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1991-11-20 第122回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 武藤 山治君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 自見庄三郎君 理事 額賀福志郎君    理事 山本  拓君 理事 竹村 幸雄君    理事 和田 貞夫君 理事 森本 晃司君       甘利  明君    新井 将敬君       岩屋  毅君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    尾身 幸次君       奥田 幹生君    佐藤 信二君       佐藤 守良君    斉藤斗志二君       田辺 広雄君    谷川 和穗君       仲村 正治君    増田 敏男君       大畠 章宏君    加藤 繁秋君       小岩井 清君    渋谷  修君       鈴木  久君    水田  稔君       安田  範君    吉田 和子君       権藤 恒夫君    二見 伸明君       渡部 一郎君    小沢 和秋君       川端 達夫君    江田 五月君  出席国務大臣         通商産業大臣  渡部 恒三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 野田  毅君         官)  出席政府委員         公正取引委員会 梅澤 節男君         委員長         公正取引委員会 糸田 省吾君         事務局経済部長         公正取引委員会 矢部丈太郎君         事務局取引部長         公正取引委員会 地頭所五男君         事務局審査部長         経済企画政務次 田中 秀征君         官         経済企画庁長官 藤井  威君         官房長         経済企画庁調整 吉冨  勝君         局長         経済企画庁国民 加藤  雅君         生活局長         経済企画庁物価 長瀬 要石君         局長         経済企画庁総合 冨金原俊二君         計画局長         経済企画庁総合 太田 道士君         計画局審議官         通商産業政務次 古賀 正浩君         官         通商産業政務次 沓掛 哲男君         官         通商産業大臣官 内藤 正久君         房長         通商産業大臣官 渡辺  修君         房総務審議官         通商産業大臣官         房商務流通審議 麻生  渡君         官         通商産業大臣官 中田 哲雄君         房審議官         通商産業省通商 岡松壯三郎君         政策局長         通商産業省通商 藤原武平太君         政策局次長         通商産業省貿易 高島  章君         局長         通商産業省産業 山本 幸助君         政策局長         通商産業省立地 鈴木 英夫君         公害局長         通商産業省機械 熊野 英昭君         情報産業局長         通商産業省生活 堤  富男君         産業局長         工業技術院長  石原 舜三君         資源エネルギー 黒田 直樹君         庁次長         資源エネルギー 川田 洋輝君         庁公益事業部長         中小企業庁長官 南学 政明君         中小企業庁次長 新関 勝郎君 委員外出席者         内閣参事官         兼内閣総理大臣 梅崎  壽君         官房人事課長         外務省アジア局         南東アジア第二 林  景一君         課長         外務省経済協力 小島 誠二君         局調査計画課長         労働省職業安定 野寺 康幸君         局雇用政策課長         商工委員会調査 山下 弘文君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十四日  辞任         補欠選任   佐藤謙一郎君     尾身 幸次君 同月十九日  辞任         補欠選任   中谷  元君     植竹 繁雄君     ――――――――――――― 十一月十九日  高圧ガス取締法の一部を改正する法律案内閣  提出第一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  高圧ガス取締法の一部を改正する法律案内閣  提出第一号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 武藤山治

    武藤委員長 これより会議を開きます。  この際、新たに就任されました渡部通商産業大臣及び野田経済企画庁長官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。渡部通商産業大臣
  3. 渡部恒三

    渡部国務大臣 通商産業大臣を拝命いたしました渡部恒三であります。  このたび、国会冒頭にもかかわりませず、大韓民国で開催された第三回アジア太平洋経済協力閣僚会議出席させていただき、大変ありがとうございました。本会議は、中国、香港及び台湾の三者が正式に参加したほか、アジア太平洋経済協力に関する宣言採択等があり、大変意義のある会議でありました。  世界情勢を見まずく東西冷戦構造の終結に伴い、新たな世界経済秩序形成が模索されており、戦後形成された政治経済秩序のもとで著しい発展を遂げてきた我が国としては、今こそ世界経済の秩序ある発展に積極的かつ主体的な役割を果たすべき責務を負うに至っております。  一方、国内に目を向けますと、我が国経済は、昭和六十一年十二月以来、内需中心として、景気拡大を続けてきたところでありますが、最近では、景気拡大テンポは緩やかに減速してきております。こうした状況のもとで公定歩合引き下げが行われましたが、内需中心とした景気持続的拡大を図るためには、引き続き適切かつ機動的な経済運営を行っていく必要があります。  通商産業行政は、通商産業エネルギー地域経済技術、そして中小企業など、幅広い分野にわたっており、このような情勢の折、いずれも我が国の将来にとってゆるがせにできないものばかりで、まことに責任の重大さを痛感いたしておるところであります。  私といたしましては、全力を挙げて任務の遂行に当たる所存であります。今後とも委員各位の御意見を十分拝聴いたしまして、通商産業行政の推進に努めてまいりますので、何とぞ御指導並びに御協力をいただきますようお願い申し上げます。  以上、所信の一端を申し上げさせていただいて私のごあいさつとさせていただきます。(拍手
  4. 武藤山治

  5. 野田毅

    野田国務大臣 このたび、経済企画庁長官を拝命いたしました野田毅でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  世界経済現状を見ますと、景気後退にあった一部の国で回復過程に入るなど全体として減速から脱しつつあります。また、主要国間の対外不均衡には総じて改善が見られますが、発展途上国の累積債務問題など解決すべき課題も残されております。  我が国経済現状を見ますと、現在、拡大テンポが緩やかに減速しつつあります。それは、我が国経済完全雇用を維持しながらインフレなき持続可能な成長経路に移行する過程にあることを示しております。今後につきましては、雇用者数の堅調な伸び、最近の市場金利の低下、公共投資の増大に支えられ、個人消費は着実に増加し、設備投資も総じて底がたく推移すると見込まれます。しかしながら、景気減速企業家消費者の心理に及ぼす影響については十分注意していく必要があり、きめ細かい対応が必要と考えております。  先週、日本銀行はこうした点を踏まえ、公定歩合を〇・五%引き下げたところであります。  政府としては、内需中心としたインフレなき景気拡大をできる限り持続させていくことが重要と考えております。このため、今後とも、主要国との政策協調にも配慮しつつ、物価の安定を基礎とし、適切かつ機動的な経済運営に努めてまいりたいと考えております。  次に、対外経済面につきましては、引き続き保護貿易主義の抑止と自由貿易体制の維持・強化に向け率先して努力するとともに、世界経済活性化に対し積極的な貢献を行っていく考えであります。  国民生活の面につきましては、地価の適正化内外価格差の縮小、労働時間の短縮等国民生活に関連する分野を重視し、消費者の視点に立った経済構造調整を積極的に進めていくとともに、消費者保護支援に積極的に取り組んでいく所存であります。  また、二十一世紀を展望し、人口の急速な高齢化社会資本ストックの整備、環境・資源エネルギー制約への対応等中長期的課題にも的確に対処していく所存であります。  今日の世界情勢には予断を許さないものがありますが、私は、経済運営に誤りなきを期し、国際社会の持続的な発展のために価値ある貢献を行うとともに、活力と潤いに満ちた「生活大国」の形成を目指して最大限の努力を行ってまいる所存であります。  本委員会皆様の御支援と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。ありがとうございました。(拍手
  6. 武藤山治

    武藤委員長 引き続き、新たに就任されました古賀通商産業政務次官沓掛通商産業政務次官及び田中経済企画政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。古賀通商産業政務次官
  7. 古賀正浩

    古賀政府委員 このたび、通商産業政務次官を拝命いたしました古賀正浩でございます。  渡部大臣のもと、沓掛政務次官と力を合わせ、通商産業行政に一生懸命取り組んでまいります。  委員長初め委員皆様方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手
  8. 武藤山治

  9. 沓掛哲男

    沓掛政府委員 このたび通産政務次官を拝命いたしました沓掛哲男であります。  微力でございますが、古賀政務次官ともども渡部大臣を補佐して、通商産業行政の進展のために全力を挙げて邁進する決意でございますので、何とぞ委員長初め委員各位の御指導、御支援を心からお願いする次第でございます。よろしくお願いいたします。(拍手
  10. 武藤山治

  11. 田中秀征

    田中(秀)政府委員 このたび経済企画政務次官を拝命いたしました田中秀征でございます。  商工委員会先生方にはこれから何かとお世話になりますが、先生方の御指導、御支援を賜りまして、野田長官を精いっぱい補佐してまいりたいと決意をいたしております。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)      ――――◇―――――
  12. 武藤山治

    武藤委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。逢沢一郎君。
  13. 逢沢一郎

    逢沢委員 野田長官、今御退席のさなかでございますけれども、御就任本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。また、通産大臣就任をされました渡部大臣、本当におめでとうございます。両大臣長官の大活躍をまず冒頭お祈りを申し上げたいと思います。ありがとうございました。  渡部大臣は先ほどごあいさつの中にもおっしゃっておられましたように、就任早々ソウルで開かれましたAPEC、アジア太平洋経済協力閣僚会議出席をされまして、開かれた地域主義を標榜して、日本も大いに貢献をしていこう、大変成果の上がった会議であるというふうに承っております。また、さきにはアメリカ通商代表ヒルズ代表日本に来られ、会談をされたということでございまして、就任早々大変お忙しくなさっておられるわけでありますが、どうもここのところの経済情勢景気先行きが今までとはちょっと様子が変わりつつあるな、そういうことが感じられるわけであります。  例えば、自動車販売台数の推移を見ておりましても、あるいは住宅の新規着工の数値を拝見をいたしましても、あるいはそれぞれの企業が将来に向かってここ三年、五年、どのくらい新たな設備投資計画があるか、そういうことを拝聴いたしておりましても、どうもここ三年、五年とは様子が変わる方向に行きつつあるな、そう感じられますね。また、来年度はどうも大きく税収が落ち込むんじゃないか、予算を編成する上でもこれは歳入欠陥相当深刻になるなというふうなことが伝えられておる中に、渡部先生通産大臣就任をされたわけであります。どうか大臣として適切なリーダーシップを発揮をしていただきまして、調和ある経済発展、またそれを通じて国民生活の向上のために全力を尽くしていただきたい、心からそのようにお願いを申し上げる次第であります。  また、私どもこの夏以来、通産省が来年度、平成四年度に一体どういう考え方で、どういうところに重点を置き、行政を進めていこうとしているか、そのことについて勉強させていただいておるわけであります。「平成四年度通商産業政策重点」ということで承っているわけでありますが、その副題として「国際社会との連携・調和」、そして「地域産業文化の創造」、この二つのことを挙げておられる。これはまことに適切な表現であり、かつそのこと自体が日本経済、また国民生活を考えた上で大変重要なテーマだなというふうに改めて思わせていただいたわけであります。  そこでまず大臣に、では一体これから先行き景気がどうなるんだろうか。経済は生き物でありますので、なかなか見通しのつかないところもあるとは思うわけでありますけれども産業政策の元締めとしての大臣として、日本経済先行き、特に来年度の見通し、どういう見通しを持っておられるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  14. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいま逢沢委員から極めて重要な御指摘がございました。我が国昭和六十一年以来、いわゆるインフレなき持続的成長ということで、常に消費者物価の上昇を経済成長が上回り、豊かさを増進してまいりましたけれども、最近に至ってこの経済に非常に心配な点が幾つか出てまいりました。今景気の予測のお話がありましたが、我が国経済の近年における牽引車ともいうべき自動車産業においてすら今ほとんどの企業が減益になっておりますし、また経済減速ぎみのために中小企業等にもいろいろ年末心配なことが出ております。また、そういう中で貿易黒字はきょうの新聞にも、ごらんのようにこれは一千億になるのではないかというふうに、外圧は大変厳しくなってまいりまして、今お話の出ましたヒルズ通商代表とも私は前後三時間にわたっていろいろお話をしましたけれども自動車問題あるいは部品の問題、半導体の問題と、いろいろ厳しい注文がつけられております。  こういう内外の厳しい情勢の中で、経済を守っていくことがつまり宮澤内閣のスローガンである生活大国日本国民生活の豊かさを守っていくことでありますから、私も就任最初記者会見で思い切った金利引き下げを一日も早くお願いしたいということで、先般〇・五%の公定歩合引き下げが行われたのでありますけれども、今後景気の問題は、私はもう黄信号から、場合によっては赤信号になるおそれもある、そうなってからでは遅いので、これから金融面等にもいろいろ注文をつけてまいりまして、日本経済がさらに、国際摩擦を解消しながら内需拡大に努めて、伸展していくように努力をしてまいらなければならないと考えておるところでございます。
  15. 逢沢一郎

    逢沢委員 景気から目を離すことができない、そういう厳しい認識を持っておられる。そういう状況の中で、御案内のように国民ひとしく注目をしておりますガットウルグアイ・ラウンドがどうやら最終段階最終ステージを迎えたな、そういうことであります。ヒルズ代表との話の中にも、アメリカとヨーロッパの間では大分すり合わせができてきた、歩み寄りができてきた、そのことが新聞やテレビの報道でも私たちに伝えられたところでありますけれども通産大臣としてこのガットウルグアイ・ラウンドが今どういう段階にあって、どういう最終的な決着を見ることができるか、そのことにどんな見通しを持っておられるか、率直にお教えをいただきたいというふうに思います。
  16. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ベーカー国務長官も私の就任早々に参りまして、これも一時間ほどお話をしました。また、さきに申し上げたように、ヒルズ代表あるいはウィルソン・カナダ国際貿易大臣など、また幸いに皆さん方のおかげで出席をさせていただいたアジア太平洋閣僚会議でもいろいろの大臣お話をしてまいりましたけれども、特に我が国黒字になっておる相手国我が国に対する注文は大変厳しい、これはいろいろ具体的な問題を含めてございます。  特に、その中で一番厳しいのがアメリカであります。したがって、まだいろいろこれから話し合っていかなければならない問題が多いと思いますが、結論を申し上げますと、日本資源エネルギーも乏しい、しかも国土も狭い、そしてあの太平洋戦争において壊滅的な犠牲を受けた。その中で、今日今やアメリカ、ドイツと並んで世界の豊かな成長国というふうになってきたのは、世界が平和であって、また世界のすべての国と自由に貿易ができて、我々の国民のすぐれた技術と勤勉が付加価値をつくって、今日の豊かさをつくり上げておったわけですから、これを持続させていくためには何としてもウルグアイ・ラウンドは成功させなければならない、これは前提になる。これは委員皆さん方にも御認識、御理解を賜りたいと思います。  ただ、対外政策というものはまず国益が大事であります。ですから、ガットという場はそれぞれの国の代表がみんな自分国益を主張いたします。しかし、その自分の主張を一〇〇%通さなければならないということでは、これは世界の平和、国際協調は成り立たないわけでありますから、主張すべきものは主張し、また譲るべきときは譲って、その中でこれから厳しいいろいろの中で最大公約数を求めでいって、やはりこのウルグアイ・ラウンド年内決着をさせる、そういう方向努力をしてまいりたいと思いますので、先生方の御理解を賜りたいと思います。
  17. 逢沢一郎

    逢沢委員 ぎりぎりの努力をして年内に何が何でも決着をさせたい、強い決意をお伺いしたわけでございますけれども、しっかり頑張っていただきたい、私どもも精いっぱい御支援、応援を申し上げたい、そのように思います。  さて次に、アメリカとの関係日米関係について幾つかのことをお伺いを申し上げたいと思います。  かつて駐日大使であられたマンスフィールド大使が、日米関係というのは世界の中で最も大切な二国間関係、こういう表現をされました。私もまことにそのとおりだなと思います。大ざっぱに申し上げて、御案内のようにアメリカGNPは約五兆ドル、日本は三兆ドル、この二国間で世界GNPのおおよそ四〇%も占める。この数字だけ見てもこれはもう日本アメリカがどういう関係であるかというのは、世界に大変な影響を与える、そういうふうに認識をしなければならぬというふうに思います。  ところが、昨今日米両国民の間に、日本人アメリカをどう見るか、アメリカ人に対してどういう感情を持つか、またアメリカ人日本のことをどう評価しているか、さまざまな世論調査意識調査というものが行われ、それが発表されているわけでありますけれども、総体で大ざっぱにつかめば日米両国関係はうまくいっている、そういう肯定的な前向きの評価が両国民の間からなされている、そのことは大切なこととして押さえておきたいわけであります。しかし、それと同時に微妙な感情がやはり双方に存在しているなということについても非常に注視をしておかなきゃいかぬ、そういうふうに私には思えるわけであります。  例えば、ついせんだってでありますけれども、十一月十八日でありますから、おとといの月曜日の朝日新聞にそのたぐいの調査の結果が出ておりました。例えば日本人アメリカに対してアメリカパートナーと見るか、ライバルと見るか、そういう設問があったわけでありますけれども日本の方はアメリカパートナーと見るという方が五〇%、しかし逆にアメリカの方は日本パートナーとして見る方が二一%に対してライバル視をしている方が七七%ということでありまして、恐らくこの数字大臣ごらんになったのではないかと思いますが、私も少なからずショックを覚えたわけであります。  また、かつてこういうふうに言われておりましたね。アメリカにとって脅威は何だ、一つソ連軍事力、もう一つ日本経済力。しかし、今やソ連軍事力はもうアメリカにとって、あるいは世界じゅうにとって脅威ではなくなった、唯一残る問題は日本経済力じゃないか、あるいは日本輸出力じゃないか。ちょっとためにするうがった表現にも聞こえるわけでありますけれども、しかしアメリカ国内にそういう世論が一部にある、あるいは感情があるというのもまた事実ではないかなというふうに思います。  アマコスト大使はいろいろなことをおっしゃっておられるわけでありますけれどもポスト冷戦時代は明らかに経済活性化をする時代経済活性化をすれば当然いろいろな摩擦も起こっていく、そういう認識を示しておられます。そして世界じゅうで一番大切な二国間関係日米というのは協調と競争の要素が混在をしている、そういう関係なんだということも同時におっしゃっておられるわけであります。  そういった状況の中、御案内のようにSII日米構造協議というのが二年前、八九年からスタートしたということでありますけれども、このSIIを通じて相互理解の促進、また良好な関係発展のためにやはり双方努力をしていく、そういう引き続きの努力というのはいかにも大切なことだというふうに私ども感じるわけであります。この構造協議について、伺うところによりますと大臣ヒルズ代表との間では特に具体的な論議はなかったというふうに漏れ聞いているわけでありますけれども、我々日本人はどうもこの構造協議については日本側が一方的にアメリカから追い込められているな、そんな国民感情と申しますか感触が、率直に言って、ざっくばらんな話になりますけれどもございますね。例えば建設市場へのアクセスの問題も、いろいろ業界に難しいことがあるけれども相当改善をした、努力をした、そんなこともあるし、あるいは大臣も御案内のように、大店法もさき国会法律がかわりました。あるいは再販制度についても今相当詰めが行われている。そういうふうに具体的な成果は、日本の方はいろいろと困難もあるけれども前進をさせてきた。それに対してアメリカの方は一体どうなっているんだ。これはマスコミに出ないだけなのかもしれませんけれども日本アメリカに対して相当のことを、実はよくそこまで言えたなというところまで言っていますね。アメリカ人というのはどうも貯蓄率が低いじゃないか、これはやはり貯蓄率を上げてもらう努力が必要である。あるいは財政赤字も何とかしなさい。あるいは企業経営者にとって目先の利益よりももっと長期的な観点というのが必要なんだ、そういうふうなことをずっと言ってきているわけでありますけれども、そういう日本側の指摘したことが具体的に本当に改善されているんだろうか、日本が頑張っていると同じくらいに前進しているんだろうか、どうもそのあたりが我々日本人には、特に一般の方々にはつまびらかでない、そういうふうに感じられるわけでありまして、その進捗状況、特に日本側アメリカ側お願いをしたことが字体どうなっているかということについて簡潔に御報告をいただければというふうに思います。
  18. 岡松壯三郎

    岡松政府委員 御質問の日米構造協議の問題でございますが、最終報告に盛り込まれた措置につきまして両国がそれぞれ実施していくというのが当然のことでございまして、先生の御指摘のとおりでございます。  日本側といたしましては、米側の実施状況について重大な関心を持って見守っているところでございますが、このような観点からフォローアップ会合という場で、通産省から貿易収支の改善を図っていく上では米側においても米国産業の競争力の強化を図っていくことが極めて重要だということを指摘しておりますが、そのような観点から、先生からも御指摘ございましたが、例えば海外からの直接投資は米国産業の競争力を高めていく上で重要な役割を果たしておるので、開放的な投資政策を進め、規制的な動きを抑えるべきだということを主張いたしたりいたしましたし、またメートル法についても、九二年九月の導入時期に向けてその進捗状況を示すプログレ又レポートというものを作成して着実な進展を図っていく必要があるんだ、これがアメリガの競争力を高めていく上に重要なんだというようなことを指摘いたしましたし、さらに先ほどお話がございました、米国産業がとかく短期的な利益を追うということでは経営は成り立たなくなるわけで、長期的な展望を持っていくことが必要だというような点を提起し、議論を進めてきております。  米側の措置につきましては、一部進捗が見られるものの、米国議会等の関係で必ずしも進展してないというのも先生御指摘のとおりでございまして、今後とも日米構造協議というのはスタートのときから双方向でいかなきゃいけないという精神にのっとりまして、米側に対して積極的な対応を求めていくように努めてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  19. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、構造協議成果を上げていくということは、これはもう日米双方にとって大事なこと、日米にとって大事なことということは世界じゅうにとってとても大切なことでありますので、しっかりとした成果が上がるように引き続きの努力お願いを申し上げたいと思います。  特に、どうもアメリカ日本に対して、日本の市場というのはどうもフェアな市場になってないな、そういう印象を持っておられるようであります。したがって、この構造協議を通じて日本の構造障壁は随分なくなった、アメリカと対等の競争ができる枠組みになった、そういうふうに理解していただけるように引き続きの努力お願いしたいと思いますし、また同時にアメリカについても、日本は言うべきことは言っている、そしてそのことが進捗しているんだということはしっかり国民皆様に対して知らしめる、広報をしていただくということについても御努力をいただきたい。お願いを申し上げておきたいというふうに思います。  さて次に、自主規制の問題、輸出自主規制についてお伺いをいたしたいというふうに思います。  実は今、私どもの手元に「我が国の主要な通商問題の推移」という一覧と申しますか、コピーがございまして、繊維に始まって鉄鋼、テレビ、工作機械、自動車、VTR、御案内のようにずっと経済摩擦がこういうふうに推移をしてきた。これは一目でわかるわけでありますが、そうこうしているうちに自主規制、輸出自主規制ということを日本側アメリカに対して、ECに対して、あるいはその他の地域に対して行っているものもあるわけであります。  輸出自主規制というと、私どもすぐそれはやはり自動車ということが思い浮かぶわけでありますけれども、改めて考えてみると、一体この輸出自主規制というのは何なんだろうかなということなんですよね。一体これはきちんとした日本法律に基づいた一つの行為、概念というふうに規定ができるのか、あるいは広い意味での行政指導のようなものなのか、あるいはそんなものじゃなくて、言ってみれば率直に言葉のとおり、業界が自主的に洪水のような輸出をするのを差し控えよう、そういう自主的な判断に基づく行為なのか、一体どうなんだろうなとはたと孝えたわけでありますけれども、この輸出自主規制というのは一体何なのかということについて改めてお教えをいただきたい。定義ということが適当なのかどうかよくわからないのですが、教えていただきたいというふうに思います。
  20. 岡松壯三郎

    岡松政府委員 輸出自主規制についてさまざまなものがございまして、一定の定義があるわけではございませんが、外為法、具体的にはその下の輸出貿易管理令でございますが、あるいは輸出入取引法によりまして、我が国からの輸出に関して、その価格あるいは数量について規制を行って対外貿易摩擦の回避に努めるように措置しているものというのが輸出自主規制かと存じます。
  21. 逢沢一郎

    逢沢委員 ガットにおいては、明らかにその求める方向は関税化ということでありまして、灰色的なグレーなものだという位置づけが自主規制にはあるというふうにも伺っているわけでありますけれども、このガットの場でいわゆる輸出自主規制の問題はどのように取り扱われているのか、あるいは取り扱われる方向にあるのかということについてお教えをいただきたいというふうに思います。  また同時に、この自主規制というのは日本は、私の手元にございますけれども随分たくさんやっているんですね。アメリカ向けに、アメリカに対して自主規制をしている。例えば数値制御旋盤でありますとか工作機械、鉄鋼構造物、フォークリフトトラックというのはEC十二カ国に対して自主規制をしている。特殊鋼は対アメリカアメリカに向けてのものがやはり目につくなということなんですね。じゃ、アメリカは一体自主規制というようなことをECやあるいはアジアやそういうところに行っているのかどうか、そういうことについてもお教えをいただければというふうに思います。
  22. 岡松壯三郎

    岡松政府委員 先生御指摘の輸出自主規制の問題でございますが、ガットで認められておりますのは、ガット十九条によりまして緊急輸入制限、すなわち、ある産業が他国からの輸出によって被害を受けるという事実がありました場合には、ガットに決められた一定の手続に従って緊急輸入制限をすることができる。これはセーフガード条項と言っているわけでございますが、そういう形でとるのがいわばガットのルールに従った正常な規制ということになるわけでございます。  それに対しまして御指摘の輸出自主規制は、いわば輸入国側がやるのではなくて輸入国、輸出国との話し合いによって輸出国が自主的に措置をとるということでございますので、ガットルールから見ますとこれは灰色措置というふうに言われているわけでございまして、灰色と言われるように、ガット上はどちらかといえば余り明確な位置づけがないものということをあらわしているわけでございます。その意味で、御質問のウルグアイ・ラウンドでどういう取り扱いかということでございますが、このような灰色措置が先生御指摘のようにいろいろと広がってきている。これでは何のための貿易ルールのガットかということになるわけでございまして、このルールをきちっとただしていこうということから、このウルグアイ・ラウンドにおきましては灰色措置と言われる自主規制を禁止ないし撤廃していこうということでございますし、同時にきちんとしたルールに基づいてセーフガードがとり得るようにしていこうではないかというそのルールの明確化ということが議論されているところでございます。
  23. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  こういうふうに見てまいりますと、世界で最も大切な日米関係、大切なんだけれどもその中身はさまざまなことがあるな、そういうふうに思うのですね。しかし、やはり理解をし、世界の平和や繁栄のために、とにかくけんかせずに協調しながら力を合わせてやっていかなければいけません。例えば、セラミックパッケージなんていうのはもう日本からほとんど一〇〇%アメリカに輸出をしているというふうなことでありまして、そういうものも実際あるわけでありますから、これはやはり相当摩擦は将来ともあるなというふうにも感じられるわけであります。  そこで、大臣に改めてお伺いするわけでありますけれども、より良好な日米関係を将来にわたって築いていくために、一体どんな経済産業政策貿易や投資を含めての政策やあるいは態度というものが必要になるのか、その御所見についてお伺いができればというふうに思います。
  24. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほどから逢沢委員お話しのとおりに、日米関係、極めて重要な問題でありまして、明治維新後百二十年の歴史を振り返ってみても、日本アメリカ関係がいい状態にあるときは日本は平和で豊かでありましたが、あの日米戦争を思い出すと、日本アメリカ関係が悪くなったときは世界にとってもお互いにとっても極めて不幸な時期でありました。したがって、我が国世界の平和に貢献し、また国民の福祉と生活を豊かにしていくために日米関係というのは極めて重要な問題でございます。  ただ、残念ながら結果として四百億ドルあるいは五百億ドルという貿易黒字が続いております。この貿易黒字がある限り、アメリカとしては日本に対していろいろな言い分が出てくるわけでありますけれども、ただ、今逢沢委員御指摘のようにアメリカこそまさに自由主義経済世界のリーダーなのでありますから、やはりアメリカ世界の自由主義経済のリーダーであるという誇りを失ってはならないと思います。また、日本も自由主義経済によって今日の豊かさを築いてきておるわけでありますから、基本的には世界の中のお互いの国の考え方、哲学は一致しておるのであります。ただ、残念ながら、逢沢委員もいろいろ経験されておると思いますが、私どもアメリカの要人等と会談するたびに出る話は、日本はアンフェアじゃないか、そういうことが結局一番問題になっておるのですが、これは我々が反省して直さなければならないこともありますし、同時にアメリカ側の誤解もございます。ですから、日米外交で最も大事なことは、お互いに言うべきことは遠慮しないで率直に言う、その中で我々に過ちがあればこれは直す、またアメリカにも誤解があればそれは直してもらう。日米構造協議はまさしくそういう中で生まれたものであって、単にアメリカから押しつけられたからやむを得ずやるというよりは、これから新しい時代の中で日本国民の豊かな生活を目指して進むべき方向を指示しておるものであると我々は考えます。  具体的な問題等にいろいろ御疑念がありますれば政府委員から答弁をさせますが、基本的には、世界の平和のために、世界の自由のためにお互い手を握って貢献をしていかなければならないという、国の進むべき哲学についてはお互い一致しておるのです。しかし、現実に四百億ドルから五百億ドルの、日米貿易の中で我が国黒字になっている、つまりアメリカにしてみれば赤字になっている。かつては自動車王国であったアメリカが今や日本にその座を奪われようとしておる。あるいは半導体において、あるいはテレビにおいてそういった具体的な中でアメリカ側のいらいもも我々は理解をしていかなければならないというところで、今、私も就任わずかの期間でありますけれども、これらの問題でベーカー国務長官あるいはヒルズ通商大臣等から受けた指摘については、相手側が誤解をしている面については、私は率直に、それはあなた方の誤解であるというふうに申し上げましたが、また、我が方として改善すべきものについては、これは通産省の各関係の者に改善するように指示をいたし、基本的には、繰り返すようでありますけれどもアメリカ日本のものがどんどん売れている、またアメリカからはなかなか買わないということでありますから、先般、五十に近い日米貿易に最もかかわりの深い企業皆さん方等にも御参集をいただいて、できるだけアメリカからの輸入をするように積極的に協力をしてほしいということで、お互いの貿易拡大均衡の方向で進んでいくように努力をしてまいりたいと思っております。
  25. 逢沢一郎

    逢沢委員 ありがとうございました。  それでは、時間も大分少なくなってまいりましたのですが、最後に地域産業政策のことについて一点だけお伺いをしたいと思います。  冒頭にも申し上げましたように、平成四年度は、地域産業、文化を創造するんだ、通産省としてもそういう大きな柱を掲げておられるわけでありますが、地域における産業の育成、とりわけ中小企業の振興というのは日本にとって最重要の課題、テーマの一つである、そういうふうに私も思います。昭和六十一年に五年間の時限立法で、特定地域中小企業対策臨時措置法、これをつくっていただきました。もうその五年が近づいてきたわけでありますが、例えば私の地元の岡山でも、ざっくばらんに言うと、三井造船におんぶにだっこの玉野市でありますとかあるいは耐火レンガ産業中心の備前市を中心とした地域、こういった特定不況地域に指定をしていただいて、税制や金融や予算措置で相当支援をいただきました。その後の好景気にも支えられて地域としての景気は好転をした、地域としての産業基盤のあり方は相当強化をされたということでありますから、この法案の効果というものは相当上がったというふうに評価をしているわけであります。しかし、引き続き地域における産業の育成、特に中小企業への育成施策というのはとても大事だというふうに思います。  改めて考えてみると、我が国中小企業というのはそれぞれの地域や社会の中心的な存在である、極めて大きな役割を果たしている、そのことに間違いないというふうに思います。産地や企業城下町等の中小企業群というのは、地域における所得の確保や向上、あるいは雇用の機会を提供している、あるいはコミュニティーの維持発展のためにもなくてはならない存在だ、そんなふうに思います。  しかし、昨今の大きな経済の変動、中小企業をめぐる環境の変化を見ると、やはりいろいろな意味で体質が弱いものですから、行政として、政治として応援すべきところは相当応援をする、また、企業家の精神に、それはもうやらなければいけないところはそれに心から精神的な支援を送るという態度が必要ではないかなというふうに思います。ほうっておくとやはりこれはまずいなということでありますから、地域経済活力の維持発展、また個性ある地域社会の持続的発展の基盤が揺らいでしまうおそれがある、あるいはそんなことになると我が国経済全体の長期的な健全性というものを損なってしまうかもしれない、そういうことでありますから、こういった観点に立ったときに、じゃあ一体地域における産地や企業城下町等における中小企業群に対してどういうことをこの時期改めてしたらいいかということは、非常に重要なテーマだろうというふうに思うわけであります。  ここで中小企業庁にお伺いをしたいわけでありますけれども、そういう状況を踏まえて、平成四年度以降、どういう観点で地域の産業を育成するか、あるいは中小企業を応援するか、時間でございますので簡単に御答弁、お教えをいただきたいというふうに思います。
  26. 南学政明

    南学政府委員 先生御指摘のとおり、産地、企業城下町等の各地域の中小企業は、地域経済社会の中核的な存在でありまして、当該地域経済発展のためにも、さらには我が国経済全体の発展のためにも重要な役割を担っているわけであります。  しかし、昨今、こうした中小企業をめぐる経営環境というのは大きくかつ厳しく変化をしてきておりまして、このような環境変化は、大企業に比べでいろいろな面でハンディを持っておる中小企業にとって極めで大きな問題になっているわけであります。地域中小企業がこうした環境変化に対応しながら長期的な発展を図っていくためには、地域や伝統にはぐくまれた技術、資源、人材、情報等を積極的に活用しながら、新しい分野を開拓したり、あるいは高付加価値化を図っていくということが重要であると私ども考えておりまして、その際、政府としても支援策を講じていくことが不可欠であると認識をいたしております。  このような観点に立ちまして、去る十月一日に通産大臣から、地域の中小企業に対する今後の施策のあり方につきまして中小企業近代化審議会に対し諮問を行ったところでありまして、現在この審議会において御審議をいただいているところであります。私どもといたしましては、今後、この審議会の答申も踏まえながら、地域中小企業活性化のための新しい法律案を速やかに準備いたしまして、総合的かつ抜本的な地域中小企業活性化のための支援措置が講じられるよう最大限の努力をしてまいる所存であります。
  27. 逢沢一郎

    逢沢委員 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  28. 武藤山治

    武藤委員長 小岩井清君。
  29. 小岩井清

    ○小岩井委員 私は、独占禁止政策全般について質問をいたしたいと思います。  独占禁止政策のうちの最初の質問は、証券不祥事と独占禁止法の関係についてであります。  証券会社による損失補てんの行為については、独占禁止法第十九条「不公正な取引方法」の禁止に抵触する、そして、不公正な取引方法に関する一般指定の九、不当な利益による顧客の誘引に明らかに該当すると考えられます。  梅澤委員長は、今まで、証券会社が損失補てんという不当な利益供与の手段で顧客を誘引する、そのことによりまして証券業者相互間の公正な競争秩序が乱される、今回の事件のようにそれが有力な証券会社によって行われる場合にはその弊害の度合いが強いわけでございますということで過去に述べているわけであります。その意味で今回の損失補てんにつきましては独占禁止法の「不公正な取引方法」に該当する、このことは十分考えられるということで委員長は今まで述べてきているわけですね。この見解に基づいて独占禁止法違反についての証券会社大手四社を対象にした事情聴取と調査を行ってきたと思うのです。この経過、あわせて公正取引委員会の判断について梅澤委員長から明確にしていただきたいと思います。     〔委員長退席、和田(貞)委員長代理着席〕
  30. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘いただきました点につきましてお答えを申し上げます。  先般の臨時国会以来、この問題はたびたび国会で御指摘をいただきまして、ただいまお述べになりましたように、公正取引委員会としての考え方を述べてまいったわけでございます。  先般、大蔵省が特別検査を実施いたしまして、その結果を立法府に報告すると同時に、即日当委員会に連絡がございまして、私どもも直ちにこの問題についての審査を開始したわけでございます。本日まで鋭意作業を進めてまいったわけでございますが、今回のいわゆる損失補てん問題につきましてはこれが独占禁止法十九条に違反するということで、野村証券株式会社、大和証券株式会社、日興証券株式会社及び山一証券株式会社の四社に対しまして、本日、勧告をいたしました。この勧告の内容、骨子につきましては後ほど事務局から御説明申し上げます。  同時に、今回の損失補てん問題につきましては、先般、証券業協会が準大手を含む十七社の損失補てんの事実を公表いたしておりますが、この問題につきましては、四社については勧告、十七社を含む証券会社、証券業協会会員である証券会社全社に対しまして、今後かかる行為が行われないように、今回の四社に対する措置の内容を周知徹底するよう要請をいたしました。  本日のこの措置をもちまして今般の一連の証券会社のいわゆる損失補てん問題に対する独占禁止法上の対応公正取引委員会での措置を終結いたしたいと考えております。
  31. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 本日勧告いたしましたその内容につきまして御説明申し上げたいと思います。  私ども、これまで審査を行ってまいりまして、その結果として、野村証券ほか大手証券会社四社が昭和六十二年十月から平成三年三月末日までの間に損失補てんをいろいろと行ってきた、その大部分が顧客との取引関係を維持し、または拡大するためのものであるというように認められましたので、こういった行為は不公正な取引方法のうちの不当な利益による顧客誘引行為であるということで、独占禁止法第十九条に違反するという認定をしたわけでございます。  その結果、二つの措置をとるようにということで勧告をしたわけでございますが、一つは、こういった損失補てんは独占禁止法に違反するものであるということ、それから今後こういったことはしないということを、社内で役員、従業員に対して、また取引先に対しても十分周知徹底するようにということが一つでございます。それからもう一つは、こういった独占禁止法に違反する損失補てん行為は今後一切行ってはならないという不作為を求めるということと、この二点について勧告したところでございます。     〔和田(貞)委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 小岩井清

    ○小岩井委員 今、大手四社、証券四社に対して勧告をした、独禁法第十九条違反だということで勧告をしたということでありますけれども、これは大手四社に勧告をして、あと中小証券会社十七社と今おっしゃいましたけれども、これは勧告をしていないということでありますけれども、これはどうしてこういうふうになったのですか。
  33. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 いわゆる準大手と申しますか、十七社についても損失補てんが行われているということは、十七社の方の自主的な公表によって私ども承知いたしておりますが、今回私ども、大手四社について調査をし、また法的措置をとったわけでございますけれども、その持つ意味は、いわゆる証券取引においてこの大手四社の占める地位というものは圧倒的に大きいものがございます。こういった非常に大きなウエートを占める大手四社が不当な利益によって顧客を誘引するということが行われますと、市場における公正な競争を妨げる影響が非常に大きいというふうに考えたわけでございまして、即刻それを排除するということが何よりも大事であるということを考えました。  今回そういった意味で大手四社に対して法的措置をとったわけでありますが、それによって、大手四社の地位などからしましても、証券市場における公正な競争というものはそれなりに回復が期待できるものというようにも考えておりました。それからまた、こういった損失補てん行為が独占禁止法に違反するものである、以後やってはならないということが今回の措置によって十二分に関係業界に周知することになるだろうと思いますので、そういったことも含めまして、この業界における公正な競争の確保というものは十分図られるものと考えております。  また今回、実はあわせまして日本証券業協会に対しまして要請をすることといたしました。その趣旨は、今委員おっしゃったように十七社も損失補てんをしているといったような事実がございますので、今回大手四社に対してとりました勧告という法的措置、この趣旨を日本証券業協会の会員全員に対して十二分に徹底するように、そして二度とこういった行為が会員の中から行われることのないようにということを強く本日要請をしたところでございますので、こういったことと相まちますと、損失補てん等によります公正な競争を阻害するという行為はこれで払拭され、また、この業界における公正競争というものの回復は十二分に図られるもの、そのように考えたところでございます。
  34. 小岩井清

    ○小岩井委員 大手四社に対して勧告をしたということについては、この点については評価をいたします。ただし、独占禁止法第二十条で排除措置が出されたわけですね。排除措置についての二点、今御答弁がありました。これは、「証券四社は、次の事項を各社の役員及び従業員並びに顧客に周知徹底させること。」「顧客との取引関係を維持し、又は拡大するため、一部の顧客に対し昭和六十二年から平成三年にかけて行っていた損失補てん等は独占禁止法の規定に違反するものであること。」これは、違反だということを明確に出したということですね。次に、次が問題なんですけれども、「今後、上記行為と同様の行為を行わないこと。」それからその次に、「証券四社は、今後、顧客との取引関係を維持し、又は拡大するため、顧客に対し、損失補てん等を行わないこと。」ということで、両方とも「今後」なんですね。  ということは、これは一点目で独禁法違反だ、十九条違反だということを明確にしておきながら、後で、二項目目は今後のことなんですね。ということは、独禁法違反の効果は残るじゃないか、そういうふうに理解できませんか。その点はどうですか。
  35. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 先ほど私の御説明が少し舌足らずであった点があったと思いますので補足的に申し上げますが、先ほど申し上げたように、今回の私ども調査によります損失補てん問題というのは、昭和六十二年の十月から平成三年三月までの間に行われたものであるというように認定いたしました。四月以降は損失補てんは行われてないというように認識しておりますし、また、御承知のようにこの証券大手四社は社内においても十二分の対応措置を講じたというように伝えられておりますし、また、大きな新聞広告その他で、今後こういったことのないようにしたいというような報道もございます。こういったことからも、現在は大手四社による独占禁止法に違反するような損失補てん問題というものは存在していないというように考えられたわけでございます。したがって、勧告における措置につきましても、先ほど申し上げたように、これまでの行為が違反するものであったということの十分の認識を持つことと、それから、今後こういったことをしてはならないということ、この二つを求めておるところでございます。
  36. 小岩井清

    ○小岩井委員 第十九条違反だということを明確にしておきながら、損失補てんをした事実がある、それも残っているわけですね、そうでしょう。ですから、違反の効果はそのまま残っちゃう。  観点を変えて伺いますけれども、この勧告、独占禁止法違反勧告について、これについては受取人に対する返還義務を生ずるのかどうか。この点は法の解釈として伺っておきたいわけです。
  37. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 いわゆる補てんを受けた取引先企業に対して、例えば独占禁止法で何か措置をとれないかといったような御趣旨のお尋ねかと思いますけれども、独占禁止法で措置がとれますのは、これは申し上げるまでもなく、独占禁止法に違反した行為を行った企業に対してその排除措置を広く求めることができるということでございまして、直接違反をしていない者に対して何か義務を課するということは独占禁止法の予定しているところではございません。
  38. 小岩井清

    ○小岩井委員 違反をした者に対して排除措置はできる。していない者については独禁法でできない。違反をしているというのは証券会社ですね、ということは、受け取った側は違反をしていないということなんですか。違反をして、その事実として受け取っているわけですけれども、その辺、どうなんです。
  39. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 私どもの今回の認定は、証券会社が取引関係を維持し、または拡大するために損失補てんを行った、それが独占禁止法違反である。不当な利益をもって顧客を誘引した行為が違反であるということでございます。したがって、補てんを受けた企業について独占禁止法の問題を論じておるわけではございません。
  40. 小岩井清

    ○小岩井委員 勧告を出したということは評価いたしますけれども、要は、やり得だったんだね、これは。その点、指摘をいたしておきます。  「不公正な取引方法の禁止」、第十九条に違反をしているわけですけれども、独占禁止法というのは違反行為に対する抑止のための法律ですね。ということになると、これは不公正な取引方法に対する罰則というのはないのですね、ない。これで、今回勧告は出したけれども、独占禁止法の目的、趣旨に沿って今後この再発防止、抑止ができるのか、罰則規定がなくて。この点について、どうですか。
  41. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 独占禁止法の十九条違反に対して直接罰則の規定がないという、これは一般的な御質問でございますので私からお答え申し上げたいと思います。  御案内のとおり、独占禁止法におきましては実体行為違反について各種の罰則の規定がございます。その基本はやはり、市場経済システムの根幹を揺るがすものとしての私的独占それからカルテルについて直接罰則をもって禁止をしているわけでございます。  そこで、十九条違反につきましては、種々御議論のあるところではございますけれども一つは、不公正な取引方法というものはある一つの行為類型がございまして、その行為を行った事業者の市場における地位あるいはその行為が行われた結果、市場の競争効果にどういう影響を及ぼしたかということを、いわばこれはルール・オブ・リーズンといっておりますけれども、ケース・バイ・ケースによって合議体である公正取引委員会が違反事実を認定するということになっているわけでございます。したがいまして、一つは、これを罰則によって規制するためには罪刑法定主義の観点から構成要件というものが明確でなければならないという一つの法理論がございます。それからもう一つは、これはアメリカの法制も同じような法制をとっているわけでございますけれども、ただいま申しました当然違法、パー・シー・イリーガルな問題につきましては刑罰をもって臨む、ルール・オブ・リーズンの領域につきましては行政措置によって排除するというのが基本的な法律の構成になっておるわけでございます。  ただいま委員が御懸念になりましたように、しからばそういった行政措置の実効性が果たして担保できるのかという点でございます。今回の件に即して申し上げますと、過去に行いました違反行為の事実というものを排除するために、先ほど事務局から御説明申し上げましたように、従業員並びに顧客に対して周知徹底をする、この周知徹底の方法についてはあらかじめ当委員会の承認を受けなければならないということを勧告によって明記しておるわけでございます。一方、将来の行為につきましては、これを行ってはならないという命令をかけておるわけでございます。したがいまして、公正取引委員会の今回の勧告による命令に証券会社が従わない場合、つまり審決命令に従わない場合には、これは罰則をもって担保されておるわけでございまして、仮に仮定の問題として、今回の勧告を証券会社が応諾し、なおかつこの命令に従わなかった場合には、当然告発の対象になる、いわば審決命令や違反に対して刑罰が科せられておるという形で間接的に担保されておるというのが、その十九条の違反に対する公正取引委員会行政措置の有効性を制度上保障している点でございます。
  42. 小岩井清

    ○小岩井委員 すとんと落ちないのですね。  さらに伺いますけれども、要するに、不当な利益による顧客の誘引であるということを認めたわけですね。ということは、誘引効果を消さなければ勧告をしたことにならないのじゃないかと思うのです。一つの例として申し上げますけれども、補てんした相手方との一定期間の取引禁止、これは誘引効果を消すことになると思うのですね。このことを独禁法上できますか。
  43. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 私ども今回の勧告をするに当たって考えましたことは、これまでの行為が独占禁止法に違反するものであった、不当な利益による顧客を誘引する行為であったということでございますが、その行為は、先ほども申し上げましたように、平成三年四月以降は行われておることは一切認められません。もう既に終わってしまったものだと考えております。それからまた、今回、それまで行ってきました行為が先ほど来申し上げておりますとおり独占禁止法に違反するものであるということを証券会社はもちろん顧客に対しても十分周知するようにということをこの勧告で求めているわけでございますから、こういったことが徹底されることによりまして、証券会社と顧客との取引関係がこれまであった損失補てんによって何ら左右されることなく、公正な姿で取引関係が行われるものであるということを十二分に期待しているし、またその効果も認められるものというふうに考えておるところでございまして、御指摘のような点について、特段そのようなことを考えるまでには至らなかったというところでございます。
  44. 小岩井清

    ○小岩井委員 勧告を出したということについては評価をいたしておりますことを冒頭申し上げましたけれども、内答的には不十分だということを申し上げておきます。この点については、受取人である企業の監督官庁である通産大臣の見解を求めたいと思いますが、今度におりませんので、戻ったら伺いたいと思います。  続いて、梅澤公正取引委員会委員長は、この種の不公正な取引というのは証券取引規制を行う主管庁が第一義的に規制すべきである、それが行政機能の重複を避ける観点からも有効である、そして、大蔵省の処分の状況等を見定めて、排除措置としてさらに独禁法上の措置をとるかどうかということを最終的に判断したい、こう述べております。今回、勧告を出したからその点についてはいいのですけれども、しかし、この考え方についてはどうなんでしょうか。証取法と独禁法は相互に排除しないということになっております。この答弁だけ見ていると、公正取引委員会は大蔵省の監督下にあるように聞こえるのです。公正取引委員会の主体性はどこにあるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  45. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 これはたびたび御質問、御指摘を受ける点でございますが、再度繰り返して御理解を賜りたいと思うわけでございます。  そもそも損失補てんという行為自身は、投資家の保護あるいは証券取引の公正さというものを損なうものとして証券取引法の法規制のもとで行われることでございます。例えば、ある一社がある一回の損失補てん行為をやったといたします。これを独占禁止法上問擬することができるかどうかという場合に、その証券会社の行いました行為の公正競争阻害性というものを判断する、これが独占禁止法上のこの問題に対する対応になるわけでございますが、証券取引法の法規制のもとにおきましては、損失補てん行為自体だった一件でも許されないということで規制されている法領域でございます。この点をまず明確にしておかなければならないと私は考えるわけでございます。  であるがゆえにこそ、先般の国会で証券取引法の改正が行われまして、この損失補てん自体が明確な法違反である、罰則をもって禁止さるべき行為であるということも明確になりましたし、それから、先ほど委員が御指摘になりました受け取り側も場合によっては法違反を問われる。これは、受け取り側につきましては、独占禁止法の法目的あるいは法体系からいいまして独占禁止法上の措置をとるということはできないわけでありまして、そこはやはり、この種の不公正な取引というものにつきましては証券取引法の規制が明確に行われるということが第一義的に有効であるし、アメリカ等の例を見ましても、証券の不公正取引につきましては、連邦取引委員会がこれに関与したという事例は過去一件もないわけでございます。それはなぜかというと、その不公正な取引を排除するための最も有効な法規制、同時にそれを効率的に行うための行政コストの重複を避けるという点があると私は思うわけでございます。その考えを今日まで私はるる申し述べてきたわけでございます。  ただ、今回は、証券取引法が改正前の領域におきましてはこの損失補てん行為自体が法違反にはならないということも確認の上、かつ、大蔵省が営業停止等各種の処分をとったわけでございますけれども、それに加えて、改正前の証券取引法のもとにおいては独占禁止法違反であるということも明確にすべきであるという判断に立って今回勧告を行ったわけでございます。行政機能の重複ということを私がたびたび申し上げましたのは、今回のような事件につきまして、同じ時期に行政機関が同じ検査に着手するということは明らかに行政効率の重複になるし、行政コストの点からいっても決して合理的ではない。今回も、もし新たに公正取引委員会が立件をいたしまして審査手続に入るとすれば、大蔵省と並行いたしまして、かなりの時間が私はかかったと思うわけでございます。その意味では、大蔵省の検査結果を手がかりとして短時日のうちに効率的な措置をとるということが、行政機関の判断として私は今でも適当であったと考えております。  この種の事件に着手するに当たってそれを後にするか先にするかということは、専ら行政効率の点からいって行政機関が責任を持って判断する、もちろんそれについての合理性なり効率性の御批判は十分受けなければならないと思いますけれども、その検査に着手する場合の適当な時点、その進め方、これは行政機関が責任を持って判断すべき問題であると私は考えておるわけでございます。
  46. 小岩井清

    ○小岩井委員 通産大臣が席にお着きになりましたので、大臣伺いたいと思います。  証券会社による損失補てんの問題について、きょう大手四社に対して、独占禁止法第十九条違反ということで勧告が出たわけですね。そして排除措置が二点ある。ただし、十九条違反だということを明確にしながら、排除措置は、「今後、上記行為と同様の行為を行わないこと。」というのが第一点。それから、「証券四社は、今後、顧客との取引関係を維持し、又は拡大するため、顧客に対し、損失補てん等を行わないこと。」ということで、両方とも「今後」になっているわけですね。ということは、この独占禁止法第十九条違反の、違反の効果は残ってしまう。ということは、もう少し詳しく言うと、その損失補てんを取り戻さないと違反の効果が残ってしまうじゃないか。  ただし、受け取り側には独占禁止法の勧告には及ばないという答弁がありました。受け取り側はほとんど企業でありますから、そういう面では監督官庁である通産大臣の見解を求めておきたいわけです。以上です。
  47. 渡部恒三

    渡部国務大臣 大変難しい御質問。損失補てんの問題は、今お話しのように、一義的には証券会社によって行われた証券市場の公正さを害する不適切な行為である、こういう判断がなされております。他方、損失補てんを受けた企業の側にも、結果として自己責任原則の認識を欠いた面があったということは、これは否定できないと思います。  ただし、企業が受けた損失補てんの具体的な取り扱いについては、これはあくまで個別の企業の自主的な判断によってこれを行うものと考えます。ただ、いずれにしても、企業も社会的に非常に重要な存在でありますから、企業が社会に対する責任を自覚して行動することが極めて重要なものである、こういう認識を持っております。
  48. 小岩井清

    ○小岩井委員 かなり時間が経過をいたしておりますので、次に移ります。  刑事罰について、独占禁止法に関する刑事罰研究会の中間報告が、本年五月十七日に出されておりますね。この「中間報告を踏まえ、事業者及び従業者等の罰金刑の上限の切離しに係る具体的問題、罰金刑の強化を行うべき独占禁止法違反行為の範囲、罰金刑の水準、いわゆる三罰規定の見直しなどの点を中心に刑事罰の強化に係る具体的問題点の検討を行うこととしており、本年秋頃までに結論を得ることを目途としている。」というくだりがありますね。刑事罰研究会。この間の経過七、中間報告ですから最終報告はいつ出るのか、この点について伺いたいと思います。
  49. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘のとおり研究会の中間報告が出まして、その後数回の研究会を開催していただいております。実は本日も午前中から午後にかけましてこの研究会をやっていただいておるわけでございますが、現在の研究会の御討議あるいは作業の状況から見まして、私どもが期待をいたしておりますのは、十二月の中ごろまでには最終報告をちょうだいしたいというふうに考えております。  内容につきましてはまだ現在御討議の過程でございますけれども、独占禁止法第三条、つまり私的独占並びにカルテルの部分を中心といたしまして、現行の罰金刑の上限は事業者、いわゆる会社に対しての罰金刑の上限が五百万でございますので、これを相当大幅に引き上げる必要があるという方向で今議論が行われております。同時に、御案内のことと存じますけれども、この行為者と法人事業者等の刑罰の切り離しにつきましては、法務省の法制審議会の刑事法部会でも同じような方向で今議論が行われております。私どもは、法制審の御議論の経過も見ながら、十二月のしかるべき時期に最終報告をいただきまして、これは法律改正を要する問題になりますので、関係方面との調整なり御理解を賜りながら立法化をぜひお願いしたいと考えております。
  50. 小岩井清

    ○小岩井委員 先般の通常国会の折に、課徴金についての法改正がありましたね。その折の質問で、これは刑事罰についての改正についても同時に行うべきではないかというふうに申し上げました。今の考え方について、前向きだというふうに理解はいたします。  それで、中間報告の中に、「研究会の検討状況については、今後も随時独占禁止懇話会に報告するとともに、法務省とも密接な連絡をとりつつ、研究会の最終的な結論を得た上で、その後関係機関との調整を図りながら、制度改正の実現に努めることとしている。」こうなっていますね。本年度中に最終報告が出るという話を今伺いました。というのは、通常国会に法改正として提案をされるというふうに理解してよろしいですか。
  51. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま申し上げましたように、最終報告は、年度内といいますか、年内にいただけるということでございます。したがいまして、通常国会に立法のための手続をお願いするとなれば、その後関係方面、もちろん政府部内の調整というものが必要になるわけでございまして、そういった手順を踏んで、私どもの念願といたしましては、通常国会に提案できる運びになればということを強く念願しておるわけでございます。
  52. 小岩井清

    ○小岩井委員 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、この金利と手数料問題ですね。  先ほどの証券問題に戻りますけれども、各社一律に近い社債の受託手数料、元利払い手数料等の設定があった。これは相談等のカルテルがあったかどうか、この点について伺っておきたいわけです。もう既に独禁法上の措置はこれでおしまいだというわけですから、この点についてはあるいはないというふうに御答弁いただくのかもしれませんけれども、確認の意味で伺っておきたいと思います。
  53. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど独占禁止法上の措置を終結したいと申し上げましたのは、今回の一連の損失補てんの問題だけでございます。御指摘のように、この金融あるいは証券の各種の取引慣行については、今日種々の議論がございます。これもたびたび国会で私どもの考え方を申し上げているところでございますけれども、これは金融、証券に限らないとは思いますが、寡占産業それから政府規制を多く受けている産業分野におきましては、ともすれば協調的行為あるいは独占禁止法違反につながりかねない商慣習というものが生じがちでございます。なかんずく金融あるいは証券につきましては、長い期間政府規制の範囲というのは非常に広うございました。しかし、これは今日自由化あるいは競争促進に向けて制度改革の議論もされておる時期でございます。したがいまして、私どもは、自由化に向けての制度改革について強い関心を持つと同時に、関係省庁との調整を今後積極的に進めてまいるという制度論の立場と、もう一つは、明白な独占禁止法違反があれば当然これは厳正な措置を講ずるわけでございますけれども、独占禁止法違反の行為ではなくても非常に不透明である、わかりにくい慣習というものにつきましては、むしろこの機会に公正取引委員会としても全般的な慣習の見直しについて強く要請をいたしたいと考えておるわけでございます。
  54. 小岩井清

    ○小岩井委員 今の点については、今後の公取の進め方について見守っていきたいというふうに思います。  次に、ラップ業界、塩化ビニール製業務用ストレッチフィルム業者の告発について伺いたいと思います。  十一月六日、公取は独禁法第七十三条第一項の規定に基づいて検事総長に告発を行った。委員長談話が出ておりますが、「当委員会は独占禁止法の運用強化の一環として、昨年六月に、「独占禁止法違反に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針」を公表したところ、本件は、短期間に二回にわたり大幅な価格引上げが協定され、また、この協定に参加した企業の多くが過去に独占禁止法違反により審決を受けたものであることなどから、この方針に照らし告発すべき事案と判断して告発を行ったものである。  当委員会としては、今後ともこの刑事告発に関する方針に従って刑事告発を積極的に行うなど独占禁止法の厳正な運用色行うことにより、公正かつ自由な競争を促進してまいりたい。」委員長談話の中にこのように述べられておりますね。「この協定に参加した企業の多くが過去に独占禁止法違反の審決を受けたもの」とありますけれども、過去に独占禁止法違反で審決を受けている企業と業界についてはこのラップ業界だけではないのではないかと思うのですよ。この点について、今回、告発したのは悪いと言っているわけではないですよ、非常に勇断を持ってやられたというふうに考えますけれども、しかしこの業界だけじゃなくて、過去に審決を受けた企業と業界というのはまだまだたくさんあると思うのです。この点について、今回告発に踏み切ったラップ業界以外の業界について過去の事例を具体的に挙げていただきたい、こう思います。
  55. 地頭所五男

    ○地頭所政府委員 ラップ業界は石油化学業界に属するわけでございますが、それ以外の業界で過去に違反行為を多く犯している業界といたしましてはダンボール原紙製造業、ダンボール製造業、セメント製造業、生コン製造業、ガソリン販売業などを挙げることができるかと存じます。
  56. 小岩井清

    ○小岩井委員 今挙げた業界、たくさんありますね。じゃ、なぜラップ業界だけ選んだのですか。
  57. 地頭所五男

    ○地頭所政府委員 公正取引委員会といたしましては、昨年六月に刑事告発の方針を一般に公表したわけでございますが、それ以降における違反行為は、先ほど申しました分野では行われておらないわけでございます。いわゆる刑事告発の対象とするといたしました生産数量協定、販売価格協定、共同ボイコット等の事案でございますが、それはなかったわけでございます。  塩化ビニール製業務用ラップのケースにつきまして告発をいたしました理由は、短期間に二度にわたって相当大幅な値上げ協定をしておる。それから、ただいまも議論になっておりますように、この関係人八社のうち五社につきましては過去に価格協定等の違反歴があるということ。それから、本件カルテルはかなり組織的に行われておるものでございますし、また関係している企業も八社中七社は上場企業である。しかも、カルテルの範囲も全国的にわたって行われ、相当程度の実効性を有していたといったもろもろの点を考慮いたしまして、昨年六月に公表いたしました告発の方針に欠けるところはないという判断をして告発に踏み切った次第でございます。
  58. 小岩井清

    ○小岩井委員 告発したことについて聞いているわけではないのです。これは勇断を持ってやったというふうに評価すると申し上げたわけです。  昨年六月二十日に出された刑事告発に関する公正取引委員会の方針、今言われました。具体的に二点あるわけですわ。「一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル、供給量制限カルテル、市場分割協定、入札談合、共同ボイコット、その他の違反行為であって国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案」これが一項目ですね。二項目が「違反を反復して行っている事業者・業界、排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち、公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案」、今のものはこの二点目に当たるのではないかというふうに思いますけれども、今回世間一般に言われていることを御存じですか、スケープゴートにしたと言われていますね。まだまだたくさんあるのではないかというふうに思うのですよ。今言われた段ボール、セメント、生コン、ガソリン、一つ抜けているのではないですか、建設業界が抜けていますね。それらはこの二点の公取の方針に当てはまる違反行為がたくさんあるわけですね。なぜこれだけなのか。ただし、今後これをきっかけに積極的にやるというふうに、まだ全然そういう意思表示は、答弁はいただいていませんけれども、その辺のところも含めて、これは委員長から伺いたい。あわせて、現在告発をするという結論は出ないまでも、この二点に該当するということで調査をしている企業ないし業界はありますか。この点についても伺いたい。
  59. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず第一点目でございますけれども、昨年六月に公表いたしました告発の方針、ただいま御引用いただきましたとおりでございます。これはいわば二つの基本的な方針でございまして、実はあの方針を発表いたしました後、法務省との間でこの告発方針を実行に移すための詳細な運用基準を定めてございます。しかし、これは抑止力を減殺するという観点から、この告発基準の公表はいたしておりません。したがいまして、この運用基準をつくったということは、先ほど来委員も御指摘になっておりますけれども、今後公正取引委員会がこの告発権を発動する場合に恣意的であってはならないということで、運用の基準を定めておるものでございます。したがいまして、今後この方針に照らし、かつ運用基準で定めるものについての違反事件が生じました場合は、業種のいかんを問わず告発をいたしてまいります。  それから後の方の御質問でございますけれども、この点については、私どもの業務の遂行上がっこれが仮に告発につながるような事件であるとすれば、将来の捜査の支障という問題もございますので、具体的な事件についての御答弁は御遠慮させていただきたいと思います。御了解を賜りたいと思います。
  60. 小岩井清

    ○小岩井委員 今後業界を問わずこういう事案があれば積極的に告発するということですね。ということは、なぜこういうことを言うかというと、この独占禁止法は専属告発なんですよ。公取しか告発できないわけですね。ですから、積極的に独占禁止法の目的に沿っていくということになれば、これは告発していかなければ独占禁止法の目的に沿っていく独禁政策というのはできないと思うのですね。ですから、その面で申し上げているわけです。二点目については具体的に申し上げられない、これはそのとおりだと思います。しかし、きちんと調査をして今後あるべき告発の方向に向けて頑張っていただきたいというふうに思います。  以上が、ラップ業界の件についてであります。  最後になりますが、公正取引委員会委員の構成について伺います。来ていますね。――公正取引委員会委員長及び委員の構成について、今回伊従寛氏が任期満了になったというふうに聞いております。この伊従氏を除く四名の出身官庁名を伺いたいと思います。
  61. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、公正取引委員会委員のうち、一名は任期満了で欠員になっておりまして、現在委員長を含め四名となっておりますが、その出身省庁別の内訳は、大蔵省、通産省、法務省及び公正取引委員会事務局の出身者各一名となっております。
  62. 小岩井清

    ○小岩井委員 大蔵省、通産省、法務省、公正取引委員会事務局といいましたね。公正取引委員会事務局の方は、事務局に来る前はどこですか。
  63. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 ただいま先生御指摘の委員につきましては、公正取引委員会に行かれる前は大蔵省で勤務しておられました。
  64. 小岩井清

    ○小岩井委員 ということは、大蔵省二名、通産省一名、法務省一名というのが正確でしょう。どうですか。
  65. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 ただいま先生御指摘の点でございますけれども、御指摘の委員は五十六年の七月に公正取引委員会の事務局の方に移られまして、私どもといたしましては公正取引委員会の事務局の御出身ということで受けとめております。
  66. 小岩井清

    ○小岩井委員 私どもはそういうふうに見ていないのですよ。大蔵省が二名いると見ているのですよ。ということは、任期満了となった伊従さんは公正取引委員会の事務局長から公取の委員になりましたね。これは一般的な評価では、この公取の職員として積み上げてきて、独禁政策推進の上からも功績のあった方だと言われているのです。私も率直にそう思います。  それで、公取からの登用ですね、公取プロパー、この人は大蔵省ですよ、公取プロパーじゃないですよ、さっき言った方です。公取プロパーから登用することの重要性については、伊従さんの実績が示していると思うのですよ。どうですか。要するに、公取の職員として積み上げてきて、その中で登用されていくという道をふさぐじゃないですか、どうですか。
  67. 武藤山治

    武藤委員長 委員長の感想、どうですか。プロパーの人を出すことは。
  68. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 申すまでもないことでございますけれども公正取引委員会委員長を含む委員の任命は、国会の御承認を経て内閣総理大臣が御任命になるわけでございます。私自身は現在任命されている立場の人間でございますので、人事の構成等については委員長という立場では申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  69. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 独占禁止法は企業の事業活動の基本ルールでございまして、絶えず変動する経済事象に適用され、また事業活動を規制の対象とすることから、公正取引委員会委員長及び委員には、その職務上、法律経済に関する豊富な知識と高度な専門性が必要とされております。  現在、国際的により開かれた市場の実現や経済力に見合った豊かな国民生活の実現が課題となっている中で、内外の事業者の公正かつ自由な競争を促進するという観点から、独占禁止政策への期待が高まっているところでございますが、このような職務の重要性にかんがみまして、公正取引委員会委員長及び委員には、公正取引委員会の事務局の出身者であると否とを問わず、法律に定める資格要件を有する者のうちから適切な者を広く人選していくことが重要だと考えております。
  70. 小岩井清

    ○小岩井委員 それでは伺いますけれども、五名の委員の構成の理想的な姿というのはどういうことなんですか。言ってください。大蔵省、法務省、通産省、外務省の利益代弁者的な構成はやめるべきじゃないですか。
  71. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 公正取引委員会委員は、年齢三十五歳以上で法律または経済に関する学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命することとされております。公正取引委員会行政は、経済の広範な分野におきます事業者の活動を対象とし、かつ処分に当たり準司法的手続がとられるなど、法律経済に関する豊富な知識と高度な専門性が必要とされておりますところから、法律関係の学識経験者と経済関係の学識経験者をもって構成されております。  現在の公正取引委員会委員は、いずれもこのような観点から法律に定める資格要件を有する者のうちから両議院の同意を得て任命されたものでございまして、人格、識見ともにすぐれた方々であって、法律を厳正かつ公正に運用しているというぐあいに考えております。
  72. 小岩井清

    ○小岩井委員 では伺いますけれども、公取プロパーの人は法律経済の学識がないということなんですか。今言うのはそういうことか。
  73. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 ただいま先生御指摘のようなことを決して申し上げているわけではございませんで、委員長及び委員の選任に当たりましては、公正取引委員会事務局の出身者であると否とにかかわらず、広く適材を人選するのが適当であるということを申し上げております。
  74. 小岩井清

    ○小岩井委員 公取プロパー、公取出身者が一番適任だと思いませんか。どうですか。
  75. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 ただいまもお答え申し上げましたとおり、公正取引委員会事務局の出身者であると否とを問わず、広く適材を人選するのが基本であると考えております。
  76. 小岩井清

    ○小岩井委員 同じことばかり繰り返しますね。これについては重大問題なんですよ。というのは、一連の証券問題をめぐっても、それから今までの独禁政策上の問題までも、梅澤委員長は立派な方だと私は思いますよ。だけれども、大蔵省が二名もいるから大蔵省に弱いと言われているんだね。「“主”に遠慮?重い腰」なんて新聞に書かれているでしょう。それから「国内人事情報」、私初めてこれを見たのだけれども、来年の十月に梅澤委員長、任期満了になるんだそうですね。来年の十月に任期満了になる後任の人の名前まで出ているのですよ。お名前は申し上げませんけれども、「前大蔵次官、三十一年入省の就任が確実視されている。」経歴まで出ている。見ましたか、これ。こういうことが出てくるんだよね。非常に不明朗だね。どうですか。しかも来年の、一年先の人事まで出ている。
  77. 梅崎壽

    ○梅崎説明員 現在の梅澤委員長の任期は来年の九月二十三日までとなっておりまして、現時点で任期満了後の委員長大事について政府側で特に申し上げる段階ではないと考えております。  そこで、ただいま先生御指摘の雑誌というのは私どもも拝見させていただきましたけれども、これは私どもとして関知しているものではございません。
  78. 小岩井清

    ○小岩井委員 これは関知したら大変ですね。委員長、不愉快じゃないですか、自分の後任まで名前出されて。まだ再任の道だってあるのでしょう。しかも来年のことまで、これは鬼が笑うどころじゃないですよ。委員長、どうですか。
  79. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 この問題につきましては、内閣官房で所管されておるところでございまして、先ほど来内閣官房の方からお答えになっている以上のことを私から申し上げる立場にはございません。
  80. 小岩井清

    ○小岩井委員 質問者として大変不愉快ですね、最後にこういう質問をするのは。厳重に御注意申し上げておきます。  終わります。
  81. 武藤山治

    武藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  82. 武藤山治

    武藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安田範君。
  83. 安田範

    ○安田(範)委員 質問に入ります前に、渡部通商産業大臣就任大変御苦労さまでございます。今日の大変に変動の激しい時期の大臣就任でありますので、ぜひ精いっぱいの立派な商工行政を推進していただきたい、かように感ずるわけでありますが、企画庁長官同じでありますが、特に通産大臣につきましては、古くからこの商工委員会についてはかかわりが深い。とりわけ商工委員会理事をやられましたり、あるいはまた商工委員長をおやりになった、こういうようなこともあって今回の大臣就任でありますが、特にそういう中で、商工委員長が私どもの先輩であります武藤委員長であります。さようなことから、大臣委員長、車の両輪のごとくと申しまするか、そういう関係で十分連携を深めていただきまして、円滑な通商産業行政に取り組んでいただきたい、このことを冒頭心からお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、初めに通商産業大臣通商産業行政に対する基本姿勢、こういうことでお伺いをしたいと思うのであります。  大臣は、今言いましたように、大変商工には深い造詣を持っておられるわけでありまして、そういう意味からしますると、私どもも今後の行政手腕と申しまするか、指導的な立場における力の発揮、こういうものに大変な期待をいたしているわけであります。  そこで、今日の東西対立の解消、こういうものに伴いまして、新しい世界の秩序を構築していく、こういうようなことで、特に平和の構築の問題であるとかあるいは市場原理の徹底であるとかさらにはまた貿易障壁の解消そして経済圏域の問題であるとかあるいはブロック化の問題、こういうことで大変多くの問題が山積をしているわけだと思うのですね。そういう意味からしますると、特に我が国の通産行政、これも今日までのありようではなくして、大きな認識の転換ともう一つは当面する問題への対処、こういうものが極めて重要だと思うのですね。したがいまして、今日変転する国内外の状況に照らして、通産省といたしましてどういう極めて大きい課題があるか、この認識の問題とそれに対する適切な対処の仕方、これについてまず基本的にひとつお伺いをしておきたい、かように思います。
  84. 渡部恒三

    渡部国務大臣 冒頭大変温かい励ましのお言葉をちょうだいいたしまして、武藤委員長、私の早稲田大学雄弁会の最も尊敬する先輩でございますので、この前の国会のときいろいろ心配されましたけれども、商工委員長になっていただいてよかったなと私も通産大臣就任のとき大変気を強くいたしております。  今安田先生からのお話にありますが、まさに東西冷戦の終結後の新しい世界の秩序をつくっていくという中で、経済情勢も、ソ連、東欧のあのような状態、また南北問題、大きく変化をしてまいりました。先般、お許しをいただいてアジア太平洋閣僚会議出席して、私はこのことを肌で感じましたが、ASEAN六カ国の経済閣僚と話をしまして、大変我が日本に対する期待が大きい、また、大洋州、オーストラリア、ニュージーランドといったような人たちの期待も大きい。我々はこれから北米、ASEAN、NIES、それぞれの国の中で、しかもアジアにおける唯一のサミット参加国として重い重い責任がある。まず第一に、世界経済日本がいかに貢献するかという新しい時代にやってまいった。また、国内的にも、六十一年以後いわゆるインフレなき持続的成長が続いてまいりましたけれども、なかなか世の中そう都合のいいことばかり続くものではありませんで、最近日本景気にも心配される問題がいろいろ出てまいりました。  その中で日米貿易摩擦は、私も先般ベーカー国務長官あるいはヒルズ通商代表などとの会見の中で、さらに厳しいものになっておることを肌で感じました。しかし、日米問題というのは、先ほども私は申し上げましたが、明治維新以後近代日本百二十年の歴史の中で、日本アメリカが不幸な状態になっておるときは世界が不幸な状態になっておるときでありますから、難しい懸案を辛抱強く力いっぱい解決してこれも前進をさせていかなければならない。また、宮澤内閣生活大国ということをスローガンに掲げましたけれども、これからは経済と生産というものも消費者優先、消費者のニーズにこたえるということでやっていかなければならない。  いろいろ私は、問題を多く抱えておる厳しい時期に大変重い責任を仰せつかったということで痛感をいたしておるのでありますけれども、先生御指摘のとおり、二十一世紀に向かっての新しい世界の新秩序の中で、また、新しい我々の生活大国を目指しての国の進むべき方向の中で通産行政というものを進めてまいりたいと思いますので、先生のなお一層の御指導お願いいたしたいと思います。
  85. 安田範

    ○安田(範)委員 御指導なんというわけにいきませんけれども、そういうことで今の御決意をもとにしまして精いっぱいお取り組みをいただきたいと思うのですが、特に日本が先進国という立場から考えますると、日本の動向、これは国際社会に大変な影響を与える、こういうことはもう当然の話でありますから、そういうことも十分に含めて適切な対処をお願い申し上げたい、かように思います。  それと、お話の中にありました宮澤首相の所信の表明、同時にまた先ほど大臣からもこの場で表明がありましたが、生活大国へ転換をしていく、このことにつきましては後ほどまた触れさせていただきたいと思うのでありますが、これはやはり今日の通産行政の中で政策の大転換をする一つの柱だ、かように私ども認識をいたしておりますものですから、これについては改めてまたお尋ねをしたいと思うのであります。  そこで、今の御答弁の中にありました、過般ソウルで開かれました第三回のアジア太平洋経済協力閣僚会議、APECの関係でありますけれども、これについて関連をして質問をさせていただきたいと思うのであります。  大変お忙しい時期に出張された、こういうことで、御苦労についてはお察しを申し上げるわけでありますが、こういう中で我が国はこの会議の中で、ガットウルグアイ・ラウンド、これの年内の実質合意を全力を尽くして解決をする、こういう表明をされた、同時にまた、それぞれの加盟各国におきましても、相次いで新ラウンドの推進の必要性、こういうものについて表明をされた、こんなことを知らされているわけであります。さらには、先進国と発展途上国の南北調整問題、こういうものが続いております。農業あるいはサービス貿易の扱い、さらには日本が拒否姿勢をとり続けております単純外国人労働者問題、こういうものも討議のテーマになってまいった、こういうように聞き及んでいるわけであります。こういう中で宣言を採択したという状況になってきているわけでありますが、その宣言によりますると、アジア・太平洋地域内の将来の自由貿易形成に一歩踏み出す、こういうような状況になりつつあるのではないかな、こういうような印象を深めたわけであります。  もう一つの問題としましては、この構想に対しましてアメリカベーカー国務長官経済ブロック化の懸念を表明した、こういうこともあるわけ、ですね。そういうものと、もう一つ別の問題としましては、北米の経済協力関係ですね。アメリカ、そしてカナダ、メキシコ、この三カ国で経済ブロックをつくるというような形になってきているわけですね。こういう問題を一連のものとして考えた場合に、これからの調整は非常に大変だろう、こういう印象を一つ持つわけであります。  もう一つは、この加盟国には御承知のように社会主義国もある、アメリカ日本のように先進国もある、そしてまた御承知の発展途上国もまた混在をしている。こういう状況でありますから、それらを含めて加盟国全体の自由貿易構想、こういうものを進展をさせつつ、このブロック全域がこれから大きく発展をしていく、こういうものにはいろいろな調整が必要なんじゃないか、かように考えるわけであります。それらの調整、非常に困難かと思いますけれども、今後の見解と申しまするか見方、言うならば受ける側、そういうものと反対の側、そういうものもあろうと思いますので、それについての若干の見解をお示しいただきたい、かように思います。
  86. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさに安田先生がおっしゃるとおり、今回のアジア太平洋閣僚会議、今後の日本世界における責任を痛感させる幾つかの問題がございました。  その前に一言お礼を申し上げさせていただかなければなりませんのは、国会開会中にもかかわらず与野党の皆さん方の御理解を得てこの会議出席させていただきました。行ってみましたらランチタイムというのがありまして、これは閣僚以外の者は参加させない、しかもそこで非常に重要な会合がなされて、最初に高級者レベルでつくった原案に対してある国の閣僚から修正案が出たり、いろいろあったのですけれども、あのとき従来のように我々閣僚が日本から出席できていなかったとすれば、これは欠席裁判になっておったので、国会皆さん方の御理解世界の中の日本の責任を御理解いただいて、会議の初めから終わりまで出席させていただいて日本の立場を十分に世界の人たちに申し上げる機会を持つことができたことを、これはお礼を申し上げなければなりません。  今度のアジア太平洋閣僚会議、御承知のように中国、台湾、香港、三つのグループが新しく参加をいたしました。私はアジア・オリンピックでスポーツが政治の壁を越え、さらに今回経済が政治の壁を越え大きく前進していることを評価いたしております。また、前二回の会議では共同宣言というものを採択することができなかったわけでありますけれども、今回は、激しい各国間の議論はありましたけれども、その中で共同宣言が行われました。また、こういう会合は非常にいいことだから継続してやろうということで、事務局の設置あるいは予算を各国が持つというようなことも行われました。その中で、マレーシアが参加する、しないというようなことで心配されましたが、法務大臣が、あの国では法務大臣が総理の次に高い重い立場にあるそうですけれども出席をいたしまして、今先生御心配のいわゆる北米あるいはASEANといったような地域主義心配されましたけれども、その地域主義を、ブロック化を乗り越えて大きく世界に向かって開かれた経済を進めていこう、こういう基本方針が決められました。  私は記者会見で、日本の果たすべき役割はかつて私が経験した国対委員長のようなものだ、北米、またASEAN、NIESあるいは大洋州といったようなそれぞれの特色のある地域が、それぞれの地域の独自的な考え方がありますけれども日本はいわばその中で中心的役割、こう言うと言葉に誤解を生ずるおそれがありますけれども、いわばそれぞれの国と共通の接触点を持てるという立場でこれを調整していく大きな役割を持っておるのではないか、こういう責任も感じましたので、いずれにしても我が日本は貧しいあの戦後の荒廃の中から、平和で自由な経済活動によって今日の豊かさをつくり上げてまいったのでありますから、世界が平和であるように、そして自由にみんなが交易できるように、その先頭に立って頑張らなければならないという重い責任を痛感して帰ってまいったことを御報告させていただきます。
  87. 安田範

    ○安田(範)委員 時間の関係がありますものですから、再度の質問ということをいたしませんで要望を申し上げたいと思うのです。  最初も触れましたけれどもアメリカ、カナダ、メキシコ、この地域における北米の自由貿易協定、さらにまたマレーシアが提唱していると思うのですけれどもアジア経済協議体ですか、こういうもの、いろいろと問題を残していると思います。そういうものがありますけれども、さらにそれを乗り越える努力、さらにまた経済体制も違うという面もありますし、同時にまた経済の格差というものも非常にひどい状況がある。そういう面からしますると、包括的にはなかなか大変な問題だと思いますけれども、私どもが考えまするのに、やはり今回のアジア・太平洋地域、こういうものについてもうちょっと認識を深める、特に日本の場合はこの地域を中心的に考える、こういう姿勢が非常に大切かなというふうに思うのであります。もちろんECの問題も非常に重大ではありますけれどもアジア中心にしたきちんとした平和を確立をしたり、同時にまた、それぞれのアジア中心国民の人たちが満足のできるような生活の状態というものを築くというのは、何にも増して国際化の時代日本のとるべき政策であろう、かように考えますものですから、ただAPECは大成功だよというようなことだけではなしに、ひとつそこのところを考えてもらいたい。  もう一つは、APECについての日本国民全体の認識というものは非常に低いのではないかと思うのですね。第三回ですからそこまで認識が高まるというわけにはなかなかまいらないかもわかりませんけれども、この辺についても、政府としましてはやはり日本の今日の立場を十分踏まえて、APEC全体についてのPR、こういうものもする必要があるのではないか、こんなことを考えて、一言これは注文を申し上げておきたいと思うのであります。  次に、やはり今日の国際的な重要課題といいますか、国内においてもまさにそのとおりなんでありますが、ガットウルグアイ・ラウンド状況であります。何遍も触れられておりますから詳しくは申し上げませんけれども、とにかく年内いっぱいに何とか全体を成功させよう、こういう雰囲気については十分わかっておるのですけれども、そういう中で私ども一番関心を持たなきゃならないのは、やはり米の問題であります。この米の問題が、成功させるかどうかについて相当かぎのような形で報道されている、こういう面はあると思うのですね。そういうことからしまして、今日、米の問題は十二月合意、年内合意、こういうものについて、どの程度のウエートを持っているのかな、こういう考えを持たざるを得ないのですね。その辺につきまして、貿易担当大臣という立場もあるものですから、さような意味で、米のウエート、十二月のウルグアイ・ラウンド決着とかかわりを持った形でひとつ御答弁をいただきたい、かように思うのです。
  88. 渡部恒三

    渡部国務大臣 農業の問題、御案内のようにアメリカとECの問題、またアメリカ日本の問題、いろいろあった中で、やはりこれは多角的貿易ということで、ウルグアイ・ラウンド決着をつけようということで今話が進められておるわけでありますけれども、結論を申し上げると、先ほども申し上げたように、我が国は自由主義経済によって世界の中で国民が最も恩恵を受けておる国でありますから、このルールを決めていくウルグアイ・ラウンドは何としても成功させなければなりません。  成功させるための幾つかの問題がありますけれども、その中で農業の問題、特に米の問題がシンボリックに報道されておるわけでありますが、これは農林水産省の問題でありますけれども、私の所見を申し上げさせていただくならば、この問題を避けて通ることはできない、いずれ内閣が決断する時期がやってくると思います。  ただ、誤解のないように一言つけ加えさせていただきますと、そのことが農業を犠牲にするというようなことであってはならないので、やはり我が国国会決議もあり、また今、穀物の大部分をアメリカから輸入しておる現実もあり、また、農林省が奨励して農家の皆さん方につくっていただいた水田の八十万ヘクタールを減反しておるという現実もあるのでありますから、そういう中で、これは農林水産省の問題でありますが、政府全体としても、農家、農民の皆さん方を犠牲にしない、将来に展望を持たせるというような前向きの農業政策の中で、農家の皆さん方理解を得て、このウルグアイ・ラウンドを成功させるために、あるとき政府は決断しなければならない、このように考えております。
  89. 安田範

    ○安田(範)委員 大臣の答弁を聞いていますると、率直に申し上げましていろいろな考えが浮かぶわけです。これは基本的には、私どもは米の市場開放は許してはならないということ、同時にまた、関税化の問題についても、これは阻止をしていきたいな、こういうふうに結論として申し上げたいわけであります。  大臣になられまして日経新聞のインタビューがありましたね。そのときから大分トーンダウンといいますか態度が変わったな、こんなふうな印象を非常に強く受けているわけなんですよ。特に、昨日の読売新聞でしたか、各閣僚、自民党の人たちの多数が、五十万トンぐらいの受け入れはやむを得ないのじゃないか、こういうような合意もしたというようなことが報道されておるわけであります。  こういうことから見まして、大変失礼なことを申し上げますけれども渡部通産大臣、かつてはベトコン議員などと言われましたり、これは今の渡辺外務大臣と一緒でしたが、まさに農民を代表する、こういう立場の中で大変な御努力をなされたという経緯も、大臣は福島県で私は栃木県でありますから隣の県でして、十分記憶に鮮明なものがあるわけで、そういう面からしまするど、今日、今の答弁も含めてなんですけれども、豹変とまでは申し上げませんけれども、大分柔軟な形に変わった。  ただ、私どもが考えまするのに、国会決議を三たび繰り返し行ったということについてはやはり重く受けとめておく必要があろう、こういうことに尽きるわけであります。こういうことについては、ここでいろんな議論をしてもせんないことということになろうかと思いますから、その気持ちをひとつ十分に受けとめていただく、同時にまた、農民、農家を犠牲にしないという今のお話がございましたけれども、結局自由化あるいは関税化ということになりますると、もう言葉にはどう表現しましょうとも、実質的にはこれは相当の農業の破壊につながるような状況が生まれてくるのではないか、こういう懸念を私ども強めておるわけでありますから、この辺については、ひとつしかと受けとめておいていただきたい、かように考えて次の項に移らせていただきます。  時間が過ぎるのが大変早いものですから困っちゃうのですが、次に、いわゆる通産省編の九〇年代の通産政策のビジョン、これについてお聞きしたいと思うのです。  このビジョンにつきましては、六〇年代あるいは七〇年代、八〇年代そして九〇年代、四回目かと思うのでありますが、それぞれの政策ビジョンというものを見てみますると、政策目標というものは大変大きな変化を遂げつつある、こういうことに気づくわけであります。そういう中で特に今回は、今までの生産第一と申しまするか、企業社会と申しまするか、そういう一つの物の考え方を基盤にしてやられた通産政策、あるいは国全体の政治の方向もそうではなかったかというふうに思うのでありますが、それを今回九〇年代のビジョンで初めて生活というものを大きく前面に押し出した。言うならば、目をみはるほどの大転換のビジョンではないかな、こういうふうに感心をしているわけです。そういう面では、決して悪い方向ではなくて、今日までの経過を踏まえて、企業社会から人間社会という立場におきましては大変高く評価をしてもよろしい、こういうふうに感じて読ませていただきました。  ただ、そういう中で非常に心配なのは、ビジョンだから仕方があるまいというようなことになるかどうかは別にしまして、やはりビジョンということでも、発表するということになりますると国民に大きな期待を与えるわけですね。これは必ず多くの皆さんが期待を持つ、同時にまた関心も深くなる、こういう状態があると思うのでありますが、今までの経過を見ますると、特に七〇年代、八〇年代のビジョンから見ますると、実績というものはどこまで上がったのだろうか、政策というものがビジョンに大体どのくらい忠実に計画されたのかな、こういう面では非常な私ども、不信感と言っては悪いのですが、言葉は悪いかもわかりませんけれども、そういう不信感を持つような今日までの経過というものがあったように思えてならない。したがって、今回のビジョンにつきまして、やはり一つはアクションプログラム、こういうものをつくって現実にそれらのビジョンが政策化をされる、こういうような方向というものはとれないものかどうか。これは、通常の都道府県の自治体でありますると、一つの基本構想ができる、そういうことになれば、今度は実施計画というものがきちんと計画をされて年次別の予算化もされる、こういうことで、住民の皆さんに十分にわかりやすいような形でそれなりの政策が展開をされるということになっているのですが、ただ、残念ながら今日までのビジョンの経過を見ますると、それらがどうも実施に当たっての具体性が乏しい、こう指摘をせざるを得ないのですけれども、この辺についてはいかがなものでしょうか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  90. 渡辺修

    ○渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のとおり、昨年の七月に発表されました通産省の九〇年代ビジョン、これは産業構造審議会の答申でございますが、大きく三つの柱を打ち出しておりまして、国際社会への貢献、それからゆとりと豊かさのある生活、さらには長期的な経済発展基盤の促進、こういうことで御指摘のとおりでございます。  この九〇年代ビジョンをもとにいたしまして、例えばそれの初年度に該当いたします昨年度でございますけれども、通産省、毎年翌年度の重点施策というのを全省ベースで検討いたしまして、予算、税、財投、さらには法律その他あらゆる政策手段を駆使いたしまして実現していく、こういうやり方をして施策の展開を図っておるわけでございます。  例えば昨年度、平成三年度の例で申し上げますと、先生御指摘のありましたゆとりと豊かさの柱のもとに、大変御支援いただきましたが、大店法改正に伴います魅力ある商店街の整備等々において法律改正をいたしまして、千六百二十億円等の商店街整備のための予算を組んでいただいたとか、あるいは中小企業の労働力確保の観点から、魅力ある職場の実現のために、時短の促進とか職場環境の整備を図っていったとか、あるいはリサイクリング法を通していただきまして、それに伴う一層の環境対策に乗り出すとかといったような個別具体的な成果をゆとりと豊かさを目指して実現いたしたわけでございます。平成四年度につきましても、全く先ほど先生おっしゃったようなゆとりと豊かさというのを一つの柱にいたしまして現在平成四年度予算要求中でございまして、大いにそれを具体的に実施していきたい。  したがいまして、九〇年代は毎年毎年の重点施策の中で九〇年代ビジョンを実現していきたい、これがいわばアクションプログラムである、かように考えておるわけでございます。
  91. 安田範

    ○安田(範)委員 御答弁ありましたけれども、なかなか率直に言ってそう簡単には理解できないわけなのです。というのは、一九七〇年代のビジョンというのがありましたね。その中の通産政策の目標ということで、第一の柱として、人間性豊かな生活の確保というのが出ているのですよ。これはまさに、今回のゆとりと豊かさと同じような形で、やはりそのときの通産省での考え方をまとめられた、まあ一つのビジョンを示したということなのですが、二十年も過ぎて、この中に書いてありますようにいろいろ、経済成長は果たしたけれどもやはりなかなか生活のゆとりとか豊かさが実感できない、こういうようなことが反省点としてあって今日出てきたのかなというふうには思うのですが、それと同時に、反省点だけじゃなくて、今日の経済の伸展の状況からすれば当然のこととしてこのことは提起をされたのであろう、こういう面でも受けとめられるわけなんですね。特にヨーロッパ先進諸国等々の比較の中におきまして、日本の一般の国民、特に勤労市民、こういう人たちの今日の生活の実態、こういうものの中から判断をいたしますると、非常に劣悪といいますか劣っている部分が多い、このことをやらないと、やはりもう政権とかそういうものにもいろいろかかわりが来るというようなことも反省点として出てきたのだろう、こんなことを踏まえて私どももこれを見させていただいたのですが、そういう中で、個々の問題について若干話を聞かせていただきたいと思うのですね。  一つは、概括的に、ゆとりと豊かさという言葉を使うのです、ゆとりと豊かさ。これは、どなたがどういう立場でお聞きをしましてもこのことについてノーと言う人はいないと思うのですね。が、しかし、本当の意味でゆとりと豊かさというものを考えてみた場合に、何が豊かさなのか、何がゆとりなのだろうか、こういうことで考えますると、国民それぞれの間で受けとめ方はまちまちだと思うのです。いろいろ、状況の変化、生活の実態の状況も違いますから、あるいは意識の変革も大分あるわけでして、そういう面からしますると、ゆとりとは何だ、豊かさとは何だ、こういうことに気づいてくるのじゃないかと思うのですね。そういう意味についてひとつ簡潔に認識をお聞かせいただけませんか。
  92. 渡辺修

    ○渡辺(修)政府委員 今先生極めて具体的に御指摘いただきましたように、豊かさあるいはゆとりというのはなかなか難しい問題がございまして、実は、先ほど先生御指摘になった九〇年代ビジョンでも、この豊かさとゆとりというのを小委員会を設けまして、あらゆる階層の先生方にお入りいただいて相当議論を尽くしたわけではございます。年代により性別により、あるいは育ってきた環境によって皆さんそれぞれ意見が違います。  九〇年代ビジョンの中では、豊かさというのは一定水準以上の衣食住その他の経済条件が満たされることであろう、ゆとりというのは余裕がある状態を指すものと言えようと、しかしながら、豊かさもゆとりも結局各個人の主観にかかわる性格を有するものであって、本当の意味でのゆとりと豊かさは経済指標の数値だけで示されるものではなく、また統一的な尺度で規定されるべきものでもない、最終的には国民一人一人がみずからの価値観に基づき追求し実現していくべきものであろう、こういうことがうたわれておりまして、そういう意味で、我々の九〇年代ビジョンで豊かさとゆとりを、先ほど申し上げましたが定量的な基準で示すということは答申の中では出ておらないわけでございます。  ただ、そのときコンセンサスがございましたのは、今までの国や企業レベルでの経済的な成功と、今申し上げました個人の生活面での充実感との間に著しくギャップがある、先ほど申し上げましたように定量的には定義はできませんけれども相当のギャップがある、これを九〇年代は埋めていかなきゃいかぬ、そのときの手法としては、個人生活における時間的、空間的、経済的なゆとりと豊かさを最重点にしていこう、こういうコンセンサスが得られまして、これに基づきまして、先ほど来申し上げておりますような幾つかの、消費者重視、労働者重視あるいは長寿社会への対応等々の施策を提言されているわけでございます。
  93. 安田範

    ○安田(範)委員 審議官言われるような状況、私も十分理解をするつもりであります。そういう中で考えられますのは、例えば衣食住などという話が出ました。特に考えられなきゃならないのは住宅の問題、これなどはもう象徴的に人間の豊かさの部分でかかわりを持つのじゃないかというふうに思うのですね。今は大分バブルがはじけたということで宣伝などが少なくなりましたけれども、あのバブルの最中といいますかああいう時期には何億というようなマンションをどんどん宣伝をする、新聞紙上へ広告が出されるというような状況がありました。片や勤労者は、一生懸命働きましても、何年働いても狭いマンション、そんなに立派なマンションじゃなくても購入することができない、こういうことも現実の問題としてあったわけですね、今日もある。そういう面からすると、やはり住宅問題なんかを中心にして考えましても、ゆとり、豊かさ、こういうものについてどうも、それぞれの個別の認識というものはもちろん違うでしょうけれども、余りにも日本のそういう生活環境の整備というか、そういうものがおくれているために豊かさが感じられない、こういうこともあろうかと思うのですね。これは決して住宅の問題だけじゃなしに、例えば交通の問題でもそうですし、広く環境の問題、生活環境全体の問題をひっくるめてそういうことが言える、こんなふうに感ずるわけなんです。  そういう中で一つ一つお聞きをしたいのですけれども、特に住宅環境なんかにつきましては、これは具体的にこのビジョンの中では実施をすべきということではないということもあって、一つの目標といいますか、これならばいいという一つ方向は示されているわけなんですけれども、具体的にそれをどう私どもが現実のものとして受けとめ、そして求めていくかということになりますると、やはりそれぞれの省庁が今日の縦割り行政の枠を超えて十分な協議の中で一つ一つ政策的に具体化をしていく、こういうことが大切だろうと思うのですね。  そういう中で一つ考えられますのは、例えば豊かさを実現させるための一つの住宅の手法ということになりますると、特に今日の未利用地の国土、未利用地の国有地ですね、こういうものをフルに活用して低廉な住宅ができないものかな、こういうようなことも考えます。これは、土地購入というものを考えないで住宅をつくる、そういうことになりますれば、相当低廉な住宅ができると思うのですね。特に今日の中小企業の勤労者、労働者に対してそういうものを提供していくということも一つの方法がま。特に、御承知のとおり四百三十兆という公共投資があるわけでして、それを例えば三十兆円これに回したということになりますれば、これは百万戸つくるということになりましても三十兆で十分可能、大体百平米ぐらいのやつということで考えれば、大体そのくらいの基準で住宅が提供できる、こういう状況にもなろうと思うのですね。できないことではないわけでして、それほどに心を砕いてやれば、いろいろな意味で豊かさが実感できるような政治というものは可能なんではないか、こういう印象も強くいたしているわけであります。  さらにはまた、実はきょうは建設省あるいは労働省、それぞれおいでをいただいて答弁をしてもらうつもりであったのですけれども、なかなか時間の関係がそうはまいりませんものですから、一括して申し上げてしまいますけれども、ともあれ、その住宅の問題なりあるいはまた交通関係、建設省にかかわりがあると思うのですが、交通関係の問題についても、やはり一極集中というものがゆとり、豊かさというものを阻害しているのではないのかな、こういうふうに思うのです。今日の都市の過密の交通、渋滞、こういうものはまさにいらいらだけが募りまして、どなたに会ってお聞きをしましてもとてもゆとりのある環境ではない、こういうことも言われているわけでありますから、そういう面では、生活環境、都市機能、こういうものすべてがやはり豊かさあるいはゆとりと直結をしている、こう見てもらわなきゃならないんじゃないかと思うのですね。  そういうことからしまして、やはり社会資本、これをどう充実をしていくか、特に、四百三十兆の公共投資、これをゆとりと豊かさにどう直結を。させるかという視点でこれから各省庁との協議をやっていただかなきゃいけないな。せっかく通産省でビジョンをつくったわけですから、そのビジョンは各省庁にまたがっているわけですから、通産がやはり指導的な立場で、それぞれの省庁が、縦割りをちょっと緩めていただいて、あるいは機構なんかもちょっと考えてもらった方がいいと実は思っているのですよ。国民生活局がなんかをきちんとつくって、そういう中で全体のこういうゆとりや豊かさが実現できるような政策の展開、こういうものを図る必要があるのかな、こんなこともしみじみ感ずるわけであります。  そんなことを念頭に置いて質問を予定をしておったわけなんですが、こういう考え方はいかがなものか、これは大臣にひとつちょっと御答弁いただけませんか。
  94. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まさに戦後著しい経済成長を遂げておるわけでありますけれども、これは、数字の上で政府が、これだけ我が国経済成長した、こういう説明をしても、国民の皆さんがそれぞれ毎日毎日の生活の中で、日本は豊かになったなあという実感を伴っておらないのが残念ながら今日の現実であり、そのためには、今先生御指摘の交通渋滞のいらいらであるとか、あるいは、一生懸命一生働いても底つき二戸建ての住宅がサラリーマンは持てないとか、問題は各省庁にまたがっております。  まあ日米構造協議、公園、下水道、こういったものに力を入れようということにこれはなっておりますけれども、いわば生活空間、緑と花と太陽を満喫できるような、これが求められておるわけで、それは東京に、あるいは京浜葉、ここに人口が集中してしまうということではこれはできないので、この東京に集中してしまった機能をこれからどんどん宇都宮に、さらにもっと白河の方にとか、どんどんどんどん全国に行って、私は先般まで自治大臣をやってふるさと創生事業を訴えましたが、これはやはり北は北海道から南は九州、沖縄まで、四十七都道府県、三千三百の市町村それぞれの地域に生まれた人たちが、それぞれの地域で未来に夢と希望を持って暮らしていけるような、こういう日本をこれからつくっていかなければならないと訴えてきたわけでありますが、今先生のお話を承りまして、これは全く同感で、先生が大先輩でありますけれども、やはり私と同じ学校で学んだからかなと、今大変共鳴をいたしておるところでございます。
  95. 安田範

    ○安田(範)委員 まあ妙な話になって恐縮なんですが……。  それで、通産行政の中で、特に今、自由競争といいますか、自由経済、自由競争、競争原理といいますか、いろいろなそういう形で表現されておりますように、いずれにしましても、今日の通産行政の考えていることだけではなしに、国全体が市場原理を基本にしているという形で、大体全体の統一した認識になっているように思うのですがね。  そこで私は、非常に心配される面があると思うのです。市場原理ということになれば競争の社会ですね。これは、競争秩序、こういうものを中心にしてやっていくわけなんですが、特に通産行政の中で中小企業、零細企業、この市場原理の中で、いかに中小企業、零細企業努力をいたしましても、いろいろな外的な条件がありますから、そういう中で落後してしまうというものも必ず出てまいる、こういうことが懸念をされるわけであります。  と同時に、後でもちょっと申し上げたいと思うのですが、特に日本の大企業と中小零細企業の賃金の格差というものはひどいわけです。特に大企業の場合には、高賃金の――今の状態は高賃金とは申しませんけれども、まあ比較的高い賃金、その中にやはり福利厚生部分でのいろいろな手だてがなされている。あるいは住宅にしましても、低利の長期の住宅資金なんかも企業によっては貸し出す、こういう状況もあるわけですね。ところが零細企業の労働者ということになりますると、もう賃金も非常に低いし福利厚生施設もない、あるいはもちろん低利の貸し付けなんということは望むべくもないということになりますると、年々年を追ってこの所得の格差というものは拡大をしていく、こういうことが予想されるわけですね。そういう面からしまして、やはり市場原理、こういう中での言うなれば弱い部分、弱い部分についてどのような手だてが必要なのか、これは言葉では幾らでも答弁はできると思うのです、私は。例えば低利の融資がありますよとかあるいはそれぞれの補助制度もありますよとかたくさんのことは言えると思うのですが、しかし現実の問題としてそういう制度融資やなんかを利用いたしましても、なかなか実際問題としてそれらの弱い立場の人たちが浮き上がってくる、まあ技術水準がずっと特別のがあれば話は別なのですけれども、そうでもない通常の、一般的な中小零細企業ということになると、これはやはり谷間に落ち込むのじゃないか。谷間に落ち込んでしまうのじゃないか。そういう面からすると、市場原理と中小零細企業の調和というものが必要なのではないのかな、ここのところががやはり今後の通産行政の焦点として灯を当ててもらいたい。ということは、イコールの問題として、中小零細企業で働いている国民ですね、国民の人たちの底上げをしていかなければならない、こういうことに通ずるものだと思う。そこらのところは明快に一言でお答えいただけるならば結構なのですが、時間がありませんから余り長いお話じゃ困るのですが、いかがなものでしょうかな。
  96. 新関勝郎

    ○新関政府委員 中小企業と大企業との間で賃金格差がやや拡大してきていることは承知しているところでございまして、賃金等の労働条件の問題につきましては基本的には労使間のお話し合いで決めるべき問題なのだと思っておりますけれども、賃金につきましては中小企業の経営基盤を強化するための種々の施策を私ども講じることによりまして、賃金格差縮小のための環境整備に努めてまいりたいと思います。  特に、中小企業基本法というのが昭和三十八年にできておりまして、大企業中小企業との間の格差の是正とか自助努力の促進ということを言っておりますし、小規模零細対策、先生おっしゃいますことは非常に大事なこととして位置づけておりまして、私どもそういうようなことで、施策を講じることによってその環境整備に努めてまいりたいと思います。  また、中小企業の労働力の確保の観点からは、賃金の引き上げのみならず労働時間の短縮とか福利厚生施設の充実等の雇用管理の改善が図られますことが必要であると認識をしているところでございまして、本年五月に制定をしていただきました中小企業労働力確保法を柱といたしまして、職場の魅力向上に取り組む中小企業を総合的に支援してまいる所存でございます。
  97. 安田範

    ○安田(範)委員 これは答弁要りませんけれども、ちなみに申し上げておきますると、労働省の毎月勤労統計調査、これによりますると、一人当たりの賃金と産業別の格差、こういうことで、三十人未満の企業、これは五百人以上を一〇〇としまして賃金を見ますると、五十八年が五九・一%、そして平成元年五七・五%、こういうことなのです。今御答弁によりまして、三十八年かな、中小企業基本法ができた。あたかも改善方向を向いているようなそういう印象を与えるのですけれども、現実には賃金というものは、この五十八年よりも今日の方が賃金格差というのが開いているわけですね。開いているのです、現実の問題として。ずっと開きっ放し。こういう面から考えましても、ただ単に今までの、こういう対策をやりましたよ、あるいはこういう施策もありますよという話だけでは解決ができない、とみにそういう度合いというものが開いてくる、こういうことについても十分に留意をしていただかないと、これから実態に即した商工行政ということにならないのじゃないかな、こういうことを痛感をいたしますので、これは後でまた議論したいと思いますが、今後の問題として御留意をいただいておきたいと思うのです。  ゆとりと豊かさをもっとやりたいのですけれども、予定しておりました部落解放問題関係の通産にかかわる問題、特に商工にかかわる問題、これについて若干質問をしておきたいと思うのであります。  御承知だと思うのですけれども、今日部落産業、こういうものが存在をしているわけですね。これは中小企業庁でしょうかな、部落産業の今日の実情をどのように認識をしておられるか、これをひとつ簡潔にお述べいただきたいと思うのです。
  98. 新関勝郎

    ○新関政府委員 対象地域の産業現状を見ますと、これまでの地域改善対策によって一定の改善が図られましてはいますものの、依然として中小零細企業が大宗を占めておりまして、経営基盤が脆弱でございます。さらに、近年対象地域産業の製品と競合いたします製品の輸入増加でありますとか消費者ニーズの多様化、高級化の急速な進展、さらにはウルグアイ・ラウンドの関税の引き下げ交渉等の環境変化が見られますことから、対象地域産業は極めて厳しい状況に置かれているものと認識をしております。
  99. 安田範

    ○安田(範)委員 認識についてはよくわかりますけれども、ぜひ実態というものを十分に見きわめていただきたい。特に今日の、先ほど話がありましたけれどもウルグアイ・ラウンド交渉をめぐりましてさらに関税が引き下げられる、こういう状況になりますると、一層輸入も拡大をする。特に皮革産業、革靴を含めましてそういう面については大変な影響が出てくるんではないかな、こういうことを痛感をいたします。  特に、今日の部落産業中心というものは主にはやはり皮革産業でしょう。あるいは革靴の関係、そういうものがあろうかと思うのでありますが、これらについて大変厳しいよという認識が示されたわけでありますから、その厳しさに視点を置いてこれからどうそれらの業種を底上げをしていく、対策を立てていく、このことが極めて重要だと思うんです。これは先ほどのゆとりと豊かさ、こういうものとの非常に強いかかわりがあると思うんです。もちろん、部落問題というものは歴史的な今日の背景というものはありますから、これは根本的に解決をしなければいけない問題でありますけれども、ただ、そういう中で、今当面の問題としてゆとりと豊かさが議論をされている。そういう中で、より劣悪な状況で生活をしなければならない部分がある。そういうものをいかにして底上げをしていくかというのが国全体の、国民全体のゆとりと豊かさにつながるんだろうと思うんですね。一部の人たちのゆとりとか豊かさであってはならない、こういうことを基本に置いてひとつ十分な対策を講じていただきたいな、特に関税の引き下げ等につきましては慎重にもなお慎重を期してもらいたいし、もし引き下がったという状況ならば、その中でその影響を受けるそれぞれの産業については最大の力点を置いた行政施策というものが必要である。このことについても、これは大臣にもひとつ御理解をいただいておきたい、かように考えるわけであります。  時間が大変少なくなったのですが、最後に、最後といってもあれなんですが、地対協がありますね。地対協の答申、こういうものを待っていろいろこれからの部落産業等々の施策をやりましょうというのが非常に多いんですね。言うならば、中心的には地対協の答申、これを待ってという状況、これはやはりある部分では今日の政治のシステムといいますか、そういう中で、そういういろいろな機関に答申をいただく、諮問をして答申をいただいて、それを行政化をしていくという手法は全面的に否定するわけじゃありませんけれども、やはり物によりましてはきちんとそれぞれの担当する所管庁がみずからの判断、主体的な判断によってそういうものについてはしっかりした方向を出してまいる、このことがより大切なんではないかなというふうに思うわけです。  地対協の場合はそれぞれの関連する事務次官が十名ですかな、それと学識経験者が十名、大体二十名ぐらいで構成されていると思うんですが、そういう面からしましても、今日の状況を踏まえて通産の果たさなければならない役割、このことを十分に理解をしていただいて、それで主導的な役割を果たす、こういう姿勢を示していただきたいと思うんですが、いかがですか。一言でいいです。
  100. 新関勝郎

    ○新関政府委員 通産省といたしましては、これまで実施してまいりました地域改善対策事業の結果、対象地域産業の一般地域産業との間の格差が一定の改善をされていると考えております。しかしながら、対象地域産業は依然として中小零細企業が多数を占めておりまして、経営的にも厳しい状況に置かれておりますことから、引き続き経営の合理化、設備の近代化、技術の向上等を促進するための施策を講じていく必要があるというふうに考えておりまして、私ども、地対協の審議につきましても、以上のような認識のもとで積極的に参加をしてまいりたいと思います。
  101. 安田範

    ○安田(範)委員 時間が来てしまいましたものですから最後に、実は、部落解放同盟の全国研究集会がありまして、その第十分科会の報告というものを私、見せていただきました。時間がないものですから、その最後のまとめの部分を一言だけ読み上げさせていただきたいと思うのですけれども、これは大臣にも十分お聞きをいただきたいと思うのですが、いろいろずっとありまして、「高額所得者・多額納税者を造り上げていこう。誇りを構築していこう、を合い言葉に」「同盟が指導している税金はタダのように思っている人もいるがとんでもないことだ。我々はさらに水準をアップさせようと努力している。こういう人は卒業してもらいたい、といえばその会員は「私たちのこの誇りこそが、私たちの自力自闘・自助努力してきた姿として是非看板にしていただきたい」」これは個人で二億円、法人で二十億も払っている、そういう部落産業、こういうことで非常に成功した人がいる。そういう人はもう卒業したらいいじゃないかという話をされる。がしかし、そうじゃないよということで、これは私の誇りなんだ、やはり部落というものを大切にして、部落というものに誇りを持って、これから社会的にも十分な評価をしてもらう、そのために私ども努力をしているんだということをはっきりここで申し上げていることなんですね。こういう歴史的な背景、そして今日的な事情、こういうものを十分に今日の考え方としては受けとめていただいて、弱いものについては適切な十分な措置をしていただきたいな、このことを申し上げておきたいと思うのです。  総じて、先ほどのゆとりと豊かさの問題につきましては、まだまだいろいろ申し上げたいことがございますから、後の委員会の中でまた質問の機会を与えていただきまして十分に議論をしてまいりたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わりにいたします。ありがとうございました。
  102. 武藤山治

    武藤委員長 森本晃司君。     〔委員長退席、和田(貞)委員長代理着席〕
  103. 森本晃司

    ○森本委員 質問に入ります前に、まず通産大臣、非常に大事なときに御就任いただきまして、大変おめでとうございます。またいろいろと責任を果たしていただかなければならないと思っております。  もう私から申し述べるまでもなく、今国際化の中の日本をどうするのかという点でございますが、これについて通産省の果たす役割は非常に大きい。それから、同時にまた環境問題が大きくクローズアップされてきておりますが、これに対して果たす役割も通産省として非常に大きい。先ほど来いろいろ安田先生からも話がございましたが、ゆとりと豊かさ、今日までのどちらかというと経済発展一辺倒の日本の政治のあり方から、生活者のための政治、生活者大国へ目指していかなければならない。これら一つ一つをとってみても、我が委員会また通産大臣の果たしていただける役割は非常に大きいのではないか。そのときに通産の政務次官さらにまた商工部会長さらにまた商工委員長、言うならばこの商工委員会に大変造詣の深い力強い大臣が御就任になったと大いに私も期待しているところでございますので、御奮闘をよろしくお願い申し上げます。  そこで、まず最初に外交問題からお尋ねをさせていただきたいと思います。  先般、大臣大臣就任早々にAPECの会合に御出席いただきました。御苦労さまでございました。このAPECは従来から加盟していた十二カ国に中国、香港、台湾という三カ国が加盟して、従来のサロン的な雰囲気から政治経済を含む巨大な地域協議体へ離陸し始めた、そのように言われているところでございますが、会議に参加された大臣の感想とこのAPECに出席した我が国の果たす役割について大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
  104. 渡部恒三

    渡部国務大臣 森本先生から大変温かい励ましのお言葉をちょうだいしてありがとうございます。  APEC、私はいつも言うのですけれども、これは五・四・三、これは工業出荷額の世界の五〇%、また人口で言うと四〇%、面積で言うと三〇%、まさに世界の中でアジア太平洋閣僚会議の意義はまことに大きいと思います。しかもこれは北米また大洋州、ASEAN、それぞれの特性を持った地域、その中で私は、日本はかけ橋としての役割を果たさなければならない。また、社会主義国の典型ともいうべき中国も台湾、香港と委員御指摘のとおり今回は参加をいただき、また今新しいいろいろの国から参加の申し出がある。これは世界の中で大変大きな役割を果たすものであり、しかもその中で日本の責めというのが大変に重い。今回はそういういろいろの特性のある地域の国々が集まって共同宣言の合意ができた。また、来るべきウルグアイ・ラウンドを成功させよう、こういう合意もできた。大変意義のある会合であった、こういうふうに私は考えております。     〔和田(貞)委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 森本晃司

    ○森本委員 今大臣の方から共同宣言ができた、あるいは特別宣言ができた、意義があるというふうにおっしゃいましたが、今回のウルグアイ・ラウンドで、特別宣言の中でいろいろと「参加閣僚はウルグアイ・ラウンドが成功することが、国際社会の直面する最も緊要な経済問題である」、そのほか「世界貿易拡大の基盤を固め、保護主義の圧力を抑え、市場に対する信頼を植え付け、この地域及び域外における経済改革の継続を促進するために、ラウンド交渉での主要かつ実質的な結果が必要であることを強調した。」等々がこの特別宣言の中でなされておりますが、これを採択したわけでございますが、これを受けた我が国の具体的な対処方針について大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  106. 渡部恒三

    渡部国務大臣 まず、当面、御指摘のあったウルグアイ・ラウンドを成功させなければならないと思っております。また、マレーシアが地域的な会合をつくりたいとか、また北米で地域主義が生まれるとかいろいろありますけれども、そういう中で、やはり自由化の方向に向かってこれから前進していくように、それぞれの国の閣僚と思い切って、国と国の外交は当然国益代表するものでありますから、これは自分の国の国益を主張してまいらなければなりませんが、しかしその中で、世界が平和に自由にやっていくためには、お互いに主張すべきものは主張し、譲るべきものは譲って最大公約数というものをつくっていかなければならないので、私は、このアジア・太平洋会議における我が日本の立場は、その最大公約数をつくっていくためのかけ橋にならなければならない、そういう考えでこれから一つ一つ努力をしてまいりたいと思います。特に、その会合に出てASEAN六カ国の閣僚の皆さん方とお目にかかりましたけれども、この閣僚の皆さん方が全員一致して私にぜひ来てくれ、できるだけ参りたいけれども、日数に制限があるというような中で、これからひとつASEANの経済閣僚会議日本大臣を呼ぶことにしたい、こう言うので、これは大変いいことであったなと、出席を快諾して帰ってまいりました。
  107. 森本晃司

    ○森本委員 大臣、各国とよく話し合い、ウルグアイ・ラウンド成功に向けていかなければならないということをこのAPECの会合を通じながら感じたということでございますが、このガットウルグアイ・ラウンド年内合意に向けての各国のそれぞれの動向というのは、極めてわかりにくい状況下に今あるのではないかと思うのです。貿易担当大臣として今どういう見通しをされているのか。それから、何と何が問題であって政府として何を決断しなければならないのか、どのように考えておられるか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  108. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先ほど申し上げましたように、それぞれの国にはそれぞれの立場がありますから、問題は非常に多岐にわたっております。私どもは、やはり自由貿易のルールづくりが大事だ。アメリカに対しても、私は、ヒルズさんにも、何か自分の気に食わないというとすぐ一方的措置を持ち出す、そういうような考えはやめてもらいたいというような話を繰り返して申しておりました。また一方、農業の問題、これも大変難しい問題であり、我が国は、言うまでもありません、食糧の安全保障という立場から米の自給をできる限り堅持していきたいという基本的考え方もございますし、また、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これは長い間農林省が農家の皆さん方に奨励して、しかも農家の皆さん方がかなり大きな負担を持って、負担を抱えて、まだその負担の返済も済まないでおる水田を八十万ヘクタールも減反していただいておるという現実、また、たび重なる国会決議、こういう中で各国が合意を得ること、アメリカとECの問題もありますし、日本アメリカの問題もありますし、大変これは厳しい問題も幾つかまだ残っております。しかしガットという場は、まずはお互い自分の国の国益を強く主張し、そして激しいディスカッションの中で、最後は最大公約数の中で合意を求めるということでありますから、今具体的に一つ一つ取り上げて、これが難しい、これが易しいというような段階ではございませんが、まだ厳しい問題がたくさん残っておりますけれども、これらを乗り越えて何とか年内決着するように努力をしてまいりたいと思います。
  109. 森本晃司

    ○森本委員 次に、日米関係についてお尋ねをいたします。  日本貿易黒字が再び拡大しておりまして、九一年度の上半期の黒字は五百十一億八千八百万ドルで、前年同月比を大きく上回っております。さらにまた、けさの各紙の報道を見ますと、日本の来年の貿易黒字、空前の一千九十億ドルになるかとか、あるいはアメリカの九月の対日貿易赤字一二%増の四十二億ドル等々が報道されております。アメリカとの貿易日本黒字がだんだん大きくなってくるにつれて、一たん鎮静化したように見えておりました日米間の貿易摩擦問題が再び頭を持ち上げてきたと言っても間違いないかと思いますし、同時にジャパン・バッシングの再燃も懸念されております。特にアメリカでは、来年の選挙を控えて議会で対日強硬法案が相次いで出され、日米間の通商摩擦がさらに鮮明化される可能性が強いというふうに感ずることができます。新聞でも「米議会で法案続々」、「標的は日本」とか「「赤字」にイラ立ち」を感じているとか、いろいろ書かれております。中でも、特に自動車それから自動車部品、大臣もお会いになったかと思いますが、板ガラス、この問題も今深刻化しているわけでございますが、この日米間の状況大臣いかに認識しておられるのか。また、自動車あるいは板ガラス等々の交渉の経過並びに見通し、それから大臣がこういう状況下でやはり訪米される機会も近いのではないだろうか。もちろん、向こうへ行っていろいろとお話をされることの必要性も痛感しておるわけでございますが、訪米時期はどのように考えておられるのか、御答弁願います。
  110. 渡部恒三

    渡部国務大臣 言うまでもございませんが、日米関係は両国にとって極めて重要な問題であり、しかも今お話しのような自動車問題あるいは板ガラスの問題とか、お互いに意見の合わない、しかしこれから何とか意見を合わせなければならない問題等がございますから、いずれ私も訪米して、日本の立場を強く主張すると同時に、またアメリカ側の考え方も聞いて、その中で最大公約数を見出して両国関係改善に努めてまいらなければならないと思っておりますけれども、その時期等については、ブッシュ大統領の訪日等がまだ明確になっておりませんので、今後これらの推移を見ながら時期を決めてまいりたいと思っております。
  111. 森本晃司

    ○森本委員 次に、電力の広域融通体制問題について質問をさせていただきます。  ことしの六月十日の電気事業審議会需給部会電力基本問題検討小委員会の中間報告において、計画的応援融通を一歩進めて三大都市圏への融通型電源の整備を地方の電力会社が計画的に推進すべきだという提言がされております。しかしながら、大都市を管内に持つ電力会社は現在でも他の地方電力会社管内に発電所を建設しておるわけでございまして、現地電力会社より低コストの電力を都市に供給している。そういった面で大都市のための発電所等々が地方にあるということでいろいろな反発が起きているその声も聞こえてくるわけであります。その上に、今度大都市のための発電所を地方の電力会社が地方に建設するということになっていけば、さらにその批判が起きてくるのではないだろうかと思います。  これは通産大臣、福島県でございますのでこの問題について恐らく一番住民のお気持ちをよく御存じではないかと思うわけでございますが、東京電力は福島県や新潟県で大規模な原子力発電をしている。その結果、東京電力の電気料金が東北電力より安いということにもなっている。いわば電源開発に協力したにもかかわらず高い料金を払っているという住民感情大臣、地元でございますので私よりもはるかによくその御意見をお聞きになっていると思います。  その上に、今度地方電力に大都市のための電源立地をと言われても地域住民は納得できない部分が出てくるんじゃないだろうか。むしろこういったことが大きくなってまいりますと、国全体としての電源立地は困難化して、さらにまた遅くなっていくのではないかと思うのですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  112. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは随分前のことになりますけれども、私は商工委員をしておったときに、今の森本先生のようなお話をこの席から、当時森山資源エネルギー庁長官にしたことがございます。  今御指摘のように、私の郷里の福島県、これは福井県と並んで電力の最大移出県であります。私がそのときに質問をした基本は、エネルギー、特にそのエネルギーの中でも電力というものは国民経済国民生活を支える血液のようなものである、電源立地の推進というものはこの国の発展のために欠かせざるものである。しかし、これは立地条件というものがありますから、発電所というものはどこにでもできるものではない、やはり立地条件の最もいいところにつくるのが合理的でありますから、それが福島県とか福井県とかにかなり大きくできたわけであります。  そこで一番大事なことは、発電所をつくった地域の人たちが、ただ国のためにおれの町に発電所をつくったということだけでは納得できない。やはりおれの町に、おれの村に発電所をつくってよかった、後々の世代まで喜んでいただけるような施策が何といっても大事であるということで電源地域振興のための交付金制度等をつくっていただいたわけでありますけれども、私の福島県で言わせていただければ電力移出交付金というものをかなりちょうだいを、ちょうだいするという表現は今当てはまらないかもしれませんが、移出交付金を差し上げております。  私の郷里に栃木県の鬼怒川温泉から、私の生まれた会津田島というところで第三セクターで鉄道をつくっておったわけですけれども、その鉄道を電化するためにはお金が要る。しかしその金は出てこない。これは電力移出交付金を使わせていただいて電化できたということで、地域の人たちに非常に喜んでいただいた。私はまず何よりも大事なことは、やはり発電所をつくっておる地域の人たちが、おれの町に、おれの村に発電所をつくってよかった、地域の振興に役立っていくということで、この面の政策はなお積極的にこれから進めていくように指示してまいりたいと思っております。
  113. 森本晃司

    ○森本委員 大臣のおっしゃる、地域の人たちに十分役に立つようにということでございまして、またその施策は講じられていると思うのですが、またそれで地域住民の人も御理解をされ、あるいはまたいろいろな交付金等々をいただいて生活が豊かになっていくという部分があるわけでございますが、今日までそうであったとしても、今また地方の電力会社を使って地方に大都市のためのものを建設するということはいかがなものなのかというのが私の大臣にお伺いしたい点でございます。  さらにまた、東京の一極集中という点がいろいろと言われているわけでございますけれども、もうこれ以上東京へどんどん電力を持ってくるというよりも、むしろその需要供給のバランスのある、むしろ地方へそういった企業の誘導施策とかを持っていって、そしてさらにそこの土地の人たちが潤っていく、あるいはまたそこに企業が同時に来てみんなも栄えていく、こういう施策へむしろしなければならないのではないだろうか。東京に電力が足りないから地方の電力会社を使ってさらにまた東京へエネルギーを送らなければならないという考え方は、今の政府が、国民生活白書も出ましたけれども、それによると東京は豊かさで一番低いということになっているわけですけれども、一極集中を是正しようという考え方と逆の方向になっていっているのではないかと思うのです。大臣、その辺、地方の電力会社を使って大都市への電源立地をしようという考え方についてどうお考えなのかお伺いしたいと思います。
  114. 渡部恒三

    渡部国務大臣 御承知のように我が国は九電力になって、それぞれの配電地域がそれぞれの電力会社でございます。しかし一方、今御指摘のあった私の福島県、これは東北電力の配電地域でありますけれども、しかしここでつくられた電力のかなりの部分は東京に来ております。電源立地、これほどこにでもできるものではありませんから、やはり水力発電所をつくるのはその資源のあるところでなければなりませんし、原子力発電所をつくるにも、それは地盤とかいろいろ条件がありますから、ある程度これは電源立地の適地に効率的に発電所をつくっていくということでありますけれども、しかし先生御指摘のとおり、やはり東京に何もかも集まってしまうという今までの日本の来た道、これは厳しく我々反省しなければならないというところで今日の一極集中から多極分散型国土形成という国の政策の方向が出ているのであって、したがって、先ほど申し上げた電源立地交付金などもそれぞれの地域の地場産業の振興とかあるいは企業の立地とか、そういう東京の人口が発電地域に移っていけるような前向きのことにも使えるように、ある程度今行っておりますが、もっと積極的にこれを行うようにこれから指示してまいって、発電地域の人たちが喜んでいけるように、人口が四十七都道府県に平均に暮らしていくということは、まさに今日の問題である土地の問題あるいは庶民が花と緑と太陽に包まれた底つき二戸建て住宅を持てるということにもつながるわけでありますから、先生の御意見のように、これから東京とか大阪だとかそういう大都会に集中した人々が地方にどんどん分散していけるような政策遂行に努めてまいりたいと思います。
  115. 森本晃司

    ○森本委員 大臣がおっしゃったように、どこにでも建てられるというものではありませんから、これは電源の立地条件というのは大変必要かと思いますし、同時に、そういった地域へ集中して住民の皆さんにいろいろと御迷惑をかけていることも事実でございますから、その点についてはきちっとやっていかなければならないと思うわけであります。  それと同時に、それでは三大都市圏への当面の電力安定のための電源立地ということであれば、国策として電源開発株式会社というのがつくられておるわけでございます。商工委員会としても、昭和六十一年の消費生活用製品安全法等の改正案の採決の際に、「電源開発株式会社の国策会社としての機能を一層発揮させるため、同社の活性化策を実効あるものとするとともに、電気事業の健全な発展を期する見地から、同社に広域電源等の開発を積極的に行わせるよう指導すること。」こういった附帯決議をつけております。既に実績も積み重ねてきておりますので、こういった国策としての電源開発株式会社を大いにもっと積極的に推し進めていくことが必要ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  116. 川田洋輝

    ○川田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおりでございます。最近の電気の需給の状況は大変厳しくなっておりまして、先ほど来お話が出ているような九電力、沖縄を入れますと十電力ですが、電気事業者間の協力関係を強めてまいりますと同時に、御指摘のように国策会社でございます電源開発株式会社の活躍を期待をいたしたいと思っております。  電源開発株式会社は、電源開発基本計画において定められた地点の電源開発を速やかに行って、電気の供給を増加するために、従来から石炭火力、水力などさまざまな電源開発及び送電線の整備を行ってきておるところでございます。数字で申し上げますと、一端でございますが、発電所については六十二カ所、一千二百二十九万キロワットの発電設備を有しておりまして、全国の電気事業者に卸供給を行っておるところでございます。  電力需給の地域間のアンバランスとか電力需給変動等への対処のため、広域運営の一層の促進を図っていく必要が出てまいっておりますが、こういう中で、広域電源の開発ですとか広域的な送電線の整備など広域運営に資する設備の整備につきまして、今後とも同社が有します経験、技術力などを生かしまして、引き続き重要な役割を果たしていくことを期待をいたしているところでございます。
  117. 森本晃司

    ○森本委員 次に、時間帯別電灯料金制度の家庭への選択制導入問題について質問をさせていただきます。  去年の十一月から、時間帯別電灯料金制度が実施されましたが、この加入状況、まだスタートして間もないということもありますが、伺うところによりますと、一万八千件程度で余りその加入状況が芳しくない。これはいろいろ原因があるかと思いますが、本当はそれも聞きたかったのですが、ちょっと時間がございませんので、そういう状況下である。その上に、今月の五日にまとめられた「料金制度研究会中間とりまとめ」では、家庭用需要について、時間帯別料金制度の選択制での試行拡大が盛り込まれた、電気料金の新しいメニューが行われるという案が中間取りまとめされたというふうに聞いておるわけでございますが、これについては、早期導入することについては問題点が多々あるのではないだろうか。新聞では来年導入されるかというふうなことが書かれておりますが、電気のピークを抑えるのに、この家庭の夜間料金制度を取り入れたところで、選択とはいえども従来夜使っている人はそのまま使うだけでありまして、そのほかのいろいろな夜間用の機器もまだ十分開発されていない中で、これは早期導入したところで果たしてどれほどの効果が起きてくるのだろうかというふうに今思わざるを得ない。同時にまた、電力会社にとっては、この制度を導入するについてはコスト増になってくるのではないだろうか。なぜならば、この選択をするときにいろいろな人が相談に来られる、その相談の窓口も設けなければならない、あるいはそういう制度を導入するとメーターをかえていかなければならない。このメーターの一つ一つをかえていくにもただでかわるわけではございませんし、従来のメーターを簡単にできるものではない。そういったこと等々がコスト増になる。そうして電力会社は減収になる。やがてそれは料金改定にまたつながってくるのではないだろうかという危惧を持っております。  いずれにしても、本制度の早期導入には非常に私は疑問を持っているところであります。つい二、三年前には、オール電化ハウスといって電力会社が大々的に電気を使うことを宣伝しておりました。そうしておいて、供給が不安定になったからといって今度通産省主導、これは通産省主導ではないかと思うのですけれども、このような電気制度を導入することには問題があるのではないかと考えております。  ピーク対策を講じていくには、もっともっといろいろな、例えば電力多消費型産業における夏季長期休暇とか、あるいはピークカット等の産業用電力料金割引とか、社会システムを省エネルギーに変えていくとか、そういったことをどんどん推し進めていくことが私は先決ではないかと思うのですが、どうですか。
  118. 川田洋輝

    ○川田政府委員 電力の需給状況につきましては、先ほど申しましたように、大変中長期的に厳しい予想が出てまいっております。こういう中で、安定供給を確保してまいりますためには、大臣も先ほど申しておりましたが、電気というのはやはり家庭生活、産業活動になくではならないものでございますので、安定供給の確保というのは大変大事なところでございます。  その重要な一つとして、これからは需要に合わせて供給を行っていくという考え方だけではなくて、需要の面についても合理的な範囲内でその対応を考えていくべきではないかというのが、昨今いろいろなところで御指摘をいただいているところでございます。この電気の需要の伸びの中で今後大きく伸びが予想されますのは、家庭用とか業務用の電力の需要の伸びが大きく見込まれております。今まで需要を何とかしようではないかという面では、産業用の需要につきましては、需給調整契約その他いろいろのメニューがございまして、アプローチ、対応がなされてきておるところでございますけれども、家庭用とか業務用というところではなかなか難しいという側面もございまして、対応策が進んでいなかったというのが実情でございます。  そこで、昨年から家庭用についても、試行的ではございますけれども、時間帯別料金制度というものを導入して、皆さんに需要の抑制ということについて一緒にお考え、御協力願えないか、こういうことで施策をとり始めたところでございます。現在までの加入状況は、先ほど先生御指摘のように一万八千件余ということでそう大きくございません。まだ関連の機器が十分開発されていないということもございます。この機器の開発は今各方面で進んでおりますので、機器の開発と相まってこの時間帯別料金制度の需要家は増大をしていくのではないかというように思っておりますが、昨今の電力の需給情勢から見ていろいろな対応、料金制度面からの対応もいま一度検討すべきではないかというのが、最近いろいろなところから声が強くなってまいりましたので、私ども内部に研究会を設けまして料金制度面からの検討をいろいろやっておるところでございます。  その一つとして、家庭用の時間帯別料金制度について、今試行的にやっているんだけれどももう少し広げられないだろうかという声が出てまいっておりますので、それを前向きに検討していこうというのが現段階でございます。まだまとまりはございませんけれども、今まで述べましたような事情にございますので、検討を進めてまいりたいと思っております。  それから先生、その他で御指摘いただきましたように、工場の夏休み、これをできるだけ長期化あるいは分散化していただくというのは電気のキロワットの面では大変役に立つというかすぐ力になる面が大きいと思っております。この面につきましては、電気事業審議会の先ほどお触れになりました需給部会の中に設けております基本問題検討小委員会の中で、十一月八日でございましたか提言を取りまとめていただいて、広く産業界に夏休みの長期化、分散化について呼びかけをさせていただいているところでございます。できるだけいろいろな方面からの施策を講じてまいりますことによって、電気の安定供給の確保を図ってまいりたいと思っております。
  119. 森本晃司

    ○森本委員 あと、以前も申し上げましたけれども、特に夏の高校野球のときはピークになってくると思います。この高校野球の時期を云々という議論もあるようでございますけれども、これはなかなかそうはいかない。そこで、最大のピークを抑えていくには、やはり私はガス冷房をもっともっと家庭用にも普及すべきようにしなければならぬ、電力で足りない分をガスでもっともっと補うことができるのではないだろうか。今日までそのガス冷房が普及しなかったのは、料金がもう一つ格安という状況まで至っていなかったという点があろうかと思いますが、こういった制度、こういったことに対していろいろと優遇策を講じていく必要があるのではないかと考えているところでございます。これが一番ピーク時を抑えることの力になってくると思いますけれども、いかがですか。
  120. 川田洋輝

    ○川田政府委員 御指摘のとおりでございます。  電気は夏がピークでございまして、ガスは夏は需要が少ないシーズンになっております。したがって、ガスによる冷房の普及を促進してまいりますことは、電力の夏季ピーク需要の伸びの抑制を初め、電力、ガスの季節間の負荷平準化にも役に立つものでございます。先ほども触れました電気の基本問題検討小委員会の中間報告におきましても、ガス冷房の普及促進等についてもっともっと検討せよという指摘を受けております。私どもは、これまでもガス冷房の普及促進のためには予算、税制、財投、各面からの施策を講じてまいっているところでございますけれども、先ほど来述べております現下のエネルギー情勢を踏まえまして、今後さらにその拡充に努めてまいりたいというように思っております。
  121. 森本晃司

    ○森本委員 いずれにしても、これから我が国エネルギー対策、これは本当に二十一世紀が近づけば近づくほど真剣に考えていかなければなりませんし、電力等々の不足は目に見えてあるわけであります。そう数多く原発をつくってやっていくというわけにもいかない。そういった状況下で、エネルギー対策は真剣に取り組まなければならない課題でもありますし、同時に省エネを大いに進めていかなければならないと思うところであります。  そこで、昭和五十六年から五十八年にエネルギー対策投資促進税制というのが行われまして、五十九年からは今度はエネルギー利用効率化等投資促進税制云々という税制が二年ごとに行われてまいりました。平成二年から平成三年まではエネルギー環境変化対応投資促進税制、エネ環税制というのが行われていましたが、これは平成三年、もう本年で切れるわけであります。しかしこれが、このエネ環税制が期限が切れたからといって、これでこのまま終わってしまうとこれはもう大変なことになってしまうし、今日まで進み始めたエネルギー対策というのがここでまたストップしてしまう。これを、平成四年度以降にもこれにかわる税制措置を講していかなければならない、あるいはまた財投を使っていかなければならない。これは今伺うところによると大蔵省が大変渋っているようでございますけれども、通産省としては全力を挙げて取り組んでもらわなければならないと思いますし、我々もこれは全力を挙げて、超党派で応援しなければならない問題だと思っております。こういったいろいろな施策を講じて、コジエネやガス冷房あるいは蓄熱槽などの需要標準化設備や燃料電池を促進していかなければならないと思います。  先日、我が党の商工部会でコジエネそれから燃料電池あるいは地域冷暖房等々を視察いたしまして、非常に学ぶところが多かったわけでございます。ある有名なこの近くのホテルが、最近ガスタービン、省エネルギーの効果が非常に高いガスタービンコシェネを導入いたしました。そこを我々も見学し、現地の人の声も聞いてまいりました。排熱の回収利用が非常に高いのでエネルギー費用の低減を可能にした、あるいはクリーンの燃料で公害防止に資することができるとか、あるいは常用非常用兼用によって非常用発電機費の削減が行われた、向こうの担当者の方は非常にそのことを我々に説明をされておりました。そのいろんな議論のやりとりの中で、これは優遇税制があったから我々は導入しようという気持ちになったのですというお話もいただいたわけであります。今までの制度の中で、取得価額の七%の税額控除をやるか、あるいはまた三〇%の特別償却のいずれかの選択を適用する。そこは七%の税額控除を適用したけれども、こういう制度があったがゆえに自分たちはさらに踏み切ることができたのだということです。非常に省エネの効果が大きいということを我々は実感してきたわけでございます。  今度非常に厳しい状況下にあると言われておりますが、大蔵省の厳しい状況に対して通産省はどのように考えているか、お答え願いたい。
  122. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございまして、エネルギー情勢、表面は落ちついているわけですけれども、中長期的に考えますと、需要供給両面から思い切ってエネルギーの需給構造を改革すること、そのための対策を講ずることが不可欠でございます。  御指摘のように、エネルギー関係の税制については本年度末でエネルギー環境変化対応投資促進税制が期限切れになるわけでございまして、私ども新たな需要構造改革設備あるいは供給構造改革設備等を対象として加えながら、平成四年度からということでエネルギー需給構造改革投資促進税制という名称のもとに御趣旨のような税制を要望いたしているところでございます。  また対象といたしましては、今先生が御指摘ございましたようなコジェネであるとか蓄熱槽であるとかガス冷房であるとか、あるいは燃料電池等エネルギーの効率的な利用、あるいは先ほど来御議論のございますような需給の平準化のための設備、あるいは新しいエネルギーを利用する設備、そういったものを対象に考えながら現在財政当局と折衝をいたしているところでございます。重要性、先生御指摘のとおりでございまして、私どもとしても全力を挙げてその実現に努力してまいりたいと考えております。
  123. 森本晃司

    ○森本委員 燃料電池も同様でございます。燃料電池を見学しました。なぜこんなのにこういう状況で電気が起こるのかなと我々も非常に不思議に思ったところでございますが、これはNOxやCO2が非常に少なくて地球環境面からもすぐれておりますし、いろいろ説明を聞きながら、これは究極のコジェネだなというふうに感じた次第でございます。これが将来それぞれの自動車にづけられると環境面を相当守ることもできるであろう。これを高能率、無公害という点からもさらに推進していかなければならないと思うところでございます。  時間がございませんので、どうぞ小型燃料電池開発とか、あるいはいろいろなそういう燃料電池の開発に向けても、通産省一歩も譲ることなく、従来に増して大臣も頑張っていただいて、この点は日本の将来のエネルギーのためにお願いしたいと思います。我々もまた全力を挙げてこの問題についてはそれぞれ働きかけてまいりたいと思うところでございます。  次に、公取委員長にお見えいただきましたので、公取委員長に数点質問をさせていただきたいと思います。  けさからも小岩井先生からいろいろと証券会社の損失補てん問題について質問がございました。公取が勧告を出されたということでございますが、前国会のこの委員会で、私は公取委員長の見解並びに対処についてお伺いをいたしました。その際、梅澤委員長は、独占禁止法上の不公正な取引方法に該当するということが十分考えられる。大蔵省の検査の状況を手がかりとして、公正取引委員会としても事態の究明を急ぐ。独占禁止法違反行為であると認定した場合に、排除措置をとる点で手抜かりがないように行いたい、そのように答弁されたわけでございます。けさから勧告を行われたということを小岩井先生に答弁されておられましたが、前国会で質問した立場として、もう一度公取委員長の方から今回のとった措置について、どうしたのかということを改めてお伺いしたいと思います。
  124. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 証券会社によるいわゆる損失補てん問題につきましては、かねていわゆる大手四社に審査活動を続けてまいったところでございますが、本日、野村証券株式会社、大和証券株式会社、日興証券株式会社及び山一証券株式会社の四社に対し、独占禁止法第十九条に違反するものとして勧告をいたしました。勧告の内容、骨子については後ほど事務局から御説明申し上げます。  同時に、証券業協会を通じて公表されました、いわゆる準大手十七社の損失補てん行為につきましても、本日、証券業協会に対し、この四社に対する勧告の要旨を周知徹底すると同時に、十七社のみならず傘下会員である全証券会社に対してこの趣旨を徹底するように要請をいたしたわけでございます。  本日の措置をもちまして、いわゆる今回の損失補てん問題に関する独占禁止法上の対応公正取引委員会の措置を終結いたします。  なお、この機会に、先般の国会で証券取引法が改正になりまして、この種の損失補てん行為については厳正な禁止規定ができたわけでございますので、今後、証券会社の損失補てん問題については、改正証券取引法のもとに厳正かつ効率的な規制が行われるように、公正取引委員会として強く期待するものでございます。
  125. 糸田省吾

    ○糸田政府委員 ただいま公取委員長からお話のございました、本日大手四社に対して行いました勧告の中身につきまして御説明申し上げます。  私どもの審査によりますと、この大手四社は昭和六十二年十月から平成三年三月末までの間において損失補てんを行ってきたところでございますけれども、これは顧客との取引関係の維持あるいは拡大のために行われたもの、そのように認められました。こういった行為は独占禁止法の不公正な取引方法として不当な利益による顧客誘引に該当するわけでございまして、そういったことで、独占禁止法第十九条の規定に違反するということで勧告をしたわけでございます。  勧告によって求めております措置、いわゆる排除措置ということでございますけれども、二つございまして、一つは、こういった損失補てんが独占禁止法に違反するものであるということを四社が社内において役員それから従業員さらには四社のそれぞれの取引先に対して十分周知徹底するようにということでございます。それからもう一点は、こういった独占禁止法に違反する行為を今後再び行わないようにという不作為を求めるということ。この二点について勧告をしたところでございます。
  126. 森本晃司

    ○森本委員 今回の勧告でもまだ甘いのじゃないかといういろいろな声もありますが、いずれにいたしましても、前国会のこの委員会で私も述べさせていただきましたけれども、金融機関に対して今回のような措置をとられたのは三十年ぶりのことであります。今後金融分野に対しても公正取引委員会の監視体制を強化していくことが必要だと思いますが、公取委員長決意伺いたいと思います。
  127. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 かねがね申し上げておりますとおり、金融・証券会社はもとより、寡占産業あるいは政府規制産業というのは、特に企業協調的活動等を通じまして独占禁止法に違反する行為につながりかねない素地を持っておるわけでございます。今後ともこの種の業界に対する監視を強めますとともに、独占禁止法違反事件を把握いたしました場合には厳正に対処してまいります。
  128. 森本晃司

    ○森本委員 次に、告発問題でございますが、十一月六日に公正取引委員会は、生鮮食料品の包装などに使用される業務用ラップ材料メーカー八社と担当部長など八人を刑事告発されました。これは石油カルテル以来十七年ぶりで、私も大変評価するところでございます。  同時にけさの新聞で、十一月六日は担当部長などでございますが、大手役員も告発する、価格協定に深く関与をしていたということで報道されております。私は大手役員であろうと何であろうと厳正にしていかなければならないと思いますが、実際はいかがなものですか。いずれにしても厳しく取り締まっていかなければならないと思いますが、現在のこの大手役員に対する告発状況について答弁願います。
  129. 地頭所五男

    ○地頭所政府委員 塩化ビニール製の業務用ラップ材につきましては、先生御指摘のとおり十一月六日に告発を行って、翌七日に検察当局が捜査を開始して、きょうまで二週間ぐらいの日時を経過しておるわけでございますが、これまでの捜査の状況がいかがであるかということについては私どもまだつまびらかにしておらないところでございまして、新聞に伝えられておりますような役員等について追加告発をするというようなことについて申し上げる段階に至っておらないというのが現状でございます。もちろん、今後同種の独占禁止法違反事件がございますれば、私どもといたしましては、告発を含め厳正に対処する方針をとっておるところでございます。
  130. 森本晃司

    ○森本委員 時間が参りましたので、最後に一言申し上げて終わりたいと思います。  ラップ業界、こういったことで今回告発になって、これは私も評価するところでございます。しかし一方、こういう声が聞こえできます。ラップ業界というのは年商売り上げが三百から四百億の小さい業界である一しかも過当競争の上、輸送費、人件費、湾岸戦争等々による石油の値上がりなどのコストが上昇して赤字経営だった。いろいろとこのラップ業界に似たようなことが多々あるのになぜラップ業界だったのか。これは一罰百戒的なスケープゴートにしたのではないだろうか。そのほかにもっともっと大きなものがあるのではないか。昨年末に勧告したセメント業界だってあるのではないか。そういった感情国民が持っております。こういった問題につきまして、先ほど申し上げました役員の問題も含めまして、今後国民の生活を守る上からも公取として厳しい姿勢で取り組んでいただきたい。委員長決意伺います。
  131. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今回の告発につきましては、昨年六月告発方針を公表いたしましてそれ以後起こった事件でございまして、告発するのに至る我々の判断過程についてここで具体的なことを申し述べることは省略させていただきますけれども、結論的に言って、私どもが公表いたしました告発方針に照らし、今回の事件は告発に値する、要件に欠けるところはないというふうに考えております。  今後におきましても、公正取引委員会の告発が恣意的なものにわならないように法務省との間で既に、告発の運用基準についても公表はいたしておりませんけれども、きちんとした基準をつくり、業種のいかんを問わず、この方針なり運用基準に当たると判断いたしたものにつきましては告発を行い、我が国の市場を厳正かつ公正なものとするために今後とも努力してまいりたいと思っております。
  132. 森本晃司

    ○森本委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  133. 武藤山治

    武藤委員長 水田稔君。
  134. 水田稔

    ○水田委員 まず、渡部通産大臣また野田経済企画庁長官就任おめでとうございます。お二方ともにいわば日本の商工行政なり日本経済の問題については専門の方でございますし、国内状況また日米関係や国際的な経済状況は大変変動期を迎えているだけにぜひ頑張っていただきたい、冒頭お願いを申し上げておきたいと思います。  まず一つは、日本国内経済状況について通産大臣経済企画庁長官に同じ質問でお答えをいただきたい、こういうぐあいに思います。  いざなぎ景気を上回るかどうかといわれた景気が実際にはもうことしの三月ぐらいには終わったのではないかというようなことで、数字を見ましても、例えば住宅建設は昨年の十一月ぐらいから少し陰り始めている。特にことしの四月からはずっと今日までマイナスということになっておる。最高百六十万戸ぐらいの年間の建築が百二十万ぐらいに落ちるのではないか。また、特に高級乗用車の売り上げも落ちている。そうすると、それらに素材を供給する産業というのは生産を落とさざるを得ぬ、そういうぐあいに全体的な影響が出ておりますし、個人消費の点でも、もちろん住宅、自動車個人消費になるわけですが、百貨店の売り上げ等もふえておるところと減っておるところがある、実際には微減ということで、個人消費が冷えてきたということを示しておるわけですね。それらが影響して民間の設備投資が、一九八八年から一九九〇年ですか、それまで二けたで伸びておったのが今日では一けたに転落している。数字の上で見ればまさに大変厳しい状況になってきておる。二回にわたって公定歩合引き下げを行ったけれども、これまでの景気を支えた中にバブルによって支えられたもの、例えば住宅建設の中には投機的なマンションの建築等があったわけですし、また、バブルで稼いだ者が高級乗用車を買ってきたというようなものがある。対外貿易の収支で見ても、高級自動車の外国からの輸入ががたっと落ちる、そして貿易収支が黒字の幅が大きくなってくる、こういう状況で、すべてがそういう数字であらわれてきておるわけです。  そういう点から見て、一体これからの日本産業日本経済の運営というのは、まあバブルがはじけて、私はあの当時思ったのは、いわゆる虚業が栄えて実業が本当に軽んせられるという社会がいつまで続くのだ、そんな社会はまともな社会じゃないと思ってきたわけです。ですから、実業が大事にされるということはいいことではあるけれども、逆に言えば、今厳しさがある。そういう中で、特に通産行政の中で通産省が、「ゆとりと豊かさを実感できる社会の実現」、いいことをうたっておるわけですね。もう一つは、「消費者を重視した行政の推進」と、こうある。ですから従来とは違った、バブルの当時のとにかく何でも生産すればいい、どんどん売れるというような形とは違った形で、国民生活なり将来に向かつて我が国がどう生きていくか、そういうことを展望しながらこれからの通産行政でなければならぬし、経済運営の基本というのは経済企画庁もそういうところへ視点を置いたものでなければならぬと思うのです。基本的なところですからこれは両大臣から、ひとつ心構えの点、これから取り組みの基本のことについてまずお伺いをしたいと思います。
  135. 渡部恒三

    渡部国務大臣 かつてこの商工委員会で同僚委員として議論した水田委員から励ましの善言葉をちょうだいいたして、大変ありがとうございました。景気の問題、これは経企庁長官から詳細説明があると思いますけれども日本産業経済政策を預かる通産大臣として大変心配しております。現実に六十一年以後奇跡のように続いてきたインフレなき持続的成長というものが、先生御指摘のように減速状態にあります。これは大企業中小企業を問わず、きのう私は自動車工業会の方とお目にかかりましたが、鉄にかわって今日日本産業牽引車の役割を果たしておる自動車工業でも、売り上げも減る、利益も減る、こういう状態でありますし、中小企業も、売り上げも伸び悩みの状態にあり利益も減っておるということで、私は、大臣就任最初記者会見でも、一日も早く思い切って大幅な公定歩合引き下げ、また金融の緩和等を求めてまいりました。これからも、これはもう景気が悪くなってからでは間に合いませんから、黄信号のうちに、これは赤信号にならないうちに、事故の起こらないうちに、経済は安全運転でいかなければなりませんから、景気の問題には大きな関心を払ってまいりたいと思います。  二番目の、ゆとりある、消費者を重視したこれからの生活というものを通産省が訴えてまいりました。これは、時代の変化で消費者のニーズが変わってまいりました。二十年前は、ピアノを買った、それから自動車を持てた、何か豊かになったような感じがしたわけでありますけれども、今では自動車を持っても駐車場がない、ピアノを買っても、二LDKのマンションに大きなピアノが入ってしまうとピアノに全部住んでおるところを占拠されてしまって、貧しさだけが目立つというように、日本が豊かになったことは現実でありますが、その豊かさがむしろ生活実感の中では貧しさを感じさせるような状態になっておるので、これからは広い意味で、やはり豊かな生活というものは、生活環境を豊かにしていく。これは、公の面でも、公園とか下水道とか、そういうものに力を入れていただかなければならないし、また個人の面でも、やはりサラリーマンが一生汗を流して働いても底つきの家を持てないというようでは、これは世界に向かって日本は豊かになったと言えませんし、毎日毎日が交通渋帯のいらいらの中で、一あるいは長い通勤時間でへとへとになって会社に行くというようなことではなりませんし、これは毎日毎日の生活の中で豊かさをお互いが感じるような未来を目指して、これから通産省の行政もやっていかなければならないということを今申し上げておるところでございます。
  136. 野田毅

    野田国務大臣 長年私も、通産大臣同様、この商工委員会で水田先生初め先生方の御指導をいただきながらまいった者として、よろしくお願い申し上げたいと思います。  今、通産大臣から、基本的に景気の問題あるいは生活の豊かさの問題についてお話がございました。現在の経済情勢でありますけれども、先生御指摘のとおり、住宅であったり、あるいは自動車、あるいは消費の中身、あるいは設備投資の動向、それぞれ御指摘のとおり指標の上で一時ほどの元気な姿でなくなっておる、こういうものもたくさん実はございます。  しかし、マクロ、鳥瞰図で見ますと、基本的には私どもは、今までのいわゆるバブルを含んだ経済という表現がありますけれども、結論から申し上げると、やや高目の成長の時代から、むしろより物価の安定を基礎とし、内需中心とする持続的な拡大といいますか経済成長への経路に今ずっと移行しつつある段階にあるということではなかろうかなと実は考えております。  例えば住宅にしても、今の地価の水準は確かに昨年のピークから徐々に徐々に低下してきております。しかし、まだ今の水準が、これが底だということではない印象がある。まだ水準が高いから下がっていくのではないかという、実はそういう期待感が、もうちょっと待てよ、もうちょっと待ったらもっと下がるかもしれぬというある種の効果を生んでおるということも一方では指摘がなされるわけであります。  そういった意味で、先生先ほど御指摘がありました実業、虚業という言葉をお使いになりましたが、その言葉を利用させていただくならば、まさにそういう実業の世界中心になってこれから持続可能な安定的な成長に今移行しつつある過程にある。ただ、今までのハイスピードから見るとかなり減速感があるということはそのとおりだと思いますし、業種あるいは中小企業中心にそれぞれミクロでずっと見ていきますと、かなり厳しい物の見方をしておられるということもよくわかっておりますが、トータルとして見れば、私は今そういう段階にあるのではないか。  今後、じゃどうなるのかということでありますけれども、これは雇用者数は着実に伸びてきておりますし、それを背景として個人消費もやはり堅調な姿で推移する。あるいは公共投資がこれからも持続的な下支え効果をもたらしていくわけでありますし、設備投資も、特に合理化あるいは省力化あるいは新商品の研究開発投資への意欲そのものは非常にまだまだ旺盛なものが潜在的にはある。こんなことを考えますと、今申し上げましたように、これから内需中心型の持続可能な成長への今ラインにあるというふうに判断をいたしておるわけであります。  生活の問題については、通産省の方でも九〇年代のビジョンなどでお出しになっておりますが、実は我が庁も、御案内のとおり国民生活白書をお出しをして、そういう中で、確かに今日まで、我々個人の側面においても収入の増大に重きを置くような発想があったわけです。しかし、むしろ収入の増大よりも自分たち一人一人の生活を大事にしていきたい。つい先般総理府の調査もありましたけれども、そういう中で非常に特徴的なことは、収入の増加よりもむしろ労働時間の短縮を選びたいという発想が実は出てきておる。これは個人のゆとりとか豊かさというものはそれぞれ個人差がありますし、見る角度によっておのずから異なってくると思いますけれども、基本的に、充実した生活、人生をどうやって設計をしていくのかという多様性というか、いろいろな意味でのゆとりというものが必要になってきた。そういうことが、これは雇用の面においても必要になってきた。したがって、中小企業でもこれからは、賃金さえ高くすれば人が集まるという時代ではなくて、むしろ労働時間というものが非常に大事なポイントになってくる、そういう時代になってきた。さまざまな企業活動にしても、企業の収益中心型の企業経営ではなくて、むしろ社会への貢献ということを逆に前面に出していくということが企業イメージのアップにつながっていくとか、さまざまなものが出てきた。さらに、環境の問題だとか、いろいろなかっては成長の制約要因と考えられ、二律背反的なアプローチの仕方があったんですけれども、むしろ逆に、それと共存していかなければ成長そのものが達成できないのでは一ないか、そういう物の考え。そういう中で、むしろこれまでの企業社会中心型であった姿から個人の生活重視型のそういう形に変わっていく、消費者重視というか生活者という視点からの経済運営ということも非常に大事なことになってきた。そういう中で、個々人の分野は別として、少なくとも住宅であったり、あるいは通勤時間の問題であったり、あるいは下水道だとか公園だとか、そういう生活環境に関連する社会資本ということについては、これは公的セクターが大いにその役割を果たしていかなければならぬわけですから、そういう意味で、いわゆる四百三十兆の公共投資の基本計画を着実に達成をしていく必要がある、このように私は考えております。御指摘のとおり、世界経済も非常に大きく変わってきておりますし、日本経済が単に日本国内向けだけでなくて、世界経済の中での調和といいますか、そういう中での責任が非常に大きくなってきたということもしっかりと踏まえて経済運営をしっかりと頑張っていきたい、こう考えております。
  137. 水田稔

    ○水田委員 総論として御答弁いただいたわけですが、二つほど各論でちょっとお伺いしたい。  一つは、年末を控えての問題で御質問したいと思うのですが、私は、証券のスキャンダルの事件、特別委員会でやってみまして、これだけの経済力を持った日本企業国内だけではなくて国際的な企業のあり方というものが問われた事件ではないかと思うわけですね。法律に触れなければ何をして稼いでもいい、あるいはすき間を縫って稼げばいい。例えばヨーロッパでも事前の利回り保証は違法、こう言う。それがあると事後もやらぬわけですね。日本は、法律を読んで、事前にやるといけぬから、実際には事前にやっておるのでしょうけれども、証拠を残さずに事後でも保証をもらう。だから、損害がないのに、損失がないのに保証をもらったのは五十九社あった、こういう報告があったわけですね。まさにそれはそういう企業のモラルの問題。これから国際社会日本貢献しようというのであれば、少なくとも企業のあり方としてはやってはならぬことだと思うのです。  それから、けさほど既に公正取引委員会から、出した側の四社に、これは独占禁止法十九条違反ということで勧告が行われておる。これは前の中尾大臣に私は証券特別委員会で、そういう金は、これから企業のあり方をきちっとするのであれば、それはちゃんと社会還元をするべきではないか、例えばそれは難民救済であってもいいし、あるいは災害救済であってもいい、そういうぐあいにすべきじゃないかと言うと、それは企業の問題で、企業の自主的な判断、こういう答えなんですね。これは明らかに、法律も変えられた、今やれば違法ですね。そして、きょうの段階では、公正取引委員会も出した側を違反としていわゆる勧告しておるということになれば、条件も若干変わっておるし、大臣もかわったことですから、これからの日本企業は、国内的にはやはりクリーンな運賃透明感のある運営、公正透明な、そして国際的にも信頼されるような企業の運営をする出発点としてこれは還元すべきだ。通産大臣が強く、通産の中でですよ、よその省庁の関係まで言ってくれとは言いませんから、通産省所管の企業に対しては強く指導をされるべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  138. 渡部恒三

    渡部国務大臣 損失補てんの問題については、補てんを受けた企業の側にも結果として自己責任原則に対する認識を甚だ欠いた面があったことは、これは先生御指摘のとおりだと思います。ただ、その企業が受けた損失補てんの具体的な取り扱いについては、これはやはりそれぞれがこれから世界に生きていく企業でありますから、みずからの自主的な判断の問題であって、これを私から今とやかく申し上げるということではないような気がいたしますが、いずれにしても、企業が社会に対する重い重い責任を自覚して行動することは極めて重要なことであると感じております。
  139. 水田稔

    ○水田委員 大臣、バブルがはじけて株で損した人は二百兆円とこかへ消えてなくなったのです。そのうちをわずかな企業が千七百億ほど入れておるのですね。二百兆損した人の恨みというのは大変なものですよ。そして、一部上場企業でそれを懐に入れたままほおかぶりをしておるのかということは、これからの企業運営でそれは社会的な信用という点では大変損ですよ。だから親切なんですよ。それはちゃんと処理をした方がこれからの企業イメージも違うし、悪いイメージの企業だったら人は来ぬですよ。今人が採用できなくて倒産するというのがふえてくるわけですからね。そういう点ではまさに、私は法律的な権限があるから通産大臣に言ってほしいということじゃないのです。日本産業国民からも信頼される企業であってほしいし、また国際的にも、よその国ではないことをあの国では何十億と懐に入れた会社がというので、外国に行ったらそれはつまはじきでしょうね。そういうことがないようにすることは、通産大臣としては企業に対する極めて親切な仕事だろうと思うのですが、もう一遍いかがですか。
  140. 渡部恒三

    渡部国務大臣 いろいろ立場がありまして、私も大臣になる前は、雲仙岳に被災しておる皆さん方のために一部出したらどうだなどという話をしたこともございますが、今この席から私が具体的にどうこう言うのは、これはある程度圧力になりますので、企業も立派な社会的存在でありますから、みずからの判断、またみずからの責任でこれから信用を国際的にも国内的にも保持するような御判断をなさるのではないか、私と水田先生とのこのやりとり等も聞こえていくのではないか、そんなふうに感じております。
  141. 水田稔

    ○水田委員 そういう意味に理解をして、終わります。  次は、豊かさ実感という中で、やはり日本経済というのは、特別な公共料金のようなこういう決め方をしておるものは別として、普通はいわゆる市場原理が働いて価格が決定する。それが業者にとってみても、また消費者にとってみても一番いいことであることはもう間違いないと思うのですね。  そこでちょっとお伺いするのですが、エネルギーで、例えば都市ガスを使うとかLPGを使うとか、あるいは灯油を使うとか、あるいは炭を使うとかまきを使うとか、そういうことを選択するのに何か法律的に、どこは何を使わなければならぬという制限はありますか。
  142. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 基本的にはございません。消費者の選択によって決められるものというふうに考えております。
  143. 水田稔

    ○水田委員 そのとおりなんです。消費者の選択であるけれども、まさに市場原理が働かない、国民の生活に大変関係の深いエネルギーがあるのです。私は数年前にもこれをやったのです。それから全く変わりがないのですね。消費生活に関する通産省も経企庁も、また公正取引委員会も一体これをどう見て、なぜ何もしないのだろうかと疑問に思うわけです。  具体的にちょっと申し上げますと、LPGの輸入価格、いわゆる卸ですね、卸の価格が昭和六十年にトン五万八千五十一円です。そのときの小売を、これを換算して、一グラム幾らでカロリー計算をしてやりますと、トン当たり二十六万二千四円なんですね。ですから、五倍くらいになりますか。私は五倍になるときに何で、加工は何もしないのですから、例えばナフサを入れていろいろな化学製品をつくるのは加工がありますけれども、プロパンというのは、いわゆる船からタンクローリーで運ぶか何かパイプで運んでタンクヘ入れて、それをボンベに入れる、そういう作業ですから、五倍もなるのはおかしいじゃないかと言ったら、それは保安のために金が要るんだ、こう言ったのです。  それから、ずっと見ますと、一番安いときには、昭和六十三年の十二月が一万五千七百五十五円、それから平成元年の一月が一万六千三百七円ですから、五万八千円からいうと約四分の一ですか。四分の一に下がったときに、これは通産省が指導して五%しか下がらなかったのです。約二十三万、二十二万九千六百二十九円。そして平成三年、ことしの九月の新しい資料でいきますと、トン当たり二万二千四百九円が、これは二十六万八千二百七十二円ですからまさに十二倍。こういう経費はもう絶対どんな商売でもないですね。加工しないのですから、ボンベに入れかえるだけですから。これが幾ら通産省が指導しても、円高差益のときも五%ぐらい下がったのが精いっぱいで、全く下がらなかったのですね。まさに市場原理が働かない最たるものになっておるわけですね。  これはどうしてなんですか、通産省、経済企画庁、それから公正取引委員会。いわゆる国民生活に一番関係のある、都市ガスのない地域ではほとんどがプロパンを主体に使っておると思うのですが、そういうところで、それだけの大変な影響のあるものがこれだけ硬直化した価格で、しかも原価から比べれば十数倍の値段で売られるということがまかり通っておる今の状態で、豊かさを実感できる消費者に対する行政というのは一体何なのか。これ、どうですか。
  144. 武藤山治

    武藤委員長 どこから聞きますか。
  145. 水田稔

    ○水田委員 通産省、それから経済企画庁、そして公正取引委員会はこういうことに全く目を向けないのかということを伺いたいのです。
  146. 黒田直樹

    ○黒田政府委員 LPガスの小売価格でございますけれども、今先生御指摘のように、原料はほとんど海外から輸入するわけでございますが、これは代表的な産油国でございますサウジアラビアの原油の中のアラビアン・ライトという価格に連動して決まる仕組みになっておるわけでございます。そのときどきによって若干連動の仕方が違いますけれども、基本的にはそれに連動して最近は動いておる。そういうことから、原料としてのプロパンあるいはブタンの価格というものがそのときどきの原油価格の情勢を反映して動いているというのが第一でございます。  そのほかに、今先生御指摘のように、小売の段階までにはいろいろな段階があるわけでございますけれども、小売の段階ということで申し上げますと、やはり先生先ほど御指摘がございました保安関係の設備というのが非常に充実していかなきゃいかぬということで、最近ではマイコンメーターというのを普及させるべく各業者とも努力をいたしているところでございますし、そのほか、これは導管で供給する供給形態とは違いまして物流というのが非常に重要になるわけでございます。したがいまして、そういった意味での人件費の高騰等に基づきます配送費の増大等を反映して価格は決まっているものと思うわけでございます。  それで基本的には、このLPGの価格というのは市場メカニズムの中で決まっていくわけでございますけれども、過去の私ども行政といたしましては、円高が急速に進展した段階で、原料であるプロパンあるいはブタンの変動に応ずるような価格引き下げが未端段階で必ずしも十分に行われていないという背景のもとに、四回ほど円高差益と申しますか、それを価格に反映させていくようにという要請を業界に、いたしたところでございます。それから、前回の湾岸危機の状況の中におきましては、ちょうど石油製品の価格について同じような指導をいたしたわけでございますけれども、便乗値上げはしないようにという指導を行っているところでございます。  現在のところはそういうことで、市場メカニズムの中でこのLPGの価格というのは決められていくわけでございますけれども、私どもかねてから、そういった特段の時期ということを除きましても、仕切り価格に見合った適切な価格設定を行うこと、あるいは、価格改定を行う場合には十分にその内容を消費者に説明していただくこと、あるいは、当然のことでございますけれども、独占禁止法の違反になるような行為がないようにというような御指導はかねてやっているところでございまして、最近またこの夏ごろから若干小売価格が、私どもの行っております価格調査によりますと微増の状況にあるわけでございますので、十分その価格動向については監視してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  147. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 お答えいたします。  私ども、石油産品の価格、需給動向につきましては、通産省ともどもこれを注視し、調査、監視に努めているところでございます。  LPGにつきましては、ただいま通産省からも御答弁があったところでありますが、プロパンの小売価格が輸入価格の下落はど下がらない要因といたしましては、一つには、プロパンの商品としての性格からいたしまして、保安面あるいは輸送管理面でほかの商品とかなり違った、手間のかかる、そういう特性があるということがあろうかと思いますし、同時にまた、プロパンガスの販売業者には個人経営などの中小零細業者が多いといった事情も介在しているかと思いますし、さらには、その間にありまして全コストの中で流通コストの占める割合が九割以上ということでありまして、輸入されてまいりますプロパンの原料の比率が一割程度であるというような事情がある、そういうようなことが、先生から御指摘ございましたような輸入価格の下落ほど下がらないという背景にあろうかと思います。  しかしながら、御指摘なされましたように、国民生活の豊かさを実感できない要因の一つといたしまして内外価格差の問題があるということもまた事実でございますし、その間にありまして、輸入価格の下落が小売価格の下落に結びつかないということではまた困るわけでありますので、こういった点につきましては、消費者重視、このような観点から政府といたしましても、政府・与党内一外価格差対策推進本部におきましてさまざまな角度から取り組んでいるところでございます。  プロパンガスを含めますこのような問題につきましては、経済企画庁といたしましても今後とも通産省と十分に連絡をとりながら、引き続きLPG価格の安定需給、こういう点につきまして調査をし努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  148. 地頭所五男

    ○地頭所政府委員 御指摘のLPガスにつきましては、国民生活に欠くことのできない重要な物資でございまして、私ども、カルテル等の競争制限行為を規制する立場からも、かねてから強い関心を持っている物資でございます。これまでにも多数の排除審決を行った前例もございますが、最近では本年二月に、茨城県高圧ガス保安協会太田支部、社団法人岐阜県LPガス協会恵那支部の各団体が、従来の最低料金プラス従量料金、数量に応じた料金でございますが、のシステムから基本料金プラス従量料金というような、これを二部料金制と言っておるようでございますが、この二部料金制に切りかえること、それから、価格引き上げについて協定をした疑いのある行為が認められたということで警告をいたしたところでございます。  また、先ほど六十一年ごろの価格についても御指摘があったかと思いますが、エネ庁が六十一年に円高差益還元の指導、これはガイドポスト的なものを設けて指導を行ったことがございましたが、その際に鳥取県LPガス協会、それから福岡県LPガス協会が、価格引き下げ幅について、これ以上は引き下げを行わないという下げどめ協定をした疑いで警告をした事例がございます。  私どもカルテル等の競争制限を規制する立場から、今後とも端緒となる情報の収集に一層努めますとともに、所要の調査を行い、違反行為が認められた場合には厳正に対処する所存でございます。
  149. 水田稔

    ○水田委員 通産大臣、聞いていただきたいのですが、ぼろもうけをすることを、折れて曲がるほどもうけるという言葉があるのです。折れて曲がるというのは、大体一に対して折れて曲がるわけですから三倍ですな。それがぼろもうけ。これは十何倍ですからね。話にならぬわけですね。  通産省は私に、保安とか管理なんかに金がかかると。うそなんですよ。LNGは温度を冷却して圧を加えなきゃならぬ。プロパンは圧力だけでいいんです。だから、圧力容器が安全ということが検定で保証されれば、今度高圧ガスのあれも次に法案を出すようですがね、それであれば安全なんですよ、扱いは。そんな難しいものじゃない。そして、なぜこの価格が自由に競争できないのかというのは、容器を、特定の業者のものはそれだけがそこへ行ったら使うという仕組みになっているんです。だから、例えば、ビール瓶ならどこのビール瓶、今は若干違うのもあるけれども、違ってもラベルを張りかえたらアサヒでもキリンでもどこでも使える。安全性の問題だけ。そうなってないんですよ。だからとにかく、一つのところが入ったらほかは入らぬという、事実上はカルテルでないかもしれぬけれども、業者間のそういう取り決めがこの高い価格を維持しておるのです。ですから、通産省はそれはよく知っておるんですよ。公取も知っておるし、経済企画庁も知っておる。これができないというところに国民が実感として豊かさを実感できないいわゆる市場原理が働かないという仕組みがここにあるんですよ。  それからもう一つは、通産省は、僕が最初に聞いたのは、それはプロパンを使おうが、あるいは都市ガスが入っておるところでプロパンは使ってもいいんですよ。炭を使ってもいいし石油を使ってもいい。それは消費者の選択だというのですよ。選択できぬ状態がある。それは、通産省が一番よく知っておるのですよ。ガス会社が供給区域を広げようとすれば、それは通産省の認可だけでいいんですよ、普通は。しかし、持ってこいと言うんです。プロパン協会の判をもらってこいと言うのです。自由なんだ、本当は。それは実際に判を押さないんですよ、通産省は。  そして、これは報道でありますから皆さん御承知だと思いますけれども、プロパンから都市ガスに変えた場合には、これは大阪ガスの場合が書いてありますね。一軒当たり四万二千円を立ち会い料として一万五千五百五十円、保安協力費として二万六千五百円を取るわけです。これを一万円さらに上げるという要求が今されておるところです。こんなのはどこにもないのですよ、こういう取り決めは。例えばプロパン使っておるのが都市ガスに変わる場合には金を出せというのはどこにも法律的に要求する権限はないのに、それは通産省がその指導をし、そして通産省が、その業界の判がなければ供給区域を認めない。全部知っておるわけです、この状態は。  だから私は、これから今バブル経済が実業の経済に変わっていくその中で、国民がお互いに豊かに暮らそうとするなら、そういうところではやはり市場原理が働くような仕組みを、私はこれは例として申し上げるのですよ。だから、そのことは通産省が知り抜いてやらないのです。ですから、例えば消費者の立場で言えば、これをカロリー換算で計算しますと、LNGを使う都市ガスと、それからプロパンで言えば大体二割ぐらい、どこの場合計算しても、カロリー換算で、片一方五千カロリーで片一方は二万四千ですか、それを換算して計算すると大体二割ぐらい安いのですね。だから、同じ金を消費者が使うのならそれはいい。しかし、その選択は自由にできないような仕組みになっておるところに問題がある。  これはもう答弁は結構ですから、大臣、そういうもので、官僚は全部知っておるんですよ、知っておるけれどもやらないところに今問題があるし、これからの経済の運営というのはやはりそこが大事なんです。消費者にスタンスを置いてやるのならそこを考えてほしいということを申し上げて、これは時間がありませんから要望でとどめておきたいと思います。  それから、あとは、ひとつ年末が迫って中小企業の資金の問題についてぜひ御配慮いただきたいのは、やはり証券が証券スキャンダルで不況になる、だから大手の企業はいわゆる資本市場から資金を調達するというのがだんだん難しくなってくる、当然銀行に頼らざるを得ない。銀行にとってみれば、大口の方がいいし、心配ないものですから、そこへ貸すだろう。すると、前なら幾らでも出すのでしょうが、今預貸率もBIS規制で幾らも出すというふうにはいかぬから、大手が大枠にとると中小へ回る金は少なくなってくるわけですね。そういう点で、特に年末を控えて、先ほど申し上げましたように、経済状況はちょっと下降ぎみですから、そういう点では中小が一番厳しい状況にあるわけですから、商工中金とか中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等、そういうところへやはり中小企業の資金手当てのための手配をぜひしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  150. 南学政明

    南学政府委員 先生御指摘のとおり、株式市場の低迷から新たなエクイティーファイナンスがとりづらくなっておりますし、またこれから既発の転換社債等の償還のため多額な資金需要が発生するおそれがあるわけであります。今後大企業がこうした需要を背景に金融機関借り入れに対する依存を高めていきますと、金融自由化の進展なりBIS規制への対応ということもありまして、中小企業者は資金調達に困難を来すおそれもあるわけであります。  ただ、これまでのところ中小公庫や国民公庫への資金需要を見てみますと、堅調ながら落ちついた伸びとなっております。本年度の政府中小企業金融機関の資金につきましても、所要の貸付規模を我々としては確保していると考えておりますが、引き続き年末にかけまして中小企業をめぐる金融経済情勢を注視しながら、必要に応じまして機動的に対応し、政府中小企業金融機関からの円滑な資金供給に万全を期してまいりたいと考えております。
  151. 水田稔

    ○水田委員 ぜひ十分な手配をいただきたいと思います。  次は、日米関係について、経済企画庁長官も言われましたように、私も日米関係というのは大変大事だし、いわゆる個別の問題もさることながら、構造協議のような形で全体的なあり方というのを論議をして、その中で着実にそれを努力していく、まさに日本はそういう努力をしておる。足らぬところもありますけれどもね。例えば独禁法というのは、どうもあれは本当は約束したことでは我が党が出した案の方がよかった。あれを通してもらえばアメリカも文句言わぬのじゃなかったかと思う点はありますけれども、やっておるわけです。ところが、最近、ことし一年見ても、アメリカの議会では、いわゆる保護主義的な通商法案ですね。ですから、通商法三〇一条を発動する、こういう場合には。あるいは関税を二・何%を一五%に上げる、そういうような法案がメジロ押しで既に四つ出ていますし、十一月中には二つで、六つも出てくる、そういうことになっておるわけですね。  それから、宮澤内閣が発足して大統領がおいでになるかと思ったらちょっと延期だ、こう言って、後はいわゆるベーカー国務長官から、ヒルズ通商代表から、エネルギー省の長官からメジロ押しに来て、米を初め、いろいろな問題でこうやるわけですね。  これは私、心配するのは、アメリカ国内の内政の状況がよくない。国民の目を外に向けるというのはどこの国でもよくやることの一つなんですが、そして、日本たたきをやる。そういう状況がまた出てきておるのではないか。それからもう一つは、日本のこれまでの対応が、いわゆる個別の問題で、繊維に始まってずっとやられて攻めてくる。日本新聞を見たら、そればかり出るわけですね。そして、最初はこうやって防いでおるけれども、最後にはしょうがないということで牛肉・オレンジまで認めてきたという歴史があるわけですね。そういうことから、今、日本の若者の中に、嫌米、嫌だということ、アメリカに対して、嫌だ、そういうあれが広がってきておるわけですね。私は、決してこのことは日米お互いにとって好ましいことじゃないのです。そして、二つの国で世界GNPの四〇%を占めるのですから、そこらはやはりお互いに協力できる条件をつくらなければならぬ。こういう形を続ければ、恐らくアメリカはいわゆる反日、日本は反米ということでだんだんいくのじゃないだろうかと思うのですね。  ですから、私は、個別の問題の解決はもちろん大事ですけれども日米の間で構造協議をやったら何か普遍的なルールに基づいて個別の問題を解決するとか、何かそういうことを今やらなければ、これは日米関係はだんだんだんだん悪くなっていくのではないかという心配をするのですが、その点はどういうぐあいにお受けとめになって対応されるお考えか、お伺いしたいと思います。
  152. 渡部恒三

    渡部国務大臣 日米関係は、お互いにとって極めて重要なことである、これは先生御指摘のとおりであります。ところが、今お話しのように、五百億ドル前後の貿易黒字というものがお互いの関係をぎくしゃくさせておるわけで、アメリカからもいろいろ注文が来る。しかし、その注文は必ずしも納得のできるものでもないのもありますし、また、それが我々にとって当然のことであれはこれは素直に受け入れられなければなりませんし、しかし、日本日本アメリカアメリカですから、我々もただアメリカが要求してきたからといってすべてイエスというわけにもまいらない。お互いの国益を主張しながら、しかし世界の平和のために、また世界の自由のために日米パートナーシップはまことに重要である。これはお互いが話し合って理解を進めていかなければならない。まず当面は、ウルグアイ・ラウンドを成功させることにお互い全力を尽くしていくことである、こう考えております。
  153. 水田稔

    ○水田委員 ちょっと大臣、余り簡単過ぎまして、これは重要な問題ですから、経済企画庁も、やはり日米関係経済の問題ですから、できれば長官もお答えいただきたいと思います。
  154. 野田毅

    野田国務大臣 基本的には、今通産大臣御答弁されたとおり、当面のウルグアイ・ラウンドを何としても成功に持っていかなければならぬ、これは日米欧含め、みんなが努力をしていかなければならぬことだと思っております。  ただ、率直に申し上げて、日米関係というものを経済面だけでとらえるという、これは経済面の現象は非常にわかりいいのですけれども、私は、一政治家として感じますのは、基本的にアメリカの方々の発想は、安全保障という問題に極めて大きなウエートを置いておるということだと思っております。すべて、技術の問題にせよ、どんな問題にせよ、やはりアメリカの発想というのは安全保障だ。逆に安全保障という大義名分が立てはかなりのこともできる。それに対して日本の場合は、むしろ戦略的に、日本で言う戦略産業というのは、安全保障ということよりもむしろ経済中心にした一つ産業政策というものが今日まで行われてきたというイメージをアメリカが持っておる。  そういう中で、多少このところアメリカ産業構造自身がやや空洞化しつつあるのではないか。そういう意味で、構造的な問題をアメリカ産業自身が抱えておる。そしてまた、財政の問題もいろいろあろうと思います。それは決してアメリカ自身の政治的な努力不足ということではなくて、やはり世界の安全保障を担っていかなければならぬという、そういうある意味でのスーパーパワーであるがゆえの責任を遂行していく上での不可欠な部分であったのかもしれない。しかし、そういったことを私どもも、今通産大臣がおっしゃいましたように、お互いそれぞれの気に入らぬところをあげつらうという言い方の主張をするのではなくて、むしろ本当にかけがえのない、これからの世界経済をみんなで引っ張っていく大事な一員として、しっかりと率直に意見交換をしながら政策協調を続けていかなければならぬ。これはやはり粘り強い、お互いが理解をし合う努力をしていかなければならぬと思っております。特に、議会筋はともかくとして、アメリカ政府は基本的にはそういうスタンスでやっていただいておることだと考えております。
  155. 水田稔

    ○水田委員 私はこの問題、日米関係の問題は、例えば知的所有権の問題とか、また我が国産業構造のあり方との絡みというようなことで少し質問したいと思っておりましたが、時間がもう五分ほどしかありませんから、改めてまた一遍、十分大臣等の御意見も聞きたいと思うのです。  最後に、ソ連、東欧の経済がどうなるのか。ということは、世界経済ひいては日本経済にも影響があるわけです。そしてアメリカも金はないし、ドイツも東を抱えたものですから外国へ出す金がない。みんな、出すのは日本が出して、こう言うんですね。しかし、ソ連状況というのは本当に混沌としてよくわからぬわけです。この間通産省も含めて、シベリアの緊急医薬品、食糧の援助の調査団が入る、それから渡部大臣は行っておられないのですが、中尾前大臣が十月二十日から行かれていろいろお話をしておるわけです。  それで、時間がありませんからもうはしょって申し上げますと、一つは、私は、一番の隘路は、連邦と共和国の権限、共和国と自治州、自治共和国の権限がいまだに明確でないものですから、そういう中へ一体どういう援助ができるのかというのが問題です。  それからもう一つは、援助でただ上げる分はいいですね。ですけれども、貸す分ですね、これはやはり、もう通貨がどうなるかということで、今ルーブルがどうなるのか、あるいはルーブルが恐らくこの一年間で何百倍のインフレになるかもしれぬ。そういう中では非常に不安定ですが、そこらが問題があると思うのです。それ以外にも通産省は二つの調査団、大臣を含めて行かれたわけですが、何かそういう陸路になるものがほかにもあるのかということをお伺いしたいのが一つ。  それからもう一つは、やはり状況が今は変わりましたから、むしろソ連邦が解体されてくることによってソ連の持っておる軍事技術が第三世界へ流出するのじゃないか、それをとめないと危ないよ、こういう話になってくるのですが、全廃はできないにしても、相当スタンスの変わった国として見て、ココムというもの全体を見直してみる必要があるのじゃないか、そのことについてお伺いしたいのと、最後に、ソ連は、いわゆる数字の見方はいろいろありますけれども、一人当たりのGNPが五千ドルと言われてきたのです。ところが、実際に今、一ルーブルを実勢価格、旅行者の価格で計算すると、私、この間五円でかえてきたのです。今はもう既に四円、恐らくもう二円ぐらいになっているかもわからぬですね。例えば四円で計算して月二百五十から三百ルーブルで計算したら年千ドルないし千二百ドルぐらいの所得しかならぬわけですね。そして、ロシア共和国が五千ドルのときにウラル山脈を越した東側というのは千七百ドルぐらいだったのですね。ですから、ODAの援助の対象になるわけですね。そして今、連邦がほとんどもう権限がなくなってきて、共和国になって、例えばバイカル湖の東側のヤクート自治共和国は独立宣言をする、こういうようなことになってくれば、それぞれで考えられるのじゃないか。それは、物を上げるというのじゃなくて、例えば港湾の整備であるとか通信であるとか、日本の商社が行っても通信がモスクワよりとにかく通じぬわけですから、シベリアを中心にしてそういうODAの援助とか、あるいは輸送の機関、道路もいけませんね、それから鉄道とかそういうことを考えるべきではないだろうか、これからアジアにおける日本海を中心にした日本ソ連との新しい経済関係で、その三点をお伺いして終わりたいと思います。
  156. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今ソ連との今後の問題の大変難しいことについてお尋ねがございました。  実はきのう、エリツィン大統領の代理ということでルーキン最高会議対外経済委員長が私のところに参りまして、先般の中尾前通産大臣貿易保険等についての協力については非常に評価をしていただきました。また、いろいろ話をしている中で、まさに先生御指摘の問題、大変重要であったと思うので、私の方から、ソ連が円滑に経済改革を実施していくのには二つの点が重要である。まず第一に、既に十の共和国によって署名している経済共同体条約の実施などにより、連邦と共和国の関係も含め改革の推進主体が明確化することが極めて重要でないか。また、ソ連経済の数多くの問題の解決に同時にこたえ得る包括的な経済改革パッケージが作成されることが重要ではないか。これによって巨額の財政赤字の削減計画が明確にされるとともに、価格の自由化、民営化、競争の導入政策などが効果的に関連づけられて実施されていくことが重要ではないか、こんなことをお話ししておきました。  またこれからも、ソ連がといいますか、ロシア、共和国、これが安定していくということは世界のために極めて重要なことであり、また我が民族としては北方四島の返還という極めて重大な問題をこの機会に解決しなければならないので、一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  157. 水田稔

    ○水田委員 基本的なことは結構でございますが、いわゆるODAの共和国に対する適用と、もう一つはココム規制の問題について、すぐにじゃなくて検討なら検討ということでの御答弁でもいただければと思います。
  158. 岡松壯三郎

    岡松政府委員 ソ連邦についてODAの適用がないか、またソ連邦でなしに共和国をとらえてみれば、自治区をとらえてみれはODAは適格ではないかという趣旨の御質問と存じますが、ODAのあり方につきましては、共和国に対するODAを今直ちにやるのかどうかということにつきましては、まず連邦と共和国の関係あるいは共和国と我が国と一体どういう外交、政治的関係を持っていくのか、その辺を明らかにしながら慎重に検討すべき問題ではないかというふうに考えておる次第でございまして、これら地域につきましてはやはり対ソ支援全体の枠組みの中で検討していくべき問題ではないか、かように考えておる次第でございます。  ココムにつきましては、担当局長からお答えします。
  159. 高島章

    ○高島政府委員 ココムにつきましてお答えを申し上げたいと存じます。  ココムは、先生よく御存じのとおり軍事的観点から見まして戦略性の高い先端技術を規制しているものでございます。ただ、先端技術というのは日進月歩でございまして、その規制内容についての見直しが必要となるわけでございますが、最近の技術の進展を踏まえました見直しをココムで行いまして、本年五月規制緩和を盛り込みました新しいリストを採択をいたしまして、九月一日に発効したところでございます。これを受けまして、我が国といたしましても法制を整備いたしまして、今月十四日からこの新しいリストを採択、施行したわけでございます。  ただ、ソ連に関しましては、その軍事的脅威が全く払拭されたというわけには現在いかない、今般のソ連国内におきます政治的な変革によりまして直ちにココム規制を撤廃するということは時期尚早であると考えておりまして、これは他のココム参加国とも十二分に連絡をとり、情報交換しておりますが、現在はそういった考えでございます。
  160. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  161. 武藤山治

    武藤委員長 小沢和秋君。     〔委員長退席、和田(貞)委員長代理着席〕
  162. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 本日は、今急増しております貿易不均衡を是正する抜本対策について渡部野田大臣に見解を伺いたいと思います。  委員長、質問のために資料の図表を用意いたしましたので、同僚の議員や政府側に配付をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。  では、質問させていただきます。  最近、貿易収支や経常収支の黒字政府見通しを大きく超えて再び急増いたしております用地域的には、従来の対米不均衡に加え、EC、アジアなどに対しても不均衡が増大していることが今回の特徴であります。その輸出内容を見ますと、今大臣にも皆さんのお手元にも配付をいたしましたとおり、自動車、コンピューター、電気製品などがこれまでどおり大きな部分を占めており、トヨタ、日産など上位十社で総輸出額の三三・一%、三十社で五〇・五%を占めております。我が国の巨額の貿易黒字自動車、電機などのほんの一握りの巨大企業の猛烈な輸出によってもたらされておることはもう明らかだと思います。念のため一九八〇年の上位三十社を調べてみましたが、十年たっても入れかわっておるのは四社だけてあります。  我が党は、日本経済の維持発展のために輸出が重要な役割を果たすべきことはよく理解をしておりますが、このような一部の巨大企業の輸出ラッシュで日本世界じゅう貿易摩擦を起こすような事態は緊急に是正しなければならないと考えます。今まで貿易摩擦解消のため、黒字減らしのためにいろいろやってもこういう状態だということは、従来の対策ではだめだ、もっと抜本的な対策を講ずる必要があるということを示しているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  163. 高島章

    ○高島政府委員 御指摘ございましたように、我が国貿易黒字、通関ベースで見ますと九一年の四月から十月で四百七十二億ドル、対前年同期比にいたしまして四六・八%増と非常に拡大をしているわけでございます。  これは、内容を見てみますと、前年急増しておりました絵画とか自動車といいました高級品の輸入が減少したり、あるいは昨年に比べまして円高になりましたためにドルベースの輸出価格が上昇させたことがございますほかに、統一後のドイツで非常に需要が伸びましたことあるいは東南アジアの好調な内需が、これもまた日本の輸出につながったということでございます。  今後の動向につきまして、為替レートや石油価格等の変動要因に左右されるところも大きいわけでございまして、注視していく必要があるわけでございますが、いずれにいたしましても、これまでいろいろな施策を打ってまいりましたわけでございますが、引き続きインフレなき内需中心持続的成長を図るということがこれはもう根幹でございますけれども、構造調整努力の促進あるいは輸入拡大策の一層の推進に努めていく必要があろうかと思います。  なお、八七年にピークを打ちました貿易黒字は、その後の諸般の施策によりましてずっと減少してきたわけでございまして、その意味ではいろいろな施策が黒字解消に役立ってまいりました。ただ、冒頭に申し上げましたような状況でございますので、そういった施策の一層の拡充、推進が必要であろうかと思っておるわけでございます。
  164. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そこで、渡部通産大臣にお伺いをしたいのですが、アメリカのブッシュ大統領はこの貿易不均衡是正のために、日本に対し、ウルグアイ・ラウンドとも絡んで、米の輸入自由化を強く要求いたしております。日本政府に圧力をかけるために要人の来日も相次いでいるわけでございますが、これに対して、宮澤首相を初め自民党の有力者が相次いで譲歩を示唆しております。あなたも昨日そういうような趣旨の発言をされたということが新聞で報道されております。  既にこれまでも、政府・自民党は我が党や農民などの反対を押し切って、自動車などの輸出超過のしりぬぐいを農業に押しつけ、次々に農産物の輸入拡大に応じてまいりました。その結果、我が国は食糧のカロリー自給率がついに四八%まで落ち、主要国最低という状況になっております。農産物の純輸入額では世界最大という状況であります。  もうこれ以上、米についてまで輸入自由化に応じたら、日本の農業は完全に崩壊するのではないかと思いますが、関税化であれ部分自由化であれ、日本は絶対に応ずべきではないのではないかと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  165. 渡部恒三

    渡部国務大臣 一言先に申し上げさせていただきますのは、委員一握りの企業とおっしゃいますけれども自動車にしても半導体にしても弱電にしても、その企業貿易をし、あるいは生産をし、そのことに携わって何百万人の働く人たちがそれで所得を得て、子供を教育し、あるいはまたその企業の上げる利益から法人税が上がって、お年寄りの方の年金やら弱い方の社会福祉の費用やらに使われておるわけでありますから、ただ一握りという言葉はちょっと極端であろう。日本は戦後、やはり技術を開発して、すばらしい製品をつくってこれを外国に売って、国民全体がその豊かさを享受しておるということは、委員にも御承知願いたいと思います。  したがって、この自由貿易によって最も享受を受けておる日本が、ウルグアイ・ラウンドを成功させなければならない大きな責任があります。しかし、たびたび私が申し上げておるように、それぞれの国が国益を背負って、国益代表して、ガットどいつ場でそれぞれ議論をして今日にまで及んでおるわけでありますから、何もアメリカが言ったから、はい、そうですと、これはすべてを受け入れるものではございません。我々は、譲ることができることもあるし、譲ってならないこともあるし、国益を前提にして、しかも、やはりこれは世界が平和で、自由で、みんながすばらしい未来に向かって進んでいくためには、最終的には最大公約数、話し合いによって一致点を見出して、ウルグアイ・ラウンドを成功させなければならないということでございます。  農業については各国ともそれぞれ困難な問題を抱えておりますけれどもウルグアイ・ラウンド交渉を年内に終結させるためには、お互いの国が相互の協力によって解決に向けて最大限の努力を、したがって傾注する必要がございます。特に、米については、農業についての相互の協力による解決に向けての最大限の努力の傾注の中で、国会決議などの趣旨を十分に体して、国内産で自給するとの基本的方針のもとで、大変苦労の要る仕事でありますけれども、これから対処してまいりたいと存じます。
  166. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今のお話は、そうすると、国内産で自給をしていくということを基本にしながら対処していくというふうに最後のところでは確かにおっしゃったんですが、その前の方では各国の相互の協力、最大の努力をお互いにし合ってというように言われたんですが、米の輸入の自由化は認めないという点についてはどうなのかということが、今の答弁ではもう一つはっきりしないので、重ねてお尋ねをしたいと思うのです。
  167. 渡部恒三

    渡部国務大臣 国会決議等を十分に尊重しながら対処してまいります。
  168. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ここで大臣にずばり申し上げたいのですが、あなたは昨年の総選挙で、この米の問題についてはどういうような公約をされたか、私案室言うと調べて、そのときの選挙公報をここに持ってきたんです。これがそれです。この中に、「私の政策」として「米の輸入自由化を阻止し食管制度を堅持する。」というふうに、疑問の余地なく書かれておるのですね。だから、私は、政治家であるあなたとしては、国会の決議を守り云々というような大臣としての一応の公式の物の言いようはあるかもしれませんが、このあなた自身が選挙民に対して行った公約を守るという立場からは、今のお話では私はまだ不十分だと思うのですよ。これをちゃんと守るということをひとつここで明言願いたいのですが、いかがでしょうか。
  169. 渡部恒三

    渡部国務大臣 これは、たびたび申し上げてまいりましたけれども、米は二千年の歴史にさかのぼれば、豊葦原の瑞穂の国、我が日本民族にとって心ともいうべき大変これは大事な問題であります。しかも、現状、農林省が戦後奨励して農家の皆さん方に田んぼをつくらせ、構造改善事業を進め、これはかなり多くの国費を出しておりますけれども農家の皆さんにも負担をいただき、その返済もまだ終わっておらないという中で、これは残念ながらだんだんだんだん国民の食生活が豊かになるに従って米の消費が減ってまいりましたから、現在の状態では四百万トン近い過剰設備に水田がなってしまったということで八十万ヘクタール前後水田を減反していただいておる、こういう状態の中でありますから、そういう立場に置かれておる農家の皆さん方理解していただくためのやはり積極的な農業政策、これは私の分野でありませんが、これは農林水産大臣お願いをしなければならないと思っております。  ですから今答弁したように、国会決議がそういう中で行われておるわけでありますから、これを尊重しながらできる限り食糧、米の自給というものを確保するという方向の中で、しかし交渉というものは、全部おれの意見が一〇〇%だ、こういうことではお互いの話し合いは成り立たないわけでありますから、お互いにやはり譲れない点もあるしまた譲らなければならないこともあるし、相手側もそうでありますから、そうでないと国民に対する責任ある政治というものはできないので、小沢さんと私の立場の違いも御了承を賜りたいと思います。
  170. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 米が余るようになって減反をしておる、日本の農民が大変な苦境に立っている、だからそこから出てくる結論というのは、私は外国からお米などを輸入するようなことは困るということでなければおかしいのではないかと思うんですよ。  それで、ウルグアイ・ラウンドの成功のためということがさっきから出ておりますけれども、私が承知をしておるのでは、このウルグアイ・ラウンドの最大の交渉の焦点というのは、農業問題についていえば輸出補助金やECの可変課徴金の問題じゃないかと思うんですね。だからアメリカはこの問題でECと交渉しながら、同時にそれがうまくいかなかったときにも貿易摩擦の最大の相手国である日本に米の問題で譲歩をさせたということになれば、今国内で人気が下がりぎみのブッシュが非常に自分の政治的立場をよくできる、こういう思惑があって日本に非常に圧力を集中しているということじゃないかと思うんです。だから私は、そういうような彼らの思惑に全くはめられるというようなことでは、これは国益も守れない。今こそ相手がアメリカでも言うべきことは言う、さっきから何遍かおっしゃったように思います。ぜひこれを言っていただいて、米の輸入自由化は絶対認めないということをはっきりお約束願いたいんですが、政治家としての渡部さんにもう一遍お尋ねしたい。
  171. 渡部恒三

    渡部国務大臣 先般訪問していただいたベーカー国務長官にもまたヒルズ通商代表にも、米の問題というのは我が国にとっても極めて困難な問題であるということは再三申し上げておりますが、これは一義的には農林水産大臣の問題でありますから、これ以上のことは農林水産大臣にお尋ねを賜りたいと存じます。
  172. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それは私は許されないことだと思うのですよ。しかし、きょうは商工委員会の場であるから、今の問題についてはそのことを指摘するだけで先へ行きたいと思うのですが、私は、この米の輸入自由化を推し進めでもいわゆる貿易赤字の解消には余り役に立たないんじゃないかという認識を持っておるんです。  これは極端な想定でありますけれども、米を全量アメリカから輸入することにしたらどうかということを私はちょっとここで計算をしてみました。米の国内消費量一千五十万トン、これに対して米の国際価格は二百八十四ドルですから、これを掛け合わせてみますというと、全量輸入したら二十九億八千二百万ドル、円に換算いたしますと四千三百十八億円にしかならないわけです。これはトヨタの輸出額二兆七千九百二億円の六分の一にもならないわけですね。だから、九〇年度の我が国貿易黒字額が六百九十八億六千四百万ドルであったし、九一年度はさらに急増するということを考えてみますというと、この米の輸入自由化というのは、幾ら何でも私が仮定したように全部輸入に一遍に切りかわってしまうということはあり得ないわけなんですけれども、こういう極端なことを想定してもこの程度しか輸入額としては日本の側はふえないことを考えてみても、これは本当にこんなに大騒ぎをして輸入を自由化するというような問題じゃないんじゃないかというように私は考えるんですが、いかがでしょう。
  173. 藤原武平太

    ○藤原(武)政府委員 農業貿易の自由化でございますけれども、これはウルグアイ・ラウンドで取り上げられておりますコンテクストと申しますのは、アメリカあるいはケアンズ・グループといった輸出国のグループから強く求められておるところでございまして、工業品の貿易自由化とは直接には無関係に進められておるというふうになっておるわけでございます。  それで、自由貿易の恩恵、これは単に工業品の生産者のみではなくて、兼業農家におきまする農業従事者が工業で雇用される、あるいは工業従事者の所得の上昇を通じて農産物の消費が増大をするといったことで、農業従事者を含む国民の広い層が恩恵をこうむるという次第になるということも認識すべきであると思っておるわけでございます。したがって、工業品貿易の自由化のために農業があるいは犠牲になっているとか、そういった論理と申しますか、お考え、見方もございましょうが、それは一面的ではないかというふうに思っておりまして、より多面的、総合的な観点からこの貿易の自由化、こういったウルグアイ・ラウンドといったことを考えていかなければいけないというふうに思っておる次第でございます。
  174. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私は、日本が全世界に対し輸出超過になる構造的な最大の要因は、過労死が国際語になるような長時間・超過密労働にあるのではないかと思います。だから、これをなくすことが膨大な貿易黒字解消の最も重要な施策になるのではないかと考えます。  一九八九年の数字で見ましても、製造業で日本の労働者の年間総労働時間は二千百五十九時間、これに対しアメリカは千九百五十七時間、ドイツは千六百三十八時間と、日本の労働時間の長さは際立っております。国民の中から、経済大国といっても我々には豊かさもゆとりも実感できないという悲痛な声が上がっているのは当然だと思います。しかし、これだけ労働時間短縮が国民的関心事となっているときに、トヨタ、日産など主要な輸出企業は、時短どころか残業時間の伸びで総労働時間がふえてさえおるわけであります。  資料に我々がつかみ得た限りでの主要輸出企業の総労働時間と所定外時間を書いてあります。これをごらんになっていただきますとわかりますが、全国平均は二千七十六時間、これ以下というのは、総労働時間では五社、所定外では三社しかないわけです。ほかはいずれも大幅に上回っているのですが、特に自動車会社が長いことが際立っておりまして、長い方のベストテンの六社までが自動車ということになります。  通産当局は、我が国企業のこの異常な国際競争力の重要な要因としてこのような長時間・超過密労働があるということを認識しておられるのかどうかということをお尋ねいたします。     〔和田(貞)委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 先生御指摘のように、日本産業の国際的な調和を確保する、あるいは御指摘のゆとりと豊かさ、そうしたことを実感できる生活を実現するためにも、日本の労働時間を短縮していくことは極めて重要であると私ども認識いたしております。  通産省は先般、時短経営問題懇談会というのを開催しまして、経営の側から時短を進めるための具体的方策を検討いたしました。そしてその報告書におきましても、業種、業態に応じた時短推進へ取り組みが必要という指摘がございます。こうした状況を踏まえまして、現在業界ごとの時短に向け、取り組みの状況等についてヒアリングを行っておりまして、業界ごとの事情を踏まえまして自主的な時短推進体制の構築を要請いたしているところでございます。  御指摘のように、この時短問題につきましては私ども、緊急な課題であると考えておりまして、今後とも産業界の時短の推進に積極的に取り組む方針でございます。
  176. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そこで、この問題は大臣にもお尋ねをしたいのです。  通産省も貿易摩擦が激しくなるにつれて、労働時間短縮を労働省の問題だというふうにばかり言ってもおれなくなって、九〇年代の通商産業政策の目標として、ゆとりと豊かさのある生活の実現などを掲げまして、あと三十日休んでゆとり社会の実現などとさまざまの労働時間短縮の提言をしておられるわけであります。ただ耳ざわりのよい言葉を並べるのではなくて、今こそ実際に大幅な労働時間の短縮になるように、企業あるいは労働組合、労働省などに具体的に働きかけてそれを実現していただきたいと思いますが、大臣決意のほどを伺っておきたいと思います。
  177. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今、詳細、山本産業政策局長から答弁がありましたが、時代が推移、ゆとりのあも生活を求める、これは先ほどからの議論もありましたが、昔は何時間余計働いても収入を余計欲しいという貧しい日本だったのですけれども、私どもの長い政権の中で、今では国民の皆さんが、むしろ収入が若干減っても労働時間を短縮したいという豊かさを生活の中で求められるような経済社会ができ上がったわけでありますから、この時短に、労働時間を短くするように努力する、これは委員御指摘のように、そういうことによってもっと、きょうまであの貧しさから今日の豊かさをつくり上げてきたわけですけれども、その豊かさが一人一人の庶民の毎日毎日の生活の中で生きていくように努力をしてまいりたいと存じます。
  178. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私は、もっと具体的に企業や労働組合や労働省などに大臣の立場で積極的に働きかけていただきたいということをお願いしているわけです。ぜひそうしていただきい。  この問題については、経済企画庁の野田長官にもぜひ伺いたいわけであります。  経済企画庁の関係でも、最近、国民生活審議会から「個人生活優先社会をめざして」という中間報告が出されるなど、しばしば労働時間短縮の提言が行われております。私は、これを一般的提言に終わらせることなく、特に輸出関係の製造業で働く人々の長時間・超過密労働、先ほどから申し上げているとおりでありますし、これを解消し、この人々にゆとりと豊かさを確保して貿易摩擦を解消する役に立てていただきたいというふうに願っているわけであります、  今まで経企庁としてどう努力をしてきたか、それから経済関係閣僚会議の座長としても、日本経済のかじ取り役の立場からも、ぜひ時短に積極的に取り組んでいただきたいと思うのですが、長官の決意も伺って、時間が来たようですから終わりたいと思います。
  179. 武藤山治

    武藤委員長 野田経済企画庁長官。――事実関係を先に。冨金原総合計画局長
  180. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 時間もございませんようですので、簡単にお話をしたいと思いますが、先生御承知のとおり、経済企画庁は経済全体の総合調整をするという立場から経済計画の作成をいたしておりまして、現行の経済計画世界とともに生きる日本」という計画の中でも、労働時間の短縮は国民生活の豊かさを実感する上で極めて重要な問題であるという認識のもとに、計画の中でできるだけ早く千八百時間の労働時間を実現するようにということをきちんとうたって、そういう方向努力をしているわけでございます。それが一点。  それから、毎年のフォローアップというのをやっております。計画の中で実行状況をチェックするわけでございますが、その中でも、労働時間の短縮は進んではいるけれどもまだ十分ではないということを繰り返し述べておりまして、それは政府の閣議にも報告をしてその促進に努めているわけでございます。  さらに、今御指摘ございましたが、国民生活審議会であるとか経済審議会、最近におきましては、経済審議会の中で二〇一〇年委員会という委員会で長期の展望をいたしましたけれども、その中でも、労働時間の短縮、さらにはそれを含めて自由時間、ゆとりという問題が極めて重要であるということを報告の中ではっきりうたっておりまして、いろいろな意味で企画庁も真剣に取り組んでいるというのが実態でございます。
  181. 野田毅

    野田国務大臣 御指摘ございましたように、労働時間の短縮の問題は、ゆとりある豊かな国民生活を実現をしていこう、生活大国を目指していこうということから見れば極めて大事な問題であります。現在の状況は必ずしも十分な状況ではありません。依然として長いということは事実です。ただ、このところ所定内労働時間の短縮を中心に多少改善の歩みはありますけれども、まだまだ努力をしていかなければならぬと思っております。  これからも、関係省庁の御協力もいただきながら、先ほど来御指摘のあった民間のそういった企業の御協力もいただきながら、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
  182. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 終わります。
  183. 武藤山治

    武藤委員長 川端達夫君。
  184. 川端達夫

    ○川端委員 日本経済にとっても、また国民の個々の生活にとっても非常に大きな役割と責任を持っているいわゆる通商産業省あるいは経済企画庁両省庁に、豊かな見識と実績をお持ちの渡部大臣野田大臣に御就任をいただいて、心からお祝いを申し上げたいと思います。ぜひとも期待どおりの御活躍をお願いを申し上げたいというふうに思います。  初めての御就任後の委員会でございます。全般的なことを中心にお尋ねを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。  一番初めに経済見通しに関してでございますが、私たちも選挙区、あるいはいろいろな経済にかかわる方にお会いをします、あるいは職場に回りますと、経済先行きというのに大変不安をお持ちの方が多い。同時に、ひたひたとというよりももう少し強い勢いでかなり厳しい状況に陥っているという話をのべつに伺います。先般十一月十四日に公定歩合引き下げをされましで、我々もぜひともにと思っておりましたので、時宜を得たものと思うのですけれども、最近の経済状況は予想以上にカーブを切っているのではないかなと実感いたしておるわけですし、民間の信用調査機関東京商工リサーチが十三日にまとめた十月の全国。倒産状況によりますと、負債総額一千万以上の企業倒産が前年同月比六五・八%増の一千七十一件、八七年の十月、千六十四件以来四年ぶりに一カ月千件を超えた、こういうふうなことも報じられております。先ほど来の議論で、バブルの崩壊ということで虚業と実業というお話もございましたけれども、実業界においての経済のそういう危機というふうな状況相当深刻になってきているのではないか。製造業、販売業などもこの中には随分倒産が含まれております。  そういう意味で、まず初めに、今までもいろいろと見解をお出してございますが、経済企画庁として経済見通し現状、それからその先行きということに対していま一度お聞かせをいただきたいと思います。
  185. 野田毅

    野田国務大臣 今経済現状についてのお話があったのですが、住宅の建設あるいは自動車の新規登録台数あるいは企業収益の動向、設備投資幾つかの指標の中で、従来に比べてかなり減速をあらわす指標があらわれておることも確かであります。しかし一方でまた、雇用者数というのは着実に伸びてもおりますし、あるいはいわゆる個人消費のレベルを見てみますと底がたい堅調なものがある。必ずしも指標がそろっておるというわけでは実はありません。設備投資の問題にしても、きょうも先ほど申し上げたのですけれども、あるいは省力化、合理化への投資意欲とか、おるいは研究開発投資への意欲とか、基本的にはそういう底がたいものが現にある。これからその先を考えましても、公共投資がかなり持続的な下支え材料にもなっていくし、雇用の伸びも着実に進んでいく、そういう消費も総じて堅調にある。こういうことを考えますと、やはり現状は基本的には拡大テンポ減速しつつある。ただ、今までのテンポが、先ほどバブルのお話もありましたが、やや高目のテンポで来ておりましただけに、減速感というものが心理の中にあるということは、率直にそのとおりだろうと思います。しかし基本的には今申し上げたような状況にあり、いわばインフレなき内需中心とする着実な成長を持続的に行っていく、そういう過程への移行の段階にあるのではないかというふうに実は判断をいたしております。  今、倒産件数のお話もございました。確かに商工リサーチの結果によりますと千件を超えたというお話であります。ただ、このところ過去の年間のあれを見てみますと、確かに平成二年度あるいは元年度は年間で六、七千という倒産件数であったけれども、それより前の、例えば五十七年以降、ピークの二万件を超えだということは別といたしまして、総じて見ると、ではこの状況が深刻ないわば景気後退段階にあると見るということはいささか弱気が過ぎるのではないか、このように実は考えておるわけであります。  今後の見通しといたしましては、先ほど申し上げましたような着実な雇用の増加、そしてそれに支えられる消費あるいは公共投資、そしてまた先般公定歩合引き下げも行われました。金利も今低目に移行いたしております。それらの事柄を考えますと、私どもはこれからも内需中心とするインフレのない着実な成長経路をたどっていくものであるというふうに考えておるわけでございます。ただ、この減速感というものが企業家消費者の心理にいろいろ影響を及ぼしておるということも十分理解をいたしておりますので、これからの経済運営に当たっては機動的なきめの細かい経済運営をやっていかなければならぬ、このように考えております。
  186. 川端達夫

    ○川端委員 実際の産業の現場を所掌されている通産省としては、今きょうの委員会でも今の御答弁でも、いわゆる減速しつつ拡大基調、減速しつつ拡大をしているというのが経企庁の全般的な御判断のようですが、通産省としてはどのような認識見通しをお持ちですか。手短にお願いをいたしたいと思います。
  187. 渡部恒三

    渡部国務大臣 最近の我が国経済、まさに川端委員御指摘のように倒産、大変残念なことでありますけれども増加傾向にあります。また、住宅着工の減少や設備投資の鈍化など、残念ながら緩やかに減少をしてきておることは否定できないと思います。企業には今経済企画庁長官から答弁のありましたように弱気の見方が大変強まってきております。こうした状況のもとで、先般の公定歩合引き下げによって企業心理、企業の資金調達にこのことが好影響を与えることを私は期待をしております。  今後については景気の実態をより慎重に見きわめ、内需中心の息の長い成長が持続できるように機動的かつ適切な経済運営を行い、川端委員心配のようなことにならないように、何とかこの国の国民の豊かな生活を支える前提である持続的成長を続けるように努力をしてまいりたいと存じます。
  188. 川端達夫

    ○川端委員 大変ありがとうございました。確かに今非常に微妙な時期であろう。そして長官もおっしゃいました、大臣もおっしゃいましたように、いわゆる弱気な部分、それから減速感というものが非常に大きな影響を与える可能性もあるという時期を迎えている。そういう意味で、いわゆる経済政策のとり方というものがある部分には慎重に、ある部分には大胆にということで、トータルの大きな目で政策運営をしていただきたいというふうに思うわけです。  それに関連をいたしまして、最近の新聞報道を含めましていろいろなところで耳にする部分で、いわゆる税収の落ち込みに対する財源対策として財政当局がいろいろ検討されている、その中にいわゆる自動車に関する消費税の六%が期限切れになるのを延長という問題、それから湾岸危機に関して増税を行いました石油税、それから法人税そのもののいわゆる期限つきのものを財源対策として継続してはどうかというふうなことが巷間耳にいたす話でございます。この問題に関しては、先ほどもお述べになりましたように、自動車の登録台数が減ってきている、そういうふうな一般の需要者の消費、それから自動車産業自体がまさに、先ほど小沢委員に対して大臣御答弁されましたけれども、ただ単に自動車だけでなく、広範な産業影響を与えるだけの基幹産業になっている。あるいは法人税に関しては、これは全企業にかかわることでもございます。それから、エネルギーの大きなもとである石油、こういうものに関して、今の期限つきの税制が、しかもこれは政治的に言えば、いわゆる約束ごととして、特別にこのために要るから、あるいはこの期間だけということでやられた税制が、財政事情のためにということで継続されるということになると、これは政治的に大変な、いわゆる道義的に許されるべきことではないということと同時に、先ほど来御答弁いただいておる中でもあるような、今の微妙な時期の経済に対して与える影響というのが非常にマイナス方向に大きく働くのではないかという部分を懸念をいたすわけでございます。  そういう意味で、内閣を構成される一員として、この問題に対していわゆる政治的な不信をあおらないという意味での政治的な責任というもので、こういうものをやるべきでないと私は思うのですが、そういうことに対する考え方と同時に、この三つのことが経済においては非常に大きな影響を与える、どちらをやるかによって、やめるのか継続するかによって大変大きな影響を与えるという御認識なのか、余り大したことないと思っておられるのか、その部分に関して通産省、経企庁、どのように受けとめておられるかということをお伺いをしたいと思います。
  189. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 先生御指摘の点でございますが、私どもは普通乗用車に対する消費税暫定割り増し税率六%につきましては、平成四年三月三十一日をもって本来の税率である三%となるというふうに理解いたしております。  また、法人の臨時特別税及び石油臨時特別税につきましては、湾岸の支援措置に係る財源ということで、本年四月より一年限りの措置として、臨時的かつ限時的に課税されているものというふうに理解いたしております。  いずれにしましても、一般論として言いますれば、税制のあり方、これは経済に大きな影響を与えるものでございまして、慎重な検討を要するものというふうに理解いたしております。
  190. 川端達夫

    ○川端委員 現行の法律はそうなっているわけですからあれですが、これはそういう経済に大きな影響、とりわけ今の微妙な時期、去年の今の時期であればそんなに問題にならなかったということでやられたのだと思うのですが、現状においては大変な影響を与えると同時に、政治的に、非常に政治改革が叫ばれる中でこういうことをしては私はいけないという部分で、内閣におかれましてそういう問題が議論になれば、断固ノーの立場を貫いでいただきたい、御要請を申し上げておきたいと思います。  それから次に、日本経済を支える本当に大きな力というか、中心的な役割を担っているのはやはり中小企業であろうというふうに思います。そういう中で、中小企業も現実にいろいろ先行きに不安を持っておられる方も多いわけですが、現実問題として中小企業幾つかの問題を抱えていると思いますが、その中の一つに、いわゆる人手不足がある。これは本当に深刻な問題でございますが、そういう問題の切り口で申し上げたときに、先般人材確保法をおつくりいただいて、いろいろな御援助をいただいているということは非常にありがたいことだと思っているのですが、いわゆる単純労働における外国人労働者の受け入れ、この問題に今までのような姿勢から一歩踏み出すような情勢に来ているのではないだろうか。中小企業経営者の方とお話しをしますと、何らかの形でそういうふうなことが政治の課題として真っ正面から取り上げて踏み込んでいただきたいという御要請を随分伺います。そういうことで、まず労働省に、現在のそういう社会的な要請を踏まえて、今この問題に対してどういう取り組みをされているのか、お伺いしたいと思います。
  191. 野寺康幸

    ○野寺説明員 外国人労働者問題につきましては、ここのところ、先生御指摘のとおり、労働者不足の深刻化の中で、さまざまな議論でございますとか提案でございますとか行われているわけでございます。  ただ、労働力不足の解消という点から見ますと、政府といたしましては、安易に外国人労働者に依存するといったような方法よりは、まずもって生産工程の合理化でございますとか、機械化の進行でございますとか、いわゆる三K職場と言われておりますような労働環境の改善によりまして、まずもって労働力不足の解消に努めるのが先決だと思っております。  あわせまして、高齢者でございますとか、女子でございますとか、そういった方々の能力を有効に発揮できるような環境の整備を図ることが必要であるというふうに思っております。  外国人労働者の受け入れにつきましては、例えば二国間協定によりまして、期間でございますとか人数等を限定いたしました方式で受け入れてはどうかといったような主張があるわけでございますが、こういった例をとっております西欧の具体例を見ますと、次第に滞在期間が延長されてまいったり、あるいは受け入れ人数が、あるいは就労分野も含めまして適時拡大されていくとか、結果的に十分機能していないといったような現状があるわけでございます。  そういうことを考えますと、まずもって国内の労働力を十分活用するといったことが必要でございますし、そういう意味では外国人労働者、特に単純労務者の受け入れについては今後ともやはり受け入れないという方式を通すべきであるというふうに思っております。
  192. 川端達夫

    ○川端委員 従来の枠を超えない御答弁でございました。しかし、現実に今のような状況は、私は、アメリカにおける一九二〇年代の禁酒法の時代、お酒を飲んではいけないというときに、アル・カポネが暗躍をしたというふうなことを映画でよく見るのですが、ああいうのを思い出してしまう。現実に今やブラジルとかペルーとかの日系人以外に、いわゆる不法労働者というものが蔓延をしてきている。そして、同時にそれはまさにアウトローでございますので、それを束ねる、あっせんをするという人たちがいわゆるアンダーグラウンドの人脈の中で非合法的なことをしている。そして、雇用者は現実に、給料は高く払っているにもかかわらず、働いている人は搾取をされ、ほとんど三分の一ぐらいしか手にしない。そして、犯罪も起こっているわけですし、働いている人、それからその出身の国は反日感情が増すという状況を生み出しているのは事実なんですね。そういうときに、しかも日本において労働力は今本当に不足をしているというときに、今のようなことで本当にいいんだろうか、私はそういうふうに疑問を持たざるを得ません。現に、産業を支える労働者、今労働省がおっしゃったような省力化であり云々ということで機能する状態を既に過ぎている。今現実に過ぎているという状況であると思うのですが、この問題に関して、通産省はどのような御認識をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  193. 南学政明

    南学政府委員 私ども中小企業庁といたしましても、先生御指摘のとおり、中小企業にとりまして、今労働力不足問題は大きな経営上の問題と認識をいたしております。  ただ、この労働力不足対策のために外国人労働者を積極的に受け入れるか否かという点につきましては、帰国の担保であるとか、あるいは社会的受け入れ基盤の問題など、いろいろ検討を要する問題があるわけでありまして、昨年の入管法改正におきましても、単純労働者の受け入れは行わないという政府方針がとられております。今後とも慎重な検討が必要と認識をいたしております。  なお、政府といたしましては、国際的な技術移転促進という観点から、外国人研修生の受け入れのための制度につきましては、その整備に鋭意努めているところであります。例えば中小企業庁といたしましては、外国人研修生の受け入れを積極的に進めるという考え方に基づきまして、本年度から中小企業組合、商工会あるいは商工会議所が行う外国人研修生の共同受け入れ事業に対しまして補助する制度を創設しまして、その実施に今努めているところであります。また関係四省で本年九月に、財団法人国際研修協力機構の設立認可が行われまして、同機構を活用して、今外国人研修生受け入れに当たっての助言、援助等を実施しているところであります。今後とも外国人研修生の受け入れのための支援措置を積極的に講じていく考えであります。
  194. 川端達夫

    ○川端委員 時間が限られていますのでくどくど申しませんが、いろいろな手だてをされているということはよく承知をしております。しかし、研修生のいろいろな仕組みを使うということができるのは、現実には大企業にシフトをしてしまうというのも現実でございます。そういう部分で、今の政府の方針をすぐ変えろというのはなかなか難しいでしょうが、そういう次の段階への枠組みというのがどうあるべきかは、ぜひともに積極的にお取り組みをいただきたい、御要請を申し上げておきたいと思います。  それから、同じく中小企業の諸施策に対しては、今回の税制、予算の要請に対しても、いろいろな形で中小企業対策、それから大店法施行に伴う商店街あるいは町づくりの活性化のために御配慮をいただき、要求をしていただいていることは評価をさせていただきたいと思いますし、ぜひともに予算獲得をして、遅滞かき政策の実行をしていただきたいと御要請申し上げておきたいと思うのですが、同時に中小企業の、どちらかというと企業に対する経営基盤の確立という意味で、いろいろな融資であるとか施策というのは今までもやってこられました。しかし、一番今人手不足で困っているときに問題になっているのは、企業としては大企業中小企業が連携をとりながらおのおの分担をしてやる、そして中小の経営基盤の弱いところにはいろいろなところから援助をしていただく、これはいいのですが、人を採用するという段に関しては大企業中小企業は同じ土俵の中で競争をしなければいけない、そのときに現実にはほとんど負けてしまうということで人が集まらないという状況であるわけです。したがって、何らかの形で政策的に、中小企業に働く人が職を求めていくときに、中小企業に勤める方が大企業に勤めるよりメリットがあるというふうな仕組みが政策的に何か考えられないかということを思うわけです。ここは大変難しいことかもしれません。  いろいろな議論を我々もしましたときに、恐らくできないとおっしゃるのですけれども、例えばパートの方を採用するにも、最近は大企業はパートを非常にたくさん雇用するということで、中小企業になかなか来てくれない。それで今、パートの方の最大の政治に対する願いは、非課税限度額を上げてほしいということがあるわけですね。そうしたときに、大企業は非課税限度額百万円です、中小企業で雇用する場合は百二十万円ですと言えば、僕は中小企業にたくさんパートの方が行かれると思うのですね。税制の大家が笑っておられますからあれですけれども、というふうな発想も柔軟に持ちながら、そういうふうなことを何か仕組みとして、働く人にとって、選んだときに、例えば社宅が完備しています、食堂が立派です、厚生施設が全部大企業に負けるのは当たり前なんですね。そういうふうな観点で、働く人にとってという中小企業政策が何か考えられないのかということも含めて、ひとつ、お願いと同時にお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  195. 南学政明

    南学政府委員 御指摘のとおり中小企業が人材を確保していく上で福利厚生あるいは知名度といった点で大企業よりも不利な立場に置かれておりまして、これが中小企業における労働力確保難の大きな要因になっていることは事実であると思います。しかし、中小企業で働く労働者につきまして一大企業で働く労働者よりも例えば税制面において優遇をするということは、労働者の所得に対する課税の公平性の確保という観点からも極めて難しい問題ではないかと思うわけであります。  現在私どもは、去る通常国会におきまして制定していただきました中小企業労働力確保法に基づきまして、労働省とも協力しながら、福利厚生を含む職場の魅力向上に取り組む中小企業支援しているところであります。今後とも同法に基づきまして、労働時間の短縮、職場環境の整備、福利厚生施設の改善等に積極的に取り組む中小企業を側面から大いに支援し、中小企業における魅力ある職場づくりに努力してまいりたいと思います。  また、中小企業の知名度の不足につきましても、平成四年度におきましてイメージアップ対策のための予算要求を行っておりますので、こうした対策を通じて中小企業の労働力不足対策に努めていく考えであります。
  196. 川端達夫

    ○川端委員 またいろいろとお知恵を出していただきたいと思うし、我々もまた提言をさせていただきたいと思います。  時間が限られておりますので、本当は、事業の承継税制に関して今大変な悩みをお持ちになっている、特に評価額が七〇%から八〇%に引き上げられるという問題も含めていろいろと御質問を申し上げたかったのですが、あとわずかになりましたので次の機会に譲らせていただきまして、実はきのう質問をいろいろ準備をしているときに夕刊を読みました。そうしましたら、「野菜供給へ経企庁応援」という記事が載っておりまして、非常にうれしく思いました。今国民が本当にもう野菜、野菜と悩んでおりますときに、きめ細かい観点から、例えば曲がったキュウリを送るとかいうことを含めて御配慮をいただいたことは、本当に大ヒットではないかということで喜んでおります。  つきましては、お礼を申し上げると同時に、これに対して一点だけお伺いをしたいのですが、昨今異常な野菜の値上がりが現実に起こっている。物価に直接的にかかわる品々でございますし、物価ということは国民の生活に大変な影響を与えるわけですが、この現象が全国的に起きている。台風の被害、それから秋の長雨の被害というのはもちろんあったというふうに思います。しかし、私は、それ以外の要因というものが根底にはあるのではないかなというふうな気がいたしてならないわけですが、現在のこの野菜の異常な高騰の原因、それからこれからの見通しというものに対して経企庁としてはどのような御認識をされているのか、伺いたいと思います。
  197. 長瀬要石

    ○長瀬政府委員 温かいお言葉をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。  今般の生鮮野菜の価格上昇、これは基本的にはやはり近来にない九月中旬以降の長雨、日照不足、そして台風の来襲によりまして冠水、浸水、暴風雨、そういったことによりまして天候の影響を受けたということが主因であるというふうに思うわけでございまして、ちなみに台風等の被害が少なかった北海道を主産地といたしますニンジン、タマネギでありますとか、あるいは湿害に強い里芋というようなものにつきましては、価格が平年並みの水準にとどまっているということでございます。  しかしながら、ただいま先生から御指摘がございましたように、そのような天候要因の背後に構造的な要因がなかったか、こういうことになりますと、これは先般私ども公表させていただきました物価レポートの中におきましても、天候不順以外の要因として幾つかの点を指摘いたしております。手短に申し上げさせていただきますと、一つは、やはり品種なり産地の要因でありまして、近来軟弱野菜そのほかにつきまして、天候に弱い品種がふえてきた、あるいはまた、主産地が形成されましたけれども、これが台風の直撃を受けますと大変大きな被害を受けるというようなことがあろうかと思います。同時にまた生産面の要因といたしましては、農家や担い手の高齢化、こういう状況が起こってきておりまして、野菜関係は機械化が困難である、労働時間の縮小が進まない、こういったことからいたしまして農家の生産意欲の減退ということが懸念されるところでございます。さらには市場面ということからいたしますと、いわば先取りというような問題について、これは評価の分かれるところでございますけれども、特に供給量が減りました状況のもとでは先取りというような問題でありますとか、あるいは外食産業におきます価格よりも数量を重視した仕入れ態度というようなものも影響しているのではないかということを指摘いたしております。そのほかに消費者の要因、消費面の要因といたしましては、鮮度を初めといたします品質を重視するというような傾向があるわけでありまして、これは大変重要なことでありますけれども、しかし、過剰な鮮度あるいは過剰な包装に対する要求というようなものは価格の引き上げに結びつく、こういうこともあるのではないかということであります。  昨今の野菜の高騰、これは基本的には天候要因でございますけれども、同時に、その背後にそのような構造要因が横たわっているということにも十分留意しながら、野菜の価格安定の問題につきまして農林水産省とも十分連携をとって対応を進めてまいりたいと考えております。
  198. 川端達夫

    ○川端委員 時間が来てしまいましたので終わりにしますが、どうもありがとうございました。  今のいろいろな問題指摘、私も同感でございまして、必要以上に曲がったキュウリは売れないというふうなこともあるでしょうし、いろいろな地域に非常に集中してしまっているとか、いろいろな野菜づくりが、基盤が脆弱化していることは事実だと思います。それと同時に、やはり今もお触れになりましたけれども、いわゆる農業後継者の問題、それと手間がかかるということでの、要するに農業従事者が本当に少なくなってきているというふうなこの現象を見ますときに、米づくりにおける農業というものの何か将来を先に見ているのかなというふうな不安も持った次第でございます。どうか高い立場で分析をいただいて、農水省とも連携をとって将来に備えていただきたい、お願いを申し上げて終わりにいたします。  ありがとうございました。
  199. 武藤山治

    武藤委員長 江田五月君。     〔委員長退席、和田(貞)委員長代理着席〕
  200. 江田五月

    ○江田委員 渡部通産大臣、御就任おめでとうございます。たしか私がまだ参議院の時代ですから今から十二、三年前でしょうか、近畿地方の大学の教育のシンポジウムか何かで御一緒させていただいたことがありまして、以来大臣には先輩としていろいろ御指導を賜りたいと思っておりました。今回の大臣就任、大変期待をしておりますので、ひとつぜひ頑張っていただきたいと思います。  最初の質問ですので通商産業行政全体にわたって議論させていただきたいのですが、時間が余りありません。いや、これは文句を言っているのではなくて、委員長や同僚の委員の皆さんの御配慮で二十分という貴重な時間をお与えいただいているので感謝をしておるのですが、それときょうは緊急の問題がありますので、もう早速テーマを絞らせていただきたいと思います。  実は前の国会の終わりごろ、九月の二十七日にこの商工委員会で私は当時の中尾通産大臣政府のいわゆるODA四原則、平成三年四月十日参議院予算委員会における海部総理の答弁要旨というものが私の手元にありますが、ここにあるODA四原則について質問をいたしました。被援助国の軍事支出の動向、兵器の開発、製造等の動向、武器輸出入の動向、そして四番目に被援助国の民主化の促進及び市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況、こういった点に十分注意を払いつつ援助を行う。もちろん概括的な二国間関係とか安全保障環境を含めた国際情勢とかいろいろ総合勘案するわけですが、私はこの環境の原則もこの中に加えたらよかったんじゃないかということをつけ加えたわけですが、特に基本的人権と自由の保障状況について伺いました。そしてこれに対して中尾大臣からは基本的に賛成だ、その上十分なる草の根の調査が必要である、十分なる資料と十分なる情報によって初めて的確なる判断が下される、こういうことをおっしゃられたわけですが、この点について渡部大臣の基本的なお考えをまず承っておきたいと思います。     〔和田(貞)委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今江田先生からお話しの四原則、基本的に同様でございます。
  202. 江田五月

    ○江田委員 さまざまな資料を十分に把握した上でその基本的人権あるいは自由、民主化、こうしたことについての判断を下さなきゃならぬ。そういう十分な資料、情報ということの中で中尾前大臣は草の根の調査あるいは草の根運動的に調査をする、こういう言い方をされたわけで、これは草の根というのが何を意味しておるかはそれ以上時間がなかったので詰めておりませんが、恐らく単に政府間の情報だけでなくてNGOといいますか非政府組織あるいは人権団体、市民団体あるいは個人レベルの情報、その情報価値はそれはいろいろですけれども、そうした情報をきちんととにかく受けとめるという姿勢で的確なODAを行うために努力をする、こういう趣旨だったと思うのですが、この点も渡部大臣は同じお考えだと伺いたいんですが、よろしいですか。
  203. 渡部恒三

    渡部国務大臣 今江田先生お話しの考え方、私も同様でございます。
  204. 江田五月

    ○江田委員 お答えが簡単で時間が節約できて大変助かっております。  そこで、実はきょう私は朝、委員会を時々抜けて大変忙しい思いをしたんですが、それは一つはミャンマーですね、ミャンマー、ビルマ。アウン・サン・スー・チーさんが率いる党が選挙で大勝したのに実は議会が招集されない。アウン・サン・スー・チーさんはノーベル賞を受けた。しかし自宅軟禁で出てこれない。もしノーベル平和賞をもらいにオスロヘ行ったらもう帰ってくることができないといった状況ですね。まあこれは象徴的な事例ですが、これについての勉強会を一つ行いました。十二時からは今度は東チモールの問題について記者会見を行いまして、非常に忙しかったんですが、この東チモールです。これは、一九七五年にインドネシアに武力侵攻されて、その後インドネシアの占領下にある東チモールという場所で最近重大な人権侵害事件がどうも起きた。インドネシア国軍による武力弾圧事件があったわけです。きのうの夜の九時のNHKの「ニュース21」のトップニュースで報道されまして私も見ましたが、これは大臣ごらんになったでしょうか。きのうの夜の九時の「ニュース21」
  205. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ちょっとその時間テレビを見ておりませんでした。
  206. 江田五月

    ○江田委員 それは大変残念で、だけれども、私もいつもテレビ見ているわけじゃないからそのことがどうというんじゃありませんけれどもごらんになっておれば大臣もきっとびっくりされたと思いますよ。墓地の門のようなものがあるのですよね。その門のところへ人がばあっと逃げてくるわけです、門の中から。銃の音がバンパンバンと聞こえるという、まさにたまたま門があるので第二の天安門事件じゃないかなんて、冗談言っている場合じゃないのですけれども、そういう事件です。私は、これは先日宮澤総理が所信表明演説で、今「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まり」だ、そして日本は「国際社会において名誉ある地位を占め、国民が誇りを感ずることができる品格ある国となるようこ頑張る、こういうことをおっしゃったわけですが、もし大臣がこのテレビをごらんになったら、こういう状態の国に、日本のODAはインドネシアに一番たくさん行っているわけです。インドネシアから見ると日本から来ているODAが一番大きいわけです。これでいいのだろうかということを感ずるべき、そこから先どうするかは別ですよ、感ずるべきそういう映像だったような気がするのですが、どうです大臣、ちょっとそのビデオをもう一遍見てみようという気になられませんか。
  207. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ぜひ取り寄せて拝見させていただこうと思います。
  208. 江田五月

    ○江田委員 ぜひひとつこれはごらんになっていただきたい。ODA四原則から見ても看過できない事件だと思うのです。  そこでこれは、事実関係の究明というのは外務省のまずは第一次的なお仕事かと思いますので、外務省、事実関係をどう把握しており、またこれにどう対応されたか、これからどうされようとしておるか、これを説明していただきたいと思います。
  209. 林景一

    ○林説明員 お答え申し上げます。  全体としてまだ調査中という前提で手短にお話しさせていただきます。  この十二日の朝、東チモールのジリ市におきまして、去る十月二十八日に別の騒擾事件で死亡いたしました二名の青年の埋葬されております墓地に集まっておりました群集と治安部隊が衝突を起こしました。軍の発砲等によりまして、インドネシア政府の発表によりますれば、死者二十名及び負傷者九十名以上に上る惨事となった由でございます。  これに対しまして我が国といたしましては、十四日にインドネシア政府に対しまして、一つ、かかる事件の発生は遺憾であり、二つ、事実関係の究明と情報の提供を求めたい、また三つ、かかる事件の再発防止とこれ以上の流血回避を希望する旨の我が国政府の考え方を申し入れいたしました。この申し入れは、東京でアジア局参事官から在京の公使、在京インドネシア大使館の公使を招致して行うとともに、念のためジャカルタにおいても外務省に対して行っております。さらに、十四日から三日間、在インドネシア大使館の館員二名を現地に急遽派遣いたしました等、みずからも情報の収集に努めております。このことは我が国の本件に対します関心の高さを示すものというふうに私どもとしては考えております。  これに対しましてインドネシア政府でございますけれども、十七日、インドネシア政府はスハルト大統領の指示に基づきまして、最高裁判事をリーダーとし外務、内務、法務各省、国軍、最高諮問会議及び国会代表、いわば国を挙げての調査委員会を設置いたしまして、本件事件の真相究明のため徹底的な調査を行う旨、また政府としては本件を深く遺憾と考える旨を明らかにしております。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、こうした調査委員会の活動を通じまして十分な調査が行われて早急に事件の真相究明がなされること、及びこれを踏まえましてインドネシア政府がしかるべき措置をとることを期待しておる次第でございます。  以上でございます。
  210. 江田五月

    ○江田委員 比較的早い段階での迅速な措置に感謝をいたしますが、そこで、私たちも事実関係については国際的ネットワークで調査をしておりますが、十二日の事件だけでなくてその後今度は十四日には逮捕者が、六十人にもわたって逮捕されている者が銃殺をされたという、裁判なき処刑ですね。これは事実かどうかの確認ということになると難しいですけれども、そういう報道まで出てくるという大変に心配な状態になっている。死体はもう運び去られているのではないかとか、インドネシア政府は、今二十人というようなお答えだったのですが、報道によると十九人と発表したということですが、百十五人という死者が、いやいや百八十人じゃないかというようないろいろな情報があるわけです。相当な数に上っていることは間違いない。しかもこの後なおいろいろなことが起きてくるということが心配されるわけです。  そこで外務省にちょっと伺っておくのですが、私どもがこの東チモールのことについてどうなっていますかというと、もう再三の質問に常に、いや状況はだんだんよくなっています、次第に安定してきております、そういうお答えだったのですが、そういう、状況がだんだんよくなって次第に安定していって、そこへ突然ぽんと起きたのか、それともやはりこれは深い深い内攻した不満あるいは深い事件の背景、根があるのか、どう認識されておるのでしょうか。
  211. 林景一

    ○林説明員 お答えいたします。  外務省といたしましては、累次現地東チモールに在インドネシア大使館の館員等を派遣しておりまして、昨年の五月及び十月にも、これは在ジャカルタの外交団と共同でございましたですけれども派遣いたしまして、現地の実情把握というものに努めております。こうした中で私どもとしては、長い目で見ました場合には全体として、八九年からチモールの解放が行われる等事態の改善という方向にあったように受けとめておりました。それだけに、今回の事件の発生というのは非常に残念に思っております。ただ、今回の事件がどういう形、どういう意味合いを持って発生したものであるかということにつきましては、なおインドネシア側で調査を進めておる、これから本格的な調査が行われる段階でございますし、私どもとしても引き続きさまざまな情報を収集してまいりたいと思っております。
  212. 江田五月

    ○江田委員 やはり事実というものを知る方法について、もっとさまざまな方法を駆使する必要があると思うんですね。これは通産大臣もひとつぜひ聞いておいていただきたいのですけれども、在外公館から向こうの政府を通じて手に入れた資料、あるいは在外公館の人間が現地に行って見てくる、それだけで事がわからないケースというのはいっぱいあるので、私どもがいろいろな草の根資料でこんなこともあるぞ、あんなこともあるぞ、現地の人間はこんなことを不安に思っている、こんなことを心配しているぞということをいろいろ申し上げても、まあそれはなかなか資料的価値としてはいろいろあると思うのですけれども、常に政府は、いやいや平穏無事でございます。今回のような事件は平穏無事だったらそんなにぽんと起きないですよ。私は、やはり今度のこの十二日の事件でも、インドネシア側が設立を決めた真相究明委員会、この出してくる答えだけでなくて、それが本当に確かなのかということを日本の独自の草の根調査で調べていただきたい。向こうが出してくるものをそのままうのみにするのではなくて、日本日本としてのそういうさまざまな真相究明の努力をするんだというその決意を外務省の方で聞かしていただきたい。
  213. 林景一

    ○林説明員 お答えいたします。  先ほど御説明いたしましたとおり、私どもとしても現地に急速館員を派遣する等独自の情報収集ということについては相応の関心を持っておりまして、現地に参りました館員も、決して政府関係者だけではございませんで、市井の人々の話も伺う等の形で情報を収集しております。今後とも引き続きあらゆる形での情報収集に努めてまいりたいと思っております。
  214. 江田五月

    ○江田委員 事前に質問のためのやりとりで伺いましたら、現地の人たちが調査をして帰ってきた報告によると、現地は静ひつであると、どういう言葉でしたかね、穏やかである、そういう報告だったというふうに伺いましたけれども、それは穏やかなんじゃなくて、やはり圧殺されているんじゃないですか、自由な声が。そこまで見抜かなければいけない。  私どものところに山ほど資料が集まってきて、もう私の部屋のファックスはパンク寸前とはいいませんけれども、随分集まってくるのですが、ひとつぜひ逮捕者とか行方不明者、そういう人の名前も挙がってくると思うので、これらの人々の安否についてインドネシア政府に確認の要請をしていただきたいと思うのです。これはこれからのことですが、いかがですか。
  215. 林景一

    ○林説明員 私どもとしては引き続きこのチモールの状況、政治状況というものに対して十分な関心を払ってまいりたいと思います。
  216. 江田五月

    ○江田委員 私は何もインドネシアをいじめるとか日本が優位に立つとかそんなことで言っているのじゃなくて、そういう関心を示していることが、インドネシア政府が基本的人権というものを大切にしないと国際社会で生きていけないよという認識を持っていく、そういう手だてになると思うから言っているわけで、このODA四原則についても、これは何も日本がお金を出す場合のさじかげんのことの原則じゃなくて、世界から武器をなくしたいあるいは市場経済を確立していきたいあるいは基本的人権や自由を世界に確立したい、こういう日本の意思があるからこそこれをやろうと言っているわけですから、その都度、機会あるごとにそういう発言をやっていくべきだと思うのです。  そこで通産大臣、これは事実関係がまだ完全に明らかでないので今の段階でどうするという答えは求めませんが、実はもうかなりのところまではインドネシア政府も認めていて、さらにポルトガルはもとよりアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなども声を上げておりまして、ODA四原則に照らして、この間ハイチヘの援助停止が行われてこれが適用第一号のようですが、事実いかんによってはインドネシアの援助停止を考えるべきだ、こう思います、事実いかんによってはですよ、もちろん。今すぐそうするというのではないですが、そういうこともあり得ますよということを通産大臣、おっしゃるべきだと思いますが、いかがですか。
  217. 渡部恒三

    渡部国務大臣 ただいまの江田委員と外務省政府委員のやりとり、興味深く聞かせていただきましたので、これから勉強してみたいと思います。
  218. 江田五月

    ○江田委員 勉強してみたいというお答えをいただきましたが、その瞬間に「質疑持ち時間が終了いたしました」という紙が来たので終わりますが、私はやはり、少なくとも事実関係が明らかになるまでは、実施中のものはともかくとして、新規の援助は中止をしておくべきじゃないか、それだけの大きな事件じゃないかと思います。これは……
  219. 武藤山治

    武藤委員長 ちょっと外務省に聞こうか。――それでは最後に、外務省小島調査計画課長
  220. 小島誠二

    ○小島説明員 お答え申し上げます。  先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、インドネシア政府調査委員会というものを設置いたしまして調査を行っておるところでございまして、私どもといたしましては早急に事件の真相の究明がなされることを期待しておるわけでございます。したがいまして、当面私どもといたしましてはインドネシア政府調査の動き、結果、そういうものを見守っていきたいと考えております。
  221. 江田五月

    ○江田委員 ぜひひとつ、単に見守るとか研究するとかだけじゃなくて、この事件、こういうことを通じて基本的人権を世界に確立するのだという日本の意思を示していただきたいと思いますが、時間になりましたので終わります。  ありがとうございました。      ――――◇―――――
  222. 武藤山治

    武藤委員長 次に、内閣提出高圧ガス取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。渡部通商産業大臣。     ―――――――――――――  高圧ガス取締法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  223. 渡部恒三

    渡部国務大臣 高圧ガス取締法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  現行の高圧ガス取締法は、昭和二十六年に高圧ガスの保安に関する基本的な法律として制定され、その後、高圧ガスの大量消費の増加、高圧ガス製造事業所の大規模化、複雑化等に対処するため、数次にわたる改正が加えられてきております。  しかしながら、近年、高圧ガス保安行政を取り巻く諸情勢は大きく変化してきており、特に、先般の大阪大学における爆発事故にも見られるとおり、圧縮モノシラン等の特に危険な性質を有する高圧ガスの消費が拡大していること等を踏まえ、高圧ガスの消費についての保安対策を強化することが急務となっております。  また、近年下げどまりの傾向にある高圧ガス関連事業所における事故の発生をより確実に防止していくため、事業者自身が行う保安活動の徹底を図っていくことが必要となっております。  さらに、高圧ガスの保安に関する技術の向上等に対応し、規制の合理化を行う必要がございます。  以上のような要請に対応するため、今般、本法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の要旨をご説明申し上げます。  まず第一に、圧縮モノシラン等の特殊高圧ガスを、その特に危険な性質にかんがみ、特定高圧ガスの種類に追加することとし、これにより、特殊高圧ガスの消費について、届け出をさせるとともに、特定高圧ガス取扱主任者の配置義務、従業者への保安教育の実施義務等を課することとしております。  また、液化石油ガス以外にも一般消費者が高圧ガスを消費する機会が増大していること及び高圧ガス消費事業所における事故が毎年多数発生していることにかんがみ、販売業者等に、その販売先の消費者に災害の発生の防止上必要な事項を周知させる義務を課することとしております。  第二に、事業者自身が行う保安活動の徹底を図るため、事業者がみずから定めた危害予防規程を遵守していない場合、あるいは従業者に対する保安教育を怠っている場合に、都道府県知事が危害予防規程の遵守を命令または勧告し、あるいは保安教育の実施、改善を勧告することができることとしております。  また、高圧ガス取締法に基づき設立されている高圧ガス保安協会の業務について、技術的な事項に限定せず、広く高圧ガスの保安に関する調査、研究及び指導並びに情報の収集、提供を行うこととしております。  第三に、高圧ガスの輸入について、現行の輸入前の許可、輸入後の検査という二重の厳しい規制を課しておかなくても保安は確保されることから、許可制を廃止し届け出制とするとともに、一定の場合には、届出、検査とも不要とすることとしております。  第四に、高圧ガスの保安に係る技術の向上により現行の規制を課することが過重かつ不要となっている一定の設備について、通商産業大臣等が行う認定を受けた場合に、許可等の規制から届け出等の規制に変更をすることとしております。  第五に、高圧ガスを充てんするための容器について、容器証明書制度を廃止し、保安上必要な事項を容器に直接表示する制度を一律的に適用することとしております。  このほか、高圧ガス製造事業所について都道府県知事が行う保安検査について、高圧ガス保安協会に加えて民間検査機関も行えることといたします。  以上がこの法律案の提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  224. 武藤山治

    武藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会      ――――◇―――――