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1991-11-20 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月二十日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 中川 昭一君 理事 船田  元君    理事 与謝野 馨君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       浅野 勝人君    井出 正一君       伊吹 文明君    石川 要三君       上草 義輝君    衛藤 晟一君       小澤  潔君    岡田 克也君       北川 正恭君   小宮山重四郎君       斉藤斗志二君    鈴木 宗男君       武部  勤君    二階 俊博君       西田  司君    福田 康夫君       真鍋 光広君    増子 輝彦君       町村 信孝君    松浦  昭君       三原 朝彦君    光武  顕君       秋葉 忠利君    伊東 秀子君       小澤 克介君    緒方 克陽君       岡田 利春君    五島 正規君       沢藤礼次郎君    松原 脩雄君       元信  堯君    山中 邦紀君       東  祥三君    遠藤 乙彦君       山口那津男君    渡部 一郎君       東中 光雄君    古堅 実吉君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長 伊江 朝雄君         官)  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣 野村 一成君         官房参事官         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         内閣法制局第二 秋山  收君         部長         警察庁警務局長 安藤 忠夫君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 小池 清彦君         局長         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁長官 藤井 一夫君         防衛施設庁総務 竹下  昭君         部長         防衛施設庁施設 大原 重信君         部長         沖縄開発庁総務 造酒亶十郎君         局長         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長  委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委 石田 俊昭君         員会調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     浅野 勝人君   中谷  元君     真鍋 光広君 同日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     逢沢 一郎君   真鍋 光広君     中谷  元君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第五  号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣  法第六号)      ――――◇―――――
  2. 林義郎

    林委員長 これより会議を開きます。  第百二十一回国会内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東秀子君。
  3. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 社会党の護憲共同伊東秀子でございます。  冒頭に委員長にお願いでございますけれども、ちょっと質問に書面を使いたいと思いますので、お配りさせてよろしゅうございますでしょうか。
  4. 林義郎

    林委員長 それでは、さよう取り計らいます。
  5. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 きのうまで、自衛隊部隊として出す場合の現地での指揮命令系統が大変問題になったわけでございますけれども、きのうまでの論議では、国連事務総長指揮が、指揮あるいは指図という言葉でございますが、自衛隊に及ぶのは実施要領を通じてのみである、現地での具体的指揮権自衛隊法八条に基づく防衛庁長官統括のもとに、幕僚長、そして部隊指揮官になるというふうに確認してよろしゅうございますでしょうか。
  6. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊部隊指揮につきましては、ただいま御指摘のとおり、この法案の第九条四項に基づきまして、防衛庁長官指揮というのが、実施計画実施要領に従い、自衛隊部隊等国際平和協力業務を行わせることができるということで書いてあるわけでございまして、それは、その防衛庁長官指揮が、今先生指摘のとおり、自衛隊法規定に基づきまして、防衛庁長官内閣総理大臣指揮を受けるという関係になります。  同時に御指摘申し上げさせていただきたいのは、やはり協力隊員としての身分を併有いたしておりますので、したがいまして、協力隊員としての業務、昨日も御議論ございましたのですが、四条二項の第三号に掲げております業務につきましては、本部長指揮のもとに活動する、そういうことになります。
  7. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 そうしますと、この場合、自衛隊自衛隊員自衛隊法五十七条に定められた「上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」という義務はなくなることはないということですね。
  8. 畠山蕃

    畠山政府委員 自衛隊としてPKO活動を行うわけでございますから、その規定は生きているということでございます。
  9. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 そうしますと、万一、法二十四条三項、法というのはこの現在審議している協力法案のことですが、法案二十四条三項にある要件がないのに、例えば国連現地指揮官任務妨害等の場合に武器使用を命じたとかいうような場合ですけれども、部隊指揮官自衛隊員に対して武器使用を命じてしまった、それによって人を殺傷してしまったという場合に、その部隊指揮官も、さらには発砲行為をした自衛隊員も、ともに刑法上の殺人罪あるいは傷害罪に問われるということになるわけですね。
  10. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  昨日の御審議でも防衛庁長官の方から何回となく御答弁申し上げている点でございますが、この二十四条に書かれております武器使用というのは、あくまで自衛官個人判断で行われるものでございまして、したがいまして、ただいま先生指摘指揮官指揮命令、そういう状況のもとでの武器使用がないということでございます。
  11. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 法律というのはあらゆる場合を想定してつくられる、そういう性格のものだと思うんです。間違った指揮を出すことはないということ自身は神でない限りあり得ないわけですから、そのような場合には殺人罪傷害罪が適用になるのかということを聞いておりまして、そういうことはございませんという答えはちょっと、法としてそういうことは予定してないということであれば大変不備な法律ということになるんじゃないんでしょうか。
  12. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  間違った指揮という前提でございますけれども、私ども、この部隊活動、この法案に基づく活動につきましては、そういう指揮官が誤った指揮というふうなことは行わないという大前提に立っております。まさにこの第二十四条に基づきます武器使用自衛官判断によって行われる、そういうことでございます。
  13. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 人は人を殺さないものであるというような前提に立てばですけれども、やはり人間は過ちを犯すことがある。だからこそ法律が必要になるわけでございますけれども、だから、そのような場合にどういうふうになるか。そうでないと、現地に出る司令官あるいは自衛隊員というのは非常に不安定な状況で、自分たちが誤った行為をした場合にどうなるかということを明確にしておかなければ、大変法律としてはずさんであるといいましょうか不備ということになるんだと思いますので、質問しているわけでございます。明確にお答えいただけたらと思いますが……。
  14. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  私どもは、先ほど指摘申し上げましたのは、まさにそういう誤った指揮というものがないという前提でございますが、もし仮にというふうな極端な仮定のもとでの御質問でございます。  あえて申し上げますれば、そういう場合には、これは昨日の議論でもございましたかと思いますけれども、基本的には受け入れ国との地位協定その他で、まず裁判刑事管轄権というものの処理が行われることになろうかと思います。その上で我が国にそういう裁判管轄権があるということでございますれば、通常慣行といたしましては、PKFの場合には派遣国の方に刑事管轄権があるということでございますが、そういう場合には我が国刑法にのっとって処理されるということになろうかと思います。
  15. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といいますと、日本刑法上の罪が、間違った指揮を出した指揮官やその行為を行った自衛官刑事訴追が行われるということの御答弁でございますが、その場合の警察の捜査はいかにして開始するのでございましょうか。
  16. 坪井龍文

    坪井政府委員 お答えいたします。  通常自衛隊部隊に、自衛隊法の九十六条によりまして、部内秩序維持に当たる警務官というのがございまして、その者が通常いろいろ自衛隊にかかわる犯罪行為につきましては捜査し、司法警察職員としての行動をするということになろうと思います。
  17. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 これまでいかに戦闘行為を効率的に行うか、つまり敵をいかに効果的に殺害するかと言えばいいんでしょうか、そういった訓練がこれまでは自衛隊で行われていた、行われていると思うのですが、そういった自衛隊がそのまま自衛隊業務としてこういった現地に赴く場合、大変な刑事責任を負うということで、私は、自衛隊員の方々がどんなにか不安な身分に置かれるのではなかろうかと心中非常に心配するわけでございます。  次の質問に移らせていただきますが、今のこれまでの御答弁においても、事務総長指図という形で実施要領を通じてのみであって、現地指令はすべて指揮官である防衛庁長官統括のもとにおける日本部隊指揮官が行うということでございました。  それで、きょうお配りいたしました図表をごらんになっていただきたいんですけれども、この英語で書いてあるのは国連が出版しておりますSOPガイドラインでございますが、これに基づきましても、FC、フォースコマンダー、このフォースコマンダーのもとに、あらゆる現地での部隊はすべてフォースコマンダー指揮命令のもとに服するという構造になっております。  それで、さらにはその別な国連ナミビア独立支援グループ、この組織図ごらんになっていただきたいんですが、これによりましても、事務総長指揮命令のもとに民政部門軍事部門と分かれておりまして、軍事部門に関しましては、現地司令官、副現地司令官のもとにあらゆる部隊指揮命令系統を受ける、こういう構造が示されているわけでございます。今のこれまでの論議による自衛隊業務として防衛庁長官指揮を受ける自衛隊員がこういった平和協力業務につく場合には、この例えば国連ナミビア独立支援グループ組織図に基づきましても、どこの部隊にも所属しないということになると思うんですが、そのとおりでございますでしょうか。
  18. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私、今この資料を拝見させていただいておるわけでございますが、何分これは、例えばUNTAGにつきましても、非常に簡略された形での組織図になっておりまして、このナミビア独立支援グループ図面で説明申し上げますと、この右側の例えば軍事部門というところ、現地司令官、それから副司令官ですか、それからその後にずっと部隊というふうに、これは恐らく各国部隊という、各国参加部隊という、そういう前提で書かれているのではないかというふうに思いますが、この全体のこれはナミビア独立支援グループ活動が行われる場合の全体のシステムを図面の形で書いたというふうに思われます。  それで、この場合に我が国部隊活動というふうに着目いたしますと、やはりこの現地司令官というのがございます。その現地司令官のところには基本的に国連ヘッドクォーターと申しますか、がございまして、そこには連絡要員日本部隊から派遣されている。常に連絡業務を行う。それは日本部隊長との間の連絡業務ということに相なります。この指図と申しますのは、まさにこの現地司令官と、それからこの下にある部隊、それぞれ担当する部隊がございますけれども、その間に介在いたしまして、その指図日本部隊が受け、それをさらに実施要領という形で、必要に応じ本部長指示を仰ぎ、実施要領をその指図に適合するということで対応していく、そういう仕組みになろうかと思うのでございます。したがいまして、今私突然見ておりまして、その上でのあえてこの御説明申し上げているわけでございますけれども、この組織図を見る限り、私の理解は以上のとおりでございます。
  19. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といいますと、今もおっしゃったように指図という形でしか、つまりペーパーでしか現地司令官意向、あるいは事務総長と言いかえてもいいわけですけれども、意向自衛隊員には通じないということでございますれば、つまり自衛隊員PKO構成員ではないというふうに考えていいということでございますね。
  20. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  モデル協定に、昨日も何回か引用させていただきましたけれども、国連指揮官は、各国が出してきますところの要員に対しまして、配置組織行動等権限を及ぼす、まさに各国はそういう形で参加していっているわけでございまして、各国のそういう要員はまさにそういう形で、構成員という言葉意味にもよりますけれども、まさに国連指揮下PKO要員として活動をしておる、そういうことでございます。日本も同じような態様で活動するということでございます。
  21. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 構成員がどうかということは、こういった場面での指揮命令系統に服するかどうかということが重要なことでございますし、このSOPの出しておりますガイドラインに基づいても「平和維持活動に従事する軍事要員は、作戦に関する事項に関しては自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長から命令を受ける国連軍司令官からのみ」、この「のみ」というところが重要でございますが、「命令を受けるということが、平和維持活動基本原則である。」というふうにはっきりうたっております。この基本原則に服さないというのであれば、この組織構成員ではないというふうになると思うのですが、そのことは違うのかどうか、構成員であるかないか、イエスノーで答えていただけますでしょうか。
  22. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  昨日から何度も御説明申し上げておりますとおり、日本PKOあるいはPKFに参加して出ていく場合、国連配置組織行動等権限というもののもとで行動するということは何度も御説明申し上げたとおりでございまして、そういうものがもし構成員ということであれば、そういう構成員として行動する。私の理解では、各国もまさに同じような対応で行動しておる、まさにそういうことでございますので、国連は過去の慣行、そういうものを考えて、これをモデルだということでこのモデル協定というものを出しておるわけでございます。まさにこれはそういうひな形として、過去の例を全部共通するものを入れてつくったひな形でございまして、各国はまさにこれに基づいてといいますか、こういう考え方に基づいてPKFに参加してきている、こういうことでございます。
  23. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今局長がおっしゃられましたモデル協定におきましても、すべての適当な措置現地司令官がとる。つまり、作戦上の指揮命令はすべて現地司令官にあるというふうに書いております。それに服さないものは国連としてはPKOには参加できないというような態度をこれまでとってきている。つまり、現地本国指令に基づいて動く、本国指揮命令に服するような要員PKOには参加できないというふうにはっきり国連態度を示していると言われておりますが、もし、そうじゃない、現地司令官国連現地司令官に服さなくてもよいPKO要員として日本が参加できるのであるという大変重要な、これまでPKOに関する例外中の例外措置だということでございますが、それはきちんとした文書でなければそういうことは確保できないのではなかろうかと思います。今の局長さんの御答弁であればそういった文書がおありかと思いますので、その文書をお出しいただけますでしょうか。     ―――――――――――――
  24. 林義郎

    林委員長 議事の途中でございますが、ただいまニュージーランド・マッキノン副首相一行の皆様が本委員会の傍聴にお見えになりました。御紹介を申し上げます。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  25. 林義郎

    林委員長 質疑を続行いたします。  丹波国際連合局長
  26. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  何度も同じようなことを申し上げて恐縮ですが、昨日、前からもそうですけれども、特に昨日以来一貫して申し上げておりますことは、日本といたしましては、PKFに参加した場合、PKOもそうでございますが、この国連指揮官配置行動組織といったような面についての権限あるいは指図に従うということは前から申し上げておるとおりでございまして、ただ、通常指揮という場合には身分関係その他が入りますので指図という言葉は使っておりますけれども、繰り返しますけれども、配置組織行動といった側面についてのまさに指図には従うということを申し上げておるわけでございます。     〔委員長退席大島委員長代理着席〕  それから二つ目に、国連の側から見て非常に大切なことは、いろいろ各国が出てくる、その各国がばらばらに行動されてはたまらぬということで、先ほどからほかの指示を求めるな、こういうことを言っているわけですが、日本実施要領の中には、国連指揮国連司令官指図に従うように、適合するような作成を常に行っていくということが書かれておるわけですから、国連の側から見ても、日本だけがそういう指図に従わない行動をするようなことにはなっておりませんので、その国連として見て一番重要な点も確保されているということでございます。     〔大島委員長代理退席委員長着席
  27. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 先ほどからの御答弁では、自衛隊員が従うのは実施要領という文書を通じてのみ国連事務総長指揮に従うんだ、現地では現地司令官日本防衛庁長官統括のもとにある日本人現地司令官指揮に従うということを御答弁になりました。あたかも身分上のというか懲戒権のないものは指揮の中には入らないというような宮澤首相の御答弁がございましたが、これはもう一回繰り返しますと、宮澤首相は、協力隊員国際公務員でないのだから国連指揮に従う義務はない、指揮に従わないときに制裁、懲戒をするのがそれが事務総長にはない、主権国家事務総長指揮に従う義務はないというふうに御答弁なさっております。ところが、広辞苑におきまして指揮という部分を私は調べた。失礼しました、広辞苑ではなくて法令用語辞典でございます。指揮とは何かということの中には四つございまして、内閣野村さんがおっしゃっているような「上級官庁下級官庁に対して、その所掌事務について方針、基準、手続、計画等命令し、これに従わせる」ということのほかに、「指揮は、また、自衛隊等部隊について、職務上の上司が職務上の命令を下すことと区別して、部隊を実際に命令し、動かすことを意味する。」「部隊を実際に命令し、動かすことを意味する。」というふうに書いてございます。  つまり、部隊を実際に命令し、動かす権限国連現地指揮官にないとすれば、これは指揮に服さない。つまり配置とかそういったものは事前のペーパーでしか自衛隊に及ばないわけですから、指揮に服さない、つまり構成員ではないということになると私は考えるわけでございます。それについて、何度も同じ御答弁を繰り返しておられますので、構成員がどうかということをイエスノーかでお答えいただけますでしょうか。
  28. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま構成員という具体的なそういう――どういう趣旨で言っておられるかということにもよろうかと思いますけれども、この全体の、いただきました組織図と申しますか全体のオペレーションの方、これがなければ業務が行われないわけですけれども、それの一翼を、一端を担っている要員であるという意味におきましてはそのとおりだと思います。  他方、先生ちょっと先ほど私の答弁をめぐって、日本人司令官云々ということを御質問の中で触れられたかと思いますけれども、もう一度私の方から、このいただきました組織図に基づきまして確認させていただきたいのでございますけれども、「現地司令官」あるいは「副現地司令官」と書いてあります、これはまさにフォースコマンダーと申しますか、国際連合事務総長権限を移譲して現場で指揮をとるという人でございまして、そこからその下の、例えば幾つかここにございます。全く仮定の話でございますが、左の「歩兵大隊」というのが日本が担当している部隊だというふうに仮定いたしますと、そこには当然部隊長というのがおるわけでございまして、そうしますと、この「現地司令官」から線が、ちょこちょこと曲がっておりますけれどもずっと来まして、基本的に「歩兵大隊」というところにもつながっておるわけでございますが、それがまさに私のこの組織図理解するところにおきましては指図ということだろうと思うわけでございます。それで、その指図を受けまして、この部隊長実施要領に基づきまして、先ほど申しましたように、自衛隊隊員身分としましては防衛庁長官指揮のもとでこの国際平和協力業務を行い、まさに協力隊員身分においては本部長指揮のもとに協力隊業務を行う、そういうことでございます。  それでまさに先ほど、ちょっと答弁が長くなって恐縮でございますけれども、指揮という言葉についての御指摘もございました。私はやはり、これも繰り返しでまことに恐縮なんでございますけれども、身分関係と申しますか、これは懲戒権を伴ったもの、権限として指揮という言葉が使われているのが通例でございまして、やはりそういうことに着目いたしますと、個々の現地司令官からの指図という、モデル協定第七項、八項に言っておりますUNコマンドというのは指図というふうにとらえるべきものであるというふうに考えられます。
  29. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 昨日からさまざまな方が、国連で定めるPKOとは国連事務総長及びそのもとに置かれた現地国連司令官の直接の指揮下に入るのがPKOだ、この今回の法案派遣しようとしている自衛隊員等は、これは国連が要求しているPKO指揮命令系統が全く別の防衛庁の業務として自衛隊法に基づいて行くのであって、全く別個のものではないかというようなことが議論になっているわけでございます。  これに関して、国連人口基金事務局長特別補佐官であられまして、「ブルーヘルメット」とかさまざまな国連関係文書の書籍の紹介あるいは翻訳、論文等出しておられる中村恭一という方がこのように言っておるのですね。   国連平和維持活動は、安全保障理事会の承認の下に、国連事務総長が最高指揮官として派遣するものである。もし日本から一歩出れば、日本の総理大臣も、防衛庁長官権限も及ばなくなる。日本政府の自由になるのは、日本人要員事務総長に託すことを決めるまでと、事務総長または国連の采配にゆだねることが承服出来ない事態となり、派遣要員を帰国させる決定をするときだけということを十分に認識した上でなければ、国連平和維持活動へのよき協力者とはなり難い。こういうふうに言っております。さらには、続けてこう言っております。  国連平和維持要員として派遣された要員に対して、派遣国政府が現地要員行動に対して直接、命令を下すことは出来ない。アークハート氏が強調する問題(紛争)の一部にならないようにするためにも、派遣国政府は全面的に国連要員を託してしまわなければ、国連の役割が果たせなくなってしまう。国連の中立性が大きな武器である限り、派遣国政府の意思が直接及んではならないことは自明の理である。この点が多国籍軍に参加する場合と決定的に違う。 というふうに、国連平和維持活動というものをはっきり明言しておるわけでございます。  こういった国連の役割を果たせなくなってしまうような構造になっているのが今回の法案に基づく自衛隊等部隊としての平和協力業務派遣ということになるわけでございますが、なぜ国連の役割を果たせなくさせてしまうような、しかも自明の理であると言われていることまでゆがめるような法案構成でこの法律はつくらざるを得なくなったのか。大変私は、渡辺外務大臣は率直に物を語ってくださいますので、わかりやすくて非常に好感を持っておりますので、なぜこのような無理をした、国連の役割が果たせなくなってしまうぞ、国連の、自明の理とされている派遣国政府の意思が及んではならないというような法律構成の法律をつくったのか、その点についてぜひお答えをお願いいたします。
  30. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 大変いい解説を今していただきまして、実際ほかの国はそのとおりやっているところが多いだろうと思います。日本もそのとおりやれればいいのですが、他の国に例を見ないような憲法を有しておりますので、その憲法にも合って、しかも、今言ったような実際上支障を来さないように限りなく合わせるという苦肉の策でつくったのが今回の――苦肉の策というのはちょっと取り消しましょう、非常に苦労をしてつくったのが今回の法案であります。――ちょっと静かにしてください。したがって、実際上は今言ったようなことになれるようにできるだけ限りなく近づけるという、運用上の問題であろうと存じます。
  31. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今外務大臣がお答えいただきましたように、大変苦肉の策である。(渡辺(美)国務大臣「取り消し」と呼ぶ)私は、国際貢献をすること、そのことは否定はしないわけでございますよね。しかし、国際貢献をするのであれば、今国民の五八%が自衛隊PKFに出すことには反対である、そういった国民の意識があり、かつ、そんなに無理してまで、国連にとっては役割が果たせなくなってしまうような、国連にとって役に立たないと言われるような形のPKO派遣ではなしに、全く憲法上問題のない、非軍事面での文民による派遣ということはなぜできなかったのか。つまり、国連事務総長の昨年九月の報告書でも、PKOには文民ができる役割がどんどん拡大している。例えば病院その他の医療施設を含む医療活動、ヘリコプター等の操縦と整備、あるいはトラック、バス、輸送機関の運営と整備、食糧の供給や食堂施設、駐屯基地に必要とされる主要な建造物、施設の建設、通信施設の設置、当該業務維持、こういったあらゆる分野で文民でやれる、つまり自衛隊自衛隊部隊として武器まで持たせてPKFに参加させなくても、国民の圧倒的人たちが安心でき憲法上も全く疑義のないこういった国際貢献をするのがまず筋ではないかと思うのですが、外務大臣、この点についてはいかがでしょうか。
  32. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 そういう見方もございましょう。ございましょうが、しかしながら国際的に見ますと、やはり日本がこれだけの国家として、何十カ国も参加しているPKO活動、その一部としてPKFがあるわけでございますが、それに貢献することは大変結構なことだ。今そこへニュージーランドの貿易大臣もいらっしゃいましたが、彼とも昨晩会っていろいろ話をしたけれども、やっと日本もそこまで来ましたかというようなことで評価をしておりますよ。いや、ちゃんと話していますよ。  だから、どこの国でもそれは民間ばかり派遣しているわけではないのであって、そういうふうな機能と組織訓練と両方を受けている集団を派遣することが一番効率的で、それで目的にもかなうというようなことで自衛隊協力ということを我々は提案をしておるわけでございます。したがって、今おっしゃったようなことはもちろんやるのですが、そのほかに監視というようなこと等もやるわけでございます。  以上であります。
  33. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 自衛隊を全く出すなとかいうような問題ではなくて、先ほど私が申し上げたような民生部門――ちょっと静かにしてください、それから国連ナミビア独立支援グループ、ここでもしっかり民生部門というのがたくさんあるわけですよね。こういった民生部門に今の自衛隊とはしっかり切り離して別な訓練をして、別個な組織としてどんどん出していく、そういうことなら社会党としても非常に積極的に賛成であるということを提案しているわけでございます。それをわざわざ、憲法上六割の人が問題だと言っている、国民の合意なんか得られていない、しかも無理をして国連の役に立たないような形でのPKF参加の法案、これをつくったということは、大変、まず自衛隊を海外に派兵したいということがもろに最初にあったんじゃないかということが問題になるわけでございます。  現に、大変私の尊敬いたしております後藤田さんも、国際貢献を軍事優先でやるのは愚かな考えということをはっきりインタビューに答えておられますし、なぜそういうようなことを法案に盛り込まず、もう大変な無理をして国連指揮下にない自衛隊業務として海外に出ていけるようになったか、なっていく仕組みにしたこの法案をつくってきたか、これが最大のこの法案の問題点であり、これはPKOに参加するための法案ではなくて、自衛隊自衛隊業務として海外に派兵する突破口をつくる法案であるということを我々社会党としても、それから国民の六割の方々も反対をしているということでございます。  この件にいう機構上の問題はおきまして、次に、この法案の中身に立ち入らせていただきたいと思います。  この法案によりますと、五原則、つまり、停戦の合意、PKO活動を行うこと及びPKO活動を受け入れる国の同意、あるいは中立性の原則、武器使用は必要最低限、あるいは停戦が壊れたら撤収するという五原則がはっきりこの法案に盛り込まれているから憲法に違反しない、だから国会承認も要らないということをこれまで何度も御答弁なさっておりますが、この五原則が一つでも要件を欠いた場合には自衛隊等部隊派遣しない、そういう構成にこの法案はなっておりますでしょうか。外務大臣に続けてお答え願います。
  34. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、このいわゆる基本方針の五原則というのがこの法案にすべて明記されておりまして、日本から派遣される要員は、この基本方針の内容を盛り込んだこの法案に従いまして平和協力業務を実施するということに相なります。  その場合に国際平和維持活動PKOは、通常武力紛争が発生した場合において、武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意があるときに実施される活動でございまして、そういった活動として行われる国際平和協力業務につきましては、いわゆる基本方針の要件をすべて満たしつつ実施されることになります。また、人道的な国際救援活動として行われる国際平和協力業務につきましても、その業務の性格を踏まえて、基本的にはいわゆる基本方針五原則の要件を満たしつつ実施される、そういうふうに従来から答弁しているわけでございます。
  35. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 一つでも欠いた場合は派遣させない、この点はいかがでしょうか。
  36. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私、PKO活動というのは、通常武力紛争が発生した場合においての活動であるということを申し上げました。そういった場合にはすべて要件を満たさないといけないということも申しました。  他方、人道的な国際救援活動につきましては、この定義で述べられておりますように、もちろんその受け入れ国の同意というのは必要でございますが、「活動が行われる地域の属する国が紛争当事者である場合においては武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意がある場合」というふうに、例えば停戦の合意につきましても、その具体的な活動の態様に応じまして違った形にはなっております。  それから、私は、PKOにつきましては、繰り返しますけれども、通常、武力紛争が発生した場合においてが通常でございますので、その場合には五つの要件をすべて満たして実施されるということになります。
  37. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今の答えは、紛争が発生していない場合にも派遣できる場合を定めているともいう答弁でございました。  それで、じゃもう一回重ねて伺いますが、停戦の合意という場合の停戦という事態は武力紛争が発生した後にもたらされる状態である。だから、武力紛争が発生していないときには停戦合意はあり得ない。つまり、第一の要件を満たすことはあり得ない、このように考えていいわけですね。
  38. 野村一成

    野村政府委員 ただいま先生指摘の点は、この法案第三条の一のPKO活動の中で、この法案の前から四行目でございますけれども、括弧内で書いてございます。「(武力紛争が発生していない場合においては、当該活動が行われる地域の属する国の当該同意がある場合)」ということに着目しての御質問がと存じます。  実はこのPKO、国際連合平和維持活動の定義につきましては、ここ四十三年の長年の慣行がございます。その慣行を反映いたしまして、できるだけそれに忠実と申しますか、実態を反映するものにするべく私どもで考えたのがここの定義でございまして、実は武力紛争が発生していない場合でも、過去に二十四の、現在活動しているのを含めましてPKO組織されたわけでございますけれども、一件、武力紛争が発生していない場合で組織されたPKOがございます。それは一九五八年に組織されました国連のレバノン監視団、UNOGILと呼ばれているものでございますが、そういうケースが、これはごく極めてまれなケースでございますけれども、一件あるわけでございまして、やはりPKO活動、長年の慣行先ほど申しましたように反映した定義というときに、それ一件あるわけでございますので、それをも外すというのがいかがなものかということで、こう括弧書きにしたわけでございます。  他方、私、説明申し上げましたように、通常PKO活動と申しますのは、特にPKF活動につきましては、やはり武力紛争が発生して、それが停止して、それでそれを維持するとの紛争当事者間の合意がある、そういうのが出発点となって、ここに書いてございますような要件、つまり、受け入れ国の同意あるいは「いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施される」、そういった形で行われているのが通常の例でございます。
  39. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今の御答弁によりますと、停戦の合意というのがなくても派兵できるんだ、つまり、一件国連レバノン監視団にあったからというようなことで、武力紛争が発生していない場合にも、来てほしいという国の受け入れ国が同意さえすれば行けるようにしたんだという答弁だと思うのですが、それでは停戦の合意、つまり、もう武力紛争が発生して大変危険な状態が去った中に平和を回復するために行くんだというこれまでの答弁が全く覆ってしまうわけじゃございませんか。武力紛争が発生する前というのは、これからどういうような状況が生じるかわからない。つまり、イラク・クウェートの問題を考える場合に、去年の八月二日以前、つまり、イラクがクウェートを侵攻する前の状態のようなときにも、もし国連事務総長の方でPKOを出そうというような意向に持っていけば、日本もそれに自衛隊部隊として武器を持って、自衛隊業務として出ていけるということになるじゃないんですか。
  40. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私、PKOの過去の慣行ということを申し上げましたですけれども、それにかんがみましても、コンゴの場合は例外といたしまして、武力紛争がまさに勃発しようとしているようなとき、そういったときにPKO活動ということを行うということは全く想定しがたいし、また行われてもいないわけでございます。  私、レバノンの先ほど国連暫定監視団のことを申し述べましたですけれども、そのときには、やはりこれは国連事務総長国連としてのきちんとした情勢判断というのがあろうかと思います。まさにそういう武力衝突の勃発ということがないという、しかしやはりこのPKO活動を行う必要がある、そういう前提のもとで、そういう基本的な判断のもとでこのPKO活動組織されたというふうに理解しておるわけでございまして、ただいま御指摘のございましたようなまさに武力衝突の勃発という、そういう状況が予見されるというふうな状況のもとでのPKO活動というのは、想定しがたいというふうに思っております。
  41. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 法律というのはひとり歩きするものでございます。今の宮澤首相は、大変私は平和主義者というふうに信頼いたしておりますので、そういう判断を下さないかもしれない。しかし、できてしまったらどんどん法律というのはひとり歩きする。だからこそ明快にしなければいけない。だからこういう国会審議があるわけでございまして、今のように出さない想定でございますなどと言っても、この条文上からはできる仕組みになっている。  つまり、なぜかといいますと、先ほど国連レバノン監視団の問題を例に出しましたが、あのときにはシリアの同意は得ておりません。この法律の条文によりますと、紛争当事者とは武力紛争の当事者を言うということで、これから武力紛争が発生するかもしれない、発生のおそれのある紛争当事者は含まないことになっております。とすれば、「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」ということは全く不要になる。イラク・クウェート間の問題のような場合に、これから停戦しますという合意は全く不要であって、「当該活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者の当該活動が行われることについての同意」というのは不要になる。そして、武力紛争が発生していない場合には、当該活動が行われる地域の属する国の当該同意がある場合、つまり、クウェートの同意さえあればこれでは出ていくことになれるじゃないか。  今、出ていくか行かないかの意思を聞いているのではなくて、法律がひとり歩きして、どんどん解釈が拡大解釈されるようなことの条文ではあってはならない。しかも自衛隊が海外に部隊ごと出ていくという重大な事態変更の場合には、まさしく厳密でなければいけない。そういう意味から、この法案によると、昨年のイラク・クウェート間の、イラク侵攻の前にクウェートの同意さえあれば、しかも国連事務総長が予防的にあそこにPKOを出しましょうと言えば、自衛隊が出ていくという仕組みになっているということを言っているわけでございます。  行けないとすれば、条文上何ゆえに行けない、どこの部分の要件に不該当か。昨年の八月二日以前の例をとりまして、つまり、クウェートの同意があっても、それから国連事務総長PKOを出しましょうと言った場合でも、政治判断ではなく、条文上出せないんだという部分はどこの要件に該当するのか、明確にお答え願います。
  42. 野村一成

    野村政府委員 今、イラクとクウェートの状況についての御指摘がございましたけれども、私、これは実態の問題としまして、国連がああいう状況においてPKOをオーガナイズするということは全く考えられない点だと思います。やはり基本的には私どもは、先ほども申しましたけれども、PKOのこれは定義でございます。それで、その定義というのは、やはり過去において行われましたPKO活動を、慣行を反映してつくっておるわけでございます。そういう点で、この括弧の中に入れております「武力紛争が発生していない場合」云々につきましては、仮に将来、過去のそういった例にもかんがみまして、そういうようなPKO国連により設立されまして、そのようなPKOへの派遣を要請されるといたしまして、我が国の参加に当たっては、当然この法案規定に従って参加するということになるわけでございまして、具体的にその場合にPKOの任務あるいは現地状況等、いろいろな事情を慎重に検討すべきものと考えております。  なお、ちなみに私申し上げないといけないのは、そういう場合にありましても、もし武力、イラク・クウェートの場合にはその後不幸にして武力紛争に至ったわけでございますけれども、そういうふうなことになる場合には、まさにこの法案に、五つの原則に書いてございますが、そういう状況に合致しないわけでございますので、当然我が国部隊派遣は終了ということになるわけでございます。
  43. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 どこの要件に合致しないかということを私は条文の解釈上伺っているのでございますので、そのどの要件に合致しないか、条文を明示してお答えください。
  44. 野村一成

    野村政府委員 私、このPKOのやはり慣行に基づく活動でございます。その場合に、恐らく先生指摘の点は、予防的なそういうPKOというのを想定して、そういうのに参加するというふうな場合はどうなのかという点が頭の中に描かれての御質問がと思いますけれども、現実問題としまして、過去の例を反映した定義ではございますけれども、現在私ども、国際連合の場においてそういう予防的な平和維持隊というのが構成されるというふうには考えておりません。
  45. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今のは条文に沿ってということに回答しておりませんので、その件はもう一回答えていただきますが、今の答弁に反しておりますのは、実は私はここに国連の「平和維持活動のすべての側面における問題の包括的検討」という文書を手にしておりまして、八九年、九〇年、九一年の文書でございますが、いずれもこれは日本が出席しております。その出席した会議の中で「平和維持活動の一層の展開」という部分におきまして、「平和維持活動は、政治の信頼醸成、紛争の防止、紛糾の平和的解決の手段として利用できるであろう。」という発言が出て、それが検討課題に上がっております。  これは八九年でございますが、さらに、九〇年におきましても、これも日本が、スミ・シゲアキさんという方が出席しているのでございますが、「平和維持活動の活用」「以下の問題が検討されるべきである。」というところにおきまして、「信頼を強化し、法律及び規則を推進し、国際の安全を確保するため、平和維持活動の手段として国連多国籍部隊を活用することについての一般的に受け入れ可能な取り組み方。」これを検討しようというようなこととか、同じく九〇年ですが、「事務総長が紛争予防のため迅速に派遣団を派遣することを可能にする手段。」とか、さらには、「新たな紛争の予防における平和維持活動の役割及び地域機関の可能な役割が検討されるべきである。」というような問題が検討されたというふうに報告されております。  九一年においては、ますますそれが大変いろんな国から議題として出されておりまして、「国連平和維持活動の拡大に満足を示すとともに予防、先制行動、選挙・住民投票の監視及び管理等の潜在的な役割について更に探求するよう勧奨した代表がおった。」つまり、国連ではもはや、そんなことはあり得ないというふうに今お答えになりましたけれども、このように大変積極的に予防的PKO、それを活動領域を広げていこうという検討がなされております。  さらに、これは「世界」の論文でございます。七月号の論文でございますが、国連の職員でございます明石康さんという有名な方でございますが、この方はこういうようなことを言っております。「ほかに国連平和維持軍の予防的な使用が考えられてしかるべきである。クウェート侵攻を試みるイラク軍の目前に、平和維持軍が針金のように国境地帯に展開されていたならば、サダム・フセインが国際社会の強い反応を恐れて侵攻を思いとどまることがなかったと、いいきれるだろうか。紛争や衝突が生起してから撤兵や停戦監視のために派遣される、いままでの国連平和維持軍のような事後的手当ではなく、武力衝突の抑止機能をもつ予防的な平和維持軍が考えられてよい。」と、こういうようなことを述べているわけでございます。  としますと、今この三条一項のどの要件からいけないかということの回答としては、国連が予防的平和維持軍を出すことがないであろうからというのは答えにならない。確実にイラク・クウェート間の紛争の前にクウェートのような状況には出さない、出せないというのであれば、どこに不該当であるということを明確にもう一度お答え願います。
  46. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私、先ほど実は答弁いたしたと思っているのでございますけれども、仮に私の先ほど説明いたしましたUNOGILのようなそういうPKOが設立されるということになりますと、この法案規定に従いますれば、それに国際連合から要請がありますれば検討の対象になるわけです。ただ、それは、今回についてはこのまさにPKOの定義ということで、過去の慣行を勘案しながらいたしておるわけで、その定義を受けまして、まさに国際平和協力業務、この三条の三以降、これはまさに日本が行う業務でございます。ですから、それを行うかどうかというのはまさに慎重検討の上、実施計画実施要領で――実施計画をつくる、業務に参加するかどうかの段階で慎重に検討すべきものであるというふうに考えております。  他方、私ぜひ御理解いただきたい点がございます。予防的云々というのは現在課題になっておらないというわけでございますが、UNOGILのケースというので、なぜこのケースが出てきたか、武力紛争の発生していない場合においてということで組織されたかという点にあるわけでございますけれども、当時レバノン、反政府運動が活発に行われていたという状況におきまして、お隣のシリアでございます。当時アラブ連合共和国と言っておりましたが、そこから武器の搬入が国境を越えて行われてくるということで、これが平和を脅かしているとしてレバノンが安保理に提訴いたしまして、安保理がその監視団を組織したということでございます。その場合の国際連合の判断でございますけれども、私は客観的な情勢判断の問題が非常に重要であるというふうに申し上げましたけれども、その際にはやはりシリア側にまさに武力紛争を始める意図がないというそういう基本的な大前提のもとでのPKO組織であろうかと思います。
  47. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 私は、条文上どこのことで不該当であるからいけないかを聞いているのに対して、全く答えになっておりません。これ以上この、私は条文の解釈として伺っているにもかかわらず過去の例だけを引く。しかし、この法律は今後に生かされていくのでありまして、今後は地域間の紛争で、イラク・クウエート間のようなああいう問題が違う形で出てくる可能性がある、そういうところに自衛隊を出すのか、出せるのか、出せないのか、この条文に基づいてというのを聞いているのでございまして、今の答弁では納得できません。だから、この条文に基づいて答えていないでは審議は続けられません。
  48. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  私は、これは基本的な状況、ただいま御指摘のイラク・クウェートの状況とは基本的に違うのだと思いますが、ただ私は、ここで申し上げていますのは、今申しましたようなUNOGILのケースというのが過去にあったわけでございます。その場合には、この武力紛争が発生していない場合、したがいまして、この法文上でいきますと、まさに「紛争当事者間の合意」とございます。この「紛争当事者間」というのはまさに武力紛争の当事者でございますので、したがいまして、それは当然ないわけでございます。したがいまして、紛争当事者間の合意というのがなくてもできる、国際連合の事務総長の方から要請がありますれば、それはこの法案上検討の対象になる、そういうことになります。
  49. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 としますと、イラク・クウェート間のような状況の場合に、クウェートの同意があれば、この条文上は自衛隊は派兵できるということでございますね。そういうふうに受けとめていいのでございますね。
  50. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  私は、今、イラク・クウェートの状況とは基本的に違う状況をUNOGILの例で申し上げたつもりでございます。他方、これはやはりそういう武力紛争の発生していない場合においても、安全保障理事会なりあるいは総会が、PKOを行う、そういう決議を行いますれば、それは当然このPKOの私どもの書いてある条文の定義の枠の中に入ってくるというふうに考えております。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  51. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 としますと、これからの地域紛争、どういう形で起きるかわかりませんけれども、その地域紛争が突然起こるのではなくて、例えばイラク・クウェート間のことを考えましても、石油の盗掘をめぐりましてイラクとクウェートの間にはさまざまな小競り合いがあった、そしてああいうようなことが全く、侵攻という形は別といたしましても、そういう小競り合いがあって紛争状態にあることは明確であった、だからこそ明石さんは、ああいうところにPKOを、針金の網の目のように張り出すPKO活動をやるべきであるというようなことを提言しているわけでございまして、としますと、今の答弁であれば、ああいう状態でも国連PKOへの、自衛隊に来てもらいたいという国連事務総長の要請があれば、今後地域紛争に自衛隊部隊ごと自衛隊業務として派遣できるというふうに考えていいわけでございますね。
  52. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  基本的には、私、やはりそういうふうな状況のもとで、国際連合の安全保障理事会あるいは総会がPKOの設立について決議を行うという場合には、いわゆるPKO活動ということで国連統括して行うことになるわけでございまして、当然PKO、第三条一項の定義の枠の中ではまってくるわけで、ただ、その場合でございましても、国際連合がそういうPKOの設立を決議いたしたとしましても、我が国としましてはまさにこの基本方針の五原則を含めましたこの法案に従ってのみ参加を検討する、そういうことになるわけでございます。
  53. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今聞いているのは、その五原則というのが、武力紛争が発生する前のイラクやクウェートのような状況であれば、停戦の合意も不要になる、さらには、クウェートだけの同意で自衛隊等派遣が可能になるという意味では、停戦の合意という第一番目の原則、さらには紛争当事者のPKO活動我が国PKO活動に関しての同意、さらには中立性の原則、この三つが全くほごになるではないか、そういうことを問題にしているのでございます。この点について渡辺外務大臣、いかがでしょうか。
  54. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは法律の解釈の問題ですから、最終的には法制局長官に答えてもらいます。  今審議官が言ったように、そういうおそれがある場合も、それは法文上は出せるということになっていますよ。なっていますが、出すか出さぬかは日本政府が最終的に決めることですから。また、国連で決定する場合においても、全体を見て、そこに国連平和維持活動国連の旗を持っていっていれば、もう攻めてこないかもわからぬというようなこともいろいろ検討されるわけですから、そこでまず決定をされる、そして要請がある、要請があった場合、日本はこの法律に基づいて支障があるかないかをそこで決めるわけですからね。大丈夫だと思って出した、出したところが向こうが宣戦布告して入ってくるという場合は、当然にこれは中断ということになって、実施計画の変更ということにも当然なるわけですから。中断もあり得るんですから。だから国連の旗を持って、攻めてきたらわきへ逃げたのに、そいつを殺すなんということは普通はやらぬですわね、普通は。だから、そういう問題も含めて、全く危険がないとは言いませんよ、私は。言いませんが、それは赤十字の病院だって爆撃する人もあるんだから、それは全くないとは言えないかもしれませんけれども、それによって抑止力になるだろう。  だから、この法文のどことどこにそれが書いてあるかということは法制局長官に答弁してもらいます。
  55. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  基本的には、先ほどからの内閣審議官あるいはただいまの外務大臣のお答えのとおりだろうと思います。多少条文に則して申し上げたいと思います。  それで、まず定義でございますが、三条の一号に「国際連合平和維持活動」の定義がございます。ここにおきまして、従来の大半のものは括弧の外、括弧の外と申しますのは、紛争当事国間の合意あるいはその国の同意、こういうことでございますが、括弧の中がございます。「(武力紛争が発生していない場合においては、当該活動が行われる地域の属する国の当該同意がある場合)」、これを今委員は問題にされていることだろうと思います。それで、その場合には、ここにありますように、国連の総会あるいは安保理事会が行う決議に基づきまして、そういうことがあり、かつ「参加する二以上の国」、「国際連合」というふうなものがありますれば、まず平和維持活動の範疇には入ってまいります。  ですから、まず第一段階として国連の総会あるいは安保理事会の決議というのが、そういう事態に出すか出さないかという判断がまず第一段階であるという前提は、おわかりいただけるだろうと思います。それで、その次に、我が国としまして実施計画を定めていく、ここの判断がもう一つ次にあるわけでございます。  それで、その二つの判断をしました上で参加できないかと言われれば、そういう形で参りました場合には参加できないとは申し上げません、法律的に。  ただ、それでは、行った場合に、何か起こった場合にどうなるかということにつきましては、ただいまの外務大臣のお答えにもございましたように、私どもの方としては、中断、あるいは同意が崩れた場合のいわゆる派遣の終了、こういう事態にはなろうかと存じます。
  56. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今のお答えではとても私は納得できないわけでございますが、要は、国連事務総長の要請とか国連の決議といいましても、それは予防的PKO国連が出すということを決定した場合に、例えば去年のイラク・クウェート間のような、侵攻前のああいう非常に緊迫した、いつ武力紛争が発生するかわからないというような状態に、国連さえオーケーを出せば行けるということの危険性、それは、国際紛争を解決する手段としては武力による威嚇あるいは武力の行使を絶対してはならないという憲法九条に明らかに反してくるということが第一点の問題であるということ。さらには、中立性。それはクウェートの側に立つわけでございますから。中立性の原則が崩れる。停戦の合意が崩れる上に、中立性の遵守という大きい原則も崩れるのではないか。  それであれば、この停戦の合意、紛争当事者の、一方当事者じゃない、両当事者の同意、さらには中立性という三つの原則がほごになるような、そんな構成の法律であれば、ケース・バイ・ケースで必ず国会のシビリアンコントロール、つまり国民の意思を問うべきである。それをなぜ問わないのかということが第一点、大きな問題になるかと思いますが、その点についてはどうですか、いかがでしょうか。内閣総理大臣にお伺いいたします。宮澤首相にお願いいたします。
  57. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 それは、国会承認の問題は、何回もこれは答弁をしておるように、この法律においてかなり細かいことまで決めてあるわけですから、その決めたとおりに実行すれば、一々国会を開いて時間を長くかけてやるまでのことはないだろうということにこの法律はできておるわけです。(伊東(秀)委員「重大なことじゃないですか、出すか出さないかは」と呼ぶ)だから、重大なそういう問題についてはまず、クウェートの話を先生は出しておりますが、ああいう場合に国連がそこへみんなで派遣国連PKO派遣しようというように決めるかどうか、これも実際はわからぬのですよ、それは。これは危ないから派遣しない、国連自身が派遣しないというふうに決めるかもしらぬから。いろいろ討議をそこでされるのですから。それで派遣した方がいいということで、世界の大勢がそう決まれば、それは派遣をすることもあり得るんですよ。日本政府に言ってこられても、日本政府は国連から言ってきたのを全部うのみにするわけでもありませんからね。この法案にどうも抵触するという場合は、それは今回は遠慮さしてもらいますと言う権利はあるんですから、これは。何が何でも出さなきゃならぬというわけじゃないですからね。  それはだから、この法案がほかの国と違っていろいろなことが書いてあると言うけれども、憲法がそうなっているんだし、これは仕方のないことなんですよ。だから憲法の範囲内で、中でしか協力できないんだから。そうなっていますからね。その点はそんなに心配なさることはないんじゃないでしょうかね。
  58. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 いや、渡辺外務大臣はなさらないかもしれないけれども、法律というのは一たんできてしまえばいかようにも使われるということ、それが法律の使命ですから、つくるときに非常に厳格でなければいけない、それこそが問題でございまして、停戦の合意も当事国の同意も中立性の原則も崩れるような、そういう構成になっている法律であるからこそ問題だということを問題にしているわけでございます。  それから次に、じゃ、角度を変えて言いますが、そういった武力紛争発生前、いつ武力紛争が起きるかわからないような状況の中で、国連が一応予防的PKO国連はコンゴ軍のような場合でも派遣を決定したわけでございますから、そういった場合に、日本自衛隊部隊ごと派遣した、そしてそこで自衛隊が捕虜になったというような場合の自衛隊員の救出は、どこが行うんでございましょうか。
  59. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 戦時国際法に関係すると思いますので、私の方からお答えさせていただきます。  国際平和協力業務に従事しております我が国隊員が誘拐されるような事態につきましては、当然これは、これを予防するような努力が必要であることは言うまでもございませんけれども、仮に、万一そのような事態が生じた場合におきましては、原則として国連が、国連PKOでございますから、国連活動としてこの誘拐された隊員の解放のための交渉等を行うということになろうと思います。我が国といたしましても、派遣先国の当局でございますとか、あるいは国連事務局との十分な協議、調整を経て、誘拐された隊員の安全確保、速やかな解放について、我が国として可能な限りの手を打つということになろうと思います。  これが捕虜かどうかという点につきましては、ジュネーブ条約の適用関係になると思いますが、御承知のとおり、捕虜と申しますのは、ジュネーブの関係条約によりますと紛争当事国の軍人ということでございまして、PKOの場合は紛争当事国ではございませんので、いわゆるジュネーブ第四条約によって、文民の保護に関する条約でございますが、この条約によって保護されるということになると思います。
  60. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今のお答えは、きのうの答弁とちょっと矛盾しておられるんではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、昨日から一昨日にかけての宮澤首相の御答弁によりますと、自衛隊等協力隊員国連指揮に従う義務はない、主権国家国連事務総長指揮に従う義務はないんだと。つまり、主権国家の主権の発動として、一つの、自衛隊法に基づき幕僚長防衛庁長官統括のもとに今回は自衛隊等部隊として当該地域で活動を行うわけでございまして、その主権国家の主権の発動として防衛庁の業務をやっている自衛隊員が捕虜になるなり誘拐されるような事態が起きたら、当然主権国家の主権の侵害になると考えるべきなのが、この法律構造による、PKOそのものの構成員ではない日本自衛隊員として自衛隊業務を行うのであれば、そういうふうに考えるべきであると私は考えますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。
  61. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  今、先生は、協力隊の性格についてまず前提を置かれました。協力隊に参加する部隊としての自衛隊は、これは本部長である内閣総理大臣指揮下にございまして、そういう意味での内閣総理大臣全体の指揮を受けております。  ところで、そういうことで自衛隊員が海外において捕虜その他になった場合に、どういう指揮監督、その他処置が可能かというお尋ねだと存じますけれども、これはただいま条約局長が申し上げましたように、海外におけるそういった問題でございますから、自衛隊自体が自力救済とか、そういうことが一義的に行われるわけでもございませんで、さっき条約局長の言われましたように、一義的には一応国連の機能に参加するわけでございますから、国連においてこの救出を行っていただく、あるいは場合によると、さっき条約局長の言われましたように、自衛隊が各種の連絡をとりつつその救済に当たるということになることは私は当然だと思っております。
  62. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 明らかに今の御答弁では、昨日の御答弁と食い違っているのではなかろうか。つまり、昨日の答弁では、法案の十三条二項に関しまして、隊員として四条二項三号に掲げる事務を行うときには、本部長である内閣総理大臣指揮下に服する。それは十二条の五項、本部長指揮監督下に平和協力業務を行うという部分でそうなる、と。しかし、その同じく十三条の三項に「前項に定めるもののほか、同項の規定により自衛隊員身分及び隊員身分を併せ有することとなる者の身分取扱いについては、前条第六項から第九項までの規定を準用する。」ということで、前条の十二条のわざわざ五項、本部長指揮監督下にという部分を準用していないのでございます。  つまり、部隊として出ていった自衛隊員本部長指揮に服さない、それをきのう、そういうふうに防衛庁長官統括のもとに現地でも指令を受けるというふうに今までずっとお答えになっていたわけでございまして、きょう、そういうことであれば、この自衛隊部隊等活動はあくまでも、これまでも何回も防衛庁関係者がお答えになっておられるように、防衛庁の業務ということである。とすれば、防衛庁の業務を、人的には主権が受け入れ国の範囲内では緩やかに及ぶというふうに条約局長も昨日御答弁なさっておられますので、自衛隊員がこの自衛隊法に基づいて行う業務について捕虜になったような場合には、当然自衛隊業務に対する妨害つまり主権国家に対する妨害になるのではないんですか。
  63. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと構成の問題に関しますので、正確を期す意味で防衛局長から答弁させます。
  64. 畠山蕃

    畠山政府委員 ただいまの御質問の前段の部分、つまり指揮監督の点について若干補足をして御説明申し上げます。  部隊として自衛隊が出る場合には、御指摘のとおりこれは自衛隊業務として出るわけでございますから、そこの指揮防衛庁長官指揮によります。ただし、これは実施計画ないしは実施要領に従って、本部長の定める実施要領にも従っていくという限りにおいては、本部長の実質的な指揮のもとにも、指揮といいましょうか、その指令のもとに入るということが実質的には言えようかと思います。  それから、そのほかに四条の方に定めます隊員としての業務を行います。これは本部長の任務でございます。そして、先ほど防衛庁長官本部長のもとにと申し上げましたのは、その実施要領の定める限度において従うという意味と、もう一つは本部長と同一人物である内閣総理大臣が全体の防衛庁、自衛隊法にも八条にありますように、そういう指揮監督権を意味したものと私は理解いたしました。
  65. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 いずれにしましても、内閣総理大臣の大きな指揮監督下にあるとしても、防衛庁の業務として行う以上、国連指揮というのは及ばない、実施要領を通してしか、指図という形でしか国連意向日本の防衛庁の業務には通じないわけですから、そういった自衛隊業務を行っている自衛隊が、もし捕虜になった場合に日本国としての主権を全く発動してくれないというのであれば、自衛隊員はどういうふうになるんでしょうか。そういうような非常にあいまいな、ルーズな定め方では大変自衛隊員身分としても問題ではなかろうか。それは当然、私は自衛権の発動につながるような法律構成にこれはなっていると考えるわけでございますが、いかがでしょうか。
  66. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 自衛隊員がテロ集団等に捕まってしまったという場合につきまして、これを救出すべきことは当然でございます。その際、恐らくは国連としてそのような指図をするだろうと思います。その場合に、我が自衛隊としてもその救出のために交渉等のことを行うのは、これはまた当然のことであろうと思います。  ただ、非常に極端な場合を考えまして、いわば自力救済と申しますか、武器を使って救い出すというような行為につきましては、武器使用を自己または自己とともに現場に所在する隊員等の防衛に限定している法案二十四条の趣旨から申しまして、これは行えないというふうに考えます。国際法の問題としては、これはまた別でございます。
  67. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 としますと、交渉は、最初には交渉の段階では国連も行うであろう、しかし日本の自衛権の侵害であるという部分も残っているんだという、つまりきのうの答弁から論理的にそうなるかと思うんですけれども、主権が人的には及ぶと言っている以上、その人的に及んでいる自衛隊員が捕虜になった場合に、そこでは知りませんと言うのじゃ論理矛盾ですか、そういうことになると考えていいわけですね。
  68. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 私、これまでの答弁と矛盾はないと考えております。  いわゆる自衛権、国際法上の自衛権の問題につきましては、これは別な機会に御答弁申し上げたこともございますけれども、自国民が海外で御設定のような状態で危難に陥ったという場合に武力を行使して救出できるかという問題は、国際法の問題としても大変難しい問題でございます。かなりの国際法学者は、そのような場合に自衛権の行使として自力救済はできるんだという学説を唱えておる者もおりますけれども、他方、そのような実力を行使するということは他国の領土で実力を行使するということでございますので、領域主権の侵害ということとのバランスの問題がございますので、これは非常に慎重に考えなければいけないものだというふうに考えております。  ただ、いずれにしましても国際法の問題として言えば、自国民の救出に自衛権を行使するということが一定の場合に許されるであろうということは言えると思いますけれども、ただ、我が憲法の関係でいえばそれはできないことであろうというふうに考えますし、そのような考え方に立って、この法案でも二十四条でこの武器使用ができる場合を非常に限定している、こういうことでございます。
  69. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 大変不安定な、出ていく自衛隊としては何とも不安定な身分で出ていく、こんな法律自衛隊が出ていくということはどんなことかというふうに、私はもう北海道としては自衛隊員がたくさんおりますので、そういう意味からもとんでもない法律じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一つ、時間の関係で次の質問に移らせていただきますが、人道的国際救援活動、この分野におきまして、昨年の多国籍軍のサウジ派兵の活動、これ湾岸戦争前の多国籍軍のサウジ派兵でございますが、これは三条二号に定める人道的国際救援活動に該当するか否か。これ、不該当であるとするなら、どのような条件に当てはまらないか。この二点、明確にお答え願います。
  70. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  ただいま、多国籍軍ということでの御質問かと思います。私は、多国籍軍というのは、クウェートへの侵攻を行ったイラク軍の排除を目的とするものであるというふうに理解しております。  したがいまして、今回の法案で書いてございますのは、第三条二号で書いてございます人道的救援活動と申しますのは、あくまで「国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれのある紛争によって被害を受け若しくは受けるおそれがある被災民の救援のために又は紛争によって生じた被害の復旧のために人道的精神に基づいて行われる活動」ということでございます。したがいまして、明らかに、多国籍軍の活動というのはこの人道的救援活動に該当しないというふうに考えられます。
  71. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 昨年のアメリカが先導して行ったサウジ派兵には、サウジ住民がいつ被災を受けるかわからない、そういうおそれの人道的精神が全くなかったとは言えないんじゃないか、そういう部分があったからこそ多国籍軍という形でほかの国も出たという部分もあるかと思うわけでございますが、なぜ人道的精神に基づく活動ではないという、その分けるメルクマールは何か、それについて明快にお答え願います。
  72. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  人道的な国際救援活動と申しますのは、法案第三条二号に指摘しておりますとおり、次のような要件を満たすものであるというふうに考えられます。  一つは、国連総会、安保理もしくは経済社会理事会の決議またはこの別表に掲げてございますけれども、そういった国際機関の要請に基づくということが一点でございます。次に、紛争に起因する、先ほど私読まさせていただきましたけれども、被災民の救援または被害の復旧のための活動であるということ。三番目に、受け入れ国の同意がありまして、またそういった活動が行われる地域の属する国が紛争当事者である場合には、その紛争当事者間に停戦の合意があるということ。四番目に、そういった要件に合致しておりましても、国連PKOとして実施されるものは除いております。  他方、以上が法案に書いてございますが、この人道的救援活動を実施するに当たりましては、総理の方からも答弁がございましたけれども、いろいろな情勢判断の問題があろうかと思います。人道的活動でありますので、本来文字どおり人道的な救援活動として受け入れられる、そういうものでなければならないと思いますし、また、当然のことながら、我が国からそのために派遣する要員の安全の確保といった点も十分に配慮すべきことかと思っております。
  73. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今の御答弁では、どの要件に不該当であるから昨年の多国籍軍のサウジ派兵が人道的国際救援活動に当たらないというのか全く不明確なままでございます。私は、この法案ができていれば、この人道的な国際救援活動という部分で、自衛隊が昨年の平和協力法案と全く同じ後方支援活動、これは条文を照合いたしましてもできる業務は全く同じ部分が、このトからレまでは全く同じでございます。特に、後方支援活動とお考えであるものはタの輸送、保管、通信、建設、機械器具の備えつけ、検査もしくは修理という部分でございます。  なぜサウジ派兵に自衛隊部隊ごと武器を持って派遣することがこの条文では可能かといいますと、まず国際連合の総会、安全保障理事会もしくは経済社会理事会が行う決議、これも安保理の決議がございました。そしてさらには、サウジというのは被害を受けるおそれがある住民である、だから、そういった住民がクウェートから攻め入られるようなことで被害を受けてはいけないというようなことで、やはり多国籍軍も、あれは人道的精神ではないというのであれば大変問題ですけれども、ということの活動である。しかもサウジは紛争当事者ではないので、停止や停戦の合意、これは全く不要となります。そして、サウジだけの活動を受け入れるという同意があればいいことになる。しかも、協力する相手方には「国際連合加盟国その他の国」となっておりまして、国連活動というふうには限定されておりません。とすれば、これで何ら問題なく昨年の多国籍軍の活動自衛隊が後方支援できたじゃないか。  むしろこの条文で問題なのは、その実施要領国連事務総長指図と、大変きのうから問題になっているような言葉でしか書けなかったのは、国連事務総長指揮命令という、指揮監督という言葉を入れれば、この人道的な国際救援活動自衛隊部隊ごと武器を持って自衛隊法上の防衛庁の業務として出ていくということができない、国連指揮を受けなくても防衛庁の業務として出ていくということができないために、こういうような法律構成になっていると考えるわけでございます。  ですから、私はそう考えるわけでございますが、政府としてはどの部分が不該当なために去年の多国籍軍の活動には出せないというふうな判断を下すか、最終的に責任者でおられる宮澤総理にこの部分をお答えいただきたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは文字どおり法律の解釈でございますから、専門家がお答えします。
  75. 野村一成

    野村政府委員 恐縮でございますけれども、先ほどのサウジの例で御指摘がございましたけれども、私の理解する限り、国連におきまして人道的国際救援活動という意味におきまする決議はなされていないというふうに理解しております。したがいまして、私が要件で申しました冒頭のものに該当しないということでございます。
  76. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 先ほどから、どこに不該当という部分がはっきりしないのですよね。人道的精神に基づく活動ではないという判断なんでしょうか。私は、できる、この条文ができ上がってしまえばああいう活動に人道的と称して出動できるというふうに言っているわけでございますが、できないとお答えになるのはどこかをはっきり明示してほしいわけでございます。
  77. 野村一成

    野村政府委員 繰り返しで恐縮でございますけれども、私は一番目の要件として、国連総会、安保理もしくは経済社会理事会の決議または別表に掲げる国際機関の要請に基づくことということを指摘いたしました。まさにそういった点での要件、要請がありますればできるわけでございますが、御指摘のケースの場合については、私が理解するところ要請はなかったということでございます。
  78. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 要請はなくても安保理の決議はあったじゃないですか。あの決議では、あの多国籍軍は人道的精神に基づく活動ではなかったというのでしょうか。決議はあったんじゃないんですか。決議に基づいて出ていったんじゃないんですか。
  79. 丹波實

    丹波政府委員 人道的な救援との関連では、例えばクルドの避難民についての決議はございましたけれども、サウジの住民ということとの関連での決議は、私、記憶力で今申し上げておりますけれども、なかったと承知いたしております。
  80. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 じゃ、今の答弁でお伺いいたしますが、クルドの難民の救援のために、例えばアメリカが出ていく、それで日本に対して、自衛隊に後方支援してもらいたい、ここで定める他の業務、輸送とか保管とか通信とか建設とか、こういった大事な兵たん部門を自衛隊が防衛庁として責任を持ってやってもらいたいといった場合には出られるということになるんじゃないですか。
  81. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私は、先ほど来人道的救援活動についての諸要件を御説明申し上げました。クルド難民支援について申し上げれば、そういった要件に合致するものである限りにおきまして、このような人道的な活動に対しまして我が国の自主的な判断に基づいて、この実施計画の決定等いろいろな手続がございます。それを経ましてこれを自衛隊により支援するということは可能であると考えております。
  82. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 としますと、アメリカが何らかの国際機関の――その前に若干、非常に基本的なことを伺いますが、この要請機関の中に、別表におきますと政令が入ってございます。二号でございますが、「国際連合の総会によって設立された機関又は国際連合の専門機関で、次に掲げるものその他政令で定めるもの」というふうに書いてありますが、この「政令で定めるもの」というのは、昨年の特例政令にありますように、政令に委任されているというのが大変国民の意思と離れてひとり歩きするような批判がございました。そういう意味でもこの「政令で定めるもの」は国際連合の専門機関に限るのか、国その他、あるいは政令でどんどん専門機関以外にも追加できるのか、その辺をお答え願います。
  83. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおりな条文になっております。第二号の柱書きに規定されているとおり、「その他政令で定めるもの」には、「国際連合の総会によって設立された機関又は国際連合の専門機関」である、そういう限定が付されております。したがいまして、御指摘のような個々の国家が含まれるということはございません。
  84. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 もう一つ伺いますが、先ほど、クルド支援にアメリカが出ていくような場合は日本自衛隊部隊として後方支援に出かけられるというようなことをおっしゃいました。次に、今イラクの核査察が国連の核査察チームで行われております。ああいった場合に、要請があれば自衛隊部隊ごと、また派遣できるのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  85. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  人道的な精神に基づいて行われる活動がまさに人道的な国際救援活動でございますが、それにつきましては、具体的にこの法案の第三条三号ヌ―タ及びそれに類するものとして政令で定める業務であるということを規定しております。具体的に列挙いたしておりまして、今御指摘の核査察につきましてはそういった業務には該当しないわけでございまして、したがいまして核査察は含まれないというふうに考えております。
  86. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 ヌからタにまでには入らない。しかし、もし、これは国会の承認は不要、閣議で決定できる、政令というのは閣議だけで決定できるわけでございますけれども、核査察というのも住民が核被害のおそれがあるということで出かけていくんだと思うのですが、レの中に追加すれば今後ああいったことにも可能になる、そういった条文であるということにはいかがでございましょうか。
  87. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  この人道的な国際救援活動はあくまで被災民の救援または被害の復旧のための人道的精神に基づいて行われる行動というのが定義で書かれておるわけでございまして、そういうことからいたしましても、それからさらに、先ほど申しましたように、具体的には「ヌからレまでに掲げるもの」というふうに書いてございます。したがいまして、ここの例の類する業務としてであっても、御指摘の核の査察というのは人道的な救援活動といたしましては含まれないというふうに考えられます。
  88. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 私は、この人道的な国際救援活動ということで、昨年、国民の圧倒的な意思に基づいて廃案になった平和協力法案における、つまり多国籍軍的なものに対する自衛隊の後方支援、これが復活している。そして具体的には、今クルド族の難民支援にアメリカが行くと言ったら、そしてアメリカから要請があれば自衛隊を閣議決定で出していけるという構造になっているわけでございます。それが本当に、今回の法案国連平和維持活動協力する、あくまでも宮澤首相が何度も繰り返しお述べになっていらっしゃいます国連中心主義、国連活動に貢献するんだというものであれば、大変これは人道的という、法律の人道的精神に基づく活動などとこれまで法律の条文で一個たりとも見たこともない精神的な条項を持ち込んだ条文というのは初めてでございますが、こういった形で昨年の平和協力法案の復活、それである、国連協力ではないというふうに考えるわけでございます。  宮澤首相は、本当に国連協力ということに、国連中心主義を言うのであれば、ここではっきりと人道的な国際救援活動についても国連PKFと同じように統括のもとに行われる行動で、かつ国連事務総長の要請に基づくというふうに限定すべきだと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これで法律論は一応終わられたものと考えまして、そうなりますと、今度はこの法律をどのように運用するかというお尋ねと承りました。  以前からも申しましたように、昨年、湾岸危機がありましたときに、国内的にいろいろな議論があって、日本もある程度人的な貢献をしなければならないという世論が高くなりました。しかし、その際にやっていけないことがある、明らかにできないことがある、これもかなりはっきりいたしました。その反面で、できることはやはり一生懸命やろうではないかということがこの法律案で御審議を願っていることの意味でございますので、したがって、ただいまおっしゃいましたような仮にクルド族のようなケース、そこで国連の総会、安保理事会もしくは経済社会理事会で具体的な決議がございましても、そこへ我が国自衛隊を出すということが仮にこの法律で可能であっても、国民の世論の中でできることとできないことがある、そのできないことに非常に近接する危険がある、そういう場合には私はやはり政治の決断としては出すべきではない、これは一つ一つの具体的な状況によって判断すべきものだと思います。
  90. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 やはり国連中心主義ということであれば、加盟国が行う活動に非常に憲法に抵触するおそれがあるということを渡辺外務大臣もはっきりお認めになったような危なっかしい無理のある法案でもって、初めての自衛隊を海外派兵という、そういった部隊ごと自衛隊業務として行わせるということには、明らかにこの人道的な場合にも国連事務総長の枠というのは当然はめるべきではないか。国際貢献がノーと言っているのではありません。国際貢献はやるべきだというのが社会党のやはり基本的な態度でありまして、あくまでも国際貢献をやるときには、アジアの国々を初め、国民が自衛隊をそのままPKF派遣するのは違憲であるというこの世論、これは大変重要なものでございますが、そういった状況の中では、百歩譲っても国連事務総長の枠をつけるべきである。そういう意味で、この人道的国際救援活動が昨年の平和協力法案だ、それの復活だと言われることのゆえんでないかと思うわけでございます。  それで、最後になりましたが、これまで私は国連文書を取り寄せましたところ、八九年、これはノーベル平和賞をPKOが受賞した後でございますが、八九年においても、九〇年においても日本PKOに対して大変否定的な見解を述べております。例えば、これは八九年の提言でございますけれども、PKOの財政問題に関してですが、「紛争の確定的な解決を助長するという観点から、長期にわたるようなPKOの制限または削除も考慮されるべきである。」というようなことを提言しておりますし、また「その平和維持活動により直接利益を受ける国は、その財政力に従って利益に応じた追加財政負担を引き受けるべきである。」例えばナミビアのような、最後の独立国と言われるような大変窮地に陥っている国にPKOの財政負担をせよという、まあ何ともPKOに対して否定的な見解をしているわけでございますが、平和主義者でおられるという宮澤首相が、なぜ突然九〇年までのこういったPKOの否定的見解を変えて、今回は一気に文民活用どころか自衛隊、軍事面でのPKO協力まで必要だと考えるのか、本当に率直に哲学をそちらで教えていただけたらと思いますが。
  91. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは先ほども申しましたことでございますけれども、いわゆる湾岸危機に際して、国民的に、我が国もいわゆる経済大国になりましたので、これを全く座視していいのか、何かしなければならないのかという議論が起こりました。これは御記憶のとおりのことでございますが、そうして、財政的な支援をしなければならないだろう、それだけで済むかということになって、いわゆる汗を流す、血を流してはならぬということもはっきりしたわけですけれども、汗を流す範囲はどこまでかという国民的な議論があった。それはできないことがございますと国際的に言うことの反面で、それならできることはできるだけ誠意を尽くしてやります、こういうことで国民的な世論が形成されてきた、私はそういう理解でございます。
  92. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 国民的世論が形成されていないのは、PKFに対しては自衛隊は出すべきでないと六割の国民が考えている、そういう世論調査の結果があるわけでございますが、そういった世論調査を無視してなぜ今回自衛隊派遣、派兵法案をつくったのかということをお伺いしているのでございますが。
  93. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 六割の世論調査というのは、私はそれに挑戦するつもりはございませんけれども、よく読んでみますと、その大部分の方が自衛隊そのものが違憲だ、こう言っていらっしゃるんですね。それですと、それはまた別のお話に私はなるんだと思います。
  94. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今の世論調査は、自衛隊の違憲の話を聞いている調査ではございませんで、今かかっている法案の世論調査でございまして、朝日新聞でございます。自衛隊が違憲、違憲でないという問題と自衛隊法に基づく業務として出ていくという問題、別にまた考えなければならない大変重大な問題でございます。その違憲である、あるいは違憲でないということを、それを抜きにしても、違憲であるという人でもこの問題に対しての論議というのは出てきているわけでございまして、六割に対する説得をどのように行うつもりなのか、いかがでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 自衛隊が違憲だと考える限り、自衛隊のすることは恐らくすべて違憲だ、そういう御議論だろうと思うので、それは私は、この際自衛隊が違憲だということに立ってこの御議論を考えるということはいかがなものかと思います。
  96. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今伺っているのは違憲論者のお答えでございません。自民党支持者の中にも、ここに自衛隊を出すべき、PKFに出すべきではないという意見がある点についてはいかがでしょうか。後藤田さんもおっしゃっていらっしゃいますが。
  97. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは、この法案につきまして、この委員会国会で御議論をしていただく中で国民が理解を深められるものである。私どももまた、その努力をいたします。
  98. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 これで終わります。
  99. 中川昭一

    ○中川委員長代理 午後一時より再開することとし、この際い休憩をいたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  100. 船田元

    ○船田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山中邦紀君。
  101. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 社会党の山中邦紀でございます。よろしくお願いします。  最初に総理に、去る十一月八日衆議院本会議で所信表明の演説を承りました。激動のさなかの国際社会を何百年に一度の大変化と評価をされて、冷戦後の時代、新しい世界平和の秩序構築の始まり、こういう認識を示されたわけでありますが、必ずしもその脳裏に描かれておられる秩序、明確にわからないわけでありまして、いかなる意味で新しい世界平和の秩序を考えておられるか。  その中で、このPKO法案、早期の成立を期待するとおっしゃっておられましたが、今まで予防的なPKFあるいは昨日来の指揮指図、非常に問題が多いことがわかってきております。不完全なままの法律の成立を急いでも得るところはないのではないかというふうに思います。御所見を伺いたいと存じます。
  102. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 本会議でも申し上げましたとおり、いわゆる冷戦後というものを新しい世界平和秩序の構築が始まったというふうにとらえたい。多少楽観的過ぎるという御批判はあるかもしれませんけれども、そういうふうにとらえて考えていくことは意味があるのではないかということを申し上げたわけでございます。無論、幾つかの不確定要因がございます。そんなに人類が急に進歩するものであろうかとか、あるいはかつてのソ連がこれからどのような道を歩むのであろうかということがいろいろ不確定要因でございますけれども、しかし、かつてのような世界平和に脅威を与える存在ではなくなろうとしておるのではないかということは客観的に言えるとすれば、それは文字どおり、そこから世界の新しい平和秩序が生まれる可能性がある。仮にそうなりましたときは、軍縮も進むでありましょうし、そのいわゆる平和の配当というのが南北問題の解決に向けられていくならば、地球全体が裨益するのではないかという、大変漠然としておりますけれども、方向としてはそういうことを考えております。  その際に、たまたま湾岸危機でも経験いたしましたように、経済大国になりました我が国が世界から期待されるものが非常に大きい。財政的な貢献はいたしましたが、国民の中にそれだけでは不十分なのではないか、金だけで済ますつもりか、こういう一種の自問自答のようなものがございまして、ある程度人的貢献もしなければならないのではないかという議論が起こりました。しかし、それと同時に、いや人的貢献にはしていいこととして悪いことがあるという、そういう議論も起こりました。結果として、それならばして悪いことはきちんとして悪い、しかしできることはやはり最大限にしなければいけないのではないかという、そういう考え方から、この法案のような発想が生まれたわけでございますが、それはまた湾岸危機に際して国連が、事情はいろいろございましたが、初めて前面に出て事態の処理に大きな役割を果たした。その国連に対する協力ということで国民の意識が高まってきた、そういう見方をいたしております。
  103. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 やや漠たるお話のように承りましたけれども、同じ線に乗っておりました国連平和協力法案、昨年廃案になりました。既にそこで廃案という、国際貢献と称した一つの法案が事実として廃案になったわけであります。これをどういう理由で廃案になったとお考えでしょうか。その廃案になった国民の気持ちを今度の法案でどのように生かしておられるか、なぜ今この時期にこういう形のPKO法案でなければならないのか、これはいかがでしょうか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 当時政府部内におりませんでしたので、その角度からのお答えはいたしかねますけれども、一人の議員として状況を見ておりまして思いましたことは、やはりあの湾岸危機というかつてない、しかも緊迫した状況の中で、我が国がどのように人的貢献をすべきかについては、大変に議論が急激に高まり、また、かつて経験したことがないことであっただけにいろいろな議論が起こりました。その間に試行錯誤がやはり行われて一つの落ちつきになっていくのに時間がかかったのであろうかと存じます。  一つの問題は、人的貢献と申しても、我が国憲法の精神との関連で、それは例えば武力行使というようなことに仮に結果としてなりますれば、それは一つの問題がやはりあるといったような考え方であるとか、あるいはまた他方で、平和維持活動協力するとすれば、それは相当専門的な知識がなければ国連に対する貢献にならないであろうとか、そういったようないろんないわば試行錯誤の中から前の法案が廃案になり、そして新たにこのたび御審議をいただいておりますような法案が生まれた、こういう経緯であったかと存じます。
  105. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 そうはおっしゃいますが、この法案が前国会に提案された前後、中国、韓国などアジアの隣人の間には懸念が表明をされたことは御承知だと思います。韓国の李外相、日本は、軍事的役割より外交的活動や経済力による方法を通じて、国連PKOにより効率的な寄与ができると思う、こう述べて、軍事大国化の可能性に対して懸念を表明をいたしました。中国の江沢民総書記も同様の意見を述べております。いずれも自衛隊の海外派兵、そして日本の軍事大国化に対する懸念であります。この解消なくして国際貢献も有効に働かないのではないか、この辺はいかがお思いでしょうか。
  106. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 第二次大戦にさかのぼりますいろいろな経験を我が国の隣国は持っておられますから、そのような懸念を持たれることは理解できることであります。したがいまして、在外公館を通じまして、あるいは我が国から関係者がそれらの国を訪問いたしますときに、あらゆる機会を通じて、我々の意図、これが決して武力を行使するために自衛隊が海外に出るという、そういう性格のものではないこと、それに伴ういろいろな条件、前提等々を説明をしつつあるところでございます。結局、我々の意図は了解をされましても、まあひとつ昔のことがありますからよく注意をしてお願いしますよというようなことは、幾つかの国から寄せられておりまして、それは当然のことであろう、我々としても十分注意をしなければならない、注意をしつつ運ばなければならないと思っております。
  107. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 お話でありますけれども、いろいろ努力をなさっても、なお懸念が解消しないというのは、やはり努力の仕方が的を射ていたかどうか、これが一つでありましょう。  それから、先ほど軍縮のお話もなさいましたけれども、我が国自身の軍縮の努力に欠けているという点があるのではないかと思います。韓国の国防省が出した国防白書のことは新聞記事になりました。既にもう昨年の白書で「日本は軍事大国化の兆候を見せている」と指摘をいたしておりました。そうしてことしの白書では、日本の軍事大国化への強い憂慮を表明をいたしました。「専守防衛概念を拡大解釈し、」というような記載であります。こういう点は我々の努力にもっともっと欠けているところを考えなければならないというふうに思うのであります。  ちょっと考えてみましても、台湾の元日本兵の方への補償とかサハリンに残留した朝鮮人の方々の問題、あるいは韓国、朝鮮の被爆者の方々の問題、元日本兵で不幸にもBC戦犯に問われた人への配慮の問題などなど、こういう点について実質的な、適切な処理をすること、そうして明確な前大戦における我が国の責任に関する謝罪の公的な表明ということをすべきであろうというふうに思います。国会の決議につきましては、これは国会のことだという本会議でのお話でありましたけれども、自民党の総裁としてのお立場からも、これを推進する、あるいは政府の声明に盛るとか、こういうことをお考えになってみられませんでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国が過去におきまして我が国行為によりましてアジアあるいは太平洋地域を初めとする関係地域の人々に多大な苦痛と損害を与えてきたということは事実でありますし、我々はそれを深く自覚をいたしております。二度とこのようなことを繰り返すまいということで、憲法のもとにきょうまでそう決心して歩いてまいりましたし、また、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献することによって、その実を上げたいと考えてまいったところでございます。また、このような我が国の考え方は、例えば海部前総理大臣が本年の五月にシンガポールにおいて海外に向かって述べられたところでもございまして、政府としてもこのことは深く戒めておるところでございます。
  109. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 ぜひ国連軍参加に関して、大幅軍縮のこともきのうお述べになったと思いますが、これは大分先の話、こういうお話でありましたけれども、まず、我が国自体の軍縮について努力を払っていただきたい。そういう観点で、今月十八日にアメリカのパウエル統合参謀本部議長が総理にお会いになって防衛力の整備の問題などについての会談があった旨マスコミに発表をされております。アメリカ側が我が国の防衛力のこれ以上の増大を望んでいるのか、そしてこれに対して総理がどういうお考えで対応されたか、この際お聞かせを願いたい。
  110. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 パウエル統幕議長の方から別にアメリカ側がこういう希望を持っているというようなお話はございませんでした。私は、いわゆる冷戦後の世界というものについて、全体としては非常に喜ばしい状況である、ただ、我が国としてはいわゆる基盤的防衛力構想というものでいわば必要最低限のものを整備しておこうという、基本的にそういう考えでございますので、その考えに大きな変化があるわけではありません。もとより世界の大きな流れについては十分に注意をしつつ、用心をしながら、その大きな流れに対応していく、こういうことは考えておりますけれども、そういうようなことを申したところでございます。
  111. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 この際、防衛庁長官にも軍縮に関する御認識を伺いたいと存じます。  新中期防自体、最近の国際情勢、冷戦緩和の状況を反映していない、それこそ防衛大綱の精神に立ち返って、内外の情勢の変化を考慮しながら、整備は弾力的でなければならないというふうに思います。長官御自身の言葉の引用として、自衛隊の定員が十八万でも、実際十五万三千なんだから、その数字まで削減するということを考えてみようというようなこともおっしゃったようであります。新中期防も来年度中に大幅に下方修正ということも報道をされております。長官の御認識をお伺いしたいと思います。
  112. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 防衛力整備についての先生の御指摘でございますが、今中期防に言及になり、また当面の防衛力整備についての御質問であったかと存じますが、御案内のように、今の中期防は昨年の十二月の二十日に策定されました。これの基本的考え方は、五十一年につくられております、先生御承知の防衛計画の大綱に基づきまして、当時の国際情勢判断、これは、デタントの時代にこの防衛計画の大綱によりまして、我が国の平時における基盤的防衛力構想ということで、独立国家として当然小規模の侵略に対して対応し得るだけの防衛力を整備しようということで、当時の国際情勢を反映したものとして策定したわけです。  しかし今日、御案内のように、大変世界は激動しております。これで、国際情勢が変化したにもかかわらず、この防衛計画の大綱を基礎にすることはいかがかという御議論もございましたけれども、この点につきましては、昨年の十二月の十九日に、平成三年度以降の防衛力の整備計画の基本的な性格について、これを決めておりますが、当時の、五十一年当時の国際情勢、確かにデタントでございます。その方向がより高められておる、より強化されておる、こういう状況であるという認識のもとに、防衛計画の大綱に従って、現在、平成三年度以降の中期防衛力計画が定められたわけでございます。したがいまして、今の世界の情勢、御案内のように、非常に激動しております。緊張緩和でございます。しかしながら、私どもは、そういう動向は常に留意しつつ、また考慮しつつ検討しなければなりませんけれども、当面の防衛力整備計画はそのような趣旨でつくられておりますので、今直ちに中期防を変えるというようなことにはなっておりません。  ただし、先生今御指摘のように、三年後の見直し規定等も、修正――必要であれば、この二十二兆七千五百億円の範囲内で見直すという条項もございますし、それからまた、今人員の充足状況その他を見まして、十八万人の陸上の体制でありますけれども、これは十五万三千人の今の充足率で充足されているものを超えない範囲内でこの中期防中はいく、そして将来的には、それを検討して次期防に反映をしていきたい、こういうことも中期防自体に書き入れてございますから、そういった方向で今後防衛力の整備を考えていきたい、このように存じております。
  113. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 新中期防の修正問題、お話しになりましたけれども、私どもからいたしますと、安全保障会議の議決を経ているとしても、その経緯は密室のような感じがいたします。いかなる国際情勢の認識でこういう計画を決めたか、うかがい知るところがないという感がいたします。やはり、こういうところで実質的なシビルコントロールということをもっと工夫をしていくべきであろうというふうに思うんであります。小規模の侵略に対応するということでありますけれども、もう大規模の侵略も、我が国周辺にその意思も能力も持っているような大国はいないわけでありますから、片や軍縮を実現し、そうして国際貢献ということでなければ話が済まないというふうに思います。  そういう意味で、私最近気になりましたことを一つお尋ねをしますけれども、湾岸から掃海艇が皆さん無事で帰ってこられました。その経緯におきまして、我が国の補給艦ですか、母艦が外国の、アメリカの掃海艇あるいはドイツのヘリコプターに重油を給油した、十三回にわたり、こういうことがございますようです。これが防衛次官の通達でなされた、こういうことでございますけれども、他国の軍艦あるいは軍用機にこういう給油をするということは、防衛庁一存の通達でやれる仕組みになっておるんでしょうか。
  114. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  細部のことにつきましては、物品管理法その他の法令に基づいて行っておりますので、装備局長の方から御答弁させていただきますが、基本的にはやはり掃海艇の任務を達成するために出ているわけでございまして、他国の掃海艇等々もございました。そういうものに対して共同した任務のもとで給油するということは、私はこれは当然なことであるというように考えておりますが、その法的根拠等につきましては、装備局長の方から御答弁させます。
  115. 関收

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  各省庁の関連いたします物品の管理、具体的には取得、保管、供用、処分に関しましては、御案内のとおり、物品管理法によってコントロールされているわけでございますが、物品管理法の第七条におきまして、各省各庁の長は、その所管する物品を管理するものとするという規定がございます。また、同法第二十九条第一項におきまして、「物品は、貸付を目的とするもの又は貸し付けても国の事務若しくは事業に支障を及ぼさないと認められるものでなければ、貸し付けることができない。」という規定がございます。  今回の掃海関連艦艇によります給油につきましては、物品管理法、ただいま申し上げました第七条に基づきまして、同法第二十九条の制限の範囲で実施したものということでございます。
  116. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 事務処理の規定としてお伺いしましたけれども、外国の軍艦、軍用機に国内の事務処理規定で物品を供与し、利息をつけて返してもらったそうですが、それはそれとして、そういうあり方というのは、私はシビルコントロールに欠けると思いますね。  ところで、法制局長官にお尋ねしますけれども、文民統制というのは、シビルコントロールというのはいかなる概念ですか。また、日本国憲法上はどこに規定がなされておりますか。
  117. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  シビリアンコントロールにつきましての御質問でございますが、これにつきましては、従来からお答え申し上げておりますように、国防に関する国務の遂行について政治的な考慮、これを軍事的な考慮に優先させる、こういう原則であると承知しております。  で、そういう実現のために、国防に関する国務の遂行についての最終的な決定が、いわゆる武力行使を職務内容とするような公務員あるいは機関によって下されるのではなくて、そうなっていないという建前、こういうことが必要だというふうに言われていると存じます。  我が国の現行制度で申し上げれば、国防に関する国務を含めて、それは国政の執行を担当する最高の責任者でございます内閣総理大臣及び国務大臣がすべて文民でなければならない。これはそういう規定がございますし、また、国防に関する重要事項につきましては安全保障会議の議を経て、これは法律事項でございますが、議を経て行われる、さらに国防組織である自衛隊自衛隊法等の法律あるいは予算を通じまして国会の民主的なコントロールのもとに置かれている、こういうことであろうかと存じます。
  118. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 私は、憲法上の根拠を聞いたわけでありまして、文民規定の解釈についてはいろいろあることは承知をしておりますが、特に注目すべきことは、我が国の憲法では軍隊の設置について何ら触れていない、書いていない。むしろ置かないという明文があるわけであります。こういう場合の文民統制のあり方というのは、これはイージーに考えるということはできないというふうに存じます。  軍に対する政治の優越ということにプラスして、もう一つ民主主義のコントロール、これが文民統制の基本的な要素であろう、こういう観点で今回の国会承認の問題も考えなければならない。外国におきまして国会の承認を得ない例があるというようなことがありましても、我が国の憲法に軍隊を置かないという規定があるわけでありますから、これを押して自衛隊があり、そうしてよそへ出るわけですから、その場合はまた別の考えに立たなければならないというふうに思います。  それにしても、国会承認に関しましてはもういろいろ議論がありました。平成三年九月三十日の文書による考え方というのもちょうだいをいたしました。結局のところ、お尋ねしたいんですけれども、PKO自衛隊を参加させて海外へ派遣するにつき、国会承認をすることにより不都合が生ずるんですか。絶対に国会承認をすることはだめだという根拠があるんでしょうか。
  119. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 その点はしばしば申し上げているところでございますが、御指摘のような文民統制ということをこの法案の中に各所に置いてございますし、また、実施計画につきまして国会の御意見を承る機会も設けておるわけでございます。  具体的な国連との関係におきましては、国連の要請に機動的に対処したいということ、また、国会の御承認が得られなかった場合にはという、そういう一種の条件つきの交換公文をするということについての国連側の不安、不都合といったようなことが私どもの考えております理由でございます。
  120. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 中立国におきまして、PKOに参加する場合に条件をつけて、後日条件が成就しないときには途中でやめるという例もあるようでありまして、要するに今の話は便宜の問題であろうというふうに思います。  法律上の規定があって枠がある、枠があるのは当たり前でありまして、諸事行政については法的な根拠がなければならないわけであります。枠と申しましても、いわゆる五原則、なかんずく同意、合意はそもそも国連の原則であります。そうして政令事項が多い、中断、撤退の基準も明らかでない、こういうような枠では、やはり政治の優先に加えて民主主義的なコントロールという意味国会承認が原則的に必要である。便宜で曲げることはできない。殊にもう、先ほど申し上げましたように憲法上の軍隊の存置をしないという規定が現にあるわけでありますから、その中でのシビルコントロールのあり方というのはもっと慎重でなければならないというふうに思います。  そのほか、何か国連から要請があった場合に直ちに対応できないとか、そんなお話もございましたね。しかしながら、目下目先の問題としてカンボジアの問題があるわけでありますけれども、我が国からもPKO参加を前提としたと思われる調査団を出すとか、UNTACが正式に発足していないうちからいろいろ準備をしている。これが実態であろうと思うのですね。前もってお互いの意思の疎通を図る。要請をしたが断られるかどうかわからない、こういう形の要請はないものだというふうに思います。それが国連中心主義でもありますし、近隣外交のあり方でもあろうというふうに思います。  ついでながら伺いますけれども、カンボジアは、UNTACは正式に発足をしたのですか。それから、これから実際にPKO活動が始まるのはいつごろから予想されますか。そして、その終わり、選挙に至ると思いますけれども、いつごろまでの期間が予想されますか。
  121. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 カンボジアの方は、まだUNTACはできておりません。先遣隊が行きましていろいろな調査をした上で、その後UNTACが、暫定機構ですね、暫定機構がつくられまして、そういう中でいろんな調査や準備をして、今度は選挙をするという段階になりますから、まだいついつということは断定できませんが、もうことしじゅうとか来年の初めとかということはあり得ない。もっと後になるだろうと思います。
  122. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 まあそういうような次第でありまして、選挙をやるについても、その前に選挙に関するいろんな啓蒙とかそういう段階も必要だというふうにも聞いております。決して遅いというようなことではないと思うのでありまして、緊急の場合には事後の承認ということもあるであろうというふうに思います。  要するに、国会承認について軽く見ておられる。そうとしか考えられない。ほかに何か別の本当の国会承認を得ない方がよろしいというような根拠でもあれば別でありますけれども、いろいろ直後に、中間に、あるいは変更の際に、終われば国会に報告するということでありますれば、そしてまた報告の結果の議論を尊重するということでありましたら、これは事前の承認を得ることはそう難しいことではなかろう。カンボジアの問題もUNTACが発足する前に国会議論をなさればよろしいし、あるいは与野党の間で協議をしておくということも必要ではないのかというふうに思うわけであります。自衛隊の出動関係は国民の権利義務に関し非常に重大な事態だから承認を要するので、PKO関係は、そうなりますと、それほど重大でない、また権利義務関係しないとでもいうことになりますか。決してそうではないわけでありまして、参加をする者も相手国の住民にとっても直接間接に権利義務関係をするというふうに思うのであります。この辺はどのようにお考えいただけますか。外務大臣にお伺いしましょう。     〔船田委員長代理退席、委員長着席
  123. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 国会承認というのは一つの考え方であることは間違いありません。しかしながら、世界の状況を見ますると、出動前に国会承認を受けるという国は非常に少ない。なぜか。結局、どこの国でもやはり国会の召集手続とかいろいろなことがございますし、四六時中、三百六十五日国会を開いているわけじゃありません。まして、手続の問題がございましょう。それから、賛成されるかどうかということは国会論議の後でなければわからないというようなことで、極めて不安定である。  だからといって、それじゃそれにかわるものは何かと申しますと、もうこの法律に書いてあるように、いろいろな条件をつけて、実施計画実施要領その他、もろもろの歯どめがいっぱいかかっておるわけでございますから、それを今あらかじめ御審議を願っておいて、そしてその範囲の中で政府が実行をするということであれば、不安定な状態の前に、日本法律国連でもわかっておるし、すり合わせをしておるわけですから、あるこういうような場合には日本にはお願いできないな。その任務遂行のために武力を行使するんだと最初からわかっているような問題も中にはなきにしもあらず。そういう場合はもう最初から日本には頼めないということは国連の方もわかるわけですから、だからそこで選別をされてもこれも仕方がないことであって、日本にできそうなことについて、いろんな条件のもとで日本に要請がある。そのときには、日本としてはこの法律に照らして、さらに吟味をいたしまして、受けるか受けないかということを政府は決めていくわけでありますから、国会の承認はなくても済む、そういうように考えておるわけでございます。
  124. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 結局のところ、なくてもいいというお話でありまして、手続の問題であれば工夫は幾らもしようがあろうと思います。なくてもいいというようなことであっさり考えるような問題ではないはずだというふうに思います。  決して承認不要の国が多いというわけでもないのでありまして、スウェーデンは議会の外交問題委員会と協議をするとか、フィンランドは外交委員会の意見を聴取するとか、ノルウェーは承認不要のようであります。デンマークは国会の承認を必要とします。オーストリアは下院の筆頭委員会の事前承認が必要であります。アイルランドは下院の事前承認が必要であります。この中で、承認問題について考慮をしているとかいうようなお話は今までございました。しかし、これらの国々は、待機軍があるとか、憲法体系の中できちっと待機軍とかPKO派遣部隊が位置づけられているわけであります。我が国の場合はもっともっと尊重して悪いこと一つもない、なくてもいいということではなかろう。枠があるから十分だということではないと思います。  なかなか御承服はいただけなかったようでありますが、しかし理屈はそういうことであろう。国会承認の必要性をさらに強調をして、次へ移りたいというふうに思います。
  125. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 これは同じような答弁になって恐縮千万なんでございますが、恐らく、日本のこの法律PKOに関する法律のようにいろんな条件がつき、歯どめがかかり、こういうような法律をもってPKOに参加する国は少ないのじゃないか。だから、国会承認というものを我々はするかわりに、いろんな条件の場合を想定をして、そこへ列挙をしてあるわけであって、それが今既にここで議論されていることなんですね。細かい問題について議論されているということは、一々承認を受けなくとも、その範囲の中しかPKOには参加しないわけですから、だから細かい議論がいっぱい出ておるのであって、その議論にあったように、我々は法律の中でしかやらないということを繰り返し言っているのはそういうためであります。
  126. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 それでは、本法案の条文について少しお尋ねをしてみたいと思います。  さきに政府の方からいただきました「武器使用と武力の行使の関係について」という印刷物がありますので、これをお手元にごらんになりながらと存じます。  それで、法案の二十四条第三項、第四項関係で伺っていくわけでありますけれども、この文書による使用と行使の関係についてというのは、この法案の合憲性を前提に文章ができているようでありまして、少し読みにくい感じもいたしますけれども、第二項の末尾二行「必要な最小限の「武器使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。」これは、二十四条のどの部分の規定を念頭に置いて書いたものですか。
  127. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  この二十四条におきますと、武器使用につきましては「平和協力業務に従事する隊員」、これは二十四条の一項でございますが、「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該小型武器」、二十四条の一項の場合「小型武器」でございますが、「を使用することができる。」というふうになっておりまして、これは、ここで書いておりますのは「いわば自己保存のための自然権的権利というべきもの」でございまして、憲法第九条がそこまでも否定しているものではない、そういう考え方でございます。
  128. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 それでよろしいのでしょうか。最小限の武器使用というのは、むしろ第四項に当たるのではないか。第三項はどの部分、第四項はどの部分に該当するか、いかがですか。
  129. 野村一成

    野村政府委員 私、今一項のみを引用いたしましたが、基本的には一項、二項、三項それぞれについて、規定されておるとおりでございます。
  130. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 それでは四項は、この「行使の関係について」という文書の中には該当箇所がありますか、ありませんか。
  131. 野村一成

    野村政府委員 武器使用、公的な武器使用を法的に規制する場合、要件といたしまして、段階ないし場面は二つあるのではないかというふうに理解しております。一つは、使用でございます。これは、武器を相手に向けて空砲を擬して撃つという、そういうことも含めた広い概念でございますが、もう一つは、やはり危害を与える、相手を殺傷する、そういう二つの場合があろうかと思います。  それで、私ども今指摘いたしましたのは、まさにその使用の側面に着目いたしまして、特に先生の御質問武器使用についてでございましたので、私、一項、二項、三項と申し上げたわけでございまして、四項はむしろ今申しました危害の要件ということに該当するというふうに考えます。
  132. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 私が不敏なのか、答弁なさる方がお疲れなのか、第三項は「必要な最小限の」というような書き方はしていないわけでありまして、使用される武器については、自衛隊が装備として持参をしていく武器全体を指している。実際にどれを使うかどうかは別ですよ。第三項はそのように読むべきものではないのかというふうに思います。そうして、今あなたがおっしゃった広い、狭いの関係からいいますと、どうやら第四項が狭くて、第三項が広いように思います。これを、この「武器使用と武力の行使の関係について」という一項、二項の文面全体の中で位置づけていただきたい、これが私の質問です。
  133. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  確かに御指摘のように、この法案のもとにおきましては、武器使用要件を極めて厳しく限定いたしております。防護対象にいたしましても、基本的には自己の生命及び身体ということにとらえておるわけでございます。  他方、この法案の第四項にございます刑法、正当防衛、緊急避難の要件でございますけれども、その中には、使用について限定した要件のもとであっても、なお例えば刑法三十六条に含まれております「急迫不正ノ侵害」といった点が、要素があろうかということでございます。したがいまして、重ねてこの危害を与える場合の要件といたしましてこの四項を規定しておく意味があるというふうに考えた次第でございます。
  134. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 要するに、政府委員は前に、第三項は法令行為だ、公務上の行為だ、業務上の正当行為だ、こういう説明だったのですよ。三項は非常に広い、四項は人に危害を与える場合ということで非常に狭い。この法案武器使用にいろいろ制限つけたとおっしゃいますが、第三項はそのようには読めないというふうに思います。  法制局の長官に伺いますけれども、法令行為とか業務上の行為であるとかいうような概念については、講学上どういう説明がなされておりますか。
  135. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの御質問でございますが、まず法案の方で申し上げますと、一項から三項まで、これが使用のことを書いてございまして……(山中(邦)委員法案の説明はいいですから、概念の説明だけで結構です」と呼ぶ)刑法の三十五条におきまして、「法令文ハ正当ノ業務ニ因リ為シタル行為ハ之ヲ罰セス」というふうなことでございます。
  136. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 私のお尋ねしたのは、法令行為とはどういうものだ、正当な行為というのはどういうものかということをお尋ねしたのですが、まあそれはそれとして、それじゃ外務省の方から、この第三項の「派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官」、これが正当行為あるいは法令行為あるいは公務上の行為、これは速記録にそういうふうに出ているはずでございます。具体的にどういう行為を念頭に置いてこの条文ができておりますか。
  137. 野村一成

    野村政府委員 基本的な考え方といたしましては、この法案の第三条で、具体的な平和協力業務規定しております。その業務を遂行するに当たりまして、やはり現地状況、特に治安その他がございます。また、要員の安全という考慮もございます。そういった点から、その業務の遂行に際して武器使用が必要になってくるということ、そういう基本的な考え方、これはまさに、特にPKFにつきましては国連の考え方にも合致するわけでございまして、そういう――いや、私は武器使用という点にのみ着目しておるわけでございます。この二十四条の立て方は、今申しましたような業務の遂行に当たりまして必要になる規定であろうというふうに考えております。
  138. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 野村さん、この条項を念頭に置いて、実際に出ていった自衛隊隊員の皆さんがどこで何をやっているときにどういう武器使用するか、念頭に浮かびますか。言葉の羅列だけで法案ができているということでは、危険な場所に行く場合もあり得ることで、それでは済まないというふうに思います。第三条を援用してどうこう言ってほしい、こういうわけではありません。現地に行って、この条項によって武器使用することあり得べきケースをお尋ねしています。
  139. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私、三条を引用いたしましたのは、やはりこの中に基本的に、例えばPKFの場合ですと検問とか巡回、そういうことが具体的な要員活動として記されておるわけでございまして、まさにこれがそのまま国際平和協力業務に当たるということでございます。それを遂行するに当たりまして、やはり具体的に、例えば検問の最中に二十四条に書いてございます「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員」の生命、身体が脅かされる、そういう状況はあり得るわけでございまして、そういう場合の規定が第二十四条でございます。
  140. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 午前中に伊東委員が、隊員が捕まって捕虜になりそうな場合のことをお尋ねしたのでありますけれども、検問の最中にゲリラの方が襲ってきて隊員が捕まったら、この条項ははまりますか。
  141. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  具体的な状況でいろいろと違うんだろうと思うのでございますけれども、基本的には、私はこの二十四条の規定につきましては、平和維持隊の活動そのものに関係してくるんだと思います。この二十四条の規定は、積極的に武器使用するというための規定では一切ございません。まさに平和維持隊の業務の中には、非強制の立場で活動するというのが一つの大きな原則になっておるわけでございます。にもかかわらず、そういうみずからに危害が及ぶ状況というのはあり得るということでございます。  したがいまして、ただいま人質というケースを引用されましたけれども、やはり基本的には、例えば人質をみずから積極的に奪回する、そういうことを想定して積極的な武器使用ということを念頭に置いているわけではございません。やはりそういう、この三条に書いてあります具体的な業務を実施するに当たりまして、例えば鉄砲で撃たれるということ、撃たれるという事実に対しまして、そのことが「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防衛するためやむを得ない」という、そういう要件に合致すれば、その場合に武器使用していい、そういうための規定でございます。
  142. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 どうも前々思っておりましたけれども、この法律案というのはむだな法律をつくるわけじゃないのですから、できれば実効性のあるものをつくる、制度を樹立するのでありますから、立法事実というものをどれだけ調べているのか、立法の基礎になる諸事実を全部集積をして、その中から筋立てをして法案化していく、こういうことでなければならない。ところが、この三項に関しては、今の御説明は全く理解がいかないですね。  ひとつ聞きましょう。この武器使用している人は、PKO業務に従事中の人ですか。それから「使用することができる。」とありますけれども、では、使用することをだれが決めるのですか。勤務中であれば、その隊員自衛隊法のもとにあるのですか、ないのですか。そして、この武器の範囲、限定がありますか。以上、お答えください。
  143. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいまの御議論を拝聴いたしておりますと、三項の実施計画に定める装備である武器使用ということと、四項に関します三十六条、三十七条、正当防衛、緊急避難のこの関係だと思います。  それで、三十六条、三十七条はまさに緊急避難、正当防衛の場合のことを書いておりまして、武器使用によって人に危害を加えてはならないということははっきりしておるわけでございます。したがいまして、論理的に申しますと、三項では武器使用という場合はそれより広い範囲内ではないかという先生の御指摘は、私は理論上そうだと思います。  それじゃ具体的にどうかということで、今捕虜の例が引かれました。午前中の質疑でもございましたが、捕虜の問題は、これは自力救済で奪還できませんから、外国におけるそういう行為でありますから、これはまた別個に、先ほども条約局長の説明がございましたように、いろいろ国際的な法制下のもとにおける規制があります。しかし、今理論上あり得ると申し上げました点について、我が自衛隊部隊として参加した場合にどのようなことが理論上考えられるかということについて申し上げますならば、例えばこの武器使用は、ここに原則が書いてございますね。読みません。しかし、人に危害を与えない武器使用というものがあり得るからこそ概念として広いということを申し上げているわけで、その場合は、例えば侵略行為をやめさせるために、実際に殺害したり生命に危害を与えないけれども、しかし空砲で射撃するというようなこと、あるいは相手以外の方向に対して威嚇射撃をするといったようなことも理論上は考えられるわけです。こういうことを指して私は、我が自衛隊部隊の場合には理論上想定されている、しかし実際上そういうことが行われるかどうかは個々のケースによって判断しなければなりませんが、原則的には、先ほど来御議論のあるように、自衛官個人判断とそしてその行為によって行うという、この原則だけはきちっと貫かれているわけでございます。
  144. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 まだしもわかりやすい。納得はしません。  三十六条、三十七条は、人に危害を加えてはならないという規定ではないんで、そういう状況のもとにあっては加えてもやむを得ない、こういう規定であろうというふうに思います。それから、三項があるということは、理論上あるんでなしに、実際に使われる場合を予想していると私は考えます。  捕虜の話が出ましたけれども、捕虜になる前の捕まっている段階、私は大いにこの三項を使ってやれるんじゃないか、やると思いますよ。おっしゃるように、警告を発する、空砲を発砲する、あるいは実弾であっても相手の頭上を越して発射をするということがあるのじゃないですか。それがこの三項の規定である、私はそう思いますよ。実弾を込めて相手をねらうということまではいっていない。しかしながら、だんだん威嚇の程度を上げていくにつれまして相手の方がやはりもっと強い態度に出てくれば、四項に移ってしまうんじゃないでしょうか。私はそう思います。ですから先ほどの、国連局長だったと思いますが、非常に細心の規定をしているということは、そんなことはないというのが実態でないか。第三項は武力による威嚇ではありませんか。長官、どうですか。
  145. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申します。  三項における、これはあくまで法文にきちっと書いてございますように、自然権的な自衛隊員の生命、身体を防護するために必要な限度でやる場合でございまして、これはあくまで自己目的といいますか、自分の生存を維持するための武器使用でございます。  その場合に、先ほど申しましたように、繰り返しになりますが、これは刑法三十六条、三十七条のようなことになる場合を除いては人に危害を加えてはならないということを申しておるわけで、先ほど私が申しましたように、その余地がある、理論上余地があるということを申し上げたわけで、それが具体的な態様がどうなるかということはその具体的な事実によりますから今ここで一々申し上げませんが、まあ威嚇射撃をさっき例として申し上げました。これは威嚇射撃という言葉を使いましたけれども、武力行使または武力の威嚇という意味の、そういう憲法上使われているような意味ではございませんで、抑止的な意味で使ったわけでございますから、その点は御理解をいただきたい、こう思います。
  146. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 威嚇とおっしゃったのは実感を申されたものだと私は思って聞いておりましたよ。  大体この第三項の具体例を念頭に置いた議論が進まないというのは、これを読んで、本当に隊員にわからせるつもりはあるのかなという気がいたしますよ。だれに見せるためにこういう複雑な書き方をしたのか。長官も一生懸命勉強しておられるようでありますけれども、自然権的なというのは四項の方ですよ。今までの答弁の中で出ておりますのは、自然権的な権利ということで言われておりましたのは四項であろうと思います。だって、三項をごらんになっていただきたい。合理的に必要と判断される限度などと合理性を基準にして書いてあるのですよ。四項は、これは正当防衛、緊急避難、刑法の条文によるわけでありますけれども、もう絞りに絞った最小限という規定です。  大体が自然権的権利と言いながら武器使用することを認めるというのも大変理論的ではないというふうに思っておりますが、先へ進める意味で第三項で絞っていきますけれども、それでは長官、先ほどから念頭に置いてお話をなさっているのは、例えば捕まった方あるいは三項によって武器使用する方は、ねらってやるという意味ではありませんよ。これは自衛隊部隊としてPKO派遣した方が業務中の仕事だ、こういう点は御理解いただけるでしょう。
  147. 畠山蕃

    畠山政府委員 御質問は、この三項の「派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は、」と書いてございますので、その限りを見まして「従事する自衛官は、」ということでございますが、もちろんその従事している期間、そういう対象になるわけでございます。例えば睡眠中に襲われたのがこれの該当にしないかというと、そういうことではございませんで、当然に、その従事というのは広い範囲で、その任務が与えられた期間において、こういうふうに理解いたしているところでございます。
  148. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 寝ているか起きているかお尋ねしているわけじゃないわけであって、勤務中ということになれば自衛隊法の適用があるんですよ。そうすれば、当然指揮命令関係は出てくるんです。この「武器使用することができる。」というのは、してもいい、しなくてもいいということじゃない。そのように実際にはなっていくわけですよ。結局武器使用は軍隊的な統制のもとに行われるということになるわけです。ただ、ねらってならないというから、これは武力による威嚇ですね。そうなんですよ。  したがって、国連側で自衛のために武器を使う場合がある。それは二つに分けられる。一つは、本当に身体の危急に備えた場合である。これはこの法案でやれることだ。しかしながら、業務の遂行を妨げられたときの武器使用、これはやれないというのは私はうそだと思いますね。その後の方はこの三項でやれるのです。そうして三項で、お互いが競り合っていけば四項にいく場合もあるのですよ。どうお思いになりますか。
  149. 畠山蕃

    畠山政府委員 この間来、何回かそのお答えを外務省の方からも申し上げておりますけれども、国連の方のSOPの中には武器使用に、御指摘のとおり二通りございまして、自分の生命にかかわるものを守る場合と、それから任務遂行を実力をもって妨げる行為に抵抗する場合と二つあって、後者のものについては、これを我が国法律においては取り入れないという意味で、そういう意味でここに隊員の生命または身体を防衛するためということに限った、そういう趣旨でこの規定が書かれているところでございます。
  150. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 しかし、業務を遂行している間に生じた身体または生命の危急なんですよ。同じことですよ。  ついでだから畠山さん、伺っておきますけれども、例の束ねる問題ですね。よく最近はネガティブな感覚でお話しになっていますけれども」、それでいいのですか。個人個人の隊員が決めることではあるけれども、まだ早い、撃つなというような意味で助言をするのが例の束ねるだ、こういうお話だ。あなたはそれでいいと思っていますか。
  151. 畠山蕃

    畠山政府委員 この法二十四条三項は私どもは非常に狭い範囲というふうに理解しております。そして、その場合に個人の立場として判断をし、行為の主体も個人でございます。これが原則でございます。  しかしながら、そういう場合にあってもなおかつ指揮官が抑制的な方向にのみ指揮を発揮するということは、指導するということはあり得るということを申し上げているわけでございます。
  152. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 ちょっと条文を離れてあなたに尋ねたのですよ。あなたは平成三年九月二十五日、上原委員質問に対して「その場合の指揮というお話でございましたが、司令官指揮をすることは、したがってできませんで、」そこまではいいですよ。「撃ってもよいよという判断を示すことはできますが、」こう言っていますよ。ですから、私が武力の行使について言った点のお話は、どうも本当に当てになるのかなという気がしてなりませんですね。  重大なことは、第三項は自衛隊部隊の統制のもとに武力による威嚇を行うことができるということを規定をしているわけです。ですから、ほかの方で幾ら穴をふさいだつもりでおられても、これは海外へ行って武力の威嚇をするということを認めた規定である。そうじゃありませんか。
  153. 畠山蕃

    畠山政府委員 一般的にいかなる場合でも武力の威嚇をするということが書いてあるわけではございませんで、自分の命が危なくなったときに実弾を撃つか、空砲を撃つか、他方面に向けて撃つかという、そういう選択は当然その要件の合致した範囲内であり得るということでございまして、必ず実弾を撃たなければならぬということはない。ただ、いかなる場合においても、自分の生命、身体が危なくなってきている状態である、そういう要件のもとでの選択の問題でございます。
  154. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 そんなことは聞いてないですよ。具体的な実例に即して聞いているのですよ。朝から晩まで武力による威嚇をするなんというようなことではPKOにはなりませんでしょう。本当に必要なときに、この威嚇というのは、何も私は悪い意味で言っているわけではないわけであって、善意でやむを得ず必要最小限のことを威嚇という形でやるということを言っているわけであります。これすら認めませんか。そのためにこそこの三項の規定があるのじゃありませんか。そして、束ねるかどうかわかりませんけれども、部隊として、例えば兵力分離の地帯に何カ所かに数人ずつ分かれて勤務に服しておれば、その場所では自然、上級者、下級者が命令系統で武器使用を行う、こういうことじゃありませんか。
  155. 畠山蕃

    畠山政府委員 繰り返しになりますが、この二十四条で生命、身体が危なくなってきたときに、威嚇と称する武器使用態様、そういうことがあり得るということを申し上げているわけでございます。
  156. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 それでいいんでしょう。私も、何も生命、身体が危なくないのに威嚇をしている、それが認められている、そんなこと言っておりませんよ。危ないときにねらいを定めずして、相手にはっとさせ、本心に戻ってもらう、こんな善意も含めてこの三項の規定がある。どうしてそれがわかりませんか。  立法の事務上の責任者、また、これが仮に法案として通ったら、これに従って指導するのでしょう。その方がそのようなことであっては、この法案は何のためにつくろうとしているのか、もっと別のねらいを持っているのではないか、こういうふうに思われてもしようがないのじゃありませんか。何かつけ加えることありますか。
  157. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 要するに、四項の規定によりまして、「人に危害を与えてはならない。」ということは書いてございます。武器使用した場合に、必ずそれは極限状況になると武器使用して相手の生命、身体に危害を与えることがございましょう。しかし、それ以前におきまして、十分こういう三項のような条件があった、つまり、自分の身体を防護する必要がある、そして同時に相当の理由がある、あるいは合理的に必要な範囲内だと判断されるという条件のもとでもなおかつ殺傷しない武器使用をやって、自分の生命、身体を防護するということは十分あり得ることでございます。このことを先生おっしゃっておられるだろうと思いますが、私はそのように思います。
  158. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 それでいいんですよ。そのとおりなのでありまして、それが今までさんざん、政府側の答弁でありました。国連側の武器使用、これをさらに厳格にこの法案では書いているということを無にするものなんですよ。それは、国連業務遂行を妨害する者に対する武器使用は、いろいろな経過を経て自分の方に負傷者が出、死亡者ができたら実効性のある射撃をすることができるというふうにはなっております。しかし、そうなりますと、第三項、第四項あわせていきまして、同じ結論じゃありませんか。どこが違いますか。
  159. 野村一成

    野村政府委員 この法案二十四条の一項から三項まで、それから四項との間の違いということでございますが、先ほど法制局長官から御答弁があったかと思いますが、まさに「正当行為」、刑法第三十五条に基づく公的な武器使用ということにつきましては、二つの要件があるというふうに申し上げました。  一つは、その使用そのものについて、先ほど威嚇のために撃つということが議論になっておりますけれども、この使用というのはそういうのも含めまして、そもそも武器を使うということ、その非常に広い概念でとらえておるわけでございます。それがまさにこの使用につきましては二十四条一項であり、二項であり、三項ということでとらえております。さらにさらにもう一つの要件といたしまして、現実に相手を殺傷するということ、それが危害要件ということでございまして、それがこの四項で規定している内容でございます。  したがいまして、その二つをあわせて、私ども基本方針の第五原則で述べております要員の生命等の防護のため、必要最小限度の武器使用に限る、そういうことでございます。
  160. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 私も字は読めますから、条文どおりの御説明をいただいても余り有益ではないわけでありますよ。私が言っている国連側の自衛の場合の武器使用方法、使用の可能性というのは、この三項、四項でぴったり合うのじゃないかということを言っている。違いますか。大体、武力による威嚇というのはどういうふうに理解をしておられますか。そういう点を念頭に全く置かずに、武力の行使とかそういうことばかりを念頭に置いてこの法案ができているとしか思えない。この法条が実際にどういう場面に使われるかというのは全然念頭にないのじゃないですか。それでは法案を出したということの意味はないと思いますよ。私は、たった今あなたが御説明なさったこの条項を読んだ、そのままそのとおりだと思っていますよ。具体的な場合にどうなるんだ、さっぱりそれは念頭に浮かんでこないじゃないですか。
  161. 丹波實

    丹波政府委員 先生もお持ちと思いますけれども、例えばキプロスの平和維持隊に関しますところのウ・タント国連事務総長のエードメモワールというものがございます。この中でウ・タント事務総長は、どういう場合にその武器使用が認められるかということの詳細を書いておりますが、(山中(邦)委員「この条項で使えるか使えないかを言ってください。そんなほかの話はいいですよ」と呼ぶ)いや、ですから、例えば、武器を用いた攻撃であって、それが車両に対して行われた場合ということが書かれております。まさにこれは一、二あるいはA、Bと分けたBの場合の、単に車両が攻撃されておる、そこに人はいないというような場合、こういう場合には、先ほどのような生命、身体の危機、危険がないわけですから、こういう場合に日本としては武器使用はしないという意味においてまさに削除されているといいますか、二十四条にはそういうことは入ってないという意味で違いはあるわけでございます。そのことをいろいろな言葉先ほどから私たちが御説明を申し上げている、そういうことでございます。
  162. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 もう時間がないからですけれども、全然納得がいきませんね。私はキプロスへ行ったわけでもありませんし、現地はよくわかりませんけれども、具体的な情景ぐらい頭に浮かびますよ。キプロスの車であるという必要は一つもないわけであって、目の前に隊員を、あるいは危害を加えられそうになっている人を念頭に置いて答えたらどうですか。  車をやられて反撃する、これはだめだ。キプロスの場合だって当たり前でしょう。必ずやれということじゃないんですから。車をやられたら、その先に生命の危険、身体の防衛という段階は出てくるはずですよ。だから、言葉の違いで若干の差が出てきたって、落ちつくところは両方同じということですよ。決して外国における武力の威嚇を排除した法案ではない。あなたがこの条項をつくりましたか。具体的な実例を念頭に置かずに言葉だけの遊びをやっているということでは、国民を迷わせます。
  163. 畠山蕃

    畠山政府委員 例えば、一つの例といたしまして、検問所において検問を行うという場合におきまして、その任務を妨げるために検問を突破する、それで武器を搬入しちゃうというような行為が、向こうが武力を行使しないままそういうことを強引にやったという場合におきまして、その任務の遂行を妨げたということをもって我々はその武器使用することはできない。国連の方で言えば、第二番目の範疇の武器使用によってそれがあり得るということで、その辺の差はあるわけでございます。
  164. 山中邦紀

    ○山中(邦)委員 もう最後ですから。  今の例は全く架空の話で、そんな場合だって国連は反撃しませんよ。そういうすき間のあるケースにおいてPKOが反撃するような荒っぽい部隊ではないはずですよ。そういう仮定議論と、私が言っている、より現実的な仮定とかみ合わせたって議論になりませんよ。ですから、両方一緒なんですよ。  終わります。
  165. 林義郎

    林委員長 次に、松原脩雄君。
  166. 松原脩雄

    ○松原委員 今、山中委員武器使用と武力行使の件について質問をされましたので、その続きからお伺いをしたいと思います。  防衛庁長官先ほどの御説明ですと、二十四条三項の武器使用の要件とそれから二十四条四項、正当防衛の要件、やはり二十四条三項の方が、例えば威嚇射撃をすることもあるとかいうことを可能ならしめるという意味で三項の方が広いというふうに今おっしゃいましたけれども、それはそのとおり間違いないでしょうか。
  167. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今お尋ねの件で先ほど答弁したんですけれども、広いというのは理論上広いということでございまして、二十四条の三項をごらんいただけばわかりますように、自己または自己とともに現場に所在する他の自衛隊員または隊員の生命、身体を防護する必要のために、必要な範囲内で、その合理的な範囲内で実施するということでございますから、あくまでやはり自己防衛ということだけにこの武器使用を限定している、こういうことを申し上げているわけでありまして、次の四項は、その場合において、人の生命等に影響を及ぼすような、危害を与えるようなことは刑法の三十六条、三十七条に該当する場合でなければできませんよ、したがって、そこの間にずれがあるのではないかという場合は、危害を加えない程度において、差し迫った場合に、その手段、最後の手段によらないで防護できれば、その武器使用も許されるということを申し上げたわけでございます。
  168. 松原脩雄

    ○松原委員 防衛庁の方にお伺いしますが、PKF部隊として参加した自衛隊が、指揮官命令によって行動するという事態、武器使用するという事態は、それはあり得ますか、今回の法案の場合。
  169. 畠山蕃

    畠山政府委員 御質問の点は何度か御議論ございましてお答えも申し上げておりますが、この法案二十四条に基づきます武器使用は、あくまでもその判断の主体、行為主体とも個々の自衛官ということでございますので、指揮官命令によって撃てという方向での指揮が行われるということはございません。
  170. 松原脩雄

    ○松原委員 自衛隊部隊活動をするときに、特に武器使用に至るような事態の場合には、部隊単位でやる、指揮命令がきちっと通った形でやるというのは、これはもう大原則だと思うのですね。そういう原則をこの場合はひっくり返して、個々の自衛官判断に任せるという御答弁でしたね。なぜ、指揮官命令に基づく部隊としてのいわゆる武器使用というものを、今回の法案の場合にはこれを排除をしたのか、その理由をちょっと説明してくれませんか。     〔委員長退席、金子(原)委員長代理着席〕
  171. 畠山蕃

    畠山政府委員 今回のこの武器使用は、慎重を期するために非常に限られたケースを二十四条に規定してございます。つまり、身体、生命の危険が迫ったときということでございますから、そのときに、座して死を待てということではなしに、やはり自然権的な権利に基づいて対応するという限りにおいてこの武器使用を認めたということでございますから、その差し迫った状況においては個々の自衛官判断ということが望ましいのではないかということでございます。
  172. 松原脩雄

    ○松原委員 今回の二十四条の法案先ほど三項の法案と、非常に参考になる例をちょっと出して聞いてみたいのですけれども、自衛隊法の八十九条治安出動、治安出動する場合は警察官の職務執行法の規定が準用されますよね。そしてこの場合、治安出動で出動した自衛隊部隊武器使用をする場合、個々の自衛官に許された武器使用と、それから部隊の、それ以外の場合の武器使用の原則ですね、これは法文上どうなっておるか、ちょっと説明してもらえませんか。
  173. 畠山蕃

    畠山政府委員 治安出動の場合の武器使用のまず大原則は、やはり「自衛官は、」ということになっていますから、まず個々の自衛官ということでございます。それをただし書きによって、刑法三十六条、三十七条、正当防衛、緊急避難の要件に該当する場合を除いては、これは部隊指揮官指揮によらなければならない、こういうことになっていますから、実際上の運用といたしましては、正当防衛、緊急避難による場合が個々人、しからざる場合が部隊指揮官、こういうことに相なります。
  174. 松原脩雄

    ○松原委員 正当防衛と緊急避難のときは確かに個々の自衛隊員にいわゆる武器使用権がありますよね。それを急迫不正という極めて、ここで言う法の二十四条の四項の場合には、治安出動の場合でも、急迫な事態が非常に差し迫っていますから個々の自衛隊員に発砲権を認める。しかし、そうでない、急迫性を要しないような場合には個々の自衛隊員には発砲することを許さない、部隊指揮命令に従え、こういうふうになっているわけですね。これが治安出動のときの八十九条二項にその趣旨のことが書いてあるわけです。  そこで、治安出動の場合のいわゆる自衛隊が準拠する法律警察官の職務執行法でありますが、警職法の第七条に武器使用についての規定があります。ちょっと長いですが、読んでみます。「警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器使用することができる。但し、刑法第三十六条若しくは同法第三十七条に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」  これが職務執行法の第七条に書いてあるわけですが、この職務執行法の七条の解釈につきまして、確かにここには警察官ですから犯人の逮捕や逃走の防止という要件がありますが、並列して、自己もしくは他人に対する防護のためにも、相当な理由のある場合には、合理的に必要と判断される限度において武器使用できるということですから、これは今回の法案の第二十四条の三項、一項から三項の要件とぴったり一致をしておるわけであります。  そういう意味で、やはり法律の条文の形が一緒であれば当然同じ解釈になると思いますので、この際、警察庁の方きょう来ておられると思いますが、警職法七条の件についてお聞きをしたいと思うのですが、まず第一に、ここで言う、警職法の第七条で言っておる正当防衛と緊急避難の要件がある場合を除いては人に危害を与えてはならない、こうなっています。じゃ、それ以外の場面として、もっと広い概念として警察官には武器使用を認めておるわけですが、それは一体どのような、どういう形で武器使用を認める形になっておるのか、お伺いしたいと思います。
  175. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 警職法には、武器使用につきまして、人に危害を与えない使用と人に危害を与える使用とに分けて要件を定めてございますが、今御質問の人に危害を与えない使用といたしましては、犯人の逮捕もしくは逃走の防止等のために武器使用が必要であると認められる相当な理由がある場合に限り武器使用することができる。具体的には、けん銃を構えて威嚇するとか、あるいは空あるいは地面に威嚇射撃を行うことによって相手をひるませる行為がございます。
  176. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、けん銃を使っていく場合に、警職法の七条によれば、人に危害を与えない場合は非常に広い範囲で威嚇等の行動をすることができる、こういうふうになっているわけですが、そのけん銃の使い方について、やはり個々の警察官に任せておいたらまずいですから、それなりの警察庁としての決まりがあると思うんですね、もっと細かい決まり。具体的にけん銃をどういう形で使用することができるかということについて、もう少し詳しい御説明をお願いできますか。
  177. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範というものを定めてございまして、その第七条で、先ほどお示しの警職法第七条の規定を受けまして具体的に規定をいたしております。これは保管、管理から使用に至る各段階を含めているわけでありますが、その規範に示しているところでありますけれどもい先ほど申しましたように、人に危害を与えない要件としての御説明をいたしましたが、人に危害を与えて使用するときは、先ほどの御説明いたしました要件に加えまして、正当防衛、緊急避難、犯人の逮捕等の場合において、相手方の抵抗あるいは逃走を防止する上で他に手段がないときのいずれかに該当する場合に限って認めることといたしております。
  178. 松原脩雄

    ○松原委員 それ以外は。正当防衛要件がない場合は。今のは正当防衛の危害のときのお話なんですけれども、私聞いているのは、そういう危害要件がないような場合、もっと急迫性が差し迫っていない、もう少し広い、広がった場合に、けん銃を威嚇したりあるいは相手に向けないで撃ったりということについて、細かい使用上の注意というのはされているんじゃありませんか。それをちょっと説明していただけませんか。
  179. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 第七条と第八条に規定がございまして、第七条には、けん銃を使用することができる場合といたしまして、「犯人の逮捕もしくは逃亡の防止、自己もしくは他人に対する防護または公務執行に対する抵抗の抑止のため、警棒等を使用する等の他の手段がないと認められるときは、その事態に応じ必要な最小限度においてけん銃を構え、または撃つことができる。」「ただし、次の」ような「場合のほかは、相手に向かつてけん銃を撃ってはならない。」ということで、相手に向かってけん銃を撃てる場合は、先ほどお示しの正当防衛、緊急避難に該当し、自己または他人の生命または身体を防護するため必要であると認めるときが一つでございます。もう一つは、凶悪な罪の犯人を逮捕する際、あるいは逮捕状により逮捕する際等につきまして、その本人が職務執行に対し抵抗し、あるいは逃亡しようとする場合、これを防ぎまたは逮捕するために他に手段がないときにも相手に向かって撃つことができることといたしております。
  180. 松原脩雄

    ○松原委員 取扱い規範のことを私はお聞きしたかったわけですが、取扱い規範によりますと、相手方を威嚇する必要がある場合ですね、そのためにけん銃を使用する形態としては、まずけん銃を構えることだ、それから二番目に相手方に向けないで撃つことだ、こういうふうになっています。そのほかに非常に細かい規定がありまして、特に、使用する前に警告する。使用する前に警告する、現実にこれは撃つ場合のことでしょうけれども。そういうふうに、相当細かく、相手方を威嚇する必要のある場合のけん銃使用のありようをこれは示しているわけですね。  ここで、こういうけん銃を向けて相手方を威嚇するという場合、これは威嚇する行為だけですけれども、これは警職法七条で言ういわゆるただし書きの正当防衛や緊急避難というものではなくて、本文の規定によってそれが細かく定められておる、こう見てよろしいですね。
  181. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 正当防衛、緊急避難以外の場合、要件を緩められた形で、けん銃を取り出して構え、あるいは警告し、場合によれば威嚇射撃を行うことができるというふうにされております。
  182. 松原脩雄

    ○松原委員 警職法上はその点が明らかです。  そこで、警職法の規定では、「警察官は、」ということで、個人という形の警察官がそういう武器使用をすることができるんだ、こういう規定になっておりますが、この警職法七条は個人の警察官にのみ適用されるのでしょうか、それとも警察部隊に対して適用される場合もあるのでしょうか、いかがでしょうか。
  183. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 武器使用につきましては、個々の警察官が使用判断をいたすことといたしております。  規範の第八条によりまして、第八条は内乱とか騒擾等のいわゆる多衆犯罪の鎮圧等のために部隊行動を起こす場合の武器使用について規定してございますが、その場合には武器使用の要件の有無は、先ほど御説明いたしましたように個々の部隊員が判断をいたしておりますが、いわゆる多衆犯罪のような形になっておりますので、たとえ武器使用が適法であっても、その他妥当性を判断すべきことがございますので、部隊指揮官にその判断をゆだねた立て方にしてございます。
  184. 松原脩雄

    ○松原委員 つまり、警職法の七条は警察官という一つの個人の形で規定がしてありますが、多衆犯罪ですね、騒擾であるとか、あるいは内乱であるとか、多衆犯罪に対しては、部隊による、指揮官命令による武器使用をすべきである。ただし、急迫不正のときはその限りにあらず、こうなっているからね。だから、その場合一番考えやすいのはやはり威嚇ですよね。銃を構える、あるいは空に向けて空砲を撃つとか、そういうふうな威嚇については、警職法上七条で「警察官」と書いてあるけれども、そういう多衆犯罪に対しては、部隊をもってやらなきゃいかぬ、こうなっているわけですね。  では、なぜそういう多衆犯罪の場合に、個々の警察官に発砲あるいは武器使用することを認めないで、この場合は部隊による、指揮官命令による形のそういう武器使用の形になるように規定されたんでしょうか。その決まりの理由ですね、そこをちょっと御説明願えますか。
  185. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 個々の警察官が判断すべきことではありますが、先ほど申しましたように、個々の隊員判断によりますと、例えば要件をたとえ充足いたしたといたしましても、相手方を無用に刺激してより深刻な事態になること等をおそれまして、部隊指揮官にその指示をゆだねているところでございます。
  186. 松原脩雄

    ○松原委員 まさに警察の周りに大変人が衝突しておるわけですから、そういうふうな非常に尋常ではない状態の場合には、個々の警察官の武器使用なんというのは認めない。部隊指揮統制によって武器使用をやるというのは警察でも扱われているわけですね。その点について、解説等によりますと、まさに現場の混乱といったことを抑えるために指揮者の責任において統一ある行動をとることが必要であり、部隊員が無統制にけん銃を使用して不必要に相手方を刺激するようなことは厳に戒めなければならない。だから、銃を構えるという作業によって、こっちから、危害を加えようとする者に対して、待てよと恐らく警告も発するでしょうから、そういうことによってこちらに対する一種の侵害行為といいますか、危険を除去するために、こういう部隊統制によって一斉命令のもとによって対応する、こういうことになっていると思うわけであります。  そこで、ちょっとお聞きしたいんですが、PKFが国外へ出ていって実際その武器使用という事態を想定する場合に、今までの例でいきますと、単に個人のゲリラにやられたという場合よりも、むしろ集団による一つの攻撃といいますか、動きというものが実は深刻な事態を生むわけであります。それは、場合によってはそのときの入っていった国の政府の行動としてやられるかもしれないし、あるいはいわゆる内乱状態のようなものがやってくるかもしれないし、むしろそういう多衆、こちらで言う、日本で言う多衆犯罪に近いような、非常に深刻な組織的ないわゆる攻撃といったものに対して、PKF部隊が自己を防衛するためにどう対処をするかという問題が実は立てられているのではなかろうかと思うのですが、参考のために、実際将来PKFを出したときにどのような侵害事態が、やむを得ず武器使用しなきゃならないという侵害事態が生ずるというふうに見ておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  187. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  抽象的には、まず武器使用が許される状況として累次御説明申し上げてきていますとおり、国連文書によりますと、a、要員の生命がその危険にさらされたとき、それを防護するためと、bとして、国連PKOPKFの任務の遂行か実力により阻止され、それに抵抗する場合、こういうことでございまして、過去の基本的に前提が崩れたと考えられるケースとして典型的なものとして、私たち二つのケースに言及してまいりました。  一つは、一九七四年にサイプラスの北からトルコ軍が攻めてきたとき、それから二つ目は、レバノンの平和維持隊に、これはレバノンに展開しているわけですが、イスラエル軍が攻め込んできた場合と、その二つを典型的な例としてお挙げしておりますけれども、この場合の各国の対応ということを各国に聞いてみましたけれども、多くの国は、業務を中断して現実に応戦したというようなケースはなかなかないわけでございます。しかし、過去におきまして全くそういう例がないということは申しません。例えば、「ブルーヘルメット」なんか読みますと、そういう応戦せざるを得なかった状況というのはあるわけですから、そういう例もあるわけですが、基本的には第二番目のケースでやり合ったというケースは余りないのではないかというのが、私たちがいろいろ調べた結果として持っている印象でございます。
  188. 松原脩雄

    ○松原委員 もう一回警察の方にお聞きしますが、先ほどの騒擾罪等の多衆犯罪、それで警察官を部隊として行動させ、部隊として武器使用をさせなければならないという事態を想定したときに、それは警職法第七条に言う警察官の「自己若しくは他人に対する防護」という必要性が生じたから、だから武器使用にかかるんだという、そういう場合も当然考えられると思いますが、この点はいかがでしょうか。要件に関することです。
  189. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 具体行動の問題ではありますが、あくまでそれは警職法七条の要件を満たしている場合につきまして個々の警察官の判断によって武器使用をすることができるということでございます。
  190. 松原脩雄

    ○松原委員 いや、それはそうなんだけれども、第七条にありますように、「自己若しくは他人に対する防護」という目的のために武器使用にかかるということも、多衆犯罪を想定された、部隊行動する場合、そういった場合にももちろんあり得ますよね。そういう要件の発動があることはあり得ますね。
  191. 安藤忠夫

    ○安藤政府委員 はい、あり得ます。
  192. 松原脩雄

    ○松原委員 私はここでちょっと法制局長官にお聞きしたいんですが、これまで憲法九条で言う武力行使と武器使用については、今まで統一見解というものを示されておりました。そうしたら、憲法九条一項が禁止をする国権による武力の威嚇と武器使用ということについてはどのように考えたらよろしいでしょうか。
  193. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  憲法の九条一項は、簡単に申し上げますが、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、」ということで並べて書いてございます。この場合の「武力による威嚇」といいますのは、例えば宮沢俊義先生あるいは佐藤功先生といった学説によりましても大体一致しているところだと承知しておりますが、それは通常は、現実にはまだ武力を行使しない、しかし自国の主張、要求を入れなければ武力を行使する、こういう意思、態度を示す、それによって相手国を威嚇する、こういうのが大体言われているところでございまして、例に引かれておりますのは、例えば宮沢先生でございましたら一八九五年のフランス、ドイツ、ロシアの日本に対する三国干渉であるとか、これは日本が受けた方ですが、あるいは一九一五年の中国に対する二十一カ条要求、これは逆に日本が行った場合、こういうふうな例が引かれているところでございます。
  194. 松原脩雄

    ○松原委員 それは少し広い概念で、今回の法案の審査には僕は適さない定義だと思うんですよね。ですから、今回は統一見解で武力の行使と武器使用を言っていますね。特に第二項で「「武力の行使」は、「武器使用」を含む実力の行使に係る概念であるが、」こういう形。そして、武器については火器、火薬類等で、一項等で細かく規定をしております。それがPKF部隊が海外に出ていったときにそれをどう使うかということをめぐってまさにこの審議の焦点になっているわけですから、この統一見解との関係で、武力による威嚇と武器使用について少し御説明をお願いをしたい。余りアバウトで広くなったらわからぬ。それは憲法のあれに書いてありますけれども。
  195. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま申し上げましたように、武力による威嚇というのが、現実にはまだ武力の行使をしていないけれども、自分の方の主張、要求を入れなければ武力を行使する、こういう意思、態度を示すというふうに考えられておりまして、むしろ武力の行使の前段階といいますか、そういうことだろうと思います。  そういうことから申し上げますと、この前の「武器使用と武力の行使の関係について」のここの関係から申し上げれば、ここで申し上げている武力の行使のもう一つ前段階、要するに「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、あえてこの文言を当てはめて入れて読めば、自分の方の要求、主張を入れなければそういうことをするぞ、こういうのが武力による威嚇と武器使用との関係になろうかと思います。
  196. 松原脩雄

    ○松原委員 そうしたら、さっきの例で、PKF部隊が出ていって、そして攻撃を受けてきた、そのときには、場合によっては、防衛庁長官もさっきおっしゃったけれども、銃を構える、そして撃つぞという構えを示す、あるいはそのうちに空砲も撃つこともある。この行為は、憲法で言う、今おっしゃった説明で言う「武力による威嚇」という概念に該当しませんか。
  197. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほどから政府委員等もお答えしておりますように、そこにおきましては武器使用が行われるのであって、この前の見解で言う「武力の行使」ではないんだ、こういうことでございますから、そういう意味で、武力による威嚇が武力の行使の概念と結びついているとすれば、そういう現地におきまして銃を構えるというふうな、武器使用という概念、これとは別の概念であろう、かように考えております。
  198. 松原脩雄

    ○松原委員 この問題は、また後ほど取り上げることにします。言われている御説明がよく私も理解できない。  そこで私、これは防衛庁の方にお聞きをしたいんですけれども、先ほどからおっしゃっていますように危害要件があるときは人に撃ってよろしいわけですよね。しかし、その前の段階で、例えば武器使用による威嚇をするというふうな事態に立ち至った場合、この場合には、今度出ていったPKF部隊というのは一体、個人の判断でやるんですか、それとも部隊指揮官命令でやるんでしょうか。
  199. 畠山蕃

    畠山政府委員 この法案二十四条三項の規定に基づきます武器使用は、「自衛官は、」ということで、個々の自衛官判断ということはるる申し上げてきたところでございます。その場合におきまして、危害許容要件が書いてございます同四項の要件に該当しない部分というのが仮にあるとすれば、例えば今御設例の空砲を撃つというようなケースにつきましては、これは。法案上は「自衛官は、」ということで個々の判断ということになっておりますが、そこで先ほど来御議論のございます指揮官がこれをネガティブな方向へ指揮をするということはあり得るということ、そういう考え方の整理でございます。
  200. 松原脩雄

    ○松原委員 それじゃちょっと設例を変えます。先ほども言いました治安出動の場合ですね。治安出動の場合、威嚇をする場合は、威嚇、銃を構えろあるいは空砲を撃てというふうな行動をする場合は、これはだれがやるのですか。自衛隊員個人がやるのですか、それとも部隊指揮官命令するのですか。
  201. 畠山蕃

    畠山政府委員 若干、空砲を撃つということが三十六条、三十七条に該当する場合との関係でございますけれども、三十六条、三十七条の要件に該当する場合に個々の自衛官判断して実弾を撃つ場合もあるでしょうし、それにもかかわらず空砲を撃つということもあり得ようと思いますので、空砲を撃つことがすなわち指揮官判断によるか、しからざるものが指揮官判断によらないか、こういう整理ではございませんで、三十六条、三十七条の要件に該当する場合は個々の自衛官判断で、しからざる場合は部隊指揮官判断による、その中に空砲を撃つことも含まれることもあるということではなかろうかと思います。
  202. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、確認しますけれども、治安出動の八十九条の二項では、危害要件のない場合にはすべて部隊行動しなさいという命令になっているわけですね。空砲で撃つ場合には、先ほどからずっとおっしゃっているように二十四条三項はそういう正当防衛の危害要件ではない、もう少し広い場合、それをも含めた概念であるというふうに説明がされておって、そうすると治安出動、自衛隊法の八十九条によれば、危害要件のない威嚇なんかの場合には、これは部隊による指揮官命令というものが当然出てくるわけですね、そういうふうに理解してよろしいですか。
  203. 畠山蕃

    畠山政府委員 先ほど答弁申し上げましたように、八十九条の立て方は、基本的には自衛官はということですから、全体として個々の自衛官判断するという前提のもとに、ただ二項においてただし書き的に刑法三十六条、三十七条に該当する場合を除いては「当該部隊指揮官命令によらなければならない。」こう書いてございますから、今おっしゃったように刑法の三十六条、三十七条の要件に該当する場合以外、つまり危害許容要件のない場合といってもいいのかもしれませんが、そういう場合には、部隊指揮官命令によるというお説の整理でよろしいかと思います。
  204. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、今度PKFとして海外へ行ったときに、部隊指揮官命令で銃を構えた威嚇行為をするということも当然出てくるわけですか。
  205. 畠山蕃

    畠山政府委員 法案の二十四条三項は、私どもは非常に限られた場合、非常に差し迫った場合をそもそも規定してあるというふうに考えております。その中において、対応する場合の一形態として、みずからもうそれ以外にとる手段がないということで実弾を撃つということもあり得ましょうし、また、それにもかかわらず空砲なり警告を発するというような対応の仕方もあり得る。いずれにしても、二十四条三項の差し迫った要件の範囲内においての手段のオプションの問題であろうかと思います。
  206. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、やはりまた、二十四条三項は正当防衛以外のもう少し広がった概念であるというふうな先ほどの説明とは、私は矛盾してくると思うんですよ。それで、私が言っておりますのは、警職法七条の規定とそれから二十四条三項の規定というのは、法文上基本的にはもう一致をしておりますね。この点はいかがでしょうか。
  207. 畠山蕃

    畠山政府委員 警職法の話は、私、直接責任を持ったお答えができませんけれども、この第七条は、かなり広い範囲で武器使用が許されているというふうに受け取れます。  警察官は、犯人の逮捕、逃走の防止云々、それから「公務執行に対する抵抗の抑止のため」、それから緊要度におきましても「必要であると認める相当な理由のある場合」ということになっておりますが、法案の二十四条三項の場合は、「防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」ということで、表現においてもかなり厳しい表現になっておるということで、こちらの法案二十四条三項の規定は限りなく正当防衛、緊急避難の状況に近いというふうに思っております。
  208. 松原脩雄

    ○松原委員 そうすると、警職法七条と、それからそれに「やむを得ない」というものをくっつけましたね、限りなく正当防衛に近いと今おっしゃったけれども、その区別の基準を説明してください。
  209. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま警職法第七条との関連で、二十四条の説明ということでございました。確かに先生指摘のとおり、刑法三十六条とかあるいは三十七条の要件を危害要件として加重している点で類似の規定になっておりますけれども、ここで注目していただきます、先ほど防衛局長からございましたけれども、警職法につきましては、非常に広い範囲のと言っていいかと思います、要するに、職務の遂行のための武器使用について規定したものでございます。  それに対しまして、この法案の第二十四条における武器使用は、あくまで任務の遂行に当たって、あるいは際しての隊員の生命等の防衛のためにのみ行われるものであるということで、おのずと違った、異なった性格のものであるというふうに理解されます。特に、法案二十四条の隊員の生命等の防衛のためというのは、いわば自己保存のための自然権的権利というべき、そういうふうなとらえ方でしかこの武器使用を認めておらないということでございます。
  210. 松原脩雄

    ○松原委員 警職法の場合も、自己もしくは他人に対する防衛というために警察官の武器使用が認められていますが、これは警察官の職務を執行する、そういう場合も当然含んでいるわけでして、今度の法案の二十四条の場合でも、PKF隊員行動しているときに、それに対する危害があれば対応するという形では、私は警職法七条と二十四条との関係というのは全く一致をした概念であると思います。  それから、さっき私、質問しておりますが、いわゆる警職法の七条よりももうちょっと狭い要件であるというふうにおっしゃいましたね、防衛庁の畠山さん。そこのところを、じゃその基準はどう違うんですかということをちょっと説明してください。
  211. 畠山蕃

    畠山政府委員 私が申し上げましたのは、警職法七条につきましては私の方から有権的解釈をする立場にはございませんとお断りした上で、この法案に出ております文言から判断いたしまして書き方が異なっておるということを申し上げたわけでございます。  といいますのは、云々云々「抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合」というのと、それから「するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」というのは、その表現において異なっているものではないかということが一つ。それから、警職法の解釈はさておきまして、当方の方の法案二十四条第三項の規定は、その検討の経緯からいたしまして、我が国隊員のみずからの生命、身体の防護に限定する、差し迫った危険が迫ったときにそれに自己防衛のために自然権的な権利として発動するということをここに規定したという経緯からいたしましても、これは非常に狭い範囲というふうに理解しているということを申し上げたわけでございます。
  212. 松原脩雄

    ○松原委員 私は、自衛隊が出ていくときに、危害要件以外の場合に自己もしくは他人に対する防護、防衛のために部隊としての組織活動が現実にこの二十四条三項の規定によって実際は担保されておるという点を指摘をして、時間がありますから、次の問題点に移ってまいりたいと思います。  本法案の特にPKFに関する点につきましては、いわゆる国連平和維持活動については自衛隊とは別個の組織というものによって平和維持活動を行うというふうな原則、昨年の三党合意がございましたけれども、そのことによって今回の法案の作業が行われたと聞いておりますが、国連平和維持活動については、自衛隊とは別個に今回の法案が提案をされてきたと言っていいものかどうか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  213. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生指摘の三党合意におきましては、自衛隊と別個の組織ということで合意がなされておったわけでございますが、基本的には、私ども今回の法案で考えておりますPKOなりあるいは人道的救援活動を行うに当たりまして、どういうふうに機能するのが一番効果的であるかということを鋭意検討いたしました。その結果、やはり自衛隊が長年にわたって蓄積してまいりました技能、経験あるいは組織的な機能を活用することが適切であるというふうに判断するに至った次第でございます。  それで、今回の法案につきましては、厳密に申しまして自衛隊とは別個の組織ということになっておらないわけでございますけれども、国際平和協力本部という常設の組織を総理府の中に設けるということが一つ。その組織におきまして、国連等からの要請を受けますれば検討を行いまして、政府として協力を決定する場合には、その都度その本部の中に国際平和協力隊を組織する、そういう一面がございます。  他方、そのほかに、必要に応じまして国際平和協力隊員身分をあわせ有するということとなる自衛隊員によりまして構成される自衛隊部隊等の参加を得まして国際平和協力業務活動等に協力する、そういう体制をとるのが最も効果的にこの国際平和協力業務を行うゆえんであるというふうに判断した次第でございます。
  214. 松原脩雄

    ○松原委員 今回、国連平和協力隊員とそれから自衛隊部隊として出る場合、特にPKFですけれども、その身分は、協力隊員自衛隊員身分は併有をする、併任をするという形になっておることは間違いありませんか。
  215. 野村一成

    野村政府委員 御指摘のとおりでございます。
  216. 松原脩雄

    ○松原委員 併任の問題については昨年の平和協力法案、その場合にも併任という問題が出されましたですね。じゃ、昨年の併任と今回の場合の併任というのはどこがどう違いますか。
  217. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  今回の法案におきましては特に自衛隊の参加、個人参加の場合とそれから部隊参加の場合に分けてございます。それで、身分につきましては同じく併有ではございますが、特に指揮系統につきまして、個人参加の自衛隊員につきましては協力隊員としての本部長指揮のもとで協力隊の業務に従事するということでございますが、部隊参加の自衛隊員につきましては、自衛隊員としての身分におきましては防衛庁長官指揮のもとに国際平和協力業務実施計画及び実施要領に基づきまして従事する、他方、協力隊員身分におきましては本部長指揮のもと、この法案第四条に定めております協力隊員としての業務に従事する、そういう業務の仕分けを行っております。
  218. 松原脩雄

    ○松原委員 昨年の場合は、国連平和協力隊には一元的に本部長指揮監督がずっと自衛隊にも通っていたわけですね。それでも昨年の平和協力法案では併任という言葉を使っておりました。その場合、昨年の併任状態の場合、指揮監督の関係は、本部長とそれから防衛庁長官との指揮監督の関係は、昨年はどういう整理をされておられたのですか。
  219. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま昨年の法案との比較での御質問でございますが、昨年の法案におきましては、本部長でございます内閣総理大臣指揮監督権と防衛庁長官指揮監督権の関係につきましては、平和協力業務に関する限り防衛庁長官指揮監督権がいわば潜在化しまして、指揮監督が本部長たる内閣総理大臣に一元化されるとの整理を行っておりました。その点、国会におきましての、必ずしもその関係が明確ではないのではないかといった議論が行われた経緯もございまして、このことも、先ほど申しましたような今回の法案の整理の際に検討の対象にさせていただいた次第でございます。
  220. 松原脩雄

    ○松原委員 つまり、昨年の平和協力法案は、本部長とそれから防衛庁長官指揮監督が両方とも通っていた。ただし、その防衛庁長官指揮監督はいわば潜在化して隠れておった、発動することはないということだったはずですよね。それが今回のPKO法案自衛隊部隊参加の分についてはその点が整理をされたわけです。つまり、指揮監督という面でいけば本部長指揮監督は通っていない、PKFに関しては通っていない。で、防衛庁長官一本の指揮監督として単純に、きれいに整理できた、こう言っていいわけですね。これをちょっと確認したいと思います。
  221. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  昨年の法案におきましては、この本部長防衛庁長官指揮監督権につきましては、平和協力業務に関する限り、本部長指揮監督している間は防衛庁長官指揮監督権がいわば潜在化する、そういうふうな御説明をしたように思っております。
  222. 松原脩雄

    ○松原委員 いや今回は、今回の構造は私のような整理でよろしいですか。
  223. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  今回の法案におきましては、先ほど先生の御指摘ございましたけれども、部隊参加が予定されております平和維持隊の本隊にも参加すること等、去年の法案とは我が国協力と対象としております業務が異なっておるということにもかんがみまして、最も適当な整理をした次第でございまして、その整理と申しますのは、先ほど御説明いたしましたが、自衛隊員身分におきましては、実施計画実施要領に基づきまして防衛庁長官指揮のもとで国際平和協力業務に従事するということ。一方で協力隊員としての身分を併有しておりますので、協力隊員としての身分におきましては本部長指揮のもとで、第四条三号の特に実施要領が「変更を適正に行うための、派遣先国において実施される必要のある国際平和協力業務の具体的内容を把握するための調査、実施した国際平和協力業務の効果の測定及び分析並びに派遣先国における国際連合の職員その他の者との連絡に関すること。」これを本部業務で掲げておりまして、これをまさに本部長指揮監督のもとで協力隊員身分として実施する、そういう関係に整理してございます。  ただ、この観点で私ぜひ強調させていただきたいのは、この法案第九条四項、五項の規定でございます。あくまで、先ほど私、防衛庁長官指揮のもとで自衛隊員としての身分では国際平和協力業務に従事すると申しましたが、この四項は防衛庁長官についてでございますが、「実施計画及び実施要領に従い、自衛隊部隊等国際平和協力業務を行わせることができる。」さらに第五項をごらんになっていただきたいのでございますが、そこはまさに、そういうふうにして参加する自衛隊員が同じく実施計画及び実施要領に従って国際平和協力業務に従事するということを書いてございます。要するにポイントは、閣議決定をされます実施計画あるいは本部長の定める実施要領に従って、自衛隊の参加する部隊等の構成しております自衛隊員協力業務に従事するということでございます。  したがいまして、防衛庁長官指揮と私申しましたが、これはあくまで実施計画実施要領に従ってその枠内でのみ指揮権を行使する、そういう関係でございます。
  224. 松原脩雄

    ○松原委員 要するに四条二項三号のいわゆる調査業務等ですね、調査業務については今の説明でもはっきりしておるように、本部長指揮命令が通るわけです、自衛隊部隊に対しては。その他の業務については、いろいろ言ったけれども、実施要領に基づいて当然防衛庁長官指揮命令するのは当たり前のことであって、要は指揮監督権が、自衛隊部隊については防衛庁長官指揮監督権がすきっと通った、こう考えて理解をすべきだと私は思います。  そこで、そうしたら、つまり指揮監督という面からいうと、部隊としての自衛隊員には防衛庁長官とそれから本部長の、今言ったように二つの指揮監督系統があるから、だから身分を併有させている、併任にさせた、こういうわけなんでしょう。じゃ、第四条二項三号の調査等の事務、これを平和協力隊員としての任務から仮に解除して外しちゃったら、あとはもうすっきり部隊としての行動には防衛庁長官指揮監督はぴしっと通っちゃう、こういうふうになるのではありませんか。
  225. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  今先生非常に重要な点を御指摘いただきまして、まさに第四条二項三号というのを外してもらっては実は困るんでございます。これはこの仕組みはやはり実施計画及び実施要領に基づく、特にこの実施要領に基づいて派遣される自衛隊部隊等国際平和協力業務に従事する、その実施要領というのが極めてこの法案の仕組みの中で重要でございまして、したがいまして、この実施要領が適正な形で常に出されておる、それに、その適正な形で出されておる実施要領に基づいて自衛隊部隊防衛庁長官指揮のもとで国際平和協力業務に従事している、そういうことを確保することが一番重要な点でございます。  まさにそのために設けられておりますのが四条二項三号の規定でございまして、言葉としては非常にあるいは抽象的に聞こえるかもわかりませんけれども、これは書いてあることは極めて重要でございまして、まさにこの平和協力業務の具体的内容についての調査とかあるいは現実にきちんと協力業務の効果が発揮されているかどうか、そういったことを協力隊員身分におきまして、本部長指揮のもとで、それが本部長に、英語を使って恐縮ですが、それがフィードバックと申しますか、それが本部長の知るところになるというところが重要でございます。  それを受けまして、さらに本部長が必要に応じて実施要領を変更するという、そういうメカニズムでございまして、この構造によりますと、まさに本部長が、確かに防衛庁長官のもとで、指揮のもとで自衛隊部隊等国際平和協力業務に従事するわけでございますけれども、常にこの実施要領が適正であるということを通じまして、平和協力業務が適正に的確になされているということを確保することができる、そういう仕組みでございます。
  226. 松原脩雄

    ○松原委員 私は、今の規定が重要でないと言っているんじゃないんです。このように調査やあるいは分析等のような高度な作業について、それ専任の、いわゆる平和協力隊員、専任の人を配置さえすれば、当然それはできることであって、それで足りることもあるわけです。  私が言いたいのは、いわゆるPKF活動の本体はやはり実動、実務部隊ですよ。現地に行って部隊展開をするそれらの人々、それらの面については、本体の部分についてはいわゆる防衛庁長官指揮監督権が通っておって、本当に四条二項三号というこの限られた任務をやらせるというためだけに、しかも他に代置し得るという状態であるために、そこでいわゆる併任という状態をつくっており、ごく少数のところでその問題を立てている。  こういう状態からしますと、国連平和維持活動について自衛隊とは別個の組織をつくる、こういう昨年の三党合意から始まって、これは政府の方針だと思います。今回自民党は閣議決定で、官房長官談話で「今般、自民、公明、民社三党間での協議等を踏まえて、この法律案を作成した」こうおっしゃっていますから、いわゆる自衛隊とは別個の組織という形のラインをそのままおつくりになったと思うんですね。  しかし、その実態は、PKFの本体についても、本当につけ足しの部分だけいわゆる協力隊員の任務をつけるだけであって、本体のところについてはまるで自衛隊そのもの、防衛庁長官指揮に従った自衛隊部隊そのものの展開になっておるというところ、これは別組織として行動する、新しい組織をつくるんだ、自衛隊とは別の組織をつくってPKO活動をやるんだという大きな大原則から大きく踏み外したものであって、なおかつ、昨年の平和協力法案でも、あの併任制でもいわゆる別の組織本部長という組織指揮監督がぴしっと通っておったのに、それとは全く対向、逆行した形で、まさに自衛隊をそのまま出してしまっておる、こういう構造になっておると私は思うのであります。  それだけちょっと私は、いわゆる自衛隊とは別組織という形で、いまだにその状態で今回のPKO法案ができたと言えるものなのかどうか、ちょっと総理の方からお伺いしたいと思います。
  227. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 自衛隊のあり方に関する基本的な問題でございますので、私から答弁させていただきますが、自衛隊部隊として参加する場合と個人として参加する場合のあることは御案内のとおりでございます。  そこで、その場合の指揮系統、まず指揮系統の話が先ほど議論ございました。野村室長の方からも的確な話があったわけですが、再度多少かみ砕いて申しますと、自衛隊部隊として国際平和協力業務に従事する場合のスキームといたしましては、まず実施計画の閣議請議がありますね。そして、内閣総理大臣実施計画を確定いたします、立案をいたします。そして、それに基づきまして、そこで部隊の場合は二つに分かれるわけですね、今も御指摘のように。一つは四条二項三号、これは先生は多少過小評価されているように思いますが、私はこれは大変重要な業務だと思っております。  つまり、実施要領をつくったりなんかする場合に、その派遣した部隊がどのような効果をおさめているかどうか、あるいはそれが適正なものであるか、情報収集を務める、分析をする、また外国の、この法文にございますように、国連職員等との連絡もとるというこの全体のPKOを動かす一つの頭脳部門みたいなもの、これを設けたことは一つの独立であるという説明がありましたが、私はまさにそのとおりだと思います。  その点に関しては、本部長たる内閣総理大臣指揮を受けます。そして同時に、部隊として参加する場合には、九条四項によりましてこれは防衛庁長官指揮がございますけれども、しかし、今お話しのように実施計画に基づく実施要領というものをまず策定するわけでございまして、無条件に自衛隊が、私が、防衛庁長官指揮をして出動するものではございません。あくまで業務計画並びにそれに基づく要領に基づきまして協力業務を実施するという、言うならばいわば制約を受けた指揮権と言ってでもいいかもしれません、そういう格好で自衛隊防衛庁長官指揮することになります。  一方、自衛隊の個人が、自衛隊隊員が個人として国際平和協力に従事する場合のスキームがございます。内容的には個人で参加する場合も平和協力業務の実施に参加することがございます。これは高級将校等があるいは監視等に行く場合ですね。部隊として行かなくて監視等に行く場合は、監視団で行く場合は、そういう場合があります。したがって、その面はございますが、同時に個人単位で行った場合も、今申しました四条二項三号の平和協力業務の効果の測定、分析でありますとか情報収集でありますとか、あるいは実施要領の変更に必要な企画に参加するあるいは国連職員との連絡をやるということも同時に行うわけでございます。したがって、この場合は内閣総理大臣が、本部長たる内閣総理大臣実施要領に基づいてこれは指揮をすることになりますね。  そういう意味で、自衛隊部隊として行った場合は、四条二項三号に関する限りは総理大臣の指揮権、指揮ということになります。それから、実施要領に基づきまして行動をする、協力業務を実施するという場合は、本部長たる内閣総理大臣実施要領に基づいて防衛庁長官指揮をする、こういう仕組みになっておりますね。個人単位の場合、今申したとおりでございます。  そういう意味で、この別個の機関をつくるということは、まさにこの四条二項三号、これは個人、自衛隊も参画はいたしますが、そういう組織が機能を持っておれはこそまた独自の機構を設けたものだと思っております。それに対して、自衛隊が参加する場合の身分関係につきましては、あわせ有する、身分関係をあわせ有する、併有ということが、これが時宜にかなったものでございますから、昨年の協力法案でも同じように併有という言葉を使っておりますけれども、今回もそのような言葉を使わさせていただいて、ドッキングをしておるわけでございます。
  228. 松原脩雄

    ○松原委員 PKF部隊として出ていったときの現地行動こそ、実務部隊現地行動こそやはりこの問題の焦点なわけですよね。  ずっと議論になっているように、万が一の武力を行使しなければならぬときはどうかという議論でずっと今やってきたわけですよ。特に、その場合、現地活動武器使用に至るまでのその本隊のところは部隊として防衛庁長官指揮監督をしておるというのがこの法案の特徴であって、その実態を見れば、もう自衛隊とは別組織で、今回PKF自衛隊を別組織でやったという実態は既に失われているというふうにいうべきだと私は思うのですよ。  これは、私、なぜこういうことを言いますかというと、昨年平和協力法案が廃案になった後いわゆる三党合意というのができて、そのときに、例えば公明党の皆さんなんか、別組織国連PKO協力活動をするんだ、こうおっしゃって、もし自衛隊が入ればそういうものは粉砕するんだというところから、石田委員長なんか昨年の十一月から始めておられるわけですよ。私は、当然そういう、それほど自衛隊と別組織にするということがとても重要だという概念は、野党の公明党の皆さんにも実はあったはずなんです。  ところが、それが、守られている、別組織として、やはり現に三党合意に基づいて今回の法案ができたという説明もされているし、実際今の防衛庁長官の説明でも、今みたいな非常に私から見れば本当につけ足したようなものであってもいわゆる別組織だったというふうにおっしゃっているけれども、実態は違うじゃありませんか。実態は違うのだ。実際PKF部隊を出すときには、もう自衛隊指揮防衛庁長官指揮監督で本隊の部隊が完全に現地で展開する構造になっておって、実質的にはもはやこれは自衛隊部隊が海外展開していると断定せざるを得ないわけです。  しかも昨年廃案になった協力法案では、一応併任とは言っていても、防衛庁長官と平和協力隊の本部長指揮監督が二つともあったとしても、当時の説明によれば、防衛庁長官の方の指揮監督権は後ろに隠れてしまっていて平和協力隊の本部長指揮監督が通っているというのが先ほどの説明だったじゃありませんか。昨年の廃案になったものよりももっと違った、もっとえげつない形で今回の法案が実は出されてきたという点は、私はこの法案の極めて、いわゆる政治的な意味から含めても重要な欠陥を持っているということをこの際一応指摘をしておきたいと思います。答弁は要りません。  それで、時間の関係で次の点をちょっとお伺いをしたいと思います。  これは国連指揮監督に関する件なんですけれども、まず最初に総理の国連常設軍構想におけるいわゆる指揮監督の問題ですね、この点についてもう一度お伺いをいたしたいと思います。
  229. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは前にも申し上げましたが、今すぐにできるというようなことで言ったわけでもありませんし、国連憲章にもはっきりした規定があるわけじゃございませんけれども、世界で非常に軍縮が徹底しまして、そしてまた国連というものが加盟国全体の利益を代表するようなものになって、文字どおり世界の平和と繁栄の中心になったときには、国連自身に超国家的な警察といいますか平和維持といいますか、そういう国連が持つ部隊ができることは、今から現実性はそう高くないとしても非常に望ましいことであろう。そういうときには、各国からいわばボランティアの人たちが行って国際公務員としてそういう部隊を形づくるということは好ましいことであろう。その場合には、もちろんこの部隊各国の支配を受けるものではありませんし、この一人一人の国民は国際公務員になるわけであって、恐らくその場合のそのような部隊あるいは軍の指揮は、国連の議長であるか事務総長であるか、とにかく国連当局である。こういうふうに考え方としては思っておるわけでございます。
  230. 松原脩雄

    ○松原委員 今のような国連常設軍構想ですね、総理はいつごろそういう構想をお持ちになったわけでしょうか。
  231. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは実は随分前から考えておりまして、そうでございますね、二十年やそこら前には考えてまいりましたのですけれども、ただこれはとてもとても、国連がそういうものになってこないものでございますから、なかなか日の目を見ない話でございました。
  232. 松原脩雄

    ○松原委員 実は私ども社会党も、結党が一九四五年の九月ですけれども、そのときから結党の呼びかけで国際安全保障機構への参加ということを言っておりますし、八〇年代には例の前の委員長の石橋さんの石橋構想も、  将来の展望としては、各国の安全保障をあげて国連の手にゆだねることが望ましい。国連が加盟各国の主権の大きな部分を分けもつ新たな国際的権威として確立したあかつきには、公正な国際紛争処理機関として強力な警察機能(国連警察軍)をもたせるべきであろう。それは、世界の恒久平和を念願して自らは非武装たることを宣言する日本国憲法にとっては、本来、不可分の前提である。 こういう石橋構想も出されているし、その間にもずっと実は党の考え方としては国連による安全保障という問題、最終的には国連警察軍をいわば理想として持っておった。うまくいったらそのときに本当に非武装になるということも実は指摘をしているわけですね。  そういう意味では、総理よりもうちの社会党の方が早目に国連による世界の安全という問題について提起をしてきたと私は思うのであります。  そこで私は、国連の、今国連常設軍とおっしゃいましたが、その国連憲章が想定しておる国連軍、憲章第七章にありますね。それと、今総理のお考えになっている国連常設軍というのは同じものなんでしょうか。それともちょっと違っておるんでしょうか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 六章、七章のあたりはなかなか具体的に何が考えられておるのかはっきりいたしませんし、特別協定というようなことも書いてあったり、また軍事委員会というようなことも書いてございまして、どうも私は今の憲章からすぐ何かを考えるよりは、憲章ではそこまで考えていなかった、まあ気持ちとしてはあるでございましょうけれども、そういうふうに思っておいた方がいいのじゃないかと考えております。
  234. 松原脩雄

    ○松原委員 恐らく総理のお考えになっておる国連常設軍であれば、国連国際公務員というふうになっておりますので、その場合にはいわゆる指揮監督が国連によって通っていて、いわゆる懲戒問題等指揮監督が不十分、十分にはなされていない、懲戒問題は各国に留保されておる、そういった問題も、その場合には、総理の場合にはなくなるというふうに想定してよろしいんでしょうか。
  235. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そうであると思います。我が国からボランティアで行きました人は、国連の職員、職員と仮に言わせていただきますが、国際公務員になるのであって、恐らく我が国の、どう申しますか、我が国の主権の指揮を受けるという立場ではなくて、それからは中立な国際公務員になりますから、したがって国連のいわば規律といいますか、一般的なディシプリンに従う、そう考えるべきだろうと思います。
  236. 松原脩雄

    ○松原委員 これはちょっと外務省の方にお聞きしたいんですが、国連憲章は、国連軍形成については、そもそも四十七条第三項ですけれども、軍事参謀委員会というのを安全保障理事会のもとで形成するのその場合には、その軍事参謀委員会理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う、この兵力の指揮、ザ・コマンド・オブ・サッチ・フォーシスに関する問題は後に解決する、こういうふうになっていますね。そういう意味で、今総理のお考えになっているようなものとはもう少しレベルの低いといいますか、そういう事態が国連憲章には書いてあるわけです。  その後この国連憲章については、いわゆる米ソ冷戦が始まる前の、本当にこれで世界の平和は国連でやっていくんだという熱い時代に軍事参謀委員会は、この国連による指揮、それから各国軍の持っておる権利といいますか、そういうものについて検討をしたことがあるはずです。それについてどういうふうな結論になったのかお聞きをしたいと思います。
  237. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この四十七条三項の点は、まさに憲章が作成されていた段階でこの問題はその時点では解決ができないということで先送りされたというのがこの表現であったと理解いたしますが、その後この問題につきましては、まさに先生指摘のような米ソ冷戦というような中で、この問題については議論はありましたけれども、結局今日まで先送りされている、一定の結論は出ていないと私たち理解いたしております。
  238. 松原脩雄

    ○松原委員 軍事参謀委員会の中間報告というものが出ておりますね、その中にはこういう規定がある。「第三十九条 国内割当部隊指揮は、それぞれの加盟国によって任命された指揮官によって行われる。これらの割当部隊は、それの国内的性格を保持し、かつ自国の国内兵力において実施中の規律及び規則に常に服する。」という形で、いわゆる憲章が想定した国連軍そのものでも、やはり規律の問題、結局懲戒に関する問題ですから、懲戒に関する問題については各国の権利に留保するという形で規定をされておるという点を一つ指摘をしておいた上で、そもそも先ほど言いましたように、どうも私はこの間、問題を戻しますが、実際PKFが出ていった、そのために武力行使があり得る事態は、自衛のための武力行使としては二つの対応を認めていますね。自分たちの生命等を防護するためというのが一つ、それから任務の遂行を妨害されるということについては、これについては抵抗できるのだ、対抗できるのだということを国連のいわばPKOの今や確立された原則として、今既にモデル協定等々で提示をされてきておるわけであります。  この点を、そもそも国連憲章でいけば、各国にはその規律、懲戒等の規律はある、しかしその他の指揮命令関係については国連の手にあるというふうに考えておった、その考え方の基本がずっとPKOについても実は来ているわけであって、懲戒権各国にある、各国にあるとしたところで、その他の、懲戒権、規律等の点を除いたその他の指揮命令系統については、まさに国連の手に指揮命令系統がゆだねられておる。それは結局最終的には現地司令官ですね、現地司令官指揮権として発動されてくるという形になるだろうと私は思うのですよ。そんな理解でよろしいんですか。
  239. 丹波實

    丹波政府委員 先生の引用された中間報告におきましても、結局は超国家的なその指揮権というものは国連としてはまだ確立できないということを結局は言っておるのでございまして、それがそのPKOに至りましても、まさに超国家的な意味での指揮権ではないということを実は昨日来といいますか、ずっと御説明申し上げてきているとおりでございます。     〔金子(原)委員長代理退席、委員長着席
  240. 松原脩雄

    ○松原委員 そうは言っても、先ほど言いましたように、懲戒についても昨今の基準等からしますと、既に国連によって逮捕権がある、そして特別の国連の職員がその規律違反行為については、それを調査して、そして処罰をすべしという勧告権までとらえようとしているという意味で、いわゆる先ほど総理がおっしゃったように、指揮監督、懲戒権も含めた指揮監督を国連は最終的な理想像としては持ちたいと思っているのだと思うのですが、しかし、それに至る過程では、指揮権と各国の規律権といったものはいわばせめぎ合いをしながら次第次第に形成をされてきているのが私は現状だと思うんですよ。  したがって、そういう意味で昨今のモデル協定等、この間問題になっていたところで、懲戒を除いた部分については国連指揮監督がすぱんと通っておる。したがって、部隊行動になりますから、国連指揮監督に対する部隊行動について、例えば、モデル協定等にありますように、これからの作戦行動については、単に人の生命、いわゆる任務に対する実力妨害ですね、任務に対する実力妨害についても国連は自衛権の行使としてそれをやれるというふうに書いてあるわけですから、それをいわば日本だけ特別にそれを除いて行動できるなんというのは、今申し上げたような国連の本質と、それから、ずっと築き上げられた国連の権威を高めていこうという、指揮権を強めていこうという動きからすると完全に逆行しており、実際そんなものはできないのではありませんか。任務妨害に対する武力行使はしませんと言っているけれども、実際そんなことはできないのではありませんか。
  241. 丹波實

    丹波政府委員 これは昨日も本日も外務大臣の方からも申し上げましたけれども、日本の憲法を踏まえてぎりぎりどのような貢献ができるかといういろんな研究の結果、そのぎりぎりのところを踏まえて国連と相談した結果、その第二番目のケースについては、日本武器使用をしなくても機能できるという国連の答えがあって、こういう法案をつくって御審議をお願い申し上げておる、こういう段階でございます。
  242. 松原脩雄

    ○松原委員 先ほどから申しましたように、やはりポスト冷戦の新しい平和の枠組みを国連によって強化、それでまだだめなところは改革する、そういう姿勢でもって私たちは臨んでいかなきゃならぬ時代に入ったと私は思います。そのときに、そういう意味で、国連平和維持活動については、そういう国連強化の一環ですから、私たちは基本的にはこれを正しく位置づけて、我々がやれるものは、憲法論的にも政治的にもやれるものはきちっとやっていかなきゃいけない、これが本来あるべき態度だと思うのですね。  余り日本国憲法と確立された国際法規としての国連憲章との関係をつなげると話がややこしいから、一つだけ、確立された国際法規としての国連憲章の中でPKOの性格を、私、はっきりさせておきたいと思うのですよ。  今我々はPKOに出ていない。ほかの国の人たちがPKOをやっていますね。そういうPKOをやっておるときに、これは国際法の上で、仮にPKOがいわゆる武力行使をして、その武力行使が仮に誤って過大であったとか、そういった場合には、国際法の用語の上からいって、よく集団的自衛権という言葉を使われますけれども、それでいいのかなというふうに私は実は率直に言って感じるわけです。  したがって、国連憲章上、いわゆる個別的自衛権と集団的自衛権と、それからいわゆる国連軍等の集団安全保障ですね、これの三つについて、ちょっと柳井さん、説明してください。
  243. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま国連憲章における、いわばPKOの位置づけという点についての御指摘がございました。これまでも御答弁申し上げた機会がございましたけれども、このPKOは、国連が世界各地における地域紛争の平和的解決を助けるための手段といたしまして、いわば現実的な要求に基づいて、実際の慣行を通じて確立してきた一連の国連活動ということが言えると思います。  そこで、結論を先に申し上げれば、国連憲章に明文の規定はございません。この点、御案内のとおりでございます。そして、しからば、これは国連憲章のどの辺に位置づけるべきか、何条ということはないにしても、どの辺に位置づけるべきかという点でございますけれども、これも御案内のとおり、第六章におきましては、一連の平和的解決の手続が規定されているわけでございます。交渉とか仲介とかあるいは国際裁判というものがございます。それではないということであろうと思います。  他方、第七章、ちょっと今先生もお触れになりましたけれども、におきましては、国連による強制的な手続、すなわち平和が破壊されたような場合において、国連自体が、憲章上は国連軍を使って軍事的な強制行動を行うあるいは経済制裁を行うというようなことが書いてございます。他方、この七章には、これも先ほどお触れになりましたけれども、個別的、集団的自衛権というのがあるわけでございますが、いずれにいたしましても、このPKO関係国の同意を得て行うものでございますので、この強制行動でもないという考え方が広く持たれているということは言えると思います。  それで、これも有名な点でございますけれども、ハマーショルドさんがかつて、平和維持活動は憲章の第六章半とでも言うべき新しい章に置かれるのがよいかもしれないというようなことを言われたそうでございますが、まさにそういうような位置づけであろうと思います。  かつて国連におきまして、このPKOの財政負担をどうするかということをめぐっていろいろな議論がございまして、そのときに総会が国際司法裁判所の勧告的意見を求めたことがございます。これは直接は財政負担の問題でございましたけれども、国際司法裁判所が一九六二年に出しました勧告的意見の中で、これは、PKOはいわゆる強制行動ではないんだ、ただ、この憲章の目的には合致するのであって、この経費は国連関係経費であるというような結論を出しております。  したがいまして、最近では、これは「ブルーヘルメット」の最近版に出ておることでございますが、近年では、平和維持活動は、同意の原則は別にして、国連憲章が国連、特に安保理に与えた広範な権限に基礎を置くものと考えられるとのコンセンサスに近いものができ上がってきた、こういうようなところだろうと思います。
  244. 松原脩雄

    ○松原委員 その憲章の五十一条には、各国の権利としての個別的自衛権と集団的自衛権の行使、非常に限定的に認めておりますよね。PKOはここで言う自衛権の概念に入りますか。それとも違うんですか。ちょっと言ってください。
  245. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 五十一条に定めております個別的、集団的自衛権は、これは国連がとる強制行動ではございませんで、要するに、この五十一条の初めの方だけ読ませていただきますと、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」こう言っております。その他、ちょっと略させていただきますけれども、したがいまして、これは加盟国が攻撃を受けた場合にとる自衛権ということでございますので、PKOはこれに対して強制力を持って平和を維持するというものではございませんで、国連の権威と説得をもって、非強制の立場から、中立的な立場で平和を維持するという活動でございますので、これには当たらない、この五十一条には当たらないというふうに考えております。
  246. 松原脩雄

    ○松原委員 私は各国の権利としての自衛権、集団的自衛権ではなくて、国連による平和維持活動ですから、それとは違った概念として、それはもう講学上、国連憲章の本を読めばわかりますけれども、こういうのを集団安全保障というのですよね。私はその一環として理解すべきだというふうに思います。  そういう意味で、私たちはやはり国連の定めた、国連が現に動いておることと矛盾のないような形をしないと大変、今、目下の政府の法案のように自衛隊の丸出しで、まるで国連活動とはほとんど関係のないところでの議論を――大ざっぱに言ってごめんなさいね。しかし、今までの議論ではっきりするように、あのような、万が一の武器使用についての今のような政府の解釈や答弁によるならば、これは逆に、出したPKO部隊が本当に大変厳しい側面に遭うだろうと私は思いますよ。したがって、このようなあやふやで、しかも別組織という公党間の合意にも反するような形で強引に入ってきた今回の法案PKFに関する問題については、私は絶対反対だということを最後に明らかにして、時間が参りましたので終わります。
  247. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 大変立派な御高説を承りましてありがとうございました。けさあなたの「日本の選択」という新聞を読ましてもらいまして、如実に今のお考えがあらわれておって、私、賛成をしたいとここまで出ておるんですが、言えない立場にございます。本当に、今度の法案がすっきりしないところがあるとおっしゃることは、割り切り方が割り切れない。現在の憲法解釈の延長線上で我々やっておるわけでございますから、それが割り切れればすっきりするんでございますが、そういう点であなたの言うほどすきっとしない点もあろうかと思いますが、絶対反対でなくて、賛成をしていただきたいと存じます。
  248. 林義郎

    林委員長 次に、上原康助君。
  249. 上原康助

    ○上原委員 きょうは、易しくて大変重要な問題を、総理と四名の大臣にお尋ねをします。  そこで委員長、きょう政府委員は相当お疲れのようですから、私のお尋ねについては、総理、外務大臣、防衛庁長官沖縄開発庁長官、御四名の答弁でよろしゅうございますので、向こうは指名しないようにまず要望を申し上げておきます。特に、私が信頼を申し上げたい北米局長の御答弁も、きょうはお断りをします。  随分久しぶりですね、宮澤総理。あなたとのやりとりは過去においてもいろいろ思い出もありますけれども、それはまたいずれ機会があればやるとして、最初にいきなり威嚇をするわけにもいきませんので、副総理にまずお尋ねをいたします。  月曜日からこの法案審議に入って、総理と副総理が並んで座っており目線を合わしそうにないんだが、かなり仲よくチームワークをとってやっているような感じがするわけですが、副総理になって宮澤さんのお隣に座ったお気持ちは、どんなお気分ですか。
  250. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 私もハト派として随分勉強になるところがございます。
  251. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、宮澤総理がハト派とおっしゃったんで、御自分はそうでないということになるわけですか。
  252. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 ややもすると世間からそう見られがちであったということは間違いありません。
  253. 上原康助

    ○上原委員 いろいろやりとりを聞いて、大変辛抱をなさっているなという感じがするわけですね、総理も副総理も。特に渡辺外相の場合は、やはりもっと言いたいこともおっしゃっておやりになった方が、ストレスもたまらないし、この国会論議もにぎやかになるし、野党も元気が出るかもしらぬし、あなたもポスト宮澤として頂点に届くかもしれませんから、余り遠慮なさらぬで私の質問にもお答えいただきたいと思うのです。  そこで、最初に、まずこれも渡辺外相からいきましょう。あなたの憲法に対する御認識、そして憲法と国際貢献、我が国自衛隊、安全保障についての哲学と言うとちょっと大げさですが、その御見解をぜひ聞かしていただきたいと思います。
  254. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 我々は、宮澤内閣の一閣僚として、憲法を守って、その範囲内で最大限できるだけの国際貢献をやろうということであります。  また、いろいろな自由な発言をというお話もございますが、法案審議の邪魔になるようなことは極力避けたいとしておるわけであります。
  255. 上原康助

    ○上原委員 まだこれ相当続きますから、邪魔になることをおっしゃるかもしれませんよ、ひょっとすると。  そこで、宮澤総理はどういう御見解ですか。これまでの国民なり、私たち野党というか国会でこういうやりとりをしている者として、宮澤総理というと、宮澤さんという国会議員、しかも一村のリーダーだけじゃなくして、今は日本を背負う総理になられて、まさに国際的にも日本の総理というのはもう大きな地位にあられるので、その意味ではあなたのこれまでのニューライトというか御見識というか博学、そういう面はある面では協調できる面もあるし、しかし、今度の総裁選挙を通して相当ねじれたかなというまた印象も持ちますし、ニューライトと言われた宮澤さんとしては、憲法問題、平和外交というか日本の今日までの国際的地位というもの、その中での国際貢献というものをどう見ておられるのか。まさしく今議論されているのは憲法の基本をどうするかということなんですよね。指揮権の問題にしても、武器使用、武力行使の問題にしても、派遣のあり方にしても、それを皆さんはどんどんどんどん解釈改憲でやってきたがゆえに今日つじつまが合わない。いみじくも外相がおっしゃったように、苦肉の策をやっているわけでしょう。羊頭狗肉と言うのだ、これ。どうですか、そこは。
  256. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 憲法は、自由主義、平和主義というものを基本に、国際協調を訴え、また基本的人権というものを十分に尊重をしております。それで、我々はその憲法のもとに四十何年暮らしてまいりました。明らかにこの日本の戦後の四十何年は我々にとって失敗ではなかった、成功であったと考えておりますので、私はそのような憲法を大変に大切なものであると考えております。  そこで、もう一言よろしければ、上原委員の言われましたこととの関連でございますが、日本はそのような国になりまして、世界第二の経済大国になったということでございますけれども、世界の平和に対して軍事力をもって貢献をすることは事実上できませんので、国民の間にODAのような世界に対する経済援助、特に発展途上国に対する援助というようなものは一生懸命しなければならないという意識は私はかなり高くなっておると思うのでございますが、たまたま湾岸危機が昨年起こりました際に、我々の貢献は経済的なものだけでいいのかどうかという、戦後初めて、殊に国連が事態の正面に出ましたので、そういう国民的な議論があった。私は、これは非常に大変意味の深いことであると存じます。  その結果、まだ最終的な結論が出ているとは思いませんけれども、財政的な貢献だけでは相済まぬのではないか。何か人的な貢献はしなければならないが、それにはしかし、できないこと、していけないことと、できることとが両方あるであろう。そういうところで今国民的な議論が行われている、こういうふうに考えております。
  257. 上原康助

    ○上原委員 その国際貢献の必要性、やらねばいかないというスタンスというかポジションは私たちもそう変わっていないと思うのですね。やりようの、方法の、方法論で大変分かれている。その基本がやはり憲法解釈だと思うのですね。私のような者はそれは論じられませんが、いずれまたそれは機会があればやりますけれども。  そこで、総理にあと一言二言お尋ねをしておきますが、憲法を大事にしたいとおっしゃいました。私は民主主義だからいろいろな意見があっていいと思うのですね。ただ、それはやゆ的にさっき副総理がなさったようなやり方はちょっと僕はどうかと思うのですが、私はそういう気持ちを率直に今、さっきのことを聞いて感じたわけですが、それはそれなりに民主的でいいんです。いろいろな議論があっていい。社会党ももっと広く議論していいし、自民党だっていろいろな議論がある。それが民主主義社会ですから。余り脱線はいけませんけれどもね。  そこで、今国際情勢が変わったんだ、国際貢献は必要なんだ、だから自衛隊組織ごと出そう、こうおっしゃっているわけでしょう。そのいろいろな問題点は機会があればやるとして、総理にこれだけはお伺いしておきたいわけです。  あなたは、今憲法を大事にしたいとおっしゃった以上は、よしんばその自衛隊が、あるいは我が国に集団安全保障権があるとか、あるいはそういった国連の常備軍ができた場合に自衛隊がそれに参加をして武器使用というか武力行使をやってみても、現在の憲法でも、それは憲法の枠内なんだというようなお立場は、まさかお考えは持っていないと思うのですが、これはいろいろな意見があるだけに重要な点ですので、その点はどう思われるのか。あなたの内閣というか、あなたが首相としてあるいは日本のリーダーとして政治をおやりになる間は、憲法解釈というか改憲というか、そういうことはお考えにならないというお気持ちなのか。この点はこれからの宮澤政治にとって、内閣にとって大変重要な点ですから、ぜひひとつもっとわかりやすくおっしゃってくださいよ。イエスならイエス、だめならだめ、ノーならノーと。
  258. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 例えば、昨年の湾岸危機に際して、国連安保理事会が事態の収拾の前面に出ましたけれども、しかし、あの際の多国籍軍のようなところに我が自衛隊が参加できるか、私は参加すべきではないと考えます。  憲法改正につきましては、私は具体的な政治の日程、政治の課題として取り上げる気持ちはございません。
  259. 上原康助

    ○上原委員 今の点は大事な点で、これは外務大臣にも大変恐縮なんですが、総裁選挙のときのいろいろな演説とか、まあそれは少しアドリブがついているのもある程度勘案しましょう。しかし、みずから私はハトではないとおっしゃるくらいですから、湾岸戦争の場合の多国籍軍に自衛隊を出しても憲法上問題ないんじゃないかという考えがあなたの頭の中か腹の底かどこかにあるような感じもしてならないのですが、今の総理の御見解と何か変わったことがありますか。
  260. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 変わっておりません。
  261. 上原康助

    ○上原委員 余り聞こえなかったですが、まあないという方に理解をいたしましょう。ここは大変大事な点ですので、ちょっと失礼な聞き方をしたかもしれませんが、御理解をいただければ……。  続いては、実力部隊を預かる防衛庁長官にも聞かぬといかない、これまた不平等になってもいかないですから。どうですか、防衛庁長官は。
  262. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  総理大臣の申されたとおりで、私は内閣の一員でございますので、そのとおりに解しております。
  263. 上原康助

    ○上原委員 伊江長官は、昔から沖縄は非武装の国だからまさか憲法改正しようと思っていらっしゃらないと思っていますから、あなたはシマンチュだから、その点はきょうはよしましょう。  そこで、きょうはPKOのことについて延々いろいろやっていますが、これは与党の方々いろいろおっしゃいますが、雑音もあるのですが、しかし、質問している方も熱心にやっているのですよ。なかなかうまくいくものじゃないのです。その点は御理解いただきたいと思うのですね。  そこで、少し解明すべき問題点というのがあるんじゃないかと思うのですね。ひょっとすると私、あした続編をやるかもしれませんから、これは委員長もぜひお聞き取りいただいて、国連指揮権と日本指揮権はどっちが優先するのか明確にせぬといかない。これは皆さんかどう弁解がましい御答弁をしようが、国連から出されているいろいろなマニュアルとかガイダンス、そういうものを見てみますと、どうしても今までのような議論では国民も納得をしがたいし、我々もますます疑問を持たざるを得ないんですね。  そのことで一つだけ重要な点を指摘をしておきたいのですが、ミスターPKOと言われているアークハートさんが書いている、これを全部総理お読みになったかどうかわからぬけれども、この中に、さっきもどなたか引用したかもしれませんが、私はこれはこの間どこかの討論会でも引用したことがあるのですが、「国連平和維持活動は、安全保障理事会の承認の下に、国連事務総長が最高指揮官として派遣するものである。」いいですか、総理大臣。「もし日本から一歩出れば、日本の総理大臣も、防衛庁長官権限も及ばなくなる。日本政府の自由になるのは、日本人要員事務総長に託すことを決めるまでと、事務総長または国連の采配にゆだねることが承服出来ない事態となり、派遣要員を帰国させる決定をする」ことである、こういうふうに明確にしている。あちこちにこういうことがある。ですから、皆さんが幾ら、やれ実施要領をつくるとかいろいろなことを言ってみたって、国連の解釈はそうなんですよ。だからそれを明確にさせる必要がある。  この点を明確にするには、国連からしかるべき人をこの委員会に呼ぶか、招請するか、参考人として。これは必要ですよ、これだけ日本の戦後の安全保障政策を大転換しようというわけだから。もしくは本委員会の代表を国連に超党派で派遣すべきである。  もう一つは、国連が発行するPKOにかかわる重要文書の提出が不可能と言っている。マニュアルとかいろいろなガイダンス。本当にそうなのかどうか確かめにゃいかぬ。そういうことについてもこの委員会を通して解明をしないと、この法案というものが国民の納得というか、賛否の是非はともかくとして、やらなければいかない点であるということを申し上げておきたいと思います。  そのことについて総理はどういう御見解を、御感想を持つかということと、これは委員長にも、ぜひ理事会でも、我々は正式に提案をいたしますので、お取り計らいを願いたいと思います。
  264. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいまのような国連平和維持隊というのはこのようなものであるべきである、あるいはこのようなものであるという御意見は、学者でありますとか国連の当事者とかからよく伺います。ただいま御紹介のありましたのもその一つでございますが、しかし、実際にはこういうモデルのものでなければPKOではないんだというようなわけには私はいかないので、何か先験的にそういうものがあって、それに合わないものは全部PKOとは認めない、排除されるんだというようなわけには現実にはいかないのじゃないか。  おのおのの国におのおのの事情がございます。我が国には我が国の事情があって、その我が国PKOとして協力をいたしたいとすれば、それは今日もるる外務大臣からも御説明がございましたけれども、今御審議願っているような形で我々としては協力をするのが最善である。それは自分たちモデルと違うから、そんなものなら要りませんとおっしゃればそれは別でございます。それは別でございますが、私どもは私どものような形で協力をいたしたい、そのもとで国連と交換公文をやり、協定をいたしまして協力をしたいと我々はこいねがっているわけでございます。
  265. 上原康助

    ○上原委員 これはこんな水かけ論じゃいかないですよね。やはりその真否を確かめなきゃいかぬです。そのことはぜひ日本としてやらなければいかぬ、国会として。  そこで、じゃ、こういう法案の中身で国連が了解をしているんだ、こういうことを当局は言っているね。そのTPOは、いつ、どこで、だれが、だれに、どういう形で、もしこの法案国連が了解したと言うなら、事務総長が了解したのか、だれが了解したのか、そのはっきりした公式文書を出しなさい、ここに。いいですか。委員長、この点は、今の点も含めて。
  266. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは事務当局がお答えを申し上げます前に申し上げますけれども、我々がこれだけの誠意を尽くして、我々の国としてはベストとしてこれだけのことができますということを考えて申しておるのであって、その我々の善意といいますか、協力の体制がそんなにすげなく拒否をされるとは、私は思いません。ある程度の瀬踏みはいたしておるかもしれませんけれども、正式に法案ができませんうちに、まだ協定案もできませんうちにだれがどこでということはきちんとは申し上げられないだろうと思いますけれども、これだけ誠意を尽くしましたものがむげに拒否されるというようなことは、私には考えにくうございます。
  267. 上原康助

    ○上原委員 この続きはまた後日やります。  そこで、委員長、今私が指摘をした点、国連との確認があったということも言っているわけだから、どこで、だれと、どういう形で、実際にそれが明らかにならないと、外交は行政府の、内閣の専権であるかもしらないが、国会はそれをチェックする機能があるのですよ。だから国会、立法府は国権の最高機関なんだよ。今私が指摘したことにつきましては理事会で検討いたしますね。
  268. 林義郎

    林委員長 本問題につきましては、後刻理事会において協議をいたしたいと思います。
  269. 上原康助

    ○上原委員 もう時間が来てしまった、PKOをやっている間に。済みませんが、あと二、三分下さい。  基地問題について、これはPKO問題とも関連するので、済みませんが事務局、これを総理と四名の大臣に見せてください。最近の沖縄の基地の実態というのは、御案内のように目に余るものがあるのですよ。  そこで、これは宮澤総理が外務大臣をやっておったころからのことなので、おわかりにならないとはおっしゃらないだろうと思うのですが、私はなぜこういうことが続発するかというと、やはり日本の外交姿勢というか防衛政策というか、いわゆる日米安保の運用の問題があると思うのですね。これは安保を嫌いだとか好きだということじゃないのですよ、問題は。みんな、皆さんは事務局任せなのですよ、政府委員任せ。やはり外務大臣とか沖縄開発庁長官とか防衛庁長官とか総理大臣が、時にはアメリカに――こういう事故とか、どこなら夜の夜中に爆音をかなり立ててもいいというところがありますか、あなた、今ごろのこれだけ緊張緩和の状態で。天から二トンくらいの物体がおっこちてきて、あわや大惨事になる。フィリピンのピナツボが爆発すれば沖縄に全部持ってくる。今でさえ大変な状態なのに、これはやはり政治家が物を言わないからだ。日米関係の根本なんだ。真の友人と友好というのは私はそうじゃないと思う。私は総理の気骨とかそういうものには非常に感服するところもありますよ。なかなかしんがあるなと思うところもある。  この際、四人の大臣からこういう問題について、沖縄の基地の整理縮小を含めて、第三次振計を含めてどうしていくか、一言すつ決意を言ってください。
  270. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 実は、偶然のことでございましたけれども、一昨日アメリカのパウエル統幕議長が訪ねてこられまして、沖縄に行かれるということを言われましたので、私からこういう趣旨のことを申し上げました。  我々としては、沖縄の人々に対して、戦争中のことはもとより御存じのとおりであるが、戦後非常な苦労をされ、本土の方が早く独立をし、後から復帰をしてこられた。しかし、今日に及ぶまで我が国の防衛の非常に大きな部分を沖縄の人々に背負ってもらっている、そのことに対して我々はみんな恩義を感じております。したがって、我々は今度、開発計画がまた終了するわけでございますけれども、できるだけのことをして沖縄の人々のこういう苦労に報いなければならないと思っている。つきましては、統幕議長ですが、間もなく沖縄を訪問されるそうであるけれども、どうかこういう沖縄県、島民の気持ちというものもよくよくお考えの上で、この基地を利用される米軍の毎日毎日のいわばお心構えということも十分に御留意を願いたいということを申しました。実は、この伊江島のことを私は情報では知っておりました。それに対して統幕議長は、実はそのことは自分が最も大事に考えているところであります、かねてからそういうことはよく申しておりますけれども、今度沖縄に参りますから現地にもう一遍そういうことを間違いのないように申したい、こういうことを言っておられました。  私の気持ちはそういうところでございます。
  271. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣、どう解決する。
  272. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 実は私もパウエル参謀総長に会いまして、総理と似たような話を申し上げておきました。  いずれにしても、日米安保が基軸ですから、非常に重要でございます。しかしながら、在日米軍の七〇%近くが沖縄に存在をするというのも現実でございますし、用地の七割以上が沖縄にある。したがって、日米安保の円滑な運用という点からも、沖縄県において住民との間で協調関係がつくられていくことが非常に重要なことでございますので、そういう点も御配慮をいただきたいということを申し上げておいた次第であります。
  273. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官からもあれですが、伊江長官、先にしましょう。  初めての御就任、おめでとうございます。まず、沖縄開発庁長官というのももう少し基地問題にも関心を持たなければいかぬですよ。内閣でこういうものを解決しなければおれはやめるぐらいの気迫でやっていただきたい。その決意を含めて、第三次振計もどうするかをあなたから聞いて、宮下長官の……。
  274. 伊江朝雄

    ○伊江国務大臣 御丁重なお言葉を賜りまして、まずありがとうございました。  ただいまの御質問ですけれども、先生もう既に御高承のとおりでございますが、基地問題というのは整理縮小しなければならぬという方向で我々も取っ組んでおります。しかし、先ほど総理も御答弁になりましたように、やはり日米の置かれている立場、安保条約の立場から考えて、急に我々の勝手でどいてくれと言うわけにまいりませんので、逐次それは関係官庁にお願いし、また我々も第三次の振興計画をつくっていただく過程においてその土地を有効に使うように、返していただくように関係省庁にお願いしていきたい、こういうふうに思っております。  それから今、伊江島の補助飛行場のトラブルについての御質問がございましたので、これも総理と外務大臣からのお答えがございましたけれども、私どもとしても非常に住民の生活の安全というものを守らなければならないという点については、省庁は、管轄は違いますけれども、同じ気持ちでございますので、今後とも関係官庁とよく十分に連絡をとり合って事故防止に努めてもらい、住民の安全に寄与したい、かように考えております。
  275. 上原康助

    ○上原委員 宮下長官はいかがですか。
  276. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 基地を抱える先生の御発言、私も本当に重要なことだと受けとめております。  整理は徐々に行われておりまして、しかし防衛所要とそれから基地の問題、これは調整をいかに図っていくか、そしていかに県民の納得を得ていくかということが大切なことでございます。また、米軍の演習、訓練は安全保障の実効性を高めるためにも大変重要なことではございます。このことの認識は私は大変強く持っておりますけれども、しかし同時に、それが大きな迷惑をかけるような訓練であってはなりません。落ち度があるようでありますれば、私どもとしても米軍には率直に物を申していきたい、このように思っております。
  277. 上原康助

    ○上原委員 総理、そうしますと、パウエル統合議長かにお話しをした、それはいいことです。少なくともこの種の問題、沖縄の基地問題、その他のもろもろのことについて、宮澤内閣として政治レベルに上げて積極的に解決する努力をなさいますね。
  278. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そういう決意であります。
  279. 上原康助

    ○上原委員 終わります。ありがとうございました。
  280. 林義郎

    林委員長 次に、山口那津男君。
  281. 山口那津男

    ○山口(那)委員 十分間の時間をいただきましたので、私これまで二回ほど質問の機会を与えていただきましたが、それらの審議を踏まえて、それを束ねる形でお伺いをいたしたいと思います。  まず初めに、今回の法案が、シビリアンコントロールあるいは武器使用についての憲法の制限等、これらがどう合憲的に成立をするかという点でさまざまな議論があったわけでありますが、その過程で法案に盛り込まれました五原則プラス国会の報告という、これがセットとして、一つの枠組みとしてつくられたわけであります。それと対比される形で国会承認、単独の国会承認、いずれを選ぶべきかという議論がありました。その結果、今回の法案のような五原則プラス国会報告、こういう枠組みが法案化されたわけでありますが、このでき上がった経過について、なぜそういう選択がなされたか、この点についての総理のお答えをお願いいたします。
  282. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 経過につきましては、正確には私は報告を受けておるという立場でございますけれども、御承知のように国連平和維持活動をいたしますために各国協力を求める、その場合我が国もその一員になるわけでございますが、国連として全体的なプログラムを書きますときに、やはり参加をする国はできるだけ機動的に速やかに参加をしてもらいたいという、これは当然のことでございますし、それからまた参加の意思そのものについては条件つきでない確定的な意思を表示してもらいたい、これは国連が当然にそう考えるわけでございます。  そういう具体的な必要がございまして、しかしながら文民統制の立場から国会が関心を持たれることはこれはもとより当然でございますので、山口委員が御指摘になられました五原則のほかに、実施計画につきまして国会に御説明を申し上げ、御指摘によりまして後刻それを訂正するような機会も設けさせていただきたい、このように考えたわけでございます。
  283. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その五原則というのは、単独の国会承認という立場からすれば、五原則は国連の慣習であるからあえてこれを法案化するまでもない、こういう議論もあったように思います。しかし、先日の総理の御答弁にもよれば、この国連の慣習からくる原則の判断、同意とか停戦の合意とか中立性とかという判断と、我が国が合憲的な立場からするこの原則の判断というのは、より我が国の方が厳しくなる、また独自の判断としてなされ得る、こういう御答弁もあったわけでありますから、この五原則というものは単なる国連慣行だけに任せるわけにいかない、そういう重みがあるであろうと考えるわけであります。  これが仮に法定されなくて、国会承認単独であるとすれば、この五原則を満たしているかどうかが不明確な場合であっても、承認さえ得ればこのPKO、中心はPKFですが、これの出動が可能になってしまう、これをおそれる議論があったはずであります。その点について、この五原則は非常に重要性があり、かつこれを厳格に解釈していくことが必要だ、こう思いますが、その点の総理の御認識をお願いいたします。
  284. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いわゆる五原則のうちで、最初の三つは多かれ少なかれ国連も事実上そのように考えられると思いますけれども、あとの二つ、派遣の終了あるいは業務の中断に関する部分あるいは武器使用に関する部分は、一昨日来いろいろ御議論がございますように我が国の独自の立場に基づくものでございます。そのゆえに、むしろそれは国連のいわゆるSOPに合わないという観点からいろいろ御批判がございましたけれども、我が国の立場として、この憲法のもとに思わざる不測の事態が起こることを防ぎますためには、この二つの問題は大事な五つの中の二つの原則として我が国としてこれはやはり譲ることができないと考えましてこれを法案の中に織り込んだ、こういうことでございます。
  285. 山口那津男

    ○山口(那)委員 五原則の中の二つの原則が重要なことはもちろんでありますけれども、私はむしろ、参加に当たってまだ武器使用が云々される前提のない場合での同意あるいは停戦合意等の判断というのも、これまた劣らず重要なことだろうと思うのですね。これらの前提が崩れた場合に中断、終了、こういう判断もあるわけでありますから、ここの判断は実に厳格であらねばならないと思うわけであります。  ことしの七月に公明党の調査団としてカンボジア等へ行ってまいりました。そこでカンボジア四派のそれぞれの代表と会ったわけでありますが、ポル・ポト派のキュー・サムファンそれからソン・サン派のソン・サン、そしてシアヌーク派のユネスコ大使であったイン・キエット、それからヘン・サムリン政権のソク・アン外務次官及びホー・ナム・ホン外務大臣等々と会ったわけでありますが、そのいずれもが会談の席上、軍事要員、つまり日本自衛隊も含むこのPKOへの日本協力というものに対して、これはウエルカムである、歓迎をする、こういう発言がなされました。  私は正直言って驚いたわけでありますが、しかしその参加の形態については、それぞれ四派ニュアンスの違いがあるわけであります。ですから、同じく同意といいましても、カンボジアの場合SNCという統合的な形でなされるではありましょうが、各派の思惑というものも絡んでその内容は異なるわけでありますね。したがいまして、この同意の判断というものは慎重になされる必要がある、それを敷衍いたしましてこの三原則も厳格な認定を要する、こういうことを私は訴えたいわけであります。その点、もう一度お考えをいただきたいと思います。
  286. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 カンボジアの事態は、十三年もここまで来るのにかかりましただけに、あのような和平が本当に真実のもので永続的なものかどうか、いろいろなことを総合いたしますと、よく事態を注意深く見ておく必要があると存じます。また、どのような合意が生まれ、国連からどのようなUNTACの要請がございますか、そこらも明確でございません。したがいまして、この法案を成立さしていただきました後、また我々としても必要な訓練等々も要します。  そういうことの関連もございますから、いざカンボジアにどのような協力をするかということにつきましては、ただいま御指摘の五原則と非常に関係が出てまいる場合が私はあろうと思いますので、その辺は慎重の上にも慎重に判断をいたしていくべきだと思っております。
  287. 山口那津男

    ○山口(那)委員 五原則プラス報告という一つの枠組みにさらに国会承認をプラスすべきではないか、このような考えもあろうかと思います。この点を判断するに当たって、例えば防衛出動等と比較した場合に、緊急性、機動性ということは両方とも必要なわけでありますが、そのほかに我が国の国民生活等に与える影響の度合い、あるいは、国連あるいは紛争当事国あるいはPKOに参加する他の加盟国等、PKOの利害関係国等との信頼関係といいますか、そうした要素を考え合わせた上での比較判断、相関関係判断だろうと思うわけでありますね。ですから、絶対的に国会承認が不要であるとかあるいは報告だけで事足りるとかそういう紋切り的な表現ではいけないと思うわけであります。  そこで、従来、機動性、緊急性があるということだけが強調されてまいりましたけれども、総理の答弁の中には、条件つきによる不安定な制度となるということも言われているわけでありまして、これは私流に言えば国際的な信頼性というものも制度の中に内在している、こう思うわけであります。こういう点を踏まえた上で、このシビリアンコントロールのあり方についての最終的な総理の明快な御判断を伺って、私の質問を終わります。
  288. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 五原則を法案の中に明定をいたし、また実施計画につきましての御説明も申し上げるということで十分の用意をいたしておるつもりでございますが、他方で、御指摘のように国連として我々に求めます機動性あるいは安定性といいますか、条件つきでないオファーといったようなことも、これも大事なことでございますので、その辺のバランスをとりました形でこの法案を御審議願っておるというのが政府の立場でございます。御理解を賜りたいと存じます。
  289. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これで終わります。
  290. 林義郎

    林委員長 次に、古堅実吉君。
  291. 古堅実吉

    ○古堅委員 総理に伺います。  自衛隊が武力の行使を伴うか伴わないかにかかわらず海外に派遣できないことについては、我が国の憲法、平和原則と第九条に照らして実に明々白々であります。PKO法案に問われている根本もここにございます。総理は、我が国の国際貢献にはできることとできないことがあるというふうに言っておられますが、何ができないことだと考えておられるか、まずはその基本点について伺います。
  292. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま現実の問題について申しますならば、自衛隊が海外に出て武力行使をするということは許されないことである、しかし自衛隊がその他の目的を持って海外に出るということは必ずしも排除されない、こう思っております。
  293. 古堅実吉

    ○古堅委員 一九五四年六月二日、参議院本会議は、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議を採択しました。その内容は、  「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」 となっております。  総理は当時参議院議員でありました。この本会議に出席し、決議に賛成されましたか。
  294. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 大変昔のことでございますので正確には記憶いたしませんが、そのとおりであったと存じます。
  295. 古堅実吉

    ○古堅委員 この決議は、憲法の平和原則と九条を確認して、自衛隊の海外派兵、派遣そのものをしないと決議したものであります。それは、木村篤太郎大臣がその本会議に出席して、自衛隊は「直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持っていないのであります。従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。」と明言されたのであります。お認めになりますか。
  296. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この決議の解釈は有権的に当然参議院のなされるべきことでございますので、そこを私は云々することは差し控えなければなりませんが、当時の木村防衛庁長官は、自衛隊は直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することが任務であるから、外国に出るということは、これはそういう目的は持ってない、こう言っておられます。この言葉意味は、外国に行って武力行動をする、そういうようなことは考えていない、こう答弁をされたものと私は考えております。
  297. 古堅実吉

    ○古堅委員 総理は、現在の七百数十名の国会議員の中でただお一人この決議に参加された議員であり、この決議に関する議論がどういうものだったかは、記憶が薄らいだ、そういう面があったにしても基本的にはおありだと思います。この決議で言う海外出動が武力の行使を伴うものであるとの解釈あるいは論議がその当時あったんですか。明確にお答えください。
  298. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この決議に対しまして発言を求められました木村国務大臣は、自衛隊は「直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持っていないのであります。」すなわち、自衛隊の目的というものは日本の防衛である、我が国を防衛することである、海外でそういうことをすることは目的ではない、こういう答えをしておられまして、明らかにこれは自衛隊の持っている機能に関して防衛という、いわゆる武力行使というそういう機能を海外で行わせるつもりはない、こういうことを言われたものと私は考えております。
  299. 古堅実吉

    ○古堅委員 私がお尋ねしたのは、その決議を全会一致で採択するについて、海外への出動は許さぬという内容にわたり、出動というのは武力の行使を伴うものであるとかないとかそういうことでの論議をされた、そういうことがあったかということを確認を求めているわけです。
  300. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そのことはつまびらかにいたしませんし、また、決議の有権的解釈につきまして私がかれこれ申し上げることは差し控えるべきであると思います。
  301. 古堅実吉

    ○古堅委員 この決議の趣旨説明をされるに当たりまして、当時の鶴見議員が明確にしています。どのような条件もつけずに海外出動というものを禁止するということでの国民の意思に基づいて参議院で決議するんだという趣旨になっておるんです。ごまかそうとされてもこれは通用いたしません。  この決議は、一九七〇年三月三日の参議院予算委員会において、決議当時内閣法制局第一部長であった高辻内閣法制局長官が、「武力の行使を内容に含んでいる場合が多いと思いますけれども、それだけに限定される、限定して解すべきであるというふうに私は申し上げることはできない」というふうに明言された。自衛隊は武力行使を伴う伴わないにかかわらず出動禁止を確認したものであることが余りにも明らかであります。武力行使を伴わないものであっても自衛隊の海外派遣それ自体を禁止したものが参議院決議であったということを総理はここで否定されるお考えですか。
  302. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 事実に徴しますると、自衛隊が平和目的、いわゆる戦争、武力行使を目的とせずに海外に出ておりますことはそれから何回かあるように存じます。それは恐らく私どもの考えでは参議院の御意思に反した行動ではなかったのであろうと存じますけれども、その点は私は有権的には申しかねます。
  303. 古堅実吉

    ○古堅委員 あなたが参議院の決議の趣旨を体して正確におっしゃることができれば、国会議員七百数十名の中でたったお一人、本当に生き証人としての名誉ある地位を確保することができます。今のような形でごまかそうという態度では、そういう名誉ある地位をあなたが持つということはできないですね、残念ながら。  本日午前の委員会で渡辺大臣から、苦肉の策、苦労してつくった云々の御答弁がございました。憲法上できないことをやろうとし、それを合憲だと繕うための苦肉の策だというふうに思います。事実、この法案は一見本来のPKOと違うように見せかけようとしておりますけれども、実際は作戦面では国連指揮に従い、武器使用についても事実上第二のケースもあり得ることも論議の中で認めています。そのことにかかわる件を幾つかこれからお尋ねしてみたいと思います。  昨日、政府は、PKF参加部隊配置組織行動については国連指揮することを認めましたが、きょうはPKFに参加する自衛隊の装備についてお尋ねしたいと思います。  法案は、国連事務総長が必要と認める範囲で装備を定めることになっておりますが、法律上は自衛隊が現在装備している八十一ミリ、百七ミリ迫撃砲も否定していない、こう思います。そのとおりですか。
  304. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国連の平和維持隊に参加いたします自衛隊部隊等が具体的にどのような武器を携行していくかということでございますけれども、これにつきましては武器を含めまして、これは装備ということになっておりますが、武器を含めまして閣議で決定される実施計画で定めることになっております。この場合、「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」これは基本方針の二条にも書かれております。そしてまた、国連平和維持活動の趣旨に照らしてこの業務を実施するに必要な範囲内でなければならないということも明定されております。かつ、今御指摘のように国連事務総長が必要と認める限度で定めることになっておることは今申されたとおりでございます。  そういう意味では、現実にこれを具体的にどういう意味、今迫撃砲でございましたか述べられましたけれども、具体的な武器について定めてはおりません。今まで国連平和維持隊に参加いたしました諸外国の通常の例というものがございますけれども、これはたびたび申し上げておりますように、けん銃、小銃、機関銃及び装甲車でございまして、通常ほとんどの場合これらで我が国の任務は十分に果たし得るのではないか、このように考えておるところでございます。  ちなみに、各平和維持軍の携行武器の種類、数量、これは外務省から聞いていただけばよろしゅうございますが、例えば……(古堅委員「今何もそういうことをお尋ねしているのじゃないのです」と呼ぶ)よろしいですか。はい。それでは以上でございます。
  305. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 私が午前中、苦労の作というのを苦肉の策と言い違えたものですから、それは直ちに取り消したので、念のためにひとつ御了承を願います。
  306. 古堅実吉

    ○古堅委員 防衛庁長官、八十一ミリ、百七ミリ迫撃砲あるいは重機関銃などの重火器を法律上携行してはならないのか、携行してもよいことになっているのか、法律解釈として明確にしてください。その他の説明は要りませんよ。もしこのような重大器の装備はできないというのであれば、法案のどの規定か、はっきりお答えください。
  307. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 それはただいま私が御説明いたしましたとおりでございまして、この平和協力業務を実施する範囲内で、しかも国連事務総長の定める装備の範囲内でございますが、一方、二十四条におきまして、この武器の私どもの目的が書かれております。それはたびたび議論ございますように、自己の生命または身体を保全するため、防衛するために用いているものでございます。
  308. 古堅実吉

    ○古堅委員 なぜ質問に答えないのですか。
  309. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 質問にお答えを申し上げているつもりで、私この枠組みの話を申し上げたわけでございますが、具体的な装備については書かれていないということははっきり申し上げておきます。
  310. 古堅実吉

    ○古堅委員 だからお尋ねしておるのですよ。  もう一度尋ねますよ。八十一ミリ、百七ミリ迫撃砲あるいは重機関銃などの重火器を法律上携行してはならないのか、携行してもよいことになっているのか。
  311. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは国連の要請に基づきまして、具体的にこれを定めることでございます。
  312. 古堅実吉

    ○古堅委員 言いにくいところが、それを法律上否定されてないというふうなところだと思いますが、法律にこのように否定されていますというふうな形で言えないということは、逆に、それを否定することができない、肯定せざるを得ない法律の内容になっているんだということだと思うのですよ。だからそこをこの国会における論議で、あなた方がここは答えにくいということがあっても質問にはずばり答えて、国民の前にこのPKO法案の内容、どうなっておるのだということを知ってもらって、国民にも判断してもらう、国会もその審議を通じてみずからの意思を決定する、そういうことにせぬといかぬじゃないですか。これからいろいろ尋ねるのですから、そんな行き違いの答弁では困りますよ。  自衛隊が装備している二種類の迫撃砲は、国連平和維持軍すなわちPKFが装備する重兵器そのものであります。この迫撃砲を含む重兵器はPKFの任務遂行のためのものであって、要員個人の生命、身体を防護するための兵器でないことは国連文書で明白であります。  国連が作成したSOPガイドライン訓練マニュアルの二つの国連文書は、そのいずれも重兵器の発射権限PKF軍司令官あるいは大隊指揮官にあることを明確にしています。  SOPは第三部第四章の二十四項、訓練マニュアルは第五部第七章の四十八項、全く同じ規定で、それによりますと、「作戦規定において軍司令官は、大隊指揮官が有しているその他の重兵器の発射権限を含め、重支援火器(百二十ミリ迫撃砲)の発射権限を自ら有することができる。」となっています。  政府が持っている二つの国連文書にそう書いてあることは認めますか。
  313. 丹波實

    丹波政府委員 国連の、先生が引用されました文書につきましては、国連事務当局は資料として国会にお出しすることは勘弁してほしいということでございますので、先生がおっしゃったことをそういう意味で確認する立場にはございませんけれども、先生がおっしゃった意味のことがそういうものとして報道されておることは事実と思います。報道としてはそういうことでございます。
  314. 古堅実吉

    ○古堅委員 国連文書にそういう内容になっておるという理解でもございますか、単に報道されておるということではなしに。
  315. 丹波實

    丹波政府委員 繰り返しになって恐縮ですけれども、そういう文書のそういう中身であるとして報道されていることは私も承知いたしております。
  316. 古堅実吉

    ○古堅委員 つまり、法案において自衛隊PKFに参加する際に、携行を否定していない八十一ミリ及び百七ミリ迫撃砲というのは、大隊指揮官ももちろんですが、軍司令官にも発射権限があります。それは個人の生命、身体の防衛のための武器ではなくて任務遂行のための武器であるからこそそういう扱いになっておるのであります。  そういう重兵器をPKO法案法律上の扱いとしては携行か可能であるようにしてある、否定していない。第六条第四項はそういうふうに読むしかない、それ以外に読み方はありません。まことに重大だと申さねばなりません。法律上そうなっていることを肯定できますか、もう一度お尋ねいたします。
  317. 畠山蕃

    畠山政府委員 自衛隊なら自衛隊が出ます場合の携行武器につきましては、御指摘のとおり武器の種類について法律上の文言上の限定はございません。しかし、先ほど防衛庁長官がお答え申し上げておりますとおり、本法案武器使用の趣旨にかんがみまして、みずからの生命、身体の防衛のためということでございますから、まさに今お話の中にもございましたように迫撃砲といったようなものは身体、生命の防衛の目的には使いようがないだろうと、まさに御指摘がございましたように、その趣旨からして、こういうものを持っていくことは、その武器本来の目的として持っていくことはございません。ただ、考えられますことは、これは、迫撃砲というのは照明弾として使用されているということが多いわけでございます。したがいまして、武器本来の目的としてではなく携行することはあり得べしということでございます。
  318. 古堅実吉

    ○古堅委員 質問にまじめに答えてください、まじめに。ふざけていますよ、本当に。  このPKFは任務遂行のための武力行使も許されるが、それに参加する場合でも日本は任務遂行のための武力の行使は憲法で許されないということについては、政府も繰り返し言ってこられたとおりです。隊員の生命、身体の防護のための武器使用、それしか許されていないということになっています。  そうだとすると、そういう説明に見合うような法案になっていなければなりません。しかし、法案上、迫撃砲などの重火器の装備も可能になっています。今そういうものについて尋ねておるのです。そこをあいまいにしてこの法案審議は終わりましたというわけにはいかないのですよ。あれこれの説明をされるのではなしに、そこについてはっきりさせてください。それをはっきりしないのでは前に進めないのですよ。はっきりしてください。
  319. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま防衛局長から申し上げましたように、迫撃砲を武器使用として、いわゆる二十四条の目的のために使うようなことはないということをただいまはっきり申されたわけでありますけれども、私もそう感じます。  ただし、今、先生大変御立腹で、ふまじめな答弁だとおっしゃいましたけれども、各国の例で見ますと、迫撃砲を持参した場合には、それは迫撃砲を火力として使っている例はございません、私の聞いた限りでは。それは夜間の監視等のために照明弾を撃つために使用している例はあるようでございます。
  320. 古堅実吉

    ○古堅委員 今、武器本来の使い方ではなしに、照明弾を打ち上げるというふうなことであれば持っていくことがあるかもしらぬというふうなことは認めました。同時に、そういう武器が携行されるということは、必要に応じてはその武器本来の使用もあり得るというところまで発展していくのが携行なわけですから、そんなことを言っても、それだけで携行することの合理的な理由ということにはならぬというふうに思うのですね。  この法律案について、今の一部を認めるということにはなりましたけれども、長官にもう一度お尋ねしますが、事実上の問題として、こういう武器の本来の目的以外の使用で持っていく場合があるかもしらぬというふうなことではなしに、法律の仕組みとしては、国連平和維持活動、それらについての武器の装備、そういうことにかかわる国連事務総長が必要と認める範囲でその装備については定めるということになっているわけですから、あなた方が通常はこれこれで間に合いますということでは説明がつかない、そういうものになっておるので、法律上は、この言っているところの四つとかということに限定されない八十一ミリ、百七ミリなどの今自衛隊が装備しているそういう武器も、国連事務総長が必要と認めるそういう範囲ということの関係では法律上はそういうことになっているなということは、事実上の問題としてではなしに、法律上の仕組みとしてそうなっているなということは確認できますか。
  321. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 あるいは法律の解釈でございますから私が答弁するのはどうかと思いますけれども、私どもの理解する限りは、国連事務総長の必要と認める限度においてこれを定めるというように法律ではっきり書いておりますから、私どもは、先ほどSOPの話がございましたけれども、そういう範囲内で協議した上決めることになると存じます、法制的に。  それからもう一つ、先ほど先生がおっしゃいました迫撃砲について、持っていくことがあるのかもしらぬよというお話でございますが、これはあくまでも外国の例を私が引用したわけでございまして、我が国が迫撃砲を持参していくことを述べたものではございません。
  322. 古堅実吉

    ○古堅委員 何で法律上の解釈の問題について答えませんか。法律上は可能でしょう。可能でないんですか。
  323. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私は、私の感じといたしましては、なぜそういう装備を持っていくかと、装備のうち武器を持っていくかということは、二十四条のやはり自己またはあるいはそこにいる同僚の身体、生命を守るための機能がこれが限定されたものとして認められておりますから、そういう趣旨から申しまして、その目的を超えるような武器は必要でないということを私ははっきり申し上げております。
  324. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう終始質問には答えようとされないんですよね。答えられないんですか、答えられないような法案審議しかできないんですか。質問には答えてないじゃないですか。繰り返し繰り返し質問しても、同じようなことで繰り返し逃げておられます。それでは前に進まぬということなんですよ。  それじゃ、なぜ法律上、あなたがおっしゃるようにこれこれこれで間に合います、隊員の生命、身体を防護するその範囲の武器で、その範囲で必要を満たしますということであれば、法律上そのような形できちっと規定を明文化されなかったんですか、そうなってないでしょう。
  325. 畠山蕃

    畠山政府委員 先ほど法律に則してお答えを申し上げているつもりでございますが、法案の二十四条三項の例で申しますと、「武器」という場合の武器には、法律の文言として武器の種類の限定は書いてございませんというそこは御指摘のとおりですということをまず申し上げた上で、しかしながら、この武器の携行はその使用目的に従っておのずと限定があるので一定の限度のものが携行されることになるでしょうということを法案に則して大臣からもお答えいただいているところでございます。
  326. 古堅実吉

    ○古堅委員 答えようとされない。そこがやっぱり痛いんだな。それは憲法とのかかわりがすぐに出てくるからなんです。これだけ繰り返し繰り返し短い時間で時間をとって執拗に質問をするんだけれども、それにずばり答えられない。そこにこの法案の持つ憲法違反としての重大な問題が潜んでおるんです。  大事なことは、PKF司令官が発射権限を持つような重火器はPKFに与えられた任務遂行のものであって、それは我が国憲法九条に照らしても決して携行の許されない武器、装備であることは疑う余地のない問題であります。任務の遂行のための武力行使、武器使用のための装備を可能にしたまま法案を成立させることは、皆さんがこれまで説明してこられた政府の立場からでも許されないものではありませんか。その整合性を持たないままに、質問に対する答弁もできないままに、その法案をあるいは数で押し通そうなどということは、我が国憲法に照らしても許されない内容のものが含まれておるということにはなりませんか。もう一度お答えください。
  327. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御答弁申し上げます。  私といたしましては、今御審議をいただいている法律の枠組みで正しくお答えを申し上げている、このように存じます。
  328. 古堅実吉

    ○古堅委員 自衛隊は現在八十一ミリ、百七ミリ迫撃砲を装備しています。百七ミリ迫撃砲を例にとりますと、その要員は五人。構成は、司令部から伝えられる目標を部下に伝達して発射を命じる分隊長、照準を合わせる砲手、弾をセットする副砲手、弾薬を準備する二人の弾薬手から成っているといいます。  そこで、その使用ですが、まず司令部などから目標が伝えられる、それを受けた分隊長が目標を分隊に伝達、発射を命令する。砲手は目標に照準を合わせ、そして副砲手が弾をセットする、そして発射をする、弾薬手は新たな弾薬を準備するという、こういう段取り、順序で使用されるというふうに聞いておりますが、そのとおりですか。
  329. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今先生指摘のように、大変具体的な装備の諸元とその運用についてお触れになりました。担当局長から答弁させます。
  330. 畠山蕃

    畠山政府委員 今お述べになったとおりでございます。
  331. 古堅実吉

    ○古堅委員 今そのとおり認められましたが、この迫撃砲というものは、部隊としての武器使用そのものに当たるものでありまして、個々の自衛隊武器使用だとは仮にも言えない、そういう武器だと考えます。そのとおりですか。
  332. 畠山蕃

    畠山政府委員 一般論として申し上げます。つまり、迫撃砲をこのPKOと離れて使う場合の運用の仕方として申し上げますが、まさにこれは、お述べになりましたように五人の、主として五人の者が共同して行うという限りにおきまして、しかも一人の司令官というもとで運用するのが一番適当だということからすれば、これはまさに部隊としての運用に適しているということでございます。
  333. 古堅実吉

    ○古堅委員 今までこの審議などを通じて、複数人で使える武器についても個々の自衛隊武器使用についての意思がたまたま集合的に一緒になって全体として使われるようなことになったんだというふうな説明がありました。自己の生命、身体を守るというふうなことからしますと、二人以上で使えるような武器そのものを携行するということ自体が、その法案に照らして一般的におかしい。まあけん銃とか一人で持つところの小銃とかいうぐらいのそういうものであればともかくとして、そういうふうにも理解できます。  この二人以上、複数人で使うということになる武器、それも、今迫撃砲についての説明と同じような意味で、単なる個人の自衛隊、個人の武器使用ということにはならない、そういう内容になりますなということは認めますか。
  334. 畠山蕃

    畠山政府委員 複数といいましても、例えば地上用の機関銃、これは二名で射撃手と給弾手でございます。そこに指揮官というものがおるわけではございません。二人が、例えば同じ危険な状態に置かれたというときにやむにやまれず機関銃を撃つというときのことを想定していただきますと、そのときに二人で行う行為は二人の命が危ないそれぞれが共同して行う行為ということであろうかと思います。  それから重機関銃は、これは三名でございます。三名でございますが、同じように射撃時は一、二名ということで、射撃手と給弾手ということでございますから、同じ複数名といいましても、指揮のもとに動かないと作動せられないようなそういう火器と、しからざるものとがあるわけでございまして、重機関銃とか通常の地上用の機関銃といったような二、三名で行う場合があるわけでございますけれども、これは同じ危険に直面した人たちの共同の対処ということに理解できると考えております。
  335. 古堅実吉

    ○古堅委員 複数人で、二人であろうと三人であろうとこれは複数人ですから、軍隊たる自衛隊、それについての、どのような形でこの複数人が意思統一をしてやるんだというふうなことについてのそれなりの定めがあって武器というものは複数人で運用されることになっているというふうに思うのですよね。三人がばらばらに、何の意思統一も図らずに、だれかれの何の指示もなしに同時に危険だというふうに思って弾をぶっ放す。自分はそう思わぬとかいうふうなことにはならぬじゃないですか。そこはどうなんです。
  336. 畠山蕃

    畠山政府委員 ただいま御説明をしたつもりでございましたが、同じ危険な状態に二人、三人が置かれた、そういったときに、二人とも当然ながらその危険を排除しようという行動に出る、そのときに機関銃でもって共同して行うということでございますから、それは自然から出た自然の行動だというふうに思います。
  337. 古堅実吉

    ○古堅委員 それはあなた自身が現地に行ったときのことを想定して答えてごらんなさいよ。二人で機関銃を持っておって、やれ危険だというふうな形で、何のだれかれの指示もなしに、そういうふうな器用なことがすぐにできますか。そこはどのような自衛隊の運用の仕方になっておるのですか、実際に。皆さんは、武器使用、武力の行使について自衛隊法上もあります、そういう場合も、そのときにはどういう武力の行使、武器使用になるということについては、それの立場で自衛隊訓練しておるのでしょう。危ないということで、二人の場合にでも三人の場合にでも思い思いで銃をつかんでやりっ放す、そんなことになるんですか。そんな武器使用のやり方がありますか、どこに。
  338. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 二、三人で、二人で例えば機関銃を持っておるという場合に、今防衛局長の言われたのは、そういう侵害、危機が発生した場合に、おのずから個々人の判断が共通なものになってくる、合一するということだろうと思います。実際上はそういう可能性は、大きな部隊ではございませんし、大きな部隊が大きな兵器を使うということではございません。あくまで生命、身体を守る、自衛隊個々人の生命、身体を守るということが原則になっておりますから、私はそのように解します。  したがって、先生は、例えば機関銃を二人で操作するのに、一人は嫌だ、一人は使うというようなことが理論上現実にあり得るかというようなことだろうと思うので、しかし我々、実際問題として現地でそういう事態になれば、やはり二人が機関銃を、自分の身にかかってくる危険を排除するということで意思の合一があり得ると私は思います。
  339. 古堅実吉

    ○古堅委員 自衛隊のこういう武器使用については、今、PKFに参加した場合のことではなしに、一般的に、例えば外国からの侵略があった、自衛のための武器使用、武力の行使が許されるというふうなことを仮定したということになった場合の武器使用などについても、そのように思い思いで個々の隊員が使うというふうな訓練をしておるのですか、実際に毎日毎日。
  340. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 防衛出動あるいは間接侵略に対しまして、国内におきまして自衛隊がその目的・任務を果たす場合には、整然と上下関係がございますし、部隊としての指揮命令系統も明確でございますし、武器使用についても、そんなばらばらでやるというようなことはございません。  しかし本件は、その派遣国におきまして、いわば海外でございますね、最小限度のその任務、武器を使わない任務に私どもが参加するわけでございまして、その場合は必要最小限度の兵器に限定していこうという精神は、この法律の中にはっきりしていると存じます。  ただ先生は、その法律の中に明記してないじゃないかということをおっしゃられると思いますけれども、それは国連の具体的に派遣する場合に、本当にもう小銃とけん銃だけでいいんだという場合もありましょう、あるいは、それだけではいけない、機関銃も持っていこうということもございましょう、それはそのときどきの協議と、事務総長の必要と認める限度におきまして内閣総理大臣が、本部長実施計画によって決めるときに、明確にこれを定めていくわけでございます。したがって、国内における防衛出動その他の場合とおのずから趣を異にしていることだけは御理解いただきたいと思います。
  341. 古堅実吉

    ○古堅委員 こういう説明は成り立たぬと言うのですよ。あなたは、法律上は百七ミリの迫撃砲や八十一ミリの迫撃砲まで禁止されていない、これは携行できるような仕組みにしてある、その他にも複数人で使うような武器を携行する、そういう複数人で使う武器については、日常日ごろは、そういう上官、それから下級という上司の関係があって、武器についてはきちっと使用する方法はできておると言う。そういう日ごろの武器の使い方ということとは別個に、PKFに参加する場合には、そういう上司、下部職員、部下というものの関係なしに、新たな複数人で使う武器の使い方というものを指示して行かせるということですか。その武器使用のあり方というものは、PKFに参加する者については改まるのですか。
  342. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  国内におきましても単独行動をとる場合がございますね。例えば歩哨あるいは警戒、そうした場合における単独行動の場合でも、これはその個人が判断しなければなりません。そういう意味では、私は先ほど全般的に、防衛出動等の場合を全体として申し上げましたけれども、個々の訓練形態につきますとそういうことも十分ありますから、その場合の慎重な武器使用等々については当然自衛隊としても訓練をしているはずでございます。
  343. 古堅実吉

    ○古堅委員 このPKFに参加する自衛隊というのは、その他の一般の隊員についての武器のかかわりとは全然別ですよね。個々に採用される協力隊というのは、それ自体が装備して行くなどとかいうふうなものとは異なって、武器現地にあって必要という場合には貸与するという関係になっています。ところが自衛隊部隊等として装備していくということになっています。違いますか。
  344. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 部隊等としての派遣は、個々人で行く場合と違う条文規定で設けられていることは御指摘のとおりでございます。しかし、部隊等として行動する場合に、部隊等としての武器を全体としてどうだというような観点でこの武器を携行するものではございません。あくまで二十四条の目的に沿うような形で武器を携行するわけでございます。その点は個人の募集された隊員等に小型武器という定義で規定されておりますけれども、基本的には、そうその精神において私は変わるものではない、こう存じております。
  345. 古堅実吉

    ○古堅委員 自衛隊等部隊等として武器を装備するというのは法案上は明確じゃありませんか。
  346. 畠山蕃

    畠山政府委員 武器の携行について特に条文があるわけじゃございませんで、武器使用の条文として、自衛隊部隊参加の場合でいいますと、二十四条三項で、これこれこれの武器使用することができる、それの範囲内で携行するというのが従来自衛隊法上の場合でも常にそうでございますけれども、使用権限を与えればその使用権限の範囲内において携行するという従来からの解釈でございます。
  347. 古堅実吉

    ○古堅委員 第六条の二項、ホの(2)、それには「部隊等」ということで、「規模及び構成並びに装備」について定めるというようなことになっておるのじゃないですか。
  348. 畠山蕃

    畠山政府委員 御指摘の点は、実施計画の中身として定める条文として、部隊等の規模、構成並びに装備という規定実施計画の中身として定める内容としては書いてございます。
  349. 古堅実吉

    ○古堅委員 それ以上自衛隊部隊等が装備するというのは、どこに定められておるのです。あくまでも部隊等として装備していくのでしょう。
  350. 畠山蕃

    畠山政府委員 ここに書いてございますのは、国際平和協力業務を行う自衛隊部隊等の規模、部隊等の構成並びに装備ということでございますから、「装備」というのが単独で書いてあるということでございます。
  351. 古堅実吉

    ○古堅委員 この「装備」というのは「部隊等」には係らないという、そういうことですか。
  352. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ここのホの「自衛隊部隊等」というこの引用は、(1)、(2)ですね、このことについて定めるということでございまして、必ずしも自衛隊部隊の編成に即応した装備ということにはなっておりません。したがいまして、個々の隊員が持参する、私が今まで申しておりますように個人の生命財産を守る、そういう個人個人の携行する武器全体としてどういう装備を持っていくかということが書かれているものだと存じます。したがって、「部隊等」という主語があるからといって、その部隊編成に伴う武器、装備を持っていくというふうに直ちには読めないのではないか、私はそう思います。
  353. 古堅実吉

    ○古堅委員 その内容がどのような形でなるにしても、個々人について現地に行ったときに武器を貸与しますなどとかいうものとは異なって、部隊等という一つの組織としてその装備は規定されているということには違いないのじゃないですか。違いますか。
  354. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま私が申し上げた点は、装備、この中に武器があるわけですね。装備の方が武器より広い概念です。いろいろもろもろの装備が、後方支援の設備、装備が必要でございましょう。  武器に関して今の御質問でございますが、武器はあくまで個人が二十四条の目的に従ってこれを使用するわけでございますから、その限度において各個人に携行はさせます。総量として部隊で、部隊の編成規模が決まれば小銃は何丁ということははっきりするでございましょう。しかし、あらかじめ定められた部隊編成の戦力としての兵器体系、兵器組織、そういうものを一体としてここで定めているものではないことは、これはもうはっきりしております。隊員個々人のあくまで兵器を予定しておる、こういうように私は思います。
  355. 古堅実吉

    ○古堅委員 この「自衛隊部隊等の規模及び構成並びに装備」ということ、その具体的な内容についてどう説明されようと、PKF派遣、参加していく自衛隊というのは、個々人が武器を持っていくなどとかいうものは異なって、自衛隊という組織部隊として防衛庁長官指揮も受ける、そういう形で組織的に派遣される、それに見合うような形でそれなりの装備をしていくということには違いないんでしょう。その通常自衛隊そのものが装備しているそのままであるかどうかは別問題です、それは。
  356. 畠山蕃

    畠山政府委員 日ごろから自衛隊部隊として保有している武器をそれは携行することになるわけでございますが、その武器は、その数量及び種類ともこの法案の二十四条三項の目的に必要な限度において実施計画で定めた上携行するということでございます。したがいまして、日ごろの部隊としての行動に必要な武器というわけではございません。
  357. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間がだんだん差し迫ってまいりましたので次に進みますけれども、政府はこれまでこの法案審議を通じて、大事な要求されている資料も提出しないままにこの国会審議を乗り切ろうという終始そういう態度をとってまいりました。先ほど来私が引用いたしました国連作戦規定SOP訓練マニュアル、そういうものもその一つであります。また、これまでこの委員会答弁のありました自衛隊は内訓をもって武器使用についての指導をしているということにかかわる問題もございます。このPKFについてもそういうことが審議の必要上、国権の最高機関としての国会で大事な資料というのは提供されなければならないと考えます。提供されて、それをもとにして審議を行う、それがフェアなあり方だというふうに考えます。  これまでも問題がありましたが、SOP訓練マニュアル、これを再度国連にかけ合って、この国会に要求されているように提供する、そのことについて総理、必要な段取り、指示をして、その要求にこたえていただけるかどうか、お伺いします。
  358. 丹波實

    丹波政府委員 先生がおっしゃっておられる二つの書類、一つはSOPガイドライン、もう一つは訓練ガイドラインでございます。マニュアルでございますけれども、この二つにつきまして国連に、国会としてそういう資料提出の要請があるけれども、出してよろしいかと照会いたしました。  これに対しまして国連側からは、本件文書は専門的、技術的な国連の内部文書であり、国連は本件文書を公開することは考えていないので、日本においても本件文書国会に提出することは差し控えてもらいたいという回答を得ております。訓練ガイドラインにつきましては、二回そういう要請をしておりますけれども、二回同じ回答が返ってきておるというのが現状でございまして、やはり国連の要請というのはそれなりに考えていかなければならないと私たちは思っております。
  359. 古堅実吉

    ○古堅委員 この大事な資料の問題について、これまでもそういう答弁があったように思うのですが、それならもう一度突っ込んで、大事なことですからお聞きしておきたい。明確なお答えをください。いいですか。  こういう国連との折衝については、いつ、どなたが、国連のだれに対して、どのような方法で問い合わせをされたか。それは文書でか口頭でか。それだけを明確にお答えください。
  360. 丹波實

    丹波政府委員 訓練マニュアルにつきましては、ことしの四月と九月の二回、本省から国連我が方代表部に対しまして訓令を発出いたしまして、国連代表部が国連事務当局とかけ合ったということでございます。  SOPガイドラインにつきましては、本年十月、外務省から国連代表部に訓令を発出しまして、同じ手続で問い合わせをした、こういうことでございます。
  361. 古堅実吉

    ○古堅委員 私が尋ねているのは、だれが、どなたに、そこを明確にしてください。もう一度お答えください。代表部などと言って、わからぬですよ。
  362. 丹波實

    丹波政府委員 これは外務大臣名の訓令を波多野国連代表部大使に発出し、波多野大使の、代表部の担当官が国連事務局の担当官に問い合わせた、こういうことでございます。
  363. 古堅実吉

    ○古堅委員 それじゃ文書の回答がありますか。文書の回答がありますか。
  364. 丹波實

    丹波政府委員 代表部から本省に対する回答は公電で参っておりますが、担当官と国連事務局担当官とのやりとりは口頭で行われておると承知いたしております。
  365. 古堅実吉

    ○古堅委員 これは、こういう憲法の重大な問題にかかわる審議ですから、一法案のその他の審議などというものとは意味が違います。だからこそこのような重大な問題にならざるを得ません。しかも、我が国憲法というのは他の諸国に類例のない平和条項を持った憲法であります。だからこそPKO法案についてこういう真剣な論議がなされざるを得ないのです。  そういう意味合いを持ちますから、委員長、このマニュアル、SOP、それについては、今こういう御答弁がありましたけれども、国権の最高機関たる国会審議にふさわしいそういう立場で理事会でも諮っていただき、もう一度政府をしてそれを提出させるようなそういう措置をとっていただきたいというふうに思います。
  366. 林義郎

    林委員長 本問題につきましては、けさの理事会でございましたかお話をされたところでございます。しかし、せっかくのお申し出でございますから、後刻理事会において協議いたしたいと思います。
  367. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わります。
  368. 林義郎

    林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  369. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いつも一番最後ですから落ち穂拾いみたいな質問になりますけれども、脈絡があるいはないかもしれません。  ただいまも聞いておったのですが、都合のいいときには、国連がこう言っているから出せない、都合の悪いときは、国連が決めたマニュアルでもガイドラインでも日本は従わぬでいいのだ。どうなっているんですか、これは。だから説得力がないんですよね。同じ国連の言うことを聞くんだったら、ガイドラインやマニュアルも尊重しなさいよ。どうも私はおかしいと思うんですね。  それから、おとつい私が質問した内容を、きょう社会党の伊東さんが午前中同じ質問をなさいました。私の場合は時間がなくて御答弁がなくて、伊東さんの方に御答弁がありましたので、その点について、過去四回日本から国連事務総長の要請に対して意見書を出している、それを私言いました。そしてこれが湾岸戦争を境にして変わった。なぜなのか。  これについて、けさ伊東さんの質問に対して総理は、湾岸戦争が起こって、これは何らかの貢献をしなくちゃいけない、簡単に言えば、そういうふうに変わったんだ。それはそうおっしゃらざるを得ないと思いますがね。しかし実際は、私はここで議論しようとは思いませんが、実際は湾岸戦争前は米国はPKOに熱心じゃなかったんですよ。そして国連に対する費用分担金、これの滞納国でもあったんですよ、米国は。ところが、東西関係が変わって、国連が米国の思うようにだんだんなり出したから、だから国連を使い、PKO、これをこの際使った方がいい、そういうふうに変わってきたから、この米国の変化に応じて日本も変わったんだ、私はそう思うんですよ。  それを証明するものとして、おとついも要求をしました、国連PKO特別委員会というものがあって、そこの作業部会の議長さんのカナダのキルシュ氏が、どうして日本がこんなにいわゆる豹変――豹変ようなさいますが、政治改革も豹変なさいましたけれども、どうして日本が豹変したのか。それはキルシュ氏はこう言っているんです。これは作業部会の議長さんですよ、PKO特別委員会の。日本法律改正をして軍人の派遣を目指しているためにこのような態度変更をしたのであろうとちゃんとおっしゃっている。正しく見られておりますよ。  それから、別の議会筋は、日本は文民の参加を限定的なものにして、湾岸戦争前は文民文民と言っておったのに、湾岸戦争後は文民の参加を限定的なものにし、事務総長の関与を薄めようとする日本政府の意図が働いたと説明しておる。これは日本の三大新聞の一つが報道いたしております。私は議論をしようとは思いません。大体私が言っているようなことじゃなかろうか、こう思います。  それで、もう一つ。これも返答がなかった。私は、三条の、きょう伊東さんもなさいましたけれども、例の紛争前ですよ、括弧の。事前のPKF派遣。あの三条の括弧の中、紛争前の、これは私も指摘をしました。これはいわゆる中立もパアにするし、五原則のうちの同意もだめ、合意もだめだ。五原則のうちの三つもだめ、これがあれば。そうなるんですよ。もうくどくど言いません。おとつい言いましたし、きょうも伊東さんがおっしゃったとおり。先ほど公明党の山口さんは、五原則ということを非常に尊重されている。ところがこの文章は五原則のうちの三原則をパアにするんですから、これ削除したらどうですか。公明党に対して申しわけないんじゃないですか。どうですか、削除した方がいいんじゃないですか。そうせぬとあなた、公明党は納得せぬのじゃないですか。
  370. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  私は、けさの議論でもさせていただきましたですけれども、これは何分国際連合平和維持活動の定義でございまして、四十三年間のPKO活動の実態、慣行に着目いたしまして、それでこういう活動もあった。そのときに私は、具体的にレバノン監視団、UNOGILのケースを引きましたですけれども、そういうケースがあったという事実に着目いたしまして、その定義として設けたということでございます。
  371. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはもう一度慎重にお考えになった方がいいんじゃないですか。五原則のうちの三原則はこれでパアになるんですよ、パアになりますよ。あなた首振ったって、おとついときょうと、おったかね、君は。  それからもう一つ、私は考え直された方がいいと思うのは、二十四条ですね。二十四条の緊急避難のところですね。二十四条の四、「前三項の規定による小型武器又は武器使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条」、これは緊急避難の方は削除していいんじゃないですか。刑事局長、来ておられるでしょう。どういう文章になっていますか、三十七条は。二項に「前項ノ規定業務上特別ノ義務アル者ニハ之ヲ適用セス」。業務上特別の義務ある者とはだれか。これはもう定説になっている。これは工藤さんも御承知と思いますけれども、この業務上特別の義務ある者というのは、警察官、自衛官、消防職員、船員、したがって海上保安庁も入る。医師、看護婦などの職務上一定の危難に身をさらすべき義務を負う者をいう。もしこのPKOが通ったら、この職務上一定の危難に身をさらす義務を負うことになるんですね、これはみんな。そうすると、この三十七条の緊急避難というのは当てはまらないことになる。だからこれは、私はここで即答はいただこうとは思いませんけれども、考え直された方がいいんじゃございませんかと言いたいのです。
  372. 野村一成

    野村政府委員 この二十四条の規定、まさに刑法第三十五条の正当行為についての規定でございますが、公的な武器使用につきましての要件、実はこれは、使用の場合、それから危害を与える場合、二つの場合がございまして、この本件二十四条の立て方といたしましては、使用の面について非常に厳しい限定をしております。まさに生命または身体の防衛のためということで、いわば自己保存のための自然権的な権利という、そういう限定的な使用しか認めておらないわけでございまして、したがいまして、そういう枠の中でなおかつ刑法三十六条あるいは三十七条の緊急避難の場合に……(楢崎委員「三十七条を言っている」と呼ぶ)三十七条の場合の例えば侵害の急迫性とか、そういった要素というのは、なおかつやはりつけ加えておく必要があろうかというふうに考えたわけでございます。したがいまして、警職法第七条ただし書きにもならいましてこの第四項を置くこととしたものでございまして、規定しておく必要があるというふうに考えております。
  373. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたはだれでしたかね。私は刑事局長にお願いしたはずですけれども。あなた刑法のこと知っているの、そんなに。もういいですよ、時間がないから。これは一応考えていただいた方がいいと思うんですよ。これが通ったらこの隊員は緊急避難の適用を受けないことになるんじゃないか、私はそう思いますよ。
  374. 井嶋一友

    井嶋政府委員 この二十四条の条文は、一項から三項におきまして、それぞれの隊員武器使用できるいわゆる使用要件を定めておりますが、四項におきましては、人に危害を与えるような方法で武器使用する要件を定めておるわけでございます。その要件といたしまして、本来条文として書きおろせばいいわけでありますけれども、他の武器使用法律と同じように、刑法三十五条、三十六条の要件を引用するという形で書いておるわけでございまして、今委員が御指摘のような三十七条全体をここへ持ってきているわけではございません。したがいまして、今御指摘の三十七条二項の適用の有無というのは、全くこの法律では触れておらないと申しますか、規定をしておらないわけでございます。  ところで、自衛隊員が外国へ行きました場合におきまして、これは一般人と同様でございますから、国内で義務づけられておるような義務づけはないわけでございますので、危難に赴く義務があるというわけではございませんから、三十七条二項が外国におけるこの種の平和業務の遂行の中で認められるという例はまず起こり得ないだろうと考えております。
  375. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは時間のあるとき議論しますけれども、これは一考を要しますよ、一考を。  それから、前の廃案になった協力法と今度の協力法、大分違っていますね。これも伊東さん随分やられた。ところが、今度派遣隊員の名称はどう言うんですか。――派遣隊員の名称もわからぬのですか。
  376. 野村一成

    野村政府委員 私、正確を期して――国際平和協力隊員と……
  377. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これですよね。これで審議しろというんですよ、名称もよう知らぬで。
  378. 野村一成

    野村政府委員 国際平和協力隊員でございます。
  379. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう話になりませんよ、このくらいのことで時間を要するようじゃ。今何とおっしゃった。よう聞こえぬやったよ、やじが多くて。あれでしょう。じゃあ私の方から。間違いであったら間違いと言ってください。  一条に、今度の場合は「国際平和協力隊の設置」と書いてあるでしょう。国際平和協力隊と呼ぶんじゃないですか。違うなら違うと言ってください。総理、言ってくださっていいですよ。しかし前回廃案になったのはどうなっておるか。国連平和協力隊になっておる。どうして国連が国際に変わったんですか。いや、笑い事じゃないんです。重大な意味があるんだよ。
  380. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。先ほどの点の方からお答えいたします。一第四条第二項第四号で国際平和協力隊というのが設けられます。それから第十条におきまして、それの隊員、「協力隊の隊員」というふうに書いておりますので、したがいまして、国際平和協力隊員というのが正式の名前でございます。突然のお尋ねでございましたので失礼いたしました。  それから、ただいまの国際ということでございますが、基本的には国際連合を中心とした活動でございますけれども、何分PKOのほかにこれは人道的な国際救援活動というのも入っておりまして、その意味でやはり国連というよりも国際という言葉の方がより適当というふうに判断した次第でございます。
  381. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 恐らくそう答弁されるであろうと私は予想しておった。ところが、防衛庁長官は、何遍もあなたは、きょうですよ、国際平和協力隊とおっしゃらなかった。国連平和協力隊とおっしゃった。それほど名称についてあなた方は関心がない。今おっしゃったことが事実なんだ。これは前と違って人道的な国際救援活動というものが入ったから、広くなったんです、前より。広くなったことは、悪くなった。悪くなったんだ。そうでしょう。いいですか。  じゃ、一つ一つ言いましょうか。この三条の二のところの「人道的な国際救援活動」「国際連合その他の国際機関又は国際連合加盟国その他の国」が実施するもの、こうなっているんですよ。こうなりますと、国際連合の平和維持活動のように国際連合の統率のもとに行われたり国際連合によって行われる活動である必要はなくなるんですよ。どの国が行う活動でもいいことになる。国連非加盟国でもいい、こういうことになるんですよ、これは。  まだありますよ。容易に自衛隊派遣ができるようになる。この規定になりますと、国際救援活動では極めて自衛隊を海外に派遣することがたやすくなる、その名のもとに。すなわち、紛争によって被害を受けるおそれと、国際機関の決議や要請あるいは当該国の受け入れ同意があれば自衛隊を海外に派兵できる、こういうふうに広まる。そして湾岸戦争の際に大問題になったあのヨルダンヘのC130、これも当然可能になりますね。あるいは伊東さんもおっしゃったけれども、イラク、サウジアラビア、イスラエルにもこれは派遣できるようになるんですよ、自衛隊は。それから、住民が被害を受けるおそれがある、そう思えばそういう理由で自衛隊が出動できる。  そして、今度はその活動内容はどういうことになっておるかというと、ずっとイから書いてありましょう、医療から難民収容施設からずっと、輸送、通信、建設、機械。これは自衛隊がそういう活動を行いますと、実際上は戦争の準備に協力することになる、あるいは後方支援になる、戦争の常識としては。  それで、例えばこれはどういうことになるか。緩衝地帯への駐留というのが入っていますね、口で。これは武力紛争発生前にも行われ得る性格のものじゃございませんか。それから、検問、武器の搬入、搬出を検問する活動、これは武力衝突の原因になることが多いと世間では言われております。  それから、ヌの「医療」からずっとレまで、これがいわゆる後方支援になるんだ。アメリカはそう言っている。そしてタの「輸送」、これは国際連合平和維持活動と人道的な国際救援活動のために必要な「輸送、保管、通信、建設又は機械器具の据付け、検査若しくは修理」、これも軍事活動の後方支援になりますよ。なります。そして、この輸送には一体何を使うんですか。C130ですか。陸上ではトラック、装甲車、二千人の隊員を運ぶとき、海上自衛隊の軍艦、つまり自衛艦ですか、あるいはC130、あるいは今度購入されました政府専用の飛行機で、それで運ぶんですか。それは後で答弁してください。  それで結局、今度は「五 海外」となっている。これも問題です。「海外」の定義は「我が国以外の領域(公海を含む。)をいう。」ということになっていますよ。今まで我々は随分いわゆるシーレーンの問題で、まあ一千海里ぐらいだと言っておったけれども、これはパアになってしまう、全部。世界のどこでも行けるんだ、海外ということで。だから、去年廃案になった法案よりもこれはさらに危険度が大きい。私はそれを指摘したい。後で一緒に答弁してください。私は聞き損なったかもしれないが、私は法案のことを質問しているんですからね。いや、あなた方、いろいろと言って聞かしておかぬとね。  それから、社会党の山中さんが質問されたあれ、答弁が私よく聞こえなかったが、前の臨時国会のときは、いわゆる束ねるですね。これは池田さんは、撃ってもよいという判断を示すことができる。今度あなたは、撃ち方やめ。前は撃ち方始めと束ねるを説明して、今度は撃ち方やめと、始めといや、大臣が言ったことを言っているんです、私。何でそんなにたった一、二カ月で変わるんですか。どうしてそんなに変わるの。  もう一つついでに言っておきますが、いいですか、束ねるということは、私はこの前の臨時国会でも言ったけれども、こんなことは、こんなあいまいな日本語はないんですよ。いいですか。偉い人が言っている。総理大臣候補を自分の事務所に呼びつけて口頭試問をした元幹事長小沢一郎氏がこう言っている。束ねるとは何ですかとインタビューで聞かれて、それは指揮するんですよ、まことに明快に言っている。元幹事長ですよ。当たり前です。  さあ答弁してください。
  382. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生指摘の、人道的な国際救援活動についての御指摘についての部分、私の方から答弁させていただきます。  これはきちんとした枠組みがあるわけでございまして、まず、国際連合の総会とか安保理事会あるいは経済社会理事会が行う決議または別表にきちんと掲げております。そういった国際機関が行う要請に基づいて行われるということが第一点。さらには、被災民の救援のために、または紛争によって生じた被害の復旧のために人道的精神に基づいて行われる活動であるというはっきりとした規定がございます。したがいまして、そういった意味での基本的な枠組みの中で実施されるものであるということについて御理解をお願いいたしたいと思います。
  383. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 束ねるということについて最後に御指摘がございましたが、これは前防衛庁長官が束ねることもあるということを申されました。私はこれに対しまして、武器使用については、あくまで使用の主体も判断主体も個人個人である、しかし、隊員の人たちがこの際武器使用してもいいんじゃないかという場合でも、上級者が判断してそれは抑制しておいた方がいいんじゃないか、この際は、というような意味で、ネガティブな意味でこの指示を与えることも束ねるという意味ではないのかという意味のことを申し上げたわけでございます。
  384. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたはネガティブに言われたんですよね。だから、もう時間が参ったようですから一問だけしておきますが、前に政府は、ゲリラは紛争当事者ではないという答弁をなさいました。いよいよカンボジア問題が出てくる。カンボジアではポル・ポト派の一部が武装闘争をまだ行う可能性が多く残されています。そうすると、これは紛争当事者ではないから――停戦合意は存在しておるわけですね、だから駐在しておる。もし行くならおらなくちゃいけません、自衛隊さんは。そうすると、カンボジア当局はどう言っているかというと、派遣された自衛隊とポル・ポト派との泥沼の内戦が予想される、こう言っていますよ。  まず確認しておきますが、ゲリラは紛争当事者ではないんですね。これは前の政府答弁ですけれども、確認しておきます。そうすると、ポル・ポト派はどうなるか、ポル・ポト派の一部ですけれども。
  385. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)国務大臣 カンボジアは御承知のとおり、現在のヘン・サムリン政権の派と、それからポル・ポト、ソン・サン、シアヌーク、これが国民政府というものをつくって実際おったのですが、ゲリラ活動をやっておった。そこでこの一派対三派の間では内紛があったことは事実であります。それが話がついてSNCというものをつくって、そして国家最高評議会をこしらえて、それでいろんな国連の勧告を受けてやろう、停戦も実行します、こういうようなことになっておるわけですから、今派遣するしないという問題は別問題でございますが、それはポル・ポト派との内戦になるというのはちょっと飛躍じゃないかと思っています。ポル・ポト派といえども、停戦協定をした以上は、やはり守るというように今のところ我々は見ております。守らない状態になれば当然派遣はできないわけですから。
  386. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。
  387. 林義郎

    林委員長 次回は、明二十一日木曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会