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1991-09-05 第121回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月五日(木曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  九月四日     辞任         補欠選任      高井 和伸君     粟森  喬君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         大鷹 淑子君     理 事                 成瀬 守重君                 松前 達郎君     委 員                 岡部 三郎君                 久世 公堯君                 関口 恵造君                 原 文兵衛君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 田  英夫君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 立木  洋君                 粟森  喬君                 猪木 寛至君    国務大臣        外 務 大 臣  中山 太郎君    政府委員        内閣審議官        兼内閣総理大臣  野村 一成君        官房参事官        防衛庁参事官   内田 勝久君        防衛施設庁施設        部長       大原 重信君        公安調査庁次長  関場 大資君        外務大臣官房長  佐藤 嘉恭君        外務大臣官房領        事移住部長    久米 邦貞君        外務省アジア局        長        谷野作太郎君        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省欧亜局長  兵藤 長雄君        外務省経済協力        局長       川上 隆朗君        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合        局長       丹波  實君    事務局側        常任委員会専門        員        辻  啓明君    説明員        大蔵省証券局業        務課長      堀田 隆夫君        大蔵省国際金融        局開発金融課長  河上 信彦君        文部省初等中等        教育局小学校課        長        近藤 信司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (ソ連情勢に関する件)  (外交実施体制に関する件)  (日朝国交正常化交渉に関する件)  (米空母インディペンデンス横須賀配備に関  する件)  (国連平和維持活動PKO)に関する件)  (対ソ支援に関する件)     ―――――――――――――
  2. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨四日、高井和伸君が委員を辞任され、その補欠として粟森喬君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) 国際情勢等に壊する調査を議題といたします。  ソ連情勢について、政府から報告を聴取いたします。中山外務大臣
  4. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 本日は、ソ連情勢我が国対応について申し述べます。  八月十九日発生したソ連政変は、ソ連国家ソ連国民が真に民主主義、自由、人権尊重に立脚した民主主義国家の道を歩み続けるかを問う最大の試練でありました。  我が国は、事態に対する強い遺憾の念を表明するとともに対ソ支援措置停止を公表いたしました。特に、実力による抑圧が行われたことに対しては、これを強く非難し即刻停止を求める立場を発表するとともに、これをソ連側に伝達せしめました。  我が国は、ソ連情勢の把握、分析に努めると同時にサミット参加諸国首脳との緊密な協議を実施いたしました。EC議長国を含むすべてのサミット参加国との協議電話にて実施したほか、さらにアジア諸国も含め外交ルートでのさまざまな協議を実施し、情報収集対応に遺漏なきを期したところであります。  日ソ間におきましては、まず政変の際、総理エリツィンロシア共和国大統領及びゴルバチョフソ連邦大統領電話で会談されました。さらに、政変後の新しい情勢日ソ関係の今後の展望につき議論するために、斉藤外務審議官ソ連に派遣し、ゴルバチョフソ連邦大統領エリツィンロシア共和国大統領はか連邦ロシア共和国双方の要人と会談を重ねせしめたところであります。  政変の後、ゴルバチョフ大統領ソ連邦共産党書記長を辞任するとともに、ソ連邦共産党中央委員会解散を求める声明を発表し、一九一七年以来のソ連邦歴史における歴史的転換点を画す事態を迎えました。  さらに、政変後の情勢の急激な変化の中で独立を求める各共和国動きが活発化し、連邦制の見直しか大きな政治的争点となるに至りました。  今般開催された第五回ソ連邦人民代議員大会では、一、新しい連邦制を「主権国家連合」とし、各共和国が自主的に右への参加形態を決定すること、及び、二、新憲法のもとで新しい国家機構が組織されるまでの暫定的措置として、執行機関としては連邦共和国代表による国家評議会及び共和国間経済委員会を新設し、また立法機関としては最高会議の中に共和国会議を新設すること等が提案されております。  バルト三国の独立問題につきましては、我が国として、これら国民の強い願望と自由な意思を反映した平和裏独立を支持し、その早期実現を期待する旨を明らかにするとともに、我が国より新井大使を長とするミッションが現在バルト三国を訪問しております。西側各国承認動きも進んでおり、我が国としても、同諸国承認につき時期を失することなく適切に対応する所存であります。  対ソ支援につきましては、今後ともロンドン・サミットでのコンセンサス並びに拡大均衡という 我が国対ソ政策の基本を踏まえ、新しい状況のもとで適切な対応をとっていく考えであります。  以上であります。
  5. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) ありがとうございました。  以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 成瀬守重

    成瀬守重君 ソ連につきましては、連邦共和国との関係が極めて流動的になっております。新連邦条約によれば、外交について連邦国際法主体と規定され、各共和国は完全な権利を有する国際社会構成員であると規定されておりますが、連邦国境線変更について、連邦共和国共同管轄として関係条約加盟国の同意に基づくとされております。条約加盟国連邦財政支出を監視する。実質的には共和国の権限が拡大していくようでありますが、エネルギー資源について共和国所有権が明記され、金準備ダイヤモンド外貨ファンド連邦が保管するようであります。  今後、連邦共和国関係はどうなっていくのか、また日本国家や企業あるいは各種団体はこれから連邦共和国のどちらを相手にいろいろな交渉をしていけばよいのか、この点について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  7. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) ただいまソ連邦におきましては全国人民代議員大会が開催をされておりまして、いろいろと新しい国家形態共和国との関係につきまして議論が行われておる過程でございます。  細部につきましては欧亜局長から答弁をさせていただきます。
  8. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 御案内のごとく、ただいまソ連邦人民代議員会議におきまして、委員提起連邦共和国との関係をどういうふうにするかという点について大議論が行われておりまして、昨日、十プラス合意というものがゴルバチョフ大統領と、バルト三国、グルジア、モルトバ五共和国を除く各国大統領との間で一応合意をされたわけでございますが、それが人民代議員会議に送付をされ、それをめぐって大変な議論が行われて、きょう現在まだ決着がついていないというのが現実でございます。  その中で、委員提起の例えばエネルギー資源あるいは金準備あるいはダイヤモンド等貴金属等がどうなるのかという点でございます。これは八月二十日に署名予定の、四月二十三日の九プラス合意ができまして以来事務的に詰められた連邦条約草案があったわけでございますが、ここでは一応こういう天然資源物は原則として各共和国に所属するというところは踏み切られていたわけでございます。ただ、金準備ダイヤモンド貴金属につきましてはその点はなお共同管轄というような概念が導入されておりまして、では実際に具体的にどうなるのかということは、そこまでは詰められていなかったのが現状であったと思います。  しかしながら、この八月のクーデター後の状況というものは連邦条約草案に想定しておりましたよりもはるかに共和国主権を大幅に、もっと大胆に認めるという方向で動いております。どの程度とうということはまさに今議論の中でございまして、またもう一つ先生が御指摘になりました国際法上の主体ということが今回の十プラス合意でうたわれたわけでございますが、それでは各共和国国際法主体というのはどこまで行くのか、国連は別々に加盟するのかどうなのかというような問題も含めまして恐らくこれはまだ全く議論が煮詰まっていない段階で、なおきょう行われる予定人民代議員会議、あるいはそれに続いて恐らく何らかの形の法的措置がとられなければならないと思いますけれども、その法的措置を見ないと全貌が明らかでないという現状だと考えております。
  9. 成瀬守重

    成瀬守重君 瀕死のソ連経済市場経済への移行が進むにつれてさらなるインフレの高進や失業者の増大を生むだろうと予想され、さらには東ヨーロッパ対ソ貿易の解体と難民の流出におびえていると思われます。  十月から寒くなってきて食糧事情医薬品不足懸念されますが、どのようにこれに対して見ていらっしゃるか、また我が国としてどのような対応考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  10. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今委員からお尋ねのソ連の今後この冬にかけての状況でございますけれども、私ども政府として懸念をいたしておりますことは、いわゆる国家行政機構がどのような形になって整えられるのか。また、貿易の決済も非常に問題が多いというふうに聞いておりますし、貿易がストップするといったようなことが起これはそれがまた国内のインフレに拍車をかけるといったようなことも心配をいたしておりまして、一日も早く国家機構というものが整備されることが望ましいと考えております。  なお、来るべき冬にソ連方々食糧あるいは医薬品といったようなものの不足大変生活が困難になるといったような場合には、日本政府としては、隣国として医薬品あるいは食糧等の人道的な援助については適切な支援をいたさなければならないと考えております。
  11. 成瀬守重

    成瀬守重君 次は視点を変えまして、日本外交は今日、国益の確保と国力にふさわしい世界への貢献という両面から今まで以上に強力な外交活動が求められておりますが、その意味在外公館外交活動拠点であり、在外公館機能強化して在外勤務環境などの外交実施体制強化することは今日の我が国にとって死活的な重要性を持っております。  さきに衆議院の内閣委員会在外公館に関する小委員会では、一九八八年の十一月に小委員長所見として在外職員定員増員を強調しておりますが、現在我が国在外公館に勤務する外交官の数は他国と比較しても非常に少ないと伺っております。私の手元にある資料を見ましても、米国の外交官一万六千四百人、英国八千七百七十七人、フランス七千七十八人、西ドイツ六千四百六十五人、イタリア五千百四人、これに対して我が国では四千百四十八人というぐあいに外交官数が少ないようでございますが、現段階においてどのような構成をもって、人数をもって行っておられるか。この点について、一時に先般ソ連の大動乱の中において皆さん方大変な御苦労をなさったと思いますが、新しいデータがございましたら教えていただきたい。もしございませんようでしたら、今の私が伺った点について大きな変更があるかどうか、そういった点についても伺ってみたいと思います。
  12. 佐藤嘉恭

    政府委員佐藤嘉恭君) ただいま成瀬先生の御指摘のとおり、我が国外交実施体制強化していくということは外務省に課せられた一つの大きな責務であろうというふうに感じております。私ども、毎年度の予算要求重点事項といたしまして外交実施体制強化ということを一つの大きな柱として掲げておるわけであります。平成四年度の概算要求をつい一週間前にやらせていただきましたが、この予算案の中でも定員の増加あるいは在公施設の増強といったことを柱といたします外交実施体制強化ということをお願いしてまいっているわけであります。我々としてなお一層努力をしてこの定員増に努めてまいりたいというふうに思います。  ただいま先生から御指摘のありました諸外国の外務省職員数でございますが、おおむね私ども手元にございます資料と合致しているというふうに思います。外務省の仕事というのは国によって若干出入りがございますので、正確に職務が同じかといえばそこは若干幅があるようには思いますけれども対外関係に従事するという意味で本省及び在外職員を合計いたしますと、ただいま成瀬先生の御指摘のあったような数字になっているわけでございます。  我が外務省につきましては、平成三年度において四千四百十六という定数をいただいておるわけでございますが、来年度さらにこれにできるだけ 多くの増員を図ってまいりたいと思っております。提出申し上げました要求案におきましては、百三十九名の増ということをお願いしている次第でございます。
  13. 成瀬守重

    成瀬守重君 次に、この点もお願いしたいわけですが、在外公館施設整備拡充また在外職員の不健康地対策強化という点につきましてもこれは非常に重要な問題ではないか。我が国在外分館のうち三分の二がいわゆる不健康地にあり、そこに在勤する在外職員は全在外職員の約半数に上ると伺っております。こういった在外職員方々が安んじて外交活動に専念できるように特に健康管理対策充実を図ることは不可欠であり、医務官増員とかあるいは医務官制度を補充するための施策、さらには休暇制度充実、そういったようなものを充実することが大事じゃないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
  14. 佐藤嘉恭

    政府委員佐藤嘉恭君) 御指摘にもございましたとおり、私ども在外公館というものは日本にとっての海外情報収集あるいは外交交渉の最前線の拠点というふうに考えるわけであります。また同時に、多くの在留邦人を抱える地域におきましても邦人保護活動というような危機管理をやる際の拠点になる、かように考えているわけであります。したがいまして、外務省といたしましては、これらの拠点強化する、予算面それから物的な施設の雨その他それを支えるソフトの面で強化していかなければならないことは先生のおっしゃるとおりでございます。先ほど来申し上げておりますとおり、外交実施体制強化ということは、今般のソ連情勢変動ということに言及するまでもなく、湾岸情勢あるいは東ヨーロッパ変動あるいはその他の地域における諸問題に対応するために一層の強化が必要であろうかというふうに思います。  特に先生が今御指摘になりました多くの在外公館職員不健康地域におるということにつきましては、私ども相当決意をもって強化してまいらないと我々の情報収集活動あるいは外交交渉あるいは邦人保護危機管理体制止いった面で十分職員の士気にこたえられるものができなくなってしまう、かように考えているわけであります。  来年度の予算要求におきましても、危機管理体制強化、これは非常に基本的なところでございますけれども通信網整備するとか自動車電話を十分配置するとかあるいは緊急時に衛星を使った通信が可能となるような通信体制を敷くとかという危機管理体制強化ということを一つの柱とし、また在外公館施設整備拡充といったこともこの柱としているわけであります。同時に、先生が御指摘になりました職員の不健康地対策、これは健康管理休暇が十分とれるとかあるいは毎年の年次休暇が十分消化されるとか、あるいは御指摘になりました医療体制といったことを念頭に置きながら予算の増額をお願いしてまいりたいと思っております。  これからもまたいろいろな形で先生方の御支援をいただく必要があろうかと思っておりますが、私どもとしては、これから情報収集活動を効果的にやる機能を高めるという観点も踏まえまして必要な整備をさせていただきたい、かように考えているわけであります。
  15. 成瀬守重

    成瀬守重君 世界各地戦争とか内乱、また治安の悪化が見られるので、特にペルーだとかコロンビアあるいはフィリピンなどで在外公館が時によっては非常に危機的な状況に見舞われるということも伺っておりますが、そういう意味での警備対策あるいは危機管理対策というものを今以上により一層留意いただきたい。さらには、世界各地でハイジャック、爆破、誘拐、テロ、そういったものが頻発しており、非常にいろいろな面で在留邦人の生命の危機が高まっておりますが、今後そういったものに対しましても抜本的にいろいろな対応策考えていただきたいと思います。次に、国際連合の問題について伺いたいと思います。  東西関係変化の中で国際秩序維持世界の平和のために国際連合が果たす役割はかつてないほど高まっています。このような状況下国連機能の一層の充実のために、平和国家を標榜し、世界平和なくして国の存立がない我が国としましては国連に積極的に協力していくべきだと考えますが、これについて国連局長決意をお伺いし、さらには大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  16. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 米ソの対決が終わるといったような事態で、中東の湾岸戦争が起こった時点から国連の安保理における協議というものは、従来の拒否権というものを発動する姿勢がなくなって、各国国際紛争協力しながら対応するという一つの新しいパターンが生まれてきたと思います。この姿こそ、国連の創設されたときの理想の形というものがここへ具現化しつつある。そういった中で、日本政府としては国連を中心に国際紛争の解決あるいは平和の維持というものにこれから協力をしていかなければならない。  今、日本は、資金的な面では国連に対して毎年約九千万ドルぐらいの年会費を出しておりますが、任意の拠出金を合わせますと昨年度あたりで年間七億五千万ドル近い資金をもって国際社会のために貢献しているというふうに御理解をいただいて結構だと思います。しかし、資金的な協力だけでは十分でないといったような観点から人的な貢献にさらに力を入れるべきであると、今まで紛争地点における政務官派遣等もいたしておりますし、選挙管理等におきましても各地方自治体を含めて人的貢献をやってまいりましたけれども、この国会ではPKOを初めあるいは国際緊急援助隊といったようなことも踏まえて人的貢献の一層の拡充を図っていく必要がやってまいったと、このような認識を持っております。
  17. 成瀬守重

    成瀬守重君 今大臣の御決意を伺いましたけれども、一国際社会の平和と秩序維持のためにPKO活動そのほかいろいろな問題でこれから我が国として当然貢献しなければなりません。一面においては国連無用論とかあるいは国連に対する一般の関心の低下がある点も否めない事実でありますが、より一層その点につきましての国民へのPR、そういったものも御配慮いただきたい。  その中で特に私どもとして懸念を感じます国連における敵国条項の問題につきましてはどのような状態になっているか、大臣にお伺いしたいと思います。
  18. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 旧敵国条項の存在というものは、戦後四十六年を迎えた今日、平和国家として国連加盟をいたしました日本国にとってはこの条項がそのまま残っているということについては国家としても極めて好ましくないという認識に立ちまして昨年の総会でも私がこの旧敵国条項の廃止を訴えておりますし、その後アメリカを初め常任理事国外務大臣等の会合におきましてこの問題についての理解を求めました。大方の理解を得られましたので、引き続きこの憲章の改正問題について努力をしなければならない、このように考えております。
  19. 成瀬守重

    成瀬守重君 ありがとうございます。  以上で質問を終わります。
  20. 田英夫

    田英夫君 先ほど外務大臣からソ連情勢についての御報告がありましたが、内容はどちらかといえば今度の情勢に対する日本政府対応経過報告という内容になっていたと思いますので、なぜこういう事態が起きたのか、大きなグローバルな世界歴史流れの中でなぜこういう状況が起きたのか、そういう分析を当然しておられると思うのですが、その点について大臣なり欧亜局長からお答えいただきたいと思います。
  21. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 今、田先生指摘の大きな流れの中でというその流れの中でとらえますれば、私はやはりレーニンが一九一七年に革命を起こして共産主義政権をつくって以来続けられてきた一つの壮大な実験というものが完全に行き詰まってしまったということであろうかと思います。  より近視的に言えば、その中でペレストロイカの動きが一九八五年から始まった。しかし、その中で改革路線というものが、左右といいますか、 保守派改革派両方からのいろいろ激しい突き上げあるいは場合によってはこれに対して抵抗するということでどうしても前に進まない。過去一年の具体的な動きを見れば、昨年の十一月、十二月にはむしろ保守派からの激しい突き上げがあり、ゴルバチョフがその突き上げであるいは保守派の方に急速に歩み寄って保守派寄り政策をとっている。その中でバルトの流血その他が出てくる。しかし、それがまた行き詰まる。  そこで、四月二十三日の九プラス合意に象徴されますように、今度はエリツィン大統領と手を握って急速に改革路線にもう一度揺れ戻していくという事態があったわけでございます。今度はその改革路線寄りの急旋回が大変に急角度で進んでいった。その中で、経済問題について西側対ソ支援と加速化された経済改革とがいわば結びついた形での改革路線を進む動きが見えてきた。これに対して保守派が相当な危機感を募らせていった。そこの中の最大のものがやはり連邦条約で、連邦条約が大きく共和国主権を認める方向で動いていった。このままでは連邦そのもの存立が危うくなるという、そういう危機感保守派に募った。それが直接この保守派といいますか、をして今回のような異常な手段に訴えせしめたのであろうというふうに受け取っております。
  22. 田英夫

    田英夫君 確かにそういう経過があるわけですけれども、私が申し上げたいのは、例えば保守派クーデター失敗をした、しかもその失敗状況というのは、民主化を求める民衆の下からのといいますか、そういう力によって挫折せざるを得なくなったというところに非常に今回の問題の世界史的な流れの中の大きな特徴がある。  私がこういうことを冒頭申し上げるのは、今度のこういう状況をそういう歴史流れの中で適切にとらえておかないと、これからの日本政府対ソ外交といいますか、そういうものを誤るおそれがあるというふうに思うから申し上げたのですが、この問題を余り長くやっていてもいけないので私の考えだけ申し上げれば、やはり世界冷戦構造崩壊という状況の中でイデオロギー時代というものが終わってきている。だから、今度の保守派というのはやはりイデオロギー主義者たちだと私は言いたいわけです。そういう古い考えに立った人たちの誤った考えに対して、イデオロギー主義ではないそうした民衆考えが勝った。このことは、後で朝鮮問題に触れたいと思いますが、日朝交渉でもよほど注意しないと我々も誤りを犯すのではないか。つまりイデオロギー主義の時代は終わりつつあるのだということを本当にしっかりと腹の中に持たないとこれからの世界に対する対応は間違うのじゃないか、こう思うからです。  では、イデオロギーというものにかわって、つまり資本主義か社会主義がというイデオロギーの対立というものにかわって一体何がこれからの世界的なテーマになるのだろうか。これは実は海部総理も演説の中で言っておられるわけですが、やはり平和、軍縮という各国民あるいは国の共通の願い、それから人権とか民主といってもいいかと思いますがそうした問題、そして環境問題、こういう問題が世界の共通の課題になっていく時代になってくる。そこでは依然としてイデオロギーの違いはあるわけですし、国の体制の違いは例えば中国などを考えればあるわけですが、そういう違いはもう余り大きな問題ではなくて、その違いを乗り越えて今申し上げたような共通の課題についていかに協力するか、そういう時代になってくるのだ。ソ連の今度の激変はそういうことを私は教えているのじゃないかと思うわけですが、ソ連問題はこの程度にして日朝交渉の問題に触れていきたいと思います。  先日まで北京で行われておりました第四回会談、これまで四回と回を重ねてきましたけれども、いろいろ曲折がありましたが、それをくくって今までの四回にわたる会談の成果といいますか評価というか、これを政府はどういうふうにお考えになっていますか。
  23. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 私は、今日までの日朝間の国交正常化交渉を振り返ってみて、第一回から今回の会談までいろいろと曲折はございましたが、やっと本来の議論すべき課題に入り得たという認識を持っております。いろいろ長い間の両国間の不幸な時間帯というものがございましたから双方いろいろな問題が蓄積しておりましたけれども、問題を一つ一つ議論しながらやっと基本的な問題に議論の窓口が開き始めたと。  私は、今後この二国間の交渉についてはさらに誠意を持ってやっていくことが必要でございますし、また幸いなことに国連総会で南北が同時に加盟するといったような環境が国際的にも整備されてきたということは歓迎すべきことと、このような認識を持っております。
  24. 田英夫

    田英夫君 確かにそういう状況になってまいりました。ただ、私に言わせていただければ、以前にもここで申し上げたのですが、外務省外交交渉、特にソ連であるとか朝鮮民主主義人民共和国であるとかというような国を相手の交渉の場合に、交渉の入り口に何か大きな石のようなものを置いて、これをどけなければ内容に入らない、部屋に入って交渉に応じないというようなそういうやり方がどうもあるように思えてならない。今回の第四回の冒頭ももめましたけれども、その原因はそういうところにあるのじゃないか。李恩恵の問題とかあるいは核査察の問題とか、困難な問題をまず入り口に置くような気がしてならないのです。  李恩恵の問題というのは、これも大分前にあのことが発表になった直後にこの外務委員会で私の意見を申し上げましたけれども、この問題は今後どういうふうに取り扱われるおつもりですか。
  25. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 田先生から紆余曲折の末にやっと本交渉に入ったというお言葉がございましたけれども、恐らく今の李恩恵の問題を頭に置いての御発言だと思いますが、確かに冒頭にこの問題につきましてかなり北側と厳しいやりとりがございました。経緯は省略いたしますとして結局決着したラインといいますのは、この問題について日本側が希望するのであればいつでも実務レベルで協議には応じますということを確保した上で第四回の正式の会談に入ったわけでございます。  入り口に大きな障害を置いたというお言葉でございましたけれども、国会でもたびたび御議論がありましたけれども、この問題を全く横に置いたままで何事もなかったように本会談を進めるということは、私ども政府としてなかなかとり得ざる道ではなかったかと思っております。
  26. 田英夫

    田英夫君 私は、今度の日朝交渉の朝鮮側の代表団長である円仁徹という人は三十数年来の友人でありますから、彼とも話しましたし、七月に日朝議連の代表団で朝鮮へ行きましたので、そこでも金日成主席初め現場の指導者とも会いましていろいろ向こう側の考えも聞きました。日本とのそういう交渉に臨む向こう側の基本的な理念といいますか、過去のことを含めてそういうものも聞いておりますが、日本側から考えたときに、かつてのことを含めてどういう点を基本的な姿勢として交渉に臨んでおられるのか、そうした点をひとつ大臣からお答えいただきたいと思います。
  27. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) この交渉に当たる日本側の考え方といたしましては、やはり三十六年間に及ぶ日本の植民地時代におけるこの地域方々が受けた精神的あるいは物的な被害、そういうものが現実に存在をしているといったことについては政府として基本的に海部総理日本政府考え方を国会等で申し上げておりますけれども、私どもはそのような不幸な過去を新しい一つの転換点としてこの日朝交渉を成功裏におさめて、一日も早く朝鮮半島全体が平和の中にアジアの国家として繁栄をしていく、そういうことに日本政府としては心から期待を持っているということでございます。
  28. 田英夫

    田英夫君 私の考えも共通しているわけですけれども、ちょっと整理して意見を申し上げたいと思うのです。  一つは、今大臣言われたとおり、過去の植民地支配に対する反省とそれを謝罪という形、それを どうあらわすかというところへ非常に今度の交渉の中身の問題が絡んでくると思いますが、それが第一の柱だと思います。  二番目に、日本人は、植民地支配のときはもちろんですが、歴史的に朝鮮民族に対する不当な差別意識のようなものがあるのではないか。こういうことに対する反省も同時に大変大事ではないか。朝鮮民族は非常に誇り高い民族ですから、特に民族としての尊厳とか人権擁護とかということを大きな柱として考えておく必要があるのではないか。  三番目に、やはり南北は統一されるべきだ、そのために日本は陰ながらということの方がいいと思いますが協力をするという、そうしたことも基本に持っていなければいけないのではないか。  それから大臣を言われたとおり、もちろん日朝間の国交正常化ということはアジアの平和につながる、そういう平和の問題、これが四番目の柱だと思います。  五番目の柱は、さっきソ連のところで申し上げたつまりイデオロギー主義にとらわれてはならないということ。先日も金日成主席に会ったときに、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮式社会主義を厳守する、我々は地球の上に住んでいる以上地球の変化に沿っていかなければならないという発言がありました。これは非常に注目すべき発言だと思ったわけですが、同時に我々は朝鮮式社会主義を堅持していくと。我々式社会主義という、朝鮮語でウリ何とかというその言い方もあるようですが、こうしたことを考えたときに、率直に言ってアメリカの一部などにありますけれども、自分たちのイデオロギー、自分たちの考え方をよそに押しつけるという、そういうものがこの日朝交渉、日朝間の中にあってはならないということ。  この五つが私は重要な柱だと思っています。その意味で、冒頭の植民地支配に対する反省ということ、この中から過去に対する謝罪をどうあらわすか、それが今賠償とか財産・請求権とかという言葉で容易に一致しない部分の一つになっているわけです。  最初にお答えいただきたいのは、一九一〇年のいわゆる併合条約ですね。日本政府の側からすれば、日韓基本条約の第二条で無効とするということを書いてありますが、これはあの時点で無効だということであって、北朝鮮側はもう初めから不当であんなものは無効なものだと言っているようですけれども日本政府は北朝鮮側との関係の中ではどう考えているのですか。
  29. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいまの一九一〇年の条約についての御指摘でございますけれども日朝国交正常化交渉におきまして北朝鮮側はこの条約、いわゆる日韓併合条約でございますが、これは強制を背景に締結されたものであって当初より無効であるというような主張をしているわけでございます。  日本政府といたしましては、従来からいろいろな機会に御答弁申し上げておりますとおり、この条約は一九六五年の日韓基本関係条約第二条によりまして「もはや無効である」ということが確認されておるわけでございますが、一九一〇年の当時には有効に締結され実施されたものであるという考え方をどってきているわけでございます。ただ、このような法的な評価の問題それからこの条約が締結されました当時の政治的その他の背景とは別の問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  30. 田英夫

    田英夫君 日韓基本条約で「もはや無効」という非常に微妙な言葉を使っているわけで、この問題も一つのテーマだとは思いますが、もう一つ今非常に日朝間で意見の違う請求権という問題ですね。請求権という言葉は、外交の今度のような場合に使う用語の意味と一般的な辞書に書いてあるような意味、辞書のような意味からすれば、何というか、金銭財産の貸し借りみたいなことになるわけですけれども、サンフランシスコ平和条約の第二条で、「日本国は、朝鮮の独立承認し」、幾つかの島を含めて「朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」、こうあるわけです。この場合の請求権、英文で見るとクレームと書いてありますが、これと日朝交渉の中で今言われている請求権、政府が言っておられるのとは同じですか、違いますか。
  31. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま田先生から御指摘ございましたように、サンフランシスコ平和条約第二条には御指摘のような規定があるわけでございます。この規定、第二条でございますが、これは御承知のとおり領土の処理にかかわる規定でございまして、したがいましてこの第二条で用いられておりますいわゆる請求権は最近問題になっております財産権的な請求権という意味ではございませんで、領土の領有関係の主張にかかわる概念であるというふうに解しております。  他方、我が国と分離独立いたしました地域との間の財産・請求権の問題の処理につきましては、サンフランシスコ平和条約ではむしろ第四条の(a)項におきまして、日本国と現にこれらの地域の施政を行っている当局との間の特別取り決めの主題とするという規定がございます。そのような規定に基づきまして、日韓におきましては御承知の一九六五年のいわゆる日韓請求権・経済協力協定によりましてこの問題を完全かつ最終的に解決したということでございます。
  32. 田英夫

    田英夫君 ちょうど条約局長からサンフランシスコ条約第四条の話が出ましたが、(a)同項はまさにそういう規定だと思うのです。それに基づいて今交渉しているということだと思いますが、(b)項のところで、アメリカが朝鮮で処理した、処理という言葉を使っていますが、つまり没収したという意味だろうと思いますが、日本国及び日本国民の財産は処理したものと認める、つまり没収されたことを認める、こういう条項が(b)項にあるわけです。これは実は韓国側がひそかに要求して入ったという説もあるようでありまして、したがってアメリカがと書いてあるわけですが、そうなると、北半分はソ連軍がかつての日本国並びに国民の財産を没収したと言われているわけですけれども、サンフランシスコ条約にはその問題は触れていませんから、今度の日朝交渉の中の朝鮮側の問題についてはないわけですね。ないと考えていいのですか。そうするとこの問題は、日本側からすれば交渉一つのフリーな問題になると考えていいのですか。
  33. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) この点につきましても、ただいま田先生から御指摘ございましたとおり、平和条約第四条(b)におきましては、「日本国は、第二条及び第三条」、第三条はこの場合関係ございませんけれども、「に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する」という規定があるわけでございます。したがいまして、これは合衆国軍政府のとった措置を承認するということにとどまるわけでございまして、北朝鮮におきましてのこのような処理というものはなかったと思いますので、この北朝鮮におきましての財産の問題というのはこれとは基本的に別個の問題であるというふうに考えております。  北朝鮮におきまして我が国の財産等がどのように処理されたかということの詳細につきましては。残念ながらよくわからない点が多いわけでございますが、ただ私ども承知している限りにおきましては、北朝鮮におきましていわゆる北朝鮮臨時人民委員会が一九四六年三月五日の北朝鮮土地改革に関する法令というものによりまして、日本国日本人及び日本人団体の所有地を没収いたしまして、一九四六年八月十日の産業、交通・運輸、逓信、銀行等の国有化に関する法令というもので日本国及び日本人所有の施設を国有化したというふうに承知しております。なお、一九四八年の九月八日に交付されました朝鮮民主主義人民共和国憲法におきましても、日本国及び日本人の財産は国家、すなわち北朝鮮でございますが、の所有に属するとされておりまして、日本国及び日本人の土地所有は永久に廃止されるというふうに規定されているものと承知しております。  いずれにいたしましても、我が国と北朝鮮との間におきましては両国及び両国国民間の財産・請求権の問題は未解決のままで残っているわけでございますので、今後日朝国交正常化交渉の場でこの問題を解決していきたいというふうに考えているわけでございます。
  34. 田英夫

    田英夫君 そこで、確認をするのですけれども、請求権生言った場合に、財産・請求権という意味ですけれども、北朝鮮側に当然あると、それは人的物的被害に対する賠償という意味で向こうは言っているわけですが、日本側は、今の条約局長の御説明だと、サンフランシスコ平和条約にはアメリカのことしかないから一方的に北朝鮮側は憲法その他の法令によって没収しているのだけれども日本側もかつての国の財産とかあるいは企業の工場等の財産に対する請求権はあるのだというふうに政府はお考えなのか、この点はどうですか。
  35. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいまの点は、先ほどもサンフランシスコ平和条約に触れましたときに日本側の財産・請求権というものもこの規定の対象になっていることを申し上げましたけれども、これはいろいろな戦後の請求権処理の問題で常に問題になってきたところでございますが、北朝鮮との関係につきましても、我が国が置いてきた財産の処理という問題についての請求権というものはこれは交渉の対象になる問題であるというふうに考えております。
  36. 田英夫

    田英夫君 そこはこれから非常に重要なところになると思います。私も北朝鮮側のこの交渉を取材していも人とかそういう人たちから北側の意見を聞くという形で接触してみますと、やはりこの点を非常に重視していますね。  それで、私もこれは同感なのですけれども、私はさっきなぜ第四条の(b)のことを聞いたかというと、アメリカの方は明文で規定しているのです。そうすると、北半分のことは条約に関係がないから何もないけれども、当然援用して南半分と同じように考えるべきじゃないかと思う方が自然じゃないか。これは私の意見として申し上げておきます。  それからもう一つの問題で、北朝鮮側は人的物的被害、例えば強制連行をされた人あるいは従軍慰安婦というような形で大変な被害を受けた人たちに対する賠償という形で支払え、こういうことを言っているわけですが、これに対して交渉の場で日本側は、それならば証拠を出せ、例えば郵便貯金通帳とか年金証書とか、それから徴用で賃金が不払いだったというようなことに対する証明できるものを出せ、こう言われたというのですが、これは事実ですか。
  37. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 北朝鮮側の主張は、いわゆる日本の統治時代の人的な被害あるいは物的な損害、こういうものを賠償という形で補償せよ、こういうことでございまして、私どもの立場は先ほど来条約局長が申し上げているところでございますが、いずれにいたしましても、そういった個別の先方からの請求に対しましてはやはり私どもといたしましても客観的な事実をまず御開示いただきたい。帳簿を見せろということは言っていないと私は思います。必ずしもそういう具体的な表現ではなかったとは思いますけれども、具体的な積算根拠を政府に示していただきたいという議論を始めております。  大臣が冒頭申し上げましたように、そういうことも含めて第四回目でようやくそういった具体的な論議を始めたということでございます。
  38. 田英夫

    田英夫君 これも北朝鮮側の田仁徹団長自身も非常に怒りを込めて言っているのですが、血も涙もないと。大体五十年もたってそうした貯金通帳とかを持っているはずがないし、また強制連行や慰安婦で連れていかれた連中がそんな貯金できるような経済状態になかったじゃないかという言い方をしているわけですけれども、私もこれはちょっと血も涙もないな、こういう感じがしてなりません。  そこで、強制連行の問題ですけれども、韓国の盧泰愚大統領も昨年来日されたときにこの問題に触れられた。日本側は、調べましょうということになったにもかかわらず、率直に言って厚生省、労働省などで責任のなすり合いのようなことがあって一向に調査は進んでいない。民間の人の努力で若干名簿が出てきたというような程度でしかないわけです。このことは実は冒頭申し上げた植民地支配に対する反省と謝罪ということからすると一番直接的に表にあらわれた問題で、これにどう対応するかということは単に北朝鮮だけでなくて中国、韓国を含めてあるいはアジア諸国を含めて非常に重要な問題で、日本政府のいわば怠慢のために今取り残された問題だと言わざるを得ないわけであります。  私は、この際委員長にお願いをしたいのですけれども、ぜひ理事会で、この外務委員会に強制連行問題調査委員会というものを置いていただいて改めて参議院として積極的にこの問題の調査を進めるということをすぐやっていただきたい。お願いをしておきたいと思います。
  39. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) わかりました。
  40. 田英夫

    田英夫君 そこで、例えば田仁徹団長は、ドイツがユダヤ人に対して補償を行ったそうした資料を集めてこれを参考にしているということも語っております。  私の調査では、西ドイツですけれども、かつての西ドイツ政府政府としても非常に積極的にユダヤ人に対する補償をやってきましたし、民間もやっております。日本は、例えば花岡事件などで鹿島建設は全くそうした補償措置をやろうとしていないわけであります。その他の企業も全くやっておりませんけれども、例えばドイツの場合はベンツ社、あの自動車のベンツ社だけで日本円にして一兆円を超す賠償をユダヤ人の団体などに支払っている。今もまたその支払いが続いているという状況だということを聞いております。  したがってこの問題、いわゆる賠償・請求権の問題というのはこれから非常に大きくなるだろう。それをどう処理されるのか。時間がありませんから、きょうは私の方から一方的に申し上げましたけれども。  そこで、海部総理はことしの五月にシンガポールでの演説の中で、過去の第二次世界大戦への反省ということを込めて学校教育の場でもきちんと教育をしたいと思うということを言われたわけですね。私は全くこれは同感なのでありますけれども、文部省がおいでになっていると思いますが、この海部演説を受けて文部省は五月以降具体的にどういう処置をとられましたか。
  41. 近藤信司

    説明員(近藤信司君) お尋ねの歴史教育の問題でございますが、本年五月に総理大臣から文部大臣に対しまして、我が国の次代を担う若者たちが我が国の近現代にわたる歴史を正確に理解するよう学校教育においても努めてもらいたい、こういう趣旨の御指示があったところでございます。  この学校教育におきます我が国とアジアの近隣諸国との近現代史の取り扱いにつきましては、委員御案内のとおりでございますが、従来から国際理解と国際協調の見地に立ってその友好親善を一層進めるよう指導をしてきておるところでございますし、今回学習指導要領を改訂いたしまして、国際社会に生きる日本人の育成という観点から歴史学習の改善を図りまして、その趣旨につきましては文部省が作成しております指導書等においても、例えば小学校の場合で申し上げますと、我が国にかかわる第二次世界大戦について指導するに当たっては、これらの戦争において中国を初めとする諸国我が国が大きな損害を与えたことについても触れることと、このように明確に示しておるところでございます。  今後、文部省といたしましては、この新しい指導要領の趣旨に沿って児童生徒が我が国と韓国、中国を初めとするアジアの近隣諸国との近現代史を正しく理解いたしましてこれらの諸国との友好親善を深めていくよう各学校現場におきまして一層適切な指導が行われることが大切である、そういうふうに考えております。  それで、総理から五月にそのような指示がございましたので、五月の末から各学校段階ごとに全 国五地区で実施をいたしました教育課程講習会、これは今申し上げました新しい学習指導要領の趣旨をすべての都道府県に周知徹底する会でございますけれども、そういった会におきまして関係者に対してその趣旨を指導したところでございます。また、今後も教育課程講習会でありますとか都道府県の教育委員会のいろいろな会議がございますので、そういう場におきまして関係者に対しまして一層の指導に努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  42. 田英夫

    田英夫君 ぜひ文部省が今までよりもはるかに積極的にこの問題に取り組んでいただきたいとお願いをします。  今大変いいことを言われましたけれども、従来は例の教科書問題というものが起こるようなそういう教科書検定のあり方であったし、むしろ逆だったと思います。  これはここでお話ししたかもしれませんが、昨年韓国の高校生が夏休みに日本を訪問して、松代の旧大本営跡を見学したわけです。つまりあの大本営、穴はすべて強制連行された朝鮮の人たちが掘ったわけで、多くの犠牲者が出ている。そのことを韓国の教科書は詳細に教えているわけです。ところが、その折に松代の近くの長野県の高校の生徒とその韓国の生徒が交流をしたところが、韓国側がそのことを実は勉強に来たのだということを言ったら、日本の高校生は松代で朝鮮の人たちがひどい目に遭って多くの犠牲者が出たということを全く知らなかった。松代の近くの高校生ですら知らなかった。こういうことでその韓国の高校生が口々に私に訴えていたわけです。そういうことでは北朝鮮を含めて全く真の謝罪にはならないわけでして、この点は文部省に重ねてお願いをしておきます。  日朝交渉の問題というのは、まだ核査察の問題とか管轄権の問題とかいろいろ問題があります。  核査察のことも私の意見を言えば、果たして日朝間で日本側が要請をしたそれが解決しなければ前へ進まないみたいな話になる問題がなと。しかも、IAEAの協定を結ぼうというそういう状況の中でそんなに大きな石としておく必要があるかなと思います。  管轄権の問題は、これは一番双方の意見が一致しつつある問題ではないかと思いますが、その中で一つ気になることは、日韓基本条約の第三条で韓国政府が朝鮮にある唯一の合法政権と、こううたってしまっているわけです。これとこの管轄権の問題とのかかわりはどういうふうに解決をされるわけですか。
  43. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま御指摘の日韓基本関係条約の第三条でございますが、第三条におきましては、御承知のとおり、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される」というふうにうたっているわけでございます。そして、第三回総会で採択されましたこの百九十五号の決議の前文に当たりますが第二項のところで申しておりますことは、単に唯一の合法的な政府と言っているだけではございませんで、この総会が認識したところの政府というものにつきましていろいろなことを言っているわけでございます。  例えば、この大韓民国政府が全朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に対して有効な支配及び管轄権を及ぼしている合法的な政府であるということでございますとか、また朝鮮のその部分の選挙民の自由意思の有効な表明があったというようなこと、さらに当時設立されました臨時委員会が観察した選挙に基づくものであるというようなこと、並びにこの政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることを宣言すというふうに言っているわけでございます。したがいまして、これを受けまして基本関係条約で貝先ほど申し上げましたように、国連総会決議に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府という認識を言っているわけでございます。  結論的には、北半分につきましては白紙であるという立場をとっているということでございます。
  44. 田英夫

    田英夫君 実際には白紙じゃなくて、国連というものが今の現実には全く合わないことをやってしまっていたわけだと思うのです。つまり朝鮮戦争のときにアメリカ軍が実はアメリカ軍であるにもかかわらず国連軍という形になった。これは拒否権の問題でソ連側にもミスがあったかもしれませんけれども、今だにずっと国連軍が駐留をし、毎日正午になると板門店で国連軍と朝鮮民主主義人民共和国側とが接触をするということが続いてきている。そういう国連の態度を修正しませんと、今度南北が国連に同時に加盟するということは喜ばしいことだと大臣おっしゃったけれども国連がこの問題をどうクリアするとお思いですか。国連はつまり北朝鮮を敵にして国連軍という軍隊を今だにずっと持ち続けてきているという状況の中で、その敵をメンバーに入れるということになるのじゃないですか。
  45. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) このたび北朝鮮と韓国双方が国連加盟するということになれば、当然これは国連憲章に言う加盟の資格が認められるということになるわけでございます。  他方、いわゆる朝鮮国連軍につきましては、ただいま田先生からも御指摘がございましたように、当時ソ連の安保理欠席というような背景もございましたけれども、いずれにいたしましてもその拒否権が発動されなかったために実現されたという経緯があったことは事実でございます。そして、国連憲章との関係で言いますれば、この国連軍いわゆる朝鮮国連軍の設立というものは国連憲章四十二条に基づくものではございませんで、いわゆる強制的な措置というものではございませんで、安保理の勧告に対しまして加盟国が自発的に応じて編成されたものでございます。  このようにして編成され現に存在するいわゆる朝鮮国連軍の位置づけがどのようなものになるかということは、今後の朝鮮半島におきます南北間の対話、そして軍事的な意味での均衡の問題、また軍縮の問題、そのようなものと総合的にあわせまして検討されていくものであろうというふうに考えます。  いずれにいたしましても、これまでこのような国連軍の存在、そして板門店におけるいろいろな接触というものが朝鮮半島の安定の維持に一定の役割を果たしてきたということは言えるのではないかと思います。
  46. 田英夫

    田英夫君 カンボジアの問題も触れたかったのですが、朝鮮問題で一つ今の御答弁に関連してぜひお願いをしたいのは、大臣国連総会に行かれるようですから、今触れました国連と北朝鮮との関係というものを表立って大きく叫ぶ必要はないかもしれませんけれども日本の今の日朝交渉をやっているという立場も考えて、国連側は実際には事務総長がやるかもしれませんが、円滑に北朝鮮が国連加盟できるようなそういう役割を日本政府も果たしていただきたい。今のままですと大変ぎくしゃくするおそれがあるのじゃないか。実際は加盟できると思いますけれども。  それからもう一つそれに関連して、例えばアメリカ下院のソラーズ外交委員会委員長は核査察の問題に関連をして、この問題をそういう形でぎくしゃくやるよりも朝鮮半島を非核地帯にしたら一番いいではないかという提案を民社党の大内委員長にしておられますね。そういうことも我々は参考にすべきじゃないか。むしろ日本から言うべきことじゃないかな、こう思います。  時間がなくなってしまいました。もうあと二分ぐらいですが、最後に大臣、カンボジアの問題、大変進展がありますね。SNCが一つ合意をすることに成功したようでありますが、長い間大臣もこの問題にかかわってこられましたが、今のその問題についての御感想を簡単に伺って終わりたいと思います。
  47. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) カンボジアの和平問題については、今日までカンボジア四派の方々がいろいろと苦労をされ、あるいは国連のP5の和平案を中心に関係各国議論をしてまいりましたけれども、最近シアヌーク殿下あるいはフン・セン 首相との間でいろいろと協議が行われてきたと思います。私は、その結果、パタヤにおける六月末の会議から始まったカンボジア人がカンボジア人の手で和平をつくる、平和をつくるというような一つの大きな理想というものが現実に四派の間で動き始めた、こういうふうに感じておりまして、私としてはこの動きを大変歓迎しております。  先般も七〇%のいわゆる兵力削減、あとの三〇%の兵員及び武器というものはカントンメントで管理をするといったようなことも決められておりますし、来月予定されているパタヤの会議では恐らく残された選挙制度の問題が四派の間で協議をされるものと思います。そして、この選挙制度の問題で大方合意が見られれば、早ければ十一月にパリでの本格的なカンボジア和平会議というものが開催できるであろうという大きな期待を持って、日本政府としてもこの和平会議の成立へ向けてのできる限りの協力と、成立後のカンボジアの復興については格段の協力をしなければならない、このように考えております。
  48. 田英夫

    田英夫君 ありがとうございました。
  49. 矢田部理

    ○矢田部理君 同僚議員からも既に質問がありましたが、ソビエトの最近の動きと今後の変動の見通しなどについて冒頭私からも伺っておきたいと思います。  当面の焦点は、クーデター失敗後の国家体制が一体どんなものになるのかということが一つのポイントかと思います。暫定的な国家機構の構想についていろいろな動き議論がなされておるわけでありますが、この行方についてはどんなふうに外務省としては見ておられますか。
  50. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) まさにきのうきょう人民代議員会議議論されております問題の中核は、御指摘連邦制の骨格をどうするかということであろうと思います。きのう出されました決議案が議論の中でずたずたにされて、かなりの部分が書きかえられるあるいは全面削除になるということ一つからも推察されますように、大きなところでなお考え方が相当食い違っている。御承知のように、連邦憲法の文字もこのたび採択されました決議案から落ちているわけでございますが、連邦憲法すら要らない、連邦政府すら要らないという議論まで出てきている状況でございますので、最終的にゴルバチョフ大統領が一応提案をいたしました国家評議会、それから共和国間の経済運営委員会、新しい形での共和国会議連邦会議から成ります新しい最高会議という一応の輪郭がそのまま承認されるのか否かも含めましてまだ流動的であろうと思いますが、一つ確かなことは、先ほど申し上げました八月二十日に署名を予定されておりましたような連邦条約の中で考えられていた連邦共和国との関係というものに比べますれば相当大幅にいろいろな権限が共和国に移っていく、そういう方向はほぼ間違いない。したがって、方向としては主権国家連合的なものに近い、あるいはそちらの方向に向かって検討が今なお続けられているのではなかろうかというのが現時点での私の感じでございます。
  51. 矢田部理

    ○矢田部理君 私の認識も同様でありますが、全体として共和国の側に比重が移っていく、そのイニシアチブが非常に大きくなるということになろうかと思います。その場合、主権国家連合というようなことに移行していく場合に連邦共和国との関係がどんなふうになるのか。例えば主権主体はどちらになるのか。その主権の一部を連邦に預けるようなことになるのか。預けるとすれば連邦共和国との関係主権をどんなふうに分から持つことになるのかというようなことなどがまたもう一つ内容的なポイントになろうかと思うのです。  例えば外交権、対外関係はどこが主たる役割を果たすのか。さらには安全保障は一体どうなるのか。軍の管理や核の問題も含めてこの辺はどうなるのか。そしてまた、通貨とか徴税とかいろいろな国家の基本的な問題はどういう方向で仕切られ、いずれがイニシアチブを持つことになるのか。その辺の見通しはどんなふうに分析をされておりますか。
  52. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 今まさに御指摘外交権の主体あるいは通貨、徴税権等々のいろいろの問題につきましてどういう見通しがという御下間でございますが、実は恐らく今議論しております為政者の中でも一体どういう姿が最終的に落ちつく姿であるかということがなかなかわからない状態であろうかというのが現実がと思います。  私は、これ以上大体こういうようなことでまと。まりそうだという予測を今ここで申し上げることは不可能であろうと思いますし、またこういう公の場所で私見を交えての予測を申し上げることも差し控えたいというふうに存じます。
  53. 矢田部理

    ○矢田部理君 現実に外交を展開し国際関係をつくっていく上でこの成り行きというのは非常に大きな影響を今後の国際関係にも与えてくるものと思われますが、いまだ見当がつかない、議論の成り行きを見るしかないというのが受けとめ方ですか。
  54. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 大きな方向としては、先ほど申し上げましたように、主権国家連合のような形のものにだんだんと大勢の意見が移りつつあるということは間違いないと思いますが、個々の具体的な問題、例えば軍の問題につきましては、いろいろな戦略兵器の管理はどうしても中央の管理にゆだねなければいけないだろうということがほぼ大勢のようでございますけれども、昨日出された決議案にそのことが書いてあったのに採択された決議案はここがすっぽり落ちているということからもおわかりいただけますように、どうもその点についてもなお各共和国間では議論があるということのようでございますので、個々の問題につきましてこれは恐らく連邦に残るあるいはこれは共和国に全部わたるだろうというような推測は現時点ではなかなか立てにくいだろうというふうに思うわけでございます。
  55. 矢田部理

    ○矢田部理君 外交は主として連邦が中心的な担い手となっていく。もとより独立主権国家ということになりますれば、例えばロシア共和国が一定の外交権を持つとか国連とのかかわりをどうするかというような問題が出てくる可能性もなしとはいたしませんが、主として連邦が持つ。それから核の管理とか軍の統率あるいは指揮命令ということなどについても、従前の流れ連邦が持つ。一部共和国が軍を持つこともあり得る。州兵みたいなものでしょう。こういうふうなことも言われてきたのですが、その辺もとんと見当がつかないということになりますか。
  56. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 矢田部先生指摘のとおり、例えば外交権につきまして従来言われておりましたことは、またエリツィン大統領クーデター前にもちょっとそういう発言をされたことがありますが、条約締結権につきましては従来は、例えば平和条約といったような条約は連邦が当然結ぶのだ、しかしながら、個々の技術的な協力協定みたいなもの、これは共和国が当然外国と独立に結ぶことができるのだというようなことを申していたわけでございます。しかし、最近の議論を見ておりますと、国連にももう別々に加盟するのだという議論が出てきているわけでございますし、一部の共和国では独自の軍を持つのだということも言っているわけでございますし、あるいは核の管理の問題にいたしましても実質的にはロシア共和国が管理するということであれば、各共和国が平等に責任を持ち発言権を持つという建て前から一体どうなのだろうかという議論も実は出てきているわけでございまして、まさに中央が核その他の戦略的な兵器、組織、指揮命令系統は持つというこの最初の決議案が落ちているのも恐らくそういう議論があって落ちたのかなという気がいたします。  外交一つとりましても、従来の考え方は、矢田部先生のおっしゃったように、大体の輪郭は私ども理解していたつもりでございますけれども、ここクーデター以後のいろいろな主権共和国に、ほとんど移してしまおう、もう連邦政府も必要ない、連邦憲法も必要ないという議論が今出てきておりますだけに、ちょっとこの帰趨について一体落ちつくところがどこに落ちつくかということを 今ここで断定的に申し上げるあるいは予測するということも若干不透明な状況になってきたということであろうかと思います。
  57. 矢田部理

    ○矢田部理君 中山外務大臣に伺います。  それぞれの国の政治のありようあり方はその国の人民自身、国民自身が決めるべきことだということですから、あれこれ日本が言う立場には必ずしもないと思いますが、共和国がそれぞれ自主的に主権国家的なものとしてイニシアチブを発揮することは是とするにしましても、何らかの形で、緩い形にせよ連邦としてそれが残り統一的な国家機能が果たせるようなことを西側総体としては期待しているのではないかという印象を受けているのですが、その辺は日本外交の今後の展開にとってどんなふうに考えておられるか、もし御所見がありましたら伺いたいと思います。
  58. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 外交をやってまいります立場から申せば、一つ連邦体としてその所属する共和国との関係を法的にあるいは条約を結ぶといったような形でも外交権というものを確立してもらわなければ、外交交渉をする対象者がいないといった問題が今日あるのではないかと思います。  共和国連邦との関係というのものは、私が一月に訪ソいたしました際も、三月の東京における日ソ外相会談においても、ゴルバチョフ大統領の訪日の際も、ベススメルトヌイフ連邦外相とそれからロシア共和国の外相がまだ同席しておられたという事実がございます。  そういう経過をたどっておりますけれども、今回どのような形でソ連における人民代議員大会での法的な取り決めが行われるかということについては、今欧亜局長がお答え申し上げましたように、まだ確たるものはわかりませんが、外交をやる立場にとってみると、各国とも一つの明確ないわゆる外交権を持った法的な立場というものが確立される、これが望ましいと思います。
  59. 矢田部理

    ○矢田部理君 安全保障問題について、防衛庁も見えておると思いますが、伺いたいと思います。  ことしの防衛白書を見ますと、依然としてソビエト情勢、軍事についても不透明だというような認識に立っていて、従来の軍拡基調という路線を日本政府は崩していないのであります。全体としてソビエトの脅威は非常に低くなった、とりわけマルタ会談以降の冷戦構造解体がずっと進んでいく中で大きな戦争はなくなったという認識中山外務大臣も当時から示されておるわけでありますが、最近のソビエト情勢にちなんで言えばもっともっと、脅威というのはないに等しい、大幅に低下をしたというふうに受けとめていいのではないかと思われます。  具体的な状況を見てみましても、例えばソビエトの軍の充足率というのは大幅にダウンしてしまった。兵が集まらない。それから軍事品の資材とか部品の供給もかなり落ちている。今後、核の管理を一体どこがやるのかとかだれが握るのかというようなことは非常に軍縮を進める上でもポイントの一つになろうかとは思いますが、そういう面で見ますと、従来のソビエト脅威論を軸にして立ててきた日本の軍拡基調の路線、これもやっぱり大胆に修正をしていいのではないか。むしろこの時期には本格的な軍縮の提起日本側がしていいのではないかというふうに私自身は考えておるのですが、これは外務省なりまた防衛庁なりはどんなふうにお考えでしょうか。
  60. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) ただいまの矢田部委員の御指摘一つにはソ連の脅威というものはもうほとんどないのではないか、ソ連の軍についても言うなれば非常に弱体化してきているのではないかという御指摘でございます。  私どもも今回のクーデターを経てソ連の軍の実態というものはある意味で少しわかってきたところもあるかと思います。今度の軍の動向、いろいろまだこれはよくわからないところがございますけれども、いわゆるペレストロイカ路線というものがかなり軍の内部にも浸透してきていたというような兆候も見られ名がと思いますし、クーデター以後もいわゆる保守派と見られる軍の幹部の人事異動ということも行われております。そういう状況を見ますと、軍についても今後大きな変革があるのではなかろうかということは予想はできるかもしれませんけれども、なおかつ今の状況を見ますと、こういうソ連の内部状況のもとでソ連が今外部に対して、何と申しますか、いわゆる非合理的な行動に出るとか、そういった状況というものにあるとは私ども考えていないわけでございます。  ただ、今までのところ、クーデター終わりましてまだまだソ連の内部の混乱というものが続いておりますし、そういう目で極東ソ連軍というものを考えてみますと、その極東ソ連軍自体が具体的にどういうふうに変わったのかということについて私ども必ずしも十分な情報を得ているわけではございません。  現時点で申し上げる限り、基本的に極東ソ連軍の存在というものが、これまでも何度も申し上げてまいりましたように、この地域の軍事情勢を厳しいものとしているという、そういう基本的な認識を私どもは今すぐここで変えるということではない、実態としてはそういうものがあると。ただ、繰り返して申し上げますように、今の段階で、ソ連がもともと脅威でおると私ども一度も言ってきたことはございませんし、この地域でなおかつ膨大な存在であるという実態、その実態が今後どう変わってくるかということを見守っていかなければいけないわけですけれども、今すぐ、今直ちにここでその実態についての認識を変えるという段階には至っていないのではないか、このように考えている次第でございます。
  61. 矢田部理

    ○矢田部理君 脅威とは言っていないというのじゃなくて、潜在的脅威ということをしばしば言い、それを軸にして日本の軍拡なり自衛隊の増強をやってきたわけでありますから、顕在的とは言いませんけれども、潜在的脅威論を基本に立ててきた。  今度のクーデターの背景を見ましても、今お話があったように、軍にもペレストロイカが相当程度進んでいる。そしてまた、民衆の側がイニシアチブをとったということもあって軍は本格的な出動ができなかった。またそういう体制にもなかった。特に極東ソ連軍の状況を見ますとむしろクーデターには反対であったというような状況も伝えられてきておるわけでありまして、その点では今後のアジアの軍縮等々にとっては非常にいい条件が生まれつつあるというふうに私は見るわけであります。その点で情勢をもう少し全体として見きわめたいということは全くわからないわけではありませんが、そういう視点でもう一回見直して対ソ関係をつくっていく、アジアの安全保障を考えていくということがあってもいいのではないか。アジアの軍縮はヨーロッパに比べて大幅に。おくれているわけでありますから。  先ほどの朝鮮の問題もありますが、南北朝鮮の対話が一層進み、全体として日朝間の正常化交渉が実りあるものとして成果をおさめるようになればその状況もよくなる。それから中ソ関係国境線の兵力引き離しなどがずっと進んできておるわけでありますから、アジアでも軍縮の情勢がより一段と進みつつある。こういう状況認識の上でやはりこれからの外交なり安全保障あるいは軍縮なりを考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  最後に、ソビエトの議論で、軍需産業が民需にどんどん転換をする方向づけがなされておる、こういうことが言われておるわけであります。経済が非常にピンチになって特にこの冬は厳しいと言われておるわけでありますが、北方領土問題を私は否定するわけではないし重要ですけれども、このことに余りとらわれ過ぎて全体としての日本の対ソ援助を非常に消極的なものにしてはならないというふうに私自身は思っております。  もとより対ソ援助をするに当たっては、ソビエト自身のこれからの経済再建のプランがどうなるのか、技術援助にしましてもその内容を一体ソビエト自身がどう考えるのか、ちょっと今経済問題も空白、ブランクみたいなことが続いているとは 思いますが、予定されている国民経済運営委員会というようなものができて新たな経済のプランができればより積極的に援助をしていっていいのではないかというふうに私自身は思っております。  とりわけ援助との関係でいえば、北方領土問題も大事でありますが、それだけにかかわらせずやっぱり軍縮とか軍需産業の民需転換ということとの兼ね合いなども十分考えながら援助をしていくということが非常に大事なのではないかと思いますが、特にこの民需転換については金森久雄さんがミッションで最近行ってきて報告書を近々出すということであります。これはどんなふうにソビエト状況を受けとめてきておるのか、民需転換についてどんな援助の方法を提起しようとしているのか、もしわかりましたらかいつまんでお話しをいただければと思います。
  62. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 今御指摘のいわゆる民需転換の調査ミッションは、金森久雄団長外、外務、通産の省員並びに米国防省、米国務省の専門官も参加したミッションでございます。若干の民需転換を対象とした軍需工場を実際に見てみたいということで参ったわけでございますが、実際にはそういう意味での工場はなかなか見られなかったというのが実情でございます。モスクワから許可が来ていないということで、そういうまさにこれが転換の実例だというような工場に接することはできませんでしたけれども、なお一部バスでその工場の周りを回ったとかそういうことはあったようでございます。  実際の現場で見る状況と我々がここでいろいろ聞く状況とにはまだ差があるようでございまして、これはクーデター前の状況でまさにそこに私は産軍複合体の、これは保守の一つの牙城といいますか中核と言われていたわけでございますが、そういういろいろな意味での民需転換に対する抵抗というものがやっぱりあったのかなと今にして思えば感じております。しかしながら、モスクワの中央ではこれについてのソ連政府の内部の考え方ということにつきまして有益な意見交換をいろいろ行って帰ってまいったわけでございます。  これだけ事情が変わりましたので、恐らく金森ミッションが行った時点での政府内の対応とこれからの対応ではあるいは若干差があるのかもしれないと思いますが、いずれにいたしましても、民需転換はロンドン・サミットでペレストロイカの技術支援の中の重要分野の一つとして特に指定を受けている分野でもございますし、何はおいてもやはりソ連がみずから軍需偏重を改めていくということについては、これは日本にとっても世界にとっても歓迎すべきことでございますので、ソ連側が真剣に取り組むのであれば我々はこれに積極的に技術的知的な面で協力をしてまいりたいという姿勢は不変でございます。
  63. 矢田部理

    ○矢田部理君 対ソ外交の今後ですが、ソビエトの状況をもう少し見きわめなければ、どんな影響が出、どんな対応にしていくかということは容易に下し得ない部分もあろうかと思いますが、このソビエトの最近の急変というかいろいろな動きがどんな影響を与えるか、日本はそれに対してどう対ソ外交を展開していこうとしているのか、ポイントのところだけでも説明をいただければと思います。
  64. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) ソ連のこういう歴史的な転換期になって政治の主導権というものが大きく民主化が進んでいく、大衆の中から一つの政治が生まれていくという形の中で、今後日本対ソ外交というものは、やはり我々にとりましてはソ連は巨大な隣国でありますから、この間に平和条約を一日も早くつくる、結ぶということが我々の大きな目的でございます。私は、そういう過程においてできるだけ政府間の接触を強めるということが大切であると。  今までの日ソ関係が長い四十数年間の氷の時代といいますか、いわゆる困難な時代がございましたけれども、やはり相手が大きく変化を起こしているという時代においては私は積極的に接触を深めていくことが重要であるという考え方で、先般も斉藤外務審議官を直ちにモスクワに派遣するという決断をいたしたわけでありますが、これからG7の一国としても各国協力しながら、この新しいソ連国際社会への参加といいますか、そういう形での協力というものを日本なりに行っていくことは必要であろうと考えております。
  65. 矢田部理

    ○矢田部理君 次に、日朝間の正常化交渉について、先ほど田さんの方から各般にわたっての議論提起がありましたので、したがって私は重複を避けてかいつまんで申し上げたいと思います。  私もこの四回に及ぶ会談をずっと眺めてきておりまして、日朝間の議題としては直接的なあるいは基本的なテーマが幾つかあるわけでありますが、どうもそうでないものを日本政府は次々に出して会談の進行をおくらせているのではないかというような疑念を払拭し切れないわけであります。ようやく第四回会談。当初、李恩恵問題でまた一日以上空転したようでありますが、内容的には本論に入った、本格的な交渉に入ったというふうにも見られるわけです。その点はそう受けとめていいのでしょうか。
  66. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) まず冒頭の、関係のないいろいろな問題を次から次へという御批判でございますけれども、そのようにお感じであるとすれば、北朝鮮の方々はそういうふうに言われるわけでございますけれども日本の中にもそういう御意見があるとすれば、まだまだ私どもの御説明が足りないのかと思います。引き続きそういう努力は諸先生に対してもしなければいけないと思いますが、今回も李恩恵の問題で、先ほども議論が出ておりましたけれども、若干のやりとりがございました。これが冒頭になされましたのはまさに北朝鮮側が会談に先立ってこの問題を協議しようということを言ってきたわけで、私どもは先方の申し出に応じてまずその問題を取り上げたという経緯がございました。  いずれにいたしましても、その問題について一応の決着を見まして、先生からお話がございましたように、それぞれの議題について、いずれにせよもう第四回目でございますから四回目にふさわしい内容に立ち至った議論を開始したというところでございまして、例えばいずれ正常化されるべき日朝関係を律するいろいろな基本的な諸原則ということについてもそれぞれの意見を交換いたしました。  いずれにいたしましても、そういうことを踏まえて北朝鮮側の代表も、日本側の対応が非常に誠意のあるものである、正常化に向けて熱心な意欲があるものであるなということを先方も評価しておったという経緯がございます。
  67. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもの立場は先ほど田さんからもお話がありましたのと全く同じでありまして、やっぱり長きにわたる日本の植民地支配の本格的な清算、戦後責任はきちっと果たしていくというところにポイントがあろうかと思っております。その点で五十年近くにわたってこの問題の処理がなされないまま今日に至っているわけでありますから、できるだけ実質的な交渉を本格的に進めて早期の妥結を私としても求めたいと思っておるわけでありますが、一応第四回会談の終わりには、初めての実質協議入りとがある程度の前進があったとかそれから第二段階交渉が入ったとかという評価もなされているようでありますから、その点さらに前進されることを期待したいと思います。  その中で私、自身非常に気になっておる課題の一つは、先ほどもちょっと出ました核査察問題です。核の問題というのは、日朝間に限らず私たちは非常に敏感に対応したり物を言っていかなきゃならぬと思います。特に私どもとしましては、アジアの軍縮とも絡みますが、東北アジア、朝鮮半島全域を含む全体の非核化、非核平和地帯の設置ということをかねてから主張しておるわけです。飛鳥田委員長の時代にも朝鮮労働党との間では非核平和地帯設置宣言というものをやりまして、そのための努力を両党が行うというようなことをずっと言ってまいりました。  その点で核問題には私たちも敏感に物を言わなきゃならぬと思っているのでありますが、今、日 朝正常化交渉をするに当たって北の核の問題だけに焦点を当てて議論をするのは適切でない。さっき言った原則を踏まえた上での問題の立て方ですね。核の問題を議論するとするならば、南朝鮮に配備をされていると言われるアメリカの核、戦術核、最近は数が減って百数十発だというふうに言われております。群山にあるとも言われておりますが、やはりその核の撤去もあわせ求めていくということでないといけないのではないかというふうに私は思っておるし、そしてまた朝鮮だけではなくて、日本の非核三原則の徹底とかあるいはこの周辺にある洋上、海上核の問題とかということにも話が及ばなきゃならぬ性質のものだというふうに思っているのであります。  その点で朝鮮民主主義人民共和国の側が、自分たちは核の査察を一回も拒んだことはない、しかし南の核についても同時に問題にしてしかるべきだ、それを言わずして北の核だけを問題にするというのはいかがかという議論があるのでありますが、その点外務省としてはどんなふうにお考えでしょうか。
  68. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) この核査察の問題について私どもが北朝鮮との間で取り上げておりますポイントは、これは先生よく御存じの点でございますけれども、一九八五年に例のNPT条約に北朝鮮は加盟いたしまして、その結果同時に生ずるいわゆる査察を受け入れるという義務を理由なく一方的に拒否しているわけでございまして、その点を私どもは問題にしておるわけでございます。  北朝鮮の方々は、自分たちはそういう核兵器をつくる能力もないし意思もないとおっしゃるわけでございますから、しかりとすれば、それを国際的に説明するのに一番いい道は核査察を受け入れる、そのためのIAEAとの必要な協定をつくるということでございますから、その点を強く申し上げておるわけでございます。
  69. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、それは承知しておるわけでありますが、核拡散防止条約がそもそも核兵器保有国に有利な内容になっている不平等条約だとかねてから言われているわけですね。しかし条約である以上、朝鮮民主主義人民共和国の側も条約の締結に踏み切ったわけでありますからそれはそれとしてわかるわけでありますが、やっぱり朝鮮半島全体あるいは東北アジア地域全体の非核化を同時に問題にしていくことは非常に大事だし、その意味で朝鮮民主主義人民共和国側の言い分にも相当な理解を示す必要があるということは、そのとおりでよろしゅうございますか。
  70. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 日朝交渉の場で朝鮮半島の非核地帯構想についての具体的な議論にまでは至っておりませんけれども、先方からそういうことについて十分北朝鮮側の考え方を説明したいということであれば私どもも十分拝聴しなければいけないと思いますし、北朝鮮との間ではございませんけれども、先般海部総理が中国に行かれましたときにも、中国の方からまさに朝鮮半島の非核地帯構想についての中国側の立場というものについてるる御説明がありまして、海部総理の方からは日本側の考え方、すなわちそういった非核地帯構想の問題とされる地域における何よりも大切なことはすべての関係当事者、当事国の方々のこれを支持する合意といいますか、そういうものが大事であるということを説明になっておりましたけれども、いずれはそういったことも北朝鮮との間でも意見交換をすることは何ら妨げないと思っております。
  71. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後になりますが、ようやく日朝国交正常化に向けて交渉が進んでいるさなか、私どもも先般八月の二十日前後に朝鮮民主主義人民共和国に行ってまいりました。これは法律家、学者の代表団ということで行ってきたのであります。  これは法務省に伺いますが、そこに参加した人たちを公安調査庁の役人が最近あっちこっち歩いて身元調べをやっている。勤め先ほどこかとか、大家さんのところへ行って契約書を見せるとか、最近の朝鮮の経済事情を教えるとか、これは一体公安調査庁、どういうことなんでしょうか。
  72. 関場大資

    政府委員(関場大資君) まず事実関係でございますが、今委員指摘の北朝鮮を訪問した方に面接をしていわゆる私ども調査をしようとしたという事実はございます。ただ、その面接した方の個人に関する事情をお聞きするということではございません。その点ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  73. 矢田部理

    ○矢田部理君 今、私どもの後にはジャーナリストの代表団が数十名共和国を訪問しているわけですね。そんな秘密でも何でもない、オープンなのです。この間は、田先生も先ほど言っておられましたが、国会議員や地方議員団の代表が大挙して出かけていく、そういう時代に、公安調査庁は行った人の身元調べや事情を聞きにうろうろ歩く。本人にとっても非常に迷惑な話だし、人権上も非常に問題があるというふうにこの調べの状況なんかを見ると感じるわけですが、どうしてそんなことを今でもやっているのでしょうか。
  74. 関場大資

    政府委員(関場大資君) 公安調査庁の業務でございますが、御承知のとおり、破壊活動防止法による規制に関し必要な調査を行うということになっております。したがいまして、破壊活動防止法四条、五条、七条に該当する疑いのある団体の動向を調査するというのが私どもの責務でございますが、この調査一つとしましてこういった団体に対する海外からの働きかけの状況それからこれに関連しまして外国の諸動向を知るというような情報収集活動をいたしております。  そういう関係で、訪朝された方に事情を教えていただければということで接触しようとしたわけでございますが、その方の個人の事情、個人のプライバシーの問題をお尋ねするということは全くございません。あくまでもそういった外国事情あるいは外国から国内の団体に対する働きかけの状況をお伺いじょう、そういうことでお目にかかろうとしたわけでございます。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 今の発言は極めて重大だと思いますね。今もって破防法関連でそういう情報収集をやっている。とりわけ共和国に行った人々に事情聴取に当たっている。これはやっぱり断じてやめるべきだし、ちょっときょうは時間がありませんからこの程度でとめておきますが、そういうことで公然とそんな活動を今どきやっているというのはやっぱり日朝関係を今後前進させる意味でも許しがたいことです。私は、厳重にそういう活動をやめるように、そしてまたそういう活動をやったものについては謝罪をするように申し上げて、ちょっと時間がありませんしほかのテーマがありますからきょうは終わりますが、ちょっとこのままあなたの発言を見過ごすわけにはいかないということだけ申し上げておきたいと思います。  それから次のテーマですが、ミッドウェーにかわって横須賀港に空母インディペンデンスが近々やってくるということでありますが、それはそうでしょうか。
  76. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生が今御質問になりました空母インディペンデンスでございますが、九月十一日に横須賀に到着いたしまして、海外家族居住計画に基づきまして乗組員家族を横須賀及びその周辺に居住させている艦船の一隻としてアメリカの第七艦隊に編入される予定と聞いております。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 横須賀はこれによって空母インディペンデンスの活動上の根拠地になるというふうに見てよろしいでしょうか。
  78. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 空母ミッドウェーにつきましても当時同じような御質問がございましたけれども、今私が申し上げましたように、今回のアメリカの空母インディペンデンスはいわゆる海外家族居住計画に基づいてその乗組員家族を横須賀及びその周辺に居住させるということでございます。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 ミッドウェーの寄港のときにも、事実上ミッドウェーの母港になるのではないか、当然のことながら活動の根拠地になるのではないかという議論が相当程度行われました。その際政府が説明しておったのは、ミッドウェーは三年に 一度はアメリカの西海岸に戻る、だから活動上の根拠ではないとか、あるいはまた修理、補給など我が国で実施できないことを西海岸に戻ってやるので、したがって活動の根拠地ではないというような答弁をしておったのでありますが、果たしてミッドウェーは三年に一度西海岸、サンジエゴだと思いますが、そこに戻ったことがありますでしょうか。
  80. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 米軍の運用にかかわることでもございますので、現時点で先生の御質問に正確にお答えする情報を私は持ち合わせておりませんが、一般論で当時も申し上げたことでございますけれども、恐らく先生が念頭に置いておられますのは、事前協議の主題となっております合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更というこの配置の問題だと思います。  当陣ミッドウェーの関連でも申し上げたことでございますけれども我が国施設、区域を本拠あるいは根拠地として駐留する場合をいうのでございまして、いかなる場合に本拠あるいは根拠地としての駐留に該当するか否かは個々のケースについて米軍の活動の実態に即して判断されるべきものであるということを申し上げたわけでございます。具体的な先生の今の点に関しましては現段階で具体的な情報を持ち合わせておりませんのでお答えできませんが、私はまさにそのとおりに、当時まさに配置ではなくて海外居住計画に基づいてということを申し上げておりましたが、そのとおりに運用されてきたものと思っております。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がないから端的に答えてください。  ミッドウェーの航海日誌を調べるとアメリカの西海岸に戻ったことなどはないのです。それから日本でできない重大な修理、補給、これは活動上のポイントでありますが、これも日本、横須賀で主としてやっているのであって、少なくともアメリカの西海岸に戻ってやったことなどもないのです。当時の答弁は全くうそなのです。したがって、当時の議論を正確に整理すると、事実とそれとを照合してみると、明らかにミッドウェーも横須賀が母港であり活動上の根拠地であったということが幾つも出てまいります。  例えばアメリカの海軍の記録を一九八四年と五年の二年間にわたって調べてみますと、西太平洋からインド洋の航海が約四百日です。そしてフィリピンのスビックなどにも寄港するわけでありますが、港に寄港した日が三百三十日であります。その三百三十日のうち実に二百五十日これは横須賀にいるのです。七割五分が横須賀に寄港している。もちろん家族も全部横須賀にいる。横須賀で艦船の補修や補給もやっている。演習もここでやっている。これは明白に活動上一の拠点なのですね。しかも、アメリカの記録をずっと調べてみますと、例えば海軍広報部で出した米海軍艦艇戦闘部隊という資料によりますと、横須賀をホームポート、こう書いてあります。さらには、最近の湾岸戦争にも出張っていっているわけでありますが、砂漠の盾、砂漠のあらしという記録を見ますと、これも横須賀を母港というふうにきちっと書いてあるのであります。  外務省はどうもやっぱり母港だとか配置だとか活動上の根拠だということを努めて避けるためにごまかしているのじゃありませんか。いかがでしょうか。
  82. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生が今御指摘の諸点はまさに空母ミッドウェーの関連でいろいろ御質問が出て当時国会で御説明したことでございますが、今私が改めて申し上げておりますように、ミッドウェーは、先生が言われた意味においての母港ではございませんで私が先ほど申し上げた意味での海外家族居住計画に基づいて来たものでございまして、したがいまして私どもが言っておりますいわゆる配置されているものとは考えていないということを繰り返し申し上げたいと思います。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 七三年に日本に来てからあるいは横須賀に来てから一度も戻っていない母港だとか活動上の根拠なんてありますか。人だけが、家族だけが来ているのじゃありません。  もう一点どうしても言わなければならないのは核問題です。このミッドウェーがソビエトや朝鮮をにらんで、場合によってはイランなどをにらんで、その非常に重要な時期に核兵器の事故演習を相当回数行っているという事実を外務省はつかんでおりますか。
  84. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生が具体的に何に言及されておられるか存じませんけれども、一般論として、例えばブロークンアローというふうな言葉も使われております。こういう用語は核事故に対する対処能力をテストすることを目的として行う訓練であるということは承知しておりますけれども、具体的にミッドウェーでどういうことが行われたかということは承知しておりません。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 航海日誌がアメリカの海軍歴史センターに保存されておりかつ公開されております。その航海日誌を見ますと、一般的な核事故演習ではないのです。イラン・イラク戦争が緊迫したときにあそこの沖合に行って非常に多くの回数、例えば八四年一月十九日から四月十六日まで三カ月間で十三回行われております。それからソビエトとの関係で見ますと、昔私どもも問題にしましたフリーテックスという合同演習がありましたが、そのときにウラジオ近くまでアメリカの艦隊が出かけていった。その近くで核事故の訓練をやっている。それから八五年にはチームスピリット85というのが韓国沖でやられておるわけでありますが、そのときにも核事故の演習がやられておる。当然に核戦争というものを想定し、その核を飛行機に積みおろしする場合等々の事故を想定してこの演習がやられているのであります。  そのような事実があることから推定をいたしますと、当然にやっぱり核戦争を想定しているだけではなくて、全部核搭載能力を持った飛行機を積載しているわけでありますから、核を積んで日本に寄港している。日本を母港にして展開をしている。今度の湾岸戦争もそうでありますが、そういう事実をやはりきちっとつかむ必要があるのじゃないでしょうか。
  86. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生、最後にちょっと重要なことを発言されましたので、核の持ち込み問題につきまして従来政府が国会で明らかにしておりますことを改めて申し上げたいと思います。  日米安保条約上、艦船によるものも含めまして核兵器の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象となり、また核持ち込みについて事前協議が行われた場合、政府としては常にこれを拒否する所存ということでございます。アメリカ政府は、核持ち込み問題に対する我が国の立場及び関心を最高首脳レベルを含めて十二分に理解しております。政府としては、核の持ち込みは、事前協議が行われない以上アメリカによる核持ち込みがないということを……
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 前のお経を何度も聞かせられる必要はないのでありまして、結構ですから。
  88. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今先生から、重要な御指摘があったので、改めて……
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がありませんので次の質問に入ります。  これはミッドウェーだけが核兵器の事故訓練をやっているのではありませんで、インディペンデンス自身も、これまた同じ航海日誌を私どもは入手いたしておりますが、八八年だけでも四回の核兵器の事故訓練をやっております。その事実は知っておりますか。
  90. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 具体的に言えば、インディペンデンスにおきます訓練の状況について私ども承知しておりませんけれども、これは先ほど申し上げましたことの繰り返しですけれども……
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、知らないならそれでいいです。
  92. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 定期的にいろいろな核事故に対する訓練が行われているということは承知しております。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 しかも、今度それが入港してく る。それには核兵器の搭載可能な艦載機が相当数乗っていることももちろんお認めですね。認めますね。
  94. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 核の持ち込み問題については、先ほど申し上げた基本的な立場はここで繰り返しませんけれども、今先生が御質問の点に関しまして申し上げれば、インディペンデンスが核搭載可能な戦闘機を積載しているということは承知しております。これはそういうことが一部の文献に書いてあるということでございます。
  95. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後、これで終わります。もう少し細かに正確にやることが大事でありますが。  航海日誌を見ておりますと、やっぱりそういうことで核事故訓練、例えば甲板に核兵器を落としたことを想定した訓練だとか、これは八八年の一月二十一日何時から何分と詳細な航海日誌が私ども手元にあります。それから核攻撃を受けたときにどうするかというようなことも日誌に記載をされております。しかも、この艦船に搭載される飛行機はもうミッドウェーなんかよりもはるかにまた数もふえるわけだし威力も強まるわけでありますが、核搭載能力を持っているということになりますとまたまた核疑惑が疑惑だけではなくて本物になるということにもつながっております。その点で日本の核問題に対する対応が、例えば朝鮮民主主義人民共和国などに対しては極めて厳しい対応をとっておりますのに、みずからを引き締めることはほとんどやらない。北米局長のように昔の話をお経のように繰り返している。これではやっぱりどうにもなりません。  その点で最後に申し上げますが、やっぱり核問題に私どもは厳しく対処していく、そしてアジアの核軍縮を中心に軍縮を進めていくということを外務省としても防衛庁としてもきちんと考えてほしいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 私、まずPKOの問題についてお尋ねします。これは準備室に尋ねるわけですかな。    〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕  三党合意がまだできておりません。できていないということは残念というかあるいは残念じゃないというか、これは個々の見解の相違でありますが、ただ当然その法案の作成の作業は進んでいるのじゃないかと思います。第二回目の幹事長。書記長会談が九日。これで三党合意した場合、直ちにその法律は国会に提出できる段階にあるのかどうか。どうですか。
  97. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 実は、今先生指摘の法案の準備のために内閣の官房に準備室ができまして、七月の終わりにできたわけでございますが、十二省庁の参加を得まして約四十名の規模で日夜作業を進めております。これは先生指摘のように、私どもの法案作成の作業、普通は政府提出の法案の場合ですと法案ができますればすぐ国会提出ということになるわけでございますが、御指摘の三党協議というその結果を踏まえましてそれで作成というある意味で二つの作業が並行して進んでいるという状況でございまして、私ども日夜法案作成に努めておりますけれども、同時に三党協議の方も頑張っていただくということでございまして、両方あわせましてできるだけ早く法案を提出できるようにいたしたいと思います。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 両方あわせる必要はないのよ、三党はこちらでやっているんだから。  九日の日に二回目の会談がある。それが成立したら直ちに出せますか。だって国会は十月四日で終わりじゃないですか。政治改革は十日から始まるじゃないですか。三党合意なんていうのは、精力的にやるったって法案の提出がいつになるかわからなかったら精力的になれといったってなれないじゃないですか。  どうですか、その準備状況は。直ちに出せる段階にあるのかないのか。それはどうですか。
  99. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 三党協議の結果を踏まえまして、それでその後、現在もそうでございますけれども、大特急の作業を行いましてできるだけ一日も早く法案を作成する、そういうふうに努力いたしたいというように思っております。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう外務大臣の発言月や総理大臣の発言はそんな発言じゃないですよ、できるだけとか。しかも、三党間はどんどん進んでいるんですよ。いいですね。公明党の場合はどこの党員も一生懸命毎日毎日やっているのよ、精力的に。本人がそこでそんなに中途半端。  それじゃ九日に成立したとしますよ、こちらは精力的にやってますから。いつごろ出せますか、それを前提にした場合には。九日に三党合意が成立。いつごろ出せますか。ごろでいいですよ。いつごろ出せますか、見通しとして。
  101. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 私ども具体的にいつと申し上げられないのでございますけれども……
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 ごろで結構です。
  103. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 他方、法案の作成のためには印刷とかそういうものに要する期間もございます。ですから私の今申し上げられますことは、その結果を踏まえまして本当に一日も早く提出するように最大限日夜努力いたしたいというふうに思います。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことじゃ参議院の公明党キャスチングだと一生懸命やっているのに承知しませんよ、そんなことは。違うじゃないか、総理の言っていることと。外務大臣の言っていることと。だめだよ、そんなことは。これは破棄です、そうしたら我が党は。おかしいじゃないですか。ごろを言ってくださいというのに一日も早くなんて、そんな子供みたいな審議をやっているんじゃない。とんでもない話ですよ。大体いつごろか。だってもう国会は四日に決まっているんでしょう。延長もなかろう。成立を目指しているんでしょう。国連局長だって外務大臣だって一生懸命準備室つくったんでしょう。精力的にやっているんでしょう。日にちがないじゃないですか。九日に成立したらいつごろか。ごろといったってわずか三週間しかないんですよ、一日も早くといったって。  大体いつごろですか、めどは。
  105. 野村一成

    政府委員(野村一成君) まことに恐縮でございますけれども、私どもは本当に文字どおり一日も早くやりたいと思っていることでございまして、三党協議の結果が出次第、本当に文字どおり早急に出せるようにいたしたいと思います。    〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうこれ一問しか聞きません。一問しか聞きません。それによって参議院公明党の態度は変えます。  もう一回聞きます。連休が三日三日と続きます。そんなことを言う必要はありませんが、これは審議できません。土曜の閉庁、これも審議できません。そんなことはもう言うまでもありませんね。それを踏まえて、四日ですよ。どうですか。九日に終わる、その次はまた連休、その次の次も連休。一週間あるいは十日以内にできますが、それを限った場合、一週間ないし十日。国会に提出てきますか、一週間から十日。できないとなればこれはもう継続審議にもできませんよ。一週間から十日。できますか。
  107. 野村一成

    政府委員(野村一成君) 今先生の御指摘のラインに沿った形で、もう本当にそれに間に合うように最大努力していきたいと思っております。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、私たちが何も間に合わせると言っているのじゃないわけであってね。一週間か十日、それに間に合わせる。大臣、約束してください。
  109. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今、黒柳委員から九日に三党協議が成立した場合に政府はいつごろその法案を提案できるか、こういうお尋ねだと理解をいたしておりますが、私は、お示しのように、日程も限られておりますので、できるだけ一週間あるいは十日以内にこの法案を整理いたしまして国会の御審議をいただけるように提案する努力をいたす覚悟でございます。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、いろいろな問題を聞きたいのですけれども、私たち参議院公明党はそんな中途半端でこれは承認できないのです。最後のとりでですから、いい意味でも悪い意味でも。まあいい方に持っていきますから、大臣。  そこで国連局長、いわゆるPKF参加の中間の 五原則というものを出しましたね。もういろいろ疑問だらけ、聞きたいことがあるんですが、時間がありませんので、まず四項目目で、前の三項目目がひっくり返ったとき、要するに停戦の合意あるいは当事者両国の受け入れの合意、そして中立、これが破られれば、当然撤収するんだ、この四項目目。それで五項目目が要するに生命等を守る必要最小限の武器を携行する。まずこの五項目から始めましょう。  今まで国連と参加各国とで武器の携帯について細かい規定なんかあったのですか。何の武器を持っていくとかそういう規定は今まであった、今もあるのですか、その点いかがでしょうか。
  111. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 携行武器につきましては、基本的に私たちの理解では、国連と派遣国との間に合意があって、派遣国としてはその国連との合意の範囲内で一定の武器を携行していくというふうに承知いたしております。  日本政府といたしましては、それではそういう個々の各国国連との取り決めを知っているかということになろうかと思いますが、そのような個々の合意について日本政府として把握しているというわけではございません。しかしながら、国連がことし国連と派遣国との間のそういう場合につくるひな形の協定というものを作成し発表いたしております、このひな形の協定は、国連によりますと、これまでの慣行をもとにして作成したものである、こう言っておるわけですが、このひな形の協定によりますと、派遣する要員の種類、人数、それから装備といったものの概要が掲げられることになっております。  したがいまして、御堂の御支持も得てもし法案が成立した暁に日本が参加する場合には、個々の平和維持軍ごとにこのひな形の協定というものを念頭に置いて持っていく装備も含めて国連との間で取り決めを結んで対処してまいりたいというふうに考えております。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もそのひな形を見させていただきました。国連と参加当事者国とで装備、どういう装備を持っていくかと、こういうことで私も理解しています。  そうすると、一般的に今までどんな武器を携行して参加国は紛争国に行っているのでしょうか、PKFとして派遣された場合。大体概略的にどんな武器を。
  113. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 携行されます武器の種類につきましては、当然のことながら個々の平和維持活動の種類によって異なると思いますので一概に述べることは難しいのですが、ただ一般的に申し上げますと、ピストル、自動小銃、機関銃その他の装備が挙げられると思います。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。今まで国連PKFが派遣された地域か八カ所ある。今活動しているのが三カ所ですか、レバノン等含めまして。そうすると、私も七九年にレバノンに行って実情を視察してきたわけですが、例えばUNIFIL、レバノンの国連暫定軍、ここに限った場合に、参加国はどんな武器を携帯して今現在活動しているのか、具体的な武器の名前を挙げていただけますか。
  115. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 私たちが国連及びその参加している関係国を調査したところでは十ぐらいございまして、ピストル、ライフル、サブマシンカン、軽機関銃、重機関銃、それからバズーカ砲、対戦車無反動砲、軽級砲、中級砲、重級砲というふうに承知いたしております。  しかしながら、一言だけつけ加えさせていただきたいと思いますが、これらの装備が大変使われてきたかというとそういうことではないということもあわせて聞いておる次第でございます。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、今までのPKFは大体その重級砲、重級砲。というと百二十ミリですかな。
  117. 丹波實

    政府委員(丹波實君) はい。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 百二十ミリは今お聞きした中で、私も余り専門知識はありませんが、それが一番重装備ですね。あと自衛隊が陸で持っているのは対空、対地。対艦ミサイルは当然持っていませんな。それからあと百五十五ミリ、二百三ミリ、これはもう持っていくわけにいきませんな、重装備ですから。ほかのは大体持っていっている。  そうすると、今までの八例のPKFでは今言った十種類の範囲の武器を携行して行っている。行っているというのは全部行っているというわけじゃないですよ。最高その範囲での武器の携行である、こう理解していいですか。
  119. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 国連の平和維持活動は一九四八年から始まっておりまして四十数年間たっておりますので、すべてのケースを網羅的に承知しているわけではございませんけれども、基本的にはそういう御理解でよろしいのではないかと思います。  ただ、もう一度だけつけ加えさせていただきますけれども、例えばオーストリアは今まで十八年間平和維持軍に参加しておりますが、鉄砲類を一度も発射したことがないという、そういう状況であることもあわせてぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。あわせて御理解いただくかいただかないかは御堂のこれからの問題でありまして、まだまだこれからも十月四日までで終わるのか、十一月、新しい総理総裁が決まって、そしてその総理総裁のもとにPKO臨時国会が開かれて、それで十二月の雪が降る時代に最終結論が出るのか、これは全くまだわからないんだ、国連局長。ですからそこまではまだ論議する必要はない。そういうつもりはありません。我が党も今非常に精力的に地方議員の意見を吸収している最中なもので、何とか一日も早くと思いますが、もう大反対が多くてこれは大変、黒柳さんもたじたじですよ。  そこで、今も申しました一番問題なのは五番目ですよ。いわゆる今言った必要最小の武器を携行して自衛のため、この自衛のため、これはもう合憲だと。これは我が党も認識しております。それから今度は武力行使、これは違憲である。これはもう当然です。その接点をどこに求めるのか、これが非常に問題であろうかと思うのです。最後にくしくも国連局長が防波堤を張った。武器は発砲していない、オーストリアは一発も撃っていませんよ、これを強調されましたけれども、その問題についてやっていると時間がない。これからも時期を見て徹底的に論議していきたい、こう思っております。これがクリアされないと、憲法上グレーゾーンが残ったら、野党ですから、これから野党の公明党がいまだかつてない憲法問題で、これは意味では結構ですよ、ですけれども賛否を問われる。それで追及され批判されるような野党公明党になったらこれは大変なことですよ、これから将来。ですから私は、今言った合憲である自衛権の発動、それから今度は違憲である武力行使、どういう接点があるのか、どういう状態が、これは後ほど。  それで、また前に戻りまして撤収の問題ですけれども、撤収も三項目、いわゆる停戦合意それから当事者国の受け入れの合意、そして中立、これが破られた場合には撤収する。これは当たり前だと思うのです。私も国連に行って二十数年前からこういう問題に関心を持っていますが、これは停戦ということを前提に国連が協定書をつくってPKFの派遣になるわけでありまして、この三つが崩れたらそれこそ日本は撤収するというのは当たり前。現にそういう時代があったわけですから。  ただ、私がここでお聞きしたいのは、この三つが崩れて撤収、そうじゃなくて、この三つが崩れなくてもあるいは崩れる直前でもいろいろな事態が予測されるのです。この事態を予測するというのは、私が一々どういう事態とういう事態などと言ったって国連局長には釈迦に説法ですから、これは国連局長も御存じのとおり、今までの過去八例をとりましてもいろいろな事態。現に三百数十名のPKFに参加した各国の派遣の人が死んでいます。その対応だって千差万別。ですから、ただ単に前三項目が崩れたら、停戦状態が崩れたら撤兵するという四項目だけを私たちはうのみにできません。いろいろな複雑な要素が想定されるので すが、その複雑な要素、想定されるどういう要素がという前にもっとやっぱり具体的に法制化といいますか、これから作業を進めていくわけですが、国会に法案が提出される、その成文された中には、当然この五項目なんというこういうラフな問題じゃないと思いますが、具体的にどういう場合に撤収するのか、それが明確にならないと現地の自衛隊の指揮官あるいは国連の指揮官だって責任者だってこれはもう決定を下されないのじゃなかろうか。そういう局面が非常に多いのじゃなかろうか。過去の八例でも多かった、こんなふうな感じがします、私たちも。  ひとつ専門家の国連局長は、こういう状態について法案が国会に提出された場合にはもうちょっと判断が詳しくできるようなものを持っていただきたい。あるいはそういうことをお考えになっているのか、ここをちょっとお聞かせいただけますか。
  121. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 過去を見て判断するよりほかはないわけですが、過去の事例で停戦が崩れた場合というのは実は過去十年二十年で二例しかないわけでございまして、一つは一九七四年のサイプラス、もう一つはレバノンにおける一九八二年の例で、この場合は非常に客観的に崩れだということが判断できる時代であったと思います。先生の御指摘の問題は、そういうふうに客観的に判断し得ない場合もあるのではないかという御指摘で、私は、いや全部客観的に判断できるというところまで申し上げるつもりはございません。あるいは先生のおっしゃるような問題はあるのかもしれません。  いずれにいたしましても、私たちといたしましては、いざ平和協力隊を海外に派遣する場合に実施計画、これは本部長たる総理のもとでつくられるわけですが、あるいはその実施計画の細目化たる実施要領というものがつくられると考えられておりますけれども、その中でそういういろいろな事態のときにどう対応するのかということをできるだけ詳細に定めたいと思っております。もちろんすべてのケースをカバーすることはできないわけで、その場合には国連司令官と協議、連絡をとりながらどう対応するかということをできるだけ定める。その中で先生指摘された御懸念というものも解消できるように対応してまいりたいと考えておりますのでぜひぜひ御理解賜りたい、こういうふうに考えます。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。ぜひぜひと二回言われると、こちらも人がいいものですから、ぜひぜひと、こうなっちゃうのかわかりませんが、そういうわけにいかないんですよ。  それで、今の実施方法、細則、これは法律の中に盛られますか。それともそれ以外、政令で決めるとかあるいは細則、内部規約でと。それはどういう形になる予定でしょうか。
  123. 丹波實

    政府委員(丹波實君) これは法案準備室の領分に入ってしまうのでございますけれども、現在実施計画あるいは実施要領という形でこういうことを考えたらどうだという検討中の段階でございまして、実施計画、実施要領という言葉は恐らく最終的には法案の中に入るだろうと思います。入った場合に実施計画、実施要領でどういうものを定めるかというそういう大きな柱は入るかと思いますが、私が先ほど申し上げた詳細についてまで法律の中に入るということには恐らくならないのではないかと考えます。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。今そこまでは出ていません。これは私たちは出ようたって出ようがありません。私たちはあくまでも中間の五項目で合意するかどうかと。ところが、それを合意したとしますよ。それで国会にその法律が提出されますよ。今言ったようなことが出て、もう失礼ですが、社会党、共産党の先生方は拡大解釈だなんだと私たちが先国会で言ったようなことをさらにエスカレートしておっしゃいますよ。私たちも野党ですから、当然言わなきゃならないというようなことはもうぜひ避けてくださいよ。皆さん方の答弁、先国会の多国籍軍でもうめためたになっているような法案の内容、そういう答弁だったら私たちは合意したことについて何のため合意したのか、こういうことになる。  これは取り越し苦労といったら取り越し苦労。そんな黒柳、外務省がそんなへまやるわけないじゃないかと、こういうふうにお思いでしょうけれども、これはぜひ細分化して実施計画をつくって、そしてそれを法案化して出したときにおいての国会審議、私たちもやらなきゃならないときは徹底的に追及します。それでだめだとなったら廃案を目指すよりほかはありません、合意したものについて。その法律までも、細分化したまでも、実施計画までも合意したわけじゃありませんから。だけれども、そんなことはしないようにします。修正で何とか通そうという仏心はありますけれども、そんなわけにいかない事態になったらこれは大変ですから、ぜひ外務大臣、指揮をとってください。  済みません。あと三十秒ぐらいしかありません。最後に一言。  外務大臣、本来ならば天皇陛下の首席随員でしょうか、あるいは総理大臣国連に行かれるのでしょうか、そのかわりと言っちゃ失礼ですが、行かれる。  それで、もう重要な時期ですね。どうなんですか、武器移転。中国に行ったら余りいい顔されなかった。イギリスは同調してくれた。この勝算の見通しはどうですか。今国連総会で何をやるんだ、これを継続するんだということもあるでしょうけれども、勝算の見通し、国連の賛意を得られるのかどうか。あるいは非常任理事国にまず立候補して各国合意を得てもらわなきゃならない。その見通し。さらには外務大臣が総会において大演説されるわけですね。その骨子、どういうことを今考えていらっしゃるのか。ソ連の大きな転換問題、あるいはベーカー長官が十日前後に行きますね。それで、援助問題で相当やっぱり前向きに、北方問題での条件を含めて前向きに対処するわけでしょうけれども、そういう問題についてどういう骨子の国連における大演説をされるのか。さらに今言ったような武器移転についてのあるいは非常任国についての当選の見通し、確信。そこらあたり、簡単でいいです、もう二分三十秒過ぎちゃったから。簡単に述べていただけますか。
  125. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今委員から、今回の国連総会における日本政府の演説の内容を話せというお尋ねでございました。外務省の中におきまして国連における政府演説の草案を今いろいろとつくっている過程でございまして、まだ最終的に成文をいたしておりません。しかし、基本的な考え方といたしましては、これだけの大きな歴史的な世界の再編成とも言うべき時期に到達をした現在、日本政府としては国連を中心にこれから国際社会の安全確保、あるいはまた危険発生を予防するためにもこの武器移転の登録制の問題といったようなことに各国理解を得るべく全力を挙げてやってまいらなければならないと考えております。  なお、この国連総会は極めて重要な意味を持った機会になろうかと思います。それはソ連政変後初めて各国の外相が集まる機会でございまして、ここにおきましてこれからの対ソ外交政策協議の問題、あるいはこれからの国際社会において発展途上国の抱える問題、あるいは地球環境の問題、いろいろな点について日本政府としては言及をいたしたいと考えております。  なお、安全保障理事会の非常任理事国へ立候補する準備をいたし、各国にこの協力を要請いたしておりまして、私どもといたしましてはぜひ来年度、常任理事国ではございませんが、理事国として議席を得るように格段の努力を現在やっておる最中でございます。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうも済みません、超過しまして。ありがとうございました。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 今日、世界が大きな変動の中にあるということはもう言うまでもないことですから、これはさまざまな角度からいろいろな問題を取り上げることができるだろうと思うのですが、きょうはその一つの重要な問題として軍縮の問題との かかわりで幾つかの点について質問をしたいと思うのです。  先ほどお話がありました九月十一日にインディペンデンスが日本に来るということが既に決まっているというわけですが、私はこれは世界の軍縮の流れに逆行する一つの典型として指摘されなければならない問題だというふうに考えております。このインディペンデンスは核戦争を想定した最初の核空母と言われておりますし、米海軍の主力戦闘機、これはミッドウェーよりさらに強力な搭載機を積んだものであって格段の空母能力を有しておる。搭載している艦載機に積載される核爆弾など核兵器の威力は、広島に投下された原爆の三千発以上にも当たるというような資料も報道されております。これは先ほど問題になった核訓練等々も現実に航海日誌によっては明らかにされておるわけです。  これらの問題については引き続いて北米局長からまたテープを回していただこうとは思いませんが、ただこれは去年の二月二十三日、チェイニー国防長官が日本に来て記者会見で発表されたわけです。ミッドウェーにかわってインディペンデンスが横須賀に行くことになると発表されました。その前後から今日に至るまで日米間でこのインディペンデンスの来日の問題に関してどういう折衝、つまリ話し合いが行われたのか。インディペンデンスの日本に来ることに関してどういうような申し入れあるいは日本側の意向を米側に伝えたのか。その折衝の経過、内答についてまず最初にお尋ねしたいと思います。
  128. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生が今言及されました昨年の二月二十三日のチュイニー国防長官の日本記者クラブにおきますスピーチに先立ちましで、チェイニー長官から総理及び外務大臣に対しまして、一九九一年中に空母ミッドウェーを通常型空母インディペンデンスに交代させ米国の対日コミットメントを継続していくという発言がございました。これに対しまして総理及び外務大臣から、アメリカがアジア・太平洋における前方展開を重視していることを評価する、空母ミッドウェトの交代艦が来ることについては歓迎するという御趣旨の発言を行っております。それを踏まえまして二十三日のスピーチになるわけでございますけれども、まさにそれを踏まえて今回九月十一日に横須賀に入港することになったということでございます。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 いや、その間の日米間の折衝の内容あるいは日本から申し入れた事項というのは、全くインディペンデンスに関してはなかったわけですね。
  130. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 基本的な日米間のやりとりは今御披露いたしました政治レベルのやりとりでございまして、その後のやりとりに関しましては事務レベルで地元神奈川県さらには横須賀市といろいろお話し合いをしてまいりましたので、その結果を踏まえましてアメリカと事務レベルで幾つかの点について話している。例えば神奈川県及び横須賀市から乗組員等に対します教育訓練の徹底、さらには安全航行の徹底ということについてお話を承っておりますので、こういう点に関しまして日米の合同委員会その他の場でアメリカ側といろいろ話をいたしたことはございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 中山大臣、この問題についてこれ以上議論を続けようと思いません。同じ回答が返ってくるというのははっきりしているわけです。しかしこの問題は、いわゆる核戦争を想定した最初の空母としてインディペンデンスがつくられたという経過もこれあり、御承知のように、莫大な核装備も事実上備えているというふうに見られる核空母であるわけですが、日本に対しては今までアメリカ側は核兵器を日本に配備していません上いう言明をしたことはただの一回もないわけです。存否を明らかにしないという政策のもとにということで。こういう事態が既に一年以上も前から問題になっておるにもかかわらず、この問題に対して日本側からは確かめるということを一度もしなかった。結局、事前協議というものが核持ち込みを隠ぺいするものに事実上なっていることはやはりこの問題でも私は指摘しておかなければならない点だと思うのです。  次の問題に入りますが、外務大臣もこのインディペンデンスの日本に来ることに関しては極東と我が国の平和に貢献するものであって歓迎すると述べられたということを私も知っておりますが、これは先ほど来問題になっておりましたように、世界の現在の情勢でいえば、ワルシャワ条約機構が事実上解体し、そしてその後、きょう防衛庁はお呼びしておりませんけれども、防衛白書の中でもソ連の潜在的な脅威という問題が昨年来事実上除去せざるを得ないような情勢認識になっている。そういう状況にあって今軍縮の方向に進まなければならないのに、このインディペンデンスと言われるような巨大な空母が日本の横須賀に配備されるというふうなことは私はまさに時代の逆行だと思うのです。日本国民は、インディペンデンスに来てもらわないと困ると思っている国民はほとんどいないだろうと思うのです。こういうインディペンデンスの来日は私は不要なものだと思うのですが、その点についてどうしてこれが必要なのか、大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。  松浦さんはいいですよ、大臣のお考えを聞きますから。
  132. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 米ソの対立が終わる、冷戦時代は終わったという状況でございますけれども、先般七月三十一日にやっと条約の署名が終わったSTRATのあの案文を一応調査いたしましても、現在核がそれぞれ一万発あるのを三〇%削減をする、また海上・水中発射の核弾頭つきのミサイルの数については現実の所有数よりも上限に設定されているという状況から考えますと、私はこの日本のような国は世界が完全に、何といいますか、核を廃止するといったような事態というものを確認するまでは、なかなか日本国民の安全というものの万全を期していく上では政府としては相当注意をしていかなければならないと思っております。  現在ソ連の脅威がなくなったという説もございます。私はソ連日本を攻撃する意思どいうものはないというふうに期待をしておりますけれども、現実一万発の核弾頭つきミサイルがソ連の国内にあって、これの管理をめぐって国際社会が大変な心配をしておるという現実の姿の中で、私は今日の日本の安全保障というものはまだまだ十分な注意を政府国民のために払わなければならないという認識を持っております。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 依然としてソ連に核兵器の存在があると。今度の人民代議員大会でもいろいろ提案されていますが、先ほどお話しになったように、一方的な削減なんということは削除されたというふうな動きもありますけれども、しかし引き続いて核兵器の削減の問題については大幅な削減という問題を目指して交渉したいというふうな提起もあるわけですね。  確かに動きはさまざまな動きがあると思います。しかし問題は、今日本にとって、アメリカの世界戦略はいざ知らず、日本の安全にとってインディペンデンスがどうしても横須賀に来なければならないという理由には私はそれはならないだろうと思うのです。インディペンデンスが横須賀に来なければならないという理由は何でしょうか。日本の防衛にとってどうしても必要だと言われる理由はどうでしょうか。
  134. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) このインディペンデンスの横須賀への寄港という問題につきましては、御案内のように米軍の運用上の問題でございますから、日本政府としてこれについての意見を格段申し入れるということは差し控えたいというのが政府の基本的な考え方でございます。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 これは大臣のお言葉とも私は考えられないのですが、日米安保条約の六条では日本の平和と極東の平和の維持のためにだけなのですよ、米軍に日本施設や基地を提供することが許されているのは。日本政府もそのことを踏まえているわけです。  しかし、現実の問題としては、フォード米国務 次官補代理が四月の十日に米議会で証言している内容を見ますと、日本に基地を置く米軍というのは極東、アジア・太平洋、インド洋地域のどこででも即時に有効な反撃を加えることができる戦力なのだと。もう極東だけじゃないのです。アジア・太平洋、インド洋、どこででもなのです。そしてさらに、日本に配備するこの戦力がなければ全地球的な責任を果たすことは全く困難だ。地球的な規模で行動を起こすというのが日本に駐留している米軍の任務だと言っているのです。七月の三十一日にアメリカの下院予算委員会でチェイニー国防長官が証言しておりますが、これによっても、我々が日本にいるのは慈善や友人を守るためではない、我々自身の利益のためにと言って横須賀、三沢、沖縄、三つを挙げて、そこに前線配備をする米軍の位置づけをしているのです。  そういうことになれば、これはもう日本の防衛だとかという域ではなくなってきている。まさにアメリカの世界戦略、これを遂行するために、先ほどの大臣のお言葉をかりるならば、アメリカがどういう行動をとるかということは米国自身の問題でございまして日本がとやかく申し上げることではございませんなんというふうな答弁になると、もう日米安保条約の枠を大幅に乗り越えて変質させておるというふうに指摘せざるを得ないのです。その点はいかがですか。
  136. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先ほど大臣が言及されましたのは、今回のまさにミッドウェーからインディペンデンスヘの交代ということに限定して言及されたわけですが、先生が今御指摘されました一連のアメリカ政府関係者の発言は私どもも承知しておりますけれども、重要なことは、先生が言及されました日本におきますアメリカ軍が日本及び極東における平和と安定の維持に寄与しているという実態があるということで、これはもう国会で繰り返し私どもも申し上げていることで、まさにその実態があるかどうかということに限りますけれども、私どもはそういう実態がまさにあって、そしてそれゆえに日米安保体制というものが日本及び極東の平和と安全の維持に役に立ってきているというふうに認識しているわけでございます。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 松浦さん、残念ながら大臣を助けたことにはなっていませんよ。大臣が先ほど言われた言葉というのは大変なのです。議事録を後で整理してよくごらんになっていただきたい。米軍が日本でとる行動がアメリカ自身によって任されているというふうな主張ですよ。違うのです。日米安保条約で枠がかかっているのです。これは私たちの主張じゃないですよ。私たちは日米安保条約に賛成していませんから。政府自身がおっしゃっている内容。アメリカの自由な行動になるんだ、日本からとやかく申し上げることはできないという趣旨のことをあなたは述べられたのです。これは大変なことなのです。ですから、この問題に関しては今の答弁は助けになっていない。  その問題についてはもう一遍大臣がお述べになるなら述べていただきたい。
  138. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今私が申し上げましたことは、この艦船の交代について私は日本政府としてこれを米国の運用上の問題として申し上げているわけでありまして、我が国にとっての重要性というものはやっぱり我が国の安全保障とアジア・太平洋の安全ということが原則でございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 後で議事録をよく見てみることにします。  この問題に関しては私はもう時間がありませんからここでこれ以上申し述べることはしませんけれども、やはりこの問題は今の世界の軍縮の流れから見ても非常に逆行する重要な問題だし、ましてやこの問題は日米安保条約の枠をはみ出した、つまり安保条約自身を変質させるような重要な問題につながりかねないということ、最近のアメリカの国会における若干の証言を先ほど引用しましたが、この点を改めて強調しておきたいと思うのです。  この問題の最後に、先ほども問題になっていましたが、ミッドウェーが日本に配備されてから、これは母港でないと盛んに松浦さんは強調されましたけれども、その問題について私は論争しようと思いませんが、当初、大河原アメリカ局長がおおむね三年だと言ったのです。ところが、実際に日本に駐留したのは十八年間です。この期間に日本に滞在していたミッドウェーが横須賀にいた期間を見てみますと二千九百十二日間、約八年間に及んでいる。滞在している、入港している期間だけでもそれだけあるわけですね。まさにこれは、三年間と言いながら実際にはその期間さえ守っていないという問題が一つあります。  もう一つは、新たな施設、区域の提供を必要とするものではないと、これは一九七三年三月二十日付で外務省が国会に提出した文書の中に明確に記入されているのです。だけれども、これも事実を破られているのです。これも結局はどういうことになるかというと、逗子の米軍の住宅の提供がありあるいは三宅島のNLP、これの施設を要求するというふうなことがその後出てきました。  三つ目の問題は何か。艦載機の夜間離着陸訓練ですね。これは厚木基地においては行いませんと一九七三年十月四日、フランクリン・H・バーカー米基地司令官が明確に日本側に約束したのです。これも明確に破られたのです。もうじゃんじゃん厚木基地でやられた。もうあの周辺の自治体から住民から非難ごうごうですよ。結局このようにして行われた。それだけではなくて、超低空飛行が日本各地で行われている。そして、漁船だとかヨットだとかこれが攻撃目標にされるような低空飛行で三十メートル近くまで来る。もうヨットがひっくり返りそうになって乗っていた人がけがまでするという事態まで起こっている。奈良県ではワイヤーロープが切断される。超低空まで飛んできてこんな被害というのが起こっているのです。  ところが、これは最初約束したことが実際に守られないで起こった事態なのです。十八年間にわたってこういう事態が起こっている。ですから地域の住民やそれから自治体の中でも、このインディペンデンスが来る、そしてこれにはミッドウェーよりもさらに二十機も多い八十数機の艦載機が搭載されていると。これによって今大変ですよ、もう自治体の要求、反対、住民の厳しい抗議の声。  こういう問題について、本当に先ほど言ったようなアメリカ側で明確に約束をしておりながらも住民に被害を及ぼすような事態が現実に起こっているということを振り返ってみるなら、私はもうこんなもの要らぬから帰ってもらった方がいいという主張ですけれども、しかしあなた方が責任を持ってそういうふうにして来させるならば、こういうような事態を絶対に起こさせないようにさせるということを少なくともやるべき義務があるのだというふうに考えますが、これらの個々の問題についての対応をどういうふうになさっていかれるのか、基本的な点をまず大臣からお聞きして、あと松浦さんの方で補足することがあれば具体的にどういうふうに対処されるか述べていただきたいと思います。
  140. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 申しわけありませんが、順番を逆にさせていただいて私から具体的な点を最初にお答えさせていただきたいと思います。  先生幾つか申されましたけれども、例えば三年で終了することになっていたではないかという点でございますが、確かに先生が言及されましたように、当時ミッドウェーがオーバーホールのために三年ぐらいたったら本国に帰るのではないかという見通しは申し上げたことがございますけれども、何もこの三年で終了する約束になっているということを申し上げたわけではないと承知しております。  それから、いずれにいたしましても、先生の御指摘の中で一番重要なことは地域住民との関係であろうかと思っております。私自身も、先ほどもちょっと触れましたけれども、神奈川県知事あるいは厚木周辺の地方自治体の関係者の方々等からいろいろお話を直接伺って、地元の方々がどうい うふうに感じておられるかということは重々承知しておるところでございます。したがいまして、私どもも従来から努力しておりますけれども、一番重要な点は先生が今お触れになりましたNLPの問題で、私自身も現地に参りまして自分で体験しておりますけれども地域住民の方々に御迷惑をかける程度をできるだけ少なくするにはどうしたらいいか私どももいろいろ考え、いろいろ国内の関係省庁とも相談し、さらには米側とも相談しているつもりで、先生がお触れになりました黄硫島の新しい施設、区域の建設もまさにそういう見地から、できるだけ黄硫島に早く関係施設を完成させてそちらにNLPを持っていって周辺地域の住民の方々にかける迷惑の程度を少なくするという努力の一環でございますので、私どもはそういうことで努力を今までもしてきたし、今後もしていくつもりであるということはぜひ御理解賜りたいと思います。
  141. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先般来、神奈川県知事及び横須賀の市長、市議会の正副議長がお越しになりまして、いろいろとこのインディペンデンス寄港に際しての地元の要望を私もつぶさに拝聴いたしました。それらの案件も踏まえまして、昨日、在日米軍司令官が交代されて新しい司令官が訪問されましたので、この駐留米軍の特に航空機による騒音等の問題について基地の周辺の住民が大変不安を持っているということで十分注意をしていただきたいということを私から正式にお願いいたしておりますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  142. 粟森喬

    粟森喬君 まず外務大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。ソビエトに対する支援の基本的な姿勢と原則についてお尋ねをしたいと思います。  日本のソビエトに対するこれまでの援助の姿勢は、技術と知的援助を中心に中長期的には考える、それで金融財政援助についてはIMFとの関係とかソビエト連邦そのもの国家体制の問題があって多少流動的というか明確な方針が出ていない、こういうふうに言われております。そんな中で特に先進サミット諸国の中でも、日本は隣国であるにもかかわらずソビエトに対する援助姿勢が最も消極的な国だと一般的に言われております。私どももその理由の一つに、この間の政府の発言の中にもあるように、北方領土問題が一つの大きな問題だというふうに言われているわけですが、その考え方は基本的にいかがでしょうか。
  143. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 政府といたしまして、ソ連への援助のあり方については、昨年のヒューストン・サミットにおける話し合いの結果、例えば世界銀行あるいはIMF、OECD、EBRDの専門家をソ連に派遣して調査の結果に基づいて協力をしようということで、その報告が昨年十二月に出て、ポイントとしては、ソ連に対する援助というものは大量の金融支援は効果がない、むしろ技術支援をやるべきだ、また人道的な援助というものも必要である、こういう三点が要点として私は挙がってきたことを記憶いたしております。その線に基づいて政府としては、ソ連からの調査団の受け入れ、また専門家の派遣等をやっておりまして、今年も予算ではたしか二億円の予算を組んで知的支援をやる、三百人の方々を交流させる、こういう方針をとっておりますし、御案内のように、チェルノブイリの被曝者に対しては二十七億円相当の医療器材をWHOを通じて提供いたしましたし、また一億ドルの輸銀融資の枠を食糧援助のために確保しておるといったような姿勢で臨んでおります。  ロンドン・サミットにおいても、先般のその四機関の報告を基礎に六分野にわたって協力をするということで合意が見られているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  144. 粟森喬

    粟森喬君 私がお聞きをしたのは、ロンドン・サミットゴルバチョフが来まして、そのときの日本対応が必ずしも積極的ではないというか、そういう印象で語られていることについて外務省としてどう思うかと、こういうことです。
  145. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 我々は、ソ連に対する政府の姿勢として、北方領土問題というものが我が国国民にとって重要であるということは、もう国会で衆参両院で十回御決議いただいているわけですから、北方領土問題を全然考えずに対ソ外交をやるということは国民の意思に反する政府の行動でございます。それはできません。北方領土問題を解決して平和条約を結ぶ、そして拡大均衡していくというのが基本的な考え方でございます。
  146. 粟森喬

    粟森喬君 今の点は重々承知しているのですが、北方領土問題があるから経済支援とか当面の緊急支援が後ろ向きに見えるというのは必ずしも好ましいことではない。私どもは、そういうことがあるからむしろ積極的に我々がやるという姿勢を外務省は見せるべきだと思っています。この件はこれからの具体的な中身で申し上げます。  そこで、ちょっとお尋ねしたいのですが、これは事務局で結構でございます。今ソビエトに新連邦体制といいますか、流動的な要素が非常にありますが、今この冬を越すというときにソビエト連邦全体の中でどこに何がどの程度不足しているかということについて外務省が掌握している状況というのはどの程度なのか。  私どもは、さまざまなマスメディアでいろいろなことが伝えられているけれども外務省のつかんでいる情報のその概括みたいなものも全くなしで、これからのあり方について論議するに当たってここはやっぱり、こんなことを言ってはなんでございますが、外務省の秘密主義的なところがあるので、もうちょっと端的に、日本国民なり日本の国が支援をする基本的な姿勢を出す前にここは明確にすべきではないか。特に、私もこの間から東欧諸国だとかいろいろなところを回ってきましたが、市場経済移行が非常に混乱をしている、うまくいっていないということの中で、やっぱりその的確な情報というのは外務省を通じて日本大使館がソビエトの中できちんと把握していることがまず前提ではないかと思いますが、いかがですか。
  147. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 対ソ支援の問題では、今御提起の人道的な立場に立っての食糧、医療援助、それから今大臣から御説明いただいた民主化支援の知的技術支援、二つあるわけでございますが、恐らく今先生の御提起は前者、人道的な食糧を念頭に置いての御質問がと思いますので、その点について若干敷衍させていただきます。  昨年の穀物生産は犬豊作と言われて二億トンを超えたわけでございますけれども、ことしはこれから収穫期に入るわけでございます。ソ連の公的な予測は一億九千万トンということでございますが、これはこれからどのくらい収穫できるか、収穫したもののうちどのくらいがうまく輸送できるか、どのくらいがうまく貯蔵できるか、その貯蔵したものの中でどれだけうまく流通で末端に届くか、いろいろな過程がございます。相当にロスが多い。二千万トン近くがロスというときもあったわけでございます。  そういう中で、ことしはやはり去年に比べましては穀物の需給はかなり厳しいであろう。しかし、その実態がわかってくるのはこれから、つまりどれくらい収穫ができたかという数字はこれからでないと把握ができないということでございます。そのほかに食肉あるいは鶏卵、ジャガイモといった基礎的な食糧につきましては去年はかなり減っております。ことしも趨勢としては減ってきておりますが、私ども食糧援助をいたします前に調査をして、去年は極東地域に無償食糧援助のほとんどをつぎ込んだ。去年の調査では不足しているものは例えば育児用の粉ミルク、これが一番喜ばれるということでこれを中心に小麦粉あるいは即席ラーメン、あるいは保存がきくものがいいということで魚、サンマとかイワシとかいう缶詰、この辺を中心に実態調査に基づいて出したわけでございます。それから医薬品につきましても向こう側の赤十字と専門的に詰めていただいたものを出しました。  ことしはどういう状況かにつきまして、まさに九月の後半に政府のあるいは場合によっては日赤の御協力も得まして極東地域で実態調査のための 調査団を派遣したい。あわせて、今申し上げましたような去年の物資が実際に末端にうまく届いたかどうかという追跡調査もいたしてみたいということを考えております。
  148. 粟森喬

    粟森喬君 私は今の外務省の答弁を聞いていて率直に感ずるのですが、生産量は刈り取りが終わらなかったらわからないというのは、これはやっぱり政変のときも少しおくれていたのではないかということもあって、大体そのパターンが決まっているわけです。ことしはもうかなり穀物のできが悪いということがわかっているなら具体的にそういう状況をつぶさに国会なり国民に知らせながらその援助の体制をつくっていかないと、北方領土という問題があるだけに、そこに人道的な支援をやっていくことは、外交交渉の中で北方領土問題解決というときにここが非常に大切な観点ですから、そういう意味で押さえておいていただきたいと思います。  そこで、輸銀がソビエトに一億ドルのいわゆる借款を検討しておるといいますが、国家体制もどうなるかわからぬというときに、プレゼントじゃなく借款というのは、少なくとも借款したら返してもらうという前提でしょう。現状、借款で検討することそのものが何となく今の相手側の関係からいったらこれは適当ではないのではないか。  それから大蔵省にももしなんだったら関係者に来てくれるように言ったのですが、今の段階で輸銀にそういうことを求めることそのものが多少問題ではないか。むしろこれは政府なら政府の明確な支出としてやるべき性格のものではないかと思いますが、いかがですか。
  149. 河上信彦

    説明員(河上信彦君) 一億ドルを上限といたします輸銀融資につきましては、昨年の十二月に人道的観点からの特別支援として決定されました対ソ緊急食糧等支援、これの一環として行うものでございまして、現在ソ連の国内情勢は大きく変わっておるわけでございますが、基本的にはソ連という国は資源に富んだ国というようなところでもございますし、いずれにいたしましても、人道的観点からの対応だというこうした性格を踏まえましてその中で輸銀の融資を行うことが適当と決められた、こうした趣旨に沿いまして現在詰めの作業を行いたいと考えておりまして、今後も適切に対応してまいりたいと考えております。
  150. 粟森喬

    粟森喬君 輸銀が出すという場合は借款でしょう。相手が担保能力なり返済する見通しがあるかどうかというのは、どの国、これはソビエト連邦なのかロシア共和国なのか知らないけれども、相手も明確じゃないのに依然として輸銀の一億ドルというのは、これはどこかでやっぱり政策変更しなかったらだめなのと違いますか。
  151. 河上信彦

    説明員(河上信彦君) 確かに一億ドルはソ連邦の銀行に対します私どもの用語で申しますとバンクローンということでございまして、こうしたローンにつきまして返済が確実であるということは非常に重要なことでございます。したがいまして、そうした保証といった面も含めまして今後十分詰めてまいりたいと考えております。
  152. 粟森喬

    粟森喬君 ソビエトではバンクも変わるという話なんだから、これはこれからの中で十分検討をお願いしたい。  別の議題がありますので申し上げます。  多国籍軍に九十億ドル拠出したことに関連して、新聞報道などでは五億ドルを追加支援したということが、これは予備費で出したはずでございますが、報道されています。  これは外務大臣、御記憶だと思いますが、私が予算委員会で、帰ってきた朝でしたか、たしか時差があって大変厳しいときに、この九十億ドルというのはあくまでも円建てであって九十億ドルではないということを確認したら、そのとおりだと、外務大臣も大蔵大臣もそう答えたと思う。私たちが伝え聞くところによれば、円安でございましたから、九十億ドルいっていない、だから追加をよこせと言われて出したという報道がありますが、この五億ドルの追加をした、いわゆるGCCの湾岸平和基金に出した、このお金を出す根拠ですね、どういう見解でこれを出されたのか、そこを明確にしてほしいと思います。
  153. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生指摘の五億ドル、これは七百億円でございますけれども、そのことについてお答えする前に正確を期するために先生が最初にお触れになりましたいわゆる九十億ドルについて申し上げますと、これは国会で補正予算等を御了承いただいた後、三月十二日にGCCと交換公文を結びまして、十三日に一兆一千七百億円を円で払っております。  それから次に、御質問の七百億円でございますけれども、これにつきましては、湾岸地域におきまして戦闘終了後も御承知のようにいろいろな動きが出てきたわけでございまして、まさに今申し上げました一兆一千七百億円の拠出を決めました時点では想定されていなかった新たな資金需要が出てきている、そういうことを考えまして、引き続き我が国といたしまして湾岸の平和と安定の回復のために我が国にふさわしい一層の国際貢献を行うという観点から拠出したものでございます。
  154. 粟森喬

    粟森喬君 一兆一千七古億円とこの今回出した七百億円は明確に別物だというふうに言われましたが、同じGCCの湾岸平和基金に出すということは、その区分というのは何によって皆さんは証明しようとしているのですか。
  155. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 最初の一兆一千七百億円でございますけれども、これに関しましては、ちょっと申しわけありませんけれども、まだ全額実は各国に支払っておりませんで、現在のところ約九六%、金額にいたしますと一兆一千二百四十五億円支出して残りが四百五十五億円ございますが、これはこれとしてしっかり管理されて、運営委員会でその後の各国からの要請を踏まえてさらに検討中ということです。  新たに拠出しました七百億円でございますけれども、これはこれとして運営委員会でまずアメリカに支払うということでその大半がアメリカに支払われているわけでございまして、その前にも十九億ドルの支出も行われておりましたが、それぞれきちんと管理運営されているということを改めて申し上げたいと思います。
  156. 粟森喬

    粟森喬君 私がお尋ねしているのは、同じ会計に入ってこれは前に出した一兆一千七百億円と別物だということは、その程度の答弁じゃ私は納得できないですよ。具体的に何に使ったか。新たな情勢が出てきたとかまだ続いているというけれども、あのときの約束事というか、その協定を含めて明確じゃないのになぜ出したのか、これはよくわかりません。具体的に一つ一つの事例について、これはあそこでの政府答弁も少なくとも支出については公表するという前提でございますが、今の程度じゃ公表したうちに入りませんよ。残金が幾らかという話だけでね。もうちょっと具体的に言ってください。時間の関係もありますからね。それを出すのか出さぬのか。
  157. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生がお触れになりました会計報告の点でございますけれども、これはまさに先生が言及されましたような形で私ども国会で御答弁申し上げております。  つまり支出が完了した段階で湾岸平和基金の運営委員会関係各国とも協議して、財務報告あるいは会計報告と申し上げてもいいと思いますが作成の上、我が国報告してくることになっておりまして、その報告を受けまして適切な形で国会の場でも明らかにしてまいりたいと思っておりますが、先ほども触れましたけれども、いわゆる九十億ドルに関しましてもまだ支出が完了しておりませんし、それから支出したものに関しましても何に充てるかということは従来六分野ということを申し上げてきておりますが、アメリカ、イギリス、フランスに既に支出しておりますけれども、まだ具体的にどういうふうにこの六分野に使ったか報告を受けておりませんので、いずれにしましても、全体で支出が完了しかつ各国からの報告があった段階で財務報告なり会計報告をまとめたいというふうに運営委員会考えていると承知しておりますので、それを受けまして公表させていただきたいと思いますが、まだ残念ながらそこまでいっていないということでございます。
  158. 粟森喬

    粟森喬君 外務大臣、最後にもう一度念を押して申し上げておきます。  一つは、GCCに追加をしたというのは適切なのかどうかということについていうと、私はやっぱり必ずしも適当ではないと。私どもも、戦後処理のオイルの問題やそれからいわゆる今でも油井が燃えているとか、難民の問題、クルドの問題、いろいろな問題がありますから、これは明確にGCCと別のところに入れていった、支出したというなら私たちは納得できるのですが、どうもこの辺のやり方について過去のいきさつから見てやっぱり九十億ドルの円安による差額を埋めたという、そういう印象はぬぐい切れないわけでございます。  今後のいわゆる湾岸戦争後の中東諸国なり関係諸国に対する協力の姿勢を含めましてここはお尋ねをして、私の質問の時間はこれで終わりでございますので、外務大臣の答弁をお願いしたいと思います。
  159. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 湾岸戦争後のいわゆる地雷等あるいは戦場となった場所の問題の処理のために必要な経費が要請されたということは事実でございます。そういうことを考え政府としては湾岸に資金を提供したといったことでございますが、これからの湾岸地域との二国間の協力というものは、これは二国間でそれぞれいろいろと話をしてまいりました経過もございますから、各国協力をお約束した分については引き続きやってまいる。特に大気汚染、海洋汚染の問題については引き続き問題が残っておりますので、日本としてもこれに協力していくという考え方でございます。
  160. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 一昨日、テレビの番組でサッチャー前首相があるアナウンサーの質問に答えておりましたが、今日本は証券不祥事で大変な問題になっておりますという話をしましたら、外国でもこういう問題はありますよというような答えをしていたと思うのです。  そこで、既に特別委員会の方でも論議されておりますので、今回の補てんの問題、それから暴力団との関係ということについて究明されていくと思いますが、私がきょう大蔵省にお伺いしたいのは、今現在、例えばこの証券問題、先進国というより特にアメリカの場合こういう類似したような事件が多分起きていると思うのですが、その場合の処分という部分についてちょっとお伺いしたいと思います。
  161. 堀田隆夫

    説明員(堀田隆夫君) お答え申し上げます。  アメリカで例えば損失補てんが起きたようなときにどういう処分が行われるかということでアメリカの状況を御説明申し上げますが、アメリカでは損失補てんそのものを禁止した法律はないというふうに承知しております。損失補てんはニューヨーク証券取引所とか全米証券業協会という自主規制団体の自主ルールで禁止されておると聞いておりまして、これに違反した場合には今申し上げました各自主規制機関において資格の停止とか過怠金などのペナルティーが科されるというふうに聞いております。  ただ、このところ問題になっております我が国の損失補てんのような会社のいわば方針として大がかりに行われるというものはなくて、個々の外務員がそういった不適切な行為をした例が散見されるということのようでございます。
  162. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 この件に余り深く突っ込んでいるあれがありませんので、一つ私がアメリカに旅行したときの経験なのですが、ニューヨークからニュージャージーに行くときによくタクシーに乗ることがありまして、タクシーの運転手さんからいろいろ情報を聞くことがあるのです。ちょうどイタリア系のアメリカ人でもあったので、実はマフィアのことについてちょっと質問をしたいということを言いましたら、その運転手さんいわく、だれが私はマフィアですよという顔をして歩く人がいますかと、大変それはやぼな質問ですねという話がありました。しかし、日本は現実に私はやくざですよといって看板を大きく町に掲げてやっているわけですね。  マフィアのことは私もよくはわかりませんが、私なりの知識では、マフィアというのはすべての利権にかかわっていくというか、特に金融市場に深く入っているということを聞いておりますが、大変頭脳的になってきているという部分。日本のこの証券にしても、人間がつくっていくルールですからその穴を突いてきてまた新しい犯罪というものが起きてくるかもしれませんし、その辺についてちょっとアメリカにおける情報を聞かせていただきたいと思います。
  163. 堀田隆夫

    説明員(堀田隆夫君) ちょっと私、アメリカのマフィアの実情につきましてあるいはマフィアが金融なり証券の世界にどういうふうに入っているかという問題につきまして余りお答え申し上げる情報を持っておりませんので申しわけございません。  日本では、おっしゃいましたように、野村証券なり日興証券が暴力団関係者と不明朗な取引をしていたことがはっきりしたわけでございまして、これは直ちに我が国の法令に違反するという話には今のところはなっておりませんけれども、いずれにしても、免許を受けた会社の行為としてあるいはその関連会社の行為としては極めて不適切だと思います。これまで厳正に対応してきたつもりでございますけれども、引き続いて捜査当局が捜査を進めているというようなことでもございますので、そういった状況も見て大蔵省としても厳正に対処していきたいと思っております。
  164. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 余り時間がないので、その部分についてはそれでもう結構です。  きょうはソ連情勢に関連した問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、まず、今回私もびっくりしたのですが、ちょうど政変があったと報道されたときに中国におりまして、私が日本へちょうど電話を入れたその瞬間に今ニュースが流れましたというので、私も私なりの友達というか情報網がありましてソ連にすぐ電話を入れたのですが、そのときはそういうクーデターということは言っておりませんでした。たまたまヤナーエフ当時の副大統領に一時間ほど会見させてもらって、大変親日的で私も好感を持っていた大なもので大変びっくりしたのです。  そういうことで、この前ソ連に行ったときに保守派人たちあるいは改革派、中道派みんなそれぞれ会わせてもらったのですが、一つ私の感じを言うと、保守派人たちがかなりまじめな意見を持っていた、徐々に変革していかなきゃいけないという部分で。一方で改革派というのはかなり急いでいる部分で、今回クーデター起こした連中ではありませんけれども、そういうソ連情勢の中でゴルバチョフ大統領の人気というのは大変、地に落ちたとまではいきませんけれども、かなり落ちだと思うのです。ですからこのままではいかないなという予測はしておりましたが、その辺について外務省として情報というか、先ほども外務省情報収集能力というのはどのぐらいあるのかという話がありましたが、だから今回の問題について大変立ちおくれたのじゃないかとかいろいろなことがあると思いますが、外務省としての考え方というか意見があったらちょっと聞かせてください。
  165. 兵藤長雄

    政府委員兵藤長雄君) 情報あるいは立ちおくれの御批判でございますが、もしその御批判が初動の段階において日本は若干立ちおくれたのではないかという御批判でございますれば、十九日のまさに猪木先生が中国でニュースを聞かれたあの日の段階状況でございますけれども、確かに米国、英国、この両国は私どもも情報交換を密接にいたしておりましたので確認をいたしておりますが、特別にそのクーデター失敗するという情報は何ら持ち合わせていない、これはどうなるか本当にわからぬという状況の中で、政治的な理由から積極的にエリツィンいわゆる改革派支持、クーデターを徹底的に非難するという極めではっきりした態度を打ち出したわけでございます。  一方、ドイツ、フランスにつきましては、例えばドイツのコール首相は、十九日の時点での話あるいは二十日のまだ早い段階の時点でございます けれども、もしも内外政策が継続されるならば西側支援というものを続ける可能性があるのではないか、ただしゴルバチョフの生命だけはぜひ保証する必要があるという趣旨の発言をしておられたわけでございますし、ミッテラン大統領は経済制裁を云々するのはまだまだ時期尚早だという趣旨の発言をしておられたわけでございます。  このことからもおわかりいただけますように、各国ともそれぞれの持つ国の特殊性あるいはソ連との関係を考慮に入れまして、特にドイツ、フランスでは今この対応が非常に慎重過ぎたのじゃないかという批判もむしろあるくらいでございますけれども日本日本の置かれた特殊な状況米ソ関係とそれから日ソ関係とはおのずからかなり違った局面があるわけでございまして、やはり十九日から二十日の午前中の段階というのはクーデター状況が本当にどうなるかわからなかったという要素があったわけでございます。  日本時間で言えば二十日の午後の段階からクーデターがいろいろな意味でほころびがあるのではないかということがだんだんわかってきた。海部総理の最初の御発言、憲法上大きな疑義がある異常な事態という二十日の午前中の御発言から、夕方には実質的なクーデターという御発言になるわけでございますけれども、その間日本政府も独仏と同様に非常に慎重な対応をとったということは、私はやはりこの種の政変に対する対応としては間違っていなかったのではないか。むしろ、もし仮にクーデターが成功した場合でございます。クーデターはやはりいろいろな要素で幸いにしてこういうことになりましたけれども、仮に成功していた場合にどうなったかということを考えますと、逆にアメリカ追随で勇み足をしたのじゃないかというあるいは御批判が出たかもしれない。これはわかりません、結果論でございますから。そういうことで、もし出おくれという御批判がそういうことであれば、私は対応は間違っていなかったのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  情報量につきましては、私どものモスクワ大使館から非常に多くの情報が送られてまいりました。その中には米英よりも早い情報あるいは米英でなかったような情報、モスクワ大使館もロシア共和国の中にかなりいろいろパイプを持って当たっておりましたので、そういうところからの情報というのはかなり送ってまいりましたし、我が方の情報というものは友邦国に比べて私は遜色がなかったのじゃないかと思います。例えば一行がモスクワから出発してどこかに行ったというときに、クリミアの空港に向かったという確実な情報をキャッチしたのは恐らく私どもが最初だったのじゃないかという気もいたしますし、私どもも特に在モスクワ大使館の情報収集というのはほかに比べても遜色がなかったのじゃないかというふうに感じております。
  166. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私も実際大使館の一生懸命頑張っている姿を見ておりますので全く同感です。  ただ一つ世界情勢がどんどん変わっていく中で予測というのは大変難しいのでしょうけれどもエリツィン大統領がこんな立場になるというのはだれも予測もしていなかったと思うのです。たしか二年前だったでしょうか日本に来られたときに、ゴルバチョフ大統領一辺倒というか、そういう政策の中で大変エリツィン大統領に対して日本外務省は冷たかったのじゃないかという声がありますが、これについてはどうでしょうか。
  167. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) エリツィン氏が日本を訪問されたときに、私はじっくりとお話をさせていただきました。そして、日ソ間の問題についてもエリツィン氏の意見を十分聞かせていただいたし日本考え方もよく説明しておりまして、決して冷たいような扱いはいたしておりません。
  168. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 それでは、エリツィンさんが大分力も増してきましたし、今後そういうことで日ソ関係でかなりのウエートを占めてくると思うのですが、支障はありませんか。
  169. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) この一連の経過の中で、海部総理エリツィン大統領にも電話で直接この勇気のある行動をたたえておられますし、民主主義を守るために努力してもらいたいというメッセージを送っておられます。また、斉藤外務審議官をモスクワに派遣しましてエリツィン大統領に海部総理の親書をお渡しして日本政府考え方を伝えておりますから、私はエリツィン氏が大変感謝をされて、自分に対する日本の支持を感謝するということをおっしゃっておられます。  そういうことで、これからもエリツィン大統領とも十分対話ができる環境を持っているということを御理解いただきたいと思います。
  170. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 私も、大統領になる前にちょっと総理からのメッセージをいただきまして行ってきたのですが、ただ一つ私が心配するのは、今のエリツィン派を取り巻く側近というか、これがまだまだ市場経済の原理がよくわかっていない。西側のある意味の悪い部分だけを知ったというのか。例えて言いますと、我々がホテル代を払います。五百五十ドル払いますと、彼らはそれを受け取ってホテル側に払うとき三ドルで決済をしているというような、非常に細かい話ですが、今ある意味ではそういう現実があるわけです。非常に矛盾した部分なのですが。  ただ、そういう国とこれからつき合っていく外務省も大変だと思うのですが、私は逆に今回の問題が起きて北方領土問題については非常に前進というかやりやすくなっていくのじゃないか。今まで硬直していた状態からある意味で本当に交渉の相手がはっきりしてきたのじゃないかと思うのですが、それについていかがでしょうか。
  171. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今回のソ連政変によりまして、ソ連の政治指導部の人事というものが前と比べて相当思い切った変化が起こってくる。現在、まだ人民代議員大会がきょうも開かれておって最終結論は出ておりませんけれども、閣僚の承認問題とかいろいろなものが出てきて、私は新人が登場してくると。そういう中で考え方が非常に柔軟な人たちが出てきて、これからの交渉というものは将来の日ソ関係についての話し合いの速度といいますか幅というものが相当広がっていくということで、積極的に両者の交渉が進み得る環境が整うものだと、このように考えております。
  172. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 ちょうど新聞にも出ておりますサハリン開発に関して前にもちょっと意見を述べさせてもらったのですが、こういう契機に日本の一番アキレス腱であるエネルギーの問題というかそういうものを含めて、経済援助というのは今正面からはできないでしょうしそういう状況でないというのも承知しておりますが、例えばソ連が持っている今手をかせばできるもの、先ほど大臣が言われた技術的な問題とかそういうことから、また日本のメリット、国益というものを考えた上で、サハリン開発を推進していくとか、パイプライン構想というのを前に述べさせてもらいましたが、そういうものがこれから二十一世紀に向けて現実化していくような人脈づくりというか、やはり外交というのはお互いの信頼だと思いますので、そういう私なりのまた人脈、そして外務省としても新たにこれからロシアの変革の中で太いパイプをつくっていただきたいと思います。  きょうはもう余り時間がありませんので、これで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
  173. 大鷹淑子

    委員長大鷹淑子君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十一分散会