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吉井(英)
委員 それから、私は、これも
研究者は非常に
指摘しておられるサポーティングスタッフの問題なんです。例えば、私、二十数年前お世話になりました東大の原子核
研究所へもせんだって行ってきたのですが、サポーティングスタッフが本当に削り倒されてしまっているのですね。東大の原子核
研究所をのぞいてみますと、旋盤とかフライス盤とか、
研究者が
研究に必要な機器類を自分で設計して、すぐに
研究に間に合わすように、かっては、それをお願いずれは名人芸の機械工の方におってもらったのです。ところが、名人芸の職人とでもいうべき方が今やだんだん削られてしまって、いないのですね。
それから、地質
調査所というところでは一いわば人間国宝級の方がおられたわけです。この方の技術というのは、岩石の薄片、顕微鏡シャシーに乗せるように〇・〇三ミリに石を切るのですよ。〇・〇三ミリという、まさに名人芸なんです。そういう人が試料をつくってくださって
研究者は
研究ができたわけなんです。ところが今は、この地質
調査所では、一九七九年四百二十一名が三百五十三人に、六十八人、十三年間でそういうスタッフが減ってくる中で、その岩石の薄片をつくる技術者が九人から六人に減ってしまった。三分の二に減ってしまっているのですね。仕事量はふえるが、名人芸の人はどんどん減ってくる。これは
研究上も深刻な
事態というのが今生まれてきているわけです。
外国の例では、例えば化学技術
研究所の方が留学したドイツのマックス・プランク
研究所の例も紹介しておられますが、総員六十名の
研究所だけれども、充実した工作部門を持っていて、そこの工作部門の長たる人はマイスターと呼ばれて非常に所員の尊敬も集めている。だから生きがいも持ち、仕事にやりがいも持って頑張ってくれる、そういうサポーティングスタッフがおって
研究が成り立っているわけですね。
ところが、今の国立の
研究機関の場合は、どんどんこの部門が切り捨てられてしまっているわけなんです。私はこれでは、いろいろ
指摘されているような
事態を招来するのはもう当然じゃないかと思うわけです。
これは私、勝手に申し上げているわけじゃなくて、実はこの点については、国立大学協会がことし三月にまとめられた「教官の直面する教育
研究費の現状」に始まって、「高等教育費充実についての要望」とか、幾つかのものが出されております。それからまた、
科学技術庁の方でも、実は六月に「国立試験
研究機関の定員の現状について」とか、それから九月には「国立試験
研究機関の
研究環境について」とか、その他一連のものを出しておられます。だから皆さん方が、実際に直轄
研究所長の皆さんにも集まってもらって、議論をしてもアンケートをとってもみんなこのことを
指摘しているわけなんですよ。
だから、私が
指摘していることは、これは極端な話を御紹介しているのじゃなくて、まさにこのことが今大問題になっているときなんです。そして大学の
関係者は教育
研究環境の悪化に極めて強い危機感を抱き、将来の
研究水準の維持に悲観的な見通しを持たざるを得ない、ここまで大学の
関係者は言っておられるし、また大学財政懇談会からは、そういう中では高等教育並びに
基礎研究にかかわる予算については概算要求基準にとらわれないで概算要求できるようにしてほしい、私はこれも本当に深刻な訴えだと思います。また、公費の負担率についても
日本は〇・七%にすぎないが、せめて諸
外国並みに二倍に引き上げてほしい。
だから
大臣、なかなか一遍に二倍はというさっきの
お話ありましたけれども、これは本当にみんなの切実な、悲痛な訴えたということをよく肝に銘じていただきたいと思うわけです。
それから、国立大学協会の有馬
先生の方からは、大学教官の定員削減
計画に対する要望書の中で、やはりサポーティングスタッフをぜひ増員してほしい、もしそうでなきゃ
日本のこれからの技術は大変なんだということを訴えておられるわけ
です。
なお
科学技術庁の方も、これは九月に発表されたもので、西暦二〇〇五年には、こういう定員を抑えているやり方では、工学系で三十万人、理学系で十三万人、合計四十八万人の
研究者の不足が懸念される。ですから、国公立の
研究所も充実しながら、同時にそのことに意欲を燃やして、実際入ってくる後継者をどう養っていくか、育てていくかということについても今本当に真剣に考えなきゃならないところへ来ておるということを、私は各種のデータが示しておると思うわけです。
その中で、かつては予算削減、人員削減の臨調行革を主張して旗振り役をやってきた経団連でさえ、十月の八日に「二十一
世紀をめざした
研究開発体制の確立を望む」というこの文書などでは、
我が国の
科学技術の土台というべき大学、国立試験
研究機関の教育
環境、
研究環境は劣悪化している、足元が崩れ始めていると、そこまで言っているわけです。この
科学技術予算、高等教育予算のシーリング枠を撤廃せよ、行革とは別枠で思い切った予算を投入せよという主張をしているわけです。
そこで
大臣、私は、抽象的な議論じゃなくて、こういういろいろな人たちの訴えを受けて、具体的に本当に思い切った予算を組まなきゃだめだというところへ来ているわけでありますから、この点についての
大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。