○伊藤茂君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました二
法案について、
総理に
質問をいたします。
この
法案は、これからの
世界における日本の生き方、進路についての政府の
姿勢を象徴するものであると私は思います。しかし、どう
考えても政府の
考えは間違いであります。私は、ポスト冷戦の
国際社会で我が日本が「名誉ある地位」をどう占めていくのか、政府とは違うもう
一つの積極的な
貢献の
考えを述べながら
質問いたします。
総理、あなたはわずか一年足らずの期間のうちに、重大な政府
見解を百八十度転換をさせました。昨年、
平和維持軍については、
武力行使を伴うということで、
自衛隊が
参加することはたとえ後方
支援であっても
憲法上許されないと
総理自身も法制局長官も繰り返し強調してきたのに、今は
平和維持軍を含む全面
参加を
提案し、それは
憲法九条に違反するものではないとし、加えて政府統一
見解では「従来の政府
見解とも整合性を有する」としています。政府
見解を根底から覆しているものであります。先ほどの
説明を伺いましても、弁解にもなりません。あなた方が
国会で答えてまいったことと全く逆のことをここで言うのでしょうか。白は白、黒は黒であります。昨年の
見解を否定した理由をはっきりと述べてください。(
拍手)
あなたはもう
一つ変わりました。昨年の
国会論議を通じて、
PKOへの
参加については
自衛隊とは別個にというのが共通の認識、
合意だったと思います。しかし、この
法案は、別個から
自衛隊そのもの、併用でと変えました。
自衛隊を部隊として公然と
派遣することにしたのであります。重大な変更です。
平和維持軍を軍、フォースでなく隊と言うなど、よろいに衣を着せたつもりでございましょうか。我が党は、日本の
国際貢献にとって重要なのは
国民合意であることを繰り返し要求してまいりましたが、あなた方はそのベースを変えたのであります。この重要問題をどうして変えたのですか。犬型間接税は導入しないと公約しながら消費税を強行導入したのと全く同じであります。変えた理由をはっきり
説明してください。
事柄は
憲法判断に関する重要な問題であります。私は、この点で
総理がどういう御信念をお持ちなのかを伺いたい。あなたの党に設置されている
国際社会における日本の
役割に関する特別
調査会の中間
報告草案なるものが報道されております。そのほかの場所でも小沢会長、すなわち前幹事長が
見解を述べて、
湾岸戦争での多国籍軍への
参加も可能であり、積極的に検討する、防衛計画の大綱を見直すなどと述べています。
国連協力なちば
自衛隊の行動に
憲法の制約は一切ないという
趣旨であります。
総理、あなたはこれを是としますか、非としますか。拒否すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
さらに、最近の
PKOに関する
国連の
議論についてどういう認識をお持ちでしょうか。最近の
国連では、
平和維持機能、平和創造
機能の強化が真剣に
議論され、
湾岸戦争のようなことが二度と
世界で起きないようにどうするのか、
PKOだけでなくPMO、すなわちピース・メーキング・オペレーション、
紛争予防
措置の
機能強化、
PKOにおける文民の
役割の拡大、
PKOの
活動範囲が選挙監視、人権、警察など大きくすそ野が広がっているなどが最近の
議論の新しい特徴であります。
PKOと
自衛隊問題だけで頭がいっぱいになっているのは旧時代の発想であります。過去しか知らないで将来を見ないのでは、目が後ろにあって前にないというのと同じではないでしょうか。
総理は、
国連の
平和維持機能の今後にどういう見識をお持ちたのか、お聞かせください。
私は、政府に大きな平和戦略がなくて、個別の問題である
PKOと
自衛隊だけに没頭しているとしか思えません。
総理、今
世界が音を立てて新しい歴史を刻んでいるのです。冷戦時代は終わったのであります。歴史的な新しい現実を認識して、スケールの大きい発想で新しい政策を
考えようではありませんか。私は、ポスト冷戦、ポスト湾岸の
世界で、我が日本が誇りある
役割をすべきだと思います。ヨーロッパではパリ憲章やCSCEを
中心に冷戦後の新しいシナリオが実現しました。アジアでも事態はよい方向に進展しています。なぜ
総理は、CSCA、すなわち全アジア安保
協力会議のような大きな平和構想と展望を提唱しないのですか。今は、米ソに大胆なアジア軍縮構想を提起する絶好の今機会ではありませんか。それは既に幾つかの国から
提案され、提唱されている問題であります。同時に、それはまさに日本に最もふさわしい提唱ではないでしょうか。どうお
考えになりますか。
自衛隊の
海外派遣について、今中国や韓国、朝鮮民主主義人民共和国など近隣諸国から懸念の声が上がっています。報道によれば、昨日、中山外務大臣と会談した中国、韓国の外務大臣が強い懸念を表明し、また、昨日、韓国の盧泰愚大統領も
自衛隊海外派遣に慎重な対応を求めています。最も近い国から
国会審議の前の日にこのような発言があるとは重大なことであります。私は、この
法案に示されたような発想をやめて、新しい軍縮時代の構想を提起し、歴史の反省と将来への誓いを鮮明に内外に宣言する中から、
世界とアジアに
貢献する日本の進路が開けると思いますが、近隣諸国のこの懸念にどう対応されますか。(
拍手)
総理、私は
提案します。このような中で今
PKOに
派遣しようとしている
自衛隊についても、私は大胆な削減、大胆な改編の計画を提起すべきであると思います。仮想敵国を設定した戦争への準備はもう要らたいのです。大きな戦争をする危険性はどこにあるのですか。
自衛隊の削減計画を立て、平和
協力、平和国土建設、
災害対策など、新しい
組織を創設していく展望の中で
PKO協力を具体的に構想すべき時代を迎えていると思います。当然削減した軍事費はこの新しい分野に振り向けます。当然のことであります。これこそが新時代における本当の軍縮であり、
国際貢献ではないでしょうか。我が党は、このような
立場から、非軍事、民生、文民による
活動を基本とする
組織を創設し、三年後を目途に
国際平和
協力庁を設立しようということを具体的に
提案をしているのであります。(
拍手)
世界が新しい軍縮時代を迎えて、どの国も軍縮政策を推進し軍事費を削減しているときに、日本だけが
自衛隊を強化して
世界公認の軍隊として
海外でも
活動させようとするのですか。軍縮をして
国際貢献をするのが
世界の歴史の方向なのに、ことしも五・四%の防衛費拡大の概算要求など、軍拡をして
世界に軍隊を出す方向は、まさに古い頭であります。あなた方自民党は歴代、
憲法を邪魔にしてきましたが、
憲法九条があるからこそできる積極的な平和外交をしてこなかったのではないですか。そういう軍縮構想について
総理はどうお
考えですか、お聞かせください。(
拍手)
そういう
立場から、私は幾つかの具体的な
問題点を指摘して答弁を求めたいと思います。
まず、
武器の
使用と範囲について、
派遣される自衛官については
国連が必要と認める限度でということで、事実上制約がありません。
内容は不透明であります。事柄は具体的であり、抽象論では困ります。今までの
PKOの
武器の実績は御承知でしょう。
国連事務総長が認めたら、対戦車ロケット砲や装甲車も持たせるのですか。
外国人のための
武器使用もあるのですか。共同で行動している
外国人が攻撃された場合に、それは
対象外ということなのでしょうか。はっきり具体的にお答えください。
武器の
使用と
武力行使の概念を分けたことは
国際社会では通用しない、言葉の遊びやへ理屈でごまかしてやる
姿勢はよくない、これは小沢前幹事長発言として報道されている言葉でございます。どう思われますか。
また、撤収の条件の問題があります。
法律には規定がなくて
実施計画で、
派遣の終了を含む
実施計画の変更があり、
業務の中断で一時退避するとしておりますが、
国連の統一した指揮下で
活動する
PKOから、危険な状況になったときに日本の
自衛隊だけが撤退することが
国際的に通用するのでしょうか。だれがその判断をするのですか。現場で突然
発生する事態に対して首相官邸から現場指揮することは不可能でありましょう。いかがですか。
さらに大きな問題として
国会承認問題があります。
自衛隊法七十六条、七十八条で、緊急出動や治安出動でも
国会承認が義務づけられているのに、
海外に出動をするのについて
報告だけで
承認は不必要というのはまさに論外であります。(
拍手)これは
自衛隊管理の基本である
シビリアンコントロールを排除するものであります。議会を無視することは
国民を無視することである、このことを政府は忘れているのでしょうか。
総理の
見解を伺います。
私は、政府がこの
法律の成立をなぜ急ぐのか、いつ、どこに急いで
自衛隊を
派遣する必要があるのかという
国際情勢の判断を伺いたいのであります。また、カンボジアが重要な
国際問題の焦点になっておりますが、それに対する政府の
見解を聞きたいのであります。
この七月、私たち与野党の政策担当者でカンボジアを訪問いたしました。その後の状況を見ますと、特徴的なことは、カンボジア各派がシアヌーク殿下を
中心に自主的に和平と建設を進めようとする意欲と
努力が高まっていることであります。来月にはパリ
会議で調印という方向に進んでいることを私は本当に喜んでおります。もはや大
規模な
平和維持軍を
派遣して管理するような状況ではございません。このような進展の中で日本のとるべき
措置は、カンボジアでの自主的な和平を支持し促進する
役割を果たしながら、戦乱で破壊された国土の復興と再建のために
努力をすることであります。軍事的に管理するかのような印象を持たれるような行動は絶対に避けなければなりません。政府は、この
法案によって
自衛隊のカンボジア
派遣を現実にやるのですか、計画しているのですか、お答えください。
国際緊急援助隊派遣法の
改正についても、私は常設の
組織として設置されるべきだと思います。
自衛隊を部隊として導入するという発想ではなくて、
自衛隊員を含む広い分野からの志願、公募で新しい
組織をつくるべきではないでしょうか。なぜそういうわかりやすい発想が持てないのか、
国民は疑問にしていると思います。
総理、
最後に改めて新時代の
世界の中の日本の進路についてのあなたの
見解を聞きたいのであります。
ポスト冷戦の
世界の中で、日本国
憲法や
国連憲章の精神が今新しい構想を持ってよみがえるときが来たと私は思います。
世界が新しい歴史に向かって熱っぽい
議論をしているときに、また懸命の
努力をしているときに、政府は
自衛隊派遣問題だけに夢中になっているかのように見えます。もっともっと大きな平和戦略を今こそ立てるべきではないでしょうか。
先日、ドイツの新聞シュピーゲルにバイスゼッカー大統領が次のような
趣旨の
見解を述べておりました。
湾岸戦争は終わった。このようなことが二度と起こらないよう新しい
努力を
国連中心にやらなければならない。同時に、我がドイツは日本と一緒に
国連安保理常任理事国を目指すということでいいのだろうか、私はそうは思わない。人類は今、地球
規模の環境や貧困に迫られている。今、ブルーヘルメットと同じくらいのグリーンヘルメットという大きな目標を立てなければならない。我がドイツは、そういう人類の新しい
課題の提唱者となり、担い手となりたい。
そういう大きな構想や発想が政府にないことを私は本当に残念に思います。
世界の首脳と肩を並べる先見性のある大きなスケールで
国民に語る政治が今こそ求められているのではないでしょうか。そういう新しい座標軸を持たないこの
法案に、社会党は反対であります。私たち社会党は、
世界に
貢献するもう
一つの道を積極的に主張してまいります。
総理、現臨時
国会はあとわずかの日にちしかございませんが、この
法案の行方にはまだ時間がありそうであります。改めて再検討し、全政党・会派で協議し、文字どおり
国民合意のものにやり直そうではありませんか。それを強く求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君
登壇〕