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1991-03-12 第120回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十二日(火曜日)     午前九時開議  出席分科員    主 査 林  義郎君       浅野 勝人君    倉成  正君       穂積 良行君    増岡 博之君       松浦  昭君    串原 義直君       佐藤 敬治君    志賀 一夫君       関山 信之君    松原 脩雄君       大野由利子君    渡部 一郎君       正森 成二君    兼務 五十嵐広三君 兼務 北側 一雄君    兼務 伊藤 英成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房会         計課長     阿南 惟茂君         外務大臣官房文         化交流部長   小倉 和夫君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房会         計課長     目崎 八郎君         大蔵大臣官房審         議官      小川  是君         大蔵省主計局次         長       田波 耕治君         大蔵省理財局長 篠沢 恭助君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       峯嶋 利之君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省銀行局保         険部長     竹内 克伸君         国税庁直税部長 山口 厚生君  分科員外出席者         国土庁土地局土         地政策課長   鈴木 省三君         国土庁土地局地         価調査課長   生田 長人君         法務省刑事局参         事官      鶴田 六郎君         大蔵省主計局主         計官      太田 省三君         大蔵省主計局主         計官      田谷 廣明君         水産庁海洋漁業         部長      嶌田 道夫君         運輸省国際運輸         ・観光局外航課         長       村上 伸夫君         運輸省国際運輸         ・観光局国際航         空課長     羽生 次郎君         労働大臣官房政         策調査部総合政         策課長     太田 芳枝君         労働省労働基準         局監督課長   山中 秀樹君         労働省婦人局婦         人福祉課長   藤井 龍子君         労働省職業安定         局雇用保険課長 池田 克忠君         参  考  人         (日本たばこ産         業株式会社常務         取締役原料本部         長)      折居 靖彦君         参  考  人         (日本銀行企画         局長)     小島 邦夫君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 分科員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   穂積 良行君     浅野 勝人君   串原 義直君     関山 信之君   佐藤 敬治君     松原 脩雄君   冬柴 鐵三君     藤原 房雄君   正森 成二君     菅野 悦子君 同日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     松浦  昭君   関山 信之君     串原 義直君   松原 脩雄君     志賀 一夫君   藤原 房雄君     吉井 光照君   菅野 悦子君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   松浦  昭君     前田  正君   志賀 一夫君     佐藤 敬治君   吉井 光照君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   前田  正君     穂積 良行君   渡部 一郎君     長田 武士君 同日  辞任         補欠選任   長田 武士君     吉井 光照君 同日  辞任         補欠選任   吉井 光照君     大野由利子君 同日  辞任         補欠選任   大野由利子君     冬柴 鐵三君 同日  第三分科員北側一雄君、伊藤英成君及び第五分  科員五十嵐広三君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算  (外務省及び大蔵省所管)      ────◇─────
  2. 林義郎

    林主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算外務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  3. 浅野勝人

    浅野分科員 湾岸戦争で果たしたアメリカ役割、実績から見て、戦争後の対応アメリカを軸に展開しているのは当然の成り行きと考えます。したがって、アメリカとのコンスタントダイアローグがますます重要となってきています。ブッシュ大統領は四月から五月にかけて日本に来てくれるものと私どもは期待していたのですが、さまざまな観測が出ています。まず最初に、ブッシュ来日日程について伺っておきます。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねブッシュ大統領訪日の時期でございますが、現在のところ確定はまだしておりませんが、延期されたということではなしに日程がまだ検討段階、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  5. 浅野勝人

    浅野分科員 去年九月の日米首脳会談で、ことしの早い時期に実現することで合意をしていたと承知をしておりますので、内定していたものが延期されたのではないかという懸念を抱きます。今、大臣おっしゃるようにもともとまだ決まっていないものだったというのなら、これはまたこれから詰めていただくということになるのだろうと思いますけれども、その点にこだわるのは、ブッシュ大統領が多国籍軍参加したイギリスのメージャー、カナダのマルルーニー、フランスミッテランら主要国首脳と近く相次いで個別会談をすると伝えられているものですから、湾岸戦争に対する日本対応不満で、その間接的な表現という形で、ことし早い時期というのが延期されたのではないかという懸念がさまざま言われているときでもありますので、そのあたりのことをもう一度伺っておきます。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 私も同席したのでございますが、ブッシュ海部会談のときにブッシュ大統領の方から来年の二月のある時期に訪問をしたいということで、日本政府としても海部総理訪日を歓迎するというお話がございましたが、問題の湾岸戦争があのような事態で起こってまいりましたので、アメリカ大統領自身政治日程が大きく変更したものだというふうに理解をいたしております。
  7. 浅野勝人

    浅野分科員 次に、クウェート日本大使館再開の見通しについて伺います。  早く再開できるようにクウェート政府に申し入れたところ、クウェート側から、治安が確立するまで自分の国の警備兵を現場に派遣できない国の大使館再開を待ってもらうと言われているというのは事実ですか。
  8. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 クウェート大使館につきましては、私どもといたしましてもできるだけ早く再開したいと考えておりまして、クウェート解放直後に黒川大使サウジアラビアリヤドに参りまして、現在まだリヤドその他サウジアラビアにございますクウェート政府協議接触を続けておりますし、また現地の状況をできるだけ把握するように努めております。ただクウェート政府からは、クウェート市内の安全、治安上の理由から若干まだ待ってほしいということを言われておりますのは御指摘のとおりでございまして、したがって我々といたしましては、長期的な滞在はともかくといたしまして、少なくとも現地事情を確認するという意味で、できるだけ早く一たんとにかくクウェート入りをするということで現在準備を進めております。
  9. 浅野勝人

    浅野分科員 東京のクウェート大使館筋からのお話ですと、さまざまな細かいうわさが伝えられておりまして、例えば多国籍軍参加した国の大使館は戦後今直ちに国旗を掲げていいけれども、それ以外の国はちょっと遠慮してくれとか、ルーモアのたぐいがいろいろ伝えられておりまして、これは今、中近東アフリカ局長の情報は、どこの国に対してもそうなのか、多国籍軍参加した国とそうでない国との扱いに若干の差異があるのか、その辺もし承知をしておられたらお答えいただきたいと存じます。
  10. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 クウェート政府側扱いが多国籍軍参加した国とそうでない国と異なるということはないと承知をいたしております。ただ、現実の問題といたしまして、これまでに大使館再開いたしました例えば米国、英国、フランス等は、自国の軍隊が多国籍軍参加して現地に展開をいたしておりますので、例えばサウジアラビアなりバハレーンからクウェート入りをする場合に自国軍用機で入るというようなことに現実の問題としてなっていると理解をいたしております。
  11. 浅野勝人

    浅野分科員 人的に何も貢献できない国の悲哀を感じているのは、私のひとりよがりで杞憂だといいのですけれども、この人的貢献と関連して国連平和維持機能について聞いておきます。  国連平和維持活動は、これまで何回行われ、日本はどれだけどのようにかかわってきましたでしょうか。
  12. 丹波實

    丹波政府委員 まず、いわゆる国連平和維持活動ですが、次のような幾つかの要素でできております。  一つは、国連安保理または総会の決議に基づくということ、二つ目は、国連加盟国から提供されました要員から平和維持軍または停戦監視団を組織するということ、三つ目は、関係当事国の同意を得て派遣される、四番目は、現地に派遣し紛争当事者間に介在して停戦監視治安維持という任務に当たる、五番目の要素は、そういう活動を通じて事態鎮静化紛争再発防止等に当たるということでございます。これまでこのような平和維持活動国連が組織しましたものは十九回になっております。  日本として参加いたしましたのは四回でございまして、一つは、一九八八年から八九年に行われました国連アフガニスタンパキスタン仲介ミッションというものに政務官一名を国連職員として、これは外務省員ですが派遣しております。二つ目は、一九八八年から八九年に行われました国連のイラン・イラク軍事監視団でございまして、これも外務省員国連職員として一名政務官として派遣いたしております。三つ目は、一九八九年の十月から十一月にかけて行われました国連ナミビア独立支援グループ選挙監視グループと呼ばれるものに対して、日本といたしましては選挙監視要員として三十一名の要員を送っております。それから四番目は、一九九〇年の二月から三月にかけて行われました国連ニカラグア選挙監視団に対しまして日本政府として十名の要員を派遣いたしております。
  13. 浅野勝人

    浅野分科員 十九回のうち四回要員を派遣しているということでありまして、ナミビアあるいはニカラグアの総選挙監視要員というようなことは日本にもってこいの仕事ですし、その意味では既に日本PKO参加をしているということになろうかと思います。  そこで、憲法の精神などから判断して日本参加できる限界をどうお考えですか。
  14. 丹波實

    丹波政府委員 先生ニカラグア選挙監視への日本政府要員について特に言及されましたけれども、昨年の二月に、この選挙監視団参加したわけですが、日本参加につきまして大変評価されまして、関係者からは次のような言葉が寄せられております。我々は日本よりランド・クルーザー三台借り上げに協力してもらい、さらには要員の提供及び資金的援助を受け、日本側協力を高く評価している。日本からの今次要員は、全員三十歳代前半という若さであったが、ニカラグアについての知識も十分で、迅速に行動でき、かつ逆境にも耐え得る人物で高く評価している、こういうことでありました。  ちなみに、そのPKO参加できる限界という御質問でございますけれども一般論で申し上げますと、国連平和維持活動の具体的な内容は、個々の事例によって異なっております。したがいまして、一般的にはなかなか論じることは難しいわけですが、あくまでも一般論として申し上げれば、その維持活動任務目的が、仮に武力行使というものを伴うものであれば日本参加というのは憲法上許されないということが従来政府側国会答弁あるいは政府答弁書という形で申し上げてきている限界ということでございます。
  15. 浅野勝人

    浅野分科員 ナミビアニカラグア選挙監視団というのは、これはどういう人が具体的に、外務省職員が行くのですか、どういう人が行っておるのですか。
  16. 丹波實

    丹波政府委員 例えばナミビアの例をとりますと、外務省職員も行っておりますけれども、しかし多くの者は地方自治体の職員あるいは自治省の職員、こういう方々が一たん外務省員という身分を取得して出かけておられるということでございます。
  17. 浅野勝人

    浅野分科員 よくわかりました。今、軍事を伴う、ないしはその懸念が濃いものには参加ができないという見解のように承りましたけれども、例えば過去のPKO活動の中で、今のザイール、当時のコンゴでの国連軍活動などは、過去の例からいくとだめという見解ですか。
  18. 丹波實

    丹波政府委員 先ほど申し上げましたのは、一般論として申し上げれば、その任務目的が仮に武力行使を伴うものであれば、我が国参加については憲法上許されないと考えるということを申し上げたわけですが、この任務目的武力行使を伴うものということで典型的なケースとしてよく言われますのは、先生が今御指摘になられた、このコンゴにおきますところの平和維持軍活動でございまして、このコンゴ平和維持軍活動に関しましては、当時の安保理決議の中に、内戦防止のためには最終的には武力行使を認めるということが明文で書かれてございますので、そういう意味ではその任務目的の中に明確に武力行使も含まれているということで、いわゆるここで申し上げるその日本憲法参加を許されない典型的なケースじゃないかということでよく例に挙げられるケースでございます。
  19. 浅野勝人

    浅野分科員 今回のサダム・フセインのような特殊なパーソナリティーの人物を除いて、世界じゅうに戦争をしたいと思っている指導者国民というのはいないわけですから、最初から戦をしよう、武力行使しようとして国連平和維持活動参加するわけではないということを考えますと、私は、青竹を割るようにこれに線を引くことはなかなか難しかろうと思いますし、武力行使にかかわることはきつく憲法で禁じられているとおりではありますけれども、場合によっては、ケースによっては勇気を持って与野党の合意を、国民コンセンサスを得ながら果敢に取り組んでいくのが国連への真の意味での協力になるかと存じます。  パレスチナ問題に戻りますけれども国連ダブルスタンダードだという主張に対し、日本政府はどのような見解をとるのか、玉虫色ならそれなりにわかりやすく答えていただきたいと思います。よく選挙区で聞かれて私どもも、うっと詰まってうまく答えられないことがある。庶民感覚からしても、イラクは悪いけれどもイスラエルは構わないんだということにはならないわけで、これまで日本政府はかなり明確な立場をとってきているわけですので、もう一度整理して、わかりやすく見解を聞かせていただきたいと存じます。
  20. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ただいま先生指摘の問題につきましては、二つの点があると思います。  第一の点は、イラククウェート侵攻というものの性質と、このパレスチナ問題の性質の差であろうかと存じます。すなわち、イラククウェート侵攻は、独立国に対して何の挑発もないままこれを武力によって侵略をし、併合したという問題でございますし、他方のパレスチナ問題は、パレスチナという土地に関しますユダヤ人パレスチナ系アラブ人の非常に長い歴史的な争いの延長線上の問題であるということが第一点であろうかと存じます。  それから第二点は、パレスチナ問題につきまして御承知安保理決議二四二、三三八というものがございまして、これはいずれも安保理決議といたしまして、問題の当事者間の交渉による解決を要求しているわけでございます。その交渉がいろいろな形でこれまでも続けられてきておりますが、その結論が出ていないという意味におきまして、特にパレスチナ系アラブ人不満があるということは事実でございますが、これは安保理決議に従った解決国際社会としても求めてきたということであろうかと思います。  日本政府立場といたしましては、このパレスチナ問題につきましては、二四二、三三八を基礎といたしまして、イスラエルの全占領地からの撤退、それから、独立国家の建設の権利を含みますパレスチナ人民族自決権承認、それからイスラエル生存権承認という三つ基本的な原則に基づいてこの問題が解決されるべきであるという立場を一貫してとってきております。
  21. 浅野勝人

    浅野分科員 湾岸戦争前の中東におけるイスラエル立場と戦後の今では、比較にならないほど立場が強まったと判断いたします。イスラエルの存在は、中東でのアメリカの新たなプレゼンスと切り離して考えられないだけに、その重みは一段と増した、安定したと見ていいと思います。強いイスラエルが誕生した今こそ、中東包括的和平を進めやすい政治環境が生まれてきたと私は考えます。イスラエルの全占領地からの撤退独立国家樹立権利を含むパレスチナ人民族自決権承認イスラエル生存権承認を通じて恒久平和を達成すべきだという日本政府主張は、世界に立派に通用する、間違ったものだとは思っておりません。問題は、どうやってこれを実行させるか、そのためにどんな役割日本が果たすことができるのかが肝要だと存じます。外務大臣決意のほどを伺っておきます。
  22. 中山太郎

    中山国務大臣 まず、イスラエル日本との関係というものは、外交関係は、悪い関係ではありませんけれども特に緊密な関係という関係では今日まではなかった、私はそのように認識をいたしておりますが、やはり今回のイスラエルの、中東湾岸戦争におけるその戦火を拡大しないということについての自制、これは極めて高く評価すべきだと私は思っております。そういう意味で、私は近い将来にイスラエルを一度公式訪問をして、外相会談を持って意見を交換して、中東に対するイスラエルのこれからの取り組みについての見解をよくただしておきたいという考え方一つ持っておることを明確に申し上げておきたいと思います。  なお、イスラエルパレスチナの問題、御案内のようにどうしてインティファーダが起こったり、あるいはまたテロが起こるかという問題を解決するためには、パレスチナ人生活水準をいかに上げるかということが一つの大きな問題点というふうに認識をいたしておりまして、そういう意味でも、パレスチナ問題について日本政府としてできることはやはり協力をしてやっていくという方針を持ってまいらなければならない、このように考えております。
  23. 浅野勝人

    浅野分科員 戦後は物で、お金で戦後復興に寄与するという役割日本にも一つあると思いますけれども、まさに今大臣決意を述べられたように、出番かなという気がいたしますので、今のような基本認識に立って大いに活躍していただくことが日本のためであり、湾岸のみならず旧西側に足場を置いた日本外交基本かと思いますので、大いに頑張っていただきたいと思います。  最後に一点、生物化学兵器製造に転用することが潜在的に可能な民生用製造設備ミサイル技術拡散防止のための新しい輸出規制アメリカから発表されたようであります。日本への協力要請はこの点について来ておりますか、どんなアプローチがありますか。
  24. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生今御指摘アメリカの新しい輸出規制措置でございますが、これは三月七日にアメリカ政府から発表になりました。現段階アメリカから我が国に対して正式な協力要請が来ているわけではございませんが、米政府はこの措置発表するに当たりまして、すべての主要な供給国がみずからの規制と同等の措置をとる必要があるとして、オーストラリアグループミサイル関連技術輸出規制等の場を通じまして、我が国を含む関係国協力要請を行うとの方針を明らかにしております。今後、これらの場において正式な要請がなされるものと理解しております。
  25. 浅野勝人

    浅野分科員 それは具体的な品目みたいなことまで来ておるのですか、あるいはもうちょっと大きな物の考え方として協力要請があるのですか。
  26. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先ほど申し上げましたように、現段階具体的協力要請が来ているわけではございませんで、アメリカ政府が言っておりますように、今後それぞれの場、例えばオーストラリアグループそれからミサイル関連技術輸出規制の場で協力要請が来るものと思っておりますが、アメリカが三月七日に発表しました措置といいますのは、例えば化学兵器の原材料については現在の規制を、今原材料については十四の義務的な規制が行われておりますが、それを五十にするというふうに非常にはっきりしたものでございますが、例えば生物化学兵器製造に関連する設備をどうするかというものについては具体的なリストは現段階発表になっておりません。アメリカ側としては、このリストをみずから固めるかたわら、関係国に対しても要請を行ってくるもの、こういうふうに理解をしております。
  27. 浅野勝人

    浅野分科員 ポスト冷戦構造の中での日米関係というのは、従来の意味とまた違った視点があろうかとは思いますけれども、やはり今度の湾岸戦争を経て、ベトナム戦争以降ドルの威信が低下し、アメリカ社会はエイズと麻薬と売春で腐ったリンゴのようだというような認識を抱いていた中で、いざというときには国民コンセンサスが大変見事に統一されて、自分たちに直接利害のないことでも世界のデモクラシーを守るためにあそこまで団結できるすばらしい国だということを改めて教えられたような思いがいたします。新しい視点に立った日米協調日米基軸というものをもう一遍ポスト湾岸の中で構築してもらう努力をしっかり、挙げてお互いに努力していってもらいたいということをお願いして、私の質問時間を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  28. 林義郎

    林主査 これにて浅野勝人君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦昭君。
  29. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 私は、本予算委員会の第二分科会におきまして、目下激動を続けますソ連邦の動向及び特に極東地域を中心とした援助問題に関しまして若干の質問をさせていただきたいと思う次第でございます。  私は昨年の九月から十月にかけまして訪ソ団一員といたしましてモスクワ、レニングラードを訪問させていただき、また昨二月十一日から十三日までの間にサハリン友好議員連盟一員といたしましてサハリンに行ってまいりました。かつて私は水産庁に奉職をいたしておりましたが、日ソの漁業交渉も担当させていただいた次第でございますけれども、十数回訪ソをその際にいたしておりましたけれども、今回見ましたものは、かつてと比べ物にならないほど悪化した経済事情であり、また同時に庶民のペレストロイカに対しますところの不信の気持ちでございました。  その状況をつまびらかにここで述べたり、あるいはその原因を論ずるいとまはありませんけれども、私は、やはりソ連がペレストロイカあるいは情報公開ということを推進しまして、共産党一党独裁の体制を排除しまして、できるだけ民主的な政治形態を取り入れると同時に、その経済も我々がとる市場経済に近づいてくることが望ましいと考えている一人でございます。したがいまして、その方向を進めるためには、ペレストロイカ援助とでも申しましょうか、ソ連に対する西側の援助を強化いたしましてその経済を再建せしめて、ペレストロイカの円滑な進展に協力しなければならないという立場に立つものでございます。  しかし、このような考え方をとる者にとりまして、昨年末のシェワルナゼ外相の辞任、バルト三国における流血の惨事というのは、私にとっても大きな衝撃であった次第でございます。軍部あるいは保守派の台頭を予想した同外相の予言が次第に現実性を帯びてまいってきております。また一方、ソ連邦は、自主独立を要求する各共和国との間に民族問題を含んだ大きなきしみを生じておりまして、中央政府と地方政権との間の亀裂も拡大いたしまして、その中で来る十七日この問題に関する国民投票を迎えようとしている次第でございます。昨日のテレビを見ておりましても、急進改革派の五十万人に及ぶ赤の広場を埋め尽くした群衆の姿は、このソビエトの苦悩というものを物語っていると思って拝見をいたしておりました。  このような激動する政情の中にありまして、私はサハリンにおいて、地域経済の独立を追求し、また民主主義と市場経済を求めて努力を続ける地方政権の姿に接してまいりました。また、その目標の実現のために我々の援助を要請するという非常に真剣な声も聞いてきたわけでございます。私は、この二つの貴重な視察を通じまして得られた現在の私の考えを私なりにまとめてみますと、次の三点に要約できると思います。  その第一は、サハリンを含む極東地域こそは、その地理的あるいは経済的な立地の条件から考えましても、我が国が援助の力点を置くべき地域であるということであります。また同地域におきましては、ペレストロイカを推進しようとしている勢力の強い地域であります。したがって、この地域に我が国の援助を集中することは、ソ連邦全体が保守化する傾向を牽制し、また我が国が隣接する地域に我々と類似した政治経済の形態を持つ地域を保持することによりまして、我が国の平和と安全を確保することができるというふうに考えておるのでございます。この趣旨から、我々はこの極東地域こそ我々の援助を集中すべき地域であると考えてまいりました。  第二は、北方四島問題との関連であります。私は、もとよりこれらの島々が我が国の固有の領土であるという信念にいささかの揺らぎも持つておりませんし、また、その返還のためには政経不可分の原則というものは基本的にはこれを堅持しなければならないという立場をとっているものであります。またしかしながら、同時に、ただ返還のみを大きな声で繰り返しているだけではその実現は困難ではないかとも危惧をいたしている次第でございます。特にソ連側の考え方に立ってこの四島の地域を見ますると、これはサハリン政府の管轄区域に属していると言われているわけであります。現にそこに住む人々の直接の利害を反映する政府でもあります。したがいまして、この人々が四島についての我が国主張を容認してくれる以外には、四島返還という糸口はなかなかつかめないのではないかというふうに思うのであります。それゆえ、私はこの極東、とりわけサハリンの地域に重点的な経済援助を行うことを示しつつ、一方我が国の四島の主張というものに十分耳を傾けさせるように努めていくことが北方領土問題の解決にとって最も有効な手だてであると考えたのであります。  さらに、第三点といたしまして、これはやや我田引水になるわけでございますけれども、この地方への援助、協力を誘い水といたしまして、今後経済の交流あるいは人的な交流が進むことになりますれば、このことは、いまだ経済社会の発展が本州に比しておくれをとっております北海道の発展にとりまして、貴重な貢献をしてくれるものと考えるものであります。  今や日本海の時代が到来すると言われているのでありますが、例えば北海道の小樽は、かつてサハリン、沿海州の貿易で栄えた港であり、その貿易の沈滞とともに地盤沈下を生じた町でもあります。現体制のもとにおいては、今後の貿易の伸長はなかなか望むべくもないと思うわけでありますが、政府の援助をてこにして北海道とこの極東地域の物的、人的交流を図っていくならば、地域間格差に苦しむ北海道にとって大きな福音となるでありましょう。  私の考えは以上のとおりでございますが、しかし、このような考え方には、現実の情勢の変化の中で克服すべき幾多の複雑な要因をはらんでいることは否定できないと思っております。しかし、こらの困難は乗り越えるべき困難であると思います。特にこの四月、ゴルバチョフ大統領の来日を控えまして、日ソ関係が大きな転機を迎えようとするときに、以下の諸点につきまして政府がいかなるお考えをお持ちになるか、ぜひお伺いいたしたいと思っておる次第でございます。  その第一は、政府はかねてから総計十億円の食糧援助、そしてまた医薬品援助、さらには一億ドルの食糧支援のための輸出入銀行の融資を御決定なさっておられるわけでございますけれども、現下の情勢のもとで、これらの援助措置の実施をどうお考えになっておられるのか、また、一般的に申しまして、こういった種類の援助は、その地理的関係なりあるいは経済的関係から見ましても、先ほど申しましたように、極東地域に集中的に実施することが効果的であると考えるわけでございますが、どのようなお考えをお持ちになるか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  30. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員お尋ねの、対ソの人道的支援につきましては、昨年末、我が国政府としてソ連に対する緊急人道援助措置を決定いたしました。その後、医薬品、食糧供与などの十億円拠出先たる赤十字社連盟及びソ連側関係機関と連絡をとりつつ、品目の選定作業等の事務的準備を行ってまいりました。ソ連の国内事情等も勘案しつつ、先般赤十字社連盟に対する拠出を一部実施いたし、近く支援物資の輸送を開始すべく、現在準備中でございます。その他の支援策につきましても、事務的準備を現在進めているところでございます。  また、極東地域に集中的に実施することが好ましいのではないかというお話でございますが、配分につきましては極東地域に重点を置くべきとの考え方は、適切にこの地域に集中的に配分できるように政府としては配慮をしてまいりたい、このように考えております。
  31. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 ちょっと角度の変わった質問でございますけれども、現在、ソ連邦中央政府とエリツィンの率いますロシア共和国政府との間にいろいろなぎくしゃくした関係が生じているようでありますけれども極東地域へ集中的に援助を行うという御回答をただいま大臣からもいただきまして大変意を強うしたわけでございますが、そのような場合に、こういった中央政府と、それからそれに対立と申しますか、そういう関係を持つ共和国政府という両者の関係の間にありまして、これをスムーズに行うことはできるのかどうか、また、それをやるにはどのような手だてをしたらいいのか、そういう点を局長からお伺いいたしたいと思います。
  32. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 まさに先生指摘のとおり、現在ソ連邦と共和国、あるいは共和国とその中のいろいろな行政、対州、地区あるいは自治共和国等大変微妙な関係にあるわけでございますが、私どもも非常にデリケートな面を十分勘案いたしまして、今大臣から答弁申し上げましたとおり、緊急援助物資、極東地域を重点的にと考えておりますけれども、そういうことも考えまして、その配布ルートはソ連赤十字社と、もう一つは、モスクワに緊急援助を受け入れる中央政府機関でございますソ連人道的援助物資利用委員会というものが大統領令によって設立されましたので、この二つの機関と十分に協議しながら、そこの賛同を得ながら極東の重点配分を実施してまいりたい、こういうふうに考えております。
  33. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 例えばサハリンの州政府は、この間参りましたときにいろいろと伺ったわけでございますけれども、食糧援助という形ももちろん欲しいわけでありますが、恒久的にある程度まで施設が残るような援助を期待もいたしているわけでありまして、特に一般的な借款というようなことができないものか、フィヨドロフ知事の意見によれば、マーシャル・プランのような借款ということが実現できないかということも聞いておった次第でございます。将来に及ぶわけでありますが、このような要請にこたえてやれるような考え方はおとりになっていただけますでしょうか。局長からお願いします。
  34. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 サハリン州を中心といたしました極東におきまして、我が国に対するいろいろな援助の期待がいかに大きいかということは私ども承知しているわけでございますが、この対ソ金融支援を中心といたします援助につきましては、いわば西側全体としてどう対応するかという問題が一つあるわけでございます。ヒューストン・サミット以来いろいろな動きがあり、最近ではIMFを中心といたしましたこの問題に関します報告書が出たわけでございます。この報告書の中でも強調されるところでございますけれども、ペレストロイカ、つまり改革そのものの土台骨をきちんと整えない限り、無原則な金融支援を行っても余り意味がない、ほとんど意味がない、そういう報告書が出ているわけでございます。  そういう問題と、さらに加えまして、先生御案内のとおりサハリン州は特に北方領土を抱える地域でございます。北方領土問題とのかかわり合いという問題もあるわけでございます。そういう問題を勘案しながら、将来の課題として私どももいろいろ考えさせていただきたいと思っているところでございます。
  35. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 よくわかりました。  次に、現在ソ連邦政府極東地域に管轄権を持つロシア共和国との間で対立がございますし、また、今局長お話しのように、共和国の中で州なり地域なりとの関係が非常に複雑に入り組んでいる。そういう対立関係が生じているわけでありますが、これからの措置としては、いわゆる新連邦条約がどうでき上がってくるかということが一番のかなめになってくるのじゃないかと思うわけであります。  そこで、この新連邦条約が結ばれますと、共和国に資源につきましてはかなり利用をさせる、あるいは経済的な自主権を持たせるというようなことも報道されているわけでございますけれども、資源のシェアというものが相当共和国側に移ってまいりますと、大分これからのいろいろな対ソ関係対応が異なってこなければならないのではないかと思うわけでございます。そのような意味で、新連邦条約の内容はどのようなものになっていくのであろうか、その点について簡単にお話しをいただきますと同時に、一例をとりますと、漁業交渉の場合には、従来まではまさに連邦政府の漁業省を相手にしてやってまいったわけでございますが、これからは地方の政権と申しますか、政府も相手にしなければ――この新連邦条約ができるとすれば、そのもとでの交渉がなかなか複雑になっていくのじゃないかということが考えられます。こういった点についてどのようなお考えを持っているか。特に、後者の点については外務省だけではなくて、水産省からもおいでをいただいておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
  36. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 今御指摘の連邦条約草案につきましては、御案内のとおり、昨年いろいろな議論の末に起草準備委員会というものが設立されまして、そこで一案を検討し、これが三日公表されて直ちに連邦評議会の審議に付されたわけでございます。同六日に連邦評議会の承認を得まして、現在各共和国の最高会議の審議に回されているというふうに承知をいたしております。その審議を経まして、再び連邦の最高会議に戻り、最終的には人民代議員会議で承認されるというふうに承知をいたしております。  そういう過程でございますので、まだいろいろな議論を経ての議論でございますので、私どももその草案は入手しておりますけれども、その草案のまさに私どもに一番関係いたします問題、例えば軍事、外交、通貨制度、輸送網、エネルギー等等、また漁業あるいは天然資源も含めまして、まさにこのあたりが、連邦と共和国との力関係をどういうふうに線を引いていくかということがまさに一つの焦点だというふうに認識をいたしております。また国境線の変更についても、共和国の発言権が強化される方向で検討されるというふうに考えておるわけでございます。そういう中で、実際問題として、漁業も含めて私ども実務を進めてまいります中で、いわゆる地方の権限が趨勢として強化されておるということは、私どももいろいろな分野で看取できるところでございます。  漁業につきましては、水産庁からお見えになっておりますので、そちらの方からお答えさせていただきたいと思います。
  37. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 このたびのソ連の新連邦条約の制定によりまして、ソ連との間で締結しております、私ども担当しております漁業取り決めにつきましていかなる影響が生ずるか、現段階では不明でございます。しかしながら、新連邦条約の制定に向けました動きを注視しながら、外務省とも十分連絡をとりつつ、問題のないように対処してまいりたいというふうに考えております。
  38. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 この問題はまだちょっと予測がつかない要素が多々ある問題でございますので、ただいまの御答弁のようなことになろうと思っておりますけれども、非常にデリケートな問題であり、かつ将来の交渉に当たっていろいろ複雑な影響を及ぼす問題でございますので、よく事態の推移を注視しながら、適切な対応をおとりになっていただきたいとお願いをいたす次第でございます。  そこで、三つ目の御質問でございますけれども、今回サハリンに参りました折にも、この地域におきましていろいろな要望が出ておりました。特に協力関係、援助関係につきましてもいろいろな要望があった次第でございます。その中で、例えば石油の問題とか、あるいは天然ガスの問題とか、いろいろな多方面にわたる援助協力の問題が出ておったわけでございますが、全部につきまして私の方から申し上げるだけの時間がございませんので、特に絞りまして数点お伺いしてみたいと思うわけでございます。  何と申しましても、現在この地域、特に極東の地域の援助協力の問題として、私は、大きな問題はやはり漁業の問題であろうと思うわけでございます。そこで申し上げたいわけでございますが、大臣も御承知のように、日ソの漁業関係というのは大変長い歴史を持っているわけでございまして、また北海道その他関係の漁民にとりましても非常に重要な生産基盤をここで保持している状態でございます。しかしながら、相次ぐ二百海里の影響によりまして、漁民も非常に困っているというのが現状でございます。また、昨年暮れから先週にかけまして地先沖合及びサケ・マス漁業に関する一連の日ソの政府交渉が御当局の大変な御努力によりまして決着を見まして、本当に私もほっとした次第でございますが、このような交渉の状況を見ますと、特に年々の交渉の推移を見てまいりますと、最近の交渉状況は非常に厳しいものがあるわけでありまして、御案内のように、一九九二年にはサケ・マスの沖取りは禁止だということも向こう側が主張しておるといったような状況でございます。  また、ソ連国内の事情の変化から見ましても、このままで推移いたしますと、日ソの双方に無用な不満と申しますか、摩擦と申しますか、しこりと申しますか、そういうものを残すだけだというような懸念がわいてくるわけでございます。また一方で、極東の地域におきましては、資源配分が自分たちのところにも来るんだ、かなりな経済の自主権が持てるんだという希望のもとに、漁業の分野におきましても合弁等の形で協力をしていきたい、あるいは援助をちょうだいしたいといったような声もかなり聞かれるわけでありまして、そういう中で今後の漁業の問題をこの地域において考えていかなければならない、そのように思っておるわけでございます。  そこで、一番の山場は、この四月中旬においでになるゴルバチョフ大統領の訪日であろうと思うわけでございます。この訪日を控えまして、目下政府におかれましても着々準備を整えておいでになるということは私も仄聞をさせていただいておるわけでございまして、その一環として、日ソ間の種々の合意文書についても詰め等も行われておると伺っておるわけでございます。せっかく大統領の訪日の機会でございますので、ぜひとも日ソの漁業関係につきましても将来の展望につながるような足がかりをつけていただけないかということが我々の願いでありまして、その点、御所見、御方針大臣からお聞かせいただければ大変ありがたいと思う次第でございます。
  39. 中山太郎

    中山国務大臣 日ソ間の漁業関係は長い歴史を有しておることは御指摘のとおりでございまして、重要な日ソの両国間の問題の柱の一つでございます。本年四月に予定されておるゴルバチョフ大統領の訪日を契機に、相互の意見の交換を十分いたしてまいらなければならないと期待をいたしております。  具体的な方法につきましては、現在関係省庁とも検討中でありますけれども我が国としては、政経不可分の原則は堅持し、北方領土問題に対する我が国基本立場との整合性が確保されるような形で日ソ間の漁業問題の処理をいたしてまいる所存でございます。
  40. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 大臣の御決意を伺いまして、大変心強く受け取った次第でございます。  なお、水産庁の方にも伺いたいわけでありますが、このような機運もあり、また大臣のただいまの御答弁も踏まえまして、合弁等の形態をとりながら漁業協力を実施するということについて、具体的な方策もあろうかと思いますが、そういった操業の確保を図るということから、この点、大臣の御答弁にあわせて水産庁としてどう考えているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  41. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 先生指摘のとおり、日ソ間の漁業関係は長い歴史を持っておりますし、それから、先生御出身の北海道の漁民だけではなくて、我が国の漁業にとりましても、その協力関係の強化を図っていくことは非常に重要であると考えております。  現在既に、漁業に関します日ソの合弁事業は幾らか設立されておりまして、この合弁事業等をもとに操業の確保も行われているところでございます。今後ともソ連二百海里内におきます操業の確保を図るためには、この合弁事業を通じました漁業協力を強化していく必要があると考えております。四月のゴルバチョフ大統領の訪日を契機に、日ソ関係におきます重要な柱の一つであります水産分野における協力が相互利益に資しますように、また一層発展しますように、水産庁といたしましては、関係省庁とも御相談しつつ、早急にその具体的な対応ぶりにつきまして検討作業を進めていきたいと考えております。
  42. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 大変重要な機会でございますので、その機会が生かされるように、関係省庁とも十分御相談の上、ひとつ善処をお願いしたいと思う次第でございます。  最後の質問でございますが、今回の交渉に当たりましてもしみじみと思ったわけでございますけれども、特にこの極東地域との人的な交流あるいは経済、文化の交流というものが、日ソ間の友好関係を育てるという意味で大変重要であるという感じがいたしたわけでございます。そして、その進展は非常に大きな効果を持つと思うのでありますが、しかし、そのために一番重要なことは、やはりアクセスをどうやって確保するかということであろうと思うわけであります。  今、サハリンに参りますには、私どもが北海道から参りますと、千歳の飛行場から新潟に行きまして、そこからハバロフスクに行って、それからユジノサハリンスクに行くという経路をたどらなければならないわけでありますが、先般初めて千歳からユジノサハリンスクへ直行便を出していただきまして、わずか一時間十分、東京より近いということに驚いた次第でございます。そういうことで、千歳―ユジノサハリンスク間の直通の空路ができますれば、人的交流等にも非常に役立つと思いますし、また、小樽、稚内とサハリンを直接結びまして、さらに沿海州にも延びるような航路、例えば小樽―ホルムスク―ワニノを結ぶような三角航路が開ければ大きな経済交流の期待ができるのではないかという感じが私はいたすわけでございます。  この航路関係に関しますところの政府の御見解局長から承りますと同時に、運輸省からも来ていただいておりますので、両局から御答弁をちょうだいしたいと思う次第でございます。
  43. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生指摘のごとく、ソ連の極東と日本の北部、特に北海道との間におきまして人的交流が活発化するということは、私どもも、相互理解の増進ということから大変結構なことだと考えておりますし、今大変に不便な状況にあることも十分認識している次第でございます。  その中で、先生指摘の定期航路、海運でございますが、これにつきましては、後ほど運輸省から詳しく御報告があると思いますけれども、二月初旬に御当局間において海運当局間協議というものが開催されております。それを受けて、さらに直接船会社同士の話し合いが近く持たれると聞いております。  また、航空問題につきましては、海路よりもやや、安全保障上の問題でございますとか、あるいはサハリンの場合には、先生承知のように法的な立場が、南サハリンにつきましてはまだ帰属未定ということがあるとか、若干の問題がございます。そういう問題も考慮しながら、また、北方領土問題の進展というものをにらみながら、今後の検討課題として考えるべき問題であろうと考えております。
  44. 羽生次郎

    ○羽生説明員 ただいま外務省の方からもお答えがございましたように、ユジノサハリンスクと北海道の間、特に極東地域における人的交流には我我も促進に努めてまいりたいと思っております。  同時に、直行便につきましては、これはソビエト側との交渉も必要でございますし、また、国内の官庁との間の調整も必要でございます。しかしながら、私どもとしては、できるだけ経済的でかつ安全な道を選ぶようにこれからも努力してまいりたいと考えております。
  45. 村上伸夫

    ○村上説明員 旅客船についての問題でございますが、ただいま外務省の方からも御答弁がありましたように、本年の二月六日と七日、日ソ両国の海運当局者間におきまして会議を行いまして、この合意に基づきまして日ソ両国の関係の船会社が、この航路開設の問題について今後具体的に検討を進めていく、こういうことになっております。  したがいまして、我々としても日ソ両国間の人的交流が進むということは歓迎するところでございまして、運輸省といたしましても、この民間の船会社間の協議というものを見守っていきたいというふうに考えております。
  46. 松浦昭

    松浦(昭)分科員 御答弁を通じまして、政府のお考えを十分お聞かせ願いまして、まことにありがとうございました。たくさんの未知の分野の開拓の問題がありますし、また、困難も克服しなければならないわけでありますが、我々の隣人が我我と同じような考えを持つということは、我が国の平和と安全にとりまして大切なことであると思っておる次第でございます。今後とも、北方領土問題の解決もあわせまして、御当局の御尽力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  47. 林義郎

    林主査 これにて松浦昭君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  48. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いよいよ、月末には外相が来て、来月十六日にはゴルバチョフ大統領が来るという、大変長い間期待いたしておりました領土問題を含めて正念場を迎えるということになりましたので、領土問題を中心にして、この機会に幾つかの点をお伺いしたいと思う次第でございます。  まず、北方領土交渉というのは、日ソ両国間の解決でそれは決まった、こういうことになるのかどうかという問題なわけであります。  御承知のように、サンフランシスコ条約で我が国は南樺太と千島を放棄しておるということになっておるわけであります。しかし、その帰属に関しては当時決まっていないという経過等もあるわけでありますが、日ソ間で今話をして仮に領土問題が解決したということになりました折に、その問題の全体的な決着というものは、そういう歴史的な経過からいって、他の国々との関係が残るのかどうか、この点の御認識をまず承りたいと思います。
  49. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生指摘のとおり、第二次大戦後のいわゆる広い意味での日本とソビエトとの間に起きた領土の問題ということでございますれば、一つは南樺太と千島列島の帰属問題、これは、サンフランシスコ条約によりまして連合国の決定にゆだねられておるという問題でございます。ですから、これは二国間で最終的に決着するという問題ではないわけでございます。私どもがソ連政府との間で二国間の問題として、二国間の交渉による解決を図る問題としての北方領土問題は、北方四島の帰属をめぐる問題であるというふうに認識いたしておるわけでございます。     〔主査退席、穂積主査代理着席〕
  50. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そうなりますと、どういうことになるのですか。つまり、当時四十八カ国ですね。ソ連はこれに参加しなかった。改めて国際会議を開いていただくというようなことが必要だという見解になりますか。
  51. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 この連合国によります決定というものが、具体的にどういう形でどういうふうに行われるべきかということにつきましては、我が国はサンフランシスコ平和条約でこの権利、権原を放棄をいたしておるわけでございますから、正式に申し上げれば、これは連合国の中で、どういう形でどういうふうにということも含めまして決定されるべき問題であるというのが私ども認識でございます。
  52. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そうしますと、日ソ両国間で仮に四島の問題で解決がついて平和条約を締結、そこで、他の地域に関してはソ連に主権が確定をするというものではなくて、その間に一つ、当時の四十八カ国の同意といいますか、これはどういう表現になるのかお聞きしたいところでありますが、そういう経過が必要である、こういう認識ですね。
  53. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 繰り返して恐縮でございますが、いかなる方法によって最終的にこの問題に決着を図るべきかという点につきましては、私どもが決定をする問題ではなくて、連合国側が決定すべき問題であろうという基本的な認識でございます。まずは、私どもは四島の帰属についての二国間の話をつけるということ、それとの関連におきまして、日本との関係で申しますれば、最終的にはいわゆる国境線の問題とソ連が言っております問題になると思いますけれども、その問題は、先生の提起された問題としてどういう形で決着するかという問題がもう一つあるだろうということは、私ども認識をしておるわけでございますが、私どもはあくまでも、それは日本がこうすべきだということを決める問題ではないというふうに認識をいたしております。
  54. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そういう点に関しては、今まで平和条約作業グループ等で、七回ですか、協議をしたり、長い歴史の中でさまざまな経過をたどっているわけですが、ソ連側はどういう認識に立っていますか。
  55. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 平和条約作業グループにおきましては、当然のことながら、先方も北方四島の帰属をめぐる法律的な側面あるいは歴史的な側面というものを議論するのが中心であるという認識でございます。  ただ、それとの関連におきまして、当然のことながら、ヤルタの拘束力あるいはいろいろな法律論を展開いたしてまいりました過程におきましては、一八五五年の下田条約に始まりまして、一八七五年の千島樺太交換条約あるいはポーツマス条約といったそういう議論に及ぶ、その中で、南樺太、千島列島の法的な側面についての議論も当然に出てきたわけでございます。私ども認識は、さっきも申し上げましたような認識で一貫しているわけでございます。
  56. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 そうしますと、つまり当時の関係国、特に主体的な草案作成等に中心になったアメリカなどの見解、殊に日ソ間で話がついたということになりました折に、関係国から別に問題が提起されなければそれは確定を見るということになるわけですか、あるいはそこはいつまでも未解決のままいくということになるのですか、そこはどういうことになりますか。
  57. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ソ連側は、先生承知のとおり、あそこの全地域はソ連邦に編入手続をとり、あれは既にソ連の領土であるという主張を一方ではしているわけでございますが、この問題についての最終的な国際法上の決着といいますか、区切りをつける必要があるという認識は私どもあるわけでございます。それをどういう形でやるのかという点につきましては、先ほどから繰り返し申し上げているとおりでございますが、先生が先ほど御指摘になりました連合国、どういうような形での了解といいますか、会議によるのか、あるいは幾多の方法があるのか等も含めました問題、これはソ連政府との話し合いもあるわけでございますけれども、これにつきましては連合国が最終的に決定する問題であろう、私どもは、この北方領土問題が解決をいたしました段階において、一日も早くその問題の決着が図られるということが望ましいというふうに当然考えているわけでございます。
  58. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 一九五五年か六年のころもやはりこの問題について議論があって、国際会議をという日本側見解に対して、当時ソ連側がかなり憤激をしたという経過もあるように聞いております。やはり全体の問題を解決する上ではそういう点を十分、もちろんトータルな話の中では含めながら、しっかり四島の返還を目指していくものであろうというふうに思いますが、これらにつきましても最善の努力をお願い申し上げたいと思います。  それにしてみても、近々ゴルバチョフ大統領がおいでになる前にアメリカブッシュ大統領が来日という計画でありましたのが、湾岸等の問題もあるゆえでありましょうが、おいでにならない。つまり、当分延期ということになったことは、やはり領土問題をめぐる歴史的な経過の中におけるアメリカの占める立場といいますか、役割といいますか、これは非常に重要なものがあるというふうに私は思うわけで、当然また、今日における日米間の関係の重要性というような意味からいいましても、あるいはまた米ソの関係等からいいましても、本来でありますと、ここで首脳間の領土に関する十分な意見調整が行われて四月十六日を迎えるべきであったのではないかというふうに思うのですが、こういう点についてどうお考えか。また、ブッシュ大統領が来なくなったわけでありますが、そういう中での意見調整の最終的な詰めというものをどのように事前に行おうと考えておられるか、できれば大臣見解をいただきたいと思います。
  59. 中山太郎

    中山国務大臣 北方問題につきましては、連合国側、特に今委員からお話しのアメリカ政府考え方というものは、私は、北方四島は日本の古来の領土であり、日本に帰属するべきものという認識で一致しておると存じております。  そういう中で、今御指摘のように、米ソの間のいろいろな話し合い、特に戦略上の問題も含めて、この地域の持っている重要性についても重大な要素でございますから、この問題を解決するに当たりましては、ソ連とも話をしなければ、もちろん当事国でありますからいたさなければなりませんが、アメリカとも十分意見を交換してきておることだけはこの機会に申し上げておきたいと思います。
  60. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いよいよ具体的な話を、両国間で最終的なところで一つの山場を迎えるということになるわけでありますが、私ども、ほぼ一致した意見であろうというふうに思うのでありますが、やはり領土問題の一つの原点というのは、一九五六年の日ソ共同宣言のあの両国の合意というものであろうというふうに思うわけであります。しかし、遺憾ながら一九六〇年、日米安保条約の改定の折に、ソ連側は一方的にこれをほごにするという対日覚書を出した。これは両国で正式に批准をした国際上の取り決めであって、ソ連の国内でも、最近は非常にこれについての議論、批判というものが出てきているようであります。やはり日ソ共同宣言の時点、つまり、このときは二島返還をソ連側は申しておるわけでありますから、この時点が領土問題における両国の解決への第一歩というふうにすべきものであろうと思うのでありますが、これについての御見解を伺いたい。
  61. 中山太郎

    中山国務大臣 一九五六年に結ばれた日ソの共同宣言、これは日ソ両国によって批准された条約でありますから、ソ連は日ソ共同宣言第九項に拘束されており、法律的には同宣言に立ち戻る云々の問題は生じないというような日本政府見解でございます。
  62. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 この前も、予算委員会の総括質問でありましたか、大臣の御見解もいただいたところでありましたけれども、まず二島、一九五六年の原点のところに立つ、しかし、我が国は言うまでもなく四島を要求しているわけであります。ただ、自来三十数年、今四島に三万ぐらいの人がいる、一個師団のソ連軍も含めてであろうと思います。しかし、二世、三世と、既に戦後四十数年を経過している、そういう現実というものも確かにあると思うわけであります。  栗山外務次官が去年の四月号の雑誌「世界」で、「領土を含む平和条約は一九五六年に解決すべきであった」、こう述べられて、そして、それからの三十年以上の時間の重さについて語っておられるわけですね。私は、その時間の重さというのは、今申し上げたようなそういうさまざまな経過というもの、今日の現実というものを指しておられるのではないかというふうに思うわけなんです。今松浦さんからもちょっとお話がありましたが、私は再三サハリン等に出向くことがあるのでありますが、御承知のように北方四島は、ソ連の行政区域と称するものの中ではサハリン州に属しておるわけでありますから、いろんな話に接する機会もあります。そういう現実認識する機会も少なからずあるわけであります。  そこで、四島の返還を要求するということはもちろん貫きつつ、しかし、今言うような現実というものの中で具体的に我々は四島を返還させていかなければならない。そこにはさまざまな現実的な状況というものがある。したがって、具体的な返還に当たっては、両国の知恵を絞って、工夫を凝らして、そして一つ解決の方法と、その解決の方法を具体的に結実されるまでには、やはり当面の現実から見て、相当な期間というものをひとつ考えながら四島の返還実現を期していくべきではないか、こういうぐあいに考えるのでありますが、いかがですか。
  63. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生指摘のいろいろな現実の問題という点につきましては、私どもも十分に認識もいたし、勉強もいたしておるつもりでございますが、まず日本政府が求めなければならないのは、そして、これは中山外務大臣もゴルバチョフ大統領に明確に主張し、強調されたところでございますけれども、四島の主権の問題、この問題についてはまずゴルバチョフ大統領が英断を下していただく、これがまず最初である、これが突破口になる。この突破口を今回のゴルバチョフ大統領訪日の際にぜひとも開いていただきたい。先生のおっしゃるいわゆる日ソ双方の知恵という問題でございますが、突破口が開ければ、いろいろな形でいろいろな知恵が当然出てくるものと私どもは確信をいたしております。  その先の問題につきましては、今まさに先生冒頭に御指摘くださいましたように、正念場でございますから、今私どもがいろいろと申し上げるということは、交渉の中身そのものにも関係をいたしますので、事情を御賢察いただきまして、御容赦をいただきたいというふうに考える次第でございます。
  64. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 つまり交渉を控えているわけでありますからね。しかし、今のニュアンスでは、そういう一つの方法なり相当な期間というようなものも含めながらその実現に当たるということであろうと考えます。そういう一つの方法で、あるいは一定の相当な期間の中で実現をしていく、そういうプログラムの中で、これから予測される時間の中で、四島の非軍事化、それから日ソ両国民の混住、自由往来、共同開発あるいはソ連の人で帰りたい人があれば、今のソ連の状況でありますから、帰国者の住宅等への支援であるとか、残る人に関してはいろいろな権利調整等、これは既に、この前法務大臣も検討を言明しているようでありますが、こういうようなことなど、さまざまな問題があろうと思うのです。これらにアイデアを凝らして、現実的な円満な解決に当たるべきであろう、こういうぐあいに思うのでありますが、この点についてはいかがですか。
  65. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 北方領土に今先生指摘の一個師団が駐留をいたしておる、この点につきましては、従来より日本政府としてそれに抗議し、その撤退を求めているということは、先生承知のとおりでございます。  今の先生お話は、まさに先ほど御答弁申し上げました突破口が開かれた後のいろいろな具体的な問題についての御意見でございます。先ほど申し上げましたことの繰り返しで恐縮でございますけれども、その後の問題につきまして、私が今個個の問題についていろいろ御答弁申し上げることは、交渉でございますので控えさせていただきたい、御理解いただきたいと思います。
  66. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 しかし、例えば非軍事化の面では、仮に二島が当面返還になるとして、あとの二島には一定の期間がかかる。それは四島の返還というものを前提にしての話ですが、その場合、やはりそれぞれが、その二島、二島に関して非軍事化を明確にしていくというようなことは当然のことだろう。歯舞、色丹を戻してもらって、そこに我が国がすぐ基地を設けるとか軍事化するなんということはあってはならぬと私は思うし、向こう側も一個師団は引き揚げてもらうということが妥当であろうというふうに思うし、そういうことは当然のことと思うのですが、後の質問と一緒に、できれば大臣にお答えをいただきたいというふうに思うのです。  大臣、最近の領土をめぐる問題もそうでありますが、全体として、殊に三月十七日に国民投票が行われる連邦制の改定の問題等にあるように、共和国あるいはそれぞれ地域の権限というのは非常に重視されていくことになる。殊に領土の問題に関しても、新しい改定案によると、共和国の合意を要するというようなことであろうと思いますし、また既に、ロシア共和国の法律によっても、領土の変更、国境線の変更に関しては国民投票でやろうというようなことも書かれていたりして、その重要性は非常に以前と違うと思います。かつまた、いわゆるその環境をつくっていくという意味からいいましても、これは四島の住民はもとよりでありますが、サハリン、極東のこの問題についての理解が非常に大事である、そういう点では必ずしもまだ十分に情報が行き渡っていない。我我も時々行っていろいろやるのですが、やはりよく知っていただいていないなというものが随分あるのですね。そういう点等を成熟させていくということが非常に大事な問題解決のかぎになってきているというふうに我々は思うわけなんです。この間我々が行ってきたのも、主要な目的一つはそこにあるわけなんであります。大臣、どうですか、今年の外交日程の中で、サハリン、極東訪問などを考えていいのではないかというふうに思うのです。これについて御見解をいただきたいと思います。
  67. 中山太郎

    中山国務大臣 外務大臣サハリン、極東訪問という問題は、現在まだ私の頭の中では具体的に考えておりませんか、いずれにいたしましても、ソ連のべススメルトヌイフ外相が今月末にお越しになる、来月は大統領がお越しになる、こういったような日ソの首脳会談の結果、すべてのものが新しい展開ができるかどうか、私は日ソ間のこの首脳会談の持つ意味が極めて大きなものであると考えております。  今委員お尋ねの非軍事化の問題につきましても、私は領土の問題を含めて、これからの日ソの首脳会談の中で、具体的な問題としていろいろと協議をされることも十分あり得ると考えております。
  68. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 これは外務省としてはなかなか難しいことなのかもしれぬのですが、そして外務省見解もわかるのですけれども、僕らが実際にやっておりながら、これはやはり考えてもらった方がいいな、一つの転機をつくった方がいいなと思うのは、四島住民との交流の問題なんです。  それで、今度四島のうちの三島に関しては、三月十七日に国民投票と一緒に住民投票をやるらしいですね。しかし、情報が十分にない、わからない。しかし、実際にサハリンの要人等も日本なんかに来て、そしてやりとりをしているうちに、領土問題に対する認識なんかも非常に変わってきているわけなんです。ですから、そういうことを考えますと、あそこで閉ざしておくということが本当にいいのかどうか。それは、四島返還というのは当然我々は強く主張していきますが、向こうの住民との交流についてこの辺で考えるべきじゃないか。それは、四月十六日にゴルバチョフ大統領が来たときの状況にもよると思いますが、やはり考えていっていいのではないかと私は思うのですよ。例の自粛の話が出て以来、もちろん自粛しているわけですが、何となくほころびて行き来するなんということは適当でなし。やはり我が国として交流するならば、きちっと外務省のそういう見解を出してもらって、それを転機にしてむしろ積極的に交流する、お互いに話し合う、わかってもらう、成熟させていくということが大変大事だと思うわけで、この点、大臣、どうですか。
  69. 中山太郎

    中山国務大臣 いずれにいたしましても、この領土の問題は、大統領が来られるときにどのような形で話し合いの糸口が開けていくのか。私はヨーロッパの国々を見ておりましても、皆国境線はそのまま、道路はそのまま通じておって、遮断機が一つおりているというような状況の中で、相互の交流は十分行われております。領土権がどうなるかという問題は、またそれと別の次元の問題だろうと私は思います。そういう意味で、交流は結構でございますけれども、領土権の問題については首脳間の協議が一つの大前提であると考えております。
  70. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 どうもありがとうございました。
  71. 穂積良行

    穂積主査代理 五十嵐広三君の質疑はこれにて終了いたしました。  次に、関山信之君。
  72. 関山信之

    関山分科員 私はあらかじめ御通告を申し上げておりますが、きょうは環日本海交流基金の創設というテーマで大臣の御所見を承っておきたいと思うのです。  湾岸戦争も終わりまして本当にほっと一息ついているところだろうと思いますけれども、この戦争を通じて我が国の国際秩序へのかかわり方や国際社会への貢献のあり方が改めて問い直されたということなんだろうと思います。ポスト冷戦をどう構築するのかということが問われているのだろうと思いますけれども、そういうこととも関連をしながら、ここ一両年と言ってもいいのではないかと思いますが、ある意味では非常に長い歴史を持ってもいるのですけれども、にわかに環日本海圏あるいは環日本海経済圏といったような言葉で極東アジアの新しいパラダイムが脚光を浴びているわけであります。かなり古くからとも申し上げましたが、私、新潟の出身なものですから、そういう意味ではずっとフォローしてきているのですが、いろいろと語られながらも、この問題については現実的な基礎が今日までなかった。しかし、米ソ和解という状況を受けて、しかもここしばらくの国際情勢の展開は極めて急テンポであることは申し上げるまでもないわけでありまして、中ソ和解を背景にしながら、ソ連、韓国の国交樹立とか、あるいは日朝の正常化も今具体的な交渉に入ったというような状況でございます。もともとこの地域につきましては、ソ連、中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、日本の五カ国のそれぞれ持っている関係が、極めて経済的に見て相互補完の関係にあるというような側面もございますし、どう考えたって平和という問題をめぐってはこの地域が重要な地域であることはもう申し上げるまでもない事柄でありますので、単なるリージョナリズムというものを超えたところでこの地域の位置づけ、役割が今日期待されていると思います。  これ全体について語り始めれば、とても三十分や四十分では終わりそうもないのですが、まずもって総括的なと申しますか、包括的な環日本海圏あるいは環日本海経済圏といったようなものについての大臣の御認識や御所見を承っておきたいと思います。
  73. 中山太郎

    中山国務大臣 環日本海圏構想に関しましては、私は米ソの対決が終わるという新しい歴史の展開する時期に当たって、日本海を囲む湾岸各国の都市がそれぞれの交流を進める、また貿易を盛大に振興するといったことは極めて意味のあること、これがまたこの地域の平和と安定に大きく貢献するという考え方から、私は、環日本海構想というのについてはこれを推進したいという考えを持っております。
  74. 関山信之

    関山分科員 そこで、いろいろな分野でのかかわり方があるのだろうと思うのですけれども、私どもも地域的な交流運動みたいなものをいろいろと手がけてきて、なかなか民間のやることについては限界がある、あるいは一地域での努力というものが、特にこれまでは主として日本海側だろうと思いますけれども、さまざまな自治体や民間の努力が積み重ねられておりますけれども、おのずと限界があるわけでございまして、申し上げたような状況になってまいりますと一斉に花開いているという、そういう状況もありますだけに、なおこの時期、積極的な対応が必要だろうというふうに思うわけですけれども、いろいろなところでかかわっていただきたいと思うのですが、きょうのところは国際交流基金ということに即してお尋ねをしたいのです。  その前に、ちょっと素朴にこれは伺っておきたいと思うのですけれども外務省の予算重点項目の中に、三番の国際協力の推進というのがございますが、この中に国際文化交流の強化、一、国際交流基金事業の拡充及び実施体制の強化、文化協力の推進、これは合わせて百五億五千四百万という数字が出ておりますが、この計上はどういうことなんでしょうか。つまり、お伺いしたい意味は、そもそも日米交流基金がさきの補正で実現を見ているわけですけれども、それとのかかわりでどうしてこういう予算的な措置をしたのかというところ、ちょっとわからぬ部分もあるものですから、御説明いただければありがたいと思うのです。
  75. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 先生のおっしゃいました百億という数字の資料そのものは、私ちょっと手元に持っておりませんが、平年度予算におきましては、文化交流のために主として国際交流基金の事業費あるいは管理費、そういう意味での補助金、こういうものをふやすということ、それから外務省本体の在外公館そのものがやっておる事業もございます、そうしたもの。それから、資料によりましては、広報事業に近いもの、そういったものも文化交流の一環として予算に計上して御説明している場合もございます。  他方、いわゆる国際交流基金の出資金というものがございまして、補正予算で出資金というものを手当てした、こういう状況になっております。
  76. 関山信之

    関山分科員 ちょっと私の伺い方が舌足らずだったのかもしれませんけれども、さきの補正における日米親善交流基金、これは、このための運用資金として五百億という枠を設けて、それに必要な四百億を国際交流基金に対し追加出資するものである、こうなっているわけですから、つまり五百億という枠を設定しながら、補正では四百億しか出資できなかった、したがって、この部分でその足らない百億円を埋めたのかという意味なんでありまして、そういう措置をせざるを得なかった背景とか、結果としてこのことによって従来の事務事業費に対する補助金的な部分がかなり圧縮されたという結果にもなるわけですね、もともと五百億というものがあるとすれば。そこらあたりはどう受けとめていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  77. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 御指摘のとおり、日米親善友好交流基金というのは五百億円ということで発足したわけでございますけれども、ただ、これは国際交流基金の中に日米親善交流センターというものを設けまして、あくまで国際交流基金の中の一つの組織であるということでございまして、そういうこともございまして、管理の面その他いろいろな面で、国際交流基金自身がやはりそういったものの運営そのものにもお金を出すという形でやった方がいいであろう、こういう考え方もございまして、新たに四百億円補正予算でいただきまして、同時に、国際交流基金の従来の運用しております基金の中から百億円をこのために使うというようなことで、全体で五百億円、これを使おう、こういう考え方で発足したわけでございます。  それで、先生がおっしゃいます、では百億移したということになると、結局その部分で従来やっておった事業は少なくなるのではないか、こういう御指摘かと思いますが、その部分につきましては、まさに御指摘のとおり百億円を、基金を移しました関係から、従来それの運用益でやっておりました事業に支障が起こってはいけませんので、財政当局とも御相談し、また国会の今御審議いただいております予算その他におきまして、そういった百億円の運用益に見合うような事業、これを支障がないように平年度予算の中で措置したい、こういうふうに思っているわけでございます。
  78. 関山信之

    関山分科員 どういう事情があったのかわかりませんが、こういう時期なものですから、何か少少こそくなやり方とは言いませんけれども、何でややこしい措置をしたのかなと思って伺っているのです。  この日米交流基金を設置されたわけでありますけれども、これ自体についてとやかく申し上げるつもりもないのですけれども、ただやはり、これは後でお聞かせいただきたいと思うのですが、承知をいたしております限りでは、やはり日米経済摩擦、貿易摩擦の関連で出てきたことというふうに承知もいたしておるのです。  よく言われますように、後追い的なといいましょうか、悪くいえば場当たり的な、言いわけ的なこの日米関係の中での措置なのか、そうあってはいけないんだがな、こう思いながら、実は私も、国際交流基金が一九七二年にできたときの各外務委員会の会議録などちょっとのぞかしていただいたのですが、当時の福田外務大臣ですか、実に立派な、先見性に富んだ、しかも見識ある御所見が展開をされておりまして、当時から、こういう事態はいつでも起こるよ、したがって、日本が経済大国だ、経済アニマルだ、エコノミックアニマルだと言われないように、この時期から一千億ぐらいのことは準備をしながらちゃんとやりましょうや、これは大臣も同じグループでいらっしゃるのじゃないかと思うのですが、大変見事な御見識の展開があって言うことないなと思いながら、この間ずっと少しずつ積み上げがあったのでしょうけれども、五百五十億ということできて、ここへきてまたぼんと五百億というやり方ですね。これはいかがなものかなと思ったりもするものですから、この点では私の前段の理解に間違いがあっても困りますので、この時期日米交流基金を設置をされた動機や目的というものについて、どうぞもう一つはっきりさせておいていただきたいなというふうに思うわけです。
  79. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 実は、国際交流基金のアメリカ、これは統計上カナダも入れておりますけれども、そういったものに対する事業がどれぐらい全体の事業の中で占めてきたかという歴史を振り返ってみますと、十五年ぐらい前、交流基金が発足しました直後には北米が二五%、年によりましては三割近い状況を占めておったという時期がございます。しかし、平成元年度でございますと、これは一〇%ぐらいになっております。  これは、決して日米交流なり日米文化交流を軽視してきたわけではございませんけれども、いろいろな事情から開発途上国地域向けの協力、経済協力の一環としてのそういった予算上の問題、いろいろございまして、そういったところに力が注がれてきた。相対的には、国際交流基金の事業費だけをとりますと、かなりそういうような状況になってきたというようなことが、一つの背景としてございます。  それからもう一つは、先生も御指摘の日米間の経済的な相互依存関係というものが非常に深まっている中で、私どもいろいろ努力はしてまいりましたけれども、相互理解という面でかなり不足している面があるのじゃないかという認識が非常に高まってきておりました。  こういう二つの状況がありましたところに、昨年日米間の記念行事のために出席されました安倍特使が、日米親善交流基金の新設の意図を明らかにされた。同時に、七月には海部総理がアトランタの演説で、日米間のコミュニケーションと申しますか、意思疎通の重要性等も訴えられた。これに対してアメリカ側も、ぜひそういうことをすべきだというような声が上がった。  こういうようなことを背景といたしまして、やはりそういった長い背景、同時に緊急な事情、そういう両方をあわせまして、日米親善交流基金の設置に踏み切った、こういう経緯でございます。
  80. 関山信之

    関山分科員 当初私が問題を提起しておることが背景にありますだけに、日米関係というのは、まさに戦後日本の外交の基軸として存在してきて、よかろうと悪かろうと、けんかしようとしまいと、利害が一致しようとしまいと、一番理解や交流が深い関係にあるはずなのに、こういう問題が起きるとこういう形で処理をするということは、やはり先ほど申し上げましたこの法律の設置当初のいわば理念といいましょうか、当時の大臣の御姿勢を拝見をしましても、いささかいかがなものかと私は考えざるを得ないわけです。  そういうことを一方で考えながら、申し上げましたような時代はまさに環日本海交流基金の創設を要求をしているのじゃないか。これは三十分の中で議論もできませんから、冒頭申し上げましたように、まさに単なるリージョナリズムではなくて、単なる経済交流というだけではなくて、もっと広い国際的な視野の中でのとらえ方をしながら、ぜひこの時期、環日本海というものに即しての交流基金の創設にこの辺で手をつけていただけないかな、こんなふうに思うわけです。  ちなみに、私どもでは昨年の十二月に、これまた私の新潟で、環日本海フォーラムというのをやりまして、環日本海に向けての政策提起をしたところでございます。委員長のお許しをいただいて、こんな機会でないとなかなか大臣に差し上げられないと思いますので、一度ごらんをいただきたいと思います。また、昨年の暮れの党首会談におきましても、この基金の創設については総理に我が土井委員長が御要請も申し上げているところでございまして、この問題の将来的な積極的な対応についてこの機会に、大臣の御見解というよりはぜひ御決意のほどを承っておきたいと思うのです。よろしくお願いしたいと思うのです。
  81. 中山太郎

    中山国務大臣 環日本海の構想という考え方それ自体は私は評価されるべきものというふうに考えております。  しかし、この環日本海構想の経済圏の構成を進めていく前提が一つあるのじゃないか。どちらが先になってどちらが後になるかということは別にいたしまして、不可分の関係にあるものは、やはりこの地域の安全をどう保障するかということがこの平和と繁栄の前提にある。そういうことで、この地域の安全保障、ある意味では、言葉をかえて言えば、環日本海の安全保障というものは一体どうなっていくのか。それとまたこの北太平洋の安全保障とどうつながっていくのかということを考えますときに、現在いろいろな国の外交官がいろいろと構想を既に考えております。  私どもといたしましては、この問題について日本政府としてもこれから検討を始めていかなければならない。つまり、北太平洋における安全保障はいかにあるべきか。これは、環日本海を取り囲むソビエト連邦あるいは日本あるいは中国あるいは朝鮮半島の北朝鮮と韓国の問題、こういった問題を踏まえながら私どもは、環日本海におけるこれからの繁栄と平和の確保のために政府としては真剣に努力をしてまいりたい、このように考えております。
  82. 関山信之

    関山分科員 大臣としてはそうおっしゃるわけでしょうけれども、冒頭、鐘が鳴るのか撞木が鳴るのかという趣旨の御発言がありますから、それでいいのですけれども、政経不可分という原則の上に日ソ関係なんかも議論をされてきたという経緯もあるのです。しかし、ここは大臣十分おわかりのとおり、これはどちらとも言えない。むしろそういう関係が、文化的あるいは経済的な交流がその地域の平和をつくり上げていく基礎になることは十分御承知のところでおっしゃっているのでしょう。しかし、申し上げましたように現に事態はどんどん動いているわけですね。実態がどれほど進んでいるかということについての御認識はもう一つ深めていただきたいなと思うのです。  そういう意味で、国際交流基金の具体的な運用についても少しお尋ねをいたします。  こういう時期、国や行政の先行的なさまざまな援助がございませんとやはり進まない部分がかなりあるということもございますので、どうぞひとつ、この環日本海交流基金のことについては最後にもう一遍お尋ねもしたいと思いますけれども、ぜひ積極的なお答えをいただきたいと思うのです。  ところで、この国際交流基金の中で過去に、申し上げております環日本海圏への適用といいましょうか、どういう形にせよどういうものがあったのか、あればお聞かせいただきたいのです。
  83. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 これはいろいろな側面があろうかと思いますが、まず地方自治体との関係先生もまさに御指摘にございましたように、この環日本海構想というものが自治体の自主的な動きを中心として出てきているというところに見られますように、自治体のそういった国際的な文化活動と申しますか交流活動、これを国際基金としても直接間接に支援し、また御協力しなくちゃいかぬということで最近、一種の自治体巡回キャラバンというようなものもやっておりまして、自治体に国際交流基金の職員がいろいろ出向いて御要望をお伺いしておる。同時に、国際交流基金の方にお呼びしまして自治体の国際交流の担当者の方との連絡を深めておるということもございます。  また、環日本海ということで申し上げますと、国別に申し上げますと、ソ連、中国、韓国、そういったところがどうしても中心になるわけでございますが、確かに現在のところ、過去の統計だけを見ますと、そういった国々との交流が圧倒的な国際交流基金の地域的な事業の中で大きな地位を占めるというところまでは必ずしも行っておりませんけれども、中国の場合は大体アメリカに次いで二番目の重要性も持っております。     〔穂積主査代理退席、串原主査代理着席〕  ソ連につきましても、先週日ソ間の文化交流会議を開きましたけれども、これから非常に大きく飛躍すべきであるということで、国際交流基金も一つの新しいプロジェクトをやろうというようなことをやっておりますので、これからむしろふやしていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。     〔串原主査代理退席、主査着席〕
  84. 関山信之

    関山分科員 ふやしていきたいという御発言を大事に受けとめておきたいと思うのですが、特に申し上げたいことは、一つは、せっかく日米交流基金が創設されたわけですから、平成元年に一〇%というようなお話ありましたが、大体九%から一〇%ぐらいになっているのでしょう。それは少なくとも今度は、追い出すといったら悪いんだけれども、外側へ出るわけですから、せめてこういう時期にそのくらいの分は環日本海枠として少し芽を出させることをお考えになれないでしょうか。これから新年度のさまざまな運用についても御相談になるでしょうし、もちろん過去のいろいろな経過もあるでしょうけれども。  実は私申し上げたいのは、今おっしゃいましたように、各国別にいえばそうやって入ってくる部分も中国やソ連についてはある、韓国もあるだろうと思う。ただ問題は、環日本海という視点で今我々が何が将来できるのか、平和について、経済について、もっと基礎的な人的交流について、あるいは日本語の研修について何ができるのか。それはまさに環日本海という枠組みで、ハバロフスクでも中国の東北部でもあるいは韓国でも日本でも、こういう形で五カ国がテーブルを一つにし始めているわけですね。そこでの問題意識というのはもちろん各国別の取り組みの中にもそれぞれあるでしょうけれども、しかし環日本海という一種の圏域を中心として物を考えるというところに、ぜひひとつ応援の手をといいましょうか関心をしっかり持っていただきたいなというふうに思うわけですね。  さまざまな経済的な行為を見ておりましても、今の段階は具体的に貿易や交易を、合弁事業をどう進めるかということ以前のところでみんな苦労しておるわけでありますし、あるいは一体的な情報の収集、分析、提供、あるいは日本語の普及なんかも急速に要求が強まっているというようなこともございますので、この点はぜひ考えていただきたい。  それから、この際具体的に申し上げておきたいのですが、この二月十三日に新潟大学の環日本海研究会というのが中心になりまして、日中ソ二十大学が一緒になって研究会を発足させておりまして、ハバロフスクに事務所を設置なんというようなことをやっているわけです。こういうことが出てまいりますと、一々がお金のこととかかわるわけでして、それは今の自治体ではやはり受け入れる限界もありますし、そのようなことも考えながらぜひもう一度現状、国際交流基金の枠組みの中で将来に向けての環日本海交流基金の創設に向けて芽を出してほしいということを強く申し上げたいわけでございます。  大臣、創設そのものについてお約束は今いただけないにしても、そういう形で具体的に芽を出していくということについてはいかがでしょうか。ぜひ考えてほしい。
  85. 中山太郎

    中山国務大臣 国際交流基金の中で、環日本海の人物交流あるいは都市と都市との協議等について国際交流基金で十分これから積極的に努力をして協力してまいるということを申し上げておきたいと思います。
  86. 関山信之

    関山分科員 小倉さん、それでよろしゅうございますね。環日本海というそこのところが肝心のところなんですから、ぜひもう一つお願いします。
  87. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 基本的な方針大臣が今申し上げたとおりでございます。  せっかくの機会でございますので、先生がやや具体的にいろいろな御要望が今後あろうかと思いますので一つだけ申し上げますと、日本語教育、この間実はまさにソ連の極東地域にその地域だけを目指しまして日本語の現状把握のための使節団を派遣いたしました。これの報告に基づきまして、例えばそういったような領域につきましてこれからしっかり協力体制を整えていきたいと思っております。
  88. 関山信之

    関山分科員 時間もなくなりましたので一つお尋ねをしておきたいのですが、ソ連領事館の新潟設置の問題なんですね。既にいろいろな形で陳情が行われておりましたり、地元のマスコミ等でもさまざまな動きが伝えられておるのですが、外交関係ですからはっきりしたことは言いにくいというようなことになるのかもしれないんですけれども、しかし既にかなりの部分表に出ていることでもありますので、今後の見通しと日ソ両国のそれぞれの意向みたいなものについて、ぜひひとつお差し支えのない限りお聞かせをいただきたいと思います。
  89. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 日ソ双方の総領事館、領事館設置につきましては日ソ領事条約というものがございまして、その規定によりまして相互主義に基づいて双方の合意によって設置するということになって、既にそれぞれ二つずつの総領事館があることは御承知のとおりでございますけれども、最近の日ソ関係の進展を背景といたしまして、それぞれいろいろな地方公共団体から誘致のお話もあり、またソ連側もこういう認識を深めているということでございます。  そこで、今第三の総領事館をつくる話は初歩的な意見交換を行っている段階でございます。それをいつどういう形でつくるかということは、ゴルバチョフ大統領の訪日あるいはその後に予想されます総理の訪ソというようなプログラムの中でどういうふうにこれを位置づけていくかということをソ連と今協議中ということでございます。
  90. 関山信之

    関山分科員 初歩的なというお言葉ついておりましたが、これはもう当然第三の領事館を置くという立場で双方が相談を始めているというふうに伺っておいていいんでしょうか。
  91. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 そのとおりでございます。
  92. 関山信之

    関山分科員 その中に新潟も入っている、こういうふうに承っておいていいでしょうか。
  93. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 まず、両国政府間で総領事館を設置するという合意ができました後に、それぞれ最終的に派遣国、接受国の合意に基づいて具体的な設置場所が決まる、こういうことになろうかと思います。
  94. 関山信之

    関山分科員 時間が来たようですが、そのことについての予算的な措置はもうあらかじめ準備をされているというふうに、新潟という意味じゃなくて、相互主義ですからね、つまりそれがまとまれば領事館設置についての予算措置はできているというふうに承知しておいていいでしょうか。
  95. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 具体的な予算措置につきましては、まず日ソ間で設立の合意をし、具体的な設置場所が決まりました後におきまして初めて外務省予算にその予算を計上し、さらに名称位置法の中に総領事館の設置を書き入れた名称位置法の改正をお願いする、こういう段取りになろうかと思います。
  96. 関山信之

    関山分科員 いかようにでも対応できるというふうに受けとめておいていいですね。合意がもし仮にゴルバチョフ訪日で決まりがつけば、そのことによって、いつ置くかという問題ももちろんありますけれども、いつでも対応できる、そういう予算的な裏づけはあるんだというふうに理解しておいてよろしいですか。
  97. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先ほど申し上げましたように、既に予算が確保されているということではございませんで、日ソ間で合意ができました後に、恐らく一番可能性がありますのは、その合意ができました次の年度の予算におきましてその総領事館設置の予算の請求をさせていただく、国会でそれを御承認をいただくということがまず第一でございます。  それとあわせまして、これは在外公館の新設でございますので、名称位置法におきましてその新設の御承認をいただく、そういった手続が必要であろうと思います。
  98. 関山信之

    関山分科員 どうもありがとうございました。
  99. 林義郎

    林主査 これにて関山信之君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 我が国におきましては、非核三原則、武器禁輸三原則等着目すべき平和原則を所有しているわけでございますが、この対イラク武器輸出の主要国が、ソ連を筆頭といたしまして、フランス、中国、アメリカ、ブラジル、西独等の国々が大量に参加しておったということが最近報道等に明らかにされているわけであります。国連常任理事国がそろって輸出した兵器をみずからの軍隊でこれを壊していった。イラク軍と多国籍軍との戦いは、同じ国の兵器が両側に存在して、両側がたたきつぶすという極めて奇怪な状況の中に発生したものであるということを私ども認識したわけであります。したがってこうした状況を、政治的な側面というだけではなく、軍事物資の輸出という観点から抑制することが我が国の外交の柱として確立されるべきではないかと私は考えるわけでありまして、その立場から二、三御質問をしたいと存じます。  まず、SIPRIのデータ等はございますけれども世界の主な武器輸出国、輸入国及びその額について、外務省は保有されておるデータがあったらそれを述べていただきたい。また、武器輸出主要国の軍事産業の規模、依存度等について御説明をいただきたい。また、西側主要国の武器輸出は国の政策に基づくものであるか、もちろんそうだろうとは思いますけれども、その武器輸出国の意図はどういう意図で行われているものか。そこまで述べていただくだけでも相当の量になると思いますが、的確にお答えをいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
  101. 丹波實

    丹波政府委員 先生質問三つの御質問うち、最初二つを私の方からお答えを申し上げて、三つ目は経済局長の方からお答え申し上げたいと思います。  まず、世界各国の主な武器輸出国、輸入国は一体どういう状況になっているかという御質問が第一と思います。私たちが持っておる資料は二つございまして、一つアメリカ国務省の資料、もう一つはストックホルムのSIPRIの資料でございます。  国務省の資料によりますと、一九八八年の時点、一番新しいデータの時点でございますが、武器輸出国として、一位がソ連の二百十四億ドル、二位がアメリカの百四十三億ドル、三位が中国の三十一億ドルということになっています。また八八年の時点での武器輸入国としては、一位がイラクの四十六億ドル、二位がインドの三十二億ドル、三位がサウジアラビアの三十億ドルというふうになっております。  ちなみにストックホルムのSIPRIの資料によりますと、やはり八八年の時点でとりますと、武器輸出国として、一位がソ連の百二十五億ドル、二位が米国の百五億ドル、三位がこの場合は中国ではございませんで、フランスが二十二億ドルとなっております。  輸入国につきましては、一位はイラクではなくて、インドが三十四億ドル、二位が日本が挙がっていまして二十三億ドル、三位がイラクの二十億ドルというふうになっています。  各国の経済に占めますところの軍事産業の比重という点につきましては、その軍事産業というもののとり方その他、大変技術的に難しい点がございますので、一つの目安として、輸出全体に占める武器輸出の比率、あるいはGNPに占めますところの軍事費の比重という二つの基準が考えられるわけです。前者の輸出に占める兵器輸出の比率ということで主要な国の例を挙げますと、一九八八年の時点で、輸出全体に占める兵器輸出の比率は、ソ連が一九・三%、これはいわゆるダントツという形でございます。以下、中国の六・五%、米国の四・四%、チェコの三・二といったような続き方になっております。なお、いわゆる西欧諸国は概して低くございまして、イギリスが〇・五、フランスが一・一、西ドイツが、当時はまだ西ドイツですけれども〇・一%という状況でございます。  それから、念のためにGNPに占めます主要国の軍事費の比率は、ソ連が一一・九%、ポーランドが八・七、チェコが七・一、アメリカが六・三、イギリスが四・三というような状況でございます。  以上でございます。
  102. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生質問の第三点でございます。西側主要国の武器輸出はどういうふうになっているか、武器輸出政策はどういうふうになっているかという御質問理解いたしましたが、一般的に申し上げますと、西側主要国は、武器輸出管理法等のもとにおきまして、武器輸出案件を審査、許可するという輸出管理体制を有しております。  武器の輸出の問題につきましては、国際社会における国家関係、同盟関係などが複雑でございまして、世界各国を取り巻く政治、安全保障環境も一様ではないわけでございます。世界各国が自衛のために必要な範囲内で行う調達、各地域における軍事バランスの確保といった複雑な要素が絡んでいるわけでございまして、西側主要国はこれらの点を勘案して対応している、こういうふうに承知しております。
  103. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 日本の武器輸出三原則は外国にも例を見ないものではございますが、武器輸出について何らかの規制を設けている国あるいは放任している国、そういうのがいろいろあると思います。それらについての現在の認識を述べていただきたいと存じます。
  104. 林貞行

    ○林(貞)政府委員 先生指摘のとおり、我が国は、平和国家としての立場から、武器輸出によって国際紛争を助長することを回避するために厳格な武器輸出三原則を遵守しておりまして、武器の輸出に関し厳格な対応を行っておるわけでございます。右は国際的な平和と安全に大きく寄与していると考えておるわけでございます。  西側主要国におきまして、武器輸出管理法令のもとで、武器の輸出に関しましては、共産圏向けへの規制国連決議等の規制、テロリズム国家に対する規制等、政策的な基準を設けて武器輸出の規制を行っておりますが、私ども承知する限り、我が国の武器輸出三原則ほどの厳格な運用を行っている国はないと承知しております。その他の国については必ずしも明らかではございませんが、いずれにせよ、我が国のような武器輸出三原則を持っている国はないと承知しております。
  105. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 湾岸戦争の途上から既に言われていたことではありますが、三月九日付のイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙によりますと、アメリカ政府サウジアラビア、エジプト、トルコ、バーレーン、アラブ首長国連邦等の中近東五カ国に対して百八十億ドル相当の通常兵器の売却を計画していると報じられておりますが、この情報を得ておりますか。また、こうしたやり方について、アメリカ政府の態度は余りおもしろくないと私たちは実感しているわけでありますが、日本政府はそれを喜んで見ておられるのか、悲しんで見ておられるのか、抗議するつもりがあるのか、黙っておるのか、その辺態度を明確にしていただきたい。  というのは、このフィナンシャル・タイムズのニュースの前に、約百二十億ドル分の武器の売却を戦争直後にサウジアラビアに対して行った、それは非常に我が国の外交のプラスポイントであるとアメリカの議員の某氏が語ったということがアメリカ国内で報道されているわけでありますから、恐らく、政府側だけでなく、新聞だけでなく、こういう議員の口からも出てくるところを見ますと、かなり確度が高いものでなければならぬと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  106. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 今月の八日から九日にかけまして、米国あるいは英国の新聞に先生ただいま御指摘のような報道がなされたことは承知しております。他方、米国政府自体は、その事実につきまして公式に確認をしておりません。私どもも現在のところその事実関係を確認するに至っておらない状況でございます。  我が国といたしましては、この通常兵器の移転の問題につきましても、外務大臣国連演説にございましたように、その透明性、公開性をさらに確保するというような方向で種々の努力を行うべきものと考えております。他方におきまして、通常兵器の問題は、その地域におきますバランスの問題、あるいは受け入れ国側の安全保障に対する考慮等、種々複雑な問題を含んでおると思われますので、その点も含めまして、今後我が国として真剣に取り組んでいくべき問題というふうに考えております。
  107. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 武器を輸出するから戦争をするのだという観念と、武器が全くない国が存在するので隣の国から襲撃されるなんという反対論理があるということを今おっしゃっているのだろうと思います。そして、それを一々簡単には言えないのだと言われているのだろうと思います。  我が国は、国連中心外交の立場に立って、今回も多国籍軍の行動を支持する立場にあった日本政府でありますから、世界戦争を食いとめる立場に立たなければいけない。世界戦争を食いとめる立場に立つならば、世界じゅうで武器の量が一地域に偏在する、あるいは急激に増加するということは慎まなければならぬと主張することが当然だと思うのです。その辺がひどくティミッドである。日本政府は何にも言わない、自分の頭のハエだけを追っておって、アメリカのやっていることについてはともかく何も言わない、下向いて歩いておる、下向いて歩こうという立場でいくというふうに見えるわけだ、こういう立場でいくと。それは余り賢明ではない。その賢明でないことの累積が、イラン・イラク戦争において中東市場が武器市場として最大の市場になってきたという事実を遠慮なく示しておる。これはだれが見たって、あれほど売り込めば最後は火を噴くのは当たり前であると見ていたわけです。  そこへもってきまして、八九年になりますと、インドなど南アジア地域におきましては、今度は前年度比で四三%も増加し始める。この四三%伸びたということは、今度は南アジアまで戦争するぞと武器商人たちが思っているのか、武器商人を通してそういうものを買う国々がそういうふうに自覚しているのか、そういうふうに扇動されているのかは別ですけれども、そのどれかわかりませんけれども、南アジアにおいて猛烈な武器購入が始まっておるという状況である。欧米の軍需産業では、現状では既にアジア地域は数少ない武器輸出のための草刈り場であると言われておる。  世界的な安全保障の組み上げがおくれているためにこういうことになったということは御異議がないと思いますが、このような状況に対して、アジアに軍備拡張を招く、また、今まで中近東市場において武器の大量輸出を招いてしまった、日本政府は膨大な経済的影響力を行使する立場にありながらほとんど何も言わない。ほとんどといいますのは、大臣国連等においてこの問題について勇敢に御発言をいただいておることは事実だけれども、それを実効あるものとするような努力は欠けているのではないかという不信を私どもは感じているわけであります。その点はいかがでございましょうか。
  108. 丹波實

    丹波政府委員 事実関係の問題があると思いますので、私の方からお答え申し上げたいと思います。  一つは、武器輸出の市場が、中東もさりながら最近アジア地域に少し移行しつつあるのではないかという問題の御指摘との関連で、先ほどのSIPRIの一九八九年版の資料によりますと、確かにそういう指摘がなされております。これは、第三世界の武器輸入全体に占めますところの中東の比率が、一九八四年の四八%から一九八八年の三九%に減少している。ところが南東アジア、これはビルマ以東のアジア、ただし日本、中国を除くとなっていますが、これの比率が同期間に一二%から二二%に増加しておるということを根拠としておるようでございます。しかし、比較の基準年次を例えば七九年にとりまして八八年と比較しますと、必ずしも同趣旨の結論が出てこないということで、私たちも今後の武器輸入の変動については注目していくつもりですけれども、一定の結論が出せるのかどうかという点が一つ問題があろうと思います。  それから、第二点目としてあえて「ACDA」という国務省の資料から指摘させていただきますと、一九八三年から八七年の累積でとりますと、世界主要武器輸入国十八カ国のうち十四カ国までがソ連の友邦国なんでございます。したがいまして、そういう観点から見ますと、この武器輸出の問題は、もしソ連がこの輸出を抑制してもらいますとこの武器輸出の問題の大方は片づくというのが、この資料の指し示しておるところで、確かに今後についてはわかりませんけれども、まさにそういう観点から、外務大臣が先般シュワルナゼ外務大臣に対してソ連の武器輸出の抑制を要請したというのは、実はそういう背景があるわけでございまして、国連に対して物を言うと同時に、私たちはできるだけそういう関係国に対しても物を言ってきたつもりで、そういうことで今後とも行動してまいりたいというふうに考えております。
  109. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 ところが、最近に至りまして、海部総理は画期的に、日本のOODA供与の条件として、軍事目的紛争当事国及び紛争を助長するものへの供与は技術を含めて禁止されておるが、さらに武器の輸出入国へのODA供与の見直しにつきまして、草川昭三議員に対して、傾聴すべきものがあって、前向きな答弁をされたわけであります。ところが外務省の中には慎重論、反対論が渦巻いておるというふうに、新聞報道ではやじられておるのでありまして、どの局長がそういう態度を示されたか、私は興味深く観察しておるところであります。総理の御指導に対して拳々服膺し従う公務員としての立場を遵守され、頑張っていただくようにお願いしたいし、一杯飲むときでも変なことを言わないようにしていただかなければならないということを、私はしかと申し上げておきます。  ところで、この事実、ODA供与と絡ませて武器輸出入国に対するODAをさじかげんしていく、これは我が国外交の非常にいいルールではないかと私は思いますが、現実は甚だ難しい。八八年の暮れにゴルバチョフ書記長は、国連演説において、二年間で五十万人の兵力と戦車六個師団一万台を一方的に削減するとばんと表明する、そして、米ソ雪解けを演出し始めてくる。西ドイツのコール首相は、昨年七月にソ連の懸念にこたえて、統一ドイツでは三十七万以上の軍隊は持たないとばんと言ってくる。またアメリカは、上院軍事委員会において現有兵力二百十万を毎年十万ずつ、下院軍事委員会によると毎年十四万ずつ、五ないし十年間にわたって削減する、三千億ドルを超える国防予算は毎年百八十億ドルずつ縮小されると言ってくる。世界は方向が変わったなというのが、外交の口の上ではなくて数字の上で、軍事予算の上で見事に示しておる。  ところが日本政府は、木で鼻をくくったように、棒を飲んだみたいに一方的に軍事費をぐいぐい上げていく。公明党から攻め寄せられてやっと千億円を泣く泣く下げた。そして、下げた分については、防衛庁長官がまた余計なことを言って、後で必ず膨らますからなどと言って国会で大騒ぎになる。それでやっと千億円下げた。あれは日本政府方針ではない。公明党の方針なんだ。公明党から攻め寄せられて辛くもうんと言うような、この哀れな哀れな防衛費に対するフレキシビリティーのなさというものを考えると、私はがっかりしてくるわけです。  そこで、武器の輸出入国に対してODAの金額をふやしたり減らしたりするぞという宣言は、画期的なことだ、石頭的日本防衛軍事外交において画期的な、歴史的な、史上空前の出来事だと私はあえて申し上げたい。しかし、やるルールが決まってないみたいに見える。これは甚だ難しいことだ。それじゃ、その総理の言われたことに対して今後どういうふうに取り組んでいき、どういう原則をつくっていかれるか。今後慎重に検討するなどという答弁はいただきたくない。なぜかといえば、これほどの重大問題を総理が言われる以上、直ちにそれに対する二、三の基礎方針というものもおありになるはずだと私は思うものですから、ここでお尋ねしたい。どうぞお願いします。
  110. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の、軍事費、武器移転といった問題と経済協力、ODAとの絡みは、確かに難しい問題ではございます。ただし、今次湾岸戦争を契機としまして、御指摘のとおりこのような要請はますます強まってきているという認識でございまして、我が国の対外貢献の重要な柱でありますODAにつきましても、このような認識を踏まえて考慮していく必要があるというふうに考えております。  例えば基本的な姿勢の問題として、みずからの国を防衛する権利というのは当然尊重されるべきだというふうに考えますが、国民生活を差しおいて膨大な軍事支出を行っている、武器を大量に輸入しているといったような国があるとすれば、そういう国に対しましては、経済協力を行うに当たって毅然とした態度をとるというふうな態度でもって臨むべきであるというふうに考えます。  他方におきまして、経済協力は、開発途上国の経済発展、飢餓と貧困の除去、救済、国民生活の向上への貢献というものを、先生御案内のとおり基本的な目的とするものでございますので、このような経済協力の本旨を損なうことのないように配慮することも当然必要であろうと思います。  かたがた、まさに先ほど先生指摘のとおり、各国の適正な軍事支出といるものが何か、この水準は一体どういうところにあるのか、武器の実際の輸出入量が一体どういうことになっているのかといったトレンド等の問題、こういうものの立証というのは決して容易ではないという現実があることは御理解、御賛同いただけるものと思います。  そういうような点も踏まえながら、御指摘の問題につきまして、こういう制約を念頭に置きながら、経済協力基本的な取り組みの中でどういうふうに反映させていくのかということで検討をやっているということでございます。
  111. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 今のは、概論に過ぎて正しい。概論に過ぎているがゆえに意味がない。常識の範囲を出ない。残念ながら、それはまだ研究したことになり得ないと私は思いますね、大臣。ひどくまずいのは、そういうことを言っているとどういうことが発生するか。  例えば中国。中国はシルクワームというミサイルをイラン・イラク紛争のときに大量に輸出して、シルクワームの命中度というのは当時世界に誇られた。国連における中国大使に面会したときにそれを聞いてみたら、我々はサウジアラビアに対してシルクワームをいち早く送った、だからこそサウジアラビアは今回イラクに侵略されなかったのである、何が悪いのですかという恐ろしい答弁をいただいて、私は愕然としたことがありますけれども、そのシルクワーム一つをとったって、典型的な輸出を行っている中国に対してODAを、我が国の供与としては第二位ですが、その膨大なODAを供与しながら、中国に対して、じゃODAは、このたびいろいろ武器輸出入国としては非常に大量なところに対しては何かいたしますが、中国に対しては除くと言うのでしょうか。  世界はそれを明らかに注目していますね。総理の言っていることがそんな軽々に扱われていいものかと私は思うのです。そうすると、中国をどう扱うかという一事をとったって、これは大問題ですね、中国に対するODAをこの際急に絞ったとしたら。日本の対中国外交というのは非常に大きな変動を来すはずだ。  そうすると、これは一体どうするのか。宣言するのはいい、国会の答弁で追い詰められて何か言うのはいいけれども、ルールがない。私は極めて不信を持って見ているわけでありますが、本当にこのODAをさじかげんするよと言うのなら、その言った直後に的確な指針を出さなければならない。その的確な指針というのは、全体バランスがとれているかいないかは別として、ともかく日本の外交として、こことここの国に対してのODAは下げる、これとこれはふやすというものが、数字と具体的な国名を通して出てこなければならぬ。それがないで方針を言っていても仕方がないと私は思いますが、いかがですか。
  112. 川上隆朗

    ○川上政府委員 御指摘のとおり、ODAにつきましては、基本的には、先ほど御説明申しましたような基本的な理念、目的を持って供与するものでございますし、それから供与に当たりましては、当然のことながら二国間、我々はよく相互依存という言葉を使いますけれども、二国間関係のトータルな、総合的な考慮に基づきましてこれを供与するということでございますので、例えばひとり軍事費が多いからODAを直ちに減らすとか、それから武器輸出入が多いからODAにさじかげんをするとかといった関係には、必ずしも立ち得ないんだろうと思います。やはり二国間関係全体の枠の中でそのODAというものをどういうふうに見ていくか、その一つ要素として、もちろん重要な要素ではございますけれども、重要な要素として今のような軍事費の問題、武器輸出の問題等を考えながら配慮していくということなので、やはりきちっとした原則を設けるということ自体はなかなか難しいのではないか、しかしながら何かそういう方向で作業できないかということで、現在鋭意検討しているところでございます。
  113. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 では、その原則はいつできるのか、いつまでに返事をなさるのか、それを聞かなければならない。だって、海部総理が言ったことに対してあなたが原則としてそういうものを立てるのは難しいと言われたのは、海部総理の答弁をはるかに後退させたことになる。総理の答弁を経済協力局長が、見識はあったとしても経済協力局長がそこまで総理の答弁を拒否することは許されないですよ。あなた、いつから総理の指南役みたいな顔をされておるのか。それはおかしい。
  114. 川上隆朗

    ○川上政府委員 私の申し上げていることは、海部総理の答弁を後退させるという趣旨は毛頭ございませんで、総理がおっしゃったとおり、軍事支出の問題、それから武器輸出入の問題等々は、ODAの供与に当たっての一つの重要な原則であるということから、その原則というものを実際にどういうふうにアプライしていくか、適用していくかということについてどういう考えで臨むべきか、先ほど先生さんざん御指摘いただいたように大変難しい問題でございますので、これによってすぐ援助を増減するということに、原則のつくり方いかんによっては結びついてしまうわけでございますから、その辺は十分考えながら鋭意検討するということでございます。
  115. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いつまでに返事なさるのですか。
  116. 川上隆朗

    ○川上政府委員 できるだけ早期に検討するようにいたします。
  117. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣、この答弁、態度が悪いと思いませんか。この態度が悪いのは、指示がないからです。それは議院内閣制である大臣の御見識が問われている。  総理の言っていることは明らかにぼんやりした原則です。中身は十分検討されてないでおっしゃった。それは私は方向として間違いないと思うのです、世界がみんなそう思っているのですから。ただ、このときに、私ついでに申し上げておきますが、コンバージョン、軍需産業を平和産業に切りかえるのに、どこの国でも時間がかかるのですね。自分の国で武器弾薬を売り続けて生活を支えてきた国がひっくり返すのは、もうただごとじゃない。ゼネラル・モーターズだって一万四千人も首にして、もう悲鳴を上げている絶頂に今到達している。そういう大きなところでも悲鳴を上げて、会社にも、地域社会にも、国家の財政の上でも悲鳴を上げているのをどう転換していくかというのは、物すごい大きなテクニックが要る。そこのところまで我々が突っ込まないとその問題についての説得性を失う。  またもう一つは研究開発費、軍事と民事について、軍事が二で民事が一というアメリカ、一対二のフランス、一対六〇の日本、一対六〇なんというんだそうですから。一対一〇の西独と言われているわけですね。民事の研究費に膨大な力をかけている日本と比べて、二対一のアメリカが研究費の上でかなうわけがない。また、アメリカにおけるカリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツなどの二十州においては、雇用の一七%が軍需産業に従事している。  また、発展途上国においては、しばしば軍事は内政の不安定を糊塗するための内乱鎮圧部隊として使われておる。内乱を鎮圧しないで、ほったらかすことができないでいて軍事を使うところもある。また、発展途上国全体に対する経済協力世界じゅうの経済協力よりも、発展途上国全体の軍事費に対する支出の方が多いということは、一昨年の国連報告の中に既に出ておる。この一つずつ全部異常な状況である。だから、僕が言うのは、ODAの費用を減らして、ODAの費用を減らすからそっちちょっと何とかしてくださいよと言うのはいいけれども、それと一緒にこのコンバージョンの問題、その国の採算の問題、財政の問題、そういうのを全部ひっくるめて考えを組み立てないとあほみたいな議論になってしまう。  そこをひとつ大臣、ぜひともしっかり御研究いただいた上で、なるべく早いところで私たちも御答弁いただく、世界にも宣明していただく、それが平和外交を担い国連外交を担う日本の行く道ではないか。いいかげんな一部のことだけ言うと、国際外交場裏でみっともないほど批判されて、しまいに説得性を失なう。既に今回の湾岸危機で、我が国の外交については、随分頑張ったけれども非難が多い。本当の平和を地球の上でつくり出すために日本外交は何をしなきゃならぬかという、こういうような問題を全部まとめて論議をしていただき、原則をお答えいただくことじゃないか。しかもそれを早急に私は求めたい、御返事をいただきたい、世界にも言っていただきたい、こう思うのですが、いかがでございますか。まとめてひとつお願いします。
  118. 中山太郎

    中山国務大臣 この兵器の輸出、輸入の問題で、ODAとの関連につきまして、委員からかねて大変見識のあるお話をいただいておることに敬意を表したいと思いますが、問題は、私は武器を輸出する国、輸入する国、二つに大別されると思います。それで、日本から見て、日本は輸出をしない国でありますけれども、輸出をしている国でODAの対象国になる国、ODAの対象国にならない国と、これまたそこで一つの区別がされるんではなかろうかというふうに思います。そういうことで、武器輸出国でODAの対象になる国とならない国の識別を急がなければならない、また輸入する国で、それが隣国に対して軍事バランスを大変崩すほどの大きな輸入をするODAの対象国、これに対する日本政府考え方を整理しなければならないと思います。  今委員から御指摘の点は極めて重要な点でもございますし、既に総理の国会における答弁もございますので、その線に沿って局長を通じていろいろとこの考え方の政策の整理を急ぐようにさしていただきたいと思いますが、今お触れになりました軍事研究と民事研究の比率の問題、私はこれも非常に難しい問題だと思います。日本はこれだけの技術大国だと言われながら、技術面では全部赤字であります。ライセンスフィーが全部赤字になっております。むしろアメリカ、ヨーロッパからの技術の輸入が極めて多いという面を考えますと、軍事費に対するRアンドDが非常に日本の場合に低いですけれども、それとの関連性というものが即これにつながっていくのかということにつきましては、もう一度私は深く議論をさせていただきたい。しかし、全体的に先生の御指摘のODAとこの軍事、兵器の輸出国、これとの関連性については、日本政府考え方というものを早急に整理をさしてお話をさせていただきたいと考えております。
  119. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 終わります。
  120. 林義郎

    林主査 これにて渡部一郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  午後四時から再開し、大蔵省所管について審査を行うこととし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ────◇─────     午後四時開議
  121. 林義郎

    林主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算大蔵省所管について、政府から説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣
  122. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 平成三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十兆三千四百七十四億一千九百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、租税及印紙収入は六十一兆七千七百二十億円、雑収入は二兆九千七百六十一億四千八百万円、公債金は五兆三千四百三十億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十八兆七千四百三十二億九千三百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げますと、産業投資特別会計へ繰り入れは一兆三千億円、国債費は十六兆三百五十九億八千万円、政府出資は三千百二十五億円、給与改善予備費は一千三百五十億円、予備費は一千五百億円となっております。  次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。  造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百五十八億七千二百万円となっております。  このほか、印刷局等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。  国民金融公庫におきましては、収入四千八百七十六億八千八百万円、支出五千八十二億八千二百万円、差し引き二百五億九千四百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  なお、時間の関係もございまして、お手もとに配付しております印刷物をもちまして詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  123. 林義郎

    林主査 この際、お諮りいたします。  ただいま橋本大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 林義郎

    林主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    平成三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算に関する説明  平成三年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は、七十兆三千四百七十四億一千九百万円でありまして、これを前年度予算額(補正予算(第一号)による補正後の改予算額。以下同じ。)に比較いたしますと、一兆八千二百九十六億四百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、租税及印紙収入は、六十一兆七千七百二十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、二兆六千四百十億円の増加となっております。  この予算額は、現行法による租税及び印紙収入見込額六十一兆七千七百五十億円に、平成三年度の税制改正における租税特別措置の整理合理化等による内国税関係の増収見込額二十億円を加え、関税率の改定等による減収見込額五十億円を差し引いたものであります。  次に、各税目別に主なものを御説明申し上げます。  まず、所得税につきましては、二十五兆七千三百八十億円を計上いたしました。  法人税につきましては、租税特別措置の整理合理化等による増収見込額を加えて、十九兆二千六百七十億円を計上いたしました。  また、消費税につきましては、四兆九千四百四十億円を計上いたしました。  以上申し述べました税目のほか、相続税二兆四百六十億円、酒税二兆円、たばこ税九千八百七十億円、揮発油税一兆五千三十億円、有価証券取引税一兆二百億円、関税八千五百億円、印紙収入二兆一千四百八十億円及びその他の各税目を加え、粗税及印紙収入の合計額は、六十一兆七千七百二十億円となっております。  第二に、雑収入は、二兆九千七百六十一億四千八百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、六千三百五十三億八千三百万円の増加となっております。  この収入のうち主なものは、日本銀行納付金七千四百九十億円、日本中央競馬会納付金三千二百九十億一千八百万円、特別会計受入金一兆五千七十億七千四百万円等であります。  第三に、公債金は、五兆三千四百三十億円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆一億八千万円の減少となっております。  この公債金は、「財政法」第四条第一項ただし書の規定に基づき、公共事業費、出資金及び貸付金の財源に充てるため発行する公債の収入であります。  最後に、前年度剰余金受入は、一千十三億六千七百万円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、十八兆七千四百三十二億九千三百万円でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一兆五千二十七億七千四百万円の増加となっております。  これは、国債費が一兆五千八百六十六億七千九百万円、給与改善予備費が一千三百五十億円増加しましたが、他方、予備費が二千億円減少したこと等によるものであります。  以下、歳出予算額のうち主な事項につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一に、産業投資特別会計へ繰入につきましては、一兆三千億円を計上いたしておりますが、この経費は、無利子貸付けの財源に充てるための「日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に基づく産業投資特別会計への繰入れに必要なものであります。  第二に、国債費につきましては、十六兆三百五十九億八千万円を計上いたしておりますが、この経費は、一般会計の負担に属する国債及び借入金の償還及び利子等の支払並びにこれらの事務の取扱いに必要な経費の財源を、国債整理基金特別会計へ繰り入れるためのものであります。  第三に、政府出資につきましては、国民金融公庫等三機関に対し、一般会計から出資するため必要な経費として、三千百二十五億円を計上いたしておりますが、その内訳は、国民金融公庫二百億円、中小企業信用保険公庫百九十五億円、海外経済協力基金二千七百三十億円であります。  第四に、経済協力費につきましては、三百八十八億七千四百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国際開発金融機関を通じて供与する発展途上国に対する経済協力等に必要なものであります。  第五に、給与改善予備費につきましては、一千三百五十億円を計上いたしておりますが、この経費は、政府職員等の給与改善に伴う予見し難い予算の不足に充てるためのものであります。  最後に、予備費につきましては、予見し難い予算の不足に充てるため、一千五百億円を計上いたしております。  次に、当省所管の特別会計のうち主な会計につきまして、その歳入歳出予算の概要を御説明申し上げます。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入、歳出とも三百五十八億七千二百万円となっております。  次に、印刷局特別会計におきましては、歳入九百四十四億三千二百万円、歳出八百七十四億一千三百万円、差引き七十億一千九百万円の歳入超過となっております。  以上申し述べました各特別会計のほか、資金運用部、国債整理基金、外国為替資金、産業投資、地震再保険及び特定国有財産整備の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、国民金融公庫におきましては、収入四千八百七十六億八千八百万円、支出五千八十二億八千二百万円、差引き二百五億九千四百万円の支出超過となっております。  このほか、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、北海道東北開発公庫、公営企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、環境衛生金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────
  125. 林義郎

    林主査 以上をもちまして大蔵省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  126. 林義郎

    林主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原脩雄君。
  127. 松原脩雄

    松原分科員 私は、企業の社会貢献活動、いわゆるフィランスロピーと税制についてお伺いをしたいと思います。  最近、企業の社会的責任や社会的役割を重視するという考え方から、企業の社会貢献活動、いわゆるフィランスロピーとか、企業が文化、芸術活動を支援する企業メセナ、あるいはよき企業市民、グッドもしくはベター・コーポレート・シチズンシップとか、あるいは個人や企業が所得の一%以上を毎年社会貢献活動に支出することを約束する一%クラブ、そういう言葉が大変話題になっております。  これらはいずれも大変よいことであると私は思っておりますけれども、このような傾向をどのように思っておられるのか、これは大蔵大臣にお願いをしたいと思います。
  128. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、基本的にこうした活動というのはもっと助長され、もっと普遍化するべき行為だと思います。と申しますよりも、欧米社会に比して日本の企業がこうした点についての配慮が足りなかったことが、経済大国日本という言葉の裏腹に、日本企業の進出というものについて各地で警戒心を起こしたり、いたずらなトラブルを巻き起こしたり、そうしたことが私はあったような気がしてなりません。それだけに、むしろこうした活動が、国外においては比較的早くから動き始めながら、国内においてなかなか育っていかなかったという点に一つの残念な気持ちを持っておりました。最近、今委員がお述べになりましたような企業の活動というものが、社会的責任というもの、地域社会にある企業というもの、さらには国の中における企業としての役割といったものに目覚めて行動ができるようになった、これは望ましい方向であると考えております。
  129. 松原脩雄

    松原分科員 そこで、この点については日本の最も中心的な経済団体であります経団連でも、平岩さんが会長になられて、昨年、新経済民主主義の提唱という方針を出されて、その中でフィランスロピーを推進しようじゃないかということを提起された。私もこれに大変関心を持ちまして、そのフィランスロピーセミナーというものにも参加をいたしましてその論議を聞かせていただいたのですが、やはりそこで我が国の寄附税制ということが問題になっている、問題とされた。  それで、我が国の税制は、例えば今大臣が御指摘のようなアメリカのように非常に進んだ税制の国に比べまして、企業の社会的貢献を推進するという観点からすると問題点が多いという指摘が実はございました。この点についてまず概括的に大蔵省としてどのようにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  130. 小川是

    ○小川政府委員 現在の税法上、寄附金制度は三つグループに分かれております。  法人が支出する一般的な寄附金につきましては、資本等の額及び所得等の額によって限度額がございまして、この限度の枠内のものは損金に算入される。それから、その全く反対の方に指定寄附金制度というのがございまして、これは個別に指定をされました公益性の高い寄附金につきまして全額損金に算入されるというのもございます。その中ほどに特定公益増進法人制度というのもございまして、一定の公益性の高い法人に対して行う寄附につきましては、一番最初に申し上げました一般的な寄附金の限度額と同額だけの範囲内において損金に算入することができるということになっております。第二、第三の指定寄附金制度あるいは特定公益増進法人制度はこれまでそれなりに活用をされてまいっておりますが、個々の企業サイドから見まして限度額に対してどの程度活用されているかと申しますと、その活用状況はまだかなり低いというのが現状でございます。
  131. 松原脩雄

    松原分科員 今御指摘のありましたいわゆる特定公益増進法人、それについてちょっとお伺いをしたいのですが、これは御説明のとおり一定の限度で寄附の損金算入を認める、免税資格を与えられる。実は同じような制度がアメリカにもございます。それでそのアメリカ日本を比べてみます。そうすると、アメリカではこの種の団体が五十万とか六十万ぐらいあると言われています。それに対して日本ではいわゆる民法法人に限っていえば七百五十という、数の上において大変大きな開きが実はあります。それから、いわゆる特定公益増進法人の基準とか要件、これについてアメリカは相当明快にできているようですが、日本ではこれはどうも明確じゃないのじゃないかというふうな指摘があるのですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  132. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの特定公益増進法人につきましては、法律上、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しい役割を果たすもの、こういった民法法人を中心にしまして現在のところ約一万五千ほどございますが、そのうち、今お尋ねのありましたとおり、いわゆる民法法人としては七百五十程度、それ以外はそれでは何かと申しますと、社会福祉法人であるとか学校法人であるわけでございます。民法法人の七百五十が多いか少ないか、全体としまして公益法人二万ちょっとございますので、それに比較して必ずしも少ないということにはならないのではないかという気がいたします。  片方、アメリカにおいて、私どもも五十万か三十万か必ずしも数を正確にとらえておりませんが、アメリカにおいて非常に数が多いのは、私どもの推察いたしますのには、一つには、米国におきましては宗教活動に対する寄附というのも慈善に対する寄附金ということになっているようでございます。実際問題といたしまして、社会におけるこうした慈善活動を進めるに当たって、社会の基盤をなすところに恐らく教会というものがかなりあるんではないか。他方我が国の場合には、宗教活動あるいは宗教法人に対する寄附金というのは基本的にはこの非課税対象にいたしておりません。そういった社会的な風土の違いというのが数の上で大きなものになっているのではないかというふうに推察している次第でございます。
  133. 松原脩雄

    松原分科員 今の基準、要件のことについてもう少し詳しくお聞きしたいのですが、今説明しなかったから、もう少し詳しく私の方から聞いてみます。  先ほど言った経団連のセミナーあたりでも指摘をされているわけですが、特定公益増進法人の指定を受けるにはまず三億円の基本財産が必要だ、その上で二年ないし三年はその法人の活動の様子を見て、これはまじめだというふうに大蔵省が認定をされるとそういった指定法人に許可される。ところが、これをやっていますと、その二、三年の間はまだ指定されませんので、幾ら寄附活動をしていても寄附として認められない、したがっていわゆる免税措置が受けられないということになりますので、いわゆるそういった法人が資金集めをしようと思ってもなかなかうまくいかないという例が一方ではあるようです。一方、いわゆる官庁が主導してこしらえた法人だとしますと、基本財産が五千万円でもすっと認められてしまうということで、どうも純粋の民間法人と比べて官庁主導型の団体といったものが不当に優遇されておるんではないか、その意味で基準が非常にあいまいというか不透明じゃないか、こういう指摘があったのですが、この点についてはどうでしょうか。
  134. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの点につきましては、法人税法の施行令で民法法人のうち一定の目的の業務を行っている、しかも「その運営組織及び経理が適正であると認められること、」というのが一つの要件です。第二の要件といたしまして「相当と認められる業績が持続できること、」第三の要件といたしまして「受け入れた寄付金によりその役員又は使用人が特別の利益を受けないことその他適正な運営がなされているものであること」について認められなければいけないということになっておりまして、ただいま御指摘のありました基本財産の件につきましては、恐らく当該民法法人の設立認可に当たりまして所管官庁がそれぞれの内規を持っている、その範囲のことであろうかと存じます。  それから、いま一つ、二、三年の実績を要するという点につきましては、ただいま申し上げました第二点の「相当と認められる業績が持続できること、」というところで一応二、三年という実績を見させていただいているということでございます。  これらの要件は、どういたしましても、こうした公益性の高い活動に対する寄附金をどう認めるかという趣旨からいたしまして、法令上の要件はやや抽象的にならざるを得ない、これを具体的にどう運用していくかという問題でございます。その際に、ただいま申し上げたような、ある意味ではきちっとした要件をつけざるを得ませんのは、やはり免税の寄附金でございますから、使われる目的がはっきりと公益性の高いものであるというととを認定しなければならないというのが一点。第二点といたしましては、いわば公金に近いものを扱うわけでございますから、そのお金を受け入れるところ、法人がきちっとした組織で、社会的にも間違いのないという要件が必要だと存じます。さらに、その受け入れたお金を目的に即して適正に支出をすることが常時確保されているということが極めて重要な点であろうかと存じます。そのために、要件としてはやや厳しいという感じを持たれるかと存じますけれども、これらのものに該当する場合には、現実に動き出せばかなり円滑な運営がむしろ期待されて、現実に行われているのではないかというふうに私どもとしては考えているところでございます。
  135. 松原脩雄

    松原分科員 ちょっと今聞き逃したのですが、官庁主導型、まあ実態においてだと思いますが、その団体の場合には基本財産が五千万円といった場合でも認められるといる点の指摘はどうでしょうか。そういう実態はあるのかないのか。
  136. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの点につきましては、明確な数字的な基準を持っているわけではございませんが、官庁主導型というのが果たしてどういう法人を指すか、ケース・バイ・ケースで必ずしもはっきりいたしませんが、ポイントは、今申し上げました運営組織、経理が適正であるとか、相当の期間きちっとした業績が得られるであろうとかいったようなことが何によって担保されるか、その場合に、当該所管官庁が相当厳しい設立要件を持っているような場合には、私どもが審査をいたしますときにケース・バイ・ケースにのっとって比較的安心してその適正さを担保されている、こういうことでございます。
  137. 松原脩雄

    松原分科員 どうもそういういわばばらつきがあるように受け取りましたが、またもう一つ、例えば民間の公益法人が指定を受けるような場合には、そのうちその事業費が七〇%以上、管理費が三〇%以下、そういうものでなければならないという行政指導ですか、こういうふうなものもどうやら行われているんじゃないかという指摘もあったわけですね。そうしますと、そういう行政指導のような形になりますと、まさに明文化された基準というものを要するに超えた形になるようですから、どうもその基準、要件というのが明確にならない。あなた方の運用の仕方が、どうもある意味では、外から見たら恣意的になるという可能性が僕はあると思うのですね。そういう意味で、そういう基準、要件についてきちっと明文化したような体制にあるのか、あるいは、もしないとすれば、明文化するような方向性を置くつもりがあるのか、この点についてはどうでしょうか。
  138. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの点につきましては、当該法人にとって主たる目的である業務かどうかということを判定するときに、主たる目的といえば何割くらいかということで、一応事業関係費を七割というめどでこれまでのところは運営をいたしてきております。また、そうした公益活動でございますから、管理費に余り大きなウエートを占めるというのは決して好ましいことではないだろうと存じます。  御指摘は、そうした数字的な基準をもう少し明快にできないかというところでございますが、いろいろな形で最終的に所管官庁あるいは私どもの主税局でこうした認可について御相談を受けます、その場合に具体的な御説明を申し上げているというのが現状でございます。今後とも、先ほど申し上げましたように、ある程度抽象的な基準の範囲内で公益性をそのときどきで認定していく必要があろうかと存じます。
  139. 松原脩雄

    松原分科員 先ほどから御指摘ありました特定公益増進法人、そのうち民法法人にかかわるものが七百五十というふうなお答えがありました。そこで、この七百五十ある法人のリストを、具体的に名前を入れたリストをいただきたいと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  140. 小川是

    ○小川政府委員 特定公益増進法人につきましては、この認定をいたします作業を大蔵省から主務官庁に一定のものについては移しております。また、主務官庁はこれを都道府県におろしているものがございます。そのために、一つずつのいかなる民法法人がこの認定を受けたかというのは、実は私ども知り得ない状況でございまして、むしろ先ほど申し上げました七百五十というのは、関係省庁を通じましてどういった認定を行っているかというのを集めたものでございます。その限りにおきまして、この具体的なリストとして全部の名前を言ってみろあるいは出してみろというのは、実は現段階ではできないというのが実情でございます。
  141. 松原脩雄

    松原分科員 この間大蔵省から御説明聞いたら、その七百五十の法人のいわば台帳のようなものは大蔵省にあるというふうに聞いたのですよ。そうしたら、その台帳を取りまとめてリストにするということは技術的にはできるんじゃないかというのが一つなんですね。  それからもう一つ、この民法法人は、例えば自然科学とか文化、経済協力、犯罪予防、その他非常に多岐にわたって、そういう有益な公益法人を網羅しているわけでしょう。先ほどちょっと出たけれども日本の企業がそれに献金しようと思っても、一体どういう団体が指定されているのかわからないじゃないかということも実はあるわけ。わからないから、日本の企業の献金ぶりがはかばかしくないんじゃないかという見方もできるわけですよ。そういう意味からいうと、まずそのリストを整備をして早く出して、見せるということは技術的にも可能だし、必要なのではないか。  それからもう一つ、先ほどから聞いていると、どうも指定するときにばらつきがある。ある法人は厳しくやるけれども他の法人は簡単にやるというばらつきがどうもありそうだ。そうすると、そのリストがちゃんと出てきたら、何であんな法人がこんな優遇されているんだということも出てきかねないわけですよ。だから、そういう面も厳しく国民の目でチェックしなければいけないと私は思うのです。そういう面からいっても私はこのリストは出してしかるべきだ、出さない方がおかしいと思うのですが、この点はどうでしょうか、もう一度。
  142. 小川是

    ○小川政府委員 今お話のありました七百五十の民法法人というのは、例えば自然科学の関係で二百六十八、学校教育の関係で百七十二、更生保護等の関係で百四十八、こういったところが大どころでございます。今のこの都道府県段階で認可を行っているものまで私どもがこういった数字を整理するために、実はごく最近やったわけでございますけれども、とらえたものでございます。問題は、二年ごとにこうした法人については認可を更新するといったような作業も行っております。そういたしますと、全都道府県において個別の法人についてどういう作業をやっているかというのは、実は私どもこれまでのところは少なくとも把握をいたしておりませんものですから、現状でどれくらいだ、どんな法人になっているか、全部を出してみろと言われても、実は現段階ではそういう作業ができないという実情を正直なところ御理解を賜りたいと思います。
  143. 松原脩雄

    松原分科員 そうすると、そのリストの公開の方向性すら出せないということの答弁のようですけれども、大蔵大臣、こんなんでいいのかどうか、ちょっと大臣の御意見も聞いておきたいと思います。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今ちょっと私もふなれな部分でありますので確認をしましたところ、将来の公開の方向を考えてみたいという事務方としての考え方を申しております。  ただ、これとは別に私一点、ちょっと委員の先ほどからの御議論を聞いておりまして、私自身の体験の中から恥を一つ申し上げたいと思うのであります。  実は昭和四十年代の終わりごろに、まさに障害を持つ方々の関係のあるグループから、特定公益増進法人をつくりたい、そして大々的な活動をしたいというお話がありました。元東大総長の大河内先生を初め私ども何人か、その趣旨に賛成をし、その役員を引き受けたことがございます。ところが、それがなかなかうまくいかないと思っておりますうちに、これがとんでもない詐欺であることがわかりまして、大河内先生や私どもはその後始末に非常に苦労をいたしました。そして、そのときまでに実は寄附を集めると称してある人間がだまし取ったお金の返済に、その後随分時間がかかったことがございます。それだけに私は、その基準というものが妙に固定したものであるより、やはりある程度弾力性を持ったものでそれぞれの所管省庁が内容を十分にチェックするということは必要ではなかろうか、個人的な体験の中から、先ほどからの御論議を聞いておりました。妙にルールをつくり、そのルールができて、それに当てはまっておれば自動的に認めるという形は、この種の問題の場合にはふさわしくないのではないか、自分の体験からそのような感じを持って拝聴しておったところであります。
  145. 松原脩雄

    松原分科員 それは結局フィランスロピーを推進する方向になるならば、数からいってももうアメリカの方がうんと大きい、非常に活発に活動しているというふうになります。その中の病理現象をどうチェックするかは、また別の角度から見た方が私はいいだろうと思うのですね。  きょう私はお聞きしまして、やはりその指定の基準、要件、そういったものがどうもすっきりしていない、明文化しているのかどうかということがはっきりしないことが一つと、リストもまだ公開されていない。今ちょっと前向きのお答えをいただきましたが、そういう不透明な点が多いわけですね。  もう一点だけ、ここにもう既にごらんになったと思いますけれども、経団連が、「官主導による財団法人等の設立の自粛を求める」、こういう文書を出しているのですね。その一つに「官庁が直接、所管の業界・関係企業に資金拠出や要員派遣を求めることも少なくない。」盛んに御自分で財団こさえて、企業のところへ行ってお金と人を出してくださいよというようなことをやっておるのが大分目に余る、だから自粛してほしいという人が出てきているのです。これは口の悪い人によれば、町のあんちゃんがやれば恐喝やけれども官僚がやるから官喝だというふうなことを言う人もいるようですよ。私はその辺のところ、どうもこの指定法人の中に、余り公開をし基準をはっきりさせないと、そういう疑いを経済団体から指摘されるような状態になっている、これじゃフィランスロピーをどんどん進めようという基本的な方向性に反するのではないかなというふうに思います。したがって、もう時間が来たようでございますから、ぜひともこの広がり始めましたフィランスロピーの活動をさらに促進するという立場に立って、不透明な部分とかあるいは不公正だと思われるようなことのないような形で行政も進めていっていただきたいし、私もその方向で努力をしたいと思いますので、今後ともその方向をとっていただきますように強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  146. 林義郎

    林主査 これにて松原脩雄君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  147. 北側一雄

    北側分科員 私からは、一つは路線価評価の問題、それから法人の土地所有が拡大しておりますが、それに関連いたしまして、法人の土地所有拡大の一つの原因として税制上法人の土地所有が有利になっているのではないか、その問題点と、そして最後に地価公示制度につきまして少しお聞きしたいと思っております。  まず最初に、路線価評価の問題でございますが、現在、地価税法案が審議されております。これまで路線価評価といいますのは、相続税の土地評価の基準として使われてまいりました。現在審議中の地価税の土地評価の基準とも今後はなってまいります。そこで、路線価評価のあり方について、この二つの違った税に適用されるということで幾つかの問題点があるのではないか、その辺をお聞きしたいと思っております。  最初に、路線価評価の評価割合の引き上げの問題でございますが、総合土地政策推進要綱の中でも評価割合を引き上げるというふうに記載されております。これは具体的に路線価の評価割合を公示価格の何割にされようとしておられるのか、お答えをお願いしたいと思います。
  148. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、昨年十月政府税制調査会の「土地税制のあり方についての基本答申」が出されたわけですけれども、そこには土地の有利性を縮減をして不要不急の土地需要を抑制するために、土地の相続税評価における現行の評価割合、七〇%でございますが、この七〇%をある程度引き上げていく必要があることが答申されたところでございます。また、委員御指摘のように、本年一月総合土地政策推進要綱におきましても、土地の相続税評価につきましては、地価公示価格を基準として評定する考え方に立って平成四年分の土地の評価から評価時点を一月一日に変更すること、現行の評価割合の引き上げを図ること、それからこれに伴う相続税の負担調整等について平成四年度税制改正において検討することが閣議決定されたところでございます。  国税庁といたしましては、この閣議決定の趣旨に沿って、評価割合をどの程度引き上げるかについて、今後、鋭意検討してまいりたいと考えております。
  149. 北側一雄

    北側分科員 今の御答弁は、今検討中であるという御答弁ですね。それでは、検討されて数値が決められて、それはいつからの適用になるのですか。
  150. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 これは具体的な適用は、平成四年分の相続税評価から適用になるわけでございまして、この引き上げ幅については、先ほども税制調査会の答申もありましたけれども、現在その具体的な数値を持ち合わせておるわけではございません。土地の有利性を縮減するという見地から、妥当な水準を検討していきたいということでございます。
  151. 北側一雄

    北側分科員 平成四年度から、来年の話でございます。  大臣、昨年十月の土地税制の基本答申の中で触れられておりますのも、土地の相続税評価について、相続税の視点からある程度引き上げる必要がある、私はこれは賛成でございます。私もそう思います。それはよろしいのですが、地価税にも基準となるのがこの路線価なわけですね。現在、地価税について審議されています。路線価の評価割合を上げるということは、実質的には税負担が重くなるわけですから、税率を上げるのと同じ意味でございます。現在、地価税が審議されている中で、この路線価評価の評価割合の引き上げについて具体的な数字を出さないといけないのじゃないのかなと私は考えておるのですが、大臣、いかがでありましょうか。
  152. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、具体的な技術上の問題になりますとよくわかりませんけれども、相続税評価につきまして、平成二年十月の税制調査会「土地税制のあり方についての基本答申」の指摘を踏まえながら、地価公示制度を基準として評定する考え方に立ち、平成四年分の土地の評価から評価時点を地価公示価格の評価時点である毎年一月一日時点に合わせる、同時にその評価割合を引き上げ、その適正化・均衡化を図ることにしました。そして、これに伴う相続税負担の調整などについては平成四年度の税制改正において検討することを先般の平成三年度税制改正要綱で閣議決定をいたしております。  したがって、御指摘の相続税評価の評価割合引き上げに伴う負担調整の問題については、私どもとしては、平成四年度の税制改正における税制改正作業の中で検討してまいりたい。ちょうど地価税とその意味では符節を合わせて実施したい、そのように考えております。
  153. 北側一雄

    北側分科員 私の質問の趣旨は、心配しておりますのは、私は評価割合は例えば八割なら八割に上げるということはよろしいのじゃないかと思っているのです。思っているのですけれども、今地価税法案が審議されている中で、そういうことをある程度具体的に言っておかないと、地価税法案が成立してから後で七割を八割にするんだと言ったときに果たして、今でもこの地価税法案についてやめておけというようなプレッシャーがいろいろなところから出ているわけですので、実質、税率を上げるのと同じ意味を持つ評価割合を上げることについて大変な抵抗が出てくるのじゃないのかという心配をしておるわけでございます。だから、税率を上げるのと同じ意味でございますから、今この国会の中で、例えば八割なら八割に引き上げるのですよということを明確におっしゃるべきじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  154. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、事務的な作業スケジュールその他を考えると、無責任にそういう日付を入れたお答えを申し上げることはできない、現在そう思います。しかし、できるだけ早く作業が進捗することにより、明らかにすべきものはできるだけ早い時期に国民に知っていただけるようにする、そうした御注意として受けとめさせていただき、事務方の作業を督励したいと思います。
  155. 北側一雄

    北側分科員 できれば今国会中に明らかにしていただきたいと要望する次第でございます。  それで、この評価割合を引き上げることは結構なんですが、相続税との関係一つ心配しておりますのは、居住用資産たる土地の相続、これは今でも重いのではないかというふうな、特に大都市部においては大変な負担になっておるという実態がございます。評価割合を一般的に引き上げるのは結構ですが、この居住用の土地の相続に対してはやはり負担軽減の配慮をなされないといけないのじゃないかなと私は今考えておるのですけれども、この点いかがでしょうか。
  156. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの点は先ほど大臣及び直税部長から御答弁申し上げましたとおり、評価割合の引き上げあるいは評価時点の変更に伴う実質的な相続税負担の増に対する調整につきましては、平成四年度の税制改正において検討することにいたしております。  なお、昨年十月に出ました税制調査会の答申は、まさにその点につきまして「実質的な相続税負担の増加を伴うことになるので、課税最低限の引上げや税率の区分の幅の拡大等による負担軽減を行う必要がある。」というふうになっております。御指摘の問題は、こうした全体的な相続税負担のあり方の中での検討課題であろうかと存じます。
  157. 北側一雄

    北側分科員 全体的な相続税負担の軽減の問題よりも、私が申しているのは、特に大都市部の居住用の土地の相続の場合に、さらに負担軽減を図る必要があるのではないか。現行でも、確かに二百平米まで五〇%減額という制度はあるのですが、評価割合を引き上げる以上はこの部分をさらに、例えば五〇%減額を六〇、七〇にするとか二百平米を三百平米にするとか、そうした配慮があっていいのではないかという要望でございます。  時間がございませんので、次の質問に入らせていただきます。  今回、地価税が問題になっておるのですけれども、地価税に路線価が適用されるにつけまして、一つ問題点がありますのは、これまで相続税路線価というのは当然相続税を対象にして土地の評価をつけておりましたので、専ら企業が所有していると思えるような地域には相続が発生しませんから、路線価がついていない地域がたくさんあるのです。例えば、臨海工業地帯それから工場団地、こういうところは相続税路線価はついておりません、ついてないところが多いのです。  例えば、私ちょっと調べたのですが、名前は申しませんけれども、ある大きな製鉄会社なのですが、全国に十一カ所、大きな本社も含めまして十一カ所の土地を持っておるのです。全体で面積が七千四百平米余りございます。大変な土地を所有しておられます。ここが、全国に十一カ所あるのですが、路線価がついておりますのはこの十一カ所のうちたった四カ所、東京の二カ所とそれから釜石の一カ所と大分に一カ所、この四カ所しか路線価がついておらなくて、例えば大阪の堺でもいまだに倍率方式になっているのです。私は、やはりこういう地域にはこれから路線価をつけていかないといけないのじゃないかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  158. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 委員御指摘のように、相続税における宅地の評価は、原則として、例えば市街地にあるような路線ごとの地価に開差があるような宅地、これは路線価方式による、その他の地域にある宅地は倍率方式によって行うこととしておりますので、臨海工業地帯であるとか工業団地等についてもこのいずれかの方式によって評価することと相なるわけでございます。しかしながら、お話しのように、これらの土地については通常相続税あるいは贈与税の課税の対象とはなりません。そういうものであることから、評価の効率性等を考慮して、本来路線価を付すことが適切な場合であっても路線価を定めていない場合がございます。  そこで、先生お話のこういう路線価のついている土地を拡大していくべきではないか、こういう御指摘でございますけれども、路線価の付されていない宅地につきましては倍率方式によって評価することとなるわけですけれども、この倍率方式は、評価する宅地の固定資産税評価額に、この地価の近似する地域ごとに定めた一定の倍率を乗じて計算した金額によって評価する方法でありまして、比較的地価の開差が少ない地域におきましてはそれなりに合理性を有しているものでございます。しかしながら、市街地にあるような路線ごとの地価に開差がある宅地につきましては、一層きめ細かい評価を行うため、倍率方式が適用されているものについてできる限り路線価方式に変更していく必要があると考えております。
  159. 北側一雄

    北側分科員 ちょっと具体的にお聞きしますが、現在市街化区域の宅地面積の何割程度に路線価が付せられているのか、これをどの程度まで拡大しようとするのか、また、現在路線価評価の標準地が何地点あるのか、これをどの程度までふやそうとされておられるのか、この辺の御答弁もいただきたいと思うのです。  私は、倍率方式だから不合理だというので単純に言っているわけじゃなくて、やはり倍率方式の問題点としては一つはそういう臨海工業地帯のようなばかでかいところにきめ細やかな評価をするためには、やはり路線価評価というのを付していった方がいいのじゃないかというのが一つと、それと、固定資産税評価というのは公開されません。非公開でございます。ところが路線価評価はちゃんと公開されます。公開と非公開という大きな違いがあるわけですね。だから、そういう意味からも、路線価評価の拡大というのはしないといけないのじゃないかというふうに考える次第でございます。いかがでありましょうか。
  160. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 御質問のポイント、三点ございますが、まず市街化区域の宅地で路線価がついていない地域はどの程度あるのか、まずこういう御質問でございます。この点につきましては、私どもでは、市街化区域の宅地と路線価地域との関係について掌握しておりませんので正確にはお答えができませんけれども、現在路線価方式によって評価している宅地の面積は約四十万ヘクタールございます。この数字は宅地評価総面積の約三割程度、そういうことになっておる次第でございます。  それから第二点の、現行の路線価地域をそれではどのくらい拡大するつもりか、こういう御質問でございますが、地価税の導入に当たりましては、現行の路線価地域を約一・五倍程度に拡大していく必要があると考えております。そのための具体的な方法については、今後それぞれの地域の実態に応じて検討してまいりたいと考えております。  それから最後のポイントですが、標準地の地点数のお話ですが、現在、相続税の土地の評価につきましては、地価事情の異なる地域ごとに約十七万地点の標準地を設けまして、その地点の価格を評定して、それをもととして路線価等を決定しておる、そういうことになっております。地価税の導入に当たりましては、評価制度の一層の向上を図るために、現行の標準地数を約二倍程度に増加してまいりたいと考えております。
  161. 北側一雄

    北側分科員 現在、宅地面積の三割程度を一・五倍にするというお話、それから十七万地点を二倍程度に、ぜひ進めていただきたいというふうに思います。  この相続税の路線価評価なんですけれども、この評価の方法が結構難しいのですね。例えば相続税の場合でしたら、二、三十年に一回あるだけですから難しくても税理士さんにお任せすればいいのですけれども、例えばどういうことかといいますと、三角地とか、それから路線価評価が敷地に二つ以上ついているような場合とか、単純に路線価評価掛ける面積というわけじゃないのですね。いろいろとややこしい計算方法がございまして、これをそのまま、毎年毎年課税する地価税にこの方法でやらないといけないのか。私は、この地価税についてはこの土地の評価の方法を少し簡易にする方法を大蔵省さんで検討してもらった方がいいのじゃないかと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  162. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 委員の御指摘は、この地価税の評価方法、これを簡易化をすべきではないか、こういうことかと存じます。  土地の相続税評価のうち倍率方式による評価は、これは固定資産税評価額に所定の倍率を乗じて計算すれば足りますけれども、路線価方式による評価の方は路線価をもととして、奥行き価格逓減等の価格調整が必要と相なるわけでございます。これはこの路線価というものがその路線に面する宅地の一平方メートル当たりの標準価格を表示しているものであるために、実際に評価しようとする宅地の位置とかあるいは形状等に応じた評価格を算出するためにぜひ必要なことでありまして、また一般的にも合理的なものと考えております。  この路線価方式は相続税において定着しているところでございますので、地価税においても対応できるものと考えておりますけれども、委員御指摘の趣旨を踏まえまして、必要に応じ、簡便化を図ることについて、さらに検討を重ねることとしまして、また、土地等の評価に関する相談、指導等の体制についても、所要の整備を図って円滑に評価ができるよう対処してまいりたいと考えております。
  163. 北側一雄

    北側分科員 いずれにしましても、今回、これまで相続税にしか使われていなかった路線価評価が地価税にも適用になるわけでございます。そういうところから幾つかの今申し上げました問題点が出てまいりますので、大蔵省の方でよく御検討のほどをお願いする次第でございます。  次の質問に移りますが、法人の土地所有が特に大都市部におきまして非常に増加をしております。例えば東京でこの土地所有増加の状況がどうなっておるのか、国土庁さん御答弁できますかね。
  164. 鈴木省三

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  昨年の土地白書のデータでございますけれども、東京都におきましては、昭和五十七年の時点で法人の全体の買い主に占める割合が二五・八%でございましたが、昭和六十三年の時点では三五・四%というような比率になってございます。
  165. 北側一雄

    北側分科員 というふうに法人の土地所有が増加をしております。この法人の土地所有の増加と今回の地価高騰とがやはり私は関連性があるのではないかと考えております。税制上、法人が土地を所有している方が純然たる個人が土地を所有しているよりも有利な制度があるのではないか。これから具体的にお聞きしますが、例えば損益算入の問題、法人の含み益課税の問題、これはもう大蔵省さんプロパーの問題でございますけれども、こうした問題があるのではないか。ところが、今回の税制改正ではそこのところがまだまだ不十分ではないかというふうに考えております。この点大臣、もし御答弁ができましたらいかがでありましょうか。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今国土庁からもちょっとお話がありましたけれども、私は、すべての原因を法人の土地所有に帰すというのは、これはちょっと問題があると思います。ただ、今回の土地税制の見直しの中で、土地の資産としての有利性の縮減を図る必要性があることなどを考え、法人の短期所有土地等の土地譲渡益重課制度などの適用を受けない土地譲渡益についても新たに一〇%の追加課税を行うこととするほか、事業用資産の買いかえの特例の大幅な縮減などを行うことにしておるわけでありまして、これは言いかえれば、委員が御指摘になりましたような問題点があるいは存在したかとおっしゃられてもやむを得ない点かと思います。
  167. 北側一雄

    北側分科員 きょうは損益算入制度についてお聞きいたしますが、かつて大蔵省さんの内部の中で、特別土地保有税につきましてこれを損金としては認めないというふうな御検討がなされたのではないかというふうに私は聞いておるのですけれども、少なくとも、市町村税である特別土地保有税、これは土地の有効利用を促進するというそのための政策税制でございます。こうした政策税制については、特別土地保有税を払った場合にもその税金を損金としては認めないというふうな制度が必要なのではないかなと考えますが、いかがでありましょうか。
  168. 小川是

    ○小川政府委員 ただいまの、特別土地保有税を法人税の課税上損金不算入にするという考え方についてどうかということでございます。  確かに、損金不算入にいたしますと、その分いわば課税済み所得から払うわけでございますから、負担がそれだけ大きくなるのは事実でございます。しかし、現在の法人税の考え方は、いわば罰料金に相当するもの、罰金、科料といったようなものを除きまして、それと法人税自身でございますけれども、法人税は所得に対して課せられる税でございますからこれはもとより損金に算入しない、こういったものを除きましてすべて税の関係は損金に算入するという考え方でございます。それは結局のところ、法人の負担する税というのは、仮に特別土地保有税であれあるいは今度の地価税であれ、事業活動を行っていく上での総合的な経費の一部であるというところから損金算入を認めているわけでございまして、法人所得に対する課税の考え方としては妥当なものではないかと考えております。
  169. 北側一雄

    北側分科員 例えば特別土地保有税であれば、これは広い遊休地とか低・未利用地、そういうものに対する課税なんですね。土地の有効利用を促進していこうという税制なわけです。こういう政策税制については固定資産税とはちょっと違った考え方があっていいのじゃないかなと私は思うわけなんです。土地の有効利用促進を図る、また今回の地価税でも土地の資産としての有利性を縮減するというのが目的、政策税制でございます。そうした視点からはこれを損益としては算入させないというふうな考え方もあり得るのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
  170. 小川是

    ○小川政府委員 純粋の政策的な観点からそのような考え方をとるということは、もとより議論から退けられるものではないと存じます。ただし、先ほど申し上げたような税、法人所得税の考え方基本からいたしますとさていかがなものか、むしろ税率水準で考えるということも一つの方法であろうかというふうに考えるわけでございます。
  171. 北側一雄

    北側分科員 ただ、税率水準といいましても、今回の地価税も〇・三%で、これが実質実効税率はこの損益算入によって〇・一五ぐらいしかないとも言われております。だから私は、特別土地保有税、地価税等の政策税制については損益に算入しないというふうな考え方をぜひ検討をしていただきたいと要望する次第でございます。  最後に、地価公示制度について少しお聞きいたしますが、総合土地政策推進要綱の中でも、地価の引き下げの目標として、土地の利用価値に相応した適正な水準まで地価を引き下げる、利用価値に相応したというふうに言われておるのですね。それでまた、同じ要綱の中で地価公示制度について、地価変動の著しい地域については土地の収益力を示す収益価格についても適切な公表のあり方について検討を進めるというふうにうたわれております。私は、具体的に、この地価公示制度の中で、取引価格の指標となる価格だけではなくて収益価格もできるだけあわせて公示すべきである、取引価格と収益価格との差が大きければそこは問題がある土地であるということがわかるわけですから、できるだけ収益価格をあわせて公示すべきではないかと考えます。この点どのように今御検討をされておられるのか、どのように取り組んでいかれるのか、御答弁をお願いいたします。
  172. 生田長人

    ○生田説明員 収益価格の公表につきましては、昨年十月二十九日に行われました土地政策審議会の答申におきまして、地価が急激に上昇するような一定の地域につきましては平均的な収益価格を示すことによりまして、市場において土地の利用価値を越えた値づけがなされている場合にはその実態を明らかにすべきだということを指摘されたところでございます。さらに、本年の一月二十五日に閣議決定されました総合土地政策推進要綱におきましても、土地の収益力を示す収益価格につきましては適切な公表のあり方について検討を進めるとされたところであります。これは、収益価格の水準との乖離が一時的に大きくなる場合に市場に対しまして警鐘を鳴らすことを求めたものと考えております。  国土庁といたしましては、現在これらを受けまして、地価公示制度とは別な形になると思いますけれども、地価上昇の著しい地域など一定の地域におきましてゾーン単位で平均的な収益価格水準ともいうべきものを示す方向で検討を行っているところでございます。
  173. 北側一雄

    北側分科員 以上でございます。ありがとうございました。
  174. 林義郎

    林主査 これにて北側一雄君の質疑は終了いたしました。  次に、志賀一夫君。
  175. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 予算分科会におきまして、昨年は大蔵大臣に初めて、またきょうは参考人の方もたばこ会社からおいでをいただきまして、御苦労をかけますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  福島県のたばこ産地、今度はいよいよ統廃合が進みまして、福島県のたばこ連合会も一つになりまして、私の田村郡に、連合会というより、福島県たばこ耕作組合という名称のもとに一カ所のみ設けられるということになりましたので、実質的に福島県における中心地でもあります。それだけに私はたばこの今後の行方につきましては極めて関心を持たざるを得ない立場でもありますので、きょうは主として生産対策を中心にお伺いをしたいと思う次第であります。  御承知のように、たばこ事業が民営化されましてから五年以上経過しているわけでありますが、その間におきまして、たばこをめぐる状況変化はまことに著しいものがあります。したがって私は、このたばこ問題について、まず生産対策を中心にお尋ねをするわけでありますが、民営化以降におけるたばこ消費をめぐる一般的な状況なり、あるいはまた外国たばこへの市場開放後における我が国での消費の動向並びにその影響等について、まずお伺いをいたしたいと思います。     〔主査退席、串原主査代理着席〕
  176. 峯嶋利之

    峯嶋政府委員 お答えいたします。  我が国におけるたばこの総販売数量でございますが、成人人口の伸び悩みとか喫煙と健康に関する国民の関心の高まり等を背景としまして、わずかずつでありますが減少傾向にあった、しかし最近では、新製品の市場投入によりまして減少傾向には歯どめがかかり、やや持ち直しの兆しを見せているのではないかと見られます。ちなみに元年度の総販売数量は三千百三十八億本ということに相なっております。  また、外国たばこのシェアにつきましては、専売時代には一、二%台であったものが、昭和六十年の四月の輸入自由化、六十二年四月の紙巻きたばこの関税無税化等によりまして、平成二年度には、二月末までの累計ではございますが、一五・九%にまで上昇してまいっております。この結果、国産たばこの売上高はやはり伸び悩み、それからたばこ耕作農家の将来不安といったようなこと等から、我が国のたばこ産業を取り巻く状況は厳しいものがあるのではないか、このように考えられます。  しかし、さはさりながら、日本たばこ産業株式会社におきましては、営業活動の強化、それから経営の合理化等に努めるとともに、葉たばこ耕作団体との間ではさきに安定面積構想を合意し、これを逐次実施に移すなどいたしておりまして、この結果、我が国たばこ産業の健全な発展が図られつつあるのではないか、このように私ども認識いたしております。
  177. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 次に、昭和六十年から平成二年度までにおきまして、葉たばこ生産農家数において約四七%の減となって四万二千百七十戸、面積におきましても三八%減の三万二百六十四ヘクタールと、いずれも大幅な減少となりまして、後継者不足、そして耕作者の高齢化によって、十年後は著しい減少を招くのではないかと思われるのであります。このような状況下で、昨年初めて安定面積構想なるものを発表されたのでありますが、この構想を発表されるに至った経過並びに今後の安定面積構想を実現していくための方策等について、お伺いをいたしたいと思います。
  178. 峯嶋利之

    峯嶋政府委員 お答えいたします。  近年、我が国の葉たばこ生産は、御承知のとおり、過剰在庫とか国際価格からの乖離といった問題を抱える中で、累次にわたり生産調整を余儀なくされてまいりましたために、耕作農家の不安を解消し、経営の安定した担い手である農家を育成していくことによる生産性の向上を図るとの観点から、日本たばこ産業株式会社と耕作団体との間で、ただいま御指摘がありました安定面積構想というものについて協議が行われ、平成元年十二月に合意を見たところであります。  御承知のこととは思いますが、本構想は、二万五千ヘクタールから三万六百ヘクタールの安定面積帯を設けること、強制的な減反は今後行わないこと、それから産地実態と耕作者ニーズに対応した助成の強化を行うこと等を内容としており、現在、可能な施策から逐次実施するとともに、施策の細目につき具体化に向けた協議が、これは会社と耕作団体との間で行われているところであります。私どもとしましても、これにより、国内葉たばこ生産の将来的な安定化や、さらには生産性の向上が逐次図られていくもの、このように考えております。
  179. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 ただいまもお話がございましたが、安定帯構想というもの、非常に私はそれなりに結構なことだと思いますが、それを実現するために、今いろいろな施策は言いましたけれども、やはりそれを裏づけるところの会社の、消費動向あるいは外国たばこによる影響等、そういうものを勘案しながらの、具体的なこれからどうするんだという構想がもう一応具体化しない限り、この安定構想が実際耕作農民の期待するものとはならないのではなかろうかと思うのでありますが、その辺お伺いをしたいと思います。
  180. 折居靖彦

    ○折居参考人 原料本部の折居でございます。  今委員御指摘の点につきまして、まさに私どももそのとおりだと思っています。安定面積帯というのは、あくまで枠をつくっただけで、そこにやはり魂を入れていくということがこれからの私どもにとっての大変大きな作業だと思っています。農家がたばこ作を継続する、あるいは農業を継続する場合の非常に大きなポイントは、やはり所得の安定ということが一番大きなポイントになると思います。葉たばこの場合でまいりますと、経営面積掛ける収量掛ける一キロ当たりの単価、この掛け算によって所得が構成されますので、その三つ要素それぞれについて、やはりそれぞれの産地の実態に即して、弊社と耕作組合あるいは農家の三者が知恵を絞っていくということがこれからの大きな課題であると考えております。
  181. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 この安定構想の一環としまして、強制減反は行わないということを明確にした理由は何なのかをお聞きをしたいと思うのであります。  従来、強制減反は四、五回程度やったというふうにお聞きをしておるわけでありますが、最近の例を申し上げますと、昭和五十七年度かと思いますが、と同時にまた、六十三年度において実施されました状況を申し上げますと、反当たり十五万円あるいはまた十八万円というふうに、それぞれの年度で交付をいたしております。その結果として、組合員にして約三〇%減の一方八千名が減少し、面積におきましては約三〇%の減少となって、約一万ヘクタールの大幅な減反につながっているわけであります。こういうふうな大幅な減反になりますと、会社の方ではその事実に驚いて、たばこ組合の役員等を叱咜激励をして、今度はもうやめないでほしい、こういうふうな大変な働きかけを実はしているわけであります。生のまま申し上げて失礼でありますが、そういう実態であります。そして、その結果として、今度は、じゃ今の、現に耕作している人に激励金をやろうということで、わずかなから一万円をくれているというようなことをやっているわけであります。  こういう相矛盾したやり方をやっておりますと、たばこの耕作者が、全く一体会社は何を考えているのかということで、将来への希望を失ってしまう、展望を失うということで、だんだん耕作者が減る、意欲が減る、こういうことに相なるわけであります。むしろたばこの耕作者の皆さんが言っていることは、十五万、十八万とくれるなら、これから一生懸命生産性の高いたばこ生産者になろうという皆さんに、もっと価格の面で、あるいは別な効果的な補助事業で援助をし、激励をするという仕方こそ本来のやり方ではないか、そういうふうな声が非常に強いのであります。この点は、今後強制減反をやらないという中で、過去のことを十分反省しながらどのように対処されるのかを、この際お聞きをしておきたいというふうに思います。
  182. 折居靖彦

    ○折居参考人 私ども、昭和五十七年の強制減反、生産調整を皮切りに、昭和六十年、六十二年、平成元年と、四回にわたる生産調整を余儀なくされてまいりました。これは、先ほど大蔵省の審議官からお話がございましたように、需要が停滞し、しかも外国たばこにシェァをとられていく中で、膨大な過剰在庫を抱えておったということでございます。五十年代から六十年代の初めにかけて、その過剰在庫が、標準在庫の二十四カ月を大幅に上回って四十カ月近くに相なった、これが経営を大変圧迫して、その結果農家の皆様に、あるいは産地の皆様に大変大きな犠牲を強いてきたということは率直に認めざるを得ないと思います。しかし、平成元年の減反をもって、将来の売れ行き数量との関係において、過剰在庫についての解消の願望が開けてきたと私どもは思っております。  そういう意味で、私どもは、二度と強制減反はしないということを耕作組合との間で鮮明に宣言し、お誓いをいたしました。それと同時に、これからは葉たばこを将来とも担っていただく担い手農家のためのバックアップ施策というものを用意してまいる、委員御指摘のようなことも、これからも継続してやってまいりたいというふうに考えております。
  183. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 今後はそういうことはやらないということでありますので、十分留意をして努力をしていただきたいと思うわけであります。  しかし、これからのたばこ産地の基盤強化をするためには、今後は新規を含め増反を行うという一定の方針をお示しになった以上、生産性の高い、安定供給のできる農家を期待されるならば、葉たばこで食える農家の育成を中心に据えた諸施策をやっていくということが当然ではなかろうかというふうに思うのでありますが、この辺についてはいかなる所見をお持ちか、お伺いをいたしたいと思います。
  184. 折居靖彦

    ○折居参考人 今私ども、安定面積構想のもとに、これからは、将来葉たばこを担っていただく農家には、新規の参入も大いに結構、あるいはまた増反も大いに結構という方向を打ち出して、現に新規がぼちぼちと、新しく葉たばこを始める農家が出てまいりました。恐らくことしも、福島県では十人くらい新しく葉たばこ農業に参入してこられる方が出てくると思います。  ところで、そういう方々に対する私どものバックアップ施策でございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり何といっても所得の安定ということが一番大きな、大事な問題でありまして、農業というものはどうしても天候に左右されがちでありますけれども、昨年は大変好天にも恵まれて、農家の所得というのは相当大幅にアップいたしました。これに満足しないで、これからも収量の安定、それから品質の向上ということをバックアップいたしまして、農家の所得の最大限を確保していくという方向で私ども努力してまいりたいと思います。これこそが生産の継続につながる大きなファクターだと思っております。
  185. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 おっしゃられたこと、十分期待しているところでありまして、ぜひそのような葉たばこ生産農家を育成されるように、鋭意御努力を願いたいと思うわけであります。  それにしても、たばこ耕作農家の皆さんが待ち望んでおりますることは、やはり再生産を保障する値段にしてほしい、こういうことでありますので、たばこで食える農家、いわばたばこ専業農家、これを中心に、主体に据えた育成を今後考えるべきではないのか、そういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  186. 折居靖彦

    ○折居参考人 私どもとしては、たばこ専業で生活していく農家を中心にということは、いささか行き過ぎてはいないかと考えております。もちろんたばこ専業農家も、私ども大事に育成していかなければいけませんけれども、やはりもう一方、日本農業の中にあります葉たばこ農業でございますから、複合経営の中でたばこをその経営作物の一作物として選択してくれる農家の育成も重要であると考えております。  現に、たばこ作農家の分析をしてまいりますと、単一経営、たばこだけで所得を上げていく農家というのは五割を切っております。逆に、たばこ作以外の一般農家は七割の人が単一の作物で経営を行っておりますけれども、たばこ作農家は複合経営が中心と言っても過言ではないと思います。そういう意味で、専業農家だけを目指すということではなくて、専業農家も、と同時に複合経営で所得を向上していくという施策も大事ではないかと考えております。
  187. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 私は、専業農家ということを据えながらやらないと、現実にはあなたの今お話しになったとおりでありますが、しかしたばこづくりというのは専業的な考え方でやらないと成功はしない。また同時に、最近たばこ収納所の統廃合が進んでおりまして、年に一回だけの収納、そして集荷場所も福島県内でも四カ所か五カ所というふうに、大変限られた状態になっている。そうすると、遅い人はもう二月二十六日までに収納する、そして今度は三月上旬になればもう播種をする、こういう状況下にあるわけですから、年がら年じゅうたばこ耕作に従事せざるを得ないという実態も現実にあるわけでありますから、そういうことになりますと、やはりたばこを主体にして食える農家づくりをどうするのかということを中心に据えた、力点を置いた指導をやっていかないと、たばこに魅力を持って後継者がどんどん出てくるという状態にはならない、そういうふうに考えますので、その辺は再考憲をいま少し検討すべきであろうというふうに考えますが、どうでしょうか。
  188. 折居靖彦

    ○折居参考人 また繰り返すようになりますけれども、確かに施策の中心はたばこ専業農家の育成、バックアップということには変わりはありませんけれども、ただ、委員の御地元の福島県をとっても、御主人は外に働きに出ていっている、しかし奥様がたばこは飯よりも好きだというようなことで二十アール、三十アールつくっておられます、そういう方はまた立派な品質のたばこをつくっていただけます。そういう意味で私どもは、そういう人を犠牲にするんではなくて、そういう人もともども葉たばこ生産佐加わっていただく、両様兼ね備えてバックアップ施策をとっていくということが重要ではないかと考えております。
  189. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 そういう考え方もわからないわけではありませんが、しかし今後の後継者をつくってやっていくという点ではいささか、その辺を私は切れとか否定するという考え方ではありませんけれども、それではやはり本物のたばこ耕作者をつくるということにはならないと思うのであります。  時間がなくなりますから先に進めますが、私は一つの提案をしたいというふうに思っているわけであります。  それは、今たばこをつくる皆さんは、やはり毎年起きるひょう害、霜害、その他の病害、こういうことによってかなりな収入の落ち込みになる。そうするとたばこづくりについて意欲をなくしてしまう。こういう実態等考えますと、やはりそういうときに何らかの災害補償的な施策かないものか。今現に会社でやっておりますこの制度では、これは失礼ですが、ないよりはましだという程度のものではないかと耕作者は受けとめているようでありますので、これをやめて別の制度をつくったらどうだろうか。そして災害補償的な意味合いと、もう一つは再生産に見合う価格を保障する、こういう二重の意味を持たせた制度をつくったらどうだろうかということを思います。  実は私が県会議員のときに、福島県は御承知のように中心県でありますから、たばこの耕作者は反当五千円、そして耕作組合、地方自治体、関係団体それから県、こういうところが拠出をして葉たばこ振興基金制度をつくったらどうだろうかという提案をいたしまして、県も農政部が非常に熱心にやろうといたしましたけれども、残念ながら当事者が腰を上げませんでしたので実らずに、残念だったと思うのであります。しかし、こういったことを含めて耕作者も、どうだ皆さん、一万幾らか出してくれるかと言ったら、喜んで出しますよという答えが返ってきていますので、耕作者も出す、会社も出す、国も援助をしよう、あるいは関係団体も援助をしようという形で、そういうもっと期待されるような何らかの補償制度というようなものをつくってみてはどうかと私は考えますが、正直言って私もまだ十分煮詰めてないものでありますので、そういった視点からこれからそういうものを検討していただぎたいな、私も一生懸命皆さんの意見を聞いてしますので、ぜひそういうことをお願いしたいなと思う次第であります。お聞きをしたいと思います。
  190. 折居靖彦

    ○折居参考人 災害援助金制度の問題でありますけれども、これはほかの農作物に例を見ない、農家の再生産を図るための極めて優遇した措置を講じていると私どもは思っております。つまり、農家は一円の掛金も払わないで私どもの災害援助金がもらえるということでございます。一筆ごとに計算いたしますけれども、全損、つまり全滅した畑では平年の五割もらえる、それから最高は八割までもらえるという制度で、私どもとしてはこの制度については、たばこ耕作組合と法律に基づきまして約定を結んでおります。現在耕作組合からこれを改善してくれという要望も特に聞いておりません。私どもとしては、ある程度満足をいただいているんではないかというように考えております。現に昭和六十三年の福島県の大冷害のときには、十億円余りの災害援助金が私どもの会社から農家の方々に支払われました。十億円以上の金額を支払いました。そういうことで、現在私どもとしては、ほかの作物に例を見ないほどこの災害援助金制度は整備されているというふうに理解しております。
  191. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 今そういう御意見がありましたが、耕作者の立場では、そういう極端な場合に大変効果があったことは認めておりますけれども、普通の場合では今の会社のその制度を必ずしも喜んでいないという実態を、私は多くの皆さんから聞いているわけでありますので、私が提案したことも前向きに御検討いただきたいということを希望申し上げておきます。  もう時間がなくなりましたが、最後の点は大臣にひとつお願いしたいと思います。  たばこ産業は、国の専売事業として、明治以来国家財政を支えてきた役割は大変なものであったと思います。さらに、今日なおたばこ税は国、地方を合わせて一兆七千億円台を前後しておりますけれども、まさに大変な安定財源であります。そういう点では、たばこの諸施策につきましても大蔵省といたしまして特段のお力添えをしていただきまして、地場産業であるたばこ産業というものを今後とも維持発展させていただきますように、特段の御努力を求めたい、そんなふうに思いまして御質問した次第であります。どうぞよろしくお願いをいたします。
  192. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私自身が大変なたばこ吸いでありますので、そういう意味では、恐らくたばこというものに理解のある一人ではないかと思っております。  私は、この安定面積構想というものの合意がなされましたことを非常に喜んでおります。そして、これがうまく機能し、可能なものから今進められているわけでありますが、本当にたばこ産業というものと耕作者の方々の間がお互いに支え合う仕組みとしてうまく機能することを心から願っております。  私はたばこについて二つ問題点があると思います。先ほど来たばこ産業と委員の間の多少御意見の違いのような部分がありました一つの問題は、中山間地帯の非常に厳しい状況の中でたばこにかわる換金作物を持たない農家というものの存在が現にあり、その限りにおいて、まさにたばこ専業農家というものが現存するという現実をどう見るかということであると思います。私の郷里にもたばこ耕作地帯はありますが、他の換金作物を持たない中でたばこに将来をかけていかなければならない地域というのは現にあるわけであります。同時に、たばこ産業というものが国民生活の中でさまざまな御批判を受けておりますが、一つの存在として現にあるわけでありまして、これが企業として安定した経営をしていく、しかも外国との競争を続けていくという中で、そうした部分にどこまで深入りをしていくべきなのか、企業としての立場も出てきておりまして、いわば農政との接点部分に、我々はたばこ産業のみにそのすべての責任を、たばこ産業株式会社にすべての責任をあずけるのではなくて、違った視点からの検討も将来ともに必要になる、その中で耕作農家というものの安定を図ってまいりたい、そのように考えております。
  193. 志賀一夫

    志賀(一)分科員 ありがとうございました。
  194. 串原義直

    串原主査代理 これにて志賀一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君     〔串原主査代理退席、主査着席〕
  195. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 私は、自動車賠償責任保険制度の問題についてきょうはいろいろとお伺いしたいと思います。  この自賠責の問題は、私が昭和五十八年に初当選以来、自動車のユーザーの人たちのためにどうしたらいいんだろうかというような意味でこの問題についてはずっと私ども取り組んできたわけであります。そしてこの自賠責の問題は、いろいろな問題があった中で、特に医療費の適正化の問題を初めとして、大蔵省を初めとして関係者の皆さん方が大変な努力をされてきたというふうに私は思っておりますし、その点については感謝もしながら、そしてまたこれからさらに鋭意積極的に取り組んでいただきたい、まずこういうふうに思います。  そこでお伺いをいたしますけれども、先般自賠責審議会の答申で、本年の四月から平均八%保険料率を引き下げることになりました。その原資は、累積黒字の約五千億円、それから累積運用益の約九千五百億円、合計一兆四千五百億円、ざっと約一兆五千億円ですね、こういうふうになっているわけです。そして、その滞留預金の一兆五千億円の還元方法は、累積黒字は七年、それから累積運用益十年というふうになっております。まず、この還元に当たっての考え方を伺いたいわけでありますが、なぜ七年と十年というふうになっているわけでありますか。
  196. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 自賠責のお話につきましては、先生大変権威でいらっしゃいますので必要ないかと思いますが、今回の料率の引き下げ、あわせて限度額の引き上げということを決めたわけでございます。その背景を若干御説明しながら、今の御質問にお答えをさせていただきたいと思います。  御案内のように、自賠責は昭和三十年に発足した、交通事故の被害者救済を目的とした強制保険、国が六割の再保険を引き受けるというものでございます。対人賠償を目的としたノーロス・ノープロフィットということでございますが、三十年以降運用の実態は、御案内のように保険の支払いの限度額を九回引き上げてございます。現在二千五百万。それから料率は七回引き上げを行ってきております。直近では、昭和六十年に収支が非常に悪化したものでございますので、料率を約二九%引き上げさせていただきました。限度額は二千万から現行の二千五百万に引き上げたわけでございます。  その後の状況を見ますと、御案内のように損害率が最近では九二、三%というぐあいに下がってきております。今先生お話にございましたように、交通事故率が落ちついてきているというようなこと、あるいは医療費の支払い等の適正化が効果が出てきたのではなかろうか、あるいは交通安全についてのいろいろな、警察その他の御指導も効果があったのではなかろうか、そういうようなことから損害率が下がってきた。ノーロス・ノープロフィットの原則でございますから、一〇〇%の運用が一番適切でございます。加えて、この五、六年、毎年単年度収支が黒字でございますので、累積黒字が今お話ございましたように五千億ぐらいたまってきた。運用益と申しますのは、これは御案内のように保険料の収入と実際の支払いにかなりタイムラグがございますので、その間を、特会でございますと運用部に預託する、民間ではそれぞれ運用するというようなことで運用益が出てくる、黒字が累積するとその運用益も出てくる、運用益がたまってくるとその運用益も出てくるというようなことで、一兆弱の運用益がたまってきたわけでございます。  そこで今回、こういう状況において、まず限度額につきましては五、六年間の物価等の上昇を見て二千五百万から三千万に引き上げることが適切ではなかろうか。料率につきましては、ノーロス・ノープロフィットでございますから、まずは九二・六%ぐらいの損害率が一〇〇%の運用になるように料率の引き下げが可能な状況になってきた。加えて、今御質問にございましたような累積黒字、これも累積の黒字がたまれば本来消費者に還元すべきものである、累積赤字がたまると料率で吸収していただく必要があるというものでございます。運用益につきましてはちょっと考え方が違うわけでございまして、審議会の答申でも、将来の予期せざる収支悪化に備えて留保しておく必要がある、こういうものでございます。  そこで、累積黒字の方は六年ぐらいでたまったものでございます。いろいろ使い方、余り早く使ってしまいますと、すぐに今度は料率の引き上げをしなければいけないということになるわけでございます。そうしますと、この制度の安定的な運用という観点から見ますと、消費者サイドにも引き下げが出てきたらすぐに引き上げがあるというのも迷惑な、迷惑といいますか、余り適切でないということで、六年間ぐらいでたまりましたので、これを七年間で使うように仕組んで計算をしてみたわけでございます。運用益の方は、このところ大体毎年一千億ぐらい運用益が新規に発生いたします。したがって、今一兆弱ございますので、まあまあ十年間で使うということで計算をしてみました。私どもはいろいろなシミュレーションをやってみました。交通事故単価その他ほとんど予見でございますので、非常に大きく変動をいたします。したがって、どっちにぶれるにしても制度が適切、円滑に運用できるようにということでいろいろなシミュレーションをした結果、今申し上げましたように累積黒字は七年間で、運用益は十年間で使っていくということで、そう近い将来に引き上げをしなくてはいけないという状況はまずなさそうだ、かつ消費者の還元という点も果たせるかなということで考えたわけでございます。
  197. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 一兆五千億もあるときに、今部長が言われたような格好でそんなに長く置くことは全然ないのですね。そもそも、先ほど言われたように、ノープロフィット・ノーロスの原則でやるわけでありますから、こんなに置くことは全然ない、置いておく必要がないというわけであります。  そういう議論はかつて私がこの席でも、あれは六十一年だったでしょうか、そのときもそういう議論をして、大蔵省もあのときは五年間で償還する話をいろいろされておりますね。私は、今回のこの問題についても、ユーザーのことを考えれば五年間で償還したって全然問題はないと思うのですね。私は計算してみたら、五年間でやってみますと、約一九%程度引き下げることが可能だと思います。今総額一兆五千億の原資で五年で償還すると一九%くらい下がると思います。先ほど部長が言われたように、最近の状況等を考えれば、ますますそういう考え方でやるべきだと思いますが、いかがですか。
  198. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 計算といたしましては、数字は別としまして、おっしゃるような計算も出てくるかなというふうに思います。私どもも、先ほど申し上げましたように、いろいろなシミュレーションをしてみたわけでございます。  そこで、一つの過去の例といたしまして、昭和五十九年に、つまり六十年のときに、先ほど申し上げましたように二九%もの大変大幅な料率の引き上げをお願いしたわけでございます。このときの状況は、御案内のように、単年度の収支もかなり大幅な赤字である、累積の収支残も赤字であるということでございましたので、この二つ解決するためには非常に大幅な料率の引き上げが必要である。結果的には二九%でお願いしたわけでございます。そこで、先ほど申し上げました過去からたまっておりました累積の運用益が当時約六千六百億ございました。そこで、この累積の運用益は審議会でも議論をいただいて、これはいずれにしても自賠責の運用のためのお金でありますので、かつこの自賠責を取り巻く諸条件といいますのは非常に大きく変動するということで、予期せざる将来の収支の悪化に備えて留保しておくことが適切であろうという答申をちょうだいしておりました。そこで、ちょうど五十九年の当時がまさにそういう予期せざる大幅な収支の悪化というような状況でございました。したがいまして、この運用益を当時使わなければ大変大幅な料率の引き上げをお願いせざるを得ないわけでございましたけれども、この運用益をいわば取り崩しまして料率の引き上げ幅の圧縮を図ったわけでございます。当時、五年間にしたという根拠は、いろいろな議論が恐らくあったであろうと思いますが、五年間でこの運用益六千六百億を使って料率の引き上げ幅を二九%に抑制することが適切だというふうに判断したわけでございます。  ところで、今回の場合は、ただいま御説明申し上げましたように、事情としてはかなり逆の事情でございます。つまり、単年度の収支は黒字である、累積の収支残も黒字である。したがいまして、この二つの状況から限度額の引き上げ、あるいは料率の引き下げということが可能な状況が出てきたわけでございます。ノーロス・ノープロフィットの原則からいたしますと、単年度収支の一〇〇%以下の損害率は一〇〇%で運用するということでございますから、また累積の黒字がたまっておりますればそれは消費者に還元すべきであるというとでございます。  他方で、運用益につきましては、先ほど申し上げましたような収支で考えておりますので、今回の措置としましても、運用益のそういう趣旨からいいますと、運用益を消費者に還元して、料率の引き下げ幅を大きくする以外の道、つまり運用益を消費者還元に使わない道も選択肢としてはあったわけでございます。その点は、五十九年、六十年のときとは事情が違うわけでございます。ただし、非常に大きな金額になってまいりましたので、これは当然消費者還元の問題も検討する必要がある。それから、将来の予期せざる不測の収支悪化という事態に備えるという趣旨から考えましても、必要にして十分な、つまり過去の最悪のような経験の場合にも対応できるというようなことも考えますと、この一兆弱の運用益を使うことも可能だなということに検討がなってまいりました。そこで、そういう意味では五十九年、六十年のときとはいささか発想が、根本的にはそう違わないとは思いますが、この運用益の留保目的という意味で見ますと違うわけでございますので、新たな角度から検討いたしました。戦後、この運用益を使って料率の引き下げ、もっとも料率の引き下げそのものは戦後初めてでございますので、新たな検討というつもりで議論をしたわけでございます。  その結果、将来の予想せざる収支悪化にも、つまり今後新たに発生する運用益ということもあるわけでございますから、そういうことも考えて十年間で使う程度のことは、いわば消費者への当面の還元の問題と安定的な運用、私どもは安定的な運用そのものも消費者との関係で適切な運用の一つ要素であると考えておりますが、その間の調和として今申し上げました十年間で使うというのが適切ではなかろうか。五年で使うということになりますと、それも一つの道ではございますが、収支の計算上五年見通しで五年で使うというふうにしますと、五年たつと、例えば伊藤先生が今おっしゃった料率分だけ引き上げなければならぬ、あるいは若干運用益が出てくれば五年が七年に延びるかもしれませんが、あるいは逆に今度は予期せざる収支の悪化というようなことが起きますと、それよりも早くこの引き上げをしなければいかぬという事態もあり得るわけでございます。  そこで、その点につきましては、審議会でも運用益、累積黒字、特に運用益を使うことも十分考えられる適切な措置ではあるけれども、これが直接的な原因になって、料率を今回引き下げて、近い将来料率の引き上げをするというような事態は避けるように配慮をする必要があるというような答申もちょうだいしておりますので、先ほど申し上げましたような対応が適切であろうと考えた次第でございます。     〔主査退席、穂積主査代理着席〕
  199. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 まず一つ、先ほど言われたように、五十九年のときに六千五百七十億円の滞留金がありました。あれをあのときは五年間で償還するというふうに大蔵省も答えましたね。なぜやらないのですか。なぜ五年間というのを使わないのですか。この間もほごになったと私は思うのですよ。そして五年間というのは、実際に車を持っている人の立場に立てば、車検も大体二回になりますね。その人たちが享受できるようにするためには、そこで余った金は早くそのときの人たちに還元することがそのユーザーにとってはダイレクトに還元されるわけでありますから、この制度そのものも最もわかりやすくなると思うのです。大体、この自賠責なるものは、この保険制度はユーザーにとってはなかなかわかりにくいかもしれない。そういうときに、本当にユーザーにとってどうした方がいいだろうかということを考えれば、先ほど言われたように、できるだけちゃんとノーロス・ノープロフィットの原則に乗っかって運営されていく、それでそこに滞留益が出てくれば早くそれは還元をしていくというやり方をしていけばいいと思うのです。どうですか。
  200. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 確かにそういう考え方もございますし、また審議会で議論をちょうだいいたしましたが、例えば運用益の場合には、過去長い間、運用の利息収入等がたまっているわけでございます。そうしますと、もう一つ考え方は、その瞬時瞬時に過去にたまったものを返していくのが適切であるか、そのときに返そうとしますと、今回であれば料率の引き下げ幅は大きくなりますが、近い将来それが原因となってといいましょうか、近い将来その分を使い終わった段階では今度は引き上げが必要になるということになります。そうしますと、過去長い間にたまったお金をどういうふうに消費者、ユーザーに還元をしていくか、非常に短期間に還元する場合には、いわば契約年度をまたがった公平の問題をどう考えるかという問題も出てまいりますし、制度全体の運用からすると下がる。それから、近い将来またぐっと上がる。そうすると、その間の契約者との関係での公平さという問題や、あるいは制度自体として非常に一兆三千億は国民生活にとって大変大きな事業でございますので、ある種の安定的な運用ということも対消費者の関係で適切ではなかろうか。加えて、繰り返しになりますが、他条件によって非常に大きく変動いたしますので、その点も安定的運用の上で考えておく必要があるということで、いわばくどくど申し上げましたが、いろいろな要請の調和として審議会でもこういうあたりが適切ではなかろうか。少なくとも五十九年のときは五年ということでやりましたが、そのときとは事情が違うわけでございますので、つまり、そのときは累積運用益自体の本来の目的に合致する、当初考えておった事態でございました。今回は違った角度からこれを消費者に還元するということを検討いたしましたので、必ずしも前回の五年ということにとらわれずに、新たな角度から検討したわけでございます。
  201. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 大臣、ちょっと突然で申しわけありませんが、実は今の部長の言われたようなことをいたしますと、ずっと以前に車を持っていた人たちが猛烈な保険を払うということになる。いいですか、その人たちは物すごく過剰な保険を払ったことになりますね、実際には。そういう状況がずっと続いて、そしてそのあげくが現在二兆五千億もたまってしまった、膨大な金額がたまって、これから十年もかかってそれを償還いたしますよなんという話は、当時それぞれ持っていた人たちから見るとおかしいじゃないかというふうになりますでしょう。これは長過ぎます。五年あったら十分です。そしてまた不足になりそうだったら、そのときに保険料率は考えればいい。それがノーロス・ノープロフィットの原則ですよ。そうでしょう。そんなことをするものだから、今回の車種別の引き下げ率なんかを考えますと、例えば自家用自動車は五・九%でしょう。今度の引き下げ率五・九%。いいですか、今まで例えば累積運用益の九千五百億円のほとんどは、かつて自家用自動車のユーザーが払ってきたものですよ。今はこの人たちは五・九%しか引き下げない。そしてほかの種類の車のところがぼんと引き下げるというようなアンバランスが生まれてきていますよね。どうですか、大蔵大臣、今のような運用の仕方について。
  202. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 プロに対してアマチュアがお答えをするというのは本来どうも逆さまのような気がします。私は率直に申し上げて、大変失礼でありますが、今両者の議論を拝聴しながら、事務方の諸君の立場になってみますと、従来からこの自賠責に限らず、料率改定で引き上げのときに抵抗の大きさというものが骨身にしみておるというのが一つあると思うのです。そして、私は委員が今論議をしておられますように、そのときどきに還元をしていく、そのかわり、必要なときにはそのときどき簡単に料率を引き上げていく、そういう運用も一つの手法だと思います。ただ、その場合には自賠責の財政というものは常に不安定な要因を持つということになります。それでよろしいという国民合意があるとすれば、私は委員のお述べになったような対応は可能なことだと思います。しかし、率直に私は感じを申し上げますならば、必ずしも委員のお述べになるほどに私は制度自身に対して国民の知識というものは習熟している状況にはないような気がいたします。これは率直に申しまして、私はそういう感じがいたします。  そういたしますと、私は五十九年にどういう議論が行われたか存じません。率直に不勉強はおわびいたします。しかし同時に、やはり保険の収支というものを考える場合に、ある程度のアローアンスを持ちながら、安全率を持ちながら、できる限り国民は還元をしていく、そうした姿勢を行政当局として運営責任者がとるのは無理からぬことだと私は思うのです。ただ、今委員がお述べになりました特定車種についてのばらつきといったようなものにつきましては、あるいはこれは技術的にまだ検討すべきことがあるのかもしれません。この辺になりますと私は知識がありません。要は、非常によく料率の踊る仕組みというものが望ましいのか、ある程度安定した制度運営が望ましいのかという選択をする場合、私ならば、現時点においてはある程度安定した制度運営がより望ましいという考え方をとりたいと思います。その意味におきまして、私は、今事務方の御説明をしておりましたような考え方を支持したい、率直にそういう感じを持っております。
  203. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 大臣の言われた基本的な考え方といいましょうか、余り急激に変動してもという意味だと私は思いますが、それはそれなりに私は理解できると思うのです。だからこそ、私は一年とか二年とか言いません、この膨大な一兆五千億なる資金、これは五年で十分じゃないでしょうか。五十九年の自賠責審議会でも当時、六千五百七十億円の滞留金について五年でというふうに答申もいたしましたね。そして、この席だったか予算委員会の本体だったか、当時加茂部長が保険部長をされておりまして、六千五百七十億円について五年で償還をしたいという話をされました。なぜあのときが五年で今は七年、十年というふうに言われるのですか。
  204. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 若干繰り返しになって恐縮でございますが、前回はそういうような状況で、全体として極めて大幅な料率の引き上げをお願いせざるを得なかった。これも、自動車事故をめぐるいろいろな条件が非常に急激ほ変化するということのあらわれではございます。そこで、余り急激な料率の引き上げ、最終的には調整をした上で運用益を使った上で二九%ということでございますから、使わなければもっと大きな料率の引き上げということでございました。こういう事態を急に国民に、契約者は求めるということはいかがなものかということでございます。そこで、当時言われました運用益がその本来の使用目的に合致するということで、五年で使うということにしたわけでございます。したがいまして、私どもは、今回はその状況とは違うわけでございますので、いわば新しい初めてのケースということで新たな角度から検討したわけでございます。  繰り返しになりますが、五年で一兆の大きなお金を使うということになりますと、仮にその予測どおりにいっても五年、予測よりも早く収支が悪化したという場合にはもっと早く、三年とか四年とか早い時期に今回の引き下げ幅分また戻さなければいけないということもあり得るわけでございます。そういう意味におきまして、前回と違う状況下で安定的な運用ということを考えたわけでございますが、先生のおっしゃる趣旨も一般論として私どもよくわかるわけでございます。いずれにしてもこれはユーザーの金でございますから、これをほかに使ってしまうわけではございませんので、どういう形で、つまり消費者に還元する期間、タイミングの問題、それから制度を、他動的に非常に早く変動するので予測しがたいところで安定的に運用する、両者の調和を図っていくという観点から、今後とも勉強させていただきたいと思います。
  205. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 今後も勉強するという話でありますので、一言お伺いしますが、先ほど申し上げたとおりに、この意味、私の申し上げた意味は、部長の方も十分に理解していただいていると思うのですよ。それで、この問題は私は本当に真剣に考えるべきだと思う。今までやってこなかったからこんなにたまってしまったのですよ。したがって、ことし四月から実施でありますからこれは実施するとして、来年以降、この償還期間を短縮して、さらに引き下げること等についても真剣にもう一回勉強していただきたいと思うのです。いかがですか。
  206. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 ただいま御説明しましたように、この制度は非常に国民生活の上で大きなもので、かつ一兆三千億という大きな事業でございますので、中期的に安定的に運用していくことが必要だという考えに立っております。毎年毎年検証はいたしますが、今先生のおっしゃるような、また来年すぐ運用益の使い方自体を変えるという考え方は恐らくとれないと思いますが、いずれにしても、その調和をどこへ求めていくかということは中長期的な課題として勉強させていただきたいと思います。
  207. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 大臣、ちょっとお願いしますけれども、今の話は中長期的に云々と、いつの話をしているか知りませんが、今のような状況で、それはもっと目の前を真剣に考えた方がいい。あすまた運輸の方の分科会でやりますけれども、それはもっと真剣に、早急に検討してみる必要はあると思いますよ、どうでしょうか。
  208. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 実は、けさ内閣といたしまして交通安全対策閣僚会議を開きまして、平成三年度から平成七年度にかけての交通安全対策五カ年の点検をいたしました。そして、私どもとして今非常に頭を痛めておりますのが、ひところ陸上における交通事故すなわち自動車を中心とした事故による死亡率というものがある程度低下をしてまいりました。昨今また非常に急増いたしています。そして、ついに一万一千名を超える死亡者を出す状況になりました。これを何とかして一万人以下まで減らしたい、自動車の交通量はふえていくであろう、国民の自動車保有台数はふえていくであろう、しかし、その中で死亡事故を減らしたいという論議をけさいたしたばかりであります。  そうした一方における交通事故特に自動車を中心とした交通事故というものの多発の状況をけさ議論をいたしたばかりであります。そうしますと、私は、今事務方が申しましたように慎重を期したいという事務方の気持ちはよくわかります。むしろ、委員の御指摘のように、来年度においてでもこの滞留金を見直せるといった事態になることを私は願っております。
  209. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 時間も参りましたので、最後に一つだけお伺いをいたします。  今度、自賠責の死亡支払い限度額が二千五百万円から三千万円に引き上げられることになりました。私は、今回の答申の中に、この保険制度のあり方について検討をせよといろいろなことが述べられております、文字どおりこの問題は大変重要な問題だと思っておりますし、したがって、二千五百万円から三千万円への引き上げは、今しなくていい、これはしばらく待っていいというふうに思っております。これはまた、あす運輸の方の分科会で申し上げます。それで、政府がどうしても実施するというなら、それに見合う任意の対人保険を引き下げるべきである、こう私は思います。最後に、この任意の対人保険の引き下げの問題はどのようになっているか、御質問いたします。
  210. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 任意の保険の方は、御案内のように、大部分の商品が対人から対物からいろいろなものがセットになっているわけでございます。そこで、対人の方の要因としては自賠責と似たような影響がある、あるいはこちらの限度を上げればその恩典自体は任意の方の対人の支払いの減少要因になるということ自体は事実でございます。大きな影響力があるかという点はちょっと別でございますが、しかし対物の方が、御案内のような非常に車の高級化でありますとか、あるいは車検の人手不足でありますとか、単価の状況でありますとか、たしかこの五、六年、ずっと人件費アップ等が続いてきております間改定をしておりませんので、いろいろな要因があります。ほとんど、九三%の商品がセットになっておりますので、対物の方の状況を今検討中でございます。
  211. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 対人は引き下げるのですかという質問をいたしました。
  212. 竹内克伸

    ○竹内政府委員 その点を含めまして、対物の非常に大きな問題がありますので、検討中でございます。
  213. 伊藤英成

    伊藤(英)分科員 時間が来ましたから、終わります。
  214. 穂積良行

    穂積主査代理 これにて伊藤英成君の質疑は終了いたしました。  次に、大野由利子君。
  215. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 公明党の大野由利子でございます。  大蔵大臣には初めて質問をさせていただくことになりました。ぜひ御誠意ある明快な御答弁を期待いたしまして、質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  私は、まず育児休業中の給与保障について何点かお尋ねしたいと思います。  今国会で政府提案とすることが与野党で合意されております育児休業法案でございますが、現在、政府において法案の作成作業が進められております。ぜひその中身を実効性のあるものにしていただきたい。つまり、休業期間中の賃金保障と、事業主が違反した場合の罰則規定、そうしたものをぜひこの法案の中に盛り込んでもらいたい、そのように切に念願しているわけでございます。  そこで、きょうは提案でございますが、育児休業中の賃金保障につきまして、雇用保険制度の枠内で育児休業の賃金保障制度を導入してはどうか、そのように考えるものでございます。労働省の中にもそのような主張をお持ちの方も多いように伺っております。  まず、労働省に初めにお伺いしますが、雇用保険積立金の残高は、現在どれぐらいになっておりますか。また、昭和六十一年度から平成元年度までの失業給付関係の余剰金と申しますか、収支関係の推移を教えていただきたいと思います。
  216. 池田克忠

    ○池田説明員 最初に雇用保険の積立金でございますが、平成元年度末現在、残高は二兆二千八百五十三億円でございます。  六十一年度から元年度末までの失業給付費関係の収支の推移でございますが、収支差で申し上げます。六十一年度が二千二百六十六億円、六十二年度が二千七百八十五億円、六十三年度が四千五百八十一億円、元年度が六千百八十三億円のそれぞれ黒字となっておりまして、積立金残高は六十一年度の九千三百四億円から、先ほど申しました、元年度二兆二千八百五十三億円となっているところでございます。
  217. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 労働省に重ねてお尋ねいたしますが、育児休業の取得者に給与の六割給付を実施した場合、年間の必要負担額はどれぐらいになるか、ぜひその推定を教えていただきたいと思います。
  218. 藤井龍子

    ○藤井説明員 お答えいたします。  御質問の趣旨は、育児休業が法制化された場合にどうであるかということであろうかと思われますが、民間労働者のために育児休業制度が広く法制化された場合、どの程度の労働者が育児休業を取得することになるのか、また取得する期間、月数でございますね、こういったものがどれぐらいになるのかという点について、現時点において確定的な推計を行うことは極めて困難でございますので、この場でただいまの先生の御質問にお答えするような数字をお示しすることはできないことを御了承いただきたいと思います。
  219. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 昭和六十二年から野党が共同提案としまして、育児休業中の給与保障六割給付ということを主張しております。そういう主張が長年にわたってなされてきたわけでございますので、当然労働省としてはいろいろな試算をお持ちじゃないか、そのように思います。決して持っていらっしゃらないことはないと思いますが、現段階発表できないということかと思います。  私の方の入手しました資料によりますと、試算では年間の必要負担額は千二百億、そのような額でございます。これは、出産者の雇用継続率を八二・五%、また育児休業の平均利用期間でございますが、産休の間は当然除きまして八カ月間、それから育児休業の利用率を八〇%、そのように推定した上での数字でございます。年間育児休業利用者総数は、今出産する人が百二十二万人、そのうちの十五万人程度、そのように出産率等からはじきまして推定されます。大体千二百億という金額があれば、この六割給付ができる、そういう状況でございます。この試算についてでございますが、今お話をいただきました財源についてちょっと私の方も幾つか試算をしてみましたので、そのことに関しまして御見解を伺いたいと思います。  まず運用金でございますが、雇用保険積立金の残高が平成元年度で二兆二千八百五十三億円ございます。今お答えいただいたとおりでございます。これは財政投融資に使われておりますが、この積立残高の一部自主運用化を図って、その運用益を育児休業の給与六割給付の財源に充当すべきではないか、そのようにできるのではないかと思います。その財源として、雇用保険積立金の一部自主運用化を図るべきではないかと思いますが、大蔵大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  220. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 御質問の趣旨、雇用保険の積立金を、目的がどうであれ、その雇用保険の積立金の一部を自主運用によってより有利な運用を図る、そして、その運用収入をもって特定の事業に充てるという御趣旨であろうと思います。  ただ、私は、これはちょっと雇用保険制度というものの内容の問題とは別に、この積立金が資金運用部の預託による運用から生じております運用収入も含めて、不況期に増大をする雇用保険事業の失業給付費を支弁するための財源という大きな目的を持っております資金でございます。ほかにちょっと使うというのには問題があるのではなかろうか、他の目的に使うことには問題があるのではなかろうかという気持ちをまず申し上げたいと思います。  たまたま私は、超党派の議員立法で医療関係、福祉関係、教育関係の三職種に育児休業制度を導入いたしましたときの提案者であり責任者であります。その時点におきましても、実は休業期間中の所得保障というものの扱いで大変議論が難航いたしました。一年立法がずれたという経験を持っております。そして、その当時にも実は同じような論議が一部の方々からは出ておりました。しかし、やはり私どもは、雇用保険事業というものを、本来の性格を考えますと、また、たまたま今労働力もある程度需給がタイトであり、失業率も非常に低い時代、積立金がある程度ございますけれども、一たん何らかの状況で不況に入りましたとき、この資金の活用を余儀なくされる事態というものを考えましたときに、目的外に自主運用を行い、他の目的にこれを使用するということは、制度本来の趣旨からしても非常に怖いことだ、率直にそういう感じを持っております。
  221. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 雇用保険法の第一条に、雇用保険の「目的」としまして、次のように書かれております。「労働者が失業した場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、」「及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。」このように雇用保険法の第一条に、雇用保険の目的が述べられております。この雇用保険の目的から見ますと、育児休業の給与保障をこの雇用保険制度から導入するということは決して目的から外れていないのではないか、そのように思います。  この雇用保険制度の導入によって、出産を契機にして仕事をやめざるを得ない、失業せざるを得ないという人たちが救われるわけでございますので、失業の予防及び雇用機会の増大、まさに育児休業はこれに当たると思いますので、この雇用保険法第一条の範囲、精神から見まして、これはぜひ前向きに考えていただきたい。  また、この財源は、今非常に経済が好調ですけれどもというお話がございましたが、平成元年度の残高二兆二千八百五十三億円、その中の二割、四千六百億円を年率八%で運用して三百六十八億円、そういうお金が運用できます。これは運用資金でございますので、先ほど大蔵大臣がおっしゃったように、運用を続けるということで、元金を損なわないでやっていけるのではないか。これは一部の財源でございますが、この件についてはいかがでございましょうか。
  222. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますけれども基本的に、雇用保険積立金など、国の制度あるいは信用を通じて国民からお預かりをいたします公的資金というものは、すべて資金運用部に預託をされ、責任を持って統合運用をされるというのが原則であります。そして、これによって政府資金全体が最も効率的な運用が確保されているわけであります。特に、雇用保険積立金は財政投融資の重要な原資でありますし、さまざまな部分において大きな役割を果たしておることも事実であります。そして、国民のニーズにこたえて適切に運用していく必要があるという一つの大前提は、これはお認めをいただきたいと思うのであります。  そして、たまたま委員のそのお話が、一部自主運用というところから始まりましたので、私は、その自主運用という点については、これは資金運用部の資金として統一的に運用されるべきであると思っておりますし、また雇用保険事業そのものの中において、雇用保険制度の中で育児休業をどう位置づけるかというのは、ちょっと私の方がお答えをするのには非常に向かないテーマ、むしろ雇用保険制度そのものを主管される労働省が労働行政の立場として御判断になることであろうと思います。  ただ、私自身が育児休業制度を三職種についてつくりましたときの責任者として、当時も実はそういう御議論があった。しかし、その議論のために結局制度のスタートが一年おくれてしまった。そういう経験もたまたまありますために、この点で御論議をいただきますのは、非常に実は制度の仕組みを難しくしはしないかな。かつて、各党共同で提案をいたしましたときの経験から、私は率直にそのような印象を申し述べた次第であります。
  223. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 郵政省に一部自主運用を認めていらっしゃいますが、ぜひこの件も一度また前向きに検討していただきたいと思います。  それから、雇用保険料が現在、失業給付に充てるため、労使折半で千分の五・五ずつ、合計千分の十一支払っておりますが、これを千分の〇・五ずつ、労使で千分の一を育児休業保障に振り分けてみる、そのように考えてみますと、昭和六十年度で千二百八十五億、六十一年が千三百四十九億、六十二年が千三百九十六億、六十三年が千四百二十四億、元年度で千五百十六億、それだけの財源が生まれることになります。失業給付余剰金の中の平均三八・三%でこれだけのお金が出る、そのようになりますが、このことにつきまして御見解を伺いたいと思います。
  224. 池田克忠

    ○池田説明員 質問の御趣旨は、千分の〇・五ずつ引き下げてはというお話か、あるいはその余剰金の運用のお話か、両方でございますでしょうか。
  225. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 はい。余剰金の運用じゃなくて、雇用保険料の中の千分の一をこういう育児休業保障に振り当てるということです。
  226. 池田克忠

    ○池田説明員 雇用保険法の目的は先ほど先生おっしゃったとおりでございます。雇用保険の中で育児休業の経済的援助をどうするかという議論になるかと思いますけれども、そもそも育児休業の経済的援助そのものにつきましては、婦人少年問題審議会というところで建議が出されまして、この建議によりますと、経済的援助のあり方につきましてはさまざまな見解の違いが見られる中でまだ一定の方向を定めることは困難な状況で、さらに広範かつ多角的な観点から論議を深められる必要があるというぐあいにいただいているところでございます。  したがいまして、この育児休業の経済的援助のあり方そのものがまず前提になるわけでございますが、仮に雇用保険制度の中でそういう、今失業給付ということで千分の十一の御負担をいただいているわけでございます。失業給付以外にその育児休業の所得保障を行うということは、現行の雇用保険制度の中では失業保険事故としておりますから、たとえ休業中でありましても失業していない者に給付を現行の雇用保険制度の中ではやることは困難でございます。  それで、その雇用保険制度の枠を非常に広げましてこの育児休業の休業という部分につきまして経済的援助を考えたらということになりますと、先ほどの婦人少年問題審議会でいろいろ御建議、御議論をいただいているわけでございますから、その前提で考えなけりゃなりませんし、本来、保険原理だけで考えますと、育児というものを理由とする休業というのは全労働者に起こるものではないとか、それを取得することが保険事故といいますか、任意的、選択的というような要素がどうしてもあるのではないかということになりますと、これは保険制度として仕組むのはいかがかという問題もあろうかと思います。いずれにしてもいろんな建議の中で御議論がございますので、それを前提に……。
  227. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 千分の十一の中の千分の一をぜひこちらの保障に充てたらどうか、そういう提案でございます。失業給付、失業とは言えないというお話でございましたが、雇用保険の制度は本来外れているわけではございませんので、この雇用保険制度の拡大というものをぜひ御検討いただきたい。確かに現時点におきましては失業給付となっておりますが、これを失業給付というだけではなくてその雇用保険制度の適用の拡大というものをぜひ前向きに検討をお願いをしたい、そのように思います。  今女性にとって仕事を継続できない最大の理由は、まず育児がございます。次に介護がございます。非常に労働力不足が言われておりますが、この育児または介護休暇のためにこの雇用保険制度を積極的に活用することでもってその労働人口を確保する、そういうことも可能でございますので、現行の中でいろいろまだ問題があることはよくわかりますが、この雇用保険制度の適用の拡大について労働省また大蔵省の方で積極的にぜひ御検討をお願いしたい、そのように思います。  次に、パート労働のことに関しまして質問をさせていただきたい、そのように思います。勤労者の非課税限度額について、いわゆるパート減税と言われております件でございますが、パート労働者が最近非常にふえまして約八百万人、そのように言われております。我が国の経済を支えております基幹労働力になっているわけですが、非課税限度額の引き上げがパート労働者の最大の関心事になっているわけでございます。このことに関しまして、昭和六十二年、昭和六十三年の所得税法等の改正によりまして、妻のパート収入に応じて夫の控除額がなだらかに減少するという配偶者特別控除制度が導入されたことによって税制上の逆転現象はなくなった、そのように大蔵省ではおっしゃっているわけでございます。  しかし現実、実情はどうかと申しますと、決してそうではございませんで、非課税限度額を超えると妻に所得税、住民税がかかってくる、またその夫の配偶者控除、配偶者手当が受けられなくなる、また社会保険料の自己負担等で実質夫婦の手取り収入がかえって落ちてしまう、目減りしてしまう、そういう現状がございます。そういうことで、非課税限度額を超えたくないということで、年末、十一月、十二月の非常に忙しいときに仕事を休むパート労働者が多くいたり、また仕事を休めないということでその賃金を返還したり、ただ働きをしたり、ボーナスを辞退したり、そのような実情がございます。賃金を一定水準以下に保つ働きをなしているわけですが、これに関しまして労働省の御所見をまず伺いたいと思います。
  228. 太田芳枝

    太田説明員 今先生が御指摘のとおり、相当数の企業におきましては妻の収入が百万円を超える場合には夫の配偶者手当を支給しないという取り扱いをしているところがあると承知しております。その結果、これによりまして家計収入全体で見た場合には少々その額が減少するというような理由によりまして、パートタイム労働者の中には一部みずからの所得を百万円で調整しようとする者がいるということは認識しておるところでございます。
  229. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 年収百万または夫の収入が年収六百万の家庭を想定いたしまして、夫の配偶者手当等、年収等によって変わってくるわけでございますが、大体百二十三万とか百五十万前後とか、それぐらい妻が働いてようやく同じようにペイする、そういう状況がある。労働時間にしますと、今パート労働の平均の一時間当たり時間給が六百六十二円、そういう状況ですので、百二十三万としましても千八百五十八時間、百五十万円になりますともう二千二百時間、いわゆる常勤の労働者と同じだけの労働時間になる、そういう現状があるわけでございます。  働いたらその働いた分だけやはり収入が上がる、それが労働意欲がわく、それが資本主義社会の原則ではないかと思うのですが、これは税制の問題ではないからどうしようもないんだというのじゃなくて、やはりこういう現状をどう改めるかということに対して衆知を集めて検討すべきじゃないか、そのように思いますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  230. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、今の委員の御指摘に対して基本的に二つの問題があると思います。一つは、税法上独立した人格を一体どの程度の収入から認めればいいのかということがありましょう。しかし、それ以前の問題として、パートタイム労働者の雇用問題というものについて議論いたします場合、そのパート労働というものを雇用政策また社会政策上どう位置づけるかということが、私は基本的な課題だと思います。そして、今委員がお述べになりましたように、先般の税制改革におきまして問題点、いわゆるパート問題というのが制度的には解消いたしました。そして、平成元年十一月のパート減税というものの実施によりまして、今御議論がありますように、パート収入の非課税限度というものは百万円に上がったわけであります。この結果、奥様に百万円のパート収入があるパート世帯、御主人の給与収入と合わせた世帯収入、標準世帯でありますけれども、三百六十四万二千円まで所得税がかからなくなりました。しかし、片働きの世帯でありますとこの額は三百十九万八千円でありまして、それだけ既に共働きの御家庭に対しては税制上優遇措置が講ぜられているわけでございます。そして、その一人年間百万円を超えるような収入がある方というものは、やはり税法上は被扶養者というのではなく、独立の人格を持つということの方が本来の姿ではなかろうか、既にもう片働きの御家庭とは数字は差が出ておるわけでありますから、むしろ税負担の公平という面からは、これ以上というのは私は問題があるような気がいたします。ただ基本的に、私はパート労働というものを雇用政策上、社会政策上どう位置づけるかという基本的な問題があるということは認識しておりますし、その上で先ほど労働省の方からお答えがありましたような実態があることも承知をいたしております。税法上、私は今のような問題点を考えております。
  231. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 今大臣がおっしゃいましたように、確かに同一労働、同一賃金という、パート労働の人たちの労働を守っていくと申しますか、パート労働法等の制定等、そうしたものも必要だとは思いますし、またきちっと税金を払った上でということも当然考えられるわけでございますが、しかし、こうした逆転現象というものはやはり異常現象じゃないかと思います。この点についての現実に行われている逆転現象でございます。やはりそれについてはこれから知恵を絞っていかなければいけないんじゃないか、そのように思っております。  それから、パートの賃金格差でございますが、昭和五十一年は、女性の一般女子労働に対しましてパート労働の賃金は八〇%でございました。ところが平成元年では七〇%、そのようにだんだんパート労働の人たちの賃金格差が開いております。それからまた、昭和四十九年の非課税限度額の七十四万円を一〇〇としますと、現在の非課税限度額は一三五でございます。一方、物価指数の方は昭和四十九年が一〇〇で、現在一・八三倍になっております。こうしたことから見まして、現在のパート労働者の非課税枠の範囲が物価指数に比べて伸びが悪いということは、裏返せば実質的な増税になっているのではないか、そのように思いますが、御見解はいかがでございましょうか。
  232. 小川是

    ○小川政府委員 先ほど大臣から申し上げましたとおり、まず税法上は、課税上は、パートについて途中で仕事を打ち切らないと税負担あるいは税引き後の手取りが減るという、いわゆる逆転現象は既になくなっているというところはぜひ御理解をいただきたいと思います。問題は、各事業者が支払う配偶者手当というものについて、所得限度を各企業でどういう形で置かれるかという問題、その置き方によって今おっしゃったような問題が生ずるということをぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、いま一点は今の水準の問題でございますが、これまた年間収入百万円というところまで所得税の負担をしないで済んでいる現状になっておるわけですけれども、この水準というのは既に十分に高い水準ではないか、とりわけパートの場合には、御主人のところで控除が受けられ、そして御本人の収入についても基礎控除を受けられる、いわば二度控除を受けられる、そういう水準にあるというところから見ましてこの水準というのは現行所得税制上十分な水準になっているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  233. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 独立した個人の課税方式から見ましたときに、この非課税限度額が物価指数に比例して上がっていないという、そういう現状から、まあいろいろ難しい問題はあるかと思いますが、この基礎控除の拡大、それから給与所得控除の拡大というものについてぜひ積極的に取り組んでいただきたい。給与所得控除の最低保障額の引き上げについてぜひ前向きに取り組んでいただきたい。今パート労働の人たちは、先ほど申しましたように給与格差が非常に開いている現状でございますし、まだまだ劣悪な環境状況の中で働いております。そういう状況にあるということをぜひ御理解をいただきまして、そして基礎控除よりも給与所得控除を拡大する方が税制に与える影響は少ないようでございますが、この点をぜひ検討をお願いをしたい。そして本人の所得非課税限度枠でございますが、現在の百万から百二十万、また百五十万とぜひ拡大を検討をお願いしたい、そのように思います。
  234. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、この基本問題はパート労働というものを雇用政策、社会政策の中でどう位置づけるかということであると思いますけれども、税法の上において公平性を既に担保したということは繰り返し申し上げてまいりました。そして共働きの御家庭と片働きの御家庭と、既に共働きの御家庭の方が税法上より有利な立場に立っておるということも申し上げたつもりでございます。当初労働省に御質問のございました配偶者手当などの支給基準、これとその妻の収入の多寡というのは、これはむしろ労使間の問題でありまして、これと税法とを一緒に御論議をいただくのは、私どもとしてはちょっとお答えのできないものでございます。  また、先般の、六十三年十二月の税制改正におきまして、総額三兆三千億円に上る所得税、住民税を合わせた減税をいたし、これによって税体系自体も随分大きく変化をさせてまいりましたので、今この減税効果というものが平成元年から本格化をし始めている状況の中で、今委員が御指摘になりましたように、さらなる所得税減税というものについて私は考える時期にはない、率直にそう思っております。
  235. 穂積良行

    穂積主査代理 大野君、時間が過ぎておりますので……。
  236. 大野由利子

    ○大野(由)分科員 はい。  税制上の問題だけでは解決しないということはよく私もわかっておりますが、この所得限度額と配偶者控除がリンクしている問題もいろいろ問題があるかと思います。またぜひ御検討をお願いしたいと思います。  大変ありがとうございました。
  237. 穂積良行

    穂積主査代理 これにて大野由利子君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  238. 正森成二

    ○正森分科員 委員長初め事務局の皆さん、それから大蔵大臣初め政府委員の皆さん、大変遅くまで御苦労さまでございます。私で最後でございますので、しばらく忍耐していただきたいと思います。  私はまず最初に、日銀お見えになっておりますね、日銀に伺いたいのですが、最近土地高騰、地上げ等に絡みまして金融機関の関与が種々報道され、その中で不祥事件が相次いでおります。それについて国の金融対策がどうであったのかということが基本的に問われております。その場合に、私の知るところでは、日本銀行は九〇年四月号調査月報で「わが国における近年の地価上昇の背景と影響について」という論文を発表されております。その「要旨」を見ますと、  こうした地価上昇の要因としては、①首都圏への経済機能の集中等を背景とする「実需」の増加と、②比較的最近まで続いた金融緩和が挙げられるが、地価上昇が波及する過程では、③投機的な「仮需」の発生や、④節税目的の不動産需要等も、地価上昇の加速要因として働いたものとみられる。 こういうように言っております。さらに、「要旨」でなく、本文の中の「金融緩和の影響」というところを見ますと、   今回の地価上昇の第二の要因は金融緩和である。前述の地価の理論式に即して言えば、この要因は金利の低下という形で表現される。そこで地価上昇が始まった六十年以降の金融経済情勢を改めて振返ってみると、六十年九月のプラザ合意以降、円高が進行し、景気は円高のデフレ効果から停滞する一方、一般物価は国内WPIが六十一年度には前年比マイナス五・二%を記録するなど、極めて安定した状態で推移していた。このような情勢の下では景気回復が優先的政策課題であり、日本銀行は六十一年一月以降累次にわたって公定歩合を引下げ、六十二年二月には公定歩合は二・五%と日本銀行創業以来の低水準となった。これまでも金利低下の下ではマネーサプライの伸び率が高まり、これが地価上昇の一因となっているという関係が看取されるが、こうした関係は今回の地価上昇局面においても妥当する。 こう書いてあります。そしてこれについては、一般の新聞等で、日銀の自己批判であるというように報道している向きもあります。これらについての日銀の見解をまず伺います。
  239. 小島邦夫

    ○小島参考人 お答え申し上げます。  ただいま委員がお読みいただきました論文に書いてあるようなことでございますが、昭和六十年九月のプラザ合意以降の数年間、私どもの金融政策は、物価の安定を確保しつつ我が国経済を内需主導型の望ましい姿に転換させ、かつそれを定着させていくという、大きな流れの中で運営してきたわけでございます。昭和六十一年一月から昭和六十二年二月にかけて、五次にわたる公定歩合の引き下げが行われたわけでありますが、これは、ただいまもございましたように、当時の急速な円高の進行のもとで経済活動全般が停滞する一方、物価は、原油価格の低下にも助けられまして全体として極めて安定していたという環境のもとにあって、ただいま述べましたような趣旨に立った政策措置であったわけでございます。  このような金融緩和政策は、内需中心の景気拡大をもたらしたわけでございますが、その一方で、副作用として、不動産関連貸し出しの増加を通じて地価上昇の一因になったということは否めないところでございます。もとより今回の地価上昇、ただいまございましたとおり、首都圏への経済機能の集中等を背景とします実需の増加、さらには土地神話でありますとか土地関連の税制、各種規制などと相まって生じたものでございまして、ひとり金融緩和のみが原因ということではございません。  その後私どもは、一昨年五月以降五回にわたりまして公定歩合を引き上げてきたわけでございますが、こうした利上げ措置の決定に際しましては、総合判断の一環としまして、地価の上昇とそれがもたらす弊害といった点も十分考慮に入れたところでございますし、同時に、各金融機関に対しましては、不動産融資に関して、金融機関の公共性に照らし、かりそめにも投機的な土地取引を助長することのないよう、また金融機関貸し出しの健全性を損なうことのないよう、いろいろな機会をとらえて慎重な対応要請してきたところでございます。
  240. 正森成二

    ○正森分科員 今一応局長の答弁を聞いたんですけれども、ある意味では三重野総裁の方がもっと率直ですね。十月十二日の毎日新聞にも、そのほかにもいろんな新聞に載っておりますが、光進の問題やイトマンの問題が出てまいりました後、十月十一日に記者会見をしまして、「私どもは(政策選択に)最善の努力をしてきたつもり。しかし、(金融緩和政策の期間が長過ぎたと)批判されても仕方ない」こういうぐあいに述べて、誤りを率直に認めているんですね。ですから各紙にそれが出たわけです。  同じ新聞ではこう言っております。「日銀は八六年から八七年にかけての円高不況時に、大蔵省が財政による景気テコ入れを渋ったために、金融の超緩和に踏み切り、公定歩合を史上最低の二・五%まで下げた。その後、景気が拡大したことから八八年初めに引き締めに転じると予想されたが、参院選への配慮などでタイミングが遅れ、株高、土地高のマネーゲームを長期化させたとの批判が出ていた。 このため、三重野総裁は昨年十二月就任直後から三回にわたる公定歩合引き上げを行った。日銀総裁が金融政策の誤りを認めるのは異例で、故佐々木直総裁がニクソン・ショック時に過剰流動性を招き、狂乱インフレをもたらした失敗を認めた時以来といえる。」こう言っているんですね。だから、局長が何と言おうと、トップがこういうぐあいに責任を認めているんですから、はっきりしていると思います。  日銀はもう帰っていただいて結構です。  ところが、大蔵省は、同じころの新聞を見ますと、割とのほほんとしているんですね。名前は書いてないのです。「大蔵省首脳」となっておりますから、事務次官が言ったのか大臣が言われたのか、銀行局長が言われたのかもわかりませんが、日経では「日本経済が底を打った八六年秋以降の金融緩和で、(株、土地への)過当な融資競争があったのかもしれない」と、すこぶる悠長ですね。十三日の日経を見ますと「大蔵省として土地関連融資の特別ヒアリングを実施していたにもかかわらず、結果として行き過ぎた融資が生じたとしたら反省しなければならないような気がする」こう言っておるのです。大分大蔵省は悠長なものですな。日銀が相当はっきり言っているのに、何々のような気がするとか、そういう表現で、余り自分の金融政策について誤りを認めておられないんですが、ごく簡単に、何か一言御意見があれば伺いたいと思います。
  241. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 引用されました記事がどこの記事か私にはよくわかりませんけれども、それほど悠長だったとは、実は私自身は思っておりません。むしろ貸し出しに対する総量規制を行ったといったことも、過去の反省の上に立ちながら事態を深刻に受けとめていた行動でありまして、その表現のいかんは報道の問題でありますから、それがいい、悪いと申し上げる立場にはありませんけれども、我々はこの事態について何ら責任はないと申し上げたつもりはございません。
  242. 正森成二

    ○正森分科員 そこで具体的なことについて伺いますが、まず第一にイトマンの問題について伺いたいと思います。後ほど光進、小谷の関係について伺います。  イトマンの問題につきましては、きょうのある新聞の夕刊にも一面トップに出ておりますが、ゴルフ場関係ですけれども、不良融資というのは枚挙にいとまがないのですね。それで、さまざまなところで問題が起こっておりますが、新聞を見ましたら年商売り上げが大体七千億円前後だと思われるのに融資が一兆五千億円、そのうち住友銀行だけで、他の銀行が十月ぐらいから一斉に引き揚げ始めたのを全部肩がわりしましたので、報道によりますと五千三百億円を超える。一行が一つの企業に融資できる限度のすれすれ、あるいはもう超えたのではないか、こういうように言われているのですね。  それを見ますと、いろいろ言われるのはゴルフ場の関連をめぐる非常に不可解な放漫融資とかいうのがございます。これらについて銀行局長に伺いますが、イトマンの従業員から銀行局に、早く調べてくれというそれこそもう血の出るような要望が出ていたのじゃないですか。私のところに、イトマン従業員から出たと思われる「土田正顕様」、これあなたのことですね。
  243. 土田正顕

    ○土田政府委員 土田正顕と申します。
  244. 正森成二

    ○正森分科員 ああ、そうですか。  「土田正顕様」ということで、何回か手紙が出ておりますね。それは全部読むと大変ですから読みませんけれども、その中で第四回目の手紙というのに、「土田さん、これまで何度も申し上げたように、当社の」というのはイトマンですね、「放漫経営を助長してきたのは、金余りを背景にした金融機関の貸出姿勢であります。メインバンクの住銀はもとより富士銀行(芙蓉総合リース)、住友信託銀行、埼玉銀行、東京銀行をはじめ常陽銀行、八十二銀行、千葉銀行等の地方銀行や、ドレスナー銀行のような外国銀行に至るまで、当社及び当社グループに対する融資を、当期に入りましても著しく増加させています。そこで、私共はこれらの銀行に対し警告文を出しました。同封しましたのでどうかご覧下さい。私共としては、大蔵省が動かないなら次の手段を考えるしかありません。」ということまで言うているんですね。それで、何回目かの手紙には相当な細かい数字を出し、調査をする場合にはどこが重点かということまで指摘した内容であります。  第五回目のには、「土田さん、私共は六月三十日付の日経新聞を見て、本当にびっくりすると同時にあきれ返りました。」ということで、イトマンや住銀が全く反省していないということを書いた後で、「土田さん、これは大蔵省の行っている不動産融資総量規制に対する公然たる挑戦、反抗です。何故、大蔵省はこれに対し毅然たる態度をとらないのですか。それとも、大蔵省は住銀のような大銀行には何も言えないのですか。繰り返すようですが、一日も一刻も早く、当社をめぐる資金、不動産の流れにメスを入れて、当社を更生させて頂くことを切にお願い致します。」というようになっているんですね。  あなた方はこういうのを見られてやっと九月ごろに調査に入られたようですが、それも通例の定期調査だと住友銀行について言うておられましたが、どう対処されましたか。
  245. 土田正顕

    ○土田政府委員 今のお話はイトマンという一つの事業会社、それの行動についてのいろいろなお尋ねでございますが、ただいまイトマンの従業員の要望というふうにおっしゃいました。ところで私どもは、いわゆる投書、これは内容的には内部告発文書のようなものでございますが、銀行局長あての投書を何回か受け取ったことは事実であります。ただし、それがだれが書いたかということはしょせん今日まで明らかにされておらないと私は思いますので、これがイトマン従業員の筆に成るものであるかどうか、そこは何とも申し上げかねるわけでございます。  そこで、いずれにいたしましてもそのような投書が何通か参りまして、その最も早いものは昨年の五月ごろからであったかと思います。私どもは、そのような投書も一つの参考にしながら、ほとんど五月よりもおくれることがない、もう五月ごろからは住友銀行にいわば適切な対処方を要請しております。それで、その後いろいろなことがございまして、大蔵が動かないなら次の手段をとるというような表現のものもたしかあったかと思います。しかしながら私どもは、どのような行動をとっているかということを外部に説明すべきいわれはありませんし、大体返事のしようもございませんので、私どもとしましては、住友銀行を通じましてイトマンの状況についてそれなりに観察、注意を怠らなかったつもりであります。  さらにその後、この住友銀行に対しましては、これはもちろん位置づけとしては定例でございますけれども、昨年の九月二十五日から金融検査に着手をいたしました。その後、この検査の最中にいろいろな出来事が起こり、さらに調査を深める必要を生じましたため、この検査は適例の金融機関検査よりも長期化いたしたわけでございまして、やっとことしの二月十四日に主任検査官から口頭により講評を行ったわけであります。なお今後この検査の結果を踏まえた示達を発出すべく、準備中でございます。  いずれにいたしましても、私どもは、委員の御期待に沿うものかどうかは別といたしまして、私どもの職責に照らして厳正な態度でこの事情の調査及び検査を進めてまいったつもりでございます。
  246. 正森成二

    ○正森分科員 通常の検査が一月半ぐらいで終わるのが約三倍の五カ月かかったということも報道されておりますし、一生懸命おやりになった、それだけまた住友銀行に問題があったということを裏書きしていると思います。  それで、きょうは個別事件をいろいろ聞くというのは趣旨ではございませんけれども、だから聞こうと思ったら、ここへ新聞を持ってまいりましたが、物すごくたくさんあるんですね。しかし、二、三だけは聞かせていただきたいと思うのですが、例えば非常に不明朗だと言われている絵画取引という問題があります。  これは当初の額に比べまして、調べてみたら六百億円を超える絵画取引である。それが初めは売買だとされて、稟議書は売買で起こされているんですね。それはイトマンの関係者が明白に述べております。ところがこれが二倍ないし三倍、西武百貨店の外商の課長が当初は偽造してそういう二、三倍のものを提出したと言われておりましたが、その後の報道によりますとこの課長は、偽造ではなしに上司の了解と指示のもとにこれを行ったということを言っておりますし、あるいは新聞報道によりますと、逆に西武の本社に呼ばれて、一問一答の事前のけいこをして、そして関与しない、関係ないということを言えというようなことを言われ、しかもその後で金一封をつかまされて、口どめ料みたいなものをもらいかけたけれどもそれは返したということを本人が言うております。そのほか警視庁に事情聴取をさせよぅとしたとか、いろいろ不明朗なことが出ておりますけれども、問題は、この絵画取引のそもそもの発端が、住友銀行の磯田会長の娘婿あるいは娘さんというところから河村イトマン社長に依頼があって、それから始まった。しかも、その取引の後、五千万円謝礼がイトマンから、名前もわかっておりますが、磯田氏の娘あるいは娘婿に支払われているということがございます。  それで、これに主として関与したのは伊藤寿永光氏、当時イトマンの常務ですが、それがそもそも住友銀行からの要請によって送り込まれたというように言われているのですね。後で読み上げますが、最近、二、三日前に出ました文芸春秋に河村前イトマン社長が「なぜ磯田一郎氏を恨むか」というのを書いております。私もこれを詳細に読みましたけれども、もちろんこれは自己弁護の手記でありまして、イトマンは決して経営不良ではなくて、十分やっていけたのだというようなことをるる述べるというところに重点があります。しかしながら、その中にも磯田氏との関係では、今まで外にあらわれていなかったことも含めていろいろ言っております。その要旨だけは後でまた申し上げたいと思います。  そして、伊藤寿永光氏の背後には関西財界の地下経済の隠れもない大物と言われる許永中氏、これは関西新聞その他の実質上のオーナーだと言われておりますが、そういうところを通じて売買をしておる。許永中氏は、二、三の新聞に、それは名義はともかく私の取引であるというように言っております。そして、売買であるとすると、それはもう事実行為として終わっておりますから、売買ではなくて絵画を担保とする融資である、だから三月末までに返済すればよいのだという形をとっておりますが、しかし極めて不明朗な形であるということは隠れもない事実であります。  そこで、検察といいますか法務省に伺いたいと思いますが、新聞報道によりますと、法務省はこのことに重大な関心を示して、既にイトマンへの鑑定を行った課長等に事情聴取をしたということが報道されております。私も法曹関係者一員ですから、今捜査がどこまで進んでいるかとか、どういう処分をするつもりかとかいうことを言いましても、捜査の秘密で答えられないというようにお答えになると思いますが、私の見るところでは、これは西武の一課長などができることではなくて、もっと上層部の了解あるいは関与がなければできないことである。しかもこの件は、買った方からいえば明らかに市価の二倍、三倍、物によっては五倍のものがあったというのですが、そういう絵画を十分な調査をせずに買う。しかも、伊藤寿永光氏というのはイトマンの常務であり、同時に売る方の許永中氏から送り込まれたといってもいいような人物だ。そうしますと、イトマンの首脳部については商法四百八十六条の特別背任罪、そういう高値のものを売りつけた、あるいは刑法上は、それを担保にして金を借りましても、これは過大な融資を受けたということで財産上不法な利益を得ておりますから、詐欺罪が成立するということで、個々の課長の鑑定書の偽造とかそういう問題ではなしに、首脳部の特別背任罪もしくは詐欺罪ということで、強制捜査を含めて、これは完全に事実を剔抉することが必要だと思います。  ここからは一般論として伺います。一般論として、時価あるいは実際の価格の二倍、三倍の売買と知りつつ行った、あるいはさせたというようなことがあれば、これは買った方については場合によったら特別背任罪、知って売った方は詐欺罪というのが成立するのじゃないですか。一般論ですよ。
  247. 鶴田六郎

    ○鶴田説明員 お答えいたします。  イトマンの問題についてはマスコミでもいろいろと報道されておりますし、国会でも議論になっているところでございますけれども一般論ということでありましても、個々具体的な事案にかかわることでございまして、その犯罪の成否ということになりますと、これはあくまでも法の定めるところにより収集されました証拠に基づきまして、それにより認定される事実を前提として判断されるべき事柄だというふうに考えておりますので、何罪が成立するとかそういうことにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  248. 正森成二

    ○正森分科員 そんなことは答えなくてもわかっているけれども、たとえどんなことであれ事実を調べて、構成要件に該当することがあれば厳正な対処をする、それは言えるのですか、それも言えないのですか。
  249. 鶴田六郎

    ○鶴田説明員 お答えいたします。  これも大変一般的なお答えしかできないわけでございますけれども、いかなる事件におきましても検察としては、もし刑罰法令に触れる事実があるとすれば適正に対処すべきものと考えております。
  250. 正森成二

    ○正森分科員 法務省としてはそれぐらいまでしか答えないだろうと思いました。しかし、言うておきますが、これだけ社会的に問題になり、我々が新聞を見ただけでもおかしいと思っているのに、イトマンの首脳部や伊藤寿永光、その背後にある許永中氏等についてあなた方が一指も触れないということになれば、会計検査院は、果たして法務省や検察の存在意義があるのか、それに対して予算を出しているのは不当事項ではないのかと言って調べなければならないと思うぐらい職務怠慢ですね。あなた方は国家から給料をもらい、検察という権限を独占的に持っておるということをもっと自覚してやらないと、この分科会での答弁としてはそれで過ごせるかもしれないけれども国民全体に対する信頼などはとても得られないですね。  そこで、いろいろ見ますと、例えば、これもひどいものですね。伊藤前常務の義兄がハワイで土地転がしをやって二十五億円も利益を得たという事件、これは新聞で報道されております。これも伊藤常務が入社してから以後のことですけれども、パン・パシフィック・コーポレーションというハワイの地元不動産会社が邦貨約五十五億三千万円で去年の二月に購入して、そしてもう八月にはイトマン・ハワイに八十億幾らで転売した。わずか半年間で二十五億円。この金はだれが払ったかといえば、イトマンが払っているのですね。この二つの会社は両方とも伊藤前常務の義兄が社長をしているのですよ。自分が社長をしている会社から自分が社長をしている会社へ転がして半年間で二十五億円もうけ、その金はイトマンに払わせるということをやっているのです。この義兄というのはイトマンの非常勤取締役も兼ねているのですよ。こんなことが許されますか。違う会社だって半年の間に土地を転がして二十五億もうけられれば、もうけたな、大分えげつないなと。私は大阪ですから、あいさつがもうかりまっかという大阪ですが、その大阪でさええげつないな、こう思うのですよ。そういうことを外へ広げてハワイでやる。あるいは京都のKBS、近畿放送の土地などを担保にして、放送会社ですよ、それで百四十六億とか莫大なお金を引き出す。従業員も泣いておりますが、そういうことを次から次へとやる、こんなことが許されるのでしょうかね。  それで、今言いました河村良彦というのが独占手記を書いております。この中で、私が初めに言いましたように自己弁護ですよ、しかし一部はよく検討しなければならぬことがあるのです。それはこう書いております。  「伊藤寿永光元常務を入社させ、その伊藤君がわずか九カ月間で約二千六百億円にのぼるいわゆる伊藤案件という絵画を含めた問題物件を伊藤萬に背負わせたことについて、伊藤萬はマスコミから袋だたきにあっています。」こう言うて、この伊藤寿永光を入社させたのが住銀であり、そして磯田氏の強い影響力だったということをここで書いているのですよ。例えば、「十月七日に、磯田さんは住銀青粟台支店長が出資法違反で逮捕された責任をとる形で辞意を表明、十六日付で会長を辞任しましたが、あいかわらず住銀の実権を握っていました。」こういうぐあいに書いて、その後、「十一月七日、私は磯田さんと伊藤君を交えて三人で会談をしました。」大阪のヒルトンホテルの一室だ。そして磯田さんがこう切り出した。「河村君も伊藤君も二人とも伊藤萬を辞めたらどうか。そうすれば、伊藤萬が伊藤君に融資している二千億円については住友銀行が肩代わりして伊藤君に融資しよう。伊藤萬の面倒も住友銀行でみますよ。しかし、二人とも会社に残るようであれば、伊藤萬の会社更生法を申請する」こう言ったというのです。このことは、二千億円という安宅産業の倒産に匹敵するお金を、これは皆預金者から金を集めて、住友の従業員が営々と働いて稼ぎ上げたお金ですよ。それを事実上どぶに捨てるようなことを磯田氏が堂々と言う。しかもこれは会長をやめた後ですよ。私はこのことに注目したいのです。会長をやめた後にこういうことが言えるということ、あるいは言わなければならないということは、イトマンとの関係について重大な責任を持っており、自分が処理しなければならぬ、自分がするのが当然だと思っているからこういう言葉が出る。それなのに、辞任したときには、土田さんあなたは、イトマンには関係ないのですねとかなんとか磯田氏を詰問したということまで新聞に出ているのですよ。そのときに関係は一切ないと答えたと新聞に堂々と出ているじゃないですか。関係のない者が会長をやめてから何でこんなところへ出ていって二千億円をもう事実上どぶに捨てるようなことを提案するのですか。  またこう言うています。「磯田さんと親密度を増した伊藤君は、夜中の一時、二時に磯田邸から私のところに報告の電話をかけるまでになっていたのです。」こう言っているのです。だから、許永中氏グループから送り込まれた伊藤寿永光の後ろに磯田前会長かいたということは、これを見たって隠れもないことじゃないですか。  またこう言っています。「私はこれまで磯田さんのいうことはなんでも聞いてきました。自分で磯田一家の第一か第二の番頭格のつもりでこれまでやってきたのです。世間では伊藤萬のことを、「住友銀行のタン壺」だとか、あるいは住友銀行で腐ったものを一生懸命焚いて掃除している「住銀の風呂焚き」と称するものがいることは知っています。」よう言うたと思うよ。そういうぐあいに言うているのです。またこう言っていますよ。「伊藤萬における絵画取引は、私が磯田さんの娘夫婦である黒川園子・洋夫妻から受けた電話から始まったのです。それは平成元年の十月頃だったと思いますが、園子さんと黒川君の二人から別々に私宛てに電話が入りました。」その後磯田会長は繰り返し娘をよく頼むと言った、こう言っています。  また最後がおもしろい。法務省、よく聞いてくださいよ。こう言っているのです。「さらに、一浪人となった私の立場としては、伊藤萬の生死を手中にする大きな力に対する抑止力として、事実を明確にできる証拠を現時点においては伏せて置きたいと決意したからなのです。」こう言って、この手記を書いた自分の動機を語っているのです。つまり「伊藤萬の生死を手中にする大きな力に対する抑止力として、事実を明確にできる証拠」を持っているのだけれども現時点では伏せておきたい、つまり検察が調べれば何ぼでも言いますよ、私だけが悪いのではないのですよ、住友銀行のもっと大物が実際上これをやったんですよということを言っていると見てもしようがないじゃないですか。文芸春秋というところに独占手記で堂々と出しているのだから、これは国会でもやらなくてはしようがない。それに対して銀行局や法務省、ほうっておくのですか。国民はとてもそんなこと許さないですね。
  251. 土田正顕

    ○土田政府委員 私ども立場の方から御説明を申し上げます。  ただいま委員がいろいろと御披露されました記事は、私どももしかるべき注意を持って大体は読んでおります。それから、最近殊に大阪方面で出されております新聞では、実にいろいろな記事が出ておるようにも聞いております。  ただ、私どもの職務と申しますのは、金融機関の資産なり経営の健全性をマクロ的にチェックするというのが主眼でございまして、金融機関ではない一つの事業会社の経営内容なり、その事業会社とさらにその外側におりますいろいろな取引先とのやりとり、そのようなところまでを克明にトレースするというのは私どもの職務ではございません。ただし、もちろんそのような事実が住友銀行を初めとする金融機関とイトマングループとの間の取引に関係する、ないしはそういうものに影響を及ぼすというような状況でありますときには、検査なりそれから行政によるいろいろな事情照会によってしかるべき実情を明らかにするように努めてまいったところでございます。ただ、ただいま委員がいろいろ仰せられました特定の個人の親類の行動とかその人自身の御発言とかいろいろございますけれども、そのようなところに立ち入るという話は恐らく私どもの仕事を超えておると思います。  それから、私の磯田会長への質問その他についてのお尋ねもございました。私は住友銀行の幹部と何回も話をいたしましたし、説明を聞きまして、それで実情調査の助けとしたつもりでございますが、やはりその中には金融機関と第三者との個別取引の内容にわたる部分が多うございますので、一々のことをここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  252. 鶴田六郎

    ○鶴田説明員 お答えいたします。  イトマン疑惑についてはいるいると御指摘あるいはマスコミ報道等がなされていることは承知しております。  この問題につきましては大阪地検におきまして情報収集中であると承知しておりますが、それ以上のことは何とも申し上げかねますので、御了解いただきたいと思います。
  253. 正森成二

    ○正森分科員 それでは光進の関係について少し申し上げます。  ここに持ってまいりましたのは、住友銀行不正仲介事件についての検察官の冒頭陳述の要旨であります。これはあなた方が裁判所に言ったものですから否定できないと思います。  非常に長いもので全部を読むわけにはいきませんが、これは御承知のように山下ほか、それからその後任の支店長も同じように出資法違反等で起訴されております。それに関することです。こう言っているのですね。  「ところで、青葉台支店は昭和六十一年以来七期連続で業績表彰を受けている住宅地区における全国屈指の支店だったが、西丸が着任してからは業績は低下の一途をたどっており、自己の支店長としての地位が危うくなると考え、苦悩は深まるばかりであった。 そこで、被告人西丸は、同月二十五日ころ、同山下に対し「業績を伸ばす方法を教えて下さい」と依頼したところ、「これはあまり人に勧められないヤバイ話なのだ。顧客から光進の小谷に貸付けするように仲介したのだ。」浮き貸しですね。「私の知人の秋山が大物仕手グループ一員だから、これに貸付けるように勧めたらどうか」と打ち明けられた。ここにおいて、被告人西丸は、自己の住友銀行内における地位の保全を図ろうと決意し、被告人山下に対し、仕手集団に対する取次ぎ等を依頼し、同山下も了承した。」こういうぐあいに書いてあります。  それで、この中には弁護団の意見も載っておりますが、弁護団は、被告人の目的は、重要な顧客の支店離れの防止であり、同条の利益を図る目的ではなかった。これは、私は弁護士ですけれども、自己または第三者の利益を図りですからね。自己の利益は図ってなかったかもしらぬけれども、小谷や光進の利益を図ったことは間違いないので、これだけでは十分な弁護にならないのですけれども、そういうことを言っている。  つまり、ここであらわれていることは、山下というのは、ここに記録もございますけれども、仕手戦に参加してそれで金をもうけて、昭和六十三年の暮れごろに世田谷に、土地だけでも二億円という豪邸をつくるということをやってもうけたということがわかっております。この西丸という後任の支店長は、そういうことはやってないのです。しかし、前支店長がこれだけ業績を上げているのに、出資法違反の浮き貸しをしてその利息を支払われたら、それをまた自分の支店へ預け入れてもらう、そうすると金の移動もあるし預金量もふえる、それが自分のところになってだあっと減ったら、自分自身が出世できない、他の行員にも迷惑かける、えらいことだ、何とか業績を上げないかぬといってこの犯罪に入っていったんだ、こう言うているのです。つまり、そのことはどういうことかというと、住友銀行では犯罪をしなければ支店長の地位が保てないというような状況がつくり上げられていたということじゃないのですか。そこが一番問題なんですよ。そんなことになったときに、あら、おれの前任の支店長はこんなことをしていたのか、おれは何ぼ何でもこんなことをしてはいけないから、上層部に言うてそして真実を伝えてやろうという気が起こらぬで、悪いことをしてもやはり営業成績を上げようというような体質になって、それこそ磯田氏が向こう傷を恐れるなと言うから、向こう傷も向こう傷、もうどえらい傷を負うたわけですね。だから、そこに非常に大きな問題がある。しかも、この山下氏というのは、新聞で大きく報道されておりますように、家については、これは小谷氏からの仕手戦に参加したもうけによって、あるいは別途お金を貢がれて購入したというふうに新聞に書かれているのですね。  ところで、銀行局長、伺いますが、この浮き貸しというのは二百数十億円に上るのですね。また、迂回融資も住友銀行から二十億円以上なされたと聞いております。これは一支店長の決裁の範囲を超えるのですね。必ず本店が決裁しなければなりません。したがって、そういう点で上層部に責任がないなどということは絶対にないというように思うのですね。そして、当時そういうものの営業関係の責任者をしていたという人は、私はあえて名前は言いませんが、住友銀行の首脳部で、一定の責任もとっております。  ところで、検察にも伺いますが、この住友銀行の首脳部の一人、仮に名前をAとしておきます。この人も山下と同じ時期に数億円の自宅を入手しているのですよ。住所もちゃんとわかっておりますが、世田谷です。おまけに、新築のものに増築までして、そこに平成元年の一月末から二月にかけて入居をしております。自分の財産に手をつけた形跡もありません。私のところに内部告発が来ました、あえて名前は伏せておきますが。そうだとすれば、住友銀行の一支店長にだけそういう利益を図り、悪いことをさせたのじゃなしに、上層部にも小谷が手を回して同じようなことをやらなかったと言えるでしょうか。そういう点に関心を持って調べていますか。
  254. 鶴田六郎

    ○鶴田説明員 お答えいたします。  お尋ねの出資法違反につきましては、昨年の十月五日に住友銀行の青葉台支店の山下元支店長及び共犯者一名を逮捕し、所要の捜査を遂げた上、十月二十六日に起訴し、あわせて同日、その後任の西丸元支店長を起訴し、この事件につきましては現在東京地裁におきまして公判中でございますが、その捜査の過程におきまして、起訴済みの者以外に共犯者等の犯罪の嫌疑が認められるような者はいなかったというふうに聞いております。
  255. 正森成二

    ○正森分科員 通り一遍の返事ですね。  ここは「経済界」という雑誌があります。財界から影響の非常に強いものですが、それには小谷と住友銀行との関係の端緒と言えるようなことが載っております。それは、昭和六十年の暮れに、南インターナショナルという会社の熱海に持っている二万数千平米の物件、それについて、住友銀行が小谷という人物を連れてきて、ここに売却しないかというような話を持ち出してきて、そのときに小谷というようなのを知らないのですね、この人は神戸ですから。そこで話をつけたのが有名な新宿新都心支店で、まさにその仲介をしたのが当時そこの副支店長だった山下被告なんですね。  それで、こういう話があるということで事が起こって、非常に奇妙なことなんですけれども、所有権移転登記一式を住友銀行が預かるというようなことまでやったということがこの「経済界」には書いてあります。そして、そういうことは一神戸の支店長等がやったんじゃなしに――この事件はもちろん裁判になっています。宮崎文雄という当時の神戸支店長の裁判の証言銀がここにあります。それを見ますと、それまではコーリン産業などという、光進ですね、取引は全然なかった。それを、新宿新都心支店の方から連絡があって、こういう契約ができたんだ、じゃそれはだれを言うたんだというときに、小谷を南に紹介するとき住友の上層部と相談をしたというようなことをさっき答えられたんですけれどもと言うたら、その上層部はだれかと言わないのです。「お答えしなければいけませんか。お答えしたくないのですが。」というようなことを言いまして、盛んに渋ったあげく、こう言うとるのです。「資金をお貸しする新都心が、小谷さんにお貸しする窓口は東京の本部でございますから東京本部でその貸金の申請が出た時にそれを了とするということが必要になるわけです。ですから東京本部のその衝に当たってるトップと相談をしたと、こういうことでございます。」裁判所で明白に言うているのですよ。そんなもの、一山下だとか一宮崎というようなものじゃなしに、住友銀行のトップがまず小谷をある会社に紹介をして、二十億とか二十五億とかいうお金を事実上詐取する手伝いをした。それから始まって小谷に対して常時百億円ほど融資し、最後は蛇の目が千八百五十億円ですか、肩がわりするのにも、時間がありませんから言いませんが、住友から富士から埼玉銀行から、いっぱい関与しておるということになるのです。蛇の目に対して小谷が恐喝容疑と言われているけれども、小谷はなるほど悪いでしょう。しかし本当に小谷だけが悪いのかといえば、蛇の目の首脳部だとか埼玉銀行にしたって、任務に背いた行為をして会社に重大な損害を与えた特別背任が十分成立するじゃないですか。少なくも蛇の目については明々白々だと言ってもいいぐらいですね。検察あるいは法務省か、ここで聞いてもまた個別の問題についてはお答えできませんというて顔に書いてあるから、もう答弁は求めないけれども、しかし、それで済むと思っていたら大間違いですよということを申し上げておきたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、新しい問題をひとつ聞きたいと思います。  銀行局長、こういうことをやりますと、結局のところ、住友は別会社で不良債権だけ五千億円ぐらいまとめて、それは全部住友が背負うと言っているのです。そのうち、焦げつきで返済不能が少なくも二千億あるという、しかも、五千億全体について金利は取れないかもしらぬという、つまり損害は二千億円プラス五千億円の金利ですから、仮に八%としても毎年四百億ふえるのです。安宅産業よりずっと上になるんです。その金はだれが稼いだんですか。従業員が一生懸命働いて稼いだんです。それからまた、預金者が預金して、それを一定の利ざやを取って健全なところへ貸す、そこで稼いだものをイトマンだとか小谷みたいな者に、そしてそのイトマンの後ろにいた許永中というような地下経済の者のところへ行くわけです。そんなことをまじめに働いている者は絶対に許せないですね。  そこで伺うのですが、一方、住友銀行を含めて大手銀行は、銀行労働者に対して残業手当を支払わない、サービス残業を押しつけることが横行しているのです。ここに持ってまいりましたのは、「SUSONO」といいまして富士銀行が出している社内誌ですが、その中に業績が一位の支店だといってこんな写真が出ているのです。全員の写真がこうやって写っているのです。そこでどう書いているかといいますと、「平成二年度上期の業績表彰のナンバーワン店として受賞代表に輝いた上野支店。業績表彰、事務表彰ともに二期連続で受賞し、さらに店頭表彰を受賞。そのうえ、早期終業体制が完全に定着しているという。その秘密がどこにあるのかを上野支店のみなさんに聞いてみました。」などという記事が載っている。  その中で、「平均退行時間は午後七時半」との中見出しがあるのです。ここにちゃんとあります。そして「当店では、最終退行時間を、ビバの日は六時」、ビバというのはビバウエンズデーといって、水曜日を特に早く帰る日に決めているのです。「ビバの日は六時、通常日は八時、指定日は九時と決めて早帰りを実施しています。」指定日というのは、土曜日が休みになったので、ある特定の日は、通常の勤務時間は八時四十五分から五時までなんだが、指定日は五時四十五分まで働く、それを指定日と言うのです。そして、「平均退行時間は午後七時半、「この早帰り体制が完全に定着するのには、約一年かかっている」(秋山副支店長)とのこと。」と書かれているのです。  ところが、いいですか、平日は五時まで、指定日は八時四十五分から五時四十五分までですから、平均が七時半だということになれば、一体何ほ残業しなきゃならないか、これは小学生でも数字で出てくるのです。そうすると、この行内誌の記事に沿って計算すると、月の残業時間は一人最低でも五十時間なんです。これが早期終業体制が完全に定着していると誇らしげに掲載されているのですから、ほかの支店ではいかにひどいか、推して知るべしですね、ここが一番いいというのだから。重大なのは、こうした残業に対して残業手当がきちんと支払われないシステムが銀行当局によって構造的につくられているのです。  銀行局長それから労働省、来ていますか。  八八年三月三十一日の参議院社会労働委員会で沓脱タケ子議員が質問した際に、富士銀行の「時間外予算の運営」という通達の内容を取り上げました。私もその現物を見ております。それによると、富士銀行の全部長、支店長に人事部長から半期ごとの時間外予算時間を指定し、昭和五十九年度下期では管理職階は月二十五時間、男子事務行員二十二時間、女子事務行員十時間等となっており、「五九年度下期の時間外運営の重点は、時間外予算時間の厳守とするが、そのための留意事項については別途通達申しあげる。本部については前期同様、時間外を大巾に行った者は個人別に報告することとなっているので留意願いたい」、こう言っているのです。この大幅超過者というのは「三カ月九〇時間」ですから一カ月三十時間ということです。それぐらいなのに、早帰りが徹底しているという模範店が一人五十時間やらなければならないようなことを堂々とこれに書いているのです。こんなこと言っているのは全部うそっぱちだということを自分のところの行内誌で宣伝しているのです。  私が確認した別の行内文書では月ごと、グループごとに時間外の目標と実績を掲げ、渉外の男子行員では十八から二十時間となっているのです。だから、これは完全に守れないことなのです。月末に時間外を集計して上司に提出するが、ここで決めた、予算上決められている時間、それを上回ると黙って突き返されるというのです。残業をしたということで請求を出しても黙って突き返される。だれかが目標より多い申請をすると、他の人のをその分削って調整し、平均が目標に合うように再度提出するが、その際訂正の跡が残らないように文書全体を初めから書き直す。これは私がそういうことを常時やっている人から直接聞いてきたのですよ。労働省、こういうことをやっているのです。  このやり方は住友銀行でも全く同じで、住友では組合が平均退行時間についてのアンケートをとったが、結果の数字は経営者には全部行っているのに、組合員には機関紙に執行部のコメントが載っただけで数字は一切発表していないのです。労働組合が労働組合の役割を果たしていないのです。労働基準法では労働時間の延長等は割り増し賃金を支払わなければならないとなっており、賃金そのものについても労基法百十九条、百二十条で罰則があるのですね。  労働省、こういう事態をどう思いますか。また、これらの銀行では、残業は本人が申告しなければ払わなくてもいいんだということが公然とまかり通っているのですよ。残業なんというものは会社がきちんと管理をして、三六協定が必要なんでしょう。それが残業した労働者が申告しなければ残業代を払わぬでいいというようなことを公然と言う。労働省はいつからそういう解釈をとったのですか。
  256. 山中秀樹

    ○山中説明員 残業時間が労働時間であるか否かは実態に即して判断すべきものであると思います。労働者が使用者の明示または黙示の業務命令を受けてその命令のもとに働いている限り、その残業時間は労働時間である、使用者は法定労働時間を超えた残業時間に対して割り増し賃金を払わなければならないというふうにされております。このことは労働者の請求の有無とかかわりなく遵守されなければならないというふうに理解しております。
  257. 正森成二

    ○正森分科員 それは当然ですね。それを申告しなければ払わなくていいというふうなことを公然と言っている。  それから、さらにリクルート残業というのがあるのです。八月二十日まではいわゆる青田買いは禁止されているはずですけれども、各銀行では、入社一年から三年目の行員をリクルーターと言って真に就職させたい学生の抱え込みをやっているのです。昔、イギリスではインクロージャーというのがありましたけれども、それと似たようなもので、どうするかというと、この男は採りたいと思うと、リクルーターというその会社に勤めている一年生から三年生が押しかけて、それで映画を見に連れていく、食べに連れていく、よその会社が手を触れないように自分たちで囲い込むのですよ。そういうことをリクルーターがやらされるのです。  第一勧業銀行では、四月末から入行三年目の行員をチーフにして、入行一、二年目の行員を使い、総勢約二百五十人ぐらいを駆り出す。まず、大学のゼミなどの仲間から他行、他企業の動向、情報を集める。人事部に対象者の学部と名前を告げ、人事部で思想などの調査をする。思想が悪ければあかんのですね。共産党だというと、これはやめておこう、こういうことになるらしいのです。七月が本番で、七月三十一日の国家公務員試験以前に有力な人を内定する。六月から七月が中心で、連日午前二時ごろまで対象者をべったりと囲んでよそへ行かせない、接触させない。土曜日、日曜日も旅行や映画へ連れていく。夜は十二時退行というように出勤簿に書かなければしようがないようになっておる。映画代や旅行代はまとめて請求するように言われているから、安月給の一年生、二年生、新入社員がたまらないのだということで困っておる。このリクルーターが余り夜一生懸命やるものだから、寝不足で倒れた、救急車で運ばれた。それで昨年の八月の組合大会でリクルーターの時間外手当について質問が出た、余りにもひどいじゃないかと。そうしたら、びっくりして八月八日に、「採用応援者の平成二年七月分の時間外勤務につきましては、給与計算上の時間的制約もあり、当室にて直接入力いたしましたので、ご了承下さい」云々と言って、長くなるから引用はやめますが、そういうことでやっと払うようになって、八月十八日の給料日に支払われた。  ところが、後日談がある。その後、大和銀行と富士銀行でリクルーターの時間外手当が支払われた、これはまだいい方です。第一勧銀、富士銀行等は支払われた。そうしたら、三菱銀行は組合の大会で問題提起されたが、執行部は、あれはボランティアだと言い逃れをし、人事部の首脳は、よそでは支払っているとの指摘に対して、なぜ第一勧銀は余計なことをやってくれたのか、けしからぬ。いいですか、労働省、よく聞いておきなさいよ。三菱銀行は、なぜ第一勧銀は余計なことをやってくれたのか、けしからぬ、法律を守る方をけしからぬと言うて、それでボランティアだと言い張っておる。これは明白に労働基準法にも違反する、ある意味では犯罪行為じゃないですか。自分首脳部を先頭にして何千億という金をどぶに捨てるような不当な融資をやり、地下経済とも結びついており、それについてろくなことは言えない。労働者の勤労の成果をそういうぐあいに捨てる、そして働いた者には残業代を払えない、これが我が国の経済をリードしているという都銀のやることですか。警察だって別にこのことについて動いたらいかぬということはないのですよ、労働省が基本的にやるのだけれども。労働省が何年か前に、我が党の沓脱議員も、よく調べて善処するようにと言いましたけれども、銀行局長及び労働省の御決意のほどを承って、時間でございますので、委員長、質問を終わらせていただきます。
  258. 土田正顕

    ○土田政府委員 ただいまつぶさに実情の御説明を承ったわけでございますが、私ども銀行局の立場から申しますと、私どもの職責は主として銀行法その他金融法令に基づきまして金融機関の業務運営についてそれが適切な状況にあるかどうかを監督してまいるというようなことが主目的でございます。したがいまして、通常、人事管理、組織管理などにつきまして余り介入するようなことはしておりませんし、それから労働環境なり労働条件については基本的には労使関係の問題であると位置づけております。  ただ、これにつきましても基本的な行政としましては労働行政のお仕事でありましょうが、ただいまいろいろ御指摘がありましたような事実をよく承りまして、今後考えてまいりたいと思います。
  259. 山中秀樹

    ○山中説明員 金融界につきましては、労働条件を初めとした法定労働の確保のため監督指導に取り組んでいるところであります。今後とも的確に対応したいというふうに思います。
  260. 正森成二

    ○正森分科員 大蔵大臣、最後に、以上のような情報をお知らせいたしましたので、よろしく善処していただきたいと思います。
  261. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いろいろと私自身が知らない労使関係など聞かせていただきました。十分拝聴させていただいたつもりです。
  262. 正森成二

    ○正森分科員 ありがとうございました。
  263. 穂積良行

    穂積主査代理 これにて正森成二君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日水曜日午前十時から開会し、法務省所管及び大蔵省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十三分散会