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1991-09-30 第121回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月三十日(月曜日)     午前十一時開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 柿澤 弘治君 理事 田原  隆君    理事 谷垣 禎一君 理事 中川 昭一君    理事 船田  元君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    井奥 貞雄君       今津  寛君    上草 義輝君       小澤  潔君    大石 正光君       岡田 克也君    高村 正彦君       鴻池 祥肇君    佐藤謙一郎君       斉藤斗志二君    園田 博之君       武部  勤君    福田 康夫君       福永 信彦君    増子 輝彦君       町村 信孝君    松浦  昭君       光武  顕君    宮下 創平君       村井  仁君    伊東 秀子君       上田 卓三君    上田  哲君       緒方 克陽君    沖田 正人君       川崎 寛治君    五島 正規君       田口 健二君    山中 邦紀君       吉田 正雄君    東  祥三君       遠藤 乙彦君    山口那津男君       渡部 一郎君    東中 光雄君       古堅 実吉君    和田 一仁君       楢崎弥之助君   出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         自 治 大 臣 吹田  愰君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)坂本三十次君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君   出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       伊藤 博行君         閣法制局長官  工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      秋山  收君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房審         議官      石坂 匡身君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省理財局次         長       米澤 潤一君         厚生大臣官房総         務審議官    大西 孝夫君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         消防庁次長   渡辺  明君   委員外出席者         国際平和協力等         に関する特別委         員会調査室長  石田 俊昭君     ――――――――――――― 委員の異動 九月二十七日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     村井  仁君 同月三十日  辞任         補欠選任   中谷  元君     福永 信彦君   増子 輝彦君     佐藤謙一郎君   松浦  昭君     井奥 貞雄君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     松浦  昭君   佐藤謙一郎君     増子 輝彦君   福永 信彦君     中谷  元君     ――――――――――――― 九月二十七日  海外派兵新規立法反対に関する請願東中光雄紹介)(第一六二六号)  同(古堅実吉紹介)(第一六二七号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案自衛隊海外派兵反対に関する請願外一件(長谷百合子紹介)(第一六二八号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案成立反対に関する請願上原康助紹介)(第一六二九号) 同月三十日  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案反対等に関する請願東中光雄紹介)(第一九一三号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案反対に関する請願楢崎弥之助紹介)(第一九一四号)  同(長谷百合子紹介)(第一九一五号)  同(藤田スミ紹介)(第一九一六号)  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案成立反対に関する請願楢崎弥之助紹介)(第一九一七号)  同(長谷百合子紹介)(第一九一八号)  海外派兵新規立法反対に関する請願古堅実吉紹介)(第二〇〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月三十日  国際平和協力の強化に関する陳情書(第一六二号)  国連平和維持活動への自衛隊派遣反対等に関する陳情書外一件(第一六三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案内閣提出第五号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ――――◇―――――
  2. 林義郎

    ○林委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田康夫君。
  3. 福田康夫

    福田委員 現在の日本システム国際社会の秩序に合わない、こういうふうなことは湾岸戦争を通してだれの目にも明らかになってきた、こういうふうな状況であります。したがいまして、我が国は、日本システム国際世界システムに合わせるべくいろいろな努力湾岸紛争のさなかから続けてまいったのでありますけれども、例えば医療活動それから物資の輸送とかそういうふうな後方支援、これを実現するべく国連平和協力法案を提出するというふうなこともございましたし、また避難民の移送、これを実現するための自衛隊機派遣、こういうことも努力をいたしました。また、資金協力、これは実現ができたわけでありますけれども、そのほかの今申しました二点につきましては、この人的貢献については実現をしないできたわけでございます。しかし、そのままでいいというわけにはいかないので、その後紛争終了後もそういうふうな努力を続け、また一部実現をしてきたわけであります。例えば、クルド難民医療を分担するとか、また掃海艇派遣、こういうふうなこともしたわけであります。  現在議論をしておりますこのPKO法案、これなんかもそのための一つ努力であるというふうに言ってよろしいかと思うわけでありますけれども、このような努力を続けているということは、日本国際社会の中で孤立化をすることのないように、そして国際社会の一員として立派な務めを果たすことができるようにする、できるようになりたいというふうな努力のあらわれであるわけであります。  そこで、外務大臣一つお尋ねいたしますけれども日本PKO法案PKO出動、そういうふうな人的な貢献を果たそうとしているということに対して、海外評価考えはどのようなものであるか、お聞かせをいただければ幸いでございます。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 海外における日本PKO派遣に関する認識というものが、今回私、ニューヨークに参りまして、国連事務総長デクエヤル事務総長日本の現在の国会におけるPKO法案審議状況について御説明をいたしましたところ、国連としてはPKOがこれから非常に重要な問題になってくる、そして、単なる人的な貢献だけではなしに、資金的な貢献もぜひひとつ協力をお願いしたいという御要請がございました。  また、カンボジアのSNCに関しては、シアヌーク殿下から、カンボジアのいわゆる和平が成立をして、そして国連暫定機構ができ上がるといった場合には、ぜひひとつ日本PKO協力を期待したい。また、フン・セン首相もそのような意見を述べておられます。  また一方、アジア近隣諸国の中でも、特に隣国の韓国の外相とお話をいたしました際に、PKO考え方を申し上げて十分御理解をいただくように説明をしてまいりました。  中国銭外相に対しても説明をいたしましたが、自衛隊派遣については慎重にひとつやってもらいたいという御意見がございましたから、私は会談の最後に、中国国連常任理事国として現在国連協力をしておられる、日本国連のいわゆる安保理の決議の中でこのようなPKO活動をやろうという考え方が基本である、考えでみれば中国と同じような協力をしたいということであるということを申し上げてまいりました。
  5. 福田康夫

    福田委員 国内世論の方も大変最近著しい理解を示してきておるわけでございまして、これは新聞社調査でありますけれども、八年前にPKOでもって自衛隊海外派遣しようということに対して、賛成が二三%、反対が七〇%ということで圧倒的に反対が多かった、こういうことでありましたけれども、同じ新聞社の今年六月の調査では賛成が四五%にふえ、そしてまた反対は一三%に激減をしておる、こういうふうなことであります。これは、国民が現実を直視している、そして合理的に物事を判断していこう、こういうふうな態度を示しているものであるというふうに私は考えておるわけであります。  そこで、人的貢献の中で我が国がこれまで果たした最大の実績、今のところでありますけれども、これは掃海艇派遣、こういうことであります。これは自衛隊海外出動というふうなことで画期的な出来事であったわけでありますけれども、この掃海艇も先般九月の、今月中旬に作業を終了し、そして来月の中旬には帰国をすることになりました。  この掃海艇派遣というのは、国内における決定がおくれまして、出動した、ペルシャ湾に到着した時期からいいますと、諸外国に比べますと一番おくれてしまった、こういうふうなことがございましたけれども、しかし、三十四個の機雷を除去した、そして無事に任務を終了して帰国するということになったわけでありますけれども、この作業中に事故やそれから何らかの障害があったでしょうか。これは防衛庁お尋ねしたいのですけれども
  6. 畠山蕃

    畠山政府委員 掃海作業中におきます事故は一件もございませんでした。ただ、何せ約五百十名からの者で数月月間にわたる厳しい作業環境でございましたので、一、二名の病人が出たという事実はございますが、事故といったものはございませんでした。
  7. 福田康夫

    福田委員 病人の一、二名、これは五百人ですから当然そのくらいのことは起こるだろうと思いますけれども事故一切なしというのは大変すばらしいことであったというふうに私は思います。また、艦船の故障もなく、艦船可動率一〇〇%というふうな快挙をなし遂げたわけであり、またそういうことを他国の専門家大変評価をしておるというふうなことが報道で見られておるわけであります。  私も実はこの掃海艇ペルシャ湾に到着したときにア首連のアルラシッド港に赴きまして、そして落合軍司令を初め幹部の方々とお会いし、また若い隊員にもお会いしてきましたけれども落合司令は、隊員を無事に家族のもとに戻すんだ、これが私の最大任務であるというふうなことを言っておりましたし、またそういうふうな隊長の考えを反映しまして、若い隊員たちも非常に明るく、また一生懸命努力をしてやろうというような気持ちにあふれていたように私は見受けております。  しかしながら、出発前はさまざまな憶測がなされまして、危険だから、危険な作業だから行ったら死ぬんじゃないか、そんなところ火は行きたくないとかいうふうな隊員の不安ももちろんありました。そしてまた、国内でもこの派遣をいろいろな意味でもって危険視をするという、危惧をしていたわけであります。また、海外諸国反発がかなりあったというふうに私は記憶をいたしております。  しかし、結果は極めてよかったし、成果も十分に上がったと私は思うのでありますけれども防衛庁長官はこの点につきまして、今回掃海艇派遣、これはどのように評価をされ、また、防衛庁自衛隊活動の中でどのような位置づけをなされていらっしゃいますか、また今後なされようとしていらっしゃいますか。
  8. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、ペルシャ湾への掃海派遣部隊でございますけれども、四月二十六日に出発いたしまして、六月五日から今月の十一日まで三カ月余りにわたって、極めて厳しい環境もと作業を続けてまいりました。そして、この二十三日に現地を出発し、目下帰国の途についておりまして、来月の末ごろには帰ってくる、こういうふうに予定されておるわけでございますが、その間、御指摘のとおり事故もなく、また体調を崩した者も二名でございまして、本当に落合司令もと一致団結いたしまして任務に当たったわけでございます。  そして、時期がおくれましたので、他の国に比べまして現地到着が遅うございましたので、処理した個数こそ必ずしも多くはない。しかし、大変難しい状況下にある、潮が速かったり浅いところにございますものを含めまして三十四個の処理をし、ペルシャ湾船舶航行の安全を確保したわけでございまして、これは大変意義のあることだと思いますし、先ほども指摘ございましたけれども、諸外国からも、特に私ども外国の海軍の関係者などからもよく話を聞きますけれども、本当に日本掃海派遣部隊技術も立派であるし、旺盛な士気のもと、立派に任務をなし遂げたと高い評価をちょうだいしておるところでございます。  また国内におきましても、先生指摘のとおり、この任務というものが決して一部に懸念されたような、憲法に触れるとかあるいは日本の進み方を誤らせるとかそういうものではなくて、全く平和目的のものであり、また我が国船舶航行の安全、あるいはあの地域、さらには世界全体に対する貢献という意味で大きな意義を有したという御認識がだんだん高まっているところでございまして、まことによかったな、このように考えております。もとよりこれは、現在の憲法もと、そして自衛隊法の第九十九条に基づく行動としてなされたわけでございます。そういった意味では、私ども自衛隊といたしましても、国民皆様方の、また世界の御期待にこたえ得たと思って喜んでいるわけでございます。また、将来に向かってどうかということでございますが、将来に向かいまして、掃海作業云々というのではなくて、先生も先ほど御指摘のように、日本がやはり国際社会において、貢献していくというよりも当然の役割を、責務を果たしていくという面において、単に資金面だけではなくて人的な面でも仕事をしていかなくちゃならぬ、こういうことになると思います。その際に、もとより日本国民全体として考えることでございますけれども自衛隊のこれまで蓄積してまいりました経験なり能力というものをそういった面でも活用しろ、生かしていけというふうな御判断が日本の政治全体として下されるならば、やはりこれからもそういった面で私どももお役に立ってまいらなくちゃいけない、このように考えておるところでございます。
  9. 福田康夫

    福田委員 心配していました海外からの反発も、これも先ほど外務大臣の御答弁に一部ございましたけれども、これは外交努力も相当なされたというふうに私理解いたしておりますけれども、その結果、その反発もかなり薄らいできている。今後もこの努力は続けていかなければいけないというふうに私は思うのでありますけれども、大変よい方向に向かっているというふうに私は考えております。  この掃海艇派遣で一番よかったことは、最大の収穫と申しますか、これは、先ほど御説明ございましたとおり安全作業に徹して無事故で帰ってくる、こういうことになったということではないかと私は思います。十分な訓練とそして適切なる指導がありますれば、危険と思われるような作業も無事に遂行できるということが実証されたわけでございまして、このことは、海外経験の乏しい自衛隊にとりましても、自信をみずからつけるということになった貴重な体験ではないかというふうに私は思います。PKOもとかく危険な作業だというふうに思われていることはこれはもうやむを得ないのでありますけれども、万全な準備訓練ということがありますれば、危険の度合いも軽くすることはできるというふうに私は思っております。  実際に、PKO先駆者でございますスウェーデンPKO任務中の殉職者、これは何人かということで調べていただきましたら、PKOスウェーデンにおける組織化以来九名しかいない。しかと言っちゃいかぬかもしれぬですけれども、九名であるということであります。これは単純比較はできません。できませんけれども数字規模比較ということで申し上げますと、自衛官殉職者、これは我が国の過去十年間の自衛官殉職者が二百十一人いるわけです。そしてまた、警察予備隊発足から二十五年間、合計千五百人、こういうふうな数字が挙がっております。また警察庁の公務災害、これは同じ二十五年間をとりますと六百九十人であるというふうなことを考えますと、もちろん単純比較はできませんけれども、九名というのは非常に少ないな、こういう印象を私は受けております。同じ人命のロスということで考えるならば、交通事故死、これは今、年間一万人を下らない、こういうふうなことでありますので、それから考えても、本当に万全なる措置をとってそういうふうな任務を遂行しているんじゃないかな、こういう予測を私はしておるわけであります。  このような安全な任務遂行ということをするためには、これはまた十分な準備訓練が必要である、こういうふうに私は思うのでありますけれども、この点につきまして、この法案の十五条に「隊員はこ「研修を受けなければならない。」という一項が入っております。  そこで、研修の具体的な内容についてちょっとお触れ願いたいのですけれども、簡単で結構でございますが、研修の中身ですね。これは実技もありますでしょうし、そしてまた語学研修とか、またいろんな知識を入れなきゃいけないということもあろうかと思います。またそれから期間ですね。各国の研修期間を見てみましたならば、短いのは二週間ぐらいというものもございました。比較的短い期間なんでありますけれども、そういう短い期間研修というのはできるものかどうか。それから場所なんでありますけれども研修センターというものは今ないと思いますが、将来これを設置する準備はあるのかどうか。そういうふうなことについてひとつお答えを願いたいと思います。
  10. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘研修重要性認識いたしまして、法案第十五条に規定しておるわけでございます。基本的な研修訓練についての考え方といたしましては、やはりこの法案に基づきます平和協力業務を行うために関係行政機関協力を得る必要がございまして、そういう関係行政機関から必要な技術能力を有する方々に御参加をいただくという大前提がございます。したがいまして、そういう意味におきまする訓練とか研修につきましては、各関係行政機関において所要の訓練等を行っていただくというのがございます。他方、それだけでは不十分でございまして、やはり任国の、行く派遣国の事情、それから、そもそも平和維持活動についての基礎知識等につきまして、十分なオリエンテーションと申しますか、研修をする必要があるというふうに考えております。  場所等につきましては、先ほど先生研修センターという御提案がございましたけれども、今回この法案を御承認いただきますと、基本的にはやはり既存の行政機関にいろいろと研修施設がございます。あるいはそのスタッフ等を活用させていただきまして、まずそういう意味での運用と申しますか、研修を充実させていくということがまずさしあたって重要であるというふうに認識しておる次第でございます。
  11. 福田康夫

    福田委員 研修については、やはり将来長く続くことでございますし、十分な訓練をするというためにも、立派な研修センターをぜひつくっていただいた方がいいのじゃないかというふうに私は思うわけであります。  ちょっと話題、飛びますのですけれども一括審議となっております国際緊急援助隊法、この一部改正案について少しお尋ねをいたします。  国際緊急援助隊法案、この方は人道上の活動でございまして、日本平和外交の象徴として位置づけていきたい、こういう活動でございます。現在は諸条件の制約がありまして、人数も二、三十人、最近五十人というのもございましたけれども、その程度規模出動している、こういうふうなことでございます。今回の改正によりまして自衛隊参加を求め、自衛官参加を求めまして、従来より飛躍的に援助活動内容を充実させる、こういうふうなことであろうと思います。  そこで、一体じゃ規模はどのくらいのことを考え自衛官協力をしてくださるか、これをお尋ねをしたいと思います。どのくらいの想定をされていらっしゃるでしょうか。
  12. 畠山蕃

    畠山政府委員 今回の法律改正によりまして自衛隊参加する場合でございますけれども、これはあくまでも外務大臣との協議に基づいて、そういう必要性が認められた場合に行うということでございますし、また個々の災害状況その他によって区々に異なるわけでございますので、一概に申し上げることは困難でございますけれども、試みに先般のバングラデシュのケースについて一定の前提を置いて試算をいたしてみますと、我々として考えておりますのは三つのタイプの事業でございまして、一つ医療活動でございまして、この場合には医官約二十名を含む部隊規模で約百八十名程度空輸活動の場合ですと約二百六十名程度、それから給水活動の場合ですと約百名程度派遣する能力があり、またそういう活動ができるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  13. 福田康夫

    福田委員 ざっとこれ単純加算でございますけれども、五百四十名というふうな規模であるというふうに一応想定しておきたいと思います。  それから、手当なんですけれどもPKO法案では十六条に国際協力手当というのがございます。こういうふうな手当はこの緊急援助隊の場合には支給されないのでしょうか。  それからもう一つ研修でございますけれども研修のことについてもPKO法案では規定があるけれども、こっちの方にはないわけであります。ですから、同じ自衛官PKOで出るか国際緊急援助隊で出るか、そこでどのような差が生じるのか生じないのかという、同じような趣旨の活動でありますので生じないのがいいのではないかとは思いますけれども、その辺は実態はどうなっていくのでしょうか。
  14. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  派遣中の待遇、手当の問題についてのお尋ねでございますが、緊急援助隊法の場合は従来と基本的には同様でございまして、派遣される先、国家公務員が公務員出張としている場合、地方公務員、警察、消防等が地方公務員としている場合、それから民間人の場合、それぞれ派遣先が違うわけでございますが、基本的には派遣先からの給料がそのまま支払われる。それから、民間の場合にはJICAの格付で技術専門家として格付されまして、それに従った給料が出るということでございますが、そのほかは旅費それから支度料、日当といった通常の出張の際の手当が出るということでございます。  それから、PKO法案にありますような特別の手当というのは、これはそもそも緊急援助隊の方は危険なところには派遣しないという大前提がございますので、従来そういうシステムはございませんでしたし、今回についても考えてないということでございます。
  15. 福田康夫

    福田委員 先ほどの規模の問題でありますけれども、これは実例を申し上げますと、昨年イランで地震がありました。死者四万人、負傷者十万人、家を失った人五十万人という大変大きな災害でありました。このときにフランスは即時に、これはちょっと私記憶が定かではないのでありますけれども二百人ないし三百人の規模、そして日本は数日おくれて二十四人国際緊急援助隊として派遣をしたわけであります。  それから、もう一つ例を挙げますと、一九九一年、本年のバングラデシュのサイクロン、これで米軍は兵隊を六千人出しました。そして、揚陸用のホバークラフトを使った。日本は五十人出ました。これはそれでも一番多かったのでありますけれども。消防のヘリが二機出ました。この消防のヘリでもって三週間かかって三十トン運んだ資材を、米軍は五十トン積みのホバークラフト一台でもってすぐ片づけてしまった、こういうふうなことでございます。  人数の問題にしましても、これは先ほど五百人という提示がございましたけれども、先ほどのは即時に出るわけではないので、即時に出るのは二百人か三百人かという規模なんでしょうけれども、今後の日本の平和的な活動、これが日本にとっては象徴的な日本国際行動であるということを考えますと、やはり相当規模の人数を出せるような体制というものを考えなければいけないのじゃないかなというふうに私は思います。  それから、例えばホバークラフトというふうなことでありますけれども、これもでき得る限りの装備をするべきではないかな、こういうふうに思っております。これは自衛隊協力なくしてはできないのでありますけれども、その辺自衛隊として協力をしてくださる気持ちがあるのかどうか、これは日本の国是としてこれから深刻に考えていかなければならない問題である。日本は軍事的な行動はできないわけであります。軍事的な行動で貢献しているフランスでさえこういう数百人の人を一どきに出すというふうなこともあるわけでございますので、そういう国と比較しても日本は格段の努力をしなければいけない、こういうふうに私は思っております。  また研修も、これもおざなりのことでなくて、やはり語学の必要もあるだろうと思います。海外活動するのですから、現地の人と交わらなければいかぬ、まあしかし現地語まで勉強するわけにいかぬだろうから、せめて英語ぐらいは十分に話せるようにならなければいかぬかもしれぬですし、また、現地の地理とか風俗習慣、そういうふうなことも知っていなければいかぬ。また、これはPKOも同じでありますけれども国際マナーも身につけなければいけない。こういうふうなこともあるわけでありますので、これは先ほどPKOのところで申し上げましたとおり、十分なこの面における研修をできるような設備を設けるべきではないかなというふうに私は思います。そういうことによって、日本がそういう方面で努力をするんだという姿勢を明らかにすることができるというふうに私は思うわけであります。  そういうことで、私は今回の掃海艇派遣、これは第一歩でおりますけれども、これからスタートして、ますます日本は平和のために大変貢献をする国であるという印象づけを世界に与え、そしてかつそれを実際に実践していくんだというふうな、そういうふうな気持ちを持ってやるためにこの国際緊急援助隊法案を重視していただきたい、こういうことをお願いいたしまして私の質問を終わらせていただきます。  最後ですけれども、ちょっと時間がありますので、防衛庁長官に、自衛隊としてこの国際緊急援助隊にどのような貢献というか協力をなさるか、それだけ一言お尋ねしたいと思います。
  16. 池田行彦

    池田国務大臣 先生指摘のとおり、これから国際社会において日本がいろいろな面で、特に人的な貢献をしていかなくてはならない、そのとおりでございます。PKOだけではなくて自然災害等を中心といたします緊急援助活動におきましても、現在御審議いただいております法律成立いたしますならば、自衛隊の持てる力を活用させていただくことができるわけでございまして、我々としても全力を尽くしてまいりたいと思います。ただ、現在考えられております仕組みというのは、こういった任務のために自衛隊の人員とか装備というものをどんどん調達していこう、装備していこうということじゃございませんで、現在持てる力を活用するという形でございますので、そこにはおのずから限界がございますけれども、その中で可能な限りの努力はしてまいりたいと存じます。  それからまた、もう一点御指摘がございました、そういった国際的な活動をするならばそれなりの教育訓練が必要じゃないか、せめて英語ぐらいはという話がございました。これまでも防衛大学あるいはそれぞれの段階における教育訓練課程において英語教育あるいは国際法も含めた国際常識についても教育しておりますけれども、今後こういった緊急援助隊あるいはPKOといった任務が加わるとするならば、そういった教育訓練の面においてもいろいろ充実を図ってまいらなくてはならない、このように考えておるところでございます。
  17. 林義郎

    ○林委員長 次に、光武顕君。
  18. 光武顕

    ○光武委員 アメリカのブッシュ大統領は、今月の二十七日に、地上、海上配備の短距離核兵器の一方的廃棄を含む大幅な核軍縮計画を発表したわけであります。そしてまた、これに対してソビエトのゴルバチョフ大統領は、翌二十八日、非核世界へ向けての積極的な動きであると直ちに歓迎の意向を表明しました。イギリス、フランスにありましても、短距離核の廃棄あるいは削減を打ち出しておりまして、特にミッテラン大統領は、米ソ英仏の四大核保有国による首脳会議が開かれると明言しておるところであります。また、ゴルバチョフ大統領は、核実験の全面的停止を示唆したとも伝えられておりますし、こうした一連の核軍縮への突然の動きは世界に大きな聳動を与えるとともに、これを歓迎するという各国の声が伝えられた。唯一の核被爆国として、我が国にとってこれら一連の動きは非核世界への大きな第一歩であるとしてまことに喜ばしいと私は考えるのでありますが、本日は、いわゆる平和維持活動法案についての質問に先立って、お許しを得て、この際、外務大臣に次の二点についてお伺いをしたい。それぞれお伺いいたしますので、それぞれについてのお答えを願いたい。  その一つは、ブッシュ大統領の核軍縮演説と、ゴルバチョフ・ソ連大統領のこれを評価するテレビ会見があったわけですが、こういった事柄は本当に私どもにとっては突然ともいえますが、しかしまた、一面、世界が今猛烈なスピードで変化しつつある、その中で両大国がそれぞれイニシアチブをとりながら核軍縮に向けて出発をしているということでありまして、我が国政府としましても、こうした両大国のそれぞれの考え方、そのことに対しまして、当然それに対応していろいろなことを考えられるわけでありますが、この際、こうしたゴルバチョフ・ソ連大統領あるいはブッシュ大統領の一連の動きについて政府はどう受けとめられているか、外務大臣お尋ねしたいと思います。
  19. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、我が国は、委員もお示しのように唯一の被爆国として、かねて究極的な核兵器の廃絶を国際社会に強く訴え続けてまいっております。このような観点から、我々は核兵器が存在しない世界というものが理想でありますけれども、現実的に米ソの超大国が大きな核の保有国であるという中で、先般、七月の末にモスクワでSTARTのいわゆる条約の署名が行われました。さらに、今回、ブッシュ大統領から、地上の核兵器を撤去する、あるいは海上の核の兵器を撤去するというような話を一方的に宣言されたということについて、政府としてはこれを歓迎し、これが、米ソ双方がこの核の削減に向かって努力をされるように心から期待をいたしております。
  20. 光武顕

    ○光武委員 ただいまの外務大臣のお話では歓迎をするということでありますが、私は、先ほど大臣もおっしゃったように、唯一の核被爆国としては、こうした核軍縮へ向けての第一歩ということでありまして、それだけに我が国としてももっと積極的にこの問題に関与していくということが必要ではないか、このように思うわけですね。  そういうことで、この問題、これから先、我が国としては最大の課題として取り上げていかなければならないと思うのでありますが、質問の第二点であります。  この米ソの核軍縮に向けた動きを受けて、我が国の将来、安全保障政策にどのような変化があるのか、そしてまた、それについて政府は今のところどういった考え方を持っているのか、さらにお伺いしたいと思うのであります。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 今後、米ソ両大国を初め、核保有国である中国あるいはフランス、イギリスといったような国々がそれぞれ核の削減に向かって努力をされることを我々は期待しておりますが、日本の安全保障にとってこの問題がどのような影響を与えるかといった問題は、極めて我が国の安全保障上重要な問題だと思います。そういう中で、この米ソの核兵器の保有量がだんだん減っていく、そして均衡のとれた抑止力が漸減する過程において維持されて、そして世界の平和が確保されるということは、極めて我々は歓迎しなければならないと思います。  我が国といたしましても、そのような国際環境が醸成されていくことに協力をいたしますとともに、日本としては核兵器の廃絶に向かって今後さらに、委員のお示しのように主張を続けなければならない、このように考えております。
  22. 光武顕

    ○光武委員 今の点に関して、防衛庁長官、特に御意見があればこの際承っておきたいと思うのでありますが、いかがでしょう。
  23. 池田行彦

    池田国務大臣 私どもの立場からいたしましても、今回のブッシュ大統領の声明、そしてそれに呼応する形でのソ連初めいろいろの動きというものは、世界全体の平和と安定に資することになると期待しておるところでございます。  さて、ただ、こういった動きが我が国の安全保障政策、その中でも防衛政策にどういうふうな影響を与えるかという点から申しますと、御承知のとおり、我が国におきましては、従来から、核の脅威に対しては米国の抑止力に依存するという方針をとっておるところでございます。そして、今回の新たな核兵器に対する政策は、かかる米国の抑止力の信頼性に影響を与えるものではない、こう認識しておりますし、したがいまして今回のような新しい米国の政策によりまして、我が国の防衛政策や防衛力整備の方向というものが影響を受けるということは基本的にない、このように認識しておるところでございます。
  24. 光武顕

    ○光武委員 以上の点について、一応外務大臣並びに防衛庁長官の御意見を承ったわけであります。  核軍縮ということについて、その大きな第一歩が踏み出されているわけでありますが、しかし、そうはいいましても、完全な廃棄というところまではまだかなり距離がある。その意味におきまして、なお我が国の防衛政策の大綱というものもこれから先、従来の体制を維持する、そしてまたそれは核廃棄ということがより鮮明になってくるにつれて変わってくるものと思うのでありますが、以上、外務大臣並びに防衛庁長官の御答弁をお聞きしながら、少なくとも積極的に我が国がこうした核軍縮に力をかすと申しますか、積極的な関与をしていくということで特に要望をいたしておきたいと思うのであります。  私は、このたびの政府提出によるいわゆるPKO法案に対して、本会議、当委員会、三日間にわたりますいろいろな議論をお聞きいたしてまいりました。その中で、さまざまの角度からあるいは反対あるいは修正といったような主張、意見を承ってまいったのでありますが、その中の一つに、この平和維持隊の派遣に関して、シビリアンコントロールをより確実にするために国会の承認が必要であるあるいは必要でない、こういったような、政府提案ではその点について必要性を認めていないと申しますか承認という形での提案でありますが、私はこの法案について改めでいろいろな角度で検討してまいりましたが、結論的に言いますと、政府提案で十分その歯どめができているというふうに認識をいたしております。いわゆるその五原則が明記されている、あるいは隊員の総数もその上限が二千名ということで限定されておりますし、あるいは実施計画の閣議決定、さらに総理は、国会への報告の際、その折の論議を承認に匹敵する重さで受けとめ、計画変更の端緒にしたい、こんな答弁もありました。  そもそもこの平和維持活動ということにつきましては、国連憲章にも明記されているわけではなくて、これまでも法的な整備について作業が進められてまいりましたけれども、結局その都度、現実に実施された幾つかの平和維持活動を規律するガイドラインあるいは指導原則というものの積み重ねによってその概念が今日定着しつつあると私は思うのですね。しかし、またそれがゆえにこの内容が変化していく可能性も十分考えられる。例えば、最近のイラク・クウエートに関する平和維持活動、いわゆるUNIKOMにこの五原則を照らし合わせると、我が国参加は不可能となる。国連サイドの平和活動のガイドラインが今後いろいろと変わるかもしれない。しかしながら、我が方はこの五原則という座標軸は絶対に動かしませんよと内外に宣言するということは、実は非常に厳しい歯どめになるというふうに考えるわけであります。  「国連平和維持活動」の著者として、また、この面での理論的権威者として知られている香西茂京都大学の教授はこのことに触れまして、今回の法案で言えばこれだけ詳しい規定を置いている国はほかにはない、逆に言えばここまで詳しく法律で規定せざるを得ない日本の特殊事情というものが考えられる、こういうふうに述べているわけであります。  こうした見解のもと外務大臣お尋ねいたしますが、各国の派遣、法体制は一体どうなっているのか、日本と比べてそれはさらに厳しいものであるのかどうか、また国会はそれにどう関与しているのかということについて、これまで明確でありませんでしたので、この際お尋ねしたいと思うのであります。  これは先ほど申しました香西教授の著書でありますが、この第三章第三節、「平和維持活動への参加問題」という中で派遣の手続あるいは条件というものがいろいろと示されておりますけれども、私も多少そのことについて承知しているつもりであります。この際ひとつ外務大臣から、その点についての各国の例、例示してお答えを願いたいと思うわけであります。
  25. 中山太郎

    中山国務大臣 お尋ねPKO参加しております各国の状況で政府の調査をいたしました結果では、必ずしもこのPKO活動参加する各国の法律体制は一様ではございません。北欧等のヨーロッパ諸国におきましても、スウェーデン、フィンランドは国連平和維持活動への参加に関する国別の法令を制定しておりますが、デンマーク、ノルウェーは特別の法令ではなく、議会決議の形でいわゆる待機軍の設置を決めております。  国会の関与につきましては、我が方が調査したところによりますと、北欧諸国を初めPKO要員派遣の主要な貢献国におきましては、一般に、要員派遣決定に国会の承認を条件としてはおりません。ただし、オーストリア議会は、下院の委員会の事前の承認が必要とされておりますが、国連からの派遣要請に即時に対応できるよう現在見直し中の由でありますし、またアイルランド議会も事前の承認を必要として、アイルランド議会の事前の承認というものは、非武装のPKO派遣、一定数以下の派遣には承認は不要ということになっております。
  26. 光武顕

    ○光武委員 私、この著書で調べた限りでも同じようなことが書いてあるわけでありますけれども外務大臣は二十六日の答弁の中で、参加する以上タイムリーな対応が必要だと。私も実は、この問題については当然のことながら事柄の性質上、即応性というか迅速性ということが要請されると思うのでありますが、これまで参加した国々の中で大体、国連要請があってそれにこたえて出動する、そういった時間的な問題ですね、この辺はどうなっているのでしょうか。
  27. 中山太郎

    中山国務大臣 第一次の国連緊急隊の場合でございますが、これはコロンビア、デンマーク、ノルウェーは九日ということになっております。それから、国連サイプラスの平和維持隊につきましては、彼らの場合は要請されて九日後に出しているということでございます。それから国連兵力引き離し隊、これについてはペルーは三日で出したということでございます。国連レバノン暫定隊、UNIFILでございますが、これは、フランスについては四日で派遣を決定しているということでございます。
  28. 光武顕

    ○光武委員 先ほどオーストリアの点について触れられたのですが、私も調べてみますと、確かにオーストリアではこの迅速性ということにかんがみて国会の承認について今見直しの検討をやっているということも承っております。全体として見ますならば、私は、日本の場合に先ほど申しました五原則等々の厳しい歯どめがかかっているわけでありますから国会承認は必要ない、こう思っているのであります。しかし、例えば他国の例におきましても、国連の要請がありますと国会の外務委員会等と協議をして、それから政府が派遣を決定するといったような国も見られるわけですね。  私は、やはり念には念を入れよ、こういう言葉もありまして、この問題いろいろと考えてみたのでありますが、そういった事例、あるいはまた一方では即応性、迅速性ということを考えますときに、国会の承認というところまでは必要ないであろうが、例えば外務委員会に匹敵するものが何であるかということは、私も我が国に照らし合わせていずれが適当であるかわかりませんが、例えば安全保障特別委員会、これはこれから、近々でありますが、常任委員会に昇格が予想されている。その安全保障常任委員会ですか、国連から要請があった場合に直ちに国会ないしはこの常任委員会に報告をする。当然のことながら、報告があればそれについての議論が始まるわけでありますから、そういった国連の要請に応じて直ちに国会ないしは安全保障委員会といったものに報告をするというお考えはあるのかどうか、そこら辺をひとつお尋ねをしたいと思います。
  29. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  この国会に対する報告につきましては、法案の第七条で派遣の事前それから期間変更のあるときそれから派遣が終了するときと、それぞれのポイントで、基本的には閣議で決定がなされるというときには常に遅滞なく報告をしなければならないということを書いてございまして、報告の形としましては、これはやはり内閣総理大臣から衆参両院の議長に文書で報告するということが慣行になっているというふうに承知しておりまして、それで、その報告の後、先生指摘の具体的にどういうふうにこの御審議を国会の中でされるかということにつきましては、まさに国会御自身がお決めになられることではないかというふうに私ども理解しております。
  30. 光武顕

    ○光武委員 この問題についてはやはり念には念を入れという議論もあるわけでありますし、国会に直ちに報告をするということによってそこでの議論が、総理が言われるように承認と同じ重みとして受けとめるということを、私はいわば大きな歯どめとして受けとめたい、こう思うわけであります。  次に、池田防衛庁長官お尋ねいたします。  その一つは平和維持隊の位置づけに関してでありますが、今回の派遣について、防衛出動など主任務を定めた自衛隊法第三条に盛り込むべきだといったような意見もありました。そしてその中で、特に副次的任務と受けとめられる雑則の改正で片づけるということはいかがであるかといったような質問がありました。それに対して防衛庁長官は、十分あり得るし、理解できると答弁されましたね。この意味は、今日雑則の中での改正であるけれども、将来あるいはPKO活動自衛隊の中で主たる任務になればという意味合いが込められていると思うのです。  私は、将来はともかく、今日において自衛隊任務は、あくまで第一義的には国土の防衛にあると思うのですね。これは「衆議院欧州及び北米各国政治経済事情等調査議員団(政経第五班)報告書」でありますが、これによりましても、各国では国防軍とこの平和維持隊、維持活動との間には明確な一線を画している。今回の議論の中に、平和維持活動自衛隊が参画することによってあたかも自衛隊が変質するあるいは変質させるといったような思潮が私には感じられるのでありますが、私はそういった立場をとらない。自衛隊の中から選ばれた平和維持隊の海外派遣は確かに画期的な事柄ではありますけれども、これによって自衛隊の本務である国土防衛の理念にいささかでも揺らぎがあってはならないと私は思うのであります。もちろん国際情勢が、先ほど申しましたようにブッシュ大統領の今回の核軍縮といったように激変するにつれて我が国の防衛のあり方が見直されるということ自体は否定はいたしませんけれどもPKO参加を引き受けることによって、例えば予算等についても、防衛体制へのしわ寄せがされるということがあってはならないと私は思うのでありますが、防衛庁長官はいかがお考えでしょうか。
  31. 池田行彦

    池田国務大臣 まず今回の法改正の御提案、その関連における問題と将来問題と、こう二つに分けて御答弁させていただきます。  今回の御提案申し上げております法案におきましては、基本的に現在自衛隊が有する能力、つまりこれは御指摘のとおり国を防衛するという主任務のために有する能力でございますが、それをPKOの面あるいは緊急援助隊の面で活用しようということでございます。そういった意味で第八章に規定する任務としておるわけでございます。  将来の問題として、私がさきの委員会におきまして、第三条にこのPKO任務を規定することがどうかという御質問に対し、そういう考えは十分理解できるし、十分あり得る、こう申し上げたわけでございますが、そういったことをやるためには、やはり日本の安全保障をどう考えるか、その中での自衛隊の役割をどう考えるか、そしてPKOというものをどういうふうに位置づけるか、そういったことにつきまして非常に広範なしかも慎重な国民的な議論を経た上でなくてはならないんだ、こう考えております。そして仮にそういうことがあるとしましても、基本的に自衛隊の主たる任務が、中心の任務我が国の防衛であるということは変わらないわけでございまして、やはりそのための人員なり装備なり予算なりをきちんとやっていく、まずこれは確保しなくちゃいけないんだと思います。さらにそれに加えてPKOのような任務を現在のような八章に位置づけるんじゃなくて三条に位置づけるかどうかということが議論され得るのかな、こう考えておるところでございます。  なお、念のためでございますけれども、第三条に規定されている任務も二通りございまして、一つは、まず三条全体が自衛隊の本来任務と位置づけられております。その本来任務の中に主たる任務とございまして、これが国の防衛、つまり直接侵略あるいは間接侵略に対して行動する、こういう任務でございます。それで、本来の任務であるが主たる任務でない任務として、必要に応じ、公共の秩序を維持するための任務、これがあるわけでございます。  そういうことでございますので、現在の時点におきましては当然三条は考えていないし、将来の問題で三条に位置づけるとしても、主たる任務とは思わない、本来任務のように入れるかどうかということであるし、しかし主たる任務である防衛の任務にいささかも影響することがあってはならないというのはお説のとおりでございます。
  32. 光武顕

    ○光武委員 時間がありませんので前あたりをちょっと省きましてお尋ねをいたしますが、防衛庁では実態把握のために中東にこのPKO活動について調査団を派遣した、それについての報告をまとめた、こういうことでありますけれども、私は、カナダとかあるいはスウェーデンだとかPKOについて先駆的な実体験を有する国々がこれまで訓練あるいは研修ということについてかなりの力を注いでまいっております。したがってそうした経験等については、これをひとつ大いに我々としては学び、そしてそれに倣ってこの訓練研修を進めるべきだと思うのでありますが、こうした調査団の報告、そしてそれに基づいてこれからどんなふうにその構想を進めていこうとするのか、最後にお伺いしたいと思います。
  33. 畠山蕃

    畠山政府委員 御指摘の実態調査のための調査団、行って帰ってきたのは事実でございますが、新聞に出ておりましたようにその報告書をまとめたという段階にはまだ至っておりませんで、なお一週間ぐらいかけてこれを資料を整理して、これから報告書をまとめるという段階でございます。  それで、その結果を踏まえまして、我々としては、まず、自衛隊の中におきますPKO要員の今後の教育訓練ということをやっていかなきゃいかぬというふうに思っておりまして、その過程におきまして、今確定的に決まっているわけではございませんけれども、一応核となる者を北欧の訓練の教育センターといったようなところに派遣をいたしまして、そこで教育を受けた者がこちらへ帰ってきてまた核となってこちらで教育をするといったようなことも含めて、現在その具体的なやり方について詰めている段階でございます。
  34. 光武顕

    ○光武委員 これで終わります。  カンボジア和平の実現性も非常に高まってきておるわけでありますから、PKO活動についての研修訓練についてはぜひともひとつ力を入れていただきたい、急いでいただきたい。最後に要望して、終わります。ありがとうございました。
  35. 林義郎

    ○林委員長 午後一時より再開するとととし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  36. 林義郎

    ○林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、日本社会党を代表しまして、いわゆるPKO法案のこれまでの政府の見解、答弁等々に強い疑念を有するものでありまして、そうした立場から質疑をいたしたいと思います。重要な法案でありますから、海部さん、明快にひとつ、しっかりした論議を残そうじゃありませんか。  まず、一昨日、現地時間二十七日に、アメリカのブッシュ大統領が画期的な核兵器削減の計画発表をいたしました。総理は常々、新しい秩序の中で行われる世界の秩序づくりの中で平和維持活動に云々ということを言われている。たまたまその言葉が一致するのかどうか。少なくともこの衝撃的なブッシュ提案というのは非常に大きい意味を持っています。私は、このブッシュ提案はその内容として「地上発射の短距離核と核砲弾の全廃」「核巡航ミサイルを含む海上・海中配備の戦術核の多くを廃棄し、平常時には米艦船から核兵器をなくす」「大陸間弾道ミサイルMXおよび小型大陸間弾道ミサイル(ICBM)ミゼットマンの移動化計画の中止、を一方的に実施する」「複数弾頭ICBMの全廃について米ソ間で早期合意をめざす」。これはまさに人類が核兵器を持って以来、その折り返し点に立ったと言っていいことであると評価をいたします。総理の言う新しい秩序とこの考えは一致いたしますか。
  38. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 世界が平和を目指しての新しい秩序を模索しておる、そして、それは冷戦構造の発想を乗り越えて、ともに平和と繁栄を目指すものであるということを私はいつも念頭に置いてお答えをし、またそれが非常に望ましい姿だと言い続けてまいりましたが、ブッシュ大統領の演説による核に関する新しいイニシアチブは、私は、この方向に適合したものであって、ブッシュ大統領の勇気あるイニシアチブを高く評価するものであります。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、これは世界の安全保障政策あるいは安全保障政策体系の新局面である、こういうふうに考えるのです。同感ですか。
  40. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、世界が、核による、力による対決、核の恐怖というようなものから核を取り除いていくということについて、米ソが大いなる目標に向かって歩みを進める。その中で、アメリカの一方的な廃棄通告、撤廃通告、ソ連がそれにこたえてそのような方向に動いていくことを強く期待いたしますし、我が国も核の究極的な廃絶というものをきょうまでも願い続けてきたわけでありますから、その方向へ向かっての大きな歓迎すべき流れであると私も同様に受けとめます。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 結構であります。確かに一方的という形はとっておりますけれども、軍備増強競争の中でその重圧にあえぐのは米ソとも変わらないのでありまして、その意味では、アメリカもまた救われたというべき要素を十分に持っております。とりわけSTART交渉でアメリカが優位である海上・海中発射核について、「水上艦艇から攻撃型潜水艦にいたるまでの艦船、海軍航空機からすべての戦術核を除去する」、こうなりまして、「すべての核トマホーク巡航ミサイルの搭載もなくなり、空母搭載の核爆弾も除去される」。つまり平時には米軍艦船には戦術核は載っていないという状況になるわけですから、海に囲まれて、太平洋戦略、日本海戦略を重視してきた日本のあり方からして日本の安全保障政策なるものは大きく影響を受けるということになってくるわけだと思います。そういう意味での日本の位置づけ、この変化、どのようにお考えですか。
  42. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 核の持っておる戦争抑止力というものについては、きょうまで戦後、日米安全保障条約の中で日本は、通常兵器による局地的な侵略に対してみずからの力でこれを阻止するようなことを大前提にしたみずからの防衛計画をつくり、節度ある防衛力の限度はそこに置き、同時に、核に対する不安に対しては日米安全保障条約のもとでアメリカの核の抑止力に頼ってきたことは御承知のとおりでございましたけれども、大きな大きな世界的な米ソの対立の中でこのような措置が行われて、今御指摘のような状況でアメリカがこれを一方的に引き揚げる、同時にソ連に対してもそれに対応する措置をとるように提案をしながらそれを進めていくわけでありますし、また、それまで行われておる戦略兵器削減条約の早期批准がこれはまた不可欠になってまいりますし、同時にまた、ソ連との間で約束済みのいろいろな問題についてもさらにこれを加速させていくという意思が表明されておるわけでありますから、私は、このことがアジア・太平洋あるいは日本の安全保障にとっても好ましい影響が、緊張緩和という形で好ましい影響が訪れるように、相互がお互いに信頼関係に立ってこの撤廃、撤去が行われていくことを強く望んでおりますし、そうなることを期待いたします。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 結構でしょう。今のお話の中に、日本の安全保障政策にも大きな影響がある、まさにそのとおりであります。その影響というものは、まさに米ソの核競争、そのはざまにある日本、そして総理の言われるような日本の防衛政策が従来主張してきた核の傘、抑止力論、こういう問題が、自動的にと言ったら言葉は違うかもしれないけれども、画期的に今なくなろうとしている、この中で従来とは違った発想というものが当然組み立てられなければならない、こういう意味ですね。
  44. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 原則的なことを言えば核保有国というのは米ソだけではありませんので、すべての核保有国が足並みをそろえて地球上から核を廃絶するということが極めて望ましいことであり、そうあるべきでありますが、なかんずくずば抜けた保有国である米ソ両国がそれぞれ、先ほども触れましたようにSTARTの交渉にきちっと完全に合意していく、またそれの約束事をさらに加速していくという意思表示もあったわけでありますから、これが進行していくことは日本にとっても非常に望ましいことであり、アジア太平洋地域にとっても非常に望ましいことである、これは日本の安全保障にとって非常にいい方向に向いてくることである、こう受けとめます。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 話を広げるのは結構なんですが、世界に何カ国の核保有国があるにしても、際立って米ソが超核保有国、核兵器保有国であるというだけではなくて、地政的に日本の置かれている状況からすれば、米ソ以外の核の脅威論というのは考えられないわけですから、その意味ては非常に大きな影響を受けるということは言うまでもないわけですね。そうなってくると、ここでやはりそのはざまにある日本としては、世界平和、今言われたような世界平和ということを考える立場からいっても、これまでの発想を脱却して、脱核兵器、脱通常兵器へ向かっての平和のイニシアチブをとる外交政策、安全保障政策が生まれるべき契機に立った、こう思わなきゃいかぬと思うのですね。同感でしょうか。
  46. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 まさにそのようなイニシアチブをブッシュ大統領がとったわけであり、同時にまた、それに対して基本的には対応していこうという考え方がソ連にもあるわけでありますから、この二つの国の決意、特にアメリカのそういった一方的な削減というものがイニシアチブになってそのように動いていくということを私は強く望んでおると先ほどから申し上げてまいりましたが、これは状況の変化だと思います。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 そうなりますと、日本のイニシアチブの根底になきゃならないのは、まず日本の軍縮でなければならない。これは国民等しく希求するところでしょう。いかがですか。
  48. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日本の場合は、これは御承知のとおりに、戦後専守防衛、そして必要な節度ある防衛力を整備するということできょうまでやってまいりました。先ほども率直に申し上げたように、核の抑止力は日米安保条約に依存してやってまいりました。そういったことの背景の一つが大きな変化をするのですからどのような変化をしていくかという世の変化は十分注目をし見きわめ、同時にまた、そうであっても我が国の安全を確保していくためには我が国はどうあるべきかということは、その変化を踏まえながらその中で検討をしていくべき問題である、私はこう考えます。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 途端に抽象論になっちゃうんだね。具体論にしましょう。  問題は、中期防です。二十二兆七千五百億円という膨大な中期防、しかも累次年度防衛費も上がっていくという傾向とこの新しい傾向とはマッチしないと私は思うのですね。したがって、この中期防をどうするかということに具体的なテーマを絞ることができると思うのですが、伝え聞くところによりますと、防衛庁は断固として中期防を守るんだというようなことを早くも打ち上げておられるようでありまして、私は、これはブッシュ提案というものの中身を全く理解したがらないという傾向ではないか、こう思うのです。よもやこういう最初に中期防あり、軍備増強ありなどというかたくなな姿勢をとられるのではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 今回私どもが決定してお示しした中期防は、これはもちろんおっしゃるようにブッシュ演説の前に決まったものでありますけれども、それもやみくもにただ増大すればいいというだけではなくて、きちっとした考え方を持ち、今後の五カ年間の正面装備の予算は、伸び率は前と比べて少なくなっておるというようないろいろな配慮、苦心をしたものでありましたが、しかしそれでもこのような国際情勢の変化があるわけですから、先ほど申し上げたように、この変化がアジア・太平洋、特に日本の安全保障にどのような影響がくるのかということを慎重にこれはきちっと対応をして、その変化に対処して、我々は我が国の節度ある防衛力はここだということを検討してまいります。やみくもにふやしていこうとか、これは何にも影響ないんだとか、そんな受けとめ方は決していたしません。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、いい話なんですよ。つまりそれは、この画期的な核兵器削減計画の提示を受けて、それに非常に大きな影響を受ける日本としては、これまで従来の計画というものをやみくもに通すのではなくて、削減の方向、全体的な軍縮、平和の方向に向けて検討していこうという地点に立ったというふうに理解していいわけですね。
  52. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 基本的には私どもは核については究極的な廃絶、それから通常兵器についても世界的にこれを公開性、透明性を新たにして、いかなる地域においても必要な限度を超える通常兵器の集積はすることは必要ない、そういう時代が来たんだということを国連の機能を強化しながら、国連の報告制度を提唱しておるのはそういう背景もあってのことであります。そのかわり、それぞれの国の安全保障に必要な環境とかあるいは周辺の状況等を踏まえてそれぞれの国がきちっとした節度のある計画を立てて自衛力を持つということは、これはそれぞれの国の固有の権利だと思います。我が国に当てはめれば、そういった意味で、アジア・太平洋地域にあった米ソの対立、緊張、それによって日本が受けておった脅威、そういったものがだんだん変化しつつあるということは、これはそのとおりでありますから、その変化にふさわしい対応は、これは我々としては十分注目をして検討してまいりたい、こう思っておるのです。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 私は具体的に伺っているわけでありまして、中期防について今論点を絞っているのであります。  この中期防の柱となる考え方はいろいろありますけれども、大きく言えば、言うなれば、言葉は使わないけれども仮想敵国に対応するもの、つまりソビエト脅威論でありました。政府の立場ではそういう言葉は使わないけれども、例えば北海道に展開している自衛隊の質、量を考えるなどなどいえば、これはもう常識としてあるわけですね。で、防衛白書でも大きな変化が従来起きていたわけですけれども、その脅威がどうなるかという問題の把握としては、脅威という二つの要素、意思と能力ということで言えば、もはや意思はないけれども、いやいや能力は残っているぞということになっていたが、今回のブッシュ計画の発表はそのソビエトの能力も、初めからアメリカ側だけで一方的にやってもいいというふうに考えるほど評価を変えるところへ来た、これはまた世界の常識だと思うのですよ。つまり、そういう脅威論が大きく変質したということになれば中期防というものに対する検討があるのは当然のことであるという点を私は伺っているのであります。
  54. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 具体的な仮想敵国をつくって、この国があれだから、その脅威に対抗するためにこうするんだという決め方ではなくて、我が国を、通常兵器による限定的な小規模の侵攻があったとした場合に、それをみずからの力で阻止することができるように節度ある防衛力を整備する。そのことは、この地域に空白地帯をつくって無用な混乱を起こしてもいけないという立場に立ってのこの防衛計画の大綱でありましたから、この大綱の基準を平成二年度の予算でおおむねこれは達成したということになっておることも御承知のとおりでございます。したがって、それを拡大強化していこうというのではなくて、そういう変化を見据えて、変化を見詰めて対応しながら、必要ならばそれによって対処をしていく、こう言っておるわけであります。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 仮想敵国論をここで争わないです。時間のむだなんです。そんなことはいいのです。しかし、実態の問題として、常識の問題として、明らかにいわゆる脅威論というものが、国の名前をそこに入れる入れないの議論はしませんよ、明らかに日本列島に対する脅威論というものの変質が今日の前に明らかにっているのだから、それは世界の常識なんだから、そこで防衛力整備計画というものに変更を、検討を行うというのは当然ではないかということを私は当たり前のように確認をしておきたいのですよ。
  56. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 何度も申し上げておりますように、新しい動きが出てきておるということは私も好ましい動きとして評価をしておりますし、日本の周辺における緊張状態やあるいは日本の周辺のいろいろな性能や能力の問題については、これはいろいろあるわけでありますけれども、その中で日本はこの状況の変化をどうとらえて日本の保有すべき節度ある自衛力の限界はどこでもって節度あるものとしていくのか、これは変化を見きわめながら、変化を見ながらそれに対応して、対処をしてまいります。決してかたくなに固定観念で、これはだめだとか、変化がないとか、増強しようとか、そういうような御懸念をあるいはお持ちだったのかもしれませんけれども、そんなことは全くありません。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 私は抽象論を避けて、中期防について話を詰めておきたいのです。  外務省の見解として伝わっているところでは、中期防についてやはり検討しなきゃならぬだろうというふうな考えがあるように聞いておりますが、外務大臣、いかがですか。
  58. 中山太郎

    中山国務大臣 外務省では、そのような議論をいたしておりません。基盤的防衛力の整備ということは、従来どおりの方針を現在堅持をいたしておるところでございます。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 ちょっとおかしいのですが、アメリカから帰ったばかりですから、外務省の中のことは知らぬということならそういうふうにしておきますが……。  防衛庁長官、今までの議論の中で胸に響かれるところがあるでしょう。防衛庁が、中期防を絶対動かすことまかりならぬというようなことを言われておる。そんなことはないだろうと私は思うのでありまして、少なくとも九三年にはそうした時期も来るのでありまして、当然この変化を受け入れるということでなければならぬ。しかと御答弁いただきたい。
  60. 池田行彦

    池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来総理からも御答弁ございましたように、私どもも、今回のブッシュ大統領のイニシアチブ、またそれに呼応してのソ連の動き等々が、世界の平和、とりわけアジア地域の平和にも寄与していくことを期待しているところでございます。しかしながら、先ほども総理から御答弁ございましたけれども、従来から核の脅威に対しましては、我が国としましては、米国の核抑止力に依存していくという方針をとっておりますので、今回の核に関するブッシュ提案が直ちに我が国の防衛力整備のあり方を変えるということにはならないというのは、先生も御理解いただけるところかと思います。  それからまた、先ほど来ソ連の脅威が減退するからというお話がございましたが、これも御承知のとおり、我が国はいわゆる脅威対抗論、どこかの脅威があるからそれに対して整備するという方向をとっておりませんで、基盤的防衛力という言い方をしておりますけれども、平時における十分な警戒態勢あるいは限定的かつ小規模な侵略に対して有効に対応するという、その程度の力を想定して役をやっておるわけでございます。  そういったことでございますので、今直ちに大綱をどうこうだとかあるいは中期防をどうだとかということに結びつくとは必ずしも、とりわけ今回のブッシュ提案が直ちに結びつくとは思いませんけれども、しかしながら、先生もただいま御指摘ございましたように、現在の中期防におきましては、三年間の経過を見まして、そのときの内外情勢、その中には当然その国際情勢の動きというのは大きな要素でございますが、そういったものを勘案しながら、要すれば見直していくという規定もあるわけでございます。そうして、今回のブッシュ提案も含めまして、今国際情勢も非常に大きく動いておるところでございますから、当然そういった情勢を十分に勘案しながら、見直すか否か、そういうことは三年後の時点で考慮されることになるのであろう、このように考える次第でございます。決してかたくなに何が何でも今までの方針は一切変えないと私どもは申しておるわけではございません。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 やや進んだのですが、九三年に予定されていた言うなれば定期見直しということの中に、三日前まではこの計画変更は入っていなかったわけだから、その中には当然このことも入れて検討するということでいいのですね。
  62. 池田行彦

    池田国務大臣 国際情勢の動き、いろいろ大きなものがあったわけでございますが、おっしゃるとおり、今回のブッシュ大統領の極めて勇気ある、かつ大胆な提案というものは、今回新たに出てきたわけでございます。こういった要素も勘案しながら、私どもは三年後の時点における見直しというものに取り組まなくちゃいかぬ、こう考えております。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 総理からもそこのところを、これはまだ中期防にはなかったわけですから、新たな提案が出てきたわけですからへその見直しの中にはこうした考えも十分取り入れて検討してみるということを確認してください。
  64. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほど来お答え申し上げたつもりでおりましたが、変化がございました。これは好ましい流れであり、アジア・太平洋、日本の周辺の緊張緩和にもこれは必ず役立ってもらわなければなりません。私は、今後の動きを注目しながら、現在のいろいろな我が国の防衛の節度ある基準はどこかという問題についての検討をする材料にこれは入ってくる問題である、こう考えて御答弁をいたしておりました。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 そろりそろりとした御答弁だけれども、もうこれは前向きに受けとめて、まあ総理もうなずいておられるから、共通の土俵にしましょう。  そこで、そういう中でさらに具体的に申し上げると、これから日本に入ってくる米艦船には戦術核はもう含まれない、これははっきりしたわけですね。これはもう今まで核の保有の存否については明言しないと言っていた政策の大変更であるということは言えるわけですから、こうなってくると、いわゆる非核三原則というのが非常にわかりやすくなってくるわけですね。  そこで、これまで非核三原則の長い議論をしてきましたけれども、どうしても突き破れないことは、これは虚構の論理であるという追及と、いや、信用することなんだということでもって空回りをしてきました。ならば、その真ん中に、こちら側から聞いてもいいではないか、核の存否を。このことがどうしても突き破れなかった。今回ここまではっきりして、アメリカはもう載せてこないというのですから、はっきりこういうふうに表明したわけですから、今度はこちら側から向こう側に聞く、核の存否を確かめるということが外交的にできるようになったと考えでいいですか。
  66. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生の言及されました非核三原則でございますけれども、政府といたしまして、今後も非核三原則を堅持していくつもりでございまして、今回、先ほど来話題になっておりますブッシュ大統領のイニシアチブによりまして、この政策が変更を受けるものではないということでございます。  他方、さらに申し上げたいと思いますのは、今回のイニシアチブが実現されれば、アメリカが自国の領域外に配備している核兵器の多くが撤去されるあるいは廃棄されることになりますが、このアメリカが従来からとられておりますいわゆるNCND政策の変更を含むものではないと承知しております。  この結果、先生が今ちょっと言及をされましたけれども、私どもは、従来から、日米安保条約上、艦船によるものを含め、核兵器の持ち込みが行われる場合にはすべての事前協議の対象となり、また、この持ち込みについての事前協議が行われる場合も常にこれを拒否するということでございまして、これに対しまして、先生が言及されました一部から懸念があったということは承知しておりますけれども、今回のイニシアチブが実現いたしまして、米軍の水上艦船及び攻撃型潜水艦が核兵器をそもそも搭載しないということになれば、このような疑念を提起する人も減っていくだろう、こういうふうに期待しております。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、私は、核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませずと佐藤榮作総理がこの場で議論をしながら、その言葉がいわゆる非核三原則として定着していった経過を経験していますね。これはとにかく大事なことですよ。国会論議の中で、国論の最高機関であるこの国会の議場の中でそうした議論を積み重ねる中で、つくらず、持たず、持ち込ませずということが、いつの間にやらと言うと言葉が当たらないかな、自然のうちに成熟して一つの非核三原則という言葉に結実をした。これは国会論議の花でしょう。  今私は、ブッシュのこの大きな展開、これは最大評価しているんだから、お互いに、ここで総理たる者、これまでの多くの国民が疑念を抱いていた、核があるのかないのか、来ているのか来ていないのかという問題を、一歩と言わずとも半歩進めていくという、あの佐藤さんのときの情景をここで再現してみようじゃないですか。私は、今のようなこんな三十年やったのと同じことを、また古い映画を繰り返すようにフィルムを回すんじゃなくて、ここまで来たんだから、日本に入ってくる米国艦船には核兵器は積まないと大統領がはっきり打ち出しているんだから、ここに向かって我々が、国民の三十年の疑惑に対してはっきりしようじゃないかということを言うのは、総理・総裁、政治家たる者の国民への一つの当然なあり方じゃないですか。すぱっとした、言い方がどうなるかはわかりません、総理の言葉で語ってくださいよ。  今までこのことが突き破れずに、国会というのは何をこんにゃく問答しているんだと言われたんだから、ここでひとつ、非核三原則がああいう論議の中から生まれてきたように、今、持ち込ませずというやつが二・五原則と言われてきたのですから、今度は我々の方からアメリカに向かっても核の存否を言えるときが来た、こういう時期だと思うのですよ。半歩でも進めてみよう、どうしていいか、ひとつ見解を明らかにしてください。
  68. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ブッシュ大統領がそのような決断をして、そのすべての地球上にあるいろいろな核の、戦術の核の問題、そういったようなことについて、これは一方的に米国本土へ引き揚げて、そこで廃棄するものは廃棄する、安全なところへ保管するものは保管する、いろいろこれだけのイニシアチブを発揮して、全世界に向かって公言されたことであります。日米安全保障条約というのは、日米の信頼関係に基づいてきょうまで運用されてきたわけでありますけれども、アメリカと日本がきょうまでの信頼関係に立って、そういう核に対する思い切ったイニシアチブをとられたことを高く評価をしたわけでありますから、そういったようなことがこれから一々聞いてみろとおっしゃるけれども、私は聞かなくても、このブッシュ演説というものの信頼性は世界じゅうの人がそれを高く評価をして信頼しておるわけでありますから、このことについては、それは信頼関係に立ってきちっと認めていったらいい、そのとおり受けとめていったらいい、こう思っております。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 頼りないなと思いますよ。どういうふうにこんにゃく問答を続けたって、国民はおかしいなと思ってきたんですよ、三十年間。ここで入ってくる船全部聞けなんてことを言っているんではないのですよ。まだ、例えばあの船に本当に載っているかな、載ってないかなといったら、今度はアメリカに向かって日本から、この船には、持ち込ませずになっているんだから本当に載ってないだろうなということを聞くことはできないかと私は言っているんです。入ってくる船全部聞きなさい、何かそこに関所を設けて聞きなさいなんてことを言っているんじゃないのですよ。  今までは聞けないということになっていたんだ。今度は聞こうと思えば聞こうじゃないか。これぐらいのことは総理大臣として、これだけの支持率を得ているということが御自慢になっている、あなたとは言いませんよ、大変な数字を背中に負っている総理大臣が、国民の疑念がそこにあるんだから、そこに向かって、いやこれからはちゃんと聞くよ、疑念があったらいつでも聞けるよ、信頼信頼とおっしゃるが、そんなに信頼があるんなら、向こうが載せないと言っているんだから、いや載せてないと思っているんだなんて言わないで、本当に載っているかどうかということを一遍聞いてみよう、聞くときがあればね。その原則を持つことができないか、これは総理大臣がここで言い切ることが、一つの国会への信頼ですよ。それぐらいのことは言えませんか。
  70. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 きょうまでも日本安全保障条約の上において、その事前協議の制度というものがございました。それから、今回特に、またブッシュ大統領自身の核に対するイニシアチブで、そういったことは核の一方的な撤去ということを全世界に向かって表明された。信頼関係に立っておる私としてはそれを高く評価したわけでありますし、ブッシュ大統領はその自分の全世界に対するイニシアチブを全世界に対してこれはきちっと実行するものである、私はそうかたく信頼しております。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 言わずもがなのことであるとおうしゃるわけだ。それなら、非核三原則を法制化しましょう。国内法として法制化しようじゃありませんか。いかがですか。総理の決断ですよ、政治的決断ですよ。法制化しましょうよ。言わずもがななら当然これは法制化していいじゃないですか。いかがですか、総理。
  72. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 核を持たず、つくらず、持ち込まずということは、これは長い間国会で、おっしゃるように言われ続けてきた三原則でありますし、またその持たず、つくらず、持ち込まずという三原則は国会決議もなされており、私はそのとき、たしか質疑か討論に立った記憶を今、御質問、突然であったものですから、思い出して、本会議でやったことを思い起こしております。したがいまして、持たず、つくらず、持ち込まずということはもう定着してきた基本的な国是である、このように受けとめております。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、それをそんなに明々白々なことならしっかり法制化するときが来たのではないかと言っているのですよ。あなた、総理大臣じゃないですか。すかっと答えてください。――あなたは法制化の力はないんだ、総理大臣だ。
  74. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど来の総理、さらに私からも申し上げておりますように、安保条約それから関連取り決めのもとで、従来からのきちんとしたメカニズムがございまして、アメリカ政府はまさにこのような義務を誠実に履行しているということを繰り返し言っていたということを改めて申し上げたいと思います。  それに加えまして、非核三原則に関しまして、今総理も申し上げられましたけれども、これは日本が国是として内外に宣明しておりまして、国際的にも非常に周知している国是でございまして、法制化をすることが必要がないということは累次政府から御説明してきているところでございます。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 国是だから、法制化するのに問題ないじゃないか。  総理、今の答弁にありましたように、国是だとおっしゃる。国是であれば法制化するのは当然じゃないですか。答えてください。
  76. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 先ほども私はお答えしておりますように、長い間の御議論を通じて、持たず、つくらず、持ち込まずという三原則は国会で確立したことでありますし、また、非核三原則の決議もございましたし、それに従って、国是としてこれはもう定着しておることでありますから、この考え方やこの精神は、私はそれでもう周知徹底されておる、こう考えております。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 これは論理にならないので、では、検討しようという一言で先に行きましょう。検討もしないというなら話は別だ。
  78. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いや、私がお答えしたように、これはもう国是として定着しておりますし、国会の決議もいただいておりますし、歴代、今いろいろ内閣においても、持たず、つくらず、持ち込まずは国是として受けとめていきます、こうしてきたわけでありますから、私としては、これを今ここで国是として定着しておるものを、それを少しも解釈を変えようとか変えたりしていく気持ちはありませんから、国民の皆さんにもこの非核三原則の政策は定着しておると思います。私がよく、それでは反省しながら勉強してみます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 時間がないので、反省しながら勉強すると言われるから、私はそれを検討と受け取って、先に行きましょう。  簡単でいいのですが、大事なことは、こうした変化の中で、私は、去る一月十一日に海部総理大臣に、衆議院北方領土特別委員長として、ソビエトへの政経不可分の方針を転換しろということを申し上げました。この潮流の中でその時期が来たと思うのですが、いかがですか。
  80. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘の北方領土の問題につきましては、これも大きな状況の変化、むしろ積極的にソビエトの方からもあるいはロシア共和国の方からもそれぞれ、私あてには親書なりメッセージなりあるいは電話のやりとりを通じて北方領土の問題についての両国の一番大切な平和条約締結という問題を加速化させようというお話は参りました。私は、それについては領土問題を解決してという大前提もあることでありますから、四月の日ソ首脳会談のときにこの点はゴルバチョフ大統領と共同声明で確認をし、同時に、その中において人道的なあるいは緊急援助あるいは技術支援その他十五にわたる協定も調町をいたしまして、それらの問題については幅広くできる限りの交流をしていくということを決定をしておるわけでございます。  また、ロシア共和国のハズブラートフ議長代行がこの間いらっしゃったときにも、エリツィン大統領からの親書もいただき、それの交流の促進も書いてある。それから同時に、ハズブラートフ議長代行とのお話し合いの中で、日本が政経不可分の原則をとっていらっしゃる立場は自分にもよく理解ができる、しかしソ連についての窮状その他も率直に述べられて、その原則を理解しながら、それでも人道的な援助とかあるいは国際的な世界の枠組みの中の、これは恐らくG7で決めたIMFとかその他の問題を通じての特別提携関係促進にまつわるお話であろうと私は想定しながら聞きましたが、そういったことについての積極的な協力も頼みたいと、率直なお話がございました。  私は、そのときにもお答えしましたけれども日本は今とりあえず人道的なそちらに対する支援というものはいろいろな面で幅広くやっております。食糧の緊急援助医療緊急援助あるいは調査団の派遣、最近も調査団を新たに派遣して、どの程度のものが緊急援助で必要か、それの調査をいたしております。全体については、これは枠組みをどう変えていくのか、市場経済に変わっていくには何が一番必要なのかということをこの間G7の場でも議論しましたし、そこヘゴルバチョフ大統領も加わってもらって議論をしまして、やるべきことをいろいろG7でも合意しております。それらの問題については積極的に、幅広く、拡大均衡でやっていこうということを決めておりますから、無原則な政経分離はできませんけれども、しかし、緊急援助だとか全体の合意の枠組みを進めていこうということについては、日本としてもできるだけ、隣国との関係でありますから、拡大均衡の中で進めていこうということは常に申し上げ続けてきておるところであります。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 もう一つ、日朝国交正常化交渉への影響ですが、韓国における地上核というのが撤廃される、撤去される、これはもうリストも出たわけですね。こうなってくると核査察の問題というのも窓が開けるし、報道されるところでは、朝鮮民主主義人民共和国の金書記も、一つの条件が整ってきたんじゃないかというふうにも仄聞しています。そうなってくると、これにも大きな好転の影響が出てくるんではないかと思いますが、いかがですか。
  82. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御承知のとおり、日朝国交正常化交渉を政府が始めましてからネックになってきましたのは、核査察の問題があったことは委員御承知のとおりでございます。しかし、この核査察を受け入れるということについては、これはアジアの安定と平和のためにも重要な問題でございました。そして、日朝交渉の間で北の政府が主張されたことについては、韓国にある核の問題が絶えずありました。したがって、今回の決定によって地上からの核の撤去ということが現実のことになれば、きょうまでの日朝交渉の間のやりとりを顧みてみましても、懸念の一つが完全になくなるわけでありますから、北の政府にもオープンに核査察の保障を受け入れるということになりますと、これは、さらにアジアにおける緊張緩和といういい前進が図れるのではないか、こう考えますので、これは両政府とも胸襟を開いてこのことは話し合い、前進をしていただきたいという期待があろうと思います。私は、いい影響が及ぶようになることを強く望んでおります。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 この問題の最後に、まさにこのことはグローバルに言うと、脱軍事の世界秩序に向かっての幕があき得ることだと思うんですね。世界経済にどういう影響が出てくるのか。これは総理及び大蔵大臣からひとつ承っておきたいなと思います。
  84. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、ブッシュ大統領の示唆された方向というものは、中長期的に見て世界経済に確実に資するものであることは当然のことでありますけれども、短期的にもい軍事支出の減というものを通じましてアメリカ経済そのものにも非常によい影響を与える可能性のあるものであると思います。と思いますという言い方をしますのは、実は、これらの分野に産業として働いている人たちがどの程度あるのか、産業構造の上に占めるウエートが率直に申しまして私はわかりません。そのウエートによりましては、短期的には民間の経済に与える影響というものも無視できませんので、この点について確たることを申し上げるだけのデータを持っておりません。  しかし、少なくとも軍事支出の中で核に対する支出が削減をされる、それは国家財政の上ではプラスであります。そしてそれが、仮に民間の設備投資等に回りますならば、あるいは財政赤字の縮減策に充当されますならば、アメリカ経済に対してプラスの影響を比較的近いタームでとりましても与えることは想定できるわけであります。要は、短期的には雇用というものにどのような影響を及ぼすかという点についての判断材料を持たないということでありますが、中長期で見る限り、いずれにいたしましてもこれは世界経済にプラスに転ずるもの、そのように私は理解をいたしております。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 総理も同感のようですから。ぜひ大きな核兵器削減計画を地球上の福音とするような、しかも、それを前向きに進めていく力となる日本外交あるいは経済外交の努力を切に要望しておきます。  これをうんとやりたいんですが、時間がありませんから先へ参ります。  私は、当初申し上げたように、いわゆるPKO協力法案について主として憲法論を中心にお伺いをするのでありますが、今回の法案はさまざまな側面を持ちますけれども、端的に言うと一つ。本法案成立すると我が国は初めて法律によって自衛隊海外派遣することになるという事実は、これは何と言いましょうかぼ、冷厳な事実であるということですね。
  86. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 お言葉を返すようで申しわけありませんが、海外派遣法律によってしますのは、私の記憶に誤りなければ、遠洋航海もそうでありますし、南極観測の援助事業もそうでございますし、また、掃海艇ペルシャ湾への掃海派遣派遣でございますし、海外派兵はありませんが、海外派遣は初めてではない、こう思います。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 これは、そうなると派兵か派遣かということにまた戻るんですが、私は、議論を言葉の争いにしたくないためにあえて派遣という言葉を使ってみたんですが、私どもの言葉で言うと、海外派兵は初めてじゃないかと言いたいんですね。つまり、遠洋航海に行くだの何だのというのは武器を携行していってないわけですから、ほかの言葉で正確に言うならば、自衛隊という名の武装集団が法律によって海外派遣されることは初めてである、こう言い直した方が正確ですか。
  88. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これも言い尽くされてきた国会の議論だと思いますけれども、武力行使の目的を持って武装部隊が他国の領土、領海、領空へ出ていく、これを海外派兵と言うんですけれども海外派遣というのは……(上田(哲)委員「いや、そこは争わないと言っているんだ、今」と呼ぶ)争わないとおっしゃると、ちょっと答弁もしようがなくなってしまうんですけれども、今度はその武力行使の目的を持って行くのではありませんから、平和協力活動というののために行くわけでありますので、強制力を行使したり、力を行使したり、武力行使の目的を持って行くのがPKOやPKFではない、こう思っております。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなこと言ってない。正確に聞いてもらわにゃ困る。政府がつけられた新しい前提では武力行使のためには行かないと言っているんですから、そんなところへ先回りして議論するつもりはないんですよ。しっかり聞いてくださいよ。  じゃ、遠洋航海なりなんなりには武器を持って行ったんですか。武器の使用ということを場合によっては考えながら行ったわけじゃないでしょう。私が言っているのは、だから、海外派兵派遣かは争わぬと言うんですよ。我々からすればこれは海外派兵なんです。しかし、それを言っていたら、これだけで何時間もかかって非常に生産的でないからそれを言ってないのに、蒸し返してもらっちゃ困る。私はあえて皆さんの言葉を使って、派遣という言葉で同じ土俵で議論しようとしておるわけだよ。いや、そんなことはあっちへ逃げないでこっちへ向きなさい。  私が言っているのはこれまでとは違うんです。明らかに兵器を、武器を持って、私たちの言葉は耳ざわりになるかもしれないが、武装集団としての自衛隊法律に基づいて海外派遣されるというのは初めての事態になる。正確な語意を確定しておかないと議論できないから、これが武力行使を目的としているとかしてないとかという話はずっと後の話だから、今はそんなことは言ってないんです。そういう最初のケースになりますね。
  90. 池田行彦

    池田国務大臣 お答え申し上げます。  従来も自衛隊員が海外へ出たという例が、法律に基づいて海外に出てまいった例があるというのは、総理から御答弁があったとおりでございます。また、そのときに武器を携帯したか否かという点でございますが、遠洋航海等におきましても、自衛艦が参りますと、その船には武器を装備しておるわけでございまして、それは別に取り外していないわけでございます。  今先生のおっしゃいますごと、私なりにこう考えてみますと、何かこれまでと違うだろう、派遣の仕方が、こういう御趣旨がと思います。そういった観点から申しますと、国連が行います平和維持活動、それに参加するために自衛官我が国から派遣されていく、その派遣されます自衛官は個人として参加することもございますけれども、部隊として参加することもある、そうしてそうやって参加いたします自衛官がみずからの、あるいはその同僚である隊員の生命、身体を防護するために必要な武器を携帯することがある、そういった意味で、それが今回の法案で根拠づけられようとしているという意味では、これまでと違うかな、そう考える次第でございます。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 歩み寄れればいいから、私は言葉はこだわりません。  あえてそこにつけ加えれば、紛争地域あるいは……(池田国務大臣「紛争のかつてあった地域」と呼ぶ)じゃ、かつてでもいい。紛争のまた再発の可能性もあるということも含みますけれども、あるいは紛争停止地域ないしは紛争予備地域とでもいうべきところへ法律に基づいて出かけるという、派遣されるということはこれまでと違う初めてのケースだなということで統一すればいいですか。言葉は争わないから。
  92. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほど、私は国連の行います平和維持活動のためにということを申し上げました。その平和維持活動が行われますのは、それまで武力紛争があった、しかしながらそれが停戦の合意が成って、そうして国連の停戦監視なりPKFなりで来てくれという要請といいましょうか、紛争当事国のその合意もある、そういう場所でございますから、紛争がしばらく前まであった地域ということはそのとおりでございます。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 この辺の定義を争うつもりはないんですが、防衛庁長官も言われたように、これまで考えられないこと、想定されていなかった新しい事態の派遣である、このことは間違いないですね。念のためですが、言葉にこだわらないように。
  94. 池田行彦

    池田国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、これまで想定されなかったケースでございますので、新しく法案を御提案申し上げ、御審議をちょうだいしている次第でございます。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。  そこで総理に伺う。  日本憲法はこういう新しい事態を本来想定していたでしょうか。
  96. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 平和主義、国際協調主義というのは、日本憲法の前文に書かれてある国家の理念であると思います。そして、日本憲法ができ上がったときに、こういった意味平和維持活動というものが具体的にあることを断言した人は、恐らく学者の中にもなかったでしょうけれども、しかし、全体として平和主義、国際協調主義、誠実に世界の平和を希求する、自国のことのみを考えないで世界平和のために協力をしていく、こういった国際協調主義というものが書かれておる以上、いろいろな場面というものは想定される範囲の中に入っておったのではないか、私はそう考えます。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 念のために確認します。  こういう新しい事態は日本憲法は本来想定していたのですか、いなかったのですか、どっちですか。
  98. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 平和主義、国際主義の理念の中で、それの、何といいましょうか、各論として、その枠の中でできることは全部想定しておるだろう、できないことも想定して決めてあるわけですから、そう思います。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 そうではないんですね。少なくとも八〇年の政府見解までは違うんですから。今度は前提を二つつけたから新しい事態に入ったんであって、これまで想定していなかったことが前提をつけることによって生まれることになる、これが政府の解釈なんです。ずっと前からこういう事態も想定の中へ入っていたと言うのは無理じゃないですか。
  100. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは憲法制定のときに、こういう平和維持活動の中にこういったようなものが生まれてくるかということまで想定しておったかどうかというふうに私は受けとめましたから、あの憲法起草委員会とか憲法起草委員の皆さん方は、まさかこういう具体的な細かいことまでは想定されずに、ただ、平和主義、国際協調主義という。ことで、日本の国家の理念というものを考えられた。その幅の中にはいろいろ世界へやらなきゃならぬということが将来出てくるということば想定の中に入っておったろうとこう考えて、そうお答えをしたわけです。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 法制局長官に承りましょう。  新しい、前提をつけて、新しい事態になったんだと。その前は明らかに八〇年の政府見解においてもこのような事態は想定していなかった。それも想定の中に入っていたと言うのはいかがですか、長官。
  102. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  委員の今おっしゃられる想定と言われるところの考え方と申しますか、そういうことだろうと思います。  それで、今委員は八〇年というふうにおっしゃられます。それは多分昭和五十五年の稲葉答弁を想定されてのことかと思いますが、それより前からこういう問題についての議論がしばしば行われたことはもう委員、十分御承知のことかと存じます。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 全然答えになってないですよ。そこのところをひっかけるんなら八〇年の答弁書はちょっとやめましょう。  日本憲法成立のときにこのような想定があったと言うのは私は詭弁だと思うのですよ。それを受けて答弁書ではそれはできないと言ったんじゃないですか。しかし、条件をつけたからできるようになったと。これは新しい事態なんだ。正直に新しい事態だと言うべきでしょう。前からこれも実は考えの中にあったと言うのはこれは無理じゃないですか。長官、答弁になってない。
  104. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 今、委員おっしゃられる点でございますが、まず先ほど総理からお答えございましたように、国際協調主義あるいは平和主義というのがひとつ憲法の中に規定してございます。  それから、先ほど私が若干申し上げたのは、例えばかつての高辻もとの長官でございますが、例えばこういうふうなことを言っている部分がございます。例えば「もっぱら平和的目的によって国際協力活動としてやるようなものまでが憲法九条で許されないというのは、私ども考えとしては行き過ぎになるのではないかと思うわけです。」こういうふうな議論もかつてございまして、そういう意味では全く想定されなかったというか、昭和五十五年以前にもこういう議論があった、こういう意味で御紹介を申し上げたわけでございます。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 全然答弁になってないんだ。そういう議論があったのは当たり前なんですよ。その議論があった中で一つのせきとめとして八〇年の答弁書ではこれはやっぱり違うと。つまり、憲法が想定していないことだというふうに答弁したじゃないですか。だから、今までのどんな経過が、なかったのなら別だ。議論があったけれども、これはできないんだということをあなた方が明定したのですから、そのことは当然本来の想定にはなかったことだった。今度は前提つけたから変わったんだ。ここが出発点じゃないですか、どう違いますか。
  106. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 今委員おっしゃられました、どうも前提をつけた、あるいはできないと申し上げた、こういうふうなことをおっしゃられるわけでございますが、私どもの方も、例えば昭和五十五年の答弁書について申し上げれば、一般的に武力行使を伴う、これは憲法九条の目から見て難しい、困難であると、かように申し上げているわけでございまして、それをある一定の、今回でございましたら五つの要件と申しますか、前提と申しますか、そういうものであれば憲法九条の問題は生じない、こういうふうなことで申し上げております。それを前提をつけてというか、あるいは従来の想定になかった、こういうふうにおっしゃられるのは、私もまた私の御説明が悪いのかもしれませんが、そういうことでございます。
  107. 上田哲

    上田(哲)委員 じゃ、質問を変えましょう。  その前提がなければ従来どおりこういうことはできないということは明らかですね。
  108. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 憲法九条で武力の行使が禁じられているということはそのとおりでございますし、それからそれにいかなるものが当てはめとして禁じられるか、あるいはいかなるものがそれから見て許されるか、かような当てはめの議論としてはございます。
  109. 上田哲

    上田(哲)委員 何を言っているのか全然わからぬのですよ。端的に答えてください。  前提を付した、その前提を付してなければ従来どおりそのようなことは憲法は予定しないということですねと言っているんですよ。どこか違いますか。こんな単純なことが答えられないで、ほかのことを言わないでください。
  110. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 憲法が予定しないという点で、私、若干の問題がございますが、(上田(哲)委員「では、憲法が許さないという言葉にかえましょう」と呼ぶ)私どもとしては、その目的・任務に武力行使を伴う、こういうものは一般的に申し上げて問題がある、これが昭和五十五年の答弁でございますし、今回の五つの前提を設けました場合に、そういうその目的・任務が実際の行動上におきまして武力行使を伴うものとはならない、かようなことでお答え申し上げているわけでございます。
  111. 上田哲

    上田(哲)委員 全然わからないのですよ。簡単に答えてもらいたい。難しいことは言っていない。前提を新しくつけたから、今まで憲法が許さないと考えていたことが、この前提をつければ許されることになった、あなた方がそう言っていることを単純に聞いているのですよ、単純に聞いているのです。それでいいのでしょう。どう違うのですか。
  112. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 一つのといいますか、今回の五つの前提を設けた枠の中であれば憲法九条に反するものではない、こういうことでございます。
  113. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、前提をつけなければ今までどおりこれはできないのだということを言っていることですねと言っているんですよ。いいんでしょう。
  114. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 委員のおっしゃるところと言い回しの問題が違っておりますが、私の方としては、一般的に申し上げて、その目的・任務が武力行使を伴うもの、それは憲法九条の禁ずるところであるし、今回のような五つの前提をつけて、その範囲内で行動する場合には憲法九条の何ら禁止するところではない、こういうことでございます。
  115. 上田哲

    上田(哲)委員 何ら禁止するところでないとかというところばかり力を入れて、あなたも法律家なんだから牽強付会ということはやめた方がいい。まあいいですよ、それで。言っていることははっきりわかってきているんだから。私は難しいことを言っているのではない。あなた方が説明したとおりのことを確認しているんだから、もっと素直に答えないと国会の議論としてレベルを落としますよ。  そこで、今まではできなかったんだ、ところが前提をつければできることになるというふうに変わったんだ、これははっきりしているんだ、あなた方の説明なんだ。だから、今武力行使がどうかなんというそんな言葉の概念の論議はしていないんだから、単純な論議をきちっと整理していただきたいのです。  そうすると、質問を変えましょう。これまではできなかったというのは、何でできなかったかというと、憲法の規定は原点が違っていた、原則が違っていた、こういうことになると思うのです。言葉で、抽象論で争いませんから、非常にわかりやすく言えば、憲法は、つまり憲法九条は、日本という国は軍隊は持たない、戦争はしない、こういう原則をしっかり持っていたということでいいですね。
  116. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 従来からお答え申し上げておりますところは、憲法九条において個別的な自衛権、これはもう委員十分御承知のところでございますので、例えば軍隊とか、今委員のお言葉をそのまま使うのは、私の方としては従来使ってきておりませんので、そういう意味で個別的自衛権、これは我が国憲法の許すところであるし、それを超えるものは許されない、かようにお答えしているところでございます。
  117. 上田哲

    上田(哲)委員 こういうところで時間を使われては困るので議論をしません。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕  言うまでもないことなんだが――どうか自民党の諸君、静かに議論させてくれ、やじは構わぬけれども、質問を妨害しないように、静かにやらしてもらいたい、これは基本のことなんだから。静かにやらしてくれよ、本当に。委員長、議場指揮をしっかりやっていただきたい。  非常に単純に、今まではだめだと言っていた、憲法は。前提をつければいいということになった。こういうことなんです。今までだめだと言っていたのは、憲法九条があるからだ。文句の言いようがないじゃないですか。憲法九条というのは、あそこに書いてあることを必要最小限だのなんだのと言いかえればいろんなことがあるけれども、単純に言えば、軍隊を持つちゃならぬということになっていて、戦争をしないということになった。これは当たり前のことですよ。これを否定されるとか、ぐにゅぐにゅほかの言葉を使われるというなら時間のむだだからこれはやらないけれども、こういう立場で言いますと、今回、こういうねじ曲げてきたと私たちは考えざるを得ない背景にいろんな問題が出てくる。そこから具体的に入りましょう。  私たちは、PKO世界平和をつくるためにいろんな平和活動をしなければならないこと自体は反対ではないのですから、そういうことをいろんな形でやっていきましょうということは社会党も対案を出しているわけです。こういう中で、何で自衛隊でなければならないのかというところが一つ大きな問題になっているわけですね。まず、そこに絞っていきましょう。そうすると、具体的にいきましょう。  例えば、総理は、国連に聞いてみたら自衛隊でなければだめなんだ、こういうふうに言われたので自衛隊ということになったと再々答弁をされておられる。国連のどこに聞いて、だれが答えてきましたか。
  118. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは先生も御承知と思いますけれども、外務省として国連調査団を出しておりますし、それから国会の議員先生方がグループになって国連調査団を出されて、そういう会談の中で、国連側事務当局は常にPKFそれから軍事監視団については軍人にやってもらっておるという説明を一貫してしてきておるわけでございます。それから国連のいわゆる「ブルーヘルメット」の中でも同じような議論が行われていると承知しております。
  119. 上田哲

    上田(哲)委員  「ブルーヘルメット」なんというのは、こんなものは読めばだれだってわかるのですよ。ここに書いてあることは書いてあることなんだ。  政府を代表して国連というところに行って聞いてきたというのだから、どこでどう言って、どういう答えが出てきたということをしっかりしたデータで出してください。
  120. 丹波實

    ○丹波政府委員 日本政府といたしましては、例えば先ほどのような外務省の調査団に対しても国連ははっきりと言って括りますけれども、最近の例といたしましては、八月の半ばに、国連局から国連事務局に参りまして、このPKO担当のグールディンク事務次長と会談いたしておりまして、その中で日本政府としてのこの五原則というものを説明した段階でも、今申し上げたようなやりとりが行われておるわけでございます。
  121. 上田哲

    上田(哲)委員 非常に重要な問題ですから、ひとつそれは資料としてしっかり出してください。どこかに書いてあったとか、どこかで言われていたのを聞いてきたという程度の話で自衛隊を初めて出す、こういう形で出すということがするすると決まる根拠にされては困る。今ここでそこのところを追及する時間を省きますから、しっかりした資料を出していただくことを要求をしておきます。いいですね。――時間がないんだよ。早く、急いでくれよ。外務大臣でも総理でもいいよ、うんと言ってくれればそれでいいんだ。そんなに時間がかかるというのは、出せないのかな。
  122. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどから申し上げておりますとおり、外務省それから内閣官房といたしまして、ことしの一月に国連の事務当局に参りまして、このPKO問題についてやりとりしておりますけれども、その中で出せるものを精査いたしまして、追って御報告申し上げたいと思います。
  123. 上田哲

    上田(哲)委員 そこを問いませんが、私は、そもそもこの出発点に、初めに自衛隊ありき、ここが問題だと思うのですよ。防衛白書で、防衛白書の今年度版で初めてPKOに対する参加ということが出てきたのです。これは、今までの二十年を超える防衛白書の中になかったのです。これが出てきた。この日付は九一年の七月なんであります。この法案ができたのは九月の十九日なんであります。この法案ができる前、今も八月云々ということが、国連へ行って聞いてきたと言っているんだ。それより早い七月に、既に、印刷の時間から考えれば、もっと早い時点で防衛白書はPKO参加ということをその「むすび」の中で書いてあるのですよ。これは明らかに防衛庁が先にその方針を出しているということになるではありませんか。これはどういうことでしょう。あるいは、時間がないから言うのですが、今手を挙げた防衛庁長官はことしの三月十二日に記者会見をして、ぜひ自衛隊を使ってもらわなきゃ困るということも発言をする、明くる日の十三日には私、防衛庁長官に質疑をしましたね、そのことで。こういう経過をずっと考えると、春夏秋冬、どうやら秋になって出てきたこのPKO法案よりもかなり早い時点で、防衛白書なり防衛庁長官の発言なりで、自衛隊でなければということがすっと出てきた。初めに自衛隊ありきではありませんか。
  124. 池田行彦

    池田国務大臣 お答え申し上げます。  御承知のとおり、昨年来、我が国国際社会の中でいかなる役割を果たしていくかということがいろいろ議論されておったところでございます。これは議会の中でもそうでございますし、広く国民の中でいろいろ議論されてまいりました。そういった中で、自衛隊の有する能力というものをそういった面でも、憲法の許す範囲内で活用することができないだろうか、活用したらどうだろうかという御意見もいろいろあったわけでございます。そういったことを踏まえて私どももいろいろ考えてまいったわけでございます。  なお、その防衛白書を引用されましたけれども、あの「むすび」で書いておりますのは、自衛隊がいろいろどういうふうなお役に立ってきておるか、本来の任務でございます防衛についてはもとよりでございますが、そのほかに、災害のときにどうであるとか、あるいは海外の関係で申しますと、ペルシャ湾に参りました掃海派遣部隊のことについても叙述いたしました。そういったことを踏まえて、いろいろ国民の中に議論が出てきている、自衛隊というこの集団の持つ能力というものはいわば国民の財産だから、これをどういうふうに生かしていくか、これは国民全体で考えるべき問題でございましょうと言っておりまして、我々として、出ていくべきだとまでは言っておりません。そういった経緯でございます。
  125. 上田哲

    上田(哲)委員 時間が非常になくなってくるので私は先急ぎますが、どうして自衛隊でなければならないかということが大変わからないんだけれども、そのことの議論が進んでいかない間にどんどん自衛隊への準備が進むんですよ。例えば防衛庁は既に国際援助隊の運用構想というのをまとめた、自衛隊員の三百人の編成をして出すというふうな要綱もつくったなどと出ています。一々これやっている時間がもうない。だから先急ぎますけれども、例えば、自衛隊法三条を改正してここに、雑則ではなくて、こっちへPKO問題も入れようとしている話も出ているなどなどいろいろあるわけです。  私はもう時間が本当になくなってくるからまとめて聞くよりしょうがないんだけれども一つ問題があるのは、国連と主権との関係です。国連と主権との関係。いかにも国連中心主義。私たちも国連を大事にしようということについては同じなんですが、国連中心主義ということと国連が個々の独立国の主権の上位にあるということは違う。これは明らかに国連憲章等によって主権を制限されているということはありません。これは言うまでもないことでありまして、例えば七章の義務規定はあります。しかし、七章によって、安保理事会の決定に従ってPKO派遣するというようなことになった土しても、これは各国の憲法の手続に従ってやれということでありまして、憲法国連によって制約されるなんてことは絶対にあり得ない。国連から言われたら全部聞かなきゃならないみたいなことは全くないんでありまして、国際的寄り合い世帯というべき国連というものの位置づけが少し国連中心主義という言葉で使われ過ぎていないか。  さらにまた、一国平和主義なんて言葉がしきりに使われる。社会党は一国平和主義なんて言葉は使った覚えがありませんよ。社会党は、日本の平和を世界に持っていこう、国際協調主義ということを言っているんであって、一国平和主義なんて言葉を使われるのはまことに迷惑だから、この際ひとつお慎みをいただかなきゃならない。  こういういろいろな問題がいっぱいあるのですが、絞っていきます。簡潔に答えてください。自衛隊法三条に、やがてPKOの問題を、国際協力なるものをこの中に入れていこうという考え方はあるんですか、ないんですか。あるかないかだけでいいです。
  126. 池田行彦

    池田国務大臣 現在御提案いたしております法案におきましては、御承知のとおり、そのような位置づけはいたしておりません。三条に入れるかどうかということは、この議会の審議を通じましてそういった御意見がございましたので、将来の問題としてそういう御意見をお述べになるということは、私としても理解できると申し上げたわけでございまして、この法案は三条には位置づけておりません。
  127. 上田哲

    上田(哲)委員 雑則に入っているというのも問題があるんだけれども、とにかくその議論は先に行きましょう。  初めに自衛隊ありきというような問題とつながる非常に大きな懸念がここに生まれてきたのは、先般、自民党の国際社会における日本の役割に関する特別調査会、これが要綱を発表したようであります。仄聞するところによりますと、ここでは大きな問題が二点指摘されている。座長は小沢前幹事長であります。一つは、多国籍軍や国連参加への道を開く。二つは、集団自衛権を認めていない九条の解釈を変更するか、しからずんば九条そのものを改正せよ。これは本音としては大変なことですね。私たちは本音ではないかと思うんですが、総理、こういう考え方があなたの自民党の特別調査会の中から報じられているわけです。いかがでしょうか。多国籍軍や国連参加への道を開くべきである、集団自衛権を認めさせる九条解釈にしろ、そうでなければ九条を変えろ、この考え方を、どうですか。
  128. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 いろいろな御議論、それが研究、勉強、いろいろなことがなされておるということは承知しておりますけれども、政府といたしましては、今ここでお願いしておる法律案に従っても、そのようなことを具体に想定しておるわけではございません。
  129. 上田哲

    上田(哲)委員 ところが、あなたは、国会の答弁の中で、集団自衛権は国として持っております、たまたま憲法九条がこれを禁止しているから我々はそれを行使しないだけであります、こういう言い方をしているんです。表面的に見ればそうなんですが、あなたの党からこういうのが出てきてみると心配だから確認をしておる。  裏返して言うと、集団自衛権というものは……(海部内閣総理大臣「言ってないですよ」と呼ぶ)言ってますよ、これはちゃんと、あなた、議事録ありますよ。本会議だって言ってますよ。そういう言い方をしておるのは、首をかしげるから余計心配になってくるんだが、裏返して言うと、憲法九条さえなければ集団自衛権の行使ができるのにという願望に聞こえたら大変だから、はっきりしておいてください。
  130. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 法律的に言いますと、国際法上、独立国家の当然の権利として集団的自衛権というのはどこの国もある、その前提に立ったからこそ国連憲章もあり、そしてたしか日米安保条約にもそういったことがありますが、ただ、日本の場合は憲法があり、集団的自衛権を否定しておりますから、日米安全保障条約というのは、バンデンバーグ決議の二つの原則のうちの一つである、集団的自衛権は行使しませんという、日本にとってはある意味では非常に都合のいいといいますか、あるいは日本にとって非常に受け身一本やりの条約になっておるというのも、そこのところを明確にしておるのだと私は受けとめております。
  131. 上田哲

    上田(哲)委員 端的に言えば、集団自衛権は日本のとるところではない、こういうことですね。
  132. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日本憲法九条の精神からいくと、これは個別的自衛権というものによって、日本はみずからの安全とみずからの平和を守っていくためのものであるということです。
  133. 上田哲

    上田(哲)委員 憲法を含めていかなる議論も自由でありますけれども、そうすると、あなたの党が今特別調査会で出された、集団自衛権を認めない九条の解釈を変えるとか、そうでなければ九条を変えるという考えとはあなたは違うということですね。
  134. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 党では何も決めておりませんし、また、今党の方でいろいろな議論やいろいろな意見を持っている人は自由民主党だからたくさんありますけれども、党の機関として決めたり、それを、今発表したとおっしゃいましたけれども、発表してはおりませんし、発表する段階にもなってないと私は思っておりますが。
  135. 上田哲

    上田(哲)委員 決定していなかろうと何だろうと、だから自由なんですよ、議論は。その議論に対して見解を明らかにしてもらうのは、その党の責任者としてのあなたの立場だからはっきりしておくのであります。そんなことは当たり前です。  そこで、そういうさまざまな懸念があるが、まず自衛隊ありきとか、あるいは、武装集団を強化しようとかということではなくて、あなた方が言われるのは日本国際貢献だ、こういうことですね。その国際貢献というのが非常にわからない。つまり、平たい言葉で言うと、金、物だけではなくて人も出せ、こういう言葉ですね。しきりにそう言う。あなたは、まだ少な過ぎるじゃないか、小さ過ぎるじゃないかという声を聞くのだ、これも国会答弁で言っておられる。一体どこにそういう声があるのか。私はいろいろ調べてみました。外務省からも資料をとってみました。十日もかかって調べてもらったけれども、政府、議会、マスコミ等々で、ぜひひとつ金や物ではいかないから人を出せなんということを言ってきた報告はないんですよ。  例えば、ブッシュさんはことしの二月六月のニューヨーク経済クラブで、日本に軍事面での貢献を求めるべきではないという発言をしている。サッチャーさんはことしの九月三日、東京の国際シンポジウムで、PKOには参加しろと言ったが日本憲法は守られるべきであって日本憲法で軍隊を出す必要はないという発言をされた。テレビ朝日でこの間、三週間前にシェワルツコフ将軍がインタビューを受けておりましたが、ここでも日本の軍隊の出動を求めるつもりはないというふうに、みんな言っておるのです。一体どこに金と物だけではなくて人を出さなければいけないのだという声があるんですかい具体的に教えてください。
  136. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 日本の場合には憲法に従って個別的自衛権であるということは申しました。そして、武装兵力を出そうとか軍隊を出そうとかそんなことを考えたことはありません。むしろ、この間のイラクの不法、無法な行為に対してアメリカを先頭とする世界の二十八に及ぶ国が国連の決議に従って力で平和を回復しなきゃならぬ、武力行使を共同でしなければならないというときに、それに参加できないという日本の立場を理解してもらうために、日本は平和回復のための費用を提供したんだ。しかし、物や費用を提供するだけではいけないから、せめて力でお役に立てないならば許される範囲内でいろいろなことで汗をかこうという気持ちを持った。それがここまで大きくなってきた。しかも、世界の平和と安定の秩序の中で大きくなってきた日本として、世界とともに生きるというならば国際協調国家として当然やらなければならない問題である。その限度はどこでその範囲は何かということを我々はいろいろ検討をし、政府としてはそれをお願いしておるんです。ツースモール、ツーレートというのはどこから言われたことかとおっしゃいますが、私自身みんなから言われました。
  137. 上田哲

    上田(哲)委員 私はお経を聞きたいんじゃないんですよ。そうじゃなくて、だれに言われたかということを具体的に聞きたいというんですが、これは外務省に聞いても出てこないんです。そういう世論をつくっているのは政府であり、その他ではないのかというふうな大きな疑念を持たざるを得ないんですよ。  それじゃ、質問をひとつ変えます。もし物や金ではなくて軍隊、人を出さなかったら日本にとってはどういう不都合なことが起きるんですか。これはお経でなくて具体的に言ってください。
  138. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 武装部隊を出そうという気持ちを持っておりませんし、武装部隊を出すことはいたしません、この法律にもそう書いてあるわけですから。
  139. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉じりじゃ困るので訂正しましょう。共通の言葉で聞きます。  物や金ではなくて、自衛隊を出さなかったら日本国際社会でどんな不都合なことになるのかを具体的に説明してください。
  140. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 世界とともに生きる日本とか、あるいは世界の中でこれだけ大きな影響力を持つ経済国家となってまいりました。きょうまでも人は出してまいりました。人を出したところでは非常に喜ばれて高い評価を受けております。そういった意味で、でき得る限り、お金と物を出すだけではなくて人も出してできる限りの協力をしよう、これが世界とともに生きる日本の果たすべき役割の分担だ、私はこう思っております。
  141. 上田哲

    上田(哲)委員 もう全部お経なんですね。具体的にひとつどうかということを説明してもらえないから、これはまあかみ合わないということで先に行きましょう。  じゃ、九十億ドルについて聞きます。  私は、九十億ドルは小さいとは思いません。大変な金だと思います。そして私自身はことしの三月十三日の委員会において、つまりあの交換公文が交換をされて金が払い込まれた翌日にその交換公文をかざしながら議論をいたしまして、九十億ドルがまさに一兆一千七百億円という邦貨によって支払われるということが協定されているということを確認をいたしました。当時は池田防衛庁長官が国務大臣としてそのとおりであるということを申された。そしてこの九十億ドル、一兆何がしの金は、年度の支出官レートが百三十三円でありましたが、近時点の平均値をとって百三十円で計算をしたものである、当日百三十六円前後でありましたから計算を大蔵省にしてもらいましたらおよそ八十五億ドル程度になりました。これを補てんするようなことがあるのかないのかということを申しまして、絶対に補てんしないということも約束をいたしました。一兆一千七百億円、百二十六円で計算いたしますと八十五億九千六百万ドルという数字が出ました。これは補てんしないということになっておりました。これを補てんするという言葉ではなかったが、別な名目をもって事実上の補てんを行ったということはだれもの承知しているところであります。  時間の制約がありますからまとめて伺いますが、この交渉に当たられた大蔵大臣、九十億ドルというのは私は十分過ぎる金だと思うが、足りなかったのかどうか。あわせて、この大蔵大臣とブレイディ財務長官との話し合いの中で円建てかドル建てかの詰めがなかったという話が出てきているわけですが、私は交換公文が円建てになっているのでありますからこのようなことはなかったと思うが、いかがか。そしてまたこれを、先方の言いなりにという形だと私たちは思いたいが、こんな形で補てんしたということのあり方というのは正しくないんではないかというふうに思うのですが、まとめて御答弁いただきたい。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 幾つかの点についてお触れになりましたので、順次お答えをさせていただきたいと思います。  今、交換公文によって決せられた一兆一千七百億円を支出した金額は多かったか少なかったかという御指摘がございました。これは私は日本国民にとって極めて多い負担であったと考えております。政府にとりましても、そのために予算を組み替え、新たな年度を限っての新しい臨時の税を国民に御負担を願わなければならなかったほどの金額であります。これが私は軽かったというつもりはございません。第一点であります。  また同時に、ブレイディ長官との話と仰せられますけれども、ブレイディさんと私は何遍もお目にかかっておりますし、今委員がお話しになりましたブレイディさんの話というのがどの場面を……(上田(哲)委員「最終的に」と呼ぶ)最終的と申しますのはどの場面でございましょう。(上田(哲)委員「九十億ドルが決まったとき」と呼ぶ)九十億ドルが決まったときとおっしゃる意味は、アメリカが湾岸の戦闘行為を開始した直後のブレイディ財務長官と私の話し合いでありますならば、ここで金額は決まっておりません。本院でも何回か御答弁を申し上げました。なぜならその当時においてアメリカは……(上田(哲)委員「九十億ドルが決まったときですよ」と呼ぶ)決まっておりませんので、大変恐縮ですがきちんと御説明をいたしますからお聞きをいただきたい。  本院で何回も申し上げましたように、当時アメリカとして戦闘継続期間も不明でありますし、どれだけの費用がかかるかもわからない時期の中で戦闘に要する経費そのものが算定できておらなかったわけでありますから、アメリカとしてどういう状態にあるというお話はありましても日本にどれだけの負担をしてほしいといったお話はございませんでした。私はその空気をそのままに持ち帰り、総理初め党の幹部の方々にもそれを御報告をいたしました。そして、一兆一千七百億円の交換公文が締結をされましたのは外交交渉の上でありまして、金額が確定をしたのはこの瞬間であります。事実関係を正確に申し上げるならばそのとおりであります。そしてその交換公文は円建てであったと私は承知をいたしております。  一方、七百億円を追加支出した理由と申しますものは、戦闘が終結をいたしまして、戦闘行為そのものは終結をいたしました後において、今ほとんどマスコミをにぎわすこともありませんけれどもクルド難民の問題その他、当初戦闘行為が発生をいたしました時点で、日本が湾岸に対する平和回復努力に対しての基金処出を決定をいたしました時点では全く想定をされていない新たな情勢が展開をしておったことは委員御承知のとおりであります。そうした状況に対して日本政府として改めて追加出資を決定し、基金に対しての支出を行ったという経緯であります。
  143. 上田哲

    上田(哲)委員 この九十億ドルは、その経過もともかくですが、使い道がどこへ行ったのかな。実はお見せしたい現場のさまざまなフィルムなども来ておるのでありますが、これはもう本当に時間がありませんから、今回は割愛をして先に行きたいと思います。  そこで、ここで本論の憲法に戻るのですが、先ほど来確認してまいりましたように、政府のPKO法案の新しい解釈というのは二つの前提を付した。これには多くの無理や矛盾、詭弁があると思うのでありますが、その二つの前提について手短かに聞いておきます。  まず第一に、小火器、みずからを守る兵器しか持っていかないんだという前提ですね。この前提であるならば当然限定されなければならない武器の限定がない。他の隊員については小火器の武器の種類の特定が、制限があるにもかかわらず、自衛隊員の携行する武器について特定をしないというのはどういうわけですか。
  144. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  自衛官として参加する場合には二つございまして、一つは停戦監視員のように個人として参加する場合でございます。これにつきましては、他の平和協力隊員と同じように小型武器を貸与されて行くということになっております。他方、部隊等として参加するにつきましては、二十四条において、御指摘のとおり限定はございませんけれども、それはこの法案の二条二項、つまり武力の行使あるいは武力による威嚇を行ってはならないということ、あるいはこのPKO、平和活動の定義等にかんがみまして、大きな制約、枠組みのもと参加するということになっておりまして、したがいまして特に限定を設けておらないわけでございます。
  145. 上田哲

    上田(哲)委員 これはめちゃくちゃですよ。大事な前提をつけた第一項の小火器という部分に限定するんだと言いながら、その小火器というものの限定がないのですよ。そんなばかなことはないでしょう。例えば、イギリスなんというのは機甲部隊も出していますよ。日本だって輸送ということになれば航空機、艦艇ということが出てくるから、ここで小武器、小火器ということに限定できないのでしょう。こんなばかなことがありますか。これは明らかに、他の部分は政令でやると言っているのですよ。これ、政令でもやらないのです。国連と話し合って決めるといったら何だって持っていけることになるじゃありませんか。こんなものが制限になりますか。まず答えてください。今のような話は三遍聞いてもだめだよ、答えてくれなければだめだ。
  146. 野村一成

    野村政府委員 小型武器につきましては、政令によって種類につきましてはっきりと定めることになっております、けん銃及び小銃を想定いたしております。この具体的な種類につきましても、現在自衛隊あるいは海上保安庁、警察等が所持している種類の中から限定することを考えております。
  147. 上田哲

    上田(哲)委員 こんないい加減なことで審議できますか。武力行使だ、武器使用だというので言葉を変えているのだけれども、じゃ兵器において武器使用という限界が来ることがあるじゃないですか。それを全然限定しないで、まだ検討していますということで法案が完成していると言えますか。  後の議論にします。  二つ目、必ず撤退するんだと言っているのですが、この必ず撤退するという言い方の中には、撤退し切れない場合というのは含むのですか、含まないのですか。端的に答えてください。
  148. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの撤退し切れない場合というのは、私趣旨を必ずしも理解できなかったのでございますが、この法案に書いてございますのは、まさに私どもの五つの原則のうちの一、二、三の原則、停戦の合意、受け入れ国の同意あるいは中立の原則が崩れた場合に、まず業務の中断というステップがございます。それから、短期間のうちにそういう事態が是正されない場合には外国への派遣の終了と、そういう手続で定めておる次第でございます。
  149. 上田哲

    上田(哲)委員 これは全然答弁にならないんだ。  法制局長官、あなたがとにかく二条件ということをずっと説明してきたのだから聞くんだ。いいですか。撤退しなければいけないわけでしょう。撤退し切れない場合ということは想定していますか。していませんか。
  150. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 今内閣審議官がお答えしましたが、撤退し切れないというのは、例えば非常に紛糾をしてその場にとどまるということあるいはとどまらざるを得ないという、それで業務は中断いたしますので、もし身の危険に必要があれば、二十四条の武器使用のところまではございますけれども、それ以上のことは規定してはございません。また、業務の中断をいたしますし、できれば業務の終了までいく、こういうことでございます。
  151. 上田哲

    上田(哲)委員 全然答弁にならない。僕は一般原則を聞いておるのですよ。撤退が条件で行くんでしょう。撤退が条件だということは、必ず撤退できるという場合に限るのですか。あなた、法律論でしょう、そのぐらいのことを一言えなければ困る。
  152. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 必ず撤退することになると思います。
  153. 上田哲

    上田(哲)委員 必ず撤退できるという想定で出す。じゃ、そこにしておきましょう。  もう一つ聞きますが、それでは、個人として武器使用するんだと言うが、隊として武器使用するということは絶対にないんですか。
  154. 池田行彦

    池田国務大臣 部隊として武器を使用することはございません。
  155. 上田哲

    上田(哲)委員 はっきりしてきましたよ。  国連がつくっている、つくろうとするPKFは、これは一九六〇年九月十日のキプロス国連平和維持軍の主導原則というのではっきりしておりまして、これは国連の出している資料の中でも今日まで生きている原則なんですね。この原則では、明らかに、「国連軍は常に国際連合の排他的な指揮、管理の下にある。国連軍司令官は事務総長によって任命され、事務総長に対してのみ責任をもつ。国連軍を構成する各国派遣部隊は統合された国連軍の一部であり、その命令を国連軍司令官からのみ受ける。」PKFは明らかに事務総長によって任命される司令官によって指揮をされるのですよ。組織として行動するのですよ。組織として行動するのだが、いざ問題が起きたときには、組織としての行動ではなくて個人で撃て、撃ってよろしい、武器使用するときにはそういうことになる、それでいいんですね。
  156. 池田行彦

    池田国務大臣 平和維持隊に参加いたします我が国自衛隊員がその任務を遂行します場合には部隊として行動いたします。パトロールをするとか勤務をするとかですね。しかしながら、武器の使用と申しますのは、これは任務の遂行との関係では使用できることになっておりません、この法案では。この法案においては、みずからの、あるいは同じ場所におります他の隊員の生命や身体の防護のために必要な場合に使用することができるということになっておるわけでございまして、これはあくまで部隊行動じゃございませんで、自衛官個人の判断に基づき、自衛官個人としての主体において武器を使用するものでございます。
  157. 上田哲

    上田(哲)委員 確認しますが、平常は組織として行動しているが、武器使用するときには個人である、これでいいんですね。
  158. 池田行彦

    池田国務大臣 武器の使用についてはあくまでその判断なりその使用の主体は部隊ではございません。
  159. 上田哲

    上田(哲)委員 二つの想定があります。  一つの想定は、極めて少人数が行動しているときに言うところの正当防衛のために武器を使う場合。これは確かに個人の判断ということもあるでしょう、歩哨に立っているとかですね。こういう場合は武力行使ということにはならないという言い方もいいでしょう。  もう一つの想定。二千人までは出せるんですから、そのマキシマムの場合はもう一つの想定もあり得るわけでありまして、二千人の部隊としましょう。この部隊が平常の任務についているときに国または国に準ずる部隊に攻撃を受けた場合、このときにも二千人はばらばらに武器を使用することになるんですか。
  160. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま先生が後の方で前提されました状況というのは、むしろPKF活動の前提が崩れたケースじゃないかと思うわけでございます。要するに、PKO、PKFも含めてですね、PKFの活動を行う前提が崩れたケースじゃないかと思います、国または国に準じる集団から攻撃を受けるという事態は。  そういう場合には、むしろ我が方といたしましては、まず業務の中断をし、またそういった状況が長く続きます場合には業務の終了をする、そういうことになるんじゃないかと思います。
  161. 上田哲

    上田(哲)委員 大変都合のいい、想定が覆っちゃうんですね。法案の審議ですからね、あらゆるケースをきちっと、この法案に予定されているデータの中で進めなきゃならない。だから、私はこっち側のミニマムな場合も出した。ミニマムな場合は少人数で起きることだから、武器使用という言葉の概念でいいとしましょう。二千人までは出せると言うんだから、マキシマムだけは考えないということは議論にならないでしょう。そうすると、二千人が平常行動をやっているときに国または国に準ずる組織によって攻撃を受けた、守らなきゃならないからそこで武器使用をするという事態がありますね。あったときに、それは二千人がばらばらに行動するのかということは、そんなことは想定できないと言うんじゃ議論にならないじゃないですか。まあ、だから、これは水かけ問答にしないために先に行きましょう。  これは明らかに武力行使なんですよ。武力行使だということになるとぐあいが悪いからばらばらだと言っているんですが、そうすると政府の説明している内容はこういう図柄になりませんか。  つまり、組織体として行動をしている日本自衛隊員は、紛争が起きる、攻撃を受ける、しかも想定としては国または国に準ずる組織体の相手方からその組織体自身、こちら側の組織体自身をねらって攻撃を受ける想定もあり得るんですから、あり得た場合にも個人の判断だ、つまり二千人でも何人でもたくさんの部隊が、普通の場合はおいっちにおいっちにと平気で歩いていたが、一たん銃声がしたら一人一人がばらばらになって行動する、こういう図柄になるわけですか。
  162. 池田行彦

    池田国務大臣 PKFに参加しております自衛隊員の数が少人数であるか、あるいはかなりの人数であるかという問題ではなくて、今先生が想定されましたケースというのは、国またはそれに準ずるような集団から攻撃を受けるという、こういうことをおっしゃったわけでございますけれども、そういった状況というのはそもそもPKFを含めたPKO活動の前提が崩れたケースであろう、こうお答え申しておるわけでございまして、その場合は業務の中断なり、あるいはその終了に結びついていく場合でございまして、ということを申し上げておるわけでございます。
  163. 上田哲

    上田(哲)委員 質問を変えましょう。  そういう事態が起きるんですよ。起きる。いや、起きるから、先ほど、先般の質疑の中でコンゴのケースは派遣しないと言ったんでしょう。法制局長官、コンゴのケースには派遣しないというのは、どういう理由でコンゴのケースには派遣しないのですか。
  164. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 コンゴのケースは、私が承知しております限りでは、その任務・目的に武力行使が許されている、こういうことだろうと思います。
  165. 上田哲

    上田(哲)委員 武力行使が許されているというときには出さない。これは、そうだとすると、あなたの前提はここでまず崩れますね。二つの前提をつければ、今までの憲法解釈を変えるということになった。コンゴの場合が入らないんだったら、二つの前提は書き直さなければならないじゃないですか。――コンゴを除くとでも書きますか。国連軍じゃないんだよ、これは。
  166. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 今回の法案におきましては、第一、第二、第三、いわゆる五原則のうちの最初の三項目につきまして、まず「定義」の中でそれをそれぞれ、当事国の合意なり、あるいは当事国がそこでPKFが存在し活動することの合意なり、中立的なりということをそれぞれの「定義」の中に織り込んで書いてございます。その範囲内で当方は参加する、参加することの可否を決めるということ妃なっております。  コンゴの、コンゴ型のいわゆるPKF、これはそもそもその三条の「定義」のところに入ってこない、かように考えている次第でございます。
  167. 上田哲

    上田(哲)委員 これはおかしいんですよ。今までの説明というのは、二つの前提をつければ、派遣することはいいということになっている、PKFに参加するということになっているじゃありませんか。PKFに参加するということになっている前提がコンゴは別だということになったら、これは前提がその分だけほころびたということになるじゃないですか。あなたが言っているのは一般原則ですよ。一般原則の中で除外例をどんどんつくっていくということはおかしいじゃないですか。これは当然、この二つの前提というのを書き直すべきですよ。これは書き直して出し直すべきですよ。いかがですか。
  168. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 PKFの中にいろいろなタイプかあるということはまず大前提としてお認めいただけるだろうと思います。その中におきまして、PKFのコンゴ型のものは先ほど申し上げたような理由によりまして当方が参加することができない。それで、その点につきましては、三条の一号、二号、三号というところで、あるいは当方の同意に関しましては六条というふうなところで限定をつけて参加する範囲を決めているわけでございます。コンゴ型のものには、そういう要件に該当いたしませんので参加できない、こういう結論になると思います。
  169. 上田哲

    上田(哲)委員 これは大変おかしい。大変おかしい。
  170. 林義郎

    ○林委員長 上田君に申し上げます。せっかくの御質問ですが、お約束の時間が既に経過しておりますので、結論をお願いいたしたいと思います。
  171. 上田哲

    上田(哲)委員 キプロスの例を言いましょう。キプロスの例は、これはもう時間がないからしょうがないんですが、一九六七年十一月、六八年七月、七四年八月、ずっとケースを見てみますと、実際にはコンゴの場合と同じ状態が起きるんです。恐らくあなた方は、コンゴの場合は明確な武力行使の授権があった、この場合はないとおっしゃるかもしれないんだが、すべての事務総長報告なりあるいは決議なりということをずっと累次重ねていけば、具体的に紛争事態の中で武力行使をしたという事例がいっぱいあるんですよ、例を挙げる時間がなくなって残念でありますけれども。  もう一つ言えば、レバノンの場合もそうです。レバノンの場合も、累次安保理の決議やあるいは事務総長の報告によると、これは当然そういう事態が想定されるんです。レバノンにも、そしてキプロスのような例にも行かないという解釈になるんですね、法制局長官。法制局長官、今の例で答えてください。
  172. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 私の承知しております限りでは、レバノンあるいはキプロスのような例につきましては、三条で先ほど申し上げましたような両当事者の同意であるとかその他の国連の決議であるとかというふうな要件は満たすと存じますので、そういう意味で当方として参加できないわけではない、かように考えます。  なお、その段階におきまして、その参加している過程におきまして何らかの事態が生じました場合、これは当方では中断ないし派遣の終了、こういうふうなことで構成しておりまして、そういったときに当然使われますまた武器も、二十四条の範囲に限定される、こういうことでございます。
  173. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、それは違います。だから私はさっき前提を聞いたんです。撤退できない場合があるんですよ。撤退することを前提としてでなければ、あなた方の前提というのは成り立たないんでしょう。ところが、一九七四年八月十四日の紛争の場合では、明らかにこれは撤退できなかったではありませんか。法制局長官、完全に撤退できるんだと言っているんだが、実際に撤退できないんですよ。できない状態が起きているんだったら派遣すべきではないんだということは、あなた方の前提に触れるじゃありませんか。これはどうなんですか。
  174. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生の御質問は過去の国連のPKFの実態にかかわります御質問でございますので、私の方から御説明させていただきたいと思いますが、キプロスの場合それからレバノンの場合ですが、私たちは前提が基本的に崩れた事例といたしましては、キプロスにおきます一九七四年の事態、レバノンにおきますところの一九八二年の事態でございますが、各国のとった対応を調べてみましたところ、出している国の中には、要するに任務を遂行せず、任務を中断して自分のところに引き揚げたという事例が散見されるわけでございます。  私たちはそういうことを参考にいたしまして、そういう前提が崩れた事態の場合にはまず任務を中断し、その任務から離れる。その中断の期間が短期間で回復した場合、例えばキプロスの場合は二十日前後で回復しておりましたけれども、その場合には任務に復帰する。どうしてもそれが長引いて、要するにPKFが存在する大前提がもうなくなったと判断される場合には日本に帰ってくる、こういう二段階で対応することを考えておる次第でございます。
  175. 上田哲

    上田(哲)委員 だから、こういう言葉だけの説明ではだめなところへ来ているんですよ。今私が例に挙げたこうしたキプロスの場合は撤退できなかったではないですか。しかもそこで非戦闘員の殺害まで起こっているわけでしょう。そして、このキプロスの例とコンゴの例、レバノンの例はいずれも三けたの人が死んでいるんですよ。ほかのとは違うんですよ。これは明らかに撤退できない、交戦はした上で撤退できないという面では、単に安保理事会の武力行使の授権があっなかなかったかということではなくて、同じ事態が起きているということになるじゃないですか。このことからすれば、撤退をする、問題が起きたときには撤退をする、中断をする、これは言葉の上ではそうだけれども、実態の問題としてコンゴが行けないのであればキプロスもレバノンも行けないということにならざるを得ないじゃないですか。
  176. 丹波實

    ○丹波政府委員 行けない場合と申しますのは、法制局長官の方からもちょっと御説明がございましたけれども、当初PKFが設立されて、当初国連から要請がある。で、日本の五原則に照らしてあるいは照らした上でそれに入れる。決定して派遣する。しかしながらその途中で前提が崩れた場合、この場合には任務を中断し、あるいは場合によっては帰ってくるということで、私たちの原則は保たれる、そういう保たれた形で参加できるというふうに考えております。
  177. 上田哲

    上田(哲)委員 これはだめだ。法制局長官、あなたは法律家としてこの法案説明に当たっているんだから、あなたの解釈でしっかりお答えなさい。いいですか。今実態は詭弁なんだよ。実態は詭弁だということは、コンゴの場合は行けないんだ、コンゴの場合は安保理決議によって武力行使の授権が行われているんだとおっしゃるが、コンゴの場合だうて初めからそうだったんじゃないんだよ。初めからではなくて、途中の事態の中で授権が行われているんですよ。打っちゃったら、途中でこういう紛争事態に巻き込まれるという事態があるじゃないですか。それがコンゴじゃないですか。  そこで、キプロスの場合だってそういう形になって行われているが、帰れなかった事態がここにあるじゃないですか。そのときは中断して帰るんだなんて言葉の上だけで言ってもらっちゃ困るんですよ。帰れないで死傷者が出ているという事態になるんだったら、それだったら行けないという言葉は正確な言い方じゃないが、行かせないということにならざるを得ない。あなたが立てた前提というものは崩れるじゃないか。あなたの立てた前提というのは、つまり今まで憲法が予定していたものでない新解釈を立てることに対しては不十分だということが、法理の上で実態の上で明らかになっているじゃないですか。法制局長官、責任を持ってお答えなさい。
  178. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  まず、実態の問題、これにつきましては国連局長の方に答弁をお願いしようと思いますが、先ほどの申し上げましたように、コンゴにおきまして、ある段階におきまして、いわゆる私の承知しております範囲では、カタンガ州の問題につきまして、例えばカタンガ州は平和維持隊の活動に同意していなかったとか、あるいはカタンガ州との間に必ずしも停戦の合意が成立していなかったとか、あるいは中立的な立場ではなかった、こういうふうなことがあったと聞いております。そういう意味で、三条の定義から外れてくるであろう、かように申し上げたわけでございます。  それに対しまして、レバノンとかあるいはキプロスでございますか、という問題につきましては、私の承知しております範囲では、国連の決議、安保理の決議と申しますか、等から始まりまして、いわゆる要件に適合するであろう、そうして現実にいわゆる最初の三原則の事態が崩れたとき、これはこの法案におきまして業務の中断ないしは撤退、業務の終了、こういうふうなことを書いているわけでございますし、その間におきまして何らかの危険にさらされた場合には、二十四条におきまして要員等の生命等の防護、こういうふうなことで規定して仕組んでいるわけでございます。
  179. 上田哲

    上田(哲)委員 全然、これはもう詭弁としか言いようがないんだ。では、言葉の上できちっと聞きますから、法制局長官、答えてくださいよ。  一九七四年の安保理の決議三百六十一、この中では「今キプロスに広がっているような状況に対して、人道的援助を行うことが、国際連合の主要な目的の一つであるという事実を念頭に」、このような援助を必要としているキプロス住民のすべてに緊急人道的援助を引き続き与えるよう要請した。つまりこういう国連の報告、要請に対して日本のPKFはこたえていく立場なんですか。――法制局長官は、向こうへ言わないで、ちゃんと、あなたの解釈じゃないですか、これは。どうして法制局長官、答えられないんだ。
  180. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生御承知のとおり、日本はキプロスのPKFに現実には参加してございませんで、人道援助の問題につきましてはその安保理の決議を見た上で、その状況現地で判断した上でどのように対応するか、そのときに決める問題であると考えます。
  181. 上田哲

    上田(哲)委員 大変な発言ですよ、これは。そのときでは、事態が起きちゃうんですよ。そこで派遣してしまったら、途中から武力行使の授権が行われて、そこで負傷者が出る、死傷者が出る。この事態で中断すると言ったって帰れないという事態を、キプロスに起きているではないかと言っておるんで、過去に起きたキプロスに今さらタイムスリップして帰るとか何とかということを言っているんじゃない。こういうケースというのが私たちが議論するテーマだから、このようなものに予想されるものに対しては、あなたの前提では行けないということになるじゃないかと言っているんですよ。  ところが、国連の事務総長、安保理の決議はこういうものに対してPKFは努力をしなさいと言っているんだ。こういう努力をするということをあなた方は意図しているんですか。はっきり答えてください。――どうして法制局長官、答えられないんだ。
  182. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいま申し上げましたとおり、例えばキプロス、私も参りましたけれども、平和維持軍が展開されているところと普通の住民が暮らしているところ、大変地域が広うございまして、例えば今のケースでございました場合には、平和維持軍が展開されている場所から撤退して通常のシビリアン、普通の住民が暮らしているところに移って、そこで国連の決議を見た上で人道的な活動ができるのであれば、例えば給水活動であるとか、そういうことはできるのであればやる、できなければ任務を中断したまま。それはやはり現地の司令官が国連の司令官と協議し、連絡し、態度を決める問題。一番重要なことは、日本はそういう事態が起きたときに武力紛争には巻き込まれないようにする、そこが一番重要なところだと思います。
  183. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなこんにゃく問答困りますよ。そうできない事態がここに起きているではないか。できない事態が十分に想定し得るのだから、そういうものに派遣してしまうということは、日本のPKFは、先ほど来言っている、問題が起きたら帰ってくるんだということに当たらなくなるんだから、だからそれは派遣できないことになるんではないかと言っているんですよ。そういうことはないんだ、ないんだ、こんなこんにゃく問答じゃどうしようもないですよ。明らかにコンゴは行けないと言ったんだ。キプロスとレバノンの場合も同じじゃないですか。明らかにその二つの前提にはこれははまらないんですよ。いいですか。  じゃ、別の質問を一つ言いましょう。日本PKFは戦死者を想定しているんですか。
  184. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生のおっしゃる意味がよくわかりません。御承知のとおり、何度も御説明申し上げておりますとおり、停戦の合意が成立し、平和維持軍の展開に当事者が同意し、かつ中立的な対応で活動する。PKFは、日本参加するPKFのみならず、国連のPKFは戦うために行くわけではないということはいろいろな関係者説明しておるとおりでございまして、今の先生の想定しておるかという御質問の意味はそういう観点から必ずしも私はわかりません。
  185. 上田哲

    上田(哲)委員 これは意味がわからないだの答えられないといったら質疑できないじゃないですか。いいですか。コンゴの場合は二百三十四名も死んでいるんですよ、隊員が。キプロスの場合は百四十九人死んでいるんですよ。レバノンは百七十人死んでいるんですよ。こういう事態が起きているではないかという例を出しているんだから、当然日本のPKFもここへ行くんだったら死者が出るんですよ。中断して帰ってくるということにならないんですよ。じゃ、これを当然その想定の中に入れるのかと言ったら、質問の意味がわからないというのはこれはどういうことですか。こんなことじゃ質問できないじゃないですか。都合の悪い事態は全部想定の外にあるといったらこんな議論はできないじゃないですか。これはどういうことですか、一体。同じ答えなら要らないよ、時間がなくなるんだから。こんな時間稼ぎされちゃ困る。都合の悪い想定は全部だめだというのじゃしょうがないじゃないですか。
  186. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  先生の、一たん平和維持隊に入って業務に従事しておりまして、それで途中で中断とか業務の終了というのはできないんじゃないかという、そういう御指摘がございました。  私どもは、この法案の中での基本的な仕組みといたしまして、実施の計画を閣議で決定いたしまして、その上で本部長が実施要領というのをがっちりと決めましてそれにのっとってこの業務を実施するわけでございますが、その実施要領の中に、業務の中断とか、そういうできる限り類型化しました、具体的にそういう状況が生じたときの現場でとるべき措置というのを、きちんと本部長からあらかじめ受理した実施要領で定めておく所存でございます。したがいまして、ただいまの御指摘の、いろいろな突然の事態に対応できるようにしておくということでございますので、中断あるいは業務の終了、いずれも可能と考えております。
  187. 上田哲

    上田(哲)委員 これはもう全然答弁してくれないんです。私は二つの想定をミニマムとマキシマムでやっても、マキシマムのことは想定に入らないとか、当然起きる事態がこうなんだから過去の例に照らしてこの場合はどうなんだと言っても答えない。事態はそんな簡単じゃないんですよ。  これはわかりますか。これは、今外務省が出したい、出したいと行っているカンボジアですよ、カンボジアから持ってきたんですよ。これは何だかわかりますか。木でつくってある。これ、地雷ですよ。防衛庁、木でつくった地雷があるんですよ、向こうには。こんなものがありますか。総理、見てごらんなさい。持つの怖いですか。危ないですよ。木の箱じゃないかと言うが、その木の箱が地雷なんですよ。こういうものなんですよ、カンボジアでやっているのは。こんなこと、防衛庁で用意してないでしょう。こういう事態が平気で起きるんですよ。新聞にも書いてあるじゃないですか。そんなに安全だ安全だと言うのなら、自衛隊員が、名前は秘すけれども、安全だったら外務省が行ってくれと言っているじゃないですか。  だから、私はもう一遍整理して聞きます。一九七四年の国連安保理決議三百六十一で、さっき言いましたから繰り返しませんが、キプロスのような事態について各国のPKFはこれをしっかりやってくれと言っているのです、簡単に言えば。これをやるということでなければ参加する意味は失われるのです。だから、日本のPKFがキプロス的なパターンにも参加する――キプロスの例じゃないんですよ。国連がはっきり言っているのは、一九六四年以来今日まで有効である原則であるとはっきり言っているのです。この原則に照らして、今日も生きているこの原則を日本のPKFというのは遵守するというのかどうか。それなら今の事態で戦死者が出るんですよ。  二つ目に、じゃ、日本の戦死者が出るということを想定しているのかどうか。想定にないなどということでは答弁になりませんから、このことをしっかり答えてください。そうでなければ、これは質問を続けられません。
  188. 丹波實

    ○丹波政府委員 国連のPKF活動参加いたしまして、参加するときの、先ほどから異次御説明申し上げております基本的な前提というもののいずれかが崩れた場合には、あるいは日本任務を中断し、あるいは場合によっては撤収してくるということは御説明申し上げてきているとおりでございます。  二つ目の、死者を想定しておるか、死傷者を想定しておるかという御質問でございますが、過去の国連平和維持活動、特に軍事監視団、それから平和維持軍、四十数年間の歴史がございますが、この歴史の中で七百名以上の方々が亡くなっておられることは事実でございます。しかしながら、この点につきまして補足的に一言だけ御説明させていただきますと、各国がどのような場合において亡くなられたのかということを調べましたけれども、例えばスウェーデンの場合ですが、五十九名の方が亡くなられましたけれども活動中に亡くなられたのは九名、これには地雷の接触事故も入っておりますけれども、その他、例えば航空機事故、それから病気、例えば病気で十二人の方が亡くなっておる、そういう数字になっております。  もう一つだけ例を挙げさせていただきますと、フィンランドですが、これまで三十六名の方が亡くなっておられますが、いわゆるPKFの活動中に亡くなられたのは五名、その他、航空機事故、病気、例えば病気で八名亡くなっておりますが、それが三十一名、こういう数字になってございます。
  189. 上田哲

    上田(哲)委員 これは答えになってないですよ。私が聞いているのは、国連決議三百六十一を日本としては遵守していくのかどうかと言っているのですよ。それがキプロスの例でもって問題になるんだからそれを聞いているのに、ちっとも答えられない。人数の問題じゃないでしょう。明らかに二百三十四人死んでいるコンゴの場合だって、敵対行為によってかなりの人が死んでいるというのは数字が出ているじゃないですか。こんなこと、答弁になりませんよ。ちゃんとした答えをしてください。時間のむだですよ。
  190. 丹波實

    ○丹波政府委員 私の言葉の足りないところで御説明がしっかりしてないのは申しわけないと思いますが、基本的に前提が崩れた場合、日本のPKF活動は中断いたしまして、場合によっては本国に引き揚げてくる。しかし、その中断の過程におきまして、例えば、先ほど申し上げましたけれども住民地域に引き揚げてきた、しかしそこで住民の方々が何らかの理由で水が飲めない、あるいは病気になっている、そういうものを助けてはという決議であるとするならば、それは状況を見てそういう人道的な活動をすること、この点は私は問題はないと考えます。しかし、それは状況その他を見てその場で司令官が国連司令官あるいは本国と協議をして活動することではないかということを先ほど御説明申し上げたつもりでございます。
  191. 上田哲

    上田(哲)委員 答弁にならないですよ。ちゃんと整理してください。同じことをぐずぐずぐずぐず言って、あと幾らもない時間がなくなるのは困る。ちゃんと、しっかり整理してくださいよ。しかも全然答えてないじゃないですか、一人でも二人でも死者を前提としたのかどうか。何にも答えてないじゃないですか。これを答えてくださいよ。できません。
  192. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私はこの法案の仕組みのことを申し上げましたですけれども、やはり我が国が平和維持隊に参加する基本原則の一番から三番目、それが崩れた場合におきましては、この法案の第八条をごらんになっていただければわかるわけでございますけれども、「中断に関する事項」ということでまず本部長が定めておりまして、その点につきまして、我が国が、本部長が基本的にそう判断する場合には、事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合しなくても独自に我が国の判断で中断ができる、そういう仕組みになっております。したがいまして、できないということではございません。
  193. 林義郎

    ○林委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  194. 林義郎

    ○林委員長 速記を起こしてください。  内閣総理大臣海部俊樹君。
  195. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ただいまのやりとりを伺っておって、私のあれを率直に申し上げますけれども、戦死者ということではなくて――これは戦いに行くんじゃありませんから、戦争に行くのじゃありません。しかし、私自身の経験からいっても、日本青年海外協力隊も、望んだわけでは決してありませんでしたし、当初から不幸なことを想定して派遣したのではございませんでしたが、私どものスタートさせた協力隊がきょうまで四十二名の犠牲者が出たことは事実でございます。けれども、その悲しみ、苦しみを乗り越えて、今日も二千名近くの青年がアジア、アフリカの諸国に献身的な奉仕に行ってもらっております。今度の場合は、同じものではございませんから、違いますけれども、私はそういったことが、望ましい場合ではないけれども犠牲者が出ないとは断言できませんから、もし不幸にして出た場合にはどのように手厚い対応をするかということを、賞じゅつ金の問題等も含めて具体の問題を指示しておりますのできる限り出ないように努力するのは当然でありますが、最悪の不幸な場合もあり得るということは想定の中に入れておかなければならぬと思います。
  196. 上田哲

    上田(哲)委員 そうでしょう。だからそうなると、私が言っているのは、今の国連が求めているPKFへの参加という概念に従って日本もそれを派遣するということになれば、コンゴの場合のみならず、例えばキプロス、例えばレバノンの例で、紛争が起きたり前提が崩れたら撤退するんだとおっしゃるが、撤退できないで、しかもそこで命を失う場合が出てくるというのです。それでも出すのですか。
  197. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは国連の決議を受けて停戦の合意が成立をし、紛争当事国のすべてが受け入れて、その平和維持隊の行う監視活動、そしていろいろな業務によって、それは申立て強制力を使わないものでありますから、それによって平和が維持できるということを当事国がすべて同意、合意をしたという前提で参ります。しかし、不幸にしてその前提が崩れるというときには業務の中断をする。業務中断をしてもどうしてもそれが時間的に長引くような場合、それは撤収をする。そのときには外交ルートを通じて本部長から国連事務総長に撤収の通報をする。そのことは決めてございますし、また国連の間においても、そういう日本の対応で問題ありません。結構ですという合意を受けて法案作成の作業を進めてきた、こういう経緯がありますから、そのようにいたします。
  198. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、矛盾が生ずるんですよ。死者もあり得る、しかも当初はそうではないつもりで行ったが、撤退するつもりだったが撤退できなかったということがあり得る、その中で死者が出るということになる。この事態はやむを得ないということですか。
  199. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 初めから武力行使を前提としておる決議があったコンゴのような場合には、これは全く例外なことだと思いますし、平和維持隊が行って平和維持活動をするというのは、紛争当事者すべてが合意をして、平和を確立しようという合意に基づいて、そして、当事者同士ではなかなか不測の事態が起こるといけないから国連の権威と説得を受けてそれをしようということで、それがいかに崇高な業務であったかということは、ノーベル平和賞も受けたということは御承知のとおりだと思っております。ですから、そういったことに参加をして、やろう、日本協力をしようという決断をしたわけです。
  200. 上田哲

    上田(哲)委員 決断はしょうがないんですね。答えてくださいよ、答えてくれなければ……。そんな前のお経はいいんです。そこでそういう事態が起きてもやむを得ないということなのかと聞いているんですよ。
  201. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 実施要領というものをつくるときに、そういった状況に対して十分、ですから武器の使用もみずからの隊員の生命、身体を防護するためにやむを得ない場合にこれは最小限度の行使ができる、できるだけそういう事態を防いでいこうという大前提を幾重にもつけておるということであります。
  202. 上田哲

    上田(哲)委員 いろいろなことを言われるけれども、大変なことを言っているんです、これは。大変なことを言っているんですよ。そういう事態にも出すということなんです。私は、そういう事態にも出すということになるだろうから政府が出した二つの条件というのはもうこれは崩れているんだ、条件にならないんだということを言っているんですよ。これを詭弁でいくのなら、これはいたし方ないんです。  じゃ、時間がないからもう一つだけ言いましょう。  さっきの私が第一に言った質問はどうなっているんですか。あの決議は認めるわけですね。その決議に従ってやるということになるわけですね。イエスかノーかたけ、はっきり言ってくださいよ。
  203. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 コンゴ型のような、あれはたしか百六十一号の決議であったと思いますが、そういう決議に従っては出しません。これは初めから出す五原則に反するわけでありますから。
  204. 上田哲

    上田(哲)委員 そうじゃないんで、三百六十一号。これは一例なんですよ。一例なんですが、累次国連事務総長がいろいろな形で出している報告とかその他における要請というものを全的に受けるということがなければこれは話にならないんですが、まあそれはいいです。どうしても答えられなきゃ、時間がもったいないから先に進むのですが、総理はこれまでの討議の中で、実態的には日本人、外国人とを問わずその正当防衛、緊急避難を否定するものではないとおっしゃっているわけです。これは今の決議とつながってくるわけですよ。  隣に日本自衛隊あるいはPKF隊員でない外国人がいた、これもあなたは人道的にはほっておくわけにはいかないということを言っているわけですね。これは答弁しているわけですよ。これは、この法案のどこを探しても外国人という言葉を出てこないのですよ。出てこないでしょう。言葉が全然出てこないのに、どうして出てこない外国人の生命、安全のために日本が発砲するのですか。こんなことはとんでもないわけじゃないですか。  もしそうであれば、あなた方が懸命に、組織的には行動をしているが武器の使用は個人だと言っている、個人の法益を守る法律である刑法三十六条、七条というものを持ち出して、組織としての行動と個人の行動とがここで非常に矛盾しているのも顧みずそういう言い方をしているんだが、そうなってくると、そこで非常に避けようとしている武力行使というものと集団自衛権というところに触れてくるんだ。いいですか、外国の軍隊が組織的な攻撃を受けた、これに対して日本自衛隊が行動をとる、集団自衛権ということになってくるじゃありませんか。  ここはあなた方が違う違うとまた言うでしょうから、時間がないからこれ以上そこを詰めないが、結論として言っておきたいのは、外国人のために撃つということはできないのですよ。だから先ほど私は、三百六十一決議というのをのむのか、のまないのかということを言ったんだ。これをのむということになってくると、外国人を守らなければならないのです。外国人を守るということは集団自衛権に入っていくから困るわけですよ。だからいけないというのか、あえてここで外国人を書いてないけれどもやる、人道主義なんという情緒的な言葉では困る、そうではなくて、まさに日本の法理において外国人を守るために発砲するのか。それができるというなら、その無理な論理をここで明らかにしておいてください。今後の議論に非常につながっていくが、私はできないと思うのですよ。できないならば、外国人について云々というところは取り消してください。これははっきりしてください。
  205. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 この法案においては外国人をということは法案に書いてありません、ということは法令上の義務でもありませんし、業務行為でもございません、そういう答えをしておりますと、御質問があるのです。隣で急迫不正の侵害とかもう正当防衛の要件に当たるような人がおっても人の命は捨てておくのか、見殺しにするのか、見捨てるのかと。私は、基本的人権を尊重するという立場から、そういう場合にはこれはやむを得ない行為として、人道主義の立場で、日本の刑法でも認められておる範囲内の自然権的な行為だと思ってお答えをいたします。今でもそう思っております。  けれども、離れたところにおる外国の部隊が部隊から攻撃を受けておるからそれをこちらも攻撃に行けというようなことは毛頭考えておりませんし、それは答えたこともありませんし、現にきょうまでの通常のPKFの行為というものは、停戦が成立してその後のところのパトロールなり見張りなりをそれぞれの国が国連司令官の指示によって地域を分けてやっておるわけでありまして、そういったような状況が想定されるものではないということも言い続けてまいりました。
  206. 上田哲

    上田(哲)委員 これはだめですよ。これは情緒的に人道主義とかという言葉を法理の中に置換することはできませんよ。いいですか、だから、ここに問題があるのです。国連のPKFは明らかにこういう決議に基づいて人道的にやるのですよ。発砲することもあるのですよ。日本の場合、刑法を持ち出して三十六条、三十七条でやろうというのですよ。これは個人の法益なんですよ。ところが、隣の隊員までは書いてあるのだ。外国人が書いてないのに、外国人のために日本自衛隊がPKFで発砲するということはできないじゃないですか。これはできないじゃないですか。これは訂正しなかったら大変な法理と矛盾することになるのですよ。これははっきりしてくださいよ。――時間はあるよ。さっき中断しているじゃないですか。これはだめだよ。外国人問題だけは撤回してくださいよ。
  207. 林義郎

    ○林委員長 上田君に申し上げますが、時間が参りました。質疑を終了してください。
  208. 上田哲

    上田(哲)委員 答弁してください、答弁。
  209. 林義郎

    ○林委員長 答弁で終わります。  工藤法制局長官。――丹波国連連合局長。(上田(哲)委員「せめて最後に総理答えろよ」と呼ぶ)
  210. 丹波實

    ○丹波政府委員 その前に一つだけ、事実関係。  先生が先ほど引用されました安保理決議三百六十一号は、キプロスの人口の多数が極度の窮乏状態にあることに留意して今行っている人道的援助を継続してほしいということでございまして、まさに人道的救援でございまして、鉄砲の弾を発出して助けるとかいうそういうことではございませんで、まさに食糧とか水とか、そういったぐいの人道的援助ということを言っているわけでございます。(上田(哲)委員「責任持って答えてくれよ。外国人はできないのだから、できるのかどうかだけはっきり言ってくれよ。外国人はできないのだよ、外国人のために武器使用はできないのだ。はっきりしてくれ」と呼ぶ)
  211. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 事態をちょっと区分して申し上げるのが適当かと思います。  まず、法案の二十四条でございますが、これはいわゆる法令に基づきます行為といいますか業務上の正当行為、こういう意味で、まず刑事法の分野だけ申し上げます、刑事法の分野で申し上げますと、そういうごとでいわゆる違法性が阻却される。それに対して三十六条、三十七条というのは、これは正当防衛あるいは緊急避難、こういうことで刑事上の責任を免れる。こういう段階がまず刑事法の概念としてはございます。  それ以外にこの法案に即して申し上げれば、この法案で、二十四条で武器を使います。これは業務上の行為でございますから、そういう意味我が国の公務員としての公務上の行為である。こういう評価で、いわゆる法案上の公務上の行為という評価を受けるわけでございまして、これは格別、いわゆる刑事法の分野とは別の分野でございまして、その分野におきましては、こちらの分野におきましては、先ほどから総理その他も申し上げておりますように、いわゆる我が国の自身あるいは我が国の要員の生命あるいは身体の防衛、こういうことで書いてあるわけでございます。  そこで、刑事法の分野につきまして申し上げれば、刑法の三十六条ないし三十七条、こういうのに当たります場合には、身近にいる外国人が刑法の上でそういう正当防衛、緊急避難に当たりましたときには刑事法の責任を免れるということでございます。それ自身、この法案の話と若干区別して申し上げた方がいいと思います。また現実問題としては、そういう近くの場所外国人がいるとか、あるいはそういうふうな現実は想定しがたいわけでございますけれども、仮に外国人がその近くにおりまして、そして刑法三十六条、三十七条という場合でございましたらそういう事態になる。法案の二十四条とはそういう意味で区別してお考えいただければと存じます。
  212. 林義郎

    ○林委員長 時間が参りましたので、上田君、質疑を終了してください。(上田(哲)委員「一言言わしてよ、質問しないから」と呼ぶ)はい。
  213. 上田哲

    上田(哲)委員 委員長の御配慮で、質問ではなくて一言だけ。  私は、明らかに最後の外国人のために武器使用するということは集団自衛権に対して道を開く、これは絶対に撤回すべきであり、二前提の条件は崩れたと言わざるを得ないから、これは廃案以外にないということを強く申し上げて、終わります。
  214. 林義郎

    ○林委員長 次に、山口那津男君。
  215. 山口那津男

    ○山口(那)委員 公明党を代表して御質問させていただきます。  先日、アメリカ合衆国は核の政策に関して重大な変更をなしました。これについては既に同僚議員からもたびたびの質問があり、また総理においてはブッシュ大統領の声明に対する高い支持と評価を与えているわけであります。  そこでお伺いいたします。このブッシュ大統領の声明を受けて、ゴルバチョフ大統領の発言などソ連側での反応が出てきておりますが、これに対してはどのように評価をされるでしょうか、総理、お伺いします。
  216. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ブッシュ大統領の核兵器削減イニシアチブに対してはゴルバチョフ大統領が基本的に非常に肯定的に評価をした、こう承知をいたしております。そして、ソ連側からこのような迅速な反応がなされたということを、日本政府としてはソ連をも評価をいたします。  我が国は、今回のブッシュ大統領のこの大胆かつ勇気あるイニシアチブを世界の平和と安定に資するものとして評価し、同時に、核兵器の究極的廃絶に向けた大きな一歩として強く支持をいたしております。ソ連指導部もこれに的確に対応してくれることを強く望みます。
  217. 山口那津男

    ○山口(那)委員 このブッシュ大統領の声明に際しては、ヨーロッパ、イギリスあるいはフランス、ドイツ等に対して了承を得た上で声明を発表した、このような発言がありました。このアメリカの対応に対して、日本側にアメリカから何らかの説明があったでしょうか。あるいは、近い将来アメリカとのこの件に関する何らかの協議等の場が設けられる予定がおありでしょうか。
  218. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ブッシュ大統領が演説をされたのがたしか日本時間の午前九時だったと思いますが、前日の夕刻、アマコスト大使が私のところへ来られまして、ブッシュ大統領の考え方、そういったものを手紙の形できちっと書いて持ってきて、そして背景、概要等の説明を受けました。前日の六時ごろのことでございました。
  219. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この声明の中に、海洋戦術核を撤去する、こういう表明があるわけですが、我が国に配備されておるアメリカの空母インデペンデンスなどによって日本への核持ち込みの可能性、これは従来から非核三原則との関係でアメリカ側は否定も肯定もしないという表現を繰り返してきたわけでありますが、今度の大統領の声明によって核持ち込みの可能性が否定をされた、このように理解できるのではないでしょうか。
  220. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御指摘のとおり、従来の政策はそうでありましたし、日本政府としては、安保条約の、非核三原則の問題等もあり、必ず事前協議の対象になるものという立場を貫いてまいりました。したがいまして、きょうまで事前協議がなかったということはそういったことはなかったという、日米信頼関係に立って処理をいたしてまいりました。今後は、このイニシアチブを世界に向かって公表したわけでありますから、アメリカが世界に対してさらにこの政策を行っていくんだということを表明したわけでありまして、その問題についても、従来と変わりなく日本としては非核三原則の立場で対処していくことになる、こう思います。
  221. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今のお答えはちょっと不十分でして、アメリカ側は否定も肯定もしない、こう言っていたわけです。ところが、アメリカ側は、海洋戦術核はすべて撤去をする、こういう表明をしているわけですから、これは肯定をする根拠というのはなくなるわけですね。持ち込みを肯定をする根拠というのは完全に否定された、つまり持ち込む可能性は完全になくなった、こういうふうに理解できるんじゃないでしょうか。その点の御認識を伺います。
  222. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 そういう角度から考えてみますと、そのとおりでございます。
  223. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 一般にアメリカのNCND政策と申しますのは、具体的な艦船、具体的な飛行機等に関しまして当てはまることでございまして、今回あくまでもブッシュ大統領が表明いたしましたのは一般的な政策でございまして、具体的な問題に関しましては、引き続きアメリカはNCND政策を続けるものと私どもは承知しております。  ただ、今総理がおっしゃられましたこと、基本でございますけれども、一言つけ加えさしていただきますと、従来アメリカは、他方においてNCND政策をとっておりましたけれども、一方におきまして、日本との関係ではアメリカ政府は安保条約及びその関連取り決めに基づく我が国に対する義務を誠実に履行しているということを繰り返し言っておりますので、そういうところから、先ほど総理が申し上げられましたように、事前協議が行われない以上アメリカ側による核の持ち込みがないというふうに私どもは確信していた次第でございます。
  224. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今の政府委員の御答弁ですと、具体的にはこの持ち込みの可能性は完全に否定せられたわけではない、こういう趣旨に伺いますけれども、それでよろしいですか。
  225. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私、最初申し上げましたのは、一般論として、アメリカは今回、先ほど総理が申し上げられましたように、海の核に関しましては引色揚げ、かつ廃棄するということを言っておりますけれども、一般論でアメリカのNCND政策がどうなるのかということであれば、このNCND政策を変更するということではないと理解しておるということを申し上げたわけでございまして、日本との関係におきましては、従来からも安保条約のもとできちんとしたメカニズムがきちんと機能していたということは今申し上げたとおりでございますけれども、総理が申し上げられましたように、米軍の水上艦船及び攻撃型潜水艦に関連して、先ほど来御指摘のような疑惑が一部から従来提起されて、そういう疑惑を提起する人が減ってくるだろうということは当然だと私ども考えております。
  226. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この海洋戦術核撤去の具体的な実施の見通しですね、これが、アメリカが近いうち一方的になすのか、あるいは米ソの交渉の経過があっでなされるのか、その点の実施の見通しについてお答えください。
  227. 丹波實

    ○丹波政府委員 ブッシュ大統領のこの点に関しますイニシアチブは、アメリカの一方的なイニシアチブでございまして、ソ連と交渉して行うということではございません。しかしながら、アメリカとしては、ソ連が見合った行動をとることを強く期待しつつということでございます。この点につきましては、私たち日本といたしましても、ソ連がまさに見合った行動をとってほしいと強く期待するものでございます。
  228. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これはアメリカ側の一方的なイニシアチブによって行われる、こういう御説明でしたから、そのアメリカ側のイニシアチブがどのように発揮されてこの撤去が実現されていくのか、その見通しをお伺いしているわけであります。
  229. 丹波實

    ○丹波政府委員 例えば戦略核の警戒態勢というのは既に解除されておりますけれども、その他発表されたものの実施の詳細につきましては、何しろ一昨日のことでございますので、我々としても国防長官の説明その他を研究しておりますし、場合によってはアメリカにもより詳細を問い合わせ、どの時点で現実にいろいろな措置がとられていくのかということを見定めていきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、近い将来行われるというふうに承知いたしております。
  230. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これは我が国を含む北東アジアの非核化に向けての大きな一歩になるわけでありますから、アメリカのイニシアチブをただ期待するというのではなくて、総理みずからこの日本側の意思を伝え、アメリカとの早期実現へ向けての話し合いをすべきであろう、このように思います。総理の所信をお伺いいたします。
  231. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 最初に申し上げましたように、このアメリカの大統領のイニシアチブは私は高く評価しておりますし、同時に核の問題については、今回の一方的な撤去というようなことがさらにアメリカの決意と行動によって一日も早く行われるように、同時にそれに対応した行動、対応をソ連初めもとるように、そのことを強く私は期待をし、要望をいたします。
  232. 山口那津男

    ○山口(那)委員 このアメリカの政策は、北朝鮮のNPT条約に関する査察制度の受け入れ、これを拒否していた根拠が失われることになった、まあ失わせることをむしろ意図して行ったものである、こういう評価もあり得ると思いますが、この点について政府はどのように認識されているか。そしてさらに、今後の日朝交渉に当たって、この査察の問題について我が政府としてはどのように取り組まれるおつもりかお伺いいたします。
  233. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のとおりでございますけれども、北朝鮮は、従来から在韓米軍の核兵器の撤去ということを口実にいたしまして、御案内のIAEAの保障措置協定の締結を拒否してきておるわけでございます。これに対しまして日本政府等は、そのような主張は正当化されるものではないということをるる申し述べてきておるところでございますけれども、いずれにいたしましても、米側におきましてこのような積極的な措置がとられたわけでございますから、もはや北朝鮮の側におきましてくだんのIAEAの保障措置協定の締結をこれ以上おくらせる口実といいますか、理由はなくなったのではないかと考えております。そういうこともありまして、私どもといたしましては、引き続き日朝交渉等の場を通じまして北朝鮮側に早期かつ無条件にこの協定の締結を求めるとともに、また、その査察の完全履行を行うことを強く求めてまいりたいと思っております。
  234. 山口那津男

    ○山口(那)委員 中期防衛力整備計画では三年後の見直しか示唆をされております。今回の核政策の転換によりまして、今後、その推移を含めて今回の事態が有力な見直しないし修正の契機になるのではないかと思われますが、その点の御認識防衛庁長官にお願いいたします。
  235. 池田行彦

    池田国務大臣 委員指摘のとおり、中期防におきましては三年後にそのときの内外情勢を勘案しながら必要に応じ見直していく、こういうことになっております。そういう中で、今日の国際情勢の大きな変化、その中には今回出されましたブッシュ大統領のイニシアチブも入るわけでございますが、そういったことを勘案して考えてまいることになろうかと存じます。  しかしながら、御承知のとおり我が国の防衛政策は、核の脅威に対しましては、我が国独自に対応をするのではなくて米国の核抑止力に依存する、こういうことになっておる。こういうことを考えますと、今回の米国の核政策の変更が直ちに我が国の防衛力整備に影響するものではないということは、さきの審議でも申し上げたところでございます。  二番目には、また、我が国の現在の防衛政策というのは、脅威対応論ではなくていわゆる基盤的防衛力という考え方をとっておりますので、そういった面から申しましても、直ちに現在の事態あるいは三日前のブッシュ大統領のイニシアチブが中期防の見直しにつながるということではございません。  いずれにしても、こういったことも含めましてこれからの国際情勢の推移、委員も推移とおっしゃいましたけれども、そういうものを十分見きわめながら考えていくべきものと承知しております。
  236. 山口那津男

    ○山口(那)委員 核政策が根本的に変わるということはアメリカの重大な認識の変化を示しているわけでありまして、これは単なる核だけの問題ではなくて、日本がその核に依存しているから我が政府は関知せず、こういう立場ではないはずであります。やはり大きな軍縮の流れ、もはやソ連がアメリカと対峙し得る力は全くなくなっておる、それに伴って核ばかりでなく通常の戦力に対しても大きな影響が出てくる、こういうことを見越しての行動でありますから、当然我が政府の防衛計画も大幅な修正を余儀なくされることは明らかなのでありまして、それについて、直ちに影響を受けるものではないというような消極的な認識は全くこの事態の重大性を見過ごしておる、このように私は思います。いずれにしましても、この点について積極的な計画の見直し等を期待したいと思います。  続いて、今回問題となっているPKO法案についてお伺いいたします。多少技術的なことも含めて細かくお伺いする予定でありますが、たびたび質問にもなりましたシビリアンコントロール、この関係について具体的にお伺いいたします。  このシビリアンコントロールという言葉は、憲法には国会との関係で具体的な規定は置かれてはいないわけでありますが、このシビリアンコントロールの一般的な意味についてまず確認をしておきたいと思います。
  237. 畠山蕃

    畠山政府委員 シビリアンコントロールの一般的意味でございますが、一般的には政治の軍事に対する優先ということでございまして、民主主義国家としてはぜひとも確保しなければならないというふうに我々は考えているところでございます。
  238. 山口那津男

    ○山口(那)委員 非常に簡潔なお答えだったわけでありますが、やはり軍人が政治に関与しないこと、あるいは政治が優位に立って軍人の行動を規制していくこと、ひいてはこれが民主的統制につながっていくこと、かように解されることかと思います。その上で、このシビリアンコントロールという言葉が、直ちに具体的な国会の承認とかあるいは内閣のある特定の制度を意味するものではないのだろうと思います。  そこで、諸外国のこの国際的な具体的な制度を見てみますと、多国籍軍に参加するような場合、例えば湾岸で形成された多国籍軍等に参加するような場合には、各国とも議会の決議を要する、こういう例が多いようであります。また、このPKO、これは国連平和維持活動でありまして、多国籍軍の活動とは根本的に性質が違うだろうと思いますが、この活動への参加に対しては議会の承認を要するという制度をとっている国は極めて少ない、そういう実例であろうかと思います。  このように、諸外国が同じ軍隊の海外の行動でありながら制度が全く違う、まず議会の承認を設けるか設けないかで全く違うという制度がとられている、これはどういう理由に基づくものであると考えられますか。
  239. 丹波實

    ○丹波政府委員 私たちが調べましたところでは、議会の承認を要する外国の例といたしましては、オーストリアとかアイルランドがございますけれども、その他スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドなどでは議会の承認を要しないということになっております。  それで、議会の承認を必要としない各国の理由につきましては、各国国情必ずしも明らかではございませんけれどもスウェーデンとかフィンランドでは、PKO参加する法律というものが議会によって承認され、その法律の枠組みの中においてこのPKO派遣というものを運用しておるということが理由になっているのではないかと承知いたしております。
  240. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私の知る限りでは、例えばポーランド、これもPKOの常連とも言っていい国でありますが、ここでは国会の承認なんというのはそもそも議論になったこともないということが語られておりました。  ところで、オーストリア、ここではPKO参加に下院の承認を要するという制度を置いていたそうでありますが、最近、この制度を変更しよう、承認を外そう、こういう動きが出ているようであります。こういう議論がオーストリアでなされている理由は何なのか、これについてお伺いいたします。
  241. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  私たちが承知をいたしておりますところでは、一つは迅速な処理を要するということ、もう一つは、いろいろなPKF活動は、存続の期間を例えば六カ月とか短く区切って安保理がそれを更新していくという制度をとっておりますけれども、オーストリアの場合には、延長する場合でございますけれども、その都度議会に対して承認を求めなければならないという点が、運用改善を考えているもう一つの理由であるというふうに承知いたしております。
  242. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ところで、我が国の法体制を見ますと、自衛隊法七十六条、七十八条等で、防衛出動あるいは命令による治安出動の場合に国会の承認を要件としております。これは事前または事後ということでありますが、この二つの出動について国会の承認を要する、こういうふうに定めている、この具体的な理由は何でしょうか。
  243. 畠山蕃

    畠山政府委員 いずれも非常に重大な事態でございまして、かつまた国民の権利義務に極めて重大な関連があるということから、そういう慎重な手続を定めているものでございます。
  244. 山口那津男

    ○山口(那)委員 もっと具体的に言いますと、国民にどういう重大な影響があるのか、片や治安出動と防衛出動では、その重大な影響も内容が違うと思うのですが、それについてもっと詳しく説明をしてください。
  245. 畠山蕃

    畠山政府委員 御承知のとおり、防衛出動になりますと、国を挙げまして、国が組織として侵略者に対して武力を行使するという事態でございます。これは我が国にとっては非常に重要な事態でございます。それからまた治安出動の場合にも、これは言葉がちょっと適当でないかもしれませんが、時と場合によりましては国民に対して銃を向けるという場合も想定されないわけではございません。それからまた、一般的に言って国民の権利、行動等が制約を受ける、国を守るというあるいは治安出動で治安を守るという観点からいたしますと、その目的を達成するために、一般的に通常認められております国民の権利義務が制約を受けるというような事態も招くわけでございまして、そういう意味において重大であるということでございます。
  246. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そのような出動がなされた場合、国内でどういう具体的な権利義務の制約等があるのか。これは法制度がないわけでありますから具体的には言えないことだろうとは思いますが、事実上そういう影響があり得ることは当然に予想されるわけですね。  そこで、同じ治安出動であっても要請に基づく治安出動、八十一条で規定されておりますが、これは都道府県知事の要請に基づくものでありまして、この出動が終了した後、これは都道府県議会へ事後に報告をする、こういう制度になっております。この場合に、片や命令による治安出動は国会の承認を要し、こうした要請に基づく治安出動は地方議会の事後的報告でよい、こうやって差を設けているのはどういう理由なんでしょうか。
  247. 畠山蕃

    畠山政府委員 治安出動の場合に命令による場合と要請による場合とがあるわけでございますけれども、要請による場合といいますのは、一地方におきまして、その地方におきます知事等の判断に基づいて要請がなされるわけでございまして、それに対しまして命令というのは、そのいとまがなく、かつ国レベルの全体の立場から見ましてもたちどころに要請を待たずに出動しなければならないという重要度において差があるということから、そのような差が設けられているものと承知いたしております。
  248. 山口那津男

    ○山口(那)委員 片や命令による治安出動が地域的な限定がないということと、それからこの要請による治安出動は、都道府県知事の要請によると、何か地域的限定があるかのようでおりますが、そういうことがこの手続に承認か報告かと差を設ける理由になっていますか。
  249. 畠山蕃

    畠山政府委員 地域的限定もあろうと思いますし、それからまた時間的な限定といいますか、ゆとりといいましょうか、そういうこともあろうかと思います。  例えば今回の雲仙の災害の場合におきましても、これは長崎県知事からの要請に基づいて動いたわけでございますが、その要請をするいとまがないという場合には、国としての立場から要請によらず災害出動を行うといったことも災害についてはございます。治安についても同様のことがあろうかと考えております。
  250. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、この自衛隊法で、シビリアンコントロールのあり方ということで、これも制度が具体的な状況によって異なっているということは、やはりシビリアンコントロールのあり方というものは一様には、一律には論じられないということの具体的なあらわれだろう、このように理解をします。  そこで、日本がこのPKO活動参加するに当たって、国内の防衛出動あるいは命令による治安出動にも比すべき国会承認を求めるような前提となる要素があるかどうか、この点についてはどう御判断されますか。
  251. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の方から、防衛出動あるいは治安出動との関連におきまして、このPKO法案でどうかという御質問でございました。  防衛出動とか治安出動の場合につきましては、そもそもこういった事態は我が国にとって重大な事態でございまして、また国民の権利義務に関係するところが多い面もあることから、慎重を期しまして国会の判断を求めるとしたものである、そういうふうに私ども理解をしております。  そういうこととの関連で今回の法案PKOへの協力ということを見ますと、まずそういった、今申しました意味での我が国にとっての重大な事態への対応ではないということが申せるかと思いますし、PKOはそもそも、この紛争当事者間の停戦の合意が成立しておりまして、国連の権威と説得によりまして停戦確保等の任務を遂行するものでございます。我が国としまして、国連からの要請を受けてこれに協力するということによりまして国連PKO活動に積極的に貢献しようというものでございます。  そういったPKOの性格からいたしましても、我が国PKO協力するということは、先ほど申しました防衛出動とか治安出動のごとき国民の権利義務に直接関係する面はないということでございまして、そういうことから、同じような意味での国会の承認までの手続を必要とするということにはならない、そういう考え方だと思います。
  252. 山口那津男

    ○山口(那)委員 このPKO活動参加する個々の日本人の利害にどうかかわるかという問題はあろうかと思いますか、一般的に日本国民に対して重大な権利の制約等を及ぼす可能性はこのPKO活動についてはおよそ考えられない、こう思います。しかしながら、出動していく、派遣される先の国、相手の国に対しては、この活動いかんによっては重大な影響を及ぼす可能性もあるかもしれません。その場合には、この相手国の同意という制度が取り入れられておりますので、その相手国の同意によってその相手国の利害に対する影響のスクリーニングというのがなされるのだろう、このように理解されます。  さて、PKO参加の場合に、仮に国会の事前承認ということを要件とするような制度をとった場合に、これは具体的な不都合が出てくる可能性があるのですか。あるのであれば述べてください。
  253. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  この点につきまして委員会でも種々議論がなされておるわけでございますが、私どもはやはり、先ほど国連局長の方からオーストリアの例について指摘がございましたけれども国連PKOに対する協力という側面に着目いたしますと、機動性というのがなくなるというのが一つの大きな問題であろうかというふうに思っております。
  254. 山口那津男

    ○山口(那)委員 機動性と一言で表現されましたが、余り抽象的な言葉ですから、なるべく具体的にその利害を述べていただきたいと思います。  事前承認についてはそのような不都合があり得るということはわかると思います。しかし、事前だからそういうことが起こるわけでありまして、事後であればそのような問題は回避される可能性があるわけですね。この事後的な承認を要件とするような制度をとった場合に、これがどのような影響を及ぼすかという点についてお答え願いたいと思うのです。例えば、参加している我が国隊員に対する影響あるいは国連あるいはその関係国等に与える影響がどのようなものがあるか、これを具体的に述べてください。
  255. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  現実に派遣されている状況もとでも、なお国会で承認の問題があるということからきます派遣そのものについての不安定性というのが指摘できるかと思います。
  256. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その不安定性というものが、心理的にもあるいはこの制度の運用に当たっても、いろいろな影響を及ぼすんだろうと思われます。  そこで、仮にこの事後的承認の制度で結果的に不承認、つまり承認の制度を設けるということは、承認の場合もあるし不承認の場合も当然ある、制度の可能性としては十分考えなければいけないことである。そこで不承認になった場合の法的効果、あるいはこの制度にかかわる国際社会の影響、反応、こういうものについてはどのようにお考えになりますか。
  257. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  甚だ仮定の御質問でございますけれども、不承認ということになりますと、いろいろ具体的な状況にもよるのでしょうけれども、基本的には派遣そのものを終了させるということになろうかと思います。
  258. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ほかにも国会の承認を設けている制度がいろいろあるわけですが、例えば条約、これは国会の承認が必要とされております。これで不承認になった場合の法的効果については論者によって見解の相違はあるようでありますが、外務省としてはどう考えますか。確認的にお伺いします。
  259. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の条約の場合でございますが、これは先生よく御存じのとおり憲法七十三条で、条約の締結権そのものは内閣に属しておりますけれども、ただ国民の権利義務の関係があるということで事前承認を原則として、ただ時宜によりましては、事後に国会の承認を経ることを必要とするというふうに規定されているわけでございます。  そこで、仮に事後承認というような場合におきまして承認が得られなかったという場合でございますけれども、この場合には、私ども考え方といたしましては、条約の効力そのものには影響は及ばない、しかしながら、この承認が得られるという前提のもとに政府が出した条約の締結につきまして御承認がいただけなかったということになりますれば、政府としては国会の意思を外しましてこの条約の改定を申し入れる、あるいは廃棄条項に従って廃棄する、脱退するというような手続をとるべきものというふうに考えております。
  260. 山口那津男

    ○山口(那)委員 条約の場合は国家間の合意でありますから、その条約の内容に基づいて直ちにある事実行為等が重ねられるとは限らないわけですね。しかし、このPKOの場合どうかといいますと、これはもう既にPKO活動が始まっている段階で事後的に不承認になるという場合が想定されるわけです。この場合は、条約の不承認の場合とは実態的には効果が違うだろうと思うのですが、その点について具体的に述べてください。
  261. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  いわゆるこの法案の仕組み、もしそういう承認の条項があるという前提に立ってのお話でございますけれども、それで承認が得られないということに相なりますと、派遣そのものを終了させる、そういう効果になろうかと思います。
  262. 山口那津男

    ○山口(那)委員 仮定の質問で甚だ申しわけないのですが、そういう効果が出る、こういうことになった場合に、これは国際社会にどういう影響が出るかということなのです。  日本がせっかくこれは国際貢献のために、しかも平和人道的な目的のためにやろうという制度、これが制度として不承認になる、撤収しなければならない、引き揚げなければならないという可能性を含んだまま始まると、これが国際社会で通用するものなのかどうか、国連の側から見た場合には甚だ使いにくいといいますか、利用に適さないというふうに見られるのではないか。これは常識であろうと思うのですね。この点での承認という制度の持つ国際的信頼性に対する影響、この点についてどうお考えですか。
  263. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  まさに仮定の御議論でございますけれども、今野村議官の方から御説明したような状況が生じた場合、これはこの委員会で御議論、御質問されておりますところのいわゆる前提条件が崩れた場合でなくて、日本国内的な理由で任務を終了して引き揚げてくるということでございますので、国連の側から見れば、ほかの他国に突然その穴埋めを頼まなければならないということで、国連としてはやはりそれなりに困難を感じる状況に当面する事態ではないかというふうに考えます。
  264. 山口那津男

    ○山口(那)委員 PKO活動は、実際に国連決議がなされて活動が開始されるというその事前の段階で、さまざまな準備行動といいますか交渉がなされてきた上での出動だということが一般に知られているところであります。そうしますと、事後的承認の場合、事後的に不承認になった場合、今お述べになったよう影響が出るということになろうかと思いますが、仮に事前の承認であったとしても、これが不承認で終わった、日本PKO活動参加しない結果になったとしましても、この積み上げられた準備活動に対しての国際的影響というものは何がしかあるというふうに予想されるわけですね。したがいまして、この国会の承認という制度の持つ内在的なマイナス面というものも当然考えなければならないわけでありまして、それと、この国会の承認を求めるべきシビリアンコントロールの実質を確保するための何らかの積極的な理由があるのかどうか、ここで論じなければならないはずであります。  公明党としては、この点に関しまして当初、国会の承認とそれから五原則と言われております二つを対比して、このシビリアンコントロールを考えたわけでありますが、いやしくもこの五原則というのは、なかんずくPKOの前提ともなっている三原則というのは、これが満たされなければ我が国憲法九条に違反するおそれも十分に予想される、その可能性が極めて高くなる、九条に違反しないための基礎的な枠組みである、こういう考え方であります。  ですから、この一角が、例えば五原則が法定されないで承認だけに任せられた場合には、承認というのは一回限りの多数決原理に任されるわけでありますから、この一回限りの多数決原理で、憲法に触れるような、あるいは反するような枠組みが崩される、正当化されてしまう、こういう事態もあり得るわけであります。ですから、このシビリアンコントロールの徹底、そして憲法の平和原則の遵守、こういう点ではこの原則を法定をしておく、なるべく法定をするということの方がはるかに実質的な歯どめとしての効果がある、このように考えるわけであります。  そこで、このPKO活動は、近年といいますか、発足以来いろいろの具体的状況に応じて変わってまいりました。そして、これからもますます複合的な活動あるいはその領域をどんどん広げていくだろうと思われます。そうした中で、慣行としてつくり上げられてきたこの三原則というようなものが今後も必ず維持される、こういう保証はないわけであります。現に国連憲章では、このPKOの慣行等についての明確な規定はございません。その意味で、我が国としても憲法原則を遵守する意味で、この五原則を法定をする、まあ同じ内容のことであったとしても法定をするということの非常に重大な意味がある、このように我が党は考えてきたわけであります。  さてそこで、ではシビリアンコントロールの実質を確保し、さらに国際的な信頼性をも満たすためにはどういう制度が望ましいのかということでありますが、結局大事なことは、この国会のチェックを受ける、つまり国会で政策判断の当否が論じられ、ひいてはそれが計画の変更の端緒になるとか、あみいは政治的責任を追及する機会になるとか、そういうことを確保することが本質的に重要なことであろう、このように思われますのであれば、一回的な承認にこだわるよりは、これは事前及び事後、場合によっては中間の段階で変更の都度やるという多段階における報告という制度、これは国会の取り組み方いかんによっては非常に実質的なシビリアンコントロールの内容を持つということになるだろうと私は考えます。その点についての総理の御認識をお伺いいたします。
  265. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 ここで法律をつくっていただくということは、全体の枠組みが決まって行政府の方がこういったものを派遣したいというときの大きな制約の枠ができるわけです。その枠の中に五原則をきちっとそれぞれ決めておりますし、また人員の歯どめ等も決めてありますから、それに従っておるかどうかということ、これは必ず法律を守って、従ってやっていくのですけれども、国会においてそれを御議論をいただくために事前の報告もし、御指摘のように中間の報告も、終わるときの報告もいたします。そして、その報告を受けての国会の御議論を高く評価をしてそれを重く受けとめて、次の計画変更の端緒ともなるようにしたいという考え方ておりますから、十分シビリアンコントロールのもとで運用されるようになっていくであろう、こう考えておるところであります。
  266. 山口那津男

    ○山口(那)委員 シビリアンコントロールの本旨からいった場合に、本法の中でさまざまな制度がとられているだろうと思うのですね。何も国会の関与だけが唯一のシビリアンコントロールではないはずであります。行政内部におけるシビリアンコントロールを確保するための制度として本法の中にどういうものがあるか、ちょっと具体的に述べてください。
  267. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 法案の中でということでございますが、第九条に、自衛隊の部隊等は、閣議決定による実施計画あるいは内閣総理大臣である国際平和協か本部長の作成する実施要領に従って業務に従事するものでありますから、その二つの問題、実施計画及び実施要領という枠がございます。それからあとは、今御議論いたしました国会との関係もございます。
  268. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この国会への報告という制度が本当に実効的なものになるためには、単なる議長あるいはどこかの委員会理事に文書を提出した、これだけでは何らの実効的なものにはならないわけでありまして、やはりこれは立法府の側の問題であります。立法府の各先生方がどうやってこれを、政治責任を追及する、あるいは政策判断をチェックする、こういう機能を持たせるか、これにかかっているわけであります。  その意味で立法府の積極的な取り組みが期待されるわけでありますが、その場合の国会側の受け皿としては幾つかの考え方があろうかと思うのですね。PKOの外交的側面に着目すれば外務委員会というお考えもあるでしょうし、あるいは今回、安全保障特別委員会が常任委員会に昇格をするということが言われております。その場合、まあ防衛に関する問題、安全保障全般に関する問題を議論するのでありましょうから、広くこのPKOの問題もそれに含まれる、こういう理解で安全保障委員会でやるべし、こういう考え方もあり得ると思います。  しかし私は、この安全保障委員会は、主として防衛といいますか安全保障ということでありますから、PKOという実態、性格から考えれば、むしろこれは平和の維持という、安全保障、防衛とはまた別な側面を有しているんだろうというふうに思うわけであります。したがいまして、総理府にこの本部が置かれる、その全部、行政各部を指揮統括するのは内閣総理大臣であるという制度の仕組みからいたしまして、これは内閣委員会を受け皿として今後十分な議論をしていくべきだろうと私は考えておりますが、総理の御認識を、お考えをお伺いいたします。
  269. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 これは国会運営上の問題でございますから、各党各会派の代表が例えば議院運営委員会等で御議論の上、どこでやるかということは御決定をいただくことになっておると思いますので、政府はその御決定に従いたい、こう考えます。
  270. 山口那津男

    ○山口(那)委員 続いて、このPKO憲法九条との関係についてお伺いいたします。  PKOへの参加に関しては、法制局長官から、昨年の十一月六日でしたか、御答弁の中で、停戦監視団的なものに参加できる場合は多い、また、平和維持軍的なものに対しては参加することが困難な場合が多いと考えられる、このような趣旨の御答弁があったと思います。  しかし私は、法律家としてこれを考えますのに、憲法解釈としての厳密な規範的意味が果たしてあるのかどうか、多いとかなんとかという表現が本当に解釈の指針として正確な意味があるのかどうか、当時いぶかしく思った一人であります。  そこで、停戦監視団的なものに参加できる場合が多い、このように御答弁されたのですが、その場合、多いというわけですから、少ない部分では憲法九条で参加が禁止される場合が果たしてあるのかどうか、この点についてどう認識されておられるか、法制局長官、お答えいただきたいと思います。
  271. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  昨年の十一月六日でございますが、衆議院の国連平和特におきまして、たしか渡部一郎委員からの御質問だったと思いますが、その御質問に対しまして私お答えしました。  それで、今委員お述べになりましたように、まず第一に、我が国として憲法上許されること、許されないこと、この分かれ目は憲法の九条に発するものである、憲法九条で禁止された武力の行使あるいは武力による威嚇、こういうものに当たるかどうか、ここで発するものであるということが第一点。  それから第二点として、国連の行う平和維持活動については停戦監視団的なものあるいは平和維持軍的なもの、それぞれの中に多少の相違がある、内容上の差異が存在する、こういうことを申し上げた上で、したがって停戦監視団だからすべていいんだとか、あるいは平和維持軍だからすべてだめなんだとか、こういうふうなことではない。したがいまして、その参加し得るかどうか、これは個々の組織が構成されるときにその任務・目的が武力の行使を伴うものであるかどうかという点を個別的に確認する必要がある、かようなことを申し上げたことでございます。  それは、従前の事例なども念頭に置きながら、概して言えば停戦監視団的なもの、これは参加できる場合が多いであろうというふうなことで申し上げたわけでございます。これはいわば、何といいますか、停戦監視団とかあるいは平和維持隊という名称のいかんによるものではなくて、むしろその組織の目的・任務、これが武力の行使を伴うようなものであればこれに参加することは憲法上許されない、こういう趣旨で申し上げたつもりでございます。また、それはそういう格別の前提を設けない一般的な場合についての解釈を申し上げた、かように考えております。  今回の法案におきましては、そういう意味では平和維持隊等に参加いたします場合に、今申し上げたような我が国の行為が憲法で禁じられた武力の行使に当たることがないように、こういうことで五つの原則を前提を設けて参加する、こういうことでございます。  昨年の念頭に置きました考え方、それとは今回のものは態様を異にしておりますということがございますし、今回の法案に基づいて行う参加につきましては憲法に反するものではない、こういうことで五つの原則を法案の中に書き込みまして、そういう意味で昨年との整合性をとりつつ、かつ憲法との関係も違反するものでないように仕組んだ、かように考えております。
  272. 山口那津男

    ○山口(那)委員 要するに、法制局長官の一般論としての憲法の規範というのは武力行使を伴うものはだめと、こういうことなんだろうと思うのですね。その一般論の当てはめとして停戦監視団的なもの、これを過去の実例から見て、当てはめとして許されない場合というのがあるんですか、それを認識されたんですか。
  273. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 必ずしも過去の事例につきまして私は詳しいわけではございませんので、そういう意味で従来の停戦監視団といったようなものは非武装のものが原則である、これが全部であるかどうかについては若干の自信がございませんでした。そういう意味で、概してこれこれ的なものはというふうな言い方で申し上げたところでございます。
  274. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そういうことで自信がなかったということでありますと、平和維持軍的なものに対して参加することが困難な場合が多い、この点についても実際に困難な場合が多いのかどうか、先ほどの武力行使を伴うかどうかというこの一般論の当てはめとして困難な場合が多いのかどうか、そういう認識があったのかどうか、いかがでしょうか。
  275. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 この点につきましてもほぼ同様なことでございまして、明確に過去の事例をすべて私はそういう目でといいますか、実態を十分に存じ上げなかった、そういう意味で、概してこれこれ的なものは多いという表現をとりましたわけでございます。  ただそのとき、一点認識にございましたのは、コンゴ型の平和維持隊といいますか、これにつきましてはそもそも武力の行使がその任務・目的になっている、非常に明確な形でなっているんではないかという点は認識としてございましたけれども、それ以外のものにつきましての明確な仕分けというものにつきましては、実態を十分に存じ上げなかったということでございます。
  276. 山口那津男

    ○山口(那)委員 武力行使を目的・任務の一部とするというのはコンゴのタイプ一例なんですね。ほかにはそういうものは存在しないわけであります。ですから、それを念頭に置いて困難な場合が多いと言われたんではない、このように思いますけれども、法制局長官の職員上、具体的な実態を全部把握した上でこの一般論を組み立てるというお立場ではないでしょうから、今の御答弁を伺う限りは、この多いとか少ないとかという表現には、憲法解釈としての規範的意味は極めて乏しい、したがって、これについて文言上の揚げ足をとるような言い方は余り実がないと私は思うわけであります。  さて、その場合に、このPKF、平和維持軍に限りますが、これの具体的な任務、あるいは武器の使用の基準の実態から見て、武力行使を伴う場合が実際にあるのかどうか。この点は外務省としてどう認識しておられますか。
  277. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  PKFの活動の実態の問題に絡みますので、私の方から御答弁させていただきたいと存じます。  停戦監視員は、御承知のとおりいわゆる丸腰で参りますので、武器の問題は生じません。いわゆるPKFにつきましては、武器の携行が許されております。  国連の関係文書上、次の二つの場合には武器を使用してもよろしいということになってございます。二つと申しますうちの一つは、要員の生命等の防護のための武器の使用、二つ目は、任務の遂行が実力によって妨げられた場合、こうなってございます。  第一番目の場合の武器の使用につきましては、累次御説明申し上げてきていますとおり、いわば自然権的な権利でございまして、憲法上問題にはならない。しかし、二つ目の場合の武器の使用につきましては、具体的状況にもよりますけれども国際的な武力紛争の一環として戦闘行為を行うような結果ともなりかねず、この場合には憲法上問題があり得るというところが問題であったわけでございます。
  278. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この任務遂行のために武器を使用する場合、この場合は、我が憲法で言うところの武力行使を伴う可能性が排除できない、こういうふうにおっしゃられたかと思いますが、国連のこの武器使用の基準からするとそういうことになるだろうと思うのですが、実際に任務遂行に武器を使って、我が憲法の目から見て武力行使を伴った場合である、こういうふうに評価できる実例というのがありますか。
  279. 丹波實

    ○丹波政府委員 状況によっては、武力の行使が任務一つとして付与されていたコンゴの例は、これは別といたしまして、その他のPKFにつきまして、いわゆる今申し上げた二つの場合のうちの第二番目のケースについて武器の使用が行われたことがあるのかどうか、私たちとしていろんな国に問い合わせて聞いてみましたけれども、そういう実例というのはなかなか具体的な例として私たちに説明がなかったわけでございます。
  280. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、過去の実例としては一度も確認をされてない。あったかどうかはわかりません、しかし、確認をされてない、こういう御答弁でありました。  そうしますと、ここから短絡することはできませんが、これまで延べ八十一カ国ないし八十三カ国以上、五十万人の人たちが参加をしたと言われるこのPKO活動の長い歴史の中で一度もそういうことが、そういうことというのは武力行使を伴うような活動が行われた、そういう実態が確認をできないということを前提に考えますと、このPKO活動というものは、武力行使をもちろん伴う実態は皆無に等しいというか、極めてまれである。そして、むしろこの本来の任務・目的に沿った活動がなされてきたんだろう、その評価をもって、国際的にも認知され、またノーベル平和賞という実績にも結びついたんであろう、このように理解をいたします。  そこで、しかしこの国連の武器使用の基準からすれば、公表されてないので何とも私は評価のしょうがないのですが、これに対して、理論的には全く排除できないというところから、我が憲法との整合性というのが再三論議されているわけです。議論がここに偏り過ぎる嫌いがあろうかと思っていますが、念のため幾つかお伺いいたしたいと思います。  今回の法案で、二十二条の規定についてですが、本部が保有する小型武器、これについては、自衛隊あるいは海上保安庁の職員等の場合を除いてこれは新たに調達をするんだ、こういう解釈がこの間述べられました。  そして、その前の二十一条、物品の管理がえに関する規定があります。本部がこの小型武器を調達するに当たって、自衛隊など小型武器を管理、保有する関係行政機関に管理がえ等の協力を要請をして本部が小型武器を調達する、こういう場合はあり得るんでしょうか。
  281. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  先ほど本部の保有する小型武器につきまして、新たに購入するということを先生指摘になりました。その関連で、二十一条の管理がえということとの関連でございますが、やはり自衛隊の装備品、基本的に言えば我が国の防衛のための装備品という位置づけであろうかと思いますので、それの本部への管理がえというのは基本的には自衛隊任務遂行上に影響があるというふうに位置づけられるべきものだと思いますので、やはり先ほど申しましたように、二十二条で本部が保有する小型武器については新たに購入というふうに御理解いただいたらと思います。
  282. 山口那津男

    ○山口(那)委員 一応法律の解釈として、管理がえのできる物品には武器は含まない、他の関係行政機関の武器は含まない、こういうふうにお伺いしていいですか。
  283. 野村一成

    野村政府委員 何と申しますか、法律の条文上の解釈としてはあるいは含み得るということかと思いますけれども、実際問題といたしましてはそういうのは行われないということかと思います。  そもそも二十一条で規定をしておりますこの管理がえその他の協力というのは、例えば国立病院のお医者さんの医療器具等を協力隊に管理がえする、これは人道的な国際援助活動国際救援活動の場合にそういうことが起こり得るわけでございますけれども、そういうときに管理がえその他について関係行政機関協力してもらいたい、また、それがなければ円滑に派遣が行われない、そういうことを念頭に置いてつくった規定でございます。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  284. 山口那津男

    ○山口(那)委員 本来想定したのはそういうことでしょうけれども、法文には物品に何らの限定もないわけですから、法解釈の問題と現実の遵用の問題は当然違う場合があるだろうと思うのですね。ですから、今の御答弁を伺った場合には、その運用の方針としては新たに本部で調達をするということにして、これを関係行政機関から便宜的に管理がえで賄う、こういう運用はしない、こういう趣旨だというふうに承ります。  続いて、二十三条の関係についてお伺いいたします。  これは小型武器が貸与できるという規定でありますが、その貸与すべき場合というのは「国際平和協力業務」と一般的に書いてあるわけですね。何も、平和維持活動とかあるいはその中の停戦監視業務とか、限定はついておりません。そこで、このPKO活動全般、また、人道的な救援活動など、いわゆる業務として規定される法三条三号イからレに列挙する業務、これ全部に及ぶ、こういう趣旨でしょうか。
  285. 野村一成

    野村政府委員 お答えいたします。  考え方といたしましてはすべての業務に及ぶということではございますが、何分貸与するかどうか、基本的には現地の治安状況等を勘案いたしまして、特に必要である、そういうふうに認められる場合、そういうふうにもあわせて御理解いただきたいと思います。
  286. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ですから、現地の治安の状況からして、特に必要がある場合というのがこんなに広く業務全般に及ぶのかどうかということを私は聞いているわけでありまして、その必要がないのであればできる限りこの業務そのものを限定するというふうにするのが筋だろうと思います。そうでないとこれは、何というか、本来の業務にふさわしくない場合にも一々小型武器を保有することを検討するとか、おかしなことになってしまうだろうと思うのですね。ですから、その点についての運用の指針というものをしっかりしていただきたいと思うのです。いかがですか、もう一度御答弁。
  287. 野村一成

    野村政府委員 具体的な管理の基準については政令で定めることになっておるわけでございますが、基本的にはこの法案の枠組み、やはり紛争に起因して、それが原因となってのあるいはPKOであり人道的な国際救援活動ということでございます。したがいまして、三条で細かく定義いたしておりますが、やはりそれなりの治安状況あるいは危険度というような点についてもあわせて配慮しなければならないというふうに思っております。  他方、御指摘の点、論点よくわかります。やはり、特にだからといって、必要と本部長が認める場合については厳格に運用してしかるべきである、そういうふうに思っております。
  288. 山口那津男

    ○山口(那)委員 同様に、この貸与される対象は「隊員」と書いてあるわけですね。これもどういう隊員かというのは限定がないわけです。自衛隊員や海上保安官等以外の公務員あるいは民間から参加した人、こういう人も対象として含まれる、こういうことですか。
  289. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、貸与を受ける隊員については特に制限を設けておらないわけでございます。これは決して全員に実際に武器を貸与するという趣旨ではございませんでして、やはり二十三条第三項に基づきます政令で貸与の基準というのをしっかりと設けまして、それに適合する隊員に対してのみ小型武器を貸与する、そういうふうにいたしたいと思っております。
  290. 山口那津男

    ○山口(那)委員 法文上は限定がないわけですから、この点運用の方針は明確にしていただきたいとは思いますが、法の三条一号、二号で派遣先国等の同意というのが要件になっておりますね。この同意の対象として、この隊員がある業務について小型武器を保有するかどうか、その武器を使用する場合もあり得るかどうか、こういうことも含めてこの派遣先国等の同意の対象になっておるんでしょうか。いかがでしょうか。
  291. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、武器の携行そのものだけじゃなくて、その使用につきましても派遣先国の同意を取りつける必要があるというふうに考えております。
  292. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その場合、PKOや人道的救援活動の過去の実例から見まして、小型武器を貸与して実際に使った事例があるのかどうか、そういう具体例というのはあるんですか。
  293. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  あるいは後で国連局長の方から補足していただく必要があろうかと思いますけれどもPKOでは、例えばレバノン暫定軍UNIFILの携行武器としましてピストルあるいはライフル等が掲げられており、これらはけん銃または小銃というカテゴリーに相当するものであるというふうに考えられます。
  294. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その平和維持軍的なものはわかるのですが、私が聞きたいのは、平和維持隊の業務以外のもので、しかも民間の出身者あるいは地方公共団体から参加したような方が、治安の必要からこの小型武器を貸与される場合があるか、過去他国の事例からしてそういう方々が、それに類する方々が武器を携帯して使ったような事例があるのか、これをお伺いしているわけです。国連局長からいががですか。
  295. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生がおっしゃいますとおり、このPKFの要員の場合ではございませんで、いわゆる各国の例えば民間とか普通の政府職員が参加した場合のことを御質問と思いますけれども、結論的に申し上げて、私たちそういう事例というのは承知しておりません。例えば警察の例はございますけれども、これは場合によっては本国からピストルを携行していく。しかし、現に警察官が現地の警察官と組になってパトロールをするときには、ほとんどのケースはオフィスに置いていくということを聞いておりますので、そういう例は承知しておりますけれども、いわゆる括弧づきの民間の方が外国から参加して、その場合の武器の問題は、私たちちょっと承知していないというのが実情でございます。
  296. 山口那津男

    ○山口(那)委員 もし仮にそういう方々にも武器を貸与するということがあるのであれば、日ごろこういう小型武器の取り扱いにはなれていないわけですから、その場合基本的訓練、操作の訓練をどうするかとかだれが教えるのか、どこでやるのか、そういうことまではっきりとしなければ、これは法制度としては明確さを欠いている、こう言わざるを得ません。その点についてはっきりさせていただきたいと思います。仮にその現地の治安の状況によって、現地の国の同意があれば小型武器を貸与させる場合があり得る、こうしました場合、例えばこの国際緊急援助活動、この場合に小型武器等を携帯すべき可能性が実際問題として、実態としてないのかあるのか、この点についての御認識を伺います。
  297. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  国際緊急援助隊派遣に関しましては、先生御案内のとおり、従来より、武器を使用しなければ派遣人員の生命等の安全が確保できないような治安の悪い国にはそもそもこれを派遣しないという方針を堅持いたしておりまして、この方針は、自衛隊が援助隊への参加を可能とする今次法改正によりましても、この点は何ら変わるものではないということでございます。また、今般PKO法案との関連におきまして、国際緊急援助隊は武力紛争による災害には対応しないという整理を行ったことにつきましても、累次御説明申し上げたとおりでございます。  このような事情を踏まえまして、法案提出に際しまして政府は閣議の決定を行っておりまして、派遣に関する従来の方針を変更せず、これを堅持していくということにいたしました。したがって、この閣議決定にもございますとおり、国際緊急援助隊は武器を携行しなければ生命等を防護できないような地域には派遣されないということになりますので、国際緊急援助活動またはこれにかかわる機材の輸入を行う人員の生命等の防護のために、被災国内において武器を携行することはないということになる次第でございます。
  298. 山口那津男

    ○山口(那)委員 運用の方針は何度も伺っていることなんですが、法律にはそういうことは、武器保有は排除されていないわけですよ。今回のこのPKO法案についてもその点は保有があり得るような規定になっているわけです。なおかつ、そういう方針を貫く、運用方針を貫く、こうおっしゃっているわけですから、もしその方針を変えるような場合には、将来これを転換するような場合には、このPKO法案の二十三条等に類した規定、持つ場合をはっきり決める、あるいは持たない場合を決めるかどうか、その点明確に法定をするということを考えていただきたいと思うのです。その点どうでしょうか。
  299. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  若干先ほどの説明を敷衍したような話になって恐縮でございますけれども、そもそも緊急援助隊法は、大規模な主として自然災害に見舞われた海外の地域、特に開発途上の地域に対して主として人道的な立場から緊急援助を行うという法の立て方になっておりまして、そもそも先ほど申しましたように安全を確保し得ないほど治安状況が悪い国への派遣は法の建前として想定していないということでございます。これは、派遣要員の安全の確保につきまして、法の制定に当たりまして両院の附帯決議にもうたわれてございますし、当時の倉成外務大臣からも趣旨を十分に踏まえて今後適切に対処してまいるという御発言、答弁をしておることにもあらわれているわけでございます。  このような法の性格、運用に関する確固たる方針がございますが、この点は、先ほども申しましたように今次自衛隊参加が可能になったとしても何ら変わらないということでございます。これは法の性格でございます。  そこで、どういうことかと申しますと、その自衛隊参加するということは自衛隊能力を十分に活用するという趣旨でございまして、より危険な事態に対処してもらうという趣旨ではないということ、そういうことを期待したものではないということでございます。このような改正は御案内のとおり改正案の中には盛り込まれてないということでございます。  そこで、さらにつけ加えますと、先ほども申しましたPKO法案との関係で武力紛争には今回緊急援助隊法はかかわらないということにもいたしましたので、今私が説明申し上げました点は、全体としての法の性格、より明確になったんではないかということでございます。
  300. 山口那津男

    ○山口(那)委員 二十四条の関係について伺いますけれども、二十四条の四項には、人に危害を加えてはならない、こういう規定があるわけですね。しかし、これには罰則規定が本法にありませんので、これが実際どうやって法的に確保されるか、使い方によって武力行使につながる可能性はないのかどうか、この点が明確になる必要があると思います。  そこで、この四項に違反するような場合にどこの国の法律が適用になるか、その点についての例えば条約その他の取り決め等がなされるのかどうか、この点についていかがでしょうか。
  301. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 この各国から派遣される要員の現地における地位につきましては、御承知のとおり国連の事務局におきまして、いわゆるモデル地位協定案というものをつくってございます。これは昨年の秋に事務総長からの報告という形で出てきたものでございますけれども、基本的な考え方といたしましては、いわゆるこのような要員の特権免除等につきましては国連と受け入れ国との間の地位協定によって定められまして、派遣国から提供される要員は、国連と今度は派遣国との間の何らかの枠組みを通じてこの地位協定の定める特権免除を受けるという仕組みになっているわけでございます。  そこで、いわゆる刑事裁判管轄権につきましては、この地位協定、モデル協定に即して見ますと、PKOの軍事部門の軍事構成員につきましては、受け入れ国において犯すことのあるすべての刑事犯罪についてそれぞれ本国の専属的管轄権に属するという考え方が示されているわけでございます。このような考え方にのっとります場合には本国の刑法によって評価がなされるという関係になろうかと思います。  なお、このモデル協定案というのは昨年できたばかりでございますので、まだこれ自体にのっとってつくられた実際の地位協定というのはないと思いますが、ただ、このモデル協定をつくります際に、それまで国連が締結してきたいろいろな地位協定の実例を見ながら、そこに示された一般的な原則なり慣行というものを盛り込んでいったというふうに承知しております。
  302. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そのモデル協定の原則、これは従来の慣行を配慮したものであるということでしょうから、本国法つまり日本の刑法が適用になるという場合が多いのだろうというふうに理解いたします。  そうしますと、これが実際にこの四項違反の事態に対して捜査等の体制があるのかどうか。これは自衛隊については秩序の維持に専従する隊員の制度がありますので、それは賄える。そしてさらに、自衛隊出動する場合には必ずこの専従する者を同伴させるということも必要になってくるかと思いますが、それ以外の隊員について、そのような体制があるかどうか、この点いかがでしょうか。
  303. 野村一成

    野村政府委員 自衛隊以外につきましても、これは日本の刑法にかかわる話でございますので、捜査当局が事案について判断するというケースかというふうに思っております。
  304. 山口那津男

    ○山口(那)委員 明快な答弁が伺えませんが、地位協定を結ぶとすればそれは外務省が対応することでありますから、それも含めてどういうふうにやるのかということについて明確な方針を立てていただきたい、このように思います。  時間も参りましたけれども、最後に、この同条八項で業務の中断中も武器が使用できることになっております。この中断から派遣の終了に至るまで若干の時間があるのだろうと思いますが、この中断というのは、いわゆるPKOの前提である停戦合意あるいは当事者の同意あるいは中立性等の原則が崩れかけた場合だというわけですね。完全に崩れたあるいはもう崩れることが確実である、こう確認できた場合には派遣を終了する、こういう決定ができるりだろうと思いますが、この中断中に武器の使用を許しているということは、まかり間違えばこれが武力行使につながる可能性がないのかどうか、この点について慎重な判断が必要だろうと思います。この点の制度的な枠組みはどうなっているのか、御答弁願います。
  305. 野村一成

    野村政府委員 御指摘のとおり、業務の中断の際にも武器の使用ができるという形になっております。やはりこの武器の使用、二十四条、これは基本的には業務上、ここにまさに書いてございますけれども、「派遣先国において国際平和協力業務に従事する隊員」でございまして、中断の場合とはまさに業務を中断しているということでございますので、厳密に言いますとその二十四条の適用がないということに相なるわけでございます。しかし他方、実態といたしましては、その中断の場合でありましても、現に必要やむを得ざる使用の場合というのも想定され得る、そういう考え方でございます。
  306. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、何か中断中は武器使用がないかのような答弁があったように聞こえたんですが、これは八項によれば四項の規定はこれこれの武器使用について準用すると書いてあるんでしょう。武器使用する場合には危害を加えちゃいけないという規定を準用するというんですよ。今の答弁は矛盾しているんじゃないですか。ですから、この点も含めてどうなのかちょっと慎重に検討していただきたいと思います。  時間が参りましたので、もっともっと聞きたいことがたくさんあるのでありますが、この審議の充実を期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  307. 船田元

    ○船田委員長代理 次に、古堅実吉君。
  308. 古堅実吉

    古堅委員 政府が九月二十七日、文書で示した「武器の使用と武力の行使の関係について」という表題の見解は、憲法が禁止している武力の行使を非常に狭く解釈して、自衛隊国際的軍事協力ベの道を一挙に広げるものではないか、このように思われます。  そこで、この政府見解に関連して質問いたします。  この政府見解は、「一般に、憲法第九条第一項の「武力の行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいいことなっています。憲法第九条が禁止している武力行使とは、戦闘行為一般を対象にしているのではなく、国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為だということになりますか。
  309. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 憲法の九条一項で禁止されております武力の行使につきましては、そこに、その紙にございますように「我が国の物的・人的組織体」、こういうものが行います、そういうものによります国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為と申しますか、そういうことであろうと存じます。
  310. 古堅実吉

    古堅委員 それは、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というものに該当しなければ自衛隊の戦闘行為も憲法上は許されるということにもなりますか。
  311. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 自衛隊の行います戦闘行為一般と、こういうふうにおっしゃられましたが、自衛隊といたしましては、自衛隊法にございますように、その任務に則して行われる実力行使、これに当たるものだと存じております。
  312. 古堅実吉

    古堅委員 私がお尋ねしているのは、この間出たばかりの内閣の統一見解に関連してです。そこで、あなた方は憲法九条に言う武力の行使とは、ということについて新たな見解をまとめて出しました。よく聞いてください。  「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というものに該当しなければ自衛隊の戦闘行為も憲法上は何ら差し支えない、許されるということになりますかと質問しているのです。
  313. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、自衛隊法におきましてその任務とされているところ、その行動の点、それにつきましては、いずれも自衛隊法の三条あるいは七十六条以下で規定されているところでございまして、そういう自衛隊の行動ということはあろうと思います。  それで、今委員指摘の、自衛隊の行う、そこは現実には防衛出動以下のところが規定されているということでございまして、国際的でない武力紛争といいますか、戦争というふうなものをちょっと私ども想定いたしかねるわけでございます。
  314. 古堅実吉

    古堅委員 長官は、あなた方が出されたところの統一見解、それを御存じなんですか。こんな答弁が出るとは全くあきれた話です。  もう一度言います。「一般に、憲法第九条第一項の「武力の行使」とは、我が国の物的。人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいいこということになっていますよ。そこで、憲法第九条が禁止している武力行使とは、戦闘行為一般を対象にしているのではなく、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」をいうんだ、こうなっておるんですよ。だから次の質問に移ったんです。  そこで、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というものに該当しなければ自衛隊の戦闘行為も憲法上は許されるということになりますねと、念を押して聞いておるんです。
  315. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  委員の御指摘でございますが、自衛隊の行います戦闘行動といいますか戦闘行為といいますかにつきまして、まさに憲法九条につきまして「我が国の物的・人的組織体による」云々と書いてございますが、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」と書いてございますが、自衛隊の行う戦闘行為がこれ以外のものが武力の行使としてあるとおっしゃるところが、私ちょっと理解をしかねるところでございます。
  316. 古堅実吉

    古堅委員 それじゃお聞きしましょう。  「国際的な武力紛争」というのはどういうことをいいますか、それと戦争はどう違うんですか、また「一環としての戦闘行為」というのはどういうことをいいますか、御説明ください。簡潔に。
  317. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 「国際的な武力紛争」とは、一国の国内問題にとどまらない、そういう形の軍事的な争いであろう、かように存じます。(古堅委員「聞いてくださいよ、戦争とは」と呼ぶ)
  318. 船田元

    ○船田委員長代理 古堅君。
  319. 古堅実吉

    古堅委員 答えさしてください、委員長。何をなさるんですか。いたずらに時間をとらして。
  320. 船田元

    ○船田委員長代理 古堅君、もう一度質問をしてください。
  321. 古堅実吉

    古堅委員 統一見解をこの間出されたばかりですよ。「国際的な武力紛争」とはどういうことをいいますか、戦争とはどういうことなのか、その違いはどうなんだ。「一環としての戦闘行為」というのはどういうことを意味しますか。憲法第九条の武力の行使とかいうことにかかわる重大な概念を皆さんは新たに文書をもって出されたんだ。それが条件になって、武力の行使とは、というものがいろいろと解明されるのです。その条件となるもの、要件となるもの、それを明確にし切らぬとは何事ですか。おっしゃってください。
  322. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 どうもなかなか御理解いただけないようでございますが、まず九条一項で「戦争」と書いてございます、あるいは「武力の行使」と書いてございますが、九条一項におきます戦争というのは、通常いろいろのコメンタール等にございますのは、宣戦布告、あるいはそういうふうなものを前提としたことであり、武力の行使とは、そういう宣戦布告などを伴わないけれども、例えばかつての我が国が行いましたような一国の国内問題にとどまらないようなそういう戦いといいますか、そういうものを指す、かように憲法九条につきまして解釈されているところでございます。
  323. 古堅実吉

    古堅委員 いいですか。この間出されたその統一見解では、「「武力の行使」とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいいこと、単なる戦闘行為だけでは憲法九条による武力の行使ということにはならぬぞということをここに明確にされたんだ。だから聞いておるんです。  次に質問しますよ、そのことを前提にして。いいですか。国連平和維持軍、すなわちPKFの武器使用は、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」に当たりますか。
  324. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 平和維持隊が行います我が国の行動といいますか、我が国が国会の法案におきまして参加を予定しておりまして、そこで行われますものは武器の使用でございまして、そこでは、こういう今武力の行使ということで、いわば定義的に書きましたもの、これには当たらない、かように考えております。
  325. 古堅実吉

    古堅委員 なぜ故意に答えをずらすんですか。国連平和維持軍、すなわちPKFの武器使用は、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」に当たりますかということを尋ねておるんであって、法に言うところの自衛隊の武器使用について質問しておるんじゃないんですよ。
  326. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 失礼いたしました。国連のいわゆるPKF一般と、こういうお尋ねであろうかと存じます。そういう意味におきましては、PKFはあくまでも国連総会あるいは安保理事会の決議等に基づきまして、紛争が終わりました後で出ていくという考え方であると承知しております。そういう意味におきましては、国際的な武力紛争というものには当たらないだろうと存じます。
  327. 古堅実吉

    古堅委員 それでは、次の質問に移ります。  国連平和維持軍、PKFは、国際的な軍事紛争当事国の間に入っていく軽装備した軍事組織です。この活動は「国際的な武力紛争の一環」に当たりますか。
  328. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 国連の行いますPKFは、むしろ紛争当事者そのものではなくて、その紛争当事者の間に紛争が終了した、あるいは停戦が行われたという段階におきまして、いわば国連の名において行われるということでございます。そういう意味で武力紛争というふうに言うことはできない事態だろうと存じます。
  329. 古堅実吉

    古堅委員 そうしますというと、PKFが国連安全保障理事会から与えられた任務を遂行するために、PKFに許される最大規模の武器を使用しても、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」ではないということになりますね。間違いありませんか。論理的な帰結です。
  330. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 先ほどのやりとりのお答えの中でもございましたが、国連の文書上におきましては、現実にそういう事態があるかどうか存じませんが、国連の文書上におきましては、自己あるいは要員の生命保護以外に、任務の達成を実力をもって妨害するものに対しての武器使用、こういうのがございまして、これもすべてがそういう意味では国際制な武力紛争とか言うことはできないと思いますが、そいうものに発展していく、あるいはそういうことになる契機になるといいますか、そういうものに当たるようなことになっていくそのおそれはあろうかと存じます。
  331. 古堅実吉

    古堅委員 それじゃ、PKFに参加した自衛隊が、いいですか、PKFに付与された任務を遂行するために、PKFに許された最大規模の武器を使用してもそれは憲法の禁止している武力の行使に当たらない、したがって、憲法上は問題がないということになると思いますが、そのとおりですか。
  332. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 先ほど申し上げましたように、国連の文書上におきましては二つのものがある。一つは要員の生命等の防護であり、もう一つ任務等を実力をもって阻止するものに対しての武器使用である。我が国は、参加いたします場合に、先ほどのようなおそれ、懸念というものを考えまして、そのむしろ前者の要員の生命等の防護という点に限りまして武器の使用を認める。あくまでも例外的なケースだろうとは思いますが、そういうことに発展する、あるいはそういうことに当たるということを懸念しての二十四条の限定でございます。
  333. 古堅実吉

    古堅委員 長官、すれ違いの答弁にしないでくださいよ。大事な憲法解釈一にかかわる統一見解が出されたので、この法案とも重大なかかわりがありますし、その前提となる、そういうことについて今真剣にお尋ねしておるんです。そういう立場で答えてください。  もう一度やりますよ。PKFに参加した自衛隊がPKFに付与された任務を遂行するために、PKFに許された最大規模の武器を使用しても、それは憲法の禁止している武力の行使に当たらない、先ほどおっしゃったような説明によれば論理的にはそういう帰結になります。したがって、憲法上は問題ないということになりませんかと尋ねているんです。
  334. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 まず、先ほどからの若干繰り返しになりますが……
  335. 古堅実吉

    古堅委員 もう法律説明はいいんですよ。質問に答えてください。二十四条云々のことを聞いているんじゃないです、今は。
  336. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 国連の平和維持隊、PKFが行動いたしますときに、任務の達成のための武器使用と、それから要員の保護のための武器使用と二つが国連文書上あるということをお答え申し上げました。それで、我が国の場合には、その要員の生命等の保護、これを行う、それだけを行うという意味で、むしろ任務達成の方は、ここで書いてございますように行わない、こういうことにしてございます。また、装備につきましては、実施計画等で定め、かつ国連からの要請め限度内で行う、こういうことにしてございます。そういう意味では憲法九条に言う武力の行使には当たらない、これが説明となろうかと思います。
  337. 古堅実吉

    古堅委員 繰り返して、念を押してお尋ねしますよ。憲法九条の言う禁止された武力行使というのは、国際紛争の一環として、武力紛争の一環としてその戦闘行為だということを規定された。だから、それに当てはまらなければ憲法上の禁止された武力行使というものには当てはまらなくなる、だから憲法上は問題がないということになります。論理的には当然そうです。  それで、それを前提にして自衛隊がPKFに参加して、その使用できる武器というのは国連総長の許す限度というのがありますから、その最大限の規模で武器を使用したとする場合、そういうことであっても、このPKFの武力のそういう行使というのは憲法の禁止する第九条の武力行使というものには当たらないのだから、ここでは憲法上の問題は起こらないということになりますかということを念を押して聞いておるのです。おわかりですか。
  338. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お尋ねでございますが、PKFが行いますときの要員の生命の保護のための武器の使用ということにつまましては、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」というようなものではそもそもないと存じます。それに対しまして、先ほどの任務の遂行云々というときには、場合によってはそういうおそれも生ずる、こういうことでございまして、私どもの方はそこは区別して使っているわけでございます。
  339. 古堅実吉

    古堅委員 それでは、憲法が禁止している武力の行使とはということで統一見解を出された、「我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環として」、いいですか、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、それはまた御破算にして、ここでは都合のいいように武力の行使にも当たる場合があるというふうな解釈になっていくんですか。前提として、PKOそのものの活動が「武力紛争の一環として」というものに当たらぬということであれば、憲法上の禁止する武力行使ということにはなっていかないんじゃないですか。その要件に当てはまらなければ同じ結論は出ぬじゃないですか。ごまかさぬでお答えください。
  340. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 決して、そらしたりごまかしたりしているつもりはございません。私といたしましては、まずPKF、国連の行いますPKFというのは、その行われる事態におきまして、安保理の決議等を受けて、しかも紛争当事者の同意、合意等があってその上で行われますものでありますから、それ全体として、まず武力の行使に当たるような武器使用はまずまずないだろう、かように存じます。  ただ、そこの中で認められております、国連文書によって私が承知しておりますところでは、場合によって、そのPKFの任務を達成する、それを実力をもって阻止しよう、そういう動きに対して武器を使用することも例外的に認める場合がある、かように言われております点から、まず全体として国際的な武力紛争に携わるものではないけれども、そういうものによって武力の行使に当たるようなケースが例外的にないわけではない、そういう形で私は申し上げているつもりでございます。
  341. 古堅実吉

    古堅委員 なぜ先ほどあれだけ明確に指摘しておっても、またごまかされるのですか。あなたがこの間出されたところの統一見解に憲法の禁止する武力の行使とは、ということで、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」だと、「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」という要件がかぶさっていますよね。それで、先ほど来何回も確認していただきましたように、PKO活動というのは、そういう国際的な武力紛争の一環としての活動ではないんだと明確におっしゃっておられる。そうだろうと思いますよ。そうであれば、総長のもとで許されている限度の武器を使用するということが、自衛隊参加したPKFにおいて起こったにしても、憲法が禁止する武力の行使ということには当てはまらぬなということを聞いておるわけです。そういうことにしかならぬじゃないですか。そのとおりですとおっしゃれば前に進みますよ。
  342. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 繰り返しになりますが、先ほど申し上げました……(古堅委員「同じことは繰り返さぬでいいですよ、質問に答えてください」と呼ぶ)PKF全体が、概括的に申し上げればそういう意味で「国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」を行うようなものではございません。それはもうおっしゃるとおりでございます。ただ、その行動しておりますたまたま一つのケースとして、そういう先ほど申し上げましたような任務の遂行を実力をもって妨げるような動き、それに対して武力行使をすることも認める、そういうケースもまれなケースとして認める、こういうことでございますから、そういうものは相手によりまして、あるいはこちら側によりまして、そういう意味で武力紛争に全くそれが当たらないとまで断言し得ない、そういうおそれを持ったものでございますから、今回の法案におきましてもいわゆる要員の生命等の防護にそれを限定して我が国参加する、そういうことであれば我が国憲法九条に言う武力の行使に当たることはない、かように考えているわけでございます。
  343. 古堅実吉

    古堅委員 それでは逆にお尋ねしますけれども、この「国際的な武力紛争の一環として」ということは、憲法九条の禁止する武力行使の概念規定の要件としては外しても構いませんということをここで改めておっしゃいますか。答弁をしてください。外してもいいということでないというと、先ほどの論理は成り立たぬじゃないですか。
  344. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 これはあくまでも「物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為」、これが武力行使であると考えているわけでございます。
  345. 古堅実吉

    古堅委員 首相は、PKFに参加する場合に関連して、任務遂行を妨げる企てに対抗するための武器使用は我が国から参加する維持軍はしないと述べられました。また丹波国連局長が、任務遂行の武器使用が憲法に抵触することがあるので、いわゆる五原則を法案に規定したと述べています。これらの政府答弁を通して、PKFの任務遂行の武器使用は憲法で禁止された武力行使であるから、自衛隊はそれはしないのだというのが政府の考えだというふうに理解してまいりました。  今の答弁からしますというと、国際的な武力紛争に発展するようなことがあった場合、例外的にそういうことが起きた場合は別として、PKFの武器使用は大小の区別なく憲法が禁止した武力行使に当たらない、そういうことをおっしゃっておるのですね。そのとおりですか、念を押してお尋ねします。
  346. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 ただいまの御質問は、武器の大小にかかわりなく、こういう点にあるいは力点があるのかと存じますが、その意味におきましては、ここで、この法案におきましても、実施計画におきましてはっきりといわゆる装備を定めますが、その装備を定めますときに二条二項、いわゆる「武力の行使に当たるものであってはならない。」ということ、あるいはいわゆるPKOの原則に当たるもの、そして国連の事務総長が必要と認める限度、こういうふうな限度を六条の四項に書いてあるわけでございまして、武器の大小にかかわらずということよりは、むしろ、こういう限度で持っていくものについてはと、かようにお答えしたいと思います。
  347. 古堅実吉

    古堅委員 そこを尋ねておるのじゃないのですよ。  二十六日の審議のときに、東中議員が、国連レバノン暫定軍では軍事トラブルが二年半のうちに二千百九十九件も発生していることを指摘しましたが、そのときに国連局長は、それは小集団、ゲリラとの小競り合いだというふうに述べました。その場合、自衛隊参加していてこの小集団からの武器による攻撃に武器を持って応戦するようなことがあったとしても憲法上禁止するものではないということになりますね。
  348. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 ゲリラあるいはテロというふうなことにつきましては、具体的にどういうふうなものであるか、特にその現実の事態において明らかでないと存じますが、そういうものがもし私的な集団、個人というふうなものであれば、国際的な武力紛争には当たらないと存じます。
  349. 古堅実吉

    古堅委員 具体的な国連レバノン暫定軍の場合ですよ、暫定軍。いいですか、その内容はもう御存じでしょう。それは「国際的な武力紛争の一環」というふうな立場をとられるのか、とられないのか。そういうことも明確にして、今申し上げたような小競り合いがあったときに自衛隊参加しておって応戦した場合でも憲法の禁止する武力の行使ということには当てはまらぬなということをお尋ねしておるのです。明確に長官もお答えください。
  350. 丹波實

    ○丹波政府委員 いわゆるレバノン暫定隊の事実関係の問題に関係しますので、私の方から一言答弁させていただきたいと思いますが、先生が引用になられたいわゆるレバノン暫定隊、UNIFILでございますけれども、確かに二千件以上の記録が書いてございますけれども、その中で、この「ブルーヘルメット」の日本語訳では、暴力事件となることもあったという表現はございますが、同時に、武装分子が検問所でひっかかった後、普通、武器を引き渡し、素直にUNIFIL地域小ら離れていったケースもあるということで、全部が暴力事件になったあるいは鉄砲の撃ち合いになったということではございませんので、その点だけお答えいたします。
  351. 古堅実吉

    古堅委員 そうは言ってませんよ、何も。長官、答えてください。委員長、答えさせて。時間がないんだから。何もそんなことを聞いておるんじゃないのですよ。
  352. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 過去のレバノンのケースについて具体の例を私は申し上げるわけにまいりませんが、この法案におきまして、我が国の平和維持隊がいたしますときには、二十四条におきましてあくまでも要員の生命等の防護のためにしか武器は使えない、かようなことでございますから、今のような御指摘は当たらないのではないかな、かように思います。
  353. 古堅実吉

    古堅委員 首相、湾岸戦争を戦った多国籍軍だが、これは「国際的な武力紛争の一環」としての戦闘を行ったのですか。政府は、この多国籍軍が国際の平和と安全を回復するための関係諸国の行動だと説明されました。明確にお答えください。
  354. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 国連の平和回復活動、共同の武力行使であったと思います。
  355. 古堅実吉

    古堅委員 「国際的な武力紛争の一環としての戦闘」であったのですか、違いますか。これはこの間出された統一見解に出てくる言葉なんですよ。
  356. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 多国籍軍の活動につきましては、これまでもいろいろな機会に御答弁申し上げたところでもございますけれども、あのときの国連安保理決議を受けまして、一連の決議を受けまして、加盟国がその兵力を出し合ってイラクの侵略に対して平和を回復する努力を行ったということでございます。  いわゆる国際紛争と申しますものは、国と国との間あるいはこれに準ずるものというものがあると思いますが、その間において紛争がございまして、これを実力をもって解決するということでございます。国際法の観点からいいますとそういうことになろうかと思います。  このような場合に、国際紛争を解決するために武力を行使してはならないということが国連憲章上の原則になっているわけでございまして、これに対して、国連加盟国が力を合わせて平和回復努力を行ったということでございますので、その対等な当事者間の国際紛争というものとはいささか違った面があろうと思います。
  357. 古堅実吉

    古堅委員 「国際的な武力紛争の一環」というものに当たらないんだということを言おうとしているというふうに思いますが、それでは、憲法上は自衛隊がこの多国籍軍に参加して一緒に戦闘行為を行っても問題はないというところまでいきませんか。
  358. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 これは昨年の秋の国会におきましてもたびたびお答え申し上げたところでございますが、多国籍軍に参加することは我が国憲法上許されない、かようにお答えしたところでございます。
  359. 古堅実吉

    古堅委員 もう時間が参りましたので締めますが、一貫してみずからが出されたところの統一見解にかかわる見解も素直にここで述べ合って論議を尽くそうとされません。こういう態度では、国権の最高機関としてのこの国会における審議というものは真剣には展開されないということにならざるを得ないのです。今、国際紛争の一環としてのものではないということが多国籍軍のあの戦闘行為であったというのであれば、先ほど出された統一見解からすると、自衛隊がそこに参加して戦闘行為を行っても憲法九条の禁止する武力の行使というものに当てはまらないんじゃないか、したがって憲法上の問題は起こらぬという結論になるんじゃないか、論理的にはそれ以外にないじゃないですか。  時間がありませんので終わります。引き続き展開させていただきます。
  360. 船田元

    ○船田委員長代理 次に、和田一仁君。
  361. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は初めに、けさもちょっと御質問がございましたけれどもペルシャ湾への自衛隊掃海艇派遣に関して、総理と防衛庁長官の所感を伺いたいと思います。  四月の二十四日に政府は臨時閣議でこの自衛隊掃海艇ペルシャ湾への派遣を決定いたしまして、そのころには、もう既に列国は掃海艇を出して機雷の除去作業に入っておったときでございますが、遅くてもとにかく行こうということでこれが決まって出かけていったわけでございます。伺いますと、その任務が終わってそして二十三日に帰国の途についた、こういうことでございます。一番難しい残された機雷の処理ということに努力していただいて、三十四発と聞いておりますけれども、処理をした。幸いに事故はなかった。病人が二人出た程度でこの任務が終わった、こういうことでございまして、私どもは今帰国の途にある隊員の無事の帰国を念願してやまないものでございますが、本当に御苦労さんでしたとその任務をねぎらいたい気持ちでいっぱいでございます。先般、私どももドバイに人を出しまして、ちょうど無事終了した時期でございましたので、任務の御苦労さまというねぎらいをさせていただいたわけでございます。総理も決断されてこういった派遣をされまして、無事帰国されたときにどういうお気持ちでお迎えいただくのか、御所感を伺いたいと思います。
  362. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 一口で言えば、本当に御苦労さまでしたということに尽きるわけでありますけれども、お触れになりましたように、停戦の合意が、停戦の合意といいますか、イラク側が国連決議を受けて停戦が成立した、そうしますと、あの地域は戦いが済んだ後の平和の海になるわけであります。そうして、あの地域から石油をたくさん輸入しておる日本にとっては、ここの死活的に重要な通商航海路の危険を除去する、安全確保に資することは、日本のみならず、我が国が二〇%とすれば他の八〇%は結果として国際社会に対する貢献にもなる。そこで自衛隊能力を生かして行ったわけでありますけれども、大変インド洋を渡りながらの御苦労あるいは現場での御苦労、さらに最近、私の記憶に誤りなければ、新聞報道によると、他の国が日本のあの掃海艇作業を見て一〇〇%の稼働率に高い評価を与えたということも記事として載っておりました。また、日本掃海艇が担当した区域というのは、おっしゃるように当初の面が終わって、それから非常に深いところとか難しいところを担当したんだという報道等もなされておりました。何の事故もなく無事任務を果たされたこと、また冒頭に戻りますが、本当に御苦労さまでした、こういう気持ちでお迎えしたいと思います。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  363. 和田一仁

    ○和田(一)委員 総理の口から国際的な高い評価もあり、御苦労さまでしたというお言葉、行った隊員にとってはやはり何よりの言葉ではないかと思うのですね。  防衛庁長官、こういった一連の任務について本当に成果を上げて、高い評価を得て帰ってくるわけですが、これは私は海上自衛隊の士気をすごく高めているような感じがするんですが、長官、お帰りになりましたときはどういうお言葉をいただけるんでしょうね。
  364. 池田行彦

    池田国務大臣 ただいま総理からも御答弁ございました。また、先生からもお話ございましたけれども、本当に難しい状況の中でよく任務を完遂してくれたと、本当に心からうれしく思っております。もとより参加いたしました隊員一人一人は、いや、それは当然自分たちに課された任務だ、任務を遂行するのは当たり前だといった謙虚な気持ちを持っておるんじゃないかと思いますが、それにしても私は、よくぞやってくれた、こう思っておるわけでございますし、また、この間、国民の多くの皆様方から本当にありがたい御激励をちょうだいいたしました。民社党の代表団の方も先般わざわざドバイまでお越しくださったわけでございまして、そういったことは、参加しました一人一人の隊員にとりましても大変誇りにも思われることであり、また将来の任務の遂行に向かって励みにもなることと存じますが、また、それは単に参加隊員だけではなくて海上自衛隊全体あるいは自衛隊全体のモラルの向上にも大きく資するものだと考えております。そうして、現在帰国の途についておりますが、恐らく来月の末になると思います、本国へ、日本に到着いたしますのは。そのときには自衛隊としても、また政府としても、総理ともよく御相談申し上げながら、できるだけの温かい出迎えをしたいと思っておりますし、また、国民皆様方にも、どうか温かく迎えてやっていただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
  365. 和田一仁

    ○和田(一)委員 やはり汗をかき、骨を折って、世界の国のため、あるいは国の代表として世界のそういったために任務を果たすということには隊員一人一人が誇りを持ってやっていると思うわけでございます。  そこで私は、今度のこのPKO派遣に関して自衛隊派遣されるような内容について防衛庁長官に若干お聞きしたいのですが、三条、本則三条の問題でございます。  先般、外務大臣国連で演説をされまして、これからは国連中心の新しい国際秩序の確立にそれぞれの国が努力をしなければいけない、そしてその中にあって我が国がこれから積極的に寄与、貢献していく、そのことが大事である、それにはもういろいろな努力をしなければならない、その一つとして、今回のPKO、こういうものが具体的に法制化されようとしているわけでございますね。  このことは、もう私が申し上げるまでもなく防衛庁長官も同じ御意見であり、見解であり、お立場であられると思うのですが、そういう中で、今度このPKO自衛隊をお出しになる、その任務規定を自衛隊本来が持っている第三条、ここに私は新しく加えるべきではないか。国際的に寄与、貢献していく一つのあり方としてこのPKO活動もやろうという新しい任務が付加されたんではないかと思うんですね。  これはこの前もお聞きいたしました。そのときにも長官は、第三条は、まず最初に、これは自衛隊が行くだけではないんだ、そして他の公務員や民間の人も行くという立場からそういうことは附則の中で十分だ、こういうお話でございましたけれども、しかしPKOの中でもPKFは、これは自衛隊以外は参加できない、こういうことですね。  私は、これからのPKO、いろいろな活動分野があると思うのですが、やはり注目されて日本貢献するかどうかというのは、このPKFにどう対応していくかということが注目されるポイントではないかと思うんです。それだけに行く方も、ペルシャ湾に行った海上自衛隊の諸君も、同じように、任務をきちっと与えられれば誇りを持って、自信を持って私は任務遂行努力してもらえるもの、こう期待しているわけなんで、そういうものを今度は雑則の中で、自衛隊法改正は百条の方で付加すればいいんだ、こういうお考えにどうしても納得できないんですね。これはやはり南極の観測隊への支援であるとか、あるいはその他の国内での民間のいろいろな行事等への支援であるとか、本来業務から外れたものはそういうことでいいかもしれません。しかし、新しい任務としてこれだけ国際的に注目される行動をこれから新しくとろうというときに、私は本来任務の中にきちっと入れてもらいたい、こう思うんですが、まずその点いかがでしょうか。
  366. 池田行彦

    池田国務大臣 先生指摘のとおり、大きく変わっております世界の中で、これから国連の平和を守る上で果たす役割はますます大きくなってまいると思います。そういった意味PKO活動は非常に重要な意味を持つものでございます。その中でもPKFが大きな意味を持つんじゃないかという御指摘、それはPKFの任務を担当をさせていただこうとしておる防衛庁自衛隊の立場からすれば非常にありがたい評価でございますけれども、私はやはりPKOの諸活動それぞれに重要性を持っているんじゃないか、その中の一つとしてPKFの参加意味があるんだ、こういうふうに考えております。  もとより、そういったこれからのPKO活動、とりわけPKF活動重要性考えるならば、これを自衛隊の本来の任務の中に入れるべきじゃないかという御意見、それは決して根拠がないと私は申しません、そういった御提議は十分に意味もございますし、私もそういった御提議をされるところを理解できるところでございますけれども、しかしながら、現在の段階で私ども御提案申し上げておりますのは、やはりこれまで三条のその任務を果たしていく、国の防衛のために働いていく、そのために必要な力、すなわち人員であるとか、あるいは訓練だとか装備であるとか、そういったものを持っておる、そういったものを、今擁する能力を活用していこう、生かしていこうという立場で、話をこれまで政府におきましてもあるいは各党間のお話し合いの中でも進めてまいったものでございますから、現在におきましては、これはその三条に定める本来的な任務という位置づけではなくて、持てる能力を活用するという八章への位置づけというふうに考えておる次第でございます。  しかしながら、決して八章にあるからその任務というものが、その価値が低いんだとかそういうことじゃございませんで、これはやはり法律でそれを付与されます以上、自衛隊としての大切な任務でございますから、隊員も誇りを持ってその任務に携わっていくことになろうかと存じます。
  367. 和田一仁

    ○和田(一)委員 長官のお考えとそこが私はちょっと違うのでありまして、例えばカナダでも、カナダの国防政策ではきちっと柱を立てておりまして、一つは防衛及び集団安全保障、一つは軍備管理及び軍縮、三つ目には紛争の平和的解決、この三つの柱のうちの一番最後のところにPKOの公式の役割というものを位置づけて対応している、こういう非常にやはり受けとめ方が違うんですね。自衛隊の持っている能力であるとか、あるいは機動性であるとか、完結性であるとか、そういう持っているものを、たまたまあるからそれを使うんだというのと、いやそれはほかの国と同じように同じレベルで我々も考えて対応しているんだという位置づけの問題ではないかと思うんですね。私、長官の答弁ですと、たまたまおれの部下はそういう能力を持っているから出してやるんだ、それにしか受けとめられないんですが、そうなんですか。私はそこのところをもう少しお考えいただきたい。  けさの御答弁では、必要に応じて三条に位置づけることも論議されるのかなと思う、こういう御答弁でしたね。私は、必要に応じてというお言葉は、今がその大事なときではないか、位置づけを決めるところが一番大事なところだ、こう思うので、私はこの法案成立して、出ていく隊員の身になったときにも、あるいは任務を新しく付与される組織としても、その辺はもっともっと国会がどう受けとめてやっているのか、ここの論議を長官御自身の口から聞きたいと思っておるんですね。いかがでしょう。
  368. 池田行彦

    池田国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、私、先生のおっしゃる、御提案なさいます。その意味、十分に理解できるところなんでございます。しかしながら、これまで政府で、あるいは各党間で話し合ってまいりましたところ、あるいは国民の中でもいろいろに御意見ございましたが、そういったところでも、まだ今のところは、まず日本としてそのPKO活動にも参加していこうじゃないか、そうしてその中でPKFという分野について自衛隊が持つ力を活用したらどうかという、そういうところまでの合意が形成できるかどうかというところに我々はおるんじゃないかという気がするわけでございます。  そしてこれを、PKFに対する参加というものを日本の安全保障政策の一つとして、あるいは自衛隊の本来的な任務一つとして位置づけるかどうかということは、なお国民全体の中で、もっと深い、あるいは幅の広い議論を進めていくべきじゃないかという感じがいたします。  また他方におきまして、やはり自衛隊法の三条を変えるということになりますと、これは自衛隊のあり方そのものをどうするかという議論になるわけでございますから、その観点からも申しまして今までの議論ではまだそこまで熟していないんじゃないか、こう考える次第でございます。これからまたいろいろ幅広く議論されるべき御提案がな、こう考える次第でございます。
  369. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今長官は、そうなると自衛隊のあり方そのものにも関係してくる、こういう御答弁でございました。  私は、自衛隊そのもののあり方は見直していいんじゃないかと思うのですね。これから国際的に大きく軍事情勢は変わりつつあるのです。防衛計画の大綱についても、冷戦下の脅威の存在を前提にしてそういう計画、大綱ができているので、今時勢はどんどん変わっているのですね。自衛隊が今本来あった形のままでないとどうにもならないんだというときではなくて、自衛隊そのもの、そして世界の防衛の問題、集団的な安全保障体制というものを国連考えてそこに行こうというときに、我々の防衛のあり方そのものも当然問われてこなければいけないときだと思うのですが、そうじゃないんでしょうか。
  370. 池田行彦

    池田国務大臣 御指摘のとおり今世界は本当に大きく変わっておりまして、そういった中で我が国のあり方、それは安全保障のあり方も含めまして将来に向かってどうするか、これは本当に真剣に考えなくてはならないところだと存じます。  しかしながら、先生も御承知のとおり、これまでの日本の防衛政策あるいはその中での自衛隊の持つ防衛力の整備というものは、御承知のとおりその基盤的防衛力という考え方もございますし、あるいは我が国だけで対処するのではなくて、日米安保体制というものの力もかりながらやっていくということになっておるわけでございまして、私は、現在までの国際情勢の変化、国際軍事情勢も含めて極めて大きいものではございますけれども、今の時点で日本自衛隊あるいは防衛政策のあり方というものを直ちに変えなくちゃいかぬということではないと思います。これからも国際情勢の動きをよく注視しながら真剣にいかにあるべきか考えていく、そういうことではないかと思うわけでございます。
  371. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そのきっかけに、ぜひこういう大事な法案の審議の中でいろいろお尋ねをし、考え方の基本をお尋ねして明らかにしていきたいと思うのですが、例えば自衛隊の持っている能力を使って貢献したい、こういうお話でしたが、本来的にいって自衛隊海外に人を出していくようなシステムになっていない。したがって、輸送の任務を委託されても今の体制そのものでは十分期待にこたえるだけの活動ができないし、PKFにたとえ二千人という枠があっても、これは支援を含めての枠だと思うのですね。三分の一の人を出すにしても、私は今の自衛隊の持っている能力で十分かな、こういう感じすら持っておるのです。  というのは、そういう足の長い、よその国へまで部隊を派遣するというような能力が果たしてあるかどうかですね。そうなると、やはり自衛隊のあり方全体を見て、そういう任務もこれからどんどん出てくるよ、したがってそういう装備も必要である、そのかわりには、こういう要らなくなったものはこうしようという総合的な計画が本来ならここで論議をされて、そういう方向性だけでも出てくるべきだ、こう思っておるのです。  したがって、私はそういう意味で、このまず出すときの任務は本来任務の第三条にきちっと新しく書き加えるべきだ、こう思っております。  総理大臣、いかがでしょうか。ほかのことをお考えかどうか。今私が申し上げたのは、この大事なときなのでぜひひとつそのことをお考え賜りたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  372. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 御議論は承っておりました。そして自衛隊の主たる任務という、侵略に対応するということ、それから必要に応じて公共の秩序の維持に当たるという今の三条の規定にまさるとも劣らないものではないかという委員の御質問の趣旨も、私は委員のお考えとして傾聴をいたしました。  ただ、その今、最初のことでございますから、おっしゃるように今まで専守防衛のみずから守る隊でありましたから、輸送の任務一つにしても、またどれだけの規模の人を送るときにどれだけの後方支援とか交代要員が要るんだとか、全く新しいことでありますから、十分にそれには対応したいろいろな場合を想定しながら計画、計算もしていかなければなりません。本当にお役に立てる国際協力ができるためにどうしたらいいかという角度から、今御質問になったことを念頭に置きながら我々も大いによく勉強をしていかなければならぬことだ、こう思っております。
  373. 和田一仁

    ○和田(一)委員 別の質問を一つさしていただきたいと思います。  同僚議員のいろいろな質問とも若干関連しているわけなんですけれども、この法案を読みましてやはり明らかにしておかないといけないなと思う点が二、三ありまして、そのことについて私の解釈が違っているのか、もっと適切な御説明がいただけるのか、そういう意味でちょっと伺いたいのがございます。  まず、PKO派遣する場合には、紛争が終わって停戦の合意ができて、そしてそれに基づいて国連が議決をして、その要請を受けて実施計画が決められる。これは閣議でお決めいただくわけですけれども、本部長になる総理大臣は、これについて実施計画をつくり、実施要領が作成されてくるわけですね。そこで、その実施要領の第八条の中に、二項ですけれども、実施要領はつくられます。変更についても一項の六号で規定されております。それ以外は国連の「事務総長又は派遣先国において事務総長の権限を行使する者が行う指図に適合するように行うものとする。」こういう項がございます。この「指図に適合するように行うものとする。」という、法律的には大変珍しい表現なんですが、これは指揮とは違うのかどうか。この辺をはっきりとお答えいただけるならお願いしたいと思うんです。
  374. 野村一成

    野村政府委員 お答え申し上げます。  この国連のコマンドということの実態につき、私ども調べましたところ、それは今先生指摘の私どもの国家行政組織法上からする上司から部下へといった趣旨の指揮命令、そういうのではなくて、むしろ調整的なものである、そういうふうに理解ができましたので、そういうことから、より言葉として適切な表現としましては指図とした方がいいであろう、そういうふうに考えた次第でございます。
  375. 和田一仁

    ○和田(一)委員 これは指揮とか命令とかいうことになると非常に強い拘束力が出てくると思うんですが、調整的なものという指図、これは従わなくてもいい、場合によっては、うちは都合悪いですと言えるものなのかどうか。こういうケースは我が国だけではなくて、よその国々も、PKOにあるいはPKFに出している国々は同じ立場にあるわけなんですが、その辺はどういうふうになっておるのか、ぜひひとつお聞きしたいです。
  376. 丹波實

    ○丹波政府委員 国連でPKFに参加する場合に、当事国が国連と結ぶひな形の案というものを出しておりますけれども、その中の司令官の権限というところに、この場合の司令官というのは平和維持活動の配置、組織、行動及び指令について権限を有するということが記されております。こういうところにあらわれておりますとおり、その平和維持活動の配置、組織、行動といった側面については、司令官は一元的な権限を持っているというのが私たちの理解でございます。
  377. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私の手元に国連の発行の平和維持隊に関するパンフレットがありまして、ここに、「国連平和維持軍の兵士たちは、ユニフォームはそれぞれ自国のものを着用するが、同時に国連のブルーのベレー帽やヘルメットをかぶる。任務遂行に当たっては、国連事務総長の指揮下にある司令官の命令に服する」と書いてありますが、「給与、軍規、昇進等はそれぞれの国の制度下のままである。」  実施要領は第八条第一項で、七までずっと規定してございますね。そして八の二のところで、要するに第六号に規定する事項に関し本部長が必要と認める場合を除いて、いわゆる中断のとき以外はこの指図に入るように、こういうことのように思うのですね。私は装備に関しても指図に入るようにというふうに読めるのですね。そうすると、これは相当大事な指図が出てくるので、そういう意味では大変重いものだと思うのですが、よその国はどうなっているのでしょうか。こういう場合によその国も同じように調整的なものと考えておるのかどうか。
  378. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほど申し上げたことを裏返して申しますと、行政面とか兵たん面とかあるいは身分面とか、そういうところには国連軍の権限は及ばない、これは本国政府の問題である。しかし、兵員の配置、展開、そういった行動の側面については国連指揮官のもとで行動するということで各国も理解しておると承知いたしております。
  379. 和田一仁

    ○和田(一)委員 各国もそういう理解であるということはわかりました。  それで、もう一つお尋ねいたしますが、先ほど議論を聞いていて、ちょっと私もう一つ確認しておかなければいけないなと思ったのは、やはり武器の使用についてなんですが、長官、これは二十四条で何回も同じことをお聞きして同じ御答弁をいただいておりますが、これは個々のいわゆる隊員の責任において正当防衛あるいは緊急避難という国内法に基づいて自己が判断の上でやれ、こういうことで、隊としての命令はない、こういうことでしょうか。
  380. 池田行彦

    池田国務大臣 二十四条にございますとおり、武器の使用は「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防衛するため」に行うものでございまして、その際の判断の主体あるいは使用の主体は個々の自衛隊員でございまして、部隊として使用することはございません。  ただ、私が先ごろの審議の中で「束ねる」ということを申しましたけれども、その趣旨も、これまでの答弁ではっきり申し上げておりますけれども、慎重を期す必要がある、武器の使用について慎重を期するためにいわば上官がこれを束ねることが適切である場合がある、こういうふうに申し上げました。  これはこういうふうに考えていただけたと思うのです。一人一人の隊員の判断でこれは生命等の防御のために必要だなと思いましても、まださらには念には念を入れて、いやそうじゃないのじゃないか、まだそこまでいかなくても、武器の使用までいかなくてもいいのじゃないか、そういうことが経験の豊富な上官には判断できるので、個別の個々の隊員の判断だけではなくて、念を入れてその上官の判断をもあわせ聞く、そういうことが適切なケースがある、こういうことでございます。あくまで部隊としての使用ではございません。
  381. 和田一仁

    ○和田(一)委員 急迫不正な場合に使う、こういうことのようですけれども、それを個々が判断してやるのはよろしい、しかし、今もっと経験豊かな束ねる上にいる人が、いやまだ早いよというときにはそれを阻止するというふうにも聞こえたんですが、急迫不正かどうかは、本人の判断でやらなければ間に合わないからこそ急迫不正なのであって、そうでないときにはこんなものは使えないんだろうと思うんですね。  私は、日本自衛隊の諸君はそういう訓練は受けてないと思うんですよ。これは任務に行って、任地において武器を使用する場合にはきちっとした規定があってそれに従ってやる、つまり命令があればやるというようなことであって、いわゆる刑法上の急迫不正に対する対応だというふうになっているんでしょうか。そうではないと思うんですね。  だから、さっき私が申し上げたのは、これは、現地司令官の命令に服するとあるのは、しかしこの指図という意味では調整だと、それはそれで結構ですよ。しかし、本当の現場の部隊を掌握しているその指揮官というのは、自衛隊の隊長であり指揮官だと思うのですね。私は、その人が命令しない限り、どんな急迫不正であってもこれは恐らく何も行動を起こさないという心配がある。では、それを起こすときには束ねる者がやると言うならばやはり隊として行動するのかなという感じがするのですよね。  問題は、国際的に日本のもう国内法のらち外にあって、そういうその急迫不正という、特に不正という定義、概念が一体通用するのかどうか、国際間にあって。これはどういうふうな御理解なんでしょうか。国際的な正、不正というものはそれぞれ違うと思うのですね。私は、正当防衛という概念そのものがこれは国際間の概念ではない、こう思っているんですが、いかがでしょうか。
  382. 池田行彦

    池田国務大臣 私が申し上げましたのは、この法案に基づいて武器を使用する場合どうなるかということを申し上げておるわけでございます。  それで、自衛隊員が武器を使用する場合は指揮命令に従ってやるんじゃないかというお話でございますけれども、それは防衛出動なんかの場合は確かにそうでございますけれども、この法案に基づいてやりぎす場合は、先ほど来ございますように任務の遂行との関連において武器を使用するというのではございませんで、あくまで生命、身体等が危なくなったときに使うわけでございます。そうしてそのときにやはりするのは、先ほども申しましたように、あくまでその指揮とか命令ということではなくて、個々のその隊員の判断でございます。  それで、そういうことはないじゃないかとおっしゃいますけれども、例えば数人の人間が一緒に行動しておりまして、その目的・任務をやりますときには、確かにその中の上官が指揮いたします。そういったときに生命の危険が迫ってくる。しかし、それをある隊員はこれは生命が危殆に瀕しているというふうに判断するかもしれませんけれども、ほかの隊員はしないというケースもあるわけでございますね。  そういったことでございますから、そういったときには、その中でも経験も豊宮でより的確な判断ができるであろう上官の判断をもあわせて、その武器の使用が必要ならばする。たとえ個々の、個別の一人の隊員が必要じゃないかと判断したとしても、ちょっと待った、もう少し念を入れてみよう、こういうケースがあるだろうということでございます。
  383. 和田一仁

    ○和田(一)委員 最後に一言御質問してやめますが、先ほど来国会承認等の問題についていろいろな御見解がございました。その中で、先般来、国会承認をすると不都合な面として、外務大臣も緊急性の問題があると、きょうは機動性という言葉をお使いになられましたけれども、機動性に欠けてくる、こういうことでございました。なるほどそういう見解もあるのかなと思っておりますが、総理大臣は報告を何回もするよ、こういうふうにおっしゃいました。そして、報告をしたときに国会の論議を十分していただく、これは国会のことだ、しかし、それを重く受けとめて承認に匹敵する重さで対応して変更等も考える、こう何回もおっしゃっていました。  私は、緊急性の問題なら、それは全く同じだと思うのですね。報告するときも、いつも国会は開いているとは限らないし、その国会の論議を十分踏まえてそれを重要視していくというのは、国会の論議の時間をお考えになっているんだ、だとすれば私は、国会承認があっても決して緊急性に欠けるものだとは断定できない。こう思うのが一つと、やはり今この国会で論議することは非常に大事です。民意を反映するような格好になると思うのですね。しかし、そのことで、いわゆる授権されたものが、これがこれからどう政治情勢が変わっても、その中で、行政行為の範囲の中でやれるんだということは、私は納得いかないのですが、この両点について御答弁をいただいて、私の質問、きょうは終わります。
  384. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私が言い続けてまいりましたりは、今こうして法案の枠組みを皆さんと御議論をしてお認めをいただこうとしておるわけであります。その枠組みの中には、今回の法案をつくるに当たっていろいろなPKFに参加する五つの条件を法案の中にも入れております。上限等も決めております。そうして与えていただいた枠組みの中で、言葉を変えれば、立法府からの授権の範囲内で行政府は必要に応じて対応をする、それで、対応をするときに、これは閣議で実施計画を決定しますので、実施計画が決まったら直ちにその段階で国会へ報告をいたします、こう申し上げておるわけであります。  国会の御論議のことについては国会でお決め願うことですけれども、御論議の結果は十分尊重して、その途中における変化とか終了とかいろいろな政府が決断をするときの端緒にさせていただくのですから、承認と同じような重さ、同じような内容のことになってくるんだということを私は何回も申し上げたのですが、そういうことでございます。
  385. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  386. 林義郎

    ○林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  387. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 また落ち穂拾いのようなことになりますが、ただいま上の質疑の中に出てきておる、国会承認のかわりに国会報告を綿密にやり、その論議を重視すると。政党なんかでは、定期大会があると報告をやって、それの承認を議長は求めますよね。報告やって、そんなことは承認できないということになったらどうなるのです。総理。
  388. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 それが圧倒的多数の御意見であるならば、私どもとしては大切に受けとめて、尊重して、計画の変更の端緒にさせていただきます。
  389. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、承認を要することになると同じことじゃないですか。  それで、私はもう一つ重要な御答弁をこの前聞いたのですが、防衛庁長官から。この法案の三条、いろんな業務がありますね。これはほとんど治安の維持に関係しできます。それからまた二十三条、「現地の治安の状況等を勘案して」、治安という言葉が入っておる。それになぜ承認が必要ないか。国内でも必要なのに、ましてや国外へ自衛隊派遣されて同じような業務をするのに何で要らないということになるのですか。あなたはその中でこういうことを一つ言いましたね。全部じゃないかもしれないけれども、理由の一つに。国内の場合は国民に銃を向ける、そういう点もあるからと。全部じゃないかもしれないが、それは重要な答弁ですよ。人種差別とまでは言わないけれども、人種区別をしていますよ、あなた。外国人だって基本的な人権があると言うたじゃないですか、ここであの刑法三十六条の他の人の権利というところに外人も入ると答弁されたでしょう、この前も私言うたところです。刑法の三十六条をあなたは引用された。  それからまた、私は注意しておきますが、あなたは答弁をすりかえている。二十四条の四項に、刑法三十六条と三十七条を援用しているのです、ここであなたはこの前、答弁の中で、それを除いては人に危害を与えてはならないと、私はそういうことを聞いているのじゃない。除いてはだから、これに該当するときは人に危害を加えても違法性を阻却される、そういうことでしょう。だから、その刑法三十六条に、法制局長官、あなた、この前とぼけておったが、どの解釈読んでも、刑法の三十六条は私の言ったとおりになっているのですよ、これは。いわゆる三十六条に出てくる権利、もう一遍言いますよ。一般的な生命、身体、自由、名誉、貞操、財産、こうなっている。そして今度は、個人だけでなしに国家ないし公共団体に属する財産権、これは定説ですよ。これが解釈ですよ、大抵私も本を読みましたが。だから、私は、国の財産である弾薬とかあるいは薬品、医療品、食糧、そういうものを、財産ですから、これが急迫不正の侵害を受けたときには、これは守らにゃいかぬのじゃないか、三十六条を援用しておれば。それを私はこの前申し上げたんですね。だから、これはもう一遍、こっちの方はもう答弁がわからぬから、法制局長官、あなた専門家だから、もう一遍私が言っているのを間違いかどうか言ってくださいよ。  それからもう一つ、官房長官、この前フォースを何で「隊」に訳されたのですか、何の意味があるのですかと私が聞いたときに、たしか私の聞き方に間違いかなければ、これは自公民で話し合ってこうしたんだというようなことをおっしゃったような気がしますが、それは我々とは関係ないことなんですよ。これはあれでしょう、議員提案じゃにいんでしょう、この法律は。自公民で出していらっしゃるんじゃないんだから、海部内閣として政府提案として出しているのですから、そういうことはここではおっしゃらない方がいいんじゃないですか。もう少しフォースを「隊」にしたという政府としての権威あるお考えを僕は聞きたかったわけです。これも後でお考えがあればお聞きいたします。  それから今回、けげんな日本語がはやりますね、この前もちょっと言いましたけれども。いいですか、武器の使用は個々の隊員の判断だが、司令官が組織ではなく組織的にその判断を束ねる。「束ねる」はこの前もう言いましたね、辞書。今度は「的」ということを言いましょうか、辞書で。外務大臣、「的」というのはどこから来た言葉と思いますか。辞書を引いてごらんなさい。私、ここへ持っておりますけれども中国から来ているのですよ。中国は、何々的というときは何々のという意味なんですよ。だから、正確な「的」の使い方をすればこうなるのです、ここは。司令官が組織ではなく組織的にその判断を束ねるということは、組織の判断を統率する、こうなるんですよ。日本語を「的」なんていって言ったってだめなんです、それは。組織的な統率と組織の統率と区別はないんですよ。ないんです。首をひねったってだめよ、長官。中国語知ってるの、あなた。辞書を読みなさいよ。  だから、私は、こういう言葉の遊びをしちゃいけないということを言いたいんですよ。この前も、法律論と実態論というか、何かごちゃごちゃごちゃごちゃあれして、そして、撃ってもいいという判断をするが、指揮ではない。何ですか、これは。撃ってもいいという判断を指揮官の判断でやるということが指揮なんですよ。何でこう分けるんです。こんなことを言っちゃだめですよ。だから、この前、去年の協力法でもそうですが、矛盾がいろいろ出てくるんです。モグラたたきと同じで、一つでも矛盾を直せばもう一丁の矛盾がぽんと出てくるんですよ。私はそれを申し上げておいて、後で一括してあれをいたします。  それから、総理にお伺いしておきます。  二十六条、民間の協力、これですね。これは物資の徴発あるいは民間人の徴用ということに道を開くことは絶対ありませんね。それを後で御答弁ください。  それから、この統一見解ですが、共産党の方も言われましたけれども、これはもう全くびっくりしましたね、こういう統一見解を出されるということは。こういうことをしておったら、武力の行使なんて出てきませんよ、全部武器の使用になっちまうんだ、こういうことは。もう時間がないから、あるとき言いますけれどもね。  それで、一つだけ申し上げておきますけれども、何ですか、八月五日の日ですか、八月五日に大島さんや外務省の幹部が自民党の部会に行って説明されたんでしょう。そして、そのときにこういう説明をされたんじゃないですか。武器の使用と武力の行使の区別について、これは自民党の外交・国防関係合同部会で基本的な考え説明された。そのとき、柳井条約局長、こういうふうに言われたそうですね。「憲法で禁じた武力行使と維持軍での武器使用との区別について」まさに問題のところですね。「国または国に準ずる組織に武器を使用するのが武力行使で、ゲリラ行動などへの自衛的な武器使用は武力行使に当たらない。」こう説明された。  ところが、九月二十五日、工藤さんはどう言われたか、このPKOの特別委員会で。ゲリラやテロに対する、武器使用の問題です、武器使用も、国または国に準じる組織、いわゆる外敵に対する対抗という意味で武力行使になるとおっしゃっているんですよ。その紛争の相手方が非常に紛らわしい場合も、武力行使に当たるおそれがないとは言えない。全然違うんですな、答弁が。片一方はゲリラはだめだ、片一方はゲリラでも武力行使になる可能性がある、そういうことがありました。  それから、もう一つ言っておきますが、これはちょっと、さっき、何ですか、掃海艇の方が苦労して帰られる。おねぎらいになることは結構でしょう。それで、叙勲はないですよね、自衛隊には、ありませんね。それで、何があるかというと、何か勲章みたいなものをつけてやるでしょう、武官の人が。あれは長官、知っていますか、何か。あれは記念章というのですよ。十年前あれはできたんです。そして、その功労に応じて記念章のあれが違うんですわ、違うんです。  それで、これはちょっと外れるかもしれないが、大事なことだから聞いておきますが、あした国会で二十五年の永年勤続のあれがあるそうですけれども、勲一等旭日章、この前私はある方のあれに立ち会った。勲章は陛下が渡されますね。勲記というあの免状みたいなものはあなたが渡されるわけですね、そうでしょう。そのときに何と書いてあるか。あなたは何回もやられたからわかっておろうが、明仁と陛下の名前が書いてある。その下に、国璽というのですよね、あれは「大日本国璽」という大きな判が押してある。そういう国があるんですか、大日本国というのは。日本国しかないんじゃないですか。あなたは何回も見られて不思議に思われませんでした。どうして「大」がついているのか説明してください。  以上、御答弁を承りたい。
  390. 池田行彦

    池田国務大臣 私に対するものは、御質問と、あるいは一方的な御指摘と二種類あったかと思います。  まず最初に、シビリアンコントロールに関する私の答弁がというお話がございましたけれども、きょうの委員会で実は私はシビリアンコントロールの関係では答弁に立っておりません。それは、先ほど御指摘がございましたのは複数の政府委員からの答弁だと思いますけれども、その中で申し上げましたのは、防衛出動あるいは命令による治安出動の場合にはなぜ国会の承認が要るかということに対する答弁でございまして、それは、我が国にとって非常に重大な事態であるということ、それからまた、国民の権利義務に非常に重大な関係があるからだ、そういう答弁を申し上げた、こういうことを御答弁させていただきます。  それから、二つ目の二十四条の関係につきましては、私は法案の範囲でございましたので、正当防衛の関係は私ではなくて法制局長官からお答えいただくのが適当かと存じます。  それから、武器の使用、それで個々の自衛官がどうかといった点でございますけれども、この点は「的」がどうか、「束ねる」がどうか、それはいろいろ言葉の定義については私もあれこれ先生と争うことは申し上げません。要するに私が申し上げておるのは、先ほども申しましたけれども、あくまで武器使用というのは個々の隊員の判断によって行うのである、しかし、慎重を期すために、何人がおりますときに、一人がもうこれは使用せざるを得ない状態じゃないかと思っても、いやさらに念を入れて経験の豊かな一緒におります上官の判断をも仰ぐ、そういうことがあり得る、そういうことが適切な場合があるということを申し上げておるのでございますので、御理解をいただきたいと存じます。  それから、最後に掃海派遣部隊の関係でございますが、いろいろな任務参加いたしましたときに、功労に応じて表彰したり、記念章ですね、ございます。それからまたいろいろな表彰の規定もあるところでございますので、今後、私ども防衛庁の中、あるいは政府ともいろいろ相談いたしまして、今回の働きにふさわしい対応をしてまいりたいと存じますけれども、叙勲ということは考えておりませんのは当然でございます。
  391. 海部俊樹

    ○海部内閣総理大臣 私には二十六条についてお尋ねがございましたが、あれはあくまで民間の皆さんの自主的な御判断による御協力をお願いする、こういう趣旨でありまして……(楢崎委員「断ってもいいんですね」と呼ぶ)結構でございます。  国璽は、明治四年五月に我が国の印章として制定されたものであり、以来、その印文は「大日本国璽」となっているところでございます。
  392. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 国連のPKF、すなわち平和維持隊は、紛争当事者の間の停戦の合意が成立し、紛争当事者が平和維持隊の活動に同意していることを前提に、中立・非強制の立場で国連の権威と説得により停戦確保の任務を遂行するものであって、強制的手段によって平和を回復する機能を持つものではありません。したがって、国連平和維持隊は従来の概念の軍隊とは全く違うものででざいまして、戦わない部隊とか敵のない部隊とか言われておりまして、それのゆえをもちましてノーベル平和賞も受けたというものであります。  でございますから、政府としては、先般自公民三党のいろいろ御協議も承りまして、そのアドバイスもございましたが、政府の責任としてPKFの訳を、平和維持軍よりも、前に申しましたような理由で、敵のない部隊ですから、平和維持隊と呼んだ方が適当であるという政府の判断で解した次第であります。
  393. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 正当防衛、緊急避難についてのお尋ねでございました。  刑法三十六条ないし三十七条といいますのは、いずれもその要件に該当すれば刑事法上の責任を免れる、こういうことでございます。それに対しまして、こちらの法案の二十四条というのは、あくまでも隊員のいわゆる武器使用の権限といいますか、そういうものを法案上求めたものでございます。  そういう意味におきまして、たまたまある隊員が、委員の御指摘によれば防護対象にしたと、こういうふうなことをおっしゃいますが、それはあくまでも隊員の行為としては刑法三十六条あるいは三十七条、こういうふうなこと、要するに法案の二十四条に規定する使用目的以外に武器を使えば、それはあくまでも私的なもの、こういうことでございまして、そういう意味で、携行する武器でいわば任務として守る、こういうことでは全然ございませんで、刑法三十六条ないし三十七条の適用があってそれは刑事上の責任を免れる、これだけのことでございます。
  394. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わりますが、全然納得しないし、武器使用と武力の行使の関係の統一見解も了承いたしません。それだけ申し上げておきます。
  395. 林義郎

    ○林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十六分散会