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野田国務大臣 盛りだくさんの御質問でございましたので、若干漏れが出るのを多少懸念いたしておりますけれども、まず初めに、世界
経済の
現状と見通しはどうか、こういうことでございました。
これは簡単に申し上げますと、景気後退が続いておりましたアメリカなど一部の国で回復過程に入るなど、全体として世界
経済は減速から脱しつつあるだろう、こう言えると思っております。ヨーロッパでは、特にドイツでは、いわゆる統一景気といいますか、統一を契機に好調な
経済が続いてきたわけですが、やや内需が鈍化し、景気が減速を強めてきておるという
状況にあるのではないか。フランスでは緩やかに景気が拡大をしておるし、イタリアでは内需の鈍化などから景気の
基調は弱い。イギリスは景気が後退局面から脱しつつある。それから、アジアの途上国では、総じて内需が好調でありますし、輸出も増加が続いておるということから好調な拡大が続いている。東ヨーロッパは、御案内のとおり、
市場経済への移行を目指す過程にありまして、
経済情勢は厳しいということでありますし、御案内のとおり、ソ連も深刻な
状況にある、こういう
状況にあります。
今後の見通しでありますけれども、先進国
経済全体としては、今後成長率は上向いていくだろうという予想を一応いたしておる
状況にあります。
それからいま
一つは、輸出輸入の
現状と見通してありますが、先ほど御
指摘がありました、確かにことしに入りまして貿易黒字が予想以上にかなり膨れ上がってきた。しかし、これはむしろ構造的な要因というよりも、基本的には円高ということが、いわゆるJカーブ効果といいますか、それによって一時膨れ上がっておるということが
一つあると思っております。
それからいま
一つ、いわゆるドイツが統一をした。それに伴う東独
地域を
中心とする需要が非常に強かったということからこれが膨れ上がってきた。しかし、これはもうそろそろ減速傾向に入ってきたということであります。それから、東南アジア
地域が
経済の拡大が続く中で、日本の輸出も大幅に伸びた。これも今輸出の伸びはやや減速傾向にある。
一方で、輸入の側面は、いわゆる高級絵画あるいは高級自動車、こういったものが、昨年はかなり大幅な輸入があったわけですが、これがすとんと落ち込んできておる。いわば一時的要因というものがある。むしろ構造的な側面で見てみると、
数量ベースの伸びで見ますと、輸出の伸びよりも輸入の伸びの方が上回っておるということ、これは非常に大事なことだと思っております。
それから、より長期的に見ても、日本の
経済のこのところの成長が基本的に内需で成長率を稼ぐ、いわば外需の寄与率はむしろマイナスになるというようなパターンにだんだんなってきたということが言えると思っております。したがって、これからも内需を
中心にして日本が着実な成長を続けていくということが貿易収支の面でも非常に大事なことだ。しかし、何もしないでいいというわけにはいきませんので、今日までいろいろ構造
調整の
努力ということ、この成果があったればこそ今申し上げたようなパフォーマンスになりつつあると思っておるわけですが、さらに
消費者の視点をも念頭に置き、
内外価格差の問題もあります、あるいは
市場参入の問題もあれば、いろいろな角度からの規制緩和の話やらいろいろあるわけですが、そういった構造
調整の
努力をしていかなければならぬ。
特に大事なことは、私どもは今日、ソ連を
中心とする東側と西側との冷戦構造がずっと変わってきた。そういった中で、いわば自由主義
経済あるいは民主主義の政治体制ということは決して西側だけの専売特許ではない。むしろこれは共通の価値観になってきた。
そういった中でもう
一つ大事なことは、やはりフェアな姿が必要になってきておる。単に自由主義
経済というだけで共通の価値観だと言えない。そういった中で、日本とアメリカ、ヨーロッパとの
関係の中で、やはりそういう
理念的なプリンシプルみたいなものが非常に必要になってきた。そういう意味でお互いがフェアであるということ、そういう共通のルールを持っていかなければならぬ。日本人から見れば何ら問題意識はなかったけれども、世界の目から見てフェアだという認識がなされるのかどうか、そういったことがやはり大事な時代に入ってきたように実は感ずるわけであります。そういった意味で、これから構造
調整ということもさらに我々は心していかなければならぬことだと思います。
しかし、だからといって、このことと今回の農業交渉の問題を絡めてやるということでは私はないと思います。基本的に、フェアという側面から見れば、アメリカも決してフェアとは言えない部分があるわけですね。御案内のとおりウエーバー条項を持っているわけだし、ECも可変課徴金だの輸出補助金だのいろいろあるわけでありますから、そういった意味で、これは現在交渉事でありますから、いわば黒字減らしということのために私どもはここでそういった農業交渉を使うとか、あるいは何かまた内需、何といいますか、財政政策を用いて、これは冒頭申し上げましたような日本の
経済の
現状でありますかう、ここでまた
公共投資を財政政策を用いて大幅にやるということになると、かえって建設資材の暴騰を招きかねない、そういうことも実はあるわけであります。
そういった意味で私どもは、今回
政府・与党の中で
経済の問題について緊急の
会議をやろうということになりましたけれども、それは何も
現状の
経済の認識というものをお互いもう一遍きちっとすり合わせをして、その上で、いよいよこれから来年度の予算編成等々に向かうわけでありますから、そういった中で基本的な意思疎通を図っておこうという
趣旨でそういうことになったわけであります。長くなって恐縮でございました。