運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1991-11-27 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十七日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 中川 昭一君 理事 船田  元君    理事 与謝野 馨君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    浅野 勝人君       井出 正一君    伊吹 文明君       石川 要三君    上草 義輝君       衛藤 晟一君    小澤  潔君       岡田 克也君    北川 正恭君      小宮山重四郎君    鈴木 宗男君       住  博司君    高橋 一郎君       武部  勤君    二階 俊博君       西田  司君    福田 康夫君       増子 輝彦君    町村 信孝君       松浦  昭君    三原 朝彦君       御法川英文君    光武  顕君       秋葉 忠利君    伊東 秀子君       小澤 克介君    緒方 克陽君       岡田 利春君    五島 正規君       沢藤礼次郎君    松原 脩雄君       元信  尭君    山中 邦紀君       東  祥三君    遠藤 乙彦君       山口那津男君    渡部 一郎君       東中 光雄君    古堅 実吉君       伊藤 英成君    和田 一仁君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (内閣官房長官         )       加藤 紘一君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   塩川正十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 宮下 創平君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣 野村 一成君         官房参事官         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣 伊藤 博行君         官房内政審議室         長         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣 有馬 龍夫君         官房外政審議室         長         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         内閣法制局第二 秋山  收君         部長         警察庁長官官房 井上 幸彦君         長         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 小池 清彦君         局長         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長         運輸大臣官房総 土坂 泰敏君         務審議官         海上保安庁次長 小和田 統君         労働省職業安定 若林 之矩君         局長  委員外出席者         議     員 伊藤  茂君         議     員 上原 康助君         議     員 山花 貞夫君         議     員 村山 富市君         議     員 早川  勝君         国際平和協力等         に関する特別委 石田 俊昭君         員会調査室長     ————————————— 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   斉藤斗志二君     高橋 一郎君   鈴木 宗男君     御法川英文君   中谷  元君     浅野 勝人君   和田 一仁君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     住  博司君   高橋 一郎君     斉藤斗志二君   御法川英文君     鈴木 宗男君   伊藤 英成君     和田 一仁君 同日  辞任         補欠選任   住  博司君     中谷  元君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第五  号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣  法第六号)  国際平和協力活動等に関する法律案伊藤茂君  外四名提出衆法第一号)      ————◇—————
  2. 林義郎

    林委員長 これより会議を開きます。  第百二十一回国会内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案及び伊藤茂君外四名提出国際平和協力活動等に関する法律案の各案を議題といたします。  まず、伊藤茂君外四名提出国際平和協力活動等に関する法律案について議事を進めます。  趣旨説明を聴取いたします。上原康助君。     —————————————  国際平和協力活動等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 上原康助

    上原議員 提出者を代表し、国際平和協力活動等に関する法律案について、提案趣旨及びその内容について御説明いたします。  今や国際情勢は、冷戦構造が終結し、対話と協調基調とする時代に入り、東西陣営は言うに及ばず、世界は平和の中に共存していく新しい国際秩序が構築されつつあります。  そのために克服すべき課題は多々ありますが、大別すれば、第一に、平和の創造と軍縮の実現に向けて、核の廃絶を含め、世界国々はどのように努力していくかということであり、第二は、地球人口の三分の二は経済的発展途上国だと言われる中で、どのようにして南北間の格差を是正し、飢餓や貧困からの救済や、難民や被災民、そして自然災害から人々を救済するかであります。そして第三は、年々広がりいく砂漠化熱帯雨林の消滅、大気汚染オゾン層破壊など、地球的規模環境破壊にどのように対応するかという人類共通課題に対し、世界はいかに対処していくかということであります。  こうした状況下で、世界GNPの一五%をも占める我が国はどのようにして国際的な責任を果たしていくかは、ひとり我が国の将来だけでなく、世界の平和と安定にとっても極めて重要な問題であります。  よって我々は、平和憲法を持つ我が国として、それにふさわしい国際貢献あり方について国民合意形成し、今日の時代要請に的確にこたえるべきとの考えに立ち、今世界が必要としているあらゆる分野に対し、非軍事民生文民による専門機関を設置し、最大限の貢献を果たすべきであるとの主張を貫いてまいったのでございます。  その具体的な行動として、一つには、国連中心とした平和のための努力として、国連の改組、改革を含め、国連中心国際紛争未然防止のため国連管理査察衛星の保持や、国連事務総長による早期調査団派遣武器輸出禁止アジア太平洋平和保障体制確立、核の全廃に向けた積極的行動など、平和の創造のための努力であり、また、国連平和維持活動、いわゆるPKOに対する協力であります。そして、これらの活動を効果的に推進するために、我が国として国連平和保障基金としてGNPの〇・一%程度国連に拠出してはどうかと提案するものであります。  二つ目は、すでに提案してまいりましたが、発展途上国等の自立と、それらの国々民生の安定、自然災害による被災者救援など人道的立場に立った貢献として、政府開発援助ODA)のための新たな制度の確立として、ODA基本法制定であり、国際災害緊急援助についても、常設の専門機関を創設するための国際緊急援助に関する法律制定でございます。  そして三つ目は、地球環境保全に向けて、我が国としてなすべき施策として、来年の地球サミットに向けた諸行動を起こすことであります。  このように人類共生立場に立って、世界の平和の創造人道的立場に立った諸課題についての対応、そして、地球環境保全のために、我が国憲法の志向する平和主義国際協調主義のもとで、全力で人的、物的そして技術的、資金協力をもって、世界貢献することが我が国のあるべき姿であり、今、自衛隊組織ごと海外派遣しようとすることは、憲法精神理念から見て論外であることを改めて強調しておきたいのであります。  ここに提案する国際平和協力活動等に関する法律案も、非軍事民生文民基調として、積極的に国際協力していこうとするものであります。  その内容を要約しますと、その第一は、自衛隊とは別個組織として、国際の平和及び安全の維持のための活動及び人道的救援活動を行うための組織として、国際平和協力機構を創設し、国連及び国際機関からの要請にこたえていこうとするものであります。  その第二点は、国際の平和及び安全の維持のための活動及び人道的な国際救援活動を行うために、国際平和協力隊派遣しようとするものであります。  その第三点は、平和協力活動に当たっては、当然のことながら関係国の同意、関係国への内政不干渉紛争の処理に対しては、厳正中立立場を堅持することであります。  その第四点は、国連等から要請があった場合、外務大臣は、平和協力活動実施が適当と認める場合は、平和協力活動実施計画を策定し、閣議の決定を経て国会の承認を求め、国際協力機構に対して国際平和協力隊派遣を命ずることができることとなっております。  その第五は、外務大臣は、関係行政機関地方公共団体国家公安委員会に対し、国際平和協力活動に必要な技術能力等を有する職員に、実施計画に基づいてその活動に従事させるよう要請することができるようになっております。  その第六は、政府国際の平和及び安全の維持活動、または人道的救援活動協力するため適当と認めるときは、物資等協力を行うことができることとなっております。  その第七は、政府国際平和協力活動が終了したとき、または、物資等協力を行ったときは、その内容国会に遅滞なく報告することとなっております。  その第八は、国際平和協力機構の設立については、別途、法律で定めることといたしております。  以上が、我が党が提出した法律案提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いして、趣旨説明を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  4. 林義郎

    林委員長 これにて趣旨説明は終了いたしました。     —————————————
  5. 林義郎

    林委員長 次に、ただいま議題となっております三案について議事を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。元信堯君
  6. 元信堯

    元信委員 前国会以来、政府提出のいわゆるPKO法案等二法についての審議が今日まで行われてきたわけでありますけれども、今日時点でこれまでの審議経過を振り返ってみるならば、審議をすればするほど不可解な点が続出をしている、解明されていないものが余りにも多過ぎる、こういうことだろうと思います。一部には、既に十分な議論を行ったのであるから採決をなどという意見も出始めているようでありますけれども、とんでもないことであると言わなければなりません。議論が混迷している今日、憲法との関係においても極めて明快な社会党案提出されたことは、まことに喜ばしいことであると考えるのであります。願わくば本案は、政府案と同じだけ十分な時間をかけて、与党においてもあるいはまた野党においても質問を行い、政府案との関係において解明をして十分審議されるものであると考えるのであります。  以下、社会党提出法案国民皆さんにあるいは同僚議員皆さんによりよく御理解をいただくという観点から、幾つかの質問をいたしたいと存じます。  まず第一は、湾岸戦争以降、我が国においても急速に我が国国際貢献あり方に関する議論が高まってまいりました。これまで我が国政府は、国連中心主義を唱えつつも、実態において必ずしもそのとおり振る舞ってきたわけではなかったことが、この委員会審議の中でも明らかにされてきたわけでありますけれども、最近にわかに態度を豹変させた。首相が君子に変わったからと言ってもなかなか理解しかねるところであります。  しかし、最近の論調では、日本は金を出すだけではなく汗も流さねばならないなどと言うものが多いわけでありますが、政府提出法案では、汗どころか血をも流すことになりかねないのであります。しかも、その血というのは、ひとり我が国の有為の青年の血ばかりではなく、紛争地域人々の血である可能性も極めて高いと言わねばなりません。  我が国国際貢献考えるときに、そのあり方について、この法案考え方の基礎となっているその思想について提案者の意図をまず承りたいと存じます。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 御質問にございましたように、これからの国際貢献考える場合に、あるいはまた世界との協力考える場合に最も重要なことは、我が国憲法理念、それを世界にどう生かすのかというふうなことであろうと思います。  お話にございましたように、私ども提案しました内容は、日本国憲法内容に照らして一点の曇りもなくこれを表現をする、そして憲法前文にございますように、今日の大きく歴史が回転をする世界情勢の中で、憲法言葉にございますように、誇りある地位をどう占めるのかという気持ちを込めて作成をさせていただいたわけであります。その意味では、今日までの皆様の真摯な議論を通じ、あるいは同僚社会党議員皆さん質問などを通じて、政府案憲法上極めて重大な疑義があるというものとは対照的な内容であるというふうに考えております。  特に申し上げたいのは、今日の情勢の中で極めてこれが重要になっているというわけであります。御承知のように、国連PKOについての最近のさまざまな議論湾岸戦争などを通じて、これまでからこれからの活動をどうするのか、国連平和維持活動をどうするのか、たくさんの議論が起こっているわけであります。そういう中での特徴は、一つは、PKOにおける文民の役割、これを大きく評価をしなければならない。御案内のとおりであります。同時にまた、今までのように、どう対応するかだけではなくて、PKOだけではないPMOですね、さまざまな幅広い分野未然に防止する活動国連は重点を置かなければならないという状況になっているわけでありまして、そういう意味から申しますと、私ども提案は、これまでだけの経験ではない、これからの時代を表現する内容になっていると考えております。  もう一つだけ申し上げたいのですが、今大事なことは、憲法に基づいて世界との協力国民合意をどう形成するかということだろうと思います。国連分裂のもとでの世界協力はしてはならないと思います。私どもも、政府に対して再三再四、国民合意、すべての政党参加をして真剣に議論しようではないかということを提案をいたしてまいりました。願わくば、けさの有力新聞の社説にも書かれておりますが、政府案採決を急ぐということではなくて、我が党の提案について、憲法ベースに、まさに今日の時点での国民合意にふさわしい内容であるという観点から御審議をいただき、御成立をお願いしたいと思います。
  8. 元信堯

    元信委員 政府提案の二法案に対する国民最大懸念は、その存在そのもの憲法違反の疑いの極めて濃い自衛隊を、政府自身がこれまで歯どめとしてきた専守防衛、すなわち海外派兵を行わないとの原則を破り、部隊のまま武装せしめて海外派遣することにあるのであります。このことは、警察予備隊の創設に始まるなし崩し的ないわゆる解釈改憲の総仕上げとして、この法案が万が一にも成立することになると、いよいよ憲法実態との乖離が明らかになり、実態憲法を引き寄せる形での改憲が迫るのではないか、こういう点に国民最大懸念があるのであります。社会党提出のこの法案は、憲法PKOそして自衛隊という観点からどのような配慮をされたのか、そのことについても伺いたいと存じます。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 御質問ございました点がまさに本法案の最も核心的な問題であろうと思います。中心であろうと思います。同時に、今多くの国民皆さん国会審議を見守りながら一番御心配をなさっている点であろうというふうに思います。  私は、憲法に基づき、そして国民合意国際協力法、これがベースだということを申し上げましたし、そういう点について、国民の代表である私どもがまさに真剣な議論合意を図らなければならないというのが政治の使命であろうというふうに思うわけであります。  今の御質問に関連して申し上げますと、一つには、だれがどう言おうと、これは自衛隊部隊として海外派遣する法案以外の何物でもありません。これはだれが読んでも憲法条文に抵触をする、違反をするということは、私は、当然のことであろうというふうに思うわけであります。  例えばスウェーデンの場合を見ましても、憲法国防軍海外派遣禁止をされております。したがいまして、別個組織というものが形成をされている、御案内のとおりであります。私は、日本の場合にはそれ以上に、やはりこれからの時代にふさわしい努力内容考えるべきであろうというふうに考えまして、私ども法案を出してまいったわけであります。一つには、やはり憲法条文憲法平和原理、これに照らして、私どもがただいま提案申し上げました内容以外にないと思っております。  あえて申し上げますならば、昨年暮れ、自公民三党の皆さんにおかせられましては六項目の合意をなさいました。そのときに、第一には「憲法平和原則を堅持」すると書いてございます。そして、引き続きまして「自衛隊とは別個に、」ということも書いてございます。私どもは、それらの点は賛成をし、あるいはまた支持をしながら、その他の点について若干問題があるので真剣に議論しよう、そして政党間でも議論し、国民合意を図ろうではないかということを申し上げましたが、そういう議論を今改めてやらなければならないのが私ども使命ではないだろうかというふうに思うわけであります。  もう一つは、先般のある有力新聞世論調査でも、PKFにまで参加することの是非について、たしか六〇%程度の反対という内容がございました。国会審議などなどを通じながら、多くの国民皆さんが、これでいいんだろうか、世界に対して日本は積極的に貢献をし、ともに生きなければならない、と同時に、自衛隊部隊として出動する、PKF参加する、これはおかしいではないかということを深刻に、また真剣にお考えになっているのが今日の国民の意識ではないだろうかと思います。そういう国民の、今真剣にお考えになっている気持ちとずれない、それと合った方向への内容を決めていくのが、私は、国会使命であろうと思います。そういう方針に基づいて私ども法案を出させていただきました。御理解いただきたいと思います。
  10. 元信堯

    元信委員 社会党提出法案は、要約して言えば、非軍事文民民生、この三つ言葉に集約をされるであろうというふうに思います。これらの理念を具体的にどのように実現しようとしているのか、ぜひ国民皆さんあるいは与野党議員皆さんに具体的にイメージできる形で御説明をお願いをしたいと存じます。
  11. 上原康助

    上原議員 お答えします。  社会党提出をいたしました法案の骨子というのは、今質問者が御質問なさったように、まさに非軍事文民民生というのを基軸としております。それは、国際貢献多様性あるいは国民のいろいろな声があるということは、私どもよく認識をいたしておりますが、本委員会でもしばしば問題になりましたように、憲法とのかかわり、あるいは目的・任務が武力行使を伴わないものであるといっても、一たん国際紛争がおさまっている地域武器を携帯した自衛隊組織ごと派遣をするという場合は、紛争が再発した場合は、原則武器の使用を禁止あるいは武力行使であっても、やっぱりそれに巻き込まれるおそれが多分にあるというのがPKFの今日までの国際社会における認識なんです。  そういう面からすると、政府自民党も今日まで、集団自衛権憲法上認められていない、武力行使はできないということをおっしゃっているわけですから、そのおそれのあるところに自衛隊武器携帯のまま組織ごと派遣をするということは、これはやっぱり国民合意形成ができない。そういう意味では、憲法理念精神を正しく反映をさせて国民合意形成を求めるには、非軍事文民民生国際貢献策というものを日本平和国家としてやっていくというのが、私は、将来の平和国家日本の目指す方向性だろう、こう考えて、そういう内容法案提出をいたしました。
  12. 元信堯

    元信委員 我が国におけるいわゆるPKO法案審議は、ひとり我が国国民だけではなく、世界じゅう、とりわけアジアの諸国民がかたずをのんで見守っていると私は思います。かつて日本軍国主義に踏みにじられた諸国としては当然と言わなければなりません。歴史が証明しているように、いつでも軍隊がやってくるときは、平和を口実にやってくるのであります。この法案において、アジアの同胞への配慮はどのように行われたのか、提案者の御説明を伺いたいと存じます。
  13. 山花貞夫

    山花議員 ことしは、よく言われておりますとおり、パールハーバーから五十年、そしていわゆる満州事変から六十年、加えて日韓併合条約から八十一年、私たちは、そうしたけじめの年にあるということを踏まえなければならないと思っています。諸外国の皆さんは、そうした記念すべき年に日本自衛隊海外派遣しようとしている、こういう目で不安なまなざしを向けているということについて、自民党案は一体どう考えているのかと言わなければならないと思っています。  実は従来、この点につきましては、自民党側におきましても、既に前内閣時代においてやはり心配だったのでありましょう、各国に説明をした、理解を求めたという経過については私たち承知をしております。八月の十二日、海部前首相江沢民中国共産党書記との会談、あるいは八月の十七日、自民党の小渕前幹事長と同じく江沢民書記との会談、伝えられた報道などを通じて、依然として中国も、いろいろな言葉回しはありましたけれども、強い警戒感を持っていたということではなかったでしょうか。  そして、最も端的な指摘が十月の末、韓国国防白書に示されておりました。韓国国防省は、十月の二十八日に今年の国防白書を発表しておりますけれども、九〇年代後半の日本防衛力について、従来の専守防衛概念を拡大解釈して、徐々に前進防御のための攻撃的性格に変貌しつつあると、日本軍事大国化に強い憂慮を示しています。九〇年度防衛費予想額は四兆四千億円と、我が国国防費の三倍以上であり、軍事大国の水準であると分析しています。さらに、湾岸戦争以降は掃海艇派遣や……(発言する者あり)
  14. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。
  15. 山花貞夫

    山花議員 国連平和維持活動参加方針を決定するなど、すなわち、韓国皆さんは今回の平和維持活動参加方針決定に対して、国際的な軍事的役割拡大を志向しながら、そのための自衛隊法などの関連法規の整備を急いでいるとして、近しい立場にあるとされている韓国の側からも、日本軍国主義によって不幸を経験した韓国など北東アジア地域諸国を憂慮させているという国防白書内容を、私たちは真剣に受けとめていかなければならないと思っています。  私どもは、伺っている限りでは、政府が、この韓国のいわば政府の見解に対して誤解を解くために外務省が伺ったと聞いておりますけれども、今日まで私たちは、その誤解が解けたという情報には一切接していないわけでありまして、外務省がいかに努力しても、近しい関係にあるとするそうした国の皆さんの誤解を解くどころか、そうした懸念と不安というものがさらに一層強まりつつある中で、最近のアジア諸国の情勢としても、従来に増して日本自衛隊海外派兵するかということに対しての関心が高まり、問題認識が深まっているという現状だと私どもは把握しております。  私たちは、こうした国際貢献には大きな三つの要件が必要だと考えております。要件というよりは前提と言った方がよろしいかもしれませんけれども、何よりもまず第一には、多くの国民理解と同意、第二番目は、国会承認の手続を含めた国会における圧倒的多数の与野党の賛同、そして第三番目に、かつて侵略と戦争の傷跡残るアジア諸国の皆さん理解ということではなかろうかと思っております。  そしてまた、同時に私たちが強調したいと思いますことは、国際貢献考えるならば、国際貢献をする側、与える側の立場だけではなく……(発言する者あり)
  16. 林義郎

    林委員長 御静粛に、御静粛に願います。
  17. 山花貞夫

    山花議員 国際貢献を受ける側、国際貢献を期待する側の立場考えなければならない、このことだと思っています。政府考え方は、いわば国際貢献をする側の立場だけを考えているのではないだろうか、国際貢献を受ける側の期待、要求、そして不安の解消、そのことなくして本当の意味日本国際貢献をしたとアジアから評価される中身にはならないと思っているところであります。  我が日本社会党提案こそが、その意味において国民の大方の皆さん合意を得ることができ、かつアジア皆さんからも理解と、そして国際貢献を受けたということについての感謝の気持ちを抱いていただける、そして相互の合意がそこから導き出せる唯一の法案であると確信をして提案をさせていただいた次第でございます。
  18. 元信堯

    元信委員 英明なる議員諸君の賛同を得てこの時宜にかなった社会党提出法案が成立をした場合に、実際にどのような活動が行われるのか、伺いたいと思います。  とりわけ問題なのは、国連平和協力隊との指揮系統の確立の問題でありましょう。政府政府案説明において、我が国から派遣する自衛隊国連事務総長の指揮下に入らない、このように明言をしており、あるいはまた、国連PKO原則からも大いに逸脱していると言わざるを得ません。このような無理を貫くために政府は、指揮を指図と言いかえ、国連平和協力隊に対する統括を、法制局長官の答弁によれば、ネズミ講における親ネズミが子ネズミ、孫ネズミにリベートを要求する、それと同じ意味である、このようなことを言い出しているのであります。このような言いかえによるごまかしは絶対に容認できない、こう言わざるを得ません。社会党案における国連平和協力隊との関係について、政府のような言いかえあるいはでたらめな概念引用によるものではない明快な御答弁をお願いしたいと思います。
  19. 上原康助

    上原議員 お答えします。  今お尋ねがありましたように、もし政府提案が通って自衛隊武器を携帯をして海外派遣をされるということになりますと、本来、国連のいろんな文献を見ましても、また本委員会でしばしば議論されてまいりましたように、我が国から派遣される自衛隊にしても、いわゆる平和協力隊というか平和維持軍、PKFの場合は国連事務総長の支配下に入るというのが原則なんですね、原則というよりも、むしろそれが国連の平和維持軍の運用のあり方なんですが、それを指揮権の二重構造というか二元的指揮権でやっていこうというところには大変無理があるんですね。  なぜそういう非常に無理な解釈をするかというと、先ほど御答弁しましたように、憲法とのかかわりが大変出てくる。だから、自衛隊というのは、本来軍隊というのは、まあこれは常識論で、軍事論で言うと最も命令系統を重んずる組織なんですね。上司の、上官の命令に従って軍隊組織というのは動いているというのが、これはもう言わずもがなの話で、だれが考えても、それを、個々ばらばらで武器を使うんだ、あるいは束ねるんだと、組織としてはやらないんだが、組織的には武器を使うこともあるんだと、それが武力行使ではなくして武器使用なんだ、正当防衛だ、自己防衛だというような、御質問者のお尋ねにもありましたように、相当無理をしているこじつけ的な面が多いという面でありまして、その意味で、そういう不明瞭さ、指揮系統権をあいまいにしないということで、社会党提案しているのは、非軍事民生文民原則とすると。それを、はっきり土台をきちっとすれば憲法上も指揮命令系統上も、国連におけるそういった協力関係においても私たちは整合性がとれると、そういう面では社会党案がむしろすっきりしている、こういうふうに相なろうかと思います。  以上です。
  20. 元信堯

    元信委員 一部には、軍事力を利用せずにPKO参加するならば、現行の海外青年協力隊やJICAの拡充で十分ではないか、このような意見もあるやに聞いておりますけれども、あえてこの新法を提出をする積極的な意義について、重ねて御説明をお願いしたいと思います。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 いろいろな意味で、国連平和維持活動、そしてまた国連のさまざまの世界平和のための活動というものに対して、日本憲法日本立場にふさわしい努力最大限に積極的にやっていかなければならないというのが私ども考え方の基礎になっているわけであります。初めに自衛隊ありきという発想では、これは全然違うと思います。また、世界のこれからの時代にも合わないと思います。  例えばでありますが、カンボジアの問題があります。自衛隊が行くのか行かないのかという御議論もあったようでありますが、私も超党派の政策責任者でこの七月にカンボジアヘ行ってまいりました。各派の皆さんあるいはプノンペン政府皆さんなどなど、いろいろ会ってまいりました。あのカンボジアの現地の中で向こうの責任者の方々から、日本自衛隊軍事力、ぜひ来てくださいという話はただの一人も私は伺っておりません。切実に言われたことは、十数年間、道なき道をさまよい歩いた、ようやく今世界の国とともにハイウエーに乗ろうとしている、新しい希望が生まれた、ぜひ日本は応援してください、何を応援するのですか、基礎的なインフラ、例えば道路でも通信でも、あるいは電力、電気でも大変な困難な状態にあります、大変な厳しい状況に置かれています、何とかみんなが、カンボジア各派が、人民が連帯して新しい国家を築くために、真剣に心の通った応援をお願いしますと言うわけであります。  例えばでありますが、福田さんの総理のときであったと思いますが、日本が援助をいたしまして通称ジャパン・ブリッジ、日本橋と言われるメコン川にかかる大きな橋がございます。ポル・ポト、内戦、その他の中でピアが一本と百メートルほど壊れております。十年、二十年近くになるのに全然それは直されておりません。船でやっております。どんなに不便なことか。それができたら、カンボジア・プノンペンの皆さんがどんなに喜ぶことかと思います。やろうと思ったら、こんなことは大したお金でもないと思います。本当にやろうと思ったらすぐ、日本橋、ジャパン・ブリッジという名前になっているのですから、今すぐにでも私はやるべきだと思います。  言うならば、これから国連の中でUNTACその他の編成が進むわけでありますけれども日本からは、カンボジアの人民が一番願っている、一番困っているそういうことについて、やはり同じアジアの一員として、経済力と技術力を持つ日本が積極的にほか以上にそれをまずやりましょうという提案を、今すぐなぜ出さないのかということを非常に感じたわけであります。そういう努力を真剣にやろうではないか。自衛隊が行く行かない、自衛隊派遣する、これは間違いだと思います。本当にこれは全体の日本のあるべき中でのごく一部分の議論だと思います。そうではなくて、もっともっとやるべき大きな貢献をどうしていくのかということをやるべきであろうと思います。  カンボジアなどなどの国を訪問しながら思いましたが、先ほど御質問の中でアジアというお話がございました。やはり今の状況のもとで、もし何かがあってアジア自衛隊派遣をされるとしたら、これは大変なことになると思います。大変な批判と抵抗を受ける、私はそうなると思います。アジアの諸国民の代表と、ここに外務大臣がいらっしゃいますけれどもアジアの諸国の代表と一緒に、日本はどういう方向アジアのために、世界のためにやったらいいのか、注文を聞いてそれに合うようにやろうではないか、こういうふうな意思統一などをやられるべきではないだろうか。私は、ここで早く採決をするのではなくて、表の外務大臣・副総理がいらっしゃいます、私ども影の副総理も外務大臣もおりますので、相談をして、そういうやはりアジアの人民からも支持されるような大きな計画と大きな構想をどうするのか、だれが考えても私は当然だと思いますが、そういう方向でやってまいりたいという気持ちを込めて提案をしているわけであります。
  22. 元信堯

    元信委員 大変よくわかりました。  終わります。
  23. 林義郎

    林委員長 次に、伊東秀子君。
  24. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 社会党・護憲共同の伊東秀子でございます。  第一回国連軍縮会議におきまして、当時の園田外務大臣は大変格調の高い演説を行いました。その中には、「人類の先覚者たる日本国憲法」と、高らかにこの「人類の先覚者たる日本国憲法」という言葉を使っております。きょう審議になっておりますこの法案は、まさしく「人類の先覚者たる日本国憲法」の精神を中軸に据えて、この憲法を全世界に広めていく、しかも、受け入れ国が最も何を必要としているか、そういった観点に立っての国際貢献、さらには、国連PKO活動とはどういうものであるか、国連PKO活動のマニュアルにもぴったり合致して何のそごもない。非常に私は、今求められている国際貢献あり方法案にしたものであると高く評価するものでございますが、何点か疑義もございますので、細部にわたって御質問させていただきます。  まず、この社会党案の中にある平和協力業務とは何かということに関してですが、政府提出法案では、あたかもPKF自衛隊員を部隊ごと武器を持って出さなければ国際貢献はできない、そういったことが中軸、中核になる、自衛隊活動が中核になるPKO協力法案の形をとっております。ところが、この社会党案では、全く非軍事部門に限定している、文民活動に厳しく限定しているという形をとっているわけでございますが、これは国連の目指す方向、そういったものとの合致等についてはどうなっているのか、お答えいただけたらと思います。
  25. 早川勝

    ○早川議員 伊東委員質問にお答え申し上げます。  その前に、最初に、社会党がいわゆるこの国際平和協力法案提出いたしたわけですけれども、その前段といたしましてぜひ御理解いただきたいという社会党考え方を御指摘したいと思います。  それは、国連が今総会を含めまして議論されている内容にもかかわるわけですけれども国連の平和活動というのは非常に広範な分野に広がろうとしてきているわけです。それは、一つの例を言いますと、麻薬の問題だとか、それから貧困、飢餓の問題、そういったとこまで国連活動を広げていくことが広い意味での平和活動になるんだ、こういう議論が盛んになってきております。  そういったことを考えてみますと、社会党がこれから国際協力をやる場合に、二つ考えております。一つは、やはりいわゆる国際緊急援助活動ですね。御存じのように、フィリピンのピナツボ火山の災害あるいはバングラデシュの洪水等々、自然災害に対して日本こそ積極的に貢献すべきだ、これが一つございます。それともう一つは、国連中心として行われている、そしてまた国際機関を通じてのこういった平和活動でございます。  今回出しました法案に関連して申し上げますと、国連の事務総長報告、昨年の九月十八日に行われておりますが、その中で、平和維持活動についても文民の果たす役割が広がってきているという、いわばメニューが出されてきておるわけですね。選挙監視だとかあるいは文民警察、医療サービス、輸送サービス、資材提供から、さらには人道的援助、行政支援、財政支援等々、こういった形で、積極的に文民を活用した形で平和維持活動を進めていこう、こういった報告が出されております。  そういったことを考えてみますと、非軍事文民民生、そして日本国憲法精神にのっとり最大協力をするという趣旨を盛り込んだ法案でございますので、何分とも御了承、御理解をいただきたいと思っております。
  26. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 この法案の中には、第二条の基本原則のところに停戦の合意ということがございませんで、その点で政府案とちょっと違う点もあるわけでございますが、このPKO活動に対する同意の原則、さらには内政不干渉原則三つ目には中立の原則、この三つを基本原則として掲げているわけでございますが、この停戦の合意というものを入れなかったのは、つまり、軍事には一切関与しないということと、さらには、もし万が一、人道的な救援活動であり被災民救援であっても、一方の側に加担するような、あるいは内戦の一方の当事者に加担するような場合には、ここで出ていかないということが担保できるというふうに考えているのでしょうか。その辺をお聞きいたします。
  27. 早川勝

    ○早川議員 今御指摘のとおりでございまして、社会党案は非軍事文民民生ということでございますので、政府提出案のような、自衛隊を出すということを一切前提としておりません。ということと、社会党案に第五条でも書いてございますけれども実施計画を出すんだ、そして、しかも国会の承認ということを考えてみますと、十分担保できるというふうに考えております。
  28. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それから、「国際平和協力隊は、国際平和協力活動を行うことを任務とする。」という第四条の規定がございますが、この国際平和協力隊員、これはどこに所属するのか、その身分関係についてお伺いいたします。
  29. 早川勝

    ○早川議員 この協力機構を設置するわけですけれども、そして協力隊員を編成いたしますけれども、基本的には、一つは、まあ三区分という表現が適切かどうかわかりませんけれども、その機構の、常設機関でございますので、そこに常勤をしている専任の方がおります。専属の方ですね。それと公務員、地方公務員、国家公務員の協力もいただくということと、もう一つは、法案にも書いてございますけれども、ボランティアの方にも協力をしていただくという形で、協力隊員を確保し、編成したいと思っております。  問題は、その身分の問題ですけれども、もちろん、専従者というのはその機構の専従でございますし、問題は、公務員の方に協力をいただくわけですけれども、そのままいわば出向という形で協力をしていただきますので、例えば自治省から選挙監視団に出ていただくということになれば、自治省の事務所掌、仕事の所掌範囲でやっていただくということでございますので、身分は公務員あるいは地方公務員という形で保障されております。
  30. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といたしますと、国際平和協力機構というものをつくり、今の御答弁によりますと、その平和協力機構の中に常設の職員をある程度人数を置く、さらには、関係行政機関とか地方自治体に要請をして、国家公安委員会、そういったところへ要請を出して、その行政機関の職員として身分を保有したまま機構の隊員として平和協力業務を行う人たち、さらにはボランティアが平和協力機構に登録して、そしてその国会承認を得て派遣をする都度出ていく、この三つの構成になっているというふうに承っていいのかと思いますが、その平和協力機構というのは、外務大臣が機構に対して「派遣するよう命ずることができる。」というふうに第六条にはなっておりますが、その機構とは、どういう外務大臣との関係、その組織の、どういうものを予定しているのか、若干御答弁をお願いいたします。
  31. 早川勝

    ○早川議員 お答えいたします。  外務大臣の所管するいわば特殊法人ということを考えておりまして、人員の構成、今委員復唱されましたけれども、その中で、常設の機関であります機構の専従者というのは大体三百人程度確保し、そしてトータル、先ほど公務員、それに協力をいただく公務員とそれからボランティアの方を含めまして、およそ千人ぐらいの体制がしければ十分活動できるんだというふうに考えております。
  32. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 そうしますと、その機構の職員となるのは三百人程度である、そして活動しているときの最高限度人数が一千人程度であるということはわかったんですが、地方公務員や国家公務員等が協力機構の中に入って活動する場合の身分は、行政機関、つまり自分がもともと所属しているところの職員の身分のまま、その行政機関の職務をそのまま機構の中でも行うというふうになるんでしょうか。その辺を若干整理して御説明いただけたらと思うのですが。
  33. 早川勝

    ○早川議員 公務員の身分は、国家公務員、地方公務員ございますけれども、身分はそのままでございまして、そして外務大臣がそれぞれ、法案に書いてございますけれども、公安委員会等々にそれを、ここに出向という形を、協力機構に出向をしてもらいたいということをいわば依頼するわけでございますので、そこへ来ていただきまして、そしてその仕事としてその平和協力活動を担っていただくという考え方でございます。
  34. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その仕事としてというのは、その地方公共団体なら地方公共団体の職務の一部として行うというふうに承ってよろしゅうございますでしょうか。
  35. 早川勝

    ○早川議員 そのとおりでございまして、公務員としての仕事としてやっていただきたいというふうに考えております。
  36. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 その平和協力機構に関しての細部、外務大臣の所管のもとにある特殊法人であるというお答えでございましたが、その細かいことについては、第十一条では、別に法律をつくるという構造になっているわけでございますが、この組織の編成あるいは構成その他は別な法律に基づくというふうに考えていいわけですね。
  37. 早川勝

    ○早川議員 この法律を、ぜひとも院の御賛同を得まして成立させていただきまして、その時点でこの機構の組織法を整備し、とにかくきちんとした方針、基本法、こういうものをつくっていただいて、そしてそれを執行する組織機関をきちんと内容を詰めてということを段取り的に考えておりますので、御理解をいただけたらと思います。
  38. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 それから、平和協力隊員が平和協力活動を行う場合の指揮命令系統はすべて国連の事務総長の指揮下に置かれる、国連の指揮下に置かれるという先ほどの御答弁でございましたが、関係行政機関、公務員は、地方公務員も含めてそのもともとの職場の業務の一環として行うという部分もございますので、その現場での指揮関係をもう少し今政府案と対置した形で御説明していただけたらと思います。  つまり、政府案では、自衛隊自衛隊法に基づき防衛庁の業務としてPKO活動の一環を担う、その場合には国連の指揮下には入らないというようなことを政府関係者は答弁しているわけでございますが、その政府案との対比がはっきり浮き彫りに出る形でこの我が社会党法案の指揮命令系統をもう一度詳しく御説明いただけたらと思いますが。
  39. 上原康助

    上原議員 お答えします。  先ほど元信委員のお尋ねのときに答弁しましたことに尽きると思うのですが、この社会党提案をしております法案の第六条で「国際平和協力隊派遣等」ということがあります。  今お尋ねのところはその第二項で「協力隊は、国際の平和及び安全の維持のための活動に係る国際平和協力活動を行うに当たっては、国際連合事務総長の指揮に従うものとする。」これはPKO活動、もちろんFの方は社会党は除外をしておりますので、武器使用であるとか武力行使であるとか、そういう面は当初から想定した法案内容になっておりませんから、その点が政府提案との根本的な違いであるということと、いま一つは、先ほども申し上げましたように、指揮命令系統が二元化されるということは、これはむしろ混乱を引き起こす可能性も多いと思うのですね。ここで机上のやりとりをする中ではいろいろつじつま合わせはできるかもしらないんだが、紛争再発のおそれがある地域において一つ組織として行動をしていく場合に、やはり指揮というものは二元化をしていかないと大変混乱をする。国連平和維持活動というか、国連協力をするという基本の面において、むしろそれぞれの加盟国というかあるいは派遣国が指揮権を持つんだということになると、これは協力業務そのものが体をなさないというおそれがあると思いますから、そういう面で指揮命令系統というのはやはり国連事務総長に一元化をする。  その国連事務総長が指名をする現地、現場の司令官というか、そういう面、これはもちろん日本から行くPKOの隊の司令官が国連事務総長から指名される場合もあるかもしれません。そういう面での縦の一元化というものは社会党案ではきちっとしていることと思いますので、その点は政府案と明確に区分されている点だと私たちは自負をいたしております。
  40. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 要請する関係行政機関の中には防衛庁が除かれております。つまり、現職の自衛官はたとえ個人であっても派遣考えていない、あくまでも退職した自衛官が個人の資格で機構の職員として、あるいはボランティアとして登録するということは構わないというような構造になっていると考えてよろしゅうございますでしょうか。
  41. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 伊東さんの御質問と同じですね。そのとおりの取り扱いをいたしております。  と申しますのは、私ども自衛隊部隊として派遣をするというのは憲法上も実態上も間違いである。同時に、自衛隊員の経験なんかを持たれる皆さん自衛隊を退職して、そして新たな意気込みと名誉感を持ってこれに参加するということはまことに結構なことだと思っているわけであります。私は、そういう手続論だけではなくて、この際、やはり日本自身の軍縮と世界協力に対する大きな構想を持つべきだというのを前提にしているわけであります。  今日、世界が新しい軍縮時代を迎えている、日本自身の軍縮の構想とその努力がなければ、これからの時代に対応する日本の進路にはならないと思います。そういう意味では、今日の自衛隊、大胆な削減、同時にさまざまのレスキュー、その大胆な改編、言うならば違ったものに持っていくというふうな大きな構想を持つべきであろう、これが新時代におけるところの本当の意味での軍縮ではないだろうかと思うわけであります。そうなりますと、当然ながら、今日の巨大な防衛費というのは大幅に削減をされる。そういう削減されたものが私ども提案している新しい分野に、立派なものとして、また大きく貢献するものとして活用される、そういう時代の進路をやはりぜひとも持つべきではないだろうかという考え方であります。
  42. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 といたしますと、今の御答弁を伺っておりますと、むしろ積極的に自衛隊員がその能力を、これまでの規律とかを生かす形で、自衛隊を退職して個人の資格でこの平和協力隊に加わることはむしろ大歓迎である、それをむしろ方向としては目指したいというふうに承ってもよろしゅうございましょうか。
  43. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 そういう方向に向けた新しい時代の大きな構想とまた変化が求められているというのが今日の時代であろうと思います。日本国憲法をだれが読んでも、今日の自衛隊は違憲である、しかし、法的には存在をしているという今日の状態であります。しかし、そういうものをどうしていくのか。今の自衛隊存在そのものを今のまま置いて、また自衛隊をそのまま出そう、何かどこかの調査会でやっているようですが、世界公認の軍隊として堂々と出そうではないか、国連あるいは国際というネーミングなら問題はないというふうな大変な暴論も出ているようでございますけれども、そうではない、やはり新たな構想を持つべきである。  例えば、フィンランドなんかの場合でも、私ども伺っているところでは、基本的にはボランティア組織、大部分はボランティアという形で編成をされているというふうなことを伺うわけでありますけれども、そういうさまざまの国のさまざまの参加の仕方があるわけでありまして、そういう中で、これからの日本の進路にふさわしい発想と編成とやり方を考えていくという知恵と努力がやはり必要であろうということであります。
  44. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 きょうの新聞の報道によりましても、カンボジアは大変な医薬品の不足とか食糧の不足、しかも上下水道がめちゃくちゃにされたために疫病が発生している。日本に助けてほしいのは、自衛隊派遣ではない、医療チームの派遣であり、さらには、そういったさまざまな技術者が来て、戦後の復興のための上下水道の整備、そういったさまざまなことに手をかしてくれることだというようなことが報道されております。こういった……(発言する者あり)地雷処理が今必要なことではない、人間の生命の方が大事なんだということが訴えられているわけでございますが……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。私が質問中でございますので静かにしてください。  それで、この法案でお伺いしたいわけでございますが、こういった文民に、医療あるいは被災民の救助、さらには、後方の部分で行う輸送や保管、三条の三号リのところには「輸送、保管、通信、建設又は機械器具の据付け、検査若しくは修理」というような部分も書いてございます。こういった部門を行うについて、武器を持たなくても大丈夫であろうかというような心配もあろうかと思うのですが、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
  45. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 カンボジアのお話が一つございましたが、私は、正直言いまして非常に何か焦った気持ちになっております。報道で伺いますと、聞いておりますと、今ドイツはカンボジアに対し医療チームを派遣をしている。そしてオーストラリアは同じく通信隊を出しているという状況でございます。特にドイツは基本法の改正論議などがあるわけでありますが、それはそれでゆっくりやろう、今できることを、またやらなければならないことを、カンボジアが求めていることを緊急にやろうではないだろうかということになっているわけであります。なぜ日本の方がおくれているのでしょうか、同じアジア人、同じアジアの国なのに。というふうに思うわけでありまして、自衛隊派遣する、しないの議論とか、そんな問題を考える前に、先ほど申し上げましたが、橋を直す、どんなに喜ぶか。あるいはまた、ドイツやオーストラリアがやっているのですから、同じように医療チームを派遣をする、通信隊を出していく、こういう努力をして、そして今役に立つこと、例えば、間もなくSNC本部が本格的にスタートいたします。私も行ってみましたが、一生懸命その建物を補修したり直しています、前の建物を。そういうこれからの新生カンボジアのセンターとなるものをつくるについて全面的に日本は、資金面でも建物でも技術でもクーラーでも協力しましょうとか、気持ちのこもったことがなぜできないのかというようなことを思うわけでありまして、こういう努力日本が先頭を切ってやることの中で、私ども提案しているような法案の成立によって整然と大きく位置づけられて、新しい方向が実現をするというふうなことではないだろうかと思っているわけであります。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕
  46. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 武器の使用についてはどのようにお考えでしょうか。
  47. 上原康助

    上原議員 御答弁いたします。  今質問者がおっしゃったとおりで、武器の使用は一切想定していない、こういう基本でございます。ただ、この点については、恐らくほかの質問者からも質問があると思うのですが、よくは存じませんが、例えば我が国から派遣されている外務省の職員の場合に、その派遣されている国でピストルの所持が法律上認められているとか、あくまでも護身という立場で所持できる範囲のものについては、相手国の相談いかんによってはあり得ると思うので、機関銃を持っていくとか装甲車を持っていくとか、そんな大げさなことはこの案にはないということでございます。
  48. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 さらには、七条の九項で、国家公安委員会に対しても要請をすることができるようなことになっておりますが、これはどのようなことを考えておられるのでしょうか。
  49. 早川勝

    ○早川議員 先ほども答弁いたしましたけれども文民のやる活動範囲の一つ文民警察という項がございます。民生のためにということを考えてみますと、そういった分野でも協力するのが望ましいと考えております。その文民警察というのは、やはりそれなりの専門家でないといけないということを考えてみますと、都道府県警察、そういったところへの協力を求めるということで公安委員会ということを書き込んであるわけでございます。
  50. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 最後に、こういった社会党案は非軍事に限定して、しかも、今国連が目指す文民の役割をどんどん拡大していこう、文民の役割を重視していこう、これまで軍事要員でしか行っていなかった部分を、民間会社の技術者とかあるいは行政機関のそういった技術を持っている人とか、そういった者の力をかりながら国連活動へ全面的に協力していこうという社会党案でございますが、非常にその点が、自衛隊部隊ごと武器を持って出ていく、防衛庁の業務を行うという、ここが中心政府案と対比をしているわけでございます。  突然で申しわけないのですが、宮澤総理にお伺いしたいのですが、この二つの対比を見てどういうような御感想を抱かれておられますか、ちょっとお願いいたします。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 いろいろ御質疑、提案の御説明等を伺っておりまして大変参考になりましたが、この法案の目的としておられるところと、政府がお願いをして御審議いただいております法案の目的としているところとはかなり違っておるということを感じております。
  52. 伊東秀子

    ○伊東(秀)委員 自衛隊派遣するか否かが、まず目的にしている政府案とは、もうそれは当たり前なことで、違うのは当然でございます。そういう意味では、もう少し明快なお言葉が承りたかったなと思います。  これで私の質問は終わらせていただきます。
  53. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 この際、秋葉忠利君から発言を求められておりますので、これを許します。秋葉忠利君。
  54. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 実は私、十九日の本委員会での質問中にフィールドコマンダーという言葉を使いましたが、これはフォースコマンダーという言葉を使うべきでしたので、議事録の方の訂正をしていただきたいというふうにお願いしましたが、使用箇所が非常に多いということで、時間をかりてこの場で訂正をさせていただきます。  一言説明を加えさせていただきますと、フィールドコマンダーとフォースコマンダーという差は、指揮を指図と言いかえるような意図的なものではありませんで、非常に単純な用語上のミスでございます。フィールドコマンダーというのは現場の指揮官ということですから、用語上は、意味上は間違いではないんですけれども国連の方では特にこれをフォースコマンダーというふうに言っておりますので、改めて訂正をさしていただきたいということです。  実は、私がこのフィールドコマンダーという言葉を使ったために、宮澤総理初め、おつき合いいただいたと言ったらいいんでしょうか、あるいはついうっかりつられてというふうに言ったらいいんでしょうか、外務省の方も同じ言葉を使われたようなんですが、御迷惑をおかけいたしました。  ついでに、つられついでに、この政府提案法案も、私の発言の意をお酌み取りいただきまして廃案にしていただければ大変ありがたいんですが、とりあえずは用語の訂正をさしていただきます。  どうもありがとうございました。
  55. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 次に、緒方克陽君。
  56. 緒方克陽

    ○緒方委員 昨日に引き続きまして、海上保安庁の問題、そして輸送の問題について質問をさしていただきたいと思います。  きのう質問が中断をいたしましたので、ちょっとなかなか議論が進まないかと思うのですが、きのうの質問の最終段階の中で、結局海上保安庁の、例えば保安巡視船艇というのは九一年、九〇年、そして九二年と要整備の船艇が三年間も放置をされたままであるということ、また、耐用年限を超えた船艇が五十隻もある、そういう現状にあるということがはっきりしたわけであります。そういう中で国際平和協力活動参加ということになれば、海上保安庁の本来の任務に支障が出るのではないかというふうに思われますが、その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  57. 小和田統

    ○小和田政府委員 本法案で海上保安庁が協力隊に参加いたしますのは、保安庁が長年にわたり蓄積してまいりました専門的知識、経験あるいは装備を有効に生かせる分野として、平和協力業務の中でも被災民の救出救援といったような人道的な分野について可能な範囲で協力していくということでございますけれども、御指摘のとおり、国内の業務に対する対応能力を維持しておくということも非常に重要なことだと考えております。  したがいまして、参加できる勢力につきましてはおのずから限度があろうかと思います。具体的要請があった場合に、海難の多発時期であるかどうか、あるいは領海警備等への対応、ふくそう海域での安全対策といったようないろいろな業務需要を考慮いたしまして、国内における任務遂行に支障を生じない限度において参加することになろうと思います。
  58. 緒方克陽

    ○緒方委員 そこで、さらに具体的に進めたいと思うのですが、法律の第六条五項では、「海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度においてこということで、今も答弁があったことでありますけれども、先ほど私が質問でも申し上げましたように、大変厳しい巡視船艇や航空機の整備状況の中では、任務遂行に支障が生じる場合が想定されるというふうに思うわけでありますが、支障が生じる場合にはどういう対処をされるのか、お答えをいただきたい。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 小和田統

    ○小和田政府委員 ただいま先生も御指摘なさいましたように、実施計画を作成するに当たりまして、海上保安庁の船舶あるいは航空機で行います協力業務の種類、内容、あるいは協力業務を行う職員の規模等につきまして、これを定めるに当たりましては、「海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度において、」ということを法案の六条にも明記していただいているわけであります。  実際に実施計画の案を本部で策定する段階におきまして、そういう海上保安庁の事情等も十分本部に対して申し上げ、必要な意見を反映していただけるものと承知しております。
  60. 緒方克陽

    ○緒方委員 その支障が生じるかどうかの判断はだれが行うのですか。
  61. 小和田統

    ○小和田政府委員 支障を生ずるかどうかという具体的な判断につきましては、これは、とりあえずは、一次的には海上保安庁長官が行いますけれども、最終的な判断は、閣議において実施計画の案を決定する段階で行われるということになろうかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、案の作成段階において、事前に十分な協議、調整が行われることとなっております。
  62. 緒方克陽

    ○緒方委員 今の答弁では、最終的には閣議という話もありましたけれども実態を一番掌握をされているのは海上保安庁長官というふうに思いますが、海上保安庁長官がなかなか困難だというふうに判断された場合には拒否をするということもできるんでしょうか。
  63. 小和田統

    ○小和田政府委員 法律的な意味での拒否権というようなことではございませんけれども、この協力業務を円滑に遂行する上で事実上必要なことでございますので、案の作成段階で十分調整していただき、問題のないようになると承知しております。
  64. 緒方克陽

    ○緒方委員 問題のないようにということですが、主体的には海上保安庁の長官が判断をされるんじゃないですか。
  65. 小和田統

    ○小和田政府委員 実態的には海上保安庁長官が判断し、それが尊重していただけるものと承知しております。
  66. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、事実上保安庁長官が判断をした場合には拒否をされる場合があるというふうな答えだったというふうに思いまして、そういうふうに確認をいたします。  そこで、保安庁に最後の質問ですけれども、海上保安庁の船は公船という、公の船という分類で、自衛艦とか軍艦という船とは違うというような国際法上の取り決めがあるというふうになっておるそうでありますが、この海上保安庁の巡視船が海外でこの活動をする場合の問題ですけれども自衛隊が所持する武器については、「実施計画に定める装備である」というふうに規定をされておりますけれども、海上保安庁の巡視船が海外に出かけて平和維持活動参加する場合に、機関砲、機銃についてはどういう扱いになるんでしょうか。
  67. 小和田統

    ○小和田政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、法案の第二十四条に明記されておりますけれども派遣先国において平和協力業務に従事する海上保安官が巡視船に搭載されている機関砲等を使用することはできないということが法文上明らかになっております。
  68. 緒方克陽

    ○緒方委員 ですから、私が質問しているのは、そういうことができないということであれば当然外されていくということになるんじゃないかということで、質問に正確に答えてもらいたいと思います。
  69. 小和田統

    ○小和田政府委員 派遣先国までの途中の公海上において、本来の海上保安業務を遂行する必要があるという場合などもあり得ますので、そういうときには搭載したまま派遣することもあり得るかと思います。
  70. 緒方克陽

    ○緒方委員 そういう答弁になりますと、つけていくことが多いということになりますが、いろんな前段の話を聞いた中では、特別に、例えば海賊が横行しているとかそういう特殊的な事情がある場合にはそういうこともあるかということは聞いていたんですけれども、現実の状況で、今日の世界状況でそういうのがあるかといえば、それはないということでありますから、それは当然今の時点では外されるということになるんじゃないですか。
  71. 小和田統

    ○小和田政府委員 私どもがこの協力業務に対応する場合に、緊急に出動するというような必要が起きることもあろうかと思います。そのような場合は、洋上哨戒に出ております巡視船をそのまま派遣するということもあり得ますので、そのようなときには一度内地の港に戻って機関砲をおろすというような暇がないこともあり得ます。  それからまた、ただいま海賊というお話が出ましたけれども、現実に南シナ海からマラッカ海峡のあたりにかけては海賊の多発する地域でございまして、本年も既に日本関係の船舶だけで十隻以上海賊の被害を受けております。
  72. 緒方克陽

    ○緒方委員 航海に出ている途中から引き返すことができない場合があるからというような話をされましたけれども、そういう場合は特別の例であって、基本的な考え方を聞いているわけですから、そのことについてお答えください。
  73. 小和田統

    ○小和田政府委員 ただいま申し上げましたような場合を除きまして、原則として取り外す方向考えております。
  74. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは、この法案と輸送協力の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず、運輸大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、湾岸戦争のときに政府はいろんな輸送協力を行われたわけでありますが、どのような輸送協力を行われたのか、それはいかなる法律根拠によってやられたのかという、まず二点についてお尋ねをしたいと思います。
  75. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 事実関係でございますので私からお答えをさせていただきたいと思います。  湾岸危機のときに輸送協力業務をさせていただいたわけでございますが、まず航空関係では、昨年の九月から十月にかけましてフィリピン人などの避難民を本国に帰還させるために三回の輸送をやっております。また、一月にベトナム人などの避難民を本国に帰還させるために輸送を四回やっております。そのほかサウジアラビア政府からの要請がございましたので、昨年十一月、救急車の輸送を実施しております。また、海運の関係では、昨年の九月から本年の三月にかけまして二隻の貨物船をチャーターをいたしまして、湾岸地域に向けて建設資材等の輸送をそれぞれ、これも二回行ったところでございます。  それで次に、この根拠というお尋ねでございますが、この輸送協力につきましては、まず運輸大臣から日本船主協会と関係の航空会社に輸送について協力をお願いをいたしました。これを受けまして、船主協会と航空会社から、安全が確保されるということを前提としてこれを受けるという御回答をいただきました。したがいまして、こういう要請と回答ということで、両当事者間の合意に基づいて行われたものでございます。
  76. 緒方克陽

    ○緒方委員 私が質問をしているのは、一番目のはわかりましたけれども、その法律的根拠は何ですかということを聞いていますから、法律的根拠はないならない、行政判断でやったならやったと、問いに答えてくださいよ。
  77. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 言葉が足りなくて大変失礼をいたしました。特段の法律的な根拠によって行われたものではございません。
  78. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで、そういう法律的な根拠はなくてそういう輸送協力がされたわけでありますが、この際の湾岸戦争における輸送協力について、政府としてはどういう評価をされているか、お尋ねをいたします。
  79. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今回の協力は、あの湾岸区域における平和と国際的な秩序回復のために自主的に協力を行ったものでございまして、船舶関係、そして航空機関係の企業各位の御了解も得まして、また全日本海員組合を初めとする労働組合関係の御了解も得た上で御同意を得て行ったものでございます。そういった意味では、御協力いただいた各企業、関係組合に関しまして高い評価と敬意を払って実施したところであります。
  80. 緒方克陽

    ○緒方委員 そこで、現在審議をされておりますこの法案実施をされますと、具体的な輸送協力はどのような形になるのだろうか、この法案実施をされれば何ができて何ができないのかということで、輸送協力という点だけで結構ですから、具体的にお答えをいただきたいと思います。
  81. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 この法案によりますと、輸送に関しましては、国際平和協力隊などの手によってまず第一次的な輸送をやりまして、それで十分でないときに民間の船会社あるいは航空会社に対して輸送の協力を求めることができるということになっております。したがいまして、具体的なケースに即しまして個々に相談をしていくことになるわけでございますが、どういうものをどういう場所に運ぶのか、そのときの状況はどうなのか、いろいろなことによりまして相手方のお考えも変わると思います。この輸送協力はあくまでも相手方の同意を前提とすることでございます。  したがいまして、具体的なケースに即しまして、まず安全の確保ということを前提としながら、個々のケースごとに船会社なり航空会社なりあるいは関係の労組なりとよく御相談をしながら、ケース・バイ・ケースで判断をさせていただきたいというふうに思っております。
  82. 緒方克陽

    ○緒方委員 そこで、また後に質問が戻ってくるかもわかりませんけれども、次は、防衛庁の方に、長官の方にお尋ねをしたいと思いますが、現在の自衛隊の輸送能力についてお伺いをしたいと思います。  先ほどの私どもの、きのうですか、五島委員質問などでも、C130とかいろんな話が出ましたけれども、現在の自衛艦というのは輸送を中心にしたということではないということで、輸送能力というのは非常に厳しいという話を聞いているわけでございますが、自衛隊の輸送能力ですね、特に具体的に航空及び海上輸送について現在防衛庁が想定をしております標準、最大の艦船、機の型式とその輸送能力はどれぐらいあるか。もっと具体的に言いますと、例えば飛行機では何千人の人を運べる、それから荷物であれば何十隻で何十万トンの荷物を運べる、どういう力が輸送能力があるのか、防衛庁の方からお答えをいただきたいと思います。
  83. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 現在考えております、この法案関係する輸送の手段といたしましては、何度か既に御答弁を申し上げていると思いますけれども、C130型航空機、輸送機でございます。それと、海の、海上自衛隊の輸送艦、それから補給艦といったものが想定されるところでございます。  そこで、個々に申し上げますが、補給艦というのは現在四隻保有いたしております。輸送艦は現在八隻保有しておりますが、そのうち代表的なもので申し上げますと、まず補給艦で、とわだ型補給艦というのが八千トンを若干超えるクラスでございますけれども、これは物資を約九百トン、その他、その他といいますのは真水を積める、ほかに真水を積むことができるということでございます。真水をほかに約二百トンぐらい積めるということでございます。それから、みうら型の輸送艦、これは二千トンクラスでありますが、これは物資約五百トン、または人員約二百人を搭載することができるということでございます。  それから航空自衛隊のC130型の輸送機、これは現在十五機保有いたしておりますが、これは最大で物資約二十トン、または人員約九十名ということでございまして、そういう搭載能力があるということでございます。
  84. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで、最後に総量でお答えくださいと言いましたので、その辺答えてください。
  85. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ちょっと正確を期するために計算をさせていただきたいと存じますが、ちょっとその計算をいたしておりませんので、早急に計算をさせたいと思います。
  86. 緒方克陽

    ○緒方委員 それでは運輸省の方にお尋ねしますけれども、民間の船舶というのは、令言われた自衛艦の輸送艦ですか、二百トンとか五百トンということじゃなくて、何万トン、何十万トンという単位の船がたくさんいるわけでございますが、運輸省にお尋ねいたしますけれども、現在民間が所有している航空機及び船舶の輸送能力は、トータルして、例えば何億トンになるのか何十億トンになるのか知りませんけれども、その数字を航空機と船舶でお知らせいただきたいと思います。
  87. 土坂泰敏

    ○土坂政府委員 日本の航空企業が所有しておりますいわゆる貨物機はボーイング747のフレーターでございますが、これの輸送能力は一機九十トンでございますけれども、民間の会社で十六機お持ちでございますので、全体の輸送力というお尋ねでございますから、約一千四百トンでございます。  それから、日本の海運企業が持っております船でございますが、これはいわゆる外航船と言われて、外国へ行けるもの、二千トン以上の船を我々調べておるわけでございますが、その輸送能力は、全体で四百四十九隻ございますが、三千三百万重量トンでございます。
  88. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで、お尋ねしますが、自衛隊の方は百万トンでもあるんでしょうか。
  89. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 おおむね六千百トンぐらいになろうかと思います。
  90. 緒方克陽

    ○緒方委員 結局一万トンにも満たないということですから、〇・〇〇何%というような力量しか自衛隊は輸送能力では持っていないということが今の数字で明らかになったと思うわけです。しかし、そういう能力がないのにどうしても自衛隊に輸送協力させなきゃならぬというところにこの法律案の問題があるということでありまして、まず自衛隊ありきという中身になっているということについて問題を強く指摘をせざるを得ないし、こういう内容については撤回をされるべきであるということを意見として強く申し上げておきたいと思います。  それから、きのうも同僚議員から、アジア近隣諸国の問題について御指摘が具体的にありまして、一定の答えはありましたけれども、非常に抽象的な答えでありました。しかも、中身をはぐらかしたような答えでありましたので、こういうことではアジア近隣諸国は、私は納得をしないのではないか。そういう意味で、以下具体的に、我が党の議員が参議院で取り上げました朝鮮人の強制連行問題やあるいは従軍慰安婦の問題について、現在政府がやっている問題点についてただしていきたいというふうに思うわけです。  実は本年の四月の参議院の予算委員会におきまして、社会党の本岡委員がこの問題を取り上げております。内務省の警保局保安課ということで、極秘と赤い字で書かれているわけでありますが、特高月報複製版というのがあるわけでありますけれども、この中に具体的に、朝鮮人がどういう動きをしているとか、あるいはどういう仕事をさしたとか、あるいはさらには従軍慰安婦の問題についても具体的に数字で出てきているわけでありますが、そういうことで、この有効性をめぐって参議院の予算委員会ではいろいろ議論がされまして、最終的に国家公安委員長は国立国会図書館に調査を指示をされておりますけれども、その結果についてどうだったかお尋ねをいたします。
  91. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 事実関係の問題でありますので私からお答えさせていただきますが、お話のございました特高月報の複製版、これは国立国会図書館に所在するということを確認をいたしております。そして、さきの参議院の予算委員会で、お話のありましたように本岡議員の御指摘によりまして、国立公文書館に原本があるのではないかという御指摘でございました。それについて確認をいたしましたところ、国立公文書館には原本なるものは存在をいたしておりません。ただ、複製版、国立国会図書館にあるものと同様の複製版というものが所在しているということは確認をさせていただいております。  以上であります。
  92. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで問題は、アジア近隣諸国の人たちの大変な不満とそして不信というものを解消するために日本政府がどういう努力をしているかということが具体的に見えていないから、いろいろな問題が起きているわけであります。  私がもっと具体的に質問したいと思いますけれども、例えばこんなに厚い特高月報の複製版というのがあるんですが、その中のあるページを開きますと、例えば昭和十八年にどこどこでどういう事件があったということが具体的に載っております。それは、裁判所に行くと、そのことがまた具体的に記録に載っているわけですから、そこと照合すれば、この特高月報という本は間違いない、真実をやはり記録しているんだということが明らかになると思うのですけれども、そういうところまで努力をする必要があるんじゃないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  93. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 事実関係については、歴史的な事実としてこういうことがあったのではないかということは確認はできると思います。  しかしながら、警察庁の立場で、これらについて事実、特高月報の複製版に載っていることを公的にこれを確認しろと言われましても、私どもは、戦後の内務省解体に伴いまして新しい警察制度になり、また内務省の仕事というものをそのまま受け継いでおりませんし、書類もございません。したがいまして、その辺のところの事実の確認を公的な立場でこれを確認するということはできないのではなかろうかというふうに思います。
  94. 緒方克陽

    ○緒方委員 口先では、アジア近隣諸国の問題については本当に大変申しわけなく思っているということで、韓国からも、その他のところからも、こういう問題をぜひ解明してもらいたいということが出ているわけですが、その努力をしていないですね。  私は、では、もっと具体的に角度を変えて質問したいと思うのですけれども、例えば、この特高月報の複製版というのは東京の政経出版社東京事務所から四十万円で出版されておりまして、それぞれあるわけですね。この膨大な月報を内容を勝手にでっち上げるわけにはいかないわけです。私も見たんですけれども、私と一緒に、私の父ともちょっと関係ある人ですけれども、農民運動をやっていて弾圧をされた人がいるんですけれども、そういう内容もこの特高月報にはちゃんと載っておりまして、私の身近な人の問題もやはり対応されている、そういうことがあるわけでありまして、内容はもうはっきりしているわけですね。  そこで、政府に、もっと誠意を持ってやるべきだということで思うのですが、例えば、出版社まで行けばそこにはだれかが、持ち込んだ人がいるわけですから、そこまで訪ねていって、この原本についてはどうでしょうかというところまでやるというのが政府の誠意ではないか、私はそう思うのですが、どうですか。
  95. 井上幸彦

    ○井上(幸)政府委員 ただいまお話のありましたとおり、この複製版の出版社については、おっしゃるとおり政経出版社というものと確認をいたしております。これは昭和四十八年ごろに出したもののようであります。そして、その出版社の所在は都内の港区高輪ということでございまして、そこにつきましても私どもは警察署を通じまして、当時出版社があったのかということを確認いたしました。しかしながら、現段階ではその出版社は存在いたしておりません。また、この地域につきましては、昭和五十八年ごろから地上げの対象になっておりまして、現在では廃屋と更地のみになっておる。また、昭和四十八年以来ずっと住んでおる人々の声を聞きましても、政経出版社なる会社が所在していたということは、残念ながら確認はできておりません。  以上であります。
  96. 緒方克陽

    ○緒方委員 そういう言い逃れをしながら時間がたっていくのを待っている、そういう態度を私は非常に許せないというふうに思うわけです。  そこで、総理にお尋ねいたしますけれども、実はこの問題はさきの参議院の委員会でも取り上げられまして、海部総理ですけれども、どういうふうに言われているかといいますと、例えばその朝鮮人の強制連行問題、名簿の問題とかあるいは従軍慰安婦の問題についても、「過去の問題についてはできる限り調査をし、真実を明らかにし、提供すべきものは提供」するというふうにお答えになっているわけですね。この内容について海部総理はそういう答弁をされておりますが、過去のこういう、韓国を初めとするところからいろいろな、名簿の提供を含めて真実を明らかにしてもらいたい、そういう要求が出ていることについて、総理も同じ考えであるのかどうか、お尋ねをいたします。
  97. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 総理の答弁の前に、私は当面の、国家公安委員会委員長といたしまして、この問題につきまして、御質問ある機会に徹底的に再度調査するように命じております。  しかし、先ほども申しておりますように、内務省からの引き継ぎが一切なかったということが一つございますのと、それからその当時、国家警察と地方警察に分かれておりまして、それぞれ指令が別々に行っておるということでございましたので、そういう混乱の中で紛れ込んでしまっておるということを私たち思っておるのですが、しかし、おっしゃるように、こういう記録はやはり原本を大事にするということもございますし、できるだけいろいろなルートを通じて調査をしてみろということをやっておりますし、官房長も言っておりますように、必ず調査を続けていきたい、こう思っております。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 朝鮮人の被徴用者の名簿につきましては、これは労働省が中心になって本年三月に九万人分の名簿を韓国政府に引き渡したところでございますけれども、今後とも各種の情報の把握に努めまして、誠実に調査を続けて対応してまいりたいと思います。  なお、次のいわゆる従軍慰安婦問題等々につきましては、ただいま国家公安委員長がお答えになられましたとおり鋭意努力を続けておりますけれども、もとになります資料というものに到達することができないという現状だそうでございます。なお努力を続けることにいたしたいと思います。
  99. 緒方克陽

    ○緒方委員 それで、時間がなくなってきましたので、あと二つだけしたいと思うのですが、昨年の十月に韓国の女性団体連合会などが従軍慰安婦問題に関する公開書簡を海部総理に提出をされまして、政府としては、参議院の予算委員会の要求もあって、四月の二十四日にとりあえず在韓国日本大使館が先方に説明をされたというふうに聞いておりますが、しかし、この挺身隊問題協議会は、本年五月に、この説明には納得できないということで、改めて正式な回答を求める旨の公開書簡が出されておりますが、その内容を簡単に説明してもらい、なお、早急にこれに対しては返事をするというのが日本国としてのとるべき姿ではないかと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  100. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 御指摘の朝鮮人従軍慰安婦の問題でございますが、労働省関係で調べてまいりましたが、何にも資料が残されておらないようでございます。また当時、厚生省勤労局に勤務しておりました者や国民勤労動員署に勤務しておった者から事情を聞いたところでは、当時、厚生省勤労局も国民勤労動員署も朝鮮人慰安婦については関与していなかったということでございます。したがって、女子挺身隊との関連の有無を含めて、その経緯等全く状況がつかめない状況でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  101. 緒方克陽

    ○緒方委員 私が質問いたしましたのは、再度回答を求めておるということでありますから、日本政府としては誠意を持って対処をすべきではないかというふうに思うのですが、その点についてお答えください。
  102. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の方からお答えいたします。  この問題は、先生から御指摘のように、かねてから韓国の女性団体の方からいろいろな御要請がございまして、それに対して、ただいまお話しのように本年の四月でございますけれども日本政府から大使館を通じてとりあえずの現状、この問題についての考え方を述べました。  そこで、お尋ねの件でございますが、それに対しまして、私どもの方からの回答では不十分であるということが寄せられまして、書簡の形で改めて日本の総理あてに書簡が参りました。非常に長いものでございますから要点だけを御紹介いたします。  調査のルートを限らないで広範に調査をしてほしいということが第一点。それから、いわゆる朝鮮人女子挺身隊の存在、これは歴史的な事実である、日本政府はその全体像を責任を持って明らかにしてほしい、謝罪もすべきである。それから、いわゆる慰安婦の問題につきましては、請求権協定ということでございますが、これから除外されておるのではないか、補償をしてほしい。そして最後に、いわゆる慰安婦問題について日本歴史教科書で正しく明記してほしい、このような諸点が盛られておりました。  そこで、今後の対応でございますけれども、もとより、先ほども総理が仰せになりましたけれども、今後の調査によりまして新しい事実が仮に出てくるとすれば、それに応じた対応をしてまいりたい、このように考えます。
  103. 緒方克陽

    ○緒方委員 全然まともな対応をされていないということで、憤りを感じます。  それで、盧泰愚大統領がお見えになってこのことを要求されたときにも対応をしているわけですが、実際は、政府がどういうことをやったかといいますと、昨年の段階でどういう調査を指示をしたかということになりますと、もう時間が迫りましたから具体的になかなかないのですけれども、例えば労働省の一課長名で各県の職安課長に、調査をしなさい、そういう内容なんですよ。これは、総理が言っている、誠意を持ってやるということとは、私はかけ離れていると思うんですよ。そういう意味で、これは総理として、そういう課長名じゃなくて、もっと具体的な内容をちゃんと調査をするようにしなきゃならぬと思います。聞くところによると、それから、あと一万名ぐらい名簿が出てきたということで、近々渡されるという話も聞いておりますが、そういう一課長名の通達では全体が出てくるわけがありません。ぜひ総理、これは課長名じゃなくて、もっと政府として責任ある立場で調査の通達、指示、そういうものを出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  104. 若林之矩

    ○若林政府委員 事実関係だけ御説明させていただきます。  昨年の六月以降、累次、私ども職業安定局庶務課長から各方面に通達をいたしておりますが、本年に入りまして六月に、内閣の外政審議室長と職業安定局長名で関係各省に対して依頼をいたしております。また、この十一月に同じく内閣政審議室長と職業安定局長名をもちまして各都道府県に再度調査を依頼いたしております。
  105. 緒方克陽

    ○緒方委員 それは、私がことしの十月ごろからこの問題について質問をするということでいろいろ追及をしたから、そういうことで十一月に出されたと思いますけれども、総理、このことについてもっと真剣に対処するという意味で、具体的な総理の誠意ある回答を求めたいと思います。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 大切な問題でございますので、最善の方法をもって調査いたします。
  107. 緒方克陽

    ○緒方委員 今のような答えでありますけれども政府はこれからぜひ誠意を持って本当に、口で言っていることと実際にやっていることが一致するようにしなければ国民も納得しないし、あるいは国際的にも、特に東南アジア人々から信頼をされないということになりまして、PKO法案なんかとんでもないということになるわけでありますので、こういう法案については撤回をしてもらいたいということを強く要求して、私の質問を終わります。
  108. 林義郎

    林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩     —————————————     午後一時一分開議
  109. 林義郎

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。串原義直君。
  110. 串原義直

    ○串原委員 つい先ごろ、私は、新聞報道ですけれども、前自民党幹事長の小沢さんが、慌てることはない、PKO法案はいま少し慎重審議、慌ててはいけない、その確度のほどはわかりませんけれども、そういう御意見だった、こういうことを聞いた。  そしてまた、このところ、各種の信頼できる雑誌の中にも、大変このPKO法案が報道されることになった。これを詳しく読む時間もありませんけれども、ある雑誌には「疑問だらけのPKO法案」、内容を見ると、なかなか大変なことを書いてある。これもある。それからまた、ここに、これも信頼できる雑誌でありますが、後藤田正晴自民党代議士、これがPKO法案に対して厳しい警鐘を鳴らしている。「私は一貫して自衛隊派遣に対して慎重論を唱えている。」それで、その中で、「ああいうガラス細工みたいな議論は、形式的には一応憲法論議はクリアしてるが、壊れますよ、と。そのときにだれがいったい責任を負うんだ。」こう言っているんですね。私は名言だと思う。それから、「国際貢献はモノとカネだけではない、ヒトも大切、これも当たり前。ところが、ヒトの貢献は即、自衛隊というような経過をたどっている。これはあまりにも短絡的なのではあるまいか。」私の言いたいことをそのまま言ってくださっている。まさに国民の意見だろうと思う。そしてなお、国際貢献あり方で後藤田さんは、「世界の飢餓、疾病、保健、教育、自然災害といった面に人的な貢献をしたらいいし、おカネも出したらいい。海外青年協力隊ももっとやったらいい。」こう言われているのであります。  論議が進めば進むほど、本委員会審議が進めば進むほどに、非常に世論が心配だという立場で高まってきた。このことに対して、総理はどう受けとめますか。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 何度も申し上げているところでございますけれども湾岸戦争の経験として、財政的貢献ばかりでなく人的貢献もしなければならないという世論の高まりがございました。人的貢献の中で何をなしてはいけないかということについてもいろいろな議論が行われました。他方で、しかし憲法上許されることはやはり我々としては誠意を持って全力を尽くすべきではないかということから、このような法案を御審議願っておるところでございます。  自衛隊海外におきまして武力行使をするといったようなことは、これはもとより許されないところでございますが、同時にしかし、国連平和維持活動という非常に大切な活動に対しては、我が国として最大限の貢献をしなければならないということもまた事実であって、そういうことについての自衛隊の持っております経験、組織力等々は、これはやはり高度に貢献をすることができる。しかし、重ねて申しますように、それに伴ういろいろな危険というものは十分に法律上排除して、それを担保しておかなければならないということで、この法律を御提案しておるわけでございます。
  112. 串原義直

    ○串原委員 先ほども触れましたけれども、人を出す、その貢献をしよう、人を出すことで貢献をしよう、国際貢献をしよう、このことが実は自衛隊とつながっているところに問題があるわけですよ。私も先ほど指摘をしましたように、審議を進めてくればくるほど、同僚のこの審議の状態、議論を聞けば聞くほど、私自身もますます疑問がわいてきた。従来、総理は憲法擁護派と言われていたわけですね。そう言われてきた。ところが、この委員会での答弁を聞いておりますというと、その姿勢が大きく変化したのではないかと国民は受けとめているようであります。だとすれば、宮澤内閣誕生に大きな期待を寄せていた多くの国民は大変失望するだろうと思う。この本音、本音で言って、総理の憲法に対する基本姿勢、これは従来と全然変わりはないのか、あるいは何らかの変化があったのか、お答えください。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 従来と少しも変化はございません。
  114. 串原義直

    ○串原委員 まことにどこかで、総理、実態は汗が出ているんじゃないか、私はそう思う。  以下、具体的に論議を進めてまいりたいというふうに思うのでございますが、憲法我が国法律上の大黒柱である、これは当然ですね。この基本法に反する法律は無効であるはずです。それでありますだけに、一つや二つの前提条件、原則と言ってもいいでしょう、それがつけられたから憲法違反ではなくなるという理解というのは、私にはどうもよく理解できない。許されないのではないか。私は大きな問題だというふうに実は考えているわけであります。  以下、質疑を続けてまいりますが、そこで、つまり五原則、平和維持参加原則、停戦合意の成立、紛争当事者の同意、中立の厳守、この上記原則の満たされない場合の撤収、生命等を守るための必要最小限の武器使用、この五原則ですね、この措置をとったから憲法違反にはならない、PKF参加は可能になった、こう言うのであります。  つまりその論点は、同僚上原議員の過般の質問に対してこう答えている、宮澤総理は。五原則の中に国際通念もある、最後の二原則、つまり中断と最小限武器使用ですね、これは国際通念ではない、我が国自身に課している武力使用の評価を受けないための原則だ、こう言っているのであります。それを受けて法制局長官は、五原則のうち合意等が崩れる場合の中断、生命等の防護のための必要最小限の武器使用の原則によって憲法に反する武力行使にはならない、こう言っているのであります。  でありますから、そこで伺いたいのは、そう答弁されているので伺いたいのでありますが、この二条件、私は、まさにガラス細工だと見ているのですよ。この二条件、原則が守られなかった場合、結果として原則が崩れたという場合に、これは総理、憲法に触れるということになるじゃありませんか。いかがでしょう、見解を伺います。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 この原則の四と五は、憲法を遵守する立場から考えられたものでございます。
  116. 串原義直

    ○串原委員 総理、私の聞いているのは、ガラス細工と私は思うのだけれども、そのくらい心配なこの後半の二原則、これが結果として崩れることがないとは言えないわけですよ。崩れた場合には憲法違反ということになるじゃありませんか、結果としてそうなりませんか、こう総理に私は伺っているのです。いかがでしょう。
  117. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  先日もお答えしたところでございますけれども、今回この法案を作成するに当たりまして、いわゆる五原則、五つの基本方針というものを考えたわけでございます。そういう意味で、この五原則について、そのよって至りますところはいわゆる憲法上の問題を解消するためのものである、こういうふうに考えております。
  118. 串原義直

    ○串原委員 法制局長官の答弁はもうよろしい。この際よろしい。総理に伺います。  危険な条件、危ない場所へ出かけるということが心配されるわけですよ、この際は。先日の公聴会の折に、ある公述人の先生が言われました。言うならドンパチやっていたところへ出かける場合、とても心配だ、そう簡単なものではない、ここで答えるほど安易なものではない、こういう意味の解説をされていらっしゃった。私はそう思う。だから、総理に伺いたいのは、この二原則というものが、そういう危険な条件あるいは場所へ出かける、公述人の先生に言わせるならば、ドンパチやっているところなんだからとても心配だ、こういうふうに言われるように、そういうところへ出かけた場合、それほど簡単に先ほどの二原則が守られると本当に総理思っているのですか。いかがです。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 国連平和維持活動というのは、国連にとりまして非常に大切な仕事でございますから、我々もそれに協力をするということは大切なことでございます。そうではありますが、我が国には我が国憲法がございますから、我々は憲法の認める範囲において協力をする、そういうことでこの五原則を設けております。
  120. 串原義直

    ○串原委員 いや、とても苦しい答弁ですね。そんなに簡単にこの二原則が守られるとは私は思わない。  続けていきましょう。  そこで、後ほども問題になってまいりますけれども、指揮と指図、この問題について伺っておきますけれども、当然のことながら、防衛白書では指揮というふうに明確に表現されている。  外務大臣に伺いましょう。あなたのお書きになった「ミッチー大いに吠える」、こういう本があるそうでございますが、この中であなたは、「指揮監督は国連軍がやる。世界が決める。そこへ日本も兵隊を出す。」こう言っているんですね。そう言っているようです。まさに疑いの余地なしだ。外務大臣、つまりPKOPKF、すべて指揮と判断するのが、言うのが、表現するのが正しい、こう私も思う。ここで確認をしておきます。
  121. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは外務大臣になる以前の話で、多少不勉強なことでございますので、多少アバウトな点はあったかと思います。
  122. 串原義直

    ○串原委員 いやいや、私は、大臣、それはちょっと笑い話ではないと思うんですよ。渡辺美智雄衆議院議員が書いた事柄と、その立場に立って、なられた、就任された外務大臣と人間が違うわけじゃない。立場などお互いに違うときあるでしょう。一年か二年たてば、時によれば何とか委員長と肩書のつくときもあるでしょう。それは当たり前のことでしょうね。だから、外務大臣としても、この指摘、表現、これはきちっと認めておいてもらわなきゃいかぬ。あのときはあのとき、外務大臣になったから別でございます、そんなことは許されませんよ。いかがですか。
  123. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは何に書いたか、対談か演説か何かだろうと思いますが、外務大臣という立場じゃございませんので、それはわかりやすい表現にしたということは事実でしょう、それは。しかし、私も聞いてみたんです。(発言する者あり)ちょっと静かに聞いてください。私も、指揮と言ったっていいんじゃないかと思ったこともあるんですよね。しかしながら、政府部内に聞いてみると、やはり指揮というのは、懲戒権まであってきちっとしたのが正確な指揮だ、なるほどと。しかし、デモの指揮者なんというのもあるし、指揮というのはコンダクターの指揮者もあるし、言葉がなれていることは、耳なれていることは事実ですよ、これは。耳なれてはいるが、今度国連の指揮というのは、法律上正確に言うと懲戒権まではないんだ、右に行けとか左に行けとか、前へ進めとか伏せろとか、だから懲戒権までないから指図の方が、指図の方が正確だと言うので、そう言われてみればそうかなということで、やっぱり指図がいいんだろう、こう思うようになったわけです。
  124. 串原義直

    ○串原委員 ここで私は時間をとりたくないですけれども外務大臣としての答弁としてはまさに適当でないですよ。お粗末とは言わないけれども、大臣としての答弁じゃない。しかし、私はここでこのやりとりに時間をとろうと思いませんが、後ほどこれは触れていきましょう。あなたは正直だ。それはそのとおりだ。まさに渡辺美智雄衆議院議員としては、PKOPKF、これは国連の指揮下にあるんだということを本で書いたことだけは認めておきましょう。これは正しい表現なんだ。正直なんですよ。  以下、質問してまいりましょう。  そこで、本委員会で一定の時間をかけて審議してまいりました。熱心に審議してまいりました。しかし、審議が進めば進むほど、先ほど総理にも私は申し上げましたが、資料を点検すればするほど疑問がわいてくる。我が党の中には、これではまだ十分の一の解明もされていない、こういう主張もだんだん出てきた。したがって、我が党はあと少なくとも、少なくとも三日程度、集中審議、締めくくり質疑等を含めて必要である、こう考えて、理事会を通じて強く今要求しているところです。  ところが、このところ、指揮、撤収など、武器使用の問題を含めてですが、これに関する国連文書、SOPの内容が明らかになった。この報道、朝日、毎日、読売、日経等々、すべての新聞にも載っておりますけれども、大きく報道をして、改めて国民はびっくりした。これを見ますというと、政府見解と国連の基本原則の差というものが余りにも大きいんですね。全く大きい。ちょっと言い方はスマートではないけれども、この報道、国連の文書によりますと、今まで随分時間をかけて議論してきたような気がするけれども、この議論は靴の上から足の裏をかくようなものだった、こんな論議だったということも言えなくもないわけですね。どうも今までいささか議論がおかしかったんじゃないか。  そこで伺います。総理に伺いましょう。  総理は、先日聞いておりますというと、こういう表現、全部一字一句同じかどうかちょっとわかりませんよ。主権国家が何で国連事務総長の指揮に従う必要があるのか、こういう意味の答弁をされた、説明をされた。間違いありませんね。ところが、私の手元に入りましたこの国連の「PKOのための標準運用手続きガイドライン」、この第一章第五節、明確に書いてあるのですね。ちょっと長いですけれども、これは大事ですから読みます。あえて読ませてもらいます。  「作戦は、その全ての分野について安保理に責任をもつ事務総長の権限の下におかれる。」明確ですね。「事務総長の指揮下におかれ、給与及び規律に関する事項について各国の権限下にとどまる。平和維持活動に従事する軍事要員は、作戦に関する事項に関しては自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長から命令を受ける国連の軍司令官からのみ命令を受けるということが、平和維持活動の基本原則である。」まことに明確なのであります。「この指揮系統が尊重されないならば、重大な作戦上および政治上の困難を引き起こしかねない。」こう書いてあるのですね。  そうなりますというと、つまり明確に国連の司令官の指揮下に入る、だが日本だけが指揮は日本部隊にあると、そんなことが実はこの基準を読む限り許されるのでしょうかね。その根拠、どこにあるのでしょう。これは総理に伺います。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは、先日以来何度も何度も御議論になりましたので、もう一度まとめて申し上げますけれども、いわゆるコマンドという言葉をどういうふうに考えるかということであったわけでございます。  派遣国によりまして提供される要員は、国連平和維持活動派遣される間も、派遣国の公務員としてこれを行うわけであります。この間、国連のいわゆるコマンドの下に置かれます。ここで言う国連のコマンドとは、国連事務局が、国連平和維持活動の慣行及び国連平和維持活動に要員を提供している諸国と国連との間の最近の取り決めを踏まえて一九九一年五月に作成、公表した、ただいま言われました「国際連合と国際連合平和維持活動に人員及び装備を提供する国際連合加盟国との間のモデル協定案」第七項及び第八項にも反映されておりますとおり、派遣された要員や部隊の配置等に関する権限であります。懲戒処分等の身分に関する権限は、引き続き派遣国が有するところであります。  我が国から派遣された要員は、本部長が作成する実施要領に従い国際平和協力業務を行うことになりますが、実施要領は、平和維持隊への参加に当たっての基本方針、いわゆる五原則を盛り込んだ法案の枠内で国連の指図に適合するよう作成されることになっております。これは法案第八条二項の規定であります。したがいまして、我が国から派遣される要員は、そのような実施要領に従い、いわゆる五原則と合致した形で国連のコマンドの下に置かれることになる、これは何日も御議論になったところの結論でございます。
  126. 串原義直

    ○串原委員 それは従来話のあったことで、それは了解しているんですよ。ところが、この今申し上げた国連の文書ですね、文言。これから言いますと、大きな差があるのじゃありませんか。  それでは、もう一つ申し上げましょう。  第二章、「全てのPKOの統制権は、安全保障理事会の権限の下で事務総長に帰属する。」もう一つ、「全てのPKOにおける軍事要員の指揮権は、軍司令官または軍事監視団司令官に帰属する。」こう書いてあるのであります。  そうすると、今総理も答弁したけれども、今まで言ってきたことと大きな差があるではないか、こうなるんですよ。全部国連の司令官のもとに指揮権というものはある、そういうことになって、明白であります。これは、適当な説明、解説では国民承知しないだろうと私は思う。私も理解できないところであります。それでは指揮権というものは二つあるということになるのですか。国連のものと我が国部隊と両方ある、こういうことになるのですか。そんなことはないでしょう。  ですから、とにかくそういうことに結論づけられてはいけない。国連の指揮下にあってPKOPKF参加する我が部隊行動しなきゃならぬ、これは明白になってきたわけでありますから、その点に対して明確に、今の答弁では私は納得できない。明確にお答え願いたい。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先日来の御論議を、ただいま私が整理して申し上げました。これですべて尽きておると思いますが、御満足でございませんでしたら、政府委員が補足をいたします。
  128. 丹波實

    ○丹波政府委員 総理のおっしゃいましたとおり、総理のお答えにほとんど尽きていると思いますけれども、先生が引用になっておられます国連文書の規定その他は、まさに総理も先ほど引用された、最近国連がつくりましたこの派遣国と国連との間のモデル協定の第七項、八項、九項というものは、過去のそういうPKOの基本的な考え方、慣行というものを取りまとめてここに盛り込んだということで、従来から政府はこのモデル協定に基づきまして御説明してきておりますけれども、そういう意味で、今先生が引用になっておられる国連文書との関係におきましても、私たちの従来の説明は矛盾したものはない、こういうことをぜひ御理解いただきたいというふうに考えます。
  129. 串原義直

    ○串原委員 それは、視点、論点が違うわけですよ。つまり、そういうことになりますというと、二重の指揮権を日本部隊は背負うということになるのですか。両方あるということだね。我が日本部隊の責任者と国連の司令官、それとの二重の指揮権を受けて行動する、こういうことなんですか。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕
  130. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生、指揮権という言葉をお使いになられましたですけれども、この指揮権、法令用語としまして使っておりますのは、指揮または指揮監督というのは、職務上の上司がその下僚たる所属職員に対して職務上の命令をすること、または上級官庁が下級官庁に対してその所掌事務について指示または命令することを意味しております。その意味におきます指揮権は一つでございます。
  131. 串原義直

    ○串原委員 いや、それは、国連組織日本組織とは違うわけですよ。それでは、この指揮権の問題については、後ほど触れていきましょう。  じゃ、具体的に伺いましょう。  それでは、派遣された部隊が、具体的な問題といたしまして、ほかの地域活動していた日本のほかの部隊が不幸ながら襲撃を受けた、他の部隊に助けを求める、援助を求める、そうした場合にはどうなるのですか。
  132. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  ただいまは、武器使用に関する対応の一つとしての御質問かと存じますけれども武器使用につきましては、御案内のとおり、二十四条三項におきまして自衛隊武器使用、これが規定されておりますが、これはあくまでも刑法三十六条、三十七条、正当防衛、緊急避難に該当する場合にのみ危害が侵害に対して加えられるということを規定して、非常に限定的にこれを定めておりますから、決しておっしゃられるように、他の部隊がやられたから支援しに行くとかあるいは支援を求めていくとかいうようなことは想定をいたさないわけでございまして、あくまで判断は、自衛官ということで規定しておりますように、原則は自衛官個人個人の判断によってこれを行うという建前を貫いてございます。
  133. 串原義直

    ○串原委員 今長官は、そういう事態はあり得ないという意味のことを言われた。あり得るわけですよ。当然でしょう。私も昭和二十年、日本陸軍の最後の二等兵だ。少しは軍隊のことは承知しているつもりですよ。危険な地域へ出かけていったそれぞれの組織部隊が、今申し上げたようなことはあり得ない、ありません、そんなことを言葉では言えるけれども実態は言えますか。  それから、今長官から話があった個人、そんなときに個人の判断がどうなどという問題ではない。Aという組織、Aという部隊、Bという部隊があった、お隣の部隊がちょっと危険だ、困った、援軍を求められた、そのときにはどうするか。そんなことはあり得ません、そんな判断でこの法律審議はできないわけですよ、実際問題として。私も少しは鉄砲担いだ経験があるから、先ほど申し上げるように軍隊の何たるかはわかるつもりだ。いかがですか。
  134. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 経験に基づく部隊武器使用の点に触れられましたけれども我が国は、自衛隊法三条によりまして、固有の業務としては、我が国の直接侵略、間接侵略に対応する任務がございます。あるいは公共の秩序の維持ということで本来任務が与えられております。我が国専守防衛でございますから、攻めていくことはありません。しかし、攻められた場合には、これは部隊行動をとって断固として我が国を守るというのが自衛隊使命でございまして、そういう局面においては、かつての部隊における戦闘行動と同じような訓練をやっていることは、これはもう当然でございます。それでなければ、実力行使をして侵略を抑止できません。  しかしながら、今回のこのPKO法案におきます協力は、あくまで国連の勧告に基づきまして我が国の選択で、しかも平和的な行動をやる、平和的な貢献をやるということで平和業務の中に列記しておりますようなものをいたすわけでございまして、戦闘行為を目的としたものでないことは、これはもう申すまでもございません。しかもその際に、やはりある程度PKFは危険な状況であるということも、これは否定できないところでございましょう。停戦の合意、それから受け入れ国の同意があったとしても、PKFの場合に危険なしとしない、これは私も否定できません。その場合には、自衛官個人個人の生命、身体を守るために最小限度の、先ほど申しましたような刑法の三十六条、三十七条に準じた自衛の措置は、これは自然権的な権利として保障しなければなりません。私はそのことを申し上げておるわけでありまして、戦時におけるいわゆる一般的な我が国防衛のための防衛出動の武器使用と今回の平和利用のための武器使用、これはおのずから異なってしかるべきでございますし、我が国憲法上の制約のもとに行われるわけでございますので、この点は御理解を賜らなければならないと存じます。
  135. 串原義直

    ○串原委員 やはり長官、私が指摘したような危険性はあるんだということを暗にお認めになりましたね。それはあるわけですよ。それは、自衛隊の任務としては、今言われた答弁の中にも含まれているでしょう。それはわかりますよ。出かけていって、それは平和業務に協力するということなんだけれども、危険のないことを期待しながらも危険が生ずるということはいっぱいあるわけですね。当然ですよね。あり得る。想定しなければならぬ。そのときに個人の行動、個人の防衛だけで、集団行動部隊としての行動というもの、日本の司令官の指揮、こういうものがない、個人だけである、こういうことになると問題だと私は思っているのであります。つまり、今答弁があったように、結果的に集団行動もやらざるを得ないときがある。これは必ずあると思う。絶無だとは言えない。結果的に、日本部隊が残念ながら組織的に応戦せざるを得なかった、危険に対応しなければならなんだ、そういうときの援助に出かけたと仮定をいたしましても、日本部隊武器使用というものは武力行使ということにつながっていくではないかという危険性もある。いかがですか。
  136. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  この任務はあくまで平和的な、平和維持活動に対する貢献でございまして、武器使用を本来的な目的ないし主要業務とはいたしておりません。この点は、もう法律にはっきりいたしております。したがいまして、指揮権その他の今御議論がございますが、部隊行動武器使用を除く平和的な業務の部隊指揮は、当然指揮官がこれは行うわけでございます。その指揮は、法律に書いてございますように国連事務総長の指図に適合するように定めますから、当然、そしてまた二十四条に規定されている条件を満たす、そういうことで実施するわけでございます。  したがいまして、指揮の問題は、一般論としてこの活動についての指揮はございますけれども武器使用につきましては、あくまでも我が国憲法上の建前で、ぎりぎり私どもは、海外においてそのような疑惑のないようにするということで、自衛官個人の判断、これを主体といたしまして武器使用を認めておるわけでございまして、決してドンパチが行われているような状況のもとで我が国派遣いたしません。もしもそれが部隊……(発言する者あり)ちょっと御静粛にしてください。もしもそういう状況がありまして、これが部隊として何らかの作戦行動をとらざるを得ないような状況に立ち至るというようなことがあれば、これは法律にはっきり書いてありますが、先ほども議論がありますように、中断ないし撤収ということは我が国の主権国家としての判断に任せられておりまして、この点は国連とも了解済みであると私どもは聞き及んでおります。(発言する者あり)
  137. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛に。
  138. 串原義直

    ○串原委員 私は理解できませんが、これは順次触れてまいりましょう、この点は。  そこで、進めてまいりますけれども、海部前総理は、私も前国会の中で聞いていたところでありますけれども、他国の、ほかの部隊に対しても、私は今、日本の中の部隊日本同士の部隊のことを聞いたのでありますけれども、そうでなくて、他国の、他の部隊に対しても正当防衛のための武器使用はあり得ると答弁しているわけですね。非常に私は微妙なところだと思う、これは。PKFで他の部隊が正当防衛——正当防衛という判断も、実は厳しい情勢の中では瞬時の判断は難しいと思うけれども、あえて正当防衛の目的と申しましょう。それで援軍を求めてきた。その場合、これは日本部隊の場合、出かけていってお手伝いをする、こういうことですか。
  139. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 この法案の二十四条の三項にございます規定は非常に限られた場面における規定でございまして、ここで今御設例のものは、この法案の中の「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員若しくは隊員」というところの「現場に所在する」ということの意味合いであろうかと思いますが、御設例のような、他に展開している部隊に対してそれを支援しに行くというようなことは全く想定いたしておりません。これは、自己またはその現場に所在する他の自衛隊員なり隊員の極めて差し迫ったやむにやまれぬ状況における武器の使用ということでございますので、御設例のようなものは含んでおりません。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 串原義直

    ○串原委員 これは大臣に伺いますけれども、それでは近くの部隊、これは我が国部隊でもよろしい、あるいは他の国の部隊でもよろしい、近くの部隊が任務遂行不能に陥ったその場合、現地司令官、これはつまり国連の現地司令官から、援軍、応援に行ってやれ、こういう指揮があったといたしましたならば、そのときはどうするのですか。拒否をするのか、この指揮に従って部隊ごとずっと移動して命令のところまで出かけるのか、いかがです。
  141. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  このPKFの展開でございますけれども、これは実際、モデルといたしまして、国連の事務総長あるいはその事務総長の権限を委任を受けました現地司令官が、まさにコマンドという中に、配置、移動等を含めましてその有する権限であるということでございまして、各地域をそれぞれ国別々に分けて配備いたしておるわけでございます。したがいまして、今御指摘のような指揮というふうなものが日本部隊に来るということは、現実問題としてないというふうに理解しております。
  142. 串原義直

    ○串原委員 いいですか、委員長。冗談じゃない、ちょっと待ってくれよ。冗談じゃないよ。一体それは、今の答弁、国民に知らせるお答えになりますか。そんなことはないなんということを断言できるはずがないじゃありませんか。そんなことを、いいかげんなことを言っちゃいけませんよ、冗談じゃない。それでは、一体何で出かけていくのですか。国連要請に従って、よろしゅうございますということになって日本部隊が出ていく。何のために出ていくのですか。国連の指揮下に入ることは間違いないわけですよ。現地司令官が情勢を判断して、こうやってくれ、指揮、まあ指図とだれかが言ったけれども、それはそれとして、指揮がある。ありませんなんということを想定してこの法律審議できませんよ、冗談じゃない。いいかげんなことを言いなさんな。もう少しまじめな御答弁を願いたい。
  143. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生にお答え申し上げます。  まず、先ほど先生が引用された国連の文書を初めとして、武器の使用につきまして国連の文書あるいは過去の慣行が示しておりますことは、PKF参加してきた部隊が、一定のときに武器を使用しろということを言っているのではございませんで、一定のときに武器を使ってよろしいということを言っておる。その典型的な場合は英語でいうセルフディフェンス、自衛の場合であるということを言っているということが第一点でございます。  それから御説明申し上げたい第二点は、従来から御説明申し上げてきておりますけれども日本政府がこの法案の策定に当たりまして五原則という考え方を決め、それについて国連当局と意見交換をし、その中でその第五原則が今の御議論中心ですけれども、第五原則は、武器の使用は、日本の場合、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られることという点が第五原則ですが、この点についても国連は問題はないと言っておるわけでございます。したがいまして、この法案の中にもまさにそういうときにしか武器は使わないということが規定されておりますので、先生がおっしゃるような場合に、例えば国連軍の司令官が、先生がおっしゃったような命令を下したとしても、日本参加部隊はこのような武器の使用しかいたしませんということは、法令的に明確になっておるということでございます。
  144. 串原義直

    ○串原委員 私は、武器の使用ということを最初に言ったわけではない。現地司令官の指揮というものにどう対応するかということを聞いているのです。  今度は大臣に答弁してもらいたい。近くに部隊があった、この部隊が任務遂行不能に陥ったと現地の司令官、国連の司令官が判断をした、日本の諸君、御苦労だけれども応援に行ってやってもらいたい、こういう指揮がない、そんなばかなことを言ってもだれも信用しない。だから、その指示があった場合に、つまり指揮があった場合に拒否をするのですか。もう全然あり得ないなんてことではなくて、そんなことをおっしゃったって本気にする人はありませんけれども、拒否をする、あるいは拒否でなくて指揮に従って移動をするのか、これを聞いている。武器使用をすぐするかしないかということを私は聞いているのじゃない。
  145. 丹波實

    ○丹波政府委員 何度も御説明申し上げてきておりますとおり、国連との派遣取り決めの第七項には、国連の司令官はPKFの要員に対しまして、配置、組織行動等についての権限を有する……(発言する者あり)等ということを申し上げました。等を抜かせば、「配置、組織行動及び指令について完全な権限を有する。」というふうに書いてあるわけでございます。何度も申し上げておりますとおり、日本としてはこのような配置、組織行動等の指令、指図に適合して行動するということでございます。  問題は、一番問題は憲法との関係での武器の使用の問題でございまして、例えば隣の部隊に水を供給しろというような指図がございましたならば、それは憲法との関係で問題がないわけでございますから、そういう状況のもとであれば水の供給をする、こういうことになろうかと思います。それはまさに指図の一つであろうかと思います。
  146. 串原義直

    ○串原委員 もう一度伺いましょう。  だから私は伺ったのであります。国連の現地司令官、いいですか、だから、私は最初伺ったことでありますが、現地司令官が、任務遂行にはいろいろあるだろう、任務遂行が不能に陥った場合ということはあり得る、いろいろな条件があるでしょう。今あなたは武器使用と言った。たまたま水をくんでほしいとか言ったとかいう話も今ちょっと言った、そういうこともあるだろう。水のこともあるだろう、住宅のこともあるかもしれない。しかし、近くの部隊が任務遂行不能に陥った場合ということは想定される。そのときに現地司令官の指揮があったとしたら、武器使用にちょっとでも触れるようなことになったら拒否する、ほかのことならば拒否しない、こういうことなのですか。内容を分けてくださいよ。
  147. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  事武器の使用に関する限り、この法案におきましては第二十四条できちんと規定しております。まさに、「自己又は」「他の隊員の生命又は身体を防衛するため」、あくまでその二十四条の枠の中でしか行動できないということになります。
  148. 串原義直

    ○串原委員 ちょっと時間が過ぎて、まことに遺憾です。遺憾ですが、現地司令官から要請を受けて、危険だかどうかわからないけれども指令のところへ行った。それから先、もし危険な状態になったらまた逃げて帰る、こういうことですか。
  149. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  逃げるという表現は適切でございませんけれども、任務遂行上そういう武力行使のおそれのある場合、その場合は、これは我が国PKFの前提が崩れるわけでございますから、一時避難し、中断をし、場合によっては撤収ということがあり得るということを法律で厳格に要件も書いてございます。
  150. 串原義直

    ○串原委員 私も承知していて質問しているつもりでありますが、武器使用は前提じゃないんですよ。武器使用が前提だということは議論の対象にはなりっこない。要請があったときにはどうするのかということを聞いているわけであります。  ここで時間をとるわけにはまいりませんから、次に防衛庁長官に伺いましょう。  私は、自衛隊の意思、意向について、一言伺っておきます。  ここに、ある雑誌が手元に入っておるわけでありますが、自衛隊の諸君は、PKOへの自衛隊の反応は、まことに憂うつな表情をしているというんですね。「何年か後、私は後輩たちから酷(ひど)い非難を受けそうですな。PKO協力法ができたときの当局者は誰なんだ、なんでこんな法律が作られたとき黙っておったのか、なんていわれる運命か、とも考えますよ」と陸上自衛隊の将官の一人は言った、こういうのであります。当たり前だと思うんだね。こんな程度議論をしていたのでは、時によると命をと考え自衛隊の諸君が出かけるはずはない。よろしゅうございますなんて言うはずはない。平和維持軍は時には、長いのは二十七年も出ていっている。  それから、まことに残念な発言がありますから、ちょっと引用しておきましょう、この際。  「テレビの国会審議を見ると、発砲は個人の正当防衛だから、隊長が、撃て、と命ずるのは違法、という。だけど現地の言葉もできない隊員に各人の判断で撃たせるなんてトラブルのもと。部隊は、幹部の判断は、隊員の判断より多分正しいはず、という前提で成立している。隊長が発砲を命じてはいけない、各隊員に任せるなんてのは、正当防衛の法律論としては分からんわけじゃないが、現実を全く知らない論ですよ」こう言っているのです。自衛隊の幹部はこう言っている。  政府は、つまり武器使用は個人の判断によって、部隊としての使用は考えない、こう言っているわけですね。だからこういう雑誌に出てきたわけでありますけれども、身を守るために自分たちは、場合によれば正当防衛で武器を使用することがあるかもしれないけれども、隊長は待てよと言う権限しかないということだ。中には、これは心配だな、どうしようかと思っているときに隊長が、待てよと言われたら待たなきゃならぬ、それだけだと言うんですね。つまり、時に生か死かの死活的な場面で、部隊としての使用を、言葉のように実際問題として制限できるか。私は不可能だと思う。自衛隊の諸君が心配するのは当然じゃありませんか。これでは、ただでさえ自衛隊員応募者が年々少なくなっていく、いよいよ若者は自衛隊ノー、こういうムードが広がっていくのじゃないかと思っているわけであります。私は、これは重大な問題点だろうと思う。長官の見解を伺っておきます。
  151. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 串原委員の方から今、週刊誌その他の雑誌に基づく引用がございました。私は、一々それにどうのこうのと言及する立場にはございませんが、言い得ることは、我が自衛隊は、こういう国際的な貢献について理解を示してきていると私は認識しております。そして今こそ、ペルシャ湾の掃海艇派遣にも見られますように、これが国民的な理解を得、また国際的な評価も得ていることも自衛官の方々は誇りに思っております。  そういう点で、今後の国際社会日本自衛隊が、やはり憲法の枠内で、平和的な意味でこの知識経験等を生かし得るならば、本当に立派な任務だなということは、これは当然私は、隊員の多くの方々、まあほとんどと言っていいと思いますけれども、そういう感じを持っていただけるだろうと思うし、また、今後の教育訓練その他の場におきまして、自衛隊がそういう聖なる任務をきちっとできるように訓練もいたしていくつもりでございます。
  152. 串原義直

    ○串原委員 今の長官の答弁で、自衛隊の幹部が、それでは安心だということになりましたかどうか、私はちょっと疑問だ。  それはそれとして、次に一つ触れておきますが、懲戒権の問題でありますが、国連は、国連に懲戒の権利を保有するとSOPに明記しているわけですね。ちょっと読んでみましょう。  「特権、免責、義務、責任」、第四章「要員」、こういうところに「懲戒」とありまして、「PKOのすべての要員は軍司令官、停戦監視団長の指揮下にあり、任務の遂行についてはこつまり司令官、停戦監視団長に「責任を負う。」停戦監視団長、軍司令官は「特別政治問題事務次長の指導のもとに懲罰について捜査を行い、尋問を指揮し、報告と諮問を要請する権限を持つ。懲戒は各国の軍法と軍規に従って各国派遣隊の指令官が行う重要事項である。」  これは懲戒権ですね。日本に懲戒権だけあって、国連ではない、こういう答弁だった、従来は。政府の答弁。この答弁にも、国連の文書から見ると大きな差がある。これはどうなるんですか。私は総理に御答弁を願いたいと思う。
  153. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生にお答え申し上げます。  先生が引用された国連文書の件に関しましては、一部日本の新聞でも問題提起を含んで報道されたところでございますけれども、この文書では、部内の秩序の維持等の観点から、PKOの綱紀、ディシプリンに関しまして、国連軍の司令官は調査を実施し、質問を行い、並びに状況報告及び協議を求めることができるということを言っておるわけですが、同時に、綱紀に関します措置、ここではディシプリナリーアクション、現実にそういう綱紀に関する措置をとることは、各国派遣部隊司令官の権限事項であると明確に規定しておりまして、懲戒権はあくまでも当該派遣部隊または要員派遣国が有するものであって、国連自身が有するものでないということは明確であろうかと思います。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、何度も申し上げておりますけれども、最近国連がっくりましたモデル協定というのは、こういう過去の文書あるいは慣行というものの共通点をもってこの協定にしてあるわけでございまして、その中でははっきり、第八項で、この懲戒処分に関する責任は派遣国が持っているということを明文で書いておるわけでございます。
  154. 串原義直

    ○串原委員 ただいまの答弁は、私は承知できない。今の答弁は、処分権の問題なんですよ。懲戒権はもっと広いものです。この問題については深めたいと思うけれども、これは関連して質問をする小澤委員に譲ってまいりますけれども、まことに疑問が深まる。ますますおかしい。こういうことを声を大にして強調をし、先ほど申し上げましたように、より一層審議を深めてまいりますために、引き続き委員会で濃密な、時間をかけた審議をすべきであろうと強く強調させてもらいまして、小澤委員に時間を譲ることにいたします。
  155. 林義郎

    林委員長 この際、小澤克介君から関連質疑の申し出があります。串原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小澤君。
  156. 小澤克介

    小澤(克)委員 最初に、私の要求に従って提出されました政府見解について、これを議事録に残す趣旨で読ませていただきます。     国連のいわゆる「コマンド」と法案第八条第二項の「指図」の関係について  一、派遣国により提供される要員は、国連平和維持活動派遣される間も、派遣国の公務員としてこれを行うが、この間国連の「コマンド」の下に置かれる。ここでいう国連の「コマンド」とは、国連事務局が、国連平和維持活動の慣行及び国連平和維持活動に要員を提供している諸国と国連との間の最近の取極を踏まえて一九九一年五月に作成・公表した「国際連合と国際連合平和維持活動に人員及び装備を提供する国際連合加盟国との間のモデル協定案」第七項及び第八項にも反映され   ているとおり、派遣された要員や部隊の配置等に関する権限であり、懲戒処分等の身分に関する権限は、引き続き派遣国が有する。  二、法案第八条第二項にいう国連の「指図」は、前記一、にいう国連の「コマンド」を意味している。    我が国の国内法の用例では、一般に「指揮」又は「指揮監督」は、職務上の上司がその下僚たる所属職員に対して職務上の命令をすること又は上級官庁が下級官庁に対してその所掌事務について指示又は命令することを意味しており、その違反行為に対し懲戒権等何らかの強制手段を伴うのが通例である。これに対し、前記一、にいう国連の「コマンド」は、派遣国により提供される要員がその公務員として行う職務に関して国連行使するという性格の権限であって、かつ、懲戒権等の強制手段を伴わない作用であり、そのような「指揮」又は「指揮監督」とは性格を異にしていることから、混乱を避けるため、法案第八条第二項においては「指揮」又は「指揮監督」ではなく、「指図」という話を用いたものである。  三、我が国から派遣された要員は、本部長が作成する実施要領に従い国際平和協力業務を行うこととなるが、実施要領は、「平和維持隊への参加に当たっての基本方針」(いわゆる「五原則」)を盛り込んだ法案の枠内で国連の「指図」に適合するように作成されることになっている(法案第八条第二項)ので、我が国から派遣される要員は、そのような実施要領に従い、いわゆる「五原則」と合致した形で国連の「コマンド」の下に置かれることとなる。 以上です。これについてはまた後で質問することにいたします。  そこで、あらかじめ委員長のお許しを得ているわけでございますので、図面を配付させていただきました。ここに私が持っているこの図面と同じでございます。これに基づいて質問をしたいと思います。この指揮系統図は、これまでの政府答弁をわかりやすくまとめたものであります。  若干の説明をさせていただきます。お手元にありますでしょうか。  左の方に「各国部隊の指揮系統」というのが書いてございます。これは国連事務総長、そこから権限を付与された現地指揮官、まあ司令官と言った方がよろしいのでしょうか、フォースコマンダー、そのコマンドに各国から参加した部隊の指揮官が従う、極めて単純な図面でございます。参加国が提供する、その国に属する部隊国連活動参加するわけでございますから、多かれ少なかれ、国連活動たる側面と参加各国の部隊活動たる二面性があることは事実でございます。そして、その点について経験的に形成され、そしてまた、先ほどから出ておりますモデル協定案に集大成されたところでは、結局、部隊の配置、組織、指導及び指揮、英語で言いますとディプロイメント、オーガニゼーション、コンダクト・アンド・ディレクション、こういった事柄については、いわゆる作戦面については国連側に指揮権が集中される、そして懲戒処分、服務規律については参加国に留保される、なお、今串原委員からの最後のところでありましたとおり、この懲戒についても捜査等々一部分についてはなお国連側に集中される傾向にあるという状況でございます。  なお、このような国連の権限が発するのは、総理が最初に勘違いしておられたのではなくて、当然に発生するのではなくて、各国と国連との取り決めによって国連側に移譲される、そのことによって国連側にそのような権限が発生するということは理の当然だろうと思います。  そこで、この図では専らオペレーション面、作戦面での指揮系統についてのみ記載してございます。懲戒権等は省いてございます。それが前提でございます。  右側を見ていただきたいと思います。これがこの法案によるところの「自衛隊部隊の指揮系統」でございます。簡単に説明いたしますと、法案第九条四項に従いますと、参加した自衛隊部隊は、本部長の作成する実施要領に従いつつ防衛庁長官の指揮に基づいて活動をする、こういうことになるわけです。これがこの図の右側の方に書いてあるところでございます。なお、法案八条二項によって、この実施要領はコマンド、これはフォースコマンダーですか、が発しますところのコマンド、これを指図というか指揮というか、ともかくといたしまして、そのコマンドと適合するように作成する、これが八条二項でございます。ここ、ニアリーイコールの記号を使っておりますのは、適合という言葉をこのように表現させていただいたわけです。  なお、これには例外がございまして、八条二項にまさに明記されているのですけれども、業務中断に関する事項、この判断については本部長の判断が優先する、コマンドと実施要領とは適合しなくてよろしい。こうはっきり書いてございます。したがって、これをノットイコールの記号で表現させていただきました。極めて明確に本法案による指揮系統がこれでおわかりになると思います。  さて、このような極めて異例の指揮系統を持つものが国連の要求と合致するものかどうか、国連がこのようなものを受け入れるかどうか、これがまさに問題でございます。  既に出ているとおりでございますが、モデル協定案、これはもう先ほど言いました。SOPガイドライン、これについても、その序論のところは既に先ほど串原委員から紹介がございましたので省略いたします。このSOPガイドラインの作戦のところには次のように書いてございます。これは報道されているところによるわけですが、非武装の監視団を除き、すべての軍事要員は、武力行使に関し、完全に同一の方法に従わなければならない。それからまた、これまた残念ながら公開されておりませんけれども、いわゆる訓練マニュアルには、指揮系統を国連の現地司令官に一元的に統一しなければならない、要員は、給与と規律を除き、あらゆる作戦は事務総長のコマンドのもとに行われる、要員は、国連の司令官の指示だけを受けるものであり、派遣国の指示を受けてはならないのが基本原則である。このような国連の基準と、このような極めて特殊な指揮系統を持つ自衛隊部隊が適合しないことは、私は明らかだろうと思います。  そこで、外務大臣にお尋ねいたします。  この法案がもし成立いたしますと、国連との間で派遣参加に関する取り決めをしなければなりません。その取り決めの中でこのように——先ほど言い忘れましたが、政府委員の方から、本法案においては国連への指揮権の移譲は行われないんだ、終始行われないんだ、このように明言されております。それを前提にこの図面はできておるわけですけれども、そういたしますと、指揮権、作戦面での指揮権も最終的に国連側に移譲しない、国内側で留保するということを明記するのか。  それからさらに、特に中断に関してはその判断権を日本側が留保するという留保条項を入れるのか、取り決めにおいて。これは、もうきょうは余り時間がございませんから、外務大臣にお答え願います。
  157. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 取り決め、国連との交渉をやってまいりまして、どういうようにその実施計画をこれからつくるのか、向こうのガイドラインに恐らく合わせてこれはつくるのですから、その委細の問題は事務当局から説明させます。
  158. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この点につきましては、御指摘のようにこの法案が成立いたしました暁には、国連側と具体的な案件に即して我が国派遣に関しまして何らかの枠組み、あるいは取り決めと言っていいかもしれませんが、を協議、話し合うということになるわけでございます。したがいまして、現時点におきまして的確にどのような規定ぶりになるかというところまでは申し上げる状況にございませんけれども、私どもといたしまして、その際考慮に入れる点は幾つかあるだろうと思います。  一つは、御指摘のようなモデル派遣取り決め案、派遣協定案、それから現実に各国がこれまで締結してきましたいろいろな先例、それから我が国法律、この法律のもとで行動するわけでございます。
  159. 小澤克介

    小澤(克)委員 委員長、条項を入れるのか入れないのかだけ答えさしてください。今言った留保条項を入れるのか入れないのか、そこだけお答えください。前置きは要りません。わかっています。
  160. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 いずれにいたしましても、我が国としては、この法律に従って派遣をするということでございます。
  161. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうしか答えられないことはわかっております。  それでは、次に総理にお尋ねいたします。なぜこのような極めて特殊な指揮命令系統にしたのか、その理由は明らかです。業務中断に関して判断権をこちら側に、日本側に留保する必要があったからです。それはなぜか。武力行使に至ることを避けるための仕組みです。  そこで具体的にお尋ねします。法の三条三号ロ、ハのような業務、これはまさに兵力引き離し業務、対立する武装勢力が緩衝地帯に侵入してくることを直接規制する業務です。駐留しパトロールする、あるいはチェックポイントを設けてチェックする、これがロ、ハでございます。このような作業に日本部隊がエリアを担当して展開していたといたします。そこで、諸外国の参加部隊は極めて限定的、謙抑的、抑制的ではありますが、武力行使、すなわち組織的に武器使用をすることが最終的には否定されておりません。ところが、我が国部隊はこれまでの説明から明らかなように、あくまで個別にしか対応できない、組織的に武器使用することができない、すなわち武力行使ができない。これは憲法上当然でありますけれども、そのように全くコンセプトの違った存在となっております。  そこで、武装勢力が、これはUNIFILの場合などにはそういうことが頻繁に起こったのですが、緩衝地帯に侵入を図ったとします。近づいてくる。まず、国連のこれまでの経験等によれば、警告をします、ここは緩衝地帯だから入るなと。それでもなお近づいてきます。そうするとどうするか。銃を構えて、そして警告をします。それでもなお向こうが侵入をしてきたら、さらに空砲を撃つ、あるいは上空へ向けて発砲する等の威嚇行動をして規制します。そしてそれでも攻撃をしてきたら、万やむを得ない場合には結局戦闘状態になります、防衛のために。では日本部隊はどうするか。本部長である総理、実施要領を作成されるのは、あなたの権限で作成されるわけですからお尋ねします。  武装勢力が近づいてきた。日本部隊は平和的説得をするだけだ。ここは緩衝地帯でございますからどうぞ入らないでくださいと平和的説得をする。それでも相手が近づいてきたらどうするか。さらに相手が空へ向けての威嚇射撃等までやった。この場合どうしますか。結局中断の実施要領を作成し、中断させるしかないのではありませんか。本部長に就任されるはずの総理大臣、お答えください。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 法律問題であれば専門家がお答えいたしますし、また、具体的な例についてお答え申すことはできませんけれども、要するに我が国から派遣された部隊は、この法律憲法の枠内に基づいてしか行動ができないということであります。
  163. 小澤克介

    小澤(克)委員 本部長、あなたの責任でこの実施要領が作成されるのです。中断しますか。どうしますか。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ですから、実施要領というのはこの法律の枠内でしか書けない、こういうことです。
  165. 小澤克介

    小澤(克)委員 昨日の総理のお答えで、残念だが我々は遠慮させていただく、フォースコマンダーから妨害排除のための武器使用を命じられた場合。それからまた政府委員の方から、万一そういうことが起きた場合、我が国の要員は指図に従うことができないというのがこの法律の仕組みです、こう言っている。要するにその仕組みというのはこの中断のことを指していることは明らかです。中断するわけでしょうね。  そこで、どうなるか。私は、これはもう政策として最悪だろうと思います。エリアを分けて武装勢力の侵入を防いでいるわけです。ほかのところはフォースコマンダーの指示に従って最後の努力をしている。日本だけが中断をするしかない。ほかの部隊努力まで全部スポイルされてしまいます。しかも他の部隊からは日本部隊は恐らくさげすみを受けるでしょう、残念ですけれども。そして対峙している武装勢力からは侮りを受けるでしょう、日本部隊のところを行けばいい。中断というのは要するに何もしないということですから、黙って通過させるということです。そして、参加している自衛隊の諸君は大きな挫折感と屈辱感を味わうでしょう。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕  防衛庁長官、もう一つついでにお尋ねします。  この日本部隊は最終的には武力行使することができません。個別の、個々の正当防衛というのは、これは自然人が持っている。私も持っている。防衛庁長官も総理大臣も持っている。まさに自然権にすぎません。組織的な防衛活動ができないのです。  日本部隊がパトロールをしていたとします。物陰から狙撃されたとします。どうしますか。こういうときこそ統一的な指揮のもとに組織的に対応しなければ隊員の命が守られません。私が指揮官だったら、その狙撃してきたところに対して狙撃を抑制するための射撃を命ずるだろうと思います、数人の人に。そして、部下の命を守るためにはそうするしかありません。相手を殺す意思ではなくて、狙撃を抑制するために銃撃させます。その間に他の部隊員には退却させます。一定程度退却したところで、今度はそういう何といいますか援護射撃を交代させて残った人が退却する、こういう、組織的にしなければ命が危ないです。  この間、シビリアンコントロールということが話題にされております。シビリアンコントロールはミリタリーに対するシビリアンのブレーキという側面が強調されております。もちろんそういう側面も強いわけですけれども、シビリアンこそが責任をとるというのがシビリアンコントロールだろうと思います。防衛庁長官、あなたの部下に、今言ったような危険な場合に個別にしか対応できない、指揮官は指揮をすることができない、部下の命を守ることができない。そういうことを、最高の司令官でありシビリアンであるあなたは責任がとれますか、出動命令を出すことができますか。
  166. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  幾つか触れられましたが、まず中断の点は、御案内のように、括弧書きで中断の場合は除いてございますが、これは、我が国がまさに我が国だけの判断でその状況判断をいたしまして中断をいたすわけでございます。この場合の対応について先生は一定の想定のもとにいろいろ申されましたけれども、具体的な対応は、今後これはどうなるかということは、一概に、一義的にここで私は想定してお答えするわけにはまいりませんが、しかしこの法案趣旨から申しまして、中断の場合ということは十分あり得ます。そして、実施計画等では国連との調整のもとに、実施要領で細部を決めるわけでございますが、私どもはそれに基づきまして行動をしていくということでございまして、事前に自衛官にもそういった点の十分な教育をやって派遣をいたすことになりますから、決して私は、自衛官に屈辱的なことを与えるというようなことにはならないと存じます。(発言する者あり)ちょっとお待ちください、答弁まだ終わっておりませんから。  それから第二番目に、ゲリラ等で襲撃された場合には集団の武器使用になるのではないかという御指摘でございましたが……(小澤(克)委員「できないのでしょう。つまり命が守れないんじゃないかと聞いているのですよ。逆ですよ。」と呼ぶ)それは私が申しましたように、二十四条では自衛官個人個人の判断でございますけれども、しかし仮にゲリラ等から突如襲撃を受けたような場合に、当該侵害行為を回避するいとまがないというような場合には、これは、武器使用をいたしまして当該侵害行為を排除しなければその隊員の生命が危うくなるわけでございますから、こうした場合には、例えば何人かおった場合に、それに対応して意思の一致を見て、その侵害を排除するということは当然考えられることであります。  それからもう一つ、最後に重要なことを申されたので申し上げておきますが、シビリアンコントロールの点であります。シビリアンコントロールにつきましては、いろいろこれは国会の問題あるいは行政府の問題、指揮権の問題等々多岐にわたりますから、私はここで一々その解説は申し上げませんけれども、私どもは、やはりこの法律に基づきまして責任を持って自衛官を派遣いたします以上、私どもの責任においてきちっとした対応ができるような実施要領、あるいは国連の指図との調整、そういうものを図って本来のこの法律の目的に従って行動するように、私どもは最善の努力をいたすつもりでございます。(発言する者あり)
  167. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛にお願いします。
  168. 小澤克介

    小澤(克)委員 要するにこの法律は、どうしてもPKFにまで派遣したい外務省と、そして憲法とのつじつまを合わせることに腐心する法制局とがでっち上げた、ガラス細工という言葉がございましたが、これは見た目にも美しくありません。粘土細工です。実際に派遣される制服の立場が全く考慮されていない、そのように言えると思います。ぜひ自民党委員の方、それから民社党の委員の方、よくこの点お考えを願いたいと思います。公明党ももちろんです。  それから、最初に質問したことについてとうとう答えられなかった、留保事項を設けるのかどうか。これは、国会承認を政府が頑として認めない理由がまさにここにあります。国連の基準に適合するような取り決めをつくったならばこの法律の建前から外れてしまいます。国会承認にたえられないからです。民社党の委員の方、よくそこのところを御考慮願いたいと思います。  さて、最後に政府見解についてお尋ねいたします。  この三項に、一番最後のところ、「国連の「コマンド」の下に置かれることとなる。」と書いてあります。「下に置かれる」というのはどういう意味でしょうか。コマンドに従うという意味でしょうか。  この図面、見てください。政府委員は、権限の移譲は終始ないとおっしゃいました。だからこの図面になったのです。この図面、コマンドの下にはその受け手がありません。書けないのです。空白なんです。この最後のところが、「「コマンド」の下に置かれる」というのがコマンドに従うという趣旨であれば、この矢印はこう延ばして部隊指揮官に届きます。どうなんでしょうか。答えてください。
  169. 野村一成

    ○野村政府委員 この法案の立て方でございますけれども、まさに国連のコマンドを受けましてそれに適合するように実施要領をつくる、そういう形になっておるわけでございます。(発言する者あり)
  170. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛に。
  171. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは指揮系統図であります。指揮系統図であって、単なる情報伝達図ではありません。このコマンドのもとに部隊指揮官、この矢印は部隊指揮官に届くのか届かないのか、コマンドに従うのか従わないのか。ここに言う「「コマンド」の下に置かれる」というのは、これは恐らくアンダー ザ コマンドを訳したというふうに弁解されるでしょうが、コマンドに従うのか従わないのか、明確にしてください。
  172. 野村一成

    ○野村政府委員 私、このモデル協定で言っておりますアンダー ザ コマンドということをそのままこのコマンドのもとにあるというふうに言っておるわけでございます。実は、統一見解で書いてございますように、「要員や部隊の配置等に関する権限」これがそのままコマンドでございまして、それを受けて実施要領をつくって、まさに部隊の運用につきましては、防衛庁長官あるいは本部長の指揮のもとで我が国部隊国際平和協力業務に従事するということでございますので、そういうことでございますので、したがいまして……(発言する者あり)
  173. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛にお願いします。(発言する者あり)御静粛に。
  174. 野村一成

    ○野村政府委員 ただいまのような趣旨におきましてこのコマンドに従っておるという、今申し上げたような趣旨でコマンドに従うということは申せるかと思います。
  175. 小澤克介

    小澤(克)委員 法の八条三項に、本部長はあらかじめ指定する協力隊の隊員に実施要領の作成を任せることができる、こういう規定がございます。だから、このコマンドが指定される協力隊の隊員に届くと、英文を日本語に書き直した実施要領を作成する、それに従って部隊活動をする、こういうことに実際にはなるのでしょう。  そこで私は聞くのです。このコマンドの受け手はだれなのか、部隊指揮官はこのコマンドに従うのか従わないのか。なお聞きますと、私に示されたこの文書の第一項にも「「コマンド」の下に置かれる。」と書いてあります。これは諸国の部隊についての一般論です。これが同じ意味だとすればどうなるのですか。この一項に言う「「コマンド」の下に置かれる。」というのはそのコマンドに従うのか、三項に言う「「コマンド」の下に置かれる」というのはコマンドに従うのか従わないのか、その点を明確にしてください。これはこの法律の本質にかかわるところです。明確にしてください。
  176. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この法案第八条の二項によりますと、実施要領、これは本部長が作成するわけです。「実施要領の作成及び変更は、」「事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合するように行うものとする。」ということになっておりまして、ここで申します「実施要領」と申しますのは、まさにこの国際平和協力業務に着目いたしますと、その個々の部隊、隊員、要員の行動を具体的に定めた指令書のごときものでございまして、したがいまして、その実施要領に従って行動する隊員に着目いたしますと、まさにこれは本部長がそのコマンドの受け皿となって部隊行動するということになるわけでございます。
  177. 小澤克介

    小澤(克)委員 私が聞いているのは、この「「コマンド」の下に置かれる」というのはコマンドに従うのか従わないのか、そのことだけです。いいですか。この文書は、指図という言葉のあいまい性を「「コマンド」の下に置かれる」という別のあいまいな言葉に置きかえただけなんです。だから聞いているんです。「「コマンド」の下に置かれる」というのはコマンドに従うのか従わないのか。一項と三項に分けてはっきり答えてください。
  178. 野村一成

    ○野村政府委員 コマンドに従って行動するという意味におきましては、従うということになります。
  179. 小澤克介

    小澤(克)委員 あなたは権限を移譲することは終始ないと言いました。にもかかわらず、なぜコマンドに従うんですか、従う義務がどこから生じるんですか。明らかにしてください。
  180. 野村一成

    ○野村政府委員 まことに恐縮でございますが、私、指揮権と申し上げます場合には、この統一見解にも書いてございますように、上下関係あるいは命令服従の関係から出てくる言葉でございまして、そういった意味におきましては、まさに我が国の、日本がと申しますか、国連の指図と違いまして、防衛庁長官ないし本部長に指揮権があるというのがこの法案の仕組みでございます。
  181. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が来ましたので終わりますが、今のしどろもどろの答弁でよくおわかりだろうと思います。全く審議が、まだ何も明らかにされていないということがわかったと思います。  質問を終わります。
  182. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 次に、渡部一郎君。
  183. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうは、今までの委員会質問の中で問題になりました点で詰めなければならない点を詰めて、きちんとした答弁をいただきたいと思っているわけでございますが、それに先立ちまして、社会党からせっかくの衆法提出されまして、同僚議員の御努力に敬意を表したいと思っているわけであります。それを差しおいて政府の方をやるのはちょっと気の毒な気もしますから、ちょっと前提にいたしまして御質問をさしていただきたい。  ところが、その中身を拝見いたしまして、基本的な問題で幾つか伺っておかないと話が進まないなと思っているわけであります。この文書の中には、非軍事文民民生でということが明示されておりますが、非軍事文民民生で行うとなりますと、既存の法律でほとんど間に合ってしまうのではないのか。これは、予算措置だけの提案、あるいはせいぜい政令程度配慮で済むものをこうして法律案のようにまとめられたのではないかという疑いが、初めからがっと見た瞬間にくるわけであります。しかし、その点は十分御配慮をされてつくられたのだろうと思いますので、どういう意味でこういう屋上屋を重ねるような雰囲気の法案をお出しになったのか、それをひとつ聞かしていただけるとありがたい。それはまず法案提出者に伺いたい。また、このPKO法案を出された政府法律作成者に率直な忌憚のない批評を聞きたい。この二つを聞かしていただきたい。ですから、いいですか、社会党の方もこれはきちんと答えていただきたいのです。
  184. 上原康助

    上原議員 お答えさせていただきたいと思います。渡部先生のように外交、防衛の大家が私のような未熟な者に御質問をするのもいささかどうかと思いますが、せっかくのお尋ねですから答弁をさせていただきたいと存じます。  確かに、今御指摘ありましたように、また、けさ社会党の同僚委員の御質問にもお答えしましたが、我が党提出法案は、非軍事民生文民を基軸といたしております。それは、自衛隊組織ごとに武装して海外派遣をしないという憲法理念精神を大前提にいたしておりますから、根本的に政府案と異なっている点かと思います。  そこで、非軍事民生文民となると、既存の制度といいますか、あるいは国際貢献、援助の範囲内で十分可能じゃないかというお尋ねですが、確かにそういう面もあろうかと思うのですが、これだけ国際貢献というか、国連への平和協力というものが多様化してまいりますと、既存の機関なり制度の範囲内ではなかなか対応しにくい面が多い。そういう面で、私たちは、国際的な軍縮、そして日本版軍縮ということも将来勘案をしながら、新たな組織国際貢献機関として創設をしていく方が日本の平和貢献により資していくのじゃないか、こういう判断でこのような法案になっております。  以上です。
  185. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 じゃ、今度はこの法案に対する、社会党の出された御努力に対して政府PKO法案をつくられた方の責任者はこれを見てどう思われているかを御説明いただきたい。言いにくいでしょうけれども言ってください。どうぞ。
  186. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。(発言する者あり)
  187. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 静粛に。
  188. 野村一成

    ○野村政府委員 社会党の御立場を踏まえた法案でありまして、けさほど総理の方からも答弁ございましたけれども実態面で私ども政府の出しておる法案とは極めて大きな違いがあるというふうに認識いたしております。
  189. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まあ、これぐらいで勘弁しましょうか。  それに、既に選挙監視も出動をしておりますし、民生の補助に対しても日本政府は既に国連協力でやっておられるわけだし、それを全部ひっくるめましてこの中に入れておいて、そして国会承認までおつけになると書いてある。この本委員会にかかっている政府案に対して張り合う意味で特に国会承認を強くお書きになったんでしょうけれども、書き過ぎではなかろうかと思う。それはなぜかというと、これではODAも全部もう一回国会で審査し直さなきゃならなくなってしまう。選挙監視も全部そうなってしまう。あるいはちょっとした政府派遣団は、全部この項目によりまして国会の承認をつけなきゃならなくなってしまう。これでは行政府に対する行政権への介入がひどくて、仕事ができなくなってしまうのではなかろうかと私は思うのでございますが、こういう批評をさせたら極めてユニークにお話しになるであろう渡辺外務大臣に一言批評をお願いするのが妥当ではないかと思いますが、どうです。
  190. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 ちょっと私、座を外しておって全部を聞いておらなかったものですから、正確な答えができないかもしれません。しかし、おおむね私はそうだろうと存じます。
  191. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 さて、それから今度は、甚だ恐縮でございますが、自衛隊に対して、伺うところによれば社会党は違憲論のお立場にあるのか合憲論のお立場にあるか、変更しつつあるのか不明快である、横から見ていて。そして、違憲合法論などという奇妙な議論もお立てになったことがある。それは同じ野党ですから余りこういうことはぎりぎり申し上げることはしない。しかも、社会党と公明党の間では、政策協定を結んで自衛隊の合憲論についてはぼ合意した歴史的事実があるのに、その後社会党はそれに対して適切な手を打たれなかったという思いが私はあるんです。したがって、社会党としては、自衛隊違憲論と言っておいてPKOが違憲かどうかというのは、もう議論の余地なく違憲になってしまうだろうと私は思うわけですね。  ここのところは、恐縮でございますが、短い言葉歴史に残るようにちゃんとお答えいただきたい。自衛隊は合憲なのか違憲なのか、それからPKOは違憲なのか合憲なのか。そして、雲仙あたりまで行くのも違憲なのか合憲なのか、海外に行く自衛隊員というのは、もう自衛隊という名がついたら全部違憲なのか合憲なのか、この辺不明快ですね。その辺のスタンスが不明快なのに、そのままPKO法案でさも自衛隊の問題について合憲の立場から発言するというのはちょっと論議の混線を招くものではないか。ここのところをきちんとお答えをいただければありがたい。お答えにくいところは言わなくても結構です。
  192. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 尊敬する親しい友人の渡部さんでございますから、率直に申し上げたいと思います。今、社公協定の話がございましたが、私も、例えば三年前には四党連合政権協議など、何か夜を明かしながらお互いに党の代表と議論したことを思い起こします。そういう気持ちを込めながら申し上げたいんです。  私は、今日の自衛隊憲法、そしてまた国民意識その他から考えますれば、最も常識的、良識的判断は、憲法条文に照らした違反です。しかし現実に、これは自衛隊法その他で法的に残念ながら大きく存在しているということであろうと思います。問題は、そういう規定づけと解釈をどうするか以上に、この現実からどのように新しい時代日本の設計をつくるのか、その努力をお互いにやろうではないか、また、そういう意味での過去を振り返るのではなくて、新しい意味での将来に向けても新しい合意と相談とを何かやろうじゃないかというのが国民の求めているところではないだろうか。いろいろ苦難にぶつかっておりますけれども、こういう気持ちでお互いにやってまいりたいと思っております。(発言する者あり)
  193. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛に。
  194. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 委員長、答弁者の声まで僕の席に聞こえないくらい後ろでやじるのは、同僚議員のやじの声が大き過ぎるという証拠だと思いますし、それに対して議場整理をお願いする私のお願いは不当ではないと思います。もうちょっと静かにさせてください。
  195. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛にお願いします。
  196. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これでは議会民主主義もヘチマもないよ。そっちの声が僕に聞こえないじゃないか。そのくらいにしてくれよ。(発言する者あり)
  197. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛にお願いします。
  198. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今お話しになったところを伺いますと、明らかに自衛隊は違憲だ、しかし存在しちゃった、どうするかで苦労しているとおっしゃっているだけでお話をとめられました。したがって、雲仙岳に行った自衛隊のこともカットされましたし、PKOの違憲、合憲のこともそこからわかれという意味合いだろうと思いますから、恐らく、自衛隊が違憲なんだからPKO自衛隊員と名のつくものを出すのは全部違憲だし、それから海外に用事が何あろうとみんな違憲だし、雲仙に行くのも全部違憲だということをほのめかされたのだと私は思います。どうやらうなずいておられるようですから、武士の情けでそれ以上答弁を求めないで、次に行きたいと思う。  そういたしますと、これはちょっと残念ではございますけれども、そういう法案では説得性がある程度薄いのではなかろうか。もう少し論理立てをしっかりしていただけると、公明党としても政府案に賛成しようかな、社会党案に賛成しようかなというふうに迷うぐらいのことはあってもいいけれども、これでは、仕事もほかの法律ではできるし、御説明も明快でないとすると、ちょっとこれははしにも棒にもかからないかなという感じを抱かざるを得ない。私は、その意味では残念に思っているわけであります。  そこで、それでは今度は政府の方にちょっと伺いたいと思うのです。  十一月の二十五日、PKOに関しての国連の内部文書が二つ、実は見れないので質疑をしないとおっしゃったのは社会党であります。それは、「トレーニング ガイドラインズ フォー ナショナル オア リージョナル トレーニング プログラムズ」と「ガイドライン スタンダード オペレーティング プロシージャーズ フォー ピースキーピング オペレーションズ」の二つでございまして、前者はどうやら訓練マニュアルと称せられるものであり、後者はSOPと称せられるものであります。これを見ない限りは質問しないと頑張られたのは社会党でございました。ところが、その前の日に大騒動がありまして、二十五日公開されたときには、社会党はごらんになりませんでした。(発言する者あり)
  199. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛にお願いします。
  200. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 これは、このような文書は国連の文書であるから公開できないのだということを政府担当役人が必死になって説明しておられたにもかかわらず、そういう公開しないからなどという理由で拒否されるというのは、私は愚かなことだと思います。  そこで、しようがないんですけれども、これは審議にならないので、国民の皆様の中に国連文書の二つ不思議な文書があって、そしてこれがあるから政府議論が全部にせものだと思われては問題だし、私どもは公明党の議員等を連れてまいりまして、五時間にわたり閲覧をさしていただきました。率直に言ってかなり苦労いたしまして、めくりにめくって、そして主要なところをチェックさしていただきました。したがって、それに基づいて問題点を質問させていただきたい。これの前提として国連のモデル協定は既に当委員会にも提出されているわけでございますが、それとあわせて、国連関係三つの部分をあわせて今まで問題点になったところをおさらいをしてみたいと思っているわけでございますので、まとまった御答弁をいただければありがたいと存じます。  まず、当委員会の論議中幾つかの論議がございましたが、例えばPKOに関する五原則は、これは当たり前のことであって、法案などにしたって意味はないという御議論が何回も感情的に行われました。また、この法案自衛隊海外出兵法であり、海外侵略の扉を開くものだというような思い込みの議論が猛烈に行われました。私は、証拠もなしに一方的に決めつけ、そして自分の気に入らぬ意見はことごとく不まじめだといって罵倒するやり方は正しくないと思っております。  私は、この質問の中から、まず二つの項目につきまして政府側の御答弁をいただきたいと思っているわけでございますが、私がこれらの三つの文書を拝見して受けた印象から申しますと、SOPのガイドライン及び訓練マニュアルの二つは、明らかにPKO参加国を強制あるいは拘束するような文書ではございませんで、手引というか、表示されているようにガイドライン、ある種の示唆に富む指針というべきものであって、正確には、その後の事態をコントロールするのは、モデル協定に従って日本政府一つずつのPKOに対して結ぶことになるであろう協定がその確たる約束になるものだ、こういうふうに思っているわけでございます。したがって、日本側が五原則というものを立ててこの法案をつくり上げようとした御努力というのは的を射た対策であると思うのでございますが、この点につきまして、政府側の御見解を伺いたいと思います。
  201. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 渡部委員国際関係には非常にお詳しい方でいらっしゃいますので、あえて申し上げるまでもございませんけれども、この五原則のうち最初の三つは、確かに国連協力が一般的に成り立つための、国連平和維持活動が成り立つための基本的な条件ではございます。しかしながら、おっしゃいますように国連我が国とが取り決めを結びます場合に、国連側のいろいろSOPであるとかマニュアルというものは国連側の基本的な立場でございますし、それに対する我が国の基本的な立場、これはこの法律により規制されるわけでございますから、それに基づきまして取り決めが行われるということでございます。したがいまして、五原則三つのものは、基本的には多くの場合に妥当する条件であろうとは思いますけれども、これを我々の政府を規制するものとして掲げることは、やはり取り決めに入ります政府立場としては極めて大事なことだと思いますし、いわんや後の二つの原則日本独特のものでございますので、あわせて五原則といたした次第でございます。
  202. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このSOPの前文の中に、SOPは活動の任務、維持活動の概念、政治、軍事状況を反映している、国連より実施される維持活動多様性考えると、一つの普遍的なSOPに画一的にすべての活動を組み込んでしまうことは望ましくもないし、実践的でもない。つまり、一種類のSOPに全部をくっつけて入れてしまうというのは乱暴だよ、そんなことはあるものじゃない、一つずつのPKOについておのおの決めてくるのが正しいんだということが明示されている。前書きに書いてあるわけですね。  また、国連というところは、各国の行政というか、各国の国内の主権を侵すようなことを国連が決めるわけにはいかないのであって、各国は、国連参加することによって協調的に自国内の行政あるいは立法を行使することになっているわけでありますから、言ってみれば、日本政府と何とか県との関係国連日本との関係に適用されるわけではない。日本がどういう立場を持っているかというのは厳として存在するということが国連との関係ではわからなきゃいかぬと思うのであります。その辺の基礎的なルールの理解が薄いうちに議論が一遍に始まってしまった、それが議論の混乱の半数以上を占めているんじゃなかろうかと私は思っているわけであります。  そこで、今度はPKFの件ですが、国連事務総長の指揮下に入りますと、停戦あるいは同意、中立の原則が崩れたとしても日本の隊員は撤収できないのじゃないかとか、あるいは国連事務総長の指揮下に入ると、射撃命令が出て、コマンドが出たときに拒否できないのではないかとか、こういう議論が繰り返し繰り返し、同じようなトーンで行われました。また、このマニュアルの中の派遣国の指示を受けるなという部分をとらえまして、指揮系統を国連の現地司令官に一元的に統一しなきゃいかぬという部分を挙げまして、日本側の法律に基づく意見というのは執行されないという議論もたくさんございました。この点をまとめて伺いたいと思います。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕  先ほどの五原則のうちの第四の原則、撤収という項目については、モデル協定第二十六項に明示されております。私がちょっと読み上げますと、参加政府は、国連事務総長に対し適切な事前の通告を行うことなく、国連平和維持活動から自国の人員を撤収してはならないと書かれております。これは逆に言いますと、対偶で申しますと、自国の人員を撤収するには事前の通告を行うこと、こういうことでございます。したがって、撤収ができる。これはモデル協定に厳として書かれているわけでありますから問題がない。おまけにSOPは、ボランタリーに各国政府は隊を派遣することになっており、その意味でも撤収は可能であります。つまり、ボランタリーで出ていっているのですから、もうやめたと言えばそれで終わりですね。撤収なんて問題になるはずがない。これらの問題につきまして、政府側の御答弁をきちんといただきたいと思います。
  203. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 御説のとおりと存じます。
  204. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この事前の通告でありますが、事前の通告については、どの程度のものをどういうルートで行うかというのはかなり問題が残るかと思います。それについては今どう予想しておられるか。細目は後に決まるのかもしれませんけれども、御報告をいただければと存じます。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  205. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生が御引用になられた派遣国と国連とのモデル協定の第二十六項、「〔参加国〕政府は、国際連合事務総長に対して適切な事前通告を行うことなく、」このPKO活動から「自国の人員を撤収してはならない。」ということでございまして、まさに先生がおっしゃったとおり、逆に言えば、事前の適切な通告を行うことにより撤収することができるということになります。  具体的に何が適切な事前通告かという点につきましては、そのときの事情によりまして判断しなければならない問題であると思います。ルートにつきましては、日本政府から国連本部に申し入れるというのが正規のルートであるというふうに私たち考えてございます。
  206. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 今度はPKOに関する五原則目の問題でございます。武器の使用は生命の防護のための最小限度のものに限ると言っているわけでありますが、整理して、セルフディフェンスと英文で書いてあります部分が、日本風に言う生命の防護というのと任務を達成するための武器行使という部分と、両方が含まれているように見えます。これについての見解を述べられたい。  また、他のPKO部隊に対する攻撃に対して、外国人に対する攻撃に対してどういうように判断しておられるか、まとめておっしゃっていただきたい。  また、最小限度の兵器といいますけれども、ライフルでも大変な凶器になるという議論同僚議員から多数行われているわけでございます。この最小限の兵器というのは何を意味するものであるか述べられたい。
  207. 丹波實

    ○丹波政府委員 前段につきまして、まず私の方から御答弁申し上げます。  武器の携行を許されるPKFの要員が武器行使を認められるのは、先生がおっしゃったところのセルフディフェンスのときだけであるというのは、いろんな国連文書にも出てまいりますし、過去の国連PKF活動の慣行であろうかと思います。その場合の自衛、セルフディフェンスは、典型的には次の二つの場合を含むということが書かれてございまして、A、要員の生命を防護するときと、Bとして、PKFの任務が実力により阻止された場合にそれに抵抗する場合。日本政府といたしましては、後者につきましては憲法上の問題があり得るということで、後者の場合には武器の使用は行わないということが第五原則にございまして、それが現在の法案の第二十四条に反映されている、こういう仕組みになっております。
  208. 野村一成

    ○野村政府委員 外国人との関係でございますけれども、先ほども私答弁いたしましたが、この平和維持隊に参加する部隊は、一般に各地域に割り当てられて地域ごとに展開することになるわけでございまして、ほかの国の要員の生命等を防衛するための武器の使用というのが必要となる事態は、通常考えられないわけでございます。いずれにいたしましても、この法案におきましては、第二十四条で法令行為ないし業務上の正当行為としての武器の使用について規定しているのでございまして、その場合に、外国人の生命等は防衛の対象に含まれていないということをはっきりと申し上げさせていただきたいと思います。
  209. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、コマンドについてでございますが、政府側は指揮と指図について解釈を分けて御説明をなさり、先ほどから論議が続いているようにかなり紛糾をしているわけでございますが、このPKOの五原則のうちの第四、第五の原則は、SOPあるいは訓練マニュアルあるいはモデル協定をよく眺めてみますと、日本の規定が武器行使に対して極めて厳格に書かれている。だから、このSOPや訓練マニュアルの広い範囲とは全く違っておるというのは明らかだと思うのですね。そこを、何か最初同じようなニュアンスで質疑応答が行われていたのが混乱の一つではなかったかと私は思っているわけであります。  では、その、指揮、指図の内容は本法案でどういうふうに意図されているのか、また、日本のこの法律において、憲法の条項を反映させるために特に厳しく中側に締め込んだということによって任務の達成が可能かどうか、その辺のところを御説明いただきたい。  ただ、これにはもう一つつけ加えておかなければなりません。それは例の「束ねる」であります。この「束ねる」という用語は極めて不明快でありまして、後の御説明を伺えば伺うほど奇妙である。これは余り洗練された御答弁にはなっておられない。私は、この御答弁はもう一回基本的に修正なすった方がいいのではなかろうかと個人的には思っておりますが、それも含めて、今の段階で指揮あるいはコマンドあるいは指図について御説明をいただきたいと存じます。
  210. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この国連のコマンドと申しますのは、派遣された要員や部隊の配置等に関する権限でございまして、これに適合するように実施要領を作成するという関係にこの法案ではなっておるわけでございます。特に、今先生御指摘になりました憲法との関係では、この実施要領を適合すると申しましても、特に中断という場合には除いてございます。通常、中断と申しましても、先ほども国連局長の方から答弁あったと思いますけれども、やはりそういう状況になりましても、中断というのは、そもそもこのPKOの前提条件が、三つの第一、第二、第三原則が崩れるような状態でございますので、そういう場合については現地の司令官と緊密な連絡をとりながらやっていくわけでございますが、最終的にはやはり我が国の本部長の判断が優先する、そういう仕組みをとっておるわけでございます。  それから、武器の使用につきましては、これはもうあくまで第二十四条に規定しております、御指摘の非常に厳しい制限でございますけれども、そういう場合においてのみ使用できるという関係になります。  いずれにいたしましても、こういった点につきましては、先生既に御案内のとおり、国連との間におきまして五つの原則、今私申しましたのは四番目と五番目でございますけれども、そういうもとで我が国PKO協力するということについてはっきりと確認いたしておりまして、国連の方としては特に問題ない、そういう前提でこの法案をつくってございます。
  211. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 渡部先生から「束ねる」という言葉の中身、そして適当ではないのではないかという御指摘がございました。  私ども、「束ねる」と前長官以来申し上げてきておりますのは、あくまで武器の使用は個人の判断でございます。そして仮に数人おった場合に、その数人の人たちの判断で武器使用が行われる場合、そういう条件が整っている場合であっても、部隊の指揮官がおりまして、いや待てよ、もうちょっと待った方が本当に状況判断として適切な行動であるというようなことを経験からして申されるということもあるだろう。逆に言えば、指揮官が、部下がまだ武器使用の状況でないと思っているにもかかわらず武器を積極的に使えというようなことはあり得ない、そういう意味で一種の「束ねる」という言葉を用いたものでございますという答弁を申し上げてきておりますが、まあ言葉の問題でございますから、どれが適切であるかどうか、要するに問題は実態でございますから、御判断をいただきたいと存じます。
  212. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 助け舟を出すつもりではないのですけれども、もうちょっと文章をちゃんとやられるとちゃんと出てきたんじゃないかなと私は思いました。  というのは、SOPなんかを拝見しますともう明快なんです。これはモデル協定の方に書いてあるのですが、オペレーショナルコマンド、配置、組織行動は現地司令官がその権限を有し、懲戒処分は派遣国が有するとぱしっと書いてあるわけですね。したがって、コマンドを指揮と訳すときは、総理が何回かおっしゃいましたように、日本風の指揮というともう全権指揮ですから、それとはちょっと当たらないというので「指図」という表現を使われたというのはわからぬじゃない。ただ、その両方が混線していたのではないかなと思う節があるのは、いよいよ現場に行って、国連側の指揮官から射撃しろと言われたらどうなんだという設問に対する答弁が、私は余り適切でなかったんじゃないかな、こう思うのです。  これは、ユース・オブ・フォースという訓練マニュアルの中にあるわけでありますが、PKOというのは制圧的なものではない、武器を使用するとか実力行使していくんじゃなくて、武器を使用しないこと。今まで武器を使い続けてきた軍人をそこに派遣するのは不適当だ、彼らのあの考え方を自動的に再現する人たちをむしろ直さなければならないんだ、あるいは国連の職員で今までそういう問題に従事していた人も、年々場所によって変わるから訓練し直さなければいけないんだとか、あるいは警察の応援のために出ていった軍人もやり方を変えなければ間に合わないよというこのユース・オブ・フォースのところを拝見して私はびっくりしたのですけれども武器を使わないための訓練が並んでいるわけですね。  そこへもってきて武器の使用に対しては、マストという字ではなくてメイという字でみんな書いてある。武器を使用してもよろしいというときはこうこうというふうに極めて制限的に書かれている。おまけに武器の口径についてまで、どれだけ以上の武器については総司令官がやるぞというふうにもう制限的に制限的にやられているのを見ておりますと、この国連の現地の司令官が業務の妨害に対抗するための武器使用をするなんということは、この文面から見る限りはほとんどあり得ないということが私は言えるのではないかと思うのですね。  だから、これを自分で読んでみた上でのこれは私の感想でありますけれども、このような国連関係の文書から出てくることは、武器をしょっちゅう使うんだという調子で議論するのが正しいのではなくて、武器の使用を抑制するための訓練というものが行われるということがPKOの訓練の主体であるという現状を考えて答弁を組み立てられた方が適切だったのではないかなと私は思うのですね。  そこはこれから参議院もおありのことですから、十分いろいろな答弁もできることでしょうから、そのときゆっくり頑張っていただければいいとは思いますけれども、あの「束ねる」はちょっとわけがわからなかった、何を束ねるんだと。束ねるというのは日本人の語感としてはわかるのですけれども軍事用語としても政治用語としても余り適切ではない。宮澤さんは自民党を束ねているのか、あるいは派閥だけ束ねているのかなと、こう言われても極めて不思議な感じのする用語であって、抽象に過ぎたのではないか。ですから、俗語としては非常にわかりいい言葉を心がけられた前大臣を踏襲されておるわけですから、下手な言い方はできないのかもしれないけれども、ここのところはひとつ御研究いただく、そういうことでいかがでしょうか。
  213. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 渡部先生から大変示唆に富んだ御発言、御指導をいただいたわけでございまして、私が渡部先生の今の発言をお聞きいたしまして特に評価できる点は、本法律があくまで平和目的のための業務であるという立脚点を強く意識されて、武器使用というものはもうほとんどあり得ないので、例外的な、限界的なケースだという御指摘だと思います。私もそのとおり受けとめます。しかし、実際はこの議論といたしましては法律論議でございますから、限界的なケースについて質問者が言及されておるということも、これに私ども答えてきたわけでございますが、基本は先生のおっしゃるとおりでございまして、大変ありがとうございました。     〔中川委員長代理退席、金子(原)委員長代理着席〕
  214. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は個人的な立場では国連議連を推進した一人でございますし、国連というのは第二次大戦のときに日本が負けたときの向こうの連合軍の変形したものではないか、そんなところに協力するのはどういうわけだという反発もあるかもしれませんけれども、私は、日本にとって国連を抜きにして考えられない問題というのはもう大変多い、その意味で、国連との関係というのは極めて注意して取り扱わなければならぬという立場でいろいろやってまいりました。  そこで、私はこのPKOの問題についても、自分で北欧も訪ねてまいりましたし、同僚議員と一緒に視察のときにも行かせていただきましたし、またアメリカにも行かせていただいたし、現場も見たし担当者とも会ってみたし、そうしたあれをしながら、ブライアン・アークハート氏が日本においでになるときには私も自分のグループとともにこの方をお招きして、日本国会議員の皆様全員に御招待も差し上げて御説明を聞かせていただいたわけであります。そのときのブライアン・アークハート氏の説明はひどく耳新しく聞こえた部分がございました。  それは、あの方が国連憲章の第七章あるいは第六章のちょうどはざまと言われている活動ですが、国連憲章上PKOは規定がない。規定がないにもかかわらず積み上げたことに対してどう思っているのかなと私は思っているのです。そうしたらあの方は、世界じゅうで警察が始まったのは今から二百年近く前なのでありますけれども、そのポリスという概念が始まって、そういうグループができたときに笑われながら出てきたのが今や世界の国の常識になった。同じようにPKOについても、四十三年前にこれができたときにみんなから笑われて、みんなから批判されていたけれども、今や国際政治の安定弁としてなくてはならぬものになったと彼は胸を張って言っておるわけですね。そして、多くの試行錯誤をした。  そして彼の言いますのは、日本で一番たくさん出てきた質問一つとして、日本人のPKOだけが撤収できるかという質問が非常に多い。これはできるんだ、PKOで撤収なんというのは日常茶飯事である、平和維持軍は自主的な参加が本質であって義務ではないんだ、参加することは義務だと思っている人たちが山ほどいる、特に、政府がこういう問題を担当されるときは義務的感覚で考えられるものだから極めて大きな混乱を生ずると彼は言っておるわけですね。  それからもう一つは、撤収してもだれも後ろ指を指すようなことをするわけではない。中には政権が交代したから撤収したとか、ちょっとお金が実際的にはなくなったから撤収するとか、現地指揮官が極めて不愉快なことに遭ったから撤収するとかという撤収すらある。だけれども、そういうことのおかげで平和維持軍が安定的に平和に寄与できたということは、ノーベル平和賞を持ち出すまでもなく極めて成功であったという証拠なんだと、彼がしみじみと述べておりましたのに私は感銘したわけであります。  彼は、平和維持軍は非暴力、非強制の敵のない兵士であるからこそ偉大な兵士なのであって、戦闘状態で武器を使った瞬間彼らは実質的には、平和維持軍と名のっていたとしてもそれは平和維持軍ではない、ただの兵士、ただの暴徒にしかすぎない。だから、我々は戦わないということを金科玉条にしてやらなければならない。それを何ぼ各国政府説明しても、当初、PKOの問題を説明した各国政府では非常に理解が得がたくて、繰り返し繰り返し言わざるを得ないと彼は言っておりました。私はその話は印象的でございました。  私は、今この戦わないための組織をつくったということに対して敬意を表したいと思っているわけでございます。こうした面につき、このアークハートさんの説明だけを私は述べましたけれども政府も、実際的な撤収その他についてどういう具体例があるか、実例をもってお答えをいただきたいと思います。
  215. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  例えば、スウェーデンが一九八七年の十二月にサイプラスの平和維持隊から撤退しております。私たちが調査いたしましたところ、理由は、財政負担が過大となったということが理由であったと聞いております。それから、もう一つはイランでございますけれども、今までレバノンに展開しております平和維持隊でありますところのUNIFILから一九七九年に撤退し、かつUNDOF、これはゴラン高原に展開しておる平和維持隊ですけれども、一九七九年の三月に撤退した。理由は、イラクとの国境紛争で緊張が高まったというふうに承知いたしております。それから、チュニジアが一九六一年の八月にコンゴ国連軍から撤退した。それから、マリ連邦が一九六〇年の十一月にやはりコンゴ国連軍から撤退した。そういう事例を承知いたしております。
  216. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 PKOというのは平和を維持するために大きな功績を立てたというだけでなく、私どもは、身の回りの世界で今どんなひどいことがあっているかを深刻に認識すべきときが来たと思います。というのは、難民が現在、国連高等弁務官の説明で千九百万出ている。毎月毎月一万とか二万というオーダーでその人たちが死んでいく。また、世界では第二次大戦以降、七十回とか百三十回という大きな次元で大戦争が行われておる。しかも殺りくというのが行われるのは、いわゆる戦争が終わりかかったときに、民間人同士あるいは民間人を虐殺する行為が大発生しておる。  第二次大戦以後五十年、約四十数年でございますけれども、またそれに対する適切な歯どめ措置というのを世界は持ち合わせていない。それに対する歯どめ措置として、PKOはとめ男として大変見事な功績を果たした。これはもう社会党の先生方は私と同意見であろうと思うのですね。何とかこのPKOをバックアップしなきゃならぬという点については、私たちは、ようやく国民のレベルはそこへ上がってきたと思うのです。  ただ、ここのところの委員会では、その基本的な部分をのけて差のある部分だけを猛烈に取り上げて論争する余り、PKOというのが、血まみれの兵士たちがまた第三次大戦を起こすために元気はつらつとアジア侵略の前駆となって行くみたいな印象を与えたとすれば、我々の論議の仕方が共通して反省すべきことではなかったかと私は思います。  だから、私はここのところで伊藤先生にちょっと伺いたいのでありますが、先生はPKOの平和的意義と、これはもう世界の平和になくてはならぬ、立派だというところは先生は先ほどから十分御説明ができませんでした。また、私の質問の中でもそういうことが出るような格好になっておりませんでお気の毒に思っておるわけでございますので、PKOの平和的意義は何とかしてやらなきゃならぬというお気持ちがあるのかどうか、そこのところをちょっと御説明いただいておきたいと思います。どうぞ。
  217. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 私どもは、PKOが、また国連平和維持活動が戦後果たしてきたさまざまな役割、敬意も持ちながら一生懸命勉強しながら、その認識を深めるように勉強しているわけであります。そしてまた、渡部さんも私も、やはり世界の平和と安定のために今まで以上にさまざまな努力をして日本貢献しなくちゃならぬ、このことについては違いはないだろうと私は思います。  問題は、日本がどのような形で参加をするのがいいのかということをめぐる議論、もう一つは、国連の改革問題を含めまして、これからの国連、これからの国連日本、どうしたらいいのか、これからの時代をどう模索したらいいのか、こういう問題であろうと思います。  渡部さん、せっかく総理を初め閣僚と議論を積み上げられたのに、大変恐縮でございますけれども、平和維持軍、政府は隊と申しておりますが、これが直接武力攻撃や武力干渉を目的とするものではない、当然だと思います。ただ、結果として起こる危険性がさまざまあるではないかというところで、非常に心配してみんなで議論しているということになっているわけであります。これはないようにしなくちゃならぬということであります。私は、渡部さんの御質問政府の御答弁ございました、まじめに伺っておりました。その前に、我が党からもいろいろな質問ございました。私は、まだまだ多くの国民皆さんが、ああそれならわかった、この場所でも、与野党が大多数がわかったというような状態になっていないというのが大変残念な状態であります。  実は、渡辺美智雄さんも政調会長時代一緒に議論したり、政審仲間は何でも議論しようと随分やらせていただきました。当時はマスコミからは放言居士というネーミンクがございましたが、今は総裁候補、外務大臣・副総理として慎重に発言されておりますが、その渡辺さんもこの間、伊東さんの御質問でしたか、苦肉の策、いや取り消します、苦心の作とか言われましたが、渡辺さんは非常に正直な方ですから、お気持ちが私は出たのだろうと思います。  苦肉ではなくて、やはりもう一遍何かまじめに考えて、言葉上恐縮でございますけれども自民党案にいわば取り込まれないように、束ねられないように、さえた目と静かな頭を持って、どう考えたらいいのかということをやるべき非常に大事なときだ。世界歴史の節目、日本歴史の節目です。本当にどうしたらいいかを考えるということであろうと思っております。
  218. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少し伊藤先生にもガス抜きをしていただかないとちょっとお気の毒に存じましてお話をしていただいたわけでございますが、PKOが大事だというのはわかっておられるのだろうと思う。だから私は、社会党関係の方は、特にPKFにこだわってPKO全体を非難することはやめてもらいたい。それは本当に愚かなことだ。そして、それは法案審議を……(発言する者あり)
  219. 金子原二郎

    ○金子(原)委員長代理 御静粛に。御静粛にお願いします。
  220. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 法案審議を通して、私たち日本国民として次の道を開くために大切なことではなかろうかと私は思っておるのです。  さてここで、法制局長官に私はお尋ねしたいと存じます。  法制局長官は、昨年十一月六日、私に対する御返事をPKO活動に対していただきまして、後に何回も引用されるテーマになってしまったいきさつがございます。昨日既にあらかじめ申し上げましたので、法制局長官にここのところのPKO活動全般に対して、また自衛隊活動に対して、法制局長官としてのまとめた御答弁というものをいただいておきたい、そして後の論議の基礎としたいと思うのでございますが、ひとつお願いいたします。
  221. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  委員のお尋ね、従来から私がこの場でお答えしておりますことをもう一度整理してと、こういうお尋ねであろうかと存じます。  私が従来からお答え申し上げておりますのは、その中で基本になりますのがいわゆる憲法九条の武力行使あるいは武力による威嚇、こういうものに当たるかどうか、これが基本的な視点である、こういうふうにまず申し上げました。そうしまして、いわゆるPKO平和協力隊との関係につきましては、昭和五十五年の稲葉誠一議員に対します政府の答弁書、これが従来一つ政府見解として出されておりますものでございます。これをめぐりましての御質疑というのが従来あったわけでございます。  その趣旨といたしますところは、いわゆる平和維持隊の目的・任務が武力行使を伴う場合には、通常これに参加した我が国自身も武力行使をすることが予定されるという上に、我が国自身が仮に武力行使をいたしませんでも、そのほかの参加しました国が武力行使をするということになれば、その参加を通じて、いわゆる一体化論というふうなことから我が国武力行使をしたと同様の評価を受けるのではないか、そういう参加の形態は憲法上許されない、これが五十五年の答弁書の趣旨であろうと存じます。  そういう意味で、今回の法案との関係でさらに申し上げれば、その目的が、任務が武力行使を伴う平和維持隊でございましても、今回のように五つの原則をまず前提として設けまして、そういう形で我が国自身としては武力行使をしないことが明らかである、また他の参加国によります、あるいは仮に行われます、先ほどからの御答弁でも政府委員の方からも申し上げておりますが、極めて例外的なケースであっても、そういう武力行使が仮に行われました場合にそれと一体化しないことが確保される、こういう前提に立ちますれば、先ほどの原点に戻りまして、憲法九条に違反するというような評価を受けることはないということでございます。  なお、委員に昨年の十一月でございましたか、お答え申し上げましたときも、今のような基本に立ちまして、結局、平和維持活動、あるいはその中の停戦監視団あるいは平和維持隊、こういうふうな名称のいかんにかかわらず、その実態を個々に把握する必要があるという前提に立ちました上で申し上げたわけでございますが、それはあくまでも、先ほど昭和五十五年の答弁書につきまして申し上げましたようないわゆる一般的な前提を設けません参加の場合、これを申し上げたわけでございます。  これに対しまして、繰り返しになりますが、今回の場合には、憲法で禁じられております武力行使に当たることがないように特に慎重な配慮をし、前提を設けまして参加いたします、こういうことで、従来私が申し上げております、あるいはそれにさかのぼりまして昭和五十五年の答弁書で申し上げております。そういうものとの関係は御理解いただけることと存じます。
  222. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そこでもう一つ伺いますのは、古い話でしょっちゅう言われておりました自衛隊が合憲か否かについて、もう大分何回も議論いたしましたが、この辺で新しくもう一回、自衛隊は合憲か否かについてお話をいただきたいということが一つ。  それからもう一つ。今回の国際的な協力について、憲法第九条による規制とそれから憲法の前文による規定、それを比較対照されまして、憲法の前文の精神によって自衛隊海外に出動することは合憲だと簡単にはお話を伺っておりますが、その辺を整理してお話をいただきたいと存じます。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  まず、自衛隊の合憲性のお話でございますが、憲法九条はいわゆる戦争放棄、戦力の保持を禁止している、こういうことでございます。ただ、これは従来から申し上げておりますように、我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定しているものではございません。そういう意味で、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力、これにつきましては、それを保持することは憲法九条の禁ずるところではない。これは従来しばしば申し上げてきているところでございます。それで、自衛隊我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つための不可欠の機関、しかもその限度内の実力組織、こういうことでございますから、違憲のものではないということでございます。  それから次の点の、いわゆる憲法前文にございます俗に国際協調主義と言われるようなものとの関係でございますが、もちろん、憲法前文で、平和主義あるいは国際協調主義というものをうたっております。これは憲法全体を理解します上での貴重な指針であろう、私はかように考えます。  そういう意味におきまして、今回のPKOがまず武力行使を前提としない、あるいは非強制、強制力を伴わないというような形で国際の平和あるいは紛争の解決の維持、こういうことに当たりますものは、当然、憲法の前文で予定しておりますそういう国際協調主義平和主義、かようなものに合致するもの、こういうふうに考えております。
  224. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 憲法前文のことをおっしゃっていただきましたが、憲法の前文のどの部分がそうなのか、もう少し詳しく、踏み込んでおっしゃっていただけませんか。
  225. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今委員御指摘の憲法前文の中で申し上げますと、ちょっと読み上げてまいりますと、   日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 こういった部分がございます。またさらに、   われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 それ以外の部分にも随所に出てまいりますが、中心はその部分だろうと思います。
  226. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 我々は、第二次大戦の後に政府政府の間では平和条約が結ばれ、関係は正常化されているというふうに理解しているわけでございますが、民衆のレベルでは第二次大戦の傷跡というものは終わっていない。本法案の質疑がもう一つ複雑化するのは、アジアにおける日本の第二次大戦後の処理というものがいまだに心の中で処理されていないで、そして傷が痛みを伴っているところにあると私は思うわけであります。これに対して、私どもはいろんな手続がこれからも必要ではないかと総理にお伺いしたいと思うのです。  私は、具体的に何種類か挙げて申します。  一つは教育なんです。戦後の教育、歴史の思い出というのは我々にとって痛まし過ぎる。そしてその痛まし過ぎるのは、私たちにとってもそうだけれども、傷つけられた人にとって大変な痛みを伴っておる。最近において、日韓議員連盟において韓国側と、互いの教科書、最近の歴史の問題についてお互いに話し合おう、そのための研究会をつくろうというお話し合いができたというので、韓国側が物すごく喜んでおられたのを私は目の当たりにして思うのでありますけれども、第二次大戦の痛ましい歴史をどう教科書に表示するかは、おのおのの関係国とある程度相談するなり、研究会を持つなりすることも考えるときが来ているのではないかなと私は思うわけであります。  第二番目に軍票なんです。軍票、お金。政府が、軍が支出した軍票が散らばっておりまして、これが悪いことに、日本人は必ずこの軍票をかえてくれるという信仰があった。そのために戦後随分流通した。余計これは確保された。しかも、この軍票を流通するときに、香港等においては軍票を使わない者を処刑にしたという悪い思い出が残っておる。この軍票を持った人たちが香港を中心として何回も大騒ぎをしておられる。この様子を放置するということは、もう日本に対する反日運動としてとらえるのではなくて、個人として痛ましい思い出を増幅することに一生をかけておられる方というのは見るに忍びない、これは処理するのが当然ではなかろうかと私は思うわけであります。これが二です。  それから三番目。軍人軍属、原爆被害者、特攻隊、挺身隊、軍夫等非日本人、現在では非日本人の方々がおられます。この軍人軍属、軍夫、特攻隊、挺身隊、このようなもういろんなのが、あるいは原爆被害者まで含めて一部では補償が行われている。確かに台湾の軍属の方に対しては行ったし、私も努力した一人でございます。だから、やったのですけれども、目立つところだけやったというのはちょっとまずいんじゃないかなと今思うわけでございまして、これは処理するべきではなかろうか。それから強制連行者ですね。日本へ連れてきちゃった、あるいは北のサハリン等に連れていって置き放しにしちゃった。これをほったらかしにしているのはまずい。これは謝罪するか意思表示をするか、それで補償するか、こういうのを組み合わせて何かをしなければいけないのではないか。  私は、こういう戦後処理問題、まだいろいろあるかもしれませんが、そう大金額のかかる問題でもないし、世界の中で信用を集める日本の国にならねばならぬときに、少なくとも尊敬され、尊厳さを持つ日本の国にならねばならぬときに何かしなきゃならぬじゃないか。  いずれも関係省庁と打ち合わせしなきゃならぬテーマであることはわかっておりますし、これは事前に調べましたときに、基本的な御方針を打ち出されるのは総理しかない、総理のお気持ち次第だというふうに皆さんが言っておりますので、恐縮ではございますけれども、総理の御方針を聞かしていただくことで、私はこのPKOに対する一つの大きな、PKO日本国際貢献しようとしても、何だ日本人はという猛烈な反発があるために何もできない、そしてむしろその法案の変な背景になっているということを私は感じざるを得ない。そこでこの問題についてお尋ねするわけであります。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 先ほど渡部委員が御指摘されましたとおり、確かに国際平和維持活動は、紛争当事国の間にいわゆる撃ち方やめがともかく成立したけれども、しかし非常に不安定な状態である、そういうところへ国連平和維持活動が始まるわけでございますので、その結果としてまた撃ち方が始まったのではこれは平和維持活動というものは意味をなさないわけで、そういう意味で、基本的に非強制的であり、かつ国連の権威と説得により行われるべきものである、それが平和維持活動精神であるとおっしゃる点はまさに私どもそう思っておりまして、またこの法律の中でも、その間違いを起こしませんようにいろいろな担保を入れておるつもりでございますし、これからの運営に当たりましても、それはそのように、そういう精神努力をいたさなければならないと思います。  ただ、本委員会の御審議でその点についてのいろいろ危惧をお持ちの点が御指摘なされましたことは、これもまた国会のお立場としてはごもっともなことでございますから、私ども一つ一つそれは十分これからの運営につきまして戒心をしてまいりたいと思っております。  それから、憲法との関連でございますが、先ほど法制局長官が言われました中で、やはり平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼するという、そこのところが私どもが今後の国連活動に大いに期待をかけるゆえんでありますし、また、その活動貢献をいたしたいと考えておるわけでございます。  最後の点でございますが、それにしてもこのような法律が成立をし、またこれが実施された場合における諸国、殊に周辺の諸国との関連でございます。  教育につきましては、たまたまこれは私が内閣官房長官でございました際に、教科書の編さんにつきまして、それら諸国における我が国への危惧を十分に配慮すべきであるということを政府方針といたした経緯がございますが、なお最近、御指摘のように、民間の間で共通の歴史を探ろうではないかという動きがありますことは極めて慶賀すべきことである、歓迎すべきことであると思っております。  最後に、幾つかのいわば戦後に残されました今日までの問題、それは例えば軍票の問題であり、あるいは日本人でない人々、それは徴用された人もありましょうし、軍人軍属等々いろんな人がおられる、あるいは強制連行者の問題について御指摘がございました。  これは、私どもの先輩たちがサンフランシスコ講和条約あるいは日中の国交回復の共同宣言、日韓の共同コミュニケ、それから幾つかの国とは賠償協定によりまして法的にはほぼ処理をし得たと私ども考えておる問題でございますけれども、先輩の御苦労は御苦労として、今日いろいろな問題が出ておりますことを知っております。まず、そういう問題について実態を把握をするということに努めなければならないと考えております。いろいろ検討すべき問題が多々ございます。そのことはよく心にとどめておきたいと存じております。
  228. 林義郎

    林委員長 次に、東中光雄君。
  229. 東中光雄

    ○東中委員 この法案は、申すまでもありませんが、国連平和維持軍、PKFへ武装した自衛隊部隊として参加することも可能な、そのことを中心にした自衛隊の出動に関する法律であります。したがって、対象は、PKFはどういうことをやっているのか、どういう権限、組織になっているのかということが明らかになって、そこへ参加するという問題が起こるわけですから、PKFを明らかにするためには、私たちが要求をしました国連のいわゆる訓練マニュアル、それからSOPガイドラインというものが非常に重要だ。提出を求めましたが、今日に至るまで出されない。極めて遺憾であり、そして審議が尽くされない、そういう重大な障害になっておるということを強く指摘をし、出すべきだということを委員長に要求しておきます。  それで、国連の平和維持軍というのはどういうシステムになっているのかといいますと、安保理事会の決議に基づいてPKFを設立しろ、そういうことになった場合に、事務総長が各国に軍隊の派遣要請するに当たっては、当該平和維持軍について、その平和維持軍の軍司令官の権限や参加する部隊の構成員の権利や義務の問題等々を規定した当該平和維持軍の軍規則、フォースレギュレーションというのをつくるんです。それに従って動いていく、それを了承した上で参加協定を結ぶということになると思うのですが、条約局長、そうではございませんか。
  230. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 簡単にお答え申し上げます。  ある具体的な事案に即しましていわゆるPKOが設置される場合におきましては、その決定が安保理、通常安保理でございますが、なされますと、各国に国連からその派遣要請がありまして、これに応ずるかどうかは各国の裁量に任されているわけでございますが、これに加盟国が派遣をするという場合には、国連との間でいわゆる派遣取り決めが結ばれる。その形式等につきましてはいろいろあると思いますが、何らかの枠組みが結ばれるということでございます。その中でいろいろな具体的な案件について取り決めるということでございます。
  231. 東中光雄

    ○東中委員 問題は、フォースレギュレーションというのをつくるんです。それで私聞きますが、国連緊急軍、UNEFのフォースレギュレーション、軍規則によりますと、その第一章の四項には、「軍司令官は、PKF司令官としての任務を遂行するためのコマンドオーダー(指揮命令)を発出することができる」、そして第三章の「軍司令官の権限(オーソリティ・オブ・コマンダー)」この十一項を見ますと、「軍司令官は「軍」に対する完全な指揮権限を有する」、さらに「軍司令官は、司令部のすべての構成員を指揮下におく完全な権限を有する」、パラグラフ十二項。こうなっています。だから、こういうフォースレギュレーションがあって、日本がこのPKF参加をすればこの軍規則の適用を受ける。その適用を除外するということはあり得ないと思うのですが、その点外務大臣どうですか。基本的な枠組みの問題じゃないですか。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  232. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題がございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、先生が今引用になられたスエズに展開いたしましたところのUNEFのフォースレギュレーション、恐らくこれはSOP類似のものの文書であろうかと思いますが、いずれにいたしましても、累次御説明申し上げてきておりますけれども、最近、国連がつくりました派遣国と国際連合との派遣取り決めの第七項、八項、九項に書かれておることとほとんど同じことがこのフォースレギュレーション、先生が今お読みになられたところに書かれておるということでございまして、そのモデル取り決めで言っている、国連司令官がそのPKFの要員に対し配置、組織行動等の完全な権限を有するということと同じ意味を言っているものであるというふうに理解いたしております。
  233. 東中光雄

    ○東中委員 だから、国連緊急軍の軍規則に書いてあることと表現は違うけれども、モデル協定の中にはあるということを今国連局長認めたわけですから、コマンドオーダーを出せると。先ほど、コマンドを指図か指揮かといろいろ言われましたが、コマンドオーダーを出すことができるという意味のことがモデル協定の七項ではコマンドという言葉だけになっておる、そういうことだと思うのです。  それで、同じ軍規則によりますと、軍構成員の権利、義務として、「平和維持軍の任務を遂行するにあたり平和維持軍の構成員(派遣部隊を含む)は、軍司令官及び軍司令官の定める指揮系続からのみ指示をうける」指示というのはインストラクションというふうになっています。これもあのモデル協定の七項、九項に出ておるのと趣旨は一緒である、こう聞いていいですか。
  234. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほど私第七項、八項、九項ということを申し上げましたが、この九項は「国際的な性質」ということが書かれておりまして、「〔国際連合平和維持活動〕の機能はもっぱら国際的なものであり、〔参加国〕によって利用に供される人員は、国際連合の利益のみを念頭に置いて自らの行動を規制する。それらの者は、本国の行政事項に関する場合を除くほか、その任務の遂行に当たって国際連合のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならず、また、〔参加国〕政府もそのような指示をそれらの者に対して与えてはならない。」基本的な考え方は、先生が読み上げられたフォースレギュレーションと同じであると私たち理解いたしております。
  235. 東中光雄

    ○東中委員 今九項を読まれたが、これは、国際連合以外のいかなる当局からも指示を受け、あるいは指示を求めてはならないというのです。今読まれたのは「以外の」の「以外」が抜けておるのです、私が聞いたのが聞き違いでなかったら。それはもうそういう内容のことを言われたのです。ですから日本は、国連軍に参加した、平和維持軍に参加をした自衛隊に出身国である日本からの何らの指示も政府はしてはいけない。任務遂行についてはですよ。それ以外の行政的なものは別です。任務遂行についてはしてはいかぬのだというふうになっておるのだということを今言われたわけですね。  ところが、この法案は、この国連軍の指揮命令あるいはコマンドに従うんじゃなくて、従うのは政府から出していく、本部長が出す実施要領に従って行動をするのだ、こうなっていますね。だから指揮官は宮澤本部長ということになるわけです、実施要領をつくる総理大臣ですから。そして、その中身はPKFが出す指図に適合するようにするのだ、そういうことになっているのですね。この九項とは明白に違う構造になっているのですよ。その点はどうでしょう。     〔中川委員長代理退席、金子(原)委員長代理着席〕
  236. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題がございますので、私の方から答弁させていただきたいと思います。  累次政府から説明申し上げてきておりますとおり、実施要領は、我が国から派遣される隊員が円滑に国際平和協力業務を行うことに資するために、業務を行う地域、期間、業務の種類、内容、業務の実施の方法等必要と認める事項を、本部長が事務総長または国連司令官の指図に適合するように作成するものであります。  先ほどから御議論になっておられるモデル協定の第九項におきまして、参加する要員は国連の利益のみを念頭に置いてみずからの行動を規制し、国連以外のものからの指示を求めてはならないという考え方が示されておりますが、これはPKO国際的な性格からいたしまして、国連の利益を阻害したり、各国から参加している部隊を有機的に結びつけて一体として機能させるオペレーション上の権限を侵してはならないということを規定しているものと解しておりまして、国連の有しますところのオペレーション上の権限の範囲内で、国連からの指図に適合するように作成されますところの実施要領までが禁止されているというふうには私たち考えておりません。
  237. 東中光雄

    ○東中委員 国連の平和維持軍の司令官がみずから指揮をする、指揮系統を通じて指揮をする、そして国連以外のいかなる当局からも指示を求めてはならない。だから、そういうことを求めてもならぬし受けてもならない、構成員については。だから出ていった自衛隊は、国連の司令官から出てくるもの以外は受けてもいけぬし指示を仰いでもいかぬのである。そして出しておる国は、参加政府もそのような指示、任務遂行に必要な指示ですね、そのような指示をそれらの者に対して与えてはならないとちゃんと書いてあるじゃないですか。だから、これはもうまるっきり違うのですよ。体系が狂っているということであります。  それで、具体的な問題で聞きますけれども、こういう指示というのはどういう内容のものを国連軍司令官は出すのか。PKF活動をやるときですよ、任務を遂行するために。先ほど指図とかコマンドとかいろいろ言われていますけれども言葉はどうでもいいのです。どういう内容のものを出すというのですか。それに適合するようにやるというんだから、どういう指図、命令が出てくるのですか。防衛庁長官、直接関係あるのですよ。どういうものが出てくるのですか。
  238. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  法文に則して申し上げればよろしいのですが、これは法文に本体が書いてございますから私から申し上げますけれども自衛隊派遣する期間あるいは規模、装備、組織、構成等々につきまして法律ではっきり実施計画で定めることになっております。そして、それに基づきます実施要領によりまして私どもはこれを遂行するわけでございます。したがいまして、その間に、今SOPの関係あるいはガイドラインとの問題等々ございましたけれども、私どもは、やはりそれらの国連の指図、いわば国連の定める指図と適合するようにこの実施計画が定められるわけでございますので、その適合された、そして我が国のこの法律に基づく制約条件のもとで、国連合意された範囲内で私どもはこの貢献をしていかなければならない、このように思っているわけでございます。
  239. 東中光雄

    ○東中委員 全然、問題をそらすんですね。それは、あの実施計画なり実施要領なりの法律に書いてある条文を言うたって何にもならぬですよ。具体的な国連の軍司令官が出す指示というのはどういうものがあるのかというのは、具体的内容はそのときに応じて違うのですよ。  その性格は、例えばSOPのガイドラインで、その第二章に「司令部」という項があります。その二十八項によりますと、SOPのこの節では、司令官が司令部をつくっているわけですが、司令部から発出される文書は次のようなものがあると。要するに指揮命令する文書ですね。  どういうようなのがあるかというと、まず「指令」というのがある。これは行動または手順を統括するためのもので、ディレクティブと書いています。次は、指令を実施するときの手順の概要を示す、そういうための下のものに「指示」というのがある。インストラクション。そしてそのほかに、オペレーションオーダー「作戦命令」というのがある。さらにオペレーションプラン、「作戦計画」というのがある。そして、「その他のタイプの作戦命令 軍事PKOの日/日の行動では、書面作戦命令は、準備命令、予備命令、各別命令によって代えられ、補足される」、こういう形であなた方の言われている指図というのが出るんですよ。国連事務総長または事務総長にかわる国連軍司令官、これが作戦命令やら作戦計画やら日々の準備命令まで出してくるんです。  その指図に適合をするように本部長実施要領を変えるというのでしょう。そしてその実施要領に従って日本自衛隊は動くんだ、作戦命令に従っては動かないんだ、あるいは作戦指示に対して、国連軍が出したときは従わないんだ、これではまるっきり体系が違っちゃうんです。この法案は、国連軍に入るといって国連軍の形をとりながら日本自衛隊日本防衛庁長官等の指揮に従って動く、こういうことになるんですよ。これは全くの国連軍の解体じゃないですか。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席〕
  240. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  具体的な要請に基づきまして私ども実施計画を策定し、そして慎重な検討のもとに派遣するわけでございまして、私は、国連の事務総長あるいはそれに基づく委任された指揮官との調整の問題が、ただいま私申し上げたわけですが、この法律上の要件に該当する限りにおいて調整をしたものとして、そして、いわば調整された指揮権と言うのがいいかどうかちょっと疑問に思いますが、適合するように定められた範囲内で私ども行動するわけでございますので、決して今御指摘のような点で全面的に国連の指揮下に入らなければならないというものではございません。  これは、実はこの事柄自体、国連の平和業務に従事すること自体が国連の決議による要請でございまして、我が国がこれを受諾するかどうかのこの決定の権限は我が国にございますし、そしてまた、終結する場合におきましても、これを撤収することについて我が国の判断が優先されるということでございますから、結局、基本的な枠組みはそういう枠組みの中でございますから、個々の具体的な実際の場における想定その他は、私は今ここで、要請の中身その他が具体的に出てまいりませんとこれを論ずることはなかなかできないと思いますし、また出てきた場合は、これは強力に私どもとしては、いかなるこの法律趣旨によって貢献ができるかということをよく検討の上これに対応していく、こういうことでございますから、これはひとつ御理解をいただかなくちゃなりません。
  241. 東中光雄

    ○東中委員 全く答弁になっていません。作戦命令が出るんでしょう。日々に準備命令や予備命令まで出てくる、それが指図なんだ、法律でそう書いたんでしょうが。それを一々東京まで持っていって、そして向こうから実施要領を変えて、それで適合するようにやっていく、そんなばかなことありますかいな。軍司令官の指揮に従うということになっているじゃありませんか。それを、指揮に従わないでその指揮に適合するように変える、そして別にやるんだ、こんなものは体系上、国連PKFへの参加と言えませんよ。字面だけの論議をやったらだめなんだということを自民党の有力幹部でさえ言っているじゃないですか。そういう指図か指揮かでの問題ではないんです。  指図の内容は何かといったら、今言ったように作戦命令とかこういうものを出すんだと書いてあるんだから、そういうマニュアルがあって、その部隊へ入って言ってきたことには従わないんだ、軍司令官からの作戦命令には従わないんだ、従うのは政府から言ってくる実施要領でやるんだ、こんなばかなことが通用しますか。これはもう本当に、冷静にほかから見れば何ということをやっているんだということになりますよ。こういうばかげたことは断じて許せません。これはひとつ整理をしなさい。どういうものが出てくるか、入ってそのとき出てきたものを見てから日々の作戦命令が出てきてからどういうふうにできるのかを、参加するかどうかを決めるんだなんてナンセンスじゃないですか。  もう時間がありませんので、もう一つ言います。  「フォース・レギュレイション」によれば、第五章の「構成員の権利、義務」の中で、パラグラフ三十二ですが、「「軍」の構成員は」、平和維持軍ですね、「構成員」、参加した日本自衛隊は、「その地位によって知りえた情報で公にされていないものは—任務による場合を除き、司令官の許可なく—いかなる者にも伝達してはならない。」こういう規定があります。これは「権利、義務」の参加自衛隊の義務です。  ところが、法案によりますと、法案九条二項では、平和協力隊員はPKF参加業務を行うほか、これがPKF活動参加のことですね。そのほかに、PKF活動の具体的内容を把握するための調査、PKF活動の効果の測定及び分析を本部が行う上で、東京にある本部ですよ、本部が行う上で「有益であると思われる情報及び資料の収集に積極的に努める」、こう書いてあるんです。職務の遂行によって知り得たことは秘密だと書いておるんです、はっきり。それなのに日本は、その職務をやる、そのほかに情報を集めるんだ、しかも作戦の内容について、活動の効果の測定、分析をやるための情報を集めるんだ、それを任務づけているんでしょう、九条の二項は。これはやっちゃいかぬということをやっているわけですよ。  それだけじゃないんです。そういう情報を集めて一体本国へ報告できるのか。ちゃんと規則があるんです。SOPによりますと、指揮統制の具体的内容というのがある。SOPの第三章の「オペレーション」という項に書いています。その第十節の「通信」ではさまざまの種類の通信の権限を規定している。  例えば、派遣軍が本国政府に対して通信施設を使用して連絡することは認めているんです。自衛隊が連絡することは認めている。しかし、本国政府に対する通信についても厳格な統制がつきます。連絡の内容派遣国が関与を認められている問題、例えば要員の管理の問題、部隊活動の一般的条件などについて限定されているんだ。その通信によっては、これは今みんな元気でやっておりますとかそういうことだけであって、作戦についてはできないんだということになっているんです。特に十二節の「作戦報告」の項では、「武力衝突が発生した場合、部隊は先ずPKOの司令部にこれを報告する。司令部は国連本部に通報する。その前に当該部隊は、その国の政府に通報してはならない」と書いてあるんです。  中断するという指示は本部でやるんでしょう、基本的に。それは情報を知らなきゃできないでしょう。発砲とかあるいは武力を使ったとかいうことの報告がなければ判断しようがない。しかし、そういうことは本国への通報はやっちゃいけないと書いてあるんですよ。だからこのSOPをあなた方は公表することを嫌がったんでしょう。しかし、内容には今言ったようにちゃんと書いてある。これは国連のやっておることと全く違うことを、まあ、いわばスパイみたいなものですね、国連軍としてやっている。それの効果の分析、評価をするために特別の任務を協力隊員に法律で負わす、こんなむちゃくちゃなことが許されますか。  しかも、時間がありませんからもう一つだけ言っておきますが、武器の使用ということを言われています。しかし、国連の訓練マニュアルにしても、あるいはSOPのガイドラインにいたしましても、PKF部隊として武力行使するのは自衛のためである、それも任務遂行を妨害する場合も含む。全部ユース・オブ・フォースと書いています。ユース・オブ・ウエポンなんて書いてあるのはどこにもないんです。だから、問題になっているのは武力行使なんであって、日本法律武器の使用なんということでごまかす、これほどひどいものはないと思うのです。  だから私は、武力行使をできるという部隊に入って、その指揮に従わないで武器の使用、重機関銃で正当防衛をやるなんというのは、迫撃砲で正当防衛をやるというのは世界じゅう通用しないことです。やるという法律はだめです。絶対に体系的に違う。それから、偽りの審議をやっている、言葉面の審議をやっている。これじゃ許されない。答弁を求めます。
  242. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まず、情報の点についての御指摘でございますが、我が国のこれは主体的な行動でございます、この平和協力業務に参加するかどうかは。したがって、この平和協力業務を適正かつ効果的にやるために調査等が必要でありますから、これは四条の三号に書いてあるわけでございます。そして、それが現地において自衛隊としてもこの任務は持っておりますから、そして正確にこの現場の状況等を把握することが適切な執行になるわけでございますから、これは別に先生御指摘のようにスパイ行為だなんだとそういうものに全然当たらないことは明らかでありまして、我が国の国内法に基づく措置でございます、その点はひとつ理解をいただきたい。  それから私は、一つだけそれじゃつけ加えさせていただきますけれども、先生はあくまでSOPあるいはガイドライン、これに絶対的に日本が服しなければこれは参加できないんだというようなお感じのもとで御発言かと存じます。しかし、私ども我が国立場に立って、我が国は、総理が申されておりますように、憲法上のぎりぎりなし得ることは何であるかという模索の上にこの法律が構成されておるわけでございますので、決して国連のそのSOPそのものに拘束を受けるというものではないと私は思っております。  その一例として、外務省から御答弁をいただいておりますように、武器使用についても二つの場合がある。セルフディフェンスなんだけれども、その第一は生命、身体を守るため、あるいは任務遂行と二つに分けて、この後者は我が国としてとりませんということを、それを国連に了解を得ているわけでございますから、結局、国連におけるSOPその他が我が国に対して絶対的な拘束力を持つという前提での御質問は私は当たらないかと思いますので、この点だけは申し上げておきます。
  243. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますけれども、一言だけ申し上げておきたい。  これは、武器の使用は任務遂行のためにできると国連が言っているんじゃないんです。「武力行使は」と書いていますよ、はっきりと。だから、部隊武力行使だと書いてあるのを武器の使用というふうにすりかえるのはよくない、言葉面だけだということを言っているんです。  それからもう一つは、国連側は承知したと言うけれども日本が最後に、この武器を使用することであっても、十分に任務を遂行することが可能であることを確信していると述べているから、それならいいでしょうと言っておるだけで、国連軍の任務遂行ができるか、法則と違うことをやるんだから。これは、確信していると言うからそれならいいでしょうと言っておるだけで、こんな文章で国連が認めたということにはなりません。ごまかしたらいかぬと思うのです。  終わります。
  244. 林義郎

    林委員長 次に、伊藤英成君。
  245. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、総理に対して、今回のこのいわゆるPKO法案国会承認との関係について中心に所見を伺いたい、このように思います。  まず私は、基本的に民社党としては、この国連平和維持活動に、自衛隊の活用も含めて日本は積極的にその役割を果たさなければならぬ、こういうふうに思い、しかし、憲法やあるいは自衛隊に関する今日までの日本の非常にセンシティブな状況やら、あるいは周辺諸国に大きな迷惑をかけたその歴史的な経緯等にかんがみて、内外世論の理解を得るためにもシビリアンコントロールがどうしても必要だ、そしてそのために国会承認とすることが必要だ、こういう考え方であります、  そこでお伺いするわけでありますが、総理は先般、国会承認ということに関連をいたしまして、現在の国会状況からして、承認とすると国連からの要請に条件をつけることになり、不安定なものとなる、こういう答弁をされております。国会で否定されたら困るという意味でこれは使われたのでしょうか。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういう意味ではございませんで、政府国連と取り決めに入りますときに、その取り決めの中で、この取り決めは国会のその御承認の仕方いかん、書きよういかんにもよりますが、いわゆる停止条件をつけておかなければ完全な取り決めになりませんので、受け取る側はそれを不安定な状態と考える、そういう心配があるという意味のことを申し上げたわけでございます。
  247. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の国会状況からして云々というふうに総理はこの間言われたのですね。そう言われたのですよ。  それから、私はあの答弁を聞いておりながら思ったのですが、先日、私のところに政府のある高官が来られました。そのときに何と言われたかといいますと、こう言ったのですね。国連からPKFへの派遣要請をされて、政府国際世論を考え日本からも派遣すべきであると考えたときに、そのときに国会に承認を求めたら国会がノーと決定をするかもしれない、そうなると困るからこの法律の中に国会承認を入れたくない、こういうことを私に言われました。私は、これはとんでもない発想だ、こう思うのですね。  そうしましたら、きょう、私はラジオで十二時のニュースを聞いておりましたら、官房長官はこのように言われたようであります。これは、PKF派遣そのものについては政府の外交判断に任せられているものだ、こういうふうに述べたと報じられております。私は、先ほど申し上げた、国会に承認を求めるとひょっとしたらノーとなってしまうかもしれない、それは困るからという発想とこれは同じ話だろう、こう思うのですが、いかがですか。
  248. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 政府が申し上げておりますことは、私が申し上げましたように、国会の承認ということで、どういう形になりますかはともかくとして、法律が成立いたしましたときには、政府国連と取り決めに入りますときに、この取り決めはいわば国会の承認を条件としてとか、そういう一つの条件を書きますことが当然取り決め上の義務になりますから、そういう場合には国連側としては、この取り決めそのものが将来一つの条件によっては変わるかもしれないというふうに考えるであろう、そういう法律上の可能性について申し上げたわけでございます。
  249. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のは私は、今も仲間の議員皆さん方からも話がちょっと出ておりましたけれども、この問題は、国民の代表たる国会の意思に反することでも行政府のもとで実行するんだ、その方がよいと考えているのではないかと思われるのですよ。要するに、そのことはそのまま、国民の声を拒否した方がいい、拒否をしてこれを実行した方がいいというふうに考えられると思いますが、いかがですか。
  250. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 申し上げておりますとおり、この法律が成立いたしますと、政府国連要請があれば取り決めを結ぶことになるわけでございますけれども、その取り決めは、当然政府法律上の義務として条件つきのものにいたさなければならないわけでございます。そのことを申しておるわけでございます。
  251. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、これほど重大な問題について考えたときに、国会が、議会がその大きな役割を果たすべきだと思うのですよ。先ほども申し上げてまいりましたけれども、私は、政府の方の発言やらを聞いておりますと、民主政治とは何なんだろうか、こういうふうにさえ思います。私は、やはり民主政治というのはプロセスを大事にし、時間を大事にしなきゃならぬ、コストはかかってもそのことの方がどんなに大きな価値を生み出すかということだと思いますよね。今申し上げたような議会の役割を否定してしまったら、文字どおり私は全体主義になってしまうのだろうと思うのです。  私が申し上げるまでもなく、例えば、ソ連はなぜ崩壊したのだろうか、あるいは東欧はどうしてこうなったのだろうかというようなことを考えたときに、今日本が、初めて海外自衛隊武器を持って出るかもしれないというような重大な問題について、議会がその承認をしようという話は極めて重大な話だ、このように思うのですね。どうですか。
  252. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 政府といたしましては、国連と取り決めを結びますときに、なるべく最終的な条件つきでない、取り決めを結ぶことが国連のためにもよいと考えておりますけれども、しかし、それは、最終的には法律を御審議いただきます国会の御意思に係ることでございます。
  253. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、今のにさらに追加したい、こう思うのですが、日本が戦後から今日まで来て、そういう状況の中で自衛隊海外にまで出してそれを活用しようというような問題を考えたときには、国会でその妥当性について審議をしてというプロセスですね、このことが日本のこれからの健全な発展にとって極めて重大な要件だと私は思うのです。そういう意味で申し上げるわけであります。  先般のこの問題についての世論調査なんかを見てみましても、七十数%、八〇%近い人が国会承認を求める、いろいろな団体も国会承認を、あるいは労働組合も国会承認をと、こういうふうに言ったりしておりますよ。ある意味では、日本の政治が不信を呼んでいたり、あるいは国会不信を言われたりもしますよね。そういう中でこんなに多くの人が国会の、あるいは議会の議決に期待をしてくれる、これにどういうふうにこたえられますか。
  254. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 いわゆる文民統制の問題につきましては、しばしば申し上げましたように、この法律案の中にいろいろな仕組み、要素を入れておりまして、政府としては、これをもって文民統制を危うくするようなことはないと考えておりますのと、先ほどのように国連とはできるだけ最終的な、将来変化をしない取り決めを結びたいと考えておりますわけでございますけれども、最終的にはこれは国会が御判断をせられる問題でございます。
  255. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最初に私は、日本の周辺諸国、近隣諸国のことについても触れました。事実近くの東南アジア国々からも、日本自衛隊武器を持っての海外派遣の問題については大きな懸念を表明されたりしております。過去の歴史を見れば、彼らのそういう気持ちも私はそれなりに理解できるのですね。そうしたときに、これほど重大な問題、先ほど申し上げたように、日本自衛隊が初めて武器を持って海外に出るというような重大な問題について、シビリアンコントロールのもとに国会の意思で派遣をしたということになれば、これはそれぞれの国々の受ける印象も随分違うものだろう、その懸念というものを大きく払拭するものになるだろう、こう思うのですが、どうですか。
  256. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それらの国の懸念については、あらゆる方法をもってその解消と申しますか、懸念を持たれるには及ばないということの努力を私どもいたさなければならないと思います。
  257. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、これを比べてみれば、国会承認とした方がそれぞれの近隣諸国の人たちによりこたえることになるだろうと思うのですね。  さらに、これは防衛庁長官にお伺いしますけれども、いざPKO、特にPKF派遣される自衛隊員の気持ちに立って考えたときにどうなんだろうということでありますが、先般、掃海艇派遣のとき、あの前にテレビで見ておりましたら、その訓練中の艦艇の若い艦長さんが、命令とあれば行きます。しかし、さらにそこでつけ加えたのは、国民皆さんが行けと言われればそれは喜んで行きます、こう言うのですよ。だから政治は、例えば自衛隊員の人たちのことを考えれば、自衛隊員の皆さん使命感を持って働けるように、その環境整備をしてやることが政治の責任だと思うのですよ。そういうふうに考えたときに、国会承認の方がどんなにか自衛隊員の皆さん方が胸を張って行けることになる、こう思いますが、いかがですか。
  258. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ペルシャ湾の派遣の件についてお述べになりました。これは自衛隊法九十九条によります権限に基づく掃海業務の実施でございまして、国会承認とかそういう問題ではございません。本来の自衛隊の任務として与えられておるものを遂行したわけでございます。しかしながら、これは初めての経験、つまりペルシャ湾にあれだけの遠洋航海をいたしまして、そして我が国の石油資源の輸送ルートの障害を取り除こう、そしてまた、国際的にも結果として高い評価を受けたわけでございますが、このことをやろうということで安全保障会議並びに閣議の決定を経て、慎重な手続の上にも慎重な手続をとって派遣したものでございます。そして、なおかつその結果は、国民皆さんからこの問題は大変評価されていると私は存じます。行かれました落合一佐以下大変な、今いろいろ事情を聞きたいということでございまして、私どもは、自衛隊がそういうことによって士気が阻喪するというようなことはないということを申し上げたいので、ややちょっと時間を拝借いたしました。  国会承認の問題につきましては、総理がお述べになったとおりでございまして私はつけ加えることはございませんが、しかし、シビリアンコントロールという建前からいたしますならば、国会との関係では法律ないし予算を通じての統制、コントロール、これは有力なシビリアンコントロールの手段でございます。そういう意味でこの法律案は、今御審議をいただいておりますように、五つの条件、その他かなり厳格な枠組みをつくりまして、我が国としての憲法上可能な限りの手だてを尽くして、そしてその中でやるわけでございますから、あくまで国会の御議論、承認のもとに行われる行動でございます。  したがいまして、この枠内で行われる限り、行政権が自由裁量によってこれを自由にできるという問題でもございませんし、それからまた、総理がたびたび申しておられますように、この実施要領、実施計画についてその都度国会にも報告をするということを申し上げているのもそのとおりでございますから、私といたしましてはそのように考えておるところでございます。
  259. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお言葉は、自衛隊員の皆さん方の心情を本当に考えて答えられているかどうかといいますと、非常に私は疑問に思います。そういう意味で、ぜひまた自衛隊員の皆さん方ともこれからも十分に対話もしていただいて、それに即した施策をとっていただきたい、こういうふうに思います。  この国会承認の問題についても、私はこう思うのですね。自民党の多くの首脳の皆さん方も、今日まで何度となくそれぞれが国会承認の必要性について言われてまいりました。野党の中はもちろんでありますよね。必ずしも余り強く国会承認を主張されない人もあったりはいたします。しかしながら、国会での同意あるいは承認を入れない方がいいと考えている議員が本当にそんなにいるだろうかというふうに私は思うのですよ。本当に日本のこれからの平和を思い、あるいは日本のこれからの健全な発展を思ったら、私は、ほとんどの議員の人たちは、ほとんどの国民国会承認をすべきだ、こう思っていると思います。事実、自民党の閣僚経験者の方からも私は直接言われました。これは国会承認ということがどんなに必要であるか、もしもそういうことなしで法律が成立した場合に、政府というのは一たんできたらどんどんやってしまうよ、そういうふうに思わなければなりませんということを自民党のある偉い方からも私は直接言われました。総理、そういうことを思われれば、本当に国会承認ということを入れなくていいのだろうか、こう思います。  そういう意味で伺いますけれども、アメリカに戦争権限法というのがございます。アメリカは合衆国の軍隊を、私が知るだけでも歴史上、三百回以上も海外に投入をしているようでありますけれども、その戦争権限法の中で議会との関係を、まず第一に、合衆国の軍隊を投入する場合に、可能なときはいつでも連邦議会と事前に協議しなければならぬ、それでその次に、大統領の軍隊投入に対して、議会の承認なしに原則として六十日を超えて合衆国軍隊を投入することができない、このように国会承認をアメリカは非常に厳しく課しております。日本自衛隊武器を持たせて派遣をするというような歴史上大きなポイントとなるような問題について、アメリカのこの戦争権限法の考え方ですね、議会との関係での考え方について総理はどのように考えられますか。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 米国の戦争権限法をつまびらかにいたしませんけれども、これはいずれにしても、ただいま御指摘のように、軍隊を投入するときの大統領の権限に関する法律でございます。我々がしようとしておりますことは軍隊を武力行使の目的をもって外国へ出すということではございませんので、もし米国の場合の比較でございましたら、米国がPKO活動に入りますときの法制との比較でなければならないのではないかと思います。
  261. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話は、私は、日本とアメリカの置かれている状態は違うのだと思うのですよ。日本は今までずっと戦後から今日まで、自衛隊武器を持って海外に出るなんていうことはなかった。それを今回初めてやろうとするわけです。だから多くのみんなが心配をするわけですよ。懸念をするわけですよ。そういうことを考えたときに、議会が承認をしなくていいというような現在の法案について、本当にいいのだろうかという意味でその考え方を申し上げたわけです。
  262. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 自衛隊に対しまして大変御理解のある民社党の伊藤先生の御発言でございまして、先ほど来拝聴いたしておりまして、私どもも、国の安全と平和を守るための自衛隊の重大性、そして隊員の士気の問題、これはもうきちっとしておかなければならない、そして、立派にその任務を果たして我が国土の平和を守っていくことが何より重要だという意識は、私ももう伊藤先生に劣らないくらいの気持ちでございます。そういう点では先生のおっしゃられるお気持ちはよくわかる面もございますけれども、先ほど申しましたように、法律の構成その他からいたしましてシビリアンコントロールに欠けているのではないかという御指摘であれば、先ほどのような御答弁を申し上げるということにならざるを得ないわけでございまして……(発言する者あり)
  263. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。
  264. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは総理が今基本的な事柄についていろいろおっしゃられたわけでございまして、委員長が私に答弁の指名がございましたけれども、まさに総理のおっしゃるとおりでございますから、私もそのように考えております。
  265. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最後に一つお伺いしたいのでありますけれども、今回のこのいわゆるPKO法案は、これは国連決議に基づいて行う、いわゆるPKO国際機関要請による人道的な行動に限っておりますよね。そこで政府は、昨年議論されたような多国籍軍の後方支援のような活動参加すべきではないと考えてこの法案を出したのか、それとも、これとは別に、国連決議に基づく多国籍軍の活動の後方支援などに参加するための法案を別途これから準備する必要があると考えられておりますか。
  266. 野村一成

    ○野村政府委員 法案の枠組みにつきまして私の方から答弁させていただきますが、御指摘の昨年の湾岸危機の際のいわゆる多国籍軍の活動でございますけれども、これは、この法案に定義しておりますPKO国際連合平和維持活動あるいは人道的な国際救援活動、いずれにも該当いたしません。したがいまして、日本としましては、この法案の枠組みの中におきましてはこのような活動に対する、今先生後方支援とおっしゃいましたが、後方支援のようなことはできないものというように考えております。
  267. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今政府委員が申し上げたとおりでございます。昨年の多国籍軍のような場合にこの法案が何かの形で適用できるか、私はできないと考えます。
  268. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今お伺いしたのは、ならば今後、いわゆる多国籍軍という形で紛争処理に当たるというケースは非常にあるかもしれませんですね。これからあるかもしれません。したがって、この多国籍軍の活動の後方支援などに参加するための法案をこれから準備するおつもりですか、そういう考えはありますかということをお伺いしたわけであります。
  269. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういう考えは今持っておりません。
  270. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間が参りましたから、終わります。
  271. 林義郎

    林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は先日の質問で、一九七八年、八九年、九〇年、九一年の四回にわたって、日本政府は、国連事務総長に対しPKOに関する見解、提言を行っております。その資料を英文と日本文で下さいという要求をしたはずであります。それはまだ提出されておりませんから、その点に対する質問は保留をいたしておきます。  なお、ことしの四月十一日の報告分について、昨年廃案になった国連平和協力隊法のいきさつ、経緯を報告の中に盛らなかったのはどういうわけか。それを後で御説明いただきたい。  私はまず、私ども立場を明確にしておきたいと思います。  この法案は、湾岸戦争を契機としての反省あるいは考慮から出されたと総理はきょうも答弁をされました。しかし、その出発点に私はまず疑問があると思うのです。  どうしてかというと、このPKOというのは、皆さんもおっしゃったとおり国連憲章に明文がない。なぜか。冷戦のために国連機能が十分でなかったから生まれたのです。ところが冷戦が終えんした。したがって、冷戦のために生まれたPKOと冷戦が終わって後のPKOあり方というのは当然変える必要がある、私はそのように思うのです。だから、湾岸戦争後のPKOあり方を探求するのではなくして、冷戦後のPKOはいかにあるべきかを議論すべきではないか。つまり、新しい日本型のPKOとは自衛隊活用論であってはならない、今だからこそ憲法の出番である、憲法活用論の立場に立つべきである、これが我々の基本的な立場であって、本日提案された社会党案はその線に沿ったものであると私は評価をいたします。また、民社党がシビリアンコントロールの立場から国会の承認ということを非常に頑張られておる、この努力にも高い評価を与えたい。  自衛隊活用論に立つ限り、憲法の枠を実際問題として超えざるを得ない。当然でしょう。だから日本語の遊びでそこをごまかそうとしたのじゃないですか、詭弁を弄せざるを得ないのじゃないですか。小沢元幹事長が正しくそのことを指摘しておるではありませんか、日本語の遊びをしては国民の説得にはならないと。後藤田さんもそう言っているじゃありませんか。  つまり、この法案の特徴は、一つで言えば、自衛隊部隊として武器を持たせて海外に出す、その一点にある。例を挙げましょう。自衛隊部隊として派遣する、これを、自衛隊部隊として派遣することを世の中では派兵と言うのですよ。これが参議院のかつてのあの派兵禁止の決議と同じなんだ。だから、戦争を知っている者は太平洋戦争のときに何と言ったか。日支派遣軍、南方派遣軍と言ったじゃありませんか。派遣という言葉を使っているんだ、出兵に対して。  それから武力行使ですけれども武力行使というのは武器の使用を中心として行われるものであります。(発言する者あり)戦争を知らない人は黙っとってください。部隊として派兵する自衛隊武器使用というものは、これは正当防衛として個人で使おうと、部隊の構成員としての武器使用に間違いないんだ。それを武力行使と区別するなどということはもともとできない相談なんですよ。最初は個人の武器の使用であっても、結果としては武力行使に発展することは当然考えられる。そこには必ずタイムラグがある。つまり、PKF武力行使を目的や任務としてはいなくても、結果としては武力行使にならざるを得ない場合が十分あるのですよ、何とおっしゃろうと。だから、幾ら日本語で指揮を指図と言いくるめようと、英語ではコマンドであることには間違いないんだ。日本だけで通用する言葉国際的に通用するはずがない。束ねる、組織としてではない、組織的にやる、どこが違うのです、そこは。何を言っておるのです。  どこからこういうことが起こったかというと、結局は軍隊というものを知らない人、戦争の本当の経験のない人、宮澤総理は丙種合格で戦争には行かなかった、軍隊には行かなかった。そのせいもあるでしょう、ああいう御答弁をなさることは。そこの私は差であると思う。だから、後藤田さんもきょう出た週刊朝日にそう書いておるじゃありませんか。結局は戦争を知らない者と知っている者の差だとはっきり言っているでしょうが。  だから私は、二番目の質問ですよ、つまり結論として言えば、この法案は、あるいは言葉のもてあそびは、この国会を通すためにそういう言葉のもてあそびをしておって、一遍通れば国連のガイドラインに従わざるを得ない。もし国連のその基本原則、SOPあるいはガイドラインを無視して日本の独自行動が可能だとする、この法案が可能だとする、国連に認められる、そういう保証は一体何ですか、何をもってその保証とするのですか。日本が独自行動ができるというその保証は、どういう物的なあかしかあるのですか。それを明確にしてください。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 この法律案我が国自衛隊海外において武力行使をするというようなことを目的にしておりませんことは、法律をごらんいただきましても、この委員会審議を通じましても……(発言する者あり)
  274. 林義郎

    林委員長 静粛に願います。
  275. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 極めて明らかであると思いますので、ただいまそのような御指摘が再びございますことは大変残念なことでございますが、実はこの法律案の中で、たびたび御指摘がありましたように、平和協力部隊武器の使用について非常に抑制的に規定をいたしております。その結果として、しばしば、それで国連との話がつくのか、今楢崎委員もおっしゃいましたような安全が保てるのかという、そういう御指摘があるほど自制的な規定をしておるわけでございます。それをもちましても、この法案がおっしゃるような目的を持っていないことは御了解をいただけることだと思います。
  276. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ことしの四月十一日、国連事務総長あてに日本政府から出した報告の中に、去年の国連平和協力隊法の廃案の経過が盛られなかったのは何ゆえか、それを答弁してくださいと言ったでしょう、一番最初。
  277. 丹波實

    ○丹波政府委員 まず、先生が御指摘になられた過去三年間の資料でございますが、これは理事会を通じまして当委員会提出いたしておりますが、念のため先生にお届けいたしたいと思います。  二つ目のただいまの御質問でございますけれどもPKO委員会議論の対象になりますのは、訓練あるいは文民あり方、あるいは今後どういうPKOがあり得るかといったようなこと、それからPKOの財政状況といったような項目がPKO特別委員会議論の対象となっておりますので、昨年の我が国の問題についてはあえて触れなかったということでございます。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、最後、一問だけさせてください。  このいわゆるPKFというものは、自衛のため、あるいはそのほかにも、安保理事会が必要と認めた場合は武力行使をなし得る軍隊組織であるということは過去の文献でずっと明らか、この国会でも明らかにされたでしょう。例えば、一九五八年十月九日に出されたハマーショルドさんの研究摘要、あるいは国連キプロス平和維持軍のそれに関して出された一九六四年四月十日のウ・タント国連事務総長の覚書あるいは自衛原則、私はその資料を今全部そこに持っていますよ。そして日本はこれに対してどうしたか。この前もあれしましたけれども、一番最初の国連軍はハマーショルドさんのときですよね。そして、日本がこの国連参加したのが一九五六年の十二月十八日。それからわずか三日後にいわゆるその緊急軍の問題が出て、そしてそれの財政問題の採決があった。加盟して三日後、日本は賛成しているのですよ。そして研究摘要も賛成している。それから以後ずっと今言ったのは全部賛成している、財政的に。  だから、私は最後に、この賛成をしたときに当時の外務大臣の藤山首席代表が国連第十三回総会において、この日本の態度と関連してこういうことを言われておる。つまり、近ごろ再び国際平和軍の創設が問題となってきましたが、この問題は極めて慎重な研究と論議とを要する問題であることは言うまでもありません。その機能を発揮するに至れば個々の国々の軍備の縮減に寄与し得るでありましょう。また同時に、個々の国の軍縮は国際軍創設への寄与を容易ならしめるでありましょう。つまり、このPKOの問題は軍縮との関連でとらえなければいけないともうそのときに言っているんです、第十三回国連総会で藤山さんは。我々もそう思う。だから、今度自衛隊を軍縮する、そして併任にしたその分をこの平和協力隊に回せばいいんだ、自衛隊の身分をなくして。これがこの藤山さんの演説に合致する方法じゃありませんか。  それを申し述べまして、終わります。
  279. 林義郎

    林委員長 次に、船田元君。
  280. 船田元

    ○船田委員 それでは、私の質問を始めたいと思います。  きょうは、なぜだかわかりませんが、聴衆が非常に多いわけでございます。やや騒然とした雰囲気でありますが、できるだけ冷静に質問をいたしたいと思いますので、どうぞ御清聴のほどをお願いを申し上げたいと思います。  最初に、私ごとで恐縮でありますが、実は私もこの一月から我が党の外交部会長ということで、まさにさきの湾岸戦争への対応のある意味で第一線に立ちまして、九十億ドルの支援やクルド難民対策、あるいは自衛隊の掃海部隊のペルシャ湾への派遣等々、さまざまな対策の実現に努力をしてきたつもりでございます。この湾岸戦争の対応という大変大きな仕事を通じまして、私は、これから申し上げる二つの教訓を非常に強く心に刻んだわけであります。  その一つは、国連という組織が、設立以来初めてその安全保障システムを作動させ得たということであります。もちろん、この背景には、東西冷戦構造の終えんという大きな国際情勢の変化があったことは言うまでもないわけでありますが、ただ、この安全保障システムはまだ一回きりのことではないか、今後起こり得る、起こるかもしれない地域紛争に対してもこの国連の安全保障機能が十分に働き得るように、安保理事会の五つの常任理事国を初めとして世界の各国がそれに向けて努力をする、これは大変重要なことじゃないかな、こう思っております。特に、国連を重視をしている我々日本にとりましても、国連の安全保障システムあるいは安全保障機能の一部に積極的に参加をして国際社会での責務を果たす、これが大変重要である、このことをまず第一に感じたわけであります。  もう一つの教訓は何か。それは、日本はこれまで国際社会に対してさまざまな協力をしてまいりました。しかし、その内容をいろいろと調べてみますと、そのうちの多くはいわゆる金、そして物による協力ということがやはりどうしても中心になってしまう。人による協力、いわゆる人的貢献ということがどうしてもほかの国に比べて少なかったのではないか、限られたものであったのではないかということを感じたわけであります。特に、さきの湾岸戦争に対する我が国の対応としても、国際社会の評価というのは必ずしも高くはなかったというふうに認識をしております。今後、我が国国際社会の中で、ほかの国々と一緒になって汗を流して世界の平和のために頑張っていこうというときには、お金や物はもちろん大事ですけれども、それだけではなくて、人による協力、人的貢献というのを飛躍的に伸ばしていかなければいけない、こういうことを強く感じたわけであります。  これらの二つの教訓は決して私一人だけのものではなくて、まさに日本国民の多くが感じていることであり、それは湾岸戦争前の世論調査と戦争後の世論調査の変化において顕著にその証拠が見られる、こう思っておるわけでございます。国連が行う平和維持活動、その他人道的な国際救援活動に対して自衛隊も含めて積極的に参加をする、こういうことを目指した政府案は、このような湾岸戦争等から得た教訓を本当の意味で生かすべく提案されたものであって、ぜひとも成立させたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。  当委員会では、政府案に対しまして審議がずっと行われてまいりました。前の国会と合わせますと、実は昨年の国連特の審議時間に匹敵をする、あるいは政党によっては、その昨年の審議時間を上回る十分な時間をとって審議をしておりまして、審議は十分に尽くしている、このように私は理解をいたします。しかし、今回社会党さんから対案が出されまして、当委員会に付託となりました。せっかくの御提案でありますので、私の方からこの社会党案に対しまして、政府案との相違点を中心に若干の質問をいたしたい、このように思っておるわけでございます。(発言する者あり)
  281. 林義郎

    林委員長 静粛に願います。御静粛に願います。
  282. 船田元

    ○船田委員 そこで、まず第一番目に基本的なことでありますけれども、いわゆる国連PKO活動のうち、社会党案によりますと、これはたしか第三条にかかわる部分だと思いますが、「国際の平和及び安全の維持のための活動」という定義をされております。しかし、それをよく読んでみますと、その社会党案の今申し上げた活動の中には、暫定政府の行政に関する事務、それの指導とかいうことが書いてあります。もう一つには、いわゆる選挙監視ということも書いてありますけれども、それのみに限定をされて、我々が大変大事だと思っているいわゆるPKF、そして停戦監視団への参加は落ちているわけですね。排除されているということでございますが、私は、このPKFや停戦監視団への参加というのはまさにPKOの中核をなすものである、このように感じます。  例えば、これまで国連が出してきたPKOの中で、PKF中心としたものが九回、停戦監視が十三回、選挙監視が一回、全部で二十三回ということでございまして、この数字を見ても、PKFや停戦監視団というのが国連の行ってきたこれまでのPKOのまさに中核である、これはもう論をまつまでもないと思っておるわけでございます。  確かに、今後文民による活動がふえるだろう。そういう文書も私もつぶさに拝見をしております。しかしながら、この文書の意味はあくまでも、まずPKO活動にはPKFがあり、停戦監視があるんだ、そしてそれをしっかり踏まえた上で、なおかつ文民活動というのもこれからふえていくでしょう、そういう文脈で解釈をすべきもの、こう私は理解をしておるわけでございます。社会党案では、まさにその中心であるPKF、停戦監視団への参加が抜けているわけでありますが、ここで改めて、なぜそれを抜かしているのかということについての御答弁をお願いいたしたいと思います。
  283. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 与党の外交部会長をなさっている船田さんでございますから、しかもまだ、こういう緊迫した質疑の中でございますから、率直に私の気持ちを答弁をさせていただきたいと思います。  二つございます。  一つは、これからのPKOへの参加あるいは我が日本世界への協力国際貢献、どういう進路で進むのかという場合の大前提は、ポスト冷戦、ポスト湾岸、これからの時代に向けての新しい発想ということを踏まえなければ、私は日本として意味がないだろうと思います。船田さんのお話の中にもございました。湾岸戦争と同じようなことが二度も三度も十回も起こるだろうから、同じことをやろうという時代ではないと思います。世界じゅうがそうではなくて、あのようなことが二度と起きないようにどういう新しい努力をしたらいいのかということを、国連世界も真剣に議論しているという内容になっているわけであります。  したがいまして、船田さんも言いましたが、やはりPKOにおける文民の役割、具体的に考えたらわかると思います。間もなく国連カンボジア暫定機構、UNTAC、数千人から一万人近いと言われております。あの国土、それから通信、水道その他、大変な場所です。大変大きなそのインフラの基盤がなければ選挙監視のような活動できません、これは。だれがやれるだろうか。率先して日本が引き受けるという、また、ほかの国にはできない大きな役割があるということであろうというふうに思うわけでありますし、それから、言うまでもありませんが、やはりPKO、ピースキービングだけではなくて、経済社会関係、人権、いろいろなものを含めてピースメーキングシステムをどうつくるのかというのがこれからの課題、そういう方向への大きな新しい提案をするのが日本のビヘービアに最もふさわしい立場であろうというのが我々の法案の基礎になっております。  もう一つ申し上げます。  政府の案では、余りにも急速に、余りにも大きく内容が変わりました。一年足らず前に廃案になったあの法案、あの後に自公民三党で合意六項目がなされました。忘れてはいないと思います。「憲法平和原則を堅持しこが第一項目ですよ。「自衛隊とは別個に、」というのが第三項目ですよ。第四項目には、「国連平和維持活動」「人道的な救援活動に対する協力を行なうものとする。」一年足らずのうちに余りにも大きく変わりました。余りにも急に変わりました。したがって、政府案方向国民の世論はまとまっていないというのが数字でもあらわれているという状況であろうと思います。(発言する者あり)
  284. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。静粛に願います。
  285. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 恐縮ですが、今やポスト湾岸、ポスト冷戦の新しい時代への国連協力参加をどうするのかを議論しなければならないときでございますから、やはり目玉は前に向けて後ろに向けないように、そして将来に向けた大きな構想を提起をするというのが憲法に基づいた日本らしい大きな役割であろう。したがいまして、今おっしゃいました金、物、人、金、物、人、人イコール自衛隊というのは、私は今日の国民の了解できる点ではないと思います。
  286. 船田元

    ○船田委員 今の御答弁の中では確かに金、人そして物と、特に人の部分においては、最初に自衛隊ありきということを我々は最初から考えていたということではありません。これはいろいろな分析をして、そして人の派遣をするときにやはり組織的にやらなければいけない、そういう面があるわけですね。組織的に動かなければいけないという部分があるわけでして、やはりそれは今ある日本のさまざまな機関の中で自衛隊というものが最もそれにふさわしいのではないか、こういうことでいろいろと各方面から慎重に検討いたしまして、そしてもちろん、すべての歯どめをかけながら自衛隊を出すということを決定をしているわけでございまして、それはぜひ御理解をいただきたいというふうに思っておるわけでございます。  次に、第二番目の質問になりますけれども、さらに社会党法案について質問を続けたいと思います。  社会党法案の第三条第一号によりますと、ちょっとこれ読ましていただきます。「国際の平和及び安全の維持のための活動 国際の平和及び安全の維持のために国際連合が行う決議に基づいて国際連合及び二以上の国が行う活動であって、武力による威嚇又は武力行使を伴う活動以外のものをいう。」というふうに書いてあります。しかし、これはよく読んでみますと、余りにも範囲の広い活動をここで言っているのではないか、こういうふうに私は感じるのです。  例えば国連憲章に第七章、有名なところがありますけれども、第七章の四十条とか四十一条、これはいわゆる非軍事的な制裁措置がいろいろ書いてあります。例えば、代表的なのは経済制裁ということがあるわけですが、この法文そのものからすれば、まさにこの国連憲章第七章下の四十条や四十一条のものに、これもその中に含まれる、こういうふうに私は理解するのでございますが、それはそういう意味でよろしいのでございましょうか。
  287. 早川勝

    ○早川議員 お答え申し上げます。  今、伊藤茂提案者からるるPKOの将来の活動を展望した国連協力あるいは国際協力をしなければいけないという答弁をいたしましたが、それを受けまして、今委員御指摘のような法文の内容になっております。  問題は、社会党の案におきましても、できるだけいわゆる文民、非軍事民生の領域では最大協力をしていこう、またやらなければいけない。ただし、社会党提案しております基本的な原則があるわけでして、それは武力による威嚇、あるいは武力行使を伴う、これはやらないんだ、それ以外のことは最大限やっていこう、こういう趣旨でございます。
  288. 船田元

    ○船田委員 まあ、今御答弁でございますけれども、やはりそれを聞いても、どうしても何か範囲が非常に広いなという感じがしてしまいまして、少し、国連が行うPKOのその活動の部分を何かはみ出るような、そんな感じにどうしてもまだ受けとめられるわけでございまして、これは見解の相違なのかもしれませんけれども、これはちょっと疑問点が残るところでございます。  その次に、第三番目になりますけれども、今申し上げたこのPKOの定義の中では、これは社会党案の第二条になると思いますが、この前提として、内政の不干渉とかあるいは中立的立場を守るということは書いてあるのですけれども、停戦の合意、つまり停戦の状態というのが要件になっていないわけですね。ここはちょっと非常に不思議な感じがいたすわけであります。例えば、第三条のイ以下に社会党さんの言うPKOのいろいろな活動内容が書いてあります。医療活動や輸送を行う、あるいは被災を受けたところで建設を行うというようなものがありますけれども、そういったものは停戦の合意がないという状況の中で、例えば紛争継続中にそれを現地で行うとか、あるいは紛争開始前でも今言ったような国際平和協力活動が行える、こういうふうにどうしても読めてしまうわけでございます。  これまでの国会審議においては社会党さんの何人かから、紛争継続中の協力は危険である、隊員を危険に陥れることがあるんだ、そういうことで批判をされましたし、それからまた、紛争が起こる前に派遣されて、いわゆる予防PKOと言ったらいいかもしれませんが、そういったものへの参加社会党としては問題だ、こういうふうに御指摘をいただいているわけですが、そういうお立場からするとこの条文に書いてあることはちょっと矛盾するんじゃないかな、こう思うわけであります。ですから、停戦の合意という言葉を書いていないということに何か特別な意味があるのかどうか、これをお尋ねをしたいと思います。
  289. 上原康助

    上原議員 お答えさせていただきます。  船田先生の大変御丁寧な御質問に敬意を表したいと存じます。  今御指摘あった点ですが、停戦の合意ということが特にこの法案に明記されていないということは別に他意があるわけでもありませんし、それは当然の前提として国連に対する協力PKO活動というものはやっていくということでございます。  同時に、先ほど御提言というか、湾岸戦争以降の我が国国際協力をどう展開をしていくかということで、いろいろ外交部会長としての要職からもっと積極的にやっていきたいという提言があったわけですが、大方の面においてといいますか、かなり傾聴に値する文脈も大分あるわけですね。  ですから、私たちは、こういった日本のこれからの国際平和協力というか貢献というものは、確かに物、金だけでいいのかという国民の御疑問もあります。人的貢献をどうしていくかということが昨年の平和協力法案以降大分議論をされて、私も微力ですが、党の立場でいろいろ今日まで一緒に勉強をしたり、また国会でも御質問をしたり、やってまいりましたが、何遍も申し上げるようで大変恐縮に存じますが、我が党の法案の基軸といいますかスタンスといいますか土台と、政府の案が根本的に違っている点は、やはり私たちは非軍事民生文民ということを大事にしている。  政府はそれでは不十分だから、先ほども御指摘がありましたように、要するに自衛隊を活用することが一番機能性があるんだとか、あるいは便宜だとかいうことが大変強調されているわけですが、装備であるとか組織力という面では、確かにその点も全くないとは言えませんね。しかし、そういう国際貢献をやる上においては、どうしてもやはり憲法理念精神とどう整合するかというのが根本にならなければいけませんので、そういう面からすると、にわかにPKFというものを直ちに今日本がいろいろやるということは大変問題がある。  ですから、私たちは、PKO活動の中にも停戦、選挙監視団とかいろいろあるわけですから、そういう国民合意形成ができる分野から積み上げていって、いろいろと今後の国際貢献、物的支援というものがどうあるべきかということをさらにやっていくべきじゃないのか、こういうふうな見解でさきのこのような法案になっておる次第であります。
  290. 船田元

    ○船田委員 上原議員には非常に丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  しかし、今申し上げた質問の方でございますが、やはり停戦の合意ということ、これは政府案ではきちんと第三条に明記をしております。もちろん、PKOの大前提であるということは私もよくわかっておりますけれども、大前提であればあるほどやはり法文に書くということがこれは大事なんじゃないかと、こう思っておりますので、その辺はまた議論したいと思っております。  次に、第四番目の質問になります。  実は、社会党さんの案における国際平和協力活動、それを行う場所も、政府案PKOが出ていって行う場所も、確かに停戦の合意とか、あるいはさまざまな紛争当事国の同意があるというような前提はもちろんあるわけでございますが、しかしながら、治安状態というのは必ずしもよいところではもちろんないわけでございます。ところが、この社会党案によりますと、これをいろいろ読んでみても、その協力隊員がたとえ自己の生命、身体を守るためだけであっても武器は一切持っていけない、全くの丸腰である、こういうふうにしか読めないわけでございます。  その中で、例えば警察官ですね、警察官も、これは国家公安委員会を通じて要請外務大臣がしまして、そして社会党さんの案による隊に入って、そして派遣される、警察官の身分を持ったまま派遣をされる、こういうことになるわけですが、しかしよく読んでみると、国内では警察官はピストルを持っております。警職法に従ってピストルを携行しているわけですが、今の社会党さんの案によって協力隊員として海外に出るときには、そのピストルは、これは外していくというふうに解釈をしていいのか。その辺がちょっと、武器の問題、非常に微妙でございますから、お答えをいただきたいと思います。
  291. 早川勝

    ○早川議員 先ほど上原議員が答弁いたしましたけれども、補足させて答弁、最初にさせていただきます。  先ほど、停戦後の規定がないじゃないかという御指摘でございますけれども、第二条の合意、中立性というあの三条件を盛り込んでございます。それと同時に、第五条に、やはり同じように国際平和協力活動実施計画を私たちはつくります。その際に、適当であるときといういわば条件を盛り込んでございまして、そして社会党考え協力の基本原則は、非軍事文民民生と、これは大前提でございまして、それらの要件をその都度点検いたしまして決めていきたいと考えております。したがいまして、紛争継続中だとか、あるいは紛争開始前のそういった活動参加するということは考えておりません。これが第一点でございます。それから、それにつけ加えてやるのは国会の承認という項目がございますので、そういうことはありません。  それから、今の武器の問題がございますけれども、再三繰り返しておりますけれども社会党というのは非軍事文民だというのが原則でございます。治安の問題を指摘されましたけれども、伺いますと、いわゆるPKFですね、PKFというのは自分で身を守るために武器を持っていく。それからMOG、停戦監視団は非武装で行って、相手の国が身の安全を守ってくれるということになっておりますね。そういったことを考えてみますと、社会党の案では文民がまさに行くわけでございまして、その安全というのは相手の国に守っていただくし、最大限相手の、あるいは当事国を信頼をしながら身の安全を守っていただくという考え方でございます。
  292. 船田元

    ○船田委員 ただ、派遣された隊員が丸腰で行った場合に、やはりどうしても不測の事態、治安の状況によって不測の事態というのはやはりある程度考えておかなければいけない。そういうときに丸腰であるという状態でありますと、やはり非常に難しい問題が生じてくる。さらに、丸腰で隊員がそういう地域に行っているということを、例えば強盗というのでしょうか山賊といいましょうか、そういうものがそれを知っていて、飛んで火に入る夏の虫だ、こういうことで人質にとるなんてこともあるいはあるかもしれない。ですから丸腰で行くということは、ある意味で現地における危険性を誘発するということにもなりかねない、こう私は考えるわけでございます。これは議論してもしようがないところかもしれませんけれども、私はそう思っておりますので申し上げさせていただきたいと思います。  次に、問題移りますが、PKOあるいは人道的な国際救援活動のいずれについても、先ほど来話が出ておりますように、自衛隊の問題を社会党さんは一切外しておられるわけであります。しかし、私どもは、やはり自衛隊が長年にわたって蓄積をしてきた技能あるいは経験、組織的な機能を活用する、そのことが我が国の人的貢献を実効性あらしめるためにはまさにふさわしいものではないかと思っております。自衛隊参加なくしてなし得る貢献というのは極めて不十分な内容とならざるを得ない、こう思います。  実は、私もいろいろ経験をいたしましたけれども、クルド難民に対して医療援助を行う、これは国際緊急援助隊法の適用によって医師が出ていったわけでありますけれども、現場の役人に聞いてみますと、これまでも約百名の民間あるいは国立、公立病院の医師を常に登録をしているというふうに聞いております。そして災害発生時においては、その百人近くの登録名簿のうちから一人ずつ、あなた行っていただけますかどうですかということを問い合わせをするわけでございますが、やっぱり民間のお医者さん、それぞれ患者さんを持っておりまして、例えば派遣の期間が一カ月とか二カ月とか、そういうふうに長くなるのであれば、大変残念だけれどもそれには参加できない、こういう返事が往々にしてある、そこが大変苦労するところである、こんな苦労話も聞いたことがございます。このようなことを考えますと、こういうときにこそやはり自衛隊に所属をする防衛医官の皆さんに行っていただくということであれば、これは大変いい貢献ができるんじゃないかな、こんなことを考えております。  また、もう一つの例を申し上げますと、やはり今の国際緊急援助隊の話でございますけれども協力隊員を現地にまで、まあ現地はどこになるかわかりませんけれども海外のあるところでその活動が行われる、そういうときに、要員を現地まで運ぶのに一体どういう手段を社会党さんとしてはお考えであるのか。これはもちろん、国際緊急援助隊の現在の制度でも大変困っていることでございます。  クルド難民の援助のために医療チームを派遣したということを先ほど言いましたけれども、その医療チームを派遣するときも、民間の、コマーシャルの飛行機の便をキャンセル待ちで待って、そして苦労して乗って現地に行く。ところが、現地に行くまでに三日とか四日とか、あるいは一週間もかかってしまう。そうすると、ほかの国々、このような救援活動をこれまで行ってきた国々では、非常に早く現地に入って、そして既に活動を始めている。いつも日本は、せっかくお医者さんは出すけれどもどうしても現場に入るのがおくれてしまう。やはりそこに輸送手段という一つのネックが今の制度ではあるのではないかということを痛感をしておりますが、社会党さんとしては、この活動内容はともかくとして、その要員を現場に派遣するその手段を一体どう考えているのか、これをお聞きしたいと思います。
  293. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 船田さんのおっしゃいましたようなさまざまな問題、どう対応するのか、私は大事なことだと思います。二つの方法が今あります。  一つは、政府案に見られるように、自衛隊部隊として自衛隊そのものを使うという方法でございます。私は、その方向は反対である、とるべきではないと思います。そういう形で、例えばもし万一アジアで何か起こった場合に、そういう出動があった場合にはアジア国民がどう思いますか。アジア国民日本関係がどうなりますか。肌寒いような感じがします。そうでない、そうでないもう一つの、政府案ではないもう一つの……(発言する者多し)
  294. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。(発言する者あり)御静粛に願います。御静粛に願います。
  295. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 政府案ではないもう一つのあるべき方法を私はとるべきだと思います。それは何か。自衛隊の思い切った削減、軍縮、改編、そして、自衛隊の諸君に憲法上問題があるというのではない、胸を張ってレスキューやさまざまの国際貢献をやってもらう、新しい別の組織に移行してもらうという方法を私はとるべきであろうと思います。今日の世界情勢を見ましても、自衛隊の、四兆円かかったこの自衛隊の存在をそのままに残しておくことは私は許されないと思います。ソ連が日本に攻めてくることはありません。よそが攻めてくることもありません。戦争もないわけであります。(発言する者あり)
  296. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。
  297. 伊藤茂

    伊藤(茂)議員 例えば、国民の見る目は、雲仙とか災害出動とかに自衛隊が出ています。ああいう災害出動、レスキューなんかを国内外で専門でやってもらうのが一番いいんじゃないか。戦車でもなく軍艦でもなく。政府がやった世論調査でも、国民の声ではそういう数字が出ている。こういう状態だと思います。そういう方向への新しい転換と構想をどうするのかということを我々政治家が真剣に考えなければならない今日の時代であろう。お待ちください。  前に、緊急難民で自衛隊機の海外派遣の問題がございました。私どもは反対しました。しかし、全国のボランティアの皆さんが、自衛隊の飛行機はごめんです、みんなでカンパをします、ボランティアでみんなで飛行機をチャーターします。社会党もやりました。やったではありませんか。やっぱり国民全体の気持ちが通うような方向への新しい発想の努力を今やる、それがまさに私どもに、日本の政治に求められている新しい構想であろうと思います。
  298. 船田元

    ○船田委員 今の社会党さんの考え方にはなかなか納得する状況には至らないわけでありますけれども自衛隊をこの国連PKO活動に生かしていくということ、それから国際緊急援助隊法に自衛隊も加えていくということを、そもそもどうしてこれを考えたのかということについて、宮下防衛庁長官は、この自衛隊を活用すると、こういう面で、どういうお気持ちでこういうことで提案をされているか、お考えを聞きたいと思います。
  299. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと、国際緊急援助隊の方のことでございましたか当法案のことでございましたか、ちょっと……(船田委員「両方です」と呼ぶ)両方ですね。  我が国自衛隊は、御案内のように我が国の独立と平和と自由を守る、これはもう主権国家として当然なことでございまして、我が国防衛力というのは、もう御案内のとおり基盤的防衛力ということで、脅威対抗論はとっておりません。  つまり、相手の国がこれだけ武力を持っておるからそれに対抗し得るだけのものを持とうということではございませんで、これは五十一年の防衛計画大綱に基づいて現在の中期防が立てられておりますが、そのときの基本的な考え方は、やはり現在と同じように国際情勢がデタントの情勢にございました。そこで、そのときには日本防衛力あり方について、こういうデタントの状況でどう日本の防衛があったらいいかという議論がございまして、いわば平和時における日本防衛力あり方というものが昭和五十一年のあの大綱を策定する前後に議論されたわけでございますね。  それに基づきまして中期防を立て、そして今日まで来ておりますが、今日、御指摘のように国際的な情勢の大きな変化があります。この変化を踏まえて、今、伊藤議員の方から大幅な軍縮をすべきだという御議論もございましたが、我が国防衛力というのは脅威対抗を目的としたものではございませんので、いわゆる必要最小限度の侵攻に対して我が国を守っていくんだ、それからまた、平時においてやはり十分な警戒機能ができる機能を持つというバランスのとれた自衛隊というものを考えておって、それに基づいてやっているわけでございまして、あくまで我が国の平和を維持するための機能を持った自衛隊でございます。そういう意味でございまして、今日この議論がなされております。私どもは、自衛隊をあくまで平和の使命を帯びた部隊であるというように考えております。  そういう意味で、今回、国際的な貢献、これは今船田委員が冒頭おっしゃられましたように、緊張緩和のもとで、冷戦構造の終結のもとで国連の安保理事会の合意も得られるというような国連機能の重視の中で、我が国国連要請に基づき、あるいは国連の決議に基づきましてこの国際的な貢献、平和的な協力業務をやろうということは、まことにこれからの国際社会のあるべき日本の姿を指し示しておるものでございまして、この法案意味を私は高く評価をいたしております。  そして同時に、国際緊急援助隊、これはやはり自然災害等による大規模災害に対しまして我が国はこれに貢献していく、これは平和的に貢献する、この第二のことでございますが、これも重要なことでございまして、この二つを私どもとしては、これは時代要請にかなったもの、そして国連平和外交の我が国の国是にかなったものだということで考えておりまして、このことはまことに大きな歴史的な意味を持っておる、このように存じております。  なお、自衛隊の諸君が今日、非常にいろいろの国民理解を得られながらも、苦労して訓練に訓練を重ねております。私は、先ほど民社党の議員にも申し上げましたけれども自衛隊をこの上なく愛して、そして本当にこの立派な任務を尽くしていただきたいというのは……(発言する者あり)
  300. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。
  301. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 我が党の立場でございまして、この点はいささかも変わりありません。そして、今回の……(発言する者あり)
  302. 林義郎

    林委員長 御静粛に願います。
  303. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 二法の審議を通じまして、自衛隊の人たちがプライドを持ってこれから国際貢献ができるようにしていく、そのことがぜひ必要でございますから、どうか国民皆さんもこのことを大いに理解を私はいただきたいと思うわけでございます。そのことだけをはっきり申し上げておきたいと存じます。
  304. 大島理森

    ○大島委員 議長。緊急動議をお願いします。(発言する者多く、聴取不能)打ち切りをお願いします。採決をお願いします。(聴取不能)以上でございます。
  305. 林義郎

    林委員長 ……(発言する者多く、聴取不能)(拍手)……(聴取不能)(拍手)……(聴取不能)(拍手)……(聴取不能)     〔委員長退場〕     午後五時四十五分      ————◇—————