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1991-08-21 第121回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年八月二十一日(水曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       内海 英男君    越智 伊平君       狩野  勝君    倉成  正君       後藤田正晴君    志賀  節君       塩川正十郎君    田邊 國男君       田辺 広雄君    津島 雄二君       戸井田三郎君    萩山 教嚴君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村山 達雄君       柳本 卓治君    山口 敏夫君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       仙谷 由人君    田口 健二君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    児玉 健次君       古堅 実吉君    吉井 英勝君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         警察庁警務局長 安藤 忠夫君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁刑事局保         安部長     関口 祐弘君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  稲葉 清毅君         青少年対策本部         次長      杉浦  力君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         防衛施設庁建設         部長      新井 弘文君         防衛施設庁労務         部長      荻野 貴一君         経済企画庁調整         局長      吉冨  勝君         国土庁長官官房         長       藤原 良一君         国土庁大都市圏         整備局長    西谷  剛君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中南米局         長       瀬木 博基君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房総         務審議官    小川  是君         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省銀行局保         険部長     鏡味 徳房君         大蔵省国際金融         局長      江沢 雄一君         国税庁次長   冨沢  宏君         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部大臣官房総         務審議官    井上 孝美君         文部省初等中等         教育局長    坂元 弘直君         文部省高等教育         局私学部長   奥田與志清君         厚生大臣官房総         務審議官    大西 孝夫君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省薬務局長 川崎 幸雄君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産大臣官         房審議官    今藤 洋海君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       麻生  渡君         通商産業大臣官         房審議官    林  康夫君         通商産業省通商         政策局次長   藤原武平太君         通商産業省貿易         局長      高島  章君         中小企業庁長官 南学 政明君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         自治大臣官房審         議官      田中 宗孝君         自治省行政局長 浅野大三郎君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁三重野 康君         参  考  人         (株式評論家) 浦   宏君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十一日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君   小此木彦三郎君    山口 敏夫君   越智 伊平君     柳本 卓治君   浜田 幸一君     狩野  勝君   村田敬次郎君     田辺 広雄君   串原 義直君     田口 健二君   不破 哲三君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   田辺 広雄君     村田敬次郎君   柳本 卓治君     萩山 教嚴君   山口 敏夫君     小此木彦三郎君   田口 健二君     仙谷 由人君   吉井 英勝君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任   萩山 教嚴君     越智 伊平君   仙谷 由人君     串原 義直君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口敏夫君。
  5. 山口敏夫

    山口(敏)委員 内外情勢に対しまして若干の質疑を行いたいと思います。  渡部予算委員長から、国政に極めて御健聞いただいておる総裁総理に対して十分なる労を多として質疑を進めなさい、こういう御好意もいただいておるわけでありますが、大変世界情勢は激動しているわけでございますが、わけてもここ二、三日のソ連状況というものは、世界の人々が極めて深刻に憂慮し動向を見守っているわけでございます。政府で今把握しておる最新の状況を、まずひとつ外務大臣から御報告を承っておきたいと思います。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 山口議員お尋ねソ連現時点における状況につきましては、昨夜来急速に悪化をしております。モスクワにおきましては、ロシア共和国最高会議建物周辺ソ連軍部隊が集結をし、既に一部実力行使が行われている模様でございます。事態は一刻の猶予も許されない段階に来ておりまして、このような実力行使が行われていることはまことに遺憾と私どもは思い、政府としては、この実力行使ということについては厳しく批判をいたしたい、このように考えております。  なお、政府といたしましては、せっかく自由化民主化を進めている東ヨーロッパ国々についても重大な関心を持っておりまして、これらの国々に対する支援も引き続きやっていかなければならない、このように考えております。
  7. 山口敏夫

    山口(敏)委員 極めて、ロシア共和国建物周辺に軍部の戦車が出動して、ニュース、テレビを見ておりますと、何か炎上もしているような緊迫感のある報道が続いているわけでありますが、この予算委員会質疑の最中にも重要な情報がございますれば、ひとつ逐次、審議を中断していただいても結構でございますから、国民皆さん方も大変重大な関心を寄せておりますので、ひとつ的確な情報を御報告をいただきたいというふうに思います。  私は、ソ連の内部の状況把握と同時に、日本も対岸の火事と見ておるわけにはいかない、当然日本のこのソ連に対してどういう対応をするかということが重要な問題だと思いますが、特に、今度の事件を起こした保守派に対して、これ以上乱暴させない、過激な行動をさせない、こういう立場というものが非常に重要だと思います。特にこのクーデター憲法違反行為である、首相は、憲法違反行為考えていただいてもいいというようなややちょっと抽象的な発言もございましたけれども、これはやはりはっきり日本政府としての見解見解として表明されておくべきではないかというふうに思いますが、いかがでございますか。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的にお尋ねの件は、私、憲法違反考えていただいてもいいというような言い方で申してはおりません。昨日の委員会でも明確に申し上げましたが、現下の情勢憲法違反可能性が極めて高い異常な事態と受けとめておると申しましたし、また昨日の記者会見においても、憲法秩序そのものに背反する形で行われている、こういう可能性が極めて高いと判断される異常な事態と受けとめているということでありますから、これは特に冷戦時代に戻らないように、同時に、けさのような事態を事前に察知して、人権尊重の点については特にゴルバチョフ大統領生命の安全も含めて強く昨日政府見解として発表したところでございます。これは憲法違反のものであって、いけないことだという政府の方針を発表しておりますから、どうぞそのように御理解をいただきたいと思います。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういう首相会見もございましたけれども現時点において対ソ連の問題について首相としてなすべきことは何かと具体的にお考えになることがございましたら、ひとつ発言をしていただければと思います。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府与党首脳会議の最中に第一報の連絡を受けまして、その後情報がいろいろ不透明でしたけれども、直ちに夕刻連絡会議をまた開き、同時に、政府としては、この問題については人道上の問題もあるし、また同時に、ソ連約束した対外約束、特にその中でペレストロイカと新思考外交のグローバルな適用ということは強く求め、かつ過日のロンドンサミットでもそのことを主張して共通の認識も得ておることでありますから、そういった路線が絶対に後退することがないように、同時にまた、今まさに行われるかどうか、流血惨事なんかは絶対に防がなければならぬわけでありますから、そういった意味予算委員会の前、後にそれぞれG7の首脳とは連絡を、私がとれるところは電話で直接とり、また外交ルートを通じていろいろな政府の意向を伝え、これ以上人権問題その他に発展していかないようにできる限りの外交努力を続けておるというところであります。
  11. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これは総理一つのお考えにあるのか、外交を補佐する外務大臣及び外務省が適切な政府内で助言を与えているのか、いずれかだと思いますが、私は、今総理がおっしゃったようなロンドンサミットとか関係諸国というようなことも大事でございますけれども、今問題が起こっているのはまさにソ連国内なわけですね。そしてまた、先般のサミットでも七カ国にゴルバチョフが参加をされた。私は、今外堀を埋めるような話、靴の上から足をかくような話ではなくて、やはり日本国民日本政府に求めているものは、ソ連国内政情にいかに日本として一つの役割を持たなければいけないかということだと思うんですよね。私がお聞きしたかったのは、今一番大事なことは何かといえば、やはりエリツィンゴルバチョフゴルバチョフはいずこにいるかということでありますけれども、この二人の合法的に選ばれた大統領、この政権に対して日本としてもどういうサポートができるかということなんじゃないでしょうか。  私は、今、日本政府対応は、ブッシュと話をしたとかメージャーと話をしたということも大事ですけれども、やはりエリツィンは存在がロシア共和国の中にいるのはわかっているわけですから、昨日首相日本政府としての見解内外に明らかにされたその決意を、意思を、私は、今このゴルバチョフ政権に復帰すべきであるということで、まさに流血惨事、風雲急を告げる中でロシア共和国大統領としての指導力を発揮しているエリツィンにもあなたのお考えメッセージをお届けになったらいいんじゃないですか。どうですか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府考え方というのは、あのような憲法状況に反するようなことをやることを黙って見逃すわけにはいけないということもきのう私の気持ちとして強く委員会でも申し上げましたし、同時にまた、ゴルバチョフその人は今どこにいるかわからないというので、特にその生命安全保障については強く主張をしておきました。同時に、流血惨事を起こしたり、これ以上のことをしてはならぬということも強く申し上げてあります。  エリツィンロシア共和国大統領は今まだ声明を発表したり、今健在で居どころもわかって努力しておるわけでありますから、そういったものをこれ以上侵してはならぬということはこちらのメーセージとして当然伝わっておると思いますし、またソ連に対してはそのようなことを外交ルートを通じて伝えてあるわけでありますから、そういった正当な手続を経て選ばれてきておる大統領に対する支持というものは、これはエリツィン氏の現在の立場行動に対して私も同じ気持ちで強い支持を表明したいと思っております。
  13. 山口敏夫

    山口(敏)委員 伝わっていると思いますじゃなくて、海部総理は、エリツィンがまだロシア共和国大統領に就任する以前に、一私人として来日をしたときも首相としてあなたはエリツィンさんともお会いをしているわけでありますし、今やはり世界がなさねばならない最も重要な仕事は、私は、エリツィンゴルバチョフの合法的な政権にいかに国際世論支持を与えているかということなんじゃないんですか。ですから、伝わっていると思いますじゃなくて、あなた自身外務大臣外務省を通じてきちっとしたメッセージを届けるということをなすべきではないかということを私は申し上げているわけです。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今おっしゃったように、まさに正当に選ばれた者を国際的世論の中できちっと支持をするということが大切だと前半おっしゃいましたが、それはソ連という国が、特にゴルバチョフペレストロイカによって東西の、力で対決するというあの冷戦構造の発想を乗り越えてきた大いなるリーダーであったわけですから、その正しい方向性支持し、そして正当に選ばれた大統領であったという建前から私どもはこれを支持する、それを十分ににじませて政府の今度の見解も出しておるし、また人権問題についての配慮も述べております。  また、ここで伝わっていると思うと申し上げたのは、予算委員会が始まってしまいましたので、確認してありませんでしたが、今確認しましたら、昨日きちっと私のあれはソ連大使館を通じて伝えてあるということでありますから、伝わっております。
  15. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういう自分が一方的に政府、もちろん日本国を代表して声明を出されているわけですから、その声明を届けられたということはメッセージを届けた、こういうことにもなるとは思いますけれどもブッシュ大統領は二度にわたってエリツィンと直接電話支持約束をしているわけですね。約束しているわけですよ。ですから、何もブッシュがやったから日本もやらなければならないという必要はないわけでありますけれども海部首相自身一つ首相としての見解において、そういう行動国民の目にも我々にもわかりやすくなぜとれないのか、直接的に自分考えエリツィンさんにメッセージを送るということがそんなに抽象的なややこしい外交的な手順でなくて、もっとすっきりとやれないのか。ですから、自民党の中にも、けさ報道などにもございますけれども、また湾岸戦争のときの拙劣な対応が悪夢がまたよみがえったような、何か各国首脳がそれぞれ自分の言葉でこの事態に対する見解を表明している。まさにペレストロイカソ連の自由と民主化という問題を後退させてはならない、不当、不法なクーデターであるということまで明言をしているわけですね。私は、これは外務大臣日本外交はどちらかというと、実効支配実力支配をした政権に対して追認をするという今まで外交的慣例があったと思うのですよ、外交的慣例が。そういう部分がいま一つソ連の今回の事件に対して対応がおくれているのか。その理由はどこにあるのですか。我々がそういう何かもたもたしているという感じを受けるのはどこに原因があると思いますか、大臣として。
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 山口委員お尋ねでございますが、政府はどのような方法、つまり憲法、その国の憲法にのっとっていわゆる政権が交代したのかどうか、また、その新しい政権が全領土を実効支配しているかどうか、これが一つのポイントであります。もう一つは、その新しく登場してくる政府行政執行者国際約束を守ることの能力を持っているかどうか、これが第二点の問題でございまして、この二つの点を十分見きわめた上で新政府を承認するかどうかという外交的な判断をするというのが日本政府の基本的な外交の原則でございます。  そういう意味で、今日のソ連の状態は、委員も御指摘のように大変な混乱、さらに情報によりますと、新しいいわゆる国家非常事態委員会の八人のメンバーのうちに辞任をする者も出てきたという情報も流れている中で、私どもは、刻々変わり行くこのソ連の実態をあらゆる情報を収集しながら的確に分析をしていくことが、この巨大な隣国を持つ日本としては非常に大事な外交の原点であると私は考えております。
  17. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから、非常に発言は懇切丁寧でございますけれども、要するに、政府といってもお互い政治家ですからね、やはり政治として何をなすべきかという問題があると思うのですよ。ですから、例えば今までは、私が伺ったのは、実力支配という一つ外交的な慣例というものがあったけれども、やはりこういう国際、グローバルな時代日本サミットの中においての一員というよりも、非常にある意味においてはリーダーシップも果たさなきゃならない国になった今日においては、そういう価値基準をやはり変えていくということも私は大事なんじゃないか。ですから、もう米国などは各国情報をとり合っているわけですよね。そうでしょう。NATOヨーロッパは、とにかくソ連ヨーロッパにもう大半が向いているわけですから、これはソ連国内政情というものはやはり自分たち国内問題と同じぐらい深刻な状況にあるからね、NATOとかECども外相会議などを開いて頻繁に連絡をとり合っているわけですよ。日本はどこと連絡をとっているか。まあ我々から見ても、与党立場から見ても、何か蚊帳の外に置かれているんじゃないかということを懸念せざるを得ないわけですよ、それは受け身だから。例えば日本だって隣の中国、この問題で中国情報交換をしたことがございますか、大臣
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 中国とこの問題について直接意見交換を行っているということはやっておりませんけれども総理は、御案内のようにブッシュ大統領あるいはカナダのマルルーニー首相、あるいは昨晩はイギリスのメージャー首相電話でいろいろと協議をいたしておりますし、コール首相ともきょう連絡をされるという予定を持っております。こういう中で私自身も、EC議長国であるオランダのファンデンブロック外相ときょう電話EC閣僚会議の後の動きについての意見交換をいたすことに予定をいたしておりまして、事務レベルでは、小和田次官各国次官級と緊密に連絡をとっております。  どうもそういうようなことで、日本政府としてはできるだけのG7の国々との連絡もやっておりますけれども、もちろんおっしゃるように中国との、どういう考え方で中国がこれに対して対応しているかということについても、外交ルート意見交換をすることは適当であろうと考えております。
  19. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから中曽根元首相も、必要ならば緊急サミットも開いてみてもどうか、こういう提案もありますよね。ありますが、私は、アメリカの大統領あるいはイギリスの首相、いろいろな国の、サミット国の首脳と会談、連絡をとり合うことも大事だと思いますが、例えばお隣の韓国も対ソ関係を改善した直後にあるわけですよね。これなども、非常に韓国などもソ連情勢をどう心配しているか、どう対応すべきと考えているか、どういう情報分析にあるか、やはりこういう問題を私はまず、海部首相もアジア重視、アジア重視ということをしょっちゅう国会で言っておられるじゃないですか。アジアの中にだって対ソ連、あるいは中国政府の動向ですな、内政干渉というようなことの意図がどこにあるのかということも含めて、これはソ連中国が一体どういう形で今後政治的、外交的な関係に発展していくんだろうかということを含めて、やはり火事場は火事場の情報というものが、火がやんだら火がやんだ情報の上での判断ということも大事でしょうけれども、やはり修羅場は修羅場としての状況情報というものを頻繁に連絡をとり合えるというネットワークや信頼関係がなければ、この間総理中国へ行ってきて、にこにこ握手して帰ってきただけじゃこれは意味がないわけで、やはりそういうときのためにすぐ電話連絡がとり合える李鵬さんとの関係というものが私は大事なんじゃないか。また韓国の大統領首相とも、外務大臣とも直接外務大臣連絡をとり合うという情報を非常に大事にしていかないと、やはり日本という国の国際的貢献、PKOの問題ありますけれども、私は、PKOの法案以前の問題としてもまだなすべきことが十分なされておらないのじゃないかということを心配するわけですよ。総理、御発言をひとつ。
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 委員から御心配をかけておる御発言がございますけれども日本外務省としてはアジア周辺国も含めてあらゆる情報を集めて、情報調査局を中心に省を挙げてただいま鋭意分析をやっております。――もちろん閣僚レベルでもやりますけれども、とにかくこれだけの激しい激動がいたしておる国際情勢でありますから、私どもは、外務次官に対しても、あらゆる手段を使って各国との連絡を強化しろということを昨晩も電話で指示をいたしております。いろいろなことをやっておりますから、外交でございますからすべてここで明らかにするわけにもまいらぬことも御理解いただくことは十分あると思いますが、政府としては、国民の皆様方の御期待に反しないように格段の努力をいたしておることを申し上げておきたいと思います。
  21. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから総理外務大臣からも御答弁ありましたけれども、私は、湾岸戦争ともなれば百三十億ドルもの巨額な資金を嫌な顔一つせずといいますか、いろいろ御協力をいただいている国民の皆さんに対しても、やはり世界平和やまた国際外交の面においても十二分な貢献と積極的な役割を果たしているということが、私は、PKOに対する国民的な理解、協力あるいは国際貢献基金に対する拠出に対する協力というものの一つの大きな理解の根幹であるというふうに思いますので、こういう時期は、いろいろ政府あるいは省庁における見解はあるでしょうけれども、やはり政治家のイニシアチブによってひとつ十分な外交的な機能を、ひとつ叱咤激励して活動をいただきたいということなんですね。ですから、中国を初め韓国とかアジア各国とも緊密な情報交換をとるということについては、外務大臣も閣僚レベルも含めてそういう外交的な連絡をとり合う、こういうことでございますからぜひそうしていただきたいと思いますし、総理としては、やはり緊急サミットも必要ならばやるかもしれない、やってもいいじゃないかということも日本首相自身としてブッシュやイギリスの首相などとも、コールさんなどとの話のときも、やはり日本NATOECがないのですから、そういうことも御提案もされたらどうかというふうにも思うわけでありますが、一言御見解をひとつ承っておきたいと思います。積極的にやってくださいよ、積極的に。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 事態が始まりましたら、直ちに安全保障議員懇談会には二度詳しい状況報告させるとともに、昨日は、政府考え方を予算委員会終了後直ちに党の四役とも相談をして、基本路線をきちっと示すべきであるということでお示しもいたし、同時にまた、その会議の最中でしたが、我が方から連絡をしておいて、ちょうどイギリスやアメリカと日本とは時差というもの等もあってなかなか電話のコンタクトが両方の都合が合わなかったので会議中につながってしまいましたから、会議を中断して私はそれに出て、そしてG7の物の考え方とか今後どのような協調協力体制がいいのか、おっしゃるようにNATOでもECでもこちらはありませんから、そういったことも踏まえて話をしました。当面、アメリカもイギリスもそうですが、ゴルバチョフがどこにいるのか、どうなっておるのか、あるいはこの不透明な状況がどうなっていくのかということも全く見通しがつかない今の状況ですから、そこで私も、再び後戻りしないように、冷戦時代に戻らないようにということを第一に強く願うとともに、同時に人権問題についてはこれは厳しい警告を発し、これ以上流血惨事にならぬようにしなきゃならぬ。連絡の方はどうしようかということも言いましたが、結局いろいろな面で、こうして電話でとりあえずは緊急に物があるときには連絡をとり合うということが非常に有意義であって、物の考え方やなんかがわかったことはお互いにいいことだから、今後ともこのようなことでやっていこう。  また、緊急サミットのことについては、これはブッシュ大統領は、電話でこうして話せるのだからというようなこともあったし、また今の状況ではちょっと生産的ではないというような意向等も私は伝わって聞いておりますし、ですから、我が方はできる限りの手は積極的に今打っておるところでありますので、そして世界情報を集めながら、また刻々変わり行くソ連状況がどうなるのかわかりませんので、けさソ連に対しては、これ以上流血惨事になったりすることは極めていけないことであるから厳しく自制を求め、けさ状況についてはこれは非難をするということも伝えてここへ来たところであります。  今後とも、また予算委員会が終わったらすぐその方面のことに取りかかるつもりで準備を進めさせております。
  23. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ブッシュさんもそういうふうに言っていましたからということでなく、これ以上保守派でありますとか軍部が過激な行動をして流血惨事ということになりますと、相手はソ連ですから、また対ソ関係の改善にも、西側のみならずこれは東欧の問題もあるわけですし、非常に世界が苦慮するわけでありますから、そういう最悪の事態を避けるための環境づくりというものの中で、必要な場合は、二国間である場合もあるでしょうし、あるいは緊急サミット的な性格の場合もあるかもしれませんが、少なくとも世界ソ連国内の暴発を牽制するという決意、気構えの政治的な環境、外交的な状況というものをやはり整備していくということが非常に大事なことだ。そういう意味において、ひとつ総理もアジア諸国との情報交換、と同時にサミット諸国の首脳ともひとつ緊密な連絡を、情報をさらにとり合っていただいて、必要に応じてはソ連国内の合法的な認知された指導者に対しても、やはり支援のメッセージも送るというようなことも含めていろいろ積極的なリーダーシップを発揮していただいて、まさにサミットその他で大きな成果を上げたわけでありますから、ひとつ世界においても日本首相として踏ん張っていただきたいということを御要望しておきたいと思います。  私は、今ソ連がこういう状況になってしまったものですから、今さら対ソの関係改善のための幾つかの具体的な提案というのをここで取り上げるのもいかがかと思いますが、四月にゴルバチョフさんが来たときは、確かにソ連国内政局からすると最悪の状態であった。したがって、五六年の二島返還、二島継続の問題も確認、追認されないまま終わってしまった。しかし、総理外務省にまとめさせた海部ゴルバチョフ会談の成果というものからしますと、大変な成果があった、共同声明の中にも国後、択捉、歯舞、色丹の四島が明記されたということで評価されているわけです。これは自画自賛なのか、本当に実体を伴った評価なのかという問題があると思うのです。私は実体を伴った評価だというふうに受けとめたいわけですよ。しかし、その後の政府の対ソ政策というものを考えておりますと、サミットゴルバチョフ出席するかどうかというときも、海部首相はカナダの首相やアメリカの大統領との会談の席においても反対の立場を表明しておった、結果としてはゴルバチョフ出席することになったわけですけれどもね。この辺の外交的な見解、やはり国民は、ゴルバチョフさんと海部さんが指切りして共同声明に調印してノートを交換している場面を、これで世界で一番おくれた二国間関係の日ソが大きく改善、発展していくんじゃないか、外務省がまとめた海部ゴルバチョフ会談の評価も相まって、これは何らかの前進がスタートを切られるんじゃないかという思いを持つわけですよね。しかし、その後サミットでの出席に消極的あるいは賛成でない、まあ結果的に出ていましたけれどもね。私は、そういう点は一貫性といいますか、首相がやはりきちっとした指導力を発揮していただいて、あなたが一番日本人としてゴルバチョフソ連の当時の最高首脳と渡り合ったわけですから、その中で肌で感じた信頼関係とかあるいは不信感とかいうものの中で日ソ関係というものが方向づけられるわけですから、その辺が非常に私はわかりにくい。  特に、対ソ金融支援なんかの問題でも非常に世界との、これは大蔵大臣の御見解もあるのかもしれませんが、私はやはり四億ドルから五億ドル、今ソ連というのはそれこそ何百億ドル援助してもまさに焼け石に水であることはそのとおりなんですよね。これはもう我々も、今のソ連というのはちょうど終戦直後の日本と同じように、こういう公の席で適当かどうかわかりませんが、本当にやみ屋とかブローカーとかあるいは暴力とか売春とか、社会が非常に疲弊して混迷の極致にあることは事実ですよ。しかし、なぜそれにもかかわらず四億ドルか五億ドルの金融支援というものが、海部ゴルバチョフ会談、その成果をまとめた論文、指切りというものから見ると、なんで四億ドルから五億ドルの金融支援ができないんだろうか。  四億ドルか五億ドルの金融支援というのはどういう意味があるかというと、これは通産大臣の所管でもありますが、日ソの通商関係が大体六十億ドル今まであったわけですね。ところが、まさに日ソの歴史上初めてソ連の元首が日本に来たその年にソ連の焦げつき債権の問題が出て、このままほうっておくと日ソ関係の貿易は四十億ドルから場合によっちゃ三十億ドルにも減ってしまうんじゃないか、こういう状態になるわけですね。これは、商社といえどもボランティアじゃありませんからね、当然ビジネスですから。そうすると、やはりゴルバチョフがせっかく来た年によりによって今まで六十億ドル近く曲がりなりにも、それでも日本の貿易量からすればわずか〇・九%、一%にも満たないわけですよね。サハリンには膨大なエネルギーがあるけれども領土問題があるからこれは当然のこととは言いながら、それにしてもやはり政治というものがないんじゃないか。とすると、四億ドルから五億ドルの金融支援というものが、六十億ドルの日ソ関係の通商ベースを横ばいにする、現状維持の状況に持ち込むための政策的なてこにもこれがなる場合もあるわけですね。そういうことも、私はやはり首脳会談をした人としては指導力を発揮してやっていただくべきなのではないか。  今非常に総理は、きのうの記者会見でも、ペレストロイカ支持するんだ、冷戦構造に大きな役割を果たしたのはゴルバチョフなんだと。これは今評価したって、もういなくなっちゃってから評価したってこれはだめなんで、五億ドルがあったから別にゴルバチョフが助かったかどうかはわかりませんけれども、そういう、日ソ関係についてもせっかく首脳会談が行われたにもかかわらず、何か政府部内でもちぐはぐなんじゃないかという印象を私は一議員としても与党議員としても受けるわけでありますけれども総理として今の私の発言に対してどういう御見解を持たれるか、ひとつ御答弁を伺いたいと思います。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろの御意見を今承りましたが、私なりに率直に申し上げると、いなくなったからペレストロイカをたたえておるのじゃなくて、四月のゴルバチョフ大統領との首脳会談も、当初の予定をはるかに超えて最も長い時間やったと言われるぐらいいろいろやったのは、これはゴルバチョフ大統領に対して、日本には日本の原則があるし、同時にまた、ペレストロイカの正しい方向性は認めておる、これは成功してほしいんだという大きな大前提を伝え、そして率直な議論、話し合いをしたわけです。ですからそのころから、ペレストロイカの果たした冷戦構造を乗り越えるという努力は高く評価をしたわけです。  同時にまた、新思考外交というものはスターリンの膨張主義に対する反省として新しく生まれた新政策であったはずですから、それはユーラシア大陸の西のヨーロッパでだけ花開いて実を結ぶではなくて、グローバルにアジア・太平洋にもそれは押し及ばなきゃならぬ。ゴルバチョフ大統領、あなたがいけないというのじゃなくて、これは、かつてのソ連のスターリンの膨張主義の残滓がまだアジアに残っておるのを例示すれば象徴的には領土問題ではないかということから、北方領土問題を解決して、まだソ連とは平和条約も結ばれていないという極めて不安定な状況でありますから、平和条約を結ぶということを大前提に私は交渉を続けたつもりであります。  そしてソ連に対しては、一億ドルの食糧の緊急援助とかあるいは技術支援とか、いろいろな問題で幅広く、拡大均衡という形で、これはお互いに共通の認識を持ちましたが、努力をしていこう。ただ、無原則な政経分離はできない。領土問題だけ横へ置いておいて、平和条約も結べないけれども、お金さえ出せばうまくいくだろう、じゃお金出そうというわけにはいかぬから、あなたの方もひとつ平和条約を結んで正常な状況に戻すということ、それから、原則をきちっと踏まえてかっての誤りを正すということ。  これは山口議員もよく御承知おき願っておると思いますけれども、よくヨーロッパで議論されるヘルシンキ精神というものは、第二次世界大戦において固まった国境線を力でもって変更しないというのが簡単に言うと基本精神のはずでありますけれども、北方四島の問題は日本がポツダム宣言受諾をして終戦になった八月十五日以後に起こった問題であるということは、当時、青年局、お互い仲間で根室の研修会なんかでも確認してきたことじゃありませんか。だから私はそのことも言い、戦後の不法占領だからこれは返すのが、ゴルバチョフさん、あなたの恥でも何でもないし、スターリンの膨張主義をユーラシア大陸の西でも東でも変えたという新思考外交の大きな成果になるはずだから、これだけは認めなければいかぬではないかといろいろ言いました結果、歯舞、色丹、択捉、国後という四つの島のことが解決されなきゃならぬ領土問題だということで共同声明には明記されたわけでありますから、私はしかも、それを解決して平和条約を結ぶための努力が双方にとって一義的に大切だということまできちっと確認をしたわけでありますから、このことについては、両国の関係は共同声明の精神によって原則を守りながら前進していくべきだ、こう判断しておりますし、この認識においてはゴルバチョフ大統領とも一致しておるわけです。  ですから、今度の場合も、サミットに参加することを反対だと言ったとおっしゃいますが、そうではなくて、初めいろいろな国のいろいろな意見の中で、サミットにそのままメンバーとして会議に呼んだらどうかというそういった接触に対しては、私は、きょう現在まだ自由と民主主義と市場経済に完全に政治的にもコミットしていないし、自助努力のプランもできておらぬし、目標も掲げておらないんだから、それはサミットと切り離してやるべきである、そのことを言いました。だから、正式メンバーとして今回のサミットに呼ぼうということには反対だと私は言ったわけです。同時にそのとき、文書や電話でもって、議長国たるメージャー首相には、切り離してやるべきである、そしてサミット諸国でどのような対応をするかということをきちっと決めるべきであるということを相談したわけです。そして、ソ連世界の平和と秩序のためにお互いに話し合うことができるような国になるために、自由と民主主義と市場経済の普遍的な価値というものに完全にコミットする国になるべきであると。ですから、七プラスワンの形で話し合うことには私は決して反対していませんし、終わったら呼んだらどうかということをメージャー首相に積極的に提案したのも、率直に申し上げて私の方であります。
  25. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これは参議院と違って、衆議院は総理発言の部分も私の質問時間の中に入っておりますので、ひとつ。  私が伺いたいのは一億ドルの援助が行われたかどうかということだけなんですよ、ポイントは。総理は一億ドルの食糧援助とか技術移転とか言っているけれども、いっ実行されましたですか。ですから、今は五分もいろいろ御説明いただいたけれども、じゃ、ポイントの一億ドルが、何も私は日本政府の事情でこれが行われてないということじゃないんですよ、受け入れ側のソ連国内事情でこの一億ドルの提案もまだ実行されてないということなんですよ。それは別に日本政府の責任じゃない。しかし総理が今、得々と、一億ドルの食糧援助もやったし技術移転もやっているしと言っているけれども、実態は日ソ関係は何ら具体的な行動がとられていない。  安倍晋太郎さんが政府・自民党を代表して訪ソしたときに、政経不可分という、領土問題の解決なくして日ソの本格的な経済協力というものは行わない、行えない、行うべきでない、これはみんな共通しているわけですよ、そんなことは。しかし、ペレストロイカ支援というもの、ソ連民主化、あるいは東欧におけるあの鉄のカーテンの、収容所列島のソ連をいかに西側にあるいは世界の平和の中に組み込むかということの上において、お互い政治的な努力走しておるわけですから。一億ドル、私が言っているのは五億ドルだけれども、その一億ドルもまだ実行されていないのを総理はもう既に実行された問題として御説明いただいてますけれども、ことほどさように、やはり日ソ関係というものについては、非常に大事な二国間関係でもありながら、非常にある意味においては窓際的な関係の中に位置づけられている。こういう点からいたしまして――じゃ、政府として、はいどうぞ。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ関係は窓際的に処理をしているというお話でございますけれども――印象を受けるというお話でございますが、委員はもうせっかくよく御存じだと思います。一九五六年の日ソ共同宣言によって、我々は最恵国待遇をソビエト・ロシアに与えているわけであります。今ごろG7の国の中で、最恵国待遇を与えるかどうかといった論議をしている大国もございますけれども日本は既に一九五六年にソ連には与えております。そして、昨年までは、委員も御指摘のようにもう往復で六十億ドルの貿易量が民間で行われております。そして、これはドイツ、フィンランド、イタリー、日本といったところがトップランクにいるわけであります。  一方、金融の問題でも、昨年度で見ますと公的な金融資金は二十二億ドル出ております、中長期で。民間が六十四億ドル出ているわけであります。アメリカはどれだけ出しているかというと、アメリカは公的な金融は八億ドル、そして民間のものは三億ドル。カナダ……(山口(敏)委員「ドイツは」と呼ぶ)ドイツは七十五億ドルを公的金融機関から出しておりまして、民間は七十八億ドル、こういったことで、今日ドイツ・マルクが物すごい下げを食らっているといったようなことでございまして、日本は平和条約は結ばれておりませんけれども、そこそこの仕事をしているというふうにこの実態的な数字からは御理解いただけるものと考えております。
  27. 山口敏夫

    山口(敏)委員 その問題についてもいろいろ見解の相違ありますけれども、これは政府与党立場でございますからまたいろいろ議論する場所もございますので、そういう問題点だけ指摘をさせていただいて、特に党の立場でもいろいろな角度から論議はしておりますが、政府の中におきましても大きな政治的なイニシアチブの上に立って、こういう大事な、まさに日本の歴史にとっても民族の命運、国益にとっても大事な問題については、十分めり張りのポイントは、ひとつ首相の御判断で実効、実を上げていただきたいということを御要望しておきたいと思います。  日ソ関係も、さらにいろいろ問題もございますので続けたいと思いますが、時間もございますので、経済問題をひとつ何点か御質問させていただきたいと思います。  日銀総裁にも大変お待ちいただいて恐縮でございますが、証券・金融問題の特別委員会も今臨時国会で設置をされたわけでございますが、本来は証券問題と金融不祥事の問題は、これは別問題で、一片方は違法行為といいますか刑事問題ということでございますから、証券・金融、証券・金融ということもいかがかと思いますが。  しかし、私、政治家の事務所に勤めておるころでございましたけれども、山一証券が経営危機になりまして、日銀から特別の融資をした。当時としては極めて異例中の異例であったと思うのですが、たしか田中角栄さんが大蔵大臣だったと思いますけれども、あのときの規模が二百八十二億円ですよね。昭和五十二年に中堅商社の安宅産業が経営危機になりまして、これが伊藤忠と合併したわけですが、住友銀行が一部償却をした。この金額が千百三十二億円。ですから、これは戦後の経済史にも残る、我々の記憶の中にも常に残っている大きな経済問題だったと思うのですが、大変大きなお金だと当時は思いました。しかし、今から見ると、経済状況とか、日本が金融大国になった今日とは全然力量も違いますけれども、二百八十億とか千百億とか、こんなお金をよく償却できるなと思っていたものが、もう今日においては一人のおばさんが四千億も右から左に動かしている。それも日本を代表するような金融機関がこれを支接しているということを考えますと、本当に、無責任時代を演出する植木等さんのリバイバルがまさに時代を風靡しているような状況も何となくうなずけるわけですね。  そういう中で、大蔵大臣が、再発防止に蔵相としての生命をかけて取り組むんだ、そういう決意。一部にはこういう責任をとる覚悟で、とにかくこれは針のむしろであってもこれだけはやり遂げるんだ、こういう御決意も漏れ承っているわけでありますが、私はこれはやはり広い行政責任だと思うのですね、一大蔵省の問題だけじゃなくて。大蔵大臣の責任をとるような決意で再発防止に全責任を果たす、こういう決意、これはやはり一――一というか、大蔵大臣だけのものじゃなくて、やはり内閣を構成する首相自身行政責任の問題でもあると思うのですけれども、その点の御認識は総理、いかがでございますか。
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一連の不祥事件が証券業界そして銀行にも波及しておるということに関して、私は行政府の責任は厳しく重く受けとめております。同時に、責任を受けとめ、それを果たしていくためにどうすべきかということについても、いろいろと再発防止のため、そして公正な社会をつくるにはどうしたらいいのかというような点等についても鋭意今取り組んでおるところでございます。(山口(敏)委員「責任を十分自覚しておられるということですか、大蔵大臣と同じように」と呼ぶ)
  29. 渡部恒三

    渡部委員長 不規則発言でなくて、ちゃんと質問しなさい。
  30. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理としても、これは一大蔵省の問題じゃなくて行政全体の責任としてこれを受けとめておられる、こういうことでございますので、その決意の上に立って再発防止を期待する国民の皆さんの御要望にこたえていただきたいというふうに思います。  そこで、補てんの問題は、一部の投資家や個人に対して財産上の特別な利益を供与した、これは一般投資家の証券市場等に対する信頼を損なった、こういうことでもございますし、証券会社が千七百二十九億円の補てんをした、日本証券業協会を通じて公表したということは大変私はよかったと思うのですね。これはやはりこういう問題を変にこれを隠ぺいするということになりますと、また疑惑が疑惑を呼び、誤解が不信を招いて、これはやはり事は日本経済全体にわたる問題でございますから、適切にそういう措置をとっていただきたいと思うわけでありますし、またいま一つは、暴力団との関係で野村証券や日興証券が、東急電鉄の株の買い付けが行われた。そしてまた関連会社からファイナンスが、融資が行われた。これは幹事社ですよね、この証券会社は東急電鉄の。この幹事社というのは、こういう問題のとき、特別な、例えばMアンドAみたいな、あるいは特別な意味を持つ買い占め等のときに対しては道義的な責任だけしか問題ないのですか。それとも商法的な何か問題というのはないわけですか。
  31. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 法的な側面については事務方から正確なお答えをさせたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、証券会社が暴力団との不明朗な取引を云々されること自体は決して好ましいことではございません。  法的側面につきましては、事務方から答弁することをお許しをいただきます。
  32. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 いわゆる幹事証券会社と申しますのは、主としてその企業が資金調達をする場合に主たるアンダーライターになるというのを称して幹事証券というふうにいっているわけでございます。しかし、それ以外に、法人が資金運用する場合にもいろいろなアドバイスをするというような機能も営んでいるわけでございます。  しかし、幹事証券という言葉は、今申し上げましたように必ずしも法律的な概念ではございません。これはそういうふうないろいろなファイナンスの場合あるいは資金運用の場合に一定の機能を営むという関係がある証券会社というような言葉で使われておりまして、法律的な位置づけというわけではございません。
  33. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、法律的な問題というものがないとしても、幹事会社というものが扱っている企業の株式というものが不当な、不当なというよりも不明朗な買い付け等が行われているということに対して直接関与しているということは、やはり一つの商法的な、道義的な問題としてはいかがなものか。こういう問題もいろいろまた証券局等においては御研究、御検討いただく問題の一つではないかということを指摘しておきたいと思います。  そこで、私は、また証券・金融特別委員会がございますから、詳しい問題につきましてはそこでもまた論議されると思いますが、この補てんにかかわる経済的な問題について一、二申し上げておきたいと思いますのは、今回千七百億近くの補てんが行われたのは、いわゆるブラックマンデーに対する損益の補てん、こういうことですね。これを調べてみますと、ブラックマンデーその時期の株価というものは、ピークのときが二万六千六百四十六円であった。これは昭和六十二年十月十四日でございますが、ところがこれがブラックマンデーによって二万一千円になった。要するに五千円ダウが下がったということでございます。これに伴って千七百二十九億円の補てんが大手・中堅からなされた、こういうことでございますけれども、現在の株式市況を見ておりますと、これは平成元年の十二月の末でございますけれども、これはバブルの最盛期ということにもなるのでしょうけれども三万八千九百円。ですから、約三万九千円近い株価をつけた。そして、これが一番下がったときは平成二年十月で、一瞬でありますけれども二万円を割った。その差額を見ますと、一万九千円ダウが下がっているわけですよ。ブラックマンデーのときは五千円下がって千七百億円の補てんが行われた。今度は、この時期は一万九千円、この期間ダウが下がっている。その補てんが行われたかどうかということは、ことしの三月の決算の中でこれが行われたかどうかということがまだ報告がなされておらない、今検査中ということですけれども、なされておらないということでございますが、その辺の状況は大蔵大臣としてはどういうふうにお受けとめになっておるかということをちょっと伺いたいと思います。
  34. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今平成三年三月期における決算ということについてのお尋ねでありますけれども、こうした一連の問題を受けまして、七月十八日以降、野村証券、大和証券、日興証券、山一証券の大手四社に対しまして一斉に今特別検査に着手をいたしております。これは現在全力を挙げてその検査を進めている状況の中でありまして、法令とかあるいは通達違反の事実を確認しているかどうかについては、どうぞこの時期留保をさせていただきたいと存じます。  しかし、検査の結果としてそうした問題が判明いたしましたなら、その内容に応じて行政処分等を行うなど、処置を当然のことながらいたすことになると思います。
  35. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これはこの千七百億近い補てんのときは通達と前後しているわけですよね、その通達と。ところが、ことしの三月期の決算で、いわゆるバブルの崩壊の中で二万円近く株価が大きく変動した、その補てんが仮に行われたとするならば、これは大蔵省の通達を全く無視している。これはわからないわけですよね、結果は、調べているわけですから。その仮定の問題で論議することもいかがとは思いますけれども、やはり今日出ている補てんの問題とちょっと性格を異にするということにもなると思う、もしあった場合は。  これは、ですからこの問題と再発防止の問題とは、再発防止というのは法律論も含めた商法の改正という問題どこれは違うという見解もありますけれども、私は新しい再発防止のための諸政策をまとめる段階においてはやはり無視できないと思うのですね。ですから、七月に特別検査に入ったということですけれども、大体いつごろまでにその報告大臣のお手元に届くというふうにお考えになっているか、その点だけ聞かせていただきたいと思うのですよ。
  36. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは全く問題がなければ非常に早く済むでありましょうけれども、それにいたしましてもこの四大証券全部のチェックを終わりますには二、三カ月の単位は事務的にかかるであろうと常識的に承知をいたしております。  同時に今、平成三年三月期に問題があった場合はというお尋ねでありますけれども、それ以前に、損失補てんそのものがなぜ法律に書かれていなかったか、しかも、ほかの国の法律にも書かれていなかったかということを考えてみますと、当然のことながらしてはならない行為という、むしろ倫理面での制約というものをどこの国もが頭に置いておったと思うのです。ですから、自主規制団体の規制の中に損失補てんを位置づけておる国はございますけれども、法律で損失補てんを禁じている国がなかった、少なくとも私が知る限りありませんでした。ところが、それが通達によって禁止され、なおかつその後においても再発したということでありますから、これはその平成三年三月期の決算にそれが存在するしないにかかわらず、我々としては証券取引法改正の中で改めて損失補てんというものを法律上処分の対象になる事項として明定しなければならないと今考えておるわけでありまして、そうした考え方というものは世間にもお認めをいただけるもの、そのように考えております。
  37. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから、大蔵大臣が本会議でも見解を示されましたね。いろいろ証取法の改正などの損失補てんの一任勘定などの禁止とか、法令化の推進とか、証取法の罰則の強化とか、補てんした証券会社に対する刑罰とか、いろいろありますが、やはり基本的な再発防止というのは、今大臣がおっしゃるように二、三カ月仮にかかる、この国会中では報告が間に合わない、こういうことにもなるわけでありますから、私は、これは行革審を中心として十分審議を、時間をかけて審議をして、基本的な抜本的な改革というのは拙速を避けて、そういう行革審等の審議を十分踏まえた上で、やはりきちっとした取りまとめをするということが基本的には必要になってくるんじゃないかというふうにも思うわけでありますが、大臣としてはいかがでございますか。
  38. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、既に委員にもお聞き及びいただきましたように、衆議院の本会議におきまして、この問題というものを分析して五つの問題点に集約をいたしました。そして、その中にはさまざまな課題がございます。その中には、例えば、今申し上げましたようなルールの明確化、そしてペナルティーの明確化、こうした問題は、既に、行革審の御審議をお煩わせする以前に、例えば取引一任勘定取引等につきましても、法によって禁じなければならないものは禁じなければならないと私は思っております。  それに続きまして、今、通達という形で行われております行政全部を見直していきます中で、あるいは業界の自主規制団体がしっかり機能するのであればそちらにお願いをすべき事項もありましょう。逆に、法令化をすべき事項もありましょう。こうした問題を新たに法律に取り入れる作業というのは第二段階にあろうと思います。  また、今、罰則にお触れになりましたが、罰則は、恐らく今法制審が御審議をされておるさなかでありますので、その法制審の結論を受けた段階で、改めて御審議をいただく場面があろうかと私は思います。  同時に、例えば検査の手法でありますとか技術的な問題は、これは大蔵省自身が今までを反省しながら全面的に見直さなければならないものと思います。同時に、行政のあり方も、これは大蔵省自身考え、反省し、その結論の上に立って行動すべきことでありましょう。  ただ、総理から行革審に検査のあり方というものについて意見を求められております。当初、実はそういう動きがなかった時期には、私は、大蔵省自身に、証券のみならず金融検査等も含めまして、検査体制の全面的な見直しをすべくプロジェクトチームをもって作業に着手をさせました。その作業は今日も続けております。  しかし、同時に、その内容は、去る十九日の行革審に、今日までの検討結果につきましては全部御報告をいたしました。そして、その出てきた問題点、そしてそれに対してどういう対応考えられるかということにつきましても全部御報告をいたしました。そして、行革審は、来年度の予算編成あるいは機構の査定に間に合うようにこの問題についての見解をまとめてくださるということでありますので、むしろその御検討を待って我々は結論を出すべきである、今日そのように考えております。  無論、我々自身の作業はいたしますが、その内容はきち人と行革審に御報告もいたしますし、逆に行革審側から、こういう問題はどうかという、あるいはこの問題についての資料はあるかというお問い合わせがある限り、我々はそれに全力を挙げておこたえをしていくつもりであります。
  39. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理総理が御相談をした行革審、行革審の鈴木会長が、昨日、証券、金融を合わせた監視・検査機関をつくるについて、大蔵省の息が直接かかるものでは国民の納得は得られないと述べて、独立的な機関を設置する必要があるということの考え方を強調したわけですけれども、これは今大蔵大臣もおっしゃったように、これからまだいろいろ相談があるし、大蔵省の中でも行革審の審議にゆだねるという方針、と同時に省内にもいろんな意見がある、こういうことですけれども、行革審が独立した機関をつくるということになると、総理としてはそれを政府として認知する、国会に語る、こういうことで理解してよろしいわけですお。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この一連の問題が起きましたときに、私は直ちに大蔵大臣に、これは厳正に対処しなければならない、同時に大蔵省も、きょうまでいろいろ努力をしてきたことは、それは認めますけれども、にもかかわらずという頭文字がつくようなことが現に起こったわけでありますから、再発防止という件についてはあらゆる角度から大蔵省自身も、検査体制の再点検とか、行き届かない点がもしあったとすればそれはどうなんだろうかとか、通達だけでいけないときには、そのいけない面は法律の規制にしてでも証取法の中へ盛り込んで抑えていくとか、いろいろな方法があろう、それには直ちに着手するように、これは話してあります。  けれども、それだけで事足りるというわけにもいきませんでしたので、行革審の会長に対しては、どのようなあり方で検査機能というものはしていったらいいのかということについて率直に検討をしていただきたいと要請はしてあります。  その結論がまだ私のところへは届いておりませんけれども、来ればそれを十分拝聴し、尊重してやっていくわけであります。
  41. 山口敏夫

    山口(敏)委員 十分その結論を尊重して国会と相談する、こういうことですね。わかりました。  そこで、補てんを受けたいろいろな関係企業があるわけですが、年金福祉事業団なども自主運用、自主運用ということでやっていたところが、株をやって損して補てんを受けたと思っておりましたが、これは国債、普通の民間の一般企業の株じゃなくて、国債を運用して、一番トップに名前が連ねられているわけでありますけれども、これは私は、今の財投の金利など、六・七%から見ますと、自主運用、自主運用ということで八十兆円のうちの三分の一も自主運用にする必要があるのかどうかというふうにも疑問を持ちますが、しかしいずれにしましても、年金事業団としても国民の福祉のためにいろいろ御苦労いただいていると思うのです。しかし、こういう一つの教訓の中で、私はもう短期の――年金福祉事業団などのような資金的な余裕のある機関は中長期の国債にこれを、運用をゆだねるということが一番安心、安全なんじゃないか、また自主運用を提案している立場からして妥当な選択なんじゃないかというふうに思うのですが、厚生大臣、その点だけ一つ、時間がないものですから、お答えしていただければと思います。
  42. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答えいたします。  年金福祉事業団は、年金の大事な資金をお預かりしてこれを運用しているわけでございます。その運用の仕方といたしましては、誤解のないようにお願いしたいのですけれども、損失補てんを要請したことは一回もございません。結果的に、税務の当局の調査の結果、損が出た部分が更正決定を受けて、それが損失補てんを受けた、このようにみなされているわけでございます。我が方としては、そういう懸念を受けたことは非常に遺憾だと思う次第でございます。  運用につきましては、御承知のように、株を運用しているわけではございませんで、国債、公社債、それからまた預貯金、こういうことになっておりまして、大体それを三分の一ずつに十二兆円を分けて運用しておりまして、そのねらいは、要するに安定的な運用として、長期の国債、公社債それから金融債、こういうこと、ぞれがそれぞれ分かれまして、合計いたしまして約七割、残りが預貯金、こういうことで運用いたしまして、長期的な資金でございますから、長期・安定的な運用をやるという観点で慎重にやっておりますし、それからまた御承知のように、証券局の指導がございますものですから、その利益、価額の、相場の上下の幅の中の運用につきましては、これは二%の上下の幅の中で運用するようにということでございますが、この事件がありまして、我が方で調べましたところ、これはすべて〇・五%範囲の中の幅で運用いたしておるということでございますので、そういう意味では疑惑を受けるような運用はいたしておりません。常に長期・安定、そして年金資金のための堅実なる資金運用にということを心がけておる次第でございます。
  43. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そこで、厚生年金事業団のような機関もありますが、私は、損失補てんを受けて、これからこういうことはやめよう、やはり一般投資家の信頼という、不信を買ったという点からしますと、これはあくまで企業の問題だと思いますが、例えば環境庁長官と通産大臣にちょっと私は伺いたいと思うのですけれども、リクルート事件のときに献金問題とかいろいろありまして、証券の損失補てんに比べれば何十分の一、何百分の一で比較になりませんけれども、やはり姿勢を正すという意味で、批判に対して姿勢を正すという意味で社会的事業にこれを還元したわけですよね、竹下首相を初めそれぞれの方が。  私は今、ことしから来年にかけては環境問題というのは一日本の問題だけじゃなくて国際的な問題、特に南北問題の中において先進国が積極的なイニシアチブをとってこの問題に取り組まなければならない。ところが財源が非常に不足して、活動がなかなか進まない、こういう意味で私は、自発的な問題ですけれども、そういう損失補てんを受けた企業が何も全部という必要はないけれども、たとえ一割であっても一部であっても、世界も注目しているわけですから、そういういわば何といいますか、自発的にそういった一つのファンドに協力して、補てんを受けたという自覚がないまま受けている企業もあって、何でおれの会社の名前が出ているんだ、こういう一方的な意見も、私は国民から見れば何だと思うけれども、その企業からすれば当然だという面もあると思うのですね。これは環境庁長官に聞く話ではないけれども、個人的な見解としてどうですか、そういう協力があった場合は、申し出があった場合はいかがですか。
  44. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 地球環境問題の解決につきましては、特に来年の六月に、御承知のとおりUNCEDと申しております、ブラジルで大きな会議がございますが、これをめぐってこの環境問題の財源をどうするかというのが国際的に大きな課題になっております。さまざまな提案などがなされているわけでございますが、まだ具体的にどういう方法が一番いいのかということは結論が出ておりませんけれども、それはそれといたしまして、財源問題が大変大きな課題でもございますので、今委員からお話しのこと、よく私どもも真剣に受けとめて、ぜひそういうことも考えていきたい、このように考えます。
  45. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これはあくまで企業の問題であって、何も正しい一つの選択ということでもないと思いますが、私は、幾ら機関投資家が市場の七割、八割だとしても、個人投資家というものに市場が支えられている、企業もまた社会の市民権の中で存在しているということからしますと、やはりこれだけ皆さんが世界的にも注目されて、国内的にもみんなが注目してその審議の行方を見守っているわけですから、企業を、いろいろな包括的に政策を取りまとめておられる中尾大臣としても、私のこれは個人的なそういう気持ちですけれども大臣として、その企業の政策をまとめる立場においての大臣として、個人的な御所見でいいですから、ちょっと御発言いただければと思います。
  46. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 山口委員にお答えさせていただきます。  確かに御指摘のとおり、企業が社会的存在としての自覚に基づいて社会貢献活動を行うということは望ましいことであろうと思いますし、今おっしゃったように、一般の各位の方々が大変に苦汁をなめておるときに企業だけが補てんしてもらう、これは私は道義にかなう問題ではないと思います。  そういう意味においては、それをどういう形において還元していくべきかということも、これも大きな問題でありましょう。例えば昨日来言われておりますような雲仙の問題等でも、一刻も早くやれというこの声も大変に大きな声であろうと思いますし、それに補てんすることも大変なことでしょう。CO2のような環境問題に補てんすることもこれまた大事だと思います。その方途は種々あろうと思いますけれども、これは今、目下検討中というよりも、今進行中のことでございますから、私どもで断定的なことは申し上げられませんが、委員の趣旨はよく十分に体して考えていきたいと思います。
  47. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そこで、私はまさにこの国会が大きく言えば日本経済、世界経済の動向に極めて重要な影響を与える国会だというふうに思うのですよ。やはりここで国内外日本経済に対する信頼が回復できるか、あるいは国会としての務めが結果として果たせずに余計経済市況の混乱に拍車をかけるか、こういう点においては我々も国民の代表として、また世界の中の日本政治家として、それぞれが、一人一人が真剣に取り組まなければならないと思うのです。  今私が申し上げたように、これは今株式市況のピークから、バブルが崩壊して、三万八千九百円から二万一千円になったということは、これは二百四十兆円という、これ全部損益がそこで突然あらわれたという問題ではありませんが、数字で計算すれば二百四十兆円という膨大な資産がバブルで泡と消えてしまったわけですよね。これは先月の「月例経済報告」では、経済企画庁は、「国内需要が堅調に推移し、企業収益は高い水準にあり、雇用者数が堅調に増加するなどこ経済は「拡大局面にある。」と、「拡大局面にある。」という認識を持っておられるわけですよ。これは経済企画庁長官は、同じように今でも思っていますか。ソ連の問題もありますけれどもね。まあどうぞ、経済に与える影響。
  48. 越智通雄

    越智国務大臣 月例報告のとおりに考えております。
  49. 山口敏夫

    山口(敏)委員 あなたはそれで経済政策のまとめ役として、あなた、経済報告のとおりに考えていますと、あなたも選挙区が東京で、やはり中小企業その他いろいろな関係者の方々の支援者も多いと思うのですけれども、この今私が経済企画庁長官に質問したとおりに後援会でお答えして、そのとおり思いますというふうに断言できますか。もっと政治家としての、あなた、いろいろな総合的分析も言ってくださいよ、それは。
  50. 越智通雄

    越智国務大臣 「月例経済報告」は経済企画庁が責任を持って報告していることでございますので、責任者といたしましてはそのとおりに考えております。
  51. 山口敏夫

    山口(敏)委員 経済は、釈迦に説法ですけれども、これはやはり子供の体と同じで、山の天気と同じで、常に変化というものは伴うわけですよ。そうでしょう。なぜソ連に政変が起こったといって大蔵省にプロジェクトチームができるのですか。外務省にできていないプロジェクトチームがどうして大蔵省にできているんですか。これは皮肉で言うわけじゃありませんが、そのくらい世界政治動向も、日本経済、金融問題、証券市場、いろいろな意味において大きな、どんな小さい情報でも看過できないという決意で大臣がつくられたわけでしょう。そういうふうに、今、先月の月例報告は私は間違っていると言っているわけじゃないのですよ。先月の月例報告はそういうことであったけれども、景気には陰りが出てきているんじゃないですかと。  例えば、自動車などにおきましても六%近くで五カ月連続のマイナスを記録している。住宅なども二一%減で、五分の一ですよ、八カ月連続のマイナスをしている。これは六十二年の内需拡大政策で、三重野さんなんかも当時は副総裁だったと思いますが、やはり目玉は何かといったら住宅政策でしょう。今まで歴代自民党内閣が景気対策というと必ず取り上げた住宅政策が、その住宅が二〇%も、五分の一も減っているということだって、これはやはり景気に対しては何らかの影響が出るのは当たり前の話ですよね。いかがですか、それは。私は、先月の月例報告じゃなくて、これから、先月の月例報告以降今日までの期間の中において、あなたは経済企画庁長官としてどういう認識を持っているかということを聞きたいのです。
  52. 越智通雄

    越智国務大臣 先生今例に挙げられましたまず自動車でございますが、自動車は昨年一年間に千三百万台ぐらい製造いたしておりますが、大体が七百万台が国内、六百万台は輸出でございます。現状におきまして国内の登録台数は七月が五十七万台でございますので、十二倍するという簡単なものではございませんが、大体七百万台近い国内の登録は出るものと思っておりますし、輸出の方も、現状におきましてはむしろ昨年よりふえる、六百万台超すかなと。ただ、仕向け地が違っておりまして、アメリカの分がどんどん落ちておりますが、ヨーロッパの分がかなり伸びております。ただ、これに対しては、国際情勢によって差が出てきますので十分判断がききませんが。国内の方は多少足が緩んでおりますのは、先生御存じのとおり、来年から税も変わります、この秋の相当大幅なモデルチェンジもございますので一進一退でございますが、そこに車庫法の問題その他がございますので、これで自動車の生産が千三百万台ががくっと落ちるということになりますと景気全体にも影響しますが、この一月から四月までの生産は既に三百万台を超しておりまして、大体千二百万台ぐらいの製造はいくものと私ども考えて、その上での景気判断をしているわけであります。  住宅に関しましては、現在どのくらいの着工になっていますか、百三十万戸から百四十万戸ぐらいになっておりますが、先生おっしゃいました六十二年のころはたしか百二十万戸台でございまして、一時百八十万戸まで上がりまして、労務者の不足その他のオーバーヒートをいたしておりましたが、住宅五カ年計画では百四十六万戸年間というペースで走ることになっておりますので、現状の百四十万戸台で私はむしろある意味では適正の、経済全体としては適正の水準で走っているのじゃないかと。  全体といたしまして景気全体は、設備投資が、きのうも御報告いたしましたが、昨年に比べ六・八%の増と見込んでおりましたところ、現状では七%を超すのではないか。日銀は七・一という報告を出しておりますが、私どもの方も大体七%ぐらいいくんじゃないか、こう思っておりますし、消費の方は一進一退いたしておりまして、七月のデパートの売り上げがやや伸び悩んでおりましたが、六月、その前の消費そのものほかなり堅調でございますので、これは天候その他も影響いたしますが、消費が落ち込むというふうには考えておりませんので、私どもは経済成長三・八%、経済の見通しで書きましたものは実行できる、このように考えております。
  53. 山口敏夫

    山口(敏)委員 本当は建設大臣にもその辺の認識は聞きたいわけですけれども、恐らく経済企画庁長官とは多少ニュアンスが違うと思いますが、ちょっと時間がないので……。  私が申し上げたいのは、例えば、イザナギ景気に追いつくような勢いで来た景気がここへ来て陰りが出てきている。今まで日本経済というものは、安い市場からの資金を調達をして、省力化とか技術革新を絶えず追い求めながら設備投資ができた。そこに国際競争力というものもあったわけですよね。ところが、もう今株式市況がこういう状況でもありますから、資金調達という問題が大きく壁にぶち当たっている。これは認めますわね。  ですからそういうことで、これは日銀総裁に伺いたいんですが、為替は各国為替介入ということのようですけれども、株式市況は介入というわけにはこれは自由市場ですからいかないわけですけれども、それからまた、幾らくらいが適切なダウ平均かという経済の実情を反映しているかということもなかなか大蔵大臣や日銀総裁立場では言えないと思いますが、しかし、昨日予算委員会総裁が最初に答弁されたことが、ソ連のあれで千三百円下がったけれども、きょうは三百円上がっておりますと、質問されてないのに最初にそういうお答えをしたのを私テレビで拝見していまして、日銀総裁もダウ株価についてはいろいろ心配されておるなというふうに承っておったわけでありますが、今私が経済企画庁長官とやりとりした見解について日銀総裁としてはどういうお考えに立っておられますか。
  54. 三重野康

    三重野参考人 お答えいたします。  先生御高承のとおり七月一日に私ども公定歩合を下げまして、それから約二カ月弱でございますが、まずその間の情勢の推移をごく簡略に申し上げてから御質問にお答えしたいと思います。  この間引き続き日本の経済というのは、非常に緩やかでありますけれども減速過程を続けていると思います。ただ、減速しているとはいいながら、まだレベルはかなり高いところにありますし、設備投資、個人消費は、今企画庁長官からもお話がありましたけれども、ひところに比べると勢いが弱ってまいりますけれども、まだここで急に失速するというような状況にはないというふうに判断しております。  物価でございますが、国内の卸売物価は、石油の価格の低落等もありまして落ちついた動きで、先月は十カ月ぶりに前年比二%を割りました。消費者物価はまだちょっと三%台前半の高いところを推移しておりますが、そういう状況でございまして、そこにゴルバチョフのショックが――これは、ソ連の経済力あるいはソ連経済と世界経済との関連を見ますと、今度の政変が直ちに我が国を含めまして世界経済に大きなインパクトを与えるというふうには考えておりませんが、外為市場あるいは株式市場にはかなりのショックを与えておりまして、先生も今御指摘のとおり、第一日の月曜日は千三百五十円ダウは下がりました。さすがに昨日は若干冷静さを取り戻して二百三十円上がりまして、きょうは、十時半現在でございますけれどもさらに三百九十円ほど上がっておりまして、この二日で初日に下げた大体半分は取り戻して、ダウも二万二千円台を回復いたしております。  しかし、これからソ連がどういうふうになるのかわかりませんし、株価がどう動くかもちょっとなかなか予想はっきませんけれども、市場関係者が現在の事態に冷静に対応することを期待しながら注意して見守っていきたいというふうに思っております。やはりこの株式市場のこういうインパクトというのは、企業、その他個人の未来に対するコンフィデンスに影響がありますので、十分注意して政策の誤りなきを期したい、かように考えております。
  55. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから私は、来年は、各企業が、市場から資金を調達してそれぞれ設備投資に供した、そういうワラントなどがことしの秋から来年にかけていろいろ処置しなきゃならない。それは一面では十六兆とも十二兆とも言われているわけですが、しかし、それだけの膨大な資金を、これだけ株が低迷して金融が総量規制といいますか金利が高いと、だれがどういうふうに調達するのか、こういう問題があるわけですね。ですから日銀総裁や大蔵大臣はバブルは国民の敵だと、これはもうだれもが認めているわけですよ。今の政策もやむを得ざる一つの国の金融政策だというふうに私も評価いたします。しかし、例えば一番端的な例は、国土庁のところの、例えば地価の抑制のために、不動産業界に行儀の悪い人もいて、地価の高騰、金融緩和がバブルを生んだ、地上げ屋。だけがもうかったみたいな批判がありますけれども、今地価が下がっているにもかかわらず、実態は下がっているにもかかわらず、高値で横ばいになっているわけですね、横ばい。なぜ横ばいかというと、金融機関が実質的な経済に対しても融資しない。だから、売り買いが起これはそこに地価が一割下がった、二割下がったという実態が出てくるわけですけれども、その取引が行われないからそのまま高値で横ばいになっているという奇妙な現象もあるわけですね。  それから、我々は埼玉なのですけれども、これ以上人がふえてもらいたくないと思っていますけれども、しかしサラリーマンの人が住宅を持つということになると、埼玉とか千葉とか神奈川とか、東京都内よりもやはり我々の郷土に新しい土地を求めて来るわけですね。ところが、ほとんど宅地造成は行われていない。これは金融引き締め、総量規制、窓口規制。今の分譲地が売り切れますと、そういう宅地造成にしたって、商品になるためにはあれはやはり五年、十年かかるわけですよ。だから、ある程度私はきちっとした事業計画、バブルでない、正業な一つの商行為であれば、不動産といえどもこれはやはり少し金融政策の面というものについてはきめ細かい配慮というものが、手当てというものが必要なのじゃないかというふうに思うのですけれども総裁、ひとつもう一回御答弁いただきたいと思います。
  56. 三重野康

    三重野参考人 先ほども申し上げましたとおり、景気が緩やかに減速過程にあり、しかもこういうふうなゴルバチョフ・ショックのようなものがあるわけでございますから、いろいろの事象に非常に目配りをしなければならないことはそのとおりだと思いまして、私どもとしましては、物価安定ということはあくまで基軸にいたしますけれども、そういう点目配りをいたして、政策に誤りなきを期したい、かように考えております。
  57. 山口敏夫

    山口(敏)委員 それから私は、この間〇・五%七月に下げた金利は、株式初めいろいろな実体経済、すべての経済行為の中にまさにバブルのごとく何の成果も上げずにそのまま鎮静化してしまったという点からすると、ことしの秋にはもう〇・五%あるいは年内までに〇・五%というくらいの金融緩和策というものがとられないと、実態的には経済企画庁長官が言っているような景気の動向にはないというふうに見ておりますし、経済調整の立場で言うと、対米輸出がまた少し増加をして、それとアメリカの対日貿易赤字というものがまたふえて、先週の世論調査などでは、ソ連がこういう状況ですけれどもソ連の脅威よりは日本の経済的脅威の方がもっと恐ろしいというのが、また世論が一五%上がって七〇%にもなっている。まさに内需拡大の、六十二年の緊急対策をやったのと同じような状況もまた考えなければならない。ところが、一方では四千億も一人で借りてしまった人がいる。これは日本経済全体、世界経済にかかわる日本経済ということからすると、公定歩合の問題もやはりいじくるべきじゃないかということを大蔵大臣や日銀総裁にも、これは答弁はできないでしょうけれども、提言しておきたいと思うのです。一方においてああいう金融不祥事とか何か起こりますと、なかなかちょっと言いにくい環境でもあるわけですね。その点はひとつ大蔵大臣、どうですか。そういう不祥事は不祥事、やはり経済は経済ということで、大臣として、海部内閣の副総理格でいろいろ取り組んでこられたわけですから、ひとつ御見解を承っておきたいと思うのです。
  58. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 公定歩合の変更は、これは日銀の専善事項でありまして、日銀総裁がそのお考えは述べられると思います。しかし同時に、私が一つここで申し上げたいことは、今日、今私は種々の立場からおしかりを受けておる立場でありますし、その監督責任者でありますが、その一連の問題が発生した一つの大きな問題の根っこに金利の安さというものがあった、超金融緩和という状態があったということは、どうぞ御想起をいただきたいと思います。  そして今、委員はさまざまな角度から問題を提起されました。その中には、宅地開発等を例示に挙げられた部分がございます。これは、今私どもは総量規制という考え方を持って土地関連融資に対して対応いたしておりますけれども、本来なら、土地政策というものの根本は都市計画というものであるべきでありますし、国土計画というものがそのもとにあるべきでありましょう。しかし、土地基本法が生まれてからまだ間もない今日におきまして、その中で税制あるいは金融が土地政策に果たす役割が大きいということを私どもは自覚をいたしております。そして、この点についても本院においてもおしかりをしばしば私どもは受けてまいりました。  そして、総量規制というものの基本的な考え方は、内需拡大に必要な資金の円滑な供給というものには引き続き配慮をするけれども、金融機関の融資全体に対しては、土地関連融資がそれと均衡のとれた水準になるようにすることが望ましいということでありまして、それは、必要な開発に資金を供給しないということでないことは当然のことであります。持続的な経済成長というものを達成してまいりますためには、地域企業への密着あるいは地域経済の振興などという基本的な観点から行き届いた配慮を金融機関としてもされることは当然のことであると思います。  同時に、総量規制というもの自身がもとよりこれ非常措置でありますから、永遠にこうした考え方を継続すべき性格のものでないことは、私もそれを否定するつもりはありません。しかし、現在のところようやく地価が下がり出した、しかもそれは、今委員はしなくも御指摘になりましたように、しかし売りたいという価格はまだ高値にとどまっているという状況が残っておるといたしますなら、私どもがやはり政策全般の中で土地政策の中における金融の役割という視点から考えてまいりたい、そのように思います。
  59. 三重野康

    三重野参考人 たびたび同じことを繰り返して恐縮でございますが、委員の御指摘のありましたようなことは視野に入れておりますが、現在はやはり七月一日に下げました公定歩合引き下げの効果がどういうふうになるのかということを注意深く見守る段階だというふうに考えております。
  60. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから私は、大蔵省や日銀を中心として常に経済の緊急事態という問題については十分な目配り、気配りをしていただいて、やはり経済対策というものが国民の福祉、また国際的貢献への一つの大事な基盤を形成しているわけでありますから、特に経済企画庁長官も、ひとつ経済分析に対しては十分シビアに見ていただいて、ひとつ政治的な、選挙運動を通じた実体経済も十分官僚の政策の中に取り込んでいただきませんと議院内閣制の意味がありませんので、ひとつ御注文をしておきたいと思います。そこで、通産大臣や皆さんにも、そういう意味においては経済対策についてはひとつ引き続き御協力をお願いをしておきたいというふうに思います。  そこで、政治改革を取り上げさせていただこうと思ったのですが、時間がもうなくなってしまいましたので、政治改革を提案をした総理自身総裁任期もこの十月に来られるわけでありますけれども、二年間を、海部内閣を総括して、いろいろ御苦労もあったし感激もあったと思うんでありますが、そういう一つ総理としての総括的な御所党もひとつぜひ伺っておきたいと思います。
  61. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ党内外の皆さんの御協力や御理解を得ながら、またこの二年間の間に、私のスタートするときから政治改革をしなければならぬということは、我々の前任者の皆さん方が党議で決められた問題もありました、それを果たさなきゃならぬということ。その間に衆議院の選挙もございました。これはどんなことがあっても前回の参議院選挙のような二の舞になってはいけないということ、これも皆が力を合わせて頑張り抜いて、衆議院選挙は勝たせていただきました。その後いろいろなことがございました。微力でありますが、精いっぱい、力いっぱい取り組んで頑張ってまいったつもりでございます。
  62. 山口敏夫

    山口(敏)委員 リクルート事件に端を発して与党が大きな国民政治的な不信を買った。やはり自民党として、与党として、国民との和解のその使者として海部さんが総裁として総理として選ばれて、衆議院選挙また地方選挙、大きな勝利を党にもたらして政局の安定に寄与した。これは、私も率直に評価をするわけでございます。  しかし同時に、あえて私の立場から申し上げさせていただくならば、湾岸戦争の問題でありますとか、特にこういうソ連等の激変等の問題の中におきまして、私は、海部首相自身のお考え海部首相自身のお気持ちというものが、イデオロギーというものが、総理自身の言葉として国内はもちろんのこと世界にも広く発表されるということでございませんと、やはり昔の日本と違って、アジアを代表して、総理がおっしゃられるように、サミットにも参加しておる、こういう責任のある指導的立場におられるわけでございます。私は、こういう時代の指導者の条件、総理のあるべき姿、こういうことを、あなたは昭和生まれの初めての首相でございますから、我々若い政治家にもひとつ後学のためにいろいろ御指導をいただきたい、こういう意味でそのお考えを承りたいと思います。
  63. 渡部恒三

    渡部委員長 じゃ、御指導ください。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も答弁いたしましたように、民主主義の世の中で、私は独裁者じゃありませんので、党の皆さんともその節目節目には御相談をしながらいろいろやってまいりましたが、ここでしゃべっておるのは私の声であります、私の言葉であります。ですから、今後ともこの国の将来のために、いいことはいい、改めるべきは改めるで前進を続けていきたい、こう思っております。
  65. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういうことで、私は最初に冒頭ソ連の問題についてもいろいろ総理見解を伺いましたけれども、やはり国会とも十分相談をしていただいて、中国、韓国初めアジア諸国とも緊密な情報をとり合うとか、あるいはヨーロッパ諸国ともサミットの人間関係を通じて積極的な連絡をとり合って、ソ連の暴発がこれ以上拡大をしないようにというための外交的な努力、国際的な貢献というものをもっともっと積極的にひとつ活動をしていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  最後に、中山外務大臣、ひとつその後のソ連状況につきまして外務省の方に入った報告がいただければ、それを最後に承っておきたいと思います。
  66. 中山太郎

    中山国務大臣 モスクワ時間で午前三時四分、在ソ大使館よりロシア共和国政府幹部に現状を電話にて照会をいたしましたところ、現在ロシア共和国政府建物周辺は小康状態が続いております。現時点で襲撃が発生する状況ではないという見通しが伝えられております。  なお、午前三時七分、大使館員がロシア共和国政府建物の近くから状況を目で確認をいたしましたところ、特に衝突等の異常は見られない、このような状況でございます。  以上、御報告を申し上げます。
  67. 山口敏夫

    山口(敏)委員 終わります。ありがとうございました。
  68. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  69. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、お諮りいたします。  松浦利尚君の質疑に関し、参考人として株式評論家浦安君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  71. 渡部恒三

    渡部委員長 次に、松浦利尚君。
  72. 松浦利尚

    松浦(利)委員 まず総理に冒頭お尋ねをしておきたいと思うんでありますが、今度の証券・金融不祥事問題について我が国の国民の間には大変な不信感というものが起こっておることは事実であります。我が党の山花書記長の質問あるいは各党代表の質問等について御答弁がございましたけれども、今日の状況について総理国民に対してどのように思っておられるのか。ただこうしたことが起こらなければいいような形で改革をすればいいんだ、これだけを盛んに主張しておられますけれども、現にこういったバブル経済の中で被害を受けた、あるいはこの不祥事に対して置き去りにされておる一般国民に対してどう思っておられるのか、そのことについてまず冒頭総理から見解あるいは御感想を承っておきたいと思うのです。
  73. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 証券業界を中心とする一連の不祥事件が起こったことに対しては、私は、公正な社会の理念という面から考えてこれは極めて遺憾なことである、行政府としてもその責任は威しく受けとめておりますということは、私の第一の受けとめ方であります。  ただ、遺憾なことであった、いけないことであったと言っておるだけでは、受けとめた責任の、どのようにして果たしていくかということにつながらないわけでありますから、どのようなことが行われ、どのようなところでこういうことがなり、それを防ぐためにはどうしたらいいか、今までもいろいろなことが行われてきたけれども、通達で守られない点は何であったか、それを埋めるにはどうしたらいいか、証券取引法はどうするのか、あるいはこういったことが再発されないためにはどうしていくべきかということについて、監視機能を強化するならばその監視機能のあり方はどうかということなどについても、これはきちっとした歯どめ作業を続けていくことがむしろ第一義的な責任の一つのとり方の方法であるということは当然のことだと心得て、その作業をしております。  また、今議員御指摘になった、一般の損をした人のためのことはどうかということでありますが、これは言葉が悪いかもしれませんが、自己責任の原則でやっていただいておるこういうところでは、すべての参加者がすべて必ずプラスするというものでは初めからないわけでありまして、そういった道を選んでくださったときには、自己責任の原則がノーマルな状況の中ではあるんだということでございますから、それは光の面と影の面とがあるわけでございます。そういうときに不公平なことが行われて、おれはまじめにやっておったら損をしたけれども、まじめにやっておったから損をしたのかということになってはこれはいけませんから、そういった不透明な、不公正なことをなくしていくというのが公正な社会の理念に合するわけでありますから、そういった考え方、そういった角度からこの問題には取り組むべきだと私は思います。  損失をこうむられた個人の皆さんにはまことにお気の毒だという点においては御同情もいたしますけれども、自己責任の原則というものはきちっとやっぱり貫いていかないと、公正な社会の基盤のそれも一つの条件ではないかという気が私はいたしますので、率直に申し上げました。
  74. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、株というのは自己責任の問題だと思うのです。にもかかわらず、片一方では損失補てんが行われておるわけですね。しかも、その損失補てんをした証券会社というのは政府行政指導しておるのじゃないですか。指導監督しておるのじゃないですか。しかも、一任勘定の問題についてはいろいろ議論がありましたし、もうここでくどくどとは申しませんけれども、この基本的な問題点である一任勘定というのは、これは大蔵省からいただいた資料ですけれども、昭和三十九年から有価証券の一任勘定取引の自粛についてという通達は出されておるのですよ。三十九年の二月七日に蔵理第九百二十六号で出されておる。にもかかわらず、昭和五十年、六十三年と一部改正を出しまして、そしてまた今度平成三年度に出されておられる。にもかかわらず、片一方では自己責任であるべきものに対して補てんができておる。片一方では一般投資家の方は、それはあなた方仕方がないですわ。これでは、確かに言っておられることは筋が通っていますよ。しかも政府が管理監督をしておるところで行われておるわけですから、じゃ差別じゃないですか。補てんされないあなた方は、これは仕方がありませんよと。そして片一方は損失補てんされておる。これじゃまさに差別の行政が行われていることになりはせぬですか、理論的に。  そこで、私はここに一通の手紙を持ってきておるのです。これは野村証券の社長に対して出された一般投資家の内容です。よく聞いてください。  まず、野村証券の営業マンが、五年間の利率を書いた、毎月毎年の利率が上昇しておるような表を見せて、八%から一〇%と書いてあったというのです。それで、あなたひとつ株を買わぬですか、こう言われて、まあそのときに自分の判断でもうけようと思ってその人は入るのでしょうが、一人で三百万、二人で六百万円のお金を渡した、こう言うのです。ところが、証券預かり証が来たのは七日後だ。現金を払って七日後に証券預かり証が来た。なるほどその預かり証の中には、そういう毎月毎年利率が上昇するようなことは書いてなかったという。しかし、書いてはなかったけれども、勧誘されるときにそういう一覧表を見せられたので私は安心しておったと。それで一年たって今度は国債が満期になったので、また同じようなものを買ったというのです。ところが二年たったら配当があった。元金六百万円に対して二年間分が経費を差し引いてこれだけですと言って約六万円もらったというのです、六万円。しかも、現在の基準価格一万円に対して九百九十三円ですが、買い取り価格は九千九百七円という説明をしてくれた。これは約束と違うじゃないか、あなたが持ってきたこの利率表と違うじゃないか、こう言ったら、あなたが持っておられるその証券預かり証にはそんなことは書いてありませんよ、こう言った。証券預かり証には書いておらぬけれども、あなたが最初に金を取ったときには、一律上げる表を野村証券のあなたは持ってきたじゃないか、確実に上がると約束をしたじゃないか、こう言ったら逃げ回って、課長さんとかなんとかという人が来て、まあ待ってください、もう少しすると上がりますから、上がりますからと言ってらちが明かない。結局大損をさせられた。  今、仕方がないと言われる。仕方がないです、これは。そう言われてみれば。しかし一般の人たちは、こういう営業マン、野村証券の営業活動によって六百万の金を払わされて損をして、片一方の方は損失補てんをしてもらっている。しかもそれは損失保証ではなくて補てんだから、定義がないから、これはそのまま、社会的な非難を受けるだろうが、そのまま生き残る。何をしておったんですか。どういう行政をしておるんですか。どこに管理監督をしておる姿があるのですか。今日のこの証券・金融の不祥事の最大の原因は、政府が管理監督をしておるにかかわらず、なぜこういうことが大っぴらに行われるかというところを解明しなければならぬと思うのです。こういうことが、あってはならないことが政府の管理監督のもとで公然と行われておる。なぜ行われておるのか、このことの解明なくして私は今度の問題の本質的な解決はないと思うのです。ですから、そのことについて今から解明をさせていただきたいと思います。  その一つが稲川会と株価操縦の問題であります。  証券局長お尋ねをいたします。  東急電鉄の主幹事会社は野村証券だと思いますが、間違いありませんね。これが第一点。  それから第二点。東急電鉄の五島昇社長がお亡くなりになったのは平成元年三月二十日だ、その点については知っておられるかどうか、調査をされておるかどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  75. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 東急電鉄の主幹事は野村証券会社でございます。  それから、五島昇氏の亡くなられた年月日については、私ちょっと存じ上げません。
  76. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣、私は決して責めるつもりはありません。少なくとも株価操縦の問題、株価操作の問題、稲川の東急株の買い占め問題、あなたは調査しておると、こう言われたのです。調査をしておるなら、五島昇社長が亡くなった日付を調査しなければ調査をしておるということにならない。  なぜ私がそう言うかというと、平成元年の三月二十日に五島昇社長が亡くなった翌月、平成元年の四月から稲川会が東急電鉄の株の買い占めに入ったんですよ。東急電鉄の社長が三月に亡くなったその翌月、四月から東急電鉄の株の買い占めに稲川会が入ったことはだれでもわかっているんだ。調べればすぐわかることなんだ。週刊誌にも載っておるんだ。どうですか。
  77. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 東急電鉄の株につきましては、確かに御指摘のとおり平成元年四月から暴力団関係者による買い付けが始まっているわけでございまして、私どもはその買い付けの執行状況あるいは内容については調査を進めているわけでございます。  先ほどございました五島昇さんの正確な死亡日付まで私存じ上げてないというふうに申し上げたわけでございまして、私どもの株価操作の調査はもちろんそういう状況を勘案するわけでございますが、やはり市場における執行状況あるいは証券会社の勧誘状況というようなものを中心にして調査を進めておるわけでございまして、それが証取法に触れるかどうかという点について、事実関係に基づいて調査を進めるというふうなことを続けているわけでございます。
  78. 松浦利尚

    松浦(利)委員 なぜ稲川会が東急株に手をつけたかということは、そういうことをぴしっと調べておかなければだめなんですよ、目的があるんだから。そういうものを調査しなければ何を管理監督しているんですか。結果が現実にあらわれてきておっても調査に手抜かりがあるじゃないですか。  さらに、時間がありませんから前に行きます。  稲川会の石井前会長は、四月から九月にかけて二千四百万株、千七百円から千九百円で買い切っているわけですね、四月から九月にかけて。それは調査済みですか。
  79. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもの調べといいますか、証券会社からの報告などで私どもが現在確定しているところでは、平成元年の四月から野村証券と日興証券両社を使いまして石井さんが買っているわけでございますが、野村証券で約一千百万株、日興証券で約一千五百万株、合わせて二千六百万株の東急電鉄株の買い付けが行われております。
  80. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それから、その後十月から野村と日興が東急電鉄株を急速に買いあさっていますね。買いあさっている。買い入れていますね。売買していますね。一週間で六千五百万株を売買していますね。そういう事実は確認していますか。
  81. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、平成元年十月から十一月にかけまして野村証券を通じて多数の投資家が東急電鉄株の買い注文を出しております。その売買株数でございますが、十月二十三日から二十七日の一週間で野村証券を通ずる買いが六千五百万株ございます。
  82. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今、あなた一週間で六千五百万株野村が買っておるということを言われました。  総理、私は大蔵省に資料の要求をしたんです。これは一カ月のトータルなんだ。十月、十一月、十二月の証券会社のトータルなんだ。私は、恐れ入りますが十月、十一月の一週間ごとの東急電鉄の株の売買について四大証券の資料をいただきたい、こういう資料のお願いをしておりましたけれども、私の手元に来ない。きのううちの山花書記長が質問をした。二見公明党政審会長が質問をして、野村証券は七〇%買っていますという御答弁が出たことも知っています。しかし、一週間ごとに、こういった場合は株の集計というのは出るはずなんです。なぜ隠そうとなさるんですか。私はここに体質があると思うのですよ、ここに。我々国会議員にすら資料を出そうとしない。今いみじくも言われたように、一週間で六千五百万株も野村が手をつけている。これは明らかに、二千四百万株買い占めている、買っている稲川会の株の値上がりを期待をしておったんじゃないですか。  私はここで、浦参考人お尋ねをいたしますが、浦さんは株式評論家として週刊誌とかあるいは新聞等に毎週あるいは毎日株価の状況等を記録されておられる方だ、記事にしておられる方だと思っておりますが、そうかどうか、それが一つ。  それから、浦さんは東急電鉄と極めて近い関係にある株式評論家だ、こういうふうに承っていますが、その二点についてお尋ねをします。
  83. 浦宏

    ○浦参考人 お答え申し上げます。  私は、株式の記事を毎週雑誌に発表しております。それから、毎日相場観を発表している新聞もございます。私は、約二十五年間株式評論家として生活をいたしております。  それから、ただいまお聞き及びになりました東急電鉄と私の関係は、私の家内浦慶子の父親が、実は大正年間において東急電鉄の創立者五島慶太先生の鉄道院時代に部下でございまして、鉄道技師として勤めて、そうして五島慶太先生が最初武蔵野電鉄、それからしばらくして現在の東京急行の前身である目黒蒲田電鉄に移られましたときに、ずっと鉄道院から随行して、その部下として働いた者でございます。鉄道の建設を担当しておりました。ただ、昭和四年一月十五日に亡くなりましたから、その後はまあ音さたなくなったんですが、私の妻浦慶子は、五島慶太先生から名前をつけていただいたということを伺って非常にありがたがっております。だから、私は非常に東急電鉄という会社に株式評論家としての立場を離れて常に愛着を感じておって、常にその株価には注目をしていた次第でございます。
  84. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに詰めてお尋ねをいたしますが、今局長からも答弁がありましたが、一週間に六千五百万株も東急株を野村が買うということは異常な事態だ、こう考えられて、浦さんは野村証券に電話をされて確認をなさった、こういうふうに承っておるわけでありますが、その野村証券の幹部に電話をされて確認をされた事項について、ここで御説明をいただき光いと思うのです。
  85. 浦宏

    ○浦参考人 お答え申し上げます。  ただいま松浦先生の御質問にございましたように、私は東急電鉄株を野村証券が異常に大量に買っておるという事実に注目いたしまして、実は私株式評論家ですから各社に私の親しい友人がいるんでございます。それで野村証券の本社の内部で株に詳しい友人に実は電話をいたした次第でございます。  そのときに、その友人は私の電話に対して即座に、実はこのことは野村証券の極秘事項だから絶対に記事にしちゃ困る、その約束ができるかと一君うものですから、私はさよういたしますと返事いたしましたところ、実はある暴力団の会長が野村証券でこの株を大量に買った。それで、その値をつり上げるために野村証券の極秘事項として実は大量に買っておるのだ。しかし、そのことが、私が言ったということが漏れると私は非常に苦しい立場に立つからこのことは記事にしないでくれ。また、記事にしたら、君、その暴力団からやられるかもしれぬよと言ったのです。それで私はなるほどと思いまして、いや、絶対私は記事にしない、ただ、私は東急電鉄に非常に興味を持っていて実は伺ったんだが黙っておくというふうなことで、それで、そのときはっきりその暴力団会長への援護射撃だという表現を私の友人はいたした次第でございます。
  86. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ちょっと浦さん、病後上がりですが申しわけありません、もう終わります。  今援護射撃ということを言われたのですが、稲川会の株の援護貫いをしておるということについては、野村証券の人たちは大部分が知っておる、極秘事項として幹部は知っておるというふうに判断をされましたですか。
  87. 浦宏

    ○浦参考人 その私の友人は株式関係を担当しておりました。それで、私の問いに対してその場ですぐ答えだということは、株式部関係の野村証券の幹部は、ほとんどこれは極秘の事項としてながら野村証券内部では周知の事実ではなかったかという感じを私は今でも持っております。
  88. 松浦利尚

    松浦(利)委員 浦さんにお尋ねいたしますが、そのときにその暴力団の会長の名前とか暴力団の名前とかは出ませんでしたか。
  89. 浦宏

    ○浦参考人 それは、そのときはこれは非常な秘密事項であったと考えましたものですから、それ以上立ち入って聞くのを私はやめました。もし聞いても、そのときの友人の態度では恐らく稲川会までは出なかったろうと想像されます。
  90. 松浦利尚

    松浦(利)委員 最後の質問ですが、今言われた、あなたが電話された相手についてここでお名前を言うことについてどうでしょうか。
  91. 浦宏

    ○浦参考人 私は、私の言っていることの真実のあかしのために本当は言いたいのですけれども、彼は野村証券の株式関係の幹部でございます。それで、もし野村証券の秘密を私に言ったということがわかりました場合には、野村証券から彼は恐らく戯言されるでしょう。少なくとも馘首されないでもみずからやめるでしょう。そうしますと、私は彼に一生補てんをしなきゃならぬ。ところが野村証券は、私の聞くところによると、五十五歳まで勤めて管理職になった方には毎月五十万円の企業年金を出すんだそうでございます。それほどの高給を与えておりますし、一生を保障するのでございますが、私はそういう補てんはそれこそ全然できませんから、私はまことに松浦先生には申しわけありませんが、その名前を明かすことだけはお許しいただきたいと思います。
  92. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、浦さんには病後に大変申しわけないと思いましたが、参考人に対する質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。
  93. 渡部恒三

    渡部委員長 お引き取りになって結構です。
  94. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう既定の事実なんです。今、浦さんからお聞きのとおりです。これは明らかに株操縦があったということはもうだれが見ても明らかな事実なんです。それでなぜ証券局は依然として調査を続けるのですか。証拠がない、証拠がない。しかし、現実に客観的な状況は全部そろっている。しかし、今司法当局もこれについては調査をしておられる。結局、今の行政対応では、こうした問題に対して今日の大蔵省証券局は対応できないんじゃないですか。できない証拠が今ここに端的にあらわれてきているのですよ。  こういう状況であって、しかも結果がこのように出てきて、具体的に言うと一週間に六千五百万株も野村が買い占めている。調査に入ればどういう状況かという判断はつく。にもかかわらず、結果が出ておるにかかわらず、なおかつ調査してもここでそういうものが出てこない。これでは、日本の場合はアメリカのSECと違って、悪いことをしようと思えば司法の手が回るまでは幾らやったって大蔵省は手が入らない。そういうことをいみじくもあらわしておるんじゃないですか。今日までの大蔵省証券局の行政指導、監督というのは、あるいは検査というものはこういう状況だったのですよ。これをどうするかということが問われておるんじゃないでしょうか。大蔵大臣でも結構ですし、総理大臣からもお聞かせをいただきたいというふうに思うのです。
  95. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今参考人のお話を聞いて、改めて私も燦然とする部分を感じております。ただ、私は決して事務方をいたずらに弁護をいたすつもりはございませんけれども、改めて現行証券取引法におきまして証券局の与えられております権限というものをもう一度委員に思い起こしていただきたいと思うのであります。  報告の徴収また検査というものは証取法五十五条で許されておる権限であることは、委員御承知のとおりであります。これは「公益又は投資者保護のため必要且つ適当であると認めるときは、証券会社若しくはこれと取引をなす者に対し当該証券会社の営業若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員をして当該証券会社の営業若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」そしてまさに証券会社に対して証券局は検査権限を持っております。また、帳簿の閲覧等のあるいは帳簿書類等の検査をする権限を持っております。しかし、この権限は直接的に取引相手の帳簿を閲覧する機能を与えておりません。こうした点に私は一つの問題点があると考えておりますけれども行政当局としての法律上許される範囲の検査しか行えないということについてはどうぞ御理解をいただきたいと思います。その範囲でこうした事態が発見できなかったというおしかりは甘受いたします。
  96. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今お話を申し上げたように、片一方では自己責任で泣く人がおる。片一方では暴力団が資金調達をする。しかもその高くなった株を担保にしてまた関連金融会社が二百四、五十億の融資をしてやる。あるいは紙切れ一枚で担保にして金を貸す。これは端的に言って、証券業界のみならず、大蔵省の銀行局、証券局挙げてもう一遍行政の再チェックをすることが必要ではないかというふうに私は思うのです。我々自身も今国会を通じてこうした内容が防止できるように、我々社会党もどういう機関を設ければいいのか、鋭意今日努力中でありますが、さらにこの野村証券の問題について私は指摘をしておきたいことがあるのですが、こういう株価操縦をするのに、きのうも我が党の書記長あるいは公明党の二見政審会長が言われたようでありますが、年末に、この株は五千円になりますよ、今が買いどきですよ、こう言ってどんどんどんどん買ってもらう。そして一般投資家は一番高値の三千六十円で買わせる。そうすると、御承知のように年が明けたら反転をいたします。急に年が明けて反転をするということがわかってきたら、野村証券はどうしたか。その一月、ヨーロッパにおいて徹底的な日本株のキャンペーンをしているのですね。東急株は当時二千三百円、その後九百八十円という安値になってしまうわけですが、十銘柄を宣伝をしてその中に東急株を持ち込んで、そして今度は売り逃げをする。自分はたくさん買っているからどうかせぬといかぬからヨーロッパに行って宣伝をして、ところがヨーロッパの人たちは株に対して自己責任が徹底している。買った人の責任だから文句を言わない、損失補てんの要求もない、補償の要求もない、損失補てんする必要もない、だから何も問題になっていない。しかしこういうことをやられたら、これは国際的にもひんしゅくを買うような野村証券のやり方だと私は思うのです。  だから、暴力団も紳士ですから、株の売買について正規のルートでやられるのですから、今の法律で取り締まる方法はない、これは事実そのとおり。しかもこういう形で資金がつくられていく、これは社会的に見ても大変なことだと思う。私は、あえて法務大臣やら皆さんから意見を聞こうとは思いません。バブル経済の中でこういう問題が現実にひそかに進行してきている。しかも表立って、なおかつ今の証券局ではこれに対して調査も遅々として進まない、対応もできていない。私はこうした問題を含めて、野村証券の会長、社長等をぜひ本臨時国会において証人喚問していただきたい。大蔵省のもう手の届かないところでやっておるわけですから、こうした問題については野村証券並びに証券の社長、会長をぜひ呼んでいただいて、暴力団のかかわり、ヨーロッパにおける株の宣伝、一般大衆に対する悪徳商法まがいのこうした売り込み、こうした問題について徹底的に本院で究明をすべきだ、こう思います。  委員長、ぜひ御配慮いただきたいと申し上げたいと思います。
  97. 渡部恒三

    渡部委員長 ただいまの件については、追って理事会で協議をいたします。
  98. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、ぜひ証人喚問して御議論をお願いいたしたいと思います。  それから、続いて信託関係の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、その前に、住友信託銀行を八九年の一月、二月にかけて二カ月間検査をなさったことがあると思うのでありますが、あるかないかだけお聞かせをいただきます。
  99. 土田正顕

    ○土田政府委員 住友信託銀行に検査をしたことはございます。ただいまその前回の検査の時期青確認いたします。
  100. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そのときの検査官は伊豆金融検査官だったと思います。これは伊豆金融検査官がおられたということは、七月まで在籍しておられたことは、平成元年の七月までおられたことは確認をしたわけでありますが、結構です、されたことだけで結構です。  ここに、これは大蔵委員会の集中審議の中でも進民党の菅直人さんが、若干時間がありませんので簡単に取り上げられた内容でありますが、この住友信託銀行内部の、対外厳秘資料というのが実はあるのです。これは「対外厳秘」と書いてこういうのがあるのです。これは伊豆金融検査官以下検査官全員と、当時の櫻井社長以下常務役員、常任監査役が全部出席をした中で大蔵省の検査講評が行われた。その検査講評についてずっと羅列をして、この検査に従ってこれからやろうという意味で、部外秘として「対外厳秘」として実はされておるのですが、その中身、「財務管理応能信託」というところで「特金信、金外信」、その第一番目に「ファントラの管理面が不十分である。特にファンドの運用管理に不適正と見なされる事例がある。」こういう指摘をしておられるのですね。この不適正だということについて、ここでいどういう内容だったかお示しいただけますか。
  101. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず、先ほどお尋ねがございました住友信託銀行くの前回の検査でございますが、私ども基準日、着手した日を基準日ということで言っておりますが、昭和五十九年十月六日でございます。  そこで、ただいまのお話の御説明を申し上げます。  そのお手元の文書がどのような文書であり、だれによって作成されたかについては私どもは存じません。ただ、ただいま委員の御質問の中で、七月二十五日の衆議院大蔵委員会の集中審議で菅委員からお話があった書類であるという御趣旨のお話がございました。それでございますならば、実はそのときにもお答えを申し上げてあるわけでございますけれども、私どもその御指摘のような文書については明細は承知しておりません。それは私どもが作成した文書ではございません。  それで、この検査の中身につきまして委細申し上げることは差し控えさしていただきたいわけでございますけれども、したがいまして一般論として申し上げますが、検査などで時々不適切な取引を発見することはございます。それで、例えば一つのファンドを複数のファンドマネジャーが運用していた、そのためにファンドの手持ちの余裕金残高を上回る有価証券を購入してしまった、そこで後日やむを得ずほかのファンドでそれを購入したように記録をつけかえたとか、そのほかそのような事務体制の不備、内部管理体制の不十分、その他このようなものに起因するようなもの、これは一例でございますが、そのようなものにつきましては、やはり顧客との信頼関係を害したり、トラブル発生の原因ともなりかねないと認められたりする事例はございますので、内部管理体制の厳正化その他につきまして、検査の機会に注意を喚起し、しかるべく指導してまいったところでございます。
  102. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この文書があなたが関知しないということはわかっているんですよ。ただ、検査を受けた、その検査結果、住友信託銀行の内部でつくられた文書なんです。そこで今言ったような指摘を、特にファンドの運用管理に不適正とみなされる事例があったというふうに指摘をされたと、指摘をされた方が書いておる。あなたは、それじゃ、こういうふうな不適正な指摘をしたことはない――ないものが、いやあったというふうに書くはずがないんですから。それじゃ言葉をかえて、管理が不十分である、特にファンドの運用管理に不適正とみなされる事例があるというふうに指摘をなさったことはないのかあるのか、お聞かせください。
  103. 土田正顕

    ○土田政府委員 また一つ、先ほどの御質問に対するお答えを補足いたします。主任検査官は伊豆でございました。  それからただいまのお尋ねでございますが、私ども、個別の検査の内容につきまして御説明することは従来から差し控えさしていただいております。ただ、先ほど申し上げましたのはあくまでも一般論としてでございますが、そのような御指摘の信託銀行の検査の結果その他の情報を総合いたしまして、私どもがやっております。その仕事のしぶりについて御説明を申し上げたわけでございます。
  104. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言っておられることがどうも私は理解できないんですがね。この「週刊金融財政事情」というのは、これは大蔵省の人たちも執筆を盛んにする内容ですね。これは今年の四月一日の「週刊金融財政事情」ですが、そのときに大蔵省の方も執筆をされておるんですが、その中に「視角」というところがあるんです。「頻発するファンド内外の操作」、いろいろな仕組みが、ここに操作されている仕組みが入っている。今あなたが言われたことも確かにあります。やはり損失補てんまがいのことがやられておる。事前に「にぎり」ということまである。これにこの「にぎり」ということが書いてある。しかもそれに何と書いてあるか。「事実は事実としても、ファンド間の益移動は他人のためにする窃盗行為であり、一段罪が重い。「よくあること」とか「しかたがない」と当事者はいうが、倫理感覚が腐っているといわれてもしかたあるまい。なお、この件に関する「実感」として、監督当局はきわめて寛大である」と「斜道」という人が書いているんです。  これは「金融財政事情」ですよ。福田先生が始められたんですよ。今の理事長は東証の長岡さんですよ。しかも大蔵省の官僚の人たちは、ここには検査はこうしなさい、ああしなさいという検査の指導から何からずっと書いてある、これにも。だからここに書いてあるように、恐らくこの「斜道」という人がどういう人かは大蔵省の方も知っておられると思うんだけれども、その人が――私はここを言うんですよ。この人が、「窃盗行為であり、一段罪が重い。」「倫理感覚が腐っている」とまで言い切っている。「この件に関する「実感」として、監督当局」、ですから、信託ですから銀行局だと思いますよ、「監督当局はきわめて寛大である」。もしこういう事実がなければなぜ抗議しないのですか、編集のときに。寛大じゃないのですか。あなたがここで説明できないのも寛大だからじゃないですか。寛大だから説明ができないんじゃないですか。  私は、ロッキードのときに第七十七国会で「議院の国政調査権と公務員の守秘義務等との関係に関する質問主意書」を出したのです。当時の三木総理から私あてに答弁書をいただいたのです。これは政府の統一見解。これを中心にして、例のロッキードのことについて、これを根拠にして発言をされた。まさに今、金融、株すべての問題についてうみをさらけ出して、こういうことが二度と起こらないような状況をつくり出さなければいかぬときでしょう。なぜ隠さなければならぬのですか。私が七十七回国会に出した国政調査権と公務員の守秘義務に関する統一見解、これに対してどう判断をされるのかお聞かせをいただきたい。統一見解というのはもう広く皆さん方に行き渡っておる内容です。
  105. 土田正顕

    ○土田政府委員 いろいろな論点がございますが、まず「金融財政事情」の雑誌の御紹介がございましたが、その雑誌の記事は私どもも目は通しております。しかしながら、それは匿名でもございますし、私どもとしてのその内容について直接コメントをする限りではないと思っております。  それから第二に、先ほどから、検査の具体的な内容についてはお答えを差し控えさしていただいておる、そういう趣旨で申し上げておるわけでございまして、当然その検査は厳正にやっておりますし、それから、検査の状況などを踏まえたところで最前から御答弁を申し上げておるわけでございます。  さらにその次に、いわばファントラの運用の手口その他についてどのように見ておるのかという御趣旨のお尋ねでございますが、詳細はお尋ねがあれば詳しく申し上げますけれども、信託の運用につきましては信託の本旨に従って受託者が行動する義務がございます。それで、例えば信託菜法の九条に言う元本補てん、利益補足の禁止の規定、それから信託法の二十条、善管注意義務の規定、それから信託法二十二条、忠実義務の思想を表現した規定だと言われておりますが、そのような法律の規定に違反する行為の有無などについて重点的にいろいろ私どもは調べておりますし、その検査もしておるわけでございます。  それから、ファンド間のいろいろな振替その他につきましては、これもさらに具体的なお尋ねがありましたら立ち入って御説明は申し上げますが、ファンド間の振替そのものは全面的に禁止されているとか、それが適当でないとか、そういうような考え方はございません。このアメリカのレギュレーションでありましても、やはりある勘定に受託した資産を自行の他の受託勘定に売却することができるというようなことを想定したようなレギュレーションはございます。したがいまして、全体といたしましては、私どもは、ただいま申し上げましたようないろいろな法令の禁止に触れていることがないかどうか、それからまた、事務管理その他で委託者、受託者間の信頼関係を阻害し、顧客とのトラブル発生のおそれがある行為で行き過ぎはないかどうか、そのようなことについていろいろ調査し、検査におきましてもいろいろ検査をいたしまして、指摘をしている例はございます。
  106. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これは私は非常に大切な問題だと思うのです。信託にも損失補てんがあるというのはもうちまたの声なんですね。ただし、これが表面化してまた株価が暴落をするということになれば、そういう意味の配慮はしなきゃならぬということも事実だと思います。それは私も理解できます。ただ問題は、こうした手口がふたをして隠されてしまう、しかも、大蔵省の検査した人とあるいは一部の人との間だけで終わってしまう。そこに私はどうも問題の本質があるんですよ。やはり事件が起こったらそこで処罰をする、ぴしっと。軽く見過ごしてしまうものだから、まあいいや、まあいいやで、なあなあ主義でいつの間にか大きくなって、今度のような取り返しのつかない大きな問題になる。国際的にひんしゅくを買う。  私は、そういった意味で、この前住友信託銀行に対して検査をされた、特にファンドの運用管理に不適正とみなされる事例があるというところについて、ぜひ、この第七十七回の国政調査権と公務員の守秘義務等の統一見解に対する政府の統一見解、これに従って出していただきたい。公の場にさらせなければ理事会にでも出してもらいたい。委員長の方でぜひ御配慮をいただきたい、そのことを申し上げたいと思います。
  107. 渡部恒三

    渡部委員長 後刻理事会で協議いたします。
  108. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃ、先ほど山口先生が五分早く終わられたので、これで午前中の質問を終わります。
  109. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  110. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  111. 松浦利尚

    松浦(利)委員 午前中要求いたしました資料について、理事会で拝見をさせていただきました。ありがとうございました。  そこで、理事会で銀行局長においでをいただいて御説明をいただき、いろいろ我が党の考え方等も含めて御意見を申し上げました。それについて、銀行局長の方からそれに対するコメントをいただきまして次に移りたいというように思います。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 いろいろ委員の御意見、御注意も拝聴をいたしました。私どもは、ファントラはファンドマネジャーにその運用の裁量権があり、したがってその反射的に運用責任があるという点で、特金、殊に営業特金とは違っておる。したがいまして、特金について言われたような議論がそのままファントラに妥当するとは考えておりませんが、いずれにいたしましても、この信託の運用といたしまして、午前中にも申し上げましたが、信託の本旨に従って受託者が行動する義務があるわけでありますし、その義務に違反するようなことがあってはならないわけでございます。また、そのような義務違反というようなものでありませんでも、やはり顧客との間にトラブルなり誤解を生じやすいような行動は慎むべきでございます。  私どもは、これまで信託銀行に対して当然定例的に検査をしておりますし、昨年度その中の五社について検査をいたしました。また、本年度に入りましても既に一社検査を行っております。近々、割合早い機会に一巡するということもございますので、この昨今の御議論を体し、また委員の御注意も体しまして、さらに十分注意をして検査に当たりたい。その結果、いろいろ情勢を分析いたしまして何らかの注意すべき手段があるか、それは私どもの方の注意であるのか、それとも業界の方の自主的な一つの申し合わせであるのかわかりませんが、何らかのそのような注意すべきことが取りまとめられるものであろうか、その点を含めまして今後鋭意研究をしてまいります。
  113. 松浦利尚

    松浦(利)委員 わかりました。ぜひ信託関係でこうしたことがまた表面化することのないように御注意をいただきたいというふうに御注文を申し上げておきたいと存じます。  それでは、関連質問がありますので残り三十分ですから、個々の問題について幾つかお尋ねをして、最後にこれに対する今後のあり方について御質問させていただきます。  まず最初に、山一証券が損失補てんをいたしました企業名を六十六社、四百五十六億二千百万円損失補てんがあったと自己申告をされました。ところが、この山一証券の公表リスト六十六社の補てん先のうち十一社は旧三井銀行が紹介をした、こういうふうになっておるわけでありますが、どういうわけかこのうちの六社ですね、具体的に言いますと嘉悦学園それから津村建物、津村順天堂それから富商、フュージョン、日本図書普及、この大企業に対しましては、山一証券が損失補てんとした同額を、旧三井銀行が約五十億さらに損失補てんをしておられるのです。  大体損失補てんすること自体が極めて悪質な問題だというふうに今、本委員会でも指摘をされておるわけでありますが、その損失補てんを山一証券が半分して残り半分を旧三井銀行が補てんしてやった。これは一体どういうことなのか。なぜこういう複雑なことが行われることになったのか。三井銀行はこれに対して内部処分等を行っておるようでありますが、これはどういうことを意味しておるのか、どういうところに原因があるのか、なぜこういうことをしたのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。簡単にお願いします。
  114. 土田正顕

    ○土田政府委員 御指摘の事件につきましてごく概略を申し上げますと、旧三井銀行の支店におきまして、これは昭和五十九年ごろからというふうに聞いておりますが、取引先のニーズにこたえるためということで、山一証券と相談の上、取引先に対して有価証券の運用を推奨し、その資金を融資しておりました。それで、その運用は当初はいわば現物取引でございましたが、その後だんだんといろいろな取引が起こりまして、六十二年の九月に債券相場の下落により多額の損失が発生することになりました。このため山一証券側が、これは三井銀行から私どもへの報告でございますが、山一証券側が損失負担を図りましたが、その損失がかなりの額でありましたために旧三井銀行に対して負担要請がありまして、結果的に旧三井銀行はこれを受け入れることにいたしました。そして昭和六十三年に取引先から債券を高値で購入して、直ちに時価との差額を自発的に有税償却をしたものでございます。  このような問題はそのときにも大きな社会的な批判を受けたところでありますし、私どもといたしましても公共性の強い金融機関の性格にかんがみまして厳重に注意をいたしました。  なお、この旧三井銀行では、この関係の事実を厳粛に受けとめまして人事面の処分を実施したというふうに私ども報告を受けております。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  115. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ずっと聞いておりますと実際言われたとおりですが、自己責任の原則ということを考えますと、損失補てんしたことも問題だと今ここで問題になっておる。しかしその損失補てんを今度は銀行に山一証券が要求して、おまえのところが紹介したお客さんだからおまえのところも損失補てんの半額を持てという要求をすること自体は、これはもう率直に言って、損失補てんも問題だけれども、その損失補てんを三井銀行に要求した山一証券の行動というのは、これはまさに証券会社としてとるべきことではない。損失補てんより以上にこれは問題な行動をとっておると思うのです。山一証券のとった態度は、これは明らかに私は糾弾されるべきだ。それに応じた銀行も銀行ですけれども、結局、背景にはどういうことがあったのか。  総理大臣、あなたに申し上げておきますが、今度のこの事件というのは、三井銀行と山一証券の関係というのは、三井銀行がお金を融資をしてやって、そしてその融資を受けた企業が山一証券に株の購入を依頼をする、こういう関係なんですね。そのときに三井銀行と山一証券は事前に話がある。ですから、三井銀行は企業に金を貸すことによって金利を稼ぐことができる、銀行から金を借りた企業は株を買うことによって利益を得ることができる、山一証券は手数料を稼ぐことによって金もうけができる、まさに三万一両得という形で、この問題は、損じゃなくて、もうけの、得の三万一両得という形の関係ができておるのですよ。これはまさに「にぎり」が行われておるということですよ、全体的に。実際、バブルというのはこれで起こってきたのですよ、こういう金の動きで。  ですから、今度の問題は何か証券関係だけだということじゃなくて、銀行と証券会社と企業と三つが一緒になって行われたのが今度の姿なんですよ。これが山一証券のこの事件なんですよ。ただ単に処分したからどうだこうだということで見過ごしちゃいかぬ、この内容は。典型的にあらわれておるのです、これが。もうここには全く大蔵省の行政管理監督というのは、銀行局にも何にも全然行き渡っておらないのです。だから、先ほどから不規則発言でもありますように、何か私たちから見たら、管理監督をすべき立場にある大蔵省が、こういう姿で出てきてしまう、全部。ということは、何か大蔵省はなめられておるんじゃないか、こういう気がしてならないのです。こんなことなら、もうすべて自由化したらいいんですよ。認可行政でなくて届け出制にすればいい、全部同じことなんです。管理監督あろうがなかろうがこんなことをするんだから、もうこの際思い切ってアメリカのように自由化してしまう。どうですか、総理
  116. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理へということでありますが、直接の責任者は私でありますので、私からお答えをいたしたいど思います。そして、御批判は私は御批判として甘受をいたさなければならないと思います。  しかし、この事件、今局長から御説明を申し上げましたような経緯をたどったものでありますが、本件の事実関係の当局への報告は平成二年の四月の末に参っております。そして同時に、これは自主処分という、また御批判を受けるかもしれませんが、その当時におきまして、当該銀行としては人事を含む相当部分の処分を行っておりました。こうしたことを考えますと、私は、大蔵省の行政というものが全く無力であったと言われることは非常に残念であると思いますし、同時に、その処分をきちんと行わせしめるだけの行政力は持っておった、そのように考えております。しかし、それでなおかつ足りない部分があったという点については、私はおしかりは率直にちょうだいをいたします。
  117. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は大蔵大臣が一人で何か責任をとってあれしておられることに、非常に残念に思うのですよ。やはりこれは厳しく大蔵省全体として受けとめてもらわなければいかぬですよ、大蔵省の官僚も含めて。私はそこに問題があると思いますよ。ただ許認可権だけ握っておって、そして肝心なところは全く、癒着しておるのかどうかわからぬけれども、こういう事件が起こってきてもただ銀行が処分されれば終わりだ。これは大臣がやめたりなんかしただけの問題じゃとどまらないです、官僚組織というのは残るわけだから。だから私は極端な、自由化したらどうか、許認可なんかやめたらどうか、こう言うのですよ。その点はぜひ私は官僚の皆さんに厳しく言っておきます。  そして、次にもう一つ、これはまた後でお答えいただきますが、今度は日興証券が、補てん先一覧表の中に住友生命というのがあるのですよ。住友生命の補てん金額三億一千二百万、その中に括弧変額とあるのですよ、変額。これはもう時間がありませんから私の方からお尋ねをいたしますが、生命保険というのは一般勘定と特別勘定というのがある。一般勘定というのは終身、養老等、特別勘定というのは変額保険の運用。この住友生命が持っておるこの一般勘定と特別勘定の間に日興証券が入って株価による損失補てんをしておるのをここで変額、こういうふうに括弧して書いてあると私は読んだわけでありますが、そのとおり理解をしていいですか。
  118. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お尋ねの点でございますが、ここで括弧変額と書いてございますのは、今御指摘ございました特別勘定の、つまり変額保険の特別勘定に対して補てんをしたという意味でございまして、一般勘定と特別勘定との間というわけではなくて、日興証券が変額保険であります特別勘定に補てんをしたという意味でございます。
  119. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今それだけですか。変額勘定に補てんをしたというだけですか。それで間違いありませんか。もう一遍確認します。
  120. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもが日興証券から闘いでいるところでは、変額保険の勘定に日興証券が直接補てんをしたということでございます。
  121. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そういう報告を受けたということであって、どういう方法で補てんをしたかということは聞いておられますか。どういう方法でやったか、それは。
  122. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この補てんの方法は、株価指数先物取引を使いまして、日興証券が株価指数先物取引の価格差を利用して変額勘定に直接補てんをしたということでございます。
  123. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今言われたことは、住友生命で確認をされたことというふうに理解をしていいですか。
  124. 土田正顕

    ○土田政府委員 これまで住友生命から私どもの方で事情を聞きましたところでは、この件については、証券会社が公表をした取引事実、それについての認識はあるけれども、損失補てんを受けたという認識がない、通常取引だと思っていたという報告を受けております。  なお、今後よく調べてみたいと思っております。
  125. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今後調べてみましょうというのを、聞いてもお答えいただけませんから、調べていただいて、御返事をいただきたいというふうに思いますしかるべく委員長の方で御配慮いただきます。いいですね。いいですね。今から調べてみられた結果は御報告いただけますね。――はい。それじゃ、そういうふうにお願いをいたします。  それでは続いて、こういう状況が起こってきたのは大変悲しいことですが、私は、今までの大蔵省の検査体制のあり方がよかったのか悪かったのか。率直に言って、結果から見て決していいものじゃない。いろいろなことが言われてきました。天下りの問題、聞くところによりますと、この前大蔵大臣の御答弁によりますと、課長以上の官僚は二年間天下りすることは自主的に業界等で遠慮をしてもらう、そういうことですね。ところが、実際今検査体制というのは、大体検査課には何人人がおるんでしょうか。私は七人か八人と聞いておるんですが。
  126. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証券検査官の定員でございますが、これは現在本省は三十八名でございまして、あと各財務局に合わせまして二百一名ということになっております。
  127. 松浦利尚

    松浦(利)委員 二百一名。そして二年に一回ぐらい証券会社を検査して、検査するときの人数は七、八人で一カ月程度というふうに聞きましたが、そう理解してよろしいですか。
  128. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 検査対象の証券会社の規模いかんにもよりますが、大体標準的なものであれば今御指摘のとおりで、大手の四社になりますともう少し人数がふえて期間が延びるということはございますが。
  129. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理大臣、今の我が国の検査体制というのは、大蔵省という同じ傘の中に指導育成をする人とそれから検査する人が両方おるんです。証券局の中に同じ検査官がおるんですよ。これはどう思われますか。指導育成する人と検査する人が一緒のところにおるんですな。これで正確な検査、摘発というのはできるとお思いになるでしょうか。
  130. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今お聞きをいただきましたように、証券局の検査体制、総員二百三十九名であります。そして、その局の中にいるという御指摘でありますけれども、例えばアメリカのSECにおきましても、行っております。務は、日本と違いまして免許制ではございませんから、その登録の受け付けから始まりまして、SECは全体の業務を行っております。検査も同じSECの中でありますし、会社の設立についての届け出を受理するのも同じ中であります。その点はどうぞ誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。
  131. 松浦利尚

    松浦(利)委員 誤解しておるつもりはないのですが、それで実際に正確に中立的な立場で検査できるか、こういうことなんですよ、同じ傘の中におって。
  132. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、私は、傘の中にいるという意味ではという意味でアメリカの例を申し上げました。ただ、今御答弁を申し上げてまいっておりますように、私どもはこの検査機構というもののあり方につきましては行革審の御審議を待ちたいと考えております。  そこで、多少お許しをいただいて、私どもが今までどのような問題意識を持ってこの見直しに当たってきたかについて少し申し上げさせていただきたいと思うのであります。  私どもは、まず第一に、その所掌事務につきまして、行政機能と検査機能の両機能の所掌のあり方、証券と銀行の両業務分野の所掌のあり方をどうするかという視点で、まずここに一つのメスを入れました。また、検査権限などにつきまして、現行の権限を越えて準司法的な権限を持つこととするかどうか、また、検査対象を証券会社や銀行の取引先に及ぶものにするかどうかという視点も検討の対象といたしてまいりました。また、告発あるいは行政処分との関係につきまして、検査の結果を司法当局への告発、行政処分にどのようにつなげていくか、また、行政処分の適正さを担保するためにどのような所掌、仕組みが考えられるか、また、取引所などの自主規制との関係につきまして、新しい監視機構はこれを想定して役割分担をするのかどうかという問題意識も持ちました。同時に、人的体制については、採用、訓練、人事、処遇等をどう考えるか、責任体制につきましては、国会や内閣に対してどのような責任を持つ組織を想定するのか、こうしたことを私ども考えてきたわけであります。  そして、所掌分野につきましては、行政機能と検査機能の両機能には少なくとも一定の距離、節度のある距離を保ちながら、どうしてもこの間に必要とされる両機能間の連絡調整について実質的に維持していく必要をどうするか、また、金融や証券の両市場が相互連関を強めている現状、今後こうした事態の中でなおさら急がれる金融制度改革による相互参入等を勘案いたします場合に、金融・証券両市場を視野に置いた検査機構をどう考えるか、こうした問題意識を持って大蔵省としては検討してまいりました。しかし、行革審の方で来年度予算編成に間に合うようにこうした問題についての結論を出すということを言っていただいておりますので、十九日、これらの内容、検討の問題点すべてを行革審に御報告し、その作業を私どもは待っておるという状況であります。
  133. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は、最後に希望を申し上げます。  同じ傘の中におりますと、そこには温情がわいたり、それからまた魚心水心といいますか、やはりそういったものが自然に起こってくると思うのです、片一方では育成しでおるのも同じ仲間ですから。本来だったら、もうこれだけの経済大国になったんですから、育成部分というのはもう必要ないとは思うんですけれども、まあ中小証券が非常に多いですから、その分野もあることは認めます。しかし、いずれにしても検査機構というのは、私たちは日本版SECというものをつくるべきだという考え方に立っていますけれども、やはりどうかして独立したものにする、やはり育成というものとは違う独立したものにしていくということを私たちは考える必要があるんじゃないか。  それは、大蔵省なら大蔵省の影響力があるかどうかは別ですよ。例えば国税庁のようなものをこちらに、検査庁といいますか、そういったものをつくり上げるというのも一つの方法だと思う。いずれにいたしましても、現在の育成と監督、検査という二つのものを一つの傘の中に置くことだけはこれを契機にやめた方がいい。何らかの方法で独立させたものをつくった方がいい。それは今大臣が言われたように行革審の結論待ちだ、こういうことでありますが、我々も今国会にそうしたものを出させていただいて、もう二度と再びこうしたことが繰り返されないように、そして通達を出しても出しても、一任勘定のように、通達は出したけれども実質的には改まっておらない、それが結果的にこの大きな事件を生み出すというような、こうしたことがなくなるように努力をしていかなきゃならぬと私たちも思います。  なお、最後に私はもう一遍申し上げます。何もこれは大臣とか総理大臣の責任じゃないんですよ。最高の長として責任は持たなければいかぬ。しかし、官僚の方もこうした事件を起こしたんだから、みずからの縄張りだ、おれのところはこれだけだということで、エリアを主張し合ってなかなか譲らない、そういうことは改めてもらって、もう二度と再びこうしたことが起こらないように、官僚みずからも襟を正して自粛をしてもらいたい。そのことを最後につけ加えて、関連質問に珍らしていただきます。  終わります。
  134. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 この際、田口健二君から関連質疑の申し出があります。松浦君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田口健二君。
  135. 田口健二

    田口委員 質問に先立ちまして、関連質問をお許しをいただきました委員長初め委員皆さん方にお礼を申し上げます。非常に限られた時間でありますから、私は、今回の雲仙・普賢岳噴火災害に絞って、総理、関係大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず、今回の災害に際しまして、たしか六月の九日であったと思いますが、海部総理にはいち早く現地にお出かけをいただきまして、現地の状況の把握やあるいはお見舞い、激励等をいただきました。私も同行させていただきましたが、改めてこの機会にお礼を申し上げたいと思います。さらに、西田国土庁長官あるいは吹田自治大臣を初め多くの関係大臣皆さん方が現地にお出かけそいただきまして激励をいただき、あるいは御指導をいただいたことに対しましても、重ねてお礼を申し上げておきます。  今回の災害に対する政府対応の問題であります。  長崎県というところは大変に災害が多いところでございまして、過去にも昭和三十二年の諌早大水害、過般の長崎大水害、もろもろの台風災害など、私も身をもって経験をしてまいりましたが、今回の災害というのはこれらとは違って、まさに前例のない大災害であります。それだけに、政府がとってこられた対応も今までとは違ったものがあるというふうに私は思っています。  六月の四日に早速対策本部を設置をしていただきました。現行法律制度の弾力的な運用ということも決めていただきました。総理も体験をされたと思いますが、あの体育館の中に何百人という方々が避難をしておられる。入りまして五分もたつと、もう全身から汗が吹き出る、こういう生活環境でありましたし、とてもこれでは人間らしい暮らしはできないということで、クーラーも入れてほしい、テレビも欲しい、洗濯機も入れてほしい、こういう要望なども申し上げましたが、ほとんどそれも認めていただきました。応急仮設住宅についても早急の着工の要望を申し上げてまいりました。たしか厚生省の基準によりますと、二戸当たり百十八万の単価だというふうに思っておりましたが、これも最終的には二百二十万ということで認めていただきました。クーラーもテレビも洗濯機も全部つけていただいたわけでありますが、そういう意味では今回の災害に対する応急策について、政府はこれまでとは違った、十分迅速でかつ的確な対応をしていただいたというふうに、このことは私率直に評価をいたしております。  ただ、問題は、あの六月三日以降、やがて八十日近くが経過をしようとしておる今日、火山活動というのは依然として鎮静化の兆しを見せておりません。一日に約三十万立米のマグマが地下から供給をされておるというふうに言われておりますし、溶岩ドームも長さ五百五十メーター、体積にして約七百万立米という最大の規模まで実は今大きくなってきておるという状況でありますし、これが果たしていつごろ終息をするのか、専門家でもまだわからないと言っている今日の現状、これが今度の災害のまた一つの特徴でもあると思うのであります。  私も十数回にわたって現地に参りましたが、先日参りまして、応急仮設住宅に参りました。行きましたら、居住をしておる人たちが家の外に出て近くの公園の木陰で休んでおるわけですね。そこに行ってお話をいたしました。暑いですねと言って、クーラーはないのですかと聞きましたら、クーラーはありますけれども、クーラーをつけたら一日に電気代が五百円はかかりますから、その電気代が払えないのでクーラーはつけません、こういうお話なんですね。中には、仮設住宅をつくっていただいてようやく体育館の避難所からこちらに移ることができて大変うれしい、しかし、今になってみれば体育館の方がよかったのではないか。理由を聞きますと、仮設住宅に入りますと食事の支給が打ち切られてしまう。自分で三度三度の食事をとらなければならない。中には、食事どきになったらこっそり近くの避難所の体育館に行って食事をもらっている方もいらっしゃるのだそうであります。大変深刻な状況が長期化をするにつれてたくさん出てきているわけですね。私は、こういう状況考えていってみた場合に、現行の法律制度だけでは対応でき広いのではないかと思っています。現行の災害関係の法律制度というのは、いわば応急対策を中心にしてでき上がった制度でありますから、このように長引いてまいりますととても現行法では対応できないのではないかというふうに考えています。これは長崎県の知事や地元の島原市長、深江町長を初め皆さんがそういうふうにおっしゃっているわけですね。総理も御存じのように、去る八月の八日に衆議院本会議で決議がございましたが、この中でも「現行制度において不十分なものは適切かつ速やかに対応するなど必要な措置をとること。」という決議が本院でも実はなされておるわけでありまして、総理のこの特別立法についての基本的な見解というものを改めてここでお伺いをいたしたいと思います。
  136. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初に、議員が心を痛めておられる雲仙岳の被災者の皆さんと、同時に、今日もなおマグマの活動がおさまっておらないという極めて不安定な状況について、心からお見舞いを申し上げたいと思います。  御指摘のように、私が現地に参りましたときは、終始議員にも御案内をいただきましてありがとうございました。私はあのときも申し上げたように、私自身も、かの伊勢湾台風というのは私がちょうど国会に出る直前のことでありましたし、私の郷里は長期間水浸しになり、同じような集団で避難をしておった人々の状況というものは鮮やかに私は思い出しました。そして、あの場でいろいろ承った御要望等については、まずとにかく現行法でできるだけのことをする、それからその次のことについてはあらゆることを考えて適切に対処したい、こういったことを知事さん、市長さん、町長さん、そして先生方議員の前で率直に申し上げました。そして、とにかく交付税なんかを前渡ししてほしい、これは各代表も言われました。自治大臣に指示をして、そのとおりなったはずであります。また、参りましたときはまだ体育館にはクーラーは入っておりませんでした。洗濯機もございませんでした。直ちにこれをするべきということで努力をしてきたつもりでございました。そしてその後、現行法でぎりぎり対処できないような場合を考えて、具体的な御要望については対策本部の方で各省庁からの御要望等を全部取りまとめて、この間うちから御報告しておりますように、二十一分野にわたっておりますが、八十三項目のうちの三十項目は、政令を、あるいは省令を、あるいは今の法律の適用基準を緩和をしてとにかくこたえていかなければならぬということで、できるだけの処置を続けてきたつもりでございます。  今後の問題については、まだ災害もおさまっておりません。けれども、最終的におさまるまで待っておったのではとても長引くというので、臨時特例の措置でお支払いを始めておる分なんかも議員御承知と思います。将来の島原半島地域の防災、活性化、復旧のためいろいろな地方自治体がしなければならない仕事があるということも市長さん、町長さん方から聞いております。また、県から具体御要望の基金の問題等もよく承知いたしております。それらのことについては、対策本部ででき得る限りの対応をするという方針をもとに今鋭意作業を続けておるところでございます。
  137. 田口健二

    田口委員 今の総理のお答えを聞いておりまして、残念ながら大変私は今失望いたしております。少し状況の認識が違うのかなという感しもしそおるわけですし、また私がどうもやはり説明が足りなかったのかな、こういう今気持ちもしておるわけでありまして、重ねてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に少しまた私の方から状況考え方について申し上げてみたいと思います。  六月の三日にあの大火砕流が発生をいたしまして、死者、行方不明者四十二名という大変な犠牲を出しました。私はその翌朝、島原の鏡ケ江市長と会って申し上げました。また、六月の六日には本院の災害対策委員会が開かれましたので、その際も私は申し上げたのですが、やはり強制力を持たない避難勧告だけではこれは人命を救うことにはならない、したがってやはり法的拘束力を持った災害対策基本法六十三条一項に基づいた警戒区域を設定をすべきではないか、こういう話も申し上げました。島原の市長さんも随分これには苦悩をされたようでありますが、御案内のように六月の七日、島原では警戒区域の設定がされました。翌八日に深江町の警戒区域の設定がされまして、今日に及んでいるわけですね。もう既に四回延長されまして、今度の期限は八月の二十六日まででありますが、恐らく今の状況からいえばこの時点になっても解除をされる見通しは全く立たないと思っています。現在、深江、島原で二千八百十四世帯、一万三百四十九名の方がこの警戒区域から実は立ち退かされているわけですね。  私は七月の下旬ごう参りましたときに、その方々からたくさんの陳情を受けました。こういう話がありました。あの警戒区域を設定をされたおかげで私は豚を十数頭死なせました、ある方は鶏を二万羽死なせました、こういう話でございました。調べてみましたら、豚の行方不明というのは、まあ行方不明というのはおかしな話なんですが、警戒区域ですから現地に入って調査ができないのですね。それで行方不明という言葉を使ったのだろうと思いますが、約六百頭、この警戒区域内だけで。鶏が十二万五千羽というのですね。これは火砕流とか土石流で死んでいるのではなくて、人間が入ってえさを与えることができないから、自然に餓死をしてしまったのですね。こういう状況がたくさんあらわれてきているのです。皆さん言っているのですが、警戒区域の設定で命は助かりました、今日まで何とか生活をやってきました、しかし、あしたからの生活は一体どうなるか全く見当はつきません、こう言っているのです。  私は八月の十二日の日に、国道二百五十一号線が部分開通をいたしましたので、島原から深江町まで参りました。行ってみて、予想以上にその警戒区域の広さ、頭の中で考えておったよりも現実は物すごく広かった。途中には一千軒以上の家が散在をしている、全部無人なんですね。総理も見られたかと思いますが、水無川は完全に土石流で埋まっております。畑の中にはスイカがごろごろ転がっているのですね。ちょうど農産物の収穫期でありましたが、それが収穫できない、葉たばこも立ち枯れのまま、苗つけもできない、来年の収穫も期待できない、こういう状況が生まれてきているのですよ。  これは総理、今まで例がなかったと思うのですね。災害対策基本法六十三条の一項によって警戒区域が設定をされた、法律でもって強制的に立ち退かされて立ち入りが禁止をされた、したがって自分の家にも自分の畑にも入れない、こういう状態が二カ月以上も続いておる。そのことによってあらゆる生活の手段が奪われてしまっておるのですね。これはどうでしょうか、現行法で救済できますか。やはり私は何らかの立法措置をしなければこれはできないと思いますのできないからといってこの方々を放置をしておっていいのでしょうか。私はこれは政治の責任だというふうに思っていますから。改めて、くどいようですが総理、特別立法について御所見をいただきたいと思います。
  138. 西田司

    ○西田国務大臣 田口委員は島原の地元の関係者でございまして、大変詳細に現地の状況を見ておられますし、お話をちょうだいいたしました。私どもは、調査団が二回、私は三回現地へ参りまして、今御指摘になりましたようなことを同様に認識をいたしておるわけでございます。一そのような観点に立ちまして、六月の四日に、三日の直後でございますが、非常災害対策本部を政府内に設置をして全力を挙げてこの対策に取り組んでまいりました。先ほど総理からもお話がごさいましたが、二十一分野、これは農林業の問題もございますし、中小企業の問題もございますし、あるいは教育の問題もございますし、雇用の問題もございます。あらゆる分野を網羅して八十三項目ここに問題点というのを拾い上げて対策に取り組んできたわけであります。――わかったと言われますが、そのうちの三十項目は、これは今まで過去の災害においてなかったような対策というものを立てて今日取り組んできておるわけでございます。  確かに、お話しのように長期間にわたっておるものでございますから、私どももこのことを極めて深刻に受けとめておるわけでございます。地方公共団体等の御意見を現在もお聞きをしながら、これらの対策について今後どういう方法をとっていくか、今検討を進めておるところでございます。  特に基金等の問題につきましては、総理からもお答えがございましたけれども、これは関係各省とよく相談をいたしまして前向きで対処していきたい、このように考えております。
  139. 田口健二

    田口委員 国土庁長官のお話は、経過としては私も十分よく存じ上げておりますから、そのことはあえて申し上げません。ただ、私が先ほどから一つの例として挙げた警戒区域の設定に伴う、言うならば、地元ではこう言っているのですね、これは法律的な二次災害だ、こう言っているのですよ。確かに命は救われた、しかし生活はもうめちゃくちゃになる、だれが一体これ責任をとってくれるのか。災害対策基本法第三条には「国の責務」という言葉も実は入っているわけですね。  総理、先日島原の地元の方が私のところに陳情に来まして置いていった陳情書のごく一部を申し上げてみます。   警戒区域の指定によって安中地区に立入が禁止されてから、私達が丹精込めて育ててきた農作物は死滅し、愛情を注いで飼育してきた牛や豚や鶏は、餌をやる主人を探し求めながら餓死してしまいました。警戒区域で餓死した牛や豚や鶏は、火砕流や土石流で死滅したわけではなく、警戒区域の指定によって蛇が生殺しにあうように飢えながら死んでいったのです。   この家畜達の悲惨な運命が、今度はこの家畜連の主人であった私達の身に襲いかかってきております。   噴火活動が終わりを告げ、警戒区域の指定が解除になれば、私達は安中地区に帰り、被災前の生活に戻らなければならないのですが、そこには何も無く、一粒の生活の糧も無くなっているのです。農民も漁民も商売人も、そこに見つけることができるものといえば平穏な被災前の状況において借入れた借金くらいのものであります。 こう訴えておられるのですね。これ、そのまま放置しておっていいんでしょうかね。  総理、重ねて私はお尋ねをしますが、これらの方々の救済について現行制度でできるでしょうか。  もう一つ。これは一昨日の地元の長崎新聞ですが、昨日私のところに送ってまいりました。この社説にやはり特別立法のことを取り上げているんですね。長いですから一部分だけ。「過去の災害と質的に違う点を挙げよう。まず災害継続が二カ月以上に及んでいる。一万人以上が三カ月の長期にわたって避難するのも過去に例がない。災害対策基本法によってそれらの人々が強制的に排除されたのも初めてだし、この警戒区域設定によって住民に甚大な不利益が生じた。」人命の尊重という理由だけで免責されるものであろうか、こう言っているのですね。そして、残念ながらこの社説の最後のところには、県選出の国会議員は一体何をしているか、あえてこれは政治の問題ではないか、こうまで書かれているのですね。  これは一体、先ほど総理は現行法制度で一生懸命やります、そしてなおあらゆる対応考えていきたいと言われたのですね、その対応策の中には特別立法も含まれるのでしょうか、もう一度お尋ねをしたいと思います。
  140. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、でき得る限りのことをするとお約束をしてまいり、要望を受けて努力もしてまいりました。  きのうは私は、ここで例に出された葉たばこの問題について、それの災害救済のために審査手続も簡素化して七月十日にお払いをしましたと答弁いたしましたが、きょう来ました資料には、第二回目には八月二日になって既にお払いをし、これは六億二千辺百万円支払いをしましたというようなことがこの葉たばこのみならずいろいろなところでたくさん行われて、特別立法をすると同じように政令や省令や規則の拡大解釈等ででき得る限りの対応をしていきなさい。御要望があれば、今までではできなかったような仮設住宅に対する無償の入居の問題とかあるいは船を沖に借りてきてそこへどうぞ泊まってください、いろいろなことを、現地で聞いた限りのことについては全部指示をして、本部長へ取り次いで努力をしておるわけでございます。ですからそういったことを、人命は大切だから警戒区域をつくるが、その後のことについては何も知らないというような態度で作業しておるつもりは全くございません。  同時にまた、将来の問題についても、基金等のことについて十分県の御要望、市長さん、町長さんの御要望も聞きながらその線に従った作業等も進めさせておるわけでありますから、もう実質的にいろいろなことを続けておる。特別立法をしなければできないものというよりも、むしろこういう政令、省令あるいは解釈の弾力化の中で対応できるものは対応し、先に払うものは払い、貸し付ける金額を高くするなりいろいろな作業をここにこれだけ詰めてやっておるわけでありますので、そういったものにおいて被災者の皆さんのことを、ただ人命尊重さえすればいい、それで知らぬ顔しているわけでは全くございませんので、細部にわたってもどうかよろしく御理解をいただきたいと思います。
  141. 田口健二

    田口委員 政府がいろいろやっておることは私も知っています。今総理が言われた葉たばこに対する補償もあります。これ五〇%なんですよ。それだけではもうどうしようもないというふうに葉たばこ農家の方たちは言っているのですね。だからやはり限界があるのですよ、現行の法律、制度の中では。ですから、やはりそれは今総理が言われたように、現行の制度、法律の中でもうあらゆることをやるとおっしゃっているんだから、それやってほしいと思いますよ。それでもなおかつ対応ができないという問題になれば、これはやはり特別立法も考えてもらわなければならぬ、そのことを、もう時間がありませんから、どうでしょうか、最後に一言。最終的にはやはりそのことも考えられるということはどうなんでしょう。
  142. 西田司

    ○西田国務大臣 警戒区域の設定というのは、ただいまもお話がございましたように、それぞれの地方自治体が生命というものを守っていくために発動していく制度、御存じのとおりでございます。私は、六月三日に不幸な災害が起こりましたが、六月七日にこの警戒区域の設定をしていただいて六月八日のあの大火砕流というものを避けることができたわけであります。この点、地方自治体のおとりになったことは高く評価をしておるわけでございます。  そこで、もう一つの御質問の論点でございます、いわゆる長期にわたるこの間の個人の補償をするために特別立法をつくるべきではないか、こういう御質問であるとするなら、残念ながら個人補償を特別立法によって補償をするということは極めて困難だ、このように考えております。
  143. 田口健二

    田口委員 もう時間が余りありませんのでお答えをいただくことはできないかもわかりませんが、ただ、国土庁長官、個人補償といいましても、現に災害弔慰金の支給に関する法律というものがあって、亡くなった方には二百五十万ですか、負傷された方については百五十万だとか、そういう制度も現存しているのですよ。ですから、私どもは、これは衆議院の法制局とも相談をいたしましたが、この法律を改正することによって、例えば見舞い金的なものを支給することは法理論的にも可能であります、こういうお答えもいただいているのですよ。ですから、何もかもやれと言っているのじゃないですよ。こういう特殊なものについて、これはやはり検討してほしい、こう言っているわけです。  それから、時間がありませんので申しわけないのですが、さっきの総理のお答えの中に、基金の問題では非常に前向きなお答えをいただいたというふうに私は思っているのです。今国土庁長官も、その趣旨を体して関係省庁とよく話をしてみたいというふうに言っています。私は昨日、伊豆大島の三原山噴火に対する東京都のいろいろな復旧計画だとか対応策というのを拝見をさせてもらいました。大変すばらしいものでした。非常にうらやましいと思った。ところが、これはもう自治大臣一番御存じのように、長崎県というのは貧乏県でありますから東京などとは比較になりません。ぜひひとつ基金を設定をしてほしい。それにはやはり国の財政支援がなければ、これは県知事も金出すと言っているのですけれども、これは到底追っつかないと思います。これは一体どうでしょうかね。最後に自治大臣、できればお答えをいただきたいと思います。
  144. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 田口先生、今いろいろとお話がありましたことはずっと聞いておりましたが、特別立法もさることですけれども、現実問題として現行で応用できる最大限で、私は特に自治体が、国の制約を受けないで自治体が、昨日も自民党の中島先生にお答えしましたように、知事の権限において基金をつくる、その基金に対しては私の方がいわゆる起債を交付する、あるいはまた自己財源を縁故債で出すということで何百億かをこれに積み上げればそれは容易にできることなんですね。そして、それが無利子になるような形にして、それは私の方で交付税で援助するとして、その果実をもって運用さえすれば、現実問題としてはその立法の問題、特別立法云々よりは現実に当てはめて応用が自治体の姿でできるという方法があるわけでしょう。だからそういう方法で、我々政府一同が協議をして、自治省も先頭に立ってやりますから、どうぞひとつ御理解ください。
  145. 田口健二

    田口委員 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  146. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 これにて松浦君、田口君の質疑は終了いたしました。  次に、和田静夫君。
  147. 和田静夫

    ○和田(静)委員 余り事件が多いものだから、どれにしようかと思いながら取り上げてまいりますが、まず身近な問題から少しお聞きをしたいと思います。  佐藤幸子さんという六十四歳の方が、学校の職員として四十年間働いた退職金等三千五百万円を野村証券町田支店の証券レディーが退職前から熱心に勧誘するのに応じて投資信託にした。ところが、四年の間に野村証券の株や転換社債など数種類の株券に変身をして、最近も断ったにもかかわらず三種のファンドが売られて、そして株式ファンドに買いかえられて大幅に目減りをした。結局三千五百万円は今や半分ぐらいになってしまった。このほとんどの売買は佐藤さんの知らない間に勝手に行われた。最近、六月四日も、あなたの目減りした分取り戻してあげるからと支店長が言ってきた。来年四月二十五日が満期だからいじらないでくださいと断った。ところが無断で積立式株式ファンドにかえられて、手数料も二十九万八千円引かれた。その後二カ月で五百万円ほど目減りした。  専門家によりますと、変動が激しい株式ファンドというものにまとめるのは極めて危険だ、こう言っているわけであります。大臣、この野村証券の行為は不正であり詐欺でさえあると私は考えるのですが、一いかがですか。
  148. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今初めてその中身を拝聴いたしましたが、私自身、詐欺であるとまではわかりません。しかし、少なくともお客さんが動かさないでほしいと言っているものを勝手に動かした、そしてなおかつ、解約を求めたにかかわらずいろいろな理由をつけてそれを引き延ばした、さらになおかつ、満期が近いからそのままに置いておいてほしいという意思を無視してそれを他に売買を行ったというようなことは非常に問題のあることだと思います。
  149. 和田静夫

    ○和田(静)委員 この人は思い余って抗議した。そしたら、担当の人は出てこなかった。あなたも会いたくないでしょうと言って支店長や次長がはぐらかした。それで、ついに酒巻社長あてに手紙を書いた。ところが、返事が来ない。本社に電話をした。紛争処理係らしい森本という人物が出てきた。勝手に売られたという証拠があるかと開き直られた。支店長に任せたからと相手にしてくれない。町田の石松という支店長は、好意でやってあげたのに告げ口をするとは何ですか、支社に来なさい、こういう形で六十四歳の女性に無礼な言い方をする。佐藤さんは怖くなって支社へも行けなくなる。そして、こういう訴えになったわけであります。  大蔵大臣、この人は泣き寝入りするしかないのでしょうか。
  150. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは事務的にどういうふうな対応ができるのか、私自身証券取引というものを自分で体験したことがありませんので、よくわかりません。しかし、少なくとも今委員が述べられました事実を総合して考えます限りにおいて、私は、もし支店長という方に解決の責任を野村証券として与えているという、紛争処理係の方ですか、その言葉が真実であるとするならば、非常に不穏当な話であると思いますし、殊にみずからの求めをい行為を勝手に継続した上で、それを本社に対して解決を求めた行為を、告げ口をするとは何だ、こっちへ来いといったような言い方というものは極めて社会的常識をも欠く行為だと思います。
  151. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は当初、新聞の投書、この方の投書ですね、投書でもって事件を知った、したがって御本人に接触したのですが、この人は証拠があるかと開き直られたと訴えられていました。では、証券会社の方ではこの顧客の指示どおりのことをしたかどうかという証拠を一体持っているのだろうかということを私は逆に考えてみた。これは法務大臣、裁判をやった場合にこの人が勝てる見込みは、私はないと思っているのですが、どうですか。
  152. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 突然のお尋ねでございますので、果たして裁判の結果どういうことになるのか、これは軽々には申し上げることはできませんけれども、少なくとも当初の契約の指示に反して支店の方で勝手にやったという事実が証明されれば、これはあくまでも証拠に基づいて判断されることでございますけれども、何らかの責任が生ずるということは一般論としては考えられるところである、こういうふうに思う次第でございます。
  153. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私も実はそう思っています。ただ、この人には捜査をするような権限がない。そうすると、大会社相手に証拠を争う裁判で勝つというのは容易ならざることなんですね。このことを考えてみますと、私は、泣き寝入りをさせないような手法というものが今の状態の中では我々の知恵として編み出されなければならぬだろう、そういうことを考えたがゆえに今問題の提起をしたわけであります。いかがでしょう。
  154. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘のような事件というのは、私ども時々聞くわけでございます。お互いの言い分が違うというような問題がございまして、なかなか証拠がないわけでございますが、証券業協会にも苦情処理の機関が設けられております。これは会社自身と違いまして、自主規制機関としてそういう窓口を設けているわけでございますし、我々の方にも時々そういう苦情を申し入れてこられる投資家の方もおられます。我々としてもそれは行政の範囲内でできるだけ誠実に対応したいと思いますし、あるいは協会の方に行かれて御相談をされるというのも一つの方法だろうというふうに思うわけでございます。
  155. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、少なくとも酒巻社長はこの人に謝罪に行くぐらいのことをやるべきだろう。それこそ補てん、被害の弁済をそういう上に立ってするというぐらいのことをある意味で会社は考えるべきだろう。私は大変これは許すべからざることだと思っているのですよ。四十年間かかって営々として働いてきたわずかな退職金を含んで、そしてそれがにわかに半分になってしまった。お先は真っ暗である。こういう状態が今実はたくさんあるのですね。  先日も証券局長から苦情の件数というものを聞きましたが、大蔵省に直接大変な苦情が寄せられています。私たちはこういう事態を放置するわけにはいかない。証券業界の民主化というものをこの機会にもっともっと進めるべきだろう。そのことをまず意見として述べながら、どうしても私は、これは酒巻社長の辞任は当然だろう。また佐藤さんをだました石松支店長、あるいは一千万円もの売買を電話で応対するあなたも悪いというような形で述べた本社の森本という方、この人たちの役職の辞任、当然大蔵省として野村証券に対して指導をすべきではないだろうか。もう、単に一つ事件にすぎないということはわかっていますが、一罰百戒しか今日の証券業界の体質を改めさせる方法はないのではないだろうか、そういうふうにさえ考えるのですが、いかがでしょう。
  156. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘の案件、お聞きした内容によりますと、証券会社の営業姿勢として大変不適切な行為だというふうに思うわけでございます。事案の詳細について私どもにお知らせをいただければ、私どもとして、行政として可能な限りの指導、あるいは証券会社に対して事情聴取するということも含めまして、可能な限りの対応をさせていただきたいと思います。
  157. 和田静夫

    ○和田(静)委員 じゃ、まあ大蔵省の処理に対して期待をいたしておきますしっかり相談に乗らせていただきます。  ところで、なぜ事故がしょっちゅう起こるのか。これは言うまでもない、話を実は売っているからなんですよ。ついでに約束をするからなんですね。はっきり言いまして、証券営業マンは、顧客の利益のために働いているのではありません。今日、ノルマを果たすために働いている。野村証券の営業マンの一カ月のノルマが幾らであるかということを御存じでしょうか。私は、今回詳細に調べてみました。一人ずつのノルマは当然禁じられていますから、ノルマは禁じられているという答弁しか返ってこないでしょう。しかし店のノルマを営業マンに割り当てるわけでありますから、結果は同じことなんですよ。手数料収入だけで野村は営業マン一人当たり一千万から五千万円だそうであります。そうすると、手数料収入一千万円ということは、大体株の売買高で一体幾らになるのだろう。これは証券局長、どうでしょう。
  158. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 現在の株の手数料は、実は売買代金によって段階的になっておりますものですから、一概に簡単に計算ができないわけでございますが、もし平均的に大体百万から三百万ぐらいの売買金額ですと一%ぐらいの手数料になっております。したがいまして、もし一千万の手数料をこのような比較的小口の取引で上げようといたしますと、その百倍ということになりまして、十億円ということになるわけでございます。
  159. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そういうことですね。そうすると、これは一回や二回で十億円動かせばいいですよ。ところが、いつもいつもそううまくはいかない。そうすると、苦し紛れに小口でやるということになりますね。ごみというのだそうですが、ごみと呼ばれる小口をもってノルマを達成しようとする。そのえじきになった人の被害というのは、これは深刻ですよ。こういう実情、これをやはりしっかり私は今日踏まえていただきたいと思うのであります。  これは非常に深刻な話であります。私が話を聞いた人は、証券界のことを豊田商事と同じだと言って怒っていました。顧客をだましてお金を集めているが、例えば自動車のセールスマンは客をだましたとしても自動車は客の手に残る、株は何も残らない、こういう言い方をしていますね。私は、そういう意味で、後ほど触れますけれども、大蔵省の全体の認識は甘いのではないかということを、ある意味では現場のことを何も知らないのではないかということを非常に憂える。  総理大臣に伺いますが、今度の証券不祥事で、証券界の体質そのものが実は私は問題だと思っているのです。その意味で構造的問題であります。その点はどういうふうにお考えでしょう。
  160. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 証券業界の構造というのは、これはやはり一つの本来の面からいけば、資金を産業に投資するための一つの資金を集める機関でもある。そういう構造、そういう目的で国の経済のある意味では一面を支えてきたという面もあります。しかし、その中でいろいろ今指摘をされておるような不祥事は、そういった本来のあるべき姿の中のルールに反するようなことが起こるからこのようなことになってきておるのだと思いますから、私は、公正な社会という理念から見でこれは許さるべきことではないという考え方を当初から持っておりました。そのように理解をしております。
  161. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、第一に手数料の問題があると思っていますね。日本の場合に売買数量がニューヨークなどよりかなり大きいのも、これはしばしばトラブルが生じている、そういうのも証券会社営業マンの手数料稼ぎに私は大きな原因があるのだろうと思わざるを得ません。自由化すれば問題が解決するという問題じゃもちろんありませんが、そして昨日来ここでも論議をされましたが、証券国際化を今日考えてみる。証券の不祥事の続発を考える、そうしますと、やはり自由化の時期に来ているのじゃないかなということを考えざるを得ませんが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  162. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 昨日も本委員会において申し上げましたとおり、現在既に手数料につきまして自由化をいたしましたアメリカ、イギリス、フランス等において起きております弊害があることも委員御承知の上での御質問であると思います。ですから、それを私は繰り返すつもりはありません。そしてこの株式委託手数料というものの取り扱いにつきましては、引き続きその水準については私どもとして国際的な動向を勘案しながら機動的、弾力的に対応して見直しを行っていくべきものであると心得ておりますとともに、諸外国における実情等も踏まえまして、制度のあり方についてもやはり今後検討していくべき課題であると認識しておると昨日もお答えを申したとおりであります。
  163. 和田静夫

    ○和田(静)委員 手数料とともに当然もう一つの問題は、証券大手が大量推奨販売をしていることですね。例えば石川島株、これを考えてみますと、野村証券は、八六年八月から八八年七月まで二年間に市場の三九・七%に当たる四十九億株も買っているのですね。同じく市場の三六・二%に当たる四十四億六千八百万株を売っています。この間に株価は百五十円の安値から千百二十円まで一気に七倍もはね上がる。この間に野村は百五十億円の手数料を稼いでいますね。市場の同社株売買の四割近くも野村が売買したというのは、これはもう株価操作以外の何だろうか。これを操作ではないともし考えるとするならば、考える方がちょっとおかしいのではないだろうか。かてて加えて、野村の「ポートフォリオウィークリー」は八七年七月六日号から八八年三月二十二日号まで、三十六週連続して石川島播磨株を取り上げているわけですね。ウオーターフロント株というのだそうですけれども、実際には再開発計画はなかった。当時の石川島の業績もよくない。調べてみましたが、八七年三月に二百三十一億円の赤字ですよ。これは大蔵省が禁じている大量の売買、推奨販売そのものだったんですね。大蔵大臣、これが私は野村の、いやまあ四大証券ひとしく言っていいんだろうと思うのですが、証券界の実際のやり方なんですよ。そういう同じことがいつでも行われている。例えば、昨日から問題になっています、我が党の山花書記長も取り上げました東急電鉄株も同様であります。八九年十月から野村が中心になって集中的に取り扱われる。株価が急騰している。これは深くもう既に何人かの方が取り上げられましたから述べません。  そこで、証券会社が集中的に一つの銘柄を買う、しかも、それを公式には参考銘柄と称する、こういう状態。そして、営業マンに猛烈にノルマを課して、顧客にまあいろいろと勧誘をさせる。これはもう株の値段が急上昇することをねらっていることである。そういうふうに考えた方が間違いでしょうか。いかがでしょうか。
  164. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が例示を挙げられました例につきまして、私は今初めて拝聴いたしたわけであります。ただ、昨日来、またそれ以前からも閉会中審査等におきましても御論議をいただいております例えば東急電鉄株というものにつきまして、疑念を持ちながら現在も調査を証券局は進めておるわけでありますが、株価操縦を立証するに足る証拠を現在持っておりません。
  165. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、これは世間の常識からいえば株価操作。これは同じ条文なんですね。日本の場合はアメリカからの翻訳した条文ですから同じなのでしょうが、アメリカではこういう株価操作やインサイダーの摘発があって、そして日本ではほとんどこれは皆無である。まあ検察が国際航業株問題で小谷容疑者を逮捕した、ところが大蔵は何もしない。私は、証券法百二十五条は抜かざる宝刀なのか。それじゃいかぬのじゃないだろうか。問われているのは条文の、あなた方が得意とする運用だろう。私は、そういう意味では大蔵省の姿勢に大変問題があるんだということを指摘せざるを得ません。  さらに、もう少しはっきりさせるとすれば、この証券会社の補てんは今に始まったわけではありません、前からあるんです。しばしば事件になったんです。八七年十月のブラックマンデーの暴落時にも大手証券各社が補てんしているじゃありませんか。そして昨年、ちょうど一年ぐらい前の七月の下旬で補てん総額は百六十億円とされているわけでしょう。八九年末にも大和証券が約百十三億補てんした、そして判明して二日間の営業自粛をやった。ことしの二月にも大手各社がワラントの買い取り、つまり補てんをした。これは報道をされました。これらは事実ですよね、今私が指摘したことは。
  166. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今御指摘の点は事実でございます。
  167. 和田静夫

    ○和田(静)委員 そうしますと、私は、今度の補てん事件の根底に明確に営業特金がある、この営業特金があるがゆえにこういうような状態のものが起こってくると指摘せざるを得ないのです。これは、恐らく大蔵省がこの金銭信託の会計処理で昭和五十五年に簿価分離を認めて以降だと私は思うのです。  本題の前にちょっと銀行局長に伺いますが、信託銀行が金銭を預かって、運用は自分でやらないで、そして証券会社が思う存分運用して大きな損が出る、信託銀行は責任を持たない。これでは、信託銀行は何ら役割を果たさないで手数料だけをもらう、そういう機械になってしまっている。こういう営業特金というのは大変疑問があると私は思うのですが、いかがでしょう。
  168. 土田正顕

    ○土田政府委員 信託にいろいろな種類があるわけでございますが、この営業特金に限らずいわゆる特定の信託というのは、多かれ少なかれ委託者からの指図を忠実に執行するということでは共通でございます。  その場合に、それでは信託をしている意味がないではないかという御懸念かと思いますが、信託は、これは御案内のように、財産権を委託者から受託者に移転をいたしまして、そういう意味でこの信託財産は、いわば受託者の財産として管理、処分されるわけでございますので、そこがいわゆる代理と違うところでございます。したがいまして、その代理と違うという意味におきまして、特定でありましてもやはり信託の機能はあると考えております。
  169. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ちょっと私の質問の趣旨と違う答弁でしたが、時間がありませんから急ぎます。  けさ、我が党の松浦委員から指摘がありましたように、信託銀行は、これは金銭信託ですから、いわゆる補てんをしているということが常識になっていますよという指摘を松浦委員はいたしました。そこのところを確認しておきたいのですが、これは補てんしていますよね、信託銀行。明らかにしてください。
  170. 土田正顕

    ○土田政府委員 再々のお尋ねでございますが、そもそもこの損失補てんという言葉が、これは主として特金の方の証券売買のことでいろいろと言われてまいったわけでございますが、この信託の運用につきましてどのような行為を指すのかということにつきまして、必ずしも私ども、明確な定義を考えついておらないわけでございます。私どもといたしましては、重ねて申しますけれども、信託の運用は信託の本旨に従って行われるべきである、そしてそれを具体的に幾つか定めた法律の条項がございます。その法律の条項に違反するような行為があれば、これはやはり法律違反であるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、この損失補てん関係で一番いわば類似のというか関係する規定といたしましては、信託業法の九条の規定がございます。これは元本補てんや利益補足の禁止といいますか限定を、こういうものでなければ元本補てんや利益補足の契約をしてはならないという規定でございます。そのような規定に照らしまして、違反する行為の有無につきましていろいろと検査もし、調査もしておるわけでございますが、本日までのところ、そのような損失補てんといった行為があるという認識をしてはおらないわけでございます。     〔増岡委員長代理退席、近藤(鉄)委員長     代理着席〕
  171. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは、ここのところは事実関係、特別委員会がその他で明らかにしてもらいましょう。  そこで、三月七日の予算委員会で、私は日興証券の問題を取り上げながら一任勘定禁止の問題について論議をさせていただきました。そして大蔵省は約束をしました。結果的にようやく一任勘定禁止の通達が証券局から出ました。まあ私は、やっとという感じでありますが、営業特金も一任勘定と私は同質のものではなかろうかということを考えます。なぜこんな無責任商品を認めたのかというのが非常に疑問なんですが、これは大臣どうしてなんでしょう。
  172. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 過去にさかのぼりましてどうして認めたかと言われますと、ちょっと私わかりませんので、事務方に答弁を、わかる範囲でお答えをさせたいと思います。
  173. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 いわゆる営業特金と申しておりますのは、私どもは特定金銭信託の中で投資顧問契約がついていないものという考え方をしているわけでございます。したがいまして、投資顧問契約がついていないということは、営業特金契約を結びます企業と信託銀行、それで企業が運用の指図権を持っているという、契約上はそういう形になっているわけでございます。その企業の運用権が証券会社に事実上ある程度ゆだねられているというようお形が見られだというのが今回の損失補てんの一つの大きなきっかけでございますが、特定金銭信託という信託の仕組みというものは、先ほど銀行局長から申し上げましたように、これは信託の仕組みとして認められているわけでございまして、その際に投資顧問契約を結ばない形の特定金銭信託というものを信託銀行が企業から受託するというのも、これも法律上は認められている制度でございます。  そういったようなことで、投資顧問契約がつかない形の特定金銭信託、さらにその中で、運用上証券会社が企業にかわって指図をするというような形のものが発生した、それが営業特金であるというふうに我々認識をしているわけでございまして、法律的には特定金銭信託という一つの信託形式を利用したものだというふうに考えているわけでございます。
  174. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは証券局長、一任勘定問題と同様に私は大変疑問に思っています。したがって、しっかり検討してくれませんか、いかがでしょう。
  175. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに、今回の損失補てん問題に絡みまして主な原因は営業特金にあるわけでございまして、私どもも平成元年十二月に通達を出したときに既に、営業特金はできるだけ投資顧問づきにしろという適正化の指導を始めているわけでございます。今回の事件にかんがみまして、特に営業特金につきましては、我々これから証券会社に対して適正化をさらに指導したいというふうに思っております。
  176. 和田静夫

    ○和田(静)委員 その通達ですが、平成元年十二月二十六日に証券局長は「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」という通達を出された。未然防止とは私はよく言ったものだなという感じをこれを読みながら思ったのですが、それから後に損失補てんが続出しているわけですね。それで非常に私は不思議に思った。ここのところがポイントだと思っていろいろ調べさせていただきました。  この通達には日本証券業協会専務理事あての事務連絡がついていましたよね。ここのところがなかなか我々にはわからなかったものだから非常に苦労しました、本当のところ。この事務連絡を見て、なるほどとこう思ったのですよ。それは今まで通達だけが問題になってきましたが、この事務連絡でもって全容が明らかになりますよ。  この通達には、営業特金には文書を取り交わしたものしか認めないと書いてありますね。それ以外は今答弁あったように顧問契約づきとすること、これを平成二年末までにやることと指示されている。証券各社はこの指示を受けて平成二年三月決算で処理をしたわけです。それが今回の損失補てんの実態ですよ、これは。言いかえれば、通達が出たので、そして事務連絡が来たので、それに従うために損失補てんをした、こういうことに私はなるのだと思うのですね。そうなってきますと、これは大蔵省知りませんでした、大蔵大臣も全然初めてでしたなんていう言い逃れは全然できなくなってくる私は事務連絡だとこれは思っていますよ。  なぜ平成二年末までになどと猶予期間を一つは置いたのだろう。これは理由ははっきりしています。この通達が出たのは、ちょうど大和証券で損失補てんがあったことが判明したときですね。時間がありませんから早口でしゃべりますが、つまりお客との話し合い、言いかえれば損失補てんをするか、ひな形に従って顧客から一札もらうかしなければならなくなった。そこで各社は、一札をもらうためにお客にお願いをして回る一方で、三月決算期に補てんした、これが実態でしょう。  ところで、大蔵省は平成二年一月に中間報告を各社に求めていますよ。そこで補てんの事実が判明したでしょう。これは事務連絡にあるわけでありますから。少なくとも、ある証券会社に接触をしましたが、中間報告をした、はっきりしていますよ。よって我々は、証人をここに来てもらわなかったならば話はこれ以上進まないとこう言っているのです。大蔵省は補てんを知っている。当然の認識です、中間報告をしたのですから。これは中間報告の資料を出してもらいたい。  証人の要請については後ほど一括させてもらいます。
  177. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の事務連絡でございます。これはこの通達にあわせまして営業特金の適正化をチェックするために出したものでございます。通達では、営業特金を原則として投資顧問づきにする、あるいはそれができない場合には確認書をとるというようなことでこの事務連絡は出ているわけでございます。  御指摘の既存の特金勘定については、平成二年末までにそういうことをしろというふうに事務連絡で書いてございます。これは、当時のいろいろないきさつはつまびらかではございませんが、やはり投資顧問契約をつける、あるいは確認書をとるというのに時間的な余裕が必要だということで、二年末までというふうにしたのだろうというふうに思うわけでございます。  それから、中間報告の件でございますが、これは事務連絡の4で、上記1及び2の調査指導については一月中に実施しとこうなっておりまして、報告は三月末及び九月末現在ということでこの事務連絡は書いてございます。これに従いまして私どもの、特金勘定といいますかの現状については、平成二年の三月末に報告をもらったということになっているわけでございます。
  178. 和田静夫

    ○和田(静)委員 今も現局長は、だろうと思うという程度しか答弁ができませんから、それで角谷当時の証券局長を証人としてここに、この国会にお出まし願ってはっきりさせたい。したがって、角谷当時の証券局長の証人としての出席をこの国会で取り計らってもらうように、委員長、ひとつよろしくお願いします。
  179. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)委員長代理 理事会でお諮りいたします。
  180. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それじゃ、よろしくお願いします。  この平成二年三月決算に備えて各社が、私が指摘したとおり、駆け込みで補てんをした。が、それは全体の二割ぐらいなんですね。八割は今も営業特金があると私は調査結果で思うのですが、これは今、実態はここで報告できますか。
  181. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 通達に基づきまして報告をとっているわけでございまして、私どもに参りました報告では、投資顧問づきにする、あるいは確認書をとる、どちらかの手段で営業特金を適正化する。投資顧問づきにしますとこれはもう営業特金というふうには私どもは呼んでおりませんが、営業特金のままで利回り保証とかあるいは売買一任をしないという確認書をとるというような措置をとったものが、先ほど申し上げました事務連絡に基づいて平成二年末までにほぼ九九・五、六%適正化されているというふうに報告を受けております。
  182. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここのところは特別委員会にひとつ持ち越させてもらいましょう。  さらに、各社は二年三月を過ぎて、通達と事務連絡という指示に基づいて、年末までにもう駆け込みで処理はすべて終わったのだろうかという疑問を実は持っているのですが、それは今の答弁との兼ね合いで彼ほどにしますが、大蔵省は、この平成二年の三月と九月、それからことしの三月にも調査をしていますね。しなきゃならぬわけです、この事務連絡。そこでも、つまり今回問題になった以後でも補てんがあったでしょう。ここのところは明らかになりますか。
  183. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この報告をとっただけでは損失補てんがあったかどうかというのは必ずしも明らかになっておりません。そういうこともございまして、現在四社に特別検査に入っているわけでございます。
  184. 和田静夫

    ○和田(静)委員 それじゃ、少し検査を、それはけさから論議のあったところですから、時間があればもっと詰めなきゃなりませんが、もう少し結果を見ましょう。  そこで、今度の事件は国税の摘発で明らかになったのですね。国税というのは、当時の国税庁長官は先ほど証人喚問をお願いした角谷さんであります。それで前の証券局長でしょう。さらに証券局から国税に移った課長など幹部が、まあ名前は挙げませんが、いらっしゃいますよね。この証券の話はそういう意味では今に始まったことでは私はないと思っているのです。もう何年も前から調査されていたんですよね。これはおたくの調査課がやっているわけですから、おわかりのとおりですよ。ですから、証券局にも話は行っていたわけですね。証券会社はずっと補てん行為をやっていた、このことは、これは証券局の幹部が知らないはずがない。  結局、有価証券売買会社、神田の三協エンジニアリングを査察が摘発しましたね。そして地検に告発して公になりました。証券局は一体この間、つまり平成二年一月に証券各社から報告を受けて、三月と九月、ことし三月にも調査をして報告を受け、そしてことしの六月末に新聞報道されるまで一体何をしていたのだろうかということを、どういう行政対応をしたのだろうかということを大変私は不思議に思います。何もしていない。表向きは何もしていない。補てんを知っていて、知らなかったでは私は済まない。報告したと先ほども指摘したように会社側が言っているわけでありますから、これはもう証人喚問を実現して、ぜひ会社側からその経過をここでおしゃべり願う以外には今すべがありませんが、それで営業特金を減らすことで済まそうとした。余り減らなかったわけですけれども、これでは私は行政不在だと思うのですよ。総理、私の先ほど来の論議をお聞きになって、そういうふうにお思いになりませんか。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先ほど証券局長から御答弁を申し上げましたように、あるものは投資顧問づき、これはいわゆる営業特金とは外れていく、そしてあるものは契約書を取り交わす、そしてその作業は相当程度に進捗したと先ほど証券局長から御報告を申し上げました。
  186. 和田静夫

    ○和田(静)委員 答弁、大変不満です。したがって、もう一遍重ねて言いますが、証券四社の代表を証人としてこの国会に出席をして、ここの部分の真相というものを明らかにしていただきたい。委員長、お預けしますが、よろしいですね。
  187. 渡部恒三

    渡部委員長 後刻理事会で協議いたします。
  188. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大臣、大蔵省と証券各社は頻繁に情報交換をされているのですよ。私は、それは間違いだということを言うつもりは何もありません。交流し合っているのは、これはもう当然であります。各レベルでの交流がありました。ある意味では、やましいところがないから、大蔵省に要求をしましたらお持ちになったのだと思うのですがね。  例えば四社社長との懇談会。参加者は証券局長審議官二人、先方は四社社長、月一回、八月を除く。それから目的、内容。それから十社社長との懇談会。証券局長審議官二名、全課長、十社社長、月一回、八月を除く。目的、いろいろあります。四社副社長との懇談会。B・S会。日本銀行との懇談会。投資信託委託会社社長との懇談会。株式本部長との懇談会。債券本部長との懇談会。引受本部長との懇談会。国債本部長との懇談会。外国証券会社との懇談会。受託銀行との懇談会。四社投資信託分担役員との懇談会。そして、これは出席者が全部わかっています。一覧になっています。  私は、ついでに言っておきますけれども、銀行局と金融業界等との懇談会も同じような形で一覧で持っています。これだけ交流があるわけであります。しかも六カ月ごと報告も受け、先ほど来指摘したように、調査もしていらっしゃいます。特に平成二年一月には中間報告も受けています。その後三月にも補てんがある。これでは私は証券局の責任を問わざるを得ませんよ、総理大臣。いかがでしょう。
  189. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員はしなくも申されましたように、御要求があり、大蔵省としてその事実をそのままに報告をさせていただきました。それは、私自身その中身を存じておりませんけれども、それぞれに目的を持って会合を持っていると思います。
  190. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私はこれでさっき全課長というところを申し上げましたね。全課長となりますと、大蔵省と証券会社の懇談会に検査課長も出席をされているということになるわけであります。それでは幾ら法律を改正しても十分な不正摘発はできませんよ。結局大蔵省の外に検査機関をつくる以外にはない、それでないと国民に説明ができない、私はそういうふうにここで指摘をし、そのことをこれからの論議の中で少し詰めていきたい。意見として述べます。  大蔵省と証券会社がインフォーマルな形でつき合っていらっしゃいますから、国税調査で問題があることがわかっていても、マル査が摘発するまで証券局は対策を打てなかったのだと私は考えるしかありません。したがって、これは証券会社の責任だけでは済まない。証券局の責任も非常に重要である。大蔵大臣のこれは責任である。私は大蔵大臣辞任を要求いたします。
  191. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員の御指摘は厳粛に受けとめます。ただ、私は政治家としての責任のとり方にはいろいろなものがあろうかと思います。そして、私自身この問題の中で御指摘を受けるような事実を一つずつ解明をしながら再発防止に向けて努力をしていくことが今私に課せられている責任であると考えておりますことも申し添えさせていただきます。
  192. 和田静夫

    ○和田(静)委員 しかも、私は昨日来の論議を聞いていましで、行革審に頼んだ以外は大蔵省任せ。何もしないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、総理大臣、これはあなたの責任でも私はあると思うのですよ。このまま先延ばししてこの国会では何も証券行政の改革がもし行えないというようなことになると大変です。この機会、総理大臣、私はあなたも大蔵大臣とともに責任をとって、これは非常に重要な事件でありますから、辞任をされてしかるべきだと思っているわけでありますが、総理見解を承ります。
  193. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 再三申し上げておりますように、行政府の長として私は責任は重く受けとめております。同時に、この問題が起こりまして以来、大蔵大臣にも厳正な対処を強く求めるとともに、これはほっておいていいというものではありませんから、再発防止をするために今までここで幾多御議論になったような、例えば通達、それによって聞かれなかったではないかというようないろいろな問題等も含めて、これは証券取引法の改正でそういったことができないようにするとか、きちっとした事件の再発防止のための法的措置までこの国会で考えたい、そういったことをきちっとしていくことが私の責任のとり方である、こう考えて、努力をしておるところであります。
  194. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私はそこまで申し上げたのはなぜかといいますと、今回の証券不祥事に伴って大蔵省幹部に対して次のような処分が行われました。橋本大蔵大臣に対して一〇%の減給三カ月、保田事務次官、松野証券局長、中平証券局審議官並びに堀田証券局業務課長に対して訓告。大蔵大臣の七月十日朝の記者会見での発言によりますと、九〇年三月の証券会社の自主報告の際に報告されなかった補てんが国税当局の調査で明らかになったから処分した、これが理由であります。私は、換言すれば、国税の調査で新たな補てんが明らかになり、マスコミに騒がれて問題が大きくならなかったならば大蔵省が監督責任を問われることはなかったというふうな感じをこれで受けざるを得なかったがゆえに、実は総理以下の責任の重さというものをここで強調させていただいたわけであります。  法制局長官、私ちょっと伺いますが、訓告というのは国家公務員法で言う懲戒処分じゃありませんよね。これは、私は参議院十八年間何遍もやってきたことでありますが、解釈変わっていませんでしょうね。
  195. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  突然のお尋ねでございますが、訓告は公務員法上のものではないと私は承知しております。
  196. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私は、今それははっきりしましたからいいのですが、そこで、大蔵省幹部の処分をした後に準大手や中小の証券会社の損失補てんの状況が明確になった。そうすると、補てんの状況が処分後に明らかになったのであれば、大蔵省幹部の準大手や中小の証券会社に対する監督責任というのは、これは大蔵大臣どういうふうに考えますか。
  197. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 この処分の仕方等につきまして御意見は率直に承るつもりであります。そして、私自身の進退に関しても友情ゆえの御忠告と私は受けとめさせていただきたいと存じます。  ただ一点、私は、先ほどの委員のお話の中で、行革審に預けっ放しでそれで事終われりという御指摘に対してだけは省としての名誉にかけて申し上げたいことがございます。  私は衆議院の本会議におきまして、今さまざまな角度からいただいております御指摘というものを大きく五つの原因に分類をいたしました。あえて今これを全部繰り返して申し上げようとは思いませんけれども、その五つの原因に対してそれぞれどういう努力をしていくべきかという考え方につきましても私は本会議で申し上げたつもりであります。その中には、業界行政のあり方という形で今委員が御指摘になりましたような、今まで保護育成という色彩の強かった証券行政というもの、私は最近、むしろ今委員からも何回が御指摘のありましたように、例えば営業特金に対してその適正化を求める、あるいは、結果的に踏みにじられだとはいいながら、損失補てんを禁止する通達を出そうとしてきたこと、あるいはディスクロージャーの制度その他、私はただ単なる保護育成め行政から行政は変わろうとして努力をしておったと思います。それが結果として遅かった、力が足りなかったという御指摘はそのまま素直にちょうだいをしなければなりません。しかし、その中で、大蔵省としてその姿勢を変えようと努力をしておりますことは、ただ単に行革審に監視機構のあり方につきまして、むしろ我々はそれ以前に作業に着手をいたしておりました。しかし、その検討の状況まで含めて御報告をし、そして我々自身ももちろん勉強を続けていきますけれども、結果を行革審の御判断にゆだねようとしておりますことは、ただ単に行革審に責任をほうり投げてしまって大蔵省はそれで責任事終われりとしているんだということだけは、もしそのような誤解をされたとするならば、これは私は大蔵省職員全員が心から傷つく御指摘であると思います。おしかりは甘受いたします。しかし、どうぞ大蔵省自身が信頼を取り戻すための努力を手抜きをしておるというようなことはお考えにならないでいただきたいと心からお願いを申し上げます。
  198. 和田静夫

    ○和田(静)委員 証券局長その他から事情をいろいろ聞いていますから、今大臣が答弁をされた部分について私は知らずに言っているわけではありません。ただ問題は、今度起こっている事件の重さというものをもっとやはり真剣にとらえないといけない。そういう観点に立って述べています。それから大蔵大臣については、もう今御自身で言われましたけれども政治家としてのあなたの将来というのはだれしもがある一定の見方をしているわけでありまして、そこに向かって一体どうみずからを処せられるのかというのは、これは政治家の身の処し方の問題でありますから、そこに誤りなきように私は実は求めておきたい、そういうような意味で申し上げておきます。  証取法五十条違反についての話にちょっと移りますが、損失補てんが事前に約束されていた証拠となるものがあるかないかということで大変消極的なようでありますが、事前であろうと事後であろうと特定の顧客に対して不公正な取引方法を用いて不当な利益を与えたならばこれは独禁法十九条に違反する犯罪行為になるのではないだろうか、法務大臣、いかがでしょうか。
  199. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりました独占禁止法十九条に不公正な取引方法の規定がございます。いろんな行為類型があるわけでございますけれども、正常な商慣習に照らし不当な利益を供与することによって顧客を誘引する、これは独占禁止法の不公正な取引方法に該当するということになっております。
  200. 和田静夫

    ○和田(静)委員 また、損失補てんを行っていた証券会社の取締役たちの会社に対する賠償責任、これは当然商法二百六十六条によって私は生ずるのではないだうかと素人目に考えるのですが、これは司法当局、いかがです。
  201. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 一般論として申し上げますと、株式会社の取締役がその業務執行に当たりまして、法令または定款に違反する行為を行って会社に損害を負わせる、こういう場合には会社は当該取締役に対しまして損害賠償責任を追及することができる、こういうことになっております。商法上、株式会社の取締役は、その業務執行に当たりまして、会社に対して善管注意義務を負っておる。これに違反しまして会社に損害を与えた場合には、法令違反行為であるということでこの損害賠償責任を負うことになるわけでございます。  そこで問題は、この損失補てん行為が法令違反行為に当たるかどうか、こういうことになるわけでございますけれども、このいわゆる補てん行為が具体的にどのような動機あるいは目的を持って、またどのような事情のもとにされたものであるか、詳細な事情が明らかになっておりませんので、具体的に今直ちに結論を申し上げるということは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、取締役個人の責任の有無は、個々の取締役につきまして、個々の事案ごとに関係するあらゆる事情を精査して判断さるべきものと考えておる次第でございます。
  202. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ここのところ、さらにこの場所でなくても少し当局と詰めさせてもらいましょう。私は、述べたとおりに考えています。  さらにもう一つ、企業と証券会社の連絡によるインサイダー取引ですね。それから証券会社そのものの営業促進という方針によって行われる株価操作、これは明確に私は違法行為だと考えているのですが、ここのところはどうでしょう。
  203. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 インサイダー取引につきましては、さきに法律を整備していただきまして、一定の重要事実が公になる前にいわゆる会社内部者あるいは内部関係者が取引をするということを禁止したわけでございます。したがいまして、インサイダー取引に当たるかどうかという場合には、一定の重要事実というものが存在するかどうかということで判断をし、かつそれがいつ公表されたかということが一つの決め手になるわけでございます。  それから、御指摘の大手証券会社による推奨販売でございます。  これにつきましては、私どもも非常に問題意識を前から持っているわけでございまして、そういうあらわれが、例えば余り一つの銘柄について一つの証券会社のシェアが大きくならないようにというような指導もしているわけでございます。株価操作、百二十五条の問題、これは確かに大量推奨販売というような形で行われる場合があるということも私ども十分認識をしているわけでございます。ただ、なかなかその確証を得るというのは難しいという問題がございます。例えば東急株の問題にいたしましても、結局はその投資家が動員をされているという形になっているわけでございまして、投資家に対してどういう働きかけをしたかというのが一つの決め手になるわけでございます。その辺、問題意識を持ちながら現在検査でさらに詳しく調べているというところでございます。
  204. 和田静夫

    ○和田(静)委員 大蔵省が、今回は事後の損失補てんであって証券取引法に触れるような行為ではないという見解をずっと大蔵委員会その他から引き続いて述べられているように読み続けてきましたが、大蔵大臣総理の答弁の中でもありましたが、免許会社の規範に著しく反する行為であるということを私は非常に重要視するのです。ということは、損失保証がどうかというような問題以前に、これらの証券会社は免許会社であること、この免許会社としての対応にふさわしくない、このような会社がいつまでも免許会社として証券業を開業していることが私は当然許されないのではないだろうか。どうですか、これは免許を取り消すぐらいのことを考慮の中に入れられますか。
  205. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今日この損失補てんという行為が極めて大きな問題となり、御論議をいただき、私ども自身の監督責任を含めてまことに残念なことと考えております。そして、再々御答弁を申し上げておりますように、この損失補てんという行為は、損失保証とは異なり、当然のことながらあってはならない行為ということで多分ありましょう。どこの国も法律条文にこれを禁止していないというのが事実であります。そして、たまたま元年の十一月、私は初めてこうしたケースに遭遇をしたわけでありますが、特定の証券会社による損失補てんというものが問題となり、その結果、先ほど来御論議をいただいております元年十二月の通達をもって改めて損失補てんというものを禁ずる通達を出しました。結果としてこれが踏みにじられてしまったということを私は否定をいたすつもりはありません。  ただ、同時に、私自身のこの処分を考えていきます中で、過去一体こうした行為にどのような処分を行ってきたのか、これは当然大蔵省自身も責任を問われることではございます。同時にその通達違反という行為あるいは明確に法律に違反をした行為等々の過去の処分の実例をも調べてみました。結果として実は私が知りましたことは、過去に法律に反する行為に対しましての営業自粛が、一番長いもので三日でありました。こうしたことも今回判断を決する私の心の中に問題として浮かばなかったとは決して申しません。また、行政通達、通達に違反した行為に対し、過去営業自粛二日を要請いたしましたものは、その当時の記録あるいは報道等を見てみますと、重い処分という報道がされておったことも事実であります。  今後、こうした事態は絶対に再発をさせてはならないことでありますし、証券市場そのものがただ単に投資家のみならず広く国民一般から信頼を回復するためには、当然のことながらその行動は厳粛なものになるでありましょう、また慎重なものになるでありましょう。願わくは今委員がお述べになりましたような処分を検討しないで済む状態に一日も早く業界が立ち直っていただきたい。そして、何よりもまず大蔵省自身行政国民の信頼を取り戻すものになるようになってほしい、心から願っております。
  206. 和田静夫

    ○和田(静)委員 私が取り上げたのは、これはもう申すまでもありません、証券取引法第三十一条では免許審査の要件として、業務を公正かつ的確に遂行できること、十分な社会的信用を有するものであることとなっているわけですね。日本の証券会社は十分な社会的信用があるかといえば、これはないと言った方がよいでしょう。そして、公正でないことは、特定の顧客に損失補てんをしていたことでももう明らかであります。となれば、既に免許の審査基準に合わないということになるわけでありまして、よって私は、免許を与えた大蔵省の責任も一方ではあるかもしれませんけれども、これら法条に適合しない会社に対するところの免許取り消しの処分などというものも構想の中にあってしかるべきことだろうというふうに実は考えたがゆえに取り上げさせていただきました。いかがでしょう。
  207. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御意見は、私は真剣に拝聴したつもりであります。そして、今回は、私どもなりに判断をいたしました結果、さまざまな御批判を受けておりますけれども、既にそれぞれに対して社内処分を求め、また営業自粛措置を指示いたしました。今後において、委員が引用されました条文を再び思い出さずに済む状態に早くなってもちいたい、心から願っております。
  208. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀総裁、大変お待たせしました。  まず、前回の七月一日の公定歩合引き下げの折には、これはアメリカからの利下げ要請があったことは間違いないでしょう。そして、今回のドイツの公定歩合の引き上げで、日本に対してはアメリカから一段と利下げ圧力があるのではないかと私は推測をいたしていますが、G7でもアメリカの強い要求で、表現はともかくとして協調利下げが盛り込まれました。BCCIの問題に関する日本に対しての対応を見ましても、アメリカ、イギリスなどのやり方は自分の都合のいいように日本に協調を求めるということではないだろうか。  そこで、端的な話、この秋以降に再度金利の引き下げがあると見ておいてよろしいでしょうか。
  209. 三重野康

    三重野参考人 お答え申し上げます。  委員のお言葉ではございますけれども、七月一日の我が国の公定歩合の引き下げは、米国の要請によったものではございません。私どもの総合判断によったものでございます。  それから、ドイツの利上げ、これは委員御高承のとおりでございますけれども、旧西独地域の景気拡大、大幅な賃上げ並びに東西ドイツ統合に伴う政府支出の増大のもとにありましてドイツの物価が非常に悪化している。したがって、そのインフレを抑制するためにとられた措置だというふうに考えております。  ドイツは上げ、日本は下げたということで一見ばらばらのようでございますが、G7、これは四月と六月と両方がございましたが、そのコミュニケにもはっきり示されておりますけれども、協調というのは同じ方向に金利を上げたり下げたりするわけではございませんで、それぞれの国の経済事情が違いますので、その相違の中にありましてインフレなき持続的成長を遂げる必要な措置をとるということで合意を見ておりますので、ドイツの措置も日本の措置も、これもともにそういった合意に沿った線で行われたというふうに理解をしております。
  210. 和田静夫

    ○和田(静)委員 最後のところは。日本の秋以降……
  211. 三重野康

    三重野参考人 日本の利下げ、ドイツの利上げも、これはともに今申し上げましたG7の合意に沿ったもの、こういうふうに私どもは理解しております。
  212. 和田静夫

    ○和田(静)委員 いや、この秋以降に再度利下げを……
  213. 三重野康

    三重野参考人 申しわけありません。  これは、現在は、七月一日に公定歩合を下げた後の情勢の推移を注意深く見守っている段階でございまして、秋以降については何も考えを持っておりませんで、あくまで物価安定を中心に据えた慎重な金融政策をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  214. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ソ連情勢との関係でちょっと日銀総裁にも含んで伺いたいのですが、ドルのファンダメンタルズは弱いわけですが、今度の事態が長引くとするとドルの価値が下落をする、世界通貨に深刻な影響を与えていくのではないだろうかということを私は危惧をいたしていますが、西側諸国は、この対策にこそ今真剣でなければならないんだろう。したがって、緊急サミットが話題になっていますが、その課題の中心でもこれはなければならぬのだろうと私は思っていますが、ここのところは総理はまずどういうふうにお考えですか。
  215. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 緊急サミットの問題につきましては、きのうも記者会見のときに御質問がありましたけれども、具体的にそのようなことにはまだなっておらず、また、当面サミット参加国の間で連絡を取り合って、ソ連情勢に風しては、今、昔の冷戦時代に戻らないようにすることが絶対大切ということと、人権問題の保護等に関する点が中心であって、今御指摘の為替の問題その他の問題については特にやりとりをいたしておりませんので、担当官から報告をいたさせます。
  216. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀総裁、いかがでしょう、私の今の質問。
  217. 三重野康

    三重野参考人 お答えいたします。  ソ連の今度の政変がどういう経済に対して影響を与えるかでございますが、ソ連経済の実態並びにソ連経済と世界経済との関連を考えますと、今度の政変が直ちに我が国を含めまして世界経済に大きな影響を与えるというふうには考えておりません。  ただ、今度のことは、いわゆる資本市場、外為市場にかなりのショックを与えたことは事実であります。例えば日本の場合は、第一日の月曜日には千三百五十円ダウが下がっておりますし、外為、為替レートも一円五十銭ほど円安に振れております。しかし、その後冷静をたんたんと取り戻しまして、昨日は二百三十円、きょうは約三百何十円株が戻してきておりますし、それから為替レートにつきましても、月曜日は百三十八円四十銭でございましたが、きのう、きょうと百三十七円へやや円高方向へ戻してきております。こういうふうでございますので、もちろん今後のソ連情勢推移によってはどういうふうに動くかわかりませんから、引き続き注意深く見てまいりたいとは思いますけれども、ここで直ちに大きな変化があるというふうには考えておりません。
  218. 和田静夫

    ○和田(静)委員 短期の市場での短期金利のさらなる低下現象というのは、これは一体どういうことを意味しているのでしょうか。一説によると、日銀の金融面からの株価下落防止策の一つではないだろうかというような指摘もありますが、これは総裁、どうです。
  219. 三重野康

    三重野参考人 七月一日の公定歩合引き下げに伴いまして、短期市場の金利が下がってきております。これは、当然そういったことの反映でございまして、日本銀行が特に株価を意識して低目に誘導しているというわけではございません。
  220. 和田静夫

    ○和田(静)委員 金融、銀行問題に入らせてもらいます。  時間を前段とり過ぎましたが、実はこれは一九七九年七月二十四日、ですから十二年前、「金融の"黒い霧"を暴く」私がエコノミストに書いた小論文であります。十二年前に書いたことと今起こっていることが全然変わっていないのに驚くのであります。このときには富士銀行雷門支店問題、住友銀行横浜支店問題、さらには近畿相互銀行天六支店、第一勧銀西銀座支店、関東銀行、東京信用金庫それから大光相互銀行、大光相互銀行は御存じのとおり。駿河銀行。そして「深部で結びつく暴力団」「銀行など金融機関と暴力団との関係も、金融にかかわる事件を語るうえで、見落とすことはできない。」という私の指摘。「通常、金融機関は、事件が発覚しでもできるだけ内閣で済ませようとする。表面化しても担当者を処分して一件落着という形で済ませようとする。経営者の責任までが問題となることはほとんどない。しかし、私は、事件は金融機関の体質、経営責任と切り離して考えることはできない。」云々といきまして、最後に「くさいものにふたをし、事件をおこせば担当者を処分して終わりにする。そんなことを繰り返しているかぎりは、体質改善は不可能である。」「大蔵省、金融界は金融事件をこそ、深くかみしめて反省すべきである。」こういうふうに当時書かせてもらった。参議院の決算委員会だとか予算委員会理事や大蔵委員会理事を務めながら論戦をしたことをまとめて、十二年前に書いたものであります。  今度、事件がずっと連続的に起こるのを見て、十二年間も、十年一日といいますが、全然変わっていないのだということを深く感ぜざるを得なかったわけであります。富士銀行、旧埼玉銀行、東海銀行、大阪の東洋信用金庫、ここで幹部行員による不正融資事件が続発をしていますね。いずれも架空の預金証書を偽造して、それを担保にノンバンクから融資を受けるという手口なんですね。ノンバンクが肩がわりを求めてきたとき、銀行側というのは一体肩がわりをする義務というのはあるんですか、ないんですかね。東洋信用金庫の場合に架空預金の総額が預金総額に匹敵する多額に及んでいますよ。それで、肩がわりをするのか、この融資をどちらがかぶることになっても多額の焦げっきが出る可能性がありますが、この辺は大蔵省どういうふうな指導をされるわけですか。
  221. 土田正顕

    ○土田政府委員 いろいろ経営者みずからもまた当局の方も努めておりますはずでございますが、事件が絶えないのはまことに遺憾でございます。その都度個別の金融機関につきましては経営者の責任を含めていろいろと適切な責任の究明というようなことは心がけておるはずでございます。今後なお一層努力をいたします。  そこで、お尋ねの今度のいわば偽造預金証書、それを担保に入れた、それについてのいわば発行の名義人であります。その金融機関の肩がわりの義務があるのかないのかということでございますが、これにつきましては一概にあるとかないとかいうことを申すことはできないと思います。これまでも似たような事件は実は過去に多少あったかと思いますが、具体的には裁判になり、そして非常に長期間をかけてなかなか解決がつかないというような実例もございます。したがいまして、これは全くケース・バイ・ケースということであり、最終的には法律論というような問題になることもあり得るかと思います。  ただし、ここで最後にお触れいただきました東洋信用金庫の問題につきまして一言申し添えさせていただきますと、東洋信用金庫は現在通常の業務を支障なく続けております。それで、御指摘のような、偽造預金証書の金額は大きいわけでございますが、この信用金庫は、偽造預金証書が作成された経緯などに基づきましてノンバンクなどに対する債務を全面的に否認をしております。これは現状そのままでございます。したがいまして、その肩がわりとか被害とかその状況につきましては、なお今後当事者間の交渉を見守らなければならない状況にございますので、現段階では何とも、どうなるかというようなことは私どもからは言えないのではないかと考えております。
  222. 和田静夫

    ○和田(静)委員 日銀総裁、これは私読んだ記事でありますから、昨日も通告しておきましたが、「日銀の内部では「不動産がらみの短期の融資など、銀行の手続きで間に合わない場合にこうした手口が使われていた可能性があり、富士、東海などの例は氷山の一角かも知れない」という見方も出てきている。」というのでありますが、これは何か日銀は調査をずっと行われているそういう過程での話題でしょうか。もし調査があれば、結果について少し報告をしていただきたい。
  223. 三重野康

    三重野参考人 私どもの知る限りは現在出ています事件だけというふうに思います。特別な調査はいたしておりません。
  224. 和田静夫

    ○和田(静)委員 総裁、どうもありがとうございました。  東洋信用金庫の不正融資をちょっと問題にしてみますが、特に日本興業銀行なんです。日本興業銀行が多額の融資をしていたことは、大臣、明らかになりましたよね。興銀は、もう釈迦に説法ですが、産業界に長期の設備資金を供給することを主目的としている。長期信用銀行法の中の母体ですよね。そうすると、この興銀がその趣旨のもとに預金者から集めた資金を個人に対する異常なほどの融資に振り向けてしまった、異常なほどの融資に振り向けた。そこにのめり込んでいったということは、これは非常に重大な問題だろうと私は思うのですね。こういうような行為、大蔵省の従来の銀行行政をこれは真っ向から否定する行為とも受け取れるのですが、大臣はどういうふうにこの興銀のあれをごらんになっているのでしょう。
  225. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 長期信用銀行法上では、設備資金、長期運転資金の貸し出し及び預金の総額の範囲内での短期資金の貸し出しというものは、法人、個人を問わず長期信用銀行の業務として可能であると承知をいたしております。したがいまして、個人に対する貸し出しか直ちに長信銀法の違反になるというものではないと思います。ただ、一般論としてこれは申し上げれば、一個人に対しまして多額の融資が行われるということは、債権保全上に問題が仮にない場合でありましても、銀行の営業のあり方として慎重に欠けるという点がないとは言えない、これは事実そのとおりだと私は思います。  ただ、それ以上具体的な問題に入りますことは、事実の解明が進んでおらない今日の状況でコメントは控えさせていただくべきであると思います。
  226. 和田静夫

    ○和田(静)委員 興銀が多額融資の関係から東洋信用金庫の支援に加わっているわけですが、個人に対してその使途も明らかにしないままに異常に大きな額の融資を行った上に、これはまだわかりませんが、東洋信用金庫がノンバンクの融資を肩がわりすることにもしなって、そして興銀が多額の支援をする必要が出てくれば、これは興銀の経営責任は私は免れないのではないだろうかということを考えるのです。興銀のこういうような行為を事前に察知できなかった大蔵当局の、何といいますか、大蔵当局と興銀の関係というのはどういうふうになっているのだろうということも実は思うのですけれども、これはどういうふうに対処をされるつもりでしょうか。
  227. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいま大臣から申し上げましたお話の続きでございます。  法律上、長信銀行の業務として今回のような業務が可能であったかと申せば、それは可能でございます。ただ、一個人に多額の融資が行われるということは、それはそれなりのやはり反響なり意味というものを考えるべきであろうという御意見はあり得るかと思います。それで、実はそれは私どもも興銀の方から話を聞いたわけでございますが、便宜、これは新聞に出ておりますような表現をかりますと、これは興銀の頭取は、「結果的に見れば個人に対する融資としては過剰だった。」「本件については確かにやりすぎた。債券の客だったということで安易に流れた。」云々というような表現が新聞に出ております。実はそれと同趣旨のことを私の方にもお話はあったわけでございますが、ただ、いずれにいたしましても、そういう経営上の判断がどうであったかという問題はございますけれども、まだ、この行動の結果がどのような結果を法的に生むかということは、これは現在、事実関係の解明、まさに進んでおりませんのみか、これからの問題でございますから、そのような解明が進んでおりません段階で当局として立ち入ったコメントを申し上げることは適当でないと考えるわけでございます。  それから、東洋信用金庫の行く行くの話、それから経営支援云々という話のお尋ねでございますが、現在興業銀行が名を連ねておりますのは、東洋信用金庫側の要請に応じまして万一の場合のいわば資金繰りについて協力する用意があるという意向を表明しているというところまででございます。それで、今後東洋信用金庫について支援の問題が生ずるのかどうかということは、現段階でその問題にまで立ち入ることは適当ではございませんで、先ほど申し上げましたように、この預金証書の効力を争うというようなこともあり、それからまた主債務者でありますこの女性の財産その他の状況を調べるのもこれからでございますので、それ以上立ち入った議論をただいますることは適当ではないと考えております。
  228. 和田静夫

    ○和田(静)委員 委員長、私、今お話がありましたように、興銀問題というのはある意味では全貌はわからないわけでありまして、興銀の頭取の証人を要請をしておきたいと思います。これも先ほどのと一緒に御協議願いたいと思います。よろしいですか。
  229. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で後刻協議いたします。
  230. 和田静夫

    ○和田(静)委員 富士銀行の不正融資事件に蔵相の秘書がかかわられた、私はゆゆしき問題だろうと思うのです。大蔵大臣、いろいろな場所で大変反省をされていますのですが、私は、やはり単なる議員秘書ではなくて金融行政の最高責任者である大蔵大臣秘書ということで、融資等の紹介に当たって相手方に与える影響力はまことに大きい。これは大蔵大臣の肩書、地位を利用したことと同様ではないだろうか。既にリクルート事件の裁判でも、秘書が秘書がという弁明はもう通らないわけで、私はその意味で、大蔵大臣の監督不行き届きということについて強く責任を追及をこの機会にしておきたいと思います。  さて、大阪府民信用組合、イトマンの問題でありますが、このイトマン問題は三月七日の本予算委員会でいろいろ指摘をさせていただきました。そして約四カ月半かかって大阪地検、検察等のいろいろの努力があって、もう御存じのとおりの状態になっていますし、大阪府警に移された新たなるゴルフ場問題などというものも今出ている状態になっているのですが、大阪府民信用組合が伊藤容疑者、許容疑者開運融資で九一年一月末時点で約一千二百億円、同信組の融資総額の半分近くに上っていたとされますね。これは、富士銀行が大阪府民信組に対して千三百五十億円にも上る紹介預金をやった。こういうような紹介預金という形で大手の銀行が中小金融機関に預金を回す、密接な関係をつくり上げている、これは頻繁に行われていることなんでしょうか。伊藤容疑者、許容疑者への巨額の融資が行われていることを富士銀行も承知の上で私は行っていたのではないだろうかと思うのですが、いかがでしょう。
  231. 土田正顕

    ○土田政府委員 あるいはお尋ねの全部についてお答えを申し上げることはできないかもしれませんが、とりあえず私どもの分についてお話をいたします。  その前に、先ほど実は一言、これは繰り返してございますが、御説明で強調すべき点を強調しなかったことがございますので補足をいたしますが、これはさっき申し上げました繰り返しでありますけれども、東洋信用金庫は現在業務を通常どおり続けております。その点をぜひ御理解いただきたいのでございます。  それから、大阪府民信用組合の問題でございますが、一般論といたしますと、金融取引上金融機関同士が他の金融機関から顧客の紹介を依頼されるとかそれにこたえるというようなことは随時あることでございます。したがいまして、紹介預金というようなものの例は必ずしもまれとは思っておりません。ただし、それはそれぞれに紹介する方、紹介を受ける方につきまして個別の営業戦略、個別のいわば打算というようなものは当然あるであろうかと思います。それはそれぞれの金融機関の経営上の判断の問題でございます。  そこで、本件につきましては、事案の実態は委員御案内のようなことでございますが、紹介者であります富士銀行が大阪府民信用組合に預金を紹介するとして、その信用組合がどのようにこれを運用しているかについて富士銀行が十分な知識を有していたかどうかという点につきましては、これは率直に申しまして、現段階で私はどうだというふうに当局として断定するほどの知識を持っておりません。富士銀行はそのようなことは全く知らなかったということを、少なくとも当初事件がある程度明らかになるまで全く知らなかったというような説明をいたしております。  それから、この融資そのものについての問題、それからそれを含めての大阪府民信用組合の今後の経営のあり方の問題でございますが、これは委員御案内のように、信用組合の第一次的な監督権者は都道府県知事でございまして、現在この大阪府民信用組合に対する指導監督は大阪府が行っているところでございます。それで、大阪府の指導のもとに経営の刷新、合理化その他の経営改善策を策定し、その実行について努力中であるというふうに私どもは承知しております。私どもとしては、関係者の努力によりまして大阪府の考えておりますような計画どおりの効果が上がることを期待しているところでございます。
  232. 和田静夫

    ○和田(静)委員 ちょっと検察関係まとめて、時間の関係がありますので質問いたしますが、イトマン事件に関して、河村前社長の逮捕容疑である自社株買い集めについては、それに先立って磯田前住友銀行会長が河村前社長に会って社長退任を迫っていたことが明らかになっています。また、絵画の不正取引について私は三月七日の本予算委員会で取り上げさせていただきましたが、そもそも磯田前会長が長女のいらっしゃる会社から絵画を買ってくれという申し入れをやったのに対してこたえたものである、そういう事実関係がありますね。とかくうわさのあった伊藤前常務をイトマンに紹介したのもまた住銀である川  こう見できますと、イトマン事件の裏には住友銀行の影響力というのが、あるいは意向というのが、あるいは、ひいては磯田前住銀会長の意向が強く反映していることはもはや間違いないと見るのが妥当でしょう。したがって、磯田前住銀会長の証人の要請を私は理事を通じて理事会にいたしておきました。委員長に善処を求めておきたいと思います。  大阪地検としてもそういう視点に立って河村逮捕に当たって磯田さんから事情聴取をされたのだと私は見ているのですが、そのあたりで地検は何を主眼として磯田さんの事情聴取をされたのか。私が前国会で指摘した特別背任というようなことはここでは視野に入っていたのか、なかったのか。  さらには、今の捜査の過程で岩間カントリークラブヘの住銀の関与についてどういうことになっているのだろう。というのは、日興証券、野村証券両証券、このファイナンス会社がそれぞれ二十億円、岩間カントリークラブの会員資格保証金預かり証を買い取ったと言われていますね。この岩間カントリークラブは稲川会の石井前会長の関係する会社であるとされているわけでありますが、住銀がこのクラブのメーンバンクであって、そして役員も派遣していると聞く。そういう実態が明らかになってきているんだと思うのですが、証券会社も単に岩間カントリークラブのみの信用で会員資格保証金預かり証を購入したのではまさかないでしょう。背後に住友銀行の存在があったから関与したのではないだろうか。この辺の関係というのはどういうふうに説明をされますか。  また、一連の住友銀行やイトマンの事件は、その背景に、外圧等による超金融緩和とあの平和相互銀行合併に伴う多額の赤字を埋めて大手トップの座に返り吹こうとする住銀の一つの思惑、利益優先の営業姿勢を加速させたところに私はあるんじゃないだろうかと思っているのですが、その点では大蔵省の金融政策と、銀行を倒産させないという必要以上に過保護な銀行行政がこの大規模な事件を誘発しているのではないかということを危惧いたしますが、大蔵省はその辺に何か御見解をお持ちでしょうか。
  233. 井嶋一友

    井嶋政府委員 報道されておりますようなイトマン株式会社に絡みますいろいろな事件につきまして、委員大変深遠な背景分析をされるわけでございますけれども、また、そのようなことがマスコミその他に報道されておることも私も承知をいたしておるわけでございますけれども、御案内のとおり、また先ほど委員が御指摘のとおり、大阪地検特捜部では、まず、絵画取引に絡む特別背任と、それから河村前社長の自己株取得に関する商法違反及び立川株取得に関する十億円の業務上横領という事件で起訴いたしまして、現在さらに大阪府警におきましてゴルフ場に関する融資問題について特別背任容疑で捜査を継続しておりますので、今後の見通しも含めまして、また背景事情も含めまして、ここで詳しい答弁をすることは私自身不可能ではございますし、また差し控えるべきであろうと思います。  ただ一点、いろいろなことを申されましたけれども、磯田前会長につきます疑惑という御指摘がございました。これにつきましても一連のイトマン事件が現在捜査が継続されておるわけでございますから、そういった中で、現時点で、現段階で、前会長のこういった一連の事件に関する関与といったことをここで申し上げる立場にはないわけでございますけれども、少なくとも報告を受けております限度におきましては、磯田前会長にそのような刑法上の疑惑があるというふうな報告は受けておりません。
  234. 土田正顕

    ○土田政府委員 お尋ねの後半の方に私どもの方への御質問がありましたかと思いますので、ごく簡単に申し上げます。  今度のいろいろな事件の引き金といたしまして、確かに長期にわたって金融緩和が続き、その間に企業の、何と申しますか銀行に対する要請というものがさま変わりになりまして、従来のような製造業中心の融資構造からサービス業、さらには財テク方面への融資へと構造がかなり急激にシフトせざるを得なかったということは一つあろうかと思います。  それからまたもう一つ、これにつきましては多少申し上げたいこともあるのでございますが、過保護行政とおっしゃいますけれども、実はたまたま時期的には一致いたしますが、この昭和六十年過ぎぐらいから当局としましては全面的な自由化と、それから競争原理の導入に踏み切っておりまして、それで、例えば預金金利の自由化を初め、今まで例を見ないような自由化が現在進行しつつあるわけでございます。その自由化の進行に伴いまして一段と銀行間の競争が激しいものになったということは、それはございます。したがいまして、融資構造の変化と、それから収益競争、業績競争の先鋭化とが結びついたということはあるいはあるかもしれませんが、過保護行政と結びついたというふうに言われるのは、私どもとしてややそうは思っていないということを申し上げたいと思うのでございます。  ただ、いずれにいたしましても、そのような地合いの中で、ある銀行はやはり融資そのもののあり方に適正を欠いたというようなものもあり、それから、最近の事件にありますような、やはり内部管理の方がややおろそかになった結果、個別の不良職員の不祥事件を未然に防止できなかったというようなところは、それはいろいろとございますので、環境の変化に十分適応した融資構造、それからリスク管理、さらには内部管理体制の整備、それを整えるということがこれからの基本的な課題ではないかというふうに私ども考えております。
  235. 和田静夫

    ○和田(静)委員 検察、答弁ができるかどうかわかりませんが、今度のイトマン事件の起訴時の絵画取引に係る金額五百二十九億円、これは通常小売店頭表示価格の二・九倍、こう言われていますが、この金の流れは一体どうなったんでしょうか。言えますか、言えませんか。
  236. 井嶋一友

    井嶋政府委員 絵画取引に絡みまして被告人のグループが取得いたしました金額、これはそれぞれ多額に上るわけでございますけれども、この使途は当然解明に努力をしておるわけでございますが、いずれ裁判の場面において明らかにされていくわけでございますので、現時点におきましては答弁をすることは不可能でございます。
  237. 和田静夫

    ○和田(静)委員 実はもう起訴されたんだから、ある一定のことは述べられてもいいんではないだろうかと思って。起訴事実の中にあるやつですがね。この使途不明金が約三十九億五千万ぐらいあると言われる。その中で多額の金が近畿放送の前社長福本邦雄さんに流れたという、こういう報道がありますよね。事実関係はここのところは解明されているのでしょうか。  福本邦雄さんといえば、思い出すのは、六つの政治団体の代表兼会計責任者として、政治資金収支報告書にあらわれただけでも年間一億円近い政治献金を動かしている方であり、六つの政治団体とは、南山会・中曽根康弘さん、登会・竹下登さん、晋樹会・安倍晋太郎さん、俯仰会・宮澤喜一さん、とどろき会・渡辺美智雄さんなどである。名義貸しで複数の政治家の政治団体の代表におさまる例は皆無ではない。しかし、当時のあれで言えば、現首相と前首相、さらには次期首相候補と目される政治家の――海部さんは次期首相候補ではこのときなかったのでしょうけれども政治家のすべての政治団体を主宰し、金を集め、配っているのは政界広しといえど福本のほかにはいない。現在六十一歳。新聞記者から、岸内閣時代、官房長官椎名悦三財氏の秘書官ということで著名な方ですが、フジ・インターナショナル・アートの社長さん。  こういう状態の使途不明金は、今の報道等を基礎にして少し推理をさせてもらって、政治資金への流れについても関心を持ってお調べになっている、こういうふうに判断をしておいてよろしいですか。
  238. 井嶋一友

    井嶋政府委員 今回のイトマン事件は、御案内のように、一種の金融というか、融資に絡むいろいろな金の流れといったものが複雑に絡み合う事件でございまして、そういった過程においてこういった背任行為が行われたというふうに判断されるわけでございますから、その入手した、融資を受けた、あるいは任務に背いて取得した全員の流れにつきましては、当然検察としては捜査をしておるわけでございますけれども、その点につきましては今後の公判における立証の問題にもなりますので、御勘弁をいただきたいと思います。
  239. 和田静夫

    ○和田(静)委員 これは適切な質問であるかどうかはちょっとあれなんですが、郵政大臣、近畿放送の福本前社長の前の社長は内田和隆さんと言われるのですが、彼は今問題になっている許永中氏の関係者なんですよ。そして、今回のさつま観光事件で事情聴取を受けたと報ぜられている人なんです。私は、なぜこういう一連の人脈が公共的使命を帯びたKBSに入り得たのかというのをちょっと不思議に思うのですが、郵政省、民間放送なんかの人事の関係では何かの関係がありますか。
  240. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 この個々の問題につきましては私も詳しく聞いてはおりませんが、流れといたしまして郵政省も注意深く見守っているところではございます。ただ、いろいろな放送局の場合に、人物を厳しくチェックするということは今まで当然やっておるものと思っております。
  241. 和田静夫

    ○和田(静)委員 もう時間がありませんのであれですが、ジャパンライフで、昨日山花書記長が通産大臣との関連の問題を述べられましたので、次のようなことについてちょっと見解を承りたいのです。  韓国の新聞の報道をもとにしてでありますが、ジャパンライフの韓国の合弁会社である山隆産業の磁気寝具販売が韓国経済企画院公正去来委員会にマルチ商法と認定されて是正命令を受けた。この販売方法は日本側から持ち込まれた疑いが強いと報じられていますが、こういう韓国当局の動きというのを御存じでしょうか。  それから、韓国商工部がことし五月に、貿易赤字を理由に、他の二十数品目とともにジャパンライフの製品の輸入禁止措置をとっていますが、その背景にはマルチ商法の問題があると見られているわけですが、これについては承知をされていますか。  日本国内におけるジャパンライフの販売方法について、マルチ商法の疑いはないのだろうか。国民生活センター等でジャパンライフに関する苦情や相談が持ち込まれているということはありませんか。独占禁止法や訪問販売法との関係で調整する必要があるのではないでしょうか。  それから、ジャパンライフが国内での販売の際に、がんなどに効くというふれ込みの健身法という行為を行っていますね。そうすると、勧誘の手段としているというこういうやり方は、事実だとすると、薬事法との関係は一体どういうふうになりますか。  それから、ジャパンライフの役員に、昨日山花書記長が指摘をしました中尾通産大臣の元秘書が名を連ねていらっしゃいます。全然関係がないというふうにきのう大臣言われたのですが、この方は今なお通産大臣の秘書としての名刺をお持ちでありますから、大臣が過去に  それから北海道山栄会ですかの会長か何かの名刺ですね、過去に巨額の政治献金を受けられたことは、これは公表されていることですね、三千八百万ぐらいの。そうすると、日韓間に波紋を今韓国の新聞では広げていますね。マルチ商法、現物や通商問題は大臣、主管大臣のわけですから、この辺のことはどういうふうに責任論としてお考えになっているのだろう。  それから、韓国の捜査当局の認定では、ジャパンライフの韓国進出に当たって、韓国のマスコミは、日韓の暴力組織が連携したスキャンダルとの視点で報道が繰り返されていますけれども、この捜査内容というのは日本では把握をされているのだろうか。  それから、山隆産業は韓国側五一%、日本側四九%出資の合弁会社ですっそうすると、韓国での報道によりますと、韓国側の株主は名義を貸しただけで、実は韓国側の出資金も山口隆祥会長が持ち込んだのではないかという疑いが持たれている。この場合に、虚偽合弁会社設立として韓国の外為法違反などに当たる可能性があるように思われますが、これは事実関係を把握をされていますか。日本国内法との関係では、これはどういうふうになりましょうか。
  242. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 ただいまの御質問に対しまして、一部の新聞において、ジャパンライフの韓国における子会社がいわゆるマルチ商法を行って問題になっているという旨の報道がございました。我が国におきましては、いわゆるマルチ商法については、これが販売法に触れる、訪問販売法に言う連鎖販売取引というものに該当する場合には、同法の規定を受けまして取引の適正化が行われているわけでございます。ただ、本問題は、韓国においては韓国法人が行っている販売活動についての問題でありますがために、一義的には韓国政府がその対応措置をとる問題であると理解をしておるわけでございます。同国政府も、これまで公正取引委員会の是正命令などの措置をとってきているものと承知しております。通産省としましては、引き続き事実関係の把握に努めるとともに、韓国政府対応をじっくりと注目してまいりたい、こう考えておる次第でございます。  昨日の飯野元秘書につきましては、昨年八月六日にやめた、こういうわけで、それ以来私自身もほとんど会っておりませんので、また同時に、通産大臣になって以降の秘書ではありませんから、昨年の八月以来やめておりますので、通産大臣秘書という名刺を、肩書は私は与えた覚えもございません。また、そのとおり本人も答えているようでございます。  以上です。
  243. 関口祐弘

    ○関口政府委員 先生お尋ねのジャパンライフが韓国におきまして設立した現地合弁会社山隆産業につきまして、韓国の司法当局が捜査をしているという点でございますが、この点につきましては、新聞報道等で私ども承知をしているところでございます。ただ、これまでのところ、韓国の捜査当局から私どもの方に情報の提供等を受けておりませんので、報道以外の点につきましては承知をしていないところでございます。  また、先生の御指摘で、山隆産業の出資に関しまして、外為法云々に触れるのではないかというふうなお尋ねでございますけれども、私どもそうした事実関係を把握していない段階でございますので、果たして日本の法令に触れるものかどうか、判断をいたしかねる状況でございます。  それからまた、さらに国内での問題ということでございますけれども、現在のところ、私どもジャパンライフ社につきまして、訪問販売法に抵触するような事案につきまして把握をいたしておりません。  以上でございます。
  244. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘のジャパンライフの関連会社の韓国におけるマルチ商法の問題につきましては、昨年十月だったかと思いますけれども、韓国の独占禁止当局が事実認定を行い、排除措置をとったその内容を私ども承知をいたしております。韓国の独禁当局の事実認定がそのまま事実であるとすれば、仮に同じような商法が我が国で行われれば、先ほど通産大臣がお答えになりました訪販法ないし独占禁止法でやはり規制されるような商法であると思います。
  245. 川崎幸雄

    ○川崎政府委員 ジャパンライフが販売しております磁気治療器と薬事法の関係でございますけれども、当該治療器は装着部位の凝りと血行をよくするという効能効果として承認されているものでございまして、決してがんに対する効能効果は認められていないものでございます。したがいまして、このように認められていない効能効果を販売に際して宣伝した場合には、これは薬事法違反となります。
  246. 和田静夫

    ○和田(静)委員 最後にですが、太平洋銀行なんですよ。太陽神戸三井、富士、東海、三和の都銀四行の支援体制がああいう形でできましたよね。ところが、いろいろ訴えられてくることを見ますと、預金量、融資量ともに横ばい状態です、これは大蔵さんにも部屋でいろいろ説明をしましたが。そうすると、預金量そのものの内容も極めて悪いわけですね。自由金利預金が平成二年九月期で約七〇%。これは都銀、地銀、信託銀行など百五十四行中後ろから三番目です。これは全然改善をされない。九一年三月期決算で、業務純益は九〇年三月期に比べて七割強、経常利益で六割強の大幅減益となっていますね。九〇年九月中間決算時点に比べれば、九一年三月期決算では、株式相場があのときは回復した分、有価証券の含み益で回復したんだと大蔵といろいろ話し合っているときは、あの時点はそうだったんです。ところが、今はもう大変なことになっていますね。こういうふうに推移をしていきますと、これはどういうふうに一体前途を考えたらいいのだろう。これが一つです。  二つ目は、千代田ファクタリングの方も、ああして分離して、一千億円の債権回収はやはり遅々として進んでいませんよ。回収済みは数十億円程度であって、平成元年十二月からは支援四行くの金利支払いも停止をして、未払い利息が合計百億円ほどになっていますね。このままではこの一千億円も最終的には回収できずに太平洋銀行本体の延滞債権となるのではないか。こういう回収をもしできなかったときの債権はどうなるんだろう。  時間が来ましたので、最後ですが、最上恒産絡みのあの約一千億円の部分ですね。この延滞債権を除いても、太平洋銀行本体でまだ五百億円からの延滞債権を抱えていましょう。その上一千億円の債権もということになりますと、延滞率二十数%ということになりますよ、これ。実質的に単独経営が困難になる。私は、四行支援体制は完全な大蔵の指導であったが、失敗なんじゃないか、これ。四行支援体制を組んだ大蔵省の責任というのは重いと思っているんですけれども、しかし、ここで何か手を打たれることを考えていらっしゃるのかどうか、一遍尋ねておきたいのです。一千億円の債権の回収問題を含めて今後どういうふうに一体やられていくのか、今後とも四行支援体制を継続するのか、それとも他の再建策を検討するのか、ここのところを少し、今方針をお持ちならば明らかにしていただきたい。  同時に、ずっと質問が残ってしまったんですが、BCCIとの関係で一言だけですがね。石川島播磨重工業グループ百三十七億円、東京商銀信用組合百二十五億円、堀田産業二十五億円、この預金回収不能ですね。ここを今問おうとは思いませんが。外国為替取引に伴って、先ほどの興銀ですがね、興銀三千億ドルでしょう。そうすると、これは未回収になっていますな。興銀の頭取が来られたときに一遍質問させてもらって少し詰めたいと思うのですが、こういうものについて何か今後対策というのはお考えなんですか。BCCIについても同時に答えてください。
  247. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず、太平洋銀行の方でございますが、これはいろいろ経緯はございますけれども、やはり個別金融機関の経営内容の問題でございますので、立ち入ったコメントは差し控えたいと存じます。やはりここのとこち、いろいろ経営構造、収益構造、御指摘がございましたが、やはり最近の金融自由化の進捗などによりまして、そもそも全国銀行の利益そのものが二年連続減益になっておるという厳しい状況でございます。各金融機関それぞれ経営の維持向上に苦心をしておるところでございます。個別の債権の処理その他につきましてはお答えは差し控えさせていただきますが、本日の御懸念は十分拝承いたしまして、今後なおいろいろ考えてまいりたいと思います。  それから、BCCI事件でございますが、これにつきましては、やはり我が国でも初めての経験でございます。それで、この問題につきまして特別これまで日本当局のとりました措置が迅速を欠いたとか、一般預金者の保護に欠けるところがあったとかいうふうには私ども考えておりません。ただ、この問題を調整いたしますには、単に日本当局のみならず、海外の金融監督当局との間の連絡協調体制を具体的にどのように組むことができるかという、そういう国際的な協議案件となる要素が非常に多うございますので、今後の課題でございますが、なかなか具体的なスキームを組み立てることは容易ではなかろうと現在考えておるところでございます。
  248. 和田静夫

    ○和田(静)委員 興銀の三千億も。
  249. 土田正顕

    ○土田政府委員 失礼いたしました。為替決済の仕組みでございますが、地域が離れ、時差があります関係で、たまたまそのある時点で仕掛かり中でありました為替取引につきましてそういうリスクが発生することがあり得るわけであります。それで、そのような例は前もございましたし、今度の場合にも御指摘の銀行がちょっとたまたまそういう不幸な事態に遭遇しておるということでございます。これも国際的な金融リスク管理の中の一つの問題でございまして、やはりこれも今後金融当局間の協調により何らかの有意義な解決策を見出し得るかどうか、今後の研究課題である、そのように考えております。
  250. 和田静夫

    ○和田(静)委員 どうもありがとうございました。
  251. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  外務大臣から発言を求められております。この際、これを許します。中山外務大臣
  252. 中山太郎

    中山国務大臣 お許しをいただいて、その後のソ連情報を御紹介したいと思います。  日本時間けさの十時、モスクワの午前四時に、ソ連・モスクワの大使館からは、私服を着たグループがロシア共和国政府建物中央口から入ろうとして、押し返された。ロシア共和国内部に私服を着た攻撃に気をつけるように警告が出されているといったようなことがございます。  続いて、午前五時、日本時間の十一時でありますが、新しい攻撃が始まる可能性があり、ロシア共和国内部に警告がなされているというニュースがモスクワに流れております。それでその理由として、ビテブスク空挺師団の二個連隊がミンスク街道を通って市内に入りつつある。戦闘車両は約六十両。また、別の戦闘車両がレーニン通りを移動中であるということが言われております。  また、日本時間の十二時二十分、現地時間で六時二十分でありますけれども、ロシア系ラジオの報道として日本大使館が聞いておりますのは、ロシア共和国政府建物周辺には装甲車数台が見える。昨夜半の衝突による死者は二名、負傷者は二名。チェルナビン海軍総司令官がロシア共和国支持に回った。それから、エリツィンロシア共和国内の軍司令官に対し、同共和国への服従を要求をしているということでございます。  なお、日本時間の十二時五十分、これはモスクワ時間の六時五十分でございますが、ブルブリス・ロシア共和国国務長官は、クリュチコフ・KGB議長と本件に関し二度話をし、その際クリュチコフが、ロシア共和国政府建物への攻撃は行わないと述べたといって報道が流れています。  日本時間の一時十五分、現地時間の午前七時十五分でありますが、朝六時の国営テレビの報道によると、本日未明、カリーニン・サトーボエ交差点で二名死亡。丸紅からの情報によれば、空港の状況は平常どおりと言われております。  日本時間の一時四十分、モスクワ時間の七時四十分でありますが、日本大使館員が現場を確認した結果として次のように連絡をしております。本日未明、カリーニン・サトーボエ交差点で死亡したのは五名。うち二名は銃撃によるもの、三名は車による轢死。後者は、本日零時三十分ごろ、カリーニン・サトーボエ交差点南側のバリケードを装甲車約十両が突破しようとした際に発生をしたもの。なお、その際、先頭の装甲車一両が燃え上がっている。  で、日本時間の午後二時、モスクワ時間のけさの八時でありますが、現在の市内の状況につき、ソ連外務省-サトーボエ、カリーニン通り-ロシア共和国建物-動物園において、連邦軍の戦車また装甲革等は見当たらないということを言っております。  以上であります。
  253. 渡部恒三

    渡部委員長 はい、御苦労さまでした。  次に、仙谷由人君。
  254. 仙谷由人

    仙谷委員 日本社会党の仙谷でございます。  ただいまの外務大臣報告にもございましてソビエトの状態が非常に気がかりでございますが、日本の経済自身も今度の金融・証券スキャンダル、あえてスキャンダルというふうに呼ばせていただくわけでございますが、この金融・証券スキャンダル、考えてみますと、甚だ深刻な事態ではないかというふうに私は考えているところでございます。  総理大臣総理大臣は昨年来、企業の社会的な責任、そしてまた消費者中心の社会をつくるんだ、あるいは公正という言葉もよく口にされるところでございます。私は、その総理大臣の演説を拝聴をいたしておりまして、さすが我が徳島の三木武夫先生のお弟子さんだなというふうに考えておるところでございますけれども、今度のこの金融・証券スキャンダル、まあ大手銀行、大手証券会社を初めとする証券会社のほとんど、あるいは私どもが学生時代に就職したいなと思っていましたいわゆる一流会社のほとんどが何らかの格好で関係をしておる、こういう事態総理がいつも言われる社会的存在としての企業あるいは企業の社会的責任、消費者の保護あるいは消費者中心社会、公正、こういう観点からいたしまして、総理は現在どういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  255. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、私自身が唱えておりましたのは公正な社会、これを目指し、同時に心豊かな社会ということも常に言ってまいりました。今起こっておる問題についてどう思うかと言われますと、私自身にとっても非常にショッキングな出来事でございました。それはなぜかというと、公正な社会というのは、やはり今おっしゃるように、みんなが額に汗して頑張ってこの国、この社会をきちっとしたものにしていこう、そういう努力をみんながいろいろなところでしてきた。しかし、ふと立ちどまったときに、何か、自分は額に汗してまじめに働いておるけれども、こちらではそうではなく、うまいことのできる部分があるのではないかというような疑問が起こってはいけない、私はそう考えます。  ですから、そのようなことに関しては再三申しておりますように、行政府としてはその責任を重大に受けとめて、このようなことが再び起こらないようにするにはどうしたらいいかということを今鋭意考えておるところでありますし、もう一つは、やはり物事を決断するときに、社会的な指導的な立場にある多くの方々は、どうかすべてを自己の利益ということのみに余り基準を置かずに、金銭万能主義的な考え方をとらずに、それが余り横行するとどうしても利己主義になってきます。利己主義がはびこるということは、是非善悪の価値判断の基準というものが往々にして矮小化されて乱れがちであります。社会が公正であるためには、用意ドンというときのルールはやはり公正でなければならないんだということを私は最近もう一回かみしめながら、そのような社会になっていくようにいま一度考え直して政策努力をしていかなければならぬということを厳しく受けとめて考えておるところであります。
  256. 仙谷由人

    仙谷委員 総理大臣はショッキングだとおっしゃいましたけれども、私は別にショッキングでも何でもないわけであります。こういうことは我々が日常的に生活する上で間々経験すること、断片的な事象については経験をしてきたわけでございます。私が前の職業でございます弁護士をやっておりましたときには、断片的に経験をいたしました。こういうことがこういう広範囲に、そしてまた深くなっておるというところまでは気がっかなかったわけでございます。まさに構造的問題になっていたということが大問題なのではないんじゃないでしょうか。  今ちまたのといいますか公刊される本をあるいは雑誌を拝見しますと、日本の資本主義は、市場経済はマフィア資本主義である、あるいはきれいな言葉で言いますと、法人資本主義である、なあなあ資本主義である。まあいわば事業会社、金融機関、官庁がなれ合い、もたれ合ってどうもこういう荷造の市場を、市場経済をつくったのではないんだろうか。これは、よほどの覚悟で腹を据えて、構造的な変革をなし遂げなければ日本の市場経済は甚だ危ういのではなかろうかということを最近感ずるわけでございます。  一人一人はまじめに働く勤勉な社員が多うございます。野村証券はノルマ証券と言われています。セブンイレブンと言われております。朝の七時から夜の十一時まで必死で働く、ノルマをこなすために必死で働く、会社総体としては間違った方向へ行っている。これが日本の資本主義だったわけでございます。住友銀行も同様なことが言われております。私は、わき目も振らず勤勉に、勤勉を通り越して超勤勉に働く、そのことがかえって事態を深刻にしておるというこの矛盾に思いをいたしますと、どうやったら解決できるのか、その点について総理大臣あるいは大蔵大臣、大ざっぱで結構でございますのでお答えをいただきたいと存じます。
  257. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本院におきましても繰り返し申し上げてきたことでありますが、この事件全体における行政当局の責任を私は否定をいたしません。この点については私自身が深刻にこの問題を受けとめております。その上で、特にこの証券の問題につきましては私は五つにその原因を分類してみました。  そして、そのまず第一は、ルールが不明確であったということであります。これはまさに取引一任勘定取引あるいは損失補てんの禁止などを内容とする証券取引法の改正法案を今国会において御審議を願いたいと考えておりますこと、同時に、これから先考え一つずつ処理していかなければならないことでありますが、今までの通達行政というものを振り返ってみまして、その通達というものを全部洗い直していく。その中で、自主規制団体にお任せをすべきものは行政の手を放し自主規制団体にそれをお預けをする、法令化すべきものは法令化する。この作業は、相当通達の数が膨大でありますようで、今国会には残念ながら間に合いません。しかし、できるだけ早くこうしたものをまとめていきたい。そして同時に、口頭による行政指導というものが今日まで問題を生んでおりますから、こうしたものを果たして全部廃止できるかどうかわかりませんが、原則的に廃止したいと思います。また、相場操縦的な行為の禁止に係る法令についてもさらに見直すべき点がないかどうか、これは証取審の特別部会で御検討を願っておるところであります。  もう一つは罰則という問題であります。これはルール違反者に対しての相応のペナルティーが科されてはいない、そういう御批判があります。今回準備中の証券取引法の改正案につきまして、損失保証や損失補てんを行った証券会社に刑罰を科す方向で検討をいたしておりますとともに、証券取引法違反に対する罰則そのものの見直し強化あるいは行政処分のあり方につきましても、現在行われております法制審議会の御論議を踏まえて必要な見直しを行い、今後法務省等と御相談の上でありますが、できるだけ早い機会に国会にまた御審議をいただかなければならぬと思います。  また、我々自身の検査体制というものにつきましては、先刻来申し上げておりますように、大蔵省として証券のみならず金融検査をも含めた全面的な検討に入りましたが、行革審が御作業いただけるということになりましたので、去る十九日、今日まで検討いたしました内容のすべてを行革審に御報告をし、今後行革審とともに作業をさせていただく、その結論を待つということにいたしました。  また、もう一つの問題として、自己責任の原則というものをどう、もっと徹底させていくかということがございます。これには、証券会社サイドにおいては、仮に、例えば倫理憲章とでも名づけましょうか、法令、通達、諸規則などのルールの遵守というものを明確に規定していただいて、これを通じて証券取引における自己責任原則というものを徹底させなければなりません。投資家サイドにおいてもこの原則が徹底いたしますように、各種の経済団体を初め、各分野の御協力をいただいていく地道な努力が必要であります。  こうしたことから、この考え方の一環として、自己責任原則のある観点から問題のある取引一任勘定取引というものを原則として禁止する、また、損失保証や損失補てんを求めて、これを受けた顧客に対しても罰則を科することを改正法案に盛り込みたいと考えており、関係省庁その御相談をいたしておるところであります。  最後に、行政自身のあり方として幾つかの問題点がございます。  今日まで、私は、敗戦後の月本が証券市場というものを育て上げるために、育成保護という観点からの行政を行ったことが全面的に間違いだとは思いません。しかし、それを切りかえるべき時期に来て、切りかえ始めていたつもりでありますけれども、それが遅かったという批判は甘受しなければなりません。また、そうした中において、例えば委託手数料、これにつきましては既に何回か御論議がございました。これを自由交渉制にした場合での問題点をも含めまして、常にその水準のあり方を引き続いて見直していくと同時に、制度のあり方についても検討を加える必要がございます。また、自主規制機関、どうやってこの機能を強化していただくかという問題がございます。これにつきましては、いろいろな角度で、証券取引所におきましても、また証券業協会におかれてもさまざまな角度で検討を進めておられるようでありますし、我々自身もこれをサポートしていかなければなりません。そして、行政の姿勢として、職員の再就職問題というものにつき、我々はそれによって行政がゆがめられたとは思っておりませんけれども、そうした御批判を受けてきたことにかんがみ、本省幹部職員の証券業界に対する再就職というものを当面自粛したいということを今まで申し上げてまいりました。  金融機関につきましての問題は、この偽造預金証書という、まさにこれは刑法上の犯罪行為に当たるものでありますから、問題の所在は全く異質でありますが、いずれにいたしましても内部管理体制というものをきちんとしていただかなければならないという点において大きな問題を持っておる、そのように考えております。
  258. 仙谷由人

    仙谷委員 最初から結論めいたことをおっしゃられますと話の接ぎ穂がなくなるわけでございますが、今の大蔵大臣の御答弁、二、三考え方を異にするところがございますので、また後にその点は議論をお願いいたしたいと思います。  補てんの問題でございますが、ちょっと大ざっぱに大蔵大臣にお伺いしたいわけですが、この補てんであらわれたこういう現在の事態、これについての日本の市場、金融市場、証券市場に対する影響、それからそれが国際経済にどういう影響を与えているのか、与えようとしているのか、あるいは今後の日本経済全般に対する問題としてどういうことになっていくのか、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  259. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、今回の損失補てん行為というものから起こりました最大の影響は、一般投資家の証券市場に対する信頼性を大きく失わせしめたこと、それ以上に、国民全体の中に広く、特定の者だけが利益を受けるという行為が現実に存したということを知られ、当然のことながら、これは国民の中に極めて大きな不満、怒りというものを招いている、そしてこれは、市場に対する信頼だけではなく、行政に対する信頼にも大きな傷をつけた、私はそう思っております。そしてこの影響を払拭するには、行政といたしましても、また証券市場関係者にも極めて大きな努力が必要なものであると考えております。  しかし、この一点を除きまして、今さまざまな要因の中で市場は揺れ動いておりますけれども、特にソ連情勢を受けて一時期急落いたしました株価というものは、その後じりじりと戻して、それなりに冷静な対応という状況になっております。今後ともにこれは注視をいたさなければなりません。  しかし、本質的に、やはり証券市場が健全性を取り戻し、国民の信頼を取り戻しませんと、一つ国民の資産運用という面から見ましても、また企業の資金調達という面から見ましても、日本経済に必ず将来に影響をもたらすものでございますから、できる限りそうした影響が出てこない間に、我々はその信頼を取り戻す努力をいたさなければなりません。世界有数の証券市場として、その影響は国際的にも当然のことながら考慮を払わなければならないことであり、それだけに、先ほど和田委員からやめろというな言葉をいただきましたが、むしろ、やめて済む責任でありますならば、という思いが私の胸をよぎりましたことも事実であります。全力を尽くして信頼回復のための努力を一つずつ積み重ねていかなければならない、そのように考えております。
  260. 仙谷由人

    仙谷委員 それでは補てんの問題に移らせていただきます。  大蔵大臣は八月二日の参議院の大蔵委員会で、補てんについて、有価証券売買による損失の一部または全部を補てんするため、有価証券の売買の形をとって財産を供与するもの、証券会社が損失補てんの目的としてやったことは、相手の認識にかかわらず損失補てんである、新聞紙上によりますと統一見解と書いてありますけれども、こういうふうに定義をされたことは間違いございませんでしょうか。
  261. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 正確な言葉遣い、一字一句まで記憶をいたしておりませんが、同趣旨のことを申し上げたと存じます。  それは、相手側が認識していない、補てんを受けていないと言うところがあるが、それについてどう思うという趣旨のお尋ねに対するお答えを、そのようにさせていただいたと記憶をいたしております。
  262. 仙谷由人

    仙谷委員 私どもは、今大蔵大臣がお認めいただきましたようなこの補てん、定義されました補てんですね、これがまさに市場機構の担い手である証券会社が、最大限譲歩して、つまり、認識があるとかないとか、あるいは損失保証的なことがあったのかなかったのか、そこのところはまずさておきまして、純粋に何にもなかったけれども損が出て補てんした、こういう場合であったとしても、市場機構の担い手が最終段階で勝手に市場メカニズムを歪曲してしまった、こういう行為である、こういうふうに考えております。  極めて違法性が高いというふうに私ども考えるわけでございますが、大蔵大臣、法律論じゃなくて、先ほどからずっとおっしゃっている今度の証券・金融スキャンダル、そしてこの補てん、そして大蔵大臣がなさった補てんの定義、これから考えまして、この補てんという行為は、大蔵大臣の常識、常識論で結構ですから、これは違法、不法、不当、不正、あるいはグレーだ、正しい、当たり前のことだ、このぐらいに分けますと、どれに該当いたしますでしょうか。
  263. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、委員が引用されましたような言葉でこの事態考えたことはございませんでした。というよりも、私にとりましては、自分がその証券売買というものをいたしませんだけに、要するに事後における損失補てんというようなことがあると全く考えたことがなかったわけであります。それだけに、こうした問題に直面をいたしましたとき、率直に申しますなら常識以前の行為という受けとめをいたしました。
  264. 仙谷由人

    仙谷委員 常識以前ということは、非常識というか常識に反するといいますか、どちらかだと思いますが。  違う聞き方をさせていただきます。この補てんというのは、証券業の信用を失墜させる行為でございましょうか。
  265. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 少なくとも、証取法において損失保証は禁止をされております。しかし、損失補てんという行為につきましては、日本の証取法だけではなく、世界、私の知る限りどこの国の法律でもこれを禁じておりません。と申しますことは、当然のことながら、あり得ない行為という認識で法体系はつくられておるものと思います。聞くところによりますと、自主規制団体の規制ルールの中にはこの損失補てんというものを禁じておるものもあるようでありますが、少なくとも法律にはございません。  私は、元年の十一月に、ある証券会社の損失補てん問題が起こりましたとき、初めてその損失補てんという事態を知った、ケースを知ったわけでありますが、その時点で事務的に説明を受けましたときにも、いわゆる事前に約束をして行う損失保証というものは法律によって禁じられている。しかし損失補てんという行為は、法律上、証取法上禁止をしておらない、しかし非常に問題の多い行為という説明を受けたことを記憶をいたしております。
  266. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと端的にお答えいただきませんと、今の御説明は、もう大蔵委員会の閉会中審査でもこの予算委員会の審理でもお伺いしておりますので、ちょっと端的にお答えいただきたいのですが、今のお話聞きますと、常識以前の問題で、証券業者としてはあり得てはならない事柄だ、つまり、あれば、そういうことが存在すれば証券業者としての信用を失墜するというふうにお認めいただいたということで次に進みますが、補てんというようなことが行われることは、これは取引の公正を害することになりましょうか、いかがですか。
  267. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 正確を期したいと思います。  それは証券会社だけではなく、お得意さんの方にも私は問題があることだと思います。そして、公平性を阻害する行為であることは間違いありません。
  268. 仙谷由人

    仙谷委員 もう一つお伺いしたいのですが、補てんという行為は、投資者の保護に欠けることになる行為でありましょうか、それとも、いや、投資者を大事にするからいいんだということになりましょうか。
  269. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 少なくとも特定の大口の顧客に対してのみ便宜を与えるという行為であり、これは不公平を助長するものと思います。
  270. 仙谷由人

    仙谷委員 なぜこういうことを大蔵大臣にお伺いいたしましたかといいますと、この辺を法律解釈という名のもとにねじ曲げて解釈する方が多いからなのであります。つまり、今申し上げた三つの要件というのは、証券取引法五十条に書かれておる要件なのであります。  法律というのは、御存じのように、当然のことながら社会通念によって、あるいはその時代時代の常識で意味内容というのが付与されなければならない、解釈されなければならないというのは当然のことでございます。常識で考えますと、補てんという行為が証券業の信用を失墜させる行為であって、取引の公正を害する行為であって、全体としての投資者の保護に欠ける、そういう行為であることは疑いを入れない、これが、私は多分日本の大蔵省のお役人の方以外はすべて、私が今申し上げたことに御同意をいただけると思うのですね。法律なんというのはそんな難しいものじゃなくて、すらすらと素直に読めばそうなってぐるわけです。そうですね。  で、五十条は、こういう評価を与えられる行為で大蔵省令で定めるもの、健全性省令というのができております。つまり、こういういわば抽象レベルの評価が与えられる行為、そしてもう一段具体化された行為、具体化するために特定明確性を持たせるために健全性省令で規定をしてある、こういうことになるわけでございます。  私は、この補てんという行為自体が、大蔵省はこの間、あるいは一昨年大和証券事件が公になって以降、いやそれは構成要件として補てん行為自身が禁止されてないから証取法違反の問題は起こらない、そういう前提でこの問題に処してきた、ここがずっと過去、今に至るまでの最大の問題ではなかろうか、そういうふうに考えるわけでございます。  先ほど大蔵大臣、ルールが不明確と言いました。法律の文言というのは、抽象の段階というのがあるのでございます。言語というのはすべて抽象性のレベルがございます。したがいまして、大蔵大臣がおっしゃる事柄も、確かに五十条に書いてあることは抽象的かもわかりません。しかし、そういう抽象的な文言に含まれる行為であれば、その行為が五十条違反の行為である、あるいは五十条違反であるかどうか検討してみる、その検討の積み重ねがまさに先例であります。裁判になれば判例でございます。そして、そういう先例や判例の積み重ねがない限り意味内容が明確にならないというのは、法律の一般原則でございます、今から法務省の方にお伺いしてもいいんでしょうが、ということになると思います。  そこで、私は、この補てん行為自体証取法違反でなかろうか、あるいは証取法違反であるというふうにも思いますけれども、それはさておいて、それを立証するために今から具体的にお伺いをしていきたいというふうに考えるわけでございます。  今度のこの補てん問題で浮き上がってきた事実ですね、相当程度、どういう事実が補てんなのか、自主申告させた、あるいは国税庁が認定したというようなことで発表がされておるわけでございます。ところが、私、ひとつこの問題を明確に問題解決するために一番必要なのは、日時の問題だと思いますね、日時。つまり、いっどの証券業者がどういう相手方に対して、非上場債なのかワラント債なのか国債なのかわかりませんけれども、売って買い戻したのか、このいつというところがすべて出てきてないわけであります。せんだっても大蔵省の方にそれを明らかにしていただきたいということを申し上げたわけでございます。重立ったところを明らかにしていただきたいということをお願いをしたわけでありますが、それはできないというようなことを非公式に言われております。  大蔵省、いかがでございますか。この典型的な事例ですね、今から名前を申し上げてもいいですけれども、典型的な事例について、いっ、だれが、どういう銘柄といいますか、物を売り買い、つまり補てんとみなした一連の行為としてやったのか、これを明らかにしていただく御用意はございませんでしょうか。
  271. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先日の審議におきまして私の方から主な手口について、例えば売買価格差を利用した売買の利益を供与するというような形のごく短期間での、いわば日ばかり商い的なものが一番多いというふうに申し上げたわけでございます。それには、例えば国債を使うあるいはワラント債を使うというようなケースがございます。それからあと、先物、これは国債先物あるいは株価指数先物というものを使って客に利益を落とす、これもごく短期間の間での売買決済を行っているわけでございます。あるいは新発債の割り当てというような形で利益供与を行っているものもございますし、いわゆるクロスを利用して、他市場でのクロスを利用して利益供与を行っているようなものがあるわけでございます。主な手口ということでございましたら、今申し上げたようなことが大体今回の利益補てん行為で使われているということでございます。
  272. 仙谷由人

    仙谷委員 私も、重複質問を避けるためにずっと議員会館の部屋もしくはこの後ろへ来て大蔵省の答弁も聞いてまいったわけでございますが、今おっしゃったようなことは、もう局長あれでしょう、この委員会で十回以上あなたはしゃべっているでしょう。そんなことを聞きたいわけじゃないのです。つまり国債を、日ばかり売買というのですか、なさった、年金福祉事業団はどうもそうらしい、こう言っておるわけですね。五十億にも上る補てんがどういう仕組みで、つまり何月何日に国債を、いいですか、野村が年金福祉事業団に幾らで売って、何月何日にそれを買い戻して、その差益が補てんになったんだということがわからない限り、これからの証券取引法の改正問題の審理なんてできませんよ。ちゃんと事実を明らかにするように、委員長の方から大蔵省の方へ御命令をひとつお願いします。
  273. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 個々の取引について、私どもも全部を把握しておるわけではございません。典型的な例というようなお尋ねでございますれば、幾つかの例をお示しすることができると思います。  手元に今持っておりますのは、年金福祉事業団ではござい」ませんが、例えば野村証券が。日立製作所に対して二十一億円の利益補てんを行っておるわけでございますけれども、これはワラント債の売買で実行されております。ワラント債が二銘柄、平成二年の三月十六日に野村証券から売却をされております。それで、同じ日に買い戻しか行われまして、これはワラントの数量は二千二百フラン十と四千二百三十二ワラント、二銘柄でございますが、おのおの単価が、これは一〇単位ということでございます。これは外貨建てでございますので為替レートが関係してまいりますが、それを同日付で一〇ポイントのものを一銘柄は七二ポイント、もう一銘柄は四五・七五ポイントで買い戻すというような取引が行われまして、合わせて二十一億七千三百万円の利益が供与されております。
  274. 仙谷由人

    仙谷委員 私なぜこの問題にこだわるかといいますと、どうも我々に入ってくる情報だけ拝見いたしますと、事業会社の方は、そんなものは補てんとは思ってない、認識してない、勝手にやったんだろう、一方ではそういう声が聞こえるわけでございます。一方では、大蔵大臣が参議院の大蔵委員会できっちりと補てんの定義をされて、それをもとにこれから証券取引法の改正問題、つまり補てんの構成要件とは何なのかということをつくろう、それがこの国会の一つの大きな課題である、そういうことですね。そうだとすると、今現実にここに二百何十社でございますか、もっとだったのかよく記憶しておりませんが、補てんというふうに証券会社が自主申告し、あるいは大蔵省がこれは補てんだという実態を、事実関係、日にちを明らかにしていただかないと、つまりもっと変わった、換言をいたしますと、この機会に国会が補てんの実態を一つ一つ逐一ケースメソッドをする、ケーススタディーをする、ケースから構成要件という抽象概念を積み上げていくということをしませんと、国会は関係なしにまた法律の中身がつくられるということになるのであります。  これはぜひ、まあ重立ったところといいましても、億を超えておるところぐらいはひとつ全面的に何月何日ということを明らかにしていただきたいと思うのです。国会の委員会に、つまり証券特別委員会でも結構です、予算委員会でも結構です、出していただきたい。大蔵省はわかっておるはずでございますから、出していただきたいと存じます。もう一度大蔵省、出していただけるかどうかだけで結構ですから、御答弁をいただきたいと思います。
  275. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど御答弁いたしましたが、私どももすべての取引を把握しておりません。これは補てん額を把握しておりますけれども、相手先と。御指摘でございますので、できるだけ大きな、すべてというと相当膨大なものになりますけれども、典型的な手口がわかるような具体的なものを御提出したいと思います。
  276. 仙谷由人

    仙谷委員 すべてを把握されてないということでございますが、今まで、話はちょっと飛びますが、大蔵省の方に私いろいろお伺いしましても、この証券取引法百八十四条に基づく報告をさせる、そういう行政処分といいますか行政上の指示を余りなさってないのじゃないか。事はこれだけ大きい肝題になった補てんでございますので、ちゃんと証券会社が法律上の義務として残さなければならない文書ですね、それは大蔵省に報告しなければならない、報告を提出しなければならないという規定があるわけでございますので、なあなあの行政指導じゃなくて、ちゃんとした法律があるわけですから、法律に基づいて報告をさせる、このことが必要だと思うわけであります。その点、大蔵省、いかがでございますか。
  277. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の百八十四条でございますが、これは、証券会社は、「大蔵大臣が公益又は投資者保護のため必要且つ適当であると認めて大蔵省令で定めるところにより、帳簿、計算書こ「その他業務に関する書類を作成し、これを保存し、又は業務に関する報告を提出しなければならない。」という規定でございます。この規定に基づきまして施行令あるいは証券会社省令というのができておりまして、一定の営業報告書その他の作成、保存、提出というのを義務づけているわけでございます。この条文自体はそういう比較的定期的な、あるいは帳簿の作成、保存、定期的な報告というものに使っているわけでございまして、私ども、日常任意ベースで報告をとる、あるいは必要に応じては五十五条の報告の徴収あるいは検査権というものを利用するということで運用をしているわけでございます。
  278. 仙谷由人

    仙谷委員 全然答えになっていませんけれども、今回のこの問題で法律に基づいて報告をとる、私が先ほど申し上げました補てんの実態について、特に日時を特定したやり方、やり口、これを報告をとるというふうにお考えなのかどうなのか、イエスかノーかで結構です。
  279. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど申し上げましたように、必要なデータを提出させていただくためには、報告をとらないとできない部分がございますので、報告をとるつもりでございます。
  280. 仙谷由人

    仙谷委員 日立のほかに今のような典型事例の補てん行為というのは、今御存じのはございますでしょうか。
  281. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 比較的補てん額の大きい例といたしまして丸紅がございます。丸紅の場合、これは日興証券が十六億円の補てんを行っているわけでございますが、これはすべて株価指数、指数にはTOPIXと日経二二五と二つございますが、この株価指数を利用しております。かなりたくさんの取引でございまして、十数件にわたっておりますが、一例を申し上げますと、平成二年の二月十九日にTOPIXの先物を百五十枚買い建てをいたしまして、これは同日で売って余り利益が出ておりませんが、四千百万円の利益になっておりますが、比較的利益が出ましたケースを申し上げますと、平成二年の二月二十七日に日経二二五先物を四百枚買い付けて、同日四百枚売却をいたしまして、これはいわば日ばかり商いでございますが、五億四千万円の利益を提供しております。
  282. 仙谷由人

    仙谷委員 幾らやっても、この問題をやっておりましたら奥が深いといいますか、しょうがないので、この辺で一応この問題はおさめまして次に進みますが、先ほどお約束いただきましたように、できるだけ多くの事例を出していただいた方がわかりやすい。委員長も多分、今の答弁をお聞きになりまして、補てんというのはそんなものなのか、一日で二十一億七千五百万円も入ってくる、そんなやり方があうんであればみんなやりたいですよ、それは。そうでしょう。それであれば、信用さえあれば銀行から金を借りてきてやればいいわけですから。そうですね。あるいはノンバンクだったらいつでも貸してくれもかもわからない、この間までだったら。こういう典型的な事例というものは、まことに私は、これをもって、まあこれは補てんだから損失保証ではないんだ、こういう議論で何とかやり過ごそうとするというのにはちょっと怒りにも似た感慨を持つわけでございます。  ちょっとほかのケースに行きます。山一総合ファイナンスというのがございます。これはどういう事例でございましょうか。
  283. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 山一総合ファイナンスの補てんの取引の明細はちょっと今手元に持っておりませんが、これは山一証券が山一総合ファイナンス、これは関係会社でございますが、これに対して三十六億一千二百万円の損失補てんを行っております。この取引はストリップス債、いわゆるアメリカの国債、米国国債の利札をとったものといいますか、そういうような形のものでの売買が行われているわけでございまして、そういう債券を利用して売買益を山一証券が山一総合ファイナンスに供与したということでございます。
  284. 仙谷由人

    仙谷委員 この山一の分も日時、回数、あるいは補てんとみなされる売り買いですね、何月何日に買って何月何日に売った、あるいは売って買ったか、反対かわかりませんけれども、そういう行為、これを調べていただくことができますでしょうか。
  285. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 山一証券から調べまして報告をさせていただきたいと思います。
  286. 仙谷由人

    仙谷委員 このYGF、山一総合ファイナンス、八七年の十二月に営業特金を四百億円で開設をした、こういうことが、これは報道で伝えられているわけであります。なぜ山一総合ファイナンスという山一証券の子会社が営業特金というふうなものを開設しなければならないのか。新聞紙上によりますと、どこか損が出たので穴を埋めないと銀行から融資をもらえないので、八七年の十二月に四百億円で銀行のファイナンスを受けて営業特金を設定したんだというふうなことが書かれております。ちょっと常識的に考えても、こういう取引はないんじゃないか。これは、例えば先般来問題になっております稲川会の関係の野村証券と野村ファイナンス、この関係でも、要するに、この融資が、いわば法人格が否認されておる、つまり、野村ファイナンスの法人格なんてないに等しいんだ。野村証券の言うことを全部聞いて、たまたまファイナンス会社といいますか、金融子会社をつくっているだけなんだから、これは一体のものだという認定で証券業協会の処分も行われておるようでございますが、常識的に見れば、役員とか資本とかあるいは山一の総合ファイナンスに対する支配力からいいましても、法律用語で言えば法人格否認、まあ一体のものである、こういうことになると思うのですね。なぜこういうことをしたのか。  私は、内部の方からも入ってきた報道によりますと、どうもこれは引っ越しだ、疎開だ、飛ばしてある、こういう話が入ってきておるのであります。引っ越しとは何だ、疎開って何だ、こういう話ですね。簡単に、まあ私もよくわかっていないのかもわかりませんけれども、損をした客の受け皿になっておる。つまり、どんな人か知りませんけれども、もともと別の事業会社あるいは個人が、特金とか株の取引で損をした人の、これを補てんをするためにそっくりそのままその株を山一総合ファイナンスに移した、多分それの集積ではないだろうかということが言われておるわけです。つまり一人の分しゃなくて、一社の分しゃなくて、多数の損をした人の分がここに入っておるのではなかろうか。八七年の十二月といいますと、御承知のようにブラックマンデーの直後でございます。こういう引り越しとか飛ばしとか疎開と言われるやり方がどうもあるようであります。大蔵省、その点御存じでしょうか。
  287. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どももその飛ばしとかいうような言葉をいろいろなところで聞くわけでございますし、非常に問題意識を持って現在ちょうど検査中でございます。そういったような飛ばしあるいは引っ越し、疎開というような、あるいは損を集約するというような行為が実際に行われているのかどうか。これは会社の外、証券会社の外でございますからなかなかトレースが難しいわけでございますけれども、そういう情報があることは十分認識をしておりますし、そういう問題意識を持って検査をしているところでございます。
  288. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど和田議員の方からも話が出たかもわかりませんが、例の八九年の、我々が知ったのは、十一月の二十七日とかいうふうに言われておりますけれども、大和証券の一番最初に大きい報道として流れた補てん行為、これは今局長おっしゃったまさに引っ越しの例じゃないんでしょうか。私は新聞紙上で見ただけでございますので、事実を証拠で確認をしておりませんけれども、有価証券販売会社に、あるお客の値段が下落した株を簿価で、そもそもの買い入れ価格で引き取らせた、そして子会社か関連の証券会社と思いますけれども、引き取ったその証券会社は穴埋めに困って、大和証券と引き受けた証券会社の間で多分交渉が行われて、大和証券は大和ビル管理というところの株をどこかにはめ込んで、それで補てん、今度は第二次補てんをした、こういうふうに報道はされておりますけれども、こういうのはこの引っ越しの、疎開の典型的な事例なんじゃないんですか。
  289. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに大和証券の御指摘のケースは、たしか三協エンジニアリングという会社だったと思いますが、そこに損失が発生して、それを補てんしたというように聞いております。私どももその点については完全に確認をしているわけではございませんが、なかなか別の会社のことでございますので難しい問題がございますけれども、先ほど申し上げましたように、そういったようなケースではないかということで、ほかにもそういう類似のものがないかということで検査をしている最中でございます。
  290. 仙谷由人

    仙谷委員 それじゃ、この大和証券の件も鋭意努力をしてお調べをいただいて、委員会報告をしていただきたいと存じます。  さっきの問題にちょっと返りますが、日立、そしてお話をいただきましたのは丸紅のケースでございましたか、この二つのケースでお伺いしたいわけでございますが、そもそもこの日にこういう行為をやる前段階でどのくらいの損が出ておったということなんでしょうか。
  291. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもとしてはそこは把握しておりません。
  292. 仙谷由人

    仙谷委員 これはぜひ把握をしていただいて報告をいただきたいと存じます。  今度の証券取引法の改正案、構成要件を拝見しましても、損失の全部または一部を補てんし、もしくは利益を与え、――もともと利益が出ておっても損失保証の約束がある場合、あうんの呼吸で積み上げる場合と、いろいろあると思いますので、先ほどお願いしました日時を特定して報告をいただくときに、幾ら損が出ておったか、これをちゃんとお調べをいただきたいと存じます。  新聞紙上によりますと、京都市職員共済組合というのが二十億円の特定金銭信託を組んで九〇年の三月の段階で解約をしなければならない、そのとき三億六千三百万の評価損が出ておった。そこで三月の十九日に六千八百八十万でワラントを購入して翌日四億三千八百九十万円で売却した、一日で約三億六千三百万円の評価損に該当する損を取り戻す、こういう売り買いが行われたというのが報道をされておりますけれども、大蔵省で確認なさっておる事実も、このとおり間違いないんでしょうか。
  293. 滝実

    ○滝政府委員 私どもの所管でございますから、私から御答弁申し上げます。  ただいまの問題は、仰せのとおりでございます。b仙谷委員 この京都市職員共済組合の方も一日で三億六千万余りの収入が得られた、それで損を取り戻した、それでも損失補てんの認識はないと言っておるわけであります。その認識問題はまた後で触れますが、こういう行為、今の京都市職員共済組合の行為、三月十九日に六千八百八十万でワラントを購入して三月二十日に四億三千八百九十万円で買い戻してもらった、あるいはさっきの日立、同日中に二十一億七千五百万円が懐へ入ってきた、あるいは丸紅でございますか、五億四千万、同日中に売り買いを二回すれば入ってきた、これがどうして証券取引法違反の行為にならないのか、私は私自身の常識を疑うのであります、もしならないとすればですよ。  健全性の準則等に関する省令では、「顧客に対して特別の利益を提供することを約して勧誘する行為」、これも法令でございます。先ほど大蔵大臣にお伺いした五十条の五号を受けた省令が今私が申し上げた構成要件になって具体化をされておるわけであります。一日であるいは同日で二十億のあるいは三億のケースもございますけれども、あるいは五億四千万のケースもありますけれども、入ってくるというこの取引がどうして健全性準則等に関する省令一条の二号、これに該当するということが言えないのでしょうか。
  294. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘の健全性省令一条二号の特別の利益提供を約して勧誘する行為、これが証取法五十条の禁止行為になっているわけでございます。私どももこの規定が適用できないかどうかという点を検討したわけでございます。この規定の趣旨と申しますのは、やはり勧誘行為を禁止しているわけでございまして、特別の利益提供を約して勧誘するということは、投資家の投資判断に影響を与えるということで、不適正な勧誘行為だということで勧誘行為を禁止をしているわけでございます。そういう趣旨から申し上げますと、この利益補てん行為というのは、むしろ利益提供そのものを申し出ている行為でございまして、今申し上げたような投資勧誘、投資判断を左右するような影響を与えるような勧誘行為だと言うことがどうしてもできないのではないかということで、私どももいろいろと検討をしたわけでございますが、なかなかこの一条二号の禁止行為に補てん取引が該当するということは非常に言いにくいのじゃないかというのが今のところの私どもの解釈でございます。
  295. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵省のお役人の中にも法学部を出られた方がほとんどだと思いますけれども、今の法解釈論は物すごいことをあなたはおっしゃっているんですよ、言っておきますけれども。法律家の常識からいいまして、勧誘がないのに利益提供行為だけがあった、そんなことはあり得ないわけであります。これは明示の勧誘という行為はなくても、あなたはこれだけ損をしているんだからワラントを買いなさい、あした買い戻してあげて三億円の穴が埋まりますよという話でしょう。日立にしても丸紅にしても、同様のことがあうんであるのか、しかし、にもかかわらず、買えという申し込みがあって、そこに合意が成立して、売買が成立しておることは間違いないわけであります。むしろ勧誘する行為よりももっと悪い行為であります。もっと直接的であります。そういうことを勧誘する行為が問題になっているのであって、利益提供そのものはいいんだなんという、こういうのを昔の言葉で言えば曲学阿世の徒というのです。まさに法匪というのであります。法律をもてあそぶことになるのであります。そうでしょう。だれが考えても補てん行為が証券取引法違反にならないということはおかしいのであります。世間の人間が考えればおかしいわけであります。なぜこんなことが許されるのか。そうですね。それを無理やり法をねじ曲げて解釈して証券会社に対するペナルティーを科さないようにする、そのために解釈をする、運用をする、これが補てんに関連する大蔵省の今までのやり方ではないか、そういうふうに私は強く感じるのであります。  これは裁判所でもどこへでも出してください。出して、だれかの判断を聞いてみましょうか、これ。日本には憲法裁判所あるいは法令を解釈する権限を持っている裁判所はございませんから、公権的解釈というのはございませんけれども、例えば内閣法制局長官とか、あるいは法務省の方、この条文をそういうふうにねじ曲げて解釈することができるかどうかですね。――じゃ、法制局長官、ひとつお答えください。
  296. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  実は具体の事例を私存じ上げませんので、そういう意味では、これにつきまして明確にお答えするわけにはまいりません。  それからもう一つ、ただいま証券局長御答弁がございましたように、これに提供することを約して勧誘する行為、ここの読み方につきまして委員と証券局長の間でどうも違うようでございますが、これを絶対に委員のように読まなければならないということは、またちょっと私もなかなか言い切れないのではなかろうかというふうに存じます。
  297. 仙谷由人

    仙谷委員 まあ日本の法律家というのは、やはり解釈の立場とか視点とかというのが変わればそういうふうになるのかなというふうに私思います。  時間の関係もございますので、この点はまた後に筒井議員もここで質問をさせていただきますので、そのときにまた議論になるかもわかりませんし、証券特別委員会でも議論をさせていただきたいと思います。  それから、今の点とはちょっと外れますが、補てんをするという行為の中に、損失保証を推測し得る、あるいは事実上の推定ができる、補てん行為こそ最有力の証拠であるという意見もございます。先ほど、私どもも健全性省令一条二号でございましたか、これに該当するのではないかと思って検討はした、こういうふうにおっしゃいましたけれども、いかがでございましょうか、局長。補てんがあった場合に損失保証もある可能性が、蓋然性が高いということで、大蔵省の立場とすれば、これを調査する、検査するということが必要なのではないでしょうか。
  298. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘のように、損失補てんがある裏には損失保証あるいは利回り保証のようなものが存在するのではないかという疑いはあるわけでございます。我々としては当然そういう疑いも含めて検査をしているわけでございまして、現在までのところ残念ながらその確たる証拠がつかめていないわけでございますけれども、現在行っております検査の中では、場合によっては、そのために取引先に対しても事情聴取をするというようなことも含めて検査をしたいというふうに考えているわけでございます。我々として全くそういう疑いがないということで対処しているわけでは決してございません。
  299. 仙谷由人

    仙谷委員 何の理由もなくて二十億も三十億もするお金を落としてくれるような、つまり補てんをしてくれるような、そんな人のいい営業というのはないわけであります。それを全部にやっていたら商売成り立たないというのは、これは当たり前の話でございます。ひとつその点も鋭意御調査をいただくということをお願いしておきます。  損失保証との関係でもう一つお願いをしておきたいと思います。  六十三年九月期、平成元年三月期、平成二年三月期というのは、今補てん額が出ております。この中で、例えば大和証券から補てんを受けたさる会社が六十三年にも補てんを受け、元年にも補てんを受け、二年にも補てんを受けているという事例があるか。大和証券というのはたとえです。あるいは八八年には大和から受け、八九年には日興から受け、九〇年には野村から補てんを受ける、そういうケースがあるかどうか。つまり、これは先ほどの損失保証の問題と関連していいますと、もう、一度癖になったらそういうことが黙示の契約で決まっている、当たり前になっているという少なくとも間接的な事実になるわけであります。損失保証約定があったことを推測するに足る非常に重要な徴憑になるわけであります。この点もひとつ鋭意お調べをいただきたいと存じます。  そこで大蔵省、これだけ重要な、庶民感覚からすれば、あるいは通常の社会通念といいますか常識からすれば、これについて行政庁の処分が、内部の処分じゃございませんよ、行政処分が行われないというのは、免許監督を誇る大蔵省としては私は甚だ不可思議だというふうに考えておるわけであります。とりわけこの補てん問題、今度明らかになりましたことにつきましても、八九年、九〇年、ことし九一年です。三回も、重なっておる分もあるのかもわかりませんけれども、三回も補てん行為が繰り返されておるわけでございますが、行政処分がないんですね。営業自粛、これはまさに自粛でございます。営業停止の行政処分がなされていない。これはどうしでなんでしょうか。大蔵大臣にじゃお伺いしましょう。なぜ法律に基づいて行われないんでしょうか。
  300. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、先ほど和田委員からも同趣旨の御質問をいただきました。そして、それに対しての御批判は甘受すると申し上げた上で当時の状況を申し上げた次第であります。  すなわち、私自身過去の処分というものが一体どのような状況であったかを調べてみました。それでないと判断の材料がございません。そして、社内処分の状況あるいはその営業自粛の実態等を調べてみますと、過去、純粋な法律違反につきましても営業自粛三日というのが最高というのが実態でありました。そして、まさに営業自粛のケースにおきまして、法律違反ではないケースにおきましては、過去二日というのが一番長かった例でございます。そして当時の記録を見てみますと、その営業自粛二日というものに対しても、極めて厳しい処分といったものが文献上残っておりました。そうしたことの中で私が最終的に判断をいたしたことでありますから、おしかりは甘受いたし、ます。
  301. 仙谷由人

    仙谷委員 百歩譲って、法律違反があるかないかという点は、つまり、証券取引法違反があるかないかという点はさっき議論をさしていただきましたので、百歩譲ります。さっき局長がおっしゃったように、証券取引法違反に該当するかもわからないという前提で処分手続に乗せようとなさったことはあるんでしょうか。
  302. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 現在までのところは、先ほど申し上げましたように、法律違反行為というものを確証するだけの心証といいますか証拠がございません。現在検査でそれを探せるかどうかということをやっているわけでございます。今までのところはそういう事情でございますので、法律上の正式な、証取法三十五条あるいは三十六条に基づきます行政処分の手続を開始したことはございません。
  303. 仙谷由人

    仙谷委員 頭から行政処分をするに足る具体的な事実がないという前提でなさるからそうなるわけであります。  そして、私も処分事案がどのぐらいあるのかお伺いしてみました、大蔵省に。この間の処分事案というと、藤田観光事件、小谷光浩さんの株価操縦、これがございます。これもしかしあれでございますね、そもそも大蔵省の方で株価操縦の疑いがあるという観点から調査をし、そして行政処分の手続に乗せて処分をしたというものではないですね。
  304. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お尋ねの藤田観光の事件は、私どもとしては証取法五十条に基づきます行政処分も行ったわけでございます。現在、証取法百二十五条の株価操縦で裁判が行われておりますが、私どもは、証取法五十条に基づく証券会社に対する処分ということで、これは正規の手続をとって審問などを行って行政処分を行っております。
  305. 仙谷由人

    仙谷委員 私が聞きたいのは、この小谷さんの事件、刑事事件としての発覚よりも前に大蔵省がこういう処分手続を進めておったのかどうかということを聞きたかったんです。そういう意味です。ちょっとお答えください。
  306. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この事件につきましては、私どもも株価の動きという点で関心を持って、取引上の手口あるいは証券会社の委託者等も調べて調査をしていたわけでございますけれども、私ども調査権は直接投資家に及ぶというわけにはいかないものですから、なかなか投資家の株価操作の目的というようなものまでつかむに至らなかった段階で調査を進めていたということでございまして、したがいまして、正規の行政処分の手続に入っていたということではございません。
  307. 仙谷由人

    仙谷委員 もうそうなってきますと、結局、行政処分の手続規定も証券取引法上存在するわけですが、証拠がない、証拠がない、あるいは該当しないかもわからない、そういうスタンスで取りかかりますから、警察、検察が手を入れて刑事事件として立件したものしか大蔵省が後追いで処分することしかできないということになるんじゃないんですか。そこが、今問題になっておるまさに独立の準司法機関が必要かどうかという議論になってくるわけでありますけれども、私は改めて証券取引法を見ておりまして、今までもやる意欲があれば実例を積み重ねるというやり方でできたはずだ。インサイダーにしましても、株価操縦にしても、この種の補てんにしても、こういうだれが考えても証券取引の上であり得てはならない行為、これを行った証券会社あるいは受託した証券会社をきち一つきちっとその都度けじめをつけておけば、一般予防的効果、つまり一罰百戒でございます。業界がもう少し正常な姿であり得たんではないか、こんなことを感じるわけでございます。この点についてはお答えいただきません。もう大体わかりますから、お答えは。  そこで次にお伺いするんですが、処分手続について大蔵省の組織上はどこが担当することになっておるんでしょうか。
  308. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証券会社に対する処分は証取法三十六条の手続で行われるわけでございますが、具体的には、これは証券局の業務課が所管をしております。
  309. 仙谷由人

    仙谷委員 私たまたま大蔵委員でございまして、「大蔵省の機構」平成三年版というのをいただいております。百二十七ページに業務課の職務分掌が記載をされております。今局長がおっしゃった行政処分手続を業務課が担当するとおっしゃることは、六十五条のどれに該当する、六十五条に書いてあるのかないのか、その点、ちょっと御答弁ください。
  310. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今手元にございませんですが――恐縮です。私ども考え方は、これは業務課で証券会社、「証券業を営む者を免許し、これを監督すること。」というところがございます。この監督の一つの方法として、行政処分もここで担当しているというふうに実際運用しているわけでございます。
  311. 仙谷由人

    仙谷委員 行政処分というのは、委員長も御存じのように、運転免許の取り消しに始まって、あるいは種々のものがございます。そして、行政処分をするということは国民の権利義務に重大な影響があるという前提で、告知と聴聞の手続というのが普通規定をされております。証券取引法にも百八十二条で告知と聴聞の規定が定められているわけであります。つまり、国民の権利義務に関する、あるいは証券会社の権利義務に関する非常に重要な手続がこの証券取引法百八十二条に書かれておるわけです。ところが、業務課が職務上それを分掌するということをおっしゃるのだけれども、この「大蔵省の機構」、大蔵省組織令六十五条には、その重大な手続を業務課が担当するということが規定をされてないのじゃないですか。どういうことなのでしょうかということになるわけです。  時間がございませんので簡単に私の方から結論を言いますが、つまり今まで大蔵省はやる気がなかった。行政処分は証券取引法の規定に基づいて、つまり法律に基づいてはやる気がなかった。行政指導ですべて事を済ませた。営業自粛、自主報告、法律に基づく報告を徴収しない。非違行為的なことがあっても行政処分の手続にはのせない。つまり、この告知と聴聞の手続、証券取引法百八十二条によりますと、まさに公開で審問がなされなければならないということが規定されておるわけであります。公開であります。つまり、市場における非違行為、非違行為と言えないまでも、証取法違反の事実があるかもわからないというその疑いが非常に濃いという行為については、公開の審問手続にのせるということが積み重ねられるならば、つまり透明性のある市場に一歩一歩近づけるわけであります。それを全部大蔵省検査課、そこで臭い物にふたをし、押し入れの隅っこに押しやる、こういうやり方をやってきたのが今までの大蔵省の行政だったのじゃないでしょうか。そうだといたしますと、なぜそうなったのかということが次に追及されなければなりません。  きょうは余り時間がございませんので、そこから先は特別委員会の席上でも追及をさせていただきますけれども、簡単に言ってしまいますと、これは大蔵省が、きょうの議論にもずっと出ておりますけれども、やはり発行の主体であるということですね。証券会社に引き受けていただく。国債とNTT、今後はJR、日本たばこを引き受けていただかなければいかぬ。株価は高ければ高いほどよろしい。証券会社の保護育成、これも任務である。そして証券会社も検査しなければいけない。そして、今度の議論でずっと出ておりますように、大事な大事な就職先である。これだけ重なりましたら、それはやはりこういう愛のあるといいますか、優しい行政指導ですべて通り過ぎようということになってしまうのじゃないでしょうか。  私は、この点について別の機会に譲らしていただきますが、もう一点ちょっとお伺いします。  加商という会社をめぐって、弁護士であります並木さんが逮捕をされて起訴をされております。株の買い取り交渉が、これもまた脱税で起訴をされております竹井博友さんという方と加商の側で交渉がされて、最終的には九〇年の八月三十一日、加商のメーンバンクである東京銀行の関連である綜合通商というところに一株二千五百円で買い取られてそれは終わったわけであります。この過程で、新聞報道によりますと、六十二年の十二月ごろに、つまり一九八七年の十二月ごろに、地産の竹井さんが野村の田淵会長に紹介状を書いだということが報道されております。この点、法務省あるいは警察当局でも結構、法務省になりましょうか、こういう事実を確認されておりますでしょうか。
  312. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お尋ねの加商の事件に関連いたします並木俊守元弁護士に対する弁護士法違反事件でございますが、本年七月二十九日に、東京地検の特捜部が東京地裁に公判請求をいたしております。弁護士法違反であります。  事実関係を簡単に申し上げますと、顧問弁護士契約を加商との間に締結をしておりましたこの被告人並木弁護士が、地産グループの代表者であります竹井から出されていた、そのころは同社の大株主でございますから、そこから出されておりました業務提携それから役員派遣要求及び所有株式の買い取り要求、この三つの要求に関する交渉とその対策等の事件を受任をいたしまして活動していたわけでございますが、まず、この役員派遣の要求に関する事実が一部成就したことに対する謝礼という趣旨で、加商の弁護士であるにかかわらず竹井から、まず平成元年九月に八百十万円の小切手一通を受けた。さらに同二年六月二十一日ごろに、竹井からやはり役員派遣要求に関する交渉ができたということで、竹井側から三百万円の小切手を受けた。最後に、今お触れになりましたいわゆる所有株式の買い取り要求関係の事件が竹井側に有利に成就したということで、竹井から八千十万円の小切手を受けた、こういう事実で、いわゆる双方代理の事件ということで起訴をされたものでございます。  その過程におきましては、この株式の取得の関係、役員派遣の関係、その他いろいろなことが調べられておるわけでございますけれども、これは公判が係属しておるわけでございまして、今後書院その他において、必要な限度で事実が明らかにされていくものであると思うわけでございまして、この場におきましては、お尋ねのような詳細につきましては、私は報告も受けておりませんけれども、また、お答えを差し控えるべきであろうと思っておるわけでございます。
  313. 仙谷由人

    仙谷委員 それじゃ警察庁の立場も勘案して、この野村の田淵会長が紹介状を書いたかどうかという点については、これ以上追及するのを今の段階では控えておきます。  そこで、お伺いをしたいわけですが、この関係では、地産グループが加商の株一千三百十六万一千株というのを手に入れて筆頭株主になったのが昭和六十二年の十二月ごろだ、つまり一九八七年十二月ごろだ、こう言われております。それを、先ほど申し上げましたように綜合通商に売り渡したのが平成二年八月三十一日、昨年の八月三十一日、その約定ができましたのが一カ月前、平成二年の七月三十一日、こういうことになっておるようでございますが、その点については大蔵省、現在では事実確認をでき得ますでしょうか。
  314. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもも加商が発表した内容について承知をしているわけでございまして、加商が平成二年八月三十一日に、御指摘のようにグループで持っておりました保有株一千三百十六万一千株を東京銀行系の綜合通商に移動したということを承知しております。
  315. 仙谷由人

    仙谷委員 手に入れた時期の方ですね、一九八七年の八月ごろ地産グループがこれを入手したという点はいかがですか。
  316. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 名義書きかえによりまして、平成二年八月には千三百十六万株を取得するに至るということを私どもは把握しております。――地産の取得でございますか。失礼いたしました。一九八七年、昭和六十二年の九月ごろから買い集めを始めて、今申し上げましたように平成二年八月に千三百十六万株を取得するようになったというふうに私どもは把握しております。
  317. 仙谷由人

    仙谷委員 もう少しまた詳しくお調べをいただきたいと思うんですが、要するに昭和六十二年の十二月の末ごろには、この一千三百十六万一千株を取得して筆頭株主になったということのようでございます。  そこで、一九八八牛一月以降の加商株の東京証券取引市場における売買手口、何か月足というんですか、これは今大蔵省の方ではお持ちでしょうか。
  318. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 持っております。
  319. 仙谷由人

    仙谷委員 私は東京証券取引所に欲しいという要求をしたんでございますけれども、プライバシーとかなんとか言ってなかなか出さない。それじゃ長岡さんにこちらに来てもらうというふうに申しましたら、三カ月単位のを今私のところへ持ってきて、私持っております。この売買手口が証券取引所で出せない。まさにやみにカーテンの中でやっておるような証券取引でございます。  これは甚だ遺憾なことでございますけれども、この四半期別売買手口を拝見いたしましても、一九八八年の一月から三月は、野村の売りが全体の一三・三%、買いが二〇・〇。四月から六月は、売りが二〇・〇、買いが二〇・〇。同年の七月から九月は、野村の売りが七六・七、買いが七八・七。十月から十二月、野村の売り七四・五、買いが七六・四。それから、年がかわって一九八九年でございます。一月から三月、これは野村はこのときは一〇・二、そして買いが六・五。四月から六月、野村は六六・四、買いが六三・〇。七月から九月、野村が売りが三一・八、買いが三六・四。十月から十二月、野村は七六・六が売り、買いが八一・八。一九九〇年 月から三月、野村の売りが四一・九、買いが一六・五。四月から六月、野村は売り八七・二、買いが八七・七、こういうことになっておるわけです。先ほど申し上げましたように、七月の三十日に加商株の買い付け合意がなされた。七月から九月の野村の加商株の売り一・一、買い四・二。次の四半期、一九九〇年十月から十二月、野村の売りは一五・七、買いが六・七。こういう際立った売り買いの差があるわけでございます。つまり、加商の株を地産が買い占めて筆頭株主になって、並木弁護士を籠絡しながら相対取引で加商側に買わせようとした、その間だけ野村の売買手口が、多いのになると八七%、こういうことがずうっと続けられておる。これについて、当時、大蔵省の証券局の方で関心は持たなかったんでしょうか。
  320. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今の御指摘の数字は私どもも持っております。  ただ、この加商の株。と申しますのは平常時は非常に出来高の少ない株でございまして、例えば一九八八年をとってみましても、普通の月であれば一万株、二万株、一月でそれぐらいしかできておらないわけでございます。野村証券の売り買いシェアがある時期、四半期で見ても非常に高い四半期があるわけでございますが、これは私どもの調べでは、その月、それが含まれている月に大口のクロス南いがあった。この大口のクロス商いは、大口の客と大口の客との間の注文を処理する一つの方法でございまして、両方の注文を市場に出して執行するというようなやり方でございます。しかしながら、もちろんその市場には一度注文として出るわけでございまして、その大口のクロス南いというものは、必ずしも株価の形成に積極的な役割を演ずるのではなくて、市場でできている株価を基準にして大口の取引、売りと買いの注文が突き合わされるといいますか、事実上出ていくというような形でございまして、野村証券がそういうふうな大口客間のいわゆるクロス商いを行った時期が含まれております四半期については、御指摘のように非常にシェアが高いということになっております。非常にシェアが高いわけでございますが、今申し上げましたように、それ以外の取引が品薄で非常に少ないということで、結果的に非常にシェアが高いということになっているわけでございまして、私どももこれは異常な数値でございますので当時チェックをしたわけでございますけれども、今のような事情で、特に株価形成上問題があるというふうな判断にはならなかったわけでございます。
  321. 仙谷由人

    仙谷委員 証券市場では三〇%ルールというのがあるというふうに聞いております。つまり、一社の委託あるいは自己売り買いの取引、これが月単位で三〇%を超えたときには、証券取引所の売買審査部が動き出して売り方、買い方を調査する、大蔵省の証券局の方にもちゃんとそれを報告として届けるということのようでございます。当時そういう報告、つまり売り手と買い手の具体的な名前、どういう人が局長がおっしゃったようなクロス商いを野村に委託しているのか、これを当時お調べになったんでありましょうか。
  322. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 いわゆる三〇%ルールと申しますのは、私どもはその証券会社に対しまして、一銘柄の月間の売買高に占める一社の割合が三〇%程度以上となるような場合には、株価形成上問題になることはないか、その証券会社の社内で特に売買監視を強めてほしいというようなことで、そういう趣旨で申し上げているものを三〇%ルール、こういうふうに呼ばれているわけでございます。もちろんその証券会社の社内の売買監視にとどまらず、取引所の売買審査もそういうものを一応のめどとして行っているわけでございまして、ただ、三〇%を超えれば機械的に問題だというようなルールではございませんで、三〇%を超えるようになれば監視を一段と強めてほしいというような、指導のルールでございます。
  323. 仙谷由人

    仙谷委員 お答えいただいていませんが、売り方、買い方の報告が当時大蔵省の方に報告をされておったのか、あるいは証券取引所の売買審査部がそれを入手しておったけれども大蔵省は知らなかったということなのか、その点お答えをいただきたいと思います。
  324. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 当時、その委託者についても私どもは調べております。
  325. 仙谷由人

    仙谷委員 それで、この件は局長がおっしゃったように株価操縦、つまり先ほどの名前に出ました小谷さんの高値をつけるような株価操縦としての買い上がりといいますか、そういうことでは急激に買い上がるということではないでしょうけれども、この期間非常にクロス商いを行うことによって株価が、ある意味ではこの加商という会社の実態以上のところで張りついている、安定しているという可能性があるということで、お調べになったということはなかったんでしょうか。
  326. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のように、確かに加商から綜合通商に株が移動いたします前に、この加商の株価は急騰をしております。私どももこの点については、問題意識を持って、関心を持って調査をしたわけでございます。  ただ、この間の取引というのは、先ほども申し上げましたように非常に薄商いでございまして、例えば七月二十四日には二千八百円だったのが、八月七日には三千三百円まで五百円上がっておりますけれども、この間、実際の取引では七日でございますが、全体の取引高は五万五千株しかないというような状況でございまして、しかもその注文の執行状況を取引所のいろいろな記録に基づいて私どもチェックしたわけでございますが、株価形成上異常なことが行われたというような証拠が見つからなかったわけでございます。非常に品薄株でございますから、買いが入るとすぐ急騰するというような形になるわけでございまして、特定の意図を持って株価を引き上げるということでなくても、品薄株の場合には需給関係でも非常に株価が動くということがございます。私ども調べた限りでは、操作的なことが行われたというような証拠は得られなかったわけでございます。
  327. 仙谷由人

    仙谷委員 浮動株が少ない場合には、ちょっと買えば上がります。上がり過ぎると困るからクロスを入れて、ある程度ちょっとずつ上げていって安定化させる、こういう手法だって一般にはあるというふうに言われでおるわけでございます。そしてこの件に関しては、証券取引法百二十五条の三項の安定操作が許される場合の諸規定に合致しない、そういう場合じゃないこともまた明らかであります。つまり証券取引法百二十五条の三項、安定操作に該当するのではないだろうかということでお調べをいただいたとすれば、ひとつ証券局のお持ちのこの売買手口、月足ですね、これとその買い方、売り方、これをぜひお示しをいただきたいと思います。  といいますのは、今上がったところだけをおっしゃられましたけれども、加商の要するに場外クロスですね、地産と綜合通商の間の株が取引された以降、野村がほとんど、先ほど申し上げたように一%台あるいは四%、こういう売り買いに終始するわけでございますから、当然のことながら加商の株価はこの後どんと下がったわけですね。それで、おっしゃるように一九八八年の前といいますか、八七年中はそれほど高くなかった株であることも間違いがないわけであります。八八年に入ってから高値に張りついて、そして二千五百円で場外でクロスする、場外で相対取引をされる、この間高値に張りついておった、こういう客観事実はあるわけであります。どうかひとつその点、こういう株価操作といいますか安定化操作ということもあるということで、今後も刑事事件絡みでございますので、お調べをいただきたいと存じます。  時間がほとんどなくなりましたので、大蔵大臣に、この段階で御所見をいただいておこうと存じます。  今、私はそれほど大蔵省に悪意を持ってどうのこうのするというスタンスで質問をしておるわけではないわけであります。しかし、大蔵大臣もおっしゃったように、やはりルールがもう一つ不明確だ。それと、ルールを担保する制度がどうも制度疲労を起こしておるのではないか。何か政治改革で、制度疲労というのは自民党の方一生懸命言われますけれども、制度疲労を起こしているのではないか。そしてまた、証券市場のスケールが以前とは全然違うということもあると思います。やはり大蔵省が誇ってきた免許制、事前予防、どうもこれが非常に制限的な効果しかなかった。大蔵省の免許行政、事前予防主義というものがどうも限界があるな、そういう感じがしてならないわけであります。  免許、そして監督、検査ということで、証券会社を通じて市場の適正化を図るということが、どうも大蔵省の、さっき申し上げました四つの証券業界との関係のうちの残りの三つの関係もあって限界があるのではないか、そういう感じを強く持つわけでございますが、その点、大蔵大臣いかがでございますか。
  328. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、御指摘を否定しようとは思いません。最初に申し上げましたように、五つの原因というものに私は分類していきます中で、業界行政のあり方ということを申し上げました。そしてその中において、保護育成という時代を既に私どもといいますか大蔵省とすれば変えつつあるつもりでありましたが、それが間に合わなかったという御批判は、結果的に我々は甘受しなければならないということも率直に申し上げております。  免許制がいいか、登録制がいいか、これは私はいろいろな議論があろうかと思います。そして、かつて登録制でありました我が国が免許制に移行しましたには、それなりの理由は当然のことながらございました。そして、その中において日本の証券市場が育ってきたこともまた事実であります。登録制の国にはまた登録制の国としての問題を抱えておられるこども、御承知のとおりであります。こうしたことを含めて、我々は今真剣に全部の問題を、先ほど申し上げましたような形で我々自身も必死で検討をいたしておる、その中で手のつくものから少しでも早く再発防止に向けての努力をいたしたい、率直に申し上げたところであります。
  329. 仙谷由人

    仙谷委員 極論をいたしますと、大蔵省が発行主体でもあるわけでありますから、今問題になっておりますSECといいますか、どの程度の権限、機能を持たせた監視、審査の機構をつくればいいのか、どこにつくればいいのかということについては、いろいろな諸要素を考えなければならないとは思います。しかし極論を言えば、発行主体としての大蔵省という位置づけがあるわけでありますから、そしてこれは国家財政を担うという非常に重要な機能を持っておると私は思います。そうしますと不可避的に、その国家財政を担う機能と、大蔵省が証券市場の公正さをチェックする、審判する、そういう機能とはなかなか両立しがたい側面もあるのではないか。大蔵省の不公正を摘発できるか、まさに極論しますればそこに問題があるの。ではないかと考えます。  したがいまして、どうしても免許制の議論、固定手数料の議論、それからファイアウォールの議論、いろいろ考慮しなければいけない要素いっぱいあると思いますけれども、私はやはり、大蔵省の不公正があるとしてもそれを摘発でさる、そういう機関でなければ、この審査機能、審査権限、監視ということは十分の役割を果たせないのではないだろうか、そういうふうに考えておるわけであります。その点について、大蔵大臣の御答弁をもう一度ちょうだいいたしたいと思います。
  330. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今の点で一点だけ御説明を申し上げたいと思います。  よくアメリカのSECと大蔵省の証券局の機能の対比がなされます。証券局の行政も、これは登録制、免許制の別はございますけれども、SECの機能も、本質的に持っておるものに変わりはございません。これは委員がよく御承知のように、企業の存立の瞬間から全部に責任を負う機構であります。  著しく異なっておりますのは、SECには証券会社のみならず、その取引相手に対しましても非常に広範な捜査の権限が与えられております。また、証人を喚問する権限がございます。さらに、その証人に対して偽証罪をもって告発することもできる仕組みがございます。また、例えば電話の記録等を含めまして、異質の情報を収集する機能が与えられております。こうした点についての機能の差があることは別でありますが、証券行政全体を監督するという意味においては、この両者において本質的な変わりはございません。  そして、先ほど申し上げましたように、行政機能と検査機能に一定の節度ある距離が必要であるという問題提起は、私自身冒頭に申し上げました。ただその中で、あと機構が一体大蔵省のどういうところにあればいいかとか、外に置くべきであるかということは、これは今大蔵省として申し上げるべきことではないと私は思います。  先ほど申し上げたような問題点を我々は今までに掘り下げてまいりました。そして、去る十九日の行革審にその結果をすべて御報告を申し上げ、行革審の審議にまちたいと申し上げておる。これをもって御理解をいただきたいと存じます。
  331. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣の御意見は承りましたけれども、一番重要なことは公正な市場をつくることだと思うのですね。その市場の提供者、公正な市場が成立する条件を提供する権限と義務があるのが大蔵省、こういうことになるんだろうと思います。  そういう観点からいいますと、やはり業界に偏した立場ではなくて、公正な市場をつくること、そして一般の投資家が保護をされ市場に参加ができる、そういう市場を本気でつくらなければならない時期に来た。そうしないと、日本の金融・証券市場、大変なことになるだろうと私は思います。  証券特別委員会が開かれるようでございますので、また大いにその辺も含めて議論をさせていただきたいと思います。  終わります。
  332. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日木曜日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会