○沓脱タケ子君 それじゃ、時間もありませんから
課題を変えます。
私はちょっと驚いたんですけれ
ども、日本、我が国では
老人の自殺率というのは依然として高いんですね。一九九一年の人口動態で警察庁の自殺の概要というのか、白書か、データを見せていただきますと、六十五歳以上の方の自殺が男性が二千八百九十四人、女性が三千二百四十七人、合わせて六千百四十一人かんです。ちなみに九〇年のデータを見ますと六千三百五十八人、
余り変わっていないんですね。その自殺の原因別に見ますと、病苦というのが男性も七四・七%、女性が七五・一%、四分の三を占めているんです。これはもう驚きました。しかも、その中で、これは九〇年度のデータでは無理心中が十一件ある。自殺の最高年齢は九十六歳の男性なんです。八十五歳の寝たきりの妻の首を絞め無理心中をはかった。もう本当に無残というのですか、そういうことが現に起こっております。
〔理事竹村泰子君退席、
委員長着席〕
私
ども大阪でもそれに近いような例があります。例えば六十八歳の妻がリューマチで動けなかった。主人がずっと面倒を見ていたんだけれ
ども、たまたま虫垂炎を起こして手術をしたら胃がんが見つかった。一定の回復はしたんだけれ
ども、その後は以前のように元気がなくなって看病できなくなったんですね。そうしたら、三人が折り重なって玄関表の道路で焼身自殺をしている。机の上に何と書いてあったかというと、「二人でどうすることもできない。ただ情けない。」、こう書いてある。この種の問題というのは、私は幾つか拾い上げて、時間があればと思ったんだけれ
ども、ありませんからやめておきますが、いっぱいありますね。
こういう高齢者の悲惨な実態というのが一体なぜこんなに起こってきているのかというあたりが問題だなと思っていろいろ考えてみたんです。
老健法の
審議の中で、お
年寄りの懐から千三百億円近くのお金を新たにもぎとるというのは、これはむごいなと思っておりました。それと同時に、
病院へ行っても安心して
入院しておられない、三カ月がたったらいつ退院を迫られるかわからぬ、一遍帰ったら今度はとってもらえる
病院が見つかるかどうかわからぬという状況になっておるというのも、今お
年寄りの最大の悩みの種になっている。私は、こういうことが起こってきたというのは、
老健法が制定されて以来、お
年寄りの一部
負担を片や入れ、片や七十歳以上のお
年寄りのために
老人特掲診療料という六十九歳以下の人とは別の診療報酬の
制度をつくった、それ以来どんどんこういう事態が起こってきているんじゃないかというふうに思うんです。
厚生省は、
老人医療費の増高を何とかして抑えたいというので、
老人医療費の抑制にはお
年寄りの長期
入院を抑制するのが一番よいということを
老健法をつくった当時から盛んに言っておられましたし、そういう中で
老人の心身の特性を踏まえて適切な
医療の提供をするんだということで新たなやり方をしてきたわけでございます。
一つずつ聞いたらいいんですけれ
ども、時間がないので申し上げておきたいと思いますが、今どういうことになってきているかということを少しまとめて申し上げますと、
一つは、
入院した場合の
入院時医学管理料というのはお医者さんの監督料なんです。これの日数による逓減制というのは実にひどい。改めて驚きましたけれ
ども、これが
入院してから一週間までは一日四千二百円。二週間まではほぼ近いところですね。二週間を過ぎたら途端にそれが二千七百円になるわけですから、六五%。三カ月を過ぎたらそれが千八百円になる。四三%です。二カ月過ぎたら、もう半分以下になる。三カ月を過ぎたらこれは千三百四十円で、当初
入院したときと比べたら約三〇%。六カ月過ぎたら四分の一というふうなことに日数による逓減制が出てきている。
それからもう
一つは、注射とか処置、検査、これも六十九歳までの
患者と七十歳以上の
患者の扱いが違います。非常に有名なのはいわゆる点滴なんです。六十九歳までだったら
病院でやってもらったらその手技料は七百五十円、誕生日を過ぎたら同じ
病院で同じ注射をしてもらっても二百円、こういうことになっているわけですから大変です。しかも、
老人病院では何本やっても二百円の丸め、あるいは特例外
老人病院だったらそういう注射をやっても報酬はゼロ、こうなっているわけです。薬とか検査とか処置とかいろいろ言いたいと思いますが、そういう
年寄りが
病院におっても、何やら費用がまともにもらえでいないんで、気がねてしょうがないなという状況ができているわけです。
それからもう
一つは、医師に対しては診療
方針に対する制限があるわけです。これは
保険医あるいは
保険医療機関では
療養担当規則というので義務づけられているわけですよね。それは
保険医療機関、
保険医なんです。ところが、
老健法ができてから新たな基準というのをつくったでしょう、担当に関する基準というのを。その基準を見て私は驚きましたけれ
ども、これはもう時間がないから
余りゆっくり言えないんだけれ
ども、担当に関する基準は、もう驚く。例えば、言ってみますと、「みだりに注射を打ってはならない。」、「点滴注射は、これによらなければ
治療の効果を期待することが困難であるときに行い、みだりにこれを打ってはならない。」。療担規則にはみだりに行ってはならないなんて書いてないんです。ところが、
老健法には、こういうふうに彼此適用して、これを守らなかったら、
保険医は命令に定められたことに従わなかったら処分、処罰があるんです。
それから、もう
一つ気になったのは、診療報酬の請求をした場合に、これはま
たちゃんとやっているんです。
審査基準というのを新たに決めて、
老人保健の分は
入院期間が六カ月以上になっているもの、あるいは平均点数の高いもの、こういうものはもう削ってもよいと言わんばかりなんです。これはひどいですよ。
細かく読みたいけれ
ども、時間がないから言えませんけれ
ども、こういうことになってまいりますと、とにかく
患者さんを置いておきたいと思っても、
病院としては経営も成り立たなくなる、
看護婦さんの給料も、ほかの従業員の給料も払えなくなる、あるいはそれ以上やったら処罰をこうむるおそれもある、こうなるから、しょうがないから退院をしてもらわないとしょうがないということになっているわけです。そのことが高齢者の
医療というものを随分ゆがめてきております。例えば、高齢者の人工透析は必要ないということで、費用を払わないという問題が起こって大問題になったということもありますし、京都の例では、救命のための医学的根拠を示せという紙を請求書に添付して突っ返してきたという例もあります。これは救命のための医学的根拠を示せと言われたら困るんです。医師や
医療機関では
患者さんの命を助けるために全力を挙げるというのが本当の本務なんですね。一生懸命にやったからこれだけかかりましたよと請求したら、その
患者さんの救命のための医学的根拠を示せなんて言ってきたら本当に困るんですが、こういう
人権じゅうりんも甚だしいようなゆがみまで起こる。
そういう点で、こういうことで退院をさせられる、退院をした
患者さんはこのごろはいっぱい管をつけて、マカロニ症候群と言われていますが、管をつけたまま退院しています。だから、管をつけた人は、
老人保健施設に入れたいと思っても受け取ってもらえない、もちろん特養ホームでも受け取ってもらえない、しょうがないから家族がやっている、こういう状況になっておるのが、我慢ができなくなって焼身自殺になったり自殺をしたりということになっているんではないかという点で、これは本当に本気で考えてみないとお
年寄りの
医療というものにまともに対応できないなということを実は考えておるわけです。
さらに、本
法案では附則二条で、評価
方法の研究に努めて、費用額の包括的な算定等の算定の
あり方について
検討を行い所要の措置を講ずる、さらにまたこれを強化しようというやり方をお考えになっておるようですけれ
ども、私は、ここら辺で
老人医療の
あり方について本気になって考えてみる必要があるんじゃないかなというふうに思うんです。というのは、
政府がやってきたやり方というのは後ろ向きだと思うんです。
老人医療がかさんでかさんてしょうがない、確かにそうだったんです。そうしたら、診療報酬はとにかく減らします、医者は締めます、監督を厳しくしますと言って
患者をほうり出す。
患者は行くところがないんです。だから、大変なことが起こってきているという事態を冷厳に見詰めなければならない。
もう時間がありませんから、ちょっと私は言っておきたいんですが、少なくともお
年寄りの
患者さん
たちは
病院に長いことおりたいと思っていないんです。病気をしたときぐらいは安心して
病院で
治療をしてもらう。必要がなくなって退院できるようになったら、
介護体制がちゃんとできておれば安心してお家へ帰れる、帰れない人には中間
施設の老健
施設だとか、あるいは土地によれば
老人病院だとか養護
施設へでも行くというふうに受け皿をきちんとしておけば、こんなに
患者さん
たちを痛めつけたり
医療機関も随分締めつけたりしなくてもいけるんじゃないか、その辺はとっくり考えてみなきゃならないところへきているんじゃないかと思うんです。だから、少し厳しい言い方をいたしますと、
老健法をつくるときにちゃんと受け皿をきちんとつくってきてやりながらきたら、今大慌てをしなくてよかった。急にゴールドプランだと言ってもきょうあすには間に合わぬ。そこが私は後ろ向きの行政だと思うんです。
そういう点で、考えてもらいたいと思うのは、長年苦労してきたお
年寄りが病気になったときぐらいは少なくとも年齢による
医療上の差別だけは受けないように、
老人特掲診療料というようなこんな
制度はやめてもらいたい。そして、それをさらに強化するような附則三条というようなものをわざわざ、まだ
検討するというものをわざわざ
法律に載せる必要はないと思うので、それはぜひやめてもらいたいと思うんですが、御見解を伺いたいと思います。