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1991-08-22 第121回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年八月二十二日(木曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       内海 英男君   小此木彦三郎君       越智 伊平君    狩野  勝君       後藤田正晴君    志賀  節君       田邊 國男君    津島 雄二君       戸井田三郎君    萩山 教嚴君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    秋葉 忠利君       五十嵐広三君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       筒井 信隆君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    金子 満広君       児玉 健次君    正森 成二君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣         (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         警察庁警務局長 安藤 忠夫君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁刑事局保         安部長     関口 祐弘君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  稲葉 清毅君         防衛庁参事官  金森 仁作君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房 日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      新井 弘文君         経済企画庁調整         局長      吉冨  勝君         経済企画庁調査         局長      小林  惇君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         国土庁長官官房         長       藤原 良一君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省矯正局長 飛田 清弘君         法務省保護局長 古畑 恒雄君         法務省人権擁護         局長      篠田 省二君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房長 篠沢 恭助君         大蔵大臣官房総         務審議官    小川  是君         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      江沢 雄一君         国税庁次長   冨沢  宏君         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部大臣官房総         務審議官    井上 孝美君         文部省初等中等         教育部長    坂元 弘直君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省高等教育         局私学部長   奥田與志清君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         厚生大臣官房総         務審議官    大西 孝夫君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省社会局長 末次  彬君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産大臣官         房審議官    今藤 洋海君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    海野 研一君         食糧庁長官   京谷 昭夫君         林野庁長官   小澤 普照君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       麻生  渡君         通商産業省産業         政策局長    山本 幸助君         運輸省自動車交         通局長     水田 嘉憲君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設省住宅局長 立石  真君         自治大臣官房審         議官      田中 宗孝君         自治省行政局長 浅野大三郎君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君  委員外出席者         参 考 人         (日本銀行総裁三重野 康君         参 考 人         (日本銀行理事)福井 俊彦君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十二日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君   小此木彦三郎君    萩山 教嚴君   浜田 幸一君     狩野  勝君   新盛 辰雄君     筒井 信隆君   武藤 山治君     秋葉 忠利君   石田 祝稔君     市川 雄一君   児玉 健次君     正森 成二君   古堅 実吉君     金子 満広君  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   萩山 教嚴君     小此木彦三郎君   秋葉 忠利君     武藤 山治君   筒井 信隆君     新盛 辰雄君   金子 満広君     不破 哲三君   正森 成二君     児玉 健次君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。草川昭三君。
  5. 草川昭三

    草川委員 おはようございます。草川でございます。  昨日来から我々も国民の一人としてテレビにくぎづけになるという、こういう状況でございます。特にソ連の歴史的なクーデター失敗があったわけでございますが、この失敗に至った原因あるいはまた経過、そしてまたゴルバチョフ大統領の消息の確認、あるいは非常事態委員会メンバー現状、そして完全に制圧をされているのかどうか、そのあたりをまず外務大臣からお答え願いたい、こういうように思います。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 昨夜来のモスクワにおきますクーデター失敗と申しますか、この状況について、私は、やはり民主主義、自由というものを求めるソ連国民が、エリツィン大統領中心にこのクーデター武力による弾圧、これに徹底的に抵抗する強い姿勢を示した、また国際世論はこれを支持したといったところに今回の一つの大きな特徴があったと考えておりまして、今憲法秩序が回復しつつあると考えております。  政府といたしましては、今回の政権獲得にとられた一連の措置に対して、武力行使の即刻停止と強い自制を求める等の意見を発表してまいりましたが、事態が我々が期待したとおりに進展をしたことを心から喜んでいる次第でございますが、改めてソ連国民の決意と勇気に敬意を払いたいと考えております。  この政権奪取の試みの後、どのような形できょうから、ゴルバチョフ大統領モスクワにもう帰っておられる時間だと思いますけれども、どのような形でこの混乱を収拾されていくのか、あるいはまた、これからこの自由と民主主義を基調とする新しい形のソ違というものが新思考外交をさらに広げられて、我々の国とも領土問題を解決して平和条約を結ぶという姿勢を一層強められることを心から期待をいたします。  なお、経過等具体的な事実につきましては、政府委員から御答弁をさせていただきます。
  7. 兵藤長雄

    兵藤政府委員 事実としての経過は、昨夜来の経過御存じと思いますので、先生の御下間のうちの、今回のクーデターがこういう形で終結しつつある背景と申しますか、その点について一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。  なお、まだ不透明な点が若干ございます。例えば八人の国家非常事態委員会メンバーが現在どうなっているのか、どこにいるのかというような状況については、なお確たる情報がございませんというようなことも含めまして不透明な点はございますけれども、現段階で申し上げますと、例えば、このクーデターを起こしたこれらの関係者クーデターの計画というもの、あるいはその具体的な施行の段取りといったようなこと自体の中にいろいろな問題点があったように見受けられると思います。  それから、この指導者たちの間の結束がどの程度の結束であったのかという点につきましても、これに疑義を抱かせるいろいろな情報があることは御存じのとおりでございます。  それから一方、エリツィン大統領指導のもとに、六年間のペレストロイカ、グラスノスチの持つ価値というものをソ連国民が肌で体得していた、その結果としてのモスクワでのこの非常に強い抵抗というものが一つあった。  それから、一枚岩、一糸乱れぬ統制を持つとされていたソ連の軍の組織、指揮命令系統、KGBの指揮命令系統というものにもいろいろな亀裂があるということが図らずも露呈したという要素もあろうかと思います。  それから、大臣の御指摘のございました国際世論というものがこれを厳しく糾弾をしていったというようなこともその背景としてあろうかと考えておる次第でございます。
  8. 草川昭三

    草川委員 次は、総理にお伺いしたいと思うのですが、ただいま外務大臣の方からも、また局長の方からも、エリツィン指導のもとに、あるいは中心にというようなお言葉がございました。エリツィン共和国大統領の果たした今回の役割というものは私も大変大きいものがあると思いますし、それからまた、今後の政治的な基盤は強まると思います。そういうことを含めまして、総理は今回のクーデター失敗についての認識をどのように受けとめられておられるのか、お伺いをしたい、こういうように思います。
  9. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 エリツィンロシア共和国大統領の果たした役割というのは、クーデター発生直後から、テレビの映像なんかにもあらわれておりますように、文字どおり先頭に立って、憲法手続に背反する行為に対しては民衆は立ち上がれということを体を張って行動したわけでありますから、私も昨夜遅くようやくエリツィン氏と電話回線が通じましたので、そのときにまずそのことを高く称賛をいたしました。同時に、エリツィンの方からは、国際社会世論というものが、そういったペレストロイカに対して、保守派からのあるいは力によるこのような違法なクーデターに対して国際世論が支持してくれたということが大きな心の支えになっておる、日本国民皆さん日本支援というものも、声援というものも大きに感謝しておるということを率直に言っておりました。  ただ、その時点ではまだ、軍隊は撤退しつつあるけれども、完全に見通しが定着しておらないことと、一つ懸念としては、ゴルバチョフ大統領のところへ出ていった、当時は八人の最高会議議員という言い方を私にはされたのですけれども、それとゴルバチョフ大統領のところで退陣の署名をしろというようなことが行われるのじゃないか、自分は、ゴルバチョフ大統領は絶対署名しないものと信じておる、健康上の理由でやめたということになっておるが、絶対にゴルバチョフは健康だということを繰り返して言っておられました。そういった連携と心の支えというものが今度のクーデターをこのような形で終息に向かわせた。  先ほどの情報では、ゴルバチョフ日本時間のけさの八時ごろにはもうモスクワに戻っている、こういうことが確認されておりますし、また、つい先ほどブッシュ大統領からも電話がありまして、自分は今ゴルバチョフ大統領と直接電話で話して、彼の安全なこと、そして彼が状況を掌握していることを確認をした、電話がつながったからおまえにも伝えておくけれどもということで、いろいろな話もございました。  今後、どのように落ちついていくかということは、まだ不透明な点が確かに残っておりますし、最高会議においてはやはり裁判にかけろというような決議がきのうもなされておるわけでありますから、ソ連国内の情勢がどうなっていくかということについてはまだ不透明なところがありますけれども、国際社会でこういった民主化の努力というものが確保されていくように、また冷戦時代へ戻ることはもうこれで絶対ないと思いますけれども、そういったこととともに、ペレストロイカや新思考外交世界的な適用が、ゴルバチョフ大統領の復帰というのでしょうか復権というのでしょうか、それによってさらに確実に進んでいくようになることを強く期待し、日本もそれに支援をしていかなければならぬという考え方をここで申し述べておきたいと思います。
  10. 草川昭三

    草川委員 ブッシュ大統領からも電話があったというお話をただいま聞いたわけでありますが、国際社会の、特に西側の果たした役割支援役割が今回大変大きかったというのが今も御答弁の中に出ておるわけでございますが、昨日私も傍聴をしておりまして、与党の中からも、日本態度は諸外国に比べ一歩おくれている、歯切れが悪い、国際的なイメージも悪いじゃないかという大変手厳しい批判があったようでございますが、私は改めて総理に、今のブッシュ大統領お話あるいはまたエリツィン大統領お話、いろんなお話を聞いておるわけでございますが、日本の果たした役割というもの、国際的な西側の一員としての役割について自負があるかどうか、改めて総理の御見解を賜りたい、こう思います。
  11. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御意見や御批判がいろいろあることについては、これは率直に聞かなければならぬと思いますが、今回のことに関しましても、事態が起こりました第一報を受け取ったときはちょうど政府与党連絡会議のさなかでございましたので、健康上の理由でやめたとか、戒厳令がしかれたとか、錯綜するいろいろな情報が飛び込んできました。直ちに安全保障議員懇談会を開いて情報収集を始めるとともに、そして政府態度をきちっと決めて、このような憲法違反の極めて強い法秩序に対する異常な事態、これに対しては深刻に受けとめておるという懸念を表明するとともに、さらにこのことについて人道上の問題からゴルバチョフ大統領の生命の保証を強く求めたり、あるいは武力行使はこれは絶対に停止すべきであるということを、ソ連大使館を通じてあるいは政府声明を通じてこれを全世界に主張しましたし、また、きのう予算委員会が終わった直後に私の方からコール首相電話で話しておるときに、アンドレオッチ首相からも電話がありまして、ヨーロッパに対する問題や日本考え方等についても率直に伝えて、そういった交流の中で、基本的にこのような考え方、このような態度で、ソ連に対する現状が変わるまではこれは支援も当面停止するということで圧力をかけるとともに、やはり正当に選ばれた民主的な手続に従った政権の存在というものを人権とともにきちっと国際世論が支持していく、それには日本としてはきちっとした態度を表明し、対応をし続けてき先考えております。
  12. 草川昭三

    草川委員 大変国際的な首脳連携をとって行動してみえるという御答弁でございますが、さきのゴルバチョフ大統領の来日で北方領土問題が進展をしなかったのは、ソ連国内での保守派に配慮をせざるを得なかったのではないか、こういうことになっておるのではないかと思うのですけれども、今回のこの保守派クーデター失敗、特にこの保守派の主張というのは、他国からも国境線の譲歩を求められている、これに我々は断固としてというような発言もあったようでございますから、その保守派失敗をしたということは、北方領土問題に進展期待というものができてきたのではないだろうか、我が国にとっては、こういうように思うのでございますが、その点の御見解はどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。
  13. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 四月に東京でゴルバチョフ大統領日ソ首脳会談を、時間を延長し会合の回数も六回にしてやりましたのは、ほとんどがこの領土問題をどう認識するか、これを解決して平和条約を結ぶことはどうするかという点に大半の時間を費やしたと言って言い過ぎではありませんけれども、きょうまで公式文書に出ておらなかった歯舞、色丹、択捉、国後島、この四つの島の名前を明記する、これは共通認識で書きましたし、領土問題を解決して平和条約を結ぶことが両国にとって一義的に大切なことであるという認識もきちっと書き込むことができました。  ただ、今から思えば、対談を通じて、ソ連国内にもいろいろ意見がある、日本日本国民世論があるように、ソ連国内にもいろいろな意見考え方があるんだということで、四島の主権を直ちに認めるという共同声明にならなかったことは、今にして思えばそのような国内背景国内状況等も作用しておったんだろう、私も率直に受けとめましたし、その後の学者や評論家皆さん意見等もそういったことになってきておりました。  今度のあの三日前の異常な事態のときには、領土問題に関する幾らかの発言声明がありましたから、あれは全部無効であるということがまたきのうの最高会議で否決されておりますし、また、ゴルバチョフ大統領復権によればそれはもとへ戻るわけでありますから、やはり共同声明の原点まで戻ると思いますけども、ただ一つ、七月のロンドン・サミットのときに、ソ連の新思考外交ユーラシア大陸の西の端だけで結実するのではなくて、アジア・太平洋でも、すなわち東でも結実することが世界の平和と安定のためには大切だから、北方領土問題というのは日本ソ連の二国間問題ではなくて、サミット諸国共通の、要するに世界の平和と安定のために大事なことなんだという認識共通認識として持たれたわけでもあり、そのことはゴルバチョフ大統領自身がその直前の私との会談や七プラス一と言われる全体会議でも繰り返し主張されたテーマでありますから、記憶に新たなところだと思います。  私は、引き続いて原則に従ってソ連ペレストロイカの正しい方向性支援していく基本的な態度拡大均衡で進めていきますけれども、あくまでまだ平和条約が結ばれていないということは非常に異常な事態だと言っても言い過ぎではありませんから、このことに関する共通勿認識ゴルバチョフ大統領との間に持っておりますから、さらに積極的にどうしたらいいのか、第二次世界大戦で決まった戦後の国境線を力で変えてはいけないというヘルシンキ精神というものはこれは私も尊重しますし、そうであらねばならぬと思っておりますが、北方領土のことは、委員もよく御承知のように、第二次世界大戦が終わった後において、スターリンの膨張主義の過ちによって、八月の二十九日の指令によって九月の三日までかかって戦後の平和時になってからの不法な占拠であったということは、ヘルシンキ・プロセスからいってもこれは全く別個の次元の戦後の不法占拠でありますから、これに対しては強く主張をしていきたいと思っております。
  14. 草川昭三

    草川委員 ですから、なるがゆえに、総理の御答弁なすったような情勢なるがゆえに、この今日のチャンスを利用して対ソの経済支援というものを改めて考え直すべき時期が来たのではないか、そのことによって重い扉というものをあけていくことが私は必要ではないかと思うわけであります。特に、このクーデター問題について、アメリカを初め先進各国は経済支援の凍結を打ち出していたわけでありますけれども、これが全面的に撤回をされる可能性というのは出てきたと思うのです。そういうことを含めて、私はこのロンドン・サミットで踏み込めなかった対ソ金融支援など、西側諸国の本格的な支援を改めで打ち出す時期が来たのではないか、こういうような考え方を持っております。  そういう考えをひとつ中心にしながら、私は日本として新たに対ソ支援協議の首脳会談というべき、これは外相レベルでも結構でございますけれども、そういうレベルでの会議を開催するというようなことを日本は積極的に提議をしてもいいのではないか、こんなように思うのでございますが、その点はどのようなお考えか。あるいはまた、そのために、ソ連情勢が一段落をするということを見込んで、日本政府としてソ連に特使を送って、私が先ほど申し上げたようなことを中心に対ソ外交を展開されたい、あるいは世界の一員として頑張っていただきたい、このように申し上げたいと思うのです。
  15. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 情勢が大きく変化をしたわけでありますから、日本としても、ソ連の今後に対してどのような対応をしていくかということは御指摘のように極めて大切であります。  なお、日ソ共同声明のときに十五の協定を結んでおりますけれども、ペレストロイカ支援を含める技術協定や、あるいはそれに基づいて既に実行し始めた軍民転換への調査団なんかも既に行っておりますけれども、そういった拡大均衡考え方を一層進めると同時に、新しい陣容、新しい事態にどのように対応するかということで、しかるべきレベルの接触、交渉はもちろんのこと、日ソの平和条約締結に向けてのことも共同声明に向けての大事なテーマでありますから、あらゆる手段を使って積極的に対応していきたいと思っております。
  16. 草川昭三

    草川委員 きょうは特にこういう新しい事態でございますので、これ以上のことを申し上げませんが、ぜひ私どもの真意を酌んでいただいて、こういう非常に重大な時期であるがゆえに、日本も一歩西側諸国に先んじた行動をとっていただきたい。強く要望しておきたいと思います。  では、二番目に話を移します。  雲仙災害の問題について、この委員会当初からいろいろと意見が出てきておるわけでございます。また要望も出てきておるわけでざいますし、国土庁長官の方も、現行制度の範囲内で最大限に対応したいという御答弁をなすっておみえになります。しかし、実態に即したきめ細かい対応をするには限界があるわけでございまして、特別立法の要求あるいは被害者救済基金制度の設立、強い要望が出ておるところでございますが、総理の御見解を改めて問いたい、こういうように思います。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 雲仙岳の災害による被災者の皆さんに対しては、心からお見舞いを申し上げます。  同時にまた、繰り返し申しておりますように、私も現地を見せていただいて、直接知事、市長、町長さんたちからも具体の要望も承り、現行法で対応できない問題については、政令とか省令を改めたり、適用基準を拡大したり、そのことだけでも今回既に三十項目にわたって対応を進めてきたところであります。そして、どのようなことをしたらいいかできる限りの対応を考えろということで、対策本部にも指示を出し、各省庁力を合わせてできるだけきめ細かく、やり得る限りのことをしておるつもりでおりますし、また復興基金の問題につきましても、地方公共団体からのお話を十分承り、周辺地域については今後、火山活動の鎮静化を待って被災施設の復旧等に万全を期していくとともに、災害の状況を踏まえ、その地域の住民の皆さんのためにも、活性化とかあるいは復興とかいろんな面でいろんな要望がまた細かくあろうと思います。そういったときの基金の問題についても、関係省庁と対策本部で十分な対応ができるように今検討をさせておるところでございます。
  18. 草川昭三

    草川委員 まあ三十項目の提案とかあるいは被災者の救済制度の諸問題についての弾力的な運用、いろいろときめ細かい対策をすると言っておみえになりますけれども、現実とのギャップは非常に厳しいというのが被災地からの声であり、また地元の声ではないだろうかど思っております。総理も現地を訪問をしておみえになるわけでございますが、過日もこの委員会で、総理の滞在時間が短いというような御批判もございました。改めて現地へ行き、駆け足ではなくて腰を据えて実情を調査あるいは陣頭指揮を行うべきではないか、こういうように思うのですが、再度御答弁を願いたい、こう思います。
  19. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現地で陣頭指揮をとれという御意見を念頭に置きまして今後いろいろ研究をさせていただきますが、私は現地は視察させていただいてお話等も十分承ってきておりますし、また、草川委員も御承知のように、お互いの郷里愛知県で、伊勢湾台風で長期間にわたってあのような共同避難生活をしたり、災害復旧のために大いに知恵を出し、力を出し合ったときの体験も今私はまざまざと思い起こしておりますのでき得る限りのことをしたいという強い気持ちを持って臨んでまいりたいと思います。
  20. 草川昭三

    草川委員 では、政治改革の点について質問をしたいと思います。  まず総理の政治姿勢についてでございますが、いわゆるこの政治改革については不退転の決意、内閣の命運をかける、こう言い続けておみえになったわけであります。政府提出の三法案の成立の問題についてはいろいろと新聞報道にも出ておりますし、また、与党の内部にもさまざまな御意見があるようであります。今のままだと、この法案は提出しただけで責任は果たすことができないのではないだろうか、こういうように思うのでございますが、三法案が成立をしなければ総理は責任をとられるのかどうかですね、お答えを願いたい、こう思います。
  21. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私が党の総裁に選び出されたときの党の事情というのは、政治改革をやれという党議が決定しておって、私はそれをもって、全国の皆さんにも私自身が先頭に立ってそのことを公約に掲げて衆議院の選挙も戦ってまいりました。これは不退転の決意で取り組んできたということはそのとおりであります。  同時に、そうですから、党内でも二年間にわたって三百三十回にも及ぶ何回かの議論をしてもらい、同時にまた、政治改革をやらなくてもいいと言っておる人は一人もいないと私は思います。ですから、政治改革をやろうということにおいて政府は、審議会の答申もいただいたり、いろいろなことを考えながら三法案として今国会に提出をさせていただき、つい本会議でそのための特別委員会の設置も認めてもらったところでありますから、今は政府は、この出した法案をぜひ御理解をいただいて議論をいただいて成立させていただきたい、強い気持ちで臨んでおります。それ以外のことは申し上げるわけにいきません。御理解をいただきたいということを強く重ねてお願いをしておきます。
  22. 草川昭三

    草川委員 御理解を求めたいというトーンが率直に申し上げてだんだん薄くなってきておるのではないかというのが私の率直な感想なんですけれども、それは言葉のやりとりではなくて、我々は冷静に見ておるつもりでございますが、残念ながら不退転とか、言葉の意味でも、まあ私は文学者でもございませんけれども、大変印象は薄くなってきておるように思います。  そこで、総理は、政治に民意を的確に反映できるシステムだというようなことも言っておられたようでございますが、現在小選挙区制を採用しておりますのはお隣の韓国であり、あるいは米、英、オーストラリアなどあるわけでございますが、それぞれの国では、特にお隣の韓国等においては、小選挙区制ではなくてまた日本のような中選挙区制を採用したいというような声が大変多く起きておりますし、小選挙区制は金がかかる、参ったというような御意向もあるわけでございますが、いわゆる比例代表ということを私どもは主張しておるわけでありますが、比例代表の方が総理の言う政治に民意を的確に反映できるシステムだ、こういうようにかえってなるのではないかと思うのですが、その点についての見解を賜りたい、こういうように思います。
  23. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 草川議員に私は率直に物を言うことをお許しいただきたいと思いますが、不退転の決意で取り組んで、三法案をようやく提案できるところに来たわけであります。選挙というのは本来、国会議員一人一人がその地位に入るときの仕組み、手続の問題であります。すべての政党、各会派、すべての議員の出発の根源に関する問題であります。行政府に任せ切っておかないで、立法府の方で、しかも責任ある野党の皆さん政府の不退転の決意がだんだん薄くなったようだとお考えになるなれば、かわって立法府として、じゃ立法権は立法府が行うんだからこのようにしてやるんだというそれを示して、これをどう思うか政府と言ってここで今突きつけていただくのが、これはやはり私は三権分立というものができてきた根源の問題ではなかったかなという気持ちが率直にしておりますけれども。  ですから、政府提案でいく、議員立法でいく、いろいろございますけれども、どうか各党におかれても、そのような問題について、公明党さんが今のままでいいんだ、中選挙区の今のままでいいんだとおっしゃるならばそれでいいんですが、熱意が出てきたとか出てこなかったとかいうそういう皮膚感覚的な言葉じりみたいなことだけでおっしゃらないで、真剣に議論して、すべてをかけてやっておるのです。ですから、それについてはどうか、今のままでいいとおっしゃるのか、ここまではいいけれどもここはこうだとか、いろいろな御議論があったら、どうぞ議論として、せっかくつくっていただいた特別委員会もあるわけですから、そこの場において改めて立法府としての権威と責任においてお示しもいただけるように、私は心からここでお願いを申し上げておく次第であります。  もう一つ、後半の大事なお尋ねは、小選挙区にして民意の反映ができるかとおっしゃいますけれども、一番民意を的確に反映できるのが小選挙区だという議論や学者の意見や、あるいは選挙制度審議会の答申にもそれは出てきておるわけであります。民意が直接反映するからこの制度をとれといって、先進工業国の中でも小選挙区制をとったところは多いはずです。けれども、完全な小選挙区制にいたしますと、多数意見だけ、特定大政党だけが有利になって、その他の中小政党の声が反映しなくなるのではないかという学者の意見批判があることも私はよく承知しております。そういった意味で、比例代表制を加味して並立制という制度、仕組みができておるわけでありますから、そういったことを考えながらでき上がっておる案だということも重ねて申し合わせていただくとともに、国会で決議をいただいておる一票の価値格差の一対三以上の問題はいけないという点についても、それは憲法違反の疑いが強いということで違憲判決等も出たわけですから、この提出しておる法案では原則一対二、一番多いところは一対二・一四六ですか、何か二十七区においては一対二を少し超えたというやむを得ない結果が出てきておりますけれども、大幅に縮減され、その問題も解決されるという内容が含まれておるということ、さらに、政治不信を招いた政治改革の根本に立ち至る政治と資金の関係、お金が必要以上にかかり過ぎるのじゃないかという関係、公費負担と実際にかかっておるお金の落差が余りにも大きいのではないかという問題、これらをどのように透明性を持たせ、どのように合理的にし、個人中心に任せ切っておったこれらのことを国家とか政党とか、そういった透明性、公開性がより保障されるようなものに導いていきたいという流れもこの中には出ておるわけですから、どうかひとつこれは委員会が始まったら内容にわたっても御検討願って御意見を承りたいと思います。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  24. 草川昭三

    草川委員 大変総理にお言葉を返して恐縮ですが、皮膚感覚だけで反対するなとおっしゃったその言葉は極めて私は不穏当だと思います。我々政治家というのは皮膚感覚で行動するのでしょう。皮膚感覚の中には国民の声がそのまま反映しておるわけですよ。だから、お互いに国民の声をどのように政治に反映しようかというので我々もきようここの場に立って総理に直接物を申し上げておるわけです。皮膚感覚だけで物を言うなとおっしゃるということは一体何の感覚で物を言うのですか。本だけで読んでやるのですか。理屈だけ読んで政治を議論するのか。私はいただけぬと思うのですね。  だから、私は言葉じりをつかまえる気はございませんけれども、そして野党もこの立法府の場で提案をしろとおっしゃっていますが、各党ともそれぞれ提案なすっておみえになるのじゃないですか。我々の方もただ単に政府の方から提案されたものに対して絶対反対だということではなくて、要するに我々もこれを受けて、少なくとも併用制でいこうじゃないかということを御提案申し上げておるわけですよ。他の野党もたしかそれぞれ御意見を出しておみえになるわけですから、まさしく議会で、あなたたち文句言うだけじゃだめじゃないか、言うなら言ってみなさいというのですが、まさしくそう言っているわけですよ。それは今度の政治改革の特別委員会でも議論になると思いますが、私どもはひとつそういう対応があって、日本の政治改革というのをあらゆる場面からそれを直していこうということを常々申し上げておるということだけをきちっと受けとめておいていただきたいということを申し上げて、もう時間もどんどん過ぎていきますので、証券不祥事の方に移っでいきたいというように思います。  証券・金融の不祥事問題について、昨日までいろいろと私どもは主張してきております。過日の大蔵委員会あるいはまた本会議、そしてまた予算委員会、こういう機会を得ておりますけれども、総理の御答弁を聞いておると、率直に言って証券不祥事についての危機感というのが非常に薄いのではないか、受けとめ方が、こういうように感じます。特に再発防止についての力強いリーダーシップを発揮していこう、これは日本の金融あるいは証券市場、あるいは大きく分けて世界の金融問題にもこの問題は影響するんだという視点に立って、これは大変だというような考え方答弁の中ににじみ出ていない、私はこういう不満があります。特に今、日本を取り巻く内外の関係というのは、先ほどの対ソ政策の問題にも関係するわけでございますけれども、非常に大きな影響を与えるわけでありますから、それをまた一番支える金融機関の運営あるいはまた証券市場の運営には公正なルールの確立ということが大変強く求められている。特に、国民皆さんから不信感を今持たれているわけですから、それを抜本的にどのように立て直すのか、これが大切だと思うのです。  このことについて、総理は、当局として責任を重く受けとめて厳正に対処をしていきたいというような答弁をしておみえになるわけでありますけれども、私は、今までのこの委員会なり本会議の中で、今一番犬切なのは、まずなぜこのようなことが起きたのかという徹底的な究明、真相解明、それを明らかにすることによって今後の対応というのはできるわけですから、そういう意味では証人喚問の実現を図るという意味での努力というのが大変欠落をしておったのではないかと思うのです。ようやく証券特においても近く証券業界からは二人の証人を国会に来ていただこうというところになっておりますけれども、まだ金融界の代表の問題については未定であります。私は、事件が発生して以来もう随分の年月がたつわけでありますから、この際、総理として証人喚問については積極的に努力するよう与党にも指示するというくらいの決意があってもしかるべきだと思うのですが、その点どのようなお考えか、お答えを願いたいと思います。
  25. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の証券不祥事については、当初から厳しく受けとめて、行政府の責任者としての責任を感じ、同時に、大蔵大臣にも厳正対処を指示し、そして今おっしゃるように、どのようなことでこの問題が起こり行われたかということは政府としてはできるだけその手口、補てんの方法等についても国会の場を通じて皆様にも御報告、御説明をさせておるはずでありますし、同時にまた、事態を明らかにしなければならぬということについては、国権の最高機関たる国会でしかるべき各党間の代表のお話し合いが進んでおるわけでありますから、真相を明らかにすることについては協力をしていくという基本的な考え方を私は示しております。  また、再発防止のためには、証券取引法の改正というもので――もっともどのような理由があったかという真相がもっと明らかにならなければそれはわからぬではないかという不透明な部分もあるかもしれませんけれども、しかしきようまでの調査、きょうまでの反省からいって、このこととこのこととこのことは法で示さなければならぬということは、これはもう当局できちっと問題点を掌握しておるはずでありますから、法改正にすべきものは法改正にもしていくというかたい決意で望んでおることと、このことは将来に向かっての再発防止のみならず、内外の一般投資家の信頼を回復するという面からいっても、国際化社会の中で大切な問題であると、極めて大きく受けとめております。
  26. 草川昭三

    草川委員 今内外というお話もあったのですけれども、今回の証券不祥事の問題については、外国の関係者からも相当な強い批判と不信が日本に対して寄せられております。世界の中での日本の地位や評価というものが、この件によって低くなる。これは大変今後に大きな影響を与えていくと思いますけれども、海外からの批判という問題について、総理はどのような御見解を持っておみえになりますか。お答えを願いたいと思います。
  27. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 海外からの批判がいろいろ紙面に出ておることも承知いたしております。また海外も、それぞれいろいろな問題を抱えて、困難な問題を抱えておる海外があることも報道で承知しております。けれども、日本日本で公正な社会の理念というものを立てて行動しておるわけでありますし、少なくともルールをきちっと守っていこう、ルールを守ってやっていく社会である、そして少なくとも共通の価値観、共通のルールに従って動いておる国なんだということを、今度の改革で身をもって示していかなければならないと私は受けとめております。
  28. 草川昭三

    草川委員 ルールを守ってやっていかなければいけない、こういうお話ですが、それはそのとおりだと思うのです。それで、そのためにこそ再発防止を急がなければいけない、こう思うのでありますけれども、そういう重要な時期に、所管の大蔵大臣が秘書の不正融資の仲介問題で陳謝を繰り返しておみえになるわけであります。これでは私は政府への信頼感はないと思うのでありますが、大蔵大臣は、拝見するところ、出処進退はもう覚悟を決められておられるやに我々は拝察をいたします。そのことについての御見解を改めて問うつもりはありません、大蔵大臣。  問題は、私は総理にお伺いをしたいわけでありますが、総理はこの件について何か大蔵大臣お話をなすっておみえになるのですか。お答えを願いたいと思います。
  29. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題が新聞に報道されましたそのときだったと思いますが、大蔵大臣から直接、秘書の行為に対して監督不十分であった、まことに申しわけなかった、世間をお騒がせしたことを心から陳謝しますという申し出がありました。私はそのとき、政治家の立場というものは、みずからの置かれているその立場に立って、今これだけ大きな国民的疑惑の出てきた証券不祥事、金融不祥事の問題ですから、あなたは職員を賭してでも再発防止のためにきちっとしたけじめをつけて、どのようなことがどのように行われておったかということも、これはできる限り明らかにするとともに、なぜ通達を出しておったのに守られなかったか、あるいは免許会社が規範に反する行為をしたのがなぜ見抜けなかったかというようなこと等についていろいろな原因や反省もあろうから、大蔵省内でもそのことを謙虚に経験を生かして、きちっとした検査体制を拡充して、再発防止のための道筋をつくるということが一番大きな責任であるから頑張ってほしい、こういうやりとりをいたして、今日に至っておるところであります。
  30. 草川昭三

    草川委員 いずれこの再発防止対策というのが国会の方に提案をされることになるでしょうし、またこの委員会あるいは特別委員会で我々もこの問題についての議論をするわけでありますが、私は何回か申し上げておるわけでありますが、問題が今日に至ったその要因、原因ということについて、私は、これは単なる一つ一つの積み重ねではなくて、仕組みに問題があると思っておるわけです。だからこの予算委員会でも各議員が主張されておみえになりますのは、いわゆる構造的な何か問題があるのではないか。その構造的な問題を解決をするということが一番大切なんで、そこに私は総理としてのリーダーシップを発揮していただきたいということを特に要望しておきたいと思うわけです。  そういう立場から少し問題を前に進めていきたいと思うのでありますけれども、今回の証券不祥事のリストの公表で表面化したのは、上場企業や延べ八十近くの金融機関、あるいは年金、共済などの公的資金も補てん類の上位に登場していますね。それで、これは八〇年代の財テクブームの中で、いかに多くの機関投資家が運用能力のないままに安易な資金を証券会社に委託をしたというのですか、まあ証券会社に投入をして資金運用を任せてきたかということを証明することだと思うのですね。  ここで私が言いたいのは、実はその運用力の弱い中心金融機関が、証券会社頼みの、もたれ合いというよう宣言葉が適当だと思うのですけれども、有価証券運用を依存しておるのではないか。本来ならば、地元で集めた中小金融機関ならばその地元で融資先を開拓するというのが本当だと思うのですね。地元で集めて地元で非常に優しくお金を使っていただく。ところが、お金を集めるだけ集めて、運用というのは難しいので、また面倒くさいというわけじゃありませんけれども、手っ取り早くひとつ証券会社に運用を任そうではないかというようなことになっておるのではないかと思うのですが、本来地道な地方における営業活動に中小の金融機関は戻るべきではないか。これは私は農協なんかの組合も同じことだと思うのです。そういう意味で、もっと融資先開拓などに努力をするように大蔵省当局は指導すべきではなかったかと、こう思うのですが、その点、どうでしょう。
  31. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほど私自身の責任にお触れをいただきましたけれども、あえてこの場でこの問題についてお答えをすることは控えさせていただきます。  今のお尋ねに至ります前に、一点私はつ付加えさしていただきたい部分がございます。  けさ、為替市場、非常に平静を保っておりますし、おかげさまで証券市場もそれなりの状況にございます。この数日間、ソ連情勢の激変以来、非常に市場に対して注視をいたしてまいりました。この情勢を解除できるというわ付ではございませんが、それなりの安定を保っております。これは私は、おかげさまで六月のG7の意向を受けて、サミットにおける蔵相レベルの話し合いの中で、またサミット全体において、G7の枠組みの協調体制というものが確認をされ、今回の事態の中においてワークした、それが市場の一時的なショックがございました、しかし、冷静さを取り戻したものにつながったと考えておりまして、これらの点に対する御協力にまずお礼を申し上げたいと思います。  また、今委員が御指摘になりましたような問題点がなかったと私は思いません。そして、金融自由化の進みます中で、大小あるいは大中小それぞれの金融機関がそれぞれの特色を生かし、また立地する地域のその特性を生かした運営をしていくべきである、その委員の御指摘にも私はそのとおりであると思うし、そのままに受けとめたいと思います。そしてそうした指導に努めてまいったつもりでありますし、それが例えば不動産投機等に流れることのないように、例えば総量規制といった手法もとってまいりました。しかし、地域経済の中で、集まりました資金が必ずしも十分に新たな投資先の開拓が行われなかったのかもしれない。そして、それがややむしろ金融緩和の局面において潤沢な資金供給が図られたことと裏腹に投機的な取引が活発化したという状況を現出した可能性は否定できないと思います。御指摘はそれなりに私は素直に伺わせていただくつもりでありますし、今後の行政に反映してまいりたい、そのように思います。
  32. 草川昭三

    草川委員 問題は、八八年から八九年時代は日本に、国じゅうに金がだぷっいたんですね、お金が。先ほど大臣の御答弁もありますように、いわゆる右肩上がりの土地高あるいは株高が前提に、会社は低コストのエクイティーファイナンス、資金調達に競ったわけです。銀行はノンバンクあるいは金融子会社に野方図な信用創造ということを繰り返した。そして設備投資規模をはるかに上回る資金を手元にするわけでありますから、そのお金を吸収したのが証券会社の営業特金であり、信託銀行のファンドトラスト、こういう流れになっていくんではないか、こう思います。  そこできょう、お忙しい中、日銀総裁にもお見えになっていただいておりますので、大変お待たせして恐縮でございますが、日銀と大蔵省にお尋ねをします。  最近のバブル経済の破綻にかんがみますと、八〇年代の後半にこのバブル膨張をもたらした金融緩和政策に何らかの反省があってしかるべきだと思うのでございますが、総裁にお見えになっていただいてこういう言い方は大変恐縮ですが、やはり金融の元締めでございますから、しかるべき反省の善言葉を賜れれば私は納得をするわけでありますが、どんなものでしょうか。
  33. 三重野康

    三重野参考人 委員の御質問にお答えするために、昭和六十年以降の金融政策についてごく簡略に御説明してみたいと思います。  委員も御案内のとおり、昭和六十年の九月にプラザ合意がございました。その結果日本経済といたしましては、大幅な対外不均衡を是正するという宿題をもらったわけであります。そのために物価の安定をキープしながらも内需主導の経済構造に変えまして、そして、その持続的成長をキープすることによりまして対外不均衡を是正するという大きな流れの中で経済政策が運営されたわけであります。  金融政策といたしましては、その翌年の六十一年の初めから約一年にわたって五回にわたり公定歩合の引き下げを行いました。これは、その間幸いにして原油の値段が低落いたしまして物価が安定しておりました。そのもとにおきまして、やはり急激なる円高、そのスピードを幾分緩和する。しかも、急激な円高による大幅な景気後退をなるべく緩和して内需主導の経済構造への転換に時間をかける、そういうことをねらって下げたわけであります。  その結果といたしまして、今日イザナギ景気を超すか起さないかと言われる内需主導の景気があったことは事実でございますが、しかし、副次的作用として今委員御指摘のように、例えば株の、あるいは土地の値段の上昇というバブル経済が出たことも事実でございます。このことはやはり金融緩和と無縁なものではございません。例えば土地の値段の上昇というのは、金融緩和だけではなくて、やはり東京の一点集中、土地神話、あるいは税制、土地規制、そういったものの複合的要因であるとは思いますが、しかし、金融緩和がもたらしたということは否定できないと思います。  その後、内需主導の経済が軌道に乗ったことを見まして、日本銀行といたしましても、インフレの予防的措置としまして五回にわたり公定歩合を引き上げましたが、これはそういったバブル経済の是正に役立つということも視野に入れての上のことでございました。しかしながら、こうやって見ますと、やはり副次的作用とはいいながらこういう効果をもたらしたことは事実でありますので、これからの金融政策のあり方を考えますときに、このことは一つの反省として十分勘案して政策に誤りなきを期していきたい、こういうふうに考えております。
  34. 草川昭三

    草川委員 やはり今総裁がおっしゃったように、プラザ合意に遠因をするわけであります。そして、当時のプラザ合意の中から日本も内需刺激をしなければいけない、一面我々はそのことは肯定するわけでありますし、それを主張したこともあるわけです。しかし、今になって考えてみれば、内需刺激の効果というものは対日貿易赤字に比べれば極めてわずかなものにすぎない。だから、遠因はプラザ合意における我が国のアメリカに対する主張が非常に不十分であったのではないかというところへ私は戻るのではないだろうかということを言八たいわけでありますが、そのことを論じておりますと大変時間が長くなりますのでこの際若干飛びますけれども、総裁がお見えになっておられますので、総裁に二点ほどまとめて質問をさせていただきたいと思います。  まず第一は、過去に実施をされましたエクイティーファイナンス、これが今後大量に償還を迎える予定だということを言われておりますが、多分これは九三年に集中する。それで、一説によると十兆円だ、こう言っております。あるいはまた、株価の動向にもよりますけれども、三万円台ならもう少しこれは下がるのではないだろかというようなことも言われておりますが、いわゆる企業の資金調達の今後の見通しということになりますけれども、今までのように株がずっと上がっておれば、いわゆる自転車操業ではありませんけれども再度資金調達の、いわゆる社債等の発行、あるいはまたワラントというようなことに逃げていくことができるわけでありますが、なかなかそれが困難になるのではないかということが言われておるわけであります。調達コストが上がってくる、こういうことになりますと、景気に及ぼす影響も非常に大きいと思うのでございますが、総裁の御意見を賜りたい、こういうように思います。
  35. 三重野康

    三重野参考人 今委員御指摘のとおり、エクイティーファイナンスの償還が来年度以降大幅に来ることは事実でございます。したがいまして、そのときの株価動向によっては当該企業に影響があること、これもそのとおりだと思います。  ただ、御質問の企業金融全体ということから考えますと、そのエクイティーの償還額というのは、いろいろな金融市場を通じて直接あるいは間接に企業金融全体には還元してくることが一つございます。もう一つは、これまでの好景気により、例えば不動産のような一部業種を除きまして、企業の流動性というのは厚目に確保されております。三番目に、これまでの好景気によりまして企業の全体として財務体質は改善されておりまして、しかも今のところ、企業収益の良好さも大きく損なわれている状態にはございません。そういうことをいろいろ考えますと、企業金融の全体が非常に詰まって、日本の経済の安定的な発展を即害するというふうには考えられませんが、しかしこれから何が起こるかわかりませんので、その点はよく注意して適切な手段を講じてまいりたいと思います。
  36. 草川昭三

    草川委員 一言で言うならば、企業の中身はいい、日本の企業はよく頑張っている、だから景気に心配はない、そういうお話のようでございますが、問題は、先ほども少し触れたわけでありますけれども、最近連日のごとく信じられない金額の金融不祥事が相次いております。こういうものがずっと増大をしていくとするならば、国民はもう金融機関を信用しない。あるいは証券市場も信用しない。極端なことを言うならば、ボーナスをもらってももう郵便局しか行きませんよ、強いて言うならば国債ぐらいは買っておきましょうということで、それが嫌ならあとはもう金塊を買ってそれを倉庫に積むか、まくら元に積んでおこうということになる可能性だって、これはあるわけですよ。金融不祥事というのは私はそういう本質をはらんでおる問題だと思うのですが、日銀として、この今日の金融不祥事の頻発の原因は一体どこにあるのかお答えを願いたい、こう思います。
  37. 三重野康

    三重野参考人 委員御指摘の金融関係の不正事件というのはまことに残念なことだと思います。これは、単に刑法上の不正事件というだけではなくて、委員の御指摘のとおり金融機関に対する、あるいは金融システムに対する信任、信頼を損なう、そういう意味で大変遺憾かつ残念に思っております。  そこで、こういった事件の出てくる背景を考えてみますと、表面的には、まず第一に金融機関のいわゆる事務の内部管理というものが不備だということが挙げられますけれども、それだけではなくて、もう一つその奥にある金融機関の経営姿勢のようなものにも原因があるのではないかと思われます。  と申しますのは、最近のような国際化、自由化が進んでまいりますと、金融機関の経営環境は非常に厳しくなってまいります。したがいまして、リスク管理とかあるいは内部管理というのには新しい対応を迫られるわけでありますが、その間にあって多くの、全部とは申しません、一部金融機関は、これまでのいわゆる業容あるいは収益に対する量最優先、ボリューム最優先の経営姿勢が必ずしも改まっていなかった。そうしますと支店に対して有形無形のいろいろな業務推進の圧力がかかりまして、その陰に事務処理がなおざりになったということは否定できない、こういうふうに思います。  したがいまして、私どもといたしましては、この際、単に内部の事務規程管理を厳しくするということだけではなくて、そういう経営姿勢そのものにさかのぼって、かつ内部管理体制の再点検を、今度の問題を起こした金融機関だけではなくて、私どもの取引のある全金融機関に再点検、総点検を求めております。それと同時に、求めるだけではいけないわけでありまして、日々のモニタリングあるいは実地考査を通じまして、そういう点検が所期の効果を上げているかどうかを従来にも増して厳しく指導いたしまして、こういう不祥事の再び起きることのないようにいたしたい、かように考えております。
  38. 草川昭三

    草川委員 総裁はこれでお帰りになって結構ですが、最後に一言要望を申し上げておきたいのですが、もちろん日本の金融の総元締めになるわけでございますから、このような発言を許していただきたいわけであります。  我々は子供のときから銀行員というのはかたいというイメージがあるのです。銀行員というのは間違いが絶対ないという神話があるわけです。それで私どもはずっと生活をしてきたのですよ。だから、日本の働く人というのは額に汗をしながら少しでもお金をためて、それを預金をする。その預金が日本の再建というのですか、経済再回転、いわゆる国の活力になっていったわけです。それを、私は先ほど冗談まじりに申し上げましたけれども、その根本的な信頼を今日はもうなくしたわけですよ。我々は今度もまた特別委員会で主張しようと思いますけれども、そこら辺の小さな銀行と言うと失礼でございますが、小さな商売屋さんでおつりを間違えたとかお金をどうしたというようなトラブルはあるかもわかりませんけれども、れっきとした金融機関という看板の中で、信じられない金額でしょう、何百億とか何千億とか。我々は、先ほどの総裁のお言葉ではありませんけれども、お金というものにどこか麻痺をしてしまった、弛緩をした、これはお互い日本国内で働いておるわけでありますけれども、これはゆゆしき問題だと思うのですよ。日本の国というものの根幹が今ぐらついているのですよ、土台が、信頼というのがなくなるわけですから。  これは大蔵省もさることながら、日銀という絶対的な、これはもう国のシンボルですよ。昔は日銀総裁というのは法王と言われたのでしょう、王様と言われたのですからね。大変恐縮でございますが、きちっと全国の金融機関の管理、そして今膨大な資金量になったから事務的にはどこかで瑕疵があったのではないかというような御答弁でございましたが、少なくとも日本の経済の成長を支え日本の製造業の会社機構というものは、そのようなシステムをお互いに苦労しながら乗り切っていっているわけですよ。だから、そういうことをぜひ心していただいて、大変生意気なことを申し上げて恐縮でございますが、日銀の強い管理態度というものあるいは指導行政というものをやっていただきたいことを特に要望申し上げて、大変偉い方をわざわざおいで願って嫌なことを言いましたけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。どうもきょうはありがとうございました。  では、少し話をはしょっていきますけれども、先ほど申し上げましたように、企業の集めた資金の運用の問題というところから証券不祥事の方へ入っていこうと思うのでございます。  八〇年代の後半に企業というのは証券市場を通じて非常に安いコストで資金を集めることができた。転換社債を発行する場合もあるでしょうし、その他の一般的な社債というのもあるでしょうし、日本で有名な企業でございますけれども、昭和六十三年の七月に国内の転換社債を発行して集めた資金量というのは三千億円、発行コスト、これは大蔵省資料で聞いてみますとわずか一・二%ですね。三千億というお金を証券市場で集めて一・二%で運用できるわけですから、これは企業というのはこたえられぬですね。それを支えたのが一般国民ということになるわけでありますが、だからこそ日本の企業というのは繁栄し、日本は国際的にも大変豊かな国だ、金持ちだということになっていったわけであります。  この膨大な資金がすべて設備投資に使われるならいざ知らず、余るわけでありますから、余裕資金というのが財テクに入る。この当時、日本の各企業の中に財テクを目的とした財務部が新設をされる、こういうことになるわけです。各企業には昔から財務部があるのですが、大きなポジションとして位置づけされるのは、八〇年代の後半ということになります。  証券会社の法人担当の方々とお話をすると、まあ草川さん、言っちゃ悪いけれども企業の財務部も大きな力を持つようになりましたよ、五十億ある、百億ここにある、おい、あなたのところはこれは何%で運用するんだ、あなたのところは何%で運用するんだ、公開の入札だというのですよ、実際は。ここに今日の営業特金と言われる基本的な問題がある。もちろん法律で言うならば、あらかじめ利回り保証してはいけないということは、みんな百も承知なんです、言う方も受ける方も。しかし現実に、目の前に五十億だとか百億の運用ポ住されるかどうかということになれば、私は隣の会社のプラス〇・何%で運用させていただくからぜひ私にと言う。だから証券会社の法人部の連中は、入札ですよ、草川さん、こう言うのですよ。入札という言葉を私は証券会社の連中が使うのでびっくりしたことがありますが、これが現実だという実態の上にこの損失保証問題を議論をしないと、あそこがあった、ここがあったという点だけの真相解明なり問題提起だけでは基本的な解決をしない。だから私は、八〇年代の後半になぜ日本の資金運用というものがこんなにお金がだぶつくようになったのか、金融政策に問題があったのではないかということを総裁に聞いたわけですよ。改めて大蔵大臣に、この点についての見解を問いたいと思います。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員からお述べになりましたこと、そして先ほど御指摘がありましたように、プラザ合意以降の円高の進捗の中で、日本経済のその時点における対応として金融緩和が行われたこと、それ自体が私は誤りだったとは思っておりません。そしてその結果として、現在も息の長い内需中心の経済拡大というものが続いております。しかし、その中に行き過ぎた面がなかったかと言われれば、先ほど私が素直に委員の御指摘を受けとめましたとおり、こうした問題を起こす素地がなかったと申し上げることはできません。今委員からお述べになりましたようなこと、十分私どもとして意識をいたしております。
  40. 草川昭三

    草川委員 それから、時間が大分過ぎてまいりましたのであれでございますが、もう一つの原因は、大蔵省の証券行政いわゆる保護行政が行き過ぎたのではないか、その結果四大証券が強くなり過ぎた、四大証券の中でも野村というのがガリバーになったという指摘がずっとされてきておるわけでありますが、その点ももう一つの問題だと思うのですね。  それで、きのうも他の委員の方々からも具体的な例が随分出されておりまして、証券会社、特にリーダーをするところの野村証券のいわゆるノルマの押しつけ、ここに相当大きな問題があるのではないだろうか。先ほど画鋲の総裁の御答弁の中にも、金融機関の中においても各支店ごとの一種の競争というのですか、成績というのですか、ノルマの問題があるようなお話がございました。  この野村証券の経常利益というのが群を抜いておるわけですね。これは通産大臣に一回比較をしていただいたらわかると思うのですが、たしか三千億とか四千億とか五千億という一年間の経常利益を上げていくわけですよ。これは、日本支える自動車産業のトヨタの経常利益をはるかに上回るわけです。私は、証券会社がもうけて悪いということを言うわけではありませんが、少なくとも製造業というのは苦労しているわけですよ、たくさんの労働者がいて、たくさんの機構があって。それで、輸出をして鉄を売り、あるいは車を売り、あるいは船を売り、あるいは化学を売り、そして日本というのは成り立っていくわけですよ。これを粗末にしたら日本というのは成り立っていかない。証券会社が悪いという意味じゃないですよ。しかし、よく本にありますが、しょせんは株屋なんですよ、言葉をかえて言うならば。しかし、その株屋が今は資金を集める一つの機関になっちゃった。ところが我が方は、大蔵行政もそうですが、日本の金融市場という位置づけじゃないんです。やはり株屋だという印象があるわけです。そこで我々はごまかされてしまう場合もあるわけです。  私は、これはちょっと通産大臣にお答え願いたいのですが、ひがみで言うわけじゃありませんけれども、製造業がもっと高い収益を上げるべきだ、製造業で働く労働者がもっと高収入を受けるべきだ、証券屋はその下であっていいというぐらいの私は気持ちなんですよ。この考え方について、これは大蔵省にお話を聞くというよりも通産省、通産大臣から、ちょっと場違いな質問になるかもわかりませんが、見解を賜りたい、こう思います。
  41. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 草川委員にお答えいたします。  確かに私どもは製造業を所管させていただいておりますけれども、先ほどの経常利益の問題から入りましたので、その問題点についてお答えを先にさせていただきたいと思いますけれども、意外なまでに製造業の分野で経常利益を上げている、先ほどトヨタの指摘がございました。トヨタの指摘、同時に例えば新日鉄というのは一番代表的な製造業のあれかと思いますが、大体経常利益は平成二年度で千六百億円ということになりましょうか。それに対しまして、証券会社は多いところで三千億ないしもっと多いところでは四千八百億というような平均値でなされておりますから、これは相当に差異があるということは御指摘のとおりかと思うのでございます。
  42. 草川昭三

    草川委員 それで、証券会社が三千億、五千億という経常利益を上げるに至ったのは、ノルマという、非常に厳しいノルマ行政もあったのでしょうが、もう一つは、これは後で再発防止の中でも申し上げたいのですが、固定手数料でしょう。大変手厚い保護をされたそういう高額な手数料収入がありますから上がっていくわけです。だから株が下がったり、いわゆる資産評価が下がったら、おい、約束違うじゃないか、私が先ほど申し上げたように、入札なんだから、実質的に。おい、面倒見るんだろうな、こういうのが今回の損失補てんにつながった。証券会社にしてみれば三千億も五千億も利益があるわけですから、バックマージンでしょう。バックマージン的な意識があるからこそ損失補てんが行われたわけですよ。だから小口の投資家はごみとして扱われて泣きなんですよ。大口投資家だけが保護されるという結果が生まれた。この構造的な仕組みをしっかりと受けとめないと、再発防止にもつながりませんぞ。だから、抜本的な保護行政をやめるべきだ、競争をさせるべきだ、もっと自由にさせるべきだという議論に私は持っていかなければいかぬと思うのであります。  ここでちょっと大蔵大臣にお聞きしたいのですが、一昨日来、この二日間の予算委員会の議論で大蔵大臣は、損失補てんの禁止が外国では法制化されていない、なぜ法制化されていないかというのは、補てん行為そのものが常識としてあり得ぬのだ、外国では。だから大変これは恥ずかしいことだというような答弁を繰り返されておられます。一方、今回補てんを受けたとされる多くの企業は、補てんを受けたという認識がない、こう言っているのです。それは本当かどうかは別として、そういう認識がないというこのギャップを、私は今入札だという一つの例を申し上げて、それもその一つだよ、こういうことを言っておるわけであります。  本来、商売というのは将来の利益や取引の継続というものを希望して、一時的に損を覚悟でサービスをする場合があると思います。ところが、今回の場合は、証券会社が損をして商売をしておきながら、お客さんの企業はサービスをしてもらったという認識が全くないわけですから、これは奇妙な結果でしょう。本来ならば、サービスをしたのですよと言って盛んに売り込まなきゃいかぬ、お客さんの方も、将来継続をしてもらうために認識をさせなきゃいかぬ。ところが、それがない。  ということは、結局取引を開始をするスタートの時点で、証券会社が顧客に一定の利益を出すという約束、つまり禁止をされている利回り保証があったと見るのが私は正論じゃないかと思うのです。そうでしょう。だから私は最初に入札の話を持ち出したのです。書類にはない、何にもないけれども、お客は当たり前だと言って五十億や百億の運用を任せたんだから、だから損失の補てんを受けたという認識がない、そういう一つの面もある。それを大蔵大臣は恥ずかしいことだ、恥ずかしいことだと言うけれども、実はその流れを御存じないのか、その流れを知っておってきのうの、おとといの御答弁をなすっておみえになるのか。これは重大な大蔵大臣の基本的なスタンスの問題になってきます。悪い悪いと言うのではなくて、再発防止をいかにするかというところにその落ちつき先を見出さなきゃいかぬわけですから、落としどころは。私は、その路線を間違えると大変なことになると思うのですが、どのようなお考えか、お答え願いたいと思います。
  43. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先日来、衆参の閉会中審査、また、今国会が開会されましてからの御審議の中で、いろいろな角度からこの点についての御質問を受けております。そして、今委員がお尋ねになりましたような角度からの御質問は初めてであります。ただ問題は、その認識、そういう商売の流れを知っていたかどうかということは、私はこの際別の問題であると思います。行政の責任者として法律というものを我々は守る責任がございます。また、行動する範囲はその法律に許された範囲内であります。その中において、今委員がはしなくも例示をされましたような行為が現認されておりません以上、私どもといたしましては、その事実がたとえ想像の中でどうありましょうと、法律によって許され法律によって行動を求められている範囲で行動をすべきが至当と、そのように思います。
  44. 草川昭三

    草川委員 要するに、はっきりとしたことがないと我々は対策は立てられない、こういうお答えだと思うのですが、だから私は、今その事実についてどのような処分をするかということではなくて、そういう流れだから落としどころのところで、再発防止のところできちっとした対策を立ててもらいたいということを申し上げておるわけであります。  そこで、少し具体的に、今回の損失補てんで今までの中で出ていない問題を取り上げてみたいと思うのでありますが、証券業協会の方から与党の方に御説明になったという中で、いわゆる補てんの手口として外貨建てワラントの低い譲渡、低廉譲渡と高値買い取りがあるという説明があったようであります。  そこで、具体的にワラント債についてお聞きをしたいわけでありますけれども、まず、ワラント債というのは、もちろん国内でも売っておるわけでありますけれども、大抵はユーロ市場、外国で売るわけですね。日本の方が手数料が高いから、引き受けのいろいろな制約がありますから、これは後で申し上げますけれども。その外国で売ったのをまた日本に持ってきて日本で売買される、いわゆる借り腹と言うんですね、こういう言葉が現地ではあるわけでありますけれども、問題は、外国で発行した社債を購入するのは日本の投資家であり、また日本の銀行、生保が多い、こういう借り腹現象というものについてどのようにお考えになっておられるのか、お答え願いたいと思います。
  45. 江沢雄一

    ○江沢政府委員 お答え申し上げます。  居住者による外債の発行額は、昨年中三百九十四億ドル、その内訳は普通社債百三十四億ドル、転換社債五十七億ドル、ワラント債二百三億ドルというふうになっております。ただ、このうちどの程度が国内投資家によって購入されているか、これはちょっと統計がないので明らかでございませんが、市場関係者によれば、一般的には発行された外債のかなりの額が国内に還流してきているというふうに言われております。  そこで、我が国企業の起債のうちかなりの部分が海外で調達されているということも事実でございまして、平成元年度で約五五%、それから平成二年度で約六二%、最近になって海外でのエクイティー物の発行か増加しておりまして、その結果、我が国企業の起債のうち海外で調達する比率が増加をしているということがございます。  我が国企業が海外で起債することを選ぶ理由といたしましては、一つは、海外市場におきまして商品性が多様化されておりまして、発行者にとって選択の余地が大きいということのほか、委員御指摘の、国内市場に比べて発行コストが割安であるというふうなことも考えられるわけでございます。
  46. 草川昭三

    草川委員 今局長からの答弁があるように、せっかく日本の企業がヨーロッパで、わざわざヨーロッパヘ出かけていって資金調達をする。発行したところの社債であろうとワラントは、だれが買うかといったら、大半は日本で買う。日本で発行すればいいんですよ。ところが、日本で発行すると、さまざまな規制があって高いからわざわざ外へ行く、その間にいろいろとワラントというのは不明朗な市場というのですか、価格の公表という意味では非常に国民にとってわかりづらいシステムになっていくわけであります。  問題は、ワラントの相場というのはいつから公表されるようになりましたか。九〇年四月以降の損失保証の問題についてこれから伺いたいと思うので、その点についてお答え願いたいと思います。
  47. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、特に外国で発行されました外貨建てワラントにつきましては、従来市場が整備されていなかったわけでございまして、価格が非常に不透明であったわけでございます。そういうこともありまして、私ども、関係者、特に市場関係者に市場の整備を要請いたしまして、平成二年、昨年の九月から価格を公表する、あるいは取引のルールを整備するということを行っております。
  48. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑中でございますが、その後のソビエト情勢について外務大臣から発言を求められておりますので、この際、許します。外務大臣
  49. 中山太郎

    中山国務大臣 お許しをいただきまして、ソ連状況を御報告申し上げたいと思います。  モスクワにあります日本大使館からの情報は、ゴルバチョフ大統領の動向として、大統領を乗せた飛行機は二十二日午前二時過ぎ、日本時間でけさの八時過ぎ、モスクワのブヌコボ空港に到着をいたしております。インタファックスの報ずるところによれば、ゴルバチョフはノヴォ・ガリョーヴォ、大統領公邸のことであるそうでありますが、に向かっております。また、シラーエフ・ロシア共和国首相は共和国最高会議の建物に入りました。  国家非常事態委員会の動向につきまして、二十一日夜、これはモスクワ時間でございますが、同日開催された連邦最高会議幹部会におきまして、ゴルバチョフ大統領憲法上の職務からの事実上の解任と、その職務の副大統領への委譲を不法とみなす決定をいたしております。  また、クリュチコフ、バクラノフ、ヤゾフ、チジャコフの四名はクリミアのゴルバチョフ大統領の別荘で逮捕され、プーゴは既にモスクワにおいて逮捕されているという報道がございます。  また、ゴルバチョフ大統領は、クリミアにおいては国家非常事態委員会メンバーとは会っておらないというのが報告でございます。  以上でございます。
  50. 草川昭三

    草川委員 大変我々にとってうれしいニュースでございましたが、総理、今のお話を聞いて、我々も大変喜ばしいことだと思うのですが、総理の御見解があれば賜りたいと思います。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 非常に歓迎すべき決着を見つつあると私は受けとめておりますし、また幾らか、きのうの夜、私が直接電話で聞きました話によれば、そろって別荘に行って、そこでまた何かの懸念を直接表明されたようなこともありましたが、そういう懸念もだんだんこれで解消されていく。私は、さらに今後ともペレストロイカが一層着実に進んでいくことを心から期待し、この事態を歓迎の気持ちを持って受けとめます。
  52. 草川昭三

    草川委員 では、質問を続行します。  そこで、具体的な問題提起をしたいと思うのですが、このワラントの市場価格は大変不明確だというのは今局長答弁。これは大変だというので去年の十月ですか、九月から日本国内においてはBB市場というところで取引をすることによってその市場価格を公開するようになった、こういう御趣旨の答弁だったと思います。  そこで、私が言いたいのは、実は今までの損失補てんの発表というのは九〇年の三月末までだった。九〇年の四月以降があるんじゃないですかというのは、本会議でも我々の委員長も他党の方々も質問をされました。そちらの方には実は株が下がっておるのだから損失補てんは多いんじゃないですかという質問だった。そのときに大蔵大臣の方からは、ただいまのところは証券会社から、九〇年の四月以降、すなわち九一年度分は補てんをしたという事実はないという報告を受けたというお答え。そこで私は、そうじゃないよ、調べればあるんじゃないかということを言いたいのです。ただしそれは、損失補てんという意味ではなくて、ワラントというものを使って特定のいわゆる機関の方々に実質的な保証をした。早く言うならば、安いものを買っておきなさいよ、おい、この問題は値段が上がるぞ、そのうちに、こういう事実があるから。そして上がったところで売ったらどうですかという、いわゆるこれはどちらかといえばインサイダーですが、インサイダー的なものをこのワラントで応用しておるんじゃないかという例を申し上げます。  昨年の四月の日本航空のワラント債の動きをまず紹介をします。ロンドン市場で四月の四日、ワラントは一一・五ポイント、二十三日には一九ポイントに上がります。二十四日は二八ポイントに上がります。五月の二日には二六・五ポイント、そしてまたずうっと、ことしになってくるとむちゃむちゃにこれは下がっちゃうのですが、そのことは別として、ロンドン市場で四月の二十三日に一九ポイント、二十四日に二八ポイント、二十三日と二十四日を比べると一九ポイントから二八ポイントに上がったわけでありますが、この上がった理由というのが、実は二十四日に日本航空が五百円株の額面を分割するわけですよ、五十円に。こういうニュースを好感して株式もワラントも急上昇する。このときの買い方は一体どこなのか、そして買い方がだれのところへその株をつけたのかということをぜひ私は証券局に調べてもらいたいという要望をしたいのです。  私がなぜそういうことを言うかというと、これは本当に売買に従事をしておるいわゆる法人部の連中から意見を聞いてきたんですよ。それで、ちなみにこのワラントの上げ幅というのは株式の三倍だ、こう言われておりますね。それで、例えば一千万ドルを投資をした場合に計算をすると、一日で、日本円に換算をすると十三億五千万円の利益を上げるのです、一日で、ワラントの場合は。そこで、実際取引の量はどうかと聞くと、一千万ドルぐらいではございません、五千万ドル、あるいはまた、もっと大型の場合は一億はざらでございますよ、野村はもう少し小さい一つのユニットがあります、あるいは大和は大和でユニットがあります、山一は山一のユニットがありますという報告を受けておるわけでありますが、こういうところで細かい話をしても大変恐縮でございますので、私は、この二十四日を前後としてさらに数銘柄が著しく上昇をしております、四つか五つ。これはまたほかのニュースなのです。わずかなニュースですけれども、それが経済専門紙に出る。そしてわっと上がる。わっとまた、下がったとは申し上げませんが、大変な、一日の間でも高値と安値がある。  こういうことでございますので、細かいことを言うとあれでございますが、時間がないので、いわゆる日本航空ワラント債の動き、ロンドン市場でわずか二十三と二十四日の間でこれだけのポイントが上がりました。ちなみに、二八から三〇ポイントまで上がるのでございますが、ことしの八月現在、このポイントが幾らかということを調べてみると、わずか二・五ポイントに下がっちゃうのです。恐ろしい話ですね、ワラントというのは。だから、このワラントを利用する売買差益というのは、先ほど局長からお話がありましたように非常に不透明であった。ようやく去年の九月からBB市場というのを日本でもつくってそこで公にするようになった。でございますから、こういうことが実は日常茶飯事に行われておるからこそ、九〇年の四月以降の損失補てんは我々はやっておりませんよという、こういう報告を大蔵省に上げているのではないだろうか。ほかのやり方があるからそちらにシフトしておるんじゃないかということを言いたいわけであります。  何せ東京証券市場というのは、八九年の十二月のいわゆるダウが大変、三万九千円ですか、急騰したときの東京第一証券取引所に上場されている株式にその時価を掛けたら約六百兆を超すんでしょう。ちなみに、今の東京証券取引所の総上場数の金額に時価を掛けると三百兆でしょう。大体半分なんですよね、アバウトな話ですけれども。だから、本来ならば三百兆の評価損というのを証券会社は国民皆さんに穴埋めしなければいかぬわけです。ところが、三百兆の穴埋めなんかできませんよ、機関投資家だけだというのが今になっておるわけですよ。  だから、言っちゃ悪いけれども、千六百億か千七百億か知りませんけれども、証券会社は大喜びですよ、これは国会でこの議論になったから。あとは損失補てんしなくて済んじゃうんだから。様々ですよ、これは。だから、三千億とか五千億の経常利益を上げているのだから、今申し上げたように、本来ならば三百兆の損失補てんを国民にしなければいかぬ。しかし、国会で騒がれた、国税も騒いだ、大蔵省もがんがんがんがんやったおかげで、一番喜んでいるのは実は証券会社だと思うんですよ。証人喚問なんか全部出てきたっていいんですよ、本来ならば。だから私はそういう乱暴な議論を言っておるわけですが、あえて乱暴だというのは、国民の声を代表してそういうことを言わざるを得ないんですよ。  だから、このワラント債のやり方についても、私はしっかりとフォローをしていただきたい。この二十四日のJALの問題については、株の分割でありますから、これはインサイダー取引の大きな項目になるわけでありますから、私は対象になると思うのですが、調べる気があるのかないのかお答え願いたい。
  53. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御指摘を踏まえて調査をさせたいと思います。  なお、事務的に補足をすることがありましたなら、証券局長答弁をお許しいただきたいと思います。
  54. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘を受けました件につきましては、私どもも、この株式分割が行われた時期に株式の取引そのものについては調査をしているわけでございますが、人手等の関係もございまして、ワラントについてはまだ調査をしていないわけでございます。御指摘を踏まえて、ちょうど検査に入っておる最中でございますので、その中で調査をしたいと思っております。
  55. 草川昭三

    草川委員 今御答弁がありましたように、ワラントについての調査については、大変大蔵省も新しい問題なものですからやっておみえにならぬ。そこの不透明なところを私は業界はついておるということを指摘をしたいわけであります。  その次に、暴力団関係と株式の問題について質問をいたします。  稲川会の二代目会長が、会長当時の平成元年に野村ファイナンスや日興クレジット等から巨額の融資を取りつけて、これを野村証券や日興証券などを通じて東京急行電鉄の株式投資を行っていたという事実が判明をしております。ちなみに、二千九百七万株を取得をした、こう言われておるわけでありますが、警察庁にお答えを願いたいのですが、兵庫県警において捜査中の外為法違反の捜査状況はどのようになっているのか、お答え願いたいと思います。
  56. 國松孝次

    國松政府委員 兵庫県警察が現在捜査中の外為法違反事件は二つございます。一つは、ある貿易会社、これはウェスト通商株式会社という会社でございますが、その役員らが、韓国内におきまして土地を取得をいたしますために、平成元年五月ごろ、二回にわたりまして円貨表示自己あて小切生計百通、額面一億七千万円を不正に持ち出したというのが一つでございます。それからもう一つは、同役員らが平成元年六月三十日ごろ、大蔵大臣に対する事前の届け出をせずに、米国にございます。ある株式会社の発行に係る株式百万株を四百万米ドル、約五億四千万円で購入をしたというこの二つの事実でございまして、本年一月以降、これらの貿易会社の事務所等十五カ所を捜索をいたしました。現在、押収資料の分析等所要の捜査を行っておるところでございます。
  57. 草川昭三

    草川委員 続いて警察庁にお伺いをいたしますが、この事件に関連をして、稲川会の石井前会長が東急電鉄株を大量に取得をしていると報道されておるわけでありますけれども、警察はどの程度把握をしておみえになるのか、お答え願いたいと思います。
  58. 國松孝次

    國松政府委員 ただいま御答弁を申し上げました事件に関します金の流れを解明する過程で、暴力団稲川会の二代目の石井前会長が東急株を取得しておるという事実を把握しております。その数は、先ほど委員、二千九百万ちょっとというようなことでございました。それに近い数を私ども把握しておりますが、具体的にはその数を確定するにはまだ至っておらぬわけでございます。大体その程度の株を取得しておるというふうに把握しております。
  59. 草川昭三

    草川委員 これは後でも申し上げたいと思うのですが、最初にお伺いをした方がいいと思うのであれでございますが、石井進、いわゆる稲川会の、その当事者でございますが、東急株を取得をした意図についてはさまざまなことが報道されております。本人も売り抜けていないというようなことになっておるのではないか、こう思うのでありますが、これはその意図については、東急デパートの跡地をめぐる利権があったとか高値買い取らせのねらいがあったのではないかと言われているわけであります。東急デパートの跡地という言い方をしましたけれども、ある人に言わせるならば、跡地ではなくて駐車場跡地だ、こういうことを言いますし、将来の移転の問題をめぐってさまざまな不動産的な発想があるとかいろいろなことを言っておるわけでありますが、その点についての警察の捜査状況についてお答えを願いたいと思います。
  60. 國松孝次

    國松政府委員 石井進が東急株を取得した意図につきましていろいろな報道がなされておることは承知をいたしております。私どもも、犯罪捜査をするという過程でそうした石井進の東急株取得の意図がどのような関係を持つかということにつきましては関心のあるところでございますので、現在その点につきましての解明に努めておるところでございますが、捜査中の現時点におきまして、具体的な点についての御答弁はちょっと差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  61. 草川昭三

    草川委員 そこで、警察庁は暴力団新法などで暴力団の資金源抑圧に取り組んでいるわけでありますが、金融機関が暴力団に対して多額の資金を融資をする、このことについてどう思うか。これはひとつ総理からお答え願いたい、こう思います。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御指摘のような事実が今般明らかになって不明朗な取引が行われているということは、これは特に免許会社が規範に反しているということよりももっと問題も絞られてきて、具体的に国会の立法のあった直後において何だということでございます。私は、この点についてはこれはもうここで議論をするまでもなく、このようなことは絶対に許されてはならぬことだと考えておりますし、まさに今捜査当局による実態の解明も行われておるわけでありますから、その方の進行も見ながら信頼を確保できるように政府としてはその信頼を打ち立てていかなければならない、こういう考えでございます。
  63. 草川昭三

    草川委員 具体的な経過をちょっと説明をしますから、もう一度総理、改めて最後にお答えを願いたいと思うんですが、この日興クレジット株式会社というのが石井隆匡名義人に対し、この隆国というのは先ほど警察庁の御答弁のあった方と同一人物だと私は思うんですけれども、平成元年十月三十一日に六十億円、平成元年十一月一日に三十六億円、平成二年四月十八日に五十一億円。この五十一億円、これは同年一月十八日、平成二年一月十八日でございますが、日興クレジットではなくて日興DCカードサービス株式会社というのがあるのですが、その日興DCカードサービス株式会社が石井に貸し付けた五十一億円を切りかえておるのですけれども、この二年四月十八日に五十一億円出しておるのですね。さらに、平成二年五月一日に三十五億円、平成二年五月七日に二十億円。この五月七日の二十億円は平成元年十一月七日に日興ミリオンサービス株式会社が石井に貸し付けた二十億円を切りかえたものだ、こう言われておるわけです。計二百二億円を石井名義人に融資をしておるわけですね。  一方、野村ファイナンス株式会社からは平成元年十一月七日に四十億円、平成元年十一月八日に十億円、平成元年十一月十四日、七、八、十四日どこう続くのですが、ここでまた百十億円。四十億円、十億円、百十億円の計百六十億を石井隆匡名義人に対し融資をしておるわけですね。この二社の合計金額は三百六十二億円、これはもう既に新聞等で出ております、三百六十二億円というのは。しかし、この金がそれぞれ年利七・二%、そして七・二%から、それぞれ幅があるんだそうですが、九・五%までの幅で石井に融資をされておるわけです。  なお、これは私も驚いたのですけれども、約三カ月分の利息を天引きして石井元会長のメーンバンクであるところの住友銀行高輪支店の石井隆匡名義の普通預金口座に入っておるわけですね。日興クレジットの方からは三菱銀行本店を窓口として平成元年十月三十一日、五十八億八千九百九十二万七千九百四十四円が入れられておる。この細かい差額というのは三カ月分の年利七・二から九・五%の金利を先取りしておるわけです。暴力団の方々との取引だから金利を先取りしたと言えばそういう言い方もあるのでしょうけれども、私どもこれを聞いて、貸す方も貸す方だな、よくぞここで七日、八日、十四日というふうに毎日のように四十億、十億、百十億とやっておる、立派な人格者としての取引なのかなとも思うわけですよ。一体どっちの立場に立ってこのクレジット会社は石井何がしに融資をしておるんかな、こう思うのですね。また、平成元年十一月一日、三十五億三千四百六十六万六千五百七十四円、計九十四億二千四百五十九万四千五百十八円を入金しておるわけですね、これは三菱銀行本店を窓口として。  また、野村ファイナンスからは、三井銀行本店を窓口として平成元年十一月七日に三十九億二千八百一万四千六百十五円、端数がありますね。十一月八日、翌日ですね、九億八千百九十万二千二百八十六円。その一週間後の十一月十四日に今度は百八億一千七百五十二万千四百六十四円、計百五十七億二千七百四十三万八千三百六十五円。以上、日興、野村合計で二百五十一億五千二百三万二千八百八十三円が石井口座に振り込まれているわけです。日興クレジットは二日間で九十四億とか野村ファイナンスはわずか一週間の間に百五十七億円も暴九団に融資をしておる。  こういうことを一体どのように我々は受けとめたらいいのか。これは企業を相手にしておるのか、単なる暴力団個人というものではなくて、我々の認識をしていた暴力団というのは何かイメージが違うのですね。長い長い歴史、あるいは小説になったり本になったり、国定忠次もそうでしょうし、いろいろなのがあるけれども、今やまさしくこれはもう企業になってしまっている、この取引を見ても。まして企業舎弟という言葉も最近では出てくるように思われるのですが、警察庁はどのように御判断なすっておみえになるのでしょうか、お答えを願いたいと思います。
  64. 國松孝次

    國松政府委員 暴力団対策を進める上で私どもがやっておりますことは、もちろん言うまでもないことでございますけれども、あらゆる法令を使いましてこれを取り締まっていくというのが一つございます。そういう取り締まりの一つの強力な武器として、先般暴力団対策法をおつくりをいただいたということでございます。  ただ、一般論として言えば、先般成立いたしました暴力団対策法と申しますものは、一定の要件に該当する暴力団を公安委員会が指定暴力団として指定をいたしまして、その団員がその組織の威力を示して一定の暴力的な要求行為をすることを規制するということを目的とした法律でございます。したがいまして、今回の今委員御指摘のいろいろな融資に当てはめて考えてみますと、その融資が暴力団側からの威力を示されて、強いてその融資が行われたというような事実がございますれば、この新しく暴対法が施行されましたときには、その九条の八号という形で規制ができるわけでございます。ただ、その前提といたしまして、暴力団側が組織の威力を示して、企業側からいたしますれば非常に強要されて出したというような事態がなければならぬわけでございまして、そういう事態がない場合には、そもそも暴力団対策法というのは動かないということになるわけでございます。  したがいまして、私どもは、暴力団対策を進める過程で取り締まりをやるというのは、これはもう我々の使命でございますのでやるところでございますが、その一方におきまして、企業の側におきましても暴力団との関係というものを可能な限り絶っていただく、企業活動から暴力団を排除するという姿勢が必要だろうということでございますので、先般、国家公安委員長の強い御意向を受けまして、私どもといたしましては経団連会長あるいは日商会頭などにその旨の要望をしたところでございます。今後につきましても、そういった要望を重ねてまいりたいというように思っておるところでございます。
  65. 草川昭三

    草川委員 警察庁のは僕もよくわかると思うのです。  ここで大蔵省御答弁願いたいのですが、今私が具体的に例を挙げたように、おどして融資をしたとするならば警察庁が出動することになりますけれども、これはもう毎日のように、やれ四十億だ、やれ何億だ、こう出すわけですから、少なくとも合意でこれはやられていると見なければなりません。要するに、暴力団に対する金融機関の融資の態度についてまず一点。  それから、暴力団が株の取引に参加したことについて一体証券局はどう思うのか、相手の素性もわからずにこんな多額の融資を行える、行うことができるような余裕のあるもう会社になってしまっ木のか、お答え願いたいと思うのです。
  66. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに、御指摘のこの暴力団関係者に対する証券会社の関連会社からの融資と申しますのは、証券会社がその融資を紹介したわけでございまして、非常に免許会社としては不道切な行為だというふうに考えているわけでございます。  また、株式の受注の問題でございますが、大量の株式を受注する場合には、私ども当然証券会社に対して本人確認ということを要求をしているわけでございます。このケースの場合には、本人確認がなされている場合となされていない会社とが、必ずしも十分になされていないケースがあるわけでございますが、ただ、単純なる株式注文の受注というものをある特定の者からの受注を一切禁止できるかどうかという点につきましては、なかなか難しい問題がございます。  しかし、いずれにいたしましても暴力団新法という新しい暴力団規制の方向が出ているわけでございまして、今後払ともこの新法を所掌される担当の部局といろいろ御相談しながら、一体どういうふうな対応が可能なのかという点についてさらに検討をして必要な措置をとってまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  67. 草川昭三

    草川委員 時間がどんどん過ぎていきますから少しはしょりますが、本当は今の御答弁で、野村というのは幹事証券ですから、本来ならば東急という立場に立って、おい、こういう買いが入っておるぞ、あるいは仕手が入っておるぞ、注意しなきゃいかぬよと言うのだが、その相手側に融資をするというあっせんをするんですから、融資のあっせんを。こんなふざけたモラル以前のことをやっておる証券会社というのはそれこそ世界の物笑いだと私は思うのですよ。非常に強く抗議をしたいと思うのです。  しかも私は、今から申し上げたいのは、当初稲川会の石井前会長というのは野村証券の横浜支店に取引の申し入れを行うのですよ。ところがその横浜支店は立派なもので、取引を断るのですよ。それで、断るから今度は本社へ行くのですよ。私の調べた限りでは、野村の本店営業部に口座がその後開設をされるのです。その経過を大蔵省調査しておりますか。横浜支店で断った者が何ゆえに本店で受け入れられたのか。それは本店のトップによる、本店のトップの某人物が紹介をするわけでしょう。事件発覚後、この口座開設に伴う関係者の社内処分が行われておるのです、野村の社内では。大蔵省は承知をしておりますか。私どもはそのことを事前に申し上げておるはずでございますが、まずそこらあたりから再発防止のために努力をしていただかないと私は問題があると思います。その点どうですか。
  68. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘を受けまして、横浜支店に口座を一確かに横浜支店においては口座を設定した事実はございません。ただ、取引について相談があって断ったかどうかという点につきましては、実は現時点ではまだ私ども最終的に確認ができておりません。引き続きその点については調査をしたいと思っております。
  69. 草川昭三

    草川委員 本店でそのときに、口座を開設した某何がしは、不動産関連に行き、そしてもうやめられたという話も私は聞いておるところであります。この稲川会の前会長は、岩間カントリークラブの額面四千万円の会員資格保証預かり証を五十口、金額にして二十億円を野村証券を通じ野村の関連会社から調達をしたと既に報告をしたようになっておるわけでありますが、野村証券ではゴルフ場の会員権を担保として扱っていないというのですね。いわゆる野村証券で取引をする場合にゴルフの会員権を担保にして株の売買を許していない、一方ではね。  ところが、今申し上げたようにゴルフの会員権でさえ担保にならない野村証券が、五十口の預かり証では話にならぬというわけですから、関連のノンバンクを通じて融資をした。もうすべてわかっていて野村はやっておるわけです。そして一方、私が先ほど申し上げたように、既に本委員会でも名前が出ておりますが、「ポートフォリオウィークリー」、これを使って野村は、高くなりますよ、東急、東京急行電鉄は高くなりますよと言って紹介銘柄として盛んに宣伝をするわけでしょう。本社跡地再開発だとか、リゾート開発だとか、さまざまな事業部もこれから伸びていきますよ、JR関係の土地もたくさん持っておりますよと言って宣伝をするわけですよね。これは残念ながら、ただいまのところ株価操縦にはなってないというのが御答弁ですけれども、株価操縦になっていないと言うのだけれども、国民皆さんが、おい、野村がえらい宣伝するぞというと、ちょうちんつけてわあっといくのですよ。  だから、意図的に株価操縦、しかじかかくかくというような、あの協同飼料事件のような、そういう構成要件がなくても、野村というのは今ガリバーですから、ガリバーがこう宣伝をすればわあっとみんながついていくから株が急騰する、こういうことになるわけですよね。ここを、我々は従来の法律から見て株価操作の構成要件はこれこれしかじかだから株価操縦にならぬと言ったってだめなんですよ。ガリバーで強過ぎるし、国民の側も、野村が売るぞ、いくぞと。さらに、店頭窓口では営業マンはどういうことを言っていますか、ヤッちゃんが入ったからこれは高くなると言っているのですよ。ヤッちゃんという言葉は卑近ですからもうこれ以上解説はしませんが、ヤッちゃんが入ったから上がる、こう言っているのだからセールスマンが。公知の事実なんですよ。いかに日本の証券市場が腐ってきておるかということですよ。それは大蔵省の保護行政が強過ぎたからなんです。  だから私は先ほど、ワラント債がなぜ日本で発行されずにユーロ市場に逃げていくか、それは日本の規制が厳しいからですよ。手数料が高いからですよ。銀行等の固定証拠金というのですか、固定の料金が高いものだからヨーロッパへ逃げる、しかし買うのは日本人が行って買う、こういう理屈になる。借り腹だという言葉が出てくるわけですよ。  時間がどんどん過ぎていきますので今度は東京佐川急便に行きます。東京佐川急便株式会社の保証債務問題を取り上げてみたいと思うのでありますけれども、これは運輸大臣からお答え願いたいと思うのです。  東京佐川急便というのは大きな会社ですよね。そして、市民生活の中にもいろいろと、荷物を翌日運びますよというので大変大きな影響力を持っておる関東一円の一般貨物自動車運送事業を営む会社です。  それで、この東京佐川のいわゆる保証先内容一覧表というのを私持っておるわけでありますけれども、さまざまな企業がずっとありまして、その企業に東京佐川急便がいわゆる融資保証をするわけです。佐川が融資保証しますからノンバンクでその金が出るわけですね。もちろん東京佐川急便はその保証料を取るわけです。金融業のいわゆる貸金業をやるわけです。東京佐川急便というのは貸金業としての届け出をやっておるかどうか、まずお答え願いたいと思います。
  70. 土田正顕

    ○土田政府委員 私どもの調査では、東京佐川急便につきましては貸金業の登録は行われておりません。  ただ、一つ申し添えますと、「物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの」は貸金業には該当しないという貸金業の規制等に関する法律の規定はございます。
  71. 草川昭三

    草川委員 運輸大臣に今度はお答えを願いたいと思うのですが、この東京佐川急便の債務保証総額というのは三千九百八十五億円に上るのです、ずっとこれはいろいろな各社で。そうすると、これは私大変な金額になるわけでございますけれども、もしこの債務保証をした企業先が倒産をしたということになると、本来の運輸業がつぶれるということになっていくわけですよね。私は運輸省に、この会社の本業は一体何か、運送なのか、あるいは債務保証で膨大な利益を上げる会社なのか、きちっと一遍調べていただきたいと思うのです。しかも、このリストの内容を見ると、北祥産業株式会社というのがあります。この会社は一体どういう会社なのか、あるいは先ほど私が触札ました稲川会の石井会長との関係は一体どういうことになっておるのか、これは警察庁にお伺いをしたいと思います。
  72. 國松孝次

    國松政府委員 北洋産業は、昭和六十年二月七日株式会社として設立された不動産売買、日用品雑貨輸出入を主要業務とする資本金三千万円の会社でございます。  これと石井進との関係でございますが、同社の役員に同人の親族等が名を連ねているなどかなり強い関係にあったと申しますか、石井進の支配力がかなり及んでおった会社というように言ってよろしいのではないかというように思います。
  73. 草川昭三

    草川委員 こういうような今の答弁もあるわけですから、運輸大臣、どのようにこの会社を今後御指導になるのか、お答え願いたいと思います。
  74. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 東京佐川急便でございますけれども、貨物自動車運送事業法により許可を受けました一般貨物自動車運送事業者でございますが、荷主等との取引など貨物自動車運送事業等の業務としての取引以外の一般的な企業活動としての投融資、債務保証等の取引については、運輸省がこれに直接関与し、行政上の措置を講ずる立場にはないと考えております。したがいまして、東京佐川急便が行ったとされる債務保証についてはつまびらかではありませんが、先生がおっしゃいました四千億円弱の債務保証が行われたとの報道については承知をいたしております。  資金の借り入れ、債務保証、投融資等の取引行為は、基本的に企業活動の一部として個々の企業の判断と責任において自由になされるものであり、これらの個々の取引行為の内容について当省が直接これに関与し、行政上の措置を講ずる立場にはないと考えておりますが、しかしながら、御指摘の、ようなことにより輸送の安全確保、輸送秩序の維持等の観点から問題が生ずることになるような場合には、必要に応じ指導を行う所存であります。  以上でございます。
  75. 草川昭三

    草川委員 直接運輸業法の枠に入らないというようなお立場も十分わかりますけれども、市民生活に大変大きな影響を与える業者でありますから、特にこの暴力団関係との関連についてはひとつ明確な指導を賜りたいと思います。  時間も過ぎておりますので、最後にもう一問警察庁にお伺いをしますが、暴力団新法をもっと効果的に運用して、今私が述べたような暴力団が行う証券取引等の資金源活動というのを規制するということは可能ではないか、こう思うのですが、その点の御見解を賜りたいと思います。
  76. 國松孝次

    國松政府委員 先ほども御答弁申しましたとおり、今回いろいろな問題の過程で出ておりますうち、株式、株の取得のための資金を融資をするという点につきまして、もしそれが暴力団員によってその組織の威力を示して行われたというものであれば、現在成立しておりますこの暴力団新法を大いに活用いたしましてやってまいりたいというように思っております。そのことは当然可能でありますし、またやるべき問題であるというように考えております。  ただ、もう一つ、暴力団関係者が株の取引を行うということにつきましては、そのこと自体につきましては、この暴対法をつくりました段階におきましては、今日問題になっておりますようにこうしたことが非常に類型的あるいは広範に行われておるという事態はちょっと認識をしておらなかったところがありますものですから、そういったものにつきましては、現在の暴対法、暴力団新法におきましては、直接規制をしていくことというのはなかなか難しいのではないかというように思います。ただ、今回の事態を踏まえまして、暴力団員がその組織の威力を示して証券取引に介入をするというような事態につきましてはやはり何らかの規制が必要であろうという点につきましては、そのように認識をいたしておりますので、そうした方向で今後検討をしてまいりたいというように考えておるところでございます。
  77. 草川昭三

    草川委員 本来はここで再発防止のことを少し詳しくやらなきゃいかぬのですが、公取の委員長、何か大変きょうは国際的なお仕事があって十一時までにあれだというので、再発防止の中で、私は、現在の損失補てんが生じている原因の一つは、株式を売買する際の手数料が固定化されておる、先ほどもちょっと触れましたけれども、その受託手数料がカルテル的になっているのではないか、こういうことを言っておるわけであります。現在のこの手数料というのは、小口の売買の場合は〇・九だとか大口の場合は〇・〇七だとかいろいろなランクがあるわけでありますが、どうしても、大口取引で売買の手間に要するコストが一回の取引で百万円を超えるというのは実際は信じがたいわけでありまして、早く言うなら、それはもう自由にして下げることができるんじゃないか。ただ、余り自由化ということを言うと小さな証券会社が困るというこういう面もあるのですけれども、困るということを言うならば、上限をひとつつくって中小にはある程度打撃を与えないようにして、大口はもうフリーにして相互参入をしたらどうだろうとかいうようないろいろな意見があるわけであります。  私は、マネーセンターを持つ国で日本のように固定手数料を取っておる、こういう制度をとっておる、徴収義務を課している国が本当にあるのかないのか、まあ日本ぐらいじゃないだろうか、こう思うのでありますけれども、小口投資家の利益擁護を考慮しながら自由化をすべきだという主張の上に立って公取に対してお伺いをしたいのは、その引受手数料、受託手数料の問題についてどのようにお考えになるのか。あるいは、現在四社の社債の引受手数料の水準あるいは都市銀行の受託手数料の水準を考えるとするならば、私はもっとフリーにすべきではないだろうか、こういうような意見があるわけでございますが、要するに、公取に二問お伺いしたいのは、株式売買手数料を自由化すべきだ、競争政策の観点から公取はどのような姿勢なのかお伺いをしたい。  次いで二番は、受託、引受手数料は各社が同じだ、ここにカルテルが存在するのではないか、こう思うので、ひとつ公取の立場から御意見を賜り、再発防止の一助にしていきたい、こう思いますので、お答え願いたいと思います。
  78. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御質問がございました二つの点でございますが、まず前者の点につきましては、現行の株式の売買委託手数料の問題でございます。これは、御案内のとおり、制度上この固定手数料につきましては独占禁止法の適用除外という建前になっております。  この問題につきましては、二年前でございましたけれども、主として学者、専門家に委嘱をいたしまして、証券のみならず流通、サービス、いろいろな分野についての政府規制の問題を御検討願ったときに、この委託手数料につきましては基本的に自由化すべきである。将来の検討の方向として、今お触れになりました小口投資家の問題等々の点にも触れられておるわけでありますけれども、競争政策の立場からは、言うまでもなく、公共的な政策目的に真に必要なもの以外の政府規制は基本的に自由化すべきであるというのが基本でございます。ただ、この手数料の問題につきましては、大蔵省御当局におかれましても今後いろいろな角度から検討を始められるということでございますので、資本市場政策の立場とそれから競争政策の立場をいかに調整していくかという観点から、今後大蔵当局と十分に話し合ってまいりたいと考えております。  それから、後者の問題でございますけれども、各種の引受手数料等については、これは制度上自由な手数料でございます。各証券会社が基本的に自由に判断すべきものでございます。各種の市場を見ますと、似たような商品、サービスの場合に、競争の結果、価格とか料金水準がおのずから一定の水準に収れんするという現象は見られるわけでありますけれども、ポイントはやはりその間に協調とか共謀があってはならないという点でございます。私どもは、証券業のみならず、一般に寡占産業あるいは政府規制産業につきましては、カルテル的ないし協調的な行為に引き込まれやすい素地があるわけでございますから、我々の任務といたしましては、今後とも監視を強化するとともに、万一独占禁止法に触れるような事態が認められます場合には厳正に対処してまいります。
  79. 草川昭三

    草川委員 公正取引委員会の立場というのはこれからの競争政策の面からも非常に重要な位置づけになってくると思いますので、特に今日の証券不祥事の一つの解決方策の中で大きな役割を果たされると思うので、ぜひ御努力を願いたいと要望を申し上げておきたいと思います。これはもう結構でございますので、どうぞ。  そこで、時間が過ぎてきて申しわけないのですが、実は、取引所のあり方が果たして今日公正なのかどうかという疑問を私は大変持っております。  東急株の価格操作問題のときにも、東京証券取引所は非常に早く価格操作の疑いなしという結論を出しているわけです。大蔵省はただいまのところはまだ調査中だと言っておるにもかかわらずそういう行動をとっておみえになります。苦情処理の問題についても、他省の商品先物市場等においては取引所に苦情処理委員会等を持っておりますけれども、証券業の場合は証券取引所にそのような苦情処理機関、紛議処理というようなものはない。まして、私はここで問題を提起したいのは、本来取引所というのは、証券取引法第五章八十条に基づく特殊法人の性格を持って、それで大蔵大臣の免許を得て定款を定めて、いわゆる証券取引法に基づいた会員組織の法人だと思うのですね。だから取引所の設立の目的は、公益及び投資者の保護、はっきりしておると思うのです。たまたま名古屋の証券取引所は、昭和四十三年から平成元年まで政治連盟に政治献金を三百二十二万二千五百円しておるわけでありますが、こういう取引所の性格から政治献金をするということは果たしていかがなものかと思うのでございますが、その点、大蔵大臣、どのようにお考えになっておられるのか、あるいは今後どういう処置をとられるのか、お答え願いたいと思います。
  80. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一点は、取引所は確かに御指摘のように紛争処理のための特別の機関を設けてはおりません。しかし、会員間あるいは委託者と会員の間で取引所における有価証券の売買取引等について紛争が生じました場合に、取引所が当事者の申し立てによって一定の手続に従ってその仲介を行うことになっております。また、証券業協会におきましても、顧客と協会員あるいは協会員間の紛争をあっせんし、調停することとなっております。  現在、証券取引所及び証券業協会におきまして、今回の一連の不祥事を契機に、一日も早く投資家の信頼を回復するため、自主規制機関としての機能の強化に真剣に取り組んでおられるところでありまして、私は、御指摘のような紛争処理の問題につきましても、あるいは委員から遅いとおしかりを受けるかもしれませんけれども、改善すべき点がないかどうか、当然のことながら検討は進められるものと考えております。  また、取引所の特定の政治団体に対する寄附というお話であります。これは恐らく名古屋証券取引所が財団法人国民政治協会に寄附を行ってきたことを指しておられると思いますが、これは御指摘のとおりでありますが、同協会から政治資金規正法に基づいて献金の報告を受け、自治省が官報に掲載されておりますのを見ますと、昭和五十一年から六十二年まで十五万円、昭和六十三年十九万二千五百円、平成元年十八万円となっております。これは政治資金規正法によりまして政治献金を禁止されている団体には該当をいたしませんが、有価証券の売買取引等を行うため必要な市場として開設されるものでありますし、また名証そのものの定款におきましても、有価証券の売買などが公平円滑に行われることを旨としてその運営を行うとされております。こうした取引所の性格から見れば、その運営に当たりまして信頼を損ねることのないような慎重な行動というものが必要であることは言うまでもありません。御指摘の件につきまして名証に事情をただしましたところ、地域活動の一環として受けとめて支払いを行ってきており、政治献金として明確に意識していなかったが、これを機にその必要性などを勘案の上、見直しをした結果、取引所の運営姿勢に誤解を招かないようにするためにも、本件寄附を今後行わない方針であるという返事を受けております。  これから私どもといたしましても、各取引所の運営姿勢につきまして十分指導してまいりたいと思います。
  81. 草川昭三

    草川委員 時間が大分過ぎてまいりましたので、本件の問題についてはまだ後ほどの証券特別委員会等で議論をしていきたいと思います。  日朝交渉に残った時間を割きたいと思うのでありますが、私は、北朝鮮、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国と我が日本との友好的な国交樹立を望むものです。しかし、交渉に当たっては、将来朝鮮半島が統一されたときに隣の韓国との関係についてもしこりを残すものであってはならぬ、こういう立場に立ちたいと思っておるところです。これまでの日朝交渉の経緯を見ておりますと、政党レベルの接触が先行しているわけでございますし、政府、外務省の対応がこれを追いかけるという形になっているのではないか、こう思います。外交交渉としては必ずしも自然な形ではないと思っております。私も国民の一人としてこういうやり方について時として不安感を感ぜざるを得ないのでありますけれども、問題なのは、友好国、例えばこの交渉の結果に直接影響を受ける韓国、アメリカとの連携が必ずしもスムーズにいっていないのではないかという疑いがあるので質問をしたい、こういうように思うのでありますが、日朝交渉を進めるに当たって、特に核査察問題について、アメリカとの間にどのような連絡をとって交渉に臨んでおみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  82. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまのお話のように、アメリカ、韓国との緊密な協議ということにつきましては、核査察の点はもとより、そのほかの点につきましても大変重要なことでございます。これで月末第四回目の交渉を北京でさせでいただきますけれども、これまで三回、事前そして事後、それぞれの機会に韓国、アメリカと緊密な協議を行いながら今日まで協議を進めてきております。  そこで、特にこの核査察、核施設に対する査察の問題でございますけれども、これは先生御指摘のように特に米国政府におきましては大変関心の高いところでございまして、そのためもありまして、これはもとより、アメリカの関心はいかにあれ日本としても大変重要な関心を有する問題でございますけれども、先方の関心の高さということもございますので、これまで累次にわたり私自身もワシントンに行って、この問題、先方の政府当局と緊密な協議をいたしました。そのようなことも含めまして、緊密な連絡、協議をワシントンと経ながら交渉に臨んできております。
  83. 草川昭三

    草川委員 今ワシントンとの内答についての報告があったのですが、先ほど触れましたこの核査察問題で、日本政府として今後どのような姿勢で臨むのかということをお聞きしたいわけであります。  特に、昨日のニュースによりますと、英国のジェーン・インテリジェンス・レビューでは、北朝鮮の核施設として研究用原子炉、小型原子炉、大型原子炉、ウラン濃縮工場、再処理施設の五カ所を指摘をしていますけれども、外務省は少なくともこの五カ所の核施設の存在を認識をしておみえになるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  84. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 事実関係を私からお答えしたいと思いますが、例のウィーンにございますIAEAという国際機関がございますけれども、そこの報告によりましても、現在北朝鮮のピョンヤンの北方の九十キロのところに寧辺というところがございますけれども、そこにソ連から導入いたしました二基の研究炉があるということが確認されております。  他方、それに加えまして、いろいろな報道等があるわけでございますけれども、その報道によりますと、そのほかに小型の原子炉及び再処理施設、これは建設中と伝えられますけれども、そういうものが存在するのではないかということが言われております。
  85. 草川昭三

    草川委員 北朝鮮は、今お話がありましたIAEAの核査察受け入れを表明をしているようでございますが、一部には北朝鮮側が査察の施設を限定するのではないかというような懸念があるわけであります。日本としてはあくまですべての施設の査察を求める立場で話し合いをすべきだと思うのですが、その点どうですか。
  86. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 仰せのとおり、すべての施設についての査察の受け入れというものを厳しく要求、要請してまいりたいと思っております。
  87. 草川昭三

    草川委員 ついせんだっても、実は日韓議員連盟がございまして、私も運営委員の一員として韓国の国会議員の方々といろいろなお話をし、またソウル大学のいろいろな関係者の方とも懇談をしてきたわけでありますが、彼らは今回の日朝交渉のわかりにくさに不安感を持っている方が多いわけであります。知的レベルの高い比較的冷静な人々の中に、日本は今後各分野での対韓交渉を有利に進めるために北のカードをちらつかせているのではないかと考えている人がいる。私はこれには大変驚いたわけでありますが、そういう見方もあるんだなと実は反省をしたわけであります。  外交交渉でありますからすべてをオープンにできるはずはございませんけれども、ひとつ交渉を進めるに当たってはぜひ、秘密裏に密使が行くというようなことではなくて、周辺の友好国の無用な疑いを招かないような外交を進めてもらいたいと私は思うのですが、交渉に当たって韓国とはどのような連絡をとっておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  88. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 仰せのとおり、そのような心配と申しますか懸念の気持ちが韓国の一部にあることは私どもも承知しておりますしかるがゆえに、先ほども御答弁申し上げましたように、毎回の協議の事前及び事後におきまして、韓国政府に緊密に私どもの考え方、それぞれの交渉に臨む立場、基本的な考え方を十分説明して理解を得ながら進めてきております。  いずれにいたしましても、日朝交渉がいかなる方向に進むものであれ、やはり朝鮮半島全体との関係を考えます場合に、申すまでもなく、日本と韓国との友好関係というのは基本に据えられるべきものでございますので、そういうことを十分念頭に置きながら交渉を進めたいと思います。
  89. 草川昭三

    草川委員 今回の交渉で最もわかりにくい点は、要するに日本の基本姿勢が見えてこないというところに私は問題があると思うのです。我が国の個益という立場から考えても、なぜこの時期に交渉を急がなければならないのか、あるいはまた、ピョンヤンに極秘に担当者を派遣してまで交渉を促進するのか、ここらあたりが大変韓国の我々の友人にも疑問を与える行動ではないか、こう思うのです。  もちろん私は、この北朝鮮との交渉をおくらせることには賛成ではありません。特に、我が日本が過去朝鮮半島で行ってきた行為については、相手が北朝鮮であれ韓国であれ、率直にこの歴史的な経緯の反省をしなければいけない、こういう立場でありますけれども、我が日本として絶対に譲っては相ならぬ線というのもあるわけでありますから、今から申し上げる点についてお答え願いたいと思うのです。  第三回の交渉中断の原因となったとも言われる李恩恵問題について一体どうなっているのか。この問題は、我が国の国民が外国に拉致をされたという疑いのある問題です。個人の人権問題であるとともに、これは我が国の主権が侵害された疑いのある極めて重大な問題ではないかと思っております。  通常、主権侵害の疑いがあった場合には、どこの国の場合でも外交交渉上これが最も重大な関心事態になるわけでありますし、主要議題の一つになるわけでありますが、一部の報道によると、次回の交渉の議題から外すことで日朝間で合意をしたというように伝えられておりますが、もしこの報道が事実とすれば私は大変不可解なことだと思うのであります。特に、この問題を議題から外すということになると、我が国の人権感覚が一体どうなるんだ、日本の主権というのは一体どうなっておるのかという実は国際社会からの批判もあるわけでありますが、実は私はそういう批判を受けて過日議員連盟の出席から戻ってきたわけでございます。外務省の首席事務官クラスが、過日ピョンヤンを訪問をして日朝交渉の再開に向けてこの李恩恵問題等の取り扱いを協議したと言われておりますが、その内容をお伺いしたいと思います。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 草川委員お尋ねの問題は、二つに整理してお答え申し上げたいと思います。一つは李恩恵の問題、もう一つはその他の一連の男女の失踪問題であります。  李恩恵の問題につきましては、同人が失踪中の日本人女性である可能性が極めて高いと警察当局が判断したことを踏まえまして、日朝国交正常化交渉の第三回本会談において、北朝鮮に対しその消息等につき調査を依頼したところでございますが、本件につきましては日本国民が多大の関心をしている、これも御指摘のとおりでありまして、今後とも北朝鮮に対し提起をしてまいる考えであります。  また、その他の一連の男女の失腺問題につきましては、事実関係等につき必ずしも明確でない点があるものと承知をいたしております。その対応ぶりにりきましても慎重に検討する必要がございますが、このような問題を含めて、北朝鮮についての情報不足により生じている我が国国内における不安感を解消するために、相互理解を深めるとともに北朝鮮の透明度が高められるよう働きかけて、双方の信頼関係を築いていくということが交渉の基本的な我が方の考え方である、こう申し上げておきたいと思います。
  91. 草川昭三

    草川委員 今外務大臣の方から基本的な姿勢についてお話がございましたが、先ほども透明性ということが出ておりますが、いずれにいたしましても、隣の、一番近い国の問題でございますし、国民も非常に関心のあるところでございますので、ぜひ間違いのないように対応していただきたいとお願いをしたいと思うのです。  それで、警察当局の発表のお話が今外務大臣からございましたが、この際、警察当局の見解を再度確認をしておきたいと思うのでありますが、この李恩恵と呼ばれる女性というのは北朝鮮に拉致された者かどうか明らかにされたいということと、またこの一連の、先ほど来答弁がございました男女失瞭事案というもの、事件というものがあるわけでございますが、これは果たして北朝鮮と関連があるのかないのか、これもひとつ明確にこの際お答えを願いたい、このように思います。
  92. 吉野準

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  まず第一の李恩恵の関係でございますが、この女性の身元特定につきましては、昭和六十三年の二月に全国の警察を督励いたしまして調査を進めた結果、本年の三月になりまして埼玉の警察が有力情報を得まして、非常にこの李恩恵の特徴に酷似した女性が出てまいりましたのでさらに調査を進めましたところ、一定の裏づけがとれましたので、本年の五月十五日でございますが、警察庁の係官を韓国に派遣いたしまして金賢姫自身にこの写真を見せたところが、これが李恩恵であるという供述が得られましたので、こういう点を総合いたしまして、この女性が李恩恵であるとの可能性が非常に高いと判断するに至ったものでございます。  なお、この金賢姫の供述によりますと、李恩恵は日本から船で引っ張ってこられたと語っておりましたので、そういう点からしましても北朝鮮に拉致された疑いが非常に濃いというふうに判断をいたしておりまして、自後の捜査を現在進めているところでございます。  それから、そのほかにも御指摘のいろいろ事案がございます。これは事案によりましていろいろ状況が違うわけでございますけれども、概して申し上げますと、北朝鮮に関係する疑いが非常に濃いというふうに私ども見ておりまして、そういう点から捜査を進めておるところでございます。
  93. 草川昭三

    草川委員 この李恩恵問題について次の交渉で、今外務大臣の御答弁がございましたが、李恩恵問題とあわせて、一連の男女失腺事件についても私は北朝鮮側に問題提起をすべきだという立場でございますが、その点について再確認しておきたいと思うのですが、どうですか。
  94. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、副本政府考え方として先ほど御答弁申し上げたとおりであります。  私は、北朝鮮と日本との国交の正常化、国交を開始するということでただいまいろいろ交渉をやっておりますけれども、基本的には朝鮮半島全体の安定、これが原則でありますし、また韓国との関係を悪くするというようなことで北朝鮮との交渉をやるという考えは毛頭ございませんし、アメリカとの関係もこの交渉によって壊す、そういうことはあり得ないこと、またあってはならないこと、こういう基本原則で交渉を進めてまいる、こう申し上げておきたいと思います。
  95. 草川昭三

    草川委員 これは最後に、私この問題についての要望をちょっと申し上げておきますが、この問題というよりも、日韓あるいは北との関係について申し上げておきますが、実は昨年、盧泰愚大統領が日本にお見えになり、海部総理もことしの一月に韓国にお見えになり、いわゆる在日韓国人の法的地位問題というのは随分前進をいたしました。  その中の一つの問題として再入国問題というのがございまして、これは韓国の方々、在日朝鮮人の方々からの要望もあったと思うのでありますが、現在までの再入国というのは、一年間だけ外国へ行って、そして現地の大使館にお願いをすればプラス一年。二年目までは日本に帰ってくることができるよという今までの法律だった。それを、大変これは議員連盟の努力もこれあり、あるいはまた加藤幹事長等のいろいろなお話を聞いておりますと与党の中でも随分割り切っていただいて、再入国は四年プラス一年ということになった。四年間外国にいて、プラス一年再延長して五年目に日本に、五年間は外国にいて日本に戻ることができるよというように入管法の改正が成ったんです。みんな喜んだんです、我々も。ところが、残念ながら、韓国の国内の旅券法というのがあって、在日韓国人の滞在は一年以上だめということになっているのです。だから、せっかく一年プラス一年あるいは四年プラス一年、日韓双方の外務官僚あるいは法務省の方々がお話しになって、四年プラス一年で喜んだんですが、在日韓国人の人が向こうへ行くと、韓国の方は一年以上の滞在は特別な理由のない限りだめだということになっているのです。百万ドル以上のお金を持って向こうで仕事をやるとか、留学生以外はだめです、こういうことなんですね。せっかく日韓の間であれだけ努力をしても実効性がないわけです。何をやっておったという反省があるわけ。我々もある。外務省にもどうなっているんだと言う、あるいは法務省さん、あなたたちどうなんだと言うんだが、お互いにそんなことあったんかな、こういう話なんです。  この現場の話を私は一つの反省点として、例えば日韓の交渉についても、あるいは北の交渉についても、よほど現場に手をつけてこれからの日本外交なり外交折衝をやらないと、ただそういう要望があったからやりましょうということだけでは私は間違いを犯すのではないかという材料として申し上げておきたいというように思うわけであります。  この件については問題提起で、もう既に外務省ともお話をしておることでございますし、私どもも韓国側の方にお願いをしてその旅券法の適用についての再検討をお願いしておるところでございますから、事例問題としてだけ申し上げておきたいと思うのです。  あと五分しかございませんので、最後に国連のPKO活動について二、三点だけ、時間の許す限り質問をさせていただきたいと思います。  これは私自身も院の派遣でPKOの調査団に参加をさせていただいておりますし、公明党も実は今全党を挙げてこのPKOに対応する議論をいたしておるところであります。もうこれは私も議席を得て十数年になりますけれども、初めてと言っていいぐらいに苦悩した議論をいたしております。その根底は、国際貢献に我が国はどうあるべきだという視点で議論をしておるわけでございますが、国会決議あるいはまた五十五年の鈴木総理当時の政府答弁書あるいはまた昨年来の国会での議論、そういうものを踏まえてやっておるわけでございますが、ひとつまず問題意識として、国連のPKOになぜ自衛隊の参加が必要なのか。あるいはまた、戦わない軍隊だということでこの平和維持軍というものが位置づけされておる。すなわち敵のいないのがPKOなんだ、こういうことを言っておるわけでございますけれども、そのために自衛のためにしか武器を使用しないというようなお考えで今法案が整備されておるというように聞いておりますが、過去の例ではどの程度の武器を使用したのか。例えばオーストラリアの例なんかを挙げてこの際質問しておきたいと思うので、この一、二問について総理から御答弁を願いたいと思います。
  96. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連の平和維持活動というのは、もう委員も御視察をいただいて今質問の中で要点お触れになりましたように、停戦が成立をして、そして国連の権威と説得によってその平和秩序というものを維持していこうというのが主たる目的でありますから、中立的で非強制的なものであるというのが平和維持活動を貫いておる根本の理念だと思います。だからノーベル平和賞も受けておるわけだと私は見ております。そして、そういった新しい秩序をつくるためには、国連の機能を強め、国連を中心にして、国際社会の意思、国際社会の協力で物事をなし遂げなければならないということは、湾岸の危機においてこれはいろいろな面で我々が深く体験をしたところでありますし、そういった国際社会における平和維持活動というのに、日本も黙ってこれを見ておるだけではなくて、やはり物とお金のみならず人の面でもできる限りの貢献はしなければならない。例えば、バングラデシュのサイクロンに対する緊急援助隊の問題にしても、クルド族難民支援のための人的貢献の問題にしても、あるいはペルシャ湾における廃油の除去作業にしても、掃海艇の機雷除去作業にしても、皆これは国際社会の平和を回復していくための、あるいは人道的な立場での活動であった。  そういったところで、守るべき線を守りながら、同時に平和国家としての理念をきちっと踏まえて国際社会のために協力をするのが平和維持活動でありますから、ただいま政府は鋭意、何がなし得るかということについての成案を得るべく作業を続けておるさなかでございます。
  97. 草川昭三

    草川委員 最後に二問申し上げて終わりたいと思うのですが、いわゆるコンゴ国連軍を除いた過去の例で、停戦等の合意が破られて平和維持軍の部隊が紛争当事者の軍隊と対峙するような場合が本当にあったのかどうか、あるいはその際、各国の部隊はいかなる対応をしたのか、実際に武力行使をすることによって攻撃を阻止したような例はあるのかないのか、これは改めて担当者の方から御答弁願いたい。  それで、もうこれは時間がございませんので、内閣法制局長官に一問御質問をしますが、いわゆる政府の言う基本方針、今まだこちらには出ておりませんが、いわゆる政府の言う基本方針に従えば、自衛隊が平和維持軍に参加することについて憲法上問題は全くないのか、あるのか、この際法制局長官の御答弁を得ておきたい、こういうように思います。
  98. 丹波實

    ○丹波政府委員 前段の方につきまして私の方からお答え申し上げます。  過去の例を見ますと、今先生の御指摘になられた前提条件が崩れたような状況、二つ考えられると思います。一つは、一九七四年の七月のサイプラスで起こった事件、それから二つ目は、一九八二年にレバノンにイスラエルが侵攻してきた事件の二つだと思います。  前者の例でございますけれども、各国に電報を打って調べてみましたけれども、トルコ軍がサイプラスに侵攻してきたわけですが、そのとき、イギリスが参加しておりました部隊は撤退せずに持ち場にとどまってはいたけれども、侵入者であるトルコ軍に対して何らの行動もとらなかった。オーストリアの場合には、オーストリア部隊はトルコ軍に対し口頭で移動の停止を申し入れたけれども、武器の使用は行わなかった。それからデンマークにつきましては、自分たちは何らの措置をとることなく、ニコシアの本部に撤収した、こういう報告を受けております。  後者の、イスラエル軍がレバノンに入ってきたときには、例えばフィジー軍あるいはアイルランド部隊は基地内に戻り、自分たちとしては何らの抵抗行動もしなかった。あるいはノルウェー、オランダ部隊は道路上に車両、障害物を置いて侵入阻止を試みたけれども、武器を使用してイスラエル軍に対抗することはしなかったというようなことが報告されております。
  99. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  従来、政府といたしましては、平和維持活動のために編成されたいわゆる国連軍、これは俗称の国連軍でございまして、それにつきまして、個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないとした上で、その目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない、これは五十五年の政府答弁書でも申し上げているところでございます。  その政府見解の趣旨とするところでございますけれども、これは、平和維持軍の目的・任務が武力行使を伴う場合、これは通常、これに参加いたしますと我が国自身も武力行使をすることが予定されるという上に、さらに、仮に我が国自身が武力行使をしないといたしましても、当該平和維持軍が武力行使をするならば、それと結局我が国としても参加を通じてその武力行使と一体化することになるんではないか、こういうことで、結局みずから武力行使を行うのと同じような評価を受ける、こういうことで、したがって、そのような参加は憲法上許されない、かように従来、見解としてきたところでございます。  ところで、その目的・任務が武力行使を伴うような平和維持軍への参加でありましても、我が国としてまずみずから武力行使をしない、それから、かつ当該平和維持軍の行う武力行使と一体化する、こういうことがないのでありますれば、我が国が武力行使をするといっただいまのような評価を受けることはない、こういうことでございます。  で、今回の方針で参加いたします場合には、まず紛争当事者間での停戦合意が崩れるといったようなことで平和維持軍が武力行使をするというふうな、仮にそういう場合になりました場合でも、我が国部隊は当該平和維持軍から撤収するというふうなことが第一点。  それから第二点といたしまして、武器の使用は、我が国部隊の要員の生命等の防護、こういうものに必要な最小限のものに限られる、こういう前提をつけておりますわけでございます。  そういうことが明らかにされているわけでございますから、先ほど申し上げました、仮に当該平和維持軍におきまして武力行使に当たるようなことがあると仮にいたしましても、我が国としては任務の遂行に際しての武力行使、こういうことを伴わない行動に終始するということでございます。当該平和維持軍の武力行使と一体化する、こういったことはございませんので、我が国がみずから武力行使を行う、こういう評価を受けることはない、かように考えているわけでございます。したがいまして、我が国が基本方針に基づきまして行う平和維持軍への参加、これにつきましては憲法に反するものではない、かように考えているところでございます。
  100. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたので、終わります。
  101. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十一分開議
  102. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。筒井信隆君。
  103. 筒井信隆

    筒井委員 大蔵委員会の閉会中審査では、すべての真相を明らかにすること、そしてはっきりとした再発防止策をとること、そして責任ある者がちゃんとした、きちんとした責任をとること、この三位一体を要請して質問をいたしました。その責任というのは、もちろん大蔵省、それから証券会社、補てん先の企業、この三位一体の責任も追及しなければならないわけでございまして、田邊委員長が七日の衆院代表質問でこういう発言をいたしました。大蔵省は監督官庁として全く無能力であったと認めるのか、さもなければ、あしき慣行を黙認した共犯者としての責任を問わざるを得ない、この点を明確に浮き彫りにしたいというふうに考えます。  まず最初に、損失補てんのリスト公表がなされたわけでございまして、大手四社と準・中堅十三社、それから中小四社の公表がされました。しかし、中小四社の中以外の中小証券でも、発表した四社以外にも補てんがある、大蔵省はそう認めておられます。しかし、あるんだけれども、金額が少ないからリストの公表を促さないというふうに表明をしております。そのリスト公表を促す金額というのは幾ら以上なのか、幾ら以下だからリストの公表を促さないのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  104. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 中小証券につきましては、今回リスト公表が行われた証券会社はいずれもいわゆるディスクロージャーのルールに従いまして有価証券報告書の訂正が行われた会社でございます。私どもは、その有価証券報告書を提出している中小証券の場合にはディスクロージャー上のルール、すなわちこれは有価証券報告書の訂正の一つのルールでございますが、投資家の投資判断に非常に重要な影響を与えるという場合に、企業が公認会計士と相談をしつつ訂正をするかどうか対応するということになっているわけでございまして、そういう有価証券報告書の訂正が行われるような場合には、できるだけ自主的にその中身を公表するようにしてもらいたいということを要請しているわけでございます。
  105. 筒井信隆

    筒井委員 端的に質問だけに答えていただきたいと思うのですが、今お聞きしたのは、リスト公表を促す金額というのは幾ら以上なのか、その金額を聞いているわけでございまして、幾ら以下だから促さないのか、その金額を一言お答えいただきたいと思います。
  106. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今申し上げましたように、重要性ということでございますので、明確な基準を我々がつくっているわけではございません。これは公認会計士と企業が相談して、今申し上げたように、投資家の投資判断に重要な影響を与えるかどうかという点で訂正をするかどうかというのを考えて訂正をしているわけでございまして、重要性という場合に、いろいろな企業の要素があるわけでございまして、一律に数値基準があるというわけではございません。
  107. 筒井信隆

    筒井委員 全然質問に答えられていないのですが、中小証券の補てんは発表された四社以外にもある、しかしそれは金額が少ないからリストの公表を促さないと言っているわけです。現実にもう金額がわかっているはずなんです。幾ら以下だからその公表を促さないのか、幾ら以上のものを今まで公表を促してきたのか、それを端的にお答えいただきたいと思うのです。
  108. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ただいま申し上げましたように、重要性の原則に従って訂正を行う必要がある証券会社の場合に公表を要請したわけでございます。公表いたしました企業は、結果的には一億円以上というような損失補てん額になっている証券会社でございます。
  109. 筒井信隆

    筒井委員 大手四社、準・中堅十三社、それから中小四社が公表した際、これを大蔵省の方で要請した際に、幾ら以上の金額を公表してほしいという、そういう金額的な基準も話したのでしょうか。それとも金額的な基準は一切言わないで、それは各証券会社の自主的な判断に任せたのでしょうか。
  110. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもが公表をしてほしいあるいはした方が望ましいという要請をいたしましたのは、本省監理会社の場合には自主報告を求めております。その自主報告にあわせて税務調査などで指摘された分すべてでございますし、本省が監督しておりません、財務局が監督しております中小証券の場合には、税務調査などで指摘された分をすべて報告、公表している。そういうものを、損失補てんとして認定されたものを公表するようにということを要請したわけでございます。
  111. 筒井信隆

    筒井委員 この予算委員会でも質問されておりますが、山一証券の公表された分の最低金額は三千七百万円、そして最も低い藍沢は十四万円、物すごい差があるわけでございまして、聞くところによりますと、百万円以上の補てんを公表すると大手だけでも数百億円の規模の額が新たに表面化する、こうも言われておりますし、準・中堅十三社の切り捨て部分は数千件ある、こういうふうにも言われているわけですが、大蔵省として今度公表された最低金額以下のものは、これは補てんとしてはないというふうに断言されるのでしょうか、それともその点はよくわからないというふうにおっしゃるのでしょうか。その点どうでしょうか。
  112. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回公表されました内容は、申し上げましたように自主報告及び税務調査などで指摘されたものでございまして、これ以外が全然ないのかどうかという点につきましては、私どもが現在四社については調査、検査をしているわけでございまして、全くないというふうに申し上げるつもりはございませんし、ただ、あるかどうかという点については、自主報告あるいは税務認定で指摘されたものがすべて公表されておりますので、これ以外にあるということを今私ここで申し上げることもできない、ただ全然ないということも申し上げられないということでございます。
  113. 筒井信隆

    筒井委員 ないとも言えないしあるとも言えない、要するにわからないということですけれども、これは大蔵省の態度としておかしいと思うのですが、証券会社にすべて明らかにせよ、こういうことを一言要請すればそれで済むことで、報告しろと言えば済むことで、なぜ今まで補てんのすべてを大蔵省に報告せよ、こういう要請をしなかったのですか。今でもなぜまだわからないのですか。
  114. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 本省が監督しております会社に対しましては、自主点検をして、自主的にすべてを報告しろということを平成元年の十二月の通達と同時に要請したわけでございます。その際は、損失補てんというのはやはり営業特金などに絡むものでございますから、規模の大きな、本省が監理しております会社に対して要請をしたわけでございます。
  115. 筒井信隆

    筒井委員 質問に対する答えではないですが、ないかもしれないしあるかもしれない、こういう状態を続けている限りは今度の補てんの真相がはっきりしたということは全然言えないと思います。各証券会社がばらばらの金額、山一のように三千七百万が最低金額、当然それじゃその以下の補てんのところに政治家あるいは暴力団関係者がいる、こういう疑いを国民が持つのが当たり前でありまして、それらをすべて明確にさせなければいけない。そして、実際に大和の社長は記者会見で、政治家が絡んでいるかどうかについては個別にはっきり答えられる資料は持ち合わせていない、こういうふうに答えて明確にしてないわけでございまして、そして大蔵省の方は、今度の中小の補てんに関してのみは政治家や暴力団関係は含まれていない、これも明確にしているわけです。  じゃ、今度公表された中小四社以外の大手それから準・中堅、これらの公表された分、それから公表されて、あるかないかわからない部分、これについて政治家あるいは暴力団が補てん先として含まれているかどうか、これも、じゃ大蔵省はわからない、断言できないということになりますね。
  116. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほど来局長が御答弁を申し上げましたことを整理して、改めて私から申し上げたいと思います。  平成元年の十二月に通達を発出いたしました時点で、本省監理会社すべてに対しまして、すべての自主報告を我々は要請をいたしました。そしてその結果、自主報告は出てまいりました。その後、証券検査また税務調査の中で、自主報告をされていなかった、しかし損失補てんと認められるケースがあった、それが今回まとめて公表されたリストの内容であります。  その限りにおきまして私どもとしては今お尋ねのような問題があったとは承知をいたしておりませんが、現在、過般来の国会の御審議等の経過もありますし、四大証券について特別の検査をいたしております。こうした中において、委員が御指摘になりましたような視点も持って私どもとして検査に当たってまいりたいと考えているところであります。
  117. 筒井信隆

    筒井委員 じゃ、まだあるかないかわからない部分について当然政治家、暴力団関係者がいるかどうかもわからない。今の大蔵大臣の話ではそれらの視点も持って調査されるということなんで、その調査結果を待つことにしたいと思います。  それから、新発証券の割り当てによる利益提供部分、これについての質問に移りますが、新発証券の割り当てによる利益提供部分、損失補てん部分、このリストを公表したのは大和と日興と三洋、この三社でございまして、これらの三社は補てんと見て公表した。しかし、野村とか山一は補てんと見ないで公表しなかった。これもおかしな話で、各社ばらばらの基準、損失補てんの中に新発証券の割り当てというのが含まれると考えるのかあるいは考えないのか、これが各社ばらばらで公表されているわけです。  野村、山一の新発証券割り当てによる損失補てん部分、利益提供部分、これを公表してほしいと思いますが、どうでしょうか。
  118. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 新発証券の割り当てによる損失補てんの問題でございますが、確かに公表されているものの中では、野村証券、山一証券等ではそれは含まれておりません。  この新発証券の配分につきましては、損失補てんの目的を持って通常の範囲を超えて集中的に配分されたというようなものが自主的に点検されて報告をされ、あるいは税務調査で認定をされているわけでございまして、通常の取引の範囲内で行われて、しかも損失補てんを目的としてないというようなものについては、新発証券による割り当てを直ちに損失の補てんに充てているというふうな認定ができないわけでございます。  野村証券あるいは山一証券から我々が聞いたところでは、現在までのところ、新発証券の割り当てについては損失補てんのためにそういう集中的な配分をしたというものはないという報告を受けているわけでございます。
  119. 筒井信隆

    筒井委員 野村、山一に関しては新発証券の集中的割り当ての報告はないということはもう前からわかっているのですが、ないというふうに、損失補てんと考えられるような新発証券の割り当てはないというふうに今大蔵省は考えておられるのですか。それとも、これも調査中の中に入っているのでしょうか。
  120. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この自主報告についても我々としては現在検査の中で調査対象としておりますし、また九〇年四月以降についても、やはりこの新発証券の配分というもので行われていないかどうかという点も検査の対象にしているわけでございます。
  121. 筒井信隆

    筒井委員 それもまた調査中ということ、そして八七年十月から九〇年三月までの分は一応今度公表されたわけですが、しかしこれが真実すべてを出しているとは断定できない、先ほどの質問にお答えされたわけでございまして、これも早急に明確にしていただきたい。  それから、八七年の九月以前の分、これは一切報告されていないわけです。しかし、八七年十月からは、計算してみますと、十七社だけでもって一カ月五十九億円余りの損失補てんをしている、平均で。十月から突然月平均五十九億円余りの損失補てんをして、その以前の、九月以前は全くしていなかったなんて全く考えられないわけでございまして、この八七年九月以前については、これも今調査中なのか、それとも、それはもうないというふうに判断されて調査していないのか、その点お答えをいただきたいと思います。
  122. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 八七年、昭和六十二年の九月以前のことでございますが、平成元年の十二月に通達を出しましたときに自主点検を求めましたのはブラックマンデー以降でございまして、ブラックマンデーは昭和六十二年の十月に発生をしているわけでございます。それ以前については我々としてはこのような形の損失補てんはないというようなことで、ブラックマンデー以降ということで自主点検を当時求めたわけでございます。  現在検査に入っておりますが、検査は、主として現在九〇年の四月以降を中心にして検査を行っているわけでございます。もちろん検査の視野は別に限られているわけではございませんが、限られた人数で重点的に検査をするということでございますので、九〇年四月以降について特に重点は置いております。しかし、それ以前のものについても検査の過程で常に問題意識を見ながらチェックをしているという状況でございます。
  123. 筒井信隆

    筒井委員 それらのことをまとめますと、既に発表されている最低金額以下の部分を明確にすること。それから、野村、山一等に関しては新発証券の集中的割り当てがあったかどうか、これも明確にすること。それから三つ目には、八七年の九月以前の損失補てんの有無を明確にすること。それから四つ目には、公表された今度の九〇年三月までの分の、事実それ以外に、公表された分以外になかったかどうか、これも今検査中ということでしたから、それを明確にすること。五つ目には、今お答えされました九〇年四月以降の部分。この五つの部分すべてを明確にしない限りは、あるとかないとか、あるとすればそのリスト、これを明確にしない限りは真相が明らかになったと言えない。そして、それらの中に政治家のあるいは暴力団の名前があるかどうか、これも明確にされない。この五つの部分を明確にしない限りは政治家の関与がないとは断定できないし、真相が究明されたとは言えないというふうに考えるのですが、その点、大蔵大臣どうでしょうか。
  124. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員がいろいろの角度から述べられましたけれども、それぞれの問題意識を持って検査を行っているということは証券局長からお答えを申し上げました。また、少なくとも今日私の立場で言い得ることは、まず自主点検の結果自主報告が存在をした、そしてその中において証券検査を受けたところもございますし、順番からいってまだ回ってきておらないところもありますけれども、証券検査の中において見落としを発見したところもあります。そして、税務調査の結果、損失補てんという認定を受けたものを加えてそれぞれの企業は公表をされました。それについて、例えば幾ら以下は切り落とすとかそういう制限を設けたものではなく、すべてを自主報告を求め、さらに税務調査等が行われた結果が公表されておるということであります。そして、四大証券について今特別の検査を実施しておるということでありまして、その検査の結果がどういう内容になりますかは、これは私に今どうこう申し上げられることではございません。
  125. 筒井信隆

    筒井委員 私の質問は、ファントラ関係は別にして、今の五つの点が明確にされない限り真相究明がされたとは言えない、だからそれをせずしてこの問題の幕引きは許されない、こういう点を指摘しているわけですが、その点についてだけのお答えを求めているわけです。
  126. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、事実が解明されないままに幕を引くとか引かれないとかということは、院として御論議をいただいておる中で、私がその時期を明定することはむしろ僭越であると思います。しかし、それと同時に、再発防止の努力を、今わかっております事実の中からだけでも必死で組み立てようとする努力を我々が払うこともお許しをいただけることと思います。
  127. 筒井信隆

    筒井委員 再発防止を並行して考えるのはもちろんよろしいのです。ただ、私は、心配をしているのは、真相究明がされずにあいまいなまま終わってしまう、これを心配しているわけでして、それで今五つの項目について明確にしない限りは真相究明がされたとは言えない、その五つの項目全体について明確にする意思があるのかどうか、それを今確認したいわけです。そのことについてだけお答えいただきたい。
  128. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 なお委員を初め多くの方々のお持ちの疑念にこたえるためにも、この検査が速やかに終了することを私は期待をいたしております。
  129. 筒井信隆

    筒井委員 五つの項目、明確にする意思があるというふうなお答えの趣旨であるというふうに問いておきたいと思います。  そして、今度の公表されたリストの正確性について確かめておきたいと思いますが、公表されたリスト、それから訂正有価証券報告書を見ますと、今度の損失補てんは三つの項目に分けられている。それで申告をされている。一つは、訂正有価証券報告書の中で出されておりますが、取引関係維持に係る売買損益。それからもう一つが営業費用、販売・一般管理費中の雑費のうち一定の顧客との取引関係整理に係る費用。そして三つ目が営業外費用のうちの一定の顧客との取引関係整理に係る費用。取引関係維持に係る売買損益という項目と取引関係整理に係る費用が二つに分けられている。こういう三つの区別にされているわけでして、これ、聞くところによりますと、この三つの区別をはっきり確かめたいのですが、取引関係整理に係る費用、二つに分けられている分は、いずれもトラブルになって、その解決のために必要となった補てんである。これは現金と証券取引と、二つの方法で補てんをされている。  最初の取引関係維持に係る売買損益に関しては、これはトラブルにならないで補てんした例で、現金で補てんしたのはなくてすべて証券取引で補てんしている。こういう区別というふうに聞いているのですが、それでよろしいでしょうか。
  130. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 基本的には今御指摘のとおりでございまして、有価証券の売買損益として計上されているもの、それから主として現金で支払われたものの中に営業費用として落ちているもの、あるいは営業外費用の雑損として整理されているものというのがあるわけでございます。
  131. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、大和証券の報告を見ますと、すべてトラブルではない、取引関係維持に係る売買損益として報告されているわけです。しかし、大和の社長の記者会見の中身を見ますと、取引先と紛争があり、大和の営業部門にそれなりの落ち度があったのじゃないかということも補てんの理由となった、紛争とは、商いの中で的確な買い指示があったとかなかったとか、そういうことだ、紛争があって、トラブルがあって補てんした、この事実を明確に認めているわけです。しかし、大和の有価証券報告書だと、すべて取引関係維持に係るもので、つまりトラブルのものではないという形で報告されている。この点どうでしょうか。
  132. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 大和証券のケースにつきましては、私どもが報告を受けているところでは、すべて有価証券売買損として経理をされているということでございます。それはその過程においてお客との間でいろいろな話し合いがあったとは思うわけでございますけれども、有価証券売買損という形で損失補てんが行われた、したがって有価証券売買損という形で財務諸表上経理、整理されているというふうに報告を受けております。
  133. 筒井信隆

    筒井委員 聞いている趣旨にお答えいただきたいのですが、大和の有価証券報告書ではすべてトラブルではないというふうに報告されているにもかかわらず、大和の社長自身が明確に、紛争があった、トラブルがあったと、そういうふうに答えているわけで、ただこの公表されたリスト、訂正有価証券報告書は正確性に欠けるのではないかということを聞いているわけなんです。  同時にまた、野村証券の点に関してもですが、野村証券の方は、トラブルとなったのは全体の二百七十四億円余りの三十七億円余り、一割余りというふうに報告されているわけです、訂正有価証券報告書では。しかし、野村の社長の記者会見によりますと、リストの四十九社との問題は、予測したパフォーマンスが狂い、取引先と意見の違いが発生したものだ、おおむね事後の補てん要求から話し合いが始まった、お客様からの問題提起があり、トラブルのような形になった。おおむねトラブルのような形になったというふうに社長は答えているわけなんです。しかし、訂正有価証券報告書ではほんの一割余りしかない。この点はどうでしょうか。
  134. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 個々の証券会社の問題ではございますが、私申し上げましたように、個々の会社の経理、この損失補てんに伴います経理処理につきましては、個々の取引の実態に応じて経理処理が行われておりまして、これは会社と公認会計士、公認会計士の監査を経ているわけでございまして、お客との、投資家との間のいろいろな話し合いがあったということはあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、経理処理上は個々の取引の実態に応じて、あるいは有価証券売買損として経理処理される、あるいは営業外損あるいは雑損として処理されるということで、これは公認会計士と企業との間でそういう処理をするということについて特に問題がないというふうに判断したということでございます。
  135. 筒井信隆

    筒井委員 だから、お聞きしたいのは、訂正有価証券報告書というのは、そういうふうに項目別に報告されているけれども、全然正確じゃないんじゃないか。この有価証券報告書自体、もう一度明確に検査しなければならない。公表された資料からだけでも矛盾が生じている、このことを言いたいわけでございます。  この点で最後の例ですが、第一証券、第一証券の補てん額四十九億余りのすべてが取引関係維持に係る売買損益、つまりトラブルでないという形ですべてが報告されております。しかし、これも公表されているものですが、第一証券がダイイチファイナンスに補てんした件、これは無断売買で、明確なトラブル処理、このことを双方が認めているわけでございまして、無断売買ということからトラブルになって、それで補てんした。しかし、第一証券の有価証券訂正書ではトラブル部分は全くないというふうに報告されている。この点も先ほどみたいな抽象的な答弁なら必要ないですが、もし具体的な事実として今何か答えられるものがあればお答えいただきたいと思います。
  136. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 具体的なお話、御答弁を申し上げるあれではございませんが、先ほど申し上げましたように、個々の取引の実態に応じて公認会計士と相談の上で経理処理が行われておりまして、これについて特に問題があるというふうには私どもも考えていないわけでございます。
  137. 筒井信隆

    筒井委員 何も調べてなければ、また調べる意思もなければ問題ないというふうに判断されるでしょうけれども、今幾つかの例を挙げましたように公表された事実からだけでも矛盾がある、正確性に疑いがある。この訂正有価証券報告書自体本当に正確なものなのかどうか、真実を報告したものなのかどうか、これも明確にやはり検査していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  138. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 既に出された有価証券報告書の有価証券売買損益あるいは営業費用、営業外費用の中に損失補てんにかかわるものが入っていて、特に有価証券売買損益なんかの場合にはそれは通常の有価証券の売買による損益ではないというような認識で、その部分について特に区別をして内書きで明記をするというような扱いをしているわけでございます。営業費用、営業外費用も同じように取引関係整理のためということで内訳をより明瞭に示すということで、明瞭開示の観点からその内訳の表示を求めて訂正報告書が出されているわけでございます。  私どもとしては、このような明瞭な開示をするという観点に立って、内書きで書かれたという表示で、特にこの有価証券報告書の明瞭性を著しく損なうというふうな感じを持っているわけではございません。とりあえず、一応こういう形で明瞭に表示されれば有価証券報告書としては十分ではないかというふうに考えているわけでございます。
  139. 筒井信隆

    筒井委員 今までももう既に有価証券報告書が出されていて、しかしそれが正確ではなかったから今度訂正有価証券報告書を出したわけで、そういう正確でない場合に正確なものにさせるというのが一つの大蔵省の任務だろうというふうに思いますけれども、その任務を果たすことを、今幾つかの例を挙げましたようにもう既に矛盾があるわけですから、それを要求しているわけでございまして、明確にやはりしていただきたいというふうに思います。  そして、今回の損失補てんに証券取引法違反はなかったのかどうか、この点の質問に移りたいと思います。  大蔵省は、証券取引法に触れる違法な行為はない、これを大前提に今行動をしております。もし法令違反があれば、証取法の公開の審問をした上で証取法上の処分をしなければならない。今まで証取法違反と大蔵省は考えていないから、だから証取法の審問手続も処分も一切やっていない。証取法違反があれば大蔵省の前提は完全に大きく崩れてしまうわけでございまして、具体的なケースとして具体的な事例でお聞きをしたいわけですが、今度の損失補てんのうち、先ほどから聞いておりますトラブルとなった場合あるいはクレームがついた場合、トラブルとなって話し合いの上に証券売買で補てんしたケース、これが結構たくさんあるわけですけれども、そのケースに限って確かめたいと思います。  トラブルになって話し合いをした上に、損失を補てんするために価格のはっきりしない国債とかワラント債を低い価格で購入して、そして同日あるいは翌日に高く買い戻して利益を提供する、こういうケースがたくさんございました。高い価格で買い戻すことを約束しない限り、既に損を出したためにトラブルになっているお客ですから、そして価格のはっきりしない証券ですから、これを購入することは考えられない。損失を補てんするために高く買い戻して利益提供することを約して勧誘した、こういう場合が極めてたくさんあるんじゃないでしょうか。そして、これは特別の利益提供を約して勧誘することが健全性省令にもそれから証券取引法にも違反するわけでございまして、だからもう一度確認しますが、トラブルになって、話し合いの上損失を補てんするために価格のはっきりしない国債とかワラント債を低い価格で購入させてすぐに高く買い戻して利益を提供したケース、これはいずれも特別の利益提供を約して勧誘した例に当たるのではないですか。
  140. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもも、今御指摘のような取引について証取法第五十条にあります特別の利益提供を約して勧誘する行為に該当しないかどうかという点について検討をしてまいったわけでございます。検討が終わったというふうに申し上げるつもりはございません。しかし、現在までの検討では、この損失補てん行為といいますのは、安く売って高く買い戻すという取引ではございますけれども、その行為自体がこの五十条に言う勧誘行為、これは投資家の投資判断をゆがめるといいますか悪影響を与えて証券取引の公正を害するという趣旨から、特別の利益提供を約して勧誘するという勧誘行為を禁止しているわけでございまして、そういう法の趣旨から申し上げますと、投資家の投資判断をゆがめて取引の公正を害するというような解釈をこの行為についてすることができるのかどうか。単に安く売って高く買うというような利益供与のための行為にすぎないんではないか。五十条で禁止しております勧誘行為というものの趣旨からした場合に、直ちにこういうような損失補てん行為が特別の利益提供を約して勧誘する行為に該当するというふうに解釈することはかなり難しいんではないかというのが現在までの私どもの検討の結果でございます。
  141. 筒井信隆

    筒井委員 きのうの同僚の仙谷議員の質問にもこれが出たわけでございますが、今のお答えですと、利益提供を約して勧誘したことは認められるけれども、それが特別の利益と言えるかどうかはわからない、こういう趣旨でしょうか。
  142. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今私が申し上げましたのは、そういうふうな、つまり一つの問題としてはまず特別の利益提供に当たるかどうかというのに該当する行為もございます。これは、例えばいわゆる金利相当分のようなものを供与する、いわゆる現先取引のようなもので行われる場合には必ずしも特別の利益提供というふうにも言えないと思いますし、あるいは取引によっては勧誘行為が、勧誘といいますか、全く証券会社が独断でといいますか、行って後報告をするというような行為形態もあるわけでございます。したがいまして、今回の損失補てん行為の中にはそういったものがいろいろと含まれているわけでございますが、仮にそういう特別の利益提供という、要するに特別の利益提供になるという場合でも、今申し上げたようなこの五十条の趣旨からして、直ちに五十条の特別の利益提供を約して勧誘する行為に該当するというふうな解釈が非常に難しいんではないかというのが先ほど御説明した内容でございます。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  143. 筒井信隆

    筒井委員 大体、検討がまだ終わっていないとか言われましたけれども、そんなものもうとっくにはっきりしていることなんで、これをまだ今も、今のところ言えないけれどもまだ検討が終わったとは言えない、こういう形で逃げるのはやめていただきたいと思うのです。  明確に確認しますが、高く買い戻すということを約束して勧誘した行為、勧誘する行為、これはこの健全性省令、証取法に違反するんでしょうか、違反しないんでしょうか。もう一度確認しますが、高く買い戻すことを約束して購入を勧めた行為、ワラント債でも何でも、その行為は健全性省令、証取法に違反するのですか、しないのですか。
  144. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 それは、先ほど申し上げましたように、その取引の状況によると思います。損失補てんのように明らかにただ補てんじて利益提供するというだけの行為である場合に、果たして勧誘行為と言えるのかどうかという点については、必ずしも勧誘行為とは言えないというふうに私どもは考えているわけでございます。
  145. 筒井信隆

    筒井委員 今ワラント債の購入について言っているわけで、ワラント債でも国債でもいいんですが、それらの証券の購入を勧める際に、高く買い戻す、すぐ、同日があるいは翌日に、どちらでもいいんですが、高く買い戻すことを約束してそのワラント債の購入を勧める、これはまさに勧誘行為そのものじゃないですか。これが勧誘行為じゃないとしたら何ですか、一体。  だから、もう一度確認しますけれども、厳密に限定して言いますが、高く買い戻すことを約してワラント債の購入を勧めた、これは特別の利益提供を約して勧誘した行為に当たるのか当たらないのか、どちらですか。一般的に言わないでください。今の事例だけについてお答えください。
  146. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 高く買い戻すことを約して勧誘すると言われましても、今回の場合にはそれだけを切り離して判断するというわけにはいかないのではないか。つまり、高く買い戻すという行為が当然利益提供、つまり損失補てんということで行われるわけでございますから、その行為は全体としてとらえるということに考えるのが自然であって、そうなると、私どもがさっき申し上げたように、それは勧誘行為というものではないんではないかというふうな考え方を現在のところはとっているわけでございます。
  147. 筒井信隆

    筒井委員 今は、証券取引、証券の売買という形で補てんをした、それだけを切り離して、それだけを取り出して聞いているわけなんです。これも証券取引であることは間違いない。それ自体が証取法に違反するのかどうか、なぜ切り離して判断できないんですか。切り離して判断したら明確に証取法違反でしょう。切り離してしたら自然ではないなんて、どうして自然じゃないんですか。一つ一つの証券取引を見て、それが証取法に違反するかどうかを判断するわけでしょう。今、補てん行為としてされた証券売責取引、それ自体をとらえているわけです。それだけ取り出してみれば、これは証取法違反も明確になるでしょう。もう一度お答えください。
  148. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、私どももこの条項に違反するかどうかという点について検討を進めてまいったわけでございますが、しかし、五十条の趣旨、ある特定の勧誘を禁止している趣旨といいますのは、投資家が投資判断をする際にその判断をゆがめて、公正な取引をゆがめるということを防止するためにこういう勧誘行為を禁止しているわけでございまして、そういう趣旨からいいますと、今回の損失補てんのための取引というのは、五十条で禁止しているような勧誘行為に当たるというふうに言うのは非常に難しいんではないかというのが我々の考え方でございます。
  149. 筒井信隆

    筒井委員 その点は、事実上この行為は特別の利益提供を約した勧誘行為であることをお認めになっておられるけれども、しかし、それが証券市場をゆがめるものとして判断できるかどうかわからないから、だから難しいんだというお答えのように見えます。しかし、特別の利益提供を約して勧誘する行為自体が、それ自体がもう証券市場をゆがめるんだ、だから証券取引法で禁止しているわけで、この特別の利益提供を約して勧誘するというその構成要件に該当する限り、もう必然的にそれは証券市場をゆがめるんだ、こういうことが前提の条文じゃないでしょうか。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私が申し上げております。は、この損失補てんのための安値売却、高値買い取りという行為そのものは、あくまでも利益提供を目的とした行為ということでございまして、投資判断に影響を与えて公正な取引をゆがめるような勧誘行為というふうに解釈するというのは難しいというふうに申し上げているわけでございます。
  151. 筒井信隆

    筒井委員 同じような答えばかりして逃げておりますが、ただこれは大蔵省の今までやってきた行動の大前提が崩れる重要な問題なんで、具体的な事例でお聞きをしたいと思います。  京都市職員共済の例でございますが、これも昨日、同僚の仙谷議員がこの事例について別の観点から聞いているわけでございまして、これが解約することになった際に三億六千三百万円の評価損が出ていた。そういう損が出てしまったので、野村と相談して、野村の勧めで、元本割れを避けるためにワラント債の購入を決めた。損失補てんとの指摘を受ければそうでなかったとは言えないというふうにこの点都市職員共済の側が声明を出しているわけでございまして、野村が元本割れを避けるためにワラント債の購入を勧めた。元本割れを避けるというためには、もちろんこのワラント債を高く買い戻して利益を提供しなければならないわけでございまして、高く買い戻して利益を提供する、これを約してワラント債の購入を勧誘した。まさにこの事例に当たると思うのですが、どうでしょうか。
  152. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の取引、私どもも把握をしております。確かに元本に三億数千万の評価損が出た、それをワラントの取引によって補てんをしたという取引でございます。ただ、これにつきましても、先ほど来申し上げておりますように、これはあくまでも損失を補てんする、元本を補てんするために行われた行為でございまして、これが五十条に禁止しているような勧誘行為に該当するというふうに解釈するのは極めて難しいんじゃないかというのが私どもの考え方でございます。
  153. 筒井信隆

    筒井委員 利益提供を約してワラント債の購入を勧誘した、こういう行為に該当すること、これ自体は事実ですね。それが証券取引法に該当するかどうかは、さっき言ったように別の何か変な理由をくっつけて否定されておりますが、まず厳密に確認したいのは、利益提供を約して、つまり高く買い戻して利益を提供する、これを約してワラント債の購入を勧誘した、こういう行為であることは事実ですね。その点についてだけお答えください。
  154. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 具体的なそのときの状況を私は存じません。提供を約して勧誘をしたのか、あるいはそういう行為を申し入れたのかという点については、その状況がよくわかりません。したがいまして、勧誘という行為というものが果たして行われていたのかどうか、その点については一体として損失補てん行為だというふうに私どもは考えているわけでございます。
  155. 筒井信隆

    筒井委員 だから先ほど野村の勧めでということを最初に言ったわけで、野村の勧めでワラント債の購入を決めた。勧めというのはまさに勧誘そのものじゃないですか。この事実について、今知らないと言われましたけれども、知らないのになぜでは証取法違反ではないというそういう断定ができるんですか。まさにその点が問題になっているのに、しかもこれほど大きな報道の事実になっているのに、これについて事実を全然知らない、判断できない。証取法違反を今調べてないんですか。そもそも調べる気がないのですか、どうですか。
  156. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私は具体的な事実を承知していないと申し上げたのは、その場でどういうふうなことが行われたかというのを存じ上げてないという意味でございまして、取引そのものは、御指摘のような取引が行われたということは我々も認識をしているわけでございます。
  157. 筒井信隆

    筒井委員 まさにいずれも逃げの答弁で、もし今のが本音であるとすれば、大蔵省は一切調べるつもりがない、その意思がない、能力もない。まさに田邊委員長が代表質問で言ったそのことを証明することになるわけで、能力がないのかあるいは共犯かどちらかしかないというふうに判断せざるを得ないと思います。  次に、新発証券の割り当てに関してですが、大和と日異と三洋が新発証券を集中的に割り当てた、そういう形でリストを公表しております。そして、このうちの大和と三洋はすべて取引関係維持に係る売買損益として公表をしております。その取引関係維持のために、つまり有価証券取引の継続を勧誘するために新発証券を割り当てた場合は、これもやはり証取法違反になるのではないか、この点を確認したいと思います。新発証券、有利な証券なわけでございまして、これを割り当てる、そのことを約束して、取引関係維持のためにそういうことをやって、そして別の有価証券の取引を勧誘する、これもやはり特別の利益を提供することを約して勧誘する行為、証取法違反に当たるのではないですか。その点どうですか。
  158. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに新発証券は、それが利益を生むチャンスというのは大きいことは事実でございます。ただ、新発証券を配分する行為そのものが直ちに特別の利益提供になる、あるいは、それを勧誘した行為である、五十条で言う禁止行為に該当するというふうには私どもは、検討の結果そういうふうに考えるのは困難ではないかというふうに考えているわけでございます。
  159. 筒井信隆

    筒井委員 今、損失補てんとして発表された新発証券の割り当て、これに限って聞いているわけです。損失補てん、つまり利益を提供したわけでしょう。利益を提供しなければ損失補てんにならないわけで、しかもこれを取引関係維持のために、これからの証券取引を続けるためにこういう行為を行った。これもまさに特別な利益を提供することを約して勧誘する行為そのものじゃないですか。それ自体検討されていないとすれば、大蔵省の態度もおかしいんじゃないですか。それもさらに引き続いてまた検討をいただきたいというふうに思います。  それから、その次ですが、大蔵省は今回の損失補てんをそもそも前から知っていたんではないか、知っていて容認していたんではないか、九〇年三月ごろまでわからなかったなんてうそである、この点をお聞きをしたいと思います。  まず、営業報告書とか附属明細書、これを各証券会社から大蔵省に毎年度、毎営業年度提出することになっておりまして、この附属明細書等の中には有価証券の売買とか引き受けとか募集または売り出しの取り扱い状況を明確にさせるというふうになっております。そしてさらに、附属明細書と営業報告書だけではなくて、定期資料というのをこれも提出させている。有価証券売買引き受け等状況表とか商品有価証券明細表、こういうものはこれは毎営業年度ではなくて毎月出させている。毎月、翌月の十五日までに出させている。この定期資料の方は通達に基づくもののようでございますが、これらの営業報告書、附属明細書、それから定期資料、これらの資料を見ても損失補てんの事実、これはわからないんでしょうか。
  160. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の資料は、特に有価証券の引き受け売買状況表、これは定期資料として報告をとっているわけでございますが、ここに書かれております有価証券の引き受けあるいは売買状況といいますのは、自己、委託の別の売り買いの合計の金額と件数だけでございますので、この資料だけからその損失の補てん行為があるということを把握するというのは困難であるというふうに考えているわけでございます。
  161. 筒井信隆

    筒井委員 今の定期資料、附属明細書、営業報告書等ではわからない。じゃ次に法定帳簿、これについてはどうですか。法定帳簿には注文伝票とか有価証券取引日記帳、顧客勘定元帳、こういうものをいずれも作成義務を課している。例えば顧客勘定元帳では顧客名とか約定年月日とか銘柄、数量、単価、金額、受け渡し月日、こういうものまで記載されることになっている。この法定帳簿を見れば、今度の損失補てんはわかるんじゃないですか。
  162. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 法定帳簿は確かに詳細な内容の記述を要求しております。ただ、それは作成をして会社に保存しておく。我々が定期検査などに行ったときにその法定帳簿をチェックするというようなことになっているわけでございまして、そういった意味では法定帳簿、法定帳簿だけというわけではございません、検査に行った場合にはあるゆる資料をチェックするわけでございますが、そういったものを総合的にチェックをするということによって損失補てんを把握するということはある程度可能だというふうに考えるわけでございます。
  163. 筒井信隆

    筒井委員 法定帳簿を見れば今度の損失補てんはわかる、そういうふうに今お聞きしておきます。  これと同じことですが、売買一任勘定元帳、この作成、備えつけ義務も通達で課しておりますね。この売買一任勘定元帳は顧客別に契約年月日、契約期間、売買年月日、売買銘柄、売買株数、売買金額、損益の額、現金、信用の別、こういうものを全部書くように指示されている。この売買一任勘定元帳も見れば今度の一任取引に関しての損失補てんの有無もわかりますね。
  164. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 売買一任行為が今御指摘になりましたような契約をちゃんと結んで行われていればその元帳に記載することになっておりますから、それを見れば売買一任勘定があるかどうか、あるいはどういうふうな契約の内容になっているかということは把握できます。
  165. 筒井信隆

    筒井委員 売買一任勘定元帳を見ればわかる、こういう答えとして今の趣旨をお聞きしておきます。  そうしますと、法定帳簿と売買一任勘定元帳、これは作成、備えつけ義務ですから、確かにそこへ行ってそれを見なければだめだ。しかし、先ほど言いました定期検査、これほどのくらいの頻度で、八七年の十月以降に限ってでも結構ですが、なされていたのでしょうか。
  166. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 定期検査は、これは本省が行うもの、財務局が行うものとあるわけでございますが、本省が直接監督しております二十二社に対しましては、おおむね二年、二年半ぐらいの周期で定期的に行っております。
  167. 筒井信隆

    筒井委員 じゃ、大手四社、準・中堅十七社、いずれもほぼ毎年以上どこかの会社に定期検査をなされているというふうにお聞きしてよろしいですね。
  168. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今申し上げたように、二十二社に対しましては周期二年半ぐらいでやっておりますので、毎年どこかの証券会社には検査に入っております。
  169. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、毎年入っていて、今の法定帳簿や売買一任勘定を見れるわけですから、それらを総合して見るというふうに先ほど言われました。そうすると、八七年中にその大手四社か準・中堅、どこかでもって損失補てんがあったということをもう既に知っていたということじゃないですか。どうですか。
  170. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほども申し上げましたように、八七年の十月にブラックマンデーが起きて、そのときにこういう損失補てんのもととなる大きな損失が出たということで、我々もそれをブラックマンデー以降の自主点検ということで自主的な報告を求めたわけでございます。そのブラックマンデー以前の検査におきましては、このような大規模な損失補てんというようなものは、検査においても把握されておりません。もちろんトラブルとかそういったようなものはあるわけでございますが、こういったような大規模な損失補てんが発生したのはブラックマンデー以降だというふうに我々は承知しております。
  171. 筒井信隆

    筒井委員 大規模だろうが小規模だろうが一緒に聞いているのです。  それで、今度の訂正有価証券報告書によりますと、例えば野村証券は八七年の十月一日から八八年の九月までの間に二十二億円の損失補てんを報告してきている。大和も八七年の十月から八八年の九月までの間に五億円余りの損失補てんを報告してきている。日興は同じ期間に二十六億円余り、山一は非常に大きくて、今の同じ八七年の十月一日から八八年の九月までの間に三百十八億円の損失補てんを今度の訂正有価証券報告書で出してさている。まさにこんなにたくさん損失補てんがあったわけじゃないですか。先ほど言いましたように、法定帳簿とか売買一任勘定を見ればわかる。それを、検査に入っていでこれが当然わかっていたわけじゃないですか。もう一度お答えください。
  172. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 山一証券につきましては、最近の検査が八九年の十月に、これは着手日でございますが、行われております。その八九年の十月の検査においては、既にある程度の損失補てんをその検査において把握していたということでございます。
  173. 筒井信隆

    筒井委員 山一証券については九〇年の三月以前にもうわかっていたということを今お認めになられたのですが、じゃ、日興はいつ入りましたか、この八七年十月以降では。それから日興と大和と野村についてお答えください。
  174. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 日興証券は八八年の一月、つまり昭和六十三年の一月十九日に着手しております。それから大和証券は同じ六十三年四月十九日、それから野村証券は平成元年の一月十二日でございます。
  175. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、大和に関しては八八年、日興に関しても八八年、山一に関しては八九年、この時点で損失補てんの事実を大蔵省は知っていた、そういうことですね。
  176. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証券検査の中において、ある程度の損失補てんは把握をしております。ただ、すべてを把握できている上いうわけではございません。これは、公表された額の中に我々が検査で指摘したものも入っているわけでございますが、当時検査において把握した損失補てんの額というのは、公表額よりも検査の把握額は少ないわけでございますけれども、いずれにいたしましてもそのおのおのの検査においてある程度の損失補てんがあったという事実は把握しております。
  177. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、大蔵委員会で私の質問に対して、九〇年の三月時点になってから、それに近づいた時点で初めて知ったというのはまさにうそであることがはっきりしたわけでございまして、その以前の検査のところでもうわかっていた、しかしそれが全部わかっていたわけではないという今の答弁ですけれども、今度発表されたうちの何割ぐらいが大蔵省は検査してつかんでいたのですか。
  178. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 正確な数字は現在手元に持っておりません。ただ、こういうような検査で見つかったということを受けて元年十二月に通達を発出したわけでございます。
  179. 筒井信隆

    筒井委員 もう八八年の時点で、少なくとも八八年、もうその前からわかっていたと思いますけれども、今お認めになられたのは、八八年の時点で損失補てんの事実はわかっていた。ただ、今一部と言われたから、それで聞いているので、もし検査をそういうふうに全面的にやって、法定帳簿とか取引勘定元帳とか調べておきながら今度公表されたもののほんの一部しかわからなかったとすれば、大蔵省の調査能力がない、能力がないということの証明になりますし、もし能力があったなら、ほとんど今度公表されたうちの八割、九割これはわかっていたことになるので、厳密に幾ら幾らまでわかっていたかどうかは確かめないでいいですが、ほとんどわかっていたのか、ほんの一部にすぎないのか、大蔵省のまさに調査能力の問題に関係しますので、その点確認しておきたいと思います。
  180. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 非常に補てん額が大きい山一証券については、ほぼあの補てん額に近いものを検査で把握しておりました。――ほかは金額が小さいものですから、現在ちょっと私記憶にないわけでございますが、検査においてそのごく一部しか把握していなかづたというようなことではないというふうに記憶しております。
  181. 筒井信隆

    筒井委員 もちろん言うまでもないことですが、大蔵委員会であったとしても極めて重要な委員会でございまして、そういうところでもって事実に反したようなそういう答弁はぜひしないでいただきたい。このことをここで、大蔵大臣意見がありましたら。
  182. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、たしか平成元年の十一月に、ある特定証券会社の損失補てんが発見をされましたとき、また報道されましたとき報告を受けたという御答弁を申し上げたと記憶をいたしております。また、十二月に通達を発出する直前にその通達の趣旨を報告を受けた、そのように申し上げておると思います。私自身はそれ以前にその報告を受けておりませんでしたので、大変申しわけありませんが、私の報告を受けた段階からをお答えをしたと思います。
  183. 筒井信隆

    筒井委員 証券局長自体が、大蔵省として証券局としては九〇年三月の報告そのあたりまで、三月より少し前に出されたところもあるので、三月に近い期日になって初めて知ったというふうに答えられているので、じゃ、それは明確にうそですね。
  184. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 損失補てんにつきましては、私が申し上げましたのは全貌を、自主報告、自主点検を求めてその報告を求めて、全貌を把握したのが平成二年の三月でございます。この検査においてときどき、この検査のたびに損失補てんを各証券会社について把握をし、それについて検査を通じて指導をし、あるいは是正を求めるというような、検査におけるいろいろな処理はしておるわけでございますが、すべてこういうふうに大規模な損失補てんが行われたというふうなことを把握したのは自主点検あるいはその元年十一月の大和証券の損失補てんが明らかになってからということでお答えをしたわけでございます。
  185. 筒井信隆

    筒井委員 すべてが一〇〇%わかったのがいつかという質問ではなくて、損失補てんについて知ったのがいつかという質問に対してそういうふうに答えておられたから、だからこれは明確なうそであるという主張をしておるのです。その点明確に抗議をもう一度言っておくと同時に、今度の損失補てん、しかもこの九〇年の一月から三月までの分の金額を大蔵委員会の方でも聞いたときに、いろいろな理由をつけて、余り理由にならない理由ですが、拒否されておりましたが、今度この通達後の損失補てん分を公表されました。それを見ますと、今度の損失補てん全体のうちの約半分が、大蔵省が通達で禁止した以降の三カ月間に集中しでなされている。それまでの八七年十月からの平均の補てん額を計算してみますと約三十三億円ですが、大蔵省が禁止した以降の補てんが平均で月二百七十六億円、八倍以上に上っているわけでございます。大蔵省がやめろと言ってきたからなおさらやった、結果を見ればまさにそういうふうに見えるわけでございまして、これは大蔵省が見逃したとかなんとかという理由ではなくて、まさに大蔵省が容認した一つの根拠じゃないですか、その点どうですか。
  186. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 元年十二月に通達を発出いたしまして、その最初に事後の損失補てんは厳に慎むことという通達を出したわけでございます。あわせて、その損失補てんの温床となる営業特金の適正化というものもその通達に織り込んだわけでございます。その際に、本省監理会社二十二社に対しまして自主点検を求めて自主報告を求めたわけでございます。それが平成二年三月でございますが、その自主報告を受けたときに、結果としてではございますが、平成二年の一月から株価が急落をした。その急落局面において営業特金の適正化をめぐって相当数のトラブルが出た。トラブルといいますか、要するに適正化をめぐってお客との間でいろいろと意見の交換が行われ、そのために余儀なく損失補てんをしたんだということを証券会社各社から説明を受けたわけでございます。確かに結果として通達発出後の損失補てんが非常に多額に上っている点については、通達が遵守されなかったという点について大変我々も責任を感じているわけでございますが、当時の状況は、今申し上げましたように平成二年の一-三月の株価急落局面という中で営業特金の適正化を進めるというような状況の中でこういう損失補てんが行われたということでございます。
  187. 筒井信隆

    筒井委員 全く私の質問に答えてないんですが、先ほどの点で一つ確認しておきたいのは、大手四社について八七年の十月一日以降八七年中に検査に入っているところがないというふうな先ほどのお答えでしたが、八七年中に調査に入っている、特に八七年十月以降調査に入っている証券会社、準大手・中堅含めてでよろしいですが、それはどこになりますか。
  188. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ちょっと古い検査の着手日でございますので、今手元に資料がございません。後ほど調べてお答えしたいと思います。
  189. 筒井信隆

    筒井委員 では後ほと明確にしていただきたいと思います。八七年に必ず入っているわけでして、入っているとすれば当然先ほど言った資料を見ているし、また見ていなければならないわけで、八七年中からもう損失補てんの事実を大蔵省がつかんでいたということが明確なこととして言えるだろうと思うので、その追及もさらにしていきたいと思います。  次に、各補てん先企業ですが、認識しておりませんとほとんどの企業が言っております。しかし、これもやはり大蔵省と一緒ですが、明確なうそであるというふうに思っておりまして、もちろん認識していないものが一部あるでしょうけれども、ほとんどの場合は認識している。特に、トラブルになってクレームをつけて、そして話し合いの末補てんした場合、こういう場合にはこれはもう補てんの認識が明確にある、これはまず少なくとも言えますね。
  190. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもの立場として、その補てん先がどういうふうな状態になっていたかというのはわかりませんし、トラブルの具体的な状況というのも把握をしておりません。したがいまして、個々の取引の状況によるわけでございまして、補てん先の認識の問題については私の方からお答えをできるような立場にはございません。
  191. 筒井信隆

    筒井委員 先ほど各証券会社の社長の声明の内容も言いましたけれども、トラブルになったのが非常に多い、クレームがついて話し合いの上になったのが非常に多いというふうに言っているわけでして、当然のことながら話し合いの末補てんした場合は補てん先企業は認識しておる、これははっきり言えるわけでございます。ただ、それを大蔵省がわからないと言うのならそれでもいいんですが、お聞きをしたいのは、証券取引法において売買報告書を証券会社は遅滞なく交付しなければならない義務がございます。それから大蔵省の通達において、これは「有価証券の売買一任勘定取引の自粛について」という通達ですが、取引の都度行う売買報告のほか、月間取引状況についての月一回の報告義務、これを明示した契約書を締結せよという指示をしているわけでございまして、取引の都度行う売買報告、それから月間取引状況についての月一回の報告、これが各企業に行って、各企業はそれを見れば当然補てんを受けていた事実はわかりますね。
  192. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、証券取引法第四十八条に売買報告書の送付が義務づけられております。私どもが証券会社から聞いているところでは、この売買報告書を送付している、当然これは法律の義務でございますから送付をしております。  なお、売買一任勘定でございますが、これは現在までのところ、私どもはこの損失補てんについて売買一任勘定があったというふうな事実は把握をしておりません。  なお、営業特金の場合でございますが、これは特定金銭信託が信託銀行に設定をされております。したがいまして、証券会社からの売買報告書は信託銀行に行くということになります。
  193. 筒井信隆

    筒井委員 補てん先企業に売買報告がその都度かあるいは月一回か、それが証券会社からかあるいは営業特金のように信託銀行からか、それは別にして、それが必ず届けられていた、そういう実態がある、そのことは事実ですね。
  194. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもが証券会社から報告を受けておる限りは、そのとおりでございます。
  195. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、当然それを見れば損失補てんの事実はわかるわけでしょう。その点だけ。
  196. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 これはその送付を受けた企業の問題でございます。我々としては送付をしたというところまでは証券会社の報告を受けているわけでございます。
  197. 筒井信隆

    筒井委員 今実際に各補てん企業はそれを見て認識したかどうか聞いているのじゃなくて、それを見ればわかりますねということを聞いているのです。その点だけお答えください。
  198. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 売買報告書は売買の内容を書いてあるわけでございます。ただ、損失補てんのために行われた取引の中には通常の値幅制限の中で行われておる取引もあるわけでございまして、すべてその売買報告書を見れば直ちにわかるというふうには必ずしも言えないのではないかというふうに思います。
  199. 筒井信隆

    筒井委員 大体取引状況を見れば、それまでの営業特金とか何かは物すごい損失を出していた、しかしある日突然ワラント債が何か購入して買ったことになって、そして直ちに同じ日に売っている、損した復そういう事実があれば、だれだってそれはもう損失補てんとわかるでしょう。それを見たってわからないということですか。
  200. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 通常の取引の形をとっているということで今お答え申し上げたわけですけれども、確かにそういういろいろな状況を勘案してその売買報告書を見ればわかる場合が多いというふうに私は思います。
  201. 筒井信隆

    筒井委員 極めて官僚的な答弁で、まあそれでもいいです。わかる場合が多い、その点だけ確認をしておきます。だから、企業のほとんどがわからないと言っているのは、これはそもそもおかしいということがそのことからも出てくるだろうというふうに思います。  次に、事前の損失保証、利益提供約束の有無の問題、これについてお聞きしますが、これは今特別検査の主な目的であるというふうに言われておりますので、その検査結果を待ちたいと思います。しかしその際の態度ですが、もちろん事前の損失保証というのは明確に証券取引法に違反するわけですから、そのことを書面において約束したのは恐らく例外だろうと思います。それから、ややあいまいにやはり書くだろう。明確に証券取引法違反であることがだれから見てもわかるような形でなかなか証拠は残さないことが当然予測されるわけでございまして、そんな明確な、だれもがしないような形のものがなければ事前保証はないんだというふうな考え方で検査をしないでいただきたい、当然そうしているだろうと思いますが。  その上でお聞きをしたいのですが、特に一任勘定で目標利回りとか予定利回りあるいは予想利回りとかいうこともあるようですが、これを設定すること自体、これについての大蔵省の考え方をお聞きしたいと思いますが、一任勘定ですから顧客がみずからの責任で行う努力目標にはならないわけです、目標利回りは。証券会社がみずからの責任でその顧客にその利回りを目標あるいは予定として約束する、こういうふうな形になるわけでして、こういうことを設定すること自体、目標利回りとか予定利回りとか予想利回り、このこと自体がもう事前保証の疑いが非常に濃いのではないかというふうに思うわけですが、その点どうでしょうか。
  202. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに私どもが聞いている中にも運用努力目標利回りとかいうような名前をつけて努力目標を示しているというようなケースがあるというふうに聞いているわけでございます。これが直ちに利回り保証になるかどうかという点につきましては、単にこの言葉だけを見て判断するというわけにはまいりません。やはりその取引が始まった状況あるいは相手方の認識の問題、いろいろございます。私ども今検査におきましても必要に応じて取引相手方に対してどういう認識を持っていたのかというのもあわせて調査をして、利回り保証のような行為がなかったかどうかという点について重点の一つとして検査をしているわけでございます。
  203. 筒井信隆

    筒井委員 明確な事前保証というのは恐らく証拠として少ないだろうと思うのです。それでお聞きしているのですが、こういう目標利回りを設定すること自体、具体的な例としては、例えば内外証券が三建リースに対して損失補てんをした件に関して、その三建リースの社長が、目標利回りを掲げて売り込みに来た、内外証券が、こういうふうな発言をしているわけでございまして、こういう目標利回りを掲げて売り込みに行く行為、目標でも予定でも予想でもいいのですが、こういう行為自体今まで大蔵省は容認してきたんじゃないですか。それともそういうことはしないように行政指導してきたんでしょうか。
  204. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 そういう予定利回りあるいは努力利回りというようなものを表示することは、利回り保証というふうに受け取られかねないということで、従来からそういうようなものを示さないようにという指導をしてまいっております。
  205. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、ほとんどの証券会社が大蔵省のそういう指導に違反したということになるわけでして、その違反をした状態を見逃してきた、あるいはそれを容認してきた大蔵省の責任はやはり物すごく重いというふうに思います。  具体的な例として、今三建リースのことを挙げましたが、阪和興業に関しても、この社長が、証券会社は営業特金の委任に際して予想利回りを提示してきた、まさに大蔵省の指導に反した行為をやっているわけです。特に書面でそのことを、大蔵省の指導に反した例があるのが公立学校共済組合、この例でございました。各証券会社あての手紙でこういうふうな文言が入っておりました。本年八月末までの貴社の営業特金の運用状況は、目標の通算総合利回り七%を下回っている。これでは契約の解約もある、つまり、このことではっきりするのは一任勘定で目標利回りが設定されていたことと、目標利回り以下であれば解約もある。だから、これは目標利回り以上であることを前提に一任したことがはっきりしているわけでございまして、事実上の七%の利益保証。この目標利回りとか何かを今大蔵省は、今まで指導でしないようにやってきたと言われましたが、こんなにたくさん明確にその違反があったことについて、その違反が今度の損失補てんの大きな原因になっているというふうに思いますが、それについての責任、どういうふうにお考えでしょうか、大蔵大臣でも。
  206. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御指摘になりましたような事実を見て、結果的に通達行政というものの限界を改めて感じます。先般来この一連の問題点の中で通達というものを全部見直し、その中で自主規制団体に移すべきものは自主規制団体の規制としてお願いをする、しかし法令化すべきものは法令化する、そして今後口頭による通達ということは行わないということを基本にしたいと私が申し上げてまいりましたようなことは今、先般来委員が御指摘になっておりますような通達を行いました後の実態というものを考える中から私なりに導いてきた結論であります。
  207. 筒井信隆

    筒井委員 自治省が地方公務員共済組合に対して、一任勘定を含めた特金により運用する場合は予定運用利回りを記載した書面により承認申請するよう指示しております。こういう事実を大蔵省は御存じだと思いますが、大蔵省自体が予想利回りとか予定利回りをしないようにというふうに指導していると言われましたが、その本体の国家の自治省自体が逆に予定運用利回りを記載した書面を出して承認申請するよう指示している。これは通達で出している。元年の七月二十五日ですから。これは大蔵省の先ほど言いました考え方とは全く対立するわけですね。大蔵大臣があるいは証券局長でも結構ですが。
  208. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どももそういうふうな指導があるというのは把握をしております。私どもが予定利回りあるいは目標利回りというようなことはなるべくやめるようにというふうに指導を始めましたのは平成元年十二月の通達に合わせてでございます。しかし、いずれにいたしましても証券会社に対しては、そういう誤解を招くような利回り、目標利回りというようなものは示さないようにというふうな指導をしているわけでございます。
  209. 筒井信隆

    筒井委員 自治省きょう呼んでおりませんでしたので、大蔵省の見解を聞くだけで結構――そうですか。じゃ自治大臣、何か意見がありましたら。
  210. 滝実

    ○滝政府委員 私どもが特定金銭信託を開始いたしましたのが昭和六十一年の三月一日の通達でそういうことをやってもよろしい、こういうふうに連絡したわけでございますけれども、その際には私どもに協議をしていただく、その中の一環として予想利回りというのですか、そういうようなことを各共済組合からお聞きする、こういう連絡をしたのは事実でございます。ただいま、こういうふうなこともございまして、平成元年ぐらいからこの特定金銭信託というものを投資顧問契約に切りかえる、こういうことで切りかえ作業をやってきている最中でございます。
  211. 筒井信隆

    筒井委員 通達が平成元年七月二十五日の通達でございました。そこに今の予定運用利回りを明確に書面で書けというふうに要求しているわけでございます。しかもそれは営業特金、つまり、特金の中の一任勘定を含めたものについて書いてある。一任勘定で予定運用利回りをはっきりさせるということは、これはもう明確に利益保証に結びつく、あるいはほとんど同一視していいほどの問題なんで、こういうことを明確に、予定運用利回りを明確にさせなければそういう運用を認めないという自治省の方針、これ自体変更されるべきではないですか。
  212. 滝実

    ○滝政府委員 この点につきましては、今回の事態にかんがみまして十分検討して、改めるべきものは速やかに改めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  213. 筒井信隆

    筒井委員 これを訂正されるというふうにお聞きをしておきたいと思います。  それから、やはり先ほど挙げました「有価証券の売買一任勘定取引の自粛について」という通達ですが、この通達の中で、こういう条項を明示した契約書を締結するよう大蔵省は義務づけております。どういうのかといいますと、「本契約に基く売買取引の損益は、すべて顧客に帰属しこ損失の補てんや利益の保証を証券業者は行わない、このことを明確に明示した契約書を締結する。こういう契約書を大蔵省の指示に従って、もちろん一任勘定の際には証券会社と各投資先の企業が結んでいたと思うのですが、それは結んでおりましたね、大蔵省。
  214. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 現在までの私どもの把握している事実では、この今回の営業特金などの場合に、この売買一任勘定ということでは証券会社は処理をしていないというふうに聞いております。
  215. 筒井信隆

    筒井委員 今度補てんが問題になった中で、売買一任勘定は全然なかったということですか。
  216. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この通達に示しておりますような売買一任勘定はございません。
  217. 筒井信隆

    筒井委員 ちょっとその具体的な事例を持ってこなかったので、では、それは具体的な事例を示した上でさらにお聞きをしたいと思います。  それから、この一任勘定自体を、これはそもそもが企業の側から見ても企業の役員の忠実義務に違反するのではないか、この点を確かめたいと思います。何百億円、何千億円という会社の資産を、資金を他人に任せて、ある意味で証券会社の独断専行にゆだねてしまう、こういう行為自体、もし事前の保証がない限りは、事前の保証があれば別ですが、なければ取締役の忠実義務に違反したり、あるいは会社に対する責任や第三者責任から損害賠償責任が生じてくるのではないか。この点、法務省の民事局の見解をお聞きしたいと思います。
  218. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、商法上、株式会社の取締役は、その業務執行に当たりまして会社に対して忠実にその業務を執行する、あるいは善良な管理者の注意義務をもってその業務を執行するということが義務づけられているわけでございます。これに違反して会社に損害を与えるというような行為をいたした場合には、法令または定款に違反する行為を行ったということで、会社に対して損害賠償責任を負う、個人として会社に対して損害賠償をしなければならない、こういうことになっているわけでございます。  そこで問題は、その損失補てん行為がこれらの忠実義務違反あるいは善管注意義務違反になるのかということになるわけでございますけれども、損失補てん行為が具体的にどのような動機、目的を持って、またどのような事情のもとにされたものであるか、各個の事案について詳細な事情を調査、精査した上でこれらの個人的な責任が生ずるかどうかということが最終的には判断されるべきものであろうというふうに私どもは考えておるところでございます。
  219. 筒井信隆

    筒井委員 最終的にそれぞれの事案がこれに該当するかどうかは、もちろん個々の事案を精査しなければならないわけで、今のお答えは、ただ違反する可能性があるというふうに答弁されたというふうにお聞きをしておきますが、こういう一任勘定を認めた大蔵省の責任についてお聞きをしたいと思います。  一任勘定が非常に大きな多くの問題を生じている。そしてまた、今言いましたように企業の役員自身にとっても問題がある。この一任勘定自体、自己責任の原則に違反するものである。もちろん自己責任の原則というのは投資者自身の判断と責任を要求するわけですが、投資者自身の判断を放棄するのがこの一任勘定でございまして、これを初めから大蔵省は禁止すべきであった。特に売買の別とか銘柄とか数量及び価格のすべてを一任する、こういうふうな全面的な一任勘定は全面的にやはり禁止すべきであった。これの禁止が非常におくれて、はっきりしたのは九一年の七月八日の通達でようやく禁止したわけでございまして、それまでは原則としてだとか投資顧問に移せとかいろいろなことを言っていた。そして「自粛されたい。」と最初の通達では言っただけ。「自粛されたい。」生言いながら、しかし簿価分離という税制上のメリットを一任勘定にも与えていた。「自粛されたい。」と言うのと税制上のメリットを与えるのとはまさに矛盾するわけですけれども、事実上ずっと一任勘定を認めてきた。そして、八九年の十二月二十六日の通達では確かに投資顧問契約に移せというふうな通達をなされておりましたけれども、しかし独立性のない投資顧問に移したところで全く解決しないわけでございまして、今度もその投資顧問に入れておきながら損失補てんがなされた例がたさん出てきている。  これらの今までの大蔵省の一任勘定を事実上認めてきた責任というのは大きいと思いますけれども、その点とういうふうにお考えでしょうか。
  220. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 過去の経緯について長々と申し上げるつもりはありませんが、今委員からも御指摘がありましたように、いわゆる売買一任勘定取引というものについて自粛を求めてきたことは委員もお認めをいただいているところであります。しかし、その規則につきまして、その対象範囲が取引所会員及びすべての要素を一任する場合に限定されているといった等の問題がありましたことも事実であります。同時に昭和三十九年の通達というものが、対象範囲を規則より広げたものでありますけれども、規制内容が自粛であった、ルールとして必ずしも明確でなかったということも事実であります。  こうした反省のもとに、平成二年十月から証券取引審議会の不公正取引特別部会においてIOSCOの行為規範原則の我が国への適用問題について御審議をお願いをいたしました際、本問題につきましても御論議をいただいてまいりました。その結果の同部会の提言等を踏まえまして、今回七月八日付の通達を発出し、取引一任勘定取引というものを原則として禁止したところであります。同時に、その内容を今国会に提出する予定でおります証券取引法の改正案に盛り込んで、法令化したいと考えております。  この問題ばかりではなく、これまでの行政指導に不十分な点がありましたことにつきましては、その責任を痛感をいたしております。
  221. 筒井信隆

    筒井委員 それは、ではそういうふうにお聞きをしまして、次に暴力団への融資の問題についてお聞きしますが、暴力団融資の問題は休会中の大蔵委員会でも詳しく質問をいたしましたので、きょうは現時点の、現在での状況についてお聞きをしたいと思います。  野村ファイナンスが百六十億円を融資している。この担保は東急株が千四百五十万株のみである。現在東急株は非常に下がりましたから、もう担保割れの状況になっている、しかしまだその担保割れの状況のまま結果としては放置されているというふうにお聞きをしておりまして、この点そうであるかどうか、そうであるとすればどういうふうな指導をしているのかという点を一点目はお聞きをしたいと思います。  それから、利息が野村ファイナンスに関して最初は三カ月分天引きで、後に二十億円の利息が稲川会の兄会長から支払われていることは、これは判明しているわけですが、その後の利息は払われているのかどうか、この点、二つ目お聞きをしたいと思います。  それから三つ目に、返済期限が一年で、もうとっくに一年過ぎているわけですが、その後三カ月ごとに延長している。現在もやはり三カ月ごとの延長を続けているのかどうか。  この三つの点は日興クレジットの場合も一緒でございました。  今こちらの方は、聞いているところを見ますと、だから担保割れしているのに、もう三カ月ごとの長期、期限が過ぎたものをずっと延長を認めている、これは物すごい優遇になっているわけでございまして、普通の顧客であれはこんなのは考えられない。もう一日でも担保割れになったら、物すごいうるさく言ってくる。担保として取っているのを直ちに売却して、そしてそれを融資金の中に繰り込んで足らない分を直ちに請求する、こういう取り扱いを証券会社は通常やっているわけでございまして、しかし、この暴力団関係に関してだけ物すごい優遇している。こういう点で極めて不当だと思いますので、今の点、明確に大蔵省の方でお答えをいただきたいと思います。
  222. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の野村ファイナンスからの百六十億、それから日興クレジットからの二百二億の融資でございます。これは確かに担保の株券の価額が下がっておりまして、現在両方とも担保不足の状態になっております。私どもとしては、こういう担保不足の状態が続いているというのは非常に問題だということで、こういう状態を速やかに解消するように両証券会社に対して指導をしているわけでございます。両証券会社も、野村ファイナンス及び日興クレジットに対して追加担保の差し入れを先方と交渉中であるというふうに聞いております。  それから、利息の問題でございますが、これは野村ファイナンスの方が八月一日に期限が参りました。それから、日興クレジットの方が七月三十一日に期限が来たわけでございますが、その際に、先方から三カ月分の金利の前払いが行われまして。三カ月期限を延長し、野村の場合には十一月一日、日興の場合には十月三十一日ということで、現在それが最終期限になっております。  しかし、いずれにいたしましても担保不足の状態が続いているわけでございますので、この追加担保差し入れについて先方と鋭意交渉して担保不足の状態を解消するように指導をしているところでございます。――利息の支払いは、今申し上げましたように、期限が来て三カ月延ばすときにその三カ月延ばす分の金利を先払いしているというふうに報告を受けております。
  223. 筒井信隆

    筒井委員 そうしますと、利息に関しては現時点すべて払われているというふうな答弁、お答えだったというふうにお聞きをしておきたいと思いますが、この期限の点は、八月一日とか十一月一日と言っておりましたが、これは既にもう三カ月延長を繰り返したその延長の期限が八月一日に生じたりあるいは十一月一日に生じた、こういう趣旨でございますね。
  224. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 両方の件を一緒に御説明いたしましたのでちょっとおわかりにくかったかもしれませんが、野村ファイナンスの場合には八月一日に期限が来たものを十一月一日まで三カ月延ばした、それから日興クレジットの方は七月三十一日に期限が来たものを十月三十一日まで延長したということでございます。
  225. 筒井信隆

    筒井委員 私が聞いているのは、最初の時点から一年の期限というふうにお聞きをしているわけでして、その後はずっと三カ月間の延長を繰り返しているというふうに聞いているのですが、そういう事実ではないのですか。
  226. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のとおり三カ月ごとに延ばしているということでございます。
  227. 筒井信隆

    筒井委員 この暴力団の融資の問題は、暴力団に融資された金額が東急株の購入に使われたわけですが、この東急株の購入の点に関して、大蔵省の通達がございまして、これは大蔵委員会でも聞きましたが、「特定少数の銘柄の一律集中的な推奨の如く投資情報を主観的又は恣意的に提供することは厳に慎むこと。」衆院の大蔵委員会で私が聞いた際には、この通達違反かどうかを現在調査中というふうにお答えされました。その後の参院の大蔵委員会では、通達違反の疑いが濃いというふうにお答えをされたように聞いております。もう既にその調査中のときから大分時間がたっているわけですが、今はこの通達違反のやはり疑いが濃いという判断ですか、それとももうはっきりそれは断定できるというふうに考えておられるのでしょうか、その点お答えいただきたいと思います。
  228. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 通達は、一律集中的な推奨のように投資情報を主観的または恣意的に提供することを厳に慎むようにということでございます。私が通達違反の疑いが濃いと申し上げましたのは、この東急電鉄株の平成元年十月から十一月にかけての売買の市場における状況あるいは多数の投資家が参加している、特に野村証券の近畿あるいは四国地区の営業店から大量の注文が出ているというような、市場の執行面を通じての情報をもとに申し上げたわけでございまして、現在、私どもは具体的にその営業店における勧誘の状況について今検査の中で調査を進めているところでございます。
  229. 筒井信隆

    筒井委員 この融資問題と株価操作の問題、いずれも暴力団が証券市場に介入してきた問題ですが、これは証券市場の公平性をまさに疑わせる極めてゆゆしい問題だというふうに考えられると思います。これを明確に排除しなければならない。これはやはり国を挙げてといいますか、政府を挙げて実現をしていただきたいと思うわけですが、その点に関する総理大臣の決意をぜひこの場でお聞きをしたいと思います。
  230. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 このことについては、私が冒頭より申し上げてまいりましたように、証券市場というものの公明性と、それから私どもが常に求めていかなければならない公正な社会の理念という面からいっても、これは許されるべきことではありません。特に企業というものが、企業の社会的責任を自覚されるなれば、損か得かという価値判断だけで行動をとられないように、みずからの持つ社会的責任というものも十分自覚と責任の中に踏まえて企業活動をしてもらいたいということを強く私は期待をし、そのような意味で大蔵大臣に、厳正な対処をして、公正な、そして透明な証券・金融行政に当たることができるように改革策を考えてほしい、こういう指示をしておるところでございます。
  231. 筒井信隆

    筒井委員 暴力団の関与に特に集中して、ぜひ暴力団の関与が生じるようなそういう状態を排除することについての決意を、特に集中してお聞きしたいと思います。
  232. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会で最近個別の立法もなされたということもあり、また特に社会的に極めて批判を受けておるそういった暴力団関係との問題については、先ほど私が大きく申し上げた企業の社会的責任、著しく批判を受けるようなそういったことは、損か得かということだけで考えないで、そういったみずからの自覚と責任を厳しく持った対応をしてほしい、このことを厳しく求めるとともに、そういったことは我が方でも今後とも努力を続けていく決意でございます。
  233. 筒井信隆

    筒井委員 この暴力団の問題も、先ほどの通達違反、まだ調査中というお答えでした。そして、先ほどの損失補てんに関してもまだ調査中というものが物すごくたくさんある。これは極めて不満でございまして、本来、もうこんな問題が起こっている最中において大蔵省はいろいろな予防的行為を行う義務があった。その義務をちゃんと尽くさなかったというふうに言えるだろうというふうに思いますが、その具体的なあれとして、予防的監督命令というのが証券取引法上決まっております。大蔵大臣は次の場合に予防的監督命令を出すことができる。その次の場合というのは、例えば特定銘柄の株式の買い付けを一定期間継続して一斉かつ過度に勧誘し、公正な価格形成を損なうおそれがある行為をしている場合というふうに書かれているわけでして、今度の東急電鉄の株価の急上昇のあの過程においてやはりこの予防的監督命令を早急に、直ちに行動して出すべきではなかったんでしょうか。その点、大蔵省の見解をお聞きしたいと思います。
  234. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の点は、証取法五十四条に基づきます健全性省令第三条の第七号でございます。確かに、営業の方針として、特定かつ少数の銘柄について、多数の顧客に対して一定期間継続にかつ過度に勧誘するということを禁止し、是正命令が出せるということになっているわけでございます。  当時の状況というものは確かに非常に株が急騰し、多数の投資家が参加をしているわけでございますが、この勧誘の状況というものを把握するということが非常に実際問題として難しいわけでございまして、現在私ども検査において、先ほど申し上げました通達とこの七号というのはかなり似た条項でございます。あわせて、この勧誘の実態というものを把握をしようと努めているわけでございます。この勧誘の実態を把握するというのは、どうしてもその当時機動的に把握するということがなかなか難しいということで、是正命令を当時出すということがなかなか困難であったんだろうというふうに考えるわけでございます。
  235. 筒井信隆

    筒井委員 まず、この予防的監督命令というのが証券取引法でも予定されているという趣旨は、今大蔵省がやっているように損失補てんとかこういうものが終わってもう一年以上たってもまだ調査中だ、こんなことは全然予測していないのじゃないでしょうか。まさに問題が起こっているその最中において直ちに大蔵省が行動する、そのことを証券取引法は予定しているんだろうと思うのです。今言われましたように、この東急電鉄の株に関しては過度な勧誘、公正な価格形成を損なう、損なったときに初めて行動するのではなくて、そういうおそれがあったときに直ちに行動しなきゃいかぬということを言っているわけでして、今度のことはまさにこれが行動されるべき対象行為に入るんじゃないですか。
  236. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘のようにこの是正命令、これは予防的監督命令の対象になるわけでございますが、こういうふうな勧誘をし、公正な価格形成を損なうおそれがあるという場合には、機動的に検査に入り、その実情を把握するということが必要であろうというふうに私どもも考えているわけでございます。機動的な検査班をつくるということは、現実、実際の制約上かなり難しいわけでございますけれども、この趣旨といいますか、この条文を勧誘行為あるいは価格形成の問題というふうなところで的確に運用していくためには、機動的な検査を行う必要があるというふうに考えているわけでございます。
  237. 筒井信隆

    筒井委員 そんな機動的に検査する必要があると言うが、既にもう大分おくれている、全然機動的な行為をとってないということを言っているわけでございます。だからこれもやはり大蔵省の無能力があるいは共犯か、まあ共犯だと思いますが、そのことを証明する一つの事例として指摘しておきたいと思います。  それから、時間がなくなりましたが、相場操縦の禁止に関してまだ確証が出ていないということを、相場操縦だと認定する確証が出ていないということを大蔵省何回も表現しておりまして、その理由として仮装売買とかなれ合い売買、こういうものがあったという確証がないということを言われておりますが、相場操縦というのは別に仮装売買とかなれ合い売買だけではなくて、表示による相場操縦の禁止といものもあるわけでございまして、同じ懲役三年以下、罰金三百万円以下の対象になるわけですが、何人も上場証券の取引を誘引する目的で、証券売買の際、重要な事項について虚偽であり、または誤解を生じさせる表示を故意にしてはならない。虚偽あるいは誤解を生じさせせる表示を故意にした場合には、まさにこの相場操縦の禁止の対象になるわけでございまして、その点から今度の野村の行為を見てみますと、大蔵委員会で指摘いたしましたが、野村の社内誌である「ポートフォリオウィークリー」、大口投資家あてに出していたようでございますが、ここでは、強力なグループカを持つ東急グループは「二十一世紀に向けて大きな飛躍期を迎えようとしている。東急電鉄の時価総額二兆数千億円は過小である。ハード資産だけで一株当り約五千四百円になる。」まさに現在の株価は過小である、一株当たり五千四百円になる、こういう断定に近い形のものを言っているわけでございまして、さらに大口投資家を集めた講演会等では、あすから急騰するとか十二月には五千円になる、間違いないからすぐ買え、こういうふうな強い推奨をしている。  これも指摘しましたが、八九年の三月に五島昇さんが死亡されて、跡取りが頼りないとも言われて、東急グループ分裂の危機が内外でささやかれていた時期なのに、こういう物すごい強力な推奨をしていた。そういう内外、分裂の危機なんということは一言も言わないで、これはまさに誤解を生じさせる表示、これを故意にした、この場合に当たるんではないでしょうか。
  238. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもが現在までに把握しております。その「ポートフォリオウィークリー」での推奨の分析の、参考銘柄として取り上げております分析の主な内容としては、例えば所有土地が非常に膨大で含み資産がある、あるいは三百社を超えるグループ力があるとか、渋谷再開発が始動するとかいうようなことを理由として挙げているわけでございます。これは直ちに虚偽であるというふうには決めつけることができないんではないか。  ただ、御指摘のように、講演会で五千円になるとかいうような言葉が、表現があったというような情報も私ども入手しているわけでございまして、現在その営業店における実際の勧誘方法あるいは講演会における表現等について可能な限り証券会社の内部の資料、さらには必要に応じて投資家、この取引を行った投資家の意見も聞くというようなことで調査を進めていきたいというふうに思っているわけです。
  239. 筒井信隆

    筒井委員 質問を明確にお聞きをいただきたいと思います。  私、今最後に聞いたのは、虚偽であるということを聞いたんではなくて、誤解を生じさせる表示に当たらないかということを聞いたわけです。そして、この誤解を生じさせる表示というのはどういう意味がといいますと、よく言われておりますが、その表示によって証券の相場が上昇する相当な理由がある、こう思わせる程度に重要な事項について、実際に現在の株価は過小である、ハード資産を見るだけでも五千円になる、こういう文章があるわけでして、講演会では、もう明確に十二月には五千円になると言っている。これが誤解を生じさせる表示に該当するのではないか、その点の質問です。厳密にお答えいただきたいと思います。
  240. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 誤解を生ぜしめる表現かどうかという点もあわせて、私どもこれから検査の中で御指摘の点も踏まえて検討さしていただきたいと思います。
  241. 筒井信隆

    筒井委員 もうすべてこれから調査、これから調査。もう一年以上もたっていて、そういうふうにまだ言っている。しかも、いつごろその検査が明確になるのかというと二、三カ月かかるというふうに他の議員に対して答えているようでございますが、こういう状態が続く限りは、もう全然大蔵省に公平な証券市場のために監督するような、もうそういう能力が全くないというふうに言わざるを得ないだろうと思うのです。特に、今の誤解を生じさせる表示であるかどうかなんというのは、これは表示そのものを見れば直ちに判断できることなんだ。判断する意思と能力があれば直ちにできることなんだ。今の表示自体について聞いているのです。その点、どうですか。
  242. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘がありました点につきましては、私どもはいろいろな報道では把握しておりますが、少なくとも表示されている中にそういう明らかに誤解を生ぜしめるような表示があるということは、現在のところ承知していないわけでございます。
  243. 筒井信隆

    筒井委員 「ポートフォリオウィークリー」、私自身も持っておりますが、こういう趣旨の記載がありましたね、証券局長。現在の東急の株価の時価は過小である、ハード資産だけで一株当たり約五千円になる、ソフト資産を加えるとさらにもっと巨大である。これは投資家としては、現在の時価が安過ぎる、五千円になる、こういうふうに誤解するのが当たり前じゃないですか。この表示自体からの判断どうですか。
  244. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど申し上げましたように、誤解を生ぜしめる表示に当たるかどうか、検査の中で十分調べてまいりたいと思います。
  245. 筒井信隆

    筒井委員 検査の問題ではなくて、今、「ポートフォリオウィークリー」という、その大口投資家向けの文章自体にあるその表示自体がもう誤解を生じさせる表示ではないかという質問なんです。大蔵大臣意見ありましたらお答えいただきたい。
  246. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、私は、その時点における東急関係の不動産の簿価を、あるいは時価を存じません。よって、その評価が過小であるか過大であるかという表現自体についての判断の能力を持っておりません。  ただ、いずれにいたしましても、誤解を与えるような行為があるとするならば、それは問題だと思いますけれども、今、現時点においてその時期における判断を求められますが、その時期における、いわば地価の高騰しておりましたとき、一体東急グループ全体として、あるいは東急電鉄としてどのくらいの不動産をお持ちであるのか、私はそれについての知識を持っておりませんし、さらに、今委員お話では、渋谷の再開発とか幾つかのテーマを挙げられました。そうした問題についての知識を持っておりませんが、そうしたものを証券会社として判断材料にしたということでありますならば、必ずしもそれが不当であるということを――今の時点になっていろいろ言うことはできます。その時点の地価の状況その他を考えましたときに言い切れるかとなりますと、私は率直に申してそれだけの知識を持っておりません。  ただ、いずれにしても、誤解を与えかねないような表現というものはいかなる場合でも避けるべきものと思います。
  247. 筒井信隆

    筒井委員 時間が終わりました。  今の、誤解を生じさせる表示を故意にしてはならないというのに故意にしたならば相場操縦にまさに当てはまる、故意でしなかった場合でも証券取引法の五十条とかあるいは五十八条にその誤解を生じさせる表示は違反することになるわけでございまして、一番最初に申し上げましたように、証取法違反がないというふうな前提での大蔵省の前提が崩れるわけでございまして、それらすべての問題に関してもう一度洗い直した上でこれらの問題に対処していただきたい、そのことを要請いたしまして、私の質問を終わります。
  248. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて筒井君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  249. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは、米の問題を中心にして、ほか二、三点を総理並びに農林大臣伺いたいと思います。  まず第一に、そこに配っていただきました一、二、三の資料がありますが、ちょっと総理、それを見ていただきたいのですが、第一表は「サミット参加国の食料自給率」、穀物ベースであらわしておりますが、その一覧表のとおりでありまして、我が国は一九六〇年に八二%の穀物自給率を持っておりましたが、三十年たって今三〇%、大激減をしているという状況にあります。それから、サミット参加の各国を見ると、その一覧表のとおりで、もうほとんど一〇〇%を超えているという状況にある。ドイツは最近一〇〇%近くになったと聞いておりますし、イタリアも八九%ぐらいであると思っておりますが、八五年の数字がそこに挙げてあります。それからもう一つ、第二表を見ていただくと、「人口一億人以上の国の食料自給率」が挙げでありますが、日本が三〇%、アメリカ一七二、以下そこに挙がっておりますが、この二つの表から、サミット参加の主要国の中でこれほど食糧自給率の低い国はないし、また人口一億以上の国においてこれほど低い国もない。  この二つの表を見て、総理はどういう感想を持たれるか、まず伺いたい。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この表を見て率直に思いますことは、御質問と同じになりますけれども、サミット参加国の中で一番低いということ、それから一生懸命努力をしておっても、カロリーベースの自給率も最近は食生活の変化によって四九%から四八%へとややスローダウンぎみにあるという現実、それは国民皆さんの嗜好が変わってきたので輸入が非常にふえてきたという点もありますけれども、そういう意味で、日本は食糧という問題について他の国とは違って厳しい状況に置かれておるなということが実感としてわかる表でございます。  いいですか。
  251. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、よくないけど、まあ質問します。  今総理認識も、この一、二表を見て非常に食糧自給率が我が国は低下している、こういう認識を持っていらっしゃるということがわかりました。  ただ、今お話しのように、畜産物の嗜好、需要が高まっているということは事実ですが、畜産物、卵、乳、肉も、要するにそのもとは家畜の腹を通して出てくる。だから、もとは穀物であるという意味で、すべての自給率は穀物に還元して今OECD等でも考えている。それらが三〇%という数字になっております。  そこで、食糧安全保障という観点から考えたときに、私は、もうその三〇%を今切りかかっておりますが、これ以下に自給率を切り下げてはならないというように思いますが、その点いかがお考えですか。
  252. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 食糧の自給率というのは、やはり中長期の目標で二十世紀には二十一世紀を目指して、この今日のような心配のないようにでき得る限り自給率を高める努力をしなければならぬという基本認識を私は持っております。
  253. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこで、第三表をちょっと見ていただきたいのですが、その前に、それ以上下げずに上げなきゃならないということでありますが、もし米の、あっては私はならないと思いますが、市場開放を許すというようなことがあった場合に、自給率は二〇%台に低下をするのは必至であると思いますが、これは世界の主要国で、かつてイギリスが二〇%台に自給率が転落をして農村と民族の活力を失ったという苦い歴史がありますが、私はそれを繰り返すことになりかねないと思います。もう一つは、四万が海に囲まれている、こういう島国で一億二千万の人口を擁する我が国が現在三〇%という数字を辛うじて維持しているというのは、これは米を自給しているからであって、米の市場開放を許したならば、これはもう二〇%台にどんと転落するということは目に見えておると思います。  この二点を考えると、米の国内自給ということが食糧安全保障のもとになるというように私は考えますが、総理認識伺いたい。
  254. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この表を見ておりましても、確かに自給率が下がってきておりますから、私は、でき得れば自給率を下げないような努力をしたいということを申し上げましたけれども、確かにカロリーベースで五〇%になるように、二十一世紀にはそんなところに持っていかなければならぬというのでいろいろな努力をするわけであります。ただ、日本でできるもの、それをどのように消費していくかということは、これは消費者の皆さんにもいろいろと嗜好がありますから強制はできませんけれども、しかし日本ででき、日本で十分確保できるお米を一人が一日に茶わんにもう一杯食べていただくようになれば、それだけ概算、計算を粗っぽくやると、たしか二百五十万トンぐらいの消費になるという計算を私は聞いておったことがあります。しかし、それは最初申し上げたように強制できないことでありますから、努力をしながら、そのようにして全体の農業政策の中で自給率が高まっていくような努力をしたい、こう思っております。
  255. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の言っているのは、これだけ自給率が下がってくる、その三〇%を辛うじて支えているのは米を自給するからであって、米の自給を外したらこれはもう二〇%に下がってしまう、苦い歴史をイギリスのように繰り返すことになる。だから、この食糧安全保障の根幹は米を自給していくというところにある、こういうことを申し上げたのですが、この認識はいかがですか、簡単で結構です。
  256. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基礎的な食糧、すなわち我が国にとっては米でありますけれども、そういった基礎的食糧については、所要の国内生産水準を維持するために必要な国境調整措置を講ずるということは、今の御質問の御趣旨にも沿う方向でありますが、私は、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおいて我が国はそのような考え方に立ってこれを提案をして、それぞれ別の問題を抱えておる複雑なウルグアイ・ラウンド交渉ですけれども、我が国のこの基本的な立場をもって共通認識を得るように努力をせろということを担当大臣には指示をいたしております。
  257. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そのことはもう少し後で詳しく伺います。  資料三をごらんいただいて、サミット参加の国の農地面積と農家一戸当たりの平均面積が出してありますが、もうこれは言うまでもないことですが、我が国はちょっと上がりましたが一・三ヘクタール、アメリカは百八十七ヘクタール、カナダは二百三十一ヘクタール、日本に近いのはドイツの十七ヘクタール、大きいですが、そうなっております。アメリカの場合は日本の百四十倍の耕地の開きがある。ということは、日本は百四十分の一ということになりますが、この大きなハンディというものが、私は非常に工業と農業との違うところではないかと思うのです。  なぜかといえば、工業は資本と技術と労働力というものを移動できる、だからどういうところでもこの三つがそろえば生産を上げることができる。ところが、農地は動かない、輸入も輸出もできない、これは非常に違ったところだと思うのです。アメリカで、私も何回か行って随分論議をしましたが、それだけ日本に輸入しろ輸入しろと言うのなら農地を輸出しろ、幾らでも買いましょう、こう言って論議をしたことがありますが、工業と農業の差は、最大の生産手段である農地が移動できないというところに私はあると思うのですね。例えば、日本の鶏、鶏肉や鶏卵は、これは十分国際競争力を持っている。なぜかというと、余り土地に制約されずに十万羽、二十万羽、三十万羽、場合によれば五十万羽養鶏というようにこの狭い土地で工場のように養鶏がやれる。だから非常に安く生産することができるのですね。しかし農地は、土地に制約を受ける穀物というものは、土地利用型の穀物は、これは最大の生産手段である農地が移動しないという、動かないという、百四十倍か百四十分の一というそこから出発しなくてはならない、これを工業と農業を自由貿易という論理から一緒に扱うということにまず無理があるというように思いますが、これはいかがですか。
  258. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生、アメリカのお話が出てまいりましたけれども、先生がアメリカヘ行かれたときも、恐らく、日本からこれだけの工業製品を輸入しているのだから、日本はもっと農産物を買っていいではないか、こういうお話を聞かれてきたのだろうと思います。私にもアメリカの大臣から、アメリカの農家は日本の自動車、日本の機械を使って農業をやって、家庭に帰れば日本製のテレビを見て、洗濯機を使って、掃除機を使って生活をしておるのだから、もう少し日本も農産物を買ったらどうかというお話がございました。  いずれにいたしましても、私は、工業と農業というものを一緒に議論はできません、いわゆる土地の問題が、もちろん今お話しのございましたようにありますけれども、土地はいかんせんともこれは移動のできないものでありますが、その中でどうやって農業の自給率を上げていくかという場合のことを考えてみてもそうでありますが、いずれにいたしましても、今先生からお話のありましたように、土地利用型以外の農業は農家の努力によってかなり高いレベルに順次上がってきておるわけであります。土地利用型の農業はかなり競争力がまだまだという不十分なところでありますが、それは土地の一つの制約を受けている点でもあります。  もう一つは、農産物と工業製品と一緒にできないのは、長期的な保存がきかないというのも一つの大きな理由でありますが、その地球上に置かれておるそれぞれの国によって気象上の条件、自然条件に最も左右されるのが実は農産物でございますから、それぞれの国で基礎的食糧というのも違うのも、実はそういう意味合いからでなかろうかと思うわけであります。  もう一つは、工業製品の価値観というものは世界がある程度共通をすることができるのだろうと思うのです。自動車でも、テレビでも、コンピューターでも、これはいいなと思えば世界の人たちが価値を共通することがでぎますけれども、農産物はそうはいかないので、もう先生御案内のとおりであります。日本はお米が中粒種、粘りがあってつやのいいのがいい、こういうことで、今新潟コシヒカリが一番いい、こういう価値判断になっておるわけです。世界的には皆長粒種で、粘りがなくてさらさらしたのがいいという国が圧倒的に多い。肉も日本はサシが入ったのがいいという、価値を高く位置づけても、世界は赤肉がいいという国が圧倒的に多いということで、実は農産物一品ごとでも価値を共通できないというところがございますから、工業製品と同じ立場で議論はできませんということで、私の方からはアメリカ側にはきちっとお伝えをいたしておるところであります。
  259. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ところが、それは私も同じ共感をしておりますが、その工業でも、例えば私の福井県は繊維の産地ですが、繊維はアメリカの自主規制を受けている。自動車、工作機械、半導体、どういう主要工業品を見ても、アメリカでもECでも一定の国内のシ主アを日本の輸出が超えていくとなれば、これは結果としては実質的な自主規制を押しつけていける、受け入れざるを得ないという状況になっているのですね。そういう意味では、工業でも本当の自由貿易ということがなかながなされないという中に、これだけのハンディを持っている農業を、まだ、三割自給ということは裏返しすれば七割外国から買っていることなんですから、これでも足らぬからもっと買えという、これは工業でもできぬことを――農業と工業が、今大臣の言うように違う点がある。その工業にできないことをなお農業に押しつけようというところに非常に無理がある、私はこう思うのですが、ちょっと総理、それに対してどんなお考えを持ちますか。
  260. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国際社会の中でいろいろな物を売ったり買ったりする貿易の中で生きておるのは委員御承知のとおりでありまして、工業製品には工業製品の、農業製品には農業製品のそれぞれの立場や問題があろうと思います。ガット・ウルグアイ・ラウンドでも十五分野にわたる幅広いところでいろいろな議論が行われているのであって、同時にまた工業と農業が自然条件その他によって各国ともそれぞれ抱えておる問題もいろいろ違うということは、農林大臣、今詳しく申し上げたとおりでございます。  しかも、農業だけに限ると、我が国は世界最大の輸入国であって、また日米首脳会談のときにもこれは率直に申してきましたが、八十億ドルを超える農産品の輸入というのは、日本は最大のお得意様であるはずであって、これだけの輸入国であるという立場もよく理解してほしいし、また食糧の自給率が低いということもこれは率直に言っておるところであります。だから、他の国が抱えておるそれぞれの問題点、農業分野で議論するときは、それらの問題とともに、それぞれの国の立場を原則を踏まえながらどう国際社会で理解をしてウルグアイ・ラウンドの成功のために努力をしていくか、お互いに、立場が共通認識として理解されるようにそれを説明し、説得をし、協議をしていこう、こういう基本方針で臨んでおります。
  261. 辻一彦

    ○辻(一)委員 続いて総理にお尋ねしますが、いろいろとアメリカのブッシュ大統領やあるいはEC首脳サミット等で努力をしていらっしゃるとは思うのですが、従来我が国の態度としては、ウルグアイ・ラウンドでは、多国間交渉の場で各国が抱える農業の困難な問題をそれぞれ出されたときに協議しましょう、論議をしましょうということだったのですね。ところが、四月の日米首脳会談のときには、同じように各国の持つ農業の難しい問題、しかし、アメリカはウエーバーがあり、ECには輸入課徴金等がある、それらがウルグアイ・ラウンドの場に出されて譲歩があるならば我が国も米において市場開放の問題で譲歩をするというように受け取られかねない表現が新聞等で報道されておりますが、これは私は従来の態度より一歩そういう意味では踏み込んだ、ある意味では一歩後退をしている、こういうふうに感じますが、いかがでしょう。
  262. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国の基本的な立場、置かれている現状をきちっと説明して、それぞれが非常に厳しい問題をたくさん抱えておるわけでありますから、それぞれの国にある問題をどのようにして共通認識と理解で合意に持っていくかということは、これは原則を踏まえて説明を繰り返して説得をしてわかってもらうような努力を続けていく、その基本的な姿勢でいくのが私は我が国政府考え方である、こう理解をして、そのように対応しておるところであります。
  263. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、もう一つ伺いますが、アメリカは要するに米の関税化を要求している。これは私は、実質的には米の部分開放から完全自由化への道を開くことになると思うが、これはどう考えますか。簡単で結構です。
  264. 近藤元次

    近藤国務大臣 私は、そういうふうにならないように努力をしておるわけでありますから、御理解いただきたいと思います。
  265. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはサミットの、七月の合意事項といいますか、声明を見ると、農業問題は、困難な事態に直面すれば首脳が介入するということを声明している。首脳が介入するとなれば、やはり総理がそういう場に直面するわけですから、ちょっと総理に考えを伺いたいですね。  アメリカとECが関税化問題で仮に一部妥協があったとしたときに、日本は食糧安全保障の観点から関税化に私は応ずるべきでないと思いますが、これはいかがですか。
  266. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 サミットのときの議論は、米という単品あるいは食糧という問題での議論じゃなくて、多角的自由貿易体制というものを維持していくために前進させなきゃならぬ、それは市場アクセスの問題やサービスの問題や農業の問題や、特に知的所有権の問題まで、四項目がまだ各国の合意を得ていない大きな問題だということも共通認識としてなり、それぞれについて各国は、これを成功させるために共通認識を得るような努力をしていこう、要するに、そういった意味で宣言に書かれておるわけでありますから、その四つの分野を含めて十五分野全部の成功に持っていかなければなりません。  我が国は、その立場で農林大臣その他にいろいろ協議の結果、我が国の基本的な立場を踏まえながら、やはり我が国個人で生きていくわけにはいかぬわけでありますから、相手がどういうことを主張されるのか、それによって相手がどういう態度をするのか、我が国は譲れない点もあるんだということはきちっと踏まえて説得をし、説明をし、認識共通するような努力をしていくということに尽きると思います。
  267. 辻一彦

    ○辻(一)委員 再度質問しますが、さきに農林大臣がちょっと簡潔にお答えになりましたが、総理、アメリカは一時日本の政財界にあった米の部分開放ではもうだめだ、こう言って、そして関税化、関税化ということは、部分開放から完全自由化への道を開くという、何段かの段階をとって自由化への道を開こうということですね。だから、関税化に応ずるということは米の自由化を認めようということになるのじゃないか。これに対する答えを一つ。  それから、アメリカやECが仮にこの問題で妥協があっても、食糧安全保障という、世界じゅうで一番低い、さっき私が申し上げたこの数字からして、私は、自由化への道を開く関税化には応ずるべきでない、こういうように思うのですが、この二点についてひとつ御返答をいただきたい。
  268. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今後議論を続けていかなければならないテーマでありますけれども、サミットのときも経済宣言の中で、農業について「非貿易的関心事項を考慮しつつ、内国支持、市場アクセス及び輸出競争の各分野で」ということをきちっと盛り込んで、そしてみんなが共通認識を得るように努力をしていこうということでありますから、今から一国だけが固定的な結論を設けて、そしてそこまで行けということを強要しておるわけでもないし、決めたわけでもないし、みんながやはり理解と納得の上でさあ行こうということにならなければならぬわけでありますから、ウルグアイ・ラウンドにおける交渉の場で、各国それぞれの問題をそこでお互いに検討し合い、認め合い、共通認識で合意に持っていかなければならぬということでありますから、我が国は米は自国産で自給するという基本的な態度でこの交渉には今後とも臨んでいきたいということであります。
  269. 辻一彦

    ○辻(一)委員 質問に必ずしも答えられていないのですが、アメリカの言う関税化に置きかえる、輸入障壁に置きかえるといいますか、関税化に乗ればそれは自由化に私はつながると思うのですが、この認識はどうなるんですか。
  270. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは誤解を与えるような答えになるといけませんから、正確には専門家に解説させますけれども、私は、関税化と今おっしゃるがへ関税化がイコール自由化につながるかどうかという問題については、いろいろなまたやり方が各国ともあろうと思いますし、現に置かれでおる非貿易的関心事項というものの中にあるいろいろな考え方等も段差があると思うのです。だから、関税化ということがイコール自由化というふうに即断できるのかどうか、私には、必ずしもそう直結しておるとは思いませんけれども、詳細は農林大臣からお答えをいたさせます。
  271. 近藤元次

    近藤国務大臣 お米の分野についての御質問だと思ってお答えをさせていただきます。  お米を我が国が関税化をするというときには、自由化でも、完全自由化もあればいろいろな自由化がありますけれども、少なくとも自由化の方向に向かう危険性が非常に強いと思います。しかし、一〇〇%ということではならないのでありますが、我が国の今の米の価格の実情がらいって、関税化のときには極めて異常なほど高い、乗り越えられないほどの高い関税をかければ、これは自由化につながりませんけれども、常識的に言って、ただ単純に関税化ということだけでは、我が国の米が輸入を阻止をするということは極めて困難、だという立場で、関税化に我が国の農産物、米を対応することはできませんということを今主張いたしておるわけであります。  とりわけ一つの大きな問題は、まだ努力が足りなくて理解を十分得られていないのですけれども、一つは、このウルグアイ・ラウンドで米の交渉はやることで、日米間で米の交渉をやらないということは先生御案内のとおりです。その日米間で差のある点は何だと言えば、アメリカは、世界の農業を、将来の長期的に見て世界が食糧難になるというときに、自由化で対応することが世界の食糧難を回避できる一つの手法だということ。我が国は、それぞれの国が自給率を上げていくことが世界の食糧のその危険をなくすることになるだろう、そしてその過程において不足を輸入していくという、そういう政策が長期的に見て世界の食糧の安定にいくという、二つの路線で、実は国際会議で先般も私が日本の国の立場での演説をいたしました。それなりの拍手もいただきました。アメリカは完全自由化でまた演説をして、それなりの拍手をいただいたわけであります。そういうグループが二つ、世界的にも分かれておるわけです。  もう一つは、基礎的食糧というのは、最も重要な主食という言いかえれば言える農産物でありますけれども、残念ながら、それぞれの国の農産物によって料理がつくられて長い歴史で来ておって主食という基礎的食糧があるのですが、アメリカには料理がないものですから主食という説明が非常に困難だ、そういう点では鋭意我々は努力をしていかなければならない、そういう気持ちで今対応いたしております。
  272. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この関税化が必ずしも自由化につながらないという御見解があるようですが、アメリカの言っておる関税化は、初めは三%か五%安い関税で、後は七〇〇%とかいう高い関税で九十数%やる、しかし十年たったらだんだんそれを減らして、その関税の数字を減らしていくことによって自由化に持っていこうという、こういうコースを今押しつけようとしておるのですから、だから関税化をやれはこれはオレンジ・牛肉と同じように自由化への道を開いていくと私は思う。この認識をしっかりひとつ、農林大臣はもちろんですが、総理も持っていただきたい。やはり今度首脳が介入する可能性が大事な段階においてあると私は思うのですよ。その考え方をはっきりしていてもらわないと、あいまいな態度ではこれはなかなか乗り切れないと思うのですね。  そこで、時間の点から多くはもうこれ以上申し上げませんが、ダンケル・ガット事務局長は七月のペーパーで、十月、十一月が山場になる、こう言っておるのですね。それから七月のサミットでは今申し上げたとおり首脳の介入ももしかしたらあり得る、ブッシュ大統領が十一月の下旬に来日する、これらを組み合わすと、まさにこの秋は米の問題については重大な段階を迎えるのではないかと認識をしますが、そういう秋において、これはひとつ日本の最大の責任者として総理の決意をもう一つ聞きたい。
  273. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 食糧の安全保障の立場というものを考慮しながらきょうまでも我が国の立場はそれぞれの場で明確に主張をしておるところでありますし、また、米の問題を交渉する相手としては、二国間関係でやるのはいかがかということもありますけれども、日米の首脳会談でも日欧の首脳会談のときにも、日本の輸入国としての立場はきちっと申し述べてきておるつもりであります。今後とも国内産で自給するという基本的な方針で対処してまいるという考えは変えません。
  274. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いつも聞くのを読み上げられたもので満足はできませんが、とにかく大変な時期が来ると思いますから、しっかり腹をひとつ据えて取り組んでいただきたい、強く希望しておきます。  では、八月十三日の一部新聞にちょっと報じておりましたが、ガットのダンケル事務局長は、ある新聞の質問に対する文書の回答で、関税化を日本が原則的に受け入れるか否かではなしに、これほどこまで関税化を適用するかだ、そこに移行している、こういう見解を文書の中で述べておるのですね。これは、七月のダンケルの出しているペーパーで、いわゆる関税化を求める国もあるし関税化すべきでないという国もある、選択肢はテーブルに全部そろっている、こういうのを見ると、随分変化しているというふうに感じるのですが、これについてはどうか。  それからもう一つ、これは時間の点から一緒に申し上げますが、同様、ダンケル事務局長はその中で、食糧安全保障は、すべてを国内で生産する、それが食糧安保ではない、こう言っておるのですね。しかしこれは、私は日本の食糧安全保障を理解していないんじゃないかと思うのですね。先ほどから論議をしましたように、三割の自給率は裏返しをすれば七割、世界最大の食糧輸入国であるということですね。だから、我が国はせめてこの三〇%の自給率を維持するために米だけは自給したい、こういう意味で米の自給を言っておるのですね。だから、ダンケルさんはそこらが果たしてよくわかっているのかどうか。日本の食糧安全保障についてどういう理解をしているかということをちょっと疑問に思いますが、この点、二点ちょっとまとめて伺いたい。
  275. 近藤元次

    近藤国務大臣 ダンケル事務局長が新聞で報道されていることでありますので、私もそのダンケル事務局長確認はまだいたしておりませんが、そこで、今委員が述べられたようなことにつきまして委員の御質問としてお答えをさしていただきたいと思います。  もう御案内のようにダンケル事務局長が農業交渉の議長でありますから、今日まで我が国が主張してきたことについては十分ノンペーパーでも反映をしていただいておると理解をいたしております。極めて公正に中立的に今日まで、ぺーバーが出たときも各論併記ではないかという一部批判めいた記事も載っておりましたけれども、まさに公正で中立にまとめたペーパーであった、私はこう思うわけであります。  今、関税化で進むということ、交渉の担当者に聞いてみても、会議の席上は大体が関税でずっと流れています、その中で我が国としては関税で対応できないという主張をしております、こういうことで、あの記事の中にも、関税でどこまでカバーできるかというような表現のところも実はございましたから、カバーできないという部分は我が国の主張がなというふうに私も理解をいたしておるわけですが、御案内のように年内合意ということがそれぞれサミットでも努力をする目標というものが定められておりますし、九月の半ばを過ぎれば事務的交渉が始まるわけでありますので、私は、議会が許されれば、秋の交渉前にはダンケル事務局長にお会いをして、それぞれ確認と我が国の主張、最後のまた直接お話をしたい、こう思っております。
  276. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この米の問題はこれで切り上げますが、ガットの事務局長に会うのならば、この変化がないというこどをよく確認してやっていただきたいと思います。  そこで、農相にちょっと伺いますが、五月に私たち五、六人の議員団で新潟県を、それから七月には福井県の土地改良事業の状況調査に参ったのですね。それらをちょっと踏まえて二、三点質問したいのですが、まずその前に、ガットの論議の中で、土地改良事業や農業基盤整備等の農業への長期投資を削減対象にするような意見があると聞いておりますが、それは私は、日本状況からしてそういう削減の対象にすべきではないと思いますが、日本はどういう主張をしているのか、簡潔で結構ですから伺いたい。
  277. 近藤元次

    近藤国務大臣 国内支持、国内保護の問題で土地改良問題も対象になっているわけでありますけれども、我が国は対象外にするべく今努力をいたしておるわけであります。かなりいい方向に行っているのですが、全体の結論が出ているわけじゃありませんので、ここで確たる回答はできませんけれども、除外をする方向で努力をいたしております。
  278. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、国内にもこの考え方が連動しかねないのですね。私は前の予算委員会発言しましたからこれはもう深く申し上げませんが、政府の財政審あるいは行革審においても、米は余りぎみになっているからもう土地改良は要らないんだという、つまり削減しようという、これは国際的にも国内的にも連動する問題ですから、ガットの場でもしっかりやってほしいということ。  それから、これはひとつ総理にお伺いしたいのですが、今、農相にはこの問題はこの前伺いましたから総理にお伺いしますが、米の自由化は私は容認できないのですが、やはりコストダウンはどうしても図らなきゃいけない。そのためには大型の機械が有効に動くようなやはり土地改良、大型の圃場整備、あるいは排水をやる暗渠であるとか、そういう面の必要は今日においてもなお依然として重要であると思うのですが、これについて総理認識をちょっと伺いたい。
  279. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際化時代にコストダウンを図って国際価格と競争力を持った体質に変えていく努力というのは、議員御指摘のとおり一つの目標であろうと思います。そういった角度から考えますと、農業の体質を強化していくため、農業生産の基礎となる農地条件の整備を進めることなどは、これは大切な政策努力の一環だと心得ます。このため、圃場の大区画化の推進など生産性の向上に努めておるところでありますし、また、従来から農村地域の生活環境の改善に資する事業を推進しているところでもあり、平成三年度においては特に集落排水処理事業、農道の整備を積極的に進めてまいりますが、今後とも生産基盤の整備、地域の生活環境の整備、これらの問題には積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。
  280. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは大変大事な点ですから、しっかり具体化をしてほしいと思います。  そこで農相にお尋ねしますが、二回、四日間の調査の中で、土地改良事業等は、何回かの法改正によって国営事業あるいは県営事業の大型あるいは中規模化の事業については、まだまだ不十分ではあるけれども、しかし半歩、一歩負担軽減等も前進したという感じを持ちますが、今残されておるのは、小規模の団体営の土地改良ですね。これが依然残している。農相の地元でもありますが、新潟県の入広瀬村へ行って、典型的な山村でよくやっていらっしゃいますが、いろいろ実情を聞いても、この団体営に対する負担の軽減をひとつ考えてほしいというのが非常に強い要望であったのです。  もう一つは、国営の大型事業が完了して、その後の維持管理が容易でない。例えば、北陸農政局管内の坂井北部丘陵地開発事業、三百十七億かけて昭和四十六年からやって二、三年前に完了しておりますが、これなんかも初めは水田だったのを畑作にねらいを切りかえたために、だから水が非常に要る。九頭竜川から秒五トンの水を。揚げて導水管で持っていってポンプアップをやっておるのですね。これはもうそれだけの水を高いところへ揚げるには随分経費がかかる。そうすると、大きなポンプや揚水機がありますが、それは全部専門の電気の技術者を雇わなければいけないとか、なかなか後の維持管理に非常に、今米価も停滞あるいは切り下げられているという中で、あるいは困難な状況の中で、この負担が重いのですが、残された団体営の対策、対応、国営事業が完了後の維持管理等に対してどう対応するのか、負担軽減、これについて二点伺いたい。
  281. 近藤元次

    近藤国務大臣 県営、国営までの土地改良の市町村の負担の明確化を自治大臣から大変御協力いただいて県営のところまでは何とか、今半歩とか一歩とか言いましたけれども、私はかなり前進をした、こう理解をいたしておるわけですが、団体営は先生御案内のように土地改良が事業主体なものですから、土地改良が事業主体のところに地方財政というわけにはいきませんので、その辺のところを来年度に向けてどういう対応ができるかということで真剣に今省内で検討させておりますので、なかなか困難なところはありますけれども、できるだけの努力をしていきたい、こう思っております。  水の問題につきましては、これは国内の唯一の資源でありますから、もっと有効に活用しなければならない。圃場だと思ってその土地改良を始めて、それの水源ダムをつくったら畑地に変わったという地域もかなりございますし、そうすると水の消費量が違うものですから、その水をもっと有効的に他の目的にも使うようなことにして、その土地改良なりの管理の軽減を図っていくべきだという考え方に立って、水の効率の利用のために農業用水対策室という部署をつくらせていただいて、今一つのケースとして、その観点から検討いたしております。  もう一つは、水管理が、いろんなことで施設が、土地改良でやったりあるいは県営でやったり国営でやったりというものが、その地域にあるものをもう少し近代的なシステムでその管理体制ができないかということもあわせて検討さしておるわけでありますけれども、水の問題というのは、大変重要な資源でもありますし、今日の土地改良だけに負担をさせておくというのもいかがなものかな、水資源というのは個人の資源ではなくて、その地域であったりあるいは国全体として水資源という立場からすれば何らかの対応をしたいな、こういう考え方で、これもあわせて検討を今省内でさしているわけでありますので、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
  282. 辻一彦

    ○辻(一)委員 省内で十分検討されておるならば、ぜひひとつ具体策を打ち出してもらいたいと思います。  そこで、第三に、私は、中国の三江平原農業開発の問題で若干質問したいと思うのですが、これは二月二十五日に予算一般質問で行いましたので、その前段の方は省略しますが、五月の八日から十二日まで三江平原へ私も単身行って一週間ほど見てきました。一千万ヘクタールと言われる広大な平原であり、また吉林省は有数のトウモロコシの産地ですが、ここで現地の幾つかの声を聞いたりしましたので、ちょっとそれを紹介して、ひとつ対応を考えてほしいと思うのです。  大洪水が最近あって、水害でどうなっているかなという心配と、それから中ソ国境にこの三江平原はまさに隣り合わせですから、だから、この間のようなソ連クーデターがあのまま続くと中ソ関係の国境の緊張等が生まれはしないか、こういう心配をしておったんですが、幸いにゴルバチョフ大統領復権をしたということで、その懸念がなくなったと大変喜んでおります。  そこで、一つは、JICAが随分技術協力をして日本の総合農業試験場というのを四カ所ほどに分散してつくって、冷害試験、品種改良、作物の栽培等をやっておるんですが、日本の冷害を起こす最新設備を持っていっておるのです、援助として。これは温度を下げる施設ですが、ところが運営費が足りないので――電力が要るわけですね、ずっと冷害を起こすのは。一年のうちに、まあ冬はいいんですが、四十日しかその機械が使えない、冷害状況をつくることができないというんですね。せっかくの日本の最新の施設を持っていっても、夏場のうちに四十日しか春から夏の間に使えないというのは、いかにもこれはもったいないじゃないか。そうなると、運営の経費等をどうするかということを考える必要があるんじゃないか、こういうことを非常に強く感じたので、これにどう対応されるかということ。  それからもう一つは、あの農耕可能地六百万ヘクタール、日本の全耕地に匹敵しますが、半分は大体開発されている。あと半分を今、洪水を制御し、そして干ばつに水をやり、排水をするということで、これを開発しようというので、農林省もかつてない調査団を三年間送って、青写真はできておる。日本は、四万八千ヘクタールのモデル区を設定して、そこに協力しようとしておるのですが、今の状況ではどうも遅々として進まない。これは円借款の対象とODAの対象にしなければ、こういうダムをつくり、大規模な仕事は進まないと思うのですね。  そういう意味で、聞くところでは非公式ですが、中国は新しい円借款を、問題があれば、一つは三江平原、一つは上海南東の開発計画、もう一つは環境問題対策等を順次取り上げていきたいということを非公式に聞いておるのですが、中国からそういう要請があった場合には、我が国はこれに十分応ずる用意があるかどうか、この二点について伺いたいと思います。
  283. 川上隆朗

    ○川上政府委員 二点にわたっての御質問でございますが、最初のJICAのプロジェクトに関しましては、先生御案内のとおり六十年九月からやっておりますけれども、このプロジェクトに対しましては、今若干御説明がございましたように人工的な低温状態をつくって耐害、耐冷性品種の研究を行うための機材供与というものを行ったわけでございますが、この機材はもともと夏場の実験を行う際に使用して必ずしも一年じゅう稼働させるというものではないわけでございまして、夏場には電気代等の予算不足という事情がございまして、御指摘のとおり四十日程度しか使用されてないというふうに承知いたしております。しかしながら、冬場におきましても太陽光を利用した温室として使用しまして、冬作の実験を開始しつつあるというようなことで活用は図られていると承知いたしています。  この経費につきましては、そもそも中国側が負担するということになっておったわけでございまして、昨年六月、我々これは評価の調査団というものを送りまして、そのときにも中国側から黒竜江省におきまして予算措置を検討しているという発言がございました。そういう経緯がございました。しかしながら、先生御指摘のとおり余り改善されてないというふうに我々も伺っておりますので、これはぜひ中国側と至急協議して対応策を検討してまいりたいというふうに思っております。  それから、第二点目の円借款の件でございますが、これは御指摘のとおり、内々中国側からそういう示唆も既に出てきておりますが、正式の要請としてはまだ伺っておりませんので、正式の円借款の要請がありますれば、今先生がおっしゃったようなプロジェクトについての要請がございますれば、そのときの諸般の状況を勘案しながら可否について検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  284. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後に一問聞きますが、ごみの問題なんです。これはもう詳しい論議をする余裕はありませんから、要望、問題点を指摘をして大体終わりたいと思いますが、六十三年に福井県の敦賀市にこみ処理場が設置された、そして広域の関東、関西から、三十市町村から大量のごみが今持ち込まれて非常に問題が大きくなっております。この二年間でも約十万トン去年までごみが搬入されておる。しかも、市が最近その周辺に試験の井戸を掘った。その地は処理場からは遠い方でありますが、三本から弗素ほかの有害物質が基準以上に出てきたということで周辺の井戸の使用を禁止をしておるのですね。こういう問題が一つあるのです。それが水源に近いということと、それからさらに第二次の工事の拡張計画が今出されようとしている、こういうことで非常に社会問題化をしておるのですね。  そこで、ごみは大体区域の市町村で処理をするということが原則になっておりますが、施設は知事の届け出、現行法は。それから、ごみ処理の事業の方は、産業廃棄物は知事の許可、それから一般廃棄物は、ごみは市町村長の許可が必要となっておるのですね。ところが、市町村が業者に委託をした場合には例外として市町村の許可が要らないということになっているのですね、現行法で。その後者が今、敦賀になっていますね。だから、そういう意味では、大量のごみが持ち込まれながら地元の市町村には拒否権が法的に保障されていない、これが非常に問題になっております。  二十年前に、ごみ問題は恐らくこんな広域に及ぼうということを予想せずにつくられたので、二十年たって日本の経済が発展をし暮らしか向上する、大量のごみが出て、広域圏に、福井県にまで関東や関西からどんどんごみが来る、非常な変化があったのですね。だから、私はそういう意味では、やっていることは不法ではないのでありますが、新しい状況に対応する法の不備を補うべきである、こういうふうに思っております。  時間がもう参りましたので、私これについての答えは、要望だけして、十分検討してもらいたい、こういうことを申し上げておきます。近日、現地に我々も調査に入って、その上、結果を踏まえてもう一度当該委員会でまた論議をいたしたい、このように思っておりますので、十分ひとつ検討いただきたいと思います。  以上で終わります。
  285. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、野坂浩賢君から関連質疑の申し出があります。辻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。野坂浩賢君。
  286. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ソ連におけるクーデターは完全に失敗をいたしまして、これによってソ連においてはより民主化が加速されるであろう、こういうふうに私は思いますが、どのようにお考えでありますかということをまず総理に、これが一点。  二点目は、現状認識の上に立って日本政府の対応の問題でありますが、日本政府は経済支援の凍結の解除等、それぞれ準備万端進められると思います。今も外務省の方から外務大臣の方にメモも届いておるようでありますから、この機会に現状の報告。  そして三番目は、非常に混乱をしておる現状でありますから、総理大臣の特使が、あるいは早期に外務大臣を派遣をして、見舞いなり激励なり、また日本の国土の国益というものを考えて、善隣友好の実を上げることが必要ではなかろうか、こういうふうに考えておりますが、以上三点について総理なり外務大臣見解伺いたいと思うのであります。
  287. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連事態が、憲法手続によって選ばれておるゴルバチョフ大統領復権という形で終えんを見ました。これは歓迎すべきことであるということは申し上げたとおりであります。同時にまた、ソ連ペレストロイカによる国内の改革と新思考外交を地球的規模で適用するということ、わかりやすく言えばアジア・太平洋地域にもヨーロッパと同じように、冷戦の発想をとにお話し合いがなされたわけでありますけれども、そのときには六項目というものが示されて、ソ連に対する経済支援というものが各国首脳の間で合意を見た、こういうことになっておりますが、その後のいわゆるクーデター事態が発生したために支援を凍結するということが行われたわけであります。  これからの問題として、昨晩、実はEC議長国であるオランダのファンデンブロック外相と昨夜電話で話をし、今晩また電話で話をすることを約束しておりますけれども、ECも昨日の段階では援助を凍結しておりました。こういう形の中で各国と協議しながら、ソビエトに対する支援、これをどうするか、こういうことが各国と調整をされるということになろうと思います。なお、日本政府からは昨晩、渡辺外務審議官をロンドンを中心に各国に派遣し打診を既にいたしております。  こういう状況の中で、具体的に技術的な支援あるいはいわゆるペレストロイカのための人物の交流というものをいつから開始をするかということは、新しいソ連ゴルバチョフ大統領中心にした政府が、人事も終わり、そしてそのような体制が整った時点で各国と協議しながら打ち合わせをしなければならない、こう思っております。せっかく民主化あるいはまた自由化が安定をする機会ができたわけでありますから、政府が強固になってくる、こういう中で我々日本ソ連との間では、この拡大均衡を踏まえながら日ソ間の問題を解決していく、そのためにも私どもは努力をしていきたい、このように考えております。
  288. 野坂浩賢

    ○野坂委員 総理からも外務大臣からも一応現状認識と今後の方法、対策についてお話をいただきました。総理からお話がありましたように、日本ソ違は領土問題等を持ち合わせながら、これから善隣友好を積み重ねて成果あるものにしていかなければならない。したがって、具体的にはゴルバチョフ政権が確立をした段階で、それに激励なり確認に行きたい、積極的な支援対策についても持っていきたいということであります。したがって、時期を失しないで、誠意を持って早期にそれらについては対応されることを強く要望しておきたいと思います。  次に、先ほど来証券スキャンダルやあるいは金融スキャンダルの問題がたくさん出ましたが、まあワラント債を朝買って夜は四億一千万円も利益が出るというような我々が想像もしないことがこの場で展開をされておるわけでありますが、それとは裏腹に、一年たっても一メーターしか伸びない山の民有林、国有林の問題について、農水大臣あるいは大蔵大臣にもお聞きをしていきたい、こういうふうに思うのであります。  御案内のように、一九九〇年度の林野庁の決算が出ております。現在の借入金の残高は二兆二千五百億ですね。その利息というのは一日に三億六千万かかっておる。したがって、このように山が荒れて、そして今世界は異常なほど地球規模の環境問題が唱えられておる。国有林というのは全国の森林面積の約三割ですね。国土の二割を占めておる。その山が荒れておる。それが借金のために、また赤字のために十分な手が尽くされていないというのが私は現状だと思うのです。  そこで、与野党も協議し、政府も参画をして、第百二十国会でいわゆる特別措置法、森林二法が成立をして、事業面は事業でやろうじゃないか、そして赤字面については対策を立ててやるという経理区分が明確にできた。したがって、これから具体的に森林計画をするために、流域管理システム化がこれから具体的に今始まろうとしておるときであります。そういう状況のときに、世界の木材貿易の二割というのは日本が、熱帯林の木材貿易の四割を日本が輸入しておる。したがって、日本の森林計画というものを速やかに進めていかなければならない緊急事態に今ある、こういう認識であろうと思います。したがって、林野庁におかれましては、森林整備計画事業という五カ年計画がこれから、来年度から出発をするという状況下にあるわけであります。しかし、その計画に盛り込まれる金額が問題ですね。金額が多く盛り込まれなければ事業は推進しないというのはだれでもが知っておることであります。したがって、これについては積極的に相当な規模でやれるだろうと思うのでありますが、その内容と概要について御説明を賜りたいと思うのです。これが一点。  二点目は、今申し上げましたように、いわゆる経理の区分をやりました。事業面といわゆる赤字対策の面と、経理区分ができ上がった。したがって、この面でどのようにこれから進めていくかということが課題であります。一日に三億円も金利を払わなければならぬということになれば、今の事業面だけでも、証券や金融のようになってこない山の状況、自然がなければ山は成長しないというこの現況から見て、我々はどう対応するのか。  それは、今度の決算を見ても相当の金額ですね。借入金が約二千六百億円に上っております。そういうことになれば、だんだんだんだん赤字になって、新聞の報道によれば国鉄と同じ道じゃないかということさえ書いてあります。資源を大切にして、そして地球規模の環境汚染に対する期待にこたえる、そのためには一般会計からの大きな繰り入れを実施をしていかなければ、この山の保全、国土の保全ということは非常に困難になってくるのではなかろうかと思うのです。したがって、農水省は積極的に現状を明らかにしながらその汚染回避のために、国土の保全のために、災害の防除のためにも一般会計の繰り入れを思い切った措置をとってもらうように私は善処されたいと思うのでありますが、ごく簡潔に農水大臣の御答弁をちょうだいしたい。
  289. 近藤元次

    近藤国務大臣 前国会において森林二法について大変な御協力をいただいたことを最初に感謝を申し上げたいと思います。  山の重要性については認識を一致するものでありますが、いろいろ来年度予算編成に向かっての激励もいただいたわけでありますが、国有林野事業の経常事業部門の財政の健全化については、本年七月策定した新たな経営改善計画に基づいて、平成十二年までに、改善期間中に事業の民間実行の徹底と要員規模の適正化、自己収入の確保等、自主的改善努力の徹底を図るとともに、公益的な機能発揮等に係る費用についても、民有林助成との均衡に留意しながらも、一般会計による負担措置を講ずることとしているところであります。  平成三年度予算においては、造林、林道についての一般会計繰り入れ対象を民有林並みに拡大するとともに、森林計画作成に要する経費など一般の行政的経費を一般会計繰り入れの対象として追加したところであります。  今後とも、造林、林道に係る費用については、民有林助成との均衡に留意し、一般会計からの繰り入れの確保に充分に努力してまいる考えであります。
  290. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今、農林水産大臣からお話がありましたように、今までは国有林はいわゆる自主経営といいますか自立経営といいますか、それが建前で行われてきたわけです。今度の法制化によりまして、いわゆる民有林並みに助成措置も講ずるということに決まったわけでありまして、そういう意味で民有林の助成との均衡に留意し、というお話があったと思うわけであります。  先ほど来、大蔵大臣も証券や金融の、何といいますか資本主義、自由経済のごみのような、掃きだめのような議論をしなければならぬ。この山は、自然に恵まれて胸いっぱいに空気が吸えるわけでありますから、日本国民の健康あるいは国土保全、災害防除、そういう意味で、今農水大臣が御答弁になりました裏づけを大蔵大臣としては積極的に対応していただきたい、こういうふうに思いますが、大蔵大臣はいかがお考えですか。
  291. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 従来から林野行政につきまして私なりの意見を本委員会におきましてもしばしば申し述べてまいりました。また、委員を初め御堂の皆さん、お目にかかってお話をいたしてまいったこともございます。  今、農水大臣からも御答弁がありましたように、おかげさまで森林二法というものが通過、成立をいたしました。農水省の概算要求が今農水省として準備をしておられると存じますけれども、これをちょうだいいたしまして後、平成四年度予算編成の過程において農水省と十分御相談をいたしたい、そのように思います。
  292. 野坂浩賢

    ○野坂委員 積極的に山を守る体制を樹立していただきますように両大臣に要望しておきます。  私は、今外務大臣がはしなくもおっしゃったように、ソ連クーデター失敗に伴う一番大きな原動力は民主化の流れである、大衆の力であった、こういう御評価を賜りました。まさに私も同感でありまして、そのとおりであろうというふうに思います。そこで、その民主主義の原則とは一体何だということになれば、私は自由と平等であろうと思うのです。その平等というものが果たして確立されておるのか、いまだに部落差別は現存をしておるというのが私は実情ではなかろうかと思うのです。  したがって、私はこれから同和問題についてお尋ねをいたしますが、御案内のように第百二十国会では土井たか子委員長がこれらについて本会で質問していただきました。今回も、新しい我が党の委員長であります田邊誠委員長、ここにもおいでになりますが戸田菊雄代議士、あるいは参議院でも、それぞれこの差別の問題は、民主主義の原則である、自由と平等を闘い取っていかなければ民主主義の確立はあり得ない、こういう認識の上に立って質問をちょうだいしたわけであります。  私はその御答弁の中で、総理からもいろいろ御答弁がありましたが、気に入らぬのですね、気に入らぬ。何と言っているかというと、「一般対策への円滑な移行」、こういうことを言われておるわけでありますが、私がこの前の百二十国会で予算委員会で質疑をいたしましたときには海部首相は、渡部委員長の御示唆もあって、広く意見を聞いてぴしゃりとやります、こう言ったんですよね。そういう前提条件がなかった。いかぬじゃないかと思うのです、私も。したがって、私はこの際、この自由と平等の原則の上に立って、差別があるかないか、こういうところから議論を掘り起こしていかざるを得なくなった、こういうふうに考えて、これから質問に入るわけであります。  担当の佐々木総務庁長官は後にいたしまして、まず法律の番人である法務大臣左藤さん、あなたに聞きたい。  現実に差別の事件、いわゆる啓発をすべきそういう案件、情報、そういうものの傾向と現状は一体どうなっておるのかということだけをお聞きしたい。
  293. 左藤恵

    左藤国務大臣 法務省の人権擁護機関が取り扱いました同和問題に関します人権侵犯事件、これから見ましても、いまだにいわれのない差別意識に基づく結婚差別、それから就職差別、そういった事案、これが後を絶たないわけでありまして、今後ともこの差別事件、こういうものが発生いたしましたときには積極的に啓発を行っていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  294. 野坂浩賢

    ○野坂委員 啓発事件、啓発的な情報事件というのは大体一万五千五十七件程度、それから事件として取り上げるものが約五百件程度、そういうふうに認識していいんですね。――はい。  それでは井上文部大臣、あなたです。今高等学校の入学、進学ですね、その率は、一般地域と被差別部落の比率との差、あるいは大学はどのような状況になっておるのか、そして、それを平等にするという御努力を文部省は積極的に行っておられる、そのことはよく承知しておりますが、あと何年ぐらいすればそれの差別が解消するようになるだろうか、この点について明確にしてもらいたい。
  295. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  前回の予算委員会でも私申し上げましたが、現在文部省といたしましては、対象地域の教育水準の向上のために研究指定校や、あるいはまた教員の加配の措置を通じまして、学力向上に努めてまいったわけであります。その結果、この対象地域の生徒の高等学校の進学率は、昭和六十一年度に八七・九%でありました。これが平成二年度には八九・六%となっており、若干ではありますが上昇の傾向にあるものと承知をいたしております。さらにまた全国平均との間には、平成二年度の高等学校進学率で五・五%の格差が見られるところでありますが、今後の対策につきましは、現在行われている地域改善対策協議会の審議を踏まえながら十分検討してまいりたい、このように考えております。  また、大学におきましても進学率の問題は、対象地域の同和関係者の子弟の大学進学率、昭和六十一年度の一九・一%から平成二年度の一九・七%、若干ではありますが上昇しておる現況でございます。  あと何年かということに関しましては、私の方の局長から、また審議官から答えさせていただきます。
  296. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 数字はただいま大臣から御説明したとおりでございます。高等学校については五・五%の格差、大学については一〇・八%の格差が一般地域と同和対象地域とはあるわけでございます。  これを、その間私ども、先生御案内のとおりに、同和地区の高校生、大学生を対象にいたしまして一般育英資金と別途に奨学事業を実施してきているわけでございますが、この事業と、それから各地域の同和推進対策地域あるいは指定校制度等でそれぞれ学力の推進等に私ども努めてきているわけでありますが、そういうものと相まって、その一般地域と同じような大体レベルになるのは何年先がというのは、まことに恐縮でありますが、見通しは何年先にはこうなるというのはなかなかお答えにくい点があるわけでございます。いずれにしましても私どもとしては、なるたけ一般地域と同じような進学率が確保できるような方向で今後とも努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  297. 野坂浩賢

    ○野坂委員 厚生大臣にお尋ねします。  被差別部落の皆さんは、今年度も、共済年金、厚生年金、国民年金、こういうふうにありますね。聞けばいいんですが、時間がありませんので私から申し上げますので、もし間違っておったら訂正をいただきたいと思うのです。  国民年金は加入率が大体六〇%、生活保護の受給率というのは約九%、住民税の非課税世帯が二五%、大体こういう状況ですか。もし間違っておったら御報告をいただきたい。
  298. 末次彬

    ○末次政府委員 ただいま手元に保護率と国民年金の加入率の資料がございますので、これでお答えいたしたいと思いますが、同和地区の保護率につきましては、昭和六十年時点で全国の保護率が一一・八パーミル、同和地区の保護率が六七・七パーミル、五・七倍となっております。国民年金の加入状況でございますが、これは昭和六十年度のやはり数字でございますが、全国の国民民年金の加入率が二〇・九、厚生年金、船員保険、共済合わせまして二七・六、同和地区につきましては、国民年金は二一・六%、厚生年金、船員保険、共済合わせまして二三・九%となっております。
  299. 野坂浩賢

    ○野坂委員 六七%も、いわゆる五・七倍もあるということですね、一般地域より。これでは一体どうなるのか。  なぜ、一体こうなっておるのかということになりますと、労働大臣、小里さん、やはり普通の企業にお勤めになると大体厚生年金ですね。公務員なりあるいは農協等は共済ですね。不安定就労が高いということですね、いわゆる国民年金加入というのは。これではやはり、就職に格段の格差があるということが実証できると思いますが、いかがでしょうか。
  300. 小里貞利

    ○小里国務大臣 いわゆる同和住民関係の労働実態、中でも不安定就労の状況について御指摘あったわけでございますが、端的にお答え申し上げまして、家族従業者数、これは漸減の方向にございます。同時にまた、いわゆる常時雇用者数、これは増加の傾向にございまして、その側面におきましては改善されつつあると思います。しかしながら、先生ただいま御指摘のとおり、そういう不安定就労関係で、例えば日雇いあるいは臨時等におきましては、全国平均と比較をいたしまして極めて数字は高い方向にある。殊に就労いたしておりまする従業者のその就業先のいわゆる企業規模別に見ました場合に、小規模の方に比較的に就業をいたしておる、そういう傾向がございまして、私どもは、この点につきましては注目をし、改善を急ぐべきであると思っております。  なお、また端的に申し上げますが、就業差別事象あるいは就業差別につながるような事象、これも依然として後を絶たない、そういう状況でございまして、これも積極的に対策を講じなければならぬ、かように思っております。
  301. 野坂浩賢

    ○野坂委員 建設大臣、住環境の状況、残事業はどの程度ありますか。
  302. 大塚雄司

    ○大塚国務大臣 同和事業は基本的人権にかかわる重要な問題と認識をしております。特に同和地区の環境改善は同和問題の解決に非常に重要だと思っておりまして、きょうまでも良質な住宅の供給あるいは住環境の整備、特に道路や公園や下水道の整備には相当な努力をしてまいったところでございます。  昭和六十一年度の調査によりますと、六十二年度以降約四千億。いわゆる事業費ベースで調査をしたわけでありますが、平成二年度末で約三千十一億、約八〇%、平成三年度の予算を入れまして約三千七百五十一億、約九三%。事業費のベースではそういうことになるわけでありますが、実態は地価の高騰や建築費のアップ、あるいはまた現場の、ただ住宅を建てるだけではございませんで、環境整備というのは区画整理に近いような仕事でありますから、実際に事業そのものからするとまだたくさんあるなという感じがいたします。  そこで、百聞は一見にしかずですから、先月私は奈良県の御所市に参りまして、現場を見てまいりました。大変によくなっている姿を見てほっとした半面、まだどうも途中でやめるわけにはいかないなという実感もしてまいったわけでございますが、現行法の中でともかくできるだけ事業を進めるということに全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
  303. 野坂浩賢

    ○野坂委員 自治大臣現状各県、各市町村からそれぞれ要望があると思いますが、十分御承知だと思います。それについて残事業はどの程度か、全体を掌握をされておりますか、お尋ねをしたい。わからぬならわからぬでいいですから。
  304. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 残事業が幾らであるかということはわかりません。
  305. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やはり非常に同和問題は注目すべき重要な案件であるということを総理大臣は国会で御答弁をいただいております。まじめな海部総理でありますから、私はまじめに受け取っております。しかし、皆さんも御案内のように、地対財特法は来年の三月三十一日に終了するのであります。あと半年しかない。そういう状況のときに法務大臣は、啓発事件は一万五千もあります、ゆゆしき問題です、減りませんと。そして労働大臣もまた、不安定就労が多いために国民年金の加入者は圧倒的に多い、できれば改善をするように最大努力をしたい。厚生大臣もそうです。建設大臣も、残っておると。しかも六十一年度の調査なんです。  今、そういう状況下の中で残事業の調査をいたしました。政府がしてくださるということを期待しておりました。法律をこれで打ち切ってもいいのか、打ち切っちゃいかぬのか、民主主義の原則が揺れる、そういう時期のときに、私は事業の調査をするというのは、愛情ある政治をし、外務大臣がはしなくもおっしゃったように、大衆がどう考え、どう見ておるかということのためにも、愛情ある政治というのは私は差別をなくすることだと思っているのです。そのために、残事業を調べてみましたら、地対財特法制定時に国に提出した残事業の量、これが五千四百四十五億二千六百万円。それから地対財特法後の残事業で国の補助事業にのるもの、これが三千二百二億七千二百万円。そして地対財特法後の残事業で国の補助事業にのらないもの、いわゆる地方行政の合意額です。これが一兆四千九十七億三千二百万円。あるいは現時点で考えられる残事業は二兆円に及んでおります。一体、政府は残事業はどの程度あるというふうに御掌握になっておるのか、責任省庁であります総務庁長官の御答弁をちょうだいします。
  306. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、いわゆる残事業と称されますものは、これは計画に従って実施すべきもの、こういうふうに考えております。したがいまして、本年度でやっておるものもございますけれども、もし本年度中に処理できないものにつきましては明年度以降も引き続き実施をする、こういうことで対応すべきものと考えております。  残事業はどのくらいあるか。これは六十一年の調査で数字を出したわけでありますが、その後の情勢の変化等々ございますので、関係省庁とよく相談をしてまいりたい、このように考えております。
  307. 野坂浩賢

    ○野坂委員 法律は刻々と迫ってきておるわけであります。それならば早急にこれらの問題を解決していかなければ、調査をしていかなければ、大蔵大臣は証券のスキャンダル問題について、ちゃんと規制をして罰則規定まで設ける、こういうふうなことを明言されておるわけです。今、各大臣からお話があったのは、まだ残事業はたくさんあります、ソフトの面もハードの面もたくさん残っております、いつ達成できるか、めどが立たぬとおっしゃっておる。それでもなだらかに円滑に一般対策へ移行する、前に決まっておるんだからということです。もう一面でいえば建設大臣の大塚さんがおっしゃったように、金額は済んだけれども残事業はたくさん残っておるんだ、こういって明確におっしゃっておる。したがって、一般対策へ円滑に移行というのは、具体的な中身は何ですか、それでは。円滑な一般対策。でき上がったものを一般対策へ移行する。例えば、今は対象事業項目というのは五十五ある。ダブっておるものもありますね。でき上がったものから一般対策へ移行する、それでいいじゃないですか。でき上がらないものはちゃんと法律の中に載せて具体的に進めなければ、本当の意味の自由と平等というものはできないんじゃないですか。そうでしょうが。どうですか。
  308. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 この問題は、御承知のことなんでございますけれども、昨年の暮れに一般対策にいかにして円滑に移行するかということで地対協に御諮問を申し上げておるわけでございます。地対協では、先ほど来御議論ございますとおり、心理的な面はどうなのか、それからいわゆる事業面、物的な環境整備の面はどうなっておるのか、こういうことを十分に御検討いただいておると思いますし、それにつきまして関係の地方公共団体の御意見、御希望、そういうものも十分お聞きをいただいて御検討いただいておると思うわけであります。そういうことを踏まえまして、明年度以降どうするかということの最終的な御答申がいただける、こういうふうに思っておりまして、それを踏まえまして、それを尊重して対応してまいりたい、このように考えております。
  309. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんから、いいですか。地域改善対策協議会の答申を待つと。地域改善対策協議会では中間報告を出す予定だったんです。ところが、でぎなかったんですね。当該団体の話等を聞くと、とても円滑に移行するということは難しいと。したがって談話という格好になって出てきた。新聞を見ますと、朝日新聞です、これは。朝日新聞にはこういうことが書いてありますね、この談話を受けて。いわゆる政府側抵抗で玉虫色表現に変わってきた。今後も法律が必要であると書きたかったんです。これは原稿がありまして、直しておるんですよね。あなた方の提案は特別法として提案され成立したものであることを踏まえ、一般対策への実情に即して円滑な移行を図るという趣旨を踏まえるということを原案に書いたんです、ここで率直に言えば。  ところが、議論はそうじゃない。大衆の意見外務大臣の言葉を引用するわけじゃありませんが、大衆の意見を聞くと、その制定の趣旨に留意しつつ実情に即して配慮すること、言うなれば来年度の概算要求も従来どおりでやれと書いておるんです。前段のそういう経過措置とかあるいはなだらかな円滑というようなことではないんです、本当は。だから百二十国会のときにあなたに私は、その前段を取って、大所高所から大幅に皆さんの御意見をちょうだいをして間違いのない方向というものを答申をしてもらうべきだ、前提条件をつけちゃいかぬ。つけませんとあなたは言ったんです。それをまたぶり返すというようなことではなしに、大所高所から、あらゆる角度から皆さんに御検討いただいて、前提条件をつけないで、そして同和問題に対する、いわゆる地対財特法期限切れ後の対策というものは法律必要ないという結論が出ても最大限尊重してもらわなければならぬ。あらゆる面からやるというのは各大臣答弁の一致するところじゃありませんか。そのとおりに確認していいか。あなた、御答弁
  310. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、最終的な明年度以降のことにつきましては、年末にはっきりした御答申をいただけると思います。そこで、先般会長談話ということでいただきましたのは、いろいろございますけれども、当面の概算要求に当たっては実情をよく考えてやれ、こういうことでございますので、関係省庁御相談の上、明年度の概算要求につきましては現行どおり要求をしようということにいたしたわけでございます。  なお、それは最終的にどうなるか、それは年末の最終の御答申をいただいて決めさしていただく、こういうことでございます。
  311. 野坂浩賢

    ○野坂委員 前提条件なしで十分議論をしてもらって、その答申を受けてそれを最大限に参考にし、尊重して実施をする、改めて検討するということですね。
  312. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 前提条件とかなんとかそういうことじゃなくて、要するに、地対協にひとつ明年度以降どうするかということのお知恵を出してもらいたいということでお願いを申し上げておるわけでございますから、その御答申が出ましたら最大限に尊重して対処する、こういうことでございます。
  313. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんので、今佐々木総務庁長官は、一般対策へ円滑にということではなしに、あらゆる立場、大所高所から、日本民主主義の原則を揺るがすこれらの問題の点については十分地域改善対策協議会で話し合って御答申をいただきたい、こういうことであります。したがって、総理大臣も、そのことは前回きっちりやりますというお話もいただきましたので、前提条件なしの、十分大所高所から議論して、その協議会の意見を最大限尊重していただくということでよヶしいかどうか、総理大臣意見をこの際お聞きしておきたい。きっちりやってください。
  314. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 地対協の審議の結果を尊重して、ただいま総務庁長官申し上げましたようにいたします。
  315. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これで終わります。
  316. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて辻君、野坂君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  317. 金子満広

    金子(満)委員 一昨日に引き続いて選挙制度の問題、特にこれに関連をして政治資金の問題について、若干の点をただしておきたいと思います。  選挙にはうんと金がかかるんだという風潮がずっと出ます。そういう中で、中選挙区の方はうんとかかって、小選挙区になると金が少なくて済むのではないかという風潮がまたつくられつつあると思うんです。やはり歴史の経過に従ってこういう点は明らかにしておくことが私は大事だ、このように思います。  御承知のように、我が国の議会制度の中でこれまで二度小選挙区制が導入された。一八八九年から一九〇〇年、そして一九一九年から、一九二五年、この間であります。前者の方は十一年間に六回選挙をやり、後者の方は、二回選挙をやりました。いかに弊害が大きいかという点で、政治資金の問題だけに限定して質問をしたいと思います。  そういう中で、二回の小選挙区制というのはまずいんだ、だからこれを変えようというので、現在の中選挙区制になったのが一九二五年、大正十四年であります。そのとき国会に、当時の総理加藤高明氏が提案理由の説明をしております。そこでは、小選挙区制を今度改めて中選挙区制にするという提案の中で、特にこの金の面について次のような指摘があります。「近時ノ選挙ヲ実見致シマズルニ、」実際に見てという意味で「実見致シマズルニ、各種ノ悪弊百出シ、殆ド其極ニ達シタカト見ラルル程デアリマスこ「就中選挙費用ノ濫増ハ量モ著シキモノノ一ツデアリマス、」。  そういうようにして、いかに中選挙区でなければいけないか、小選挙区はまずいかというので、当時これだけ膨大な資料を国会に出していますが、その中で、選挙でどのくらい大選挙区と小選挙区で違うかという問題が出ております。一つの指摘は、「小選挙区制においては、選挙費用を減少せしむるの利ありとの説あるも、従来の実績に見るに、必ずしもしかりということを得ず。」そして具体的な数字で、大正四年、大選挙区のもとで議員一人当たり五千七百八十九円。大正六年、一人当たり四千百六十一円。それが小選挙区制になって、大正九年、七千百三十五円。大正十三年が七千八百五十円、約倍近くになっております。これを具体的に数字を挙げてやっているわけですが、当時でも、当時とは六十六年前ですよ、これだけの資料をずっと提出してやっているんですが、さてそこで、これは総理伺います。  当時さえそうでありますけれども、今現在、中選挙区制というのは金がかかる、小選挙区になるとかからないというのですから、それでは現行の中選挙区制のもとではどのくらいの額がかかるのか、小選挙区になるとどのように額が減るのか、その額を、当時もこういうようにちゃんと提示しているのですから、多いのだとか減るのだとか抽象的なことでなくて、科学的な裏づけをもってひとつ出してほしいと思うのです。
  318. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 なかなか難しい御質問だと思います。率直に言って、大正十四年とか大正年間の選挙制度とか選挙のあり方、世の中の仕組みとそれから今日の世の中の仕組みとは、もう極端な差があることは議員も御理解願うと思いますし、同時にまた、その中選挙区と小選挙区の問題は、面積が広いからかかる、狭いからかからないと、そんな言い方をしておるわけでもありませんし、きょう現在のいろいろな発表されておるものの中で、我が党の同僚の勇気ある若手の皆さんが、今これぐらいかかるということを発表されて、新聞にもそれは示された。それは勇気ある公表であったと思いますけれども、国からもらっておる歳費と比べるとはるかに多くの空白期間がある。また、脱線するようで申しわけありませんが、毎年政治資金の届け出、政党別に見ておりましても、共産党も届け出になる政治資金というのはやはり三けたの億になっておる、お金がかかっておるんだということは、これは事実だと思うのですよ。  問題は、私たちは、それが必要以上にかかっておるものを、個人が中心で集めようとするような仕組みではなくて、政党とか、あるいはナショナルサービスたるなれば公費とか、何か透明性とかあるいは公開性を大事にしながら必要なものにしていこうということ。同時にまた、今は選挙でも日常生活でも、個人で宣伝活動や徹底活動、後援会とのつながりというものは大正時代と比べて全然質が違うと思いますので、科学的な数字を比較検討して出せと言われても、ちょっとそれは困難な作業でありますので、私の率直な感じを申し上げさせていただいてお許しをいただきたいと思います。
  319. 金子満広

    金子(満)委員 難しいということでは回答にもちろんなりませんし、困難だからということで、金が少なくて済むんだ、小選挙区ということにもちろんなりません。我が党の問題に触れましたが、収入の九〇%以上は機関紙活動の収入でありまして、それに近い支出がありますから、直接選挙ではないということは明らかにしておきたいと思います。  私は、昔の、今話をしただけじゃないのです。確かに世の中も変わり、情勢も変化し、選挙のやり方も画一的ではない。しかし、そういう中で、一番新しい衆議院選挙は去年の二月でした。一人区は御承知のようによく言われる奄美特別区ですよ。これは一人区ですね。そして、当選した衆議院の徳田虎雄氏は、去年の五月にテレビ朝日で次のように言っているのですね。「とにかくひどい。小さくなればなるほど大変ですよ。小選挙区制になると一%で決まる。私たち、有権者十一万のところで戦って、千五百票差で決まった。こういうときに一票を三十万円、五十万円、百万円で買っておる人がおるからね。相手の百倍の実力がなかったら勝てないですよ。小選挙区制になったら現職が死ぬまでかわらない。それと有能な人が出てこない。」こういうことをテレビでも堂々と言っているわけですね。  だから、総理がそれは昔の話で今はもう世の中違ったから難しいと言っても、一番新しい話で、実感を持って言っているんだから、私はそういう点から考えてこの問題は非常に大事な問題だ、単純にこっちが多くてこっちが少ないという問題でないことを指摘をして、次の問題ですが、政治資金の問題、特にそういう中で企業、団体からの政治献金の問題については今までも長い議論がされてきたことは御承知のとおりです。  そこで、今月の十五日に毎日新聞の座談会の中で「政界浄化を問う」というのがあります。そこで日経連の諸井虔氏が次のように企業と政治家の関係について発言をしているのが注目されます。「企業の立場で言えば、本来、企業にとってプラスにならないことに金を出すことは株主に対する背信行為であり、何かプラスのことをやろうとすると本質的に汚職ということになる。企業はいま背任と汚職のはざまにいるようなものだ。」こういうように率直に言っておるわけですね。この解釈はいろいろな人でどうか知りませんけれども、明確にはっきり述べていることだけは事実ですよ。企業献金というものがどういう性質のものか、同じような趣旨のことを海部総理、これは三木さんが随分言ってきたことは御存じのとおりだと思うのですね。  そういう中で、現行の政治資金規正法の中にはこういう項目があります。「この法律の施行後五年を経過した場合においては、新法の施行状況を勘案し、政治資金の個人による拠出を一層強化するための方途及び会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方について、更に検討を加えるものとする。」というのが入っています。これは御承知のとおりだと思います。しかし、今度出されている政治資金規正法の中ではこの部分が完全に欠落をしているわけであります。  企業は社会的存在だというのは総理の繰り返し主張されていることでありますけれども、社会的存在だからもうこの条項は必要にならない、必要ではない、もうあれは有害だから今度は削るということになっておるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  320. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政治資金の問題につきましては、現実に要るから要るものを皆集めるというのではなくて、個人にそれを覆いかぶせないで、政党というものが機関として受けるとかあるいは国のための挙げての作業であるから公費を受けるとかいろいろなことも考えてありますが、しかし、個人においてはもう野方図の制限なしの問題から、だんだん政治資金規正法が今御指摘のように、前回法律になっておることは御承知のとおりですが、今回はそれを、今度は受ける政治団体の数を二つにしたり、あるいは原則としては私人でありますけれども、金額も一企業二万円というものを置いたり、いろいろ厳しい制限、制約をつけて、そして公開性、透明性を高めていこう。やはり政治活動をするには政治資金も要るわけでありますから、公明性、透明性というところ、個人に必要以上な非常識な負担がかからないような限度にしておこうではないかということを焦点に据えながら議論をしてつくり上げた法案であります。
  321. 金子満広

    金子(満)委員 今度の政治資金規正法の改正で、現在ある今の条項を削除した、除いたということについて回答にはもちろんなっておりません。この点は今後ともいろいろなところではっきりさせておきたいと思います。  それからもう一つ、今度新しく出たのが政党助成法の問題でありす。この政党助成法の問題では、「政党交付金」というところで国民一人当たり二百五十円、これで計算しますと大体三百億を超えますけれども、国民の税金を、この法律で決めるところの「政党の定義」というのがある、これに合致したものについては国が交付金としてやるんだ、こういうことが書かれているわけですね。これは私は、憲法の基本的人権、自由というものにかかわる重大な問題だと思うのですね。国民一人一人が何党を支持しようがしまいが、政治資金を出そうが出すまいが、これはだれからも強制されない完全な全くの自由なんですよ。これをどんな形でも強制とか割り当てとかいうのをやることが間違いなんですね。そこの大前提、原則を崩したら後はがらがらっと崩れるわけです。  そういう中で、ところがこの法律、政党助成法というこの案によれば、政党の政治資金を法律で決めて国の予算から出しますということでありますから、これは一体どういうことか、政党支持の自由に対する侵害だ。そして今度はこの国が出すお金、これをどうそれぞれの政党が使うかという点については細かい規制と報告を求め、それに反した場合には懲役五年、罰金ニ百五十万円以下を科すことができる、までこうあるのですね。私はこれは、政党の政治活動に対する干渉、介入、弾圧にまで道をあけるようなものになる、したがってこういうことはやるべきでないということをはっきりと述べておきたいと思うのですね。  ですから、今こういう点ではいろいろ議論がありますが、私は既に多くの法律家、法律学者や国民の中でこの問題は大議論になっていますし、反対が多いのは当然ですが、そこで一言だけこの問題について伺っておきたいと思います。
  322. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは我が国だけが今回そういう法案を用意したというわけではないわけでして、むしろきょうまで先進民主主義国のいろいろな選挙の制度とかそれぞれのところで政治というのは国全体の作業であるんだからナショナルサービスに対して公費負担をしようという基本的な発想からそういったことが行われておることは、私がここでるる説明するまでもなく、例えばドイツなんかでは、当初一票に対して何マルクということで政党ごとに分けておったのを、今度は得票だけじゃなくて得票の比率に応じてその地域の住民全部の頭数でその予算を用意して、投票に行かなかった人の分も配分に入れるようにしたのがこの前の欧州評議会の選挙以後の出来事であるということは、これはもう御承知のとおりだと思います。いろいろ形を変えた、政党に対する公費の支出はアメリカでも行われ、その他行われておるわけであります。  そういう発想に立って今度の政党助成法というものはあるわけでありまして、これも必要な政治資金はそういうところでわかりやすく見るから、個人の方はそのかわり野方図に集められないように規制もできますし、同時にまた選挙民に対して使う方の規制も、これは皆さんの御協力もいただいて去年の二月の総選挙から公職選挙法の一部改正で支出面の制約もきちっとなってきておるわけでありますから、そういったものをみんな総合的に合わせて政治と政治資金の関係をきちっと確立していきたいというのが基本的な願いであります。
  323. 金子満広

    金子(満)委員 外国の例もいろいろ出されます。それぞれの国にはそれぞれの国の歴史があり経過があり、そういう中で出ているわけですが、同じ第二次世界大戦を経験した中でも我が国では憲法の平和原則というのがはっきりと確立されている、外国にはこれがないんじゃないかといって何も気持ちやなんか肩身の狭い思いをする必要ないので、いいものは堂々とやらなくちゃならぬわけですから、私は外国でこういうように政党助成があるから日本でもしなくちゃならぬという、そういうストレートに直結するような考え方は同調できませんし、正しくないと思います。  いずれにしても私の質問はここでやめて、同僚の正森議員に関連質問ということでやりたいと思います。
  324. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、正森成二君から関連質疑の申し出があります。金子君の持ち時間の範囲内でこれを許します。正森成二君。
  325. 正森成二

    ○正森委員 私は、金子議員の関連質問として質問させていただきたいと思います。  その前に委員長のお許しを得まして、今同僚委員に資料を配付いたしました。これは、二日前の八月の二十日に金子議員総理及び大蔵大臣など少数の方にお渡しして質問したものでございますが、私は、質問する場合に、各委員にお配りしてごらんいただいて質問する方がわかりやすいのではないかというように思いますので、お許しを得て配付したわけであります。  ここに原本があります。これは日本証券業協会が毎月発行している「証券業報」という、約四百ページございます。公式の出版物であります。その中の四ページ分だけをお示ししているわけであります。  その場合に、金子議員が、皆さん、これを見ていただきますと、初めのところを見ていただいたらわかりますように、表題は、この部分は「「証券局長通達「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」と特金勘定取引に対する管理体制整備に関する説明会」の開催について」となっております。これは、問題の一九八九年十二月二十六日の証券局長通達について、大蔵省証券局の幹部が東京、大阪、名古屋三カ所で公式に説明したものであります。説明されました方は、ここにも書いてございますが、水谷英明という当時の業務課長が背景説明を行いまして、証券局のベテランの課長補佐が細かい点について大蔵省の考えを説明したものであります。  そこで、二枚目を見ていただきます。  十四ページと十五ページというところに飛んでおります。これを引用して我が党の金子議員が、この十四ページの真ん中辺でありますが、「証券会社に過失等が認められ、顧客の損失を補填する責めを負う場合に、証券会社が顧客の損失を補填することまでを禁止するものではない。」こう書いてありますが、その点について質問したのに対し、証券局長は、これは証券事故のことである、例えば営業マンが顧客の注文を適正に執行しなかったり横領した場合のことを言うんだ、その場合には証券業協会に預託してある証券取引責任準備金を取り崩して対処するという趣旨のことを答弁されたわけであります。これは同僚委員も覚えておられると思います。  しかし、これは全くの問題のすりかえではありませんか。私の示しました十四ページの真ん中辺にそのことが書いてありますが、この真ん中辺のところでその過失の内容を説明して、こう言っております。「わかりやすい例でいえば、証取法上こうしたことがあってはならないが、証券会社が事前に損失保証を約束して勧誘した場合、つまり「十億円出してください。私どもで運用しますが、もし万一結果がうまくいかなければ損は埋めます。」といった約束を証券会社が行っていた場合、それは私法上の契約としては有効である。」こう言っております。つまり、これはまさにこの通達で禁止しようとした事後補てんのみならず、証取法五十条で禁止されている事前保証をした場合のことなんですね。もう一見明らかであります。  ところが、それについて大蔵省は、こんなことは絶対にしたらいかぬぞという説明であるべきはずの説明会で、それについて事後補てんを禁止するものではない、こういうように明確に言っているわけであります。こういうように言えば、証券会社が、大蔵省がその補てんをしてもいいと言ったんだからそれで補てんするんだというように考えるのは当然じゃないですか。だからこそ野村証券の田淵義久社長が大蔵省にお届けしてその了承を得ていると株主総会で言い、その後大蔵省から不快感、あるいは抗議というような表明があった後も田淵節也野村証券会長は、真実は一つ、こういうように言っているのではないんですか。だから、この損失補てんの事前承認について大蔵省は責任をどうおとりになりますか。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  326. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から配付をされました中で委員が読み上げられなかった前後の部分がございます。例示で委員は説明をした部分のみを引用になりました。ただ、ここの中でも、ここに書かれておりますように、委員が読み上げられましたすぐその後に「一方、公法上そのような事前に損失補損をすることを約束して勧誘する行為は、証取法違反であり、証取法違反の行為を証券会社が行ったことについて証券会社や外務員が行政処分や協会処分を受けることとなる。」とあります。また、お読み上げになりましたその前の部分、「なお、事後的な損失補填を一切行ってはいけないのかということであるが、顧客に対する投資勧誘等において証券会社に過失等が認められ、顧客の、損失を補填する責めを負う場合に、証券会社が顧客の損失を補填することまでを禁止するものではない。ただしこれは、ですから、まさに局長がこの前申し上げたようなことでありましょう。「ただし、この場合の投資勧誘等における証券会社の過失等が、証券会社や外務員に対する行政処分や協会処分の対象になることは当然である。」そして、今委員が読み上げられた部分がその間に挟まっております。
  327. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁金子議員のときにもされたんですが、その「過失等」というのはどういう内容であるかという質問に対して、それは証券事故のことで、これは顧客の注文を間違えて執行するあるいは横領をするということだという意味のことを答えたんですね。  ところが、そうじゃないんで、この説明は、この「過失等」というのは、わかりやすい例で言えばこれこれいうことだということで、まさに証券会社が事前に損失保証を約束して勧誘した場合、それだけでも明々白々なのに、つまり「十億円出してください。私どもで運用しますが、もし万一結果がうまくいかなければ損は埋めます。」ということを言っていた場合、損失補てんをしていいのだ、こう言っているじゃないですか。これはまさに事前保証の場合じゃないですか。  それから、あえて言いますが、証券局長は専門家だから知っているでしょうけれども、顧客の注文を売りと買いやら銘柄を間違えて注文したようなトラブルあるいは横領したトラブルというのは、証券法においてこれは損失保証の準備金として証券業協会に積み立てることになっているのでしょう。ところが、私は金子質問の直前に証券業協会に電話をかけてちゃんと確認しているのですよ。一九九〇年三月に大蔵省の指導で損失補てんをした今回出てきた千七百億円余り、その中にあらかじめ証券業協会に届け出た損失補てんの準備金というのは取り崩されていますかとこう聞いたら、その分については一切ございませんと言っているのです。だから、証券局長の説明した説明と全く違うことなのですよ、これは。そういうトラブルではなしに、まさに営業特金そのものについて、これは私法契約として有効だから損失補てんをしてもよろしい、こう言っているのじゃないですか。弁解の余地がないのじゃないですか。行政処分云々については後でまたゆっくり話しますよ。まずその点答えてごらんなさい。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  328. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この講演の記録でございますが、今大臣からもお答え申し上げましたように、仮に公法上違法な事前保証の契約を結んでも、それは私法上の契約としては有効であるということを言っているわけでございまして、公法上は、もちろん証取法違反の行為でございますから、それなりの行政処分あるいは外務員の処分、協会の処分を受けるということでございます。  それから、証券取引責任準備金を取り崩すには証券業協会に事故報告をする必要があるわけでございまして、しかし、今回問題になっております損失補てんについては、私どもの聞いている限り、証券事故として協会に届け出られて証券取引責任準備金を取り崩したというものはないというふうに聞いているわけでございます。したがいまして、損失補てんという言葉が実はいろいろな概念で使われるわけでございますが、広い意味では、証券事故として届け出て、証券取引責任準備金を取り崩して証券会社の責めに帰す場合に顧客に損失を補てんするというのも広い意味での損失補てんの一種でございます。ただその場合には、正規の証券取引責任準備金という制度を使って証券事故として処理されるわけでございまして、現在問題になっております損失補てんはそういう手続がとられていないものというふうに私どもは認識をしているわけでございます。
  329. 正森成二

    ○正森委員 つまり、通常の横領したというようなトラブルとは別の種類のものだということでしょうが。  それで、あなたの答弁、きょう私、社会党の議員の質問に対するあなたの答弁も院内のテレビで見ておりましたが、核心的部分については同じことを何度も繰り返したりして、答弁になっていないですね。それで私はひとつ確かめていきますが、そうすると、あなたは、ここで証券局の幹部が説明した、つまり「十億円出してください。私どもで運用しますが、もし万一結果がうまくいかなければ損は埋めます。」というものであっても損失補て人をしてもいいと言ったことは事実だ、それは証取法上違法になるということはあっても私法上は有効である、こう言ったということは認めるんですね。いいですかあなた、私法上有効であるということは、約束した以上払わなきゃならぬということを認めたことになるのですよ。それを公然と、事前の保証はもちろん事後の補てんをしてはならないという通達を出したまさにその説明会で、公法上は違法かもしらぬが私法上は有効だから補てんしてもいいと言ったとあなたは今でも言うのですね。それじゃ証券会社が補てんするのは当たり前じゃないですか。  それから、あえて言うが、私法上有効だなんという学説もありますよ。しかし、有効でないという学説だってあるじゃないですか、私はそんなこと言うだろうと思って調べてきたけれども。例えば立教大学教授の上村達男氏などは、私法上も取り締まり法規に違反し、「証取法制が総力を挙げて達成した成果、公正な価格を基準とした資金配分ないし資源配分という市場経済の究極的な目標を、市場機能の担い手たるべき証券会社が最終段階で歪曲する行為として強度の反公益性を有しているとして、証取法五十条のみならず五十八条の不正の手段、計画又は技巧」に該当するものとして無効と解すべきである、こう言っているじゃないですか。  それを事前の保証はもちろんいかぬ、事後の補てんもいかぬという説明会で、私法上は有効だ、だから補てんするのは当たり前だ、こんな説明して、証券会社が補てんするのは当たり前じゃないか。大蔵大臣が、大蔵大臣の――大事なことですよ。理論的に言っているのですよ。大蔵大臣と、そしてその指揮命令下にある証券局の幹部が補てんをむしろ奨励してあおっているじゃないですか、私法上は有効なんだぞと。  それで一体、あなた言うけれども、証取法上の処分したのですか。去年の三月やっていないじゃないですか。橋本大蔵大臣は大蔵の閉会中審査でも、この予算委員会でもこう答えていますね。その後大蔵省に報告されなかった補てんが発見され、暴力団との関与もあったので、それで処分をした、こう言いましたね。合うなずかれました、委員長。そうすると、日本語としてはこうなるのですよ。暴力団が関与せず、大蔵省に報告しないということがなくて、事前に報告しておれば処分しなかった、こういうことなんですよ。そういうようにとらざるを得ないじゃないですか。だから、ここに何ぼ公法上の処分の対象になると言っても、大蔵省に報告しておれば公法上の処分もあり得るが実際は処分しませんよということじゃないですか。だからこそ、その後処分をした、処分したと言いますが、正式の処分でないじゃないですか。わずかに法人部が営業自粛ということになっただけで、証取法上は免許を取り上げることもできるし営業停止というのができますが、証取法上営業自粛なんてないじゃないですか。そういう営業自粛ということしかできなかったのは、まさに、処分もあり得るが処分をしない、私法上は有効だという指導をした何よりの証拠じゃないですか。これは証券業協会の公的な文書ですよ。昼から同僚委員がいろいろ聞かれたけれども、こういうのがあるから証券会社は補てんしたのですよ。もう議論の余地がないのですよ。一体どういう責任とるのですか。
  330. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、今私は、委員のお述べになりましたことでつけ加えさせていただき、この文章の中から故人の名誉を晴らしたいと思います。と申しますのは、水谷君は既に逝去されまして、今委員がお述べになりましたような意思で彼が説明したことではないことは私はわかっているつもりでありますから、彼自身が――いや、逝去されました。そして、その今委員が述べられました後、そして私が読み上げました後を続けてお聞きをいただきたいと思います。委員の資料そのままであります。「それでは、今後具体的に事後的な損失補填や特別の利益提供が行われた場合には、どのような処分を受けることになるかについてであるが、今回通達で明示的に禁止行為にされ、協会規則の改正も行われたことにより、第一次的には社内処分の対象となるとともに協会の処分対象になるわけである。さらに、これらが外務員として著しく不適当な行為と認められる場合には行政処分の対象にもなり、また、証券会社がそのような行為を行っていたということであれば、証券会社に対する行政処分や協会処分もあり得るということである。」  私は、彼の説明の中で一部を引用され、私法上という言葉を使いましたために委員から今厳しい御指摘を受けました。これは私は、全体をわかりやすく説明しようとして一つとったその例が必ずしも適切ではなかったのかもしれない、それは認めます。しかし、どうぞ、それが今委員が述べられましたように、逆にその行為を認めたんだということではないことは、全体の文章を通じて御理解がいただけると思いますので、それだけはお聞きをいただきたいと思います。
  331. 正森成二

    ○正森委員 私は金子議員の関連質問としてやっているので、二日前に金子議員の質問のときにあなたがそういう説明されたことも知っておりますよ。共産党は二時間も質問時間がないので、わずか三十分ぐらいだから要所だけを言っているのですけれども、念のため言っておきますが、あなたの引用されたこの部分は、あなたが死亡された人の名誉にかかわると言った水谷さんの言われたことではないのですよ。水谷さんは大きな背景説明をその前にされただけで、これを言われたのは別のベテランの課長補佐が言っているのですよ。私はそういうことは全部読んでよく心得た上で言っているのですよ。水谷さんの名誉棄損するなんて、そんなこと全然ないですよ、水谷さんの言ったことじゃないんだから、これは。  しかも、あなたがこういうことを繰り返し繰り返し言われましたけれども、私が言ったのは、協会処分や行政処分の対象になることもあり得ると書いてあるけれども、一九九〇年の三月には処分されなかったのではないか、こう言っているのですよ。それはまさに処分されなかったじゃないですか。そして、あなたはこの国会で、大蔵省に届け出ているもの以外が新たに見つかり、暴力団、これとの関係があったので、それで今回処分したのだ、九〇年に処分しなかったのはそれなりの理由があったのだと言ったじゃないですか。何遍も言ったじゃないですか。書いや、私はちゃんと聞いていますよ。速記録調べたらわかる。少なくとも、行政処分はあり得ると言ったけれども、処分を九〇年の三月にしなかったことは明白な事実じゃないですか。つまり、この文章からいえば、「これらが外務員として著しく不適当な行為と認められる場合には行政処分の対象にもなり、また、証券会社がそのような行為を行っていたということであれば、証券会社に対する行政処分や協会処分もあり得るということである。」こういうのがもし正しいとすれば、逆に言えば去年の三月段階では著しく不適当な行為とは認めていなかったということになるじゃないですか。だからこそ行政処分しなかったんでしょうが。明白な事実じゃないですか。  そういう指導をしておるから、証券会社は、他の同僚議員お話がありましたように、一九八九年、平成元年の十二月二十六日に通達が出された以後翌年の三月までの間に千七百億円に上る補てんの、約半分が補てんされているんですよ、それはもう発表になったでしょう。それは、これがあったから、行政処分は受付るかもしれないけれども、私法上としては契約は有効だと大蔵省が言っている、むしろ補てんしなきゃならないと言っている、了解をもらっている、こう思ったから補てんしたんですよ。だから、野村証券の田淵社長や田淵会長が真実は一つと言ったのは、ある意味では当たっているのですよ。その責任をどうとるのですか。  あなた、私は言っておぎますが、サミットで、異例のことですが、あなたはこの不祥事を報告されたんでしょう。言ってみれば、我が国にとっては非常に不名誉なことですよ。そういうことをせざるを得なかった問題について、大蔵省は説明会で、私法上は有効だから補てんしてもよろしいという意味のことを東京、大阪、名古屋と宣伝して回っているんですよ。そんなもの補てんするのが当たり前じゃないですか、その責任どうとるんですか。明白な事実ですよ。証券局長、言い分があるなら言ってごらん。あなたが証券局長の時代じゃなかったということはよく知っているけれども、だって、あなた、行政の継続性で責任あるでしょうが。たとえ前任者のやったことでも責任を負わなければいかぬでしょうが。
  332. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ご指摘のこの文章でございます。これは、確かに初めの方は水谷君が概括、全体的な説明をし、その後当時の課長補佐二人がしゃべったところに御指摘の部分があるわけでございます。  私の読み方と委員の読み方とが違うのかもしれませんが、あくまでも例示として、しかも今後事前の損失保証については明らかに証取法違反だということをむしろ強調するというふうに私は読みたいわけでございます。事後の損失補てんについては、その後に書いてございますように通達で禁止をし、社内処分あるいは協会の規則がそのときに改正されておりますので、協会の処分の対象になるという説明をしているわけでございまして、これでもって事前の損失保証をやっていいというふうに読むということはできないというふうに思いますし、まして事後の損失補てんまでやっていいというふうに読むというのは、私としてはそういうふうには読めないというふうに思うわけでございます。
  333. 正森成二

    ○正森委員 あのね、あなた、せっかく事前保証はもちろん法律五十条で禁止しておる、事後の補てんもいかぬのだと言うたその説明会で、後で国会で、私はこう読みたいと、そんな説明をしてくるなんてもってのほかじゃないか。だれが読んだって、大蔵省はやったらいかぬのだな、日本語を読む能力があればそう思うような説明をするのが当たり前じゃないですか。それが、私に言われて、通常に読めば、私法上有効だと言えば、同僚委員もそう思われるでしょうけれども、有効なら払わないかぬのですよ。そういうことを言って、特に不適切な場合は証取法上の行政処分をすることはあり得るよ、そういうことを言えば、そんなもの補てんする方が当たり前だというように読めるような説明をしてきて、今になって私はそう読みたい、そんなことを言うたって通りますか、あなた。  だから、そういうことをあえて言うんですけれども、認めないですけれども、私は、ここで聞いておられる心ある人は、これはこんな説明では証券会社に示しかつかないというように思われるのは当然だろうというように思います。私は学説なんかもここへ全部持ってきたんですよ。ですけれども、また必要があれば証券の特別委員会で論戦しますけれども、こんなことを説明会で言ってくるというようじゃしょうがないんじゃないですか。  それから、時間の関係であと一問だけ聞かせていただきます。  富士銀行の不正融資というのがありました。銀行局長、ごく簡単に約二千六百億円と言われている不正融資について説明してください。非常に申しわけありませんが、時間がもうわずかになりましたので、ごく簡単で結構です。
  334. 土田正顕

    ○土田政府委員 御要望でございますので、極めて簡単に申し上げます。  富士銀行の中の、支店としましては赤坂支店、神田駅東支店、日比谷支店におきまして、職員が架空の預金及び営業支店長印の盗用により偽造質権設定承諾書を作成し、取引先によるノンバンクからの借り入れのためにそれらの証書などをノンバンクヘ担保として差し入れたということによりまして事故を発生いたしました。その事故の金額は、富士銀行の赤坂支店関係二千五百七十、それから神田駅東支店関係二十三、日比谷支店関係二十一、いずれも億円でございます。  それで、それぞれの銀行は、直ちに関係の行員を懲戒免職にするとともに司法当局に告訴を行っております。告訴額は、赤坂支店関係二百五十億円、神田駅東関係は回収見込みが立ちましたので、これは告訴しておりません。日比谷支店関係二十一億円でございます。
  335. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、ここで富士銀行の不正融資のことが明らかになったのですが、その中であなたの小林秘書の名前が出ておりますね。一番金額も大きいと言われる赤坂支店の元渉外課長の中村稔と蔵相の小林豊機秘書がお知り合いであった。そして、この小林秘書が中村元課長と知り合ったのは昨年のことらしいんですが、株式会社全日販の代表取締役花田敏和氏の紹介でこの人物は紹介された。この花田敏和氏というのは、蔵相の後援会である北海道昇龍会の会員じゃないんですか。
  336. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事実のみを申し上げますが、花田氏が当時副社長をしておられました株式会社日計が法人会員として私の後援会にありました。そして、その代表として花田氏が私の後援会の設立パーティーに出席をしておられたということであります。
  337. 正森成二

    ○正森委員 そしてこの紹介を受けた結果中村元課長に融資を頼んで、そして小林秘書は赤坂の小料理屋「尾花」の女性店主の尾花万里子氏、山梨県のレジャー開発会社、俳優津川雅彦氏の「グランパパ」などに約十四億円の融資をしております。  あなたは記者会見で、これらの方についての知り合いであったということを明言されておりますね。また、そのほかにも二件ほどは融資を紹介したが、それはいろいろな事情で実行されなかった。なぜ融資をする場合に、事もあろうに富士銀行の赤坂支店のこの中村という男にだけ集中したんですか。
  338. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、私の秘書でありました当時の小林農機君が富士銀行の赤坂支店の元渉外課長に対しまして融資に関し私の知人を紹介したということにつきましては、元渉外課長が偽造預金事件に関与しているということは当然のことながらその当時知る由もなかったとはいいながら、蔵相秘書という立場にある者として、銀行員に対して軽率に融資希望者の紹介を行ったということ自体が不適切なことであると思い、私自身に結果として秘書の監督に至らなかった点があるということは痛感をいたしております。また、こうしたことを考え、蔵相という公的な地位にかんがみ、このような秘書の行為につきましては、先日、この事件が明るみに出ましたとき私自身も記者会見で申し上げました。  その上で、これは他の方々のプライバシーに係ることもありますので、仮に私が知り得たとしても新たに申し上げられることには限界がございますが、なぜということについては、たまたま当初、要するに自分の営業地域の近くである赤坂かいわいでだれか知った方がないかということから思い出して、富士銀行の赤坂支店の渉外課長さんであった中村という方を紹介したという報告を受けております。なぜ集中したかというお尋ねでありますけれども、まさにそういう関係から御紹介をしたと聞いております。
  339. 正森成二

    ○正森委員 時間がそろそろ参りましたけれども、そういう説明は新聞、週刊誌等で載っておりますけれども、調べてみるとこれらはいずれも無担保なんですね。今どき十億円ものお金を担保なしで貸してくれるなんていうことは異常であって、大蔵大臣の秘書官ならそれだけでも異常だというように思わなきゃならないのですね。まさに、無担保で貸してくれるようなところだから赤坂支店の中村に集中したんじゃないのですか。私はそれ以外には考えられないというように思います。  しかもこの小林という秘書は、いよいよ自分が転勤されそうだということになって、そして転勤しないように言ってくれというので、小林秘書が、非常によくやっているので転勤しないようにしてくれるとありがたいということを本店に電話しているじゃないですか。そのことによって、もっといろいろ早く発覚するものが継続するということにもなっているのですよ。そうすると、こういう富士銀行の不正な融資を継続させることに蔵相秘書が、しかも蔵相の肩書を利用して一方に事実上加担する行為を行ったと言われても仕方がないじゃないですか。そんなことであなたは大蔵大臣として銀行の不祥事、これに対して何とかかんとかいろいろ言って取り締まられるということができるんですか。私は、そういうことについて極めて不適格であるというように思わざるを得ないのです。あなたとしてはもちろんそれは、今度の例えば証券業協会のここに載っている説明についても……
  340. 渡部恒三

    渡部委員長 時間が参りました。
  341. 正森成二

    ○正森委員 はい、終わります。自分が事前に説明を受けたものではなかった、秘書のことは自分がやったことではない、さぞかし心の中では無念に思われることがあるでしょう。しかし、公人としては客観的に生じたことに責任を負わなきゃならないのは当然じゃないですか。  私は、あなたが政治家として本当にみずからを正されるなら、政治家として責任をおとりになるのは当然のことであるというように思いますよ。そして、その責任のとり方は、そんなもうあれですよ、あなたはいろいろ言う資格が本当に問われるようなのに……
  342. 渡部恒三

    渡部委員長 正森君、時間が参りました。
  343. 正森成二

    ○正森委員 後の対策をよくとってそれからやめるなんて、そんな悠長なことを言っていいんですか。私はそう思います。総理はどう思われますか。  終わります。
  344. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今私自身の責任について、委員の御見解は確かに承りました。  ただ、事実問題として申し上げておきたいことがございます。たまたま尾花さんという名前を挙げられましたが、尾花さんは富士銀行赤坂支店に借り入れの申し込みをされ、平成二年六月から三年の五月にかけ、数回にわたって融資の実行を受けておられます。この融資については中村元課長が担当しておりました。そして、尾花さんはその所有するすべての不動産の明細を提出され、必要の都度担保設定をすることを申し入れておられました。また、不動産の買いかえのためのつなぎ融資、既往の借り入れの書きかえ、新規不動産の購入など、その都度使途を明確にして融資を受けておられたということであります。また、尾花さんは富士銀行からの正規の融資であると確信しておられ、再三にわたる根抵当権設定登記手続を実行するよう申し入れもしておられたとのことであります。  また、事実問題として、その後発覚をしましたことによりますと、中村元課長などのその不正行為のために正規の手続がとられておらなかった。富士銀行側に調査を求められ、事実関係を確認をされた上、正規の契約を締結し、担保登記手続を実行され、現在は本来の正常な取引になっておるということを私はその弁護士さんから伺っております。これは個人の名誉のことでありますので、きちんと事実、弁護士さんから許可を得ている範囲内で私からお答えをさせていただきます。
  345. 正森成二

    ○正森委員 私はほかにいろいろ言うことがありますが、時間になりましたので、終わらせていただきます。
  346. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて金子君、正森君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  347. 中野寛成

    ○中野委員 ソビエトのクーデター騒ぎは、由民の良識のもとにクーデターそのものは失敗に終わりました。大変よかったと思います。そこで、今後のソビエト情勢とともに我が国の対応についてお尋ねをしたいと思います。  ソビエトのシチェルバコフ第一副首相は西側諸国に対して早速支援の再開を求め、西側主要国もそれぞれ再開を表明しているようであります。我が国も、本日午前、官房長官が記者会見をされて、対ソ支援の凍結解除の方針を明らかにされたと聞いております。また、総理も記者団に対して、向こうがだれがどうなるかわからないから、それを見てと語られたようでございます。そういう報道がされております。  そこで、これらのことについてはここで直接総理から、今後どうするのかを正式にお聞きした方がいいと思うのであります。新指導部の体制が整った時点で凍結を解除するのか、既に凍結解除についての方向づけをきちっと検討をされておりますのか、報道とは別にここで正式に総理から御答弁をいただきたいと思います。
  348. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 正確に申し上げますけれども、ペレストロイカの正しい方向性支援するということが我が国の基本で、それでいろいろな支援のための協定を結んだり緊急支援なりしてきたわけであります。ですから、ソ連状況がこのように復帰といいますか復権といいますか、元へ戻るということでありますので、当然支援も再開するということを私は記者団に歩きながら申し上げたんです。そうしたら、今すぐですかと言われたので、今すぐと言われても今までの閣僚メンバーやその他もいなくなり、首相以下の人事も決まっておらず、ゴルバチョフ大統領も先ほどまだモスクワヘ帰ったばかりだという確認しかしていないので、相手方の陣営や内閣がどうなるかということを見なければ、だれを相手に話をしたらいいかもよくわからないだろうけれども、向こうが戻ったのだからこちらも当面停止したのは解除されるのは当然だ、このように言いましたし、官房長官にもその旨記者会見で申し上げろと、これはきちっと打ち合わせてからの話であります。  歩きながらの話というのは、このように大変部分だけとられますと先生にいろいろ誤解を与えたようでありますから、正確に今私が申し上げた、相手の事情が変わったんだからこちらも当然それは元へ戻すんだといった大前提があるということをどうぞ御理解をお願いいたしたいと思います。
  349. 中野寛成

    ○中野委員 大前提その他、結構です。ここでむしろ正式に総理からおっしゃっていただいたわけでありますから、そのことが現在の日本政府の正式の態度である、こう思うのであります。  さて、今ゴルバチョフ大統領が復帰された。それで三日前のソビエトの状態に戻ったのかというと、内容は私は基本的に変わったと思います。すなわち、保守派勢力の大幅な後退、もしくはソビエト共産党のある意味では瓦解にもつながっていくかもしれませんが、こういうふうに、言うならば三日前のソビエトの状況ではなくなったというのがやはりお互い正しい見方であろうと思うのであります。そういう意味で、それに応じた新たな対応が我が国にもまた求められると思うのであります。求められるというよりも、我が国が判断をしなければならないであろう、こう思うのであります。  ロシア共和国の最高会議ビルをクーデターから守った数万の市民の口からは、エリツィンエリツィンと叫ぶ声は聞かれても、ゴルバチョフゴルバチョフの名は聞かれなかったと報道されております。もちろん、それは二人の置かれた環境の違いもありましょう。しかし、このことに象徴されますように、今後ソビエトではエリツィン大統領指導力が圧倒的に大きくなり、これまでのゴルバチョフ大統領一辺倒の外交政策の転換を図らなければならない状況になってくるのではないか、こういうことも予測されるわけであります。  まして、新連邦条約の調印ということも改めそ図られるでありましょう。そうなりますと、連邦政府に対する外交に加えて、新たにソビエトのそれぞれの各共和国への対応、特にロシア共和国に対して日本政府としても関係の強化を図っていくことが必要になってくるのではないかと思うのであります。言うまでもなく、北方領土はそのロシア共和国に属しているわけであります。この状況変化についての御認識と今後の我が国政府の対応について御答弁をいただきたいと思います。
  350. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 十九日の第一報というのは健康上の理由ということで伝わってまいりましたが、直ちに国家非常事態委員会というのが設立されて、そこが全権を掌握したという報道を受け、そこに並んでおりました八人の人々は、例えばヤゾフさんにしろクリュチコフにしろ、我々から見ると大きく分けて保守派、KGB、軍部の代表というメンバーばかりだなと思ったのが率直な第一印象でございました。  そして、それが大変憲法手続に反するクーデターであって、それが終わったということになりますと、これはゴルバチョフ政権の中でそれぞれ主要な地位におった人たちばかりでありますから。ゴルバチョフ政権復権した場合に、これらの軍やKGBや保守派の人々がそこから完全に排除されるということは、これは想像にかたくないところでありますから、そうなりますと、今まで私も首脳会談なんかを通じて、日本国民世論ということで領土問題、平和条約と言いますと、ソ連にもソ連意見があるんだ、いろいろあるん。だということを言われておった。  そういったことからいくと、保守派と急進攻草派の綱引きが行われておったと受けとめておった我々の認識の中から、保守派の方で強い影響力を持っておった人たちの地位が後退するとなると、もう少しペレストロイカの促進と新思考外交世界的な適用という二つの面においても、私としてはそれが前進することを期待したいと思っております。  また、きょうの報道では、ベススメルトヌイフ外相だったと思いますが、新しい外交政策は従前と変わらないんだ、ゴルバチョフ時代の外交政策は変わらないんだということをテレビを通じて聞いてここへ来たのですけれども、私はそれは全く変わらないじゃなくて、できたらもう一歩前進してほしいなという強い願いが私の方にもあるわけでありますから、それらの問題については今後外務大臣を通じて率直にそれらの気持ち等も伝えながら、どのような陣営になるのか、まだ新政権の顔ぶれが決まっておりませんけれども、きちっと対応をして、領土問題を解決して平和条約を結ぶことが一義的に大切だと決めたのが四月の日ソ共同声明でありますから、その線と原則に従って一義的に大切な方に前進をしていきたい、こう思っておりますから、冒頭に当面停止すると言った支援も、相手がペレストロイカに返ってきたんだからこちらも当然それは変えるんだという基本路線を直ちに打ち立てましたのも、そういう願いがあるからでございます。
  351. 中野寛成

    ○中野委員 政権がもとに戻ったということで、対ソ支援の凍結解除、これは当然だと総理おっしゃられたのですが、それを正式にお決めになるのはいっでございますか。もう既に決めたのですか。これは相手の様子を見てから、今後様子を見てからということですか。
  352. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 解除するということはもう当然決めましたので、官房長官から記表会見で表明したところであります。
  353. 中野寛成

    ○中野委員 そこで、対ソ支援と申しましても、今日まではどちらかといいますと連邦政府を相手に考えている。しかし、昨晩もエリツィン大統領電話で話をされたということでありますが、共和国政府のこれからの役割というのは大変大きくなると思いますね。新連邦条約、当然調印されるでしょう。そうすると、なおさらその傾向は強くなるのではないか。税金、金融、為替管理の権限の多くが今後共和国政府に移る、こういうふうにもなっておりますが、我が国の支援はどっちを向いてすることになるのか。  こういうふうにお聞きしますと、ちゃんと両方を見てやりますとお答えになるかもしれませんけれども、そういうことではなくて、これからのソビエトの外交上、また我が国との関係の比重はどちらが重くなるんだろうと分析をしておられるのか。むしろ紋切り型の話ではなくて、その中身の話をお聞かせいただきたいと思います。
  354. 中山太郎

    中山国務大臣 従来、今年の一月あるいは三月、ゴルバチョフ大統領の来日のとき、すべての連邦政府のベススメルトヌイフ外相とロシア共和国外相は同席をいたして日本との交渉に、話し合いに応じております。そういうことで、連邦条約が成立をするといったような場合にでも、この共和国との話し合いというものは中央政府と一緒に話が当然されるもの、こういう理解をいたしております。  共和国政府に対する日本政府考え方といたしましては、本来このクーデターがなければきょうシラーエフ首相が日本を訪問していることになっておったわけでありまして、急速このクーデターによって取り消しになったということでございますので、状況が復元し次第、ロシア共和国との外交のチャネルを一層拡大しなければならないと考えております。
  355. 中野寛成

    ○中野委員 その外務大臣の御答弁のニュアンスをお聞きしておこうと思います。  さて、本格的な対ソ経済支援サミットで合意されなかったのは、日本とともに英米両国が強く反対をしたためである、反対と言うとちょっと表現が適切ではありませんけれども。しかし、サミット後英国は、雇用者の大型使節団、ラモント蔵相が相次いで訪ソする、また、サミット議長国として対ソ支援の具体化に動いてまいりました。また、今回の事件を契機に、ドイツのコール首相は、今こそ経済援助に踏み切り、ゴルバチョフを助けるべきだと発言されたと報じられております。ミッテラン・フランス大統領も、今回の出来事でソ違に援助すべきだと主張した正しさが証明された、こう話っておられるということであります。  さて、私はそこで、それじゃそういう人たちの呼びかけに応じて日本もほいほいとついていくのかどうかという問題であります。もちろん日本国の主体性の問題がそこで問われるわけであります。ペレストロイカの推進は支援したい、しかし北方領土の問題これあり、政経不可分の原則を堅持する我が国の立場、それと先ほど申し上げたペレストロイカ支援国際社会の動き、こういう割方に持ってどう手綱をさばくかというのが、言うならば日本の対ソ外交の極めて難しい、しかし基本だと思うのであります。このことにつきまして、今後どういう対応をされるおつもりでありますか、お聞かせをいただきたい。
  356. 中山太郎

    中山国務大臣 これからのソ連に対する経済協力と北方領土問題、これはこのG7の国の中で日本だけが持っている特別な条件であります。こういう条件の中で、私どもの政府の基本原則は、ペレストロイカの正しい方向性支援するといったことが一つございます。もう一方、日本の個別の案件として、北方領土を解決して平和条約を締結する、この話し合いは拡大均衡で伸ばしていく、こういったことがございます。この二つのさばきをどうするかということが委員お尋ねのポイントであろうと思います。  サミットにおきましてどういう議論がされたかは既に御存じのとおりだと思います。昨年のヒューストン・サミットにおきましても、ドイツ、フランス、イタリーあたりはソ連への経済援助を強く主張いたしました。これに対して、イギリス、アメリカ、日本は慎重論を出しております。その結果、IMFあるいはOECDあるいはEBRD、こういったような国際金融機関四団体が代表者を送って精密な経済分析を行って報告書を出しました。その報告書によって、大量の資金を投入することは無意味であるけれども、一時的な人道的な支援あるいはまた技術支援は必要であるといった報告書にのっとってG7は共同歩調をとってまいったわけ。であります。  今回のロンドン・サミットにおきましては六項目が決められたわけでありますけれども、その中で日本政府としては、ソ連の自助努力というものが一番大きな問題である、こういったことも厳しく率直に申しております。  我々は、隣国であるソ連と事を構えるつもりはございません。我々の理想は、やはり平和条約を結ぶ、領土問題を解決して平和条約を結んでソ連との友好関係を強化するということが隣国としての外交の基本でありますから、ソ連がどうしてこれから腹を割って話をしてくるか。私は、今回のクーデターによってゴルバチョフを囲むその周辺の人たちの組織が変わると思います。また、当然だろうと思います。そういう中で、ゴルバチョフ大統領エリツィン大統領指導力は強化されていく。そういう中で、日本ソ連あるいはロシア共和国との外交的な話し合いというものを、思い切って腹を割って話し合う条件が整ってきたのではないか。こういうことで、私は率直に申し上げて、日本は経済大国として力を持っています。こういう立場で、これから隣国であるソ連ペレストロイカ支援することを考えながら、G7と十分協力してこの交渉を進めなければならない、このように考えております。
  357. 中野寛成

    ○中野委員 今回のクーデター騒ぎで、その結果を見て、情に流されるということであってはいけないと思います。あくまでもお互いの国益を大切にしながら、しかしソビエト国の自由化、民主化ペレストロイカが進み、国民が平和に暮らされることを願う気持ちとそのことは両立しなければならないと思います。  そこで私は、今外務大臣お答えになりましたように、政経不可分の姿勢を堅持しつつ、同時に我が国の主張は主張として常に進めていく、同時にその我が国の主張に耳を傾けやすい環境がむしろ今回の事件によってソビエトに生まれた、言うならば、エリツィン氏やゴルバチョフ氏の足かせが一つとれたとも表現してもいいかもしれませんが、そういうことをむしろ期待したい。そういう気持ちで今後とも対応されることを私としても御期待を申し上げたい、こう思う次第であります。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのでありますが、九月にも予想されております先進七カ国蔵相訪ソの計画がありますが、まだ具体化されておりますかどうかわかりませんが、この際の経済支援についてどこまでコミットするか、その辺のことについての御検討は始まっておりましょうか。
  358. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に申し上げたいことは、今回のクーデターが無事に終結しましたことは非常に結構なことでありますけれども、それと、クーデター以前そして今日のソ連の経済情勢に変化が生じてはおるわけではありません。そして、今外務大臣の御報告にもありましたように、国際四機関のリポートは現在の時点における金融支援というものに極めて否定的な答えを出しております。そして、その状況は今回のロンドン・サミットにおいても変化をいたしたわけではありません。  その上で、七カ国の蔵相の訪ソという話がサミット終了後、サミット首脳ゴルバチョフ大統領の会合の中でお話が出たということでありまして、メージャー首相から記者会見で発表をされました。しかし、その詳細は何も決まっておりません。また我が国として、当然のことながら関係国の動向、そしてそれ以上に日ソ関係全般の動向などを踏まえながらこの問題には対応しなければならないと思っております。  同時に、繰り返し申し上げておりますように、我が国は領土問題という他国にない異質の問題を抱えておりますし、これは繰り返しG7大蔵大臣会合におきましても、またサミットにおける大蔵大臣会合におきましても私は繰り返し述べてまいりました。そして、それなりの理解も得てきたと考えております。  ただ、これから先一体どうなるのかということであれば、金融支援は全く現在のところ何ら決定をされておりませんし、その状態の中で、金融支援というものとは無関係にこの訪ソという問題は決定をされたと承知をいたしております。我々がこれから先どうするかということは今後の情勢の推移の中で判断すべきことでありますけれども、無原則な政経分離はとらないという従来の方針を変更するという状況にはございません。
  359. 中野寛成

    ○中野委員 了解をいたしました。  次に質問を進めたいと思いますが、我が国を取り巻く東南アジアまた東北アジアといいましょうか、この地域において冷戦構造の残滓が残っているとされるものに今の北方領土、そして韓国と北朝鮮との関係、そしてもう一つはカンボジアの問題があるわけであります。  きょう、小さな記事を見つけました。シアヌーク殿下が、タイ南東部のパタヤで二十六日から開かれるカンボジア最高国民評議会、SNC会合に出席するため、二十一日、北京からバンコク入りした。同殿下は到着後、声明を発表し、無期限停戦と外国からの武器援助受け入れ停止を監視するために、包括和平の合意前であっても、国連が二百人程度の人員を派遣するように改めて要請した。こういう記事でございました。  七月の十日にカンボジアを訪れたときのことを思い起こしながら、タイのバンコクでこのシアヌーク殿下の御子息、ラナリット殿下にお会いをいたしました。ちょうど同じことを言っておられました。何としてもしかし、その中に、いわゆる多国籍軍のような大きな部隊でどんとカンボジアを占領されることも嫌だし、むしろ東南アジアの仲間である日本が積極的にカンボジア和平のために大きな貢献をしてほしい、そしてそのためには、経済協力はもとよりでありますが、その前にまず和平がならないと何事もできません、まず和平であるということを言っておられたわけであります。しかし、国連が二百人程度の人員を派遣するようにしたとしても、我が国にそれに対応する今システムもなければ、制度もないわけであります。相手は日本に対して大変大きな期待をいたしておるわけであります。  先般、ロンドン・サミットを契機にいたしまして、世界は東西の枠を超えた国際秩序の構築、政治宣言に言う、国連が中核となる国際体制の強化を目指すという新たな課題を背負うことになりました。この国連中心の国際体制を各国の指導者に呼びかけたその呼びかけ人のお一人が海部総理でもあると言って過言ではないと思います。  さて、この国連中心の国際体制に対して我が国は積極的にむしろ呼びかけ人としての役割をも果たす決意を持たなければなりません。今、PKO法案が間もなく上程をされるであろうと思いますが、我々としてはこれらの問題について、国際社会が望んでいるタイミング、内容、そういうものをしっかりと踏まえて、しっかりとした基準、明確な方策を打ち立てなければなりません。  先般、その法案についての政府の五原則なるものを拝見いたしました。一、停戦の合意。二、紛争当事国が我が国の参加に同意していること。三、中立的な立場を厳守すること。そして四番目に、原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合、我が国の部隊は撤収することができること。五番目に、武器の使用は要員の生命等を守るための必要最小限度のもの、こうなっております。  ポイントはこの一、二、三でありましょう。しかし、この一、二、三というのは国連のPKO部隊の原則そのものではないのでしょうか。日本の独特の原則ではないはずである。また四番目に、その原則のいずれかが満たされない場合には我が国から参加した部隊は撤収するとあるが、しかし、これは我が国ならずとも、どの国から出たPKOの部隊であっても、それは撤収するものなのではないのでしょうか。殊さらにここに書くことがむしろおかしいのではないのでしょうか。  そして、これは先ほども同僚委員からも質問が出ておりましたけれども、言うならば、国権の発動たる自衛権の行使でもありません。ましてや侵略戦争などではありません。戦うための組織ではない。敵はいない。したがって勝利も敗北もない。戦争とは違うものとむしろ性格づけるべきでありましょう。そうすると、憲法に抵触するか否かと考えること自体が本来はおかしいのではないのでしょうか。問題は、そこに自衛隊を参加させるとした場合、例えばさっきのシアヌーク殿下の言葉にもありますが、無期限停戦と外国からの武器援助受け入れ停止を監視するために、これらのことについては軍事専門家でなければできないと向こうがおっしゃっている。  例えばヘン・サムリン政権は、我々はしっかりした専門家がポル・ポト派を監視してくれる、検証してくれなければ信用できない。また一万の国民三派は、ヘン・サムリン政権の方のそういう武器の問題について武装解除ができるかどうかを確認しなければ信用できない、それができるのはやはり専門家でなければできない、ゆえに日本の場合も自衛隊をとおっしゃる、こういう要求が一方である。もちろんカンボジアの場合には国連のUNTACの提案もあります。行政面、軍事面、選挙面、いろいろあります。いろいろな仕事があります。そういう中の一つとして自衛隊の派遣がどうなるかという問題が今大きくクローズアップされているのではないかと思うのであります。これらのことについて、何か我が国が特別の、諸外国とは違う部隊を派遣するような印象を持たせることではなくて、むしろ国連のPKO部隊の性格そのものを明確に原則として御説明なさるのがいいのではないだろうか、こう思うのでありますが、いかがでしょうか。
  360. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前回の国会に御論議を願った法案の審議の結果を踏まえて、また三党合意の項目を踏まえて政府が今鋭意作業をしておる中で、考え方の中核になるものをひとつ決めておこうというので決めましたのがまさに今御指摘になったところでありますけれども、おっしゃるように、第一、第二、第三は、これは国連の平和維持活動というものについての定義でありますから、停戦が合意しておるということは、これは当然のことでございますし、また同時に、その平和の維持確保のためにはどのようなものが参加するかということは国連自体において決められておるわけでありますし、紛争当事国全部に合意を得てそこへ行くということも、それぞれ政府間で合意を得て行くということはもう国連自体で決まっておることでありますから、御指摘のとおりであり、その考え方の再確認の意味もあると思います。  一つだけ私たちが申し上げなきゃならぬ中核になっておる点は、今、ややもすると国連の平和維持活動への参加であっても、憲法第九条というものと我が国の平和主義の理念というものと、前回の国会でも大きな御議論になりましたけれども、私たちはその平和主義の理念の中でどこまでできるか、ぎりぎりのところまでできるのは何だということを議論、検討いたしまして、そして、武器の使用のことについても、国連の平和維持軍に対する武器の使用というのは非常に自制的に厳しい制約、制限が加えられておりますけれども、やはりこの際はみずからの生命等の保護を図るためにのみ武器の使用ができるという心構えを基本原則として決めよう、これは我が国自身でそれを決めよう。それから同時に、それでもって停戦の合意が崩れた場合には、もうこれは回避するなり撤退するなりしなければなりません。  先ほども御議論があったし、また数日前のテレビでも出ておりましたように、例えばレバノンの停戦のときのように、一方的に当事国が停戦合意を破って侵入しようといって力できたときには、PKOは何ら武力でもって抵抗しないで回避しております。そういったことはそれでいいんだということを国連のインタビューに出た担当次長も言っておりましたし、残念ながらやむを得ないことだという評価もあるようです。また、きょうまで二つ、三つ、そういった例がありましたけれども、停戦合意が崩れたときにはそれに武力でもって抵抗するというようなことは、今平和維持軍に期待されておるものではないわけでありますし、それもしないならば日本もそういったことについてはきちっと確認をしていこうという意味で、政府部内の検討のときに基本原則としてそれを考えたわけであります。まさに御指摘のとおりの感じがいたします。
  361. 中野寛成

    ○中野委員 五月にデクエヤル事務総長や明石事務次長ともお会いをいたしました。デクエヤル事務総長がおっしゃっておられた言葉が大変印象に残っております。もともとPKOというのは武力行使を目的としたものではありません、これはもう当然のことだ、しかし危険な場所に行くことも事実です、PKOの部隊が派遣されるところで危険でないところはむしろありません。そのときに私はちょっと冗談で、危険なところには行かさないと言う総理大臣もどこかにおりますがと、こう言ったんですが、それは別にいたしまして、ゆえに今その危険ということの意味は、いわゆる武力闘争とか戦争が再発するという意味での危険ではなくて、言うならば万一例えば不慮の事故であるとかゲリラであるとかテロであるとか、何らかの場合に自分の身を守らざるを得ないものというものが起こるかもしれないという事態を説明されたものと感じたわけであります。言うならばPKOの実態をしっかりと踏まえて、そして国民皆さんの理解と協力を求めるべきであろう、こう思うわけでありまして、時間がありませんので、私の希望を申し上げて、最後の質問に入りたいと思います。  証券問題が大変注目をされているわけでありますが、私は、時間がありませんので、簡単に証券問題の不祥事が生じた背景だけを申し上げて、その背景を除去すれば起こらなくなるわけでありますから、それを四つに要約したいと思います。それを申し上げて、大蔵大臣の御所見をお聞きしたいと思うのであります。  第一に、日本の証券市場が投機一色の性格を持つこと。すなわち、配当の利回りは欧米では三ないし五%でありますが、日本では東証の二百二十五種でもわずか〇・七%程度、したがって、配当ではなくキャピタルゲインのみをねらい、思惑が外れれば大きな損失が出る。これが一つ。  二つ目に、証券市場での自由競争が確立していないこと。これは手数料の固定化などに見られるわけであります。委託手数料、これは株の売買の場合の委託手数料、それから新規株式発行の場合の引受手数料。手数料に二つありますが、そのうちの引受手数料の場合は、株主が安定しリスクもないのに引受手数料が高く、二・七ないし三%程度となっております。これでは損失補てんをしても十分おっりがくるわけであります。また、新規株式を発行する企業でないところへも損失補てんが行われておりますが、そういうところはいわゆる大手でございます。大口でございました。その場合は委託手数料、この関係であります。これにつきましても、四大証券で一兆二千六百十七億円と、全体の手数料二兆一千四百二十六億円のうち実に五八・九%を占めております。先日出版された「ザ・ハウス・オブ・ノムラ」で、著者のアル・アレツハウザー氏が、野村の社員の生活は手数料を中心に営まれ、それが各人の力量の目安になると指摘をしております。このことについての手が打たれなければなりません。  三番目に、証券市場に公正なルールが欠落していることであります。これは、損失補てんが自主報告でしか明らかにならなかったこと、はっきりした状況証拠があるのに野村の株価操縦を当局が立証できないことなどにも見られるように、不正を働いても罰せられない仕組みに実際上なっているのではないのか、そういう誤った認識を少なくとも今日まで業界が持っていたという事実。  第四に、大蔵省と証券会社の癒着が構造化して、特に四大証券は証券局の庇護のもとに我が物顔に市場を支配していると指摘する人もいます。先ほど紹介した「ザ・ハウス・オブ・ノムラ」では、ブラックマンデーのとき、証券局流通市場課長が四大証券とNTT株価買い支えを取り決めている。その課長のみずからの発言は、あれは緊急事態でした、証券業界の指導者たち意見を聞き、協力を頼みました、こういう発言をされたことが引用されていをわけでありますが、今回の損失補てんも、外国から見れば、証券局とつるんで証券会社が行っていたということになる。この中には誤解もあるかもしれません。しかし、少なくともそういう指摘がされるという実態があることを我々は謙虚に反省しなければならないと思うのであります。  ちなみに、その手法についてはきょう改めて申し上げませんけれども、アメリカのSECが設立をされましたのが一九三四年、その前の一九二九年の、アメリカのバブル経済がはじけて株の大暴落を招いて大恐慌となって、そしていろいろな問題があったからルーズベルト大統領がSECを設置することにした。そのときの初代委員長には、当時証券市場で最も大もうけをした、いろいろな手口に詳しいと言われるジョセフ・ケネディ氏をSECの初代委員長に充てたわけであります。言うまでもなく、ケネディ大統領のお父さんであります。  このようにして、言うならば、手口というのは次から次に生まれます、この委員会においてもその手口の解明がなされておりますけれども。これらの具体的な決意、そして心構え、そういうものが必要なのではないか。私は公取委でももっと積極的に行動できたと思うのでありますが、そういう体質も含めまして、基本的な問題がここにある、こう思うのでありまして、各論ではありませんが、基本的な姿勢として大蔵大臣の御答弁をお聞きいたしたいと思います。
  362. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 個別に申し上げることは差し控えますが、私は、既に委員もお聞きをいただきましたように、今回の事態の原因というものを五つに分析をいたしました。今委員は、違った角度から四つに分析をされました。その中には、私自身がなるほどと思う部分、これはと思う部分、率直に申してございます。しかし、今の委員の分析をされましたことも、私どもこれからの勉強の一つの材料として十分活用させていただきたいと思います。  ただ、一点申し上げておきたいことは、アメリカのSECの創設の経緯を話されましたが、その以前にアメリカに証券行政をつかさどる部局がなかったこともまた御承知おきをいただいておることと存じますが、そうした情勢と現在の日本状況の異なりがある、しかし受ける批判は同じように我々は受けなければならない、そのような気持ちでおりますこともどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  363. 中野寛成

    ○中野委員 時間が来ておりますが、公取の委員長にもお越しをいただいておりますので、今御指摘を申し上げました、もう少し積極的にお取り組みいただける余地があったのではないかという指摘に対しまして、委員長の御答弁を最後にお尋ねしておきたいと思います。
  364. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりました点について、公正取引委員会考え方を明確に申し上げたいと思います。  まず、不公正な取引方法の一つとして、顧客に対する不当な利益の供与ということがあるわけでありますけれども、今回の証券会社の損失補てんという形での利益供与というのは、独占禁止法上は、それ自体が構成要件として直ちに違法ということではございませんで、市場の状況から見てもちろん違法性が判断されるわけでありますが、ただ、今回の状況、各種の指標等で見ますると、行為の態様によっては不公正な取引方法に該当する余地はございます。そういうことは十分あるわけでございますけれども、翻って今回の事件について考えてみますると、構成要件等の面で端的に規制されるというのは、実は、証券取引法の領域において所轄庁がこれを規制するという制度上の建前になっております。同時に、行政機能の重複を避けるという見地も重要でありまして、まず第一義的には所轄庁によって規制措置が講じられるのが適当である、かつ有効であるというのが私どもの考え方でございます。  ただ、今回の事件につきましては、先般大蔵省がいわゆる四社に対して特別検査を実施されるに当たって、公正取引委員会に対し、事態を究明し、その是正を図るという旨の行政連絡がございました。私どもは、いましばらくこの特別検査の結果の状況あるいはとられるであろう措置の状況を見守る、その後でなおかつ公正取引委員会として措置をとるべきであるかどうかという判断も含めまして、当面しばらくこの措置の状況を見るということで、決して私どもの権限を放棄しあるいは手を抜いているということでは毛頭ございません。
  365. 中野寛成

    ○中野委員 終わります。
  366. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  367. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、お諮りいたします。  楢崎君の質疑に関し、参考人として日本銀行理事福井俊彦君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  368. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  369. 渡部恒三

    渡部委員長 次に、楢崎弥之助君。
  370. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 おとついに引き続いて、最初、島原の対策の問題についてお願いがあります。  自治大臣は、交付税の前倒しということを何回か答弁をされました。全国の国民皆さん方の善意の義援金が、もう既に百億円を超えておるのですよね。私も長いこと、四十年以上政治運動をやっておりますが、今度ほどカンパを街頭でやって皆さんが応じてくれることはなかったですよね。だから、島原は決して孤立していないんだと私は現地で激励をいたしました。百億円以上集まったのです。  それで、銭の来たのは何が来ましたかと市長に尋ねたら、市長さんは、自治大臣がおっしゃった交付税の前倒しか来ました。六月分が二億四千五百万円です。八月分が五億七千万円です。合計八億一千五百万円です、金が来たのは。国民皆さんの集まった金は百億円を超えている、国からのものは八億、これじゃちょっと現地の人は納得しないんじゃないか。しかし、それもいろいろ、もうあれはいいですよ、二十一何とかとか八十三項目はもうよろしゅうございますから。  それよりも細かいことを私はちょっと申し上げておきますが、実は総理答弁の中で、きょうでしたか、落ちついたらいろいろ考えるんだ、山が落ちついたら、というようなことがございましたので、ちょっと申し上げておきますが、個人事を申すようですが、島原の九大観測所の太田所長は私の大学の後輩でしてよく知っておりまして、二、三日前、速達が来ました。そう山が落ちつくというようなことは考えられない。そこだけ読んでおきます。「溶岩ドームは新たな生成を始めており、火砕流発生の危険度は高まりつつあるような気がしてなりません。」これは琉球大学のやはり理学部の木村助教授も同じようことを言っておられます。  この木村助教授は、過去、この種の問題二度予告して二度とも当たった方ですね。だから、非常に心配な状態がある、そのうちの一つは、普賢岳は今あれですけれども、その前に控えておる眉山、これにもしものことがあったら島原は全滅です。そういう状態ですので、それで切実なお願いが来ていますよ、教授から。今各大学から集めているんですよね、あそこへ、観測所に。旅費がないというんですよ、旅費が。それでいろいろ、文部省はよくやられておるそうですよ、いろいろなほかの予算を削って。それほど切実なんですね。それから、要員をふやしてくださいと。増員ですね。そういうあれも来ております。  それで、こういうことが不可欠だと言ってきました。「雲仙火山を対象とする高精度地震傾斜変動観測は今後のマグマの動静を把握する上で緊急不可欠である。この問題を解決するためには、政府予備費の支出を早くやってください。」これがお願いです。これだけちょっと御紹介をしておきます。  それで、この問題は全政党が、今までない問題ですから、これは政治の決断とリーダーシップだと私は思うんですよ、くどいようですが、各党もやっています。私もこの三日間いろいろ走り回りまして、各野党政策審議会長、各野党に設けられております特別委員会の委員長さん、全部賛成をいただきました。きのう、与党の四役のうちのお二人にお会いをいたしまして、大変前向きのお考えをいただきました。  それで、特に問題の基金ですね。災害復興基金と私は申し上げましたが、復興でなしに対策基金にしてくださいという御意見もございました。それは結構です、とにかくお金が出ればいいんですから。どういう基金の形態であろうと、金が出ればいいんですから。この基金の問題について総理にもお話ししているということを聞きました。それを言っていいかと言ったら、言っていいど言われましたから、総理の耳には入っておると思います。もう少し前向きの御答弁をいただければ、現地の人はどれだけ励まされるかわかりませんので、その点だけちょっと御答弁をいただきたいと思います。
  371. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 もうくどくどと長い項目別のことは十分御承知と思いますから言いませんけれども、当面の対策はできるだけのことをやっております。  そして、私が災害が終わってからのことに触れましたのは、むしろあの地域全体が災害でこうむった被害の中から立ち上がって、将来活性化する、あるいはさらに防災体制を固めていく、そういったことについての、地方財政を逼迫しないような対応策を考えるというのは、今皆さん方が各党それぞれ、基金でもって将来のことも考えていこうとおっしゃっておるような発想を踏まえての、将来展望に向けての発言でありますから、決して災害が終わるまで何もしておらぬわけでもありませんので、それは御理解いただきたいと思います。  お話はよく承っておりますし、また、我が党や野党の皆さんからもお話も聞いております。それなりに自治大臣にも、国土庁長官を対策本部長としていろいろ検討を命じ、研究をさせておる問題等もございます。十分それらの御要望を踏まえながら対処してまいりたいと思います。
  372. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 前向きの御発言だと私は受けとめたいんですよ。  それで、私も初めて聞く言葉ですけれども、現地では、天災とか人災とかいうのはよくありました、言葉としては。今、法災という言葉、法律の対応が十分でない、それはあれです、災害基本法の問題でしょう、あるいは公権力で立ち入っちゃいかぬと言っておって、罰則だけあってその救済の方法がないというあの法律の欠陥もありましょう。そういうふうで、法律の災、法災ということを言う。さらに、政治の対応が鈍いと。現地の人はですよ。政災という言葉までこのごろ出されておる。それはまだ十分総理の意向が伝わってないかもしれないが、それだけは申し上げておきます。  それでは、また時間がなくなりましたが、いわゆる証券・金融問題についてちょっと触れてみたいですが、私は、ロッキード事件のとき、これは構造汚職であると申し上げた、初めて。そうしたら、それがその後新聞で一つの定着した言葉になりました。今度私は、今度の問題は構造汚職というよりもシステム腐敗ではないか、こういう感じがいたします。それは、次の機会にどうして私はそう言うかという説明しますけれども。だからこれを防止しようと思ったら、橋本大臣にもお願いしたいが、このシステムのメカニズムを変えなくちゃだめじゃないか、もう結論だけ先に言っていますけれども、そういう感じがしてなりません。そして、じゃなぜシステム腐敗と言うかというと、大蔵、日銀、都銀、証券会社のもたれ合い、このシステムですね、これは具体的に私は立証しますから。それから、そういうメカニズムの中で必然的に起こった複合のこれは不正ではないか、混合の不正ではないか、そのような気がしてなりません。  それで、メカニズムの大きな点だけ言いますと、大蔵の金融政策と日銀の金利政策のけじめがちょっとわからなくなる、欠如しているんじゃないかという感じがします、システムの問題、メカニズムの問題で。それから、日銀政策委員会のあり方ですね、公定歩合決定のシステムに問題があるのではないか。それから、外為相場への参入システムにも問題があるのではなかろうか。それから、大蔵と証券・金融会社のメカニズム、つまりよく言われておりますとおり、監督行政と保護、指導行政が同居している、兼務している、これは断ち切らなくちゃいけぬのではないか。さらに、人事の癒着、天下りの問題があります。それから、いわゆる免許制度、固定手数料の問題もずうっと出尽くしております。これは全部メカニズムの問題だ、そのように思うんですね。それで、例えば固定手数料なんというのは、会社は損じない仕組みになっていますからもうかるばかりです、いろいろ世話して。どんなひどいことをしているかは次の機会に明らかにいたしますけれども。そういうふうにしてもらわぬと、この治療方法は、このメカニズムに鋭く迫って、そして構造的な、制度的な、機能的な改革をしなければならぬのじゃなかろうか、そういう気がいたします。  私は、どうしてこんなことが繰り返されるんだろうかと思うんですよ。まず最近のあれがあれすると、殖産住宅に始まりますね、同じようなことが。次がリクルートでしょう、同じようなことですよ。そして今度、性懲りもない、塀の外の懲りない人たちが多いものだと思うんですが、私は、リクルートのときに庶民的なことを申し上げましたよ。あの会社の皆さんに私は、きょうは実況はないから言っておきますけれども、あなた、小学校の学習指導要領に何て書いてあるか。三年及び四年生、小学校の。「約束や社会のきまりを守り、公徳を大切にする心をもつ。」ことだ。会社の社長さんにそれを言いたい。それから、公徳心を持って法や決まりを守れ、社会の仕組みを守りなさい。まことにこれはこういうことなんです、わかりやすく言えば。  そして、何ですか、大蔵省はいろいろ責任を感じられて、大臣初め、何か給料を三カ月間、一〇%引く。保田事務次官さんは自発的にそのようにされたそうですね、自発的に。ところが、これも私あのときやったんですけれどもね、リクルートのとき。あの「夜に蠢く」という有名な本がありますね、ある料理屋の「夜に蠢く政治家たち」。この中に保田さんは随分出てくるんですよ、随分。「ほとんど秘書官同士の内輪だけが多い。この目も保田さんら、例の顔ぶれだった。芸者がついての飲み食いで、マージャン、ほとんどのときにあんまをとる。このパターンは、版で押したように決まっておる。」だから、月給から一〇%、三カ月引かれたって、もう痛くもかゆくも保田事務次官はないのじゃないでしょうかね。責任をとることになるのであろうか。これは憎まれ口たたいて申しわけないけれども、それが実情なんじゃないかと思うのですよ。  それで、次のあれに関係がありますから、ちょっと確認しておきます。  日銀ですね。日銀も、これは非常に今度のバブル経済の、言葉は悪いかもしれぬが元凶の一つだと私は思っておるのです。それも明らかにしますけれども、次の機会に。  それで、きょう数字を確認しておきますが、おたくの事業概況を私は持っています。それで、九十九回のやつ、九十八回のやつを見まして間違いないかどうか確認をしておきたい。九十八回、つまり、九〇年度の前半の方、前期の方、これは国債関係損、損の方ですね。一兆円余り出ていますね。一兆五百四十九億円国債関係の損が出ていますね。国債というのは債券のあれですね。それから当期、つまり去年の十月からことしの三月三十一日まで、それの為替差損は八百三十二億円出ておりますね。間違いないかどうか。それで九〇年、つまり当期ですよね。当期、ことしの三月三十一日に出ましたその当期、税を引く前の黒字、一兆三千七百五十一億円。昨年の純益はわずか六百七十三億円、これはさっき言ったとおり一兆円以上の国債の差損が出ておる。去年から、去年六百七十三億、それが利益が急に一兆三千七百五十一億円、二十・四倍ですね。どうして一年間にこんなにばっと利益が上がるのです。こういう会社ほかにないのじゃないですか、日本銀行以外に。どうしてこうなったかは来週討論をいたしましょう。ただ、数字だけ確認しておきたい。
  373. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答えを申し上げます。  ただいま委員から御指摘のありました日本銀行の決算に関する計数でございますが、委員御指摘の中で、平成二年度上期の日本銀行の決算の中で国債関係の損、損失の数字が一兆五百四十九億円とおっしゃいました。これは正しゅうございます。  それから、平成二年度下期の決算数字の中で為替の差損益、損が八百三十二億円、これも御指摘のとおりでございます。  あと、日本銀行のいわゆる純益金、その期の純益金の数字をおっしゃいました。委員はことしと去年という言い方をなさいましたが、より正確にはやはり平成二年度下期が一兆三千七百五十一億円、平成二年度の上期が六百七十三億円、その点だけ修正をさせていただきます。
  374. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう時間が来ました。最後結論だけ申し上げておきますが、つまり、一年間で昨年の利益の二十倍も上げるなんという会社はありません。公定歩合を上げたから、一つは、ばっと上がったんでしょう。その前いろいろ、あなた、一番ひどいときは二・五%まで公定歩合を下げて、そしてバブル経済のもとをつくったのは日銀じゃございませんか。それだけ申し上げて、次にまたやります。
  375. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会