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1991-08-30 第121回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年八月三十日(金曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 牧野 隆守君    理事 新井 将敬君 理事 園田 博之君    理事 中村喜四郎君 理事 浜野  剛君    理事 原田昇左右君 理事 井上 一成君    理事 上原 康助君 理事 遠藤 乙彦君       麻生 太郎君    宮下 創平君       岡田 利春君    川島  實君       土井たか子君    松原 脩雄君       玉城 栄一君    古堅 実吉君       和田 一仁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省アジア局 谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         長         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合 丹波  實君         局長  委員外出席者         防衛庁防衛局防 藤島 正之君         衛課長         大蔵省国際金融 河上 信彦君         局開発金融課長         外務委員会調査 市岡 克博君         室長     ————————————— 委員の異動 八月二十九日  辞任         補欠選任   高沢 寅男君     土井たか子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 牧野隆守

    牧野委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。中山外務大臣
  3. 中山太郎

    中山国務大臣 本日は、ソ連情勢我が国対応について申し述べます。  十九日発生をいたしましたソ連政変は、ソ連国家ソ連国民が真に民主主義、自由、人権尊重に立脚した民主主義国家の道を歩み続けるかを問う最大の試練でありました。  我が国は、事態に対する強い遺憾の念を表明するとともに対ソ支援措置停止を公表いたしました。特に二十日夜から二十一日朝にかけて実力による抑圧が行われたことに対しましては、官房長官よりこれを強く非難し即刻停止を求める談話を発表いたしました。これら我が方の立場は、逐次外務省欧亜局長より在京ソ連臨時代理大使に伝達せしめました。  我が国は、ソ連情勢の把握・分析に努めると同時にサミット参加諸国首脳との緊密な協議を実施いたしました。総理と私より、EC議長国を含むすべてのサミット参加国との協議電話にて実施したほか、さらにアジア諸国も含め外交ルートでのさまざまな協議を実施し、情報収集対応に遺漏なきを期したところであります。  政変の後、ゴルバチョフ大統領ソ連邦共産党書記長を辞任するとともに、ソ連邦共産党中央委員会解散を求める声明を発し、一九一七年以来のソ連邦歴史における歴史的転換点を画する事態を迎えました。ゴルバチョフ大統領は、二十六日には、連邦最高会議臨時会期において、これまで断固たる措置をとらなかった自己の責任に言及するに至っております。  さらに、政変後の情勢の急激な変化により、連邦体制の見直しか大きな政治的争点となっており、連邦条約の修正ないし大幅な変更を行わざるを得ない状況となっております。二十七日には、十五共和国より成る経済協定締結考え方も急浮上しております。この間、ロシア共和国とその他の共和国との間のあつれきも伝えられるに至っております。  バルト情勢につきましては、二十六日、我が国として、バルト三国がソ連邦に編入された経緯にもかんがみ、これら国民の強い願望と自由な意思を反映した平和裏独立を支持し、その早期実現を期待する旨、官房長官より談話を発出いたしました。また、新井大使団長とする政府ミッションバルト三国に派遣することといたしました。  日ソ間におきましては、まず、政変の際、二十一日、総理エリツィンロシア共和国大統領電話会談され、また、二一十二日にはゴルバチョフソ連邦大統領とも電話会談をされました。さらに、政変後の新しい情勢日ソ関係の今後の展望につき議論するために、斉藤外務審議官ソ連に派遣し、ゴルバチョフソ連邦大統領エリツィンロシア共和国大統領チェルニャーエフ・ゴルバチョフ大統領補佐官クヴィツィンスキー連邦外務大臣代行ロガチョフ連邦外務次官クナッゼ・ロシア共和国外務次官会談をさせましたところであります。  対ソ支援につきましては、今後ともロンドンサミットでのコンセンサス並びに拡大均衡という我が国対ソ政策基本を踏まえ、新しい状況のもとで適切な対応をとっていく考えでございます。     —————————————
  4. 牧野隆守

    牧野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新井将敬君。
  5. 新井将敬

    新井委員 ソ連邦政変を受けて我が国としてやはり一番最初考えることは、この政変北方領土関係というふうに思います。北方領土がこの政変によって返還されるには我が国がどういう作戦を新たにとるのか、こういうことをもう一度考え直す必要があるんではないかと思います。  ロンドンサミットあるいは米ソ首脳会談で、北方領土日本の正当な領土であり、また、その返還なくしては対ソ大型金融支援といいますか、直接投資を含む大型金融支援はないということがサミット参加国の合意になっているのが現状であります。その中でこの政変が起きた。そういうことで、我が国としては注意深く物事を運ばなければいけない、そういう時期に差しかかったと思っております。  まず最初外務大臣にお聞きしたいのですが、新連邦条約をめぐってこの政変が起きたと言われておりますが、新連邦条約が締結される、似たものが締結されるとして、我が国北方領土交渉相手連邦であるのか共和国であるのか双方であるのかということにおいて、これからの政策の重きをなす方向が変わってくると思うのですね。新連邦条約を読みますと、国境線変更というのは連邦共和国共管となっています。外務省考えでは、連邦の方が強いんじゃないかという見方を、これは政変の前ですけれどもしておりますが、一方、この新連邦条約の資源のところを見ますと、土地の所有権というのは明らかにこの共和国所有物である。そうなりますと、北方領土自体所有権は明らかにロシア共和国に属している、境界線変更共管である、どうも共和国の方の主権北方領土の問題に関しては強い、そういう色彩が強く見られるような気がしておりますが、大臣のお考えはいかがでございましょう。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 連邦条約案なるものが二十日に五カ国と署名がされるという一応の予定がございましたが、それがクーデターによって一挙に延長、延期されるという事態に相なっておることは御承知のとおりでございます。今お述べになりましたような点から、政府といたしましては、連邦国境線にかかわる諸外国との交渉権及び条約締結権は引き続き連邦が有しているという認識を持っております。一方、ロシア共和国は、実態面で持つ重要性が増大してい名ことは事実でございまして、政府としても同共和国との関係をこれから強化していくという考え方でございます。  いずれにいたしましても、改めてこの新連邦条約の案が練り直されました際に、もう一度国境線の画定問題、領土所有権問題等につきましては、新しいソ連連邦条約が成立した段階において政府としては対応する考え方を確立しなければならないと考えております。
  7. 新井将敬

    新井委員 大臣のお答えになるとおりだと思いますが、今後の民主化、そして連邦共和国力関係を推測しますと、一つ言えることは、やはり共和国の権限が強くなる。特にロシア共和国北方領土を持っております。もう一つはやはり民衆意思、今までのように独裁者が例えば返すといって返せるというものじゃない。それは、ことしのゴルバチョフさんの来日のときにも足かせになったのでありましょうけれども、いわゆるロシア民衆の中に北方領土日本のものであるという世論が起きなければ、これからの民主化したソ連邦あるいはロシア共和国というのは、幾ら首脳会談をしても、この民衆意思を無視して北方領土返還ということはできないと思うのです。  その観点から見ますと、いわゆる極東ハバロフスク地方、沿海州あるいはサハリン州、こういう極東との交流というのが必ずしもその観点がらは、なされてはおりますけれども不十分ではないかという気がしてなりません。最近、外務省の方で行っておられることは私も承知しております。各極東サハリン州の知事との意見交換あるいは極東を重視したミッション派遣等を行っておりますが、さらに極東マスコミ、インデペンデントなマスコミがありますから、そのマスコミ、それからテレビ局、そういうものともう少し接触を強く図る。  それから、日本の方から北方領土に関する日本ビデオ作成ロシア語でつくったビデオですね。正当な日本国の権利というものを主張する、そういうビデオを出すことは何も恥ずかしいことはありませんから、そういうものもやはり極東マスコミ新聞社テレビ局にどんどん、日本技術支援のときに招く人も青年で二百人、三百人来るわけですから、そういう人もどんどん入れて、なるべくマスコミのリーダーシップを持った人をたくさん招いて、北方領土を含めたロシア語ビデオを持って、日本のハイテクやそういう向こうが望んでいるような直接投資工場、そういうものもあわせて渡して帰す、あるいはそれをつくって現地で渡す、そういういわゆる世論に対して、日本返還は当然なんだという、味方をつける運動を起こす必要があると考えております。  これについては、大臣どうお考えですか。そのために予算獲得もぜひすべきだ。現在の技術支援の範囲内でできると思いますけれども、どうでしょう。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員からお話しのように、昨年来、都甲北海道大使極東地域サハリンもずっと訪問をさせて、いろいろと現地指導者意見交換をさせておりますけれども、御指摘のように、極東地域あるいはサハリン地域におけるマスコミあるいはオピニオンリーダーの方々に日本の事情をよく御理解いただくと同時に、我々が抱えている二国間の問題の解決がいかに日ソのこれからの協力発展に貢献をするかということも踏まえて、歴史的事実も十分紹介していくようにこれから努力をさらに続けなければならない、御指摘のとおりだと考えております。
  9. 新井将敬

    新井委員 それでは大臣、ひとつそういうマスコミあるいは向こう青年、そういうものに対するプレゼンテーションというものを、ビデオを含めてよく検討していただきたいと思います。そういう時代に入ったというふうに思います。  あともう一つは、北方領土と関連しますのは、ソ連邦立場から見ますと、やはりバルト三国と北方領土というのは、私から見ればスターリン対外政策の明らかな過ちの連結した一つである、こういう見方は決して間違いではないと思うのですね。それで、そのために今、例えば一九四一年の大西洋憲章、そして連合国勝利の後の原則を決めた連合国憲章の中には明らかに領土不拡大、戦勝によって領土不拡大という項目がありますけれども、それを破ったのがまさにヤルタのルーズベルト、スターリン秘密協定による、要するに、いわゆる北方領土の引き渡しと書いてありますけれども北方領土であり、もう一つはモロトフ、リッペントロップの秘密協定バルト三国だと思うのですね。ですから、このバルト三国に対する日本外交姿勢というのは、人の国のことではなくて我が国のことなんです。ですから、バルト三国に対してソ連邦がどういう態度をとっているかということは、翻って北方領土に対してどういう態度をとるか、まさにこれは「誰がために鐘は鳴る」のではないという切実な問題をバルト三国というのは持っていると私は思います。  そういう中で今、バルト三国がそれぞれ独立宣言を出して、しかもこれをもうスウェーデンとかデンマークとか承認していっているわけですね。ヨーロッパ諸国の中にも、承認するまでもない、もともとあれは独立国なんだ、アメリカとかそういうふうに思っている、措置している国もあって、もう承認するまでもなく独立国だと考えている国もあるわけですね。もう一方ではスウェーデンデンマーク、新たな承認を早々と打ち出している。  私はこの機会に、やはり北方領土北方領土というなら、当然バルト三国を日本早期に一日も早く承認をして、それで、返す刀でスターリン対外外交の誤りを全部直してくれ、そうなると必然的に北方領土返還しなければいかぬというのが論理的な筋道だと思うのです。これは大臣バルト三国の承認を一日も早くやっていただきたいと思いますけれども、お考えはどうでしょう。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 政府は先日、バルト三国の独立声明について、これを支持するという政府声明を出したわけでございますが、九月一日から大阪におります新井大使、これを団長にしてバルト三国の政府をそれぞれ訪問する予定にいたしております。そういう中で私どもは、このミッションは一週間の予定で帰ってまいりますが、帰国次第そのミッションとの意見交換をして、できるだけ早く御指摘のような措置をとるようにしたい、このように考えております。
  11. 新井将敬

    新井委員 大臣、いつも日本はおくれる、おくれると言っております。特にこのバルト三国の場合は北方領土との密接な関連性というものはだれの目にも明らかでございますので、これは後で後でという形にならないで、我が国のことだと思って、今言われたとおり、ひとつ承認を早急にやってくださるようにお願いする次第でございます。  それからもう一つは、大型金融支援という問題はロンドンサミットのときでも先送りになってまいりました。我が国は当然政経不可分という原則を貫くべきであると私は考えておりますし、それは我々決定したことでもございますし、そのことに全く変わりはございません。しかし、この政変の中の情勢でちょっと最近弱まったと言われておりますが、ドイツフランスを中心として大型金融支援を何とかやっていこうじゃないかという勢力が極めて強くなっていることは言うまでもない事実だと思います。その中で、我々の方もはっきりとその前提条件をもう少し言って、このドイツフランスが本当に世界全体のためにというよりは、やはりドイツも東ドイツに置かれた三十万のソビエト兵というような問題を抱え、三百億マルクを出して、要するに国益なんですね、彼らの言ういわゆる大型金融支援も、自分のところで持てないという。明らかにみんな国益でしゃべっているわけですから。フランスもそうですね。ですから日本も、ああいうサミットの場で日本だけ北方領土と言うとおかしい、そんなこと全然おかしくありませんよ。外交基本は、自分国益にかなったことを主張していって大概のものをとるということはヨーロッパ諸国と一緒なんで、そういうことをぜひやってもらいたいのですが、このままずるずると大型金融支援に引き込まれていく可能性があるのじゃないかと思うのですね。  この間政府の方でそれに対する歯どめ措置ということで、例えば贈与というのは行わないとか、それから国際機関では、例えばWHOに医療機器を買ったりするのは本当はあるのですね。しかし、IMFルーブル安定化資金のような一種の完全なお金をやってしまうというようなことはできない。いわゆる出資ですね、そういうのはできない。物を買うならばいいかもしれない。あるいはまた考えようによっては食料援助一億ドルというのも、これは百四十億円という巨額なお金ですけれども金融支援といえば輸出入銀行の貸し出しですが、何らかの形で、こういう形でお金がどんどん出ていく可能性もないではない。  そういうなし崩し的に、気がついてみるともう現在でも、この間大臣ちらっとおっしゃいましたけれども、多分日本が今持っている対ソ債権というのは百億ドルくらい実はあるのじゃないかと私は思うのです。オフィシャル、パリ・クラブやBISの方で合わせると八十何億ドルくらいと出ていますけれども、実際はカウントされていない細かいのがありますから、百億ドルというと一兆四千億円ぐらい実は日本というのは対ソ債権を抱えていると思うのです。これでも実はほとんどトップクラスなんですね。もう現在ですらやらない、やらないと言っているけれどもドイツ以外の国よりはすべて多分大きい債権を持っているのじゃないかと思うのです。  そういう状況で、この政変に乗じてなし崩し的に大型金融支援に行ってしまって北方領土問題がいつまでも解決されないということを一番恐れているわけですけれども、これについてはどういうふうに態度すればいいと大臣はお考えになっておられますか。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 委員案内のように、昨年のヒューストン・サミットではドイツフランス、それぞれソ連に対する金融支援を強く要請いたしましたけれども、私は率直に申し上げて日本北方領土問題を抱えておりますし、EC加盟国としての拘束もありません、そういうことで、この北方領土問題が解決されることが日ソ間の協力前提であるということを強く主張し、それが首脳会議でも議事録に、報告書に載せられたという経過がございましたが、一年たったことしのサミットでは各国首脳、特にブッシュ大統領メージャー首相あたりから、北方領土問題の解決というのが必要なんだということの発言が先方からございました。私どもは、やはりこの領土問題を解決して日ソ間の拡大均衡をやって平和条約を結んでいくということが、どんな理由があろうともこの原則を曲げるわけにはいかないという姿勢を堅持しております。  今お示しのように、大型金融支援をやるのかどうかということにつきましては、先般のロンドンサミットでも大型金融支援はやらないということが申し合わせになっておりますし、昨日ロンドンから報告が参りましたシェルパ会合でもそのような考え方でございます。我々がやるべきこととすれば、それは来るべき冬に大変苦労が多かろうと思う人道的支援、これを当然やらなければならない、このように考えております。
  13. 新井将敬

    新井委員 大臣日本は、サミットでもそうですけれども技術支援人道的支援、それから同じですが、知的な支援はやると言っているわけです。これは非常にいいことなんです。それならば私は、日本対ソ経済、要するにテークオフのプログラム、これを日本経済学者あるいは財界人知恵をかりて、要するにソ連経済ソ連を視察して、ソ連経済はどうしたらテークオフできるのか。これはIMFなんかが入ったりしていますけれども、やはりこれは日本なんですよ。IMFじゃなくて、戦後これだけの経済成長を遂げた日本という国がソ連に対して経済復興プログラムを持っているのか持っていないのかということが大切なんですよ、大臣ゴルバチョフさんのやり方を見ていると、日本という国自体は余り大切にしなくても周りをぎゅうぎゅう締めてコンと頭をたたくと小切手だけぼんと出てくる、こういう見方で見ていることは確かですよ、今までのゴルバチョフさんなんかの日本に対する姿勢は。  しかし私は、大型金融支援、もちろん今ソ連に必要なのはお金よりもむしろ直接投資ですね。要するに、例えば軍需工場に対して日本の三菱重工や新日鉄やあるいはロボット製作やという会社が入っていって出資をして、それは当然貸し付けを伴いますけれども、こちらから技術者が行ってそういうことをやらないとソ連経済というのは浮揚しないと思いますし、それから今のような例えば基礎物資公定価格を上げて、ぜいたく品自由価格で好きなようにさせて、間は価格上限を決めてなんという自由経済とは絶対相入れないようなシステムはだめだと言えるのも、やはり資本主義経済の中の学者経済人だと思うのです。  そういう、いかにしたらソ連という国が経済的にいつまでたてばテークオフできるかというプログラム、これはゴルバチョフ側にもエリツィン側にもありますけれども、やはり日本という国が行ってそういう対ソ経済復興プログラムというものを作成して、これでうまくいくでしょう、日本ができることはこれだけです、しかしこのお金は出しませんよ、こっちが、北方領土主権を回復しない限りできないけれども、こういうプログラムがあるのじゃないですか、これを世界に提示し、ソ連に提示したら私は一番いいのじゃないかと思う。これはそんなお金もかかることではないし、今の技術支援程度お金でもできる可能性がありますので、そういうプログラムをつくるお考えはないでしょうか。
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 先般来の日ソ外相会談あるいは首脳会談においても、ソ連側が戦後の日本復興がこんなにうまくいっているということに対して、日本の持っている繁栄の秘密というのを、ノーハウを知りたいというのを私も直接伺っております。渡辺外務審議官がこの日曜日に東京へ帰ってまいります。ロンドンでのシェルパ会合の結果を踏まえて関係各省庁と協議を直ちに開くようにさらに今準備を進めておりますけれども、これからソ連経済をどういうふうに軌道に乗せていくかということにつきましては、IMFといったような機関、先日調査に参りました四機関でございますね、そういう機関意見あるいはサミット加盟国経済専門家意見等を踏まえながら、日本政府としても、日本政府ならどういう考え方をしたらいいのかということは当然私どものこれからの日ソ交渉の中においても、日本がアドバイスできるものは大いにアドバイスをする、それこそ知的協力であり技術支援である、このように考えております。
  15. 新井将敬

    新井委員 これは大臣、細かくはあれなんですけれども、要するに今のソ連経済は見ているともうめちゃめちゃになっているのですね。結局ゴルバチョフさんが所得倍増計画を立ててうまくやろうとしたのですけれども投資過剰になってしまう、消費物資が回ってこない、それで価格を抑えている、やみのインフレが進行する、札を刷り増す、インフレが起きる、さらにインフレを生んでいく賃上げが起きるで、しかも軍需から民需への転換というのは思っているほど簡単じゃない、こういう実際壊滅的な状態になっているわけです。  ですから大臣、もう一歩突っ込んで、これはお金がかかることじゃないのです。要するに専門家の皆さんに例えば二カ月行っていただくにせよ、技術支援の一億五千万円ですか、予算もありますし、多分大きなお金がかかることじゃない。要するに頭を使えばやれることなんですね。外務省主導対ソ経済復興プログラムだけは提示する、こういう主導をされるお考えはないでしょうか、私は非常に大切なことだと思いますけれども
  16. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連経済復興プログラムといいますか、それはソ連側から先般御案内のようにパブロフの案とヤブリンスキーの案が出てきたわけでありますが、このいずれをとってみてもなかなか問題が多過ぎる、こういうことでこの案を下敷きにやるということはとても難しいだろうと私は思います。  やはり一番合理的なのは、昨年の末に発表された国際機関報告書をベースにして、ソ連経済専門研究所が恐らく各国にございますから、日本も民間でも随分研究しておられる組織がございますから、そういう知恵をいかに結集していくか。日本日本なりに極東地域に近いわけでありますから、日本考え方もおのずからそういう地域の距離に基づいて意見が出せるのじゃないかな。そういう問題につきましては、いずれにいたしましても日本がひとり独走するのではなしに、各国協力をしながら、日本日本考え方というものを十分示す機会を持たなければならないと考えております。
  17. 新井将敬

    新井委員 これでこの関係を申し上げませんが、この問題は日本が独自にやっても、プログラムを出すことぐらいはかえっていいと私は思っています。何でもかんでも協調、それはプログラムをつくってどこの国がどれだけ支援をするかということも、頭の問題ですから、何も独走ということじゃなくて、知的には独走しても構わないのですね。ですから、外務省関係機関であれやはりそれをつくって、ソ連経済を本当にどうさせたら復興させ得るか、日本人はこれぐらい全力を絞って考えているということは、対外協調、対外協調というような話では全然ないと私は思いますので、これは大臣、もう一回考えてみていただきたいと思います。プログラムをつくるということですから。  時間もございませんのでちょっと人道的支援の問題ですが、一億ドルの食糧援助の計画がございましたが、バルト三国のことが起きたりしてペンディングになっているわけですね。そういううちにこの政変が起きて、今度はいつの間にか三億ドルという記事が、これは新聞記事ですから別にお聞きすることもございませんが出ております。この一億ドルというものの約束してある食糧援助の実施は一体いつになるのか、ずうっとペンディングだらけなので一体いつ実施するのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  18. 河上信彦

    ○河上説明員 ただいま御質問の日本輸出入銀行の対ソ連緊急食糧等支援のための一億ドルの融資の件でございますけれども、これにつきましては、昨年十二月にソ連の緊急的な支援という人道的な側面を考慮いたしまして決定したものでございますが、その後交渉を続けておりまして、現在、輸銀とソ連側で融資条件等について交渉を行っている、こういう状況でございます。  この一億ドルの融資につきましては、ただいまお話しいたしましたとおり人道的見地から行うということでございまして、こうした性格も十分考慮いたしまして、またソ連の国内の状況の推移ということも十分踏まえまして、今後適切に対応してまいりたいと考えております。
  19. 新井将敬

    新井委員 これは時間がないので意見だけ申し上げますけれども、この一億ドルのいわゆる輸出入銀行の融資の形をとった食糧援助ですね、日本から物を買って。これは、ことしの秋にもまた食糧援助の話が出てくるのですね。私は、もうここまで来たら秋の食糧援助と一緒に計画を練った方がいいのじゃないかと思いますよ。  といいますのも、この食糧援助の中で相手の在日のロシアの代表部から出てきているリストは、例えば家畜用の薬剤とか、それからハム、ソーセージ。用の包装材料とか、たばこのフィルターとか、必ずしも冬に予期されている食糧不足、これが事実とすれば、それに直接対応するようなものじゃない、いわゆる生ぬるい感じの要求が多いのですね。加工用部品みたいなものなんですね。ですから、これは結構ずるずるやっても、去年の十二月からもう一年近くなるのだけれども、ずるずるやっても一向に差し迫った感じにならないのです。  ですから、こういうことをだらだらやるなら、しっかりとした要求リストをもう一回出し直してもらって、本当に庶民の手にその援助した食糧が行っているかということもちゃんとモニタリングをして食糧援助をやってもらいたいと思います。  また、食糧援助はモニタリングチームを送られるということですけれども、悪いうわさだと思いますけれども、送ったラーメンが外貨ショップに並んでいたとか、必ずしも対ソ援助がちゃんと本当に必要な庶民に回っていないのじゃないか、そういううわさも実は今すごくあるものですから、そういう意味で行き先をも踏まえた上で適切な、早急にこれは対処していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員お話しのように、食糧援助あるいは医薬品援助ということは、冬に向かっていくソ連に対しては当然必要だと思います。そういう中で、日本の善意というものがいかにソ連国民の肌に直接触れることができるかということが一番大切なことでございまして、それには格段の注意を払ってできるだけの努力をしていくという考え方で臨みたいと考えております。
  21. 新井将敬

    新井委員 私はこの間大臣に、貿易保険のことですけれども、貿易保険の中で、要するに政経不可分の原則原則なんですが、現在、小口の投資というのは非常に、ある意味では衰えていないのですね。新潟あたりにある小さい企業が、例えばハバロフスクでレストランをつくるとか、そういう草の根レベル、地方都市レベルの交流というのは実はこの政変の間もしっかりと続いていて、これは逆にハバロフスクや極東ソ連指導者日本に対する信頼感を実は非常に支えているのです、中央政府はともかくとして、草の根の地方の交流というのが。  ところが、新潟あたりの小さい会社がお金を出すとなると、その投資、合弁事業をつくって出資をしてある程度お金を貸し付けとなると、保険が全然ない。要するにリスク分散ができない。大きなものじゃないですよ、レストランをつくるのだから。現地でいえばせいぜい一億円以内ぐらいのお金ですよ。その程度のお金に対する一切の投資保険というようなものがないので、地方と地方の交流、小さい日常的な交流すら本当は危なくなるのじゃないかというおそれを私は持っておりまして、この間、大臣に御検討いかがでしょうとお聞きしましたが、今の貿易保険特会の中でもいいのですが、そういう投資保険をつくって一億円以内ぐらいの投資に対して保険が掛けられる、出資金あるいは貸し付けに対して。そういう考えについて、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 委員からそのような御意見をちょうだいして以降、通産大臣ともいろいろこれからの対ソの支援について、投資問題についての考え方、こういったものについては既に意見交換いたしておりまして、できれば来週にでも、一応渡辺外務審議官が帰ってきた後で、私ども関係各省と具体的な問題についての基本的な考え方の調整を始めなければならない、このように考えております。
  23. 新井将敬

    新井委員 時間が参りましたから、ほかにちょっと聞きたいこともございましたけれども、これで終了させていただきますが、そういう意味で政経不可分は当然としても、小口の庶民レベルの交流あるいは草の根レベルの民意の拡大、そういうことについては持続的にやっていただけるようお願いいたしたいと思います。  終わります。
  24. 牧野隆守

    牧野委員長 岡田利春君。
  25. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今次のソ連政変の問題について、ある人は、かつてのアメリカのジャーナリストのジョン・リードの言葉をつかまえて、世界を揺るがせる七日間であった。こう表現をする方もおりますし、またロシア革命に対比してロシア八月革命、こういうタイトルが盛んに最近報道されておるわけです。しかし、いずれにしても今次政変はまさしく世界史的変革であったということはもう間違いのない事実ではないかと私は思うのです。  そういう意味で考えますと、このソ連政変の評価というものはこれからの国際的な外交の面において、あるいはまた日ソ関係の分野においても極めて重要であろうか、こう思うわけです。したがって、先ほど外務大臣から報告がございましたけれども、このソ連におけるクーデター失敗、そしてロシア共産党の解散に至る政変についてどういう評価をされているのか、まず見解を承りたいと思います。
  26. 中山太郎

    中山国務大臣 今回のソ連のクーデターに対すも大衆の叫びというものは、私はソ連の領内における民主主義と人間の自由、こういったものが根強く生きているという印象を極めて深く受けました。そして、クーデターが失敗に終わる大きな役割を果たしたものは、やはり自由と民主主義を求める国民の声であった。しかも、それがそれぞれの命をかけての行動に出た姿というものは世界の人たちに大きな印象を与えておりますし、日ソ関係においても、私は、この大きな一つの変革というものはこれからの日ソの友好関係に大きな変化を与えていくものと期待をいたしております。
  27. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 一九八五年にゴルバチョフさんがソ連共産党の書記長に就任をされた。その翌年の八六年の二月にいわゆるペレストロイカ路線というゴルバチョフさんの政策が発表になった。しかも、ペレストロイカというのは言うなれば言論の自由、グラスノスチをまずてこにしてデモクラーチヤを進めていく、こういう基本的な立場に立っているのがペレストロイカ路線である、こう私は理解をいたしているわけです。そして、この五年間、着実にこの政治的な構造の変革は、中央においても地方においても、複数の候補者の立候補を認めて競争による選挙が行われる、各末端に至るまでそういう措置がとられてまいったわけであります。  同時に、二年前に東欧におけるいわゆる民主化の動き、これはゴルバチョフ政策として積極的に支持をした。そういう中で二年間の間にあの東欧の民主化が行われた。これがさらに進んでユーゴに飛び、アルバニアにその波が押し寄せた。こういう一連の流れの中で、ソ連国民はそのことを身をもって肌で体得をした。これがいわゆる民主化に対する、国民の中に、国民の心に定着していた。これが今回の政変において市民の抵抗、国民の抵抗になってあらわれたと私は評価をするべきではないのか。  もちろん、経済の分野においてはいろいろ紆余曲折があり、錯誤があり、失敗も随所に見られるわけであります。しかし、ゴルバチョフ大統領が進めてきたこの五年間の路線というものが既にロシア国民の中に定着している証拠が今回の事件で示された。このように受けとめる場合に、我々は対ソ観も当然変えてまいらなければなりませんし、そういう意味では我が国の対ソ外交政策あるいはまた伝統的な日本外務省対ソ政策というものについても、そういう立場から見直しをしなければならぬということにつながっていくのではなかろうか。そういう意味で、今度の事件をどう総括をするかということが極めて重要であろうかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  28. 中山太郎

    中山国務大臣 ゴルバチョフ大統領が進めてこられたペレストロイカ路線というものが既にソ連国民の心の中に定着をしていたという委員の御指摘は、そのとおりだろうと私は思います。また、それのリーダーとしての評価は、ノーベル平和賞を受けられたゴルバチョフ大統領の栄光によって示されていると私は思っております。  今このソ連の変化について日本外務省としての考え方をどうするかという御意見でございますが、私は、この現在のソ連、それはやはりゴルバチョフ大統領がいろいろな指導者としての国内政治をやる中で、あるときは改革派との提携、あるときは保守派との提携といったようなマヌーバリングをやってこられたことに対するソ連国内のいわゆる双方からの反発というものが現実には存在していたと思います。ヤコブレフあるいはシェワルナゼ氏の、何といいますか離反といいますか、あるいはまた軍部の抵抗といったもの、あるいは産軍共同体の動きといったようなものが見られたわけでありますけれども、私は、今回のクーデターの失敗によって真の意味でのソ連の新しい時代を受け入れる条件が整ってきた。  しかし一方では、民族間の対立、共和国間の話し合いというものはこれから必要になっていきましょうし、私どもとしては、このソ連が混乱の中で核を含む軍備がどのように管理されていくかということも引き続き十分注意をせなければならない。そういった中で相手が方針を変えてこられるということになれば、日本政府としても新しいソ連に対する対応というものは当然考えていかなければならない。  しかし、基本的な問題は、やはり領土問題を解決して平和条約を結ぶというところが日本政府基本、これは相手がどのように変わろうと変わりません。これだけは明確に申し上げておかなければなりませんが、昨日ゴルバチョフ大統領斉藤外務審議官がお目にかかって総理の親書を渡したときにゴルバチョフ大統領は、四月訪日の際の話し合いを基礎に両国の関係を加速的に進展させるというお話があったようでありますけれども、私どもはそのような対応を引き続きやっていかなければならないと考えております。
  29. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 短い言葉で言うと、今次ソ連における政変ロシア十月革命に次ぐ革命が起きた。このように理解されますか。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 そのように考えてもちっともおかしくないと思っております。
  31. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、ソ連の動向を考えてみますと、ペレストロイカを進めてから経済政策がなかなかうまくいかない、マフィアは横行する、物不足が起きる、そして秩序はなかなか保てない、そういう経済的な混乱を背景にして、ゴルバチョフさんの政策もどうしても保守派寄りに転換せざるを得ない状況が非常に強まったのが二年前からの状況だと思うのです。したがって、そういう意味で、シェワルナゼ外相がやめる、最近はヤコブレフ大統領補佐官がやめる、そして人事はすべて保守派の中から選んだという状況で、ずっと保守派寄りになったと思うのです。  しかし、このクーデターが起きる数カ月前からは、ゴルバチョフさんの姿勢はどちらかというと改革派の方に急速に向いてきたのではないかなと思うのです。そのきっかけをつくったのはやはりロシア大統領選挙の結果であろうかと思います。あの民衆エリツィン大統領の改革派の方針に対する支持というものがいかに強いものかということが投票の結果示されたわけであります。だから、ここに自分の改革路線を進める基盤があるということを政治家として感ずるのは当然だと私は思うのです。  そういう中から改革派寄りの方向にスタンスが変わっていった。そして、そこの一つの問題点の帰結として新連邦条約草案というものについて共和国の代表側と一応の合意に達する段階に至った。これに対する保守派の巻き返しかあのタイミングだったのではないかなと私は思うのです。そういう意味で、ゴルバチョフさんも反省いたしておりますように、言うなれば自分の選んだ閣僚の宮廷内革命でありますから、クーデターでありますから、自分に責任があると自己批判されたことは当然だと私は思うのです。  しかし、これだけの状況の中でこのような政変が起きるということについて、いずれの国も予期し得なかったのかどうか。ある説によると、ヤコブレフさんがもう既にそれを予測しておったではないか、こう言いますし、ある意味ではアメリカのCIAが既にそのことを報告しておったという事実があるのでありますけれども、そういう点については我が国情報収集はいかがでしたでしょうか。
  32. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先ほど大臣もちょっと触れられましたが、過去一年の状況をみましても、昨年の十一月から十二月、委員がおっしゃったようにゴルバチョフ大統領が急速な保守派旋回、右寄り旋回をしたとき、シェワルナゼ外務大臣が独裁がやってくるというせりふを吐いてやめたとき、あるいはことしの五月から特に六月でございますけれども、今委員がおっしゃったように、ゴルバチョフ大統領が改革派寄りに急速に急旋回したときの保守派からの極めて強い反撃、そのときにはクーデター云々の話も飛び出したわけでございます。  そのときには私どもこの事態に相当注目いたしたわけでございますが、その後、それを克服してロンドンでの七プラス一の会合ゴルバチョフ大統領は臨んだということから、あの時点で、つまり八月十九日のクーデターというものを予測していた国は、私の承知する限りなかったと思います。米国も英国もあの時点ですぐにエリツィン支持を打ち出しましたけれども、私どももいろいろな形で確認いたしましたけれども、アメリカもイギリスもあのクーデターが必ず失敗するという、あるいはそういう趣旨の情報を持っていてああいうものを出したのではなくて、政治的な意図を持ってああいう発言をしたということでございますから、あの時点でクーデターを予測していた国あるいは政府関係者は私の承知する限りなかった。当然、日本も私どもも十九日にああいうことが起こるということは具体的な情報は持っておりませんでした。
  33. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今次政変に当たって、たまたま国会開会中であり、総理からも予算委員会でそれぞれの質問に応じて見解の披瀝があったわけであります。自民党内部からも政府の処置についていろいろ、なまぬるい、あるいは一歩おくれているのではないか、こういう厳しい批判もございました。一応、報道は今テレビを通じてストレートでニュースが茶の間に流れますから、そういう意味で国民のいらいらもあったのではないかと私は思うのであります。したがって、私は個々具体的にどうのこうのと言いませんけれども外務省としてこの情報の収集なり判断なりその対応について、今次この事件に対して反省点というものがあるかないか、いや、もうままだったで済ますつもりか、この点率直に御意見を承りたいと思います。
  34. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の政変に当たりまして、私はまず最初に次官初め幹部を集めて申したことがございます。それは、イラクの湾岸戦争の際に一体何が起こったか、それはやはり今日の情報化社会において映像がまともに国民の家庭の中に飛び込んでくる、しかもそれがあらゆる事件の実況放送を行う、こういう事態になってくると、国民の方が情報のキャッチが早い。そういうときに必ずフラストレーションがたまってくる。それに対する政府対応というものが当然早急な措置を求められるということは新しい情報化社会における外交のあり方であるということで、去年のこの事件の経験にかんがみて、今回外務省としてはしかるべき対応をとるようにということを、特にこの事件発生後直ちに私は幹部に申し渡しました。  そういう中で、最初に通信が入ってきたのは発生した日の自民党、政府・与党の会議の最中でございまして、たしか十二時四十分、四十五分ぐらいだったと思います。私は、在ソ日本大使館から電話が、最初に第一報が入ってきたのは何時かということを確認いたしましたら一時十五分でございまして、私はそれから公電あるいは引き続き電話で絶えず情報を把握しておりましたから、今回のいわゆるソ連のクーデターに関する政府対応については、外務省としては全然問題はなかった。十分対応ができたという自信を持っております。
  35. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 自己評価ということも非常に大事なわけであります。今外務大臣から胸を張った答弁がありましたけれども、だがしかし、反省の中から次の対応が生まれてくるということになるのではないでしょうか。  我が国の今置かれている立場、今までは世界をある程度見ていたという余裕がありましたけれども、今は、日本は一体どういう対応をするかということを常に世界から見られる立場にある。また、我が国の今日の経済援助の動向についても非常に大きな期待が高まっている。ですから、国際的な事件に対して日本が一体どういう姿勢をとるかということは常に見られておるんだと思うのです。  今度、外務大臣は瀬島さんを会長にして私的諮問機関をつくられたようでありますけれども、やはり湾岸戦争、そしてロシアの今次の事件、こういうものを通して今の外務省の体制ではこれはもう対応ができない、早急に立て直ししなければならぬという一つの決意が私は示されたのではないかなと思うのです。したがって、率直にそういう反省をした上で外務省の体制の充実を図っていく、予算についてもふさわしい予算の確保を図っていく、でなければ国際社会に貢献するといっても、ODAだけをどんどん伸ばしますけれども外務省の体制はついていかない、こんなちぐはぐなことではならぬと思うのです。何も野党に遠慮することはないと思うのですよ。率直にひとつ語ってもらいたいと思うのです。
  36. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の措置で少し補足をさせていただくとすれば、総理はG7の国々とも直ちに電話での連絡をいたしておりますし、小和田外務次官とのラインでは各国の事務次官レベルとの連絡を直ちにいたしております。また、私からはECの議長国であるオランダのファンデンブロック外相とEC閣僚会議の前後に連絡をいたしておりますし、アジア地域については総理のメッセージを発出しておりますし、各国大使に伝えております。しかし一方、来年度の概算要求がこの八月末に締め切られるわけでございますが、先日の自民党の外交部会においては、新しいこのような事態の発生を踏まえて、この年末にかけてさらに必要なものは外交機能強化のために積極的に予算に組み入れていくべきだという強い御決定もございましたので、外務省としては全力を挙げて努力をしてまいりたいと考えております。
  37. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も、今度の事件の三日間を見ても、前半、中盤、後半に分けると、中盤以降の対応というのは評価できると思うのですよ。どうも最近の外務省は不幸で、事件あるたびに大使が日本に休暇で帰ってきているという何かジンクスめいたものを今度感じました。また小和田次官も休暇中であったとか、非常に不幸な状況であったのではないかな、こう思います。私自身も同情しています。しかし、やはり批判は率直に受けて、ぜひそういう点について着実な我が国外交を推進できる体制を整備していく、我々も別に国家の出張でなく私的出張をしても、予算がないので視察する場合に一緒に同乗をして行かしてくださいなどということはしばしばあるのでありますから、そういう点では率直に我々は外交活動について支障のないように早急に体制をつくるべきだ、こういう意見を申し添えておきたい、かように思います。  特に、ソ連共産党が今回解党を命ぜられて、きのうの最高会議でも確認をされたということが伝えられておるわけです。しかし、今後のソ連共産党の動向というものは我々自体も非常に注目しなければならぬのではないか、こう見ています。現在でも一千五百万人ぐらいの党員がおって、専従者が十五万人もおるという状況ですし、やはり指導部はほとんどの人々が共産党党員によって占められている。共産党がなくなっても党員の人を全部外すわけにはいきませんから。ソ連の国はそれでは動きませんよ。私は、そうしますと、かつての党員の七割の人は少なくとも残って今後の改革の仕事もしなければならぬ状況であるというのが私の見方であります。  したがって、共産党は解散されたけれども、かつての共産党員と共産党というものを区別をしていかなければならぬのではないのか、これはいろいろな場面にそういうことも出てくるのではないかな、こう思うのです。そういう割り切りがないとならないと思うし、そういうぐらいのものをのみ込んでこれからの対ソ関係の接触をどうしてもしなければならぬ状況にあるのではないかという認識を持っていますが、いかがでしょうか。
  38. 中山太郎

    中山国務大臣 共産党が解散をしたといった事態と、共産党員としておられた方々の中には極めて有能なテクノクラートもいるわけでございますから、そのような方々がかつての共産党員であったということだけですべてその仕事から離れるということはあり骨ない。やはり有能な人は有能な人として新しいソ連民主化された社会のために努力をされる方々も出てくるわけでありますから、そのようなことを十分踏まえてこれから対応しなければならないと考えております。
  39. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、今度のソ連の新連邦条約案を見て、ああこれは一体連邦の名で本当に機関で決まるのかなという気持ちを持ったわけであります。しかし今日、いろいろな混乱があっても、ソ連には連邦的あるいは連合的、そういう組織がなくて、十五の国のうち三つは独立を支持するということになっておりますけれども、それ以外の国の分析をしてもそういうことが言えるのじゃないかと思うのです。かつて七十二年前にソ連邦ができたときにはロシア共和国、ウクライナ、白ロシア、そしてカザフ共和国の四つの国で初め連邦ができて、そして最終的に十五の共和国が結集をしたというのが過程でありますから、そうしますと、今次の場合も、ロシア共和国、ウクライナと大体話がついたというような報道もあるわけであります。したがって、白ロシアは、従来の主張からいえば参加をしてくるでしょう。カザフ等も大体今話し合いが進んでおるところもあれば、主権連合的なあるいは連邦的な体制というものは、経済あるいはまた核を含む軍事管理とか、あるいはまた従来の継続的条約等を遵守をするという立場における外交的な部面とかというものをある程度網羅をしながら、統一をしながら、連邦的組織といいますか、主権連合的組織といいますか、このようなものはできるであろうし、また、世界情勢の安定からいってもそのことが望ましいという見解を持っているのですが、外務省はどういう見方をいたしておりますか。
  40. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 まさに委員おっしゃいますように、ソ連邦というものが共和国との関係で一体どういう組織になっていくのかということは今後の一番重大な問題であるというふうに考えております。  ウクライナ共和国までが独立を主張するということで、昨日エリツィン大統領その他が大変なショックを受けて、すぐにルツコイ副大統領を派遣してとりあえずの、手を握ってお互いにやっていこう、少なくともソ連邦の枠組みは残そうということでございましたけれども、しかし、バルトは完全に独立の方向を向いている、その他の共和国も完全独立を志向している国が続々と出てきたという中で一体どういう形のソ連邦としてのまとまっていき方をするのか。新連邦条約では一つ考え方が示されておりました。しかしこれではもう手ぬるいという議論が出てきておるわけでございます。もしかりそめにもウクライナが分離独立するということがございますと、これは屋台骨が崩れる話でございますから、ソ連邦自体の存立がどうかというところまでいくわけでございます。  今、連邦条約のそういう意味での見直しというものが出てまいりましたし、どういう形で束ねていくかということについても、エリツィン大統領主導下の、ロシア共和国主導型のまとまり方に対してはその他の共和国から強い反発が出てまいりました。そういう中で一体どういうまとまり方をするのか。幾つかのグループに分けるという考え方も一部の共和国の大統領から出てまいりました。  全く今混沌とした状況でございますが、いずれにいたしましても、もしこの十五の共和国が完全にばらばらになるということになりますと、各共和国の中でも、例えばロシア共和国の中でも二十の自治共和国がある。その中の例えばタタールスタン、タタール共和国その他幾つかの共和国がもうエリツィン大統領に対して、独立を志向して、これに対して挑戦をしているということでございます。モルダビアが独立する。しかし、モルダビアの中にあるガガウス人はまたモルダビアから独立するということになりますとまさにこれは大変な混乱状態に陥るわけでございまして、こういう状態というのは西側にとって決して好ましいものではないという認識は西側の一致した認識ではないかというふうに考えております。
  41. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今おっしゃいましたようにロシア共和国の中にももう既に十六の共和国が存在をするということですから、エリツィン氏の連邦支持、草案の内容よりは違うでしょうけれども、この基本的な姿勢は変わらぬと思いますね。そういう意味で好ましい姿としては、もちろんそれは自主的にそれぞれの共和国の人々が決めるべきものであるが、何らかの形において秩序の保てるような一つの連合的なものができることがむしろ世界の秩序の安定からいえば望ましいということだと思いますし、今の答弁もそのように聞いたわけですが、私もそういう見解を実は持っておるわけであります。  そこで、今日のソ連邦経済情勢についていろいろ言われるのですけれども、これをどう認識するかということが対ソ政策の出発に重要な影響を与えるのだと思うのです。したがって、今日的ソ連経済情勢を、ずっと言い始めると相当長いものになるのでしょうけれども、勘どころを言いますと一体どういうところに集約をされるのか。  今ソ連では年金生活者が六千七百万人もおるわけであります。そして完全失業者が大体二百万人おる。不就労の人々が八百万人おられるわけですから、そうしますと七千七百万、八百万人の人々がそういう状況にあるのですね。これは四人に一人ですよ。この生活を支えていかなければならないという前提があって、そして今日のソ連経済の極めて危機的な状況があるということだと思うのですね。したがって、そのソ連経済的な状況についてどのような基本的な把握をされておりますか。
  42. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 一言で申し上げれば混乱をさらに深めつつあるというのが状況であって、その状況は極めて重大な問題になりつつあるというふうに認識しております。細かい御説明は省きますけれども、象徴的な数字、あらゆる経済指標がそれを物語っておるわけでございます。  例えば日本、西欧で言うGNPに相当いたします国民総生産、ことしの一—六月は既にマイナス一〇%、公表で一〇%でございます。対外貿易、これは対前年度比ほぼ五〇%減、貿易がほぼとまりつつあるというような状況でございます。  その中にありまして一番心配されますのが、これから冬が近づいてまいりますとまず食糧でございますが、この食糧は、いろいろな予測がございますけれどもソ連の公式収穫予測量は二億トンを下回っております。この収穫をどの程度実際に収穫できるかという問題、流通の問題、保存の問題等々も含めました食糧の問題というものが非常に重大な問題になってくるであろう。同時に、冬が参りますのでエネルギーの問題というものがあわせて大変に重要な問題になってくるであろう。もう石油生産はどんどんじり貧で落ちてきておるわけでございます。一口で言えば混乱、重大な時期にあるということでございます。
  43. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 財政面からいってもGNPの一五%に相当する赤字である。対外債務においても既に百二十億ドルはもう間近に支払いをしなきゃならぬという状況でありますから、今おっしゃられたことを含めると破産状態寸前にあるということになるんだと私は思うのですね。  ところが案外、ソ連を訪問しますと、その数字の実感とソ連の生活しておる実態が隔離があるのですね。それはやはりブラック経済のウエートだと思うのですよ。ある人は三〇%がブラック経済だと言うし、ある人は、いや今日的に四〇%を超えて五〇%に近いものがブラック経済である、こう言う人もおるのですね。この把握も非常に難しいのであります。  だがしかし、今ソ連国民の大事なことは、いかにして自助努力で経済の再建を図るかというまず意欲の問題、意識の問題だと思うのですね。市場経済に移行するならば市場経済に移行する意識変革を一体どのように持たせるかということが問題だと思うのです。私も先般ウラジオストクに行ってクズネツォフ知事に会いましたから率直に言ったのです。こういう世界各国から支援を受けるときに、ソ連国民が従来の既得権にあぐらをかいて休暇も一カ月とるなどというのは日本人には理解ができない、そういう意味ではもう少し働かなきゃいかぬじゃないかと。先般サハリンから来た全ソ労評の州委員会のメンバー、書記は私の説に対して、日本に来て全くそう思ったと言って帰りましたけれども。そういう点もやはりきちっと我々は言うところは言わなきゃならないのだと思うのです。  だがしかし、今ソ連経済をすぐには安定できませんから、短期、中期そして長期的な展望がないとならぬのでありますから、その経済を破産しないように、持ちこたえるためにどう我々は援助するか、これは最低のものとしてやはり必要だと思うのですね。これは世界の平和のコストとして考えなきゃならぬ、あるいはまた日ソ関係における隣国としての安全保障のコストとして物事を考える、それほど重要な課題である、こう私は思うのでありますけれども拡大均衡を図ってますから、それとは別に離れてそういう認識についてはいかがでしょうか。
  44. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 まさに先生の御認識と私どもも軌を一にするわけでございますが、今何が必要かと言えば、まず、先ほど大臣の申し上げましたG7シェルパ会合でもそういう認識が共通でございましたけれども、これからこの経済改革をどう進めるかという青写真、これをつくることが何をおいても先決である、この青写真なくしては進みようがないという認識でございます。その青写真の中で一番大事なのは、結局なぜここまでソ連国民生活が窮乏するに至ったかという答えは、ある意味では簡単であって、それは中核は、余りにも国民生活を犠牲にしての軍備増強、バターより大砲、そういう政策がとられてきたということに原因がある。したがって、今度の一つの焦点は、産軍協同体あるいは複合体と言われる膨大なソ連の組織あるいは軍備に対する支出というものがどの程度本格的に切り込まれていくのかということが、その中でも中核的な課題の一つではないかという認識を持っております。
  45. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、対ソ援助を考える場合に、今、中近東の平和回復後における復興の問題も考えなければなりませんし、かねて懸案の発展途上国の問題についても日本は配慮しなければなりませんし、今またカンボジア問題が急速に和平の状況も結論が出るような状態に来ている、これに対する緊急的な対応考えなければならない。また朝鮮の問題も、きょう交渉されているんですか、そういう状況で、これがもし解決すれば即経済援助の問題、経済的な、いわゆる補償にかわる経済協力といいますか、そういう形で対応しなければならぬわけですから、そういう全体のバランスの中でこのソ連の援助ということも考えていかなければならぬ視点は忘れてはならないんだと、私自身もそう思っております。  ただ、私は、この拡大均衡論について、北方領土の問題があるから経済とリンクさせていくということはあえて言う必要がないのではないかというのが私の持論なんですよ。これはやはりロシア・ナショナリズムを刺激する言葉ですよ。私は随分そういう意見を聞いているんです。それは、政策はそういうことをやられたって政策として対応すればいいのでありますから、余り、北方領土の問題を何とかしなければ経済援助をできるかなどという、これはいかがなものかと思うのですね。  ソ連国民というのは、防衛のためには、過去に二回の大戦の経験がありますから、一食抜いても防衛のためには頑張らなければならぬという意識はあるんですよ。それはまだ根強いですよ、今日でもまだあるわけですね。それはもう過去の経験なんです。そして、長蛇の列をつくって、じっくり買い物で二時間でも待っておれる、あの辛抱強さですね。ロシア・ナショナリズムというのは、そういう非常に頑固な粘り強さがあるんだと思うのです。そういうものを、つき合っていて時々感ずることが多いのであります。  そういう面からいうと、何も領土の問題と経済とを拡大で均衡させるんだというようなことを言わなくてもいいのではないか。そういう意味で、もう少し政策を整理する必要がある。まさしく今度の新しい状況の中で、新しい対応一つ政策の中でこれらの問題を整理していかれてはいかがなものか。気持ちはわかりますけれどもね、そういうことが大事ではないかと思うのです。ぜひ、そういう点がこれからの対ソ支援政策の展開になるんですから、時間のあれがあっても必ずなりますから、十分判断の中に入れて対応すべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。
  46. 中山太郎

    中山国務大臣 対ソ外交の中で、拡大均衡とか領土問題というものを余りぎらぎらさせるなという御趣旨の御質問でございましたが、政府といたしましては、もう十回に近い衆議院、参議院における全党派一致の領土返還決議が行われておりますし、政府考え方も、やはり国会の御意思も十分参酌しながら今日まで対応してきたことは事実でございます。これを言わないで交渉するといったようなことは、私は外交を預かる者として、なかなかそれはやりにくいこと、しかしこのソ連の大変革に関して我々が、新しいソ連をこれからつくっていくというソ連人の大きな願望というものに日本政府としてはできるだけ協力をしていくということの考え方は、私はこれは明確に申し上げておいたらいいと思います。  我々は、新しい時代に向かって世界じゅうが動こうとしているわけでありますから、この基本原則基本原則として譲るわけにまいりませんけれども、一番先に日本が外務審議官をモスクワに派遣して、ゴルバチョフ大統領エリツィン大統領を表敬するといったようなことで総理の親書も渡しておるわけでございますから、この日本の気持ちというものは既にソ連側に伝わっているものと理解をいたしております。
  47. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、バーター的な表現は、直接表現はどうか。そういう姿勢はもう少し対応の仕方があるのじゃないか。その方がこれから特に大事ではないかということを申し上げておるわけであります。  そこで、先ほどバルト三国の問題が出ました。バルト三国といえば、モルドバも全く同じ秘密協定の中で処理された地域でもあるわけですね。しかし今、日本外務省がとっている、これを支持する、そしてミッションを派遣する、直ちに経済的な協力ができる分野があれば協力するという姿勢は、私は正しいと思うのです。そして、エリツィン大統領は既にもう署名しておるわけでありますから、この点については、国内的に最も大きいロシア共和国が保証している、最も力のあるエリツィンさんが保証している。九月に入って人民代表者会議が開かれて、そこにも議題として出される。したがって、それに基づいて承認をする。同時に、ミッション報告のもとに経済援助なら経済援助で対応する。僕はこれでいいと思うのですよ。  ただしかし、バルト北方領土を直接的に結びつける考え方はいかがなものかという感じがするのですね。もちろんバルトは独ソ秘密協定で併合が決まったところでありますが、しかし、同じ秘密協定であってもヤルタ秘密協定というのは、これはソ連とアメリカとイギリスの三首脳における協定であるわけですから、ちょっと独ソ協定とは質的に次元が違うことだけは間違いがないのであります。  ちょっと私聞きづらいのですけれども、先般二十六日に、一九五五年から五七年の米国外交文書の中で特に日本に関する部分の二百五十四件が公表になっておるわけです。いわゆる日ソ共同宣言をめぐる日ソ交渉にまつわる一連の文書が表明になっておるわけです。私これを見まして、私が昭和三十六年以来国会で言ってきたことが証明されたなと思いましたね。そして、松本全権が書いている「モスクワにかける虹の橋」ですか、あれは私は史実に基づいて、資料に基づいて書いていると指摘をしてまいりました。全く同じ内容が発表になったのですね。北方領土に関する問題もアメリカの見識がはっきり示されておるわけです。これは否定すべくもないのでしょう。いかがでしょうか。
  48. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生が今言及されましたアメリカの国務省が公開いたしました一九五五年から五七年の対日関係外交文書についてでございますが、これは先生まさにお触れになりましたように、八月二十六日に刊行されたばかりでございまして、私ども。まだ全文を入手しておりませんので細部について現段階でコメントをすることは残念ながらできませんが、先生具体的に言及されました北方領土問題に関しますアメリカ政府立場に関しまして申し上げますと、アメリカ政府の公式な立場は、一九五六年九月七日付の米国の対日覚書、それから一九五七年五月二十三日付の一九五四年十一月七日の北海道上空におけるアメリカ機撃墜事件に関する対ソ米国書簡、この二つの文書が今明らかにされております。北方四島は我が国がサンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島に含まれず、我が国返還されるべき我が国固有の領土であるというものと承知しております。  このようなアメリカ政府の公式の立場が確定される過程でさまざまな内部の意見があったということは承知しておりますけれども、アメリカ政府の公式な立場ということは、私が今言及いたしました一九五六年と五七年の二つの文書によって明らかにされているわけでございまして、これに関しまして今御報告申し上げたとおりでございます。
  49. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんからここではそれ以上触れませんけれども、それはプロセスがあるわけでしょうね。秘密協定、ポツダム宣言、そしてサンフランシスコ平和条約、そして日ソ共同宣言、五六年というのはちょうど日ソ共同宣言の締結の年ですから、そのプロセスを示しているわけですから、そのことを指摘しておるわけです。  これは、私も国会で長い間何回も取り上げてやってきたことが、事実をもって私の主張が証明された。実は満足しておるわけですが、やはり現実は率直に認めて、その上に立って我が国北方領土についてどういう立場でこれを解決していくか、ここがまたこれからの新しい日ソ外交の展開の中で非常に重要なポイントになるだろうと思いますね、現実問題としてもう四十六年たったのですから、日韓併合の期間は三十六年間ですよ。不当占領とかなんとかいって、四十七年の時間に入ろうとしているのですね。半世紀過ぎるのですから。そういう意味では、現実的解決のために我が国外交はどう対応するかということの姿勢が迫られておる、私はそう認識をいたしておりますので、この点は申し上げておくだけにとどめておきたい、かように思います。  もう一つ、今ロシアで最も人気がある、最大実力者と言われるエリツィンさん、彼は代議員時代に日本を訪問して、いわゆる北方領土の五段階解決論を提起いたしたわけです。そして、その後、最高議会の議長になって、今のトップクラスのメンバーでは北方領土を現実に視察をした唯一の指導者なんですね、ただ一人の。昨年の八月二十二日に国後を訪れて、そして色丹には波が荒れて行きませんでしたけれども、そして、彼はそこで談話を出しておるわけです。来てみて、これは絶対に返すべきでないという談話を彼はそこで出しておるわけであります。そしてまた、ゴルバチョフ大統領日本に来て、帰ったときに、今回のゴルバチョフ日本側の確認事項は私の言う第一段階そのものである、問題があるということが確認された。こう彼も主張しているわけですね。  最近の情勢を見ますと、二段階と三段階が一緒になっていくんじゃないかという気が私はします、この政変後。いわゆる非軍事基地化するということと、いわゆる自由往来、フリーゾーンのような形にしていく、今はノービザの交渉をやっていますけれども。そういう二段階と三段階が並行のような形でこれから進むのではないかと思う。そういう意味では加速されていく可能性はある、こう思いますね。しかし、四段階の平和条約の締結と五段階のいわば後世の人々に解決を託するというのは一つのものになるかもしらぬ、前から彼はこう言っているのでありますから、そうしますと、そう楽観的に北方領土の問題を考えるのはいかがなものかという気がします。  私は、そういう意味で先ほども、この北方領土をめぐる歴史について我々は非常に冷静に現実的に対応する必要があるという意見を述べているのでありまして、要は問題解決のためにどういう知恵を出すかということにかかるのだと思うのです。  このエリツィン大統領の従来の見解、今度斉藤さんですか、会われたでしょう。エリツィン大統領に審議官が会われたですね。新聞の報道もありますね。ロシア人の表現というのはああいう表現をするのですよ、大体は。肯定的だとか加速化というのは非常によく使う言葉なんですね。だから余り、加速という言葉が出てきたから積極的なんて思ったら大間違いだと思うのです。国が大きいから、言葉よりも動作の方が、どうもずれがあるような感じがしますね、私は。  そういう意味で、とにかくエリツィンさんの示した五段階の問題について、その後の状況の中でどう我々は理解をし対応していくのかというのは大事なポイントだと思うのですね。ロシアスクールの優等生と言われる兵藤さん、いかがですか。
  50. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 委員ただいま御指摘のとおり、エリツィン大統領のかなり前の五段階論の四段階、五段階と申しますのは、平和条約締結即領土問題の解決、この問題は一刻たりとも先送りできないという日本政府立場からは相入れないものがあることは委員指摘のとおりでございますけれども斉藤外務審議官エリツィン大統領に会いましたときに、エリツィン大統領は、ゴルバチョフ大統領と海部総理との間で達成された平和条約を締結して領土問題を解決するための枠組み、了解をそのまま支持し、平和条約交渉の加速化を、今委員のお言葉がございましたけれども支援する、積極的にやっていきたいという答えでございました。私ども対ソ支援それから領土問題を解決しての平和条約締結、この二つを同時に積極的にやりたいという呼びかけをしているわけでございますが、それに対して基本的にその方向でやりたい、平和条約交渉の加速化を自分としても支援したいという答えでございましたので、私は、その底にあらわれた。にじみ出たエリツィン大統領の積極的な姿勢というものに期待をいたしたいと考えております。
  51. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 上原さんの時間の関係もありますからこれで終わりますが、外交はやはりチャンスをとらまえて迅速に行動する、そしてタイミングを逸しないというのが大事だと思うのですね。来週の後半にはイギリスの首相も訪ソをいたしますし、またアメリカの国務長官も訪ソするという日程も決まっているように思いますね。日本ソ連関係というのは、ウラル山脈からこちらというのはもう三分の二ぐらいの面積があって、人口は八千万ぐらい、極東は大体八百万ちょっと、何せアジアが多いわけですから資源は圧倒的に多いという、最も近い関係にあるわけですね。懸案事項を抱えていればいるほどチャンスとタイミングを逸してはならないと思うのですね。  私は、そういう意味で、国会の開会中ではあるけれども、タイミングであるならば、今度ボリス外務大臣も選任をされたわけですから、外務大臣みずからが出かけるということが大事ではないかと思うのですね。積極外交として、そういう姿勢について最後に伺って、終わりたいと思います。
  52. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ間に懸案があればこそ積極的に接触をするべきだという委員の御意見は、私は基本的に賛成でございます。  一応今のところ、国連総会において新しいソ連外務大臣とは当然お会いすることになりますけれども、必要なことが起これは、私は、時期を見てもちろん訪問することも何らやぶさかではない、極めて重要な時期であるという認識を持っております。
  53. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  54. 牧野隆守

    牧野委員長 上原康助君。
  55. 上原康助

    ○上原委員 残り時間が少なくなりましたので、簡潔に二、三点お尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど来御質問あるいはお答えがありましたように、今回のソ連政変劇というのは今世紀最大の世界史の転換に当たると見てよいと思うのです、まだ十年近くありますから何が起きるかは予測できませんが。いずれにしても、このソ連の共産主義体制の崩壊というか転換によって明らかに東西の冷戦構造が終えんをし、国際的緊張緩和というものが、幾分紆余曲折、見通しの立たない面もありますが、大きく前進をしていくことは間違いないと思います。  そこで、いろいろ、領土問題、経済援助等についてはお話がありましたので、今回のソ連政変劇によって東西の安全保障あるいは特に東アジア、我が国の安全保障政策にどのような影響があると外務大臣はお考えなのか、現時点で御推測できる範囲でよろしゅうございますので、明らかにしていただきたいと思います。
  56. 中山太郎

    中山国務大臣 現在ソ連に起こっております変化がアジア・太平洋の軍事情勢にどのように影響を与えるかというお尋ねでございますが、私はもう率直に申し上げて、具体的にこうであるということを申し上げる状況にはないと思います。御案内のように、一万発近い原子爆弾、原爆の弾頭を持っておる国家でございますが、この国が混乱をしているということは、私は安全保障上決していい状況にはないい一日も早くこの核を含む軍備管理というものがソ連の責任ある政府によって管理されるということがない限り、この状況が改善されていると見ることは我が国国益にとってはマイナスになるという認識を持っております。
  57. 上原康助

    ○上原委員 そこは短時間ではとても議論できない分野で、防衛庁も来ていただいて少しく今後の安全保障政策についていろいろ我々の見解、また政府のこれからの見通し等聞いてみたいわけですが、いみじくも今大臣もおっしゃったように、先ほどもございましたが、今、日本国民だけじゃなくして世界の人類というか国民が非常に懸念をしている一つに、いわゆるソ連の戦略並びに戦域核の管理、軍備管理がどうなるのか、連邦ができるのかあるいは各共和国がやっていくのかということに非常に懸念を持つと同時に関心が持たれている。既にアメリカやヨーロッパ諸国においてもそういう反応が出ているわけですね。  そういう意味で、特に我が国としても、今もございましたけれども、この戦略核並びに戦域核の軍備管理について政府としてやはり何らかのアクションを、いい意味でのアクションをソ連側に起こす必要がある。また日本単独で難しいということであれば、難しいとは思いませんが、言うところのG5あるいはG7と協議をした上で核管理、軍備管理ということにはきちっと懸念のないようにやってもらわな困るということを軍縮の方向を進展させるという観点からおやりになる必要があると私は思うのですが、その点いかがですか。
  58. 中山太郎

    中山国務大臣 御趣旨のとおりでありまして、この問題はひとり日本の問題だけではなく、世界にとっての重大な問題でございますので、G7等が協議しながら、ソ連指導者に向かって、この核を含む軍備管理、これを早期に確立をして国際社会に安定感を築いていただくという要請をいたすべきである、このように考えております。
  59. 上原康助

    ○上原委員 ぜひその点は積極的に進めて、このソ連の国内の政治経済の不安定に伴う軍備管理というものがさらに世界情勢を逆行させるような方向にならないように特に進めていただきたいことを強く要望しておきます。  次に、この件とも関連するわけですが、私は過日北米局長にもお会いをして、十九日の直前でしたので、クーデターが失敗するのかどうかという見通しがまだ立たない時点でしたが、在日米軍基地が日本の安全保障にどうかかわっていくと思われるかということを聞きました。既に沖縄の米軍基地に対しては、フィリピンのピナツボ火山噴火に伴って、政府が否定をしておったにもかかわらず、まあ八月十五日時点ですが、この点も明らかにしていただきたいわけですけれども、いわゆる嘉手納空軍基地にある六〇三空輸部隊にフィリピンに在野しておった大型輸送機七機と兵員百五十人、これは兵員だけでそういうことですから、それに伴う家族も含めると相当沖縄に移駐してきたのではないかと私は推測するわけです。こういう好ましくない事態が発生している。このことについて、政府は臨時的なものと言っているわけですが、どうもそうは思われない。これは何も基地に反対するとか、あるいは革新とか保守とかいうことではなくして、県民挙げて反対をしている。こういうさらに基地を強化させるということについては、この点ぜひ明確にしていただきたい。これが一つですね。  もう一点は、昨年の六月に合意を見た在沖米軍基地、在日米軍基地を含めてですが、米側が明らかにした第一段階あるいは第二段階の整理縮小計画です。そのことには恐らく変化はないものと期待をしたいわけですが、この点はどうなっていくかということです。といいますのは、最近、マンディという米海兵隊司令官が、太平洋地域の海兵隊基地、部隊の削減計画はないという発言をしているわけです。いろいろこれまで、東西の冷戦構造が終えんの方向に向かって、一時期ソ連政変ということで危機感はあったけれども、いい方向に向かうことは間違いない。そうであるならば、在日米軍基地、特に在沖米軍基地が従来より強化されるということには我々はどうしても納得いかない。こういう立場でお尋ねしでおりますので、その点、時間がありませんから、ぜひひとつ明確に、できるだけ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  60. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生お尋ねの具体的な二点にお答えする前に、基本的な私どもの認識につきまして、先ほど大臣がお述べになられましたけれども、先生が言及されました具体的な在日米軍との関係で一言申し上げさせていただきたいと思います。  大臣が申されましたように、現下の国際情勢は依然として不透明性、不安定性というものを含んでおりまして、アジア・太平洋におきます平和と安定にとりまして日米安保体制というのは極めて重要な役割を果たしていると私どもは認識しておりまして、その日米安保体制に信頼性を与えるために我が国に米軍が駐留して施設、区域を使用しているというふうに認識している点を申し上げさせていただきたいと思います。  その上で先生御指摘の具体的な二点についてでございますが、最初のフィリピンのクラーク基地との関係でございますけれども、先生まさに言及されました火山の爆発、さらには米比基地交渉が妥結いたしまして、来年九月からクラーク基地が閉鎖することになっておりますので、その関係で沖縄にどういう影響があるかという点でございます。  私どもは従来から、クラーク基地の閉鎖に伴う、そのクラーク基地が持っておりました機能の他の基地への移転の問題に関しましては米軍で検討中で結論を出していないということを申し上げてきたつもりでございまして、この点は現時点においてもそのとおりでございまして、まさに米側で現在検討中と承知しております。  具体的に先生が言及されました六〇三空輸支援群の問題でございますけれども、この支援群の嘉手納への移駐はあくまでも一時的なものであると私どもは承知しておりまして、先生がちょっと示唆されましたように、恒常的に嘉手納におきます輸送空軍の任務に編入されたということについては、現時点では私どもは承知しておりませんで、あくまでも一時的なものというふうに承知しております。  それから、先生がもう一つ提起されました在日米軍全体の再編問題、さらには削減問題でございますけれども、これは、まさに先生御自身が御指摘になりましたように、基本的な方向は変更がないと私ども承知しております。  具体的にそれを申し上げれば、第一段階でございます九二年末までに日本から、当初五千名か六千名と言っておりましたけれども、約四千八百名削減するというふうに承知しております。現時点でアメリカが公表しておりますのは、三月三十一日時点で在日米軍の規模は四万二千四百六十一名になっておりますけれども、これは御承知のように一時期五万人ぐらいいっておりまして、かなり減っておりますが、これはまさに削減計画がそれなりに進んでいるということを反映しているのみならず、湾岸危機で、軍の運用上の都合により湾岸にかなり移っておりました。その辺がどのくらい帰ってきたのか私どもまだ全部承知しておりませんけれども、その辺の影響もあろうかと思います。こういう数字は、着々と第一段階の削減計画が進んでいるということを示しているのではないかと思っております。
  61. 上原康助

    ○上原委員 そうお答えになっても、これはみんな一時的、臨時的な移駐とは見ていないわけですよね。せんだってもこの委員会で私、大臣にお尋ねしたら、そういう計画は聞いてないということでしたが、そういうお答えでは納得いきませんので、じゃ、これは一時的なものか、いつまでいるのか、その点をはっきりさせますね。それが一つ。今の点は大臣からお答えいただきたい。  それと、終わりますが、もう一つ、これからの参考に聞いておきたいわけですが、国際緊急援助隊派遣法の改正案は今国会に提出なさるおつもりなのかどうか、ぜひお答えいただきたい。まとめて大臣の方から答えてください。
  62. 中山太郎

    中山国務大臣 今お尋ねの国際緊急援助隊法の改正につきましては、今国会に御提案をいたすために現在検討をやっておる最中でございます。
  63. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほども申し上げましたように、今回のはあくまでも一時的なものであって恒常的なものではないと米側がその旨発表をしていると承知しております。
  64. 上原康助

    ○上原委員 ですから、それは一時的なものと言うなら、いつまで一時的なのか確かめてお答えいただけますねということを聞いているのです。
  65. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 米軍の運用上にかかわる問題でございますので、私ども詳細に関しましては米側に一つ一つ照会するのはいかがかと思いますけれども、具体的なことが判明いたしましたら報告させていただきたいと思います。
  66. 上原康助

    ○上原委員 きょうのところは、納得はしませんが、これで終わります。
  67. 牧野隆守

    牧野委員長 遠藤乙彦君
  68. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、ソ連情勢に関しまして御質問をさせていただきたいと思います。  今回のソ連での事態につきましては、既にマスコミ等でも八月革命という名前が定着しつつあるわけでありまして、当然のことながら一九一七年の十月革命にも比すべき世界史的事件というとらえ方があるわけでございます。先ほど大臣もへそういった歴史的に大変重要な出来事であるという見解を表明されております。私も全く同感でございますが、さらに大臣として、今回のソ連の問題を通じて大臣御自身のソ連観というものが変わったのかどうか、あるいは今回の事態の持つソ連の国内政治史上の意義、さらには国際情勢に及ぼす影響、どのようにごらんになっておられるか、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のソ連状況というものは、今委員からお示しのように、八月革命といいますか、ソ連の一九一七年以来の歴史基本的に変えるといったような一つの大きな変革でございました。こういう中で、それじゃソ連がこれでそのままずっと新しい国家体制に入っていくのかといえば、私はそうは断言し切れないと思います。  御案内のように、各共和国独立の主張、あるいは共和国共和国の対立、国境線も含めての対立がございます。あるいはまた宗教の問題が南の方にはございます。こういった問題が一応どのような形でおさまっていくのか。解体された共産党というものが、一つの組織として今日まで七十数年間活動してきたわけですけれども、これが機能停止をするといったような場合に、ソ連は新しい機能的な組織をどのように構成していくのかということは、私は当分時間がかかるものだと考えております。  なお、九月二日に予定される人民代議員大会、ここにおいてどのようなことが決定をされるのか、あるいはまた大統領選挙がいつ実施をされるのか、こういったことを考えますと、新しい国家というものが形を整えて正常な国家機能を果たすまでには、憲法の改正も含めて相当な時間が必要だと私は思います。  こういう中で、各民族間の闘争あるいは指導者間の争い、こういったものを我々はしばらく十分静観をし、接触をしながら、ソ連が新しいリフォームをするように協力をすることが必要であるし、人道的な観点からは援助も必要であればこれはやっていかなければならない、私はこのように考えております。  一方、国際的にどういうふうな影響を与えるかということは委員も御関心をお持ちでありますし、私も実はこれに最大の関心を持っている一人であります。殊に、外交を預かる者といたしましては、従来ソ連が影響を与えていた社会主義の政策をとっている国々がどのような政策転換を行おうとするのか、あるいはその国の民族と社会主義活動というものがいわゆる共産党の支配によって行われてきた地域、国家においてはどういうふうに方向転換をしていくのか、私は、これはしばらく事態の流れをよく見ておかないといけないという考え方を持っておりまして、実はきょうも委員会終了後に外務省地域局長に集まっていただいて、世界的に見て、このソ連事態がどのように変化と影響を及ぼしていくのか、こういうことをつかまえていかなければならないと思いますが、アジアにおきましてもあるいはアフリカにおきましても、これからもまだいろいろと大きな変化といいますか影響が起こってくる可能性も十分ある、私はそのように認識をいたしております。
  70. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 基本的には私も大臣と同じような見解でございますが、ソ連の今後の問題を見る上で一番大きな問題意識は、やはり連邦がどうなるかということではないかと思います。  現在のソ連、特に昨今のソ連は大変強烈な遠心力が作用している状態だと私は見ておりまして、それは政治のレベル、経済のレベル、あと連邦共和国のレベルにおきまして大変強烈な遠心力が働いている。政治のレベルでは民主化、自由化という動き、それから経済では市場経済への移行、それからさらに共和国独立、こういう要素が働いております。今までこの遠心力を何とか束ねていたのが党、軍、KGBというものだと思いますけれども、一番のかなめの党が分解したということは扇のかなめを失ったようなものであって、連邦制の将来、これを支えるのはほとんど考えられない状態ではないかと思います。  そういった意味で、連邦制の将来は大変不透明なわけでございますけれども、その問題は余り議論するつもりはないのですが、今の共和国独立の動きは非常に活発になっております。既にバルト三国につきましては、日本政府としてもこの独立宣言に対して、これを承認する意向を表明されておられますが、その他の共和国独立宣言、既にしておる国もありますが、さらにどんどんふえていくと思いますけれども、どういう方針で対処されるのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  71. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 バルト三国につきましては、ソ連編入の経緯にかんがみまして、と申しますのは、申し上げるまでもなく併合されますまで独立国としてそれぞれ三国とも存在をしていた。その独立国たる地位が強制的にあるいは強圧的に失われたという経緯があるわけでございます。したがいまして、私どもはその成立の経緯、またこの国際社会におけるバルト三国の認識というものを十分に踏まえまして、承認の意図表明を行わせていただいたわけでございます。それ以外の国につきましては、それぞれのソ連邦の一員となった経緯等もございます。国際的にそれがどういうふうに受けとめられているかという状況もございます。そういうものを十分に考えながら慎重に検討すべき問題だというふうに認識をいたしております。     〔委員長退席、新井委員長代理着席〕
  72. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、今ソ連は大変流動的で、ソ連の権力構造がどうなるかということが非常に大きな問題だと思いますけれども、この観点からエリツィン共和国大統領とゴルバチョフ大統領との関係はどうなっていくのか、この辺をどう見ているのか。それからもう一つは、保守派の巻き返しか当然あるだろうと思います。今は時の勢いで改革派が大変勢いを増しておりますけれども、共産党員千五百万人とも言われますし、まだ多数の保守派がいるわけでございまして、こういった人々の巻き返しも当然出てくる。特に、経済改革がうまくいかない場合には必ずまたそれを発端として出る可能性があると思うのですが、ここら辺について政府はどう見ておられるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  73. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ゴルバチョフ大統領エリツィン大統領の将来の関係いかんということでございますが、これはいずれも現職の大統領でございます。立場上、ここで両国の両大統領の関係がどうなるかという見通しを申し述べるのは御容赦いただきたいと思いますが、いずれにいたしましても両者の関係連邦制、連邦共和国との関係がどうなっていくか、特に権限、力関係がどうなっていくかということとゴルバチョフ大統領エリツィン大統領との関係というものは密接に関連しているということだけを申し上げさせていただきたいと思います。  第二の御質問の保守派、軍、KGBの巻き返しの可能性いかんということでございます。私は、先ほど委員からもお話がございましたけれども、まさに今回のクーデター後の動きというものは、政治学上の厳密な意味での革命という論議は別といたしまして、政治的な意味では、常識的には革命の名に値する動きであった。この動きというものは、大きな流れの中で見ればまさにせきとめられない一つの流れになっているという認識をもっておりますけれども、しかし、それでは単純に直線的にこの過程が進むのかということになれば、恐らくまだいろいろな動き、共和国レベルでありますとかあるいは地方のレベルあるいは中枢の一部といったようなところから、いろいろな形の保守勢力からの反撃とかあるいはいろいろな動きというものはまだ予想されると思います。しかし、大きな流れはもう決まっているということではないかというふうに認識をいたしております。
  74. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 先ほど大臣から、今回のソ連事態世界の諸地域にどういう影響を与えるか、これから会議をしたいとおっしゃっておりましたが、特に私も関心のあるアジア・太平洋情勢への影響でございまして、特に朝鮮半島、カンボジアには直にソ連の変化というものは影響を及ぼすと思います。この二つの地域につきまして、またこの二つの地域の抱える問題につきまして今回の事態がどのように影響を及ぼすかにつきまして、政府の御見解をお聞きしたいと思います。
  75. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 まずカンボジアでございますけれども、先生御案内のように既にカンボジア人同士の間で和平に向けて具体的な非常に好良しい動きが出てきておりますので、私は、カンボジアに関する限り、ソ連情勢がいかにあろうとも今既に始まっておる和平に向けての具体的な動きというものはもはやとめ得ないと思います。  それから次に中国でございますが、恐らくこのソ連状況というのは、受け取る側によってお立場上さまざまな受け取り方があろうかと思いますけれども、非常に心配し、深刻な受けとめ方をしておるのではないかと思います。もちろん中国は、表に向かいましては、これはソ連の国内の問題であり、ソ連情勢にかかわらず中ソの関係はさらに発展させたいということを言っておりますけれども、非常に大きな関心を持ってこれを受けとめておるのではないかと思います。  北朝鮮におきましても、御案内のように恐らく大きな関心を持って見詰めておると思いますけれども、当面彼らの方から出てきておる表に向かっての見解は、ソ連情勢はいかにあろうとも我々は我々なりの社会主義建設を進めるんだというような見解を述べておるようでございます。
  76. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今回のソ連事態はいろいろな意味で当然大きな影響があるわけですが、特に我が国対ソ政策についても当然大きな影響があると思います。北方領土問題、それから対ソ支援の問題、特に私は防衛政策の問題が大変重要だと感じておりますので、まずこの防衛政策関係してお聞きしたいと思っております。  今回の事態、先ほど大臣も言われましたように、国際関係を大きく変えるような事態であると思います。当然今まで我が国の防衛政策基本としては、ソ連の脅威という認識があって、それにどう対応するかということを基準に組み立てられてきたわけです。この前提がもはや消滅をしたのではないかということになると、これは大変な防衛政策それ自体の見直しに発展する問題であると考えます。  この関係で、私自身昨年の夏、正確には六月ですが、欧州に出張した際に、各地の安全保障問題の専門家等と意見を交わしたときに非常に印象に残ったことは、既に昨年の夏の時点で彼らのソ連への認識は大きく変わっておりまして、もはやソ連は脅威ではない、スレートではない、むしろデンジャーであるという見方が定着をしておりました。侵略の意図を持っている存在ではなくて、むしろソ連のこれからの混乱、内戦、それによってそのとばっちりが波及してくる。特に難民問題とそれから核の拡散、これが大変な悪夢である、そういう認識が共通に表明されておりまして、非常に印象に残ったわけでございますけれども、こういった安全保障上のヨーロッパにおけるソ連観の変化ということも参考にしながら、我が国としては防衛政策前提の認識としてこのソ連情勢の変化をどのように受けとめておられるか、まず大臣にお聞きをしまして、あと防衛庁の関係者の方にお聞きできればと思っております。
  77. 中山太郎

    中山国務大臣 今日、昨年どことしのソ連のクーデター以後の新しい現在の状況との間において、極東ソ連軍の配備が変更になったかといえば変更になっていない。引き続き状況は同じような軍備状況にあるという認識をまず持っております。さらにそれに加えて、先ほども御答弁申し上げましたけれども、今までは連邦政府の中で核の管理というものが厳重に管理されていた。しかし国内の混乱の中で、この共和国の動き等も見ながら核の管理を一体だれが責任を持って国際社会にコミットするのか、こういったことは去年と比べるとさらに混乱が深まっているという認識を持っておりまして、私どもはそういう面から、安全保障に関してはまだまだそう気を緩めるような状態にないという認識を持っております。
  78. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私が質問しておるのは、安全保障上、当然関心は持つべきではありますけれども、その安全保障上の関心の中身が質的に、例えばヨーロッパの場合には脅威から危険へと変わっているという認識ですね。したがって、当然それに応じてNATOの防衛政策等も今再検討が行われているわけだと思うのですが、我が国としても、確かに現象的には極東ソ連軍の配備というのは変わっていないにしても、安全保障上の観点からソ連の存在が引き続き脅威としてそれをとらえるのか、あるいは単に危険という、むしろ偶発的なそういう安全保障上の事態に備えるべき危険としてとらえるのか、そこら辺の認識についてお聞きをしているので、その点よろしくお願いをします。
  79. 中山太郎

    中山国務大臣 問題は、ヨーロッパにおける問題、これは領土問題というものが全部解決をしていた時点でCSCEというものがいわゆる完成をしたパリ宣言を見たわけであります。そういう意味では、領土問題が解決されていないのは、やはり我々とソ連との間の領土問題ということはまだそのままだ。  それで、脅威かどうかというお尋ねでございますけれども、私は脅威というものは相手が日本を攻撃する意思があるかどうかということにつながっているという認識を持っておりますが、今日のいわゆる混乱したソ連の状態の中で軍がどこまで統制力を持っているかということが一つ大きな問題になろうかと私は思います。  もう一つは、今申し上げたように、偶発的な事故が起こり得る可能性が皆無かというと、これは核を含めてまだ相当危険性が高いということで、私どもとしたら事態を注視して経過を見ていく必要がある。私どもソ連がこの脅威とならないということを確認するということは、今日の状態ではまだ私は時期尚早であるという認識を持っております。
  80. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 この脅威か危険かという認識を余り突っ込んでやる必要もないと思うのですが、ただ、相当質的な変化が来たことは間違いないわけであって、恐らく防衛計画の大綱自体を見直さざるを得ない国際情勢変更ということを私は考えております。  そういった意味で、大臣としては、今回の事態を踏まえて防衛計画の大綱の前提となる国際情勢をもう一度検討すべきであるとお考えかどうか、この点につきまして御返事をお願いしたいと思います。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 このクーデターが発生したのが八月十九日でございまして、きょうは八月三十日でございますから、事態の変化が起こってまだわずか十日間しかたっておらない状況の中で、私どもはこれがどういうふうな、ソ連の国内でのいわゆる政府、それから行政能力、統治能力というものがどのような形で落ちついていくのかということを見きわめるのに少々の時日を要しても日本の国家としてさほど大きなマイナスはないのではないか。私は、そういう意味では極めて慎重だというおしかりを受けるかもわかりませんけれども、まだわずか十日しかたっておらないわけでございますから、事態の推移を十分見ながら対応していきたい。その上で日本政府考え方をちゃんと確立すればいい、このように考えております。
  82. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 大臣はわずか十日とおっしゃっておられますが、実は我々の認識ではここ数年こういう状態が続いている。ポスト冷戦の到来ということは数年たっているわけですから、こういった世界情勢の大きな枠組みの変化ないしはソ連の脅威のあるいは質的な変化というものをやはり十分に再検討すべき時期が来ているということを力説をしておりますので、ぜひその点はよく御理解の上、虚心坦懐に情勢の見直しあるいは防衛政策の見直し等についても御検討をお願いしたい、要望だけ表明をしたいと思っております。  続いてもう一つ核の拡散の問題でございますが、やはり今回のソ連の混乱に伴う大きな一つの懸念は、何といっても核兵器が共和国のレベルに拡散すること。特に戦略核についてはロシア共和国に大半あるそうでございますが、戦術核兵器レベルにつきましては相当に共和国レベルへの拡散が懸念されるということでございまして、まずこの点につきまして政府側としての認識をお聞きしたいと思っております。
  83. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 核の問題はまさに世界の多くの国が懸念を持って眺めている問題でございますけれども、昨日でございましたか新しい参謀総長も申しておりましたけれども、核の管理というものは、少なくとも現在は極めて厳格な形でソビエト連邦軍のもとで管理をされておるということでございます。将来、連邦条約が問題になるわけでございますが、連邦共和国との関係の中においてこの関係がどうなるのかということにつきましては、連邦条約にも若干の言及がございますが、なお不明確でございます。  基本的な考え方としては、先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、また新参謀総長も言っているわけでございますけれども、事柄の性質上、連邦が主体となって管理をしていくという考え方を打ち出しているわけでございます。私どももこの問題は死活的に重要な問題であるという認識のもとに関心を持って事態を、一体どういうふうに管理の問題は進んでいくのかということを見守ってまいりたい。  なお、さしあたりは戦略核兵器につきましてのアメリカとの合意、STARTが予定どおり批准をされ効力を発するということも同時に私どもは期待をいたしたいわけでございます。
  84. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次に、対ソ支援の問題を一言お聞きしたいのです。  一部ヨーロッパの国、特にフランスドイツの中に、今回のクーデターの起こった一因は日米が本格的な対ソ支援姿勢を表明しなかったからだ、デュマ外相のそういうコメントが出ておりますけれども、これに対して、政府はどのように考えておられますか。
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 ヨーロッパにおけるドイツあるいはフランス対ソ支援について金融的な支援問題で積極的であることを私もよく認識をいたしております。  それで、この支援をやる場合に、それじゃ経済的にどのようなことが必要なのか、ソ連の内部のシステムの問題とかいろいろございますから、去年のサミットの申し合わせに従って、EBRDとかIMFとかOECDとか世界銀行とかといったような代表的な機関専門家を派遣して調査した結果、大量の資金援助というものは効果がないという専門機関報告各国首脳報告されているわけでございますから、それにのっとってやってきた。今度のロンドンサミットでもそのような考え方が支配的でございました。また、先般のロンドンにおけるシェルパ会議でもこの考え方は依然変わっていない。ただ、IMFあるいは世界銀行のかかわり方について、これをさらに進めていく必要があるのではないかという申し合わせがあったということでございますので、その点は専門機関意見を尊重してやっておるのであって、ドイツ考え方というものはドイツの分割された国土に対するドイツ独特のやはり考え方がございますから、そこのところはひとつ十分御理解をいただきたいと考えております。
  86. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 先ほど大臣の答弁の中で、本格的な支援というのはまだ先の話だけれども、当面必要なのは人道的支援である、特に冬の到来を前にして食糧あるいはエネルギー物資等、こういった人道的支援はやらなければならぬという御方針を伺って、我々も大変うれしい思いがするわけです。  ただ、この人道的支援をやる場合、私として考えるのは、一つはタイミングを失しないということが非常に大事だと思います。ほかの国より遅くなったのでは効果が非常に減殺されるし、できる限り日本がまず率先してやるようなタイミングを選ぶということ。二つ目にニーズですね。本当に相手の必要なものをしっかりと把握してこれを出すということ。三つ目に、やはりやるのなら小出しでなく大規模にやるということが非常に大事だと思いますので、ぜひそういった点を踏まえて対ソ人道的支援というものをやっていただきたい、こう感じております。また、そういうやり方が北方領土問題交渉への大変大きな雰囲気の改善につながると私は考えておりまして、ぜひそのことも念頭に置いて進めていただきたい。これは要望でもありますけれども、表明をしたいと思っております。  特にこの人道的支援は、昨年も既に私自身チェルノブイリ原子炉問題に関する人道的支援を申し上げ、大臣も直ちに反応していただいて、これがソ連からも非常に評価をされたと聞いております。また、コースチャ君のやけどの治療の問題もソ連人の日本人観に非常に大きな変化を与えたと思いまして、人道的支援は極めてある意味では政治的な意味のあることであると思いますので、ぜひそういう政治的立場に立ってこの人道的援助は進めていただきたいと感ずる次第でございます。ぜひこの点につきまして大臣の所見、決意をお聞きしたいと思います。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連の方々が冬に向かって食糧の問題あるいは医薬品の問題等といった問題が出てくることはおおよそ間違いがない。そのようなことに日本政府は隣国として、また経済大国として人道上の援助をどうするかということについて現在既に検討を命じております。私どもの経験からして国民の皆様方にも御協力をいただくといったようなことが考えられる。その場合に問題になるのはやはり輸送の問題でありまして、そういう問題も含めて政府はどのようなことができるかということを積極的に考え計画を立てていきたい、このように考えております。
  88. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひそういう方向で抜本的な効果のある人道的支援をお願いしたいことを表明しまして、時間ですので質問を終わります。
  89. 新井将敬

    新井委員長代理 古堅実吉君。
  90. 古堅実吉

    ○古堅委員 今回のソ連のクーデター問題あるいはその失敗、それらにかかわる基本的な問題については、日本共産党常任幹部会声明や不破委員長談話などでその都度党の態度を明らかにしてまいりましたので、ここでは繰り返すことはいたしません。  ところで、我が党が厳しく批判し続けてまいりましたスターリン以来のソ連の大国主義、覇権主義の誤りについては、今回の事態を通じても何ら改められる方向にはいっておりません。領土問題は、日ソ平和条約締結の大前提でありますし、日ソ間の当面する最大の政治課題です。連邦体制をめぐり混迷を深めるソ連との関係で、領土問題の今後についてどのような対処をしていかれるか、その展望を含めてお伺いしたい。
  91. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 北方領土問題に対します基本的な我が国政府姿勢は、先ほど来外務大臣からも御答弁がございますように、基本的な姿勢というものはこれを堅持していく。ソ連との関係で申し上げれば、ゴルバチョフ大統領が参りましたときの海部総理との合意事項、共同声明第四項によってつくられました枠組みと理解というものに基づいて今後も積極的にこの交渉を続けてまいりたいというのが日本政府基本的な姿勢でございます。
  92. 古堅実吉

    ○古堅委員 ヤルタ協定以来の誤りを正して、国際的にも通用する大義名分を立てて全千島の返還を要求するのが我が国の正当な立場であります。改めてそのことを強調しておきたい、そう思います。  次に、先ほども同僚議員から御質疑がございましたが、米軍クラーク基地の閉鎖に伴う嘉手納基地の強化の問題についてお尋ねしたいと思います。  嘉手納基地にフィリピンのクラーク米軍基地所属のC141型輸送機七機と兵員百五十人が移駐してきています。嘉手納基地報道部も、臨時的と言いながら第六〇三支援群の増員を認めています。クラーク基地は六月のピナツポ火山噴火によって使用不能となり閉鎖となりました。今回の移駐はクラーク基地の機能の一部を嘉手納基地が引き継ぐためではないかという懸念が県民全体の中に強まっておりますし、沖縄県当局を初め各自治体などこぞって嘉手納基地の増強に反対しています。政府は県民の意向を尊重して移駐を許さない立場で対処すべきです。政府の対処をお伺いしたい。     〔新井委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生言及されましたフィリピンのクラーク基地からのC141輸送機等の移駐につきましては、先ほども御答弁申し上げましたが、これはあくまでも一時的なものであって恒常的なものではないということを最初に申し上げたいと思います。  それから一般論でございますが、これも先ほど御答弁申し上げましたけれども、クラーク基地がとりあえずは火山の爆発によりまして事実上使用できなくなっているのでその機能をどうするかということでございますが、来年の九月以降、米比間の合意に基づきまして閉鎖されることになっているわけでございますので、それに伴いましてクラーク基地の機能をどこに移していくかということに関しましては米軍において現在検討中でまだ結論を得ていないということでございます。
  94. 古堅実吉

    ○古堅委員 八月四日付の星条旗紙に太平洋空軍のジミー・V・アダムス司令官のインタビューが掲載されておりますけれども、このアダムス司令官はクラーク基地の移設先について、「クラーク基地の損失は太平洋地域における基地の損失であり、現在この移設をめざして数カ国との間で交渉中である」と述べております。  そこで伺いますが、クラーク基地の移設問題で米軍当局から外務省に、今米軍側としても結論が出てないということはありましたけれども、それらのことも含めて相談ということが何らかの形にしろあったかどうか。全くそれについて米軍、米空軍側からの政府への連絡その他のことはないのかどうか。さらに、今回のC141型輸送機七機と兵員百五十人が移駐してきた問題について事前に何らかの通告があったか、それらについて明らかにしてほしい。
  95. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 最初に、先生が最後に言及されました今回の輸送機などの移駐に関しまして事前に連絡があったのか、相談があったのかという点からお答えしたいと思いますけれども、今回の一時的な増員に関しましてはアメリカ側から事前の連絡はございませんでしたけれども、事後的には私どもは連絡を受けているわけでございまして、そういう形でクラーク基地の関連で米側から連絡は受けることはございますけれども、今先生が言及されました八月四日付のスターズ・アンド・ストライプス紙に掲載されましたアダムス太平洋空軍司令官が言っております意味で、クラーク基地の機能の再配置を目的として何カ国かと交渉している、こういう言及がございますけれども、そういう形で日本側に対しましてアメリカ側から申し入れがある、あるいは日本側が交渉を行っているということはございません。
  96. 古堅実吉

    ○古堅委員 このアダムス司令官が言っている、移設先について「数カ国との間で交渉中である」と言われているこの「数カ国」の中に日本は入ってないということがはっきり言える、そういうことが確認できますか。
  97. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、現段階でクラーク基地の機能を再配置を目的といたしましてアメリカ側と日本側において交渉しているということはないということでございます。
  98. 古堅実吉

    ○古堅委員 アダムス司令官は、さきのインタビューで、クラーク基地の移駐先について、「空軍が在比スビックの海軍基地のごく限定された付属地を入手し得るだろうが、これは、クラーク基地の空輸能力の損失を補うには充分でない」と述べるとともに、「クラーク基地の損失を補うために、アラスカ、沖縄、グアムの空輸能力が拡張されるだろう」ということを述べています。  アダムス司令官の予想どおり、嘉手納基地の部隊の増強が行われています。かかる既成事実を許さないためにも、単に「何の相談もない」そういう程度にとどまらずに、政府が進んで移駐には反対だというふうに申し入れしなければいけないのではないですか、どうですか。
  99. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生具体的に御質問の点にお答えするためには、先ほど中山大臣も申し上げられましたけれども、私からもさらに申し上げましたように、現在の国際情勢前提にいたしまして、私どもは引き続きこの日米安保体制を堅持していくということがぜひとも必要でございますと考えておりますし、また、そのもとで米軍が日本に駐留するということは、日米安保体制を信頼性のあるものにするという意味から重要だと考えております。  それに基づきまして、先生御承知のようなことで日米安保条約、日米地位協定に基づきましていろいろなメカニズムができているわけでございまして、先ほどもちょっと申し上げたことでございますけれども、米軍の運用に関することに関しましては、これはまさに米軍の運用でございまして、私どもはそれに関しまして一々注文をつけるという姿勢は現下のもとではとりたくないと思っております。  しかしながら、沖縄に関しましては、この委員会あるいはその他の場におきましても地元の方々の声を私どもいろいろ聞いておりますので、そのことは十分念頭に置いて対応をしていきたいということだけは申し上げたいと思います。
  100. 古堅実吉

    ○古堅委員 日米安保条約を出せば何でも説明できると考えていたらとんでもないことです。  アメリカのチェイニー国防長官は、七月三十一日の米下院予算委員会で、在日米軍の経費負担問題について言及しました。その中で、「我々がそこにいるのは」、「そこ」というのは在日米軍が日本にいるそのことを指しています。「そこにいるのは慈善や友人を守るためではなく、我々自身の利益のためだ」というふうに語ったと報道されています。  在日米軍の駐留目的についてのこうした考え方というのは、アメリカ側の一貫した態度です。何もチェイニーの今度の発言、そういうものにとどまりません。一九八四年に米国防総省が発表した「共同防衛への同盟諸国の貢献度」、そこにも同様の趣旨の文言があらわれています。「太平洋軍司令部所属のすべての戦力の優先的な任務は、米国及び米国にとって重要な兵站線の防衛にある。在日米軍は、米国ならびにその領土の前進防衛の一環である。」というふうに述べております。米国の前進防衛の結果として日本防衛があるということをアメリカ側は明らかにしておるのです。それでも日米安保条約に基づく日本の安全と極東の平和、そういうことを口実に在日米軍の思うままに基地を提供するというお考えですか。
  101. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私もチェイニー長官の発言は承知しておりますけれども、私どもが申し上げたいのは、私どもが在日米軍のために経費を払っておるのは、これはまさにチャリティーのためではございません。日本の安全を守るためであり、極東の平和と安全を守るためでございます。それが日米安保条約の目的でございまして、その目的を達成するために米軍に駐留してもらっているわけでございまして、その目的達成のために、日米間の合意に基づきまして在日米軍の経費の一部負担を行っているということでございます。
  102. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府が自主性を欠き、独立性を欠きますと、このようにずばり言われても、それについての意味さえも受けとめなくなるんです。これは我が国の将来にとってもゆゆしい問題であるし、嘆かわしい、そういうことにつながらざるを得ない重大な問題です。ですから厳しく指摘しておるんです。  冷戦構造の変化に伴って、在日米軍、在沖米軍基地が整理縮小に向かうだろう、そういう期待感というのが沖縄の県民にもございます。在日米軍の専用基地七五%が集中され、半世紀にわたる間あらゆる苦難を押しつけられてまいった沖縄県民として、情勢の変化に伴い、日米安保条約の廃棄や基地の撤去、基地の返還、そういうものにつながるのではないか、そういう立場からの期待感につながる、そういうことについては、これはどの立場から見ても当然に理解してもらえるものではないか、そのようにも思います。こういう県民の期待につながる課題というのは、沖縄にとっては切実な課題です。米軍基地の存在が沖縄の振興開発の最大の障害になっておるということもその要因です。基地の存在は県民の生活の向上と直接のかかわりを持っており、切り離すことができません。県民生活を犠牲にしての基地の増強を絶対に許すことができない。ひとり日本共産党の古堅実吉の主張というものではないんです。  政府は、今後クラーク基地の移駐の協議があったとしても、断固拒否すべきです。仮に沖縄への移駐などという形でのアメリカ側からの相談があれば拒否できますか。すべきです。
  103. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、クラーク基地が現在持っております機能をどのように再配置していくかということに関しましては、米軍におきまして現在検討中で結論を得ていないわけでございますけれども、沖縄との関係で申し上げれば、今先生が御指摘になりました日本におきます在日米軍の施設、区域が沖縄に集中しておりまして沖縄の方々に御迷惑をおかけしているということに関しましては、私ども非常に心苦しく思っておりまして、その都度いろいろお話を伺って、私どもとしてはできるだけ地元の方々の御意向も踏まえて対応をしたい、そういうことで米側とも話をしてきたつもりでございますし、今後も話をしていくつもりでございますが、今先生御指摘の具体的な、どの部隊がどのように沖縄に駐留していくかということは、これは米軍の運用にかかわる問題でございまして、先ほど御説明申し上げました日米安保条約の目的達成のために必要なものに関しましては私ども基本的に協力していく姿勢が必要であるということは、改めて申し上げたいと思います。
  104. 古堅実吉

    ○古堅委員 輸送部隊の移駐について、一時的で、あくまでも恒常的なものではないなどという説明をしておられます。しかし、日本政府にそういうことを言ってきたんじゃないのですよ。ただそういう報道があるということで、アメリカ側の立場に立ってそのことを強調される。しかし、それが既成事実化され、そのままになる可能性もなしとしない。この輸送部隊の移駐にかかわっても現地の沖縄では、それ以上強化されるのはもう御免だ、こう言っておるのですよ。ですから、その問題を含め、クラーク基地のどういう部隊にしろ、これ以上沖縄に移駐などとかいうふうな形で片づけようというアメリカ側からの相談、そういう協議については、日本政府として県民の意思を酌んで、許せぬという立場を踏まえてやるということが言えないのですか。もう一度お伺いしたい。
  105. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、沖縄の皆様方にアメリカ軍の施設、区域が沖縄に集中している結果いろいろ御迷惑をおかけしているということは非常に心苦しく思っておりますし、また、その都度いろいろ具体的なことについて御意見、御注文を賜っておりますので、それに関しましては一つ一つども誠実にアメリカと話をしてまいりましたし、これからもしていくつもりであるということを改めて申し上げたいと思います。  今先生が具体的に言及されましたC141輸送機に関しましては、先ほど申し上げたようなことで、これはあくまでも一時的なものである、恒常的なものではないということをアメリカ側が言っておりますし、全体のクラーク基地の機能の再配分に関しましては先ほども申し上げたようなことで現在検討中ということでございますので、アメリカの検討結果を待ちたい、こういうふうに考えております。
  106. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、それだけ申し上げましたが、大臣としてそのことについて思うこと、おっしゃることがありませんか。所見をお伺いしたい。
  107. 中山太郎

    中山国務大臣 沖縄の方々には、沖縄に米軍の基地が存在するということで大変御苦労をかけているということは政府としても十分認識をいたしておるところでございます。私どもといたしましては、できるだけ基地の整理縮小ということで今日まで米側と交渉してまいりましたが、このような考え方を今日も堅持しながら、これからのさらなる日本の安全保障のために努力をしていかなければならないと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、ただいま北米局長が御答弁申し上げました線で政府としては当分政策を堅持してまいりたいと考えております。
  108. 古堅実吉

    ○古堅委員 どなたに出てもらっても同じような返事ばかりが出てまいってくるのですが、これは国民立場、沖縄県民の立場から、幾ら安保条約を云々してそれを持ち出しても納得できないのですよ。  先ごろ、牧野委員長を初めとする外務委員会が十年ぶりに沖縄視察を行いました。いろいろ新聞その他でお聞きであった。それなりの御理解があられた。そういう立場でいらっしゃった方々でありますけれども、しかし現地沖縄へ行って、やっぱり、なるほど、百聞は一見にしかず、そういう思いだということをそれぞれ異口同音におっしゃいました。そのとおりだと思うのです。そういう沖縄に、安保条約を持ち出せばクラーク基地にかわるさらに増強が納得させられるなどというふうな形で考えよう、そういうことは絶対評せません。まあそれ以上質問しませんが、そういう重大な問題であるということを受けとめていただいて、きちっと対処していただくよう強く要求しておきます。次に進みます。  時間がございませんが、目下重大な問題となろうとしております国連平和維持活動、PKO問題の基本的な点について幾つかお伺いしたい、そう思っています。  国連が平和維持軍を派遣するのは、武力紛争当事国の停戦合意あるいは兵力引き離し合意を受けて、その合意を守らせる、そこにあります。その平和維持軍が派遣される当該地域は、弾も飛んでこない、発砲もない安全なところだというふうに受けとめておられるか、それとも危険なところだというふうに受けとめておられるか。大変政治性の高い問題でもありますから、大臣からそれについての見解を伺いたい。
  109. 中山太郎

    中山国務大臣 国連平和維持軍というものが派遣される地域というものは危険なところか危険でないところかというお尋ねでございます。これにつきましては、政府としては、停戦が成立をしていること、これが大きな前提条件一つでございます。そして、この平和維持軍が活動する地域の当事国を含め、この地域で平和維持軍が活動することをそれぞれが了承をし、そして日本がまたそれに参加をするということを紛争当事国が了承しているということが大きな前提条件でございます。  このようなことを考えますと、一応停戦が成立しているということは危険性が極めて低いということを申し上げなければならないと思います。
  110. 古堅実吉

    ○古堅委員 危険性は低いけれども、それなりの危険性はあるということだと受けとめてよろしいですか。
  111. 中山太郎

    中山国務大臣 危険性が低いと申し上げておりますことは、散発的なゲリラ活動のようなものが起こり得る可能性は全く否定するというわけにはいきません。そういう意味で、いわゆるパトロール中のこの平和維持軍の隊員が威嚇をされるあるいは射撃を受けるといったような危険性は、過去の平和維持軍の歴史の中でそれが証明されているわけでございます。  原則的には戦争状態にないということが原則でございますから、この平和維持軍が派遣される際に、国連がとります措置というものを国連のモデルでよくごらんいただきますとわかりますように、まず停戦の合意が成立していること、そして、停戦の合意が成立した上で国連の事務総長がその紛争当事国に対していわゆる国連平和維持軍を派遣する場合の地位協定を結ぶわけであります。そして、国連事務総長はそれらの相手国の受け入れの状況に基づいて安全保障理事会あるいは総会においてこの派遣の決定をするわけでございますから、事前に国連を中心とした和平の準備というものが国際機関によって行われるということをよく御理解をいただきたいと思います。
  112. 古堅実吉

    ○古堅委員 衆議院のPKO調査団の報告によりますと、明石国連事務次長が、「PKOは、弾がどこから飛んでくるかなどを判断しなければならず、軍事的な訓練を経ていなければならないが」というふうに述べておられまして、危険な事態があり得るということを明言しておられます。今、危険性が伴うというおっしゃり方は、いつ弾がどこから飛んでくるかもしれないようなそういう危険な事態も含んでおるというふうに理解してよろしいですか。
  113. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいままでの外務大臣の答弁で尽きていると思いますけれども政府がこれまでご説明してまいっつておりますとおり、基本的に、まさに停戦の合意が成立し受け入れ当事国も同意しておる、かつ中立、非強制という原則で行動する。したがって、国連平和維持軍の活動と申しますのは、戦闘が行われているような意味で危険な場所であるということではないと考えております。  しかし、過去の平和維持軍の活動を見ますと、確かに弾が飛んできたことはあるわけでございまして、そういう意味では私たち、全くリスクがないあるいは全く安全だということは申し上げるつもりはないわけでございます。しかし、平和維持軍への参加に当たりましては、国連あるいは我が国の在外公館等の情報をもとにして、その要員の安全ということを十分確保しながら参加していくということは当然のことかと思っております。
  114. 古堅実吉

    ○古堅委員 昨年十一月五日の特別委員会で赤尾国連局長は、サイプラス平和維持軍の場合は自動小銃、装甲車とかいろいろなものを装備しており、UNIFILにつきましては、バズーカ砲、機関銃、重機関銃等も装備していると述べています。安全ならバズーカ砲や重機関銃などまで装備する必要はさらさらないはずであります。今おっしゃる危険な面もある、危険なときがあるとおっしゃる、そういうものに対処するためにこういう重装備もしていかなくちゃいけない、そういうことなんだというふうに理解してよろしいですか。
  115. 丹波實

    ○丹波政府委員 過去の平和維持軍、調べてみますと確かに今先生が言及されたような装備というものを各国、国連と協議の上で持っていっておりますけれども、平和維持軍の目的はあくまでも国連の権威に基づき、そこに存在し説得することによって既に達成された平和を維持するということでございまして、過去の歴史を見ますと、それじゃそういう持っていかれた武器が現実にどんどん使われているかというと、それは実は現実ではございませんで、私たち、この問題を検討するに当たりまして各国に電報を打って調べてみたのです。  それに対して、例えばオーストリアは十八年間にわたりまして平和維持軍に参加しているけれども、一度も発砲したことはない。フィンランドも、これまで人をねらって実弾を発射したことは一度もない。イタリアにつきましても、実際に武器を使ったケースは一度もない。ポーランドその他ここに書かれてありますけれども省略いたしますが、それが実は現実でございまして、確かにこういう武器その他は持っていっておりますけれども、それはあくまでも治安その他の観点から念のためということと理解していただきたいというふうに考えております。
  116. 古堅実吉

    ○古堅委員 そんなことをおっしゃってごまかそうとされるんだから。それじゃお聞きしましょう。過去においてPKO、PKF、その活動の中でどれだけの人々が命を落としたか、その数をおっしゃってください。
  117. 丹波實

    ○丹波政府委員 私は過去のPKFにおきまして、いわゆる括弧づきの戦闘的なものが一度もなかったということを申し上げているつもりは毛頭ございませんで、先生に申し上げるまでもなく、例えばコンゴの例、あるいは一九七四年のキプロスの例、あるいは一九八二年のレバノン暫定軍の例というのは、そういう武器といいますか、日本政府が申し上げておりますところの前提が崩れたかあるいは崩れかかったそういう事態、特にコンゴの場合にはひどいケースでございまして、その後、国連はそういう反省に基づきまして非常に慎重に平和維持軍というものを組織してきておるわけでございます。  今の先生の御質問でございますけれども、過去の死者数、国連の統計によりますと七百七十二名ということでございますが、しかし、これも私たち各国に電報を打って調べてみました。時間の関係上たった一つの例だけ申しますけれども、例えばスウェーデン。これまで五十九名の者が亡くなったと言っておりますが、実は交通事故、航空機事故、その他病気といったことで亡くなったのが五十名、活動中で亡くなったのが九名、そういうことをスウェーデンが言っております。フィンランドの例その他ありますけれども省略いたします。  それから、最近京都大学の香西先生が本を書いておられますけれども、香西先生はその本の中でUNEFとUNDOF、これはいずれも中東地域に展開しております平和維持軍でございますが、UNEFとUNDOFの要員の犠牲者の大部分は地雷への接触及び交通事故によるものであるということを先生も言っておられますけれども基本的には、いわゆる銃弾に当たって死んだ者が全くなかったということは申しませんが、基本的な構図というのは今申し上げたようなことになろうかと考えております。
  118. 古堅実吉

    ○古堅委員 もう時間がなくなりましたのでそれ以上質問を続けることはできませんが、今の私が質問したことにかかわる持ち出されたごまかしのための数字などについて、いずれ改めて言う機会を持ちたいというふうに考えております。  終わります。
  119. 牧野隆守

    牧野委員長 和田一仁君。
  120. 和田一仁

    ○和田(一)委員 きょうは委員会冒頭に大臣からソ連情勢に関しましての御報告我が国対応について御説明をいただきました。これに関連して御質問させていただきたいと思います。  ソ連においての政変大臣は十日間の間だ、こうおっしゃいました。まさにこの十日間のあり方というものは、もう世界史に特筆大書して残されるような大変な日々であった。こう思います。一九八五年にゴルバチョフ大統領がグラスノスチ、ペレストロイカということを提言されて、そしてそれにのっとって新思考外交を展開されてまいりましたけれども、今我々の目の前でこういう形でそういう主張が急速に展開されてきたということについては本当に驚きであり、これはこの時期にこんなふうになるだろうという予測が的確にできた人は少ないというふうにすら思うわけでございます。  それ以来このソ連のあり方という、一挙手一投足について世界の人々はその視線を外すことができないようなそういう深い関心を今持っておられると思うわけでございまして、きょうもそういう意味で、この委員会はこの情勢を中心に開いていただいて、大臣においでをいただいたわけでございます。その間、我々もソ連の研究者であるとかアナリストというような人々からいろいろお話も聞いてまいりましたが、聞けば聞くほどなかなか容易な状態ではないな、こういう思いを新たにしておるわけでございます。  そこで、きょうは大臣からの御報告や御説明がございましたけれども、こういう現象の中で今率直に国民は、今のソビエト連邦というもの、今まで我々はソビエトといえばソ連邦というものを頭に置いて物を考えてまいりましたが、それが共和国の権限というものが急速に強化されている、特にロシア共和国エリツィン大統領を中心にしたクーデター失敗後の改革というものを見ておりますと、これは大変急速に、規模も大きく変化しているな、こういう感じがいたします。私どもが理解しているような法的な手続というものを超えてでも、今この際だというような思いでやっておられるなという感じもするわけでございまして、本当にこれは連邦の権限が弱まって共和国としての権限が逆転するほど強化されている、こういうような現状を知りまして、こういう変化に一体これから日本外交はどう対応していったらいいのか、これは日本のみならず先進諸国のすべてが考えるべき問題でありますが、特に我が国としては北方四島返還という大きな問題を抱えてソ連との平和をきちっとしていきたい、その時期は遠くないぞというような思いを持っていただけに、この対応というものは非常に大事だと私は考えております。まずこの点から大臣の御見解を伺いたいなと思います。  今カオスというような言葉でソ連の現状がよく伝えられますけれども、こういうカオスの状態の中で我々がやはり懸念し、関心を持ち対応をしていかなければいけないというのは幾つかあると思うのです。それは核であり、あるいは経済難民であり、そういうような問題等があると思います。そういうことを含めながらまず冒頭に、こういった大きな変化で、今までのソビエト連邦というものの連邦の権限、共和国の権限が逆転している、それもソ連邦としての権限が非常に薄くなって、外交、防衛、安全保障あるいは通貨、こういう程度に非常に限定されながら共和国の権限が大きくなっている、こういう実態を見ながらどう対応していったらよいかの基本的なお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。
  121. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連の今回のクーデターの失敗によって起こってきた新しい共和国発言権というものは、異常と思えるほど強くなってきているという認識を持っております。  特にロシア共和国においては、大変活発にエリツィン大統領を中心に新しい国づくりといいますか、そういう考え方が随所にうかがわれるわけでありますが、片や、ロシア共和国の動きに対してロシア・ナショナリズムという観点から抵抗をしている他の共和国も幾つか見られるわけでございまして、こうした共和国間の対立、そういったものも含めて、いわゆる急進改革派と保守派、また軍部、あるいは共和国間の対立といったものが、ここしばらく流動性を帯びながら動いていくのであろうと我々は思っております。  しかし、日本政府としては、これからの対ソ外交を進めるに当たりまして、先ごろ派遣をいたしました斉藤外務審議官も、エリツィン大統領に最初の日にお目にかかり、そして昨日はゴルバチョフ大統領にお目にかかる、もちろん先方の時間の都合がございましたから日がおくれたという形になっておりますけれども、同時にお目にかかるという姿勢をとっておりまして、いろいろと、これ。からの外交を進めるに当たりましては、共和国とも十分緊密に連絡をとりながら日本の対ソ外交というものを進めてまいらなければならないという考えを持っております。
  122. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今までと非常に違った対応も迫られてきていると思います。  こういった現状の中で、先ほどども申しましたけれども世界が懸念し、そして対策を至急考えていかなければいけない問題の一つとして核の問題があると思います。せっかくSTARTの調印ができて戦略核が削減されるという歴史的な時代が来た。こう考えておりますが、先ほどの局長のお話では、このSTARTの調印そして実現には、予定どおりそれが実現することを期待しているという御答弁がございました。まさにこういったソ連の現状で核というものが逆に拡散するのではないかという懸念は、これは当然あると思うのです。  ですから、そういうことに対してどういった対応が一番いいか。今、核保有五大国の核のバランスというものが変わってしまったのでは大変だ。この戦略核については、共和国もそういう大変なものを持っていてもかえって重荷だというような思いもあって、新聞報道によれば、逆にこれはもうロシア共和国領土内に移しているというような報道もございました。  そういうことを踏まえながら、安全管理体制がどういうふうになっていくか、この見通しをどう立てておられるか、いわゆる中央集中管理体制が従来のようにきちっと行われるであろうかどうか、それが共和国との間でいろいろな話し合いが行われ、いやおれのところはもういいから持っていってくれ、置いておかないでくれというようないろいろな動きの中でどう展開していくとお考えになっておられるのか、その辺の見通しをお聞かせいただいて、それにどう対応したらいいか。この管理の問題は、我が国だけでなく、G7を含めいわゆる核管理の基本的な姿勢として世界考えていかなければならない問題だと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  123. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連におきます核の管理につきましては、現在のところ連邦政府がそれの管理をやっているという認識を政府は持っております。しかし、一方、この核がどのように管理されているかということは核保有国の最高軍事機密でございますから、この実態を把握することはなかなか難しいということもよく委員が御理解をいただけることだと思います。  いずれにいたしましても、米ソのSTARTの交渉の妥結、これからこの条約は批准を両国の議会で必要とされるわけでありますけれどとも、そういうことを踏まえて考えてまいりますと、先ほどもお答え申し上げましたように、まずG7の国々がやはり一致してソ連の核の管理問題というものについて積極的に話をいたすことが国際社会の安全のために極めて重要であるという認識を持っております。
  124. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、戦略核については比較的管理体制というものは厳しく管理され、ないがしろにされるものでないという認識はどこにもあると考えておりますので、そしてそれは削減の方向で何としても世界の期待にこたえるように努力が行われると思いますが、それ以下の核管理、これがややもすれば非常に管理不十分というような懸念もございまして、そういう意味でこれからの対応が非常に大事だなという気がいたします。同じように不安もございますけれども、先ほども極東の軍備についてもいろいろ触れられておりまして、特にSLBM、こういうものはやはり極東には依然として存在するというようなことも考えると、これからの対応の難しさを私は非常に考えておるわけでございます。この問題は、また先にいろいろ機会があろうと思います。  いま一つは、ソ連経済がもう非常に崩壊寸前である。先ほどもお話で数字も出ておりましたが、局長の方から一—六月はGNPマイナス一〇%だというようなお話で、年内にはひょっとすると二〇%ぐらいの落ち込みになるんではないかという観測もあるわけでございますけれども、そういう中で経済援助の問題はほっておけないという認識をG7みんな共通して持ったと思います。先般のロンドンサミットでは、この前もここでお尋ねしましたけれども経済援助に対しては、有効にその経済援助が活用されるような体制ができるまで、人道的支援は除いて、技術的、人道的支援のほかは慎重というのが我が国とアメリカとの認識だったように思いますが、今ドイツを中心に、そんなことを言ってられないよ、もっと日本もアメリカも本気で対ソ援助に乗り出せ、おれらの方はもう手いっぱいだよ、こういう発言がどんどん出てまいりますね。  これに対応していく姿勢の問題ですが、一つは、この基本的な方針はさっきも大臣おっしゃっていたので余り変わらないのだろうと思うのですけれども、新聞記事でちょっと御質問させていただきますけれども、この間、金融支援一つの基準を設けるような記事を拝見いたしました。「政府、対ソ金融支援に基準 資金贈与には応じぬ」「日本輸出入銀行による市場レートでの融資などには応じるが、その場合でも連邦共和国政府の保証を求める」というような原則をお決めになったのでしょうか。これは、もしお決めになったとすると政策のちょっと変更がな、こんなふうに思ってこの記事を読んだのですが、この辺をひとつお示しいただきたいのです。
  125. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 今委員指摘の報道のような何らかの形の金融支援あるいは無償援助と申しますか、そういうものについて政府部内で何らかの基準あるいは目安と申し史すか、そういうものを設定したという事実はございません。
  126. 和田一仁

    ○和田(一)委員 今外務省から渡辺審議官あるいは斉藤審議官、一生懸命飛んでいただいておりますけれども、G7として対ソ経済支援強化ということをお話しになっているようでございます。渡辺審議官がお出になっているようでございますけれども、そういうG7としての強化策を踏まえて、大臣は、食糧援助の強化、これは人道的な立場からやっていただくおつもりだろうと思いますが、食糧援助の強化ということはやるんだ、こういう御発言があったと思うのです。これについてどういうことをイメージして具体的にされるか。そしてその対象として、さっきから言っているようにソビエトという連邦国家、今権限が非常に減少し、流通の管理も何にもできなくなっているようなそういう国を対象にやるのか、あるいは特定のところをお考えになっているのか、その辺ももしよろしければお聞かせいただきたいのです。
  127. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 本年度の緊急人道援助につきましては、委員案内のように、十億ドル相当の無償の食糧並びに医療品の供与、これは既に全部実施済みでございますが、そのほかに、先ほど話題になりました一億ドルの融資というものを決定したわけでございますが、この一億ドルの融資は、先ほど大蔵御当局から答弁のございましたようにまだ実施されてない状況でございます。  今年度、つまりことしの冬の食糧援助をどうするかということにつきましては、まだ全く白紙の状態でございます。これはG7のシェルパ会合でも、これからこれについて検討するために各種の情報収集等を行い、さらに検討をするという合意ができたようでございます。  失礼しました。無償援助を十億ドルと申し上げましたが、十億円の間違いでございます。訂正させていただきます。
  128. 和田一仁

    ○和田(一)委員 先ほども御答弁を聞いていて、この冬はソビエトにとって、ソビエトの国民にとって大変寒く厳しい冬になりそうだなという感じを持ちました。本当に七十年間、資本主義が敵であり、そんなものはだめなんだと価値を認めないできた国が、一気にここで経済の自由化、市場化を図ろうとしてもなかなかうまくいかないだろうという予測は当然あると思うのですね。それだけに、経済的にうまくいかない、厳しい冬を乗り切れないというような事態が出てきたときに、ドイツが恐れているように、陸続きのヨーロッパではこの経済難民の受け入れは一体どうしたらいいんだという思いが強くあると思うのですね。  私は、これは対岸の火事ではない、こういう感じを持っております。やがて日本も、そういう意味ではこの大国が経済的にカオスのまま、ここから一体いつ脱出できるかできないか、もうその時間と時期とやり方いかんによっては我々も同じような対策を考えなければいかぬというくらいに私は大事な問題だと、そしてそれは何もそのソビエトだけではなくて、先ほどもいろいろありましたように、こういったことを大きな引き金として、大きな影響力を持っているいわゆる社会主義国家の中にも同じような反応が出てきやしないか、こういうことも含めて我々はやはりこの経済難民というようなものを中心に難民の問題についてそろそろ本気に考えていかねばならないと思いますが、大臣この点はいかがですか。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 昨年は、ソ連の穀物生産が二億三千万トンあったと言われております。しかし、今年は農産物の生産は下落しておるというのが我々の頭の中に入ってきている情報でございますし、工業生産も下がっていくといったような中で、今委員がお示しのように難民の問題を一体どうするかという問題は当然これから起こってくる可能性のある問題として考えておく必要があろうかと思います。  しかし、その難民が出てくる出てこないにかかわらず、この来るべきソ連の冬、この冬は我々の国と違って相当早くやってくるということで、これに対して我々が人道的な援助を積極的にやる、隣国としても当然この経済大国で経済に恵まれた国家としては相当思い切ったことを考えていかなければならないようになるだろうと考えておりますが、その具体的な方法というものは渡辺外務審議官が帰ってからいろいろと関係各省で協議して政府としての方針を立てたいと考えております。  難民問題につきましては、国連難民高等弁務官には日本から緒方貞子教授が御就任でございまして、この難民問題についてはUNHCRを中心に国際的な協力をやっているのが今日の現状でございますが、ソ連からの経済難民が発生するということは考えたくございませんけれども、もし発生いたすというような可能性が出てきた場合には、UNHCRの緒方高等弁務官と十分協議しながらこれに対応していきたい、このように考えております。
  130. 和田一仁

    ○和田(一)委員 限られた時間の中なので、いろいろと伺いたいことがたくさんあるのですけれども、時間がなくなりましたの、で、どうしても確認しておきたいなと思う点を御質問いたします。  大臣、この国会は、政治改革それから国際社会への寄与、貢献という意味で懸案のPKOへどう対応していくかとか、突然出てきた証券・金融不祥事への締めくくりをどうするのだというような、短い期間ですけれども大変大事な中身の濃い国会になっていると私は思います。  そこで、このPKOについてですが、いろいろと御苦労なさってこられているわけですけれども、この国会の中でPKOについて法案としてお出しになって、これを成立させて、そして早ければこの秋実現するかなというカンボジア和平へ向かってきちっと対応していこうというお考えなのか、あるいはカンボジア和平も、この成立の時期は私の見通しとは違うかもしれませんけれども、そういうことは別に念頭にないのだとお考えになっているのか、この辺について基本的にひとつお考えを聞かせていただきます。
  131. 中山太郎

    中山国務大臣 日本が資金だけでなくて人的に国際貢献を行わなければならないということは、国民の皆様方も多くの方々がそのような国際環境に日本は立っているという御理解を十分いただいていると私は認識をいたしております。  ここ数日来のパタヤにおけるSNCの会合において、七〇%の兵力の削減問題、あるいはまた残った三〇%の武器と兵員というものはどこへ集めるかという協議も既に成立をしているわけでありまして、来月予定されるパタヤの会合では、さらに選挙の制度について四派の間の協議が開かれると思います。それがうまくいきますれば、当然、タイにおけるカンボジア和平会議というものの開催が考えられるわけでございまして、そういうことを考えますと、早ければ年内にもこれが持たれる可能性は随分高くなってきていると認識をいたしております。  そういうカンボジアの和平交渉の過程の進展を見ておりますと、やはりこの地域の和平が成立をする、そして各派間の停戦も守られるということになってまいりますと、当然国連の関与という問題が出てくるわけでありまして、国連の関与の中には、委員も御存じのように、平和維持のための平和維持軍の存在あるいは停戦監視の問題あるいは選挙監視の問題あるいはまた戦後の復興問題といったような問題が軒を並べて登場してくるわけでありまして、日本政府としては、各国協力をしながらそういうふうな作業にも参加をいたしたい。アジアの一国としても、特にそういう意味で参加をいたしたい。そのためには、この経験のある人たちの協力というものは必要でございまして、新しく政府考えておりますPKOというものを法案として国会で御審議をいただき、アジアで長年待望されたカンボジアの和平の成立の後に、日本政府としては、十分整備された法律のもとで積極的に参加ができれば、国家としても国際社会に大いなる貢献ができるものと考えております。
  132. 和田一仁

    ○和田(一)委員 カンボジア和平の見通しについては、今の動きから、年内にも実現の可能性は大きい、そのときに国連関与の中で要請が出てくるPKO活動を初めとした国際協力には積極的に参加していきたい、こういう御答弁でございました。そのためにPKOを法案としてきちっとしたものとして対応する、こういうふうに受けとめましたが、そうしますと、確実にこの国会で成立をさせるということだと思うのです。そうでないと、この年内は国会が開かれるかどうか私はよくわかりません。会期はもう非常に切迫をしております。通常国会が一月に召集というふうに新しく変わっていこうという国会の今の現状からいって、今の大臣の御答弁を伺うと、相当の決意と見通しの上でこのPKO法案は本国会で成立させるというふうに理解をいたしましたが、それでよろしいですね。
  133. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、このPKO関連法案というものを今国会に提出させていただいて御審議をお願いするという決意は十分固めております。この国会での御審議で、この法案の成立に御協力いただくように、政府としては心からお願いを申し上げたいと思います。
  134. 和田一仁

    ○和田(一)委員 昨年の秋以来、国際協力についていろいろ議論を重ねてきた国会でございます。そして、昨年の秋には、いわゆる平和協力法がうまくいかなくて、その後、自民、公明、民社三党による国際協力に関する合意覚書というものができました。それに基づいて、事情は変わりましたけれども、いわゆるPKO対応というものを今考えているわけです。  私は、この三党覚書の中に、そういった考えの中に、国際緊急援助隊派遣法の中にもこれが使えるようにしよう、こういう合意がありましたが、昨日だったと思いますが、幹事長・書記長会談の中で、この合意を外してでも国際緊急援助隊に自衛隊を参加させて、より有効にこれが活用できるような改正案を出そうではないかといううちの提案に合意していただけた。私はこう理解しておるんです。それと見合って、先ほども御質問がありまして、大臣はここで、出すということを検討中、こういうお話でございましたが、出すことを検討中ということは、出して成立させる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  135. 中山太郎

    中山国務大臣 国際緊急援助隊に、自衛隊の方々の積んでこられた経験また組織力というものが、海外における天災によって被害をこうむられた方々の援助に役に立つという考え方に基づきまして、私ども国際緊急援助隊法の一部を改正する法案をこの国会で御審議をお願いいたしたい、このように考えております。
  136. 和田一仁

    ○和田(一)委員 ぜひ出して、実を上げていただくように改正をしていただきたい。  私は、この法案が成立するときにも、この委員会でしたか、当初から自衛隊を参加させるべきであるということを強く主張し、要請した一人でございまして、そういう意味で、今の大臣の御答弁によって、私どもはもちろん前向きに取り組んで成立をさせ、こういうことでまず日本国際社会の中に本当に人道的な立場で貢献できるということをはっきりと示していきたいと思っております。  ピナツボ火山等に対する対応、こういったものもちょっとお聞きしたかったのですが、これはまたの機会に延ばさしていただいて、大臣の最後の御答弁、もう一回、私どもはきちっと受けとめて対応しますので、よろしくお願いいたします。
  137. 中山太郎

    中山国務大臣 委員も御案内のように、国際緊急援助隊の海外での活動ということにつきましては、あくまでもこれは自然災害が対象であるということ、そして相手国の要請があった場合、こういった場合に緊急援助隊を派遣するということが従来の慣例でございます。そういう中で、この法案が新しく修正されて、その能力あるいは輸送能力が格段に確保されるということによって、我々は、バングラデシュとかあるいはフィリピンの災害とかによって得た経験に基づいて、一層の相手国に歓迎される協力ができることを心から期待をいたしておるということを申し上げておきたいと思います。
  138. 和田一仁

    ○和田(一)委員 終わります。
  139. 牧野隆守

    牧野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会