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1991-12-02 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十二月二日(月曜日)     午前九時四十分開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 中川 昭一君 理事 船田  元君    理事 与謝野 馨君 理事 石橋 大吉君    理事 串原 義直君 理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    井出 正一君       伊吹 文明君    石川 要三君       上草 義輝君    衛藤 晟一君       小澤  潔君    岡田 克也君       北川 正恭君   小宮山重四郎君       佐藤謙一郎君    斉藤斗志二君       鈴木 宗男君    武部  勤君       中谷  元君    二階 俊博君       西田  司君    福田 康夫君       藤井 裕久君    増子 輝彦君       町村 信孝君    松浦  昭君       三原 朝彦君    光武  顕君       秋葉 忠利君    伊東 秀子君       小澤 克介君    緒方 克陽君       岡田 利春君    五島 正規君       沢藤礼次郎君    松原 脩雄君       元信  堯君    山中 邦紀君       東  祥三君    遠藤 乙彦君       山口那津男君    渡部 一郎君       東中 光雄君    古堅 実吉君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         法 務 大 臣 田原  隆君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣 野村 一成君         官房参事官         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         内閣法制局第二 秋山  收君         部長         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 小池 清彦君         局長         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長         外務省情報調査 佐藤 行雄君         局長         大蔵省主計局次 小村  武君         長         大蔵省国際金融 江沢 雄一君         局長         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部省初等中等 坂元 弘直君         教育局長         文部省学術国際 長谷川善一君         局長         文部省体育局長 逸見 博昌君         文化庁次長   吉田  茂君         厚生大臣官房総 大西 孝夫君         務審議官  委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委 石田 俊昭君         員会調査室長     ————————————— 委員の異動 十二月二日  辞任         補欠選任   二階 俊博君     藤井 裕久君   町村 信孝君     佐藤謙一郎君 同日  辞任         補欠選任   佐藤謙一郎君     町村 信孝君   藤井 裕久君     二階 俊博君     ————————————— 十一月二十九日  国際平和協力活動等に関する法律案野田哲君  外四名提出参法第一号)(予) 同日  PKO法案廃案憲法を生かす国際協力の実  現に関する請願田中昭一紹介)(第一七八  号)  同(岡崎宏美紹介)(第二七三号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案成立反対に関する請願長谷百合子君  紹介)(第一七九号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二七二号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四三四号)  同(外口玉子紹介)(第六〇七号)  同外一件(長谷百合子紹介)(第六〇八号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の  一部を改正する法律案廃案に関する請願(小  森龍邦紹介)(第一八〇号)  同(金子満広紹介)(第二三四号)  同(児玉健次紹介)(第二三五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二三六号)  同(高沢寅男紹介)(第二三七号)  同(辻第一君紹介)(第二三八号)  同(長谷百合子紹介)(第二三九号)  同(東中光雄紹介)(第二四〇号)  同(不破哲三紹介)(第二四一号)  同(藤田スミ紹介)(第二四二号)  同(古堅実吉紹介)(第二四三号)  同(小沢和秋紹介)(第三三七号)  同(金子満広紹介)(第三三八号)  同(木島日出夫紹介)(第三三九号)  同(児玉健次紹介)(第三四〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第三四一号)  同(菅野悦子紹介)(第三四二号)  同(辻第一君紹介)(第三四三号)  同(寺前巖紹介)(第三四四号)  同(東中光雄紹介)(第三四五号)  同(不破哲三紹介)(第三四六号)  同(藤田スミ紹介)(第三四七号)  同(古堅実吉紹介)(第三四八号)  同(正森成二君紹介)(第三四九号)  同(三浦久紹介)(第三五〇号)  同(山原健二郎紹介)(第三五一号)  同(吉井英勝紹介)(第三五二号)  同(上原康助紹介)(第四一〇号)  同(斉藤一雄紹介)(第四一一号)  同外一件(小川信紹介)(第四一二号)  同(古堅実吉紹介)(第四一三号)  同(小沢和秋紹介)(第四三五号)  同(金子満広紹介)(第四三六号)  同(木島日出夫紹介)(第四三七号)  同(児玉健次紹介)(第四三八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四三九号)  同(菅野悦子紹介)(第四四〇号)  同(辻第一君紹介)(第四四一号)  同(寺前巖紹介)(第四四二号)  同(東中光雄紹介)(第四四三号)  同(不破哲三紹介)(第四四四号)  同(藤田スミ紹介)(第四四五号)  同(古堅実吉紹介)(第四四六号)  同(正森成二君紹介)(第四四七号)  同(三浦久紹介)(第四四八号)  同(山原健二郎紹介)(第四四九号)  同(吉井英勝紹介)(第四五〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四五一号)  同(伊東秀子紹介)(第四八五号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第四八六号)  同(楢崎弥之助紹介)(第四八七号)  同(細川律夫紹介)(第四八八号)  同(小沢和秋紹介)(第四八九号)  同(金子満広紹介)(第四九〇号)  同(木島日出夫紹介)(第四九一号)  同(児玉健次紹介)(第四九二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第四九三号)  同(菅野悦子紹介)(第四九四号)  同(辻第一君紹介)(第四九五号)  同(寺前巖紹介)(第四九六号)  同(東中光雄紹介)(第四九七号)  同(不破哲三紹介)(第四九八号)  同(藤田スミ紹介)(第四九九号)  同(古堅実吉紹介)(第五〇〇号)  同(正森成二君紹介)(第五〇一号)  同(三浦久紹介)(第五〇二号)  同(山原健二郎紹介)(第五〇三号)  同(吉井英勝紹介)(第五〇四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第六〇九号)  同(東中光雄紹介)(第六一〇号)  同(不破哲三紹介)(第六一一号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案廃案等に関する請願伊東秀子紹介  )(第四八四号)  海外派兵新規立法反対に関する請願菅野悦  子君紹介)(第六一二号) 十二月二日  自衛隊海外派兵になるPKO協力法案反対に  関する請願長谷百合子紹介)(第六五〇号  )  同(小森龍邦紹介)(第七四七号)  同(鈴木喜久子紹介)(第七四八号)  国連連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の  一部を改正する法律案廃案に関する請願(伊  東秀子紹介)(第六五一号)  同(五島正規紹介)(第六五二号)  同(小沢和秋紹介)(第六五三号)  同(金子満広紹介)(第六五四号)  同(木島日出夫紹介)(第六五五号)  同(児玉健次紹介)(第六五六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第六五七号)  同(菅野悦子紹介)(第六五八号)  同(辻第一君紹介)(第六五九号)  同(寺前巖紹介)(第六六〇号)  同(東中光雄紹介)(第六六一号)  同(不破哲三紹介)(第六六二号)  同(藤田スミ紹介)(第六六三号)  同(古堅実吉紹介)(第六六四号)  同(正森成二君紹介)(第六六五号)  同(三浦久紹介)(第六六六号)  同(山原健二郎紹介)(第六六七号)  同(吉井英勝紹介)(第六六八号)  同外一件(上原康助紹介)(第七二七号)  同(串原義直紹介)(第七二八号)  同(斉藤一雄紹介)(第七二九号)  同外五件(長谷百合子紹介)(第七三〇号)  同(小沢和秋紹介)(第七三一号)  同(金子満広紹介)(第七三二号)  同(木島日出夫紹介)(第七三三号)  同(児玉健次紹介)(第七三四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第七三五号)  同(菅野悦子紹介)(第七三六号)  同(辻第一君紹介)(第七三七号)  同(寺前巖紹介)(第七三八号)  同(東中光雄紹介)(第七三九号)  同(不破哲三紹介)(第七四〇号)  同(藤田スミ紹介)(第七四一号)  同(古堅実吉紹介)(第七四二号)  同(正森成二君紹介)(第七四三号)  同(三浦久紹介)(第七四四号)  同(山原健二郎紹介)(第七四五号)  同(吉井英勝紹介)(第七四六号)  同(伊東秀子紹介)(第七五七号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第七五八号)  同(緒方克陽紹介)(第七五九号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案成立反対に関する請願小森龍邦君紹  介)(第七二四号)  同(鈴木喜久子紹介)(第七二五号)  同(東中光雄紹介)(第七二六号)  同(池端清一紹介)(第七四九号)  同(上田哲紹介)(第七五〇号)  同(緒方克陽紹介)(第七五一号)  同(沖田正人紹介)(第七五二号)  同(渋谷修紹介)(第七五三号)  同(田口健二紹介)(第七五四号)  同外二件(長谷百合子紹介)(第七五五号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案廃案等に関する請願外一件(外口玉子  君紹介)(第七五六号)  PKO法案廃案憲法を生かす国際協力の実  現に関する請願秋葉忠利紹介)(第七六〇  号)  同(伊東秀子紹介)(第七六一号)  同(石橋大吉紹介)(第七六二号)  同(上原康助紹介)(第七六三号)  同(小澤克介紹介)(第七六四号)  同(緒方克陽紹介)(第七六五号)  同(岡田利春紹介)(第七六六号)  同(串原義直紹介)(第七六七号)  同(五島正規紹介)(第七六八号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第七六九号)  同(松原脩雄紹介)(第七七〇号)  同(元信堯君紹介)(第七七一号)  同(山中邦紀紹介)(第七七二号)  同(和田静夫紹介)(第七七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案について  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案について      ————◇—————
  2. 林義郎

    ○林委員長 これより会議を開きます。  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案について発言を求められております。  この際、念のため申し上げます。  去る十一月二十七日提出の自由民主党、公明党・国民会議修正案文及び民社党の修正案文をお手元に配付してございますので、御了承ください。  これより順次発言を許します。沢藤礼次郎君。
  3. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 去る二十六日のこの委員会で、時間をいただいて質疑に参加さしていただきましたが、質問も不十分、御答弁も不十分という感を免れませんでした。幸いきょう、いわゆる差し戻しという形で再び発言の機会を与えていただきましたので、この前の一つの大きな流れをたどりながら、幾つかの点について質問申し上げてまいりたいと思います。  まず第一は、PKO法案そのもの及びこれにかかわる強行採決について、アジア近隣諸国がどのようにこれを受けとめているかということについてお尋ねをしたいわけであります。  私の知る範囲では、各新聞あるいはテレビ、いわゆる国内世論も、そしてまたアジア近隣諸国反応も、大変このことについては厳しく論評を加えている、こういうことに受けとめるわけでありますが、この前の二十六日の私の質問に対して、総理大臣は、アジア諸国懸念ということから若干視点をそらされまして、PKO日本がどう貢献するかどうかの問題ととらえているというふうに、PKO是非論の方に問題をずっとスライドさせたという感じがいたします。なお外務大臣も、アジア近隣諸国影響批判反応ということからやはり答えをそらされまして、PKOが必要というときに当事国同意を云々というふうな形で、私の質問には真っ正面から答えていただけなかったわけであります。  本日は、あの時点プラス強行採決後の国内外の世論背景といたしまして、アジア近隣諸国がどのようにこの問題を受けとめているとお考えなのか。なお、時間の関係質問の焦点を絞ってまいりますが、このPKO法案及び強行採決に賛意を表しているアジア近隣諸国がございましたならば、国の名前を挙げていただきたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 このPKO法案については、かねて私からも答弁をさしていただいておりますように、年配者の方々が一部不安があるということは申し上げてございます。しかしながら、それは日本のお国がやることでありますから、それについては当然だというところもあれば、慎重にやってくださいというところもいろいろございますが、それはいかないとかどうとかという国は承知しておりません。  中身がよくわからなかったということも事実でございます。国連の決定に従う、決議に従う、それから紛争当事者同意を得なければ行かない、それからもう非強制であって中立的な立場だ、こういうことを説明すると大体みんなわかるんですよ。したがいまして、私といたしましては、日本だけが独自で行動するのは困るという国がございましたが、今言ったようなことを説明をいたしますと了解をしていただいております。
  5. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 強行採決が行われた直後のことでありますが、中国外務省のスポークスマンは、二十八日の会見で、「歴史的な原因により、いかなる形にせよ日本海外派兵することは極めて敏感な問題だ。我々は一貫して日本政府がこの問題の処理に当たって慎重に事を運ぶよう希望してきたが、中国政府立場変化はない」と言っております。韓国の野党あるいはフィリピンにおける大使館前デモ、あるいはシンガポールゴーチョクトン首相言葉、引用しますが、「日本はいったん軍備増強を決意したら、極めて急速に実現する手立てを持っている」と警告している。「日本が最近、カンボジアでの平和維持活動参加など政治的役割の増大に熱心なことを指摘したうえで、背景として、米国の圧力と日本自身のナショナリズムの二点」を挙げている。「日本人の平和主義的な感情とアジア太平洋諸国の第二次大戦の記憶というブレーキ抑制要因がある」けれども、「しかし、米国孤立主義に陥って日米同盟関係が崩壊したとき、日本中国、ソ連、あるいは南北が統一した朝鮮によって脅迫されていると感じたときには日本軍備増強に走りかねない、」というふうな意味で、各国ともやはり懸念を、批判を表明しているわけであります。  これでもって同意を得た、あるいは賛同を得ているということになるでしょうか。具体的な国の名前を挙げてお答えください。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは私は、外務大臣になる前ですが、個人的にゴーチョクトン首相ともお会いをいたしました。そのときも、まあこの問題はセンシティブな問題だというまくら言葉、前の話がありまして、特に年配者の方にはそういう気持ちがあるということもお話がありましたが、いろいろ説明をいたしますと、それは当然のことでしょうと……(沢藤委員「国、国」と呼ぶ)ゴーチョクトンさんはこれはシンガポールですよ。シンガポール首相。  そこで、結局いずれの国も日本が独自の行動ということをよくおっしゃるんですよ。それはそうじゃありませんと、もちろん同意がなければ、紛争している当事者同意がなければ行かないわけですから、押しかけていくわけじゃないですから、そこのところがよくわかっていただかないと困ることなんです。  それから、よく日米安保、これにつきましては、ぜひとも日米安保は持っていてもらいたいと言う国が多いですね。実際は。日本アメリカと離れて独自の行動をとることの方はやはり心配があるんですよ。だから、アメリカ一緒にとか、あるいはそういう人的貢献国連一緒とか旗のもととか、言葉遣いはいろいろございますが、そういうことはおっしゃっておりました。  それから中国におきましても、やはり慎重にやってくださいというお話がございました。これも外務大臣になる以前の話でございますが、しかし国連の要請によらなければ行かないわけですから、だから、お国は国連の五大国一つでありますと、これはもう御承知のとおりですから、したがって、中国反対という場合はそれはもちろん行かないということでございますので、そういう心配はないということはちゃんとわかってはいるんですよ、それは、実際は。  しかし、立場がいろいろございますので、立場皆さん、みんな物をおっしゃることも事実。ですから、まあどうこうというのではなくて、要するに慎重にお願いをしたいということですと言うから、それはさようでございます。慎重の上にも慎重にやらしていただきますと申し上げてあるわけであります。
  7. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 今のお答えもやはりそらしているんですけれどもね。私は、出かけていく当事国のことを聞いているんじゃないんです。PKO、それから強行採決ということに対して、アジア近隣諸国がどう見ているかということをお聞きしているわけです。  それから、これは韓国国防白書をどこかで引用された方もありましたが、十月二十八日に発表された韓国国防白書、「日本政治軍事的影響力の拡大を追求」している、「日本攻撃的性格防衛力に変貌」しようとしているなどの記述を載せ、日本軍事大国化への強い警戒心を示している、こういうふうにあります。  それから、これはきのうちょっと手に入れたのですが、韓国で発行されている保守系新聞韓国語でどう読むかわかりません、京郷新聞というのがあるのですが、この中には「電撃通過」という言葉を使っているのですね。あの強行採決を「電撃通過」。そしてその中で、この法案の成否は戦後日本政治に大きな結節点をつくる画期的な事件として記録されるだろう、そして特に、自民党政権のいわゆる解釈改憲が、今やその限界に達している、もうその先は、いわゆる限界に到達したということは、今後の情勢変化によっては改憲が現実問題として台頭することもあり得る、こういうことを指摘しているわけです。それから、日本徴兵制核武装海外派兵という、三つのタブーと見てきたんだけれども、今度のPKO法案が成立すればタブーの一角を大きく壊すことになる、崩すことになるという指摘もしております。  こういう指摘に対して同じ答えでしょうかね。私は、少なくとも韓国あるいは中国は、PKO法案そのものあるいは強行採決には決して賛成していないと客観的にとらえざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 強行採決というのかどうか私わかりませんが、まあそれはどうかわかりませんけれども、私は、それはスムーズに採決平穏裏採決されることが望ましい、これはもう申すまでもないことでございます。  また、韓国にいたしましても、日本安保条約アメリカ一緒にいるということについては、それはむしろ安心感があるんですよ、実際は。だから、どこかの国が、今指摘したようにアメリカからも離れて孤立した場合は日本はこうなるのじゃないかというような、それは想像をおっしゃったんだと思いますが、そういう心配がないように、我々は日米安保は今後とも堅持をいたしていきますということをそれのために言っているのであって、これは諸外国の方は、むしろ大多数の国は日米安保で安心していると言っても差し支えないと思いますよ。  でありますから、日本がすぐ改憲をしてどうのこうのとおっしゃいますが、宮澤内閣改憲はやらないし考えていない、こう言っているわけですから、しかも憲法はこれは平和憲法で、要するに、それは確かに自衛隊という名前憲法には載っておりません。載っておりませんが、これは、必要があって自国防衛の場合においてはそれは何ら憲法違反でないという解釈自衛隊が昭和二十九年にできた、これも皆さん承知のとおりなわけであります。しかも、自衛隊はこれは自国防衛ということでやっておるわけですから、だから、質問の御趣旨は、ある紙に憲法解釈がもうぎりぎりのところへ来ているというふうなお話がございましたが、それは割り切ってしまえば、日本憲法というものは平和憲法であって、そして条約にはこれを守ると。日本国連に加入をしておる、国連の中にはPKO活動をちゃんとやるようになっておる、したがって国連に対する協力というものは憲法はこれを認めている、したがって、我々は、重火器等を持ち込むようなことはないが、国連の中に取り決められたあのような形をとっていくことは憲法違反でない、簡単に言えばそういうことじゃないのか、そう思っております。
  9. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 前回に引き続きこの問題については、明快なというか、私が納得できる御答弁をいただけなかった、そう思います。ということは、結局、賛成しているあるいは支持している国の名前を挙げてくださいという再三の質問に対して、それに答えていない。ということは、私の方からすれば、これは挙げれないんだな、賛成を得ていないんだな、支持を得ていないんだなということに、そう考えざるを得ません。恐らく国民アジア諸国民もそう思っているでしょう。これは水かけ論になりますから、そのように私としては確認せざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。  次に、PKO法案に盛られているいわゆる自衛隊海外派遣ということに随分集中しているわけですけれども、これが十分に国内のコンセンサスも、それから特にアジア諸国からの支持も得られていない中でこれが行われようとしている、これは大変不幸なことでありますが、この前に、こういったことを強行する前に日本としてなすべきことが幾つかあると思うのです。そのうちの一つは、やはり戦後処理、戦争に対する賠償の問題があると思います。  そこで、最近特に謝罪と補償を求める提訴の動きが出ているということは、これは明らかであります。これをどのように把握しておられるか。そしてあわせて、国家賠償と民間への賠償、個人への賠償について日本政府はどう考え、どう対応してきたかということをお聞きしたいと思います。
  10. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  戦後の補償、賠償と申します場合に二とおりのことがあろうかと思いますが、一つ日本と交戦関係にあった東南アジアの国々でございますが、これらにつきましては、戦後、法的な措置をとりまして、条約のもとに逐一賠償を払って、それによって決着したということは先生御承知のとおりでございます。もう一つは、日本から分離してまいりましたいわゆる朝鮮半島等でございますが、これも先生御案内のように、長い交渉の末に六五年、請求権の形でずっと議論をいたしましたけれども、結局最終的には経済協力の供与ということでこれを決着いたしました。ただいま、したがいまして残っております北側、北朝鮮との関係におきまして同じような請求権の問題を今鋭意先方政府と交渉中であるということでございます。
  11. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 答弁一つ漏れています。国家補償と個人補償、民間補償の関係についてお願いします。
  12. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいま御答弁申し上げましたようなことで、多くの国との間には、国と国との関係におきましてはこの問題はすべて決着済みということでございます。他方、例えば韓国のようなところで民間の間で補償を求める声が起こっておることは私ども承知いたしておりますけれども、国と国との関係におきましては、この補償の問題というのはすべて六五年の協定において決着済みというのが私どもの理解でございます。
  13. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 こっちはそう思っても向こうはそう思っていないということがあったら、これはやはり外交としては大変大きなマイナスですね。最近の動向を見ますと、国に対する請求もあれば企業に対する請求もあれば、いろいろあるわけであります。  そういった中で、中国の最近の状況としては、日中共同声明で放棄したのは戦争賠償である、南京大虐殺など人民に及ぼした重大な罪業に対する民間賠償については放棄していない、これが中国人民代表大会で論じられていることで、建議書が提出されている、これがあります。  それから、日韓のことにつきましても、今お答えがあったのですが、日韓交渉に当たった当時の韓国外務部長官によりますと、当時は朴政権のころでありますけれども、「日本から時間をかけて賠償を取り立てるより、経済協力を引き出して、韓国経済の発展を急いだ方がいいと判断して、対日請求権を放棄した。しかし、放棄したのは国家の請求権であって、民間の請求権は含まれていない」と言っているんですね。  ソビエトとの関係日本政府は、これは国会答弁の中で欧亜局審議官が答えているようですけれども、ソ連に対しては、放棄した請求権は国家自身の請求権であって、日本国民個人からのソ連に対する請求権は放棄したのではないと言っている。そうすると、日本は、韓国あるいは中国に対してはもう済んでいることだ、こう言っておきながら、ソ連に対しては個人に対する補償を意思表示している。この矛盾はどうなんでしょう。
  14. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から日韓あるいは日ソの間におけるいわゆる請求権の処理の問題についてお触れになりました。また、中国との関係についても御指摘がございましたが、いずれにいたしましても、例えば日韓請求権・経済協力協定におきましては、両国間の問題といたしましては、先ほどアジア局長から答弁ございましたように、国家及び国民の請求権の問題は「完全かつ最終的に解決された」というふうに規定しているところでございます。また、日ソにつきましても、一九五六年の日ソ共同宣言におきまして、これは具体的には第六項でございますけれども、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」というふうに規定しているわけでございます。他方、中国につきましては、これは御案内のとおり、日中の国交正常化をいたしました際に、中国の方から「戦争賠償の請求を放棄する」ということを宣言しているわけでございます。これも御案内のとおりでございますが、日中共同声明の第五項におきまして、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」というふうに規定しているわけでございます。
  15. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 全くいわゆる外交官的な答弁だと思うんですね。新しい事象として、中国あるいは韓国、さっき申し上げたから繰り返しませんが、あれは国家に対する問題であった、個人に対する賠償は放棄したんじゃないということを言っている、このことに対してどうこたえるかということがある。  そこで、確かに外交ということになれば外務大臣が行くとかあるいは局長が行っていろいろ話をする。外交辞令という言葉がありますから、かなりやわらかくといいますか、コンセンサスを得るような方向でいろいろ話し合われるということは理解できますが、しかし、本当に日本の外交あるいは日本の政府として大事なのは、バブルとは言いませんけれども、おふろに例えれば、上の方が熱い、下の方に冷たい水が残っているという、その国民の全体としての感情なりあるいは請求の動きなりをどうとらえるかということに心を配らなければ本当の外交にならないし、本当の友好関係の樹立にはならないと私は思う。  私は中国には何回か訪問しました。社会党の正規の訪問団としても参りましたが、例えば熱烈歓迎ということで、いわゆる指導者が拍手をもって迎えてくれる。これはうれしいことなんです。ただ、村落に入っていきますと、その指導者が私たちの入っていくマイクロバスに向かって一生懸命手を振る、あるいは手をたたく、そして周辺にそれを同調を求めようとする、しかし、しいんと静まり返っている。ひょっと向こうを見ますと、暗いうちの中から年とったおばあさんといいますか老婆がじいっとこっちを見ている。その目つきの、目の色の本当に言うに言われぬ暗さ、これが私は民衆の心だと思うんですよ。ですから、外交、今お聞きしますと、はいこれは文書で決まっていました、もう決着済みです、しかし、それで片づいていない両国間の感情があるという事実をどう受けとめるかということなんです。外務大臣、お願いします。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 感情の問題は御指摘のとおりだろうと。したがいまして、我々も中国初め戦争をやった国については、大変な苦痛を与えて、被害も与えたと、申しわけなかったという気持ちはもう持っておりますし、そういう表現をしておるわけであります。しかしながら、国と国との間で将来の日中友好のために賠償を放棄するということになったわけですから、それは困ります、払わしてくださいというわけにはいかないのですね。しかし、日中友好のためにというのですから、私どもは賠償を放棄されても、できるだけ協力するところは協力しなきゃならぬというつもりでやっておるわけであります。  まあ民間の賠償の要求というのも個人的にあるというのはあるでしょう。しかしながら、日本政府とすれば、やはり賠償金を払うということは国民にそれだけ大きな負担を与えるということでございますから、賠償が大きければ大きいほどいいというわけにはこれはいかない。やはり国民の負担というものを考えれば、話し合いがついた中で、我々は相手も理解してくれるぎりぎりのところで妥結をしていくということが政府の建前じゃないか。まあ、個人的に訴えてこられるものを阻止することはできないでしょう。できないでしょうけれども、国の間でもうこれで終わりということの決まったものを、さらに政府が取り決めを乗り越えてそいつに対して対応していくということは私はいかがなものかと思っております。
  17. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 日本外交の姿勢がよくわかりました。これをドイツ、アメリカ、カナダなどと比べますと、民間にも補償している。こちらから申し入れている。そして、大体金額にすれば、今お金の話が出ましたけれども、七兆円を超える賠償の内容になっているわけですね。アメリカだって、カナダだって、やっているわけですよ、個人に対しても。こういった違いが私は日本外交と他の外交との違いだと思うのです。少なくとも、特に同じ敗戦国であるドイツが周辺の国に対して払ったその気配り、こういったものが日本には完全に欠如している。この違いを私はみんなが見ていると思うのです、世界じゅうの人が。だからこそドイツはECの中で、ヨーロッパの中でみんなと一緒に仲よくやっていると、盧泰愚大統領がそう指摘されたんじゃありませんか。それに引きかえ日本韓国の間にはまだ整理されていないものがあるということをあの国会の議場で指摘されたじゃありませんか。それを我々はどう受けとめるかという問題になるわけですよ。  一片の外交文書で、終わったからもういいと。この前、外務大臣は、その感じ方、とらえ方の違いはやった方とやられた方の受けとめ方の違いだみたいな発言をなさって、あっと思ったのでしょうか、微妙に軌道修正をなさった、私の質問に対して。こういうことで、日本外交というのはどういうんだろう、人間の心を失った外交というのはどういうことだろう。条文、法解釈、厚い法令集、それでもって答弁し、それでもってもう終わったんだ、済んだんだと。よく聞こえてきますね、なあに済んだことじゃないかと。しかし、それは人間の声じゃありません、悪魔のつぶやきです。ドイツと日本の違いということをもう少し検証し、検討してみていただけませんか。これは私は外交の基本的な問題として、いずれ訴訟が出てくるわけですから、それに対する対応については、これはきちんとやっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  時間の関係で次に進ませていただきます。  PKOの前にやるべきことということで、私は今戦時賠償の話をしました。もう一つは、やはり国としての、あるいは国会としての、あるいは首相としての謝罪あるいは反省あるいは不戦の誓い、何回も触れました、それが必要だと思う。このことについてはこの前も質問したのですが、はっきりした御答弁はいただけなかった。これもやはりドイツを引き合いに出すわけですが、ワイツゼッカーのあの有名な演説に対比して、日本政治日本の哲学というのでしょうか、あるいは価値観というのでしょうか、こういったものの差が余りにも目立ち過ぎている。ですから、主体的にこっちは終わったんだといっても格差がある、ギャップがあるということは事実なんです。その事実は客観的な事実として受けとめなきゃならない。それをどう埋めていくかということに、私は国際派と言われる宮澤総理、そして人格非常に温かい渡辺外務大臣、これからの対処というものについて、国民が、世界じゅうが、特にアジア近隣が見守っているということをお忘れなく対応していただきたいと思います。  これに関連して一つ、きょうの新聞でしたか、外務大臣が国に帰られて、来年の日中平和友好条約締結の記念に際して天皇陛下が訪中されることが望ましいというふうな意味を言われておりますね。そのことはそのとおりですか、そうお考えですか。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 御質問が時々あるのでございますが、これは私は前提がありまして、皇室の問題でございますから、政府が一方的に決めるようなことはできません。しかしながら、中国からぜひ訪中してほしいという話があって、正常化二十周年の節目節目で、そういうような気持ちもよくわかりますから、できることならばそういう方向でお話ししてみるのがいいのかなという程度の感じを持っておるわけであります。
  19. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 私は、むしろ外務大臣発言を前向きに拝見し、受けとめたわけです。先ほど申し上げましたとおり、中国との往来の体験の中で何人かの中国の要路の人というのでしょうか、要人の方ともお話し合いする機会があったのですが、中国の方の率直な気持ちは、日本における天皇は象徴という存在ですから、あるいは若干受け取り方が違うかもしれませんが、やはり日本を代表する人といえば一番、中国の人は天皇を想起していますね。そして期待していますね。私は、これは非常に大きな区切りでもありますから、太平洋戦争五十年でもありますし、やはり韓国、あるいはいわゆる朝鮮半島の国、中国、そういったところにはおいでになって、あるいはもちろん総理大臣も行かれるでしょうが、きちんと今までのことを吐露なさったらどうか。オランダの女王がおいでになったときの歯切れの悪いような、恐らく外務省と宮内庁が苦心してつくっただろう表現、不幸な出来事とかなんとかというより、むしろすっきりと御本人の気持ちでもって訴えられるということの方がよろしいんじゃないかという気がするのです。これは中国の人と話し合ってみての感じです。  昭和という時代の一つの歴史の中での出来事ですから、それが昭和から平成にかわったという区切りの時期でもあります。ですから、ここはやはり率直に日本としての反省、それに基づく意思表示というものはなさった方がいいんじゃないか、こういうふうに思うのですが、これは総理から御答弁願えますか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この問題につきましての政府の考え方は既に何度がお答えを申し上げたとおりでございますが、また、例えば今年の五月に当時の海部総理大臣シンガポールにおいてそれを明確に言われましたように、折々の機会におきましてそのような遺憾の意を政府としても表明をいたしておるところでございます。
  21. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 この前もそういう、その程度といいますか、その範囲、非常に狭い範囲の答えしかいただけないということを、私は日本国民の一人として大変残念に思います。今の天皇は私と余り年齢が違っておられません。恐らくいろいろな体験、感想はあると思います。私は余り詳しくは触れませんけれども、一つの区切りをつけたいというお気持ちはあるのじゃないかとあえてそんたくいたします。このことをひとつ総理、胸に刻んでおいていただきたいと思います。  PKOの前にやるべきこと、軍縮があります。こういう東西対立という図式、枠がなくなった時期、今こそチャンスじゃないだろうか。軍縮に対する意思表明、具体的なプログラムの提示。世界に対する、あるいはアジアに対する、日本平和憲法を守るんだ、軍事大国にはならないぞと何回もおっしゃっているわけだ。そのあかしがないから不安になっている。大国化しているんじゃないかという不安がアジア近隣には特に強い。これに対する一つ答えとして、軍縮の意思とそのプログラムを明確にする必要があると思うのですが、いかがでしょうか。これは外務大臣ですか。——防衛庁長官。じゃお願いします。
  22. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  たびたび申しておりますように、また、当委員会で議論がございますように、国際情勢がこのようにデタントといいますか、冷戦構造が終結いたしまして、しかもアメリカ・ブッシュ大統領の核兵器についてのイニシアチブが発表され、ソビエトの方でもこれに呼応するというようなことで現実にその方向に向かっていることは大変好ましいことでございまして、私どもとしてもこれを十分考慮に置きながら今後の防衛政策を考えていくということは当然でございます。  しかしながら、一方、現在の自衛隊の整備の方針と申しますか、基本理念は、先生のたびたびの御指摘にありますように、軍事大国にはならない、専守防衛である、非核三原則、あるいは徴兵制はさっきお話もございましたがしない、そういう基本的な大きな枠組みのもとに我が国の防衛力の整備を図っているわけでございまして、しからばこの我が国の防衛力の水準が他国に脅威を与えるようなものであるかどうかという点については、あるいは見解が先生とまた分かれるかもしれませんが、私どもといたしましては、これはたびたび申し上げておりますように防衛計画の大綱、これは五十一年につくられたものでございますけれども、当時の緊張緩和の状況を踏まえまして、平和時において我が国として独立国家として必要最小限度の自衛力はどうあるべきか、そういう理念を大綱にまとめまして、この大綱に基づきまして現在の中期防衛力整備計画が定められております。  そして平成三年度はその初年度としてこの整備が行われているわけでございまして、決して通常言われるような脅威対抗、相手が相当な兵力、武力を持っているからこれに対抗せにゃならぬということではございません。あくまで日米安保条約のもとで、そして我が国が必要最小限度の自衛力を保持するということで整備をやっているわけでございますから、今世界のこういう傾向があるからといって直ちに我が国の防衛力の水準をどうのこうのということはございませんで、あらかじめ平和時における防衛力の水準を定めたものというように私どもは理解しておりますので、その点は御了解いただきたいし、また防衛計画の中におきましても、こうした国際情勢あるいはそういったものを勘案して三年後には見直し、この二十二兆七千五百億円の範囲内で修正を行うことも、これは中期防衛力整備計画に規定いたしております。したがって、私どもとしては、こうした情勢を反映すべく今後検討を重ねてまいりますけれども、おっしゃられるように直ちに我が国の防衛力の削減というのは当たらないのではないかと思っておりますので、その点は御理解いただきたいと存じます。
  23. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 この問題につきましては、世界史的な視点から、来るべき世紀は一体どういう世紀なのか、こういうことの基本的な認識というのでしょうか、考え方に大きく左右されると思うのですよ。このことについては後でもう一度触れますので、一たん先へ進ませていただきたいと思います。  PKO以前に日本のなすべきことの次の問題として、学術研究、基礎的な技術のレベルアップ、それによって海外への技術協力あるいは学術の提供、留学生、こちらから出ていく、外国から日本に迎える、こういった体制が極めて重要だと思うのです。  そこで文部大臣にお聞きしたいのは、今の日本の大学の基礎研究をする非常に重要な部門を背負っているわけですが、今の施設設備というのは極めて貧弱だと思うのです。それに対する国の財政投資も諸国に対して、外国に対してとてもじゃないが文化国家です、学術、技術をもって貢献する国家ですと言えるような内容じゃないと私は認識しているのですが、文部大臣、いかがですか。
  24. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 先生御指摘の点は、残念ながら実際の状況がそのようになっておりまして、我が国の高等教育をどのように考え直すかということは大学審議会でも盛んに御審議をいただいている点でございますが、例えば高等教育機関全体で非常に施設設備が老朽化をして、これから基礎的な研究を、基礎科学を充実していくためには相当な設備が必要であるというのに、既に老朽化したようなそうしたものしかないという大変残念な面がございますし、また政府、国家機関全体でどの程度の研究開発費、例えばGNP比で考えることも可能かと思いますが、そういう観点で考えましても、私ども科研費とかフェローとかいろいろやってはおりますけれども、先進諸外国に比べましてそのGNP比率もかなり低い水準にとどまっておる。そういうことで基礎科学ただ乗り論のような、そういう批判を受けることもあることは大変残念でございまして、日本は教育大国でなければならない、文化大国でなければならないというふうに私は考えておりますが、今後そのような条件整備を懸命に図っていく、あるいは教育予算というものについての国会全体あるいは政府全体の御理解をいただく中で、日本の学問、学術あるいは科学技術が世界に貢献をするということがこれからは大変重要だと思っております。
  25. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 今文部大臣からお答えいただいたのですが、お答えの中にGNPに対しての財政の投入云々というお話がありました。日本アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスという五つの国の中で研究費がどのくらい支出されているかということの数字を見ますと、GNPに対する比率は日本が最低であります。お話にならないくらい低いということです。  こういった状況の中で、PKOに一生懸命執念を燃やしておられる、その熱意のほどをこういった学術研究の方に向けたならば、もっともっと多くの国々から喜ばれると思うし、日本のためにもなると思う。このことについて私は強く要求をしたいのですが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆるRアンドDに対する支出、GNPとの比率でございますけれども、我が国の場合は民間のそのための支出はかなり高い水準にございますけれども、御指摘のように政府の貢献はまことにどうも十分でない。殊に、これがいわゆる予算編成についてシーリング制をとりました結果、文部省関係の予算の非常に大きな部分が人件費であるということから、そのような基礎研究等についての支出が結果として圧迫をされることにたっているということは事実でございます。  これはやはりシーリングというものも一つの大事な役割を果たしてまいりましたけれども、他方でそのような弊害を生ずる、長年やっておりますと、ということの一つの例であろうと考えておりまして、長期的にはやはり直していかなければならない問題がそこにあるというふうに考えております。
  27. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 留学生の行き来の中で、外国から日本に来られた留学生の嘆きというのがあるわけです。大変苦しい、生活も苦しい。それから住まいも大変な状況だ。それから、研究費その他研究施設設備ですね、こういった指摘が非常に強いのです。これでは国際交流あるいは国際協力の名が廃るわけでございまして、これは時間がもうありませんので文教委員会でまた改めてやりとりしますけれども、今総理大臣のお答え、これをぜひ敷衍して、今の日本の持っているすぐれた技術力あるいは研究体制というふうなものを世界の平和のために、あるいは海外諸国との交流、協力のために最大限発揮できるような体制をとっていただきたいということを強くお願いをして終わりたいと思います。うなずいておられますので肯定をしていただいたというふうには理解をいたします。  次に、今のことに関して私はぜひ外務大臣その他のそれぞれの大臣にも申し上げたいのですが、国が一体どういう基本姿勢で近隣に対して、あるいは国際社会に対して貢献をするかというそのポイントが実は問われているのだろうと思うのです。今皆さんの勢いではPKOだ、PKFだということで集中している。これは私は、少し視野を広げて肩の力を抜いていただかなければならないと思うのです。  私は先ごろ、ヨーロッパに文教委員会の視察に行かせていただきました。オーストリアの教育省、つまり文部省ですね。次官の方、その他の局長の方とお話し合いをする機会があったのですが、最後の場面でいろいろ自由懇談の中で、私はぶしつけだと思ったけれどもお聞きしたのです。オーストリア、あなたの国はEC加入を今望んでおられる。ECに期待するところは非常に大きいだろうと思う。と同時に、あなたの国はEC諸国に対して何をもって貢献せんとするやというふうな質問を試みてみたわけであります。直ちに返ってきた言葉が芸術、文化ですという答えでした。これが日本だったらどうでしょう。金と鉄砲です、では余りにも寂しい。この哲学の欠如が私は寂しい、悲しいんです。やっぱり別なせりふで平和です、学術です、文化ですと言える国でありたい、このことを申し上げておきたいと思います。  時間の関係上、次に進ませていただきます。  最後になりますが、さっきも防衛庁長官お話もありましたけれども、これからの日本を一体どう進めていくか。そのときに、世界の歴史はどう動いていくだろうかということに対する深い洞察がなければ私はだめだと思うのですね。その中で、今申し上げたPKO論議に熱中するよりももっと前にやるべきことがあるのじゃないか。反省、謝罪の問題、国会決議あるいは総理大臣の演説の問題、戦争の補償の問題、軍縮の問題、平和的手法による国際貢献の一つとして学術、文化の問題、そして今触れませんで後でちょっと時間があったら触れますけれども、例えば経済協力ですね。これはECが一つの大きな私は見本、手本になると思うのです。ユーラシア大陸の西端ではECということで、いわゆる経済協力体制というのは着々と進んでいる。しかし、そのユーラシア大陸のこっちの端では、もちろん国の事情もあるでしょうけれども、なかなかこれが進む展望が開けてきてない。  しかしその中で、北東アジアの経済圏ということの問題がクローズアップされてきまして、日本では環日本海経済圏と言っているようですけれども、日本海という表現がどうかわかりません、それこそ国際時代ですからね。朝鮮半島の方からいえば東海、東の海と言っているようです。そういった国際的な感覚もにじませながら、いわゆる環日本海経済圏構想にどう日本が参加し、協力できるのか。参加というよりは協力ですね。この問題もあるわけです。  以上申し上げた幾つかの問題が前提となって、そういった基礎の上に国際協力の舞台が築かれる。その上に日本の外交姿勢というものを打ち出せる時期というのは来るわけです。それをほとんど今足踏みなりあるいは十分進んでいない状況の中で、何かしらPKOだけに一生懸命頑張っている。何が何でも自衛隊を海外に派遣するんだという、海外派遣法というふうに呼んでますよ。これは私が言っているだけじゃない。海外の新聞もそう呼んでいるのです。この事実は外務省だっておわかりだろうと思う。そういうふうに——いや、違うとおっしゃっても、そう見ている国外の人、我々が友好関係を樹立しなきゃならない相手国が、そう見ていないという現実がある。  そこで、非常に気になることは、一生懸命PKO自衛隊海外派遣ということに集中しておられるという姿が周囲から指摘されているわけです。例えば、これは前にもちょっと引用したのですけれども、PKO論議の中で余り論議されていない部分、それは、国際貢献という旗印を掲げながら、日本政府PKOへの参加を政治大国への踏み台としようとしている、そのシナリオがあるのだということの指摘があるわけです。これは非常に重要な指摘だと思わざるを得ません。これは、先日、特集番組でテレビ放送になった中で、シンガポールの人の発言でございますが、世界は軍縮、日本は軍拡、不気味だ、大国外交への野心、全く反省していない国、アジアの忠告に耳を傾けない国、そんな国になっているということを心配しているのですね。  それから、そのテレビ番組の、今度は日本の外交面である程度責任を持っておられる方の発言、やりとりをお聞きしますと、常任理事国に対する希望というか執念が非常に強いわけです。そして湾岸戦争のときを例に出しながら、金を出しても口を出せないもどかしさということを告白なさっている。請求書をもらって払うだけ、意思決定に参加できないというふうな表現もなさっている。つまり、これは裏を返せば、今度のPKOは、世界の舞台に大国として名のり出る、その一つのあかしとしてほしいのだという本音がそこに見えるような気がするのです。多くの人が指摘しているのです。このことを私は本音として本当はお聞きしたいのです、恐らく答えは見えるような気がしますけれども。  ただ、国際化社会、国際化時代、国際主義という場合の国際、これをどうとらえるかということにまた若干論議があるのですね。それはインターナショナリズム——インターというのは、それぞれの、お互いにという意味もあるそうですが、埋葬する、葬り去るという意味もあるのだそうです。つまり、ナショナリズムをある程度抑える。それよりもインター、つまり国際社会の方にスタンスを、重点を置くというのが国際主義だろうと思うのですね。それはそのとおりなんです。ただ、今の日本外交のやり方を見ていますと、国際主義、国際社会に出たいために、国、国家主義あるいは国粋主義、日本の国はという意識が見えてくる。これは私の指摘でありますが、同時に、他の国の指摘もあるわけです。  ですから、私は、心配しているのは、なぜ今自衛隊なのか、この根本に対して答えがなかなか返ってこない、なぜ今なのか、なぜ自衛隊でなければならないのか、それでなければ国際貢献はできないのか、国際社会に顔向けができないのか、その突き詰めた答えをお聞きしたいのです。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 国はどの国も、外交は、国益と国益のぶつかり合いというのはたくさんあるのです。日本国連に参加をして長い間やってまいりまして、それでこれだけの経済大国にもなり、前はG5といって日本がその中に入っておりまして、カナダとイタリアは入ってなかったのです。それがG7に最近は広がってきた。日本を除いて世界の貿易とか経済とかをうまくやろうとしてももううまくできないということも事実。このこと自体、国民はそんな経済大国、G5に入ってけしからぬと言う人はいないと私は思うのですね。だから国連に対する分担金等も相当なものを払い——国連は経済だけやっているわけじゃありませんから、文化も環境も、いろいろなことをやっているでしょう、軍縮の問題もそうでしょう、そういうときに日本国民が、そういうような政治的な発言力を日本が持つのは、それはいけないという人はあるかもしらぬが、少ない、少ないんじゃないかな、私はそう思うのですね。  したがって、問題は、国連の常任理事国に参加をして、政治的な面で、発言の中身が問題でしょうけれども、立派な発言をして、世界のリーダーシップをとってほしいという気持ちは国民にみんなあると私は思いますよ。だから、政府はG7に入るようないろいろな努力を世界にすることは何ら不思議じゃない、当然のことじゃないか、私はそう思っております。
  29. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 私どもの考えとはかなり距離があるということを確認せざるを得ません。  なぜ、今自衛隊なのか。一年前、国連平和協力法案廃案になった後、たしか三党合意というのがありました。あの中では、自衛隊抜きなんだ、こういう合意をなさった。それが、ことしは何が何でも自衛隊となっている。これは一体なぜでしょう。何がそう変えさせたのか、それをお答えください。
  30. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答えを申し上げます。  私の理解する限りでは、昨年の国際協力法案におきましては、これは多国籍軍が国連の決議によりまして行動を起こしておったときの後方支援問題その他の活動PKO活動ですね、これを主たる任務としたものでございまして、当時の議論におきましても、自衛隊派遣し、この紛争に巻き込まれる、本体の紛争に巻き込まれるおそれがあるのではないか、危険性があるのではないかという議論が一つの大きなポイントでございました。  しかし、今回のこのPKO法案におきましては、まさにたびたび言われておりますように、また法律に明記されておりますように、紛争当事国の合意それから派遣国の同意、中立的な立場でやる、しかも武器使用はもう非常に限定された、いわば正当防衛、緊急避難的なものに限る、また、我が国の自主的判断によってこれに対応するわけでございますけれども、現地におけるそういう武力紛争的なものに巻き込まれないために、この我が国の中断あるいは撤収があり得るというような枠組みでございまして、この点は昨年の法案との違いを私は感じます。  そして同時に、何が何でも自衛隊と先生おっしゃいますけれども、そういうことではございませんで、これは、先ほど二十一世紀に向けての理念についてのお触れもございましたから、ちょっと私の意見を申し上げさせていただきますけれども、既に我が国は、三十二年におきまして「国防の基本方針」というものを定めてございます。その中に四原則がございますが、第一原則は、まさに国連協力をうたっております。そして当時の情勢で、防衛の基本方針として、「国防の基本方針」としては、第二は民生の安定、第三に必要最小限度の自衛力の保持、そしてまた第四に、国連がその当時まだ有効に機能しておりませんでしたから、国連が有効に機能するまでは米国との安全保障体制によって維持するという四原則が、これは明確に三十二年に定められております。  私は、これだけの年月が過ぎましたけれども、しかし、思いを新たにして、やはり日本の防衛についての基本精神は当時から確立されておったものと理解しております。そして、現在の情勢に即応しましてきちっとやっていかにゃいかぬなと思うのでございます。  そして、先生が、PKOで何が何でも自衛隊派遣ということだけがなぜここで強く主張されるのかという点につきましては、これは蛇足でございますけれども、これからの政策選択の中で各、幅広い私は選択があり得ると思いますが、その中の有力なものとして人的貢献が今回御審議を願っておる法案でございまして、いわばそういう立場の中で積極的にPKOに御議論いただいておるわけでございまして、私どももこの法案の正当性、それから、これからの国連外交の中で非常に重要な法案だという意識に基づいて議論させていただいておりますので、ひとつその点は御了承いただきたいと存じます。
  31. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 時間があと十分ということですので、この問題については若干の意見を申し上げて、次に進ませていただきます。  いわゆる日本世論といいますかあるいはマスコミ論調を見ますと、変わってきたなと思うのが湾岸戦争が一つの契機だったような気がするのです。これは多くの人も指摘していますね。ただ、この湾岸戦争がなぜこのくらいの大きな日本の進路を左右する、あるいは平和憲法にかかわる大きな選択の動機たり得るかどうかということについては私は意見を異にするんです。あなた方のパーティー、党の中のある方が週刊朝日の対談でおっしゃっておられました。湾岸戦争、これは石油権益というのがやっぱり背後にあったんじゃないか。私もそう思います。もしあそこが石油産出地域でなかったならばあの戦争はあのような形であっただろうか、これは歴史が、歴史家が後で裁くことだと思います。  そういったこととか、あるいはブッシュ大統領が世界の正義のためにやらなきゃならないんだと言ったあの開戦のとき、一月の十七日でしたか、あのときはなぜ開戦を待つことができなかったか、なぜ待てないか、それは世界が待てないからだとおっしゃいました。そして三月一日ですか、あの停戦のときに何とおっしゃったかというと、米国の威信は保たれたと言っているわけです。そこに大きな違いがありますね。世界という言葉の使い方と米国の威信という使い方がはしなくも開戦と停戦のときにあらわれてきている。こういうやはり冷たく客観的に、あの湾岸戦争は一体何だったのか、まあ後で触れますけれども、歴史の大きな流れの中に一体どういう意味を持っていただろうか。  それよりも、私たちが目を奪われなきゃならない、目を注がなきゃならない大きな問題があるんじゃないか。それは冷戦構造の崩壊だ。これをどうとらえて、二十一世紀にどう日本は選択をするかということの方がすごく大きなことだと思うのです。五十年、百年のサイクルの問題だと思うのです。湾岸戦争は私は、歴史上は三年、五年のサイクルの問題だ、そう思います。そういった歴史的な見方ということをもう少し研ぎ澄ましていただきたいということを申し上げて次に進みたいと思います。  最後の質問になりますが、いわゆる私たちは、二十一世紀の主人公に対して私たちの政治日本の国をバトンタッチしなければなりません。総理も外務大臣も私も、間もなくこの世の中から姿を消します。しかし、間違いなく二十一世紀の主人公になるのは、今の青年、少年あるいは幼年、これから生まれてくる、これが二十一世紀の主人公なわけです。つまり私たちは、二十一世紀の主人公から預かっている、非常に大きな荷物、責任を預かっている、そのときに今の選択が彼ら、彼女らにどのような評価を受けるかということを重く考えなければならないと思うのです。目の前の選択、先ほど私あえて申し上げました、大国へ、大国への野心あるいは憲法九条を消していく野望、この二つがエネルギーになっていると私は思っているのです。それが果たしてどっちが正しいかということは、やはり来世紀に、歴史の判断にまつよりほかありません。それにこたえるような判断を私たちはしなきゃならないのです。  私は、トインビーが循環説というのを出していました。そのほかに、ライトとかウォラスティンという数々の歴史学者が戦争、平和に関する周期説、循環説というのを提起しております。その中でトインビーの平和、戦争の循環説というのが非常に大きく扱われているわけですが、これは、大体百十五年周期で平和と戦争が繰り返される、今第四循環期に入って全面平和の時期に入っておるということで、本当はもう少し時間かけて申し上げたいのですが、十八世紀というのは、これはパクス・ブリタニカ、覇者英国の始まりであり、そして第三循環期の十九世紀は英国の覇権の後期であって次のバトンタッチの時期であって、そして第四循環期、二十世紀はパクス・アメリカーナ、アメリカの時代だというふうな位置づけをしています。そして、そのパクス・アメリカーナのこれからの展望ということについては私たちが十分考えなきゃならない、トインビーはもう亡くなられていますから。  そういう意味で、二十一世紀は、国粋主義とか国家主義よりも、いわゆる国際主義、そしてまた、ECに見られるように、あるいはEEAに見られるように、地域としての繁栄、提携ということが大きな主役になると思うのです。かつては、王家、王様ですね、王家が覇権を握っていた、そしてやがて国が覇権を握ってきた、今やそれは、国の覇権ということよりは、大きくブロックをつくり、あるいはエリアをつくりながらそこで相互に繁栄していくという時代じゃないでしょうか。ECがそうですし、最近の動きでは、アメリカ、北米でもカナダ、アメリカ、メキシコでそういった地域づくりの動きが出ているという、そういった時期に日本は、何が何でもという意識、国家意識を持ったのでは将来を誤る。  それで、先ごろテレビで、いわゆる外国の人たちが日本の将来をいろいろ論じている中で、ドイツは帰る国、帰る場所がある、それはヨーロッパだ、コンセンサスといいますかね、協力がありますから。日本は帰るところがないんじゃないかという心配をしているんですね。そして、その人がいわく、日本はちょっと錯覚しているのじゃないか、国連ほぼイコールアメリカというとらえ方をしているのじゃないか、そういう時代はもう過ぎつつあるのだ、パクス・アメリカーナの時代は過ぎつつあるのだ。そういった将来を見通した歴史観がなくて私たちは、国政を預かり、そしてまた国の方向性を論ずるということはできないと思うのです。  私は、最後に総理の御所見をお聞きして終わるわけですが、私たち政治家というのは選挙運動をやりますわね、選挙カーでこう回ると、子供たちが一生懸命手を振ってくださる、そのことは多分経験あられると思うのです。あの子供たちは恐らく余り深い意味なく手を振っているかもしれない。しかし、あの子供たちの将来、未来ということをあの子供たちの手から感じ取るのが私は政治家だと思うのです。その子供たちが、二十一世紀の彼らが主人公になるときに、どんな世界であってほしいか、どんな日本であってほしいか、その問いかけがあの手の中に、手を振る中に込められているというふうに受けとめなければ、私は政治家としては落第だと思うのです。  以上申し上げました、トインビーもちょっと中途半端でございましたが、歴史観、つまり今流れてきた歴史の流れの中でどのように日本はその流れに処していくべきか、そのことと、今なぜ自衛隊なのかということに対する再度の問いかけにお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 二十一世紀に向かって我々は進路を誤ってはならないということについての情熱を傾けてのお考えは、私もまことに同感でございます。幸いにして世界の流れは、所信表明でも申し上げましたように、我々が新しい平和秩序を構築する時代に入りつつある、ぜひそうありたいというふうに考えておりますが、そのときに国連が大きな役割を担うということも我々が期待をしているところでございまして、私どもの考えでは、その国連に対して我々は財政、技術的な貢献もできますけれども、このような国連一つの大きな仕事であります平和維持活動にも貢献をいたしたい、こう考えておるところでございます。  世界の大きな流れは、確かに御指摘のように、何とか過去の過ちをもう繰り返さない、いわば軍縮が進み、そしてその平和の配当を南の国々が最大の受益者となって受けるような方向に動いていかねばなりませんし、我々もそのように努力をいたしたいと考えております。トインビー氏が戦争の循環を言われました一つの理由は、民族が過去の経験を忘れる、その時期にまた戦争が起こるということを言われておる、一つの理由にしておられますけれども、我々はそういうことがあってはならないということを深く考えております。
  33. 沢藤礼次郎

    沢藤委員 要望を一つ申し上げて終わりたいと思います。  PKOでなきゃならない、あるいは自衛隊海外派遣でなきゃならないということではないと私は思うのですね。社会党が先ごろ提案しました。きょう私は、社会党もそこに並んでいるのかなと思って質問をたくさん準備してきたのですが、残念ながら見えません。あの提案の中で触れましたように、たくさんのたくさんの貢献の内容があるわけです、自衛隊じゃなくてもやれるやつが百以上ある。自衛隊でなきゃならないというのは仮に百のうちの一とすれば、社会党が提起している、こういうこともある、こういうこともあるというのは百のうちの九十九。その百分の一にこだわって、なぜ九十九をゴーサインを出せないのか。合意できる部分はやっていいじゃないですか。  そしてどうしても、今こうして国内世論が二つに割れている、特にアジア近隣心配している、憲法はどうなるのかという大変な議論が続いている中で、それを性急に百分の一を突っ込むということは、プッシュさせるということは、私は国民は望んでいないと思う。国民は、国会の中でできるだけ合意を得ながら、一致点を見出したらそれをまずやってくれ、そう言っているはずなんです、思っているはずなんです。そのことを、余り百分の一にこだわらないで、PKO法案廃案にするなり、あるいはまたじっくり継続審議するなりして論議を深めなきゃならない、そのことを申し上げて終わります。
  34. 林義郎

    ○林委員長 次に、秋葉忠利君。
  35. 秋葉忠利

    秋葉委員 十九日に続いて質問をさせていただきますが、まず最初に、先月にもうなりましたが、二十七日、この委員会が大変大きな混乱に陥りました。私は、その責任を問うことも非常に大事だと思いますが、一体だれが、あるいは何が原因でああいった混乱が起きたのか、そのことについて、例えば今この時点で委員会で議論するということは水かけ論に終わる危険性があると思います。  しかしながら、同時に、非常に大きな混乱があったということも事実です。その事実の上に立って、私たちはきょうの会議を開いているわけですけれども、そういった混乱について、謝罪をする必要はないにしろ、私はやはり、国民全体に本委員会として何らかの説明が必要だと思います。釈明と言ってもいいと思います。これはやはり、与党、野党といったその差が先にあるわけではなくて、立法府、国権の最高機関として国会があり、その中の委員会として私たちは審議をしているわけです。国民の代表として審議をしているわけですから、その責任がだれにあろうとも、原因がどこにあろうとも、やはりその事実をきちんと認めた上で審議を行うべきだというふうに思います。  そういう意味で、私は、これは当然委員長にお願いするのが適当だと思いますけれども、委員長の名において、あるいはこの委員会の名において、やはりその事実を踏まえて、事実を認識して報告を行い、さらに、それについての釈明を、簡単でもいいですけれども、委員会として国民に責任を果たすべきではないかと思いますが、委員長、一言お答えいただければ大変ありがたいと思います。(発言する者あり)
  36. 林義郎

    ○林委員長 私からお答え申し上げますが、お話でございますから、後刻理事会でお諮りしてもいい問題だと思いますが、私といたしましては、濃密なる審議を行ってきたつもりでありますが、残念の一語でございます。
  37. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございます。この件について、もしあれでしたら、理事会でそういったことをお諮りいただければ大変ありがたいと思います。  それから、委員長は被害者だという声がありましたけれども、確かに一番危険の多いところにおられたわけですから、おけががなくて、私たち、大変御同慶の至りです。  さて、もう一つその混乱に関して私申し上げたいことがあるのですが、実は、私どもが理解しておりましたこの委員会採決を急ぐ、最終的には強行採決を行う。ただし、私たちは、少なくとも私個人の見解からは、採決が行われたということは、どうしてもこれを納得することができません。実質的に、委員長の声も全く聞こえませんでしたし、修正案の内容もわからなかった。さらに、だれが委員であって、一体どういうふうに起立をしたのか、あるいは賛成の意見を表明したのか、そういったところで、審議の方法としては決定的に欠陥があったと思います。したがって、その採決があったということは、私はどうしてもがえんずることができないわけですが、その採決を急いだ理由として、時間がない、そういうことがあるんだというふうに理解をしておりました。  しかしながら、結果としてああいう事態が起こった、その結果として、きょう具体的に審議が行われている、ここで会議が開かれている。結果論になりますけれども、前提を幾つか変えれば、本当は時間があった、きょうまで審議ができた。だから、混乱を委員会で起こすかわりに、委員会においてより長期に、より詳細にさまざまな点にわたって審議をした上で、例えば混乱がなく二十七日以降審議が行われて、その結果きょうの会議が開かれている、そういったことも恐らく私は可能だったと思います。  その際に一体どういうことができたか、それを考えますと、このような重要問題については、私は、まず十分審議を尽くすということが大事だと思いますけれども、その具体的な内容として、このPKO法案について私たちが審議の中で感じてきましたことは、一つは、まず事実の問題、事実認識の問題で非常に大きな隔たりが、政府とそれから野党あるいは一部の委員の間にあるということです。  この問題に関しては、意見の違いではありませんから、例えば委員会として独立して調査団を国連に送ることによって事実の確認をすることができる。そうすれはこの矛盾は解消した。そうしたその事実の上に立って今度は十分な審議を行えば、ある程度の時点では、恐らく最終的にはこれは価値判断の問題である、あるいは意見の違いであるというところに行き着いたと私は思います。そういったプロセスで、国民に十分な理解をしてもらった上で委員会採決をする、それは最終的に世論を十分に反映したものというふうになったのではないか、私はそういう気がいたします。  すべての法案についてそういった慎重な態度をとることはできないかもしれません。しかしながら、私たちすべてがここで認識していることは、このいわゆるPKO法案というものは日本の国全体にかかわる問題である、日本国の将来にかかわる非常に大きな問題である、その認識では私たちすべて一致していると思います。そういった重要な問題について、私が今申し上げたような事実の確認と、それから、論点を煮詰めて最終的に私たちがここで採決をする、その対象は価値判断の違いである、あるいは意見の違いであるというところで、事実問題の認識の差がそこに入ってくるようなことのないような審議を尽くすべきではなかったか、そういうふうに思います。  この点について、総理大臣は先日、政府すなわち行政と、それから委員会、立法とは機能が違うんだ、別物なんであるということをおっしゃいましたが、その観点から、この委員会の審議のあり方として、私が今申し上げたようなことが、実際的には仮に無理であるとしても、ある程度理想といったことを考えると、そういった方法で審議が行われて当然であるというふうにお考えだと思いますが、一言その点について所感をお伺いしたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私の申しましたと伝えられることについて御指摘がございました。実は、廊下を歩きながら記者諸君との問答でありましたために、私の申そうとしたことが十分徹底しなかったうらみがございます。  私が最初に申しましたことは、委員会において各党の委員の方々、熱心に皆様はベストを尽くされたというふうに自分は拝見をしているということを申しました。政府はどういう責任かと言われますから、政府としては十分御審議に協力をして、最大限の誠意をもって御説明を申し上げたつもりだということを申しました。さらに、しかし委員会のこの運営について政府はどう思うかということでございましたので、それは、国会の運営ということについて行政府があれこれ申すべきことではないと思う、こういうことが私の申した趣旨でございます。  私どもとしましては、ただいま秋葉委員の御指摘の点につきまして、国連との関係におきましても、委員会の御意向に従いまして国連当局と再度折衝をするというような努力もいたしまして、最大限の誠意をもって御審議におこたえをすべく政府としての努力をいたしたつもりでございます。我々としては、十分の誠意をもって、また時間的にも十分な時間をかけて御審議をいただけるような対応をいたしたというふうに私は存じております。
  39. 秋葉忠利

    秋葉委員 残念ながら、その判断について私は総理と同じ考えではありませんけれども、一応私の申し上げた趣旨は御理解いただけたという感じがいたします。  それで実は、その二十七日の混乱ですけれども、どうも与党あるいは野党、野党の中でも特に社会党の動きを後でテレビで見ておりますと、反省する点がたくさんあるような気がいたします。自民党の一年生議員諸君が、同僚諸君が非常に、いわば統制のとれた動きをしていたかのように見えたのですが、それに反して社会党の方は余り規律がなかった。その理由の一つは、社会党の方にはきちんとした指揮官がいなかったからじゃないかと私は思っておりますが、防衛庁長官、仮にあのような混乱の状態、当然PKOに部隊を出せば、例えばあの程度の混乱では済まないと思いますけれども、例えばあの程度の混乱に自衛隊が巻き込まれる可能性というのは十分にあるわけですが、その場合に、自衛隊の隊員であればより粛然と規律を乱さずにきちんとした行動がとれたんではないか、そういう印象を私はあの二十七日の夜にここにおりまして感じたんですけれども、防衛庁の長官として、その自衛隊の最高指揮官としてあれをどういうふうにごらんになったか、防衛庁長官、一言お願いいたします。
  40. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  秋葉先生が二十七日の件に言及され、あの混乱の責任は社会党の方にもあったという御指摘、私は本当に率直に聞かさせていただきました。しかし、これは委員会における運営でございまして、あくまで、先生としてはそういうお気持ちで今後のイメージをされたかもしれませんけれども、私どもは、決してそういう混乱状況の中でこの平和的な任務を遂行するということを考えておるわけでもございませんし、そして法案の建前もそうなっておりますし、今後の訓練もきちっとしたものとしてこの法案に則したやり方で平和目的を達していきたいというように考えておりますので、委員会のああいったことについては、先ほど総理があるいは委員長が残念だという一語に尽きるような御発言もございましたけれども、私どもも、こういう論議は重要であるだけに、本当にああいう終末は私としても余り、何といいますか、賛成しかねるといいますか、院のことでございますけれども、そんな感じを持っております。
  41. 秋葉忠利

    秋葉委員 私がまず反省すると言ったのは、社会党の方としてはやり方がまずかったなということを率直に申し上げたので、混乱の原因というのは、私はやはり委員会全体として負うべきものだと思います。特に自民党、社会党、その両方ともあるわけですけれども、委員会全体としての責任ということが私はあると思いますので、やはりその点は委員会として、先ほど申し上げましたようにきちんと国民に釈明をする必要があると思います。各党ごとの反省、国民に対する釈明というのはそれは各党ごとに自発的に私はやるべきものだと思いますけれども、それとは別に委員会としての立場があっていいというふうに私は思っております。  実は、その二十七日の混乱ですが、あの混乱の中で、実は社会党の中にも指揮官と呼ばれるような人はおりませんでしたし、恐らく自民党の方でもなかったはずだと思います。あってあんなことをされちゃ困ります。しかしながら、おのずから指揮官らしき人物が登場した。やはり混乱の中にはどうしてもそういう人物が必要になってくる。その光景を、私はビデオを何回か見ましたけれども、はっきりと確認することができました。  すなわち、PKO派遣する、そして正当防衛を行わなくてはいけないような混乱状態が生ずる、そうすると仮に、意図としては個人の判断に任せる、指揮は行わないということになっても、そういった混乱状態で本能的に指揮官が登場して規律のとれた行動をとる。そして例えば社会党の議員を委員長に近づけない、あるいはPKOの場合だったらまた別のことになるかと思いますが、そういった指揮をとることになる。そういった場合に、おのずから生じた指揮官が、正当防衛のためにという条件をつけても結構ですが、撃てというようなことを万一言ったとする。その場合にはそれは当然のことだからといってお認めになるんでしょうか。それとも、それは指揮権をそういう形で使ってはいけないということをあくまで厳守して、その指揮をとった人間に対して当然の処罰といいますか措置をおとりになるつもりか。防衛庁長官、お願いします。
  42. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  先生の今の御指摘は、先ほど申しましたように、当委員会における運営のイメージと我々の自衛官を派遣した場合のイメージとの重なり合うこともあるだろうという御認識で率直な御意見だと私も拝聴いたしておりましたけれども、私どもは、この法案に定められておりますように、あくまで平和目的でおり、そして武器の使用につきましてもたびたび申し上げておりますように、個人の主体的な判断で実行するということでございますが、これは大変重要なことでございますので、私どもは、これからこの法案を成立させていただけますならば自衛隊の部隊としての派遣があるわけでございますから、まあ今訓練に訓練を重ね、そして個人の武器使用についてもいろいろな面で厳重な訓練をやっておりますけれども、この法案に沿った形で私は訓練をし、そして隊員に、この平和協力業務というのはいかなる機能を持ち目的を持っているんだということを十分自覚をさして、そしてまた隊としての行動、これは武器使用以外では隊の統一的な行動をとるのは当然で、そのことによってこの任務が達成されるわけでございますから、そういったもろもろの訓練をこれから派遣する場合はきちっとやっていきたい、このように存じております。
  43. 秋葉忠利

    秋葉委員 きちんとした訓練をするから、例えば指揮を行ってはいけないところでは絶対に指揮を行わない、そういうお答えだというふうに要約してよろしゅうございますか。
  44. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今先生が御指摘になった点は、武器使用の点に関し、そしてまた従来議論されておりますように、束ねるという言葉はございませんでしたが、指揮官が積極的に武器使用を命ずるということがあるのではないかという御想定のようにお伺いできますけれども、私どもはあくまでそうでございませんで、自衛官個人個人が判断をしてやるというのが法律の建前で、これは厳守していかなければなりません。しかし指揮官が、たびたび申しておりますように、個々の隊員が武器使用が正当であるというように主張された場合であっても、現場におる経験豊かな指揮官が、いや待て、もう少し慎重な上にも慎重にやった方がこの当面の紛争に巻き込まれないし、いいんだというような御判断があり得る場合があるでしょう、そういう意味で、そういう場合には隊員が武器の使用を判断しようとしても、まあこれは従来束ねると言っておりましたが、指揮官がネガティブな意味で武力使用を抑制していくことはあるだろう、こういうことを申し上げておるわけで、決して部下がそういう状況でないにもかかわらず隊長が撃てというようなケースを私どもは決して想定はいたしておりません。
  45. 秋葉忠利

    秋葉委員 そのお答えは何度も伺っております。私が今伺っているのはその答えられたことではなくて、要するに前提を変えてくださいということを申し上げているわけです。それは起こらないことになっている、起こることを想定してはいないだろうけれども、可能性としては指揮官が具体的に撃て——それがどのような状況であるかということはあえて問いません、個々の隊員がやはり自分の判断で撃つような気持ちになっているときもあるかもしれない、そうじゃないときがあるかもしれない、しかし、実質的に行動として指揮官が撃てと命令をしたという前提を置きましょう、私はその前提の上で質問しているわけです。そういう事態が起こったときに、その指揮官に対して、それは事情によって違うかもしれませんけれども、ともかく、正当の防衛の場合だったら正当防衛として認めて一切不問に付すのか、あるいは、そういった指揮をとってはいけないことになっているのだから、だからその指揮官に対して何らかの処分をするか、どちらにするのかということを伺っているので、どちらになさるわけですか。
  46. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 たびたび申し上げておりますように、指揮官がそういう命令を積極的にやることは私どもは想定をいたしておりません。もしかそれが不当な部下に対する指揮の発動等でございますればこれは是正しなければなりませんが、その是正の方法等については、過日も警務官の話等も申し上げましたけれども、これは自衛隊の中における自制的な抑制力によってきちっとやるし、そういう事態にならさないために徹底した訓練をやるということを先ほど来申し上げておるわけでございまして、先生の御想定のような事態は私はあってはならない、そしてまた、あってはならないように隊員の訓練をしっかりするということが必要だと考えております。
  47. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変申しわけないのですが、私の質問答えてください。私はあったはいい、いけないということを言っているのじゃないんです。前提をはっきり設けて言っているんです。前提は、指揮官が具体的にあってはならないことをやったときにどうなるかというふうに言っているわけですよ。人を殺してはいけない、これはあってはならないことです。しかしながら、万一人を殺した場合にどうなるかというのは法律できちんと決めてあるわけじゃないですか。そういった担保がない限り、人間ですよ、神様じゃないんですから、あってはならないことをする場合が非常にある。だからこそ法律が必要なので、だからこそ今ここで議論をやっているわけじゃないですか。それに答えてください。
  48. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  それはたびたびここでも議論がございますように、法案で武器使用の場合に、刑法三十六条、三十七条に該当する場合にのみ他人に危害を加えることができるわけでございまして、それ以外の場合にはだめだということをはっきり法律で書いてあるわけでございます。
  49. 秋葉忠利

    秋葉委員 指揮官が、小隊長でも結構です、小隊長がなしてはならない指揮をした場合に自衛隊法の何条が適用されるのですか。「罰則」の中で、百二十二条の防衛出動の場合ですか、それとも、それ以前の治安出動の場合ですか。そのどれが適用されるのかを条文を引用してお願いします。
  50. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 条文のことでございますから、防衛局長から答弁させでいただきます。
  51. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 お答えいたします。  自衛隊法の第九章「罰則」の中の百十九条に、「正当な権限がなくて又は上官の職務上の命令に違反して自衛隊の部隊を指揮した者」という規定がございます。この罰則が適用されると思います。
  52. 秋葉忠利

    秋葉委員 それは科料あるいは懲役三年以下で すね、罰が。百二十二条の防衛出動の場合には懲役七年以下です。これは防衛出動の方が当然適用されるのじゃないですか。
  53. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 お答えいたします。  防衛出動が命ぜられているわけでございませんので、こちらの方の規定の適用になるというふうに考えております。
  54. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうすると、指揮をしてはいけないことになっている、それがPKOの原則です。なぜ指揮をしてはいけないのか。それは武力行使と武器使用ということについて憲法の九条に抵触するおそれがあるからだというふうに私は理解をしております。しかしながら、指揮官がそのPKOの取り決めあるいはこの法案の中で了解されている事項を犯して指揮をとった場合には、具体的に憲法違反が起こるわけでしょう。憲法違反が起こる場合がなぜ防衛出動と比べて罰則が軽いのですか。懲役三年以下あるいは罰金、科料ということじゃありませんか。憲法というのは宮澤内閣においてはそれほど軽い意味しか持たないのですか、総理大臣
  55. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 お答えいたします。  今先生、憲法違反ということで御言及になりましたけれども、我々自衛隊の職務はこの自衛隊法によって規制され、またそれによってやっておることでございますので、私どもとしましては、今のような先生の仮定のケースとしましては恐らくこの百十九条の話になるんであろうというふうに考えております。
  56. 秋葉忠利

    秋葉委員 ですから、答えられないことはわかっていますから総理大臣に伺ったわけです。要するに宮澤内閣の見解として、百二十二条を適用せずに百十九条を適用する、そして防衛出動の場合の規則違反よりはその罰則が軽いという判断でよろしいわけですね、宮澤内閣憲法に対する意味づけというのはその程度のものなんですねということを確認しているわけです。
  57. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま防衛庁の政府委員の方からお答えがございましたように、百二十二条はあくまでも防衛出動命令を受けた場合の規定でございまして、百十九条は一般的な、三年以下の懲役ということで規定してございまして、百二十二条に該当するというふうないわゆる構成要件の該当性というのはそこにはございません。したがいまして、罰則だけで申し上げるならば、今の百十九条というお答えが正しいだろうと思います。
  58. 秋葉忠利

    秋葉委員 それはわかっています。わかっていますから、その上で憲法九条を犯したそういう重大な、いわばそういったことが私は意図的に起こらないことを願っていますし、ここで質問しているのは現在の自衛隊の隊員の方々がそういうことをやるというようなことを念頭に置いているわけではありません、万一そういう事態が起こったらということですから、私の質問をそのまま自衛隊に対する侮辱だというふうに解釈はしていただいては困るわけですけれども、万一そういう事態が起こったときに私はこれは非常に大きな事件だというふうに思います。それに対する法律の適用を、例えば一つの可能性としては法律を改正すればいいわけでしょう。現在のPKO法案法案の修正をつけてもいいわけでしょう。そういったことを何もやらずに機械的に百十九条を適用するというのは、これは一つ憲法に対する判断の反映としか考えられません。ですから、憲法はそんな軽いものなのかということを伺っているので、それに対しては総理に答弁をお願いいたします。
  59. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど法制局長官並びに政府委員からお答えしたところで私は足りておると思いますけれども、そのようなことが起こらないというために自衛隊法でも罰則が設けられているところでございます。
  60. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変申しわけないのですが答えになっていないんではないかと私は思うのですけれども、まだほかにも幾つか大切な質問がありますので、その点についてはまだ後で戻ってやっていきたいと思います。  一つは、もう一つこの点について、百十九条ということですけれども、懲役三年以下ということなんですけれども、そうすると、具体的に例えば百十九条が適用された例、今まで自衛隊が海外に出ていろいろな活動をしている、そのことは国民はよく承知しているわけですが、例えば南極観測というのがそうですし、それから外国において射撃の練習をしているというような事態がございます。そういった場合に、この百十九条を適用する、あるいはそれ以外の規律上の措置をとらなくてはいけなかった例というのがこれまで自衛隊の中にあったかどうか伺いたいと思います。
  61. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私もその点は気になりましたから一回お尋ねしたことがございますが、本当の軽微な事案は一件くらいあったようでございますが、その詳細につきましては担当局長から御説明申し上げます。
  62. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 お答えいたします。  先ほど来お答えしている中で、百十九条の適用につきましても、これは国内におきます自衛隊法の適用の関連で一般論として申し上げておるわけでございまして、当然外国におきます場合にはいろいろな、先般来外務省の方からもお答えになっておりますように、その受け入れ国との協定とかあるいは国連との取り決めとかそういったようなことによっていろいろ規制されることになるだろうと思いますが、今の事例の件につきましては国外におきましてそういった事例はございません、その指揮官の不正使用、不当に部隊を指揮したという件につきまして。
  63. 秋葉忠利

    秋葉委員 それ以外の件でも、私は、今の質問は百十九条適用で、指揮のことだけではありませんけれども。
  64. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 どうも失礼いたしました。質問を十分あれしておりませんが。  現在、先ほど御指摘のあったようなことで派米訓練であるとか遠航とかいろいろなことで自衛隊が海外に行っておる場合がございますが、大体海上自衛隊の場合には警務官が二、三名同乗して行くということになっておりますが、過去の例では窃盗等軽微な犯罪の例はございますけれども、先ほどから御指摘になっておるようなことにつきましては事例がないというふうに御理解いただきたいと思います。
  65. 秋葉忠利

    秋葉委員 要するに、指揮命令系統に関連したそういった問題はなかったというふうに理解してよろしいわけですね。  それで、実は私は、国連にこのPKO関連の調査に社会党のシャドーキャビネットを代表して行ってまいりました。いろいろな方と話をしてきましたけれども、軍事顧問のディビュアマさんというふうにおっしゃったと思いますが、この件について話をしました。そこで、彼のいわく、PKOに参加する兵士は、ともかく各国の代表として非常に優秀な人が送られてくる、それがまず第一。それから、やはり国の誇り、それから国連という国際的な場で活躍するという誇り、そういったところが非常に大きな規制になっているので、具体的にこういった指揮命令系統でも、それ以外の犯罪あるいは犯罪とは言えないまでも、不祥事といいますか、そういった点でもほとんど問題はないんだ、しかも、きちんとした訓練を国連でもやるし各国でもやってきているから問題はないと考えていいのじゃないかというようなことをおっしゃっていました。防衛庁長官の理解も大体そういうところでしょうか。
  66. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今おっしゃられた、大体私もそう感じておりまして、そのためのきちんとした体制をつくらなければいかぬ、こう思っておるわけでございまして、おおむね先生のおっしゃるとおりだと思います。
  67. 秋葉忠利

    秋葉委員 この指揮命令系統について、実は日本には戦前非常に悪名高きといいますか有名な軍隊があった。そこでの海外における活動にやはり非常に大きな問題があったことは、沢藤委員その他我々が指摘してきましたし、これはもう十分理解されていることだと思いますけれども、その旧帝国陸軍、海軍における海外におけるこういった不祥事についての措置というのはどういうふうになっていたのか、それについて伺いたいと思います。
  68. 坪井龍文

    ○坪井政府委員 お答えいたします。  旧軍のいろいろな刑法あるいは秩序維持等々のことにつきまして、必ずしも十分勉強しておりませんので、常識的なお答えしかできませんが、旧軍におきまして御案内のように陸軍刑法だとか海軍刑法あるいは軍法会議といった軍独自の法律とか制度がございました。それで、その中にはもちろん国外犯の規定であるとか、あるいはまたいわゆる秩序維持に当たる憲兵といった制度がございまして、それも、もちろん現在の自衛隊の部内秩序の維持に当たる警務官等に比べまして、はるかに行政警察の権限とかあるいは司法警察の権限等々大変幅広い権限を持っていたというふうに承知しております。  しかしながら、具体的な違反事例の、どんなものがどんなふうにというようなことにつきましては、ただいまそういうデータを持ち合わせておりませんので、勘弁していただきたいと思います。
  69. 秋葉忠利

    秋葉委員 具体的な事件で、これは歴史の時間にだれでも習うというわけではありませんけれども、かなりよく知られた事実がたくさんございます。非常に残念なことには、もう文部大臣いなくなっちゃいましたけれども、日本の歴史教育でこういったことがきちんと教えられていないというところも問題だと思いますが、幾つか指摘をしたいと思います。  皆さん御存じのように盧溝橋事件というのがありました。それから、日中戦争の始まりとなった柳条湖の事件というのがございました。これはいずれも関東軍、その関東軍下にある将校あるいは何人かの軍人が、ある場合には統帥権を侵して、ある場合には参謀総長の命令を受けずに、具体的には指揮権を持たずにこういった行動を起こしました。それに対して、軍としてもあるいは政府としても、陸軍としても懲戒権を行使しておりません。こういった非常に大きな事実に対して懲戒権を行使しないのであれば、一体懲戒権は何のためにあるのか、それを問わざるを得ない。つまり、名前としては懲戒権があるにもかかわらず、戦前の日本軍においてはこういった世界史を動かすような非常に重要な場面において、懲戒権が一番意味を持つ場面において懲戒権を使っていない。  しかも戦後の自衛隊においても、今お話があったように、懲戒権ということは自衛隊派遣に関して全く問題になっていない。にもかかわらずPKOの問題に対してだけはなぜ政府は懲戒権にこだわるのか。実質的には意味のない懲戒権にこだわって、最終的にはPKOをそのことによって派遣するという意図だけとしか考えられない。私にはそう思われますけれども、一体懲戒権にこれほど、実質的には歴史的にも、そして現在の自衛隊海外派遣という観点からも意味のない懲戒権になぜそれほどおこだわりになるのか、総理大臣、お願いします。
  70. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど戦前の盧溝橋の出来事あるいは柳条溝の事件について御指摘があって、その場合、軍の懲戒権が発動されていなかったという趣旨のお話がございました。  これは歴史を顧みることになるわけですけれども、当時の憲法のもとでいわゆる統帥権というものがあって、そしてそのもとに我々はついに敗戦に至る道をたどるわけでございますから、その問題は戦前の我々の国のあり方についての反省としては十分に考えなければならないたくさんの問題を含んでおります。しかしながら、そのことと——戦後の我が国の制度のもとに、自衛隊であれあるいはその他の公務員であれ、国家公務員等々の懲戒権というものはこれはまたなければ官吏の秩序というものは保てないわけでございますし、そういう制度をもって官吏が間違いなく行動するということの担保をする、このことはもう当然入り用なことであって、戦前にそういうものが働かなかったがゆえに戦後もそういうことがルースであっていいというふうには私には到底思えません。
  71. 秋葉忠利

    秋葉委員 時間がありませんので、その点については、懲戒権の問題、懲戒権にこだわって日本国連PKOに参加する場合に事務総長の指揮下に入らないということであれば、それは前回の質問の場合にも申し上げましたように国権の発動としての自衛隊海外派遣であって、それは専守防衛という自民党あるいは政府のこれまでの見解から逸脱することになる、そのことを改めて強く申し上げておきたいと思います。  それから、これもまた万一の場合を想定しての質問になるわけですけれども、このPKO活動、特にPKFの活動において、派遣された自衛隊員が万一不幸にして命を落とす場合ということが当然考えられるわけですが、その場合の国としての補償をどのように考えておられるのか。これは自衛隊員だけではなくてその他の公務員、さらにはボランティアが平和協力隊員として行くことも考えられるわけですから、総理大臣、そういった場合の国の対応ということをきちんと説明していただきたいと思います。
  72. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  一般の国際平和協力隊員につきましては、国家公務員災害補償法による補償が行われます。自衛隊派遣隊員でございます自衛隊員につきましては、この法案の十二条八項及び十三条三項によりまして防衛庁職員給与法によって災害補償が行われることになっております。この防衛庁職員給与法は国家公務員災害補償法を準用いたしております。したがいまして、先ほど申しました一般の国際平和協力隊員と同様な補償が行われることとなります。さらに、これは特に、紛争に起因します政情が不安定な、安定してない地域において、危険な環境のもとで職務に従事する場合もございますので、隊員への賞じゅつ金についても検討を進めているところでございます。
  73. 秋葉忠利

    秋葉委員 ただいま、PKOが華々しく海外に出ていく、しかもその任務の遂行中に不幸にしてその隊員が亡くなるというような場合に、非常に国民的な同情心といいますか、そういったものが高揚する可能性というのは十分考えられるわけですけれども、その際に、政府の対応として、同情心をうまく利用してと言うと言葉が悪くなりますけれども、あんなに大変なことをやってお国のために命を落としたにもかかわらず、一体政府は何をやっているんだ、自衛隊は何をやっているんだということで、我が国民の命を守るために、それでは自衛隊を重装備で出動させようとか、あるいは今回の法案を改正して、そういった場合には護衛部隊が出ていけるようにしようとか、あるいはそのためには憲法改正が必要だから憲法改正をまずやってからやろう、いろいろな段階が考えられますが、そういった国民のある意味での期待あるいは純粋な同情心といったものを悪用して、現在考えられているPKO法案、これをエスカレートする、あるいはさらに、自衛隊の海外活用といいますか海外での自衛隊の能力活用ということをもっともっと推し広めていく、そういったことは私は絶対にやってはならないことだというふうに思います。  その点について、仮にこういった万一不測の事態があった場合においても、政府は、きちんとした補償はそれはするけれども、同時にきちんとしたけじめのある態度をとって、絶対に自衛隊が海外に出ていくことがこれで歯どめがかかるように、PKO以外の活動自衛隊を出したり、それから、この法案を例えば一年二年先に修正することによって活動内容を広範囲にしたり、そういったことが絶対にないということをここで確認しておきたいと思います。  総理大臣、お願いします。
  74. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 前段の問題につきましては、万一不幸にしてそのような犠牲が生じました場合には、十分な償いをいたさなければならないというふうに考えます。  後段の問題は、そういうことがあってはなりませんので、例えば隊としての行動が阻害されるような場合には、国連のSOPはともかくとして、我々としては、その場合には武器の使用をすることはできないという自制の歯どめをかけておるというようなことも、ただいま秋葉委員の言われましたような危険を少なくするための配慮でございます。
  75. 秋葉忠利

    秋葉委員 将来、この法案を改正するかどうか、自衛隊の海外における活動、その範囲を広くするかどうかということについてはお答えになりませんでしたけれども、お答えにならないということは、当然そのような可能性は考えているということですね。
  76. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいまお答えいたしましたことから十分おわかりいただけると存じましたが、隊の行動が阻害されるときに、国連のSOPであれば武器を使用するということを認められておるわけですけれども、我々はそういうことはやはり不測の事態に発展しかねないというほど用心してこの法律案を考えておるわけでございますから、秋葉委員のおっしゃるような心配は、ひとつ私どもとしてはさらさらないように処置をしなきゃならないと思います。
  77. 秋葉忠利

    秋葉委員 お答えのコンテクストのとり方によって意味が二様あるいは三様にとれるようなお答えですので、これは大事な点ですのでもう一度確認いたします。  私はPKO派遣についてだけ言っているのではなくて、万一このような法案が成立した暁に、そして自衛隊が海外に出ていく、人が死ぬ、そういった場合に、それをてこにしてもっと自衛隊がどんどん海外に出ていくようなことを考えているのかどうか、そのあたりの、そんなことは考えていない、PKO活動だけにしか自衛隊は出さないんだ、その線引きがここではっきりしているかどうかという決意をぜひ伺いたいということを言っているので、その決意がおありなのかどうか、あるかないかはっきりとお答えいただきたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 その点は、自衛隊の海外への派遣ということは、この法律もそうでございますし、自衛隊法でも規制をされておることでございますから、それをさらに拡大するというようなことは考えておりません。
  79. 秋葉忠利

    秋葉委員 ということは、自衛隊法を改正すればもっといろいろなことができる、その可能性をお認めになっているわけですね。自衛隊法を将来改正してそのような方向に持っていくお考えはおありですか。
  80. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そこまでおっしゃるのならば、我が国には憲法があるということを申し上げればそれで足りると思います。
  81. 秋葉忠利

    秋葉委員 実は今のお答えは大変私が待ち望んでいた答えですが、実はその憲法が、ただ単に解釈によって、しかも五年を経ない間に、あるいは昨年以来の憲法解釈によってこんなに簡単に変わっているわけじゃないですか。そこのところを国民が憂慮している、あるいは我々が大きな危惧を持っているわけです。そこの憲法に対する考え方をもっときちんと、だれにもわかるように、しかも不動で、それが微動だにしないような形で政府がはっきりと決意を示していただければ、我々こういう心配をしないで済むところなわけです。  ですから、憲法に関してもう一度宮澤総理が、この憲法九条の平和主義と、それから憲法前文にも盛られている平和主義、これをきちんと守っていくという決意を今ここで一言お願いいたします。
  82. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆる国権の発動としての武力行使はしない、我が国の防衛は専守防衛であるということは何度も申し上げたとお力で、私はそれを守ってまいります。
  83. 秋葉忠利

    秋葉委員 時間がございませんので、専守防衛についてここの委員会でも何度も問題になりましたけれども、その点についても実はまだ十分な理解とそれから決着がついていると思いませんので、これについても、機会があればまた続けて質問さしていただきたいと思います。  次の質問に移ります。  このPKO法案、もともと国連中心主義ということで出されてきたわけですけれども、その国連の分担金の支払いについて先日の質問の中で外務省の方からお答えがありました。分担金をきちんと払っていないのは、為替の変動があって、その為替の変動を見て一番有利なときを選んでこれを出しているからだという趣旨のお答えがありました。  しかしながら、私はその為替の変動についての資料を持っておりませんでしたし、外務省の方にお願いをしておりましたが、その時点では手に入りませんでしたのでその後調べてみましたが、どうも為替の変動だけを見ていると支払い時期とうまいぐあいに合致しない。つまり、為替の変動を見てそれで分担金の支払い日を決めているんだと、当然払われてもよさそうなころには払われていないという事実が出てまいりました。この点について、当然その対外支払いの基本方針といったものがあると思いますので、その点を例えば疑問が氷解するかもしれないと考えております。  大蔵大臣いらしておりますので大蔵省に伺いたいのですけれども、その対外支払いを行う場合に、為替との関連で一体どのような基準があるのか。つまり、為替のレートが変動する場合にその見通しをある程度行った上で支払いを行うのか、それとも固定レート制といったようなものがあるのか。固定レートであれば、どのくらいの期間においてそのレートを調整するのか。また、この対外支払いの基準が国連への支払いに対しても適用されるのか。その辺について簡潔に御説明いただけたらと思います。
  84. 小村武

    ○小村政府委員 お答え申し上げます。  為替相場が年度途中で経済動向等により変動するものでございますので、まず私ども、予算編成上一定のレートを設定いたしまして、それで予算措置をいたします。ただいま御質問の支払いの段階でございますが、予算レートで一応政府間取引等による、端的に申し上げますと日本国内に口座のないものは支出官レートで行います。その他のものにつきましては、それぞれの省庁において執行していただく場合には、その時点における実勢レートで対処していただく、こういうふうになっております。
  85. 秋葉忠利

    秋葉委員 わかりました。  その中で、それでは外務省の何回か行った支払いを見てみますと、これが一番いい例になるかと思いますけれども、一九八九年九月二十日に支払いを行っておりますが、そのときの為替レートを大体見てみますと、これが八九年の九月ですから、実はそれは今から振り返ってみますと一番円安の時点であった。当然、例えばこれは円でそれをドルにして払うということを考えれば、一番円高のときに払うのが一番得だということはおわかりいただけると思いますが、その一九八九年の九月二十日という時点はずっと大体、そうですね七月の初めの時点で百四十五円ぐらいだったのが八月、九月と下がってきて、約百五十円近くに円が下がっていた時点ですけれども、そこで払っている。この間のあれですと、得をするようにというのですけれども、一番損をしている時期に払っている。これはどういうことですか。
  86. 丹波實

    ○丹波政府委員 過去七、八年、私も先生の御指摘がございましたので調べてみて、全貌の数字を全部持っているわけではございませんけれども、傾向といたしましては、今大蔵省の方から御説明があった支出官レートよりも円高に傾向がなっている場合には、時期的には早い段階で国連に分担金の支払いをいたしております。ただ、支出官レートよりも円安になってきた場合にはどの時点で払うのがいいか、それから、当然ずっと円安が続きますとその不足が生じるわけで、それを今後の予算でどう手当てしたらいいかということを勘案しながら、様子を見て現実に支払いを行うということで、結果としてその時点が非常に円安になっちゃっているということ、それは排除されないと思いますけれども、今申し上げたような理由で時期を見ながら支払い時期を決めてきているということでございます。
  87. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変申しわけないのですが、これ、後で参考資料としてマスコミの方にも国民の方にもお見せします。後になって、げすの後知恵という言葉があって我々には適用される言葉だと思いますが、聡明な外務省の方々が為替レートの動きを見ていて一番有利になるときを選んでやったにしては余りにも結果がお粗末だと言わざるを得ない。非常に残念なことなんですが、そうなんです。  ところで、その一九八九年九月二十日に国連に支払いを行いました。その年に外務大臣国連に行っていますけれども、それはいつのことですか。
  88. 丹波實

    ○丹波政府委員 一九八九年には、外務大臣がニューヨークに滞在しておられましたのは九月の二十三日から二十九日までです。
  89. 秋葉忠利

    秋葉委員 それから、ことしになりましても、九月二十四日にことしは国連に対する分担金を払っていますが、ことしも外務大臣国連に行かれました。何日ですか。
  90. 丹波實

    ○丹波政府委員 ことしは、外務大臣が三ユーヨークに滞在しておられましたのは九月の二十一日から二十五日でございます。国連演説は九月の二十四日でございますけれども、先般先生にもお答え申し上げましたとおり、それから今もちょっと私の方から触れさせていただきましたけれども、国連に完済した日付がいつも九月ということではございませんで、五月とか四月ということがあったことも事実であることは先生御承知のとおりだと思います。
  91. 秋葉忠利

    秋葉委員 今申し上げましたように、完済した期日をすべて取り出しているわけではなくて、およそ支払いの、三月の末というのは年度末ですから、これはある意味で理解できることなんですが、それ以外の支払い日の半分以上、外務大臣あるいは総理大臣国連に行く直前を選んでいる、あるいはその近くを選んでいる。日本にも貧しい時代がありました。そのころは、あしたPTAがあるから、せめて授業料ぐらいは何とかやりくりして持っていっておかないと恥ずかしいからというので、両親が無理をして授業料を払ったりPTAの会費を払ったという時期がありました。そういう理由だったらわかりますが、日本はそんなに今困っているわけではないんじゃないですか。にもかかわらず、これは要するに札束で、国連が金不足だということは世界じゅうよく知っていることです、そういう事務局の苦労もあるし、具体的に現場で仕事をしている人たちの苦労があるわけですけれども、そういう人たちの横っ面を札束で殴るようなやり方で金を何も出さなくてもいいと私は思います。  それは前回申し上げました。渡辺外務大臣はそういう人情がよくわかると先ほど沢藤委員も言いましたけれども、こういった金の出し方、本当にせこい金の出し方はもうこれからやめるとはっきりと言っていただきたい。本当に為替の変動を考えてやっているんだったら、それはコンサルタントを使って、きちんと日本にとって一番有利なとき、ある程度の予測ができるわけですから、それならそれで筋を通す。そのかわり今度外務大臣国連に行かれるときには、もうはるか前に分担金を払っておいて、外務大臣が行かれるときには別のお土産を持っていく。  それは、日本がどういう哲学で世界に貢献をしようとしているのか、それも、ただ単に日本だけがいい子になるんじゃなくて、世界じゅうの国々が、特にアジアの人たちにとって日本がその代弁者たるような原理原則を確立して、日本はその上で具体的にこういうことをやります、お金もこれだけは出しましょう、そういった未来の展望のある、しかも、日本が金ではなくて本当に理念によって私たちが世界にどういうふうに貢献するのかという、その理念と理想によって国連の人たちの心を打つようなお土産を手にして行っていただきたいと思います。  その意味で、まずこういった分担金の払い方というのはやめると、今、決然と表明をしていただきたい。渡辺外務大臣、お願いします。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 しょせんは支払いの時期の問題でしょうが、期限があれば期限までに払えばいいのですから、やはりそうすると、国益を考えれば余り多いよりは少ない方がいい、こういうことになるんでしょう。ですから、一概に悪いということも言えないし、それじゃ為替相場をどういうように読むか、これはなかなか、言うべくして実際はわからない、現実は。ですから、何かルールをつくる必要はあるのかもしれません。  しかし、滞納になっておれば滞納のまま国連に行けないから、それは不利であろうと何であろうとやはり支払ってから行く、こういうふうなことではないか。ですから、この支払いの話は余り難しく考えなくたっていいのじゃないかと私は思うのですが、実際のところは。
  93. 秋葉忠利

    秋葉委員 それは完全に出す側の論理です。つまり、本当にお金がなくて、その中でも何とかやりくりをしている人たちの立場からすれば、そして一般的に例えば各国の反応を見ると、とてもそんな容易なことではありません。支払い時期というのは私はやはり非常に大切なことだと思います。やはり商取引の中で支払いということをそんなに軽く考えられたんじゃ、商取引そのものは成り立たなくなるわけじゃないですか。しかもお金の出し方ということに関しては、例えば五〇年代、六〇年代のアメリカが世界的に非難をされたのは、まさにその点で非難をされたわけですから、その轍をなぜ今日本が踏まなくちゃいけないのか、その例から学ぶべきだと私は思います。  ですから、これはもうぜひ、今まだ十分その点について理解をされていないのであれば、幾らでも実例を持って参上いたしますので、ぜひ御研究いただきたいと思います。  次の質問に移りたいと思います。  先日来、同僚の小澤委員質問したことですけれども、この自衛隊国連PKOに参加させる場合に、当然協定を結ぶことになるわけですけれども、その協定の中で現在のこのPKO法案そのまま解釈いたしますと、当然留保する必要が生じてくる。それで、その留保条項というのを大まかに分けて三項目あると思いますけれども、その一つは、国連に指揮権を移譲することなく、国連側のコマンドに適合するように日本側で作成する実施要領に従って、日本側の指揮に従って活動するという留保条項をつけなくちゃいけないだろうと私は思います。  それからもう一つは、国連側のコマンドに反して業務を中断することがある、これも留保条項でちゃんと言っておいていただかないと困ることだと思います。  三番目に、いかなる場合にも部隊として組織的に武器を使用すること、すなわち、武力を行使することはなく、隊員各自が個別に自己の生命、身体を防衛するのみであること、これは法案どおりに読みますとこういうことになるわけですが、この留保条項がないと法律は守れないわけです。  それで、具体的にこの国連との協定の中でこういった留保条項を明文化されるのかどうか、伺いたいと思います。
  94. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  PKOの要員派遣に当たりましては、我が国と国連との間にいかなる枠組みを設定するか、あるいは取り決めと言ってもいいかもしれませんが、このことにつきましては、どの地域でどのような国際平和協力業務等を行うかというような具体的な状況でございますとか、国連側との協議の推移いかんを見る必要があると思います。したがいまして、現時点で確定的なことは申し上げられませんけれども、政府といたしましては、この法案の成立後速やかに、この法案に基づく我が国のPKOへの要員派遣につきまして、国連事務局との間で事務的な話し合いを開始する考えでございます。  いずれにいたしましても、ただいま御指摘のような点を含めまして、この法案の成立後、要員の派遣はこの法案に基づいて行われるものである以上、国連との間で派遣のための取り決めあるいは枠組みを設定するに当たりましては、関係法令、なかんずくいわゆる五原則を盛り込みましたこの法案の枠内の派遣であるということが確保されるように、政府といたしましては当然対処すべきものだというふうに考えております。
  95. 秋葉忠利

    秋葉委員 私が伺ったのは、そういうことではございません。  まず、今の答えの中で非常におかしいのは、先日来のお答えでは、そういった一般的了解はもう国連との間でついているんだという話だったじゃないですか。それがなぜ、法案成立後交渉することになっちゃったんですか。その点、まず答えていただきたい。  それから、留保条項を本当につけるのか、つけないのか。それは法案が成立して後の話では遅いことです。これは非常に大事な一般原則ですから。その一般原則を担保するために、先ほどのお話では、懲戒権がなぜ必要かといえば、それを、指揮を具体的に実効あらしめるための担保として懲戒権が必要だということを言っているわけじゃないですか。そこまで考えているのであれば、当然それと同じ理由によって、この法案によって自衛隊PKO活動に参加することを担保するために明文化をしなくちゃいけない話じゃないですか。一方においてはその担保が必要だと言い、一方においては担保する必要がない、それは法案ができてからでいいんだ、法律が通ってからでいいんだという説明は成り立ちません。  本当に明記するつもりなのかどうか、つもりがないんだったらつもりがないんだとはっきり国民の前に明らかにしてください。
  96. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 五原則の関係について申し上げますと、これは御案内のとおり、国連との関係でこのいわゆる我が国の五原則が問題を生じることではないということは既に確認済みでございます。  他方、それでは国連との間でどのような取り決めないし枠組みをつくるかという点に関しましては、これも御案内のとおり、具体的な案件に即していわゆる派遣取り決めというものをつくっていくということでございますので、したがいまして、そのような具体的な状況に即して国連側と話し合って決めていく。ただ、いずれにせよ我が国としては、政府としては、この法案が成立いたしますれば、この法案によってPKO活動派遣をする権限をいただくわけでございますから、そのような権限の範囲内で国連側と話をしていくということは当然でございます。  なお、いわゆる留保条項というような御指摘でございますけれども、この点は若干技術論になって恐縮でございますが、いわゆる留保というのは、多数国間条約の権利義務関係を、その当事国が自国との関係におきまして一部修正する、あるいは変更するというような、一方的な意思表示のことでございますので、現在ここで議論しておりますのは、国連との間の、いわば二国間の取り決めてございます。二国間というのは、相手が国連でございますからそのような表現、あるいは適当でないかもしれませんが、いわゆるバイの取り決めでございますので、いわゆる留保ということではないだろうと思います。  ただ、御指摘になりましたのは、我が国が国連との間でいかに、いかなる態様あるいは条件のもとで派遣するのか、それをどうやって明確にするのかという御指摘であろうと思いまして、先ほどのような御答弁を申し上げた次第でございます。
  97. 秋葉忠利

    秋葉委員 答えになっていないと私は思いますが。  今のお答えの中ですと、PKO法案の範囲内である。それで、私たちの理解では、この法案法律に仮になったという前提を設けて、これをきちんと施行するためにはこういった、今私が申し上げました三条件を協定の中に盛り込まなければ法律を守ることはできない、これはだれの目から見ても私は明らかだと思います。ですから、今のお答えは、確かにこういった条項を明文化して協定の中に盛り込むんだという答えだと私は理解いたします。もし明らかにそうでないのであれば、この際そうではないということを表明してください。そうではないという表明がない限り、私は、明記する、明文化して今の三条件を協定に盛り込むということだというふうに理解をいたします。  それに対して反論があれば、大臣お願いいたします。外務大臣、お願いします。
  98. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはこの法律で実施計画というものをつくることになっておりまして、それは国連のSOPなどとのすり合わせを当然やってつくるわけですから、この法案と違ったことはやらないわけでございます。それで、法案どおりやるわけですから、法案をお認めいただけばそれからは逸脱をしないということですね。だから、やはりそれをどういうふうに表現で、技術的にどういうふうに条約の上にあらわすか——条約じゃない、協定か、取り決めの上にあらわすかということは、これは技術論の話でございますから、国連局長条約局長に聞いていただきたいと存じます。
  99. 秋葉忠利

    秋葉委員 ただし、その本質的な、こういった原則、法律に盛られている原則についてはきちんと明文化をする、大事なものについては明文化をするということは御確認いただけますね。
  100. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはどういうように協定に書くかどうか、いずれにせよすり合わせをやるわけですから、向こうの。すり合わせがぴちっと一致しておれば何も書く必要も何もないんで、法律以上のことはやらぬわけですから。だから、そういう点でお認めをいただきたいと存じます。
  101. 秋葉忠利

    秋葉委員 協定というのはもちろん相手があるわけですが、協定というのは、相手の意見を聞いてこちらが相手の意見に態度を合わせることではありません。こちら側の主張があるわけでしょう。しかも、法律という形にそれをきちんとしようとしている。その原則を、国連を相手にして協定を結ぶときになぜ我が国が、これこれこういうことについては協定の中に入れてもらえませんかという主張ができないのですか。それをきちんと主張した上で、そういったことができないんであればもう一度考え直しますよというぐらいの責任を国民に対してとらなくちゃいけないんじゃないですか。そのことを私は言っているのです。そういった主張をまずされる気があるわけですか。
  102. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま大臣から御答弁がありましたとおりでございまして、我が国としては我が国の法律に則して派遣をするわけでございますから、この法律に定められたところに従って国連側と話をしていく、すり合わせをしていくということでございます。したがいまして、我が国の立場は、これはもう既に明らかにしているところもございますけれども、法律が成立すればさらに具体的にこの法律案にのっとって我が国の立場を主張していくということでございます。
  103. 秋葉忠利

    秋葉委員 全く私は、今のは答えになっていないと思います。なぜ答えになっていないのか。  私は、二国間の協定の結び方について、まずそれぞれの言い分があった上でそれのすり合わせをするということが大前提だと思います。そして、我が国の国民に対する責任というのは、例えば法律の中に決められていること、それを条約の中で実現するに当たっては明文化すること。特に、国民が非常に大きな危惧を持っている点について、あるいはその国民の代表たる我々が委員会で議論する際に問題になった重要な点については、慎重の上にも慎重を期して、絶対にそれが国際条約の中で生きてくるような形で政府は交渉を行う義務があると思います。その義務をどういうふうに果たすかという姿勢を私は今聞いているんであって、今のようなお答えでは、一体外務省は、アメリカのために——失礼しました。口が滑りました。アメリカなんてここでは言うところではありませんでしたが。国連でした。申しわけありません、どうもつい本音が出てしまいまして。  国連との交渉において、国連側に立って物を言っているのか、あるいは我々日本人の代表として、さっき国益ということを言われましたけれども、国益は金だけではありません。日本人の誇り、あるいはこういった問題に対する原理原則というのがあります。そういったことをきちんと代表して交渉を行う気があるのかどうかということを伺っているのですが、今の質問では恐らくそれに対する答えが得られないんじゃないかと思いますが、外務大臣、もう一度、しつこいようですけれども今の点について、本当に国益を代表するということは国民の声を代表することだと思います。それで、このPKO法案というのがこれほど議論を呼び、先日の委員会でも混乱が起こりました。それほど心配国民に与えている法案です。それを、協定を結ぶに当たって非常に大事な原則、この委員会でも何度も問題にされ、そして新たな問題が毎日あらわれてくるような問題について明記をしないという法はないじゃないかと私は思います。  その点についてもう一度、外務大臣は、我が国益を代表して、本当にきちんと主張をした上ですり合わせを行うという我が方の主張をやるのかどうかということを、まずここで最終的にお伺いしたいと思います。
  104. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 国益を代表して、そして憲法法律に従って派遣をするわけですから、そのことだけははっきりさせておきます。
  105. 秋葉忠利

    秋葉委員 最後に一言申し上げます。  その国益というものの定義が残念ながら非常に違っているのではないかということを私は現在感じております。  リンカーンが人民の人民による人民のための政治ということを言いましたけれども、このような重要な問題について、一番冒頭に私は委員長にお願いいたしましたけれども、十分な審議を尽くすということは、かなり複雑な面もあるこのような法律について十分な世論の理解を得て、その中でやはり賛成すべき点、反対すべき点、そういったことを、事実に基づいた議論が行われ、そして最終判断が国民の側にできる、ある程度のコンセンサスができるということが必要だと思うからです。その最終的なコンセンサスに沿って政府が政策を決定して、それを実行するというのが私は民主主義のあり方だと思いますけれども、残念ながら現在のこのPKO法案、非常に急いで、強行採決までしてこれを通そうという政府の態度は、人民の人民による人民のための政治という民主主義の基本原則から大きく逸脱しているような気がいたします。それについて私たちも一端の責任はあるというふうに思います。しかしながら、やはり今後このような法案が審議される際には、さっき申し上げましたような十分な審議、そして事実に基づく立法府としての矜持を持った審議をぜひしていただきたいと思います。  最後に総理大臣初め委員長にもそのことをお願いして、私の質問を終わります。
  106. 林義郎

    ○林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  107. 林義郎

    ○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  順次発言を許します。山田英介君。
  108. 山田英介

    ○山田委員 最初に私は、当委員会におきまして提案をされ、そしてまた一定の審議にかかりました社会党の提案に係る国際平和協力活動等に関する法律案につきまして、発言を申し上げたいと思っております。  きょうの当委員会の審議の運びというのは、社会党の方々に御答弁をいただくことのできない、そういう運営でございますが、私の趣旨といたしますところは、せっかく御提出になられました政府案に対する対抗法案という重要な位置づけでありますので、私もまじめに真剣に拝見をさせていただいた、その上で、おおよそ特に三点ほどぜひお伺いをしたいなという点がございますので、当委員会では無理でありますが、いずれ機会を見つけて、こういう考え方なんだということをお示しいただければ大変参考になり、ありがたいことだ、こういう立場から発言をするものでございます。  まず、一点目でございますが、法案の第一条関連、二条にも係ります。第一条の「目的」というところで、「国際連合が行う決議に基づいて行われる国際連合平和維持活動(武力による威嚇又は武力の行使を伴う活動を除く。)」こういう規定になっております。したがいまして、PKOそのものである。括弧書きで、武力による威嚇または武力の行使を伴う活動を除いている。  そうなりますと、PKF本体は、これは参加をしない、できないというお立場だと思っております。それから、停戦監視団の本体も、これは参加しない、できないというお立場でまとめられていると理解をいたしております。ただしかし、このPKFそれから停戦監視団のロジスティック、すなわち後方支援活動は、この一条の「目的」を見る限りはこれはできるというふうに読めるわけでございます。  そうなりますと、二条の「基本原則」のところに、この活動をするに当たっての基本原則が三つ書かれておるわけです。関係国の受け入れの同意、内政不干渉、紛争に対し中立的な立場を維持する、この三点のみでございまして、停戦の合意があるということを前提としていない、それが書かれていないわけでございます。規定がないわけですね。  そうなりますと、私が疑問に思います点でございますが、そういう停戦の合意ということを前提に置かずに、規定をせずに、紛争地域にそれではこの協力隊というものを出させるんですか、出かけさせるのか、それは果たして危険ではないんですか、こういう疑問を私は率直に持つわけでございます。  しかも、仮に紛争が武力紛争として顕在化をしたとき、あるいはまた停戦の合意があるというのは大前提だとしておかなかったともしすれば、その当然と思われておる停戦の合意というのが崩れた場合に、この社会党の対抗法案で言う「国際平和協力隊」というのは一体どうするのか。撤収の規定がない、中断の規定がない。このところをぜひお聞かせをいただきたい。いずれかの機会にということになりますが、どうなのかという点が一つでございます。  それから、今の点に関して言えば、「紛争に対し中立的な立場を維持すること。」という条文が入っているわけでございますから、紛争というものは十分念頭に置かれている。紛争も武力紛争や武力を伴わない紛争、いろいろなレベルがあるんだろうとは思いますが、いずれにしても「紛争」という言葉がここで使われておるということも踏まえて、停戦の合意について「基本原則」でうたわれておらない点、それから万が一そのような、レアケースだと我々も思いますけれども、そういう不穏な状態になったときに我が国の協力隊は撤収できるのかできないのかということが、全く規定がないですから不明確です。非常にそれは危険なことではないのか。また、言葉はいかがかと思いますが、無責任なことにはなりませんかということを第一点指摘をしたいと思います。  それから二点目、三条の「定義」のところでございますが、この「定義」を見ますと、「国際の平和及び安全の維持のための活動」ということで具体的にイからルまで挙げられておるわけでございます。実際問題として、このイからルまでの活動というのはPKO、非軍事のPKO、それから国際的な人道的な立場からの救援活動に係る活動内容でございまして、私がいずれお答えをいただければと思います二点目は、こういう活動が現実に法案の中に挙げられておりますけれども、この実施の可能性が果たしてこの法案全体のフレームワークからあるいは中身から見て担保されているのか、非常にこの点があいまいである、不明である、また非常に心配である。  特に、それは人材をどう確保するのか、どう確保できるのか、あるいはまた、これらの活動を実施するに当たって必要な資材、器材、資器材というものをどのように調達をし、どのような形でこれを使うのかという点がこの法律案を見る限りにおきましては具体的に明らかにされていない、これが二点目であります。  具体的にいま少し申し上げますと、ハのところに「医療活動(防疫活動を含む。)」この「医療活動」というのは、まさに一つにはPKOの関連で国連から医療活動を要請される場合があります。それから、PKOとは別に立てられておられます人道的な国際的援助活動、この分野でも国連の要請ということがあった場合に対応する、こういう立て方になっておるわけでございますから、そうすると、一名、二名、三名のお医者さんが医療かばんを持って一週間とか三週間とか行って帰ってくるという話ではないわけです。最低でも、そのPKOが仮に国連の要請を受けて出ていくということになれば、それはその活動を展開する地域の気象条件とかいろいろなそういう条件によりまして、三カ月とか六カ月とか、あるいは八カ月とか一年とか、そういうサイクルでもってPKOというのは実施をされる。したがいまして、医療かばんを持って何人かが短期間出かけて帰ってくる、そういうようなものではない。そういう法律の立て方になっておる。  そうなると、現実問題として考えて、開業医の皆さん、そういうお医者さんが、じゃ半年、一年という形で病院、医院を閉めて行くことができるのか、基本的にきつい、厳しいだろうと思います。あるいはまた、国公立大学の病院等のお医者さんあるいは看護婦さんということで編成しようとしても、これはなかなか病院のローテーションの関係がある。看護婦さんはもう看護婦さん不足ということで深刻な状況にある。  しかも、PKO関連の、あるいはこの法案で示されておる国際的な、人道的な救援活動ということになると、これは要するに期間が半年とか一年とかのローテーションのほかに、医療チームとして、例えばそれは百五十人とか二百人とか、そういう規模の話になるわけでございまして、その点からいきまして。先ほど二点目に申し上げました、特に人材の確保等この法案で規定されておる活動の実効性といいますか、実施の可能性を担保するものになっているかどうか、ぜひまたこれもお聞かせをいただきたい、このように思います。  それから、いま一つは、ハの次がニで、「被災者の捜索若しくは救出又は帰還の援助」、この「帰還の援助」は輸送をどのようにするのか、難民の輸送にしても、本国への送還にしても、当然輸送の手段がこれは必要になります。  以下、ホにつきましても、食糧、衣料、医薬品等の生活関連物資の配布といいましても、それはやはりどこからどこまでという形の輸送という、船舶によるあるいは航空機によるというこの手段が必然的に必要になるのであろう。あるいはまた、被災者収容のための施設とか、それから紛争によって被害を受けた施設あるいは生活上必要なものの整備、復旧のための措置とか、紛争によって被害を受けた自然環境復旧のための措置とか、これらはいずれも民生援助と言うことができると思うのですけれども、これらすべてひっくるめまして、そういう活動をしていこうということは私も大賛成でありますが、じゃ実際に食器材、物資をどうやって輸送するのかという点がこの法案を見る限りは明確ではありませんので、その辺もひとつ御説明をいずれいただけるものと思っているわけでございます。  きょう答弁席に出ていただけるということであれば今答弁が出るわけでございますが、きょうはそういう趣旨の委員会運営ではないようでございますので。  三点目でございます。五条関係、これらの平和協力活動の実施計画を定めるわけでありますが、その実施計画を定めたときに国会の承認を受けなければならない、これは義務づけられておるわけでございます。実は、八九年の十一月、ナミビアの独立支援のためにPKO派遣されまして、我が国は、二十数名と承知しておりますが、選挙監視団に参加をした実績がございます。それから、ニカラグアの選挙監視団に六名、これも当然選挙監視団ですからPKO活動に参加をいたしておるわけでございます。今後もこのような数大規模のPKOの参加という、こういう国連からの要請はしばしば多く行われる可能性がある。  そうなってまいりますと、これらをすべてその都度国会の承認に係らしめるということになるわけでありまして、そうなった場合に行政権への過度な介入ということになりはしないか、国益あるいは国民の利益を損なうことになるおそれが出てくるんではないか、こういうふうに私は率直に感じておりますので、あした以降できるだけ早い機会にお示しをいただけれはこれは大変結構なことでありまして、私は、この三点につきまして御指摘を申し上げておきますので、ぜひひとつよろしくまたお答えをいただきたい、このように思う次第でございます。  以上、しっかりと社会党提案に係る対抗法案を読ませていただき、勉強させていただきました。その中で特段に三点ほど疑問点を感じましたので、指摘をさせていただいた次第でございます。  それでは、次の発言に移りたいと思います。  まず、この特別委員会における審議がずっとなされ、積み重ねられてきたわけでございますが、いろいろな立場からいろいろな御意見、また質問、審議がなされてきた。それをずっと総括的に振り返ってみて、何点かやはり際立って審議が集中した、争点と言っていいのでしょうか、そういう箇所が、部分が浮き彫りにされてきております。  私は、まず前半、総論的に私の発言を申し上げ、また総理初め政府側の御答弁をいただき、後半部分におきまして、この法案の中身に即したといいますか各論的な部分で私の意見を申し上げ、また政府側から御答弁いただきたい、こんなふうに考えております。  まず、議論が集中した根っこのところには、憲法九条あるいは憲法の前文に照らして我が国がPKOに参加をするということの正当性あるいは妥当性ありやなしやというところが一つあるわけでございます。と同時に、従来のこの憲法九条を中心にして構成されてきたといいますか出てまいりました我が国の平和諸原則、このことを含めて、従来の政府の憲法解釈とこの我が国のPKO参加についての整合性というものが大きな根っこの部分の議論の焦点の一つであっただろう。  私は、憲法九条は、もう申し上げるまでもありませんけれども、国際紛争解決の手段としては国権の発動たる戦争、武力による威嚇、武力の行使を永久に放棄しているわけでございます。ですから、このこととPKOに我が国が参加するということがどういう関係になるのかということが一番根っこ、ベースにある部分であろう、こう思います。  そうしますと、私どもが申し上げて法案に反映をされておる参加五原則の例えば第一項目目、停戦の合意がPKOが出ていくための大前提であるというこの一点から考えてみても、憲法九条で禁止をしておるのは、まず国際紛争解決の手段としてという、ここが一つあります。PKO、PKFにしても同じでございますが、これは停戦の合意があって、大前提があって、ということは停戦の合意があるということによって国際紛争というものが一応終結をしている、終了している、その後に出かけていくのがPKOの本質でありますから、この部分における要するに憲法違反だという議論にはならないわけでございます。  もともと国際紛争を解決するために出ていくものではない、破壊された平和というものを回復をする、すなわち停戦が合意された、その回復された平和というものをどうやって維持をしていくか、国連の権威と説得で、あるいは国連PKOの存在によって維持をしていこう、再燃することがないようにという趣旨からいけば、九条の国際紛争解決の手段としてというところには、これは抵触をすることはないんだ。  それから、「国権の発動たる戦争」、国と国のいわゆる紛争の一環としての武力による戦闘行為、こういうものが戦争だとすれば、それはPKOの、PKFのそのものとは全く違う次元の話であります。  それから、禁止をされておる「武力による威嚇」ということに当たるかどうかと言えば、もう言うまでもありません。PKO、PKFというのは、武力を持って、そして派遣された国々、地域の人々を威嚇をするために行くわけではありません。これは回復された平和を維持するために行く、そういう任務を帯びた、それがPKOの本質であるということからして、これも当たりません。じゃ、「武力の行使」かということになれば、これは要するに自己の生命を防御するために武器を持っていく、その防御のために必要最小限で武器を使用する、正当防衛とか緊急避難的に。ということは、そういう意味の武器使用がイコール武力行使でないことは、何人もこれは認められるところでございます。  そういうふうに私は考えていきましたときに、いろいろな角度がまだあります、各論のところでも触れたいと思いますが、基本的に根っこの大もとの部分では、PKOへ我が国が参加するということと憲法九条とはこれはぶつかるものではないのだ、憲法九条に違反するものではないというところはまず押さえておかなければならないと私は思うわけであります。  それから、いわゆる従来の政府の憲法解釈との整合性が果たしてありやなしやということにつきましては、極めて大事な問題でありますから、私は先国会の総括質疑のときに、工藤法制局長官ともその点は時間をかけてやりとりをさせていただきました。それを今改めて確認をしてみたいと思うのですけれども、私どもがなぜそこの憲法解釈との整合性を重大視をしたかといいますと、実は昨年の、廃案になりました平和協力法案のときの審議のやりとり、我が党の市川書記長と工藤法制局長官、当時の海部総理とのやりとりが残っております。  それは、いわゆる五十五年の鈴木内閣における答弁書、これが基本的にまず基準になる文書であって、政府の解釈あるいは統一見解であって、例えばこういう話がなされたわけですね。  仮に集団的自衛権というものを認めたいという勢力があって、そして集団的自衛権を認めようと決意をしたときには、それは憲法そのものを改正しなければ、憲法改正という重い手続を経なければ、そのことを確定させることはできないのだ、そういう憲法解釈というのは極めて重要だよ、こういう一つ確認がありまして、そして、いわゆる国連軍がその任務・目的に武力行使などを伴う場合であれば我が国の自衛隊は参加できないという、こういう五十五年答弁書の一つの内容があって、したがって、我が国の自衛隊が武力行使をしないのだと決めて参加しようとしても、専らいわゆる国連軍の任務・性格、武力行使を伴うという性格であれば、それはできないのだというところが実は確認をされておったわけでありますから、特段に、今回のPKO、PKFへの自衛隊参加とその辺の憲法解釈との整合性はどうなのか、私どもも勉強をさせていただいたわけでございます。  それで、いろいろと先般、長官と議論をしたわけでありますが、要するに前提を二つ設けた。要するに五十五年答弁書に、今改めて振り返ってみても明らかでございますが、一般的にいってという形でこの記述がなされている、答弁書は。ですから、それが個々具体的なケースにまで及んだ答弁書でないことは、その構成から見ても明らかなわけでありますけれども、せっかく昨年精緻な、重厚な議論がなされたところでありますので、私は重要部分だと認識をいたしたわけでございます。  二つの前提条件というのは、私の理解では、まずこの法案の中に停戦の合意がある、そして受け入れの同意がある、それは中立性を保っていなければならないという、いわゆる参加三原則がまず規定をされ、そしてさらにその三原則のいずれか一つでも崩れたら、それはまさに我が国の協力隊あるいは維持隊は、PKFは任務を、業務を中断をする、そしてすぐに回復をしないという、そういう状況のときには派遣の終了にまで至るのだ、この撤収の規定が置かれた。  それから、武器の使用というのはセルフディフェンス、自己の生命、身体防御のために限定をされた。この撤収とセルフディフェンスの武器使用というのが法律に書かれた。この法律に書かれたということは、昨年の議論と重ね合わせてみれば、我が国は絶対に武力行使をやらないんだと、このように幾ら決めたとしても、それは任務・目的が武力行使を伴うというような、いわゆる国連軍であればそれでもだめなんだということになるわけですから、そこでもう一つの条件、三原則が法制化された。停戦の合意、受け入れ同意、申立てあるということが前提として置かれているがゆえに、それは従来の政府の憲法解釈とは矛盾をしないのだ、整合性があるのだ、こういうことで長官や総理や政府側の考え方を確認をさしていただいたわけでございます。  その点につきまして、総理、今るる私申し上げましたけれども、御見解がございましたら、ひとつお示しをいただきたい。
  109. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昨年の御議論の経緯を私は存じませんけれども、ただいまおっしゃいましたことは大変に筋道の通ったお話と伺っております。
  110. 山田英介

    ○山田委員 それから、これもぜひお考えをお示しをいただきたいのでございますが、なぜ今PKO法案なのかというお声があることは事実であります。今いきなりPKO問題が議論されたわけでは実はない。今いきなり出てきたわけではない。厳密に言えば昨年の十一月、自民、公明、民社の三党合意と言われるこの時点で既にペーパーになり、PKOに参加をしたらどうかという議論がなされてきているということ、先月、今月出てきた問題ではないというふうに、いろいろな言い方がありますが、私はそのように申し上げてみたいと思います。  それから、なぜ、ではそこに自衛隊を参加させることにしたのか。いろいろを言い方が私どもとしてはございますけれども、要するに申し上げれば実効性を確保するためである。せっかくPKO協力しようというそういう組織をつくっても、それが国際的に通用しないというような組織であれば、これはつくる意味がないわけですから、実効性の問題だ、私はこのようにくくっております。  それから、なぜそんなに急ぐのか、こういう御意見もある。これについては、要するに、例えばこの法案が成立をしたと仮定をいたしましても、すぐに、じゃPKFに出られるのですか、停戦監視団に出られるのですかと言えば、そんなものじゃないわけです。それはいわゆる旧軍のような、いわゆる一般的な概念における軍隊というようなものと全くその性格を異にするわけでありますから、一定の訓練の期間が必要です。いろいろな意味のトレーニングが必要であります。これはSOP、PKOガイドラインとか訓練マニュアルとかモデル協定案とか、いろいろなそういう国連PKO関連の重要文書を見ても指摘がされておりますように、訓練が非常に大事なんだ、こういうことでありますから、私は国会の承認が得られるのであれば早目に、承認というか議決が得られるのであれば早目にそのシステムというものは確立をしておく必要がある。  と同時に、その確立されたシステムの中で、PKFにしても停戦監視団にしても、その他の人道分野における援助活動にしても十分なトレーニングを積む、あるいはなす、そういう期間というものが必要なんだということからすれば、なぜそんなに急ぐんですかということの一つの有力な回答として御理解をいただける、私はこのように思っております。  以上の点、総理、いかがお考えでございましょうか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 その点も私は御指摘のとおりだと考えています。
  112. 山田英介

    ○山田委員 それから、PKOの本質に対する、何といいましょうか、無理解といいますかあるいは誤解といいますか、私はそういう点が気になるのでございます。  私は公聴会、こちらで行いました公聴会で公述に対する質問をさせていただきましたが、各公述人の方々、いろいろなお立場、いろいろな御意見がありました。そういう中においても、どうもPKF、いわゆる軍事、非軍事というのは非常に厳密な意味で立て分けられるのかという御意見があり、またそういう中でも軍事面という側面ばかりが強調をされた嫌いはなかったかというような御意見も公述人からございましたように、私はまさにPKOの本質というのは、それはいわゆるPKF、停戦監視団もそれはあります、と同時に国際的な、人道的な救援活動、救助活動というものもあるわけです。  戦争の、あるいは紛争の惨禍によって路頭に迷い、肉親を失い、苦しみ、悩み抜いている、苦しんでいる、そういう世界のその地域の人々のために温かい救助、救援の手を差し伸べるという、そういう極めて人道的な、大事な側面も含まれているということ。それから、そういう紛争とか戦争とかという惨禍の中で、要するに所を追われ、国を追われ、自分の家を追われて、山伝いに、谷伝いに、ジャングルの中を国境へ向けて逃げ延びて、そうして他国の地で収容キャンプなどというところに入って不如意な生活をしているいわゆる難民の方々も非常にたくさんおられるわけであります。  私どもが賛成をいたしておりますこのPKO法案というのは、協力法案というのは、まさにPKFという中立、非暴力、非強制のそういう分野もこれあり、また他方においては、今申し上げました世界の苦しんでいる人々の救援、あるいは難民という形で本当に悲しみに暮れている人たちに援助の手を差し伸べるという、この二つの側面が合わさっているのだということを私はこの際、恐らくこの特別委員会最後の私の発言の機会になると思いますので、総括的にしっかりと認識を確認をしておきたい、こう思うわけでございます。  渡辺外務大臣、副総理、今の私のPKFという、非暴力、中立の活動もある、人道的な活動もある、だから余りPKO、PKFというのはおっかないものだからだめなんだというような、そういう雰囲気というのはよくないと私は思うのですけれども、渡辺大臣の御所見を、手短で結構でありますので、お聞かせをいただきたい。
  113. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 全く御説のとおりでございまして、何もつけ加えることはありません。本当にそういうように説明国民にしてもらえばみんな納得するだろうと、感銘を受けて聞いてまいりました。
  114. 山田英介

    ○山田委員 もう一点、これも御所見を伺いたいと思っておりますが、五原則、参加五原則というのは国際的な普遍的な通念であって、そんなものを法案の中に盛り込んだからそれが何だというのですかというお声もある。しかし、私は、これはそういうことじゃないと思うのですね。  先日、林委員長の御配慮、関係者の御配慮によりまして、政府部外秘とされておりますSOP、すなわちPKOガイドラインあるいは訓練マニュアル、この原本を閲覧調査させていただく機会をいただきまして、私ども、私、渡部委員また東委員と三名で五時間半にわたりまして閲覧調査をさせていただきました。国連PKO関連で最重要文書と言われてきたものでございます。実は、その中にこういう趣旨の記述がございます。  「各PKOごとにSOP、PKOガイドラインができる。これは、その任務、概念、状況などを反映したものになる。」当然のことです。要するに、いろいろな条件というものがみんな違うんだ、PKOごとに。「PKOの多様性にかんがみれば、普遍的に唯一のSOPをつくって、PKOガイドラインをつくって、すべてのPKOに適用する、またはその中に閉じ込めようとすることは望ましくないし、また可能なことではない」、こうありました。その前後もしっかり読んでみましたけれども、切り文ではありません、こういう全体的な哲学で貫かれておったということからいたしますと。これがまず第一点。  それから、具体的な事例で言いませんと、ペーパーの上だけで議論しても、これはかみ合わないのです。具体的な事例を一つ一つ検証していかなければならないのです。ですから、現場に行って調査団を出して、PKOの実態を調べてくるということも私どもやってまいりました。それは大事なことなのです。  過去の例でいきますと、例えばコンゴ国連軍の場合で見てみましても、最初は確かにコンゴ中央政府の受け入れの同意があった、停戦も保たれておった、そういうところへ出ていった。しかし、後半部分では停戦の合意が崩れた、にもかかわらずコンゴ国連軍はそこに駐留し続けた。そしてまた、カタンガ州の独立運動というものがやがて発生をしてくる。そして、国連が決議によってカタンガ州と交戦をする任務・目的をこのコンゴ国連軍に与えて現実に交戦をする。それも同じPKO、PKFという中に国連は位置づけをしておるわけであります。そうすると、参加五原則の停戦の合意が破れたにもかかわらず撤収してないじゃないか、そういう例があった、現実に。  それから、厳密に中立性という観点から見ても、三原則の三つ目、これはコンゴの中央政府の立場に立ってカタンガ州という一つの団体というか組織と交戦をするという形で、これは中立ではない。あるいはまた、カタンガのPKF、PKO受け入れの同意があったかと言えば、これはない、こういうコンゴ国連軍ということが一つ過去の教訓としてあるわけですね。  ですから、参加五原則あるいは三原則というものを法律にしっかりと決めておかなければ、国連PKOと位置づけたんだから、そこに、じゃ出ていきましょうと言えば行けるということになりかねない。ですから、三原則、五原則の法制化というのは物すごい重い歯どめとしての意味があるという、こう一生懸命言っているのですが、なかなか理解してくださらない方は理解されないということで、それは立場の違いもありましょうから、それが一つ。  それからもう一つ申し上げますと、UNIKOM、イラク・クウェート監視団、これで見てまいりますと、それは、基本的にはイラクの同意も取りつけてこの監視団が出ていっている。しかし、もし将来イラクがこの監視団を受け入れることの同意を翻した場合でもこの監視団はそこにとどまり活動を続ける、こうなっているわけです。そうなると、それは停戦監視団という形、あるいはPKFではない監視団という形でありますけれども、同意の原則が崩れてもそこにい続ける、そういう性格を持つものであります。そうすると、それも今と同じようなことであります。三原則、五原則の法制化、我が国としてはこういう条件のもとでPKO、PKFに参加しますよ、こういう条件がなければ参加しませんよということで明確な、そこで立て分けができるということの意味は決して軽々なものではない。  それからいま一つ言えば、キプロスのPKF、キプロスの例を見ても、これは最初はキプロス政府の受け入れ同意があった。それで出ていった。キプロスに利害関係を持つベルギーとかトルコとかあるいはまたイギリスとか、そういう関係国の同意もとって出たというけれども、ギリシャ系の住民あるいはトルコ系の住民というものが対峙しまして、私は国連の文書、他の箇所で読んでおりますけれども、内政にかかわるような、そういう国連が何らかの形で介入するような場合には、PKO、PKFの場合にはできるだけその国内における相対立する勢力の同意をとることが望ましい、そういう観点からすれば、我が国が、じゃ今後将来キプロス的なものが出てこないとは限らない、そういうときにおいて、三原則、五原則の中の中立性の確保というこの一項目が法制化されているということにおいて非常に注意深く参加の是非を判断をすることになるであろう。  挙げれば切りがありません。したがいまして、この参加五原則、三原則等の法制化というものは極めて大きな歯どめとしての意味合いを持つんだということを改めて指摘をさしていただきたいと思います。  と同時に、国会への政府の報告義務というのは、実施計画が策定された後、要するに遅滞なく国会に報告する、それから途中で期間の変更があったときも国会に報告する、実施計画の中身の変更があったときも国会に報告する、活動が終了したときも報告する。加えて先日の自民党と公明党の修正案の中で、泥沼化を避けるために、PKO派遣が実際問題二十七年とか十四年とか十七年、そんなに長く続いていて、しかもそこに本当の意味の平和がまだ訪れてこない、維持はされているけれども訪れてこない、本当の意味の平和が確立されていない、じゃその地域の、国の人々が平和を本当に確立していこうという意欲がまだあるのか、そういう意欲すら喪失してしまっているのか、そして何となくもたれかかって自助努力というものがなくなってきてはいないか、そういういわゆる派遣の泥沼化というものをどこかでやはりチェックをしなきゃならぬだろうという議論を私どももその後いたしました。  それは、公述人の公述もこれあり、これは泥沼化を避けるための、期間の継続をするための是非についての国会の事前のチェックを受けよう、承認を受けよう、継続のための承認を受けたらどうかということを加えたことによって、より一層シビリアンコントロールあるいは歯どめとしての機能を強化させることができるのである、私はこのように理解をいたしておりますが、総理、御所見を伺いたいと思います。
  115. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆる三原則に当たる部分が本来国連側の当然の前提ではないかということはそうであるかもしれませんけれども、現実にはそもそも戦争をしておった当事者たちでありますので、状況というものは変化することがあり得る、それはコンゴの事態においてそうであったし、あるいは、今現実にはUNIKOMではそういうことは起こっておりませんが、しかし、イラクの同意というものはああいう状況のもとに得られたものでございますから、これはいつ翻されるかもしれないといったような幾つかの例をお挙げになりました。サイプラスの例もお挙げになりました。まさにそういうことでございますから、我が国の側の法律にこれをきちんと書いておくことは、その場合に我々がいかに行動すべきかということの指針あるいは規範となるわけでありまして、これは極めて重要なことであると存じます。  最後におっしゃいました担保措置についても、私はおっしゃるとおりの意味合いであると考えております。
  116. 山田英介

    ○山田委員 時間が経過をいたしてきておりますので、各論と私が考えている部分について発言をしたいと思います。  国連局長あるいは条約局長、野村審議官で結構でございますが、武器使用の点が憲法とのかかわりで当委員会で繰り返し議論となってきたわけであります。基本的にまずお尋ねしたいのですけれども、国連がマニュアル、ガイドライン等で示しております武器使用のところではAタイプ、Bタイプというものがあると私は承知をいたしております。Aタイプというのは、自己の生命防御のためのやむを得ない武器使用。Bタイプというのは、PKO、PKFの任務を実力をもって妨害しようとする企てに対する、要するにその排除のための武器使用。このA、Bタイプ二つがあると理解をしておりますけれども、当然我が国の今審議をしております法案では、Aタイプの、みずからの生命、身体の防御のために、正当防衛的にあるいは緊急避難的な場合にのみ必要最小限の武器の使用、こう決めてあるわけでありますが、そのことと国連がAタイプ、Bタイプと武器使用について定めていることとの関係について、簡潔にもう一回ちょっと整理してお答えいただけますか。簡単でいいですよ、整理は。
  117. 丹波實

    ○丹波政府委員 簡単に御説明申し上げます。  いわゆるAタイプ、Bタイプの問題につきましては、非常に重要なことは、まず、そういう状況のときに携行していった武器を使えという意味で、国連文書あるいは慣行がそうなっているわけではございませんで、そういうときに使ってもよろしい、それが自衛的な使い方であるという意味で言っておるわけでございます。しかし、日本の場合にはいわゆるBタイプ使用につきましては憲法上論議があり得るということで、念には念を入れるという意味でBタイプ的な武器使用はしないという原則を掲げ、それについて国連としても問題がないということでございましたので、法案の中身にそういう反映のさせ方をしておるということでございます。
  118. 山田英介

    ○山田委員 私は、先月の二十五日、先ほど申し上げましたPKOガイドライン、訓練マニュアル、その原本を五時間半閲覧調査させていただきまして、私どもの調査では、この両文書ともに、そのAタイプ、Bタイプの武器使用があるけれども、それをいわゆるマスト・ユーズ、使わなければならない、Aタイプ、Bタイプ武器を使用しなければならない、マスト・ユーズという、そういう記述あるいはそれを意味するような記述はなかったと私どもは判断をいたしました。したがいまして、それはメイ・ユーズである、使ってもいい、そういう表現はある。使ってもいい。このように私どもは調査結果として確認をしておりますが、基本的にその認識に間違いはありませんですね。確認を求めます。
  119. 丹波實

    ○丹波政府委員 その点は私の先ほどの説明の中にも含めたつもりでございますが、そういう文書によりますと、メイ・ビー・ユーズドあるいはキャン・ビー・ユーズドということで、まさにそういう場合に使ってよろしいということでございまして、そういう場合に使わなければならないということとは明確に区別された記述になっております。
  120. 山田英介

    ○山田委員 この点極めて重要でありまして、国連のマニュアルとかガイドラインで示されているのは、もっと使えとかどんどん使っていいという、そういう思想、哲学じゃないのです。どんな場合であっても、どんなケースであってもAタイプ、Bタイプ以外は絶対に武器使用はできませんよ、やってはだめですよ、こういう哲学に貫かれておった、この重要文書は。したがいまして、後ほどまた指揮権のところで触れますけれども、いわゆるFC、国連の現地指揮官が日本協力隊に対しまして、維持隊に対しまして、Bタイプの武器使用をしなさい、任務を実力で妨害してくるその企てにBタイプの武器使用をしなさい、撃てとか発砲しろとか、そんなような命令は下すことはないということになっているわけであります。ここが極めて重要なところでありまして、それは、この両重要文書の中の随所にその考え方、その記述というものは出てくるわけであります。  それと、もう一つ、せっかく閲覧調査させていただいたわけですから、この際申し上げておきたいと思うのですけれども、要するにこういうことなんですよね。  一方の訓練マニュアルという、こういう文書、原本を読みました。武器使用について書いてありました。「ユース・オブ・フォース」、こういう記載がありました。この「ユース・オブ・フォース」という訳し方ですけれども、武力行使とも訳せましょう、武器の使用とも訳せましょう、実力の行使とも訳せましょう、いろんな訳し方が私は可能であると思います。しかし、この切り文ではなくて、「ユース・オブ・フォース」と書いてあったからどうのこうのという議論では余りにもということになりますので、その前後をしっかり調査しました、読みました。こういうことなんです。「ユース・オブ・フォース」をどのように訳そうと、それが重要なのではなくて、ユース・オブ・フォースをいかにしてやらないかという、そういう考え方にこの訓練マニュアルというのは全編貫かれている、こう言っても言い過ぎではない。  具体的に申し上げますと、PKOにおける武器使用に関する訓練は極めて重要な要素である。そして、AからDまでありまして、制圧的なものではないんだ、ユース・オブ・フォースというのは制圧的なものではないんだ、これはこのPKO、PKFの重要基礎部分だ、こう書いてあります。B、多くの派遣国の要員は自動的に撃たれたら撃ち返すということにならされておる、だから訓練が大事なんだ、撃たれても撃ち返さないという訓練が大事なんだと書いてある、いいですか。C、治安維持、これに出動した経験のある要員であっても、そういう経験があっても、それは人々、民衆を、何といいますか治安出動ですから、一定の銃器等を使用して、あるいはそれを用いて、そしてこれを鎮圧するとか抑え込むとかということですから、要するに治安出動、維持の経験のある要員であっても、PKOは全く本質が違うから、だから訓練の必要があるんだ、大事なんだ。D、仮にPKO、PKFの以前に経験があったとしても、PKOとかPKFというのは年々歳々変化をする、生々発展のそういうものである。冒頭に引きました同じくこの重要文書の中にある、普遍的な一つのものを決めて、その中にPKO、PKFを全部押し込めてしまうなんということは実際的にできないことだし、それはそういうことではないんだというこの文書を冒頭に引用しましたけれども、それと同じ思想です、これは。ですから、PKO、PKFの経験のある要員であってもやはり訓練をして、そうしていかにしてユース・オブ・フォースをさせないようにするかというところが、実はこの「ユース・オブ・フォース」という章の全編を流れる哲学であるということを私どもは確認をいたしました。  私だけしゃべっていてもしょうがないですから、これは条約局長でも国連局長でも、確認をしてください。
  121. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生が引用されたいわゆる国連文書の中にも、平和維持の全精神は、平和維持は軍事力を使用することなく達成されることであるというふうに記載されておりまして、まさにこのPKO、PKF全体に流れる精神というのは、いかに武器を使用しないか、使用しないで任務を達成するかということにあるという点では、先生のおっしゃるとおりだと私たち考えてございます。
  122. 山田英介

    ○山田委員 もう一つ、指揮権の問題がやはり当委員会でしばしば議論がされたところでございます。要するに問題は、くくってみますと、指揮権は国連にあるんだろうという、こういう指摘ですね、一つは。それはしかも全面的にあるんでしょう、こういう指摘が一方にあり、また同じところから、全然ないとすれば、国連の指揮のもとに入らないとすれば、じゃ日本の主権の中で、日本の指揮のもとでやるということになるんじゃないですかという、こういう角度の議論が非常に多かったというふうに私は理解しております。  その是非はともかくとして、私は、調査研究あるいは仲間とさっと議論をしてきて一つの考え方を持っております。それは要するに、この法案の立て方というのは両面性を持っておるんだ、指揮権というところでは両面性を持っておるんだということが基本です。これがベースです。それは今改めて、コマンドを指揮と訳すべきだ、指図と訳すのはよくないとかという議論を私はここでもう繰り返そうとは思いません。ただ、懲戒処分権を伴う指揮と懲戒処分権を伴わない指揮というのは違うに決まっているんですから、違うんですから、国内法制上の用語とはそれは違ってくるんですから。ですから、指図と政府は言葉を選ばれた。それが気に入らないんだったら、じゃどういう言葉を使えばいいんですかと逆にお伺いを申し上げたいというような気持ちです。ですから、それは置いておきます、こっちへ。  そうじゃなくて、要するに両面性があるんです、指揮については。二元的、二元化と言ってもいいと思いますが、まあ正確に言えば私は両面性があると。ですから、国連の指揮のもとに一〇〇%、先ほど申し上げましたSOPとか訓練マニュアルにそう書いてあるじゃないかと。その書いてあるじゃないかというその文章をもって、フレーズをもって一〇〇%入るべきだ、入るはずじゃないかと。もし政府が一〇〇%入ると答えたとすれば、それはBタイプの武器使用の命令を受けてやらなきゃならないでしょう、だから九条違反の憲法違反じゃないか、この角度が一つあるわけですよ。ですから、それはないんです。そういうことになってない、両面性があるんですから。一〇〇%国連の指揮のもとに、マニュアルに書いてあるから入るんだろう、入らないと答えれば気に入らない、そういうわけにはいかないんです。大体SOP、PKOガイドラインとか訓練マニュアルというのは、まさにマニュアルなんです。まさにガイドラインなんです。そこに拘束力も強制力もないんです、この文書には。それが一つ。  じゃ国連の指揮のもとに入りませんと政府が答弁する、じゃ日本の主権が全面的に及ぶ——及ぶわけはないんです。全面的じゃないんです、両面性があるんですから。日本の主権が全面的に及ぶ、こういうふうになれば、それはもはやPKOへの参加ではなくて自衛隊海外派遣、派兵そのものじゃないか、憲法違反じゃないか、こういう角度の議論でしょう、今までずっとなされてきたのは。  ですから、恐らく当委員会の審議はきょうで終わりになると私は理解をいたしておりますが、衆議院の特別委員会の議論を締めくくるその際に当たり私は質問の機会を、発言の機会をいただいたわけでありますので、もう一回静かに振り返ってみて、そうして衆議院においてはどことどことどこの点が焦点であり、どこが平行線であり、食い違っているのかということを、お互いさま冷静にこれは検証をする必要がある、私はそういう角度から申し上げておるつもりでございます。  それで、撤収と中断、これは済みません、また条約局長でしょうか。撤収と中断、できるんですね、日本独自の判断で。どうぞ、ちょっと確認をします。
  123. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先ほどから先生が述べておられる重要なPKOには諸原則がございますが、そういう原則が崩れたという前提においては中断、撤収ということができるということになってございまして、この点は派遣国と国連とのモデル協定にもそういう条項があることは御承知のとおりでございます。
  124. 山田英介

    ○山田委員 要するに、できるんだという確認をいただきました。私もできると思っております。  具体的に国連PKO関連重要文書、そのガイドライン、訓練マニュアルのほかに、ここにモデル協定案というのがあるんです。これは国連PKO、PKFに参加をしようとする国との間でその参加の条件などいろいろと細々と取り決める、まさにモデル協定案と言われるものでございます。重要な文書であります。その二十六条、こう書いてあるのです。「撤収の通告」という項目ですね。「〔参加国〕政府は、国際連合事務総長に対して適切な事前通告を行うことなく、〔国際連合平和維持活動〕から自国の人員を撤収してはならない。」こういう規定が置かれております。ですからこれは、適切な事前通告を行えば参加国政府は自国の人員を撤収してよい、撤収することができるという、こういう規定がモデル協定案の中に明確に記されておる。そして、先日の閲覧調査のSOPや訓練マニュアルにも全く同趣旨の規定がいずれも置かれておるということから見て明らかでございます。  それからいま一つ、我が国政府が提案をされたこの法案の中には、要するに中断と撤収、こういう両方があります。撤収のところは派遣業務の終了、要するに本国へ帰ってくる。中断ということは、いわゆる国連のこの文書の中の「撤収」の中に含まれた概念なんですね、調べてみますと。ですから、派遣先国地域において、いわゆる、ここはゲリラとかなにかに、レアケースですよ、極めてまれなケースだけれども、何か攻撃を受けた。その場合に、危険を避けるために場所を移す、退避する、これも撤収の中に入っています。この法案で言う「中断」に当たる概念です、それもこの撤収の中に入った。文章を読めばわかります、これは。  いま一つは、本法案三条の中に括弧書きのところがあるのです。要するに、武力紛争が顕在化していない、そういうところにもPKOは行かれるようになっているではないか、こういう御心配あるいはそういう御指摘というものが当委員会でまたしばしばなされたところでございます。これについて、どうぞ簡潔にもう一回整理する意味でお答えをいただければと思います。
  125. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました三条一項の「武力紛争が発生していない場合においては、」というところの意味でございますけれども、PKOの定義そのもの、これは四十三年間の長い歴史の中で、コンゴ型国連軍のような明らかに今まで行われていたような慣行から照らしまして例外的な場合を除きまして、できる限り網羅的に定義した次第でございまして、したがいまして、国連レバノン監視団、UNOGILと言われております、その事例をこの定義の中に含めるための規定でございます。  確かに、委員会の審議の中で予防的なPKOではないかというような御指摘もございました。私ども、武力衝突が発生しようとしているときに、それを実力でもって予防するためのPKOというのが設立されるということは、PKOの慣行からいたしましてあり得ないというふうに考えております。  他方、先ほど御指摘しましたUNOGILのように、ともかく監視団を派遣いたしまして、監視を通じて紛争の発生を未然に防ぐとの効果を期待してのPKOが設立されるということは、UNOGILの実例にもかんがみ、あり得ると考えられるわけでございまして、そのような場合でありましても、それは安保理の決議により、一種の国際社会の意思を反映した形で設立されるものであるというように思います。事務総長より参加要請があれば、この法案の規定に従いまして検討することになるわけでございますけれども、現地等の状況等、いろいろな事情を慎重に考慮して判断さるべきものである、そういうふうに考えております。
  126. 山田英介

    ○山田委員 そういうことなんですけれどもね、ちょっとわかりにくいものですから、できれば、具体的な事例が、こういう場合が実はあったのでここへ括弧書きで、これも対応できるように入れておいたんだという説明の方がわかりやすいのですよ。  私が調査した限りでは、いわゆる停戦の合意がない、それは武力紛争が顕在化してないのですから停戦合意はあるわけがない、それは実態的に同じだとくくることがまずできるのです。それで、じゃ実際に武力紛争としてそれが顕在化されてないときに監視団が出たとおっしゃる。それはどういうときに出たかといいますと、レバノンでしたか、レバノンにシリアの武器商人が国境を越えて武器を供給をしていたんです。武力紛争は顕在化してないのですよ。レバノンにシリア側から武器商人が国境を越えて武器を供給しておった。これは将来に禍根を残しちゃいけないよということで、いろいろな国連の安保理の検討、決議で、それじゃ監視団を国境地帯に置こうじゃないかという事例が一件あったわけですよ。ですからそれは、もしシリアという国が要するに国として武器を供給していたというようなことになりますと、これはまた大きな次元の異なる話になってくる。武器商人が国境を越えて供給していた、それを監視するため、させないためにという、そういう形で実は出たんだ。これが実は括弧書きのところでありまして、ぜひわかりやすくひとつ、参議院の方でいずれ審議なさるわけですから、わかりやすく議論、御答弁していただければ、こんなふうに思います。  それからもう一つ、私ちょっと一つ確認したいのですが、昨年の八月二日、イラクがクウェートを電撃的に侵攻しました。その以前の段階で、クウェート国内で、何か武力紛争とかあるいはその他の種類の紛争というのがクウェート国内の問題としてあったかどうか。これ、ちょっと御報告くださいますか。あったのか、ないのか。要するに武力紛争みたいなのがあったのかどうかです。
  127. 丹波實

    ○丹波政府委員 私の記憶でございますけれども、当時そのような紛争は存在していなかったというふうに認識いたしております。
  128. 山田英介

    ○山田委員 そうすると、これはよく自由法曹団の方々がおっしゃるのですが、じゃクウェートがイラクの攻撃を恐れて、八月二日以前にですよ、仮にそのときにPKO、PKF、我が国が出せるようなシステムがあったと前提して、仮定して、怖いから、クウェートの主権が侵されそうだから、ぜひPKFを国連に要請したい、仮にそうなった場合に、国連は出しません、そんなところへ。内戦があるわけじゃないし、イラクという国から攻められるかもしれないという理由でPKOを出してくれと言われたって、出すわけないのです。PKOの本義、本質からいってあり得ない、そんなことは。あり得ません。そういう場合には、それは国連が送りません、安保理が決議しません。万々が一決議したとしても、日本の政府に派遣の要請が万々が一あったとしたって、日本の政府はもう一回そこで判断できるわけでしょう。要請されたから、はいはいって出なきゃいけない義務はない。PKO、PKFというのは自発的に参加するものだ。だから、行く行かないは自発的に決めるんだということになるわけですよ。  さて、時間がありませんので、いろいろまだ確認したい点はございますが、基本的には、当委員会で特に議論になりました点は私なりに私の見解は発言をさせていただいたと存じます。  最後に私は、去る二十七日のこの委員会議場の混乱について、マスコミの論調を一つ紹介をさせていただきます。  これは強行採決ではない。社会党などが、物理的な力によって、採決阻止を強行したために起きた現象だ。   ろくに審議もせずに採決を強行したのなら批判は当然だが、実態はそうではない。PKO法案の審議は、前国会から継続してきたもので、公聴会も終えている。   国民の大多数が認めている自衛隊の存在自体を「違憲」としたままの社会党と、合憲の立場の自民、公明両党の間では論議はかみ合わない。一定の審議時間が経過すれば、採決に移るのはやむを得ない。   にもかかわらず法案採決を阻止しようとするのは、力ずくの強行採決という形にもち込み、同法案が危険なものであるかのようなイメージを作り出すことによって、国民の反発や不安をあおろうとする意図的な戦術としか思えない。 こういうマスコミの、有力な新聞の社説であります。  それから、先ほど社会党の秋葉委員が御発言を午前中なさいました。社会党にも責任はあるが与党自民党にも責任はあるという御発言がありました。それらいずれも私どもの認識に極めて近いものと心から敬意を表する次第でございます。  以上で、私の発言を終わります。
  129. 林義郎

    ○林委員長 次に、東中光雄君。
  130. 東中光雄

    東中委員 先日二十七日、この特別委員会は、午後五時二十分ごろに船田元議員の質疑が終わりまして、そして大島理事が、「議長。緊急動議をお願いします。」というような発言がありました。その後御承知のような大混乱が起こりました。そういう中で、委員長は、林委員長委員長席にはおられない。大混乱でありましたが、そういう中で採決なるものが行われたと言われております。  総理は、このいわゆる採決が行われたとされておるとき、二十七日の午後五時二十分過ぎのこの委員会採決が行われたと言われておるそのときには、委員会に総理は出席されておったのでしょうか。そして、採決が行われたと言われておるその採決というのは何回、どのようなものが行われたか、総理は認識をされたのでしょうか、お伺いします。
  131. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 委員会の御運営のことでございますので、詳細は私から申すことではないと思いますが、もとより、皆さんが御熱心に御審議をせられ、また政府としても最善を尽くしていろいろ御説明を申し上げておりました。その結果の委員長の御決断であったと存じております。
  132. 東中光雄

    東中委員 総理は、その採決されたと言われておるときに、この委員会席に出席をされておったのか、あるいは退席をされたのかという事実について聞いておるのでありますが、そのことについても総理はわからないような状態なんですか、どうなんですか。
  133. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 委員会におきまして御決定がなされたと承知しております。
  134. 東中光雄

    東中委員 そんなことはわかっているのです。その提案者の、責任者である内閣総理大臣はその委員会に出席をしておったのか、退席をしておったのかということについての答弁さえ拒否される。私はそれぐらい——事実は退席されたのでしょう。いなかったのじゃないですか。そのことを何を恐れて発言できないのですか。  委員長委員長席に着いておられませんでした。そして、何が採決に付されたのか、そのことは全くわかりません。会議録を見ますと、  ○大島委員 議長。緊急動議をお願いします。(発言する者多く、聴取不能)打ち切りをお願いします。採決をお願いします。(聴取不能)以上でございます。 これだけの記載しかありません。何を採決をしたのか、何を採決に付したのか、全くわからない。そして林委員長は、  ○林委員長 ……(発言する者多く、聴取不能)(拍手)……(聴取不能)(拍手)……(聴取不能)(拍手)……(聴取不能)      〔委員長退場〕 これだけの速記録の記録であります。「〔委員長退場〕」は「午後五時四十五分」、こう書いてあります。これでどうして採決が行われたと言えるでしょうか。何を提案したのかわからない。何を採決したのかわからない。  修正案を採決したというような、そういう文書がそのときこの議場の中にありました。私たち、ばらまいてあるやつをつぎ合わしてみましたら書いてある。そこによると、提案したとか採決したとか書いてありますけれども、これを委員長が読んだだけでしょう。その読まれたこともわからない。委員長席に乗っておることもわからない。委員長席にいなかったことも事実です。  私はこういうのは、本当に文字どおり、採決は不存在だ。採決が不存在である以上、その採決を今この補充質問とか確認とかいったって、なかったものを確認しようがないわけであります。  そういう点で委員長にお伺いしたいのですが、一体、そのとき何を提案されたのか。修正案なるものは理事会にも委員会にも全く配付もされていなかった。特に自民、公明両党による修正案なるものは、提出することがあるということさえ、一言の発言理事会ではなかったでしょう。文言も見たことない。(発言する者あり)そういう形で、今不規則発言がありましたように極めてふまじめな形で、なかったものをあったと言う。私は許されないと思います。委員長委員長、どう思われますか。
  135. 林義郎

    ○林委員長 東中君の御質問、御発言にお答えいたしますが、いろいろな経過がございました。私から一つ一つの事例を取り上げて申し上げることは差し控えたいと思いますが、理事会におきましていろいろと御協議をいただき、昭和五十六年三月七日の予算委員会の例に準じて処理をするということに申し合わせをしたところでありまして、それにて御了解をいただきたいと思います。
  136. 東中光雄

    東中委員 昭和五十六年の予算委員会のいわゆる差し戻し審議の方式でこの審議をやるということでありますけれども、私たちはそれには反対をしました。そして、そもそも存在しない採決を後で確認しようがないじゃありませんか。これはもう公理ですよ。公理に反したことを多数で決めればそれでよいというものではないと思うのです。そういう点で、私は議会制民主主義という点からいいまして、まことに重大な事態だと思っています。強くこれには承服しがたい、重大な瑕疵のあるものだということをはっきりと申し上げておきたいと思います。  次に、総理にお伺いするのですが、PKOあるいはPKFに派遣された協力隊員もしくは自衛隊員は国際公務員ではない、国際公務員でない者が何で国連事務総長の指揮に従うことができるか、そんなことはあり得ない、協力隊員、自衛隊員への指揮権は派遣国である日本にある、国連事務総長なりPKF軍司令官は指揮権はないという趣旨の答弁をされましたが、PKFに参加した自衛隊の部隊の自衛隊員はその軍司令官の指揮には従わない、こういうことでございましょうか、お伺いします。
  137. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そのことはもう何度も御議論になりましたので繰り返し言いませんけれども、要するに私のお答えは、指揮とか指図とかコマンドとかいう言葉がたくさんに使われておりまして、その関係がどうなっているかということについてのお答えであったわけであります。  繰り返しませんけれども、要するに懲戒権等々によって担保されるという意味での、そういう意味での指揮を受けるということはない。ただ、法律の規定によりまして、実施計画というものはその指図に整合するように書かれるものでありますし、そういう限りにおいて国連事務総長あるいはその代理者のコマンドのもとに置かれる、こういうことでありますことは、何度も政府委員からも御答弁申し上げてあります。
  138. 東中光雄

    東中委員 国際公務員、国連職員が国連に対して職務上負っている義務といいますか、あるいはその国際的性格といいますか、それは国連憲章百条に規定があります。それから、PKFに派遣された自衛隊自衛隊員は、あのモデル協定の九項によって、その国際的性格を規定をしています。その国連職員に対する規定と、そして協力隊員という形で自衛隊員がPKFに派遣をされた場合の国際的性質というものは、文言は若干違いますけれども全く同じというふうに言ってもいいような状態になっておりますが、その点いかがでしょうか。
  139. 丹波實

    ○丹波政府委員 何度も当委員会で御議論がございましたこのモデル協定の九項の意味でございますが、国連の側から見ますと、参加各国が、複数の国でございますので、その国連司令官の指図のもとに統一的な行動をしてもらわなければPKFのミッションが遂行できない、そういう意味で、そういう統一性が確保されるために各国がばらばらに行動してもらっては困るということを確保しようとする規定でございます。それで、日本が実施要領その他の基準を守って参加する上におきましては、まさに指図に適合するように実施要領も作成していくということでございますので、私たちはこの九項で言っているいわゆる国際性というものは、日本から参加していくPKFにつきましても確保されるというふうに考えてございます。
  140. 東中光雄

    東中委員 私の質問には全く答えていないのです。国際公務員と、そして国際公務員とは言えない要するにPKF参加の自衛隊員と、それは違うんだという前提が総理の発言の中にありましたから、だから私は、国際公務員と言われる事務総長あるいは国連職員が負う国際的性格、義務と、そしてこのPKF参加の自衛隊員が負う国際的な性格、義務、その点は、例えば国際公務員は国連に対してのみ責任を負う、協力隊員は国連の利益のみを念頭に置いてみずからの行動を規律する、同じ内容ですね。それから、両方とも国際的任務であるという点も一緒です。それから、任務遂行に当たっては国連以外のいかなる当局からも指示を求めまたは受けてはならない、これは両方とも同じように規定をしています。そして、国際公務員は、加盟国は国連職員が責任を果たすに当たってこれらの者を左右しないことを約束すると書いてある。要するに影響を及ぼしてはいかぬ。このモデル協定によりますと、加盟国政府はPKF要員に指示を与えてはならない、どこからも指示をもらってはいけない、受けてはいけない。加盟国も、日本政府も指示をしてはならないというふうになっているのですよ。  だから、これは基本的に一緒なんです。一緒であるのをあたかも何か違うかのように言って、そして指図に適合するというような、そういうワンクッションを置くということが、国連の言っておることと違うということを私は指摘しておるわけであります。  国連局長答弁は、肝心のことを一つも言っていない。そういう指図に適合するように実施要領でやるというのではなくて、政府から指示を受けない、受けてはいけない、派遣国は、というのが国連九項であるということを言っているのでありますから、指揮関係について国連の原則と違った体制にこの法案はなっているんだということをはっきり申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから次の問題に入りますが、防衛庁長官に伺います。  PKFに派遣された自衛隊の部隊、自衛隊員は、国連事務総長、当該PKFのフォースコマンダー及びフォースコマンダーが確立した司令部から指揮系統を通じて発するコマンドオーダー、これは文書で出されるのが普通ですが、それに従って行動をする。コマンドオーダーは、司令部から出すディレクティブ、指令あるいは指示あるいは作戦命令あるいは緊急事態に対応する緊急事態への作戦計画、こういう形で次々に出されてきますね。それはフォースコマンダーからフィールドコマンダーを通じてずっと下へやってくる。それに従ってオペレーションをやるのかやらないのか、それに従うのか従わないのかという点をお伺いしたい。
  141. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 SOPにおきますこの指図という問題が当委員会でたびたび議論がございますが、これは外務省の方からも御答弁ありましたように、配置または組織、行動に関する一つのガイドラインと申しますか、そういうものでございますね。したがって、それに適合するように我が国としては実施要領をつくるわけでございますから、その実施要領に従って私どもとしては行動するわけでございます。したがって、その間にはおのずから調整があり得る、調整されたものである、そしてまたきちっと調整されなければなりません。そういうものに従って行動するということでございます。
  142. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、国連の当該PKFの軍司令官及び軍司令部から出してくる系統的な指揮命令、作戦命令に従うんじゃなくて、それに適合するように実施要領をつくって、これは本部長がつくりますね、あるいは本部長が変更する、それに従うんだ、だから直接平和維持軍の軍司令官の指揮命令に服すのじゃなくて、それに適合するように日本の本部長がつくった実施要領、適合するようにやるために調整まですると言いましたね、今。そうしてそれには従うんだということですね。二重になるんですね。
  143. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま私、調整という言葉を用いましたが、これは国連のSOPの今申しましたガイドライン、これと我が国の指揮系統に基づく実際の問題の調整、これを実施要領に基づいてやられるわけでありますから、私どもとしてはそれに従って行動をしていくということを申し上げたわけでございます。
  144. 東中光雄

    東中委員 ですから、派遣された自衛隊員は本部長のつくる実施要領で動くのであって、国連軍から来た命令、作戦命令、軍司令官から来た命令に従って動くのじゃない、そういうことですね。そこははっきりしてくださいよ。
  145. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは仕組みの問題もございますので、正確を期す意味で外務省の方から答弁さしていただきます。——外務省ではありません。失礼しました。室長の方から。
  146. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいまフォースコマンダーのコマンドの実施というのは、フォースコマンダーが我が国から参加している部隊員を直接指揮する、実施するものではございません。  私、この機会にちょっと今このコマンドと我が国の部隊の指揮権の関係について御説明さしていただきたいのでございますけれども、まずコマンドがフォースコマンダーより、日本の部隊長だと思いますけれども伝達されるという場合に、この部隊長、これはこの法案の八条三項によりまして本部長により実施要領の作成、変更の権限の一部を委任された人、それに当たることになると思いますが、それがそのコマンドを実施するに当たりましてあらかじめ本部長より渡されている実施要領の枠内でやるかどうか、コマンドの内容が、それを判断いたしまして、その枠内であればすぐその部隊を指揮してコマンドどおりに業務の実施に当たるということでございます。  その次に、実施要領の枠外であるというときに実施要領の変更を行うことになるわけでございますが、コマンドの内容が現地での徴調整的なもの、例えば業務の実施の場所、時間等の微調整であるような場合には、法案の八条三項にのっとりまして本部長よりあらかじめ権限を委任を受けたそういう隊員といたしましてこの実施要領をコマンドに適合するように変更いたしまして、それで部隊を指揮してコマンドどおりの業務の実施に当たる。  次に、コマンドの内容がやはり本部長による実施要領の変更を必要とするようなそういった場合には、部隊長は直ちに本部長に連絡、実施要領の変更を本部長より受けた上でコマンドどおりの実施に当たる、そういう仕組みでございます。  いずれにいたしましても、国連のコマンドは実施要領を介する形で我が国部隊長の指揮のもとで部隊によって実施される、そういうことになります。
  147. 東中光雄

    東中委員 わかりました。だから一々命令、コマンドに従うのではなくて、コマンドが出る、あしたの行動について出たコマンドを今度は作戦要領という、本来は総理大臣、本部長がつくるもの、そういう実施要領の中へ入れかえるんですね。入れかえなければ行動できない。だから指揮系統が完全に違うわけです。だから、国連の平和維持軍の行動とは違う独自の平和維持隊の実施がやられておるということになるわけです、これはそういう答弁ですから、それはそう確認しておきましょう。こんなことは世界じゅう通用しませんよ。  そして次に、八条の二項についてお聞きをしたい。  この実施要領を変更する、国連の指図に適合するように変更していくということを言われましたが、ところが、武力衝突が現場で起こってくるというふうな場合には、この法案によりますと中断という処置をとっていくということになるわけですね。その中断の処置をとるのは実施要領によってやるわけですね。その中断の処置をとる武力紛争が起こったときにどう対応するかということは、実施要領で中断をやっていくんだ、国連国連で武力の行使のあの規定が全部SOPにもあります、訓練マニュアルにもあります、できるだけ武力行使にわたならないようにいろいろ努力する、それでも任務遂行の邪魔になったときにはやるんだ、こういうふうになっていますね。その国連の武力衝突が起こるようになったときの作戦命令あるいは作戦計画、コマンドから出てきたやつには全然適合しない。適合するようにするものとするというところから外してしまっているのですね。そして、日本が独自にやっちゃうんだ、こうなっているのですよ。そして、正当防衛のための武器使用だ、こう書いてあるのです。  これは、一番重要なときに国連軍のコマンドに対する作戦命令に適合するようにはしないで日本独自にやっちゃうんだ、こういうことになりますと、これはもう部隊が参加しているのですから、各国とも軍隊が参加しているのですから、戦争じゃありませんけれども。そういう状態で、いざ武器を使う、武力を行使するかしないかということを言うときに、撤退をするんだということを勝手に日本が決めて、そして中断、撤退をする、その場所でですよ、そういうことになっています。  ところが、先ほど公明党の発言にもありましたように、撤退というのはその場面ごとに判断するような問題じゃないんだ、はっきり書いていますね。国連事務総長に適切な事前の通告を行うことなくPKOから自国の人員を撤収してはならないと書いてあるのです。だから、武力紛争が起こりそうになったから、もう国連司令官の指揮に従わないで、適合するようにしないでさっさと撤退をするというようなことを言うのは、このモデル協定で言っている、事前に国連事務総長に通告する ことなくして国連平和維持活動から撤退することは、撤収することはしてはならないと書いてあるのですよ。明らかに国連の体系と違いますね。防衛庁長官、どう思いますか。
  148. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいまのような、先生のような御想定の場面におきましては、これは我が国は、この国連に言ういわゆるセルフディフェンスという広い意味ではございますけれども、任務遂行のための武器使用はできませんので、そういうことの事態が仮に起きますれば、一時的に退避、避難等をいたしまして、そしてなおかつ、その上で継続的に我が国の任務をこの法律に従って施行することはできないというような事態がございますれば、この法案に予定されているとおり撤収ということになる、このように考えております。
  149. 東中光雄

    東中委員 武力の行使やあるいはコマンドとは別個の撤収行動をやるなどという、そういう枠組みになっているのです。  なぜこういう枠組みになったのか。外務大臣はこの前私の質問に、「日本の今までの憲法解釈の延長線上からいって現在のような法案にしないと国際貢献がやれない。」「貢献ができるように法律にいろいろ書かしてもらった。」これは憲法に適合するようにやるためには、撤収も途中でやるし、国連軍の軍司令官の指示に従わないで一々日本の実施要領に従う、こういう国連と違う体制ですね。武力の行使というのはあらゆる場合にしない、しかし武器の使用をやるんだという、体系が違いますね。そういうふうにしたんだから、もし参加するということになれば、参加協定には明白に、そういう国連の原則と違った日本憲法上制約を受けたものについてやるんだ、いわゆる五原則ですね、これを協定の中にちゃんと載せなければ、載せることを国連が拒否したらそれは参加させない、載せたら初めて参加する、だから、そのかわり普通の国連と違う、国連の平和維持軍に参加するんじゃなくて、法案に書いてあるように国連平和維持軍に協力する部隊の派遣ということになると思うんですが、そういう協定できちっと載せるか載せないか、明確に答えていただきたいと思います。
  150. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生が御議論になっておられる状況といいますのは、例えば停戦が破れたといったようなPKOの、PKFの前提が崩れた場合の状況でございまして、私たち、日本の五原則あるいは法案作成に当たりまして、今まで参加してまいった主要各国に問い合わせてみましたけれども、まさにそういう前提が崩れた場合にはその任務を中断するという各国の参加部隊がたくさんあったわけでございます。したがいまして、そういう場合に任務を離れるといいますのは決して国際常識から見ておかしなことではございませんで、先生も御承知のとおり、前のPKO担当の国連の事務次長をしておられたアークハート氏も、先般日本におけるインタビューの中で、こういう場合の撤退は日常茶飯事だと言っておるわけです。そういう意味で、決して国際的に非常識な法案をつくった、あるいは五原則を立てたというものでないことは、ぜひ御理解いただきたいというふうに考えます。
  151. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんので、これは外務大臣ちゃんと答えてくださいよ。だって、日本憲法解釈上こういう独自の体系でいくんだということなんですから。国連の体系と違うんだから。だから、参加協定を結ぶときには、日本の独自の体系でいくということを国連側に承諾をさせなけりゃ参加できない。国連の言ってるとおりにいくんだったら日本の体系は進めないから、だからそれは拒否するということになると思うんですが、それはもう時間がありませんので……。  せっかく来ていただいておるので、自民党と公明党の修正案につきまして、どうしてもお伺いをしたい点が一点だけございます。  国連平和維持軍、PKFに自衛隊が参加をする場合、それは参加するということで、海外へ出動するという場合には事前の国会の承認を得べきだ、少なくともやむを得ない場合は事後速やかに承認を得べきである。これはシビリアンコントロールの当然の原則ですが、そういうことはする必要はないんだ、そういうことはしたらいかぬのだということを言っておって、そして出ていった部隊が二年たったらですよ、二年以上行こうと思ったら国会の承認を得るんだ、これは全く奇妙きてれつな制度だと私は思うんですよ。全く理解できないですよ。  自動車を運転しようと思う者は、運転免許をとってから運転をして、そして免許期限が二年過ぎたら更新をしてまた免許を受けるのですね。ところが、運転しようと思うときに、出ていこうと思うときに承認は要らないんだ、免許は要らないんだ、それで二年たって続いて運転しようと思うたら承認が要るんだというのと同じですよ。全く理解できない珍妙な提案であると思うんです。その点についていかがお考えか、外務大臣と提案者にお願いをして、私、時間ですので終わります。
  152. 与謝野馨

    ○与謝野委員 先生の御質問は、なぜ実施計画が決定された日から二年を超えて業務を実施する場合に限って国会の承認を求めることとしたのかという御趣旨だと思いますが、本修正は、国連平和維持隊の任務は本来暫定的なものであることから、二年を超えて継続するような場合には、継続することの妥当性につき国会の判断を求めるという、より慎重な手続をとることが適当である、そういう考え方によるものでございます。
  153. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、終わります。
  154. 林義郎

    ○林委員長 次に、和田一仁君。
  155. 和田一仁

    和田(一)委員 きょうは、初めに一言申し上げておきたいと思います。  去る二十七日の本委員会のあの採決の状況はまことに遺憾であった、私はまずこの見解をはっきり申し上げておきたい、こう思うわけでございます。  総理はお体何でもございませんでしたか。というのも、先ほども質問ございましたが、実は大変な混乱でございまして、総理をお守りした、あるいはどなたかをガードをした衛視さんか、どういうところにおったか知りませんが衛視さんがけがをされているという報道記事もあったくらいの、いかに異常であったかということを私どもは非常に強く感じておるわけでございます。混乱した中で委員長正規の席にはおられませんでした。私は委員長の方へ寄っていって発言をさしていただいたぐらいですが、総理はついに最後は、私も、いらっしゃるかどうかよくわからない、緊急避難をされたのかなというふうに思うほどでございます。それほど異常であったという事態は、私どもははっきりと認識しておかなければいけない、こう思うわけでございます。  この法案の重要性につきましては、私どもはつとに国際協力の面からも、また国連の行う平和維持活動に対する我が国のあり方として非常に大事に考えてまいりました。特に、自衛隊派遣してPKFに参加をさせる、こういう初めてのことでございますだけに、当委員会といたしましては、先国会以来、非常に慎重にかつ円満な運営のもとにこの審議を積み上げてきたのでございます。それは、常に委員会の持ち方については、各党がそれぞれ意見や希望はあっても、理事会の合意のもとにその日程が決められ、決められた日程どおり行うという、そのよき習慣の上でこれが進行してきたからにほかならない、私はそう思っております。  しかし、あの二十七日の状態というのは予定の日程にない状態、つまり事前に合意しておった日程が終了しないうちに突然質疑の打ち切り動議が出された、そして採決を行わんとしたことがあの大混乱のすべてのもとであるということは言うまでもないと思うのであります。  私から申し上げるまでもなく、そもそも民主主義というものは異なる意見の存在するということを前提としておるわけてあります。もちろんこの言論の府、立法の府である国会にも異なる意見はたくさんあるわけでございまして、その反対意見、少数意見の存在が担保されて、その開陳に時間的なあるいは配慮があるというのもこれは当然のことでありまして、少数意見というのは、その限られた機会に堂々と意見を述べて、みずからの意見を開陳していくということが非常に大事であります。また多数派というのは、その少数意見に静かに耳を傾ける雅量と、言いかえれば忍耐も必要である、これが求められるということは当然のことではないかと私は思うのであります。たとえ少数意見であるといっても正当な意見であるならば最大限にこれを取り入れていくということが何よりも大事であり、これが民主主義あるいは民主的な風土を熟成させていく上で欠かすことのできない大事なあり方である、私はこう考えております。  でありますから、少数意見というものも、意に反するからといって物理的な抵抗を試みたり、あるいはまたいたずらな審議の引き延ばしは、これは厳に慎まなければならないし、同時に、多数派は数の論理で事を処していけばよろしいというものではない、まして問答無用とも言うべき質疑の打ち切り等は、これは話し合いで物を決めていこうという原則を壊してしまうことになるのでありまして、私は、一つの結論を出すのはもう時間の問題だというふうに十分理解されている理事間でどうしてもう少し話し合いができなかったかを非常に悔いるものでございます。  あのやり方は、この法案を初めから撤回したいという人々にとっては物理的な抵抗の機会を与えるためのわざわざきっかけをつくるようなものであり、また、実力をもってこれを阻止しようという反対派としては、そういうことが一つの必要悪としての幕引きの場として考えなければならないんだというような、もしそういうことがどこかにあったとするならば、これは日本国民にとって本当に無残な思いと言わなければならない、私はこのように思うのでございます。あの大混乱を目の当たりに見ていた国民が拍手喝采をしたでありましょうか。私はそういう人はおらなかったと思うのであります。  そこで私は、先ほど午前中の御質問の中で、社会党の質問の中に、やはり委員会も反省すべきだという極めて謙虚な発言もございました。委員長はそれに対して、濃密な審議を尽くしてきたが残念の一言に尽きます、こういう御見解を言われました。まさにそのとおりではないかと思います。私は、こういった委員会のあり方を二度と繰り返さないためにも、ただ、委員長報告というものは私情を差し入れた報告はできないかもしれませんけれども、明日の本会議報告にはこういった厳然たる事実のあったということだけはどこかでお入れをいただかないといけないかなという思いがしてなりません。これが残念という表現で言うことができなくても、この混乱のあった事実だけは省略して報告すべきではない、このように考えておりますので、これは要望として委員長に申し上げておきたい、こう思う次第でございます。  総理にちょっとお尋ねをいたしますけれども、あの日、あの直後、あの混乱した強行採決があったわけですけれども、あの強行採決を事前に知っていたか、了承したかという質問に対して、これは新聞屋さんの質問ですけれども、総理は、政府のことではない、国会のこと、その辺ははっきりさせておいてくださいと否定をされる御発言をされたように私は聞いております。私は、政府・与党の長であり政党政治の頂点にあるあなたが、このことに何の責任も痛痒もお感じになっていないということはない、このように思うわけでございます。総理の率直な気持ちをぜひ表明していただきたい、こう思うわけでございます。  総理が、総理におつきになって、これからの日本のことを国民におっしゃったその中に、日本を品位ある国にする、品格ある国家をつくりたい、こういうお言葉が初めて出てまいりました。非常に私は、こういうことは今までにない新しい国づくりへの意欲だな、こう感じたわけでございます。私は、そういうお言葉から、品格ある国家とはなあという私なりのイメージもつくってまいりました。国としての高い教養であるとか風格であるとか、あるいはみずからを高ぶることなく、むしろ世界の人々のために率先汗を流しあるいは涙を流し、あるいは時に世界の平和のためには身を挺する、そういう気概のある国家である、こういうものを総理のあの品格ある国づくりという言葉の中から私なりにイメージしてまいりました。  しかし、残念ながら、今その国権の最高の機関である国会が、こういう大事な法案を審議するときにああいう事態が招来して、大変な、国民からまたかつての国会に逆戻りのような印象を持たれてしまう。国会、政治の品位が、私はあのことによって下がった、こう思わざるを得ないのでありますが、これは総理にとってどんな、その大きな品格ある国家をつくろうと思っておられる総理にとって、どんな考えをお持ちかをお聞かせいただぎたい。
  156. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほども一言申し上げたところでございましたけれども、私が報道関係の諸君に申しましたことがやや徹底を欠いておった嫌いがございます。私が申しましたことは、各党とも大変ベストを尽くして御熱心に御議論になり、本当に最善を尽くされたと自分は考えている、政府としてもまた長時間にわたって御審議を十分に願って、政府も最善を尽くしていろいろ御説明を申し上げたつもりであるということを申したわけでございますけれども、この委員会の運営状況について政府としてどういう責任を感じるかという質問でございましたから、その点は、政府ということになれば、これは国会の運営をされることに軽々しく物を申すべきことではない、そういうこれは原則でございますが、ということを答えたわけでございました。  それで、今どのようにこの事態を考えているかということでございますけれども、大変に御熱心な御議論があり、長い時間の御審議がありました。私どももベストを尽くしてお答えを申し上げましたし、また、御記憶のように、国連関連の文書について国連の責任者に再度折衝をして、御内々ではあるけれどもごらんをいただけるような努力もいたしたところでございますので、政府としては万全を尽くしたと考えておりました。ただ、各党間の御意見の相違が解決されませんであのような事態に発展したものと考えております。  その後、各党のお話がありまして、今日のこういう御審議があり、今後の展望が開けつつあると承っております。そのことには敬意を表しておるところでございますが、私がここでお答えいたしますとなりますと、やはり政府としてのお答えということにならざるを得ませんので、今日こういう御審議が再度行われ、展望が開けますことを、政府としては心からこいねがっておるところでございます。
  157. 和田一仁

    和田(一)委員 あの混乱の後で、私は、宮下防衛庁長官がまだいらっしゃいましたので、興奮の冷めやらないこの会議室の隅で、恐らくこの状態は法律的には成立したと言うだろうけれども政治的にはこれは無効だよ、こういう混乱の状態の中であなたの部下である自衛隊にあなたは心から頼むから行けというような、そういうことが言えますか、こう私は申し上げました。防衛庁長官答えはございませんでしたが、その思いは、私は極めてつらい思いであったろうと思うわけでございまして、ぜひひとつきちっとした格好でこれから出していくための努力を私どもはせねばならぬと思うのでございます。  ただ、私は、きょう非常に時間が少のうございますので、先般、あの混乱の中で私どもが修正案を出しまして、そして私はその趣旨の説明をいたしましたが、残念ながらここに出されております委員会報告、当日の委員会のあり方も含めての委員会報告はたった一行で済んでおりますので、我々の修正の趣旨が伝わらない、こう思いますので、この際、再度説明をさしていただきたいと思うわけでございます。  御案内のように、米ソ冷戦の終結を契機といたしまして、私どもは、あの湾岸戦争の教訓を踏まえて、世界は東西の枠を超えた国際秩序の構築を目指している、こう考えております。  国連中心主義に立っている我が国が、世界の平和と繁栄を各国と共同して守っていくという意思を内外ともに明らかにして国際的な責任を果たしていくためにも、速やかな実現がなければならない大事な問題であります。国連平和維持活動、すなわちPKOへの参加、協力体制の確立がなければなりません。私は、その意味で、政府案が国会に提出された趣旨、内容については十分これを理解するものでございます。  しかし、残念ながら政府案は、国会承認という極めて重要な核心を抜き去って、このままでは三党によるせっかくの合意のための努力が画竜点睛を欠く結果となるものだと言わなければなりません。  修正案では、私どもは、自衛隊を部隊としていわゆるPKFの活動協力のため派遣する場合には、政府案第六条に定める実施計画について、平和協力業務の開始前に国会の承認を得なければならないものとし、また国会閉会中の場合または衆議院が解散されている場合は、その後最初に召集される国会において速やかに実施計画の承認を得なければならないものといたしております。またこの規定は、当該実施計画の変更の場合にも準用することとしておるわけでございます。  以下、国会承認が必要とされるべき理由について御説明を申し上げます。  第一は、国会承認は、申すまでもなく最大のシビリアンコントロールであるということであります。  シビリアンコントロールとは、国権の最高機関たる国会が自衛隊行動をチェックすることであり、内局統制、官僚統制のことを指すのではありません。自衛隊のPKF派遣に当たっては、国民の代表たる国会の意思を明確にすべきであるという考えであるのであります。  第二は、国会で承認することがPKFへの参加を無条件に認めるものではないという明確な歯どめ措置となる点であります。  行政は、いわゆる五原則を法制化いたしました。しかし、これらはいずれも、これまでのPKOの目的・任務に照らしてみれば当然のことであるにすぎません。また定数の上限も、各国の例に倣うものであります。国会承認という歯どめを設けない場合、結果的にすべてのPKOへの参加に政府のフリーハンドを持たせるということになってしまうのであります。  第三に、PKO活動内容には相当幅があり、個々の活動ごとに国会がチェックする必要があるという点であります。  PKO国連憲章に明確な規定があるわけではなく、そのときどきの国際情勢から生じた平和維持の必要に対応して発展してきたものであって、活動の態様もさまざまであります。国連の役割の重要性が増し、PKO活動が多様化しつつある今、過去の実績のみによってPKOのあり方を判断してはならないと考えられるものであります。PKOの中でも特にPKFへの参加は、国連から受けた要請を吟味し、国連に与えられた任務が正当であり、かつ、実現可能なものか、国民の合意は得られているか、財政的に派遣可能かどうかなど、ケース・バイ・ケースによって国会が判断し、参加の可否を決すべきであると考えるものであります。  第四は、国会が議決し、国民の総意として自衛隊を送り出すことにより、自衛隊に対する国民の理解が深まり、隊員の士気が高まるという点であります。  PKO、特にPKFは、国権の発動たる軍事行動ではありませんが、危険度、規律、行動力、組織力、いずれをとっても軍隊としての能力や体制を必要とするものであります。自衛隊でなければできない仕事を、自衛隊員の皆さんがその任務に使命感を持ち、堂々と胸を張って働いてこられるような条件を整備することこそが政治の責任であると考えるものであります。  第五は、国会承認とすることが活動の迅速性を妨げることにはならないという点であります。  国連からの派遣の打診、要請、安保理決議採択までの関係当事国への了解取りつけなどの期間を考えれば、国会の関与に十分な時間をとることは可能であり、また本案では、国会閉会中の場合または衆議院が解散されている場合はその後最初に召集される国会において承認を得ることでよいというふうにされており、活動の迅速性は十分に担保され得ると考えるものであります。  以上が、私ども修正案の趣旨及びその内容の概要であります。  なお、この主張は多くの国民の求めるものでありまして、修正があって後の成立を心から願ってやまないものでありまして、このように政府が自衛隊を海外に派遣する際に不可欠の要件である国会承認のない原案に対して、私どもは、その原案については反対をせざるを得ないことを申し添えるものでございます。  また、国際緊急援助隊自衛隊を参加させることは、これはかねてから我が党の主張であり、これがようやく実現することを評価するものでありますが、これまでの、自衛隊を日陰者扱いにして災害救助のための海外派遣すら認めてこなかった政府・自民党の姿勢に対しては、強い不満を表明し、しかし、この法案に対しては賛成することを私どもは決めていきたい、こう考えておることをここで表明させていただきます。  以上でございます。
  158. 林義郎

    ○林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  159. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二十七日のあの混乱の明くる日の新聞を拝見しますと、なかなか政府と与党の連絡が悪かったとか、あるいは賛成政党であった公明党と自民党の国会戦術についての連絡がなかったとか、そういう指揮官がどこにおるのかさっぱりわからないというあれもありました。あれは国会だからあの程度で済んだようなものの、これがPKOでそういうことになったら一体どうなるのですかな。私はすぐそれを痛感しましたよ、指揮官がおらないざまはどうなるかということを。  それで、シビリアンコントロールの立場からちょっとお伺いをしますけれども、確認をいたしますが、宮下防衛庁長官は、昭和二十年三月名古屋陸軍幼年学校卒業、同時に陸軍予科士官学校入学、二十年八月終戦によってやめられた。つまり、これは職業軍人であります。  そこで私はお伺いいたしますが、総理は戦後政治の生き字引と言われておりますから、もうあえて聞きません、間違いないと私は思いますが、つまり、憲法六十六条の二項、つまり「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」という規定があります。この規定がどうして入れられたか、生き字引ですから御承知と思います。  つまり、衆議院の段階ではなかった、この六十六条の二項は。そして、当時は参議院はありません、貴族院ですね。それで、貴族院でその衆議院から送られてきたのを審議しておったときに、連合国総司令部から日本政府に向かって、憲法の中に国務大臣はシビリアンでなければならないという規定を入れてくださいという要請が、つまり連合国の極東委員会から注文があった。そこで、日本政府は貴族院に向かって、憲法の中に国務大臣はシビリアンでなければならないという規定を修正として入れてくれませんか、あちらの注文ですからと、こういうことを貴族院で言われ、そして、国務大臣は武官の職歴を有しない者でなければならない、こうなった。つまり、過去職業軍人であった人は大臣にはならない、なれない、これが大体定説であります、大部分の。  それで、私は今ここで、そのときにどういう注文が行われたか、これをちょっと申し上げておきますけれども、そのときこの担当大臣は金森先生でした。どういうふうにおっしゃったかと申しますと、当時は枢密院があったのですね。枢密院にお伺いを立てられたのです。その枢密院に諮問されたときに、政府はやはりこの審議に際しては、文民とは武官の職歴を有しない者の意味である、そして、その語義の解釈は将来問題となり得るであろうと政府から枢密院にお答えをされております。その金森さんはどう言ったかというと、この六十六条二項の文民規定について、こう答弁されておる。この解釈は、将来、国会、内閣、裁判所の判断に任せる。三つ挙げておる。  そこで、私はちょっと聞いておきますけれども、防衛庁長官、今のあの経歴には間違いないですね。
  160. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私が陸軍幼年学校の三カ年卒業者であり、なお陸軍予科士官学校に入学いたしまして、終戦により復員と申しますか廃校になるということでございまして、そのことはこれは変わっておりませんが、しかし先生、ちょっと加えさせていただきますが……
  161. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がないからそれだけでいいです。  私は、悪いと言っているんじゃないんですよ。そういう過去の経歴をいろいろ背負って生きているんだから、みんな。ただ、私は、ほかの大臣ならそう言いません。防衛庁長官だから問題にしたいのです。  なぜか。過去そういう問題が起こった。つまり、鳩山文部大臣、あなたのおじいさんですね、鳩山内閣のときに、第一次鳩山内閣、昭和二十九年十二月、野村吉三郎、参議院です、前のアメリカの特命全権大使、海軍大将でありますので、防衛庁長官に起用しようとなさった。ところが、やっぱりこの六十六条二項がひっかかって、野党はもちろん、そのときは社会党は右、左、分かれておったが、左はもちろん左もこれはだめだという意見で、しかも与党の中にも、隔世の感がありますね、与党の中にもこれは憲法六十六条二項にひっかかる、だめだというあれが与党の中からも起こったからあきらめられた。良識がありましたね、そのころは。そして今度は二番目の第二次鳩山内閣、またそうなさろうとなさったんです、野村さんを。またこれはポシャった、同じ理由で。そして今度は三番目に、その翌年、昭和三十一年十二月、石橋内閣においても同じことをしようとしたがこれもポシャった。つまり、防衛庁長官ではだめだと。六十六条の二項に触れると。  まあ、せっかくお見えいただきましたから、このおじいさんのお考えをどう考えられますか。
  162. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 ただいまのお話等につきましては、まことに申しわけないことですが、私自身余り勉強いたしたことがありません。祖父が総理になりましたころに、私は幼稚園そして小学校の一年に入るか入らないかという状態でございまして、いわゆる幼児、児童としてまだ発達段階がかなり未熟でございましたので、今先生からそういうお話を承って、物の本でも調べてみようかと思っております。
  163. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひそうしてください。  それで、金森先生は三つ挙げられました。国会と内閣と裁判所。裁判所の判断にこの問題はなじみますか、法務大臣。金森大臣はそうおっしゃった、三つ挙げられた。
  164. 田原隆

    ○田原国務大臣 法務省の所管ではないような気がしますが、私はさらに勉強を深めて次の機会に御答弁申したいと思います。またの機会に。
  165. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、衆議院はまだ審議が行われるそうですから、またの機会をお待ちしておきます。  これは恐らく私の想像するところでは、いきなりこれは憲法違反だということは今までの例では却下される可能性がある。だから具体的に出さなくちゃいかぬです。一つは、失礼ですが宮下さんが防衛庁長官として不適格ではないかという裁判。それがだめならば、じゃ、国務大臣の歳費は百四十四万七千円、一般議員は百十八万円。二十六万七千円これは払い過ぎだ、大臣にふさわしくないからというような裁判も、起こそうと思えば起こせます、具体的な問題として。今、法務大臣は後から調べて答えるということですから、先に進ましていただきます。——いいですよ、まあそう言わないでも。参議院もあるから、参議院でゆっくりやってもらいますよ。  そこで私は、これは重大な問題ですから、問題は決着していないのです、過去の審議の経過を見ますと。決着していない。それで大多数は、例えば大多数の学説は、ちょうど去年ですかね、国会開設百年、これで佐藤功さん、今東海大学の先生ですかね、憲法の権威。別館に呼びましたよね、講師として。その佐藤さんがやっぱりだめだと言っているのですね。六十六条二項にこれは違反する、過去職業軍人であった人は。  それからもう一つ、宮下さんのために言っておきます。もう一つ議論があるのです。もう一つの議論は、自衛隊のことはもう言いませんよ、時間がない。あなたに関係するから言いますけれども、例えば、海兵あるいは陸士を卒業して任官した途端に終戦になった、こういう人はどうなるのか、職業軍人かという議論があります。あなたの場合はまだ、卵じゃないな、ひよこになって、もうすぐ羽ばたく寸前の職業軍人、これほどうかという議論については、いまだ決着を見ていない、学界でも。これをどうするか。だから、これはぜひ私はこの際はっきりしてもらいたいと思いますが、総理大臣の御見解を聞いておきます。
  166. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この問題は、私の記憶ではその後に政府見解を昭和四十八年ですかに決めておりまして、大事な問題でございますから、法制局長官からその部分をちょっとお聞き取り願います。
  167. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  この文民の問題につきましては、委員ただいま御指摘のように、いろいろな学説においても議論があることは事実でございます。  ただ、今総理からお答えございましたように、政府といたしましては昭和四十八年の十二月に衆議院の予算委員会理事会に政府見解を配付いたしておりまして、ここにおきましては、「憲法第六十六条第二項の文民とは、次に掲げる者以外の者をいう。」こういうことで、まず第一として、「旧陸海軍の職業軍人の経歴を有する者であって、軍国主義的思想に深く染っていると考えられるもの」、二といたしまして「自衛官の職に在る者」、こういうことでございまして、自衛官を退職したような者は、これはまた入っていないということでございます。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後、一問だけさしてください。  私が昭和四十八年、まさに四十八年にお伺いしましたとき、当時の田中総理大臣は、職業軍人であった者、そして特に新憲法の精神に反するような思想の持ち主はだめだと。そうすると、宮下防衛庁長官はこの憲法に違反するPKO法案の作成者の一人であり、新憲法に違反する思想の持ち主だ。だからあなたは不適格である。院の構成に関係するから、この法案はもう一遍審査し直さないとだめだというのが私の意見であります。  終わります。
  169. 林義郎

    ○林委員長 この際、串原義直君、東祥三君、古堅実吉君から発言を求められておりますので、順次これを許します。串原義直君。
  170. 串原義直

    ○串原委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となっております国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案並びに国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、反対の討論を行うものであります。  まず第一に、憲法解釈に関する政府見解の問題であります。  政府は、昨年の国連平和協力法案の審議に際して、平和維持軍は武力行使を伴うということで、たとえ後方支援であっても憲法上参加できない場合が多いとの見解を示しておりました。しかし、今回はそれを根底から覆し、自衛隊を併任の形で部隊ごと参加させ、またPKO以外の人道的平和協力活動にまで自衛隊の業務として参加させようとしております。それは、軍縮と協調の国際的流れとは相入れないものであり、幾ら五原則を法制化したと言ってみても、実質的改憲に等しい憲法解釈の変更であります。  第二に、平和維持軍に参加した部隊が合意、同意、中立の条件が満たされなくなった場合には、我が国の参加部隊は撤収できるとされております。  しかし、部隊の応戦の可能性、撤収の判断、実施の困難性等の問題がまだ解明されておりません。特に、国連の運用原則にはない異例の業務の中断は、他国部隊との間で混乱を生じさせることは目に見えて明らかであります。部隊の撤収、武器使用等についても、いまだに問題点が解明されておらず、従来の政府の見解に立つといたしましても、この法案が違憲でないという証明はなされていないのであります。  第三に、武器の使用と武力の行使の問題であります。  政府は、武器の使用という概念を設定し、それは武力の行使とは違うという詭弁を弄しておりますが、自衛隊員の使用する武器については制限はなく、言葉の上で武器使用といっても、自衛隊が部隊として一定の装備を持って海外出動するのであれば、実際上は判断が難しく、憲法で禁じられている武力の行使、集団的自衛権の行使に至る可能性をぬぐい去ることはできません。  第四に、平和維持軍の派遣について事前の国会承認を拒否し続けていることであります。  自衛隊法で緊急出動や治安出動の際の国会承認が義務づけられているのに、海外に出動する場合は報告だけでよいというのでは、自衛隊海外派遣が政府の独断で行われてしまうことであり、シビリアンコントロールの原則を踏みにじるものであります。  以上のことから明らかになりましたように、政府提出法案は、昨年の国際平和協力法案廃案に示された国民の意思を顧みず、また、自衛隊とは別個の組織という三党合意とも異なった内容で提出されたものであり、国連協力、国際貢献に名をかりて自衛隊に武器を携帯させ、部隊ごと海外に派遣し武力行使をするPKFにまで参加させようとしている非常に危険な法案であります。それはまさに憲法の名のもとに自衛隊派兵をもくろむ、小沢一郎自民党元幹事長の主宰する小沢調査会の方針に沿ったものとも言わなければなりません。  我々は、非軍事、文民、民生の原則のもとに、自衛隊とは別個の組織による武力以外の方法での国際協力が必要とされていると考えております。この方法こそ平和憲法を生かす道であると考え、我々はその趣旨の法案を対案として提出したところであります。  最後に、政府案に対する国連の了承の中身については明確にされておりませんし、国連のいわゆるSOPにつきましても、委員会での審議に供されておりません。そのほか、審議によってさまざまな問題が明白になりましたし、国連の言う「指揮」と法案の「指図」に見られるように、国連の考えと法案との間にそごがあることがはっきりいたしました。委員会として国連に調査団を派遣するなり、国連の担当者を参考人として委員会に招くなり、さもなくば審議の結果明らかになった点を国連に問い合わせるなりすることが、審議を尽くすのにはどうしても必要であります。  多くの国民自衛隊海外派遣には慎重であるべきだと考えていることは、最近の世論調査によって明らかになっております。審議を十分尽くさず、審議不十分のまま急ぎ採決に持ち込もうとする態度は、断じて容認できません。我々はむしろ、国民合意を図ることのできない政府案の撤回をここに強く求めまして、政府提出法案に対する反対の討論を終わります。(拍手)
  171. 林義郎

    ○林委員長 次に、東祥三君。
  172. 東祥三

    ○東(祥)委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました自民党、公明党提案による国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案並びに修正案を除く原案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部改正案に対し、賛成の立場から見解を表明させていただきます。  世界は今、冷戦が終結し新しい平和秩序の構築を目指して大きな変革期を迎えておりますが、いまだ内乱、紛争によってとうとい生命を落とし、また、生命の危険にさらされている人々がいる国もあります。その意味で、国際社会の平和と安全に関し国連の果たすべき役割はますます大きくなってきております。  我が国は、従来より国連中心主義を掲げてまいりましたが、今こそこの国連を中心とする国際平和秩序の確立に向けて世界の国々と協力し、紛争及び紛争の長期化によって悩み苦しむ人々、国を助けるため、紛争の再発防止、平和の維持に対し、積極的な貢献を果たしていくべきであります。これは我が国憲法の平和主義と国際協調主義に合致するものであると強く確信するものであります。  賛成の第一の理由は、PKOの基本的な性格が、武力行使を目的とした活動ではなく、あくまで国連の権威と説得によって、停戦によって得られた平和を維持し、その基盤を強固にしつつ、再び紛争が起こらないようにするという極めてとうとい活動であり、これまで多くの実績を上げてきた活動であるということであります。  PKOは、一九四八年以来、約半世紀にわたって八十カ国以上、五十万人を超える人々が参加し、しかも非暴力、非強制、中立を原則として、国際紛争の平和的解決のために多大な役割を果たしてまいりました。一九八八年にはノーベル平和賞も受賞しているのであります。また、最近においては、中立を堅持するために国連に加盟していない永世中立国スイスにおいてさえ、PKFへの参加も本格的に検討しているのであります。こうしたPKOに我が国が参加することは、極めで有意義であることは言うまでもありません。  第二の理由は、我が国の平和憲法の枠内で行われ、シビリアンコントロールも明確に確保されているということであります。  今回の法律案は、平和目的とはいえ、自衛隊を海外に派遣するという点において新しい問題であり、国民の不安もあります。しかし、PKO協力法案においては、参加に当たっての五原則、すなわち、紛争当事者間での停戦の合意、我が国の参加についての紛争当事者同意、中立的立場の厳守、これらの原則が崩れた場合の撤収、武器使用は生命防護に限定との五原則が法律に盛り込まれていることは、必要かつ十分な歯どめとして機能するだけでなく、国民の不安を解消する措置が講じられたものであると考えます。  シビリアンコントロール、すなわち文民統制とは、政治の決定に軍が従うということであります。PKO協力法案では、国際慣習であった五原則を法律に盛り込み、政府の行動に厳格な枠をはめたものであり、これこそがシビリアンコントロールそのものであります。  さらに、平和協力隊員の上限を二千名としたこと、国会に対する厳格な報告を義務づけたこともシビリアンコントロールが十分確保されていることになります。  これらに加えて、PKO派遣が長期化し、また泥沼化するようなことをチェックする意味から、派遣継続の是非について、一定期間経過した時点で国会が判断する必要があるとの公聴会での公述人の指摘を踏まえ、公明、自民両党の提案で、二年を超え引き続き派遣をする場合には国会の承認を得るものとし、さらに二年ごとに同様の承認を求めるよう政府案を修正いたしました。これによって国会の関与、シビリアンコントロールの強化が一段と明確にされたのであります。  第三に、国際緊急援助隊自衛隊を参加させることは、これまでの実績に加えてさらに我が国が自然災害等に対する人道的救援活動の強化拡充を図ろうとするもので、我が国の国際貢献に対するより高い評価につながるものと言えます。  今回の法律案によって我が国のPKO参加を可能にし、国際緊急援助隊を拡充することは、我が国の新しい国際貢献に極めて妥当であり、ふさわしいものであることを重ねて申し上げ、私の意見表明を終わります。(拍手)
  173. 林義郎

    ○林委員長 次に、古堅実吉君。
  174. 古堅実吉

    古堅委員 私は、日本共産党を代表して、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。  まず最初に、十一月二十七日に自民党と公明党によってなされたいわゆる採決の強行という暴挙に対して、怒りを込めて抗議を表明するものであります。  また、政府が、審議の不可欠な前提である国連文書や防衛庁文書の国会提出を最後まで拒否したことに強く抗議をするものであります。国連の訓練マニュアルや標準作戦規定は、武力の行使や国連平和維持軍司令官の指揮権、作戦行動などPKFのすべてを規定した公式文書であり、この提出を拒否するなど言語道断であります。武器使用に関する内訓があることを明らかにしながら、その国会提出を拒否したことも同様であります。  また、国会と主権者である国民の目をふさいで違憲の悪法を強行する宮澤内閣の不当きわまりない態度についても、私は重ねて厳しく糾弾するものであります。  第二は、この法案日本憲法に違反した自衛隊海外派兵法案であるからであります。  もともと自衛隊憲法違反の軍隊であります。徹底した非軍事、平和の見地に立った憲法が、軍事組織である自衛隊による国際貢献を否定していることは言うまでもありません。だからこそ参議院は、憲法の平和原則と九条を確認して、自衛隊の一切の海外出動の禁止を確認する決議を、自民党も含めて全会一致で採択しているのであります。本法律案は、憲法違反、国会決議違反の悪法であり、断じて許されません。  今回の法案は、武装した自衛隊を武力行使を行う軍事組織である国連平和維持軍に参加させる自衛隊海外派兵実現法案です。政府は、昨年まで言ってきた武力行使を行う平和維持軍には参加できないという見解も変えて、平和維持軍全体が武力行使を行っても日本部隊が武力行使をしなければ問題がないとか、憲法第九条に言う武力の行使を、国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為の場合だなどと新たな詭弁を持ち出しましたが、海外派兵を実現させるための憲法のねじ曲げには断固として反対するものであります。  第三に、本法案に盛り込まれたとされる国連平和維持軍参加に当たってのいわゆる五原則も、武装した自衛隊が平和維持軍の武力行使に巻き込まれないという歯どめにも全くならないということであります。  一度PKFに参加した以上、自衛隊は、武器、装備の使用も含めて国連の指揮のもとで軍事活動を展開せざるを得ないのであって、日本の判断で勝手に中断、撤収などできないことは明らかです。政府の五原則は実態を無視した詭弁にすぎません。しかも、法案は、戦闘のための装備である迫撃砲や重機関銃などの重火器の携行を可能にしています。これら重火器は部隊として使用する装備であって、その携行を認めた本法案憲法違反以外の何物でもありません。  第四に、武装した自衛隊海外派兵することにアジア諸国人民が懸念批判を強めていることを無視してはならないということであります。  アジア諸国人民と平和友好関係を築くため、この二つの法案を葬り去ることがアジアに対する侵略戦争を引き起こした日本の歴史的責務なのであります。  最後に指摘したいのは、自衛隊海外派兵アメリカの要求に基づいて、日米軍事同盟の機能を世界的規模で発揮させるために実現されようとしていることであります。本法案は、国連軍、多国籍軍参加への道筋ともなるものであって、断じて認められません。  ことしは中国侵略開始六十年、太平洋戦争五十年に当たります。国権の最高機関たる国会が第二次大戦の痛苦の教訓を踏みにじるようなことは、いかなる立場からも決して許されるものではありません。自衛隊海外派兵を実現する本法案の否決こそ、憲法国民が築き上げてきた平和原則を擁護する唯一の道であることを強く主張して、反対討論を終わります。(拍手)
  175. 林義郎

    ○林委員長 これにて発言は終わりました。  この際、念のため確認をいたします。  まず、和田一仁君提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  176. 林義郎

    ○林委員長 起立少数。  次に、船田元君外三名提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案に対する修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  177. 林義郎

    ○林委員長 起立多数。  次に、ただいま確認いたしました修正部分を除いて原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 林義郎

    ○林委員長 起立多数。  次に、国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  179. 林義郎

    ○林委員長 起立多数。  次に、両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 林義郎

    ○林委員長 御異議なしと認めます。  よって、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案につきましては、和田一仁君提出の修正案は少数で否決、船田元君外三名提出の修正案は多数で可決、その修正部分を除いて原案は多数で可決、よって、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案は修正議決され、国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案は多数で可決され、両法律案委員会報告書の作成は委員長に一任されたことが明確になりました。(拍手)  委員各位には御苦労さまでございました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会      ————◇—————