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国務大臣(
中山太郎君)
委員も御
指摘のように、ガット・ウルグアイ・ラウンドということについてよくわかりにくい、これは簡単に今までの歴史を振り返ってみなきゃならないと思うんです。
一九三〇年代に保護貿易主義というものが世界で台頭いたしまして、そういうところから結局三〇年代の後半に戦争に入っていったわけでありまして、第二次世界大戦を通じて世界の国々は保護貿易主義というものに大変大きな反省をいたしたわけであります。そういうことから戦後つくられましたものが多国間の自由貿易、ガットの協定、さらに戦後の復興のためのいわゆる世界銀行、それから国際金融、為替の安定のためのIMFと、こういったような戦後の自由経済体制の国際的な基礎がつくられた。しかし、それがつくられてからちょう
どもう四十年ばかりたっております。そういうたっております中で、この四十年の間に実はいろんな変化が起こってまいりました。
最近のところでは、第一次石油ショックの後、国際的に不況が起こってくる。さらにまた、ヨーロッパでは、構造的な不況、
アメリカでは貿易の赤字、
日本はこの小さな国でありながら大変強い債権国にのし上がってくる。こういう中で、このガットのルールに合わないで国際貿易が約四〇%ばかり今行われておるわけであります。そして、
アメリカにおけるような、スーパー三〇一といったような法律が
アメリカの議会で成立する。これはもう一方的な措置でありまして、国内法で国際貿易を規制する、こういうことがあって、このような一方的な制裁措置といったようなものを含めて、何とか国際経済を自由貿易体制を反映させながらやっていくということ、やはりこのほころび始めたガットのルールの再建をやらなければいかぬということで、今日このガット・ウルグアイ・ラウンドが行われているわけでございます。
そういう中で、農業問題が非常に大きな問題になってくる。農業は、一九七〇年代は国際的に農
作物が不足をしておった時代であります。そこで、八〇年代に入って増産に入る、そして農産物の国際的な過剰時代が起こってくるわけです。そして、この過剰になった農産物を輸出するために輸出補助金をつける。そうすると、政府は財政でそれを補てんするわけでありますから、財政赤字が出てくる。また、ECあたりでは、外国から入ってくる農産物に対して、可変課徴金といいまして、国際価格と国内価格の差額を税金で取る。そしてまた、国内の余った農産物を輸出する場合には、輸出補助金をつけて国際価格まで落とした価格で
海外に出す。こういったようなことで、いわゆる国際経済の中での自由貿易のシステムが混乱状態に入りかけている。これを何とかこの機会にやらないと国際経済がうまくいかない。
こういう中で、我々
日本は、
委員も御存じのように、貿易で生きている国でございますから、
海外から多くの資源を求めて、そしてそれを加工して世界じゅうに輸
出して、その差額を、富を分配して、今日世界一所得の豊かな国家になりつつあるわけであります。こういう中で、
日本にとっては、このガット・ウルグアイ・ラウンドが不成功に終わるということは、大変国家のためにも、また国内で生産活動に従事している
国民の皆様方にも非常に大きな影響が起こってくる可能性がある。
ここでこれが失敗した場合にはどういうことになりますかと申しますと、
各国とも保護貿易時代に入ってまいります。そうすると、輸入規制という問題が一方的に国内法で起こってくる。ただいま鉄鋼とか自動車は、それでなくても二国間の話し合いで規制が行われておりますけれ
ども、いろんなことが起こってまいりますと、貿易立国をやっている
日本にとっては大変大きな問題が
国民生活に起こってくるわけでございまして、こういうことから考えてまいりますと、この
会議というものが、このガット・ウルグアイ・ラウンドというものが
日本にとっては避けて通れない大きな問題、こういうふうに御
理解をいただければ結構じゃなかろうか、このように考えております。