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1991-11-18 第122回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年十一月十八日(月曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 大島 理森君 理事 金子原二郎君    理事 中川 昭一君 理事 船田  元君    理事 与謝野 馨君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    井出 正一君       伊吹 文明君    上草 義輝君       小澤  潔君    岡田 克也君       奥田 幹生君    北川 正恭君      小宮山重四郎君    佐藤謙一郎君       斉藤斗志二君    鈴木 宗男君       武部  勤君    中谷  元君       二階 俊博君    西田  司君       福田 康夫君    増子 輝彦君       松浦  昭君    三原 朝彦君       光武  顕君    秋葉 忠利君       伊東 秀子君    小澤 克介君       緒方 克陽君    岡田 利春君       五島 正規君    沢藤礼次郎君       松原 脩雄君    元信  堯君       山中 邦紀君    東  祥三君       遠藤 乙彦君    山口那津男君       渡部 一郎君    東中 光雄君       古堅 実吉君    和田 一仁君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         法 務 大 臣 田原  隆君         大 蔵 大 臣 羽田  孜君         文 部 大 臣 鳩山 邦夫君         厚 生 大 臣 山下 徳夫君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  渡部 恒三君         運 輸 大 臣 奥田 敬和君         郵 政 大 臣 渡辺 秀央君         労 働 大 臣 近藤 鉄雄君         建 設 大 臣 山崎  拓君         自 治 大 臣         国家公安委員会 塩川正十郎君         委員長         国 務 大 臣 加藤 紘一君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 岩崎 純三君         (総務庁長官)         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     伊江 朝雄君         (沖縄開発庁長         官)         国 務 大 臣 宮下 創平君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (経済企画庁長 野田  毅君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 谷川 寛三君         官)         国 務 大 臣 中村正三郎君         (環境庁長官)         国 務 大 臣 東家 嘉幸君         (国土庁長官)  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣 野村 一成君         官房参事官         内閣参事官         兼内閣総理大臣 荒田  建君         官房会計課長         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣 伊藤 博行君         官房内政審議室         長         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣 有馬 龍夫君         官房外政審議室         長         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一 大森 政輔君         部長         内閣法制局第二 秋山  收君         部長         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  金森 仁作君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 小池 清彦君         局長         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 関   收君         科学技術庁研究 井田 勝久君         開発局長         環境庁長官官房 森  仁美君         長         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         長         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア 小原  武君         フリカ局長         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長         外務省情報調査 佐藤 行雄君         局長         大蔵省主計局次 小村  武君         長         大蔵省主計局次 涌井 洋治君         長         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         厚生大臣官房総 大西 孝夫君         務審議官         農林水産大臣官 馬場久萬男君         房長         運輸大臣官房総 土坂 泰敏君         務審議官         海上保安庁次長 小和田 統君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省職業安定 若林 之矩君         局長         自治省行政局公 秋本 敏文君         務員部長         消防庁長官   浅野大三郎君         消防庁次長   渡辺  明君  委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委 石田 俊昭君         員会調査室長     ————————————— 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   石川 要三君     奥田 幹生君   町村 信孝君     佐藤謙一郎君   和田 一仁君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   奥田 幹生君     石川 要三君   佐藤謙一郎君     町村 信孝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する 法律案内閣提出、第百二十一回国会閣法第五  号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出、第百二十一回国会閣  法第六号)      ————◇—————
  2. 林義郎

    ○林委員長 これより会議を開きます。  第百二十一回国会内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。
  3. 与謝野馨

    与謝野委員 まず、総理にお伺いしたいわけでございますが、ここ二年ぐらい世界は随分変わったなと私は思うわけでございます。特に、昨年からことしにかけてのクウェートの問題で、国連の中を見ますと、イラクを排除するということ自体の背景には、やはりアメリカと中国ソ連決議案を通じてほぼ同一の行動をとっている。国連がよみがえったのではないかという思いもいたしますし、またソ連中心とした社会主義国の中で随分大きな変革があったわけでございます。  宮澤総理は、今後の世界というものをどういうふうに今認識されているのか、これは所信表明の中でも触れられましたが、このテレビを通じて今後の世界についてどういうような御認識をお持ちなのかをまずお伺いしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この何年間か東欧を中心に起こりました変化が、ベルリンの壁ということで象徴されますが、ソ連にも及びまして、いわば大国ソ連邦の崩壊あるいはマルクス・レニニズムの否定、共産党の解党というところまで至りましたことは、恐らく人類社会にとって何百年に一遍という大きな変化ではないかと思われます。その行く先はいまだにはっきりいたしませんけれども、いわゆる冷戦という時代が終わったということは広く認められているところであろうと存じます。  私は、願わくはそこから新しい世界平和秩序が生まれるということを、そういう平和の構築の始まりであるとこの時代をとらえたいと考えておるわけでございますが、いずれにしてもそれは人類社会にとって非常に大きな歴史の変化であろうと思われます。  他方で、ただいま与謝野委員が御指摘になられましたように、たまたまそういう時期に湾岸危機というものが起こりまして、ソ連がそのように変質をしつつあった結果、国連安保理事会中心にしまして御指摘のように米ソの協調というものが成り立ち、そして中国もそれに対して比較的協調的な態度をとったということから、安保理事会における拒否権の行使というものが湾岸危機に関しましてはほとんど見られることがなく、ほとんどと申しますか見られることがなく十幾つの決議案成立をいたしました。  このことは、おっしゃいますように湾岸危機の収拾に際して国連が前面に登場したということであったと存じます。これは、おっしゃいますように国連がもう一遍生まれ変わったといいますか、あるいは国連創設以来初めて理想の姿に近づく努力が行われていると申しますか、それは見方によると思いますが、この新しい時代における国連の役割というものは恐らく大きくなっていくであろう、またそれは望ましいことである。大きく申しましてそのようなとらえ方をいたしております。
  5. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、国際貢献という言葉が非常に多く使われるようになってまいりました。国民にとりまして、国際貢献というのは一体どういう方法で日本はやったらいいのだろうか、なぜ日本はそういう国際貢献と言われるものをやらねばならぬ責任ができているのか。これは文化的な貢献とか技術的な側面とかいろいろな方面での貢献がございます。現に日本が続けてまいりました政府開発援助、ODAというもの、こういうものも相当先進国の中では優等生に近い貢献を私はしているのではないかと思うわけでございます。  そこで、今回は人的貢献という話に日本責任が移ってきたわけでございますが、まず総理に、その国際貢献全体に対してどういうお考えをお持ちなのか、なぜ日本がそのような貢献人類社会にしなければならないのか、そういう基本のところを、総理の思想と申しますか原点というものをお伺いしたいわけでございます。
  6. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 近代社会において地球に住む者同士が一つ運命共同体であるということはだんだんに認識が深まってきておると思います。そのような意味では、個々の個人社会におけると同様に、国際社会においてもやはりお互いが飢餓にさらされ、あるいは絶えず生命を脅かされるという状況からお互い同士救い合わなければならないという人類愛というのは一般的に認められておるところであろうと思います。  またその間にあって、我が国が戦後これだけの繁栄をいたしました。ともかく、かつて援助を受けた立場から自分自身は食うに心配のない立場になりましたにつきまして、やはりそのような国際社会に対して当然国際社会の比較的裕福な一員としてなすべきことが多くあるのではないかという認識も、これも国民の間に広がってまいっておると思います。  せんだって本会議で承っておりましたときに、公明党の委員長でいらしたかと思いますが、富める者の務めであるということをノーブレスオブリージュという言葉で表現されました。私はそういう認識の仕方もあるであろうと存じます。また他方で、それは我が国自身自分自身のためである、いわば比較的富める者として務めを果たすことが自分自身のためでもあるという認識も広がってまいったと思います。それに加えまして、我が国がこのような国際の平和に対して軍事力をもって貢献することができないという国でございますから、それ以外の立場貢献をしなければならないという、そういう国民的な合意も比較的つくり上げやすいということも、これに加えて申すことができると思います。
  7. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、いよいよ日本も人的な貢献をしなければならない時代に入ったという認識が、私もございますし、政府もそういうことをずっとここ持ち続けてまいったわけでございます。それが今回の二つ法案になっていると私は思うわけでございますが、この二つ法案につきまして、これがなるべく早くできた方がいいという、それについての御決意を総理から承りたいと思っております。
  8. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほども与謝野委員が御指摘になられましたように、昨年湾岸危機が起こりましたときに、今や経済大国となった我が国がこれにどのように対応すべきかということについて国内でいろいろな議論がございました。財政的な貢献だけでは不十分である、何か汗を流さなければならないだろう、しかし血を流すということは、これは残念ながら我が国立場ではできないといったような、いろいろな議論がございました。その結果、人的貢献というなし得る範囲のことはやはりしなければならないというほぼ合意国民の中にできつつあったと私どもは考えるわけでございますが、それがこのような形になって国会の御審議をいただくことになった。たまたま湾岸危機の真っ最中にこの議論はいろいろな展開をいたしまして、どのような貢献の仕方、どのような法案が最も適当かということについて各党間にもいろいろな御議論がございましたが、このような形が最も適した形であろうということで御審議をお願いいたすことになりました。  たまたまそのような経緯がございましたので、我が国立場を比較的早く、これ以上遷延することなく国際的に明らかにいたしておきたいと存じますし、また偶発的なことではございますけれどもカンボジアをめぐっては、かつてない規模での国連平和維持活動が行われようといたしておることもございまして、可及的速やかにこの法案成立をさせていただきたいというのが私どもの念願でございます。
  9. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで外務大臣、ことしも東南アジアを多分御訪問されていると思いますが、カンボジアの現状というものを詳しく御説明をいただけないでしょうか。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 詳しいことは事務当局から報告をさせますが、御承知のとおり、カンボジアは十三年ですかの長きにわたって内乱が続いておったわけです。これについては一派と三派の戦いであったわけではございますけれども日本カンボジア和平を何とかしてやりたいということで、去年の六月、海部総理東京会談を開くというようなことをしました。しかしながらこれは、国連でもいろんな勧告案を出してきたわけですが、裏についているのは、どうしてもそれはベトナムとの関係、あるいはポル・ポト派を応援しておった中国との関係等が、これは公然の秘密ですから、何としても中越の正常化というものが進むことは非常に有意義であるということが一つ。それから、それによってベトナムカンボジアから撤兵をし、お互い相互不信感をなくするということによって話し合いが進んできた。そういうことで国連勧告も一〇〇%とは言えないでしょうが、国連勧告に限りなく近い程度の譲歩をし、そしてパリで会談が行われて停戦合意し、しかも暫定機構が、SNCができて、そしてさらに国連先遣隊が今派遣をされておって、そこでいろいろ今後のカンボジアの選挙をどうしてやっていくか、停戦監視をどうしてやっていくか、新しい軍事とかその他の行政機構をどうするかということは今後にすべて残されておることであります。  大体そういうところが今までの大ざっぱな経過じゃないかと思います。もっと詳しいことを必要ならどうぞ。
  11. 与謝野馨

    与謝野委員 国連局長にお伺いしたいのですが、まあ仮にこの法案成立する、それからカンボジアの方もこのPKOを受け入れるということになった場合、手続というのは一体どういうふうに進むのか、だれがどこで物を決めて日本にはだれが物を言ってくるのかということを、簡単で結構ですから手順を追って御説明をいただきたい。簡単で結構です。
  12. 丹波實

    丹波政府委員 簡単にお答え申し上げます。  カンボジアのこの暫定機構という、PKO活動が予定されておりますが、現在国連事務当局といたしましてはカンボジア調査団を既に一部送り、これからも現在送ろうとしておりますが、いろいろな側面におきましてどういう活動ができるかという調査をいたした結果、恐らく調査結果はことしの末から来年の初めぐらいに出ると思います。それを受けまして安保理事会が、それではこういう計画でいくということを了承するという了承をいたします。それを受けまして国連事務当局各国に対しまして、あなたの国にはこのような分野でこのような活動をしていただけないかという要請各国に対していたします。  日本にもそういう要請が来た場合には、その要請中身規模、期間、そういったことを、その時点でこの法案がもし成立いたしていたといたしますならば、この法案に基づきまして、そのいろいろな法案中身における手続というものからそういう国連要請してきた問題を検討いたしまして、要請を受ける場合にはそれなりの決定を国内でいたして参加していく、こういう手続になろうかと思います。
  13. 与謝野馨

    与謝野委員 紛争が起きている場所に国連平和維持隊が行った。一体、紛争再発を何によって抑えるのか。力によって抑えるのか、あるいは国連の旗のもとに国連平和維持隊というものが存在するというその強い存在感紛争再発を抑えていくのか、そこが非常に大きな私は考え方の差であろうと思うわけです。水戸黄門が「この印籠が見えぬのか」、こう言ったように、この国連の旗が見えないのか、国連の旗の後ろには世界のたくさんの国がついているんだぞ、そういう一種国連という権威とまた国連がそこに存在するというその存在感で実は紛争再発を抑えるというのがこのPKO活動の私は本質だと思っているわけです。  その辺を宮澤総理あるいは渡辺外務大臣、その根本のところですね、力で抑えていくのか存在感で抑えていくのか、国連の旗で抑えていくのか鉄砲の弾で抑えていくのかという考え方の差が物すごく大きいわけです。その辺を国民にはっきり閣僚の皆様方がおっしゃっていただかないと、国民の多くは何か力で抑え込むんじゃないかというふうに誤解されている方もいるわけです。その辺を総理あるいは外務大臣から、そこに存在するんだ、国連の旗が立っているぞ、国連の旗の後ろにはたくさんの国がついているぞというその存在感こそ、まさにこのPKO活動の私は本質だというふうに理解をしているわけです。その理解が正しいのかどうか、総理のお口からぜひお伺いしたいと思っております。
  14. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この法案が示しておりますとおり、国連平和維持活動は、力によるいわゆる暴力と申しますか武力と申しますか、そういうものによるのでなく、非強制立場から国連権威と、御指摘のように国連権威、それは旗と申すことができましょうが、説得力によって平和の回復と維持をしようというものでございます。その点は与謝野委員のまさに御指摘のとおりのことでございますが、つまり、世の中の紛争というものが終結をいたしますときに、お互いになかなかメンツがあってやめられないとか、あるいはもう大体先は見えているんだがどうもしかしとか、いろいろな事情があることがございます。そういう場合に国連というものが出てきて、まあまあそうおっしゃるなと。我々がひとつあとはきちんとしますし、みんなが言うんだからお互いもうここで紛争を中止されてそして平和を回復されたらどうですかと、そのような、先ほど印籠ということをおっしゃいましたけれども、つまり、世界人々の意見を代表する国連というものが間に入りますのでどうぞひとつここで矛をおさめられたらどうですか、そういうことによって和平が成り立ち、平和が回復する、そういうことをまさに目的とするのが国連平和維持活動である、御指摘のとおりと思います。
  15. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、停戦成立後にそういう国連平和維持活動PKOというものが始まるわけですけれども、今のお話ですと非強制また武力によらない、そういう存在感によって紛争再発を抑えていく、にもかかわらず武器を携行していくのはなぜか、そういう疑問を国民は持っておられると思うわけです。東京という町は比較的安全な町ですけれども、にもかかわらず警察官はピストルを携行されているわけです。その武器武力、そういう概念というのは非常にわかりにくい概念でございまして、力で抑え込むわけではない、国連という権威紛争再発を抑止するという概念ならば、なぜそれでは武器、小火器を持っていく必要があるのか、こういうことを心配している国民の皆さんはたくさんおられるわけで、その疑念をやはりはっきり払拭しておく必要があるのではないかと思います。  そこで、そのPKO活動平和維持活動武器との関係をはっきりしておいていただきたいと思うわけです。
  16. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 まず、この国連平和維持活動が可能となる場合でございますが、先ほど与謝野委員の言われましたように、これは一種権威説得により、いわば暴力でなく平和を維持回復しようとするものでございますから、それができる場合とできない場合がございます。極端なことを申しますれば、今のユーゴスラビアのような場合でございますと、国連平和維持軍に間に入ってくれと申しましても、十三回も平和の協定をやってそれが全部破れるというような状況では平和裏にこの平和を維持回復するということは事実上困難であろうと思われます。  したがって、そういう場合には、この法律が想定しておりますような国連平和維持活動というのはなかなか可能でない。ですから、こういう活動が可能である場合と可能でない場合、それは法律にございますように、関係当事国がもうお互い和平をやろうという合意をし、そしてその周辺国もどうぞ国連にお願いしますというような、そういうまた合意があって、その上で初めて国連平和維持活動ができる、そういうふうな法律の構成でございますから、どんな場合にも出ていっておさめられると、こう考えているわけではございません。そこで、そういう場合に限定されますから、したがって、自然、武器の使用の危険というものは、可能性というものは低いわけでございます。  そこで、しかしそれなら全くそれがなしに済むかと申しますれば、現にその平和維持のために出ていった人々自分の身体上のいろいろ危険を何かの拍子で、紛争が終わったばかりでございますから受けるという、そういう危険はないわけではない。その場合にはやはり自分を防衛するということはこれは必要なことであろうと私どもは考えますし、さらに国連当局は、場合によりましては、そのような全体の平和維持活動そのものが脅かされるようなときには最小限でその妨害を排除することも必要なんではないかというふうに国連当局は考えておられる場合があるようでございますけれども、私どもは、その後者の場合には、やはりある力に対してこちらが武器を持って任務を遂行するために抵抗を排除するという場合には危険な状態に陥りやすいと考えますので、この法案はそういう場合に武器を使用するということは考えておりません。私どもは、任務に従事する人々自身の危険が脅かされた場合に、いわば何と申しますか、俗語で言えば正当防衛とか緊急避難とかそういう場合にのみ武器の使用を認めざるを得ないであろう、こう考えております。  冒頭に申しましたように、全体として武器の使用がなければこの平和維持活動本質的にできないというようなことであれば、それはそもそも平和の合意ができていない、停戦合意が本当にできていないということでございますから、その場合にはそもそも平和維持活動そのものが可能でない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、報道されるところによりますと、国連武器の使用を認めるというのがある範囲だとすると、日本法律で書いてある武器の使用の範囲というのは、国連で書いてあるいろんな規則より日本の方が狭い。そういう場合、国連日本要請をしてきた場合に、武器の使用の範囲を国連より狭くとっている日本要請してくるのかという問題と、それから、武器の使用の範囲が狭い日本国連の全体の活動の一環として入った場合、その全体と日本活動との整合性は保てるのかどうかという問題が実はあるわけです。それをどういうようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  18. 丹波實

    丹波政府委員 事実関係の問題がありますので、申しわけありません、私の方から答弁さしていただきたいと思います。  先生おっしゃるとおり、この武器の使用に関します国連関係文書あるいは過去の慣例、プラクティスと申しますか、その二つに整理されて考えられておるわけでございますが、一つは要員の生命等を防護するためというのが一つ、それから二つ目は国連のPKFの任務の遂行を実力をもって防げる企てに対抗するためという二つに分けられてございます。  第一番目の点は、これはまあ自然権的な人間の権利としてどこの国でも認められるケースだと思います。問題は第二番目のケースで、日本から出ていった要員がその武器を使用した場合、憲法上の問題が起こり得るのではないかということで、第二番目のケースには日本の要員は武器を使用しないということがその五原則の、第五原則の中に入っているわけですが、問題は、過去の実態をいろいろ各国に当たって調べてみますると、あるいは国連の文書に当たって調べてみますると、任務が実力によって妨げられたその瞬間に鉄砲を発射してよろしい、発射したということではございませんで、国連はまず説得しなさいということを言っております。それから、場合によっては空砲を発射しなさい、それで警告をしなさいということを言っております。そういう意味で、第二番目のケースも、いろんな場合を見ますと第一番目のケースになっているケースがあるんではないかというのが私たちの考え方であり、かつ国連考え方であります。  したがいまして、私たちが第二番目のケースにつきましては日本としてはしない、しかし、PKFの活動はきちっとそれでもできるんではないかという質問を国連にしたのに対して、自分たちもそういうふうに思っておるということでございまして、したがいまして、文書上はあるいは実態上は若干の違いがございますけれども、全体としては機能できるというのが国連考え方であったというふうに私たち了解しております。
  19. 与謝野馨

    与謝野委員 五原則、五原則と言われているものが法案に盛り込まれたわけですが、一体五原則というのは何かというのも国民皆様方はまだ完全な御理解をしていただいていないと私は思いますので、この際、その五原則を盛り込んだ、五原則というのは一体何か、五原則の意義は何かということをお伺いしたいと思います。
  20. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今、五原則という御指摘がございましたですけれども我が国の部隊が平和維持隊に参加する、あるいはPKO活動に参加するに当たりまして、特に憲法第九条との関係で問題がないようにということでつくりました基本方針でございまして、次の五点から成ります。  まず、紛争当事者間の停戦合意があるということ、合意の原則。それから二番目に、PKO活動そのもの、あるいは、そして我が国PKO活動への参加につきまして、紛争当事者の同意があるということ、同意の原則。それから三番目に、PKO活動が中立の立場でなされるということ、中立の原則。四番目に、以上今申しました三つの原則のいずれかが満たされないような状況が生じましたときには、我が国の部隊の派遣そのものを終了できるということ、四番目でございます。それで、最後の五番目といたしまして、武器の使用につきまして、武器の使用は派遣要員の生命、身体を防衛するための必要最小限に限られる。  以上五つの原則を定めておるわけでございます。
  21. 与謝野馨

    与謝野委員 総理あるいは外務大臣、今の五原則を伺って、これで憲法第九条の規定を完全にクリアできたと確信をされているのかどうか。それをお伺いしたいと思います。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 今説明がありましたように、武器の行使はやらないというのが原則ですから、じゃ何で武器を持っていくんだといっても、これも総理から説明があったように、全く平和なところへ行くんだったら何も要らぬのですよ。それを、今まで戦争をやっておって、それで戦争を停戦だという約束をしても、はねっ返りがいるかもしらないし、ゲリラがいるかもしらないし、だから見に行くわけですから。だから、とっさのときに思いがけないことがあるかもしらぬ、そのときに自分の生命を守るためにそれは撃つこともありますよということが一つですね。  それから、実際は、パトロールなんかするときのは、選挙監視なんというのは武器は持っていかないわけですから、ある程度、面として、敵と敵のお互い戦争しておる中に入る場合だって、面として展開するというような場合にある程度の武器を持っていくということはあるんでしょう。しかしながら、最初から、そこでその任務遂行のために最初からもう武器使用をするということがわかり切ったような案件は日本は参加はしないということなんですよ。だから、それは国連との話をしてあるわけですから、日本はこういう法律でやるんですよと。実施計画、計画をつくることになっているでしょう、計画をね。どういう状況のもとにどういう計画をつくるか。そのときにすり合わせをするわけですから、だから最初から武器使用を前提としているというようなものには参加できない。やむを得ないんですね、これは、憲法との絡みですから。ちょっと物足りないという人があるかもしれませんが、これは仕方のないことだと思います。
  23. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、国民が知りたいのは、国民武器のことをとてもよく知っているわけです。この間クウェートで戦争もありましたし、武器の種類も非常によく知っておられるわけで、武器武器といって、大砲は持っていくのか、戦車は持っていくのか、飛行機は持っていくのかというときに、一体日本がこの平和維持活動平和維持隊に持っていく武器というのはどの範囲までなのか。ピストルなのか、小銃なのか、機関銃なのか、あるいは大砲なのか、戦車なのか、飛行機なのか、そのある限定がこの法律の中でなされているわけです。ここまでは持っていっていいよと。その範囲を教えていただきたい。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これはもう言うまでもなく、戦闘機や戦車やミサイルなんか持っていくはずがないわけですから、ごく限られた必要最小限度のものであって、状況にもよりますが、事務当局からお答えさせます。
  25. 与謝野馨

  26. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 自衛隊の部隊が派遣される場合の携行する武器の問題でございますから、お答えを申し上げますけれども、ただいま御議論のように、この武器等につきましては、実際には実施計画というものを閣議決定いたします。そして、それに基づく実施要領というのをつくることになっておりますが、その中ではっきりと、どういうものを携行するということが具体的には決められることでございます。  しかしながら、今の法制上の建前といたしましては、ただいま御議論のありましたように、任務の遂行のためには武器使用はいたしません。そして、自己または同時にそのそばに存在する他人でも自衛隊でもよろしゅうございますが、そういう場合の生命を防衛するためにのみこの武器の使用を認めております。これは今御説明のあったとおりでございます。  ところで、同時に、法制的に申しますと、国連事務総長が必要と認める限度でこれを定めることにもなっております。そして、我が国としては、平和維持活動の趣旨に照らしまして、今申しましたような趣旨で決めていくわけでございますが、これまでのところ、平和維持隊に参加いたしております通常の例によりますと、今御指摘のように、けん銃、小銃、機関銃及び装甲車等でございまして、この装甲車は重装備みたいに感ぜられますけれども、これはまあ兵員輸送用の装甲車でございます。輸送目的を達成するために持っていくというようなものでございまして、けん銃、小銃、機関銃、装甲車であり、通常の場合はほとんどこれで十分対応できるということでございます。  一方、今までのPKOの実績、実態を見ましてもそういうことで可能でございますから、私どもといたしましては、これらの武器の範囲内で十分任務が達成できる、このように考えておる次第でございます。
  27. 与謝野馨

    与謝野委員 防衛庁長官に重ねてお伺いしたいのですが、自衛隊はちゃんと訓練された人たちがワングループというか部隊で参加するわけですが、その部隊の人たちが、例えばピストルを提げている、小銃を持っている。そのやむを得ない正当防衛あるいは緊急避難的なときに使わざるを得ない、一体それはだれが判断するのか、だれが命令するのか、だれが逆に使っちゃいけないという命令をするのか。その辺ははっきりできるでしょうか。
  28. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この点につきましては、自衛隊員がというように法律上はなっております。したがいまして、原則はあくまで判断する主体も実行する主体も個人でございまして、自衛隊個々人の判断によって決めるということに相なっております。
  29. 与謝野馨

    与謝野委員 そうしますと、部隊としての武器使用が許されるのかという問題が一つ。それから、何も一人のとき襲われるわけではなくて、十人とか十五人いたときに自分たちの身体、生命を守る、そういう状況も発生し得るわけで、その十五人がいたときには、その十五人の団体の意思ではなくて、個々の意思がそういう同じ方向に向かうというふうに考えるのか。その辺の法的な考え方の整理をちょっと防衛庁長官にしていただきたいわけです。
  30. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま申しましたように、法制上は自衛官がということになっておりまして、その行動主体、判断主体はあくまで自衛官であるという建前になっておりまして、部隊によって武器使用というようなことは考えておりません。  しかし、先生御指摘のように、実際に数人の人たちがこの監視あるいは停戦監視任務に従事する場合に、結果として、その個々人の判断が、その危害に対しまして行動する場合に結果として同一の行動をとり得ることは十分考えられるわけでございまして、あくまで私どもは、部隊等による武器使用というものは考えておりません。
  31. 与謝野馨

    与謝野委員 停戦合意が崩れた場合、日本はそこから撤収するということになっておる。人によっては日本だけ逃げて帰るのかという議論もあるわけですが、私自身理解としては、この平和維持隊が存在する、平和維持隊が存在するのは停戦というものがあるから平和維持隊が存在する、停戦が崩れたときには観念的にはもうこの平和維持隊は存在しなくなる。ただ、物理的には平和維持隊がそこに残っているからその撤収まで時間がかかる。これは、平和維持隊が存在するというのは停戦が前提ですから、その合意、前提が崩れれば観念的には平和維持隊というのは存在しなくなるというふうに私は理解しているわけです。その辺の整理はやはりきちんとしなければなりませんし、その手続は一体どうなっているのか、総理にそのことを実はお伺いしたいわけです。
  32. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それはまさに、先ほど私がユーゴスラビアの例を申し上げましたように、こういう場合にはその停戦というものが、停戦合意というものが何度やっても破れるということは、実は成立していないということでございますから、こういう場合にはそもそも平和維持活動というものが可能でない状況であるということであると存じます。  自余は政府委員からお答えをいたします。
  33. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘停戦合意が崩れたという場合でございます。そういった場合には、まず業務を中断するという手続があろうかと思います。その場合に、この現地の指揮官があらかじめ本部長内閣総理大臣でございますが、それがつくります実施要領に定められた判断基準に基づいて行う場合、あるいは現地からの報告に基づきまして実施要領の変更の形で本部長が伝える場合、二通りがあり得ると考えております。そして、しかるべく時間を待ってなおかつそういった停戦合意が崩れた状況が回復しないという場合には、部隊の派遣そのものを終了させるという手続に入るわけでございますが、その場合には、国連事務総長に対し適切な事前通告をした上で派遣を終了させるわけでございます。その国内的な手続といたしましては、法案の第六条第七項の規定に基づきまして閣議によって我が国政府はそういう派遣の終了を決定する、そういう手続をとっております。
  34. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで日本だけ脱落するという結果になるんじゃないか、それは恥ずかしいことではないか、そんなことは国連活動の中で可能なのか、こういう議論をする人もいるわけです。私は、時間のギャップはありますけれども、タイムラグはありますけれども、実際は国連平和維持活動全体がそこで存在しなくなる、法律的、観念的にはそうだと思っていますが、日本だけ何か逃げ帰るような法律をつくっているんじゃないか、日本だけ撤収するのか、そんなことでいいのか、そういう心配をする。それは逆に言うと、ほかの人たちが残っていて日本だけ帰るということが一体事実上可能なのかどうか、そういうことを非常に心配されている国民が多いわけでございまして、その点はやはりもう一度明確にしていただきたい、総理にお願い申し上げます。
  35. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま政府委員が申し上げましたように、いわゆる五原則の前提になっております諸条件が破れました場合には、与謝野委員が言われますように、基本的に客観的に見て実は国連平和維持活動というのが不可能になったという状況であろうと思われます。  そのような状況に際して、我々はまず我々の活動を中断をする。中断をいたします意味は、場合によりましてもう一度停戦合意というものがもとに戻って可能になるかもしれない、そういう期待を込めての中断であろうと思いますけれども、それでもだめなときには、もともとこの行動は無理であったというふうに判断せざるを得ない。そのような状況判断が、我々が派遣いたしました部隊と、それから国連当局の判断とがそう基本的に異なるわけはございません。同じ局面で仕事をしておるわけでございますし、しかも国連との間には常に状況判断の交換をいたしておりますから、おっしゃいますように、そういうときにはもう基本的にこの話は無理だったということの共通の認識が私は生まれてくるのが普通であると思います。
  36. 与謝野馨

    与謝野委員 シビリアンコントロール、ちょっと難しい言葉ですが、戦前の明治憲法では統帥権の独立というようなことで、全く軍の活動総理大臣ですら力が及ばなかったというような法律、憲法上の構成になっていたわけですが、戦後はちゃんと総理大臣が全体をコントロールする、しかも総理大臣についてはこの国会が、申しわけないですがコントロールをする、そういう構造になっているのだろうと思います。そういう文民統制の構造と今回の国連平和維持隊との関係で、文民統制についてどういう配慮をされているのか、その点について国民に御説明をいただきたい。
  37. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。特に法案との関係で御説明させていただきます。  まず、シビリアンコントロールにつきましての基本的な考え方と申しますか、今先生御指摘のとおりでございまして、手続面におきましては、自衛隊の部隊等を派遣する場合には、それに先立ちまして、必要に応じまして安全保障会議の議を経まして、また部隊等は、閣議決定をいたします実施計画、それから本部長内閣総理大臣でございます本部長が決定いたします実施要領、それに従ってのみ国際平和協力業務に従事するという体制にございまして、こういった点からもシビリアンコントロールには十分配慮されているというふうに認識しております。  なお、国会との関係につきましても、この法案では第七条で、政府が実施計画の決定等基本的には閣議決定が行われるその都度遅滞なく国会に報告することになっておりまして、その国会の御審議の結果を踏まえまして計画を改めるような機会もあるわけでございまして、その意味でもシビリアンコントロールについて法案では十分配慮されているというふうに考えておる次第でございます。
  38. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、国会とこの法律の実施との関係ですけれども、今いろいろなことを報告をするという話です。そこで、この個々の平和維持活動について国会の承認が必要だ、いや承認は必要ない、あるいは事後承認でもいい、あるいは、最初承認だけして送り出して後知らぬ顔するよりは、その活動自体をフォローしていった方がいい、それに国会が関与した方がいいとか、いろいろな意見があるわけです。国会承認をやると機動的に国連要請に対応できないという意見もありますし、いややはりやった方がいいという意見もありますし、それぞれ個々心は揺れ動いているわけですが、総理、今、国会承認とこの法案との関係についてどういう御心境なのか、お伺いしたいわけです。
  39. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど御質問がございまして、政府委員からいわゆる文民統制につきましての法案における配慮事項を申し上げたところでございますが、国会承認が必要だと言われます御主張の中に、いわゆる防衛出動であるとか治安出動であるとかいうことについてもそうなっておるではないかという御質問がしばしばございます。  これはしかし、防衛出動、治安出動の場合には、現実に非常な危険が我が国自身に迫っておりまして、しかもその出動によって国民の権利義務、あるいは場合によりましては生命財産そのものが脅かされるという事態でございますから、その際に国会の御承認ということはこれは当然のことであろうと存ぜられますが、この平和維持活動は、同じく大切なことではございますけれども我が国自身に急迫不正な危険が迫っておるわけではございません。そしてまた、したがいましてこの活動によって我が国民の権利義務あるいは生命、身体等が脅かされるわけでもございません。そいうことでございますから、軽重と申しますか、軽重という言葉は適当でないかもしれませんが、我が国自身に差し迫った死の危険等と国民自身の生命、権利義務に直接に関係のある事態ではない、大切なことではありますけれども、そういう事態ではないという点が私は基本的に違うであろうと存じます。  次に、国連の事務総長から要請がありまして平和維持部隊を送るというときに、やはりそれはかなり機動的に対応しなければならないことでございましょうし、また、国会の御承認を要するということでございますと、国連事務総長あるいは国連当局我が国とのいわば約束をいたします段階で、これは条件つきの約束にならざるを得ないと存じます。そのような我が国協力について国連当局がいわば不安を抱くであろうということは当然考えられることでございますので、我が国としては、約束をいたしましたらそれはやはりきちんとした、条件つきでない約束をいたすことが適当ではないかというふうに考えております。
  40. 与謝野馨

    与謝野委員 それで外務省当局に伺いたいのですが、よその国、他の各国はこのPKO活動国会との関係をどういうふうにやっているのか。承認をやっている国もあるでしょうし、日本のような法体系の国もあるでしょう。それを少し御説明いただきたい。
  41. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  私たちいろいろな国に当たりまして調査いたしましたけれども、このPKO要員派遣の主要な貢献国でありますところの北欧諸国を初めとしてほとんどの国は、この要員の派遣の決定に当たりまして国会の承認を条件としてはおりません。ただ、オーストリアは国民議会の事前の承認が必要とされておりますけれども国連からの派遣要請に即時にあるいは機動的に対応できるよう現在この承認制度を見直し中であるということでございます。また、アイルランドも議会の事前の承認を必要といたしておりますが、非武装のPKOへの派遣あるいは一定数以下の派遣については承認は不要となっております。その他の国につきましては先ほど申し上げましたように、私たちが調査した限りにおきましては、承認制度をとっておる国は今のところはこの二カ国だけを承知いたしております。
  42. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで私は、日本としても国際貢献という意味からも、できるだけ早くこの法案成立させて国連要請にこたえられるような体制づくりをしておく必要がある、ぜひこの国会成立できるように政府も頑張っていただきたいと思っております。  そこで、日本よりもはるかに人口の小さい国、あるいは日本よりはるかにGNPの小さい国もこの国連平和維持活動に多数参加しているわけで、日本国民はそういう事実はまだよく理解はしておられない様子でございますので、一体そういう小さな国で、小さな国と言ったら失礼ですが、人口の小さい、日本よりGNPの小さい国でも一生懸命国連協力をしている、そういうので幾つか国連局長に、どういう国が例えば国連平和維持活動に参加しているのか、幾つか例を挙げていただきたいと思います。
  43. 丹波實

    丹波政府委員 これまでのPKOの歴史は四十三年間ぐらいございますけれども、その間、世界の約八十カ国の国が延べ五十万人の要員を送っております。その中の国で今先生がおっしゃったような国といたしまして、例えばアジアの国を挙げますと、フィジー、あるいはネパール、ビルマ、バングラデシュその他の国が該当すると思いますし、例えばアフリカでしたらエチオピアとかギニア、あるいはマリ、ザンビア、ケニア、そういった国があろうかと思います。中南米諸国からも例えばパナマとか、ペルーとか、トリニダードとか、ジャマイカとか、そういった国。その他いわゆる小さな国、たくさんございます。八十カ国が参加しております。
  44. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、日本も人並みにやはり国連平和維持活動に参加する、そういう法的な整備をする必要があると思います。  ただ、外務大臣に伺いたいのは、日本の周辺のいろいろな国々は、やはり第二次世界大戦の思いもございまして、日本が、そういう自衛隊というものが海外に行くこと自体についてはある種の懸念を持っていることは確かであるわけでして、やはりそれらの国々に我々のこの法体系、我々のとろうとしている活動についてよく説明する必要もありますし、御理解もしていただく必要があるのではないかと思っております。それについて今まで日本政府が一体どれだけの努力をされたのか、お伺いしたいわけです。
  45. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、政府政府でそれぞれの大使を通じて相手国の外務大臣その他に法案の内容の説明等はやっております。  私も、外務大臣になるつもりじゃなかったのですが、ことしの三月のころに東南アジアの首脳部と会談する機会がありまして、そのときいろいろ話をしました。確かに懸念を持っているのは事実です。特に年配者に多いという話でした。六十歳以上ぐらいの当時の戦争を知っている人たち。そこで彼らの言うのは、それはやむを得ないでしょう、日本もあれだけの国になったんですから、しかし、カンボジアあたりに出てくるときは、日本だけが一人で、一人ということじゃない、一国ですな、一国だけでのそのそ出かけられちゃちょっとぐあいが悪い、やはり国連の旗のもとでとか、そういう場合はアメリカと一緒にとか、首脳者との会談をやってみて、そういうのが多かったですよ、個人的見解ですが。  ですから、今回まさに国連の旗のもとででありますから、それはよくわかってはいるのですよ。しかし、今までのいきさつ、建前がありますから、やはり慎重にというのは慎重にと言わざるを得ないということの現実もございます。
  46. 与謝野馨

    与謝野委員 この法律ともう一本法律が出ていまして、国際緊急援助隊。バングラデシュで水害があった。助けに行けば人の命が助かるというのに日本は今の法律では助けに行けない。  それで防衛庁長官にお伺いしたいのですが、国際緊急援助隊に対する取り組みの決意をお伺いしたいと思います。
  47. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今回、国際緊急援助隊法の一部改正をお願いしておりますが、これは、自衛隊がこれに参加して今おっしゃったような国際的な救援活動に関与していく、そして国際的な責務を果たしていくということでございまして、私どもはこうした平和的な国際貢献、これは自衛隊としても十分経験、知識あるいは組織力等を持っておるわけでございますから、これを派遣いたしまして十分その責めを果たし、国際的な要請にこたえたい、このように思っております。
  48. 与謝野馨

    与謝野委員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひこの法律成立して、日本国際貢献、その責任を果たせるその日が来ることを私どもは待望しております。総理以下の御健闘をお祈り申し上げます。  ありがとうございました。
  49. 林義郎

    ○林委員長 次に、岡田利春君。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題になっております国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案について以下御質問をいたしたいと存ずる次第であります。  私は、質問に入る前に林委員長にお願いがあるのでありますが、本法案は前国会、海部内閣が提案をした法律案でありまして、しかも今国会に継続審査になっている法律案であります。しかし、自民党の総裁選挙の結果、内閣が総辞職をして新たに宮澤内閣が誕生いたしました。いわば自民党政権ではありますけれども、内閣がかわったその後、継続審査の法律案をこれから審査をするのであります。私は、そういう意味で、従来の継続審査の法律案とは違って、新内閣のもとでより慎重に審議をされなければならない性質のものであると理解をいたしておるのであります。  したがって、委員長におかれましても、既にこの金曜日、来週月曜日は中央、地方の公聴会を開催する日程も理事会、本委員会で決まっておるのでありますが、特に法案の審査につきましては、そういう面を十分加味をされて、慎重な上に慎重な審議を進められるように期待をいたしたいと思いますし、お願いをいたしたいと思いますので、委員長の御所見をまず承っておきたいと思います。
  51. 林義郎

    ○林委員長 岡田委員に申し上げますが、御趣旨はよくわかりますが、委員長といたしましては今後とも濃密なる審査を行っていくつもりでありますので、皆様方の御協力を切にお願いいたす所存でございます。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、この法案審議するに当たって、昨年国連平和協力法案審議をいたしたわけですが、その節にも私はその審議に参画をいたしたのであります。加藤官房長官が当時の委員長でありましたが、しかし、この法案国民理解するところを得ずしてついに廃案になりました。  その廃案になった以降、考えてまいりますと、いわば国民の意思はこの法律案は認めないという決定でありましたが、政府の対応は、この法律案で実行しようとした事柄について、いわば現在の憲法を解釈で行う、あるいはまたそれに関連する無理な法律案の解釈によってそれぞれ実行してまいった、こう思うのであります。  その第一は、自衛隊機の派遣の問題でありまして、自衛隊法百条の五の一、そして、しかもこれは施行令の百二十六条の十六、これに根拠を置いて、いわば国会政府合意事項であったのにかかわらずこれを無視して、一方的にこの自衛隊機の派遣を特例政令で決められたわけであります。もちろん、多くの国民の方々がこれに注目をして、ボランティア活動を行って民間の飛行機を飛ばす、その結果この自衛隊機は飛ばずして、この特例政令は去る四月に廃止をされておるのであります。当時法案を担当した官僚の諸君は、これはもう法律の解釈限界を超えているという感想すらも漏らしておるのであります。  あるいはまた、国民の支持があったとはいえ、掃海艇の派遣の問題。自衛隊法九十九条の解釈、法律を改正せずして、いわば我が国周辺の海上の安全のために機雷を除去できるという任務、これを拡大をしてペルシャ湾まで及ぼした。もちろん、ペルシャ湾は我が国の重要なエネルギー資源の供給先でありますけれども、しかしその場所は今すぐ航路になる地点の掃海ではなかったことも事実でありますし、またこの派遣にはむしろ制服組が先行をし、しかもそういう中で外務省がこれを追認して派遣せざるを得ないというようなことも伝えられておるのであります。こう考えてまいりますと、この掃海艇の問題はまさしく法律の解釈、でもできないことを閣議決定で一方的に行った。これは法治国家のなすべきことでありましょうか。  主権在民の我が国の憲法、この精神を遵守をするとするならば、こういう政治の運営というものがあっていいのでしょうか。私は非常に疑問に思うのであります。ですから、こういう法律の運用をされますと、すべて政令は勝手につくられ法律は解釈をされて、いわばどんどん問題が提起をされていくということになるのではないでしょうか。まさしく国民はこの点について今大きな心配をいたしておるのであります。そういう立場で今国民はこの法律案審議の行方を見ているのではないでしょうか。  私は、そういう意味で考えますと、この法律案をずっと内容を読んでまいりますと、私に言わせるとこの法律案は、国際連合平和維持活動等に関するというよりも、まさしく我が国が今日まで祖国防衛の任務を与えている自衛隊のいわば自衛隊等海外派遣法、こう言った方が非常に適切な法律案ではないかと思うのであります。自衛隊は全般にこの法律の内容のどこのポジションにも派遣することが可能であります。文民はこの法律の内容では派遣できない部面がはっきりとあるのであります。まさしくそういう意味で、もし自衛隊が海外に行くとするならば、姓は自衛隊、名は国連ということになるのではないのか、姓は日本、名は国連ということになるのではなかろうか、こう私は言わざるを得ないのであります。そういう一つの危惧の中で今この法律案審議が始まろうといたしているわけです。  新しく内閣総理大臣になられて内閣を組織された宮澤さんの、この本委員会に継続審査の法律審議するに当たっての姿勢といいますか、所信を率直にお聞きいたしたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のように、湾岸危機が起こりましたときに、我が国がどのようにこれに対応し、また国連協力すべきかということについては、国内にいろいろな議論がございました。国民もいろいろ議論をされましたし、お互い政治の場におる者といたしましても議論をし、また国民のお考えにも耳をお互いに傾けてまいったところでございます。  何分にも初めての事態でございましたから、正確に我が国が何をするのが一番いいのかということにつきましては、長い議論がございましたし、今日といえどもまだそれが定着をしたとは言いがたい部分ももちろんございます。しかしながら、概して申しまして財政的な貢献をするということについては国民はこれを認めておられ、一歩進みまして、しかし金だけで済ますのでは十分ではないのではないかという御議論が強くございまして、一方で、しかし海外において我々は武力行使をするということはこれはできない、血を流すことはできない、しかし汗を流すという余地はあるのではないかという、こういう国民の中に強い御議論がございました。その具体的方策は何かということにつきましてやはりいろいろな御議論がありまして、結局のところ、我々は国連が行ういわゆる平和維持活動にはこれは参画することができるであろうし、しなければならないであろうというふうにこの法律案は考えたわけでございます。  その際に、しかしこの国連平和維持活動を具体的に調べますれば調べまするほど、これはかなりの専門的な知識を有するものであるし、また組織的な活動も大事である。言ってみますれば、ある時期にボランティアを集めて訓練なしにそのまま送りましてもなかなか有効な協力ができないということがわかってまいりましたので、そうであるとすれば、そのような経験、知識と技能、組織を持っておりますものは自衛隊でございますから、この国連平和維持活動武力行使をするものでない、平和の維持説得国連権威によって行うという目的である限りは、やはり自衛隊を併任の形でこの仕事に当たってもらうということはしかるべきことである、最も有効に国連協力するゆえんである、このような結論に達したものと考えております。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、この法案審議する前提として二、三の問題について十分議論をしておかなければならぬ問題があろうかと思います。  その第一点は、過去の戦争体験を通じて、いわば過去の歴史を我々はどう清算をするのか。いまだ戦後の未解決の諸問題が次々と提起をされておりますことは皆さんも御存じのとおりであります。したがって、この戦後の諸問題にまず我々はけじめをつけなければならないということが第一点であります。  第二点の問題は、宮澤総理所信表明の中で述べられましたように、冷戦構造は終結をした、だが、この終わりは始まりである、新しい時代の始まりである、こう述べられておるのであります。この新しい時代の始まりが間違うと悔いを千載に残すことになるのであります。それだけにまたこのスタートは重要であると認識をしなければならない、かように思います。なるがゆえに、私は、この新しい時代に向けて我が国が軍備管理について、軍縮についてどういう政策と姿勢をとるか、このことがやはりまず明らかにされなければならない問題ではないかなと思います。  そして第三には、自衛隊が警察予備隊として発足をして既に四十一年の歴史を経過をいたしておるのであります。その間、我が国の憲法と自衛隊、国会とのかかわり、そしてまた国連という、我が国の外交の中心として国連外交を展開するというそういう立場に立って、今ロンドン・サミットでも問題が提起された国連に対して一体我々はどういう寄与をするのか、これらの議論がまず先行されなければならない、こう思うのであります。  そういう議論の上に立って、当面するこれらの法律案についてどう我々は国民合意を形成するか、こういう姿勢が私は極めて基本的な姿勢でなければならない、こう思います。残念ながら、そういう前提について詳しく議論する時間もなかったようでありますし、前特別委員会でもそのような掘り下げた議論は行われていないと議事録で承知をいたしておるのであります。  私は学校を出て初めて社会に出ましたが、当時、朝鮮半島から強制連行されている労働者が炭鉱で働いておりました。私は炭鉱のエンジニアでありますから、私の現場には六十名の朝鮮人がおり、日本人は十一名でありまして、私は七十一名の切り羽の担当係員をしたのが社会に出た始まりなのであります。そして昭和十九年、北海道の炭鉱の一部、石炭はもう輸送がきかない、したがって全員転換をせよという徴用指令を受けて、私は朝鮮人六十五名の引率小隊長として九州の大牟田の三池炭鉱に実は転換をしました。そのとき通産省で輸送隊の責任を負っていたのが実は田中龍夫先生であったのであります。無事に朝鮮人労働者を連れていくことができました。  そして私の着いた三池炭鉱はそのときどういう状況かというと、朝鮮人労働者だけではなくして、中国山東省の捕虜の人々が働いていました。また、オーストラリアの俘虜、オランダの人も含まれておったようでありますが、これらの方々も三池炭鉱の坑内で重労働に実はあえいでいたのであります。その後、私の与えられた現場の担当には、中国人、山東省の捕虜の人々と一緒に働くという経過になったのであります。私は、三池炭鉱からその後、旭川の第一師団の第三部隊に入隊をいたしました。  私の昭和二十年のときというのは、私の父親は、当時、アメリカ本土を爆撃する帰り切符のない長距離爆撃機を飛ばすその飛行場、計根別飛行場の建設に徴用になっておったのであります。私は長兄は当時アッツ島要員でありましたけれども、急遽変更して、サハリン、樺太で、上敷香で終戦を迎えました。三年間の抑留生活を終えて帰ってまいりました。私の三兄は当時中国の山東省に住んでおりまして、現地徴兵が行われて、そしてこれも中国から無事に家族ともども帰ることができたわけであります。私のすぐの兄貴は、関東軍から南下しまして沖縄の戦線に参加をして、首里の戦闘から与座に後退をして、そこで実は戦死をいたしました。私は旭川で技術幹部候補生でおったのであります。私の弟は、当時満州の撫順炭鉱の養成所におったのであります。これが私の家族の昭和二十年の状況であります。  これが私の政治家としての原点であるわけです。それは私の政治家としての原点のみならず、我が国の新しい日本を目指す、我が国のいわゆる原点でもなければならない問題だ、こう思うのであります。そういう中から我々は平和憲法を採択をして、この四十六年、今日の日本の繁栄を築いてきたのではないでしょうか。私は、四十一年間我が祖国を防衛するのみの任務を与えた自衛隊が、今日海外にそれぞれあらゆる分野に派遣をされる、こういう事態に当たって、そういう原点というものをもう一度見直すことが大事だと思うのであります。  私は、そういう意味で、まず宮澤総理の言うなれば戦争体験と反省といいますか、それらについてもきょう率直に承りたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま、岡田委員の戦争及び終戦についての御体験を非常に感慨深く承りました。一定以上の年齢の者にとりましては、おのおのの戦争、おのおのの終戦の記憶がございます。  長く申しては恐縮でございますが、私自身は、終戦が近づきましたころには大蔵省で戦争保険の支払いをいたしておりました。当時、毎日毎日全国が焼けてまいりますので、国が実質上それに対して保険金を支払っておりました。支払いました保険金は三千円でございます。これは家が買えるほどの金でございましたが、保険料は三千円に対して十二円でございます。  私のいたしておりましたことは、そういう保険契約を保険会社を通じてさせることと、実は、毎日毎晩焼けていきますので、人は三千円をもらって早く立ち去りたい、しかし、焼けている地区を認定するということは非常に難しうございますので、私が大蔵省におりまして何々町全焼という認定をいたすことによりまして、個々の災害の認定等々細かい事務を全部省きまして、三千円を持って皆さんがおのおののところへ帰られる、そういう仕事をいたしておりました。その間、一度召集を受けました。といったようなことが私の戦争体験でございますが、召集につきましては私は丙種合格でございました。右肺浸潤ということで帰されたわけでございますけれども、終戦までその保険の支払いを続けた。  考えてみますと、もう一遍こういうことをしてはいけない。その後すぐ続きまして占領が始まりまして、私は占領軍との交渉に八月十五日の直後に誕生いたしました東久邇内閣のもとで折衝に携わりまして、それが講和会議まで続くといったようなことでございましたが、二度とこういうことをしてはならないという痛切な個人的な体験を持っております。ただいま岡田委員の言われましたことには共感を覚えることが少なからずございます。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、ちょうど沖縄戦士と同じ年配である渡辺外務大臣のお話も聞きたいと思いましたし、また、陸軍幼年学校を卒業して士官学校第六十一期生の宮下防衛庁長官にも実はお尋ねしたかったのでありますが、時間がありませんので省略をいたしたいと思います。  私はそういう意味で、この戦争終戦当時の状況のいわゆる証人である、こう私自身は思っておるのであります。私はそういう意味で、今我が国はこの過去の問題について、日中戦争六十周年を迎え、真珠湾五十周年を迎えて、きちんとやはりけじめをつけることが大事ではなかろうか、こう思います。国会決議の問題がしばしば問題になって、まだ政府総理大臣として、また自民党総裁としてこれに対する明確な見解をお聞きいたしていないのでありますが、もちろん我が党は我が党としてこの決議案の案文について提出をいたしたい、かように思っております。各政党間協議で行うのか、あるいはまた議会のこの議事運営の場を利用してそれぞれ案を持ち寄って、この宣戦布告後、最高議決機関である国会においてこれらの問題について我が国が二十一世紀に向けて平和な国家として生き抜くという決意を込めて決議案を採択することは極めて意義深いことではなかろうか、こう思います。  私はそういう意味で、自民党総裁である宮澤さんが、各党協議でまとまるならば大いに議論をしてそういう決議も出そうという御見解をお持ちかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国が過去における行為によりましてアジア・太平洋地域を初めとする関係地域の人々に多大な苦痛と損害を与えてきたことは事実でありますし、このことを深く自覚いたしております。二度とこのような不幸な歴史を繰り返さないことを国民としても決意をいたしておりますからこそ、このような憲法のもとに今日まで平和国家としての道を歩み、また、国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献をしてまいったと考えております。その努力は永遠に続けなければならないし、また、そうすることによって我々の国際社会に対する、我々が国際社会から尊敬と信頼を得るゆえんであろうと存じております。  ただいまの御決議の問題につきましては、これはもとより国会の御意向のことでございますけれども、私といたしましては今のような考えを持っております。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 一党の総裁でもあるわけですから、やはりこういう一つの問題についてきちんとけじめをつけて新しい出発をするということは大事だと思います。そういう意味で、総裁としての指導性の発揮もこの機会に強く要望いたしておきたいと思います。  私は、この法案がもし成立したと仮定して、一体我が国政府は、もし我が国の邦人がその生命や安全について重大な問題が発生をした、そしてその財産と権益も守らなければならない、中国やあるいはまた韓国においてそういう内紛とかそういう状態が発生した場合に、一体我が国は武装しない自衛隊をこの韓国や中国やアジアに派遣できますか。いかがでしょうか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 まことに恐れ入りますが、ちょっと御質問を正確に理解いたしかねましたので、恐れ入りますが、もう一度お願い申し上げます。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 この法律案によりますと、もし我が国の邦人が韓国や中国やあるいはまたアジアにおいて、言うなれば内紛とか混乱が起きて生命やまた安全を保持しなければならない、あるいはまた財産の保持をしなければならない、そういう場合に、武装しない自衛隊をそのために韓国や中国やアジアの国々に派遣することができますかということをお聞きいたしておるのであります。
  61. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この法案の仕組みでございますので、私の方から説明させていただきたいと思いますが、まず、二つ活動への協力一つPKO国連平和維持活動への協力でございます。これにつきましても、基本的には国連総会あるいは安保理の決議と、あるいはこの法案の定義にも書いてございますけれども国際連合によって統括される活動、そういう枠の中で我が国がそれに協力するという点でございます。  もう一つは、人道的な国際救援活動でございますが、これにつきましても、主として国際連合の機関でございますが、人道的な救援活動に従事する国際機関からの要請を受けまして、それでこの法案にのっとる手続を経まして、我が国としてそれに協力するのが必要であるという判断をする場合には、それに参加する、そういう仕組みでございます。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 本法案関係なく、本件については工藤法制局長官は、二月の予算委員会で本問題についての見解を述べておられるのであります。法制局長官いかがですか、私の質問に対して。
  63. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの御質問でございますが、例えば韓国等々と、こういうことでございます。我が国国民がいわゆる在留邦人としてその地にございますときに、その地におきまして保護をすべきものと申しますか、それは第一義的には当該国でございます。したがいまして、当該国で十分の保護をしていただくというのが基本だろうと思います。  それから、今自衛隊がとか、あるいは武力武器を持たないでとかいう前提をいろいろおっしゃられましたが、現在の自衛隊法におきましては、そういう形のいわゆる邦人救出と申しますか、というふうなものは困難であろうかと存じます。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在の自衛隊法では困難でしょう。が、しかし、この法律が変わって、この法律案が通って、人道上自衛隊を派遣できるとする場合には派遣できるのではないでしょうか。もちろん政治判断の問題ですよ。そういうことすらも可能になるのではないでしょうか、総理。いかがですか。そういう気持ちがありますか、そういう場合には。いかがでしょう。
  65. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 例えば、それらの国におきまして大きな災害が起こって、洪水、地震等々でございますが、その中に我が邦人がいわば罹災者であって、そして当該国が我々がそういう人たちを救済することを要請する、あるいは認めるということであれば、これはまた別の状況であるかもしれませんが、一般的に岡田委員の言われましたような場合には、外国人保護は当該国の第一義的には国際的な義務でございますから、そういうことに対して相手国の了解を得ずにあるいは要請を受けずに何かの行動に出るということは、主権を侵害する危険が極めて高いのではないかと存じます。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 政治論と法律論のあれがあると思うのですね。私はそういう意味では法律論としては可能になる、もう、こう判断せざるを得ないと思うのです。もちろん一定の要件も必要でありますけれども法律論としてはそうではないでしょうか。これは法律がないったって、工藤法制局長官の二月の予算委員会の答弁もあるわけですから。そうでしょう。長官、どうですか。
  67. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの委員のお尋ねでございますが、立法的な解決をしてはという御質問でありましたら、それなりの立法的な解決がないとは私も考えませんけれども、私の立場で現行法のことで申し上げれば、先ほどのお答えのようなことになろうかと存じます。
  68. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういう非常に重要な問題が、この法律案には含まれておるのであります。  宮澤総理は、この法律案審議をめぐって、近隣アジア諸国については、そう心配するような状況にはないということを予算委員会でも述べておるわけであります。しかし、最近、渡辺外務大臣の次官を務めておる柿澤さんがソウルを訪問した状況が報道されたり、あるいはまた江沢民中国総書記の見解、あるいはまた中国共産党の中央対外連絡部長の来日における発言等、いずれにしてもこのPKO法案に対する非常に心配、懸念の意思が表明されておるのであります。  私は、アジア諸国でもそうだと思うのです。渡辺外務大臣は、ベトナム議連の会長で、私が副会長をいたしておるのでありますけれども、そういう国々でも、もちろん経済援助について大きな期待をしておりますから、遠慮はしますけれども、表面的な発言はできるだけ間接的にいたしますけれども日本には日本らしい協力をしてほしい、こういう気持ちがアジアの諸国民の気持ちなんですから、そう指導者が考えることは当然だと思うのであります。  私は、そういう意味で宮澤総理の本件に対するいわゆる予算委員会の発言については認識にずれがある、こう言わざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のように、中国あるいは韓国、朝鮮民主主義人民共和国等々において懸念が表明をされたということは存じておりますが、先ほど外務大臣が答弁をせられましたように、我が国の過去における行為というものは、まだ多くの人々の記憶から消えておりませんので、ひとつ慎重にやってもらいたい。過去のことがないようにと先ほど外務大臣が言われましたが、国連という場から要請を受けてというようなそういうことについて十分配慮をしてほしい、そういうことであったと思うのです。それは無理もないことでございます。また、現に、中国安保理事会のメンバー、常任理事国でございますし、韓国も朝鮮民主主義人民共和国も今や国連のメンバーに、加盟国になりましたので、したがいまして、それは要請する側の立場に立たれるわけでございますから、その点についても、要請があった場合には十分に理解をされるものと考えております。
  70. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、しばしば本委員会でも質問があり、答弁がございましたけれども、当面、カンボジア状況説明があり、法案成立をすれば、カンボジアに対して、この法律の定めるところによってPKFあるいはまた停戦監視団あるいはまた選挙の監視団、それぞれ広範な、人道上といういわゆる援助等について、自衛隊及び文民、海上保安庁の人々派遣をするということになってくるのだと思うのでありますが、どうも政府は、そういう意味において非常に積極的でありますが、本当にこの法案成立をして初めての我が国PKO、PKFをこのカンボジア派遣するという、そういう判断があるのですか、率直に聞きたいと思うのです。
  71. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 カンボジアにおきましてこれからUNTACがどのような活動をするかということにつきましては、カンボジアの各派が本当に平和協定を尊重をし、そしてそれを履行していくかどうかというかなり難しいこれからの問題に当然のことながらかかってまいりますが、仮にそのような条件が具備し、現実になりましたときには、UNTACの活動は相当幅の広い、また年月を要するものになろうと存じます。  一般的に申しまして、そのようなUNTACの活動について、この法案に述べておりますような条件が具備いたしますならば、我が国が人的に、また財政的に貢献をすることが適当であろうということは、基本的に私自身はそう考えておりますけれども、ただ実際には、この初めの段階、当初のいわゆるPKFの段階にはかなりいろいろな問題が予想せられます。現実に和平が守られるであろうか、あるいは武装解除が行われるであろうか、それから武装解除をせられませんところの二割の軍隊がおのおの平和の条件を守っていくであろうか、あるいはたくさん敷設されております地雷の中から避難民が本当に、三十数万と言われます者が職を得て自分の故郷に帰れるであろうか、その辺まで考えましても、かなりいろいろ問題のある段階ではないかと思います。  他方で、この法案成立しておりませんので、我が国の平和協力隊はまだ存在をいたしておりません。したがいまして、それなりの訓練を十分に受けていないという状況にあろうと存じます。  そう考えてまいりますと、カンボジアのUNTACの活動には我々としてできるだけの協力をいたしたいと存じますけれども、この法案の趣旨あるいは準備状況等々あれこれ考えまして、どの部分に有効に協力できるかということは、現実の問題として慎重に将来に向かって考えていかなければならない問題を含んでおると存じます。しかし基本的には、許される限りで、またこの法案の精神を酌みましてできるだけの手伝いはしてまいりたいという気持ちは持っております。
  72. 岡田利春

    岡田(利)委員 PKFの場合は、それぞれ状況がすべて違ってくるのであります。カンボジアカンボジアというまた一つの他に比類、比較のできない条件があるのであります。そう考えますと、民社党さんが熱心に主張いたしております、このPKFの派遣については国会承認を求めるべきであるというのは、私は当然ではないか。私なんかはもう、例えばこの法案が通ったってアジアにPKFを派遣するなどという考え方に立つのはいかがなものか、こういう意見を持っておるのであります。私は、そういう意味で考えますと、国会承認という問題は避けて通れない問題である、こう思うのですが、素直に考えて、いかがでしょう。そうお思いになりませんか。
  73. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは先ほどもお答えいたしたことでございますけれども、我々がいたそうとしていることは、武力を使うことではなく、非強制力と国連権威説得によりまして平和維持活動協力しようということでございます。そういう意味では、基本的に我が国国連の平和協力に対する姿勢に沿うものであると存じますし、また、御懸念の点につきましては、先ほども申し上げましたように、幾つかのいわば保障措置、安全措置をこの法案の中に、文民統制が十分に行われますように取り込んでおるところでございます。  また、国連立場から申しますならば、現実の要請に対して我が国が機動的に応じてくれることは極めて望ましいと存じますし、また我が国が条件つきで要請に応じるというようなことについては国連側としてもいろいろに問題を感じるであろうといったようなこともございまして、このような法制の仕組みにいたしたわけでございます。
  74. 岡田利春

    岡田(利)委員 平和維持軍の問題についてはまだ後から詳しく質問いたしたいと思いますが、事のついででありますからもう一つお聞きいたしておきますが、では、今まで派遣されたPKF、この派遣によって犠牲者はどのような発生の状況でありますか。いかがでしょう。
  75. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  先ほども説明申し上げましたけれども、PKFの歴史は四十三年間ぐらいございますが、この間今日まで、全体として七百七十二名の死者を出しております。分けますと、軍事監視団につきましては三十四名、平和維持隊につきましては七百三十八名ということでございますが、さらに中身につきましては、いわゆる交戦中と申しますか、たまたま交戦状態になって死亡したというのもございますけれども、事故とか病死とかそういうものも全部含んだ数字でございます。
  76. 岡田利春

    岡田(利)委員 犠牲者が出なかったPKFというのがあるでしょう、一つ。いかがですか。あとは全部犠牲者が出ているでしょう。犠牲者の出ていないPKFというのは一つありますね。いかがですか。
  77. 丹波實

    丹波政府委員 突然の御質問ですけれども、犠牲者の出なかったPKFにつきましては、現在四つございますけれども、一番新しいのは、これは始まったばかりですけれども、あとの三つにつきましては、事故も含めますと死者その他はあったというふうに考えております。
  78. 岡田利春

    岡田(利)委員 西イリアンのPKF、これは六カ月ぐらいで終わっているのですよ。これは犠牲者がないです。ゼロですよ。あとは全部犠牲者があるのであります。いわばPKFには、過去の実績からいえば、わずか半年で終わった西イリアンの場合はそうでありますけれども、ほかは全部犠牲者が出ているのであります。したがって、犠牲者がPKFの場合には出ることを覚悟しなきゃならぬというのは、過去の実績からいって当然ではないでしょうか。いかがでしょうか。
  79. 丹波實

    丹波政府委員 先ほど申し上げましたけれども、過去四十三年間の中で、全体として七百名以上の犠牲者が出ていることは先ほど申し上げたとおりでございます。
  80. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問は、一時間レクチャーしてその上で質問しているのですから。突然質問しておるのではないんですよ。一時間、土曜日午後二時にレクチャーをした上で質問しておるのですから。ただ、順序が質問によって違う場合があると思うのですね。そのことをよく御理解の上お聞き願いたいと思うのですね。  そこで、私はお伺いいたしたいのでありますが、先ほど申し上げましたように、軍縮の政策を出してはどうかという話をいたしたのであります。今までの我が国の防衛政策の中で、これは安保条約もそうでありますが、ソ連脅威論、北方脅威論という前提において防衛計画が組まれ、そして我が国の防衛力が配備をされておったのが今までの実態であります。しかし、今日、冷戦が終結をした。アジアにおいてももう冷戦構造は終結をしたと言い切ってもいいのではないでしょうか。ソ連脅威論は、私に言わせればゼロである、こう申し上げたいのであります。  私も今年五回ほどソ連を訪問いたしましたけれども渡辺外務大臣も、サハリンを初め極東、そしてまたモスクワにも今年訪問されて、いろいろ向こう側とも話し合いをされておるわけであります。私に言わせると、今のソ連の実態というのは、グループの会社があって、もうその運営がにっちもさっちもいかなくなってきた、そこで和議を申請して、この和議の結果、言うなればグループの会社を解体しながら、主力は一つの大きい会社がありますけれども、十五の会社に分けて、そしてこの再建を図る、こういう状況にあるんだと思うのです。もちろん経済がそこまで崩壊をしている状況でありますから、軍事力についても、核は存在するが、軍事力的に見てもそういう崩壊過程にあると言わなきゃならぬと思うのです。  クナーゼ次官は私に、私はなぜもう少し軍縮をこの機会に思い切ってやらないのか、こう言いましたところ、軍縮をしたい、六十万でも軍隊は減らしたいと言うのですよ。軍隊を減らすということは大変だ、やはりその人の生活を考えなければならないし、また雇用も考えなければならぬ、だから我々はある程度ソフトに、ソフトランディングで軍縮をしていかなければならないというのが率直な意見です、軍縮するのにも、すぐ敏感に切り捨てるわけにはいかぬのですという話を私にしておりました。  私はそうだろうと思うのです。日本の軍縮をやる場合だってそうじゃないですか。北海道なんかは、自衛隊をぜひ存置してくださいと言ってそれぞれ陳情に来るのですから、そう簡単に切り捨てるわけにいかぬのであります。地域経済を考え、そしてソフトに、ソフトランディングで軍縮をしなければならぬことは当然だ、こう思うのであります。  そういう意味で、ソ連脅威論、まあ防衛白書も書いておりますけれども、もうそういう状況にはない。そういう意図と状況が違って、脅威を与えるソ連であるならば経済援助できないでしょう。そういう認識について外務大臣から率直に承りたいと思います。
  81. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 現時点で見れば、それは岡田委員の言う見方も私はあると思います。問題は、あの膨大な軍備管理のために国民がお金を出し続けるのか、それとも生活優先の方に国民は持っていきたいと言うのか。これは、ソ連の民主主義がどこまで定着するかということが一つじゃないか。恐らく民主主義が定着すれば、GNPの二〇%も三〇%も使うというようなことはあり得ない。だが、けれどもまだ今その段階にはいっておりません。  それからもう一つは、やはり極東に対する配備等は強化されているということも事実。もてあましているような状況もあるいはあるかもしれません。ですから、もう少し様子を見ないと、今早速それに対応して日本が防衛費を減らすということをおっしゃりたいんでしょうが、そこまではなかなか私いかぬと思うのですね。方向としては私は、そういう軍縮の方向は定着させる必要があるし、応援をしてやる必要がある、そう思っております。
  82. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在の陸上自衛隊の配置状況は、今十三個師団おるわけでありますが、そのうち北海道は四個師団、我が国の自衛隊の最精鋭部隊が北海道に配置をされておるのであります。なかんずく第七師団は我が国最強の機甲師団であります。  国際情勢が変わってまいりました。私はそういう意味で、それだけ考えても、いわば自衛隊の配備、軍縮の方向は当然目指さなきゃならないと思うのです。それをどういう手順でやるかということは、先ほど来いろいろ問題がありますから、これもやはりソフトランディングでいく方向を目指して進めていかなきゃならぬと思うのです。  たまたまきょう新聞読みましたら、宮下さんの就任のインタビューが出ておって、自衛隊は量と質があるが、量だけを考えちゃいかぬ、これからは質を考えなきゃならぬということを述べられておりましたね。私は、きょう記事を見て、やはり専門家だなという感じが実はしました。  そこで、考えてまいりますと、この軍縮の方向は避けられないのですよ。今十八歳の男子は一体幾らおりますか、日本に。百五万人しかいないのであります。これが二〇〇一年、十年たった場合には三四%減って六十九万人しか十八歳の男子は存在しなくなるのですよ。徴兵制でもしかなきゃ恐らく自衛隊の隊員を集めることもできないような状況に、若い世代の人口は減っておるのであります。  これから見ても、今のような陸上十五万のような体制で基盤整備をするなどという考え方は通用しないんではないでしょうか。私は、そういう先を見てきょうは防衛庁長官の発言があったのかな、こう思いましたけれども、いかがでしょうか。
  83. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまインタビューのことについて触れられておりますけれども、私は基本的には、今の日本の防衛力の水準というのは、防衛力大綱、これは先生御案内のとおりでございますが、五十一年度の平和時における基盤的防衛力構想というものを想定いたしまして、それに基づく数量的な問題もここで決めておりますけれども、おおむね前期、中期防衛力整備計画で達成したわけでございまして、水準としてはもう既に量的にはこの所要を満たしておる。したがって、これからは軍事技術その他の発展がございますから、十分それに即応した体制をとっていかなければいけないということを申し上げておるわけでございまして、これから我が国の防衛力整備、これは今、先生御指摘の中でいろいろ御指摘がございましたように、世界の軍縮傾向その他も十分見きわめつつやっていかなければなりませんけれども、しかし基盤的防衛力構想に立っておりますので、今直ちに日本の防衛力水準を引き下げていくということは適切なことではないと私どもは考えておりますので、そういった視点で整備をやってまいりたい、このように存じております。
  84. 岡田利春

    岡田(利)委員 我が国の航空自衛隊は、世界最優秀の、最レベルの装備を持った航空自衛隊であるということはもう国際的に認知をされております。我が国の海上自衛隊ももう一流の水準にあるということも、これは専門家が認めておるところであります。我が国の自衛隊のうち陸上の場合は、陸上の装備についてはまだ一流ではないという評価は事実であります。  だがしかし、今の防衛計画の中で、F15、これを百四十一機から今度は二百二十三機にふやす。八十二機買う。一機九十二億円するのであります。P3Cの場合は六十七機から百四機。一機百二億円するのであります。今、このF15を持っている国というのは、イスラエルが五十三機、そしてお金持ちのサウジアラビアが六十三機、もちろんアメリカは六百二十四機持っております。  こういう世界最優秀のF15をさらにふやさなきゃならぬのか、あるいはP3Cもふやさなきゃならぬのか疑問であります。何かアメリカの軍産複合体の、これを支えるためにどうしても飛行機を買わなきゃならぬという立場ではないのか、こういう疑問があるのではないでしょうか。最近、ECの方もこの航空機の問題についてはいろいろな意見が出されてきておるのであります。アメリカ自体この軍産複合体制を、構造を変えないと、アメリカの経済は成り立たないんではないでしょうか。軍事産業と普通の消費民間産業は、雇用率も一対二の違いですから、技術の完成品の集約が軍事技術でありますから雇用力は弱いのであります。  そして今、今年三千億ドルの財政赤字を出そうとしております。来年はこれが三千六百億ドルになるのではないのか、こう言われて、今国内でいろいろな論争が行われている実態であります。ソ連の方はもう騒ぎ出しました。そういう意味では、日本とアメリカのパートナーの関係においてその間の調整がきちっと行われないと、どうもアメリカの下請になってしまうのではないかという国民の心配は私は当然だと思うのですね。そういう意味では、アメリカ自体が軍産複合の経済体制をどう変革をして改革をしていくかということが問題ではないんでしょうか。  しかも最近、軍事費を百五十億ドル減らした、こう言っても、まだ二千八百五十億ドルとか今までは三千億ドルだったわけですね。世界一兆ドルの軍事費のうち三〇%がアメリカであったわけであります。これでアメリカの経済の再建、財政の再建というものは非常に困難があるということは、専門家の宮澤さんならば十分御承知だと思うのです。日米関係の問題について、こういう調整がなくて正常な両国の経済の相互依存、相互協力の体制というものは生まれていくんでしょうか。率直な御意見を承っておきたいと思います。
  85. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどクナーゼ・ロシア国の外務次官の言葉を引用されまして、ソ連としても軍縮はしたい、しかし、その何十万という人々をどうやって正常生活に復帰させるか、住宅の問題もあり食の問題もあるというのは、私は恐らく本当のお話であろうと存じます。それはソ連に限りませず、本当に世界がこれだけ大きく変化をしていくといたしますれば、その国の軍備あるいは経済構造、いろいろに変化をしなければならないことは御指摘のとおりと思いますし、私はその場合の平和の配当は、一番大きな受益者は南の国でなければならないということをせんだっても申し上げました。そう感じておりますが、そういう大きな変化がやはりかなりの時間を経過しながら現実になっていくことは極めて望ましいことと存じます。  その中で、我が国の防衛力の問題についても御指摘がありまして、方向を見誤ってはならないと存じますが、理想は常に失わないように、現実はしかし一歩一歩踏み固めて慎重に進んでまいりたいと思っております。
  86. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから進みますけれども、私は、先般の参議院で我が党の佐藤議員が質問いたしておりますが、自衛隊法ができて自衛隊が発足するときに、参議院では本会議決議が行われております。     自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議   本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条軍と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。 というのが決議案の内容であります。  これに対して、政府は、   只今の本院の決議に対しまして、一言、政府の所信を申上げます。   申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものでありまして、海外派遣というような目的は持つていないのであります。従いまして、只今の決議の趣旨は、十分これを尊重する所存であります。 という決議がなされ、木村防衛庁長官の発言が行われておるのであります。これは極めて重大だと思うのであります。  我が国の自衛隊は絶対核武装をしない、海外に派遣をしない、そしてこの自衛隊は、言うなれば専守防衛に徹するんだということを決め、徴兵制度などというものは絶対にこれは議論の対象にもしないということで推移したと思うのであります。私は、そういう意味でこの自衛隊の海外派遣という問題は、それなるがゆえに、基本的な我が国の政策の転換に当たると言わなきゃならないと思うのであります。当然この解釈は参議院が有権解釈の権限を持っておるのでありますが、これは自衛隊法については賛否それぞれあったんですよ。にかかわらず、この決議だけは満場一致で決まっておるところに重みがあるのであります。本来であれば、満場一致の決議は満場一致でなければ変更できるものではないとも言われるくらいの重さを持っておるのであります。宮澤さんはこの決議は尊重しますということを率直に参議院の予算委員会で答弁をされておりますが、この法案を出すに当たって、前のこの国連平和協力法案でもそうでありますが、参議院の議長に対して当然しかるべき政府立場を事前に説明をするなり、あるいはまた法案の内容について説明をするなり、参議院に対する政府としての対応をするのが当然ではなかろうかと思うのであります、もちろん提案をしたのは海部内閣でありますけれども。  政府としてはそういう対応をとっておられるかどうか承っておきたいと思いますし、この重さについての率直な御意見を承っておきたいと思います。
  87. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  私の承知しておりますところでは、昨年の秋でございましたか、昨年に、いわゆる前回廃案となりました法案につきまして、参議院の方にその有権解釈があるということで、参議院の方にそれを求めたという経緯があるように承知しております。ただ、その国会におきましてその解釈につきましても結論が出ていない、かように承知しているところでございます。
  88. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、そういう意味でもこの法案審議は慎重でなければならないということを申し上げておるのであります。  一つだけ、時間がございませんので、国連に関する問題について見解を承っておきたいと思います。  デクエヤル国連総長の言をかりますと、今東西の冷戦の終結はあった。これは鉄のカーテンが開かれたという意味である。だが、残念ながら今地球上、世界には貧困のカーテンがきちっと張られて、南北関係は閉ざされている。これからの国連の仕事は、このカーテンをどうして開くかということが極めて重大な問題であるという認識を示されておるのであります。  この貧困のカーテンというのは、総理、これは一枚ではないでしょう。南南問題、南の内部も大変な格差があるわけである。いわゆる南南格差、こう称しておるのであります。そうすると、貧困のカーテンというのは二重、三重になっているということが言えるんではないでしょうか。それに我々はどう挑戦するかという問題なのであります。  そのためには、今百六十六カ国のうち百カ国を超える第三世界人々の意欲を、自立的な意欲をどう引き出していくのか、こういうことも重要でありましょう。そのためにそういう発言の場を国連で確保してやるということも大事でありましょう。だが基本的に、例えば今、米の問題が問題になっておりますけれども、地球上の食糧の三分の二を三分の一の先進国人々が食べておるのであります。残りの三分の一を地球上三分の二の人類が食べているというバランスに残念ながらあるのであります。一方では飢餓があり、一方では食べ過ぎて病気になっている。  例えば、問題になった油でいえば、油はG7プラスソ連、ちょうどG7プラス1でありますこの八カ国で消費している油は、地球上の石油の六七%なのであります。あとの残った三分の一の油を、実に百五十八カ国になりますか、この国が残った三分の一の油を使って今経済運営をしているというバランスなのであります。このようなバランスがずっと変わらないでいくならば、南北問題は解決するどころか地球上に平和は訪れないのであります。紛争の源泉というものはいつまでも存在していくわけであります。  私は、そういう意味で、国連の問題についてはロンドン・サミットでもその機能を高めるということが確認をされておりますけれども、今、しかし今までのアメリカを中心とする対国連政策を考えると、これはもう国連を利用するという立場の方が多かったのではないのかなという心配があります。今冷戦構造の産物としてのPKFとかPKOを我々は議論しているのであります。これからPKOもPKFもどんどん変わっていかなきゃならぬのであります。平和の概念というものは、単に紛争がないという平和の概念ではなくして、人間が人間たるに値する暮らしができる、そういう概念のとらまえ方で平和の問題を論じなきゃならぬ時代を今我々は迎えておるのではないでしょうか。  我が国が真に国連中心の外交を進めていく、そして憲法で定めておる国際的に名誉ある地位を確保する、諸国民の信頼にこたえようとする場合に、今PKO関係のこの法律審議するそのレベルではなくして、一つの哲学と、きちっとした我が国のこれからの国際政治に対するあり方を踏んまえて、宮澤さんが言っておるように一つのこれからの二十一世紀に向けての我が国の外交、経済すべてについてのグランドデザインをきちっと決めていく、決められなくても方向づける。そして、一九九五年には二十一世紀を一応展望でき得る条件を今日本がつくり上げることができるかどうか、私はそういう立場に立ってこの国連に対する我が国の初心を貫いていかなきゃならぬのではないかと思うのであります。率直な御意見を承っておきたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘がありますように片方で貧困があり、他方で飽食暖衣があるということは、これは人類の知恵でぜひ解決をしなければならない問題でございますが、先ほど言われましたように、冷戦後の時代というものはいわゆる平和の配当が期待される、それはその問題の解決に大きな部分が向けられなければならない、私もその点では岡田委員と同様に考えております。その間にあって国連が大きな役割を果たすようになる、国連協力というものがいよいよ大切になると私どもは考えておるわけでございます。  そこで、この法案でございますが、南の国々がその平和の配当を受けて貧困から開放されていくという過程ではやはり幾つかの問題があるように存じます。それは南の国々のかなりの国々の中にいわば民族間ともいうべき闘争、争い、あるいは戦争があるというようなこと、あるいは為政者が国民のことを考えるよりは高額な武器の取得を非常に希望しているというようなこと、あるいはまた家族計画の問題もあるかもしれませんが、そういういろいろな問題について南の国々にも善処をしてもらわなければならない問題がございますが、今回の法案などは、恐らく今後いろいろ紛争が起こりやすい南の国々の場合にも国連平和維持に果たす役割は私は大きくなるであろうと考えておりまして、そういう意味ではいわゆる南北問題の解決と申しますか、南の国が豊かに平和になるためにも国連平和維持活動というものに期待されるところが多いのではないか、さように考えております。
  90. 岡田利春

    岡田(利)委員 今宮澤さんの答弁でもPKO派遣というものはふえるかもしれないという前提でちょっとお話があったと思うのであります。  今まで二十三のPKOが出されて、まだ十のPKOが現在も活動中であります。特に一九八八年から今日までわずか短い期間に十のPKOが出されておる。まさしくPKOラッシュというような感じがこの三年間するのであります。だがしかし、これからもこのPKO派遣しなきゃならない条件がどんどんふえていくという説と、一定の時期を過ぎると減るであろうという説もあるのであります。私の知るところでは、国連でも既にそのことを予測をして、今言われたこの貧困の問題あるいはまた保健衛生あるいは家族、人口の問題、環境、人権の問題、これらに対する新しいPKOの型を検討中であるとも伝えられておるわけです。それは一つのホワイトヘルメットとか、あるいはまたグリーンヘルメットとかそういう形で既に議論が行われておる。とするならば、我が国貢献する最もふさわしいPKOであろうか、こう思うのであります。  私はそういう意味で、今の冷戦構造の落とし子である現在の型のPKOだけを考えるという考え方は既に遅いのではないか、おくれておるのではないか、こう思うのでありますが、宮澤総理のお考えはいかがでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 南の国々においてなおいろいろな紛争、民族間の争い等々が予想される、その場合の国連の役割ということについて申し上げたのでありますけれども、もとよりそれは国連なり我々が果たすべき役割の一部でありまして、基本的にはいろいろな意味での経済協力あるいはODA等々によりましてそのような紛争を防いでいく、あるいは飢餓と貧困を防いでいく、そういうことが主たる我々の仕事であることに私は同意でございます。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 PKF、PKOは慣習法の一つ概念でとらまえられて今日まで、一九四八年でありますから実に四十三年間実績を積み重ねて到達したものである、こう言われておるのであります。しかし、このPKFに対する法的根拠ということが最近問題になっておるのでありますが、この法的根拠について、我が国政府はどういう理解をいたしておりますか。
  93. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国連憲章との関連もございますので、私の方から手短に御答弁申し上げたいと存じます。  ただいま先生も御指摘のように、このPKOというものは慣習的に発展してきたものであるということが言えると思います。国連世界各地における地域紛争の平和的解決を助けるための手段といたしまして、現実的に出てまいりました要求に基づきまして実際の慣行を通じて確立してきた一連の国連活動であり、国連憲章に明文の規定はございません。結論を先に言えばそういうことになろうかと思います。  御案内のように、国連憲章第六章におきましては、紛争の平和的解決に関する諸規定を置いておるわけでございます。例えば交渉、調停、仲裁あるいは国際司法裁判というような規定でございます。他方、憲章第七章におきましては、不幸にして紛争の平和的解決がなされなかった場合に備えまして、すなわち平和が破壊されたような場合でございますが、そのような場合に国連がとるべき、いわゆる強制的な制裁措置に関する規定をいろいろ置いてあるわけでございます。  そこで、PKOは、御案内のとおり停戦成立後に関係国の同意を得まして国連権威説得をもって中立・非強制立場から停戦確保等の任務を遂行するというものでございますので、このPKOの生みの親とも言われるハマーショルド氏の言葉によれば、第六章と第七章の間にあるもの、六章半だというようなことも言われております。  いずれにいたしましても、PKOは「国際の平和及び安全を維持する」という国連憲章の最も重要な目的に合致するものでございまして、そのような目的のために与えられた安保理、総会あるいは国連事務総長の権限と加盟国の非常に広い支持のもとで、実際の慣行を通じて発達してきた制度であるというふうに考えております。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の答弁ですが、最近どうなんですか、法律的根拠を与えておるのじゃないでしょうか。  その第一は、第七章の四十条、安保理における必要暫定措置、第五章二十九条、補助機関の設置、この併用にPKOの設置の根拠を与えると、大体こう意思統一をされたんではないでしょうか。私はそう承知をいたしておるのであります、答弁は要りませんけれども。そういう法的根拠も与えておるということを理解しておかなければならぬのではないでしょうか。  そこで、今若干、柳井さんも触れられましたけれどもPKOの設置の要件ということが、どうも軽く言われていて非常に重みのある内容なのであります。国連におけるPKOの設置の要件はいかがですか。基礎的な条件というものは何なんでしょうか。
  95. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この点もただいまの答弁と関係があるわけですが、憲章上明確な根拠がない、したがって、実績の積み重ねということが非常に重要な根拠になっておるわけですが、そういう実績の中で共通して見られまする特色と申しますと、まず第一に、PKO紛争国のどちらか一方にくみするような事態は避けるという原則、それから紛争当事国の同意を前提とした上で派遣され、武力行使を目的としないという原則、それから国連事務総長の要請等によりまして要員はバランスよく配置され、国際社会を代表して活動を行うというような原則、それから紛争への不介入、中立性の確保という考え方、そのようなものが代表的な原則と申しますか、基本的な考え方であろうかと思います。
  96. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はレクチャーするときによく言ってあるのですよね。答弁が国民にさっとわかるように、ひとつこういうことを質問しますから答弁してくださいということを実は申し上げておるのですが、どうも今の答弁はいかがなものか、こう思います。  いわゆるこのPKOの設置は、国連の総会もしくは安保理において決まるわけでしょう、設置を決定するのは。総会では二回例があるのであり、あとは安保理で決めておるわけです。今度我が国も安保理の一員でありますから、決めなきゃならぬわけであります。これも要件があるんでしょう、設置するのに。安保理にかけて九カ国の賛成がなきゃ設置できないんでしょう。そして、常任理事国の五カ国の賛成が含まれなければ設置できないんでしょう。こういうのをぴしっと言わなきゃだめなんですよ、どうしてあれかということを。そうなんでしょう。どうですか。
  97. 丹波實

    丹波政府委員 先ほどの先生の御質問がPKO設置に係るところの原則という御質問と理解したものですから先ほどの答弁を申し上げましたけれどもPKOが一般論としてどういう国連の決定を根拠とするかという御質問でございましたら、先生おっしゃいましたとおり、基本的には総会または安保理の決定に従う。現在までのところ、先生がおっしゃいましたように、総会の決定に基づいたものは二つ、残りは安保理の決定。次に、安保理の決定はどのような決定で行われるか。安保理の構成国は十五カ国でございまして、そのうちの五カ国は常任安保理理事国、常任安保理理事国を含む九カ国の賛成があって初めて安保理としての決定ができる。先生のおっしゃるとおりでございます。
  98. 岡田利春

    岡田(利)委員 いわば非常に重みのあるものなんです。五カ国でも、例えばソ連中国が棄権したという場合には成立するわけですね。そういうケースが随分あるのであります。ですから、事務総長が何かPKOに対して簡単に物の言える状況にある根拠ではないのでありまして、国連の安保理の権威において設置をされるのであります。  設置をするときに、ただ設置をするというだけじゃないのでしょう。その決議の内容はしかじかかくかくという内容が決められておるんでしょう。そこが重要なのであります。  一つの例を引いて恐縮でありますけれども、例えばレバノンの暫定軍の安保理の決議、これにはやはり幾つかの条件が決められておるのじゃないですか。これが大事なんですよ。この例も、私は聞きますよ、こう質問の通告をしてありますから。レバノン暫定軍の安保理の決議はどういう内容ですか。
  99. 丹波實

    丹波政府委員 先生にお答え申し上げます。  このレバノンの暫定平和維持隊、UNIFILと呼ばれておりますけれども、このUNIFILの設置決議は一九七八年三月十九日の安保理決議四百二十五号でございます。これによりますと、この任務は、イスラエル軍の撤退を確認し、国際の平和と安全を回復し、またレバノン政府が当該地域でその実効的な権威の復帰を確保することを支援することということになっております。  UNIFILの設立決議に関します事務総長報告というのも重要だと思いますけれども、その事務総長報告によりますと、UNIFILの一般原則として主なものを次のとおり列挙しております。「(1)司令官は、事務総長に対し責任を負う。事務総長は、UNIFIの活動につき常時安保理に報告する。UNIFILの任務遂行に重大な影響を及ぼす事項に関しては、安保理の決定に付される。(2)UNIFILは、自衛的性格の武器を供与される。自衛の場合以外の武器の使用は行わない。(3)UNIFILは完全に公平な立場活動する。」その他もちろんいろんな事項が含まれておりますけれども、以上が主要なことではないかと考えます。
  100. 岡田利春

    岡田(利)委員 すべてそういう内容で決議がなされ、そしてその権威を受けて事務総長がこのガイドラインについても今度は報告書を出す、こういう権威のあるものであります。キプロスの場合にも、自衛の定義、自衛の要件、こういうのを詳しく決められて、そしてPKOが初めて設置をされるのであります。  PKOというのは、拠出は強制されるものですか、それとも自発的、自主的に、国連要請に対して自発的にPKOを拠出するものですか。この点いかがですか。
  101. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  基本的に国連加盟国はPKOに参加する憲章上の義務と申しますか、そういうものは負っておりませんで、国連からの要請があった場合に、その国の判断で参加するかしないかを決めることができるということになってございます。
  102. 岡田利春

    岡田(利)委員 答弁を余りややこしくしないで。僕が聞いているのは、要請があった場合に出せるかどうか自分が検討して、出すという場合には自発的に出すんでしょうと聞いているのですよ。そうでしょう、原則は。
  103. 丹波實

    丹波政府委員 そのような意味でお答え申し上げたつもりでございますが、言葉が足りなかったら申しわけございませんでした。
  104. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、この拠出をした部隊の指揮権というのは、もう明確でしょう。指揮権というのはどこにあるか。安保理、その権限を受けた事務総長、事務総長が任命をした司令官にあるわけでしょう。国連に存在をするということを認めますか。明確に一〇〇%国連にあるということは間違いがないでしょう。
  105. 丹波實

    丹波政府委員 最近、国連は要員提供が加盟国から行われる場合に国連と加盟国との間で結ばれるであろうその協定のひな形というものを公表しておりますが、そのひな形の中に第七項というところがございまして、それによりますと次のようなことが書かれてございます。「〔参加国〕によって利用に供される人員は、」略しますけれども、「安全保障理事会の権限の下に事務総長に付与された国際連合の指揮の下に置かれる。」その指揮の中身につきまして、ほかのところは省略しますけれども、肝心なところは、要するに、事務総長はその配置、組織、行動といったようなことについて権限を有するという規定がございます。  ちなみに、軍人の懲戒処分等の身分の問題につきましてはその参加国が権限を持っておるということが第八項に書かれてございます。
  106. 岡田利春

    岡田(利)委員 指揮権が国連にあるのでありますから、そうしますと派遣された部隊の忠誠義務というものは当然そこに存在をするというのが不動の原則じゃないですか、いかがですか。
  107. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生、国連の指揮権という言葉をお使いになられたと思いますけれども、ただいま国連局長から答弁ございましたように、国連の指揮権と言われているものでございますが、これは基本的にはやはり各国からPKO活動に参加している要員とか部隊なんかが有機的に結びつきまして、申しますれば一体として機能させるために先ほど指摘ありましたような配置や移動のオペレーションを行う権限であるということでございまして、ただ、私、指揮という言葉につきましては非常に紛らわしいというふうに思っておるわけでございます。  指揮と申しますと、我が国国内行政組織法上、上級官庁が下級官庁に、または職務上の上司が下僚たる職員に対しまして、その所掌事務を遂行する上で有している懲戒権等を伴う指揮監督権というふうに理解されますので、そういったものとは、私、いわゆる国連の指揮権というのが異なっておるという、そういう理解でございます。
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 勝手な理解じゃ困るのですね。自衛隊も軍隊でありますから、軍隊の指揮権、極めて明確なのであります。したがって、指揮権が存在するということは忠誠の義務はそこに存在しなきゃいかぬのです。なぜそうしなきゃいかぬのでしょうか。理由があるでしょう。あなた方が必ず答弁する場合の国連の不動の原則の第一、中立性を厳守するという大原則、これを守るためには指揮権とそして忠誠の義務がきちっと国連に存在し得なければ中立性は保てないのではないですか。これが不動の原則なんですよ、不動の原則。  ハマーショルドの百六十八項、ここにもう明確に詳しく書いてあるのですよ。この中には、こう書かれてあるのであります。「軍隊構成員の国際的性格」、これはただし書きは別でありますけれども、   国連の準軍事活動に使用される部隊の構成員は、当然、国連に対して一定の義務を負うことになるが、その内容は、国連事務局の職員が国連に対して負う公式の義務とは、同じではない。しかしながら、国際公務員に関する国連規則の基本的部分は、この種の隊員にも適用され、特に国連の目的に対する忠誠義務を負い、また隊員の本国や他の国との関係で、国連活動国際的性格を損い「二重の忠誠」といった事態を招く行動は慎まねばならないという点で、規則の適用があるといわねばならない。この原則の遵守は、単に受入れ国との良好な関係維持するために不可欠であるだけでなく、当該隊員の提供国にとっても有益である。というのは、隊員がこの義務に反するとき(国家)責任の問題を生じ、それは当該国家の政策上も好ましくないからである。 慣習法ででき上がってきた指揮権と原則、はっきりしているのですよ。だから、併用とは言いませんよ。国際公務員とは、国連職員とは併用じゃないが、準併用なんですよ。そういう任務を持っているんですよ。これほど明確に書いているじゃないですか。この不動の原則を曲げることができますか、お伺いしたい。
  109. 野村一成

    ○野村政府委員 ただいま指摘のございました国連の指揮権と申しますのは、モデル協定で指揮という言葉は使っておりますけれども、先ほどから説明がありましたように、四十三年間の長いPKOのいわば慣行と申しますか、その中で成立してきた概念、それをモデル協定ではコマンドというふうに書いておるわけでございますが、これはあくまでこのPKOそのものの活動にちょっと着目してもらいたいのでございますけれども、やはり事務総長の要請に応じまして国家が、先ほど先生自発的とおっしゃいましたけれども、自発的にそれに応じて部隊等を参加させる、そして国連の、この法案では統括という言葉は使ってございますけれども、そのもとで国連各国の部隊とがその実施に当たるという活動でございまして、やはり各国の部隊の活動には各国の主権のもとでの活動という側面があるわけでございます。  したがいまして、私ども、先ほど国内の行政組織法上の指揮という言葉にはなじまないというふうに申し上げたわけでございますが、その点がまさにこの法案におきまして反映いたしておりまして、そういった混乱を招くため、法案の第八条二項におきまして、実態に着目しまして、指揮ではなくて指図という言葉を使っておるわけでございます。  それで、その法案の内容といたしましては、やはりこの慣行の中で生まれておりますけれども国連の指揮が、先ほど申しましたようなオペレーショナルな権限でございますけれども、それが守られてきている、各国の参加部隊等はそれを守ってきているという、それに従ってきているという慣行かございまして、それをこの法案において明確に規定しております。  それはまさに、この日本の部隊等が活動する場合に実施要領、本部長内閣総理大臣が定めます実施要領に基づいて行動するわけでございますけれども、その実施要領が国連事務総長の認可、任命された現地司令官の指図に適合しなければならない、そういうふうにはっきりと書いてございますので、その意味におきまして今先生御指摘の指揮とそれから国内法上の指図との間には何ら問題はない、そういうふうに考えております。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはガイドラインにおいても明確であって、事務総長の指揮梶、コマンドとコントロールの章にはこのことがはっきり明示をしなさいと書かれてあるのであります。  指揮系統についても、第百六十九項には明確に書いてあります。これはUNEFの関係の設立に当たっての原則であります。  総会は軍司令官を自ら任命し、これに国際公務員の地位を与え、 ですよ。いいですか、司令官に。  これに国際公務員の地位を与え、その任務の遂行上総会に対して責任を負うものとした。しかし、行政面では国連事務機構に統合され、総会から事務総長に委ねられた国連活動の執行権限に基づき、事務総長の指揮の下に置かれたのである。 明確じゃないですか。こんな、あなた、勝手に解釈できないですよ、国連の原則を。しかも、これは総会、安保理の権威にかかわる問題ですよ。その原則を勝手に解釈してはいかぬですよ。そうでしょう。疑う余地がありますか。
  111. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど来説明申し上げておるわけでございますが、国連のいわゆる指揮権と申しますのは配置や移動、部隊の配置や移動のオペレーションを行う権限である、そういうのははっきりしております。その権限の範囲の国連の指揮につきましては、私どもそれを法案の中では指図というふうにとらえまして、その指図については、国際連合の司令官の指揮に適合する、そういうふうにきちんと法案で手当てしておるわけでございます。その点、特に問題はないというように考えております。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 こういうあいまいなことを平気で答弁するというのは、我が国の政治もやはり官僚が壟断している感じさえ私は受けるのであります。  法制局長官、法律用語で指図なんていう言葉は普通ありますか。いろいろ専門家に聞きましたら、こういう言葉はないと言うのですよ。ただ、会計上の手形とかそういう関係で指図という言葉は使われている。普通、一般の法律用語にはないというのです、これは。勝手に官僚がつくったんでしょう。どうですか、法律的見解はいかがですか。
  113. 野村一成

    ○野村政府委員 法案作成に当たりましては、私ども事務当局の方から先に答弁させていただきますけれども、実は国際連合の言っております指揮権、指揮というのは、私説明申しましたけれども、上下とかあるいは命令服従とか、そういう関係ではない。しかし、それは慣行によって、やはりそれには各国が従っている、そういうことでございます。したがいまして、指揮という言葉は法令用語としてなじまない。  しからば、指揮という言葉を使わないときにどういう言葉がいいかということで指図という言葉を使ったわけでございまして、この場合の国内法上の用例、法令探索も行いましたが、例えば民法第百一条に「代理人カ本人ノ指図二従ヒ其行為ヲ為シタルトキハ」とか、あるいは証券投資信託法第二条にも、委託者が受託者に対して特定の行為を言いつけ、させるという意味におきまして使っておるわけでございます。この場合には、上下とかあるいは命令服従という関係にない状況について使っている言葉でございまして、先ほど申しました国連の指揮権という場合に最も適当な言葉であろうかというふうに判断した次第でございます。
  114. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官、いかがですか。
  115. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  いわゆる指図という言葉につきましての用語例は、ただいま内閣審議官の方がお答えしたとおりでございます。また、その意味する内容につきましても、私どもの方も、指揮という言葉が、国内法的には少なくとも身分の懲戒等を含みますいわゆる上下関係、上下関係もしかもはっきりした身分関係等を含んで、違反した場合には懲戒等にも処せられるような、そういう用語として使われております関係から、指揮という言葉を避けて、今のようないわば対等関係あるいはそういう関係としての用語としての指図、これを採用したところでございます。
  116. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は語学はだめなんですけれども、専門家がおりまして、指図は、国連の正式文書では、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語で何と言われているのですか。
  117. 野村一成

    ○野村政府委員 恐縮でございますが、この法案日本語でつくっておりまして、私にわかに今、御質問で英語でと言われたときに、最も適当な言葉が何であるかということを権威を持ってお答えできないということでございます。
  118. 岡田利春

    岡田(利)委員 国連に対してこの法案について説明したという委員会の答弁があるわけであります。これは英語の大家の宮澤総理に聞くというのは無理ですかな。いかがでしょう。
  119. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  国連説明いたしましたのは、平和維持隊への参加に当たっての基本方針でございまして、この法案の内容につきまして詳細にまだ国連説明したという段階ではございません。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはどうなんですか。こんな重要な問題で、継続審査になっている問題ですよ。今まで聞いたことの答弁が、それが今度はあいまいになっていく。こんなことで法案審議ができますか。こういう極めて基本政策の転換に関する問題の審議ができますか。原則は、これは不動のものなんですよ。こんなあいまいにでき上がったものじゃないのですよ。四十三年間の歴史を積み重ねて、そして今日の原則を決めたんですよ。それが三百代言のような説明で変わると思いますか。そういうことには絶対にならぬのであります。  もう一つ申し上げておきますけれども、この軍の統括の問題についても原則は決まっておるのであります。  国連の現地活動は、多様な事態に対応して多様な形態がとられることを十分承知した上で、近時一貫して採用された統轄・指揮に関する上記の原則は、私見では、将来も踏襲されるべきである。すなわち、国連活動は、常に総会または安全保障理事会の、あるいは、これらから授権された事務総長の指揮の下に置かれねばならない。こうして、国連活動は、主要機関の一つに対して直接に責任を負うとともに、事務局とも適当なかたちで結びつくことになる。 こういう軍の統括の原則もぴしっと決まっているんですよ。  まだありますよ、たくさん。あるいは事務総長の派遣要請、あるいはまた軍の構造的体質に関する問題、こういう原則が四十三年間かかってぴしっと積み重ねられて、だから慣行としてでき上がっているんでしょう。その原則を無視したら、慣行も何もないでしょう。法律的な、国連憲章のよりどころもないということになりますから。そういうことを平気で外務省が解釈するというのは、まさしく官僚的な、独善的な解釈だ、こう私は指摘をしなきゃならぬのであります。  では、これらの言葉について、いつ外務省の正式の見解をもらえますか。先ほどの要求したもの、いつまでにもらえますか。英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語で何と言っているかという点について、指図を。
  121. 野村一成

    ○野村政府委員 先ほど御指摘のございました指図とか、そういう言葉各国語、英語とかフランス語での訳というふうに理解しておりますけれども、早速検討いたしまして、どういう言葉が適当かを考えてみたいと思います。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 指揮命令系統について、英語やまたそれ以外の外国語で、国連の正式文書では、ではどういう表現をいたしておりますか。国連の正式文書ではどういう表現になっておるんでしょうか。
  123. 丹波實

    丹波政府委員 私たちが承知いたしておりますところでは、コマンドというのがこのモデル協定でも使われている言葉でございます。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 この問題について国連宮澤さんがお話しになるときに、向こうは英語で話をされる、日本の方でも日本語で話されて通訳で話をするのか、直接宮澤さんが話をされるのか。そういう意味では、疑う余地のない明確な表現になるんでしょう。どうですか。
  125. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は語学について今お答えをする資格がございませんので、私がお答えしようとしておりますのは、ただいままでのお話を伺っておりまして、政府委員の申し上げていることは、国連がそのSOPで言っておりますことは、部隊の組織であるとかあるいは配備であるとか移動であるとかいうことについて、そういうオペレーションについての国連のいわば指図と申しますか、何といいましょうとも、そういうことはさせていただくということが一つ。それから、それについてこの法案の整理の方法は、第八条によりまして「事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合するように」実施要領をつくります、そのような適合するように実施要領をつくりますというのが八条の規定でございます。  そこで、ここで言っておりますことは、そういう組織、配備、移動について国連の事務総長あるいはその代理者がいわば指図をいたしますから、実施要領はそれに適合するように我々としてもつくります、そういうところは組織、配備、移動について認めておるわけでございます。  他方で、岡田委員の言っていらっしゃいますことは、この協力隊の人々国連のそういう事務総長、あるいはその指揮に従うかというお尋ねであるわけでございます。ところが、考えてみますと、そのSOPにも言っておりますとおり、これは国際公務員ではないということを言っておりますわけですから、国際公務員でない者が何で国連の事務総長の指揮に従うことができるか。(発言する者あり)そんなことはあり得ないことであります。そもそもそういう場合の指揮というのは、その指揮に反したときに懲戒をする、あるいは制裁をするということが指揮ということの意味でございますから、国際公務員でない者が何で国連の事務総長の指揮に従うことがあるか、あるいは、もう一つ申せば、主権国家がどうして国連の事務総長の指揮に従うことがあるか、これはもう基本的な私は常識問題だと思っております。
  126. 林義郎

    ○林委員長 御静粛に願います。
  127. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の宮澤総理の常識だと言われる常識は、本件には非常識だと残念ながら言わなきゃならぬのであります。  問題は、司令官は先ほど原則で言いましたように明確な公務員なんですよね。司令官は国際公務員にするということを明確にしたんですね。そして隊員については、国際公務員ではないけれども国際公務員の原則は適用される。だから国連の旗がついて、国連の旗のもとに部隊が構成されるわけなんです。その指揮権が明確でなければ国連の旗はつかないのであります。  朝鮮戦争において、アメリカを主体とする国連軍には国連軍の旗は認めなかったわけですよね。コンゴについてもそうであります、勝手にあれはやっておるのでありますから。そういう原則というものを非常にシビアに解釈をしなければ、軍隊というものは成り立たないんではないですか。閣僚でも随分軍隊の経験のある方も恐らくおられると思いますけれども、指揮命令がなきゃならぬ。軍隊であるんですよ。だから軍隊を出しなさいと書いてある。軍隊以外に出しなさいと書いてますか。だから軍なんですよ、あくまでも。  もちろん軍というのは、軍の性格として、軍人よりも外交官たれとか、敵のない軍隊とか、そういう表現を使って、この維持軍というのは専守防衛であるという原則ははっきりしているんですよ。先制攻撃をしてはならぬということははっきりしておるんですよ。指示をしているんですよ、あくまでも攻撃をされた場合にそれに応戦をすると。こういう原則を明確にしておるのが、やはり軍隊であり、そういう必要要件から軍隊以外の派遣を認めていないのが維持軍じゃないですか。でなければ民間でいいじゃないですか。防衛庁の高級将校の人が言ってますよ、そんな安全で何ともないなら、無理しないで外務省の人が行ったらいかがでしょうかと。軍人でなきゃならぬという必要要件、軍人は好ましくないけれども、今この任務を果たすのは軍人しかいないというのがハマーショルドさんの見解でしょう。皆さんと同じように我々もそこまでのみ込んで今質問をしておるのですよ。  ですから、場合によっては自主防衛とはいえ武器の行使をしなきゃならない軍隊に、指揮命令系統がはっきりしない部隊がどうしてこの維持軍に参加できるんですか。しかもこの法律の立て方は、その指揮権は我が国の場合には防衛庁長官にあると書いてあるんですよ。そうでしょう。たまたま中断の場合には指図を考慮する、こうなっておるだけですよ。  そうではないんであります。どこの軍隊でも、PKOでもPKFに派遣した場合はすべてその手から離れるんですよ。でなきゃ中立を保てますか。一番大事な原則が中立を厳守するという原則なんですよ。その原則を守るために当然忠誠義務が必要なんでしょう。そういう論理の矛盾のあるようなことを考えてはならないのであります。すっきり考えておかなければ大変なことになりますよ、これは。国連でそういう忠誠義務をはっきりしない、今の指揮権についてもそういう解釈でよろしいと言った国連の方がおりますか。おるならば、だれが言ったか明確にしてください。そんなあいまいな答弁じゃできませんよ。
  128. 丹波實

    丹波政府委員 先ほどからの繰り返しになりますけれども、ここで意味しておる指揮と申しますのは、国連として、参加国から参加してくる要員に対する配置、組織、行動等に対する権限ということを言っておるわけでございまして、国連の側から見ますと、参加各国がここで言っておりますところの配置、組織、行動に対する指揮官の命令に従って、一致してと申しますか、みんなが同じように行動してくれるということが確保されることが一番重要なことでございまして、過去のPKFはまさにそのような行動、そのような活動が行われてきておるということは先ほど野村審議官からも御説明申し上げたとおりでございます。
  129. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務省が出した資料にディレクションと書いてるでしょう、指令というのを書いてるでしょう、明確に。みんな持ってますよ。どうしてそういう文書を出してそこだけ読まないんですか。だめですよ、そんなことでは。
  130. 丹波實

    丹波政府委員 これは、私はこの御議論関係する部分と思って、先ほども私、略しますということを申し上げましたけれども、それでは、国連のモデル協定第七項全文は次のとおりになっております。  〔参加国〕によって利用に供される人員は、〔国際連合平和維持活動〕に派遣される間、引き続き本国の役務に服するものであるが、安全保障理事会の権限の下に事務総長に付与された国際連合の指揮の下に置かれる。したがって、国際連合事務総長は、〔参加国〕によって利用に供される人員を含む〔国際連合平和維持活動〕の配置、組織、行動及び指令について完全な権限を有する。同権限は、現地においては、事務総長に対して責任を負う派遣団の長によって行使される。派遣団の長は、権限を更に委任することについて統制する。 もう一つだけ重要だと思いますので読み上げさせていただきますが、第八項、  派遣団の長は、〔国際連合平和維持活動〕における良好な秩序及び規律について一般的な責任を負う。〔参加国〕によって利用に供される軍人の懲戒処分に関する責任は、そのために〔参加国〕政府が指名する官憲が負う。 失礼いたしました。
  131. 岡田利春

    岡田(利)委員 ですから、国連の原則的な立場というのは極めて明確なんですよ。軍隊を扱うのにそんなあいまいなことで軍を扱うわけにはまいらぬのであります。まして、先ほど聞きましたように、八つのPKOのうち、たった一つ六カ月間のPKOの業務に服したのが犠牲者はゼロですが、多いのは百七十人、コンゴは二百四十人を超えているわけでしょう。  それは、もちろん先制攻撃をしない、専守防衛に徹する、だから説得をする、あるいはまた何回でも拡声機で呼びかける。だが、そういう状況の中でも紛争が起きるわけでしょう。停戦合意をされておるが、しかし、それは形式的には停戦合意されても、実効上合意をされていないから、PKFが必要なんでしょう。実効性を上げるために、それを維持するためにPKFが必要なんでしょう。だから軍隊でなきゃならぬ、こう言いよるのですよ。それはもう常識なんですよ。我々が昔、帝国軍人のあった場合もそうですが、今でも同じです、それは。一貫していますよ、ミリタリーの場合は。軍の場合にはそれが崩れたのでは軍にならない。防衛庁の幹部諸君がそう批判しているんです。そんなナンセンスなことがありますか、こう言っておるのであります。  そこを明確にしなければならぬのであります。いや、それはもう国連の方が了解しています、こういって言うんですよ。国連の方で了解しているなら了解したという証拠を見せなさい、大事な問題ですから。証拠を出してください。外務省は出すと言っているでしょう、これ。  我が党の上田哲君の質問に対して、「非常に重要な問題ですから、ひとつそれは資料としてしっかり出してください。」丹波さんは次のように答弁している。「先ほどから申し上げておりますとおり、外務省それから内閣官房といたしまして、ことしの一月に国連事務当局に参りまして、このPKO問題についてやりとりしておりますけれども、その中で出せるものを精査いたしまして、追って御報告申し上げたいと思います。」と言うけれども、その精査した、やりとりした内容というのを出さないじゃないですか。どうして出さないのですか。これはいつですか、もう随分前ですね。前の国会で、そういう約束をして、我々が資料要求しても出さないんですよ。そんなことで審議せいというのはできるでしょうか、委員長。これは委員長指揮でひとつこれらの資料はきちっと出していただかなきゃならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  132. 丹波實

    丹波政府委員 先生にお答え申し上げます。  さきの臨時国会におきまして、この場で上田先生と私の間での質疑応答の中で御要請がございました資料につきましては、既に提出済みでございます。  一つは、グールディング国連事務次長の発言、それから二つ目は、一月に外務省及び内閣外政審議室の調査団が参りましたときのやはりグールディンク国連事務次長のやりとりをまとめてお出しいたしております。
  133. 岡田利春

    岡田(利)委員 そんなものじゃないんじゃないですか。このやりとりをずっと読んでいて、そんなあなた、これは原則ですよ、五原則、こんなものを出すなんという答弁じゃないでしょう。いわゆるお互い国連と話し合った内容、その内容についてあなたは資料として出すということを答弁しているんじゃないですか。今あなたが説明したのは、そんなのは五原則でしょう。そんなもの、あなた、やりとりしなくたってわかっていることじゃないですか。だから、あなたの答弁と今言っている答弁は完全な食い違いがあると指摘をしなければなりません。  国連の五原則の問題についてだって、これは不動の原則なんですから、一々に説明を受けなくても、PKOが始まって以来積み重ねて原則は決まっているんですから、もう。その中で一番大事なのが中立の原則であり、それから紛争当事国の停戦合意であり、受け入れ国の同意である。そして、その中立の原則を一番担保するためには、指揮権の問題であり忠誠義務である、そのことによって国連権威をしっかり保って忠誠の立場を確保するんだという原則になっておるんでありますから、そして武器は先制攻撃してはならないという原則もあるんですから、これが国連の五原則なんですよ。中断の場合だって、司令官は中断するんでありますから、場合によっては撤収する場合もあるんですから、そういう原則が明確に決まっているんですよ。日本法律で書いても担保にならんのですよ、こんなものは。外国でやるんですから、国連の原則になきゃだめなんですよ。日本法律で書いたから担保できる。という問題じゃないでしょう、これは、国連軍ですから。ごまかしですよ、それは。そこが明確でなければ審議できないんじゃないですか。いかがでしょう。私の言う方が無理があるんでしょうか。私は頭が悪いんかな。
  134. 丹波實

    丹波政府委員 申しわけありません。上田先生とのやりとりで問題になりましたのは、その軍事監視員あるいはPKFになぜ軍人が参加しなければならないのかという点について国連事務当局はどのような説明をしておるかという点でございまして、その点につきまして資料を御提出申し上げたということでございます。
  135. 岡田利春

    岡田(利)委員 それは、私もここに議事録を持っていますけれども、単にそういう原則について聞いているんではないんであります。問題は、やはり国連がそういう日本の指図とかそういう考え方についていわゆる同意を与えた、了承したんだという前提に立って答弁をなされておるから、ではそういう話がされたのであれば当然その内容を出しなさい、グールディンクさんの話についてもこの中に出ておるのであります、これは。  ですから問題は、今それぞれ政府委員の答弁というのは、私に言わせると、極めて不動の常識的な原則、これに何か疑義を挟むような、再確認しなきゃならぬような答弁なんて要らないんですよ、それはもう。決まっているんですから、これは侵すべからざる原則なんですから。だから、国連では単なる原則と言わないんですよ。不動の原則、こう言っているんですよ。絶対動かさない原則、そしてこの指揮権の問題と忠誠心の問題、これをはっきりしているんですよ。それを幾ら日本流的な解釈で、あるいは指図の解釈で逃れようとしても逃れることのできない内容であります。成り立たないんですから、出ていった者は困りますよ、出ていった人が。しかも部隊は一個大隊ぐらい出すんでしょう。一個大隊の場合に、二百人ずつの中隊が二個中隊、それにプラスこの要員を含めて大体五百名規模の大隊を出す。千名であれば大隊で二個大隊になりますし、一万名の場合にはさらに十個大隊も二十個大隊もなっていくという内容のものでありますから。だから、その指揮系統がすきっとしてないと、これはもうどうしようもないんですよ。参加する隊員の人命を守ることはできないんですよ。防衛的に個々の問題に自衛権を行使するしないという問題ではないのであります。  これは明日、専門的にこの問題を中心にして我が党の同僚議員が徹底的に御質問をしますし、見解をただすことにもなっておるのであります。これはごまかしやその他で逃れることはできないんですよ。場合によっては、国連に一緒に行って、我が委員会と行って、こういう重要な問題ですから、国連の不動の基本原則はこういう解釈でいいのですかということを確かめなければ、国民責任を持って我々はPKOを出すことはできないんではないでしょうか。私のそういう見解に対して、重ねて総理の見解をお聞きいたしたいと思います。
  136. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど申し上げましたことで大体尽きておると思いますけれども岡田委員の御指摘になりました一つの問題は規律の問題であるわけでございますけれども、これについては、実施要領もございますし、また、本部長並びに防衛庁長官がそういう規律をいわば指揮をせられるわけでございますから、それについての問題があろうとは存じません。  それから、もう一つ重要な問題を御指摘になりました。それは中立性の問題でございます。これは確かにもう一つの重要な問題でございますけれども、法の第三条に、いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施されなければならないということでございまして、これが崩れますと平和維持活動というものが基本から崩れる、そういう法の体系をとっておるわけでございます。
  137. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから同僚議員に譲りますけれども、この問題は極めて本法案のポイントになる大事な内容であると思います。そして、我々がこれから国際社会貢献をしていくという場合においても、このような問題があいまいなままに参加をするということになると、悔いを千載に残すということは国際的にむしろ嘲笑の的になるのではなかろうかと思います。国連には長い間、四十三年間積み重ねてきた原則があり、そういう不動の原則に従ってこのPKO派遣する、それに対する国際的な信頼がある、受け入れ側もそういう国連権威というものそのものを受けて受け入れをするのであります。この原則が崩れるということは大変なことであります。  私はそういう意味で、先ほども英文やあるいはまたフランス語やあるいはまた露文、中国語、明確にあなた方の誠意のある資料を出して、この問題について引き続き答弁願いますことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  138. 林義郎

    ○林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  139. 林義郎

    ○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋大吉君。
  140. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 初めに、総理大臣以下各閣僚の皆さん、大臣就任大変おめでとうございます。日本社会党のしかない陣がさ代議士の石橋大吉です。きょうは、またひとつよろしくお願いを申し上げます。  今回御提案になりました国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案は、いろいろな意味から非常に重大な法律案と同時に、私の見たところ重大な欠陥法案でもある、こういうふうに考えるわけであります。世間では参加五条件などを法律に組み込んだので、これでシビリアンコントロールは万全だなどという御意見もあるようですが、私はこれは軍隊の本質軍事史について全く理解のない人の言う夢物語ではないか、こういうふうに考えております。  そういう意味で、いろいろな角度から質問申し上げようということで、あらかじめ配付をさせていただいておりますように、大項目で七項目の質問を準備いたしておりますが、残念ながら十分な時間がありませんので、したがってきょうはこのうちからせいぜい二つか三つの問題を挙げて質問をさせていただきたい、こう思っております。  恐らく、あらかじめ私という人間がどういうやつか御承知だと思いますが、私は、自他ともにエリート中のエリートを自負される宮澤さんなどと比べまして、並みいる皆さんと違って高い学歴もありませんし、教養もない男ですから、きょうは余り英語などを使ってごまかさないように、よくわかる日本語でひとつお答えをいただきたい、こういうことを初めにお願いをしておきます。  まず初めに、午前中にも少しやりましたが、一体自衛隊員というのは軍人なのか軍人でないのか、派遣される部隊は軍隊であるのか軍隊でないのか、この点について念のためにお伺いをしておきたいと思います。  政府は、平和維持軍を平和協力隊と名称変更し、また海外派兵を海外派遣として、言葉の操作によって海外派兵ではない、こういうふうに強弁をされているわけであります。  そこで、まず伺いたいのは、政府は、国連やその他の国際機関や我が国平和維持軍参加部隊が派遣される関係国等に対しましても、自衛隊員を軍人として処遇されるように求めるのか求めないのか、また、自衛隊の部隊を軍隊として処遇されるように求めるのか求めないのか、この点をまずはっきりお伺いをしたいと思います。
  141. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 自衛隊につきましては、憲法上必要最小限度を超える実力を保持し得ないというような厳しい制約があるわけでございますが、したがいまして、通常の観念で考えられる軍隊ではないというふうに言って差し支えないと思います。  ただ、ただいまお尋ねの国際的な関係におきましては、国際法上は軍隊として取り扱われるということが言えると思います。したがいまして、自衛官は国際法上軍隊の構成員、また例えば船、自衛艦でございますが、これは国際法上軍艦というふうに取り扱われますし、あるいは自衛隊の航空機はいわゆる軍用機というような取り扱いを受けるというふうに言って差し支えないと思います。これはあくまでも国際法上の問題でございます。
  142. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 国際法上軍隊として処遇されることを求める、こういう答弁ですが、そうであるならば、国際平和協力隊に参加する自衛隊員は国際的には軍人であり、その部隊は軍隊だ、こういうことになるわけであります。  国内的、国民向けには軍隊でないと言い、国際的、外向けには軍隊であると言う、そういう二枚舌を使って問題の本質をぼかすやり方は私は承服できない。国民には判断を誤らせ、外国の認識日本国民認識との間に大きなそごを生じさせる、やがてはそれが原因になって国際的に大きな誤解を招き、そして国民認識を誤らせる、私はそういうふうに考えているわけであります。国際的に軍人であり軍隊であるならば、国民にももちろん軍人であり軍隊として派遣する、派兵する、そういうことを明確にして理解協力を求めるべきだ、私はこう思いますが、どうですか。
  143. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答えを申し上げます。  今条約局長の方からお答えがございましたように、我が国の自衛隊は外国による侵略に対しまして我が国を防衛する任務を有しておりますけれども、憲法上非常に制約がございまして、最小限度を超える実力を保持し得ないという等の制約が課せられておることは御案内のとおりでございます。自衛隊のこのあり方、専守防衛、小規模の侵略に対抗する力というようなことでこれはしばしば述べられているところでございます。  一方、今外国における取り扱いが条約局長からございました。我が国におきましては、これはこういう憲法上の制約を受けているものだとして、定義にもよりますけれども、あくまで自衛隊という位置づけで国民理解を求めておるわけてございまして、この点については佐藤内閣時代、古い話になりますけれども、四十二年ころもそのような御議論がございました。しかし、そのときも佐藤総理の答弁といたしましては、今と同様な趣旨で、我が国の内部におきましては自衛隊を軍隊として呼称することはいたしませんということをはっきり明言しておりますし、我が国の法体系その他も自衛隊と、自衛隊法、防衛庁設置法においてもそのように規定されているところでございます。
  144. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今防衛庁長官の言われていることは従来からずっと言われておることでして、そういう説明があることは私もよくわかっている。しかし、皆さんも含めてみんな腹の中では自衛隊は軍隊だと思っている。国民もそう思っている。政府説明は、サギをカラスと言い、カラスをサギと言うたぐいの詭弁だ、こう私は思います。国民を欺き国際世論を欺くものであって、断じて私は承服できない。合理主義者として自他ともに認める宮澤総理、あなたが本当に合理主義者ならこれは絶対に認められない話だと私は思う。どうですか。
  145. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 我が国のような憲法のもとで専守防衛を仕事としております自衛隊というものが国際的に言われております軍隊とは違う概念でつくられているということは、これは常識的に考えて私はどこでも通ることではないかと思います。ただ恐らく外国におきまして生ずべきいろいろ権利義務等々の関係からいいますと、それは軍隊としての扱いなり礼遇なりを受け、あるいは義務を負うという、そういう意味合いであろうと思います。本質的には西欧で言っておるところの軍隊というものと私は考えておりません。
  146. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ、あなたの説明国民も納得しないでしょうし、私も納得しません。しかし、それは一応それぐらいにして次に進みます。  次に、武器の使用と武力行使の関係についてお尋ねをしたい。まず、武器の使用と武力の行使の関係について政府の統一見解を改めて確認をしておきます。  一 一般に、憲法第九条第一項の「武力の行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいい、法案第二四条の「武器の使用」とは、火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をその物の本来の用法に従って用いることをいうと解される。  二 憲法第九条第一項の「武力の行使」は、「武器の使用」を含む実力の行使に係る概念であるが、「武器の使用」が、すべて同項の禁止する「武力の行使」に当たるとはいえない。例えば、自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の「武器の使用」は、憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。 これが政府の統一見解であります。  そこで、防衛庁長官、工藤内閣法制局長官に承りたいわけですが、こういう統一見解を出すに当たっては、内閣、防衛庁、外務省、法制局、我々が想像を絶する各省の俊秀が集まって、いろんな角度から検討してこういう統一見解を私は出されたと思う。  そこで、この統一見解について伺いたいのですが、まず隊員の生命防護のための武器使用の形態と限度。二つ目、隊員の生命の防護のための武器使用についての限度をだれがどういう形で判定するか。三つ目、限度を超えると判断されるとき、歯どめ策をどう考えているか。どういうことを具体的に頭の中に置いてこの統一見解を決められたのか、防衛庁長官と法制局長官から具体的に、国民がよくわかるようにひとつ説明をお願いしたい。
  147. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 武力行使と武器使用の関係につきましては、今先生が引用になりましたとおり、政府内部で統一見解を述べたものでございます。  そこで、今回のPKO法案におきまして、自衛隊員の武器の使用の限度でございますが、これは先生御案内のように、二十四条におきまして、自己の生命または身体を防衛する必要の限度におきまして、そのときの情勢判断でやむを得ざる事情の場合にのみこの自己の生命または身体を守るための手段として認めておるものでございます。これは法律ではっきり二十四条で明定してございますから、私どもはそれを逸脱して武器の使用が行われることはない、このように存じております。  なお、武器の使用につきましては、この本法案におきまして実施計画をつくることになっております。そして、この実施計画は内閣総理大臣が閣議に、あるいはその前におきましては安全保障会議でこれを決定することになっておりまして、そして法第二条にもこのことを明定しております。この業務を遂行するに当たりまして武力の行使または武力による威嚇があってはならないということがはっきり明定されておりますので、私どもはその精神に基づきまして実施計画が定められるとき、あるいは実施計画によって実施要領が定められますけれども、その中におきましても、明確にそういう自衛のためのものであるという限度を、歯どめをしっかりとこの法律で設けてございますから、決して御心配のような向きではないと私は考えております。
  148. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 言葉では歯どめもかけられるし、限定もできますよね。そうはいかぬですよ、現場は。まあいいです、それはまた後でやります。  政府の統一見解で「自己又は自己と共に現場に所在する」「自己保存のための自然権的権利」こういう説明。それから自己の生命、身体の防護。まあ非常に限定をされて極めて政治的に見える、この説明は。私は非常に感心しておるのは、内閣法制局というところは海千山千の修行を積んだ法律の妖怪みたいな人が住んでいて、どうも国会議員や国民を妖術を使ってだましているんじゃないか、私、こう思えてしようがない。これもまあ後からしっかり聞かしてあげるからね。  それで、この統一見解を見ると、みんな一人の隊員しか頭に浮かばないのですよ、一人の隊員しか。現場はそうじゃないですよ。いいですか。現地に派遣された隊員がいつも一人で歩いているとは限らない。四、五人の場合もある。二、三十人の場合もある。一個中隊百二十人の場合もある。いろいろあると思うのですよ。そういう行動をする。隊員の生命の防護、これは全部その数について回ると私は思いますよ。一人じゃないですよ。一遍説明を何となく聞いておると、一人に見える。しかし、四、五人で行動しておるときには四、五人の生命を防護する、五十人のときは五十人の生命を防護する、百人のときは百人の生命を防護するための武器使用が認められるわけでしょう。いわば隊員の人数、攻撃をする側の向こうの人数、そういうことによって千変万化しますよ、これは。その点どうですか。
  149. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  実際上の問題といたしましては、先生御指摘のようにいろいろなケースが考えられるわけでございます。そして、一人だけでこの任務を遂行するものでもございません。したがって、監視団の場合に二、三人で隊を編成していくとか、あるいはそれ以外の場合にももっと多い人数でこの任務を達成する等々いろいろございますでしょう。しかし、この法律できちっと決めてありますように、この武器使用の主体あるいは武器使用をする判断、これは自衛隊個々人、個人個人ということで、はっきりそこは歯どめをかけてございます。  結果として数人あるいはそれ以上の規模の場合の統一した武器使用ということが考えられないことはございません、これは常識的に言って。しかし、それは部隊の指揮官が命ずるものではなしに、この法律によりまして各個人個人が防衛をいたします。そしてその結果として、状況によりますけれども、統一的な行動を結果としてとることはあり得ましても、あくまで自衛官個人の責任においてこれを判断し、実施するということでございますので、その点は法律上も明確にいたしておるところでございます。
  150. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 私は今部隊の人数のことを中心に言いましたが、これはどういう武器で攻撃をされるか、あるいはどういう武器で生命の防護を実現するか、そういう武器、使用される武器によっても物すごく違ってくるわけですよ、当然。小銃の場合、機関銃が出てきたとき、迫撃砲が出てきたとき。これはまあ一応小型武器という限定はありますが、小型武器の最大限のところまで拡大される。そういう意味では、この点でも大きく変化してくる。  だから最初に言ったように、言葉として説明はわかりますよ。私はそんなことは聞いてない。だれが個人の防護の範囲のところを判断するか。個人だという説明かもしらぬが、そんなことじゃだめですよ。客観的にだれが判断するか、これが責任を問う場合に必ず大事なんですよ。頭の中でいわば主観的に判断をしているだけじゃだめなんですよ。事と次第によっては他人の命を奪うわけですからな。  そういう点ではちゃんと正当防衛としての規定なんかもあるけれども、そういうことをだれがちゃんと判断をし、客観的に評価をするか、あるいはどこでそういうことにならぬように具体的な歯どめを受けるか、こういうことを聞いているわけであります。説明を聞いているわけじゃないですよ。具体的な歯どめをどうしてかけるか。個人の生命防護という範囲から、そうでないところにエスカレートする、そのエスカレーションの歯どめをどこでだれがやるか、こういうことを聞いているわけですよ。
  151. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、武器の使用は非常に限定された場合にのみ自衛隊個人の判断で行うということはしばしば申し上げているとおりでございます。  先生が今御質問の中で、いかなる武器が登場するかわからないというお話がございましたが、これは一つは相手側の事態がどうなるかによります。しかし、我が方はやはり個人の生命あるいは身体の安全を期する場合においてのみ武器の使用を認めておるわけでございまして、攻撃的な非常に大規模なそういうようなものがよしんば想定としてあり得た場合は、これはこの法律の建前上業務の中断ということがございまして、そういうものに巻き込まれないようにして中断をいたします。そして一時避難をする。そして同時に……(石橋(大)委員「基準が何かと聞いているわけですから。そんな答弁よくわかっていますよ」と呼ぶ)いや、基準と言いますけれども、歯どめの基本になる精神を、あるいは仕組みを申し上げておるわけでございまして、これはその仕組みの範囲内で個々の具体的ケースによりまして判断していくと申さざるを得ないと存じます。
  152. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 要するに、そういうことをちゃんと、まあ一人一人でもいいですよ、客観的にもちゃんと言いわけがつくように、そういう基準はないということですな。どうですか、その辺。基準がありますか、ないですか。
  153. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  まず、兵器の種類等につきましては、御議論ございましたように最小限度の武器使用でございまして、これはけん銃、小銃あるいは機関銃、または場合によりますと兵員の輸送の安全のための装甲車ということが、これが申し上げているところでございまして、これは各国も大体そのようなことになっておりますから、我が国任務を果たす場合にもそれで十分かと存じておりますが、なお、この検討しておるかどうかという点につきまして、詳細は、私も検討しておると存じますけれども、担当局長から答弁をさしていただきます。
  154. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ただいま議論になっております法案の第二十四条の問題でございますが、これはよく御承知のとおり、我が国の隊員の命がまさに今危なくなっているという状況でございます。そのときに一々基準というものがあるわけはございませんで、まさに刑法の正当防衛緊急避難におきましても抽象的に、やむを得ざる場合とこう書いてございますのと同じように、まさに自分の命が危なくなってきたときにはその自然権的な権利の発動としてこれに対応するということでございます。したがいまして、そうい基準というものは設定できるような状況ではございませんで、状況に従って、極めて切迫した状況ということでございます。(発言する者あり)
  155. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 正解がどうかはこれからよく聞け。いいですか。基準がないということははっきりしましたね。これは大事なんですよ、非常に。それでは次に移ります。  武器の使用は要員の生命等の防護のために必要最小限のものに限る、今説明があったとおりだ。その場合には「いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、」「憲法第九条第一項で禁止された「武力の行使」には当たらない。」さっき最初に読み上げた統一見解だ。しかし、果たして本当にそういう限定された武器の使用方法というものが、こういう統一見解どおり、いついかなるところにおいても厳格に守られるものかどうかを考えてみると、私はそう簡単なものではないと思う。そして、この問題を論ずるときには単純な法律解釈だけでなく、武器の性能、使う者の精神状態や武器使用の技量、指揮官の指揮、この有無が非常に重要だと私は考えている。  そこで、まず武器の性能と使用方法について伺いたいと思いますが、まあ私の年配以上の大臣の方も何人かおられるようですが、私も子供のときに、秋になるとよく陸軍の大演習がありまして喜び勇んで兵隊さんについて歩いていろいろと演習の状況を見たものですが、昔の小銃は御承知のとおり三八式歩兵銃。一発ずつばあっと撃鉄引いて弾を一発ずつ込めて、天皇陛下からもらった鉄砲だからむだにするなよ、百発百中で撃て、こう言われたものです。これは私らから上の年配の者は大体そういう感じで受けてまいりました。しかし、今の小銃はそんなものではない。  自衛隊の装備年鑑によりますと、今自衛隊に一番多く配備をされている六四式自動小銃の場合、自動、半自動の切りかえ可能、単、連発ともに命中精度良好、これが大事なところだ。発射速度、最大毎分五百発、持続十発。給弾方式、箱弾倉、容量二十発。いいですか。大臣、しっかり頭に入れておいてくださいよ。発射速度、最大毎分約五百発、持続十発。給弾方式、箱弾倉、容量で二十発。ということは、一つの箱弾倉で十発ずつ二回に分けて二十発までの連射可能、こういうことだと私は思う。  現在最も多く配備をされている六四式の更新近代化用で、平成元年度から取得開始、まあ大体現在までのところ全自衛隊で二千丁程度しかまだ配備をされていないようですが、八九式自動小銃の場合、単発と連発の切りかえができるほか、三点制限点射、スリー・ショット・バースト方式という、私はあんまり英語はわかりませんが、こういう名前がついております。発射速度、最大毎分約八百五十発。給弾方式は弾倉式、容量二十ないし三十発。もう一遍言いますよ。発射速度、最大毎分約八百五十発。給弾方式は弾倉式、容量は二十ないし三十発。ということは、三点制限点射、すなわちダダダッ、ダダダッと十回はやれる、こういうことですよ。こういう優秀な自動小銃を自衛隊の普通科、いわゆる歩兵中隊の場合は、隊員の定員が二百十三名だそうですから、大体この定員に見合った二百丁を常時一中隊で携行することになる、私はこう思うのです。この性能と配備をされている数も非常に私は重要だと思いますから、しっかり皆さん覚えておいていただきたい。  そして、こういう自動小銃の使用に当たっては、平和維持軍は戦争に行くものではない、戦場には行かない、武器使用は原則として使用しない、こうなっている。しかし、今までの平和維持軍では七百人を超える人々が死んでいる、こういう現実があるのです。ということは、ふだんは武器を使用するという心構えは余りない。しかし、死んでいるということは、恐らくこういう場合、予期しないところから狙撃をされたり、突然襲撃をされる、こういうことによって、私は犠牲者がたくさん出ておると思うのですよ。  そうすると、戦争の場合であれば相当長い距離で、遠くからこう一発ずつねらって撃つことも可能だ。ところが、予期していないところへ突然敵が飛び出してダダッと来る。私は、そういう場合は、人間の本性として、非常に反射的、動物的に銃を操ることになるだろう、こう思うのですよ。ダダダッと撃てば十発か二十発飛んで出ますよ、すぐ。一人でとまらなかったら、やっぱり五人でおれば五人全部使うかもわからぬ、十人おれば全部使うかもわからぬ。そういうときの銃の撃ち方というのは、一発ずつ遠くからこうねらっているんじゃなくて、腰だめにしておってダダダッ、こういくのですよ。そういう銃の使い方になると思いますが、どうですか。
  156. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今先生が装備年鑑等からの資料によりましてうんちくを傾けられたわけでございまして、私も、その性能、一分間に何発出るかというところまでは承知しておりませんので、あるいは必要に応じて防衛局長から答弁させますが、問題は、やはりこの法案の前提となっておりますのは、あくまで武力行使ないし武力の威嚇は行わないという基本原則のもとに、必要最小限度の自衛のための措置を認めておるわけでございます。  したがいまして、兵器の性能は向上はいたしております、確かに。先生御指摘の古い小銃と八九式、あるいはさらに今自動小銃のお話がございましたけれども、そういったものが性能的にアップしていることは十分承知いたしておりますが、我が国武力行使のために例えば防衛出動する場合等と違いまして、あくまで平和目的で行くわけですから、武器を使用しないということが原則でございます。したがって、性能のいい自動小銃をよしんば持参いたしておりましても、その範囲内で応戦をして防衛をする、自己の「生命又は身体を防衛する」ということでございまして、あくまでこの目的を貫いていくようにしなければなりません。  そしてまた、私ども、自衛隊を派遣する場合にも、研修その他に応じまして、きちっとしたものをつくらなくちゃなりませんし、また、このことについての大枠は、実施計画または実施要領等で細部が決められて現実に派遣するわけでございますから、性能がこれだけいいから、その性能をフルに使って応戦するというような想定ではございません。決してそういう武力の行使のためでございませんから、あくまでも自衛のために必要最小限度というこの法律で決められてある点は非常に重要な点でございますから、私どもはこれを守っていきたい、このように思っております。
  157. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ、大体あなた方が答えられておることは今まで答えたことの繰り返しですね。あなた方の言われることは私わかっているのですよ、よく。現実はそうはいかぬということですよ。私はそのことを言っているわけですよ。  そこで、次の問題に移りますが、実戦で冷静に沈着に銃を扱うことはかなりの場数を踏まないと非常に難しい。簡単じゃないですよ、兵隊に行っていない人もいるが。太平洋戦争に従軍して、その戦争体験をもとに書かれ……(発言する者あり)まあ静かにしてくださいよ。その戦争体験をもとに書かれ、戦場という特殊な環境下で歪曲された人間の姿を生々しいタッチで大胆に描写をし、世界的センセーションを巻き起こしたベストセラー、アメリカのノーマン・メイラーの「裸者と死者」、こういう作品があります。それを読んだときの鮮烈な印象を私は忘れませんが、初めての実戦のとき、兵士たちは恐怖の余りタコつぼの中で思わず小便を垂れたりうんこをしたりするんですよね。いわば動転をするわけですよ、動転を。  だからこそ、銃を扱うためにはよっぽど練達をしてないと扱えないわけですよ。いいですか、そういう異常な状況下、国連平和維持軍といえども武器使用をせざるを得ない。武器使用をせざるを得ない状況というものは、私は戦場と同じだと思う。現に、先ほどもありましたように、そのために今まで国連平和維持軍、七件の事例で七百十九人も犠牲者が出ている。国連監視団も四件で五十三人の犠牲者が出ている。そういうことがあるからこそ平和維持軍は軍隊でなければならない、こう言っているわけですね、国連も。いずれにしても、こういう異常な状況下で冷静沈着に武器使用の統一見解に則した武器使用ができる者は、よほど練達した経験と自己抑制のきく人物でなければできないだろう、私はこう思う。  そこで、もう一つ非常に大事なのは、練達した指揮官の重要性が非常に重要になってくるわけですよ、そういう場合は。アメリカの戦争映画によく出てきますが、不死身で歴戦の練達の軍曹の指揮が欠かせない。そういう練達の上官の指揮なしに、こういう自動小銃その他の武器を兵士個人個人の判断にゆだねるということはどう考えても危険千万だ。どう考えても、危険千万だ。武器使用の統一見解はあくまでも統一見解であって法律ではないのだから、その規制は必ず気分的、情緒的なものとなり、ルーズに流れる。統一見解などともったいぶっているけれども、厳守される保証はどこにもない。特にPKFの場合、先ほどもちょっと言いましたが、戦争に行くわけではないから、まあ武器使用はないと思って安心している。もう少し言えば油断している。突如としてやられる。そういうときに指揮官の判断も指揮による抑制も全くきかないのだから、法的に指揮権ないと言っているわけでしょう、きかないわけですから。往々にしてそういう武器使用は動物的、反射的なものになりかねない。事と次第によってはブレーキのない暴走車と同じで、一人の隊員の銃の乱射によってたちまち他の隊員の射撃をそそり、住民をも巻き込んでパニック状態に陥る危険は避けられない。いいですか。せっかく法制局長官が知恵に知恵を絞って練り上げた統一見解の武器使用と武力行使の限界などは、一瞬のうちに吹き飛んでしまう。大事ですよ、これ。一瞬のうちに吹き飛んでしまいますよ。  そういうことを考えると、この統一見解は余りにもずさん、机上の空論をもてあそんで国民をたぶらかし、国会を欺くものだ、こういう統一見解は直ちに撤回すべきだ。答弁を求めます。こんな統一見解はだめだ。
  158. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生が御指摘の中で武器使用に関する点に触れられておりまして、武器使用は慎重でなければならない、そして、これだけの性能のいいものを使う場合に反射的に使う可能性もあるし、大変危険なことだ、沈着でなければならないというような御指摘の点は私も同感する点が多うございますが、しかし、これは自衛隊が今現にこういう武器を保有しておりまして、これの訓練をいたして習熟しておるわけでございます。そういう自衛隊を、その経験と知識、組織力に着目して派遣するわけでございますから、全くの素人がこういう武器を与えられて、そして出動するものではございません。  そういう点の誤解があってはいけませんので御答弁申し上げますが、ほかの隊員、つまり、自衛隊の部隊としての参加以外あるいは自衛隊個人の参加以外の一般の人たちもこの隊には参加することがございますけれども、これには小型のけん銃、小銃等が貸与されます。しかし、これは恐らく非常に限定されたもので、これも訓練を要しますよ、訓練を要していくわけですから、乱射とか、あるいはその誤った使用が行われないように厳重な訓練をしておきますが、そういうことですが、自衛隊の場合は、今先生おっしゃったような、あるいは自動小銃等も携行するでございましょう、しかし、それは今自衛隊が訓練に訓練を重ね、そして武器の使用については慎重な上にも慎重な扱い、そしてそれが武器の本来の目的に沿うような訓練をいたしておりますから、素人がそういう武器を持っていって現地で何かえらい騒擾状況が起きるような御指摘でございますが、決してそういうことはないと私は確信をいたしております。
  159. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 訓練と実戦は全然違うのですよ、訓練と実戦は。大事なのは指揮権がないということですよ、部隊指揮官の。これがないからだれも歯どめをかけぬのじゃないですか。乱射、乱射ですよ、そのときは。だからこういう統一見解は絵にかいたもち。一発射撃が始まったら一瞬のうちに吹き飛んでしまう。そういうことで国民をだましちゃいかぬ。
  160. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 「武器の使用と武力の行使の関係について」の統一見解について撤回せよということでございますが、これは、書いておるところは極めて重要な点でございますけれども、しかし、今おっしゃられたような無理なことは書いてございません。いわば第一項におきまして武力の行使とはどういうものであるかということが書かれておりますし、また、国連平和協力法案におきまして武器を使用する場合のそのいわば性格についても記述がございまして、いわば自己保存のための自然権的権利というような観点からこの武器の使用を認めておるわけでありますので、決して武力の行使に当たることはないということを、これを統一見解として述べておるわけでございまして、決して私はこれは国民をだますものでもございませんし、また、愚弄して誤った認識を与えるものでもない、このように思っておりますから、御理解をいただきたいと思います。
  161. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 統一見解をつくられた法制局長官、あなたの考えをちょっと明らかにしてください。
  162. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  我が国の憲法におきまして武力の行使をしてはならない、かような規定が九条の一項にございます。そういう意味におきまして、武力の行使に当たるようなことを法文上も実際上もしてはならないことは当然でございます。そういう意味におきまして、この法律案におきます二十四条のいわゆる「武器の使用」と憲法で禁ぜられております「武力の行使」、これの関係をこのペーパーにいたしたものでございます。
  163. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 具体的な歯どめ策や個人の生命の防護から、そうでない状態をどこで分け、判断をするか、そういうことを聞いておるわけですよ、法制局長官。
  164. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 まず第一に、平和維持隊、あるいはPKFと言ってもよろしゅうございますが、は、先ほどからしばしばお答えが出ておりますように、国連権威説明によってその目的を達するもの、いわゆる強制力を伴うものではない、これが大前提だろうと思います。  ただ、たまたまその中におきましていわゆる隊員の生命、身体等が脅かされますときに、これに対して防衛するための武器の使用、こういうものが書いてございますし、これはまた国のそういう隊員に対する安全保持の観点から、国としても当然配慮すべきことであろう、かように考えております。そういう意味におきまして二十四条が規定されておりますし、その二十四条の運用、これが十分慎重でなければならない、これはもうまさしく御指摘のとおりだろうと思います。  現実に運用されます場合に、決して、先ほどの委員のお言葉であれば、暴走するようなそういうことがあってはならないことは事実だろうと思います。そういう意味では御指摘のとおりだと思いますが、法案におきますこの武器の使用の考え方は、ここで御説明申し上げているとおりでございます。
  165. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ抽象論としてはわかりますが、具体的には何も歯どめがないということですよ。時間がありませんから先へ行きます。  次に、政府答弁の不透明部分について幾つか聞きたいと思います。  畠山防衛局長、九月二十五日の本委員会の我が党の上原委員の質問に対する答弁でこう言っている。武器使用は、自衛官が個人として判断するが、場合により、より慎重に武器の使用を行うという観点から、組織としてではなく、組織的にいわば束ねるような形で、個々の自衛官の個別の判断を束ねる形で行う。組織としての武器使用ではない、こう答えている。  組織としての武器使用が武力行使となることを避けるための慎重な言い回しであるが、個々で組織的でない、個々の自衛官の個別判断を束ねるとは具体的行為としてどういうことになるのか。まず個人個人の判断をさせて、それを何らかの方法で意思表示をさせ、多数決によって武器使用の可否を決める、そういうのか。実弾が飛んでくるところで投票採決か挙手採決でもして、多数決によって武器使用ということにでもなるのか。大変締まらない話だが、そうしたことでそういう組織的な対応ができる、そういうことをしたってやはり組織的な対応はするものだと私は思いますよ。それとも目と目で一瞬のうちに隊員の個人個人の腹のうちを読み取って、それをまた隊長か上官の腹の中で瞬時のうちにろ過して、出てきたものがその権限を束ねた、こういうことになるのか。それにしたって結果は、声に出すか、手を挙げるか、隊長か上官の何らかの動作なしに意思の伝達はできないと私は思う。  そうなれば全く指揮そのものではないか。珍妙なことを考えれば、案外、防衛局長は、十人か五人隊員を一束にして縄でぐるぐる巻きにしておいて、束ねて鉄砲を使わせる、そういうことでも考えているのかもしれないと思ったりもする。それはしかし漫画だ。そんなことではないと思う。事前に、まず隊長か上官が撃ったら君たちも撃て、こういう伝達方式もあるかもしれないが、そうなれば隊長や上官はもう四六時中あたりを見回しながら、へとへとになってしまう。現実にはできない。  どっちにしても、ここで束ねるとは一体どういうことを具体的に言うのか、よく国民がわかるように説明してほしい。
  166. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 防衛局長の答弁の前に私からちょっと御説明申し上げておきたいと思いますが、この束ねるという御議論は、これは前国会におきます当委員会におきまして議論がなされまして、前長官が束ねることもあり得るというような見解を表明されたことは私も承知しております。  しかし、原則は先ほど来申し上げておりますように自衛隊個人個人の判断、そして行動も個人個人の主体的な行動であるということはたびたび申し上げておりますけれども、この束ねるというのは、当時の長官の御意図は、結局、例えば個々の自衛隊員がまだ武器使用する必要のないという判断があった場合に、上官がそれでも武器使用しろというような命令をするというような意味で申し上げたわけではございませんで、むしろ個々の自衛官にとってはあるいは武器使用が必然的に必要かもしれないという御判断があった場合に、上官がそれをネガティブに考えまして、いや待てよ、もうちょっと情勢その他を見て武器使用は少し待った方がいいというような、そういう場合にのみ束ねて行うという趣旨であるというように私は理解しておりますので、束ねるという言葉の正当性、これがどういう意味を持つか、私も余り束ねるということの意味が、いろいろの意味で使われますから、これが果たして適当であるかどうかという問題はございますが、問題はそういうことでございますので、そのことだけちょっと冒頭に述べさせていただきまして、あと防衛局長の方で組織的その他の説明があったようでございますから、答弁をさせます。
  167. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 防衛局長、後でいい。二つまとめて、もう一つ言うから、これも二つまとめて、局長、後から答えてほしい。  続いて、畠山防衛局長、あなたはさっきの答弁の続きでこう言っている。その場合の指揮は、司令官は指揮することはできないで、撃ってもよいという判断を示すことはできるが、法律的な意味における指揮ではない。これもわからぬ。撃ってもよいという判断は示すが、法律的な意味における指揮ではないということは、これも具体的にはどういうことを意味するのか。例えば、おれは撃ってもよいと思うという判断を指揮官が示す、続いて、しかし撃つか撃たないかは君たち個人個人の判断と責任だよ、君たちが撃ってもおれには責任はないよというのか。まあそんな間の抜けた軍隊はないですよ。ないが、そういうのか。上官と隊員の関係だけからいえば、上官の立場からいえば、そういうときには黙って死んでもらうのを見ているしかないですよ、これは。指揮できないのですから。そういうことで責任を持って隊長が部下を連れて外国なんかへ出れますか。出れないですよ。この上官としての判断を示すということについても、明確なひとつ具体的なお答えを願いたい。
  168. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 二点について私に御質問がございました。一つは、先ほど防衛庁長官から概略お答えいただきました束ねるということの意味、それから第二点目がただいまの指揮官の判断を示すということで、法律的な意味の指揮ではないという点についてどういう意味かというお話でございました。  この二つは、ともに同じ実態を反映したものとして私どもは整理しているわけでございますけれども、先ほど来御説明しておりますとおり、現行の今の法案の二十四条の立て方は、「自衛官は、」と法文に書いてございますとおり、自衛官個人の判断として行うものであります。しかしながら、先ほど来御質問の中でも御懸念がございましたように、自衛官個人の判断が時として過大に過剰反応を示す場合もなきにしもあらずということも念頭に置きまして、念には念を入れて、抑制する方向にのみストップをかけるという方向で指揮官が判断を示すということがあるということを申し上げているわけでございまして、個々の自衛官の責任と権限において行うものでありますから、それを束ねるという表現をたまたまとったものでございます。なお、念のため申し上げますと、この束ねるという表現は、かつてここの国会議論政府委員から答弁された例がございまして、そういうことを同じような意味合いにおいて申し上げたまででございます。  それからまた、先ほどの撃ってもよいという判断を示すのであって、法律的な意味の指揮でないといいますのは、そのストップをかけていたやつを解除するという意味で撃ってもよいということはあっても、撃てというのが仮に指揮命令だとすれば、そういう強制力を伴った意味ではないよという意味合いを込めて申し上げているわけでございます。  いずれにいたしましても、この考え方、一見奇異に思われるかもしれませんけれども、現行の自衛隊法九十五条においても全く同様の立て方をいたしておりまして、「自衛官は、」という書き方をして、個々人の自衛官が判断をするという建前になっておりまして、それを内訓におきましていわば指揮官の判断にかからしめる部分を生じせしめているという状況がございます。したがって、これはこの法律案において初めて出てきた、とった考え方というわけではございません。
  169. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今の問題はもう一遍後で少し言いますが、先へ行きます。  次に、一体武器の使用の正当性をだれが判断をするか。個人と、こう言うだろうが、それじゃ済まぬですよ。武器の使用について上官の指揮権は排除されている、法律上隊員個人の判断による武器使用だ、こう言うのですから、結果的に武器使用は個人の判断で自由自在ということになってしまうおそれがある。隊員個人の判断で乱射、乱射ということの事態も起こり得る。仮に刑法第三十六条や三十七条による歯どめがかかっていても、これは日本国内でのみ通用する話であって、外国に出て通用する話では私はないと思う。  したがって、これは事実上の空文であり、単なる飾り文句に終わるだろう。現実には気休め程度のものだ、私はこう思う。だれも客観的にそういうことを証明する者はいない。不正使用しても客観的にそういうことを証明することは非常に難しい。仮に不正使用があって、本国に帰ってから刑法上の責任を問おうにも、現場検証はできない。指揮官や同僚の証言も恐らくは期待できない。知っていてもお互い必ずかばい立てするから、真相は明らかにならない。結局は隊員個人の主観にゆだねざるを得ないから、本人が正当性を主張する限りそれを認めざるを得ない。指揮官の責任の追及も、法律上指揮権がないのだから追及できない。こういうことからしても、武器使用は一たん事が起こったときには自由自在になってしまうのですよ。  時間があれば、本当は私は、この質問項目の中でのシビリアンコントロールと軍の統帥あるいは統制というところでもう少し詳細に論ずる準備はしていますが、残念ながら時間がないので、それはきょうはできない。  そこで、一言だけ触れることにしますが、旧日本軍が死刑の極刑まで含む非常に厳しい軍独自の陸軍刑法や海軍刑法を持ちながら、軍司令官や下士官、兵に至るまで政府や軍中央の方針や指示を無視して暴走し、勝手に軍を動かしたり住民の虐殺や略奪、強姦などの悪事や暴行を重ねてきても、国内に帰って責任を問われたり、ましてや刑罰を科されたというようなことはほとんどなかった。私は寡聞にして知らない、知っておったら教えてほしいのですが。こういうことから見ても外地においての正当防衛などの責任は問えない。歴史的な事実が証明している。  そういう意味では武器使用の正当性、刑法第三十六条や三十七条があるけれども、これは日本国内でだったら、国民が見ているからかなりそれは有効に作用する。しかし、国民が見ていない外地に行って、武器使用は個人の判断だ、こう言っている。どうしてこの正当防衛などの武器使用の正当性を確保しますか。
  170. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 先ほども御答弁申し上げましたけれども、要するに、ここの二十四条に定めております「武器の使用」といいますのは、個人の生命が危なくなったときでございます。でありますから、それに基づいての判断ということで行うわけでございます。それを超えた武器使用が仮に万が一にもあるとすれば、それはその外地において訴えられるということがあり得ると、ぎりぎりのところはそういうことでございます。
  171. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 今ここに出ていますわね、この間、国内法の適用、こう言ったでしょう。裁判は、派遣国に帰って刑法上の責任は問われるのでしょう。どうして責任を問えますか。一々現場検証しますか。どうですか。この間は国内法の適用を受ける、こう言って答弁していますよ。今は違っている。どっちですか。
  172. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 我が国から派遣されます自衛隊員がPKF活動等に従事いたしまして、その場合に先ほど来御指摘のような事案が生じたという場合にどういうふうに責任を問われるかという点につきましては、最近国連の方で、従来からの原則あるいは慣習というものに照らしまして、いわゆるモデル地位協定案というものを発表しております。そこにおける考え方といたしましては、まあこのとおり、モデルどおり取り決めができるというものでは必ずしもございませんし、今までまだこのモデル協定案そのものに沿った協定ができたというものではございませんけれども、一応の考え方といたしましては、PKO軍事部門の軍事構成員は、刑事犯罪につきましてその派遣国の専属的な裁判権に属するということでございます。したがいまして、そのような事件が万一あれば、それは派遣国、つまり親元の自国において裁かれるということでございます。
  173. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 まあ考え方は今局長が言う説明のとおりかもしらんですよ。さっき言ったように、ことしは一九三一年のあの満州侵略から始まって六十年。パールハーバー五十年ということを言われるけれども、私はむしろこの柳条溝事件ですか、以来六十年、この方が非常に大事だと思う。どうもそれは余り言われないけれどもね。あの十五年戦争の中で、さっきから言っているように、中国や朝鮮に行って住民を虐殺したり、射殺したり、略奪したり、強姦したり、しほうだいしてきた。だから朝鮮や中国の人たちが非常に心配しているわけですよ。中国や朝鮮の人たちが非常に心配しているわけです、そういう歴史的な事実があるから。それだけに、どんな形にしても、初めて出すわけですから、しっかりした歯どめをかけて出さないとだめだと私は思うのです。  そういう意味で、国内におればいいですよ、私がさっきから言っているように、国民は見ているし。だけれども、外地に行ったときは見てないわけだから、具体的に一体どうして歯どめをかけ、もし裁判すると言ったって、現場検証もできないでしょう。どうするんですか。指揮官の指揮もないわけだから問えないでしょう。
  174. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと先ほど来の御議論で申し上げさせていただきたいのですが、先生は旧軍時代のあの苦い経験を引用されながら、PKOも大体それと二重写しになるのではないかという前提のもとにいろいろ御意見を述べられているやに私は感ずるわけでございますが、今回のPKO活動は、まさにそういった過去の本当に苦々しい、多くの国に迷惑を与えたようなそういう行動と全く違いまして、国連のもとで、国連要請に基づいてやるわけでございますから、その点が本質的に違っておるということ、これははっきり国民の前に私ども説明しなければなりません。そのことを申し上げさせていただきます。  なお、先ほどの刑法三十六条、三十七条との関係でございますけれども、あくまで自衛隊個人の判断で自己の生命等を保護するために武器使用が認められておるわけですが、それが乱に流れた場合はどうなるかということでございますが、これは、一つはやはり派遣する業務計画等におきまして、実施計画あるいは実施要領等におきまして、きちっとした訓練によって歯どめをかけたい、これが何よりであると存じますし、また、よしんばそういうことが起きた場合も、今の自衛隊は警務官、これは警職法の適用をもって自衛官自体のそういう行動についての規制なり監視をし、おのおの措置を講じておるわけでございますから、今回のPKOも恐らくそういう方々も参加することになるでありましょう。そういった問題で内部牽制によって、決して先生御指摘のような懸念のないようにしたいというのが私どもの決意でございまして、このことだけ二点申し述べさせていただきます。
  175. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 そんな答弁じゃ納得できないですよ。さっきから言っているように、昔は極刑、死刑まである陸軍刑法、海軍刑法があって、警務官と言われるけれども、昔の軍隊は鬼より怖い憲兵がいて、それでやりたいほうだいやってきているわけですよ。警務官なんか、そういう昔の憲兵に比べたらへの役にも立たぬでしょう。まあいいです、先に行きます。とにかくそういうことでは歯どめにならぬ、これだけは申し上げておく。  次に、畠山防衛局長にもう一遍聞きたい。  あなたは、九月二十五日の本委員会における先ほどの答弁の続きでこう言っている。自衛隊法第九十五条あるいは治安出動の場合においても「自衛官は、」という主語になっており、自衛官個々の判断で行うという形になっているところを、部隊を束ねる形での内訓が定められているわけであり、実際の運用としてはさらに慎重な運用を期すという観点から束ねるということを申し上げている、こう答えている。これはさっき言ったように何を言っているか全くわかりませんがね。畠山防衛局長は、実のところここで答弁に困って、自衛隊法第九十五条と治安出動を持ち出したのではないか、こう私は思っている。  なぜか。自衛隊法第九十五条は、武器等の防護のための武器使用について定めた条文であり、確かに主語は「自衛官は、」となっている。しかし、治安出動の場合は違う。治安出動時の自衛隊の権限を定めた自衛隊法第八十九条、第九十条、これは「刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合を除き、」いずれも武器使用については「当該部隊指揮官の命令によらなければならない。」、明確にこう規定しているわけです。しかし、この二つの条文は治安出動に関する条文でありますから、国際連合の平和維持活動とは無関係だ。さらに、自衛隊法第九十五条は、本法第二十四条第六項によって適用を排除されている。初めから適用を排除されることがはっきりしている自衛隊法第八十九条と第九十条、本法律案によって適用を排除されている自衛隊法第九十五条を持ち出しての説明だから、これはむちゃくちゃな答弁の見本みたいなものだ、私はこう思う。  この際、防衛局長に念のためにもう一つ聞きたい。  武器使用について上官の指揮権が存在するかどうかは、統一見解に言う「武器の使用」と「武力行使」を分ける重要なポイントである。その重要なポイントとなるべき事項を本法律案の中に明文をもって規定していないのはなぜか。第二十四条第一項の中でも、武器使用についての上官の指揮権は排除される、武器使用は隊員個人の責任と判断による、こういう規定を挿入すべきであると考えますが、どうですか。
  176. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 第一点目の御質問の、私がさきの答弁で自衛隊法九十五条ないし治安出動のための武器使用の規定を引用しましたのは、別にその実態、内容とのつながりということではございませんで、武器の使用が自衛官個人の判断による例として現行法にこういうのがございますという例示として申し上げたわけでございます。したがいまして、それだけのことでございます。  それから、第二点目の話でございます。この御趣旨は、二十四条に、個人としての自衛官の使用であって指揮官の命令によるものではないということを明定せよという御趣旨かと思いますが、これは「自衛官は、」という書き方によって、そこが個人的な武器使用であるということが明らかになっているかと思います。  なお、先ほどの八十九条の治安出動の場合は、「自衛官は、」となっていながら、なおかつ刑法三十六条、三十七条に「該当する場合を除き、当該部隊指揮官の命令によらなければならない。」という規定がございますから、これはいわば「自衛官は、」と書けば、ただし書きがない限り、これは個人としての武器使用であるということを逆に物語っているものと理解しております。
  177. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 さっきから言っているように、初めから関係のない条文と適用排除されている条文を使って説明しているわけですから、そんなことは納得いかぬ。  もう一つ、最後に。政府説明は全く納得できません。今までずっとありました。統一見解で示されている武器の使用の限界、すなわち隊員個人の生命の防護に限るということも、武器使用について上官の指揮が排除されているという説明も、このままでは厳格に守られ、実践的に履行される保証はどこにもない。恐らく自衛隊の内部では完全に無視されるだろう。このことを承知で、私は、皆さん方は説明していると思うんだね。国会審議を乗り切るための方便にすぎない、私はそう思う。  しかし、いずれにせよ政府説明は、平和維持軍に参加する自衛隊の部隊の武器使用については、表向き上官の指揮権は及ばないと言っている。きょう冒頭の防衛庁長官説明でもそうだ。これは非常に重大な問題ですよ。私はそう思う。外国に出て、しかも中立・非強制が大原則となっている平和維持軍参加部隊の武器使用について上官の指揮権が排除されているということは、結果的に平和維持軍の原則を損ねる危険性が大きく、また外国人の生命を軽んずることにもつながっていく危険性を持っている。武力行使と武器の使用を分けて、組織的な武器使用すなわち武力の行使は違憲だが、隊員個人の生命の防護のための武器使用は自然権的権利であり合憲などという理屈をひねり出し、無理やりつじつま合わせをした苦肉の策がこういう説明になっていると思うけれども、こういう無統制きわまる烏合の集団に堕しかねない武装集団を外国に出すことは、国会権威にかけても国民の名誉にかけても絶対に認めることはできない。武器使用について指揮権を排除された、烏合の衆に堕しかねないと、こう言っている。(発言する者あり)
  178. 林義郎

    ○林委員長 御静粛に願います。
  179. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 武器使用について指揮権を排除された武装集団は、総理大臣よく聞いてくださいよ、指揮権を排除された武装集団は、中枢神経を抜かれた武装集団と同じだ、私はそう患う。立場上黙ってはいるが、そんなことは軍隊としての自衛隊の存在にかかわる問題だ、私はこう思う。絶対に認められないはずだ。もし自衛隊のトップが唯々諾々としてそういうことを認めたというなら、全くもって無責任きわまる話だと私は思う。そういうトップは直ちに解任すべきだ。  以上、政府の統一見解に言う武器使用の限界と武器使用と指揮権の問題を中心に問題点の解明を求めましたが、疑惑は深まるばかり。一つも具体的な答えになっていない。武器使用と武力行使の問題一つとってみても、こういうずさんきわまる法律案は、もはや審議に値しない。重大な欠陥法案であることははっきりしていますから、私はこの法案の撤回を求めます。
  180. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 先生の今の御指摘の中で、指揮権が全然ないのではないかというお話でございますが、これは現地に参りますこの隊は、閣議決定によりまして、そして実施計画に基づき、そして実施要領に基づきましてきちっと派遣されます。その限りにおきまして私どもの指揮監督にあることはもちろんでございまして、この使命達成という意味ではあくまで指揮権のもとにあるわけでございます。  ただし、武器の使用についてのみ先生の御指摘のように上官の指揮権は否定されておりまして、個人の主体的な行動、判断によって行うという建前でございますから、烏合の集団を、無統制な烏合の集団をただ海外にやみくもに出すんだというような御指摘は当たらないのではないか、こう思います。
  181. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 もう時間がなくなりましたから一言だけしか言いませんが、武器の使用について指揮権が外されている、そのとおりですよ。しかし、軍隊の作戦行動の中では武器をどう使うかはやはり最高の軍隊の軍隊たる、軍隊の存在の根底にかかわる問題でしょう。それについて指揮権が外されているということが問題なんですよ。
  182. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまの議論は、防衛出動に関することでありますとかあるいは命令による治安出動等の場合は、これは我が国の防衛に重大な影響のあることでございまして、これは当然武器使用等につきましても整然と組織としての武力行使が行われることは当たり前のことでございます。今回、今議論されておりますのは、海外における平和協力ということで、あくまで武力の行使、武力の威嚇は行わないという大前提のもとに派遣いたしますものでございますから、この法案の趣旨をよく御理解をいただきまして、そして御議論をいただければ幸いかと存じます。
  183. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 審議続行不可能。こんなことではだめだ。
  184. 林義郎

    ○林委員長 石橋君、質問をしてください。——次に、山口那津男君。
  185. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私は、公明党・国民会議を代表して質問をいたすものでありますが、ひとつ冷静な御議論をいただきたいと思います。  まず初めに、我が国国連の安全保障理事会の非常任理事国となることが決定をいたしました。そのメンバーとして臨むに当たっての基本方針について何点かお伺いをいたしたいと思います。  初めに総理にお伺いいたしますが、日本などの提案による兵器の移転の登録制度というものが国連の採決を得られたようでありますが、これに対し外務大臣のコメントはありましたが、総理としてこの点をどのように評価をされるか。あわせて、今後我が国世界の軍縮に対して、平和憲法を持ち、また非核三原則、そして武器輸出禁止の三原則を堅持してきた我が国の果たすべき役割は非常に大きいと思います。その点についての今後の日本の方針もあわせて御答弁いただきたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 武器の登録制度につきまして、我が国は率先してこれを提唱した国でございましたが、幸いにして国連においてあのような決定が行われましたことは、まことに慶賀すべきところであると思います。なおしかし、将来に向かってこの制度はさらに拡充、改善する必要がございますし、また、すべての国々がこの制度に従って今後行動されることを深く望むものであります。  我が国は本来、憲法のもとに非核三原則をも堅持してまいりまして、また、武器の輸出をしないということも国の政策として守ってまいった国でございます。東西冷戦の終結によりまして米ソとも大幅な武器の、軍縮の動きをしておりますことはまことに喜ぶべきことでございますが、これらのことが重なりまして、結局東西の緊張緩和による平和の配当が南北問題の解決に向けられるといったような、広く世界全体の繁栄と平和のために寄与していくことを心から祈っておるものでございます。
  187. 山口那津男

    ○山口(那)委員 欧州においては、安全保障、これが集団的な取り組みの中で順次進んできておるところでありますが、残念ながらアジアにおいては、多くの複雑な、あるいは不安定な要因をなお抱えておるということで、にわかにこの平和と安定に向けての国際的な話し合いの場というのが設定できない状態であろうかと思います。  このアジアの地域的平和と安定に果たす日本の役割について、安全保障理事会のメンバーとして、合議体の構成員として発言していく役割と、それから、我が国が二国間の関係あるいは多国間の交渉との関係で主張していく立場とは違いがあってもしかるべきかと思います。そのそれぞれについて、安保理のメンバー国としての今後の方針、それから我が国の独立国としての方針というものについて、分けて御答弁をいただきたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 東西冷戦の終結と、殊に湾岸危機という具体的なケースに当たりまして国連の役割がにわかに重大視されるに至りましたことは、委員も御承知のとおりでございます。しかもその間に、南北朝鮮が国連に同時加盟をするというようなことがあり、あるいはカンボジア和平につきましてもUNTACに期待されるところが多いというふうに、国連の地位はいよいよ重くなってまいりましたところで我が国が非常任理事国となったわけでございまして、我々は湾岸危機の際に大きな国連協力をいたしましたが、なおこのたびはいわば安保理事国の一国として、国連権威責任をいよいよ重からしめるといった、有効ならしめるために努力をいたさなければならないと思います。  他方で、アジアにおいて、ヨーロッパにおけるような大きな平和の傘が立てられないことは、CSCEのようなものがにわかに可能でありませんことは、これはどうも歴史的ないきさつからやむを得ないことであろうと思いますけれども、しかし、アジアにおいて幾つか、今まで問題でありました幾つかの問題が解決の兆しを見せつつある現状もございます。  まあ今のところは、そういう具体的な問題の解決、あるいは二国間、殊にその際、日米というきずなが非常に大切でございますけれども、二国間で多角的にできております——多角的というのは適当でございません、二国間で多数できております関係を大事にしていくということが、この際大切なことではないかと思います。
  189. 山口那津男

    ○山口(那)委員 国連の安全保障理事会のなすべき役割としては、平和の回復活動、そしてまたでき上がった平和あるいは既に与えられている平和の維持活動と、大きく二つのあり方が存在するわけでありますが、この平和の回復活動に当たって、これから我が国が安保理のメンバーとして、その安保理の意思決定に参画をしていく、あるいは立案の段階からかかわるということが当然予想されるわけであります。さらに、つくられた決定に従って我が国がどのようにそれに参加をしていくか、この二段の行動となるわけであります。  そのあり方に対して、当然我が国の憲法を遵守した立場で臨まなければならないと思うわけでありますが、まず初めに外務大臣に、この日本国憲法に適合する立案、決定、そして参加のあり方というものに対しての一般論をお答えいただきたいと思います。
  190. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 当然我が国は、非常任理事国に参加をしますから、国連会議におきましてはいろいろな立案をし、また意思決定をしていくことになります。しかし、場合によっては、これは自分で決めておいても自国で出られないという場合もございましょう。それはどこまでも、憲法の制約の中でしか参加はできないという場面もございます。
  191. 山口那津男

    ○山口(那)委員 大事な問題ですから具体的に質問いたしますけれども、今日、内戦あるいは国家の分解の過程というものがあちこちで起きるような状況におきましては、国連の役割というのは一層大きくなろうかと思います。昨年あるいはおととしからの湾岸における動き、その中で起こった湾岸戦争に対して、湾岸タイプの多国籍軍というものが形成されたわけでありますが、このようなものが今後起きにくい状況になるという判断もあろうかと思いますが、絶対に起きないという保証はございません。  我が国が安保理のメンバー国である任期中に、このような湾岸多国籍軍タイプを形成すべし、こういう議論が安保理で起こってきた場合に、我が国としてその立案、決定、そして参加の各段階においてどのような方針をおとりになられるのか、総理立場からお答えをいただきたいと思います。
  192. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 サダム・フセインのクウェート侵略に対しまして、国連加盟国が安保理事会中心にこれに対応をしたわけでございます。十幾つの決議を安保理事会で重ねまして、多国籍軍がそれを実行するという形をとりました。幸いにして、安保理事会は一致してこの行動を決定し、あるいは支援することができたわけでございます。これは、事実関係が余りにも明白でございましたために、サダム・フセインの意図並びに行為に対してほとんど疑問を入れる余地がなかったということが、安保理事会が一致して行動できた根本であろうと思います。  もとより米ソ協力とかいうことはございますけれども、客観的に事実が比較的いわば明白であったということがあったのではなかろうかと存じますので、今後同様な事情であればともかく、もう少し複雑な事情になりましたときには、あのように簡明に、しかも迅速に安保理が行動できるかどうかということは、これは具体的な事例によって決定するしか、判断するしかないであろうと思います。  我が国の場合、いわば国際的な正義、公平というようなものに立って、国連の本来あるべき使命を間違いなく果たすという形で、安保理事会において我が国立場を明白にすべきものと考えております。
  193. 山口那津男

    ○山口(那)委員 あのイラクのクウェートに対する侵略というのは、当時事前にはだれしも予想しなかったところだろうと思います。しかし、実際には起きてしまって、即時の対応というものが迫られた。我が国としてはその点じくじたる思いもあろうかと思います。  ですから、物事の実態に即して実際に起きたときに考えるというのはそれはそれでありますけれども、この過去の、近年の事例である湾岸タイプの多国籍軍に対してどうするかということは、この過去の事例から判断できることでありますから、このタイプのものに対してどう取り組まれるかというのは明快な御答弁ができることだろうと思います。その点について、もう一度お答えいただきます。
  194. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それはやはり難しいお尋ねであると思います。  と申しますのは、あのように客観的に明らかなケースが、それが常であるということはなかなか申しにくうございまして、私がむしろ思いますのは、安保理事会が常に公平に、そして国連の本来の使命に従って行動をする、そのために我が国が最善を尽くすということがやはり大事なことである。幸か不幸か、昨年の事件は余りにも明白でございましたので、そういうところについて迷いがなかった、疑いを入れる余地がなかった。それは安保理の行動が非常に迅速に明快に行い得た基本的な理由でございますけれども、今後常にそういうことであるという保証はございませんので、安保理の理事国として行動するためには、ただいま申し上げましたような心構えが必要であるというふうに考えます。
  195. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは、先ほど外務大臣は、決定には我が国が同調しても、実際の参加に当たってはできないこともあり得る、こういう御答弁でした。  その答弁を踏まえて、総理、この武力行使をすることが明らかである多国籍軍に対して我が国が参加あるいは一体的な行動をとり得るようなものができるのかどうか、この点についてどうお考えになられますか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、仮に、昨年の湾岸危機が起こりまして、そのときに仮に我が国安保理事会の非常任理事国であったときに、安保理事会のああいう決定をその都度支持したであろうか、どうであろうかというお尋ねであるとすれば、これは仮定のお尋ねでありますのできちんとお答えをするわけにはいきませんけれども、結果として我が国安保理事会の決定を常に支持し協力してまいりましたから、恐らく非常任理事国であれば、我が国もあの決定を支持し協力してまいったであろうと思います。それが第一段の問題でございます。  第二段の問題として、そうであった場合に、あのように多国籍軍が行動を起こしましたが、我が国はその多国籍軍に加わって我が国として武力行使に参加し得たであろうか、したであろうかということでありますれば、これも仮定の問題でございますけれども、私はそのような行動に我が国が出ることはなかったであろうというふうに考えます。
  197. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今のような仮定の質問ではあったとしても、一般論としてそのような御答弁が当然予想されるわけでありますから、今後の安保理のメンバーとしての基本方針としてぜひとも堅持をしていただきたいと私は考えます。  さて次に、国連平和維持機能について、今まさに法案審議されておるところでありますけれども、この機能をさらに強化をすべきである、こういう議論があろうかと思います。  まず、安保理のメンバー国として、このPKO、これを紛争の予防、つまり武力紛争を予防するための活動に従事をさせるべきである、このようにお考えになられるかどうか、この点いかがでしょうか。
  198. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 国連の事務総長の権限を強化する、そういう中での今お話にあったような紛争を予防するためのシステムをいろいろ検討していく。例えば、国連の情報収集と分析をどういうふうにやるか、あるいは事実調査団の現地派遣とかあるいは事務総長の権限による問題解決等のための調停とか仲介とか、こういうような平和維持活動機能の強化というようなことについて我が国は大いにこれを推進をしてまいりたい、そのように考えております。
  199. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ただいま事務総長の権限のさまざまな強化という御答弁があったわけでありますが、実際PKOのこの部隊といいますか、組織を、紛争がまだ起きていない地域であるがこれからまさに起こるかもしれない、こういう地域に国連が何らかの要件、従来の慣行を踏まえた要件をセットした上で出ていく、そういう活動をこれから考えていかれるかどうか、この点についてのお考えをいただきたいと思います。
  200. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 さようでございます。
  201. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そういうPKO活動をこれから政府としては推進をしていく、こういうことでお伺いしてよろしいですか。
  202. 丹波實

    丹波政府委員 事実関係の問題でございますので私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、国連の中には、確かに先生が御指摘のように、PKOを将来先生がおっしゃるような分野で活用してはどうかという議論があることは事実で、PKO自体がこの委員会で御議論になられていますように過去の積み上げでできてきておりますので、将来あるいはそういうことはあり得るのかもしれませんが、現在、非常に近い将来ということで見ますれば、その紛争予防というためにPKOを使うというところまでは現在の時点ではまだ具体的な案は出てきてないというのが現状ではないかと考えております。
  203. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の事実関係、現状を踏まえた上でこれから日本がどうするのかという問いに対しての先ほどの外務大臣のお答えですから、その点について、これが紛争PKOが巻き込まれるというようなことがないように、かつ、紛争防止の目的が達せられるような、そういう工夫というものをこれから大いに推進をしていただきたい、このように思います。  続いて、掃海艇の行動についてお伺いいたします。  先ごろペルシャ湾において我が自衛隊の掃海作業というものが終えられたわけでありますが、我が党としてはこれに対して反対の態度をとりました。それは、一つには、本来自衛隊法というものはこのような行動を予想してない状態で立法されているということである。もう一つは、現場において、ペルシャ湾のあの湾奥のごく一部のところで、しかも多国籍軍が千二百個とも言われる機雷を過半数処理している状況において、なお我が国が行くということは果たして一体どういう目的があるのか。自衛隊法の目的にもかなわないし、また、不明確である国際貢献というものにそれを使っていいかどうか、こういうコンセンサスができ上がっていない。こういう立場で反対をしたわけであります。  しかし、炎天のもとでそれなりの、三十四個という機雷処理を果たしたことは、それはそれで敬意を表したいと思うわけでありますが、この結果から見て、出す時点ではなくてこの結果から見て、このたびの掃海作業というものはその効果がどこにあったか。本来、自衛隊法であれば、我が国の船舶の航路の安全を確保するということが主目的であるはずでありますが、実際の結果から見れば、むしろ、三十四個とはいえ国際貢献といいますか、クウェートその他の湾岸国の航路を確保したという点において国際的評価が得られているんではないか、このように考えるところでありますが、その主たる効果はどこにあったとお考えでしょうか。
  204. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  さきの掃海艇の派遣、これは先生評価していただきまして大変ありがとうございます。我が国のいわば最初の仕事としてこの掃海艇をやったわけでございまして、私は、国益に沿い、また国際的評価を受けたもの、このように存じております。  さて、今のお尋ねのペルシャ湾には、湾岸危機の間にイラクによって敷設された機雷が多数存在いたしておりまして、これが我が国の油送船、タンカー等の航行に重大な障害となっておりました。各国ももちろん参加はいたしておりますけれども我が国も原油の七割をあの地域に依存しておる、こういう状況でございますから、私どもは、自衛隊法九十九条によりまして、これは固有の業務として、海上自衛隊が海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこの処理を行うことができるという権限規定によりまして、我が国の船舶の航行の安全を確保するためにこの地域に機雷の除去、処理のために海上自衛隊を派遣したわけでございます。  他方、ペルシャ湾には、御案内のとおり、世界の原油の主要な輸送経路、ペルシャ湾は輸送経路になっておりまして、一日も早くこの海域における船舶の航行の安全の回復がこれは必要であるということは国際社会要請でもございました。  今回の措置は、結局我が国船舶の航行の安全を確保するためということが目的でございますが、結果といたしまして、これが世界国際社会要請にもこたえることにもなり、そして被災国、例えばクウェートの港湾封鎖解除につながるとかいうような、そういう平和的、人道的な目的を有します人的な貢献策にもなり得たという意味で大変評価されておるところでございます。
  205. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ただいまの御答弁は掃海艇を出すときに論議されたことと同じ御意見かと思いますが、結果から見ますと、湾岸でクウェートの大部分の油井が炎上しておる、まだ鎮火をしておらない。また、イラク、クウェート、イラクからは積み出しが実際にはほとんどできない。その七割を依存していたというのは紛争が起きる前の時点でありまして、この湾岸戦争が起きて、まさに掃海作業を必要としているこの現場では石油の積み出しはほとんど不可能である、そういう状態における作業です。遠い将来、油田が鎮火してから、積み出しが十分可能となってからの作業であれば、これは我が国の船舶の航路安全という目的が浮かび上がるでしょうけれども、現時点ではそういう要請は、必要性は疑わしい、こういうこと、このように考えます。また、唯一積み出しが可能であったかもしれないと思われたカフジという、これはクウェートとサウジアラビアとの国境付近にある油田ですが、我が国が開発したものと言われております。しかし、実際に掃海作業をしたのはこの沖合ではありませんで、さらにもっと北部のクウェート沖でありますから、この点でも現実の必要性というものは疑わしい、このように思うわけであります。  そうなりますと、今お答えになったそのさまざまな効果の中で残るところは、やはりクウェートのその一般的な航路の安全を切り開いた、こういうまさに国際貢献的な部分であろかと思うわけですね。これを私は、やってはいけないことではないと思うわけであります。むしろこれが国際的な中立性というか、これを保ちながら貢献の実が上がるのであればこれは真剣に考えるべき問題であろうと思うわけであります。  そこで、今回のPKO法案を見ますときに、この機雷の処理というものが果たして法律上理論的に可能であるのかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  206. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げます。  この国際協力業務の中身につきましては、内容につきましては法三条で定めているところでございまして、そこに国際平和協力業務として規定されている中に、廃棄された兵器その他の除去ということがございます。したがいまして、機雷等がこのPKF派遣の要件に合致しておれば当然その任務一つに入るのではないかと私どもは考えております。  なお、先ほど先生の御指摘の中で、こういう必要性はなかったのではないかとおっしゃいますが、しかし、我が国が石油資源をその地域に依存しておる以上、現実に湾岸戦争によりましてそのことが行われなかった、これは不幸なことですが、これをなるべく早く回復して我が国の油の輸送をきちっとさせるということは当然我が国の国益にかなうことでございまして、こうした観点からやったわけであります。
  207. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ただいまこのPKO法案に基づいて掃海作業が可能である、このような御答弁があったかと思います。正確には法三条の第三号の任務規定の中の「ニ 放棄された武器の収集、保管又は処分」、この規定に当たる余地がある、このようなお答えであろうと思いますので、実際にこのPKO活動として機雷の処理、掃海作業というものは過去なされたことがないわけですね、地雷については若干あるようでありますが。この掃海作業についても今後PKO活動として我が国がやるべし、こういう立場で臨まれるのかどうか、この点いかがでしょうか。
  208. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ただいま申し上げましたのは法律上そういうことが可能であるということを申し上げたわけでございまして、現実の国連の決議等によりまして要請があり、そしてその中身がこの法三条に、いわゆる放棄された武器の処分、これを要請されるようなことがあれば、これはケースとしてあり得るということを申し上げておきます。
  209. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それではちなみにお伺いいたしますが、人道的な国際救援活動というのが法に規定をされておりますが、この活動の一環として掃海作業はできないんだろうと解されますが、この点、確認的に伺います。
  210. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま防衛庁長官から指摘ございましたように、国際平和協力業務の具体的な内容は第三条で規定しておるわけでございますが、その中に人道的な国際救援活動についても個々に具体的な業務を書いてございます。その中には含まれておりません。したがいまして、人道的な国際救援活動として機雷の除去を行うことはできないということに相なります。
  211. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、この法案成立したとすれば、掃海作業をやる根拠としては、この法案に基づくPKO活動の一環として、もう一つは自衛隊法九十九条に基づく活動としてという二つの選択肢があるわけでありますが、しかしながら、この自衛隊法九十九条によりますならば、これは我が国の一方的意思で、つまり国際機関の要請もなく、また他国との合意のもとでもなく一方的な意思でできる、こういうことが可能になるわけでありますね。しかし、これはこの掃海作業そのものが事実行為としては状況によって憲法上の禁止された武力行使に当たる場合もあり得るわけであります。しかしまた放置されたことが確実である、明白であるという状況であれば、これはまた武力行使には何ら触れずにできることである。そういう掃海作業のもろ刃のやいば的な部分に着目いたしますと、これはできるだけ国際的に中立であるということが望ましい。望ましいというか、そうでなければいかぬと私は思うわけであります。  ですから、九十九条による実例はともかくとして、今後はPKOによる掃海作業ということをむしろ我が国としては推進をしていくべきである、それ以外の掃海作業は行わない、こういうことを明確な方針として打ち立てるべきではないかと思うわけであります。この自衛隊法九十九条については今なお国民の間には、この国際貢献としての性格が明文上付与されておらないわけでありますから、しかも我が国の船舶の航行安全確保という目的があいまいなままにこの活動がなされるということはまた国際間の疑義も招くことかと思うわけであります。この点について、今後の方針をぜひ明確にしていただきたいと思います。
  212. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答え申し上げますが、結論的に申しますと、九十九条の要件、これに合致いたしますれば、自衛隊法の規定によって掃海等が行われます。これは国連要請を必要といたしません。我が国独自の判断で行えます。しかし今回の場合は、事柄の重要性等にかんがみまして、安全保障会議、閣議等の議を経てこれを派遣をいたしております。  他方、PKFの方で行う場合は、これは国連要請その他各種の要件がございまして、その中における、そういう制約された条件のもとにおける廃棄された武器の処理でございますから、これはおのずから限定されたものになるだろうと思いますね。そういう意味で、このPKFとそれから九十九条による掃海、これは今後とも両立といいますか、両方ともそのときどきの事情に応じて活用されていくべき問題だ、このように考えております。
  213. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今回の法案に基づいて自衛隊法が若干追加されました。これはまさに国際的な貢献というものが個別的に明文化されたものであります。しかし、掃海作業が、先ほどの御答弁にも、国際貢献としての効果があった。私は、それがむしろ主たる効果であった、こう考えるわけでありますが、そういう状況であれば、個別的な国際貢献というものしかうたってない自衛隊法のもとで、九十九条は国際任務というものは明定してないわけでありますから、これを例えば自衛隊法三条で、一般的に国際貢献任務といいますか、これをうたえばまたともかくでありますが、このような現状のまま九十九条が国際貢献任務もあわせ持った活動として日本の一方的な意思でできる、こういう実例はいかがなものかと思います。むしろ我が国の方針としては、せっかく安保理のメンバーとなるわけでありますから、これ、ぜひとも今までやってこられなかったPKO活動として国際的に疑義のないような形で行うことを推進すべきである、このように思います。重ねて総理の方針をお伺いいたします。
  214. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどおっしゃいました一つの意味は、九十九条で現実に我々は掃海をいたしましたけれども、あの場合にある機雷が果たして無主物であるのかあるいは戦争したどっちかの当事国に属していたものであるかによって戦争のどちらかに加担するという危険というものがあり得たではないか、多分そういう意味のことをおっしゃったと思います。あの場合には戦争が終わっておりましたからそういう問題がございませんでしたけれども、なるほどそういうことは考え得ることだなと今思いながらお話を承っておりました。  いずれにいたしましても、このPKO法案によりますと、やや要件が辛くなる、国連要請等々厳しくなります。そのかわり、しかし行きます以上は、紛争当事国の間に停戦合意ができておって、そして通過いたします国々が通過について同意をしておる、そういう条件がございますから、そういう意味では作業がやりやすいことと、何よりも国際貢献が明確になる、それは私はごもっともな御主張だと思います。  先ほど防衛庁長官が申し上げましたように、現在の九十九条を別に残しておいて問題があるとは思いませんので、現実の問題としては、そのときの条件に従いまして、どちらの法律でいくかということを考えてまいる。いずれにいたしましても、このPKO法案がその際非常に有意義な貢献をし得る根拠になりますことは確かと存じます。
  215. 山口那津男

    ○山口(那)委員 大事な御答弁であったと理解いたします。自衛隊法の国際任務の体系的な位置づけ及びそれに伴う改正というものは今後ぜひとも検討しなければいけないところだと思いますが、今の御答弁の趣旨に則して、ぜひこの法案に基づく国際貢献としての掃海作業というものを検討していただきたい、このように思います。  さて次に、五原則と言われているものについてお伺いいたしますが、この法案に基づく国連平和維持活動については「武力紛争の停止」中略して、その「紛争当事者間の合意」、いわゆる停戦合意ということがうたってありますが、しかしこの合意というものが実際の停戦武力紛争の停止というものを含むのかどうか。これは先ごろのユーゴの実例でいいますと、停戦合意がなされたと再三にわたって報道されるもののすぐに壊れる。つまり、停戦合意の安定性というものに疑いがあるわけでありますが、この停戦合意というものを、これはやっぱり我が国の憲法を遵守する意味での大事な歯どめでありますから、厳格に解釈すべき基本姿勢がなければいけないと思います。この停戦合意、現実の停戦を必要とするかどうか、この点についてどうお考えでしょうか。
  216. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のように、この法案国連平和維持活動そのものの定義におきまして、五原則の一番目、停戦合意につきまして「武力紛争の停止及びこれを維持するとの紛争当事者間の合意」、そういう表現で書いてございます。武力紛争が現実に停止されているということ、それをまた維持するという当事者間の合意、はっきりとした合意というのを前提にいたしております。
  217. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これから停戦をしてそれを維持していきますという将来的合意ではなくて、現に停止をした上でのその状態を維持していく、こういう合意である、現実の停戦を必要とする、こういうふうに理解してよろしいですね。防衛庁長官、いかがでしょうか。
  218. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 お答えいたします。  今室長のお答えしたとおりでございまして、それに加えるものはございません。
  219. 山口那津男

    ○山口(那)委員 続いて、紛争当事者間の同意というものも要件になっておりますが、この同意というものも明確であること、あるいはそれが自発的な任意のものであること、これは意思表示の一般原則かと思いますけれども、この明確性を確保するために、国際間の意思表示でありますから、書面によることを原則とするのかどうか、あるいは口頭のものでもその明確性は確保されるのかどうか、この点についてまずお伺いいたします。
  220. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  二番目の同意の原則につきましても、この法案におきましては、当該活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者の当該活動が行われることについての同意というのが一つ、それからまた、我が国の参加についての同意というのも明確に書いておるわけでございまして、先生御指摘のとおり、形式としましては書面による同意というのが多いと思いますけれども、いずれにいたしましても、ここは客観的に、明らかに紛争当事者が同意している、そういうのが基本的な柱になっておる条項でございます。
  221. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この同意が任意に、自発的になされることも大事なことだろうと私は考えるわけでありますが、これが例えば紛争当事国に何らかの軍事的あるいは経済的その他の圧力、強制力が働いたもとに形式的に同意がなされるということもないとは言えないと思います。このようなものもここの法案で言うところの同意と理解していいのでしょうか。
  222. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御指摘の同意の形につきましても、基本的には、具体的にはいろいろな状況によろうかと思いますけれども強制とかそういうことのない、あくまでその国家としての任意の意思表示に基づく同意である、そういうふうに理解しております。
  223. 山口那津男

    ○山口(那)委員 実例に即して申し上げますと、イラク・クウェート間のUNIKOMというPKOがありますが、これについてはイラクの事前の同意があったのかどうか、あるいは同意かどうか疑わしいという評価もありますし、また一部では、イラクがたとえ同意を取り消したとしても、五大国が撤退はしない、こういう圧力がなされておったために、形式的にも同意をし、またその撤回もしなかったのだろう、こういう評価もあるわけでありますね。また一方では、多国籍軍が引き揚げるかわりにPKOが来るんだから、イラクとしてもこれを歓迎する意図もまた背景にはあったのではないか、いろいろなことが言われておるわけです。こういうさまざまな状況のもとでイラクの同意というものがあったと評価できるのかどうか、この点いかがでしょうか。
  224. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  この点につきましては、ことしの四月の九日に事務総長が安保理に対しましてイラク・クウェート監視団、UNIKOMと呼ばれておりますが、このUNIKOMにつきましての報告書を提出しております。その報告書の中で、イラクは四月の八日に自分に対して、つまり事務総長に対して、このイラク・クウェート監視団に同意するという通告をしてきているという表現がございます。そのイラクの同意の背景には、先生がおっしゃったいろいろな意味が、いろいろな考え方ができると思いますけれども、イラクは少なくとも形の上ではこういうぐあいにきちっと事務総長に同意を通告してきておるというのが事実でございます。
  225. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それは報告書で確認をされた、こういうお話でしたが、事前にイラクの同意があったのですか。これは事実として伺います。
  226. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  私たちが承知しておりますのは、事務総長が四月九日の書簡の中で、昨日イラクが自分に通告してきたという、そこをとらまえて承知しておるということでございます。
  227. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その場合、この同意の任意性、明確性というものについて評価が分かれる場合もあり得るだろうと思うわけでありますが、午前中の総理の御答弁では、この同意ですとか停戦合意ですとか、いわゆるこの原則なるものは国連の判断とそう異なることはないであろう、原則的には同じような判断になるであろう、このような御趣旨の御答弁があったように思います。しかし、実際の場面でこのUNIKOMの事例等を考えてみますと、国連の判断と我が法に基づく判断とでは、これは若干のずれがあることもある、我が国がより国連の判断よりも慎重な、より厳格なこの三原則の認定を行う、こういう場合もあり得るのではないかと私は思う。また、そうあるべしとも思うわけであります。この点について総理はどうお考えでしょうか。
  228. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 目的は国連平和維持活動に、我が国が参加を要請があっていたしました場合に、この法律案に示しておる要件が間違いなく満たされる、そういうことが一番大事なことでございますので、そのことから考えますと、ただいま御指摘のような場合は私はある、あり得る、あっても差し支えないことだと存じます。
  229. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その厳格な認定をなす我が国の独自のこの法の趣旨に従って判断をする、その意味では国連の判断とは若干のずれが生ずることもあり得る、こういう御答弁だというふうにお伺いをいたしました。  さて、この法案に基づく人道的な国際救援活動にも五原則の適用があるという趣旨の御答弁が前回の国会でなされました。しかし、厳密にこの法案を見ますときには、この五原則すべてがそのままPKOと同じ意味で適用になるということではないだろうと思うのですね。  これは確認の意味で質問するわけでありますが、厳密に言いますと、紛争当事者間、つまり派遣先国、日本が出向いていく先の国の同意が必要である、こう書いてあるわけですね。その国が紛争の当事者であった場合には、停戦合意成立していること、こういうことが要件になっているわけですね。そうすると、紛争当事国それぞれ両方の同意というものが要件になっていない、この点が一点であります。それからもう一つは、PKOの場合には、中立性ということが要件に明確に規定されているわけでありますが、こちらの場合は国際機関等の要請ということは書いてありますが、明確に中立性ということはうたっておりません。そういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  230. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、人道的な国際救援活動につきましても、基本的にはこの法案では基本方針の考え方を反映するようにいたしております。その中でも、御指摘のとおり、活動が行われる地域外の紛争の当事国の同意を必要としないとしていること、それから、中立性の条件をはっきりと書いていないということにつきましては、御指摘のとおりでございます。  これは、特に中立云々につきましては、そもそも人道的な国際救援活動、その概念、性格上、人道的精神に沿ったものでございまして、また、中立的なものとして行われることが法律で規定するまでもなく当然のことであるというふうに認識した次第でございます。  また、紛争当事者のすべての同意というのは、もちろんそれが得られればそれにこしたことはないわけでございますが、現実のニーズは、やはりそれ以外の、紛争当事者以外の国でも発生する場合が多いわけでございまして、その辺のところは、現実には運用の面では慎重に対応する必要がございますけれども、御指摘のとおり、明記はいたしておらない次第でございます。
  231. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の御答弁のとおりだとすると、現実に紛争当事国の停戦合意をとりにくい状況で、一方の同意だけを取りつけて、そして停戦合意だけを確認して出るということが、果たして我が国紛争に巻き込まれないということが、憲法に違反することがあり得ない、こう言い切れるのかどうか、若干の疑問の余地があるところであります。  また、中立性も自明のことのようにお答えがありましたけれども、必ずしもそうとは言えない。それは我が国要請をしてくる国際機関の人道的活動の実績といいますか安定度、それから国際的評価、またその国際機関に対する信頼性、こういうものとの相関関係で決まることであり、より慎重により厳しく解釈して運用していかなければならないのだろうと私は思うわけでありますね。ただ形式的に、国際機関の要請があればいい、にわかにつくった国際機関の形式的要請だけを受けてやるというようなことがまかり間違ってもあってはならない、このように思うわけであります。この点についての運用の指針についてどのようにお考えになるでしょうか。これは外務大臣にお伺いいたしましょうか。
  232. 野村一成

    ○野村政府委員 五原則につきまして、特にこの法案の立て方の中で、やはり現実のニーズと申しますか、特に人道的な活動の必要が出ている場合でございますので、そういった点を勘案しまして、この法案のような立て方にいたしておるわけでございます。  例えば、具体的な例を申しますと、紛争当事国の間でまだ紛争が続いておる、厳密には停戦合意ができていないというふうな場合にありましても、もうほぼ停戦の状態に近くなっておる、現実にそれ以外のところで難民の発生、被災民の発生等が行われておる、そういうような状況に照らしますと、紛争当事国の合意というのは厳密にとらえますと第一原則をそのままこの形で適用するわけにはいかないということになるわけでございます。  他方、今先生の御指摘のとおりだと思いますのは、現実にこの人道的な国際救援活動のために協力隊を派遣するという場合には、まず第一に、要員の安全性の確保、その他の面につきまして、非常に慎重に検討した上で、要請がありました場合にも検討を重ねていかないといけない、その上で決断を出す、そういうことだと思います。
  233. 山口那津男

    ○山口(那)委員 実際のその運用の方針といいますか、難しい判断をどうするか、幾つかのメルクマールがあるのだろうと思うのですね。そういうものはやはり明確にしていかないと、これは国民にとってもわかりにくいものになってしまう、こういうおそれがあろうかと思います。その点の運用の方針といいますか指針といいますか、もう一度明確に御答弁いただきたいと思います。
  234. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいまの御指摘は、運用に当たりましてよく注意すべきことであると思います。本来、国連平和維持活動への協力と人道的な救援とは、行為の態様、内容が多少違いますので、したがいまして、その条件が全く同じでないということまでは御理解をいただけると思うのでありますけれども、しかしながら、仮に人道的な意図を持った行為であっても、それが関係国の少なくとも一方にそのように受け取られない可能性が、これは考えられることでございます。それは非友好的行為と受け取られる可能性もございますし、その結果として人道的と考えました行為そのものが失敗をするといいますか妨害をされるというようなことも、これも考えなきゃならないことでございます。でありますから、運用に当たりまして大切なことは、我が国の人道的な意図が正しく理解されること、及び生じております紛争に対しての我が国の中立的な立場というものに誤解を生じないこと、そして実際のオペレーションがそれらの条件の中で成功の確率が高いこと、それらのことは運用に当たりまして慎重に考える必要があると思います。
  235. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ぜひともその点の明確な運用指針というものを貴いていただきたい、このように申し上げまして、私の質問を終わります。
  236. 林義郎

    ○林委員長 次に、東祥三君。
  237. 東祥三

    ○東(祥)委員 関連質問させていただきます東祥三でございます。  宮澤総理、そして新閣僚の皆さん、御就任まことにおめでとうございます。私はまだ一年生議員でございます。諸先輩を前にしてまだ物を語れる年齢に達しておりませんし、また種々の体験も足りません。したがって、生意気なことは言えないのですけれども、ぜひ、このように皆さんにお会いできる機会もありませんので、一言言わさせていただきます。  御案内のとおり、内外において今激動の時代に私たちは生きていると思います。そういった意味で、今直面している種々の問題は極めて複雑多岐にわたっておりまして、その解決に当たりまして皆様方責任は極めて重い、このように深く思います。したがって、国民の生活及び日本丸の方向性を決定していく上で皆様方の判断が大きくかかわっているのですから、私心を捨てていただきたい。さらにまた、業界あるいは特定の地域の利益から脱して、国家益、人類益あるいは地球益という視点でもって事に当たっていただきたい、心からお願い申し上げます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、PKO法案及び国際緊急援助隊法に関連して、以下時間のある限り質問させていただきます。三本柱でございますが、平和、人道的見地からの国際貢献について、そしてまた国連のあり方について、そして政府、民間を含めての国際貢献という、こういう形で質問させていただきます。  第一番目は、人道的そしてまた平和的な見地から日本の種々の国際貢献を考えるに当たって、このPKO法案及び国際緊急援助隊法の改正の早期成立が待たれるところでございますが、この法案の中に示されている具体的な国際平和業務を効率的に行うためには、重要な道具あるいはまた手段の整備確保が必要なのではないか。具体的にいいますと、第三条三項に書かれております、例えばヌの「医療」活動あるいはルの「被災民の捜索若しくは救出又は帰還の援助」、そしてまた「被災民に対する食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布」等に関連する問題だろうと思います。  その第一は、政府専用機の活用でございます。この政府専用機の使用目的については、また後ほど政府委員の方から答弁願いたいと思うんですが、世界じゅういろいろなところをこう回ってまいりまして、これだけ大きな国になった日本がなぜ政府専用機を持っていないんだろうというふうにいつも思っておりました。昭和六十二年に二機購入計画が決められて、一機が十一月の十三日に着かれた。この時点でまず総理から、政府専用機をお持ちになった御感想について御答弁願えればと思います。
  238. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 東委員はかねて国際機関におかれまして発展途上国の援助あるいは人道問題等について御貢献をしておられることをよく存じ上げておりますので、それらの見地から、本法案成立につきましても、また有効な御助言を賜りたいと存じます。  政府専用機の引き渡しと申しますか到着が間もなく現実になるわけでございますが、当初総理大臣あるいはその他の要務を要する人の輸送というようなことが一つの目的として考えられました。しかし、実際には沿革がございまして、私個人の体験で申しますと、一九七五年にサイゴンから私どもが、私は外務大臣をいたしておりましたが、同胞を引き揚げようといたしましたときに、その方法がなかったわけでございます。民間機に委託をしようといたしましたけれども、だんだん危険が迫りまして、乗員の確保が難しかったことと、保険料が禁止的になりました両方の理由からとうとう我々の同胞の救出を有効にすることができなかったという経験から、私は何かやはり政府がそういうものを持つべきだと考え続けてまいりましたけれども、別の観点からこのたびそういう整備ができることになりました。  しかしながら、考えてみますと、これからも邦人の救出ということは起こり得ることでございますし、また、ただいま御審議願っております法案あるいは緊急援助によりまして、我が国から人を送るあるいは向こうから人を迎え入れるといったようなときにも、この政府専用機が有用な役割を果たすのではないかということを実はひそかに考えておりまして、ただ、いろいろ法律関係でそれがすぐそうなりません。しかし、そういうものを政府が持つに至りました以上は、何かもう少し広い目的に奉仕すべきではないかということを私としては、実は就任いたしましたのは極めて最近でございますけれども、専用機のことを聞きまして思いつつあるところでございます。
  239. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、専用機の使用目的について答弁していただけますか。
  240. 荒田建

    ○荒田政府委員 お答えいたします。  政府専用機、実は先生御指摘のように、先週の十三日に一号機、それから今週の末に二号機がようやく導入されまして、日本にデリバリーされることになっております。  その二機につきましては、過日の政府専用機検討委員会におきまして、主として内閣総理大臣等の要人の輸送というようなことに供するということのほかに、三つほどの輸送目的を決定しております。一つは、緊急時におきます、今総理からもお話ありました在外邦人救出、このために使いたい。二つ目には、国際緊急援助活動、災害の援助物資、これの空輸のためにも使いたい。それから三つ目には、国際平和協力業務、難民の輸送とかそういった業務にも使いたいということで、これからいろんな準備がございますけれども、精力的な準備を今しておるところでございます。
  241. 東祥三

    ○東(祥)委員 今言われた、緊急時というお言葉をお使いになったのですが、これはどのように解釈したらよろしいですか。
  242. 荒田建

    ○荒田政府委員 緊急時でございますけれども、例えば紛争等がありました場合に在外邦人が帰国をしようと思っても、民間機が飛べないあるいは飛ばない、こういったような場合もございますし、あるいは便数が極めて限られていて乗ろうと思っても乗れない、こういった状況が考えられるわけでございますが、しからばその緊急時、一体どういう事態になれば緊急時かというのは、具体の事案が発生した段階でよくその実情にかんがみて的確な対応をするという観点からこの緊急時を判断すべきものというふうに考えております。
  243. 東祥三

    ○東(祥)委員 そういたしますと、昨年の八月二日のイラクのクウェート侵略後に、イラクからヨルダンやあるいはトルコ、イランの方に大量の難民が出たわけですけれども、残念ながら日本の場合直接、政府専用機を持っておりませんでしたから、飛ばせなかった。また自衛隊機も飛ばさなかった。民間のチャーター機を駆使して、ある点からある点へという、こういうことをやったわけですが、この政府専用機を持つことによって、もしあのような同じような状況が現出した場合、この政府専用機を使用するという、そういうふうに理解してよろしいですか。
  244. 荒田建

    ○荒田政府委員 たしかことしの一月か二月だったと思いますが、湾岸危機におきまして生じた難民につきまして、たしかJAL、日本航空だったと思いますが、エアラインに御協力をいただいて避難民を運んだというケースがございますが、ああいったケースはまさにこの緊急時における、在外邦人救出ではございませんけれども、避難民救出ということで、先ほど目的のところで申し上げましたけれども、平和協力業務の一環で、人道的な救援活動というのがこの法案にも盛り込まれておりますので、そういった角度から恐らく運用することになるだろうというふうに考えております。
  245. 東祥三

    ○東(祥)委員 この専用機を運用する基準というのはもうできておりますか。
  246. 荒田建

    ○荒田政府委員 専用機の運航目的については先ほど申し上げましたけれども、運用基準、具体的な運用基準ということになりますと、目的の間で競合する。例えば総理がお出かけになられるという予定をしておったところ、急にそういった人道的な救援活動が必要だというような状況が生じた場合、目的間の競合ですね、そういった場合に、どちらを優先するかというようなことが一番その運用基準で考えていかなければいけないところなんですが、それにつきましては、まだ飛行機が来たばっかりでございますから、今後政府専用機の委員会において検討してまいりたいと思っております。
  247. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、基本的にはこの専用機の使用目的としては四つあると。内閣総理大臣初め要人を輸送する。第二番目として、在外の邦人救出。そしてまた、国際緊急援助隊活動にも使える可能性がある。さらにまた、このPKO活動とのかかわりで生じる必要な活動にも使用することができる。こういうことをやるに当たって、現行法で可能なんですか。
  248. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ただいま内閣の参事官の方から申し上げました四つの使用目的のうち、第一番目の要人の輸送、内閣総理大臣等の輸送に関しましては、これは現行の、これはあくまでも来年の四月一日以降防衛庁の方に所管が移されるということがせんだって決定されたことを前提としてお答え申し上げるわけでございますが、その場合において、第一番目の内閣総理大臣等の輸送業務につきましては、現行自衛隊法の百条の五という規定がございますので、それに従って輸送することができるというふうに考えます。  それから、第三番目の国際緊急援助隊活動と、四番目のPKO法案の中にあります人道援助に関するもの、この二つは、この二つ法律案が通りました後には自衛隊、防衛庁の権限として附則で書かれておりますので、これもその法律案が通ればこれはそれに従って行うことができる。別途の法律案は要らない。問題は、二番目の邦人救出という点だけでございまして、これにつきましては別途検討いたしておりますが、恐らくこれは新たな法律改正が要るであろうというふうに考えておるところでございます。
  249. 東祥三

    ○東(祥)委員 邦人救出に当たっては次の国会あたりで出すという、そういう意味に理解してよろしいですか。
  250. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 現在それについては検討を取り進めているところでございますが、関係各省庁とも相談をして早急に結論を得たいと考えております。
  251. 東祥三

    ○東(祥)委員 この政府専用機は、何か航続距離が一万三千キロということで、日本から出れば世界じゅうのどこにでも飛び立っていくことができる。そしてまた、ジェット旅客機ですから、これがおり立てる空港があれば世界じゅうほぼカバーすることができる。そういう意味においても極めて有用性の高いものだろうと思いますので、要人のみならず、先ほど答弁にありました国際緊急援助隊活動あるいはまたこういったPKO活動に近い将来使えるようになることを祈ります。  次の問題ですが、道具の問題ですけれども、野外手術システムというのがあるのを聞きました。野外手術システムというのが北海道に三セットあると聞いております。聞きなれない名前で、私は初め医療車というふうに理解しておったのですが、この野外手術システムというのはまずどういうものなのか、説明していただけますか。
  252. 金森仁作

    ○金森政府委員 お答え申し上げます。  この野外手術システムは、野外で移動いたしまして外科的な治療を施すための装備でございまして、四つの車両と、そのそれぞれの車に載せます医療器材で一セットになっておりますが、具体的に申し上げますれば、手術をいたします手術車、それからその準備をいたします手術準備車、それから滅菌車とそれから衛生補給車の四つを一セットとしてシステムと呼んでいるところでございます。
  253. 東祥三

    ○東(祥)委員 これは野外テント、普通例えば紛争が起こる、紛争近くに必ず医療団が来たときに野外テント等が設置されるわけですけれども、その野外テントを補充する役割があるのか、あるいはまたそれ以外の用途で使えるものなのか、もうちょっと目的について明確にしていただけますか。
  254. 金森仁作

    ○金森政府委員 この使用目的は、先ほど若干触れましたように、野外で手術をするわけでありますが、患者さんがたくさん発生いたしました場合に、後方病院が大変ないというような場合に、いわゆる大量の先ほど申しました傷害者が発生いたしましたときに、現地で早期に外科的な治療を行うということが目的でございます。
  255. 東祥三

    ○東(祥)委員 この運用構想はどういうふうになっているんでしょうか。今北海道に三セットあると言っているのですが、現実には使われてないんじゃないかというふうに思うんですけれども、運用構想について答弁願いたいと思います。
  256. 金森仁作

    ○金森政府委員 先生御指摘のように、現在このシステムは北海道の三つの師団で持っておりまして、また、そのほかに教育訓練用として一セット持っておりますが、逐次その他の師団にも整備をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  257. 東祥三

    ○東(祥)委員 なぜこの問題を出したかといいますと、人道的な国際救援活動あるいはPKO活動にこの野外手術システムというものを使えるんではないのか、このように思っているわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  258. 金森仁作

    ○金森政府委員 このシステムを国際緊急援助活動や人道的な国際救援活動のために活用するか否かということにつきましては、具体的な災害あるいは被害の規模であるとか態様であるとか、また、被災国あるいは国際的な機関からの要請内容等、そのときどきの状況を勘案しながら、自衛隊の行う救援活動の必要性に応じまして総合的に検討してまいることとしたいと思っております。
  259. 東祥三

    ○東(祥)委員 要請があって、そしてまた必要性が認められる場合は、この野外手術システムを送り出しても構わない、このように理解してよろしいですか。
  260. 金森仁作

    ○金森政府委員 このシステムは、かなりいろいろと車の大きさ、重さ等々の制限はございますけれども、いずれにいたしましても、人道的な国際救助活動要請があれば、自衛隊の任務遂行に支障のない限度で、適切な装備の利用を図りつつ貢献してまいりたいと考えております。
  261. 東祥三

    ○東(祥)委員 前向きの答弁、ありがとうございます。  第三番目に、これはまだ現実には日本にないわけでございますが、今言ってきたのは空とそして陸です。今度は海です。国際災害医療船、仮称ですけれども国際災害救援あるいは医療船、こういうふうに言っていいのかわかりませんが、言うまでもなく、第二次大戦後、日本というのは貿易立国を目指して、貿易振興のために世界じゅうを回ってきました。そして、いろいろな各地において見本市を開いたりしてきた。四十六年たった今日、経済大国に見事に成長することができた。発展途上国に行ったとしても、日本の商品を見て日本というものを理解するようになった。湾岸戦争が起こり、また、冷戦構造が崩壊し、今改めて日本国際貢献というものが大きく議論の、関心の的になってきているわけです。  そういう視点から考えますと、商品ではなくて、やはり人道的あるいは平和目的のために日本はこういう活動をしているんだという、目に見えるようなものは一体何なんだろうというふうなことを一生懸命考えておりますと、結局、やはり目に見えるこういう国際救援活動医療船みたいなものをつくる必要があるんではないのか。そして、これは素人が考えていることですから、果たして現実可能かどうかわかりませんけれども、基本的にはこの船は大型なものであって、基本的には世界じゅうを周航して、その目的は、第一義的には三つあるんじゃないか。  一つは、すべてのものをやろうとするんではなくて、発展途上国において公衆衛生の向上が叫ばれている国々はたくさんあります。また、現地医師が足りないというところもあります。現地医師の医療技術指導にも多分役立てることができるんじゃないのか。さらに第三番目として、周航中、近くで緊急を要するような災害等が起きた場合、現地に急行して医療活動にも当たるということができるんではないのか。最低限のところに目的をとどめておきまして、それがうまくいくようになれば、将来的にはヘリコプターだとかあるいは高速艇、そしてまた、先ほどお話がありました野外手術システム等を装備して、種々の需要にこたえることができるようになるんじゃないのか。こういう活動をしているところというのは、世界じゅう一つもまだないわけでございます。国際社会の絶大な信頼と信用を得ることは間違いないと思うんですが、こういった国際医療船という構想は、民間の方々においてもかなり出てきております。  そういった意味において、資金的に政府が調達することができないとするならば、民間の方々のお力をかりて、また、ともども協力を得ていくことができるのではないか、このようにも思うわけでございますが、私はこういった視点から、日本のこれからの国際貢献策の一つの目玉としてこういった仮称国際災害救援医療船の建造を提唱したいんですけれども、まず総理の御所見を伺いたいと思いますが。
  262. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御自身の貴重な御体験からの御発言と思います。実は、せんだってもヨーロッパで国境なき医療団の活躍を、情報を聞きまして非常にうらやましく思いましたが、ただいまのお話のようなことは、かつての見本市などと違いまして、利潤動機でもってやるというわけにいかない種類のことでございます。それだけ国民全体の大きな決心を必要とすることでございますけれども、しかし、政府としてもその中になし得る部分がきっとあるであろうと思います。私は、そういうことはやはり我が国としてこれから大いに努めるべきことだと思います。
  263. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 ただいま総理からもお答えいたしましたように、非常に建設的な、そして創造的な、そして日本に極めて合った構想ではないだろうかなというふうに政府でも受けとめたいと思っております。  今、東先生おっしゃいましたのは、国際緊急医療援助船みたいなそういう概念でございますけれども政府の方でも何らかそういうものができないかということで、政府が今検討しておりますのは、多目的船という、それに何をこれから入れるかというのはこれからの検討でございますけれども、本年の六月からその検討会をやっておりまして、もう既に六回、各省庁集まったり民間の方の意見を聞いたりしながら会議をやっている。政府の検討のペースとしては比較的速い種類でやっているということでございますので、我々もそのいい結果が出ますように一生懸命やってまいりたい、こう思っております。
  264. 東祥三

    ○東(祥)委員 非常にいい答弁でうれしいんですけれども、もう具体的に検討しているということですが、その基本的な検討結果はいつごろ出るんでしょうか。
  265. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま官房長官から御答弁申し上げましたように、先生がおっしゃる医療目的ということも含めまして、もう少し広い観点から政府として持つ船としてどういう機能が期待できるのか、他の民間分野で行っておりますものとの対比においてどこが欠けておるのかというようなことを含めまして、関係しそうなところを全部集まっていただいてやっております。  とりあえず、現在の当面の目標といたしましては、今年度中にはいろいろな目的の概念整理をしてまいりたい。具体的に申しますと、やはり目的によりまして期待される船の機能も異なってまいります。したがって、そもそもいろんな諸要件の中で現在何が最も政府に期待されるのかといったようなことの、ある程度類型化した上での概念整理をしたい。来年度にはその中で、でき得るならば、これは多少予算要求とも絡みますのであれですけれども、その中で特定できるならもう少し特定したところでその議論を少し深化させていきたい。いずれにいたしましても、当面は今年度中に概念整理をしたいというふうに考えております。
  266. 東祥三

    ○東(祥)委員 できるだけ具体的な像が得られることを祈ります。  それでは次に、先ほどの山口議員の質問とも若干関連するんですけれども国連のあり方についでぜひ質問させていただきたいと思います。  御案内のとおり、国連創立以来四十六年にわたって経済あるいは社会開発、人権、人道等の広い分野で大きな成果を上げてきております。これらの分野における国連の役割は、今後ともますます拡大の一途を進んでいくと思っております。  ただ、国際の平和と安全の維持という国連の第一の使命に関しては、今日まである意味で幻滅に近い状況がずうっと続いてきた。しかしながら、近年の国際政治の目まぐるしい変化によって、ひょっとして創立当初の理想実現に向かって状況が現出されていると見られる方もいらっしゃいますし、そういう空気が盛り上がってきているのではないかとも私は思います。例えば、デクエヤル事務総長は一九九〇年の国連デーにおけるメッセージで、長年にわたってきた平和の創造を不可能としてきた機能麻痺との決別、こういうふうにも述べておりますし、また他の西側国連の代表というのは、第二次世界大戦後、国連の創設者が掲げた理想がやっと日の目を見たと叫んでおりますし、さらにまた、さきのロンドン・サミットにおいても、国際体制の中核がまさに国連の役割として位置づけられるのではないか、このようにも言っております。  こういった状況下において、第二次世界大戦の悲惨と残酷さを二度と繰り返さないと誓い、また平和の重要性を深く認識しているこの日本が、回復された平和及び再び戦乱の地にならないようにするために、今議論しているPKO法案、これは極めて妥当なことであり、さらにまた極めて意義があることだと私は思っております。  こういった視点から、もう既に総理の方から所信表明演説及び我が党の石田委員長の代表質問に対する答弁の中でもありましたけれども、現在の国連に対しての認識はどのようにお持ちなのか、改めてお伺いしたいと思います。
  267. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 国連の存在がにわかに世の中の注目を浴びるようになりました。それは大変喜ばしいことでございます。  で、一つは、やはり米ソの対立というものが、いわゆる冷戦の解消ということがあずかって力がございましたが、もう一つは、たまたま湾岸戦争が起こりましたときに各国、主としてアメリカが、国連をこの問題の前面に立てて対処をすることが大事である、それがアメリカとして最も望ましい道であるということを考えました。そういう理由にもよったことと存じます。国連はその役割を立派に果たしたわけでございますが、したがいまして、今国連がこれだけ我々の注目を浴びるようになりましたのは、国連自身が充実したというよりは、むしろ国際的な情勢が国連の出動、国連活動を必要とした、そういうふうに考えることの方が私は自然であろうと思います。  したがいまして、国連はそのような大きな、にわかに期待されました任務にこれから実はこたえていかなければならないのではないかと、私は正直言うとそう思っておりまして、これだけ大きな仕事を国連が担っていくのにはいろいろ国連自身がやはり変わっていかなければならない、非常な敬意と期待を持ってこれは申す言葉でございますけれども、そう思います。したがって、我が国のような国もこういう形で国連平和維持活動法律をつくって協力するということも、これも国連を充実する一つの道であると思いますし、非常任理事国になりましたのも、またそういうことを我々としては非常任理事国としてやってまいりたいと思います。  やはり随分前にできた制度でございまして、加盟国の数もこれだけ大きくなってまいりました。一番大切なことは、国連がこれからすべての加盟国のよき代弁者である、公平なよき代弁者であるという、そういう信頼をかち得ることだというふうに考えております。何かの間違いで大国の利益に奉仕するといったような印象を与えれば、それは国連世界すべての人々の信頼を担うということの差しさわりになりますので、やはりそういう意識を持って新しい任務をしてもらわなければなりません。  と考えますと、しばしば御指摘になりますように、たくさんの実は改善をすべき制度がございまして、敵国条項というようなことをよくおっしゃいますが、これなどはもう明らかにだれが考えてもどうかしてほしいという種類のことでございますけれども、あるいはそれよりもっともっと、例えば安保理事会というものが今の常任理事国、ベトを持った五つとああいう構成で果たしていいのであろうかというようなこともございます。忌憚なく申せば、国連憲章を全面的に改めるということになるのでございましょうけれども、それは恐らく非常に時間ばかりかかることでございますから、何かそこで、やはり国連がすべての加盟国の公平な代弁者であるという実体を備えますための、仮に全憲章といえば時間がかかりますので、何かそういう比較的短時間で実を備える方法はないものであろうかといろいろに私も考えておりますけれども、ただいま具体的にこれ以上申し上げます用意がないのは残念でございますが、しかしそういう意見というのはやはりほうはいとして起こってまいりますと、きっと何か道が見つかるのではないかと思います。
  268. 東祥三

    ○東(祥)委員 これまで日本もいろいろな機会で国連の改革、大きな枠組みを変えることなく既存の枠組みの中で強化できるものは強化しという、また最近では通常兵器移転について国連への報告制度をしたり、あるいはユネスコの行財政改革制度だとか、また今御指摘になりました敵国条項の削除だとか、こういったことはいろいろなところで言われてきているわけです。また、他方において一九八五年ぐらいから、国連の中においても賢人会組織みたいなものをつくって、そして国連改革の方向性を検討している。また日本の中でも、特に最近においてはいろいろな識者の方々が国連の改革の必要性ということを論じております。  総理、いかがでしょうか。日本国連の改革へのアプローチをある意味で全体的にとらえる意味で、総理のもとあるいは政府のもとに国連改革の検討委員会なりそういったものをおつくりになって、そしてしかるべきときにその結論をいただくという、こういうことに関してはどのようにお考えになりますか。
  269. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは一つのお考えであると思いますけれども、やはり一番大切なのは、ただいまの安保理事会拒否権を持っております五つの国、これらの国々が現状ではやはり十分でない、何かこれを改める必要があるという認識を持ってもらうことが、まず私は大事なのではないかと思っております。
  270. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間がなくなってきてしまいましたので、もうちょっと質問したいことがあったのですが、最後に一つ。  国連国連というふうに言っていても、まだまだ国連組織に対しての広報活動といいますか、日本における広報活動というのは極めて低いのだろうというふうに思います。さらにまた、国連拠出国第二位の地位になっている日本でありながら、まだまだ国連の職員が極めて少ない。第一回目の第一次邦人職員というのが今の事務次長の明石さんだというふうに私は聞いておりますが、当時の国際連合の職員の給与というのは日本総理大臣の給与よりも高かったということで、世界一の高い給与をもらっている国際公務員というふうに言われておりました。ところが、現在は日本がこれだけ経済大国になってしまいましたので、余り経済的なインセンティブがなくなってきてしまったというところに、ある意味で邦人職員を国連に出したいのだけれどもなかなか入らないという、インセンティブがなくなってきちゃっているのじゃないか、こういう面があると思うのですが、拠出金に見合った形でまだ日本人の職員が少ない。この日本人をもっと増員させていくためにどのような方策を政府としてお考えになるか、この答弁を聞いて私の質疑を終わらさせていただきます。
  271. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおりでございまして、先生御承知のところですが、国連事務局は国連本部の専門職の人数につきまして、各国として提供してくる望ましい上限というものを各国について算定しております。日本は大体二百ぐらいになっておりますが、それに対して最近は九十名前後で推移しておるということから見ても非常に低い。先生のおっしゃるとおりです。原因は、先生が今おっしゃった点に加えまして、語学の問題ですとか、それから日本の終身雇用制的な雇用制度の問題、一度外に出ると帰ってきてなかなか職場が難しい、そういうような問題があろうかと思います。  しかしながら、そういう状況に甘んじてはいけないという先生の御指摘はおっしゃるとおりで、私たち例えば国連局の中に国際機関人事センターというものを設けまして、いろいろな国連本部、国連関係機関が人を募集する場合に、そういう情報を提供する広報活動をいたしております。まだ足りないという点は先生のおっしゃるとおりでございますが、今後ともこういう活動を広げて、できるだけ多くの日本の方が国連職員あるいは国連関係機関の職員として働いていただけるように、私たちとしても広報活動その他で努力してまいりたいというふうに考えます。よろしくお願いします。
  272. 東祥三

    ○東(祥)委員 どうもありがとうございました。
  273. 林義郎

    ○林委員長 次に、東中光雄君。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 この法案は、戦後初めて公然と武装をした自衛隊の部隊が海外に出動をする、そして国連平和維持軍、PKFに、武力行使を伴う軍事活動に参加をする、こういう内容を持った法案であります。これは、そういう点では、憲法の原則からいいましても非常に重大な問題だと私たちは思っています。  そこでお伺いをしたいのですが、これは外務大臣にお聞きしたいのですけれども、先ほど来の御審議で、国連安保理事会国連平和維持軍派遣をする決定をする、そうした場合に、国連から要請があれば日本は自衛隊を部隊として参加できるようにしたい、その場合に派遣についてのいわゆる五原則というのを貫いていくんだ、こういうお話でございましたが、要請があったら、はい行きます、そう簡単にいくものではないのですね。その場合には、国連日本政府との間に外交上のちゃんとした取り決めが要ることになります。どういう取り決めをやられるのか、これは外務大臣にお聞きをしたいと思うのです。
  275. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 安保理事会で具体的なPKO活動の設置が決定され、その活動に参加を要請されました場合には、我が政府といたしまして、この法案成立した後の段階でございますれば、この法案に則してその参加の可否を決定するわけでございますが、仮にある特定のPKO活動に参加するということになります場合には、国連との間でいわゆる派遣に関する枠組み、あるいは取り決めと言っていいと思いますが、派遣取り決めといったようなものを作成することになると思います。  これまでも、各派遣国と国連との間におきましてそのような枠組みが設定されてまいりました。最近、御承知のように国連におきましては、これまでの過去の慣例、原則というようなものを踏まえまして、いわゆるモデル協定、派遣に関するモデル協定というようなものを作成しているわけでございます。そのとおりの取り決めをつくるということはこの段階で申し上げられませんけれども、このようなモデルというものが参考になると思います。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 国連安保理事会で決定がされる。いわゆる付託任務、マンデートが決まる。それに従って国連事務総長が報告をする。その報告内容で一つの外郭ができるわけです。それに対して、参加をするについては、いわゆる国連維持軍を受け入れる国と国連との地位協定があります。それを含めて、そういうことで今度は参加国と国連との間で地位協定をつくるのです。同時に、国連事務総長は軍規則というのをつくるのですよ、フォースレギュレーションというのを。それは、国連平和維持軍はどういう指揮系統で動くのか。前例は幾らもあります。それを検討してみますと、先ほど言われたいわゆるモデル参加協定ですね、これを見ましても、作戦行動についての指揮権は全部国連事務総長にある、そして国連事務総長が任命する軍司令官にあるということが、これはもう全部一貫しているのです。  それで、先ほどの国連局長の、社会党の質問に対して、モデル協定で第七条にコマンドということがあって、はっきりと指揮ということが書かれているのにわざわざ落とした、あの問題がありました。この条項は、派遣国の要員は、当該国の職務下にあるけれども国連の安保理の権限のもとに事務総長に属しておる、その事務総長のもとに置かれる。だから事務総長の指揮に従う。したがって国連事務総長は、この平和維持軍派遣国の要員を含め、先ほどの外務省の訳語で言えば、配置、組織、行動、指令について完全な権限を有すると書いてあるのです。行動というと何でもないようですけれども、オペレーションですよ、作戦行動です。作戦行動について、派遣国の要員を含めて全部事務総長の指揮下に入るんだということが書いてあります。  そのことについて説明があったから繰り返しませんが、あのときに、八条も重要ですからといってつけ加えましたが、九条に非常に重要なことが書いてあるのにあえて言わなかったのです。どう書いてあるかといえば、これは私たちの訳でありますが、派遣国の要員は国連の利益のみを念頭に置いてその行動を規定する。それは、PKO任務は排他的に国際的なものであるからだ。当該国の管理上の事項を除いて、派遣国の要員はその任務の遂行に関して国連以外のいかなるオーソリティー、いかなる機関からも指示を求め、または受令——指示を受けるということをしてはならない。派遣政府は、その要員に当該指示を与えてはならない。だから、作戦行動についていえば一切国連がやるので、軍司令官がやるので、そしてそれ以外の、日本なら日本が、派遣国が、本部長防衛庁長官だといって現場で指示するというようなことはできないんだということをはっきり書いてあるのですよ。  ヨーロッパ、北欧には、国連派遣PKO参加法というのをつくっている国が二カ国あります。これはもう日本みたいに協力なんて書いてないのですよ。はっきりと参加法と書いてある。参加する部隊やら装置やら、そういうことは書いてあるけれども、指揮、向こうへ行ってからどうするかというのは全部国連に任すんだということになっているんですよ。日本だけですよ、本部長防衛庁長官やらが何か指揮監督があるような体系になっておる。これは全くおかしいんですね。  そして、先ほど言いました軍規則によりますと、これは事務総長がつくるわけですが、そこではこの指揮命令は、こういう言葉で使っていますが、コマンドオーダーは軍司令官がつくるんだ。コマンドオーダーですよ。そこまで徹底しているんですよね。それを、そういう協定を結んで、それがついてきている文書で、そういう軍規則、フォースレギュレーションがついておる文書で交換公文をやって、国連日本政府との間で、国連事務総長ですね、その間で協定を結ぶ。ほかのやっていることは全部そうなっているんですよ。  ところが、日本だけはそれとは全然別個に、いわゆる五原則なるもので、この協定の中へ五原則入れますか。ここに書いてある、基本原則だというのですから。こういう協定をつくった場合に五原則を入れるのか入れないのか。入れないでほかの国に対して出しているのと同じようなもので協定を結ぶ、そういうことになるのかどうか、これは外務大臣、お答えを願いたい。
  277. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは難しい問題ではございますが、日本の今までの憲法解釈の延長線上からいって現在のような法案にしないと国際貢献がやれない。したがって、我々としては、そういう微妙な問題も含めまして、貢献ができるように法律にいろいろ書かしてもらった次第でございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 いやいや、法律に何を書こうとそれは日本法律ですから勝手ですけれども国連との間で協定を結ぶんですから、地位協定を。それは、裁判権の問題やら財政の問題やらみんな書くんですよ。その中にその指揮命令のことがあるのです、私が今言ったようなことが。それについて、そのとおりでいかぬわけでしょう、という法律をつくっているんだから。だからこの法律のもとで、さあこれから行こうというときに国連からそういうのが出ますね、各国に対して、これで参加してください、参加国は調印してくださいと言ってきたときに、五原則を入れたものでなけりゃそれは派遣するというわけに、調印するわけにはいかぬということになるのか。いや、まあしゃあない、調印しておこう、そして派遣して、そこでまた違うことやるんや、こういうことになるんかということを聞いているんですよ。  そんなこと、入れられるわけがないんですよ。しかし、日本はそれでいくというんだから。そしたら、国連との協定を結ぶときに、地位協定を結ぶときに、五原則を言うんですか、言わないんですか、そこはどっちかでなきゃいかぬですが、どうですか。
  279. 丹波實

    丹波政府委員 国連との関係のことでございますので、私から答弁させていただきたいと思いますが、まだこの法案は現在御審議をいただいておるわけでございますけれども、これが成立したと仮定した場合、幾つかのことを念頭に置いて国連との協定を結ばせていただきたいと考えております。  一つは、この先ほどから論議の対象になっております国連の出しておるモデル協定というもの、これが一つ。それからもう一つは、各国がどのような取り決めを結んできたかということ。それから三つ目は、この法律の枠内で当然行政府は行動するわけでございまするから、この法律の枠組みという、その三つぐらいを重要な視点として念頭に入れて将来の国連との取り決めというものを考えてまいりたいというふうに考えています。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 およそ非現実的なことを言っているんですよ。その出すのは、今モデル協定が出ているんですね。それもことしの五月二十三日に国連事務総長がつくったんですよ。それで、去年の十月五日に訓練マニュアルというのをつくった、国連事務総長文書。そして、十月十日に先ほど言われているSOPというのをつくった、どういう作戦をやるのかということを。私ここに持ってきました。SOPと簡単に言いますけれどもこれだけあるんです。それから、訓練マニュアルというのはこんなにあるんです。ごっついんです。詳細に書いてあるんですよ。  そのことを念頭に置いて、そして今の地位協定をつくるわけでしょう。地位協定のモデルまで出ているんです。各国に出すんですよ、同じものを。それで、日本だけが日本法律があるからよく研究します。そんなもの、国連事務総長が指揮を持つということがPKOの大原則じゃないですか。国連憲章に規定はないけれども、六章半で決定に基づいてやっていくんだというのでしょう、そして出してくる。九回、PKFが出た。そこで積み上げられてきたやつを今度はマニュアルにしたのでしょう、去年からことしにかけて。それに従うか従わないかということを改めていろいろ検討します、国連局長、それはもう全くいいかげんなことを言っておると言わざるを得ません。
  281. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 これは、要は、国際貢献に自衛隊を出させないという考えで解釈をするか、国際貢献に自衛隊がぎりぎり出せるという考えで物を言うかで分かれちゃうのですよ、これは実際は。そこで、だから、あなたの言うようなことを法律に書いてあなた方が賛成するんなら一つのそれはもう方法なんですよ。しかし……(発言する者あり)いや、アバウトと言っても物の考え方がそうですから。  だから、いろいろ国連当局とも外務省は相談しているんですよ。それでは、こういう法律をつくります、そこでこういうことでやりますけれどもいかがですかと相談しているのですよ。それはできるということになっているんです。だけれども、できないものもあるんですよ、それは、できないものも。最初から、何といいますか任務遂行のために武力を行使するということが最初からわかっているような場面も中には数少ないがあった、今までには。そういうところは参加できないのですから。そこが分かれるんだから。だから、それはもうどちらに念頭を置いて言うかで違っちゃうんですよね、こういう意見というのは。仕方がないことです。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 私はそういう文字どおりアバウトなことではこれは通らない問題だと思うのですよ。だって国際協定でしょうがな。公式の交換公文を交わすときに完全に国連の指揮に入るのか、国連事務総長の指揮に入る、それだけじゃなしに国連軍司令官の指揮に入る。それは、規律の問題とか財政の問題、それは別だと書いてある、はっきり、管理に関することは。作戦行動ですよ、武器の使用を含めて。それは全部向こうの線に従うのだというふうになっておるんです。それでどういう行動をやるのかというのを決めるのがSOPなんですよ。これは、国連事務総長から任されて、そして先ほど言いましたコマンドオーダーをつくることができる、そういう権限を持った軍司令官がSOPを今までつくってきたのです、各平和維持軍で。それで今度は、八九年から国連としては検討して、それで去年の十月十日に国連文書として正式につくったのがこれなんですよ。  だから、それに従ってやるということになるんですが、そうするとどういう行動をやることになっておるかといいますと、例えば日本のこの今つくっておる法律でいきますと、極めて簡単に、例えば国際紛争、三条の三号です。PKFに参加した自衛隊は何をやるのかということについては、武装解除の監視とか、そこから地域に駐留し巡回する、その次は検査し確認する。確認、検査、駐留、巡回、そういう行動をすると書いてあるんです。  ところが、実際はそういう名前でやる行動というのは、国連のSOPによりますとこれは大変なことなんですよ。どういうことを書いてあるかといいますと、駐留というのは、武力紛争の当事者の間へ引き離しで入っていくんでしょう、そして部隊が駐留をするんです。駐留地というのは陣地をつくらにゃいかぬと書いてあるのですよ。どんな陣地をつくるのか、これも詳細に書いていますよ。  文書によりますと、ちゃんと鉄条網を張れ、それから土塁をつくれ、入り口はジグザグをつくらなければいかぬ、こう書いていますよ。しかも、そのSOPの中にはこういう図面まで出ているのです。どういう陣地をつくるのかということがかいてあるのですよ、こういう図面が。これは、周辺部の一番外にワイヤーを引いて、国連軍の陣地であることを示す。その次は有刺鉄線帯をつくる、有刺鉄線の幅があるやつをつくるのですね。その中に蛇腹鉄条網をまたつくる、そしてさらに有刺鉄線帯、こんなに広いやつをつくるとなっているのですね。そういう攻撃を受けるということを前提にしているからですね。そして、これは付近の鉄条網です。この中に陣地があるのです。  その中の陣地は、また一番外に土塁を築く、二番目は波形番線鉄網フェンスと書いてあります、そういうものをつくる。そして三番目には高く積み上げた、2ハイと書いてありますが、積み上げた下型の壁をつくる、こう高くして。だから、どうしても中へ入れないようにするというふうになっているのですね。そして、その中に監視塔をつくる。その上でシェルターをつくってそこに部隊が駐留するのだ、こういう態勢ですよ。  そして、そこから検問に出ていくというのでしょう。検問に出ていったらどういうことをやるのかというと、道路封鎖ですよ。これに書いてある。一本線の場合は、これも鉄条網を全部張る。鉄条網を両側に張ってそしてここに陣地をつくって、検問をする陣地です。そこにどう書いてあるかというと、鉄条網で囲った上で砲台と銃座を設けると書いてあるのです。砲台、迫撃砲ですね、それから銃座を置く。それで、こう来よったらアレイと、こういうわけですね。道路封鎖なんですから、国連憲章でいつでも、封鎖といったらあれは強制手段になるのですね。この場合は道路封鎖だから、全面的封鎖じゃないから、だから六章半なんですよ。しかし、単なる平和じゃないのです。それでここでやっているのでしょう。こういうことで検問に行くのです。  三差路なら、こういうふうに銃座や、これがやられたら次こっちにつくる。全部こういうSOPという作戦行動の方針が出ているのですよ。それに従ってやれということを自衛隊は出ていったらやるのですよ。そういう軍事活動でしょう。そして、そういうときに、相手方がその陣地に対して攻撃をかけてきた場合、陣地周辺に入ってきた場合あるいは陣地の中へ侵入してきた場合、相手方の武力紛争をやっている当事者がこの陣地の中へ強制的に侵入してきた場合、発砲するとは書いてないのです。その場合には武力の行使をするというのがSOPの規定なのです。  日本はそういうことをやっておって、侵入してきたその場合に、日本の自衛隊はそこで迫撃砲を撃ち、機関銃を撃つのか、武力の使用はできるのか、どうなんでしょう。
  283. 渡辺美智雄

    渡辺(美)国務大臣 その図面ですね、私は現場を見てきましたから、スウェーデンでね。そして、その訓練をしている、大体わかります。わかりますが、最初から言っているように、これは紛争当国が停戦なら停戦をするというまず合意があるわけですからね。合意がないところへのそのそ出かけていくわけじゃなくて、合意がある。しかしながら本当に停戦を完全にして全く平和だというのなら監視も何も必要ないんですよ、全く平和なら。それが全く平和であるかどうかわからないことがあるわけですよ。その司令官といいますか、両国の最高首脳部がサインをしても、司令官に伝わり、部隊に伝わり、末端まで果たして一〇〇%伝わっているかどうか。大体伝わっている、だけれども、その現場を見なければわからぬわけですから、ジャングルとかなんかだったらよくわからない。だから、そういうところにパトロールの場合もあるし、その両方の兵力が光らせた中でそれは陣地を築いたり何かをしますよ。なぜかというと、それは発砲しなくて済むようにするんですよ。こちらだってやはり命を大事にしなければなりませんからね。だから下手な者が、ゲリラが入ってこれないようにいろいろバラ線を張ったり何かするということは何ら差し支えない。当たり前のことなんですね、これは。  だから問題は、そういう中で向こうの部隊として仮に入ってきたときには、それを見過ごすか。そういう場合もあるんですから、それは。それは前例もありますから詳しいことは聞いてください。あるいは自分たちが逃げるか。あるいは全く不意打ちに来られたという場合は、それは発砲する場合だってあるかもわからない。自分の命を救う最後の手段としてですね。そういうことはレアケースですよ、レアケース、今までの実例から見ても。だから全体としてやはりそれは停戦監視停戦監視なんですよ。ただ、そういうところに軍隊を使う、自衛隊を使う、そのことをいろいろ言って出させないようにしようとすれば幾らでもいろいろな理屈はあるんですがね、出させようとすればそれでちゃんと解釈ができるんですよ。それだけの違いなんです、これは。見解の相違なんです。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 国連のSOPによりますと、この第三部「作戦」第一節の「序論」では「すべてのPKO要員は武力行使にかんする同一の政策に従わなければならない。」こうなっています。武力行使についてはすべての各国から参加している部隊は同一の政策に従わなければならない。そして、そのパラグラフ二十二には、「国連要員への直接の攻撃もしくは要員の生命への脅威に対抗して、」武力を使うことがある。これはこの法案に書いてある部分です。  もう一つは、「全体的な国連の安全が脅威にさらされた場合」、「紛争の一方の当事者による国連の陣地やその周辺への力ずくでの侵入、国連軍部隊を武力で武装解除する試みなどに」対しては、国連軍としては、PKFとしては武力の行使をすると書いてある。それはこの間の答弁でも、日本は自衛の生命、身体を守るとき以外は任務遂行のためには使えないんだ、使わないんだというふうに言っているわけでしょう。ところが、国連のこの方針では、現にそうやって来た場合は使うんだ、武力を行使するんだというふうにSOPで決まっているんです。そういうふうに訓練をしなければ困るということで訓練マニュアルが日本にも来ているんですよ。  ところが、この法律は、そのときは何もしないんだ、それはできないんです、憲法からいって。そうしたら、「すべてのPKO要員は武力行使にかんする同一の政策に従わなければならない。」という国連の方針に違ったものを持っていく、こういうことで、これはもう大混乱を起こさすことになりますよ。そのことについては「平和維持活動の特徴」d項の中で、「平和維持作戦に従事する軍事要員は、作戦上のことがらにかんしては事務総長の指揮下にある国連司令官の命令に服し、出身国当局の命令を受けないことが基本原則である。この命令系統が順守されなければ、重大な作戦的、政治的困難を引き起こしかねない。」これはSOPに、ちゃんと方針に載っておるのですよ。混乱を起こしに行くのですか。そして、混乱を起こさないと思ったら憲法違反の武力行使をやるのですか。このどっちかしかないのです。私はこういうものは断じて許せぬ、やめるべきだということを申し上げておきます。  時間ですから、終わります。
  285. 林義郎

    ○林委員長 次に、和田一仁君。
  286. 和田一仁

    和田(一)委員 先般の総理所信表明演説、これに対しまして我が党の大内委員長の代表質問がございました。その中で、PKFに自衛隊を派遣する場合には国会承認を必要とするよという質問をいたしました。さらに、緊急を要する場合には事後の国会承認を受けよ、こういう質問をいたしましたが、総理の御答弁は、国連我が国との約束との中でPKOへの参加そのものがいわば条件つきになることの不安定は避けたいというお答えがございました。  これは、国連我が国との約束との中でという意味と、それから、条件つきになることの不安定は避けたいという条件つき、どういう条件がつくのをお考えになっているのかを具体的に伺いたいのと、これは国連自体の約束の中でそういう条件つきはいかぬよとか不安定な出し方はいかぬよとか、そういうことの意向を示されたので、その約束上それはまずい、こうお考えになっているのか、それとも総理自身でそれだけのことをお考えになっているのか、その辺をお伺いしたいと思います。  というのも、これは私ども国会承認ということが、シビリアンコントロールが大事だ、こう考えておりますので、そういう意味で国会承認という一番最高のシビリアンコントロールをどうしても担保したい、こう思っているのですが、国会承認ということになりますと、やはりそれには承認できないというケースもそれは当然あろうと思うのですが、そういうケースを総理は想定されて、それが不安定になるというふうにお考えなのかどうか、その辺をここでもう一度改めてお伺いしたいと思います。
  287. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは私が大内委員長に申し上げたことでございますので私から申し上げますが、あのときに条件云々と申し上げましたのは、国連国連平和維持活動を決めまして各国協力を呼びかける、我が国にも要請が参りましたときに、仮に我が国としてそれを応諾しようと考えましたときには、国連との間にそれなりの交換公文でございますか、何かの形で合意文書が取り交わされることでございますが、法律によってそのような政府の決心が国会の御承認を必要とするということになっております場合には、国連とのそのような約束におきまして、ただしこれは国会の承認を必要とする、どういう表現になりますか、仮にサブジェクト・ツーというようなことを申さざるを得ないと存じます。  その場合、国連におきまして、一つ平和維持活動について何カ国かの協力を得てやることでございますので、我が国からの協力分が場合によってはないかもしれないというのが文章の意味でございますので、それでは国連として全体の計画の立てようがない、あるいは立てることに非常に支障があるであろうと考えられますので、したがいまして、国連に対する約束はそのような条件つきでない形でいたしたいと政府は考えておりますということを申し上げたわけでございます。
  288. 和田一仁

    和田(一)委員 国連PKO派遣を全体的に計画を立てる、それはもう当然だろうと思います。その計画に基づいて日本派遣要請してくるわけですけれども、私は、そのことが、国会承認によって条件がつくということが国連の全体の計画にとっては好ましくないのはわかりますけれども、しかし、それが優先して、そのために国会承認はない方がいいという判断だとすると、これはやはりシビリアンコントロールの原則ということをもう少しきちっとお考えいただかないといけないかな、こう思うのですね。私は、不安定は避けたいという意味合いが、もし国会の承認があるということが不安定になるんだということになると、非常にこれは国会を軽視した意見ではないかと思うのですね。  PKOというのは、もう先ほど来何回も言われておりますが、PKOそのものが国連の憲章には規定されておりませんね。したがって、経験の中から積み上げてきたことでございまして、過去の例からいっても、必ずしも、要請があれば必ずこれを受ける、受けてきたというものでもないと思うのですね。  ただ、先般日本は、今度は七度目ですか、国連の安保理事国になりました。百六十一カ国中百五十八カ国の御賛同をいただいたという、いかに日本国際社会の中での重みが増したかな、こういう思いもいたしますし、期待されるものも大きい、こう考えております。それはそのとおりでございますが、その国連の意思決定に日本もこうして安保理事国として入って、そこで国連の意思決定をする。その国連の意思決定の一員である日本が、その意思を受けて出すPKOですから、当然その計画の中で既にそういうことは言えると思うんですね。  そういう意味からいっても、私は、このPKOへの派遣、特にPKFについて、ただ単に行政の責任において全部処理するというのでなく、国権の最高機関である国会がシビリアンコントロールの担保をしておくということは非常に大事だと思うので、このことはぜひともお願いをするわけでございます。  これは、かつて日本国連に加盟した直後にやはり要請がありまして、断っているケースがあるんですね。こういうケースがあるんですから、私は決してそういうことは不安定になるということではないと思いますし、また、そういう機会、断るケース、どうして断られたのか、もし断られたときにどうして日本は断ったかということがはっきりすれば、以後そういう要請は自動的に来ない。現に今までミリタリーに関する要請というのは、最初一回断ったことによって全然来ていない。今回初めて、また新しく日本はこのPKO法案によって自衛隊を出そう、こういう今決定をしようというのですから、そういう意味では、ここでやはりきちっと国会承認という担保を私はぜひとも国会に与えていただきたい、こういう思いが強いのですが、いかがでしょうか。
  289. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 大内委員長がいわれる文民統制についていろいろ御心配のことはよく理解いたしておりますので、その点につきましてもこの法案でいろいろな処理をしてございますことは申し上げました。今繰り返しません。和田委員よく御承知のところでございます。  そこで、国連との関係が不安定になると申しました意味は、大内委員長は実はこのような国連協力が必要だということを一番早くおっしゃったお方でございますので、政府が考えておりますことはよく御理解になっておると私は存じておりますのですが、しかし、現実に今の国会、衆参両院をあわせて考えますと、政府のお願いすることが直ちに御同意をいただけるとばかりは限らないのが現状でございます。  したがいまして、政府が同意をお願いいたしましたときに、すぐに御同意賜る場合、御同意は賜ったがかなり長い時間がその間に経過する場合、あるいは終局的に御同意が得られなかった場合等々は一応考えておかなければならないことでございますので、これは国連とお約束をいたしますときに当然そういう条件は申しておかなければならない、これは国内の政治情勢でまことにやむを得ないことでございますので、そういうことを申さなければなりません。  そういう状況におきまして、国連側において、それをいつから実行してもらえるのか、あるいはそもそも実行してもらえるのであろうかというようなことについて疑問を持ちますことは、これも当然のことでございますから、そういう意味での不安定というのを何とか解消する道はなかろうか、他方でいわゆる文民統制のことにつきましては十分の用意をいたします、こういうことを実は申し上げましたわけで、御理解を賜りたいと切願をいたしております。
  290. 和田一仁

    和田(一)委員 それではやはり国連への対応が中心であって、日本国民がどう考えているかということは、やはり次の、次善のお考えになってしまうんですね。  急いで対応したい、機動的に対応する必要があるということもおっしゃられまして、今もおっしゃいましたけれども、それは私ども理解いたしております。ですから、緊急を要する場合には事後でも国会の承認ということをきちっとやってほしい、こういうことを申しておるんですね。これについて、いや防衛出動や治安出動とは違うんだというお話も先ほど来ございました。これは国民の権利義務や生命財産にかかわる非常に緊急な内容でございます。中身の違うのは知っております。しかし、緊急性からいえば、それは治安出動や防衛出動の方がよほど緊急度は高い、にもかかわらず、やはりこれは事後にきちっと処理すべき案件として国会の承認を求めている、私どもはそれでいいと思うんです。それぐらい大事に私どもは考えている。  それからいま一つは、やはり周辺の国々が、日本が今度やはり国際貢献とは言うがPKO、PKFに軍を出す、こういうことについての関心は非常に高い、これはもう当然であると思います。今PKF、PKOに参加していただいている国々は、考えてみると、どちらかといえば、カナダを除いてそう世界に脅威を与えるようなそういう立場の国は少ない、こう思うのですね。しかし、日本は今経済大国、非常に経済力が強くなり、同時に自衛隊の実力もかつてから比べればはるかに充実しました。もちろんその性格は攻撃的なそういう体質の力ではありませんけれども、しかし、力を持ったということは、これは日本の防衛のために結構ですよ。やはり力があるということが、侵されない国だ、侵してはならない国だという一つの大きな安全保障ですから、それはそれで非常に大事ですが、同時にそのことは近隣の国々にとって、それは小さな国々のPKFへの派遣とはいささか趣が違う、これはもう当然だと思うのですね。ですから、そうであるならばこの法案の中に、かつて日本が迷惑をかけた国々には出さないとか、そういうぐらいのことをきちっとお答えになるというぐらいのことはあってしかるべきだ。  ですから、そういう意味では、国民全体がそのケース・バイ・ケースのPKOに対して、このPKFに自衛隊を参加させる場合には一応国会の承認というものを求めた方がいい、これが今国民の大多数の声なんです。これをぜひ尊重していただきたい。私は、そういう意味で、今申し上げたことについて、総理にもう一回御答弁をいただきたい。
  291. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 お言葉を返すようでございますけれども、確かに我が国が第二次大戦におきましていろいろ迷惑をかけ苦痛を与えた国がたくさん現に存在をしておるわけでございまして、仮にそういうところに国連平和維持活動が起こりましたようなときに、我が国の参加が歓迎されるかどうか、そういうことは確かにあろうかと存じます。そのゆえに、この法案におきまして当事国の同意、合意がある場合と言っておるわけでございまして、法律上その点の担保はいたしてございますし、また現実に我々が決断をいたします場合にも、そういう意味での政治的な面もよく考えてまいらなければならないと思っております。
  292. 和田一仁

    和田(一)委員 今、ユーゴスラビアが大変な状態で、先ほど来いろいろお話もございましたけれども、十三回も停戦という合意がありながらなかなか守られない。しかしながら、何とかこの紛争は拡大したくないという思いはあるのではないかと思います。  その一つの手段として、国連にぜひ、あるいはECに入ってきてくれ、PKFを出してもらえないか、こういうような要請が伝わっておるわけでございます。これは非常に現実には難しい話だとは思いますけれども、この要請で、もしこの法案PKO法案に内蔵されております五原則、この五原則が充足されるならば、満たされるならば、この要請があった場合にはこれはお出しになるわけですね。いわゆる国連が全体的な計画としてこういう事態で大丈夫だ、停戦合意だ、こういうことであれば、もうあとは国会に諮ることなく自動的に出せる、こういうふうに私ども理解してよろしいのでしょうか。
  293. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは状況判断の問題でございますし、今現にユーゴがどうなっており、あるいはどうなろうとしているかということはつまびらかに私存じませんけれども、報道その他報告によって判断いたします限り、御指摘のように停戦の約束は十三回も破られておるということは、少なくとも今までのところ実は停戦が現実的でないという判断をせざるを得ません。  その場合に、そもそもこの法案が考えておりますような国連平和維持活動というものが可能なのであろうか、私は現状を聞いて判断いたします限り、この法案に満たしておる条件というものは存在していないと今現在では考えざるを得ませんので、仮定の問題といたしまして、この法案成立をしており、我々にそれだけのいろいろ訓練等の準備があり、しかも国連から仮に要請があったといたしましても、今の状況を私が判断いたします限り、この法案の条件を具備しているとは思われませんので、私は、国連要請が仮にございましても、それを受諾するということにはちゅうちょをいたします。
  294. 和田一仁

    和田(一)委員 自衛隊に新しい任務として国際協力国際貢献のために汗を流してもらいたい、こういうことになるわけでございますが、今度の法案は、自衛隊の本来任務である自衛隊法三条にその任務を規定したのではなくて、八章の雑則の方にある業務のいろいろな任務規定がございますけれども、それと同じ位置づけでこの法案ができ上がっております。  私は先ほど来申し上げているように、国際的な日本立場貢献も積極的にやらねばならない、こういう立場を踏まえて、これから国連活動の中でPKO、PKF、こういうものに協力をしていく、その中心に自衛隊の皆さん、汗かいてもらいたい、こういうことになるわけなんで、それであるならば、本来任務を与えていた自衛隊の任務、この中に、やはり日本の防衛のため、専守防衛のための任務と、そして人道的な立場でいろいろなことをやってもらいますよという任務と、それから国際貢献のための任務、こういう新しい任務規定をきちっとして、そして、我々は今まで事あれば攻めてこられたときには日本を守るための仕事だというふうになっていた自衛隊員一人一人が、いや、そうではない、われらも国際的にやはり世界の平和のために、日本の防衛はもちろんだけれども世界の平和のために役立つんだ、こういう新しい任務による自覚と誇りを私はぜひとも持たせてほしい。  私は、雑則の中で運動会やなんかの応援部隊に出せるというのと同列にこの大事な仕事を新しい任務として与えるというのは、これはもう少し考えていただきたい。本来業務にきちっと挙げて、これから長い将来世界平和のために貢献していこう、こういう位置づけを必要とするのですから、どうぞ防衛庁長官、まずどういうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
  295. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 大変自衛隊につき御造詣が深く、また御理解をいただいております和田先生の御意見、それなりに私も理解できるような感じもいたしますけれども、しかし、この法律の建前から申しますと、今自衛隊法三条は、御案内のように、「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」というように自衛隊の本来の任務として規定してございます。  一方、今御指摘のように、国際貢献という立場からいたしますと、自衛隊がこの種の国際協力に参加するということは大変意味のあることであり、重要なことであることは、もちろんこれは否定を申し上げるわけではないわけでございますけれども、しかし、今回本部長要請を受けまして私が、防衛庁長官が自衛隊の部隊等に国際平和協力業務を行わせるということは、これはどういう見地からなすかといいますと、自衛隊が長年にわたりまして蓄積してまいりました技能、経験、組織的な機能等の活用を図るという見地からのものでございまして、自衛隊法三条の本来のものとは、重要ではあるけれども趣は異にしておるということでございます。  このことは、今の法律の建前からいいましても、自衛隊の任務遂行に支障を来さない限度においてこれを行うことになっておりますし、私どもとしては、この自衛隊法三条を改正いたしまして自衛隊の存立目的自体を変えるということの変更を行うためには、なおかつ、我が国の自衛隊の位置づけでございますとかあるいは我が国における自衛隊は一体何なのかというような基本論は、防衛庁あるいは政府部内においても十分これはなさなければならないことでございますし、また、中長期的に見て国民的な議論を経た上で行うことが必要であると考えております。  なお、今八章の雑則の他の運動会あるいは土木工事の受託その他のものと一緒に並べて行うのはいかがかということでございますが、これは、法形式上第八章に規定をいたしたものでございまして、これは、この国連協力の重要性をいささかも否定するものでないと私どもは考えておりまして、これを十分私どもとしては守ってまいりたい、そして、国際貢献の趣旨に即してやってまいりたい、こういうことでございますから、八章に規定しているから軽視であるとかそういうことではございません。今度の法律改正によりまして自衛隊の任務としてこれが与えられるわけでありますから、この法律の目的に従って十分私どもはその責めを果たしていきたい、このように考えております。
  296. 和田一仁

    和田(一)委員 ですから、私が申し上げているのは、その自衛隊本来の任務に加えてほしいということなんですよ。やれるからこちらの任務規定でやるんでなしに、自衛隊の本来任務というのは日本の安全を守るためなんでしょう。日本の平和を守るためには世界が平和でなきゃだめなんですよ。その世界の平和のために役立つ仕事をやらせるというのであれば、本来任務に入れて当然でしょう。そのことによって防衛計画の大綱やらいろいろな体制的なものを見直すというなら、やはり見直すべき時期に来ている、私は今国際情勢はそういうところに差しかかっている、こう思うんですね。今まであったことを変えるのが大変だから、そういうことを考えればできないというのは、これは後ろ向きの議論であって、私はやはりこういうことを契機に、総理大臣、ぜひ前向きの検討の機会にとらえていただきたい。  十月三十日、私は民社党を代表して呉のFバース桟橋に参りました。そして、六カ月間苦労された掃海艇の皆さんの帰還をお迎えをいたさせていただきました。そのときに前総理は、あの訓示の中で、あれは感謝訓示ですね。訓示という言葉は何か教えを垂れるようですが、感謝の訓示だと思いますが、その中で、諸君の活躍は、新たな時代における我が国国際貢献の輝かしい先駆として、長く国民の記憶にとどめられるであろう、こうおっしゃったんですね。私はいいことをおっしゃっていただいたな、こう思いました。まさにそういう位置づけが、あのペルシャ湾の掃海業務。あれも本則ではなく出ていったわけですけれども、新しい任務なんですよ。それを考えますと、防衛庁長官はこれを契機にしばらく時間をかければというようなニュアンスの御答弁でしたが、総理、いかがでしょう、これは、やはりそういう意味で、こういうことをきちっと考えるべきときではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  297. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 三条の規定というものが、我が国におけるいろいろなケースに自衛隊が出動するということを書いておるわけでございまして、これは長いことそれをもって足れりと考えられてきたわけでございましたけれども、考えてみますと、まだ二年足らずでございますが、それだけでは足りないという世論の盛り上がりがありまして、このような法案を御審議を願うことになりました。  ただ、考えてみますと、それはまだ二年ぐらいの間の変化でございますので、自衛隊法を基本的に改めるべきかどうかということは、もう少し世論の成熟をやはり見ていた方がいいのではなかろうかというのが先ほど防衛庁長官が申し上げた判断でございまして、御指摘のようにこのたびのこの使命というものは非常に重いものであるし、また我が国国連に対して国際強力をするということの重要性も決して軽いものではございません。ある意味で画期的なものであるとも申せます。したがいまして、そこはやはり世論が今後どのようにこの任務を考えていくか、また、今後どのようにしばしばこのような任務を自衛隊が求められるのであろうか等々のこともございまして、これは確かに議論の分かれるところでございますので、御意見もよく承りまして慎重に考えさせていただきたいと思います。
  298. 和田一仁

    和田(一)委員 ぜひ私はこういう議論を高めて、そういう方向に持っていっていただきたいと思うんです。それで、それが早急にいかなくても、これはできるだけ早い時期にそういう方向が望ましいんですが、この法案が通って出る場合も、八章で出すということになりますと、私はいささか懸念がありますのは、自衛隊の持っているいわゆる総合的な力が十分実効性のある派遣になるかな、こういうことをやはり考えるのです。本来任務ならば総合的な力が発揮できる、しかし、各条の最後のところでぽっと行けと言われただけでは、今自衛隊の持っている陸海空、この三自衛隊の総合的な力をうまく活用できるかどうか、この辺が私はやはりもう一つこの法案の不十分な点ではないかなと、こういう感じがしております。  先般のペルシャ湾の状態を見ましても、もう少しバックアップできるはずのものがなかなかようできないというのも、これはやはり海上自衛隊だけの派遣であった、こういうふうに私は考えております。こういった問題を踏まえましてまた明日御質問させていただき、きょうは時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  299. 林義郎

    ○林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が十分間ですから、二問お伺いいたします。  先ほど共産党の東中委員の質問に対して、自衛隊の問題を含め今度の五原則とか法案の内容は国連と話し合っているとおっしゃいましたが、そういう痕跡がないんですね。  国連総会は、これまで何回かPKOについての見解、提言の提出を加盟国に求めております。日本も加盟国です、日本は、七八年、八九年、九〇年、九一年の四回これにこたえておるようでありますので、これは後で委員長にお願いします。重大な資料ですから、英語で出しておるので、私の英語が間違っておるかもしれませんから、資料として出していただきたいのですが、こういうことを言っておるんですな。  PKO受け入れ国に対して、これは困っておる国でしょう、費用の追加負担を求めていますね。そうして日本は金に非常に渋い、日本からの提言を見てみると。  それから、アイルランドなどが提案をしておりますテロなどに対するPKOの利用には、任務があいまいなどとして反対しておりますね。しかし、今度の法案ではテロに対しても対応するようになっているでしょう。そして、何回か聞きましたよ。八八年にこのPKOの活躍に対してはノーベル賞を受賞した。高い評価を受けておる。ところが、八八年、その裏で日本はどういう態度であったか。全然逆の態度なんです。逆の態度。  それで、例えばテロのところはどうなっているか。「日本はテロリズムに対して、あるいは航海の安全のためにPKOを活用する可能性を考慮することをためらうだろう。それはPKO指令のあいまいさや要員の危険性やPKOの存在が長引くことの危険性を考えるからである。」こういう報告をしておるんですよ、事務総長に。  そして、九〇年の場合、去年です、去年の提言は、湾岸戦争の始まる前の四月三日。九一年、ことしのやつは戦争終了後の四月十一日。私の誕生日ですけれども、四月十一日です。そのときに、これは私はいいことだと思うのですよ、文民の貢献を非常に高く評価しているんですね。これは賛成ですよ。日本政府は文民要員というもの、そしてその訓練に非常に重点を置いている。それで「日本PKOの最も重要な責任は安全保障理事会が引き受けるべきであると考えており、その決定に日本は文民要員、装備、財源を供給することによって支援を続ける。」文民ということを非常に高く評価している。  まだあります。これはことしの分、「文民の役割とPKO活動の新しい分野」、文民の役割、ここへずらっと——長くなるからもう言いませんが、非常に文民のあれをことしも評価しておるのです。自衛隊のジの字も出ていってないんだ。どういう相談をしているんですか。私の言っていることが間違いかもしれぬ、英訳が下手だから。だから、これは外務省、日本語としてこの委員会に提出してください。そうしないと、こんなのとてもじゃないですよ。あなた、口で言うとることと陰でしよることと全然別だ。こんなことは許されない。  もう一問。五原則ということを盛んにおっしゃっていますね。参加五原則。聞いておきますけれども、三条の一にこういうことが書いてありますね。「武力紛争が発生していない場合」、「当該活動が行われる地域の属する国の当該同意がある場合」。いいですか、これは事前のPKFの派遣です。出兵です。そうすると、これは双方の同意じゃないんだ。だから五原則のうちの一原則はこれで壊れる。しかも一方につくんだから中立も壊れる。あとの五原則については次の機会に言いますけれども、つまり予防的なPKFの出兵ということが考えられている。PKFです。  それで、これは先ほども名前が出ましたけれども国連の明石事務次長さんはこういうことをおっしゃっている。「ほかに国連平和維持軍の予防的な使用が考えられてしかるべきである。武功衝突の抑止機能を持つ予防的平和維持軍が考えられてよい。」この考え方と軌を一にしますね。軌を一にします。だから私は、この派遣のための五原則については、時間がないからきょうは二つだけ言っておきますけれども、特に撤収なんというのは平和裏に行われるなんというのはないんですよ。戦争を知っている者はそれがわかる。撤収するときが一番危ないんだ。ガダルカナルもそうだし、アッツもそうだ。戦争を知らぬ者がこういうことを言うんですよ。だから、今の二点について御意見を聞いておきます。  それから、資料の提出については委員長の方からしかるべくお願いをいたします。
  301. 林義郎

    ○林委員長 資料の提出につきましては、後刻、理事会で御相談を申し上げたいと思います。
  302. 丹波實

    丹波政府委員 PKO特別委員会におきますところの日本の発言、提案と申しますか、先生お読みになられたとおりでございますが、特に文民の活用のところにつきましては、過去三年ぐらいPKOの中で非常に文民が役割を増しております。御承知のとおり、一昨年のナミビアにおける選挙監視、それから行政監視、それからニカラグアの選挙監視、そういったことがあるものですから、日本としてはやはり文民というものの役割を今後とも拡大していくべきだということを最近一貫して言ってきているわけでございます。  こういう日本の提言の資料を日本語で出すという点につきましては、今委員長から御発言ございましたけれども、裁定によりまして私たちも努力したいと思います。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長一つだけ。  国連PKO特別委員会というのがある。これはなかなか中身がよくわからない。これの資料も、どういうものなのか、ひとつお願いしたい。  それから、もう一つですね。今そんなことを言いましたが、ことしですよ、このPKO特別委員会で、文民の役割強化を求めるフィンランドの提案に対して、日本はどうしたか。文民強化をあなたは今も主張しておったが、文民強化を主張を。していたはずの日本が難色を示したじゃないか。そして修正を求めた。結局、日本の主張どおりになった。余り調子のいい答弁しちゃいけませんよ。  終わります。
  304. 林義郎

    ○林委員長 次回は、明十九日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会