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1991-02-18 第120回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月十八日(月曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  一月九日     辞任         補欠選任      平野  清君     林田悠紀夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         中西 一郎君     理 事                 大城 眞順君                 野沢 太三君                 久保田真苗君                 黒柳  明君                 立木  洋君                 粟森  喬君     委 員                 井上 吉夫君                 尾辻 秀久君                 加藤 武徳君                 沓掛 哲男君                 木暮 山人君                 下稲葉耕吉君                 田村 秀昭君                 永野 茂門君                 成瀬 守重君                 林田悠紀夫君                 宮澤  弘君                 会田 長栄君                 一井 淳治君                 翫  正敏君                 梶原 敬義君                 喜岡  淳君                 野田  哲君                 三石 久江君                 和田 教美君                 上田耕一郎君    国務大臣        外 務 大 臣  中山 太郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  池田 行彦君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  愛知 和男君    政府委員        防衛庁参事官   内田 勝久君        防衛庁長官官房        長        日吉  章君        防衛庁防衛局長  畠山  蕃君        防衛庁教育訓練        局長       小池 清彦君        防衛庁経理局長  村田 直昭君        防衛施設庁長官  児玉 良雄君        防衛施設庁総務        部長       箭内慶次郎君        防衛施設庁施設        部長       大原 重信君        防衛施設庁建設        部長       黒目 元雄君        防衛施設庁労務        部長       竹下  昭君        環境庁企画調整        局地球環境部長  加藤 三郎君        外務大臣官房外        務報道官     渡邊 泰造君        外務省北米局長  松浦晃一郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    渡辺  允君        外務省経済協力        局長       川上 隆朗君        外務省条約局長  柳井 俊二君        外務省国際連合        局長       丹波  實君        外務省情報調査        局長       佐藤 行雄君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君     ─────────────   本日の会議に付した案件外交総合安全保障に関する調査  (派遣委員報告)  (九〇年代の日本役割—環境安全保障あり方—について)     ─────────────
  2. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る一月九日、平野清君が委員を辞任され、その補欠として林田悠紀夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 中西一郎

    会長中西一郎君) この際、一言御報告いたします。  本調査会調査テーマにつきましては、理事会検討を重ねてまいりましたが、本調査会は、今後、「九〇年代の日本役割」、副題として「環境安全保障あり方」をテーマとして調査を進めていくことといたしました。  委員各位の御協力をお願いいたします。     ─────────────
  4. 中西一郎

    会長中西一郎君) 外交総合安全保障に関する調査を議題といたします。  まず、先般行いました委員派遣につきまして、派遣委員報告を聴取いたします。大城眞順君。
  5. 大城眞順

    大城眞順君 本調査会中西会長野沢理事立木理事粟森理事猪木理事永野委員成瀬委員、翫委員喜岡委員、三石委員和田委員及び私、大城の十二名は、去る二月五日から七日までの三日間、地球環境問題、難民問題、自衛隊現状等に関する実情調査のため、長崎県及び兵庫県に派遣されました。以下に、調査概要報告いたします。  長崎県では、まず、海上自衛隊佐世保地方総監部で、佐世保地方隊任務組織・編成、施設などの現状について説明を聴取した後、艦対空ミサイル・ターター搭載護衛艦たちかぜ」の艦内を見学いたしました。  次に、三菱重工業長崎造船所香焼工場を訪問し、建造中のイージス・武器システム搭載新型護衛艦・一番艦について説明を聴取するとともに、建造状況を視察いたしました。このイージス艦は、これまでの護衛艦より大型で、基準排水量七千二百トン、平成五年三月末の完工を目指し、現在の工事進捗率は約六〇%ということであります。  次に、長崎当局より交通ネットワークの整備、国際交流現状、特に、長崎県が人的・文化的交流として中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国との間に進めている環東海黄海構想などについて説明を聴取いたしました。  次に、大村入国者収容所及び大村難民一時レセプションセンターを訪問いたしました。大村入国者収容所は、退去強制令書を発付された不法入国者等を送還するまでの間、一時収容しており、現在、いわゆる中国系と見られる偽装難民千四十二人を含む千百十三人を収容しております。また、これまで、昭和二十五年十二月から平成三年一月末までに、総数二万六千四百八十四人を当収容所から送還しております。  一方、大村難民一時レセプションセンターは、いわゆるボートピープルを仮上陸許可後一時的に収容し、またスクリーニングによる一時庇護のための上陸許可者を収容しており、現在は百八十二 人の仮上陸許可者が入所しております。なお、昭和五十七年二月の開所以来、入所者総数は六千八百六十八人に上ります。  次いで兵庫県では、まず、陸上自衛隊中部方面総監部で、同方面隊任務担当区域の特性などについて説明を聴取し、次に、神戸市の埋立造成地六甲アイランドに所在する関西電力六甲エネルギー実験センターを訪問いたしました。このセンターは、昭和六十一年に開所され、太陽光発電燃料電池発電風力発電研究設備を設置し、クリーンな新エネルギー実用化に向けて研究に取り組んでおります。  次に、兵庫当局より、県が進めている地球環境保全対策、昨年八月に神戸市で開催された、瀬戸内海などを対象とする世界閉鎖性海域環境保全会議などについて説明を聴取いたしました。  次に、神戸検疫所では、検疫所業務の全般について説明を聴取するとともに、特に、最近、取扱件数が増加している輸入食品監視業務について意見交換を行い、食品検査の実際を視察いたしました。  最後に、神戸当局より、環境保健研究所が進める細菌、公害検査などの研究内容のほか、市政の概要について説明を聴取し、また、海につながる文化都心の創造を目指す神戸港の再開発状況を視察いたしました。  以上が今回の調査概要でございます。  なお、調査の詳細につきましては、別途、文書による報告書を提出いたしますので、これを本日の会議録に掲載されるよう、お取り計らいをお願いいたします。
  6. 中西一郎

    会長中西一郎君) これをもって派遣委員報告は終了いたしました。  ただいま御報告がございました派遣委員から別途報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中西一郎

    会長中西一郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  8. 中西一郎

    会長中西一郎君) 引き続き、外交総合安全保障に関する調査を進めます。  「九〇年代の日本役割—環境安全保障あり方—」テーマとして、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 永野茂門

    永野茂門君 外務大臣湾岸対応ほか極めて重要な案件の日々御処理、対応、大変に御苦労さまに存じます。  最初に、十五日のイラク提案に対する政府対応について承りたいと存じます。  イラクは、国連決議六百六十号の要求するクウェートからの無条件即時全面撤退でなく、いわゆるリンケージ案件を含む非常に多くの難しい条件つき撤退の用意があることを表明していますが、政府はこれをどのように評価し、いかに対応しようとしているか、お伺いいたします。
  10. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 十五日のイラク革命評議会によります声明が初めて安保理決議の六百六十及び撤退の問題に言及したということは注目に値することだと思っております。しかし同声明は、イラククウェートからの撤退の態様には全く触れられていない。撤退の問題と湾岸地域からの多国籍軍期限つき撤退問題、またイスラエルの占領地からの撤退等、多くの条件が附帯されているということでございまして、国際社会が決めた安保理六百六十のイラク軍クウェートからの無条件撤退、この要求と相入れていないという認識をいたしております。  日本といたしましては、同声明内容をこのままの形で受け入れることはできず、イラクがまずクウェートからの撤退を明確な行動で示すということが強く求められると考えております。我が国追加支援湾岸の平和と安定の回復のために活動している関係諸国支援するものでございまして、平和回復活動が一日も早く成功することを心から期待いたす次第でございます。
  11. 永野茂門

    永野茂門君 ただいま外務大臣が御説明になりました日本政府対応あり方について私は完全に同意であります。国際社会の平和を維持するために、侵略は断じて容認しないという原則を貫くことは何よりも肝要であると思います。そして、国連中心とする集団安保体制を確立し、国際秩序を構築するためにも、政府はますます毅然たる対応をされるようにお願いいたします。  次に、国連中心外交についてお伺いいたします。  我が国は、憲法前文平和主義国際協調主義をとることを明示し、そのもとで国連中心及び日米基軸という二つのことを柱として外交安保政策を進めることを基本方針としていますけれども、冷戦後においては国連による集団安保体制の確立がますます重要になってきていると考えられます。そこで、これから国連をいかに強化し、我が国が今後いかに国連中心外交の実を上げていくべきかについて三、四点お伺いしたいと思います。  その第一は、国連はその目的として、「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決平和的手段によつて且つ正義及び国際法原則に従つて実現すること。」ということを憲章に述べております。最近までの国連の実効ある活動を観察いたしますと、従来はどちらかといいますと平和の維持回復、つまり平和が侵された後における回復維持ということにいろいろと実績を上げておりますけれども、この目的にもかんがみ、さらに世界の平和を安定的に維持するためにも、平和の醸成あるいは紛争予防へと拡大していくことが極めて重要であると考えますが、いかがお考えでしょうか。またさらに、本件について何か具体的提案がございましたらお伺いしたいと思います。
  12. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 冷戦が終えんした、一昨年の十二月三日にマルタの米ソ首脳会談でそのような共同記者会見が行われましたけれども、従来国連は、安全保障理事会常任理事国の中で、米国が提案したものはソ連が拒否権を発動するといった、国連中心国際外交というものの展開は現実の面でできなかったという歴史がございます。しかし、米ソの対話から協調の時代に入りまして、安保理で双方が拒否権を使わずに国際の平和と安全のためにいろいろと話し合うという環境が醸成されてきた。こういう中で、国連というものが初めて一つの大きな国際秩序維持のための機能を発揮し始めたものだという認識をいたしております。  日本国連加盟国としてこのような国連動きをかねて待望していたわけでございますが、こういう状況の中で、国際紛争解決する手段としては武力行使を行わないという国連憲章の基本的な精神が、共通の利害を排除する以外には国際紛争武力を使わないということを国連憲章の中に明記しておりますので、我々の国家も、平和で安定した国際秩序維持されなければ日本というものはこれから生存していくことは不可能でありますから、そのような意味でも、このような最近の国連動きというものには大いに協力をしなければならない、このように考えております。
  13. 永野茂門

    永野茂門君 趣旨は大変に結構だと思います。  今、特に具体的な方策については恐らく御検討中でありましょうから、お答えがありませんでしたけれども、例えば、国連世界軍事活動モニターシステムを持たせるとか、あるいはまたヨーロッパの中ではCSCEで地域的な紛争防止センターをつくっていろいろやるとかやっておりますが、そういうものを世界的に国連が設置していく、運営していくというようなことを考えるとか、あるいはさらに、後ほど別な項目で触れますけれども、単に技術の移転だけではなくて武器移転、つまり武器輸出等に対して十分な監視、規制あるいは勧告ができるようなシステムを持つとか、そういうような具体的なことも提案したらいかがかと思っておりますので、そういうことも含めて今後御検討をお願いいたします。
  14. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 委員指摘の、国際緊張をいかにこれから緩和し、事前に予防的な措 置をとっていくかということも重大でございまして、昨年の九月の国連総会におきまして、日本政府としては、紛争が起こる前にその危険性について警鐘を発し、緊張の水準を下げる予防外交安全保障理事会として事務総長とともに取り組むべきである、このような見地から、日本としては紛争予防のための必要な機能強化が可能となるよう他の加盟国とも協力していくということを申してまいりました。  なお、今委員から御指摘のように、今回のイラククウェート侵攻背景には、膨大な兵器を購入したイラクのいわゆる軍事大国化、こういうものの背景にはやはり兵器輸出というものに大きな関心があるわけでありまして、日本立場では、武器輸出については武器輸出禁止原則を今日まで政府として堅持しながら、国際的な平和と安全のために、この国会で総理は施政方針演説の中に、またあるいは私の外交演説の中に述べましたように、核、生物・化学兵器やミサイルの拡散防止を徹底するとともに、通常兵器移転についても透明性公開性の増大や、各国による適切な管理の強化が必要であり、これに関する国際的な取り決めが必要であると考えております。  本件につきまして、昨年秋の国連総会演説指摘をいたしてきましたが、また一九八八年の国連総会決議で設置された国際的武器移転専門家スタディーグループ、こういうものが設置されておりまして、日本からは大塚前駐ニュージーランド大使参加をし、検討を行う等、努力に努めてきておりますが、これからさらに一層の努力が必要なものと考えております。
  15. 永野茂門

    永野茂門君 今おっしゃったようなことをぜひ積極的にイニシアチブをとってやっていただきたいと思います。  次に、我が国国際安全保障について適正、妥当な役割と責任を分担、遂行し、また我が国立場でありますとか、あるいはアジアの立場などを国際安全保障活動政策に反映させ、また遂行に伴うリスクをシェアする。それによって我が国国際的な信頼と尊敬を得る、名誉ある地位を確立するというようなためには、この国連における安全保障政策決定に直接参加することがいいことである、こういうように思います。  そこで、我が国世界安全保障について主要国としての役割を演じ、国際意思決定参加するため安保常任理事国となるべきだとする意見国際的にも国内的にもいろいろと聞こえてきておりますが、これに対して政府は現在どのように対応しつつある、あるいはこれから対応しようとしておるか、現状その他についてお伺いしたいと思います。
  16. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 日本は今日まで安全保障理事会理事国として六回当選をして活躍してきた歴史がございます。ただ、常任理事国として国際の平和と安全のためにどのような、日本なり努力ができるようなポストを得るべきではないかという御意見でございますが、御案内のように、安全保障理事会常任理事国は第二次世界大戦戦勝国だけによって占められているのが現状でございまして、このような、戦後既に四十五年、日本平和国家として国連に加盟して国連憲章を遵守してまいりましたが、今日まで一つの大きな問題は、憲章の中にある旧敵国条項というものの存在も一つの大きな足かせになってきたものではないかと考えております。しかし、これも昨年の秋の東西ドイツの統一によって、戦後の問題というものはほとんど国際社会の中で現実問題として薄れていくという中で、日本政府はまず昨年の暮れの国連総会でこの旧敵国条項排除ということを主張したわけであります。  そういう中で、いろんな国との、来年度ちょうど安全保障理事会理事国の選挙がまたやってくるわけでありますが、今日まで国連外交を通じて、何遍か我が国が明年立候補するという意思をいろんな国に伝えて現在支持を求めておりますけれども、中には日本常任理事国に立候補すべきだということを言われる国の外務大臣が何カ国かおられます。日本国連に対する拠出金の金額から見てもまさにトップランクに入ってまいったわけでございますし、平和愛好国としても常任理事国の候補になることは私は資格は十分備わってきたと思いますが、いろいろとそれまでの各国理解協力を求めないとこの問題の解決がなかなかやりにくいということで、私どもといたしましては、まず旧敵国条項の廃止、そこからまず話を進めていくべきであろう、このように考えておるわけでございます。
  17. 永野茂門

    永野茂門君 まず旧敵国条項排除について御努力なさるということ、極めて重要なことであると思います。それと同時に、日本がそういうような条件を備えていくためには、国連に対する、特に安保理決議等に対する支持支援についてさらに明確なる行動をとっていくということも重要だろうと思います。既に現在いろいろと現湾岸危機に対しましては的確な処置をとっておられますが、将来につきましてもいろいろと確固たる行動協力を行うように処理されることを望みます。  さて次に、憲章四十三条による国連軍の設置というものは恐らく将来とも非常に困難だろう、こういうように見られます。したがいまして、今後のこの種武力制裁、平和の回復活動において、いわゆる多国籍軍あるいは連合軍というようなものが国連決議に沿って組織され、行動すると見るのが常識だと思います。そこで、現在のいわゆる多国籍軍につきましても、国連事務総長との間に若干の意思のそごがあるように見受けられる点が事務総長の口から出たり、私はそれはそのとおりだとは思いませんけれども、あるいは外で、一体多国籍軍活動はどの線までが国連決議に沿っておるというように考えられるのだろうかというような率直な疑問も投げかけられております。そういう観点から、国連決議のもとで多国籍軍行動はどの程度まで認めたらいいのだろうかということにつきましてお伺いしたいと思います。
  18. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 多国籍軍行動についての御質問でございますが、安保理決議の六七八は、イラクに対しましてクウェートからの撤退等を含む安全保障理事会の諸決議を完全に履行することをまず改めて求めておりまして、クウェート政府協力する国連加盟国に対して、累次の安保理関連決議堅持かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するためにあらゆる必要な手段をとる権限を与えておるわけでございます。  現在の多国籍軍による武力行使はこの安保理決議六七八に基づくものでございますが、この決議のもとで多国籍軍が認められております武力行使は、この決議目的でございます安保理決議堅持し、かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するために必要と認められるものというふうに理解をいたしております。現在多国籍軍参加をしております各国も、それぞれの行動目的はまさにこの安保理決議の実施、堅持湾岸地域における国際の平和と安全の回復であるということをたびたびの機会に公にしておるわけでございます。
  19. 永野茂門

    永野茂門君 今の件はよくわかりました。  次に、PKO部隊などについてお伺いしたいと思います。  ただいま申し上げましたように、いわゆる多国籍軍国連決議に沿って組織され、そして活動する、行動するというようなことが将来ともこういう事案につきましては常態だろうと思います。したがいまして、我が国参加の仕方ないしは協力の仕方といたしましては、前国会で示された国民意思に沿った我が国協力あり方を求めなければなりません。それは人道的支援のほかに、主として停戦後の平和の維持や戦後復興などに協力することとならざるを得ないと考えます。  そこで第一に、今後の国連による平和維持活動に積極的に参加し、我が国役割を果たすためには、とりあえず三党合意に基づく新組織創設しなければならないと考えますが、政府はどのように考えておられるか、お伺いいたします。
  20. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先般の臨時国会におきまして、国連平和協力法案の御審議を願い、いろいろと有益な御意見をちょうだいいたしました が、法案自身はいわゆる未成立ということで国会で採決もとれなかったわけであります。しかし、その間におきまして各党の御論議を通じて、どの党の発言もやはり国際社会協力をしなければならないという御認識だけは一致しておったと思います。しかし、その協力の仕方についてどうするかという問題が残されているわけでありまして、一応自民、公明、民社の三党合意というものが覚書として残りましたけれども、できるだけ多くの政党の御協力を得て、いわゆる国際社会の平和のために日本国民の御理解と御協力のもとでそういう貢献ができるようなことはできないものか。政府としましては、その覚書中心に、各党間の御協議、また参加されておらない政党の御意見も聞きながら、これから国連平和維持活動対応する組織あるいは考え方を確立しなければならない、このように考えております。
  21. 永野茂門

    永野茂門君 本件につきましては、政府は全国民的支持を得て新組織創設検討したい、こういうことでございますが、いずれにしろ極めて重要な組織であり、私はそうゆっくり、まあ合意を得るということは極めて大事でありますけれども、国際的な要求そして日本の置かれている立場からいいますとペースをもう少し速くする必要があるんではないかと思っています。これはもちろん政府だけの問題ではなく、党の方がしっかりやらなければいけない問題でありますが、協力してこの創設をしっかりさせたい、こう思います。  その次は、これらと関連することでございますが、既に政府の方でも総理大臣の談話等で示されておりますが、これは今回だけではありませんけれども、停戦後の被災国の戦災復旧でありますとか、あるいは経済復興などにつきましては十分なかつタイムリーな支援協力をすることが必要であると思います。今回の危機後においてはいかなる支援協力を構想しておられますか、お伺いしたいと思います。またその中で、今後のことを考えてさらに平時において継続的に準備しておくようなものを検討されておるとするならば、それについてお伺いしたいと思います。
  22. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 中東地域の紛争もやがて戦火がおさまる日が必ず来ることは間違いございません。それがいつ来るか、これは安保理決議六六〇の受諾をイラク政府決定すればその日からこの問題が始まるわけでありまして、その停戦後の地域の復興、それから民生・技術水準の向上のための経済、技術面の協力、あるいは難民等の医療援助、いろいろな問題が実は考えられるわけでございますが、まず第一に考えられるのは、平和維持軍をどうするのかという問題が第一に出てくるだろうと思います。次に、平和維持軍の後で停戦監視の問題が出てくるのでございましょう。また、このクウェートにおいて例えば選挙を行う場合には選挙監視の問題が出てくる。それに新しい行政府がつくられるということになってきた場合の行政に対するアドバイザーの派遣等も出てくるでございましょう。あるいは地域全体の軍備管理あるいは経済復興に対する経済支援、こういうものを考えますと、我々政府としても、日本として何ができるか何ができないかということを早く決めまして、そして法律ができればできたで、その法律にのっとって、国民理解のもとにそのような地域の戦後復興のために協力をしていかなければならないと考えております。
  23. 永野茂門

    永野茂門君 PKO部隊などについて最後の質問といたしまして、第一に、基本的にPKO、つまり平和維持活動とはいかなる意義を持つものであるか、またその目的は何か。これは先ほど申し上げました国民合意を得て新組織創設する場合にどういう組織創設すべきかということを考えるためにも極めて重要であると思いますのでお伺いいたします。  また同時に、従来我が国がPKO活動に対して要員派遣支援等をいろいろとやっておりますが、それについて御説明をお願いしたいと思います。
  24. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答え申し上げます。  国連平和維持活動と申しますのは、安保理または総会の決議に基づきまして国連国連加盟国から提供される要員から成りますところの平和維持軍または監視団等を関係当事国の同意を得まして現地に派遣しまして、紛争当事者間に介在しまして、ある場合には停戦の監視、ある場合には治安の維持といったことを任務として行う活動を総称しております。そういう活動を通じて現地におきますところの事態の鎮静化やあるいは紛争の再発防止というものに努めるということでございます。現在までのところ十九のそういった活動国連歴史の中で積み上がってきております。  ちなみに、このいわゆる平和維持活動、十九ございますが、その十九の中で日本は四回要員を派遣いたしております。  一つは、一九八八年の国連アフガニスタン・パキスタン仲介ミッションという監視団、二つ目は、国連イラン・イラク軍監視団、どっちも監視団でございますが、これに対して、外務省職員を国連職員といたしましてそれぞれ一名の職員を派遣いたしました。それが二つでございます。それから三つ目は、一九八九年の十月でございますけれども、国連のナミビア独立支援グループというものがございましたけれども、これに対しまして、主として選挙監視でございますが、二十七名の選挙監視要員、それからそれに対する四名の支援チームということで計三十一名の人員を派遣しております。四つ目の例といたしましては、昨年の二月のことでございますけれども、ニカラグアの総選挙が行われましたときに、やはり国連国連ニカラグア選挙監視団というものを組織したのに対しまして、監視要員が六名、支援チームとして四名、計十名の要員を政府として送ってございます。  以上が四つの例でございます。
  25. 永野茂門

    永野茂門君 PKOに対して従来我が国がいろいろと貢献しておった内容につきましてはよくわかりました。  また、今回の湾岸危機におきましては、我が国は多国籍軍国連決議に基づく各種行動を断固支持して、我が国の地位にふさわしい資金・物資協力等を決定し、また人的協力についても避難民の輸送協力等を決定して、それぞれ一部既に実行中でありますが、今後はさらに、湾岸危機の後にまたこういうような事案があることも予想されますので、ないことをもちろん望みますけれども、そういう場合においてはもっと明確に人的協力世界に対して明らかにするということが必要ではないか。また、国内に対してもこういう活動をやっておるということを明確にするということも極めて重要である。いずれにしろ、人的協力についてはさらに重視して拡大するということを、先ほど申し上げました新組織の問題とも関連してしっかりと考えていただきたい、こういうように思いますが、いかがでございますか。
  26. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先ほどから一貫していわば先生の御質問の背後にあるメーンテーマというのは、最近の東西関係の変化あるいは米ソ関係の変化ということを背景にしたところの、いわゆる国際連合の復権と言われておりますが、そういう時代の中で日本がどう対応すべきかという御議論かと思いますけれども、そういう中でまさに国連のPKOに対する役割の期待も高まっておりますし、今後の問題といたしましては例えばカンボジアの問題あるいは西サハラの問題、アフガニスタンの問題、それから今話題になっております湾岸の復興に当たっての平和維持活動の問題、いろんなところでの期待が高まっております。そういう中で日本活動を積極化していくためには、やはりきちっとした法的な基盤というものが国民のコンセンサスに基づいてできる必要がございますので、まさに先生のおっしゃるとおり、私たちできるだけ早く成案を得まして、国会の御審議を得て御了承いただくような形に持っていきたいというふうに考えております。
  27. 永野茂門

    永野茂門君 今言われたこと、ぜひしっかりとお願いしたいと思います。  次は、中東の安定策についてお伺いいたします。  御承知のように、中東は世界の火薬庫と言われておりますけれども、この火薬庫の状態は速やか に解消して、政治的に安定化し、あるいはまた経済的にも安定化し、特に石油供給などは適正にかつ安定的にコントロールされるというようなことが世界の平和のためにも極めて重要でありますし、そしてまた、それは我が国エネルギー安全保障のためにも欠かすことのできないものであると思います。  最近、十五日に行われましたイラク提案に示されておる条件的交渉条件と申しますか、これはもちろん現在遂行中の決議六百六十号の履行とは直接関係ない案件でございますけれども、そこには中東の平和と安定のために多くの解決すべき案件等も提起されておる、含まれておる、こういうように見ます。  そこで、湾岸危機後の将来にわたる中東の安定を確保するために、中東の諸問題について包括的に、かつ地域当事国のみならず関係国を含む国際的協議による解決が必要であると考えます。そしてまた、我が国は今申し上げましたような意味からいっても当然協議に参加すべきであると考えておりますが、この点いかがにお考えでしょうか、伺います。
  28. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 中東地域は非常に複雑な要素を持っておりまして、この地域の紛争解決するというためには、パレスチナ問題を除外してこの地域の平和と安定を期待することはできない。そういう意味では、恐らく中東のいわゆる恒久的な平和、安全保障、軍縮、経済の復興、それからパレスチナ問題の解決といったものを含めた一つ国際会議が持たれることは当然のことだろうと思いますが、我が国といたしましては、この地域の経済復興のためにも、あるいはまたこの地域全体の問題解決のためにも、日本としてはこの地域にやはり大きな経済的な関係を持っておりますので十分協力していかなければならない、このように考えております。  いずれにいたしましても、地域問題の解決には地域の国々の人たちの努力というものが必要でありますし、合意がなければ地域の安定はできないという認識を持っておりますが、紛争解決後の中東地域全体の国際会議には日本としても積極的に協力していきたいと考えております。
  29. 永野茂門

    永野茂門君 最後に、今のことと重複し、あるいは今大臣がおっしゃったことを確認するということになるかと思いますけれども、アラブの民族性でありますとか、アラブと西欧社会とのかかわり合いの歴史、あるいは今回の湾岸危機における情勢の推移を考えますと、湾岸危機後の中東秩序回復に当たりましては、国連中心とした国際社会協力を通じてこれを行っていくとともに、アラブ諸国のイニシアチブを十分尊重した枠組みの構築が必要だと考えます。これについてどういうようにお考えでしょうか。また、枠組みについてもし既に検討されておることがありましたらお伺いいたします。
  30. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 今回の湾岸におきます事態の後の中東秩序回復の問題につきましては、私どもも先生御指摘のとおり、域内の諸国の独自性と申しますか、民族性に注目をいたしまして、これら域内諸国のイニシアチブを私どもとしては支援し、それに対して協力するという考え方で対応することが極めて重要であろうと思っております。  また、国連役割につきましても、今後、戦後処理、それから安定、復興等いろいろな問題につきましていろいろな局面でこれが関与することになると思いますし、その場合には我が国としてもこれに対する積極的な貢献を行って、国連役割、権威の強化を図るべきものと思っております。  いずれにいたしましても、ただいままで御質問のございましたような幾つかの点を含めまして、今回の情勢の後の中東政策をどのようにするかということにつきましては、既に私どもも真剣な検討を始めておりまして、これに積極的に対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  31. 永野茂門

    永野茂門君 時間をちょっと残しましたけれども、以上をもって終わります。  ありがとうございました。
  32. 成瀬守重

    成瀬守重君 中山外務大臣また愛知環境庁長官におかれましては、我が国外交安全保障問題あるいは環境保全の問題につきまして多大な御尽力を賜っておりますことを最初に心から感謝申し上げて、質問をさせていただきたいと思います。  我が国と我が民族の安全保障を確保するためには、外交努力や防衛力の充実が極めて大切ではございますが、今日のように地球環境の問題が極めて大きな、いわば地球規模のグローバルな環境の保全という問題が安全保障にとって極めて重要なときに遭遇いたしまして、この問題を無視して日本外交あるいは安全保障は考えることができない時代に立ち至っていると考えます。この地球環境問題に関しましても、酸性雨あるいは砂漠化、海水の汚染、土壌の汚染など極めて重要な問題が山積いたしておりますが、その中にあってまず地球温暖化の問題について御質問申し上げたいと思います。  地球温暖化問題は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれのある重大問題であり、温度上昇による海面水位の上昇や気候の変化、さらには人間の居住環境への脅威等、自然、経済及び社会のシステムに重大な影響があると言われていますが、具体的にはどのような影響が生じると予測されるか、環境庁長官にお伺いしたいと思います。
  33. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 最近のいろんな科学的な調査を集約いたしました、いわゆるIPCCと申します気候変動に関する政府間パネル、国連の機関でございますが、そこで出しました報告書によりますと、今後特段の対策を講じなかった場合には、地球全体の平均気温は二〇二五年までに摂氏約一度、来世紀末までには摂氏約三度上昇するというふうに予測をされております。海面の水位もこれに伴いまして来世紀末までに約一メートル上昇するのではないかと予想をされております。  もしこのことが本当に起きたといたしますと、予想される影響としましては、穀倉地帯の収穫の減少あるいは森林の衰退など農林業への重大な影響、あるいはこのような急激な気候変動についていけない動植物の絶滅などの生態系の攪乱、あるいは半乾燥地帯などでの水不足の深刻化、また伝染病や熱ストレスの拡大による健康への影響、さらには例えばモルジブ等の島国の消滅、あるいはバングラデシュ等における沿岸地帯の水没による数千万人の難民が発生する可能性、こういったようなことなどが指摘されておりまして、これは大変深刻なことと認識をいたしております。
  34. 成瀬守重

    成瀬守重君 昨年秋に決定し、国際的にも高く評価された地球温暖化防止行動計画について、実施可能な方策から着実に実施に移すために、政府として具体的にどのように取り組むか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  35. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 昨年十月に我が政府といたしまして地球温暖化防止行動計画を策定したわけでございますが、この計画に盛り込まれました対策は、今後二十年間を見通して実行可能な対策の全体像を示したものでございます。ことしはこの計画の初年ということで、環境庁及び関係省庁はもとより、地方公共団体等の協力も得ながら、この行動計画に定められたそれぞれの項目について実施可能な対策から着実に推進するとともに、今後対策を具体化するために必要な新たな政策についても幅広く検討していくことといたしております。  環境庁といたしましては、平成三年度からこの行動計画を地域に即して円滑に推進するためのモデル的な地域計画の策定、これは予算には五つの都道府県の指定都市にこれを委託するという計画になっておりますが、モデル地域、さらに各省庁との連携による効果的な温暖化防止対策の導入のための社会システムづくりに関する研究等を開始することにいたしております。こういうことを始めることにより今後の温暖化防止対策の総合的な取り組みに弾みをつけたい、このように考えております。
  36. 成瀬守重

    成瀬守重君 続きまして、中山外務大臣にお伺いしたいと思います。  我が国は、地球温暖化防止行動計画を策定するとともに、昨年の七月九日より三日間にわたって開かれましたヒューストン・サミットにおいて、海部総理が地球再生計画としてこの趣旨を盛り込んだ内容、経済宣言を提唱し、各国協力を得たということを存じておりますが、これらを踏まえて今後いかに国際的な貢献を進めていくのか。特に気候変動枠組み条約交渉に積極的に参加し、我が国国際的な合意の作成に貢献すべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  37. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今委員指摘のように、昨年のヒューストン・サミットにおきまして、日本政府はこの地球再生計画を紹介いたし、このために各国協力して努力すべきであるというふうに主張をいたしてまいりました。各国ともこれに対して協力意思の表明がございました。我が国環境問題でかねて大変大きな経験をしてまいった国家でございますし、その問題を解決するために、習得した技術並びに日本の経済力をもって地球全体の環境維持のために各国協力しながらこれからも努力をしてまいる、こういうことで、外務省といたしましても環境のための大使を最近任命いたしまして、これから大きく展開しようとする地球環境の問題に積極的に取り組む考え方でおります。
  38. 成瀬守重

    成瀬守重君 続いてお伺いいたします。  地球温暖化防止を初め地球環境の保全を図るためには、途上国の環境保全対策への支援が極めて重要だと考えますが、この問題にどのように取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
  39. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 途上国の公害問題、やはり地球環境の汚染の問題というのは極めて大きいと思います。地球の温暖化に一つの大きな影響を持っている焼き畑農業とか、あるいは熱帯雨林を乱伐するとかいったような問題がいろいろございますが、一九九二年六月にブラジルで開かれます国連環境開発会議は、地球環境問題に対して国際的な取り組みを集大成するという考え方を持っておりまして、先ほど申し上げましたように日本としては積極的に取り組んでおりまして、準備委員会の副議長を務めております。同会議に向けまして進められる地球温暖化防止環境保全のための国際的枠組みづくりの作業に積極的に今参加しておる。今申し上げましたように、地球環境担当大使も新たに政府としては任命いたしております。  この途上国の重要性を踏まえまして、八九年度より三年間に環境分野で三千億円の資金を提供することを既に国際公約いたしておりますが、UNEPの地球環境保全技術センター、これを日本に誘致したいということで関係国といろいろと協議をいたしておるところでございます。  さらに、国連会議に向けたアジア・太平洋地域の取り組みを推進するために、ESCAPの環境地域戦略の策定に対しまして積極的に支援を行っておりますほか、この七月には同地域の環境大臣を日本に集めましてアジア・太平洋環境会議を開催することに相なっております。
  40. 成瀬守重

    成瀬守重君 続いて、湾岸原油の流出関係について環境庁長官にお伺いしたいと思います。  湾岸原油流出による環境汚染対策について、愛知大臣は二月一日パリで開かれましたOECDの環境大臣会議に出席されて米国と協議を行ったと承知いたしておりますが、この後この問題に関して環境庁として具体的にどのように取り組もうとなさっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  41. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 今般の原油の流出につきましては、地球環境の破壊、周辺諸国民の社会生活への悪影響といったようなあらゆる観点から大変憂慮すべき事態と私どもも認識をいたしております。  我が国といたしましても、国内でいろいろと過去苦い経験等があるわけでございますが、こういったような経験を十分生かして、ぜひこのペルシャ湾における原油流出に対して国際機関との協調あるいはアメリカその他関係諸国との協議を踏まえつつ可能な限りの協力を行いたい、行うべきである、このように考えているわけであります。  こういった考えをもとにいたしまして、まず環境庁におきましては、原油流出が明らかになりました直後、具体的には一月の二十八日でございますが、庁内に湾岸原油汚染等対策検討プロジェクトチームというものを発足させまして、早速情報の収集あるいは分析、対応策の検討を行っているところでございます。  また、今委員指摘のとおり、一月三十一日にOECD環境大臣会議に、この会議はそもそもほかの目的で開かれていた会議でございましたが、このような事態が起きましたので、急遽この問題につきましても協議をされたわけでございますが、私も総理の御指示をいただきまして、国会開会中ではございましたが特にお許しをいただきましてこの会議に急遽出席いたしてまいりました。そして、その会議に出席して各国の大臣と協議をすると同時に、主要国、つまりアメリカのライリー長官あるいはイギリスのへーゼルタイン環境大臣等と個別に会談をいたしまして、今後の連携強化を約束してまいりました。また、国連の機関でUNEPというのがございます。国連環境計画、ここの幹部がそこに来ておりましたので、この幹部とも接触をとりまして、今後我が国としても積極的に貢献していく意思のあることを伝えた次第であります。  この国連環境計画、つまりUNEPが、その後二月の五日、六日にジュネーブにおきましてこの湾岸石油流出に関する関係機関の会議を主宰いたしまして、ここでいろいろ協議をされたわけでございますが、そこにも環境庁から海洋汚染あるいは野生生物などの専門家を三名派遣いたしまして、積極的にこれに参加をいたしてまいりました。  また、米国におきましては、私と長官との会談を踏まえまして、環境庁並びに外務省の担当官がその後ワシントンで接触いたしまして、いろいろ情報収集、交換等を行ってまいっております。  こういうことを踏まえて、今後湾岸の情勢に的確に対応しながら、国際的な協調のもとで現地における調査あるいは対策立案、環境浄化、再生事業等に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  42. 成瀬守重

    成瀬守重君 続いて、外務大臣にお伺いしたいと思います。  今般の湾岸の石油流出、海洋汚染、これはまさに環境破壊戦争と言ってもいいような状態にあり、海の生態系の破壊が憂慮されておりまして、湾岸のエビや貝、魚の繁殖地に大きな被害をもたらしていると思いますが、我が国はこういった事態に対応し、緊急に一九九〇年の油汚染に対する準備、対応及び協力に関する国際条約、OPRC条約の早期締結を行うべきではないかと考えられますが、いかがでございましょうか。
  43. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 条約の問題でございますので私の方からお答え申し上げますけれども、先生御指摘の条約は、経緯といたしましては八九年三月のアラスカにおきますところのエクソン・バルディス号の大量の油の汚染が発端でございまして、その後国際海事機関が中心となりまして、いろいろこういう事態に対応する国際社会の枠組みを決めるということで検討してまいりました結果、昨年の十一月にロンドンで採択された条約でございます。  中身といたしましては、例えば油の汚染の緊急計画の備えつけの問題であるとか、あるいは油が排出されたときの通報の義務の問題、あるいは通報を受けた際の締約国がとるべき措置、そういったことを受けての国際協力ということを規定しておりまして、中身といたしまして日本としては積極的に賛同できるものでございます。しかしながら、何分条約採択後日もたっておりませんで、私たちとしては、まずこの条約に加入した場合に国内法としてどういう国内法の改正が必要なのかあるいは必要でないのかという検討が必要でございまして、そういう点を含めて現在環境庁と事務的な検討を続けております。基本的には前向きに取り組むべき条約であるというふうに考えてございます。
  44. 成瀬守重

    成瀬守重君 続いて、外務大臣にお伺いいたします。  ペルシャ湾の原油汚染防止のためにオイルフェンスが有効であるということを伺っておりますけれども、現在流出の原油の幅は十六キロにわたり、長さは五十六キロ以上にわたっていると伺っておりますが、こういった広い地域にわたって全体を囲むためには相当大規模のオイルフェンスが必要とされると思いますが、現在日本で最大のオイルフェンスの製造メーカーはブリヂストンと伺っておりますけれども、年間の生産量というものは九十キロから百キロぐらいしか生産が追いつかないということを聞いております。しかも受注生産であるために在庫は乏しい。こういう状態の中にあって、環境汚染を防止し、ひいては地域の安全保障を確保するためにも、今日までのオイルフェンスの輸送、提供の進捗状況、いわばそういった面での日本の貢献度合いというものはどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
  45. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 私ども今回の原油流出について情報を得ました時点におきまして、先生御指摘のとおり、これは非常に環境の問題あるいは海水淡水化設備の保護の問題等重大な問題であると認識をいたしまして、まず我が国として何が協力手段として可能であるかということの検討、それからサウジアラビアを初めといたします関係国が何を要請しているかということの照会等、迅速に手を打ったわけでございます。  その結果、やはり当面いわゆるオイルフェンスが早急に必要であるということで、これは海上保安庁あるいは通産省とも御協力をいたしながら、我が国として入手可能なオイルフェンス三十一キロメートルを早急に関係国に送付することといたしました。それで、送付は二月五日から開始いたしまして、既にサウジアラビア向け約十七キロメートルが先方に到着いたしておりますし、そのほかバーレーン、それからカタールからも要請がございますので、これに対しても現在送付を行っておるところでございます。  サウジアラビア向けのフェンスは既に展開をされ始めておるわけでございまして、これらはそれぞれ、非常に広い地域を全体として囲うというのはなかなか難しいようでございますが、淡水化施設等の周辺を囲うために使われております。サウジアラビアにおきましては、十一日にナーゼル石油大臣がテレビでこの問題について話をいたしまして、その際に、この原油流出の問題について諸外国からの支援を得ているということの中で我が国の名前を挙げまして、我が国を含む多くの国からの資機材の供与に深い感謝を表明するということを述べておるということを御報告申し上げたいと思います。
  46. 成瀬守重

    成瀬守重君 湾岸の流出原油に対する問題のみならず、二十一世紀に向けて我が国は地球環境の保全にリーダーシップを発揮し、さらには世界の国々に対してのさまざまな貢献をしていかなければならないわけですが、今後内外にわたる重要課題である地球環境問題にどう対処していくのか、この問題につきまして愛知大臣に御所見を伺いたいと思います。お願いします。
  47. 愛知和男

    国務大臣(愛知和男君) 地球環境問題は人類の生存基盤にかかわる重大問題でございまして、あらゆる人種あるいは国境、思想、信条、文化、歴史、こういったようなものを乗り越えて人類が力を合わせてその解決に取り組んでいかなければならない課題であると認識いたしております。我が国は高度な経済活動を営み、地球環境に大きなかかわり合いを持つと同時に、公害防止等の分野で豊かな経験とすぐれた技術力を有しておりますので、我が国がその国際的地位に応じた役割を積極的に果たしていくことが肝要であろう。また、このことが我が国世界に対する貢献策、貢献できる分野として最もふさわしい、我が国らしい分野の一つではなかろうかと認識いたしております。  このような認識の上に立ちまして、政府といたしましては、地球環境問題を内政、外交上の最優先課題の一つとして位置づけまして、地球環境保全に関する関係閣僚会議、こういうものを設置いたしております。ここで申し合わせました基本方針に従いまして、国際協力及び国内政策の両面にわたって取り組みの強化に努めているところでございます。特に、先ほど委員もお触れになりましたけれども、地球温暖化防止行動計画を昨年十月、関係各省の御理解、御協力をいただきながら策定いたしましたが、この計画は国際的にも大変高く評価されております。これを着実に実施に移していくということなども大変肝要なことだと思っております。  今後とも、地球環境問題をめぐる内外の情勢に対応しつつ、エネルギーの効率的利用あるいはリサイクルの総合的推進など、これらはこの行動計画に盛り込まれた大変大きな柱でございますが、この政策の着実な実行のために国内の体制づくりあるいは国民に対しましていわゆるライフスタイルを見直していただくというような点なども大変大事なことでございますので、そのような国民運動を盛り上げていくための施策なども実施していきたいと考えております。  さらに、発展途上国の支援ということも大変大事な分野でございまして、この点につきましても必要な措置を強力に推進していきたい、このように考えております。
  48. 成瀬守重

    成瀬守重君 ありがとうございました。  続いて、湾岸危機について外務大臣にお伺いしたいと思いますが、今回のようなイラククウェート侵略を放置すれば、今後国際社会にも類似の事件が頻発することとなるであろう。そういった意味において、国連決議に基づいた今般の加盟国による武力行使国際秩序維持の面からも極めて重要な意義を持つのではないか。我が国としてもできる限りの支援を行うのは当然ではないかと考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  49. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今回のイラク武力によるクウェートへの侵略、そしてそれの併合というようなことは、日本のような国がかねて国際社会に求めている安定した平和的な国際秩序というものを乱すものでございまして、我が国のような考え方というものからしても、このようなことは断じて許すことができないという考え方を持っておるわけであります。  米ソの対決が終わり、これで地球に安定した平和な日が来ると思っておったのもつかの間でございまして、地域紛争が発生してくる。このような地域紛争が今後とも起こり得る可能性は世界各地に多く存在していると私は認識いたしておりまして、日本としては、国連中心外交をやる上に、国連の権威に対して挑戦するといったようなイラク行動を許すわけにはいかないという考え方でございます。  また、これは安保理決議の六百七十八号に基づいて、侵略排除し、平和を回復するための最後の手段としてとられた関係諸国による共同行動、こういう平和回復活動というものを日本政府としても積極的に支持してきておりますが、日本は軍事的に協力するというわけにはまいりません。そういう意味で、経済的な面で日本国際連合から求められている加盟国への協力ということについての経済的協力をいたしておるということでございます。
  50. 成瀬守重

    成瀬守重君 この湾岸問題についてでございますけれども、アメリカ国民がブッシュ大統領を初めとする米国政府に対して極めて強い支持を与えているようでございますが、それについてブッシュ大統領がテレビあるいはマスコミを通じての呼びかけというものをよく行っておられるようです。アメリカではかつてはルーズベルト大統領による炉辺談話というのが行われて、国民に対して政府の方針、意図というものが極めてわかりやすく徹底できるようなPRが行われたようでございますが、今回の問題につきましても、我が国においてもテレビあるいは新聞を通じて政府の意図されることあるいは現在の国際情勢、そういったような問題について炉辺談話のような形で国民に語りかけて理解を深めるようなあり方を海部総理あるいは外務大臣が行われるような必要があるのではないかと考えておりますけれども、いかがでご ざいましょうか。
  51. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今日、私外務大臣を務めさせていただいておりまして一番痛感いたしますことは、国民の皆様方が日本国際社会における立場、また日本外交というものに御理解をいただかないと、国論が分裂してまいりまして、国際社会では外交というものをやっていくのに大変難しい時代がやってまいったと思います。  一方では、テレビの国際サービスを通じて世界動きが刻々と国民の家庭生活の中に報道されておりまして、そういう意味からは、日本あり方、考え方というものを責任者が国民に向かってわかりやすく説明することが非常に重要な時代がやってきたと考えております。
  52. 成瀬守重

    成瀬守重君 そういった意味におきまして、産経新聞が二月十五日付で報道しておりますが、これは最初の通告にはございませんけれども、御意見をお伺いしたいわけです。  アメリカにおいて、「真珠湾攻撃の日」を指定する決議案というものを共和党のハスタート下院議員が呼びかけて、五十人以上の議員の共同提案になっているということが報道されております。こういった問題につきまして、私どもはアメリカとの友好親善というものは極めて大事だと考えておりますが、リメンバー・パールハーバーといったようなものが制定されてアメリカ国民にPRされるというようなことになると、これは日米の友好親善という面において好ましくないんではないかと考えますけれども、これについて外務大臣としての御所見を伺いたいと思います。
  53. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今委員から御指摘のことは、二月十五日の産経新聞に載った報道だろうと思います。  私も外務大臣に就任して、ちょうど今年十二月七日が日米開戦五十年という年に当たるわけでありますけれども、この五十年を振り返ってみて、日本が戦後の歴史において安定した国民生活が維持できたのは日米安全保障条約というものが堅持されてきたからだと私は考えております。この条約も、相手国から通告を行えば一年後には解消できるというような仕組みになっておりますが、日米関係というものは堅持しておかないとこの国の安全というものは保障できない、私はそのように絶えず認識いたしております。  なぜかといえば、我々は海洋国家でございますし、貿易立国でございますから、我々の国の周辺が安定していないと我々の国は成り立たないわけでありまして、こじんまりと国内だけで生きていくというようなことはとても日本の今の国民には迎えられないことでございましょう。そういう意味で、今回アメリカの議会で真珠湾五十年の記念の日を指定するというような決議案を五十名を超える議員が提案をしているという報道は極めて遺憾なことでございますが、行政府同士の話し合いは極めて信頼関係が濃い関係にあるということを申し上げておきたいと思います。  私も就任以来ちょうど十五カ月ぐらいになりますけれども、アメリカの外務大臣と言われるベーカー長官とは十一回地球全体の問題あるいは日米関係の問題についていろいろと話し合いをいたしてまいりました。ただ、最近のアメリカの国民感情の中には、アメリカは今対外債務が一番大きな状況になってきた、日本はまた世界最大の金を持っている国になってまいりましたし、貿易は一方的な黒字が毎年計上されて、日本側が黒、アメリカが赤という状況が続いている。そういう中で、日米間の友好関係というものを堅持しながら、貿易不均衡をならして拡大均衡に持っていって、アメリカの経済に対しては、日本側も先般来のSII、構造調整協議でアメリカの弱点について日本側は問題点を指摘し、アメリカは昨年来これの改善に努力しておりますが、お互いがお互いに言いたいことを言い合うという関係を堅持しながら日米友好関係を維持していくということが、日本外交にとっても国民にとっても極めて大きな基本的な問題であろうと考えております。  そういう意味からいいますと、このような決議案が一応用意されているということにつきましては、日本政府としても重大な関心を持っているわけでございますが、私は率直に申し上げてこれだけの友好関係を持ちながら人と人との交流がまだまだ不足している。戦後日本を占領して、占領軍として、軍人として日本に来ておった人たちはもうほとんど指導者階層から引退しております。そして戦争を知らない世代が新しく議会にもたくさん進出してきて、とにかく一つの現実に基づいた批判を行う、こういうのが今日の姿ではないか。そういう意味で、日米親善交流基金というものを昨年の補正予算でお願いをいたしまして、これで日米関係の人物交流を積極的にやっていかなければならない。我々は……(「言うべきことをはっきり言わなければだめだ」と呼ぶ者あり)「言うべきことをはっきり言わなければだめだ」という考え方をお述べの方もいらっしゃいますけれども、言うべきことは日米構造調整協議で日本政府は厳しく相手に対して忠告を与えておりますし、アメリカ側も日本に忠告を与えてきた。こういう日米関係のやりとりができている間は私は日米関係というものは健全であると信じております。しかし、日本が自分の利益だけを考えて行動した場合にはアメリカの国民は決していい感情を持たないだろうと思います。  そういう意味では、我々はやはり国際的に市場を開放していくという開放経済の方向を経済面では堅持しなければなりませんし、安全保障の面では今国会にお願いをする地位協定等を通じて対等の立場安全保障に対する負担を持つということが経済大国になった日本の大きな一つの責務であろうと考えております。そういうことをしっかりやっていけば、私はこのような法案あるいは決議案を出すアメリカの議員はなくなっていく、このように信じております。
  54. 成瀬守重

    成瀬守重君 御所見を承りまして、本当にそういう意味での日米親善友好の重要性というものを改めて感じたわけでございます。  同時にまた、アメリカにおいて共和党のハンター下院議員が日本の中東貢献不足をやり玉に上げ、この地域からの石油輸出比率に応じて日本に対し米国への財政支援要求できる法案を提出している。石油の六四・五%を中東によっている我が国としまして、このような法案は、単に日本が経済的に大きな打撃を受けるというだけではなくて、さらに米国との友好のあり方の中に影を差すようなことになるんではないかということも考えられるわけですが、先ほどの中山外務大臣の御所見にもございましたが、こういった問題につきましても我が国としてどのような対応を考えていったらいいのか、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  55. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 中東に対しての石油依存度だけで日本の分担というものを決めてしまうということは、私は日本政府としては納得のできない考え方であります。  我々が中東地域に石油を依存しておるということは現実的にはそのとおりでありますけれども、中東地域全域の経済の復興あるいは長期的な安全保障あるいはパレスチナ問題の解決といった問題はたくさんあるわけでございまして、中東の紛争が終わった後の国際会議等を通じて、技術の提供あるいは生産管理システムの指導あるいはパレスチナ問題の解決、あるいは例えば一つの話として出ております中東復興銀行の設立構想などといったものについても日本政府としては十分これに対応していくという考え方でおりますので、アメリカの議員が提案しておる石油依存度に比例した日本の負担ということを考えるのは私としては理解ができないということでございます。
  56. 成瀬守重

    成瀬守重君 ありがとうございました。  以上で終わらせていただきます。
  57. 中西一郎

    会長中西一郎君) 以上で午前の質疑は終了いたしました。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  58. 中西一郎

    会長中西一郎君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、外交総合安全保障に関する調査を議題とし、「九〇年代の日本役割—環境安全保障あり方—」テーマとして質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  59. 野田哲

    ○野田哲君 まず外務大臣に伺いますが、二月十五日の夜、イラクの革命評議会から国連安保理事会決議の六六〇を受け入れる用意がある、こういう趣旨の声明が出されています。これをめぐって国際的にもいろいろ評価が分かれております。アメリカやイギリスに代表される、検討の余地は全くない、こういうにべもない態度もあるし、インドやその他の非同盟諸国のように歓迎の意向を表明している国々もある。また、この問題に大きな影響力を持っている、そして和平の調停工作を行っているソ連あるいはイランなど、条件つきとはいえ初めてクウェートからの撤退意思表示があったことを評価すべきだ、こういう受け取り方も表明されております。  これについて、九十億ドルもの多額の経費を負担しようとしている日本政府の態度がもう一つ明らかでないように思うわけであります。私どもは、従来のイラクの態度からすればこれは一つの変化であって、撤退ということを初めて表明したわけでありますから、湾岸戦争の平和解決に向けての重要なきっかけにすべきだ、こういうふうに考えているわけでありますが、これについて外務大臣としてはどのような見解をお持ちでしょうか。
  60. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) イラク革命評議会声明というものが初めて安保理の六百六十の決議に触れたということについては、深く注目をいたした次第でございます。しかし、他の安保理決議をすべて否定するような条件がついておったり、いろいろと条件が幾つかついておりまして、日本政府としてはクウェートからの一日も早い無条件撤退ということをかねて主張してきておりますので、一応イラクの革命評議会からの声明というものには注目をいたしておりますけれども、原則国連安保理決議六百六十というものの実施、いつから実行するかという強い意思声明の中に盛られていなかったということは大変残念に思っております。
  61. 野田哲

    ○野田哲君 注目という見解が今表明されたわけですけれども、日本としては、もっと積極的に和平に向けての調停といいますか、何らかの対策を示すべきではないか、こういうふうに思うわけでありますし、その後の報道によるイラク外務大臣の見解では条件ではない、撤退についていろいろ述べている点についてはこれは条件ではない、こういう表明もされているわけでありますから、九十億ドルもの金を出そうという国としてはもっと積極的に停戦、和平、これに向けて動いてもいいのではないか、私はこういうふうに考えるんですが、いかがですか。
  62. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) もっと早く日本が和平のために動いたらどうかということで御意見がございましたが、我々は安保理決議が実施されるということがすべての問題の解決の入り口であるという考え方を持っております。  御案内のように、この地域の戦火がいかに拡大しないでおさまるか、先般の訪ソに際しましても、ゴルバチョフ大統領あるいはベススメルトヌイフ外務大臣との会談においても、ソ連政府安保理六百七十八決議の完全実施ということでは日本政府あるいは他の国々の考え方と何ら変わらないということをはっきりと言われておりますし、私どもは、この決議を実施するという決断をイラク政府が行ってもらうことによって初めていろんな交渉の手続、手順というものが始まるというふうに認識をいたしております。
  63. 野田哲

    ○野田哲君 一月二十九日に米ソの外相会談が行われております。ここで、イラククウェートからの撤退を明確に約束をすれば停戦は可能と考えている、こういう合意がされて共同声明まで出されたわけでありますけれども、その後、ホワイトハウスの方が否定的な見解を表明する、こういう経過があったわけであります。  この間、アメリカのブッシュ大統領が、日本時間で十六日の午前零時にワシントンで開かれた全米科学推進協議会、ここの年次総会で演説をして、その中で、イラクが同日表明した国連安全保障理事会決議の六百六十を受け入れる用意があるという声明を拒否する、こういう意思表示をした中で、湾岸戦争を停戦させる道としては、イラク軍クウェートからの無条件撤退のほかにサダム・フセイン大統領を打倒することである、こういう演説をされている。これは私どもは報道で知るしかないわけでありますが、報道では確かにそういう言葉が使われているわけであります。そうすると、この十六日にブッシュ大統領が表明をされたクウェートからの撤退と、もう一つはフセイン大統領が倒れることが停戦の条件だ、こういうことであるとするならば、これは国連安保理決議の六百七十八を越える過剰な介入ではないか、こう言わざるを得ないと思うんです。  このことは、今まで海部内閣が態度表明をした中では国連安保理決議を守るためにということを湾岸協力の大義名分にしていたわけでありまして、そういう点からして、フセインを倒すまで戦いは続けるんだ、こういうことであるとするならば、今までの日本のとってきた態度とは大きく状況は異なってくると思うんですが、その点はいかがですか。
  64. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 最初に、私から事実関係等を若干御答弁をさせていただきたいと思います。  まず最初に、十五日に発出されましたイラクの革命評議会の声明でございますが、この声明は、安保理決議六百六十号につきまして次のように述べておるわけでございます。  すなわち、イラク撤退を含む名誉ある受け入れ可能な政治的解決に到達するため、一九九〇年の安全保障理事会決議第六百六十号を取り扱う用意がある。イラク側の撤退問題を準備するに当たり、実施されるべき第一段階は次の諸点に結びつけられるであろうといって、その下に相当数のいろいろな点を挙げまして、その中には先ほど大臣から御答弁のございましたように、決議六百六十一を初めとする関連安保理決議のすべてを撤廃するというような条件も入っておるわけでございます。  したがいまして、私どもはここで決議六百六十及び撤退ということに言及しているということは注目いたしておりますけれども、この意味は必ずしも決議六百六十ないしクウェートからの撤退を受け入れたというふうには解せないというのが現在問題であろうかと思っておるわけでございます。  それから、ブッシュ大統領の演説でございますけれども、ブッシュ大統領は最初に次のようなことを言っております。  すなわち、改めてイラクが無条件撤退しなければならないということ、すべての安保理決議の完全な実施がなされなければならないということ、それからクウェートの正統政府クウェートに帰らなければならないということを明らかにしたいということを申しまして、イラク軍が目に見える形でクウェートを去ることによって大規模な撤退が始まるまで安保理決議六七八のもとで行動している多国籍軍国連決議の遵守のための努力を続けるだろうということを申しております。すなわち、ここで米国の目標はやはりイラククウェートからの撤退クウェート正統政府の復帰を含む安保理決議の実施にあるということをまず言っておるわけでございます。  その後で先生今御指摘発言がございますが、これは大統領が、現在の流血の事態をとめるためにはほかにもう一つの方法がある。それはイラクの軍部及びイラク国民が実権をとってサダム・フセインに身を引かせることであるということを言っておるわけでございまして、これはその後、国務省の報道官等もこの真意を説明しております。つまり、流血の惨事を避けるためにはイラク 国民あるいはイラク軍がサダム・フセインに身を引かせるということであればそれも一つの方法であるということを言っておりますわけで、これが現在の米国の目的であるとか、あるいはそこに米国が何らかの形で介在するとかということを言っておるわけではないということでございます。
  65. 野田哲

    ○野田哲君 それにしても、報道から伝えられるところでは、ワシントン・ホワイトハウスの目的はフセイン体制を倒すというところにかなりのウエートがかけられていて、これはどうもやはり六百六十号だけではない、こういう印象を持たざるを得ないわけでございます。これは押し問答になるわけでありますけれども……。  きょうの午後四時ごろになるようでありますけれども、モスクワにおけるイラクの外相とゴルバチョフ大統領との会談、これについてはどういう感触をお持ちですか。
  66. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先般来日されたプリマコフ氏とお目にかかったときに、実際のイラクの考え方というものはどういうことであったでしょうかという意見を出しましたところ、アジズ外相がモスクワへ来たらいろいろと意見が出てくるだろう、こういうお話がございましたから、今委員指摘の本日午後四時の会談でございますか、これは注目すべき会談になるのではないかと思っております。それ以外のこの問題に関するイラク側の真意というものは我々にはまだわからないということでございます。
  67. 野田哲

    ○野田哲君 別の問題で外務大臣の見解を伺いたいと思うんですが、政府湾岸戦争に対する対応は、一つ自衛隊の輸送機の派遣、もう一つは九十億ドルの軍事費の負担、こういうふうな法制的にもまた国民合意を得る上でも非常に無理なことを世論を無視して強引にやろうとするためにタイミングを失って実効がないものになっている。特に被災民の救援のための輸送については、既に民間のボランティアの募金によってロイヤル・ヨルダン航空の民間機をチャーターして輸送が行われている。実効を上げているわけであります。  政府は、このような方法があって、しかも、国民の共感を得られる措置なのでありますが、そのことをやろうとしないで強引に、自衛隊機の派遣に固執している。一体これはどういうわけですか。
  68. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 委員も御案内のように、国連の委託を受けましたIOMから一月の初旬でございましたか上中旬に、各国政府に難民の輸送に関しての情報の収集を依頼する文書が送られてまいりました。それには、今回のいわゆる湾岸紛争によって起こってくる難民の輸送について、これからさらに難民が激増した場合に民間機による努力だけでは十分とは思われない可能性が出てきている。そういう前提に立って、もし民間機の不足が生じた場合に備えて、各国政府に対して、提供できる民間航空機及び軍用機の情報を提供してもらいたい、こういう公式の依頼文書がございましたので、民間機についてはカイロまでの日航あるいは全日空の飛行機を提供する用意がある。また、一部軍用機については、C130というようなものを日本政府としては持っているわけでありますけれども、これについては御案内のように、政令等ほかいろいろの問題がございますからそういう問題も処理してからでございますが、いずれにしても民間機が優先して難民の輸送に当たる。しかし、莫大に難民の数が発生してとても運べないという状況になったときに、各国協力できる飛行機というものの提供がどういうふうな状況下にあるかという情報を収集した。このような経過があったことをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  69. 野田哲

    ○野田哲君 実際問題として、今のヨルダンの状況からすれば、難民が非常にふえるであろうということが予想される地上戦争ということにもしなったときには、とても自衛隊機がアンマン空港に輸送のために着陸できる状況にはないんだろうと思うんですが、その点いかがですか。
  70. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) お答え申し上げます前に、一言ごあいさつ申し上げさせていただきます。  私、昨年末の内閣改造に当たりまして防衛庁長官を拝命いたしました。内外まことに多端な折に、国の根幹にかかわる大任を担うことになりました。皆々様の御協力を賜りながら全力を傾注してまいるつもりでございますので、どうぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。  さて、ただいまの野田先生の御質問にお答え申し上げますが、まず、我が国といたしまして今回の問題に対処するのは九十億ドルと自衛隊機の派遣という二つしかないじゃないかという御指摘ございましたけれども、私どもといたしましてはほかにもいろんな面でやっておるわけでございます。避難民の問題に関しましても、御承知のとおりこの問題を担当します国連の機関に対してその所要経費三千八百万ドルを既に拠出したところでございますし、また、政府といたしましても民間の航空機、日本航空、全日空の御協力を得まして既にベトナム、タイ等の避難民を輸送した、こういうこともあるわけでございます。そしてさらに、先ほど先生御指摘の民間の方々の御基金によります外国の航空機での輸送、政府のしたことではございませんが、これも日本全体としては今回の問題について国際的に貢献したということで高く評価されるのじゃないか、このように考えております。  ただ、私ども自衛隊の輸送機の問題につきましては、そういったいろいろな努力がなされている中で、我が国に対して避難民の輸送について国際機関から要請がある、そういった場合に民間機の活用によって対応でき、対処できる場合には我々が、自衛隊が出る必要はないわけでございますけれども、自衛隊の飛行機を活用するしかこの要請にこたえることができない場合、そういったことに備えましていろいろな検討をしたり、準備をしているところでございまして、何が何でも自衛隊の輸送機を飛ばそうなんという意図があるわけではございません。そうしてまた、避難民が大量に発生せず、発生することを我々も望んでおるわけではございませんから、そのニーズが出てこなければそれはそれで備えましたけれども出さなくて済んだということでよろしいんじゃないか、こう思っております。  さて、そういった避難民が大量に発生するのは地上戦に移行したケースではないか、そういったケースにおいてはヨルダン空港に自衛隊機の発着ということは難しいんじゃないか、これが私の分野に対する質問の中心でございましたけれども、その点につきましてはまだ今具体的なケースがございませんので何とも申し上げられません。もとよりそれはヨルダンになりますか、あるいはほかの地域になるかわからないわけでございますが、避難民の輸送というニーズが出てまいり、我が国として民間機で対応できない場合に我々が出ていくわけでございます。C130というのは我々が予定している機材でございますが、それでも運航が難しいという状態であればこれは当然できないわけでございます。  ただ、民間の航空機の場合にはいろんな観点からの配慮があるんだと思います。単に危険だから飛べないというだけではなくて、それは営利会社でございますから、保険の方は掛けられるかどうかとか、あるいはその他のその仕事の旅客、需要でございますね、その関係からその機材が割けるかどうかとか、そういったあらゆる状況勘案の上にお考えになるんだと思います。民間航空会社でもそういう事情がございます。あるいは現地の飛行場、アンマンなりなんなりの飛行場の方で、そのとき事態によって民間航空機はだめだけれども、飛行は制限されるけれども、それ以外の自衛隊機等であれば許されるというケースもあり得ると思うのでございます。  そういった具体的な状況に応じて、民間機では対応できないけれども自衛隊機で対応できるというケースに我々は備えておる、こういうことでございます。飛行できないような状態であれば、それは当然やらないということです。
  71. 野田哲

    ○野田哲君 断っておきますけれども、私は飛行可能な状況なら飛んでもいいと申し上げているのではないのでありまして、法制面の問題等はまた 場所と機会を改めて議論を行うことになると思うんです。  角度を変えて外務大臣に伺いたいと思うんですが、一月二十九日にアメリカのブッシュ大統領の一般教書演説が行われております。それを読むと、これはまあアメリカ流の演説はああいうことになるのか、あるいはそれとも湾岸戦争が始まってから二週間後というタイミングでああいうことになったのか、一国の大統領に対して失礼を顧みずに言わしてもらうならば随分高ぶった、気負った、あるいは自己過信、こういう感じの演説だな、こういうふうに感じるわけであります。  例えばこういうくだりがあります。二世紀にわたって我々は自由のために力を尽くしてきた。今我々は品位と人道に対する脅威との対決において世界を引っ張っている。あるいはまた、冷戦の終結は人類すべてにとっての勝利である。ドイツは統一され、欧州は自由で一つになった。米国のリーダーシップがこうした状況をもたらす一助となった、こういうふうなくだりがあるわけであります。  そして、湾岸戦争の問題について先ほどの質問と同じようなことを一般教書でも述べておられるわけであります。ほとんどの国民はなぜ我々が湾岸にまで出ていっているのか直観的に知っている。そしてサダムを今阻止しなければならない。石抽を彼の手中に置くようなことがあってはならないことを承知しておる、こういうふうに述べておられるわけであります。  そして、今回の戦争を成功裏に終えた後にもこの地域に平和をもたらす触媒となろうとする我々の責任が終了しないことも認識をしている。終えてもアメリカはここでいろいろ介入をしていくんだ、触媒になっていくんだと、こういうふうに述べているわけであります。私どもから言えば少し過剰ではないか、こういうふうな感じがするわけであります。  そして、最後に近い方でこういうふうに言っています。我々は成功し、またこの際には、現在または将来に不法な侵攻をたくらむあらゆる独裁者、暴君に対して世界が恒久的な警告を発することとなる。世界はこの機会を利用して長年の約束であった世界秩序を達成し得る、こういうふうに述べておられるわけであります。  ブッシュ大統領の言い回しはいろいろありますけれども、外務大臣に伺いたいのは、湾岸戦争が終わった後あの中近東に対してどういう秩序をつくろうとされているのか、日本の総理なり外務大臣としてはそのことについてどのような相談を受けておられるのか、この点を伺いたいと思うんです。
  72. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) どのような相談を受けているかというお尋ねでございますが、我々は相談を受けているというような状況にはありません。つまり、日米間は絶えず緊密な連絡をいたしておりまして、世界秩序維持のための国連中心とした外交活動というものは、アメリカの考え方も日本の考え方もその点に関しては一致していると思います。  そういう中で、戦後の問題につきまして日本はどのような相談を受けているかというよりも、我々はこの地域のために何がなし得るかという日本政府独自の判断を明確にすることが必要であろうと思います。日本政府としてこの地域に求めることは、世界の七割の原油を持っているこの地域が、安定した平和の中に存在するということが一番重要なことは言をまたないと思います。それは六割五分の、六五%の原油をこの地域に依存している我々輸入国としては、この地域に平和がなければ我々の産業も非常に不安に襲われるわけでありますから、そういう立場から考えると、戦後のこの地域の新しい姿というものについて、日本は経済的にも技術的にも協力をして、アラブの人たちがこの地域の新しい時代をつくるために努力することにできるだけの協力をしていかなきゃならない、このように日本として独自の考え方を持っておるものでございます。
  73. 野田哲

    ○野田哲君 海部総理は、何か殊さらに湾岸戦争という言葉を使うのを避けておられるようでありますけれども、湾岸戦争に九十億ドルも出そうという国、これが終わった後の国際秩序について何の見解もなしに金はどんどん出していく、こういうことでは私はなかなか国民の納得は得られないのじゃないかと思うし、そんなことでいいんだろうか、こういうふうに思うわけです。  そして、けさの報道によると、きのう海部総理は熱海に行って、これは内輪だから気楽にしゃべられたのかどうか、湾岸戦争が早く終わって九十億ドルが余れば途中で打ち切るというようなことではなくて、何か後の態勢づくりに使ってもらえばいいんだと、こういうふうなことまで述べておられることが報道されているわけであります。  私は、これだけ日本が金で深入りをしようというのであるならば当然そこには後をどうするんだと、こういうことまで協議があったのではないかと思うし、なしにそういうことをやっておられるとすればこれはますます私は理解できない、こういう印象を持つんですが、いかがですか。
  74. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 率直に申し上げて、東ヨーロッパの国々が自由化、民主化のために必要な資金を提供するために、昨年の五月三十日にパリで欧州復興開発銀行というものの設立総会が行われて、そして自由と平和を求めた人たちのために資金を提供するという組織ができておるわけでありますけれども、日本はそれにも八%強の出資をしておる。ところが、アジアにはアジア開発銀行というものが既に存在しておって、アジアの地域の経済発展のために資金供与を日本も応分にやっております。  我々は考えてみると、世界の先進工業国の中で、経済的な見通しというものが今年も明らかにされておりますけれども、経常収支で黒字になると思われる国は日本とドイツだけであります。殊にドイツは東ドイツを合併したために東ドイツに対する投資が極めて強く旧西ドイツに求められている。こういうことで、実際、資金を提供できる能力を持った経常収支の黒字の国家というものは日本が一番恵まれているんではないか。その恵まれている背景というものはやはり中東の石油に大きく依存している日本の経済構造というものを無視して語ることはできない。そういう意味で、海部総理が内輪の会で、この戦争が終わった後もこの地域の平和の回復のために応分の協力をするので、もし戦争が早く終わればこれを有効に使っても結構じゃないかという総理大臣としての見解は、私はそれなりの意味を持っていると考えております。
  75. 野田哲

    ○野田哲君 アメリカの大統領の教書の中で、具体的に金の問題に触れていることについて伺いたいと思うんですが、こういうふうに言っておられますね。「私はこの戦いの財政負担を一身で背負うように要請されてはいないことにも勇気づけられている。昨年、われわれの友人や同盟国は「砂漠の盾」作戦の費用の大半を用立ててくれた。また一九九一年の最初の三カ月間分として四百億ドル以上もの負担提供の申し出がある。「砂漠のあらし」作戦を遂行するのに、彼らがさらに協力してくれる」だろう。こういうふうに述べているわけであります。つまり、今の湾岸戦争の作戦の大半は同盟国が負担してくれた。そして最初の三カ月以降も同盟国が相当部分を持ってくれるだろう。こう言っているわけでありますけれども、九十億ドル以上に出す約束をしているわけですか。
  76. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今日まで日本政府湾岸平和基金に資金として提供するということをやったのは先般の二十億ドル、周辺国には別に二年にわたって二十億ドルもの経済協力をすることにいたしておりますけれども、今般九十億ドルという多額の国の資金を提供するということについては、これはやはり国民の十分な御理解をいただくことが極めて重要であることは言をまちません。  この九十億ドルよりもさらにまだ負担をする可能性があるのかというお尋ねであれば、我々は一日も早い戦争の終結、そしてこの地域に平和が回復してくるということを期待いたしておりまし て、現在のところこの後の協力をどうするかということはまだ検討の段階ではないということを申し上げておきたいと思います。
  77. 野田哲

    ○野田哲君 どうも、大統領の演説からすれば何らかの約束を与えているかのような印象を非常に強く受けるわけであります。特に負担の比率からいえば、私は率直に言って、湾岸戦争の多国籍軍の戦費は日本がかなりの部分を支えている、それがなければこれはもうできないぐらいの金額を日本は支えている、こういうふうに考えるわけでありますから、これが何にもない中で大統領の教書の中にこういう表現が出てくるとは私は思えないわけでして、疑り深いですかね。そのときにはまたそれでは外務大臣と議論をいたしましょう。  そこでもう一つ湾岸戦争に関連して私の見解を述べて外務大臣の見解を伺いたいと思うんですが、私は、今度の湾岸戦争を通じて日本の対外政策について反省をし、見直すべき重要な課題が提供されているんじゃないか、こういうふうに思うんです。  今度の問題について、日本は他の大国と違ってイラクに対して武器の提供を行ったこともないし、イラクに対しては全く手が汚れていない、そういう立場にあるんだという論があるわけですが、しかし、今のような状態を引き起こしたイラク軍事大国化には日本は非常に大きな責任があるんじゃないか、こういうふうに思っているんです。  外務省の文書を見ても、イラクの累積債務は七百億あるいは八百億、こういうふうに書かれているわけです。そういう中でイラクの国防費は防衛庁の資料によると一九八八年度、今から三年前の資料でありますけれども、七十億五千百万ドル。一人当たりにすると四百三十三ドル。これはもうコストとしては世界で四番目であります。そして、この国防費のGNPに対する比率は驚くなかれ二六・八%です。国防費がGNP比二六・八%、これはもう世界でダントツであります。二けたで、しかも二〇%を超えている国というのはイラクと隣のサウジアラビアぐらいしかない。こういう軍事費を使っている国に日本は大変な経済援助をやっているわけですね。しかも、外務省の資料を見ると、イラクに対する経済援助のところを見ると、人口だけは書いてあるが、GNPが幾ら、そして国民一人当たりのGNPは幾らと、こういう経済援助の基礎になる数字は全部「na」と書いてあるんだからノーアンサーということだろうと、答えがない。こういうふうな面積と人口だけの資料に基づいて膨大な経済援助が行われているわけです。  だから、今の状態を言えば、イラク軍事大国化にも日本は経済援助によってどんどんてこ入れをした、結果的にはですよ。そして今度は、攻撃をしている多国籍軍の方にも九十億ドルの金を出した。両方に日本が金を出して湾岸戦争が行われている。こういうおかしな状況になっているんではないかと思うのです。  私は、今度のことを契機にして、少なくとも軍事費がGNPの一定限度を超えた国には開発途上国であっても日本の経済援助は行わない、こういう経済援助の理念をきちっとすべきではないか。こういうふうに思うのですが、今のイラクに対する経済援助の問題と、私の提言に対してどのようにお考えでしょうか。
  78. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 国民一人当たりのGNPが低い国で、防衛費に莫大な金をつぎ込んでいる国家に、民生用のいろんな施設をつくるために日本がODAを出すということはどうかということでございましょうが、私は率直に申し上げて、相手の国が膨大な軍事費を計上している場合に、そこにODAを出していくということの考え方、二つあると思うんです。  その国と日本との間に、日本がいかなる利益を受けるかということが一つあるだろうと思います。それは鉱物資源であれ石油資源であれ、石油資源に恵まれない日本としては、どこから石油資源を手当てするかということがこの国の国民生活あるいは日本経済、国の安全保障について不可欠の条件になっていると思います。そういうところで考えてみますと、膨大な、日本よりもはるかに大きな国家で、そして海外に軍事物資を、兵器輸出しているような国にも日本は経済援助をしなければならないときもある。私は原則として、膨大な軍事費を使いながら、一方ではODAを受け取るという受け取る側の姿勢にも問題があると思いますけれども、それはあくまでも内政の問題でありまして、日本政府として日本の理想というものは平和主義ですから、武器輸出するような国家日本のODAを適用することは原則好ましくないと思います。  しかし、日本と相手の国との間に日本の利益になるものが非常に大きく存在しているといった場合には、国家としてどういうふうな考え方をするべきであろうか。私は外務大臣としてずっと見ておりましたら、結局七割近い原油を中東地域に依存せざるを得ない、このような国、この国の持っている国家としての資源上の宿命というものをどう解決するか、これは民族にとっては非常に大きな問題だろうと思います。第一次中東戦争のときの日本の石油依存度は七七%でした、エネルギー全体に占める。それが現在では五七%にまで落ちておりますし、二〇〇五年にはたしか四五%にまで下げるだけの努力をするための政府の計画が行われていると思います。また、百四十二日間の石油を備蓄してきたことも、第一次中東戦争の我々の苦い経験から生まれた一つ安全保障上の政策であったと思います。  そういうことから考えますと、外交を展開していくことと、外交と一体となってODAを使っていくこと、相手の国の国情というものを十分精査しながら、我々はできる限り軍事大国化しないような国家に経済援助をやっていくのが基本的には私は正しいと思いますけれども、例外もまたあり得るということも我々は現実の国際外交の中で考えていかざるを得ない。私はアジアにおいてもそういう問題も存在していると思います。
  79. 野田哲

    ○野田哲君 中山大臣、今大臣のおっしゃることを聞けば、日本イラクから石油を買っている、石油に依存しているから、その石油ルートを確保するためにはその国がどういう体制であろうとも経済援助をせざるを得ないんだと、こういうふうに聞こえるわけですけれども、私は日本の経済援助にはちゃんと理念があったと思うんですよね。この理念からしても、私は今のイラクがやってきたことは合っていないんじゃないかと思うんです。やはり平和、民生、これが日本の経済援助の理念になっていたと思うんです。  今考えてみると、イラクに対する日本の経済援助が、石油に大きく依存しているからということでほかのことに目をつぶって経済援助をやってきたことが、結果的には化学兵器の製造とか、あるいはもしかすると核兵器の製造にまで役立っているかもわからない、こういう懸念があるから、経済援助の理念については、今回のことを契機にしてやはり平和と民生ということで、それを具体的にチェックする機能とすれば、国際機関が発表している国防費の一定水準以下の国を対象にするということを考えてもいいのではないかと思うんですが、こういう考え方は全然検討の余地はないんですか。
  80. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 少し言葉を補足させていただきますけれども、我々のODAの基本理念というものはちゃんと確立しているわけです。我々は、先ほど申し上げたように発展途上国に膨大な資源を依存している、我々の製品もいろんな国に買ってもらっている、こういう相互依存の関係があります。また、その国の貧しい人たちの生活向上のための人道的な考慮というものもこれまたそこに基本理念としてあるわけでございますから、委員のお考えと私の考え方とは日本のODAの考え方、基本理念としては何ら変わるところはないと思います。  ただ問題は、イラクの、第一次石油紛争の後の政治家としてのサダム・フセイン大統領の経済政策のとり間違いではなかっかと私は思っています。あのときに膨大な石油価格の値上がりによっ てイラクの国庫収入は非常に増大したわけでありますけれども、経済の復興に使わずにいわゆる軍事力の強化に国庫の収入をつぎ込んだ、そして武器をどんどんと外国から輸入してきた、こういうことで軍事大国のイラクが登場してきたと思っています。  ただ、日本の考え方は基本的にイラク国民の民生上のためにいろんなODAの協力を行ってきた。その考え方が全く違うところへ行ってしまった、結果としては。しかも、今委員の御指摘のように、日本が経済協力を行った化学工場がいわゆる化学薬品の製造を切りかえて化学兵器に転用する可能性があったかもわかりません。しかし、その時点では我々の目的は違ったわけでありまして、そこに為政者としてのサダム・フセイン大統領のとられた考え方というものと、ODAによって我々が各国の貧しい人たちの生活を向上させようという理想との乖離が大きく存在していたと、私はそのように理解をしております。
  81. 会田長栄

    ○会田長栄君 会田でございます。  今ごろの時間は、ソ連のゴルバチョフ大統領とイラクのアジズ外務大臣の交渉が本当に真剣になされているものと思っておりますし、特にゴルバチョフ大統領とイラクのアジズ外務大臣との交渉を前にして、イラクのアルアンバリ国連大使がイラクの革命評議会が声明を出したことについて解説を加えている状況にあります。いわゆる国連安保理決議六百六十号というものを受諾して、他の世界で今言われているところの難しい条件というのは条件ではなくて交渉の課題なのだということをイラク国連大使が説明を加えているという状況にありますから、その意味では一日も早く湾岸戦争の終結することを願いつつ私は質問に入っていきたい、こう思っております。  まず第一に、一九九〇年九月の第四十五回国連総会において中山外務大臣は演説をいたしましたね。この演説の内容というのは、米ソ二大国を中心とする東西の冷戦は既に終結し、国際情勢が歴史的な分水嶺にあるという認識を示し、国連の活性化を心から歓迎している、変動の時代に国連中心的な役割を果たすことへの期待を述べられました。そして、日本は平和憲法に基づいて第二次大戦後四十五年、非核三原則武器輸出禁止原則を守ってきていることを強く説明いたしました。さらに、国際社会において平和と安定を求めて、我が国行動外交を追求すると強調いたしました。そして、国連の集団安全保障体制が有効に機能できるように憲法の枠内で全面的協力すると決意を述べられたわけてあります。  そこで、外務大臣に御質問いたします。  実は、この時期に国連総会に臨むに当たって、外務大臣日本外交の基本的理念というものをどのように一体把握してこのあいさつになったのかということについてお聞きしたいんです。
  82. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 突然のお尋ねでございますが、私の昨年の国連演説について日本外交の基本的考え方の原則は一体何かというお尋ねであると思います。  私は国連総会で、まず三点指摘をいたしております。それは、国際的な平和のために日本努力するということを国家の大きな理想として持っている。もう一つは、ODAを中心に発展途上国の人々に経済協力をやっていくという考え方。第三点は、国際文化交流を通じて異文化による国際紛争が起こらないように日本政府としては貢献していきたい。これが今までの日本の基本的な外交の理念、原則であったと思います。  さらに、最近では二つ事項がふえております。一つは、発展途上国における膨大な累積債務の解消に日本協力をしていく。もう一つは、地球環境の保全のために日本努力する。この二つを最初の三原則に加えて最近の国連等では日本政府の考え方として国際社会に披露いたしておるわけであります。
  83. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、四十五回国連総会における外務大臣のあいさつについて実は大変厳しく受けとめております。  というのは、国連憲章第六章にある国際紛争の平和的解決の一翼としてのPKO活動への参加と、第七章にある集団的安全保障への協力、つまり、安保理事会決議のもとに実力を行使する可能性との間がどうしてもはっきりしないまま、国連総会において日本立場というものを今申し上げた基本理念に基づいて述べられたと思っているんです。要するに、一般的な日本外交の方針というものについて述べられたと思っているんですよ。ところが、その後昨年末の国会での国連平和協力法案の問題、その後の今、湾岸戦争を課題にして国民合意を得るのに厳しい情勢になっているところの自衛隊の輸送機派遣の問題、九十億ドルの問題というものがこのはざまに入っている。とことんその点の議論というものを日本の基本的外交を進める際に理念に基づいて詰めていなかったのではなかったのかという気がしてならないんですよ。いかがでしょうか。
  84. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 日本は、国連加盟国として国連憲章のもとで国連に対する協力もしなければなりませんし、また、それに応じた責任あるいは義務とでもいいますか、それも実は負っているわけでありまして、そういう立場で、武力による国際紛争をやらないという国連憲章一つの理想、こういうものを我々は踏まえながら国際社会に貢献をしていかなければならない。しかし、委員からも御指摘のございましたように、国連憲章はその中で集団安全保障一つの大きな考え方を憲章の中に明示いたしております。しかし、我々の国家は憲法の規定のもとで、軍事的に国連協力するということは憲法上許されない。  ここが我が国の問題点でありまして、平和の理想に基づいてつくられた日本の憲法のもとで国連加盟国としてどのように国連協力していくことができるのかといった場合の考え方について、昨年の国連平和協力法案国会での御審議が得られるまでには、国連憲章の中に含まれている集団安全保障とか、あるいはそれに至る前の問題とかいろんな問題についての多くの国民合意はなかなかまだ得られる段階ではなかったと思います。  しかし、これからの日本として、我々の国の安全保障の問題も含めて、国連中心主義に日本外交を展開していくということになっておりますから、国連憲章というものを無視して我々の国の安全保障を語ることはできない。そういう中で、日本の防衛にとって不可欠と言われている日米安全保障条約の第一条にも国連憲章の遵守がうたわれておりますし、また、国連加盟国としての国連憲章を守っていくという国としての義務がある。そういう点から考えますと、米ソの対決が終わって、安保理事会での拒否権が発動されない新しい時代の中にあって、国連国家との関係を国民がどのように判断をしながら、日本のようないわゆる軍事的な協力のできない国家はどのような形で国際社会の平和と安全のために協力ができるかという考え方を徹底的に整理して臨まないと、これからの国際社会では日本は名誉ある地位を占めることは不可能になっていくだろうと考えております。
  85. 会田長栄

    ○会田長栄君 湾岸戦争の最中でありますから、とりわけ日本外交の目指すところというのは大変悩み多いことを含めて国連で演説されたんではなかったのか。要するに、国連における我が国外交というものを目指していくならそれは多国間外交でございますね。ところが、中東湾岸戦争に関連をして多国間外交というものと日米間の外交というものとを考えるとなかなか矛盾があって解消できない、今申し上げたとおり。私は今日、そういうはざまに入ってきているんではないのかという気がしてならないんですよ。  これと関連いたしまして、もう一つお聞きしますが、臨時行政改革推進審議会、第三次行革審ですよ。世界の中の日本部会という専門部会で外交の基本理念を審議してもらって、六月にまとめるんだというんですよ。そうすると、ここで言う日本外交の基本理念をまとめるということは、昨年からことしにかけて海部内閣が私どもに示しているところの外交の基本理念、外交方針というものについて基本的に考え直さなきゃならない時期に立っているということを判断しているから第三次 行革審でぜひ論議をしてまとめてくれ、こうなっているんじゃないんですか。これは外務大臣の演説、それから答弁いただいた日本外交の基本的理念、そして国連中心として今後日本外交は進めていくというこの問題と変わらないのか、あるいは変えるのか。何を一体、第三次行革審世界の中の日本部会の中で六月にまとめていただくんですか。そこをちょっと聞かせてください。
  86. 佐藤行雄

    政府委員(佐藤行雄君) 行革審の目的につきましては、総務庁の方で行革審と御相談の上でお決めになることだと私は了解しておりまして、ただいま御指摘のございました世界の中の日本部会におきましても、これからいろいろ将来の世界の中における日本ということを考えるために、民間の学識経験者各位その他の方々の御意見もいただきながらおまとめになっていかれるというふうに承知しております。  ただ、そこでどのようなことを具体的に議論されるかはこれからお決めになるということを伺っております。その中で、外交の理念ということについてお考えになるべきだという御意見もあるようでございますが、これは行革審の方でお考えになることでございまして、外務省の方からこういう格好のものを議論していただきたいということをお願いしているものではございません。  なお、私も前回、第一回に国際情勢についての御説明に伺いましたが、それ以上のことは基本的には総務庁の問題でございますので私の方からお答えすることはできませんが、私の理解いたしておりますところによりますと、行革審の方でこれから理念をお考えになるということで、どういう形で御議論になるかは行革審御自体がお決めになることと理解いたしております。
  87. 会田長栄

    ○会田長栄君 我が国外交の基本理念というのは、私は今世界に冠たる日本の憲法の前文でいいと見ているんですよ。ただ、先ほど申し上げたとおり、疑問を持っているというのは、国連中心主義の外交といえばこれは多国間外交、これを重視するということでございまして、いわゆる日米間の外交だけを重視するのではない、こう出てくるわけでありますけれども、そこに安全保障条約があって日米間のことも重視しなければいけない。そこの基本的なところに日本国憲法がある。これを整理統合するということの国民合意を得るためには矛盾も出る。そういうところがかかわって実は第三次行革審というものが開かれたんではないのかという気がしてならないんですよ。しかし、それはいいです。それはもう総務庁が中心になって第三次行革審が、国際的に日本外交は主体性がないなどと言われているから民間の有識者の御意見も聞いて踏まえる、こう言うんで、外務省の外交方針、海部内閣の外交方針とは直接かかわりない、こういうことでありますから、話を前文に進めます。  私は、日本国憲法の前文でもう外交の基本理念というものは明確になっているし、とりわけこれから日本の進むべき外交というのは人権、自由、民主主義というものを基調にして、二度と国際紛争のないように、九〇年代は日本の大きな役割を求められているのではないか、こう思うからそういう意見を交えてお尋ねしたわけでございます。  そこで、これは昨年の決算委員会で外務大臣にお尋ねいたしましたが、国連中心主義の外交日本は重視してやっていく。しかし、その割に国際的に情報を収集する、あるいは分析する、世界をリードできるだけの確信を持てる方針をつくるというのにはなかなか難しい状況に来ている。というのには、外務省の職員が余りにも足りないのではないかと決算委員会で指摘しました。ところが、外務省の機能というものを強化していきたいためにそういう御意見を踏まえて努力していきたいけれども、財政的な事情があってなかなかうまくいきませんという答弁でございました。  そこで、関連して私は聞きますが、日本政府国連中心主義の外交を進めていくといった場合に、それでは日本政府国連中心主義の外交が進められるように体制というものを年々強化されているのかどうかというところで次にお聞きしたいと思います。  例えば、国連の分担金などをいえば日本国際的にも優等生ですね。間違いないんでしょう。後で教えてください。国連の分担金でいえば、第一位から第十位ぐらいまで教えていただければ結構であります。  それから我が国の、先ほど野田先生からも御質問のあったODA予算、いわゆる政府開発援助、この問題というのも国連では優等生でしょう、違いますか。これも簡潔でいいですからぜひ教えてください。  それからもう一つ国連の要員として、国連外交を重点に展開できるようにといって日本政府が派遣する政府関係職員というものの枠が国連から決められているでしょう。決められておりますね、枠。それも教えてください。少なくとも国連中心外交日本外交基本理念として展開していくというのであれば、国連から与えられているところの日本政府から派遣する職員の枠というものも、当然配置されている枠どおり派遣をして、国際的にもあらゆる国の情報収集、国民との接触、そして日本外交が、平和外交がよりスムーズに世界的になれるように配置していかなければいけないんじゃないかと私は思っているんですよ。  その点、日本政府は今何人の枠のうち何人国連に派遣しているんですか。ここひとつお尋ねいたします。
  88. 丹波實

    政府委員(丹波實君) お答えを申し上げます。  まず、国連予算の関係の問題ですが、十カ国、分担率の多い方から、アメリカが第一番で二五%でございます。日本は一一・三八%で二番目、ソ連が九・九九九で三番目、四番目が西ドイツで八・〇八、フランスが六・二五、イギリスが四・八六、イタリアが七番目で三・九九、カナダが三・〇九、スペインが一・九五、オランダが一・六五、そういう負担率になっております。  それから、日本人職員の問題でございますが、憲章の百一条には、国連職員というのは「なるべく広い地理的基礎に基いて採用」しなさいという規定がございまして、それじゃ各国どのぐらいの数になるべきかという点につきましては、各国の分担率ですとかその他いろんな要素を計算して、これぐらいの数がこれぐらいの国に行くべきだという数字が大体計算されております。  日本について申しますと、一九八九年の数字ですが、日本人の職員が国連の職員として大体百七十八人ぐらいが適当ではないかという計算になっておりますが、それじゃ現実にどのぐらいの日本人が働いているかと申しますと九十一人ということで、必ずしも枠と申しますか、望ましい職員数にはおよそ届いていない。先生おっしゃるとおりです。しかし、これにはいろんな理由がございまして、例えば語学の問題でございますとか、あるいは日本はそもそも基本的にはいまだ終身雇用制というものをとっておりまして、国連に出かけて帰ってくると日本の国内になかなか職場がないとか、いろんな問題がこの枠に届いていない理由だと思います。しかしながら、国連局といたしましては、日本が今後国連中心として国際社会で生きていくためにはできるだけ多くの日本人の方が行っていただきたいということで、局内にセンターを設けまして広報活動をしたりいろいろしておりますけれども、今後ともそういう努力は続けてまいりたいというふうに考えております。
  89. 会田長栄

    ○会田長栄君 日本外交国連中心主義でいきますとこう言ってみても、今言うとおり、私の調べたのでは百九十が枠のようでございますけれども、まあ百七十も百九十もそう違いはないでしょうから後で精査していただければ結構でありますが、九十一というのは何といっても足りないですよ。今答弁いただきましたけれども、帰ってきた後どこに再雇用するかなかなか問題ですなんというけれども、そんなことは日本の経済情勢からいったらそんなに問題ではないのではないか、こう思っているから聞いたわけなんです。  なぜこういう話をしたかというと、やはり国連の優等生日本、四十五年間と、こういうことです よ、これは。随分長い間優等生ですよ。しかし、どうしても今国連中心主義というなら、国連憲章敵国条項というものをどうしたって国連は外さなければいけないんじゃないかと私は思っているんですよ。幾ら日本外交の基本として国連中心主義と唱えたって、今の国連はいかんせん第二次世界大戦後の戦勝国中心であって、日本はどんなに国連中心外交をやろう、国連に忠実に従おう、そして世界の平和につなげようと言ったって、この敵国条項というのは歴代大臣が主張してもなおかつ手をつけられないんですね。岡崎外務大臣のときからもうこれを外してくれと再三言っていますよ。何で外れないんですか。国連の優等生というとなるほど大変なものですよ。にもかかわらずこの条項が削除されないというのはどこに一番問題があるんですか。それを聞かしていただいて、私の質問は終わります。
  90. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 国連憲章の中に記載されている旧敵国条項というものは、日本外務大臣としてはいかにも不愉快な条項であります。昨年の秋の国連総会で、日本政府の正式な意思として私は国連の代表演説でそのことを強く主張しております。具体的に進めるためには憲章改正委員会というものを開いてここで憲章の改正をやってもらう必要がある。さらに、安保理事会常任理事国、全理事国が賛成し、国連総会の三分の二の国の同意がなければ成立しないという一つの問題が厳存しております。  もう一つひっかかっておりましたのは、先生も御案内のように、戦後四十四年間のドイツの分割統治の問題が実はひっかかっておりました。しかし幸い、昨年ドイツは統一されましたから、いわゆるベルリン等の旧戦勝国の共同管理の問題もその時点では解消してきているわけでございまして、私ども日本政府としては、この旧敵国条項の廃止のために全力を挙げて努力するということが日本の外務省の基本的な考え方でございます。
  91. 会田長栄

    ○会田長栄君 終わります。
  92. 翫正敏

    ○翫正敏君 事前に通告してありました質問内容が今ほどの同僚議員の質問と重なりますので、ちょっと内容が変わるのを御承知願います。  先ほど自民党の委員さんの方からの質問の中で、いわゆる国連平和協力法案が廃案になりました後の自公民の合意に基づいてのPKOの部隊を早くやれというようなことがありました。そのことについての外務省の方からの御答弁がありましたので、ちょっと念のためにお尋ねしたいんです。  昨年の、この法案が審議されておりましたときの新聞の記事を見ますというと、「国連平和協力法案におけるシビリアンコントロール」と題する文書を自由民主党の幹部に提示していろいろ話をしたというふうに載っておりまして、この文書を私も欲しいと思いまして、昨年の十月に二回、十一月に一回、十二月に一回というふうに計四回にわたって資料の提出をお願いしたところでありますけれども、外務省の方から、こういうものがあるともないとも、出すとも出さないとも何の返答もないのですけれども、これはどういうことになっているんでしょうか。
  93. 丹波實

    政府委員(丹波實君) まことに恐縮でございますけれども、今の先生のお話しは自民党のものでございましょうか。私は先生がおっしゃっているその紙の名前は初めて伺うのでございますけれども、もし外務省が入手しているもので問題がないものでしたら当然差し上げたと思います。ちょっと私調べさしていただきたいと思います。
  94. 翫正敏

    ○翫正敏君 これは政府委員を通じて、この記事が出た後、先ほど言いましたように四回にわたってこの記事をお渡しして、見たいと、資料を欲しいというふうに資料要求したにもかかわらず、あるともないとも連絡がないし、ないのなら新聞の記事が誤報だということになるし、どうなっているのか。つまり、政府が自民党の方にこれを示して説明したというふうに新聞には書いてあります。あるんですか、ないんですか。あったら見せてください。
  95. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 昨年の経緯につきまして御説明申し上げたいと思います。  ただいま御指摘になりましたものは、私ここに関係のものを持っておりませんけれども、自民党の部会等におきまして、政府が昨年、国連平和協力法案を作成いたしましてこれを御説明いたしましたときに、どのような民主的な統制が行われるのかというような御質問がございまして、これに対していろいろ御説明した経緯がございます。特に公式の文書をお配りしたというふうには記憶しておりませんけれども、恐らくその説明内容のことを指しておられるのだろうと思います。
  96. 翫正敏

    ○翫正敏君 それを見せていただきたいと思いますので、後で検討してよろしくお願いします。  防衛庁の方に、日本の中期的な防衛のあり方についてお聞きをしたいわけでありますけれども、言うまでもないんですが、私は、日本の防衛の基本的なあり方は、日本国憲法の前文と第九条に基づく非武装中立政策にあるというふうに考えているものであります。それはそれといたしまして、政府の方では防衛計画の大綱というものを一九七六年、昭和五十一年につくられまして、それ以後これに基づいて防衛力の整備をしておられるわけでありますけれども、防衛計画大綱をつくられたときの国際情勢についての特徴は、米ソ両超大国いわゆる東西間においてのデタントの状況である、こういうふうに認識しておられたのだろうと思います。この文書の中にもそういう国際情勢についてのところがありますので、その点確かめたいと思いますのでお願いします。
  97. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 御指摘のとおりでございまして、昭和五十一年、現在の大綱を策定したわけでございますが、この前後から東西間デタントの傾向が強まっておりました。そういったものを勘案しながら、また、その当時の我が国の防衛力の水準と申しましょうか、そういう力というものを考えながら定めたものでございます。
  98. 翫正敏

    ○翫正敏君 それでその後、一九七七年五月号、昭和五十二年五月号の「防衛アンテナ」を見ますと、防衛計画の大綱というものは、「内外の諸情勢の変化に伴って随時再検討され、必要がある場合には、すみやかに修正が行われる性格のものであり」、こういうふうに書いてあります。防衛計画の大綱後いわゆる統中と言われておるもので行っておられたわけですけれども、  対象期間中の内外諸情勢、特に軍事情勢について分析検討を行うものであるから、防衛庁長官は、これらを参考として、必要があると認める場合には、国防会議に対して「大綱」の見直し等を提案することとなる。その意味で統中は、「大綱」の見直し、ないし修正と深い関係がある というようなことで、防衛計画の大綱というものは不磨の大典であるということで定められたものでもない、そのときどきの国際情勢によって変わるものであると考えていた、つくられていた、そういうふうに考えてよろしいんですね。
  99. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私どもも大綱は決して不磨の大典だとは思っておりません。やはりそのときどきの内外の情勢そして我が国安全保障面からの必要性等々を考えまして修正されることも当然あり得る、そういうものだと思っております。  ただ、昭和五十一年以来今日までこの大綱は変更していないわけでございまして、それは大綱の変更を必要とするような内外情勢の大きな変化がない、こういうことでございます。
  100. 翫正敏

    ○翫正敏君 ところが、一九八五年、昭和六十年、現中期防がつくられたときの国際情勢は、政府によれば国際情勢の認識が大きく変わりまして、そして防衛白書の昭和六十一年版によりますとこのように書いてございます。「ソ連は、デタントにより東西関係が協調的に推移していた一九七〇年代を通じ、これらのグローバルな軍事的プレゼンスを背景に、中東地域等の第三世界に対し政治的影響力の拡大を図っていった。」、ちょっと飛ばしますけれども、「一九七九年には、政治的混乱に陥っていたアフガニスタンに直接軍事介入した。この介入は、ソ連が勢力拡張を図るためには、東欧圏以外の地域に対しても軍事力の行使をちゅうちょしない」云々というように書かれて、大きく情勢が変化したことを書いておられるわけで、そのこ とによって十八兆四千億円、五年間で防衛力の整備が必要であるということで中曽根内閣のときに現中期防がつくられたわけであります。  このときにも、さらに国際情勢などの変化、動向を踏まえて三年後にはまた見直すというふうにもなっていたわけでありますけれども、防衛計画の大綱というもの、それから現中期防がつくられたということ、そしてその後三年後の見直しということになっていたということ、しかし、また資料を見ますというと、昭和六十二年一月二十四日の閣議決定では見直す必要はないというふうに決定をされたこと、こういうようなところのつながりを少しわかりやすくかつ簡単に説明していただきたいと思うんです。
  101. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 確かに、大綱の策定時、それから現中期防の策定時、それから現中期防の中にございます三年後見直しをすることがあると書いてあるその時点、国際情勢はそれぞれ変化しております。大綱の時点ではデタントが非常に進んでおりましたけれども、その後国際情勢は厳しさが増した。たまたま現中期防が策定されたのはその当時でございますし、今先生から御指摘ございませんでしたが、現中期防での三年後見直しのときには情勢がまた少し緩和したんじゃないか、こういうことだとおっしゃりたいんだと思いますが……
  102. 翫正敏

    ○翫正敏君 後で言います。
  103. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 確かにそのような事情の変化はあったわけでございますけれども、先ほども申しましたように、大綱の見直しを必要とするほどの大きな国際情勢の変化はなかったということでございます。  若干かみ砕いて申しますと、そのような国際情勢の変化はございましたけれども、世界全体におきまして東西陣営の間の全面的な衝突といったような大きな武力衝突が起こるような情勢ではなかったということが一つございましょう。それからまた、我が国周辺の情勢を見ましても、確かに大綱策定時に比べますと現行中期防策定の時点では、例えば極東ソ連軍の顕著な増強があったというのは事実でございますけれども、しかし、だからといって我が国に対してかなり大規模な侵略が予想されるとか、あるいは現実的な脅威がずっと増しておるとか、そういう情勢ではなかった。やはり日米安保体制があるとか、またそのほかいろんな国際情勢、大国間の力の均衡関係であるとか、そういうことがバックにございまして、大綱策定時と同じように限定的な武力紛争が生起する可能性は否定することができないけれども、それ以上の大きなものを想定する必要はない、こういう情勢だったと思います。そういったことでございまして、国際情勢の観点から大綱の見直しを求められるような変化はなかったということが一点でございます。  さらに一点申しますと、現行中期防策定時におきましては、大綱で定めました防衛力整備の水準がまだまだ進捗していない状況でございましたので、当面、大綱の水準を実現するために努力をしようということで現行中期防は策定されたわけでございます。
  104. 翫正敏

    ○翫正敏君 大綱のことは後でまた言います。  現中期防のことをもうちょっと言いますと、つくられたときに三年後に見直しする、こういうふうになっているにもかかわらず、ちょうど三年後の一九八八年、昭和六十三年五月にソ連軍はアフガニスタンからの撤退を開始しました。そして、モスクワでレーガン大統領とゴルバチョフ当時書記長の首脳会談が開かれまして、INF条約の批准が交換され、さらにその年の十二月にはゴルバチョフ書記長が国連で五十万人の兵力削減というものを発表して、その後のこの湾岸紛争に至ります以前の状態までのところで米ソの対話と協調路線というものの流れがこのときに始まっているということはもう明確だと私は思うんです。  しかし、それにもかかわらず三年後の中期防の見直しは行われなかったということは極めておかしい、遺憾なことであるというふうに私は思うんです。先ほどの説明では見直さなければならないほどの大きな変化ではなかった、こういうふうにおっしゃるんですが、一遍つくった計画を大綱にしろ中期防にしろ、また次の新中期防のことも時間のある限り聞きたいんですが、この新中期防にしろ見直すとかいうことになってくると、国際情勢がそれに必要なほど、見直さなければいかぬほど変わるかどうかというところがポイントになるわけでしょう。それは一体どういう事態を想定しているのか。私に言わせれば、もう既に緊張が高まったり、物すごく緩和したりということは劇的に変化をしてきていることだというふうに思うんですけれども、そうではないということになりますと、一体どういう事態になると見直すほどの国際情勢の変化となるのか、わかりやすく説明願えませんでしょうか。
  105. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) まず最初に、現中期防におきます三年後の見直しの規定でございますけれども、これは委員御承知のとおり、六十二年一月の閣議決定におきましてGNP比一%にかわります総額明示方式というものを採用した際に三年後の見直しをとらないこととする決定がなされております。その意味におきまして、まず三年後の見直しの規定が残っているのになぜ見直さなかったかという点においては、その後、三年後の見直しを制度の問題としては、現中期防の中からいわば総額明示をより明確にするためにという観点からそれをとらないこととしたという政府の方針が示されているという点をまず御指摘申し上げたいと思います。  それから、国際情勢がどのような状態になったときに中期計画を変えるのか。これはよく御存じのとおり、まず一つは、大きなグローバルな国際情勢という、例えば米ソの対立がどうだといったような観点からは基盤的防衛力の整備を続けていくというのが大綱の精神でございますから、その観点からいって中期計画もそのラインに沿った形のものはそう変動があるべきものではないと思っております。  ただ、近隣諸国の軍事情勢、特に極東ソ連軍の状況が大幅に変わるというような状況があれば、それに応じて今度は中期計画の装備の内容等に立ち至った変更があり得ることでございますけれども、今御指摘の期間内におきまして多少の変動はあったとは言いながら、極東ソ連軍の中での、周辺諸国における軍事情勢においてそう大きな目に見えた変化が実現化したということではないということからこの変更を行わなかったものでございます。
  106. 翫正敏

    ○翫正敏君 それで、一九九一年、平成三年度以降の防衛計画の基本的な考え方というものを発表されて、いただいた文書によりますと、二十二兆七千五百億円という大幅な軍拡の新中期防がつくられたわけでありますけれども、この基本的な考え方の閣議決定の文章を見ますと、「国際情勢は総じて好ましい方向に変化しつつあり」、あと読みませんが云々と、こう書いてございますね。これは劇的な国際情勢の変化というものに相当するものじゃないかと思うんですが、現中期防と新中期防の関係というものを金額上考えてみましても、ふやすというようなことではなくて、むしろ減らすというような、防衛力削減五カ年計画というような方向に向かうべき国際情勢なのではないか、そういうふうに思うんですけれども、基本的にその辺はどういうふうにお考えですか。
  107. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) まず、二つの点から申し上げたいと思います。  一つは、新しい中期防、次期中期防でございますが、これが軍拡計画であるというお話でございましたけれども、私どもはそうは思っておりません。私どもは、現在の国際関係安定化への努力が実りつつある今日の国際情勢というものを勘案し、かたがた大綱に定めました防衛力の水準がおおむね達成されたという事情も踏まえながら、今回の新中期防につきましては極めて控え目なものをつくったというふうに考えております。  それは御承知のとおり、現行の中期防が年率平均で五・四%の増加を見ているのに対しまして、新中期防では年率平均で三・〇%になっている。 特にその中でも、正面装備につきましては契約ベースで見ますと年平均で二・三%のマイナスになっているというようなことでございます。後方の方へずっと傾斜をしております。  それでまた、具体的に申しましても、戦車の車両数であるとか、あるいは護衛艦の隻数におきましては調達数量だけではなくて、その保有の数量においても新中期防完成時において現在より下がるということになっておるわけでございまして、極めて控え目なものになっておる、このように考えておるところでございます。  それから、もう一点申し上げますのは、平成二年度白書と、それから今回の新中期防を策定するに当たっての国際情勢の大きな変化があったんじゃないか、こういう御指摘ございましたけれども、私どもはそうは考えておりません。今回の新中期防を策定しましたのは昨年十二月の二十日でございましたが、その前日十九日に「平成三年度以降の防衛計画の基本的考え方について」というものを別途閣議決定いたしまして、そこで現下の国際情勢をどのように見るか、それと大綱との関係等につきまして内閣としての考え方をお示ししたわけでございますが、そこでの国際情勢の認識は詳しくは時間の関係もありますので申し上げませんけれども、平成二年度白書と基本的には同じものでございます。ただ文章上……
  108. 翫正敏

    ○翫正敏君 同じものなの。
  109. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 基本的に同じ認識の上に立っておるわけでございます。ただ、文章の表現上、若干の違いのあるところは事実でございます。  例えて言えば、例を一つ挙げれば、極東ソ連軍の勢力につきまして、平成二年度の白書のときには、たしかこれは数量的に……
  110. 翫正敏

    ○翫正敏君 細かいところいいわ。また聞きますから、数字はいいです。
  111. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) この地域の軍事情勢を厳しいものとしているという表現がある。そして一方、十二月十九日の閣議決定の際には、正確にはちょっと今覚えておりませんけれども、質的な向上が図られておるけれども、量的な面では削減されている、こういう表現になっておりますけれども、動きとしてはこうなっていると。絶対的水準においては現在も大綱の策定時はもとよりのこと、ゴルバチョフの政権についた時点と比べましても、ちょぼちょぼか、物によっては向上しているというような水準でございますので、だから表現の上ではございますが、基本的に国際情勢の認識について平成二年度白書と今回の新中期防策定の基礎になったものとの間に差があるわけじゃございません。
  112. 翫正敏

    ○翫正敏君 もう一点だけ。これで終わります。  この「平成三年度以降の防衛計画の基本的考え方について」というものを新しくつくられたということは、今までの大綱とか現中期防とかそういうものを見直していくためにつくられたと、こういうことではないんですか。なぜこれをつくられたのかだけ御説明ください。それで終わります。
  113. 中西一郎

    会長中西一郎君) 簡明にお願いします。
  114. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) これは、新中期防を策定するに当たって国際情勢についての考え方を政府として決めたものでございます。そういったものも踏まえながら、現在の大綱を全体として変える必要はない、こういうことにしたわけでございますけれども、国際情勢につきましては現時点に立ってこういうふうに見るということを決めたわけでございまして、そういった意味では、大綱にございます国際情勢に関する記述の部分がこれによって新しくなったというよりも現時点でのものに置きかえられたというふうにお考えいただいて結構でございます。しかし、大綱全体としては変えることはしていないと、こういうことでございます。
  115. 翫正敏

    ○翫正敏君 終わります。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、あといずれにせよ数時間しますとモスクワからイラクの真意がわかる、伝えられてくるであろうと思いますし、また地上戦に突入するかどうか、これはアメリカが主体的に決めるものでありますけれども、大臣どうですか、今の状況ですと地上戦に突入してもやむを得ないと、こういう判断をされますでしょうか。
  117. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今御指摘のように、モスクワでアジズ外相とゴルバチョフ大統領の会談が行われるという状況の中で、地上戦に突入するのはやむを得ないというようなことを外務大臣としては申し上げることは少し差し控えさせていただきたいと思います。  日本政府としては、イラクのサダム・フセイン大統領が安保理決議六百六十号を完全実施するという方針を明示されれば、国際社会はそれに対応して新しい停戦への考え方というものを打ち出していくだろうと思います。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、あくまでもモスクワの、あるいは多国籍軍、アメリカの判断を待ってその後日本もコメントを出さざるを得ない、こういうことですか。今のところ地上戦に突入するというあらゆる情報を総合しましても近々に突入するだろう、必至だろうと、それをモスクワの今の会談待ちと、こういう情報が飛び交っておりますが、それでもなおかつ地上戦突入やむを得ないというコメントは今はできないと、できない理由は何なのでしょうか。
  119. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 安保理の六百六十等一連の決議イラクのサダム・フセイン大統領が国家意思としてそれを受諾するということで実施するということになれば一挙に問題は解決の方向に向かうということを申し上げたいわけであります。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 地上戦間近ですけれども、今、日本政府が和平のためにやれることはありませんか。総理が衆議院でバグダッドへ特使派遣というようなこともおっしゃいましたけれども、今さら特使を派遣したってもうだめだ、あとは待ちの姿勢だと、こういうことでしょうか。
  121. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先日のニューヨークにおける国連の安保理事会で、日本理事国でございませんが特に発言を許されたわけで、そこで日本政府の考え方も述べておりますし、また、先週はイラクの在京大使を招きまして、日本政府としては、地上戦に入る前にぜひ安保理の六百六十等一連の決議を受諾されることを強く要請するということを申し伝えておりまして、日本政府としてはできるだけの、関係各国協力しながら一日も早い平和の回復のために努力いたしている最中でございます。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、最中はわかるんですけれども、何かやられたこともある程度わかるんですけれども、もう地上戦突入寸前という情報を前にして、今ですよ、何かやることはないんですかと。特使派遣、バグダッドなんて総理おっしゃいましたけれども、それもやってもしようがない、今の段階ではと、こういう判断なんですかと、こういうことです。
  123. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今政府として何をしているか、何がでるかというお尋ねでございますが、現在、外務省のあるレベルの人をモスクワに出しておりますし、いろいろとソ連の考え方、またソ連に対するイラク側の反応、いろいろあろうかと思います。  私も先日、プリマコフ特使ともお目にかかっておりますし、これからモスクワでの会談がどのような形になって公表されるか、その結果、委員も御心配のようなことが起こる可能性もあるわけでありますから、私どもはそのようなことがないように心から期待をしたいと思います。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 いずれにせよ、国連決議の六七八で武力行使は行われているわけですから、大臣どうですか、国連決議武力行使の許容範囲というものはあると判断しますか、限界があると、こういうふうな認識ありますか、あればどの程度が限界でしょうか。
  125. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 地上戦等の攻撃の限界があるかどうかという委員のお尋ねでございますが、クウェートからの撤兵を行って六百六十の決議が実施されるというために、できるだけ民間人へのいわゆる殺傷を避ける形で軍事施設を攻撃の 目標にして多国籍軍は戦闘をやっておるというふうに認識いたしております。
  126. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 決議六七八の趣旨につきまして簡潔に私の方からお答えさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、安保理決議六七八号は、イラクに対してクウェートからの撤退等を含む安保理決議を完全に履行することを改めて求めました上で、一月十五日までにこれが完全に履行されない場合にはクウェート政府協力する国連加盟国に対しまして累次の関連諸決議堅持かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するために武力行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を与えたものでございます。  その結果、不幸にしてイラク撤退いたしませんでしたのであのようなことに、現在のような武力衝突ということに発展したわけでございます。多国籍軍による武力行使はこの決議に基づくものでございますが、この決議のもとで多国籍軍イラクに対して行うことを認められております武力行使は、これらの諸決議堅持かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するためという目的がいわば限界になっているということだと思います。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはわかっているんですよ。そうすると、イラク国境を突破することは許容範囲、限界じゃないんですね。突破してもあらゆることに入るわけですね、イラク国境を地上軍が突破しても。これはもう全然今の国連決議六六〇からあらゆる決議を遂行するために許されるものである、こういうことでしょうか。バグダッド市内に入って攻撃することもいいんでしょうか。今大臣は、市民を巻き込むことはうまくないと、断定はしませんけれども市民を巻き込むことはどうなのかと、こういう発言しました。それだけですか、許されないのは。あとは何でもクウェート解放のためにはできる、そういう六七八の決議であると、こういうふうに判断していいんですか。
  128. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) この決議目的はただいま申し上げたとおりでございますが、この決議自体には、例えば地理的な限界でございますとか、あるいは武力行使の方法についての限界ということはこの決議自体には規定されておらない次第でございます。  ただ一つには、先ほど申し上げましたような目的という限界がありますのと、それから先ほど大臣から御答弁ございましたように、武力行使に当たっても、当然いわゆる戦時国際法あるいは人道に関する国際法という規制のもとで、その範囲で行われるべきであるということが前提になっていると考えております。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうなりますと、今度は大臣にお答えいただきたいんですけれども、要するに、目的がはっきりしている、クウェート解放、そのためには手段は選ばない、こういうことになるわけでしょうかね。その際に、選ばない手段ですけれども、市民を巻き込むことだけは人道上、国際法上避けなきゃならない。こういうことが唯一のネットワークというかチェックになるんでしょうか。あとはすべてのことは目的を完遂するためにはできる。先ほどちょっとお話がありましたが、フセイン政権の打倒、これまでも六七八の許される武力行使の範疇にある、こういう判断をしていいんでしょうか。ちょっと私もわからないものですからお聞きするんで。ということは、日本政府はこれからいろんなコメントを追求するわけですよ、アメリカのこの姿勢について。もうこれは間近でしょうね。今からそれを考えた方がいいわけで、私も考えた方がいいという示唆をしながら質問しているんですけれども、どうでしょうか。
  130. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 安保理の六七八号の決議委員もよくお読みいただいていると思いますが、「国際の平和及び安全を回復するために、あらゆる必要な手段を取る権限を与える。」というふうに、六七八号は決議文の中に記録されております。また、ブッシュ大統領は先般の発言に関しまして、あくまでも安保理決議を遵守すること、それからもう一つは、イラクを破壊したりあるいは分割したりするというような考え方は持っていないということを明確に言っておりますから、問題はクウェートの解放、クウェートからの撤退クウェート正統政府の復活ということが確立されれば、ここで問題の解決は大きく前進するわけだろうと私は思います。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことは何も大臣に言われなくたって小学生だって、うちの子も小学校三年生ですけれども、もっときちっとしたことを言っていますよ。そうじゃなくて、いわゆる国連の六七八、これで武力行使しているわけです。地上戦に突入する可能性がある。そうならないにこしたことはありませんね。だけれども、あらゆる情報を総合しますとそういう可能性がある。そうなった場合に、今現在地上戦突入に対してコメントできない。アメリカはほとんど突っ込んでいく、多国籍軍日本も当然それに対して結構だ、こう言わざるを得ないと思うんですよ。  ですから、クウェート解放のためにはあらゆることができる、こうなりますと、目的のためには手段を選ばない、日本語で言うと、古いことわざであります。どんどんどんどん市民も巻き込んで、現にありましたですね、先週。そういうことが起こってくることは間違いない。戦争です、もうそんなことは容赦しませんよ。そうでしょう。そういうことが目的を達成するためには選ばれないものとして出てくることは間違いない。こういうことになるわけでありますから、それも国連の六七八、あらゆることはできるんだという中に全部入っちゃうんですか。そうなりますと、どんどん突っ走って、市民を巻き込むどころかバグダッドもあるいはフセイン打倒も、あらゆるところに突っ込む可能性もできてくる。可能性ですよ。アメリカはそうはしないんだ、分割はしないんだ、こう言っていますが、戦争ですから、化学兵器でもあったらどうなるかわからないでしょう。未知数の要素がいっぱいあるでしょう。  ですから私は、未知数の要素がありますけれども、大臣の見解というよりも、国連決議に基づいてあらゆるものをやっているんですから、賛成しているわけですから、その国連決議の範囲というものを明確にしないとうまくないんじゃないですか、日本としても、実際に力をかして血を流している日本じゃありませんから、あくまでも公的には国連決議しかないわけですよ。アメリカがそのためにああでもないこうでもないと言う言葉じりをとらえて日本が賛否をするわけにいかないんじゃないんですか、法的に。国連決議ですから。この国連決議の許容範囲、限界というものはあるのかないのか。ここだけをしっかり踏まえておかないとうまくない。  もう一回繰り返しますが、限界があるのかないのか。それからあるとすれば、今二つの法律言いましたね、条約局長、これは当たり前。人道上でやっぱり市民を巻き込まない、これだけは十二分に考える、このぐらいしかないのか。どうでしょうか。
  132. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 私から手短に補足させていただきたいと思います。  先ほど、戦時国際法あるいは人道に関する国際法の規則について触れされていただきましたが、若干具体的に申し上げますと、例えば武器の使用、どのような武器が使えるかということにつきましては、御承知のとおり化学兵器を使うというようなことは国際法上禁じられているわけでございます。  また、いわゆる軍事目標に攻撃を限るべしというような戦時国際法上の禁止があるのではないかという問題があるわけでございますが、この点に関しましては、必ずしも条約で現在適用されるものの中に明確に規定されているということまでは言えないとは思いますけれども、他方、基本的な考え方といたしまして、戦闘方法の選択に当たりましては、軍事的な必要性という一面と、もう一つは人道的な要請、この二つの要請を考慮しなくてはならないという観点に立ちまして、戦時における砲爆撃、攻撃は軍事目標に限られるべきであるといういわゆる軍事目標主義という考え方が国 際的には妥当なものとして受け入れられているということは言えると思います。  その他いろいろ戦時の国際法というものはございますが、先ほど申し上げましたように、この決議はそこまで書いてございませんが、当然国際法の規範のもとで武力行使が行われるべきであるということでございます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 国連局長、一月十七日ですか、IOMの事務局長が民間機及び軍用機について調査してくれ、出せるかどうか資料をくれと。これについて自衛隊機、軍用機についての報告はもうやったんですか、返答は。さっき大臣は民間機について云々とおっしゃいましたが、自衛隊機、軍用機についてこれこれしかじかで出せるとか出せないとか、この答えはやったんですか、IOMの方に。
  134. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先生御指摘のとおり、パーセル書簡は一月十七日でございまして、三十三カ国にこの書簡を送られたそうでございますけれども、その最後の方に、民間機または軍用機の輸送力を提供する可能性を検討してほしい、そういう要請書になっておるわけでございます。  これに対しまして、私たちの方から、ジュネーブの日本政府代表部を通じまして一月十九日に日本政府としては民間機については具体的要請があれば政府として民間航空機を説得する用意がありますということを連絡いたしました。そのときに、それまで行われた一月十七日及び十八日の総理の記者会見あるいは国会における演説で、民間航空機で他に方法がない場合には必要に応じ自衛隊輸送機の使用についてもその可能性を検討するということになりましたということで、検討の結果可となるか否となるかということまでは言っておりませんで、ただ、日本政府としては検討することになりましたということだけは情報としてIOMに伝えておる段階でございます。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、まだ検討中ですから、国会論議。これは結論じゃありませんから、出すということは結論ですから、出さないという結論ですから。もう国会でこれだけ論議があるんです。公明党も民社党も非常に苦悩しながら九十億ドルに賛成しましたと、自衛隊機反対なんですから。この反対も、もう一歩後退していただければ国内の世論がまとまりますからというようなことで、出すかどうか別ですけれども、ひとつ軍用機について、自衛隊機について、要望がない限りはこちらは自衛隊機を出すつもりない、このぐらいの思い切った答弁したらどうですか。  当然、それと同時にいろんな調査をしているんでしょうね。どこがストップ基地、給油基地になるとか、何人派遣するとか、そういうことを調査されているので、まだ結論は出ていないみたいですから、民間機で間に合う限りは民間機でやると。どうしても間に合わない、そして軍用機、もう猫の手も借りたい、軍用機九十名だけれどもそれでも欲しい、こういう要望がない限りは出しません、このぐらいの一つの歯どめをこの際つけたらどうですか。
  136. 丹波實

    政府委員(丹波實君) この点は、先生御指摘の点は総理の一月二十五日の施政方針演説の中で非常にはっきりと考え方が述べられております。総理は、「なお、民間機が活用されないような状況において、人道的見地から緊急の輸送を要する場合には、必要に応じ、自衛隊の輸送機により輸送を行う」ということを言っておられて、まず民間機を活用するのが第一だということをはっきりと宣明されておるわけでございまして、この点についての考え方は現在まで変わっておりません。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかった。それはもう知っているんだ。今のは受け身です。そうじゃなくて、今度はこちらが積極的に外務大臣なら外務大臣、当然日本政府の見解として、要するに民間機はこれこれしかじか出せるよ、出しますよ、もうボランティアでもいっぱい出すんですからね。軍用機、自衛隊機については、あちらからもうこれでも間に合わないこれでも間に合わない、だからお願いする、軍用機でも、軍用機もと、こういうリクエストがあったときに初めて出しますと、それ以外は出しません、出せませんと、このぐらい積極的なコメントを出してはどうですか、今の段階。総理の発言はそうじゃなくてね。今の段階においてどうですか、外務大臣。もう一歩積極的な。
  138. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) IOMの調査依頼にも書かれていますように、まず難民がどの程度出るかわからない段階で難民の発生数に応じて民間機及び軍用機というものをどう使うかということで彼らは考えているわけでありますけれども、国連の委託を受けて民間機で先にやる、それで、どうしようもない場合に軍用機の提供を要請することがあるかもわからないから調査を委託したということでございますから、民間機を出してもらいたいという要請がございますと、私どもはまず手続として安全保障会議、それから閣議、これらに外務大臣から報告をすることになっております。民間機が足りている場合には軍用機の提供まで求めてくることはないと、私はそのように思っております。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのう総理は、九十億ドル、もし停戦の場合には戦後復興費等に使うと、こうおっしゃっている。それは政府合意したものですか。総理時々くるくる変わりますんでね、答弁が。外務省としては、これ検討して九十億ドルは返還を求めない、停戦になった場合に。そして戦後復興等に使うということは、外務省、政府合意の上で総理おっしゃっているんですね。
  140. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) この拠出しようとする九十億ドルは、戦闘行為が終わった後それがなお湾岸の平和の回復のために必要であるという考え方で、これを返却というようなことを要請する考え方は持っておりません。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、戦後復興に使われる。そうしたら、国会の答弁で総理五項目おっしゃったですね、食糧と輸送と事務と生活と、もう一つ医療ですか。その中に停戦の場合には戦後復興等に使うと、これを入れて六項目にしてくださいよ。どうです、外務大臣
  142. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 今の大臣の御答弁が基本的な考えでございますけれども、今先生が言及されましたところの具体的な分野でございますが、これは御案内のように総理が衆議院の予算委員会で繰り返し輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費に充てるということをおっしゃっておりますが、今先生御指摘のような戦闘状態自体が早期に終結した場合は、これら方針に従いまして戦後復興に際しましてもこれらの活動にかかわる経費の中で、今申し上げましたような分野の諸経費に充当されるということを考えております。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると外務大臣、六項目と、こういうことで認識していいですね。
  144. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 恐縮でございますけれども、もう一度ちょっと私に発言させていただきたいと思いますが、先生が御指摘のように、これらの分野に戦後復興というものを追加するということではなくて、戦後復興に当たりましてもこれらの分野のニーズが生ずるであろう、戦後復興の段階でこういうような分野に充当するということでございます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 大蔵大臣は、衆議院で一、二回ですかな、戦争が長引いた場合に再々追加もなんというニュアンスがあったが、外務大臣はどうですか。万が一モスクワで逆の結果が出まして、地上戦に入った。三月までですから、そうすると四月以降追加と、こういうニュアンス、アメリカは出ています。これはもうやむを得ないという情勢だと思いますか。再々追加についての御見解。
  146. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 政府としてはこの紛争が一日も早く終結することを期待いたしておりまして、現在の御審議を願う九十億ドルの拠出が早急に両院の承認が得られて、政府が拠出できるように努力しなければならないと。その後の状況につきましては、その状況を十分判断して、政府としてどのような処置をするか検討しなければならないと考えております。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、十五日に五千億の削減、支出の。一千億が防衛費。これは新中期防の二十二兆七千五百億の中から一千億円は削減できる、する、 こういうことでよろしいですね。
  148. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先般決定いたしました九十億ドルの財源についての財源措置の変更でございますが、その中で防衛費の削減というものが含まれております。これは平成三年度予算で計上しております防衛費のうち国庫債務負担行為を含めまして一千億円程度を削減するということでございます。  中期防は、その性格上各年度各年度の予算とは直接のリンクはございませんので、中期防について触れておるわけではございません。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、中期防であそこの主要装備、出ましたね、戦車二両云々と。あれはどうなんですか、削減されるんですか、あるいはまた来年度復活するんですか。
  150. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) ただいまおっしゃいましたのは、今回の一千億円程度の削減に伴って、装備の面で今御指摘のような戦車二両とかそういうものを落としたということでございますが、これはあくまで平成三年度の予算で計上したもののうち主要な装備については安全保障会議に諮って決定しております。そういうことがございますので、平成三年度予算に計上されておりました主な装備のうちで今回の削減に伴って落ちてくるもの、こういったものについて安全保障会議に諮ったものでございまして、あくまで平成三年度予算との関連でございます。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっとわからない。  だから、あれが削減されるんですか。削減されるとすれば計画の見直しは行われるんですか。あるいは三年後に見直しをするんですか。
  152. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 私どもといたしましてはあくまで平成三年度の予算の削減でございます。そうしまして、中期防と申しますのは五年間にわたる防衛力の整備、それに当たっての主な装備がどうなるかとか、あるいは経費の総額の限度がどうなるかということを記述しておるわけでございまして、その中で各年度の予算とかあるいは装備を決定しているわけでございませんので、今回の一千億円のことはあくまで平成三年度予算とのかかわりでございまして、中期防についてすぐに影響するものではございません。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 平成三年度は幾らですか、十億でしょう、正面装備へ。どういうことですか、そうなると。一千億と十億じゃ全くけたが違うじゃないですか。
  154. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 平成三年度の予算で確かに平成三年度中に現実の支払いとなるものは十億円でございますが、平成三年度中に契約する額で申しまして一千億円程度でございます。この契約を行いますためには、予算総則において国庫債務負担行為、それで幾らまでできるといった、そういうことは予算で、国会で御審議願うわけでございますので、あくまで国庫債務負担行為を含めまして平成三年度の予算で一千億円の削減ということでございます。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、あの戦車二両等は削減するんでしょうねと言うんですよ、契約を。そしてそれはまた来年度で復活するんですかと、こう聞くんですよ。復活するとなると見直しをしないんですね、計画の見直しをしないんですね。
  156. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 平成三年度におきましては、ただいま御指摘の戦車二両初め落としましたものにつきましては契約はいたしません、平成三年度においては。したがいまして、その支払いも平成三年度予算との関係では出てこないわけでございます。  それをさて、それじゃ平成四年度以降の予算においてどうするかということは、これは各年度各年度の予算の編成、またその決定の際にいろいろな情勢を勘案して考えていくわけでございまして、現段階においては確たる方針をまだ決めているわけではございません。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、実際的に一千億は削減されるんですか、削減されないんですか。契約と実際にお金を使うのとは違うじゃないですか。今までだって円高ドル安差益還元やなんかいろいろあったでしょう。削減されるんですか、されませんか。それだけ聞かせてください、ちょっと時間がもうないから。
  158. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 平成三年度の予算としては現実に削減されます。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、それは契約をしないわけでしょう、削減じゃなくて契約。後年度負担でしょう、防衛費というのはどんどんどんどん。今は十億だけでしょう、削減されるのは。それじゃ来年度復活するんですか、戦車二両等。復活しませんか、しますか、どっちですか。
  160. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 契約ができないということは、平成三年度予算で決めるという意味において……
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。その戦車二両なんか復活しますか。
  162. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 戦車二両は平成三年度の予算においては契約はいたしませんから、平成三年度に契約したということに伴う後年度の支払いも出てまいりません。しかし、四年度以降どうするかは、それは四年度あるいはそれ以降の予算の編成の際に十分考えまして対応していくところでございます。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから戦車二両、あるいは装甲車二両、百五十五ミリりゅう弾砲云々、これを今契約から外す、一千億、そしてもしこれ外したならば、復活しなければ来年は装備全体の見直しをしなきゃならない。それはそのときに考えるじゃだめじゃないですか。そのために中期防五年間の計画つくっているんじゃないですか。全く言っていることが矛盾しているじゃないですか、それはそのときと。単年度じゃないでしょう、今考えているのは。単年度にしろと言ったって単年度にしないじゃないですか、五カ年でやっているじゃないですか、大綱の見直し。単年度予算にしなさい、それを五カ年にしているじゃないですか。どうなんですか。これは、見直しはなくて来年は考える、そのときはそのときと。そうじゃなくて、ことし契約しなければ来年は契約しないんですか、するんですか。復活するんですか、しないんですか。復活しなければ、今度は装備全体の計画は見直ししなきゃならないんじゃないですか。それはまたそのとき。そのときというのは見直しをするというからそのときということなんですか。
  164. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいままで防衛庁長官から御答弁申し上げていることに尽きると思うわけでございますけれども、もう一度繰り返しになりますが申し上げますと……
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 繰り返す必要はない、時間がないから。
  166. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) 平成三年度の予算を削減したということでございますから、国庫債務負担行為につきましても、平成三年度に契約をしたならば出たであろう例えば四年度、五年度の歳出はもう間違いなく削減されて出ないことになります。じゃ、それに見合うものについて四年度以降どうするかは、中期防の性格上、各年度年度の整備量ないし経費規模をあらかじめ年割り額として定めているものではございませんので、そこはその段階で検討するということでございます。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうしますと、五カ年の中期防じゃなくて単年度の見直しということになっちゃうわけですよ。五カ年のスケジュールをつくっているわけじゃないですか。それを、それはそのときそのとき。いいですよ、そのときそのときは。だけれども、来年はこれをどうするのか。復活しないとなって、そのときはそのときとなったら、単年度の見直しということになって五カ年計画は崩れちゃうじゃないですか。
  168. 中西一郎

    会長中西一郎君) 黒柳さん、時間が参りました。  防衛局長、簡単に。
  169. 畠山蕃

    政府委員(畠山蕃君) ただいま申し上げましたとおり、各年度年度の年割り額あるいは整備量が年度ごとに決まっているものではございませんので、五年間のうちでその部分をどういうふうにするかということについては今後の検討課題であるということでございます。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構です。
  171. 立木洋

    立木洋君 湾岸危機が起こってからの経過を見てみますと、そういう中での一九九〇年代を展望すると幾つかの重要な問題があると思うんです。  一つの問題は、国際情勢が変化してきた中でイラクのああいう前代未聞の野蛮な侵略、併合が行われたという事態が起こった。これが平和的に解決されるのではなくて、大国の主導によって武力行使する、こういう手段にまで進んだ。これがこれからの新しい世界秩序の確立という点から見ると極めて重大な逆行になるんではないかという問題が一つあると思うんです。  もう一つの問題は、この期間における国連機能役割は一体どうだったか。もちろん、国連が他に代替できない基本的な精神に基づく重要な内容を持っているということを私たちは見ているわけですが、現実に行われたこの間における運営、その他のあり方等々で本当にそういう機能が十分に発揮されたと言えるのかどうかという問題がある。  三つ目の問題としては、それに対する日本対応として、結局は大国の主導に従って憲法をないがしろにするそういう日本政府あり方、これは十分厳しく問われなければならない問題としてあったんではないかと思うんです。  時間が短いから、これらのすべての問題についてここで明らかにしてお尋ねすることはできませんけれども、今の国際情勢の変化を見てみますと、単純にこれがうまく進んでいるというふうな状況ではないと。確かに米ソ関係においては変化が起こりましたけれども、これはソ連のアメリカに対する協調主義的な態度の中でいろいろな問題が生じてきている。確かに軍縮の問題やワルシャワ条約機構が名実ともに解体の状態に至っているというふうな問題。軍縮についてはどのような理由があれ私たちはもちろんそれに賛成しますけれども、しかし、それに比べて実際にはNATOというのは依然として存続し、日米安保条約という結局は冷戦構造の産物であった軍事同盟というものが依然として維持されている。こういう問題もありますし、同時に、イラク侵略ということだけではなくて、ソ連の事態を見てみましてもリトアニア、ラトビア等に対する軍事行動武力行使が行われた。こういう重大な問題もあります。また、一昨年の十二月、パナマにおけるアメリカの軍事介入が存在した。こういう大国的な力の政策に依拠した事態というのは依然として国際的に存在している。そういうことを見るならば、今日の状況の中で新しい世界秩序を確立するということであるならば、本当に国連の持っている機能役割、これが十分に発揮できるような、日本の憲法の立場を踏まえて、いわゆる大国の覇権主義的な力の政策に従うのではないそういう道を求めなければならなかったんではないかということを強く感じるわけです。  そういう点で外務大臣にお尋ねしたいんですが、ことしの一月二十五日の外交演説の中で大臣は、「今回の湾岸危機によって改めて明らかになったことは、国際の平和と安全を守る上で中心的な役割を果たし得る国は米国をおいてほかにないということであります。」と、このように述べられた。一月二十九日にブッシュ大統領が、先ほど同僚議員も引用しましたけれども、別のところを引用しますと、我々はこの地球上で平和の力を統合することができる唯一の国なのである。これは主導国の責任だ。こういうことをブッシュ大統領は述べております。  そうすると、外務大臣外交姿勢というのは、大国の主導に対して全面的に肯定的な態度をとっている、そしてアメリカの主張に従っていくと。主導国はアメリカですから、役割を果たし得るのはアメリカしかないわけですから、あなたの主張によれば。そういう外交姿勢を今後ともとるということをあなたが述べたというふうに理解していいんでしょうか。
  172. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 我々は国連憲章という一つの大きな地球社会の理想を掲げた国際的な組織というものの加盟国の一国である。そういう理想主義に基づいたような国連ではありましたけれども、現実に拒否権が発動された八〇年代までの国連安保理事会というものは、国連の目指した大きな理想を達成するには少し障害が大き過ぎたんではないかと思います。しかし、米ソの対決が終わり、また中ソの対決も終わるという状態の中で安保理事会はその目的に非常に近い行動を取り始めることができるようになってきたんではないかという認識を持っております。  そういう中で、米国に追随するんじゃないかというお話でございますが、我々は国連憲章のような国際社会を理想にした考え方で国の憲法もつくられていると思います、平和を理想とする国家として。また、NATO、北大西洋条約機構の中にも国連憲章を遵守するということが書かれている。また、日本とアメリカとの安全保障条約の第一条にも国連憲章を遵守するということが書かれているということを考えてみると、武力によって国際紛争解決手段としないという一つのこの理想はアメリカも日本も同じ考え方に基づいているんではないか。  しかし、国連というものはあくまでも集団安全保障ということを大きな柱の一つとして持っている組織でありますから、これによって安全保障理事会決定というものが国際社会における一つの方向性を出してくることは否めない事実だろうと思います。拒否権を発動しなかった安保理の国々も、その流れというものをみずから自覚しながら拒否権を発動しなかった。つまり、国際紛争解決するためには、みんなが共同で共同の利益を守っていくんだという国連憲章の考え方というものを無視して日本は生きていけないし、日本がもし国連憲章の理想から外れた国際法を無視した社会を認めるならば、我々の国家の存在は非常に危険にさらされる可能性が将来出てくるだろうと私は思っております。  そういう意味では、国連の中で大きな指導的な力を発揮できる国は現在のところアメリカが最も好ましい立場にあり得るんではないか。それ以外の国で共同行動をとり、指導力を発揮できる国家というものは、経済力から見ても技術力から見てもそんなに多くはない、私はそのように考えております。しかも日本とアメリカは自由主義、民主主義、自由市場経済という共通の理念を持っておりますから、そういう意味でアメリカとの間の同盟関係を堅持していくことが日本としては安全保障上非常に賢明な手段であるという考え方を持っております。
  173. 立木洋

    立木洋君 米ソ関係あるいは中米関係の変化等々については私も否定しません。しかし、確かにそれは変化がある。しかし、変化があるけれども、その変化の内容をよく見る必要があるだろうと思うんです。依然として今大国の力の政策というものはなくなっていないわけです、先ほども言ったように。だから、そういう事態が依然として国連の名でもし行われるというふうになるならばこれは極めて重大な事態である。  私は、そこでお聞きしたいんですが、今行われている湾岸における戦争というのは、あれは国連の戦争でしょうか。どうでしょうか、大臣。
  174. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 国連の戦争といいますか、国際連合の安全保障理事会の六百六十号に始まる決議、最後は六百七十八でございますが、五カ月半にわたる国際社会の要望を受け入れない国に対して、国際社会が共同して平和を回復するための行動をとっているものだという認識を持っております。
  175. 立木洋

    立木洋君 それなら、つまりこの戦争を管理しているというのは、一体国連のどこが管理しているんですか。
  176. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) ただいま立木先生の御指摘、私正確に理解したかどうか若干自信がございませんけれども、御承知のとおり現在の武力衝突というものの性格は、先ほど大臣から御答弁のあったとおりでございまして、イラク侵略国連の権威のもとで、国連加盟国が実力をもってこれを排除するという共同の努力を行っているというものだと考えます。したがいまして、現在のこの加盟国行動国連安保理の権威のもとで武 力行使を含む必要な措置の行使ということで安保理決議で許容されたものである、こういう性格であろうと思います。
  177. 立木洋

    立木洋君 デクエヤル国連事務総長がル・モンドの二月九日付のインタビューで次のように語っています。これは国連の戦争ではない。ブルーヘルメット、つまり国連平和維持軍もいないし国連旗もない。私はただ同盟国の報告で戦争の進行状況を知らされているだけだ。インディペンデントの二月十一日のインタビューに対しても、この戦争は標準的な国連の戦争ではない。作戦には国連の指揮がなく、国連の旗やブルーヘルメットもなく、あるいは軍事参謀委員会の参画も何らないんだというふうにデクエヤル事務総長はこのインタビューで述べられています。  そこでお尋ねしたいんですが、国連では、国連武力行使する場合に四十二条というのがあります。これは四十一条で、つまり経済制裁をやってこれが十分でないと認めたときに武力行使という四十二条の手段をとるということになっています。国連の一体どこで経済制裁が十分ではなかったということを決めたんでしょうか。そういう決めた事実があったら述べてください。
  178. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 先ほど御指摘の、現在の武力行使がいわゆる憲章に基づく国連軍によるものでないという点はそのとおりであると思います。四十二条、四十三条のもとで想定されておった国連軍ではなく、いわゆる多国籍軍という形で現在イラクによる侵略排除努力が行われているということであるわけでございます。したがいまして、現在のこの六百七十八号のもとで権限を与えられて行われておる武力行使というものは、国連憲章四十二条、三条あるいはさかのぼって四十一条という憲章が当初考えておったとおりの手続で行われているものではないということは確かにそのとおりであろうと思います。  ただ御承知のとおり、国連安保理決議六百七十八号は、前文におきまして国連憲章の第七章のもとに行動すると言及しておりますとおり、国連憲章第七章に基づきまして武力行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を一定の条件のもとで加盟国に与えたものであるというものでございます。御承知のとおり、この国連憲章を初め恒常的な国際機関を有するこういう組織の場合には、その根拠となっている憲章——この場合は憲章でございますが、想定したとおり必ずしも現実の国際関係が動いていかないという場合に直面いたしましていろいろな慣行というものが発達してくるものであると考えております。今回の場合につきましても、憲章に規定されたとおりの展開ではなかったと思いますが、この七章に基づきまして武力行使が許容されたという点については国連安保理加盟国の間に共通の認識があるというふうに考えております。
  179. 立木洋

    立木洋君 経済制裁による措置が不十分だ、いわゆる十分でなかったということが国連のどこでも確認されていないと、あなたはそれを述べることができないわけだから。  もう一つは、僕はその六七八があるということは知っていますよ。これがどういう決議かということもわかっています。しかし問題は、この六七八が表決された、採択されたときに中国は一体どういう態度をとりましたか。
  180. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 中国は棄権をしております。
  181. 立木洋

    立木洋君 国連憲章の第五章の安全保障理事会の二十七条、表決方法の問題がありますが、この中でいわゆる手続事項に関する以外の問題について「安全保障理事会決定は、常任理事国の同意投票を含む九理事国の賛成投票によつて行われる。」。そうすると、この安全保障理事会常任理事国というのは五カ国ですよね、中国も含めて。中国が棄権したというのはこれは同意投票ではございませんね、どうでしょうか。
  182. 柳井俊二

    政府委員(柳井俊二君) 国連憲章第二十七条につきましては、ただいま立木先生が御指摘のとおりの規定があるわけでございます。昨年十一月に採択されましたこの六七八号につきましては、賛成十二、反対二、そして中国の棄権一ということで採択されたわけでございます。この国連安全保障理事会の表決に関する確立された国連の慣行によりますれば、常任理事国の投票の棄権は反対投票とはみなさないということでございまして、したがいまして、国連憲章第二十七条第三項によりましてこの決議は有効に採択されたものであるというふうに解釈されております。  この決議の採択の際に、安保理で行われました中国代表の発言自体におきましても、中国はこの決議に反対票を投ずるものではないということを明確に述べた上で棄権しておりまして、またこの中国発言の後に投票が行われて、安保理議長はこの決議が賛成十二、反対二、棄権一で採択された旨を宣言しておりまして、この決議が有効に成立したということに対しまして何らの異議もなかったわけでございます。
  183. 立木洋

    立木洋君 あなたの今の解釈は若干無理があると思うんです。私は、今幾つかの手続上の問題についてだけ触れましたけれども、例えば今からお話しするのは去年の十二月二日、ニューヨーク・タイムズやあるいはイギリスのデーリー・テレグラフなどで報道されている内容です。これが事実であるとすれば私は重大だと思うんですが、一つの問題は何か。  これは十一月二十九日、アメリカが安保理事会の議長国である状況のもとでいわゆる六七八を採択する必要があった。それに対して、ソ連に対する対応を最も重視して、ソ連にサウジアラビアから十億ドルの援助を行うようにということをアメリカは態度を決めた。それから、中国に対しては、それまで中国政府の幹部が訪米することを制限していたその制限条項を取っ払って、中国がもしこれに対して拒否権を発動するという態度をとらないならば中国外相の訪米を認めるという態度を取り決めた。同時に、これに反対したイエメンに対して七千万ドルの援助を中止するという態度をアメリカがとった。つまり、自分の武力行使をいわゆる国連の手に渡すことなくアメリカの主導のもとで開始するということを国連で採択してもらいたいがためにそういう対応をとったということが、私はこれ確認するすべがありませんが、そういうことが、アメリカとイギリスの二つの新聞で報道された。  これが事実であるとするならば、国連で決められたのは一体何だったのか、あらゆる力を行使し、自分の意思をいわゆる国連という名で強行するためにとったというふうにとられなくもない、そういう事態が起こっていたということになるんではないでしょうか。この問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  184. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 当時、そのような新聞記事がアメリカの一、二の新聞にあるいはイギリスの新聞にも出ていたこと私たちも承知しておりますけれども確認されておりません。  ちなみに、申し上げるまでもないことでございますけれども、今般のイラクの問題につきましては、安全保障理事会が十二本の決議を通しておる。そのうちの幾つかは全会一致であるという事実は、私は非常に重い事実ではないかというふうに考えております。
  185. 立木洋

    立木洋君 誤解を生じたらいけないから一言申し上げておきますけれども、一番最初に私が言いましたように、イラクがやっておる行動は何らの口実をもってしても正当化できないということは明確な事実です。こういう戦争が起こったという状況の中で、いわゆるこれからの一九九〇年代の世界秩序あり方を考えたときに、どういう問題を考えなければならないかという点を問題にして私は今述べているんです。  これは、一月十五日、つまりイラクがどういう態度を決定するかという期限切れの前の日ですね、十四日の夜、国連安全保障理事会で御承知のように非公式協議が開かれた。そしてフランスが最初にイラク軍撤退ということを明確にし、その後でパレスチナ問題の解決を図る国際会議の開催をという提案をした。後の経過を全部調べてみますと、この国連の中では十一カ国が賛成してい る。ソ連も、これには問題はないけれども、アメリカが反対するからという態度をソ連はとった。ルーマニアは、五カ国の安保理事会が賛成できないというふうな状態では困るという態度をとった。イギリスは後になって対抗の案を出した。こういう案は遅過ぎるといって後になってから対抗案を出したというふうな形になっている。  しかし問題は、今の事態を考えてみますと、これがどうかこうかということは別にしても、フランスの和平提案について、今度の事態が起こった直後フランスの国連大使は、フランスが開戦直前に提示した和平案はなお有効であり、調停役を引き受ける用意があるというふうに述べております。この問題について、これを討議して公式の議題にすることさえアメリカはにべもなく拒否した。本当に和平の解決を望んで新しい世界秩序を求めるという態度をとるなら、二日や三日待って徹底してこれを討議して、それでイラクにこの問題を提示してどうだという態度をとることができたんではないでしょうか。それが一日を争って戦争という態度に出たということについてはやはり重大な問題があるんではないかというふうに思います。  海部総理も、フランスの提案については我々も肯定的な評価をしているということを国会でも述べられているわけなんです。これに対して、こういう態度をとるべきであるということを日本政府はそのときは一言も声を発しなかったわけですが、フランスが提案したことをアメリカが拒否したという問題についてもう一度この機会にお尋ねしておきますが、大臣いかがでしょうか。
  186. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 私、国連のデクエヤル事務総長を訪ねたのがちょうど十五日の午前十時でございますが、デクエヤル事務総長イラクへ行ってサダム・フセイン大統領と最後の会談をやって帰ってこられたときでして、私との話し合いの中でも私は最後まで国連事務総長は和平のために努力をされるべきであるし、このイラク訪問の結果はいかがでございましたかという質問をいたしましたが、デクエヤル事務総長ははっきりと失望すべき問題であった、最後までクウェートから撤退するということはサダム・フセインからは一言も聞かされなかったと言って彼は非常に失望しておりました。  そういう中でフランス提案が行われたわけでありましたが、フランス提案についてフランス政府臨時国会政府の宣言をいたしております。その中でフランスは、各国そして国連事務総長と連携をとりながら安保理決議に沿ったあらゆる努力を行った。昨十五日も最後の試みを行ったが、イラクからは何もポジティブなサインは得られなかった。平和を守るには正義しかない。正義を守るには武力が必要となり得るということを政府宣言で言っておるわけでありまして、フランス政府もまた最後までの努力に対してこのイラクの態度に大きな失望をしているということもこの機会に申し上げておかなければならないと思っております。
  187. 立木洋

    立木洋君 それは非公式協議ではなくて、公式の安保理会議で結論を出して、それでイラクに正式にどうなんだと言えば正式な回答がイラクからあったでしょう。非公式の協議の中で、十五日の午前中ですか、いわゆる十四日の夜午後九時から始まった非公式協議の中でのフランスの提案を知って、イラク国連大使はこれは肯定できるものだ、受け入れることは可能なものだということを言っているんですよ。公式に態度を問われないのにイラクが答えるはずがない。だから二日、三日待って、安保理で決めた態度を問う。問うたならばどういう答えが出てきたか。今はこれは想像の域を出ませんけれども、わかりませんけれども、しかし、そういうことをも待つことをしないで開戦に走ったということはやはり今後に重大な問題が残ると。一九九〇年代の世界の本当に、国際紛争が起こったときに、平和的に解決するという国連憲章立場に立ってそれを徹底して最後まで追求する、そういう点でやっぱり問題があったんだということを私は指摘しておきたいんです。  このフランスの提案というものがなぜ道理があり根処があるのか。これは六百六十号の決議で明確なように、イラククウェートからの撤退ということが明確にされていますよ、その後の決議でも。また同時に、十二月六日、これは丹波さんもお隣の局長もいたんだけれども、不破さんが聞いても、あなた方は安保理決議だとかなんとか言って、総会の決議ということを一言も言わなかった。お逃げになったのかどうかはわかりませんけれども、国連総会で去年の十二月六日に採択された決議というのは、もう既に湾岸の問題が起こっている状況の中でいわゆる中東の国際和平の会議を開催するよう呼びかけると。パレスチナ領土その他アラブの占領地からのイスラエルの撤退等々の問題、明確にされているんです。百四十四カ国が賛成している。反対したのがアメリカとイスラエルだけじゃないですか。日本政府だって賛成したんだ。  そうするとまさに、フランスが出した提案というのは、六百六十号のイラク問題に関する撤退という決議と、十二月六日の国連総会の総意に基づいている内容を踏まえて出しているんであって、これはまさにリンケージなんかとは全く違う内容です。そういうことさえ正々堂々と主張できるような立場日本政府が立たないで、結局はアメリカ主導の形で国連という名をかりて合理化するというようなことは、今後の日本政府外交あり方としては全く許すことができない態度だということを私は指摘しておきたいんですが、この国連総会で行った日本が賛成した決議ということと関連して、アメリカの態度をどう考えますか、外務大臣
  188. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) ただいまの国連総会決議につきましては、先生御指摘のように、アメリカ、イスラエルが反対をしておるわけでございます。  ただ、私が指摘申し上げたいのは、その決議が採択されたときも含めまして、同時に先般私がお答えを申し上げました安保理決議六八一に最終的に結実をいたしました話し合いが国連で行われておりまして、パレスチナ問題の、これはパレスチナの住民の保護に関する決議でございますけれども、これを採択いたしましたときに同時に議長声明が出ておりまして、その中で、これはアメリカも賛成をいたしまして、中東和平問題に関する国際会議が、適当な時期に適切に組織された国際会議が、紛争の交渉による解決、永続的和平達成努力を促進することに役立つということを合意しておるわけでございます。したがいまして、この決議にあらわれておりますような形で、中東和平についての国際会議については米国もそれに従った一つ合意安保理でできているということでございます。
  189. 立木洋

    立木洋君 局長国連事務総長が述べた報告というのは、こういう国連総会決議だとかあるいは安全保障理事会決議だとかいうものと違うんです。結局、問題は道理のある態度、本当に国連憲章に従って、そして日本の憲法を踏まえて、そして一九九〇年代の世界の新しい秩序あり方ということを考えるならば、今日本政府がとっている態度というのは憲法をじゅうりんして、そして大国主導、アメリカだけが主導国だ、それに従うのが当然だというような態度で、しかも、国連の名までかりて事態をそういう方向に進めていくというやり方には私は絶対に賛成できないということだけは明確に述べておきたいと思うんです。  もちろん、この問題については、イラククウェートに対する前代未聞の侵略、併合を行ったという蛮行が許されてはいいはずはありません。これは最悪の問題であるということを明確にしつつも、そういう国際紛争をどうして努力をして平和的に解決していくかという点でもっと人類の英知が集められるように、国連憲章立場に立って、日本国憲法の立場に立って努力するのが日本政府の態度である、そういうことから逸脱した今日の対応については、時間がありませんからもうこれ以上述べられませんけれども、厳しく指摘をして、私の質問を終わります。
  190. 粟森喬

    粟森喬君 私の方から、政府が常日ごろ国連中 心の平和外交をやろうというふうに言っておりますので、そのことと関係をして、湾岸戦争の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず、一つお尋ねをしたいんですが、二月十五日のサダム・フセインが撤退をしてもいいという、用意があるといいますか、幾つかの条件がついていたことは承知をしていますが、このことにこたえるブッシュ大統領のコメントというのは、即時無条件撤退がなければだめだというそこだけではなく、すなわちサダム・フセインがいなくならない限り本問題を解決しないようなニュアンスが出ておったと思いますが、日本政府はそのときにいわゆる国連の六百六十号決議に基づいて、即時無条件撤退しかないんだと、あとのコメントを言っていませんが。今アメリカのブッシュ大統領がいろんなところで発言をしていることに対して、日本政府の見解はその部分についてはいかがなものでしょうか。
  191. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) ただいま先生御指摘のブッシュ大統領の演説におきましては、けさほども御答弁申し上げましたが、大統領はまず最初に、イラクに対してクウェートからの無条件撤退、それから安保理決議の完全実施、クウェートの正統政府クウェート復帰等を求めるということ。イラク軍が目に見える形でクウェートからの撤退を開始するまで、安保理決議六七八のもとに行動している多国籍軍がすべての国連決議を遵守させるための努力を続けるという形で、米国の目標が安保理決議の実施にあるということを確認しておるわけでございます。その上で今御指摘発言がございますが、これも大統領は、流血の事態をとめるためにはもう一つの方法がある、それはイラクの軍部及びイラク国民がサダム・フセインに身を引かせることであるということを言っておりますけれども、そこではこれが米国の目的であるとか、あるいはそこに米国が何らかの形で介在するというようなことを全く言っておるわけではないわけでございます。  我が国といたしましては、現在の多国籍軍行動と申しますのはあくまで安保理決議六七八によって与えられました権限に基づく安保理決議の実施、それからこの地域の平和と安全の回復目的としたものであるというふうに理解をしておるわけでございます。
  192. 粟森喬

    粟森喬君 何となく、ブッシュが言った部分を、いやそんな意味ではないというブッシュ大統領を擁護するような立場だけではいささかちょっと日本立場というのがわからないわけでございます。  特に、そのことに関連してお聞きをしたいんですが、例えば、ソビエトと今やっていますね。やっているけれども、これは二つのケースが考えられると思うんです。撤退を直ちにするということ、それから撤退を開始しないで地上戦が始まる。いずれの場合もクウェートまで今多国籍軍が何らかの格好で進攻するというか、そこまで駐留するという状態は続くというふうに想定されていますか。それとも撤退をすればそこは空白の状態になるのか、この辺のところについては外務省としてはどういうふうに想定されているか、お聞きをしたいと思います。
  193. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) イラク軍安保理決議に従いましてクウェートから撤退するということになりました場合に、そのあとがどうなるかということにつきましては、御承知のようにいろいろな構想や提案が今までにも出されております。例えば、国連平和維持軍による駐留あるいはアラブ国軍による駐留、その他いろいろあると思いますけれども、これはあくまでもイラククウェートから撤退するということを前提としているわけでございまして、したがいまして、イラククウェートからの撤退が一日も早く行われるようにというのが私どもの希望でございます。  それから、先ほど私はブッシュ大統領の言ったことを弁護するということではございませんで、私が申し上げたことは、アメリカの国務省の報道官がそういう説明をしておるということでございます。
  194. 粟森喬

    粟森喬君 何らかの格好で、今クウェートからイラク撤退武力行使でやるのか、自主的にやるのかという期限に来ていることは間違いございませんが、その後の維持というのは、クウェート国家というものが多少変則的といいますか、今すぐ戻ってきて国家としての活動ができる状態にあり得ないわけですから、二、三日前に総理が九十億ドルは戦後復興に使うというのは、その種の活動に限定されるという意味で理解をすればいいのか、それともイラク国家の中の救済活動まで敷衍するというふうに理解していいのかどうか、その辺のところについて明確な答弁をお願いしたいと思います。
  195. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先ほども戦後復興の関係につきましては御質問がございましたけれども、私どもが基本的に考えておりますことは、従来から国会の場で御説明しておりますことの繰り返しになりますけれども、湾岸の平和と安定の回復のために活動している関係諸国支援するという目的で行われることでございまして、先生御指摘のように仮に戦闘自体が早期に終結した場合にどうなるかということでございますけれども、その際におきましても平和維持活動、それからさらには戦後復興等の活動に充当したいということでございます。  先生御指摘の、具体的にどこを対象にするかという点でございますけれども、これも繰り返し御説明していることでございますが、日本はGCCの湾岸平和基金に拠出いたしまして、そこの運営委員会でいろいろ検討していくわけでございますので、従来から申し上げておりますのは日本政府の基本的な考えでございますけれども、まさに先生御指摘のような問題になりますとGCCの各国にとりましても非常に重要な問題でございますので、十分GCC各国意見も踏まえましてこの運営委員会で協議をしていきたい、こういうふうに考えます。
  196. 粟森喬

    粟森喬君 先ほども申し上げたように、国連中心主義といいながら、つまりGCCで使うんだからということで九十億ドルのお金一つとっても、どこかで国連決議なり決定というものが拡大解釈なり逸脱しているという傾向というのは、私はこの間の問題では非常にはっきりしているんではないかと、こういう気がするわけでございます。  そんな前提で幾つかのこと、もう少しお尋ねしたいんですが、例えば今イラク日本大使館というのは閉鎖状態なのか閉鎖していないのか、どっちなんですか。
  197. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 現在イラクにございます我が方大使館につきましては、館員が全員国外に出ております。ただ、大使館としてはいわば存続する形になっておるわけでございます。
  198. 粟森喬

    粟森喬君 存続していない、どっちですか。
  199. 中西一郎

    会長中西一郎君) もう一度明確に答弁してください。
  200. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) ただいま申し上げましたのは、イラク日本との間には外交関係が当然存続しておりますので、そういう意味で存続しているということでございますが、物理的には現地のスタッフの人たちが残っておるかと思います。
  201. 粟森喬

    粟森喬君 閉鎖しているのか、閉鎖していないのか。今、聞いたのは、閉鎖しているのか、閉鎖していないのかと聞いておるんですよ、一つしか答えはないでしょう。
  202. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) 物理的な意味で申し上げれば、これは閉鎖されているということになると思います。  ただし、何と申しますか、法律的な意味におきましては外交関係は継続しておりますので、そういうものとしては存在しておるわけでございます。
  203. 粟森喬

    粟森喬君 日本大使館の人たちの身分の問題も非常に重要なんですが、私はイラクにおける国内の情報を正確に伝えるという意味では、私どもが聞くのはアメリカの情報とそれからイラクから発表される情報。我が国がみずからの情報網を全く持たないということは、これは私は国連中心であるとともに、日本の自立的な外交として問われて いるところじゃないかと思う。  例えば一つの例で申し上げます。この間からイラクのいろいろなところで非戦闘要員が何人か殺傷されているという話があります。これは日本政府としてはいかなる方法で確認していますか。確認もしていない。
  204. 渡辺允

    政府委員渡辺允君) まず大使館の問題につきましては、現在のような状況になっておりますのは我が国だけではございませんで、むしろ世界のほとんどの国についてイラクには現在大使館員がおらない状況に残念ながらなっておるわけでございます。  そういう状況のもとで、私どもといたしましてはなるべく諸般の情報を総合いたしまして事態の判断をいたしておりますけれども、最終的には現在のような状況のもとで情報の把握に一定の限界があることは事実であろうかと考えます。
  205. 粟森喬

    粟森喬君 今の戦争の状態の中で、一つは事実として武力がそこで行われているという問題と、宣伝戦とかいろいろなことが言われているわけですから、もう少し日本政府としてもしっかりした情報とか事実を掌握するというような意味では今の態勢は欠けているんではないかと思いますが、大臣どうですか。
  206. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 政府としては外交関係は断絶していないわけでありますから、国際法的にはイラクとのまだ関係が現存していると。ただそこで、情報を収集するという機能は我が方の大使館の館員が国外に出ておりますから、我が国外交官自身が情報を収集するということは、現実の問題としてバグダッドならバグダッド内での情報の収集というのは難しいという状況にあることは率直に申し上げなければならないと思います。
  207. 粟森喬

    粟森喬君 それでは次に、私は国連のことについてちょっとお尋ねをします。  一つは、サダム・フセインが撤退する用意があると言ったんです。その後、国連安保理なり国連事務総長はその声明に対していかなる対応をしたんでしょうか。
  208. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 先般金曜日にああいう発表が行われた後、ニューヨークにおきまして事務総長が新聞とのやりとりを行っております。それが報告されておりますけれども、記者の方々が執物にイラク声明に対する事務総長の反応いかんということを何度も繰り返し迫ったのに対しまして事務総長は、この声明は自分は数時間前に知ったばかりで注意深く検討する必要がある、非常に慎重な検討に値する点である、それから今申し上げたように、提案については非常に慎重な検討を行う必要があるということを繰り返し述べておりまして、私の印象では事務総長は非常に慎重に扱っておるという印象でございます。
  209. 粟森喬

    粟森喬君 そこで、もう一度お尋ねをします。  今報道関係の情報として聞いたのですが、国連大使はおるのでしょう。国連大使なり事務総長なり、日本から派遣している国連関係者というのはその部分に全然コメントしていないわけですか。  国連中心主義だというふうに何遍も皆さんは言っておるのだけれども、周りの情報として注意深く事務総長は見ているということを言った。日本政府はそのことについて何らの提言も何もしていないわけですか。これは大臣にお尋ねします。
  210. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 事実関係の問題でございますから、私の方から答弁させていただきたいと思います。  国連安保理の公式会合が二月十三日から十六日まで行われておりまして、特に十五日、十六日はイラク声明を受けて各国の代表が演説しております。日本は現在安保理のメンバーではございませんけれども、強い要請をいたしまして、波多野大使が日本政府の考え方を表明しておるということで、一定のと申しますか、安保理におきますイラク情勢をめぐっての意見交換その他には日本政府もしっかりと加わっているという状況でございます。
  211. 粟森喬

    粟森喬君 どういうふうに言ったのかを聞いているので、言ったというだけでは答弁になっていないと思います。
  212. 丹波實

    政府委員(丹波實君) 失礼申しました。先生のお時間を余りとってはいかぬと思いましたのであれしましたけれども、要旨以下のとおりの発言を行っております。  日本政府は、クウェートからの撤退の用意があるというイラク声明に接したが、これにはさまざまな条件が付されており、イラクの真意を慎重に見きわめる必要があると考えている。  二、我が国は地域の正義と平和を回復するために、イラククウェートからの撤退イラク指導者に働きかけてきた。十三日は、中山外務大臣より在京イラク大使に、この旨強く要請している。  三、我が国は、安保理決議六七八に基づいてとられた国連加盟国武力行使に対し確固たる支持を表明、二十億米ドルの経済援助のほか多国籍軍に対し昨年二十億ドルの拠出を行い、本年一月九十億ドルの追加支援を拠出することとしている。  四、国連決議に従った撤退が実現する場合には、その後の諸問題解決に対する国連の建設的役割を期待する。  これ以上あれしますとますますお時間とりますので省略いたしますけれども、要旨以上のような発言を行っております。
  213. 粟森喬

    粟森喬君 私自身の意見を率直に申し上げますと、事態の解決一つのきっかけであったにもかかわらず従来の発言を繰り返しているということで、本当にそれが国連中心外交なのかどうかということです。  外務大臣、この日本大使の演説に対して、日本政府の主張として当然大臣は何らかの格好でアグレマンしているはずですから、私のこういう意見に対してどう思いますか。
  214. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 今局長が申しました安全保障理事会というのは、日本は御案内のように理事国でございませんから、本来はここで発言する機会がなかったわけでありますが、今回特別に発言する機会を得たわけでありまして、そこで日本政府としての意思を明確に伝達したということでございますが、私は事前にこの提案について承認いたしております。それで日本政府としての意思をそこで明確にあらわしたわけでございますが、いずれにいたしましても、国連中心外交といいましても国連にはいろいろな国の外交官が、大使が集まっておりますし、いろんな国と接触しながら事態が一日も早く収拾できるように日本日本なり努力をやっているということを申し上げておきたいと思います。
  215. 粟森喬

    粟森喬君 今の答弁では、問題の解決国連で本当に求めようとする気になっていないというふうに私は理解します。ただ、時間がございませんので、きょうはその辺でやめておきます。  防衛庁長官にもおいでいただいているんでちょっとお尋ねをしたいと思うんですが、今PKOの準備を何らかの格好で私たちもやらなければならないというふうに思っているんですが、一つここだけははっきりしておいてほしいと思うんです。例えばPKO、北欧の例えばスウェーデンの国連平和維持軍のための待機軍、こういうものができたときに自衛隊は例の協力法と全く同じ格好なのか、それとも多少変化するのか、それとも全く参加しないのか。この三つで申し上げたらどの立場検討されているのか、そこは明確にしてほしいと思います。
  216. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 国連PKOの活動につきましては、個々の事例によって目的任務はいろいろ違うと思います。それでまた、これから日本がどういうふうにそういったものに対応するかにつきましては、政府部内あるいは国会も含めて広くこれからお考えいただく問題だと思うのでございます。  したがいまして、今それと自衛隊との関係がどうなるかということは明確に申し上げられる段階でございませんけれども、一般的に申しますと、当該PKOの目的とか任務武力行使を伴うものであれば、これは自衛隊参加は憲法上許されないものだと考えております。武力行使を伴わないものであれば、これは憲法上許されないわけではございませんけれども、自衛隊参加することに なればやはりこれは法律上任務を付与するような規定が必要であろう、そういうふうに考えております。
  217. 中西一郎

    会長中西一郎君) 簡単にしてください。
  218. 粟森喬

    粟森喬君 政令でやったことの賛否は別にして、自衛隊機の派遣などは新しいそういうものの中に含まれるようになるのかならないのか。この辺は想定したときに防衛庁としてはどういう見解ですか。
  219. 中西一郎

    会長中西一郎君) 簡単に御答弁を。
  220. 池田行彦

    国務大臣(池田行彦君) 先ほども申しましたように、まだ全体像が見えませんのでその中で自衛隊がどうこうということはまだお答えのしようがない段階でございますけれども、ただ今回、私どもが考えております自衛隊機による避難民の輸送というのは、今回の個別具体的な事態に対応して現行の法体系の中で政府に授権されておる範囲内のことであるということで考えておるわけでございます。
  221. 中西一郎

    会長中西一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時七分散会