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1991-09-26 第121回国会 衆議院 国際平和協力等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年九月二十六日(木曜日)     午前十時三十一分開議 出席委員   委員長 林  義郎君    理事 柿澤 弘治君 理事 田原  隆君    理事 谷垣 禎一君 理事 中川 昭一君    理事 船田  元君 理事 石橋 大吉君    理事 上原 康助君 理事 串原 義直君    理事 山田 英介君       逢沢 一郎君    石川 要三君       今津  寛君    上草 義輝君       小澤  潔君    大石 正光君       岡田 克也君    梶山 静六君       河村 建夫君    高村 正彦君       鴻池 祥肇君    斉藤斗志二君       園田 博之君    武部  勤君       中谷  元君    福田 康夫君       増子 輝彦君    町村 信孝君       松浦  昭君    松田 岩夫君       三原 朝彦君    光武  顕君       宮下 創平君    伊東 秀子君       上田 卓三君    上田  哲君       緒方 克陽君    沖田 正人君       川崎 寛治君    五島 正規君       田口 健二君    山中 邦紀君       吉田 正雄君    東  祥三君       遠藤 乙彦君    山口那津男君       渡部 一郎君    東中 光雄君       古堅 実吉君    中野 寛成君       和田 一仁君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外務大臣臨時代         理       海部 俊樹君         外 務 大 臣 中山 太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)  坂本三十次君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和雄君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣審議官         兼内閣総理大臣         官房参事官   野村 一成君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       伊藤 博行君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      秋山  收君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         科学技術庁長官         官房長     林  昭彦君         科学技術庁原子         力局長     石田 寛人君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         厚生大臣官房総         務審議官    大西 孝夫君         通商産業大臣官         房審議官    林  康夫君         海上保安庁次長 小和田 統君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         自治大臣官房審         議官      田中 宗孝君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         消防庁長官   木村  仁君         消防庁次長   渡辺  明君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     渡部  尚君         国際平和協力等         に関する特別委         員会調査室長  石田 俊昭君     ――――――――――――― 委員の異動 九月二十六日  辞任         補欠選任   増子 輝彦君     河村 建夫君   和田 一仁君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   河村 建夫君     増子 輝彦君   中野 寛成君     和田 一仁君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際連合平和維持活動等に対する協力に関する  法律案内閣提出第五号)  国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第六号)      ――――◇―――――
  2. 林義郎

    林委員長 これより会議を開きます。  議事に入るに先立ち、申し上げます。  ただいま訪日グアテマラ国会議員団団長カルロス・ガルシア・レガス氏御一行の皆様が本委員会の傍聴にお見えになりました。御紹介を申し上げますとともに、拍手をお願い申し上げます。     〔拍手〕      ――――◇―――――
  3. 林義郎

    林委員長 内閣提出国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律案及び国際緊急援助隊派遣に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。海部内閣総理大臣
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日、上原委員より御指摘のあった国際緊急援助活動に関する外務委員会への報告につきましては、誤解を避けるため改めて答弁いたします。  国際緊急援助活動に関して講じた措置につきましては、法律の議決の際の衆議院外務委員会附帯決議によりまして随時同委員会報告することになっておりますが、その報告方法につき明確な御指示をいただいていなかったこともあり一外務省といたしましては、とりわけ迅速性の観点を考慮し、委員長を含む同委員会の全理事に対し、派遣の都度、さらに場合によっては中間的な報告を含め、文書で御報告してまいった次第であります。  しかしながら、このような報告が必ずしも十分でなかったとの御指摘をいただきましたので、外務委員会における御判断を待って、その方法につきまして善処いたしたいと存じております。
  5. 林義郎

    林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東秀子君。
  6. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 私は、きょう時間が短いので、首相にのみお答えをお願いいたしたいと思います。きのうの首相答弁に沿って御答弁をお願いいたします。  昨日、総理は、自衛官平和維持軍参加することは憲法解釈の変更ではない。その理由として、停戦合意が崩れたことがだれの目にも明らかになった場合に業務中断させるから、さらには、中断判断は、日本部隊日本実施要領に従って行動する、つまり中断判断はあくまで我が国の判断決定によって行う、この二つ理由を掲げております。しかし、これが平和維持軍行動原則国連全面的指揮のもとに、完全な指揮命令系統の中で国連コマンドとして活動する隊員の本質といかにかけ離れているか、さらには、戦場である現場の実態ともいかにかけ離れているか、絵そらごとであるかということが国民の目にも明らかになったのではないかと思います。  そこで、一つ一つ質問いたします。  まず、PKOの父と言われているアークハート氏の言葉でございますが、このように彼は申しております。「いったん国連派遣され、安保理コマンドとなった要員は、完全に国連指揮下に入る。派遣国指揮権は及ばない。これは日本派遣要員にとっても同様だ。」撤収する場合には「(部隊に直接撤退命令を出すのではなく)外務大臣などから国連事務総長撤収を申し入れることになる。」こういうふうにはっきり国連活動原則を述べております。  さらには、国連事務総長安保理へ定期的に報告する中でも、このように申しております。「国連軍は「統合的かつ能率的な軍隊」として機能しなければならず、国連軍部隊は等しく軍司令官指揮の下に服すべきものであるから、国別部隊間に差別があってはならない」このような見解を繰り返し表明しております。  そこで、次の三点について、総理お答えください。  まず、PKF派遣された隊員はどこに対して忠誠義務を負うか、第一点。  二つ目は、中断とは自衛隊員のどのような行動を指しているのか、二点目一  三点目は、日本自衛隊のみが別行動ができるという根拠は何か。  この三点についてお答えください。
  7. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お答えをいたします。  戦場とかコマンドとかいう言葉をお使いになりましたが、私はそういう概念で物を考えることではなくて、平和維持活動ですから、これは停戦合意が成立しておることがあくまで前提でありますし、同時に中立・非強制立場で行う行動でありますから、それをコマンドと呼んだり戦場と呼ぶのは、私は妥当しないのではないか。あくまで平和を確保するためにこれは行う行動であるということが大前提として御理解を賜りたいことでございます。  同時にまた、日本派遣します協力隊は、内閣で決めます実施要領実施計画、それは国会で今まさに御審議いただいておるこの法律の枠組みに基づいてお認めをいただくものでありますから、停戦合意のほかにも紛争当事者間の合意中立的立場の厳守、そして派遣を終了するときの問題についてもお触れになりましたが、これは派遣をするに当たって本部長がつくります実施要領の中にいろいろ細かいことを定めておきます。実施要領に従って行動をするわけであります。そして、停戦が崩れるおそれが出てきた場合どうするか、停戦が崩れた場合どうするか……(伊東(秀)委員質問に答えてください。忠誠義務」と呼ぶ)お答えしているんです。三点と言われたからお答えしているんです。(伊東(秀)委員「すりかえですよ」と呼ぶ)すりかえでありません、お話、お答えしておるんですから。  そしてそのときには、現地におけるそのようなことは本部長の決める実施要領に従って行動をし、撤収をするときには本部長外交ルートを通じて国連事務総長事前通告をすることになっておりますから、それによってできるわけであります。  以上です。
  8. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今私は、忠誠義務国連に対して負うのか否か、それから中断とは隊員のどのような行動を指すか、それから自衛隊のみが別行動ができる根拠を示せというふうに三点。この三点に限って簡潔にお答えください。
  9. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本協力隊ですから、日本であります。また同時に、集団ではなくて部隊として参加をされた場合にはそれはどのような行動をするかということは、現地に来ておる国連司令官と我が方の隊長とが緊密に常に連絡をしながら職務遂行に当たるわけですが、どのような職務を行うかは実施要領においてきちっと定めて行うわけであります。  また、別行動とおっしゃいますが、今委員も冒頭に引かれたアークハート氏の言葉にもありますように、日本だけ撤収できるかとよく聞かれるが、大きな誤解がある、撤収はそれぞれの国の理由でいつでもできるんだということが同じブライアン・アークハート氏の発言で、新聞にも出ておるのでありますから、そのような行動はできるということは国連責任者も認めておりますし、この五原則に従って行動することは、昨日もお答えしたように、国連との間でそれは全く問題ないという回答を受け取っておりますから、それに基づいてできるものと確信をいたしております。
  10. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 じゃ、自衛隊中断のときにはどのような行動をとっているのか、中断とは何を指すか、明快に答えてください。
  11. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 中断とは任務遂行を中止することでありまして、具体的な例が出ておらぬのにあれこれ仮定の問題を想像してああこう言うことは、これは差し控えなければならぬ問題と思います。
  12. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 任務遂行をやめることとおっしゃいました。だれの指揮に基づいて任務遂行をやめるのですか。
  13. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは先ほども申し上げましたように、実施計画閣議決定し、本部長実施要領を決めて派遣をいたしますから、その実施要領に従って行動をするわけであります。前提が崩れたり、実施要領に従っての行動ができないとき、停戦前提が崩れたとき、これは当然中断することになります。
  14. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 アークハート氏も言っているように、派遣国から派遣されたも一切派遣国指揮は及ばない、すべて現地国連から出てきている司令官指揮命令に従うというのが、これがPKF原則でございます。実施要領というのは、じゃ、どのような形で国連に対していつの段階で伝えるのか、明快にお答えください。
  15. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは国連から要請がありまして、具体的にこういうものだということを要請を受けたときに、それができるかどうかを閣議決定をして、そして国会にも御報告をします。そして、出す前に、本部長の方から、出ていく隊に対してこのようなことで実施をしろと細かい実施要領を決めるわけであります。したがって、それは要請を受けて、閣議決定をして、その後できるだけ早くつくるものでございますが、あくまでどこへどのような要領で仕事に行くかということについては、これはまだ全く未知の問題でございます。
  16. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 首相は、隊員行動実施要領が拘束するというようなお答えをなさいました。じゃ、実施要領現場司令官にきちんと伝達されていなければいけないはずです。その伝達の方法は、いつの段階でどのような方式で行うわけですか。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現場司令官とおっしゃるのは、恐らく国連事務総長の意を受けてその辺の総合調整に来ている人だと思います。我が方の隊長はそれを持って参加しますから、行けば今度は常に連絡調整を毎日密にいたしますから、我が方の実施要領というものは、その到着の時点において恐らく正確に伝えておかなければ現場司令官指図も困るだろうと思いますし、我が方の隊長行動もそれに従うということを相手に伝えるわけであります。
  18. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 我が方の隊長というのは具体的にはどのような立場で、それから、国連から派遣される現場司令官との関係はどうなのか、具体的にお答えください、
  19. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのような具体的なことは、国連局長からお答えをいたさせます。
  20. 丹波實

    丹波政府委員 一般的に申し上げまして、この現場の全体的な行動PKFの配置、展開、そういったものに対する指揮権は、国連司令官が持っております。日本から出ていきました隊長はその。下にくるということでございます。  ちなみに、先ほどからの先生の御質問との関連で、問題は前提が崩れているという状況で起こったことでございまして、過去の例を見ますと、各国はそういう前提が崩れたときにまさに任務中断しておりまして、これについて各国に対し国連が何か困ったということを申し入れたということは私たち承知しておりません。各国はまさに前提が崩れたときはそれなりの判断で中止しておるというのが、過去の国連平和維持活動における参加国行動態様でございます。
  21. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 停戦前提が崩れるような事態の発生と中断――首相がおっしゃる、やめるまでには必ずタイムラグがあるはずだ、時間的経過があると。その間はだれが自衛隊員指揮するのか、自衛隊員はその間何をするのか。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前提具体的想定問答でもお出しいただけると、この場合はこう、この時間はこれくらいと言えますが、全くそういうことを予測をして申し上げますので非常にわかりにくいかもしれませんけれども、だれの目に見ても、これは停戦合意が崩れたかどうかということはそこの現場にいる隊員にとっても非常に重要な問題であります。  停戦合意がある、紛争当事国合意があるという状況が崩れたときには、これは任務遂行することはできなくなりますから、そのときの判断中断をするのは現場隊長判断によって中断をしなければ、要員生命等をそれ以上危険にさらすことはできないでしょう。直ちにそのことは本部連絡が参ります。実施要領にそういったことも書いておくつもりです。本部判断をしてこれは中断、なかなか原状回復に戻らない、これは引き揚げになるという判断をしたときには、国連事務総長日本国外交ルートを通じて内閣の方から中断撤収通告事前にいたすことになっております。
  23. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 中断すべきような事態が発生しているにもかかわらず現場自衛隊員が暴走したようなことに対する歯どめは、いかにしてかけるのですか。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほどから仰せられるように、戦場へ行くのでもありませんし、コマンドとして送り込むのでもありませんから、暴走などすることは全く想定しませんが、実施要領で、そのことは法案にも書いてありますけれども、重ねて実施要領に厳しく書いて、これを守るように処置いたします。
  25. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 実施要領はあくまでも事前派遣協定を結ぶときに国連に渡すだけではないですか。一々現場指揮官実施要領を持って日本隊員指揮するということはあり得ないわけでしょう。だって、現場指揮するのはすべて国連から来る司令官であって、日本隊員――首相隊長隊長、我が隊長とおっしゃいますけれども、それも国連現場司令官指揮に従うわけです。とすれば、その間に、あなたは実施要領があるから自衛隊員戦闘行為開始のような状況でも武力を行使することはないとおっしゃいましたけれども、どういうふうに保証措置をとっているか、その点についてはっきりお答えください。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ちょっと、伊東議員の想定されておる戦場とかコマンドというような状況じゃないんです。そして、実施要領はあくまで本部長の決める実施要領に従って隊長以下全隊員がこれに服してもらいます。それほど厳しいものであるということを申し上げておきますし、同時に、国連司令官現地の我が方の隊長は絶えず連絡調整を行いながらその行動をするものであります。  したがいまして、強制力をもって武力行使をしに行くのでは絶対にありませんし、また、中立・非強制立場で行うんだということはたびたびお触れになるアークハート氏の本にも対談にも出てくることでありますし、国連本部でもそのことは明確に示しておるわけでありまして、したがいまして、PKFは御想像なさっておるのと違って敵のない軍隊、敵を持たない軍隊ということで国連でも統一されておるわけでございます。
  27. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 総理は、いかにも観念的にすべていい状況を想定しておっしゃっていらっしゃる。しかし、中断しなければいけない状況というのは停戦合意が崩れ始めたというふうに言っているじゃないですか。内乱が復活するような、あるいはゲリラ活動が活発になってきて、停戦状態とはつまり敵のない状態とは言えない、戦闘行為をしなきゃいけないような状況を指しているのではなかろうかと思うわけですが、そういうときに実施要領に従ってと言いますけれども、すべてそういう危険な状態に至ったときに、最も指揮命令系統を集中させる、現地指揮官指揮に従うということが必要になるわけです。そうじゃなければ自衛隊員生命や安全も守れない状況になる。そのときになぜ実施要領実施要領がというようなことを言うのか。  第八条を見ましても、そのような実施要領で定めることというのは、今総理がおっしゃっていることは、二番目の「前号に掲げる地域及び期間ごと当該国際平和協力業務種類及び内容」、これに係ると思うのですけれども、「業務種類及び内容」というのは現場での細かい動きまで書けるわけですか、こういう実施要領の中に。(海部内閣総理大臣「書けるんです」と呼ぶ)そういう説弁を言うことは非常に国民に対して侮辱だと思いますが、どのように書けるのか。具体的に、書けるとおっしゃいましたけれども、じゃ、どのように現地動きまで書けるのか、これの二番に沿ってお答えください。
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、誠意を持ってお答えしているわけであって、決して侮辱をしておるわけでございません。  同時に、第八条の二項二項とおっしゃいました。この二項のことについてはきちっと書きますが、同条第六項もお読みください。第六項には、「第六条第七項各号に掲げる場合において国際平和協力業務に従事する者が行うべき国際平和協力業務中断に関する事項」とちゃんと書いてあります。そうしますと、先ほどお触れになったように、内乱が激しくなったとかゲリラが頻発してくるとかいうようなことは、これは平和維持活動の行うべき前提が崩れた場合、こう判断するのが当然ではないでしょうか。そのことを実施要領に書くということがどうして詭弁でしょうか。書きます。
  29. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今その内乱の再発あるいはゲリラの攻撃が厳しくなった、中断決定するまでには時間的な経過があると。この間、では、隊員はだれの指揮に服するのか、この点はどうですか。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 隊員は一緒に例えばパトロールに出るとか停戦を維持するとか、そこにいるグループなり隊があると思います。そこにはそれぞれ責任者が置いてありますから、その判断において、実施要領では、責任者があるいは隊長が、こういった状況のときには任務遂行中断して安全の維持できるところに、任務遂行中断しろということを、そういったことは実施要領できちっと定めます。
  31. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 中断するか否かも指揮命令系統の一番重要な中身である。現場の、今回じ行動を行っている部隊責任者というのは、多分日本人の責任者を想定していると思うのですけれども、その方も国連派遣現地司令官指示に従わなければならない。それは間違いないですね。とすれば、その現地司令官中断指示しないとき、どうするわけですか。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 内乱が起こったりゲリラが頻発しておるときにPKF活動中断したいという我が方の実施要領に対して、現地司令官中断するなというような指図をするとは私は想定しがたいのですけれども、そういったことは、きょうまでの平和維持活動で、例えばこの間のレバノンの監視所の例を引いても、テレビで放映されたように、そういったときは従来の国連PKF活動というのは皆抵抗しないで中断をしておるわけなんです。そして強制力を使わない、中立立場で、どちらの味方もしないで平和を維持するというのが本来の目的で、司令官はそういった大枠のもとでPKF行動を行うものなんです。PKF行動というのは本来そういうものなんです。私は、それによって我が方も実施要領をつくって、この指図とはそごしないように事前にも十分配慮しますし、現場においても調整連絡はきちっとしていき、あくまで我が方の隊員のいろいろな身体、生命上の問題は、任務遂行すべきかどうかという点について至急に報告をとり、もしそれを終了させるときには一日も早く安全なところに終了しなさい、こういったことがあらかじめできるように実施要領で書いておきます。
  33. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 今ユーゴの停戦合意がたびたび覆されるような状況、さらにカンボジアにもPKF派遣したいというきのう中山外相の言葉がございましたけれども、カンボジアだっていっ内乱が復活するかもしれない危険もある。そういう状況で、今の総理の御答弁は大変絵そらごとといおうか、空理空論、観念論ではなかろうかというふうに思われます。  今回の法案に対する陸上幕僚監部の言葉がここに出ておりますけれども、「他国の部隊と一緒に行動しているのに、攻撃を受けた時の撤退の判断が異なったり、いちいち本国に照会しなければならないというのでは、隊員たちに死ねと言うようなもの。そんな危険な命令は自分には出せない」現に陸上幕僚監部の作戦幹部の方が言い切っておられます。さらにはもう一人の方の「危険な状況では、すべて生命防護と割り切るしかない。同僚の他国部隊が攻撃され、自衛隊だけ逃げ出したら笑いものだ」というような言葉も載っております。こういう一線の作戦幹部の方々の言葉は今総理の言ったことと相反する実態を言っているわけですが、これに対してはどういうふうな指示を出すのか。この言葉総理の言ったこととの矛盾に対してどういうふうにしてあなたのおっしゃっていることを確保するのか、お答えをお願いいたします。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 陸上自衛隊の幹部のだれが言ったか、その人には私が会って、私の気持ちを伝えて、そういう誤解を招くような発言をするなということを厳しく言いたいと思います。  また、内閣総理大臣本部長となって、閣議に諮る実施計画やそれから実施要領を定めて行いますから、最終責任、最終判断本部長たる内閣総理大臣が負うことになっております。そのことは法案をお読みいただければ明らかになっておりますし、私はまたそのようにしていくつもりであります。  また、我が国だけが撤収したら笑われるのではないか。それは何度も言うようですが、先生が想定していらっしゃる戦場コマンド部隊がおるときに我が国だけが引き揚げていくといえばそれはいけませんが、そんなことをしに行くわけじゃありませんから。同時に、国連のブライアン・アークハート氏も、そういった武力行使するようになるのではだめだ、武力を行使したら紛争当事者になって平和維持活動ではなくなるんだということは、その人の著書にも対談にも詳しく出ていることは先生も御承知のとおりだと思います。ですから、そのような想定の、むしろ私に言わしめれば想像的に、戦場コマンドを空想されて、こうなったらこうだ、ああなったらああだと言われたのでは、これは議論が少し違ってくるのではなかろうかと思いますので、御理解をいただきたいと思います。
  35. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 現場の作戦に当たる方々の現場感覚がこのような、撤退の判断が異なったときに一々本国に照会しなければならないようでは、隊員たちに死ねと言うようなものだと言っている。この言葉は、私たちにとっては最も現実的であり、そのとおりだなと思うわけでございます。むしろ総理がこういうことはあり得ない、必ずそれはさせないようにするということの確保をどうするかが問題であって、この法案を見ますと、そういった暴走あるいは生命、身体防護以上の武器使用に対して確実に歯どめをかけるものは法案の中には用意されていない、それが非常に問題であり、武力行使戦闘行為の中に自衛隊員が巻き込まれていく危険が非常に大きい法案であるということを私は思うわけでございますが、その点を指摘いたしまして、私の質問は終わりにいたします。一
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法案をお読みいただきますと、そんな暴走ができないことにしておりますし、また、敵をつくったり強制力を持って行うものではないということは、そして、武力による威嚇や武力の行使もしてはならぬということは、これはきちっと書いてあります。そして実施要領にさらにそれをきちっと具体的に書く、歯どめを何重にも置く、こう申しておりますので、どうかこれを御理解をいただきたいと思います。
  37. 林義郎

    林委員長 次に、山田英介君。
  38. 山田英介

    ○山田委員 私は、PKO法案の審議に先立ちまして、冒頭、一問総理にお尋ねをしたいと思います。  イラクは、バグダッド市内で国連核査察チーム四十四人を拘束をいたしました。国連安全保障理事会は、即時無条件に解放するよう要求しております。米国は、二十四日、ドイツからサウジアラビアに向けパトリオット迎撃ミサイル九十六基と要員千二百人の米軍兵士の移転を開始したと伝えられております。このような事態に対する我が国総理の御見解をこの際明らかにされたいと存じます。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラクが核査察問題を含む大量破壊兵器破棄問題に関して、従来からの査察妨害や虚偽報告に加え、今般、国連査察チームが行おうとした関連文書の搬出を妨害したことは極めて遺憾であり、憂慮すべき事態であります。我が国としても、累次にわたり、イラクが国連安保理決議六百八十七を初めとする関連決議を誠実に履行することを強く求めてきたところであります。今回御指摘になりました一連の報道されておるような事件、私は、我が国としては、イラクが今般の安保理議長声明にこたえて直ちに是正措置を講ずること、安保理決議の履行に誠実に対応することを改めて強く要請をいたします。我が国としては、関連決議の完全遵守を確保するために、今後の同国の行動を注視するとともに、今後の対応については関係諸国と緊密に協議してまいりたいと思っております。
  40. 山田英介

    ○山田委員 PKO法案の審議に入りたいと思いますが、まず、昨年八月二日イラクがクウエートを侵略をいたしました。いかなる理由をもっていたしましても、主権国家を武力で併合することは、これは許されません。多国籍軍がイラクのクウエートからの撤退を求めて集結をした、これは国連憲章五十一条に規定される集団的自衛権に基づいての展開でありました。  一方、国連安保理は十二本の決議をもちまして対応した。決議六百七十八号は、期限を切りましてイラク軍排除のための必要なあらゆる手段を講ずる権限を多国籍軍に付与している。同時に、すべての国に対して適切な支援を要請をした。こういう経緯でございます。  こういう展開の中で、政府は国連平和協力法案というものを国会に提出をする。自衛隊派遣して多国籍軍に協力できるようにするためでありました。  日本国憲法は御案内のとおり第九条で、国際紛争解決の手段として、国権の発動たる戦争、国権の発動たる武力による威嚇、国権の発動たる武力行使を永久に放棄をしております。この解釈か一ら、いわゆる海外派兵、集団的自衛権の行使は禁じられていることは御案内のとおりでございます。また、いわゆる国連軍、多国籍軍が武力行使任務・目的とする、また伴うものであれば、それに参加することは許されません。公明党は、この武力行使を伴う多国籍軍への協力のためにする自衛隊派遣参加は憲法違反であるとして反対をいたしまして、この法案を廃案にいたしました。  他方、九十億ドル支援につきましては、国連決議六百七十八号の要請を踏まえまして国連の行う平和回復のための活動を支援する、こういう観点から、武器弾薬に使用されないことを確認をし、政府に対しては予算の削減五千億円を要求し、その措置を見きわめて賛成をいたしました。日本の国際的な孤立化を避け得たと私どもは確信をいたしております。  このように、憲法に違反してまで、人的貢献が幾ら必要だからといって自衛隊を出すことは、これは避けなければなりません。法案を廃案にしなければならない。そうなりました。しかし、廃案にすればそれで後はどうでもよいというわけにはこれはまいりません。世界じゅうが、破壊されたこの平和を回復しようと努力をしているのに、日本は資金だけで済まそうとするのか、日本は一国平和主義でいいのか、こういうことになりまして、余りにも国際的に無責任ではないのか、こういうことになるわけでございます。そこで、昨年十一月九日の国際平和協力に関する合意、覚書、いわゆる公明、自民、民社三党の合意にこれがつながっていくわけでございます。  合意内容は御案内のとおりですが、憲法の平和原則国連中心主義を貫く、また、国連に対する協力が資金や物資だけではなく人的な協力も必要である。また、自衛隊とは別個に国連のPKOに協力する組織をつくるなど、これがいわゆる三党合意の中身になっております。これらの一連の流れの延長線上に今回のPKO法案が政府から提出をされたと私は認識をしているわけでございます。  一点だけ、別個の組織としているのに自衛隊を併任でなぜ入れるのかという点につきましては、PKOの監視団、平和維持軍は、軍人としての地位、経験、知識、こういうものがないと役に立たないということがその後の調査で判明をしたわけでございます。私どもは、カンボジアなど、あるいは国連、北欧諸国それぞれに、このPKOの実態はどうなっているのか、そういう調査をするために各種の調査団に参加をする、あるいは調査団を派遣する、こういうことをやってまいりました。と同時に、外交、内閣、安保、私どもの三部会合同の審議を十回、衆議院参議院合同の議員懇談会を八回、こういう議論を積み重ねてきているわけでございます。さらに、全党的、全国的な論議も重ねまして、そうして、せっかく国連平和維持活動国連協力をしようというそのPKO協力組織をつくっても、これが役に立たない、国際的に通用しないということであってはその意味はないんじゃないか、このような結論が導かれたような、そういう今状況でございます。  しかし、別個の組織、すなわち総理府に、常設の「国際平和協力本部を置く。」とこの法案にございますけれども、この意味ではフレームワークというのはしっかりと残っておるという認識に私どもは立っているわけでございます。  まあ立場の違いがありますから私の表現と必ずしもどうかなという点はあろうかもしれませんが、総理、PKO法案提出に至ります経緯を私はかように認識をしているわけでありますが、いかが御認識でございましょうか、御見解をお示しをいただきたいと思います。
  41. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際社会に対する日本の果たすべき役割、立場についていろいろ公明党内部の御見解、御議論を踏まえて御指摘をいただきました問題については、私も今、率直に、御見識を評価しながら承らせていただきました。  私たちとしては、先般のロンドン・サミットの議論を想起しますと、今まで東西対立て西側の一員として、西側の結束という発想でおったのが、今、冷戦時代の発想を乗り越えて、東側のトップであったソ連をどのようにして平和と繁栄の国際社会にパートナーとして入れていくかということに西側諸国はこぞって話を進めておるところであります。日本としては、許されること、許されないこと、今委員指摘のとおり、過去の歴史の反省に立った憲法上の問題もありますけれども、しかし、できる限りのことは、資金協力のみならず、物資協力のみならず、きょうまでいろいろやってきましたが、人的な面においての協力を今日までよりさらに一層日本としては役割を果たしていきたい。公明党、民社党、自民党とで三党合意を前回の法案の結末でいただきましたが、それを踏まえて、それを前提に置いて、おっしゃるように総理府に常設本部を置くこのPKO、PKF活動に対する協力の法案、これを用意いたしまして、国会の御審議をお願いしておるところであります。御理解を賜りますようにお願いします。
  42. 山田英介

    ○山田委員 国連が行います平和維持活動に我が国が協力できるようにしよう、こういうふうに考えが至ったときに、私ども公明党は、最も重要と考えられる四点を政府の行う立法作業の過程で反映するように強く要求をしてきたわけでございます。  具体的に申し上げますと、PKF参加五条件の法制化、そして、国会への事前事後報告の義務づけ、法制化、定員数の法制化、そして、憲法とPKFへの自衛隊参加についでこれが整合性があるのかどうかという意味で、確認するために政府の統一見解を求める、これが私どもが要求を強くしてまいりました点でございます。この五条件の法制化と国会への事前事後報告の義務づけ、定員数の法制化、これは子細に検討を合いたしているわけでございますが、基本的に法案に盛り込まれているようでございます。しかし、何点がはこの後確認をさせていただかなければなりません、しなければならないところがあります。  四番目の、憲法とPKFへの自衛隊参加についての従来の政府見解との整合性、そのための統一見解を示してもらいたい。この点につきましては、この法案が国会上程時に出されました官房長官談話というのがあるわけでございますが、これが我が党が要求いたしましたこの統一見解に当たるのかどうかということも含めまして、憲法第九条と自衛隊派遣に関します政府見解と整合性が保たれているのか、これを国会審議を通じまして検証をしなければなりません。と同時に、本法律案の中身、具体的な条項につきましても、憲法違反に当たるような部分がないのか、あるいは政府の拡大解釈とか恣意的な判断を許してしまうようなあいまいな部分がこの条文の中に含まれていないかどうかということもこれからの国会審議の中で厳しくやはり検証をしていかなければならない、こういうスタンスで、こういう立場で、私は、以下質問をさせていただくわけでございます。  まず、私が最も大事だと思いますのは、このPKOに我が国が自衛隊を含めた形で参加をすることとシビリアンコントロールとの関係につきまして私の考えを述べ、総理の御所見を伺いたい、このように思うわけでございます。  まず、それじゃPKOというのは一体何なんだ、こういうことになるわけでございます。武力で侵略国を屈服させることが任務ではない、そういうことでございます。その活動は幾つか特徴づけられるわけでありますが、紛争が解決した後にその旧紛争地域に出ていきまして、そして存在することにより、国連の権威と説得によって、そして回復されたその平和というものを維持する、固めていく、こういうものがPKOである。したがって、戦闘とか武力行使を目的とするのでは決してないということです。  それから、必ず国連の決議、総会とかあるいは安全保障理事会とかそういう決議に基づき、国連の事務総長などの要請があって参加をする。要請がないのに出ていくわけにはいかない。要請がある。国連が主宰するんだ。参加したら国連指揮下に入る。こういう特徴を持っております。  また、紛争をやっていた旧紛争当事国あるいは当事者の受け入れの同意を原則としている。その受け入れの同意を無視して、同意を得ずして出ていくということは基本的に全くあり得ない。  それからもう一つ挙げれば、紛争当事者のいずれの一方にも偏らない中立公平な立場でPKOを行う、こういう中立性の原則と言われるものが大きな特徴としてあるわけでございます。  御案内のとおりでありますが、具体的にはこれは監視団タイプと平和維持軍、平和維持隊と申し上げてもいいと思うのですけれども、そういう二つの体系に類別ができる。選挙監視団、公正な選挙の確保をやる。また、停戦監視団、停戦や休戦、撤退の監視あるいはパトロール、原則非武装。それから平和維持隊、紛争の再発の防止。そして停戦合意ですから、例えば国境線から五キロまで両方の兵力が引き下がろう、停戦ラインができます。その停戦ラインの外側にまた兵力の緩衝地帯というものができる。その外側にいる、引き下がっている。このラインをお互いに停戦協定に違反して越えないようにそれをしっかりとパトロールしていく。引き離された兵力というものを、再び偶発的にせよ散発的にせよ衝突が起こらないように、国連の権威と説得、プレゼンスによってそれを確保する、こういうところにあるわけでございます。それで、ノーベル平和賞も受賞しておるそういう平和維持活動、この基本的な認識がまず極めて大事である、このように思うわけでございます。  そこで、公明党が主張した、PKF参加のための五原則の法制化、それから国会への事前事後の報告の政府に対する義務づけ、また定数の明文化、これが要するに我々が求めました四条件ということになるわけでありますが、この五原則の中身というのは、改めて確認をさせていただきますけれども、一、紛争当事者間に停戦合意があること、二つ目紛争当事者間にPKFの受け入れの同意があること、そして、この紛争当事者のいずれの一方にも偏らない中立性を保っていること、これが三原則。極めて重要な原則である。そして、この三原則のいずれか一つでも欠けたときはこれは撤収をする。そして、武器の使用は、自己の生命防護のために必要やむを得ない場合の最小限の使用というものに限定をする」これがいわゆるPKF参加原則と言われるものでございます。これが今回の法律案にしっかりと組み込まれた、埋め込まれた、ビルトインされた、こういうことになっているわけでございます。この五原則法律の中に埋め込む、内蔵させる、このことによりまして、この五原則を超えるPKF参加を政府がもしやろうとすればそれは法律違反になる。この法律に違反をする。また違反をする以外に出せない。違反をすることになる。こういう縛り、歯どめというものがかかることになるわけでございます。  要するに、国内的に何を多くの方々が、国民の皆様が御心配をなされておられるかということに思いをいたしますときに、それは幾つもあるのだろうというふうに私は思うわけでございます。  例えばPKF、平和維持隊、この平和維持隊の活動原則軽武装で出ていく、しかしそれは中立・非強制、ヒューマニズム、こういう武力行使戦闘行為を目的任務としないPKOに出ていくんだけれども、自衛隊が初めてセルフディフェンスのための要するに武器を携行してPKFに出ていく。そうなると、このことがさらに、PKFPKFにとどまらない、もっとそれ以上のものに、例えば多国籍軍的なものにまでいってしまうのじゃないか、こういう不安が率直に言ってあるだろうと思うのです。それは実は、五原則の中の、紛争当事者間に停戦合意があること、停戦合意がなければ出ていけませんよ、あるいは受け入れの同意があることということがこの大きな歯どめになってくるわけでございます。あるいは、申立ていることが危うくなったらどうなるんだ、こういう御心配も出てくる。それは、一方に偏らない、そういう中立性というものを確保しなければ参加できないんだとはっきりと法律でもって歯どめがかけられる、こういうことになります。  また、日本の隊を派遣した後に停戦合意が何らかの事情によりまして崩れてしまった。崩れてしまって、我が国部隊が、平和協力隊がその紛争に巻き込まれはしないか、率直にこういう国民の皆さんの御不安というのがあるわけでございます。これについては、要するに停戦合意が崩れたら、これは日本のその部隊は、日本の平和協力隊は本国に、日本撤収をする、帰還をしなければならないということを法律にきちっと明記をする、この御心配に対するしっかりとしたこれは歯どめ、お答えになってくる、私はそういうふうに思うわけでございます。  まだありますよ。この受け入れ国の同意が崩れる、場合によっては、かつてエジプトの方でありましたけれども、その国の政府から撤退してくれというふうに、同意をしておきながら後で撤退してくれと言われる場合もあるわけです。そのときに、その撤退をしてくれという希望を、あるいはそういうことを無視して、何らかの口実をつけて、いや、おれたちはまだここにいるんだというふうに居座り続ける、そんなことがまさかないんでしょうねという不安がまたあるわけですね。それは、要するに同意が崩れれば撤退をしなければならない。要するに戦闘行為とか武力行使が万々が一起こるようなそういう事態になるというときは、これは停戦合意とか、あるいは受け入れの同意というものが崩れた場合にしか考えられないわけですから、そういう場合にはきちっとそういう、例えば撤退をしてくれというふうに相手国政府から言われた場合にはこれは同意の原則というものからして撤収をするんだということでこの法案の中に組み込まれておる、それは明確な歯どめになっているわけでございます。  もう一点だけ、一体どのくらいの人数が派遣されるのか。特に自衛隊部隊としてPKOあるいは人道的な救援活動に出ていくようにこの法案ではなっておる。しかし、じゃ、五千人行くんですか、一万人行くんですか、それは制限がなくなっちゃうんじゃないですか、その辺の御心配というのは、これは切実です。したがって、我々公明党は、この定員についてはしっかりと法制化をすべきだ、政令とかそういうレベルで決めるのではなくて、この法律の中できちっと上限の人数を定めるべきであるということを強く要求した。そしてそれはこの法案の中にしっかりと、定員は「二千名を超えないものとする。」という形で上限が法律に組み込まれて国民の皆様に示された。これをもし五千人にしよう、将来一万人にしようなんということになれば、この法律を変える以外にこの人数をふやすことはできない。自衛隊部隊をそれ以上出すことはできない。出せば法律違反ということになるわけでございますから、基本的な、国民の皆様の重要なベーシックな部分での不安というものは、私どもが要求したこのPKO参加原則を法案の中にしっかりと組み込んだということの意味の大きさ、シビリアンコントロールとしての最大の歯どめとしての機能をこれは御理解をいただけるのではないか、このように私は思うわけでありますが、一言総理の御所見を伺いたいと思います。
  43. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私がお答え申し上げなければならない点についていろいろと御意見を交えてお尋ねをいただき、私もメモをとりながら御見識に敬意を表して承っておりました。一言答えろとおっしゃれば、御説のとおり、この法案の中にはそれらのすべてが盛り込まれておるわけでございまして、例えば、私が何回もここで御答弁しておりますように、この法律国会で決めていただけば、その枠組みができるわけであります。この法律によって行政府に授権された権限の範囲内で、この枠組みのもとで適切なPKF活動を行っていきたい、これは当然の大前提でございます。もう十分御承知の先生ですから、第何条に何が組み込まれておるということは、ここで時間の関係上くどくど御説明は避けさせていただきますが、五原則ことごとくがここには書き込まれてございます。それが歯どめになることはそのとおりでございます。  また、国会に対する報告の問題につきましては、閣議決定実施計画を決めます。決めましたら、遅滞なく国会に御報告をいたします。変更もしくは終了のときもその決定国会に御報告をいたします。それに基づいて国会でいろいろな御議論があろうかと思います。もしこの与えられた歯どめ、原則を超えるようなことがあったとすれば厳しい御指摘があろうと思いますし、また、それは政府は重く受けとめていかなければならないことは当然でございます。  定員を明記しましたのも御意見のとおりでございます。我々は、これをもって与えられた権限の上限というものを法律で明記いたしておりますし、また、官房長官から談話を発表させましたのは、今仰せられたいろいろな御疑問に答えるために、やはりPKFというのは中立そして非強制立場で行くものである、敵をつくったり敵のある部隊ではない、戦場だとかそんなことを想定して行くものではない、平和をあくまで確保するために行くのだということと、停戦合意が崩れましたときには、これは実施要領に定める方法に従って、これは期間がうんと短ければ任務遂行をその場で中断させます。回復しないと見たときには任務遂行をやめて本国に帰らせます。その決断は本部長がいたしまして、国連事務総長にも通告をいたします。  その他のことは、おっしゃったことと私の考えは同感でございます。
  44. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと別の角度からシビリアンコントピールについて申し上げたいと思うのですが、要するにシビリアンがコントロールをしなきゃならないのは一体何なんだ、こういう話でございます。要するに、シビリアンの代表たる国会国会議員がコントロール、統御、制御しなきゃならない、それは一体何なんだ、こういう角度ですね。  そういうふうに考えてみると、それは結局、PKOがPKOでなくなってしまう、これを要するにきちっと制御する、コントロールするということに尽きるんじゃないか、こういうことに私は思えてならない、そう思うわけです。  国連から例えばPKO、PKFを超えるそういうグレーゾーン的なというか、多国籍軍的なものへの参加要請されたときに、じゃ、どうするのか。それは五原則をきちっと法制化しておくことによりまして、それに参加をするためには法律を改正しなきゃならない。できない。それに、もし改正もしないでPKF以上のものに、そういうものに参加をするということになれば、これは政府は法律違反を犯すことになりますよ、こういうことになるわけでございます。ですから、シビリアンがコントロールしなければならない一番大事なことはPKFPKFでなくなってしまうこと、変質してしまうこと、それを許さないこと、あるいはPKOがPKOでなくなってしまうことを許さないという、これがシビリアンがコントロドルしなきゃならない根本的な大事な部分である。ポイントである、私はそのように認識をいたしているわけでございます。  しかも、国会事前、事後の報告もしっかりと政府に義務づけをしてそこでチェックをする、注文をつける、クレームをつけるということが確保されている。国会の関与がそこで確保されてくる、こういうことになる。その前に、この法案を審議すること自体が国会が重要なかかわりを持つということになるわけですから、ここのところはそういうことでございます。  それで、この点におきまして国会事前承認というのは、昨日から事前承認の話が出ておりますけれども、私どもも、私どもの考え方をぜひ申し上げたいと思っております。  この点において国会事前承認というのはいささか問題があります。もしこの多国籍軍的な、要するに、ここで言うPKO五原則を超えるような、そういうようなPKO、PKFにどうしても参加をさせたいという勢力が、要するに国会の両院ともに過半数を占めておった、こういう状況のもとで考えてみれば、これはそのグレーゾーン的なPKF、PKOでも、要するに多数の政党というか多数の国会議員によって賛成多数で派遣参加、承認ということになってしまうわけです。そういうことは当然考えられるわけでございます。もしPKF以上の五原則に反するような、そういうPKF活動国連から日本参加してくれと言われた場合に、多数党が、多数の勢力が、それはグレーゾーン的だけれどもぜひ出したいということになって、そうして決意すれば、それはもっとはっきり言えば与野党逆転が、これがもし万が一崩れた場合ということも我々としては考えておかなければならないわけであります。したがいまして、その場合には、グレーゾーン的なものは、法律でしっかりと五原則を定めておかなければ、それは出されてしまう、国会へ。それが賛成多数、承認ということになって出かけていってしまう。これは先ほど私が指摘をいたしました国民の多くの皆様の御心配がまさに的中するということになるわけでありまして、その点を考えてみてもこの五原則の法制化というものの持つ重みというのは、これは軽々に扱われてはならない、理解を賜らなければならない、私はこのように強く思うわけでございます。ですから、仮に与野党逆転が崩れたとして  仮にですよ。崩したくない、崩さないという決意で我々やりますよ。でも、将来のことはわからない。万が一そうなった場合には、それは多数で承認はできるかもしれないけれども、しかし本当の意味では、五原則が明文化、法制化されていれば、法律改正をしなければ出せないというこの大きな歯どめ、政府の恣意を許さない、そういう拡大解釈を許さないという歯どめが、縛りがかかっている。その意味においても、五原則の法制化というものの持つ意味は極めて重いんだ、大きなシビリアンコントロールの機能を発揮するんだということを申し上げておきたいと思うわけでございます。  それで、確認を改めてさせていただきたいのは、我々は今、国会への事前承認なのか、国会への事前、事後の報告義務なのか、承認か報告かという二者択一の議論をしているつもりは全くありません。その二者択一だったら、承認が強いのは当たり前なんだ。国会事前承認の方が強いのが当たり前でございます。そうじゃないんです。二者択一の議論をしているんじゃないのです。五原則の法制化プラス国会への事前、事後または中間の、要するに報告の義務づけか、国会への事前承認か、こういう議論でありまして、これは事前承認か報告かという、そういう議論にはなっていないということをよく御理解をいただかないとこの議論は成り立たない、あるいはミスリードしてしまう、こう私は言わざるを得ません。指摘をしておきたいと思います。  したがいまして、事前承認というのはもろ刃のやいば的なところがありまして、この場合はですよ、ありまして、五原則を緩めるおそれもあるのです。今申し上げたとおりです。それから、承認、不承認の基準、停戦合意はあるんですか、それから受け入れ国の同意はあるんですか、申立てすか、万が一のときは撤収するんですね、あるいは武器の使用はセルフディフェンスに限定されるんですねということが承認、不承認の重要なポイントなんじゃないですか。基準じゃないのですか。したがいまして、承認、不承認の判断の基準というのは、このPKO参加原則が法制化されることによって極めて重要な部分というのは組み込まれてきている。事前承認のこの場合における機能というものの大事な、べーシックな部分の、基本の部分は五原則法制化で取り込まれてくる、こういうふうに理解を私はいたすわけでございます。  で、もう一言の件につきまして。要するに事前承認ということについてですが、防衛出動、治安出動でさえ承認制になっているじゃないか、国会の承認だ、だから、PKO法案でも承認に何でできないんだ、こういう御議論もあるようでありますが、しかし、防衛出動というのはまさに自衛権の発動ですから。我が国国土、国民を防衛するために防衛出動をやるわけでしょう。武力行使、これは憲法で許される武力行使、自衛のための武力行使が防衛出動ですよ。これは国会の承認、当然のことであります。それから、治安出動、これは場合によっては国民に銃を向けることになる。引き金に手をかけるということについては物すごい大きな縛りがありますけれども、しかし、治安出動というのは自国民が自国民に武器を向ける、こういうことであります。それと、中立・非強制、ヒューマニズム、この武力行使を目的としない国際協調、貢献の中の極めて象徴的な、国連が主宰するPKO活動に我が国が参加をするということと同列に置いて議論するというのは、だから事前承認じゃなきゃおかしいという議論はおかしいのではないか。  それから、行政への白紙委任をしてよいのか、こういう御意見もあるようでございます。白紙委任ではないんでしょう。我々は少なくともそんなように思っていませんよ。自衛隊部隊としてということを含めて国連の行うPKOに我が国も参加しよう、貢献しようという、どうやったら参加できるのかという枠組みをこの法案を審議することによって決めていくわけでしょう。国会の審議を通して、国会の多数が得られて、そうして例えばこの法律案が成立をする。そうなれば、国会が審議して成立を仮にさせたとすれば、させた法律に基づいて、その枠内でやるわけですから、これは五原則の入った法律という大きな縛りがかかっておる。白紙委任では決してありません。しかも、副会の事前、事後の報告も義務づけられておるということですから。あるいは国会のチェックが最大のシビリアンコントロールだといいますが、これは先ほど触れました。事前承認というのは、この場合、状況によってはもろ刃のやいばになる場合があり得るということです。  五原則というのは当たり前だ、国連が行ってきた、行うPKFというのはみんなそうなんだ、当たり前のことなんだから、別に法制化したからといってそんなに大きな意味合いというのはないんじゃないですかという考え方もあることは事実です。しかし、例えば、これは国連局長に伺いたいのですが、UNIKOM、イラク・クウエート停戦監視団、これはどういうことです、我が国は参加できるんですか。この五原則、三原則に照らして参加できますか。御説明ください、簡単に。済みません。
  45. 丹波實

    丹波政府委員 いわゆるイラク・クウエート間のこれは停戦監視団でございますけれども、UNIKOMと呼ばれておりますが、UNIKOMは、紛争当事者間に停戦合意がありまして、かつ、UNIKOMの派遣につきまして紛争当事者、イラクとクウエートですが、その受け入れに同意しているという状況のもとでございますので、そういう意味では、一見日本が何ら問題なく参加できるようにも読み取れますけれども、国連側が公開の席上で説明しているところによりますと、このUNIKOMは若干伝統的な停戦監視団と性格を異にしておる。どこが違うかと申しますと、イラクは確かにUNIKOMの受け入れに同意はしているけれども、この同意をイラクが取り消しても安保理事会が必要と認める限りUNIKOMはイラク・クウエート間に存続する、こう言っておるわけです。ですから、この点は、日本がもし参加する場合には、相当三原則上いろいろ考えなければならない点があるのではないかというふうに考えます。
  46. 山田英介

    ○山田委員 要するに五原則は当たり前だということについて今具体的に確認したわけですが、国連が行う、あるいは行ってきたPKFも実はいろんなケースがあるわけです。憲章上明文規定があるわけじゃないんですから、いろいろな知恵を働かして、五大国の拒否権で国連の安全保障機能というのが作動しない、機能しない、そういう中で編み出されてきた知恵ですから、そして具体的にはその場その場の時代の要請状況要請を踏まえて編成されていくわけですから、実はいろんなPKFの形がある。だから参加の五原則、三原則というのが大きな意味を持つんだということを私は申し上げたいわけでございます。  質問を変えます。先に進ませていただきます。十二時までとりあえず私の前半の質問時間でありますので、どうぞ必要にして最小限な明確な御答弁総理以下政府側にお願いを申し上げたい、こう思います。  まず、この法案を見てまいりますと、私どもは五原則の中の四項目目、要するに停戦合意等が崩れた、そういう場合には、我が国から派遣したこの協力隊撤収をさせるんだ、するんだ、これは法案では外国への派遣の終了という形であらわされているように私には思えるのですが、これは撤収という意味と外国への派遣の終了というのは同義語であるのか。これはそうだ、そうじゃないということでお願いします。
  47. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 同じ意味でございます。
  48. 山田英介

    ○山田委員 自衛隊員国連平和協力隊員と併任とされている。給与と手当はどこが支給するのか、これが一点。  協力隊本部が保有することができるとしている小型武器及び実施計画に定める装備、これはそれぞれ新規に調達をするのかしないのか。  まずこの二点、必要にして最小限で答えてください。
  49. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  協力隊員の身分をあわせ有する自衛隊員に対しましては、法案十二条八項、十三条三項の規定によりまして防衛庁が給与を支給いたします。他方、手当につきましては、防衛庁の業務として国際平和協力業務に従事する自衛隊員の国際平和協力手当につきましては、九条四項、十三条二項の規定によりまして防衛庁、他方、個人参加自衛隊員国際平和協力業務に従事する場合、まあ停戦監視員等でございますけれども、十二条五項の規定によりまして国際平和協力本部が手当を支給する、そういう仕組みになっております。  それから、今、武器のことでございますが、実施計画に定めておられます武器のうち、海上保安庁または自衛隊部隊参加に係るものについては現有の装備を活用するということと考えられます。  一方、本部業務としてみずから平和協力業務を行う隊員につきましては、仮に装備が必要な場合には、基本的には新規に調達するというふうに考えられます。  なお、隊員の安全保持のために本部が保有することとなる小型武器、これは二十二条に書いてございますけれども、それは新規調達というふうに考えられます。
  50. 山田英介

    ○山田委員 総理にお伺いをいたします。  今の答弁をもとにいたしますと、これは部隊参加をする場合の平和協力手当というのは給与と別で、自衛隊が、防衛庁が支払う、こういうことでありますので、理屈の上では防衛費の総額がその分だけ上へ出るわけです。しかし出してはならないんだろう、ならないと私は思います。だからそれは努力すべきだ。経費節減相努めて、PKO協力法案、仮に成立をして、そして自衛隊に新たな任務が加わります、だから当然に経費はふえて予算はふやしてもらって当たり前なんだというそういう感覚では大変ですよ、これは。総理お答え願いたい。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御説のように、これを理由に防衛費を増額をしようという意図はございませんので、防衛庁内部において最大の努力をいたさせます。
  52. 山田英介

    ○山田委員 私は、人道的あるいは医療援助というものは一層充実をしなければならない、かように思います。まさにこのPKO法案の中にも人道的な国際援助活動というものが業務の一つとして規定をされておる、あるいはまた、同様に審議にかかっております国際緊急援助隊法、この中にも、自然災害に対する応援ですから人道的な医療面というものも当然含まれておる。私は、特に医療などという部分は極めて大事なところであるというふうに認識をいたします。  そこで、医療チームの派遣等が将来行われる場合には、そういう場合には重厚な体制を組んで臨む必要があると考えるわけであります。それからもう一つ具体的に、将来的にはこの医療援助というものを一層充実させるために医療船というようなものをやはり我が国が持って、それを使用して、一層重厚なそしてきめの細かい規模の大きなそういう形で、国際的な人道的な、そしてまた自然災害救援のための医療援助というものを私は検討すべきではないのか、こういうふうに思うわけでありますが、特に総理、この医療船を我が国が整備をして、そうして国際的に人道的に貢献をしていく、こういうことについて、どうぞ総理のお考えを聞かせていただきたい、こう思います。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の、医療援助、医療協力をするときに行き届いた重厚な設備を持っていくことは、これは当然のことであろうと思いますし、また、でき得る限り大規模な協力体制も組まなければならないと思います。そしてまた、いろいろな場合を想定しますと、資機材を輸送するその方法であるとかあるいは野営の医療施設を設置して運営することなども必要に応じては可能となるような対応をしていかなければなりません。  また、後半において御指摘の、医療船のようなものを建造する気はないかという御提言でございますが、十分にそのことは記憶にとどめて作業をさせていただきますが、政府といたしましては、何かの目的に多目的船のようなものをつくってそれをどのように運用していったらいいかということについて、今年度調査費を計上しまして、政府の中に多目的船検討委員会というものを設置をいたしました。これを設置したときに、私の念頭にもそういった医療施設も医療設備も組み込んで医療協力のときに使えるようになったらいいなという願い等もありましたので、この検討委員会にきょうの御議論等も伝えて、さらに検討を進めていきたいと考えます。
  54. 山田英介

    ○山田委員 次に、いわゆるこのPKO協力法案が、仮にですよ、成立をしたとして、この法律根拠として国連憲章第七章で定める国連軍及び多国籍軍へ我が国が参加をすることが可能になるのか、可能なのか、可能じゃないのか、可能じゃないとすれば全くその余地はないのか、これを確認させていただきます。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 仮になんて前提を置かれないで、どうぞ私どもは通していただきたいと思ってお願いしておるのでありますが、この法案が成立いたしますと、何度も申し上げておりますように原則に従ってきちっとするわけでありますから、この法案において多国籍軍とかその他のものに武力行使の目的を持って参加することは、これは考えられないことでございます。あり得ないことでございます。
  56. 山田英介

    ○山田委員 それでは、現憲法下において多国籍軍への自衛隊参加は許されないと私は考えますけれども、現憲法下において多国籍軍への参加はどうなりますか。
  57. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 多国籍軍が武力の行使を伴う共同軍事行動でありますから、現憲法においてはそれは直接参加はできません。
  58. 山田英介

    ○山田委員 もう一つ、国連憲章七章に定める国連軍、「いわゆる「国連軍」」の「いわゆる」がないやつ、憲章七章に定めるこの国連軍には現憲法下では我が国自衛隊参加できない、許されない、このように考えますけれども、総理の御答弁をお願いします。
  59. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  今の御質問は、国連憲章第七章に基づくいわゆる正規の国連軍についてのお尋ねであろうかと存じます。  それで、正規の国連軍に対しましての我が国の関与の仕方あるいは参加の態様、こういうものにつきましては、昨年の国会でもお答え申し上げたところでございますが、結果を明確にまだ申し上げる段階ではございません。  ただ、その考え方といたしまして、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、我が国憲法の解釈といたしまして、いわゆる海外派兵、もう細かくは申し上げませんが、海外派兵というものは許されないという見解を従来から申し上げてきているところでございます。また、集団的自衛権、これにつきましても憲法の上で許されないものであるということも申し上げてきているところでございます。あるいは平和維持隊、こういうものは何らの前提を設けることなく参加する、これについては憲法上許されないものがあろう、かように申し上げてきているところでございます。  こういう過去に申し上げてまいりましたいわゆる憲法九条に関します解釈あるいは適用の積み重ね、こういう点から申し上げますと、推論してまいりますと、その任務が我が国を防衛するものとは言えないものに自衛隊参加させるということについては憲法上の問題が残ろうかというふうにも思います。  ただ、一方で、国連憲章というものに基づきます国連軍というのはこれまで設けられたことがないわけでございます。そういう意味で、その実態が明らかでございません。あるいは、国連憲章の四十三条の特別協定というものが必要である、こういうふうに言われておりますが、四十三条もどのような特別協定を予定しているのか、これも実態が明らかでございません。そういう意味で、今後国際情勢の変化等も考えながら、将来、国連憲章の第七章、いわゆる正規の国連軍、これが編成が現実になる段階で、その現実の姿を踏まえました上で具体的な判断をすべきものと、かように考えております。
  60. 山田英介

    ○山田委員 要するに長官の今おっしゃったのは、その任務が、要するに七章国連軍、正規の国連軍任務が我が国を防衛するものとは言えおい、そういう国連憲章第七章に基づく国連軍自衛隊参加させることについては憲法上要するに問題がある、しかし、とこうなっているわけですね。  私は、我が国憲法が認めたその自衛の範囲を超えて、任務・目的を持つ七章の国連軍が将来結成された、それは自衛の範囲を超えた目的を持つものであるというふうに政府が認定した場合には、現憲法の枠組みのもとではこれは参加は許されない。問題があるがということじゃなくて許されない。認定すれば許されないということになるのでしょう。確認してください。
  61. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 ただいま申し上げましたように、従来の我が国憲法の解釈というものからそういう結論が出てまいります。  ただ、もう一方で、先ほど申し上げましたけれども、国連憲章に基づく国連軍というのが実態がどのようなものになるのか、これはまだ明らかでないわけでございますから、その実態を見なければ何とも判断いたしかねるという部分があることも御理解いただけると思います。
  62. 山田英介

    ○山田委員 私は、要するに私の質問にはそのとおりだとお答えになったと理解をしているのですが、仮に自衛の範囲を超えるそういう国連軍であるというふうにそのとき政府が認定をすれば、それは現憲法のもとでは出せないでしょう、許されないでしょう、それはそうですが、こうおっしゃっているわけですから、そこのところは一応私の質問にはお答えになったというふうに今は理解をして、次の問題へ進めさせていただきます。  輸送の問題なんですけれども、協力隊を、仮にこの法案が成立をして、そしてこの法律に基づいて派遣先国へ派遣をするというような事態になった場合に、協力隊派遣先国へ輸送する方法ですね。それから、じゃ、活動任務が終了しまして我が国へ帰ってくる、帰還をする場合の輸送、これは何をもって行うわけでございますか。  それから、一般の協力隊員とそれから自衛隊部隊参加をする、そういうケースがあります。一般隊員と同じように自衛隊部隊一緒になって行くのか、あるいは自衛隊部隊として参加するときは、例えば人道的な国際援助活動というのは一般隊員部隊自衛隊、こういうことがあるわけですから、その場合は自衛隊自衛隊機で行くのか、ここのところをちょっとわかりやすく、一言でお願いします、あと持ち時間十分ですから。
  63. 野村一成

    ○野村政府委員 簡単にお答え申し上げます。  国際平和協力業務実施するための派遣先国との間の協力隊員の輸送につきまして、具体的方法等は個別のケースごとに必要な調整を踏まえて実施計画の中で定めることになります。平和協力隊員を対象とします輸送には、法案二十条の規定に基づきまして本部長が海上保安庁長官または防衛庁長官に委託することはできないというふうになっております。これはごく限られた目的のためということになります。  同じ平和協力業務に従事する自衛隊部隊と一般の隊員がある場合に、別々に派遣先国に行くのかということに関しましても、業務内容派遣の規模なんかを勘案いたしまして、ケース・バイ・ケースで実施計画の中で適切に変えていく、そういう考えでございます。
  64. 山田英介

    ○山田委員 総理にお伺いしたいのですけれども、政府専用機を二機発注をいたしまして、既にその二機は完成をして、現在関係のメンバーがその飛行機を操縦する等のための訓練を受けておる。伺いますと、本年十一月の中下旬には二機とも我が国への引き渡しが行われる見通しである、間違いないのじゃないか、こういうふうに承知を濃いたしております。  そこで、このPKO法案と大きな関係が出てくるわけですが、この政府専用機というのはいろいろな使用目的というのがあるのですけれども、従来政府が考えておりました、そして表明してこられたことは、国際的な場面における邦人の輸送とかあるいは避難民、被災民の人道的なそういう輸送にも政府専用機は使いたい、こうはっきりおっしゃっているわけです。その政府専用機がもう十  一月の中下旬に日本に来る、引き渡される、現実に日本要員によって操縦されて日本に二機来るわけです。一方、いわゆる我が国の国際貢献の必要性というものが大きくクローズアップされて、そして本法案も出てきている、国会で今審議が始まった。その中には、「人道的な国際救援活動」、そして法三条の中に、被災民の捜索、救助あるいは帰還、このために我が国は協力するという具体的な一項目もちゃんと入っているわけです。したがいまして、私は、この政府専用機はこういうPKO活動のために幅広く有効に使われてしかるべきである、このように考えるわけですが、総理のお考えを端的に、また明確にお示しをいただきたい、こう思います。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ただいま御指摘のような状況で進行しております。検討委員会を置いて近く結論を出すわけでありますが、その中には国際平和協力業務とか人道的な救援活動に対する使用とかいうようなことも含めて検討をいたしております。
  66. 山田英介

    ○山田委員 もう一問重ねて総理、お尋ねをいたしますが、要するに検討委員会で今検討しておる、恐らくそれは使用の目的とかあるいは管理の問題とかいろいろ詰めの作業があるのだろうかと思いますけれども、現実に十一月中下旬引き渡し、日本へ二機来る。そして、まさに今PKO法案も審議に入った。こういう一つの大きな時の流れといいますか、タイミングといいますか、というものを考えた場合に、もう一言、要するに、じゃ、いつ結論が出るのですか。いつ出したいと総理は御見解をお持ちになっているのですか。御希望をお持ちになっているのですか。それはやはり総理の御見識で申し上げてみていただきたい、こう思うわけでございます。じゃ、いっ結論が出るのですか。出すのですか。
  67. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは十一月に引き渡しを受ける前に結論を出します。
  68. 山田英介

    ○山田委員 輸送に関連してあと何問か申し上げます。  法二十条、被災民と救援活動実施のための物品ですね、要するに法第二十条は「輸送の委託」という規定なんですけれども、ここでもって、輸送できるのは被災民と被災民のために役立てる救援のための物品の輸送を海上保安庁長官、防衛庁長官に対しまして委託できる、こういう法律の構成になっていますね。被災民とこの被災民のための物品に輸送は限定をいたしまして、その他の輸送はしないということでございますか。これは確認でございます。
  69. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のとおり、この二十条の「輸送の委託」というのは極めて限定された輸送でございまして、被災民の捜索、救出または帰還の援助の業務実施のためのもの、それから国際的な人道救援活動等の実施のための物品ということでございます。御指摘のとおりだと思います。
  70. 山田英介

    ○山田委員 例えば、今の御答弁でありますが、派遣先国で他国の部隊からその他国の兵員や武器弾薬などの輸送をお願いするよというふうな形で日本協力隊要請された、依頼された、こういう場合は、これは輸送するのですか、あるいはこの法律からいってできないということになっているのですか、武器弾薬の輸送、兵員。
  71. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申します。  この国際平和協力業務としての輸送は、基本的には国連または関係国際機関の活動実施についての決議または要請前提としていることでございますので、他国からの依頼のみを根拠にこの法案で輸送云々の問題はございません。
  72. 山田英介

    ○山田委員 それから、では、こういうケースはいかがでございましょうか。自衛隊派遣先国に国連平和維持活動あるいはまた人道的な国際援助活動ということで部隊として出る場合があります。その場合には、実施計画で装備が具体的に定められる。その装備の中には実は自衛隊機も当然入ってくるのだろうと私は想定をするわけでありますが、その場合に、派遣先国に携行をしていった装備の中の自衛隊機、これを使って、他国の部隊から、要するに兵員や武器や弾薬をあそこまでひとつ運んでくれないかと輸送を依頼をされた場合、要請された場合に、現地に装備として持ち込んだ自衛隊機を使ってその要請にこたえるのか、こたえないのか。この法律によればどうなっているのか。法律によってできない、やらないようになっているといえば、それは現場でもやらないということか。当然だと思うのですけれども、そこのところの確認をひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  73. 丹波實

    丹波政府委員 これは、先生の御質問はPKO活動の実態に関係があるので、私の方から御説明申し上げたいと思いますけれども、この種のPKO活動先におきますところの輸送につきましては「参加国がみずから手だてを講じて処理しておるというのが普通でございます。  それからもう一つは、このPKOの活動内容からいきまして、他国に依頼しなければならないほどの武器弾薬、そういったものの輸送が行われるということは通常ないわけでございまして、先生のような御質問日本側に提起されるという現実は私たちとしては想定しがたいというふうに考えております。
  74. 山田英介

    ○山田委員 午前中の私の質疑時間が終了いたしました。午後また一時から質問さしていただきますが、以上で終わります。
  75. 林義郎

    林委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  76. 林義郎

    林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山田英介君。
  77. 山田英介

    ○山田委員 午前中に引き続きまして質問を続けさせていただきます。  私は、午前中の質疑の中で、我が国が国際貢献を資金、物資のみならず、やはり人的なそういう貢献もしっかりとしていくことが今日的に極めて重要な問題になっている。必要性が強くなってきている。そういうところから三党合意というのがありまして、国連が主宰をするPKOすなわち国連平和維持活動に我が国も参加を通して国連協力をし、もって国際的な貢献をしっかりと果たしていこう。また、私どもが国連が行うPKOに参加するに当たりましては、基本的な部分で、政府の立法作業の過程でぜひ反映をさせていくべきだという注文あるいは要求を四条件、四つ強く申し上げてきたところでございます。  今日ここに、国会に上程をされまして、当委員会でこのいわゆるPKO法案の審議をすることが始まったわけでありますけれども、この法案の中に四条件、すなわちPKO参加原則の法制化、また国会への事前事後の政府に対する報告の義務づけ、そうしてまた、この派遣隊員の上限の定数、定員を定める、これも立法化すべきである。あるいはまた、今回のPKFに我が国の自衛隊参加する道を開くという、そういうことに当たりまして、憲法第九条を中心とする我が国の平和諸原則についての政府の従来の解釈、それとの整合性が一体どうなっているのかということにつきましての政府統一見解を私どもは要求をしてきたわけでございます。  基本的に、その四つの条件はほぼ満たされているのではないかと私は考えているわけでありますけれども、午前中の審議を通しまして、特に五原則の法制化、この法案の中にきちっと盛り込んだという、こういうことなどがPKFの変質を許さない。あるいはまた、それが私どもが念頭に置いておりますPKOというものとかけ離れたものになってはならない。そういう変質を許してはならないという、そういう意味におけるこの五原則の法制化等が最も強いシビリアンコントロールの機能を発揮するのであるということを私どもは申し上げてまいったところでございます。  したがいまして、私どもは、当委員会の審議を通しましてこの統一見解の整合性、これがあるのかないのかということを検証をする、また、引き続き法案の中身について問題がないのか、政府の拡大解釈やあるいはまた恣意的な判断をする、そういうような余地というものがないのかどうかということを逐条的にその中身というものをしっかりとこれまた検証をしていかなければならない、こういうことでございまして、したがいまして、まず私は、午後の質問の最初に、今月の十九日に法案上程とともに出されました官房長官談話というものが、私たちが四条件の一つとして要求をいたしました、PKFへの自衛隊参加が従来の憲法解釈、政府の見解と整合性があるのかどうかということにつきましての政府統一見解、私どもが要求した政府統一見解そのものに当たるのかどうか、まずここから御答弁をいただきたいと思います。
  78. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  この九月の十九日に内閣官房長官談話として出しました項目の中の特に四番目の項目、これが今御指摘のいわゆる憲法九条との関係と申しますか、そういう関係の整合性のとれたものであるという見解でございます。
  79. 山田英介

    ○山田委員 具体的にどう整合性がとれているのか、私どももしっかりとこれを見きわめていかなければなりません。したがいまして、幾つかの観点から法制局長官また総理にお伺いをいたしますけれども、どうぞひとつ簡潔にして明快に、多くの方々がテレビを通してこの審議を見詰め、見守っているわけでありますので、わかりやすく、しかも簡潔に御答弁をいただければ、見解をお示しいただければと、かように思います。  そこでまず第一点、昭和五十五年鈴木内閣答弁書、それから昨年、政府提案に係りました国連平和協力法案でPKFへの参加協力を除いたわけでありますが、そのときの理由、平成二年、昨年十一月六日の我が党の渡部一郎代議士へ法制局長官の示された見解など、これは共通しておりますことは目的・任務武力行使を伴ういわゆる国連軍への自衛隊参加は憲法上許されないという見解と今回のこのPKFに我が国自衛隊参加することが憲法上問題ないとしたここのところの整合性について政府はどのようなお立場であられるのか、どのような見解を持ってこうなされたのか、簡潔、明快にお答えをいただきたいと思います。     〔委員長退席、柿澤委員長代理着席〕
  80. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 今一連の過去の答弁書ないし答弁の御指摘がございました。基本的なものといたしましては昭和五十五年の政府答弁書があると存じますので、これを中心に御説明申し上げたいと存じます。  それで、この昭和五十五年の答弁書で言っております基本命題というのは、憲法九条との目から見てどういうことになるか、こういうことであろうと思いますが、簡単に申し上げますと、この答弁書におきましては、国連がその平和維持活動として編成してきた平和維持隊などの組織については、途中をちょっと省略いたしますが、その目的・任務武力行使を伴うものであれば、我が国がこれに参加することは憲法上許されないと解している、こういうことでございます。  この政府見解の趣旨といたしますところは、冒頭申し上げましたように、憲法第九条、これとの関連を問題にしているわけでございまして、平和維持隊の目的・任務武力行使を伴う場合には、通常これに参加した我が国自身も武力行使をすることが予定される、あるいは我が国自身が武力行使をしないとしても、平和維持隊が武力行使をすれば、その平和維持隊への参加を通じてその武力行使と一体化することになると評価される、そういう我が国が武力行使をするという評価を受けるからそのような参加は憲法上許されないのだ、かように考えているところでございます。  それに対しまして、今回の法案におきましては、一つの、一つのといいますか、大きく分けて二つ前提を設けております。一つは、武器の使用は我が国要員生命または身体の防衛のために必要な最小限のものに限られる、これは法案の二十四条に明示してあるところでございます。それからまた、紛争当事者間の停戦合意が破れるなどして我が国が平和維持隊に参加して活動する前提が崩れる、短期間にこのような前提が回復しない場合には、我が国から参加した部隊派遣を終了させることなど、これはこの法案におきましては六条七項で「派遣の終了」を言っておりますし、さらに八条一項におきましては「業務中断」、こういったことも書きまして、そういう前提を設けて行います場合には、仮に我が国が参加している平和維持隊の中の他国の者が武力行使をするようなことがあるとしても、我が国としてまずみずから武力行使はしない、それから一方、平和維持隊の行う武力行使と一体化もしない、こういうことでございますから、我が国が武力行使をする、こういうような評価を受けることはないと存じます。  したがいまして、今回の法案に基づきましてそういう形で平和維持隊へ参加いたしますことは憲法に違反するものではない。先ほど申し上げましたような憲法第九条で禁じております武力の行使、これに我が国が加わるといいますか、我が国が行う、こういうふうなことにはならない、したがって憲法に違反するものではない。かように考えております。  なお、冒頭申し上げました政府見解との関係でございますけれども、これは、冒頭の政府見解は格別の前提を設けませんで、平和維持隊に参加する一般的な場合についての解釈を示したものでございます。それに対しまして、今るる申し上げましたように、特に前提を設けまして、二つの大きな前提を設けまして平和維持隊に参加する場合、これについては、今回のことで憲法に違反するものではないということで、先ほどの、申し上げました政府見解、これとも整合性を有するものである。今申し上げましたことをいわばつづめましてといいますか、そういう形で書いてございますのが先ほど申し上げました官房長官談話でございます。
  81. 山田英介

    ○山田委員 武器の使用はセルフディフェンス、自己の生命、身体の防護に厳しく限定をする、必要最小限。それから停戦合意等が崩れた、そういうような場合でも、例えばPKFが自衛の範囲内と、国連ではその場合の武器使用は含めておりますけれども、しかし、我が国憲法の九条の解釈から考えれば武力行使に当たりかねないということで、それは除いて、セルフディフェンスに限った。もう一つは、また、そういう事態が起きたときには引き揚げる、撤収をする、こういうことが一つの前提だと長官は今おっしゃいました。ポイント部分でございます。  それはそれで伺っておきますが、ただ、そういう御答弁ですと、まだわからないのです、私には。というのは、五十五年答弁書の中にある「いわゆる「国連軍」」、あるいは俗称国連軍とよく長官使われますけれども、これは何なんですか。要するにPKFそのものなんだ、いや、そうじゃなくてほかのも含まれるんだ、どっちなんですか。まず、話を整理するために確認させていただきますが、この五十五年答弁書では「いわゆる「国連軍」」と「いわゆる」つきなんですね、この「いわゆる」というのは何なんですか、俗称とかとよく言われますけれども、これはPKFだ、こういうことなんですか。――済みません、言い方を変えさせていただきます。  要するに、憲章七章で規定する国連軍、それから去年私たちが見てそして聞いたあの多国籍軍、それとPKF、三つ含まれるのですか、それともPKFのことなんですか、「いわゆる「国連軍」」と言った場合には。あるいは俗称の国連軍ですがと長官みずからおっしゃるじゃないですか、よく。
  82. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 ただいま手元にちょっと、すぐに答弁書全体が出てまいりませんので恐縮でございました。いわゆるここで言う「国連軍」というのは、PKFのみならず、他の停戦監視団あるいはその他の任務を持ちましたもの、こういうことでございまして、「いわゆる「国連軍」」、ここの先ほどちょっと読むのを飛ばしましたけれども、その部分におきまして書いてございますのも、「個々の事例によりその目的・任務が異なるので、それへの参加の可否を一律に論ずることはできないがこという部分がございまして、そのように多様なものを含んで、それを「いわゆる「国連軍」」と指しているわけでございます。
  83. 山田英介

    ○山田委員 憲章七章で規定しているいわゆる国連軍、それから多国籍軍、これはこの中には入っておらない、こういうふうに受けとめておきます。  じゃ、要するにその総称として私はPKF、こう統一して質問をさしてもらいますが、今の五十五年答弁書ですけれども、これは専ら当該PKFがその性格、すなわちそのPKFが目的・任務において武力行使を伴うものか、伴わないものか、伴えば、そのPKFの性格それのみによって我が国自衛隊参加できる、できないというのが決まるわけである。したがって、当該PKFの性格が任務・目的として武力行使を伴う、例えばコンゴ国連軍というようなものがあるわけですね、現実に。そういうものにはそのPKFの性格がそういうものであるということだけで我が国自衛隊というのは参加できない、こうなっておるわけですね。  ですから、我が国自衛隊武力行使をします。あるいはしません、しませんと決めたから、じゃ、武力行使を伴うPKF参加できるかといえば、我が国が幾ら武力行使をしませんと決めてもそれは参加できない、こういう意味ですよ。これはもう昨年までの長官と我が党の市川書記長初め、いろいろな場面で長官が答弁をされてきた、場合によっては総理も認められた、こういう経緯がずっとあるわけです。  それでまた、ことしの八月の二十二日、我が党の草川昭三代議士の質問へ、長官は同様に見解を示されておる。武力行使を伴うPKFへの参加であっても、自衛隊がみずから武力行使しない、かつ、当該PKF武力行使と一体化しなければ合憲である、先ほど答弁がありましたけれども、日本武力行使をするとの評価を受けることはない、こうされた。ですから、自衛隊武力行使を伴わないんだ、こう決めていたとしても、目的・任務武力行使を伴う、それがPKFであって、そのPKF参加するということは、幾ら自衛隊武力行使しないと決めて行ったってそれは憲法上許されない、こういうことが明確にされているわけです。そのことと、今回要するにPKF自衛隊参加できるようにしたということの整合性はどういうことなんですか。そこをちょっとお尋ねいたします。
  84. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 ただいまの御質問の中で、例えばコンゴ型の国連軍、平和維持隊といいますか、こういうものはいわば強制的な手段によって目的を達成しようとするものでございます。そういう意味で武力行使自体を任務とするものである、かようにも評価できるものでございますから、そういう意味で、我が国がこういった組織に参加することは、いわゆるコンゴ型のようなものに参加することは、憲法上許されないことであろうと思います。  それから、そのほかの平和維持隊、これは先ほど申し上げましたように、いろいろとその形態が多様でございますけれども、そういうものにつきましての今の私どもの考え方あるいは従来から申し上げている考え方、こういうことにつきましては、先ほどお答えしたことの繰り返しになりますが、一般的に、武力行使を伴うものについて何らの前提条件もつけずにそこに参加いたします場合には、我が国自身が武力行使を行う、あるいは我が国自身が行わなくてもそういうものと一体化して、あたかも我が国が武力行使を行うものと同様の評価を受ける、かような考え方で、前提を設けないで参りました場合にそのようなことになります。今回の場合にはそこに明確な二つ前提をつけまして、そのようなことであれば、憲法九条が禁止しております武力の行使、このようなものを我が国が行う、あるいは他国が行うものと一体となって我が国が行ったという評価を受ける、かようなことはないということでございます。
  85. 山田英介

    ○山田委員 では、こういう角度から長官またお尋ねしますけれども、ですから僕が今申し上げたのは、五十五年答弁書を初め、どういうことかというと、要するに参加しようとするPKF任務・目的が武力行使を伴う、あるいはそれが予定されている、あるいはその可能性があるということになれば、我が国自衛隊が要するに武力行使をしないとかいうふうに決めて、だから参加するんですといっても、それは実はできないんだ。ところが、長官は、二つ前提条件を置いたからできるんだと今答弁なさるわけですね。その二つの条件というのは、セルフディフェンスのための武器使用の限定、それ以外には使わないんだという、武力行使をしないんだというこういう規定、それから、武力行使というような事態がいろいろな条件が崩れて発展をして至った場合には、その局面では我が国は業務を一時中断する、あるいは短期間で回復しない場合には日本へ引き揚げる、外国への派遣の終了、撤収をする、こういう二つ前提条件をつけたんだ、こういうふうに今おっしゃるわけですね。  それじゃまだわからないんですよ。要するにそのことは、二つの条件をつけました、そしてそれを法律に明記をしました。それは確かに、我が国が武力行使を本当にしないんだという決意、あるいは本当にしないということを法律でしっかりと担保したというこの意味は大きいですよ。大きいですけれども、これは整合性の観点からいきますと、長官いいですか、整合性という観点からいけば、その二つ前提条件を法律できちっと明確にして、我が国が本当に武力行使をしないんだというその担保には確かになった、これは。だからといって、今までの長官のあるいは政府の答弁、あるいは見解というのは、いいですか、それは一般的にとおっしゃるけれども、一般的にとおっしゃってもそこのところは要するにクリアしていないのです。というのは、繰り返すようでありますけれども、当該PKFがその任務・目的に武力行使を伴う、あるいは予定されている、その可能性があるということになれば、専らそのPKFの性格によって我が国の自衛隊参加できないんだ、要するにこういう理論構成になっているわけでしょう、見解構成がなされているわけですよ。担保はした、武力行使をしないということを要するに法律二つの事項を盛り込んだ。五項目の四項と五項ですよ。それだけじゃわからない。要するに、そこで、PKO参加原則の一、二、三項というのが実は重要で、今日までの政府の憲法解釈と整合性を持たせる上で決定的な意味合いを持つのが第一項、第二項、要するに停戦合意がなければPKFは出ていけないんです。それを法律に書きました。  いいですか長官、第二項、紛争当事国がすべて国連が主宰する、そして日本参加する場合には、日本も含めてすべての紛争当事国、当事者が、もういつまでも戦争やっていられません、争ってはいられない、平和やそして経済や民生安定のために我が国も取り組まなければならない時期だ、どうぞひとつPKOおいでください、回復された、停戦合意されたこの平和をどうか守ってください、そういう受け入れ国の同意がなければ幾ら出ていきたくたっていけない。出ていけば法律違反ですよ。法律違反、出ていけない。それから、それは一万の紛争当事者、一万の紛争当事国、いずれかに偏ったそういうPKOであってはならない、おくまでも中立公正でなければならないという、このいわゆる参加原則の第一項、第二項、第三項を法律の中にしっかりと組み込んだのだ、このことが要するに従来の政府の憲法解釈との整合性という部分においては決定的な要素じゃないんですか。それをわかりやすく説明してもらいたいんですよ、どうですか。
  86. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 どうも大変失礼いたしました。一ただいま申し上げました二つ前提と申し上げますうちのいわばその撤収の方だけを申し上げましたけれども、撤収の方のもう一つ前の条件といたしまして、先ほど委員指摘のように三つの条件があるわけでございます。まず第一に、停戦合意紛争当事者の間で成立している、これは三条で歯どめをつけて、そのようなものというふうに定義をいたしております。それからさらに、紛争当事者あるいはその地域が当該平和維持隊の活動あるいはそこへの我が国の参加、このようなものに同意している、これも法律の三条の部分あるいは六条の部分におきまして書きました。そういうものと、さらに中立的な立場を遵守する、これも三条で書きました。そういうものとして平和維持隊の参加いたします「国際連合平和維持活動」あるいは「人道的な国際救援活動」というものを定義いたしまして、それを前提としているということをいわば私の答弁の中で何か当然の前提のように一つ置いてございますけれども、そういう意味で、それが崩れたようなときに先ほどの第二の条件が出てくる、こういうふうなことでございます。
  87. 山田英介

    ○山田委員 PKFに対する我が国自衛隊を含めた参加による国際協力、貢献ということが従来の憲法九条を中心とする政府の答弁あるいは見解、解釈と整合性がありやなしやということにつきましては、この法案につきましては極めて重要な法案であり、慎重にかつ濃密な審議をする必要があるということで私も認識をいたしておりますので、この後我が党の委員もなお引き続き質問があり、あるいは検証さしていただくということになりますので、従来の政府の見解と今回のこの法案に係る整合性の問題につきましてはとりあえずここまでにさしていただきます。  次に、午前中に引き続きまして法案の中身につきまして質問をさせていただきたいと思いますが、武器の携行とか武器の使用とかに関する部分でございます。  まず、この法案第二十二条「政令で定める種類の小型武器」、これは、本部が小型武器を保有できる。そして、必要があれば派遣先国で隊員任務につくときに小型武器を隊員に貸与する。その武器というのはセルフディフェンス、自己の生命、身体が危機にさらされたとき、必要やむを得ず正当防衛、緊急避難、その場合に厳しく限定をして使用することができる。こういうこの「政令で定める種類の小型武器」というのはどういう種類の武器になりますのか、政令と言われておりますが、国民の最も知りたい、あるいは明らかにされたいという部分でありますので、まだ政令ができてないから言えませんなんていう答弁じゃなくて、明確に総理お答えをしていただきたい。
  88. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、二十二条によりまして小型武器を貸与することができるということになっておりまして、具体的にはけん銃及び小銃を想定しております。また、政令におきましては型式についても定めることとしておきまして、さらに具体的な種類について申し上げますと、警察、海上保安庁または自衛隊が現に所持しております種類のけん銃及び小銃の中から選択して政令に書くということを考えております。
  89. 山田英介

    ○山田委員 是非はともかくとして、明確にけん銃、小銃と、こう答弁が出たわけです。  それから装備なんですけれども、法案の第六条四項、実施計画に定める自衛隊部隊等が協力業務を行う場合の装備は、国連事務総長が必要と認める限度で定める、こういうことになっております。  私が伺いたいのは、どの程度の装備となるのかできるだけ具体的に今示していただきたい、こういうことでございますけれども、その前に、実施計画で定める装備の上限というのは幾つかの網がかぶっているのですね。事務総長が必要と認める範囲内というのが一つ。それから、法案第二条第二項の規定の趣旨を踏まえて、これは何かというと、武力による威嚇、武力の行使に当たらない、そういう趣旨を踏まえて装備というのは決められるんだ、これが二つ目。法案第三条第一号及び第二号の規定の趣旨、これはいわゆる定義のところでありまして、国連の行う平和維持活動あるいは人道的な国際的な救援活動という業務の性質に照らして妥当な範囲内、これが三つ目。あえて言えば四つ目は、この章の規定を実施するのに必要な範囲内で定める。まあ挙げれば四つ私には網がかぶさっていると思われるのです。この実施計画に定める装備の水準というのは。ただそれも、しかし、四つかぶさっているけれどもいずれも具体的ではない。いずれも抽象的といえば抽象的な要するに縛り方と見る方が多いわけです。また、できれば私も、成立すればこの法律の枠内、この縛りの中で実施計画を定めるわけですから、国連が主宰をする、中立そして非強制、人道主義というところで行われるPKOですから、そういうことからすれば、おのずから国連事務総長の必要と認める範囲内ということでおおよそ見当がつぐといえばつくのですけれども、しかし、それを一から十まで固定的に、これとこれとこれしか携行しませんというふうにはっきりさせるということも、PKOの種類というのは、そのときどき、その地域の情勢、そういう五原則を踏まえたとしてもいろいろなばらつきがあるから、あらかじめ固定、確定をするということはこれまたなかなか困難なことであろうということも踏まえて、国民に、実施計画で定める装備、この具体的な水準というものについて、いま少し具体的に御説明いただけないものでしょうか。
  90. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  自衛隊部隊等が携行する武器、それは実施計画で定めるわけでございますが、そのとき、ただいま委員指摘のとおり、事務総長が必要と認める限度であるとか、あるいは、そもそも武力による威嚇または武力の行使に当たらないとか、三あるいは四とおっしゃいましたけれども、そういった制約があることは当然でございます。  その中でどういうものを具体的に定めることが想定されるかということでございますけれども、これは何とも申し上げられませんけれども、これまでの平和維持隊に参加した各国の例なんかから見ますと通例、けん銃、小銃、機関銃そして装甲車というようなものでございます。そして、従来の例から見まして、我が国が参加する場合にも通例そういったもので対応できるのじゃないかと思っております。  それでなお、実施計画で定めますときには、そういったものにつきまして、例えばそれが小銃なら小銃で、それは何丁であるとか、そういうことが書かれると思いますし、またこれは、実施計画で定めるのは武器だけじゃございません。装備全体についてでございますから、その他例えば運搬用のジープなどを携行するとしたらそういったものの数も記入することになろうかと思います。  それから、さらに申しますならば、部隊派遣国まで参りますために自衛隊の持っております輸送機だとかあるいは艦艇を使用することになるとすれば、そういった装備についても実施計画に記載することになるのじゃないか、数量も含めてでございますね、そういうことでございます。
  91. 山田英介

    ○山田委員 長官、早口なものですから、大事なところをちょっと私確認できなかったのですが、装備イコール武器ではない。それはジープだとか輸送用のトラックとかあるいは装甲車とおっしゃったように聞こえましたけれども、それはまた、武器といえば武器、装備といえば装備、こういうちょっと立て分けがつきにくいような部分もある。それから、装備士言った場合にはイコール武器ではない。そういうものと、また、現実にセルフディフェンス用のいわゆる武器というものも含まれた総体として装備という概念がある。その場合に、具体的に小銃とかなんとかと今長官おっしゃったと思うのですが、そこのところだけちょっともう一回言ってくれますか。
  92. 池田行彦

    ○池田国務大臣 これまでの例などにかんがみまして、通例携行いたしますのはけん銃、小銃、機関銃そして装甲車、これは人員輸送用の装甲車という場合が多うございますけれども、そういったものでございます。そして、我が国が参加する場合にもそういったもので対応できるのではないか、このように考えております。
  93. 山田英介

    ○山田委員 我が国が参加する場合も今例示をされましたその範囲内で対応できるのではないか、防衛庁長官答弁であります。  次に、法第二十四条、「武器の使用」のところで伺いますが、隊員が「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には」武器を使用できる、こういうふうになっております。この場合の隊員が自己または自己とともに現場に所在する他の隊員生命、身体の防御、このために武器を使用するということ自体は、我が国憲法第九条との関係でどのように政府は整理をされているのか、お聞かせをいただきます。
  94. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この二十四条で武器の使用として書いてございます、今先生お読みになりました「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員生命又は身体を防衛するためやむを得ない」限度においてしか使えないということ、これはまさに参加の基本方針の第五原則に照らしましてこういうふうな武器の使用の規定を設けたわけでございまして、この法案におきましては、この二十四条における武器使用、これは業務上の法令行為ないし業務上の正当行為としての武器の使用について規定したものでございます。
  95. 山田英介

    ○山田委員 いや、私がお伺いしたかったことは、憲法九条では武力の行使は我が国自衛のためその目的を超えて行使はできない、武力行使はできないと、こうなっているわけですね。ですから、PKF隊員として参加した、そういう隊員の方々が、自己の身体、生命を守るために必要やむを得ざる措置として正当防衛、緊急避難的に武器を使用することは、憲法九条で規定された武力行使との関係でこれは問題があるのですか、ないのですかと、こう伺っているわけです。
  96. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 憲法九条一項で禁止されております武力の行使、これは一般には我が国の物的、人的な組織隊によります国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為、こういうふうに定義づけられているところでございます。ただいまの御指摘の法案二十四条におきます武器の使用といいますのは、例えば、正当防衛とか緊急避難に準ずるようなそういう場合におきまして、侵害に対して生命、身体を防衛する、こういうことでございます。そういうものにつきましては、いわゆる憲法九条一項で禁止された武力の行使、先ほど定義的に申し上げましたものに当たるものではない、かように考えております。
  97. 山田英介

    ○山田委員 この後遠藤乙彦代議士が関連で質問に立ちますので、私は最後に一言。  先日、我が党の矢追副委員長がソ連、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアなど七カ国の在日大使館の関係の皆さんと懇談をする機会がありまして、そこでPKOの話題になりました。そのときに、こういうソ連初め東欧諸国の皆さんは、PKOに参加することは、その国が世界平和を愛好する国であり、世界平和を維持することに懸命であることを意味する、日本がPKOに参加することは、日本が平和を愛好していることを世界に印象づけることになるだろう、こういう御発言もございました。我が国は今日世界の平和と安定の中で自由に貿易をすることができ、主としてその理由によって大きな経済的な発展を遂げてまいりました。私たち日本の国際社会に果たすべき役割はいや増して大きくなっていると存じます。したがいまして、国連が行うPKO、この参加協力を通して国際社会に我が国が資金、物資の雨ならず人間の、世界の国々のそういう人々とともに汗を流し貢献をしていけるという、そういう国際貢献というものが極めて大事だと私は認識をいたしております。このPKO法案につきましていろいろな角度からしっかりとした審議を積み重ねまして、そうして我が国がいかに国際貢献を果たしていくか、一つの国民的なコンセンサスができれば極めて幸いなことだ、かように私の気持ちを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  98. 柿澤弘治

    柿澤委員長代理 この際、遠藤乙彦君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。遠藤乙彦君。
  99. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 山田代議士に引き続きまして質問をさせていただきます。  このPKO法案、これは大変歴史的な法案であると私は感じております。特に、冷戦の終わりという世界情勢の枠組みの激変、また我が国の近年における目覚ましい地位の向上といった状況を踏まえまして、一国平和主義を乗り越え、我が国が世界の平和にどう貢献するか、特に憲法の原則を踏まえながらどう貢献するかということに一歩踏み出す大きな歴史的な法案であると感じております。  特に、公明党がキャスチングボートを握っていることもあって、我が党の決断が選択を決めるということでございまして、大変重い責任を感じながらこのPKO問題に取り組んできたわけでございまして、先ほども山田委員から申し上げましたように、我が党としても、合同部会を設置をして、十回以上にわたってこれを討議をし、また全議員でも討議をし、また日本全国にわたってこういうPKO問題に限った意見集約、対話の場を設けてきたわけでございまして、そういっだことを踏まえて御質問をさせていただきたいと思っております。  まず、我々は、この問題を異例と言えるほどの時間とエネルギーをかけて検討をしてまいりました。その結果としては、やはりこのPKOというのは非常に立派なものである、大変崇高な任務であるという結論に達したわけでございます。特に、当初はこのPKOというものを、我々も誤解があり、あるいはわからない面もあったわけですけれども、十分に勉強し、また現地を視察し、またいろいろな意見を聞く中で認識が進んでまいりまして、このPKOというものが本当に本来の国連の理想、平和主義あるいは人道主義というものを強く体現するものである、また、この日本国憲法の精神、すなわち、戦争を放棄し、また平和的方法によって平和を維持する、そういう日本国憲法の精神にも強く合致するものであって、むしろ我が国としてはこの際このPKOに積極的に参加し、これを推進していくことこそがこれからの我が国にとって大事なことであろう、そのような結論に達した次第でございます。  しかしながら、このPKO法案、非常に憲法との関連もございます。極めて厳密に精査をし、さまざまな問題点、歯どめを十分に検討した上でないと結論を出せないということでございまして、その点につきましては、この国会の場におきまして十分にこれからも審議をさしていただくつもりでございます。  もう一点ありますのは、実際、私どもも何人か手分けをしまして、日本各地に参りまして対話の場を持ってまいりました。特に、国民の方々と直接接触をして、このPKOの問題につきまして討議をしましたが、率直に言って、国民の方々の間には、特にこのPKO、なかんずくPKFに関して、極めて疑問といいますか不安といいますか、懸念が渦巻いているというのが率直なところでございます。特に、十分な情報提供がないということが大きな問題点かもしれませんけれども、そういったことで、政府が現在考えていること、この法案がなし遂げようとしていることと、それから国民の受けとめ方との間に大変大きなギャップがある、これは私は非常に深刻に実はとらえて帰ってまいりましたわけでございまして、どうやってこのギャップを解消していくか、国民の方々に十分な理解を持っていただくかということがこの国会の重要な役割であると私は感じております。  それで、なぜこういった国民の方々のとらえ方と政府の考え方あるいは法案の中身と大きなギャップがあるのかということを考えますと、いろいろ理由はあると思いますけれども、私は三つほどあるんではないかと思っております。  まず第一点が、何よりも、十分な情報提供、これが国民になされていないということでございます。このPKOにつきまして、十分な、わかりやすい、正確な情報が極めて国民の間に不足をしておる。したがって、国民としては先入観あるいは誤解等に基づいた認識も非常にあるわけでございまして、ぜひその点、まず十分な情報提供ということが大事じゃないかと考えております。  それから第二点として、このPKOという概念自体が非常にわかりにくい、これも事実でございます。総理もよく力説をされておりますが、PKOというものが、軍隊であって軍隊ではないとか、あるいは敵を持たない軍隊であるとか、あるいは平和の戦士であるとか、そういった形容でこのPKOの概念が言われておりますけれども、こういったこと自体極めてユニークな発想であり、私自身としてはこれは卓抜な発想であると評価をしておりますけれども、伝統的な軍隊の概念、あるいは軍とか軍事組織ということから連想されるようなものとは極めて異なった、むしろ百八十度異なった逆転の発想であって、この点が極めてわかりづらいということも事実でございまして、この点をやはり十分に説明、説得をしていくことが必要ではないかと感じておる次第でございます。  それから第三点として、もう一つ、国民の側に特に感情的な反発を巻き起こしている背景には、昨年秋の臨時国会におきまして国連平和協力法案という形で提案がなされました。これが実は、二つの全く異質のものを同時に含めてそれを進めようとした。特に、多国籍軍という本来武力行使前提としたところへ自衛隊を、後方支援の形であれ何とか参加させたい、そういったものと、他方、このPKOの部分と、二つの全く異質の、いわば水と油のごとき存在のものが一緒に混同されて、しかも何とか自衛隊を多国籍軍に参加協力させたいという、そういった政府のごり押しの姿勢があったことによって、せっかくこのPKOというすばらしい、本来、国連の理想を体現をした、そういったものまでが疑惑の目で見られる、これはやはり政府の中に相当な責任があるものと私は感じております。  こういったことを踏まえまして、もう一度この国会におきまして虚心坦懐にこのPKOの問題というものを議論していくべきであろうと私は感じております。  そこで、私は、余り専門的な議論には入ることなく、むしろ、私自身が実際に対話をしてきた国民の方々の素朴なあるいは率直な意見、疑問というものを踏まえまして、それを代弁するつもりで質問をさしていただきたいと思っております。  まず第一点、最も国民の方々に強い疑念があるのは、何といってもPKOの本質というものがまだ十分理解できないということです。特に、平和維持軍とか、非常に軍、軍隊を連想させる名前がついておる、またそういったことによってすぐドンパチやるんではないか、多国籍軍と同じようなものではないか、あるいはまた軍隊もどきのものではないか、そういう印象が国民の間に強くあるということ、これは事実なんです。とともに、そこに自衛隊参加することによって、またいつか来た道を行くんではないか、率直に言ってこういう疑念が非常に強い。また、特に女性の立場から見ると、このPKO法案が成立することによって、いずれ夫や子供をまた戦場に送ることになるのではないか、こういった質問が極めて多数出て。きたわけでございまして、まずこういった国民の多数の方々の疑念、質問に対して、総理はわかりやすく明快にひとつお答えをいただきたいと思います。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現在御審議をお願いしております、いわゆる国連平和維持活動に対する我が国の参加の対応とその準備の内容でありますけれども、御指摘のように、従来の概念のように、戦場へ行くとか武力の行使を行おうとかあるいは強制力によって何か事をしようとかいうもので全くないことは、委員質問の形でお述べになりましたそのとおりだと思います。  同時にまた、せっかく世界が平和に向かって大きく流れを変えてきておる、東西の対決、対立の時代が終わって、冷戦時代の発想を乗り越えて、皆が力を合わせて国連を中心にして平和と繁栄を望んでいこうという考え方は、特に最近のサミットにおいても各国首脳共通した意見でございましたし、それよりも、国連というものができ上がってから今日までいろいろなことを行ってまいりましたけれども、その中で、国連憲章には具体的に書いてなかったけれども、そのときどきの必要に応じて決議を通じて皆が努力をして行ってきた平和維持活動というものは、平和のためにいかに新しい、そして平和に向かっての努力であったかということは、もう国際社会の高い評価が定着をして、ノーベル平和賞まで受けたということは御指摘のとおりでございます。  私も、したがいまして、今回の場合は、国連憲章の前文にも、善良な隣人として互いに平和に生活をし、平和と安全を維持するために、我らの力を合わせて国際の平和及び安全を維持するということが高らかにうたわれておりますし、我が国の憲法の前文にも、お触れになりましたように、我々は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると憲法にも書いてございます。こういった平和主義の理念と国際協調主義の中で、日本も許される枠内においてでき得る限り積極的に世界の平和構築のために協力をしていかなければならない、このように考えておる次第でございます。
  101. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 基本的な理解につきましては総理と私も同じでございますけれども、このPKOが、特にPKFはノーベル平和賞を受賞しております。恐らくこの本質に着目すれば、このPKOの活動の本質自体は、むしろ赤十字の活動とか難民救済の活動と同列に論ずべきものであろうと私は感じております。  そこで、このPKOに実際に参加をしておる国々は、どちらかというと、北欧とかカナダであるとか、いわゆる平和、中立志向の強い国々であって、いわゆる五大国はほとんど関係がない、そういったこともあるわけでございまして、むしろ我が国がPKOに積極的に参加をしていくことが軍事大国にはならないという我が国の決意の一一つの表明の姿でもある、そのようにとらえていいのか、また、総理としてはどのように考えておられるのか、この点につきまして一言お願いしたいと思っています。
  102. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 PKOというものが、国連でいろいろな段階を経て行われてきました。その間のいろいろな議論とか、あるいは定着しつつある考え方を整理をいたしますと、申立て非強制であるということが非常に強くうたわれておりますし、大前提として、国連の決議に従い、紛争当事者のすべての合意があり、そして平和維持活動が行われるということでありますから、一国だけで行うよりも、なるべく国際的な多数の国が相集まって、しかも中立ということを強調するからには、きょうまでの間はややもすると五大強国の参加が少なかったというのはそういったことが背景にあったんだろうと私は思っておりますし、また、北欧とか中立を主張する国々の参加によってきょうまで行われてきた。日本立場も、過去の歴史の厳しい反省に立って、二度と再び侵略戦争をしてはいけないという厳しい反省に立って、そして日本は片隅の平和国家であったのが、やはり世界のために、これだけ日本という国も世界の中で地位を得たわけでありますから、その大前提であった世界の平和の秩序、自由の秩序の枠組み、これをきちっと守るために日本の果たし得る役割は積極的に分担すべきである、こういうことでPKF活動にも参加しようと決意をしたわけでありますから、それに参加をしておるということは、冒頭申し上げた国連憲章の大きな願い、大きな趣旨、それに従っている日本国憲法の理念に従って日本も平和維持のために積極的に汗を流すということを世界の人々も認めていただけるのではないか、私はそう考えております。
  103. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 このPKOに関するいわば啓発、広報の問題でございますが、私は、実際に国民の方と対話をして極めて不足をしておると感じております。すべての問題について情報提供せよとは言いませんけれども、こういったPKOのような歴史的な重要な問題については、もっと野党議員を含めた国会議員あるいは有識者、さらに国民のレベルまで十分な正確な情報提供をすべきであると私は強く感じておりまして、その点につきまして極めて政府の側において努力が欠けている、特に、よらしむべし、知らしむべからずという姿勢を非常に強く感ずるという点がありまして、この点はぜひ反省を促したいと感すみ次第でございます。  そこで、このPKOの問題につきまして、これからでもぜひ強力に、幅広く国民各層にこういうPKOの本質を正しく理解させ認識していただくためのそういった情報提供をすべきであると考えますけれども、この点につきましては政府はどのような取り組みをされるのか、伺いたいと思います。
  104. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 積極的に情報を提供すべきであるという御指摘は、私はまさにそのとおりだと受けとめさせていただきます。同時に、これからあらゆる機会を通じて国民の皆さんにも、きょうまで現実に行われてきたPKF活動というものがどんなものであったのか、中立・非強制立場国連の権威と説得により停戦確保などの任務遂行するものであって、強制的手段によって平和回復をしようというものではない、そういう意味で、戦わない部隊だとか敵をつくらない部隊だとかいろいろきょうまで国連PKF活動参加された方々も述べられておるところでございます。  その意味からいきますと、政府も積極的に広報せよということでありまして、私ども一生懸命広報もいたします、こうして目で見ていただいてわかりやすいものも政府できちっとつくりまして、なるべく多くの方々にお見せしてお読みいただいて御理解いただこうと思いますし、また、あらゆる機関を通じて対談とか広報宣伝において十分にこの内容を御理解いただくようにしたいと思います。
  105. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 率直に言って、今までの資料は非常にわかりにくい、非常に専門的な、技術的な表現が多いわけですが、国民から見て極めてわかりにくいというのが率直なところでございまして、ぜひこの点は大幅に改善をし、もっと予算をつけ、抜本的にこのPKOの広報活動にぜひ取り組んでいただきたいと要望する次第でございます。  続いて、さらに国民の方の大きな疑問としてあるのは、どうも政府は、本来国際貢献といってももっとやるべきことはたくさんあるはずなのに、それを差しおいてPKOばかりやっているのではないか、自衛隊を出すためにPKOをやりたいのではないか、そういう見方が非常に強いわけですね。ODAとか地球環境とかあるいは人道的な問題とか、もっともっとやるべきことがたくさんあるのに、それを差しおいてFKOばかりにどうも目がいっている、また、何とか自衛隊を海外に出したいという気持ちが先行しているのではないか、そのように印象を持つ国民が多いわけですけれども、実際、我が国の国際貢献への基本姿勢あるいは国際貢献におけるPKOの位置づけというものはどういうことになるのでしょうか。総理の回答をお願いします。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 率直に申し上げまして、それぞれの部面できょうまでやってまいりました国際貢献、例えばODAの問題なんかは、絶対量において、年々皆さんの御協力もいただいて予算措置もとり、世界で一になったり二になったりするところまでいき、積極的な協力もしております。また、物資の協力やあるいは技術の協力や文化の交流ということもきょうまで積み重ねもしてまいりました。世界の地球環境に対する対応とかあるいは医療協力とかいろいろな問題もやってまいりました。例えば、ペルシャ湾に重油が流し出されてその回収に困るというときは、国際緊急援助隊が行って回収作業に汗を流してもまいりました。また、通商航海路を安全に確保するために、これは自衛隊の機雷除去の作業もやってまいりました。  しかし、全体として考えてみますと名に、これは率直に、私が日ごろ受けます御批判を省みると、遅過ぎる、少な過ぎるということをよく言われます。そこで、でき得る限りのことをしていこう、物の面やお金の面だけではなくて、人的側面においてもやっていこう。そうしますと、きょうまでの技術や経験や能力や、視察をしてこられた皆さん方が、例えばバングラデシュのあの災害を見てこられて帰ってきて、日本から行ったあの消防庁のヘリコプターとかいろいろ努力しておることはよくわかるけれども、お医者さんも頑張ってもらっておるが、もう少しふえないか。要するに小さ過ぎる、少な過ぎる、もうちょっと大きくならないかという御批判も率直に何度も聞いてまいりました。  こういったことに対しては、国内の総力を挙げて、許される範囲内においてできる限りのことをすべきである、こう判断をしてこの法案を用意をした次第でございます。御理解をいただきたいと思います。
  107. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 我が国が国際貢献に近年積極的に取り組んでいることは理解できるわけですが、例えば難民の問題とか地球環境等の問題等にはもっともっと努力すべき部分があると思います。そういった意味で、このPKOだけが突出するのではなくして、もっともっとバランスのとれた、人道的な援助も含めた幅広い国際貢献の全体像を十分に国民に提示し、また政府としても努力をしていただきたいと強く要望する次第でございます。  そこで、国民の方々と対話をして、PKOの本質論、それから、なぜ貢献をしなければいけないかということにつきましては、ある程度時間をかけて丁寧に説明をすれば割と素直にわかっていただける部分であるわけです。ところが、非常に反発が強い、なかなか理解されない部分は、やはりなぜ自衛隊を使うのか、この部分が一番の難問でございます。率直に言って、私もあちこちで非常に厳しい意見にさらされました。なぜ自衛隊を使うのかというこの点が、国民にとって実は最大の懸念であり不安であると思うわけでございます。  そこで、まずこのPKO、特にPKOの中でも、平和維持活動の中でもPKFと言われる平和維持軍、あるいは平和維持隊と言われておりますけれども、あるいは停戦監視、この軍事的部門が最も中心的な役割を果たすわけではございますけれども、こういった部分がなぜ自衛隊を使わなければいけないのか、なぜ一般のボランティアを募集してその人たちに十分な訓練をして使うことで済まないのか、まずこういった疑問があるわけですけれども、これに対してはどうお答えになりますでしょうか。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 人的協力、人的活動の面においては、きょうまでもいろいろな面における経験を私どもは持っております。同時にまた、それは視察をしていただいた方々もたくさんあります。例えば、日本青年海外協力隊は私どもが当選直後にスタートをして二十数年たちました。一万人を超える延べ隊員が開発途上国に勤務をしてくれました。率直に申し上げて、四十二名というとうとい犠牲者もその中には出ました。けれども、それを乗り越えて皆が頑張ってくれたおかげで、それらの地域においてどれほど人的貢献として感謝されたかしれません。けれども、もっとたくさん派遣してほしいという要請や、もっといろいろなものを出してほしいという要請等もございました。  けれども、今回話題になっておりますのは、そういう技術協力とか日本語の教育とかいうことではなくて、国際の平和と安全の維持のために国連が積み重ねてきた、要するに平和なところではなくて、停戦合意が成立して平和を維持していかなければならぬというところへ行っていただくわけでありますから、やはり迅速にそれに効果的に協力していくためには、きょうまで各国が、参加をしてきた人々がどういう人々であり、そしてどういった人々の能力というものが国連で認められ、求められたのかということ等も十二分に勘案してみました。  やはり中心となってもらうのは、技能、経験、組織的な機能を持っておるのは自衛隊でありますから、この自衛隊参加もお願いをする、けれどもそれだけではありません。広くその他の各関係官庁とか一般の皆さんにも呼びかけて、我こそは協力してやろうとおっしゃる方があればそれは喜んでお受けをいたしますが、しかし、国連のPKO活動の中で、特に平和維持隊と停戦監視団、軍事監視員の業務については、これはやはり国連からの要請で、きょうまでの経験を踏まえて参加者は軍人であることを要件とするのが、これは要請してくる方の国連の考え方であるということが国連本部との話し合いでもわかりました。  参加する以上はお役に立つ協力をしなければならないという枠等もありまして、平和維持隊と停戦監視団の業務については、国連要請する要件を満たすのは日本の現在では自衛隊員以外ございませんので、この業種に関しては自衛隊員協力を願い、そして総理府につくる常設的な本部隊員として参加をしてもらう、身分は併有してもらう、その他のPKOという部門の分野に関しては、それぞれの官庁なり個人の皆さんにお願いして参加をしていただく、こういうことにいたしておる次第であります。
  109. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この自衛隊、特にPKOの中で、PKFないし停戦監視団につきましては現職の軍人を使わざるを得ないというのは確かに国際的な一つの常識かもしれません。  その点につきましては理解は、百歩譲って理解はできる面もあるわけでございますけれども、国民の側からして非常に一つの大きな疑問点は、自衛隊を海外に出すことによってこれが派兵につながるのではないか、これが一番の懸念でございます。確かに派遣武力行使を目的としない派遣ということはあり得るとしても、それを安易に積み重ねることがやがては派兵につながるのではないか、派兵の環境を整えていくのではないか、これが非常に大きな国民の疑念でございます。  そこで、この国連平和協力法案において、自衛隊をそういった海外に出すことにどれほど十分な歯どめがかかっているのか、これが特に国民の関心事項でございますが、具体的にどういった歯どめが十分にかけられているのか、それはまた十分有効なものであるのかどうか、総理の御説明をお願いしたいと思います。
  110. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 皆さんが御懸念をなさるのは、今委員がおっしゃった海外派兵につながっていくのではないか。  要するに、日本の憲法で禁止しておりますのは武力による威嚇または武力の行使を目的として武装した集団が出ていくということであります。そういったことは絶対にしてはならぬというので、今お願いしておるこの法案自体にも、武力の行使または武力の威嚇に伴うものであってはならないということはこの法文の中に明らかにまず書きましたし、同時にまた、先ほど来申し上げておりますように、国連の決議がなされて、停戦合意が成立して、紛争当事国全部が平和維持活動を求めて、そこへ非強制そして中立立場で行くものでありますから、これは従来の概念の軍隊とかそういったものとは全くかけ離れた行為でありますので、そのことは繰り返し書いてございます。  この法案の中にも、例えば第三条の第一項には紛争当事者間の停戦合意ということが明確になっておりますし、国連平和維持隊の活動に対する紛争当事者合意というのも三条の一号及び第六条の一項に書いてございますし、また、中立的な立場紛争当事者のどっちかに偏らない中立的な立場を保つということも第三条一号に書いてございます。  ですから、このようなこの法案における歯どめは十分にかけてございますので、これによって派兵につながっていくとか、また日本国憲法が禁止しておる武力の行使、武力の威嚇につながっていくようなものでは絶対にないということを、私は強い決意を持って皆様方に御理解を賜りたいと思っております。
  111. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 確かに歯どめの件につきましては、我々も十分に実は検討をし、いろいろ提案を申し上げて、それはかなり反映されたことは評価をしておるわけでございまして、最終的にそれが十分なものかどうかは、さらに精査をして、この国会を通じて議論をしていきたいと思っております。  そこで、さらに国民の方々の自衛隊を出すことに関する疑念の一つ、あるいは考え方の一つとして、自衛隊そのものの性格の見直し、位置づけの見直しをやるべきではないかという意見が非常に今強まっております。  特に、冷戦が終わって、特にソ連がああいう事態になって、今まで我が国の防衛政策の前提となってきたソ連の脅威というものが大幅に減退をしておる、アジア・太平洋においても平和のトレンド、軍縮のトレンドが見られる、こういった中において、自衛隊そのものの見直しが必要ではないかという意見が非常に強まっております。もちろんこの自衛隊自体を認知することは、七五%以上の国民が今日認知をしておりますが、ただ、今のままで自衛隊がいいとは考えてない。むしろこういった軍縮トレンドに沿って、特にこの武力行使の部分についてはこの軍縮トレンドに沿った縮小的再編が望ましいという意見が極めて強くなっております。  とともに、それにかわって、むしろ自衛隊には今後こういった、例えば日航機事故とかあるいは雲仙・普賢岳の災害派遣とか、こういった住民に奉仕をして危機管理の大きな柱として役割を果たしてもらう、こういう民生協力、住民奉仕への部分で大きく活躍をしてもらいたい、これは非常にまた強い意見でございます。とともに、今回議論をしておりますPKOのような真に国際的な平和主義、人道主義に立った国連の枠組みでの貢献、こういったものにも活動の場を与えることは適切がなという議論も出てきておりまして、そういった意味で、今までのこういった武力行使の集団としての自衛隊の性格をむしろ薄めて、住民奉仕、災害派遣あるいは国際的な平和協力、PKO、こういった分野にむしろ性格を強めていく、それこそが真に国民から理解をされ信頼をされる自衛隊の存在ではないのか、そういう国民合意、真に正当性を持った存在として自衛隊をつくりかえていくことが必要ではないかという意見が極めて強くなっております。  また、自衛隊員から見ても、やはり本当に自衛隊員としてあってよかったというのは、実際に自衛隊の方々にいろいろ聞いてみましても、隊員に聞いてみましても、そういった武力行使の面、平時訓練をしておりますけれども、そういったことでは余り生きがいを感じない、むしろ災害派遣をされて台風で孤立した地域に行ってヘリコプターで救出に行く、そうしたらお年寄りが本当に手を合わして拝んでくれた、そういうときに真に自衛隊員であってよかったという生きがいを感じたと言っておられましたけれども、やはり自衛隊員にとっても、自分たちが本当に必要とされている、信頼されている、評価をされているという実感がなければならないわけであって、そういった意味からいいましても、こういった災害派遣、民生協力、あるいはPKOのような、国際的にも評価され、国民からも本当に理解されるような、そういった面の性格を強めるべきではないかと考えております。  そういう基本的な自衛隊のあり方につきまして、総理の所見をお伺いしたいと思います。
  112. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員の御指摘の趣旨、意味は私もよく理解をすることができるところでございますが、私が率直に申し上げさしていただきたいことは、自衛隊国民のために、専守防衛という大きな旗印のもとで我が国のためにあっておる、これは、あるときは武力行使は固有の自衛権の発動でありますし、また、そんなことがあってはならないけれども、そのときにはそれに対応してもらうように武力行使の訓練等も今しておいていただく、そのことをある意味で、起こってはならないけれども、非常に崇高な大切な任務であると私は考えております。したがって、自衛隊の皆さんかどういう角度でおっしゃったかは知りませんけれども、毎日毎日のそういった訓練が、その方の生涯を通じてただの一度も発動することがなかったとしても、それは国民にとっては崇高な、非常に大事な心の支えになっておるものだと思いますので、どうかそのことについては御理解を深めていただきたいと思うんです。  同時に、自衛隊はおっしゃるように災害派遣に行ったり人命救助に行ったり、いろいろ国内の諸活動において国民の皆さんから広く愛される自衛隊になっておられることは、支持率が非常に高いことでも今御指摘のとおりでございます。私は、そういった面で自衛隊が今後ますます、例えば雲仙の例をお引きになりましたが、私もあそこで非常に喜ばれていらっしゃる隊員の姿を見て、本当にこれはすばらしいことだと思っております。ただ、ああいったこともそんなにしょっちゅう起こってはいけません。  結局結論として言えることは、我が国国民生命、安全、我が風の平和と安全を守るためにあるんだという一番大切な目標、任務をしっかりと踏まえて、その目的には十分こたえていただけるような日ごろの訓練、練度の高いものとして節度のある自衛隊として存在をしておっていただきたい。この目的は、やはり国がなくなるまでなくならぬと私は思います。  ただ、国際情勢が非常に流動しておるとおっしゃいました。そのとおりであります。私は、この変わり行く国際情勢の中で、どのような限度が我が国の必要にして十分な節度のある最小限度の防衛力がというのは、ただいまのところは基盤的防衛力を整備して平時における持つべき基準というものを決めておるわけでありまして、それ。に従って行っておりますが、今後国際情勢の変更等を見据えながら努力をしてまいりたいと考えております。
  113. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私も自衛隊の専守防衛の任務、また個別的自衛権を否定するわけではありません。これは極めて重要な任務であるという認識を持っております。  しかしながら、現実の自衛隊の防衛体制をどうするかということは、やはり国際情勢に依存するものであって、これはむしろ政策的な問題である。したがって、これは十分に議論の余地があるわけであって、それは全く議論の余地がないものであるという言い方はおかしいのだろうと私は思っております。むしろこういった冷戦の終えん、アジア・太平洋地域におけるデタントの趨勢、こういったものを踏まえてどのような自衛隊の防衛体制をつくっていくかということは、むしろ大いにこれから議論すべきであって、それは総理もお認めだと思います。したがいまして、きょうは防衛論に入るつもりはありませんので突っ込むつもりはないんですけれども、やはりそういった問題意識だけはぜひ持っていただきたい。     〔柿澤委員長代理退席、委員長着席〕  特に、この世界の大激変、首年に一度と言われる大激変が世界情勢に現実に起こっているわけであって、欧州においてはワルシャワ条約機構が消滅をし、ソ連の脅威がもう減退をして、欧州における安全保障関係者の間ではもはや脅威という言葉が出なくなってしまった。それにかわって、危険、デインジャーとかリスクという、むしろソ連が分解していくことによる難民の発生とか、あるいは核兵器が共和国に分散をしていく、そういったことによる危険、リスクということがむしろ概念の基本になるわけであって、脅威という概念が大幅に減退をしておる。それに即してまた大幅な戦略あるいは防衛政策の見直しか行われているということが事実であって、我が国もぜひおくれることないよう、そういう問題意識を持って十分な知的な議論を進めていただきたいと強く要望をする次第でございます。  とともに、私としても、自衛隊自身が本当に国民から認知され、また評価される存在になってもらいたい、国際的にも評価される存在になってもらいたいという上から、こういった災害派遣の民生協力、あるいはPKOといった真の平和主義、人道主義の分野での協力というものをより強めてもらいたい、そういうことで国民の大多数の意見を反映するものとして申し上げているものでございまして、ぜひ総理も謙虚にこの点は受けとめていただきたいと思っております。  そこで、もう一点申し上げたいのですが、一つグリーンヘルメットという構想がございます。例えばドイツのワイツゼッカー大統領あるいはオーストリア等の政治家も言っているようでございますが、世界の環境破壊に対してPKOの考え方を活用して対応しよう、ブルーヘルメットと同列な意味でグリーンヘルメットをこれからつくっていこうという構想もあります。こういった考え方は我が国としても大いに貢献をして参加をしていいという分野だと考えておりますけれども、総理はどのようにお考えになっておられますか。
  114. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前半お触れになりました情勢の変化については、私も先ほど答弁で触れましたように、それは政策努力の中で謙虚に今後も検討をしていかなきゃならぬ問題でございますし、同時にまた、過去完了になってしまった問題ではなくていまだ現在変化しつつある問題や不透明な見通しや不透明なこともたくさんあるわけであります。そういった中で我が国の安全というものをきちっと踏まえてどのように対処していったらいいのか、極東におけるいろいろな情勢の変化等も見据えて今後とも御議論をさせていただきたい、こう考えております。  また、あらゆる意味で、ブルーヘルメットじゃなくてグリーンヘルメットというような発想につきましても、これは御指摘のとおり大切な方向を示しておるものだ、こう考えます。
  115. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは若干質問を変えますが、この法案の中ではPKOの定員を二千人と定めております。今までの議論ではかなり軍事部門に議論が集中をしておりますけれども、他方、この軍事部門以外の民生の部分、難民救済、医療等の面、大変重要な分野でございまして、そういった分野に対しても我が国としてはどうこれから取り組むのかという点をお伺いしたいと思っております。  特に、二千人の定員の内訳ですね、どれだけが平和維持隊、停戦監視あるいはその他の民生分野か、こういったことにつきましてまずお尋ねをしたいと思います。
  116. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  この法案の仕組みによりますと、具体的な国連等の要請、ニーズに応じまして、その都度協力隊を編成するということになっておりますので、具体的にどういう形で要請が来るかによりましてその都度決めるということになります。したがいまして、全体二千人ではございますけれども、それを個々にブレークダウンいたしまして何名ということは一概に申し上げられないということでございます。
  117. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今度は訓練システムの点につきましてお聞きをしたいと思います。  この法案では第十五条に研修の項があって、極めて簡単に触れられております。しかしながら、このPKO、あるいはPKFも含めて、特に自衛隊員がこれに参加をしていく場合、極めて従来の武力行使前提とした訓練とは異質の、百八十度違った任務につかなくてはならないわけであって、自衛隊員がすぐそのまま役に立つわけではない、むしろ極めて密度の高い再教育、訓練をしなければ使い物にならないということもあるわけでございまして、そういった意味では、我が国が今後PKOに本格的に参加していく場合、どういう訓練システムをつくるか、どういう訓練を与えるかというのは極めて重要な要因であると私は考えております。その点につきまして、本来、この法案十五条で極めて簡単にしか触れておりません。これは非常に私は不満でございまして、もっともっと訓練の部分を重視をして、明確な方針、体制、内容についても十分にこれは検討すべきではないかと考えております。  そういった点から、このPKOの訓練システム、教育ということについて、どういう内容で、どういう体制でこれを進めていくのか、この点につきまして十分な説明をお願いしたいと思います。
  118. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘の優秀な人材を的確な形で送り出す必要があるという点は、全く御指摘のとおりでございます。実はこの十五条の研修の考え方のほかにもう一点、やはり関係行政機関から要員派遣していただく場合には、非常に技術、技能、優秀な能力を持っておられる方々を派遣していただくということが前提になっておるわけでございまして、先ほどの、今例にございましたPKFの場合につきましても、やはり関係省庁でございます防衛庁の方におきましてそういう面での訓練というのを期待しておるところでございます。それに加えまして、まさに先生御指摘のとおり、やはりこれは通常の自衛隊員としての任務ではございません、やはり外国に出まして、他の派遣国要員等と連携して例えば監視員の場合ですと任務遂行するわけでございますし、何分その派遣地の社会、文化あるいはPKOそのものについての知識というのをしっかりと持っておく必要があるわけでございまして、そういう意味での研修というのはこの本部においてまさに行うべきであるというふうに考えております。  条文といたしましては、十五条で非常に簡単に書いてはございますけれども、ここで、本部長の定めるところにより行うということでございまして、これは法案を御承認いただきました段階では、もう今既に検討を始めておりますけれども、御指摘のとおり非常にがっちりとした研修内容にしていかねばならないし、そういう考えでございます。
  119. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この訓練システムはぜひ充実したものを、十分な予算をつけて、また十分なそういう考え方に立ったしっかりしたものをつくりていただきたい、これは強く要望しておきたいと思います。  それから、私自身もこの夏ヨーロッパに出張した際にフィンランドに立ち寄りまして、フィンランドの訓練センターを見てまいりました。規模は決して大きくなかったわけでありますが、極めてよくできた、よい訓練所、センターでございまして、非常に印象深かったわけでございますが、そこの担当の方に、最も大事な資質は何か、PKO、特にPKFに当たって最も重要な資質あるいは訓練上大事なことは何かと聞きましたら、言下に、それはコミュニケーション能力だということを言っておりました。やはりいろいろな各国要員が入りまじって、また、現地住民の中に入っていくわけですから、何よりもコミュニケーション能力、語学力を含めたコミュニケーション能力が極めて重要であるというふうに言っておりました。また、忍耐力とか柔軟性とか、すぐかっとならない性格とか、極めて高度な人間的資質あるいは訓練が必要なわけでございまして、恐らく自衛隊員の人々も、これに参加した場合に最初は極めて戸惑いを覚えるのではないか、あるいはカルチャーショックを受けるのではないかという気がいたしますけれども、ぜひこの訓練システムについては、十分な配慮、中身、体制をとっていただきたい、重ねてこれを要望するものでございます。  これはぜひ総理から、そのようにすると一言お答えください。
  120. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御意見を尊重して、そのようにいたしたいと考えます。
  121. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それからもう一つは、この北欧の訓練センターを見て非常に一つまた感銘を受けたことは、それは一国のみでやるのではなくて国際的な合同訓練センターになっておる。フィンランドは例えば停戦監視要員を重点的にやる、あるいはスウェーデンはロジ関係をやるとか、いろいろ国によって分担をし、お互いに国際協力、国際交流の中でそういった訓練をしていくという、非常にこれまたすぐれた点であると私は印象を受けたわけでございまして、訓練の段階からそういった国際交流、コミュニケーション能力を育てるあるいはそういった国際性を高めるという配慮が十分になされております。こういった点もぜひ考慮をして、我が国がこれから訓練システムをつくっていく場合に、単に日本だけに限定するわけではなくして、例えばアジア・太平洋地域の国々にも開放をして、共通に国際交流、協力のもとで訓練をしていく、そういったいわば国際的な合同訓練センター、こういった発想を初めから持ってこのシステムづくりに当たるべきであると考えておりますけれども、この点につきましては、総理、いかがでしょう。
  122. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 北欧のお話は、私も本で読んだりいろいろ御報告もまた受けて聞かしていただきまして、あのような共通の、ほぼ共通の考え方、条件にあるところで共同の訓練ができるということはすばらしいことだと率直に思います。また、アジアにおきましても、でき得るなればそういったような環境、条件が一日も早く醸成されて、日本のセンターで我々もその問題の訓練を受けようと言い出してくれる国が出てくることは非常に望ましいことでありますから、今後の検討課題として受けとめさしていただいておきます。
  123. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、要員のいわば選抜についてお聞きしたいのですけれども、先ほどるる述べましたように、このPKO参加要員は極めてさまざまな高度な資質、訓練が必要とされておりまして、どうやってすぐれた人材を確保していくかという面が一つあります。他方、やはり危険を伴う面も否定できないわけですから、やはり本人の自由意思の尊重ということも重要な点でございまして、やはり意思に反してPKOへの参加強制されることがあってはならない、そのように感じております。  したがいまして、こういった要件を満たしていくようなどういう選定の手続、方法というものを考えておられるか、これにつきましてお伺いをしたいと思います。これは防衛庁長官がよろしいでしょうか。
  124. 池田行彦

    ○池田国務大臣 今回御提案しております法律が成立いたしました場合には、この法律に基づきまして新たに任務となるわけでございますので、隊員の諸君もその使命を自覚して新たな任務遂行に当たるであろう、この点は私ども確信しておる次第でございます。  しかしながら、もとよりのことでございますけれども、実際にPKO、その中でもPKF任務に従事するとなりますと、先ほど来御議論ありますようにいろいろな難しい条件もあるわけでございます。そういった意味で、要員を選考するに当たりましては、事前隊員に対しましても十分に説明をいたしますと同時に、隊員の個人的な事情などについてもしんしゃくしてまいる、こういうことは当然やらなくちゃいけない、こう考えております。
  125. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひ今申し述べた点につきまして十分な配慮をして選抜の手続を考えていただきたい、要望したいと思います。  それから、質問を変えますが、このPKO自体、一九四八年以降存在をしているわけでございまして、その間いろいろ試行錯誤しながら今日の形に発展をしてきたわけでございます。しかしながら、昨今、冷戦の終わりということで非常に大きな世界情勢の激変があって、これはまたさまざまな国際情勢に影響を及ぼしております。特に顕著なこととしては、東西対立がなくなったことによって核戦争の恐怖は去ったといいますか、大幅に減退した反面、むしろ今までの冷戦構造によって抑えられていた地域紛争、民族間の対立あるいはさまざまな地域紛争の要因が大幅に、むしろ解放されて、現在ユーゴでも内戦が行われておりますし、ソ連だってどうなるかわかりませんし、世界各地でむしろ地域紛争要因は極めて高まっておるのではないかと考えるわけです。  そういった意味で、このPKOのあり方あるいはPKOの今後のニーズというものについても大きな変化があるかもしれないということが考えられるわけでございまして、こういった点につきまして、このポスト冷戦時代の到来ということと今後のPKOの見通し、量的にもあるいは質的にも変化があり得るのか、そういったことにつきまして見通しをお聞かせ願いたいと思います。
  126. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世界情勢の先行きが極めて不透明なことが多いわけでありますし、また、一極集中になるよりもむしろ多極分散になるような方向が今世界の情勢の中では生まれつつあるということも言えます。そういたしますと、いろいろなところでまた紛争が起こったりする可能性は、可能性としては多くなるんではないだろうか。また、それに対してPKOが果たさなければならない役割は、起こる前の、例えば予防、予防外交とか、国連にはもっと予防措置をとってもらうとか、あるいは予防機能を発してもらうとかいうようなことに着目して、ただいま国連総会に行っております外務大臣にも日本政府のそういった考え方を述べさせたりしておりますし、また、起こった場合、それに対する対応はやはりPKOとしてはきょうまでの経験を踏まえて行っていかなければならぬと思いますが、あくまでそのときは国連の権威と説得のもとに、中立・非強制という大きな原則のもとに、決議に従って、要請を受けて、関係当事国の同意を得て行っていくべきだという、この基本方針は変わるべきものではない、私はこのように考えております。
  127. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そこで、当面の一つの大きなテーマであるカンボジア問題とPKOについてお聞きしたいと思っております。  カンボジアで今和平の話し合いが急速に進展をしております。本年じゅうにもそういった和平の枠組みが十分にでき上がると思われますけれども、こういったカンボジア情勢の進展に伴って、国連として、特にPKOの面で具体的にどのような関与が考えられているか、どの程度の規模でどういう内容で考えられているか、この点につきまして説明をお願いします。
  128. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 シアヌーク殿下の指導力及び関係諸国の努力によってカンボジアの和平プロセスが大きく進展し、近くパリ会議が再開される見通しになっております。その暁には日本はカンボジア復興のためには協力をしようという意思表示も既に積極的にしておりますし、またきょうまで、カンボジアの和平に関する東京会談もいたしましたし、また私はバンコク訪問の折に四派の代表の方にそこでお目にかかって強く説得行動もいたしました。  そういった関係から、どのような形でカンボジアに国連協力していくか、P5の会議において最終的にいろいろな意向が示されると思います。まだ具体的に内容は決まっておりませんし、具体的に要請ももちろん来ておりませんので、それよりも恒久和平が達成されるということが大前提であろうと思います。要請が参りましたときに、またいろいろ具体的な対応をしなければならぬ、こう考えております。
  129. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それは総理、公式論だと思いますけれども、現実には国連との間でかなり突っ込んだ議論が行われていることは新聞報道等でもあるわけでございまして、もう少し突っ込んだ御説明をいただきたいと思います。場合によっては政府委員からでもよろしいのですが、国連が今カンボジア問題に対してどのようなPKOの関与を考えているのか、加えて、我が国がどういう形で、どういう分野で、どういう規模で参加を考えているのか、これはまだ検討段階でも結構でございますので、ぜひその姿をひとつ説明をいただきたいと思います。
  130. 丹波實

    丹波政府委員 お答え申し上げます。  国連の事務当局は、このカンボジアの今後の活動につきましてそれなりの構想というものを練ってきております。それで、私たちが得ております情報では、国連の事務当局が現在考えているそのPKO活動内容としては、次のような項目になるのではないかと思います。  一つは、このカンボジア各派間の停戦合意の遵守状況の監視、二つは、この各派の軍隊の再配置等の監視、それから三つ目は、武装解除が行われることになりますが、その履行の監視それから武器の管理、それから四つ目として、将来行われる選挙の監視とか管理、五つ目は、警察行政事務に関する助言指導といったもの、六つ目は、行政事務に関する助言指導、それから七つ目は、上記の活動を円滑に実施するための後方支援的な活動、それから八番目として、難民の帰還の支援ということになります。  それで、今後の日本協力の態様でございますが、一つには、この現在御審議をお願いしております法案が成立するかどうかということとも関係がございますし、もう一つは、今のはあくまでも構想でございますけれども、具体的に国連がこれらの部分のどれを日本側に要請し、日本としてどう対応するかという、そういう問題とのかかわりでございまして、今具体的にどのような規模、どのような構想で日本参加するかというのは、抽象的にはなかなか申し上げかねるという状況段階でございます。
  131. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 確かにまだ検討中であって、具体的要請もないわけでございますが、ただ、国連が今後カンボジアでのPKOを検討していった場合、我が国としてPKFの面で参加をしていく考えはあるのかないか、その点につきましてお答えをいただけますでしょうか。
  132. 丹波實

    丹波政府委員 この点につきましても、一言でPKFと申されても、そのPKFの本隊あるいはその後方支援的な活動、いろいろな側面が考えられますし、かつ、カンボジアにおけるPKF日本参加していくことについての国内外の世論その他の情勢の判断、いろいろな問題がございますので、この時点で参加する、しないということを述べるのは大変難しいのではないかというふうに考えます。
  133. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 このカンボジアのPKOへ日本がどう関与するか、非常に難しい点があると思います。それは今の国連局長のおっしゃったとおりだと思うのですが、私個人も、この最初のケースがどうもカンボジアになるということは必ずしも日本にとっていいことかどうか、非常にちょっと疑問を持っておるわけでございまして、やはり同じアジアの国で、初めて自衛隊が行くのがカンボジアだというのはどうも非常に問題があるのではないかという感じを若干持っております。また、カンボジア国内においてもいろいろな意見として、特にPKF日本参加してくることについてはいろいろな疑念、反発もあるやに聞いておりまして、やはりこの点につきましては、たとえこのPKO協力法案が成立したとしても、制度としてはできたとしても、実際にカンボジアヘの参加というのは極めて慎重に検討すべきではないかと考えております。  また、実際にこの法案が成立したとしても、要員の訓練等には大変な時間がかかるわけでございますから、その点については極めて十分な時間をかけて、十分な準備をして将来参加をしていくべきであって、制度を開いたからといって、やみくもにすぐに拙速にやるべきではない、こう考えておりまして、ぜひこの点は留意の上慎重な対応をお願いをしたいと思っておる次第でございます。  次に、ちょっと時間がないのですけれども、細かい点をお聞きします。  この第七条には国会への報告が定められております。ただ、具体的にどういう形で報告を考えておられるのか。本会議への報告なのかあるいは委員会での報告なのか、まずその具体的な報告の形につきまして、より詳しく御説明をいただきたいと思います。
  134. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、国会にどのような形で報告するのかということは、まず院を代表される衆議院議長のところへ、政府からは計画そのものを文書にして、御報告申し上げますといって届ける、議長は議長の諮問機関である各党の代表のお集まりである議院運営委員会にこれをどう扱うかということを御相談なさることになるだろうと、行政府としては推測をさせていただくわけでありますけれども、いずれにしても、開会中であろうと閉会中であろうと、議長のところへまず政府は遅滞なく決まったものは報告をするというように法案に書いておりますから、成立させていただいたらそのような方法で取り運ばせていただく。  それをどこでどう扱われるかということは、国権の最高機関たる国会の各党各会派が議院運営委員会によって、本会議でおやりになるのか、委員会で御議論なさるのか、それらは院がお決めをいただくことであろうと私は考えております。(「参議院ではやらないの」と呼ぶ者あり)失礼しました。衆参両院でございます。今は先生のお顔ばかり見て衆議院衆議院と言っていました。衆参両院が国会でありますから、それは当然のことでございます。
  135. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 報告は形式はそうなるとしても、大事なことは、その報告に基づいて十分な国会での議論がなされるかどうか、また、その審議の内容が次のPKOの活動に反映されていくかどうか、この点が確保されることが極めて大事な点でございまして、この点につきましては十分に確保されるものであるのかどうか、ぜひ総理お答えをお聞きしたいと思います。
  136. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、三権分立の立場国会の審議のあり方まで行政府がこういった公の場所で云々するのはいかがかと思いますが、お尋ねでありますから、私も一国会議員として申し上げれば、それは十分な御審議をなされるべきだと思いますし、御審議があれば、政府としてはその御審議を十分に尊重して、今後の運営に対してその意見を反映させていくということはこれは当然のことであろう、そのように心得ております。
  137. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私たちが、報告を是とし、承認については機動性の点で問題があるとしてこれは退けたわけでございますけれども、あくまで五原則の法制化と報告をセットでこれはシビリアンコントロールであるということを言っておりますので、ぜひこの点は誤解のないようにお願いをしたい。特に、やはりこの報告制度に基づいて、今総理がおっしゃったように十分な審議をして、それがまた今後のPKOの方針に十分に反映されるということが最も重要なシビリアンコントロールの点だと思いますので、この点はぜひ総理も御認識をお願いをしたいと思っております。  次の点に参りますが、国連のPKOの資金協力ですね。  現在、日本は資金面ではPKOに比較的重要な貢献をしておると考えておりますけれども、PKOの資金協力についての具体的な今の方式につきまして、PKOの参加国あるいは現実のPKOがどのように財政が負担されていくのか、その点につきまして簡単な説明をお願いしたいと思います。
  138. 丹波實

    丹波政府委員 PKOのこの財政につきましては、大きく分けて二通りの方法がありまして、一つは分担金によるもの、もう一つは各国の拠出金によるものということでございます。  分担金につきましては二つございまして、通常分担金とPKO特別分担金というものがございます。通常分担金と申しますのは、国連の事務局予算の中から賄うということでございまして、ですから、これは通常の国連の事務局予算が回っていくわけですから、そのためだけに日本なら日本が特別のお金を出すということではございません。PKO特別分担金というものがございます。これは特別に設立された一定のPKO活動に対して関係各国が拠出する。比率につきましては、通常の国はその事務局予算と同じ比率で拠出する。ただ、安保理五カ国につきましては若干の積み上げが行われる、そういう方式になっております。  ちなみに、通常分担金で賄われておりますPKO活動といたしましては、UNTSOとかそのほかのものがございます。それから、PKO特別分担金で行われておりますのは、レバノンのUNIFILとかあるいはゴラン高原のUNDOFというのがそういうことで行われております。二つ目の、拠出金で行われております活動として、典型的にはサイプラスの平和維持軍でございまして、これは各国の自発的拠出で行われますけれども、日本の場合には年間四十万ドル出してございます。  日本は、以上の仕組みに加えまして特別にPKO支援強化信託基金というのを国連に平成元年度から設けておりまして、平成元年度は二百五十万ドル、二年度は二百五十万ドル、今年度は一千万ドル積み上げておりますので、PKOが組織されますときには、特に立ち上がりの資金を不足とするということでこの中から拠出いたしておりまして、例えば中米監視団に二百万ドル、それからニカラグアの監視団に五十万ドル、それから先般設立されたUNIKOMにつきましては百万ドルの拠出金がこの信託基金から賄われておりまして、国連から大変高く評価されております。
  139. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 時間ですので以上で終わりますが、我が国もPKOに本格的に参加していくのみならず、世界全体のPKOにも、発展につながるように、資金面での協力もぜひ強化をしていただきたい、この点を要望しまして、質問を終わります。
  140. 林義郎

    林委員長 次に東中光雄君。
  141. 東中光雄

    ○東中委員 今回のPKO法案は、これまでの政府・自民党の見解を百八十度転換した。武装部隊武力の行使をも行うような平和維持軍への自衛隊部隊参加ということは、今度の法案では明記しているわけです。これは海外派兵を本当に具体化する法案だ、こういうふうに思います。私は寸こういう憲法の平和原則を真っ向から踏みにじっているこの法案に対しては断固としてその内容を追及してまいりたい、こう思っています。海部内閣はこの自衛隊の海外派兵を国連への協力であるとかあるいは世界の平和への貢献だとか言っていますが、あるいは平和回復活動だ、こういうふうに言っていますけれども、これは憲法上許されない平和活動、平和のための軍事的な国際貢献なんです。軍事的国際貢献というのは憲法上許されないということになっておると思います。私たちは、世界の平和のために憲法の原則にのっとった平和的貢献をこそやるべきだというふうに考えております。  具体的に言いますと、ワルシャワ条約が崩壊をしました。東側の軍事ブロックが解体した。そして東西の軍事ブロックの対抗体制、こういうものがなくなりまして大きな変化が起こってきています。こういうときにこそ、核兵器を廃絶する、通常兵器を軍縮する、そして軍事ブロックを解体する、こういう平和への積極的なイニシアチブ、国際的なイニシアチブを日本政府こそとるべきではないか。また、日本は世界有数の大きな経済力と技術力を持っておるわけですから、発展途上国への経済援助、災害援助、あるいは世界の飢餓、貧困問題、地球環境問題等にその力を役立てるべきである。人の貢献の面でも、憲法上の平和的原則に基づいて、軍事活動とは厳密に一線を画して、平和的、非軍事的手段に徹して医療、教育、災害救助、環境などの分野で積極的な貢献をしていくべきだ、こういうふうに考えております。そのことが非常に重要だと思うのです。  海部首相はこの法案について、先ほども言ったように、軍事活動ではない、平和回復活動である、あるいは、武力を行使しないし、武力の行使が行われる場合には撤退をするんだ、だから憲法上問題ないんだ、こういう主張をしておられます。  そこで総理に聞きたいのですが、総理は今まではそうは言ってこられなかったんです。昨年の国連協力法案では、その審議で、平和維持軍について、例えばこれは十月二十四日の国連特の総理発言ですが、平和維持軍というものは、PKOは構わぬから参加しろ、そこまでいけというような御意見もありますけれども、PKFですね、平和維持軍は、武力の行使を可能性として含むものである、現に武力行使が行われることが予想されるものだ、そして武力をある程度携行するということが許されておるものだ、それについては平和活動としては入れるわけにはいかぬのだ、こうも言われておりますし、それを入れないのは憶病だというふうに言われるけれども、これは守るべき線をきちっと守って、武力行使を伴わないもの、武力行使をしないものということの前提に従って、それだけだ、武力行使を伴うものあるいは可能性のあるものあるいは武力を持っていくもの、そういう平和維持軍は入れるわけにはいかぬのだ、こういうふうに同じ日に答弁をされています。その態度が今度はころっと変わるわけですね。どうなんでしょう。
  142. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あのときのいろいろな議論をそこで読み上げられましたけれども、私は、平和維持隊に参加するときに、今回は五つの厳しい条件をきちっと決めて、そして日本平和維持活動というものは、繰り返しませんけれども、国連決議に従って、停戦合意が行われて、当事者すべてが平和維持活動を招くことを要請し、それに基づいて行われる中立・非強制的な活動であって、武力行使をするという平和維持活動日本参加するというものではありません。  同時にまた、日本がこの平和維持活動参加し、平和維持隊に加わるに当たっての基本方針の中で、武器の使用は我が国要員生命または身体の防衛のために必要な最小限度のものに限られることという厳しい制約をきちっとつけての法案作成でありますから、憲法の禁止する第九条の武力の行使には当たらないものである、こう判断しております。
  143. 東中光雄

    ○東中委員 私が聞いているのは、平和維持軍とあなたは去年の十月には言われた。そしてこういうものだということを。これは総理大臣としての委員会における発言ですから、個人的認識の問題じゃないんですね。内閣総理大臣としての平和維持軍についての、それは武力行使を伴う、それから相当な武器を持っていく、そういうものはやれないんだと。  今の答弁を聞きますと、平和維持隊と言われた。ことしの八月に出された、これは外務省のPR用の説明ですよ。これを見たって平和維持軍なんですよ。これは訳文でしょう。PKFの訳を日本では平和維持軍と言ってきたんです。外務省、言ってきたんです。今度の法案を出すと途端にそれを隊と言うたら、何か変わったものになるのですか。平和維持軍外務省が言い、公式に内閣総理大臣が去年公式の委員会で述べておられたもの。その内容は、そのほかの点で引きますと、十月二十五日の答弁は、「武力行使を伴うような、あるいは過去において武力行使があったような平和維持軍」、平和維持軍というのはそういうものだと言っています。そこから、いわゆる武力行使を伴うことが想定されるような平和維持軍について、現に戦っておる兵力引き離しの中に部隊を展開して、割って入っていく任務が公然と出てくるわけでありますから、そのときには護身用の武器だけではこれはいけないだろう、武力行使は初めから伴わな。いものでなければいかぬのだと言って、だから平和維持軍はだめなんだ、憲法上だめだとは言っていないけれども、入れるわけにはいかぬのだと言って排除したんでしょう。  このとき言われた、武力行使を伴うようなもの、あるいは護身用だけじゃない装備を持たなければいかぬようなもの、あるいは武力行使を可能性等含んでいるもの、あるいは武力の行使を伴うことが想定されるようなもの、総理大臣が公式に言うたその平和維持軍が、半年の間に、名前は変えるのは勝手ですけれども、実体が変わったと言われるのかどうか。今までの、平和維持軍と言って公式に言われた、排除するときに言われた、わずか半年余りですね、前に言われたことをここで撤回するのに、言葉だけで撤回したってそれはできません。この認識は間違っているんですか、訂正されるんですか、そこのところをはっきりしてください。
  144. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨年の平和協力法案のときには、いろいろな議論、やりとりがありましたが、私が念頭に置いて申し上げておったのは、例えば、過去の平和維持軍の中にはコンゴのものがあった、そういったようなことについて、そういうものは武力行使を伴っておったわけですし、犠牲者も出ておったということはよく承知をしておりました。同時にまた、きょうまでのいろいろな平和維持軍活動についての報告書等を読んでみますと、きょうまでは積み重ねでありますからいろいろなことがあった。それで、あのときは、国連平和協力法案のときには、そういったものを想定するなればそれは除外をするということで除外をされておったはずであります、法案自体からも。  それから、今回、いろいろなあの国会の審議を踏まえて、自民党、公明党、民社党、三党間の協議の結果、新しい国際協力に対するあり方について、三党合意を踏まえて政府はいろいろと考えろということになりました。そこで、政府がつくりました今回の案は、国連平和維持活動に対する協力に関する法律であって、この法律には、過去において平和維持活動として行われたPKFの中でも、コンゴのようなあり方については武力行使が伴う可能性があるのでこれはだめだというようなこと等も考え、それなればどこできちっとそれを明らかにするかということによって、先ほど申し上げたように五原則なるものを決めたわけでありますから、――いや、五原則を決めたときに質的に我々の考え方や法案の態度そのものも変わったわけでありますし、なお念のため申し上げると、九月十九日に内閣官房長官から発表させておりますけれども、この平和維持活動は「平和維持隊」という訳にしよう、これ、は、PKFというのはピース・キーピング・フォーセスの訳でありますから、「平和維持隊」とする、九月十九日に、三党合意で決めて、そして官房長官の談話で発表をしたということでございます。
  145. 東中光雄

    ○東中委員 名前の言い方を変えた、平和維持軍を平和維持隊と変えた、これは全くの小細工ですね。私が言いたいのは、平和維持軍PKF、ピース・キーピング・フォースということの訳は、ずっと日本では平和維持軍と言って使ってきたんですよ。外務省も使ってきたんです。総理大臣もこの間まで使っておったんです。そして、今度になったら、隊に変えたら、そしたら、平和維持軍武力を伴うものだけれども、隊という名前、訳を変えたらと今言われましたね、訳を変えたら実体が変わるような印象を与えるというのは、これはほんまにごまかしも甚だしい。これは国民の皆さんが聞いておられますよ。こんなばかなことがあるか。  私が言いたいのは、コンゴのような平和維持軍は、これは武力行使を伴うからというんじゃないんです。あれは武力行使を伴うんじゃなしに、武力行使そのものをやったんですから。伴うたんじゃないんです。武力行使の目的で行ったんです。安保理事会でそう書いてあるんですから、武力行使をやれと。そういうものが問題になっているんじゃなくて、およそ平和維持軍というものは武力行使の可能性を持っている、あるいは武力行使が行われることが予測される、伴うというふうに言って、だからだめなんだと言うたのは海部さん自身の公式の発言だったんです。過去に武力行使をしたことがある平和維持軍あるいは今後もやる可能性のあるもの、平和維持軍というのはそういうものだから、これには行けないんだということだったわけですね。ところが今度はそうじゃない。隊だ。  それでは、平和維持軍をどういうものかどいうことを決めるのはだれが決めるんですか。海部さんが決めるんですか。平和維持軍はどこが決めるんですか。
  146. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和維持隊というものは、日本国連要請を受けて、国連決議に従って、そして紛争当事国全部がそれに合意をして、そして紛争当事国国連の平和維持隊を受け入れたいということを決めるんですから、私が決めるんじゃない。国連要請を受けて、それから今度はそれに対応することができるかどうかを閣議実施計画として決定をいたします。
  147. 東中光雄

    ○東中委員 全く違うんですね。あなたの今言われているのは、要請を受けてそれに参加する平和協力隊、これはこの法律でつくるわけだから、それは要請を受ける側です。要請する側が平和維持軍というのを決めるんですよ。あなたの言っていることはまるきり逆さまなんです。そのことを指摘しておきましょう。  それでは、法制局長官にも一言聞いておきましょう。この前の十一月、昨年の十一月六日の国連特別委員会で、平和維持軍の方はどちらかというといわば紛争が再発した場合の抑圧を行うことまで考えた面があるので、だから武力行使を伴うことが多い、そういう認識で武力行使を伴う場合には憲法上参加をすることはできない、こういう答弁を何回もやっていますね。その点の違いはありませんか。
  148. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  昨年の十一月、今御指摘のものでございますが、私が答えておりますのは、「これはその個々の組織が組織されますときの当然の個々の確認をいたさなければならないと思いますが、今のようなことで概して言えば、停戦監視団的なものに対しては我が国は参加できる場合が多いと思いますし、平和維持軍的なものに対しては参加することが困難な場合が多いのではなかろうか、かように考えるわけでございます。」こういうふうなお答えをしていることは事実でございます。
  149. 東中光雄

    ○東中委員 平和維持軍的なものは、それが平和維持軍という名前でなくても、平和維持軍的なものは武力の行使を伴うことがあるものなんだ、概して言えばそういうものなんだという答弁でございましたね。
  150. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 その目的・任務武力の行使を伴うものがあるということにつきまして、昭和五十五年の政府答弁書も書いているところでございます。また、そういうものでないのもある。個々に判断しなければならないので一概には言えないが、こういうふうなことでございます。
  151. 東中光雄

    ○東中委員 平和維持軍的なものというのは過去にずっとあるわけですが、昨年の答弁事態からことしまでの、現在までの約十カ月、その間に平和維持軍的なものあるいは平和維持軍が実体が変わりましたか、質が変わりましたか、その点について法制局長官、どう思われますか。
  152. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 これまでの答弁、例えば昭和五十五年の政府答弁書というふうなもので考えておりますのは、憲法九条において禁じております武力の行使、これに当たるようなものであってはならない、かような観点から申し上げてきているところでございます。  ただいま委員の御指摘の今回の法案に基づきます自衛隊のいわゆるPKO参加、これの問題につきましては、今のような憲法九条において禁じられている武力の行使に当たるようなことを回避できるという観点でつくられたものでございます。
  153. 東中光雄

    ○東中委員 海部総理大臣にお伺いします。  今回のこの法律で、そして自衛隊部隊として平和維持軍参加をさせる、言葉は違うかもしれませんが、参加させる。この行為は、参加したその自衛隊は、軍事行為、軍事的活動を――伝統的軍事的活動とかそんな伝統も何もないんで、軍事的活動をやるのではございませんか。その点はどうでしょう。
  154. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和維持活動をするのであります。
  155. 東中光雄

    ○東中委員 平和的維持活動の中に軍事的な活動と非軍事的な活動とあると思うんですが、今度やろうとしているのは軍事的活動の面が中心になって自衛隊参加する部分でしょう。その点はどうでしょうか。
  156. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連PKFというのは、御承知と思いますけれども申立て非強制で行うものでありますから、武力に頼るものではございません。ですから、大きく分ければ従来の概念の軍事活動ではありませんから、戦場だとか兵士だとかいうイメージはどうしてもここにはございません。平和を維持していくということでございます。
  157. 東中光雄

    ○東中委員 それは論弁ですね。  では、こう聞きましょう。国連平和維持活動ということについていろんな文書が出ています。私、ここに持ってきましたが、これは政府がなかなか出せと言っても出さないんですけれども、これは国連でつくっておる国連総会文書A/45/572、昨年の、九〇年十月五日発行の「平和維持活動の全局面での諸問題に関する包括的再検討-平和維持のための訓練マニュアル―」、国連事務総長報告というのがあります。いわゆる訓練マニュアルと略称して言っています。これは国連では出すについては、全部にばらまくとかマスコミなんかに渡さないということを言ってますよ。それは経済的に見てもたくさん刷るのは金が要る、あるいは専門的、軍事技術的なものだから、たくさんつくってまくというようなことはしない、関係国にだけ送るということで、日本政府にも来ている、こういうものです。  これによりますと――これは秘密文書でも何でもありません。それで、このマニュアルの第二部の第二章にPKOの構成について書いているんです。それによりますと、aは「軍事部門」ということになっています。どういうものだ。bが「文民行政部門」というふうになっています。これも説明があります。そしてcは「その他の部門」、こういうふうになっているんですが、その三つに分けてある内容、概要を外務省説明してください。
  158. 丹波實

    丹波政府委員 御承知のとおり、現在のこの国連のPKO活動につきまして三つぐらいに分けることができるわけですが、一つはPKF、平和維持隊、二つ目停戦監視団、三つ目は、この二つのエレメントが総合的に入っているようなもの、この中には例えば選挙監視、そういったものも含まれますけれども。  第一番目の平和維持隊につきましては、いわゆる本隊及びロジ、後方支援でございますが、この二つについては基本的にいわゆる軍人というものが行っております。二つ目停戦監視につきましても、これは本隊は将校で構成しておりますけれども、そこのところはまさに将校ですから軍人が構成しておる。三つ目の混成部隊につきましては、そのところどころによってあるいは文民あるいは軍人ということになっております。  最後に一つつけ加えさせていただきますと、これらの軍人が構成する平和維持隊でございますけれども、伝統的な軍隊とは違うことは先生も御承知のとおりで、国際法上一般に軍隊と申しますと、武力紛争に際しまして武力を行使することを任務とする国家の組織を指すものでございます。しかし平和維持隊はそういうことを任務としておりません、おりませんけれども、その任務の中身を見ますと、軍事的な知識や組織的行動能力等、通常いわゆる括弧づきの軍隊が有している属性、能力が必要とされているということで、伝統的に便宜的に各国の軍人を使用しているというのが実態でございます。
  159. 東中光雄

    ○東中委員 私は、訓練マニュアルに三つの部門を分けて書いているから、そのそれぞれの三つはどうなんだということを聞いたんですが、それには答えないで、まるっきりでもないですが、勝手なことを言っている。国際的に出ている文書、このマニュアルに従って日本もちゃんとやりなさい、訓練するためにはこの基準でやりなさいよということを言っているのですね。  それで、何が書いてあるかといいますと、第一は、先ほど言いましたように、aはミリタリーコンポーネント、軍事部門だ。その中身は、事務総長の要請に基づいて加盟国から派遣された派遣軍と、それから国連軍司令官あるいは軍事監視団長、この二つ司令官と言っているわけですが、その司令官と、そして日本からいえば自衛隊ですね、参加する自衛隊、これをもって組織するんだ、軍事部門は。何をやるのかといったら、平和維持活動のミリタリーパーソネル、要するに軍事要員は、当該国の軍隊日本軍隊としての地位は保持するものの、活動の期間中は国連の権限のもとにある国際要員であり、指揮系統を通して国連軍司令官指示に従ってやる、そういう軍事部門なんだ。それからもう一つあるのは、bですけれども、これはその軍司令官についていく法律あるいは政治そういった面の顧問、日本で言う政務官、国連の政務官、平和維持軍の政務官というのがbだ。cはどうかといえば、その他のものというのは、多数の選挙監視とか行政監視とかいう、日本も出しておるそういうものなんだ。こういうふうに三つに分けてあるのです。  それで、前の分だけが今まで日本参加していないのです。後の分は二つとも政務官ということでこの間参加させましたね。八八年から参加するようになった。イラン・イラクもそうです。あるいは選挙監視団は出ている。だから、a、b、cがあって、bとcは文民によるものだから、法律をつくらなくても現行法で現に出しているのです。  それで、今度つくるのは、この法案では前の方の軍事部門だけなんですよ。国連が軍事部門だと言っている部門に今度は派遣するんだと言って、それは国連平和活動であるから、軍事行動ではなくてそれは平和回復行動であります。これはもう詭弁ですよ。そうじゃありませんか。総理、どう思われますか、あなたの言われていることが国際的に通用しますか。
  160. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ここでいたずらに平行線の議論をやっておっても仕方ないと思いますけれども、私は、PKOというのは平和維持活動だ、どうしてもそう思いますし、国際的にそれが認められるかとおっしゃるが、国際的に認められたからこそノーベル平和賞がこのPKOに下されておるわけであります。  また、参加する前に停戦合意が成立して、当事国がPKF活動合意をして受け入れて、それの要請国連から来て、二重にも三重にもそういった歯どめのかかったものを受けて、要請を受けて派遣するための法案は、また我が方においても二重にも三重にも、先ほど来五条件説明しておりますが、ございますし、また第二条、第三条を読んでいただければ「武力による威嚇」や「武力の行使に当たるものであってはならない。」ということをきちっと書いておりますので、これはあくまでも私は国連平和維持活動であり、私どもはそれに対する平和維持隊として参加するのである、こう思います。
  161. 東中光雄

    ○東中委員 私は、どうしたってあなたの言われていることは詭弁だと思いますね。国連でやるんでしょう、平和維持活動というのは。そしてその国連に加盟国が参加するのでしょう。参加する日本の態度を聞いているのではなしに、国連。ではどう言っておるかといえば、それは国連平和維持活動の中に、軍事部門と、それから文民行政部門と、そしてその他がある。後の二つは今まで日本は出ておった。今度は軍事部門だけ参加するんだ、こうなっていくんだから、その点については、これは「ブルーヘルメット」もここへ持ってきましたけれども、同じことを書いていますよ。だから、それを否定して、日本法律にどう書いているかという、そんなことじゃないのです。国連でどうなっているかと、国連活動について聞いているんだから。  それで、これは軍事活動だということをあなたは知っておるからこそ、去年の八月の二十九日に、あの国連平和協力法を出すか出さぬかということが問題になったときに、記者会見でテレビで言われました、基本的な方向を。そのときは、憲法の枠組みの中でどのような協力ができるか、あらゆる可能性を国連平和協力について検討した、軍事的な面での参加はできないが、許される範囲でできる限りのことをしようという点に重点を置いた、自衛隊の海外派遣は考えておりません。これは全国に向かって総理大臣として法案出す前の記者会見でしたね。憲法の枠からいうと、そうすると軍事的な面での参加はできない、国連平和活動参加するについて軍事的な面てはいけない、こう言っておいて、その後、PKF平和維持軍の方はくあい悪い、しかし監視の方だけは入れておいたというのが去年の段階だった。それが今度はごろっと変わって、平和維持軍という言葉まで変えて、そしてやる。これは大きな筋からいいまして、軍事的な面での参加は憲法の枠組みからいったらぐあい悪いんだとあなたは言われたんだから、その態度は今も貫かれるのですか、貫かれないのですか。
  162. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 言った本人ですから私が言いますけれども、それは軍事的な面というのは、通常の概念からいって武力行使を伴って強制力を使って行うというのが、これが軍事的な面ですよ。私は、そういう武力の行使を伴うようなことは、これは憲法の上からいってもいろいろ疑義もあり、また、コンゴの国連軍の問題等が私にはどうしても頭の中にありましたから、あのときの法案にはそれは外してあったということなんです。そのときの気持ちを申し上げた。武力の行使や武力を行使する強制力を伴うことにはこれはお役に立っていくことができない。  だから先ほど言っていますように五つの原則をつくって、武力の行使をするんじゃない、強制力を伴うものじゃない、平和維持活動であるということで今回平和維持隊のお願いをしておるわけでありまして、それはあのときの感じと、武力の行使、力の行使というものに関する考え方を変えたわけではございません。
  163. 東中光雄

    ○東中委員 自衛隊の海外派遣は考えないと明確に言われたのです。今度は自衛隊部隊は海外でのPKF活動参加をするのですね。あのときのテレビの前で国民に言われた、自衛隊の海外派遣は――武力の行使はと言ってないのです、海外派遣は考えない。あのときは考えなかったけれども後で考えたんだというのですか。どういうことなんですか。
  164. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、武力行使の目的を持って武装部隊が海外へ行くということ、これは慎まなければならない海外派兵でありまして、これは憲法でいろいろ言っておる問題と抵触するから、それはいけない。  それからもう一つは、今新しくこうして法律を出してお願いをしておるときに、いろいろな五つの原則を決めて、その五つの原則を、先ほどから何回もおっしゃるが、国連事務局へ行ってその担当とも相談し、日本はこの線で御協力ができますし、国際社会の新しい平和の秩序づくりに協力をしたい、参加をしたい、そして日本判断したらこうなったんだということを説明をして、これは全く問題がないと言われてきておるわけでありますから、武力の行使と、それからこの憲法に禁止する、力によって出ていく軍事的な面との問題は、十二分に検討をしてこの法案をつくったところでございます。
  165. 東中光雄

    ○東中委員 国連へ行って事務程度で話をした、後には何にも残らない、こういうことで何ぼ言われても、公式に出ている文書、しかもそれを提出もしないで、そしてそれと違うことだけ言っている。これじゃ納得できません。特に、あなたが今答弁されたのも、海外派兵はできないと言われたのです。どころが、このテレビで言われたのは、派兵とは言ってないですよ。武力の行使はだめだなんて言ってないです。自衛隊の海外派遣は考えてないと。これは客観的に、あなたは派兵のつもりで派遣だと言うた、表現の錯誤だったというのか、内容的にどうなんですか。あのときは平和維持軍には参加せぬと言うたじゃないですか。
  166. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 当時、平和維持軍参加するかしないかを議論したときは、何度も申し上げておりますけれども、コンゴにおけるあの事態等が念頭にありましたから、そういった意味においてそれはいけないということであり、当時から、速記録のいろいろなところを見てください、海外派兵と海外派遣については何回となくここで議論もされ、また南極観測や遠洋航海やその他のことで海外派遣は行われておるということは何回も議論をされ、海外派遣で許されるもの、海外派兵で許されないもの、その理由づけ等についても何回も国会の速記録にも残っておるわけでありますから、それは御確認をいただきたいと思います。
  167. 東中光雄

    ○東中委員 そんなこと私は一つも言ってないです。そういうことを知っておって、なおかつ自衛隊の海外派遣は考えていないという、総理大臣が国民に向かってテレビで言うたことについての責任をとらないということはないということを申し上げておきたい。  もう一つ、この考え方というのは、あなたが言うただけじゃなくて竹下さんも、国連平和維持活動への参加を、人的貢献を言い出したのは竹下さんのときで一九八八年なんです。そのときの竹下さんの初めての施政方針演説でどう言っているか。非軍事的手段によって国連平和維持活動に積極的に貢献するという趣旨のことを言いましたね。宇野さんもそれを言っておるのです、宇野外務大臣です。その後、ロンドンでこの平和への貢献の政策が出てきて、あなたも支持するんだと言われた。あのときに竹下さんどう言うたか。我が国は憲法上も軍事的側面での、軍事的面での協力はできないことになっておるのであります、だから平和的な協力をするんだ、こういうふうに言っているのですよ。だから、それから後、派遣するようになったけれども、先ほど言ったように、政務官とかあるいは監視団とかだけなんです。軍事的な面は一切なかったのです。  それを、そういう立場をとってきて、今変えたこと自体を認めない、もう牽強付会ですね、私はそう思います。その点を指摘をしておきたい、これは押し問答になってもしょうがないから、しておきます。  それから次に、武力行使、武器使用の問題に入るのですが、PKF国連の決議に基づいてやるわけですが、今までPKF国連平和維持軍ということで、外務省がずっとパンフにまで、国民向け啓蒙パンフに使っておったその国連平和維持軍というのは何回あるのですか。一九四八年から始まった、それで現在まで、名前はいろいろあるでしょうが、国連平和維持軍PKFと言われるものは何回ありますか。外務省どうです。
  168. 丹波實

    丹波政府委員 現在まで二十三のいわゆるPKO活動が組織されておりますが……(東中委員「Fですか、Oですか」と呼ぶ)PKOです。そのうち、私たちの計算によりますと、いわゆるPKFは九つ、監視団的なものが十四ということでございます。
  169. 東中光雄

    ○東中委員 その九つのPKF平和維持軍と言われるもので、そこには必ずいろんな規定がありますが、自衛のためにPKF部隊武力を行使することができるということをうたってあるもの、武力の行使はできない、武器の使用しかできないというふうにうたってあるもの、九つについて言ってください。
  170. 丹波實

    丹波政府委員 基本的に、このPKFにおきますところの武器の使用につきまして、国連司令官によりますところの服務規定という形で二つのときに武器を使用することができる、英語で言うところのメイ、使用することができるとしておりまして、基本的には二つのことを言っております。一つは、生命、身体の防衛のためと、二つ目は、任務が実力により阻止された場合と、この二つについて携行してきた武器を使用することができるという規定になっております。
  171. 東中光雄

    ○東中委員 それは、武器の使用ができるということで、武力の行使はできないということなのか、武力の行使ができる、自衛のために武力の行使ができるということなのか、どういう言葉で書いていますか。
  172. 丹波實

    丹波政府委員 昨日、当委員会でも話題になりましたハマーショルドの「研究摘要」の中でもありますけれども、携行されてきた武器は、英語で言いますとセルフディフェンス、自衛のためだけに使用が認められる、そういうことが書かれた後で、今私が申し上げた次の二つの場合を言うのが一般的な書き方になっておると思います。
  173. 東中光雄

    ○東中委員 キプロス平和維持軍の場合の事務総長覚書というのがあります。六四年の四月十日でありますが、ここで「自衛の原則」ということが書かれておる。ここには「武力の行使は自衛のためだけに許される。”自衛”という表現はつぎのことをふくむ。(a)武力攻撃のもとにある国連の駐屯部隊、建物および車両の防衛。(b)武力攻撃のもとにある」、これはキプロスのことですが、キプロスの要員を支援をする、そのときには武力の行使ができるというふうに書いてあります。あるいはレバノンの八七年三月十九日の事務総長報告によると、これも自衛の中には、安全保障理事会の付託任務に基づく任務遂行を実力で邪魔するような場合に、それに抵抗する場合には武力の行使ができる、全部武力の行使ということになっているのです。  武装したフォースがおって、そしてほかの国では、それが武器の使用などと言っているのは国連文書のどこにもない。全部武力の行使となっているじゃありませんか。それをすら武器の使用と国連局長は言うのですか。はっきりしてください。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  174. 丹波實

    丹波政府委員 ただいま先生が読み上げられましたのは、事務総長の報告、エードメモワールでございますけれども、私がここに持っておりますのは、先ほど申し上げた司令官の作成する服務規律でございますが、英語で申しますと、これはキプロスの場合ですが、キプロス要員のパーソネル、人員はメイ・ユース・ゼア・ウェポンズ、まさに武器という表現になっておりまして、a、bと分けて先ほど二つのケースを挙げておるわけでございます。
  175. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、PKFのすべての部隊は、武器の使用はできるけれども、自衛のためといえども武力の行使はできないということになっておるということですか。そういう見解ですか、日本外務省は。
  176. 丹波實

    丹波政府委員 国連の文書で言っておりますのは、私が申しました生命、身体の防衛のため、及び任務が妨げられたときにその任務遂行するために武器を使ってよろしいということを言っておるわけでございまして、一般的に武器の使用が単なる武器の使用であるのかどうか、武力の行使に当たるのかどうかは別の問題でございます。
  177. 東中光雄

    ○東中委員 国連文書では、その武器の使用と言っている場合に、部隊が武装してその武装の武器を使う場合は、普通は武力の行使と言うのです。別の問題じゃなくて、武力の行使と言うんじゃありませんか。
  178. 丹波實

    丹波政府委員 任務が実力で妨げられた場合にそれに対抗して武器を使用する、この場合いわゆる日本の憲法で禁止されておる武力の行使に該当する場合があり得る、そういう議論の中で、いわゆる五原則の第五原則というものをもとに参加することを決めだというのが状況でございます。
  179. 東中光雄

    ○東中委員 国連文書によりますと、フォース・ユースと書いていますよ。ということは、普通に訳せば武力の行使であります。何という外務省ともあろうものが詭弁を弄するのかということ、そこまでして、維持軍と維持隊と名前を変えてみたり、武力の行使と書いてあるものを武器の使用というふうにやってみたり、全くこそくなことだというふうに私は思います。  それでは、角度を変えて聞きましょう。ここへ参加する部隊の装備についてでありますが、自衛隊の装備についてでありますが、この法律では派遣自衛隊部隊はどういう装備ができることになっていますか。法案についてはどうですか。
  180. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊PKF参加いたします場合に携行いたします武器は、実施計画及びそれに基づいて本部長が定めます実施要領において詳細に規定されることになっておりますけれども、これまでのPKFの例など見てまいりますと、大体その範囲は、けん銃、小銃、機関銃、そして人員輸送を目的とする装甲車というふうになっておるのが通例でございまして、今後我が国がそういったものに参加する場合にも、通例そういったもので対応できるんじゃないか、このように考えております。
  181. 東中光雄

    ○東中委員 法案ははっきり六条の四項で、装備については「必要な範囲内で実施計画に定める」、それは国連「事務総長が必要と認める限度で定める」んだ、国連事務総長部隊の装備として必要と認める限度、それで決めるんだ。  今までの平和維持軍国連事務総長が認めてきた武器の使用の範囲、これについては資料要求で何回も要求しておりますが、明確な答弁を政府はあえてしません。出てきた分だけで言いますと、これは故意に隠そうとしているんじゃないかというふうに思わざるを得ないのですが、それは内容的に言いますと、九つある平和維持軍の装備についてのなにはどうしているかということを聞いたのに対して、いろいろ調べてみたけれどもまだわからぬ分があるんだというような話でありました。  それでも出てきたのは、国連兵力引き離し監視隊、それから国連サイプラス平和維持隊、それから国連レバノン暫定隊の兵器のやつがきょう出てきました。これを見ますと、国連が現にやったのは、例えば迫撃砲も入っています、バズーカ砲も入っています、対戦車無反動砲も入っています、重機関銃も入る、装甲車も入っている、装甲車には重機関銃は十二・三ミリが積んであります。  こういう装備、そういうことを国連が言ってきたら、その限度で計画の中に入れるということになるのか、国連がそう言ってきても、日本は別やということになるのか。法律では「限度で」と書いてあるのだが、その点は総理、どうでしょう、作戦計画をつくる本部長としては。
  182. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この法律には、第二条で「武力による威嚇」「に当たるものであってはならない。」そういう歯どめもありますし、それから、今御指摘になった、国連事務総長が必要と認める限度内で定めるものとするわけでありますから、そういった限度も決めてあります。  ただ、日本日本独自の派遣でありますから、計画をつくるときに、閣議実施計画を決めて、それに携行させる武器、装備等も全部書き込んでお示しをいたします。昨日来御答弁しておりますように、今現に行動しておるPKFの通常の場合、小銃、けん銃、機関銃、そして人員輸送等のために装甲車、その程度のものを持っていけば日本として今想定しておる協力は十分適切に果たせるものではないか、このように考えております。
  183. 東中光雄

    ○東中委員 国連事務総長から装備についての基準が出てくる。その基準に対して、その基準の限度まではやるんだということが法律にあるんだから、そのときに、向こうが言ってきたやつよりも、どうしても今言われた三つなら三つ、四つなら四つに下げてしまう、国連の言ってきていることとは違うことを独自に日本でやるんだということなのかどうかということをまず一つ聞いたわけです。しかし、そのことについてはあえて答えをされないということであります。  それで、現に国連平和維持軍として使っておる例えば重機関銃、これを派遣自衛隊の、あるいは平和維持軍各国部隊の装備として現にやってきているわけですが、その装備、重機関銃といえばどういう装備になるか、防衛庁、ひとつ重機関銃の性能を明らかにしてほしい。
  184. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 お尋ねでございますので、重機関銃というものの性能について御説明いたします。  口径十二・七ミリでございまして、重量は三十八キログラム、全長が一・七メートル。射程は、これは通常のいわゆる軽機関銃に比べて二割方長いということでございます。
  185. 東中光雄

    ○東中委員 これは自衛隊の装備年鑑を持ってきたんですがね。とにかくまともに答えようとしない、殊さらに隠そうとしている。問題は、これは例えば発射速度は一分間に四百ないし六百発発射するんですよ、そして有効距離は約千メーター。こういうものを装備として持っていくわけでしょう、武器の中へ。自衛隊部隊の装備として現地へ持っていくということがあるわけです。  そのほかに、例えば対戦車無反動砲というのがこの回答をいただいた中にあります。日本にもあるわけですが、それの性能、八十四ミリ無反動砲、どういうものですか。
  186. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 八十四ミリ無反動砲でありますが、これは重量が十六キログラム、全長が一・一メートルでございます。これも約千メートルぐらいの有効射程がございます。
  187. 東中光雄

    ○東中委員 もう一つ聞きましょう。迫撃砲、百二十ミリ迫撃砲も持っていったという例が国連文書の中に出てきます。日本には百二十ミリがどうもないような感じがするのですが、百七ミリ迫撃砲M2というのがありますが、これを持っていくとしたら、これの性能はどうですか。
  188. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ちょっとお答えする前にお断りしておきますが、これは持っていくとか持っていかないとかいう話ではございませんで、御質問がございましたので性能についてお答えをしているところであります。  百七ミリの迫撃砲でありますが、これは重量は百六十一。キロ、全長が一・三メートル、この最大射程が先ほどのものの約四倍程度、つまり四千メートルぐらいというふうに理解をいたしております。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  189. 東中光雄

    ○東中委員 四千メーターの射程で発射速度最大一分間に二十発、しかも直径が十センチ、いわゆる常識的にいえば大砲です。そういうものを国連平和維持軍は持っていくのです。それはコンゴのときは爆撃機、戦闘爆撃機まで行って、さすがに、国連、そんなむちゃをやったから、今後はやらぬと言っているのです。それ以後の分はこういうのを持っていくのです。  だから、法律上は、装備として、自衛隊の装備としてこういう重機関銃やらあるいはそういうものを持っていくということに法律の構造はなっているわけです。そして、現場へ行ってこの武器を使用するのは、法律によりますと自衛官が正当防衛、緊急避難の場合にこの武器を使うことができる、使うというか、そういうふうに言っていますね。  そこで、法務省から来ていただいているのですが、刑法三十六条、三十七条による正当防衛の場合以外は、武器を使っても相手方に危害を与えてはならない、法律はそうなっているんです。自衛隊部隊が、そういう今言ったような重機関銃とか四千メーターも射程のあるものをそれを使ってもいいということになって、しかもそれは正当防衛のときに使うという、法律上の、刑法の考え方としてですよ、武装した部隊が重機関銃や迫撃砲を持っておって、そしてそれを使うとき、相手に危害を加えないように使うんだという法律になっているんですよ。そんなことおよそ市民刑法としては予想してないんです。ところが、刑法三十六条、三十七条による正当防衛、緊急避難ということで使うんだ、その場合しか使わないんだと言っているんですが、そういうことを考えられますか。  重機関銃による正当防衛あるいは迫撃砲による正当防衛ということが刑法理論としての概念としてあり得るか、法務省刑事局、どうですか。
  190. 渡部尚

    渡部説明員 仮定の御質問でなかなかお答えにくいわけでございますが、迫撃砲とかそういういわゆる重大器でもって自分の身を守る、そういうような事例は今まで聞いたことはございませんが、それが刑法の三十六条、三十七条にもし該当するということであれば、違法性が阻却されて犯罪にならないということになろうかと思います。
  191. 東中光雄

    ○東中委員 世界じゅうどこへ行ったって、そんな、重機関銃やあるいは迫撃砲で正当防衛に使うんだ、それ以外には使わないんだ、ばかなことはないんですよ。そういうばかげたことが、実際この法律には書いてあるんですよ。何というひどいことか。武力行使しないということを言うために、そういう無理をしているというのがこの法律なんです。  ついでに申し上げ。ますが……(発言する者あり)審理妨害のようなことを言いなさんな。まじめに議論せい。あなた方自民党は、気に食わぬことがあったら人の質問を妨害するつもりか。何ということですか。  それでは撤収中断の問題について――その前にもう一点聞いておきましょう。  自衛官が武器を使用すると書いていますね。武器使用の場合の判断をするのは自衛官ですね。決定するのは、部隊へ行っている、部隊参加している中の個々の自衛官と書いていますが、防衛庁長官、そうですか。
  192. 池田行彦

    ○池田国務大臣 その使用の判断をするのは個々の自衛官でございますし、その使用する主体もその個々の自衛官でございます。  昨日、私が申し上げました、事実上、慎重を期するために、必要な場合に、そういう個々の自衛官の持つ権限を束ねるような姿で対応するのが適切な場合がある、しかし、その場合も、あくまで判断の主体も使用の主体も個々の自衛官である、このように御答弁申し上げました。それは慎重を期するためということでございますので、一人の自衛官が、あ、これは生命の危険があるかなと感じましても、いや、そうじゃないんじゃないかというのがまた隊員の中にあり得る、そういうことで、束ねるというのは慎重の上にも慎重を期する、そういう趣旨でございます。束ねて控えるという趣旨だと御理解いただきたいと思います。
  193. 東中光雄

    ○東中委員 自衛官がやると。持っていく装備は、先ほどの話で機関銃が入るということ、これは自衛隊自身が言いました。重機関銃が入りますと、重機関銃というのは一人で操作するんじゃないんです。二人なり三人なり、あるいは無反動砲の場合は四人もかかってやるんです。だからこれらの装備は、自衛官に渡されたピストルなんかと違うんですよ。  派遣されるのは「自衛隊部隊等が」、法律にそう書いていますね。「部隊等」が参加するんですよ。その「部隊等」が装備を持ってやっているんですね。ところが、装備を持っておるのは、二人、三人の自衛官部隊として持っておる。その武器を使うのに、部隊としてじゃなくて、中の一人一人が、しかも、急迫不正の侵害に対する防衛のためにやむを得ざるに出たる行為というのが正当防衛、緊急避難ですね、急迫不正のやつが来ておるときに、これはと思って、ほかの、まだ早過ぎるとか、そんなこと言ってますかいな。あり得ないことを言っているんですよ。これは部隊として使う以外にない。国連文書によるマニュアルでは、全部部隊指揮によってやるというふうになっているじゃありませんか。部隊指揮以外に、軍隊が武装していって、軍隊というか部隊として派遣されて、部隊として持っておる装備を、その武器を、攻撃を受けて使うのに、てんでんばらばらにやると。五十人の部隊のうちの三人はこっちを向いておる、あっちはじっとしておる、こんなことはあり得ないんです。そういう、ないことを書いてあるということなんです。  部隊として使うことはできないんですね。部隊として使ったら、憲法上、武力の行使になるからぐあい悪いんですね。
  194. 池田行彦

    ○池田国務大臣 部隊として確かに出てまいりますけれども、隊として出てまいりまして隊として行動いたしますのは、このPKF任務遂行する、すなわち停戦がしっかり守られておるかどうかを監視する、あるいは緩衝地帯を巡回する、そういうことを隊としてやるわけでございます。  さて、そうして武器の使用は、これは我が国の場合は、そういった任務遂行するために武器を使用するということは認めておりません。これはあくまで、その隊員、あるいはその一緒におります、同一の場所におります他の隊員生命や身体が危なくなったときに、そのときにその武器を使用するわけでございます。  それから、先ほども申しましたように、あくまで武器を使用する場合の主体はその個々の自衛官でございますので、部隊としてその使用をすることはございません。それで、先ほど一つの機関銃は何人かで操作するという、こういうお話がございました。それはそのとおりでございますけれども、やはりその使用の主体は、判断あるいは使用の主体はやはり個々の自衛官でございます。ただ、その個々の自衛官が単数の場合も、また、複数の場合もあるわけでございます。これはこの法律だけでございませんで、国内における警備行動などにおきましてもそういうふうな例はあるところでございます。
  195. 東中光雄

    ○東中委員 部隊として派遣をされ、部隊として行動をし、部隊としての装備である武器を使うのは、こんなてんでんばらばらの個々の判断で、自衛官の、部隊ではなくて官の判断部隊の装備を使う、そして……(発言する者あり)自衛官法律には書いてあるんです。そういう妨害はやめなさい。――そういうことで、これは全くのごまかしの規定だということを申し上げておきたいと思います。  そこで、撤収中断の問題に入るんですが、あの停戦合意と受け入れ同意と中立原則実施がされなくなった場合、撤退または中断ということがあるんだ、こういうふうに書いてあると思うんですが、そうでございますか。
  196. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 PKFの問題については、先ほど来再三申し上げておりますように、国連の決議があり、そして紛争当事国の間における停戦合意が成立すること、そしてそれらの停戦合意を成立させた国が平和維持隊の参加国連要請をすること、そして、それを受けて派遣される平和維持隊というのは、そういう状況の確保のために中立・非強制立場で行くわけですから、その前提が崩れた場合には平和維持活動遂行する状況でなくなるわけですので、そのときには業務中断をする、短時日の間にそれが回復しないとき、は任務を終了して引き揚げてくる、これが業務中断の規定でございます。
  197. 東中光雄

    ○東中委員 三つの原則が全面的に崩されたという場合は、これは撤収をする、それは何も参加している日本だけじゃなくて、国連平和維持軍自身が撤収することになっておる、これは維持軍自体の前提なんですから、と思うのです。  今言われたその中断ですが、PKO活動で、停戦合意が崩れたということで、そういうことが確認されて各国部隊活動中断したという例は、過去、この二十年ほどの間で、一九七四年七月のキプロスの平和維持軍の例と一九八二年六月のレバノン暫定軍の二つだけだというふうに政府は答弁をしておりますが、改めて、この二つ以外に、停戦合意が崩れたことを理由にしての撤退というのは、中断というのはほかにはなかったか、どうですか。
  198. 丹波實

    丹波政府委員 PKO活動、なかなか長い歴史があるものですから、全部を私たち調査し尽くした自信は必ずしもありませんけれども、私たちが調査した範囲内では、今先生がおっしゃった一九八二年のレバノンのケース、一九七四年のサイプラスのケース、私たちが最近調べた例として二つ承知しておるということでございます。
  199. 東中光雄

    ○東中委員 それ以外は崩れたということではないということになるんですが、それで、レバノン暫定軍については一九七八年の派遣から十三年活動していますが、その間に中断は今言われた一回だけだということになるわけであります。しかしレバノンでは、この停戦合意が崩れていない条件のもとでさまざまな武力衝突が、あるいは戦闘行為が何回も繰り広げられているんです。  これは、「ブルーヘルメット」をここへ持ってきていますが、この「ブルーヘルメット」によりますと、一九七八年六月から八一年の七月、レバノン暫定軍の活動について、この期間、約三年ですが、こういうふうに書いています。  検問所またはパトロール中に停止させられた武  装分子がUNIFIL兵士に向けて発砲し、U  NIFIL兵士も自衛のために応戦した。別の  例では追い返された潜入者が、応援をつれて  戻ってきてUNIFIL拠点を攻撃することも  あった。最も深刻な例では、武装分子が待ち伏  せ攻撃で報復した。それも検問を受けたなど事  件の元の場所ではなく、他のUNIFILの拠  点、あるいはパトロールに対して報復した。こういうことが書いてあります。  「ブルーヘルメット」によりますと、こういう武力衝突が、一九七九年一月から八一年六月までの二年半の間に何と二千百九十九件も起きだと報告されています。だから、単純計算すれば一日三回ずつ武力衝突、応戦、これをやっているんです。しかしそれは中断とは言わないんだ、こう言っているんですね。中断するのは、崩れたときに中断するんでしょう、一時的に。これは全部崩れてないんです。  こういうことになっているのですが、今度行く自衛隊は、そういう場面で、ほかの、レバノンの場合でいえば維持軍がそういう行動を起こしておるときに、攻撃を受けてやっている、日本はどうするんですか、そういう武力攻撃を受けた場合はどうするんですか。
  200. 丹波實

    丹波政府委員 先ほど挙げた例が基本的に前提が崩れたと判断できる場合でございまして、先生がただいま挙げられましたのは、例えば小集団あるいはゲリラ的なものとの小競り合い的なそういうことであろうかと思います。一番この場合重要なのは、先ほどの五原則のうちの第五原則で、日本要員は自己の身体、生命の防衛のためにしか武器を使わない、このことが一番重要な視点だと思います。  ちなみに、先ほどからの先生の御質問は、あたかも非常に、参加した平和維持隊の要員が武器を頻繁に使うという前提に立っておられるかのごとき印象を受けますけれども、私たちが各国に調べましたところでは、オーストリアは今まで十八年間こういう活動参加しておるけれども、発砲した例は一度もない、フィンランドもこれまで発砲した例は一度もない、イタリアにつきましても武器使用を行ったケースはない、ポーランドにつきましても一度も銃火を交えたことはない、そういう回答をいただいておるわけでございまして、基本的には私たちは、PKO活動というのはまさに戦わない軍隊であるという認識でございます。
  201. 東中光雄

    ○東中委員 外務省がどこで聞こうが何しようが、国連のこの公式の、「ブルーヘルメット」という公式の文書に、私今言うたことが書いてあるんですから。わずか二年半の間に二千回以上も武力衝突があったと書いてあるじゃないですか、攻撃を受けて応戦したと書いてあるじゃないですか。だから、そういう平和維持軍のことだから、武力行使を伴うものだから平和維持軍には参加できないんだと去年の秋は言うたんでしょう。ところが今度は、ああいう外務省丹波局長発言で、そんなことないんです、イタリアに聞きました、どこにも聞きました、こう言っているんですね。これはもう全く実際の公式の報告を無視した話ではありませんか。  この法律によりますと、派遣された自衛隊は、業務として巡回をすると書いていますね。そして駐留すると書いていますね。駐留というのはどういうことをやるのかということなんですが、どういうことをやるんですか。
  202. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  その駐留と申しますのは、これは緩衝地帯でございますけれども、そこに物理的に存在する、そういう意味でございます。
  203. 東中光雄

    ○東中委員 今の答弁聞かれて、国民だれも納得しないですよ。駐留という法律上の言葉にしてしもうたんですから。  どういうことかといいますと、軍事的紛争地帯で、停戦協定はあったけれども、軍事的な紛争の当事者が対峙しているんですよ、まだ。その間へ、緩衝地帯という言葉が出てきましたが、そこへPKFが入っていって、海部さんが去年の答弁で言ってますよ、割り込んで入っていって、そして、紛争の中で緩衝地帯をつくるんです。そしてその中へ、駐留するというのはそこへ陣地を築いておるということなんですよ。その陣地はどういうものかというのは、先ほど言ったこの国連のマニュアルによりますとはっきりと書いてありますよ。駐留をする陣地は、駐留地という言葉を使っていますが、これは土のうとかそれから石とかそれから土塀ですね、塀をつくってそして防護をするんだ、その外に鉄条網をやるんだ、そして入り口はジグザグにしなきゃならぬ、こうまで書いていますよ。  そういう駐留地点へ、さっき言った「ブルーヘルメット」の報告ですよね、攻撃をかけてくるということがあるんだ、だからそれに対して応戦していおんだ、こう言うんですね。だから、駐留といったらアメリカが日本に駐留しているというような、そんなものと違うんですね。国連平和維持軍の駐留というのは、割って入って、そこで両方の武装部隊の小競り合いが起こるから、それをのけさせるということをやるために行っているんでしょう。だから軍隊が必要なんでしょう。だから自衛隊でなけりゃいかぬとこの法律でもなっているじゃないですか。ほかの者じゃだめなんだ、経験豊かで組織力を持っている自衛隊でなきゃいかぬと書いてあるじゃないですか。総理もそういう答弁しましたね。  そして、そういう陣地で駐留しているときに攻撃をしてきたらどうするのか。自衛隊は何もしないで、それは中断でもないんで、中断二つしかないと先ほど言いましたから、中断じゃないんで、それならじっとしているんですか、撃たれるんですか。それで生命の危険を感じたときは、自衛隊のその部隊として、駐留している部隊としてじゃなくて、一人一人が判断をして、そして重機関銃を撃ったり撃たなんだりする。しかも重機関銃の場合だったら四千メーター先で撃つんですからね。こんなもの正当防衛の概念に入らないんです。こういう仕組みになっているんですよ。  だから、そういうことになっているから、駐留地ということについての定義をしてあるこの国連のマニュアルを、どうしても外務省は出さないんじゃないですか。我々手に入ったからリアルに内容がわかったんです。これは総理、駐留についてあのような説明しかできない、こんな法律はやめるべきだ。  外務省は、このパンフレットを見ましてもはっきりと、国連平和維持軍というのは、「「平和維持軍」は、主として紛争地域の停戦の確保」、停戦合意はあったけれどもまだ確保されてないんです、紛争状態があるんです。そしてそこへ、兵力を引き離す、割って入るということのために武装部隊として行くんだ、そこで攻撃を受けたら武力の行使をするんだということになっているんで、こういうものはまさに憲法が禁止している武力の行使じゃないですか。そして海外における軍事活動そのものじゃありませんか。  そういう点で――だって、撃ってきたら応戦しているんでしょう。日本は応戦せぬでじっとしとれ、撃たれると言うんですか。そういう点について一般的な正当防衛という常識的な話じゃないんです。法律によると、刑法三十六条による正当防衛、三十七条による緊急避難と書いてあみじゃないですか。刑法上の概念というのは厳格なんです。そういうものをこの戦闘部隊へ持っていって、何を言っているか、これはもう本当に、冷静に見たらですよ、全くのナンセンスな法律といいますか、ここまで論弁を弄して憲法違反の自衛隊の派兵、派遣、軍事行動をやるということは、これは断じて許されないです。私はやめるべきだと思いますが、どうでしょう。
  204. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 派兵とか軍事行動をしようとしておるものでは絶対にありませんから、よくお読み願いたいと思いますし、また、当時国連の担当次長であった、よく例に引きますが、ブライアント・アークハート氏は、各国とも維持軍参加に反対の人は、武器使用を強調する。だが、あくまでも自衛のための最後の手段だ。維持軍は非暴力、非強制の敵なき兵士だからこそ力が発揮できるのであって、戦闘状態になったり武器を使えば紛争に巻き込まれ、当事者の一人になってしまう。戦う平和維持軍は決して役に立たないんだということをアークハート氏がこの間日本へ来て対談で述べられたことも私はここで御紹介さしていたださます。  また、いろいろな例もお引きになりますが、例えばレバノンの検問所は、そういった攻撃を受けた場合には、それは退避をしてそこを通しておりますし、また、そのようなことについて無力だと言われる批判に対しては、「やむを得ないことである。それが平和維持軍なんだ」ということを国連の事務次長がコメントとして述べておりますし、決して応戦をして撃ち合って華々しく強制力を使うというのが平和維持軍の使命ではないということを国連の維持軍担当の次長が述べておることでも明らかであります。  そういった経験を踏まえて、我が国が参加するときには、厳しい五条件をつくって、みずからの身体の、生命の防護のためしか武器使用はしないという厳しい規制を置いてつくっておるわけでありますから、そのような、力を行使する、武力行使につながるような軍事行動をしようとするものではない、従来の概念の軍とは違うんだということを私はもう一回申し上げさしていただきたいと思います。
  205. 東中光雄

    ○東中委員 結局、私が聞きました二年半の間に二千百九十九件も起こった武力衝突、駐留という業務をやる場合に、実際に国連の維持軍の駐留というのは、陣地をつくって、攻撃をされるんだ、現に攻撃されているんだ、そのときにどうするんかという答えは何にも出なかった、このことを指摘して、答えようがないんだろうと思いますからやめるべきだと思います。  終わります。
  206. 林義郎

    林委員長 次に、中野寛成君。
  207. 中野寛成

    中野委員 国際協力法案に関連をいたしまして、私は、原則的な問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。なお、各論につきましては、後刻、我が党の和田一仁議員からお尋ねをいたしたいと思います。  外務大臣、どうも御苦労さまでございました。さて、外務大臣が今国連からお帰りになられたわけでありますが、まず、その国連日本の役割についてお尋ねを申し上げたいと思います。  先般、ロンドン・サミット政治宣言におきまして、国連が中核となる国際体制の強化を高らかにうたわれました。その内容につきましては私どもも大賛成でございます。ただ、ここで国連の性格、役割というものが随分と変わってきたのではないかというふうにも思うのであります。  第二次世界大戦の反省から、時の戦勝国の主導のもとに国連が生まれました。その後、東西の冷戦時代が続き、また、その冷戦後の変化を受けまして国連の役割と機能を見直すべきときが来たのではないだろうか。ゆえに、ロンドン・サミットにおける政治宣言も行われたと考えるのでございます。また同時に、国連の機能の根幹は平和の問題でありますから、当然集団安全保障であります。ゆえに、国連と集団安全保障、日本国憲法の整合性をまた整理しておくべき時期を迎えた。これは、建設的な意味での指摘でございます。  こういうふうに考えるのでございますが、そのときに、どうも日本は今日まで国連に対して受け身だったのではないか。政府・与党は、国連決定に従うという姿勢を示し、そして、時に一国平和主義を唱える野党は、国連に任せればいいという考え方を披瀝し、国連そのものを国際協力の場として考え、そこに積極的に提言をし、貢献をし、充実をさせ、活用していくという意識に欠けていたのではないのかとも思うのであります。  軍事大国に国連を悪用させてはなりません。同時にまた、弱小国の数の力に押し切られるという形も、また新たなる心配種として出てきていることも事実でございます。ゆえに、そのバランスをとり、国連民主主義を確立をしていくということは、言うならば日本が今一番期待されている役割ではないだろうか、このようにも思うのでございます。  これらの視点につきまして、総理の御見解をお伺いいたします。
  208. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、国連の役割、また、果たすべき機能が大きく変わってきておるのではないかという御指摘には、そのとおりだと思います。  そうして、何よりも一番大きなことは、国連がスタートしましたときに描きましたいろいろな国連を中心として世界の平和の秩序を守っていこうというようなことについても、五つの常任理事国がそれぞれ拒否権というものを認められた制度の中では、東西の厳しい対立のときは機能しようとしてもなかなか機能できない状況がございました。けれども、最近の一連の国際情勢の変化の中で、冷戦時代の発想を乗り越えるという構図が出てまいりました。昨年の湾岸危機における国連がいろいろな決議をすることによって平和回復に積極的に役立つことができるようになったというのは、まさにその典型的なあらわれであったろうと思っております。  日本国連中心主義と外交の大きな柱を立ててまいりました。そして、常に国連についてはでき得る限りなし得る協力をしなければならぬという考え方で、資金面の協力や分担金の協力は、日本は最近に至ってもうどこの国にも負けないように、一、二を争うところまでしてきたと思います。また、昨年の国連のいろいろな一連の動きを眺め、イラクの問題が起きたときに、これはイラクの力による征服という行為を許しちゃいかぬというので、経済制裁決定をするときは、国連が決議する前に日本政府としては自主的にその決定もいたしました。  今回法律を出して国連平和維持活動日本も許される範囲で積極的に協力をしていこうとしておるのも、国連を中心とする新しい世界の秩序づくりの中に日本も積極的に参加をしていきたいという強い希望と、御指摘になりましたようなサミットでの討議等も踏まえて、国連の機能をもっと高めて、国連を中心にして世界の平和を確立していくべきであると強く願っておるからでございます。
  209. 中野寛成

    中野委員 総理の演説はわかりました。問題は、具体的に日本がどのような提言をし、どのよ、うな行動をとっているかが国民の目に見えなければなりません。そういう意味で、私は先般の外務大臣国連演説もまたそれなりの配慮を加えられたはずだと思っておりますが、問題は、むしろ他の国々の提言の方がダイナミックで、そしてまた発想力に富み、そしてそれが世界の注目を集める、またそれが国際平和に貢献をするという意味での報道がよくなされるのでございます。日本人は、そういう意味で国民は、いつも歯がゆい思いをしているという面があるであろうと思うのであります。  そういう意味で、ちょうど外務大臣お帰りになられたところでございますから、その国連の場を中心にした日本の国際貢献について、新たなる視点に立ってのお考えがあればお聞かせをいただきたい。
  210. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連におきましては、今総理からお話がございましたように、率直に申し上げて、この冷戦構造が終わって新しい世界史が展開される、そういった中で、従来の常任理事国の拒否権を使った時代は既に過ぎ去った。こういった中で、私は新しい国連のあり方というものを今日本は強く主張する、こういったことが極めて大切だろうという認識を持ったわけであります。  日本政府といたしましては、通常兵器の移転の国連への報告制度の確立、あるいはまた、紛争が発生する情報が国連事務総長のもとに集められて、そして事前に警告が発せられて、そして紛争の発生を防止するというシステムを確立することが今後の国連にとっては極めて重要であるということを日本政府の考え方として申しますとともに、現在ジュネーブで行われております化学兵器の問題、こういった問題も、総会の開会中といえども引き続き各国協力して、この残り少ない時間にこの条約が各国で批准を見るような努力をするように御協力を願いたい、こういうことを主張してまいりました。  私は率直に申し上げて、ただいま国連から帰ってきたところでありますけれども、私が立つ前まで何が語られていたか、それはユーゴスラビアの民族紛争、これをどういうふうにこれから解決するのか、もうもてあまして、結局国連で決議をして、そして国連の力でこの問題を解決せざるを得ないんじゃないか、こういう決議案の問題が一つございます。また、イラクに関しては、原子力の、いわゆる核の施設、このようなものをなかなかサダム・フセイン大統領は公開をしない、そういうことで、極秘の情報が国連に入った、それを、この情報を確保するために国連からグループが行ったわけでありますけれども、そのグループが出国停止を受けた、こういうふうな状態をめぐりまして、この問題の扱いがこれから安全保障理事会で、恐らくただいまごろ議論をされている可能性は非常に強い、こういったことが今朝開かれましたG7の外相会議でも非常に大きな問題になっておったことをこの機会に申し上げて、これから国連中心の、一つの国際平和の確立のために、やはり各国が、加盟国が力を合わして新しい国連をつくり上げていくべき時代が到来したという認識を持って帰ったわけでございます。
  211. 中野寛成

    中野委員 日本国憲法の前文は、言うならば、全世界の協力によって平和を維持していこう、日本もまたその中で名誉ある地位を占めたいという、いわゆるグローバリズムで通されております。また、国連もその姿勢を持っております。そしてその帰一するところは何かといえば、まさに集団安全保障であります、その柱は。しかしその集団安全保障が、時に集団自衛権との関係で離れたりくっついたりいたします。今冷戦構造が解けて、そして国連中心主義になったときに、集団安全保障と集団自衛権の概念は、またもとに戻ってくっついてきたという指摘をする学者もいるわけでございます。  しかし、これらのことについて、日本国憲法との関係において実はいつも議論をされますが、空回りでまだ結論を得ていないと言っても過言ではない状況であります。むしろ今後国連を中心にして日本国憲法前文の言うところのグローバリズムの精神に合わせてその実効を実現していこうとするならば、日本はまさに集団安全保障体制、そして集団自衛権、これらのことについては確固たる姿勢を持たなければならないときを迎えたと思うのであります。  そして、そのことが明確であるならば、例えばPKF部隊、またPKF部隊の武器使用の問題が先般来議論をされておりますけれども、例えば日本から派遣された仲間たちの問題と外国の隊員との問題でいろいろと論じられます。しかし、この、今申し上げました集団自衛権の考え方について明確な態度、姿勢が確立をされておりますならば、その問題は議論にならないはずでございます。  これらのことについて明確な整理をしなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。
  212. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  今、委員指摘の集団安全保障でございますが、いわゆる個別安全保障に対応します概念でございまして、学者等いろいろの議論がなされているわけでございます。それと、集団的自衛権というふうなものもまたいろいろの議論がなされております。  私ども従来から、集団的自衛権につきまして、これは憲法の許す範囲を超えるものというふうな考え方をずっととってまいりました。集団安全保障というのが、今後国際社会、国連の場、その他でどのような具体的な形をとってくるのかというのはまだ見定める段階でございませんけれども、そういったものにつきましては十分検討してまいりたい、かようには思っております。
  213. 中野寛成

    中野委員 法制局長官に御答弁をいただきましたから、私の申し上げている対応については総理もおわかりいただいたと思います。  まさに今日本がなさなければならない検討が後送りになってきて、今日こういう国際情勢になり、国連の役割が拡大をされているときに、集団安全保障との関係、すなわち国連は集団安全保障が基本にあるわけであります。しかし、日本は集団安全保障に対する概念の規定が不明確なまま国連に加盟をして、今日を迎えて新たなる役割を積極的に国連に果たさなければいけない、こう言っているわけであります。そこに我が国のしっかりとした外交姿勢だとか安全保障に対する姿勢が明確にならない問題が起こってくる、それが結局、この国際貢献やPKOの問題を議論するときにも、そのことが明確でないがゆえにいろいろな誤解やそごが生じてくるということなんだと思うのでございます。  総理に再度そのことについて御確認をいたしたいと思います。いかがでしょうか。
  214. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 集団安全保障の問題につきましては、かねてから御議論のあったところでありますけれども、我が国は歴史の厳しい反省に立って憲法をつくりました。憲法の禁止する武力による威嚇もしくはまた武力の行使を伴うようないわゆる海外派兵はしないということを誓いました。したがいまして、個別的自衛権の範囲内において日本はみずからの安全保障を確立し、そういうような国の平和国家としての理念を打ち立ててまいりました。したがって、日本の安全保障は世界にも全く例の見られないような、ある意味ではバンデンバーグの決議の唯一の例外扱いではないかと思われる日米安全保障条約によってそれが補完的に確保されている、こういう現実がございます。  したがいまして、その日本のきょうまでとってきた態度、姿勢というものは、過去の歴史の反省に立った日本国憲法の平和理念から来たものであったということであります。同時にまた、国連において行われておるいろいろな議論の中で、独立国家として日本が当然に集団的自衛権を持っておることを、国際法上の権利としてはそれは認められております。しかしそれは、最初に申し上げたように、我が国独自の体験と我が国の憲法からにじみ出てきている問題でございました。  そういったことに関して、これでいいんだろうか、それはまさに研究しなければならぬという問題意識をただいま御提起されたわけであります。法制局長官が答えましたように、まだ国連におけるそれらの問題について具体的なことが固まっておりませんし、日本自身としても、将来の問題についてはいろいろな意見、いろいろな考え方がある中で、政府としてはまだここで、このようになるとかこうするとか確固たる結論を出す段階に入っておりませんが、きょうまではそのような態度で貫いてきたということを申し上げさせていただきます。
  215. 中野寛成

    中野委員 残念ながらお答えになっていません。  国連が新しい時代を迎えた、その中で日本が貢献をしていこう、国連の柱は安全保障であるというところまで申し上げた上で、日本はどういう役割を積極的に果たすんですかと申し上げた。国連がどうなってくるかわからない、先の見通しが立たない、国連から何かの問題提起を受けていない、だからまた考えていないでは困るのでございまして、むしろ、日本国連においていかなる役割を果たすかではなくて、国連がどのように世界平和に役に立つか、そのために日本は提言をし貢献をしていくという積極的姿勢がなければ、今日までと同じように日本国連に対して受け身であるという批判を免れ得ない、こう思うのであります。しかし、これはこれ以上論議いたしましても、総理の今のお答えでは水かけ論でございますから、次に行きます。  私は次に、国連派遣をいたしますPKOの問題、今まさに論じられている問題であります。  一九四八年以来、言うならば四十数年間、四十三年間たっているわけでありますが、その間、先ほどの御答弁によりますとPKF九回、監視団十四回と言われます。その間、参加国は八十カ国にも及ぼうかという数字でありますが、しかし、四十数年もたちますと、PKOまたはPKFの実態も考え方も原則もいろいろな変遷を遂げていると思うのであります。例えば、三十年前、四十年前のことを例に引き出して、今もそれがあり得るかのごとく言うことは避けなければならないと思います。むしろ、現段階における確立された原則と、未来に向かってPKOがいかにあるべきかを我々は論じ、その中でいかなる役割を日本が果たすかを考えなければならないと思うのであります。  そういう意味で、政府としては、PKOの変遷、そして現在の確立をされている、もちろん国連憲章に明文化されているわけではありませんけれども、現段階におけるPKOの実態、それから未来に向かってPKOというのはいろいろな役割を果たすことになっていくと思います。例えば、人権の監視、戦争抑止力としてのPKO、これは幾つか指摘をされているところでありますが、もう一つ、私は、地球環境を守る活動というようなこともPKO活動の中に含まれてくるだろうと思うのでございます。  今、クウエートにおいて、六百本以上もの油井がまだ燃え盛っている。それを消す活動は、クウエート政府から発注を受けた米国企業三社、カナダ企業一社、それだけでやっている。しかし、なかなかはかどらない。日本にそのノーハウはないから日本は手をこまねいているというのではなくて、ノーハウもないかもしれないけれども、しかし結局日本は請け負わせてもらえない。ボランティアでもしあの油井を消す活動参加しようと思えば、それは逆に営業妨害になってしまう。こういう実態の中で、環境調査等にせめてもの役割を果たそうとして努力はされておりますけれども、むしろ国連に問題を提起をして、地球環境を守る立場からその油井を全世界の英知を結集して消そうとする努力、単に資源がもったいないとか、クウエートがかわいそうだからという問題ではない、もっとグローバルな視点に立って考えなければいけないでありましょう。  こういうPKOのあるべき姿を含めまして、政府の御見解をお尋ねをいたします。
  216. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体の例としてお引きになりました例えばクウエートの油井火災の問題、それらについてもっともっと英知を結集して、世界からいろいろな技術や力が集まったらそれをしたらいいではないか、私は一つの御提言と受けとめさせていただきます。  ただ、日本の場合は、できる限りのことをしようというので、例えばオイルスキマーを出して重油の回収作業をするとか、いろいろなこともやりました。同時に、環境とかあるいは地球の緑を守るため、いろいろな問題等もあります。例えば、先ほど来御議論になっておった、このPKFがブルーヘルメットというならば、グリーンヘルメットというように、全世界の環境問題に世界がもっと力を合わせて協力しよう、この問題については、私は、来年の国際会議を大いに成功させるために、日本も積極的に技術的にも人の面でも資金の面でも協力をしていかなきゃならぬと思います。  また、全体の平和確保のために、国連に私どもは武器の移転の国連報告制度というものも提唱してまいりましたし、サミットなんかでも参加国が共同提案をしようというところまで来ておりますから、側面から平和を守っていくこと、同時にまた、武器の移転の公開性だけじゃなくて、予防を、未然に防ぐ国連の組織をつくってくれという予防外交を強化していく提案も日本の政府として国連に提唱をしてきたわけであります。  そういった問題について、未来の問題については幅広く取り組んでいかなきゃならぬし、平和を維持する活動というのも、そのような方向に広がっていくということは私も大いに期待をすべき問題である、こう受けとめます。
  217. 中野寛成

    中野委員 私の質問の最後の部分だけをピックアップしてお答えになられましたが、私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、PKOの変遷の実態と、そしてそれに対する対応、そしてまた未来の姿に対する対応も含めて、PKOのあり方について私は問うたのでございます。  来年の決意までもおっしゃられまして、決してそれを延命とは申し上げませんけれども、そのことではなくて、私がお聞きしたいのは、例えば一九六一年二月、今から三十年前です。国連のコンゴでの活動がありました、ONUC。結局ここでの苦い経験がありますが、そのようなことが今なお行われるということはないはずであると私は思うのでございます。そして現在は、停戦合意参加同意、中立性、原則非武装、非強制等々の原則が確立をされ、そして、先ほど来も同僚議員がいろいろ武器の内容を申されてお話がありましたけれども、今日は今日の国連PKOの原則なり実態というものがあろうと思うのであります。  これらのことについて、あれは昔のことで二度と繰り返しませんと、今日からの原則はこうでありますと、なお未来に向かってはこういう分野も広がるでしょうからこういう努力もしたいと思いますという御答弁をいただきたいと思うのであります。
  218. 丹波實

    丹波政府委員 先生御指摘のとおり、この四十三年間のPKOの歴史を振り返ってみますと、PKOは確かに内容的に変遷を遂げてきております。今日まで二十三のPKOが設立されておりますが、過去三年間で十設立されております。したがって、もう半分弱が過去三年間で設立されておるということで、国連は最近このPKOの重要性というものを、非常に国連において重要性が増しておるということでございます。  二つ目の特色は、依然として、括弧づきのその軍事的な側面における紛争終了後の平和を見守る、後始末という側面は依然としてありますが、他方において、選挙の監視でありますとか、あるいは、ある国が独立し、あるいは紛争後その新しい政府をつくる、その選挙の監視、あるいは行政にアドバイスするといったような文民的な側面、それから最近、例えばエルサルバドル、あるいはカンボジアでも今後行われますけれども、その人権の側面という、そういう分野でPKOの活動が拡大してきておる、先生は恐らくそういう点を念頭に置いてお話をしておられると思います。  そのほか、国連におきましてPKO特別委員会という研究のグループがございますけれども、このグループの中の話題といたしましては、今話題になっておりますところのその環境問題にPKOが活動できないか、それから麻薬の問題について活動ができないか、それから将来はテロ、国際テロを抑えるという分野で活動ができないかといういろいろな研究が行われておりまして、一つのPKOの今後の新しい側面の将来を指し示しているのではないかと考えております。そういう新しい分野が出てくる場合におきましては、あるいはつくっていく分野におきまして、日本としてもそれなりのアイデアを出し、提言をし、積極的に参加していきたいというふうに考えております。
  219. 中野寛成

    中野委員 やっと議論がかみ合ってまいりましたが……。  さて、よく軍事的側面をとらえて、いかにもPKO、中でもPKF部隊が戦争に行くかのごと指摘というか表現をされる向きもあるわけであります。私は、新しい概念が国連においても、また我が国においても生まれてきていると考えるべきではないだろうかと思うのであります。世界的に見て軍隊は、戦争の目的、いわゆる軍事が目的であります。しかし、それはある意味では、それが消されたわけではないけれども、それだけと考えるのは過去の考え方であろうと思います。もちろん自衛隊はそのうちいわゆる防衛出動、自衛戦争のみを想定しているわけで、これは日本国憲法に違反しているとは私も思いません。  戦争は侵略、自衛、制裁と三種類ありますが、憲法前文には積極的な国際貢献を規定し、憲法九条は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという前提のもとに、幾つかの条件を付して戦争を放棄いたしております。「国権の発動たる戦争」とか「武力による威嚇又は武力の行使」、これを「国際紛争を解決する手段としてはこ放棄するんだと規定をいたしておりますが、もし自衛隊を違憲だとするならば、私はこういう長たらしい文章は要らないはずだと思っております。その場合には憲法九条はたった二行で済むのでございまして、日本はいかなる戦争も放棄する、ゆえにいかなる武力も持たない、これだけでいいわけでありまして、憲法というのはいかなる修飾語、いかなるむだな言葉もあってはならないと私は学生時代に教えられました。そういうことを考えますときに、私は自衛隊が自衛戦争を放棄しているとは思わないが、しかしPKOはそれでさえもないということであろうと思うのでございます。ゆえに、そういう意味では軍事的な側面でとらえるというよりも、しかし、ただ、国連の元の事務総長が言われましたけれども、PKOは軍隊のする仕事ではない、しかし軍隊でなければできないという言葉を言われたということでありますけれども、非軍事なんだけれども、しかし、軍事の後始末でございますから軍事の専門家でなければできない。  ただ軍事、非軍事と分けるのではなくて、むしろ今は軍事的側面と、それから災害出動やオリンピック等の運動競技会の支援や南極観測隊の輸送やそういう非軍事的な部門とあるが、その中で、そのちょうど真ん中に位置してPKOというものが生まれた、新しくそういう存在が生まれたと考えるべきではないのだろうか。どっちか、軍事か非軍事か、軍事でなければ非軍事、非軍事でなければ軍事と短絡的に考えるのではなくて、その軍事面を和らげ、なくしていくための役割としてのPKOという新しい存在が生まれた、こう考えるべきではないだろうかと思うのであります。  そういう意味では、日本における自衛隊も軍事面、PKO、非軍事面の三部門を並列的に正式の任務として規定すべきではないか、一こう思うのでありますが、いかがでしょうか。
  220. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員指摘のように、今世界も大きく変わっておりますし、その中で国連が世界の平和維持のために果たしている役割が非常にふえております。そうして、今回の法案によりまして我が国としてもこれまで以上にそういった活動に参画していく、その中に自衛隊の持てる能力、機能等も生かしていく、こういうことでございます。  そういったことを考え、また将来を展望いたしますときに、今御提唱ございましたように、我が国の自衛隊のあり方をどうするか。そのこれまでの目的は、御承知のとおり自衛隊法三条でございますけれども、直接侵略及び間接侵略に対して国を防衛するということを主たる任務とし、そして公共の秩序を維持するためにも働いていくというのが主たる任務でございますが、そこのところに、今御指摘のようにこういった国際的な面での役割、それは軍事ではないけれども軍事的経験、知識のある者でなくちゃならないという、そういった者がやる役割というものも自衛隊任務に入れるべきではないか、あるいはそのほかの任務もというお考えは、そういう御主張は私なりに理解できるところでございます。  しかしながら、御承知のとおり、現在の自衛隊の主任務でございます国の防衛という任務、それは非常に大切な仕事でございますし、現在持っておりますいわゆる基盤的防衛力という形での自衛隊というものはそれに対応するようにできておるわけでございます。そういったことが一つございます。  それから、今回のPKO法案全体の構成というのが決して自衛隊にそういった任務を付与しようという形にはなっていない、全体として日本がこれからPKOにどういうふうに対応していくかということがございまして、自衛隊以外の国の機関あるいは民間の力もいろいろ考えておるわけでございます。そうして、そういった他の国の機関の場合も、そういうPKO関係の任務を主たる任務とするよりも、これまでほかで担当しておりましたいろいろな任務遂行するために必要な力をそれぞれPKOの面でも生かしていこうという、そういう構成になっておるものでございますから、現在の段階では、やはり自衛隊としては、主任務、本来的な任務遂行するために必要であり、また、保有しておるところのいろんな能力をPKFを含めてPKOの面に生かしていく、こういうことでまいっております。  しかしながら、御提議のようかことを、今後、政府部内というだけではなくて、むしろ国民全体の中で真剣に考えていき、安全保障なり国際貢献のあり方、その中での自衛隊の位置づけ、役割というものも議論していくということは必要なことであろうか、将来の課題であろうかと、このように考えます。
  221. 中野寛成

    中野委員 私は、軍事面をふやすというのではなくて非軍事面、またPKOの役割を、それは平和に貢献する、国民生活の安全に貢献する、それもまた自衛隊の主要な任務であるという視点を置き、そしてまた自衛隊員の士気をも考え合わせますならば、そういうことを積極的に考えるべきではないのかと申し上げているわけであります。今論議をいたしておりますのはPKOの問題でございますけれども、しかしこのときに、PKOが自衛隊を抜きにして考えられないということを考えますときに、やはりその自衛隊のあり方についても考えておく必要があるだろうと思うのであります。  ちなみに、カナダ戦略研究所の常務取締役アレックス・モリソンさんの言葉をここにも紹介されているのですね。「過去を忘れるべきではないけれども、将来をよりよいものにすべきです。自衛隊とは別にPKO用の組織をつくる考えもあるようですが、それを実現する唯一の方法はこ別組織をつくる場合にも、「自衛隊の人間を中に入れることです。PKOには、十分な訓練を受けた軍人が必要だからです」というふうにおっしゃっておられます。これもまた至言だと思うのでございます。  そういう意味で、私は、自衛隊のあり方についても、また軍事面を拡大するということであれば当然国民の皆さんの御批判もあるでありましょうし、危惧の念もあるでありましょうが、新しい役割、新しい時代に合った新しい役割が生まれているという視点に立って、政府の積極的な検討が、もちろん国会の論議もそうでありますが、必要であろうと思うのであります。  さてそこで、その自衛隊の問題を論じますときに、シビリアンコントロールの問題を抜きにして考えることはできません。シビリアンコントロールとは、軍隊を政治に従属させて、軍隊の独走や軍隊の政治支配を抑えることである。そのためには、国会における軍隊の統制と政府部内における文民の優位が制度として膳立していることが必要である、こう説明をされております。すなわち、シビリアンコントロールとは、よく文民統制と訳されますが、それは決して内局統制や官僚統制を意味するものではないはずでございます。国民を代表する国会がその権限を統制するものでなければなりませんし、そして政府が、政府の中の文民がそれを統制をするのは、国民イコール国会から与えられた機能としてあくまでもなされるべきであります。最高のシビリアンコントロールとは、まさに国会が直接タッチすることであります。  そういう意味で、我々は、今回のこのPKO、とりわけPKF自衛隊参加させることについての国会承認について、突然申し上げ始めたのではないのでございます。今日までも、国会に防衛委員会、今は安全保障特別委員会がありますが、特別委員会ではなくて安全保障常任委員会を設けるべきであることを長年主張してまいりました。有事法制の検討も、決してこれは有事を望むという立場ではなくて、あくまでも有事になったときもシビリアンコントロールが機能するように検討しなければならないことを主張してまいりました。国家安全保障会議の設置等につきましても長年主張してまいりましたことは御存じのとおりであります。  それは、私たちは自衛隊の存在というものを合憲と認め、そしてその制度を平和のために必要だと考えてきたからこそ、シビリアンコントロールについても厳しく考えてきたのでございます。まして、今回PKO、PKF自衛隊参加させるとなりますと、国民感情、近隣諸国の感情も考慮しなければなりません。まして初めて出すわけであります。これらのことを考えますときに、我々は、まさにここにシビリアンコントロールが、しかも最高のシビリアンコントロールが的確に当てはめられるということでなければならないと思うのであります。  五原則、私は、国連の五原則と言ってもいいでしょうし、それを引用された日本国の五原則と言ってもいいでありましょう、それはそれとして必要性を認めますし、評価をいたします。しかしそれは、原則すなわち歯どめのための判断基準であります。その原則に合致するかどうか、政府の派遣計画が五原則に合致するかどうか、日本派遣する必要があるかどうか、そのことを分析し判断するのは国会がなすべきことであると考えるのでございます。  そういう視点に立って、私は、国会承認が、少なくともPKF自衛隊派遣をするということになった場合には必要だと考えますが、いかがでしょうか。
  222. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおり、国会の承認を求めるというシビリアンコントロールを極めて重く見る立場に立っての御意見には、私もそれはただいま耳を傾けて拝聴いたしました。国会で御議論を願うということ、シビリアンコントロールということ、それを大切に考えておりますから、ただいまこの法案を国会に提案をいたしました。  この法案は、この法案によって今行おうとしております国連に対する日本協力活動の大きな枠組みとかあるいははみ出してはならない限度とかのりとかいうものを、これは事細かに書いてございます。そして、こういった国会で御議決をいただくということは、この枠組みの中で国連平和協力活動をしなさいという授権をしていただいたものと受けとめて、内閣の責任において、この法案の厳しいいろいろな規制、原則のもとでの派遣を行うわけであります。  今委員国会との関係で、それをそのようになっておるかどうかを判断するのはまさに国会ではないかとおっしゃいました。そのことも、角度を変えて見ますと、私どもの議論の中でいろいろ検討したところでございまして、法案の中には、閣議決定します実施計画、これの決定のとき、または変更のとき、または終了のとき、それぞれ遅滞なく国会にそれを御報告することにいたしております。そのことは、国会においては、このような報告に基づいて文民統制の観点からも十分御議論をいただくことになると考えますが、政府としては、その御議論を重く受けとめますと同時に、御審議の結果を、実施計画をいずれ変更する場合の端緒にもなり得るものであり、政府としては、承認にも匹敵するような重みのある議論として受けとめておるところであります。  したがいまして、シビリアンコントロールという大前提に立って御理解をいただきたいのは、全体の枠組み、そして条件、それらすべてをここでお決めをいただき、その枠組みの中で派遣をし、その都度遅滞なく御報告をし、それに対する国会の御議論がありましたときは、それを重大に受けとめて対処していくということでございます。
  223. 中野寛成

    中野委員 三段階にわたって報告をなさる、国会で議論をさせる、国会で出た意見は重く受けとめる、ならばなぜ、恐らくその先に、それはまさにもう国会承認と同じことですよと総理は言いたかったのであろうという気がするのであります。すなわち、なぜそこまでするのならば国会承認ではだめなんですか。
  224. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、一つ一つのものについて、ここからは超えません、限度はこれです、こういう原則ですという全体の枠組みをここでこうして今御議論をいただいておって、その枠組みの中において行いますということを申し上げておるのです。  そうして、この法律の中に書かれておることはそれだけでありますけれども、だからもう決まったことは何をしてもいいんだとは思わずに、これはやはり厳しいシビリアンコントロールの中に入らなければならぬというので、一々遅滞なく御報告をする、御議論をいただく。その御議論は重く受けとめて、政府としては計画変更の場合等にはその端緒にもしていきたい。議論は重く尊重してまいります。ですから、実際それによってシビリアンコントロールは十分発揮していただけると思うし、行政府としてもその点を極めて重く受けとめてまいりますということを改めて申し上げさせていただきます。
  225. 中野寛成

    中野委員 総理は、こういうことをしますから任せてくださいという御答弁でありますが、私は先ほど、なぜそこまでおやりになるのに、あと一歩進んで国会承認にできないのですかと、できない理由をお尋ねしたのでございます。  時間がありませんからこちらで申し上げましょう。恐らく、派遣は行政権の範囲内であると言いたいのが一つでしょうね。これはこうずっとおっしゃってこられた。機動性に欠けるというのでしょうか。派遣要請があって派遣するまでの間にオーストリアは二週間の集結・編成期間を置いています。先般のイラク・クウエート監視団は、四月六日の設置決議から五月六日の展開の終了まで一カ月かかっています。  場合によっては、例えば自衛隊の防衛出動、これなどはまさに機動性を最も求められるのでしょうね。しかし、それでも国会の承認を必要としておりますし、もし事前に承認ができなければ、内閣総理大臣は直ちにこれにつき、その事後、直ちに国会の承認を求めなければならないとなっております。また、自衛隊の治安出動につきましては、出動を事前に命ずるしかなかった場合には、二十日以内に国会に付議しろ、それができない場合には、その後最初に召集された国会において速やかに承認を求めなければならないというふうに規定されているのでございます。機動性ということにかけては、これまたPKO以上の問題でありましょう。  そして、その防衛出動、治安出動を除き例がないというが、防衛出動、治安出動に比べてそれではこのPKOというのは軽いものなのでしょうか。国際社会に、少なくとも武力行使が目的ではないといえ、武器を、一応は自衛のための武器とはいえ持っていくのであります。部隊を初めて日本から海外へ派遣しようというのであります。そのことを考えますときに、我々は決して軽く考えられるものではないと考えるのでございます。まして治安出動、これはまさに武力を行使するのでもなければ、武器を行使する、持っていっているのでもないのであります。こういうふうに考えますと、何としても私どもは納得がいかない。  おえて、憶測ならば幸いですが、国会の承認となると反対の連中がうるさい、万一否決でもされて引き揚げるということになったら国際的に恥をかくと。しかし皆さん、総理、そういうチェック機能が働くからシビリアンコントロールなんです。その機能が働かないのであればシビリアンコントロールではないのであります。まさに民主主義の根幹をなす問題だと言っても過言ではありますまい。  我々は、法案で事細かく書いてある五原則があるとおっしゃるが、それは、言うならば憲法の精神を具体的に書いた基準であって、その基準だけでいいというならば、憲法に合うということだけの一行でも原則は済むかもしれません。すなわち、我々はその判断の基準を個々に検討をし、そしてそれに承認を与えるか否か、その判断をするのは国民がするのであり、国民を代表して国会がするのでありますから、そのことを忘れてシビリアンコントロールはあり得ない、こう考えるのでございます。  あえてお尋ねをいたしますが、この国会承認につきまして、総理は、検討の余地もない、これを何としてもこだわって貫くんだというお考えなのか。今後の国会審議の過程の中において耳を傾けられ、そしてシビリアンコントロールをより一層確立するために、その国会の論議の中において総理もまた検討されるお気持ちがあるのかないのか。中にこの原則があればいいというお考えを、総理初め政府の皆さんおっしゃる。そしてまた時には、国会承認という厳しい条件を民社党がつけるのは、時に五原則を無視して、国会承認さえあれば別の行為がとれるようにしようとする布石ではないかという勘ぐりを言う人もいる。五原則に加えて国会承認と民社党は明確に申し上げているわけであります。私は、そういう視点に立って明確な御答弁をいただきたい。
  226. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 シビリアンコントロールを重要に考えておりますし、また、国会の果たしていただくべき役割が大きいことは、私も議員の一人としてそのことは心からそう思っております。そして、今回法案を提出いたしますのも、その国会で、この法案を通じて、今政府が出そうとしておるものの枠組み、細かいことまでの限度、そういったものも書いております。そういたしますと、ここで枠組みを与えていただいたら、その与えられた枠組みの範囲内で平和維持協力をするということは、これは国会の枠内でお認めをいただいたものだと私は受けとめたいのです。  そして、閣議決定をいたしますときは遅滞なく国会報告をいたします。そして、報告をもとにいろいろ御議論をいただくことは、それなりに政府としては尊重をさせていただきます。そして、シビリアンコントロールの中で、国会の審議、国会の御議論がこの方向だ、今言っておるものと違う点があるんだという具体の御指摘があれば、政府はそれを謙虚に受けて、それは実施計画を変更するときの端緒にさせていただきたいと思っております。そういう議論を尊重しますから、これは実質的な承認にも匹敵するような重みを持ったものに受けとめていきたいということを先ほどから申し上げておる次第であります。
  227. 中野寛成

    中野委員 今最後に総理が、先ほどから申し上げているところでございますとおっしゃったように、先ほど答弁でおっしゃったのと一言一句違わないではありませんか。そこまでいくのならばなぜ国会承認にできないのですかという私の質問にも答えない。その次の具体的に指摘をした問題についてさえお答えにならない。それでは総理が本当に誠意を持ってこの問題に取り組んでいこうという私どもは熱意を感じられません。  時間が参りましたから、終わります。
  228. 林義郎

    林委員長 この際、和田一仁君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。和田一仁君。
  229. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、中野議員に引き続いて、関連して質問をさせていただきたいと思います。  先般の本会議で、党の代表質問という形で国会承認問題について総理にいろいろお尋ねをいたしました。本会議での我々の質疑応答というのは、御案内のように、我々の意見を質問をし、一方的な御答弁だけで、今中野議員からさらに詳しく国会承認の必要性について要求をしたわけでございます。  総理は、今答弁を伺っておりますと、三回とにかく報告をする、報告をして国会でのいろいろな意見はこれを非常に重要に考えて変更の意見等に加える、そして、承認に匹敵する重さで受けとめる、こういうところまで踏み込んだ御答弁をいただきました。それならば、どうして承認そのものがいけないのか。そのいけないという理由を今中野議員はるる説明を求めたわけですが、一向に出てまいりません。もう一回重ねてその点を私はお尋ねしていきたいと思います。
  230. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会で御審議をいただいて法案をつくっていただく、その法律の中に枠組みができておるわけでありますから、その枠組みの中において、与えられた機能のもとで平和維持隊を編成して出すということは、これはシビリアンコントロールを侵すものとは思いませんが、しかし、その都度閣議決定したときには計画をまず国会報告をする、途中で変更の報告もする、終了するときも報告をする。報告のたびに国会では御議論をいただくでしょう。その御議論を文民統制の観点から極めて大切に受けとめておりますと私は申し上げました。そうして、政府はその御審議を踏まえて、意見を踏まえて、今後実施計画をいずれ変更する場合の端緒にもなり得るものであり、政府は承認にも匹敵するような重みのあるものとして受けとめております、こうお答えをさしていただきました。  したがって、法律で枠組みをもらった授権の範囲内においていたしますが、計画の決定のときも、派遣をしてからも報告をし、その報告のもとでの御議論を踏まえて、それに従うべきときというときには計画をさらに変更する端緒ともさせていただくということも申し上げておるのでありますから、これはシビリアンコントロールを決して軽視したりしているわけではございません。
  231. 和田一仁

    和田(一)委員 昨年、やはり国際貢献のために人を派遣するべく法案が出ました。しかし、今回の法案は、それを踏まえて、自衛隊をこのPKOのPKF参加させる、こういう新しい法案になったわけでございます。当時、私どもは、この人の派遣ということは非常に大事だ、こう言っておりました。今度こういう法案が出てまいりまして、従来自衛隊は海外派遣はないんだという思いが強かった国民にとって、今度の法案で正式に派遣がされる、こういう法案になるわけでございまして、国民は昨年かも今日までにそういうものの必要性を認めてきております。したがって、そういうものを背景にこの法案が今討議されていると思うのですが、しかし、我が国にとりまして、武器を携えて海外へ自衛隊派遣するということはこれが初めてのケースになる以上、枠組みができただけでは国民は納得しない。やはりそれは、国会という国権の最高機関がその可否を論じながら、そして、よろしいという国会承認のもとに出す、これが国民国会に預託している日本自衛隊へのシビリアンコントロールの基本である、私がこう考えているのでは違いますか。  今のシビリアンコントロールというのは、いわゆる内局の統制であるとかあるいは官僚の統制である、そういう意味のシビリアンコントロールではないはずでありまして、あくまでも国会がそういうものの可否を論ずるところにシビリアンコントロールがあるのであって、今この国会で議論すること、それがクリアできればその枠の中ではよろしいというのでは、私は多様化していくこれからのPKOの対応についてもそれは十分でない、こう思うんですが、いかがでしょう。
  232. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会で決めていただく枠組みというものは、立法府が行政府にこの枠内でやれという授権行為の幅、枠をお示しになったものと受け取っていきますが、しかし、閣議決定をしたときには直ちにこのような実施をいたしますと、具体的な事実で国連から要請を受けて派遣することになるときには、遅滞なく国会報告をし、この御報告に基づいて御議論をいただき、その御議論を尊重して、もし政府としてそれについてはこうしなければならないと思うときには、それは計画変更の端緒にさせていただきますということまで率直に申し上げておるわけでございまして、どうかその点は御理解をいただきたいと思います。
  233. 和田一仁

    和田(一)委員 ですから、そこまでおっしゃるならば、私どもは、一番国民の納得する国会承認という手続をぜひ欲しいと思うわけであります。  この法案がだんだん煮詰まってきた時点において、六月のころですが、防衛庁長官は、「海外派遣が良いか悪いかの判断防衛庁長官総理大臣、安保会議でするほか、事後の国会への報告事前の了承」を得べく、国会承認が歯どめである、こういう談話をお出しになっているんですが、変わったのでしょうか。
  234. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま御指摘になりましたのは、六月の初めにさるところで講演をいたしましたそのときの新聞報道を御引用なさったようでございますけれども、六月の初めでございますので、まだ政府としてPKOの法案を固めていないことはもとよりのこと、国会へ提出するという方針もまだ固まっていなかった時期だと記憶しております。  そのとき私が申しましたのは、シビリアンコントロールの仕組みについていろいろ話をいたしました。自衛隊行動について、その文民統制、あるいは、先ほど指摘の軍事に対する政治の優先という観点からいろいろなコントロールの仕組みをつくっているんですよ、そして自衛隊行動の軽重に応じて、そのそれぞれの段階のものが当てられるものでございますということを言いまして、国会における承認だとか、あるいはその報告、その前に内閣閣議決定、あるいは安保会議における決定、あるいは内閣総理大臣決定、そしてまた文民でございます防衛庁長官のコントロール、そういったいろいろな段階がある、それをこう組み合わせるわけでございますという説明をしたわけでございまして、国会承認を必要とするというようなことまで踏み込んで言っているわけじゃございません。
  235. 和田一仁

    和田(一)委員 外務大臣、御苦労さまでございました。国連で我が国の立場を表明されまして、PKOの法案を提出して、そして国際貢献に寄与していきたい、こういう御意向の発言国連でなされました。中国、韓国等がやはり我が国のいろいろなあり方について非常に関心が深いので、こういう国々にも非常に配慮しなければいけない、こういうお話でございます。  今この法案にあります枠組み、この五つの原則を私たちはもっともだと思うのです。これは必要ないとは言いません。このことは非常に大事だと思っております。それに加えて、国会がその都度、その都度論議をして可否を決定していく承認、これがあることが私は非常に大事だと思う。我が国の議論は、これは我が国民が理解を高めるために聞いているだけではなくて、国際的にも、日本はどう考えて今度のPKOに出そうとしているのか、そういう判断基準になるのでありまして、そのことをぜひともやるためにも、そして最終決定国会が責任を負う、こういう立場からも、国会承認ということが非常に必要であり、そのことをもって国際連合の中で大きく発言できる、こう考えておりますが、外務大臣いかがでしょう。
  236. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今回、国連の事務総長の要請によってPKOを派遣するといった場合には、あらかじめ国連事務総長停戦のあっせんをする、そしてこの停戦が成立をする、そして、成立したその当事者に対して事務総長はこのPKOの派遣について意見を聞く、そして、当事者から派遣要請されるといった場合に、この派遣国連の安全保障理事会あるいは総会で決議をされて初めてPKO派遣というものが決まってくるというスケジュールがございますから、国連のモデルでは。そこで、ここでいわゆる事務総長が派遣要請するときに、どれくらいの時間的な余裕があるかといった問題が今日国際社会では非常に重要視されているわけであります。  そういった場合に、例えば、例えばでございますよ、国会が休会中にこのPKO派遣事態が起こった場合に、一番短い場合では、従来のケースを調べてみると一週間で派遣が行われている。こういったような状態からどのような形でこの歯どめをかけるかということは、私も文民出身の政治家でございますから、当然この問題については重大関心を持っておりますし、アジア地域の過去の戦争で被害を受けた国々の政治家及び国民は、日本自衛隊を形は国連のPKOであっても出すということについては懸念を有していることも事実でございますから、私はそのような事態を十分踏まえながらこの歯どめというものをきちっと法律の上で書き込んで、そして近隣諸国に十分説明をし、国際貢献をやっていくということが日本にとって非常に大切であるという認識を持っているわけであります。  私はそういう立場で、いわゆる国会承認というものはこれが実現できるということであればこれはもう言うにこしたことはございません。しかし、時間的に国際情勢が、例えばですよ、ユーゴスラビアのクロアチアとセルビアの紛争の場合に国連からPKOを派遣すると言っているわけでございます。その場合にどれだけの時間の余裕があるか、ここらのところが一番の、この国際緊急事態に対応する和平への協力の姿勢を確立するために不可欠の問題でございます。そのような点も十分踏まえて、政府としては法案作成について十分な歯どめをかけた、そして国会にはこの実施要綱あるいは実施要領等について、計画も含めて国会に逐次御報告を申し上げる、また変更があった場合にも直ちに通告を申し上げる、こういって国会のいわゆる審議権というものを尊重しながら国際協力をやっていくことが好ましいというふうに判断をいたしたということも御理解をいただきたいと考えております。
  237. 和田一仁

    和田(一)委員 私は外務大臣の御答弁を聞いていますと、国会承認はいいんだけれども、しかし承認という手続をとると迅速性に欠けてしまって間に合わない、要請があったときにすぐ出せないとこれは国際貢献にならないからという御判断が強いように思うのですね。私は、そういうことは非常に大事だとは思います。大事だとは思いますが、ある日突然紛争が終わったとか停戦が起きたとかいうような事態はまずないわけでありまして、どこそこの紛争については今こういう状態にあるというようなことは外務大臣が一番よくおわかりである。であるならばそういうことを踏まえて、あらかじめ国連要請があるかもしれないということを国会におっしゃっていただいて、それに対してどうかということを国会が十分論議して、そして最終的に間に合うような国会承認のやり方は研究すればあるはずなんです。私は絶対にそれはやるべきだ。五つの原則があれば大丈夫だというだけでなく、私どもはこういうことのチェック、コントロールの機能として国会が無視されることがたまらない。国会がやはりその中に関与しているということが非常に重い。そのことをぜひひとつ御理解いただきたい。迅速性のためであるならば、私は絶対にこれは見直していただかなければならないと思います。いかがでしょう。
  238. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務省といたしましても、このPKOを派遣しておる国々のいわゆる派遣手続と国会との関係を調査をいたしてまいりました。委員も十分御存じのとおり、この国会承認を必要としているところは、武装した場合にはアイルランド、これがございます。私もアイルランドを訪問してPKOの実態を調べてまいりました。しかし、オーストリーはこの緊急事態に対応できないということで今回法案の改正を考えているといったようなことで、ほかはそういう制度はございません。私はそういう意味で、過去の戦争に関しての日本の反省という上に立って、このシビリアンコントロールを強化していくという委員のお考えは私も十分理解をいたしております。  しかし、ここで私は率直に申し上げたいことは、この国会と行政府との関係というもの、この法律に基づいて政府が着実に間違いなく国会にこれを実施計画をつくる段階で御相談をするということが確立されれば、私は十分国会の御審議の機会というものが確保される、私はそのように考えております。  私は外務大臣として、委員もお話しのように、国際紛争が起こった場合に国連から要請があり、その紛争がどのような状態がといった場合には、内閣総理大臣に対して、これの派遣方についての要請をいたす責任が外務大臣にあるわけでございますから、その点は十分留意をしてまいらなければならないと考えております。
  239. 和田一仁

    和田(一)委員 私は納得できません。やはり国権の最高機関としての国会の意思がこの新しい派遣、これからたくさんあるかもしれない派遣について一つ一つ承認を与えていくということが最も大事である、このことはぜひともこれからも私は主張してまいりたい。まだ法案の審議の時間はあるようでございますが、私は続けてそのことは申し上げていきたいと思います。  しかし、きょう与えられた時間は少ないので、別の点で少しくお尋ねをしたいと思うのですが、こういう大事なことを、国連で貢献したい、そのためにPKFにはもう自衛隊を出すんだ、こういう決断をされたわけですから、自衛隊に新しい任務が付与されたと私らは思うのですね。さっき同僚質問の中で、防衛庁長官自衛隊の本来任務をおっしゃいました。それに加えて新しい国際貢献の任務が与えられているんだという認識を私は持っておりますが、防衛庁長官はいかがなんでしょう。
  240. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員指摘のとおりでございまして、このたびの法律案の第九条四項で「防衛庁長官は、実施計画に定められた第六条第六項の国際平和協力業務について本部長から要請があった場合には、実施計画及び実施要領に従い、自衛隊部隊等に国際平和協力業務を行わせることができる。」こういうように明確に規定されておるわけでございますし、またそれを受けまして自衛隊法の方では、第百条の七に、やはり国際平和協力業務を行わせることができると、こう規定されておるわけでございます。  そういった意味におきまして、今回の法案が成立いたしますならば、自衛隊に新しい任務が付与されることは御指摘のとおりでございます。ただ、それが第三条にございます主たる任務あるいは本来的な任務の中には位置づけられていないということでございます。
  241. 和田一仁

    和田(一)委員 これだけ大きな任務が新しく付与されて、私は、南極への自衛隊派遣であるとか、観測のための援助であるとか、運動会の競技のバックアップだとかいうようなのと同じような扱いをして、百条の中で一項目加えればいいというのでは何とも情けない。新しい国際貢献、胸を張ってやっていくんだ、そのために必要なら自衛隊を出しますという法案でしょう、これは。であるならば、本来任務の中になぜ入れられないのですか、私はその理由をまず伺いたい。これが防衛計画大綱の見直しにまでつながるからいけないとかいうようなことでこれが回避されているのなら、これは私は議論しなければいけないと思いますが、なぜ三条に入らないのでしょうか。
  242. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員指摘のような考え方、三条に入れて本来の任務に位置づけるという考え方は十分あり得るということは私もそのとおりだと存じます。理解できるところでございます。しかしながら、今回のPKO協力法案の全体の構成をお考えいただきますと、これは自衛隊だけではなくて他の国家の機関あるいは地方団体、あるいは民間の力なんかも参加することになっておるわけでございます。そういう他の国の機関につきましても、これはやはりそれぞれの任務がそこにある、それぞれの任務遂行するために備えている力をPKOの方で使う、自衛隊もそれと同じような仕組みになっているわけでございますね。そういう全体の構成を考えますと、やはりこういうことかと存じます。しかしながら、位置づけが、条文の置き方がこうであるからこの業務が重要でないとは考えておりません。私どもも、この任務が与えられますならば、その重要性を認識しながらそれを果たしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  243. 和田一仁

    和田(一)委員 他の官庁から、あるいは民間からの人と一緒に行くから、こういうことでございましたが、少なくもPKFについては、この法案を読む限り自衛隊以外は行かないのでしょう。そのPKFの話をしているのですよ、私は。それだけ大事なことが、これは自衛隊以外には出せないとはっきり明記してあるのですから、それだけ大きな部分を新しい任務として与えていくということは全体のバランスじゃないですよ、これは。自衛隊にとってのこれは大きな仕事だと思うのです。
  244. 池田行彦

    ○池田国務大臣 確かに、PKFにつきましては自衛隊だけでございますけれども、しかしながらそれぞれの任務遂行するために必要な力を活用していくという点では同じだと思います。  それからまた、いま一点、先ほど申しましたように、将来の課題としてどういうふうに自衛隊を考えていくかというのは、国民的に大きく議論しなくてはいけないのだ、こう思っているわけでございます。もしそうして本来任務にそう位置づけるといたしますならば、それに必要な人員なりあるいは装備などもきちんと考えなくてはいかぬ、こういうことになるわけでございます。今のところは全体としての考え方が、私どもはそこまで考えておりませんで、やはり自衛隊の国を防衛するというその主任務を中心とする任務遂行のために保有している力、人、あるいは装備も含めましてそれを活用するという考えでやっておりますので、そういった考えのもとで、そういった形態でやります活動は、やはり三条業務に位置づけるのは少なくとも尚早ではないか。もっともっと国民的な議論を経た上でいかがすべきか決定すべきものであろうと考える次第でございます。
  245. 和田一仁

    和田(一)委員 私は、二十四万の自衛隊員の中からわずかの人が派遣されることではあろうと思いますけれども、しかし数の問題ではない、新しい国際貢献に役立っために、自分らは国際の部隊の中で、それも日本を代表して、国連の意思を体して平和のために挺身するのだ、こういう新しい任務を付与するからには、私は今までと違った自衛隊任務がここにできてきた、そう理解しているわけであって、その全体像を見直すならば見直すときである、私はそう思うのですね。そのことがあるからできないのだというようなことで、先ほど来いっぱい言われておりますこの大事な仕事に、雑則などで扱うような出し方はしてほしくない、こういうことを私は強く要求しておきます。  きょうは時間がありませんので、わずかな時間の中でもう一つだけ、せっかく科学技術庁長官もおいでいただきましたので、これに関連してどうしてもちょっと一言だけ言っておきたいことがございます。  細かいいろいろな問題はまだ機会がありますので他に譲りますけれども、今イラクの核の問題であるとかそれから北鮮の核査察の問題であるとか、国際社会の中において核に対する考え方というのは非常にデリケートというか神経質になっております。というのは、冷戦構造が終わった後の核の分散というものは極力これは避けなければいけない、やはりこういう国際的共通の認識があると思うのですね。そういう中で、技術庁長官、プルトニウムの輸送の問題がもう来年に迫ってまいりました。これは我が国のプルトニウムの輸送は安全でなければいけませんが、今担当長官として、今の体制、政府が考えている体制でいいとお思いでしょうか。
  246. 山東昭子

    ○山東国務大臣 お尋ねのプルトニウム輸送の護衛の問題につきましては、平成元年十二月十九日に開催されました関係閣僚打合会において、海上における犯罪の予防及び鎮圧は第一義的に海上保安庁の任務であるので、護衛船として海上保安庁の巡視船を派遣するものである旨の確認がなされており、以来、この方針に沿って関係省庁とも協力し、諸準備を進めてきているところでございます。  プルトニウムの海上輸送に当たっては、護衛船の同行に加えて、輸送船におけるさまざまの核物質防護処置を講じ、また広範な通信体制の確立等を図ることとしており、今回の輸送に係る防護体制は万全なものになる、そのように考えております。
  247. 和田一仁

    和田(一)委員 私は三月七日の内閣委員会でこの問題を取り上げて、これでいいかという確認をしております。  総理大臣、きょうは総理にお尋ねできる機会なのでぜひお答えいただきたいのですが、こういう大事な問題に、これはかつての経験からいっても、我が国がプルトニウムを輸送するときにはよその軍隊の護衛という中でやりました。今回の計画は、新しい護衛船をつくったことによってやるという従来計画のままで総理はよろしい、そのとおりやるつもりでしょうか。その辺をお聞きいたします。
  248. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題につきましては、いろいろな御意見があり、政府といたしましては、プルトニウム海上輸送関係閣僚打合会を開き、そこの平成元年十二月十九日の申し合わせに従い、ただいま申し上げましたような護衛のための巡視船の建造を進めたところでございます。それによって万全を期していきたいと考えております。
  249. 和田一仁

    和田(一)委員 今総理お答えで、私が先ほど申し上げたような今の核に対する非常に細かい配慮を必要としている今日、それで総理は十分だ、我が国はそれで大丈夫だと、日米の原子力協定、日仏原子力協定、そういうもの等がクリアできるとお考えでしょうか。もう一回御答弁を伺って、私は時間がなくなりましたのできょうはそれでやめますが、総理の御答弁をお願いいたします。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そういう各方面のいろいろな意見を総合して、先ほど申し上げましたように政府としても検討をし、そのために海上輸送の護衛船として巡視船を建造をしてその準備を進めたということでございます。
  251. 和田一仁

    和田(一)委員 変わらないですね。  終わります。
  252. 林義郎

    林委員長 次に、楢崎弥之助君。
  253. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 進民連を代表して質問いたします。  私がこの二日間の一番最後でございますが、いろいろ議論を聞いておりまして痛感したのは、どうも法律論と実態論がまぜこぜになっていますね。例えばきのうでしたか、これは新聞ですけれども、中断のくだりですよ、現地隊員が行うことになる、国連とも協議、だれの目にも明らかな状況が出てくれば中断する、だれの目にも明らかな状況なんというのは、こういう法律審議のときにはなじまないのじゃないですか。だから、私は議論を聞いておって、憲法上どこまでが許されてどこまでが許されないのかの範囲について、どうも政策上の選択はあり得るかもしれませんけれども、憲法に違反するか否かの重大な、何というかメルクマールとでも申しますか、そういうことがどうも御答弁を聞いておって、ケース・バイ・ケースの判断にゆだねられておるような気がしてしょうがないのです。それで大網をかぶせた。ところがその網の目をくぐっていわゆるシビリアンコントロールの崩壊に通ずる、そういう気がしてならないのであります。  もう一つは、どうも言葉の遊戯がひど過ぎるのじゃないですか。きのうですか、「束ねる」というのは何ですか、あれは。指揮官隊員個人個人の権利を束ねて、そして命令することもある。これは指揮じゃありませんか。私は、防衛庁長官ほど学がないから辞書を引いてきた。新世紀百科辞典、これは学研ですね。「束ねる 統率する。」と書いてある。広辞苑、岩波書店。これも「束ねる 統率する。」と書いてある。それから、これは国語大辞典。これも学研。「〔ある集団・組織などを〕まとめて取りしまる。」軍団を取り締まる。何ということはない、「束ねる」といったって、これは統率することですよ、部隊として。そんな言葉の遊戯をしちゃいけませんね。  そして何ですか、今までは、去年の協力隊法までは、平和維持軍、維持軍と言っておったのを、今度は急にフォースを隊に変える。日本語で軍を隊に変えるといったって、国際的にどういう意味があるんです、それは。あなた方は国際化、国際化、国際通念ということをよく一言うが、それなら国際通念に合うようにやったらいいんじゃないですか。そういうふうに私は思えてしょうがない。  だから私は、ちょっと順序立てて聞きますけれども、まず官房長官、あなたの談話でございますけれども、この中に、今の言葉を、フォースを隊に変える、これは出ていますね。それから「我が国から平和維持隊に参加する場合の武器の使用は「要員生命等の防護のため」に必要な」最小限度。「生命等」と書いてあります。この「等」とは何を含みますか。
  254. 野村一成

    ○野村政府委員 お答え申し上げます。  「生命等」という言葉の中、これは法案の第二十四条に書いてございまして、「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員生命又は身体」、そういうことでございます。
  255. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 なぜ平和維持隊という字を使ったか、こういうことですか一なぜ平和維持隊にしたかと。前は平和維持軍と言っていたんじゃないか、こうおっしゃるんでしょう。これは三党合意。自公民三党、この皆さん方がこれの原動力になったんですから、その中で、平和維持隊と言う方が日本人にぴったりくるだろう、こういうことで平和維持隊と、こう使ったんで、別に……。政治的なこれはやはり判断でしょう。日本には自衛軍というものはありません。自衛隊はある。そういうようなもので、日本人の気持ちには自衛隊の方がぴたりくるであろうと思いますよ。大してそう難しいことはありません。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう重大な法案ですから、緊張しておる中で息を抜くことも必要でしょうけれども、ちょっと度が過ぎるんじゃございませんか。まじめに、私どもは一字一句をまじめに解釈しながらやっているんですからね。それで、まあ大したことはないんじゃないですかとか、そういうことじゃないんですよ。  それから、いわゆる正当防衛のところに外人部隊のことが入りましたね。このときに、何と言ったらいいんですかね、外国の人ですよね。外国の人が正当防衛に値するような危機がある場合にはお手伝いをする、お助けをする。そのときの理屈、総理、人間の基本的人権を尊重する立場に立ってのぎりぎりの措置、そういうふうなんですか。基本的人権を尊重する立場なんですか。
  257. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは法文上の法令行為とか、あるいは、この法文において業務行為として、規定はされておりませんということを申し上げるとともに、御質問の中で、そのときそういうのが横にあったときにはどうするか、日本人か外人かということでいろいろ聞かれましたから、そのときには^日本国の国内においても正当防衛とか緊急避難とかいろいろございますが、人道的立場、人権尊重というぎりぎりの原点に立ってそういったことは排除されるものではない、私はそうお答えをいたしました。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理、わざわざ人道的立場とおっしゃらないでもいいんですよ。どうしてかというと、あなたは別の面では刑法の三十六条を援用されましたね、いわゆる「正当防衛」ですよ。それから「緊急避難」ですね。  それでは、「正当防衛」ですね。三十六条、「他人ノ権利」とありますよね。だからこれは、「他人」は外国人も含むんですよ、法律上。そうでしょう、法制局長官。だから、この条文でできるんですよ、わざわざ基本的人権なんて言わなくても。  それから、もう一つ聞いておきます。防衛庁長官隊員生命にいわゆる急迫不正の侵害等が迫ったとき、この三十六条を発動しますね。じゃ、食糧庫、弾薬庫、医療庫、武器庫、倉庫ですね、そういうものが急迫不正の襲撃を受けたときはどうなるんです。
  259. 池田行彦

    ○池田国務大臣 この法律によりますと、「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度でこ云々とな。っているわけでございます。したがいまして、今申しました要員の「生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由」が見られるかどうかということで、生命、身体以外の対象がこの武器使用の要件になるというケースはあると思います。  それは例えば、時々言われる例でございますけれども、砂漠地帯でここをずっと巡視を、パトロールをしておる。そのとき、オートバイでございますかあるいはジープでございますか、そういった輸送手段でやっておる。それをその場で奪われた場合には、文字どおり生命の危険が生ずるケースもあり得るわけでございますから、そういうことはあるということでございます。  しかしながら、今おっしゃるような倉庫ですね。倉庫がそういうことになるかどうかという御質問でございますと、これはやはり具体のケースにならなくちゃ何とも申せないところでございますけれども、一般的に申しますならば、さっき申しました砂漠の中を動く輸送手段に比べればそういうことになるケースは確率は非常に少ないんしゃないのかな、こう思いますし、いずれにしても、具体のケースを見なくてはいけません。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど私は刑法の三十六条の援用のことを申し上げました。この三十六条の自己の権利あるいは他人の権利。それから三十七条の「緊急避難」には文章としてはっきり書いてありますが、三十六条のこの「権利」というのは、これはこういうことになっているんです、一般的な解釈は。生命、身体、自由、名誉、貞操、財産、財産が入っているんです、財産が。総理は三十六条を援用されました。財産が入っている。しかも、これは個人だけでなくて国家のものも入っている、そうすると、軍隊の、自衛隊の食糧も武器も弾薬も医薬品も国の財産じゃありませんか。そうすると、それが急迫不正の襲撃を受けたときは守るのが当然じゃありませんか。三十六条を援用しているんでしょう。そうでしょう。
  261. 池田行彦

    ○池田国務大臣 確かに刑法三十六条ではそのような規定になっていると思いますけれども、ここで、この法案で三十六条を援用しておりますのは、これは本法案二十四条の第四項だと思います。その四項の書き方は、「前三項の規定による小型武器又は武器の使用に際しては、刑法第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」こう書いてあるわけでございます。そういった意味で、あくまで、本法案に基づいて武器を使用するのは、先ほど申しました自己を含めて要員の「生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要がある」、そういう場合でございます。そういう場合に使用するのだけれども、そういう場合であっても、人に危害を与えるのは、そういうことは刑法の三十六条あるいは三十七条に該当する場合でなくちゃいけない、そういうふうに書いてあるわけでございます。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 危害を与えるかどうか聞いているんじゃないですよ。そういう財産を守らなければ、いけないんじゃないんですか。総理は三十六条を援用されて、いわゆる外人のことをおっしゃった一これは今あなたの説明の中にも三十六条を援用しておるじゃありませんか。そうすると、守るのが、私が言っているのは法律上ですよ、当然じゃありませんか、それを私は言っているのです。できるできぬは別ですよ、実際には。法律上はそうじゃございませんか。
  263. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほども申しましたけれども、本法案でどういうときに武器が使用できるかということは、法案二十四条の第一項から第三項までに書いてあるのでございます。なお、PKF参加する自衛隊の場合は三項でございます。そしてそれは、先ほど申しましたように、要員の「生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要がある」場合でございます。そうして、その条項に基づいて武器を使用する場合に、どういうふうな使用の対応をするべきかということが四項に書いてある。そこで「正当防衛」あるいは「緊急避難」に関ずみ刑法三十六条、三十七条の規定が援用されておりまして、そして、そういった「正当防衛」、「緊急避難」に該当する場合でなければ人に危害を与えてはならない、こう書いてあるわけでございます。したがいまして、この法案によって食糧であるとかその他の物資を防衛する義務があるかないかという点につきましては、一般的にはございません。ただ、そのある意味というのは、先ほど申しました「生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由」という中には、先ほど申しましたようなオートバイなりジープを確保しなければいけないようなケースがある、あるいは先ほどのケースで、砂漠の真ん中で携行している食べ物を奪われようとしたらやはり同じことになるかもしれません。しかし、それはあくまで生命、身体防護という関係から出てくるわけでございまして、この法案で、正当防衛だからあるいは緊急避難だから、当然に、物的なものが危殆に瀕するときに武器を使用しなくちゃならないということにはなっておりません。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 人に危害を加えるかどうかを聞いているんじゃないと先ほどから言っているでしょう。書いてあることを全部言ったら時間は足りませんよ、あなた。  法制局長官、一言でいいですよ。私が言っているのは理を得ているんじゃないですか。総理大臣は三十六条を援用なさった、「他人の権利」というところで、外人を守るという。それならば、三十六条を援用するのだったら身体だけではありませんよ、三十六条は財産も入りますよ。そうすると、個人だけじゃなしに国ということも三十六条では対象になっているから、これは国の財産である弾薬とか食糧とか医療品、そういうものを守るということは、三十六条からは、援用すれば当然出てくるのではないですか。実際の場面でどうなるかは別として、法律論を言っておるのですよ、私は。
  265. 工藤敦夫

    ○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。  突然のお答えで、私も資料を十分に備えておりませんが、いわゆる刑法の三十六条におきましての「正当防衛」、こういうことで自己または第三者の権利の防衛というふうなことが言われておりますし、「権利」というのは厳密な意味での権利だけでなくて、広く法益、先ほど委員おっしゃられました生命、身体、自由、財産のほか名誉、貞操も含まれる、こういうふうなことがございます。ただ、他人の法益に関しまして、それにも、私の今手元に持っておりますのでは、他人の中に個人のみならず国家や社会も含まれるかどうかは争われているというふうな記載もございまして、そういった点で私も正確な意味での三十六条――しかも三十六条具体の問題になりましたら、これはまさに裁判で争われる問題でもございますし、ちょっと具体の措置とここの今の委員の御指摘とをうまくあわせてお答えするだけの自信はございません。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国家が対象になっておる、国家あるいは国家に準ずるものというふうになっておるのが定説なんですよね。都合の悪いときはそういう答弁をしてはいけませんよね。  それで、私は過去のあれを振り返ってみたいのですよね、余りくりくりくりくり変わるから。いいですか。去年の平和協力隊法案のとき、まず自衛隊の問題で最初言われておったのは退職出向、それから併任になって、これはどうも周辺諸国にぐあいが悪い、その次出てきたのが休職出向、これは自衛隊に穴があく、それで今度は併任とまたなった。しかし、指揮系統は二つになる。去年のやつですよ。それで、今度は派遣の問題が出てきた。これが大問題になった、部隊として輸送業務をどうするかと。そして、一番最終的に併任になったのですね。そして、海外派兵の懸念がないように協力隊としての網をかぶせた。それで、指揮系統一本化を明確にするために、内閣直属になった協力会議総理設けましたね。今度はそれがなぜないのです。  それで、上原委員がきのうでしたか質問をしました、昨年の国連平和協力法案と今度のPKO法案の差を言ってくれ。そうしたらあなたは代表的に一つ言った。国連平和協力法案は多国籍軍への支援活動、後方支援ですね、今度は、まあ三条でしょう、人道的な国際救援活動、こうなっておる、ここが違いだと。ここだけじゃないのです。大事なところで大分違っているのですよ。言いましょうか。去年のやつには兵力の引き離し等の平和維持軍としての活動はなかった。重大な相違です、これは。今度入っていたではありませんか。それから、自衛隊のみ要請する業務とそれ以外の業務を今度は区分された。この前はそうではなかった。協力隊業務として執行するようになった。そして、御承知のとおり今度は撤退が入ってきた。それから、まだ重大な点がある。「輸送の委託」が今度入ってきた。さっき言ったとおり、この前なかった。この輸送の委託が入ってきたから、自衛隊が組織として動くようになった。これは二十条ですよ。重大な違いです、これは。それから今度はいわゆる装備実施計画ですね、基準がわからない。それで、組織としてどう動くか、これが二十四条の三項と四項でしょう。それから、国連事務総長が認める限度で武器です、「装備」、これは第六条の四項、これも去年はなかったのです。さらに武器の使用について、これが大きく変わっておる。前回は、自己の生命または身体。今度はどうなったか。自己または他の隊員、これが入っているのですよ。だから組織的になるのですよ。(「束ねている」と呼ぶ者あり)ええ、そのとおりです。そして今度は二十四条の、これも三項、四項、組織としてその武器を使用する、これが今度入ってきた。前回はなかった。大きな相違でしょう、大きな相違。  しかも、もう一つ言っておきますが、あなたは五原則、五原則があるから心配ないんだとおっしゃっていますけれども、いいですか、五原則とおっしゃっているその停戦合意参加の同意及び中立厳守、この三条件というのはもともと国連平和維持活動参加に当たっての基本原則にあるのですよ、わざわざこう言わなくても。あるのです。それから撤退、これもあなた、答弁していたでしょう、日常茶飯事。そうすると、五原則のうち最後に残るのは何か。つまり武器の使用です。これなんです。だから、これを除けば特筆すべき原則なんてないんですよ。だから従来からの政府の見解からしても、武力の行使を回避する歯どめにはならないんだ、この五原則は、はっきり言って。全部部隊として動けるのでしょう。そしてこれは、法制局長官、長官、あなたに宿題ですが、いいですか、さっき私が言ったように、三十六条は国の財産も守るのだから。そうすると、九十五条ですよ。武器を守るために今度は武器は使わない、あなたはおっしゃっているが、これは三十六条と矛盾じゃありませんか、財産を守るんだと。守らぬでいいとどうしてなるのです。だから非常に矛盾があるんですよ。ばらばらなんですね。ばらばらです。  それで、これはもう時間さえあれば何ぼでもつつくところはございますけれども、緊急援助隊の問題について聞きますが、自然災害と人的災害とありますね。この人的災害に戦災は入りますか。
  267. 中山太郎

    ○中山国務大臣 戦災は入りません。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。  それじゃ、二次災害、戦争の二次災害は入りますか、直接災害ではなしに。
  269. 川上隆朗

    ○川上政府委員 昨日も御答弁申し上げましたように、紛争に起因する災害は今回のPKO法案で対処する、それ以外の自然災害、主として自然災害、それから先生おっしゃいました人為災害、ガス事故等でございますが、こういうものは従来の緊急援助隊のもとでやるという仕分けでございます。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、もうこれで最後にしますが、ことしの予算委員会で私は環境庁長官とそれから科学技術庁長官にお伺いしました。つまり、湾岸戦争のあの油田が燃えているやつ、それからペルシャ湾に油が浮いている、これの排除、この災害は一次災害なのか二次災害なのかとお伺いしました。そうしたら両大臣ともにわかに区別はしにくいとおっしゃいました。私はそうだと思います。今の答弁でいけば、二次災害も入りませんね、緊急援助隊の場合は。ちょっと最後に。
  271. 中山太郎

    ○中山国務大臣 紛争によります。つまり武力による紛争によって起こりましたいわゆる一次災害、二次災害というものは国際緊急援助隊活動目的には入っておりません。あくまでも、私どもが考えておりますものは、自然災害及び人為災害としては例えば原子力発電所の爆発の場合とかあるいはガスの爆発した場合、こういったようなことを対象に考えていると御理解をいただきたいと思います。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。
  273. 林義郎

    林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会