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1991-06-04 第120回国会 参議院 決算委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年六月四日(火曜日)    午前十時五分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         及川 一夫君     理 事                 大浜 方栄君                 後藤 正夫君                 守住 有信君                 会田 長栄君                 千葉 景子君                 猪熊 重二君     委 員                 秋山  肇君                 石渡 清元君                 尾辻 秀久君                 岡野  裕君                 木暮 山人君                 清水嘉与子君                 鈴木 省吾君                 野村 五男君                 福田 宏一君                 大渕 絹子君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 種田  誠君                 西岡瑠璃子君                 渕上 貞雄君                 木庭健太郎君                 諫山  博君                 林  紀子君                 井上 哲夫君    国務大臣        厚 生 大 臣  下条進一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  愛知 和男君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        警察庁警備局警        備課長      兼元 俊徳君        環境庁企画調整        局長       渡辺  修君        環境庁自然保護        局長       伊藤 卓雄君        国土庁地方振興        局総務課長    磐城 博司君        大蔵省証券局企        業財務課長    中川 隆進君        文部省初等中等        教育局高等学校        課長       辻村 哲夫君        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       鈴木  宏君        文部省高等教育        局医学教育課長  草原 克豪君        文部省高等教育        局学生課長    喜多 祥旁君        厚生大臣官房総        務審議官     熊代 昭彦君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  岡光 序治君        厚生省健康政策        局長       長谷川慧重君        厚生省保健医療        局長       寺松  尚君        厚生省社会局長  末次  彬君        厚生省児童家庭        局長       土井  豊君        厚生省保険局長  黒木 武弘君        農林水産大臣官        房参事官     山田 栄司君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部技術企画課長  樋口 忠夫君        気象庁地震火山        部地震火山業務        課長       森  俊雄君        労働省労働基準        局監督課長    山中 秀樹君        建設省河川局砂        防部砂防課長   松下 忠洋君        消防庁総務課長  木下 英敏君        会計検査院事務        総局第二局長   澤井  泰君        会計検査院事務        総局第四局長   白川  健君        会計検査院事務        総局第五局長   山本  正君    参考人        環境衛生金融公        庫理事長     山下 眞臣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十三年度政府関係機関決算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百十七回国会内閣提出) ○昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十七回国会内閣提出) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金整理資金受払計算書平成年度政府関係機関決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書内閣提出)     ─────────────
  2. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は厚生省環境庁及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行います。     ─────────────
  3. 及川一夫

    委員長及川一夫君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  5. 及川一夫

    委員長及川一夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 皆さん、おはようございます。  私は、長崎県雲仙普賢岳のあの大きな火砕流による災害に心を痛めながら、きょうの質問を始めさせていただきたいと思います。  まず最初に、厚生大臣お尋ねをしたいと思います。  今、脳死は人の死か、医の倫理とは何か、人間生命とその尊厳、そしてその生と死の判定をめぐる問題が改めて大きな社会問題となっております。生命倫理臓器移植をめぐる法的課題につきまして、政府脳死臨調臨時脳死及び臓器移植調査会が今月十四日に中間報告を出されると伺っております。大勢は脳死容認方向であるとマスコミでも報じられています。  先月二十八日にも、岡山市の医療生協岡山協立病院での脳死腎移植の問題をめぐって、脳死は人の死か、その判定基準は、また移植手続上のことなど、医療司法関係者を中心に改めて論議が高まっていることは御承知のとおりでございます。腎移植に限らず、角膜や肝臓、心臓移植の場合もございますけれども、現在人工透析を受けている腎臓患者だけでも、全国で八万人とも十万人とも言われております。  私、直接伺ったのですけれども、ドナー、臓器提供者の家族、レシピエント、移植を受ける患者、そしてドクターの三者の信頼関係によって、救われるべき命があれば大変結構なことではないか、私なら認めたいと、こういう御意見を持っている方で、医療司法には直接関係ありませんけれども、強いて言えば文化関係の著名な方がいらっしゃいます。  このことにつきまして、臨調答申を目前に控えているわけですけれども、あえて厚生大臣の御所見をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  7. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 西岡委員にお答え申し上げます。  大変大事な問題でございますが、この脳死問題につきましては、今お話がございましたように、現在、臨時脳死及び臓器移植調査会に鋭意御審議をお願いしている最中でございます。その事務局をお預かりいたしております厚生大臣立場にある者といたしまして、現在の段階で、個人的な考えにせよ、この問題について公式の場で見解を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。  この問題につきましては、間もなく調査会としての中間意見が取りまとめられることと伺っておりますので、委員の方々には大変なお骨折りをいただいておりまして、その調査会の御結論を待って政府といたしましても適切に対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  8. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は、厚生大臣が一人の人間として、医療福祉最高責任者であると同時に一人の人間としてのお立場から、この脳死は人の死かどうかということについてお考えをお聞きしたいと思ったわけですけれども、大変残念でございます。  今、難しい言葉ですけれども、インフォームド・コンセント、同意確認、つまり、医師患者関係が一方通行的なものでなく、少なくとも同意に基づいた平等な人間関係が望ましいという前提に立つといたしましても、脳死に至る場合は、多くは交通事故による場合とか、あるいはクモ膜下出血とか、あるいは脳梗塞など、非常に突発的な理由によるものでありまして、脳死者本人、その臓器提供者意思確認は大変難しいと思われます。  脳死というのは、脳の働きが失われて回復できなくなった状態のことですよね。だから、脳死になれば意識は永久になくなり、呼吸もとまるわけです。レスピレーター呼吸を維持すれば一時的には心臓停止を先に延ばせるけれども、これも本当に時間の問題だと思います。脳死に奇跡は起こりません。十数年も前につくられた日本脳波学会によります脳死判定基準におきましても、深昏睡、両眼の反射消失、そして自発呼吸停止、急激な血圧低下と引き続く低血圧、また脳波平たん化の五条件がすべてそろってから同様な状態が六時間以上経過したとき、レスピレーターの力でたとえ心臓が動いていても脳の働きが死んだとされる、このようにされております。これが脳死なんですよね。倫理委員会の承認とか、あるいは脳死移植に必要な手続を踏まなかったとか言われておりますけれども、脳死者からの腎臓移植というのは今日まで全国でもう百三十五施設、百五十二例もあると言われております。  厚生大臣は、今お考えを述べられることは適当でないとおっしゃいましたけれども、私は、どうか脳死臨調結論を踏まえて慎重な方向で今日の医療医学保険、全般にわたっての今日的な立場での結論をお出しいただきたいし、また、これまでのいろいろな症例を一つ一つ慎重に検討されながら、こういった事柄の一つ一つの積み重ねで結論を導いていただきたい、そのように思っております。  続きまして、会計検査報告におきます処置要求事項及び配置基準遵守に関してお尋ねをいたします。  人口の高齢化が急速に進む中で、看護及び介護需要の増大、医療高度化専門化多様化に対応するため、保健医療福祉サービスの担い手としてのマンパワー、とりわけ看護職員不足と偏在をどうするかが切実かつ深刻な社会問題となっているところでございます。  そこで、看護マンパワー問題に関してお伺いをしたいと思います。  平成年度決算検査報告によりますと、医師看護婦の著しく不足している保険医療機関で、所定の減額などを行わずに医療費を過大に請求しているものがあった結果、医療費の国の負担額が十二億二千八百五万円不適正に支払われていたことが指摘されております。他方、昭和六十三年度決算検査報告におきましては、定数を超過して入院させている保険医療機関の問題も指摘されております。  恒常的なオーバーベッドは、これも患者当たり職員数低下させ、医療水準低下を招くと思われます。医療法診療報酬の趣旨から申しましても、四対一という看護職員配置基準を守ることは当然でございます。にもかかわらずこうした事態を招いた理由厚生省としてはどのようにお考えになり、今後どのような処置を行うおつもりか、お聞かせください。
  9. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) このたび会計検査院から看護婦配置不足等で御指摘を受けたということに対しましては、まことに遺憾なことと考えておる次第でございます。  委員も御承知のように、医療保険取り扱いあるいはルールといたしまして、定数を超過して患者入院させている保険医療機関、あるいは医師看護婦の数が医療法基準を下回る保険医療機関につきましては、診療報酬上一定の減額を行った上でその請求を行うということをルールといたしておるわけであります。このため、従来から都道府県に対しましてこのルールに沿った適正な取り扱いが図られるよう指導してまいったところでございますけれども、その徹底が必ずしも十分でなかったということに対しまして反省をいたしております。  このたびの会計検査院指摘を受けまして、各都道府県に対しまして改めて指導の一層の徹底を図るべき旨を通知したところでございますが、今後、特に医師看護婦不足病院の把握につきましては、衛生部局との連携強化し、それに基づく診療報酬上のルール遵守が一層図られますよう所要指導を行ってまいりたいと考えている次第でございます。
  10. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 日本看護協会が八九年に行った実態調査によりますと、職業を継続する意思を持つ者が八〇%を超えております。そして、働き続けるために改善すべき条件として、看護婦の七〇・八%が看護職員の増員を挙げているわけです。この背景には、医療高度化高齢化が進む中で、看護婦の仕事は大幅にふえている。実際、夜勤回数月平均十一回以上の者が一七%にも及んでいるからでございます。さらに、病院勤務職員のうち八三%が超過勤務をしております。育児休業制度を持つ職場にいても、実際に利用した方は四〇%程度にとどまっているわけです。代替要員定員化ができていないからでありましょう。  このような実態の中で、看護職員配置基準昭和二十三年、本当に終戦直後ですね、二十三年以降に四対一と決められて以降、据え置かれたままでございます。しかし、この四対一の基準さえ多くの病院で守られておりません。厚生省はこの事実をどう認識され、配置基準遵守するためにどのような方策をとっておられますか、重ねてお伺いしたいと思います。
  11. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) お答えいたします。  病院におきます医療従事者配置基準につきましては、その配置基準を守られますように各都道府県の方にいろいろの形で指示いたしているわけでございます。具体的には、毎年実施いたしております全国衛生主管部(局)長会議あるいは医療監視病院経営管理指導等講習会という場におまして、その医療従事者確保配置基準を守ることにつきましての指導指示いたしているところでございます。  現在、過去の傾向から見ますと逐年よくはなりつつあるわけでございますが、先生がおっしゃいましたように四対一の基準が守られてない施設もかなりあるわけでございますので、その配置基準が守られますように引き続き厳しく指導してまいりたいというぐあいに思っているわけでございます。県の指導に当たりましては、そういう病院に対しましては具体的な改善計画を提出させるなど、改善状況につきまして追跡調査をするというようなことを指示いたしまして、都道府県に適正にやっていただくように指示いたしているところでございます。  今後とも、医療法に基づきます職員配置基準が守られますように病院に対して重点的に指導強化を行ってまいりたいというぐあいに考えております。
  12. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 職員配置を担保するものとして、診療報酬上の取り扱いがあります。診療報酬取り扱いでは、医療法で定める配置基準の七〇%以下となっている保険医療機関に対して、入院医学管理料のカットや、室料給食料に関するペナルティーを科しておりますけれども、逆に言えば、七〇%までは不足を認めるということにはなりませんか。七〇%という基準は甘いのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  13. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 七〇%の基準でございますけれども、これは御案内のように六十三年の診療報酬の改定におきまして、医療法における人員配置基準診療報酬との連携強化というものを図っていこうということから導入したわけでございまして、もって良質な医療サービス確保を図る観点から考えているということでございます。  御指摘のように、医師及び看護婦医療法人員配置基準の七〇%に満たない場合に入院医学管理料を一〇%減額するという内容になっております。したがいましてこの数字につきましては、またこの措置につきましては、一種のペナルティーでございまして、したがって最低限どの地域でも努力すれば守られるという状況がなければならないわけでございます。そういうことから、七〇%という数字の根拠につきましては、地域によりまして医師看護婦等医療マンパワーが十分充足しておらず、所要人員確保が困難であるような場合があるということを想定いたしまして、私どもはかような数字基準とさせていただいているわけでございます。  いずれにいたしましても、医師看護婦不足に係る御指摘診療報酬上のルールが適正に運用されますよう、一層の指導充実強化に努めてまいりたいと思っております。
  14. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今局長おっしゃいましたけれども、医療法上も何のペナルティーも科せられておりませんですね。どの医療機関も開設時は標準の人員確保していたはずでございますし、摩擦的な不足はともかくといたしまして、恒常的に看護職員不足する場合には、逆に職員数に合わせてベッドの使用を禁止するなりオーバー分の許可を取り消す必要があるのではないでしょうか。
  15. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 医療監視に当たりまして、その病院の現在の職員配置状況を見まして、いわゆる医療法に決められております配置基準が守られていないようなケースに対しましては、早急にその改善計画職員確保についての指示をいたしまして、当該病院におきまして職員確保に向かって努力いたすわけでございますが、なかなかその確保が難しいという場合に当たりましては、県の方といたしましては、先生お話しございましたように一部病床の閉鎖といいますか休止というような措置も含めまして、当該病院に対しまして職員確保についての指導徹底いたしているところでございます。
  16. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ぜひ適正な御指導をお願いしたいと思います。  それでは続きまして、完全週休二日制、二・八体制完全実施につきましてお尋ねをしたいと思います。  厚生省は去る三月三十日、「看護職員需給見通し見直しについて」を都道府県通知され、労働時間短縮等労働条件改善に伴う看護職員需要についても考慮をした新たな見通しの作成を求めていますね。この新しい見通しにおいては、当然二・八体制複数で月八回夜勤ですね、及び完全週休二日制の一〇〇%実施前提とされていると考えますが、そのように理解してよろしいでしょうね。
  17. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 需給見通し見直しに当たりましては、先生から御指摘ございますように二・八体制につきましても十分検討する必要があるというぐあいに思っているところでございます。それで、通知を県にお出しいたしまして見直しの作業をやっていただいているわけでございます。  この通知におきましては、   夜勤回数については、月平均八回以内とすることができる看護職員需要を見込むこと。また夜勤体制については、患者容態等により異なりうるものであり、一律に定めることはできないが、夜間業務量突発的事態発生が少ない場合を除き、複数夜勤体制を組むことができる需要を見込むとともに、医療高度化を踏まえてより手厚い夜勤体制がとられていることについても考慮すること。 というぐあいに指示いたしているところでございます。
  18. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 もう少し明快にお答えをいただきたいと思うわけでございますけれども、政府平成四年までに総労働時間を一千八百時間、完全週休二日制の達成を閣議決定しているわけですね。今回の需給見通しは、平成三年から平成十二年までの十年間が対象とされております。当然完全週休二日制を前提としたものでなければならないと思います。  政府としては、基本的には今おっしゃったようにその方向で努力していらっしゃるというふうに聞こえますけれども、実際に、現実問題として看護職員確保が難しい状況等から、明確な答弁を私はいただきたいと思いましたけれども、いかがですか。
  19. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 完全週休二日制の移行の問題につきましては、いわゆる平成五年の数字におきましてはそういう完全週休二日制が行えるような看護職員需要を見込むことというぐあいに指示いたしてございます。  それから、二・八体制の問題でございますけれども、回数につぎましては八回以内という形で需要を見込んでいただきたい。  それから、複数夜勤体制につきましては、すべての病棟が二人の体制ということには必ずしもならないのじゃないでしょうか。人事院勧告にもございますように、一部の病棟におきましては、先ほど申し上げましたように夜間突発的事態の事例が少ないようなケースにおいては一人夜勤でもよろしいというような判定もございますので、そういう面で、おおむね複数夜勤、一部の病棟においては一人夜勤。場合によっては二人以上三人以上の夜動体制を組むことも必要でしょうというようなところで、それは個々病院個々病棟状況に応じて考えていただきたいというような形で指示をいたしたところでございます。
  20. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今の御答弁ですけれども、夜勤体制については患者容体等により異なるものであって一律に定めることはできない、そういうことなんですね。つまり、夜間業務量突発的事態発生が少ない場合には一人夜勤でもよい、そういうお考えですか。  しかし、医療高度化高齢化の進展に伴い、どの病棟でも常時重病患者を抱えております現実から、複数夜勤はむしろほとんどの医療機関実施をされております。三人以上勤務さえふえつつある現在でございます。にもかかわらず、一人夜勤も可と、よいという厚生省の姿勢は、私はどうも非現実的であり現実状況に逆行すると思うわけですけれどもいかがですか。
  21. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) この二・八体制という問題が出てまいりましたのは人事院からの勧告によるものでございますけれども、その人事院勧告におきましても、申し上げましたように、夜間業務量なり突発的事態発生が少ない場合におきましては必ずしも複数じゃなくてもよろしいというような判定もございますし、先生お話しございましたように、それぞれの病院病棟におきましてはどのような形で患者さんの収容が行われているか、個々病棟によりましてさまざまであるというぐあいに思うわけでございます。  そういう面で、すべてをいわゆる二人夜勤体制で組むということではなくて、ほとんどは二人夜勤体制になるかと思いますけれども、場合によりましては三人体制のところも必要でしょう、あるいは患者状態に応じましてはいわゆる一人夜勤体制のところもあってもよろしいという形で、それは個々の県の実情といいますか、個々病院実情に詳しい県におきまして調査の上で御判断していただいて、そして県内におきます今後の職員需要見通しを立てていただきたいという形で指示いたしているわけでございます。
  22. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 つまり、結論から先に申しますと、現在の四対一の配置基準では、二・八体制完全週休二日制の実施は無理だというふうに厚生省はお認めになっていらっしゃるわけですね。  そうしますと、こういったことを完全に実施していくためには、配置基準見直しが必要であろうかと思いますけれども、そのお考えはいかがでございますか。
  23. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 先生お話しございましたように、病棟の大きさによりましていわゆる看護婦さんの配置の数は異なってまいりますので、病棟が大きいところ小さいところにおきまして、四対一の基準だけでいわゆる二・八体制が組めるかということになりますれば、それは組めないところがかなり多いかと思います。ただ、病棟がそれぞれによって異なっておりますので、一概にそういうことで、配置基準でもって二・八体制が組めないじゃないかということにつきましては、必ずしもイコールにつながらないのじゃないかなというぐあいに思っております。  いずれにしましても、これからの高度化する医療を踏まえまして、必要な看護婦さんの数を確保しなきゃならないということで、私どもいろいろな形で各県とも相談しながら、あるいは先生方の御指導をいただきながら、予算の確保等に力を尽くしてまいりまして、看護婦さんの数の確保に取り組んでまいりたいというぐあいに思っている次第でございます。
  24. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 私は、現在なお四対一を満たしていない病院がたくさんある中で、配置基準の引き上げは困難であるということはよくわかりますけれども、先ほど来決算検査報告に基づき議論をいたしておりますように、四対一の配置基準さえ満たしていない病院を放置しているのは私は当の厚生省ではないかというふうに考えます。一刻も早く四対一を完全に実施させ、配置基準の引き上げに着手すべきではないかと思いますけれども、完全週休二日制、そして二・八体制完全実施について、私は大臣の御見解をここでお伺いしておきたいと思います。
  25. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 看護体制の問題については、やはり人事院勧告でこの勤務体制について二・八体制が望ましいということをいただいておるわけでありますので、厚生省といたしましては、そういう方向に沿うように今鋭意努力をいたしているところでございます。  全体の需給見通しにつきましては、先ほど来御指摘ありましたように、ただいま全国実態調査しておりまして、それが六月いっぱいで一応終了すると思いますので、その実態をよく見た上で、ただいまの御趣旨のような勤務体制の改善についても今後真剣に取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  26. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 各県に通達をお出しになったのが三月三十日。私の県におきましても、全県下の病院にあてて調査票を送って、その回収のために全力を挙げているようでございますけれども、調査結果が集約をできるのはいつでございますか。六月三十日が締め切りで、それからどのぐらい待って見通し見直しをされるわけですか。
  27. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) ただいま大臣から御答弁いただきましたように、各都道府県に、先生お話しございましたように六月末をもって調査の結果を取りまとめていただきたいということでお願いいたしてございます。そういうことで、六月末に各県からの調査が全部取りまとめが終わっておりますれば、それからいろいろ解析をし、各県との調整等も、調整といいますかお考え方について、いろいろ御意見をお聞きしながらできるだけ早く取りまとめたいということで考えておるところでございます。遅くとも今年内には、何らかの形での見通し見直しを済ませたいというぐあいに考えて、これから各県ともいろいろ連絡をとりながらやらせていただきたいと考えております。
  28. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ところで、看護婦さん不足の決定的な理由、そういうものをお考えになったことがあるかと思いますけれども、私は、看護婦さんについてまだまだ社会が認識不足という気がしております。労働条件の不備に加えて過酷な三交代という勤務体制、一体どれぐらいの世間の方々が看護婦さんの実像を御存じであろうかと思うわけでございます。  私は、この看護婦さんの仕事の内容についてもう一度厚生省確認をさせていただきたい。つまり、世間では今三Kとか六Kとかというふうに言われております。こういった仕事の内容についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞きをしたいと思います。
  29. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 先生からお話しございましたように、看護婦さんの業務は非常にきつい仕事でございますし、それからまた夜間勤務夜勤ということをどうしてもやらなければならない職種でございますから、そういう面でも非常にきつい職種であろうというぐあいに思うわけでございます。  さはさりながら、看護婦さんはどうしても患者さんを二十四時間、いろんな角度で観察をし、患者さんに対応いたしまして、いろんな相談なり手当て等を行う必要があるわけでございますから、そういう面で看護婦さんの職種といいますものは非常に大切であるというぐあいに思っているわけでございます。  そういう面で、看護婦さんが看護婦さん本来の業務がもっとしっかり遂行できますように、端的に申し上げますれば、看護婦さんでなくてもよい仕事を現実看護婦さんがかなりやっておるという面もございますし、もう少し、看護婦さんの業務につきましても機械化等によりまして省力化できるものもあるのじゃなかろうかというようなこともございますし、そういう面で看護婦さんの業務につきましてもう一回きちんと見直しをやりまして、看護業務の範囲といいますか、そういうものについて明確化をいたしまして、看護婦さんの業務を助けるといいますか、補助する手段等も十分考えながらこれから看護婦さんの養成確保というものを詰めていかなければならない。  お話しございましたように、看護婦さんの必要性といいますか、そういう看護職というものの意義につきましても国民の方々にもっと広く理解していただくということも必要であろうというぐあいに考えておりまして、そういう面でことしから看護の日というのを設けまして、国民に対しましていろいろの啓発事業等を行っておるというような状況にあるわけでございます。
  30. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今おっしゃいましたように、確かに看護婦さんの仕事というのは二十四時間勤務でございますよね。現代の医療は二十四時間の対応を必要としているわけです。点滴とか呼吸管理とか血圧管理などすべて一昼夜続いていくわけです。ですから、一日十時間とかあるいは十二時間労働はざらだと思います。肉体的にも精神的にも大変疲れて、もうくたくたで、そしてぞうきんみたいにぼろぼろになってから使い捨てられていくのではないか、そういうふうな不安を抱いている看護婦さんもたくさんいるわけです。  神奈川県の平塚市の三十二歳の看護婦さんもそのように訴えてきております。おむつの交換とか清拭、入浴の介助、その他日常生活全般、本当にもう二十四時間の、一昼夜の体制の中で看護婦さんは一生懸命頑張っているわけですね。白衣の天使と呼ばれながらも看護婦さんという職業に対する社会的評価は非常に低いと思います。  そうした中で、政府はことし一九九一年から五月十二日を看護の日として制定されました。近代看護の創設者と言われるフローレンス・ナイチンゲールの生誕の日を選んだのです。献身の人としてだけでなく、新しい時代の高度医療を担うすぐれた看護婦さんの確保ができるように、看護の日をかけ声だけに終わらせてはならないと私は思うわけでございます。  アメリカのシアトル在住の医師井上大輔さんという方が、海外の体験から日本の看護教育について新聞に投書しておられます。もっと病気の診断学や治療の理論を教え、看護婦に本当の医学のおもしろさを教えるべきだと思う。日本の看護婦医師と対等に議論できるくらい日本の教育を変えられれば、看護の仕事をやめる人は減るのではないか。今のままでは優秀な看護学生を伸ばすことはできない。このように述べているわけでございます。  このことに関連いたしまして、私は、看護職員の養成ということでお尋ねをしていきたいと思います。  厚生省は、先般の保健医療福祉マンパワー対策本部中間報告におきましても看護大学の設置促進をうたっておられます。厚生省としては、具体的にどのような形で看護大学の設置を図っていくおつもりでしょうか。
  31. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) マンパワー対策本部におきましてこれから検討する事柄でございますので、現在内部でいろいろな検討を行っているところでございます。基本的には、これからの高学歴化社会に対応いたしまして、それから医療看護の水準のレベルアップに対応いたしまして、やはり大学教育方式に、看護職員につきましてもそういう教育方式が望ましいのではないかというぐあいに考えているわけでございます。  さはさりながら、一方現実問題におきましては、かなりの看護職員マンパワー不足という問題等もあるわけでございますので、厚生省といたしましては、現在の看護教育のあり方につきましては引き続き充実強化をしてまいりたい。ただ、教育の中のカリキュラムの中におきましては、新しい学術の進歩を踏まえながら適宜修正をしていく必要があるというぐあいに思うわけでございますが、現実の養成方式につきまして、なお今後とも引き続き充実していく必要があるだろうというぐあいに思っておるわけでございます。  また一方、看護大学教育方式につきましては、文部省とも十分連携をとりながら、その方向についてどういう形で取り組むのが現実需要に対応しかつ医学の進歩に対応した形になるかにつきましては、今後とも十分検討を進めてまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。
  32. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 今回の看護職員需給見通し見直しの結果などに基づいて、そういったことも進められていくと思いますけれども、例えば私の地元の高知県では、終戦直後といいますか、昭和二十七年ぐらいに県立高知女子大学、そこが医専だったわけですね、女子大学になる前に。今、その女子大学の中に看護学科というのがあるわけですけれども、そういったところも含めて看護大学の設置を進めていかれるということなわけでございますね、そういう県の存在は御承知の上で。
  33. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 現在私どもが把握いたしておりますのは、看護大学ということで十一校あるというぐあいに承知いたしております。先生のお話しございました高知につきましては、高知女子大学家政学部看護学科ということで、入学定員が二十人という形で教育が行われておるというぐあいに承知いたしております。
  34. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 高知のその家政学部の中の看護学科というのは、医専というのがあったんだけれども、終戦直後にそれを廃止をしようということになったときに、高知県民たちが本当に一生懸命になって何としても医専を残したいと願ったわけですね。そして、その運動の結果ああいう形で、看護学科という形で残したわけでございます。そういったようなことも包括をいたしまして、私は、一県一看護大学の設置ということを今後積極的に進めていっていただければありがたいと思っております。  看護職員の養成力の強化のためには教員の資質の向上が必要でございますけれども、肝心の教員の確保が追いつかない現状にあると思われます。看護職員の資質の向上並びにその教員の確保という意味からも、最低限一県一看護大学の設置を図るべきであると、そういうふうに考えております。  その点につきまして、私は文部省の方からもお考えをお聞きしたいと思いますけれども、お願いいたします。
  35. 草原克豪

    説明員(草原克豪君) 先生承知のとおり、現在大学レベルでの看護教育は十一の大学で行われておりまして、その内訳は、国立では六校、公立では一校、私立では四校となっております。この拡大については、日本看護協会などからの御要望をいただいているところでございます。  文部省としては、今先生指摘になりましたように、看護教育の質的な充実を図るとともに看護教員の養成に資するという観点から、今後大学レベルでの看護教育を拡充することが重要な課題であるというふうに認識をしております。  国立で申しますと、これまでは国立大学に附属しておりました看護学校の改組転換によりまして二十二の短期大学を創設してきたところでございますが、今後はこれらの短期大学の改組転換も含めまして、大学レベルでの看護教育の充実に取り組む必要があるというふうに考えております。  また、この点については、国立のみならず公立、私立の大学にも多くを期待しなければならないわけでございまして、公立、私立の看護系大学の設置についても、幾つかの県で準備がなされているというふうに聞いております。これらの公立、私立の大学の設置につきましても、そのような申請がありましたならば文部省としては積極的に対応していきたいと考えております。
  36. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 現在、看護職員養成施設のうち、大学、短大、専門学校、各種学校、その他の数はどうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。これはどちらになりますか、文部省にお聞きいたします。
  37. 草原克豪

    説明員(草原克豪君) ただいま申し上げましたように、大学レベルでの看護教育は国公私立合わせまして十一の大学で行われております。また、短期大学については、国立、公立、私立合わせまして六十一創設されているというのが現状でございます。
  38. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 看護高度化が進み、学生の高学歴化が進む中で、各種学校あるいはその他の学校が数多く存在することをどのように認識しておられますか。文部省、厚生省ともにお尋ねをしたいと思います。
  39. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 御指摘ございましたように、いわゆる養成所の中におきましては、各種学校が全体の二割、専修学校が八割という形になっているわけでございます。  ただ、専修学校の基準等から見まして、各種学校がすべて専修学校にはなかなかいけないものもあるわけでございまして、そういう面で各種学校、専修学校という区分はございますけれども、それぞれはおきまして教育の質の向上を図ってまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  40. 草原克豪

    説明員(草原克豪君) 看護婦の養成については、大学、短大、専修学校、各種学校、それぞれ役割を分担しているというふうは思われますけれども、文部省としましては、看護教育の質的な充実ということを最大の課題としてとらえているわけでございまして、その観点から、先ほど申し上げましたように、従来から国立の大学においては既設の専修学校の改組転換等により短大の創設に努めてきたわけでございまして、また、今後の課題としては、さらに四年制の看護教育を充実する必要があるというふうに考えているところでございます。
  41. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 看護職員の資質の向上と養成力強化考えますならば、私は、看護職員養成施設は最低限専門学校以上であるべきだというふうに考えますけれども、お考えはいかがですか。
  42. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 御指摘ございましたように、看護職員確保あるいは資質の向上を図る面では専修学校の方が望ましいというのは十分わかるわけでございます。しかし、この養成所につきましては、看護職員養成に必要な研究内容が盛り込まれているわけでございますが、さまざまな分野を対象といたしました専修学校の要件といいますものと看護職員の養成に必要な指定基準といいますものは必ずしも一致していないわけでございます。例えば、専修学校におきましては一年間の授業時間が八百時間以上ということになっているわけでございますが、准看護婦の養成所の基準につきましては二年間で千五百時間、一年当たり七百五十時間という形になっているわけでございまして、したがいまして専修学校の許可を要件とすることにつきましてはいろんなことについて考えていかなきゃならない課題があるわけでございます。  そういう面で、すべての養成所といいますか、そういうものが専修学校の認可を得ていないわけでございまして、これからの教育のあり方という問題も絡んでくるわけでございますが、そういう面で、養成所がすべて専修学校の認可を受けるということについてはなかなか難しい問題もあるということにつきまして御理解いただきたいというぐあいに思う次第でございます。
  43. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ぜひ、このことについては慎重に御検討をいただきたいと思います。  次に、これは内容といたしましては労働省の所管になるかとも存じますけれども、関連事項として文部省にお尋ねしたいと思います。  今日まで病院などで介護の仕事に携わってこられた四人の方からの申し出なんですけれども、将来を見通して介護福祉士の資格を取得したいと決意をいたしまして、退職をし、佐賀短期大学に二年間学ぶことになったわけです。昼間の大学でありますね。ですから、当然失業保険受給資格が欲しいけれども、それがない。授業料、入学金、教科書代、通学費など約百万円の経費をどうすればいいかと悩んでいるわけです。できればこういう特別なケースのときは失業保険の支給を受けられないかと思うのですけれども、これは労働省の方でお考えいただきたいんですが、何かいい方法はないものでしょうか。例えば福祉奨学金制度の創設をお願いできないだろうかということでございます。私は、厚生大臣にも御協力をお願いしてぜひ実現をしていただきたい。これからの時代に向かって介護福祉士の資格を取りたいという、そういう切実な働く方からのお願いをあえて私はここで訴えさせていただきました。いかがでしょうか。
  44. 喜多祥旁

    説明員(喜多祥旁君) 文部省といたしましては、すぐれた学生、生徒でございまして、経済的理由によって就学が困難な方に対して、日本育英会を通じまして育英奨学金というものを貸与いたしておるところでございます。この基準に合致いたしました方に対しては、日本育英会の奨学金でもって対処いたしたいというふうに考えておるところでございます。  なお、日本育英会以外の奨学団体からいろんな奨学金を出していただいておるところでございますが、この三月に、老人介護を目指す学生に対して奨学金を出していただく財団というものが設立されたところでございまして、今後、このような財団というものがふえていくということを期待いたしておるところでございます。  なお、先生指摘の佐賀大学の件でございますが、国立大学の場合でございますと、授業料収入の一〇%の範囲内で基準に合致いたしますと授業料免除というふうな制度もございますので、大学の窓口で相談していただきたいというふうに思っておるところでございます。
  45. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ありがとうございました。  それでは次に、医療・保健・福祉人材確保法の制定についてお尋ねをしたいと思います。  深刻化する医療、保健、福祉マンパワー確保のためには、既に述べましたように、給与、待遇の改善、労働時間の短縮、育児施設など福利厚生の充実などのほか、卒後研修などの施策が必要でございます。これらの施策の実現のためには、こうした個別の課題を総合的に解決していくための法的整備が不可欠であると考えます。私どもは、こうした趣旨に沿った医療・保健・福祉人材確保法の制定を求めております。  厚生省におかれましても、つい先ごろ医療福祉人材確保法を制定する方針を決められ、本格的検討に着手されたと伺っております。ぜひとも急ぎ、しかも十分な検討をされて、次期通常国会において法制定をされるよう願うものですけれども、厚生大臣の御決意を改めてお聞かせ願いたいと存じます。
  46. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 人材の確保は非常な大きな課題でございます。そこで、保健医療福祉サービスに係る人材の確保対策につきましては、事務次官を本部長といたしまして昨年八月に設置いたしました保健医療福祉マンパワー対策本部におきまして検討を行っており、本年三月に中間報告を公表いたしたところでございます。このうち、直ちに対応が可能なものは平成三年度予算に盛り込むとともに、看護職員需給見通し見直し作業に着手いたしまして、あわせて看護の日の制定を行ったところでございます。  今後、保健医療福祉分野の人材確保のためには、さらに個別具体的な施策を着実に積み重ねていくことが必要であると考えておりまして、引き続き平成四年度概算要求に向けまして人材確保のための具体的な施策の検討を進めておるところでございます。その際、あわせて人材確保のための法律についてもその必要性を含め検討してまいりたいと考えております。
  47. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 その法制定に当たってクリアすべき問題点があるとすれば、どういった点でございましょうか、お聞かせください。
  48. 熊代昭彦

    説明員熊代昭彦君) 大臣がお答えになりました中間報告の中でも、マソパワーの確保対策といたしまして、社会的評価の向上とか労働条件の改善、養成力の強化、潜在マンパワーの就業促進、サービスの供給体制の改善等幅広い対策が必要であるというふうに指摘されておりますけれども、これらの具体的な施策につきましてどのような施策が法的措置になじむのかどうかというような問題でございますね、法的措置をした方が非常に有効であるというようなものを個別に検討していくということでございます。  それから、先例といたしましては、御承知のように中小企業人材確保法、それから教職員人材確保法等がございます。これらの法律は、中小企業につきましては民間の中小企業対象ということでございます。また教職員につきましては国公立の学校の教職員の給与の改善ということでございます。この保健医療福祉サービスにおきましては、営利を目的としない民間の法人等が主たる実施主体ということで、従前の例との事情が若干違うのではないかということでございますので、これらの例も参考にしつつ、これらと同様のことができるかどうか、そういうようなことを検討してまいりたいということでございます。
  49. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 まだいろいろとお伺いしたいことがたくさんございますが、時間も迫ってまいりました。最後になりましたけれども、私は、看護現場からの一通の手紙の一部を御紹介して、看護職員不足問題解決に向けての厚生大臣の御決意を伺いたいと思うわけでございます。  この手紙は、かつて私の長男が研修医として勤務したことのあるベッド数一千床以上ある財団法人総合病院の脳神経外科病棟の婦長さんからのものでございます。今回私の質問に網羅いたしましたように、たくさんの問題提起をいただきましたけれども、さらにこのようにも書かれております。  看護婦不足問題の対策は早くしないと病院看護婦がいなくなるのもそう先の話ではないと思っています。一番大事なことは、現在看護婦として勤務をしている人たちの看護に対する意識を同じ方向に向かわせることです。世間の人々に看護婦の仕事が本当に評価されるために、私たちがまず努力しなければならないのですけれども、そのためにも各施設が卒後教育に力を入れ、質の高い看護婦を育てていくことです。テレビドラマなどで紹介される看護婦像は変にちゃらちゃらしていて腹立たしく見ておりますけれども、世間は看護婦をそのようにイメージしているのだと認めるしかないのでしょうか。しかし、本当にこの仕事を愛し、看護という職業に働きがいと誇りを持っている看護婦たちの姿、姿勢もマスコミを通じて正しく伝えていただきたいと思っています。このように結んでおりました。  医療福祉マンパワー対策、看護職員不足問題の解決に向けて、厚生大臣の御決意を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  50. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 医療実施の上におきましては、委員も御承知のように、医師とそれに伴ういろいろな技術士、また看護職と、三種類の方々のよき協力の中で完全な医療が行われるとこのように認識しておりまして、中でも看護職員が今非常に不足しているということがそのような医療を十分に実施していく上においての大きな障害になっている、そういう認識は全く同感でございます。  ここで、その看護の職の重要性、これはやはり今おっしゃったように御本人が自覚すると同時に、世間もこのことを大きく評価して、そして協力の態勢の中で看護職の方々がその仕事に励むことができるような条件を整えていくことが必要であろうと、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、これからの看護職の方々の待遇の改善、あるいはその中でも特に労働時間の問題等の懸案事項は、なるべく早く解決するように持ってまいりたいと思いますと同時に、全体的な看護職の方々の人手不足ということもこれは放置できない重要問題でございますので、先ほど来お話し申し上げておりますように、全国の需給の実態調査を終えたところで、その実態を十分踏まえまして、しかるべき方向を出してまいりたい、このように考えておるわけでございます。  そのためには、養成所の充実はもちろんでございますけれども、現在働いておられる方々が離職しないようにするためにもまたいろいろな措置を講じなきゃなりませんし、子供を持つ親としての看護の職の方もいらっしゃるわけでありますから、保育の面についてのいろいろな充実を図ってまいるというような問題もございますし、さらにまた、かつて勤務されたところの看護職の方々が、また状況が整って再びその職に戻っていただけるようないろいろな情報交換その他の制度も充実してまいりたい、このように相努めておる次第でございます。  これからも、非常に大事な問題でございますので、厚生省といたしましても主要課題として真剣に取り組んでいく所存でございます。
  51. 西岡瑠璃子

    西岡瑠璃子君 ありがとうございました。  最後にと申しましたけれども、今再就業のことが大臣のお話に出ましたので、ちょっと一言だけ申し上げますけれども、「看護職員の供給に関して留意すべき事項」ということで通達を出しておられます。それによりますと、ナースバンクによる再就業実績の低い都道府県においては実績を上げるよう努めよということでございますけれども、実際ナースバンクに登録されている有資格者が再就業できる実態にはないということを私は高知県でも伺ってまいりました。やめて、ナースバンクに登録している方々は再就業できない、そういう実態をもう少し把握をしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  52. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ただいま下条厚生大臣から、マンパワー確保について力強い御決意が述べられたわけでございますけれども、六月三日の朝刊にまた悲しいニュースが載っておりました。新潟県上越市で重度身障者の介護をしていた母親が脳出血で死亡してしまい、その介護を受けていた御長男の方が、自分の力では食物をとることができない、そしてその四日後に餓死をしてしまいました。長い間福祉の充実を掲げてきた我が国の福祉実態をまさに見せつけられた出来事だと、そう思わざるを得ません。  早速上越南警察署に確認をいたしましたところ、母親には外傷もなく、検視の結果は、五月二十一日午前五時ごろの病死と判明いたしました。息子さんはその四日後、五月二十五日午前十時ごろ餓死したものです。父親は六十二年の七月に既に死亡しており、この長男は上下肢が不自由で一種、二級の障害程度、五十一年七月十五日に身障手帳の交付を受けています。また、ダウン症による療育手帳Aは昭和四十九年八月二十日に交付されています。  この母親と息子二人の生活費は、特別障害者手当として月々二万三千四百五十円、障害基礎年金七万三千百二十五円で、合計九万六千五百七十五円が月々の生活費でした。生活保護の対象にはなっておらなかったということでございます。これに夫の死亡による遺族年金が六十八万九千円が加えられまして、年額で合計しますと百八十四万七千九百円、こういうことになっておるわけでございます。  上越市役所の福祉課では、平成二年の七月二十七日、身障者施設かなやの里にこの息子さんを入所させるように勧めましたけれども、母親はこの息子さんの看病をすることを生きがいにして生きてこられたわけで、その入所を拒みました。そして、福祉課の方の話によりますと、ホームヘルパーさんの派遣も不要である、そういうことで処置がされておったようでございます。ことしの四月からでしたでしょうか、身障者に対する緊急通報装置取りつけ制度というものがこの上越市でも始まりまして、この家でも取りつけの準備は進めておりましたのですけれども、まだ取りつけられない状況の中で今回の事故が起こってしまったわけでございます。  今までにわかっている状況はこの程度でございますけれども、ここで、この出来事が起きたことについて問題にしておかなければならない点について、二、三お尋ねをしたいと思います。  今の福祉行政は、今回の出来事でもわかるように、望まなければ何もやってもらえないということです。在宅介護福祉の充実を大きな政策の柱に立てて取り組んでおられる厚生大臣に、今回のこの出来事について感じられたことをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  53. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) ただいま委員の御指摘の事件につきましては、本当にお気の毒な、心の痛む思いでございます。  それで、この事件は、承りますと、重度障害のお子様を持たれたお母様が必死に、そのお子様を自分の手で育てていこうと役場の方々の勧める入所を拒まれ続けてきた、その優しいお心が、かえって不幸な事態を招いてしまったのではないかというようなことも感じまして、大変心痛にたえないと思っております。御遺族の皆様に対しましては、心からお悔やみを申し上げる次第でございます。また同時に、再びこのような事件が起こらないように、在宅福祉サービスの気軽な利用につきまして厚生省としても最善の努力をしてまいりたいと思います。  また、今委員指摘の、望まなければ何もというお言葉がございましたけれども、これはやはりなかなか難しい問題でございまして、強制もなかなかできない。今のような、各御家庭の中のいろいろな御事情もございますので、やはり同意をいただいた上でこのような施設を利用していただくということに相なるわけでございますので、そこらのところがなかなか難しい問題ではないかと思っておる次第でございます。
  54. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 今回のこの事故のような在宅の重複障害者、非常に重度の障害者の方たちがこの上越市だけでも現在八十七名もおられるんです。市はこれらの世帯の構成状況、今回のような母子家庭の状況であるとか、そういうものを詳細に把握をするという作業をしておりませんでした。今実際におられるこの八十七人の方たちにつきましても、どういう家族構成の中で介護をされているかという実態はまだつかめておりません。市役所ではっきりとつかんではいないんです。  新潟県では、ほかでもこういう市がまだまだたくさんあるのではないかというふうに思われるわけですけれども、全国的には、こういう在宅の重障者を自宅で介護している家族構成、状況というようなものを調査をされたことがあるでしょうか。厚生省として、そういうことを指示なさったことがございますでしょうか。
  55. 末次彬

    説明員(末次彬君) 在宅障害者の実態につきましては、定期的に調査をいたすことにいたしておりまして、ただいまの介護者につきましても、その際調査をいたしております。来年度が次の調査の時期になっておりまして、今御指摘の点につきまして十分その中に取り込むよう、十分注意して調査をいたしたいと思っております。
  56. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。  今回のこのことを教訓にいたしまして、二度とこんな悲しい、介護の方が亡くなったのが十日間も放置をされた中で、その介護を受けていた者が餓死をするというようなこんな悲しい状況、事故だけは二度と起こしてほしくないという思いをいたしております。  来年度がその調査の把握をする年ということでございますけれども、それでは厚生省側では、何年前に行った調査だかはわかりませんけれども、今現在それについては把握はされておるわけでございますね。
  57. 末次彬

    説明員(末次彬君) 前回の調査は、昭和六十二年の二月に身体障害者実態調査ということで、全国の十八歳以上の在宅の身体障害者を対象にして調査をいたしております。その際の数といたしましては二百四十一万三千人、そのうち男子が百三十五万六千人、女子が百五万七千人という数字になるというふうに推定をいたしております。
  58. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その人数とかそういうことは、当然市役所でも把握ができているわけです。ところが、個々の家庭の実情についての調査というものが市段階でも行われておらないということですから、厚生省側で、中央で把握ができるはずはないと思うわけでございます。  そこでお願いがございます。各市町村あるいは県に向けて、そういう詳細な実態調査を早急に行って、手を差し伸べる必要のある者については積極的な手を差し伸べていく措置というものを緊急にとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  59. 末次彬

    説明員(末次彬君) 私どもの方で調査いたしております実態調査、これは行政の施策の基本になる数値を把握するということでやっております調査でございます。したがいまして、調査のやり方といたしましては抽出調査ということにならざるを得ないわけでございます。その中でいろいろ障害の状況あるいは介護の状況等につきまして数値をとっておるわけでございます。  個別の障害者一人一人の状況ということになりますと、なかなか全国的に一律に把握するということは難しいわけでございまして、この場合には、やはり実際にその行政を所管しておられます当該市町村の方、個別の状況把握につきましてはそちらの方の努力にまたなければならないというふうに考えております。
  60. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 大臣にお尋ねをいたします。  私は、この事故を教訓にして、これからの地方行政に向けて大臣からの通達なり通知なりを出していただいて、今回のようなことが二度と起こらないような体制づくりを早急にしていただきたいということを申し上げておりまして、今までの調査のこととか、そういうことではないわけでございます。  積極的に福祉を充実している市町村においては既にもうそういう障害者マップみたいなものができておりまして、三日に一度ずつ必ず訪問をするというシステムがきちんとできている、そういうところもあるわけでございますから、すべての市町村でそういう体制がとれるように、今まさに福祉充実十カ年戦略が進められているこの時期ですので、早急に取り組んでいただきたい。御決意をお尋ねいたします。大臣にお願いします。
  61. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 福祉の充実、特に身体障害者の方々に対しての行き届いた介護の問題は、これは当然厚生省といたしましても常時心がけていることでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、御家庭の中にどこまで入り込めるかという問題になりますと、御家庭の方のいろいろなお立場がございますので、今御指摘のこの悲しい事件につきましては、この点はそこまで役場の方で、介護の方々が中に入り込むことを余りお好みにならなかったというような事態もあったわけでございますので、そういう面でやはり個々の事情によりまして画一的ないろいろな施策をとることは大変困難でございますが、全体といたしましては、やはり我々といたしましてはできる限り行き届いた介護の手だてをしなきゃならないし、また同時に、そういう事情にあられる方々がより気楽に御相談に来られるような受け入れ態勢も整えていかなきゃならないと、このように考えておるところでございます。
  62. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ただいま大臣は、障害者の家庭は行政が手を差し伸べることを余り望まなかりたとおっしゃいましたけれども、本当にそうなんでしょうか。  県立新潟養護学校の寮母さんでいらっしゃいます安野さんという方は、こういうコメントをしています。  福祉の貧困と行政に対して怒りを感じます。障害者を持つ家庭の親はつらいことを全部自分の胸に抱え込もうとします。社会的に肩身の狭い思いをしながら子供たちの介護を続けているこういう人たちにもっと積極的な行政の働きかけが望まれると、こういうふうにコメントをしています。  障害を持った家庭ではこういう状況、余り人の世話にならないで生きたいという、そういう思いの中でひっそりと暮らしている状況というものをよく考えていただく中で、たとえ一度拒まれても、二度三度と手を差し伸べていく行政こそ必要だと私は思っています。望まれなくても、三日に一度ぐらいはこうした重度の方を抱えているお宅を訪問して、元気ですかの一声をかけていただけるようなそういう政治が行われなくて、どうして福祉十カ年戦略などと大きな旗を上げることができるかと、私はそういうふうに思うわけでございます。ぜひぜひそういうことに細かい配慮をするように、全国に向けての発信をしていただきたい。心からお願いを申し上げるわけでございます。  そのための人材確保ということがまさに急がれるわけでございます。先ほど来西岡委員質疑にもございましたように、マンパワーの充実こそこうした体制をつくり上げていくための第一歩であるというふうに思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  今回のこの出来事は母親の病死によって起こったわけですが、介護する者が看病に倒れてしまい、将来の不安に耐え切れずに患者を殺して自分も死を選ぶというようなケースがよく見られます。特に私の新潟県は、雪深く、暮らしにくい地域であるためなのでしょうか、自殺をする人が非常に多い県です。  警察庁で九〇年四月にまとめた平成元年中における「自殺の概要」によりますと、八六年の二万五千五百二十四人をピークに三年連続をして減少しているという結果が出ています。八九年には二万二千四百三十六人と、前年比で五・五%の減少を示しています。総数としては減っているんですけれども、六十五歳以上の高齢者の自殺は六千三百五十八人と、前年度よりも四十六人もふえています。総数で減っているのに高齢者の自殺はふえているんです。しかも、その自殺の原因の七五%が病苦などによるということになっています。  六十年七十年働き続けて、自分の行く末を案じてみずからの手で死を選ばなければならないような社会のありようを一日も早く改善をし、人間として生まれ、死のそのときまで尊厳を失わずに看病を受けられる環境整備を急がなければなりません。  マンパワーにつきましては質疑がありましたので、私は、今厚生省が推進をしておりますゴールドプランの中の施設の緊急整備についてというところを重点的にお尋ねをしていきたいと思っています。  計画が立てられて二年を迎えているわけでございますけれども、当初の計画どおりにこの設備、施設の整備は進んでおりますでしょうか。
  63. 岡光序治

    説明員岡光序治君) 先生おっしゃいました高齢者の保健福祉推進十カ年戦略では、施設関係では特別養護老人ホームそれから老人保健施設、それから自立した生活が送れるように、かつ個室を確保してプライバシーも守りながらというケアつきのケアハウスというこういう軽費老人ホーム、それから高齢者生活福祉センター、こういったものの整備を考えているわけでございますが、御指摘がありましたように平成二年度を初年度としておりまして、二年度の実績を申し上げますと、おおむね特別養護老人ホーム、老人保健施設それから高齢者生活福祉センター、これにつきましては計画どおりの整備が進んでおります。ただしケアハウスにつきましては、計画の半分程度というところでとどまっておる状況でございます。
  64. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それらの計画は、十年後における施設の必要者数というものを大体どの程度と見込んだ中で立てられた計画でございますか。
  65. 岡光序治

    説明員岡光序治君) いわゆる寝たきり老人がどのように推移をするか、それから痴呆性の老人がどのように推移をするか、主にそういったいわゆる介護の必要があるお年寄りがどのようにふえていくかということを前提に計画を立てているわけでございます。それからまた、在宅のサービスと施設のサービスとをどのように兼ね合わせていったらいいか、そういうことを考えながら、施設サービスはこの程度のボリュームが必要であろうというふうな発想で対応を考えておるところでございます。  寝たきり老人につきましては昭和六十年度で約六十万人ということでございますが、この十カ年戦略の整備目標の西暦の二〇〇〇年では約百万人になるであろう。それから痴呆性老人につきましては、六十年時点で在宅の痴呆性の老人が約六十万人ということでございますが、これが二〇〇〇年には約百十万人になるだろう。もちろん、痴呆性の老人で寝たきり状態にある人がいらっしゃいますので、その重複を調整する必要がありますが、おおむねそれぞれそういう数字前提に、しかも在宅施設ということで分け合って対応していく、それから施設の整備数をはじき出しているという状況でございます。
  66. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その予想をされた人たちが、この計画が完成をした時点で何割の人たちがこの施設の利用を受けることができますでしょうか。
  67. 岡光序治

    説明員岡光序治君) 二〇〇〇年時点で寝たきり老人が百万というふうに申し上げましたが、老人保健施設に約三十万人、それから特別養護老人ホームに二十四万人、それから長期入院という形で病院を利用される方が十万人から十四万人程度いらっしゃるのじゃないだろうか、そういうふうに考えておりまして、したがいまして、老人保健施設につきましては十カ年戦略で二十八万床、それから特別養護老人ホームにつきましては二十四万床という目標を設定しているところでございます。
  68. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 寝たきりの状況にならないためのその政策づくりというものが進められているわけですよね。そういうものも勘案をした中の予定数であろうと思いますけれども、ぜひその計画の実現に向けて進めてしてほしいと思うわけでございます。  しかし実際には、ケアハウスが半分にも満たないという状況、たしか三分の一ぐらいじゃなかったですか、私が調べたところによりますと。地価高や用地難、人手不足等で大変計画の進まない理由は多くあると思うんですね。もし今後、今は二年目ですが、三年目、四年目を迎えてこのゴールドプランに少し無理があるなと判定が出てきたときには、見直し等をする予定はございますでしょうか。
  69. 岡光序治

    説明員岡光序治君) まず、ケアハウスの整備がうまくいっていないというのは御指摘のとおりでございまして、計画では千七百人の定員を予定をしましたが、実績は七百五十人、約四四%でございます。どうもこれは、平成元年度に創設をされた、特にケアをつけた軽費老人ホームというので関係者に周知徹底が図られていないという状況もあります。おっしゃいますように土地の確保という大変難しい問題がございますが、その辺は十カ年戦略で掲げました目標を達成いたしますように努力をいたしたいと思います。なお、計画は十年間でございますので、進捗状況を見ながらやはり計画の内容をその都度その都度見直す必要があろうかと思います。  いずれにしましても、二年度が初年度でございますので、ただいまのところは当初立てました計画をできるだけ達成するように努力をしていくべきものと考えております。
  70. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 その見直す機会が来ましたら、ひとつ検討していただきたいことがございます。  マンパワー確保が大変困難な状況というのは、これは私は何年後も変わらないと思うんですね。そういう状況の中で、地域で老人をみとっていくというシステムをつくり上げていくためには、どうしても地域の人たちのボランティアの力というものが必要になってくるのではないかと思います。その地域のそうしたボランティアの人たちを組織するような体制づくりというもの、システムづくりというものをぜひ進めていただきたいんです。そんなにお金もかからずにできることの一つ、しかも早急にやることができるそういうシステムづくりというものをぜひ検討していただきたいことをお願い申し上げておきます。  公共の特養老人ホームやケアハウスの建設がおくれている中で、民間による有料老人ホームが盛んに建設をされています。新聞にも連日のように広告が掲載をされて、何か有料老人ホームに入るとバラ色の老後があるような宣伝がされています。国民生活センターが行った調査によりますと、「主婦が描くこれからの老後」という調査があったわけですけれども、その中の意識調査の中でも、四割以上の人が有料老人ホームに入りたいという答えが出ています。高齢者のニーズも高まり、経済的に豊かになっています。  例えば、総務庁の貯蓄動向調査によりますと、平成元年十二月末現在の一世帯の貯金高は一千三百十一万円。しかし、六十歳以上の世帯では二千万円以上持っていらっしゃる方が三四%を占め、平均では二千三百四万円。これは四十歳以上の平均の預金額の二倍になっているという結果が出ています。六十歳以上の世帯の人たちは預金額が大変多いということになるわけです。  また、東京都が行いました五十五歳以上の世帯主を対象にした「高齢者の住まいに関する調査」というものを見てみますと、持ち家の比率が五十五歳以上ですと七一%ある。資産が五千万円以上と答えた方が六〇・五%もありました。こうした財源を持っている高齢者に対して今シルバー企業群が、老人病院であるとか老人ホーム、在宅介護サービスなどの分野になだれ込んでいるというような状況が見えているわけでございます。業者と利用者の間に多くの問題も発生していると思います。  今年四月一日から老人福祉法が施行されるのに伴いまして、行政指導のガイドラインであります設置運営指導指針が改正をされまして、三月二十八日付で各都道府県知事に通知が出されたことは承知をしておるわけでございますけれども、福祉を営利目的に有利な産業分野と考えて進出をしてきたこのシルバー企業群を規制するための法制化というものは当然急がなければならないと思うわけでございますが、厚生大臣、積極的に取り組んでいただけないでしょうか。
  71. 岡光序治

    説明員岡光序治君) まず、先生おっしゃいますように、公的な施策が主でございまして、必要なところは公的な施策できちっと押さえていく。かつ、このごろはアメニティー部分を非常に求めるという傾向もございますので、そういった部分につきましては民間の部門が活躍をしていただく。そういうことで、公が主、民が従という形で、民は補完をしてもらうと、そういう位置づけが必要なのではないかというふうに基本的には考えております。  今おっしゃいました有料老人ホームにつきましては、御指摘がありましたように、老人福祉法の改正をしていただきまして、ことしの四月から、例えば届け出につきましては建物を建てる前に事前に届け出をする。そして安定的な経営が確保されるように、つまり倒産があるようではもうついの住みかは確保できないことになりますので、そういう倒産を防止するような事前の手を打つとか、あるいは入居者に必要な情報を開示をいたしまして、どういう有料老人ホームであるのかということが明確にわかるようにして、そして契約の段階できちっとそのサービス内容が把握できた上で納得の上で契約ができるように、そんなふうなことをしていこうではないか。あるいはまた、有料老人ホームで業界団体をこしらえておりまして、そこでは苦情も受け付けて必要な対応ができるようにしていこうじゃないか。こういうことで、先ほど御指摘がありました設置運営指導指針では相当の入居者保護の対応をしたつもりでございます。  こういうことを進めながら、必要な部門がやはりありますので、その部門を民間がちゃんとカバーをしていくということで、必要な指導を加えながらそういう民間部門の育成も図っていかなきゃならない、そういうふうな基本スタンスで行政を進めたいと考えております。
  72. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 この指導指針だけでは、結局トラブルなんかが実際に発生したときの法的規制というようなものからは外れてしまうわけですよね。そういうことの中でどうしても、今これほど騒がれているこの産業ですので、やっぱり法的に規制をするというような必要があると思うんです。ぜひ取り組みを進めていただきたいことをお願い申し上げておきます。  尊厳を保ちつつ死のときを迎えることの環境整備の一つに、患者の権利の確立ということがあると思います。いい医療を受ける権利、自分の病状を知る権利、患者の権利にはさまざまあると思いますが、アメリカでは一九七二年に、ベス・イスラエル病院の権利宣言が行われました。それ以後、米国の病院協会の患者の権利憲章に発展をして、またマサチューセッツ州では州法としてこの患者の権利というものが確立をされています。また、患者の不安を取り除くためには医師との対話の橋渡しをする患者の代理人制度というようなものがアメリカではもう既に行われております。患者の権利を守る重要な仕事として発展をしているそういう代理人制度、これは、全米の組織ですと、病院が六千カ所あるそうですけれども、その中の五一%でこの患者の代理人制度がもう既に取り入れられておる。ベッド数が五百以上ある大きな病院では八〇%代理人の方たちが活躍をしている状況でございます。  しかし我が国では、医療技術は大変レベルが高いということで評価をされていますけれども、患者医師医療側との溝が目立つと言われております。患者の不安、医師への不信感の大きな要因になっています。日本看護協会がまとめた調査によりますと、療養相談や指導部門を持つ病院への患者や家族の信頼度は極めて高いと報告をされています。しかし、看護職のこうしたサービスについて、社会保険診療報酬に点数化が認められておらない、だからこういう療養相談や指導部門を設ける病院が伸びない状況にあると、報告書はそういうふうに書いてございます。患者の権利の確立のためにも、保険の点数化への取り組みというものをこれからしてほしいと思うわけですけれども、いかがでございますか。
  73. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 先生からお話しございましたように、患者医師との間の信頼関係といいますのは、医療を行う上には非常に、基本的にベースであるというぐあいに思っておるわけでございます。そういう面で、患者との信頼関係確保いたしまして、治療効果を上げるためにも、患者の話をよく聞く、あるいは検査や治療の必要性についてその内容について十分な説明を行うという配慮がどうしても必要であるというぐあいに考えているわけでございます。  このような観点から、医師が治療の方法なり効果、危険性などにつきまして患者にわかりやすく説明し、患者が理解、納得した上でその治療方針について同意を得るという、いわゆるインフォームド・コンセントの考え方の定着化を図っていく必要があるというぐあいに私どもは思っているところでございまして、それぞれの病院の必要に応じまして、また患者の相談に応じられるような体制も整備されていくことが必要であるというように考えているわけでございます。そのような面で、医師との間のインフォームド・コンセントから患者の相談に応じられるような病院内の体制というところにつきましても、お話しございましたように、これからもそういうものを整備していく必要があるというぐあいに考えているところでございます。
  74. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 積極的にそうした問題にも取り組んでいただきたいことをお願い申し上げます。  とにかく、人間が最期のときを迎えるそのときまで、本当に人間らしく生き続けることが、今の私たちの社会に一番求められている政策であろうと思っています。皆さん方の御努力を心からお願いを申し上げまして、次は環境問題に移らせていただきます。  第百八回国会において、総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法が制定されて以来三年以上が経過をした今日、リゾート法に係る基本構想が承認された地域は二十四道府県に及び、さらに作業中の構想等、最終的には東京、大阪、神奈川を除く四十四道府県が名のりを上げるものと思われ、国土の二〇%が特定地域になろうとしています。リゾート法はもちろんのこと、四全総も含めてリゾート開発の上限的規制は何も示されておらず、自然環境の保全と調和を目的に唱えながらも、実際には日本列島はリゾート乱開発によって自然環境が破壊されつつあります。  国土庁にお聞きをいたします。  第百二十回国会に提出され、衆議院において今継続審議となっておりますリゾート法改正案をどのように評価をされていますでしょうか。
  75. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) ただいま委員お尋ねのの中にございましたように、総合保養地域整備法が制定されまして実質的にはほぼ丸四年経過いたします。また、その後制度に基づきます承認の第一号が出てからも約三年たつわけでございます。  現在の進捗状況を申し上げますと、基本構想の承認を終わりましたのがこの三月末で、今三十四というお話ございましたが、その後六つふえておりまして三十になっております。  今後、三十地域に加えまして、現在関係六省庁で都道府県からの協議に基づきまして検討中のものが十一ございまして、トータルでは四十一地区ということになります。今後の見通しでございますが、これらにつきましては基本方針に適合しているものについて順次承認をしていくことになろうかと考えております。  また、それ以降の話になりますが、四十二以降ということにつきましては、現在県単位で見ますと具体的にはできてきておりませんで、働きかけのないところは、東京、大阪、神奈川、富山、岐阜、奈良の六県からは現在声が上がっていないという状況にございます。  それから、今お尋ねの中にございましたように、さきの国会に議員提案の形で総合保養地域整備法の一部改正についての提案があったということは承知しております。私どもといたしまして、現在この総合保養地域整備法の運営に当たります立場から見た場合には、いずれにいたしましてもこの基本構想に基づいて長期的な視点に立って着実に法の趣旨に従って整備を進めていくということが現時点で一番肝要ではないか、このように考えております。
  76. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 それでは、国土庁としては何らかの法改正は必要だとは思われないわけですね。
  77. 磐城博司

    説明員(磐城博司君) 法律が制定されまして四年たつわけでございまして、現時点では、先ほどの答弁でも申し上げましたように、全体として見た場合には緒についたばかりというのが実態ではなかろうかと思っております。その間、経済事情の変更あるいは環境問題の盛り上がりというようなことで、それぞれ個別にはいろいろな問題が提起されておりますが、私どもといたしましては、現時点では法の趣旨に従って基本構想を着実にお進めいただくことが一番大事ではないか、このように思っております。
  78. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 そこで、環境庁長官にお願いがございます。  国土庁ではまだ法改正ということを余り考えておらないという答弁の中で、実際に改正の必要がないかどうか、少し話を進めさせていただきたいと思います。  ゴルフ場、マリーナなど、海に山に無秩序な乱開発が進められています。生態系さえも変えてしまうような自然破壊が行われている中で、環境庁は、自然環境を守るという立場から、現行リゾート法に何らかの改正が必要だとはお考えにならないでしょうか。例えば今私たちがリゾート法の改正の視点としておりますことの中には、環境アセスメント等の義務づけや公表によって自然環境、生活環境の破壊を食いとめる、広域にわたる都市計画を確立し、土地利用の混乱と不動産業者の暗躍を抑制する、森林法、農地法、湾岸法などによる各種事業の規制緩和措置を見直す、リゾート計画の策定過程で住民参加の手続を具体化する、環境庁長官を主務大臣に加え、計画策定、事業執行の全過程で環境面のチェックを義務づける、このようなことを改正の視点の中で検討しているわけでございます。  愛知長官に、この法改正に積極的に取り組んでいただきたいのでございますが、いかがでございますか。
  79. 渡辺修

    説明員(渡辺修君) この総合保養地域整備法に基づくいわゆるリゾート開発に関して、私ども環境庁といたしましては、自然環境の保全を初め環境の保全に十分配慮する必要がある、これは大原則としてそのように考えておりまして、その結果といたしまして、この法律に基づく基本方針を策定する段階で十分協議にあずかっております。現実にその基本方針の中では、自然環境の保全あるいは水質汚濁の防止等の環境の保全、こういうものに十分配慮がなされるように定められているところでございます。  また、先生指摘の各地方公共団体でリゾートの整備に関する基本構想を定めているわけでございますけれども、この基本構想を定めるに当たりましても、私どもとしては、都道府県の環境部局を通じまして構想の原案をつくる段階から十分相談をするように指導をし、また主務省庁から御協議がありましたときには必要な意見をつけているところでございます。  これからもこういった具体的な指導助言を通じまして環境の保全が十分に図られるようにしていきたい。今までもそうしてまいりましたし、これからもそうしていきたいというふうに考えているところでございます。
  80. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 リゾート法の施行によって乱開発が進んでおることは、愛知長官、お認めになっていただけますでしょうか。どうでしょう。
  81. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 今局長から御答弁申し上げましたとおり、現在のところ、この法律によりまして十分環境保全という点から私どもの意向が反映されている、こういうふうに考えておりますが、しかし、環境が破壊をされてしまっては大変だということはもちろんそのとおりでございまして、その点につきましては十分今後とも注意を払っていきたい、このように思います。
  82. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 長官は今、十分に環境が守られておると御答弁いただきましたですね。
  83. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 世間でいろいろ話題になっております環境破壊、すべてこのリゾート法に基づいて、その中で破壊が行われているということではなくて、むしろこのリゾート法にかかわっている地域以外のところ、その周辺といいましょうか、以外のところでいろいろ起きている事象が話題になっているという部分が多いと聞いております。したがいまして、このリゾート法があるがゆえに環境が破壊されているということではなくて、その辺の現実もよく見きわめた上で—確かに一般論から申しますと、環境破壊という点からいうと必ずしも十分ではない。つまり、若干問題があるリゾート開発が行われているということは認識をいたしておりますが、それがこのリゾート法があるがゆえにそういうことが起きているという認識ではないということを申し上げたわけでございます。
  84. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 わかりました。それではこの件につきましては、また後日長官と質疑を交わしたいというふうに思います。とにかく私といたしましては、今自然破壊が行われている、環境庁という仕事柄このリゾート法の改正に向けて積極的に取り組んでいただきたいことを強くお願い申し上げておきます。  さてそこで、経団連では、本年の四月二十三日に地球環境を守るための企業の行動指針として、地球環境憲章を制定いたしました。環境庁が発足をして二十年、その四年前に環境行政の憲法とも言うべき公害対策基本法が制定をされました。当時は、公害列島と言われるように産業公害が多発し、その克服が最大の課題であったわけでございます。自然環境保護法と公害対策基本法が今日までの環境行政の二本柱となってきていたことは事実でございます。しかし、この二つの法律の中には、今地球が問われている温暖化やオゾン層の破壊や酸性雨、そして広域の砂漠化など国際的な視点は皆無である。フロンやCO2の削減や廃棄物についても対象から外れている。地球環境を守るという立場を優先するならば、今、総合的な基本政策づくりをしなければならない時期ではないのかなと、そういうふうに思うわけですけれども、長官いかがでございますか。
  85. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 御指摘のとおり、公害対策基本法制定当時とは環境をめぐる世の中が大変変わっておりますことはそのとおりでございまして、今日では、発生いたしました汚染の回復や防止という対症療法ではなくて、広く社会経済政策全般の中に環境保全施策を組み込むというより積極的な施策の展開が求められている、こういう認識でございます。  ただいま申し上げましたことは、二十一世紀に向けて我々に課されました大変重大な課題でありまして、先般、一月の末にパリで行われましたOECD環境大臣会合におきましても、環境政策と経済政策の統合ということがうたわれたわけであります。また地球環境問題に関しましては、温暖化防止条約、地球憲章、行動計画等の採択に向けた作業が進められておりまして、来年の環境と開発に関する国連会議に向けて大きな動きがございます。おっしゃるとおり大変大きな変化でございます。  こうした国際的動向を見きわめつつ、国内的な対応を含めて基本的な環境法制のあり方につきましては今後十分検討を重ねてまいりたいと考えております。
  86. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 世界に向けて地球環境を軸にした一貫したビジョンを示し、政府がつくった地球温暖化防止行動計画を積極的に推進していくためにも、古くて小さくなった着物は脱ぎ捨てて、地球環境を保全することが経済利益より優先する社会を築くためにも積極的に取り組んでいただきたい、そういうふうに思うわけでございます。  次に、もう時間がほとんどないんですけれども、人間が生きていくためにどうしても必要な水、おいしい水についての質問をちょっとしていきたいと思います。  六月一日から水道週間ということで、夏を迎えると例年水道水がにおうという苦情が大変ふえているわけでございます。厚生省調査でも、八九年度は全国で約一千七百五十四万人の人たちが臭い水を飲まざるを得なかったというふうに報告をされているわけでございます。細かい質問を用意したんですけれども、時間がありませんので自分の方からずっと言わせていただきます。  臭い水を処理するために厚生省ではさまざまな施策を行っているわけでございますけれども、例えば高度浄水施設だとか、貯水池ではエアレーションの導入などによってプランクトンの発生を抑えるだとか、あるいは粉末活性炭などを使ってのにおいをとる作業であるとか、そういうことをいろいろと行っているわけですけれども、あくまでもこれは対症療法であって、根本的な解消につながらない、そういう実態があるわけでございます。もっと積極的に、ダムとか湖とか川の水質をよくするための根本的な施策というものが必要だという時期が今来ていると思っています。  水の問題が取りざたされるときにはいつも発がん性物質のことが出るわけでございますが、トリハロメタンの発生原因はアンモニア性の窒素に由来していると言われています。そのアンモニア性窒素は下水処理水に含まれることがわかりました。川の上流の下水処理水を下流の人々の上水道の水源として使用しているような場合、臭くてまずいばかりでなく発がん性のある水を飲まなければならないというこういうことになるわけでございまして、水道水を飲む人が減っているということがわかりました。  ここに水を売る商売ということが成立をするわけでございますが、今、どこの食料品店にもさまざまな水が売られています。特に驚くのは、輸入されるミネラルウオーターが年間に二万五千三百キロリットル、これは国内消費量のミネラルウオーターの実に一五%に上っているということです。金額にいたしますと十六億五千万円、これは九〇年度の東京税関の調べでございますけれどもね。  厚生大臣、水の行政に携わる者といたしまして、水道水が飲めないような、飲めないということはないのですけれども、まずいために水を輸入してまで飲んでいる現状、人間が生きていくためにどうしても必要なものが水であるわけですけれども、その水質が本当に汚染をされてきておって水道さえも安心して飲めないような状況の中で、輸入するミネラルウオーターによって賄われているというような現状について、どのようにお考えでございましょうか。
  87. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 水は人間生活の中で最も大事なものでございます。空気と水というように、この二つが基本的なものだと思います。そういう意味で、健康で潤いのある国民生活を支えていくために、安全でおいしい水道水を供給することは極めて重要と認識しておるわけでございます。  今お話しのように、水道水がまずいからおいしい水を輸入するということになっているのはまことに遺憾だと思いますけれども、私たちの方は安全ということがまず第一でございまして、その次が努力しておいしい水を供給したい、こういうことに相なるわけでございます。それで、安全と申しますと、先ほどお話がありましたように、取り口から来る水の種類によりまして、やはり中にはいろいろと水質が汚濁されている分野もございますので、安全性のためにいろいろな措置を講じてまいります中で水の味が落ちてくるというようなことが出てまいりまして、その点が非常に苦労しているところでございます。  このためには水源水質の保全が基本でございまして、厚生省といたしましても早急な対応を講ずるために、おいしい水を供給するための高度浄水施設に対する補助制度を昭和六十三年度に創設したところでございます。今後とも高度浄水施設を必要とする浄水場での施設整備を促進いたしまして、信頼できる安全でおいしい水の供給に努めてまいりたい、このように考えております。
  88. 大渕絹子

    ○大渕絹子君 ありがとうございました。
  89. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  90. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題とし、厚生省環境庁及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  91. 会田長栄

    ○会田長栄君 よろしくお願いいたします。  まず第一にお伺いしたいのは、昨日不幸にも、万全の対策をしてゆめゆめ危険な状態に陥らないように、対策を十二分にしていくと前回の決算委員会で実は私と同僚の梶原委員に対する政府答弁がありました。その中で、雲仙で大規模な火砕流が発生いたしまして大変な犠牲者を伴ったということでは、心に深く冥福を祈りながらも幾つかの点で御質問をしたい、こう思います。  政府は、対策本部を本日の午後二時から開くということで、国土庁長官を初め関係局長課長はその準備に大わらわだ、こういうお話を承りました。もちろん、決算委員会を重視して安全対策を怠ってもらっては困りますから、その点ではこの決算委員会に国土庁の関係局長の出席ということについては御遠慮を申し上げました。  そこで、五、六点端的にお伺いしたいわけでありますが、その一つは、雲仙普賢岳の噴火、火砕流は昨日三日最大規模に発展し、ついに三十名を超える死者、行方不明者を含めまして家屋の焼失など、最悪の事態になりました。したがいまして、今日時点でどのようにこの状況を把握しているか、消防庁あるいは警察庁にお尋ねいたします。
  92. 木下英敏

    説明員(木下英敏君) 本日午前中までの長崎県災害対策本部からの情報によりますと、人的被害につきましては確認された死者は一名、負傷者十九名、行方不明者三十一名となっております。また、家屋等の物的被害につきましては、まだ確認されていない状況にございます。
  93. 兼元俊徳

    説明員(兼元俊徳君) お答えします。  被害の関係はただいま消防庁の課長からの御説明のとおりでございます。物的被害の方でも多数の家屋が焼失しているのを確認しておりますが、詳細現在調査中でございます。
  94. 会田長栄

    ○会田長栄君 大惨事でありますね。大事故であります、これ。  それで、五月十七日に火山予知連絡会が持たれまして、実は会長コメントというものが出されているわけですね。もちろんこれに伴って気象庁といたしましても警告を発しているわけですね。五月十七日ですよ。そして、五月二十九日ですか、午前十一時に、政府は災害救助法の適用を閣議決定をして今日を迎えているわけでありますね。時間がないようで、あるわけであります。  そこで、何ゆえに一体このような大惨事になってしまったのか、ここが非常に大事なところだと思います。当然これは、私から言わせれば、未然に火砕流の危険性というものを予知できたのではなかったのか。もちろん火砕流が起きればその近辺に住む住民に対する危険の告知というものもあるし、安全対策の指導というものも徹底しなければならなかったのではなかったのか。そういう意 味で、前回梶原委員の質問に答えて、万全の対策を講じるという答弁ではございましたが、今になっては不幸はも、万全の対策ではなくてまことに大きな事故に発展してしまったという気持ちも含めまして、政府の対応というものは甘さがあったのではないかと私は思いますが、いかがですか。  国土庁は来ていないでしょうね。これはもう大臣にひとつよろしくお願いしますよ。気象庁は来ておりますか。
  95. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) 今御指摘のように、気象庁では五月十七日は火山噴火予知連絡会の幹事会というものを開きまして、厳重な警戒を呼びかけてきたところでございます。その後、二十四日より火砕流が発生し始めたわけですけれども、火砕流の発生様式と申しますのは完全に把握されてございませんので、予知という面からは非常に難しいというふうに考えております。  以上です。
  96. 会田長栄

    ○会田長栄君 もちろん五月十七日以降、気象庁は厳重な監視が必要であるということを声明を出しているわけですね。そして、二十四日に火砕流の発生が始まったんですね。それで昨日ですけれども、これは九州大学の島原地震火山観測所によると、午後三時四十六分、既にもうその兆候があらわれているんですね。そして、四時六分から九分の間に火砕流が発生をしておる。この時間帯の中身というのは二十分あるわけね。  そこで、災害対策長崎県本部なりあるいは政府が関与しているその災害救助法を適用させる対策をしていれば、この二十分というものがまことに貴重な時間であったということだけは間違いないんですよ。ところがこれだけの大きな事故につながったというのは、この連絡体制というものが万全ではなかったのではないかと、こう思われるんですが、それについて、気象庁お答え願います。
  97. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) 確かに御指摘のとおり、十六時少し前よりやや大き目の火砕流の発生といいますか、発生そのものではございませんで、少し震度が大きくなったということほ気象庁でも把握してございました。しかしながら、その火砕流が、これから発生する火砕流が今まで以上になるかどうかという予想というのは非常に難しいというふうに考えてございまして、まさかこういう大惨事になるということまでは、その時点ではちょっと想定できなかったというふうに考えております。
  98. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、この対策が、土石流に重点を置いて火砕流に重点を置かなかったのではないかという気がしてならないんですよ。その点についてどうですか。これは警察庁ですか、消防庁。気象庁でもいいですよ。
  99. 及川一夫

    委員長及川一夫君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  100. 及川一夫

    委員長及川一夫君) では速記を起こしてください。
  101. 兼元俊徳

    説明員(兼元俊徳君) お答えいたします。  昨日の十六時ちょっと過ぎに、九州大学の太田教授からの情報が入ってまいりまして、普賢岳の頂上付近が異常という情報が入りました。直ちに警察官二名を現場付近、これはちょうど眉山焼の付近でございますが、この付近まで派遣をして、避難広報に当たらせたところでございます。この警察官のうち一人が重傷を負って現在入院中、もう一人が行方不明ということでございますが、そういうことで、山の状況が異常という連絡を受けて、直ちに現場で広報をいたしております。
  102. 会田長栄

    ○会田長栄君 それからもう一つお伺いしたいのは、よく新聞報道で出るのは、琉球大学の木村政昭助教授と、それからもう一人の方は九州大学の平野宗夫教授のコメントですよ。このコメントを見ると、二百年前の島原噴火の例と似ていてまことに危険きわまりない、こういう予告をしているわけでありますね。その点、この先生方のいわゆるコメントをどのぐらい認識しているかというのは非常に大事な問題だと思いますから、その点にかかわって見解をお聞きしたい。
  103. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) 気象庁では、五月三十一日に火山噴火予知連絡会を開催しておりまして、雲仙岳の火山活動に対する総合的な判断を行ってまいっております。その場合にも、今御指摘先生方のお話についても一応考慮に入っておりまして、厳重な警戒を呼びかけているところでございます。地震の震源地などにつきましては、そういうことも考慮した地震の震源地の移動と申しますか、そういうことも警戒の対象には入ってございます。
  104. 兼元俊徳

    説明員(兼元俊徳君) お答えします。  今回の火砕流は想像以上の規模であったということでございまして、現在では、交通規制の範囲を大幅に広げております。  具体的に申し上げますと、国道五十七号線の深江町俵石展望所から九十九ホテルまでの間、広域農道の芝所交差点から島原市立第三中学校までの間、国道二百五十一号線の深江町諏訪駐在所から九十九ホテルまでの間、そして国道二百五十一号線から水無川上流付近の方向の道路の通行規制ということで、ちょうど火砕流が山を下ってきて平湯に出ますとデルタ状に広がる危険があるということで、これまでの規制範囲を大幅に広げて、そこには一切の交通を入れないというふうにしております。
  105. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは最後に意見を申し上げて、とにかくこれから最大の努力をお願いしておきます。  というのは、きょう初めて午後二時から政府の対策本部というものが発足するんですよ。これは五月十七日ですよ。警告を発して、災害救助法を適用して、なおかつ時間があるんですね。なぜ私はこのことを申し上げるかというと、地震学会では、火山活動とか地震との関連というのは、今日まであった経験というものを非常に大事にしていくということになっているんですね。やっぱりなかなか予知が万全にはいかない。したがって、島原の噴火があって大きな災害をこうむってちょうど二百年という一つの教訓があるわけでありますね。そのことから考えると、政府の対策本部というものの発足というのは私は遅過ぎる。しかしきょう発足するそうでありますから、以後、ごく一部を除いて関係省庁、政府が全体としてこれに取り組むそうでございますから、本当に万全の対策を講じてほしいということを申し上げてこの件については終わります。  次にお尋ねしたいのは、厚生大臣初め関係局長にお願い申し上げます。  これは、一九六〇年代にデンマークのミッケルセン先生が第二次大戦中ナチスドイツの強制収容所の経験をもとにノーマライゼーションというすばらしい理念を発表されている。そして一九七二年に国連は精神薄弱者権利宣言、七五年に国連における障害者の権利宣言が採択されている。そして「国連障害者の十年」というものが樹立されて、我が国もこれに呼応して、九二年の最後の年を今迎えようとしております。とりわけ、子供に関する権利条約というものも国連で採択されて、日本がその批准のためにあらゆる日本の法律と照らし合わせて今研究中でございまして、その意味ではどうしてもこの障害者問題につきまして所見や見解、あるいは具体的な考え方をお聞きしていきたい、こう思います。  その一つは、障害者問題に関する国際的動向を厚生大臣としてどのように把握しているか、端的にお伺いいたします。
  106. 末次彬

    説明員(末次彬君) 主要な流れにつきましては、ただいま先生指摘のとおりでございます。国連におきまして「完全参加と平等」ということをテーマにいたしまして、昭和五十六年に「国際障害者年」、続きまして「障害者に関する世界行動計画」というものを採用いたしまして、さらに昭和五十八年からの十年間を「国連障害者の十年」として「完全参加と平等」、このことを主要なテーマといたしまして、世界行動計画をガイドラインとして各国にその実施を要請されたところでございます。  各国におきましては、この要請に沿いましてそれぞれの国におきまして社会保障、雇用、教育等各般の施策が進められているものというふうに認識しております。
  107. 会田長栄

    ○会田長栄君 それで、「国連障害者の十年」の最後の年を迎えると私申し上げました。いよいよ残されているところ一年しかありません。したがって、我が国として障害者問題に関して現状をどのようにとらえて、そして残されている一年でどんな課題をやり切ろうとしているのか、お伺いいたします。
  108. 末次彬

    説明員(末次彬君) ただいま申し上げましたとおり、現在、「障害者対策に関する長期計画」、これに基づきまして昭和六十二年に後期重点施策というものを定めまして、その線に沿いまして各般の施策を進めておるところでございます。後期重点施策といたしましては八分野挙げておりまして、啓発広報、保健・医療、教育・育成、雇用・就業、福祉、生活環境、スポーツ、レクリエーション及び文化、国際協力、この八分野を重点施策といたしましてその推進を行っておるところでございます。  社会福祉の分野につきましては、この十年間におきまして、御承知のとおり障害基礎年金制度あるいは特別障害者手当制度、こういう制度を創設いたしておりますし、また、身体障害者の社会参加促進センター、身体障害者福祉ホーム、こういった制度を創設いたしましたほか、生活安定の施策、在宅福祉施設福祉につきましてそれ相当の進展があったというふうに考えておるところでございまして、残された一年につきましては、この重点施策の推進をさらに深めて進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  109. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは、一昨年の十一月十六日、我が党の堀委員が社会労働委員会で労働大臣に対して質問した答弁がいわゆる障害者問題について非常に明快な見解を明らかにしているんです。その見解をもう一度お聞かせ願えませんか。
  110. 末次彬

    説明員(末次彬君) 平成元年十一月十六日の社会労働委員会で福島労働大臣が堀委員に対してお答えになった趣旨でございますが、福島労働大臣は、御自身も障害を持つ子供さんがおられるという経験から、障害者が健常者と同じように自然に働ける社会を実現するということが障害者対策の基本である、そのためには自立に向けて努力する障害者を支える具体的な政策を展開することにあるといった趣旨の答弁をされたというふうに承知しております。
  111. 会田長栄

    ○会田長栄君 障害者にとって、学ぶ、働くということが大変大きな問題になっていると思いますと結んでいる。  そこでもう一つお伺いいたしますが、参議院の予算委員会で、障害者の問題について橋本大蔵大臣も、質問に答えてすばらしい所見を述べています。その答弁の中身をもう一度聞かせてもらいたい。
  112. 末次彬

    説明員(末次彬君) 橋本大蔵大臣の御答弁といたしましては、御自身の父親が下腿障害を持つ障害者であったということから、その父親の言葉から必要と考えられるものは、一般の国民の中に障害者に対するいたわりの気持ちと、そのいたわりの気持ちを踏まえた上で公平な競争機会を与えてくれるかどうかということが大事であるという趣旨の答弁をされたというふうに承知しております。
  113. 会田長栄

    ○会田長栄君 これは非常に大事なことでございまして、要するに今述べられたとおりであります。私はここで一番申し上げたいことは、大蔵大臣は、何よりも社会そのものが、障害を持っておられる方々に対してその障害を超えて挑戦する機会を公平に与える、そしてそれを受け入れることが何よりも大切と、こう貴重な見解を述べているわけでありまして、今、福島労働大臣、橋本大蔵大臣の述べられていることを言っていただきましたが、厚生大臣としては、同様な趣旨でございますか、御所見を承りたいと思います。
  114. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 身体障害者の方に対して社会が温かい気持ちで理解をし、そしてまた、障害者の方々の御不自由を少しでも少なくした形で生活ができ、また労働の機会も得るように持っていく社会的条件を整えることが極めて大事でございます。その意味合いから福島労働大臣が、障害者が健常者と同じように自然に働くことができる環境づくりの必要性を訴えられたわけでございますし、また橋本大蔵大臣は、障害者への国民のいたわりの気持ちと機会の均等の重要さを力説されたと承っております。お二人とも、御自身の経験から障害を持つ方々とその対策について深くお考えになっておられることに心から敬意を表するものでございます。  私自身も、実は小学校三年のときに足を痛めまして、一年間ギプスベッドで寝たわけです。そして、あとずっと足を引きずって学校へ通いました。もちろん三年生を二回やらされたわけですから、そういう意味で、障害でいかにつらい思いをしたかということは、私も身をもって経験しております。足のことでからかわれたこともある、あるいは落第生と言われたことがある。そういう目に遭っていかにつらい思いをしたかということも、私自身、自分が経験しております。  したがいまして、障害の方々の気持ちも若干ながらわかるわけでございますので、厚生行政といたしましては、あと一年残す障害者の国際的な協力の体制の中で、十年が終わるまでに少しでも諸条件が整えられるように、全力を挙げてこれからもまた取り細んでまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  115. 会田長栄

    ○会田長栄君 もちろん、「障害者に関する世界行動計画」の中で「完全参加と平等」という最終目標を達成するためにということで、先ほどから関連をしているお答えのとおり、その中身が列記されております。その意味では、御努力願っていることに心から敬意を表して、ありがとうございますと述べさせていただきます。  そこで、これと関連をいたしましてお尋ねしたいのでありますが、実は、障害者の高校入学選抜に関する基本的な指導要綱などに関連をして、文部省にお伺いしたいわけであります。
  116. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 高等学校の入学者選抜につきましては、一般的に学力検査あるいは調査書その他の資料に基づきまして、その高等学校の教育履修の見込みがあるかどうかという観点から判断されるものでございます。もちろん障害を持っております生徒につきましても、障害があるそのことのみをもって受験の門戸を閉ざす、あるいは不合理な扱いをするということが決してないように、そういう観点に立った公正、公平な選抜が行われるべきであるということで各都道府県教育委員会を指導しているということでございます。
  117. 会田長栄

    ○会田長栄君 それでは、具体的にお尋ねいたします。  兵庫県の市立尼崎高校における入学選抜制度のあり方、ここから今大変な問題が提起されておりますね、障害を持っていることを理由にして不合格にしたという。もちろん、尼崎市の教育委員会、兵庫県の県教育委員会、文部省もこの報告を受けて、それなりの助言、指導をしている、こうお聞きしておりますから、これに関連をして具体的にお尋ね申し上げます。  その一つは、T君という子供を障害を理由にして不合格とした判定委員会の判断というのは、今日の情勢からいって許されると思いますか。
  118. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) お尋ねの件は、ことし中学を卒業しました男子生徒が兵庫県の尼崎市立尼崎高等学校の試験を受け、その結果不合格になったという事例だと承知しているわけでございますが、この合否の判定は、兵庫県の尼崎学区におきましてはいわゆる総合選抜という制度が採用されておりまして、県の選抜要綱に基づきまして総合選抜管理委員会というものを設けまして、合否の判定はその中の合否判定委員会が判定をするということになっております。  文部省といたしまして、この件につきまして新聞報道等もございましたので、県の教育委員会を通して聞いているわけでございますけれども、この合否判定委員会が先ほど申しましたような総合的な視点に立って合否を決定している、したがって、県の教育委員会といたしましても、この決定につきましては尊重されるべきものというふうな報告でございました。文部省といたしましても、個々の生徒の合否の判定につきましてこれを云々するという立場にない。そのことにつきましては御理解をいただきたいというふうに思います。
  119. 会田長栄

    ○会田長栄君 それは、不合格とした判定委員会というのは、総合選抜制度そのものは県の教育委員会が一定の基準をつくっておくんでしょう。その上に立って管理委員会をつくらせ、なおかつ選抜の区域内にある八つの高校の校長をもって合否判定委員会をつくらせているんでしょう。だから私は、時間の関係があるから途中省略いたしますが、市の教育委員会は県教委の指導に従うと言う、県教委はそれは市の教育委員会でやることであって合否の判定委員会の結論を尊重する、こう言って逃げているんです。そして文部省に報告しても、先ほど申し上げたとおり、適切な、いわゆる障害者に対応する、原則からいってこのT君を排除するということはどこにもない。  私が先ほどから時間をかけて聞いているのは、労働大臣の言葉からいって、大蔵大臣の言葉からいって、厚生大臣の温かい言葉からいって、こういうことが高校入学選抜制度の中で行われているとしたら、文部省という文部行政は一番立ちおくれると私は言わざるを得ないんです。そう思いませんか。  このT君の持っている障害、それはこの高校に不合格とする理由、根拠というのになりますか。成績はいいんだそうですから。入学試験はいいんだそうです。それでは校内での生活はどうかといったら、中学校の担任の先生、校長先生も褒めるほどいいんだそうです。それは車いすというところにあるんだそうです。ところが車いすというのは、この市立尼崎高校ではそういう子供が卒業しているということもあるんです。そういう中にあって、この子にだけそのしわ寄せをするというのは、私は文部省の文部行政からいって、各県教委に対する指導、助言、監督からいってどうしてもおかしいから尋ねているんです。  文部省が言わんとする原則を守ってくれさえすればこれは合格なんです。障害を持っているが、当たり前に普通の学校で学びたい、働きたいという願望を持っているんです。こんな小さいいたいけな子供にこれほどの十字架を背負わせるというのは、私は障害者の十年からいったって間違いだと言っているんです。そう思いませんか。
  120. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) お尋ねの件でございますけれども、県の教育委員会の方から私どもが聞いておる限りでございますけれども、県立の高等学校におきましては、身体障害を理由に不合格にすることはない、現に受け入れているというような実態も説明しながら、市教育委員会、学校等に情導しているところでございます。  私どもも、県から報告を受けましたときにそのような立場に立ちまして実情等の報告を受け、また指導もしているわけでございますけれども、私が先ほどお答えいたしましたのは、公正公平であるべき入試でございますので、その決定する権限、個々具体の生徒を決定する権限というのは、先ほど申し上げました合否判定委員会に基づきます決定に従わざるを得ない、そのことを御理解いただきたいということを申し上げているわけでございます。
  121. 会田長栄

    ○会田長栄君 文部省は、文部行政を進めるに当たりまして、常に決定権はないと言いながら、あらゆる文部行政の施策というものを各都道府県に行政指導という形で徹底してやってきたでしょう、今日まで。各都道府県の自主性などというのは、文部省の皆さんから言わせれば、最終的に文部省の助言、指導ということで、各県の都道府県教委、市町村の教育委員会がどのように判断しようと、粘り強く是正してきたでしょう。その歴史じゃないんですか、日本の文部行政というのは。文部省は関係ないみたいなことを言われると私も腹が立つんです。今まで四十年世話になってきたからそういう言い方はよそうと思ってきたんだ。文部省がこう判断したら、やれないことなどは今日までなかったんですよ。必ず粘り強く助言、指導をしてそれを受け入れさせてきたんだ。  この件に関してどうです。逃げないでくださいよ。海部内閣としては障害者の十年で計画を立てて行動しているんでしょう。文部省もその原則を踏まえてやっているんでしょう。皆さんも高校入学選抜に当たってはその原則を幾つか指導したでしょう。その指導したとおりになっていないんだから、あなた改めなさいということは文部省が言ったって何も言い過ぎじゃないですよ。どう思いますか。
  122. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 私どもも御指摘先生のお気持ちと変わるところはないというふうに思っておるわけでございまして、障害を理由にして不合格にすることはない、現に受け入れている学校もあるんだということで県も指導し、私どもも指導しているわけでございます。しかし、合否の判定でございますので、この合否の判定をする権限を持っているところがそういう判断をしている、その点だけを御理解いただきたいということでございまして、文部省が、この結果につきましてこれで結構であるとかということを申している、そのように考えているわけではございません。ただ、実情を説明いたしますとそのような現状になっているということを今御説明しているわけでございます。
  123. 会田長栄

    ○会田長栄君 文部省が高校入学選抜制度というものの実施要綱というものを決めて指導しているんでしょう、一つは。それに基づいて兵庫県としては一つの制度の基準をつくったんでしょう。それに基づいてもう一つ今度は管理委員会、合否判定委員会というものをつくらせたんでしょう。何も尼崎市教育委員会独自でつくったんじゃないでしょう。県教委の入学者選抜制度要綱に従って尼崎市の教育委員会もそのようにしたんでしょう。それを文部省が、いやそれはもう合否判定委員会の結論を尊重するんですというような決まり文句だけで、このことを私は納得するわけにはいかないと言っているんです。そんな決まり文句で言うんなら、今日までの文部行政というものが、文教政策というものがどのように行われてきたかということを、もうここで時間をとめてもらってやりましょうか。それは言う必要ないと私は思っているんですよ。  海部内閣が内閣一体になって障害者に対する政策というものを一歩一歩進めよう、障害者の期待にこたえようとしているときに、なぜ文部省はそういうふうにかたくなにやるんですか、本当に。その子供の気持ちになってみなさいよ。私のかわりに別の人が上がれたからいいわという、実に涙ぐましいことを言っているんでしょう。それにこたえることができないで、何が障害者の十年ですか。文部省、ぜひ指導してもらいたいと思いますよ。それでなけりゃもっと嫌みを言いますよ、本に。  兵庫県の高校教育界というのはどういうことをやっているかというのは知っているんでしょう、私が言わなくても。少なくともこういう時代にこういう計画があって政府が一体的にやっているときに、障害を持っていることを理由にして不合格にするなどということを正当化してはなりませんと言っているんですよ。これを見逃すようだったら国会なんか要らぬですよ、もう。だから私は先ほど聞いているんですよ。労働大臣の所見も聞いている。大蔵大臣の所見も聞いてもらった。厚生大臣の所見も聞いてもらった。みんな立派ですよ。いやいや仕方ないんだ、障害を持っている者はもう排除してもいいんだなんていう言葉は一つだってないでしょう。なぜ、時代の先端を行かなきゃならない文部省が、今まさに子供に関する権利条約を批准するかどうかという重要なときに、この子供を疎外するんですかと言っている。  ここにいる八人の校長先生の顔を見たい、私は。顔を見たい。八人そろってこの問題を、果たして不合格にしていいんだろうかどうだろうかということを考えたら、私はこういう結論に達しないと思うもの。言い方は悪いけれども、恐らくこの尼崎市立の高校長というのはこの地域ではボスなんでしょう。この校長さんの言わんとすることにはオーケーと言わざるを得ないんでしょう、周りは。だから地域で問題になっているんでしょうと言うんだ。私は、地域でも大人が問題にすること、それもいい。しかしこのT君のことを考えたら、ひとつここは本気になって、いろいろ反省もあるけれども、文部省としては原則に沿ってもう一度合否判定委員会というものを開かせるように助言したらどうですかと聞いているんだよ。  それができないなどということはないと言うんだよ、私は。それなら幾つか例を出すよ、委員長に特別に時間をもらって。文部省はそんな簡単に今まで引っ込んできましたか。引っ込んだことなんかないですよ。文部省がつくった選抜制度基準要綱に基づいて兵庫県教育委員会がつくり、障害者に対する扱い方も具体的に指導している。それに基づかないで、八人の校長先生が集まって合否判定委員会で不合格にしてしまった。もう一度文部省が兵庫県教育委員会、市の教育委員会に御助言を願って、合否判定委員会を開かれるように助言、指導しますということをここで約束できますか。でなけりゃもう下がらない。
  124. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 合否判定委員会につきましては、今回の入試の用務を終えてその選抜事務を終了しているというような状況に今ございますので、今ここで、先生の御指摘のとおりそのことが可能であるというお答えをすることは、大変無責任なお返事をすることになるだろうと思います。  ただ、私どもも先生と同じ気持ちで当たってきたつもりでございますけれども、なお御指摘もございますので、さらに県の教育委員会を通しまして実情等を調査してみたいというふうに思います。
  125. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、時間が惜しいんですけれども、この問題は素通りしていけませんからね。  兵庫県の総合選抜制度というもので公立高校百五十四校に障害を持つ生徒というのは三百七十四人入っているんでしょう。許可されているんでしょう。全日制の普通高校にも百八十六名の人が入学許可されているんでしょう。何でこの学校だけ、このT君にだけそういう十字架を背負わさなければならないのかという、耐えられない気持ちです。  そこで厚生大臣、一つお願い申し上げます。これは厚生大臣としても見逃すことのできない、障害者に関する十カ年の行動計画の重要な一つでありますね。これは当然労働大臣も同様であります。それは文部省のことだなんて言って逃げないで、厚生大臣、これだけのことであるし、この子供のことを考えたら、やっぱり我々は何としてもこたえなきゃいけないというような気持ちが人一倍強いわけでありますから、厚生大臣労働大臣と文部大臣とひとつ連絡をとって、この問題に結論の出ていくように、温かい助言、指導ができるように何とか知恵と行動をおかりできませんか。
  126. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) ただいま大事な青春期の身体障害者の生徒の問題を真剣に取り上げておられる姿、非常に私も胸を打たれる思いで伺っておりました。  先ほど申し上げましたように、子供のころは非常に傷つきやすいんです。私も自分の足が不自由だった、これは結核性関節炎だったんですけれども。その傷は、今は普通に歩けますし、靴の減りが違う程度で、まあ大したことないように今はなりましたけれども、そのときに三年生を二回させられたということと、軽べつの言葉で皆から言われた、あるいはいろいろに扱われたことの傷がいまだに私の心の中に焼きつくように残っておるわけです。したがって、一人でも多くの方にこういう思いをさせないようにということで、私もこの問題は大変に重要な問題である、このように受けとめました。文部省の方は、ただいま課長も出席して重々承知したと思いますが、御欠席の労働大臣にもこういう問題があるということをよくお伝えして、今後障害者年の全体の計画の中で遺漏のないように取り組んでまいりたい、このように考えております。
  127. 会田長栄

    ○会田長栄君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  そこで、最後に、この件に関して一つだけ例を申し上げますが、これは石川県、この子供と同じ障害を持っている子供が普通高校へ入学をして、そして健常者と同様に学校生活を営み、修学旅行にも同級生がみんなでこの子を支えて旅行に行っているというような状況というのは全国的にあるんです。なぜ兵庫県のこの学校だけこういう結論を出さざるを得なかったのかということを考えれば、いろいろあるんだろうと思いますけれども、いろいろあるといったって、障害者に対する、学ぶという者に対する文部省の指導原則からいったって、この学校の合否判定委員会の結論というのは私は間違いだと思うんですよ。間違いというのは気がついたら是正した方がいいんです、早いところ。今のところもう角突き合いでしょう、みんな。市の教育委員会に言うと県教委です、県教委の御指導があれば云々と言う。県教委に行くと、合否判定委員会の結論を尊重する以外にないと逃げている。文部省にお尋ねすると、いや補欠入学で入れたらいいんじゃないかと一回話したけれども、そんなのはだめだとお断りされたと、こういうふうにちぐはぐなんです。  そこで具体的に、やっぱり文部省は、そういう混乱をしているときには原点に返って、文部省が指導している障害者の高校入学に関するところの原則というものを大事にして、もう一度改めるに何もはばかることはない。この子にとってはこれからの生涯というのは大変な問題でありますから、したがって私は善処方をぜひお願いをしておきたい、こう思います。とりわけ文部省にお願いしておきます。必ず朗報が入ってくるように全力を尽くしてほしい。  お願いしておいて最後に言うのもおかしな話ですが、兵庫県の高校教育界というのは、どうも文部省の御指導のとおりにならないようないろんなことばかりつくって時間を費やしているというようなことがあって、これは困ったものだと私も思っていますから、そういう点ひとつ毅然とした態度で文部省は、この子に対する、T君という子供が希望の持てるように、一日も早くこの結論が得られるようよろしくお願いしておきます。どうぞよろしくお願いします。努力してくれるんでしょうね。
  128. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 今御指摘の御趣旨も踏まえまして、努力したいと思います。
  129. 会田長栄

    ○会田長栄君 この問題でどうしても文部省に御努力を願わなきゃならないということがあって、あと三点ばかり質問がありましたがもう時間なので、一定の時間を守るというのもこれも大事なことでありますから、答弁を準備された方には大変迷惑をかけたと思いますがお許し願いたいと思います。  最後に、重ねてひとつ厚生大臣、先ほどの御答弁のとおり、国民の、子供の一人だということで、忘れないでぜひお力をかしていただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  130. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 私は、昨日の雲仙岳の火砕流で災害に遭われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、また、その対策についていろいろ質問をさせていただくべきですけれども、今政府の方では、国土庁に雲仙岳噴火非常災害対策本部が設置されて、既に午後二時からいろいろ緊急対策に関してなされているということでございますので、私はその点に関しましては、タイミングを逸しない万全な対策がとられるよう心から希望をしておきます。  本日は、私は厚生省に対して、今問題になっている社会保険診療報酬体系の見直しの件、並びに国民医療費のあり方等について質問をさせていただきます。  昨年、黒木保険局長が、社会保険診療報酬体系は二十一世紀の高齢化社会に備えて組み直しをやるべきである、こういう御発言をなさっておられます。また、それを受けて関係団体、厚生省ともどもに、診療報酬基本問題小委員会ですか、そういう勉強会がもう既にスタートをしているということであります。そういうことも踏まえまして、私は現在の社会保険診療報酬体系が、三十年たった今日、いろんな面で矛盾、不合理な点が出てきておるので、そういう矛盾点あるいは不合理な点をぜひひとつ酌み取っていただいて、今後の社会保険診療報酬体系の組み直しに役立てていただきたい。こういうことが私の本日の質問の趣旨であります。  診療報酬の件でございますけれども、御高承のとおり、国民の九割が中流階級になったという自負を持っている、あるいはまた国民のニーズが多様化している、あるいは疾病構造が大きく変化をしている等々のこともありまして、なかなか現在の社会保険診療報酬では対応できない部分が出てきておりますけれども、私は、社会保険診療報酬のあり方というものは、その中に当然経済的な要素がある、もう一つは技術的、科学的な要素もある、この二点が大きなものである、こう思っております。  また、社会保険診療報酬並びにそれに関連する国民医療費の決定に当たっては、三者三様の立場があるのじゃなかろうか。三者と申し上げるのは、いわゆる医療従事者、供給側の方としても経営基盤の安定を図るということが一つ。もう一つは、医学医術の進歩に適応させるという、患者のニーズにこたえるという大きな立場があると思っております。また、保険者側としては、何といっても保険ですから、保険財政の収支のバランスをとる、財政基盤の確立を図るというようなこと、保険料拠出者の負担能力を考えていく、これは保険者の立場としては当然であります。  それと同じように役所、大蔵、厚生省も同じように保険者の立場に寄らざるを得ない、寄るべきである。しかし、それ以外に、厚生省あるいは大蔵省としては、最も大きな、国民医療をどうするかといういわゆる政策誘導をするというまた大きな立場もある。そういうぐあいに三者三様の基本的な考え方はもちろん私のこれから申し上げる話の基盤にもなっております。  それで私は、社会保険診療報酬の現行の矛盾、不合理の最たるものの一つは、いわゆる前から言われております——これはきょう大蔵大臣おられると非常によかったんですけれども、大蔵大臣は私が議員になってから常々私に、君たちは社会保険診療報酬を上げろ上げろということばかり言っておるんだけれども、何といってもドクターフィーとホスピタルフィーを早く分離せいと、そのことが第一なんだということを言っておられたので、せんだっての二十二日の本決算委員会でも大蔵大臣はそのようなことを述べておられたから、私はきょうは非常にいいチャンスだと思ったら、大臣欠席でちょっと物足りないんですけれども。  それで、現在の社会保険診療報酬の中では、ドクターフィーとホスピタルフィーは分離されていない。ドクターフィーとホスピタルフィーというのは、それは社会構造が違いまた保険制度が違うところではアメリカみたいにきちっと分離されるけれども、日本の保険制度では無理だということも私は重々承知はしております。    〔委員長退席、理事千葉景子君着席〕 しかしながら、現在の診察料とか処置料とか手術料では、両者とも込みになっておってどんぶり勘定になっておるんですよね。だから、こういう診療報酬の要素は、もう釈迦に説法ですけれども、御存じのとおり、技術料の分、施設料の分、それから投薬、材料の分、こういう三つに分かれるわけなんですが、今役所の方では、ドクターフィーとホスピタルフィーを分けろという世論に対してどういう考えを持っておられるのかが一つ。  それからもう一つは、これはちょっと後先になりましたけれども、役所の方でもドクターフィーとホスピタルフィーがごっちゃになっているために不合理な点があるということを認識しておられるのかどうなのかということですね。それで、認識しておられるとするならどういう点が不合理であり矛盾であるか。今のままではいかぬから少しでも直していこうとするなら、しからばどういう手順でやっていこうとされておられるのか。同時に、やれるところとやれないところがありますから、そういう点。それから、これにはおおよそ何年ぐらいかかるかということもひっくるめてお答えを願いたい、こう思います。
  131. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 現行の診療報酬体系をどのように将来持っていくのかというのが基本になるお尋ねだと思うわけであります。  まず、ドクターフィー、ホスピタルフィーの御質問に答える前に全体的な説明からいたしたいと思うわけでございますけれども、御案内のように、診療報酬につきましては、その基本的な骨格が昭和三十三年に整備されたわけでありますけれども、それ以来長い期間が経過しているわけでございます。したがいまして、その根本的な体系のあり方につきましては、各方面からさまざまな意見が出されていることも事実でございます。厚生省といたしましても、中長期的な展望のもとで検討を行っていく必要があるというふうに認識をいたしているところでございます。    〔理事千葉景子君退席、委員長着席〕  こういう中で、先般、診療報酬に関する多岐にわたる基本的諸問題につきまして幅広い視点からの検討を行うため、御引用のありましたように、中医協に診療報酬基本問題小委員会が設置されたばかりでございます。私どもは、基本的にはこの小委員会における御議論を見守りながら判断をしていかなきゃならないというふうに考えておるわでございます。  そこで、お尋ねのドクターフィー、ホスピタルフィーのお話でございます。典型的にこの二つが区分されて、診療報酬なり報酬の形でシステム化されているのはアメリカでございます。アメリカにおきましては、一般にお医者さんは、日本のように病院勤務するという形態ではございません。開業医の先生方が病院施設を利用しながら患者の診療に当たるということでございますので、患者に対しましては独立に報酬を請求する。病院側はホスピタルフィーを請求します・けれども、それを利用して診療に当たられる医師に対してはドクターフィーという形で区分し、分離してお支払いがなされるというふうな形になっているわけでございます。  さまざまな各方面の意見の中で、ドクターフィー、ホスピタルフィーを区分してやったらどうかという意見もございます。私どもも、この概念整理が必要だと痛感をいたしておりますし、これを分けて考えてみる必要もあると思っているわけでございますし、その際にはアメリカのシステムが大いに参考になると思っておりますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、日本の制度に導入するということは、日本と余りにも医師勤務形態等医療供給システムに差異があるわけでございまして、そのままストレートにこういったシステムを導入するというのは非常に難しい面があるというふうに心得ているわけでございます。したがって、これから中医協を中心に幅広い視点の中で検討をさせていただきたいと思うわけでございます。  これが一緒になっていることについてどういう不合理があるかというお尋ねでございます。  いろいろ病院の経費について、例えばスライド的に引き上げたらどうかというような意見もあるわけでございますけれども、医師の技術料とコスト的な費用が一本になっておりますと、どの項目どの費用をどうしたらいいのかというのがなかなか区分けができないという難点等、そのほかいろいろあろうかと思いますけれども、そういう点があるのではないか。ただし、一本で払うというのにもそれなりのメリットもまた日本型としてあるかなとは思うわけでございます。  いずれにいたしましても、今後、先ほど申し上げました診療報酬基本問題小委員会の中で中長期の展望に立ちまして検討をいたすわけでございますが、まず小委員会としては論点の整理から始めようということでございまして、それにどういうふうな形で取り組むかというのは第一回の会合のときにその道行きが御議論されようかと思いますけれども、これからの将来の問題でございますから、相当な時間を要するなというふうに考えておる次第でございます。
  132. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 私は、この問題でもっと、今局長が述べることのできなかった部分を申し上げたいんですけれども、そうすると時間の関係でちょっと無理でございますので、今の局長の積極的な姿勢を評価して、この問題についてはその程度にしておきます。  もう一つ、現在の社会保険診療報酬の中で矛盾になっている点があります。それはどういうことかというと、官公立病院と私的病院が同じ画一的な診療報酬体系の中で運営されているといいますか、拘束をされているという矛盾があります。  それは具体的に申し上げると、収入の部分では、公的病院は社会保険診療報酬がもちろん入ってきますが、それ以外に医業外収入、すなわち一般会計からの繰り入れとか補助金とかあるいは助成金といいますか、それから施設建設費とかあるいは大型備品費等、そういうのがあるんですね。それはもちろん公営企業法に保護されている点も大きく影響しておることは当然のことであります。それから、私的病院はそれならどうかというと、私的病院は社会保険診療報酬だけで九五%ぐらい賄われている。それで支出はどうかというと、公的病院は一般経費だけ、私的病院は一般経費と先ほど申し上げたような施設建設費、備品費、それからそれのキャピタルフィーに対する利子等、さらにまた税金も払わにゃいかぬ、こういうような状況にあるわけなんですね。  それで今厚生省は、まあ厚生省だけじゃないんだけれども、競争原理を導入して民活を大いに奨励しているというのはこれは世界の趨勢なんですけれども、今日本で公的病院と私的病院の中には、こういうような社会保険診療報酬の中で画一的に公的病院も私的病院もその中で運営せにゃいかぬ、こういうことがあるので、西ドイツとかあるいはフランスあたりでは私的病院といえども一定の基準に合った場合にはそれに対する助成措置がなされているんだけれども、そのこと等もひっくるめて、私は今度の社会保険診療報酬改定に当たってはそういう面を考えてもらいたい。  もちろん、これは大蔵当局あたりに言わせると、厚生大臣は大蔵出身の財政のベテランでございますから、そんなことを言ってもとおっしゃるかと思いますが、それは何かというと、医療法人といえども、帰属する場合にはやっぱり出資者に配分されるわけですから、公的病院はそれはみんな公的に帰属していくという基本的な問題があることは私も重々承知していますけれども、それを除いて、公的病院と私的病院の競争原理を考えて、できるだけ同じ土俵に近づけるように、社会保険診療報酬の体系組み直しに当たってはそれも考えてもらいたい、こう思うわけであります。
  133. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) これも根本的な診療報酬のあり方の御議論かと思います。  現在の診療報酬、これはもう御案内のように、国公立、民間を問わず、社会保険診療を担当していただいた、それの見返りと申しますかそれに対する報酬として、社会保険診療を私どもは指定医の形で担当してもらっておるわけでございますが、指定保険医療機関の役割を果たしていただいたということのリターンという形で診療報酬を、経営主体のいかんを問わず、言ってみれば報酬として、点数表の形で一律に点数掛ける単位ということでお出しをしているというわけでございます。  したがいまして私どもは、国公立及び民間病院も含めまして、全国医療機関の経営等の状況、そういうものを医業経営実態調査という形で調査いたしまして、それを基本にしながら、賃金とか物価の動向、社会全体の労働時間の動向等を総合的に勘案しながら、どの病院にも当てはまるようにという形で、通常の医業経営に係る費用を補てんするに足る適正な措置という考え方でお支払いをしているわけでございます。  そういう中で、設置主体からの補助金の有無等によってそこに差をつけたらどうかという御提案でございます。そういう御意見があるのを重々承知いたしておりますし、そういう別途の財源がないところには不公平感があるのかなと正直私も思っておりますけれども、現行診療報酬体系としては、まず一律に公平にお配りをした後、その後でいろんな別途の財源がある経営主体もあるかもわかりませんし、民間の経営主体からも寄附金その他があるかもわかりませんが、そういう特別な個別的な事情というのはなかなか、診療報酬の体系にあらかじめ想定するというのは非常に難しい面があると私は正直に申し上げざるを得ないと思っておるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、御指摘でございますので、今後診療報酬のあり方についての中長期的な見直しの中で検討すべき事項だというふうに考える次第でございます。
  134. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 保険局長は頭脳明晰だから、リターンは公平に返しているとおっしゃって、まさにそのとおり。支出は先ほど私が申し上げたように、公的と私的とは支出の面で非常に大きく違って、残りの部分でまた大きく広がってくるから、その点をもう一遍、くどいようですけれども繰り返しておきます。  それから、その次は病室差額の件でございますけれども、この病室差額も、先ほど申し上げたように、社会構造の変化、特に国民の九割が中流階級のニーズを持っている、こういうように世の中がもう二、三十年前とは大きく変わってきておる。首都圏でも病院なんか特等室をつくると特等室の方から埋まっていくということであります。  それで、今国立病院では一〇%まではいいということ、それから公的、民間では差額ベッドは二〇%以内まではいい、こういうふうになっています。私はこれを発言するに当たっては相当勇気が要るんですよね。やっぱり憲法二十五条の生存権の保障等、また富める者も貧しき者もいろんな方方が平等に医療保障の恩恵を受けるという原理原則は踏まえていますけれども、世の中がこういうぐあいに変わってきて、国民が一千万人も国外旅行をするというようなときに、いろんな意味で生活のレベル、先ほどの質問のときにも厚生大臣でしたか、アメニティーの問題をおっしゃっておられて、厚生省は大きくゆとりのことを強調しておられるので、それでニーズに合うように、現在その差額ベッドが先ほど申し上げたように一〇%、二〇%と、こういうぐあいに規制されているけれども、これをもっと緩和していったらどうだろうかという私の要望でございます。これはもちろんうまく国民に説明をしないと誤解を招くおそれがあるんですけれども、私はこういう点を強調したい。  それともう一つは、これと正反対に、国民宿舎の半額程度しか医療保険が出されていないんですね。だからそのために快適な病室をつくってやれないという、いわゆる拡大再生産の実行もできないということもありますけれども、いずれにいたしましても、差額ベッドを緩和してもらいたい、こういう要望でございます。
  135. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 差額室料問題につきましては、私どもは基本的には患者が希望しないにもかかわらず差額負担なしでは入院できないというような事態が生ずることのないよう、従来より一定の基準を示し、指導を行ってきているところでありまして、この方針というのは今後とも堅持していく必要があるというふうに思っております。  しかしながら、他方、委員からも御披露がありましたように、都会地等では個室の方から先に埋まってしまうというように、国民の好みの多様化と申しますか、選択の幅の広がりと申しますか、ニーズが急激に変わっていっている実態というものも、やはりこういった医療を設計します場合に当然念頭に置かなければならない。すべて画一的なサービスということではこれからの豊かな時代に合わない面があるのではないかということも、私どもは絶えず念頭に置きながら検討をする必要というのは痛感いたしておるわけでございまして、これも委員の御指摘ということで、室料差額のあり方につきましては、今後とも十分検討させ ていただきたいと思っております。
  136. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 インフォームド・コンセントですか、今患者さんとの対話というのは世界の医療の大きな流れの一つになっております。それで、現在の社会保険診療報酬の体系の中で見てみますと、これがつくられた時代、三十年前と今とはいろんな点が変わってきている。患者さんの中にもいろんな考え方を持っておる人がおるし、病気の中にも軽い病気があるし、難しい病気があるし、また科もいろんな科があるという状況の中で、初診料は一定で決まっているわけですね、再診料も。  それで私は、そういう病気の種類によっては、また患者さんによっては、状況によっては、それはもう時間をかけて十分患者さんに情報を提供し、患者さんに理解を得るためには時間が要るんだ、その時間という要素に対する社会保険診療報酬のファクターが入っていないという感じがします。今厚生省は、インフォームド・コンセントというものをしきりに国民に理解をさせようと努力なさっておられるので、何らかの形で診療報酬に、診療に要する時間的なファクターに対する手当を入れるべきじゃなかろうか。もちろん、これに対していろんな意見もあると思います。それは初診料には無理だとか、そういうのがあれば再診料にとか、あるいはまた何らかの形で、なるほどこれはインフォームド・コンセントだと、たとえ医者がどんなに忙しくても患者さんに対して時間を与えてやろうというインセンティブを与えるようなことを社会保険診療報酬でやったらどうだろうか、私はこう思っております。  それからもう一つは、それは当然今後日本は経済大国になっていくんだし、いろんな意味で国民のレベルもアップしていくんですから、今診療よりは予防と言われている時代ですから、予防に対する時間的な手当、あるいはまたいろんな意味のコンサルタントに対しても時間的な要素を加味した社会保険診療報酬考えていただきたい、こういう二つの要望でございます。
  137. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) インフォームド・コンセントのお話でございます。むしろ健政局長からの答弁がふさわしいかと思いますけれども、私どもとしても、医療医師患者信頼関係の上に成り立つものでございまして、このような意味において、いわゆるインフォームド・コンセントという考え方は医療の基本と考えております。  診療報酬におきましては、個々の診療行為の評価に当たりまして、通常当該診療行為に要します人件費、設備費、技術的困難性、診療時間等を総合的に勘案して点数の設定を行っているところでございます。例えば、通院精神療法のように時間的要素が特に重要な場合には、その要素を特掲して評価しているところでございます。  御指摘のように、さらに診療報酬上時間的要素を積極的に評価すべきかどうかということでございます。巷間三時間待って三分診療と言われるわけでございます。私も、ゆっくり時間をかけて患者さんを診てあげる、それはまさしく患者さんの願いではなかろうかというふうに思うわけでございます。それが仮に今の診療報酬にそういう点を阻害するということがあればやはり是正していく必要があり、そのためには時間的要素というものも非常に重要だというふうに思っておるわけでございますけれども、いずれこれも診療報酬体系をどうするかの中でのお話でございまして、せっかくの御提案ですが、これも今後の検討課題にさせていただきたいと思うわけでございます。
  138. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次は、先ほど同僚の西岡瑠璃子委員からも御質問があった看護婦さんの人件費の問題でございます。  これもいろいろ話し出すと時間がかかりますので、要点だけ申し上げさせていただきますと、中医協の資料、平成元年の十二月六日の資料によりますと、平成元年の民間病院の正看の月額給与は二十五万七千百五十六円になっておるんです。今は平成三年ですから、二年前の給与です。二年前の平成元年よりも現在の給与は民間病院は上がっているということです。それから社会保険からの収入で、基準看護の特一類、これが正看一人二十三万八千二百五十六円なんです。それで先ほど申し上げた二十五万七千百五十六円と二十三万八千二百五十六円の差が一万八千九百円もあるわけなんです。保険からは二十三万八千二百五十六円しか入ってこないのに、民間が看護婦さんを雇うときには二十五万七千百五十六円も払わにゃいかぬ。一万八千九百円、約二万円の差額があるわけです。それでどうして民間医療機関看護婦確保ができるかという現実的な問題があるわけなんです。  私は、これはぜひ黒木局長に御答弁をいただきたい。これは時間がかかると思いますよ、私も資料をたくさん持っていますけれども。黒木局長、首をひねらないで。局長は、この前の日本病院会の講演で、私もあれ読ませていただきましたけれども、立派な御講演で、国民や我々を啓蒙するに足る立派な点もあります。しかしまた、これはどうかなと思う点も多々あるんです。それの中の一つは、局長は「看護婦の処遇改善は診療報酬にも関わるが、看護婦という病院にとってかけがえのない大切な人材を長期に渡って確保するには、いくらかかってもかまわないと思っている。」、これはあなたがおっしゃっているんですがね。だから、こういう二万円の差があるようなところ、これはもういろいろあります。地域差もあるし、病院の規模もあるし、病院の質もあるし、いろいろあるけれども、こういうことがあるので、私はぜひそういう点も御考慮いただきたい、今度の診療報酬体系の組み直しに当たってはですね。これは、ほかのコメディカルとの問題とかいろいろなものがありますけれども、ひとつ御答弁をいただきます。
  139. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 私の講演、少しオーバーな表現を使っているようでございますけれども看護問題の重要性については十分認識をいたしておりまして、御案内のように、昨年の四月の診療報酬の改定におきましても、看護料の大幅な引き上げを行ったところでございます。  診療報酬における看護料の改善問題は、本院からも再三御意見なりあるいは御質疑を賜っているところでございます。そういう流れの中で、今後診療報酬全体にかかわる中医協の御議論を踏まえながら、私どもとしてはその適正化を図りながら、適正な看護サービスが提供されるよう努力してまいりたいというふうに思っております。
  140. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次は、現在の社会保険診療報酬の中で不合理な点、矛盾したる点の代表的なものの一つがあるんです。それは、各科別に言って非常にバランスがとれていないということです。  御高承のとおり、現在の診療報酬体系は、画一的、統一的であって、医療技術の進歩とか、それからマンパワーコストの高騰の実態にそぐわない状況になっております。それで、入院費とか外来費とか各診療科別の原価を分析してみるとはっきりしているんです。例えて申し上げると、原価分析で、入院部門が診療収入比で、人件費が五〇%を超えておるんです。それで、特に高額医療機器の費用、これを含む一般管理費が二〇%以上となって赤字の状態にあるわけなんです。その中でも外科系の病棟では材料費が収入比で三六から四〇%になっている。人件費が六二から六五%になっている。これはどうしてこうなっているかというと、診療材料の高額化ですね。日進月歩の医学医術にキャッチアップするために、機械までも材料までも高額化している、また人件費も高騰している、こういう影響なんです。  それから、もう一つは、外科診療でも、小児科とか外科とか、整形外科では人件費が六〇%を超えて赤字体質になっているという資料がふえています。要するに、人手を多く必要とする診療科が現行の診療報酬体系の中では赤字体質になっていることをはっきり示しています。私も外科医ですけれども、今外科では手術をすればするほど赤字になって、外科医のなり手がなくなっているんです。これは局長御存じのとおりだと思っています。  どうしてこういうことになっているかというと、さっき局長のおっしゃった昭和三十三年ですか、この診療報酬体系がつくられたときには、感染症を主体とする疾病構造であったが、御存じのとおり、抗生物質等の投与で早く治療ができた。内科系とか外科系を問わないで、薬の投与で早期に治療ができたというようなことで、つまり当時は出来高払い制が有効に作用していた。しかし今は変わっている。御存じのとおり人手不足で、人件費がもう高騰しているというようないろんなことで、科によって、部門によって収支構造に当時と大きな違いが出ておるんです。これはもう局長、御自分でよく御存じのことと思います。  それで私は、今度の診療報酬体系の組みかえに当たっては、各部門、各診療科の診察構造、治療構造ですか、それに適応したものでないといかぬ。そのためには複数診療報酬システムをつくっていったらどうだろうか。そして各科の実態に合うような診療報酬システムを選択してもらう、こういうのも一つの案ではなかろうか、こういうぐあいに思っていますので、今申し上げた各科別の、各部門別の不均衡に対する御意見を拝聴したい。
  141. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 病院の経営状況は、患者さんの増減とか、あるいは医療高度化、コスト面の増減等で大いに病院、診療所あるいは各科、各部門ごとに変動が、昔から比べるとさまざまな形で出ているのではなかろうかという御指摘、おっしゃるとおりだろうと思っておるわけでございます。したがいまして、これからの診療報酬のあり方という場合に、私どもはやはり各科ごと、あるいは各部門ごとのバランスというものをどうとるかというのが一番大きなテーマでなきゃならないというふうに考えているわけでございます。  その一つとして、例えば複数の選択制の診療報酬というのもどうかという御提案でございます。確かに現在も少しばかり選択制の診療報酬というのは芽が出ておりますけれども、これをどの程度今回の体系の見直しの中で芽が出せ、あるいは整理でき、あるいはどの程度取り入れるかというのは、これからの検討結果を待つよりないわけでございますけれども、先生の御提案、大いに参考にさせていただきたいと思うわけでございます。
  142. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 せんだって新しい薬価算定方式が決定されたわけでございますけれども、私は、この薬価改定、それからさらに医療費改定等について、ちょっと質問をさせていただきます。  武見会長以来、医者は薬のかすを取って生活したらいかぬ、武見会長はそうずっとおっしゃっておられて、医師は、ドクターはその技術料で生きるべきであるという考え方でずっと来ていたわけですけれども、しかし実態は、武見会長の意思に反して、どうも薬価差で医院は運営されているという状況、今まではそういう状況になっています。それで、いろいろ薬価差に対して意見があります。ありますけれども、これは参考までに、薬価差というものを否定しているのは法律の建前、いろんな国民世論の動向等で、これは厚生省、大蔵省等もそうですし、また、我々医療団体の中にもそれを否定する人もいます。しかし、それはあくまでも理想論であって、建前論であって、薬価差必然論があるんですね。それは大きく分けると経営原資論というのがあるし、マージン論、マージンを求めなきゃいかないというのがあるし、コスト論があるし、取引条件論と、四つあるようですけれども、まあこういうのは時間の都合で省きまして、大浜方栄個人が薬価差に対してどういう見解を持っているかというのを申し上げさせていただきます。  今までの状態では薬価差益はどうしても避けられなかった。現在までの医療保険制度のもとでは避けられなかった。しかし問題は、どの程度までなら国民は、あるいは科学的に分析してどの程度までなら国民は容認してくれるかということになるけれども、私自身は、医療機関が自由主義経済の流通機構の中で薬品を購入している限り、薬価差益はこれは必然的に生まれるものだ、経済行為の当然の帰結である、私はこう思っております。  それからもう一つは、薬剤以外の技術料で今後カバーしない限り、私は、薬価差益というのは、潜在的な技術料の意味を持っているんだとこういうぐあいに思っております。要するに、薬価差に依存しない医療経営に向けての診療報酬体系見直しを求めるということです。  それから、薬価基準を引き下げて、これに見合う技術料の引き上げがない限り、これは収入が減るわけですから、人間はホモエコノミックスですから、だから当然医療機関は新たな薬価差益を求めていかざるを得ない。ちょっと言葉があれですけれども、なるようになるじゃないかということを恐れるわけです。  それから、今までの状況では、診療報酬による医業収入では、原価計算の上で特に外来部門は赤字になるものだから、その赤字を薬価差益で補っているところが多かった、こういうことですね。  それからもう一つは、今の自由主義経済の流通機構の中では当然オンコストされにゃいかぬ。これは在庫料とか損耗料とか、あるいは金利とかこういうことでありますけれども、これは薬価には含まれていないんだ、こういうことです。私は、こういうようなことを前提にしてそういう考え方を持っています。  もう一つは、病院と診療所、入院と外来、各科別でも薬剤比率が違う。それで、内科系は薬剤比率が高くて外科系は低い。薬価基準を改定して薬価が下がった場合に、薬剤比率の高いところ、高い科に影響が大きくなる、これは当然のことです。そこで得た財源を技術料として全体に振り向けていった場合に、薬剤比率の高かった内科系には、外科系に行った分は戻ってこない、こういうことです。  それで、私は結論的に申し上げて、今私の申し上げたのは、私は従来の薬価差益を病院経営の、診療所経営の原資に充てるべきだということを言っているんじゃなくて、今まではそういうような社会保険診療報酬の体系で好むと好まざるとにかかわらずそうならざるを得なかったから、今後は技術料が正しく評価されるような社会保険診療報酬体系をつくってもらいたい。薬のかすで運営されるようなことじゃ、病院医療機関がそういうものじゃ困るんだ、こういうことでございますけれども、御見解はいかがでございましょうか。
  143. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) 薬価の問題、あるいは薬価差の問題については、基本的には委員の認識と変わりません。私どもはそういう観点から、薬価の一層の適正化が必要だということで、先般中医協の建議によりまして薬価算定方式を見直しまして、医薬品市場の実勢価格がより適切に反映されるといったような形での薬価算定方式ということで中医協からの建議を受けたばかりのところでございます。御指摘のように、診療報酬というのは医療行為の技術評価の体系でございまして、本来薬価とは別個のものでございます。  いずれにいたしましても、御指摘のように技術料の適正な評価を行うことの必要性というものは十分認識しているつもりでございますし、それから、御指摘のような薬価差に依存した病院の経営体質というものも是正していかなきゃならないのは当然でございます。時間はかかるわけでございますけれども、私どもは今後とも技術料重視の観点から、あるべき診療報酬、あるいは診療報酬の適正化ということに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  144. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 同じく社会保険診療報酬の点数表の件ですけれども、この点数表がどうも配分表になっているうらみがある。それで、できるだけ技術評価をするような技術評価表にしてもらいたいということであります。これは先ほどの話と重複する点がございますので、あえてもう質問はいたしません。  それからもう一つ、社会保険診療報酬に絡んで、この事務の簡素化の問題ですけれども、請求項目が非常に複雑多岐になって、驚くなかれ二千項目にわたっている。それからレセプトの数が九億枚になっている。それで、審査委員先生方がレセプトをチェックするのに一枚二秒か三秒で目を通すという、神わざでないとできないように複雑多岐な状態になっておるんで、私は事務の簡素化が非常に大事だと思う。  それで、これ現場の実際に扱った方々の御意見を聞いたんですが、もう人間の頭では解釈ができなくなりつつある。いろんな理由づけで、いろいろ加算加算とか改正改正とくるものですから、これ以上複雑になったら窓口での計算はできない、こういう声まであるんです。それから、もう余り複雑怪奇で、上がり方も少ないから、昔は点数が改正になったらうれしかったけれども、もう喜びの声はないんですね。もうこちらが変わったらあっちにまた移っていったというぐあいに、ぴょんぴょんはねたり跳んだりおりたり、いろいろ何か書いてあるんですよ。橋の上の弁慶と牛若丸みたいだ、とらえどころかなくて化け物みたいだって、こういうぐあいに書いてあるんだ、社会保険診療報酬制度は。いや、これは本当ですよ。そういう声があるんですから。今、効率化が叫ばれておるし事務の簡素化が言われていますから、こういう点も次回の点数表の改正のときにはぜひひとつ御考慮をいただきたい。  それで結びに、今まで私が社会保険診療報酬の矛盾点、不合理な点を申し上げてきましたけれども、社会保障雑誌に、厚生省の前か元かの事務次官がはっきりおっしゃっておるんですよ。日本の医療制度や社会保険診療報酬の仕組みを変えないと、このままでいいとはとても考えられないと。これは役所の方々はその活字を見られたと思いますから、皆さんの大先輩がそうおっしゃっているんですからね。社会保険診療報酬の仕組みを変えないと、今のままではとてもやっていけない、こういうことをはっきりおっしゃっています。もう時間がないんで、これは答弁いいですよ。  それから最後に、国民医療費の問題点ですけれども、アメリカの医療団体の世論調査によると、イギリスは、医療費は少ないという不満を持っているのが七〇%、日本は多過ぎると答えた人が過半数。日本は国民が医療費は高いと思っておるんです。イギリスでは少ないと思っておるんです。それはマスコミの影響が大いにある。私は、これはもう論ずると時間がないので、私の話より、朝日新聞が社説の中でこういうことを言っておるんです。日本人の一人当たりの国民医療費は先進諸国の水準よりもはるかに低いんだ。それからまた、実際統計を調べても、国民医療費の対国民所得比は日本は六・四二%です。欧米先進諸国の中では一番低い。アメリカが一〇・二、フランスが一〇・八ですか。  厚生省は、何か事あるごとに、毎年一兆円ずつ医療費は上がっていくんだ、どうするんだどうするんだと、こういうことばっかりおっしゃる。黒木局長もしょっちゅう言っておった。しかし、レジャー産業なんかは六十三兆円で前年比八・一%増、建設も七十三兆円で九・八%増。いいですか、レジャー産業で八・一%の増し、建設で九・八%の増しがあるんだから、まして国民の富よりは国民の健康が最も大事であるというのは哲学ですから、社会保障、医療保障の中で。それを踏まえていったら、先ほど西岡先生からも大渕先生からも話があったとおり、看護婦労働条件等もよく考えてやらなければいかぬ。それには、いつまでも国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えていくという厚生省の大きな政策目標がありますわな。この大きな政策目標もそろそろ変えたらどうかというのが次第に国民の声になりつつあるんだ。  先ほどその点で、ゆとりのある、あるいはアメニティーを考え医療をやるということをおっしゃっておられるけれども、私の調べたところでは刑務所の面積は五・四平米、これは一人部屋です。それから病院の二人部屋で四・三平米。刑務所よりは病院の面積が少なくてもいいというような、これはおかしいことで、これもまたいろいろ僕はきのう役人さんにちょっと調べてくれと言ってありますけれども、そういうようなことで、ゆとりのあるクォリティー・オブ・ライフを目標にするには、私は国民医療費の伸びをいつまでも国民所得の伸びの中に抑えていくということはいかがなものかと思う。  それで、厚生省はいつも医療費は一兆円伸びるんだ、それからあと十年たったら幾らになるんだ、二十年たったら幾らになるんだと言うけれども、そのときはもう、今まで厚生省の長期推測、売上税のときに出された統計の中に出ているんです。国民所得の伸びが四・〇の場合に九・三%で伸びるし、それから五・五のときに七・八%という、八%以上の伸びになるんだから。一兆円伸びるけれども国民所得も伸びているわけだから。  だから私が申し上げたいことは、国民医療費を絶対額ではいかないで、国民所得に応じていつまでも抑えないで、そういうふうに考えたらどうだろうかということです。そのことは私だけが言っておるんじゃなくて、九〇年代に国民所得の伸びを上回って増加することは間違いないということを大蔵省も言っておる、それは中長期的に見た場合に。それからさらに国民医療費を中長期的にいつまでも抑えておくことは可能ではないと大蔵の権威のある役人さんが言っておる。名前を言うと差し支えがあるから私言いませんが。さらにまた同じように、臨調の某委員もこういうことを言っている。日本経済が安定的に成長していく限りはと、これは条件がつきますね、日本経済が安定的に成長していく限りは、医療費の抑制が優先するのは適切ではないと。彼も同じようなことを言っておるんですよね。  だから私は、これから先の二十一世紀の高齢化社会を迎えて、いつまでも国民所得の伸びの中に国民医療費を抑えるという硬直的な考え方を堅持していくと、看護婦問題に対して手当てができないようにいろんな問題が出てくるので、どうでしょうかということです。
  145. 黒木武弘

    説明員黒木武弘君) これから人口の高齢化あるいは医療高度化は避けられないわけでございまして、それに伴いまして医療費の増大も避けられないわけでございます。私どもは、国民の医療費の負担が過大なものとならないようにするためには、どうしても国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内にとどめるという政策目標は当面維持していくことが必要であると考えておるわけでございます。そのためにもさらに一層良質で効率的な医療ができますようなシステムを志し、日日、行政運用を心がけなきゃいけないと思っているわけでございます。  この政策目標でございますけれども、一方では、御指摘のように高齢化医療費の増から、国民所得の伸びの範囲では無理ではないかという御意見もあります。しかし片一方では、それだからこそ何らかの歯どめ、政策目標が要るのではないかという御意見もあるわけでございます。結局は、国民の医療を受益と負担の中でどう考えるかという国民の将来の選択の問題になってくるかと思いますけれども、国民の皆様方の意見をよく拝聴しつつ、この問題に取り組んでまいらせていただきたいと思うわけでございます。
  146. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 最後になりましたけれども、厚生大臣、私と保険局長とのやりとりをそばでお聞きになって、今後の高齢化社会に向けての厚生省のあり方として、社会保険診療報酬、それから国民医療費のこの二点から考えて、どういう御感想をお持ちになったか、拝聴できれば幸いだと思います。
  147. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 専門家の大浜先生の御質問よりはむしろ御意見を主として拝聴させていただいた次第でございますが、国民に良質な医療を効率的に供給していく上で診療報酬を適切なものとすることは極めて重要な課題である、このように認識いたしております。  先般、診療報酬に関する多岐にわたる基本的な諸問題についての幅広い観点からの検討という趣旨から、御承知のように、中医協に診療報酬基本問題小委員会が設置されたところでありまして、厚生省といたしましても、同小委員会の御議論を見守りつつ今後の問題について真剣に取り組んでいきたい、このように考えております。
  148. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 ありがとうございました。
  149. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 けさから当委員会におきまして看護婦問題がしばしば登場いたしましたけれども、私も、与えられた時間を看護婦の問題に絞って質問をさせていただきたいと存じます。  初めに、地域医療計画と看護婦の問題でございます。  昭和六十年に医療法が改正され、都道府県地域医療計画策定が義務づけられました。そして、平成元年の三月にはすべての都道府県におきまして医療計画が策定されました。しかし、この間におきまして、医療計画公示前にいわゆる駆け込み増床という現象が起きまして、その結果、既に病床過剰地域にますます病床をふやし、そしてさらに看護婦不足をという非常に大きな問題を起こしたわけでございます。伺いますと、厚生省におきましても、この駆け込み増床を抑えるべく通知を出したり、いろいろやっていらっしゃったようでございますけれども、ほとんどその効果はなかったのではないかというふうに思います。  増床計画を許可するときには、当然のことながら看護婦配置計画等をチェックいたしまして、そして許可を与えているというふうに思いますが、なぜこのような看護婦不足が生じてしまったのでしょうか。今回起きた駆け込み増床という現象を厚生省は一体どういうふうに評価していらっしゃるのか、その辺からお伺いしたいと思います。
  150. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) お答えいたします。  先生お話しございましたように、各都道府県におきます医療計画の公示直前に、病床規制を回避する目的で病院の開設なり増床等を申請する、いわゆる駆け込み増床、駆け込み申請は、医療法の改正の目的でございました医療機関の適正配置及び無秩序な病床増のコントロールを図る医療計画の趣旨に反するものでございます。このため、厚生省としても重ねて指導を行ってきたところでございますが、結果的には駆け込みと見られる病床増があったことはまことに遺憾であるというぐあいに思っておるところでございます。  なお、現在、各都道府県医療計画が策定された以降におきましては、過剰医療県におきましては病床の伸びがマイナスに転ずる等、医療計画の効果が上がってきているというぐあいに考えているところでございます。
  151. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 過剰県において少し抑えられてきたということでございますが、しかし最近になりまして、駆け込み増床で権利だけは確保したもののまだ開設にも至っていないというようなことが新聞で報道されましたが、一体これはどういうことなんでしょうか。この実態と、それから今後厚生省はどうするのかということをちょっとお伺いしたいと思います。
  152. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 医療計画の公示前に病院の開設許可を受けながら建築に着工していない病院につきましては、平成三年六月一日現在におきまして十三病院という状況にございます。これらの病院取り扱いにつきましては、現在までの状況等につきまして都道府県からそれぞれ説明を聞くことといたしておるところでございます。この結果を踏まえまして、厳正に対処するよう指導してまいりたいというぐあいに思っているところでございます。
  153. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ところで、先ほど西岡先生からも御指摘があったわけでございますが、医療監視の結果によりますと、約二五%の病院におきまして医療法に基づく看護婦の標準数の確保がなされていないという最近の結果でございます。  今、看護婦不足というものが全国的に叫ばれておりますけれども、看護婦不足と言っているのはこの二五%の医療法基準を守られぬような病院が言っているのか。そうでなくて、例えば週休二日制の問題でありますとか、あるいは二・八体制がとれないとか、あるいは高い類の基準看護をとりたいとか、ある程度看護婦のいるところでさらに看護婦を多くしたいというような、むしろそういうところから看護婦不足が叫ばれているのではないか、そういうふうに私は思えてならないわけなんです。そういたしますと、このまま看護婦を多くいたしましても、結局、多くなるところは多くなる、しかし多くならないところ、つまり医療法基準も満たさないところは相変わらず満たさないままで過ぎてしまうのではないかということを私は大変心配するわけでございます。  先ほどの西岡先生と役所の応答を拝見いたしましても、そういうところに対しては指導監督を厳しくするとか、あるいは診療報酬の点でペナルティーを科すとかというような非常に厳しいことが言われましたけれども、私はそういうことではなくて、とにかく国民皆保険という非常に誇るべき日本の医療制度の中で、実は二五%の病院がまだ四対一というような基準さえ守れないような実態にあるんだというようなことを考えますと、恐らく、医者はどこにでもいると思いますが、そういう小さな病院、まあ小さな病院かどうかわかりませんが、四分の一の病院につきましては少なくとも最低の看護サービスというものは受けられていないのじゃないだろうかというふうに思うわけでございます。恐らくそういうところですと、看護婦がいない。だれが看護をしているのだろうか。家族かもしれないし、あるいは付き添いかもしれないというようなことで、看護のレベルというものが日本ではまだ決して十分ではないというふうに思えてならないわけでございます。  これから在宅ケアをどんどん進めていこうというような方針も出されているわけでございますけれども、そういったときに、やはり地域医療機関がすべてそういうことに参加しなければ絶対在宅ケアなんて進んでいかないんじゃないかというふうに思っておりますものですから、ぜひ、医療法基準を守れないところに何とか看護婦が来るような、看護婦確保できるような施策がとれないであろうか、それに対して厚生省が一体どういうふうに今施策を進めていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。
  154. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) お話しございました、病院におきます看護職員の標準数を満たしていない病院につきましては、医療監視等によりまして標準数を充足するように指導徹底いたしているわけでございます。現在、対象病院にそういう形で指導をいたしているわけでございますが、やはり総体的には看護職員看護婦さんの数をふやすことが一番基本的な問題であろうというぐあいに思っているところでございまして、そういう面で従来からも心がけてまいっておるわけでございます。  特に、今年度からはいわゆる看護婦さんの養成数の増加、あるいは現在就業していらっしゃる方方がやめないような対策、あるいは資格を持っていながらおうちにいらっしゃる方々について、もう一回働いてもらうような対策、それから看護に対します国民の意識の啓発というような事業もことし行っているわけでございますが、そういうふうないろんな対策を講じまして、看護婦看護職員の絶対数の増加を図ってまいりたいというぐあいに思っているわけでございます。  また、一方におきましては、看護婦さんの絶対数の確保とあわせまして、看護婦さんが働きやすいような勤務条件、あるいはそういう環境、看護婦さんが意識を持って、生きがいを持って働けるような職場環境といいますものをつくることも必要であろうというぐあいに思うわけでございます。  いろいろ、診療報酬の問題等もあるわけでございますが、これからの国民の医療を守る面からどうしても必要な看護婦さんの確保、それから看護婦さんが生きがいを持って働けるような環境づくりといいますものにつきまして、私ども今後とも努力してまいりたいというぐあいに思っているところでございます。
  155. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 繰り返しになりますけれども、もう慢性的に集まらないところに、やはりなぜ看護婦が来ないのか、看護婦がいないから仕方がないというだけではなくて、なぜ来ないのか、どういう引きつけ策があるのか、あるいは厚生省医療監視だとか経営管理などをいろいろ指導していらっしゃるようでございますけれども、そういった非常に集まりにくいところの看護婦の処遇です とか労働条件ですとかあるいは経営の実態など、やはりもうちょっと把握して、具体的な施策をぜひ進めていただきたいなというふうに思っているところでございます。  次に、医療計画は、策定いたしましてから五年ごとに見直しをするということになっているわけでございまして、来年あたりから見直しに着手する県が出てくるというふうに伺っております。  そこで厚生大臣、昨日医療審議会に、医療計画策定に必要な基準見直しについて諮問をされて、即日答申を受けたというふうに伺っております。今度の見直しの中ではどういうところが見直しの要点であるのか、その辺についてぜひ教えていただきたいと思います。
  156. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) ただいま清水委員からお話がございましたように、昨日答申をいただいたわけでございます。  今回の医療計画見直しは、全国の病床数が欧米諸国と比べまして遜色ない水準にあり、一方、地方ブロック間におきましては病床の偏在が著しい現状にかんがみまして、全国の必要病床数を余りふやさないで、また地方ブロック間格差の縮小を図る方向で行おうとするものでございます。  厚生省といたしましては、今後とも医療計画の積極的推進に努め、地域における適正な医療供給体制の実現を図っていく所存でございます。
  157. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 そういたしますと、見直しをしない前の計画でいきますとやはり病床は伸びていっちゃうわけですが、今度の見直しによってそれほど伸びなくなってくるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  158. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 全体としてはそう大きな変化は出ないということでありますが、ねらいは主として地域間格差の是正ということでございます。それはまた同時に、その前提となる病院実態調査いたしまして、それによって新しい計数を出しまして、その計数によってより具体的に実態に即した形での病床の配分計画を立て直す、こういうことでございます。
  159. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 この見直しによって地域間の格差がなくなるというお話でございますけれども、既に過剰な病床を持っているところがたくさんあるわけでございまして、そういうところも今後の計画の中でどういうふうに違った形で変わっていくのかということをやはり考えていかなきゃいけない。そういう誘導策もぜひお考えいただきたいというふうに思っております。  それからさらに、地域医療計画の中で医療の供給体制だけはある程度方針が決まりましても、やっぱり一番困るのはマンパワーでございます。特に医師とか歯科医師はある程度教育も十分で、余ってきているというふうに伺っておりますが、看護婦につきましては、御承知のとおり大変な状況でございます。看護婦の場合を考えてみますと、約千五百校くらい学校はあるわけでございまして、入学定員も七万二千くらいある。しかしその養成計画というものが地域の計画に根差しているものではなくて、各それぞれの医療機関が、自分の医療機関職員をつくるためにどうしたらいいかという苦肉の策で養成をしているというのが実態でございます。そこで、非常に規模が小さいものが多うございます。そして病院附属のものが多うございまして、実際に運営をするのに非常に困難を来している。そして、医療費を相当つぎ込んで今運営しているという実態でございます。  そういうことを考えますと、やはり地域医療計画、この中で任意的な記載事項も各県出そろいつつあるというふうに伺っておりますが、恐らくその中の一項にマンパワー確保ということが出ていると思うんです。そのマンパワー確保を具体的にやっぱり進めていただきたい。昨日の医療審議会からの答申の中にも、看護職員の養成確保の問題について一層施策の充実を図るようにというようなことが一点つけ加えられたというふうに伺っておりますが、やはりこの地域医療計画の中で看護婦の数、あるいは質、あるいは運営のあり方、公的助成のあり方といったことを含めてぜひ再編成していただきたいと、これはお願いをしておきたいというふうに思っております。  医療計画の中で、看護婦の計画を一緒にもっとリンクさせて見直していただきたいということに対しましていかがでございましょうか。
  160. 長谷川慧重

    説明員長谷川慧重君) 先生のお言葉の中にもございましたけれども、医療計画の中の任意的記載事項ということの中に各医療従事者の職種別の確保目標を設定するほか、卒後の研修体制についても検討するということを私ども各都道府県指示いたしているところでございます。そういう面でまだ必ずしも十分な計画はできているわけじゃございませんけれども、この趣旨を踏まえまして各県とも連絡をとりながら、申し上げましたように、卒後の研修体制について十分協議して進めてまいりたいというぐあいに思っているところでございます。
  161. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 次に、国立病院と療養所の附属看護学校につきまして少し御質問させていただきたいと存じます。  国民の医療看護サービスを維持し充実させるために国が果たす役割は非常に大きいというふうに思います。特に、そういう行政の責任を有しております厚生省みずからが持っている病院あるいは看護学校、これに対します国民の期待というものは非常に大きいというふうに思うんですが、看護婦の養成について考えますと、国立病院・療養所の看護学校というのは、戦後、保健婦助産婦看護婦法というものがつくられたときに、その法律に基づいて初めてできたのが国立の看護学校でございました。二十二年に七校、そしてかなり優秀な人がそこに集まり、そして全国の例えば看護部長でありますとか教員でありますとか、そういった指導者層に散らばりまして、看護界を大変、何といいましょうか、リードしてきた、そういう輝かしい歴史を持っております。ところが、今日見てみますと、輝かしい歴史はありましても、今見ますと本当に、もう時代にちょっとマッチしなくなっているんじゃないかという問題がたくさんございます。  そこで、幾つかの問題を絞りまして御質問をさせていただきたいと存じます。  まず、国立の厚生省看護学校というのは、国立病院・療養所の附属、組織上そういうふうな形になっております。そこで、国立病院特別会計の中で運営されているという仕組みになっているわけでございまして、この決算書を私もよく見せていただきましたけれども、実際にはその目的というのは、別に国立病院・療養所のための看護婦養成であるとは書いてないですね。やはり、国の看護婦養成計画の一環として運営するんだというふうに書いてある。  ですから、そういう意味では一般会計を看護教育に繰り入れるということができているはずだと思うんですが、決算書の中では看護学校への一般会計からの繰り入れというのは一銭も書いていなくて、つまり病院の中に一般会計からの繰り入れがある、そしてそれが看護学校の運営に使われる。つまり姿だけ見ますと、病院の運営の中で看護教育が行われているというふうに見ざるを得ないわけですけれども、これにつきましてはどんなふうに厚生省考えておられるんでしょうか。
  162. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今清水委員から、大変深い学識と豊富な御経験からいろいろ御指摘をいただいております。御心配もいろいろかけておりましてありがたく思っておるわけでございます。  今御指摘のように、特別会計におきまして国立病院あるいは療養所の附属の看護婦養成所を経営いたしておるわけでございます。ちょっと参考までに、その運営費等につきまして、あるいは運営の中で一般会計をどのように繰り入れているかを先に御説明したいと思うのでございますが、附属看護学校は百二十一校ございまして、その平成三年度の予算額は六十八億五千三百万でございます。そして、その中で、内訳でございますけれども、歳入予算額につきまして検定料とか授業料あるいは給食費というような生徒負担額でございますが、これが二十九億百万円、これが全体の予算の中の四二・三%でございます。今先生の御指摘の一般会計繰り入れでございますが、三十九億五千二百万、全体の予算額の中の五七・七%でございます。  それから、今先生、附属という名前がついておるのではないかということでございますが、この設立は、先ほど先生の御指摘のような時期からあるわけでございますが、当初から国立病院・療養所の自前の看護婦を養成することと、それからまた能力に応じまして他の医療機関、そういうところにも看護婦を養成して供給するということも担いましてやってまいったわけでございます。それなりに役割を果たしておると思いますが、最近の事例でございますと、大体卒業いたしまして国立病院あるいは療養所に就職しますのが約四〇%、他の医療機関に行きますのが四四、五%でございましょうか、それから進学するのが一五%ぐらいの割合になっております。
  163. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今の局長のお話の中で、学生からの経費、検定料でありますとか授業料でありますとか給食費でありますとかという御説明がございましたけれども、実は、これ調べてみますと、看護婦養成の収入の中に占める給食費の割合というのが非常に大きいわけですね。そして、決算書の中で看護婦養成に使われている経費を私がざっと計算してみますと、一カ所当たりにすると約五千五百万くらいでしょうか。しかしこの中で約二七%が生徒食糧費、食費に充てられているということでございます。これは、生徒が食べる御飯というのが教育費の中に入れられているということ自身がちょっとおかしいんじゃないかというふうに私思っているわけでございます。結局、その分を学生から取って、それを食べさせて使っているということでございますから、相殺して、五千五百万の教育費の中の二七%が消えてしまうというようなことで、実は教育には本当にたくさんのお金は使われていないというようなことでございます。ですから、一般会計から繰り入れていると言いながら、相当やはり病院だとか療養所の皆様方もその会計からいろんな形で、陰に陽に養成機関に使われている経費というのは多いんじゃないかなというふうに思います。  ところで、食費の問題なんですけれども、ちょっとまだこだわるんですが、今経費が一日七百三十円というととでございます。そして伺いますと、人件費だとか光熱水質というのが大体四〇%くらいはかかるんだそうでございまして、これを差っ引いてしまうと本当にわずかな食費でございます。今患者さんの給食費というのを見ますと、一日百三十七点、基準給食をとっていれば四十七点ということで百八十四点あります。ところが、寝ている患者さんよりももっと元気な育ち盛りの若い人たちが、この七百三十円の恐らくこのうちの六割ぐらいで三食食べているわけでございますから、その実態たるや実に惨たんたるものがあるそうでございまして、先生方も、とてもこれではやっていけるような状態ではないと、大変心配をしておられます。  それで思いますのは、かつては食費も全部ただで食べさせていた時代がございますね。途中から取り出したということでございますけれども、こういった姿をいつまでも続けていかなきゃいけないのかということが大きな問題じゃないか。また、少し面倒を見過ぎるのじゃないかという気もするわけなんですね。伺いますと、OTとかPTの学生さんたちはもうこれをやっていないそうで、自分たちで食べている。食べられるようにしておけばいいわけですよね。特に看護学生なんかですと、看護婦になりますと患者さんに食事指導だとかいろいろやりますが、こんな状態で給食をいただいていたのでは自分で何もできない。そして人のお世話なんかとてもできないような学生が出てきてしまう可能性もあるわけでございまして、この給食制度をこんな形でするのであれば、ちょっと、もう見直しいただいてもいいんじゃないだろうかなというふうに思うわけでございます。  あわせて授業料のことも申し上げたいと思うんですけれども、今看護学校の月謝が四千四十円でございます。准看がこの半分ということでございます。公立高校の授業料が、多くのところが今七千四百円、安いところは七千二百円ということでございます。それで、民間の看護学校が言うんですね、やっぱり適正な受益者負担ということはあってしかるべきだと。看護婦というライセンスをもらうのに必要な経費はやっぱり自分で負担すべきだと。しかし上げようと思うと、国があの安さではとてもじゃないけれども民間では高く取れないというようなことを言う人もおります。  私は、別に高く取れと言っているわけではないのですけれども、やっぱり適正な受益者負担はすべきじゃないだろうか。高校よりも安い。高校を卒業した人たちが入ってくる学校でこういうようなことがなぜなんだろうか。それだけ授業料が取れないような学校なんだろうかというようなことも考えてしまうわけでございますが、ぜひ、国立も随分立派な学校もできてまいりましたし、ちゃんと授業料を取って、そのかわりもうちょっと教育条件を整えていただきたいというふうに私は思うわけでございます。  ただ、そうは言いましても、経済的に困る、安いから看護学校に来るという人もいないことはないわけでございまして、そういう人たちのためにはやはり別に奨学金制度、今は何年か勤めればもう返さなくていいですよという奨学金制度だけでございますけれども、入学前に利用できるような奨学金制度といったようなものもやはりあわせて検討すべきではないかというふうに思うわけでございます。  この辺ぜひ、伝統的に続けてきたことではございますが、もうそろそろ見直してもいいのじゃないかということに対しまして、いかがでございましょうか。
  164. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今の先生の御質問、四点あるようでございます。  最初の、給食費に一般会計を繰り入れているんじゃないかというお話でございますが、これにつきましては、生徒から徴収しております額とそれから給食費として支払っております額が同一でございまして、二十億二千二百万ということでございます。したがいまして、一般会計からこれに繰り入れているということにはなっていないわけでございます。  それから、今先生指摘の七百三十円というお話が出ましたが、これは、人件費が入っておりませんで材料費のみということで御理解をいただきたいというふうに思います。  それから、給食の件につきまして、先生の方からいろいろ、非常に多様化しております、あるいは高度化しておりますこういう社会におきまして、画一的にやるのはいかがかというようなお話がございました。給食につきまして私どもいろいろ調査もしたりしておるわけでございますが、やはり一応学生給食というようなことを希望しておる生徒もございます。したがいまして、一遍にそれをやめてしまうというわけにもまいりませんで、この辺はひとついろいろと調査をしながら、学生の希望も入れながらやっていきたいと思います。ただ、今実情をちょっと調査しましたところによりますと、寄宿舎におる者につきましては原則徴収いたしておりますけれども、食べなかった場合には返還するとか、あるいは外から通っている生徒につきましては原則取っておりませんで、自由に食べておるというようなことでございます。  それから、いろいろと研修制度等も含めまして看護婦の質を高めていくということは私ども重要なことと考えておりまして、いろんな形で対応してまいりたいと考えております。
  165. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 時間もなくなりましたけれども、一つ、ぜひお願いしたいのは教員の問題でございます。  先日も看護学校の校長さんの会に行きました。そうしましたら、病院長ばかりなんですね。つまり、病院の附属であるのが当然だというようなことで、そういう先生方がたくさん集まってきて、看護学校が足りないとか先生が足りないとかというようなことを言っておられました。医学教育ですと医学教育の附属病院があります。しかし、看護学校ですと病院附属の看護学校と、附属のつくところがどうも違うわけでございまして、そういう形で、どうも何かきちんとした養成がされていなかったことが非常に大きな問題ではないかというふうに思っております。  特に教員でございますけれども、そういうふうに校長さんも兼任である、副校長さんも兼任である。だれがやっているかというと、看護教員でございますが、これも一つの学校に、三年のコースでございますと四人いればいいというふうになっているわけでございまして、実際にはもうほかの学校は四人ではとてもできないものですからどんどん多くなっているんですが、国立だけは相変わらず四人。定員が非常に厳しいのはわかりますので、四人しかいないというようなことで大変苦労しております。ですから外来講師をお願いしなきゃいけない。一つの学校ではもう八十人も外来講師がいる。その中で医師の講師が五十人もいる。なぜかといったら、今医学界はどんどん細分化されていますから、それぞれ専門家がみんなちょこちょこと教えるというふうなことで、本当にカリキュラムがどんどん寸断されてきている。それもそういう細分化されている医療に対応しているということもあるのかもしれませんけれども、実は看護教育ではそんなに細かいことは必要ない。  もう一つは、やっぱり院内の先生方に教えていただくと講師料は払わないということになっているわけですね。そういうことも非常に大きな原因ではないだろうかというふうに思いますので、払うべきものは払う、そのかわり整備はちゃんとするというふうな形に、やっぱりこの辺に根っこがあるんじゃないだろうかというふうに思っております。  それから、教員の質の問題でもございますけれども、厚生省の学校で一生懸命やっている方々が、例えば文部省の短大とか大学ができますときに引っ張られてしまっていなくなってしまうという実態がございます。そういうわけで、ぜひ厚生省におきましても教員の育成、大学や短大の先生にも十分なれるような先生にぜひ資質をそろえていただきたいというふうに思うわけでございます。  時間もなくなりましたが、こうやってずっと、今の厚生省の持っている学校の問題につきましていろいろ申し上げましたけれども、大臣、どうでございましょうか、この厚生省が持っている教育をやっぱり日本の看護教育のモデルにするべきだというふうに思いますが、これからのあり方ですね、文部省はどんどん短大にし大学にするという方向を出して具体的に動かしておりますけれども、厚生省ではどういうふうに持っていかれるのか。その辺について最後にお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  166. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 実態に即して、極めて各部門部門の大事な点を御指摘くださいまして、大変に参考になったと思います。  国立病院・療養所は、医療施設全体に占める比率で見た場合に、元年度では病床数で五・三%、施設数で二・五%である中で、国立病院・療養所の附属看護学校の看護婦の養成につきましては大変重要な部門を占めておりまして、看護婦三年課程では全国の総定数の一八・三%を占めるに至っておりますし、これまでも養成に力を入れてまいったところでございます。  今後は、教育内容の充実を図るために、附属看護学校の総合・大型化を進めるなど、学生定数の増を図るとともに、ただいまも御指摘がありました教員の増あるいは教室、体育館等の教育施設の整備、あるいはその他御指摘の点等につきまして十分配慮をしながら教育の充実に努めてまいりたい、このように考えております。
  167. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  168. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょうは質問通告はしておりませんでしたけれども、雲仙の問題については午後から各委員先生方から、大変残念なことが起きたということでお話がありました。政府としても、本日本部をつくられてやっていらっしゃるということでございます。万が一にも再びこのようなことはないと思いますけれども、そういうことがもし起きた場合の態勢というのは、これは医療機関の問題にもかかわりますし、厚生大臣、ぜひそういう面でも心がけて、今回の問題を教訓としていただいて、ぜひともそういう態勢だけはきちんと常に対応できるようにとっていただきたいということをまず御要望をしておきます。  きょうは、難病の問題を少しお伺いしたいと思いまして質問をつくりました。特にきょう取り上げさしていただく病気は、色素性乾皮症という病気でございます。  この病気は、私たち一般の人間にとっては一番の恵みでもあります太陽の光を受けると発症する、皮膚がんになるという病気でございます。関係者からお話をお聞きもしましたし、また先日この問題でテレビ局が取り上げておりまして、アメリカに住んでいらっしゃるこの色素性乾皮症の子供たちの放送を二回ぐらいやっておりました。そのビデオも見させていただきました。  それを見たときに本当に感じたんですけれども、結局、太陽の光、紫外線が当たると皮膚がんになるわけですから、子供たちはどうしているかというと、昼間は家の中にずっといるんですよ。その家には紫外線が入らないようにフィルムが全部張ってあるわけですよ。そういう中で子供が生活している。子供が一番喜々とする時間はいつかというと、日が暮れて太陽が沈んでしまうと喜んで外に飛び出して遊ぶ、そんな姿を見て何か涙ぐましいような思いにもなりました。  また、この問題では、子供たちが外へ出る機会というのはどういうときにあるかというと、結局、治療を受けに行くときなんですよね。これだけは自宅で受けられない、専門機関に行かなくちゃいけないということで、そのときはどうするかというと車で移動するしかない、日を浴びられませんから。どうするかというと、深い帽子をかぶる。何か遮へい服みたいな服を着込んで、しかもクリームを体に塗りつけて、つばのある帽子をかぶって、サングラスも特殊なサングラスで、物すごいサングラスをかけていく。それでも光に当てたくないということでどうするかというと、ドアをあける瞬間、親が緊張して構えているわけです。子供を車に運ぶまでのわずかな何分間、この間を少しでも短くしたいということで、親が家の玄関をあけてから車までもう走り抜けるわけですよ。  その姿を見ておりまして、この病気というのは、現在原因は一応遺伝性の病気だとは言われておりますけれども、はっきりした発症のメカニズムはわかっておりません。最近は神経性の障害もさまざま起こすということが明らかになってまいりました。結局治療法のない中で、そういう子供たちが少しでも長い間生き抜こうということで必死に生き抜いている姿、また大変な中それを支えている家族の姿を見ていて何か本当に、ある意味じゃ感動もいたしました。  これはよその国だけの病気じゃなくて、実際我が国にも患者さんがいらっしゃいまして、今三百十例あるというお話ですけれども、大体千人ぐらいいるんじゃないかというふうなことも言われております。  患者さんに聞いたとき、これが難病指定になっていないんですよ、どうにかしてくださいという話もお伺いして、厚生省の方にも来ていただきまして、どうなっているのか聞きました。そうしましたら、小児慢性特定疾患治療研究事業の一つであって、一応公費負担で医療費が免除されているという話を聞いたわけです。それで私はそのことを、難病じゃないとおっしゃいましたけれども、厚生省に聞いたら難病と言っていましたよ、こういう事業の対象になっているんですよという話をしましたら、いや違うんだ、これはいわゆる特定疾患治療研究の対象になっていないんです、だから難病じゃないんです、どうにかしてくださいと、また言われました。まあ説明を聞いても混乱するところもございました。  一体今この病気がどういう取り扱いを受けているのかというのをまず御説明いただきたいと思います。
  169. 土井豊

    説明員(土井豊君) ただいまお話がありました色素性乾皮症という病気でございますけれども、大変お気の毒な病気であると私どもも思っております。  現在の私どもの対応といたしましては、小児慢性特定疾患治療研究事業というのがございますが、その対象として取り上げております。したがいまして、十八歳末満の児童につきましては、医療費の自己負担部分を公費で負担をするというような仕組みで、医療費の負担を軽減するという形で対応しているところでございます。
  170. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう少し小児慢性特定疾患の話をしていただくかと思ったけれども、えらい簡単にやられましたから……  小児慢性特定疾患というのはどういうときに指定されるかという問題が一つあると思うんです。確かに子供に多いという問題、しかもそれは家庭にとって非常に負担になるというような観点から、そういう事業の対象として取り上げているということだと思うんです。だから、子供の時期に発症するというようなことが重要な要件の一つになってくると思います。ただ、私が言いたかったのは、小児慢性特定疾患というのは、今おっしゃったみたいに十八歳で打ち切られます。そこで終わりです。じゃ、それで本当に終わるのかというのが一番問題だと思ったんです。  先日、この色素性乾皮症の臨床部門で、日本でというより世界の権威と言われる東京女子医大の佐藤吉昭教授からもお話を聞いてまいりました。確かにおっしゃるように、色素性乾皮症というのは、まず子供が生まれて、初めて日光に当たったときすぐがんになってしまう。生まれた途端にそういうことがあるというのでわかるケースがある。大体発症は、十歳前後までに光を浴びるときにそういう症状が出てくるというのでわかるようになるそうです。  ただ、この色素性乾皮症という病気も、長い間に研究が進みまして、どういう状態になっているかといいますと、治療方法はないんですけれども、どうにかひどくならない方向でいろんなことができるようになってきた。研究も進んできた。そんな中でどういうことがわかってきたかというと、実際大人でも発症するということがわかってきたわけですよ。  先日、佐藤教授に御無理を言いまして、三百十例臨床をやられた、現在いらっしゃるその三百十例の年齢が一体どんなふうな区分になっているんですかということをわざわざ調べていただきました。そうしますと、今三百十人いらっしゃる中で、百九十七人、実に六四%の人たちがもう二十一歳以上、そういう年齢に至っているということがわかりました。これ、全然実態と合っていないということを私は指摘したいんです。当初そういうふうな形で指定したとしても、その後研究の中で随分変わってきている。  そうすると、一体これはどうなるのかというと、十八歳で打ち切ってしまって、その後この人たちは、十八歳になると、突然ある日それまでは無料だったやつが公費負担が打ち切られて結局支払わなくちゃいけなくなるわけです。しかも、親たちにとってどっちが問題かというと、子供が大きくなればなるほど寝たきりになっちゃうわけですから。そうなると、ある意味じゃ支える側の苦労も多くなります。親が高齢化します。その方が負担が大変になると私は思うんですけれども、こうした問題にどういう御認識を持っていらっしゃるか、お伺いしておきたいと思います。
  171. 土井豊

    説明員(土井豊君) ただいまお話がございましたとおり、最近の実態では、年齢が高くなっているということは私どもも承知をしております。ただ、小児慢性特定疾患治療研究事業というものは、基本的には児童福祉施策の一環としてこういう事業を実施しておりまして、児童の健全育成を図るという趣旨からの事業でございますので、私どもの対象年齢といたしましては原則として十八歳、一部のものについては二十歳というものもございますけれども、そのような形で実務上処理をするというルールで臨んでいるところでございます。  確かに成人について本事業の対象となっていない点についていろんな御意見があろうということはわかりますけれども、なかなか事業の性格上、そこまでは手が伸ばせないというのが実情になっているところでございます。
  172. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、じゃ、この小児慢性疾患は、最初はそうやって指定していた、それがある一定程度いったら特定疾患へというふうに移行したケースというのは全然ないわけですかね。実例があれば教えていただきたいし、どういう手続でそれができるのかということを教えていただきたいんですけれども。
  173. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今の先生の御質問でございますけれども、小児慢性特定疾患から私どもの所管しております特定疾患へ移行した症例というものがあるかどうか、こういう御質問と解釈いたしましてお答えを申し上げたいと思います。  小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となっておりました疾患のうちから、昭和五十年度でございますけれども、大動脈炎症候群及び結節性動脈周囲炎というものが、また昭和五十九年度にはウェゲナー肉芽腫症が、また昭和六十年度には突発性拡張型の心筋症が、それぞれ特定疾患対策懇談会の意見等をもとに特定疾患治療研究事業の対象疾患として指定されてまいったところでございます。このような疾病というものにつきましては、特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定される際には、重複を避けるために、対象年齢が原則として十八歳までとの制限のある小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患から外して対応しておるわけでございます。  それから、今先生の御指摘の特定疾患治療研究事業というものはどういう形で指定をしておるかということをもう少し御説明したいと存じます。  特定疾患治療研究事業は、原因が不明で治療方法が未確立ないわゆる難病のうちから、特定疾患調査研究事業によりまして診断基準が一応確立した疾患のうち重症度が高い等の要件を満たすものを特定疾患対策懇談会という専門家の懇談会の意見を聞きまして対象といたして決めるわけでございます。  色素性乾皮症は遺伝性の疾患ということでございまして、かつ特定疾患調査研究事業による診断基準がまだ確立していないということから、現時点では、これを治療研究事業の対象疾患とすることは困難ではないかと考えておるわけでございます。
  174. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほどおっしゃいました小児慢性特定疾患また特定疾患、これはいずれも一応難病対策要綱のもとで行われている事業というふうに理解してよろしいんでしょうか。ちょっと確認しておきたいんですけれども。
  175. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 先ほどもちょっと私が申し上げましたけれども、難病というもので、全体では中には入っておるわけでございます。
  176. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、ある意味じゃ小児慢性特定疾患というのも一応この難病対策の中に含まれた一つの事業だというふうにとらえていいわけですね。
  177. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今お答えしましたように、難病という範疇には入ってございます。特定疾患治療研究事業の中には入っていない、こういうことでございます。
  178. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、今は特定疾患を定める場合は、おっしゃいましたように調査研究というものがあって、それを受けた上で診断基準ができる、できた上で今度は特定疾患へと移行するような形をとっているわけですよね。ただ、先ほどの児童家庭局長ですか、局長の話を聞いていますと、小児慢性特定疾患というのは難病じゃなくて、治療が長期間にわたるから、そんな点から結局ある意味では児童を健全に育てるために援助しているんだ、別にそれを難病みたいな形でとらえていないというような言い方に聞こえてしまうんですよね。  ただ、私が言いたいのは、両方ともある意味じゃ難病という形で一つの枠の中でくくっている。そんな中で矛盾点が出てくる。現在のように例えば十八歳で打ち切られるというのはやっぱり私はおかしいと思うんですよね。同じ病気を持っていながら、それが病状の変化なり、ある意味じゃ研究の進む中で、結局高年者でも出てくるそういった場合はこれは対応するのが私は本来で、患者立場でいえばもうそれはおかしいと言わざるを得ないと思うんです。  この特定疾患というものを指定する場合ぜひ考えていただきたいのは、小児慢性特定疾患というのもこれは治療研究事業ということになっているわけですよね、事業の名目は。治療だけじゃないはずですよね、研究事業という名前をつけているはずですよ。研究されるならば小児慢性の研究をなさっている、その研究をなさっている中で問題点が明らかになれば、その中から逆に言えば特定疾患にこれは移行しなくちゃいけないんじゃないかという問題点を当然挙げられてしかるべきだと思うんです。小児慢性と特定疾患というこの制度ができてから、もう十九年たっているわけですから、その辺の問題をもうちょっと整理しなければいけない時期に来ているんじゃないかと私は思うんです。ある意味では小児から特定への橋渡しというようなことも考えなくちゃいけないと思うんですけれども、その点どんなふうにお考えになっているか、お聞きしたいと思います。
  179. 土井豊

    説明員(土井豊君) 小児慢性特定疾患治療研究事業という点の趣旨につきましては、先ほど大変説明が不十分で恐縮でございましたが、その治療が長期にわたること、医療費の負担が高額となり、これを放置することにより児童の健全な育成を阻害するというようなそういう疾患を対象として取り上げているわけでございまして、先ほど申しましたように、十八歳という年齢の制限を設けているというものでございます。  今先生指摘のような、これが年齢にかかわりなくということになりますれば、この小児慢性特定疾患治療研究事業からはなくなって、別途特定疾患治療研究事業の方で対応できるかどうかという御趣旨かと思いますけれども、先ほど保健医療局長がお答えしましたような考えから、現状ではそれが難しいのではないかというような状況と私どもも認識をしているところでございます。
  180. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 難しいのはよくわかっているんです。わかっていて聞いているわけです。  それならもう事業名を私は変えていただきたいと思いますね。治療研究事業とは言ってほしくないですね。公費負担だけが目的ならば、それだけにすればいいじゃないですか、治療事業だけに。研究事業とつけているからには、子供にそういう病気があっている、この病気は一体どういう問題が起きているんだ、その病気はどう変化しているんだ、それをきちんとやっていくのが治療研究事業じゃないんですか。それをやった上で——局が違うからといったって同じ厚生省の中でしょう。ある意味じゃやはりそんな形で大人にも随分及んでいるものがあるな、そんなケースがある場合は、その治療研究事業の中から、小児慢性からこういう問題がありますよという橋渡しをしてやる、指摘してやることぐらいは私は必要だと思うんですよ。  そういうことをやらなければ、非常に難病というのは人数が少ないわけです。今言ったみたいに患者さんはそう声も大きな声は上げませんよ。政治家も余りこれは票にならないからやらないという話もあったんですけれども、そんなことはないよと言ったんですけれどもね。そういう小さな声があるわけです。それを救ってあげることができるところはどこかといったら、今治療研究なさっている局でしょう。難しいのはわかります。だから、そういうこともぜひ研究の課題として取り上げていただけないかなということをお願いしているわけですけれども、その点どうですか。
  181. 土井豊

    説明員(土井豊君) 御指摘のとおり、これは治療研究事業でございますので、私どもも研究面等につきましては十分関係局と常時連絡をとり合いながら、今後、相互に連携の密を図っていきたいというふうに考えております。
  182. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほど簡単に、この色素性乾皮症は判断基準が決まっていないので指定は難しいと、私まだ質問していないのにお答えをいただきました。これからその話をしたかったんです。  確かに現在の、これは法律じゃないんですけれども、要綱に基づいてやっていく場合は、判定基準ができないと特定疾患にはならないことは事実でございます。ただ、病気というのは、研究が進んでいけばいろんな意味で新しいことがわかっていきます。例えば、色素性乾皮症の場合は、今まで難病と指定するのにどうしても難しい面がありました。それは何かというと、難病と指定するときはこれは原因不明というのが最初になくちゃいけないらしいんですよ。ところが、この病気の場合は、一応劣性遺伝、もっと詳しく言うと、DNAの欠損修復ができないというような話で、それが一応原因としてあるから、原因がわかっているからなかなか難しいんじゃないかという話も研究者の間ではあったそうでございます。  ただ、これも研究が進んでいく中でどういうことがわかってきたかというと、原因はそれだけじゃない。DNAの欠損によって起きるのは皮膚がんの問題だと。この病気もう一つ問題がありまして、年齢がだんだん上がっていくと精神障害が起こっていくことが現在わかるようになりました。これについては原因不明でもございます。そういった問題を含めていろんな要件に当たってくるのかどうかという変化が起きてくると思います。  そういった場合はこれからの特定疾患へ移行する際の研究を始めるなり、検討を開始するなり、そういうことが必要になってくると思うんですけれども、この点、どうお考えになっているか、ぜひ見解を伺っておきたいと思います。
  183. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 何度もお答えいたしておりますが、特定疾患調査研究事業につきましては、もう先生も御理解いただいておるものですからくどくは申し上げないのでございますけれども、今おっしゃっております色素性乾皮症につきましては、いろいろ治療方法等未確立のこともございます。したがいまして、私どもは今児童家庭局長もお答えしましたけれども、専門家の方々の御意見も伺ったりいろいろして、またどういうふうにこれに対応していったらいいかというようなことも私ども研究させていただきたい、こんなふうに考えております。
  184. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それじゃ、ちょっと運輸省にお聞きいたします。  先ほどお話ししたように、この色素性乾皮症の患者の方たちは、生きるために、移動するために最低限必要なのは車になるわけですよね。その車というのも、先ほどちょっとお話ししましたけれども、直接光が当たったら困るものですから、車の窓に皆さん紫外線をカットするためのフィルムを張っておられるわけです。ところが、先般でしたかね、道路運送車両の保安基準が変わりまして、こんなフィルムを張ることが禁止されました。それで患者の方たちはもう非常に慌てまして、どうやっていいのか、違法でもとにかく張ってしまっておこうかなと、もう張らないとしようがないわけですから、心苦しい思いのままでやっていらっしゃる。ただ、車検のときはこれどうしようもないわけですから外さざるを得なくなる。そういった問題で非常に悩んでいらっしゃいました。  運輸省の方に、こういう患者の方たちからお話があったことがあるのか、そのときどんな対応をされたのか、実例があれば教えてください。
  185. 樋口忠夫

    説明員(樋口忠夫君) お答え申し上げます。  自動車の窓ガラスに着色フィルムを貼付することにつきましては、御案内のとおり、交通安全に必要な視野を確保するという観点から規制を行っているところでございます。  先生指摘の、紫外線等により人体に重大な影響を受ける色素性乾皮症患者が使用する車両への紫外線遮へいフィルムの貼付の現状につきましては、前面ガラスについて申し上げますと、おおむね保安基準をクリアしているという状況でございますが、運転席あるいは助手席側の側面ガラスにつきましては、一部その保安基準をクリアできていない、こういう状況があるということは理解しております。そういったことで、こうした場合には個々の事例におきまして医師の診断書等による紫外線遮へいフィルムの貼付の必要性について確認をいたします。それが一つでございます。  さらに、貼付に伴う車両特性、運転視野の確保がなかなか難しくなってきますから、そういった車両特性を十分認識の上使用していただくという条件をつけまして、保安基準の緩和措置によって自動車ガラスへの着色フィルムの貼付を認めてきているところでございます。  たまたま先生の御質問にございます、患者さんからそういった要望はないのかという点でございますが、運輸本省にはここ一、二年の間にはそういった陳情等はございませんけれども、地方運輸局等におきましてそういった問題が提起されまして、それに基づいて基準緩和を行っている、こういう状況でございます。
  186. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今お話しいただいたように、運輸省にも来ていただいて話を聞きましたら、これは近畿地方運輸局でそういう実例が起きて対応されたということをお聞きしました。地方でそうやって対応していただいたというのは非常にありがたいことですけれども、患者さんにとってみれば地方運輸局というのはちょっと遠過ぎますね。全国で七カ所しかないわけですよね。
  187. 樋口忠夫

    説明員(樋口忠夫君) 九つです。
  188. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 九つですか、そこまで足を運ぶというのはちょっと私は無理だと思うし、ある意味では、行ったときにどう扱われるのかというのがわからないので不安感もある。そういう形で一回緩和したというケースがあるならば、そのことを陸運支局なり自動車検査登録事務所でも結構でございますけれども、そういうところに趣旨をぜひ徹底していただきたい。徹底しておけば、もし患者さんが心配になって行ったとしても、これは大丈夫ですよ、緩和措置になるんですよということがきちんとできると思うんです。そういう周知徹底。もう一つはその徹底を地方運輸局からもう一ランク下げていただけないかなと。それをぜひお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  189. 樋口忠夫

    説明員(樋口忠夫君) 先生指摘のとおり、基準緩和につきましては、一般的に申し上げまして、その車両ごとの審査の高度性でありますとか関係機関との調整の必要性等から、地方運輸局長権限ということでとらえてきておるわけでございますけれども、緩和申請者の事務的あるいは経済的負担の軽減、そういった観点からも、いろいろ考慮しなければいけないというのは御指摘のとおりであろうと思っております。そういった観点から、行政事務手続の簡素化等、そういった点も考慮いたしまして、陸運支局等を窓口とした申請手続が可能となるよう、順次その運用について、一般論でございますが、図ってきております。  したがいまして、先生指摘の色素性乾皮症患者の使用する車両に対する紫外線遮へいフィルムの貼付に係る基準緩和手続につきましても、本件に対する関係省庁の意向等も踏まえつつ、運用の弾力化につきまして検討してまいりたい、このように考えております。
  190. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、文部省にお伺いいたします。  この病気の家族にとりて一番の悩みは教育の問題なんです。何でかというと、学校は昼間あるわけですよね、しかし子供たちは昼間は日光に当たるわけにいかないというようなことで、小学校入学時が一番の悩みになってまいります。  文部省として、こうした子供が入学する場合どういう対応をなさっているのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  191. 鈴木宏

    説明員鈴木宏君) お答え申し上げます。  御案内のとおり、一般的に病気等によります障害のある子供たちにつきましては、その障害の種類あるいは程度等に応じまして、養護学校あるいは小中学校の特殊学級などにおきましてそれぞれ適切な教育を受けられるようにということで今努めてきているところでございますけれども、御指摘の色素性乾皮症の児童生徒が実際に入っておられるこれら学校におきましては、主治医あるいは家庭との連絡をとりながら必要な対策を講じるということで進めてきておりまして、例えば施設設備の面では、廊下あるいは教室、それからスクールバスを使います場合にはその窓ガラスに特殊フィルターを張ったりあるいはクーラーを設置する、さらには紫外線防止用の特殊な電灯を使用する、そういった工夫をされたり、また指導の面では、日常生活において紫外線を遮断するための生活習慣の指導を行ったり、あるいは他の子供たちに対して、乾皮症の子供に対する対応について理解をさせ、あるいは協力的な態度を育てるといったような指導をするということで各学校では対応しているところでございます。
  192. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 まさにそのとおりで、どっちかというと文部省より各学校それぞれ対応しているんですよ。  そのフィルムを貼ることになるとお金がかかりますから、どうするかというと、市町村教委で対応しているんですよ。もっと言わせていただくと、さっきお話しした佐藤先生という方が、要するに子供たちが学校へ行くときに親たちも困るわけだから、どうすればいいかというので、こういう「覚え書き帳」までつくっていただいている。そして「はじめに」ということで何を書いてあるかというと、「学校の先生方へのお願い」、これ、きょう持ってきましたけれども、こういう小冊子までつくって、これをまず学校に持っていきなさいと。学校の先生がこれを読めばわかるようにしてありますから、連絡帳になっていますから、それぞれその子供の状況を書けるようなこういうものを、これは一応文部省の研究事業でそのお金を使わせていただいてつくったとおっしゃっていましたから、文部省も非常に役に立っておるのは事実でございますけれども、ある意味じゃそういう個人の方に負担が行っているような気がしてならないわけです。  先ほどおっしゃいましたけれども、子供が入っていっても学校によって対応がまちまちなんです。一つは、市が財政的に余裕がありましたらどうするかというと、そして理解があったらどうなるかというと、教室の窓ガラスだけじゃなくて、廊下はもちろんです、体育館にも張ってくれるわけです。そういう学校に行った子供は体育の授業も体育館で受けられるわけですよ。しかし、そこまで余裕のない学校はどうするかというと、結局教室と廊下だけで精いっぱいという対応になる。  この子供の場合、精神障害が何歳の時点で出てくるかという問題が残るんですけれども、ある学校では、そういう子供を普通学級に入れるのは御勘弁願いたいというので特殊学級に入れちゃうとか、それぞれ学校によって対応がばらばらのように私は思いました、話を聞いても。  しかも、子供が教育を受けるという、ある意味では一番大前提の問題が、ある一人の先生の負担にかかっているというところが非常に僕は心配になりました。この先生が一生懸命やってくれる間はいいだろう、次の人にさっと引き継いでくれると思っていますけれども、私が言いたいのは、子供が教育を受ける権利というのはどんな人間にだってあるわけですよ。それなれば、例えばそういう子供が入ってきたときはきちんと文部省のどこに問い合わせればわかる、しかも例えばフィルムを張るぐらいのそういう補助というのはやっぱり当然文部省としても検討していただいて当たり前だと私は思います。それについての見解を聞かせてください。
  193. 鈴木宏

    説明員鈴木宏君) 一般論になりますけれども、この乾皮症の子供たちも含めまして、いろいろ難病を持った子供さんたちも数多く特殊教育諸学校あるいは特殊学級等において学んでいるわけでございますけれども、こういった場合につきましては、それぞれ就学奨励の面でありますとか施設の面でありますとか、特別の手当てができるような全体的な仕組みになっているわけでございます。さらにその中できめ細かにということになりますと、子供さん方の障害の状態実情、そういったものに応じて各設置者あるいは学校等においていろいろ工夫をしていただくということで今進めてきているわけでございます。  先生指摘のような点についてもいろいろ検討しなければならない部分があるかと思いますけれども、現時点におきましては、そういったことで国としては一応基本的な仕組みを整えて、個別具体の対応については各教育委員会あるいは学校等において十分な対応をしていただきたいというふうに考えておりまして、いろいろな機会にもそういったことで各教育委員会等に指導しているところでございます。
  194. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それでは、今後こういう子供さんが小学校へ上がる場合、特殊教育課に学校から問い合わせればいろんなことを教えていただけるし、指導もしていただけるし、ある意味では金銭的な面でもサゼスチョンをしていただくというふうに理解しておいていいですか。
  195. 鈴木宏

    説明員鈴木宏君) 御質問の趣旨をあるいは正確にとらえているかどうか、ちょっと自信はないんですけれども、特殊教育の仕組みについては私ども担当しておりますので、それぞれ御質問があった場合にはお答えするようにしております。ただ、質問の内容等によりましては、これは各教育委員会なりそういったところで適切に判断していただくものもあるかと思いますので、一概にすべてのことについて私ども十分にお答えできるかどうかわかりません。  ただ、基本的に、こういった病弱の子供たちが教育を受けるに当たりましていろいろ御疑問の点がございましたら、私どもはそれぞれにできる範囲で対応したいというふうに思っておる次第でございます。
  196. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひ対応をお願いしたいし、また、一つぜひ言っておきたいのは、こういう病弱な子供が来たからといって、それをすべて特殊学級に入れるとか、そういう考えになってほしくないわけです。それをやられると、結局その子供がそういった方向に進む可能性もあるし、逆に言えば普通の児童と触れ合うことも一つの大事な治療の観点にもなるわけです。その辺もよく認識だけはしておいていただきたいと思います。こういう話をするとすぐ、子供が上がってくる、相談する、特殊学級だと、そういうパターンだけにはぜひしていただきたくないということだけ要望して、文部省、運輸省の方、ありがとうございました。  また難病全体の問題に移りまして、何点かお聞きしておきたいと思います。  難病について、現在十七の地方団体が独自に、私が聞いた限りでは四十九難病を独自に指定している、これは国と別に。その施策内容もばらばらだというような話をお聞きしました。厚生省として、こうして地方自治体がやっている状況というのをどういうふうにして掌握されて、また、これをどんなふうに評価されているか等をお尋ねしたいと思います。
  197. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今先生から御指摘のありました、いわゆる難病というような疾患につきまして、都道府県でどのような形での対応をしているかということの御照会がございましたが、私ども厚生省といたしまして把握しております限りについて申し上げます。  現在、十五都道府県におきまして合計五十一疾患につきまして医療費の自己負担分につき公費負担を行う等の単独事業を行っておるやに聞いております。これらの事業につきましては、各都道府県のそれぞれの立場から難病対策の推進ということに努力されているもので、私どもは評価をいたしておるわけでございますが、こういう地方単独事業につきまして、対象疾忠について都道府県によりましていろんな基準を設けてやっておられるということで、一概に統一的な基準はないように聞いております。
  198. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 それについてどうですか。厚生省としては、地方自治体がそうやってやられることについては結構なことだし、その部分は頑張っていただきたいというような認識でとらえていらっしゃるんですかね。その辺をちょっと確認しておきたいんです。
  199. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 先ほど申し上げましたように、いろんな基準でやっておられまして、そのよしあしを評価する立場にございませんので、地方自治体が独自にいろいろのお考えでやっていらっしゃる、こういうふうに理解しておるわけでございます。  私どもも、そういう疾患の中で私どもが行っております特定疾患治療研究事業の対象疾患としてなじむようなものにつきましては、これはまた懇談会の御意見を聞いたりいたしまして、対象疾患としてまいりたい、このように考えております。
  200. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ぜひそういう連携を深めていただきたいんです。調査研究班のだけがすぐすとんと、それだけしか難病にならないというところも、今の制度ではしょうがないんでしょうけれども、さまざまな難病を持っていらっしゃる方々にとっては、私たちのは一体どうなのかしらという認識があるわけです。  そういう地方でやっていらっしゃる独自の指定の問題についてもぜひ考慮の一項として取り組んでいかなければ、難病自体幾つあるのかという話になると四百四とか八百八とかいろんな言い方がありますけれども、非常に多いわけですね。なかなか進んでいない現状もございますので、その辺の取り組みを、地方のものについてもぜひ国として取り上げるような方向でやっていただきたいということをひとつお願いしておきたいと思います。  もう時間があとわずかですから、最後の一つとしてぜひ聞いておかなくちゃいけないのは何かといいますと、特定疾患になる病気が、残念ながら昭和五十二年以降は五十八年を除いて毎年一つだけ、研究から公費負担の特定疾患になれる病気というのが一年度について一つですね。こういう現状になっております。調査研究班が現在四十三ございます。単純に計算したくございませんけれども、もし毎年一つしかできなかったら四十三年ですね、これが終わるだけでも。ぞっとするような年数にもなってしまうわけでございます。この点は、厚生省として一生懸命頑張っていらっしゃると思いますが、もうすぐ予算要求もあるわけでございます。きちんとした結果が調査研究で出た場合は、何とか一つでも多く進めることが大事だと思うんです。  患者さんたちにとってみれば、どういうことを今思っているかというと、年に一つしかならない、次はどの順番になるだろうか、私たちの番まで回ってくるのに一体何年かかるのかしら、年に一つらしいよというふうな思いになってしまうわけです。ぜひこの点、何としても一じゃなくて二のときが生まれる、三のときが生まれる、四のときが生まれるというような形に持っていっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  201. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 過去には一年間で二、三なったこともございますのですが、最近は確かに御指摘のように毎年一疾患というような形になってございます。  だんだんと難しい病気といいますか対象とするような疾患も少なくなったことだと思うのでありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、調査研究の結果、診断基準がほぼ確立あるいは確立したものにつきまして、懇談会の意見も聞いて、少しでも多くの疾患が対象疾病として、そして患者さんの方の福音になるように努力してまいりたい、このように思います。
  202. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 局長、最近とおっしゃったけれども、五十二年以降というともう十年以上なんですよ、一つが。その辺だけはちょっと頭に置いてください。やっぱり十年以上続くと、それが固定化したんじゃないかととらえがちなんです。最近というのが二、三年ならいいですよ。その前に二が出て三が出て一になったというならわかるけれども、ずっとでしょう。その辺は、もう一生懸命努力していることを知っています、厚生省が要求されていることも。だから、ぜひこの一の壁を、十年間続いた壁をぜひとも全力を挙げて突破していただきたいわけですよ。そうすれば、ああ二が出たということが希望につながるわけですから。  最後に、大臣にお伺いします。  きょう、ずっと色素性乾皮症という一つの病気を通しながら、また難病全体の問題をいろいろ指摘させていただきました。この難病という問題、厚生省が取り組み出してから十九年、来年二十年になるわけです。先ほど言ったように、小さな人たちが病気に苦しんでいらっしゃるという現状もございます。来年、区切りのいい二十年ということになりますし、今の難病の取り組みというのは、今要綱でやっているわけですけれども、一体これでいいのかどうか。また、今言ったみたいに、毎年一つしか指定がないという問題もございます。さまざま問題があるんですけれども、この難病対策に取り組む大臣の決意を最後に聞いて、質問を終わりたいと思います。
  203. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 色素性乾皮症を中心として難病問題の取り組み方についての御意見、御質問、私も非常に重要なことだと思って拝聴いたしておりました。  そこで、難病対策につきましては、従来から調査研究の推進、医療費の自己負担の軽減及び医療施設の整備を主要な柱といたしまして、総合的な施策を進めております。平成三年度におきましても、特定疾患治療研究事業の対象疾患に、御承知のように重症急性膵炎でございますか、これ一疾患を追加するほか、さらに平成元年度からは患者や家族の不安の解消を図るため、難病患者医療相談モデル事業を開始いたしているところでございます。  今後とも、これら施策を充実させることにより、難病対策の推進には十分意を払いながら努力を続けてまいりたい、このように考えております。
  204. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  205. 林紀子

    ○林紀子君 私は、まず厚生省にお伺いしたいと思います。  原爆被爆者対策についてですが、被爆者に支給されている諸手当の所得制限が今年度から改善されましたが、どのように改善されたか、簡潔に御説明いただきたいと思います。
  206. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 簡単にということでございますが、ちょっとお聞きいただきたいと存じます。  平成三年度におきまして、被爆者の高齢化に対応いたしまして諸手当の大幅な改善を行ってきたところでありまして、所得制限の限度額の大幅な引き上げもその内容の一つでございます。  具体的にちょっと申し上げたいのでございますが、諸手当の支給率につきまして九六%から九九%に引き上げることにより、所得制限の限度額となる所得税額につきまして、平成二年度の八十三万八千二百円から今年度は二百九十五万円に引き上げられた。この措置によりまして標準四人世帯におきましては年間収入額のベースではどのようになったかと申しますと、平成二年度に九百七十九万一千九百円でございましたものが今年度は千六百八十八万五千四百円に引き上げられた、こういうことでございます。
  207. 林紀子

    ○林紀子君 今の御説明で、九九%の人が受けられる、四人世帯で年収一千六百九十万円以下の家庭ではほぼ受けられる、こういうふうに手当を受けられる方がふえるのは大変結構なことなんですけれども、所得制限があるために、手当を受ける人たちは毎年所得証明の提出が必要なわけですね。この手続というのは、高齢化している被爆者には大変大きな負担になっております。厚生省としては、このことにかんがみていろいろ努力をしている、手続の簡素化のための課長通達も出したということも伺っておりますけれども、それでも被爆者の負担は余り変わらないわけです。家族の所得証明も必要ということで、家族の手を煩わさなければならないということに大変気兼ねがあるということも聞いております。  今御説明がありました所得税額が二百九十五万円以上の人だけ届けをすればよい、そういう形に改められないものかと思うわけですけれども、そうなりますと、当然自治体が届け出の肩がわりをするということになると思うわけですから、そこに係る経費に対しては国の方が予算措置をとる、こういうことで対処をしていただけないものでしょうか。
  208. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 先生今御指摘いただきましたように、受給者の方々の高齢化が進んでおります。そこでこうした事務手続が非常に困難な方が大変多くなっておりますので、私ども、何とかこの手続につきまして便宜を図りたい、こういうことで、今年度から次のようなことについて簡素化を図ったわけでございます。  具体的に申し上げたいと思いますが、一つは、届け出用紙につきまして、届け出に先立ちまして毎年都道府県等が受給者に送付することということ。それから住民票の写しにつきましては、以前に提出した住民票の内容に変更がない場合につきましては改めて提出する必要がないということ。それからまた、所得税額証明書につきましては、税務署が作成します納税証明書のほかに、確定申告書の写しで足りるようにいたしました。また、所得税の非課税者につきましては、特段の証明書は不要であるというふうなことを図ったわけでございます。基本的には、受給者が関係機関に出向いて必要な書類を入手する手間をかけずに所得制限に関する手続がとれるようにしたというものでございます。  しかしながら、今回の措置はこういうことでございますが、実は、都道府県等に対しましてはいろいろと手数をかけるわけでございます。そのようなことの事務の負担の状況も踏まえながら、先ほど申し上げましたようなことでできる限りの簡素化を図ったものと、こういうふうに御理解願いたいと存じます。
  209. 林紀子

    ○林紀子君 そうしますと、所得税額が二百九十五万円以上の人だけ届け出をすればよいということに変えるということは、無理だということですか。
  210. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 先ほど申し上げましたように、本来毎年届け出をしていただくということでございますが、それを一応簡素化したということでございますので御理解をいただきたい、このように思います。
  211. 林紀子

    ○林紀子君 今私がお願いいたしましたのは、その簡素化をしてもなおかつ被爆者の方たちはそれが負担になっているということを申し上げたわけですけれども、所得制限がなければこういう毎年の手続というのは必要ないわけですね。そしてまた自治体の方も、肩がわりをしてそれに対して費用がかかるというようなこともないわけです。たった一%の人が受けられないというだけの、その一%の所得制限を残した根拠というのは一体何なんだということをお伺いしたいと思うわけですね。  本年度予算の概算要求のときには、所得制限をなくすことを考えている、これはマスコミでも報道されました。また、広島、長崎の八者協も、この諸手当の所得制限を撤廃してほしいと強く要望しているわけです。所得制限をぜひなくしてほしい、こういう方向考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  212. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 本年度の予算の要求のときにいろいろ検討しましたのは、何とか所得制限の改善を図りたい、こういうことで努力してきたわけでございます。  そこで、今撤廃をするべきではないかという御質問でございますが、被爆者の高齢化に対応いたしまして、被爆者の一層の健康の保持、増進を図る、こういう観点から、私ども平成三年度においては諸手当の所得制限限度額の大幅な引き上げを図ったというのは先ほどお話ししたとおりでございますが、諸手当の所得制限につきましては、被爆者の障害の実態に即した対策を重点的に実施するという観点から、原爆放射線による健康障害を現に有している被爆者に対しては、支給される医療特別手当あるいは原子爆弾小頭症手当については所得制限を設けていないわけでございます。これに対しまして、特別手当、健康管理手当等、これは放射線障害が現にないか、あるいは原爆の放射線等の関連が明らかでないという場合でも支給されておるということでございまして、一般の社会保障との均衡を考慮した上で考えますと、所得制限を設けているところでありますが、これを撤廃することは非常に困難ではないか、こういうように考えております。
  213. 林紀子

    ○林紀子君 御説明を聞いてもよくわからないわけですけれども、所得税額が二百九十五万円以上の人ということになりますと、例えば公務員の例をとってみましても、一般公務員ではこれに当てはまる人というのはほとんどいないんじゃないかと思うんですね。公務員の中でも特別職、公使、大使級の人になりましてようやくこういうところに当てはまってくる。だから、そういうところまで手当がもらえるのであれば、この一%というのをわざわざ残す必要はなかったじゃないかということを申し上げたいと思うんです。  原爆の被害といいますのは、それこそ金持ちも貧乏人もないわけですね。あの八月六日、九日に広島、長崎にいた人に対しては、もう貧乏人だから金持ちだからということで放射能がよけて通ったということはないわけですし、そういうことではその後の苦しみも全く同じ。そういうことではこれを被爆者年金という形にすれば、こうした所得制限わざわざ一%を設けて、被爆者も本当にこの手続をするのが大変だという、こういうような状況もなくすことができるんじゃないでしょうか。  それからまた、健康管理手当を受けている被爆者、これは広島であった事例ですけれども、入院中のために更新手続ができないで一カ月間ブランクができてしまった、こういう話を聞いております。広島市は、今申し上げましたように被爆者が大変高齢化しているということで、この更新手続を忘れるということもあるものですから、一カ月前に本人あてに通知をする、また十日前に再度通知をする、こういうことで更新手続を忘れないようにということでいろいろ努力をしてくださっているわけですけれども、この方は入院をしていたためにその通知がとうとう本人のところに届かなかったし、それで手続ができなかった。そのために一カ月ブランクになってしまったということなんですね。  こういうようにやむを得ない事情でおくれたという場合は、救済措置をどうしても考慮していただきたいと思いますが、いかがですか。
  214. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 委員の御質問は、二問あったかと存じます。  最初の方の年金化ができないかという御質問でございますが、毎回申し上げておりますように、私ども各種手当につきましては、放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲というものに着目いたしまして、被爆者の実態に即して支給しているところでございます。しかしながら、被爆者全員に障害の有無にかかわらず支給するということを年金と考えますと、このような場合には他の戦争犠牲者との間に著しい不均衡を生ずるのではないか、こういうふうに考えておりまして、年金化は困難である、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、入院などやむを得ない事情で一カ月ばかり延びたために受けられなくなったというケースを御紹介いただきましたけれども、これにつきましては、私ども次のような形で手当てをしておるわけでございます。  健康管理手当につきましては、御承知のように他の手当と同様に申請主義をとっているわけでございますが、法律上その認定申請をした月の翌月から支給を始める、こういうことにいたしております。したがいまして、遡及して手当てをすることはできないのでございますけれども、本年度からは健康管理手当の認定期間というものを大幅に延長いたしました。これは一年を三年に、三年を五年にというふうにやったわけでございますが、そこで認定期間が終了する前に県、市から手当受給者にその旨を通知させるということを都道府県あるいは市と相談いたしまして、そのようなことで申請のおくれがないように被爆者の便宜を図るということにいたしたわけでございます。
  215. 林紀子

    ○林紀子君 ですから、通知をしてくださってもなおかつやむを得ない事情があった場合にはということをお願いしたわけです。ぜひこれは今後そういう方向考えていただきたいと思うわけです。  そして、年金化をいたしましたら、被爆者年金という形にいたしましたら所得制限もなくせるわけですし、今おっしゃいましたように三年、五年という形で更新の期間を長くしていただきましたけれども、これをわざわざ更新しなくても済む。年金という形になりましたらね。ですから、そういうことでもぜひ被爆者年金という形で方向考えていただきたいということを再度お願いしたいと思います。  次に、原爆死没者慰霊等のための事業等の実施ということが今年度新たに予算に加えられましたけれども、この内容、これも簡潔に御説明いただきたいと思います。
  216. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 先生指摘でございますが、平成三年度におきましては、原爆の死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するために、新たに、財団法人放射線影響研究所を活用いたしまして、被爆に関する調査研究啓発事業あるいは国際交流事業を行わせるということとともに、都道府県等を通じまして慰霊事業を行うほか、広島、長崎に原爆死没者慰霊等施設を建設するための施設整備検討調査費を計上いたしたところでございます。
  217. 林紀子

    ○林紀子君 現在広島では、被爆した建物を残せという世論が大変大きく広がっております。そして、広島市も被爆建物の保存について学識経験者を含む検討委員会を今年度発足させました。当面、世論が盛り上がっている対象の建物といたしましては、広島の日赤、日本銀行広島支店、広島大学理学部の校舎、袋町小学校、平和公園内のレストハウス、こういうようなものが挙げられているわけですが、慰霊施設の中にはこうした被爆建物というのが含まれるかどうかというのをお聞きしたいと思います。  それから、今御説明いただいた新しい事業に基づいて、原爆死没者慰霊等施設基本構想懇談会、こういうものを五月二十九日に発足させたということを聞いております。そして、このメンバーは六月から七月にかけて広島、長崎で現地調査を行うという報道も見ましたが、今挙げた建物もぜひ慰霊施設ということで位置づけて、この六月、七月に広島、長崎にこのメンバーの方たちがいらっしゃるときには調査、視察の対象にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  218. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 被爆建造物をどのような形で保存するかということだと思うのでございますが、先ほど日銀の支店の例とか日赤の例をお挙げいただきましたけれども、それぞれに持ち主あるいは管理者がいらっしゃる。そこで、その意義や今後の利用計画も考慮しまして総合的に適切に判断されるものと私どもは解しておりまして、国がこれ以上そのことに関与するのはいかがなものか、このように考えております。したがいまして、それを原爆の死没者慰霊等施設とするかどうかということについては、今のところ考えていないわけでございます。  そういうことで、それぞれの持ち主の方々の適切な判断というようなものを私どもは尊重してまいりたい、このように考えております。
  219. 林紀子

    ○林紀子君 それぞれの持ち主の適切な判断ではこれがもう残せない、被爆した建物は全部なくなってしまう、被爆の追跡はその跡をとどめなくなってしまう、こういうことで今お願いをしているわけなんです。私が前にこの問題について伺ったときと全然話が進展しておりませんが、これはまたの機会にいたします。  国が被爆後四十年にして初めて死没者調査というものを行って、昨年五月十五日にその結果を発表いたしましたね。この結果が出た時点で被爆者に弔意をあらわすということを歴代の厚生大臣もおっしゃってまいりました。そして、今回の今御説明いただいた措置をもって被爆者に対する慰霊は終わった、まさかこんなふうには考えていらっしゃらないと思いますが、その辺はいかがですか。
  220. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 従来から申し上げておることでございますが、私どもは、この慰霊等事業、永遠の平和祈念、あるいは死没者の慰霊等を行うということのほかにもいろんな慰霊事業を考えておりますし、それからまた、それぞれの関係のものにつきましても、それを保存したり調査したりするような調査事業も考えております。また、国際的にもいろいろと研究交流を行って各国とその辺の知識の交換もいたしたい、このように考えておりまして、今後そういうふうな形で総合的にいろいろと対応してまいりたい、このように考えております。
  221. 林紀子

    ○林紀子君 最後の二点は厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、今これで弔意をあらわすということは終わったのではないというふうにお答えいただいたと思うわけですけれども、この死没者調査というのは、大変な作業をして一人一人のお名前というものを調べ上げたわけですね。これでもまだ十分だとは言えないわけですけれども、二十九万五千九百五十六人、こういう方たちが原爆によって亡くなったんだ、こういうお名前がわかった時点で今回のこうした事業を一括してやるからこれでもうおしまいなんだということでは、これは到底弔意をあらわしたと遺族、被爆者は認められないことだと思うわけです。  昨年の五月十五日にこの死没者調査が発表になったときに、被爆者の団体である被団協は、原爆によるこのような死は二度と繰り返さないという決意のもとに、これらの確認し得た一人一人の死を償うべきですと声明を発表いたしましたけれども、当然だと思うわけですね。一人一人に弔慰金を出してこそ原爆の犠牲者に最大の弔意をあらわすことができると思いますが、いかがでしょうか。
  222. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 原爆被爆者に対する対策でございますが、政府の行っております対策は、御承知のように放射線による健康障害という他の戦争犠牲者には見られない特別の犠牲、こういう点に着目いたしまして、こうした特別の事情にない遺族に対して弔慰金の支給を行うことは一般戦災者との均衡上問題がある、そういう理由から今考えておらないのでございます。  政府といたしましては、原爆死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するため、金品の支給といった個別弔慰措置はとらなくて、普遍的、永遠的な事業を行うことが適切であると考えまして、原爆死没者慰霊等施設の建設について検討調査するとともに、慰霊式典への助成等の慰霊事業を実施することといたしておるのでございます。
  223. 林紀子

    ○林紀子君 地元の中国新聞という新聞は、「形式だけの弔意では、名も無き原爆死没者の霊は浮かばれない。」、このように書いておりますけれども、ぜひ一人一人の死没者に対してきちんと弔意をあらわしていただきたい、このことを心から訴えたいと思います。  そして最後に、湾岸戦争のときに、アメリカの大統領、副大統領などの、イラクへの核兵器使用も辞せず、こういう発言がいろいろありましたけれども、二月の三日にはアメリカのチェイニー国防長官がABCテレビのインタビューに出演して、トルーマン大統領が広島に原爆を落としたときの決定は正しかった、こういうふうに述べたということが報道されております。  被爆者への援護対策を行う厚生大臣として、このチェイニー国防長官の発言どのようにお聞きになったか、お聞かせいただきたいと思います。
  224. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) チェイニー国防長官の発言は、先般の湾岸の事態には核兵器を使用することなく通常兵器だけで勝利する自信があることを示したものと考えております。  しかしながら、原爆が多数の人間生命を奪い、今なお健康障害に苦しんでいる方々が多いことは私としても胸の痛む思いでありまして、被爆国としての我が国の国民感情からすると、チェイニー国防長官のような発言は受け入れがたいものである、このように考えております。
  225. 林紀子

    ○林紀子君 厚生大臣、被爆者の苦しみというのは、その任は当たる大臣としてよく御存じだと思います。原爆投下により四十六年たった今も多くの被爆者が苦しんでいる。四十六年前のあの地獄の惨状、世界じゅうの人々がこの惨状を知るということになりましてもしチェイニー国防長官のあのような発言があったら、それは世界じゅうの世論から指弾を受ける、こういうことになったのではないかと思うわけです。  厚生省が行いました生存者調査、死没者調査、また被団協の調査結果も含めまして、原爆被害白書を作成して世界各国に被爆の真の姿を知らせること、これが今大変重要になっているのではないかと思います。また、被爆者援護法を制定し、再び被爆者を出さないということが被爆国日本の公の意思だということを国の内外に宣言する、このことも大変重要ですし、これこそ唯一の被爆国の日本が今行わなければならない真の平和への国際貢献である、このように考えるということを強く申し上げて、次の質問に移らせていただきます。  環境庁にお伺いいたしますけれども、私は先日、鳥取砂丘を視察してまいりました。砂丘が草原化しているというのを目の当たりに見てきたわけですが、マスコミも注目し、何とかしなければという声が地元でも大きく起こっております。  環境庁は、今年度二百万円の予算で鳥取砂丘保全協議会に調査を委託するということですけれども、これと並んで鳥取県、鳥取市、福部村という関係自治体でも努力を続けております。一ヘクタールずつ何カ所か試験的に雑草や樹木を取り払って砂丘を生き返らせたい。しかし、これは応急処置ではないかと思うわけですね。砂が動く、砂の供給、こういうことを根本的に考えなければ砂丘は生き返らないと思うわけですが、こういう研究について、環境庁は今後どのように進めていくのか、方策をお持ちでしょうか。
  226. 伊藤卓雄

    説明員(伊藤卓雄君) お答えいたします。  ただいま御指摘の鳥取砂丘の問題に関しましては、まず、今年度の調査におきまして鳥取砂丘保全協議会というものを構成いたしまして、これは学識経験者あるいは国、県、市等から成ります関係行政機関あるいは関係団体をもって横成するものでございますが、ここにおきまして除去すべき植物の範囲あるいは除去方法、除去による効果等につきまして検討いたし、砂丘の適正管理方法を確立するということを目的にしておるところでございます。  御指摘のように、今年度は試験的に例えば二カ所ほどにつきまして一ヘクタールずつの除去を行う等の措置を試みるわけでございますけれども、今年度の措置はあくまでも試験施行でございまして、生きた砂丘をよみがえらせるためにどうするかということで砂丘保全対策の第一歩だというふうに考えております。これらの効果を見た上で次の段階に進みたいというのが現段階の考えでございます。
  227. 林紀子

    ○林紀子君 今お話のありました雑草の除去ですけれども、それだけでも、本格的にやり出すとなりましたら大変なお金がかかる。それも、一年限りでこれで終わりということにはならないだろうということなわけですね。この鳥取砂丘は国立公園特別保護地区に指定されておりますし、天然記念物に指定されているわけです。こういう具体的な事業に対しましても地方自治体に援助をするべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
  228. 伊藤卓雄

    説明員(伊藤卓雄君) ただいま御指摘のような公園の景観保全等のための事業、これをどういう形で援助していくかということでございますが、たまたま手元にあります補助の制度といたしまして、特殊植物等保全事業という名前の補助金制度がございます。  鳥取砂丘の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、今年度は試験施行という形でございますので、これがどういう形に落ちつくものか、さらには現在持っておりますこの補助金制度を活用いたしまして具体的に除去方法等を利用できるのか、あるいは経費の見込みがどうなのか、その辺が具体化した段階で検討してまいりたいと思います。
  229. 林紀子

    ○林紀子君 ぜひそういう補助金も使って御援助をいただきたいと思います。  国立公園管理予算というのを見せていただきましたけれども、本年度は施設整備費が確かに飛躍的に増額されました。しかし金額的に見ますと、管理強化対策費が一億一千八百万円、その中の調査費というのが一千三百三十万円、そのうち二百万円が鳥取砂丘に回されているのだと思うわけですけれども、全国の国立公園は二十八カ所あるということを伺いましたので、到底この金額では間に合わないということは一目で明らかだと思うわけです。人と自然の調和とか自然の保護というのは今大きなニーズになっているわけですし、調査研究活動に積極的に取り組むためにも、国の積極的な予算措置というのがどうしても必要だと思うわけです。  最後に、環境庁長官にこの予算を全体的にふやすということについて、どういう御決意かというのを伺って、私は終わらせていただきます。
  230. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 御指摘のとおり、大変予算が足りのうございまして、私どもも今日までも一生懸命頑張ってきたつもりではございますが、御指摘のとおり特に自然に対するニーズというのは大変ふえておりますし、さらに今後とも努力を重ねてまいりたいと思います。
  231. 諫山博

    ○諫山博君 雲仙岳の火砕流災害による被害者に対して、心からお悔やみ、お見舞いを申し上げると同時に、若干について質問いたします。  私は、四日前に島原に行きまして、水無川の上流まで調査をしてきました。それだけに、今度の大災害は人ごとではない思いです。  災害対策本部の情報によりますと、火砕流発生は六月三日十五時五十分とされています。火砕流発生源から死亡者が出た地点までの距離は四キロないし五キロ、火砕流がそこに到着するまでには三分間かかるそうです。危険な火砕流発生が直ちに下流に知らされておれば、人的災害は避けられていたのではないかと思っています。この三分間というのはまさに魔の三分間であります。火砕流が発生した、下流に流れ始めた、死亡事故が発生するところに到着するまでに三分間ある。この三分間がどのように活用されたか、あるいは無視されたか、この問題を問いたいと思います。  最初の避難勧告が出たのは十六時十分、火砕流発生から二十分後です。事情を聞いて大変驚いたのは、避難勧告は市長さんの名前で出されるけれども、その情報は気象庁からも国土庁からも警察からも消防からも出されない。市長さんがさまざまな連絡員などの情報によってみずから判断をして避難命令を出す、こういう仕組みだそうですけれども、気象庁、間違いありませんか。
  232. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) お答えさせていただきます。  気象庁の情報も……
  233. 諫山博

    ○諫山博君 結論だけ答えてください。市長さんの判断でやっているということだけでいいです。
  234. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) 避難については、市長さんの判断で行われると認識しております。
  235. 諫山博

    ○諫山博君 今回の火砕流について気象庁が県知事に報告を出したのは、十六時二十分だと聞いています。そのときは既にもう人的な災害は発生していました。避難勧告も出ていたわけです。つまり、気象庁が公式に報告書を出したのは十六時二十分ごろで、既に災害が発生した後であったということは間違いありませんか。
  236. 森俊雄

    説明員(森俊雄君) 公式に火山活動情報が出されましたのは十六時二十分でございますけれども、絶えず火山活動状況につきましては防災機関等とも連絡はとらせていただいてございます。
  237. 諫山博

    ○諫山博君 建設省にお聞きします。  土石流や火砕流が発生すると、探知センサーというのがあって、現場に行かなくても山の中腹あたりで発生源をカメラで察知できるというふうに聞いております。こういう探知センサーが桜島にはあるけれども雲仙にはなかったと聞いていますが、そのとおりですか。
  238. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 御説明申し上げます。  水無川の土石流に関します発生監視装置でございますけれども、三月の末にワイヤセンサーを設置いたしました。
  239. 諫山博

    ○諫山博君 いずれ聞きますから、聞いたことにずばり答えてください。  桜島にはあるけれども島原にはなかったのかということです。
  240. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 桜島には光センサーという方式とワイヤセンサー方式を併用して実施しております。水無川ではワイヤセンサー方式で実施しております。  以上でございます。
  241. 諫山博

    ○諫山博君 これは、山の頂上まで行かなくても中腹あたりから頂上の状況を見ることができる、こういうものでしょう。そして、これは桜島にはあったけれども雲仙にはなかった。結論は間違いありませんね。
  242. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 桜島に設置しております光センサー方式のものは、熱センサーといいますか、赤外線を発射いたしまして、そこで土石流なり異物が通りますとそれが断裂されて、そうして土石流の発生なりが起こったということが通知できるようなものでございます。  ワイヤセンサーは、針金を張っておきまして、それが切れますと、市役所なり市町村の役場に直ちに通報が行く、こういうシステムになっておりまして、切れたときにはワイヤセンサーはまた張りかえに行くという作業が必要になってまいります。
  243. 諫山博

    ○諫山博君 本当に短い時間ですから、聞いたことに答えてください。探知ワイヤについてはいずれ質問しようと思っておりました。  探知ワイヤは水無川には何カ所設置されていたか。そして、私の聞いたところでは、今度の災害が起きたときは探知ワイヤは切れたままだったと聞いていますけれども、その結論だけ答えてください。
  244. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 水無川の水系には二カ所探知ワイヤを設置しておりまして、今回の火枠流の発生のときにはそれは切れたままになっております。  以上でございます。
  245. 諫山博

    ○諫山博君 今度の一連の災害の中で、探知ワイヤが切れてそれを補修したこともあるんじゃないですか。
  246. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 土石流の発生の場合でございますと、それが切れますと、またそれを張りかえるために作業員が現地に行きましてその作業をして修理をするということができるわけで、現地に行かなければいけないという作業が必要になってくるわけでございます。
  247. 諫山博

    ○諫山博君 探知ワイヤは何カ所設置されていましたか。
  248. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 二カ所でございます。
  249. 諫山博

    ○諫山博君 もし探知ワイヤが切れたままになっていなかったとすれば、これはどういうふうにして土石流が流れてきたことがわかりますか。
  250. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 切れたままになっておりますと、土石流が通過いたしましても、それは感知されないことになります。
  251. 諫山博

    ○諫山博君 切れていなければどうですか。
  252. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 切れていなければ、土石流が通過いたしますとそれが感知されることになります。
  253. 諫山博

    ○諫山博君 探知されるというのは、どういう方法でどこに探知されますか。ブザーがざあっと一斉に鳴るようなことになりますか。
  254. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) ワイヤセンサーが切れますと、そのことが探知されたという状況の出発点でございまして、それから市役所、それから市町村の役場のところに、土石流が通過したという警報が行くことになっております。
  255. 諫山博

    ○諫山博君 私は、なぜ通報がおくれたのか。土石流が発生して流れ始める、そしてたくさんの人が死亡する。これまでの間に三分間あるわけですよね。この三分間が生かされたのかどうかということを私は知りたかったわけです。  そうすると、結局、探知センサーは雲仙には設置されていなかった。さらに、探知ワイヤは二カ所設置されていたけれども壊れたままになっていた、こうなりますか。
  256. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 御説明申し上げますと、土石流に対する感知装置の話を今申し上げておりました。火砕流になりますと、高熱のガスと大量の火山灰が一気に噴きおろしてまいりますので、土石流の感知装置が切れたままになっておりまして、それを張りかえに行きたくても危険で現地に行けないわけであります。ですから、二次災害のおそれもありますので、私たちは、残念ですけれども、火砕流の発生を見たために現地に行けなかったという状況でございまして、土石流と火砕流とは現象が違いますので、その点を少し誤解がないようにしていただきたいと思います。
  257. 諫山博

    ○諫山博君 火砕流がさっと流れれば、探知ワイヤは完全であれば作動しますか。
  258. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) ワイヤセンサーが切れる状態が、探知されたということでございますので、火砕流が発生いたしまして、大量の火山灰なり溶岩の塊がそこを通過いたしましてワイヤが切れますと、それは探知したということになります。
  259. 諫山博

    ○諫山博君 桜島に設置されている探知センサーがなぜ雲仙には設置されていなかったんですか。
  260. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 桜島には光センサーという赤外線を出す装置のものがございますけれども、これは高熱に非常に弱い、非常に精密な器械でございまして、大量の火山灰でありますとか熱風、それから高熱のガス等が噴きおろしてまいりますと、器械そのものが十分に機能しないという欠点があるものですから、そういう火砕流等が襲ってくるような真ん真ん中のようなところに設置することは、これは適当ではないというふうに考えております。
  261. 諫山博

    ○諫山博君 しかし、とにかく設置されておれば、山の頂上まで行かなくても頂上の模様がカメラでわかるでしょう。それは間違いありませんか。
  262. 松下忠洋

    説明員(松下忠洋君) 建設省といたしまして、土石流を中心にいたしまして、まず探知することをやっておりましたものですから、火砕流というああいう大型のものにつきましては、またこれから、おっしゃいましたようにテレビによる監視あるいはもっと別な方法というものを考えていきたいというふうに検討しておるところでございます。
  263. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 諫山君、時間が来ていますので、まとめてください。
  264. 諫山博

    ○諫山博君 最後に、私は農水省と厚生省に要望いたします。  被災者の問題です。今、地元から漁業補償、葉たばこ補償に対してさまざまな要求が出て、この要求は農水省にも届いていると思います。それから、厚生省に対しては、避難場所あるいは仮設住宅の建設、いろんな要望が提起されております。例えば避難場所については、個人のプライバシーが保障されるような設備が欲しい、あるいはもっと住みよい設備にしてもらいたい、仮設住宅については、多人数の世帯が多いので広い仮設住宅をつくってもらいたいという要望が出ております。  これは農水省及び、最後に厚生大臣答弁を求めたいと思います。
  265. 山田栄司

    説明員(山田栄司君) 私ども、現在被害の把握につきまして鋭意努めておるわけでございますが、特に葉たばこにつきましては、野菜もそうですが、隆灰による被害、特に質の低下をできるだけ少なくするという技術対策がまず必要であるというふうなことで、先月来県にお願いいたしまして、現地で今指導をしていただいておるところでございます。  具体的な被害につきましては、できるだけ早急に把握して、必要な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  266. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 昨日の雲仙岳における大規模な火砕流によりましてお亡くなりになった方々や負傷された方々、その他被災をされた方方に対しまして、心からお見舞いを申し上げる次第でございます。  既に五月の二十九日午前十一時に災害救助法を適用いたしまして、避難所の設置、炊き出し、被服、寝具の給与等を行っているところでございますが、今後さらに県当局と連絡をとりながら、応急仮設住宅の設置等の措置を講じ、いろいろと手配を整えてまいりたい、このように考えております。その場合には、ただいまお話がございましたように、被災者の住民の御要望にも沿うように配慮してまいりたいと思っております。  また、負傷された方々に対しましては、国立病院での医療確保や飲料水の確保などにつきましても、最大限の配慮をしてまいりたいと思っております。現在ベッド数は、国立病院、診療所を合わせまして約五十床用意ができるようになっております。  以上でございます。
  267. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  268. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 きょうの最後の質問者になりました。しばらく御辛抱をお願いします。  きょう私は厚生省の方にエイズの問題で質問するということですが、ちょっとその前に、大蔵省及び労働省の方に、ある企業の倒産に絡む問題でお尋ねをいたしたいと思います。  五月の二十三日に岐阜県の方で、米のお菓子では業界第二位と言われております日東あられという会社が会社更生法の適用申請をいたしました。地元の新聞ではこれに関連する記事が連日のごとく大見出しで報道されております。  まず、この会社の、これまで、いわゆる証券取引法に基づいて申請をしておりました、いわば企業内容等の株主その他への開示義務といいますかディスクロージャー、そういう義務に基づいて有価証券の報告書を提出されておるわけですが、この報告書がかなり長期間大量の粉飾決算の形で出されていたということが新聞に報道されるようになっております。  問題は、この有価証券の報告書というのは、公認会計士といいますか監査人の監査を受けた、つまり証明を受けた形で報告を出されるものでありますが、この日東あられの事件について、大蔵省の方では現在どのように事態を把握し、どういう対応をしようとしているか、お尋ねをいたしたいと思います。
  269. 中川隆進

    説明員(中川隆進君) お答えを申し上げます。  日東あられに関します御質問でございます。今御指摘ございましたように、日東あられにつきましては過去に、昭和三十年代になりますけれども、株式の多数への発行といいましょうか資金調達をしたということがございまして、そういう経緯にかんがみまして、それ以来有価証券報告書が提出されているわけであります。今御指摘ございましたように、この有価証券報告書につきまして、新聞紙上等あるいは会社みずからがそういうことを言っているということでございますけれども、粉飾があったのではないか等の報道がございます。  大蔵省といたしましては、この日東あられ、すなわち発行会社と私ども言っておりますけれども、及びこの会社の監査を担当いたしました公認会計士から事情を聞いているところでございます。  他方、日東あられにつきましては、現在会社更生法による更生手続が進んでいるということでございます。これは裁判所の方の問題になるわけでございますけれども、この手続の進展との関連にも留意しながら実態の把握を進めてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
  270. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 これは私もうわさで聞いたわけでございますが、長年この会社の会計事務に従事してきた公認会計士が、会社更生法の適用申請を裁判所に出す直前に辞任しているというようなことを聞いておるわけですが、これが一般債権者への不安あるいは従業員の大きな不安のもとにもなって、果たして更生ができるのかどうかというようなことが今取りざたをされているわけです。辞任をしていても今大蔵省がおっしゃる事情聴取が可能なんでしょうか。
  271. 中川隆進

    説明員(中川隆進君) 今の先生の御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、まだ担当公認会計士が辞任したという事実を確認はしておりません。
  272. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 次に、この会社では、これも新聞報道の限りでございますが、従業員の社内預金、従業員は千四百八十四人おるということでございますが、従業員の社内預金が六億七千百二十七万円ぐらいある。社内預金をしている従業員は九百四十六人、約三分の二ですか。ところが、この社内預金が本当にあるか、会社側の方で勝手に使われて、ないかもしれないというようなことも、新聞の報道でも真偽のほどは明らかではないがという形で報道をされております。  そこで、この社内預金について、労働省の方でどういう指導監督が通常行われ、本件の場合、どういう事態が起こった場合には監督のより一層の調査、立入調査その他の必要が出てくるのか、その点についてお尋ねをいたしたい。
  273. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 社内預金制度につきましては、私ども労働基準法等関係法令に基づきまして、種々の規定を設けてその管理の適正化を図っているところでございます。  具体的には、私ども労働基準監督機関といたしましては、社内預金を行う使用者に対しては、貯蓄金の管理に関する協定を締結した際にはその協定を、あるいは預金等の額等社内預金の管理状況について、年一回所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務づけられております。それを通じまして、私ども監督をいたします場合、そういうことが法令に違反していないかどうかということの点検確認を行って、必要がある場合所要措置を講じている、こういうことをやっております。  先生の御指摘の日東あられの件につきましては、平成三年の五月一日に貯蓄金管理協定届、これは利率改定に伴う協定届が出てきておりますし、管理状況報告も所轄の監督署長に届け出がなされております。これらのことについて法令上はどうなっているかと申しますと、今のところ、必要な法令上の要件を充足しております。  しかしながら、御指摘のとおり、いろんな新聞報道がございます。この社内預金の保全に関しいろいろ問題が指摘されておりますので、私どもとしては、現在その事実関係確認に努めているところでございます。  いずれにいたしましても、この問題、先生承知のとおり、現在、会社更生法に基づきまして保全命令が発せられておりまして、債権債務関係が保全管理人の管理下に置かれているという点、あるいは現在その再建に向けて努力が続けられております等、こういう状況を勘案して、適正な処理がなされますよう、機を逸することなく適切な監督指導に努めていきたいというふうに考えております。
  274. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 今のお話ですと、五月一日に協定の届け出があった、それから状況報告も所轄の基準監督署にあったということでございます。外形的な事実だけを申し上げますと、五月二十三日、会社が更生法の適用申請を裁判所に出した日に代表取締役社長の自己破産申請書も同時に出されている。これは極めて異常なことだと思うんです。しかもこの会社は、ことしの二月に会長が急にお亡くなりになられて、それ以降非常に資金繰りが苦しくなって、今おっしゃる五月の一日ごろにはかなり非常な事態ではなかったかと思われる状況があるわけですが、そういうときに出されたということですか。これは予定の提出期限に出されておるというものなんでしょうか。
  275. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) そうでございます。
  276. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 この問題、今裁判所の方に係属をしているわけですので、余り深く質問するのが適切かどうかの問題があります。  ただ、最後に一点だけこの問題でもう一度お尋ねをしたいのは、一二%の利息を保証するというようなことで、従業員の中には最高千六百二十万円社内預金をしている。三分の二が要するに社内預金をしていて、非常に、地方の田舎に工場がありまして、従業員の多数は高齢者や女性の主婦が多いというような事態を聞いておりますが、今後労働省としては、今の点、協定の届け出、状況報告について、先ほど機を逸せずにいろいろ対応していきたいというお答えですが、裁判所の申請手続のもとで手が届かないのかどうか、あるいはそれ以外で今裁判所の申請手続に邪魔にならないような範囲で調査をなお続けていくのか、その点をもう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  277. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 今先生が御指摘になりました点について、そのような例、現在までの調査ではその事実を確認いたしておりません。今後さらに調査を進める中で、そのような事実があるかどうか確認を行っていきたいというふうに考えております。
  278. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 時間が差し迫っておりますが、次いでエイズの問題について厚生省の方にお尋ねをいたしたいと思います。  後天性免疫不全症候群というのが正式の呼び名のようでございますが、このエイズ予防に関する法律が平成元年一月に成立をしております。これは、それ以前にエイズ問題総合対策大綱に基づいてようやく法案が成立し、エイズに対する正しい知識の普及と対策の強化のために役立たねばならないということで法律が施行されたわけでございますが、実は最近の新聞報道を見ますと、ことしの五月、先月二十九日の朝日新聞の記事、他紙でも報道されているようでございますが、これによれば、厚生省のエイズサーベイランス委員会が、本年の三月、四月のたった二カ月の間で、国内で新たに二十一人のエイズ患者・感染者を確認した、このうちタイ国籍の女性が七人含まれていた、こういう報道がありました。  この報道で、私もこれは大変なことだという感じを持ったわけですが、エイズ法では、その第六条に、感染者は他人にエイズの病原体を感染させるようなそういう行為をしてはならないとか、あるいは感染者は医師指示に従って病気を治すなりそういうことをしなければならないという遵守義務が書いてあるわけでございますが、果たして今回新聞に出ましたようないわゆる在日外国人の女性が、感染者としてこういう遵守事項が現実に期待ができるかどうか。できないとなればどのような形でこの問題に対処すべきなのか。  新聞の報道の中にも、どうも二十歳代のいわゆる風俗営業関係に接している人ではないか。そうだとすれば恐らく不法滞在者の人になろう。仮に医師がエイズの感染者だということを確認し得ても、患者のプライバシーといいますか、それを保障しなければならないという問題もありまして、患者が自発的にといいますか、自覚して医師のもとで治療を受け、あるいは他に感染させるようなことを慎むということはほとんど期待できないのではないだろうか、こういう懸念があるわけであります。  厚生省のエイズ研究班の新聞発表を見ても、もう四年先、五年先には何倍になるか、十倍近い感染者を外国人で、日本に滞在する外国人女性でつくることになりはしないか、こういう予測すら——こういう予測が発表されるということもいかがなものかと思いますが、そういう予測すら出ているということを前にして、日本人の日本での通常のエイズ感染に関する対応というものは確かにうまくいっているかもしれないが、しかし肝心の、裏側といいますか、思わぬところから、実は日本のエイズ対策というのは非常に大きな穴がぽっかりあいているかもしれない。こういうふうな観点から厚生省に、この問題について今どういう対応あるいは考えを持ってみえるか、お尋ねをいたしたいと思います。
  279. 寺松尚

    説明員寺松尚君) 今先生指摘の件でございますけれども、ちょっと私どもの方でこの辺について御報告いたしたいと存じます。  これは、去る五月二十八日に開かれましたエイズサーベイランス委員会におきまして、各都道府県から報告されました事例を検討した結果、平成三年三月一日から四月末まででございますから二カ月間でございますが、その間に報告されたHIV感染者十七名のうち十名が外国人であったことは事実であります。  これは、先生も御承知でございますが、法律に基づきまして、省令等のあれをごらんいただきますとわかりますが、一応国籍を記載してもらうことになっております。そのことは、実は「日本」という場合と「その他」の場合に分けてあるわけでございますけれども、その「その他」のところに国籍を書いて報告書が上がってくる場合がございます。特別に国を書くようにとは指示していないわけでございますが、書いてあるということでございまして、先生が先ほど言われたような数字でございました。  そこで、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律、これにつきましては、この法律が制定いたされますとき、国会で御審議いただきましていろいろとあったわけでございますが、その法律の第五条の規定によります報告は、感染者の年齢それから性別及び日本人か否か、臨床診断、診断年月日等を報告することになっており、当該感染者が不法滞在者かどうかということは把握できないわけでございます。したがいまして、今回報告されました感染者が十名ということでございますが、不法滞在者かどうかは私ども承知いたしておりません。  ただし、この法律で七条にございますけれども、多数の方に感染をするおそれがあるような場合、こういう場合につきましては氏名を報告されることになっておりまして、その氏名がわかればその辺を関係当局にお聞きすることはできるわけでございますが、今までのところ、そういう報告は参っておりません。
  280. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 もう時間が切れておりますが、一言だけお尋ねをしたいと思います。  建前としては不法滞在者かどうかわからない、あるいは建前としてはこうかもしれない、それは当然のことだと思うんですが、現実に見ると、わずか二カ月で七人の数字が出てくるというのは、その潜在的な数字を思うと、これは建前に終始して果たしていいのかどうか。  そこで、きょうお見えになっております大臣に、これはもうどうしても法務省とかほかの関係省庁と一種の協議をして対応していかなきゃならぬ問題だと思うんですね。しかし、そういう問題について法的根拠が整備されているかどうかといいますと、十分ではないと思います。その点で、大臣としまして御感想といいますか、この問題について他省庁との間の何らかの知恵を出し合うというようなことについて、突然でございますが、お聞かせをいただければと思います。
  281. 下条進一郎

    国務大臣下条進一郎君) 御承知のように、非常に大きな社会問題化しつつあるこのエイズ問題につきまして、六十二年の二月にエイズ対策関係閣僚会議というものができまして、そこでエイズの総合対策大綱ができたわけでございます。基本的には、まず正しい知識の普及、それからまた、感染源の把握、国際協力及び研究の推進等の総合的な対策を推進することに相なっております。またそういう観点から、異性者間の性的接触による感染の増加、海外での感染の増加等、最近のエイズをめぐる動向を踏まえ、今後のエイズ対策の推進につきましては、現在エイズ対策専門家会議で御議論いただいているところでありまして、ここの議論をいただいた上での御意見を早急にいただきまして、これを踏まえて関係省庁と協議して、今後のエイズ対策の充実を図ってまいりたい、このような段取りで進めております。
  282. 井上哲夫

    ○井上哲夫君 ありがとうございました。終わります。
  283. 及川一夫

    委員長及川一夫君) 他に御発言もないようですから、厚生省環境庁及び環境衛生金融公庫の決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明五日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会