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1991-08-20 第121回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成三年八月五日)(月曜日)( 午前零時現在)における本委員は、次のとおりで ある。   委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 伊平君       加藤 紘一君    倉成  正君       後藤田正晴君    志賀  節君       塩川正十郎君    田邊 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       五十嵐広三君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    市川 雄一君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       児玉 健次君    不破 哲三君       中野 寛成君    楢崎弥之助君 ――――――――――――――――――――― 平成三年八月二十日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       石破  茂君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 伊平君       岡田 克也君    加藤 紘一君       狩野  勝君    河村 建夫君       倉成  正君    志賀  節君       田邊 國男君    高橋 一郎君       津島 雄二君    戸井田三郎君       中島源太郎君    萩山 教嚴君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    原田 義昭君       松永  光君    松本 十郎君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       五十嵐広三君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       山花 貞夫君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       二見 伸明君    冬柴 鐵三君       金子 満広君    児玉 健次君       中野 寛成君    米沢  隆君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣         (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁長官)         (沖縄開発庁長官)  谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長官)  越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長官)  山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         警察庁警務局長 安藤 忠夫君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁刑事局保         安部長     関口 祐弘君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         長       八木 俊道君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  稲葉 清毅君         総務庁長官官房         審議官     田中 一昭君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         防衛施設庁建設         部長      新井 弘文君         経済企画庁調整         局長      吉冨  勝君         経済企画庁国民         生活局長    加藤  雅君         経済企画庁調査         局長      小林  惇君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         国土庁長官官房         長       藤原 良一君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済協力          局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房長 篠沢 恭助君         大蔵大臣官房総         務審議官    小川  是君         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁次長   冨沢  宏君         文部大臣官房長 野崎  弘君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         厚生大臣官房総         務審議官    大西 孝夫君         厚生省社会局長 末次  彬君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         農林水産大臣官         房長      馬場久萬男君         農林水産大臣官         房審議官    今藤 洋海君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         食糧庁長官   京谷 昭夫君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君  委員外出席者         衆議院事務総長 緒方信一郎君         参  考  人         (日本銀行総裁三重野 康君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     岡田 克也君   内海 英男君     井奥 貞雄君   小此木彦三郎君    萩山 教嚴君   後藤田正晴君     高橋 一郎君   塩川正十郎君     中島源太郎君   浜田 幸一君     狩野  勝君   村田敬次郎君     河村 建夫君   辻  一彦君     山花 貞夫君   市川 雄一君     石田 祝稔君   冬柴 鐵三君     二見 伸明君   不破 哲三君     金子 満広君   中野 寛成君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   岡田 克也君     愛野興一郎君   狩野  勝君     原田 義昭君   河村 建夫君     村田敬次郎君   高橋 一郎君     石破  茂君   中島源太郎君     塩川正十郎君   萩山 教嚴君     小此木彦三郎君   山花 貞夫君     辻  一彦君   二見 伸明君     冬柴 鐵三君   金子 満広君     不破 哲三君   米沢  隆君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     後藤田正晴君   原田 義昭君     浜田 幸一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  6. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島源太郎君。
  7. 中島源太郎

    中島(源)委員 海部総理、今国会は、本来であれば政治改革国会と位置づけられるものであろうと思うわけであります。  ただ、国内において、残念ながら証券金融の不祥事が噴き出してまいりました。また、国際的には、我が国の貢献について論議をいたすべきときであろうと思います。また、自然災害といたしましては、雲仙・普賢岳の災害で被災され、亡くなられた方もいらっしゃる、また現在避難生活を余儀なくされていらっしゃる方々もいらっしゃるわけで、そういう方々に弔意とお見舞いの心を込めて論議を申し上げること多々あるわけでございますが、その前に、昨日衝撃的なニュースが世界を駆けめぐったわけであります。  ソ連ゴルバチョフ大統領辞任、正しくは失脚と申す方が正しいのかもしれませんが、海部総理にとりましても、ゴルバチョフ大統領が本年四月に来日されまして、相当長時間にわたって心を割って話し合われたと思います。北方の我が国古来の領土、四島問題、並びにソ連の新しい改革路線、その基盤を確かめつつ視野の長い支援をいたしていこうというお気持ちをお伝えになったと思いますし、過日のロンドンサミットでも総理のお考え各国に了承されたと承知をいたしておるわけであります。  また、我が党といたしましても、安倍晋太郎外務大臣、元幹事長、大変な御関心を持って対ソ政策に御努力をいただいたわけでありますし、もちろん小沢前幹事長、小渕現幹事長も御努力を続けてまいられました。  そういうことからいたしまして、この六年数カ月の間、少なくとも冷戦終結への立て役者として活躍してこられたゴルバチョフ大統領辞任された、これは大きな問題だと思いますが、私どもは昨日からタス通信その他報道関係からの情報を得て判断をいたすにとどまっておるわけでありますが、政府正式ルートでさらに新しい情報があれば御報告をいただき、この新しい状況に対してどのように対処されるか、この二点をこれは外務大臣並びに総理から伺いたいと思います。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ゴルバチョフ大統領の昨日の突然の異常事態、これは私も本当に驚くとともにいろいろな情報その他を鋭意収集しておるところでありますが、具体的な問題については後ほど外務大臣より現在の状況についても御報告させようと思いますけれども、私は現下の情勢は憲法違反可能性が極めて高い、異常な事態であると認識しておりますし、同時に、昨晩来ブッシュ大統領マルルーニー首相とも電話で協議しましたが、いずれの国も現在ゴルバチョフ大統領がどこでどうなっておるのかということすらわからない、情報収集のさなかであるという点と、もう一つは、特にブッシュ大統領冷戦時代に逆戻りさせてはならないということを言いましたが、私もそれは全く同感であって、きょうまでいろいろとG7の国々もペレストロイカの正しい方向性支援する、このことにはロンドンサミットでもコミットを与えたり、あるいは今後の支援等についてもいろいろ話したところでありますから、それが後戻りするようなことがあってはならないということは、これは両者とも一致いたしましたし、また、私あてにソ連ヤナーエフ大統領代行から来た文書によりますと、たくさん、長いですから省略しますがポイントだけ申し上げると、この措置ゴルバチョフによって開始された改革を拒否するものではないということも出ておりますし、国際分野においてはすべての条約及び協定が効力を失わず、我が国対外政策路線は継続されようとも書いてあります。私はこういったことについてはそのとおり厳しく進んでいくことを強く要求し、強く求めておりますし、同時にまた、現在のソ連状況というものは極めて懸念すべきものが、例えばニューステレビ画面等を見ただけでも極めて懸念される状況にありますので、私は強い関心を持って事態推移を見守りながら、ペレストロイカの肯定的な面が後退しないことを強く希望しておるというのが今の現状でございます。  今後は、それぞれサミット諸国とも連絡をとり、緊密に対応を重ねて、これ以上懸念が広がっていかないように努力したいと思います。
  9. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のソ連状況につきまして、概略御報告を申し上げたいと思います。  昨八月十九日、ソ連邦におきましては、ゴルバチョフ大統領は健康上の理由によりソ連邦大統領職務を遂行することが不可能になったということに関連をして、ヤナーエフが十九日からソ連邦大統領職務遂行を開始したといったことが発表されております。また、昨日から六カ月間、ソ連邦の一定の地域に非常事態を導入する、並びに国家の管理と非常事態体制実施のため、ソ連邦国家非常事態委員会が設置される旨発表をされております。モスクワ市内では戦車、装甲車等が出動をしておりまして、一部は民衆と対峙する等懸念される状況が現在見られております。エリツィン・ロシア共和国大統領ら改革派が今回の措置は正当化されず違法である旨反発していることからも、今回の措置の背景には、保守派改革派との間の争いが指摘されることができると思います。すなわち、本年四月二十三日、ゴルバチョフ大統領が九共和国の代表と共同声明に調印をし改革派に歩み寄ったことに対しまして、保守派が反発をし、四月のソ連共産党中央委員会総会ゴルバチョフ書記長辞任要求が出されております。また五月、大統領解任のための人民代議員大会招集が試みられた経緯がございます。六月には、パブロフ首相首相権限拡大を要求し、これはゴルバチョフ大統領との間で対立を招きました。六月中旬以降、シェワルナゼ前外相、ヤコブレフ大統領首席顧問ら改革派共産党を脱退いたしまして、新政治組織結成に同調するとの動きを見せておりました。  我が国といたしましては、これまでソ連において推進されてきましたペレストロイカ、新思考外交の積極的、肯定的な基本路線に影響が出てくることに大きな懸念を有しております。ソ連側に対しましても、その旨、昨日十九日、外交ルートを通じて申し入れておりまして、その際、ソ連邦における邦人保護、この問題につきましてもソ連外務省に対して強く要請をいたしておることを申し上げておきたいと思います。  西側各国とは、十九日、昨日の夜、海部総理ブッシュ大統領の間で、また本朝、カナダのマルルーニー首相との間で電話で会談が行われ、情報の交換が行われておりますが、このサミット議長国であるイギリスのメージャー首相あるいは次期のサミット議長国であるドイツ大統領ともできるだけ速やかに連絡をとりながら、この一致した情報をもとにこの新しいソ連の不透明な動き対策をしていかなければならないと考えております。  以上でございます。
  10. 中島源太郎

    中島(源)委員 今御報告がありました中で、特に総理から、ヤナーエフ大統領代行から書簡でございますか、その中にもありますように、ゴルバチョフ大統領が進めてきた改革を否定するものではないという言葉があるようでありますが、これはもうぜひそうあってほしいと思いますけれども、一方で非常事態宣言がなされる、モスクワ市内もそのような状況に置かれておるという中で、これから西側自由諸国とよく連携を保ちつつとおっしゃいますが、既にアメリカあるいはヨーロッパからは対ソ支援の見直しあるいは凍結、そしてECからもこれを、今回の事態を非常に深い失望を持って迎えた、こういうことでありまして、こういう西側諸国の反応から見まして、我が国の対ソ連対策に当面変更を考え得る状態であるかどうか、またはどのようなことを考えておられるか。  例えばけさの報道によりますと貿易保険、通産省は貿易保険の新しい扱いについては慎重に行う、これを凍結と称していいのかどうかは存じませんけれども、そういうような問題が報じられておりますが、全体として対ソ連対策をどのようにお考えになるか、この点について伺っておきたいと思います。
  11. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連に対する経済協力技術支援といった問題につきましては、今日のソ連のいわゆる政治状態経済状態が大変な混乱を起こしている状況でございまして、政府としては慎重にこの事態推移を見きわめなければならないと考えております。  一方、我々は、従来のペレストロイカの正しい方向性を支持しておりまして、この事態がどのような形で収束をするのか、ソ連国内の問題でございますから、ソ連国内事態が収拾されるというこの状況が明確になるまで、私どもは慎重に対応しなければならないと考えております。
  12. 中尾栄一

    中尾国務大臣 中島委員にお答えいたします。  ただいまの外務大臣言葉に尽きるわけでございますけれども、何せ昨日起こった出来事でございまして、私どもといたしましては、あくまでもG7のリゾリューションに忠実にキャリーアウトしていくといいましょうか、遂行していくということを建前にしておりますので、現在の貿易保険の御質問ございましたけれども、これとても十分に検討を今省議に、詰めて勉強するように、そして結論も早く出されるようにという形で、私もけさ下命したばかりでございます。
  13. 中島源太郎

    中島(源)委員 今、まさにいろいろな情報を懸命におとりになっているところだと思います。せっかくグラスノスチあるいはペレストロイカが定着しつつありまして、きのうのテレビなどを見ても、やはりソ連国民の皆さんが言いたいことをおっしゃっている、まだそういう環境が残されていると思うわけであります。これが再びその情報がなかなか伝わらなくなって、またソ連という隣国が霧の中に消えて遠くなっていくことのないように願っておるわけでありますが、その中で、ヤナーエフ大統領代行は、ゴルバチョフ大統領訪日に至りますまでにも、対日政策担当として何回も来日をされておる、そういう意味では知日家であろう、こう思うわけでありますね。今この新しい政権と申しますか、現在の状況憲法に照らして正しいか正しくないか、これは海部総理のお話もありましたけれども、少なくとも新しい大統領代行となられたヤナーエフさんが日本にも来られて、その感覚を御存じだということは一つのよりどころではないかと思うわけであります。  現在のところではこれ以上おっしゃれないと思いますけれども、新しい情報が入り次第、この予算委員会にも御報告をいただき、そして各省それぞれの対策があると思いますが、どうかその都度なさられるべき対策があればおっしゃっていただき、そして新しい大統領代行並びに西側諸国との連携をしっかりととっていただいて対ソ連対策に誤りなきを期していただきますよう、本日はそれだけを御要望しておきたいと思います。  次いで、きょうは日銀総裁お見えになっていらっしゃるわけであります。現在、御存じのように、いろいろな不祥事件があったということもございますけれども株式市況は非常に冷え込んできております。その上に昨日のゴルバチョフ大統領失脚ニュース、さらにこれに水をかけたような形になっておる。それと、懸念されますのはマネーサプライがやはり低水準にある。今直ちに経済活動に支障はないという御見解のようではありますけれども一つには、こうなってまいりますと資金調達の面が冷えてきはしないか。直接には企業の設備投資意欲が急激に低下するかもしれない。こういう中でことしの七月に公定歩合を〇・五ポイント引き下げられたわけでありますが、世の中には、この際第二次引き下げを期待するという声もなくはありません。ただ一方で、国内事情とはいうものの、ドイツは八月の十六日に一ポイント公定歩合を引き上げておるわけであります。こういう中で、我が国金融政策金利政策と申しますか、このかじ取りは相当重要なところに来ておると思うわけでありますね。  こういう周囲の状況を見られまして、まあ金融政策というのは余り短期的なものを言ってはいかぬと思いますが、三重野総裁から、これからの金融政策のあり方、現在お持ちになっておられるお考えにつきましてこの際伺っておきたいと思うわけであります。
  14. 三重野康

    三重野参考人 お答え申し上げます。  委員は株式のことをちょっと気にされておりましたので、現在の情報をちょっとお知らせいたします。  昨日、ソビエトの政変を経まして日本の株式は約千三百円日経ダウで下がりまして、二万一千五百円ぐらいでございましたが、けさはちょっと戻しまして、約三百円ほど戻しておるようでございます。為替は、昨日はやはり一円五十銭ほど円安の方に振れまして、終わり値は百三十八円四十銭でございますが、その後ずっと海外を回っておりますうちにやや戻しておりまして、現在は百三十八円二十銭程度に戻しておるようでございます。  それはそれといたしまして、今委員がおっしゃいましたドイツの引き上げと日本の引き下げとの関連でございますが、委員御指摘のとおり、先日ドイツ公定歩合の引き上げを行いましたが、これは旧西独区域が非常に順調な景気拡大をしており、かつ賃金が大幅に上昇しております。その上、東西ドイツ統合に伴い財政支出が非常に拡大している。こういうもとで、ドイツにしては珍しく現在物価情勢が大変悪化してきておりまして、生計費、消費者物価でございますが、これは前年比四%台の半ばでございまして、隣の国のフランスが三・三%でございますが、フランスより上回るという珍しい状態になっております。したがいまして、ドイツとしてはインフレ抑制の姿勢をはっきりさせるということで公定歩合を上げたんだというふうに思います。  日本の方は、これまた委員御指摘のとおり七月一日に公定歩合の引き下げを行いました。これは、日本の経済が緩やかに減速をしている中で、物価情勢、これはもちろん手放しで楽観は許しませんが、ようやくここに来て落ちつきの兆しを見せ始めたということ等を勘案して下げたわけでありまして、現在はその後の情勢を注意深く見守っている段階でございます。もちろん政策の基本といたしましては、物価安定を基礎といたしまして引き続き慎重な政策運営を行っていきたいと思っております。  今、ドイツが上げて日本は下げる、一見ばらばらのようでございますが、これは先般のG7のコミュニケにも明記されておりますけれども、それぞれの国がそれぞれの経済情勢の相違に応じてインフレなき持続的成長を遂げるということで合意を見ておりますが、その線に沿ったものだというふうに考えております。
  15. 中島源太郎

    中島(源)委員 今の総裁のお話で大体お考えはわかりました。ドイツが一%上げたということは、国内事情、給与の面、あるいは消費者物価が四%に達した、ドイツにとっては大変高い、レッドゾーンというかイエローゾーンぐらいなところに入ってきたということに対する対策であろうと思うわけでありますね。一見、ドイツが上がる、日本が下げたということでそのバランスがややアンバランスな感じもしないではありませんけれども、今の御説明で理解はいたします。そこで私も、この際、引き下げ期待感はあるものの、ここのところは慎重にひとつ見守っていただいて、金融政策に誤りなきを期していただきたいと思うわけであります。  その中で、一つだけ、これは要望として申し上げておくのですけれども一つのバロメーターと申しますか、その中に、私は中小企業のあり方を多少よく見ていただきたいと思うわけであります。この中小企業というのは少なくとも産業の基盤を支えていると思いますし、一つは商業関係で、いわゆる日米構造協議の中から大店法関連法案を通常国会の中で成立させていただいたわけであります。この中で相当な対策も打ち出しておるわけでありますが、しかし、はっきり言ってこれから厳しい面、それから建設的な面が出てくると思いますが、どうしても、時差から申しますと厳しい方が先に出てくる可能性があります。そして、商業集積その他、意欲を持って取り組んでいただくというのが、形としてあらわれるのがどうしても時差的に後になってくるわけですね。そういうところに、例えば購買力の低下というものが極度に追い打ちをかけますと、ちょっと厳しさが倍加するという感じもなくはありません。  それからもう一つは、メーカーサイドの中小企業にとりましても、今各地で労働力の不足を嘆いておられる状態だと思うのです。これは一時的なものであればよろしいのですけれども、人口構造からいたしましてあるいは慢性的な構造になってくるかもわからぬ。ということになりますと、現在やらなければならない設備投資というのは、やはり省力化のための設備投資を今引き続きしておかなければならぬという状況だと思うわけでありますね。  その二つからいたしまして、少なくとも事業所数で九九%を超す中小企業、そして全国民の中で四千万人がお勤めになっておりますこの中小企業、この健全な歩みをとめないような範囲でウォッチをしていただく、これをぜひお願いをいたしておきたいと思いますが、御所感はいかがでございますか。
  16. 三重野康

    三重野参考人 委員の今おっしゃったことはよく承りまして、その点にも目配りをして、慎重な政策を進めていきたい、こう存じます。
  17. 中島源太郎

    中島(源)委員 それでは総裁、お忙しいところありがとうございました。  引き続きまして、証券問題、金融問題のいろいろな不祥事が噴出してきたと申しますか、国民の間からは、銀行マンというと一番かたい職業というイメージを今まで持ってこられたと思うわけでありますけれども、その一番信頼されるべきものに信頼感を失うというのは非常に不幸なことでございます。一つは、証券問題は損失補てんの問題、それから金融関係では、これを不正融資事件と申すのか、あるいは偽造預金事件と申す方が正しいのか、こういう問題が相次いで噴出してきたという感じがいたすわけであります。  国民の皆さんは、今のこの事象を解明するということについて非常に大きな関心を持っておられると同時に、どうしてこのようなことが相続くのか、日本人はいつ金に魂を売ってしまう国民になってしまったのかというような感じを持つわけでありますね。だから、当面の事象の解明と同時に、もう少し深い根っこが、原因がどこにあるかということを、それが解明されませんと、広い目で不信感が募っていくということになろうと思うわけであります。  そういう面から伺いたいのでありますけれども、大蔵省とされましては、平成元年の十二月に証券に関する通達を出されておるわけであります。平成元年十二月二十六日、各財務局長・沖縄総合事務局長あてに出されております。その前文は省くといたしまして、その中の一つは、「法令上の禁止行為である損失保証による勧誘や特別の利益提供による勧誘は勿論のこと、事後的な損失の補填や特別の利益提供も厳にこれを慎むこと。」という一項目を含めまして四項目にわたります通達を出しておられるわけであります。これを出されました理由というか、当時の状況について、まず伺っておきたいと思うわけでございます。
  18. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 こうした事態を惹起いたしまして、まことに申しわけないと思います。  そして、この通達を出すに至りましたそのもとは、平成元年の十一月に一部の証券会社におきましてこの損失補てんというものが問題になったことが契機でございます。  もともと損失保証と申します行為は、これは証取法上禁止をいたしております。しかし、事後における損失補てんと申しますものは、そんなばかなことがと、率直に私そう思うのですけれども、法律上わざわざ禁止をしておるものではございませんでした。これは実は日本だけではありませんで、欧米を見ましても、そのようなことが行われるという想定がされておりませんためでありましょう、法律上、損失補てんをわざわざ禁止はいたしておりません。むしろ業界の自主ルール等においてこういうものはチェックをするということであります。ところが、現にそういう問題が起きていたということが十一月に出てまいりました。  こうしたもとは何かと調べてみますと、いわゆる営業特金と申しますものが売買一任的に運用をされる、その結果として損失補てんが行われているということが明らかになったわけであります。これを契機として、やはり損失補てんというものを禁止をする、同時に、その損失補てんの温床となりがちな営業特金というものの適正化を図るということを目的として、証券局長通達などを出して証券会社に対し指導を行うことにいたしました。  そのポイントは、法令上の禁止行為であります損失保証による勧誘、また特別の利益提供による勧誘、これは当然のことながら法律上禁止をしておることでありますけれども、事後的な損失補てんあるいは特別な利益提供も厳にこれを慎むこと。また特定金銭信託につきましては、原則として、顧客と投資顧問業者との間に投資顧問契約がきちんと締結されたものとして、投資顧問契約を締結しない場合には売買一任あるいは利回り保証は行わない旨の確認書を取り交わすこと。こうした内容の通達を出したわけであります。
  19. 中島源太郎

    中島(源)委員 今おっしゃった中に二つありまして、損失保証、損失補てんとございましたね。損失保証というのは事前に、平たく言えば御損はかけませんというような約束がある、これは法律で禁止されておる。こういうことでございますね。それから、損失補てんというのは、国民の皆様方もよく御存じだと思いますが、事後、証券取引によって起こったリスクに対して穴埋めをするというか補てんをする、こういうことだと思います。  今おっしゃった中で、よくわかりますが、事前の損失保証は証取法で禁じられておる、事後の損失補てんは法律には書かれていない。で、おっしゃった中に、それは、書かれていないのは書くまでもなくとおっしゃると、まあ言い方によっては、事前の保証よりは事後補てんの方がより起こり得ざるものという感覚で書かなかったとも言えますし、言いようによっては、事前のものは法律で禁止されておる、事後のものは法律では禁止されておりません。したがって、法律違反ではないわけでありますね。これを法律違反ではないと言う場合と、法律に書いてないということを法律以前のモラルの問題で法律に書くより重いものだという感覚とでは大分受け取り方の重さが違うと思いますね。どちらに重点を置かれてお考えになっている、こう判断すればよろしいのでしょうか。今のお答えにもございますけれども、その点を重ねて伺っておきたいと思います。
  20. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、この立法当時の立法者の意思が那辺に存したかについては現時点で知る由もございませんが、現行法からまいりますと、今般の証券会社によります特定顧客に対する損失補てんなどの一連の不祥事と申しますものは、確かに直ちに証券取引法に違反するとは言えないことであります。しかし、これは免許会社としての規範に反する、また内外の一般投資家の証券市場に対する信頼感を大きく損なう、そればかりではなく、特定の顧客だけ有利な取り扱いを受けたのではないかという不公平感を国民の中に広くもたらしたという意味におきましてはまことに遺憾なことでありますし、深刻な、極めて深刻なものと私は受けとめております。  私は、この問題については、本当に国民の皆さんにこの場を拝借して、その責めを負うべき者として監督不十分であったという点について深くおわびを申し上げますと同時に、事故の再発防止、事態の再発防止と証券市場に対する信頼の回復に向けて全力を挙げて取り組まなければならないと考えておりますし、当然のモラルとして守られるべきであったものが守られなかったということであり、通達を出して確認したにかかわらずそれにも違反をしたということでありますならば、法をもってこれを禁ずる以外にない、今そのように思い詰めております。
  21. 中島源太郎

    中島(源)委員 お考えはわかりました。ただ、平成元年の十一月時点で、ある証券会社で損失補てんの実態があった、これは法律以前のモラルの問題であるという大変重い受け取り方をなさってこの通達をお出しになった。  そこで伺いたいのですが、実は平成元年の十一月に、ある証券会社とおっしゃったわけですが、後から損失補てん額を期別に出してもらった表をいただいておるわけでありますが、それによりますと、少なくとも大手四社並びに準大手十三社、合わせて十七社の額で申しますと、既に平成元年の三月期、つまり通達を出される大分前でありますが、平成元年の三月期で既に百六十八億円強の損失補てん額があったわけでありますね。その中の氷山の一角、ある証券会社とおっしゃったので、その一つを見つけられてこれはいかぬということで通達を出された。ところが、通達を出された後も恐らく損失補てんはされたと思うのですが、その平成二年の三月期を見ますと、残念ながら補てん額は平成元年の百六十八億円を大きく上回りまして、一けた伸びた千六十四億円強の損失補てんがなされておる。月別の補てん額は私のところにはございませんけれども、この中には少なくとも通達を出された後もその通達の重さを感じなかったか、あるいは結果的に無視されたかということになっておると思います。これは大変残念なこととお思いになると思うのですが、この平成元年の三月期あるいはそのもう一つ前の昭和六十三年の九月期にも既に四百八十七億円強の損失補てんがなされておった。  大蔵大臣は、ある証券会社の損失補てんを元年の十一月に知ったとおっしゃるわけでありますが、既に六十二年のブラックマンデー以後この損失補てんが次々なされておったという実態をお知りになったのはいつでございますか。
  22. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 平成元年十二月の通達発出に合わせまして、本省監理会社二十二社に対し、六十二年十月のブラックマンデー以降の損失補てんについての自主点検を行わせしめ、その結果を二年三月末までに報告をいたさせたわけでありますが、六十三年九月期にも損失補てんがあったという事実はこの時点で報告を受けました。  また、委員から御指摘がありましたように、今回、損失補てんのございました証券会社のうち、本省監理会社十七社の平成二年三月期の補てん額千六十四億円という委員の御指摘のとおりでありまして、六十三年九月期、元年三月期に比べて金額がふえておりますことは事実であります。  この二年三月期の分に、御指摘のように通達発出後の損失補てんが含まれております。この通達発出後の損失補てんにつきまして聞き取りをいたしましたところ、各社から、当時の株価急落の局面において、営業特金の適正化をめぐって発生した相当数のトラブルに対処して、その解決のため余儀なくされた損失補てんであるという説明がございました。  しかし、いずれにいたしましても、通達発出後に損失補てんが行われた、結果的に通達が遵守されなかったということにつきましては事実でありますし、行政当局としてまことに残念と申し上げる以外にありません。これは損失補てんが理由のいかんを問わず不適切な行為であることは変わりませんし、通達発出前後ということにかかわらず問題であることも間違いがありません。こうした状況の中で、当時各社に対して厳しい社内処分を実施させてきたところであります。
  23. 中島源太郎

    中島(源)委員 お知りになった経過はわかりました。  そこで、証券検査というのがございますね、現在も。この証券検査というのはどういうものなのであろうか、これを伺っておきたいわけです。つまり、それほど重要な損失補てんが六十二年の九月期からもう三期にわたってなされておった。平成三年はまだ出ておりませんけれども。その間、改めて調べ直しをさせる、そして報告をさせてその結果おわかりになったわけでありますが、それほど重要なものを、例えば証券検査というものがどの程度でどのようなことをするのか、私も詳しくは存じません。  そこでこの際聞いておきたいのですが、そういうものをチェックする検査ではないのか、それほど重要なものが発見できない仕組みなのか、あるいは証券検査というものはそもそもそういうものは発見すべきものではないのか、その辺の性格づけと申しますか、これは今後こういうチェックというものをどのように置いたらいいのかということにもかかわるものでございますから、現在ある証券検査についてひとつお教えを願っておきたいと思うわけであります。
  24. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 証券検査と申しますものの目的は、公益または投資者の保護、そしてその根拠法は証取法第五十五条でございます。この条文、「大蔵大臣は、公益又は投資者保護のため必要且つ適当であると認めるときは、証券会社若しくはこれと取引をなす者に対し当該証券会社の営業若しくは財産に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員をして当該証券会社の営業若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」これが五十五条でございます。この条文を受けまして、証券検査と申しますものは、検査対象会社の業務運営及び財産の状況を総合的に把握をいたし、法令遵守の状況を検討すると同時に、経営方針、経営体制など基本的な面における問題点を的確に掌握することを目的とし、検査事項は、大別いたしますと、経営管理状況、営業状況、財務状況及び内部管理状況の四つの点になってまいります。そして、その中で問題として認められる事項がございました場合には、必要な指導を行いますとともに厳正な処分を行うこととなっております。  もし細部が必要でありましたら、事務方から補足をいたさせます。
  25. 中島源太郎

    中島(源)委員 いずれにしても、投資者保護とは申されますけれども、その総体を言えば、公正な取引、それから透明度の高い取引が行われていくことを願ってのものであろうと思うわけですね。したがって、仕組みを細かくは伺いませんが、せっかくそういうものがあるのに、大蔵大臣が大変重さを感じて通達を発出なさったそのもとであるべき損失補てんが二期にわたってそれがわからないというのはちょっと残念だった、こう思いますね。今の検査でわからなければ新たなやはりチェック機構をつくらなければならぬ、こう思うわけであります。  そこで、一番最初にお答えになりましたように、いずれにしても通達が無視された、あるいは遵守されなかったということであれば法律改正をせねばならぬ、こういうおっしゃり方、それで今鋭意証取法の改正を詰めておられると思うわけでありますね。厳しく言えば、平成元年に通達を出されて、そのときに、たった一件であっても、これはしまった、こういうことがあっては法律以前のモラルの問題だとお思いになったとすれば、まあ厳しい言い方なんですけれども、その重さを感じられたならば、なぜ通常国会にその法改正をお考えにならなかったのであろうか、あるいはその案を御提案だけでもできたのではないか。一方で、ノンバンクに対する規制につきましては、これは議員立法で通常国会ぎりぎりに成立させていただいたわけでありますが、そんな感じがしないでもありません。  その点と、それから、まあしかし過ぎた年を数えてもいけませんので、今度お出しになろうとする法改正は、これはお出しいただければまた党の方でもいろいろ検討させていただきますけれども、いつごろまでにおまとめになる予定であるか、あるいはさっきもお触れになりましたけれども、改正点の重要な点、あればもう一度おっしゃっていただきたいと思うわけであります。
  26. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 元年十一月に特定証券会社の損失補てんが表に出てきたときなぜすぐ法改正を考えなかったかという御指摘を今受けますれば、私も返す言葉はございません。確かにそのとき、これほど大きく、業界全体と申してはそうではない企業もあるわけでありますが、業界の多くにこうした行為がびまんしているという認識を持っておりましたなら、そのとき対応すべきであったかもしれません。しかし、その時点において、私自身、証券業界というもののモラルの信頼というものをなお持っておりました。これが誤りであったとすれば、おわびを申し上げる以外にありません。しかし、その後当局に報告をされていない損失補てんが明らかになる。先ほど委員の御質問にも多少戻りますけれども、その後の、これは証券局の検査の中で発見されたものもございますし、また税務当局の税務調査の中で出てきたものもございますが、こうしたものが出てきたということにつきましては、本当にその責任は重く受けとめております。  今、もうそろそろ条文としての整理を終わり、党にも御相談を申し上げる時期が参っておるのではないかと心得ておりますけれども、今回取り急ぎ証券取引法の改正として御論議をいただきたいと思っておりますことは、一つは、証券会社による損失補てん行為などを禁止し、刑事罰を適用すること、もう一つは、顧客が証券会社の損失補てん行為等に加担することを禁止し、刑事罰を適用すること、また取引一任勘定を禁止することでございます。恐らくこの後に、一方で法務省が法制審に諮問をしておられ、法制審が御論議をいただいておる内容の結果を受けまして、その刑そのものの状況を変化させることが恐らく第二弾としてあり得ると存じます。  また、現在通達等で行っております行政を全面的に見直しをいたしておりますが、この中においてむしろ自主規制団体にお任せをするものも恐らくは出てくるでありましょう。また、法令化を必要とするものも出てくるでありましょう。これは相当膨大なもののようでありますので、時期を区切ることはできませんけれども、こうしたものの中で法令に取り入れるべきものは今後法律改正として御審議を願うときがいずれ参ろうかと考えております。
  27. 中島源太郎

    中島(源)委員 今鋭意お取りまとめ中ということはわかりましたので、お出しいただいた上で検討させていただきたい、こう思っております。いずれにいたしましても、公正な取引を進める上に大変大蔵大臣御自身も残念だという点があろうと思いますが、今後の法改正にそれを盛り込んでいただきますように期待を申し上げておきます。  そこで、証券関係と無縁ではないんですが、もう一つ金融の、先ほど申したようにむしろ行政側からの形で偽造預金事件と呼ぶのが正しいのかもしれません。この問題は既に報道機関を通じましてその手口はいろいろと報道されておりますので、国民の皆様方ももう既に御存じであろうと思いますが、この一連の事件というのはどんな手口であったのか、これは政府委員で結構ですけれども、簡単におっしゃっていただきましょう。
  28. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明を申し上げます。  御指摘の事件につきましてはそれぞれの金融機関から報告を受けておりますけれども、その手口は、共通して申しますならば、いずれも管理職が架空の預金を何らかの方法で作成するとともに、偽造質権設定承諾書を作成し、取引先によるノンバンクなどからの借り入れのためにそれらの証書などがノンバンク等へ担保として差し入れられたというものでございます。多少、幾つかの手口がございますので、二、三、御紹介をいたします。  第一は、行員が預金の原資となる資金がない状態で預金入金の機械操作を行いまして偽造預金証書を作成いたしまして、それから直ちに預金入金の取り消しの機械操作を行いまして帳簿上の勘定を合わせたというものがございます。  第二には、一たん正規の預金入金をいたしまして預金通帳を作成し、その日もしくは数日後に無通帳、通帳なしでございますが、無通帳の状態でその預金を払い出したというものがございます。  それから第三に、預金入金の機械操作は預金証書の用紙を用いないでいわば不正に入力処理をする、一方、本来の入金処理に伴い発行すべきでありました預金証書の用紙を店外に持ち出しまして多額の預金証書を偽造したものがございます。  そのようなものがございますが、いろいろ幾分手口は相違しておりますけれども、ノンバンクなどからの借り入れ、つまり銀行からの融資ではございませんで、ノンバンクなどからの借り入れのために偽造預金証書を作成するという点につきましてはいずれも同様でございます。
  29. 中島源太郎

    中島(源)委員 今御説明がありましたように、共通点とすればということと若干の差異と両方御説明があったわけですが、共通点とすればというのが一番大きな問題で、少なくともある人物がノンバンクからお金を引き出したいというためには二つ必要でありまして、一つは預金証書というもの。ただ預金証書だけを持っていってもノンバンク等の金融機関は金を出さない。預金証書ともう一つ、この預金証書を担保に入れて結構ですよという質権設定の承諾書がなければいかぬ。この二つを持っていきますと金融機関からそれを担保にお金を出してくれる、こういう形でありますね。たまたま一つの預金証書をつくりますために、実際には一回預金をしてすぐ取り消したり、あるいは中には全然預金をしないで架空の偽造証書を初めからつくったりという点は違いますけれども、ある人物がある金融機関から預金証書をもらって、それをノンバンク等へ持っていくときに、預金証書と質権設定承諾書と両方合わせていけばお金が引き出せるというパターンはすべて共通だと思うわけであります。  これだけの事件が相次いでまいっておりますと、例えば富士銀行の赤坂店ですとか協和銀行さん以下ですね、最近では東洋信金さんとか、それが全部同じパターンということになりますと、私は一つ伺いたいのですが、これは行員の個人で起こした事件と言い切れるのかどうか。つまり、個人であっても、例えば一行員の場合には、その銀行の印を押すのに大変苦労をして偽造のものをつくっておる。中には支店長さんの場合にはそれはまあ勝手に押せるという差はありましても、これは同じパターンがこう続くということは、少なくともこういう形で金を引き出せるんだという一つのパターンが通例化しているのではないかという恐ろしさを感ずる。  それからもう一つは、一行員の問題と言い切れるんだろうか。こう金融機関全部とは申しませんけれども、一個人だけでそれだけのものをできて、これは一個人の犯罪ですよということで片づけられるのかという疑問はどうしてもつきまとうわけであります。したがって、その点を伺いたいのですけれども、さあ、伺っただけでは仕方がないので、これが二度と起こらないようにするにはどうしたらいいのかという問題を一緒に考えなければならぬ、こう思うわけであります。  これは証券問題と違って明らかに刑事事件であり、また民事事件にもなると思うのですけれども、司法当局にゆだねてあるからそちらで解明してもらうということで事足りるのかどうか、これもあわせて、今後の対応、どうしたら再発を防げるか、この点もあわせて伺いたいと思うわけであります。
  30. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、確かに行員個人の行為という言い方のできる問題ではございますけれども、また、確かに金融機関内における組織的な行為というものでないことは事実でありますけれども、管理職にある者が悪意を持てばこうした行動ができる、偽造預金証書がつくれるという事実は、これは内部管理体制の問題としては大変なことであろうと存じます。そして、こういうことが本当に連続して出てまいりましたということは何とも言いようがありません。  それで、捜査当局にお願いをし、犯罪としての視点からは当然のことながら十分な御捜査がいただけると信じており、我々もまたその解明に期待するところは大でありますけれども、それとは別にやはり金融機関自身に対しても、その自主努力というものを前提としながら、日々の行政や金融検査というものを通じて、金融機関経営の基本であるべき内部事務というものを適正に処理する体制、そのための組織、人員配置、こうしたものを含め、内部検査システムの改善等に対して一層我々としては厳正な指導を行うことによって、再発防止に全力を挙げていきたいと考えております。
  31. 中島源太郎

    中島(源)委員 この内部管理その他の徹底ですね、これは当然だと思うのですが、そもそも銀行の印鑑使用については複数の者がチェックするとか、そういう問題はこの事件以前の問題でありまして、それがなされていなかったというか、それをなすべき支店長さん自身がそれを偽造して、しかも偽造の質権設定承諾書を出すだけでなくて、それを持って相手方の金融機関に支店長みずから出向いた、こうなりますと、もうどこでチェックをしろとかいう問題ではなくてモラルの崩壊であるとしか言いようがない。これが一番国民方々にとって不気味な点であろうと思うわけですね。  それから、じゃなぜこのようなすぐわかるような犯罪が続けて行われたのか。それはある意味では、通例化と言っては言い過ぎだと思うのですが、そういう形があるいはこれ以外にも蔓延して、こういう形ならば引き出せるということがそう余り罪悪感なしに取り扱われておったのではないか、推測ですがそう思えばこれもまた大変不気味なことでございます。  そこで、信用金庫を舞台にして預金額の総額、たしか三千五百億円程度だったと思いますが、それに相当するような借り入れのための偽造証書あるいは質権設定承諾書、こういったものを出せる。これは何というのか、モラルというよりは、経済的にも一つの信用金庫が倒れるというような巨額の額のものを出している。これは金融マンとしての通念も崩壊し、モラルも崩壊をしている。こういうものを相手に相当なことをいたさないと再発は防止できないのではないか。今おっしゃった手順はよくわかります。しかし、それだけでなおかつ腹の虫がおさまらないという国民と同時に、その責にある大蔵大臣も、これは何とかせねばいかぬというお気持ちを十分お持ちだと思うのですね。今おっしゃったことは、手順としてはわかります。これを徹底して、絶対に再発させないというための手だて、つまり、今の二重チェックその他の手だてはこの事件以前の問題でありますね。事件が起こった後どうしたらいいのかということについてもう一度、今お答えに入っておると思いますが、それを徹底させるためにどうするかということを重ねて伺っておきたいと思います。
  32. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から御指摘をいただきましたことは非常に本質的な問題を含んでおります。今たちまちの話を実は申し上げたわけでありますけれども、あわせまして、今回引き続きとりました措置と、基本的に我々が持っております問題の認識、そしてその目指すべき解決の方向というものに多少の時間をいただきたい、こう存じます。  今申し上げましたように、こうした事件が発覚をいたしましてから、当該の金融機関からそれぞれ司法当局への届け出等が行われますと同時に、当局といたしましても、司法当局にそれぞれの事件に対しての徹底的な解明を要請をさせていただいてきました。ですから、当然司法当局による解明というものに我々は期待するところが大でありますし、我々は司法捜査権を持っておりませんのでこの点の限界はございます。  しかし、同時に、こうしたことが相次ぎましたために金融機関の信用というものに大きく傷がついたということから、銀行局長名をもちまして、内部管理につきましても総点検を実行させますとともに、その結果講じた措置などについて報告を求める旨、指示をいたしました。  また、当事行以外の都市銀行などに対しましては七月二十九日に緊急的な措置として、早急な内部点検を行うと同時に、不正が発覚した場合には直ちに当局に報告をするように指示をいたしました。さらに八月十三日付の文書をもちまして、一定規模以上の貸し金業者の方々に対しましても、預金証書、特に高額の預金証書を担保とした貸し付けにつきまして早急に再点検を行われるように注意喚起を行いまして、行政当局としても現状における努力を行っております。  と同時に、先日本会議で私は、今回の証券不祥事というものを振り返ってみて、その問題点というものを五つに分け、その五つに対してそれぞれどういう方針で臨みたいかということを簡潔に申し上げました。  第一に、ルールの不透明性というものがございます。そこで、この不透明性ということに対しましては、今回、先ほど申し上げましたような内容を持ちます証券取引法の改正案を御審議をいただき、成立を図らせていただきたい。また、市場の公平、公正あるいは行政の透明性というものを確保するという観点から、証券取引の規制でありますとか証券会社に対する行政指導というものを見直すと同時に、通達などのうちで法令化すべきものを証取法の抜本改正に合わせて法令化する努力をいたしたいと考えております。  また、自主規制団体の規則にゆだねるべきものにつきましては当該規則に盛り込んでいただくように、通達などの簡素合理化を図りたい、そのように考えております。同時に、そのルールの明確化の一環として、相場操縦的な取引、相場操縦的行為というものの禁止に係る法令につきましても、さらに見直すべき点がないか、証券取引審議会の不公正取引特別部会において御検討を願うことにしたいと考えております。  また、違反者の処罰についての問題がございますが、現在の証取法の改正案を準備しております過程におきまして、従来対象となっておりませんでした損失補てんを含め、保証、補てんを行いました証券会社に刑事罰を科す方向で検討いたしておりますほかに、今後、証券取引法違反に対する罰則の見直し、強化、行政処分のあり方についても検討をいたしたいと考えております。  具体的には、例えば法人に対する罰金刑の引き上げ、これは現在行われております法制審の御論議の結論というものを踏まえて、できますならば私としては次期通常国会に、法人の罰金刑の引き上げについての法律案というものを提案させていただきたいと願っております。  また、もう一つの問題として、検査体制、監査体制の問題がございます。これは大蔵省内のプロジェクトチームで検討を進めてまいりましたが、その後、総理からの御要請を受け行革審が、来年度予算に間に合うようにこの問題についての精力的な御審議を願えると聞いておりますので、国会の今までの御論議も踏まえまして、大蔵省といたしましては、新しい検査機構のあり方につきまして、これは大蔵省がこうしたいということを申し上げるのではなく、行革審の御審議をまちたいと考えております。  また、自己責任原則の問題がございます。これは証券業界に対してこの徹底を強く求めますとともに、市場に参画されるすべての方々に対しても、証券取引というものに伴う基本原則を改めて認識していただくための方策を講じなければなりません。  具体的には、証券会社サイドにおいて、例えば仮の名前でありますけれども倫理憲章を制定する、各種経済団体を通じて投資家サイドに広く理解を求めていくことが必要であると思います。また、このような考え方の一環として、例えば損失保証でありますとか損失補てんを求めてこれを受けたお客側にも罰則を科すように、証券取引法改正案の中に盛り込みたいと思います。  また、業界行政のあり方がもう一つの問題点でありまして、これにつきましては金融改革の推進などの中で適正な競争原理の活用を図っていくことが必要でありますし、株式委託手数料の取り扱いについて、引き続きその水準を国際的な動向を勘案しながら機動的、弾力的に見直しを行っていくと同時に、制度のあり方につきましても検討を進めていかなければなりません。  また、証券取引所等自主規制機関につきましては、その機能の充実強化を働きかけていきたいと考えておりまして、これを受けて現在、証券取引所、また証券業協会においても具体的な施策の検討を行っていただいていると承知しております。  また、投資顧問業者につきましては、今回の損失補てん問題に関連いたしまして、親会社に対する依存体質というものが指摘をされております。投資顧問業者の独立性を一層保持するなどの措置を検討していく必要がございます。  また、証券会社に対する再就職の問題について、これが証券行政をゆがめてきたようなことは絶対にないと私は確信しておりますけれども、一方において、厳正な行政を損なっているのではないかという御批判があることも十分認識をいたしております。当面、大蔵省の幹部職員、すなわち本省課長相当職以上、人事院承認を要する証券会社への再就職につきましては、本人と証券会社両方、当事者の理解を得て自粛を求め、人事院承認の申請を行わない、こういう措置をとりたいと考えております。総合的に今このようなことを一つずつ私どもは実行していく責任がある、そのように考えております。
  33. 中島源太郎

    中島(源)委員 今大蔵大臣から、私は金融問題で伺ったわけですが、証券問題あわせて。私もそう思います。というのは、この手口から逆算をいたしましても、金融のいわゆる不祥事がいろいろ噴き出してまいりましたけれども、これは突き詰めていけば、証券取引上のリスクでその資金運用が非常に厳しくなりまして、それで、考え得られる以上の手だてを講じて資金繰りをしなければならなくなった、こういう結果であれば、この証券不祥事、金融不祥事というものはある意味では根底で汚れた部分がつながっている、こう言わざるを得ない。  そこで、今五番目ですがおっしゃったいわゆるチェックの問題、これも言うなれば、証券金融あわせてチェックできる体制をとらなければいかぬのではないか。これを行政内に置くのか、あるいは行政外に置くのか、この問題もよく検討させていただいて、少なくとも公正、透明な取引慣行が行われますように、私どももできるだけの知恵を出してまいりたい、こう思っておりますが、どうか今おっしゃった数点を着実に推し進めていただくと同時に、また、私どもに御相談をいただき、知恵を出し合わさせていただくということを申し上げておきたいと思うわけであります。その中でちょっと、自己責任の問題で、これを何かでわかりやすくするということですが、自己責任というのはもともと自分のリスク、自分の利益というものは自分の責任で行う、これは当然のことであります。  私は、次にPKOに行きたいのですけれども、日本がいろいろな国際貢献をされてきたわけであります。少なくとも、湾岸戦争に対しても約九十億ドルの支援をいたした。その他掃海艇も派遣をしておる。しかし残念ながら、クウェートが感謝の気持ちをあらわすアピールの中に、ありがとうという感謝、三十国の中に日本が入っておらない。これは感謝を強要するつもりはありませんから、入っていようといまいと構わないことではありますけれども、残念な気はいたさないと言えばうそになるわけであります。なぜ日本というのは貢献しても余りありがたがられないのであろうか。  その一つというわけではありませんが、海部総理、日本の経済指標を拝見しますと、日本で黒字なのは貿易収支、ただし、基礎収支赤字、総合収支も赤字国であります。いわゆる総合収支からいけば、一九九〇年までですね、ことしのはまだ出ておりませんから、少なくとも歴年総合収支は赤字国ですね、日本は。これを赤字国と称するかどうかということですが、通常、黒か赤かというのは経常収支で判断をされますから、それは経常収支でいえば黒字国である。ただ、基礎収支が赤というのは、その間に長期資本収支という、つまり日本の金がどのくらい出て、外国からどのくらい金が入って、その差額がどのくらいの差額があるかということが膨大な数字になっておるわけですね。つまり、長期資本収支の赤というものは、少なくとも昨年で見ますと、本邦資本でいきますと千二百八億ドルの赤を計上しておるわけです。  これを総理、どういうふうにお考えになるかということを一言申し上げておきたいのですが、私は、総合収支が赤字国であっても、長期資本、長期的に日本の資本が外へ出ていくということは一国の生々発展の過程ではこれはあり得べき姿だ、むしろそれが好ましいか好ましくないかというのは、出ていった先で喜ばれる資本として定着し、根づいていくかどうかということが問われるんだと思うわけですね。せっかくこれだけの大きな金額が出ている。千億ドル以上と言っても、これは本邦資本が出ていっているものと入ってきているものとの差額ですね。だから総額としてはもっと大きいものがある。日本の国家予算の十数倍のお金が動いていると思いますが、そういったお金が相手国に喜ばれるか喜ばれないかということは、日本のあり方を理解していただくためには大きな問題だろうと思うわけです。  ところが、その大きな長期資本収支の中、出ていくお金が、あるときは金利差益に走り、要するに間接投資、結果的にいけばバブル。それではいかぬから直接投資にということであれば、誘導されたわけではないと思いますが、直接投資となると海外の不動産を買いあさっているというふうに見える。要するに、相手の産業に投資をして、そして長い期間かけてその産業を育成して、その産業からの適正な還元を貿易外収支として我が国経済の下支えをするというのが先進国型の経済運営だと思いますが、とてもそこまでいっていない。日本の経済というものは、幹は立派に見えるけれども、地中に張っている根は貧弱そのものである。これを太い根にするためには、海外に対する投資も、よりモラルのある投資の仕方をしていかなければならぬ。  そのたった一つの、どこが悪いのかということを私なりに申し上げれば、どうも投資をするのが遅過ぎる。種をまくのが遅過ぎて、収穫を性急に求め過ぎる。農林大臣もいらっしゃいますが、種を早くまいてゆっくりと育てるという努力の結果、適正な実りが経済を下支えするというのが、いつも日本人の行うのは種をまくのが遅くて、それを育てるリスクを抜いてしまって収穫をとろうとする。ここが、他の国際的にはなかなか認められないという性格があるのではないかと私は思います。  そこで掃海艇の、いろんな御努力の結果大変な、一番最後に出ていって大変な努力をされておるわけでありますね。この御努力に本当に感謝しつつ、いい成果を上げていただきたいと思うのですけれども、これも一番最後に出ていって何か成果をアピールしたいというお気持ちがあったら、そうではない、やるべきことは早くやらなければいかぬという点で、次のPKOつまり国際貢献について少なくともおくれをとらないように準備をいたしておかなければならぬということになるのであろうと思うのですね。  湾岸戦争が始まりまして以降、西側諸国にとりましてその国際的な貢献、そして日本のように国連中心主義を持った国が相相談し、諮りまして、どのような貢献ができるか。ただ座して指をくわえていては国際的な社会には入っていけない時代が来ておるという中で、相当重要な問題だと思います。  このPKO、一口にPKOと申しますが、これは国際平和維持活動、国民方々御存じであろうと思いますが、その意義についてひとつ伺っておきたいと思います。これは総理あるいは……。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろ御指摘をいただきました。最後の結論部分で言われたことがポイントと思いますが、今世界が新しい秩序を求めていろいろ模索しておる。特にサミットの場なんかでも、自由と民主主義というものが普遍的な価値になったときには二極の対立は多極の対立に変わっていく大きな流れも懸念される。したがって、皆が国連の機能を高めて、国連の権威を皆が高めて、そして平和をきちっと確保していこう。湾岸における危機を国連が見事に国際協力で乗り切って平和を回復したということに裏づけられてのロンドンサミットでは、さらにすべての世界の国がこういったことに協力をして新しい秩序づくりをしようということも皆の一致した意見でございました。  私は、そういう意味からいくと、国連の平和維持活動に対して、日本として今まで資金協力もしてまいりました。物資の協力もしてまいりました。人の面の協力というものも、最近は皆さんの御理解もいただきながら、例えば人が出ていって、バングラデシュのいろいろなサイクロン災害に緊急援助隊として協力をするとか、あるいはクルド族難民の救援の問題についても医療班その他が出ていっていろいろ努力をするとかしてはおりましたが、でき得る限り積極的に人の面でも協力をしていくということ、同時に、それをするために国内的な法制度の仕組みを政府は今鋭意成案を得るべく努力をしておりまして、これは成案を得た暁は、国会の皆さんの御理解と御協力をいただいてこれを成立させていただきたいと願っておりますけれども、御指摘のように、国際社会の平和維持のために日本ができ得ることは何だということを今ぎりぎり検討をいたしまして協力の体制を確立していきたい、こう考えております。
  35. 中島源太郎

    中島(源)委員 国際平和維持活動、PKOとは何かということについて、それ以上の大きい視点からお答えをいただきました。ありがとうございました。  これをそのPKOに限って申し上げますと、これは私の方からいただいた資料を読みますが、国際平和維持活動というのは、国連安全保障理事会または総会の決議に基づいて、「国連が世界各国から提供される要員からなる軍事監視団、又は平和維持軍を紛争当事国を含む関係国の同意を得て現地に派遣し、停戦・撤退の監視、治安の維持などを行うことにより、事態の鎮静化や紛争の再発の防止にあたるべきものである。」世界から感謝もされ、これはノーベル賞を受賞されているわけですね、この活動は。そういうものだということをまず国民の皆さん方に知っていただくために、PKOとは何かということをちょっと読ましていただいたわけです。  その中で、日本がそれに参加をするということについても、ちょっと時間もありませんので、一つだけ国民の皆様方が心配しているというか妙に感じておられることがあるのですね。新聞報道を通じまして、それだけ国際的な貢献をすべき活動に日本が参加をする。これは自衛隊あるいは民間あるいは国家公務員あるいは地方公務員いろいろあると思いますが、その中で、現地へ行きまして任務について、もし危険な状態があった場合には日本だけ帰ってきちゃう、これはどうも恥ずかしいんではないか、それならば初めから行かなければいいではないか、行っていざというときに方向転換するというのは行かないよりもっと悪いのではないか、こういうお気持ちがあるのですね。  ただ、これはよく吟味してみますと、そういう意味ではないと思うのですね。今読んだところがあると思うのです。少なくとも当事者国がそういう平和維持グループに来てもらいたいというまず同意がなければならないということがありますし、それから我が国で申し上げれば、その当事者間に停戦の合意なり同意が大前提としてあるということとか、その幾つかの条件がありますね。そういう場合、日本はその任務遂行についてその場で配慮する、あるいは上級指揮官と相談する、あるいは本部の指示を仰いで、あるときは回避をし、あるときは撤収するということがあるかもしれませんが、その辺だけ僕は、一般の方々、私どもも、出ていったわ、危ないときは帰るというのはおかしいではないかという、単純な誤解であってもそういう疑問に対して、きょうここでせめてそれだけには正しくお答えをしておかなければいかぬのではないか、こう思いまして、まずその点を御質問させていただくわけです。質問というよりは御説明をいただくと言った方がいいのかもしれません。一番端的に御説明いただける方にお願いしたいのです。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御指摘がありましたように、国連の平和維持活動というのは、国連で停戦が合意されたこと、紛争当事国すべてがPKOにそこで平和確保をしてほしいという共通の願いを持つことということが大前提であります。ですから、危ないとか危なくないとかいうようなことよりも、むしろ国連の理事会がきちっと決めて、ここにはこのような平和維持活動が必要であって、これはやはり国連の権威と説得でもって行うものでありまして、あくまで当事者間の合意が前提というものであります。したがって、その状況が崩れるということは、これは平和維持活動の基本となる停戦の合意が崩れるということでありまして、そういったことを際限なく議論をしていきますと、いろいろな今御指摘のような、逃げてくるという感覚は全く持っておりませんけれども、国連の決めた一国との協定の中にも、そういったときにいろいろなまた事情を持って撤収しようとする者はそういう意思表示をして撤収することができるとか、いろいろな細かい決め事はしてあります。  しかし、全体として見ますときに、その紛争当事国が合意をして、そしてそのあいておるところにきちっと停戦を監視する、停戦を確保していく、その地域の治安をきちっと維持するために平和維持軍はそこに行くのであるということでありまして、そういったことが平和回復活動の本旨であろう、したがってそういった決議を受けて行っていくのが平和維持活動の根本である、私はこう思っておりますが、詳細については、必要ならば事務局より御説明いたさせます。
  37. 中島源太郎

    中島(源)委員 それで結構だと思うのですけれども、ある程度の報道がなされるというか、内容が知らされてからなおかつそういう誤解があるということは、実は私どももちょっと誤解しやすい字句があるということを御指摘申し上げたいですね。  それは、字句ではないのですが、今総理もおっしゃった、この大前提として紛争当事者間に停戦の合意あるいは同意があるということが大前提だ、こうおっしゃっておりますね。ところが、政府案としての中間報告をいただいておるわけですが、その中に、「目的」と「協力の基本原則」と「平和維持活動協力業務の内容」というこの「業務の内容」の中に、まず、「武力紛争当事者の兵力引き離し、停戦の確保及びこれらに類するもの」、これをPKFと称する。「並びに停戦の監視」、この最初に「武力紛争当事者の兵力引き離し、」という言葉があるわけです。これは何か紛争の中に割って入って兵力を引き離すんだという、文法上はそういうイメージを持ちますわね。ところがその最後に、括弧で「武力行使を伴わないものに限る。」こう書いてあるわけですね。どうですか、三題ばなしではありませんが、停戦の合意が大前提ですよと言いながら、兵力引き離しが業務の一つに入っている、しかもそれは武力を使わないんだ。この三題ばなしみたいなものを置かれますと、非常に迷うわけですね。停戦の合意が成っておるならば、既に紛争の中の停戦はもうできている、兵力引き離しは済んでおる、そこへ行ってその現状を確認し検証するということであって、そういうことであれば、私、書きようがあると思うのですよ、それで正しければですよ。  書きようというのは、例えば私が普通の言葉で普通の文法で言うならば、紛争当事者間に停戦の合意が成立した上で両当事者間の兵力が引き離された現状を検証するための業務というのが、実際には正しいイメージをお持ちになっているんじゃないかと思うのですね。そうでないと、ばらばらに置かれますと、合意は成っているけれども行ってみたらまだやっていた、その中に割って入るんだけれども武器は使わない、これは、そういうことはあり得ない、そう思いますね。それで間違いない、そういう読み方でいいんだということであれば、お答えは要りません。よろしいですか。そういうことで、PKOをゆっくり申し上げられませんが、よろしいですか。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりでして、あの文章を翻訳した人にむしろ僕は聞いてみたいくらいで、兵力の引き離しといいますと、おっしゃるように、まさに行われておる戦闘の中に割って入っていって力でもって引き離すということをどうもイメージするような側面が確かにございます。けれども、よく読んでみると、停戦が合意をした、そして当事国がPKOの活動を合意をしたということになりますと、今度のイラクの停戦合意においても、停戦合意が成ると途中に中間地帯ができるわけです。ですから、力でもって引き離すのではなくて、その停戦状態を監視をし確保をしていくということになってくるのが正確な意味だと思いますから、今中島議員がここでお述べになられました解釈の側面からいくと、力でもって入っていって力でもって分けるようなことが第一の任務かと言われれば、私はそれはそうではない。とするなれば、日本的にどのような考え方になるのかということは今後も御議論をして皆様ともお話をいたしますけれども、引き離されたということは停戦の合意の結果でありますから、その結果を維持し確保するということが大きな任務である、私はそう思っておりますので、そのように御理解をいただきたいと思います。
  39. 中島源太郎

    中島(源)委員 わかりました。そのように解釈をいたしたいと思っております。  そこで、政治改革でございます。政治改革に一番時間をとらなければ申しわけないのでありますけれども、ただすべきこともございまして。この政治改革を御提案をなさったということにつきましては、私は評価をさせていただきます。これは相当の、自己改革としては厳しい自己改革だというふうに考えます。これを国会議員が、みずから改革をするために厳しさを忍んでというか、厳しさを受けつつこれを提案をし、進めたいというお気持ちは大きく評価をするわけであります。  ただ、今回提案をされております三法案ございますが、一般には選挙制度改革がもう先にひとり歩きをしている、それは一番身近な問題でありますから当然のことであろうと思いますけれども、それだけではない。つまり三法案出されておるということを、国民方々は三法、三法と聞いておるけれども、果たして御理解いただくまで御説明しておるかどうかということがありますので、この公職選挙法の一部改正と同時に政治資金規正法の一部改正並びに政党助成法案、これは中身を細かく御説明いただくと大変でございますが、国民の皆様方にこの三法があわせて出されておるのだよということを知っていただくために、多少端的に御説明いただければありがたいと思います。これは自治大臣でしょう。
  40. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 ただいま選挙法等を中心に三本出されておるという話でありますが、確かにお話がありますように、政治の基本が、政治倫理綱領の示しておりますところに基づいて今回政治資金規正法、いわゆる政治とお金ということにその焦点を絞ったわけであります。そのことから進めてまいりますと、自然発生的に現在の中選挙区制度というものに対しましても、やはりこれを見直さなきゃならぬということにも選挙制度審議会から勧告を受けておるわけであります。  そういう意味におきまして、政治資金規正法とそして選挙制度の改革、さらに、政権政党になろうとしましても、あるいは野党の立場にありましても、いずれにしましてもその政治活動資金、いわゆる選挙資金でなしに政治活動資金、こういったものの必要性というものはこれは認めておるわけでありますが、それを個人がひとつ捻出するのか、それとも政党政治、政策本位、こういうものに基づいて事を進めるかということになってまいりますと、そこに政党助成法というものの必要性も、必要であろうということからこの三本というものが出てきたわけでありまして、私は、あくまでもこの今回の基本的な考え方というものは政治とお金という問題で、日常活動における政治家の政治活動資金というものをできるだけ抑えていかなきゃならぬということが一つと、それにはやはり入る方についても相当の制限を加えるし、支出する方もすばらしい制限を加えて、そうしてここに立派な法律をつくり上げていこう、こういうことでありますから、この基本に立ってすべてのあとの二本が関連されておるということでありまして、私は少なくともこの三本につきましては一体性のものであるという解釈で今回提案をさしていただいておるわけであります。
  41. 中島源太郎

    中島(源)委員 ありがとうございました。  少なくとも私がこういう厳しい自己改革をよくぞお出しいただいたということで評価をいたすということを申し上げましたのは、私自身何年かこれらの検討に加わらせていただきましたけれども、その結果だけを申せば、現在の五百十二名の我々の議席を四百七十一に縮めましょうと。四十一議席の方々はその居場所を失うわけですね。その中でまた、その四百七十一のうち三百を小選挙区制で選出していただきましょう、そのときにもまた、今までの選挙区にそのまま負託を受けられる方、それから受けられなくなる人、これまた厳しい選択が行われるわけですね。そういう公職選挙法そのものにも血の出るような厳しさがある。  それから、せっかくそういう公職にある者が政治活動のために資金を使うものは国民の信頼を損なわないように透明、公正な使い方、報告をしなければいかぬというのが政治資金の問題であり、そして主権者たる国民の名においてその公のお金を使わしていただくときには、ある一定以上の資格を持った政党に入れていただき、政党がそれを正規に受けて正しく使わしていただこう、こういう三法案と思ってよろしいわけですね。つまり、その三つは、それぞれ主権者たる国民方々に対して、よりわかりやすく、そしてより透明に行っていくという法案だから三法一緒に御審議いただく、こういう意味にとっていただくのが一番わかりやすいかな、こう思います。  そこで、この細かい検討についてはまた特別委員会でもおつくりいただいてそこでやっていただかないとこれはとても時間がないわけでありますが、ただ、そういうことを評価する上で、主権者の方々に対して、ちょっとこれは皮肉な質問でないので素直にお聞き取りいただきたいのですが、主権者たる国民が、今までの選挙制度ではなぜいけないのですか、主権者たる国民がですよ。この新しい法案については評価いたします。でも、今主権者が置かれているのは今までの形の中に置かれておるわけですから、新しい法案を出されたときに、今のままの形ではなぜいけないのでしょうかと主権者が問われるのは、これは素直な問いかけだと思いますね。それに対してもしお答えするとすればどういうお答えが素直に返るべきものであろうか、これを聞いておきたいと思います。
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 率直にお答えいたしますけれども、非常に厳しい状況の中で我々がこの数年間歩みを続けてきましたのは、主権者たる国民の皆さんが政治に対する不信を高められた、それは日常活動と選挙活動に必要以上にお金がかかっておることであった、そういった厳しい反省であります。  なぜそんなにたくさん必要以上にお金がかかるのか、私はそういったようなことを考えていきますと、やはり議会政治は政党政治というように、政策本位、政党本位の選挙活動や日常政治活動というものになっていけば、今、日常活動から選挙活動から膨大になってきつつある資金の集めとかいろいろなものの責任が個人に集まっていくような情勢がややもすれば出てきておる、そうすると、一番政治家にとって大切な選挙で主権者たる国民に語りかけるその場面で、政策というものは今の中選挙区の制度でいくと、同じ政党から複数の人が出ておる場合には同じことを語りかけたら、政策論争だけをしたら主権者たる国民の皆さんの選択の基準はどこへいかなきゃならぬかという点が一つ問題として指摘されると思うし、またそういった制度、仕組みの中では、政策のみならずその他のことで個人の責任で有権者との心のつながり、関係、支援を高めていこうと思うと、政策以外のことにやはり時間も労力もお金もかけなければならないようになっていくというのが率直な現実であったという気がいたします。そういったものが何とか改革、改善されていかなければならない。それに対する有権者の皆さんの指摘が政治不信となり、またそういう必要以上にお金がかかるところの中で、お金をどのようにして集めるか、使うかというところに透明性が失われ、ややもすれば不祥事件が起きてくる背景にもなってきたんだ、率直な反省が自由民主党にあったのではないでしょうか。ですから党の政治改革大綱もでき、それを党だけではなくて、政府は選挙制度審議会にこれは二年間にわたってお諮りをして、あらゆる学者の代表やあるいは有識者の代表や皆さんの御議論を経て、二年の結果、答申をいただきました中にもそのことは明らかに指摘されておりました。  そういたしますと、今度は有権者の側からの問題になっていけば、中選挙区の今の制度の中の選挙でどうしてもそのような反省やそのように断ち切っていかなければならない、殻を破らなきゃならぬという気持ちがあるなれば、なぜ選挙区がという今の御指摘でありますが、選挙区の前に、一人一人の皆さんが政治倫理というものをきちっと守って明らかにしていかなきゃならぬということは、もう各党各会派の皆さんが御議論願ったとおりで、その問題はもう既に先行をして、自民党も既に議院に対して、政治倫理確立のための資産公開法とかあるいは政治倫理委員会の拡大強化の案を党としては既に議会へお出し願って、野党の皆さんの御意見も出してもらって、そこの議論が進んでおるところでありますから、これはもう切り離されて政治倫理の問題は先行しておると思います。また、お金の使い方の問題については、ごく一部でしたが、昨年二月の衆議院選挙に間に合うように公職選挙法の一部改正案も通過成立をしていただいて、支出の方の面の一定の制約は既に去年の二月から行われるようになりました。  けれども、そういうことだけではどうしても根本が直らないというので、政治改革に最終的には入っていかなきゃならない。そうすれば、個人が今負担をしておる政策宣伝費とかあるいは人件費とか、選挙のときのいろいろかかる費用、後援会との友好的なつながりを持つ費用、こういったものについても必要なものに制約もされていくだろうし、資金の流れももっと公明になり、もっと明朗になってくれば、有権者の皆さんの方から見ても、そういうことに要るお金ならばそのように使ってもいいではないか、先進工業諸国が行っておるような制度、仕組み等も念頭に置きながらつくり上げた政府案でございまして、その三法案をあわせてお出しすることによって、有権者の皆様には政策を通じてわかりやすい選択もしていただける、我々にとっては、政治姿勢を正すことによって必要以上な、本来の政党活動、政治活動以外のところに使わなければならないようなお金を使わなくてもいいように持っていきたい、こういう願いを込めての三法案でございますから、どうぞ御理解と御協力をお願いいたします。
  43. 中島源太郎

    中島(源)委員 今のお話は非常によくわかります。ただ、わかるのは、国会議員同士が論議をいたす場ではそれでいいと思うのです。私が質問の中にもし主権者たる国民の皆様方から聞かれた場合どうお答えになるかと言ったのは、今のお答えはほとんど選ばれる方の国会議員の立場で、少なくとも自分たち同じグループから二人、複数出ておればそれなりにサービス過剰になることもあり得る、それから同じグループから出てきて政策を訴えればほとんど同じ政策が訴えられるというのは選ばれる方であって、その御議論はいいのですよ。我々の議論としては随分やり尽くしましてよくわかります。ただ主権者たる国民は、我々が悪かったからじゃあ直すのだなというのでは、主権者たる国民には何の関係もないのですね。そこのところが非常に主権者、聞いておられる国民の皆様方がもう一つ、いや、自分たちは何でもないのに、何でもないのにというか、そういう中で一生懸命生活を思いあるいは国を思って代弁者たる国会議員にその貴重な一票で負託をしてくだすっているわけですよね。それで、あるとき、いや、その方法は実は悪かったんだと言われると、主権者にとっては非常に困るのではないか。つまり、主権者の皆様方にこういう御迷惑をかけている、あるいは今の方法よりはこういう方法の方が主権者の皆様方にとってこの点がよくなるということをもうちょっとおっしゃってさしあげないと、今の理由は国会議員同士の討論では非常にいいのです、ただ主権者の国民に対してはそれだけでいいのかなという感じが、さっきのPKOの論議ではありません、余り字句にこだわるわけじゃありませんけれども、もう一つわかりやすくないといけないのではないかなと。  これはもっと論議をしたいのですが、ここでちょっと申し上げたいのは、今、同じ政策を言われたら選択に困る、こういうことをおっしゃいました。そこで私は、総理に伺うのではないのですが、短い時間の中で申しわけないのですが、主権者の知る権利というものがあると思うのですね。私どもは知らしめる、知らせる義務というものがあると思いますが、こうして各委員会で大変熱心な討議が行われていると思いますが、その議事録を一般の国民方々が手に入れるのにどうやったらいつ手に入るかということに対して、実は大変恥ずかしいのですが、私自身が何日後にこうしてお手元に届きますよということをはっきり言えないのですね。非常に時間がかかっております。ところが諸外国、といっても私は狭い範囲の知識でありますけれども、イギリスあるいはイタリーもそうですが、少なくともきょう行われた各委員会の速記録は翌日の昼までには市販されております。これは、これがあれば自分たちが負託して出してあった代弁者が実際国会へ行ってどのような質問をし、どのようなインパクトを与え、そしてどのような動きをさせたのかということはそのまま伝わるわけであります。これがなぜできないかということはたった一つだけの理由でありまして、これは院の方のことですから、与野党並びに国民方々等の御理解を得ることはたった一つで、それは翌日お渡しできるものは速記録であって、保存用の会議録とは別に考えていただければこれはできるわけであります。つまり、一字一句そごのないもの、保管する正規の会議録と一字一句違わないものというふうに要求されますと明くる日お手元に渡すのは無理かもしれませんが、速記録なんだから大要がわかれば、多少の字句の誤差を許していただければそれができる。私はこういうことも国会改革の中にひとつ入れていくべきだと思いますが、どうかよろしくお願いをいたしたいと思うのです。  そういうことでございましてもっと申し上げたいのですけれども、これはまた委員会にお譲りするとして、最後に一つだけ御要望を申し上げておきたいと思います。  これは、自然災害の雲仙・普賢岳の噴火災害によりまして亡くなられました方々、改めて御冥福をお祈り申し上げますし、いまだに御自分の土地を追われて避難生活をなさっている方々、いろいろな要求があると思います。これはいつ御自分の土地に帰れるのかわからない、そういういらいらも高じていくわけであります。長崎県を通じましていろいろな御要望が具体的に出ておると思います。それを一つ一つここで詰めている時間はございませんが、最後に、関係省庁多々あると思いますし、資金面では大蔵省あるいは自治省さんも大変御努力をいただいておるわけですが、各省庁横の連携をとられまして、この被災者の方々にできるだけの対策をしてあげていただきたいということを最後にお願いを申し上げまして私の質問を終わりたいと思いますが、それについての御所見だけ伺って終わりたいと思います。
  44. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 災害が大変長引いておりまして、地元の皆さん方、被災者の皆さん方、心からお見舞いを申し上げます。  政府としては、直ちに災害対策本部を設置して、そこで十分意思の疎通ができるように、各省庁ごとの意見ではなくて、対策本部で政府の意見として取りまとめるようにきょうまでも鋭意努力もいたしてまいりましたし、一々、個々一つ一つのことは申しませんけれども、農林漁業とか中小企業とか雇用とか民生とか教育とかいろいろな分野についてそれぞれ責任を持つ担当省庁の申し出や、あるいは地元の知事さん、市長さん、町長さんの要望などを受けて二十一分野にわたる対策を決定し、今度のことだけで新たに省令をあるいは政令をつくる、あるいは適用基準を変えるなど三十項目にわたって対応しまして、できる限り御要望に沿うような措置をとりつつあるところであります。  なお、この災害活動はまだ続いておるさなかでありますから、さらに人命に対する十分な監視そして対応は当然でありますけれども災害が終えん後のあの地域の復興とかあるいは開発とかいうことについても、県を通じて、また市、町を通じてのいろいろな御要望が来ております。現行法やあるいは今言いました政令、省令の改正や、でき得る限り基準の拡大、弾力的な適用等でただいま対応しておりますけれども、将来の問題についてもさらに何ができるのか、積極的に対処してまいりたいと考えております。
  45. 渡部恒三

    渡部委員長 簡単にお願いします、次の時間がありますから。
  46. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 じゃ簡単に御答弁いたしますが、総理がもう御答弁になりましたけれども、自治省は特に地方公共団体を担当しておりまして、特に長崎県当局あるいは島原市あるいは深江町あるいはその周辺の町村でありますが、この負担が非常に大きくなっておりますものですから、私どもとしましては、交付税の前倒しをするとか特別交付金を前渡し申し上げるとか、そういったいわゆる交付税における措置は十分とっております。また、そのほかの問題につきましてもとるべき態度は最大限とりまして、いわゆる少なくとも地方自治体である長崎県知事が、私に相談なくても、これを判断として、冷静な判断としてやるべきであるというふうに被災者に対しまして下したものについては、後からの決裁として私の方で財政負担をするということまで申し渡しまして、最善の努力をしておるわけであります。  ただ、昨日、知事からもお話がありまして、基金云々の話がありました。ありましたから、これにつきましては、自治体自体がそういった主体性を持った……
  47. 渡部恒三

    渡部委員長 簡単にお願いします。
  48. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 基金をつくるということであれば、それに対しましては自治省として十分な対応を加えていきたい、こういうことも申し上げておる次第であります。
  49. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。  次に、山花貞夫君。
  50. 山花貞夫

    山花委員 私は、さきの党大会で書記長に就任いたしました山花貞夫であります。日本社会党を代表して質問をいたします。  直面する政治課題である証券・銀行の不祥事件、政治改革、PKO、これらの問題についてお伺いする前に、まず第一に、全世界に大きな衝撃を与えたソ連の政変につきまして、総理及び外務大臣に伺いたいと思います。  私は、今回の憂慮すべき事態が、伝えられるようなゴルバチョフ大統領の健康上の理由に起因するものであるということについては疑わしいと思います。軍部や保守派のクーデターによる大統領の解任であり、合法的な権力の移行とは思えないのでありますけれども、この点についてどうお考えであるか、御所見を伺いたいと思います。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日、お昼過ぎであったと思いますが、健康上の理由でという第一報が入り、直ちに、次には非常事態宣言がしかれるというようないろいろな情報が入ってまいりました。まだ、現在情報は収集中でありますけれども、私は、今の情勢は憲法違反可能性が極めて高い異常な事態であると受けとめておりまして、断片的に見るテレビの画像なんかを見ても、あの状態は正常な民主的な手続に従っての政権の移譲とは受け取られませんので、極めて深い懸念を持っております。
  52. 中山太郎

    中山国務大臣 山花議員にお答えいたしますが、今総理がお答え申し上げましたように、事態は極めて政治的にも混乱状態にあると考えております。私どもは、情報を的確に把握するために、在ソ日本大使館を通じ、あるいはまた関係各国と協議をしながら、この実態の把握にさらに努めていく考えでございます。
  53. 山花貞夫

    山花委員 ゴルバチョフ大統領に対する世界の認識は、いわゆる新思考外交によって冷戦の終結をもたらした功労者であり、米ソ協調を基軸とした平和と軍縮の新時代を先導していた、こういうように私たちは考えています。また、八五年以降のペレストロイカは政治的にも経済的にも民主化を進めたと評価をしております。日本の政府もそうだったのではないでしょうか。  しかしながら、国家非常事態委員会による全権の掌握という事態、こうしたソ連の政治路線が後退を余儀なくされるのではなかろうかと懸念しないわけにはまいりません。総理は、この政治路線の継承を求め、今後の日ソ善隣友好関係、一体どういうように進めていくことになるのか、まだ極めて流動的な中にはありますけれども努力の基本的な方向について所見を伺いたいと思います。
  54. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃるように、ゴルバチョフ大統領が始めたペレストロイカ、同時にまた外交においては新思考外交、これが冷戦時代の発想を乗り越えさせるものであったという認識は一致しておりますし、だからこそ世界に自由と民主主義と市場経済というものが普遍的な価値として高まりつつあった。そこで日本としても、そのペレストロイカの正しい方向性と新思考外交の地球的規模での適用ということを強く主張をして、そしてできればソ連が国際社会においてそのような普遍的な価値を共有し、世界の平和と繁栄のためにともに協力することができる国になってもらうように、そのことを強く願いながら、どのような形でペレストロイカの成功に協力をしていくかということを考えてもまいりました。その一つのあらわれが七月のロンドンサミットでの多くの議論でもあったと思っております。  そういった基本に立って物を言いますと、今、状況は非常に流動的で懸念されます。けれども、私は、その中においても再び冷戦時代に世界を戻してはいけないし、同時にまたソ連が約束をした、世界に向かって約束をしたペレストロイカというものは、これはその肯定的な方向に向かっての前進を強く期待するという願いを持っております。ブッシュ大統領もマルルーニー・カナダ首相も、そういった点についてはいろいろ意見の交換をしてみましたけれども、全く同じような考えでありますが、依然としてゴルバチョフ大統領がどこでどうなっておるかということすらまだわからないという状況であります。  したがいまして、そういった基本的な方向はこれを後退させないように、今せっかく動いてきておる冷戦状態を乗り越えたというこの普遍的な価値を守り抜いていくことができるようにしていかなければならない、この基本に立って対応していくのでありますが、まだどのようなことになっていくのか、いましばらく慎重に事態を見なければならないと思っておるところであります。
  55. 山花貞夫

    山花委員 ソ連にどのような新しい形での権力機構が確立されるか、おっしゃるとおりいまだ明らかではないと思います。このときに、各国政府の中には、新しい政権を認めない、あるいは経済制裁を考慮すべきである、こういう見解も伝えられているところでございます。先ほどの質疑の中で総理が触れましたヤナーエフ大統領代行各国首脳に対する書簡、この中では、御指摘になりましたとおり、さまざまな国際的義務についてはいかなる意味でも抵触しない、こうありました。ここのところは基本的に大事なところだと思います。  そうしたことを前提としながら、私は、新政権に対して日本の政府が、各国との協調姿勢など慎重な態度が必要だと考えますけれども、その基本的な姿勢は平和と軍縮、国際協調、そして民主的改革と開放の推進など明確な指標を持って対応すべきだと思いますが、いかがでしょうか。もちろん、国家非常事態委員会に軍事の弾圧、人権抑制等行わないことを強く要請しながら国際的な世論を強めるということについても努力を進むべきだと思います。総理のこの点についての所見を伺いたいと思います。
  56. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現状において、ソ連国内においてもまだどちらにどうなっていくのか明確な筋道は見えておりませんが、私は、おっしゃるようにペレストロイカというものの正しい方向性は、世界に平和、そして対決、対立の政治から協調の政治に流れを変えようと、その方向性、それは正しいものとして今でも強くそれが実現されることを願っておるということを、そしてそれを強く期待しておるということをここでも申し上げましたけれども、その方向に行くことを強く期待しますが、現状がどう動いていくのかという今の現状の把握について、もう少し情勢を見きわめなければ、どうなる、こうなるとは断言できませんけれどもソ連政府に対して、これ以上いろいろな懸念されるようなことが起こらないように、同時にまたヤナーエフさんからの来ておる手紙の中に書いてある一連のことは書いてあるとおりに守ってもらいたいということも当然強く求めてまいります。
  57. 山花貞夫

    山花委員 最後に、日本社会党は、私が今申し上げましたような立場を海部内閣がとってこれからの努力を尽くすということであるとするならば、協力を惜しまない、こういうつもりでございます。国政の場で与野党を超えた対応についての協力の体制ということが必要だと考えています。こうした点についての見解を最後に伺いたいと思います。
  58. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 既にソ連に対してはいろいろな点で申し入れもしておりますし、また今言いましたようにペレストロイカ方向性、同時に新思考外交をヨーロッパだけで結実させるんじゃなくてアジア・太平洋地域にも適用することは、世界の平和と安定のために役に立つということも伝えてありますし、同時にまた我々は、今後ソ連が我々と普遍的価値をともにして世界の平和と繁栄のために協調していける国になるようにその体質改善、市場経済について必要な技術支援や技術協力の問題等も既に始めておるわけでありますから、その線が後退しないことを強く望みながら、同時に人権の問題その他についても強い関心を持っておりますので、この懸念は表明すると同時に、今新書記長、ここでそういうことならば協力をし、やっていこうということであります。率直にそのお言葉は受けとめさせていただいて、さすが山花さんだと思いますが、どうぞいろんなことも全部我々と話し合って、これはよろしいと思われたことは全部相談して協力していただきたいと心からお願いをしておきます。
  59. 山花貞夫

    山花委員 次に、雲仙の災害問題について伺っておきたいと思います。  長崎県の雲仙・普賢岳は二百年ぶりに噴火をして、六月三日には記憶に生々しい死者、行方不明四十二名を出す大火砕流が発生いたしました。その後の状況につきましてもマスコミ等が刻々状況を伝えているとおりであります。警戒区域の設定によって一万人余りが強制的避難を余儀なくされていることを初めとして、自主的な避難者も含めて約一万四千人余りの方が避難をしております。このお盆の際にも御先祖のお墓にもお参りすることができなかった、こういうお話を伺うこともあります。我が国災害史上例のない事件だと言ってよろしいと思います。  先ほども総理、自治大臣から、できるだけのことはしている、こういうお話もありましたけれども総理も現地を視察された際に、まず現行法でできるだけのことはすべてやりたい、そしてそのことで不足であるならばさらに検討を進めたい、こういうお話をされました。地元の皆さんとしては、前例のない大災害、しかも、継続しているということから考えれば前例のない特別立法によっても今度の問題について手当てをしてもらえないだろうか、こういう声が大変強いのであります。こうした問題に対して立法上の、技術上の問題等はそれぞれあるのかもしれませんけれども、これだけ大きな被害、そして今日なおこの問題について苦しめられている皆さんのお気持ちを体するならば、この問題については思い切った特別立法の措置をも含めて対策が講ぜらるべきだと思いますけれども、この点についての総理の見解を伺いたいと思います。
  60. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたが、雲仙・普賢岳の長期にわたるこの災害については心からお見舞いを申し上げると同時に、御質問にありましたように、私も現地で知事さん、市長さん、町長さんの御意見等、皆聞いてまいりました。政府は、直ちに対策本部をつくってその対策を、準備を始めました。そして、実行に移すものから実行に移してまいりました。そして、現行法でできる限りのことと言いましたけれども、さらにそこに今回だけでも三十項目にわたって政令を改正し、省令をつくり、また柔軟な対応ができるような基準の拡大とか、あらゆる措置をとって対処してきたところであります。同時にまた、いまだ災害が続いておるわけでありますが、終わった後で調査をしてからというような問題については、緊急の措置としてそれに対応するような制度等も新たに行い、今回だけで三十項目加えて、前向きにできる限りのことをしておるわけであります。  今後とも対策本部でそれらの問題についてはできる限りの努力をし、さらにあの地域の将来の発展についてはいろいろな面で積極的に対応していきたいと考えております。
  61. 山花貞夫

    山花委員 さきのあの本会議、また本日も、例えば二十一の分野で、また新しく三十項目、こういうお話は伺うわけですけれども、現地の皆さんのお気持ちからいたしますと、毎日の被害、例えば葉たばこの農家はことしも収穫の時期を逃しました。また、植えつけの機会も失って来年以降も収穫はだめだろう。こうした暗い気持ちの中に、多数の家畜を見殺しにせざるを得なかったという畜産農家の声も伝わってきています。  政府はこうやっているとおっしゃいますけれども、やはり被害を受けた皆さんが、自分たちはこれだけ苦労して、また努力をしているんだけれども、じゃ一体このことに対してどれだけの支援を具体的に毎日の生活に役立つように政府がやってくれているだろうか。よく言われます、九十億ドル出したではないか、じゃ一体こっちはどうなっているんだという声もあります。先ほど来交付金、特交の前倒しという話もありました。しかし、それだけではなく、特別立法に直ちに行く前にもできることがあるのではないでしょうか。  例えば我が党でかねてから主張しております長期の避難の見舞い金の制度など、緊急の場合はあってよろしいのではなかろうかと思います。先ほど自治大臣が、地元の県の要望もありとお話ありましたけれども、国と県などが出資してある程度の規模の基金をつくって今後の対策に充てていく、こうした具体的な提案がなされるべきではなかろうかと思いますけれども、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 できる限りのことをいたしておると申しましたが、例えば具体に今お触れになりました葉たばこ被害に関する適切な対応についても、これは審査手続の簡素化等を図り、七月十日にこれは既に支払い済みにするとか、いろいろな問題についてできる限りの努力を積み重ねておるところでありますが、さらに将来の問題については、地元の意見等も聞きながらあの地域全体の活性化のための努力はしていかなければならない、こういう考えで毎日取り組んでおります。
  63. 山花貞夫

    山花委員 できる限りをということにつきましては、総理が現地の被災民の皆さんをお見舞いした際の新聞報道、非常に大きく報道されまして、期待もなお続いているところでございます。こうした被災民の皆さんの期待にこたえるような具体的なできる限りの措置をぜひこれからも強力に実現していただきたいということを要望いたしまして、この問題についてはまだ関係の同僚議員が後ほど詳しい状況についてお話をして、また質疑させていただきたいと思いますので、以上で緊急のテーマについての質問を終わらせていただきます。  証券金融の不祥事の問題に入っていきたいと思います。  本当に、毎日の新聞を見ると、次から次へと証券・銀行の不祥事が続きます。実は、ついせんだっての総理の所信表明、証券不祥事が公正な社会という理念から見てもまことに遺憾であるとして、証券取引法の改正、証券市場の監視、適正化のための是正策などについての検討をお話しになりましたけれども、実は当時、あの時点では、銀行不祥事についてはまだまだ明らかになったところが少なかったのです。総理は、証券不祥事については比較的大きく触れましたけれども、銀行の問題については大変簡単に、一部の銀行において、職員の関与した不正事件が発生したことはまことに遺憾であり、関係者に強く反省を促す、関係者に反省を促すとしか当時おっしゃっていませんでした。証券については遺憾であると言った。ところが、銀行については残念としかおっしゃっていなかったのです。あの時点では、まだいわば全体の証券・銀行不祥事、次第次第に明らかになってくるその段階だったと思いますけれども、それからさらに問題は拡大したと言ってよろしいのではないかと思っています。  もう振り返ればこの種事件というものは、大手銀行四つ、上場企業四社が関係した国際航業の事件、政治家もこの事件で刑事訴追を受ける、こうした流れとなりましたけれども、以来証券関係では二十一社の損失保証、損失補てん、一千七百二十八億八千六百万円。証券関係では野村証券の東急電鉄の株価の操縦の疑いの問題も大きなテーマだと思います。銀行関係では、架空預金証書などを使った不正融資、富士、東海、協和埼玉で三千二百億円、先ほどもお話ありました東洋信用金庫の事件、資本金十億三千万円の銀行が架空預金証書十三通で三千百五十億円、イトマンの事件、企業関係では絵画取引で五百五十七億円、地上げの資金が二千億円、丸紅・共和の事件では六十八億円の詐欺、三百七十億円の使途不明金、脱税事件では地産元会長の四十三億円の申告漏れ、あるいは岩間カントリークラブの会員資格保証金預かり証の発行による三百八十四億円、昨日のジャパンライフ、次から次へと全く大きな事件が続出をいたしました。かつて銀行絡みで三億円の強盗事件というのがありました。世の中は仰天しました。三億というお金にびっくりしました。それが今度は何百億、何千億、けたが違うのであります。  そして、全般的な問題としては、こうした証券市場に対する、不祥事件に対する国民の見方、全く信頼を失った、信頼を持ちません。同時に大事なことは、世界最大の金融市場の一つとなった日本の国際信用というものを大きく失墜をさせました。こうした不公正な金融市場のあり方につきましては、後ほど議論する金融業界と大蔵省など行政との癒着と見られるような問題、企業倫理の未確立と社会的責任の欠如、さまざまな問題を指摘しなければならないと思います。従来は、経済一流、政治三流というそうした言葉も残念ながらありました。日本の経済が一流だった、こういう見方を国民がすることはできなくなったと思います。こうした日本の経済界の実態を見せつけられた中で、今これに対する対応が問われています。  まず全般的に、これだけ大きな不祥事件に対しての、証券、銀行ともども総理の所見を伺いたいと思います。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の一連の証券不祥事件に対しては、申されるように、これは公正な社会という、そういった理念からいっても極めて遺憾なことであって、政府としては監督不行き届きの点について十分な反省をするとともに、こういったことが二度と再び起こらないように、繰り返されないようにどうしなければならないか、どうしたらいいかということを大蔵省にも直ちに厳正な対処を指示いたしましたし、同時にまた、こういったことをなくしていくためには、法律によってこのようなことが許されないものであるということを厳しくするように今国会に提出の用意もしております。  ただ、最初にお触れになった銀行その他の問題については、私が所信表明演説をしましたのは八月の五日でございました。私が所信表明演説の想を練っておるときというのは、まさに証券の問題が毎日の大テーマではありました。しかし、銀行の問題も頭を出しましたので、私はそのことについてはあの最後に、これは厳しく反省を求めるということを言った次第でありますが、しかし、こうなってまいりますと、これについては、一部の金融機関による不祥事件というものは、内部管理体制の脆弱やバブル崩壊の過程において職員が連座した刑事事件に発展してきておりますので、こういったことが二度と繰り返されてはいけないのはもちろんのこと、これが極めて遺憾な事件であったことも当然のことであり、これを厳しい反省材料として今後の銀行に対するいろいろな政府の指導もしていかなければならない、このように厳しく受けとめております。
  65. 山花貞夫

    山花委員 今総理のお話で一番大事なところが一つ欠けておるんじゃなかろうかと思います。反省をした、対策をこうやりたい、こうおっしゃいました。一番根本にあるのは、反省をし対策を立てるその前提にある、一体どんな事件であったのかという真相を明らかにする、この点が欠けておるのではないでしょうか。この点を含めて、今国民総理の政治姿勢に注目しています。  私たちは、かつてのロッキード事件の際、さまざまな政治的な圧力に抗して真相解明に全力を注いで責任の所在を明確にした、亡くなった三木総理の毅然とした政治姿勢を脳裏に焼きつけています。思い起こしていただきたいと思うのです。ロッキード事件のときの三木元総理のあの姿勢。じゃ、一体リクルート事件のときにはどうだったんでしょうか。竹下内閣、宇野内閣は、リクルート事件にけじめをつけることができないで、全国に渦巻いた怒りの声の中でつぶれました。就任以来、その後を受けて、政治倫理の確立を原点とした政治改革の実現を過日の所信表明でもおっしゃったとおり、時代から託された使命とおっしゃった海部総理は、政治の場面だけではなく、車の両輪とされている経済の部面におきましても、倫理の確立に向けて不退転の決意を持って取り組んでいただきたい、立ち向かっていくべきだと思います。  基本は申し上げましたとおり三点。まず第一は事案の真相を解明すること、第二は責任の所在も明確にしてけじめをつけること、第三は再発防止を含めた将来の施策の実現だと思います。真相解明について私たちは証人の喚問を要求しました。きょうこれからの質疑の中でそのことの必要性については明らかにしていきたいと思いますけれども、まず真相の解明、この基本において総理の取り組まれる姿勢について伺いたいと思います。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の問題については、御承知のように、何が行われて、どういうところに問題があったのかということをやはり明らかにしませんと、それに対する対応も、再発を防止するための法律といいましても、それは成り立たないわけでありますから、当然初めからそのような考え方のもとに、私はまず、企業がこれらの問題については一番よく知っておる当事者でありましたから、企業の自主的な公表でもってまず何が行われたかということを知らしむるべきであるという態度もとりました。同時にまた、自主的に公表された企業名も出ております。また、その補てんの手法等については、政府としては国会審議の場を通じてわかっている限りのことを申し上げ続けてきたところでありますが、引き続きその事実を明らかにするように努めてまいる考えでおります。  なお、具体の問題については当予算委員会理事会等でも御議論が高まっておるものと承知しておりますけれども、その事実を明らかにするように政府としても努めてまいりたいと思っております。
  67. 山花貞夫

    山花委員 真相を解明することによってどこに問題があったかという原因が明らかになるのではないかと思っております。  実は、きょう大蔵大臣からも、こうした証券不祥事に対しまして、過日の本会議以来五つの問題点を挙げて対策についてお話しくださいました。ルールの問題、処罰の問題、監視体制の問題、自己責任の原則の問題、業界行政のあり方の問題。実は伺っておりまして、極めて総花的に対策としてはわかるわけですけれども、すとんと胸に落ちないのです。これだけ大きな事件が引き続いて、大蔵大臣おっしゃっているようなそのことで済むんだろうか、こういう気持ちを捨てることができません。やはり問題の根本がどこにあるかという、そこに目を向けていかなければいけないのではないでしょうか。そこから金融財政の方向ということについても改めて抜本的に制度をお考えいただく必要があるのではないかと思っています。  バブルの崩壊と言われております。言葉の意味、なかなか抽象的でわかりにくいところもありますけれども、ついせんだって経企庁の方が白書を発表されました。バブルを分析して、そしてそのことがこれからの日本の経済に対して国民生活にどう影響を与えるかということについても、正直言って拝見して大変楽観的過ぎるというように思いますけれども、分析をされております。バブル経済、日本の経済の実態がどうであったのかということについてどう把握され、そして今度のような白書を出されたのか、伺いたいと思います。
  68. 越智通雄

    越智国務大臣 お答え申し上げます。  バブル経済という言葉自身は明確な定義はございませんが、実需に基づかない経済行為、そしてまたそれゆえに、何と申しますか泡のように消えてしまうという意味でバブルとつけられたかと思いますが、我が国の場合には、昭和六十二年、昭和六十三年、平成元年におきます株式並びに土地につきまして、実需がない、すなわちそれをずっと持つという意味ではなくて売買差益をねらいまして、時あたかも大変な金融超緩慢、金利も低いという情勢の中で行われた経済行為かと思っておりますが、この行為自身が日本経済の基本的な大勢に対しまして大きな悪影響を、確かに影響はございましたけれども、基本的なダメージを与えたという判断は私ども持っておりませんで、それぞれの主婦の方々が、例えば個人の投資家なども株を選好されましたけれども金融資産そのものにおきます株式のシェアは大体一割以下でございまして、やはり大宗の方が銀行預金であり、第二には保険でございました。また、こうした行動の中におきましてかなり企業のシェアが上がった形跡がございますけれども、これらの問題も、堅実な企業が多く占めておりまして、これらの年度を通じまして営業利益そのものはきちんと年々増加いたしておりまして、六十一年の前年マイナス以降、六十二年以降はずっと増加いたしておりまして、日本経済の全体の基調に大きなダメージにはなっていない、こういう認識で御報告申し上げた次第であります。
  69. 山花貞夫

    山花委員 今お話しのとおり、日本の経済、「「いざなぎ景気」とならぶ長さとなる時期が目前に迫っている」「景気の腰は強い。」「昭和、平成にまたがる長さを持ち、平成の劈頭を飾る上昇局面」、こういう全体的には極めて楽観的な指摘をされているわけであります。私はこの点について不安を持たないわけにはまいりません。  今、バブルというのは余り定義もないのだ、こういうお話でしたけれども、そうだと思いますが、本屋さんに行きましたら、ガルブレイス教授の「バブルの物語」という本を売っていました。序盤の方で、日本の経済もこの問題がある、こういう大変予測的な指摘もあったところでございます。バブルの語源について一七二〇年イギリスで起こった南海泡沫事件、サウス・シー・バブルという事件についての紹介もありました。南海会社の投資が中心となって空前の投機ブームがイギリスで起こって政治家も巻き込まれた、こういう事件です。株価は百ポンドが一千ポンドにもなって、しかしバブル、風船は必ずはじけるということからはじけてこの問題について終止符が打たれた。いわばバブルの語源の一つではなかろうかと思うわけなんですが、日本の経済もそうだったんじゃないでしょうか。  私は、今お話がありました金利、プラザの合意以降、五%だった公定歩合が史上例を見なかった二・五%という水準で長く続きました。その当時の経済のあり方、これが正常だったのかということについて点検する必要があるんじゃなかろうかと思っています。  六十一年、六十二年、六十三年、土地と株式が上がりました。お金がだぶついたから株に走った、土地に走った。その現状については、今日までさまざまな形で影響を各方面に及ぼしています。そうして、どのくらいの資産価値が上がったのか。さっきお話しの資産価値との差の問題ですからその点について見ると、六十一年、土地は二百三十六兆円資産価値が上がりました。株式は百二十一兆円、合計三百五十七兆円です。この年の一年間のGNPが三百三十三兆。要するに、国民が汗水流して働いたそのすべての集積、集めたものよりも土地や株の値上がりの方がはるかに大きかったという実態です。六十二年、土地の値上がりで三百五十九兆、株式が九十九兆、合計四百五十八兆。この年もGNPは三百四十九兆でした。六十三年も同じ。土地が百三十二兆、株式が百八十四兆、そして合計三百十六兆。この年のGNPは三百七十兆。この三年間で土地と株の資産の値上がりは一千百三十一兆円となりました。GNPは一千五十二兆円です。  以上は、三年前の経済白書から引かしていただきました数字でありますけれども、要するに一般の家庭に置きかえて問題を考えてみるならば、毎日朝から晩まで働きずくめでお給料をもらうよりも、たばこをくゆらして証券会社のいすに座っていた方がお金が入ってくる、これがバブル経済の実態じゃなかったでしょうか。これはもう多く触れるまでもなく貧富格差を生み出しました。株を買うだけのお金がある人、土地を買うだけのお金のある人、株についてはその後大きな損害も出ていますけれども、東京を中心とした土地を持った人たちを中心として、持てる層と持たない層が歴然とあらわれました。今、働く勤労者は一生働いても、親子何代かかっても土地を買って家を建てることはできない、これはずっとそうなのじゃないかというあきらめを持っている階層がふえています。これは総理のおっしゃった社会の公正に合うでしょうか。こういう社会の構造、経済の実態、そのことに対する反省がなくしてこれからの方向というものは出てこないのではなかろうかと思います。  バブル経済がもたらしたこうした実態に対して、総理の所見を伺いたいと思います。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 全体として申しますと、今御指摘があったように土地の値段が非常に手の届かないようなところに急騰をした、それによって働く人の夢を奪うのではないかという御指摘も何度も受けてきました。私たちはそういった問題の中で、どのようにして土地の問題についても対応できるのだろうか。土地基本法をつくってもらい、その理念に従って政府はできる限り着手をして努力をしてきたところでございますが、まだきょう現在の状況を見ると、そのように何か社会全体の中に金銭万能主義といいますか、何かこう金銭が一番幅をきかせるというようなことに対して、その他の価値との比べ合いの中で、どうしても金銭の価値が優先するような社会の風潮がそういった中から生まれてきたということについては厳しい反省をしなければならないと考えております。
  71. 山花貞夫

    山花委員 社会の構造がゆがんだ形になってきた、これがバブル経済の今日の日本の社会に暗く影を落としている大きなテーマではないかと思っています。同時に、私たちは、そのツケがこれからどのように回ってくるかということにおいて、企業の活動にあるいは国民生活にどんな影響を及ぼすのかということについても、大変大事なテーマとして考えていかなければならないと思っています。  午前中の質疑の中でも、企業の資金の調達の問題について、それが苦しくなるんじゃなかろうか、こういった指摘もございました。いわゆる九三年問題と言われていますけれども、これは大手の企業についての資金調達だけではなく、中小の企業に対してはもっと大きな影響を与えるのではなかろうかという意味において、日本の景気も左右される問題ではなかろうかと思っております。  まず第一に、企業の調達した資金の償還の問題について伺っておきたいと思います。  企業のいわゆるエクイティーファイナンス、新株発行つきの資金調達の手法につきましては、とにかく七〇年代、まだこんなところだったのですけれども、お金がだぶついて株がどんどん上がっていく、そのこととあわせて非常に膨らみました。七〇年代はわずか一兆円、八一年は三兆円ぐらいになりますけれども、八六、八七、八八、八六年には六・七兆円、八七年には十一・六九兆円、八八年には十七・六二兆円となりました。八九年には一年間で驚くなかれ二十六・四兆円、ここまでエクイティーファイナンスが膨らみました。こうして非常に膨らんだこの償還の問題について、八七年から八九年に調達した五十五・七兆のお金のうち三十九兆弱は転換社債とワラント債です。株を求めることにはなりません。  八九年ごろは株価が最高値を記録した年であって、ワラントの行使価格は高い水準で設定されています。そうなると、市場に新たなリスクの問題が出てまいります。株式市場の低迷が続く中で、企業についてはエクイティーファイナンスの償還資金の調達の問題、まだ別にスイス建て転換社債のこの償還の問題もトップオプションの問題で非常に企業に影響を与えるだろうということも言われておりますけれども、こうした償還の資金が一体どうなるのかということについて、これはBISの資本金の規制の関係もある。そうなってくると、資金の関係で非常に詰まってくるのではないだろうか、金融関係についてはかなり詰まってくるということが予想されるのではないだろうか。  こうした問題について、エクイティーファイナンスの償還問題を初めとして、このお金の詰まり方、こうした問題についての景気の影響をどう考えるか、この点が非常に大事な問題だと考えております。この点については経企庁の方に、この現状とその償還の問題についての重さについてどう受けとめられるか、伺いたいと思います。
  72. 越智通雄

    越智国務大臣 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、ワラント債、新株引受権つき社債並びにCB、転換権つきの社債でございますね、これがたくさん出ておりまして、償還のペースで申し上げますと、ことしの秋から多少出てまいりますが、来年、平成四年が約四兆円の償還、平成五年が一番のピークで約十兆円の償還、平成六年で大体六兆円の償還、ここら辺が三カ年で二十兆ぐらいの償還であろうかと思っておりますが、しかし、これはワラント債の新株が出ないとか転換社債の転換権の行使がない前提でございますので、今のちょっと株式市況ではなかなかそれが実行されるという予測は立てにくいわけですが、もし今後何か株式市況がよろしくなってくれば多少この数字は変わってくるべきものかと思っておりますが、全体を通しまして企業の資金は約半分が純粋なる社債、単純な事業債でございまして、あとの半分が本当の株式と申しますか、本来の株式とワラント債とCBで行われているというのが現状でございますので、そうした市況の中でこれらの資金調達が償還のときにうまくいくかどうか大変心配しておりますが、企業別には皆様そろそろいろいろと手当てをされ始めているようでございまして、手持ちの自分の会社の直接関係のない株式の売却による資金の調達とか、一番私どもが心配しておりますのは、資金面から設備投資の繰り延べとか縮小を図られるかどうかが心配でございまして、現状におきます平成三年度の設備投資は、大体私ども考えている六・八%ぐらいの前年対比で伸びていく、ふえていくと見ておりますが、平成四年以降の分についてはまだ各社のそうした対応がはっきりいたしませんものですから、そこにどう響いてくるか、これが長期的な経済計画としては心配している点でございます。
  73. 山花貞夫

    山花委員 お話ありましたとおり、株価が低迷し続けておりますので、転換社債、ワラント債の株式への転換行使というものは行われにくいという状態が続くだろうと見なければいけないと思っています。  今、株は上がるかもしれない、こういうニュアンスのお話もありましたけれども、実は六〇年代の証券不況の場合には、暴落で底を打つまでに四年かかりました。その後持ち直すまでに、高値までに七年かかっております。七三年のオイルショックの不況のときは底を打つまで二年、高値を更新するまで五年かかっています。過去の例から見ると、八九年末の高値、そこまで行かないまでも、そこへ近づいていくためには大体五年から七年かかるのじゃなかろうか。過去の実績に照らしてみるとそういう感じがいたします。そうなってまいりますと、今お話しのような楽観論は捨てた中でこれからの対策考える必要があるのではなかろうかと思います。  企業によってはもう企業財務の観点から手当てを始めていると今おっしゃいました。しかし、大企業はそれでもよろしいのかもしれませんけれども、中小企業は影響が大きいということについて見落とすことはできないのではないかと思っています。株価が低迷した場合にはエクイティーファイナンスによる資金調達が困難となりますから、大企業も一時的には銀行の借入の比率を高めるということになるんじゃないでしょうか。そうなりますと、中小企業の必要資金が量的に確保されない、こういう可能性が出てくるんじゃないでしょうか。従来から、私どもの知っている限りでは、中小企業に対する金融についてもかなり、これは政府の政策もありましてうまく転がっている、こういう印象を持っていたところです。しかし、こういう事態になって大企業も企業財務の関係からそこに目をつけてくるということになりますと、銀行の方も資金の枠がありますから、じゃ一体どうするかということについて選択、選別をしなければならなくなってくる。  その場合に、一体中小企業がどうなってくるのか。中小企業の手元流動性の二割ぐらいは株だとも言われているわけでありまして、あるいは土地の値上がりがストップかかるということになりますと、担保能力もなくなってくる。そういう条件を考えると、中小企業の金融関係については、コストも自由化の関係で高くなります。現実に私ども知っている範囲では高くなっています。こういう状態の中で全体の銀行が大企業に向けている、貸しているこのお金と中小企業に貸しているお金、かなり差があったのですけれども、今ほとんど差がなくなりまして、中小企業に対して貸し出しが少なくなっているというのが統計上出ていると思います。  今のようなお話の中で、大企業は財務が既に考えていると言いますけれども、中小企業の関係についての対策をなおざりにするということになりますと、景気に与える影響そして国民生活に与える影響というものは大変大きなものになると思いますけれども、この点について私たちは、そういう状況も踏まえて中小企業に対する政策、制度、融資の問題についても今の時点で十分早目に手を打っていただきたいと思いますけれども、この点について御見解を伺いたいと思います。
  74. 中尾栄一

    中尾国務大臣 中小企業の立場でございますけれども、そういうことの山花書記長が考えられているような例というものは、あらゆる角度で町の中に声としてあることはよく承知しております。そこで今回も、前年度ではございますけれども、千数百億円というような今までにない中小企業の予算措置をさせていただいたわけでございますけれども、またそれによって十分、ある意味における中小企業の活性化につながるかということを率直に問われるならば、まだまだの感がございます。  そういう意味におきましては、今からの対策というものはそういう点では十分に中小企業対策、特に、日本の国の九割を占め、なおかつ四千万と言われておりまするこの中小企業の問題というものは特に強く考慮しながら考えていかなければなるまい、このように考えている次第でございます。
  75. 山花貞夫

    山花委員 先ほど大蔵大臣の証券不祥事などの問題に対する五つの問題提起に対して、そこだけではやっぱりすとんと胸に落ちないと申し上げましたのは、以上のような問題を含めてこれからのあり方を考える、こういう視点が必要なんじゃなかろうかと思うところでございます。  去る六月二十五日、金融制度調査会は今後の我が国金融制度のあり方について答申を行っています。そこでは、いわゆる明治以来の古い歴史を踏まえて、じゃ一体これからどうするかということについて、話題となっておりました証券界と銀行界、この相互の乗り入れ問題を含めて、システムについて検討するということではなかったかと理解しているわけでありますけれども、今回の証券の不祥事、あるいは銀行の問題を考えてみると、それぞれの市場そのものがまだ確立していなかったのではないか。さっきガルブレイス教授の一七二〇年の話を出しましたけれども、今回、過日の代表質問で田邊委員長が指摘しましたとおり、日本の市場というのはアダム・スミス以前の問題ではないかと、外国からそう嘲笑されているということ、そのことを私たちはいわれのない批判とはね返すことができないような、そういう証券市場の実態、不透明である、公正を欠いておるというところがあったのじゃないでしょうか。そして、これだけたくさん起こった金融不祥事ということを考えてみるならば、銀行の管理の体制を含めてまだまだそこになすべきことがたくさんあったのじゃないだろうか。そういうそれぞれの市場というものについて、近代的な透明、公正、自由競争、そして自己責任の原理というものができ上がっていない。そうしたことの中で、いわば前提条件なしに、その次の対策ということについて、抜本的な、二十一世紀を目指した金融制度のあり方を考えるということについては不安ではないか、こういうように思う次第でございます。  この点に対して、大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  76. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変厳しい御叱正をいただいております中で、市場の問題についてお尋ねをいただきました。  私は基本的に、今委員が述べられましたような未成熟という視点よりも、むしろ我が国の、例えば証券市場をとりましたとき、非常に弱体な状況の中から今日の世界有数の証券市場に育ち上がるまでの間、保護育成という行政の手法があったことは、それはそれなりに私はその時代の政策選択として誤っておらなかったのであろうと思っております。問題は、むしろその保護育成の時代から、むしろ自分の足で立って、そして自発的な行動を求める、その切りかえの時期に必ずしも我々は十分行政として対応できていなかったのではなかろうか、そういう反省をいたしております。  先ほど委員も御引用いただきました、私は基本的な問題点をこの中から五つに分けてまいりました。その中で、行政のあり方という中に、その保護育成という視点の行政からむしろ監視監督の行政に変わっていかなければならない、その変わり目のときには公正な競争というものが促進される状態にならなければならない。その公正競争という視点からまいりますならば、私は現在、例えば金融制度調査会あるいは証券取引審議会から述べられておりますように、今までそれぞれの分野に垣根をつくってまいりましたものを徐々に取り払っていく、そして相互が相互の業務を一定のルールの中に行い得るような状態に持っていくことはむしろ積極的に進めていかなければならないのではなかろうか。それがむしろ金融市場における本当に公正な競争を生み出すのではなかろうか。その間において大蔵省自身は、従来の通達行政というものを本当に反省し、見直し、その通達という行動で進めてまいりました行政の中で、自主規制団体が育っていきますならばそちらにお願いをすること、行政として担保しなければならないもので法令化しなければならないことは法律の中にきちんと位置づけること、そういう行動を我々はしなければならない、そのように考えております。
  77. 山花貞夫

    山花委員 今、その時代の施策とお話しございましたけれども、まさに私そのとおりだと思っています。  ちょっと観点は違うのですけれども、これは大蔵省の証券局が担当でしょうか、伺っておきたいと思うのですけれども、ちょうどこのタイミングといいますか、六月十九日証券取引審議会は大蔵大臣に対して、証券監督者国際機構の行為規範原則についての我が国への適用について報告書を出しています。いわば、法律でいろいろやる以前の行為規範ということでありますから、政治家の政治倫理行為規範と同じような位置づけになると思うのですけれども、この問題に対してどうこれを受けとめて議論が進んでいるのか、対応がなされているのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  78. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今御指摘の証券監督者国際会議、これはIOSCOと呼ばれておりますが、その場で、証券業者の守るべき基本的な倫理、ルールというようなものを議論しておりまして、その議論がまとまりまして七つの原則というのに集約されております。その中には例えば、当然のことですが、仲介業者として誠実、公平に業務を行わなければならない、あるいは顧客の投資資力などを見て顧客に適合した投資アドバイスをしなければならないというような七つの原則があるわけでございます。その原則の我が国への導入につきまして、証券取引審議会で検討をしていただいたわけでございます。その結果、必要なルールについては証券取引法の中に、法律の中に位置づけるというのが適当であるというような報告をいただいているわけでございます。  御指摘の通達でございますが、これは私ども、法律が改正されてその報告が法律の中に織り込まれるまでの間の当面の措置として、七原則を守るという点についての通達を出しまして、あわせて証券業協会におきましても、その七つの原則を守るようにという証券業協会の中のルールとして受け入れたわけでございます。したがいまして、今後制度問題などとの絡みで証券取引法の改正ということを考えておりますが、その機会にその七原則のうち所要のものについては法律に明定するということを検討したいというふうに考えているわけでございます。
  79. 山花貞夫

    山花委員 今お話しのとおりだったと思うのですけれども、このIOSCOの行為規範原則の個別の原則について一体どうなっているかということについては、実はこの報告書の中でも、既に我が国においては万全の措置がとられておる、こういう言い方をしているわけであります。大蔵大臣もおっしゃいました、これまでの一つの保護的な立場、保護行政、指導監督というそこの観点からあらゆる手を打っておるんだ、こういう説明がなされているわけでありまして、あらゆる手を打ったんだけれども、しかしこういう事件が続発をした、ここのところにまた問題を感じないわけにはいかないわけであります。  私たち日本社会党は、日本版SECという言い方、抽象的な言い方をしていますけれども、こうあるべきだということについて提案をこれからしていきたいと思います。議論も進んでまいりました。私たちの意見についても十分聞く機会をつくっていただきまして、我々の観点での問題提起についても受けとめていただくことについてこの際お願いしまして、午前中の時間が参りましたので質問を一時打ち切りたいと思います。
  80. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  81. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山花貞夫君。
  82. 山花貞夫

    山花委員 損失補てん問題について伺いたいと思います。  損失補てんの問題については、午前中の質疑でもありましたとおり、事前に約束があった場合は法律違反になるけれども、そうでない場合には、いわば当然なかったこと、あるべきことではないというように考えられるべき問題だ、こういうお話でありました。実はこの点について、大蔵省の監督責任が問題になると思っています。従来から損失補てんということについて幾つか明らかになった機会がありながら、実はこの問題について放置していたのではないだろうか。だれでもよく知っておりますことは、野村証券の田淵前社長が株主総会におきまして、大蔵省も承認しておった、こういう発言をいたしました。株主総会での社長の発言ということですから重い意味があると思います。その後、不適切であった等々のことはありましたけれども、我々は、その点について国民の多くの皆さんが強い疑念を持っている、こう考えなければならないと思います。  実はこの点について、きょうも出ておりましたけれども、一番最初に、今回の損失補てんの問題について、大手四社です、自主報告があったのはいつかということに対して証券局長は、平成二年三月には千六十億円という損失補てんが自主申告された、こう過日の大蔵委員会でも説明しているところであります。そうなってくると、去年の三月にわかっておった損失補てん問題について、なぜ今回証券不祥事としてマスコミ各紙が報道するまでこの問題について黙っていたのか、ほおかぶりしていたんじゃなかろうか、こういう疑念が出てくるわけであります。七月十四日、この問題が報道されました。そしてその後、四日間の自粛という行政指導も行っています。去年わかっておりながら、新聞が報道するまでなぜこの問題について放置をして、適切な、例えば四日間の行政措置、こういう問題についてやらなかったのか、この点について大蔵省に伺いたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私自身この問題に初めて遭遇いたしましたのは、平成元年十一月のある証券会社の損失補てんが表に出たときでありました。そしてその後、平成元年の十二月に通達を出しましたことは既に委員も御承知のとおりであります。その後、自主報告の中で損失補てんの事実が出てまいりましたところに対し、当時社内処分等厳しいものを求めておりました。またその後、平成二年のたしか七月であったと思います、ちょっと今資料を持ち合わせておりませんが、七月に他の証券会社からの問題が発生をいたし、そのときの記者会見でも実は私は、他に数社あるということも申し上げております。それは、平成二年の三月時点におきまして自主報告を求めました中に損失補てんの事実があったということを申し上げたつもりでありまして、それぞれにその時点におきまして厳しい社内処分は求めてまいりました。ただ、今回私どもが非常に問題だと思いますのは、損失補てんを禁ずる通達を出し、その後に自主報告を求め、そしてその自主報告に対して厳しい社内処分を求めましたものが、その後におきまして証券検査により、あるいは税務調査により新たな損失補てんが発覚したということであります。そして通達というものが結果として軽んじられたということになりました。こうした点について、その責任を私は免れると申すつもりは決してございません。そして本当にほかの国々では当然のことながらやってはいけないことということで法律に書いておらない損失補てんでありますけれども、これだけ通達というものを出しても、またその結果に対して処分を求めてもなおその状態が続くということであるならば法律をもってこれを禁ずる以外にない、今そのように考え証券取引法の改正案を取りまとめつつある次第であります。
  84. 山花貞夫

    山花委員 実はその四日間の営業の自粛ということにつきましても、これだけ大きな損失補てんの問題、百億、一千億単位で出たのに、営業停止でもない単なる自粛をわずか四日間という疑問を国民の多くの皆さんは持つところだと思います。同時に、私たちが従来から問題にしてまいりましたのは、一体何を対象として今回の四日間自粛の措置をしたのかということについてでありまして、実は野村証券、日興証券あて及び大和、山一証券あての証券局長のこの点についての自粛を要請した文書を拝見いたしました。  これは具体的な問題ですから証券局長に伺いたいと思うのですけれども、一体何をということがこれを見てはっきりいたしません。やっぱりここのところはなれ合い的なという疑念も持たざるを得ないような感じでありまして、処分の対象となった事実は一体何なのか、この点について説明をしていただきたいと思います。
  85. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、自主報告を求め、かつ適正な処分をしたわけでございますが、それにもかかわらずその自主報告漏れの損失補てんがあったということがその後判明いたしたわけでございます。その点について、あわせて最近暴力団関係の不明朗な取引も判明をいたしたわけでございます。そういった免許会社としての規範に反するいろいろな問題が起こり、証券市場に対する投資家の信頼を損ねたというようなことを踏まえまして四日間の自主的な営業停止ということを指導したわけでございます。
  86. 山花貞夫

    山花委員 今の御説明では、要するに損失補てんが相変わらずあったからだ、もう一つは暴力団関係者に対する便宜供与の問題があったからだ、これは書いてあるとおりでありまして、私が伺いたいのは、巨額の損失補てん行為というのは一体いつのどの行為を指しているのか、また暴力団関係者に対する便宜供与というのは、実は後ほど触れたいと思いますけれども、長い間株式操縦に当たると思われるような疑いをも含めて暴力団関係者との証券会社のつき合いがあった、一体何を指しているんですか、全体調べたんですか、その点についてもう少し具体的に話を伺いたいと思います。
  87. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 この自主的な営業停止を求めました際の考え方は、今申し上げましたように、損失補てんにつきましては自主的に報告を求めたのに加えてさらに補てん行為が行われていたという事実、それから暴力団関係者に対して担保融資などの不明朗な取引が行われたというような事実でございまして、御指摘の東急電鉄の株価操作の問題につきましては、私どもまだこれは現在調査中でございまして、その問題についてはまだこの段階で何らかの判断を下したというわけではございません。
  88. 山花貞夫

    山花委員 調査中の問題についてはまた伺いたいと思いますが、やはり回答が具体的でありません。少し具体的に伺っていきたいと思います。  損失補てんの問題、実は我々はこの事後の損失補てんというものが行われるということは、やっぱり事前に何らかの約束事があった場合、なかった場合とするならばまた別の責任が問われるのではないかと思っています。これだけ巨額なお金ですから、もしあらかじめ何の約束もない、証券会社側に責任のないようなことであるとするならばこんなたくさんのお金を補てんする必要もないということではないでしょうか。もし必要のなかったお金を損失補てんということで出したとするならば、これは別に証取法違反ということではなく、商法上の責任が出てくるんじゃないでしょうか。理由なく会社の役員が巨額の金額というものを、事前の契約もなかったんだけれどもこれを出してしまった、損失を補てんしたということならば、取締役の任務懈怠による会社に対する損害賠償の責任とか、あるいは取締役の背任の問題、こういう問題が出てくるんじゃないでしょうか。したがって、事後の損失補てんについては法律違反にならないというのは、そんなことがあってはならないことであり、あったとするならば取締役の責任やあるいは背任罪が別の法律で準備されているから事後の損失補てんについては証取法上は書いてなかった、こういうことではないでしょうか。  こういう問題についても、実は証取法違反、指導ということだけではなく、その範囲の問題として証券局としては調べたのかどうかということについて伺いたいと思います。
  89. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもも巨額の損失補てんが行われたという事実をつかみまして、御指摘のように、それに伴って事前に損失を保証したり、あるいは事前に利益提供を約したというような行為がないかどうかという点について調べたわけでございますが、現在までのところはその確証が得られておりません。しかし、引き続き四社については現在検査中でございまして、その事前の損失保証行為などがあるかどうかという点については現在検査を進めているところでございます。
  90. 山花貞夫

    山花委員 取締役の商法違反の問題が出てくるかどうか、背任問題を含めて、これは東急の株取引についての株価操縦の問題と関連して後ほど法務省の方に伺いたいと思いますけれども、実は私ども知っている範囲では、八月九日に日本証券業協会が自民党証券問題調査委員会などの合同会議出席しまして、損失補てんの手口について、大体五つぐらいの手口があるということについて説明をされたようです。我々はこういう問題について当委員会で自民党に対してだけではなく与野党に対して説明してもらいたい、これが証人喚問の理由ともなっているところで、一つでありますけれども、その中で、この有価証券の売買取引を利用するものだけではなく、証券会社の販売費や一般の管理費を使ったもの十六億円ぐらい、あるいは営業外費用をつくったもの五十九億円ぐらい、実は報道によって若干中身が違っていましたけれども、私が申し上げたいのは、キャッシュで四十億、五十億のお金を補てんとして出しているというケースがあります。こういうケースは、難しいやりくりをするということではなく、極めてストレートに損失補てんという格好になってくると思います。  こういう問題についてはまさに会社に対して、約束もないのに、理由もないのに、義務もないのに出したとするならば責任があるのではなかろうかと思うわけですけれども証券局長には、今のような現金で損失補てんをしたケースというものはほかとは違ってまた問題が明確なのではなかろうかと思いますので、こういうケースについてはどう判断されておったのか、伺いたいと思います。
  91. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに御指摘のように、今回の損失補てんの中には、金額は少ないわけでございますが、経費あるいは雑損という形でキャッシュで払われているものがございます。これにつきましては私ども、損失補てんの一つであるというふうに認識をしているわけでございますが、お客との営業特金の適正化をめぐるトラブルというものの処理あるいは将来の取引関係維持というような観点から、有価証券の売買の形をとらないでキャッシュの形で補てんをする、あるいはトラブルを処理するというようなものがあったというふうに聞いているわけでございまして、損失補てんの一つの形態であるというふうに認識をしているわけでございます。
  92. 山花貞夫

    山花委員 例えば五十億円の金額について額が小さいという、こういう感覚で物事を考えておりましたならば、私は間違っていると思います。五十億円という莫大なお金を何の法律上の理由もなく会社が出している、こう考えなければ、もう発想からしておかしいのではないか、こういうように思いますけれども。  もう一つの問題として、暴力団関係について、これは実はきょう冒頭申し上げましたとおり、今度のたくさんの証券金融の不祥事の事件につきましては、一つは、そのほとんどすべてに暴力団が絡んでいる、そしてまた政治家の名前が挙がっている。ここに今度の事件の奥深い広がりというものを感ずるわけでありますけれども、大蔵省としては、この証券金融業界と暴力団の関係について、例えば具体的にゴルフ場の会員権の問題もありました。融資の問題もありました。大体こういう問題についてどの程度把握をしておったのか、この点についても御説明をいただきたいと思います。
  93. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お答えする前に、先ほどのキャッシュでの損失補てんでございます。これは確かに御指摘のように五十億を超える金額が支出されているわけでございますが、これは一件というわけではございませんで、かなりの件数というふうに私ども聞いているわけでございます。  それから暴力団との関係でございますが、まず、暴力団の関係は株式の注文の受託から始まったわけでございまして、野村、日興両証券が六十一年秋ごろから暴力団関係者からの株の注文を受け出したわけでございます。その後、特に東急電鉄株の大量の買い注文が行われたわけでございまして、それと並行いたしまして、この東急電鉄株を担保とした融資を、二社が関係の子会社に紹介をいたしまして、関係の子会社から融資が行われております。これが、野村証券の場合には野村ファイナンスという関係会社から平成元年の十一月に合計百六十億円、それから日興証券の場合には日興クレジットという関係会社から同じく平成元年八月以降合わせまして二百二億円、合計三百六十二億円の融資が行われております。  それからもう一つ、ゴルフ会員権の問題でございますが、これも野村、日興両証券の本社から関係会社に紹介が行われまして、関係会社であります野村ファイナンスが岩間カントリークラブの会員権を、一口四千万のものを五十口、二十億円購入いたしておりますし、また日興証券の場合には日興不動産、これも関係会社でございますが、同じく五十口、二十億円の購入をしておるわけでございます。
  94. 山花貞夫

    山花委員 暴力団との関係について、今ほんの一部の部分についてだけお話があったと思っていますけれども、実は東急の株の操縦の問題につきましては、その背景としてこの暴力団の関係があるということを重視しなければならないと思っています。  とりわけ、今回名前の出た暴力団がいわゆる指定三団体、山口組、稲川会、住吉会、この三団体、住吉会はちょっと今外しまして、山口組とか稲川会、とりわけ東急関係については稲川会の関係が中心となっています。いわゆる指定三団体。実は新しい警察白書などを拝見いたしますと、全体として暴力団の数も団体の数もずっと少なくなっているんだけれども、この三団体だけは異常に膨張している。そして犯罪件数も多いし検挙人員も多い、こういう状態のようですけれども、この指定三団体について、警察庁の方から若干説明をしておいていただきたいと思います。
  95. 國松孝次

    國松政府委員 現在の日本におきます暴力団の現勢につきましては、大体三千三百団体、八万八千六百人を把握しておるわけでございますが、その中で委員御指摘のございました三つの団体が、その勢力におきましても、その犯行手口等におきましても大変凶悪であり、規模が大きいということで、警察庁といたしまして指定をして、重点的に取り締まりをいたしておるところでございます。  なお、この三団体につきましては、私どもといたしましても、今度成立をさせていただきました暴力団対策法の運用につきましても、重点的にその取り締まりの対象にしてまいりたいと考えておるものでございます。
  96. 山花貞夫

    山花委員 今お話ありました新しい暴力団の対策法、この春成立いたしまして、一年以内にこれがスタートするということだったわけですが、そこでのねらいというものも、今の指定三団体を中心とした新しい勢力に対して、国民の権利侵害、市民生活を脅かしている暴力団に対する対策をどうスタートさせるかということと同時に、立法理由や当時の議論を振り返りますと、暴力団が勢力を伸ばすのはやはり資金の問題である。そうして、莫大な資金を握った暴力団は、そのことによって利益を得るだけでなく、そのことによってそのお金を新しい犯罪にも使っていく。何百億ということになりますと、麻薬の問題その他非常に大きな資金を要する仕事もできるということになってくるということを含めて資金対策ということが非常に重視されていた、こういうように思っています。  先ほど申し上げました警察白書におきましても、暴力団の資金の枯渇化ということを中心として対策を進めてきた、こういうことが強調されているわけであります。せっかく新しい法律をつくってこれをスタートさせようとしているこの時期、そして新しい暴力団の、三団体を中心とした日本じゅうの動きに対して、今これから対策をとろうとしているこの時期に、資金を枯渇させるどころかこれだけ大きなお金が右に左に動いておった事実が明らかになったとするならば、今度できた法律などは全く意味が薄らいでくるというような気もしないわけではありません。資金の問題について警察がどの程度対象にして努力をしてきたかについても、東急問題を伺う前に一言聞いておきたいと思います。
  97. 國松孝次

    國松政府委員 最近問題となっておりますように、暴力団が金融証券取引に介入をいたしまして資金源活動を行っているという事態は、暴力団対策上大変ゆゆしい事態と認識しておるところでございます。警察といたしましても、これまであらゆる機会をとらえまして、彼らの資金源を断つという努力をしてきたところでございますけれども、今までは、私どもといたしましては、刑罰法令に触れる行為がない限りそれの取り締まりがなかなか難しいという事態がございまして、なかなかそれに対する進捗状況というものも満足のいくところがなかったというところもあると思います。  今回は、ただ、新しく成立をさせていただきました暴力団対策法によりましては、行政的な手法もそれに加えましていろいろと資金源対策をやっていけるということでございますので、そういった行政、司法両方の手法を取りまぜまして、今後とも暴力団による企業を対象とした資金源活動の実態解明を一層徹底をいたしまして、その過程で刑罰法令に抵触するものがあれば厳正に対処してまいるところでございます。  また、こうした企業からの暴力団排除というものを徹底をするためには、そしてその資金源を断つというためには、やはり企業の側におきましても自覚をしていただきまして、暴力団とのいろんな関係をみずからの姿勢の問題として絶っていただくということも大変重要なことであろうというように思っております。この点に関しましては、国家公安委員長の大変強い御意向を受けまして、先般、警察庁長官名で経団連会長及び日商の会頭あてに企業活動からの暴力団の排除ということにつきましてお願いをしたところでございます。  今後とも、引き続きいろんな機会をとらえまして、そうした企業活動からの暴力団の排除ということについてお願いをしてまいりたいと考えておるところでございます。
  98. 山花貞夫

    山花委員 企業と暴力団の関係については、例えば商法の改正の後、総会屋の問題についてたしか今日まで十七ぐらいのケースについて摘発され、処罰を受けているということになっていると思います。内容をずっと拝見しましたけれども、金額が違いますね。五十万、百万、この単位の話がその十七のすべてのケースの重立った中身でありまして、今度は何十億、何百億という単位です。  例えばゴルフの会員権。一番最初にこれが暴力団絡みで野村、日興証券関係明らかになりましたけれども、岩間カントリークラブの会員資格保証金預かり証ということで三百八十四億円集めている。一枚大体四千万だったでしょうか。これは、例の蛇の目ミシンの恐喝事件のときの検察官の冒頭陳述におきまして、ここでもあの小谷被告に対するものですけれども、ほとんど財産的価値のない岩間カントリークラブ預かり証百七十五枚、額面合計七十億円をキリの箱に入れて本社に出していった、こういう格好で、財産的価値は全くなかったと言われている。これを証券会社が買っているわけであります。  それだけではなく、これまでいろいろ報道されたところを見て振り返りますと、野村、日興証券などの場合には、石井前会長の口座にわずか二週間ぐらいの間に、言われますと二百五十一億円の金を振り込んでいた、あるいは五年ぐらい前から両証券の関連会社から一日に百億を超す金が融資されておった、こういう実態があります。商法違反、総会屋のケースとは全く違った、指定三団体の中の一つの暴力団に対してこうしたお金が流れている、これが東急の株の買い取り事件の資金となっている、これを背景として株価操縦の問題があったのだ、このことを背景としてしっかり押さえていくことが大事だと思っています。  さてそこで、法務省の方に伺いたいと思うのですけれども、東急の株価操縦問題について、百二十五条で捜査が進んでいる、こういう御説明が大蔵委員会でありましたけれども、その後捜査の進展状況はどうなのかということとあわせまして、先ほどの背任問題とかそういう問題については捜査の対象になっていないのかどうか、こういう点についても伺っておきたいと思います。
  99. 井嶋一友

    井嶋政府委員 野村証券株式会社及び代表取締役社長でありました田淵義久氏を被告発人とする告発が東京地検に二件係属をいたしておりまして、その事実は東急電鉄、東京急行電鉄の株式の株価操縦をしたという証取法違反の告発でございますが、これにつきましては、東京地検におきまして七月十五日及び七月十九日に告発を受理いたしまして、現在捜査に着手したところでございます。  捜査の具体的な内容あるいは今後の見通しといったものにつきましては、委員御案内のとおり、ここで述べることは差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、告発状にある容疑事実があるかどうかということにつきまして東京地検が証拠に基づき的確に捜査し判断をするものと考えております。  それから、後段に申されました背任というのは、恐らく先ほど御議論のあった損失補てんに関連して背任になるんではないか、こういうお尋ねではないかと思いますけれども、実はこの点につきましても、たしか八月の七日であったと思いますが、野村証券株式会社及び新日本証券株式会社の株主が、それぞれ同会社につきまして、損失補てん行為は商法上の特別背任罪に当たるという告発をしておられまして、東京地検がこれを受理いたしたところでございます。まだ受理したばかりでございますけれども、早急に着手するものと考えております。
  100. 山花貞夫

    山花委員 この点については、実は大蔵省にも伺いたいと思っておったわけですけれども、東急の株の問題については非常に疑念を持って調査している、こういうように説明をされていましたけれども、疑念を持って調査した後今日まで調査の結果がどうなっているか、この点について伺いたいと思います。
  101. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 お尋ねの東急電鉄株の問題でございます。これは平成元年の十月から十一月にかけましてこの電鉄株の売買が急増をいたし、価格も急騰をしているわけでございます。その間の野村証券の市場におけるシェアも非常に高かったということで、大蔵省といたしまして、証券取引法百二十五条の株価操作に該当するかどうかという点を、取引所とも連携しながら、調査をまだ現在行っているところでございます。  これまでの私ども調査で把握したところによりますと、当時市場全体が非常に活況を呈しておりまして、東急電鉄株以外の電鉄株も急騰を示しております。また、東急電鉄株につきましては、非常に多数の投資家が多数の証券会社を通して売買をしているわけでございます。さらに、百二十五条の株価操作という観点から見ますと、特定の委託者あるいは特定の証券会社による意図的な株価のつり上げあるいは仮装売買、なれ合い売買というようなものは、現在までのところ確認できていないわけでございます。引き続き調査中でございますが、現在までのところ、株価操作行為につきましては確証が得られていないということでございます。  なお、加えまして、当時の野村証券の東急電鉄株の推奨の状況についても私ども調査をしておりまして、この推奨のやり方に、投資勧誘の方法に問題がなかったかどうかという点につきましては、確かに東急電鉄株は二十七銘柄の参考銘柄のうちの一つではございますけれども、特定の営業店での注文が非常に多いというような状況が見られるわけでございまして、私どもが疑念を持っていると申し上げましたのは、その特定の営業店、特に近畿、中国地方を中心にしておりますが、そういう営業店からの注文が多いということで、そういう営業店における投資勧誘に問題がなかったのかどうかという点について大変疑念を持って、現在その営業の具体的な、投資勧誘のやり方がどうだったかという点を中心に調査を進めているところでございます。
  102. 山花貞夫

    山花委員 結局、調査を進めているけれども、今のお話ですと、いわゆる構成要件、該当するかどうかということについて非常に厳しく考えておりまして、そういう考え方ではなかなか法律違反という形で捕らまえることは難しいんじゃなかろうかと思います。  実はこれは損失補てんの問題についても同じことでして、今回損失補てんの問題について、これを法律違反にするのだということで構成要件が議論されておったと聞いております。やはりそこでも伝えられているような中身だとするならば、今の大蔵省のような態度であるとするならば、なかなかこれはひっかからない。全部逃げちゃうんじゃないでしょうか。実態として見てみれば、先ほど私はくどいように指摘しました、全体を貫く暴力団に対する資金の援助と、そして株の多額の購入の問題、こういうことを背景として、今も御指摘ありましたけれども、野村証券が東急銘柄を盛んに推奨したということについては既に明らかになっています。それだけではなく、東京と大阪などで大口投資者を集めた講演会において、そのうち五千円になるよということを推奨したということも知られているところであります。六月に一千五百八十円だった株価が十一月に二千九百七十円と急騰して、十月になってからそれまで二千円までしかいかなかった株価が、十一月十七日には三千六十円というところまで来た。暴力団にお金を出した、どんどん買っている、推奨する、そういうことだらけで、株価がつり上がったことについては間違いのない事実です。  実は今のお話を伺っていますと、全体として株は上がっていたから、あるいは東急株は売り買いが非常に多かったから、一般的な動きの中に解消しようとしているわけでありますけれども、もうちょっと突っ込んでデータを調べてみるならば、全体として鉄道株はこのぐらいだったんだけれども、東急株はもっと一番高く上がったんじゃないかということも明らかになるんじゃないでしょうか。野村証券が取り扱った中で、ほかの、例えば証券四社、大体平均これくらいの数字で取り扱ったんだけれども、暴力団にお金を出して暴力団が株を購入したこの時期、この秋口にかけましては、四社の比較においても圧倒的に野村の取引の数が多かったということも明らかになるんじゃないでしょうか。こういうことから考えれば、株価操縦の疑いというものは極めて強いと言わなければならないと思います。  今私が指摘いたしましたほかの鉄道会社の値上がりに比べて東急の株が非常に高くなったんじゃないかという問題点と、野村の取引高というものが、ほかの、例えば大手の四社と比べて、四社の中で一番ずば抜けて多かったんじゃなかろうか。この程度のところは証券局調べていると思いますから、説明をしていただきたいと思います。
  103. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、私どもも現在調査をしている最中でございます。もちろん、御指摘のようないろいろな点、私どももすべて取引所と情報を交換しながらその中身を分析し、かつ営業の一線の勧誘の態度等も現在検査しているわけでございまして、確かに一般的な話としては市況が好調だったということもございます。  ただ、百二十五条という条項を適用するとしますと、株価操作ということになりますと、先ほど申し上げましたように、特定の委託者あるいは特定の証券会社が意図的なつり上げ行為を行う、あるいは仮装売買とかなれ合い売買とかいうような形の売買を行うというような形が確認できないということになりますと、なかなか株価操作ということを決めつける決め手がない。私どもは営業の勧誘のやり方について引き続き調査をし、その中で株価操作の意図があったかどうかという点についても引き続き検査対象として調査を続行しているわけでございますけれども、この投資勧誘の現場というところはなかなか、投資家の受けとめ方というものもあわせて必要ならば検査の中で事情聴取をするということにしているわけでございまして、百二十五条の株価操作に該当するかどうかという点につきましては、私ども十分それを念頭に置きながら検査をしているというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  104. 山花貞夫

    山花委員 十分念頭に置いてとおっしゃりながら、具体的なところについては説明を実はいただいていないと思います。  大蔵委員会以来、全体として鉄道株は上がっていたのじゃないか、こういう話がありましたけれども、私が調べ、かつ市場課の皆さんから伺ったところでは、やはり間違いなく東急の株が同じ鉄道株の中でも一番激しく動いていたということは間違いのない事実です。やはりこうした野村証券の推奨その他の動きがないとするならばこういうことにはならなかったのじゃなかろうかと判断するのは当たり前のことではないでしょうか。  あるいは、大手四社の売買の手口の中で野村証券が占める割合、四社の全体の東急の売買ということについて野村が大体どのくらいのシェアを占めておったかということについて数字を調べてみると、六月段階は二五・五六%、七月は二〇・六五%、八月は二二・二〇%、大体二〇%ちょっとというところです。九月、十月、十一月、十二月を見ると、九月は二九・七三%と大体三割ぐらいを占めるようになり、十月は四〇・一〇%と四割を超し、十一月も四〇・三七%、十二月は四二・八五%。すなわち、四社の比較においても大体二〇%くらいだったのだけれども、問題の時期は四〇%ぐらい、倍くらいの売買をやっているということなわけなんですから、暴力団にお金を出した、どんどん株が買われている、一生懸命推奨する、その中で値段が上がってくる、野村が飛び抜けて売買をやっている、こういう格好なんですから、これはだれが見ても株価操縦ということに当たるんじゃなかろうか、私どもはそう考えるわけでして、こういう問題に対してやはりきちんとした結論を出す、幾らそのことによっての影響が大きいかということがあるとしても、やはり出すべきうみは出さなきゃいけないんじゃなかろうか、こう思っている次第でして、この点についての大蔵省の姿勢を伺いたいと思います。
  105. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 まず、当時の東急電鉄株の値上がりの状況でございますが、どの時点とどの時点を比較するかということによっても変わってまいりますが、例えば平成元年の六月と十一月という終わり値で比較いたしますと、確かに御指摘のように東急電鉄株はその間八八%の上昇を示しております。ほかの電鉄株は二〇%ないし三〇%の上昇でございまして、この期間をとりますと東急電鉄株の値上がりが顕著だということが言えると思います。  それから東急電鉄株の証券会社、野村証券のシェアでございますが、私どもと取引所が調べたところでは、十月には野村証券が二七%のシェアを占めております。十一月には二四%のシェアを占めております。十月の場合には、第二位が山一証券で一九%、第三位が日興証券で八%、十一月は第二位が山一証券一三%、第三位が大和証券一一%ということでございまして、確かに野村証券のシェアが非常に高いということが言えるわけでございます。  私どももこういう数字をもとにしながら、先ほど申し上げましたように多数の顧客が注文を出しているという実態を見まして、その顧客に対する投資勧誘のあり方がどうだったのかという点を重点に置いて現在検査を進めているところでございまして、先ほど近畿地区、中国地区と申し上げましたが、実は近畿地区と四国地区でございますが、その辺が特にそういう営業店から出ておる注文が多いという数字が出ておりますので、それを中心にして現在具体的な投資勧誘の方法について調査を進めているところでございます。
  106. 山花貞夫

    山花委員 調査を進めるということだけは繰り返しお話しになるわけですけれども、どういう措置をとったのかということについてはお話はほとんど伺えません。どういう措置をとろうとしているかということについてもお話を伺うことができないわけでして、その辺がやはり国民の目から見ると大蔵省の姿勢は甘いのではないかということになってくるわけであります。  そうした意味におきましては、私どもは今度のこの野村証券を初めとした暴力団とかかわりながら資金をやりとりし、しかも株価操縦のこれだけ強い疑念を持たれているということは、まさに日本の経済のトップの企業の全く恥ずかしい実態と言わなければならないと思います。こうした不透明、不公正ということが国際的に与える影響ということについても考えなければならないと思います。  やはりまさにここでも抜本的な対策ということが必要になってくるのじゃないでしょうか。こうした問題に対して、きょうは調査中という部分もありますので、今後は、調査がこうなったということについても伺いたいと思っていますし、今の質問で出ました暴力団絡みの調査の実情、なぜこれだけの大企業がこういう落とし穴にはまったのかということについては、やはりこれまた証人尋問の機会などに十分伺っていかなければならない、こういうように思っておる次第でございます。  さてそこで、たくさんの銀行・金融の不祥事があるわけですけれども、先ほど大臣も触れられました天下りの問題、長くて古いテーマです。とりわけ今回は、本日具体的な対策についてもお出しになったと伺っていますけれども、こうした問題については大変国民関心が高いということからするならば、これは一つは大蔵大臣に対して大蔵省としての姿勢を伺いたいと思いますと同時に、これは総理にも伺いたいと思うのですけれども、事天下りの問題は、かつての退職金渡り鳥といったような問題、これを振り返ってみるならば、単に大蔵省だけの問題ではないわけでありまして、高級官僚がいわば渡り鳥として会長、社長その他顧問等に天下りをして莫大な退職金ということについての国民の批判の目もありました。あるいはさらに進んでまいりますならば、官僚をやめたらすぐ選挙に出る、こういう格好でいわば権力を利用しての選挙運動等も高級官僚のあり方として疑念がございました。大蔵省だけではなく全体としてこの高級官僚の天下り問題については総点検すべきであると思いますので、大臣にはこの大蔵省の姿勢、そして全体の省庁にかかわる問題については総理に基本的な姿勢を伺いたいと思います。
  107. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 さきの衆参の本会議におきましても、いわゆる証券会社への再就職問題というものにつきいやしくも行政に対する信頼を損なわないように厳正に対処していきたいということを申し上げました。ただその場合に、人事院の承認など国家公務員の営利企業への就職に関する法的な規制というものがございます。これは憲法に保障している職業選択の自由など基本的人権との兼ね合いの問題でありました。この点について十分配慮しなければならないということは御理解をいただきたいと願っております。  そこで、いろいろな角度から検討いたしました結果、大蔵省といたしましては、当面大蔵省の幹部職員、すなわち本省課長相当職以上の人事院承認を要する証券会社への再就職につきまして、本人及び証券会社両当事者の理解を得て自粛を求めたい、人事院承認の申請を行わないという方針を打ち出したいと考えております。今後とも厳正かつ公正な証券行政が行われますよう十分注意してまいりたいと思います。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一般的な大きな角度から答えろということでございましたが、私は、人生において定年の制度があったり、それから一たんここに就職した場合にはその後、それが官についた場合には、官僚は絶対にどんなことがあっても民間に行ってはいけないということになるとこれは行き過ぎだと思いますので、物事には光の面と影の面がありますように、誤解を受けたり疑いを受けたり、あるいはそれがいろいろ批判を受けるようなことにつながるということについては厳しくけじめを引いていかなければならぬ、これはそのとおりだと思います。  そういった角度からの問題については、これは大蔵省のみならず政府全体として厳しく受けとめて、いやしくも御批判や疑いを受けないような、そういった再就職の措置というものに注意を払っていかなければならぬのは御指摘のとおりだと考えております。
  109. 山花貞夫

    山花委員 今一般論的なところだけではなく、私はとりわけ高級官僚の天下り問題、こういうことで伺ったつもりでございまして、これは大蔵省だけではなく各省庁について従来から私も議論してきた経過がございました。この点についてはぜひそういう観点で、もう一遍高級官僚の天下り問題については根本的に検討するということについてやはり総理として取り組んでいただきたいと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
  110. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世の中の批判やいろいろな誤解を受けないためにも、正すべきはきちっとしていくことが必要かと考えます。  高級官僚との御指摘でありますけれども、私は、それに対しては今後とも十分検討するとともに、きょうまでもいろいろな場面で協議してきた点等もありますから、よく対処をしてまいります。
  111. 山花貞夫

    山花委員 実はちょっと損失補てんとは別の問題になりますけれども国民の皆さんの関心がある問題、やはりこの点も大蔵省に責任があるんじゃなかろうかという気持ちを含めてですけれども、NTTの株の問題についてちょっと伺っておきたいと思います。  全くこれは損失補てんとは別の観点から伺いたいと思うのですけれども、大蔵省が売り主であったNTTの株の場合、企業としては日本を代表する優良の企業だと思います。技術的にも世界に冠たるトップ企業と言うことができると思います。多くの国民は、大蔵省、国が売るんだからまず間違いないだろうということで入札、抽せんという手続まで行ってこれを取得しました。このNTTの株についての特徴というものは、実は一般の株と違いまして、個人の株主の割合が非常に高いということであります。全体の株につきましては、たしか個人の株主の持っている割合というのは、私の記憶では二三%ちょっとぐらいではなかったでしょうか、合計二千六百万ぐらい。ところが、NTTの株について見ると、個人株主の割合、NTTの場合には株主数百六十七万人、そのうち個人の株主は百六十四万人。株式数にしても約六割。すなわち百六十七万人のうち百六十四万人は個人の株主であります。一株ずつ持っている方もたくさんいた。一時は株価が随分上がったけれども、一挙にこれが下がった。バブルの経済の崩壊の中での一つの出来事です。この皆さんはどんな気持ちで今損失補てん問題を見ているかということをも考えながら、実はこの株式につきましてこれからまだ売り出しの問題が残っているというそのことについても目が向けられています。従来の予定によりますと、今年度中に売り出しをするということも聞いているわけでありますけれども、この点について一体どうなっているのか。これはNTTの株に対する影響その他にも非常に大きい問題が出てくると思いますので、この機会に確かめて伺っておきたいと思います。
  112. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今後の計画等事務的な問題を含みますので、事務当局から正確な答弁をすることをお許しをいただきたいと思います。
  113. 寺村信行

    ○寺村政府委員 NTTの株式の売却に当たりましては、可能な限り株式市場に悪影響を与えないように円滑な消化を図る必要がございます。こうしたことから、市場の動向を十分勘案しながら判断をしてきたところでございますが、平成元年度及び平成二年度につきましては、それぞれ百九十五万株の処分限度数につきまして国会から授権をいただいていたところでございますが、市場の動向を勘案いたしまして売却の見送りを決定せざるを得なかった状況でございます。こうしたことから、現在政府が保有しております未売却の五百万株の今後の売却方針をめぐりまして市場に不透明感が生じまして、NTT株の今後の需給関係にも影響を与えているという指摘がなされることになりました。  こうした市場の受けとめ方を配慮いたしますとともに、今後のNTTの民営化の着実な進捗に資するために昨年の十二月、現在政府が保有しております五百万株のうち二百五十万株につきまして毎年度五十万株程度を計画的に売却するということを基本といたしまして、平成四年度以降市場の動向いかんによってはその計画を前倒しすることもあり得るということにいたしまして、残余の二百五十万株につきましては当分の間売却を凍結するという計画的な方針を決定し、公表したところでございます。
  114. 山花貞夫

    山花委員 今御説明の状況の中で、やはり残る株をいつ売るかという問題は非常に慎重を要するテーマだと思っています。同時に株主対策についてもやはり検討されなければならない。これは大蔵省というよりはむしろ会社の問題かもしれませんけれども。ということは、NTTの株についても株主対策ということと同時に、これからの株式のあり方、株に対する投資のあり方としてはキャピタルゲインだけに期待するということではなく、株主対策、配当性向を高めること等を含めて、そこに一つ大きな問題点を置きながら考えていかなければいけないんじゃなかろうか、そういう例としてNTTの株についてもあるのではなかろうかと思っております。資本準備金で増資をするかどうかというような議論もいろいろあると思いますけれども、そうした問題については別の機会に譲りたい、こういうように思います。  実は、以上極めて部分的ですけれども証券金融問題等について最近の幾つかのケースを伺ってまいりましたけれども、全体としてこれだけいわば疑惑を持たれ、国内外の批判を浴びているというところから当初の設問に戻るわけでありますけれども、原因をやはり明らかにしていく、そのためには、野党が要求している証人喚問についても恐れないでこれに取り組んでいくということから始まりまして、では一体これからの対策はということにつきましては、大臣も先ほどお話ありましたけれども、全般的なこれからの金融制度のあり方ということを含めて対策を立てていただかなければならないのではなかろうかと思っている次第でございます。  私たちは、こうした問題について、まず不透明な取引を改めて、有価証券をだれが、何を、どれくらい売買したかを明らかとするような法的な措置を講ずるべきではないだろうか。そして、第二段階として、証券市場の公正を確保する独自の監視機関をやはりつくるべきじゃなかろうか。総理もこうした問題について、ストレートではありませんけれどもお触れになったところです。アメリカのSECと同様な、日本版と言われていますけれども、中身についてはいろいろあると思います。登録制、免許制の問題、そういうことも踏まえながら、やはり第三者的な機関をつくるということなくして、この不透明、不公正な市場が透明になり、公正になるということはなかなか難しいのではなかろうか、こういうように思っている次第でありまして、この点について大蔵大臣に所見を伺いたいと思うところであります。  実は大蔵大臣の関係では、秘書の方が不正融資にかかわった、まあ口ききをしたということで問題となっております。これは、やはり大臣個人が知っておった、知らなかったということではなく、大臣を支えておった政治機構の中から起こってきた問題なんですから、私は、小林さんの問題について極めて弁護士的な目で見ておりますと、それぞれ捜査の対象になるかもしれないけれども、恐らく刑事責任を負うということはないケースなのかな、こういう気もいたします。いろいろリベートその他の問題が出てきたら別です。そうなってくると、問題は全体としての政治責任をどうとるか、道義的責任をどうとるかということになってくる。そうなってくると、もうおやめになった秘書さんに政治責任ということは全く問題とならないわけでして、トータルの政治責任、こういうことについてお考えいただくことが必要なんじゃなかろうか。ということだけではなく、やはりこれだけ証券金融業界の不正、スキャンダルというものが明らかになった。大臣としてはそうした全体の大蔵行政に対する責任ということが同時に重い政治責任としてあるのじゃなかろうか、こういうように思います。真相を解明するためには先頭に立っていただきたい、そして同時にこれからの抜本的対策についてもうみを出し切る、こういう方向でしっかりとやっていただかなきゃならないと思いますし、そして同時にみずからの政治責任についてもこれはけじめをきちんとつけていただきたい、こういう私たちの気持ちでございます。この点について大臣のお気持ちを伺いたいと思います。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 順序を逆さにお答えをさせていただきたいと思います。  まず、私自身の元秘書をいたしておりました者が富士銀行赤坂支店元渉外課長に対して融資に関し知人を紹介したということにつき、元渉外課長が偽造預金の問題にかかわっているなどということは私の元秘書自身としても知る由のないことでありますけれども、少なくとも蔵相の秘書という立場にありました者が銀行員に対して軽率に融資希望者の紹介を行ったということ自体が不適切と考えております。結果として私自身の秘書に対する監督に足らぬ点があったということにつきましては責任を感じておることでありますし、心からおわびを申し上げます。  ところで、今、不正融資という言葉をお使いになりましたが、小林君が紹介した知人に対し中村というこの富士銀行の元渉外課長が手配をいたしました融資は、結果として確かに富士銀行の融資ではありませんでした。しかし、同じ中村課長が関与したものとはいいながら、富士銀行の預金証書を担保としたいわゆる偽造預金の事件とは全然別のものでありまして、これはただでさえ御紹介をしたことによって大変迷惑をかけておる方がありますので、この点は事実として御理解をいただきたいと思います。  私自身こうしたことに対して責任を感じないと決して申しません。同時にその責任は、こうした一連の不祥事に対して、今委員も仰せられましたが、その原因をきわめること、そして、その上で再発防止のためにあらゆる手だてを尽くすことという御指摘でありますが、私自身として再発防止に全力を挙げることがその責任であると思っております。  そこで、今委員一つお述べになりました検査・監視体制についての問題でありますが、当初大蔵省といたしましては、ただ単に証券だけではなく、金融をも含めまして、大蔵省自身の手で検査体制、監督体制の見直しに着手をいたしますと同時に、その検査の手法等までを含め、根本的に見直しの作業に着手すべくプロジェクトチームをスタートをさせました。しかし、その後におきまして、総理からこの証券問題の成り行きの中から、検査・監視体制というもののあり方について行革審に意見を求められるということになりました。こうしたことを受け、また本院並びに参議院の御論議をも受けまして、大蔵省といたしましては、行革審としても来年度の予算編成に間に合うように結論をお出しいただけるということでもありますので、この検査体制のあり方につきましては行革審の御審議の結果を待ちたいと現在考えております。  もちろん、我々として、自分たちの省内で起きた問題でありますから、徹底的にその問題点の掘り下げはこれからもいたします。そして、出てまいりました問題点は、行革審にそのままお伝えもいたすつもりであります。また、行革審の方からこうした問題についての資料を欲しいとか、考え方を聞かせろという御要望があれば、当然のことながらそれに御協力をいたしてまいります。  同時に、その行革審にお願いを総理からしていただきました部分とは別に、検査手法というものにつきましては大蔵省自身、今日もなお改めてチェックの努力をいたしておりまして、こうした問題から出てまいりますポイントにつきましては来年度の概算要求そのものに反映をしたい、そのように考えております。  申しわけありません。
  116. 山花貞夫

    山花委員 今の答弁を含めて、結論的には大臣として政治的な責任をきちんとけじめをつけていただきたい、このことを最後に強調しておきたい、こういうように思います。  さて、いろいろまだ証券あるいは銀行の問題について議論はあるわけですけれども、これはこれからの議論でさらに深められる、こういうように確信をいたしまして、けじめとして私の方は、いろいろ伺いましたけれども、なおやっぱり中身としてはっきりしないところがたくさんあります。補てんの手口の問題あるいは具体的な補てんを受けた側が補てんを受けていないと思っているんじゃないか、こういう問題、暴力団との関係、そしてこれまでの東急株をめぐっての取引の実態等々。私たちが要求している証人喚問の問題につきましては、この後理事会その他の機会にもう一遍改めて議論をしていただきまして、冒頭申し上げました真相を解明する、この点についてぜひとも委員長においても今後努力をしていただきたいということもこの機会にお願いをしておきたいと思います。  次に、政治改革の問題に触れていきたい、こういうように思います。  論点は多岐にわたります。今回は、総理が過日、八月五日の所信表明におきまして本会議でお話しになったそのことに絞って質疑を行い、政治改革すなわち小選挙区比例並立制である、こういう主張について誤りを明らかにしていきたい、こういうように思います。  総理は八月五日の所信表明演説におきまして、「国民の皆さんが信頼のできる、わかりやすく公正な政治を確立し、その負託にこたえていくことが政治の原点であります。」こうお述べになりました。一般的に言えばそのとおりであって、だれにも異論がないところだと思います。しかし、具体的なテーマになっているのは、政治の原点ではなく政治改革の原点です。  今日、国民が政治改革を求めているよって来るところは、リクルート事件ではなかったでしょうか。政治改革の原点は、リクルート事件によって明らかにされた政治倫理に対する国民の怒り、政治不信に対して、これをどう解消して政治への信頼を取り戻すところにあるか、ここだと思います。政治の原点ではなく、政治改革の原点を明らかにしなければなりません。  私は、そうした意味からすると、所信表明での総理の演説は、政治腐敗の原因がリクルート事件で明らかになった政財官の政治構造、その癒着そのものにあったということについて目をつぶっていると思います。今また証券金融のスキャンダルの中で、新しい癒着の構造が問われ始めているのではないでしょうか。最近のリクルートに汚染された議員が次々と復権してきている、復権しようとしているという状況をも見ながら、私たちは国民の多くの皆さんが、海部総理は政治改革のための本当の努力をしているかということについて疑問を持たざるを得ない状況にあると思っています。  私は、まず冒頭に総理に伺いたいと思います。  総理は、過日の所信表明におきましても、「政治改革の根本には政治倫理の確立があり、一人一人の政治家が高い倫理観を持って、みずからを厳しく律する姿勢を徹底していかなければなりません。」こうおっしゃいました。それならば伺いたいと思います。総理は、自民党の一人一人の政治家が、そして自民党という政党が、リクルート事件の反省の上に立ってそういう姿勢を持っているとお考えですか。そのための努力をしている、尽くしたとお考えですか。まずこの点について伺いたいと思います。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の問題について端的に申しますが、自由民主党は厳しく一連の不祥事件を反省して、その反省に立って平成元年の五月に政治改革大綱というものを党議で決定をいたしました。それには、政治倫理の確立というものが極めて大切であり、一人一人がそれに取り組んでいかなければならない。同時に、国民の皆さんからそのような厳しい批判、指摘を受けた根本にあったものは、やはり政治とお金の不透明な関係であったことと、同時に、お金が必要以上にかかり過ぎるようになってきたということ、これに自由民主党は全員で反省をして、党議を決めたわけであります。  それの上に立って議論を重ね、どうしたらこんなにお金が要るんだろうかとか、あるいはどのようなところでどうなるのか、いろいろな問題をその後二年、何回も何回もいろいろなところで会議も開き、議論もして検討をした結果、これは日常活動や選挙活動そのものをもっと個人中心なものから政党本位のものに変えていかなきゃならぬということに結論が相なりました。したがって、それらの考え方に基づいて、政府は選挙制度の審議会にも諮問をし、その答申を受けてさらに自由民主党でいろいろ御議論をいただいて、今日三法案を国会に提出するところまで来たわけであります。  さっきも申しましたように、それ以外にも、その間の過程において、政治倫理確立のための資産公開法とか、政治倫理のための議院の審査会の問題の強化のこと等については、院に自由民主党から案も出し、野党からも案をお出し願って議論をいただいておると私は承知しております。そういったことで、政治倫理を確立しなければならぬということと、同時に、過去我々が経験してきた厳しい反省に立っての政治資金改革の問題、それは根本を押さえていくと、やはり制度、仕組みの中にも変えていかなければならぬものがあったということで、この際抜本的な改革は制度の改革にまで至るという結論をもって国会にお願いをしておるところであります。
  118. 山花貞夫

    山花委員 結論は、要するに小選挙区比例並立にすればすべて解決する、こういうことなんでしょうか。初めに小選挙区比例並立制ありきで、政治倫理の問題とか政治資金の問題を私たちから言わせれば棚上げしているんじゃなかろうかと言わざるを得ません。できることをなぜやらないのか、こういう疑問を投げかけなければならないと思っています。できることというのは、これまでの証券金融の問題で多くの政治家の名前が出ました。多額の金が動いたと新聞報道されています。一体そういう問題に対して、一人一人の政治家がきちんとした態度表明しているでしょうか。政治倫理綱領を守っているでしょうか。守った方はほとんどいない。ただ否定はしたかもしれないけれども、みずから疑惑を解明する努力はどなたもなされていないのではないかと私は思っています。  具体的な問題で、少し先の問題から、少し古い問題からになるかもしれませんけれども、例えば元環境庁長官の事件、政治家が株の売買に熱中して、みずからの地位を投げ出すほどの二十数億円の脱税事件をやった。刑事の被告人になった。あのとき総理は何をおっしゃいましたか。非常に問題を重く受けとめている、こうおっしゃった。それだけだったじゃないですか。政治倫理審査会、自民党、申し立てはもちろんしなかった。じゃ、一体この問題に対して政党として何らかのけじめをつけたのか。本人が辞職をして一件落着だったではなかったでしょうか。何もしなかったんじゃないですか。  あるいはその後の元文部大臣の一億円のお金が動いた三千万円を受け取った事件、ちょっとわかりにくいですね、これは。町長などは一億円受け取って、裁判になって有罪になった。町長がお宅にやってきて、贈賄者と二人一緒になって、ふろしき包みの三千万円を置いていったと新聞に報道されています。受け取った政治家は何の罪にも問われませんでした。当時の新聞報道を見ればこうなっています。あれは怪しい金ではないんだ、政治活動に使った、こうおっしゃいました。ところが、政治活動に使ったと言ったけれども、政治資金規正法の届け出はしていなかった。一体どうしたかと言えば、税金の修正申告を行って一件落着、終わりであります。私はあのときに、三千万なんですからなぜ公示されないのかと言ったならば、修正だから、まともに出した場合には公示になるんだけれども、修正申告で後から出したんだから公示すらされないということで、国民の目には全く触れないことで終わりました。  そして、私はこの問題について伺っておきたいと思うのです。実は、こうして本来政治資金に使ったと弁解したものについて、政治資金規正法の届け出もしていない。同時に、三千万というお金では、限度枠を超えて法律違反にはなるということだったんでしょう。税金の修正申告を行った。しかし、行ったとしても、これはかつてロッキード事件の反省としてできた政治倫理審査会、これとの絡みの政治倫理綱領、規範に従って、これは議長に届け出なければならないということになったわけであります。三千万は政治資金じゃなかったんですから、税務署は恐らく雑収入として修正申告認めたんでしょう。そうなったら政治家として、お給料、歳費その他の収入のほかに三千万余計に入ってきたんですから、これは議長に届け出なければいかぬということになっておったはずであります。  この辺は事務総長に伺いたいと思っていますけれども、この問題について届け出があったのかなかったのか、あったとすればその内容はどうなっているかということについて伺いたい、こういうように思います。
  119. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 ただいまお話のございましたように、昭和六十年に制定をされました政治倫理綱領あるいは行為規範等、一連の政治倫理に関する制度がございます。この行為規範の第四条では、前年度、年間の所得の金額が「一年間の歳費相当額の半額を超える場合には、これを議長に届け出なければならない。」こういう規定がございます。ただ、これにつきましては、実施細則におきまして「届出書類の閲覧は、認めないものとする。ただし、政治倫理審査会に審査の申立てがあった場合において政治倫理審査会が必要と認めたときは、この限りでない。」こういう規定がございまして、原則非公開という制度になっております。そういうわけでございますので、具体的な中身につきまして私どもの方からお答えをいたしかねますので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。
  120. 山花貞夫

    山花委員 というお話でありまして、実は違反の実態について調べようとしたら、閲覧ができないということになっています。閲覧しなければ違反しているかどうかわからないじゃありませんか。そして、私はまた伺ったのです。届け出がありましたか、ありませんかということを聞いたんです。届け出があったかどうかについてもお答えいただきたいと思います。
  121. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 届け出書類の閲覧ができないということは、届け出があったとかなかったとか、そういう具体的な中身について申し上げられないということになるわけでございまして……
  122. 山花貞夫

    山花委員 要するに、閲覧できないから中身がわからない。じゃ、一体届け出がなければ明らかな違反である。じゃ、届け出あったんですかどうですかと聞いても、これも教えてくれない。こういう制度、役に立ちますか。全く役に立たないと思います。  第四条によれば、「議員は、議院から支給された歳費等、公的年金及び政治資金規正法によって報告した収入以外の収入のうち、所得税法の規定により申告された所得の金額及び相続税法の規定により申告された受贈財産の価額の合計額が前年一年間の歳費相当額の半額を超える場合には、これを議長に届け出なければならない。」こうなっています。前文部大臣が三千万円のお金、雑収入で処理をしたその年の、実は八九年の議員の所得について調べてみると、一千三百九十三万五百六十三円以上所得があった場合には届け出なきゃいかぬということになっています。三千万は一千三百万よりもはるかに多い。届け出なければいけないはずです。私は、届け出てはいないと思って実は聞いたんです。ところが、届け出があったかないかも教えてくれない。いわんや中身について見れない。これでは全く制度の運用上役に立たないじゃないですか。  違反があるかどうかについて全く調べるすべもないというような制度、これが実は政治倫理審査会、政治倫理綱領の中身なわけでありまして、当時そうした欠陥について、閲覧問題について気がつかなかった責任は私たちも負わなければなりませんけれども、現実にそうであるとするならば、やはりこうした問題については政治倫理審査会に申し立てをする。自分の党の問題であったって、申し立てをすることをも含めて、やはり政党として、みずからの党に所属している議員についてこうした違法があるとするならば、折り目正しくすべきではないでしょうか。  この問題について自民党の中で議論が起こったということは、全く実は私どもは聞いていないところでございまして、明らかなこうした問題に対して一体何をしてきたかということを含めて考えれば、総理に対して冒頭伺ったような、全体としてリクルート事件の反省として、政治の原点ではなく政治改革の原点が問われるとするならば、そうした問題に対して一人一人の自民党の議員が、我々もそうです、そして政党がそうした問題についてどういう姿勢をとってきたかということが問われているということ、そのこと初めになくして私は政治改革は論ずることはできないと思っています。私は、こうした政治改革の基本的な問題について総理の見解を伺いたいと思っています。
  123. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政治改革の問題がただいま提出されておる三つの法案に限るものでないということは、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、その大前提として、一人一人が政治倫理の確立をしなければならないということを、自由民主党も過去の厳しい反省に立って党議を決定したということも先ほど申し上げました。  そうして、それに従って、衆議院に対して自由民主党からは政治倫理審査会の改正、強化の考え方も提案いたしましたし、また、政治家の公私を明らかにするために、政治家の政治倫理確立のための資産公開法の提出も議院にいたしております。そして野党の皆さんとそれについて協議を願っておるということも私は報告を受けております。そういった方向に従って、適切な結論が院において行われますように、自由民主党としては党の案を出して審議をお願いしておるわけでありますから、御理解をいただきたい、御協力を願いたいと思います。
  124. 山花貞夫

    山花委員 政治倫理の問題につきましては、実は政治倫理審査会がせっかく設置されたけれども、何年も何年も開店休業で、ついに一度も開かれることがなかったということも、私は委員として出席したこの経験を含めて非常に残念に思っています。したがって、私たちは政治倫理審査会の改善を含めた政治倫理法については、既にこの前の国会で提出をさせていただきました。たなざらしになることがないように、議員が四十人、衆議院ならば四十人の議員が集まって申し立てをしたならば三カ月以内に結論を出すというのが私たち野党が提出した中身であります。こうした問題につきましては、議会制度協議会を初めとして、これからの国会でまだ議論が進むでしょう。いいものをつくっていかなきゃならぬと思っています。  ただ、私が申し上げたいのは、そういう制度ができる前にやるべきことをやるべきではないか、こういうことです。小選挙区比例並立ができるまでは全部棚上げだというようなことではいけないと思うのです。政治倫理の問題についても、政治資金の問題についてもしかり、私たちは今制度として運用、動かすことが大変難しいということであるとするならば、せめて私たちの議員の手帳の中に書いてある政治倫理綱領を議員一人一人が守るというところから始めなければならないのではなかろうか。  これは所信表明において総理もおっしゃっているところでありまして、そうした心構えが必要だということを考えながら、ひとつこれは通産大臣に伺っておきたいと思うのですけれども、まだ問題が出たばかりでありまして、ジャパンライフとの関係について、これは通産大臣は全くおれとは関係ないということで新聞でお答えになっているのですけれども、否定だけではいけないと思います。やはりこういう問題についてみずから疑惑を解明する、こういうことがなければいけないのではないかと思います。それは単に大臣がどうかということではなく、大臣を支えている、支えていた後援団体を含めて、そこでの政治構造全体が倫理を問われるということであるとするならば、この問題について単におれは知らぬということではなくて、真相についてきちんと調べて報告をする、こうしたみずから疑惑を解明する努力が必要だと思いますけれども、この点について中尾通産大臣の見解を伺いたいと思います。
  125. 中尾栄一

    中尾国務大臣 山花委員にお答えさせていただきます。大変いい機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。  まず、何といいましょうか、新聞によりますと飯野元秘書ということでうたってございますけれども、私は実は第一秘書に松尾というのと第二秘書に飯野とおりまして、松尾秘書がこの飯野という第二秘書を連れてきたわけでございますが、どちらとも非常にすぐれた秘書でございまして、ある意味においては私は大変評価をしておりました。したがって、すべからくすべてをこの両秘書に任せておった、こういうのが実情でございます。  この飯野元秘書は昨年の八月六日に正式にやめましたけれども、その前、さかのぼって四年前から、自分で独立をしたい、ぜひ事業の面で独立をしたいということの申し入れがありました。しかし、私にとりましては非常にもったいない、しかも伸ばしてやりたい将来のある秘書でございますから、私はつとにとめまして、そして、まあひとつそんなことを言わないで仕えてくれ、こう言い続けたのが飯野秘書でございました。ところが昨年二月十八日に選挙が終わりまして、その後も、私も実は独立して事業をやりたい、私は将来政治家になるわけではないし、そういう意味でやりたい、こう言うので、私もこれは仕方のないことかなということで、実は七月だったと思うのですが、期日を見ますると八月六日となっておりますので、昨年の八月六日付で私の事務所をやめたというわけでございます。  その後何をしているかということも私も時に気になりますから、その本人を入れました松尾秘書に聞きますると、よくアメリカに行ってアメリカとの関係のことをいろいろ事業関係でやっておる、こういうことを聞いておりました。しかし、何かということの定かでないことは、松尾秘書も知らなかったようであります。そういうことで、対米関係のことをしているということのみ人を通じて聞いておったというのが実情でありまして、その後、昨年の暮れに私も通産大臣に任命されましたために、多忙のために会うことがほとんどなかったわけでございます。また、やめた後もほとんど会う機会とてなかったわけでございます。  飯野元秘書が私の政治団体の北海道山栄会の代表となっておる、これは事実でございます。私は実は北海道山栄会という名前もよくは知らなかったのであります。山栄会というのは実は私の地元にある後援会の名前でございまして、東京にも東京山栄会という私の後援会がございます。ところが、私の考え方といいましょうか、理念といいましょうか、それを一にするような考え方の青年層が北海道の旭川を中心に、まあ四十名足らず、よく私が北海道に行くと必ず集まってくださる。私は、これは私を囲む、青年といいましても三十五から四十五くらいまでの間の年齢でございましょうか、その方々が私と話をし合うということのみの会かと思っておりましたので、別にこれが後援会組織として私に浄財を献金していただくというグループとは思っておりませんでした。そんなだけに、お礼は全く言ったことも会ったときにはないのです。一年間に一回ないし二回会うくらいのことでございますが、お礼とて言うたことはございませんでしたけれども、実は同団体が昭和六十三年四月二日に政治団体として届け出されておったわけでございまして、二年間程度で活動が停止されまして、平成二年度以降は事実上休眠状態となって今日に至っているわけでございますが、私は帰りまして松尾秘書に聞きましたらば、実はちょうど私はおとといというよりも日曜日の夜タイ国から帰ってまいりましたので、その翌朝のぶら下がりのときに、私は大体北海道山栄会知らないね、関係ないね、こういうことを申し上げたことも事実です。しかし、ところが後で聞いてみますると、東京山栄会の方に、北海道山栄会の名においてこの方々が六十三年度に百五十万円、それから翌年の元年度に九十万円、それから平成二年度からはゼロということでございまして、合計二百四十万でございますか、これが納入をされておった、こういうわけでございます。これはむしろこの場をかりまして、北海道のその方々にお礼も言わないで失礼であったなと御礼を申し上げたいと思っているくらいでございます。  私の調査したところでは、健康産業政治連盟からの献金につきましては、昭和五十八年、五十九年ころに行われておりますけれども、これは私の政治理念に賛同であったために行われたものと理解をしております。ただし最近は全く献金はございません。  今回、自分は本件に何ら関与しておりませんで、また、自分の事務所を辞職して、既に昨年の八月のことでございますから、それからある程度時間のたっているその人間のその後の活動については指示する立場には全く私はございませんので、その人間が今回ジャパンライフに勤める、これは、勤めたといいましても、聞いてみますると、非常勤の無月給の形で勤めているようです。これは請われたのでございましょう。というのは、非常に頭も立派に整理された男でございますから、そういう意味においてはアドバイザーという形でかどうか、非常勤の形で勤めておる、このように私は理解をしておるのでございます。私も、この人間自体は他のことで職を得て自分で独立してやっておって、名前だけの、名義として入ったのじゃございますまいか。それも、私は今会っておりませんが、第一秘書を通じてそのように報告を受けました。念のためにきょうここにも第一秘書も、君も出て聞いておった方がいいよということで出してきておりますけれども、まあしかしながら、いずれにしましても、山花委員の先ほど来聞いておることにも大きな一つの論点とフィロソフィーを感じますので、全く知らなかったとはいえこのような問題を惹起したということは、問題点を提起したということは全く不徳のいたすところでございまして、申しわけなく思っておる次第でございます。つとに申しわけないことを申し上げまして、私の話を終わらせていただきます。
  126. 山花貞夫

    山花委員 大変詳細にお話しいただいたわけですけれども、おっしゃるとおり中尾大臣は現在政治団体としては二つの指定団体――指定団体というのは、政治資金規正法第十九条によって特定候補者の政治資金を取り扱う団体、山栄クラブと東京山栄会をお持ちだというように伺っています。住所は、千代田区永田町二の九の六、十全ビル六〇一。それで、今回問題となりました北海道山栄会の住所も同じ場所であります。北海道山栄会の住所だけではなく、自治省に提出している政治団体の収支報告書に記載されている連絡担当者の電話番号、氏名はこの三つの団体とも全部同一でありまして、松尾前第一秘書、北海道山栄会会計責任者ということになっています。問題となっている北海道山栄会の代表者の飯野さんは中尾大臣の前の公設秘書であり、また、会計責任者の松尾さんも前の第一秘書であったということについてはお話のとおりだったと思いますけれども、今も御説明の中にありましたとおり、北海道山栄会から指定団体である東京山栄会に対して、六十三年、二回に分けて百五十万、元年、二回に分けて九十万の寄附が行われている。こうした実態ということについて見てみると、全くそのやめた秘書が自分の知らない間にやったということだけの説明では理解しにくい実態がここにあるのではなかろうか、こう思っている次第でございます。  実は、ことしの問題についてはこの九月ごろでないとはっきりいたしませんけれども、今中尾大臣はことしはないのだと、こうおっしゃっていましたけれども、三つの団体が事務所も同じ、ほとんど責任者も同じ、電話番号も同じ、そしてお金のやりとり、寄附のやりとりというものがあるということを考えてみた場合には、今の大臣の説明だけでわかりましたということにはなかなかなりにくいところでございまして、したがって、こうした問題につきましてはやはり全体の政治構造の問題として身を律する中、これからの問題につきましてもこうした問題についてはきちんとした整理をするなどした上で、やはりこうしましたということについて報告をいただくことが必要ではなかろうかと思っています。  政治的道義的責任といいますか処置のとり方についてはそれぞれのケースによって違ってくると思いますけれども、今回の問題は全く関係がないということではなかったのではないかということについてだけは指摘をした中で、こうした問題についてはできる限りきちんとけじめをつけていただくことについて要望をしておきたいというように思います。  倫理の問題、実は証券の問題も倫理の問題が絡んでおったものですから少し入り過ぎたかもしれませんけれども、私たちはそうした問題についてまず取り組んでいくというところからスタートしなければならないと思っています。私たちは、政治改革というものは、小選挙区比例並立、その選挙制度の問題だけではなく、従来から社会党としては四つのテーマがある、こういうように主張してまいりました。第一は何といっても政治倫理の問題、第二番目は政治資金の問題、第三番目は、けさも午前中最後に大変貴重な御意見ありましたけれども、議事録の問題について、国会改革するという問題、第四番目に選挙制度の問題、こうしたことになってくるのじゃなかろうかと思っております。まずできることから、政治倫理の問題、政治資金の問題、どんなに選挙制度が変わったとしてもこの問題について今のままでやるとするならば、中選挙区制となってもどんな選挙制度になっても変わらないということではないでしょうか。  まずできることからやる、このことについて強く指摘をする中で、そうした中、先ほどの議論にもありましたけれども、では一体、四つの柱のうちの一つである選挙制度の問題について考えるということになれば、やはり今度小選挙区比例並立を提出してきた経過について私たちは大きな疑問を持たないわけにはまいりません。選挙制度なんですから、やっぱり、午前中も議論ありましたとおり、選ぶ側、有権者の立場に立って考えるという視点が全く欠けていたと言わなければならないのではないか、私たちは残念ながらそう思わないわけにはいかないわけでありまして、しかも今度第八次選挙制度審議会の答申に基づいて自民党が案をつくった、こうおっしゃっている。しかし、私たちは、第八次選挙制度審議会の答申にもいろいろ問題があったけれども、その選挙制度審議会の答申にいわば自民党の党利党略という、トリカブトがたくさん入ったのが今度の自民党案ではないか、こういうように思っているところであります。  大体どう考えたって、選挙制度を変えた、政権交代があり得るといったって、どういうシミュレーションをかいたって、マスコミの言うとおり大体四割の得票があれば八割の議席をとることができる。具体的に言えば、東京、神奈川、千葉、埼玉、この辺のところで、三百の小選挙区につくった場合、一体私たち野党が何人当選できるのかということについて、ほとんどのシミュレーションは、ほとんどゼロでしょう。一人ぐらいいけるかな、二人は無理だろう、こういうことじゃないでしょうか。東京だけじゃないですよ。東京、神奈川、埼玉、千葉、全部この辺合わした中で、小選挙区ができた場合には野党の議員がほとんど一人もいなくなってしまうというような選挙制度というのが結論であるとするならば、どんなに総理がきれいに説明されたとしても、私は自民党の党利党略と言わないわけにはいかないと思うのであります。  しかもこうした問題について、三百の議席、三百、こうした議席はどこから出てくるのかといえば、結局自民党内を抑えるために、自民党の現職の議員は小選挙区でできるだけ出れますよという、こういう前提のもとに、五百を四百七十一にしたのだけれども、三百の小選挙区だけは残す、こういう意味において、二百、三百といった八次選挙制度審議会の均衡の理論というものを捨て去ったということを含めまして、私たちはこの問題について、選挙制度ということについて、自民党の皆さんは、特に今度の小選挙区比例並立の中身を見た場合には、何か選挙制度というのは自分たちが当選するための選挙のシステムをつくること、これが選挙制度の議論だと勘違いしているんじゃないですか、そう言わざるを得ないというのが今度の小選挙区比例並立だと思います。しかも、党内に議論があったことについてはだれでも知っていることです。野党と話すこともない、選ばれる側のほんの一部の自民党の中のまたどのくらいの割合でしょうか、そういう皆さんがつくった小選挙区比例並立ということで、私は、国民の納得するところにはならないと思っているところであります。  私たちはこの問題について、そうした初めからの議論の原点から立ち戻って、改めて検討していただきたい、こういうように思っている次第でありまして、私たちは今、選挙制度を考えるならば、抜本的な選挙制度改革ということならば、お金がかからないこと、公平でなければならない、定数は一対二でなければならない、そして政権交代の問題も含めて、こういう形で、あるべき選挙制度の原点を整理した中で与野党が協議するところから始めるべきではないだろうか、こう思っている次第でありまして、これから全く短い期間に一遍に自分たちの思ったとおり決めようとすることではなくて、もう一遍、問題提起をされたのですから、我々もこれからその議論に参画していくわけですから、我々は定数是正の問題も提案していくわけですから、そういう問題も含めて、短い期間に一遍に結論を出すということではなく、やはりこれから長い間の日本の将来の政治の仕組みを決めるという選挙制度の問題ですから、時間をかけることは惜しくはないと思っています。将来のあるべき民主的な公平、公正な選挙制度を実現するためには時間をかけて野党と話し合っていくべきだと思いますけれども、この点について総理の所見を伺いたいと思います。
  127. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙制度の問題の大前提としての政治改革、そして政治倫理を確立しなければならぬという問題については、既に議院において各党でお話し合い願っておる段階になっておりますから、その場で進めていただきたいと思いますし、またこの問題についても、自由民主党の方の政治改革本部で政治改革大綱をつくりまして以来、二年間の間に、事務局が三百三十回以上というほどいろいろな角度の議論もし、各界の代表の方の御意見も聞き、諸国の選挙制度等も見てまいりました。また、原案を要綱としてつくりましたときも、私は党首会談で、昨年暮れでありましたが、各党党首の皆さんにも内容もお示しし、また、院の公職選挙法改正特別委員会でも六回ほど各党の皆さんとお話し合いをいただいたという報告を私は聞いております。けれども、幾らでもこれは議論も意見もある問題だと思います。  ただ自由民主党だけが都合がいいように、自民党だけが全部当選するようにやったのではないかということでありますが、そうではなくて第三者機関の選挙制度審議会に依頼をしてこれらの区割り等はきちっとしてもらったわけでありますし、またテレビのいろいろなシミュレーションでも、私が一回ああっと思ったのは、前回の参議院選挙のときの得票をもとにして、これを当てはめてやったシミュレーションは、東京でとてもお一人なんというものではありませんでした。自由民主党に厳しい惨たんたるシミュレーションの結果が出ておったこともこれは事実でありますから、これは真剣に、緊張状態を持って対処していきませんと、小選挙区というのは一対一の、結局極言すると争いになります。今の中選挙区で五人区で八人も立候補して、そして投票率が六〇%というと、当選に必要な地域住人の得票率というのはおわかりいただけると思うのです。けれども、一対一の争いになってくるときには、過半数に近いものを得なければ当選できない。それだけ民意が敏感に反映する。  例は悪いかもしれぬが、私にとってはつらい、嫌な思い出ですが、前回の参議院選挙、一人の当選の選挙区は二十六ありましたが、三勝二十三敗という大変な結果でありました。あれは、あのようなことは、いつでも民意は敏感に反映するんだぞ、政権党としてあぐらをかいておってはいけないんだよという厳しい頂門の一針であったと私自身は厳しく受けとめておりますし、選挙制度審議会にも各界の学者の皆さんやあるいは評論家の皆さんやマスコミ代表の皆さんや、皆さん英知に入ってもらって、自民党がつくったんじゃない、審議会がおつくり願った議論にもそういったことは指摘されておるわけでありますから、そういったものを全部反映して三法案にしたのでありますので、どうかその点のところは、御議論をいただく上において、社会党さんの方にも、こういうことだ、定数是正をやれという案があるというお話ならばそれは喜んでまた聞かせていただきますし、いろいろ議論をしながらやっていかなければならぬと思います。  一票の格差の問題についても、議会の決議を無にしておるわけではありません。この法案を通していただければ、限りなく一対二に近いように、原則一対二でお願いして、やむを得ないところが幾らか残りましたけれども、大幅に投票価値の問題もこの中において解消されるようになっておるということも、どうぞつけ加えさせていただきたいと思います。
  128. 山花貞夫

    山花委員 今の御説明に三つ指摘したいと思います。  まず、よく参議院選挙の例お挙げになるわけですけれども、これは一人区の小選挙区でも二人区でもあるいは中選挙区におきましても、全部我々が勝っているのです。選挙制度の結論じゃないんです。ああいう政治状況の中で、小選挙区も二人区も中選挙区も、政策選挙、リクルートの後の消費税を含めた政策中心の選挙が行われたんです。したがって、選挙制度によるものではないということを指摘したいと思います。  第二番目。今、総理は、選挙制度審議会の答申を尊重した、こうおっしゃいました。果たしてそうでしょうか。私は、大事な部分について、さっきトリカブトと言ったけれども、随分変わっちゃっているんじゃないでしょうか。一つ、総定数について、二つ、小選挙区の議席の配分について、三つ、比例区選挙の単位について、四つ、政党の要件について、五つ、比例区での当選制限について、六つ、企業の献金等について、七つ、パーティーの規制について、八つ、小選挙区の選挙運動について、九つ、政治資金の運用についてと、大事な部分について、選挙制度審議会の八次審の答申と自民党案というのは違っているんです。そのことを抜きにして選挙制度審議会の答申を尊重したというのは、私はいただけないと思っています。  第三番目の問題として、定数の格差についても一対二に近づけたとおっしゃいました。実は、この問題が一番大きな問題であったと思います。国会決議に至った、あれ以来の経過を振り返っても、あるいは最近の違憲判決等の問題を振り返っても、一対二にするということが一つの大きなテーマであったことについては共通の認識でした。今度、例外、例外で二十七の例外ができたではありませんか。三百のうち二十七、大体一割ぐらいじゃないですか。どこから出てきたかといえば、これはこの三百という議席、この小選挙区制、しかも市や区を分割しないといった原則等々、全部答申の中身を変えたところからこうした事実が出てきている、こういうように言わなければならないと思っています。  とりわけ、あの各県に一人ずつばらまいたということから、初めから一対二にすることはできないというのが自民党の案だったと私たちは初めから指摘してまいりました。定数是正の抜本的な改革をするならば、一対二の格差をなくしていくこと、ここから始めなければいけない問題について、そのことを投げ捨てて一割ぐらいの例外ができてしまったということであるとするならば、私は、間違っていると言わなければならないと思うのであります。  今、総理の御説明に対して、以上の点についてだけ指摘をしておきたいと思いますけれども、実は小選挙区比例並立という問題につきましては、どこの国が、そんないいということならば、採用しているのかということを伺わなければならないと思っています。外国でこういう制度、全く同じところは全くないと思います。日本で初めての制度をつくろうとされているということだと思います。  私が調べたところでは、この並立という形で採用しておりますのは、韓国、メキシコ、ベネズエラ、セネガル、マダガスカル、ブルガリア、そして、若干形は変わりますけれども、フランス型の二回投票制というようなものも含まれています。最近調べたら、ハンガリーで独自の組み合わせ方を採用したということのようです。メキシコでは、比例代表選挙における議席の配分が小選挙区で少数の議席しか得られなかった政党を中心に行っている、こう聞いております。韓国の場合には、御承知のとおりプレミアムの問題がある。  こういうさまざまな形があるんですけれども、共通の問題点は、私が聞いている限りでは、やはりお金がかかるというんです。小選挙区比例並立で、選挙区の部分についてはお金がかかるという、こうした問題点が指摘されています。既に行っている、小選挙区並立制をとっているところでも相変わらずお金がかかって、政策中心の選挙になるというよりは、むしろ比例区の部分については、もうマスコミがこれだけ発達していますから、その意味におきましては政策中心ということにはならないで、むしろ小選挙区において一対一、お金の選挙、そして、ネガティブキャンペーンと言われておりますけれども、相手方の悪口を言ったり中傷したり、こういう選挙が中心となるというのが小選挙区比例並立の特徴であると、諸外国のいろいろな例を見た中で、実は私は承知しているところでございますけれども、お金がかからなくなるという問題、これが制度の根本の問題。この問題、導入することによって、総理はお金がかからなくなるというのか、奄美選挙が本土に上陸するんじゃなかろうかと言われている、こういう問題に対して総理の見解を伺いたいと思います。
  129. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、日本の選挙制度の改革でありますから、どこの国のどこの選挙をということだけを取り上げて議論しようとは思いませんけれども一つ御理解願いたいことは、やはり投票の価値も一対二に基本原則として近づけなければならぬ。今の一対三を超えておるような状況のときにはいろいろな問題があることはもう御指摘のとおりですから、そこはきちっとやろうと思ったのです。  それからもう一つは、これは新聞にも既に発表されたことでありましたから、皆さんも御記憶願っておると思うけれども、やはりお金が必要以上にかかり過ぎるという点を改めなければいけないということと、御指摘があったように、お金と政治活動、政治資金との間の関係をもっと公正に、透明にしなければならぬというところから政治改革の反省がスタートしたということは、先ほど来御指摘に答えて私も申し上げておるところであります。  ですから、必要な費用はかかりますけれども、かかる費用は公明に持っていきたい。同時に、個人が集めるというのじゃなくて、なるべく政党中心に、あるいは機関を中心に、そういった努力の上に立って、これはナショナルサービスという面から見れば、公費の導入等も、先進国で考えられておるように、これは日本にも考えてもいいのではないか。そしてかかったことはもっと公明に、そして透明性を持って国民の皆さんにも知らしめるようにした方がいいのではないかということがこの三法案に織り込まれておるわけでありまして、必要以上にお金がかからないようにしたいということと、政党本位、政策本位の選挙戦にしたいということと、これを願っての政治改革であるということでございます。
  130. 山花貞夫

    山花委員 今総理がお話しになった中で、これは日本の制度をつくるんですよ、こうお話しになりました。では、一体日本において明治以来の選挙制度、小選挙区、大選挙区、中選挙区がありましたけれども、小選挙区の時代、どうだったでしょうか。やはりお金がかかったのじゃないでしょうか。その反省の中で選挙制度は変わりました。  また、余り指摘されていないのですけれども、私が一番最初の六回の小選挙区の制度、その後二回を調べてみると、むしろ中選挙区になったときに二大政治勢力が集まっていますね。小選挙区のときは四つプラスアルファぐらいの政党の競争ということになっています。この辺のところはどうも御説明と私は違うのじゃなかろうかと思っているわけでありまして、ただ、こうした問題については、きょうは予算委員会の場ですから、これから選挙制度についても議論する時間がこの国会は出てくる、こういうように思いますので、さらに、細かい具体的な問題について議論をさせていただきたいと思っています。  大事な問題として、以下、PKOの問題について伺っていきたいと思います。  昨年の国会で、明らかに世論の意向というものを見きわめた中で、国連平和協力法案が廃案ということになりました。改めてまた出てきた今度のPKOに関する政府考え方というものは、過日野党にお示しになったものについても、私どもいただきましたので検討いたしましたけれども、一言で言うならば、やっぱり初めに自衛隊の海外派遣ありきということではないか、これが今度の法案の問題点だと思っています。  とりわけ、私は昨年の平和協力法案のときの国会の議事録をずっとできるだけ正確に読んだつもりでおりますけれども、その当時の総理の答弁あるいは外務大臣の答弁、あるいは関係する政府委員の答弁、一貫しておりましたのは、去年の法案、そうだったんですけれども、午前中議論となりました兵力の引き離しの問題、武力行使があるからだめだということだったんじゃないでしょうか。今度は武力の行使と武器の使用ということを分けるという。一つ国会をまたがったならば、総理大臣初め法制局の見解まで変わってしまうということであってはならないと思っています。武力の行使と武器の使用、一体どういうふうに整理をされるのか、去年できなかったことがことしはできるというような憲法解釈が出てくるのかということについて伺いたいと思います。  去年武力の行使についてだめだったんだけれども、ことしはできるようになったというその問題について、まず総理にこの点、大きな見解の転換について問題点を伺いたいと思います。
  131. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように昨年の国連平和協力法、御審議願った中で、私は、平和維持軍に直ちにこの法案で参加することができるようにはなっておりません、それは武力行使を伴うか伴わないか、その形態その他いろいろあるということなどを勘案した結果でございます、こういうお答えを、御指摘のようにしております。  そのことは、武力の行使というのは日本国憲法の中にも、武力による威嚇または武力の行使を伴うものであってはならぬということにきちっとなっておりますから、平和維持軍の中に武力の行使あるいは武器の使用、いろいろな考え方、いろいろな場合が想定されておりましたので、あの議論の中ではそのようにお答えをいたしました。  その後、慎重に検討をいたしました。国連平和維持軍については、その任務の遂行に当たり、武器の使用が認められる場合があるために、政府としては憲法九条上禁止されている武器の使用と武力行使との関係について検討した結果、国連平和協力法案ではそのような態度でありましたが、今回、平和維持軍へ参加するに当たっては、そのときにいろいろ議論になりましたものを検討して、基本的な方針をしっかりと固めて、武器の使用というものは要員の生命等の危機を防ぐために使うという厳しい限定を引いて、そしてさらに、我々の参加しようとする平和維持活動というのは、委員御承知のとおりと思いますけれども、国連における決議を受けて、そして停戦状態が成立しておって、紛争当事国が皆それに同意をしている、そして国連の権威と説得によって平和回復活動、それを維持していこうということでありますから、力でもって武力を行使して役を果たそうというものとは質が全く違うわけでありますので、基本方針にきちっと武器の使用の限度を定めることによってこれは武力の行使と区別することができる、このように考えたわけであります。
  132. 山花貞夫

    山花委員 今の説明は、国連平和維持活動、PKOのうち維持軍の参加は難しいとしておりました昨年の答弁を変えたものと思います。今総理は、慎重に検討したらこうなったと言いますけれども、じゃ昨年は慎重じゃなかったのか、こう言わなければならないわけでして、私は今度の問題について、転換しただけではなく、自衛隊が併任ということで本隊、後方支援を区別せずに部隊ぐるみ参加できるという今度の内容、私は明らかな昨年来の答弁の変更であり、憲法にかかわる問題だと考えます。  一番基本的な問題として、「新たな国際平和協力に関する基本的考え方(案)」というのを拝見しますと、国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与することを目的として、自衛隊等が海外に派遣されるケースとして三つ挙げております。三つのうち、三番目のケースである「人道的活動に従事する国際的な機関からの要請に基づく人道的な救援活動に対する協力」ということにつきましては、ある程度この協力の中身が具体的に書かれている気がします。ところが、今も総理が御説明になりました第一の「国連平和維持活動」と、第二番目の「国連決議」につきましては、その具体的内容が、これはもともとできないわけでありますから、想定されていない極めて一般的、包括的な例示ということになってまいります。  この三つのケースのうち、一番目、二番目、国連を中心とした国際平和維持活動及び国連決議の具体化というものが、従来の防衛論議において確定しておりました我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接並びに間接の侵略に対して我が国を防衛するということと関係のない国際紛争に際して、当事国の平和と独立を守るために必要な国際的協力を求める内容である場合にも参加したり協力したりする、こういう理屈がここから出てくるのじゃなかろうか、こういうように思うところです。  実は、こうした問題については、参加と協力の関係、明らかに参加になっています。文章では協力という部分もあります。一体どっちなのかということについてはわかりにくい構造になっています。参加ということになれば、部隊の指揮命令、相手方のところに入っていくわけでありますから、午前中議論がありましたような逃げる逃げない、撤退の問題につきましても、参加ということで指揮命令の系統の中に入れば問題となってくるのではないかと思います。文章の中に参加もあり協力もある、一体どういうことなのかということについては、大変議論があるところであります。  私たちは、こうした問題について既に我々の考え方を打ち出しているところです。既に具体的な法案の準備としても、第一次案として非軍事、民生、文民の原則。私たちは、これはこの前の国会において、総理、前回の国会において社会党は残念ながら参加することはできませんでしたけれども、三党合意ということになりましたあの中身としても、憲法の平和原則を堅持した中で、自衛隊とは別個に国連の平和維持活動に協力する組織をつくるんだといった、こういう枠の中で、社会党の議論も皆さんと一緒に議論できるのではなかろうかと思っておったところですが、政府の出てきた案というものは全くそれと違うことになりました。  午前中も議論がありました。大体このPKOそれ自体が国連憲章に定めがあるということではないけれども、しかし、一つの国際平和のためのアイデアとしてノーベル賞までもらったんだ、こういう話がありました。その時点におけるカナダの外務大臣一つの発想ということがPKOに結びついたということだと思います。  今、ということであるならば、平和憲法を持っている日本は、日本らしい知恵というものをこの際出すということができるんじゃないでしょうか。そしてそのことが外国から期待される。自衛隊を連れてくるということだけではないはずです。そうした問題について、私たちは自衛隊とは別個に国連の平和維持活動に参加できるようなそういう組織をつくっていくことについて、日本の平和憲法のもとにおける知恵を出していくということができるんじゃないだろうか、私たちはそういうふうに考える中で問題提起をしているところであります。  全体、私たちの構想と政府の構想と比べてみると、自衛隊の参加の問題と兵力の引き離しの問題、ここだけが違うのです。ほかのところはほとんど同じなんです。ほとんど同じというのはちょっと正確じゃないかもしれませんけれども、ほかのところはかなり共通点があるのです。ということならば、こうした大事な問題につきましては、もっともっと議論をする中で、若干これはまた時間がかかってもやっていくということになるのではなかろうかと思いますけれども、時間が参りましたので、この点について所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  133. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自衛隊参加の問題と兵力引き離しの問題について、これは兵力引き離しというのは午前中も申し上げましたように、現に行われているところへ割って入っていって力で引き離そうなんということは、これは日本の参加をしようとしておるPKOにおいて想定しておるものではありません。それは停戦が、合意が成立して既に引き離しが行われておった、その秩序を維持するための停戦監視であり、平和回復活動だということでありますから、これはいずれまた時間をいただいて御議論の場があろうかと思います。
  134. 山花貞夫

    山花委員 以上で質問を終わります。
  135. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて山花君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  136. 二見伸明

    二見委員 私は限られた時間内ではございますけれども、当面する証券問題、PKO、政治改革あるいは雲仙の問題について、総理並びに関係大臣の御所見を承りたいと思いますが、その前に、昨日報道されました衝撃的なモスクワにおけるいわゆる政変問題について二、三伺っておきたいと思います。  総理大臣はけさの当委員会で、今回のソ連における政変をソ連憲法違反の疑いが濃い、重大な事態であるという認識を示されました。一方、ブッシュ大統領はその声明の中で、法を無視し、ゴルバチョフ大統領を追放し、非常事態宣言をし、兵を配備する行為は認められない。将来のソ連に疑問を抱かざるを得ない。ゴルバチョフ政権の復帰を支持する。ソ連の民主化、人権、経済改革を変更するようなことがあれば極めて重大である。米国は、合法性を持った政権しか認めない。現政権を承認できない。こういう厳しい態度表明をされておりますけれども総理のけさほどの御見解は、このブッシュ大統領の見解と同じ認識の上に立っているというふうに理解してよろしいでしょうか。
  137. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今行われておりますことについてはまだ流動的な面がいろいろあるようでありまして、ごく最近に入ってくる通信社の通信にしても、いろいろと我々の頭で整理しがたい問題がたくさんあるようであります。ですから、この動きというものを冷静に見詰めて、どのようになっていくかという見通しをここで断言するにはまだ情報が足りない、流動的だという気がいたしますが、しかし、昨日来の情報を全部整理しますと、今の状況は、これは憲法の手続に従って行われた正当なものではないのではないか、憲法違反可能性が極めて高い異常な事態であると私は受けとめますし、また戦車が出ておるとか、あるいはその戦車は実はエリツィンを守るために出ておるんだとか、いやそうではないとか、いろいろな場面を、いろいろな情報を乱れて聞いておりますと、非常に、いずれにしても深い懸念を私は持つわけであります。したがいまして、今ソ連に行われておること、これについては、おっしゃるように私は正常なものではないという受けとめ方をしておりますので、ただ願わくはペレストロイカと新思考外交というものが世界の東西の対決に終わりを告げて冷戦構造の幕を引いたという、引き始めたというその行為は認めなきゃなりませんから、これが後戻りしないように、これがきちっと推し進められていくことを強く期待しておくというのが私の今の率直な考えでございます。
  138. 二見伸明

    二見委員 私も、今回の政変によって歴史の歯車を逆戻りさせるようなことがあっては絶対にならないと思っております。  ところで総理、重ねてお伺いいたしますけれども、今回の政変というのは、いわゆる二十日に新連邦条約が調印されることになっておりました。それに対して危機感を抱いた保守派が起こしたクーデターではないかという見方もあるわけですけれども総理はこれはクーデターであるという認識をお持ちでございますか。
  139. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日来のいろいろな情報を検討しましても、またソ連の専門家のお話を聞いておりましても、二十日の連邦条約調印というのが一つの、何といいますか、めどといいますか期限といいますか、そういったものを何とか阻止しなければならないという願いがあったのではないかということを話しておられますけれども、これも明らかに裏をとって確認したものでもなく、また何が何だかわからなくなったというのは、最初は健康上の理由で退任ということであって、それなればどうして戒厳令が出るんだろうかということになってきて、そして戦車が出撃して、もうあのような状況だということになってきますと、わからないことが非常にたくさんあります。ただ、新連邦条約をめぐっては、徴税権の問題でいろいろと議論がなされておったということは私も聞いておりますので、その辺があるいは一つの側面ではなかったろうかということは、委員の御意見として、今私もそのように素直に聞かせていただいておりました。
  140. 二見伸明

    二見委員 いわゆる非常事態委員会というのがいわゆるソ連の新しい指導部体制になっておりますけれども、これについて総理は、この正統性についてはどういうふうに見ておられますか。
  141. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはもう少し事態を見なければなりませんけれども、どこを読んでもあれは憲法上には書いてない委員会のようでありますから、あくまでも非常事態が起こったのではないだろうかという推測の対象として認識をいたします。
  142. 二見伸明

    二見委員 非常事態であることはわかり切っているわけで、限られた情報の中で判断しろと言われても困るというのが総理大臣のお立場だろうと思いますけれども、それではもう一点伺います。  対ソ支援について午前中も議論ございました。総理は、先進諸国と相談をしてこれから慎重に対処するという御答弁でございましたけれども報道によりますと、外国の反応はかなり厳しい。例えばアメリカでは、当面経済援助を停止する、こうブッシュさんは言っている。フランスのミッテラン大統領は、今回のソ連での行動は民主化に反する、ソ連は西側の支援を受けられなくなる。イギリスのハード外相は、五千万ポンド、約百二十億円ですね、この技術援助を停止する。カナダのマルルーニー首相は、一億五千万カナダ・ドル、百八十億円の食糧援助を停止する。こういう厳しい態度を表明いたしております。  私は、これからの対ソ関係というのは非常に難しい。一方ではソ連を追い詰め孤立化させてはいけないということがある。しかも、ソ連の経済は破綻の上にさらに破綻をするだろうという見通しもある。だから非常に慎重な対処をしなければならないんだけれども、これから先進諸国といろいろと対ソ支援を打ち合わせる場合に、ただ慎重というだけではなくて見直し、再検討、場合によっては一時凍結というようなことも考えられるのかどうか、その点はいかがでしょう。
  143. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現段階では非常に流動的でありますから、同時にまた日本の対ソ援助というのは、これは主として技術支援、知的協力、調査団の派遣とか人的交流という面で、拡大均衡の方針でやってきたことは御承知のとおりでありますから、G7諸国の間でもそれは段差があることはあります。けれども日本として行っておったものなどについても、今のこの状況では次々といくわけにはまいらぬと思いますから、この問題がどのようになるのか見きわめなければなりませんし、同時にまた、ソ連が対外的に話をし約束をしてきたことは、あくまでも自由と民主主義と市場経済の価値を共有するような社会の仕組みをつくり、そういう国になるということでした。ですからサミットのときにも、サミット参加国がまとめた六項目というのは、そういったソ連をつくり、そういった国際社会をつくるために参加できるような体質づくりをしていこうということでありました。  したがって、サミット諸国ともよく相談してと申しましたけれどもブッシュ大統領マルルーニー首相も私は事情は電話で話しております。この会が終わったらまたサミット議長にはお話をしてみようと思います。日本の考え方、それはやはりもっとソ連というものが、ペレストロイカの成功、東西対立を変えていった新思考外交の発展というものを国際社会にわかるように、目にわかるように進めていくようになるまでは、これはいろいろと先進国間で協調してやっていかなければならぬわけですから、日本においてもその問題は当面停止になっていくことは、これはそのとおりだと思います。
  144. 二見伸明

    二見委員 私もペレストロイカ路線がこれからも継承されることを心から願っておりますし、ソ連が閉鎖社会の中から国際社会の中にやっと入り込んできた、これを何とか維持していきたいし、そうした方向に先進諸国は誘導をしなければならぬというふうに思っております。  ところで、この問題と国内との絡みで一点だけお尋ねしたいんだけれども、今度の政変の背景に保守派のいら立ちがある。しかも、必ずしも新しい執行部が軍部を独占したというふうには思えないけれども、軍部の発言権が強くなってきている。こうした風潮をとらえて対ソ脅威論を復活させようというような動きがあっては絶対にならないと思うけれども総理大臣はこの点について、ソ連の軍事的脅威論というものを我が国内に復活させてはならないと思うけれども総理大臣の御見識はいかがですか。
  145. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国ソ連に対して願ったものは、まさに東西の力による対決に終わりを告げていくという、そういう姿勢でありました。これは、ソ連が脅威になるのかならないのか、これは相手の出方にも大きく影響するわけでして、私は観念的に脅威論を復活させることはよくないと思いますし、冷戦時代に逆戻りすることはよくないということを強く感じております。そういった気持ちはしかるべき方法で伝え続けていかなければなりませんし、西側首脳と話しておりますときも、その点だけはきちっと確保したいということを言えば、それは賛成だと恐らく大方の人は言ってくれるでしょう。そういった基本的な姿勢に立って、むしろ願わくはソ連動きの中でもとへ戻るような、ペレストロイカに反するような、歴史を逆戻りさせるような動きだけはしないでほしいということをG7の共通の認識として伝えることができるように私は努力をしなければならぬ、そう考えております。
  146. 二見伸明

    二見委員 証券問題について二、三伺いたいと思います。  まず最初に、今回証券スキャンダルが明らかになった。また金融機関の巨額な不正融資も明らかになりました。また、イトマン問題も新たなる段階に入りました。私はこうした一連の事件というものは、日本経済のファンダメンタルズそのものが疑われる事件だ、私そのことに無念さと憤りを感じないわけにはまいりません。そして、これら一連の事件を、大手証券会社、大手都市銀行のそれぞれの責任だ、あれらが犯罪行為をやったのだ、これでは済まされないのではないかと私は思っております。私はこうした一連の事件が起こったときに、行政の怠慢さを指摘せざるを得ません。しかし、そればかりではなくて、こうした不正融資あるいは証券スキャンダルを引き起こしたあるいはそれを助長した政治及び政策の責任というのは大変重要だというふうに私は考えておりますし、そういう点では、総理大臣はこれに対して重大な責任を感じなければならぬと思います。  もう一点、今回の一連の事件を通して見逃すことのできないのは、証券スキャンダルにしても金融機関の不正融資にしてもイトマン事件等にしても、これをくくるというか、キーワードは何かというと暴力団、裏人脈なのです。例えば野村ファイナンスは八九年百六十億円、日興クレジットは八九年から九〇年春に二百二億円を融資した、こう言われております。また金融、いわゆる富士銀行等の不正融資に関しても、大蔵省の中では、不健全な勢力が金融の表舞台に入り込んだという認識をされているわけであります。暴力団が、あるいは裏人脈が証券会社等と結託をして表の経済活動に進出してきたということを、総理大臣、これは重要に受けとめなきゃなりません。これを放置しておけば、日本の経済というのは根底から破壊されてしまうと思うし、世界から全く信用されない日本になってしまうと思います。その点について総理大臣はどういう認識をされていらっしゃるのか伺いたいと同時に、証券スキャンダルにしろあるいは金融の不正融資にしろイトマンにしろ、これから全容が解明されます。その解明の中で、裏人脈と企業との関係、これは全容を明らかにしてもらいたい。そしてありのままの姿を国民の前に、国会報告していただきたい。このことを私はまず冒頭に総理大臣に要請をしたいと思います。いかがでしょうか。
  147. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の点について、政府の責任者として極めて重大に受けとめさせていただいております。  ただ、戦後日本がきょうまでこの国際的な地位を得るために民間の資金をいろいろ産業に回す、そしてそれが国の経済発展の底力になってきた、そういった努力の中で、証券界の人もいろいろ汗を流して努力をされたと思います。だから、私が一部と言って今おしかりがありましたけれども、あくまで私は、今でも、そうであってもまじめに歯を食いしばってやってきた証券マンもいるではないか、光の部面と影の部分があるとするなれば、今社会の批判を受けておるのは影の部分であり、許されないということは委員御指摘のとおりであります。私は、厳しくその責任は受けとめなければなりませんが、しかし、すべてがそれをやっておるのではないわけでありますから、そのいけなかった面を厳しく正していき、どのようなことがどこで行われたかという真相の解明のためには、これは国会の場を通じて今いろいろな角度で御議論もいただき、また政府もわかる限りのことでその手段とかあり方とか方法とかをここで御報告をしておるわけでありますから、厳しい状況でありますが、歯を食いしばってまじめにやってきたその他の人々のためにも、許されない誤ったことをした問題が二度と再び起こらないように、最後は法律もきちっと改正して再び起こらないように努力をしていかなければならないと、これは厳しく受けとめております。
  148. 二見伸明

    二見委員 影の部分、一部の部分だとおっしゃるけれども、日本の証券界を牛耳っているのは四大証券じゃありませんか。その四大証券がやったのです。影の部分でもなければ一部の部分でもない。これは資本市場にとって致命的な問題だというふうに私は認識をいたしております。それは影の部分で、たくさんの頑張っておる健全な営業マンがいる、それはわかる。そうした健全な営業マンあるいはまじめな投資家の信頼のすべてを裏切ったのが四大証券じゃないですか。これを一部だ、そんなこと言えません。しかも、その四大証券が暴力団とかかわっていた、これほどショッキングなことはありませんよ。一部の問題じゃありません、これは。これは、この関係だけはきっちりと明らかにしていただかなければ、私は日本の将来にとって禍根を残すことになると思います。もう一度、この問題は、企業と暴力団との関係、裏人脈が表の舞台に乗り出してきた、このことに対しては徹底的に究明をしていただきたい、このことを改めて申し上げたいと思います。
  149. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は慎重に言葉を選んで申し上げたつもりでしたが、一部の証券マンという言葉を使いました。証券関係の働く人すべてが悪人だというような受けとめ方は、これはいたしたくありません。  それから、暴力団と絡んでおる証券会社は、御指摘の四大証券の中では、私の記憶に誤りなければ二社ではなかったでしょうか。  ですから、私は一部の証券マンという言い方をしましたのは、証券会社のすべてが、証券にかかわる人のすべてが悪につながり、暴力団とつながり、御指摘のような暗い面ばかりをやったのだというふうにはどうか受けとめないで、まじめに歯を食いしばってやっておった証券マンもおるんだということを申し上げさせていただきたかったのです。  ただ、その暴力団が絡んだという問題、四大証券のうち二大証券がそれに影響があったということについては、行政府の責任者として重大に重く受けとめて責任を感じておりますということは、最初に申し上げたとおりであって、私の申し上げた真意もどうか御理解をいただきたいと思います。
  150. 二見伸明

    二見委員 補てん問題について三つの角度からお尋ねを申し上げたいと思います。  最初は、大蔵省の行政責任について大蔵大臣に伺いたいと思います。  私は、今回の補てん問題について解決すべき機会は少なくとも三回あった。第一回は八九年十二月、いわゆる通達を出した時点です。八九年の十一月に大和証券の補てん事実が判明したとき、大蔵省は「事後的な損失の補填や特別の利益提供も厳にこれを慎むこと。」という証券局長通達を出しました。そして、社内処分を求めただけであります。一片の通達を出して社内処分を求めただけであります。もし、この時点で厳しい処置をとっていれば、以後補てん問題は起こらなかったはずであります。ここに私は大蔵省の第一の失敗があると思う。この点についていかがですか。
  151. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 結果として今委員から御指摘のありました点について、私はそのおしかりを甘受いたします。ただ、これは事実問題として、元年の十一月に第一にこうした問題が明らかになりましたとき、実は証券業界の中に損失補てんという行為がこれほど蔓延しているという認識は、私自身にもありませんでした。そして、その発見をされました事案に対しての処分をいたしますとともに、こうした問題が発生をいたしましたこと、そして、その原因を考えてみますと、いわゆるその営業特金というものが売買一任的に運用されている、その結果として損失補てんが行われているということが認められたというところに着目し、通達を発出したわけであります。  結果として通達の効果が残念ながらおしかりを受けるような事態を招いたわけでありますが、この時点におきましては、損失補てんを厳に慎むことを求める、同時にその温床となりがちな営業特金の適正化を図ったという対応をしたつもりでありました。これが今回事実上空に帰した、空になったということを踏まえ、先刻来申し上げておりますように、他国においては法律においてわざわざ規制をするまでもなく当然のこととして行われていない損失補てん、場合によっては自主団体のルールによって規制している行為でありますけれども、今回証券取引法の中に損失補てんの禁止を条文として入れなければならなくなったということを本当に情けない思いで受けとめております。
  152. 二見伸明

    二見委員 証券市場というのは、もうかった場合も損した場合も本人の責任という自己責任の原則が確立されていて証券市場は健全になる。損した、補てんをされた、これがあったならば、証券市場というのは健全な発展はできません。だから、証取法でも、まず事前に損失した場合には保証しますよという約束をした上での勧誘はしてはいけないとなっている。それは証券市場をゆがめるからいけないとなっている。しかし、損失補てんについては、損失補てんも同じように、事前に約束がある損失保証と同じように損失補てんそのものも反公共性の強い、反公益性の非常に強い行為だという認識が大蔵省にはなかったんじゃないか、こう思います。いかがですか。あったのですか、このとき。
  153. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、その点については全く委員の御意見に承服ができません。損失補てんが当然のことながら、公共性に、また公益に反する行為であり、商行為上許されない行為であるということは当然のことと思っております。しかし、それは、実は法律以前の倫理の問題として、世界のどこの国も実はわざわざ法律条文でまでこれを禁止していない行為である。しかし、こうした事態が起こりました以上、情けない話でありますけれども、その倫理にゆだねられないとするならば、法改正をもって臨む以外にない、私は今そう考えております。
  154. 二見伸明

    二見委員 法律を改正して事後補てんを禁ずるという措置は、経済先進国日本としては最も恥ずかしい措置であることは、私も大蔵大臣と同感であります。が、それをやらなきゃならないところにやはり問題があった。だから、八九年十二月の時点で、損失補てんは損失保証と同じぐらい、同じ程度の反公共性の強い行為なんだ、そうした認識に立って、この時点で大蔵省が本気になって損失補てんの問題を追及していればこんな事態にはならなかった。大体、私も証券会社に勤務している友達やなにか大勢いますから聞いていますけれども、良心的な補てんなんてありませんと。あなたの会社の十億円を私の会社に預けさせてください、今金利は安くて三%だけれども、私の会社なら、私のところに預けてくだされば五%に何とかしますよ、七%にしますよ、そうして営業活動をやって、十億円なら十億円、二十億なら二十億、証券マンはやってくる。証券マンは事前のそうした約束をしてはいけないことは知っている。預ける方も、そんなこと言って間違いないか、念書を書け。間違いないな、今までの過去の取引からいって信用できるな。口頭の約束の場合もあるし、念書を書く場合もある。これが損失補てんの実態なんだ。事前に何の約束もなく、事後に全く証券会社が好意をもって補てんするなんということは考えられないんだ。  だから、八九年の十一月に大和証券で損失補てんが発覚したときに、本来ならば、そのときに補てん先を徹底的に調べるべきだったのだ。難しいかもしれない、念書はあるいは契約書は全部破棄されて、ないかもしれない。口頭の約束であれば立証は難しい。難しいけれども、何としてでも、これだけの補てんがあった以上は、事前に何らかの約束があって当たり前だ、そういう観点で厳しい追及をして私はしかるべきだったと思うのです。そこまで恐らく大蔵省はやってなかったはずだ。やっても通り一遍の事情聴取だったにすぎない。そこまで厳しい損失補てんについての認識は持ってなかったと私は思います。いかがですか。
  155. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 その当時、事務的にどういうチェックをしたかまで私は承知をいたしておりません。しかし、少なくとも私から申し上げたいことは、損失補てんという行為が倫理にもとる行為であり、公共性を破壊するにつながる行為であるという認識を行政当局として持っていなかったということでは決してありません。そして、そういう心配を持ったからこそ私は通達を発出するに至った、そのように考えております。ただ、その時点における調査が今振り返ってみて甘かったのではないかというおしかりを受けるなら、これは甘受をいたします。
  156. 二見伸明

    二見委員 第二回は、九〇年三月に全容を掌握したときです。八九年の十一月、十二月にそれだけ厳しい認識をもししていたとするならば、九〇年三月に全容を把握したときに厳しい処置はとれたはずです。このときどういう処置をとったのか、具体的に示してください。
  157. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 九〇年三月時点におきまして自主報告がなされ、その時点における損失補てんについて報告のありました証券会社につきましては、そのとき更迭あるいは減給等の社内処分を実施させております。  詳細必要でありましたなら、事務方から答弁をいたさせます。
  158. 二見伸明

    二見委員 ことしの七月八日に、損失補てん問題について、四日間の営業の自粛、社内処分、こうした行政処分を大蔵省はしたわけでありますけれども、九〇年三月の行政処分で大して痛みを感じてないわけですね、証券会社は。今回も四日間の営業の自粛、社内処分。損失補てんをやった証券会社は痛みを感じましたか、これ。いかがです。
  159. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今回証券四社に対しまして、厳正な社内処分を要請するとともに四日間の自主的な営業停止を指示したわけでありますが、これは一つは、今回の一連の問題によりまして証券市場に対する信頼感が著しく損なわれている、それについて責任を問うということが一つ。もう一つは、損失補てんにつきまして、今回当局に報告をしていない損失補てんがあったという事実が判明をいたしましたこと、そして野村証券及び日興証券につきましては、暴力団関係者との不明朗な取引が明らかになりましたこと。また、今回明らかになりました事実からいたしまして、このような問題の再発を防ぎますためには、証券会社の営業姿勢を抜本的に改める必要がある。そのためには早急に社内の徹底した総点検を行い、社内管理体制の立て直しを行う必要がある。こうしたことを勘案してこうした指示をいたしました。証券会社がどのように受けとめたかということにつきましては、さまざまな御批判があろうかと存じます。しかし、私どもとしては、今申し上げたようなことを考え、自粛そして社内処分を要請いたしました。
  160. 二見伸明

    二見委員 もう一回は、昨年の七月に今回発表された一連の補てんの一部が各紙に報道されましたね。証券会社十五社、補てん総額百六十五億円。三月に全容を大蔵省は掌握をしていた。その四カ月後に一部が新聞で報道された。補てんがいけないんだということを骨の髄から認識していれば、このときだって厳しい処置ができたはずですよ。今回じゃなくて、一年前ですからね。今回の補てんの内容は去年わかっている。そうでしょう。去年これだけの処分ができているはずなんです。  なぜ昨年の七月の段階で厳しい処置ができなかったのか。私はこのときの大蔵省の対応はおかしいのではないか、おかしいというふうに思います。当時の報道では、大蔵省は、証券会社が自主的に報告してきたので自主処分で十分と判断したとか、今後調査するつもりはない、こうした報道もなされている。そうしたことを考えると、私は、一貫して補てん問題については、大蔵省は消極姿勢であり続けたというふうに断言せざるを得ません。この点については大蔵省の責任というのは大変重要だというふうに思います。  なぜ昨年の七月に、ことしやっているわけですから、同じことなんだから、なぜ一年前にできなかったのか。また、それだけ大変なことならば、なぜそのときに、これは証取法に関係する大変な問題だ、むしろことし言うのではなくて、昨年証取法の中で改正しよう、損失補てんは禁止するように改正しようという声が挙がって当たり前じゃありませんか。今度の証取法の改正、これもむしろ大蔵省が積極的に進めたというよりも、世論と国会論議の中でもって私はそういう方向に踏み切ったんだというふうに思います。去年やっておけばよかったのです。そうした一連のことを考えると、私は、大蔵省の行政責任というのは非常に重要だ、こういうふうに考えております。この点についていかがですか。
  161. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 行政責任についてのおしかりは甘受いたします。また、甘受いたさなければなりません。ただ、昨年七月という点につきましては多少御説明をさせていただきたいと思います。  昨年七月、マスコミに山一証券等の損失補てんが明らかになりました。しかし、それは、実は平成二年三月に自主報告を山一自身が損失補てんについて行い、既にこれを踏まえて社内処分等が実施されておったものがその時点で報道をされたということであります。ですから、既に実は昨年の七月に報道されましたものが三月時点の自主報告の時点において社内処分を求めておりました。むしろ、本年の七月以降行いました各社に対する社内処分に対する要請と申しますものは、昨年三月の自主報告に含まれていなかった損失補てんというものが明らかになったという、これに対して求めたものでございます。昨年の時点において証券取引法の改正を提起すべきであったというおしかりは、現在振り返ってみれば、その御指摘を素直に私は伺うべきであると存じます。しかし、その時点におきましては、私は率直に申しまして、行政通達というものの重みをこれほど軽んじられる行為が随所に発生をすると考えておりませんでした。私自身の認識不足をおわびをいたします。
  162. 二見伸明

    二見委員 いずれにいたしましても、この問題は、補てんについて全容を明らかにしてもらわなければ、これからどのように法律が改正されようと、再発を防止をすることはなかなか難しいんではないか、知恵比べみたいなものが始まるんじゃないかと私は思います。  それで、補てんについての実態の解明を私はぜひしていただきたいし、また、ここで明らかにしていただきたいと思います。  大蔵省がこれまで公表したいわゆる損失補てんの手口というのは、日ばかり売買、例えば株をその日の一番安い値段で買って、その日のうちに一番高い値段で売る、こういう操作、これでもうける、これを日ばかりというのだそうでありますけれども、そうした日ばかり売買によるというものが一つ。それからワラント債による補てんがある。それから新規公開の有価証券を交付するというやり方で補てんをした、その他となっていますけれども、今回の大手、準大手、中堅各社の補てんの手口は、こうした日ばかり売買によるものが何件、あるいはワラント債による補てんが何件、新規公開の有価証券を交付したものが何件、その他何件、この手口を今まで調査した範囲内でお示しをいただきたいと思います。
  163. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 損失補てんの手口でございますが、私どもちょっと件数の数字はございません。全体の損失補てん額に占める金額シェアということでお答えを申し上げたいと思います。  まず一番たくさん使われました損失補てんの方法は、売買価格差を利用したものでございまして、これが全体の六一・二%を占めております。売買価格差を利用した手口と申しますと、具体的には、一つは、例えば国債などの債券について、これは相対売買でございますので、市場ルールで、市場価格から上下二%の範囲内での値幅が認められております。その値幅の中を利用いたしまして、かなり頻繁に日ばかり的な売買を行ってお客に利益を供与するというようなものが多いわけでございます。さらに、売買価格差を使ったものとしては、もう一つ、ワラント債を使いまして――ワラント債と申しますのは、価格の透明度が低い、つまり市場価格が、市場実勢価格が比較的不透明だというような状態にありましたものですから、お客に安く売って高く買い戻すというような形で利益供与をしております。そういう手口のものが全体の六一・二%ございます。  それから二番目に大きい手口は、自己売買による利益をお客に付与したものがございます。これが全体の二三・四%でございまして、これは国債先物あるいは株価指数先物を利用する取引でございまして、証券会社の自分の計算で売りと買いを同時に両建てをいたします。両建てをいたしまして、短期間のうちにそれを決済をいたしまして、その決済をした中で利益計上となった分をお客に供与するというような形の方法でございます。これが全体の二三・四%を占めております。  それから、三番目に大きいのは、クロス取引の利用でございます。これが全体の九・五%でございますが、これは比較的出来高の少ない大阪証券取引所あるいは名古屋証券取引所を利用いたしまして、東京証券取引所との間の価格差を利用して、大阪あるいは名古屋で証券会社とお客との間のクロスといいますか、相対みたいな形で市場で取引をするというような形でお客に利益を供与するものでございます。  それから、四番目といいますか新発債の割り当てでございます。これは全体の二・四%ぐらいでございまして、これは新発の転換社債あるいは新発のワラント債というような値上がりの蓋然性の高い有価証券を集中的に配分するというようなものでございます。  あと、現金による支払いが三・四%認められます。
  164. 二見伸明

    二見委員 今回明らかになった補てん額ですけれども、これは各証券会社によって最低の補てん金額が大分違いますですね。野村証券は三千万、大和証券が千五百万、日興証券九百万、山一は三千七百万、岡三は百万、国際証券二百万、三洋が八百万等々、最低は岡三の百万、水戸証券あるいは太平洋証券、丸三証券の百万、上は山一の三千七百万、野村の三千万から、下は百万。補てん金額にばらつきがあります。このばらつきになった理由はどういうところにありますか、これは。
  165. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回公表されました補てん先の明細は、元年の十二月の通達に基づきまして三月に各証券会社から自主的に報告をとったものと、それから後、各種の調査、税務調査などで更正を受けたものが含まれているわけでございます。その補てんの中身で、今御指摘のように最低金額がばらばらな姿になっているわけでございますが、私ども考えでは、これは証券会社が損失補てんを行う場合に、やはり重要なお客との取引関係維持というようなことを考えて損失補てんを行うというふうに考えられるわけでございまして、証券会社の規模、経営規模あるいは態様などによって、顧客層などによって損失補てんを行うお客の規模というのもかなり異なっているんではないかというふうに考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、その自主報告プラス税務更正ということで示されました、明らかになりました損失補てん先の最低金額はこういうふうに結果的にはばらばらになっているわけでございまして、今申し上げたような理由によるものではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  166. 二見伸明

    二見委員 そうおっしゃいますけれども、同じ四大証券でも野村が三千万で、日興は九百万、同じ大手でも三千万と九百万の差がある。じゃ例えば、野村証券は三千万以下の補てんが全くないのか、あるいは山一は三千七百万以下の補てんは全くしていないのか。自主報告だからわからないだけであって、補てんをしているかもしれないでしょう、これは。少なくても百万円以上の補てんは公表して当たり前だと私は思います。と同時に、それは各証券会社に改めて調査をするなり調べさせるなり何らかの方法でもって、私は少なくても百万、この補てん額は明らかにしていただきたいと思います。これを公表しなければ、補てんについての全容というのはわからない。証券会社が自主的に隠してしまったものは永遠に隠れてしまう。それではこの補てん問題を論議する、証券スキャンダルの全容を把握する、それはできない。いかがですか。
  167. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今申し上げましたように、自主報告あるいは税務調査で指摘されたものがそういう姿になっているわけでございます。  確かに、これ以外のものが一切ないのかということになりますと、それは税務調査あるいは我々の検査というようなことでチェックをするということが考えられるわけでございます。特に、四社につきましては、現在、私ども損失補てんを中心にして特別検査を実施しているわけでございまして、その辺の特別検査の過程におきまして、我々としては必ずしもどこで線引きをするというようなことでは検査をしておりません。御指摘の点も踏まえて、特別検査において損失補てんの把握に努めてまいりたいというふうに思っております。
  168. 二見伸明

    二見委員 それから、九一年三月期の税務申告は終わっているわけですけれども、大蔵省は、ことしの三月期の税務申告を通して補てんの有無については掌握をしておりますか。もし掌握をしていれば、この席で明らかにしていただきたいと思います。
  169. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 九一年、ことしの三月期につきましては、証券会社からは一応損失補てんはないという報告を受けておりますし、税務調査においても、いわゆる自己否認が行われてないというふうに聞いているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、現在私ども特別検査をしております。その過程において中身をチェックしてまいりたいというふうに思います。
  170. 二見伸明

    二見委員 内容を把握次第、ぜひとも国会報告をしていただきたいと思います。  さらに、この損失補てんに関してもう一点、別の角度からお伺いをいたしたいと思います。  損失補てんは確かに証券取引法上は禁止されておりませんね、現行法では。しかし、それが非常に公共性に反する行為であるという認識は大蔵省はお持ちになっている。証券取引法第五十八条一項ではどういう規定になっているかというと、「何人も、有価証券の売買その他の取引について、不正の手段、計画又は技巧をなすこと。」を禁じています。これに違反すると、懲役三年以下、または三百万円以下の罰金、こういう厳しい規定になっております。損失保証も損失補てんも、ともに反公共性の強い行為である。そうなると、この証取法五十八条一項、損失保証は証取法第五十条、現在これで禁止されているけれども、これはまた同じように五十八条に違反する行為ではないのか。損失補てんも、これは証券市場をゆがめるということについては損失保証と同じ反公共性の強い行為でありますから、証取法五十八条一項でもって損失補てんを厳重に私は処分すべきだというふうに考えております。ところが、今までこの証取法五十八条一項というのは発動されたことはない。むしろこういうことのために五十八条一項というのはあるんじゃありませんか。これは、インサイダーのときにもこの議論があった。インサイダー取引を禁止するときにもこの議論はあった。私は、損失補てん、損失保証、これが資本市場の根幹にかかわる問題だという認識があれば、五十八条一項でもって処分するという厳しい態度を大蔵省はとるべきだというふうに思いますけれども、いかがですか、これは。
  171. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに証取法第五十八条一項は、「不正の手段、計画又は技巧をなすこと。」ということを禁止しているわけでございます。この解釈につきましては、従来から我が国におきましては、この不正の手段、計画、技巧といいますのは、有価証券取引に関連して他人を欺罔して錯誤に陥れるような態様の行為だというふうな解釈が続いているわけでございまして、御指摘のインサイダー取引規制を導入するときも、どうしてもこの五十八条で直ちにインサイダー取引を規制できないということで特別の規定を設けたわけでございます。  今回の損失補てん行為につきましても、今申し上げましたような他人を欺罔し錯誤に陥れるというような観点に立ちますと、損失補てん行為取引自体、相手を錯誤に陥れる詐欺的な行為に該当するということはなかなか言いにくいのではないかというふうに考えられるわけでございまして、五十八条を損失補てんのための行為の取引に適用するということは、従来の考え方からして非常に困難であるというふうに私ども考えざるを得ないわけでございます。
  172. 二見伸明

    二見委員 それでは、別のところから伺いましょう。これは法務省に伺います。  例えば、今回の損失補てんについては山一は四百五十六億二千百万円、日興証券は三百三十一億、野村証券は二百七十四億七千九百万、大和証券は二百二十一億一千六百万の損失補てんを行っている。これは、理由なく会社の資産を流失させたということで、商法上特別背任なりなんなり問題になるケースじゃありませんか。これは商法上何らおとがめもない行為だということになりますか。
  173. 井嶋一友

    井嶋政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、今回の損失補てんに関連いたしまして東京地検に商法上の特別背任罪という告訴が出ておりまして、まだ受けたばかりでございますけれども、これから捜査をしなければならない状態でございます。したがいまして、この具体的事件につきましておっしゃるような犯罪の成否を私がここで論じることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますが、一般的に申し上げまして、商法上の特別背任罪と申しますのは、御案内だと思いますけれども、要するに会社の機関、取締役等が自己または他人の利益を図りあるいは会社に害を加える目的を持って任務に背いて会社に財産上の損害を与えるというのが構成要件でございます。  おっしゃるような意味で一般的にあるいは純粋に理屈として考えますれば、補てんをしたということは財産の流失を招いておるということが言えるのかもしれませんけれども、具体的に犯罪の成否を考えます場合には、今申し上げましたような基本的な三つの構成要件に該当する事実がなければ成立いたしません。そういう意味におきまして、この具体的事件につきましては検察庁がこれから捜査をいたしますから、そこで証拠に基づき的確に判断をいたすと思いますけれども、一般的にはそういう解釈になろうかと思います。  なお、民事上の責任につきましては、民事局長が参っておりますので答弁いたします。
  174. 清水湛

    ○清水(湛)政府委員 お答えを申し上げます。  これは一般論としてお答えすることになるわけでございますけれども、株式会社の取締役がその業務の執行に当たりまして法令または定款に違反する行為を行って会社に損害を負わせた、こういう場合には会社に対して取締役個人として損害賠償責任を負う、こういうことになっているわけでございます。商法上、株式会社の取締役はその業務執行に当たりまして会社に対して善良な管理者としての注意義務を負っておる。これに違反して会社に損害を与えるということになった場合には、法令違反といたしまして、先ほど述べました損害賠償責任を負うことになるわけでございます。この場合には、会社はあるいは会社を代表する株主はその賠償責任を当該取締役に対して問い得る、こういうことになります。証券会社の取締役がその業務を執行するに当たりまして当該証券会社に損害を与えたという場合には、証券会社がその取締役に対して損害賠償を請求することができる、こういうことになるわけでございます。  そこで問題は、その損失補てん行為がこれに当たるかどうかということでございますが、これは会社と取締役の個人の民事の問題でございますので、直ちにこれをこの場で断定的に言うということは控えさせていただきたいと思いますが、証券会社のいわゆる損失補てん行為は、仮に一方的な贈与というようなことでされたものであるといたしましても、具体的にどのような動機とか目的を持って、またどのような事情のもとにされたものであるかというような事情を詳細に調査した上でないとなかなか判断しがたいことではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  175. 二見伸明

    二見委員 そこでもう一つ。自己否認というやり方がありましたね。株主総会では有価証券の売買損としてこう報告をする、ところが税務署には使途不明金でございますといって税金を納める、いわゆる自己否認、これはどういうことなんですか。例えば、全く善意に考えると、株主総会に報告したときには確かに売買損のつもりだったんだけれども、よく後で調べてみたらばそうじゃない、これは。これは税金を納めなければあかんのだというので納めることになった。これは善意の自己否認である。しかし、今回はそうじゃない。最初に損失補てんをしておいて、損失補てんをしたということを株主総会で報告すれば問題になるから売買損だというふうに株主総会では報告しておいて、そして株主総会を切り抜けて、後になってから税務署の方にはこれは使途不明金でございますといって自己否認する。こんなやり方は、これはノーマルなやり方だというふうに考えられますか。いかがですか。
  176. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 今回の損失補てんにつきましては、法人税の申告に当たりまして交際費あるいは寄附金というような形で自己否認をしているわけでございます。一般的に法人税の申告に当たりましては、決算による損益金額に税法上の規定による加算、減算の調整を行うということで課税所得を算出することとなっているわけでございまして、決算上有価証券売買損というふうになっているもののうち交際費等に該当するものを自己否認して課税所得を計算するということについては、法令に照らし直ちに問題になるというふうには考えられないわけでございます。
  177. 二見伸明

    二見委員 冗談じゃありませんよ。損失補てんをまずやっておいて、そしてそれを株主総会では売買損だと言っておいて、そして後になってからこれは自己否認いたします、交際費でございます、税金を払います、これが公然と認められていいわけないじゃありませんか。二枚舌でしょう、これ、やったことは。これすら、当たり前のことです。確かに自己否認というのは税法上だけに限って見ればそれは適法だ。しかし、損失補てんをしている、何百億という損失補てんをしている。それを売買損として株主総会はそれで了解をしている。ところが、実際にはそれはそうじゃなかったんですといって税務署の方には申告している。後で追徴金取られちゃいけないからとか、重加算税取られちゃいけないからとかいろんな税務上の対策はあったんだろうけれども、こんなことが許されていいのですか。そうしたらば何もかにもがしり抜けになってしまうじゃありませんか。いかがですか。
  178. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 私どもは損失補てん行為があったということで、私どもの企業のディスクロージャーという立場からは証券会社に対して訂正報告書を出すようにという要請を行って、実際に提出をさせたところでございます。この考え方は、損失補てんにかかわる売買取引、いわゆる売買損として計上されているものの中に、通常の売買取引とは異なる取引が入っているというような考え方に立ちまして、ディスクロージャー上これを区分して明示する方が企業のディスクロージャー、企業の実態をよりあらわすという観点から、この部分について明記するということで有価証券報告書の訂正を要請し、訂正報告書を出させたところでございます。
  179. 二見伸明

    二見委員 補てんにしろあるいは補てんの手口にしろ、そして補てんの違法性、それに対する企業側の認識、そうしたことはこの短い質疑の中で究明あるいは解明できるものではありません。私は改めて、これらの問題の全容を解明するために、関係者を証人喚問しなければならないと思っております。その点について、委員長のお取り計らいをぜひともお願いをいたしたいと思います。  また、この問題について二、三、さらにお尋ねをいたしたいと思います。株価操作であります。  東急株については、八九年の下半期、特に十月から十一月にかけて、野村証券を中心にすさまじい株価操縦が行われた疑いが持たれております。しかし、大蔵省は今まで、現段階では株価操縦の疑いはない、こういう立場をずうっととられている。どのような調査、分析を行った上で株価操作が行われたのではないという結論に達しているのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  180. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 東急電鉄の株価操作の関係でございます。  私どもは現在調査をしておりまして、株価操作が行われたことはないというふうに申し上げているつもりはございません。現在までの調査では、株価操作があったという確証が得られてないということでございます。  それはどういうことかと申しますと、確かに平成元年の十月から十一月にかけまして非常に東急電鉄株の売買量が急増し、価格も急騰をしております。そういった中で、野村証券のシェアが非常に、これはお客の注文が多いわけでございますけれども、そのシェアが非常に高かったという事実がございます。そういう事実をもとにいたしまして、取引所のいろいろな資料などを見、その野村証券の注文の中には非常に多数の投資家が存在するということまでは突きとめているわけでございまして、その多くの投資家がどういう動機でこの東急電鉄株の購入をしたのかという点については、投資勧誘の実態を見ないとわからないということで、現在、その投資勧誘の実態の調査をしているわけでございます。  さらに市場取引、取引所での取引の面だけを見てみますと、特定のお客あるいは特定の証券会社が意図的に株をつり上げるというような注文を出しているという形跡はございません。あるいは仮装売買、なれ合い売買というようなものも見られないわけでございまして、少なくとも現段階でその取引所における注文の執行状況を見た限りでは、株価操作が行われたという確証を得る段階には至っていない。あとは、今申し上げたその投資勧誘の実態が一体どういうようなものだったのかという点について、さらに調査を進めているところでございます。
  181. 二見伸明

    二見委員 この株の売買の中に、いわゆるディーラー株、ディーラー玉というのかな、それからブローカー玉というのがある。ディーラー玉というのは、証券会社が自分でもって売買をする自己売買、証券会社がもうけるわけだ、これで。ブローカー株というのは、お客さんからあれ買ってくれ、あれ売ってくれと言うと、注文に応じて売るのがブローカー株。ディーラー業務とブローカー業務と、証券会社は二つの業務をやっていいことになっている。しかし自己売買については、これはあくまでもブローカー業務、お客さんからの注文に応じて売買の仲介をする、それの補完的な役割であって、それが主流となってはいけないということになっている。  十月から十一月にかけて東急電鉄株が急上昇したときに、ディーラー株、この割合がどうだったのか、ディーラー業務とブローカー業務との割合がどうだったのか、まずちょっと数字でもってお示しをいただきたいと思います。
  182. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 確かに証券会社はディーラー業務とブローカー業務を併営しております。私どもも、その間の問題、弊害が起こらないように、ディーラー業務につきましては、証券会社の免許を与える際の条件をつけておりまして、今御指摘のように公正な市場を維持し、あるいは有価証券の流通を円滑にするために必要な範囲を超えないようにという制限をつけているわけでございます。  それで、お尋ねのディーラー業務が東急株の場合にどうだったかというお尋ねでございます。特にその東急株が非常に売買高が増大いたしました十月の下旬について申し上げますと、十月の十九日から二十日、二十四、二十五、二十七という五日間について私どもが特に重点を置いて調べているわけでございますが、例えば十月の十九日で見てみますと、東急電鉄株は全体で、東京証券取引所で大体五千九百万株できております。そのうちで四社の自己売買、これは売りと買いが必ずしも同格ではございません。売りが四社全体でそのうちの六百十万株でございまして、自己売りの占めるシェアが一〇%強でございます。それで自己買いの方は六百三十万株で、これも一〇・七%でございます。以下、十月二十日、二十四、二十五、二十七というような段階を見てみますと、全体の出来高は大体五千八百万株、六千五百万株、五千九百万株、七千四百万株というような株で推移しておりまして、その中に占めます自己売買の比率というのはおおむね五%から、低いときには三%ぐらいというような数字でざいまして、今御紹介いたしました十月十九日の一〇%前後というのが、自己売買のシェアとしてはこの五日間では一番高い日に当たっております。
  183. 二見伸明

    二見委員 このときの自己売買をした株数、今トータルでお示しいただきましたけれども、これは証券会社ごとに当然把握されているからお答えがあったわけですから、証券会社ごとに御報告をいただきたいと思います。
  184. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 証券会社ごとの数字は、個々の証券会社の営業の内容にわたるものでございますので、今申し上げました四社の売買、四社合計の自己売買の全体の売買に占めるシェアあるいは売買数ということで御勘弁をいただきたいというふうに思うわけでございまして、個々の証券会社の自己売買の株数については、できればお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 二見伸明

    二見委員 私は、いわゆる自己売買株のところに東急電鉄の株をつり上げた一つの要因があるのではないかと思っている。だからこれ、関係した証券会社の株数を報告してもらいたいのです。そうしなければ、株価操縦の問題はなかなか解明し切れない。これは明らかにしてもらいたい。しかも、株が上がっているときに証券会社が自己売買をやってもうけるとは何事ですか、一体。証券会社がもうけて、一般小口投資家が結局は損をしてしまう。今東急電鉄は千円を割っているでしょう。高いときは三千六十円、十一月の十七日。私は、証券局長、これはぜひとも証券会社に要求してもらいたい。
  186. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 先ほど申し上げました、例えば十月十九日の五千九百万株は全体の出来高でございますが、その中で四社合計で六百十万株の自己売り、六百三十万株の自己買いがございます。そのうち自己売りにつきまして見ますと、野村証券が四百六十万株、あと山一証券が六十三万株、大和証券が八十五万株、日興証券はこれは五千株でございます。それから自己買いの方を見ますと、野村証券が五百二十七万株、山一証券が四十六万株、大和証券は五十五万株、日興証券は五万六千株というような数字になっております。
  187. 二見伸明

    二見委員 やはりこれは、株価操縦については見逃すことのできない一つのデータだと私は思います。  と同時に、あわせて大蔵省に資料として提出を求めたいのは、証券会社や証券取引所が記録して保管している株の売買委託者の明細書があります。これは大蔵省は、これを調査している。この中で大口の投資家、これも全部わかっている。これについても、いわゆる現在疑惑になっているようなところがどの程度関与しているのか、関与していないのか、それも後ほど資料として御提出をいただきたいと思います。いかがですか。
  188. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 大口の投資家については私どもも特に関心を持って調べているところでございまして、固有の名前を出すことは御勘弁いただきたいと思いますが、大口の投資家について固有名詞を出さない形で資料を提出させていただくことは、検討さしていただきたいと思います。
  189. 二見伸明

    二見委員 私は、大口投資家で善意の大口投資家の名前まで知ろうとは思わない。しかし、今いろいろ話題となっている人がもし含まれているならば、それは明らかにしていただきたいというふうに思います。いかがですか。
  190. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 話題になっている人という定義が非常にあいまいでございますが、やはり個別の名前、顧客の名前まで出すことについては御容赦をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  191. 二見伸明

    二見委員 この問題につきましては、さらに予算委員会あるいはきょう設置された証券特、こうした委員会でもってさらに解明をしなきゃならないというふうに思っておりますし、改めて、関係者の証人喚問についてのお取り計らいを委員長にお願いをいたしたいと思います。  時間が迫ってまいりましたので、テーマを変えたいと思います。PKOについてお尋ねをいたします。  私は七月に、与野党政調・政審会長の一員としてカンボジアを見てまいりました。改めてPKOというこの仕事が、紛争解決後、停戦後、紛争の再発を防止するという観点から大変大事な仕事だという認識をいたしてきておりました。そしてその後、勤務状況も、もしカンボジアを例にとるならば、日本で我々が享受しているようなこうした快適な環境の中でする仕事ではない。炎熱の中で、ジャングルの中で、あるいはマラリアに侵されてというような、かなり厳しい条件のもとでの平和維持活動でございます。  だから、我々としては、平和維持活動については積極的に参加しなければならないと思います。ただ、私は、我々が四十数年間抱いてきた日本国憲法、この精神だけは大事にしなければならないし、日本国憲法を私は誇りに思っておりますから、その関係の中で日本としてどういう貢献ができるのか、どういうことができるのか、これはこれから詰めなければならないと思います。我が党内でも、このことに関してはいろいろな意見がございます。そうしたいろいろな意見があるということを前提として、基本的な問題について二、三伺いたいと思いますので、簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  まず、政府は中間報告の中で、いわゆる平和維持軍へも参加するとしておりますけれども、これは昨年の国連平和協力法案の中で、法制局長官が、「平和維持軍的なものに対しては参加することが困難な場合が多いのではなかろうか、」こういう答弁をされている。これと、今回政府が中間報告の中で平和維持軍に参加することができるということと、この関係、この答弁は矛盾するのではないかという疑念があるわけでありますけれども総理大臣はこの点についてはどういうふうに考えておられますか。
  192. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和維持軍の派遣に関しましては、国連の文書上の取り決めがございます。そして、要員の生命等の防護のための武器使用のほか、任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用も国連文書上は認められることになっております。  昨年、いろいろな議論の中で、平和維持軍に参加をして任務の遂行の上で武器を使用するということは、憲法の禁止する武力行使の問題とどうどこで接点ができ、どう考えるべきかということでいろいろ想定もし、いろいろ検討もし、したがいまして、昨年の平和協力隊法を出しますときは、直ちに平和維持軍が出動できるようにはしていない、慎重を期して、その問題のために平和維持軍というものは入っていなかったのです。そして一般的な御議論として、そういったことを昨年の平和協力隊のときは言っておりました。  今回、新しい秩序の中で行われる世界の秩序づくりの中で、平和維持活動に積極的に参加をしなければならぬ。そこで政府はいろいろと検討いたしまして、要員の生命等の防護のための武器使用、これに限る。任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗するための武器使用ということになると、いろいろ検討の結果、灰色の部分もあるのではないか、議論が議論を呼ぶのではないかということになってまいりました。そこで、要員の生命等の防護のための武器使用に限るということに区切りまして、そして大前提としては、停戦が合意が成立しておること、紛争当事国が全部これに参加をして賛成をするということ、国連の権威のもとに、これは説得であって、強制力、力でもってやるものではないという平和維持軍の維持活動の趣旨に照らして行えば、これは憲法の、少なくとも前文に書いてあるように、日本は世界の国々の信義と公正に信頼して生存を決意して、そこで名誉ある地位を占めたいと思う、自分の国のことばかり考えてはだめであって、世界のことも考えるという国際協調主義の理念を具現化していくためにも、私は、でき得る限りのことはすべきであるという考えで、そして、前回のときはそういう基本的原則が決めてございませんでしたので、その疑問を解くためにも厳しく一線を引く意味で、今度この法案を今鋭意作業中でありますけれども、基本方針として、いかに国連の文書上に書いてあったとしても、我が国としては要員の生命の防護のための武器使用しかしないということを中核的要素に取り決めたわけでございます。
  193. 二見伸明

    二見委員 いわゆる五十五年の鈴木答弁書の延長線上で従来法制局長官の答弁があるわけです。従来の政府見解では、目的・任務が武力行使を伴うものは憲法上許されない、こうなっている。武力行使を伴う可能性がある国連平和維持軍、これには参加はどういうことになるのか、その点をもう一度説明をしていただきたい。従来の答弁の変更になるのか、この点、いかがですか。
  194. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の五十五年の答弁のころにはこういった基本原則というものが決められておりませんでした。したがって、一般的に、一般論と言って、原則的に参加する場合にはどうかというやりとりの中で御指摘の法制局長官の答弁も出ておったと思います。ですから、一般論として、いろいろな議論の中で武力の行使ということが任務・目的に含まれておるとするなればということになりますと、恐らくそのとき想定されておったのは、あのコンゴ国連軍のように特別の任務規定の中に武力の行使を認めるという決議が入ってきますと、それは質がそこで一変するものだと思います。  委員おっしゃるように、日本国憲法の精神、趣旨の上から立って、なお日本の平和主義の理念というものをより具現化していくためにはどうすべきかというので、維持軍参加への原則というのは、停戦の合意が成立しておること、紛争当事者が合意をしておること、中立的な立場を我々は厳守すること、要員の生命の防護のために必要な最小限度の武器使用に限ること、これを中枢にきちっと据えてこれで明らかに行動するということになれば、生命の防護等ということになりますと、これは憲法の言う武力の威嚇とか武力の行使を目的とするものではないわけでありますから、ここのところできちっと線を引くことによって国連の平和維持活動に日本が参加することは可能である、私はそう判断をいたします。
  195. 二見伸明

    二見委員 そういたしますと、武力行使を任務・目的としたいわゆるコンゴ型の国連平和維持軍、これには日本は参加できないというふうに考えてよろしいですか。
  196. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 たしか国連決議百六十一号だったと思いますが、コンゴ国連軍をつくるときの決議には武力の行使が入っており、そして当然そこで、たしかカタンガ州かどこかの独立問題が発して、入っていって武力行使して排除するというようなことであったと思うんです。私が申し上げておるいろいろな型があります、国連の平和維持活動には。その都度いろいろな定めがされますけれども、そのように武力行使を当然の目的とするものは、停戦の合意が成立しておることという我々の基本原則から離れるわけでありますから、もうその時点において当然そういったものに参加するという意思決定をしないということに相なります。
  197. 二見伸明

    二見委員 時間が迫ってまいりましたのでまとめてお尋ねいたしますけれども一つは、きょうも議論になった撤収の問題です。いわゆる政府の五原則が破られた場合には撤収をするというのは、これは憲法上問題があるから撤収するというふうに考えているのかどうか、その一点。  またこの撤収するということについて、要するに国連の指揮下にあるわけです、もし日本が参加するとすれば。その国連の指揮下にある日本の平和維持軍が日本だけ撤収するということが可能なのかどうか、これが一点。  それから、これは具体的には外務省にお尋ねしますけれども、今総理大臣は「平和維持軍参加に当たっての政府の基本方針」、五原則というのを言われた。「紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。」「当該平和維持軍が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持軍の活動及び当該平和維持軍へのわが国の参加に同意していること。」「当該平和維持軍が特定の紛争当事者に偏ることなく中立的な立場を厳守すること。」「上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、わが国から参加した部隊は撤収することができること。」「武器の使用は要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。」これは政府は五原則として決めているわけだけれども、こうした五原則を国連がオーケーしているのかどうか、その点についてもお尋ねをいたしたいと思います。
  198. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いずれの国もそうだと思いますが、平和維持活動でありますから、その平和維持活動の大前提となる当事者間の合意が崩れた場合、先ほど御指摘のコンゴのような状況がもし起こったとする場合、あるいは数日前のテレビでやっておりましたレバノンの国連軍のところ、あの平和維持軍のところを、停戦合意をしておった一方の当事国が実力でもって突破するというようなときには、これは停戦合意が崩れたわけでありますから、そもそも平和維持軍が出ていくという大前提が崩れておるわけでして、あのときに国連の担当事務次長のコメントも出ておりましたが、それは極めて残念なことだけれどもやむを得ないことであるということであります。  我が国のこの五原則は、我が国の平和国家の理念に照らして国連の活動に我が国なりの役割や責任を果たそうとするにはどうしてもこれだけのものを我が国としては線を引かなきゃなりません。この条件を認めてもらわなければならない。そこで、そのことについては国連の方にきちっと連絡もいたしました。国連のその方の責任者の次長とも話もいたしました。その結果、国連としてはそういったことを日本が条件とすること、基本方針として持つこと、国連としては全く問題のないことである。また日本から国連に出ております事務次長も、これは常識的に考えてどこの国もそういうことはあるし、またきょうまで現にいろいろな理由で通告をして撤退をしたこともあるし、事実として。また協定の各国別のマニュアルの中には、そういうことになった場合には適切な方法で事前に国連事務総長に届ければ撤収することもできる、こう手続上もなっておりますから、その大前提、派遣の大前提が崩れたというときは平和維持軍としてはこれは撤収をするということに相なります。
  199. 二見伸明

    二見委員 要するに五原則について国連とのやりとり、具体的にいつどこでどういう立場でやられたのか、改めて補足説明をいただきたいと思います。
  200. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  ただいま総理申し上げましたけれども、先週の十四日、外務省の河村国連局審議官がニューヨークに参りまして、相手はグールディングPKO担当の事務次長、それから軍縮担当の明石次長、それぞれ別個に会談いたしまして日本のいわゆる基本原則を説明いたしましたところ、先方は、ただいま総理のお言葉で申し上げましたけれども、国連としてもこの基本方針には問題はないという回答を得ております。
  201. 二見伸明

    二見委員 時間が参りましたので、質問を終わります。政治改革、それから雲仙の問題については時間がありませんのでできませんけれども、これは後日同僚委員から改めて質疑をさせていただくことになります。
  202. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  203. 金子満広

    金子(満)委員 限定された時間でありますから、端的に質問をしたいと思います。証券問題、特に損失補てんの問題をめぐって、大蔵省と業界との関係についてただしていきたいと思います。  これまで大蔵省は、損失補てんというのは黙認したことはないんだということを繰り返し言ってまいりましたが、事実こう見て、損失補てんが一定の時期に集中してやられる、組織的である、しかも規模も大きなものだ、何かここに原因があるだろう、これはだれでも考えることだと思うのです。私もそれなりに調査もし、いろいろ物を見てまいりましたが、ここに一つの問題が目にとまりました。それは、日本証券業協会が発行している去年四月の証券業報であります。  この証券業報の中には、昨年の二月全国で三回行われました同協会主催の説明会がございます。この説明会は、損失補てん、これをやってはならないという通達の説明会であります。ここには大蔵省の担当官が出席をして話をしています。  委員長、そのコピーがありますから、総理と大蔵大臣に渡していただきたいと思います。
  204. 渡部恒三

    渡部委員長 はい。
  205. 金子満広

    金子(満)委員 この十四ページを見ていただきたいと思います。その十四ページの中には次のようなところがあります。「なお、事後的な損失補填を一切行ってはいけないのかということであるが、顧客に対する投資勧誘等において証券会社に過失等が認められ、顧客の損失を補填する責めを負う場合に、証券会社が顧客の損失を補填することまでを禁止するものではない。」以下、後でやりますが、これは一体どういうことなんですか。甘いとか不十分ではないんです。逆のことをやっているのです。絶対に補てんをしてはならない、損したら穴埋めしちゃならぬということを出しておきながら、その通達を出している大蔵省が説明するのがこれなんですよ。しかもこのときの大蔵大臣は橋本さんなんですから、ひとつその点どう考えているか、伺いたいと思います。
  206. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 ただいまの御指摘は、いわゆる法律的な意味での証券事故というものがございます。これは証券取引法の中に認められているものでございまして、いわば証券会社とお客との間の証券取引にかかわるトラブルが起こったときに、証券会社の側に非がある、責めがあるというような場合にその損害を補てんするという制度があるわけでございます。そういう制度に対処いたしまして、証券会社は証券取引責任準備金というものを積んでおります。これは証券業協会に積み立てておりまして、証券事故というものが起こって、その補てんをするという場合にはそれを取り崩すというようなものでございます。そういった意味でのいわゆる法律上制度として認められました証券事故に伴う損失補てんというものが、それは証券取引責任準備金という制度として認められているわけでございます。
  207. 金子満広

    金子(満)委員 これは全然答弁になっていないんですね。何も責任準備金をここに充てろなんてどこにも書いてないですよ。しかもこの中に書いてあるのは、見てわかりますが、「会社に過失等が」というこの「過失」は何なんですか。何の過失ですよ。事後に損失を穴埋めするという補てんなんでしょう、これ。ちゃんと主語がそうなっているのです。今のようなそういう解釈ではだれも納得できないし、この文脈というのは、その損失補てんについて、いいですか、これをちゃんと認めてやっている。後で言いますけれども抜け道までつくってあるんじゃないですかね。
  208. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 御指摘のところでございますが、これは「証券会社に過失等が認められ、顧客の損失を補填する責めを負う場合に、損失を補填することまで禁止するものではない。」こう書いてございます。これは今申し上げましたように、証券事故というのは証券会社が責めを負う、つまり過失、あるいは例えば営業マンがお客の注文を適正に執行しないとか、あるいは営業マンが横領するとかいうようなケースがあるわけでございますが、そういったような場合、つまり証券会社がお客に対して損害を補てんする責任を負うというようなケースを考えて、先ほど申し上げましたように、そういったものに備える準備金を用意するとともに、証券事故扱いということで損失補てんを認めているわけでございます。
  209. 金子満広

    金子(満)委員 全然違うのですね。よろしいですか、そのことをここで言っているのじゃないのですよ。初めから文章は非常に簡単で明瞭で、できるんだと、補てんは、穴埋めはと書いてあるんだから。いいですか。そういう点で次の問題を考えればよくわかるのです。これこれをやったときどうするかと。補てんしたときにどんな罰則がありますといったときに、罰則とは言わないのです。その下にアンダーラインのところがあります。「今後具体的に事後的な損失補填や特別の利益提供が行われた場合には、」として、そしてその中で、「第一次的には社内処分の対象となる」と書いてあるんだ。行き着く先までみんな答えが出ているんだ。だから安心して、ああ社内処分だなと、こういう点で安心してどんどん補てんをするんですよ。だから広がるんです。  これは二月でしょうが。三月に集中するんですよ、補てんが。しかも三月の下旬に集中してくることは、今月八日に私は野村の本社に行きましたけれども、相手側もそのことを認めているんです。三月の下旬に集中している。だから胸張って堂々と、やる方もやられる方も罪悪感なんて全然ないんですよ、これは大蔵省がやっているんですから。しかも、ここにちゃんと担当官出ていますよ、名前まで。これ全国で三都市やっているんだもの、これ一体どうすることですね。重大問題だと思うのです。甘いなんて、そして不十分だったからとか、そんな姿勢じゃないんです。逆な方向を向いて走っているんだから。こういう点ははっきりさせなければならぬと思うのです。
  210. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員は一部を読み上げられました。そして、ここに書かれております、その引用されました「それでは、」以降を正確に読み上げますと、「今後具体的に事後的な損失補填や特別の利益提供が行われた場合には、どのような処分を受けることになるかについてであるが、今回通達で明示的に禁止行為にされ、協会規則の改正も行われたことにより、第一次的には社内処分の対象となるとともに協会の処分対象になるわけである。さらに、これらが外務員として著しく不適当な行為と認められる場合には行政処分の対象にもなり、また、証券会社がそのような行為を行っていたということであれば、証券会社に対する行政処分や協会処分もあり得るということである。」そこまで書かれております。
  211. 金子満広

    金子(満)委員 とにかくこの説明会の説明内容によって、三月末に集中して報告が出た。その報告を受けとめて大蔵省はどのような検討をして、どんな処置をしたのですか。
  212. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 十二月の通達に基づきまして、三月まで本省が直接監督しております二十二社に対して、自主点検をして損失補てんの有無を調べ、その内容を報告するように求めたわけでございます。その結果、自主的に点検した結果が報告をされまして、それに基づきまして、当時は事後的な損失補てんということでございましたので、厳正な社内処分、これは減俸あるいは更迭あるいは賞与返上というような措置がございますが、各社に対してそういう社内処分を自主的に行わせたということでございます。
  213. 金子満広

    金子(満)委員 説明の筋書きどおりいっているんじゃないですか。全然問題なく筋書きどおりですよ。そういうのは、甘いんじゃなく、逆なんですよ。ですから、そういうことをやるからことしの七月八日に処分のし直しをやっているんじゃないですか。こういうことが平気でやられているのに、ああいうことを言うから、事後の間違いを合理化している。だから、私は業界は安心してやっているんだと思うのですよ。こういうことを明確にしなければならない。  今その処分の内容が出ました。その社内処分というのは公にしなかったでしょう。世間流の言葉で言えばひそかにやったんですよ。だれが発表しましたか。今言うまで発表してないでしょう。どうしてこんなことになるんですね。あの通達を、つまり損失補てんをやってはならない、厳重に禁止するというのを出しておいたんだから、その覚悟で大蔵省はやらなければいけないのですよ。ひっくり返しのことを、逆のことをやっておいて、出てきた処分はこういうように、甘いんじゃないんです、間違っているんですよ。だから、そういうようなことを繰り返してくるから後でひどいことになってきた。これで表に出たから追加の処分になったんですよ。表に出なければずっと隠しておくのです。しかし、壁に耳あり障子に目ありですから、みんな見ているのですから、あれだけ大規模なものをやればそんな表に出ないで済むなんということは絶対ないのです。私は、そういう意味で、この問題について大蔵大臣の責任というのは非常に重いと思うのです。ですから、そういう責任が重いだけじゃなくて、それじゃその責任というのはどのようにとるべきかという問題が出てくると思うのです。  いずれにしても、今この大事件の中にいる責任者、大蔵大臣ですよ。これはもうはっきりしておる。そして今そういう中で、再発防止のためにやるべきことをやってから云々ということが言われている。私は違うと思う。責任のとり方というのはそうじゃないと思う。これだけの大きなことをずっとやってきて、そして今その渦中にある責任者というのが今後の対策をやるなどというのは、責任のとり方では私はないと思う。やはり今本当に責任をとるのなら、どういうことをするか。私は、大蔵大臣はみずから知っていることをすべて国会国民の前に明らかにすることだと思うのです。明らかにした上で、事後の問題は第三者機関に任せるべきである。これは常識だと思うのです。これを外れて、私が責任があるから事後のいろいろな仕掛けまで全部つくる、しかも大蔵省が監督ができるような仕掛けなんという声まで大蔵省にあるのですから、こういう点では、私は、責任の内容、責任のとり方、公人としてあるべき姿というのは、これは率直に橋本さんに伺っておきたいと思うのです。
  214. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今こうした御質問に対し、じっと耐えながら御意見を承っておること自身、私として、自分の責任としてこの問題を受けとめ、再発防止に全力を尽くしたいと考えておる、その一念であります。
  215. 金子満広

    金子(満)委員 私は、この問題というのは非常に大きい問題でありますから、全容を国会国民の前に明らかにしなければならない、そのためには、この国会で聞くべきことを聞かなければならない人が出てくる、これが証人だと思うのです。きょうは全般にわたって具体的な内容は申し上げられませんけれども、これまでの諸経過から見て、次の十人を証人喚問として要求したいと思います。委員長において理事会で検討願いたいと思います。  田淵節也野村証券前会長、田淵義久野村証券前社長、岩崎琢弥日興証券前社長、同前雅弘大和証券社長、行平次雄山一証券社長、磯田一郎住友銀行前会長、橋本徹富士銀行頭取、渡辺広康東京佐川急便前社長、小林豊機橋本大蔵大臣前秘書、佐藤茂川崎定徳社長、以上の十名です。検討していただきたいと思います。
  216. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議いたします。
  217. 金子満広

    金子(満)委員 次に、雲仙問題について具体的な問題で質問をいたします。  雲仙が大災害を受けて三カ月です。もうお盆も過ぎました。秋風という状態。現地は深刻です。この問題は長期化することはもうだれが見てもはっきりしているんです。そういうような状態の中で、衆議院の八日の本会議の席上で我が党の不破哲三委員長が質問したのに対して、総理は次のように答えました。この不破質問というのは雲仙対策に対する具体的な問題でありますが、それに対して総理は、災害発生に対処するため所要経費は予算に計上されている、現段階で予算が不足しているから実施がおくれているということはない、このように答弁されました。そして、繰り返し二十一分野八十三項目、これが何回も出てくるわけです。私もそれを聞きましたから、八十三項目みんな見てみました。そうすると、何と驚くことに、その中には検討中、指導中、準備中、甚だしいのは災害終了後に調査まで入った八十三です。これが二十もあるんですよ。これは世間的に言えば空手形なんです。裏づけがないんです。これはひどい状態だと私は思うのですね。  それで、結論だけ伺いますが、予備費、補助金は今日まで出しているんですか。
  218. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 本日まで所要の対策を十分講じておりまして、既定予算で補助金の支出をいたしているものもございます。ただし、すべて既定予算の範囲内で足りておりますので、予備費の支出はいたしておりません。
  219. 金子満広

    金子(満)委員 だって、足りていると言ったって、現地は全然足りてないじゃないですか。あなた、見に行ってきたことあるんですか。今このことも聞いてますよ。何が足りているんです。ですから、例えば伊豆大島のときには、あの災害が起きたら半月目には十一億円出しているんですよ。だから、後手後手踏んでいるんです。どんどん矛盾が広がりますよ。  そういう中で、私はこの雲仙の災害対策について十六日に鐘ケ江市長さんやそれから現地のいろいろの人々、例えば観光協会の原田事務局長とか商店街連合会の古瀬さんとか、いろいろ伺いました。そういう中で深刻な訴えが出ますよ、これ。涙の出るような訴えが出るんですね。特に市長がそういう中で、一日だけの警戒区域設定なら無理とは言わないが、長期の警戒区域については補償してほしいと言っているわけですよ。血の叫びですよ、これ。三月ですよ、退去を強制されてきている中での。それで、こういう中でいろいろの人たちは、ただ頑張れ、頑張れ、頑張れじゃ頑張れないんだ、もっと情けある政治をやってほしいというのは、これは党派を超えたみんなの共通の願いですよ。  そういう中で、具体的には融資があるじゃないか、融資を受けたらどや。保証人になる人がいないじゃないですか。これ。そういう中で、きのうの現地の声によれば、市長さんは、このままの事態が続いたら自殺者が出るかもしれないという懸念まで表明しているんですよ。だから、私は、そういう中で現地の人々は何と言うか。私も今月の九日に長崎に行ってきましたよ。そういう中で言うのは、そうだ、あの湾岸戦争で、言われれば九十億ドルばっと出すじゃないか、一兆二千億だ。そして目減りで穴があいた、目減りしたと言ったら七百億円すっと、それはいろいろ名目ありますよ、出すことは出すんだ。なぜ雲仙には出ないのか、こういうことが言われるわけですから、現地からは具体的な要求は全部出てますよ。この具体的な要求についてすぐ財政措置をとるように、私からも政府に対して要求したいと思います。これは現地の人も聞いてますからね、はっきり答えてください。
  220. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 答弁する前には少し静かにしてください。  先ほども私、中島先生にも御答弁したんですけれども、自治省としましては、地方公共団体というものが、今金子先生もおっしゃいましたが非常に困っているということにつきましては、知事なりあるいは市長なり町長なりお越しになりまして、いろいろ実情を話されました。私も現場を見ました。二度もお伺いしました。  そういったことから、御要望がありましたものにつきましては、当面とりあえずは交付税の前倒しをするとか、あるいはまたこれに対する事業債等の問題につきましても、復旧事業債あるいは地方債、そういった配分をいたすということにいたしておりますけれども、きのうも知事がおいでになりまして、何としてもこういった諸問題について、これからの問題があります、ついては、この基金の問題もあるので、地方自治体に対する問題として自治大臣ひとつ配慮してくれないかというお話もありました。私は大事なことであると思う。今あなたがおっしゃるとおりだと思う。そういった意味で、私は県が住民の自立支援事業として行う資金、こういったことについての基金につきましては前向きにやはり検討すべきである、こう思っております。  したがいまして、自治省としましては、前向きにこの問題は取り組んで住民の皆さん方に十分こたえていけるように知事に私は話しているわけでありますから、これからは政府できちっとした統一意見も出ると思いますが、そういった線に沿って頑張っていく、こう考えておりますから、どうぞ御理解願いたい。
  221. 金子満広

    金子(満)委員 現地の人は説明聞いているんじゃないんですよ。きょう何がある、どういうことがやられるかということを見ているんですよ。聞いているんですよ。それに大演説をやったからといって、わかりましたと言う人はいないんですよ。いいですか。  私は、今日本の政府に金がないのか、予算がないのかと言うのです。現地の人だって知っていますよ。今お話しになっている地方交付税前倒しで、前倒し、だれが納得しますね。前に倒さなくたって、予算あるんじゃないですか。予備費だって六百億からあるじゃないですか。外国から言われればすっと出すんだから、現地から血の叫びが出たら何で出さないんですね。だからそういうことを考えたときに、予算がないから、金がないからできないんじゃなくて、本当にやる気がないからできないんじゃないか。これが本当現地の声なんですよ。私が真剣に言うだけじゃないんです。あそこへ行ってきてごらんなさいよ。涙が出るような状況ばかりじゃないですか。だから皆さん、そういう点では政府の担当者も、特に総理はこういうふうにすべきであるという点で、指導性もイニシアチブも発揮すべきだ、こういうように思うのです。もう一度結論的に、決意だけ聞きたいと思います。
  222. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現地の知事、市長、町長さんから、私も現場でいろいろ御要望を受けて帰ってまいりました。その中に、やはり現地の市長さん、町長さんが、資金の必要のために交付税の前倒しをしてほしいということも具体の要請の一つでありましたし、その後いろいろな細かい要請もありました。  その後――何度も聞いたとおっしゃるが、これは御質問があるから誠意をもって答えておるんです。二十一分野においていろいろなことをこれだけしたんです。そのうちには、政令をつくったものも省令を変えたものも、対応をしたものも随分含まれておるのです。それはどうしてもできないときには、いろいろさらに将来に向かっては考えますよということも加えながら、また担当の役所に指示をして、遊覧船を沖にとめてそれで仮に泊まってもらうとか、あるいは旅館のあいているところは借りてそこで泊まってもらうとか、仮設住宅の制限を撤廃するとか、基準緩和や基準撤廃も随分行って、それらのことをすべて御報告をし続けてきたわけであります。できる限りのことは弾力運用や政省令でやっていける。同時にまた、将来のあの地方全体の復興のために、地方財政を圧迫させないように、特別交付税なんかの面においても災害に対しての配慮は十分するように、また、現地とも十分それは意思の疎通を図るということはそれぞれ指示もいたしてあります。そのように今進んでおるということを私はぜひ御理解をいただきたいと思います。
  223. 金子満広

    金子(満)委員 海部総理は、現地へ来ると現地に合わせる話をしてくれるし、国会でやるとまた国会の違う話もあるというのも、これは現地の私が聞いた偽らざる声なんですよ。ですから、言ったことは必ずやるように、そして、今着々進むと言うが、それは全然何も手をつけてないんじゃないけれども、八十三項目、八十三項目と言うから、全部八十三項目を点検したら、準備中とかなんかいっぱいあるから、そのことを申し上げているのですから、ぜひこれはやってほしい、これを改めて強く求めておきたいと思います。  そこで次に、核兵器の廃絶、平和問題についてただしたいと思います。  御承知のように、ことしはあの広島、長崎の被爆から四十六周年の夏を迎えました。広島、長崎のある日本は世界唯一の被爆国だ。今国際貢献ということがよく言われる。世界の平和に対する国際貢献、日本がなし得ることは何だろう。私は、そういう点からいえば、この日本国憲法の平和原則にのっとって、そして核兵器の廃絶をこそ、国連の舞台でも、あるいは多国間でも二国間でも進めていくことが非常に大事だ。国際貢献は自衛隊の海外派兵なんかではない。これはもういろいろなことから見て言えることだと思うのですね。  そういう中で、ことし、六日と九日に広島、長崎でそれぞれ平和式典がありました。六日には海部総理が広島の式典に参加したことは御承知のとおりです。そういう中で、広島の宣言というのは、「広島は世界に訴える。核兵器を一日も早く廃止しよう。」長崎の平和宣言、「全市民が心を一つにして、核兵器の廃絶に向かって邁進しよう。」こう述べているわけですが、この広島と長崎の声、海部総理、どう受けとめますか。
  224. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 核兵器の廃絶を願う声というのは、私も昨年は両市で、ことしは広島で伺ってきました。その声は、まさに実現されなければならぬ方向に向かって我々も全力を挙げて協力をすべきだと受けとめております。
  225. 金子満広

    金子(満)委員 私は、今総理のそのことが本当であれば、私は究極的廃絶はやめてほしいのです。そして、ここまであなたがおっしゃるんなら、一日も早い廃絶をというのが、あの犠牲を受けた、そして、この被爆者、亡くなった人は何も言えないわけだから、そういう死者たちにかわって核兵器の廃絶というのを訴えるべきだ。ですから、一日も早い核兵器の廃絶というのを政府の基本方針にすべきだ、このことを強く求めておきたいと思います。  同時に、私は、よく言われるのですが、海部総理、これは自民党のパンフですよね、自民党の。そのパンフの中では、通常兵器がある限り核兵器の廃絶は危険だということが書かれているのです。こういう点で、通常兵器があるうちは核兵器は廃絶されないということになれば、核兵器の廃絶は遠い遠いかなたで、これはいつの世の話かわからないようになるわけですから、私はそうでなくて、こういうパンフレットの立場を海部総理が引き継いでいくのか、受け継いでいくのか、それとも、いろいろの兵器はあるけれども核兵器の廃絶は優先的にしなければならない、緊急にやらなければならないということを考えているのか、この点だけ伺っておきたいと思います。
  226. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 恐らくそれは、米ソ二大勢力が対立してイデオロギーとイデオロギーが争っておった、相反するイデオロギーの存在は認めない、許さないというようなあの厳しい対決の時代に、力には力をということでそういった無限の核競争になっておったことも事実として指摘させていただきますが、それが乗り越えられつつある。そうしたら、現実に具体的に一日も早くというならば、一歩一歩現実にやはり解決できることが大事じゃないでしょうか。そのためには核の拡散防止、核不拡散条約に核保有国は入れと言うことが世界の大きな現実的な一歩前進だったと思うのです。  私はきょうまでも、南西アジアでも核保有の危険のある国、あるいはヨーロッパでもあるいはアジアでも、核保有国はこの核不拡散条約というものに入らなければならないと加盟を強く訴えてまいりましたし、最近中国が私との首脳会談で、原則的に無条件で加盟するという意思を表示されたことを私はこれは率直に高く評価したのです。そういった一歩一歩現実の努力の中で究極的な廃絶を目指していこうというのは、これはよく御理解をいただきたいと思います。
  227. 金子満広

    金子(満)委員 広島の声、長崎の願いを実現するというそのことと、今究極的というのは相矛盾することであって、確かに東西の軍事ブロックの対立という時代は大きく変わったですよ、東側の軍事ブロックは崩壊したのだから。このときに、核兵器を廃絶しなければならぬ、核不拡散条約だ、これだって、五万発の核兵器がそのまま残っているんだから。こういうときに、今世界で堂々と物が言えるのは、私は日本だ、そういう意味で、被爆国の政府として核兵器の廃絶を堂々と訴えていく、これは一国平和主義どころか万国平和主義になるんだから、堂々とやっていくことが大事だ、このことを強調をしておきたいと思います。  そこで、最後に、選挙制度の問題について伺っておきます。これは時間が十分ありませんから、あさってに残ったところは引き継いでやりたいと思います。  これは総理に質問いたします。  政府は、政治改革イコール小選挙区制だ、こういう図式をかいて国民にこれを押しつけている、これが実際だと思うんですね。しかし、いろいろの計算で、いろいろのところでやってみて、この小選挙区制というものが民意を反映するものではない。莫大な死票を生むということはここで一々説明するまでもないわけでありますが、私はこういうときに、今やるべきことは、小選挙区制ではなくて一九八六年五月の国会決議による定数の是正だ、こういうふうに思うのです。これはもう内容まで全部決まっているのですから。二人区とか六人区はなくしていく、そして、三人区から五人区、こういう中でそれぞれの野党はそれぞれの案をつくってやってきておる。で、国会の決議があった後、回を重ねるに従って――海部内閣が発足した八九年、おととしの十月の衆議院本会議で私も質問をしましたが、そのときに定数是正を述べたのに対して、海部総理は「衆議院本会議において決議されているところであり、事柄の性格上、各党で十分御審議いただくことが重要だ」こういうふうに述べたわけですね。そして各野党は、一票の格差一対二未満で、三人区から五人区、同一都道府県内において合区、分区というところまでずっと話は進んでいるわけだから、案がないのは自由民主党だけなんだから、ここで国会の決議を実行するということは国会に課せられた責務であり、政府自身がこれを実行しなければならぬ。  今いろいろの世論を見ても、小選挙区制、これでいこうという世論はどんどん下がってくるのです。逆に、そうではなくて定数是正をというのが最近のマスコミの世論調査でも顕著になってきているのですよ。私は、そういう中では自由民主党の中だって、小選挙区制は異議ありと、民主主義に反するじゃないかという声もあることを耳にしますよ。しかし、いずれはともかく広範な国民は、小選挙区制ではなくて定数の是正をこそ今急ぐべきだ、やるのはこれだということでありますから、この国会決議を総理御存じだと思いますから、ひとつ実行してほしいんですね。
  228. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御承知のこととは思いますけれども、政治改革というのは非常に幅の広いものでありまして、提出しました三法案の中にも、今御指摘の一票の価値の是正の問題についても十分審議をしていただき、原則一対二未満におさまるように努力をいたしました。どうしてもおさまらなかった分がありますけれども、これはそういった基本原則に従ってしてもらったわけで、一対二という一つの大きな理想に向かって原則的にこのような処置をしたわけでありますから、この定数是正の問題についてもこの法案の中で解決できるようにいたしてあるわけであります。
  229. 金子満広

    金子(満)委員 国会決議は何も小選挙区制をやれなんていうのはどこにもないんですよ。探してもないんです。国会決議というのは一票の格差の是正なんです。そして二人区・六人区をなくすということは、現行の中選挙区制で定数是正をやれということなんです。国会の決議というのは重みがあるんですから、これを実行しなければならない。その義務をあなたも負っているわけだから、全体でこれをやっていこうじゃないか。全然無理がないんです。そして国民的な世論の多くもそれを希望しているし、望んでいるし、数字にも出ているんだ。それをこう、一票の格差を一対二に近づけるために努力をしましたが、まだ少しはみ出ていますと。それは確かに小選挙区制で二十七選挙区かな、二を超えているのが。これでも一対三を縮めたんだからその努力はと言ったって、努力の方向が違うんだ、これは。それは小選挙区制でやっているんだから。そうでなくて、中選挙区制、現行制度のもとにおける定数是正で一対二未満でやる、これが一番の筋なんだから、この点を再度申し上げます。  さて、そういう中で私は――いや、案を出せ、案を出せと言うけれども、別に代案なんか出す必要はないんで、国会決議だから。私の日本共産党もそれとして案は五百十二名で出していますよ。現行選挙制度のもとで百三十の選挙区を百二十六にすると、合区、分区も全部して出しているんだから、これでいいんじゃないですか。何も小選挙区制に対して違うんだ――筋違いというのはこのことを言うんですから、やはり依拠すべきは国会の決議である、何人もこれを踏みにじることはできないんですからね。  私は、そういう意味で本当に、真に国民の声が選挙を通じて国政に反映するということになれば、選挙制度というのは主権者国民のためにあるのであって、その主権者国民のためというのは、国民の公平な意思ができるだけ国会に反映するという、これをつくらなきゃならぬですよね。政党の立場から選挙区をどうするかとか、議員の立場からおれの選挙区はどうとかああとか、そんな細かい、みみっちいことでこの大問題をやるなんというのはとんでもない話だ。おれが、あれがと言うが、そんな金がかかるとかかからないとかいろいろ、これは議論は後でやりますけれども、今痛切に求められているのは一票の格差の是正なんですよ。その一票の格差の是正でどうするか。そうすると中選挙区制をいろいろこう、一つ一つ選挙区に手を触れるとこんなに大きくなる。じゃ、三百の小選挙区制というのはどうなんです。日本じゅうかき回してこんなようなことをやって、一つの選挙区が、東京でいえば世田谷なんか区会議員の選挙より狭くなる衆議院選挙ですよ、飛び地ができて。こういうようなことでなくて、再度私は要求いたしますけれども国民の声にこたえて衆議院、国会の決議にある定数是正をこそ今こそやるべきである、このことを申し上げて、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。
  230. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  231. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、目下最大の政治課題であります金融証券不祥事問題を、それ一点に絞り込んで政府の見解をただしたいと思いますが、その前に、緊急課題として先ほどから議論になっております雲仙・普賢岳噴火災害対策について総理の見解を求めてみたいと思います。  冒頭、災害によりまして亡くなられた皆さん方に心から哀悼の意を表し、また、今日まで御苦労をいただいております皆さん方に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。  さて、去る六月九日、総理は現地を訪れましたが、かかる甚大な災害を前にいたしまして、総理は特別立法をしてでも対処する方針だとして新規立法に前向きな方針を示されました。確かに今日まで政府は、るるお話を聞いておりますように、現行法の弾力的な運用で努力をされていることには敬意を表しますが、しかし、被災地からの要望等を見ておりますと、いわゆる特別立法なくして救済できない、そういう問題がたくさん寄せられておるわけでございまして、これは総理も御承知のとおりだろうと思います。現地の人々は、総理の特別立法をしてでもというその言葉を信じ、そして期待し、かたずをのんでその実現方を待っておるのでございますが、残念ながら余り前向きな話にならない。結局は現地の皆さん方は、総理に裏切られた、不信の渦が今巻き起こっておるという現状だと思います。せめて私は、この際、警戒区域に指定されて避難を余儀なくされておる皆さん方に対する所得補償措置あるいは災害によって財産をなくしたそういう者に対する一部の補償措置あるいは災害復興のための基金や、現地の自治体が何をしなければならぬかということは一番わかっておるわけでございまして、そういう皆さん方が、救済対策としてやろうとする原資にやはり基金をつくるべきだという要請に対してはこの際こたえていただくことが総理の義務だ、私はそう思っておるわけでございます。  るる説明は聞きましたので、決意だけお伺いしたいと思います。
  232. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も現地で御要望を聞いて、でき得る限りのことをいたします、現行法の枠でどうしても救えないものはその基準の見直しとか、あるいは政令を、あるいは省令を新たに今回三十項目追加をして、その措置対策を進めておるところであります。  さらに今後とも、あの地域全体の将来像も踏まえて、いろいろ地元から出ております基金の御要望等についても、地方財政を圧迫しないという観点に立って、どのようなことができるのか今後とも積極的に対応をしていく決意であります。
  233. 米沢隆

    米沢委員 現行法の弾力的な対応のみでは処し切れない数々の問題がありますので、今決意を述べていただいたその精神でぜひ現地の皆さんの御期待にこたえられるような対策を確立されることを強く要望をさせていただきたいと存じます。  さて、次は金融証券不祥事の件につき質問をいたします。  最近続出しております経済界の不祥事を見ますと、もうみずからの存立基盤を否定するがごとき証券業界の損失補てんや暴力団との癒着問題、あるいは何よりも信用第一でなければならなかった銀行の不正融資あるいは架空預金口座等々、また一部商社に見られる金融機関やあるいはダミー会社やゴルフ会社等を巻き込んだ悪徳商法の数々、あるいは大型の脱税事件等々、加えて、それらに見え隠れしておりますマフィア資本主義といいましょうか、いわゆるアングラ社会の表社会への浸透等々、ことごとく自由主義経済社会の根幹を揺さぶりかねない事件であると、まことに遺憾に思っておるわけでございます。そして毎日毎日、新聞を読みますと、次から次へこのようなスキャンダルが出てくる。まさに国民の皆さんはあいた口がふさがらない。今や不信と怒りは頂点に達しておると言っても過言ではないと私は思います。  同時にまた、このような事件によりまして、国内の悪影響はもちろんのことでございますが、国際的な信用の失墜は覆うべくもないというのが現状ではないかと憂える一人でもございます。それも一流の会社と言われてきた会社の、それも一流の人がこのような悪事に加担するということであってみればまさに何をか言わんやという気持ちでございまして、バブル経済の後遺症とはいえ、ある人は、拝金主義の蔓延がついに日本人の心身をも侵し始めたという方さえいるわけでございます。  ある宗教家がこんな話をされておりました。正常な社会というのは、一番上に神様や仏様があって、その下に人間がおり、その下に金や物がある社会が正常だ。ところが、今完全にそれは逆転してしまって、一番上に金や物がある。そしてそれに支配される人間がその下におる。神様や仏様はその一番下だ。今そういう社会になってしまったのではないか。そういう意味で、金や物や自分たちのエゴのためには神仏をも恐れぬ行為を平気でやる、こういう社会的な風潮が蔓延しておる、そうした中でこういう不祥事が続発しておるということを考えますと、その根は余りにも深い、こう言わざるを得ないのであります。言いかえれば、戦後社会の総決算ともいうべき社会構造や経済構造の抜本改革までメスを入れなければ本当は解決不可能なまでの難しさをこの不祥事は持っているのではないだろうかと考えるわけでございます。  今日までのこの不祥事に対する政府の対応を見ましたときに、このようなよって来た本質の究明やバブル経済がもたらした金融経済政策への反省や責任やそういうものを素通りにしてしまって、矮小化された再発防止対策の議論だけが、それも早々に手じまいたいという気持ちだけが先行している嫌いがあると私は思います。総理の所信表明演説を聞きましても、そのあたりが、その奥の深さが全然見えてまいりません。  そこで、この際総理にお尋ねしたいのでありますが、一体このような不祥事の続出する背景や根源はどこにあると総理は思っておられるのか。それにメスを入れる必要はないと思われるのか。第二に、今回の一連の不祥事の何が本質的な問題なんだ、認識を聞かせてもらいたい。そして政治責任は一体どうなんだということも聞かせてもらいたい。そして、結果としてトータルどのような処方せんを書こうと決意されておるのか、政府の対処方針の基本につき明快な答弁を求めるものであります。
  234. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の意味に必ずしも沿うかどうかわかりませんけれども、私が今聞いておって率直に感じましたことを端的に申しますと、経済至上主義といいますか、金銭万能主義といいますか、お金が必要以上に幅をきかせ過ぎる風潮というものに対して、公正な社会という理念からきちっと対応を立てなければならぬ問題だ。このことは、守るべきものは何かということになりますと、やはり、法律は国家社会の秩序を維持し形成するものでありますけれども、その以前に、やはり人間社会のモラル、道徳、倫理というものがあるんだということをもう一回謙虚に思い返してみなければならない事件の背景の一つである、そのように受けとめております。けれども、これに対する対応策をそのように言って、金銭万能の哲学が間違っておったんだ、すべてが金銭第一主義を改めろと私は強く主張したいのです。同時に、そのためになすべきことは何なんだ、きょうまでそういったことを社会でいろいろ起こるようにしてきたその行政の責任というものも、私は長として重く受けとめなければなりませんし、反省もいたします。  同時にまた、それに対する対応は、極めて次元が低いと言われるかもしれぬが、十八世紀的かもしれませんが、守られなかったならばせめて法をつくって秩序や規律を維持しなければならぬというのが、これが当面の急務になってまいります。そうして当面の急務が終わったならば最初に戻って、そのようなお金で買えないとうといものがあるんだということをもう一回みんながいろいろな場で思い出してもらうような心の復興といいますか、そういったことに関する我々としてのなすべき政策努力を続けていかなければならない、そこに思い至るわけであります。
  235. 米沢隆

    米沢委員 確かに、戦後から積み重ねてきた社会や経済構造を一挙に転換することは大変難しいことだろうと思いますが、少なくとも今後、例えば具体的には今後の予算編成方針等においても、少なくともどこに力点を置いて社会構造を変えていくのか、経済構造を変えていくのか、その力点こそ本当は一番問われている問題ではないかと思います。何だかんだと言いましても、やはりまだ今日までの生産優先といいましょうかそのような経済の仕組みは残っておりますし、今度の証券業界の事件だって大蔵省の行政そのものがやはり育成する、保護するというその延長線にあって初めてこのような不祥事がひょっとしたら起こってきたのかもしれないという反省も加えていかねばなりません。そういう意味では今、証券行政だけではなくて日本の行政そのものが本当は大きな転換期でございまして、業界を育成する、指導するという観点からやはり公正なルールで監視していくという、そういうスタイルに行政すべてが変わっていくという、そういうことを目途に今後も予算編成等々、経済政策等々をぜひそのようなふうに確立していただきまして今後の経済社会の転換を図っていただきたいということを切望いたします。  しかし、今私は議論しなきゃならぬのは、このようなことが起こってきた背景の中に、バブル経済を起こした責任というのはやはり問われねばならぬと思います。先ほど答弁はありませんけれども、一体このバブル経済が起こってきた、そしてこういう現象の温床になってきた、それに対する反省や今後そのバブル経済をどう解消していくのかという点について、少なくとも御見解を賜らねばならぬと私は思います。
  236. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今そのバブル経済という視点からの部分について、私なりに申し上げたいと思います。  まず第一に申し上げなければなりませんことは、昭和六十年九月のプラザ合意以降急速に進展をいたしました円高のもとに経済活動が停滞する一方で、物価は安定基調で推移し、内需中心の景気拡大を図る必要が説かれました。こうした中におきまして政府は、財政、金融両面にわたる経済政策を実施いたし、公定歩合も昭和六十一年以降五次にわたって引き下げられてまいったわけであります。その金融緩和局面におきまして、景気拡大などを背景にし、株価が大幅に上昇する、その中で株式市場が活況を呈しました。こうしたブームの中におきまして証券会社の業務なども拡大したわけでありますが、一方で証券会社の営業姿勢において行き過ぎがあったこと、顧客の側に自己責任原則の徹底が不十分であったこと、こうしたことは今回の損失補てんの背景にあると思います。  さらに具体的に申しますなら、六十二年十月のブラックマンデー以降、いわゆる営業特金というものが売買一任的に運用され、その結果として損失補てん等の不適当な営業行為が生じたものと考えます。こうした行為は免許会社としての規範に著しく反するものでありますし、こうした行為の結果、一般投資家の証券市場に対する信頼が大きく揺らいだだけではなく、国民の中に、こうした不公平が大きく行われているのではないかという強い不信感を生んだことは、何としても私にとりまして残念でならないことであります。背景と言われますなら、こうしたものがありましょう。  そしてその中において、行政として振り返って反省すべき点は、確かに敗戦後の日本の長い歩みの中で、私は、例えば証券行政をとりましても、市場育成というものが必要でなかったとは決して思いません。保護育成の必要であった時期があったと思います。しかし、その保護育成という段階からむしろ公平な競争というものが担保される、そうした状況をつくり出すために行政が変化するのにおくれをとったのではないか。このところ、この損失補てんの禁止あるいは営業特金の一任的な運用等に対して制約を加えておりますこと、あるいはディスクロージャーの制度の整備に取りかかりましたこと等が、おくればせながらこうしたことに気づき、努力を始めたということも言えないことではございません。しかし、姿勢の変わりが遅かったという御指摘は、我々として甘受しなければならないと思います。そして、それに対する対応策として、先般来私は、この原因を五つに分けながら一つ一つの問題に答えを出していかなければならない、そのように考えておるところであります。
  237. 米沢隆

    米沢委員 それでは、各論に入っていきたいと思います。  御承知のとおり、今度の営業特金の損失補てんの問題は、証券サイドの激しい引き受け競争というものと事業会社の安易な財テク意識が生み出したもたれ合いの産物にすぎないと言われます。言ってみればそれだけのことでございますが、二度とこういう不祥事を発生させないという意味で、損失補てん行為にかかわる本質を検討してみる必要がある。  そこで、まず大蔵大臣の認識をお聞きしたいのでありますが、今回問題になっておるこの損失補てん行為の一体何が問題だと認識されているか、またなぜ今回のような損失補てん、業界ぐるみでの損失補てんが構造化したのか、この二点についてまず伺ってみたいと思います。
  238. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 第一点として申し上げなければなりませんことは、そもそも損失補てんという行為を法律上禁止しておる国はほかにないということであります。これは当然のことながら、特定の顧客だけが有利な取り扱いを受ける、そうしたことは商売の倫理上許されないことということで、どこの国も当然のこととして、私は法律上わざわざ規制をしていないものだと思います。もちろん、それぞれの国の業界団体の自主規制のルールの中にはございます。しかし、我が日本においてはこれが過去にどの程度私はあったか存じませんけれども、少なくとも私が説明を受けました限りでは、ブラックマンデー以降これが目立ったということでありました。そして、それが昨年の年明けからの証券不況の中で拡大したと説明を受けております。恐らく事実でありましょう。これは当然のことながら倫理的に行われないものという前提のもとにどこの国も法制化していないもの、少なくとも一昨年十二月の段階で通達をもって改めて禁止を指示したにかかわらず、それが守られなかったということでありまして、これは公正性、透明性という視点からも極めて私は深刻なものと受けとめております。そして、それが今回、先ほどどなたかの御質問にもありました、他国にないことを恥を忍んで法律に書かなければならないというお言葉がありましたが、まさに他国では法律をもって禁ずる以前の問題であるこの損失補てんというものを、現在、今国会に御審議を願いたいと考えております証取法の中に、法律上の禁止行為として明定したいと考えておるゆえんであります。
  239. 米沢隆

    米沢委員 いろいろと御説明をいただきましたが、私は、やはりこの損失補てんの何が問題かと言われれば、やはり先ほどから議論になっておりますように、不公正な取引、自己責任原則をじゅうりんする、結果として市場が公正な価格形成をすることができない、そういうことでありましょうし、損失補てんが構造化したという問題は、やはり過当競争、そして利益を上げていかねばならぬ会社にとって、まさに神をも恐れぬ行為に出ざるを得なかったほどの過当競争等があったんだろう、こう思います。そういうものを日本的な特殊論だとかあるいは規制を強化しさえすればそれは結果としておさまっていくのではないかという議論もありますが、私は特殊論ではない。同時に、ただ規制を強化しさえすればそういう行為がなくなっていくだろうか、私はそうは思いません。現に、損失補てんと言われようとどう言われようとも、それをすることで会社の利益につながっていくことであるならば、結構くぐる行為が出てくるであろう、サービス合戦がまた水面下で活発になっていくだろう、そう思うわけでございまして、このような損失補てんというような行為をなくしていこうとするならば、やはりその構造にメスを入れる、ということは、少なくとも単に法制を強化するだけではなくて、もっとこの証券市場に競争を導入していくということが眼目でなければならぬ、そう思います。  今度の不祥事の温床は、日本の証券市場特有の競争制限的なシステムに求められるべきだという声が今有識者の間からも起こっておりますが、私は賛成でございます。すなわち、その意味におきまして、いわゆる固定性の株式委託売買手数料や引受手数料、こういうものをもっと見直していかねばなりませんし、また、免許制によりまして市場に新規参入がない、この新規参入規制についても問題をもっと掘り下げて議論していかねばならぬだろうし、結果として今までは新規参入がないこと、そして固定手数料でかなりの利潤を上げたということ、その超過利潤が結果としてリベートとしていわゆる損失補てんの原資になっていったという、この事実は率直に我々は認めていく、そしてそれにメスを入れていくという姿勢でなければ、私は根本的な解決にはならないだろう、そう思っておるわけでございます。  そういう意味で、大蔵省の見解を聞きたいのでございますが、一つは手数料の自由化について、これは東証の決めることでございますから、皆さんの専管事項ではありませんが、少なくとも手数料の自由化について大蔵省はどう考えているのか。もう一つは、新規参入規制の弾力化という、これは免許行政の見直しに発展する話でございますけれども、しかし、先ほど冒頭申し上げましたように、免許行政の戦後の金融機関育成に果たした役割はそれなりにこれは評価をいたしますが、資本市場がここまで成熟をしてくる、国際的な広がりが高まっている今日、その歴史的な役割をもう一度検証し直すということはもうあってしかるべきではないか。そういう意味で、免許行政の見直しと同時に、この新規参入規制の弾力化をどう図っていくのかというのがこれからの検討課題ではないだろうか。  あるいは相互乗り入れの推進という今議論されておる問題もあります。あるいはまた、証券会社が引き受けも売買も、自己売買も一緒にやるというところにやはり問題がある。今イギリスでいろいろ問題になっておりますね。そういう意味では、引受業務とブローカー業務を区分する方法を考えてみるべきではないか等々の問題が今投げかけられておるわけでございまして、そういうところに抜本的にメスを入れて初めて私は今度の損失補てんの問題がある意味で一つの教訓的に働くことになっていくのではないだろうか、そう思いますが、その点について大蔵大臣の見解をただしたいと思います。
  240. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員は、この問題点を幾つかに絞り込まれました。  私は、本会議でも申し上げましたように、この証券取引のルールの不明確性というものが一つの問題点と認識しておりますし、同時にペナルティーの問題があり、また検査その他の仕組みの問題、さらに自己責任原則の問題、そして業界行政のあり方と、こうした問題点の整理を私なりにしてまいりました。そして、今委員が御指摘になりました幾つかのポイントは、私もそのままに問題として受けとめておるテーマであります。  今、たまたま委員から手数料の自由化の問題、意見を求められました。この手数料の問題につきましては、事実問題といたしまして、アメリカ、イギリス、フランスなどにおきまして既に株式委託手数料が当事者間の自由な交渉にゆだねられております。しかし、その結果としてこのような現象が起きたと指摘をされております。一つは、機関投資家の手数料が低下したものの、交渉力のない小口の投資家の手数料が総じて上昇をした。その結果、個人投資家の市場への参入が減少し市場の機関化現象を促進させ、また、このことにより、市場における価格変動の幅が大きくなった。また、アメリカにおきましては、証券会社が手数料の減収を補うべく自己売買あるいはMアンドA業務に傾注してしまう。また、大手証券会社への集中度が高まる。証券会社の財務、業務の健全性、こうした問題が生じていると言われております。  しかし、私自身、今御指摘がありましたように、株式手数料の取り扱いというものにつきましては、引き続きその水準についても国際的な動向を勘案しながら機動的、弾力的な見直しが必要であると思いますし、諸外国における実情も、こうした今申し上げたような実情も踏まえた上で、制度のあり方についても今後検討を加えていくべきものと思います。  また、新規参入の問題につきまして、これは免許制といえども既存業者の保護のために新規参入を抑制すべきものでないことは当然のことでありまして、適格性を有する方に参入を認めるべきことは当然でございます。今回、証券取引審議会の報告の中におきましても、新規参入に対して免許を付与することは必要であるということを御答申をいただいておりますし、金融制度改革の具体化を検討していく過程におきまして相互参入等の機会を当然のことながらふやしていき、その過程において金融市場の透明化、公正化というものをより進めてまいりたい、そのように考えております。御指摘の方向に異論はありません。
  241. 米沢隆

    米沢委員 特に今回そういう証券市場にかかわる基本的な問題と同時に今問われているのは、証券行政が是であったのか非であったのかということではないかと思います。免許行政でなぜこういうかかる不祥事を防止できなかったのか。それは検査・監督体制が不備だったという議論もありましょうし、保護、育成、指導、監督、四つをごちゃまぜにして何ができるかという議論もありますし、もたれ合い、なれ合い、癒着ゆえに証券行政が徹底しなかったという問題指摘もありますし、あるいはまた天下りがそうさせたのではないかという話もあるわけでございまして、いわば不透明の代名詞と言われるような予防監督型行政、まさにこれは限界に来ておると考えるのが素直な考えではないか、私はそのように思うわけでございます。もし異論があれば反論してもらいたいと思うのであります。  そういう意味で、私は、今までの行政のあり方といいましょうか、行政指導の問題等についてちょっと細かな議論をしてみたいと思います。  今日までの議論を聞いておりますと、大蔵省の見解は、損失保証は証券取引法に違反する、しかし事後の損失補てんは証取法上禁止されておらず、海外を見てもこれを禁止する立法例はない、証券会社がちゃんと証券市場のルールを守ってくれればいいのに事後補てんなどして市場の信頼性を損うようなことをするから、八九年の通達で厳に慎むというような指導をしたものだというのが大蔵省の論理だろうと思います。そして、行政指導に当たっての基本スタンスだと言ってもいいと思います。しかし、この論理には、損失保証なら証取法違反であるから厳正に対処できるが、事後の損失補てんは常識的に言ってあろうはずがないことが起こった例でこれは次元が違う、今日まで証取法に禁止の明文もないんだから、俗に言うならば損失保証よりも罪一等を減ずる的なものだから、行政指導もやりにくいし、行政責任の一端も一部回避できる、こういう主張があるような気がしてなりません。  したがって、一連の経過の中で大蔵省がとった行政指導は余りにもわかりにくく不透明で、中途半端で、何をやっていたかわからぬという甘さがあったのではないかという批判は、私は甘んじて受けてもらわねばならぬことだろうと思います。これも異論があったら後でお答えいただきたいと思うのでありますが。  そういう観点でまず第一に聞きたいことは、去る七月二十五日、この衆議院の大蔵委員会におきまして委員の質問に答えて大蔵大臣は「私自身がこの事態を承知いたしましたのは、ロンドンにおけるG7の会合を終了し、その会合から空港に向かう自動車の中に届けられた連絡によってだ。」こう言われました。私は耳を疑いましたね、これは。少なくとも今回の損失補てんは既に平成二年三月の時点で大手四社合わせて千六十億円という、これは後から追加されまして千二百八十三億円になりましたけれども、多額に上っておることがもう既にそのときにわかっていた。自主申告という形でそれが報告をされ判明していたはずでございます。今になって、免許会社として規範に著しく反するもので、一般の投資家の証券市場に対する信頼関係が大きく損なわれたということはまことに遺憾で、深刻に受けとめている、そう言われても、その当時からその状況はそのままなんでございますから、一体こういう証券市場の根幹を揺るがすような損失補てんの実態が明らかになっていたにもかかわらず、その時点で大蔵大臣には何も報告はないのでございましょうか。もし報告がないとするならば大蔵省の業務体制は一体どうなっておるのだと問いたいと思いますし、もしそんな話は大臣の耳を汚すほどのことはないということで証券局が黙っておったならば、その認識の甘さこそまさに証券行政のすべてだと言ってもいいと思うのです。どうでしょうか。
  242. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事実関係のみ申し上げますが、損失補てんという問題につきまして、私は、平成元年のたしか十一月であったと思いますけれども、特定証券会社で問題が発生をいたしました時点でその案件について報告を受けております。また、平成元年の十二月に局長通達を発出いたします時点でその内容も説明を受けております。また、平成二年のたしか七月であったと思いますが、他の証券会社の案件が報道機関に報ぜられました時点でその案件と二年三月の時点における各社の自主申告の状況について報告を受けております。そしてそれは記者会見等でも申し述べたところであります。  ただ、今御引用になりました七月二十五日のその衆議院の大蔵委員会における御質問の趣旨は、今回の非常に大きな問題になったこの問題についていつ知ったんだというお尋ねであったと思います。そしてこれはまさに私はその直前、G7が開けるか開けないか、本当に夢中になって各国との交渉をいたしておりました。そして、一時期は、日米のみでサミット前の蔵相レベルの相談をしなければならないか、その場合には二十一日にニューヨークで会議を持つかという判断までいたしました。そして、各国にそういう連絡をとりました段階で、急遽二十三日にロンドンG7が行われることになり、たしか二十一日に日本を飛び出してロンドンに向かったと思います。  そうした中におきまして、G7の行われております会場の中というのは完全に外からの情報が入らない場所でありますから、会議が始まりましてから終了して外に出るまで一切の連絡はございません。そうした中で、東京からの状況連絡を私が受けましたのは、まさにG7の会場を出ましてから空港に向かう車の中でありました。そしてロンドンから成田に、私が飛行機の中で時間を過ごしております間に、証券会社社長お二人の辞任という事態も起きておりました。時間的な経緯はそういう状況であります。
  243. 米沢隆

    米沢委員 いずれにせよ、平成二年の時点でわかっていながら、結局それに対して厳正な対処ができないというところに証券行政の甘さそのものが、またそういう状態が続いてきたところに温床をつくってきた原因があるのではないか、私はそう思います。  時間も余り残っておりませんで、大変恐縮ですが、もう一つ解せないことは、これもこの委員会でよく取り上げられましたが、事後的な損失補てんを行わぬよう指導したと言いながら、その後、駆け込み的に依然として事後損失補てんが行われている事実があるにもかかわらず、その時点の大蔵省の対応は、何か痛痒を感じていないという、そんなふうにしか見えません。本当にこの通達行政とはこんなにいいかげんなものなのか、それとも業界に完全に無視されておるのか、無視されても仕方がないような関係にあるのか、それとも大蔵省は暗黙の了解を与えて、通達発出後平成二年三月までは補てんに目をつむることになっていたのかというところが非常に疑惑の中心でございます。  これについてはいろいろな議論がありますが、私は、これはもう大蔵省の、業界の事情聴取をされて、大蔵省の口から答弁を聞いたって何もこれはわからない。少なくとも現場におる人が心理的な状況を含めて実際こういう状況でございましたということがわからないと、本当は事態の解明に資することにはならない。そういう意味で、民社党も証人喚問を求めておりますし、その名前等については既に理事会等で要請しておりますから、この点については委員会でよろしくお取り計らいいただきたいと思うのでございます。  そういう意味で私は、この通達発出後一体どういう駆け込み的な事後補てんがあったのか、これは一番大蔵省は関心を持って調べてもらわねばならぬにもかかわらず、そんなのは区分して把握していないなんていうのが証券局長の答弁でございまして、通達を出してもそんなの守られぬでもいいのですというのが証券行政のすべてであればそれはいいですよ。しかし、通達を出して守ってもらわにゃならぬとおっしゃるならば、せめてそういうところの数字ぐらいは把握して、やはり事後補てんはけしからぬということをその間にもうるさく言わねばあんた方の仕事は勤まらぬのではないか、そう私たちは思うのでございます。しかし、どうも実情等を聞きますと、大蔵省はもうまさにそういう事情は周知の上で暗黙の了解を与えていたというのが一般的な、今耳に入ってくるすべての人のおっしゃることでございます。それでなければこんなに大っぴらに私は事後補てんなんかできないと思うのです。九〇年三月期で大体七百七十六億くらいの補てんがあったとなっておりますけれども、その前年の八九年の十二月ぐらいまでは株式はずっと上がっていたのですから、その間には余り補てんの話はない。一挙に下がり始めたから出てきたのですから、まさにこの七百七十六億円というのは通達発出後ほとんどすべてそこに集中したのじゃないか、そういうのを見逃して、私は証券行政がうまく機能しておったなんという議論は全然信じがたい話だと思うのでございますが、そういう点について大蔵大臣の見解を再度聞いておきたいと思います。
  244. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 申しわけありません。細かい点、数字の点ですから証券局長に答えさせます。
  245. 松野允彦

    ○松野(允)政府委員 平成元年の十二月に通達を出しまして、二年三月までに自主報告を求めたわけでございます。そのときの自主報告は、この前から御説明申し上げておりますように、六十三年九月期、それから証券会社はここで年度がかわっておりまして、元年は三月期になります。それから二年三月期、この三つの期に分けて自主報告を出すようにということをその当時は指導したわけでございます。その結果出てまいりました数字が今回公表された数字でございまして、本省が直接監督しております会社十七社についてその数字を申し上げますと、合計で千七百二十億でございまして、六十三年九月期が四百八十七億、元年三月期が百六十九億、二年三月期が千六十四億でございます。  この二年三月期の分につきまして先日からいろいろ御議論がございまして、通達発出後の数字を何とか出せないかということで、これは、損失補てんは有価証券売買の形でとっている場合が多いものですからなかなかすぱっと分けるというのが難しいわけでございますが、各証券会社に命じまして二年三月期の内訳について精査をさせました。その結果、二年三月期の千六十四億、これは本省監理会社のものだけでございますが、そのうち通達発出後、すなわち二年の一月から三月までの分が八百二十八億という数字が報告されております。
  246. 米沢隆

    米沢委員 残念ながらもう時間が参りました。残余の質問はまた次の機会にやることにいたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  247. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、進歩連を代表して、島原の普賢岳噴火災害について質問をいたしたいと存じます。残念ながら本日の質問時間は十分間、明後日十七分間で、これを一体のものとして質問をすることをお許しをいただきたいと思います。  結論を先に申せば、二つの緊急提案をいたしたい。一つは、特別立法であります。二番目は、災害復旧基金の創設であります。以下提案理由を申し述べまして、最後に御見解をいただきたい。  どういうわけか知りませんが、九日の日に、現地のたくさん被災者の団体ができておりますが、数団体から今の状態を見てくれという要請がありまして、私は社民連の江田五月代表と一緒に八月の十日、十一日泊まりがけで参りました。そして二日間にかけて数カ所で避難民の皆さんとひざを交えて各所で三十分間ほど懇談を続けました。そしてまた、全国から救援物資が集まっておりますが、その倉庫も二カ所視察をいたしました。特に、政治家としては初めて、島原市長と深江町長の許可をいただきまして、現地の自衛隊の協力を得、装甲車で警戒区域、つまり立入禁止区域に入らせていただきました。通行禁止されております二百五十一号線と五十七号線の区域に入りました。三十年国会をやっておりますが、防衛庁長官に協力を厚く御礼を申し上げます。現地の連隊長によろしくおっしゃっておいてください。いいことはいいことです。  それで、これはもう大変ですね、禁止区域の中は。もう私も愕然といたしました。五十七号線の方は撮影禁止であります。それほど悲惨なのであります。豚がお互いに食い合いをして死んでおる。牛も死んでおる。養鶏の場所は、鶏が半分死んでおる。電気は通じないところが多いのです。これは総理から九電に言っておいていただきたい。もう冷蔵庫もとまっておる。そういう状態の中で、島原市六千人、深江町四千人の方々の、被災者の方々の忍耐はもう限度ですよ。耐乏生活は限界に来ておる。そして、新聞には出ておりませんが、いらいらが募って精神的な病にかかった人が今や出始めております。残るも地獄、去るも地獄。どうせ外で自殺するんだったら、警戒区域の中に入って田畑を耕したい、こういう訴えもありました。  私は行きまして、一番痛感したのは、政治に対する不信です、現地の方々の。総理もお忙しい中に行かれました。六月九日の総理の日程は、視察の時間が十分間、見舞い箇所は二カ所、五分間と十分間、計十五分間、現地滞在時間は二時間十分。それに引きかえて天皇、皇后両陛下の御視察、御見舞いは、七月十日、視察時間上空より二十分、お見舞い箇所は八カ所、おのおの二十分から二十五分間、床に座られて被災者と懇談を続けられた。大変感動を皆さんしておられました。現地におられた時間は、総理の二時間に比べて両陛下は八時間です。私はその陛下の心が伝わったと思う。  なぜ私がそういうことを言うかと申しますと、それに引きかえというのです。国土庁の鹿島防災局長はどなた、手を挙げてください。――ああ、あなたですか。あなたは七月十八日のNHKの特別番組、出てくださいと言われて出なかった。それでNHKはやむなくインタビューをしました。ここにビデオがあります。こういうことをあなたは言っている。驚きましたね。これをそのまま私は文章にしています。「補償をする理由がなりたたない」。総理、よく聞いておってください、後で関係してきますから。「自然災害の回復は自主救済しかない 行政からの災害救援対策にはあらゆる対策でバランスが必要だ 過去も現在も将来も他に救済の道はない 国、県も個人に補償することは厳しいことは当然のことだ」、これは全く血も涙もないお話ですよ。特にこの絵を見たら、そんな、あなた、昔やったら不忠の臣ですわな。  それでですね、私はここで一致しているのは何が一致しているかというと、つまり、我々いろいろしてくださいと言っていることを政府の方は、この防災局長言葉に代表される、バランスがとれない、前例がない、あるいは整合性が必要である。  そこで、私は聞きたい。二つの面で聞きたいのです。  一つは、バランスと言うならばバランスをとるべき対象があるはずだ。今までこのような、今度の島原の災害のようなあれがありましたか。警戒区域を指定した災害がありましたか。ないでしょうが。三カ月にも及ぶ災害がありましたか。ないんですよ、対象が。だからバランスのとりようがないじゃありませんか。  それからもう一つ、これは橋本大蔵大臣にぜひお願いをしたい。現地の人はまず予備費というものを非常に期待しているのです。あなたは七月九日に閣議で、例の五億ドルの、九十億ドルの為替差損に対する五億ドルの補てん、七百億円出されましたね。閣議決定された。そのときあなたは記者会見をして、もう予備費は六百八十億円しかないんだと、そうですね、それでこれは、もう雲仙の対策も要るし、大変なんだから各省倹約してくれというようなことを言われたそうです。そうだと思うのです。  どうして六百八十億円しか残っていないかというと、ここに問題があるのです。当初、平成三年度の予備費は三千五百億円だったですね。それが修正されましたね、まず千五百億円に。どうして二千億円減ったか。それが例のあれですよ、九十億ドルの湾岸ですよ。特別公債ですね。まずそれで――いや、首をひねったってだめです、そうでしょうが。それから今度は、いいですか、まずそれで減って、今度は四月三十日の日、百六億を出されましたね。これは私は悪いとは言いませんよ。例の湾岸戦争後のクルド族の難民の方々にあなた方はやった。これはGCCの基金じゃないんですね、国連災害救済調整基金というやつ。そして、これは交換公文がない。かくして、だんだん減っていって、千五百億円から減っていって、六百八十億円になったんです。だから私は、この湾岸の支援とバランスがとれないのではないか、そういうことを申し上げたいんですよ。  それで私は、ここに、現地でも聞きましたが、島原選出の国会議員、九名おられます、与野党とも。社会党一名、民社党一名、あとは自民党の方々ですが、全部、懇談会されたときに、今の基金とそれから特別立法、賛成されたそうです。これは、野党の全部、お聞きのとおり一致していますから、何とかこの辺で総理と大蔵大臣のいいお答えをお願いをしたい。きょうはそれで終わります。最後にそれをお願いします。
  249. 西田司

    ○西田国務大臣 お答えをいたします。  政府におきましては非常災害対策本部を設置いたしまして、今次災害状況とそれから地元の県、市、町の要望等を踏まえながら、被災者等の救済のために政府として何をやるべきか、どういう施策をとっていくべきか、あらゆる角度から検討をいたしました。先ほど総理からもお答えがございましたように、二十一分野八十三項目にわたる雲仙岳噴火災害に係る被災者等の救済対策を講じたわけであります。  そこで、これらの措置につきましては、御承知であると思いますけれども、従来とは変わった三十事項の特別基準を設けたり、政省令の改正をいたしておるわけでございます。そういう考え方に基づきまして、現在、政府は全力を挙げて島原火山対策に取り組んでおるところでございます。  なお、過去の災害との比較がございましたが、申し上げるまでもございませんけれども、火山災害につきましては、五十二年の有珠山噴火災害、それから五十八年の三宅島噴火災害、それから六十一年の伊豆大島の噴火災害があるわけでございます。――しばらくお聞きをいただきたいと思います。  このような考え方に立ちまして、今回の対策というものが過去の災害とどのように変わっておるかということをお話をいたしますと、まず避難対策といたしましては、旅館、ホテル、客船というものを今回新たに供給をいたしました。二番目には、住宅対策として災害公営住宅の建設。農林漁業者に対する資金対策として、災害貸付限度額の引き上げ及び激甚災害法の適用措置に準じた特別措置を実施いたしました。中小企業者の資金対策として、災害貸付限度額の引き上げ及び信用保険の特例措置の実施をいたしました。さらに五番目といたしましては、雇用確保対策として雇用調整助成金の支給をいたしました。最後に、教育対策として私立高校等の仮設校舎等の建設の助成を行っておるところでございます。  今回私ども考えております御指摘の特別立法につきましては、現時点におきましては、現行制度の拡大解釈あるいは運用によりましてこのことは対処できる、こういう考え方を持っておるわけでございます。  最後に基金の問題について御指摘がございました。これは、住民救済や復旧のための基金の設立については、地元地方公共団体の意見、要望というものをよくお聞きをいたしまして、そして雲仙岳周辺地域については、今後火山活動の鎮静化を待って被災施設の復旧等に万全を期していくとともに、災害状況を踏まえながら地元地方公共団体と連携をしつつ、相談をしつつ、必要な措置について検討を行っていきたい、このように考えておるわけでございます。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 質問に答えていないですから一言言わせてください。――わかっています、一言許してください。  基金ですね、基金の財源は、約一兆円、二年度の剰余金があるでしょう。半分は国債に回さなければいけませんが、あと五千億あるんだからそれを考えていただきたい。  それともう一つは、もう質問がありましたが、今度の証券不祥事で補てんをされた各企業、利益分のそれを没収するという案があるですから、それをちょうどいいから千七百億円出したらどうですか、その基金に。それだけ申し上げておきます。
  251. 渡部恒三

    渡部委員長 もうこれでどうですか、大分お話しなされたから。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ええ、あさってやりますから、また。
  253. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日水曜日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会