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1992-01-10 第122回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成四年一月十日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 高村 正彦君    理事 岩村卯一郎君 理事 金子徳之介君    理事 杉浦 正健君 理事 東   力君    理事 簗瀬  進君 理事 石橋 大吉君    理事 日野 市朗君 理事 藤原 房雄君       赤城 徳彦君    上草 義輝君       内海 英男君    金子原二郎君       鈴木 俊一君    西岡 武夫君       鳩山由紀夫君    保利 耕輔君       星野 行男君    松岡 利勝君      三ッ林弥太郎君    御法川英文君       柳沢 伯夫君    有川 清次君       佐々木秀典君    志賀 一夫君       田中 恒利君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    前島 秀行君       目黒吉之助君    元信  堯君       倉田 栄喜君    藤田 スミ君       小平 忠正君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  委員外出席者         外務省経済局次         長       須藤 隆也君         厚生省生活衛生         局食品保険課長 織田  肇君         農林水産政務次         官       二田 孝治君         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省農蚕         園芸局長    上野 博史君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         農林水産省食品         流通局長    武智 敏夫君         食糧庁長官   京谷 昭夫君         水産庁長官   鶴岡 俊彦君         通商産業省通商         政策局国際経済         部国際経済課長 日下 一正君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君     ————————————— 平成三年十二月二十日  一、農林水産業振興に関する件  二、農林水産物に関する件  三、農林水産業団体に関する件  四、農林水産金融に関する件  五、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(ガット・ウルグ  アイ・ラウンド問題)      ————◇—————
  2. 高村正彦

    高村委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簗瀬進君。
  3. 簗瀬進

    簗瀬委員 昨年は湾岸戦争で年が明けましたが、ことしは言うならばブッシュ台風と、そして米で年が明ける、そんな感じでございます。  昨日、ブッシュ大統領、そして宮澤総理との間でいわゆる東京宣言アクションプランというようなものが公に発表されました。その中で、大変我々が注目をいたしておりますガットウルグアイ・ラウンドについて、昨年末に出されましたドンケル事務局長のいわゆる最終合意案についての評価文言が今大変注目を浴びているわけであります。これがなかなか理解のしづらい文言でございまして、直訳的な訳を各紙とも取り上げておりますけれども、「日米両国は成功裏の妥結に導くための弾みをつける重要な一歩と信ずる」ということで大変評価し、前向きな表現があれば、その同じ言葉の乾かないうちに、この最終合意案は「最終テキストではなく、両国政府が現在も文書の分析、評価を継続して」行っているなどというように、大変言葉としてもそれぞれの両国立場を反映をした玉虫色的な解釈ができるようなものになっているわけであります。  こういうふうな背景の中で、私はまず質問の冒頭にお訴えをしたいのは、ガット意味をどうとらえるのか、あるいはこれについて日本が今後本当に取り組んでいかなければならないことがあるんではないかなということを、まず提言的な発言をしてみたいと思っております。  ガット睦言うならば、ゼネラル・アグリーメント・オン・タリフス・アンド・トレードということで、関税貿易についての一般協定なわけでありますけれども、最近においては貿易協定がその主になっているわけであります。そして、ガットが最初できたころから現在に至るまで、いろいろとガットの内容が変質をしているんではないかなということを私なりに考えてみました。  まず第一段階は、アメリカ頂点とする自由貿易体制をどのように充実をさせていくのかという、そういう次元ガットが使われたというわけであります。すなわち、冷戦構造の中で自由主義陣営をいかに強化をしていくのか、そういう場づくりとしてガットというものが使われたのではないか、これが第一段階だと思います。  しかし、第二段階は、その自由貿易体制の中で足並み乱れが出てきた。その足並み乱れの最たるものがいわゆるEEC、当時でございます。ということで、アメリカ頂点とする自由貿易体制の中でブロック経済方向性が出てきた。言うならば、このアメリカ頂点とする一元的な自由貿易体制ブロック経済を志向したその動きをどのように処理をしていくのかというのがガットの第二段階のスペースになったんではないかなと私は思っております。そして、農業の問題もまさにそういう段階で出てきたわけでありますから、農業問題の本質は、まさに自由貿易体制自体ブロック経済体制の中でどのような調整ができるのかという、そういう新しい次元の問題が出てきたのではないか、これが第二段階の問題だと私は思います。  しかし、第三段階は、これこそ我々がしっかりと考えていかなければならない新しい次元の問題だと思います。それはなぜかといえば、米ソ冷戦構造が全く消滅をしてしまったわけであります。そして、言うならば独立国家共同体という、今までの冷戦構造はなくなりましたけれども、新しい一つブロック経済根っこがまたあそこに生まれてまいりました。でありますから、米ソ冷戦構造消滅をいたしましたけれども、それと同時にブロック経済体制が、今まではEC中心にするものとして志向されていたものが、新しくソビエト中心とするものとして出てきているのではないか、これをどのように調整をしていくのかということがこれから考えなければならない重大な問題であるはずであります。  そういう中にありまして、ガットに我々が取り組む姿勢において、世界経済経済システムについてどのようなグランドデザインを持っているのか、それとのかかわり合いの中でガットウルグアイ・ラウンドを考えていこうといった、そういう非常に次元の高い取り組みが欠如しているのではないかなと私は思います。まさにこれから我々が考えていかなければならないのは、その自由貿易体制が必要ではありますけれども、その中で、いろいろな状況の中で、徐々に強固になりつつあるブロック経済、これとの調整をどのようにしていくのかという、その次元農業をどのように扱っていくのかといった問題が大変重要であると私は思っておりますので、質問に先立ちましてその発言をさせていただきました。  さて、質問でございます。  昨年、ウルグアイ・ラウンド交渉においていわゆる最終合意案というようなものが出されたわけでありますが、ウルグアイ・ラウンドは、言うまでもなく世界貿易の一層の自由化と拡大の実現、ガット原則に基づく多国間貿易体制改善策目的として行われているものであります。プンタデルエステ宣言の中にあるように「保護主義を防遏し、巻き返し、貿易歪曲措置を除去する」、これがウルグアイ・ラウンド目的であるわけであります。こういう中で新しい農産物貿易ルールを策定するに当たりましては、これは輸入する側と輸出する側の双方にとってバランスのとれたものでなければならないのは常識であります。買う人がいれば売る人がいる、こういう形の中で輸入輸出というようなものが生まれてくるわけでありますから、いわゆる輸入国立場というようなものが輸出国立場の裏腹として十分に考慮されていなければならないわけであります。  こういう観点から、輸入国輸出国で本当に十分な議論がそれぞれの立場お互いに考慮した上でなされたのかどうかということが重要な、大変な問題になってくるわけであります。しかしながら、昨年の交渉過程を見てみますと、ダンケル議長が行ったことは、米国、ECという二大輸出大国あるいは超ブロック、その協議の動向を専ら注視していたのではないか。そのために、今申し上げた輸入国輸出国との間の協議らしい協議あるいは議論らしい議論が行われなかったのではないか。例えばダンケル案に記載された国境措置国内支持輸出補助金のそれぞれの削減率数字というのが公になっているわけでありますけれども、例えば、なぜ国境措置が三六%なのか、国内支持が二〇%なのか、輸出補助金が二四%なのか、これらの数字については何の議論もなされていないのではないかと聞いているわけであります。この点、農業交渉グループにおける議論の実際は一体どうであったのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 川合淳二

    川合説明員 今先生からお話がございましたように、このウルグアイ・ラウンド交渉、特に農業交渉は一九八六年に始まったわけでございますが、そのときめ交渉を始める動機と申しますか背景から見ますと、今先生がまさに御指摘になった冷戦構造の変化あるいはブロック化というようなものがここへ来て色濃くこの交渉にも投影されているのではないかということは、私も感じているわけでございます。  そうしたこともございまして、このウルグアイ・ラウンド農業交渉が複雑な経過を経てきているわけでございますが、今御質問の点からお答え申し上げますと、十二月二十日にダンケル・ペーパーが出されたわけでございますけれども、その間それに至りますまで公式、非公式の交渉、あるいはガットの場を離れた、例えば米・EC間の交渉などがあったわけでございますが、こうした交渉が必ずしも十分かみ合っていかない。それは今先生が御指摘になった背景もあったかと思いますが、そうした中でダンケル・ペーパーが出されたということは否めない事実だと思います。特に削減率あるいは基準年というようなところにつきましては、全く議論がなされないまま出されたということもまた事実であります。したがいまして、この合意案につきます農業部分につきましては、それぞれの国がかなりの意見、異なった意見を持っているのではないかというようなことは私どもも感じているところでございます。
  5. 簗瀬進

    簗瀬委員 今答弁にありましたように、ダンケル案においては輸入国輸出国双方の本格的な議論というようなものがどうもなかったのではないかというふうに聞かせていただきました。今後の交渉において、我が国としても輸入大国としての日本立場を十分に主張するようにしていかなければならないと思います。農産物輸入大国、一位は世界ではもちろん日本であります。二百八十億ドルを輸入をいたしておるわけであります。そして二位はソビエトであります。三位は西ドイツ、四位がイタリー、五位がイギリス。それぞれ輸入大国としての、輸入国としての立場を持っている国も世界でたくさんあるわけでありますから、この食糧輸入国としての立場交渉結果に十分反映されるように最大限の努力を払われることを期待いたしたいと思います。  次に、昨年のジュネーブ交渉において、我が国代表団からドンケル最終合意案なるものについてはいろいろな注文がなされたと聞いております。特にその中で私は注目をさせていただいておるのは、いわゆる三つバランス論であります。  今申し上げました輸入国輸出国バランスが本当の意味でとれているのであろうか。言うならば、輸出国輸出するばかりで、場合によっては自分の国内的な事情によって輸出をいつでもカットできるという形になれば、輸出を当てにしていた輸入国立場は全く害されるわけであります。そんな観点からも、この輸出国輸入国バランスを一体どのようにとっていったらいいのだろう。  あるいは農業交渉における国境措置やら国内支持輸出補助金三つ分野のそれぞれのバランスというものがあるわけであります。それぞれは似て非なるものであります。先ほど削減率数字を申し上げましたけれども、この数字自体が果たしてそのようなお互い共同歩調をとりながら一つ目的をきちんと達成できるような、そういうものとして考えられ提言されたものであるかどうか、こんなバランス論もやはり考えなければなりません。  そして第三番目は、ウルグアイ・ラウンドにおいて話をされているのは農業の問題だけではないわけであります。例えばサービス海運分野はどうするんだ、あるいはテレビ放送をどのように考えるんだ、こういう問題。あるいは知的所有権の問題、貿易関連投資措置問題等がございますし、また、紛争処理やらアンチダンピング、セーフガード等の、言うならば紛争解決に至るルールについての各国の利害というようなものもそれぞれぶつかり合っているわけでありますし、その交渉の進みぐあいは分野ごと大変テンポが違う、そういうふうな話も聞いておるわけであります。  でありますから、各交渉分野バランス、これもきちんととられないで農業問題だけが、真剣な議論もなされないまま、ただ早く解決をしたいという、そのせっつかれるような形での突出的な最終合意案の提出というようなことになれば、大変問題であると私は考えております。ダンケル案は、今申し上げましたこの三つバランス論の点から見て、具体的にどのような問題があると考えるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 川合淳二

    川合説明員 今御指摘がございましたように、このペーパーにつきまして私ども幾つかの問題点、しかも非常に重大な問題点があるというふうに考えております。  今先生もお触れいただきましたけれども、まずこのペーパーが出される前の十二月二十日の農業交渉グループの非公式全体会合におきましても、その点につきまして私ども代表団から発言をしているわけでございますが、輸入国輸出国バランスが崩れているということは、ぺーパーで具体的に申しますと、今先生も御指摘ございましたが、最も貿易歪曲的でございます輸出補助金削減率とそれ以外の削減率市場アクセス平均削減率、こうしたものとのバランスが崩れているということ。それから、具体的に申しますと、例えば数量輸出補助金削減率は二四という数字、これ自体根拠を私ども十分聞かされていないわけでございますが、こうしたもの。一方、市場アクセス平均削減率は三六というような関係にあるわけでございます。それから、輸出補助金削減約束につきましては、弾力的に実行し得るようになっているというようなこと。それから、基準期間輸出補助金にはより有利な期間が選定されているというような扱いがございます。それからもう一つの問題、農業交渉における三つ分野バランス。これは既に私今触れたわけでございますが、輸出補助金とそれから国内支持あるいは市場アクセス、それぞれバランスが必ずしも十分とれていないということ。  そして最後に、先生が触れられました点でございますが、十五分野、今七つのグループに分けられて交渉しているわけでございますが、それぞれの交渉によって示されましたペーパーの中の例えばサービス分野では、MFN原則例外を認めることによりまして弾力的に現実的に処理を行おうとしているのに対しまして、御承知のように農業分野におきましては、輸出補助金につきましては削減、それも一定の削減というような弾力的扱いをしているにもかかわらず、包括的関税化というような国境措置におきます画一的取り扱いをしているというような問題が各所に散見しているわけでございます。  今申しましたほかにも幾つかあろうかと思いますが、こうしたものを今精査しているわけでございますが、こうした三つバランスが十分確保されないということが非常に問題ではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  7. 簗瀬進

    簗瀬委員 今答弁にあったように、その三つバランスを失したままで最終合意案がつくられた。しかも最終合意という、文書のタイトルには最終合意がなされたかのような表現が使われておりますが、実際は合意自体がない。こういう一種の言葉のレトリックの中で合意を加速するような仕組みがいろいろと使われているわけでありまして、私は大分問題があるのではないかといった印象を持っておるわけであります。  先ほど、ガットのTとTはタリフトレードというお話をさせていただきましたけれども、まさにガット条約上の体裁自体をとっても、タリフトレードそれぞれについての法的な仕組み大分様相を変えているわけであります。関税部分については極めて強行的な、条約らしい体裁になっているわけでありますけれどもトレード、いわゆる貿易の方については大変な例外規定がちりばめられておるわけでありますし、かつて祖父条項というそんな話も出たことがあったぐらいにその法的な縛り方の意味合いにおいてタリフトレードの間には大分差があるのではないか、そんなことはもう常識的になっているわけであります。  その代表的なものといたしまして、いわゆる数量制限の一般的な禁止を定めた十一条一項、これの例外として十一条二項があるわけであります。十一条二項というようなもの、これは当初からそこに埋められたということを考えてみますと、やはりガットの当面の、発足当初の目的というようなものは工業製品に主眼を置いていたのではないかなということを強く感じるわけでありますけれども、それを今さら言っても始まりませんので、この十一条二項同といった、言うならば数量制限についての一般的禁止例外として定められた規定に基づいて我が国において輸入数量制限を行っているものに、例えばでん粉乳製品等があるわけであります。これは包括的関税化とは相入れないものでありますが、こういう問題についてもこれから十分議論されていかれなければならないことであります。我が国としては、今申し上げましたでん粉乳製品等の十一条二項の維持明確化について今後どのように対処していくつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 川合淳二

    川合説明員 乳製品などの生産調整を行っている品目につきましては、現在のガット規定に十一条二項同があるわけでございます。これは今先生もお触れになりましたが、農産物貿易あるいは農業というものが工業製品あるいは工業と違うということに基づく規定であるというふうに私ども考えでいるわけでございますが、今回のダンケル・ペーパーにおきましては、包括的関税化という考え方が出されているわけでございまして、その範囲におきましては、こうした十一条二項同におきます生産調整を行っているものについての輸入制限数量制限の許容というものが否定されているというふうに考えざるを得ないわけでございます。  しかしながら、私ども主張していることに対しまして賛同あるいは同調をしております国は二十数カ国に及んでいるわけでございまして、こうした農業における特別の規定あるいは農業特殊性あるいは農業の特徴から来た規定というものについての重要性は、特に輸入国において強調されておりますし、これは今後とも非常に重要な問題として意識していかなければいけないのではないかと私どもは思っております。御承知のように維持明確化について提案を行い、これまでもそうした立場に立って交渉に臨んできているわけでございます。大きな問題点一つとしてこれをとらえて、今後の交渉におきましても、私ども立場が反映されるように努力していくということに変わりはないというふうに考えております。
  9. 簗瀬進

    簗瀬委員 私の質問時間ももう終わりでございますので、最後に冒頭申し上げたことについてもう一回強調させていただきたいと思います。  ガットウルグアイ・ラウンドというものは、ラウンドという言葉でもおわかりになるように、まず一番核心の部分は、条約法体系部分があります。しかし、それを取り囲んでいるのは政治的な交渉の場面でもあるし、さらにそれをもっと大きく取り囲んでいるのは、今後の世界経済システムをどのようにつくっていくのかというその部分が一番肝心なものであると私は思っております。そのような意味におきまして、まさに米ソ冷戦構造が終わり、ソビエト連邦という冷戦構造の一方の大立て者が消滅をしてしまった。そしてそこに新たに生まれてきたのはブロック経済を必要としている一つ根っこではないのか。ECECとして大変なまとまりを見せようといたしておりますし、世界全体が経済は減速をいたしております。そしてその地球のすべての資金源をこの日本が抱えさせられるというふうな状況になれば、日本はその重荷に絶対に耐え切れない国にやがてはなっていくであろうと私は思います。そういう中にあって、自由と強調、そして自由経済ブロック経済というようなもの、これをどのようにシステムの中で調整しでいくのかといった新しい理念というようなものがウルグアイ・ラウンドの中でも最も重要な、緊急に取り組まなければならない問題であるということを我々は意識をし、そういう立場取り組みをしていかなければならないのではないかと提言をさせていただきまして、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
  10. 高村正彦

  11. 杉浦正健

    杉浦委員 我が党の基本的な問題については大臣御臨席の上で東氏等の方からまたございますので、私はその前座と申しますか、前提としての基本的な問題について幾つお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず農水省にお伺いをいたしますが、今まで長い間農業交渉を続けてまいったわけでございますけれども、今までの農業分野における我が国の基本的な主張はどういうことであったのか、改めて概略をお伺いしたいと存じます。また次に、その主張を、いろいろございましたけれども、今後とも変えられることはないのかどうか、この基本的な点についてまずお伺いしたいと存じます。
  12. 川合淳二

    川合説明員 我が国がこれまでウルグアイ・ラウンド農業交渉に臨んでまいりました基本的立場と申しますのは、まず基本的に、一口で言えば輸入国としての立場というものが十分尊重されなければならないということがあります。ということは、食糧安定供給ということが国民に対して十分保障されるものでなければならないということになろうかと思います。  御承知のように三つ分野国内支持の問題それから国境措置の問題、そして輸出競争の問題があるわけでございますが、我々は、国内支持につきましては、我が国輸入国という立場の中でとられる農業政策が十分主体的に、かつ弾力的に政策運営あるいは政策の実施が図られるということが一番大事なことだという基本的立場に立ちまして交渉に臨んできております。この点につきましては、削減される政策というものは限定的でなければならない、一口に申しますとそういうことであろうかと思います。  それから国境措置につきましては、何よりも基本的食糧につきましては所要の国境調整措置が図られなければならないということ、そして生産調整を実施している作物につきましても、生産数量制限ができるものでなければならないということでございます。  そして、この交渉におきます最重要課題でございます輸出補助金につきましては、撤廃ないし削減が十分なされなければ、このルールがつくられるという上で決してバランスのとれたものではないという、この三点が私どもの基本的な立場ということでこれまで交渉に臨んできたわけでございます。
  13. 杉浦正健

    杉浦委員 その主張については、十三日以降また再本格化するようでありますが、変えられることはないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  14. 川合淳二

    川合説明員 先ほど来お話がございましたように、ダンケル・ペーパーにおきましては、私ども主張と異なる点が幾つか、かなり重大な点で出されているわけでございます。しかしながら、私どもがこれまでとってまいりました基本的立場あるいは基本的方針というものは、私どもは非常に適切なものであるということを考えておりますので、今後の交渉の展開がどのようになるか、必ずしも十分明確になっていないところはあるわけでございますが、基本的立場につきましては従来と変わることなく臨んでまいりたいというふうに考えております。
  15. 杉浦正健

    杉浦委員 同じ点を外務省に、お見えになっていると思いますが、お伺いしたいと存じます。  外務大臣お話、新聞報道等で若干農水省とニュアンスの異なった御発言があるやに承りますので、確認のため、以上の二点について、外務省からお伺いしたいと存じます。
  16. 須藤隆也

    ○須藤説明員 ただいま農水省の川合局長の方から御説明ありましたように、我が国の基本的な立場、それからダンケル・ペーパーに対する見方あるいは評価、特に農業部分につきまする評価につきましては、外務省としても同じ認識を持っておりまして、十三日以降の交渉において、従来の基本的な方針を踏まえて対処してまいりたいと考えております。
  17. 杉浦正健

    杉浦委員 評価の点は改めて伺おうと思っておったところでございますが、若干前の質問で出てまいりましたけれども、改めて、どのように評価しておるか。アクションプランを拝見しますと、両国とも今後本格的に検討する、そういうふうにも読み取れるわけでありますが、現時点においては、具体的に、簡単にお答え願いたいと思いますが、どのような評価をしておって、どの点が修正されるべきだとお考えか、改めて農水省にお示しを願いたいと思います。
  18. 川合淳二

    川合説明員 十二月二十日に配付されました合意文書案につきましては、かなり詳細にわたっている点もあると同時に、非常に不明確な点も多々ございます。  私ども、今精査をいたしているところでございますが、そうしたことではございますが、この案につきましては、最も貿易歪曲的である輸出補助金につきまして撤廃されないにもかかわりませず、数量制限を撤廃し、食糧安全保障や生産調整の配慮が不十分のままにこれを関税化するという考え方が提示されているということ、それから国内支持あるいは国境調整措置、この分野におきまして、基準年次あるいは削減率等につきまして全く議論がなされないまま提示されているというようなことなど、食糧安定供給、それから我が国農業、農村対策の観点から見て多くの問題点を含んでいるというふうに考えております。  先般の日米首脳会談の結果発表されました行動計画におきまして、ダンケル提案は最終テキストではないというふうにされているわけでございますが、ここにそういうふうに書かれておりますように、私ども合意文書案は最終のものとは考えておりませんので、今後の交渉においても所要の修正を求めていくこととしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  19. 杉浦正健

    杉浦委員 同じ点を外務省にもお伺いしたいと存じます。
  20. 須藤隆也

    ○須藤説明員 外務省といたしましても、ダンケル・ぺーパーにつきましては、現在、内容の詳細に関して分析、評価を継続しているところでありますし、十三日以降の交渉方針につきましてもまだ最終的に固めておりませんし、各省とも協議する必要もありますし、それから各国の動向も見る必要があると考えておりますが、これまでのところの検討結果といたしましては、昨日の日米共同宣言の行動計画の一項として載せられましたウルグアイ・ラウンド関連部分におきまして、最終合意案は、ダンケルの提案は最終テキストではないという前提に立ちつつも、ウルグアイ・ラウンドを成功裏の終結に導くための弾みをつける重要な一歩であるというふうに共通の認識を述べたわけでございますが、もちろん、両国政府がこれからも分析、評価を継続していくということが述べられております。したがいまして、今後とも詳細に分析、評価を行った上で、十三日以降の対処方針を固めていきたいと考えております。
  21. 杉浦正健

    杉浦委員 次に、各国と申しますか、ダンケル提案に対する各地域の状況についてお伺いしたいと思いますけれどもアメリカの議会内部でもウエーバー条項を外しちゃいけないという相当強い意見もあるようでありますし、農業団体の中にも相当な反対意見があるというふうに報道されておるわけであります。EC内部においてもいろいろ状況が伝えられておるわけでございますが、そういったこの農業交渉をめぐる主要国の状況についてお伺いしたいと思います。  まず第一に、アメリカECの二国間の協議が行われていると聞きますが、その状況はどうか。それから第二に、アメリカの政府、議会あるいは農業団体等でいろいろな意見が出ておるわけでございますが、そういう状況はどうか。それから、EC委員会域内各国等でいろいろな意見が出ておると聞いておるところでありますが、これらを概略、要領よく御説明願いたいと思います。
  22. 川合淳二

    川合説明員 米・EC間の協議でございますが、これは十一月以降年末まで、いろいろな段階で行われたようでございます。ダンケル・ペーパーの提出されました後も接触が持たれたようでございますが、結果的には両者間の考え方になおかなりの差があるのではないかというふうに私ども考えておりまして、十三日以降の交渉の課程でどういうふうな形がとられるかはわかりませんけれども、今なお両者間には隔たりがあるのではないかというふうに考えております。しかしながら、この両者の動きというものは交渉に大きく影響することは十分考えられますので、今後とも十分注意を払っていかなければならないのではないかと思っております。  それから、それぞれの国、地域の反応でございますけれども、米国につきましては、私どもまだ情報をつかんでおりませんけれども、昨日議会の下院の農業委員会で公聴会が開かれているわけでございます。年末にも開かれております。それから、ダンケル・ぺーパーが出された後、幾つかの意見が出されておりますが、それを簡単に申しますと、輸出産品を比較的統括していると言っていいファーム・ビューローなども、なお不十分で問題ありと言っておりますし、ウエーバー品目の酪農あるいは砂糖、ピーナツというような生産者団体はウエーバーの撤廃に反対しているわけでございます。それから、ECにつきましては、二十三日に外相、貿易大臣などの理事会がございましたが、この後に出されたコミュニケでは、現時点では評価は尚早ではあるがと言いながら、農業部門はEC農業政策の基礎に異論を唱える限りにおいて受け入れられず、修正が必要であるというふうな発言をしております。それから、加盟国間でも、フランス、アイルランドは、ダンケル・ぺーパー農業部分について拒否ということを言っておりますし、ドイツにおいても、キーヒレ農相は農業関係提案を激しく批判しているというような状況にございます。EC農業団体は、保護の引き下げについて反対の意向を表明しているというような状況にあるというふうに承知しております。
  23. 杉浦正健

    杉浦委員 包括関税化に反対するカナダ、韓国等の国々について、昨年末我が国からいろいろと働きかけを行ったと聞いておりますけれども、これら諸国の、いわば日本立場を共通にする諸国の状況についてはいかがでございましょうか。
  24. 川合淳二

    川合説明員 今お話ございましたように、このダンケル・ペーパーが出されるまで私ども、私どもと同様の考え方を持っております国々に、この包括的関税化反対についての働きかけあるいは同調ということをとってきたわけでございます。具体的には、在外日本大使館を通じまして、この考え方に対する反対を申し入れあるいは同調を求めると同時に、我が省の関係局の審議官クラスを派遣するような努力をしてきたわけでございます。その結果、ダンケル・ペーパーが出された以後、まだ必ずしも明確になっていない国もありますが、今のところ、二十一カ国が例外なき関税化に反対する立場をとっていると見られるに至っております。一昨日も、私どもの審議官クラスを関係国に派遣するなどの措置を既にとっておりまして、こうした働きかけをさらに深めていきたいと思っております。
  25. 杉浦正健

    杉浦委員 以上で質問は終わらせていただきますが、古今東西、例外のない原則はないわけでございまして、特に、農業は非常に自然条件等に制約される等難しいわけでございまして、関税化するにしても、どの国もとの地域もいろいろ困った問題があるというのは、これはもう皆様よく御承知のとおりであります。我が国の基本方針も、お伺いしたとおり、極めて常識的、良識的な方針でございます。外務省の方も農水省と一致して対処するということでございますので安心をいたしましたが、いろいろな状況を見まして、いよいよ十三日から、これからが本格的な交渉の開始であろうというふうに見られるわけでございまして、今後とも政府一体となってお取り組み賜りますように、原則的な立場ウルグアイ・ラウンドで貫くようにお願いをしたい。また、我が国農業団体、関係者の意向もよく聴取をして、このウルグアイ・ラウンドの決着について誤りのないように今後とも御努力賜らんことを期待し、私どもも全力を挙げて努力することを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  26. 高村正彦

    高村委員長 東力君。
  27. 東力

    ○東(力)委員 今簗瀬杉浦両代議士から基本的、体系的な質問がありましたので、私はそのフォローアップをし、落ち穂拾いをしたいと思います。  最初にまず、大臣が出席されましたので大臣にお伺いしたいのですが、米は自給するという国会決議に基づいた政府の方針は堅持されるのか、最近いささかでも変化があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  28. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 国会決議を尊重して今日まで努力をいたしてまいりましたし、今後もその決意で努力をしてまいります。
  29. 東力

    ○東(力)委員 外務省からもその点につきまして確認をいたしたいと思います。
  30. 須藤隆也

    ○須藤説明員 外務省といたしましても、従来の基本的方針を踏まえて努力いたしたい、同じ考えでございます。
  31. 東力

    ○東(力)委員 それでは、最近マスコミ等で外務大臣を初め総理大臣、政府の首脳が、一部開放とかあるいは関税化にも理解を示さないかぬなというような発言が見られるのですが、外務省事務当局、大臣と食い違いがあるということですか。
  32. 須藤隆也

    ○須藤説明員 外務大臣が言われたことがいろいろ報道されておりますが、外務大臣に確認いたしましたところ、外務大臣としては、関税化なり特定の解決方式を示唆したものではなくて、ダンケルの包括的合意案が出てきたということを踏まえて、そのダンケルの提案する関税化とその他の選択肢とをよく比較検討した方がいいのではないかという問題提起を行ったということであって、特定の方式を示唆あるいは容認したということではないというふうに理解しております。
  33. 東力

    ○東(力)委員 まあ誤解をされるようなことをなるべく慎むべき特に大事な国際交渉の時期であると思いますので、農林水産大臣にも、このことをよく閣議でもしっかりと認識していただくようにひとつお願いしたいのですが、いかがですか。
  34. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 おっしゃるとおりいろいろな、まあ基本的なところは変わっていないのですが、枝葉がちょっと気になる発言が多いのではないかなという気がいたしておりますが、しかし、基本的には、自由化につながるような関税化というものは我が国は認められないという方針ではみんな一致しているわけでありますから、今後も私からもそのようにお話を申し上げていきたいと思います。
  35. 東力

    ○東(力)委員 まあ枝葉の話だったらいいのですが、それがそっちへ行っちゃうなんということになると根本的に変わってしまいますので、そういう危惧を持たざるを得ない。特に農家の方々はそうだと思いますし、その点につきまして、今ここで追及しませんが、また追及する方はたくさんおられると思いますから、やはり気になるということで、厳に気をつけていただきたいと、大臣からひとつよくお願いいたしたいと思います。  そこで、ダンケル・ペーパーでありますが、例外なき関税化ということを要求している。今農水の事務当局からも、議論がなかったというようなこと、それから外務省当局からも、まだこれから勉強するんだということ、あるいは分析、評価するんだ、これは日米のアクションプランにも書いてありますが、ちょっとおかしいんじゃないかなと思うのですね。一年前に、私も政務次官をしておりましたが、全く同じようなことが一年延長されて、中身はわかり切っているんじゃないか、まだこれからその分析をしてというような話じゃないんじゃないか。これはごまかしというか、逃げているんじゃないかという気がするのですが、新しいことが、それじゃ予測以外の何かあったのかどうか、これは外務省、農水省、両省からお聞きしたいと思います。
  36. 川合淳二

    川合説明員 分析あるいは評価をしている点と申しますのは、かなり詳細に今回のぺーパーは出ておりますので、そうした点についてでございます。少なくとも、包括的関税化という考え方については、我が国の態度は固まっており、変わっていないわけでございますから、しかもこの点につきましては、二十数カ国に及ぶ国々から反対の意見が出されているわけでございますので、ダンケル・ペーパーにそれが反映されていないというのは非常に遺憾なことであるというふうに考えております。
  37. 須藤隆也

    ○須藤説明員 農業部分に関しましては川合局長と同じ認識でございますが、従来から議論されていたことを踏まえてダンケルの最終合意案が出てきたことはそのとおりでございますが、あの中には、従来の議論を踏まえて各国がほぼ共通の認識を持ったものが反映された部分と、そうではなくて、各国が対立しているままにダンケル議長がみずからの考えを出された部分とありまして、特に数字については、先ほどから御議論ありますように、全く議論なしに出されたというようなこともありまして、その影響とか効果とかいうものについては引き続き分析する必要があると考えております。
  38. 東力

    ○東(力)委員 そのダンケル・ペーパーはまだファイナルテキストではないんだということは、これからまだ交渉したり変更する余地があるということで、これはそうなんだろうと思うのですが、一方で、アメリカ等も基本的にはそれを支持している。関税化というのはもともとアメリカ側から出てきたんだろうと思うのですが、そしてそれを推進する立場にありまして、そういう中でブッシュ大統領が来られた。そのプロセスの中でも、新聞報道等によりますと、外堀が埋められてきているというか、だんだん追い詰められてきたようなことを書いてあるわけですね。  大臣、こういう状況の中で、米につきましては例外なんだ、それをかち取るという御自信がおありなのかどうか、伺いたいと思います。
  39. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 交渉事でありますから、交渉している問は私どもは信念を持ってこれに取り組んでおる。見通しはどうかというのは、試合と同じでやってみないとわからぬ、こう思うのであります。しかし、ご案内のように、いろいろと問題がありますし、各国の状況もまた定かではないし、そんなところで、これからどういう方向に行くかというのは私も予測はつけがたいのでありますけれども、しかし、何としても守るべきところはきちっと主張してまいりたい。各国みんな違うわけでありますから、米あり乳製品あり、そういう中で反対の国々がどういう主張というものをしていくのか。私どもは、米の分野での自由化になるところは、これは敢然と阻止をしたい、こういうつもりでおります。
  40. 東力

    ○東(力)委員 かつての名監督が、試合というのは予測できないと言われるわけですから、まさにそういうことだと思うのですが、仮に、米に対しても譲れないということを貫いて、そのためにウルグアイ・ラウンド交渉が行き詰まるということがあってもやってくれるのかどうか、いかがですか。
  41. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 再三報道に米問題が大きく取り上げられておるのですが、私は、米よりも全体でむしろ自動車の方だ、こう思っておったのですが、どうも書きっぷりが米、米、こう書かれるものですから、私どもはそんなに重大にというか、今回のブッシュ大統領との交渉事でこれが取り上げられるとは思っていなかったのです。全くそのとおりでありましたが、全然なかったかというと、それはあったわけでして、予想された程度のことの話し合いはあったというふうに実は受けとめております。おりますが、いずれにしても交渉事でありますから、私どもは、外堀が埋まってもうどうにも動きがとれないというふうには感じてはおらない。これをまた開いていくというのが大事な仕事でありますから、予測を持っており先々のことを申し上げるのではなくて、やっぱり全力を尽くしていくんだということで取り組んでいきたい、こう思います。
  42. 東力

    ○東(力)委員 外務省に伺いたいのですが、日米首脳会談のテキストですと、やはりウルグアイ・ラウンドを成功裏に終結させなければいけないということについては、日米でも、また多くの国でも共通の認識をしていると思うのですが、そういう観点に立つと、米に余り頑張らされ過ぎると困るというお気持ちですか、伺いたいと思います。一生懸命突っ込んでやってくれるのかどうか。
  43. 須藤隆也

    ○須藤説明員 外務省といたしましてもウルグアイ・ラウンドの成功はぜひ確保しなければいけないという認識は持っておりますが、同時に農業につきましては、従来の基本的方針を踏まえて、各国の理解を得て、相互に受け入れ可能な解決策に至るように努力したいというふうに考えております。
  44. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ちょっと答弁を落としましたが、言われていることは、ウルグアイ・ラウンド全体としては成功させなきゃいかぬ、こうみんな言っているわけです。それがややもすると、ウルグアイ・ラウンドは米だというふうに報道されるものですから、ウルグアイ・ラウンド全体としては成功させなきゃならぬ、譲るべきものは相当譲るという中で、しかし米のところはこうですよという意味が、何か譲る、努力するというと米も一緒にというふうにとられるところが、ここのところは分けて議論していただきたいな、こう思って見ております。
  45. 東力

    ○東(力)委員 私は、大臣の言うこと、よく言われますし、わかっているつもりで聞いているのですが、ウルグアイ・ラウンド全体としては、市場のアクセスその他自由貿易を拡大発展させていこうということでもう五年もやってきているわけですから非常に大事だ、しかし米だけは譲らないんだという方針で臨んでいただけるというふうに解釈したいと思うわけでございます。  そこで、もう既に十三日が提出の期限、それから本格的交渉をやっていくんでしょうが、先ほど外務省から十三日以降のことはまだ固めているわけではないと言っているが、基本的方針がしっかりしていたら、今になって、二十日から今日までもう三週間ですか、もうあと二日、三日で提出だというときに固まっていないとか検討中だというだけでは済まされない。だから、基本的方針がしっかりしているのなら十三日以降のこともしっかり固まっているんじゃないかと思うのですよ。それが第一点。  これから交渉していくというスケジュールですが、例えばアメリカの議会とかその他いろいろなスケジュール、日程がある中で、例えばサクセスフルコンクルーションというのが実現できるとすれば、それに至るまでどういう交渉のスケジュールなのか。外務省の、これからだ、固まってないという話はちょっといいかげんじゃないかなという気がする。しかも、農水省と若干微妙な食い違いがあるんじゃないか。しかも、今までどおりぴしっとやりますということとはかなり食い違っている、基本的に食い違っている。この点につきまして、御説明をいただきたいと思います。
  46. 須藤隆也

    ○須藤説明員 先ほど申し上げましたのは、農業部分につきましては基本的方針ははっきりしているわけでございますが、具体的に十三日のTNCにおいていかなる対応を行うか、あるいはいかなる発言ぶりを行うかということについては、これから農水省の方とも相談させていただいて具体的な対応ぶりは決める必要がある。特にECがきょう、あしたと理事会を開いて検討するというような動きもありますので、そういう動きも踏まえながら、具体的にどういう言い方をするかというようなことについて、十三日まで十分に検討していく必要があるという意味でございます。  それから、交渉のタイミングにつきましても、今のところダンケル議長から具体的なことは言ってきておりませんで、十三日の会議の場においてダンケル議長から何らかの提案があるものと思っております。
  47. 川合淳二

    川合説明員 今外務省の方から御説明ありましたけれども、十三日のTNC、貿易交渉委員会がどういう形で持たれるかということがまだ決まってないということが一つございまして、今外務省からお話がありましたような、それに対する具体的な対応の仕方が決まってないということでございまして、基本的方針は、先ほど来申し上げているように私どもはぴしっとしているというふうに考えております。
  48. 東力

    ○東(力)委員 先ほどの外務省の説明は非常に明確で結構だと思いますが、それをしっかり守ってくださいよ。だから、守ってくださるということと、首脳が余り誤解されるようなことを言わないということ、この二つはお願いいたします。  あと、もう時間も来たと思いますので、大臣にお願いしたいのですが、そうすると、ウルグアイ・ラウンド交渉がある。みんなが心配しているんだけれども、米農家の立場に立って考えれば、安心して米をつくっていればそれでいいというのか、ちゃんと守ってくださるということなのか。しかし、世界的潮流としては、補助金を削減していこうという動きがあることも確かですね。これは、一方で軍縮等もあるように、そういう動きもあることはあるんですが、そういう中で、大臣農業、農政に対して基本的にどういうビジョンを持ってそれを実行されていくのか、したがって農家は安心して農業という基本的に大切な職業にプライドとそして自信を持ってやっていける、これをちょっとお示しいただきたいと思います。
  49. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 これは、現状のままで日本農業というものはいいかというと、恐らく先生方も、このままではいかぬ、何らか改善をしていかなければならぬ、こう思っておられるだろうと思うのですね。従来から国土の条件なんというのは日本は非常に厳しいんですけれども、その中でも、生産性の向上によって、米価のときも御案内のように引き下げをいたしてまいりました。そういうことでありますが、何といっても国民の納得し得る価格で安定的に供給するということを基本として、価格の引き下げをやってみたり、市場の開放をしてみたりいろいろやってまいりました。  しかし、よく言われることは、農業は保護をし過ぎるとか、補助金つきだとかということを言われますけれども、農家の手元に直接渡っている分というのは、日本は三千億ぐらいなんですね。ECは五兆九千億ですから、どんどん減らしてきているんです、日本は。逆にアメリカECはふえていっているのですね。そのくらい努力をしておるんです。また一方では、市場というものは相当開放しております。  問題は、これからの問題というのは、私は、何といっても高齢化社会と出生率の低下、担い手の不足、これは企業界がそうだろうと思うのです。こうしてみますと、一体、少なくなっていく担い手がどうやって一億二千万の食糧を確保するかということになりますと、やはり多い、半分になるとすれば倍の耕作面積をやっていただかなければいかぬというあたりがこれからの土地利用型の農業生産体制の確立、こういうものが重要であろうと思うのです。したがって、今、前大臣が新しい食料・農業・農村ということで中長期的な展望に立ってやろう、ことしの春を目指して抜本的に、私もこれはお願いしているのです。抜本的にやってくれ、微調整じゃだめだ。思い切って、今の人に反対されてもこれからの、次の時代の若い人たちが本当にこれならやれるなという案をお示しをしたい。反対があっても、そうしなければ日本農業は成り立たぬというものをつくり上げたいと思って、今事務当局でいろいろ検討いたしております。そのときはぜひひとつ先生方も賛成していただいて、これを進めるという立場をおとりいただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
  50. 高村正彦

    高村委員長 日野市朗君。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 ブッシュ・アメリカ大統領が来日されまして、随分いろいろな話題を提供してまいりました。私は、農産物貿易について、なかんずく米についてかなり時間を割いた話し合いでもなされるのかなと思っていたのでありますが、実際ブッシュさんが立ち去られてみると、まあ大したことはなかったな。これはアメリカの米に対する関心というものが日本で取りざたされているよりも強くないなというふうに私感じたわけであります。この点についての感じ方はいろいろございましょうが、私としてはそのように感じたということであります。  ただ私、この東京宣言を見まして、それからアクションプランの第二部のところに「ウルグアイ・ラウンドの成功裏の妥結」という部分がございまして、ここにいろいろ書いてございます。これはもちろんウルグアイ・ラウンドの全分野にわたっての立言であろうというふうに私思っております。ここでは、今、東委員からも話が出たところでありますが、この点について若干大臣の見解をただしておきたい、このように思います。  「ウルグアイ・ラウンドの成功裏の妥結」という部分に、詳しくこれを読み上げるまでもないのでありましょうが、このダンケル・ぺーパーについては「ウルグアイ・ラウンドを成功裏の妥結に導くための弾みをつける重要な一歩であると信ずる。」こういうふうな記載がございますが、これはウルグアイ・ラウンドダンケル・ペーパーに対する一応の評価、日米両政府間の評価がここに表現されたものというふうに思います。しかし、私これを読んでみまして、どうも余りよくわからない。もう大臣もお読みになったろうと思います。それで、この部分をお読みになっての大臣の御感想、従来までの態度、農水省がとってこられた態度、これに変更を加える必要がありとお考えか、必要はないとお考えかを伺いたいと思うわけであります。こういう文章にまとまる、それからダンケルのテキストが、これは最終的なテキストではないということも盛り込んでございまして、大分ここいらでは農水省も健闘されたのではないかな、随分頑張られたのではないかなと思います。それで大臣の御感想を伺いたいのですが、従来の態度に対する変更のありやなしや、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  52. 川合淳二

    川合説明員 若干私この交渉に事務的に参加しておりますもので、若干説明させていただきたいと思います。  これは言わずもがなでございますが、ここの箇所はウルグアイ・ラウンド全体のことでございまして、農業について書いてあるわけではございません。  それから、アメリカにつきましても、四百五十ページという膨大な資料でございますので、アメリカ自体も十分にまだ分析、評価ができてないということがございます。そしてまた同時に、アメリカにつきましてもこのぺーパーについて十五分野あるいは七グループの中で異論があるということが背景としてあります。そうした中からこの文章が書かれたということを御理解をいただきたいと思っております。
  53. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 今局長からお話しのとおりでありますが、ウルグアイ・ラウンドは多分野にわたって幅広い議論をしているわけですね。もともとブッシュ大統領日本においでになるというときにいろいろ発言されておりました。そのときは、国内の財政問題あるいは雇用問題、これが何よりも大事だという発言をしたときに、私は余り米のことは主たる議題にならぬなと。と申しますのは、米は譲ってみても雇用が拡大するわけでも何でもない、アメリカの財政的にもこれが救われるようなほど大きなものではない、自動車だな、こうそのときに思いました。  お話しのように、従来からの変更があるかないかというと、私どもは今までの方針のとおりこれを貫いていくということに変わりありません。ただ、案の出なかった、何にもないときの反対反対というのと、一応彫が出てきたということがあって、皆さんがいや何とか、危ないんじゃないか、苦しいんじゃないかという、特にマスコミを通じてそういうことを言われておりますが、私どもはとにかく農家に大きな影響を与えるそんな自由化なんてはかなことは絶対だめですよということを言い続けてまいりました。それには確固たる理由もあって、そのことはブッシュ大統領も、日本は米についてはなかなか重大な関心を持っているし、国内の意見も非常に大きいということを理解されてああいう内容のものにまとめたのではないかな、こう思っております。いずれにしても、当初の考え方を変えるということは考えておりません。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 私もこの文章を見る限り、日本として従来の態度を変える必要は全くないというふうな解釈をしたわけであります。  しかし、マスコミの見出しなどをずらっと眺めますと、ある新聞は、「「行動計画」のポイント」として「コメ、一段と厳しい立場」、どうこの部分を読むとこういう見出しか躍るのか、私としてはちょっと理解に苦しむなと思いながら読んだわけでありますが、これは見出しをおつけになった方がいろいろな点を検討された上で」ういう見出しをおつけになったんでありましょうから文句を言ってもしょうがない、こう思っております。また、ある党は談話の中で、事実上米の開放に道を開くようになったことは許せない、こう書いた談話なんかが出たりしているのですが、私と大臣との認識は大体一致しているというふうに思いますが、こういう見方をする人たちもいるということから、しつこいようですが、もう一度私念を押したい。今までと態度、変わりませんな。また、変える必要はない、こうお思いですね。いかがですか。
  55. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 国会では三度にわたって決議をいたしておりますが、国民全体とは申しませんが、いろいろな各層の方々の意見というものは、一部ならいいではないかという話をされる方もおります。そういうものがマスコミを通じて、マスコミもやはり一部入れた方がいい、あるいは自由化になった方がいいという考えの社もあるだろうし、さまざまであります。しかし、大阪、東京を除く道府県の議会の決議というものも、この二県だけが決議をしていない、あとは全部決議をしておる。おるいは市町村段階でも、議会というものはやはりそこの民意というものを酌んで決議をされたものであろうということで、私どもはそれを尊重して一生懸命努力しているつもりでありまして、いろいろ書かれてはおりますけれども、そういう考え方もあるのかもしれません。あるのかもしれませんが、本当に農家の先々の状態というものをどう考えるかというところまで考えて賛成、反対をしておられるのかというと、入ることだけは議論をするけれども、必ずしも後の状況というものは余り踏まえないでの一部輸入という、そういうお考えかなと思って見ております。いずれにしても、先生と私との考え方は余り変わってない、むしろ同じだなという感じで受けとめておりますし、私も従来の方針どおり進めていきたい、こう思っております。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 今大臣も気になる発言ということでおっしゃったが、私もちょっと閣内の、はっきり言いますと、副総理・外務大臣渡辺さんのやはり気になる発言がそちこちで散見されるというよりはちょっと多いかなという感じがするわけでございますね。ダンケル・ペーパーが出てからいろいろ閣僚同士での話し合い、これは閣議でも話題になったかどうか知りませんが、閣僚同士の話なんかもあると思うのですね。気楽な話も含めてですよ。そういう中で、渡辺さんかどういう意味で言われたかわからぬが、非常に気になる。検討を、先ほど外務省やなんかのお話を聞いていますと、そういうことを問題として話題にしてもいいのではないかという趣旨の話なんだというような、何か釈明のような話もありましたが、私は、こういう話が出ると、やはり閣内不統一という印象を与えかねない、または副総理という立場にあられる方がそのような、ややもすれば疑問の目で見られるような発言をされることは、これはやはりいかがなものかと思いますが、少量の輸入だったらいいのではないかとか、例外なき関税化というものについて前向きな姿勢というようなものが外務省の中にひょっとするとあるのかなと思うのですが、外務省としては、いかが考えておられますか。
  57. 須藤隆也

    ○須藤説明員 外務省としましても、従来の我が国の基本方針を踏まえて今後の交渉で努力してまいりたいという考えには変わりはございませんが、先ほども申し上げましたとおり、渡辺副総理兼外務大臣幾つかの発言が報道されておりますが、外務大臣に確かめましたところ、そのような発言は、例外なき関税化の受け入れを示唆したりあるいは容認しようという意図に基づいたものではないというふうに聞いております。それから、その発言は、方法論として、ダンケル・ペーパーによる関税化とその他の選択肢の間で、結果としてどういう違いがあり得るかということを皆でよく検討してみたらいいのではないかということを言ったものでありまして、特定の方式を示唆したものではないということで、従来の基本方針には変更はございません。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 今の御説明を私は子としたい、こう思いますけれども、今この米の問題をめぐっては日本じゅうずうっと神経質になっているわけですよ。非常にみんな敏感になっています。生産者、消費者それからマスコミ、政治家も非常に敏感になっているわけでありまして、こういう時期においていろいろに解釈されるような発言は慎まれるべきであろう。もしそのことについて物を言われるのであれば、逃げを許さないといいますか、ぴしっと、これはこのような意味でしかないのですよということがはっきりわかるような言葉で物を言われるのが大臣たるポストにある人にとってはふさわしかろう、こう思うのですね。そういう意味で、ひとつ大臣の方からも渡辺外務大臣に対して、または閣内の他の大臣に対しても、そういうことをきちっとお話をしていただきたいものだ、こう思いますが、いかがでしょう。
  59. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 何人かの閣僚には私ども実は真意をただしたわけでありますが、どうも直接聞いている話でないものですから、その真意がよく伝わってない部分が多いなあというまず率直な感じがいたします。  私なんかも、新聞の取材やらテレビの番組に出まして聞かれますと、何かこっちの方に曲げて引っ張られるものですから、自分の言いたいことを聞いてくれないのですね。なぜ自由化につながることはだめかということを言いたいのですけれども、その話をすると、まあまあ、その話を切ってこっち、こっちと行くものですから、つい思わぬことを言ってしまったりしている場面というのは多いんですね。でも真意は、肝心の部分というのは、いや、自由化は絶対だめだというところは皆さんおっしゃっているのです。ところが、それが全然カットされて、後の方が載るものですからいかにも賛成みたいにとられるのですけれども、そうでないのです。そこのところはぴしゃっとしていながらも、まあ例えばという例え話というのは怖いものでして、こっちの方が大体大きく載るということがありますから、よくよく気をつけて発言しないといかぬな、こう思っておりますが、そのことを言っていても書いてくれませんと疑いを持たれるということでありますから、さらに私からも重ねてそういう閣僚の皆さんには、発言を御注意いただきたい、交渉中でありますので、ということでお願いをいたしたいと思います。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 ダンケル・ぺーパーでございますが、これが先月の二十日になったのか二十一日になったのか、そこらが微妙なところですが、出されたということでございまして、これはかなり大部のものであるということでありまして、これを全部読み切ってしまう、これを訳出するということも非常に時間のかかることでありましょうし、ちょうど年末年始、クリスマスなんかが挟まって時間的にもかなり制約があると思うのでありますが、このダンケル・ぺーパーの全容は、一応そのアウトラインは把握できているはずなのでありますが、外務省にお伺いしますが、このダンケル・ペーパーをトータルに見て、これはいろいろな省庁がずっとかかわり合いを持っております。どういう点に問題があるのかということをある程度おつかみになった、余り細かいところまでは結構ですから、どういう項目とどういう項目についてはどんな点で問題がありますということをわかっている範囲でひとつお知らせをいただきたいと思います。
  61. 須藤隆也

    ○須藤説明員 ダンケルの包括的合意案につきましては、現在もその内容の詳細に関して分析、評価を継続しているところでございまして、まだ関係各省からも最終的な反応もいただいておりませんが、とりあえず外務省としての感じを申し上げますと、我が国立場がどの程度反映されたか、あるいは何点ぐらいつけられるかというような観点から申しますと、つまり目標をどこに置くかということで大分評価も変わってくると思うのですけれども、本来日本としてとりたいと思う理想的な水準から見れば五十点というところもあるかもしれませんが、どうしても守らなきゃならないという点からいえばほぼ満点に近いところまでとれたというような、評価の仕方も各省によっても個人によっても違うかと思われますが、そういう点は別といたしまして、全体としての評価といたしまして、とりあえず外務省の感じだけを申し上げますと、農業部分につきましては今まで御議論あったようにいろいろ問題があると考えておりますが、今度の交渉は十五分野にわたるいろいろな分野を含んでおります。  特に、今回のウルグアイ・ラウンドの特徴でありますいわゆる新分野と言われるサービス知的所有権それから貿易関連投資措置三つの新分野におきましては、ラウンドにおいて安定的かつ予見可能な体制を確立してできるだけ多くの国の参加を確保することを目的として交渉してきたわけでございますが、従来のガットルールでは物の貿易についてのルールしかありませんで、こういうサービスとか知的所有権とか新しい問題に対する規則がなかったわけでございます。そういう観点から最終合意文書案を見ますと、個々の論点に関しましては我が国主張が必ずしも取り入れられていないというところもありますし、特に主管の各省庁から見ますと不満な点もあるかと思いますが、全体としては、ただいまも申し上げたような新分野における新しいルールを確立するという目的に沿ったものとなっておりまして、評価できると考えております。  それから、特に日本にとりまして問題でありましたレコードレンタルにつきましても、いろいろ非常に複雑かつ技術的な定義になっておりますが、事実上日本のレンタル制度の維持が認められる形となっております。  それから、もう一つガット交渉の中で重要な分野でありますガットルールの、規則、規律の分野でございますが、この分野におきましては、我が国としましてはい今度のラウンドにおいてガットルールの乱用あるいは誤用を防いで国際貿易体制における法の支配を確立することを極めて重視して重点的に交渉してきたわけでございますが、そういう観点から見ますと、このダンケルの合意文書案におきましては、米国の三〇一条等ガットの手続を経ない一方的な措置の禁止のようにほぼその目的に沿っていると考えられる分野もありますが、他方、アンチダンピングとか補助金・相殺措置とかセーフガードといった分野では、我が国が望んだほどの規律の強化がなされていない、規律の強化が不十分である、あるいは不適切であるというような点も見受けられまして、残念ながら我が国が求めていたほどにはルールの乱用、誤用を十分に防ぐ体制は確立していないというふうに考えております。  それから、第三の重要な分野であります市場アクセス分野に関しましては、十三日以降本格的な交渉が行われる予定でありまして、その結果がどうなるかは、現時点では評価できない状況でございます。
  62. 日野市朗

    ○日野委員 今ずっと外務省の方から総体的にお話しをいただいたのですが、通産省にちょっと伺いましょう。  アンチダンピング分野とセーフガードの部分についてちょっとお話を聞かせていただきたいのですが、この二つの部分について、我が国としては、通産省としてはどのような感想を持っておられるか。それからほかの国の対応はどうか。これはこの二つの部分に限らせていただきますが、ここの部分で、十三日から始まるTNC、ここで一体まとまりが見られるものかどうか、そういった見通しも含めてちょっと話を聞かせてください。
  63. 日下一正

    ○日下説明員 お答え申し上げます。  ウルグアイ・ラウンドの最終文書案、先生指摘のとおり、農業分野のみならず当省所管分野につきましても、相当厳しい内容となっております。  御指摘のアンチダンピングにつきましては、我が国主張でございます今後の米・ECの乱用防止のための規律の強化に関しましては十分には認められない、十分な規律の強化が図られなかった一方、米・EC主張いたしました迂回防止措置の強化につきましては三種類の迂回防止措置が認められている、こういう状況になっております。  また、セーフガード、緊急輸入制限措置につきましても、我が国が強く反対いたしましたにもかかわらず、ガットの無差別原則に違反する割り当て調整が取り入れられてしまったことは問題でございます。  他方、我が国としましては、国際経済秩序の担い手としまして、二十一世紀に向けての国際貿易ルールを積極的に推進していかなければならない立場にもございます。伝えられるところによりますと、米国やEC委員会等各国は、最終文書案に不満を表明しながらも、アンチダンピングにつきましても米国内公聴会等関係業界からヒアリングをしているようでございますが、日本も不満な一方、米国内にも不満としている向きもあるようでございまして、最終文書案に不満を表明しながらも一月十三日以降も交渉を続ける意向と見られております。当省としましては、他国の動向も見きわめながら、五年間の交渉の成果でございます最終文書案を基礎に、交渉が成功裏に終結するよう今後とも最大限の努力を行っていくことが必要であるかと考え
  64. 日野市朗

    ○日野委員 今のお話、よくわかりました。通産省の立場として模範的答案といいますか、そういうところかと思いますが、ずばり聞きましょう。どうですか、日本の国として、このアンチダンピングとセーフガード、この二つのところでダンケル・ペーパーのめるのですか。それから外国、アメリカECがこれをおいそれとのむような状況にありますか。
  65. 日下一正

    ○日下説明員 私どもの方も十五、六名いつもジュネーブの方に交渉者を出しておりまして、それぞれの交渉担当の交渉者は、昨年十二月二十日過ぎに帰ってまいりましたときも、大変交渉結果は不満足ということでございます。しかしながら、これは交渉事でございますので、今後そのアンチダンピングあるいはセーフガードについて日本が不満ということで主張していく場合、関係国の合意を得ていくことが必要になります。したがいまして、諸外国としても、今後そのダンケルの最終合意案に対してどのような意見を言ってくるかというのを見きわめて交渉していくことが必要でございますので、私どもの方としましては諸外国の出方を見きわめつつ、通産省といたしましても、日本として言うべき論点を整理しているところでございます。
  66. 日野市朗

    ○日野委員 ところで、ガットの他の分野についてもちょっと伺ったところなのですが、お話を聞いてみると、まだそのダンケル・ぺーパーの分析、評価も十分でないということが随分各方面から言われております。また、アクションプランのさっき申し上げた部分でも、またこれは分析、評価中である、こういうこと、確かにそうでございましょうね。二十日にこのペーパーが出て、外国ではクリスマスには休む、日本では新年を休むというようなことでございますから、時間的制約もあった。その分析、評価が十分なされ切ったとは私は到底思えない。この段階でTNCが開会されるわけですが、日本としてこのペーパーに対する評価、これを持っていけるのですか、TNCに。いかがでしょう。
  67. 川合淳二

    川合説明員 御指摘のように、かなり詳細、かつ物によっては具体的なペーパーでございますので、なお分析、あるいはむしろ明確化しなければいけない点がかなりあると思っておりますが、先ほど来申し上げておりますように、我が国としての基本的問題について、基本的立場についての問題点ということはわかっているわけでございます。そうした点は、十三日にどういう形で開かれるかわかりませんけれども、その開かれ方に応じまして、私どもの基本的な立場は変わりありませんので、その点についての問題点指摘は十分できるというふうに考えております。
  68. 日野市朗

    ○日野委員 このペーパー、随分分厚いものでもありますし、使われている用語の一つ一つも子細に検討していくということの必要があろうかというふうに私は思います。それから、本当に言いたいことがどういうことなのかということを一つ一つこれも点検してみないといかぬですね。ダンケル氏が一体どういう目的でこういう文書をつくったか、こういう部分はどういう意味である、こういうことを一つ一つずっと点検をしていくということになると、かなりの時間がかかってしまうということになるのではないのでしょうかね。ガットの議事の進め方等いろいろ通じておられる局長さんですからこれは伺っておきたいのですが、どうですか、短期間にこの問題については結論が出るというふうな見通しを持つことができますか。
  69. 川合淳二

    川合説明員 率直に申しまして、私どももその点は非常に不透明な感じを持っております。御承知のように、いろいろな環境と申しますか状況から申しまして、なるべく早くまとめたいという動きは当然あるわけでございまして、またそうした発言もなされているわけでございます。そうした一方で今御指摘のようなペーパーの内容であるわけでございますので、果たして今後どのような動きになっていくかというのは全くつかめないというのが率直なところでございます。したがいまして、まことに恐縮でございますけれども、今のところそうした見通しについて、私ども確固たる見通しを持ち得ないというのが現状でございます。
  70. 日野市朗

    ○日野委員 どっちにしても、この交渉というものはダンケル・ペーパーをめぐってまだまだ長く続いていくというふうに見ざるを得ないと思うわけですね。先ほどから挙げておりますアクションプランでも、これはファイナルテキストではないのだ、こういうふうに述べているわけでありますから、やはり日本日本立場というものをきちんと主張をするように、しかもこのダンケル・ぺーパーが言っていることの内容を間違いなくとらえて、他の国々とも同じような意識を持った上で我が国立場を宣明しませんと、これは国益上非常に損をするというようなことがありますから、その点は間違いなくやっていただきたい。よろしゅうございますか。
  71. 川合淳二

    川合説明員 交渉事でございまして、当然のことと私ども考えております。やはりそれぞれの関係国がどういう立場でどういう考えを持っているかということを十分把握することがまず第一でございますし、それにもまして大事なのは、我が国基本的立場というものを踏まえまして、どういう形で展開するにいたしましても、それに臨んでいくということだというふうに考えております。
  72. 日野市朗

    ○日野委員 それにしても、これから長い交渉が続くと思うのでありますが、私は例外なき関税化というような考え方、これは日本のみならず発展途上国も含めて、それから自国の食糧をできるだけ自分の国で生産をしていきたいと思っている国々にとって、この例外なき関税化というものに反対をする、こういう考え方をウルグアイ・ラウンドの場からなくしてしまうということについては、共通の利益を持っている国というのはいっぱいあると思うのでございますね。これからのラウンドの交渉については、そういった国々との連携といいますか連帯といいますか、そういうことは非常に重要になってくると思います。昨年の暮れ近くになってから、我が国はほかの国々と六カ国共同で意見書を出すというような行動をとられたようでありますが、私は、こういう行動はもっと早くとられるべきであったのではないか、こう今考えております。これからもあらゆる努力をしてラウンドを日本に有利なように導いていく、特にこの農業分野については米の輸入に道を開くというようなことがないように懸命の努力を私は政府に対してはお願いをしたい、こう思います。  では、どういうこれからのラウンドに対する農水省の働きかけになるかというと、もう農水省もいろいろ考えてはおられるであろうと思いますけれども、私、こうやって見ておりまして、ほかの国では最高責任者、つまり大臣クラスですね、こういうところが活発に飛び回って、そして自分の国の訴えを他の国に理解してもらうような話し合いを行っているという姿を随分見るわけでありますね。我が国においても、どうですか、大臣、このラウンドに対する取り組みについて、あなたも各国を歴訪して、そしてラウンドのキーになる国というのはあるわけですから、重要な国というのはあるわけですから、そういうところにはどんどん行って、積極的に日本立場を理解してもらうような努力をすべきではないか、私はこう考えておりますが、いかがですか。
  73. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 この進め方自体は、何とか自由化の方向でやりたいというところの国という輸出国、この人たちはやはり閣僚レベルで何回も詰めをやっている。私どもはそうしたくないという方の立場でおるものですから、積極の度合いがいささか、見ておるとさっぱりやってないじゃないかと思われがちなのですが、こっちはだめという基本方針があるものですから、そういうことでまいりました。しかし、これからはいよいよ十三日からいろいろな動きが出てまいりますので、私が行ってもうまくまとまらぬところに、何といいますか、少し見通しというものを見ながら、必要であればその反対の国々の交渉に出かけていきたい。もう少し様子を見てみたい、こう思っております。
  74. 日野市朗

    ○日野委員 私たち社会党の方でも、実は去年、随分各国の大使館を回りました。そして、日本立場に対する理解を求めて歩いたわけですが、各国に行ってみますと、自分の国の力というものは、やはり外交交渉にいろいろ影響するものでございますね。日本のように私の方の国はそう強い国じゃないものですから、どうぞ日本さん頑張ってください、こういうような形になっているわけですね。そう言っても、お互いに一緒に頑張りましょうということを言ってくる。そうすると向こうでも、いや本当にお互いにこれは頑張ってまいりましょう、こういうふうな答えをいただきながらずっと各国の大使館を回って、本国にそういう話を伝えてもらったわけであります。非常にいい関係ができたと私は思っておりますが、ぜひともこれはやはりこっちから大臣が行って、いろいろな国に話しかけていくということは非常に効果があるだろうと私は思っています。その国の政策の問題は政策の問題だ。しかし、人と人がきちんと、何といいますか、顔を合わせてというかフェース・ツー・フェースで話をするということは、これは説得力があるものでございますよ。ひとつそういうことでやっていただきたいというふうに私どもは希望をいたしておきたいと思います。  それから、もうそろそろ時間がなくなってきたのでありますが、先ほどから話は出ておりますが、今の日本農業をこのままにしておいてはいけない、これはもう共通の感想であります。我々も、今の日本農業の生産力の低下、これがかなりのところまで来ているということについて非常に強い憂慮を持っておるのです。何といっても政治家として一番やらなくちゃいけないことは、国民を飢えさせてはならないということですね。天候不順だったとかどこかの国から入ってこなくなったとか、そんなことは言いわけにすぎないのであって、まさに我々は常に国民に対して十分な食糧を供給するという体制をつくっておかなければならないというふうに思います。  それについても、我々は既に農業の三法案というものを今作成しておりまして、これは次の国会に恐らくできるのではないかと思います。まず、地域農業振興法案というような法案を基本にしまして、そのほか二法を今法制局の方に入れているわけでありますが、やはりここでも我々考えるのは、日本農業の生産力を上げていくということだろうというふうに私思います。  どうも、いろいろ経済学者というのは数字をいじるものですから、心の取り扱いが下手でありますな。マルクスなんかも、すべてこれは経済的によくなれば心も変わる。こう見た。しかし、それは失敗して、現在ソ連のあの崩壊ということにもなってきておりますし、厚生経済学なんというのがあって、経済がよくなれば心もおさまるんだというような、それが心の厚生にもつながるというようなことを言った人なんかもいるわけでありますが、ケインズなんかを見ても、やはりソ連のやっていることを見て、こんなに経済的な自由がない、それから精神の自由がない、これはうまくいくはずがないということを彼は言うわけですね。彼は非常に強い期待を持ってソ連に行って、ソ連の現状を見て、そして小さな論文を書きます。「ショート・ビュー・イン・ルシア」という小さい論文を書きまして、それから一般理論を構成していくわけなんですが、そのケインズでさえもやはり心というものをこの経済の中に読み込んでいくということは下手だ。現在の日本の政府の経済運営のあり方を見ても、この心の部分をきちんととらえることに成功していないというふうに私は思っているんです。日本人の持っているメンタリティーというものは、これはやはり米文化がずっとつくり上げてきたものなんでありまして、いろいろ経済摩擦だとかなんとか言われるとすぐ農業がやり玉に上がる。農業に補助金の使い過ぎではないかとか、金のかげ過ぎではないか、こんなことをよく経済学者なんかも言うわけですが、私は、そういうことではなく、農業には農業としての、大事な日本の文化を維持し、日本人のメンタリティーをつくり上げてきたというプライド、そういうものを持って日本農業の生産力の向上に努めていただきたい、このように思うのです。米の輸入自由化を阻止しようというのもその一環でありましょう。それから、これからの日本農業の生産力、これは米のみならず、輸入に頼らずに生産力を上げていくための奮闘をお願いしたいと心から思います。大臣、いかがですか。
  75. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お話のとおりだと思うのです。ただ、一つ問題は、農家に生まれたから農業の後継ぎにならなきゃいかぬ、そこのところ私はちょっとひっかかっておるんですね。次男、三男だと外へ出ていかれるという自由な部分があるんですが、どうも長男は、私の親戚も全部そうですが、長男に生まれたばっかりに、やりたいものはほかにあっても農業の後継者にならなけりゃいかぬという、そこが、何代もなってきますと、本当に意欲があってやる人もあるし、まあ仕方なしにやっているという分野もあると思うのですね。その仕方なしの分野というのはやはり努力はしないし、どうしても経営という面でもなおざりになるし、こういう面ではこれからはやはりやりたいと思う人にも道を開いていく。一生懸命努力したってアメリカやタイのように安い米にはならぬと思うんです、規模の拡大も限度があるし。一方では一生懸命努力していただく、どうしても足りない分野は国民がこれはもう合意の上で、農業というものを育てていくというためには、やはり一方では一生懸命やっていただく、努力していただくという中でそういうものを進めていかなきゃいかぬのではないかな。いろいろ取りまとめて今度の新しい政策の中に織り込んでみたい、こう思っておりますので、そのときはまた御支援を賜るようにお願いを申し上げたい、こう思います。
  76. 日野市朗

    ○日野委員 終わります。
  77. 高村正彦

    高村委員長 田中恒利君。
  78. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 ダンケル案が提示をされてから初めての農林水産委員会でありますので、先ほど来何人かの方の御質問の中にもありましたが、私は、ウルグアイ・ラウンドの事務局長であって農業交渉委員長であるダンケル氏のダンケル案について政府の見解を、これの位置づけ、評価、そういうものを改めてお聞きをしたいと思います。
  79. 川合淳二

    川合説明員 今回のダンケル・ペーパーにつきましては、詳細になお分析、評価しなければいけないところがあるわけでございますけれども、私ども現在考えておりますこのペーパーにつきましての評価といたしましては、最も貿易歪曲的であります輸出補助金が撤廃されないにもかかわらず、数量制限を撤廃するという形になっております。食糧安全保障や生産調整の配慮が不十分のままにこれを関税化するという考え方をとっているわけでございます。このことは非常に問題であるというふうに考えております。また、国内支持あるいは国境措置などの分野におきまして、基準年次、削減率などにつきまして全く議論がなされないままに提示されているというようなこともございます。食糧安定供給及び我が国農業、農村の対策の観点から見て多くの問題点を含むという評価をいたしているところでございます。
  80. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 こういう質問に対しては、大臣、あなたがしてもらいたいな。これは基本的な政府のダンケル案に対する考えですからね。私は、局長が言ったようなことはそういうことだろうと思うけれども、やはり大臣答弁が必要だと思います。農林省が来たときにも、私は言うたんだ、きょうの委員会は主として大臣とのやりとりが中心にならないけぬと。それは、農産物自由化の問題は政治折衝の、政治的判断の舞台に入っておるんだ。いろいろ聞きたいことがあるのですよ、さっきからいろいろ聞いておっても。それはあるけれども、そういうものが判断されないと進まぬという状態にあると見ておりますから、ぜひこういう質問に対しては大臣が、あなたがやってもらわないけぬこともあると思うので、していただきたいと思います。  そこで大臣、私はいろんな行事で追加されたことを申し上げますが、十二月二十五日にウルグアイ・ラウンド関係閣僚懇談会で、農業では例外なき関税化を拒否し、従来の姿勢を堅持することを確認したということが報ぜられておるし、明くる日、自民党の農業関係議員も集めて、総理ですか、何かそういうことで了解されたということでありますから、このことが今の政府のこのダンケル案に対する考えと見ていいかどうか。これはちょっと気になりますから、その点を質問します。
  81. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 先生お話しのように、私どもあのとき申し合わせしたものというのは今でもそのとおりでございまして、私どもいつも申し上げておるのですが、我が国の基本的な立場というものがさらにこの十三日からの交渉において反映されるように全力を挙げていくということで、これはきちっとした態度でありますので、閣議での懇談の場と何ら変わっておりません。
  82. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 さっきから渡辺外務大臣・副総理の発言についていろいろな質問が与党からも、野党からも、社会党からも来ておるわけでありますが、御承知のように日本はこれまでの農産物自由化交渉をめぐる長い歴史がある。百をちょっと上回るぐらいの非自由化品目があったが、これがこの十数年の間にじりじり減って、今たしか十三、四だと思います。それまでの過程でいろいろないきさつがありました。新しくはオレンジ・牛肉でありますが、いずれのケースを見ても、最初はやらぬ、やらぬ、できないということを言っておったのですけれども最後にやはりいつもうっちゃられておるのですよ。この現実の上に立って、そういうことをするためにさまざまな役者が出ていろいろな動きをしておるんだ。渡辺さんは、この包括ダンケル案に反対だ、本人もこう言っておる。意を尽くさない、自分の意思とは違うと言うけれども、客観的に見たら、そのことが国内の世論を分裂させ、あるいは国内の世論の中にも自由化を求める勢力があることも事実です。そういうものに沿った発言であり、国際的な影響が大きいと思う。客観的にはそういう役割を果たしておることも事実なんですよ。そういう位置づけに立っておるということを、渡辺さんだけじゃない、これは自民党の首脳が何人がやっておるわけだから、この米問題については。そういうところに我々は危機感を持っておるし、それから国民も持っておるわけなんですよ。私はそのことをどうこうは言いませんけれども、そういう評価の上に立って、いわゆる政府のかたい、動かざる方針というものを今こそはっきり詰めてないと大変なことになる、こんな気がいたしますので、あえて質問をしておるわけであります。  そうすると、大臣の今言われた、この間の閣僚会議の方針が大体そのままの形で今度の十三日の再開のガットに臨む日本の考え、こういうふうにイコールと理解をしていいのかどうか。この十三日以降のガット交渉は、日本政府としてはどういう形で進められるであろうというふうに想定しておるのか。今までの質問では、これもなかなかわからぬというようなことを言っておられるわけだが、そんなわからぬといったことで交渉に臨むのはおかしいと思うので、どういうふうな形で進めたい、あるいは進められるであろうという観点を持っておられるのか、お尋ねをしておきたい。
  83. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 再三、交渉事でありますからわからぬというのはけしからぬ、こういうことでありますが、実際申し上げて、これは多数決では決められぬだろうし、しかしさりとて反対の国もあるし、その反対も米もあれば乳製品もあれば、ばらばらなんですね。ですから米に関心のない国も一緒になって反対しておる。言ってみれば、ヨーロッパ、EC日本に米を売るわけではないものですから関心が薄い。薄いんですけれども、その国もまた自分の反対の者を抱えておるというので一緒になっているわけでありまして、その反対の人たちと一緒にこれから十三日というものはどういう反対行動、いわゆる同じパターンのものでいけるかどうかというのはある。しかし、基本的には私ども日本は米の自由化はだめですよということは、これはもう一歩も引いておりません。おりませんが、そういっても、従来肉も何もやられたじゃないかというお話でありますが、交渉事でありますのでいろいろそういう場面もあっただろうと思います。しかし交渉過程で、予測を持って、じゃこうしましょうとかいう感じでやっておるわけではありませんので、全力を挙げて、とにかく十三日からの交渉も従来の方針どおり一生懸命努力したい、やらしていただきたいということで申し上げているわけでありますから、余り予測を聞かれても、ちょっと立たないというのが私はみんなの本音だろうと思いますので、そこのところは御理解いただきたいと思います。
  84. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 外交ですから、相手があることですし、国内のようなわけにもなおいかぬから、わかりますよ、それは相手があるから。ただ、相手があるから予測はできぬということだけで交渉に臨めるのかどうか。まず第一に我々はこういうふうにしたいという決意があるし、そういう行動が伴わなければいけぬと思うし、その丸めにどういうふうにガットが今後運営されていくかといったようなことについても十分注目していなければいけぬと思うから、私たちは日本政府としてこういうふうに進めたいんだという考えはあると思いますが、ありませんか八局長。これは局長が答えたらいいんだが。
  85. 川合淳二

    川合説明員 十三日に開かれます貿易交渉委員会がどういう形をとるかということは、今申しましたように、まだ定かになっておりません。しかしながら、私ども先ほど来申し上げておりますように、基本的立場は既に定まっているわけでございますし、それをこの交渉結果に何とか反映させていかなければならないと考えているわけでございますので、交渉の表舞台もさることながら、非公式あるいは場合によっては関係国間というような会合が幾つかあるわけでございますが、そうしたことを通じまして何とか交渉の場というものをつくる、まずそれが先決だろうと思いますので、そうした場面をどういう形でつくっていくかということを関係国と十分意を通じまして求めていく、その中で我が国立場をどういうふうに反映していくかということについて全力を挙げていくということになろうかと思っております。
  86. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そこで、ダンケル案について各国ともいろいろな異論が出ておりますね。私どももいろいろな情報を持っておるつもりです。ECも十一日ですかね、何か出すようだが、これはやれるかどうかということもまだどうも確定してないやに聞いておる。アメリカの上院もやって、下院の公聴会もあって、あるいは団体の意見も聞いていろいろなことをやっておるが、それぞれ交錯して、アメリカ自体が正直言って、特に農業の問題については少し二の足を踏む、こういう情勢が見えておるんじゃありませんか。大統領選挙でこれはいいか悪いかという判断をしなければいけない、こんなことが東京宣言でも投影しておるんじゃなかろうかとすら私などは思っておるわけでありますけれども、各国もいろいろでありますが、大体日本と同じと言ったって、それは大臣が言ったように米のある国ない国たくさんあるんだが、いわゆる包括関税に対して反対だという意見を持っておる国がどのくらいですか。
  87. 川合淳二

    川合説明員 今お話もございましたように、その立場が必ずしもすべて一致しているというわけではございませんが、私どもがこれまでにいろいろな形で働きかけを行い、かつ協議していた中で、二十数カ国は少なくともそうしたこの包括的関税化についてかなり疑義ないし反対の態度を持っているというふうに感じております。
  88. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 二十一カ国という数字は相当な国の数だと思います。これは外務省、農林省はこれまでジュネーブの交渉の中でいろいろな話し合いをされたこと、あるいは昨年末農林省は各国へいろいろな人を派遣して我々の主張を言って同調を求めたこと、あるいは小さいことだが、さっき日野君も言ったが、私なども、社会党は責任配置をして、各国の大使館を訪問して、日本国民の意思だということで向こうの大使へ本国への伝達を要請をしたことなどなど、それからまだたくさんありますがね、そういうものが反映しておるのだと思います。かつてダンケルは、私ども社会党の代表が本部に行ったときには、これに反対しておるのは日本と韓国だけだ、こんなことを言っておったふうに報告を受けておりますが、そんな状況ではなくなっておるわけでありますし、そういう国々とどういう連携とってどういう共同行動を組んでいくかということが、私はこれからのポイントだと思うんですよ。  そういう意味で、日本食糧輸入国ですから、最大の輸入国ですから、アメリカEC輸出国ですから、基本的な立場が違う。そして、ガットは発足以来食糧については輸出国立場をとっておる。輸出国に極めて有利な状況になっておりますね。自分の国の食糧が足らなくなったら輸出するのをストップしてもよろしいということになっておるが、輸入する国はどうしたらいいかわからぬ。そこで食糧安保論というものを日本が出しておるわけでしょう。私は、食糧安保論というのは、二十一世紀に向けての世界の大きな政治課題である食糧、自然環境の問題に対するガット一つの回答だと思うんですよ。そういう意味で非常に評価をしておる一人でありますが、そういう輸入国立場をどういうふうにこれから強めていくかということが、日本ガットに乗り込む基本的な戦略だと思うんです。そういう意味で、現状どういうふうになっておるか、どういう考えか、これをちょっとお聞きしておきます。
  89. 川合淳二

    川合説明員 ガット交渉の場におきます主要国は、どちらかといえばやはり輸出国であるということは御指摘のとおりであります。そうした国の声あるいは意見というものがどうしても大きく取り上げられがちですし、またそれが会議交渉をリードするということになりがちでございます。したがいまして、我が国といたしましては、今御指摘がございましたように、輸入国というものと十分連携をとりましてやるということが基本戦略になろうかと思っております。  そうした観点から、従来からもいろいろな形で輸入国グループを結成いたしまして、いろいろな場面で同調をしたり、あるいは年末におきましては同一意見をダンケルあるいは会議の場で表明したりしてきているわけでございます。年明けも、休み明け早々、我々の審議官クラスを既に派遣しておりまして、現在カナダに行っておりまして、これから他の関係国に回るというようなことになると思っておりますが、そうしたことを通じ、かつ今回ダンケル・ぺーパーが出されまして、その反応と対応、そしてこちらの働きかけということで、在外の大使館を通じまして、昨年行いました働きかけのアフターケアと申しますか、さらに強い働きかけということでずっと意見を聞き、かつ働きかけを行ってきているわけでございまして、そうしたこと、それから、今後のジュネーブでの交渉の動きに応じまして、これまでの輸入国との関係をさらに強化するような働きかけあるいは対応というものをとっていきたいというふうに考えております。
  90. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 こういう考えはできないのですかね。輸入国の関係閣僚会議といったようなものを日本がリーダーシップをとってやれないのか。ガットの中では、アメリカEC、ケアンズ・グループ、この三つグループ化でさまざまな対応がなされておるわけでありますが、日本中心とした第四グループみたいなものができてもいい状況になっておると思うし、そういうことが輸入国立場を反映する上に大きな役割を果たすように思うんですよ。そういう意味では、もう少し突っ込んで、審議官が行ってまた要請するということも結構なことだと思いますが、そういう会議の開催はできないのかどうか。  それから、大臣は今、日野さんの質問で、率先陣頭に立ちたいというような意味の御返事があったわけでありますが、こういう国々を大臣がまず積極的に回ってみて、そういう会議の打診をしてはどうか、こんなことを考えますが、いかがですか。
  91. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 私もそう思うところもあります。ただ、米だけで集まろう、あるいは食糧問題だけで集まろうとするとそういうことになりますけれどもウルグアイ・ラウンド全体になりますと必ずしも一致しないところがあるのですね。日本のように、米以外の分野では積極的に自由化でいきたい、しかし米はだめですよという国もある。韓国も米は絶対だめだが、ほかの分野では輸出をしている。輸出奨励の分野とだめの分野と一緒に集まろうといっても、農林大臣だけ集まればそういうことになりますが、国全体を考えているところによると、必ずしもどうも一致しないのではないかという気がするのですね。いずれにしても、一つのお考えだと思いますので、検討はいたしてみたいと思います。
  92. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣、私は、いつも米だけで言うのだが、米とは思っていないんだ。輸入国が集まるということだと思うのですよ。その輸入国が集まる中に、具体的にと言われると、やはり今の包括的な関税ですね。関税問題に反対しましょうという形になると思いますが、それで絞っていって、その中で日本の円満なウルグアイ・ラウンドの成功の道が出てくるんじゃないですか。これは米だけでやるといったら日本は孤立していくんですよ。そんなところ、ないんだからな。だから私は、これは東京宣言でも書いておるが、基本的に成功させると言っておる。日本もそういうことを言っておるのだからこれも間違いない。そして一歩ダンケル案評価をしておる面があるが、最終案じゃない、こう言っておる。そうするとこれはだめになるのか、これで成功するのか、まあまあで終わるのか、この三つしか方法がないのですよ。結局私はまあまあの方法しかないと思う。その場合に何がまあまあかといったら、やはり全体的な問題になって、特に農業分野輸入国立場で出てくる、そういう絞り方をする場合には、やはり同じ同類のベースの諸君が集まって会議をしていくという形をとる必要があるのではないか。あるいは、とればかえって逆になるということもありますよ。それはありますから、やはり注意はせにゃいけませんけれども輸入国立場で一遍寄って、議論していくということは今の段階では必要でなかろうかと私は思うので、米で集まるということではないということだけは、大臣、ぜひ理解してもらいたいと思うのですね。
  93. 川合淳二

    川合説明員 先生の御指摘、非常に私どもも参考にさせていただきたいと思います。ただ、今大臣からも申し上げましたように、ウルグアイ・ラウンドがいろいろな分野がありまして、それが複雑に絡み合っているということがございます。したがいまして、確かに輸入国立場という共通性を持っているといたしましても、そういう形で例えば閣僚会議というようなものが持たれることが、どういう形でそれが果たしてプラスになるかあるいはマイナスになるかということもいろいろな複雑な事情がございますので、定かに、一義的に判断できない面もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、実質的にそうした協調が保たれることが非常に重要だと思っておりますので、いろいろな手段、方法を考えてみたいと思っております。そうした中の一つとして、そういうことがあり得るかどうかというふうな位置づけにさせていただければと思っております。
  94. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 ちょっと、外務省も農水省も共通ですけれども、このダンケル案についているいろ細かく精査をされておるようでして、だからなかなか全貌がはっきり、全貌は大体わかっておるのですけれども、細かいところがどうかというのが実情のようですが、それはそれとして残るにしても、一月十三日と期限は切られておるので、ダンケルに言わせたら、二十日に出して十三日までに各国が私の案を十分に検討して、特に政治決断をして十三日に諾否でしょうか、回答してくれということになっておるのですから、おおよその、国会に報告する程度のことは大体もうできておるはずでありますし、またできにゃいけないと思うし、余り精査中で精査中でという答弁は、私は逆に何かこう、伏せるという逃げ口上に使うておるのじゃないかという気がしまして、実は余りいい気がしないのですよ。  これは、マスコミに対する批判がなされておりますが、政府は国民に知らす義務があるわけでありますから、私はやはり相当程度国民に内容を細かく知らす必要があると思うのですよ。それは政府自体欠けておるところがあるんじゃないか。マスコミもちょっと意識過剰になって、特に米問題については書き過ぎておりますよ。私はこの間、朝日新聞の論説委員の諸君とこの問題について若干話をしたことがありますが、しかしマスコミも、政府の言い方が、例えば農林省の言うことと外務省の言ったことと違うといったようなこともあるだろうし、あるいはジュネーブで、出先でやっている諸君から集めている情報もあるし、いろいろな情報を集めてやっておるんだと思いますが、外交に関する問題は日本政府が当事者なんだから日本政府の発表が一番正確です、これでやってもらいたいというようなことについて、もう少し政府が働きかける必要があると思うのです。それがちょっと不足しておるんじゃないですか。だからそういう意味では、今検討中で、言葉の、それは英語の訳をする人にだって意味わからぬですよ。ダンケルが特につくった面があるんだから、ダンケルに直接会わなければわからぬことが多いんじゃないですか、各国協議してないんだから。それはもうわからぬでいいじゃないですか。だけれども、大まかな状態はもうわかっていなければいけないんだ、もう十三日は間近だから。わかっていなければいけないし、我々にはわからせてもらわなければいけないと思うんだ。そのことはちょっと質疑応答の中で感じましたので、念のために申し上げておきます。  それで、ダンケル案が示される直前に日本の政府としては、さっき自民党の方からも質問があったが、日本政府はこういうものであってほしいという要望をしておりますね。いわゆるバランス論と言われるものですね。食糧輸入国輸出国バランスをとることとか、あるいは国境調整とか国内支持とか輸出補助金とかこういう三つの問題がバランスをとることとか、あるいは七つの交渉分野がそれぞれ持つとか、こういったようなことを言っておりますね。こういうものがダンケル案の中ではなかなか反映されていない、こういうふうに局長はおっしゃったわけでありますが、外務省はこの全体を通して、このダンケル案というものについてはどういう評価をしておりますか。
  95. 須藤隆也

    ○須藤説明員 ダンケル案につきましては、たびたび申し上げているとおり、まだ分析、評価を継続中でありまして、最終的な評価は下しておりませんが、とりあえずの外務省の感じといたしましては、先ほど来議論されておりますように、農業につきましては相当問題がある。農水省の方からも説明ありましたとおり、いわゆる国内支持分野におきましては、支持の削減の対象除外の補助金、いわゆるグリーンボックスの範囲が狭過ぎるという問題とか、それから輸出補助金の規律が他の分野に比べて緩やか過ぎる、全体として輸入国立場が十分反映されておらず、輸出国との利益のバランスを欠いているとか、そういう点につきましては共通の認識を持っております。  それから、他の分野につきましては、先ほど概略申し上げましたとおり、新分野につきましては、いろいろ個々には問題のあるところもありますが、全体としては我が国が目指していた交渉目的にかなり沿ったものになっているのではないかという評価をしております。  他方、ルール分野につきましては、先ほど通産省の方からも説明ありましたとおり、アンチダンピングのような分野につきまして、ルールの規律の強化が不十分あるいは不適切であるというところもあるというふうに考えております。
  96. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これはどういうことですか。最終的な評価はしてないというのはどういうことですか。ダンケル案については、この間の閣僚会議では、特に農業分野についてはこういう点で困る、だから変えてもらわにゃいけぬ、こういうことは閣僚会議の基本方針で、それが一月十三日に持っていく日本政府の態度だ、こういうふうに私は理解をしておるのですが、十三日に日本政府が行く場合に、個々のいろんな問題はあるよ、たくさん。たくさんあると思いますが、そういう基本的な方針については一定の評価がもうなされておると見ていいんじゃないですか。
  97. 須藤隆也

    ○須藤説明員 これまでの分析、評価の結果をも取り入れまして、具体的に十三日にどういう言い方をするかというようなことについてまさに目下検討をしておるところでございます。
  98. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これは農林省もそういうことですか。十三日に何を言うかということよりも、日本の態度として持っていくものの内容はダンケル案の修正だ、ダンケル案を変えよ、変える項目はこういう点だ、農業分野でははっきりしておるんだな。いわゆる包括関税については困る、食糧安保というものについてもう少し明確な方針を出せ、こういうことだと思うのだが、そういったようなことを持っていくということではっきりしておると理解をしておるのですが、日本政府全体としては、やはり農業問題は、これはダンケル案の一番難しいところで、一番大きなところでありますからそういう態度だと私は理解してきたのだが、まだそのことの結論は出てないということですか。
  99. 川合淳二

    川合説明員 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、農業問題、農業交渉につきます基本的方針というものは決まっております。したがいまして、先ほど先生からお話がございましたけれども、精査している具体的な点はもちろんありますけれども、基本的な点についての問題点というのははっきりしているわけでございますので、そうしたことで臨むべく現在準備をしているところでございます。
  100. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 そうすると、外務省どうなんですか。外務省が言っておるまだ決まってないということと、農林省は農業分野ということだと思うがね、これについてははっきりしておる、その他の分野についてはまだ検討中だ、こういうことですか。
  101. 須藤隆也

    ○須藤説明員 農業分野につきましては比較的問題点もはっきりしておりますが、ほかの分野につきまして、多省庁にわたるものでございますから、そういう各担当の省庁の検討結果をもいただいた上で、十三日のTNCはまず農業だけではなくて全体について、ダンケルの包括合意案についてどう考えるか、あるいは今後それをどういうふうに進めていくかというような手続問題も含めて話し合われるものと思われますけれども、そういう場でどの程度詳細に、あるいはどの程度の時間をかけて発言することが可能なのかどうかというような点もまだはっきりしていないところもありますので、具体的にダンケル案全体についてどういう言い方をするかというようなことについてなお関係省庁とも検討、協議中であるということでございます。
  102. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 どうもよくわからぬな。きのう、あなた、行動計画か何かで出しておるじゃないですか、ちゃんと基本方針は。あれは日本政府の十三日に持っていく政府の態度じゃないのですか。きのうの、このウルグアイ・ラウンドを成功させにゃいけぬ、ダンケル案は一歩の前進だ、しかし最終案じゃない、これ違うのですか。
  103. 須藤隆也

    ○須藤説明員 おっしゃられましたとおり昨日の東京宣言の附属行動計画におきまして、ウルグアイ・ラウンド関連につきましては、最終合意文書案をウルグアイ・ラウンドを成功裏に終結に導くための弾みをつける重要な一歩であると信ずる。もちろんダンケルの提案は最終テキストではありませんよという趣旨のことを述べたわけでございますが、そのような認識は十三日に述べることになるかもしれませんけれども、それだけにとどまるのかあるいはそれ以上のことを言うのか、そのような点も含めて検討中ということでございます。
  104. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 ちょっと完全に理解できないなあ。日米間で、特に外国の大統領が来て、そこで日本の総理とウルグアイ・ラウンドについてはこういう方針で臨もうというふうに決めたことのほかにまた何かがたがた出てくる。あなた方は、事務的にいろんな項目について各省から出てくることはあると思いますよ。しかし、基本的な考え方は、ダンケル案は大きな役割を果たす第一歩と思うけれども、最終案ではないということが大きな方向でしょうが。それが日本政府が十三日に持っていく案だと思うし、それが今までの、我々の担当する農業分野ではこれまでの方針を堅持していくということにつながっておるんですからそれで結構だと思っておりますが、どうもそれ以外に何か別なことが加わるということになると、別なことは加わると思いますよ、いろいろな。いろんなことはあると思うけれども、大きなことでそれ以外に何かがあるということになるとちょっと疑問を感じるんだ。そういうことが外務省と農林省と通産省、あるいはその他の省があると思う、また労働省なんか、あるいは外国人労働力の問題なんかもあるわな、まだいろいろ大きな問題は。あんな問題は全部完全に日本政府の方針として出てこぬから、だからマスコミはたったたった自分の思っておる方向を書いてくるんですよ。そういうことじゃないですか。大臣、どうですか。大臣だ、もうこれは。
  105. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ブッシュ大統領宮澤総理との間での大筋というかそういうものは非常にきちっとしたと思うんですね。ファイナルテキストでないというのもはっきりいたしました。そこで、他分野の話も一緒になるものですから、米だけで言うとこれはもうきちっとしております。他分野の方にわたりますと、どういう技術的なことで全体をやるか、というのはウルグアイ・ラウンドは米ばっかり走るわけにはいきません、ほかの分野もあるものですから、我々の立場と外務省の立場というのは、全体を見てやる方と米ばっかりやる方との考え方というのはいささか違いがあるのかな、こう思って見ておりますが、いずれにしてもそういう考え方で、基本的には先生おっしゃるとおりブッシュ・宮澤会談。しかし、これがすべてかというとまだまだECもあれば他の国もたくさんあるわけでありまして、ここで決まったことがすべてウルグアイ・ラウンドで決定したということにはならぬと思うんですね。そういうことをも含めて、まだ先々非常に難しい問題を抱えながら十三日から始まる。  何をやるかというと、これもまた定かでないという感じが私どもしておるんです。実際こんなに反対があるんですから、めいめい反対を言い出して、あるいは先生おっしゃるように反対の国だけまた集まって会議を開くとかいろんなことはあるんだろうと思います。ですから、聞いておるとすきっとしない部分というのはあると思うのですが、答える方もまたびしゃっと答えにくい部分というのは、他分野のことは私はわかりませんが、あって、そういう感じてお答えをしておられるのかなあ。ただ、米についてはもう我々の主張というものは取り入れられてないということで反対はいたしてまいります、こういうことでございます。
  106. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 ちょっとお時間が大分来まして、もう日本の国民もけさ新聞見て、ガットウルグアイ・ラウンドのあれはこういう方向で行くんだなというふうに皆理解しておるのですよ。そんなに役所が小さいことでいろいろ言ったって、そういう大きな世論が今世界を動かし、国を動かしておるんだから、だからその事実を認めないけぬですよ。それのほかに何か横やりが入ってくるとかえって混乱させますからね。だから、私はそんなふうに理解をいたしますが。実は私はそういう意味で、局長さん、あなたとになると思うのだけれども、少し議論をしてみたいことが二つ、三つあったのですよ。食糧安保の問題とか輸出補助金の問題とかそういう具体的な問題についてやって、日本政府のウルグアイ・ラウンドに臨む態度を少しあぶり出したいなと思っておったのですが、時間がありませんからもうこれはやめます。  それで、最後大臣に決意のほどをお聞きしておきたいと思いますが、やはり私は腹の決め方の問題にかかっておると思うのですよ、ここまで来たら。この問題は、米、米と言われるけれども、しかし国会で三度決議しておるわけですから、これはもう相当重いですよね、国会でやっておるのですから。これはもう各省全部ひっくるめておるし、日本国全体を代表しておるわけでありますから。だから、この米の問題がああいうふうにして、ガットの大きな立ち向かう場合の課題として提起されておるんだと思います。だから、そういう意味では非常に大きいと思うし、私も実はこの米の決議の、文案と言ったらおかしいけれども、やはり作業に参画した一人でありますから、非常にいろんな思い出があるわけであります。これは、この三度の国会決議というものにまた意味があったと思いますが、ただ決議してそれでおしまいだというわけにもいかなくなってきておるわけでありまして、今のままでいけば、我々が思った方向でいって解決すればそれで結構ですよ。それで万歳と言えばおかしいけれども、よかったなと思うのですけれども、しかし必ずしもそうはいかない。全然だめになる場合もあるし、それからまあまあで処理がされるという場合もあるし、そんな方向がそんなに長くないうちに出てくると見ないけない。だから、やはり我々の要求は貫くような方策を可能な限り大臣はとってもらうということが今の御心境であろうし、それは結構でありますが、私はこの問題の命運は内閣の命運につながっておると思っておるのですよ。国会の意思と違った結論が出た場合にはやはり内閣として責任をとってもらわないけないと思うんですよ。その責任の中心というか先頭はやはり農林水産大臣になってくると思いますよ。そういう意味で、農林水産大臣がこの国会の決議を受けて、全力を尽くすというようなことじゃなくて、よっぽど腹を決めて土壇場の勝負に挑んでもらわないと、この問題は決して簡単に話がつくような状況じゃないと思います。どうですか、御意見
  107. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 そのくらいの覚悟でやっておるつもりでありますが、いずれにしてもこの国会決議というものは私も政治的に責任を負うものだ、重大な責務を負うものだ、こう思っております。まあ世論調査なんか見ますと、随分一部は自由、入れてもいいんだというのが多いとかなんとかいうと、一体この国会決議というのは本当に民意を反映したものだったろうか、その時点ではそうだったと思いますが、今となるとそういうこともあったのかなという感じがないではありません。しかし、これは決議は今申し上げたように私どもはそれを尊重し、その実現のために最大の努力をするという政治的な責務を負っていることは確かであります。したがって、再開後のウルグアイ・ラウンド交渉においても、我が国の基本的な方針というものが反映されるように努力していきます、こう申し上げておるところでありまして、決して軽々に考えながらやっているつもりはございませんし、先生お話しのような気持ちで私も最大の努力をしている、してきたし、これからもしていくつもりであります。
  108. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 始めと終わりはいいのですけれども、真ん中がちょっとおかしいんだ。農林大臣がそんなことを言ったらだめだよ。昔はよかったが今はどうか知らぬ、世論調査がどうたらこうたら。そんなことは、世論調査が尺度になっては困るので、私は今も昔もこの問題は、私は米はつくっておらぬし私のところは米は全然ないしあれだけれども、やはり非常に大きな関心を持っておる。ということは、農業は、大臣は新しい農政の方向をいろいろ言っておったが、つぶれかかっておるでしょうが。つぶれかかっておるんですよ。その焦点が全部これにかかっておるわけですよ。だからこれで失敗したら大変なことになるんですよ。だから私は、農林大臣はただし書きは要らぬと思うのです。始めと終わりだけで突っ走ればいいんですよ、それは。そういうことはほかのやつが言うんだからね。そのことを重ねて申し上げて、私の質問を終わります。
  109. 高村正彦

    高村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  110. 高村正彦

    高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。前島秀行君。
  111. 前島秀行

    ○前島委員 大臣、午前中の最後の方になってくると、非常にこう不安になってきたわけなんですよね。やはり農林省と外務省の差が出てきた。大臣も国会決議は、あれは昔のことなんで今はあれとはどうも雰囲気違うんだというふうな気になってきたので、まず最初に大臣に聞きたいのは、このダンケル・ぺーパーへ特に農業分野の方について、農林水産大臣として日本側から見てこの案は点数をつけるとしたら何点か。農業部門だけですよ。農林水産大臣でいいです、総理大臣に変わらなくていいですから、農林水産大臣としてこのダンケル・ぺーパー農業部門、一体日本の従来の主張、あれから見て何点くらいやれるのかな、その辺のところをちょっと聞かせてください。
  112. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 点数で何点と言われると、合格点ではないわけですから、零点から、この合格点というのは何点からと見るかによりますが、率直に申し上げて合格点ではない、こう思います。
  113. 前島秀行

    ○前島委員 このダンケル・ペーパーで微妙なといいましょうか、今後の対応で重要なのは、ECアメリカの話し合いが直前にかなりされてきた。それとこのダンケル・ぺーパーとの関係、これがどうなっているのかということをどう理解するのか、どう受けとめるのかということが、私はこれからの日本の対応といいましょうか、基本的なスタンスあるいは方法論においても非常に大切なような気がするんですね。そういう面で、いわゆるダンケル・ぺーパーが出てきた。その間にECアメリカはかなりの議論を詰めてきたようなんだ。それで出てきた。そういう面で、このダンケル・ペーパーECとの間で基本的な合意をバックグラウンドとしているのか、いやいやそれは全然違うぞというふうなのか、私はそこのところをどう受け取るかによって非常にこれからの日本の対応の仕方、基本的スタンスあるいは方法論も変わってくると思うのですね。  表面上はよくアメリカ人とか外国人がやるようにオーケーと言って握手して、こんなふうな形の合意ではないと思うけれども、やはり私は、あれだけ議論をしてきた、それをじっと事務局長はにらんできたのでありますから、そこの辺の受け取り方は非常に大事だと思うのですが、その辺の大臣としての基本的な受け取り方、その辺の関係についてどう理解をしているのか、ちょっと聞かせていただきたい。
  114. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 全部の国が不満を残した案だと思うのですね。アメリカEC、それぞれ交渉を何回もやってきましてその中にいろいろな数字が出たのかな、それをダンケル事務局長が、頭の中にあり、しかしそれとてそのまま言っていることを出したのではまとまらない、しかも今アメリカはそれぞれの団体の意見を聞いたりなんかしておりますが、そっちの方も出た数字では不満が非常に多いということで、しかし出さないわけにはいかぬので、もうとにかく自分の感じた各国の言っていることの中でこの程度ならまあ何とかということで無理をして出した案ではなかろうかな、その結果として、どの国もこれはいい案だという国は余りない、むしろ不満が募っているということではなかったのかな、こう思っております。
  115. 前島秀行

    ○前島委員 そうしますと、日米共同宣言の中にも、最終案じゃないという確認がある、いつでも修正可能なんだ、数字を含めて、そういうふうに受け取っていらっしゃいますか。
  116. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 そのとおりだろうと思います。出た数字を持って帰りまして、それぞれの国が団体やらいろいろなところと話し合いをしていると思うのですね。ですから、こんなに三五%なんというのではだめだという意見もあり、もちろん合意をすればまとまるかもしれませんけれども、そこまではなおしばらくの間時間がかかるであろう、こう思います。
  117. 前島秀行

    ○前島委員 外務省に伺います。  今の要するにECアメリカダンケル・ペーパーとの関係、これをどう受けとめているのか。それと、修正という出されるものが受け入れられるような条件というか、素地というものはあるんだ、大いに可能だ、農水大臣はそう言っているのですが、外務省はその点とういうふうに受けとめていますか。
  118. 須藤隆也

    ○須藤説明員 最初の御質問ECアメリカとダンケル・ぺーパーの関係についてでございますが、私もジュネーブに行っておりまして、最後段階までダンケルがどういうふうに物事を取り扱うか注意深く見ておりましたが、ダンケルといたしましては、最後までECアメリカの折衝状況を見守っておりまして、合意のできたところはできるだけそれを反映しようという姿勢で最終段階まで待っていたという感じがいたします。それで、実際に二十日の日でしたか、ペーパーが出るのが六時間くらいおくれたわけでございまして、それもECアメリカの折衝状況を見守っていたという説もあったような次第でございますが、したがいまして、現在の包括合意案の中には、ECアメリカのみならず日本も入りまして少数八カ国程度で非常に集中的な議論を行った結果がかなりな部分反映されているところもございます。例えば、国内補助金のグリーンの分野について関係国が合意できた部分というのはそのままに入っておりますが、合意できなかった部分もたくさんありまして、特に数字削減率輸出補助金削減方法あるいは削減の率、それから関税化の例外を認めるかどうかという点については、ECアメリカは基本的には違いはないわけですけれども日本その他反対の国も大いにあったという状況のもとで出された紙でございます。  したがいまして、最終合意案の性格でございますが)これはダンケル議長自身が十二月二十日の貿易交渉委員会の場におきまして、本年一月十三日に再開される貿易交渉委員会までに、各国政府が同案を最も高い政治レベルで本パッケージを全体として真剣かつ緊急の考慮をすることを期待するというふうに述べております一方で、別途ダンケル議長は、この合意文書案の提出は、それで交渉が完結することを意味しない、例えば、市場アクセスサービスの初期コミットメント交渉のごとき分野では明年にずれ込んで交渉が続けられていくし、その文書の中には明確化し、詳細にし、もしくはより精緻にすることが必要な部分も存在しよう、それから、法律的な見地からのドラフティングも必要となろう、というようなことを述べております。したがいまして、十三日の貿易交渉委員会において、各国がこの案をそのままイエスかノーかという形で明確にすることを迫られているわけではないというふうに理解しております。
  119. 前島秀行

    ○前島委員 私はそんな簡単なものじゃないという気がするわけなんです。そういう意味で、午前中の議論の延長線上で改めて確認したいのですが、要するに日本政府としては、日本側としては、変えられるんだという基本的原則に立って、そうすると、いわゆる農業関係で言うと、まず関税化の部分、一律関税、これはもう絶対ノーだよ、それから十一条二項同のあの部分をより明確にしろ、食糧安保の観点を入れろ、あるいはミニマムアクセスというものは認められない、こういうものを中心にして十三日以降臨む、こういうふうに改めて確認してよろしゅうございますか、大臣
  120. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 従来の基本的方針と申し上げるのはそのことでありまして、それを貫く努力をこの十三日以降展開してまいりたい、こう思います。
  121. 前島秀行

    ○前島委員 外務省もそういう理解でよろしゅうございますか。
  122. 須藤隆也

    ○須藤説明員 従来の基本的方針を踏まえて、ラウンドの成功のために努力したいという姿勢でございます。
  123. 前島秀行

    ○前島委員 先ほどのECとの兼ね合いと、十三日以降交渉はあるだろうけれども、それぞれの各国の意見を取り入れて修正されるかどうかという見通しの問題ですけれども、私はそう簡単に、ちょっとやそっとのことでいくんだろうかなという気が実はしておるわけです。確かに、言われるようにダンケル・ぺーパーというのは十分な合意といいましょうか、ルールなしでできたのだけれども、ここに出てくるまでにはちゃんと積み重ねがあるわけですね。積み重ねがあると私は思うんです。そういう面を含めるし、あるいはその合意といいましょうか、いろんな意見がある中でまとめていく方法として、これは方法論の問題になると思うけれども、全員が賛成という形で物事をまとめていくといいましょうか処理していくという方法と、それぞれの言い分があるけれども、平たく言うと、みんな反対の中でもお互いに認め合っていくとかというふうな、私はいろんな方法論といいましょうか、まとめ方があると思っているんです。  今度のウルグアイ・ラウンド、とりわけ農業を取り巻く合意というのは、いわゆる主要八カ国を含めてみんなが大賛成するような方法ということは恐らくあり得ないだろう。みんなが、どの国も全部が賛成だ、合意だという形で、オーケーという形でまとまるような気はないだろうと思うんですね。そうすると、日本主張食糧安保を含めた主張、あるいは一律関税化、例外なき関税化というのを一度出されたこのダンケル・ペーパーの中で、ここを撤回さすといいましょうか、貫徹させていくには、私は相当の腰を据えた、腹を据えた対応をしなければ、そんな簡単にいくものではない、こういうふうに実は思っているわけであります。  そういう面で、先ほど田中先生の方から、大臣、履くくるぐらいの、腹切るぐらいの覚悟でないとこれはできぬぞ、こういうことなんですね。私はそう簡単ではないと思うんです。そういう面で、大臣、その辺の自信ありやなしやを問いたい。
  124. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 交渉事というのは何でもそうだろうと思うんですが、これはもう真剣になってやらぬと、相手が真剣でないと感じられるような交渉事というのは私は交渉じゃないと思うんです。日本は、今日まで国会決議をしていただき、総理も、仮に自由化につながる方向ということになると、食管法の改正まで伴う、それも通るかどうかわからぬという中で非常に難しいんだということを申し上げておりました。私も、ヒルズ代表あるいはカナダの経済大臣、オーストリアの農業大臣、まあいろいろお見えになりますけれども、そのことはもう明確に申し上げております。ですからそのことは向こうも、アメリカEC日本というのは本当にこれについてはすごい反対をしておるということはわかっているものですから、この交渉というものはやはり難航している。それは、日本は簡単に応ずるみたいだということだったら、もっと日本にとってきつい案というのが出てくると思うんですね。ですから、昨日のブッシュ大統領お話でも、日本は特別の問題を抱えておるようだがということで、ファイナルなものではないということも取り上げられたというふうに私どもは認識しております。ですから、これからもやはり毅然とした態度で交渉に臨むということは大事であります。  まあ交渉事ですから、今申し上げたことで余り憶測して楽観的でもいかぬし悲観的でもいかぬし、とにかく信念を持ってこれに当たる。その結果として、いろいろなケースというものは考えられてくるだろうと思うのです。しかし、今のところは私どもは、基本方針どおり粘り強く我々の主張というものが取り入れられるような行動をとっていきたい、こう思っております。
  125. 前島秀行

    ○前島委員 相当厳しいと思うのです。やはり大臣が言われたように毅然とした態度でなければ、そんな簡単に穴があくものではない。そういうときに、やはり外務大臣発言だとか、担当大臣がきょうの公の場であの国会決議、交渉事にしてみれば日本側としてはやはりこれからも大きな武器ですよ、それを、あの決議は昔のことで、最近の世論調査とずれがあるぞというようなことを担当大臣が言ってもらうと、そう簡単じゃないので、私はそこのところはぜひぴしっとしてこれから臨んでほしい。  局長、ちょっと伺いますけれども関税化、一律関税と、ミニマムアクセス、部分自由化になった場合、それぞれの違いですね。特に米、食管から見た場合、一律関税でいく場合と、その違いをちょっと説明していただけますか。どういうふうに変わっていくのか。
  126. 川合淳二

    川合説明員 先生お話なのですが、一口関税化と言いましても、それからミニマムアクセスと言われましても、いろいろな形態がありますので、余り確定的な物の言い方はできないことはお許しいただきたいと思いますが、今先生が言われたミニマムアクセスというのは数量管理だろうと思います。そういう意味では、ミニマムアクセスとして入ってくる分について数量管理のもとで一定の数量、クオータを付与することによってその分が入ってくるということだろうと思います。  一方関税化につきまして、今ダンケル・ペーパーで出されているものにつきましては、関税相当量と言われております、平たく言うと二次関税部分と一次関税部分に分かれているわけでございます。そのどちらも今の形でございますと、どちらもと申しますか、二次関税の方は、高関税であるとしても、少なくともその高関税を払うことによって輸入が可能になるという存在でなかろうかと思います。一方、一次関税の方はクオータがついているわけでございますので、それはクオータ管理のもと、数量管理のもとにあるのではないかというふうなことは言えるのではないかと思います。
  127. 前島秀行

    ○前島委員 要するに日本国内の対応がどう違うかということを聞きたいのであります。端的に言いますと、要するに一律関税関税化方式になると食管は変えざるを得ない、食管とぶつかる、こう理解してよろしゅうございますか。
  128. 川合淳二

    川合説明員 私ども、もちろんその辺を詳しく検討しているわけではございませんが、今の食管法といわゆる関税化というのはなじまないのではないかということは思っております。
  129. 前島秀行

    ○前島委員 では、いわゆる部分自由化といいまし鳥、ミニマムアクセスの場合はぶつからない、なじむ、さっきの言葉で言うと。
  130. 川合淳二

    川合説明員 これも先生、まことに御指摘でございますが、ミニマムアクセスという言葉自体がかなり弾力的な意味を持っておりますのではっきり申し上げませんが、なじまない場合が多いのではないかというふうな感想も持ちます。
  131. 前島秀行

    ○前島委員 ちょっとそこのところ微妙ですけれども、総理がここのところを再三農業問題で言っているときに、要するに関税化は受け入れられない、拒否したという中に、食管が政治状況から変えられないんだ、こういう論理で関税化を受け入れないというのは一貫しているのですね、総理の発言をこう見てみますと。どうもそこのところは農林省の基調といいましょうか、考え方の反映だと私は見ているわけであります。やはりこの一元管理という食管の基本的な形から考えると、一律関税という場合と関税じゃなくして部分的に入ってくる、こういうものとの間はやはり違ってくるのじゃないだろうか、こう私は見ていいと思うのです。従来もそういう趣旨のことを農林省の関係者は発言してきたと思うのです。マスコミでも載せていましたから。そういう流れの中で宮澤発言を見ると、関税化は困るんだ、それは食管を変えなければいかぬから。それは政治状況から変えられない。そうすると、部分自由化なら食管をいじらぬでもいいからというふうに受け取られる。これも心配な発言一つだと私は実は見ているのです。この辺の一律関税方式と部分管理といいましょうか、その方式と、国内的な対応の違い、食管から見た場合。そうすると、宮澤総理発言から見ると、その辺のところがやはり心配になるのですね。その辺を大臣、どういうふうに御理解いただいてますでしょうか。
  132. 川合淳二

    川合説明員 御承知のように、食管法は数量管理、全量管理という建前のもとにつくられております。したがいまして、数量管理がなされていない関税化の場合には、これは食管法とは相入れないのではないかということはそういうふうに考えております。ミニマムアクセスにつきましては、先生のお言葉ではございますが、食管法上の問題とおっしゃられましても、ミニマムアクセスということがいろいろなケースが考えられますのでちょっと言えませんが、いずれにいたしましても国会決議というものがあることを体してやっているわけでございますので、そういう意味ではそちらの方の重みというものも一つあるということも考えておかなければいけないと思っております。
  133. 前島秀行

    ○前島委員 一元管理するという形から見ますと関税化になってくると難しい、これは言えると思うのですね。そうではない方法だと、食管の一元管理という形から見ると可能だという形に私はなると思うので、その辺のところは私は非常に微妙に感ずるし、不安に感ずるわけなんで、先ほどの話じゃないですけれども、本当に十三日以降我々の主張を貫徹していく、それを実現していくという意味では、この総理の発言を含めて日本政府としてぴしっとした対応をしてもらわないと不安の要因の一つだというふうに私は理解するわけなのであります。先の話ですからこれ以上この話を、結論が出た段階でないわけですから詰めませんけれども、そこの辺のところはぜひ意思統一といいましょうか、整理をして今後臨んでもらいたい、こういうふうに思います。  それから、今まで日本政府の対応というのがECアメリカ議論といいましょうか、交渉をじっと見てくるという基本的なスタンスだったような気がします。その公な会合の中では、日本主張をしたということはもちろん知っていますけれども、基本的ないろいろな交渉事ですから、表の交渉、裏の交渉いろいろあると思うのですね。そういう中では基本的に日本のスタンスというのは、ECアメリカの基本的な話し合いの結果を見て、こういうのがスタンスだったような気がするわけですね。結果的にそういう形の中で今度のドンケル・ぺーパー日本側から見ると、日本が蚊帳の外に置かれてしまった要因ということを私は言わざるを得ない側面もあると思う。現実に一番の柱であった食糧安保論というのは前文に出ているだけでありますし、自由化につながる一律関税はもう出てきているし、ミニマムアクセスも出てきているという形になると、日本主張であるところは全部いってしまったというふうな気がするわけです。そこに何か消極性といいましょうか、弱さがあったんではないだろうか。午前中の話じゃないですけれども、あれはもっと日本側は積極的な対応をすべきではなかったのか、こういうふうに思うのです。そういう面で、これからのスタンスとして、あくまでもアメリカ交渉事を見ながら進んでいくという方針をとるのか。また、そのとる理由は一体何なのか。
  134. 川合淳二

    川合説明員 ダンケル・ぺーパーの中に包括的関税化という考え方が取り入れられているということは、今までの交渉の過程から言うと、私どもにとってはまことに遺憾なことだというふうに考えております。今お話ではございますけれども、既に御指摘もございましたように、私ども、同じ立場にある国とも提携しながら、あるいは協力しながらこの問題に対処してきておりましたし、基本的方針の一番もとにある考え方でございますので、交渉開始以来こうした考え方を踏まえて対応してきたわけでございます。  一方、アメリカECの対立というものは、私から申すまでもないことでございますが、輸出補助金というこの交渉の一番発端になりました、しかも最大の歪曲的な問題、貿易を歪曲し、かつ世界貿易秩序を乱している問題にかかわる国と地域であるわけでございますので、こうしたところの問題というのはやはりこの交渉に大きく影響するということは否めないわけでございます。そうした意味で、この両者の動向というものは、私ども今後ともよく見ていかなければいけないということは変わりないと思いますけれども、今までの私どもの努力にもかかわらず、こうしたダンケル・ペーパーが出されたということでもございますので、私ども取り組みをさらに一層強化していかなければいけないというふうに考えております。
  135. 前島秀行

    ○前島委員 どうもそこのところが前から何回となくこの委員会でも議論になって、アメリカECの動向を見ながらという日本のスタンスが不安でならないということは相当言われてきたと思うのですね。結果的には、日本の一番目的であった食糧安保、十一条二項同の問題だとか関税化なんというのは、もうすとんと入ってしまっているわけでしょう。ミニマムアクセスもそうです。何かそこに外交的な方法論、やり方を含めて、スタンスを含めて、もどかしさを私たちは感ずるんですよ。結果的には関税化というのは、あの文章をまとめるにしても、カナダ等々がリーダーシップをとっているような形がある。どうも日本の対応というのは、もっと積極的にあってしかるべきではないか。アメリカの矛盾点というのは、私は数知れなくあると思うのですね。ガットのいろいろな歴史から見ても、アメリカの言いたいほうだいで、その都度ガットのあれというのは変わってきている、そもそものウエーバーを含めて。そういうことから見ると、どうも様子を見ながら進むというのが不信といいましょうか、弱さを感ずるのですね。それがなぜもうやらないんだというと、いろいろな説明を聞くと、ウルグアイ・ラウンドが失敗してそれをかぶると困るから、こういう回答がよく返ってくるんですね。そうすると、じゃ失敗するという前提で日本は入っているのかというふうに言いたくなる気がするわけなのであります。  そういう面で、午前中田中先生の方からも、積極的に関税化反対の輸入国立場を集めてやれ、こういうふうな指摘等々もあったわけでありますけれども、その辺の具体的なやり方、先ほどは、絶対に日本主張を通して修正させていくんだ、こういうふうに大臣も言っているわけですね。それが通らなければおれは腹を切るらしきことも言うわけでありますから、その辺の具体的なやり方の問題、基本的なスタンスの問題をちょっと聞かせてほしいわけです。
  136. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 アメリカEC立場が違うというのは、向こうは条件闘争みたいなことですね。基本的には、今局長答弁のように、輸出補助金というのに問題があるわけです。これが最大の関心事なのですね。  ところが、これもさかのぼってみると、一九八〇年代ですか、農産物が過剰になりまして、アメリカECは補助金をつけてどんどんどんどん輸出していった。ところが今度、これに余り財政負担がかかっていきまして困ってきてこの問題が出てきた。言ってみれば勝手な話なんですね。どんどん自分たちでやって、今度困ったところをガット議論するという手法をとっておるわけでして、私どもは、ウェーバーもそうですし、この輸出補助金というのは問題がある。ところが、そっちの方は条件闘争でやる、それで日本主張しているものは一切入れられないということでは、公平公正ということからいって、輸出国議論ばかりで輸入国立場というものは全然認めてないじゃないですかというのが我々の意見なのです。ところが、私たちは条件闘争をやるわけにいきませんから、少しなら結構ですという案があるのなら前に出ていって言えるのですが、一切だめでございますという立場なものですから、打って出ろ打って出ろと言ったって、だめというのは前から申し入れしてありますから、何回前へ出てもだめということしか言えない、国会決議もございますし。  そういうことですから、何となく見ておって歯がゆく感じられるだろうな。しかし、結論が二つも三つもあるわけでありませんので、向こうはパーセントを上げたり下げたりというのがあるものですからひっきりなしに交渉をやってきたということではなかろうかな、こう思います。
  137. 前島秀行

    ○前島委員 時間が来たから終わりますけれども、いずれにせよ、勝手だ勝手だと言って農林水産大臣が解説してもらっているだけじゃ困るのですよ。その勝手なことを勝手にさせないように、結論としてしてもらわなければ困るので、それを具体的にどうするんだというと、蚊帳の外しゃという形にいくわけです。現時点ではどうしても言わざるを得ない。ぜひそういう面で、田中先生の提案のように積極的に輸入国立場関税に反対の立場——ECだって関税の問題、微妙なところあるわけでしょう。三条件が付されているし、輸出補助金という前提の中で、関税化というものは総合的に賛成だ、微妙なところがある。そうしたものを通じていくなりすると、いろいろな対応が積極的にあると思うので、そういう意味で、原則をちゃんと崩さないで、総理以下、内閣もぴしっと足並みをそろえて交渉に当たってもらうことをお願いして、終わりたいと思います。
  138. 高村正彦

    高村委員長 有川清次君。
  139. 有川清次

    ○有川委員 基本的な部分については先輩の皆さんがそれぞれ追及、質問されまして、一定の政府の考え方も出てまいりました。その辺はおくということにしますが、最終合意案ドンケル事務局長から出されまして、十三日までに受諾をする、それには大きな政治決断が必要だ。いわゆる政治決断の問題については答弁それぞれありましたけれども、政府自体の構えといいますか、そのものが基本にきちっと据わっていなければならないというふうに思います。今までお話がありましたように、輸出国優先のこうした案につきましては、日本の政府としては絶対にのめないという方向で、気持ち、姿勢ははっきりしておるんだ、こういうことでありますので、その構えをぜひきちっとして堅持をしていただきたいと思います。  今までオレンジ・牛肉の自由化とかあるいはでん粉乳製品等ガットにおけるクロの判定とか、こういうのがありまして、日本は非常に苦汁をなめ、そういうのがずっと続くに従って、今日日本農業というのはこの先どうなるのか。農林委員会の中でも私たちも常に論議をする後継者の問題、新年度における予算の中でもその対策が国内でも個々にやられようとはしておりますけれども、その根本にあるのは、今日、毎年支持価格も低下をする中で、この先農業はどうなるんだ、こういう不安が国民の中に横たわっておるから後継者問題も出てき、高齢化が進む、こういう状況になっておると思うのですね。  そういう中で、今、米の問題、ガットウルグアイ・ラウンドのこうした問題が具体的になってまいり、いろいろな人たち、主要メンバーの発言など聞く中で、私もこの冬、正月農村を回って意見を聞いた中で、自分の息子が農業の後継者としてやろう、こういう決意をしてくれたのはうれしいけれども、やらせるべきかやらせるべきでないか、農業の将来について、今のガット状況などからして非常に不安でならない、親としてゴーサインをやれないというのが今日の現状だという言い方をされておりました。それはまさに今日の農業を象徴的にあらわしたものではないだろうか、このように考えます。  そういう意味において、今日までいろいろ内容を詰めながら努力をされ、決断をされて、十三日には、こうして私たち日本農業食糧を考える者が一定の理解ができるような回答がなされるものと期待をするところでありますが、きちっとした姿勢を貫かれるように、まずもって要請をしておきたいと思います。  農産物十二品目の問題で、フォローアップに関する日米協議または複数国間の協議交渉が今日まで行われてまいりましたが、私は、ここででん粉の問題について若干質問をしたいと思います。  今度のドンケル案によって、国境措置の中では、関税化については、関税以外のすべての国境措置関税に転換し、転換後の関税相当量を削減する、こういうふうになっておるわけですが、先ほど来の答弁の中で、ガット十一条二項同の問題についてそれぞれ御答弁もあり、これは大体生かされておるというふうな解釈のようでありますが、その辺の問題についてちょっと伺いたいと思うのです。  これまで我が日本の場合は、カナダ、オーストリアあるいはフィンランド、こういうところと、これが効果的に運用されるように要件の見直しと明確化を求めてきたところですね。また、昨年の十一月には関心国、カナダ、北欧、韓国等々の間で、対象になる産品の範囲や実効的な生産制限措置、ミニマムアクセスの解釈などについて意見調整が行われてきております。その際、我が国は、本条項とは別に食糧安保の基礎的食糧に関する条項も提案して、明確にしてきているところであります。また、昨年十二月には、関税化の例外に関する関心国六カ国の連名によるアピール文もダンケル事務局長に提出をされております。  しかし、この最終合意案ではこの十一条二項に関するものが触れられていないということで、政府の見解ですけれども、これをなおさらに有効に受理させるということが、そのような方向で進むのかどうか非常に心配な面がございますので、今日これが生かされたままで今後の論議の対象になっていく、そういう判断をされておるのかどうか、この点をまずはっきりとお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、簗瀬委員長代理着席〕
  140. 川合淳二

    川合説明員 今御指摘のように、私どもは十一条二項(有)の見直し、明確化ということを提案し、これまでも主張してきたわけでございます。  今回のダンケル・ぺーパーは、例外なき関税化ということで、すべての非関税措置を関税化するという考え方になっておりますので、そういう意味ではこの十一条二項(c)が現行の形で継続するということは予定していない案になっているというふうに考えるべきではないかと思っております。ただ、ガットの十一条二項(c)の削除ということを明記しているわけではないことは、それもそういう事実でございますけれども、やはり例外なき関税化ということの中で、従来の数量制限というものを否定しているのではないかというふうに考えております。  今お話もございましたように、私ども昨年来関係国と協調いたしました。この点につきましてはいろいろな機会をとらえまして、アピール文の御指摘もございましたけれども、アピール文を出し、かつ、それぞれの会議主張してきているわけでございます。  先ほど来お話ししてございますように、輸入国立場としての見解なり主張がこのダンケル・ペーパーには落ちているというまことに遺憾なことになっているわけでございますので、さらにこの点について、基本的立場として私ども修正を求めていくつもりでいるわけでございます。  先ほども申し上げましたけれども、そんなこともございまして、カナダへ今週審議官を派遣し、その辺の働きかけを行っているところでございます。
  141. 有川清次

    ○有川委員 明確に今のところ触れられていないということで、そういう意味ではどのように、生かされているのかどうか問題があるところでありますし、政府としては要件の見直しと明確化を求めて、今後きちっとこの問題が非常に重要な問題として対応される、こういうことは理解をいたしますので、全力を挙げた御努力を要請しておきたいと思います。  また、十二品目に関する協議で、でん粉乳製品等について、かつてクロという判定が出まして、その取り扱いについては、その後日米二国間協議に基づいて今取り扱われておるところでございます。生産調整も行っておる品目であり、この十一条二項同に生かされておる、そういうふうに押し込みながら、なおかつそうした要件を満たしているものとして、クロではなくてシロとする方向で、日本としてはでん粉乳製品についてもさらに積極的に押し込んでいく、そういう努力というものも必要だと思いますが、その辺についてはどう考えていらっしゃいますか。
  142. 川合淳二

    川合説明員 今お話しのような背景を持っている問題でございます。私ども基本的方針の中に、この十一条二項の見直し、明確化ということを据えておるわけでございますので、今後ともその方針のもとに最大限の努力を続けていかなければいげないと思っております。
  143. 有川清次

    ○有川委員 また、先ほど来田中委員の方からも言われ、輸入国立場できちっとした組織をつくって、グループをつくって強力な運動を展開する、特に農業分野においてそうしたものが必要なんじゃないか、個々の国の対応では非常に弱いということを私もずっと見ておりまして痛感をするわけであります。今日本がとっている立場は、輸出国の強力な姿勢の中で非常に受け身の立場で対応しておるように思えてならないわけであります。  そういう意味では、日本農業の命運を決める決定的な場に来ておると思いますので、共通する二十一カ国ですか、そういう人たちと、個々ということではなくてグループを組織するというその辺の積極姿勢がなければ、そういうものを背景にしながら政治的判断をして国際舞台の中で踏ん張っていく、こういうことでなければ、国会決議など守り切っていけないというような感じがしてならないのですけれども、その辺もう一回、どう考えていらっしゃるのか、決意のほどをお伺いしておきたいと思います。
  144. 川合淳二

    川合説明員 昨年十二月にも関係国によるアピールを出したわけでございます。こうした形をつくる中心になりましたのは我が国でございまして、当然のことながら若干ずつそれぞれの農業事情が異なるわけでございますのを、共通の問題意識のもとに結集いたしましてそういう行動を起こしたわけでございます。  さらに、これに至りますまでにいろいろな形で会議を開き、あるいは協議をいたしましてやってきているわけでございますが、先ほども申しましたように、今後ともこうした形を強めていくということで、年明けからは在外大使館を通じましてダンケル・ペーパーに対します意見あるいはそれに対する働きかけというようなものを続けできておりますし、先ほど来申しておりますように、私どもの担当審議官をそのために派遣しているというようなこともございます。  二十カ国を超えます国がこういう態度、対応を示してきているわけでございますので、これを非常に重要視して、私どもも今後も対応していかなければいけないというふうに思っております。
  145. 有川清次

    ○有川委員 繰り返しですので、あとこれは追及しませんけれども、ちょうどこうした取りまとめ論議がジュネーブで行われているころ、組閣がどうなるのかという後継者問題などを含めて日本の国内が政治的には非常にまだ定まっていないそういう時期に、外国は大臣クラスが出かけていって積極的に折衝してきた。日本はそこまでいかずに、政府要員の事務次官やそういう人たちが対応したという現実があるわけで、やはり迫力において非常に弱かったのではないかという気がしてならないのですね。そういう意味で、グループによる、これも目に見えた形でやはり大臣も乗り込んでやるような積極姿勢を、この際、私は要請をしておきたいと思います。  時間がありませんので次に入りますが、日米乳製品でん粉の関係でありますけれども日本側はウルグアイ・ラウンドの結果を踏まえて対応、こういうことを言っておるし、アメリカやオーストラリアは即時完全自由化、そしてウルグアイ・ラウンド交渉とは分離してやれ、こういう要求をして、今平行線のままになっておると思います。しかし、この二国間協議の期限は平成三年度まででありまして、四年度以降は再度協議ということになっておるわけであります。  この合意文書案によりますと、大枠に従って国別の約束を三月一日までに提出して、最終計画の基礎となるのを三月三十一日、こういう取りまとめになっておるように思いますが、削減の実施期間はさらに九三年から九九年、こうなっておりまして、どうしても九二年度一年間空白が出てくると思うのですね。  そこで、日米二国間協議の今のでん粉乳製品の取り扱いは今後どのようになるのか、また、二国間協議というのは今後もあり得るという見解なのかどうなのか、取り扱いを含めてちょっと見解をお聞かせください。
  146. 川合淳二

    川合説明員 十二品目関係のフォローアップにつきましては、昨年七月それから十一月に米国との間で非公式に協議を行ったところでございます。  協議におきましては、今お話もございましたように、我が国の方は、でん粉及び乳製品につきまして輸入制限の撤廃は困難である、ウルグアイ・ラウンドの結果を踏まえ措置を講ずる考えであるということを終始主張してきているわけでございます。これに対しまして、米側はウルグアイ・ラウンドと切り離して輸入制限を撤廃すべきだという従来の主張をこれもまた繰り返しているわけでございます。  本件につきましては、今お話もございましたように、ウルグアイ・ラウンド交渉と非常に密接にかかわる問題でございますので、私どもはこれから先もこういう態度で話し合っていく考えでございますけれども、具体的にはこれから先どういうふうにするかということは、アメリカからの働きかけも含めまして、今のところ決まっておりません。当面、米国との二国間協議の具体的予定もまだ立てておりませんので、今後の推移を見なければいけませんけれども、今後とも私どもは、今申しましたような立場からこの問題に対処してまいりたいと思っております。
  147. 有川清次

    ○有川委員 現段階では、非常に今答弁も難しいところであり、しかし現場の段階では非常に不安を持っているのが現状なんですね。今、二国間協議の中でも、平成三年度の最終年度において無税枠が三百四十五万トン、抱き合わせ率が一対九、そして二次税率が五〇%またはキログラム当たり十二円というふうになっていますが、これはもう現地における生産農家にとってはぎりぎりの条件だというふうに思っております。そういう意味では、これを下回るような状況にならないように特段の努力と配慮というものを要請しておきたいと思います。  それから、国内支持政策の問題にちょっと触れますが、黄と青とに分類して、青の政策に限定して、限定的に確定をされておるわけであります。日本主張も、青を指定するのではなくて黄の範囲を限定的に確定した上で進めるのが当たり前じゃないかという御意見を提言されておりますが、まさにそのとおりだと思います。  そういう立場で今後具体的な、でん粉のコスト低減、生産性を高める施策などをやっていただきたいと思いますが、同時に南九州、主に鹿児島ですが、鹿児島、宮崎、でん粉は基幹産業になっておりまして、しかもシラス土壌、台風常襲地帯、そして最適の防災の作物であり、長年これによって地域経済が支えられてきたという状況にあります。このものが崩壊をしますと、経済の低下につながるだけではなくて、農村社会自体の破壊あるいは過疎の進行、高齢化に一層拍車をかけ、鹿児島県農業等にとっては壊滅的な打撃を受けることになるというふうに心配をいたしておるところでございます。しかもなかなかこのコスト低減を図っていくことは困難な、もうこれ以上というのは困難な作物になっておるだけに、将来為替レートの変化やいろいろなものもありますし、ガットウルグアイ・ラウンドの、これはもう絶対に認めてはならない、許すことができない状況だと思って、そのことを特に強く要請をするわけであります。  今後、鹿児島県農業、こういう手作をする農家にとっての政府としての農政の基本的な指導などを含めて、あるいは自由化を許さないという立場の、大臣の今後に臨む決意、そういう形で、もう時間がありませんので御回答願いたいと思います。
  148. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 鹿児島県の農業というものは、火山灰あるいは土壌がそうしたことでもありますし、それがまた非常に広く分布しておるということ、あるいは台風が非常に多い地域でもありますし、消費地からまた随分遠いという条件、そういうこともあります。また、この温暖多雨な気候等に恵まれて野菜、果樹、カンショ等の畑作経営や、高いウエートを占めておる畜産等に農業が多様に展開をいたしておる地域であります。  こうしたことから、農業粗生産額で全国第四位という有数の農業県であります。私どもも、このため今後とも、この地域の農業者の創意と工夫のもとに地域の特性に応じた農業振興が図られるよう、各般の施策を講じてまいりたいというふうに考えております。  以上、お答えいたしておきます。
  149. 有川清次

    ○有川委員 時間がなくて、非常に口早で申しわけありません。  今大臣の決意、状況としてはそういうことだろうと思いますが、自由化例外なき関税化というのは決定的な命取りになるのだという、畜産の部分で第四位というのを持っているわけですから、ぜひその辺を踏まえた対処を強く要請をしておきたいと思います。  最後に、検疫と衛生の関係でちょっとお伺いいたします。  私たち、安全性の問題については、国民の健康と命を守るという立場から、輸入自由化になっていけば大変だという心配を実はしておるわけであります。食糧の安全性と環境を保護する立場で、食品の添加物はもちろん、農業、化学肥料の使用制限など、可能な限り厳しく規制すべきだ、このように思っておりますが、今度のドンケルの案によりますと、「科学的正当性等がある場合には、国際基準よりも厳しい措置を採用し、維持することができる。」こういうふうになっております。いわゆる貿易にマイナスの影響を来さないように、最小限度に影響することを考慮しながら、国際基準というのは非常に緩い、そういう苦情があればそれを科学的な根拠を明らかにしてどこかで審議しよう、こういうことになっていると思うわけであります。  その場合に、いわゆる科学的な根拠ということに対して、どこの機関がどのようにチェックするのか、この辺も非常にあいまいでありますし、厚生省はこのような国民の健康と安全にかかわる重要な基準の整合性の問題についてどのような対応をされようとしておるのか。それからもう一つは、この安全基準についての決定権というのはそれぞれの国にあるわけでありまして、国民が決めるべきものであって、自由貿易のために国民の健康やいろいろなものが犠牲になるようなそういうことには絶対に合意を与えてはならない、このように思いますが、その辺の見解をお伺いしたいと思います。
  150. 織田肇

    ○織田説明員 今回の合意案では、コーデックス委員会等の定めました国際基準がある場合には、各国の食品安全基準等をこれに基づいて調和させることを原則としておりますが、科学的な正当性がある場合等には国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し、維持することができることとなっております。  これは各国によりまして、食生活のパターンあるいは衛生状況等が異なっていることから、必要に応じて国際基準より厳しい措置がということを定めているものであって、このような措置をとる場合には、食品の摂取量の違い等を科学的根拠に基づいて説明することになります。  科学的正当性の考え方につきまして具体的に紛争が生じました場合には、必要に応じまして紛争処理のための小委員会が設けられることとなっており、また当事国と協議の上、専門家のアドバイスを求めることもできるとの規定が設けられております。したがいまして、中立性は保たれるものと考えておりまして、我が国としてもこのような場合には積極的に対応してまいりたいと思います。  いずれにしましても、厚生省といたしましては、科学的根拠に基づいて食品の安全性の確保、国民の健康の保持に努めてまいりたい、このように考えておる次第であります。
  151. 有川清次

    ○有川委員 もう時間がありませんのでなんですが、このコーデックスの委員会で審査する、こういうことをアメリカ主張しておるわけですが、アメリカ自体が二十八名の代表を送り込んでいるけれども、やはりその中には多国籍企業の職員とか化学産業の利益代表もかなり入っておるし、日本の場合も、八名のうち食品添加協会等初め、いろいろなそういう関係の会社の駐在員が入っておる、こういう状況がありますし、どうしても人間の食糧の安全性というよりも貿易優先という、貿易がスムーズにやりやすい、そういう形のものに流れがちな内容になっておるというふうに思いますが、完全なチェック体制というものができると理解をされておるのか、そういう取り組みについて考え方をお聞かせを願いたいと思います。  それからもう一つは、安全基準について科学的な根拠、これが求められておるわけですが、その根拠をどこでどう判断をされるのか、それをもう少し明確にしていただきたいと思います。
  152. 織田肇

    ○織田説明員 コーデックス委員会におきます国際食品規格の策定というのは、この委員会の加盟国が中心となって行っているものでございます。  各加盟国の代表団は政府の担当者によって構成されておりますが、技術的、専門的立場から各国代表に助言するために、アドバイザーが代表団に加わることもできることになっております。このアドバイザーに民間の技術者が選ばれた場合も、あくまで専門的立場から各国代表に対しまして、食品の加工でございますとか保存技術、流通実態等に関する技術的問題を補佐するという位置づけのものであります。  また、規格基準の基礎となる一日摂取許容量の設定等につきましては、化学者のみで構成される専門家委員会において検討されているところであります。厚生省としましては、コーデックス委員会における検討は科学的な見地に立って行われているものと考えております。  なお、国内におきます食品の安全性の基準に関します議論は、食品衛生調査会におきまして、その分野の専門家によって確立されるものであります。
  153. 有川清次

    ○有川委員 コーデックス委員会で本当に安全性について明確にチェックができるのかといえば、今のこの構成メンバー、いろいろ見てみますと非常に心配でなりません。外国食品は、輸入食品はもう心配だ、こういうことになって消費者が理解をしていけば、国内のものを消費して日本農業もよくなるんでしょうけれども、どうしても都会地やいろいろなところであるものに流れていくわけでありまして、まず輸出ありきという輸出国のその概念よりも、人間の命と健康という立場に立った安全性、これをきちっとチェックができ、またその内容を国民にも明らかにしていくようなそういうシステムで今後対処していただくように強く要請をいたしまして、時間が参りましたので、終わります。
  154. 簗瀬進

    簗瀬委員長代理 志賀一夫君。
  155. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今までいろいろな方々から、ガットウルグアイ・ラウンドについていろいろな立場に立っての御質問がありましたが、私もまた角度を変えた立場で、この問題についてまずお聞きをいたしたいと思う次第であります。  今ガットウルグアイ・ラウンド維持している国々は、いずれも豊かな農産物の生産国であり、と同時にまた輸出国でもあります。特に、先進諸国と言われる国々はいずれも高い食糧の自給率を維持している状況であります。これらの国々の中で自給率の最も低い国は英国でありますが、約八〇%、しかも第二次大戦当時は二〇%台であったというふうにお聞きをしておりますが、その後独自の政策努力で今日まで高い自給率に引き上げたというふうにお聞きをしているわけであります。  これらの国々は、安全な食糧、安定した供給の可能なのはやはり国内生産であるべきだ、こういうコンセンサスができているからではないだろうか、こういうふうに考えますと、今我が国の現状は、御承知のように供給熱量自給率では、九月の当委員会で元年度四八%という答弁をされたわけでありますが、既に平成二年度ではそれがまた四七%に引き下がったというふうに報告されているようでありますし、もちろん同時にまた穀物の自給量にいたしましても、先進諸国と比較いたしましてはお話にならない、三〇%という極めて低率であります。こういう状況下にある我が国が、非常に高い自給率の国々と同一にウルグアイ・ラウンドで果たして規制を受けでいいのだろうか、こういう疑問が当然にして出てくるわけであります。  したがって、そういう我が国の特殊な自給率の低さという現状からいえば、アメリカのようにウエーバー条項に当てはめて、やはり水もそしてまた乳製品自由化からは除外していただく、これはもうむしろ我が国の当然の主張ではなかろうか、こういうふうに思うのでありますが、大臣はいかにおとりになっておられるか、お聞きをしたいと思います。
  156. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 私もそのとおりに思います。  自給率を五〇%まで引き上げたいと国会決議もいたしましたけれども、残念ながら四七%になったということは、さらに努力を広範にしていかなければならない、こう思うわけでありますし、全体的に申し上げまして、先生がおっしゃるとおり、自給できる、可能な限りやはり努力をしていく。前々からも申し上げておりますように、地球全体で人口の増加は、開発途上国、食糧の貧しいところが人口が急増しておるというときに、私ども自給可能なものまで輸入に依存するということになれば、将来とも食糧が地球的には不足をしていくということからいたしますと、私ども食糧の自給率を高めて安定した供給を国民にしてまいらなければならぬ、そのつもりで今回の交渉事にも、日本立場というものを理解してもらえるように努力をしておるつもりであります。
  157. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 この問題については、我が国の自給率の低い特異な状態、こういうものをやはり特別主張すべきであろう、こんなふうに私は考え、大臣の御努力をひとつ期待したいと思う次第であります。  二つ目に私がお聞きをしたいことは、世界のそれぞれの国々は、気象条件も地理的条件、あるいは土壌、水利等の生産条件ももうすべて異なっています。したがって、そこで生産される農畜産物もそしてまた食文化も、おのおのそれぞれの国の特有のものであるわけであります。そういうことを考えますときには、やはり我々がお米を我が国の基礎的な食糧、こういうふうに主張している際に、あの米や乳製品を他の工業製品と同じような見方、考え方で画一的に規制を加える、こういうことはガットウルグアイ・ラウンドでむしろ間違いではないのか。農業なり農業の公益的な使命なり、そういうものをいろいろ環境問題等々とかかわって考えた場合にも、やはり農業は特殊なんだ、特殊な条件下にある、それぞれの国でいろいろある。そういう状況を考えますと、今申し上げましたように、やはり他の工業製品や、今議論されているいろいろな規制、そういうものと同じように同列で画一的に農業にも規制を加える、それぞれの国によって実態は違うんだ、状況は違うんだというとらえ方をすれば、それは今のウルグアイ・ラウンドで進めていることはどうも若干間違いではないのか、お門違いではないのか、そういうふうに私は思うのでありますが、そういう視点からの大臣、御努力はどうでしょう。
  158. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 いろいろな角度から日本立場というものを主張しておるつもりであります。残念ながら、日本世界第二の大国だとよく言われるようになりまして、いろいろな分野で、農業以外の分野輸出が相当伸びて、これがまたその国に影響を与えているという分野も出てくるようになった。総じてやはり大国になったということで、そういう面では目標にされやすいという面はあると思うのであります。ですから、今おっしゃるように工業農業とで議論というのは、通じる国もあるし通じない国も実はあるわけですね。  御案内のように、もう自動車等はアメリカから言えば、大変不満のあるところで、日本の自動車のおかげでアメリカの自動車産業は壊滅的な打撃を受けた、こう言って、きのうまで大分交渉をやったようでありますが、私たちから見ると、もっと買いやすい、値段も手ごろ、みんなが望むようなものをつくってくれれば何もあんな割り当てしなくても売れるのでありますけれども、しかし、国民の要求したものでないものを生産しておるということでは、どんな手を尽くしてもアメリカの自動車産業というものは立ち行かないだろうと私は見ておるのですが、まあしかし、そう言ってみても、その原因は日本にあるのだという国もございます。  したがって、相手を見てというわけではありませんが、いろいろな角度から説明をし説得しているのでありまして、言い出せる理由というものは全部申し上げておるわけであります。ここで逐一、こまい部分にわたって、こういうPRをしているということは省略いたしますけれどもお話しのように、余り関係のない国に対してはそういう説明も私たちはしているつもりであります。
  159. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今大臣から御説明をいただいたわけでありますけれども、やはり私の主張というものは、農業というのは、食糧の生産というのはそれぞれの国によっていろいろ違うのだ、だから、工業製品の規制と同じように農業を同一で画一的に規制をするということは、農業問題に関する限りなじまないのではないか、私はそういう主張であり、そういう立場我が国はありますし、そういう主張をぜひこれからの交渉の中でやっていただきたい、特段にお願いしたいと思います。  三番目に申し上げたいことは、御承知のように今、世界の人口というのは五十数億になっているわけであります。その世界の人口が必要とする食糧はほぼ満たされているというふうに聞いているわけでありますが、しかし現実には、いろいろな報道によりますと一日四万人の子供が飢え死にするとか、あるいは数多くの地域の方々が貧困のために栄養失調というような状態で苦しんでおられる。こういうことを見ますと、まさに今大事なのは食糧の公平な配分だ、そういうことが私は言えると思います。  特に二十一世紀は、もう既に大臣承知のように世界の人口問題、爆発的にふえます。環境破壊や土壌浸食による人口一人当たり穀物収穫面積の減少、あるいはまた地球温暖化による異常気象、困難な時代を迎えるに当たって、今ガットウルグアイ・ラウンド農業交渉で最も重要なのは、こういう二十一世紀に向けた状況を考えたときに、やはり他国の主権侵害にも等しい農業の規制をすることではなくて、世界における食糧の生産をどう増加させるか、貿易の安定的な拡大をどうするか、食糧の公正な分配をどうするかというような、そういう課題が今世界の場で共通の課題として真剣に取り組まなければならない大きな課題ではないだろうか、そういう視点からのやはりこのウルグアイ・ラウンドでの折衝というものが大事ではないのか、こういうふうに考えておるところでありますが、いかなる御見解をお持ちかお聞きしたいと思います。
  160. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 アメリカのヒルズ通商代表がお見えになったときも、私からこのことを申し上げました。人口問題というのは大変深刻な問題でありますと。しかも、人口がふえると食糧問題というのが当然出てまいりますが、いずれにしても今五億の人たちが食糧難であえいでいるようでありますが、そのためには自給できるような指導あるいは援助というものをこれらの国にしてまいらなければならないし、一方では、当面これは時間がかかりますので、食糧輸出国がそれぞれやはり援助体制というものをとって、そしてそこに充てるという必要があるのじゃないでしょうか。それを自由化をして農業に大きなダメージを与えて、日本もつくればつくれるものを自由化のおかげで今度は外国から米を輸入をする、技術も何もないのなら別でありますけれども、そういうことをしては、今申し上げたような開発途上国の食糧援助をしなければならぬ国、そういうものを一体どう取り扱うのですか、そういう面から、ウルグアイ・ラウンドで私はもっと議論をすべきだということを申し上げてまいりました。  これはもうこれからさらに深刻になっていく問題なだけに、やはりきちっとしたことをしていかなければ、将来にわたって食糧の富める国とそうでない国の差というものは大きくなっていくだろうというふうに私も思っておりますし、そのことも十分主張をしているつもりであります。     〔簗瀬委員長代理退席、岩村委員長代理     着席〕
  161. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 この問題は、二十一世紀といいましてもあともうすぐに目の前にやってくるわけでありますから、このウルグアイ・ラウンドの中で新たな交渉課題としてぜひ取り上げていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それで、実は食糧の自給率の向上の問題で、去る九月二十五日の農水委員会で私質問した際に、自給率の低下の原因に米の消費の量の減少、それと飼料穀物の輸入の増大等々を挙げられたわけでありますが、それは現象面としては確かにそのとおりでありますけれども、しかしその裏づけとなる農業政策の部面で、なぜ食糧の自給率が低下したのか、その辺に対する政府としての反省点ほどのようなものがあるのか、まずお聞きをしたい、そんなふうに思います。
  162. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 我が国食糧の自給率が下がった原因については、今委員も仰せられていましたように、我が国の米の消費の減少あるいは畜産物消費の増加によります飼料穀物の輸入の増大、さらには油脂の消費の増加によります油糧原料、大豆、菜種などの輸入増加等が原因であるということをかねてから申し上げているわけであります。  そういうことと同時に、国民生活が非常に豊かになって国民が非常に多様な食糧を消費するようになったということが背景にあるわけであります。もちろん、国内におきまして国民の食生活のそういう多様な豊かな食生活を確保するために、例えば米以外の作物の生産の振興、果樹とか野菜とか需要に見合った振興もやってきているわけでございますが、自給率という数字でとらえますと、確かに減少してきているということでございます。  一方、今御議論もありましたように、この狭い国土に一億二千万人という膨大な人口を抱えておる我が国としまして、今後とも国民の食生活の豊かさというものを維持していくというためには、どうしても食糧自給率の維持向上を図ることが必要だということでございます。そこで、平成二年に閣議決定をいたしましたが、西暦二〇〇〇年を目標年次とします「農産物の需要と生産の長期見通し」というものを立てまして、その中で、国内の農業で持てる力を十分発揮するということにいたしまして、食糧自給率の低下傾向に歯どめをかけて、供給熱量で五〇%の自給率を達成したいという見込みを立てたわけであります。  そのためには、政府としまして、非常にすぐれた担い手の育成、生産基盤の整備あるいはバイオテクノロジー等の先端技術の開発普及というような施策を強力に推進していく必要があるというふうに考えておりまして、これらの施策について予算措置その他を講じておるところでございます。
  163. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 これは、これ以上まだ議論いたしますと時間がないのでありまして、はしょります。  スイスの食糧安保論をまさに裏づけるように、スイスでは、平時における国民に対する良質な食糧供給の確保とか、あるいは対外貿易の困難や危険のときに備えての食糧の安全保障、あるいは健全な環境と正常なエコロジーの保持、また農山村に十分な人口と活性的な家族経営が存在する良好な社会構造の維持というこの四つの柱を立てて、現に農家には都会の労働者並みの所得を保障する価格支持政策、あるいはまた農業生産の維持と定住の確保を条件とする直接支払いめ制度など、こういうような具体的な政策を裏づけとして現にやっているわけであります。  しかし、私ども食糧安保を唱えながら極めて食糧の自給率は低い、そしてそれの裏づけとなる政策というものは極めて弱い、それは現に食糧の自給率が年々低下をしている、あらゆる点でそれは言えるわけであります。例えば酪農問題に関連しまして言いましても、年々自給率が低下をしている、しかも、約二千五百万トンという膨大な、濃厚飼料ばかりではなくて粗飼料までも外国に依存をして、いわば畜産加工業となってしまっている。そういう状況を考えますと、やはり食糧安保論を主張するなら、やはりそれを裏づける具体的な政策を我々は政府に実施を求めたい、そんなふうに思うわけでありますが、それについて大臣の考え方をお聞きしたいと思います。
  164. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 基本的に難しいと思うのは、国土の七〇%が山でありまして、これに一億二千万人という大変な人が住んでいる。それで、適したものは何かというと、気象条件からいって日本には米が一番いいわけですね。昔は肉なんというものは余り食べなかったものです。ところが、国民のニーズというものは肉にどんどん依存していく。肉を、畜産物を輸入しなければならぬ。あるいは国内で生産をするとしても飼料穀物の輸入をするか、あるいは自国で賄うとすれば相当の農地が必要になる。ところが山が七〇%でありますからこれも不可能ということで、日本はだんだんそういうふうに追い込まれていった。私は食生活の変化だったろうと思うのです。  そのほかに、油脂の大豆、菜種の輸入、これも相当伸びてきておる。それも生産するというと、これまた国内ではもう現状不可能ということとあわせて、米の方はどうかというと減少一方ですね。結局、他のものをとるものですから、米そのものは減少していくという中で努力をしてきた。全部自給できれば一言も文句言われなくて済むのでありますが、あるものは絶対ため、ないものは入れてくれ、こういう話でありますから、相手から見れば一方的な勝手な話だと思われるかもしれません。しかし、私どもは、米に関する限りは、これは先ほど申し上げた一番適した農作物であるわけでありますから、国土の保全という意味からいっても、これだけの山があって雨が多い、それを受けとめるのはやはり水田だということからいって非常に大事な分野だという認識のもとに言ってきたつもりであります。  おっしゃるように全部が自給できれば一番いいわけでありますけれども、そういう状況にないことは大変残念だと思うし、しかし、国民のニーズというものはどんどん変化していくものにまた我々が対応していかなければならぬということで、その辺のところは努力不足はありましょうけれども、精いっぱい私たちもやっているということを御理解いただきたいと思います。
  165. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 考え方としては十分わかるわけでありますが、しかし、現に食糧の自給率が下がった要因としては、いろいろ具体的な政策面であります。現にやはりその要因というのは、既に土地の荒廃、荒れ地もたくさんできておりますし、山も荒れております。そういうことに対してどういう具体的な政策をやるべきかという議論はもっともっとあると思いますけれども、努力をされるということでありますので、今後の機会にまた十分御意見を賜りながら私の意見も申し上げたい、こんなふうに申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  166. 岩村卯一郎

    ○岩村委員長代理 倉田栄喜君。
  167. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党の倉田でございます。  今、農業というものが危機的状況である、これは恐らく大方の皆さんの共通の認識であろうかと思います。その危機的状況、二つの危機があると考えます。国内的危機と対外的危機であります。  国内的危機については大臣もお述べになりました。高齢化社会の問題、出生率の低下、もっと言いますといわゆる後継者不足と昭和一けた世代のリタイアの問題でございます。  対外的危機の問題、いわゆる関税化。関税化になってしまったら本当に農業というものはだめになってしまうのではないか、水田というものは今の状況では本当に維持できなくなってしまう、こういうふうに私は思っております。  そういう意味で、公明党の農業基本問題委員会は、何としても関税化というものは阻止しなければいけない、関税化を阻止するための責任ある対案止して部分自由化論を提案させていただいた、私はこのように考えております。  しかしながら昨年、このダンケル案を読みますと、関税以外のすべての国境措置関税に転換する、包括的関税化という形で言われますけれども、こういう案が出されてきた。私は、いろいろ交渉はあっただろうと思いますけれども、ここまでいわば追い込まれてきた政府の責任というのは非常に重いのではないのか、このように考えます。  そしてさらに、午前中から質問に出ましたけれども、外務大臣の御発言、意外なものの方が意外と得、こんなふうにたしか新聞記事には書いてありました。総理も何となくこの御発言評価するような記事もあったみたいに私は思います。牛肉・オレンジのときと同様に、またまた政府は最後の土壇場で裏切るのではないか、こういうことがあっては本当に大変だと思う。農家、農民の方々に対する農政不信の問題がさらに増幅をしてしまう。もっと根本的に、本当に農業というものをどうするんだ、これをきちんと、後継者不足といいますか、本当にこれから農業を担ってくださる方々にきちんと示していかなければいけない、そういうふうに思うわけでございます。  そこで農水省に、今まで御答弁の中に何回も出てきておりますけれども、ひとつ簡潔にまとめて、本当に国民の皆さんにわかるように御説明をしていただきたいと思うのですが、関税化について農水省というのはどのようにとらえておられるのか、そしてもちろん関税化反対ということでありますので、なぜ関税化は反対なのか、これをひとつ本当に説得的に、明確にお答えをいただきたいと思います。
  168. 川合淳二

    川合説明員 私どもこの関税化につきまして反対している理由は、基礎的食糧あるいは生産調整を実施している品目につきましては数量規制を伴う適切な国境管理、数量規制による措置が必要だということで、この包括的関税化の考え方に反対しているわけでございます。
  169. 倉田栄喜

    ○倉田委員 数量規制が認められないから反対なのだ。ここでの発言あるいはお答えというものは、国民の皆さんあるいはマスコミの皆さんが注目をして聞いているわけですから。  それで、例えばもう部分自由化はしょうがないんじゃないの、こういう意見が出たりする。あるいは、いわゆる政策構想フォーラム、こういうことの中で、もう関税化の方向で受け入れるべきである、こういう議論があるわけでございます。つまり、関税化というのは決して日本農業をだめにしないのではないのか、私はこれは農業というものを本当にきちんと理解をした上で発言したのかどうか疑問に思いますけれども、なぜ関税化というのが日本農業をだめにするのか、決して関税化というものは農業活性化に役に立つものではないのだ、こういう考えに私は立っておるわけでございますけれども、農水省はこの辺はどのように考えておられますか。  あわせてもう一点、続けてお聞きしますけれども、例えば、たしか一昨日の新聞報道では、農水省、関税化の影響を検討しよう、こういう報道がなされておりました。先ほど申し上げましたこの政策構想フォーラムによれば、毎年二・五%ずつ下げていくということは全然影響しませんよ、こういうふうな意見の展開がなされておるわけですけれども、この点についても、農水省としてはこの見解、どのようにお考えになっているのか、お答えを願いたいと思います。
  170. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 関税化を受け入れた場合、日本農業にどういう影響を与えるかということについていろいろ御議論のあるところは承知しておりますが、まず関税化という言葉、これも人によっていろいろ解釈があると思います。基本的には、関税を払えば量的に無制限輸入ができるという仕組みだというふうに考えられまして、そういう意味では基本的には完全自由化につながる性質のものだというふうに、性格としては我々考えております。  また、そこで議論になりますのは、非常に高い率の関税を課すればそう入ってこないのではないかということで、非常に高率の関税を設定すればよろしいではないかという議論が次にあろうかと思います。これは今ガットウルグアイ・ラウンドで論じられていますように、最初は高くても順次それを引き下げていく、将来的には引き下げていくということが求められておりますし、また過去のいろいろな農産物の輸入関税について見られますように、いずれはそれを下げるという要求が出てくることも一方予測されます。したがいまして、高い関税を設定すればよろしいということにはなかなかならない。  さらには、例えば関税を高く設定したつもりでありましても、農産物の国際価格というのはそのときどきの国際需給によって大きく変動いたします。また、為替レート等も変動いたします。したがいまして、一定の率を設定すればそれでいいということになかなかならないという意味で問題がございます。  翻って我が国農業の現状は、御案内のとおり非常に急峻な地形、狭小な耕地面積というような国土条件、自然条件に制約されております。のみならず、我が国におきましては、労賃、地価等、他の農業国に比べますとかなり高いという社会的な制約を抱えておりますが、御案内のように内外価格差、米についていいますと、米国との間でも六・二倍、タイとの間では九・八倍、これは最近の状況でございますが、というような形で生産者価格に大きな差があるわけであります。したがいまして、当然我が国農業について我々これからも規模拡大等を通じてコストの低減を図っていきますけれども、なかなか今言いましたような関税化というものに対応できるような意味でのコストの低減というのは難しいのではないかというふうに考えております。  おっしゃられたような学者グループの提案というようなものを見ますと、例えば毎年二・五%ずつコストを下げればいいというのですが、この考え方も、よその国はコストダウンはしない、日本だけがコストダウンができるということであればあるいはそういう議論も可能かと思いますが、輸出国輸出国でまたコストダウンを努力するわけでございますから、なかなかそういう簡単な話ではないというふうに思っているわけであります。  そういう意味で、関税化した場合の影響調査についてどうかという御議論があります。かねがね申し上げておりますように、私ども関税化ということを認めるわけにいかないという立場でございまして、その具体的な影響ということについて検討しているわけではございません。また、たとえ検討しようということにいたしましても、今ウルグアイ・ラウンドで示されているドンケルの合意案等におきましていろいろと不分明な点がございまして、具体的な検討をするのはなかなか難しい状況にございます。さらに、先ほど言いましたように、国際需給とか価格の変動とかいろいろな不確定要素がございます。これ肩の問題について具体的に検討する段階に至っておらないというのが実情でございます。
  171. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう一つお聞きしたいと思うのですが、ダンケル案の中に特別セーフガードというのがあります。ダンケル事務局長は、この特別セーフガードの規定を使うことで関税化による混乱を回復できるのではないか、こういう報道がなされておったりして、いわばこの点をとらえて、この特別セーフガードの規定を弾力的に運用すれば関税化しても大丈夫なのではないの、こんな議論も私は聞くところでございますが、私はそうではないのではないか、こう思うのですけれども、農水省としてはいかがでございますか。
  172. 川合淳二

    川合説明員 特別セーフガードの今の考え方は、関税化に伴う制度としてダンケル・ペーパーにあるわけでございます。関税化に伴う制度的問題を別といたしましても、特別セーフガードは、今の提案では改革期間中のみに適用する暫定的な措置とされているというようなことがございます。それと、このセーフガードというものについて、発動する経験というものを我が国はほとんどといいますか全然持っていないと言って過言ではないと思っております。  今回のダンケル・ペーパーの中では、数量ベースの場合あるいは価格ベースの場合にそれぞれ発動要件などが書かれているわけでございますが、これが例えば輸入急増が続いた場合に、年度が終わればそこで終わりであるとか、個々の輸入要件ごとに発動要件を満たしているかどうかを点検せざるを得ないとか、これは価格ベースの場合ですが、実際に機動的あるいは現実的に動き得るものかどうかということについて、私ども非常に疑念を持っております。この制度は、先生承知の、EC主張しておりました変動要素にかわるべきものとして、今回のダンケル・ペーパーに入ってきているものでございます。  そうしたいろいろな今までの背景を考えてみますと、なお不分明なところがあるわけでございますが、なかなかこの特別セーフガードが機動的に働くというふうに私ども考えるにしてはいろいろとまだ条件が整っていないのではないか、あるいはそれについて十分理解されるような点がダンケル・ペーパーにはないのではないかというふうに考えております。
  173. 倉田栄喜

    ○倉田委員 済みません、もう一つお聞きしたいのですけれども議論の中に、農業を活性化するためにはもっと自由化すべきである、それはいわゆる食管法の問題についても、根本的なところは別として形骸化が叫ばれている部分がある、国内的にももっときちんと自由化すべきである、同時に国内的に自由化すべきであったら対外的にも自由化すべきである、活性化の方向で考えるならば自由化がいいのではないのか、こんな議論もあります。これに対して農水省はどのようにお考えですか。
  174. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 食糧管理制度、先生承知のとおり、国内米、輸入米を通じまして生産、集荷、販売、各般にわたりまして全量管理という体制をとっておるわけでございます。この全量管理体制の中で市場原理、競争原理を入れた制度運営の改善が行われてきておるわけでございますが、その根幹をなしておりますのはやはり全量管理のシステムである。その中におきまして、いろいろまた我々改善のための工夫をする余地はあろうかと思いますが、少なくとも現在の法体系のもとで予定をしておりますこの全量管理体制というもの、これは現行法では厳しく規定をされておるというふうに理解をしておるところでございます。
  175. 倉田栄喜

    ○倉田委員 続きまして、いわゆるダンケル案の性格についてお聞きをいたしたいと思います。  訳文は「最終合意文書」、こういうふうになっておりますけれども、原文は、最初のを読みますとドラフト・ファイナル・アクト、こういう形から始まっております。昨日発表された東京宣言では、最終テキストではない、このように言われてもおりますけれども、農水省としては、訳文として最終合意案、こういうふうに書いてあるけれども、どのようにお考えなのか。通常最終合意案というのは、後は手続的部分が残されておるのみで、内容については仕上がっているものをこういうふうに呼ぶものだと私は理解をしておりますけれども、このダンケル案の示され方あるいは今までの議論、ここに最終テキストではないということが書いてあるのを見ると、最終合意案というふうに翻訳をするのは決して適切ではないのではないのか、こういうふうに思います。  さらに、その後をちょっと直訳的に考えてみると、結局交渉の経過を具現化したもの、具体化したもの、こういうふうに考えるべきではなかろうか。そうすると、この文言の中に果たして合意案という部分があってしかるべきなのかな、そのファイナル・アクト、これがどんなふうな意味なのか、私は疑問に思うわけでございますが、外務省はこの点はどのようにお考えでございますか。
  176. 須藤隆也

    ○須藤説明員 先生指摘のとおり、通称最終合意案と訳しておりますが、正確には今先生がおっしゃられましたとおり非常に長いタイトルがついておりまして、ウルグアイ・ラウンド、多角的貿易交渉の結果を収録したドラフト・ファイナル・アクトという表現が正確な表現でございますが、これを簡略化して最終合意案あるいは最終合意文書案と呼んでいるわけでございますが、いずれにいたしましても、これは仮の呼称という性格のものでございまして、ファイナル・アクトというのは最終的な合意を盛り込んだものということでございますが、あくまでもこれはドラフトという意味合意案と通称で呼んでいるということでございます。
  177. 倉田栄喜

    ○倉田委員 例えば、この案が示されましたときは、ヒルズ代表の、これはダンケル案の試みをあらわしているものである、こういうふうなコメントがたしか報道されたと思いますが、このとらえ方、これは各国はどのようにとらえていると農水省はお考えでしょうか。
  178. 川合淳二

    川合説明員 各国の正式のこの案に対する見解は必ずしも出そろっているわけではございませんし、ほとんどまだ出ていないと言った方がよろしいかと思います。  しかしながら、各国が慎重に言葉を選びながら言っていることは、やはり案であるということでありまして、日米間の先日のアクションプランにおきましても、最終でないと言っておりますように、アメリカもこの点を認めているというようなことでございます。ECにつきましても当然のことながら特に農業部門についてはかなり厳しい反応を示しておりますので、どこの国もそういう意味では最終のものではないという見解に立っているのではないかというふうに私どもは思っております。
  179. 倉田栄喜

    ○倉田委員 後でもう一回この問題をお聞きしたいと思うのですが、一番知りたいと思うことですけれども最終合意案じゃないとして、それではどの範囲で交渉の余地があるとお考えになるのか、この点はいかがでしょうか。
  180. 川合淳二

    川合説明員 率直に申しまして、それがこれからの交渉になると思います。各国とも、これは農業部門にとどまらず、全体の部門についてそれぞれ問題点を持っているわけでございます。これを今後どういうふうに各国が問題点を提起し合い、それについての修正を求めていくか、かつそれを認めていくかということが今後の交渉の過程になるわけでございまして、そこについてどういうふうな余地があるかというようなことを今即断することはできない。いずれにいたしましても、我が国としては非常に問題のある、少なくとも農業問題については問題のあるぺーパーでございますので、そうした修正を求めていくという態度でいるわけでございます。
  181. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今ダンケル案の性格についてお聞きをしたわけですけれども、中身の問題についてもやはりまだ不明確なのではないのかと私は思っております。例えば、今お聞きしましたけれども、特別セーフガードの内容の問題につきましても、あるいはAMSと日本オファーとの関連性についても、さらには青と黄色、この範囲はきちっとしているのかどうか。さらに、これが一番重要なことでありますけれども、すべての国境措置関税に転換をする、このすべての中にいわゆるガットの十一条二項(c)というのは含まれるのかどうか。  聞くところによりますと、ECはやはり残るのではないかというふうに主張しているとお聞きしている。アメリカは、いや、これはもう残らないのだというふうに主張しているようにも聞いておりますが、この十一条二項(c)の問題は、いわゆる乳製品でん粉、これらの問題も非常にかかわる重要な問題でございます。もちろん日本政府としてはこの十一条二項同の明確化を求めていく方向で交渉されていることだと思うのですけれども、こういう見解の対立がある中で、画本政府としてはこの十一条二項同というのを、すべて国境措置関税に転換するというこの部分をどのようにお考えになっているのでしょうか、これは農水省、外務省、お聞きしたいと思います。
  182. 川合淳二

    川合説明員 今お話ございましたように、合意文書案ではすべての非関税措置、したがいまして、ガット十一条二項(c)に基づく数量制限措置もこの関税化の対象にするというふうに書かれております。そういう意味では、十一条二項(c)も関税化の対象であるというふうに考えざるを得ないと思っております。  一方、今先生お話しのようなECのような意見、これも正式のEC意見というふうに私ども把握しておりませんけれども、そういうような考え方が出てくるのは、十一条二項同の削除というようなものが提案されているわけではないということによるものでございます。
  183. 須藤隆也

    ○須藤説明員 基本的に川合局長と同じ解釈をいたしております。  ダンケルの合意案の提案の趣旨は、十一条二項(c)の対象産品も含めて関税化をするという提案になっておりますが、ただ純粋法律的にこれを詰めていった場合に、現行のガット上の権利であります十一条二項(c)と、新しく合意されるかもしれない十一条二項(c)産品も関税化するということとの純法律的な関係はどうなるかというような点も含めて、明確化をする必要があると考えております。
  184. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それから、今後のその個別交渉のスケジュールでございますけれども、このダンケル案によりますと、「各国は、この大枠に従って、国別約束を一九九二年三月一日までに提出し、最終計画の基礎となるものを同年三月三十一日までにとりまとめる。」このように合意案の中に記載をしてあるわけですが、これはもうきちっと確定をしていることでしょうか、それとも、これもヒルズさんが言われるように、いわゆるダンケルさんの御希望、試みというものを表明された案にすぎないのでしょうか。
  185. 川合淳二

    川合説明員 ダンケル・ぺーパーの中にそのように記載されているわけでございますので、そういう意味では案の段階であるというふうに思っております。
  186. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今、ちょっとお答えが私はよく理解をできませんでした。案の段階にすぎないということは、これはまだ決まったスケジュールと考えなくてもいいということでしょうか。それとも私が申し上げましたように、ダンケルさんがこうしたいという希望を述べられただけであって、各国はもうこの期限で、このスケジュールでやりましょうと、ここまで同意はしてないということでしょうか。
  187. 須藤隆也

    ○須藤説明員 先ほど川合局長答弁されたとおりでございますが、若干補足して申し上げますと、ウルグアイ・ラウンドのタイミングにつきましては、本来であれば一昨年、九〇年の十二月に開催されたブラッセルの閣僚会議で終結する予定であったところが、結果としてはそういうことにならずに昨年に持ち越されて今日に至っているという状況でございますが、先生指摘のとおり、今回のダンケルの最終合意案によりますと、三月末までに市場アクセスそれから農業及びサービスにおける初期コミットメントの交渉を終了させて、その結果を最終合意案に加えることによってこれを完成させるということが意図されておりまして、提案されているわけでございますが、それは今の段階では提案でございまして、交渉参加国間で合意された期限というものが存在するわけではございません。実際にどういうことになるかということは、十三日に開催されますTNCでそういう手続面も含めて話し合いが行われるのではないかと思われます。
  188. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今、いわばこのすべての国境措置関税に転換するということで、日本農業の米も関税化しなければいけないのではないのか、これが、恐らくその米のみにかかわらず、乳製品でん粉もそうですけれども、非常に関心事であるわけでございます。  そこで、議論の中では今までも盛んに出ましたけれども、果たしてこの部分で譲歩をしないといわゆるガットウルグアイ・ラウンドというのは成功しないのかどうか。例えば、この辺の考え方によってはいろいろな資料があるわけですけれども、ダンケルさんが示された案というものはその全体として包括的なパッケージだ、だから要するに全体として受け入れられるか受け入れられないか、これが基本的な枠組みなのではないのか、いわばそれぞれ各国が自分たちの都合のいいところだけは受け入れて、都合の悪いところは受け入れないということでは結局まとまらないのではないのか、こういうふうな議論が強く多分あるのだろうと思うのです。  そこで、お聞きをしたいのですけれども、これは全体として受け入れなければいけないのかどうか、その基本的部分、問題的部分というのは留保して受け入れるあるいはまとめるということはできないのかどうか、この点についてはいかがですか。
  189. 須藤隆也

    ○須藤説明員 ウルグアイ・ラウンド交渉を発足させるに当たって採択されましたプンタデルエステ宣言というものがございますが、その中で「交渉の開始、実施及び結果の実施は一個の事業全体の一部分として取り扱われる。」ということで、いわゆるシングルアンダーテーキングという考え方が示されておりますが、今回のダンケルの最終文書案の中でも、ウルグアイ・ラウンドの成果の受諾はすべての合意をまとめて一括に行われなければならないということが書いてございます。  ただし、これはあくまでも最終合意案でございまして、それですべての参加国の合意ができそいるというわけではございませんが、これまでの交渉の大勢としましては、先ほど先生おっしゃいましたように、各国が都合のいいところだけりまみ食いして、都合の悪いところは受けないというようなことでは、交渉はまとまらないのじゃないかという声が非常に強いものですから、ダンケルの最終合意案でもそのような考えが打ち出されているというふうに理解しております。
  190. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それでは、農水省の方にお尋ねをしたいと思いますけれども、いわゆる最終テキスト案でないとしても、このダンケル案が一括的なものとして示されている、そうだとすれば、この農業分野あるいはほかの分野もそうかもしれませんが、特にこの委員会においては、農業分野においてまだ交渉の余地がある、このような御答弁でありましたが、ではどういう範囲で交渉の余地があるのだろう、こういうふうに疑問に思うわけですが、この点についてはいかがですか。
  191. 川合淳二

    川合説明員 今外務省の方から御答弁がありましたけれども、ダンケルはそういう希望を持ってこのペーパーを出したということはそのとおりだろうと思います。しかしながら、この案につきましては、先ほど来お話がございますように、農業部門におきまして輸入国輸出国のアンバランスの問題あるいは三分野におきますアンバランスの問題、さらには各分野との比較においてアンバランスの問題というようなものがあるわけでございます。また、各国ともに農業部分を含めましてそれぞれの反論あるいは不満というものがあるわけでございます。  そうしたものが、当然ダンケルの希望はそういう希望であるとしても、それぞれの国益を背景に、今後交渉によってそこを解決していかなければいけないということでございますので、私どもといたしましては、そうした余地は当然あるという前提のもとにこの交渉に臨んでいかなければいけないというふうに考えております。
  192. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今の御答弁ですけれども、例えばアメリカにとってはいわばウェーバー条項というものがありますし、ECにとっては輸出補助金の問題がある。各国とも今御答弁いただいたような認識に立っておるというふうに考えてもいいでしょうか。
  193. 川合淳二

    川合説明員 農業問題だけに限りましても三つ分野がございます。その三つ分野につきまして、それぞれ各国不満があり、かつ異論を持っているというふうに私は思います。それが、例えば日本の国の国境措置の問題、それからECにおきます輸出補助金の問題というふうに、必ずしも同じ点においての不満でないという点がこの交渉の難しさでありまして、それをどういうふうに解決していくかというのが今後の交渉になろうかと思っております。
  194. 倉田栄喜

    ○倉田委員 各国いろいろな国内事情を抱える中で、特にこの農業問題については恐らく各国ともが最も多くのいろいろな不満を持っておって、交渉が一番難しい分野なのではなかろうか、こんなふうに実は思っておるわけでございますけれども、そういう部分というものが、先ほど示されたような交渉スケジュール、個別スケジュールにのっとって果たしてまとまっていくのだろうか、こういうふうに思うのですね。  例えば東京ラウンド、一九七三年から七九年において交渉が行われたわけでありますけれども、そのときはいわゆる多角的セーフガードシステムというのは合意に至らないまま、ほかの部分で出発をしているわけであります。今回のこのガットウルグアイ・ラウンドについてもそういう可能性があるのかどうか、また、可能性があるとすればそれは各国でどのような理解、了解があった場合なのか、この点についてはいかがでしょうか。
  195. 川合淳二

    川合説明員 非常に難しい御質問だと思います。今回のウルグアイ・ラウンドは、先生承知のように、特に農業だけにつきましても従来の関税の引き下げというような部分、結果としてそうなった面もありますけれども、と異なりまして、新しいルールをつくるというようなことを含めましてかなり広い面での交渉でございますので、今後の行き先について、今先生が御指摘のような形で行くのか、あるいはそういうことも可能なのかということについては、私ども現在お答えするような情勢把握は残念ながらできておりません。
  196. 倉田栄喜

    ○倉田委員 非常に難しい話だろうと思いますので、次の質問に移りたいと思います。  いわゆる関税化ということと食管法ということですけれども、総理の今まで報道されている御発言の中で、今の国内の政治状況から見れば、食管法の改正がとてもできないから関税化は受け入れられないんだ、こういうふうな発言をされたとの報道がされておりました。  この食管法と関税化の関係について、私は前回の委員会で、例えば食管法の十一条二項の全量管理の規定というのはいわゆる関税化になれば当然改正をされなければいけないのではないですか、このような御質問を申し上げましたところ、たしか御答弁は、いわばこの関税化と食管法とは根本的に相入れないのではないのか、どの条文を変えなければいけないのかどうかということではなくて、根本的に相入れないのではないか、たしかこのような御答弁であつだろうと思います。ところがきょうの委員会の御答弁の中では、この関税化と食管法の改正については、詳しく検討しているわけではないがなじまないのではないのか、あるいは数量管理がなされていない関税化は食管法になじまないのではないのか、このような御答弁でございました。  そこで、この点について改めてお伺いをさせていただきますけれども、いわゆる関税化ということになれば食管法改正が当然必要であろう、私はこのように考えているわけでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  197. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 ダンケル・ペーパーで示されております関税化の概念、細かい点についてはまだこれからの交渉に残されている部分がございますけれども、現時点で私どもの認識するところと現在の食糧管理法の体系、先ほど経済局長からお話を申し上げておると思いますけれども、基本的には、前回の先生の御質問にお答えしましたとおり、現行法が持っております生産、集荷、販売にわたります一元的な全量管理システムとこの関税化の概念というのは両立し得ない、単に個々の条文の解釈運用の範疇で処理できる問題ではないという認識を私どもは持っております。
  198. 倉田栄喜

    ○倉田委員 この食管法の改正と関税化の問題について、これも報道ですから私はきちんと確認をしたわけでもないし理解をしているわけでもないわけですけれども関税化したとしても食管法の改正は必要でない、こういう議論もたしかあると思います。これはどういう前提に立つのか。恐らく食管法の解釈を変えていけばという前提に立っているのかなとは思うのですけれども、農水省としてこの不要論の立場というのは成り立ち得るとお考えでしょうか。
  199. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 報道されております事実というものがいかなる根拠に基づいて展開されておるのか、私ども一切承知をしておりません。  食糧管理法に基づきまして制度の運営を預かっている私ども立場で申し上げますと、この関税化の概念と現行食管制度は両立し得ないという考え方でございます。
  200. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少し個別的な要望のことも含めて次の質問をさせていただきたいと思うのですけれども、私が冒頭に申し上げました今のこの対外的危機の問題、この関税化にどう対応するかということで、農民の方々あるいは農業関係者の方々がいわば非常に不安に思っておられる。これをどんなふうに解決をしていくのかということは非常に大切なことであろうかと思うのですね。  不安のついでに言うわけではないわけですけれども、例えば熊本県は今回台風で随分被害を受けました。非常に個別の問題になって恐縮ですけれども、例えばある市では収穫量が平年の三六%に落ち込んでしまっている。私は一番冒頭に、いわゆる後継者不足、農業従事者の問題を取り上げましたけれども、このような状況の中で、例えば例年供出米で相殺をされておる米の供出前渡し予約金、これがたしか一俵当たり三千円ぐらいの返済をしなければいけない。ところがそういうふうに米の収穫量が三六%に落ち込んでいるところはとてもできない。その返済には八・二五%ぐらいの利子が必要であって非常に負担である、こんな話を実は非常に深刻に聞きまして、恐縮ですけれども、この席をおかりしてお願いを申し上げたいのですが、この点について農水省、弾力的な、救済的な対応というのはいかがでございましょうか。
  201. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 お尋ねの件、米の予約概算金の精算問題であろうかと思います。  御承知のとおり、災害の発生等によりまして、出荷開始時、夏場でございますが、政府出荷の予約をして概算金の支払いを受けた方が自然災害のために出荷ができない、その場合に、事前に受け取った概算金の返納については実は利息負担が伴うわけでございますけれども、これにつきましては、御承知のとおり概算払いの時点で、天災融資法が発動されるような災害が生じた場合には、状況に応じて、若干刻みがございますが、利息の減額ないしは免除の方途をとることあるべしという条件を告示をしてあるわけでございます。  現実に、ことしの場合九月の相次ぐ台風災害、それから七月中旬から八月中旬にかけての低温による米の被害が大変人きゅうございまして、この災害につきまして十一月中旬それから十二月の下旬に天災融資法の発動を決定したところでございます。この天災融資法が発動されたことを受けまして、この予約概算金についての利子減免措置をとるということで、具体的にどの地域で、これは被害の状況を精査した上で大体旧市町村単位に地域指定を行って減免措置を実行していくという予定にしておりまして、現在この地域指定のための調査を私どもの方の統計情報事務所で実行中でございます。その結果を受けて、減免措置を実行する旧市町村単位の地域指定を行って実行をしていきたいということで、現在作業を進めておるところでございます。
  202. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、水産物について二点ほどお聞きをいたしたいと思います。  水産物については、農業交渉グループではなくていわば市場アクセスグループで取り扱われておりまして、関税の引き下げや撤廃の方向が示されておるというふうに理解をしております。  我が国の水産物については、集中豪雨的な、こういう表現がありますように、非常に産地価格が低迷をいたしております。また、漁業経営自体依然として厳しいものがあります。このような状況を考えますと、これ以上の水産物輸入というのは漁業経営自体の破綻や漁村というものの荒廃を招くと考えられますけれども関税の引き下げ、撤廃にもまた慎重に対処していかなければいけない、このように思うわけでございます。この点について、お考えはいかがでございましょうか。
  203. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡説明員 ウルグアイ・ラウンドにおきましては、御指摘のように水産物につきましても関税の撤廃、削減が論議されております。特に米国は、関税の相互撤廃を強く求めているところでございます。  これに対しまして我が国は、関税の相互撤廃提案は受け入れることができないという立場に立っており、関税交渉におきましては各国の事情が配慮されるようなリクエストオファー方式での交渉を進めるべきであるというような立場で対応してきておるところでございます。  今後ともこのような考え方で対応して、我が国漁業に不測の事態を招くことのないよう対応していきたいというふうに考えております。
  204. 倉田栄喜

    ○倉田委員 もう一つ、日ソ漁業交渉の結果についてお伺いしたいと思います。  関連する問題になろうかと思いますけれども、昨年十二月十六日から日ソの漁業交渉が行われ、二十七日に合意をしたと聞いております。もう旧ソ連といいますか、いろいろ国内の変革によって大変な御苦労もあったと思いますが、どのような結果になったのかまずお知らせを願いたい。  そして、いわゆるソ連というものが消滅をしてしまって、今後の交渉の相手方はソ連邦からロシア政府となるのかどうか。また、これまでソ連邦との間に結ばれていたいろいろな漁業条約というのは今後もそのままロシアに引き継がれるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  205. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡説明員 今回の日ソの交渉は、昨年十二月十六日から二十七日の間に行われたわけでございまして、比較的順調に交渉が行われたというふうに理解しております。  内容につきましては、若干相違するところがございますけれども、ほぼ前年と同じような格好で交渉がてきたのではないか。ただ、ロシア漁船の寄港につきましては、初めて北海道の釧路港への寄港を認めるということになったわけでございます。  それから、昨年その交渉の途中におきましてソ連邦が解体したということから、交渉につきましては日本政府が承認いたしましたロシア連邦との間で進められたわけでございます。今後、ロシア連邦をめぐる動きにはなお不分明な点があるとは思われますけれども、近年の日ソ交渉におきましてソ連邦側が極東の現場に重点を置いた交渉態度とメンバー構成で臨んできているということでございまして、また、ロシア連邦に移行しましてもそのような対応が行われたということで、今後、日ロ間の漁業関係には実質的に大きな影響は生じないのではないかというふうに今のところ考えております。
  206. 倉田栄喜

    ○倉田委員 最後大臣お尋ねをいたしたいと思います。  私は冒頭、日本農業は本当に危機的な状況にある、国内的危機と対外的危機である、こういうふうに申し上げました。そしてさらに、その根本にいわば農政に対する不信というものがあるのではなかろうか、このように思います。この農政への不信を解消し、さらにこれからの農業従事者あるいは後継者に本当に農業に希望を持てるような政策というものを示すべきである、そのように考えるわけでございますけれどもウルグアイ・ラウンドにおける交渉というのは国境措置ばかりではなくて国内支持もさまざまな形で議論をされておる。とすれば、やはりどうも従来どおりの農政のあり方ではいけないのではないのか。例えば今まで農業が果たしてきておる国土保全、例えば水田が果たしておる治山治水、そのダム的な機能、いわば中山間地域の人たちが農業維持するという形で自然に果たしてこられた役割というものを、これは生産とは違う意味でもっと積極的に評価する方向での施策というものが示されていかなければいけないのではないのか、このように思います。  事によれば、例えば転作奨励金等々も黄色に当たるとすれば何か考えなければいけない、こういうふうなことで、新たな方途は検討もされていると聞きました。大臣は、こういう問題を含めて、これから農業というものがどんな方向に進んでいくべきものなのか、そして今検討をされておられますいわば新政策というものはどのような方向を向いているのか。ひとつ関税化阻止の決意もあわせて御答弁をいただきたいと思います。
  207. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農政不信というのがあるという話でありますが、不信の原因をいろいろ考えてみますと、国自体でやらなければならぬものもありますし、農民自身が努力によって解決しなければならないもの、それぞれあると思うのでありますが、いずれにしても中山間地域は自然的、経済的に不利な条件下に置かれて、しかも過疎化が進んでいる、あるいは高齢化が進行して活力の低下が懸念されておるわけであります。  その活性化を図ることは極めて重要でありますけれども、このために、地域の活性化、国土の均衡ある発展を図るという観点から、地域農林業の振興、立ちおくれた生活環境の整備、多様な就業機会の創出等各般の施策を推進をしなければならないと思うのでありますが、先生お話しのように、農業というのは、林業もそうですが含めて、これが荒廃いたしますと、川下の都市というもの、これに相当の影響を与えることは間違いない。そういうことを考えますと、ただ米をつくるとかつくらないとかというほかに、治山治水という面からも重要な問題を抱えておるんですね、日本の場合は。それは七割が山に囲まれておりますから、どうしてもそうせざるを得ないということで。  今、新しい食料、農業、農村ということで各部署でそれぞれ検討いたしておりますが、何とか将来にわたって希望の持てる農業というものをやろう。それには、もうからぬところへは、なかなかやりなさいとこう言っても、やはりやったらそれだけのことがある、こういうことでなければいかぬですね。そのためには一体どういう農業にすればいいのかということをひとつ検討したい。もちろん出生率が低下をして、各事業全部そうでありますが、人手不足という今日、これ以上農業から担い手が離れていくということを防ぎたい。しかも、少ない人でこの一億二千万の食糧確保ということになりますと、やはり規模は倍にするとか、何とか努力をしてもらわなければならぬと思うのですね。  ですから、今そういうものを含めましていろいろと、二十一世紀にどういう農業ならば本当に若い人たちが喜んでやれるか、経営管理をしっかりする、コンピューターも導入する、言ってみれば近代的な部分もあるという形でやっていただいたらどうかなどと今盛んに検討いたしておりますので、いずれお示しをするときがあると思いますが、本当に希望の持てるようなものをひとつ出していきたいというふうに考えております。     〔岩村委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 倉田栄喜

    ○倉田委員 大臣関税化について大臣の御決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  209. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 これも何回もお答えしておるとおりでありまして、自由化になるようなものには一切反対をいたしてまいりました。これからも我が国の基本というものを訴えて、これを取り入れてもらうというための努力をしてまいりたいと思っております。
  210. 倉田栄喜

    ○倉田委員 終わります。
  211. 高村正彦

    高村委員長 藤田スミ君。
  212. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今回のドンケル最終合意案は、多くの稲作農家から酪農家、畑作農家に至るまで、高齢化や後継者難、あるいはまた災害で苦しんでいる農民の一縷の希望を奪うものであり、政府の断固とした拒否の姿勢が見られないなら、その瞬間でも多くの離農者を生むことは必至であると思います。また、我が国の自立的な国民経済と将来の国民の食糧、生存にかかわる問題であります。だからこそ全中や農民連を初め、生産者団体、あるいは全国の主要な消費者団体も反対を表明しているのです。  しかも、九〇年度の食糧自給率は、カロリーベースでさらに一ポイント下がって四七%にまで落ち込んでしまいました。このままではとんでもないことになることは明らかです。今国民がかたずをのんで見守っているのは、政府がこの問題に断固とした姿勢をどこまで貫いていくかということなんです。米がオレンジや牛肉の二の舞を踏むことはないか、そういう心配を大変しています。私はまず最初に、合意案を断固拒否することを大臣に求めておきたいわけです。  そういう中で、ブッシュ大統領宮澤総理の首脳会談が行われました。そしてブッシュ大統領は、ドンケル・ペーパーは非常に評価される、これを枠組みとして使って前進しなければいけない、ウルグアイ・ラウンドを成功させなければいけない、米については日本において難しい問題があることは知っている、しかしウルグアイ・ラウンドの中で話し合いたいと、ドンケル最終合意案関税化受け入れを強く求めてきたわけであります。  これに対して宮澤総理はどうか。宮澤総理ウルグアイ・ラウンドを成功させるために最大限の努力をしていくという見解を示されたわけでありますけれども、一体そこで、米の輸入自由化はできないんだ、反対なんだというそういう表明をされたのか。専ら聞くだけに終始されたのではないでしょうか。  そして、行動計画で、ドンケル・ペーパーがラウンドの成功裏の妥結への重要な一歩と明記したことは極めて重大であります。事実上これが米輸入自由化を容認したものになったと言えないか、そういうふうに言わざるを得ないではないか、これが多くの国民の率直な受けとめ方じゃないでしょうか。農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。
  213. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お二人でしばしば議論されたようでありまして、英語でおやりになるものですから私たちが中に、通訳も入っておりませんので、どういう話をされたかわかりませんが、それでも発表になりましたところでは、ウルグアイ・ラウンドは成功させなければならない。これは、米のことばかりではなく全体の話であろうと私どもは思うわけです。しかし、米については日本に難しい問題があることは承知している、ウルグアイ・ラウンドの中で話してくれ、これは当初から二国間ではこの議論はしません、ウルグアイ・ラウンドの中でいたします。こう言っておりますから、そのとおりブッシュ大統領が申し上げたと思っております。  当然のことでありますが、宮澤総理も、ウルグアイ・ラウンド全部を反対するという立場ではない、成功させたい、こう政府もこれ全体ではそう申し上げておりますから、そのとおりお答えしたのであろうと思うのです。  ただ、行動計画において、ダンケル提案というものは最終テキストではないというふうに言われておるわけでありますが、合意文書案は最終のものとは私どもも考えておりませんし、今後の交渉において所要の修正を求めていくことにしているわけであります。もちろん、十三日以降再開される交渉に向けて、これまで主張してまいりました我が国基本的立場交渉結果に反映されるよう、今後とも全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
  214. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私一昨年暮れにCOPAの事務局長さんにお会いしていろいろお話をしたことがあるんです。そのときにおっしゃったのは、日本は本当に最後まで頑張られるんですか、こういうことだったんです。もちろん私たちは、もう断固頑張るというふうに答えてまいりましたけれども、それが諸外国の感情なんです。先ほど、輸入国グループをつくって、そして本当にこんなダンケル案に対してもっと対抗していこうじゃないかという御提案もありました。しかし、私はその信用が阻害されるようなことが言われていることに大変激しい憤りを覚えざるを得ません。  そこで、もう一点お伺いしますが、大臣のおっしゃる従来の基本的な立場というその立場の中には、例外なき関税化は受けられないということはよくわかりますけれども、ミニマムアクセスも受けられない、そういうふうに解釈していいでしょうか。
  215. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 そのとおりに考えておいていただいて結構であります。
  216. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 先ほどからお話にありましたが、渡辺外務大臣は、一月三日の宇都宮の後援会の会合でごあいさつされて、その中で、例外なき関税化は逃げられないという話もある、仮に六〇〇%の関税率で始めて七年間で関税率を一五%削減しても、八年目にはなお五一〇%の関税率が残り、まずい米は日本に入ってこないのではないか、例外なき関税化という名前でも実態は変わらないからそれでいいじゃないかという議論をしている、関税化を受け入れても米は日本に入ってこないから関税化の受け入れもあり得るという、いわば世論誘導的な発言をされたわけであります。  これが国会決議を尊重するべき宮澤内閣の、しかも有力な閣僚の発言だけに決して許すことはできないわけでありますが、問題は、事もあろうに宮澤総理が翌日、いろいろな可能性が含まれていると思う、十分に、あれ、つまり関税化を各方面で議論していただくことが大事だ、こういう外務大臣発言を追認するような発言をされているわけですが、この点について農水大臣はどういうふうに受けとめていらっしゃるかお伺いをしたいわけであります。
  217. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 今までもいろいろと閣僚の発言についてどう思うか、こういう御質問がありました。直接現場におって聞いているわけではありませんので、総理あるいは渡辺外務大臣発言について私がどうこう申し上げるわけにはまいりません。ただ、閣議の後にどういう趣旨で申し上げたかというお話を伺った方々もおりますが、決して言っていることはそうではない、大分長く演説をしました、全部載せてくれると誤解は生じないけれども、まあ明確、に自由化というものは阻止だ、ただそういう考えもある、こういう考えもある、皆はどういうふうに思うかという一般的な演説をやりますものですから、そっちの方を重く取り上げられて言われる人もおる。  ですから、私もそれ以上は、責任を持って、こういう話でけしからぬとかなんとかというわけには、その場にはおりませんので申し上げられませんが、いずれにしても、従来の基本方針を踏まえて我が国の基本的な立場というものを交渉の結果に反映させるということで努力してまいりたい、こう思います。
  218. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 発言部分はテレビでも報道されていますので、大臣大臣のお立場でいろいろとそういうふうに弁解されるのはわかりますけれども、しかし、とんでもない発言なんです。こういうふうな関税化受け入れに向けた世論誘導の前提として、関税化を受け入れても米は入ってこないという仮定が存在するわけであります。その議論は先ほどからも出ておりますが、米輸入自由化論者の集まっております政策構想フォーラム、ここでも、大きく見積もっても四〇〇%の関税が設定されれば、主食用の米はほとんど輸入されない、そういう見解を明らかにしていますが、大変無責任な議論だと言わざるを得ません。  私は、高関税率の米の輸入価格が結果として日本の政府買い入れ価格と同額で、ミニマムアクセスがゼロ関税率であるということを前提にして、高関税率の米とミニマムアクセスで輸入される米がまぜ合わされて、そして輸入米が日本の米の七〇%の価格あるいは五〇%の価格で販売されるとしたら、それぞれその結果、どれだけの米が輸入可能になってくるかという試算をいたしました。その結果、関税率の削減率を最小削減率の一五%で計算をしていきましたら、日本の米の七割の価格で輸入米を売ることを前提にするならば、アメリカ米で初年度八十五万トン、タイ米で九十万トンの輸入が可能になり、九九年度では、アメリカ米で二百三十五万トン、タイ米で二百五十二万トンの輸入が可能になるのです。これを五〇%で売るとしたら、そういうことを前提にしたら、アメリカ米で初年度五十一万トン、タイ米で五十四万トンの輸入が可能で、九九年度ではアメリカ米で百万トン、タイ米で百十二万トンの輸入が可能になるわけであります。  このように、決して、言われるようにミニマムアクセス初年度三十万トン、九九年度五十万トンにとどまらない、大量の米が輸入販売される可能性があることは明らかであります。  大臣、このような関税化による九九年度までの大量な米の輸入の可能性についてどういうふうにお考えでしょうか。さらに、このような大量な米が日本農業に深刻な打撃を与えることは必至だと思いますが、その点についてもお伺いをしておきたいと思います。
  219. 京谷昭夫

    ○京谷説明員 ただいま先生からお話のございました、ある前提を置いて計算をした試算結果、実は、私、昨日資料をいただきまして、拝見をいたしております。  確かに、一定の前提を置いていろいろな計算をすれば計算結果として一定の数値が出てくるということはそのとおりでございまして、先生の試算値、前提の是非云々は別として、計算すれはこういう結果になることは事実であろうかと思います。ただ、置かれております前提、例えば関税化の場合の関税率がどうなるかという問題について、実は巷間いろいろなシミュレーションも行われておるわけでございますけれども交渉の場ではどのようなレベルをどう考えていくかというふうなことは一切まだ行われておりません。したがいまして、そういう状況下で、軽々に一定の税率を前提にしたシミュレーションを我々として公式に行うというふうなことは差し控えておるわけでございます。  また、実はこの前提は、一つには価格差というところに着目をして試算をなさっておるわけでございますけれども、さらに私ども、現実の市場への影響を考える場合には、やはり品質あるいは味といったふうな問題を含めて、需要側としてどういう反応が起こるかということも念頭に置かなければいけない問題であるわけでありますが、御承知のとおり、日本国内における輸入米のオペレーションというのは、主食米で申しますと昭和四十四年度、それから加工用米で申しますと昭和四十六年度まで若干あったわけでございますが、それ以降はごくわずかな例外を除きまして、ほとんど国内でのオペレーションがないわけでございます。  そういった状況下で、大変漠然とした話で恐縮でございますけれども、御指摘のとおりに関税化というふうな、数量規制のない状態での体制を考えた場合に、相当量の輸入が予想され、そのことが我が国の国内米市場における需給なり価格について大変大きな攪乱要素になり得るという可能性についは私どもも大変懸念をしておるということで、ひとつコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  220. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 御返答を差し控えるとおっしゃりながら、かなりなこともおっしゃっておられますし、私の試算に対しても、そういう前提であればということで認めていらっしゃいます。  私がここで言いたかったのは、どんどんこういうふうにして財界だとか、輸入自由化の促進をさせていこうとする学者、一部マスコミが、影響ない、そんな大事ない、そういう宣伝がされているときに、私は、国内の国民に向けて農水省としてはこうなんだということを率直にやはり訴えていく。ここで先ほどから大臣がおっしゃったような発言ももっともっと国民の中に広げていって、国民的な合意の形成というものに努力がなかったら、どうしてもこういうときには一方的な宣伝につぶされていきますから、だから私は、やはり国民を信頼し、国民に率直にそういう問題を提起し、危険を乱打していくというのもまた重要な仕事だということで取り上げたわけでございます。  農水省にはもう一問ございますが、先に厚生省から来ていただいておりますので、次の問題に移って、また戻りたいと思います。  ウルグアイ・ラウンド農業交渉の第四の分野の検疫・衛生では、その最終合意案の中では、厚生省が示した骨子によりますと、こう書いてあります。「検疫・衛生措置が貿易に与える悪影響を最小にするために、FAO・WHO合同食品規格委員会こつまりコーデックス委員会ですが、「国際植物防疫条約、国際獣疫事務局を含む関連する国際専門機関により作成された基準又は指針がある場合には、各国の検疫・衛生措置をこれに基づいて調和させることを原則とするが、食品の摂取量や食習慣の違い等科学的正当性がある場合等には国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し維持することができる。」こういうふうに最終合意案が示された、こうなっているわけです、その骨子では。  私は、厚生省から渡されました検疫・衛生分野最終合意案の英文、原文を直接当たってみたのです。そうしたら、厚生省の示した骨子は極めて不正確だと言わざるを得ないものであります。  まず、厚生省が言っている一番大事な問題点ですね。それは、合意案には「食品の摂取量や食習慣の遣い等」、こういう記述はどこにもないのです。厚生省はそんなことは記述されなくても当たり前のことだ、こういうふうに言われるでしょうが、しかしそこには解釈の余地があることは明確でありまして、もし日本がそのように主張するのであれば、このことを明記させなければならないことは明らかであります。  さらに第二の問題は、「科学的正当性がある場合等には国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し維持することができる。」という、この問題です。科学的正当性がある場合には国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し維持することができるということはとりあえず認めるとしても、厚生省の文章にある「科学的正当性がある場合等」のこの「等」の部分は、無条件に「国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し維持することができる。」というふうにはなってい狂いのです。原文では、この「等」というのは、パラグラフの十六から二十三の規定により適切と考える保護水準、こういうふうになっていまして、そのパラグラフを見ると、交易上の否定的効果を最小にするよう考慮するとか、貿易制限が必要最小限になるようにするとか、科学的証明が不十分な場合、合理的期間内により客観的なリスクアセスメント、見直しに必要な情報を得るために努めなければならないなど厳しい条件がつけられているわけであります。このような重要なパラグラフをなぜ隠されたのですか。そして厚生省は、科学的正当性がある場合とそれ以外の場合というのを一体どういうふうに分けようとしておられるのか、そこのところを明らかにしてください。  三つ目の問題は、パラグラフ十六から二十三の表題は、リスクアセスメントと検疫・衛生措置の採用、こうなっておりますが、厚生省が訳し出したハーモニゼーションの部分と並列関係になっております。ですから、たとえ科学的正当性があっても、パラグラフ十六から二十三というのはいわば網にかけられる、かぶせられてくると考えるのが普通じゃないでしょうか。この三点、一括してお伺いしましたが、お答えください。
  221. 織田肇

    ○織田説明員 今回の合意案では、コーデックス委員会等の定めた国際基準がある場合には、各国の食品安全基準等、これに基づいて調整することを原則としておりますが、「科学的正当性がある場合等には国際基準より厳しい検疫・衛生措置を採用し維持することができる。」となっております。  食品の安全性評価についてでございますが、例えば食品添加物に関しますコーデックス委員会原則でも、その添加物がさまざまな食品を通じて摂取される推定一日摂取量について配慮することになっております。したがって、本合意案に食品の摂取量等の違いを考慮すべきという例示的な記載がなくとも、このような事項は科学的正当性の考慮要因に当然含まれているものであると考えております。  次に、科学的正当性のある場合とそれ以外の場合というのは具体的にどのように分けられるのかという問題でありますけれども、この合意案の中では、検疫・衛生措置を設定するに当たって関連する科学的根拠が不十分な場合であっても、入手可能な適切な情報に基づいて暫定的に検疫・衛生措置を設定することができることとなっており、このような場合が科学的正当性がある場合以外の要件に該当するものであるということであります。  その次に、パラグラフ十六から二十三に関して、この科学的正当性を言う場合にはこれらの規定はどのように影響するのかという問題でありますけれども、科学的な正当性ということにつきましては、これは食品中の添加物、汚染物質等から発生する人または動物に対する潜在的な悪影響を評価し証明する科学的根拠のことを意味しております。リスクアセスメント及び検疫・衛生の保護のための適切な保護の水準の決定に関する規定として位置づけられておりますもののうち、このような人の健康に与える悪影響を評価するためのリスクアセスメントの手法に関する規定については、科学的正当性を判断する場合に関係するものであると考えております。
  222. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 明記されていないでしょう、合意案に。あなた方が骨子には書いたけれども、明記されていなかったわけでしょう、合意案には。そこだけ、イエスかノーかだけちょっと言ってください。解釈でしょう。
  223. 織田肇

    ○織田説明員 先ほども申しましたように、食品の安全性基準を判断する場合には、当然に一日摂取量というものを判断することになりますので、科学的な方法をとる限りこれは含まれるものである、こういうことであります。  そしてまた、コーデックスの場合でも、日本といたしましてそのように主張しておりまして、この意見については各国異論のないところであります。
  224. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それだったら、何で日本ウルグアイ・ラウンドでそのことをずっと主張してたのですか。ずっと主張してたでしょう。それが合意案の中で落とされた。落とされたけれども、あなた方はあくまでも自分の見解、日本の見解というもので、そこに、わざわざ国民に出すその骨子の中ではつけ加えて出しているにすぎないのです。食習慣の問題、摂取量の問題については、ガットウルグアイ・ラウンド主張しながら実際には合意案には書かれなかった。書かれなかったから骨子の中にわざわざあなた方が日本の見解として書いたのじゃありませんか。それは粉飾なのですよ。パラグラフの問題についても、大事なところを「等」という一言で書いてしまっている。これも隠していると言われても仕方がないのです。そんなにまでして、あなた方は最終合意案をまとめなければならないというその思いだけを先行させているのじゃありませんか。  しかも、これが一度認められたらひとり歩きすることになるのです。たとえ科学的正当性があったとしても、それによってとる措置は交易上の否定的効果を最小にするように考慮したもの、あるいは貿易制限が必要最小限になるようにすることが求められる。あるいはまた、アメリカ政府などから、一度とった措置だけれども、しかし貿易制限が必要最小限になっていないということでガットに提訴される根拠になる、こういうことになっていくわけです。そして、結果的にはほとんど国際基準に統一されてしまうのじゃありませんか。  今まで食品の安全性は国民のコンセンサス、特に消費者運動によって形成されてきたにもかかわらず、それが国際機関のほんの少数の人間によって決められる基準で定められていく。食品の安全性がその国の食生活や食文化と密接不可分なものであることを見ても、まさにそのことは大変危険なのです。多くの消費者団体が反対していらっしゃるのも当然です。だから私は、こういう国民の声に耳を傾けてこの合意案に反対するべきだ、そういうことを主張したいと思います。厚生省に最後にこのことについて御意見をお伺いして、終わりたいと思います。  私は、もう一つ米問題のほかに実は乳製品でん粉関税削減率が現在非常に高い中で、さらにこれが自由化されるというようなことになったらもう本当に大変だという問題についてもお伺いしたかったわけでありますが、時間が参りましたので、これで終わります。御答弁だけ簡単にしてください。
  225. 高村正彦

    高村委員長 簡単に御答弁いただきたいと思います。
  226. 織田肇

    ○織田説明員 先ほどの記述の点につきましては、解説的に書きましたもので、一般的に科学的正当性の場合の例として挙げたものと御理解いただきたいと思います。  いずれにしましても、厚生省といたしましては食品の安全性の確保、国民の健康の維持ということにつきまして十分に今後とも対処してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  227. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  228. 高村正彦

    高村委員長 小平忠正君。
  229. 小平忠正

    ○小平委員 けさからの農水委員会の場において各党からそれぞれこのラウンドの問題を中心に質疑がなされてきたわけでありますが、私は民社党の立場で、重複する点もあると思いますが、党の立場質問いたします。  まず、昨年末十二月二十日にウルグアイ・ラウンド最終合意文書案ですか、いわゆるダンケル・ぺーパーなるものがガット事務局から各国政府に配布されました。これは御案内のとおりであります。  まず、この文書案の性格についてでありますが、この文書案の配付に当たってダンケル事務局長は、今後は個別分野での交渉は行わない、また高度の政治判断が行われることを期待する、そういう発言があり、このぺーパーが最終案に近いもののような言い方をしたわけであります。これに対して早速米国のヒルズ通商代表あたりは、本案は最終案ではなくてたたき台にすぎない、さらには、ECにおいては修正なしに受け入れることはできない、こういう農業部門を代表する中での拒否する声明がされております。  そこに昨日、日米両首脳による東京宣言が出されました。前文では、貿易問題について「経済摩擦の根底にある諸要因に対処するため、両国が効果的な措置を講じることに最も高い優先度を置くものである。」また、本文においては「両国経済世界で最も開放的、生産的かつ競争的なものとしこ云々と述べております。さらに、アクションプランにおいては、具体的にダンケル・ぺーパーについて「ウルグアイ・ラウンドを成功裏の妥結に導くための弾みをつける重要な一歩であると信ずる。」と述べている、一方で、ダンケル提案は、当然のことながら最終テキストではないとも記しております。  この一連の記述を見ますと、日米両国はこのダンケル・ペーパーを積極的に評価したのであって、包括的関税化を含めてダンケル・ぺーパーの大枠を認めたものである、米についても同ぺーパーの線に沿って解決の努力がされるのではないか。少なくとも今後米国側は、この東京宣言を根拠にして、特に米の自由化関税化を迫ってくるであろうという予測もされるわけであります。  そこでお伺いいたしますが、このダンケル・ペーパーは今後の交渉によって修正の余地があると考えておられるのか、それから包括的な関税化というこの大枠についても、米のような各国が持つ困難な問題を例外とする余地があると考えておられるのか、これらについて御見解をお伺いしたいと思います。
  230. 川合淳二

    川合説明員 この最終合意案につきまして私どもは、私ども主張しておりました輸出補助金に関する点あるいは国境措置に関する基本的方針のような点が入れられていないということで問題があるという認識を持っておりまして、そういう観点から修正を求めていく必要があるというふうに考えていることは、今までお話ししたとおりでございます。  また、先ほどお触れになりましたアクションプランの中の記述でございますが、これにも最終テキストではないということを明記しておりますし、また、これは日米両国政府、特にアメリカ政府も現在も文書の分析、評価を継続しているところであるということで、この評価をまだ継続しているという段階であります。  私どもは、この文書につきましては十三日から再開されます交渉におきまして、基本的立場を踏まえて交渉に臨んでいきたいというふうに思っております。
  231. 小平忠正

    ○小平委員 この東京宣言あるいはアクションプランは、今私が申し述べたとおりでありますけれども、これらの宣言を作成する過程では、各レベルで日米協議が持たれたとも思われます。  そこで、それらの協議の中で農業問題、とりわけ米の問題について米国側から何らかの要請があったのかどうか、また、どのような協議が行われたのか、それについてお聞かせ願いたいと思います。
  232. 川合淳二

    川合説明員 こうしたアクションブランの作成過程で事務的な協議が行われたことは、御指摘のとおりでございます。  その中身につきましては、交渉協議とかかわる問題でございますので差し控えさせていただきたいと思いますが、私どもは、この場面で包括関税化に反対するということを明確に申しております。それに対しましてアメリカ側も、このウルグアイ・ラウンドのダンケル提案につきまして、アメリカ側にも反対すべき点、不満があるということも申しておりました。そうした中でこの文章がつくられたわけでございます。
  233. 小平忠正

    ○小平委員 外交交渉の性格からいいまして、オープンにできない点もあると思います。そんなわけで、今の御答弁の中で差し控えさせていただきますということでありますけれども、その点もこういう性格上理解はできますが、後になって密約があった云々なんということになってきますと、またそこで一つの政治不信ということにつながっていきます。そういう点についてはいかがでしょうか。
  234. 川合淳二

    川合説明員 御指摘でございましたので御答弁申し上げたわけでございますが、御承知のように今回の日米首脳会談、一連の問題の中で、農業問題あるいはさらに米問題というものはウエートはほとんどなかったと言って過言でないと私ども思っております。他の問題が主要議題であり、かつそれが議題に供されたわけでございまして、ここのアクションプランの問題につきましてもウルグアイ・ラウンド全体の問題、さらにダンケル・ペーパー、これも包括的なすべてのテキストについて言及しているのでございまして、そういう意味での農業のウエートというのはほとんどなかったと言って過言でないと思っております。
  235. 小平忠正

    ○小平委員 それでは、私はこのダンケル・ペーパーの概要を見まして問題点がいろいろあります。しかし、大きく分けて三つほどあると思うのですが、そのまず第一点は、食糧安全保障に対して十分な配慮がなされてない。特に二十カ国ですか、それぐらいに及ぶ大変な反対があるにもかかわらず包括的な関税化を規定しているというこの点。それからもう一点は、国境措置の緩和を規定していを一方で輸出禁止を規制する規定が含まれていない。すなわち、その国がいわゆる生産事情ですとかあるいは政治的な目的によって懇意的に輸出禁止するという、そういうことも過去にアメリカ等でもありました。こういう輸出禁止を規制する規定が含まれていない、この点。それとやはり一番大きなポイントは、今回のラウンド交渉の中で、いわゆる輸出補助金についてでありますけれども、これについても十分な削減が盛り込まれていない。こういう大きな点が指摘できると思います。  そこで「当然言わなければならないことは、このペーパー輸出国側の立場に重点を置いたものであって輸入国立場への配慮を全く欠いたものである、こう断言せざるを得ないと思います。  十三日から始まる交渉では、政府は我が国主張を同じくする国かと十分連携をとりながら、我が国意見が十分反映されるよう最大限の努力を傾注していただきたい、このように強く要請する次第であります。そして、今私が前段に申し上げましたような点を含めてこのダンケル・ペーパー問題点、また、それらの問題点を解消するために、今後政府として具体的にどのように取り組んでいかれるのか、そこについてお聞かせ願いたいと思います。
  236. 川合淳二

    川合説明員 私どもも、今先生お触れいただきましたように、このダンケル・ペーパーにつきまして基本的に問題点として意識しておりますのは、輸入国輸出国バランスの問題、それから農業交渉におきます三つ分野国境措置国内支持輸出補助金、御存じの点でございますが、これのバランスの問題、さらには全体としての交渉分野におきますバランスの問題、これらについて強い問題意識を持っております。  この点は、二十日に開かれました農業会合におきましても我が国代表団から既に指摘しているところでございますので、こうした点を踏まえまして今後交渉に臨んでまいりたいと思っておるわけでございますが、先生もお触れいただきましたように、こうした輸入国立場として共通した立場を持つ各国と既にいろいろな形で連携をとってまいりましたが、さらにこれを強化いたしまして交渉に臨みたいと思っております。既に審議官クラスをカナダに今週派遣しておりまして、派遣団はその後関係国に回り、さらにジュネーブに入るというようなことを考えておりまして、共通した国々との連携をさらに強めてまいりたいと思っております。
  237. 小平忠正

    ○小平委員 ぜひ我が国主張が貫徹できますように頑張っていただきたい、このように思う次第であります。  そこで、時間の関係もありますので、きょうはラウンドの問題が中心の質疑でありますけれども、これに時あたかも同じような時期に、ことしの天候あるいは台風の影響等によって不作といいますか、そういう中で来年度に向けてお米の在庫が逼迫する、こういう状況の中で減反緩和措置がとられた。そういうことで昨年末来十三万ヘクタールという減反緩和措置、それがその後各都道府県に配分されまして、しかもその後各都道府県での作業も進んで、もう既に市町村配分も大体出尽くしたようであります。  そういうところで、私はこの点について御質問したいのでありますけれども、まず、農民は政府のいわゆる指導によって、今日まで血を出しながら、痛みを十分に持ちながらいわゆる転作というものに努力をしてまいりました。大体日本全国、各都道府県において転作体系が大体でき上がってきている。そういうところで、来年度は急遽十三万ヘクタールのいわゆる水田復元ということをしなきゃなりません。そのときに当たって、それは一部耕作放棄地があります、しかしほとんどは水田を畑作に、あるいは蔬菜に、花卉に、いろいろな方面に利用して皆さん努力をされている。その農地を今度は水田に復元するわけであります。となると、いわゆるあぜをつくり直す問題ですとか、あるいは使われていない水路については、これは大変な整備をして、水がきちんと行き渡るようにしなきゃならない、また機械も調えるものも出てくるでありましょう。またさらには、北海道あたりにおいては秋まき小麦がもう既に種まきが終わっております、そして生き腐れがないように、そういう消毒措置もされている。そういうところで、来春はこれを起こしかえて新しく水田に向けての作業をしなきゃならない。  ということは、これが単に来年度の在庫不足を見越しての単年度だけのものであるならば、これは大変なことであって、これからますます農村の高齢化あるいは離農が進む中において作付面積は年々予定まで届かないという状況であります。そういうところで、この際、これが単年度ではなくて、こういうことを契機にポスト後期に減反緩和がきちんとつながっていけるように、このことを私は考えているのでありますけれども、政府はどのようにお考えでしょうか、お聞きしたいと思います。
  238. 上野博史

    ○上野説明員 本年度の稲作の準備が各農家の段階でぼつぼつ始まるという時期かと思うわけでございまして、去年の暮れに出しました転作等目標面積の削減のこなし方というのが、現実に今委員がお話ございましたように、それぞれの地域で議論をされていることだろうというふうに考えております。  この措置といいますのは、昨年の米の不作に伴いまして本年の十月末の政府在庫が三十万トンから四十万トンという、非常に適正在庫数量を下回るというふうに見込まれることから起こったわけでございます。  食糧安定供給を図るという観点からいたしますと、適正な在庫数量を緊急に確保するということが何にも増して重要だというふうに考えられたわけでございまして、平成四年度においてはこういう観点から、単年度で見れば需要を相当程度上回る、つまり需要は大体九百八十万トンぐらいの水準でございますけれども、千五十万トンぐらいの生産をことしは考えるというようなことで、十三万ヘクタールの転作等目標面積の軽減を行うこととしたものでございます。この結果、平成五年十月末の政府米在庫というのは百万トン程度に回復をするのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  委員お話ございましたように、転作等目標面積を農家がどうこなしていくかということにつきましては、中期的なといいますか、農家の営農計画との関係を十分考えてまいるということが重要なことはこれは言うまでもないことでございますけれども、極力そういう農家の営農計画に影響を与えないということを考慮をしたしまして、今回のこの十三万ヘクタールの軽減を決めたという経緯があるわけでございまして、我々とすれば、できるだけの配慮はして、必要最小限での面積緩和を行ったというふうに考えているわけでございます。  ポスト後期の問題にお触れになられましたけれども、この問題はこれからほぼ一年をかけまして、ことしの米のできぐあい等、あるいは来年の秋におきます在庫の状況、これらの事情に影響されるわけでございますけれども、それから、現在実施いたしております水田農業確立後期対策の推進状況等々、いろいろなことを聞いて、いろいろなことを勘案しながら検討してまいりたいというふうに考えているわけでございまして、その際には、農家の転作営農の安定ということにつきましても十分な注意を払ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  239. 小平忠正

    ○小平委員 なぜこの問題に私が言及したかといいますと、今このラウンドの問題で、いわゆる自由化という問題が大きな関心事になっております。そういうところで今回減反緩和、このことに対して農民が協力をしなければ、そうすれはこれは必然的にいわゆる緊急輸入というんですか、過去にもありましたけれども、そういう事態にならざるを得ない、これでは大変なことである。特に今国内のマスコミを初め、そういう一つの世論の中で、この自由化問題が一つのあれとしてあります。そういうところで、この際、農民は大変であるけれどもこれに協力をして、そして今後のこの国内の米の自給体制を堅持して、そして国民に安定的にいわゆる主食である米を供給しよう、こういう気持ちから協力はするという姿勢で臨んでいるわけであります。  そこで、今までお米というものは全国一律に、いわゆるこの転作問題にしても、あるいはいろんなことについても全国一律に考えてこられました。しかし、この際こういうことを契機に、いわゆる適地適産というか、それぞれの主産地形成というものをきちんとつくり上げていって、お米はこの地帯である、酪農はこの地帯である、あるいは蔬菜はこの地帯であるとか、そういう意味においてはこういうことを契機に、各府県においても強弱があると思います、私はこの十三万ヘクタール、府県によってはこれが与えられた分消化できないところも出てくるような気もいたします。そのときに、これをきちんと受け入れてそして消化をする、そういう府県に対してはこれは評価をして、そしてこれを先に向かってつないでいくように考えていってもらいたい。  特に、これについては先ほど申し上げましたように大変な投資をいたすわけであります。そうなると農家の負担はさらにふえていく。そういうところで局長、これにかかわるいわゆる助成措置というか、水田を復元するに際してのいろんな諸対策というか、これらについてはどのように考えておられるのか、その御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  240. 上野博史

    ○上野説明員 転作につきましては、これまでできるだけ転作等目標面積の固定をいたしまして、安定的に実施をするということに非常に今配慮をしながらやってまいっております。その結果、個々の農家の方々から見ますと、転作営農というものが地についたという形になっておりまして、今回転作等の緩和を行うということについていろいろ難しい面があるという事情は、地域によって違いはあるんだということでございますけれども、確かにそのとおりだろうというふうに考えております。  私どもとしましては、地域間の調整というようなこと、あるいは現実に物をつくるような形での転作でない転作形態とでもいいますか、そういうようなものがあるということを考えまして、そういうところをお米の生産に回していくというようなことで何とかやれないだろうかといろいろ指導もしているところでございますけれども、今委員お話ございますように、ところによりましてはやはりなかなか水稲作に戻りにくい状況のところもあるだろうというふうに考えておりまして、今年度、来年度の予算の問題として小規模な基盤条件の整備というようなものについては対応ができるような手当てを考えているところでございます。
  241. 小平忠正

    ○小平委員 ぜひよろしくお願いいたします。  私は、先ほど申しましたように、なぜ今この問題に触れたかということについては、今ここで、けさからの質疑においても、政府の御答弁我が国の従来の主張をこれからも貫いていく、そして、お米の国内自給、国内生産がきちんとなるように、この自由化は、絶対市場開放はさせないんだという、そういう方向での姿勢であると思いますけれども、そういう状況だからこそ、今ここで大事なことは、実際に国内できちんとお米を生産して、よもや緊急的に不測の事態に輸入するなんということがないように、もしそんなことがあるといわゆる自由化論者の声をさらに強くさせてしまうおそれがあります。したがって、この問題はラウンドと密接につながっている、私はこのように思いますので、大臣最後にこの問題について、これは先ほどから何回も答弁されていると思いますけれども、やはりきちんと在庫を来年に持ち越して、そして安定的に米を蓄えて、その上でこれからのラウンドの交渉に向かって進んでいくこと、私はそう思います。したがって、この問題を二つを含めて、大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  242. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、米の自由化反対を言っております日本立場で、米が不足するという、どこかから買ってこなければいかぬという、こういう事態はこれはもう厳に避けなければならないということでして、まあ多少無理な中でも緩和をお願いいたしました。  いろいろ御苦労はおありと思いますが、何としてもこれを達成して、一方での私たちの主張というものが正当性のあるものでなければいかぬというふうに考えておりますので、その点では全く委員御指摘のとおり私どもも受けとめて、これに全力を挙げて御支援も申し上げるし、頑張っていただきたい、こう期待をいたしております。
  243. 小平忠正

    ○小平委員 終わります。ありがとうございました。
  244. 高村正彦

    高村委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時一分散会