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1991-03-11 第120回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会平成三年三月七日(木曜日)委員会に おいて、設置することに決した。 三月十一日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       倉成  正君    林  義郎君       穂積 良行君    増岡 博之君       串原 義直君    佐藤 敬治君       冬柴 鐵三君    正森 成二君 三月十一日  林義郎君が委員長指名で、主査選任された  。 ────────────────────── 平成三年三月十一日(月曜日)     午後二時開議  出席分科員    主 査 林  義郎君       衛藤 晟一君    倉成  正君       穂積 良行君    増岡 博之君       川俣健二郎君    串原 義直君       佐藤 敬治君    仙谷 由人君       筒井 信隆君    吉田 和子君       冬柴 鐵三君    寺前  巖君       正森 成二君    兼務 伊東 秀子君 兼務 上原 康助君    兼務 小森 龍邦君 兼務 沢田  広君    兼務 新村 勝雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務大臣官房会         計課長     阿南 惟茂君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君  分科員外出席者         内閣官房内閣審         議官      中西 明典君         環境庁自然保護         局野生生物課長 菊地 邦雄君         法務省刑事局国         際課長     馬場 義宣君         大蔵省主計局主         計官      田谷 廣明君         文部省生涯学習         局社会教育課長 鬼島 康宏君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      辻村 哲夫君         文部省学術国際         局国際企画課長 牛尾 郁夫君         文部省学術国際         局留学生課長  中西 釦治君         厚生大臣官房国         際課長     澤村  宏君         厚生省薬務局企         画課長     太田 義武君         農林水産省経済         局国際部国際協         力課長     三宅 輝夫君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      高原 弘栄君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 分科員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   穂積 良行君     衛藤 晟一君   串原 義直君     仙谷 由人君   佐藤 敬治君     吉田 和子君   冬柴 鐵三君     遠藤 乙彦君   正森 成二君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   衛藤 晟一君     穂積 良行君   仙谷 由人君     筒井 信隆君   吉田 和子君     川俣健二郎君   遠藤 乙彦君     河上 覃雄君   寺前  巖君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     佐藤 敬治君   筒井 信隆君     串原 義直君   河上 覃雄君     冬柴 鐵三君 同日  第一分科員新村勝雄君、第五分科員伊東秀子君  、上原康助君、第六分科員沢田広君及び第七分  科員小森龍邦君が本分科兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ────◇─────
  2. 林義郎

    林主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりました。何とぞよろしくお願い申し上げます。  本分科会は、法務省外務省及び大蔵省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。中山外務大臣。     〔主査退席串原主査代理着席
  3. 中山太郎

    中山国務大臣 平成三年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、五千七百六十三億五千五十九万七千円であり、これを平成二年度予算と比較しますと、四百二十四億二千六十一万八千円の増加であり、七・九%の伸びとなっております。  国際情勢は、東西関係の変質という状況のもと、昨年来の湾岸危機、ソ連・東欧情勢の変化、さらには欧州における国際関係変革等、新たな国際秩序への模索が始まっております。このような中で、我が国世界の平和と繁栄をより確固たるものとしていくために幅広い分野で積極的に貢献していかなければなりません。これは、国際社会に枢要な地位を占めるに至った我が国の重要な責務であると同時に、世界の平和と繁栄の中で、より豊かな国民社会を形成していくために必要不可欠な道であります。かかる観点から、我が国外交に課せられた使命は極めて重要であり、従前以上に強力な外交を行っていく必要があります。平成三年度においては、定員等増強在外公館機能強化国際協力推進の三点を最重要事項とし、その他情報機能海外邦人対策を加え、予算強化拡充を図る所存であります。  外交強化のための定員増強につきましては、平成三年度において百十名の増員を得て、外務省定員合計四千四百十九人となります。また、機構面では、在マイアミ総領事館及び在ストラスブール総領事館を開設することといたしております。  在外公館機能強化に要する経費としては、在外公館施設整備拡充現地補助員待遇改善及び不健康地対策強化等百九十九億円を計上しております。  次に、「国際協力構想」を中核とする国際協力推進に関する予算について申し上げます。  「国際協力構想」の三つの柱は、政府開発援助ODA)の拡充国際文化交流強化、そして平和のための協力強化であります。  まず、平成三年度政府開発援助ODA一般会計予算については、政府全体で対前年度比八%の増額を図り、ODA第四次中期目標に盛られた諸施策の着実な実施を図るため、特段の配慮を払いました。このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比五・七%増の二千百二十五億円計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が一千七百二十六億円、食糧増産等援助費が三百九十九億円であります。このほか、技術協力予算拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費は対前年度比七・三%増の一千三百四十一億円を計上しております。  次に、国際文化交流強化でありますが、世界の異なる文化間の相互交流を促進し世界文化をより豊かなものにするとともに、近年の対日関心の高まりへの積極的な対応を図ることが求められております。そのため、国際交流基金事業拡充及び実施体制強化文化協力の促進のために百六億円を計上しております。  平和のための協力強化につきましては、我が国は、国力の伸長に伴い、経済協力分野のみならず、世界の平和と安定のために貢献し、相応の国際的責任を果たすことが必要との認識に立ち、対前年度比二十四億円増の百七十九億円を計上しております。  さらに、人類共通の問題への対応として、全地球的規模で顕在化しつつある環境問題あるいは麻薬問題に対し、国際機関を通じて積極的貢献を行うべく、四十二億円を計上しております。  このほか、情報機能強化及び海外邦人対策整備拡充に配慮しております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましては、お手元に「国会に対する予算説明」なる印刷物を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。  以上であります。
  4. 串原義直

    串原主査代理 この際、お諮りいたします。  ただいま中山外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 串原義直

    串原主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────    外務省所管平成三年度予算案説明  外務省所管平成三年度予算案について大要をご説明いたします。  予算総額は五千七百六十三億五千五十九万七千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費四千三百四十六億五千六百五十六万八千円、エネルギー対策費三十六億三百八十万四千円、その他の事項経費一千三百八十億九千二十二万五千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省四千九百五十九億四千六百三十万三千円、在外公館八百四億四百二十九万四千円であります。  只今その内容についてご説明いたします。     (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費二百五十四億六千六百三十二万七千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、七七一名の人件費及び事務費等、並びに審議会運営経費であります。  第二 外交運営充実に必要な経費四十一億二千百五十一万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉我が国に有利に展開させるため本省において必要な情報収集費等であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費百十九億七千三百四十四万五千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金九十億七千九百八十八万三千円及び啓発宣伝事業等委託費六億六千九百八十三万九千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費五十二億九百三十一万九千円は、旅券法に基づく旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費であります。  第五 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費三十七億六百九十一万七千円は、アジア北米、中南米、欧州、大洋州、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十三億六千百六十九万一千円、財団法人日本国際問題研究所補助金三億二千三十六万四千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五千四百十三万七千円及び社団法人国際協力会等補助金一億四千五百九十万五千円並びにインドシナ難民救援業務委託費九億二千八百四万四千円であります。  第六 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費一億三百八十四万六千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 条約締結及び条約集編集等に必要な経費五千四百二十一万一千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八 国際協力に必要な経費十八億一千七百五十四万六千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金四千七百四十万二千円であります。  第九 経済技術協力に必要な経費三十六億九千四百八十三万五千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金十六億六千百四十八万円等であります。  第十 経済開発等援助に必要な経費二千百二十五億六千八百六十万九千円は、発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。  第十一 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費八百四十二億九千六百五十六万一千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十二 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費三十六億三百八十万四千円は、我が国が加盟している国際原子力機関支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十三 国際分担金等支払に必要な経費五十二億三千二百八十一万円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払 うため必要な経費であります。  第十四 国際協力事業団交付金に必要な経費一千三百九億六千四百五十六万三千円は、国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団出資に必要な経費三十一億三千二百万円は、国際協力事業団の行う開発投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。     (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費六百五十一億一千三十万円は、既設公館百六十八館六代表部平成三年度中に新設予定の在マイアミ総領事館及び在ストラスブール総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計二、六四八名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費七十七億七千八百十万九千円は、諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な情報収集費等であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十二億二千二百六十三万六千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国紹介するとともに、国際文化交流推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制維持強化に必要な経費三億四千四百十四万九千円は、自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費三十九億四千九百十万円は、在インド大使公邸営工事(第二期工事)、在ノールウェー大使公邸営工事(第二期工事)、在ジュネーヴ国際機関代表部事務所営工事(第五期工事)等の建設費、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管平成三年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ─────────────
  6. 串原義直

    串原主査代理 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ─────────────
  7. 串原義直

    串原主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
  8. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 先日新聞にワシントン・ポストの発表いたしましたアメリカでの世論調査の結果が出ていました。今度のいわゆる湾岸戦争終結直後の世論調査でございまして、それに基づきますと、日本については「信用するようになった」が一九%、「失望した」が三〇%、それから英国に対しては「信用する」が七一%、「失望」はわずか二%、フランスは「信用する」五五%、「失望」六%、ドイツについては「信用するようになった」が二五%、「失望した」が二二%となっています。そしてさらに、この湾岸戦争敗北者に分類をしたのはイラク、ヨルダン、イラン、それからパレスチナ人日本というぐあいになっておるようでございます。このアメリカ世論調査の結果をどう見られるのか、これをまず外務大臣にお尋ねしておきます。
  9. 中山太郎

    中山国務大臣 今般の湾岸戦争に関するアメリカの、今委員がお示しの世論調査の結果につきましては、そのサンプル調査方法等について具体的な提示がございませんので、私の方からもそれに関する正確な政府意見というものを申し上げるのはどうかと思いますが、この問題は、湾岸におきます今回の平和回復のための努力を、人が汗をかいて目に見えるような貢献をした国、しない国という二つの大別の方法があるのだろうと思います。これだけ映像の発達した時代におきましては、目に見える協力というものが一般の大衆には非常に大きな印象を与えるのではないか、こういうことから考えますと、我々日本も、金だけではなくて、やがて人を出す協力のことをどうするかということについて御議論をいただかなければならない時期が到達したものと考えております。
  10. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 私どもも確かにそのとおりだというぐあいに思います。日本アメリカ同盟関係にある。また、昨年海部総理は、ブッシュ大統領と会見後にグローバルパートナーシップということも言われました。しかし、この結果を見まして、私どもは非常に深刻であるなということを思います。日米信頼関係を最大の任務としている外務省としまして、もちろん国連を中心とする世界各国との友好を維持するということ、その第一に日米関係を挙げているわけでございますので、この結果につきまして、私は、ある意味では日本外交における問題点というか、失敗にもなるのではないか。この結果を見まして、少なくともアメリカ世論がそういうぐあいに見ているということは大変な結果だろうというぐあいに思っておるのですが、なぜこのようになったのかということについて、今外務大臣も若干のお話がございましたが、そのことにつきまして、いま一度その原因について大臣からお聞きをしたい、このように思います。
  11. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、湾岸の緊張が高まってイラクがクウェートを侵攻した時点で、もうペルシャ湾には当時日本に油を運ぶためのオイルタンカーが二十数隻毎日動いておったわけでありますけれども日本からの輸送協力について、当初政府が考えたとおり、飛行機にいたしましてもあるいは船舶にいたしましても、なかなか所期の計画どおりには運航ができなかった。こういう中でアメリカ国務省筋は、日本はどうして油を運ぶ船は行っても物資を輸送する協力する船が出せないのかという疑問があり、航空機に関しても同様なことがあった。そのようなことから、このような一般的な国民感情の中に問題が浸透していっているということを申し上げざるを得ないと思います。
  12. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 ぜひともこのことにつきまして、外務省のみならず政府を挙げての総括をする必要がある。例えばアメリカですと、ベトナム戦争が終わった後大変な膨大な白書が出されまして、それが議会にも報告されました。いろいろな形でその国の外交におきまして、あるいは安全政策上もそれが役立ったと言われております。日本政府でもぜひそうすべきだと思うのですが、外務大臣、その意思はございませんか。
  13. 中山太郎

    中山国務大臣 委員の御意見と全く私は同じ意見を持っておりまして、既に外務省の次官以下には、今回の湾岸危機を経験した日本外交担当者としては、どういうところにうまくいった点、うまくいかなかった点、将来改良すべき点があるかということを総括すべきであるということで、既に第一回の幹部会において総括を始めておりますが、引き続きこれから継続をいたしまして、来年度の概算要求が出るまでに外務省としての総括の結果を公表いたしたい、このように考えております。
  14. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 本日のこの予算概要の中にも、外務省人員増について約百十名ということが書かれておりまして、四千四百十九名ということに定員がなりました。なっておりますけれども日本外務省人員は極端に少ないということを私どもよくお聞きをいたします。そういう中で、アメリカイギリスフランスドイツ等と比較して、この外務省人員というのはどういう位置にあるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  15. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  諸外国外務省との定員数の比較についてでご ざいますが、必ずしも我が国と諸外国との外務省の定義あるいは職員の範囲というのは一致しておりませんので、そのまま比べることはいかがなものかというふうには思いますが、例えて申し上げますと、アメリカにつきましては、例えば本省職員及び在外職員合わせまして一万五千九百名、イギリスが八千二百四名、フランスが六千六百三十二名、西ドイツが六千五百四十六名、イタリアが四千八百五十五名、カナダが四千六百六名というぐあいになっております。我が国につきましては先ほど御紹介がありました数字のとおりでございます。おおむねアメリカの四分の一、それからイギリスの二分の一というのが現状でございます。
  16. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 アメリカの四分の一、人口でいきますと日本アメリカの約半分でございますから、規模におきましても二分の一。イギリス人口日本の約半分でございますから、この数字を見ましても大変なものだな。今回の予算案概要を見ましても、これは本当にもっともっと大幅な増員の必要を私は感じるわけでございまして、世界情勢冷戦構造から変わる中で特に日本のかじ取りが難しくなった、そういう時代においては大幅な人員増というか、これぐらいではないものが本当に必要だと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  17. 中山太郎

    中山国務大臣 外務省職員定員増加させるための努力は、毎年大臣以下官房長中心になって、積極的に総務庁あるいは大蔵省と折衝をいたしております。総定員法の枠というものが現存しておりまして、外務省だけが突出をするということは極めて難しい状態でございますけれども、このように国際情勢の変革する中で、国益に外交が非常に大きく関係をしておる時代が到来しました以上は、思い切った定員増加と人材の確保に努力をしなければならない、このように考えております。
  18. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 今回の経過を見ておりましても、情報収集だとかあるいは政策統合調整は残念ながら極めて不十分であったと言わざるを得ないと思うのですね。そのときに、こういう形で若干の増員で切り抜けられる状況ではないのではないか、抜本的な機構改革をひっくるめたことを考えざるを得ないのではないか。アメリカにおきましては、職員さん以外に国家安全保障局では五、六万だとか、あるいはCIAでも数万だとか言われる方々がおられるということでございまして、そこにおいていろいろな情報収集なり、あるいはまた国務省において政策統合調整等をやっているわけでございますから、それから見ますと、アメリカほどというようなことは私ども要求する気はございませんけれども、それにしても、少しずつ増員をしていくということではとても賄い切れないというか、応じ切れない、もっともっと抜本的な改革をしなければいけないというぐあいに思っているわけですが、どうでございましょう。
  19. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま情報収集機能についての御質問がございました。私ども今般の湾岸危機状況に当たりましては、私どものほぼ全在外公館を駆使いたしまして、情報収集に努めたわけでございます。もとより本省におきます機能としても、情報調査局を中心にいたしまして、入ってくる情報を的確に分析するという作業も徹底的にやったつもりであります。  情報収集機能強化につきましては、外務省員の訓練の問題ということ、あるいは手広く在外公館を発展させていくということが同時に必要でありますけれども、また同時に、情報の伝達手段をきちんとしておくことも重要であること、御案内のとおりでございます。その面におきましても私どもとしては、厳しい財政状況ではありますけれども在外公館との連絡網を整備するという観点からも、ただいま御審議をいただいている予算の中できめ細かいお願いをしている状況でございます。
  20. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 二月の末に、ある新聞に外務省首脳ということでこういう記事が載っておりました。「クウェート解放に関連して、昨年八月の湾岸危機発生以来の政府対応が不十分だったことを改めて認めるなど率直な所信を明らかにした。」「①日本人が人質に取られたとき黙って見守るしかなかった②日本人の救出、移送については自衛隊機も使えないなど何も決まっていない③先遣隊まで派遣しながら、医療チームを送れなかった」。そして「憲法との関係では、国連憲章に定められている集団安全保障の義務を現憲法の制約下でいかに実現していくか、「政党間で意見が違っても一度整理する必要がある」と指摘した。」というぐあいにあります。恐らく今回のいろいろな対応の中で外務省の首脳の方が感じられた、率直なことを述べられたのだと思いますが、この首脳の発言についてどういうぐあいに考えられますでしょうか。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 人質問題は、今までいろいろな国で人質がとられたというケースはございます。例えばフィリピンで捕らえられた人質、それはゲリラが日本人を人質にしたというような単数のいわゆる行動でございまして、国家の意思として外国人を人質にとるというケースは今回が初めてだったと思います。ただ、人質がとられたときにどういう手段をとれるかといえば、外交ルートを通じて、あるいは赤十字を通じて人道的にこの問題を解決する以外に、現在のところ我が国には方法というものは考えられない。こういうことを経験いたしましたが、幸いなことに、人質の皆さん方は大変御苦労なさいましたが、皆さん無事にお帰りになっておられます。  そこで、この人質の方々の苦しみ、また外務省としての脳みというものは、人質問題が今日既に一般の国民の意識の中に薄れつつある中で、人質をとられた場合に在外公館がどう対応するかという具体的な方途を、この機会を利用して外務省としては研究しておかなければならない、これが一点でございます。  また、自衛隊機の派遣問題については、憲法上の問題がございまして、今般は政令の改正ということで難民対象に限られておりますけれども、むしろ問題は、日本人の人質が出た場合に日本としてはどのような輸送手段で対応するかということを、自衛隊機を使う、使わないという問題を別にして考える必要があるのではないか、私はそのように感じております。  いろいろと問題点がたくさんございますが、私は、平和国家としての日本に許される在外邦人の救出活動はどうしたらいいのかという答えはまだ出ていない、そういうことを率直に感じております。
  22. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 率直な御意見をありがとうございました。私どもも国会の立場の中から本当に真剣に議論させていただきたいというぐあいに思っております。  さて、PKOにつきましてのいろいろな作業は進められているようでございますが、もし我が国がこのPKOに自衛隊を参加させようとした場合、憲法に抵触する部分はありますか、どうでしょうか。
  23. 丹波實

    ○丹波政府委員 昨年秋の臨時国会におきますところの法案もPKO活動を一部対象にしておったことは先生御承知のとおりでございますが、残念なことにあのような形で終わって、現在、今後の国連平和維持活動との関連で日本政府として、あるいは日本としていかなる貢献ができるかにつきましては、内閣官房が中心となって検討しておりますことは先生御承知のとおりでございます。  したがいまして、今後の問題につきましては、まさに現在いろいろな側面を含めて検討中でございますので、先生の御質問につきましても、そういう形でいろいろな側面から検討が行われているということで、それ以上のコメントは差し控えさせていただければと考えますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  24. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 御検討中ということ、また、いろいろな過程の中もよくわかりますけれども、PKOで国連平和維持軍や停戦監視団に自衛隊を参加させようとしたときに、確かに自衛隊法にはこの任務規定がありませんから今はできないでし ょうけれども、憲法上の純粋法的な解釈として、これは抵触をするのでしょうか、しないのでしょうか。
  25. 丹波實

    ○丹波政府委員 さらにということでございますので、お答え申し上げたいと思います。  先生御承知のとおり、この問題につきましては、昭和五十五年に政府答弁書が出ております。その中で「いわゆる「国連軍」」、ここで「いわゆる「国連軍」」と言っておりますのは、平和維持軍への参加を含みますところのいろいろな平和維持活動全体として総称しておると思うのですが、「いわゆる「国連軍」への参加の可否を一律に論ずることはできないが、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている。」というのが政府答弁書でございまして、まさにその目的・任務がいかなるものかということによって個々に判断されなければならないというのが政府答弁書の見解でございまして、この点は現在もそういう見解を政府は持っております。
  26. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 PKOは武力行使の目的ではありませんね。国連の方も、むしろ停戦監視団は丸腰でということでありますし、国連平和維持軍に関しても、基本的には、国連は何かあったときにはまず逃げることが先決ですよということを言われておりますね。  そうすると、何かあったとき身を守るための武器使用というのは、いわゆる武力行使を目的としていないわけでございますから、武器使用イコール武力行使というぐあいには論じられないのではないでしょうか。
  27. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、国際連合自体が「ブルーヘルメット」という本を発行しておりまして、この中で国連の平和維持活動全部を総括といいますか、あらゆる側面から議論しておるわけですが、この本によりますと、平和維持軍というものの中にもいろいろな機能がございまして、例えば典型的には、一昨年の秋、十一月でございますけれども日本が選挙監視に出かけていきましたナミビアにおきます活動も平和維持軍ととらえられております。ですから、もし平和維持軍というものに日本が参加できないのであれば、当然一昨年十一月にも参加できなかったわけでございますが、しかし、私たちはそういうとらえ方はしておりませんで、あの場合には軍事的な活動が一方にあり、もう一方には文民的な活動があり、その文民の方に入っていって選挙監視を行ったというふうに仕分けされております。そういう意味では、平和維持軍であるからという議論であるよりは、平和維持軍の中のいろいろな機能を見ながら議論を進めていかなければならないと考えております。
  28. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 選挙だけではなくて、ほかの軍事に関してもいわゆる武力行使を目的としてはいないわけでありますから、憲法上の制約としてはこれをしていないのじゃないか。むしろ憲法前文には「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」そして「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、」ということがはっきり書かれてありますけれども、我が日本国憲法はPKOについて、自衛隊法だとかいろいろな任務規定はあるでしょうが、憲法上そのものは一切否定していないのじゃないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
  29. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましても、過去の平和維持軍の中身をいろいろ調べますと、御承知のとおり、平和維持軍は主として安全保障理事会の決議に基づいて創設されるわけですが、その目的・任務の一環として武力行使が許されるというふうな条項が含まれておるものがございます。この点については憲法上の問題が生じるのではないかと思いますけれども、その他の平和維持軍の活動につきましては、やはり個々の国連決議の中身を具体的に調べて可能かどうかというものを検討していく必要があるのではないかと思います。しかし、先生が一般的におっしゃっておられる意味合いについては、私たち、先生の御議論の意味はよく理解しているつもりでございます。
  30. 衛藤晟一

    衛藤(晟)分科員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  31. 串原義直

    串原主査代理 これにて衛藤晟一君の質疑は終了いたしました。  次に、仙谷由人君。
  32. 仙谷由人

    仙谷分科員 仙谷でございます。  私は主として、今サハリンに、既に戦後四十五年あるいは四十六年目に差しかかっておるわけですが、残留をせざるを得ないという韓国人の問題、それから時間がありますれば、最近また香港の軍票の問題というのがあるようでございますので、これについて外務省外務大臣にお尋ねをいたしたいと考えております。  まず一番に、昨年のこの予算委員会分科会におきましても、外務大臣日本の朝鮮半島に対する軍国主義的な侵略について質問をさせていただきまして、外務大臣の方から真摯な御答弁をちょうだいしたわけでございます。その後に盧泰愚大統領も日本に来られたわけでございますが、湾岸危機湾岸戦争ということもあって、日本の置かれた国際的な位置というものが変わってきたといいますよりも、我々が気づかずにいたものがはっきり見えてきた部分が相当あるのではないか、こんなふうに私も考えております。  昨年の七月二十八日に中山外務大臣がASEANの拡大外相会議に出られて、そこで日本の軍事的役割の拡大を懸念するというふうな発言がマレーシアのアブハッサン外務大臣からなされて、ある種びっくりしたというふうな報道がなされております。私も昨年八月十五日に、このサハリン残留韓国人の問題で韓国の大邱というところへ訪問しまして、ちょうど八月十五日というのは中蘇離散家族会という、つまりサハリンに強制連行された人々の御遺族であったり御家族であったりする人が大会を開く日であるわけでございますが、そこにお伺いをして会を見てまいったわけでございます。その後、プライベートでシンガポールへ十一月に旅行をしましたら、偶然でございましたのですが、そこに六十七メートルの尖塔といいますか塔が建っておりまして、日本軍によって一九四二年から四五年までの間に三万人殺されたという表示がある、そういう塔が建っておることに、それまで気がつかなかったのですが、気がついたわけです。  私は、アジアの中の日本ということを考えるときに、どうしても第二次世界大戦といいますか太平洋戦争というのですか、日本の引き起こしたアジア地域における軍事的な行動というものがアジアの諸国民の間で、あるいは諸国の間で決してまだ忘れ去られていないと思いますし、まだ日本の戦後責任のとり方といいますか、それが不十分であったのではないか、あるいは全くできていない部分もあるのではないか、そういう感を強くしておるわけでございます。  そういうことから、昨年のASEANの会議あるいはアジア諸国の日本の軍事的プレゼンスに対する感覚といいますか、この点についてまず中山外務大臣に御意見を伺いたいと思います。
  33. 中山太郎

    中山国務大臣 昨年のASEAN拡大外相会議におけるアブハッサン・マレーシア外相の発言、これは大変意味のあるものだと私は認識をいたしました。そのために、私はその会議において、日本の平和憲法また日本国民の戦争を求めることのないコンセンサス、そのようなことを説明しながら、我々の国は軍事大国化にはならない、そして日米安全保障条約を維持しながら安全を確保して、我々はアジアの国の一国としてアジアの国々と協力をしていくということを、それに対する日本側の意思として申し上げたことは御理解いただいていると思います。  今委員から御指摘のようにシンガポールの、何かシンガポールには占領中に虐殺された華僑の慰霊碑が建っております。私が拡大外相会議からAPECの会合へ出るためにシンガポールへ着きましたら、日本のシンガポール大使がそのことをまず申しまして、いいタイミングに日本政府の意思 を明確に説明していただいた、よかったと申しておりましたが、私もまた、本年は太平洋戦争の五十周年、この機会に日本政府としては、毎年八月十五日の終戦記念日に国家も国民も反省をしておりますけれども、改めて我々はこの記念すべき年に当たってその反省を深めることがさらに近隣諸国に対して信頼を強めていくという一つの有意義な方法ではないか、このように考えております。
  34. 仙谷由人

    仙谷分科員 そこで、日本が二十一世紀に向かってどうしてもアジア中心に考え、アジアの中でリーダーシップをとっていかざるを得ない立場に、客観的にはあると思うのですね。ところが、余りにも経済力が他の諸国と比べてスーパー過ぎるといいますか、大き過ぎるというところへ余り自覚をしないままにきてしまったということもあるわけでございますが、私はどうしても戦後責任の問題をもう一遍考え直して、決着をつけるといいますか、清算をしない以上、やはり幾らお金をODA等々でつぎ込んでも、いつも警戒の目あるいは不信の目で見られていくのではないか。やはり足元の戦後責任といいますか、戦争でしでかした事柄でまだ未解決で残っておる問題については、誠意を持ってこれを解決しなければならないのではないか、そうしないと、アジアの中である種の尊敬といいますか、ある種の友好的な、本当に友好関係を築けないのではないか、そんな感じがするわけでございます。その戦後責任をもう一度問い直して決着をつけていく、この点については外務大臣いかがですか。
  35. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほども申し上げましたように、前の大戦で迷惑をかけたアジアの方々、これに対する日本の考え方というものは、今申し上げたように、この反省の気持ちを忘れずにアジアの一国としてお互いに生きていくということが大事でございますけれども、まだあの時代の世代の方方が現在現存しておられる国がたくさんあるわけでありまして、そのような方々が、その当時の痛みを肉体的にも精神的にもまだ覚えているという状況がまだ存在していることは否めない事実であろうと思います。その方々に対して賠償といったようなことは一応けりがついておる。朝鮮半島の問題は、まだ北朝鮮に対しては、ただいまも日朝の第二回本格会談が開かれようとして、けさも私は北朝鮮の外務次官にお目にかかったところでございますが、誠意を持って問題を解決するように努力をするということをけさも申し上げたところでございまして、このような努力を続けながら、金銭的な面だけでなしに、精神的にも信頼されるアジアの一国という位置を築かなければならないと考えております。
  36. 仙谷由人

    仙谷分科員 そこで、そういう観点からサハリンに残留を余儀なくされておる韓国人の方々の処遇といいますか、これから日本政府として、日本として行わなければならないことというそのことに関して、少々私の方からお尋ねをしたいというふうに考えるわけであります。  この問題につきましては、今ちょうど傍聴に、傍聴というよりも出席していただいておりますけれども、五十嵐広三議員が昨年の四月十八日の外務委員会中山外務大臣に質問をさせていただいて、中山外務大臣の謝意の表明をいただいておるわけでございます。ことしの二月二十二日の予算委員会でも、同趣旨の御発言と岸本政府委員あるいは谷野局長の御答弁をいただいたようでございます。  そこで一点だけ確認をしたいわけでございますが、特に今現存されておる方は三万九千人ほどというふうに聞いておりますが、このサハリン残留韓国人の方々、この方々が日本あるいは日本を通過して韓国に帰れなかった原因というものについて、二月二十二日の岸本政府委員の御発言ですと、日本人俘虜と一般日本人の二者に限られた。要するに、引き揚げ作業がそういうふうに二者に限られた。それはソ連地区引揚に関する米ソ協定、一九四六年十二月十九日の米ソ協定によって二者に限られた。したがって朝鮮、韓国人の方々の引き揚げが行われなかったという御趣旨の発言が議事録に載っておるわけでございますが、そのような理解でよろしいのでございますか。
  37. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 何分古いお話でございますが、私どもの理解でも当時、もちろん当時は第二次大戦直後でございまして、我が国は連合国の占領下にございました。そういうことで、ただいまお話の南樺太からの引き揚げも含めまして、終戦後の引き揚げはすべてこの連合国の責任のもとにおいて遂行されたという状況でございます。そういうことで、ただいま委員がお話しになりましたような対応での引き揚げということになったのだというふうに私どもも理解いたしております。
  38. 仙谷由人

    仙谷分科員 日本政府としていわば国家主権が大幅に制限されたといいますか、あるいはほとんどないというふうに言った方がいいのかもわかりませんが、当時の状況下では主権制限を受けておったという理解のもとでお伺いするのですが、その中でも、日本人の外地からの引き揚げについては随分連合国司令官あるいはソ連代表部といいますか、そういうところに日本政府は一生懸命働きかけたという事実がおありになるようです。その結果、三百万人と言われるような日本人が復員されてきたということを私もお伺いするわけです。今サハリンに残留しておる韓国人や朝鮮人の方々に対しては、この人たちが本国に帰れるようにあるいは日本に帰れるようにという要請なり作業を当時の日本政府として行ったという、何かそういう資料というか証拠というのはあるのでしょうか。
  39. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先般の予算委員会におきましても、五十嵐先生より同様の御質問が具体的にございました。五十嵐先生の方から、当時のソ連の赤十字の総裁の書簡に言及されまして、その中において、日本政府が当時の引き揚げの対象から樺太の朝鮮人の方々を除外するように働きかけたという趣旨の記載があるけれどもどうだというお尋ねがございまして、私どももその後、同じような申し上げ方になりますけれども、何分古いときのことでございますので、大臣の御指示もありまして、現在、当時の状況調査中でございます。いましばらくその時間をいただきたいと思います。
  40. 仙谷由人

    仙谷分科員 その問題を今からお伺いしようと思ったのですが、先回りしてお答えをいただきましたので、それでは鋭意御調査を続けていただきたいと思うのです。  そこで、次の問題に入るわけです。  私も中蘇離散家族会というのにも昨年八月十五日出席をさせていただいた。去る二月十一日から十三日までの間に原団長、五十嵐事務局長というサハリン友好議員連盟の一員としましてサハリンにお伺いをして、やはりサハリン離散家族会というのがございますが、その会合にも出席をさせていただきましたし、御家庭を訪問してお話も伺ってきたわけでございます。その中で、やはり日本の強制連行あるいは半ば強制連行的にサハリンへ連れていって強制労働させたということについては、非常な怨念というか、怒りの気持ちが消えてないようでございまして、その上に今高齢化してどうも将来の生活に不安をお持ちだ、こういうこともあるようでございます。  そこで、中山外務大臣、私ひとつお願いもしたいのは、この際、北方領土の問題等々おありになるのでしょうが、サハリンに行かれて離散家族会の方々とお会いになる、あるいは韓国に行かれて中蘇離散家族会、つまり御遺族や強制連行を受けられた方々の御家族、この方々とお会いになって謝意を表しながらお話をしていただく、こういうことをお願いしたいわけでございますが、いかがでございましょうか。
  41. 中山太郎

    中山国務大臣 この御意見につきましては、一応私の方で検討させていただきたいと存じます。
  42. 仙谷由人

    仙谷分科員 特に韓国の中蘇離散家族会の方々の御発言というか、お話を聞いておりますと、強制連行が本人の生活を奪い、親の生活を奪い、子供の生活を奪った、要するに三代の生活を奪った極めて、生の言葉で言えば悪逆非道ということになるのでしょうけれども、厳しい行為であったということを必ず言われるわけでございます。今韓国に残された家族の中では、年寄りのおばあちゃ んが多いわけでございます。それから、サハリンへ行きましても、もう身寄りのない高齢者の方もいらっしゃるわけでございます。あるいはサハリンに行かれて韓国の方へ永住帰国をしたいという希望をお持ちの方も随分多くいらっしゃるようでございます。これは何人という数字を調べたわけじゃございませんけれども。この点について、今は日本政府が年間、今年度一億二千万という予算を確保して、ソ連赤十字と日本赤十字の共同事業という格好で、チャーター便で一時面会という事業をしていただいておるわけでございますけれども、この永住帰国の希望者あるいはサハリンで高齢化して身寄りのない人、あるいは韓国でも、夫を連れていかれて高齢化しながら一人で暮らしておるそういう方々、こういう方々に、法律上義務があるかないか、国際法上義務があるかないかはまた別途の問題といたしまして、私どもの戦後責任という観点から何らかのことをすべきではないのか、してはどうかということを私自身感じておるわけですが、その点について外務省の御意見はいかがでございますか。
  43. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の方からとりあえずお答えいたしますが、ただいま私ども政府として支援のためにやらせていただいておりますのは、ただいまお話がございましたように、韓国へいわば里帰りされる方々の渡航費等の面での支援をさせていただいておるわけでございます。韓国政府とも話し合ってやっておるわけですが、当面そういう支援策を日本政府として続けてほしいという、韓国政府との間ではそういう話し合いになっております。  他方、これも五十嵐先生等から、いやもっと大きな基金をつくってみてはどうかというようなお話もございました。それから一部には、ただいまの、お年を召した方ですから老人ホームのようなものをつくってさしあげてはどうかというアイデアもございます。一つの御意見としていつも伺っているところでございますが、私どもも財政的に限りがございますものですから、とりあえずは韓国政府の意向を聞きまして、韓国政府がより当面の問題として考えております被爆者への支援策とか、そういったことをまずはやらせていただいておるわけでございます。そういうことで御理解いただければと思います。
  44. 仙谷由人

    仙谷分科員 その点についても大臣からの御発言をできればいただきたいのですが、やはりこれらにかかる費用を予算化するといたしましても、まあ九十億ドルに比べれば全然問題にならない額で、つまり我々は、多分百億円程度の予算措置をすれば、あらゆる意味での、基金であったり老人ホームであったり、あるいは記念館というようなものとか、あるいはもう少し頻繁な家族面会ができるような措置とかができるのではないかというふうにも考えておるわけであります。このことは、一番最初に申し上げました、日本が戦後の責任をどういうふうにけじめをつけていくのか、特にアジアにおける責任をどうけじめをつけていくのかということと私は深く関係すると思いますので、その点、中山外務大臣からも一言御答弁をいただきたいと思います。
  45. 中山太郎

    中山国務大臣 委員の御指摘の御意見、私どもも十分検討させていただきたいと思います。
  46. 仙谷由人

    仙谷分科員 先ほど中山外務大臣も、お金だけではいけないんだという話をされました。私もそのとおりだと思います。お金だけではいけないわけですが、お金もなければ御納得いただけないというのもまた世の中の習いでございます。  次に、香港の軍票問題というのがあるようでございます。私も存じ上げなかったのでありますが、香港にまだ、これは見本のようですけれども、こういう軍票を持っていらっしゃるお年寄りの方が随分いらっしゃる。どういうことでこういう軍票があるのか、これについて、時間がございませんけれども、事実をまずお伺いしたいのですが、これは何か戦費調達のために香港の市民の財産をいただいて、そのかわりにこの軍票を渡したんだというようなこと、それから一九六八年ごろから、香港索償協会というのですか、私もよく知りませんが、この軍票を持っている方々が団体をつくられて日本の公使館の方に補償の要請をされてきたということがあるというふうにも伺っております。その辺の事実関係、何でこんなものが残っておるのかというようなこととか、あるいはその補償の要請が今まであったのかなかったのか、その点についてお伺いしたいのでございます。
  47. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 確かに御指摘のような背景があったのではないかと思っております。かつ、そのような背景を踏まえて私どもの領事館の方にも補償の要求が時々関係の団体の方々からなされてきております。
  48. 仙谷由人

    仙谷分科員 そこで、大臣にもお伺いをいたしたいわけですが、その前に外務省の方にもお伺いしておきたいのですが、シンガポールにも軍票問題というのがあって、平和条約締結時にこの軍票問題を解決したというふうにも言われておるようですが、それは事実なんでしょうか。
  49. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 シンガポールとの間におきましても、この種の問題については決着済みというのが日本政府の立場でございます。
  50. 仙谷由人

    仙谷分科員 香港の軍票問題については、そういう国際法的な観点からの検討といいますか、今のところ外務省のスタンスというのはどういうふうになっているのでしょう。
  51. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 香港の場合はイギリスを相手にするということ、イギリス、英国との関係になります。そこで、そういう補償の要求がなされておることは事実でございますし、最近もたしか新聞等で同様の報道を、私、見た記憶がございますが、いずれにいたしましても、これは国会でもたびたび政府の立場として御答弁申し上げておるところでございますけれども、この香港の軍票の問題につきましては、サンフランシスコ平和条約の規定によりまして、我が国政府日本政府と英国との間において既に決着済みの話である、したがって日本政府といたしましたら、これを、日本政府としてこういった要求を一々お取り上げする立場にはないというふうに考えております。
  52. 仙谷由人

    仙谷分科員 そうしますと、シンガポールとの関係も、イギリスとの関係で決着済みということならば、それで済んでおったんじゃないかと思いますが、シンガポールが独立をしたということで、改めてシンガポールと軍票問題も含んだ平和条約をお結びになったんじゃないか、そういうふうに私は思うのでございます。  それで、この軍票問題にしましても、国と国との平和条約あるいは賠償問題の決着ということが、果たして一人一人の国民、市民の受けられた被害、特にこういう、明らかにこれを抱き締めてまだ頑張っていらっしゃる人々がアジアにいるという事実は、今おっしゃられたような講和条約で全部切り捨ててしまっていいという問題ではないのではないか。この問題も、冒頭申し上げましたように、日本アジアの中でこれからどう生きていくのかという観点からぜひ処理をしていかざるを得ない、していかなければならない問題ではないか、そういうふうに考えるわけであります。この点につきまして、今後また私の方でも調査を続けますけれども中山外務大臣、インドネシアにもこの種の軍票問題というのが残っておるようでございます。この種の問題についての基本的なお考えをお聞かせいただければと思います。
  53. 中山太郎

    中山国務大臣 香港、シンガポール等の軍票問題につきまして、今まで政府間ではすべて決着済みということが相互で確認されておりまして、日英外相会談におきましても、このような事項について英国側からは一切話が出てまいりませんし、シンガポールからも私どもにはそういう話は出てきておりません。
  54. 仙谷由人

    仙谷分科員 それでは、時間が参りましたので終わります。
  55. 串原義直

    串原主査代理 これにて仙谷由人君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田和子君。
  56. 吉田和子

    吉田(和)分科員 私は人種差別撤廃条約にかかわる問題、さらに国際人権規約との関係等につきまして質問をさせていただきたいと思います。  これまで歳月をかけて幾度となく論議をされておりまして、一日も早い条約の批准を求めるわけでございますが、人権の問題については、政府側からも大変重要な問題であるということを認識をされ、努力をされているところであろうと思われますが、一向に進まぬ状況であると言わなければなりません。このたびの湾岸戦争においては、政府は、我が国は国連中心主義である、国際社会の一員として国際社会で名誉ある地位を占めるためにも国連決議を尊重すると繰り返しております。国会でも総理大臣がみずから述べられておるわけでございますが、その一方で、この人種差別撤廃条約の批准は一向にする気がない。これでは国連に対して日本はダブルスタンダードであると言われても仕方がないと思うわけでございますが、外務省、人種差別撤廃条約の批准はどのようにお考えになられているのか、御答弁をお願いいたします。
  57. 丹波實

    ○丹波政府委員 外務省といたしましても、人権の問題あるいは人種差別の撤廃、そういうものを減少させるということの重要性につきましては、十分意識し、重要視しておるつもりでございますが、この人種差別撤廃条約につきましては、まさにそういう観点から作業をしてきておりますけれども、この条約に規定しますところの処罰立法義務というものと、日本国憲法が保障しますところの表現の自由ということとの関係問題点の整理を依然として現在検討中であるということで、現在の時点におきましては、いつ締結の見通しになるかという点につきましてはまだ申し上げる段階に至っていないということでございます。
  58. 吉田和子

    吉田(和)分科員 一向に批准する気がないというふうなことだと思います。国連に対して日本はダブルスタンダードであるという意見に対してどのようにお考えになりますでしょうか。外務大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
  59. 中山太郎

    中山国務大臣 今国連局長がお答え申し上げましたように、日本国憲法との関係でどういうふうに整合性を持たしていくかということについて、国内の所管庁との協議を続けておる最中でございますので、そのような状況を御理解いただきたいと思っております。
  60. 吉田和子

    吉田(和)分科員 ちょっとお答えがあれだったと思うのですけれども。  次に、法務省にお伺いをしたいと思います。  今外務省の方からもお話があったのですけれども、どこに問題点があって、どのような作業が今行われているか、そしていつをめどと考えてこの国内法の整備というのがなされるのか、法務省にお伺いをしたいと思います。
  61. 馬場義宣

    ○馬場説明員 人種差別撤廃条約はその第四条で、人種的優越または憎悪に基づくあらゆる思想の流布、その次に人種差別の扇動、人種または皮膚の色もしくは民族的出身を異にする人々の集団に対するすべての暴力行為またはその行為の扇動、それから人種差別主義者の活動に対する資金援助を含むすべての援助の提供、人種差別を助長し、扇動する団体への参加、人種差別を助長し、扇動する組織的宣伝活動その他すべての宣伝活動への参加、こういう行為を法律により処罰すべき犯罪行為とすることを求めておるところでございます。  そこで、これに対してどういう処罰立法をするか、あるいは憲法との関係でどうかという次のところに入るわけでございますが、まずこれらの行為すべてを、人種差別の撤廃を立法目的として公共の福祉の名のもとに刑罰法規をもって規制することは、憲法第十九条の思想及び良心の自由、憲法第二十一条第一項の集会、結社、表現の自由などの保障と抵触するおそれが大きいと言わざるを得ないというふうに考えているところでございます。  次に、憲法第三十一条が要請いたします罪刑法定主義との関係で申しますと、この条約第四条にいう人種的優越または憎悪に基づく思想、それから人種差別、人種差別主義者などの概念が必ずしも明確とは言えないものであるため、これらの概念を刑罰法規の構成要件として取り込むことは、規制の範囲が不明確となり、罪刑法定主義に反することとなるおそれがございます。また、思想、表現の自由に対していわゆる萎縮的効果を及ぼすおそれなしとしないものでございます。  最後に、我が国の刑罰法の体系との関係におきましても、この条約は、扇動や援助の提供をその段階で処罰すべきものとしているところでございますが、こうした独立教唆罪や独立幇助罪につきましては、現行の刑罰法体系全体の観点から見ましていろいろ問題があるというふうに思うところでございます。したがいまして、このような問題点につきましては、法務省といたしましてはいろいろな角度から引き続き検討いたしておるというところでございます。  見通しということにつきましては、まだ申し上げられる段階にはないということでございます。  以上です。
  62. 吉田和子

    吉田(和)分科員 現在の時点で、人種差別撤廃条約の批准国は何カ国になりましたでしょうか。そのうち、条約四条について解釈宣言をした国、保留をした国はそれぞれ何カ国であるか、お答えをいただきたいと思います。
  63. 丹波實

    ○丹波政府委員 ことしの二月現在の時点でとりますと、百二十八カ国が締約国となっております。今第四条との関係の留保、または解釈宣言を行った国の数についての御質問でございますけれども、今日時点で、私たちは十六カ国であると承知しております。
  64. 吉田和子

    吉田(和)分科員 なぜ解釈宣言すらできないかというふうな質問をさせていただいてよろしいでしょうか。外務省の方にお答え願います。
  65. 丹波實

    ○丹波政府委員 私たちといたしましては、この条約に入る場合にはできるだけ、可能であるならばその条約の一番根幹をなす部分につきましてはそのまま――できるならばということを繰り返させていただきたいと思いますけれども、そういう根幹をなす部分についてはそのまま加入したいという考え方を一般論としては持っておりまして、そういう観点から、この四条の考え方をどうすべきかということで現在まで検討が続けられているというふうに御理解をぜひいただきたいと思います。
  66. 吉田和子

    吉田(和)分科員 ここで私は、今現在もなお根強く存在しております国内での差別の状況、実態に少し触れさせていただきたいと思うわけでございます。  東京には被差別部落はない、差別はないというふうに言われております。しかし、私の選挙区でございます東京六区、殊に墨田区内には木下川地区といって、日本の豚革のほとんどの量、八〇%を占めるそうですけれども、なめしている工業地帯があるわけでございます。東京都の行政当局も議会で答弁しているように、都内では二百三十四地区にも上る部落が存在をしているというふうに言われているわけでございます。この墨田区内には木子川地区と言って工業地帯があります。労働力というものはすべて地縁、血縁でなければ集まらないというふうな大変厳しい労働条件に置かれているわけでございます。  この地域の中にある中学校で、一九八九年に部落差別の事件が起こりました。子供と父母、地域の住民が一体となりまして、全教職員出席のもとで、差別をなくすことを学校で教えてほしいという子供たちの訴えと要求にこたえるために、一丸となって一年間にも及ぶ差別と闘う実践の例がございました。  この事件で学区内の児童数を調べておりましたら、顕著な数字が出てきたわけでございます。墨田区内の小学校の平均学童数でございますが、墨田区内の平均の学童数は、十二・七五クラス、三百九十一人でございました。ちなみに、周辺にある人気の高い小学校というのでしょうか、そういうところに至りますと、緑小学校で十三クラス、三百十五人、両国小学校で十八クラス、六百四十人。そして、この木下川地区の真ん中にあります木下川小学校では、今現在六クラス、九十二人というふうな実数が挙がっているわけでございます。  そして、地価についてもどうなっているのかなというふうに調べてまいりました。十九カ所の基準値、そして十五カ所の地価公示価格が墨田区にはあるわけでございますが、いずれにも東墨田地区は入っておりません。外されているというふうに言っても過言ではないというふうに考えるわけでございます。周辺地、坪当たりの平均値は二百万から二百五十万。私、現地で不動産屋さん、そして現地の人たちに聞いて調べてまいりました数字、実数価格は、東墨田地区では坪当たり百七十万から百九十万、隣接をする立花は公示価格が平米七十万でございますので、坪二百三十万ぐらいにはなろうかと思われるわけでございます。道路づけ、地形なり工業地域というふうな点があるものの、二割は落ち込んでいるというふうな実数があらわれているわけでございます。  東京にもこのような差別の実態があるということを御存じかどうか、外務省法務省の方にそれぞれお伺いをしたいと思います。
  67. 馬場義宣

    ○馬場説明員 お尋ねでございますが、私は法務省の刑事局の人間でございまして、実は差別の行為一般、そういうものに対する啓発ということになりますと、法務省の中では人権擁護局というところが所管いたしております。そういう意味で、法務省として今のお尋ねにつきましてお答えすることはできないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  68. 吉田和子

    吉田(和)分科員 外務省はいかがでしょうか。
  69. 丹波實

    ○丹波政府委員 私は個人的には外務省の国連局長でございまして、今先生がおっしゃられたような側面を仕事として担当しているわけではございませんけれども、一日本人として見た場合に、そういう先生がおっしゃるような問題が完全に解決されているかというと、必ずしも解決されていない面も残っているであろうということは、日本の一市民として感じることはないわけではございません。
  70. 吉田和子

    吉田(和)分科員 外務大臣、いかがでしょうか。
  71. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま局長がお答え申し上げましたが、やはりこの地域問題というのは現存している。そのような問題を一日も早く、認識が起こらないように、この解決に努力をしていかなければならぬと考えております。
  72. 吉田和子

    吉田(和)分科員 国民全体の基本的人権の問題であるというふうにとらえて、認識をして、みんなで努力をしていかなければならない問題だというふうに私は考えているわけでございます。  次に、人種差別撤廃条約と国際人権規約B規約二十条との関連についてお伺いをしたいと思います。  一九七八年に批准をされましたこの規約の中に、差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、民族的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する、とありますが、人種差別撤廃条約第四条との関係はどのように解釈をされておりますでしょうか、外務省にお伺いをいたします。
  73. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生御指摘のいわゆる自由権現約第二十条は、その一条前の十九条というところに、まず表現の自由に関連いたしまして規定があるわけでございますけれども、B規約二十条2に規定しますところの差別等の禁止につきましても、一般に表現の自由に当然内在すると考えられますところの合理的な制限の範囲内であれば各国において実施すべきものであるということが規定されておるわけです。  他方、現在先生が問題にしておられる人種差別撤廃条約には、B規約十九条に当たるような規定はないわけでございまして、またその第四条は、人種的な優越または憎悪に基づく思想の流布、人種差別の扇動、人種差別を助長し、扇動する団体等に参加すること等、非常に多岐にわたるものを対象としております。しかも、ただいま国際課長から申し上げましたけれども、犯罪として処罰するという最も厳しい形態の措置をとることを義務づけるものでございますので、B規約第二十条2とは必ずしも同様にこの第四条は論じられないのではないか。しかし、いずれにいたしましても、この点を含めて慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
  74. 吉田和子

    吉田(和)分科員 この国際人権規約は既に批准されていて、当然今のお話にもございましたB規約二十条第二項も含まれているわけでございます。法律で禁止することは既に政府も認めているというふうに考えられるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  75. 丹波實

    ○丹波政府委員 この自由権規約の第二十条の一項では「戦争のためのいかなる宣伝も、法律で禁止する。」第二項では「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」とございますけれども日本がこの自由権規約に加入した際には特に新たな立法措置は講じてございません。なぜならば、その基本的な考え方は、既に日本国憲法あるいは刑法その他の法文におきまして、これらの活動が行われないような一定の担保がなされておるということと、さらに、殊さらに実際の法益の侵害があるかどうかということの判定とあわせて考えますと、これに加入しても国内立法を特に必要としないというのが日本政府の見解であったからでございます。  しかし、第四条におきましては、先ほども申し上げましたように、第二十条の一、二項と必ずしも同列に論じられないということも含めて現在検討中であるということでございます。
  76. 吉田和子

    吉田(和)分科員 今お話に出ました十九条についてもお伺いをさせていただきたいと思います。  国際人権規約B規約第十九条には「すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。」とございます。同三項には「権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。」したがって、この権利の行使につきましては、一定の制限を課することができるというふうに解釈をすることができると思うのですけれども政府が批准をしました人権規約には、表現の自由については一定の制限が必要となっております。規約十九条と憲法二十一条の整合性はどのようにお考えになりますでしょうか。
  77. 丹波實

    ○丹波政府委員 憲法の問題でございますので、私が御答弁申し上げるのが適当かどうかはあれでございますけれども、まず人権規約の第十九条は、一項は先生読み上げられましたけれども、二項におきまして「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。」この中にはこれこれを含むということがありまして、第三項が問題点のところと思いますけれども、「2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。」としております。しかしとして、ただしその制限は法律によらなければならない、「かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。」として(a)、(b)二つが挙がっておりまして、(a)は「他の者の権利又は信用の尊重」、(b)は「国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護」、こうあるわけでございます。  したがいまして、この人権規約の考え方は、その表現の自由というものは保障されるけれども、しかし一定の制限は課すことができるのだということが書かれておるわけですが、日本国憲法二十一条の表現の自由といたしましても、やはり絶対的なものではございませんで、公共の福祉の要請により制約される可能性があるという点については、判例及び学説も認めるところでございます。そういう意味では、一般的な考え方といたしましては、この人権規約の十九条と憲法の二十一条の表現の自由というものの考え方には整合性があるというふうに考えてございます。
  78. 吉田和子

    吉田(和)分科員 憲法十四条の、すべての国民が法の下に平等であるとございます。日本の公の秩序であるわけでございますが、この秩序に反する表現について一定の規制が必要なのではないでしょうか。お答えを下さい。
  79. 丹波實

    ○丹波政府委員 この十四条の問題も含めまして、やはりその公共の福祉その他の制約によって一定の制約を課すことができるというのが考え方であろうかと思います。
  80. 吉田和子

    吉田(和)分科員 条約の処罰義務の規定とそれから憲法上の規定の問題は、それでクリアできるのではないかというふうに考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  81. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点は法務省の担当課長にお聞きいただくのが適当かと思います。よろしくお願いします。
  82. 馬場義宣

    ○馬場説明員 表現の自由につきまして一定の制約を法律によって課することができるというのは、それはそのとおりでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、条約の四条が処罰を求めておりますところは非常に多岐にわたっている、範囲が広いわけでございます。それをそのままそっくり、そういうものは一切処罰をするという規定を仮に法律でつくるということにいたしますと、これはまさに憲法が規定しております表現の自由をあるいは非常に大きな範囲で制限するということになるわけでございます。  それからもう一つは、罪刑法定主義との関係で具体的にどのように構成要件を定めていくか、その構成要件を定めましたものが非常にあいまいだということになりますと、その法律が誤った方向に使われてしまうということ、これもあるわけでございまして、一般論として、表現の自由が公共の福祉によって制約できるということ、それはそのとおりでございますが、そういう、具体的に四条の処罰義務を満たすためにどうやってその整合性を保っていくかということは非常に難しい問題があるというふうに私ども考えているところでございます。
  83. 吉田和子

    吉田(和)分科員 都内の品川区で、同和問題の啓発の参考にするために平成元年一月に区民アンケートを行ったわけでございます。その中で大変興味深い数字の結果が出ておりますので、その数字を聞いていただいてお考えを伺いたいというふうに思っております。  あなたのお子さんの結婚相手が同和地区出身の場合あなたはどうするかというふうな質問でございます。その答えの中で、家族とも親戚づき合いをするというのが四七・三%、二人の結婚に賛成するが相手の家族とは余り親戚づき合いをしないというのが二・九%、二人の結婚には反対するが一〇・六%、わからないというのが三四・八%、無回答が四・四%に上っているわけでございます。  この調査では、親しくつき合っている近隣の人が同和地区出身とわかった場合には、八割強の人がこれまでと同じようにというふうに答えておりますが、身内の結婚相手が同和地区出身者とわかった場合は、これまでと同じようにというふうに答えた人は七割弱に減ります。さらに自分の子供の結婚相手となると五割以下に低下をしまして、かわって、わからないが増加をしてまいる結果になっております。  この結果を見ますと、ふだんは同和問題を他人事と考え、いざ自分に関係することになると偏見や差別の意識があらわれてくるということを示しているというふうに考えるわけでございます。日本の国内の差別の撤廃、人権の確立のためにも人種差別撤廃条約はぜひともできるだけ早い時期に批准をするべきだと思うわけでございます。最後に外務省のお考えを改めてお伺いをしたいと考えます。
  84. 中山太郎

    中山国務大臣 政府といたしましては、人種差別撤廃条約の批准に向けましてできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  85. 吉田和子

    吉田(和)分科員 時間より少し前でございますが、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  86. 串原義直

    串原主査代理 これにて吉田和子君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  87. 上原康助

    上原分科員 最初にODA問題についてちょっとだけお尋ねをさせていただきたいと思います。  ODAのあり方については、かねてより再検討を求める声が強かった、また私たちも海外援助基本法、ODA基本法なども制定すべきでないのかということを強く主張してまいりましたが、なかなか外務省政府当局はこれにこたえてくれない現状にあります。しかし、湾岸戦争の停戦後は、さらに見直しすべきであるという意見が急速に高まっているように思われます。与党内部でさえ、これまでの状態ではいかないのじゃないのか、こういう意見もある。あるいは第三次行革審でも緊急に取り上げていかなければいかないという動きもあるやに聞いております。私は当然のことだと思います。  こういう動きに対して、外務省当局、外務大臣、どういう御認識を持っておられるのか、今後のODAのあり方についてひとつ御見解を聞かせていただきたい。
  88. 中山太郎

    中山国務大臣 ODAをやっていく上で、国際的に大きなシェアを占めるようになった日本といたしましては、この湾岸戦争の経緯からいたしましても、これからのODAについて一つの考え方というものを整理しなければならないと考えております。従来はいわゆる発展途上国、民生の向上、相互依存という考え方でODAを実行してまいりましたけれども、今後は軍事大国化をするような国の政府からODAの要請があっても、これについては慎重に対応するとか、いわゆる非民主的な国家に対するODAの扱いをどうするかということを早急に整理をして、具体的に方針を確立いたしたいと考えております。
  89. 上原康助

    上原分科員 一応従来よりは、政府ODA援助のあり方について少し再検討を加えたいということかとは思うのですが、これまでも、例えば紛争当事国であるとか紛争を助長する国、また国連でそれに該当する国だと決議をされたという、いわゆる国際的というか、一つのスタンダード的なものは一応あったわけですね。だが、今大臣がおっしゃったように、日本ODA援助額というのが、これは中身を議論すればとても短時間ではできないほど巨額なものですが、もう申し上げるまでもなく、一般会計予算と事業費予算を合わせて一兆五千二百九十五億、まさに巨大な規模になっておるわけですね。これだけのお金、国民の税金、もちろん財投融資もありますからいろいろあるわけですが、私は従来のような感覚ではいかないと思うのです。特に、これまでの援助対象国のいわゆる戦費に使われておったのじゃないかと思われる国々、あるいは民生安定、ソフト面の援助といっても、実際には軍費、軍事費に流用されておったというようないろいろな実態があると思うのです。そこからこのように問題になってきたと思いますので、この件については外務省としてもぜひ十分な再検討をお考えになっていただきたい、これが一点です。  もう一つは、今も若干お触れになりましたが、武器輸出の規制ということをもっと日本としては、日本は武器輸出三原則で武器は輸出しないという国是的なものが確立されておって結構だと思うのですが、今度の湾岸戦争の結果を見ても、イラクを軍事大国にしたのは一体だれかということも議論をしなければいけない背景があったわけで、そういう面から武器輸出規制というものを、ただ日本はしないというだけではなくして、これを国連を舞台にもっと積極的に各国に働きかける、こういう何らかの宣言をやるとか、いろいろ働きかけるということも必要だと思うのです。したがって、そういった大所高所から総合判断してODA問題というもの、これに対する新たな基本姿勢というか、日本外交の基本を確立をしていく時期に、特にこの湾岸戦争後に起きている国際的な新たな枠組みの中での課題じゃないかと思うのですが、今の二点について、改めて基本的な点だけきょうはお伺いをしておきたいと存じます。
  90. 中山太郎

    中山国務大臣 武器輸出に関しましては、本国会におきましても、総理並びに私からもその日本政府の意思を明確にいたしておりますが、我々は武器輸出三原則を国家として厳守してまいっております。秋の国連総会におきましても、通常兵器の透明性、公開性というものを高めるべきだということを昨年も主張しております。  ただ、委員も御存じのように、発展途上国等で独立間もない国は、まず自分の国の安全保障ということを考えて兵器を外国から購入するというこ とは国際的な一つの常識になっておりますので、こういう点も、これから第三世界においてどうするかという問題については、委員御指摘のように、国連を中心国際社会での合意づくりに日本政府としては努力していかなければならないと考えております。
  91. 上原康助

    上原分科員 これはまた引き続きODAの内容を含めて、いずれ外務委員会で別の機会にでもお尋ねする機会があると思うのですが、非常に懸念されるのは、その武器輸出はNBC、いわゆる核・生物・化学兵器については非常に敏感というか、規制をしようとするが、いわゆる通常兵器の場合は必ずしもそうではないですね。日本のように明確に方針を確立していない。イギリスのマスコミ報道によると、何かアメリカも既にサウジやエジプトその他に、二百六十億とも二百九十億ともいう武器供与というか、売却取り決めをやった。こうなると第二のイラクがまた出現しないとも限らないと思うのです。私は、こういうことについては日本政府は、本当にパートナーであれば、アメリカに対しても武器輸出の問題というのはもっとシビアに対処していただきたい。これはいずれ問題になると思いますから注文をつけておきたいと思います。  そこで、こういう分科会ですから、沖縄の基地問題について改めてお尋ねしますが、外務省はなかなか本音を言わないですね。きょうは余り木で鼻をくくったようなお答えでなくして、もう少し私が聞きたいこと、あるいは県民が知りたいこと、国民が知りたいことにお答え願いたいと思うのです。  そこで、残念ながら中東戦争とも関連しているわけですが、我々が憂慮するのは、湾岸戦争の影響を受けて、在日米軍基地の整理縮小、とりわけ在沖米軍基地の縮小の流れにブレーキがかかるのではなかろうか、こういう心配をして、この間もちょこっとお尋ねをしたら、そうではないというようなお答えだったかと覚えているのですが、実際問題としてどういう御認識を持っておられるのか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  92. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生御案内のように、今般アメリカで国防報告が出されました。この中でも、日本におきます米軍の基地、すなわちこの施設、区域に対しまして高い評価が与えられております。したがいまして、先生が湾岸におきます今回の展開の関係で施設、区域の整理統合問題に悪影響が出るのではないかという御心配をされているかと思いますが、これは先般外務大臣からも外務委員会でお答え申し上げましたけれども、私どもは、この施設、区域の整理統合問題に関しましては、従来の方針に従いまして引き続き米側と調整していくという決意でございまして、今般の中東情勢の関係で特段の変更を加えるつもりはございません。
  93. 上原康助

    上原分科員 今そこが大事な点なんだがな。日本側は従来の――あれはやはり整理縮小じゃないのですか。整理統合なんですか。それをはっきりしてください。
  94. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私どもは従来から整理統合という言葉を使っておりますので、引き続き整理統合という言葉を使わせていただきたいと思います。
  95. 上原康助

    上原分科員 そこが外務省の頑固で石頭的なところなんです。アメリカでさえ整理縮小ということを言っているのに日本側は整理統合だ。それも問題。  そこで、あなたがおっしゃったように、日本側は整理統合の従来の計画に影響がないと思う、そういうつもりでやりたい。だが、今あなたがいみじくもおっしゃったように、国防報告では、やはり在日米軍基地を、今度の湾岸戦争とのこともあって高い評価を与えている。そこにアメリカ側のニュアンスの違いが出ているわけですね。  そうしますと、これは大臣から、今のやりとりも聞いた上でお答え願えればありがたいのですが、御案内のように、昨年四月に米国防総省は、アジア・太平洋地域の新しい戦略的枠組みというのを議会に提出をして発表されましたね。一説には東アジア戦略構想と言われるこの報告というか、計画によりますと、第一段階として九二年までに、在沖米海兵隊を含む在日米軍を約五千人削減をする、さらに九三年以降、第二、第三段階として一段と削減すると述べているわけですね。第一段階よりも九三年以降は一段と削減を進めていくというところに我々は注目をしたわけです。大きなアクセントを置いたわけです。このことについてはどういうお見通しなんですか。     〔串原主査代理退席、穂積主査代理着席〕
  96. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生がまさに御指摘のように、昨年四月に発表されました東アジアにおきますアメリカの戦略的な地位に関しましては、御指摘のような考え方が述べられておりまして、その後、米側におきましては引き続き検討を加えておりまして、まさにそこに述べてございます基本的な考え方に基づきまして、東アジアにおきますアメリカの軍事的プレゼンスをおおむね約一割今後三年間で削減するという基本的な考えを発表しております。これを日本について当てはめますと、ちょっと今正確な数字を持っておりませんが、在日米軍が現在約四万六千でございますけれども、今後三年間で、これは沖縄の海兵隊を含めてでございますけれども、四千名強を削減するという方針をその後発表するに至っております。
  97. 上原康助

    上原分科員 だから、それはもうかなり古い話なんです。それに僕は余り興味ないんだ。だれもそこに余り興味がないんだ。当たり前のことだ。しかし、それさえも今のように数字はだんだん減っている。我々が注目したい、関心のあるのは、九三年以降第二、第三段階では、向こう十年間に一段と削減をしていく、これはどうなっているのですかということ、そして、その東アジア戦略構想が発表以後、日米間でこの問題での協議なりいろいろ何かあったのか。また、アメリカ側からこれについてどういう見解、その後湾岸戦争もあったのでどういうことになっているとか、そういうあれがあったのか。全然後のことは知らないんじゃないですか。そこを明らかにしていただきたいと言うのですよ。
  98. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私、先ほど触れました、今回出されましたアメリカの国防報告を見ますと、今後のアメリカの基本的な国防政策が打ち出されておりますが、その中では、一般論の形でございますけれども、既存のアメリカが築いております各国との防衛体制、その中には日本との日米安保体制も入ってまいりますけれども、それを堅持しつつ、そして前方展開戦略を引き続き行っていくことが今後の戦略の上に重要であるという記述がございます。これはソ連、東欧におきます劇的な変化によってグローバルな脅威は減ってきたけれども、やはり欧州アジア等においては引き続き地域的な脅威が存在するということを踏まえてのことでございます。  ただ、その関連で、私が先ほど申し上げましたように、日本におきます米軍の基地に対しましても高い評価を与えております。それと、今先生が御指摘になられました具体的な今後の在日米軍の削減計画というものがその結果変わってくるということではないと私どもは見ておりまして、第一段階は先ほど申し上げましたように四千名強が削減されますが、今後それがどういう形でさらに削減を見るかどうかという点につきましては、まさに今後の情勢の展開いかんでございますので、アメリカ側におきましても、まず第一段階について基本的な考えを固めたわけでございまして、さらに申し上げれば、先生がまさに御指摘の第二段階、さらには第三段階をどうするかということは、今度の国防報告にもございます地域的な脅威がどうなるのか、それへ対処していく体制がどうなっていくのか、その辺はさらに総合的にアメリカとしては考えた上、そして第一段階におきます削減計画の実施状況を見た上で考えを固めていくものと思っております。その間、私どもは十分アメリカ側と緊密な連絡をとってまいりたい、こう考えております。
  99. 上原康助

    上原分科員 そこで、第一段階を見てからということのようですが、非常に懸念されるのは、こ の間もちょっとだけ触れたのですが、湾岸戦争突入直後、二月でしたか、アマコスト駐日米大使が沖縄に行かれた。そこでの記者会見なりコメントでは、九三年以降の第二、第三段階の削減については、湾岸危機により国際情勢を再検討する必要があると述べたのですよね。これは一方的な発表だと言うかもしれませんが、少なくともこういう変化が出てきているということです。そうすると、日本政府はこれを黙認し、容認しているのですか。  もう一つ、あなたがよく引用する三月一日発表された米国防報告、この中にも、アメリカはまたイラクなどの地域紛争とソ連の不確実性を冷戦にかわる新たな脅威と位置づけようとしているのですね。何でも理由は立つ。  こういうことなどをある程度総合すると、あれだけ基地の整理縮小だ、在日米軍基地大幅削減だと言いながら、はるか一万キロかなたの紛争があったということによって、日米間のこれまでの基地整理縮小の経緯を踏まえて出そうとした新構想というものが修正されるのか、あるいはまた、そういう伏線でアメリカ側はこういったいろいろなボールを投げてきているのか、疑問とせざるを得ない。そうであるならば、大臣、これはアメリカに確認を求めなければいけないと私は思うのです。今いろいろ日米間の重要案件も別にあって、なかなかすぐというわけにいかぬとおっしゃるかもしれませんが、少なくとも昨年四月以降あるいは六月に発表された一千ヘクタール等々を含めて、復帰二十年という節目もあって、またポスト冷戦ということもあって相当期待を持たされた。もちろん国際情勢が相当変化したことは私も理解をいたします。だが、それがうやむやの間に何かいい方向に全く進まなかったというと、これは事は大きな外交問題だと私は思うのです。したがって、このことについては、大変懸念をされるアメリカ側からのいろいろのサインというか言動があるので、日本側としてこれだけ重大な関心を持っていることについて、単にマスコミ報道だといってほっておくわけにはいかない、日米間の正式な議題として取り上げてしかるべき課題だと思うので、このことについて時期を見て十分お確かめになって、既定方針どおりいろいろ問題はあるにしても進めていくということでないといかぬと思うのですが、この決意がおありなのかどうか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  100. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 私から冒頭に、基地の整理統合問題について一般的な形で御報告させていただきましたけれども、具体的に御説明申し上げたいと思います。  先生まさによく御承知だと思いますけれども、昨年の六月十九日に、まさに今お触れになりました千ヘクタール、これは二十三の事案でございますけれども、この千ヘクタールの二十三の事案に関しまして、一つ一つ私どもは返還の手続をしっかり踏んでいくというのがこの第一の課題と考えております。  先生、これはもう既に御承知と思いますが、二十三のうち一つの事案は既にもう返還を了しております。これは浦添―宜野湾間のパイプラインの所在分でございます。それから二つの事案、牧港の補給地区補助施設と、それからキャンプ瑞慶覧に関しましては、合同委員会でこの返還のための手続を進めていくということが合意されております。残りの二十案件に関しましても、これから一つ一つ、私どもは合同委員会でしっかり協議をして、返還の手続を進めてまいりたいと考えております。これが第一の私どもの課題でございます。  第二の課題は、当時、六月にいわば積み残しました十八案件がございまして、これは安保協事案、それから沖縄県知事事案、軍転協事案、全部合わせまして十八ございますけれども、これに対しましても、今先生がまさにお触れになりました沖縄県民の御要望も踏まえて、私どもは引き続き米側と鋭意調整してまいりたい、こういうかたい決意でおります。ですから、今具体的に申し上げましたけれども、私どもといたしましては、従来どおり、施設、区域の整理統合問題に対しまして米側としっかり話し合っていきたい、こういうふうにかたく決意していることは、私からも繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。
  101. 中山太郎

    中山国務大臣 沖縄の県民の方々が持っておられる過去の第二次世界大戦における大変な体験、それらを通じて特別な感情をお持ちであることは私もよく理解をいたしておりまして、この沖縄におきます米軍基地の整理統合問題につきましては、引き続き努力をしてまいる覚悟でございます。
  102. 上原康助

    上原分科員 ですから、事務的なことはそれはやらなければいかぬでしょう。それはわかるのですが、大臣、アマコスト駐日米大使がこう言った。あるいは国防報告でこういうことになっている。そうすると、昨年の東アジア戦略構想というものが、当初構想されたとおり進むかどうか疑問というか、非常に不明瞭になってきている。だから、このことについては、日米間で改めて時期を見て話し合って、その方向でやろうやということを確認していただきたいということを今要望しているわけで、それはひとつ大臣の方からお答えください。     〔穂積主査代理退席、主査着席〕
  103. 中山太郎

    中山国務大臣 日米間におきましては、大臣レベルでも局長レベルでも随時協議をいたしておりまして、私どもといたしましては、米国側に対して、日本の安全と極東の平和のために在日米軍基地がどのように効果的に運用できるか、また従来の米国の基地の整理の考え方はどうなっていくのか、今後とも十分協議をしてまいりたいと考えております。
  104. 上原康助

    上原分科員 そこでもう一つ、この第一段階の整理統合の中に、これは局長が確かめてもいいわけだが、県道一〇四号越え実弾演習をやっている砲兵連隊があるわけですね。一説には、この第十二海兵砲兵連隊というものも第一段階の整理対象に含まれている。これはどうなっているのか。今わからないとおっしゃるならば、これはぜひ確認をとってもらいたい。あなたがさっき四千名が対象になっている、あるいは三千五百は在沖米海兵隊だという中に、第十二海兵砲兵連隊が入っているのかどうかをぜひチェックしてもらいたい。よろしいですね。わかったら、今のところ答えてください。
  105. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先ほどちょっと私数字を申し上げませんでしたが、昨年の十二月に、アジア・太平洋に展開する米軍の削減計画の報告書をアメリカの国防省は議会に提出しております。ただ、これは不公表でございますので、ちょっと詳細を私どももつかんでおりませんが、そこには、先ほど私は四千名強と申し上げましたが、数字で申し上げれば約四千八百名の在日米軍の削減計画が入っていると承知しております。ただ、今先生が御指摘の具体的な部隊がどうなるかという点は、ちょっと何分にも不公表の報告書でございますので、私どもも現段階では確認できませんが、判明し次第御報告したいと思います。
  106. 上原康助

    上原分科員 それは判明させますね。いいですね。確認しますね。確認していただけますね。
  107. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今申し上げたようなことで、まだアメリカ側が、この全体の数字も、私が今約四千名と申し上げましたのも不公表な報告書に入っている数字でございますので、その内訳に関しましては、当面不公表でございますので、残念ながらちょっと具体的な点が確認できないと思いますが、判明し次第先生に御報告したいと思います。
  108. 上原康助

    上原分科員 時間がなくなりましたので、まとめて申し上げます。  さっき松浦局長がおっしゃったのは、これは昔から言われていることだが、言葉は悪いけれども目くそ鼻くそぐらいなものなんだ、みんな部分返還だったら。そんなものやったって大幅縮小、縮小整理なんて言えない。だからあなた方は統合統合と言っている。  そこで注文つけます。普天間飛行場、読谷補助飛行場、那覇軍港、嘉手納マリーナ等々が返還の取りつけをやって、返還されるという計画ができ て初めて沖縄の基地の整理縮小と言えると思うのですよ。こういうことについては、さっきあなたが言った十八件に入っているのもあるし、いないのもあるので、特に普天間飛行場、読谷補助飛行場、これはいつも問題になって、この間も、つい二、三日前も問題になっている。那覇軍港、沖縄の玄関。嘉手納マリーナ、アメリカの兵隊は海水浴ができるのに、我々町民や県民はできない。今ごろこんなばかな話があるか。こういうことについても積極的にアメリカ側と交渉して実現を図るように強く求めたいと思いますが、お答えいただけますか。
  109. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 先生からの具体的な四事案について御質問ございましたので、私が承知しいる限りお答えしたいと思います。  最初に那覇港湾施設でございますけれども、これはまさに先生御指摘のように安保協事案の一つでもございます。したがいまして、私が先ほど申し上げました残りの十八案件の一つでございますが、何分にも移設先の問題がございまして、現段階では移設先の見込みが立っていないという問題がございますが、引き続き米側と話し合いをしていきたいと考えております。  それから普天間の飛行場でございますが、これは沖縄県知事の事案の一つでございますので、これも私ども引き続き話し合いをしていきたいと思いますけれども、現段階でも、先生御承知のように、米側がこれをフルに使っている状況でございますので、米側としては返還できないという立場をとっておりますが、私どもとしては引き続き話し合いをしていきたい、こう考えております。  あと、御指摘の嘉手納マリーナと読谷補助飛行場でございますけれども、これにつきましても、まさに先生が御指摘のように、地元より強い要望があるということは十分承知しております。したがいまして、このような強い地元の御要望も踏まえまして、しかしながら米側の適用上のニーズというものもございますので、さらに検討をしてまいりたい、こう考えます。
  110. 上原康助

    上原分科員 終わります。
  111. 林義郎

    林主査 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  112. 小森龍邦

    小森分科員 お尋ねをいたしますが、人種差別撤廃条約については、相当以前から重要な問題として国際的にクローズアップされておるわけでございます。しかし、過般の衆議院本会議におきまして、海部総理から社会党の土井たか子委員長に対する答弁としまして、人種差別撤廃条約の中にある言論の自由などの問題をめぐってなお検討が続けられておる、こういう意味のお答えがございました。その点につきまして、今日段階においてどこらのところがどういうふうに検討されておるのかということについてお答えをいただきたいと思います。
  113. 丹波實

    ○丹波政府委員 政府といたしましてもかねがね申し上げてきておるところでございますが、この人種差別撤廃条約を早期に批准することが重要だと考えてございますが、この条約に規定しますところの処罰義務というものと表現の自由など憲法の保障しますところの基本的人権との関係をいかに調整するかということで、私たちといたしましては関係省庁と検討を進めてきておるわけでございますが、現在もまだこの検討が進行中であるという段階でございます。
  114. 小森龍邦

    小森分科員 ずっと以前のことで、既にもう六年、七年前の話でございますが、ジュネーブにおいて人種差別問題に関する国際会議がございまして、私もNGOの関係でそれに出席をいたしておりましたが、アメリカから国連大使がやってまいりまして、ロビーでいろいろと、私ども現在の日本国民の立場から早くこれを批准してもらいたいという意味の話をいたしました。その際、国連大使は、速やかにこれを批准するように検討を始める、こういう意味の演説をその会議の席上でされたことを覚えていますし、その前日でしたか、私とロビーで、そういう意味の演説をするんだという話がございました。しかし、速やかにやるとか検討を詰めておるとか言って、余り時間がかかり過ぎるんじゃないですか。やはり物事を解決するということは、一定の時間を考慮に入れつつやらなければ、そういう言葉でもってぐずぐず延ばしておる、こういうことになると思うのでありますが、その点につきましてはどういうことになっておるのでしょうか。
  115. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生、今アメリカ大使のことを言及されましたけれどもアメリカも実はこの条約にはまだ加入しておらないわけでございます。  ちなみに後段の、一体これまで時間がかかっている理由は本当にどうなんだという先生の御質問でございますが、幾つか問題がございますけれども、特にこの条約の第四条には、人種的優越または憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種または皮膚の色もしくは民族的出身を異にする人々の集団に対するすべての暴力行為またはその行為の扇動、及び人種主義的活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律により処罰する犯罪行為であることを宣言するということが書かれてございますけれども、ここで言っておりますことは、非常に広範囲の思想の自由との関係の問題を提起しておりまして、特に、例えば扇動するということが一体刑法上どういう規定になるのかということ、これは私の専門じゃございませんで、法務省の問題でございますけれども、そういったことと罪刑法定主義の問題とか、いろいろな大変難しい憲法上の法律問題が絡んでおって、そこのところを、この条約に入った場合の考え方の整理をどうつけるのかという憲法上大変重要な問題が入っておるということで、関係各省庁、本当に真剣に検討しておるつもりでございます。時間がかかっておりますことは私も率直に認めます。そこは申しわけないと思いますけれども、問題の重要性にかんがみて非常に慎重な検討が行われておるというのが実情でございます。
  116. 小森龍邦

    小森分科員 それだけ聞いたら大変もっともらしく聞こえるのでありますが、しからば、そういう扇動とかという言葉を使った法律は我が国に一切ないか、この点についてはどういう受けとめをされておりますか。
  117. 丹波實

    ○丹波政府委員 私、国内法の専門家じゃございませんけれども、国家公務員法にはその種の表現があると聞いておりますけれども、刑法との関係では必ずしも承知しておりません。
  118. 小森龍邦

    小森分科員 つまり国の権力を民衆の間に抑圧的に使うときにはそういうものを、日本の法律では言葉もちゃんと使っております。ところが、人人の権利を拡大する、本当の人権を守るということについては、何年も何年も同じことばかり言っておるのであります。  それでは、同じ罪刑法定主義の国で、私の承知しておるところでは、百三十カ国を超える国がこれを批准しておりますが、それらの国では罪刑法定主義を無視してやっておるのでしょうか。
  119. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点は、時点のとり方によって加入国の数は少しずつ変わりますけれども、大まかな数字で、先生のおっしゃるとおり百三十くらいの国が加入しております。その中にはイギリスとかフランスとかイタリアとかニュージーランドなどが入っておりまして、恐らくこういう国でも罪刑法定主義ということが行われていると思いますけれども、国それぞれの国内事情あるいは歴史的な意味合いの違いということがあって、それぞれの国のこの条約の第四条に対する対応の仕方が違ってきているのであろうと推測いたしております。
  120. 小森龍邦

    小森分科員 よその国の対応がそれぞれ違うということになれば、我が国も、どうしても早く結論が出ないのであるならば、それなりの対応を、そういう状況のもとで留保の条件をつけてでも早くやるということが国際潮流にマッチしたやり方ではないでしょうか。
  121. 丹波實

    ○丹波政府委員 この条約には留保を付した国が確かに十数カ国ございまして、先生のおっしゃるのは一つの御意見としてはあり得る御意見とは思いますけれども、他方、この条約で最も重要なの は実はこの第四条でございまして、一般論として、ある条約なり協定に参加する場合に、その根幹をなすところの条文について留保することは、私としてはできるならば避けて、そこのところを本格的に取り組みたいというふうに考えていろいろ苦労しておるところであるというのが実情であろうと思います。
  122. 小森龍邦

    小森分科員 そうしますと、この第四条の「人種的優越主義に基づく差別及び扇動の禁止」というところで、一人種または一皮層の色もしくは種族的出身からなる人々の集団の優越性を説く思想または理論に基づいているか、またはいかなる形態の人種的憎悪及び差別をも正当化しもしくは助長しようとする、そういうことはいけないということには日本政府としても同調されるわけですか。
  123. 丹波實

    ○丹波政府委員 一般論といたしまして、社会的な出身であるとか皮膚の色、人種、そういったものを基準にして人を差別することはよくないことであるというのは、これは日本のみならず、国際社会におきましても確立された一つの考え方であろうと私は考えます。
  124. 小森龍邦

    小森分科員 そうすると、理念には賛成だけれども、それに対する具体的な対応のところでひっかかっておるということになりますが、そういうことはどなたでも言えるわけなんであります。実際に前向きにやろうとするには、その具体的なやり方に対してできるかできないか、しかもそれは速やかに検討を詰める、こういうことでなければなりませんが、一体いつごろまでに結論を出そうとされるのですか。
  125. 丹波實

    ○丹波政府委員 一般論として先生の御意見、私もよく理解するつもりでございますけれども、先ほども申し上げましたが、この問題は、憲法で言いますところの表現の自由とこの条約におきますところのそういった表現の自由の制約の問題、それから、そういった制約につきまして、違反した場合に犯罪行為であるという法律を制定しなければならない、それによって処罰しなければならないという大変重要な法律問題を含んでいることも事実でございまして、やはりよほど慎重に考えて検討しなければならないであろう。ちなみに、これは外務省一省の問題ではございませんで、政府部内の関係省庁とまさに一緒になって検討している問題でございます。
  126. 小森龍邦

    小森分科員 そういうことになりますと、既に我が国が批准をしております国際人権規約、この第五条の条文を読んでみますと、「この規約のいかなる規定も、国、集団又は個人が、この規約において認められる権利若しくは自由を破壊し若しくはこの規約に定める制限の範囲を超えて制限することを目的とする活動に従事し又はそのようなことを目的とする行為を行う権利を有することを意味するものと解することはできない。」つまり、人々の人権を制約するような言論はだめですよ、こういうことを言っておる国際人権規約を批准しておきながら、片や人種差別撤廃条約の問題になると、我が国政府は差別を残すための最後のとりでとして頑張っておるように私は思いますが、そこらの矛盾点はどう思われますか。
  127. 丹波實

    ○丹波政府委員 差別を残すために私たちが頑張っておるという先生のお言葉ですけれども、私、そういうふうに言われて大変悲しく思います。そういう気持ちは毛頭ございません。私たちなりに努力しているつもりでございます。  ただいまの第五条の問題につきましては、同じ自由権規約の第十九条におきましては、一定の場合には、例えば「他の者の権利又は信用の尊重」あるいは「国の安全、公の秩序」という場合にかかわってくる場合には法律によって制約することもまた可能であるという条項もあることを、私、御指摘申し上げたいと思います。
  128. 小森龍邦

    小森分科員 そういう条文があるにもかかわらず、その矛盾をある程度抱え込んで、そこは未解決のままこれを批准しているのです。少々の問題を未解決にしても国際的にこれに同調したという我が国政府の態度、その態度が日本国民に非常にプラスの影響をもたらしてくる、そうして解決しなければならないものはさらに継続して解決していく、そういう同じ態度がなぜ人種差別撤廃条約に対してとれないか、この点が私はまことにもって不思議なんであります。  外務大臣予算委員会やあるいは本会議等でも、私は外務大臣の言葉として聞いたと思いますけれども、憲法の前文の中の、つまり専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う、これは外務大臣が使われたのは九十億ドル出すということで使われたので、あれは私は全然見当違いの議論だと思う。これは、その問題について国会でまだ議論がないから、もともとはあの辺のところを理屈につけて海部総理が言われておったのです。しかし、平和に徹する、武力行使というようなことにかかっては片りんもかかわりを持たないという特別の路線において我々はこの国際社会において名誉ある地位を占めたいというのがあの条文なんであります。  それは一つの法案がもう既に決着のついた段階でありますから、それを掘り返そうと思いませんけれども、しかし、外務大臣にここでお尋ねをしたいのは、百三十カ国もの国が人種差別撤廃条約を批准しておって、そしてアメリカがやっていないということで割合安心感を伴っておるのだろうと思います。  ちょっと私、ここで訂正します。さっき私の言い方が悪かったかもしれません。アメリカから我が国の国連大使が来て、私は年度なんかも調べればわかるわけでありますが、日にちもわかるわけでありますが、我が国の国連大使が来られまして、速やかに検討する、国際約束なんですよ。ところが、それがいまだに守られないということは、それは名誉ある地位を確保することになるでしょうか。外務大臣、ちょっとお答え願いたいと思います。
  129. 中山太郎

    中山国務大臣 重たい条約とか軽い条約という意味じゃなしに、いろいろと条約案件をいわゆる締結をする、批准をするという手続をやります場合に、大変な国内法の整備あるいは憲法との関係というものを関係省庁で十分協議しながらやってきたのが今までの例でございまして、例えば麻薬の条約等におきましても大変な苦労をして現在作業をやっておる最中でございますので、委員からは、なぜしっかりもっと早くやらぬのかという御指摘でございますけれども政府としては、関係省庁と協議をしながらできるだけ早く批准をするように努力をいたしたい、このように考えております。
  130. 小森龍邦

    小森分科員 国際人権規約のみならず、留保しておるというか、例外扱いにした条約も他にあります。例えば女子差別撤廃条約。女子差別撤廃条約の精神からすれば、あらゆる形態の性をもっての差別は国内法を早く整備しなさい、こうなっています。ところが、皇室典範は女性を天皇にすることにしていませんね。これはどういう考え方でこれをのみ込んでおられるのですか。
  131. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは、先生申しわけありませんが、直接この法律を担当する国内の関係省庁の政府委員あるいは関係者にぜひお聞きをいただきたいと思います。
  132. 小森龍邦

    小森分科員 それは国の行政機関というのは細分化されておるから、その答弁も一面では無理からぬ点もあるかと思いますけれども、しかし、一つの条約を批准する、しないで相当長時間かかっておるということになれば、女子差別撤廃条約の直接の担当の省は外務省でございます。そこで、これをどう考えるかということで一応考えに考え、考え抜いた結果ああいう措置をされておるのであります。私は途中で、女子差別撤廃条約の早期批准のことについて外務省に伺ったことがあります。そのときに、ネックになっておるのは、つまり皇室典範の天皇の皇位を継承するのに性の理由をもって、女性なるの理由をもってこうなっておるので、そこで今ちょっとちゅうちょしております、こういう意味のことがございました。時間がたったからそういうことを私、申し上げるのですけれども。そうすると、そういうような具体的 な問題があったとしても、全体の大枠はこういう形でいくのですという措置、国際信用を保ち、我が国の民主主義とか世界の民主主義に貢献するためには、その大枠について賛成されておるわけであります。ところが、人種差別撤廃条約になるとそうはいかない。これがいかにしてもわからないのであります。  だから、私はどういうふうに考えるかというと、先ほど申しましたように、同和対策審議会の答申があれほど、市民的権利というものは人間の自由と平等に関する人類普遍の原理である、これを解決することは焦眉の急である、いわゆる国の責務であり行政の責任、国民的課題として焦眉の急である、こう言っておりますけれども、まだ依然として差別は続いておる。私は先ほど労働省、厚生省のおいでになる分科会へ参りまして、寿命と健康の問題で議論しました。私が提示した資料と労働省、厚生省などが提示された資料、労働省は特に収入の差別であります。厚生省は障害と寿命、つまり健康と寿命の問題をめぐっての差別の数字を出されました。解決してないのであります。その解決がずるずる延ばされることと、この人種差別撤廃条約をずるずる延ばすことと相符合しておるわけであります。だから、私そういうことを言うのです、これは政府は残そうとしておるな。  明治四年の八月二十八日に太政官布告第六十一号「穢多非人等の称廃せられ候条、自今身分職業共平民同様たるべき事」と布告したのです。しかし、それと前後して有名なあの壬申戸籍というのが出たのです。戸籍をつくるについてはちゃんと身分を明確にしておけ。片方では解放せいと言うて、片方では明確にせい、これが壬申戸籍であります。これは明治百年を期に我々が政府と談判をして、そして戸籍の問題については、そういうものは全部封印して法務省の書庫に入れてしまう、こういうことになったのでありまして、片方でよいことを言うても、片方で物事が進まなかったら、それは我々のように徳川封建幕府以来四百年間歴代差別に苦しんできて今もなお、私自身もそうであるが、親兄弟がさまざまな差別を受けておる者の立場からすれば、そういう考え方を持つのは当然でしょう。この点についてはどう思われますか。ぐずぐずして、そして我々が国連で各国のいろんな人と会ったら、人種差別撤廃条約というのは、何か日本の言葉から受ける感じは、人種というから日本の国内における身分差別の問題と関係ないように思うがいかがですかと尋ねたら、どの国の代表も、それは当然日本国内における身分差別の問題もこの人種差別の概念の中に含まれるものでありますと。だから我々は差別を撤廃するために勢いをつけたい。その勢いをつけたいことをここのところでストップをかける、そうして国際人権規約や女子差別撤廃条約ではさまざまなポーズはとる、こうなっておるのですね。外務大臣、あなたは閣僚の一員としてどうですか。私の心境は無理ですか。お答えいただきたいと思います。
  133. 中山太郎

    中山国務大臣 私はかつて総務庁長官時代に、同和対策の法律を延長する責任者として、社会党の先生方ともいろいろ協議をしながら法案の提案をやった経験者でございまして、この問題がいかに大きな問題かということは私自身がよく認識をいたしております。そういう立場に立って、今先生のお話を聞きながら、この問題がやはり国際的な条約の問題として日本の国内において一日も早く批准をするということが重要であるという認識は私は持っております。
  134. 小森龍邦

    小森分科員 そうすると、ぜひひとつ外務大臣、大いに馬力をかけていただきまして、そして各省庁の意見、きょうは時間がありませんから、どの程度詰まっておるかということまで問いただすことができませんが、ぜひ馬力をかけて進めていただきまして、世界の多くの国と隊伍、歩調を合わせて物事が取り組めるようにお計らいをいただきたい、かように思います。  そこで、多少付言をいたしますけれども、まことに残念なことでありますが、以前、中曽根総理大臣が差別発言をされまして国際的に問題になったことがございます。それから渡辺美智雄代議士も、当時、党の幹部であったか閣僚の一員であったか知りませんけれども国際的に非難されることがございました。そして先般は、これまた非常に残念なことでありますが、我が国の人権擁護の行政を担当する法務大臣、就任早々当時の梶山法務大臣が差別発言をされて国際的に問題になりました。  私は法務委員でございますので、梶山法務大臣の就任あいさつの機に、あの発言についての真意をただし、そして同時に心境もお尋ねしました。そこで、つづまるところはどういうお答えであったかというと、今までは単なる不適切な発言だと思った、けれども、いろいろ世間から言われて、そしてまた衆議院での法務委員会の議論を通じて、そういう単なる不適切というよりは、やはり差別意識がなかったと言えばうそになるという心境で受けとめています、梶山法務大臣はこういう答弁をされたのです。私はこれは非常に――それは人間、絶対に生涯過ちを犯さないということはあり得ぬわけでありまして、過ちを犯したときに、それに対してどういうふうに率直な態度をとられるかということが問題なんでありまして、私はそのときに、それは率直な態度をとられたと思いました、私は追及する立場でしたけれども。そして同時に、やはりこういうことは人からやかましく言われなければ、自分の人生経験だけではなかなか自分の内側を掘り下げることはできないということもわかった、こう言われたのです。  したがって、今直ちに私は、人種差別撤廃条約の処罰するところを同時に処罰するような形で批准をしてくださいとか、そんなことまで申し上げません。しかしながら、その根本的精神を世界の各国が組み込んで、やはり差別は悪いことだ、悪いことは人から追及されてしかるべきだ、そして追及されたら、それは素直に受けとめて、みずから改めるところは改めるべきだ、この思想が要するに国際人権規約のあの先ほど問題になった条文のところであるし、さらに人種差別撤廃条約の先ほどから話題になっております四条、そこの問題なんであります。そういう点をひとつ十分にお考えいただきまして、やはり日本が本当の意味で国際信用を回復しようと思うと、日本の国内における差別を解決し、そして世界のさまざまな差別とか圧迫とか偏狭とか専制と隷従ということに苦しんでおるこの方々に対して、生産力の高い影響力のある国でありますから、率先垂範してやれば大きく影響を持つわけでありますから、そういう点をぜひお考えをいただきたいと思うのです。  そこで、その点はもう議論をいたしましたので、そして外務大臣のお気持ちも承りましたので結構だと思いますが、先ほどODAの問題もちょっと出ておりました。したがって、できればODAの問題もほんのわずかの金で大助かりというのが人権問題なんでありますから、外務大臣として努力をしていただきたい。  私は、先般タイのバンコクへ参りまして、親に捨てられたような不遇な子供たちだけを集めて学校みたいなものをやっておるところがありますが、これは日本円にしたらほんの百万円もあったら実にすばらしい経営ができるんじゃないかと思ったことがございます。しかし、同じタイ国で、バンコクからちょっと奥の方に入った――私、歴史が好きでありますから、山田長政のゆかりの地に行きましたら、山田長政のりっぱな記念館が建っておりました。これは莫大な金が要るのであります。そういうこともよくお考えいただきまして、我が国で率先した態度をとるということ、同時にまた、国際的にも大きな影響を与えていただくということ、この点をお願いを申し上げますが、再度ひとつ外務大臣、今度は国際的な面におけることについてのお考えを承っておきたいと思います。
  135. 中山太郎

    中山国務大臣 委員から切実な御意見をちょうだいいたしまして、私は外交を担当する者として、あらゆる国における圧迫をされている人たち、そのような人たちに対して日本ODAが少しでもお役に立つということであれば、そういう 点にも十分注意を払ってやってまいりたい、かように考えております。
  136. 小森龍邦

    小森分科員 それでは委員長、終わります。
  137. 林義郎

    林主査 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  138. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 どうもお疲れさまですが、三十分の時間をいただいたものですから、自分の責任を果たす意味で立たしてもらいました。  モンゴル人民共和国のお話ですが、大臣湾岸紛争、そして終結後の処理の問題等でまさしく東奔西走、日本国の顔として総理大臣以上に、日本中山ありというぐらいの名を全世界にとどろかしておるようですが、こういう大変なときにモンゴル人民共和国の問題を取り上げる方はなかなかいないと思うのですが、実は国会の中に議員連盟がたくさんございます、大臣御承知なんですが。その中で、モンゴル人民共和国、一九七二年の国交回復前後に私も行って、それからずっとおつき合いしておりますが、その前に大先輩の長谷川峻先生を会長にして議員連盟をつくって超党派でやってございますけれども、その問題を少し、このごろマスコミでもかなり取り上げられてきたし、時代の趨勢でペレストロイカよろしくという体制になりました機会に、非常に日本国を向いております。その問題を取り上げたいと存じますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。  ちょっとその前に、大臣じゃなくて事務当局にお願いしておきたいのは、ちょうど会長が見えたので、後ろでテストでも受けているような感じなんですが、あしたの第一委員室でシベリア抑留の問題を取り上げるのでちょっと一問だけ伺っておいて、明日私の質問時間がありませんので、簡単なメモでちょうだいさせていただくと非常にありがたいと思いますが、北方領土四島、北方四島は果たして千島列島に入るのかどうか、これは一九五一年の日本が米英など四十八カ国とサンフランシスコ平和条約を締結したときに非常に論議されて、現在も続いておりますが、千島の範囲をめぐる問題ですね、これを明日で結構ですから、ちょっとメモ書きで教えていただければ大変にありがたいと存じます。  それでは、先ほど問題を提起しておきましたが、御案内のように、国交を樹立して以来非常に順調に推移してきました。向こうの方にも議員連盟がございます。こちらの方にももちろん、長谷川峻さんを会長にして、私は事務局長をやっております。そういう意味もあって伺わせてもらいたいと思います。  我が国が西側陣営に属して、一方モンゴルは今まで東側に属しておった。だから、御承知のように東西の冷戦下では友好協力関係を進展するにもおのずから非常に制限があった。例えば、私は地下資源関係の会社におったのですが、それを見ると、非常に銅鉱がとれる。それは土壌そのものがレアアースといいまして、非常に金属性を含んだ土壌を持っています。そこで銅鉱をソ連が、処理する銅鉱として買っていくわけです。ところが、皆さん御承知のように、銅鉱の中には金銀が入っておる。それは計算しないで買っておる。しかし、今になって気がついたけれども、もう遅い。こういう一つの例を申し上げますが、それで非常に日本の方にいろんな角度で協力方を要請しております。  そして、今四十七、八歳の大統領オチルバトさんが指揮して政治体制も多党化し、そしてこの間九月に初めて自由選挙も行われた。またこの間は超党派でチミドという議員を団長にして議員団が両院に表敬に来られたこともあった。  そこで、それ以上の前置きは略しまして早速聞きますが、私も昨年九月初めて、会長を初め皆さんの御協力をいただいてチャーター便というのが出た。直行便ですね。今までだと新潟からハバロフスクへ行ってイルクーツクへ戻ってきてウランバートル、あるいはモスクワに一たん行ってウランバートルに行く、あるいは北京に行って一週間に一便の飛行機でウランバートル、大体最低二晩三日というあれが、新潟から直行を出してみたら、当然だと思いますけれども五時間足らず。ところがモンゴルの変革は非常に想像以上に進んでおりまして、民主化、改革の動きを政府は果たしてどのように受けとめておるのか。  これから、外務大臣はもちろんですが総理大臣にも何とか一度という考え方を最後にお願いしておきますが、その前に、オチルバト大統領が訪米したりあるいは日本の即位の礼にも奥さんと一緒に来ておりまして、非常に積極的に外交が進められておりますが、それを政府ほどうとらえているのか、まずそこから伺いたいと存じます。
  139. 中山太郎

    中山国務大臣 モンゴルの民主化は大変順調に進んでいると私は認識をいたしております。  また、かねて長谷川先生あるいは川俣先生が日本・モンゴルの関係の向上のために大変御苦労いただいていることも、この機会に敬意を表しておきたいと思います。  私は率直に申し上げて、私が就任してから初めてモンゴルの代表者がお越しになった。海部総理とも一緒にお話しになり、早速協力をすることをお約束したことをよく記憶をいたしております。  なおモンゴルの民主化後、いわゆる国際社会における外交活動というものは鈍かった時代がございました。昨年の六月十五日に行われたサンフランシスコにおける日米外相会談において、実は私から、日本側からベーカー長官に、モンゴルの近代化、これについてアメリカ協力をすべきではなかろうかという意見を申し上げたということもこの機会に明快に申し上げておきたいと思いますし、ヒューストン・サミットの政治宣言にもモンゴルへの言及があったのは日本政府の主張であったことを御記憶を願いたいと思います。  また、九月二十七日、国連総会におきまして、私とインドネシアのアラタス外相と二人で、東南アジアアジア・太平洋の外相会合というものを初めて開催をいたしましたが、その際にも、モンゴルの外務大臣をゲストとしてお招きをしたことも申し上げておきたいと思います。  日本政府としては、今後ともモンゴルとの関係強化努力をいたしていきたい、このように考えております。
  140. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そこまで大臣におっしゃっていただくならば、さらにその裏づけの話に入りやすいと思います。  我が国アジアの一国として、さらに環日本海の一国としてこのような民主化、経済改革の動きをやはり惜しみなく支援する必要もあるし、そしてモンゴルの安定、発展に協力する必要があると思います。  そこで早速ですが、経済改革を進めるにしても非常に今モンゴルが経済的に困っておりますね。行ってみると、いろいろな意味で困っております。ジンギスカンの政策が裏目に出たのか、あるいは長いソ連の指導下にあったせいなのか、非常におくれておることは事実です。  そこで一つずつ伺っていきますが、まず最初に私はしょっぱな話したのですが、地下資源の開発を非常に日本に求めておりますね。そこでエネ庁、来ておると思いますが、大体どのようなことを今やっておるか、そして今後どういう方針で援助体制をつくっていくのか、その辺を伺いたいと思います。
  141. 高原弘栄

    ○高原説明員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のように、モンゴルにおきましては地下鉱物資源、これは非常に大事な産業でございまして、私どもが聞いておりますところ、今、国内工業生産の二〇%が地下資源、その四〇%の輸出が鉱産物に依存しているというような状況だそうでございます。日本に対しましても技術協力に対する要請がございまして、現在私どもの方でも金属鉱業事業団実施母体といたしまして鉱物資源開発の基礎的な調査実施中でございます。実は、これにつきましては今週も調査団を派遣しておりまして、どういう内容で協力したらモンゴルのために一番効率的かということについて、ただいま現地へ参りまして相手国と協議をすることにしております。
  142. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 それで、現に具体的に日本国のど こかの会社と取引などはどの程度やっておりますか。
  143. 高原弘栄

    ○高原説明員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、モンゴルは立派な銅鉱山を持っておりまして、日本の企業もこれまでに銅鉱石を民間ベースでスポットで買っているというふうに伺っております。これは一九八八年、八九年に行われておりまして、さらに今後についても引き続き買鉱をするというような話が進んでおるというふうに聞いております。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 聞いておる、聞いておるの話ではなくて、事業団というのがあるわけですから、それを通じてエネ庁がもう少し積極的にやってほしい、こういうように要請しておきたいと思います。  それから二番目ですが、向こうの方では、想像がつくと思いますが、医療関係が非常におくれておるというか、レントゲンの機械も戦前のものを使っておるという状態でございました。幸い厚生省の医療センター、昔の第一陸軍病院ですか、あの戸山町の医療センター、これは林先生が厚生大臣のときにつくったのだったかと思いますが、ここに海外協力部というのがあります。今我妻先生が部長で、これは有名な我妻栄さんの御子息ですね。それで、厚生省としては今回、特に緊急援助申し入れに対してどういうようにやっておるか、外務省とどのように協力関係があるか、そして今後どのようにやるつもりか、厚生省内でよく論議して検討しておるかということを聞きたいと思います。
  145. 澤村宏

    ○澤村説明員 厚生省といたしましては、外務省実施しております事業に対しまして専門的な立場から協力を行うために、ただいま先生お話がありましたように、昨年の七月下旬から約十日間にわたりまして、国立病院医療センターの国際医療協力部の医師を派遣して、いろいろと専門的立場から御協力をしているところでございます。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 もう少し具体的に、厚生省、何か言い方があるのじゃないかな、特に医療関係
  147. 澤村宏

    ○澤村説明員 その調査におきましてモンゴル人民共和国におきます医療機材の整備につきまして、病院管理面での専門家の立場からいろいろと助言を申し上げたというふうに聞いております。
  148. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうすると、今回の緊急援助の依頼に対して具体的には厚生省は御承知ないのですね。
  149. 太田義武

    ○太田説明員 緊急援助の中身は医薬品の援助、これにつきましてございますけれども、現在まで正式に私どもの方に要請がございませんけれども、私どもとしては専門的な立場から助言等を行うような協力をぜひともさせていただきたい、このように思っております。  例えば向こうから来ます医薬品につきまして、実は現地の言葉なりあるいは英訳された言葉で参りましても、日本にあるどういう医薬品に該当するのかという問題もございますし、あるいはそういう医薬品が確保できる場合も、例えば添付文書といいまして、それが少なくとも英語で書いてないと現地でお使いになれないということもありますので、こういうものも品目が確定すればそういう点での企業の指導等も行い、確保できるようにしてまいりたい、このように思っております。
  150. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 モンゴルと日本というのは、大臣からお話があったようにやはり今までは気持ちの上では近いのだが、あるいは人類的にも近いのだろうと思いますね、お互いにモンゴル斑というのを持って生まれた日本人ですから。けれども、やはり聞いてみると、らしいとか何が具体的かということを言われるところを見ると、せっかくこの間私らと前後して、さっき話をした海外協力部の課長がお医者さんで行ってきたのだから、やはりこの辺で外務省中心になって関係審議会みたいな、会議みたいなものをつくる必要があるのじゃないかと思っておりますが、これは今ぶっつけ本番ですから、検討してもらうように、後で我々が組織をつくりたいと思いますので、提案をします。  それから農林省、ちょっとお願いしておりますが、農業関係も、あんなに広い土地、それは砂漠だろうと言うだろうけれども、中東の砂漠とは事違って草木の生えている砂漠でございます。一つの例を言うと、麦畑がたくさんあるのですが、ビールはできない。みんなモスクワに一たん運んで逆にビールが入ってくる。それから、たばこの畑がたくさんあるのですが、シガレットができない。全部そのまま乾かして、日本の幕府の時代と同じように、巻きたばこというか刻みたばこで過ごしておる。シガレットは全部モスクワに運んで返ってくる、こういう状態なのですね。  そして、例えば、何回も言うのですが、我々議員連盟が中心になって長谷川会長の音頭でカシミヤ工場というものをつくってあげたのです。そうしたらそれが二千万ドルの経済援助。それは賠償かということだったのですが、賠償ではないと盛んに向こうは言うのだが、ノモンハン事件まで話を出すところを見れば何かおねだりしているなと思っておるのですが、やはり我々できるだけ、あれだけの広大な土地、日本の四倍半ですから、そしてこの間議員団が来たところによると、ちょうど二百十万人になりました。四倍強の土地の面積に二百十万人だというから本当にうらやましいような感じです。  そこで、農林省はどういうような手だてでモンゴルに経済援助を考えておるか、今までの実績と今後の見通しを聞かせてもらえればありがたいなと思っております。
  151. 三宅輝夫

    ○三宅説明員 お答え申し上げます。  先生今御指摘になられましたモンゴルに対します私ども協力という観点から考えますと、モンゴル政府の方で現在の民主化の動きと合わせまして、経済計画の中で畜産業を中心とする農業開発ということを今真剣に考えておられると聞いております。  私どもといたしましては、従来は畜産業、特にえさが重要問題でございますが、えさの分野での研修員の受け入れあるいは畜産分野での機械化問題についての日本への研修員の受け入れ等の協力を行ってまいっております。  これから私どもといたしましては、やはりモンゴル経済のこれからの動きに際しまして農業分野での発展ということは非常に重要であろうと思いますので、今後外交ルートでお話がございますれば私どもとしてはぜひとも積極的に協力をしてまいりたいと思っております。
  152. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 こういうように各省が個別にスポット的に援助が非常になされております。  そこで、きょうは運輸省あえて呼んでいないのですが、やはり交通ルートがもう少しはっきりしないといかぬのではないかな。この間チャーター便を出す際にも、うちの方には日本航空を初め民間の航空会社が幾らでもあるんだから、こう言うたのですが、何しろ向こうの方はドルを稼ぎたいのか、いやうちの方から飛行機を出すと。何ぼ飛行機あるかと言ったら、二機しかないんですな。二機ですがジェット機がありますのでと。しかし、ようやく頼んでやっと直行便のチャーター機が出るという状態を何とかしなければならないな、こういう感じがいたします。その辺はどう思いますか。大臣いないから、あなたからひとつ。
  153. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 確かに先生がお話しのようにモンゴルという国は、いろいろなことを私どももやりたいと思っております中で、これからやはり一つの有望な分野というのはまさに観光の分野だと思います。  他方、今直ちに航空路を定期化するというところまでは、まだ何せ受け入れの態勢もございませんし、それだけの需要があるかという不安もございますけれども、将来の問題としてやはり人の交流、なかんずく日本からの観光客をできるだけ誘致されることをモンゴル政府でぜひ積極的にお考えになってはどうかということで、私どもも折に触れてそういうお話をモンゴルの政府関係者にはしております。
  154. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 もう一つ、セクションのお話をすると、交換留学です。文部省、来ていますか。交換留学を始めてから日本というものはさらに一 層、やはり言葉でしょうから――それから結婚等が、さっき言ったように先祖が同じだから合うのか知らぬけれども、非常に多いのでございますけれども、向こうの方の言い分は、もう少し交換留学の数を一人でも二人でもふやしてくれないかということ、オチルバト大統領、リンチン議長、ソドノム総裁というような偉い人が異口同音に話をされてきているのですが、その辺はどうですか。今どういう状態ですか。
  155. 中西明典

    中西説明員 日本とモンゴルとの留学生交流の現状でございますが、現在モンゴルから国費留学生として我が国で学んでいる学生が十五名、それからモンゴル政府の招聘でモンゴルで学んでいる日本人学生が八名ございます。  この留学生交流につきましては、実は毎年毎年日本・モンゴル文化交流年次計画というのをつくっておりまして、その計画の中で留学生の交換を行うわけでございますけれども平成三年度につきましては、モンゴル側の要望にこたえまして、学部学生の一名増、それから高等専門学校への留学生の受け入れ、こういうふうに留学生交流を拡充いたしております。来年度以降の問題につきましては、モンゴル側の要望も踏まえまして、外務省とも相談しながら受け入れの態勢の整備を図っていきたい、このように考えております。
  156. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 今の駐日大使は四代目でしたかね、ヨンドンといって会ってみると我々よりも日本人らしいし、美男子ですよね。そういうことを考えるとなおさら、今交換留学の前向きの話もありましたが、ぜひそのように積極的に進めていただきたいと思います。  そこで大臣に提案は、こういうように各省がそれぞれ我々議員連盟を基盤にして手分けをして人脈だけで今動いているという格好を、何とか外務省中心になって本当に交流を深めよう、経済援助をやろう、こういう大臣のさっきの話を考えると、ぜひそういう非公式な組織体をつくっていただきたいというのが一つ。  それからもう一つは、こういうような時期に際会しまして、我が国とモンゴル人民共和国との関係を一層発展させるために、今は議員レベル、親善協会レベル程度の交流ですが、経済界、政界、そして学界、文化人ですね、文化の非常に豊富な先祖でありますので、そういった三者が一緒になって日本・モンゴル友好協会をつくろうじゃないか。これは御一同議員の人方おりますので超党派で提案しておるのですが、その友好協会を今つくるべく準備しておりますので、これを外務省もバックアップしていただけるかどうかというのが二つ目の提案。  それから、最後の三つ目で終わりますが、あと三分しかありませんが、さっきから大臣もおっしゃっていますが、恐らく海部総理の頭の中にモンゴルなんというのはなかなか忙しくてないかと思うのですが、外務大臣はそうはいかないのだと思いますので、ぜひ一度モンゴル訪問の機会をつくっていただきたいものだ。我々も超党派で応援したいと思いますので、中山外務大臣がモンゴルを訪問するまではずっと外務大臣に座るように我々も超党派で協力を惜しみませんので、ぜひひとつこの三つの提案を、長谷川会長を含めての質問でもあることなんで、ぜひお答え願いたいと存じます。
  157. 中山太郎

    中山国務大臣 各省との有機的な連絡、協議をする組織をつくれというお話でございますが、外務省中心になってこれからも各省と緊密にチームワークをとることをまずお約束申し上げておきたいと思います。  それから、日本・モンゴル友好協会をつくる場合に外務省は応援をするかというお話でございますが、もちろん喜んで応援をさせていただきたいと思っております。  第三点に、外務大臣はモンゴルを一度は訪問せよというお話でございましたが、私自身も就任以来モンゴルの関係者とは随分お目にかかっておりまして、実はベーカー・アメリカ長官にモンゴルを訪問するように勧めたのはこの私でございますから、私も時期を見てモンゴルをぜひ訪問したい、このように考えております。
  158. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 ありがとうございました。積極的な姿勢をお示し願ってよかったと思いますが、向こうに高瀬大使、皆さんの先輩でしょうが、大変にその面も苦慮しておりますので、今こういうお話をしたら穂積先生と何か同級生だという耳打ちがあったのですが、なおさら超党派でよろしくお願いしたいと思います。  以上、終わります。
  159. 林義郎

    林主査 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、伊東秀子君。
  160. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 一九九〇年は国連の定めた国際識字年でございましたし、また、この年の九月に子供の権利条約が国際条約として発効いたしました。さらには、史上初めて子供のための世界サミットが国連主催で開催されたわけでございます。私は、この識字年と子供の権利条約、さらに世界子供サミット、この三つは相互に関連を持つ、子供の現在置かれている状況から見て大変重要なものであると考えております。  そこでお尋ねいたしますが、この子供の権利条約については、外務省はまだ仮訳すら出していない。出すつもりがあるのかどうか、その時期及びこの条約の批准の見通しについてお答えいただきたいと思います。
  161. 丹波實

    ○丹波政府委員 この児童の権利条約につきましては、現在も関係省庁との間で条文の詰めをやっております。それから、国内法との関係の検討も進めておりまして、この検討が終わり次第、できるだけ早く国会におかけしたいと考えております。その過程で日本文も、法制局との間で現在あるいは今後詰めるわけですけれども、用意でき次第、これも御利用できるようにいたしたいと考えております。
  162. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今のお答えですと、国内法の整備も検討し進めているということでございましたが、具体的にどういうような整備をお考えで、どういう事業を進めていらっしゃるのか、お願いいたします。
  163. 丹波實

    ○丹波政府委員 国内法との関係につきまして、いろいろな解釈その他を詰めておるということでございます。
  164. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 具体的にどの法のどこの部分を整備しなければいけないというような、そういったピックアップ作業も現在もうなされているのでしょうか。
  165. 丹波實

    ○丹波政府委員 いろいろ関係各省庁にまたがるところがたくさんございますので、要すれば、国内の関係省庁から御聴取いただきたいと思いますけれども、民法ですとか少年法ですとか、いろいろなそういうかかわってくる法律について解釈その他の勉強といいますか、検討をしておるということでございます。
  166. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 そうしますと、いつごろ批准の見通しであるとか国内法の整備、いつごろ国会に上程されるであろうかということは、まだ具体化していないということでしょうか。
  167. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは外務大臣から、先般衆議院の委員会でも御答弁がございましたけれども、私たちといたしましては、でき得れば今国会、おそくとも来年の春の国会にはおかけしたい、しかし、でき得れば今国会という気持ちで作業しておるつもりでございます。
  168. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今国会に向けてということでございますが、先ほどの御答弁を伺いますと、まだ民法とか少年法とか云々ということで、具体的な国内法に関しての取り組みの御答弁がなかったわけでございますが、今国会ということであれば、なるべく早い時期に、国内法のどの部分をどういう形で改正していくということを国民に明らかにしていただきたいというふうに要望しておきます。  次に、国際識字年の取り組みでございますけれども、民間ベースではかなりたくさんの事柄がなされたわけでございますが、政府レベルではほとんどなかったのではなかろうかというように私は認識しているわけでございます。この国際識字年 を定めた国連決議、これを履行するために政府としてはどのような取り組みをしたのか、御報告をお願いいたします。
  169. 丹波實

    ○丹波政府委員 この国際識字年につきましては、一昨年の二十五回ユネスコ総会におきます決議、それから昨年九月の子供のための世界サミットにおきます行動計画が採択されておりまして、ユネスコ総会における決議につきましては、各政府に対しまして非識字の克服努力を倍加するようにという表現が入っておることは私たちも承知いたしております。  それから、昨年九月の子供サミットにおきますところの行動計画におきましては、ほかの問題も触れておりますけれども、しかし、特にこの識字の問題に大変重点を置いたものになっておることは、私たちは承知いたしております。  このフォローアップ、モニタリングという項目の中に、一九九一年の末までに国内の行動計画を準備するようにという一項が盛り込まれてございますけれども、まさに九一年はことしでございまして、そのことしの末までに、日本国内としてそれではどういう計画を策定するのかという点につきまして、現在、外務省が窓口になりましてと申しますか、外務省もその一つといたしまして、関係省庁の間で検討が行われているという状況でございます。
  170. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 その非識字者の実態の把握の問題なんですが、現在どのように実態を把握しておられるのか、実態調査を行っているのかどうか、さらに、行っているとすれば、その調査の中身について御答弁をお願いいたします。
  171. 牛尾郁夫

    ○牛尾説明員 我が国における非識字者の現状でございますけれども我が国におきまして非識字者の人口を全国的に直接把握した調査はないわけでございますが、昭和五十五年の国勢調査によりまして十五歳以上の未就学人口状況を見てみますと約三十一万人、十五歳以上の人口の〇・三%となっているところでございます。
  172. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 実際にはその非就学者の人口把握だけでは、非識字者の実態把握は全くなされていないと言えるのではなかろうかと私は考えるわけでございます。つまり、障害者の就学免除の人たちあるいは就学猶予の人たちが非識字状態にあるとか、被差別部落の子供たちが、あるいは大人も含めてですけれども、実際かなり非識字の実態に置かれているとか、在日朝鮮人・韓国人の方方あるいは中国残留孤児で日本に引き揚げてきている人たち、そういった方々の中での非識字者の問題が、大変社会問題にすべき状況にあるのではなかろうかと私は考えているわけでございます。文部省はそれに対して、今は未就学児童三十一万人、これの把握しかしていないという御回答でございましたが、今後の取り組み等を含めてどのようにお考えなのか、お答えをお願いいたします。
  173. 鬼島康宏

    ○鬼島説明員 今識字、非識字者の問題の御指摘がございました。どのくらいの人数がいるかということがございましたけれども、非識字者を正確に把握するのは非常に難しいところがございまして、先ほど御答弁させていただいたような状況でございます。  私ども文部省といたしましては、子供のころから家庭の経済的な事情など、いろいろな事情から読み書きに問題を抱えた人々がおられるわけでございまして、この問題につきましては、市町村において従来から社会教育の一環として、基礎的な読み書き能力を身につけ、生活水準の向上を図るということで識字学級を開設しているところでございまして、文部省におきましても、昭和五十七年度からその助成、援助を開始して、拡充に努めてきているところでございます。年々この識字学級数はふえてきてございまして、昭和五十七年に六十八学級であったわけでございますけれども平成二年度におきましては百四十九学級ということで、大体三千人ぐらいを対象に実施してきておるわけでございます。  この市町村に対する助成とは別に、国際識字年ということで、平成二年度におきましては、文部省において全国の識字教育指導者の研修や経験の交流を深めるために全国的な研究協議会を開催したところでございまして、識字教育は社会、経済文化の発展に欠かせないものでございますので、その対応には十分留意して充実に努めてまいりたいと考えております。     〔主査退席串原主査代理着席
  174. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 具体的にお尋ねいたしますが、被差別部落の実態を申し上げますと、一九八四年に部落解放同盟が調査したところでは、十五歳以上で未就学が被差別部落人口約三百万人のうちの六・一%、読み書きが全く不自由あるいはかなり不自由という人たちが一六%、少し不自由という方々が二九・七%いる。一九八五年の総務庁の調査においても、読み書きに支障がある、これは被差別部落の方々だと思うのですが、一八・六%、つまり二十二万人くらいいるという調査結果が出ているわけでございます。  現在、六百の識字学級で約一万五千人の人たちが学んでいるわけでございますけれども、今の御回答では、約三千人を対象にしたものに助成を行っているということでございましたが、この被差別部落の識字学級についての今後の方針等はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  175. 鬼島康宏

    ○鬼島説明員 ただいまの御質問の中に、六百ほどの学級が開設されているというお話でございましたが、先ほどちょっと説明不足でございまして、全国に識字学級として開設されているのは約六百学級ございます。先ほど申し上げましたのは、国の援助といたしまして、補助としましての学級数を申し上げたところでございまして、これは各市町村がそういう学級を開設したいので国の援助を、支援をということで、市町村から都道府県を経由いたして上がってくるものでございまして、それに対して助成を申し上げる、こういうものでございます。私ども、いろいろな折にそういうことの周知をいたしておるわけでございますけれども、市町村からそのように上がってくるものに対しましては、私どもとしては皆助成に応じておるということでございます。  今後どうするかということでございますが、先ほど申し上げましたように、市町村におきましては、その学級に対する援助をもっとしてほしいということがございますので、私どもの方といたしましては、最大限それに応じていきたいと考えておるわけでございます。
  176. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今被差別部落の例を出しましたが、夜間中学においても非識字の方々がたくさん学びにいらっしゃっている。例えば、先ほど申し上げましたように、中国の残留孤児の引揚者の方々とかあるいは元登校拒否のまま小中学校を長期欠席して読み書きが十分でないために学びに来ているとか、あるいは難民条約に基づいて日本に入ってきた難民の方とか、外国人労働者の子弟とかあるいは外国人労働者自身とか、こういった方方が来ているということですが、夜間中学に対して政府としてはどういうふうなことを考えておられるのか、御回答をお願いいたします。
  177. 鬼島康宏

    ○鬼島説明員 夜間中学のお尋ねでございますけれども、実は私の担当外でございますが、お答え申し上げたいと思います。  中学校におきまして夜間学級を開設してございまして、平成三年度の予算案関係でいいますと、三十校ほどの開設に対しまして国の助成措置を行うという考えでございます。ここにはかなりのお年の方など、あるいはまた在日外国人という方もおられるわけでございますが、その学級におきまして、学習の指導あるいはさまざまな生活の指導を行っておるわけでございまして、今後その充実に努めていきたいと考えておるところでございます。
  178. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 障害者の方で就学猶予あるいは就学免除の措置に基づき非識字の状態にある方方に対しては、政府としては具体的にどのような行動計画といいましょうか、取り組みを考えておられるのでしょうか。
  179. 鬼島康宏

    ○鬼島説明員 未就学あるいは就学できなかった子供たちで十分な学力がつかなかったという人々に対しましてどのように進めているかというお尋 ねでございますが、格別にそういう方たちを集めてどうこうするということは現在いたしておりませんけれども、私ども、社会教育の広がりの中でそういう人たちも含めて対応してきておるところでございますし、今後もそのように対応していきたいと考えております。
  180. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 私が伺いましたのは、障害者に対する識字教育の問題なんですが、具体的にはまだ取り組みは考えていないということでしょうか。
  181. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 お尋ねの、障害のために就学義務を猶予あるいは免除された子供に対します識字学級の問題かと思いますが、現在は、養護学校に通い得る子供たちにつきましては、例えば病院に併設して学校をつくるとかあるいは病院の中に学校をつくる、学級をつくるという努力をして、病気の治療をしながら学習にも励ますということを考えているわけでございますけれども、今先生のお尋ねの猶予、免除を受ける子供たちは、それよりもさらに障害の程度が重い子供たちであります。そういう子供たちでありましても、家庭の中であれば、学校の先生が出かけていって、訪問指導と言っておりますけれども、そういうことが可能であれば、そういう形で子供たちに学習のチャンスを与えるという努力はいたしておりますが、さらにそれよりも重度な子供たちにつきましては、これはやはり病気の治療に専念をして、一日も早く学習のできる健康な体に戻すということで、現時点では、その子供たちにつきましては、病気治療専念を大事にするというような対応になっております。それが現状でございます。
  182. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 障害者で就学猶予ないしは免除により非識字の状態にある方が、文部省がちゃんとした実態調査なさっていらっしゃらないので、これはあくまでも推定ですけれども、八十万人ぐらいおられるのではなかろうかと言われておるわけですが、その数に対して、今おっしゃったような家庭に出かけていって識字の教育をする、そういったことを実施している数はどれくらいなんでしょうか。
  183. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 恐縮でございますが、手元に正確な資料を持っておりませんが、私が申し上げましたのは、籍としては養護学校等の学校籍を持った人たちでございます。もちろん年齢は問わないわけでございますけれども、学校籍を持った人たちに対する手当てとして訪問指導が行われているということでございまして、今私が説明いたしましたのは、そうした形での教育の形態を申し上げたところでございます。
  184. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 この八十万人に対してどれだけ識字教育を行っているかという点については、ぜひ知りたいところでございますので、この後でも結構でございますので、文部省で把握している限りをお教えいただけたらと思います。  次に、先ほど外務省のお答えでは、子供の権利条約については今国会中にも何とか国会に上げたいというような御答弁でございました。その子供の権利条約の第二条によりますと、さまざまな差別を撤廃せよということをうたっているわけでございますけれども、この条項をきちんと実効性のあるものにするために、被差別部落で行われている差別解消のために、政府としては具体的にはどのような法制ないしは行政を今後考えているかということが第一点。  二つ目については、アイヌの方々へのさまざまな差別が現実には存在するわけでございますけれども、そういったアイヌの方々への差別をなくするためにどのような法制度ないしは行政を考えておられるのか、具体的にお答えをお願いいたします。
  185. 丹波實

    ○丹波政府委員 今の先生の二つの御質問、いずれ国会に条約をお出しいたしますので、その際、具体的な問題については御説明申し上げたいと思います。まさに先生御提起の問題も含めて、どういう対応をこの条約との関係でするか、現在関係省庁と検討中でございますので、検討が終わりました段階で国会に御提出申し上げますので、その段階で具体的な御議論をさせていただきたい、こういうふうに考えます。ぜひよろしくお願いいたします。
  186. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 現実に今部落基本法とかあるいはアイヌ新法ということが具体的に上がってきているわけでございますけれども、そういった点について、この子供の権利条約二条との関係でどのようにお考えであるのか、御答弁をお願いいたします。
  187. 中西明典

    中西説明員 私どもは現在、アイヌ新法問題につきまして、関係省庁がお集まりいただいて検討委員会を設けて検討しておるところでございます。私どもが議長役を務めさせていただいておりますが、この新法の問題につきましては、内容がいろいろ多岐にわたっておりますし、法制上いろいろな問題がございますので、さらに十分関係各省庁で検討を続けていくことが必要だというふうに考えております。
  188. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 部落基本法についても同時にお願いいたします。
  189. 中西明典

    中西説明員 部落基本法については、私どもの所管しておるところではございませんので……。
  190. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 レクチャーのときに申し入れはしておいたのですけれども。  ただいまアイヌ新法のことに関して、法制上多多問題があるのでまだまだ検討を要するというような御答弁でございましたが、検討の結果、具体的に法制上どういう問題があるということになっているのか、さらに、時期的にどの程度を検討期間というふうに考えているのか、御答弁をお願いいたします。
  191. 中西明典

    中西説明員 アイヌ新法問題につきましては、現在、御承知のとおり、ウタリ福祉対策を初めとして各般の施策が講ぜられておるところでございますが、これとは別に、あるいは北海道から提起されましたような新法という必要性があるのかどうかという点について、いろいろ議論しておるところでございます。その際に、例えば先住民族としての権利を尊重するという基本理念に立ってという御要請でございますが、そうした権利の内容あるいはそうした権利というものをどう考えるのか、いろいろ議論を尽くさなければならない点は多々あるわけでございます。したがいまして、現在要望されております北海道庁の方々にも御参加いただきましていろいろ検討を続けておるというのが現状でございます。
  192. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今の御答弁ですと、つまりこのアイヌ新法の必要性の問題の段階で今検討がなされている、先住民族の権利として認めるような法律が必要なのかどうかという、全く前提問題と言えばいいのでしょうか、入り口の問題であって、まだ個々の権利、中身には入っていないというふうに受けとめてよろしいのでしょうか。
  193. 中西明典

    中西説明員 先住民族としての権利という御主張があるわけでございますが、具体的にどういう内容の権利を求めておられるのか、あるいはそうした権利というものが認め得るのかどうか、そうした先住民族という立場に立っていろいろな特別な権利というものが認め得るのか認め得ないのか、あるいはどういう問題があるのか、そうした点も含めて、要するにそうした新法というのが必要であるのかないのかという議論をしておるところでございます。
  194. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 部落基本法の問題についての御答弁はないのでしょうか。――それでは、時間になりましたので、これで質問を終わります。
  195. 串原義直

    串原主査代理 これにて伊東秀子君の質疑は終了いたしました。  次に、寺前巖君。
  196. 寺前巖

    寺前分科員 私は、きょうは関西研究学園都市をめぐって、ちょっといろいろ調査をしてみると、無視することができないということをいろいろ気づきましたので、まず外務省にお尋ねをしたいと思います。  一つは、世界文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、いわゆる世界遺産条約は世界の百十二カ国が批准をしているわけですが、一九七二年のユネスコ総会で採択されてからもう二十年になる。何で日本はこれを批准しようとしないのかよ くわかりませんので、これをひとつ説明をしていただきたい。  もう一つは、国連環境計画は、九二年六月のいわゆるブラジル会議、国連環境開発会議での絶滅のおそれのある生物種を保護する国際的な取り決めとなる生物学的多様性に関する条約の採択を目指して草案を出している。これに対して保護区の指定などの提案をして検討すべきだというふうに私は思うのですが、どういう態度で臨もうとしておられるのか、この二点についてお聞きをしたいと思います。
  197. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  まず第一番目の世界文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約でございますが、おっしゃるとおり、発効いたしましたのが一九七五年でございまして、現在までのところ、締約国が百十カ国を超えておるということでございます。  ちなみに、ごく簡単に、この条約の構成でございますけれども、一つは、文化遺産と称しまして、記念的な意義を有する彫刻、絵画、考古学的物件または構造物といったようなもので、歴史上、美術上または科学上顕著な普遍的価値を有するものを保護するという考え方が一つ、国内的及び国際的に保護する。もう一つは、自然遺産と称されまして、自然の記念物で、観賞上または科学上顕著な普遍的価値を有するものをそれぞれの締約国の国内で保護し、かつ国際的にも協力し合って保護していこうという趣旨でございますので、そういう趣旨からいたしまして、私たちはこの条約は基本的に日本にとっても好ましいものと考えておりますが、ただ、この条約上必要な国内の実施の問題、どのような実施措置をとったらいいのかというようなことにつきまして、関係各省庁で検討作業が行われて、今日まで至っておるという状況でございます。大変時間がたっておりますけれども、この検討作業を急がなくちゃならないということは、十分に私たちは意識を高めておりまして、もうしばらくの御猶予をいただきたいと思います。鋭意、今後検討作業は早めていきたいというふうに考えております。  それから第二番目の条約は、現在交渉中の条約でございまして、恐らくその条約の名前は生物学的多様性に関する条約ということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、この趣旨は、生物学的な多様性の保全というものを目的とした国際的な枠組みをつくろうということで、かつ、でき得れば、先生が御指摘のとおり、来年の六月、ブラジルで行われることになっております国連環境会議の際に採択しようということで、現在鋭意関係国の会合が行われておるわけでございますが、この条約は、その内容からして、私たちから見ても積極的に対応していくべき条約であろうというふうに考えまして、保護区の設定の問題ですとかあるいは生物学的なその種の保全の問題をどうするかといったような問題をめぐりまして、専門家が現在検討しておる。日本政府といたしましては、条約の内容全体を見た上で、積極的に早期に加入することを検討していきたいというふうに考えております。
  198. 寺前巖

    寺前分科員 環境庁、お見えですね。今のお話を聞いていると、国内的に実施する段の問題が二十年来まとまらなかった、こういうお話がありました。いよいよブラジル会議を目指して、特定の生物種や生態系を開発の波から守るために保護区をつくらなければいかぬという問題が世界的な波になっているから、積極的にこれにこたえなければならぬ。積極的にこたえなければならないということを外務省は言うのに、日本の国内で積極的にそれを進めようという空気がなかったならば、国際的に笑い物になっていくということを、このことは意味していると思う。私は、環境庁はもっと積極的に環境の問題について、今開発と自然環境保護とがどのように扱われていくかということが問題になっているときだけに、環境庁の使命は大きいと思う。  そこで聞きますが、八六年から三年間かけて、日本産の絶滅のおそれのある動植物の種を選定するために、緊急に保護を要する動植物の種の選定調査というのを環境庁はおやりになりましたね。それを見ますと、例えば鳥類では、日本産の種・亜種の数は六百六十八種あって、既に絶滅をしてしまったのが十三種、危機に瀕しているのが二十七種、あるいは絶滅の危険が増大しているのが二十七種、あるいは存続基盤が脆弱になっているのが六十五種で、合わせてみると百三十二種が絶滅のおそれがある鳥類だ、こう出てきているのですよ。これは五分の一でしょう。これはただごとでない数字だ。  このように急速に衰退した原因は、レッドデータブックで見ると、土地の改変、森林の伐採、観光開発などの生息環境の変化にある、こうなっている。環境庁の環境白書を見ても同じようなことが書いてある。「過去の乱獲も寄与しているが、主要な原因は全国的な開発の進行とこれに伴う森林の伐採、原野・湿地の消滅、河川や小川、海岸等の改変、水質の悪化等とみられる。これらの環境の変化は野生生物の営巣地や産卵地の消滅、行動圏の縮小・分断、餌となる小動物の減少等をもたらし、全国的な種の衰退が進行したものと考えられる。」私もそう思う。そういう判断までしきているわけですよ。  ところが、現実にある法律、鳥獣保護及び狩猟に関する法律に基づいて、全国で国設五十三カ所、県設三千四百カ所の鳥獣保護区を設定している。鳥獣保護区というのは、鳥やけだものをとってはならない、とってよろしいとか、そういう制御をするわけだけれども、今前段に申し上げたように、環境との関係において保護をしなかったらだめだということが問題になってきているときに、特別保護地区という問題をもっと考えなければいかぬのと違うか。  法八条ノ八の五項による立木竹の伐採や工作物の設置などの行為を行うためには許可が要るんだ。これで見ると、国設で五年間に百八件、県設で二百七十七件、合わせて三百八十五件が上がっているけれども、今回のリゾート法によるゴルフ場、スキー場、ホテル等の開発による国設の特別保護地区での許可の実例はどうなっているかと聞いてみたら、一つもない、こう言うのでしょう。国設と県設合わせても鳥獣保護区の七・〇%にしか特別保護地区というのはないわけです。ですから、環境を守って鳥やけだものを守ってやるということを考えなければいかぬというのに、実践的にはそうなっていないという事実がここに出ていると私は思う。だから、そういう意味で言うと、鳥獣保護区の充実強化というのを周辺地域、水源地域について総合的に管理するように、そこに力点を置いた活動を環境庁は考えなければいかぬのと違うか。いかがですか。
  199. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、私どもで一昨年、緊急に保護を要する動植物の種の選定調査という結果を発表いたしております。内容につきましては先生がおっしゃられたとおりでございまして、主として日本の動物全体の絶滅したものあるいは絶滅のおそれの高いものについて発表いたしたものでございます。  基本的な原因につきましては、やはりこれもただいま先生からお話があったとおりでございまして、生息地そのものが野生生物の生存に適さなくなってきているというところが最大の原因であろうと思います。現在、私どもでは、やはり一番大事なものは生息地の保護である、それから、あるいは個別の、特に絶滅のおそれの高い種につきましては、それをいかにふやしていくかということについても考える必要があるということで、野生生物全体の今後のあり方というのを鋭意検討を進めておるところでございます。  先生御指摘のとおり、鳥獣法で鳥獣保護区あるいは特別保護地区というものを設定し、保護を進めておりますが、なお完全なシステムではございませんし、他の自然保護関連法令との適切な協力体制をしくとか、あるいは新たな制度についても検討するというようなことで、今後鋭意、そうした生息地の保護を進めてまいりたいというふうに考えております。     〔串原主査代理退席、主査着席〕
  200. 寺前巖

    寺前分科員 鋭意検討をするのは結構ですけれども、開発の波はもう物すごい勢いで進んでおるわけでしょう。リゾート法をつくってわざわざ山をだあっと現実的には削っていっているのだから。それから、ゴルフ場をつくって、そこには農薬から着色剤からいろいろ問題は広がっているわけでしょう。そうなってくると、鋭意検討、のんびりしているわけにいかない。  現実に、特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律が七二年でしょう、できて、それ以後、一体この生息地保護のために積極的にやったということは、具体的にどんなことがありますのか、説明してください。
  201. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私どもで、特に国設鳥獣保護区というのを設定いたしておるわけでございますが、鳥獣保護区の中でも特に重要な全国の地域につきましては、大規模な生息地であるとか渡り鳥の集団渡来地あるいは集団で繁殖している場所、それから特定鳥獣の生息地というようなことで、大きな分類をいたしまして、国設の鳥獣保護区に指定をする、それから、そのうち特に重要な点については特別保護地区にするということで、現在まで四十七地区を設定いたしてきております。これらにつきましては、五カ年ごとに鳥獣保護事業計画というのを設定して進めてきておりますが、今後とも、こうした地域の設定の増加に一層努めてまいりたいというふうに考えております。
  202. 寺前巖

    寺前分科員 さっきも言うように、やっとこさ特別保護地区が七%だ。生息地を面倒を見なければいかぬということに今大いにみんな気づいている。それで調べてみたら、何とそのために民有地を買い上げたというのは、七六年、秋田県の大潟草原三十九ヘクタール、オオセッカの保護のためといってやった。これがやっとこさ生息地の保護の一つの重要な具体的仕事でしょう。あとはたった七%の特別地区の保護。これだけでは私はおぼつかないと思う。積極的に民有地の買い上げから特別地区の拡大、大いにやらなければいかぬと思うのです。  ところで、京都、大阪、奈良三府県にまたがる関西文化学術研究都市、国家的な事業として、今この地域をずっと開発がなされていますよ。ところが、去年の夏に京大の生態学者グループや地元住民の皆さん方がオオタカを見つけた。オオタカというのは、全国にもう三百羽しかおらないと言われてきている種の一つです。絶滅の危機に瀕している。成鳥が二羽と幼鳥が一羽とか、いや四羽見つけたとか、巣らしきものもある。現実に鳥獣保護員の皆さんが見つけてきて話題になってきたわけですよ。開発がもうどんどん進んできて、少数のところにしか木は残ってきていない、緑は残ってきていないという実情下で、この京都府相楽郡精華町、木津町の地域にずっと絞られてしまった。  それで、希少生物であるこのオオタカが、猛禽類が、この地域を見ると、九種類生息している。オオタカというのは食物連鎖のトップに位置づけられることから、想像以上によくぞ残っているなという感を、日本の鳥学会の会員や鳥獣保護員の皆さんがおっしゃり、南山城オオタカを守る会がつくられ、そして何とかこの地域を、自然を大切にするようにならないものだろうか。本年一月末現在の冬期間だけで七十七種類の多様な鳥類がこの地域には確認された。日本鳥類保護連盟が製作した環境ランキングでもAランクだというふうに、貴重な里山として問題になってきているわけです。環境庁のレッドデータブックで絶滅の危険があるとされ、保護が求められているイヌセンブリも、私もこの間見てきました。そこにはありますよ。京都大学の関係する先生方も問題にしてこられた。  私は、開発が国家的に進められているあの地域で、せっかくここまで絶滅の危機に瀕しているものの巣までが検討され始めているという実情を見るにつけても、これは、環境庁は積極的に打って出て、保護政策をとるべきじゃないか、生息地域全体を保護するという立場に立って調査を進めていくという姿勢をとるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  203. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 ただいま御指摘の関西文化学術研究都市の建設予定地でオオタカの生息が確認されたという点につきましては、私どもも承知をいたしております。  オオタカにつきましては、御指摘のとおり、先ほど申し上げました、私どもが発表いたしましたレッドデータブックでは危急種というのに選定いたしております。危急種といいますのは、今直ちに絶滅のおそれというのはないけれども、今のまま推移すると将来危ないというおそれも非常に高いというのが危急種でございます。オオタカにつきましては、現在のところ北海道から本州、四国、九州まで、およそ三十七都道府県でその存在が確認をされておりまして、正確な生息数というのはなかなか難しゅうございますが、直ちに絶滅のおそれがあるという、例えばシマフクロウであるとかトキであるとか、そういったものに比べればまだ若干安心できるという状況であろうかと思います。  ということで、こうした種であるわけでございますが、御指摘の関西文化学術研究都市に絡みますこの点につきまして、私どもでは、現在、非常に関心を持ってその推移を見守っておるわけでございますが、本件につきましては、京都府によりまして、現在、都市計画決定にかかわります環境影響評価手続が進められているというふうに聞いております。この中で、オオタカの当該地の営巣状況等につきましても調査が行われているということでございまして、私どもとしても、この推移を重大な関心を持って見守ってまいりたいというふうに思っております。
  204. 寺前巖

    寺前分科員 重大な関心を持って見てもらうのはいいですが、積極的に打って出てもらわなかったら、開発というのはあっという間にいってしまうのですね。この精華町、木津町の周辺を見ておりましても、道路建設、大型の道路がずっと敷かれていきますよ。そして研究機関が次々と周囲にできてくる、住宅ができてくる。今辛うじて残ってきているのは、永谷池を中心に百ヘクタールぐらいのものがやっと手つかずになってきていますが、計画によると、その地域に公園地域というのがある。ところが、私たちが鳥獣保護員の皆さんに案内をしてもらって一日がかりで調査をしました。ついて見ておりますと、オオタカの巣というのは、これが巣だろうということがいろいろな関係から見ることができるわけです。その地域は残そうというところの公園とは少し離れて、せっかく公園計画があるんだけれども、そういう巣の地域が明確になってきた段階には、これは環境全体を保護するという立場に打って出るというふうに、計画の変更をやってもらうように、環境庁みずからが京都府とタイアップして積極的な活動をやっていただきたいものだということをつくづく私は思うのです。  環境庁も環境保全のためにいろいろなことをおやりになっています。例えば栃木県の那須野ケ原で、環境庁みずからが特殊鳥類調査の委託調査を行っておられますが、そういうふうに打って出ることはできないものだろうか。今言いました学研記念公園を残そうというわけだけれども、そのちょっとお隣のところにこの巣があるなどということを考えたときに、鳥獣保護の特別保護区、自然公園などとして設定して、ここの計画を見直してもらうような役割を環境庁が打って出るわけにはいかないんだろうか、あるいはさらに、先ほど言いましたように、オオセッカの保護のために、秋田県で民有地を買い上げたように、国がこの土地を買い上げるというような方向ができないものだろうか。私は、京都府と御相談になって、環境庁ここにあり、国際的にも環境を、生息地を保護することを通じてこういう特殊鳥類を守っていくんだという役割の先頭に、胸を張って語ることができる役割を環境庁が担っていくことができないものだろうか。  先ほど言いましたように、二十年来、世界遺産条約というのが承認できなかった。来年はブラジ ル会議がなされる、あるいは、来年は同時に、京都で何かこの種の会議が、ワシントン条約ですか、やられるし、それから再来年には、北海道の釧路で水鳥の生息に関する保護の問題で国際会議をやられるとか、一連の保護政策をめぐる動きがある中で、私は、自然環境と開発との関係日本政府が新しい積極的な姿勢を示したという一つの問題としてこの際に取り上げていただくわけにはいかないんだろうか、環境庁の見解を聞きたいと思うのです。
  205. 菊地邦雄

    ○菊地説明員 私どもも、一連の国際的な会議日本で開かれることになっておりますし、国内の野生動物あるいは野生生物全体の保護に、より積極的に取り組むということは大変重要なことであるという点については、先生御指摘のとおり認識をいたしております。  そういった点で、一番初めに申し上げましたとおり、私どもとしても、現在の鳥獣保護、これは対象が鳥とけものだけでございますので、さらにそれを幅を広げる、あるいは絶滅のおそれのある種の問題をどういうふうにやっていくかという点については、早期に対応していきたいというふうに思っております。  ただ、この関西文化学術研究都市そのものにつきましては、現に法律に基づく計画が、あるいはそれに基づくアセスが進行中でございますので、その進捗を見守りながら、地元の京都府等の話も聞きながら、私どもとしては今後の対応をしていきたいというふうに考えております。
  206. 寺前巖

    寺前分科員 最後に、大臣にお聞きをしたいと思うのです。  先ほどから、国際的には条約がおくれた、それは国内の整備の問題のおくれにある、私は非常に残念だと思うのです。今開発の波の中で、せっかく国家的な事業とまで言ってもいいくらいの研究学園都市で、開発の中に自然環境が残っておって、今のうちだったら保護する条件がまだある、こういう状況を見るにつけても、何とか関係者の間で、政府みずからの積極的な役割で守ってもらうようにやってもらえないものだろうか、閣僚の一人として外務大臣の見解を聞いて終わりたいと思います。
  207. 中山太郎

    中山国務大臣 ワシントン条約及びラムサール条約は、昨今、急速に関心が高まっております環境問題の一分野でございます野生動物の保護を目的とするものであることは、御指摘のとおりであります。  それぞれ本邦で開催される同条約の次回締約国会議は、目的達成のために諸問題について各国の相互理解国際協力推進を図るものでございまして、政府としても極めて大きな意義があるものと認識をいたしております。このような会議本邦において開催するということは、野生生物保護のみならず、環境問題一般に対する日本の積極姿勢を対外的に示す好機であると考えておりまして、日本の立場に対する国際的な理解を増進することに寄与するものと考え、積極的に対応していく考えでございます。
  208. 寺前巖

    寺前分科員 オオタカがいるせっかくのその地域のことでございますので、この間も新聞にも、社説にもなったくらいの関西研究学園都市をめぐっての開発と自然環境との問題です。あくまでも周到で科学的な調査に徹して、一般への情報も公開していただいて、調査結果によっては計画の変更もしてもらうように、そういうことを厳に貫きながら国際会議に臨んでいくというふうにしてもらいたいものだ。日本の国内的整備がおくれましたでは格好がつかぬ話じゃないだろうか。そこのところを閣僚の一員として調整をとってやってほしいものだという希望を申し上げたいと思うのですが、最後にもう一言だけお聞きして終わります。
  209. 中山太郎

    中山国務大臣 環境庁を中心にこの自然保護、生態系保護のために今後とも一層の努力をしてまいる方針であります。
  210. 寺前巖

    寺前分科員 どうもありがとうございました。
  211. 林義郎

    林主査 これにて寺前巖君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  212. 新村勝雄

    新村分科員 大臣にお尋ねいたしますが、湾岸戦争が終わって、この結果は、平和のうちに解決ができなかったという点については極めて遺憾でありますけれども、予想以上に早く決着がついたということで世界は一安心ということであろうと思います。  そこで、さかのぼるようなことになりますが、日本がこの事件というか戦争に対して対応した九十億ドルの拠出、あるいはこれは実際には行動しませんけれども自衛隊機を飛ばす準備をした、こういう一連の日本対応は、総理の答弁によりますと、安保理決議六七八の二項、クウェート政府協力している加盟国に対し、あらゆる必要な手段をとる権限を与える、次の項に、すべての国家に対し、支援を与えることを要請する、これに対して日本がこたえたんだということでありますが、それでよろしいかどうか。  それから国連から、この決議がされたということに対して、この決議がされたというこの事実に加盟国は直ちに対応すべきであるということであったのか、それとも何か特別に文書なりなんなりで形式的な要請があったのかどうか、まずそれを伺いたいと思います。
  213. 中山太郎

    中山国務大臣 国連決議六百七十八によりまして国連加盟国に対し国連は、その決議の中にも示しておりますようにあらゆる協力を要請しております。そのような趣旨に基づきまして、日本政府といたしましては独自の判断でこの多国籍軍に対する協力をするという判断をいたしたわけであります。     〔主査退席串原主査代理着席
  214. 新村勝雄

    新村分科員 国連のこの決定に対して日本政府が、あるいは日本国が対応したということですね。  そうしますと、加盟国は百五十八ですか、そのうちでこの六七八に基づいて対応して、あらゆる必要な手段あるいはその手段をとる行動に対して適切な支援をする、この支援をした国はどのくらいあるのでしょうか。とにかく何らかの形で対応した国がどのくらいあるのか、そのうちで兵力を拠出したのはどのくらいあるのか。今すぐわからなければ後でも結構ですけれども、それを伺いたいと思います。
  215. 中山太郎

    中山国務大臣 軍事的協力をやった国家はアメリカ、カナダ、フランスイギリス、イタリー、サウジアラビア、クウェート、シリア、カタール、バハレーン、このような国々でございますが、資金、物資の協力をしたものはドイツ日本、オランダ、ベルギー、ノルウェー、スペイン、ポルトガル、韓国、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦、それから医療協力を行ったものは韓国、フィリピン、カナダ、オランダ、ベルギー、デンマーク、ポルトガル、ポーランド、オーストラリア、ニュージーランド、以上でございます。
  216. 新村勝雄

    新村分科員 その国だけが国連決議に従って何らかの対応をした。ほかの国は呼びかけがあったけれども全く返答がなかった、対応がなかったのか。それとも、そういう要請があったけれども、こういう事情でできません、あるいは実際の行動には参加できません、こういう何らかの意思表示を各国はしたのかどうか、しなくて黙殺をしたのかどうか、そこら辺のところはどうなっているのでしょうか。
  217. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの安保理決議六七八の第三項に、すべての国家に対して、適切な支援を与えることを要請するという条項がございまして、これに基づいて各国がそれぞれの措置をとっておるわけでございます。ただいま大臣からも御答弁がございました実際に武力を行使した国、それから医療協力を行った国、資金協力その他を行った国、さらには基地等を提供した国というふうなものもございますが、それらを全体で延べにいたしますとおおよそ三十五カ国程度が協力をしておったと思います。特にその協力をする、しないという意思表示を求められているわけではございませんので、協 力をする国がそれぞれの措置をもって協力をした、そういうことでございます。
  218. 新村勝雄

    新村分科員 それだけの国が実際に対応した。この要請に対して、要請にこたえることはできませんという意思表示をした国はないわけですね。
  219. 丹波實

    ○丹波政府委員 累次の安保理決議がございますけれども、国連憲章上の考え方をちょっと一言私から御説明させていただきたいと思うのですけれども、憲章二十五条におきましては、「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従つて受諾し且つ履行することに同意する。」とう規定がございますとともに、四十九条にもさらに規定がございまして、これによりますと、「国際連合加盟国は、安全保障理事会が決定した措置を履行するに当つて、共同して相互援助を与えなければならない。」ということでございまして、基本的には安保理の決定というものは全加盟国が受諾し、同意するという考え方でございます。したがいまして、軍事的な行動に参画あるいは協力しなくても、例えば経済措置をとりますと、非常に世界の、あるいは加盟国の圧倒的な国がフォローしたわけでございまして、そういう観点からは加盟国の大多数がこの安保理決議を受け入れたというふうに私たちは考えております。
  220. 新村勝雄

    新村分科員 安保理決議はすべての加盟国によって受け入れられた、これを拒否した国はない、こういうことですか。
  221. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま国連局長から基本的な考え方につきまして答弁いたしたとおりでございまして、このような安全保障理事会の決議と申しますものは、これは御案内のとおり加盟国を拘束するものでございます。したがいまして、有効に成立いたしました安保理決議につきましては、加盟国である限りこれに従わなければならないということでございます。ただいま御指摘の安保理決議六七八につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、加盟国が適切な支援を与えることを要請されているわけでございますが、ただ、このような義務は一般的な義務でございまして、おのおのの加盟国に具体的にどのような支援をしろというところまでは言っておらないわけでございます。
  222. 新村勝雄

    新村分科員 わかりました。  そこで、これは二項というのですか二号というのですか、「クウェイト政府協力している加盟国」、三項には「全ての国家に対し、」とありますが、この使い分けは何か意味があるのでしょうか。
  223. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 これは、いろいろな安保理決議におきましてただいま御指摘のような文言があるわけでございますが、「全ての国家」と申します場合には、今現在数は少なくなっておりますけれども、国連の非加盟国もあるわけでございます。非加盟国につきましては、国連として何らかの行動をすることを義務づけるというわけにはまいりませんけれども、これに対して希望を表明するあるいは要望するということはしばしばあるわけでございます。しかしながら国連加盟国につきましては、この決議のような決定は拘束力を有する、こういう関係になるわけでございます。
  224. 新村勝雄

    新村分科員 そうしますと、二項の「加盟国」というのは、当然メンバーステートでしょうから義務がある。それから三項の「全ての国家」というのは、これは加盟国にはなっていない国に対して、世界の大多数の意思だからひとつ協力してくださいよ、こういう意味で要請をしている、これは拘束はしない、こういうことですか。
  225. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 三項につきましては、「全ての国家に対し、」とただいま御指摘のとおりの規定になっておるわけでございますので、これは加盟国及び非加盟国全部ひっくるめて「全ての国家に対し、」こう言っているわけでございます。そして、先ほど申し上げましたように、加盟国に対しては拘束力がある、しかし非加盟国に対しては法的な拘束力まではない、単に要望している、そういう関係になるわけでございます。
  226. 新村勝雄

    新村分科員 そこで、その事情はわかりましたが、湾岸戦争が、最善の方法ではないけれども、次善、三善の方法ではあったけれども、決着をして、その間において一つの印象的なことは、やはり何といっても国連が機能した、冷戦後の世界において初めて国連が本当の意味で機能したということ。これは湾岸戦争がよくも悪くも、あの事態の中から浮かび上がってくる一つの印象的なことだと思います。  そこで、あの事件を評価をする価値判断についてはいろいろあるでしょうけれども、とにかく早く決着をしてよかったというのが世界の印象でしょうし、あの事件の中から、将来の、世界の人々は世界の政治あるいはすべてのことをやっていく上において何らかのものをあそこから学ばなければいけないということは言えると思うのですね。連合軍が数百名の人命を失い、また無辜のイラクの数万の人命を失った。その事態の中から、やはりあの戦争がよくとも悪くともそこから何らかのものを学んで、将来の人類の福祉に役立てていかなければいけないということは、これは言えると思うのです。そういう点でやはり国連の権威が回復したということ。それからまた、世界の諸国民が生きていく上において、やはりいかにして戦争をなくしていくかということが今悲願であると思います。  十九世紀から二十世紀の初めにかけては、世界各国とも政治目的のためには兵力を使うことは、これは普通のこととしてやられていたと思うのです。戦争は普通の日常茶飯事のこととして世界じゅうやられていたし、それが政治目的を達成する一番有力な手段というふうに考えられていたと思うのですが、それが科学の進歩によって第一次大戦におけるあの惨たんたる状況を見て、初めて世界じゅうが、これは何とかしなければいけない、戦争を何とか抑止をしなければいけない、そういうことに気がついたのではないかと思います。  そこで、ウィルソンが提唱した国際連盟が初めて、主権国家が乱立をしてお互いに力によって覇権を争っていたその世界に、初めて国際間に一つのルールをつくろうとする働きが出たのではないかと思います。しかし、それは全く無力であって、日本の侵略を防ぐこともできなければナチスを抑えることもできなかったわけでありますけれども、それがさらに、その国際連盟の失敗によって第二次大戦が発生をし、第二次大戦がさらに第一次大戦に数倍する惨禍を世界じゅうに引き起こした。そこから国際連合というものが国際連盟の反省を踏まえながら再びつくられたけれども、東西冷戦によって機能しなかった。それがようやく今回、冷戦の終局によって機能するようになった。  ところが、その途端にあの問題が起こったということですが、あの問題の処理の方法についてはいろいろ評価はあるにしても、あの事件を通じてやはり国連の権威がというか国連の存在が、あるいは国連の機能が回復したということは、これは将来の世界政治に対して一縷の望みを与えたという感じはするわけですね。何といっても国際間のアナーキーな状況の中に一つの戦争を抑止するルールをつくっていく、国際間のルールをつくっていくということが、世界の人たちの願いであり悲願であるわけでありましょうから、そういう点からすればやはりあの問題から世界が学び、さらにあの問題を契機として一層国連の強化、国連の機能の強化に向かって世界じゅうが努力をしなければいけないという気がするわけであります。  そうして、世界じゅうの強い国も弱い国を絶対に侵略することはない、また弱い国であっても侵略をされる心配はないという状況の中で生きていかれる世界でなければいけないわけでありますから、そういう点ではあの湾岸の不幸を将来の戒めとしてあの中から学んでいくことが必要であろうと思います。  そういう中にあって、これからの国際政治の中で、平和国家としての日本日本は兵力を出すこともできなかった、しなかった。あの事件に対する貢献についての世界の評価はどうであるにしても、平和憲法を守って、平和を国是として国際社会に生きていこうとする日本の今後の行き方、あ の事件を契機として一層世界から評価をされるような外交をこれから展開する、そういう今後の国際社会における行き方をとっていかなければいけないという気がするわけであります。そういう点から国連の強化、その中で日本が何をすることができるかということについても、言ってみれば日本の平和戦略というか日本外交戦略というか、そういったものをこの際一層確立をして、国際社会のためにというか平和の維持のために日本が一層努力をしていかなければならないと思うわけでありますけれども外務大臣の御決意を伺いたいと思います。
  227. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の湾岸イラクによるクウェートの併合といったような事態は、これからの世界において再び起こらないということは言い得ないと思いますけれども、多くの国の指導者の今回の国連決議を踏まえての多国籍軍による平和の回復の努力というものは、私は一応評価すべきものであったと思います。  今後、日本は国連を中心にやっていくといいましても、我が国の安全保障をどうするかということも私どもは絶えず考えておかなければならない。我々の国は豊かな国でありますから、他国から見ると羨望の的になっている国家である。その国家をどうして守っていくかということも、私は外務大臣としてこのクウェートのイラクによる併合というものを見ますときに、日本国民は絶えず自国の安全保障ということを考えていかなければならない、国連を中心外交をやりますけれども、自国の安全保障もまたあわせて考慮しておかなければならないということを学んだつもりでおります。
  228. 新村勝雄

    新村分科員 自国の安全はもちろん考えなければいけないわけでありますけれども湾岸戦争の後における中東の平和あるいは中東の枠組み等についても日本なりに発言をしていかなければいけないのではないか。伝えられるところによりますと、戦後ワシントンを訪れたイギリスのハード外相がブッシュ大統領に向かって、バグダッドにアメリカのかいらい政権をつくるな、それから、中東に対して外部から安全保障の枠組みを押しつけるな、さらに第三点として、多国籍軍はできるだけ早く中東から姿を消すべきである、この三点を忠告したと言われております。これは恐らくイギリスの歴史の中から学んだ英知だろうと思いますし、同時にまた、世界の大多数の人たちがそういうことを望んでいるのではないかと思います。  そういう点からして、日本が今後中東の安全保障なり中東の安定に対して、これは中東はアジアの一角でありますから、アジア日本としてはやはり中東に対して発言すべき点は発言をし、その安定のために努力をする役割、責任はあると思いますね。そういった点について、中東に対して今後どういう態度、スタンスで臨まれるお考えですか。
  229. 中山太郎

    中山国務大臣 中東における安全保障等につきましては、去る三月六日に開かれましたシリアのダマスカスでのGCC六カ国とシリア、エジプトの外相会談においてこれからの安全保障をアラブの国々がどう考えるかという協議があったと承っておりますが、私は、あくまでもこの地域の平和と安定は地域の国々のイニシアチブによってまずつくられなければならない、そしてこの地域の国国の考え方に我々も協力をしていくことが基本でなければならないと考えておりますし、あわせてパレスチナ問題の解決は避けて通れない一つの大きな課題であると認識をいたしております。
  230. 新村勝雄

    新村分科員 パレスチナ問題は中東の最大の問題点だと思いますが、サダム・フセインが今回の事件を起こしてパレスチナ問題をリンケージさせようとした、しかし、それはつぶれたということでありますが、ああいう状況になってイラクの軍事力があそこでほとんど崩壊をしたという状況の中で、ある見方からすれば、パレスチナ問題の解決にはかえって新しい道が開けるんじゃないかという考えもあります。外相はどうお考えですか。
  231. 中山太郎

    中山国務大臣 委員の仰せのとおり、一つの新しい観点が生まれてきたという認識を持っております。
  232. 新村勝雄

    新村分科員 それと、イスラエルの忍耐、これも評価すべきものだと思います。イスラエルの忍耐あるいはイラクの軍事力の崩壊、それからまた、中東が米ソの角逐の場になっていたという面が過去においてはあると思いますが、それがなくなったということ、これらの点を総合的に考えれば、中東の恒久和平というか安全保障というか、そういった点についてはこのチャンスを逃すことなく固めていかなければいけないという感じもするわけであります。  その場合に何といっても問題になるのはソ連の出方。ここを米ソの角逐の場に再びしてはならないと思いますし、米ソがここで協力をしながら中東の安全保障体制をつくっていこう、そういう気にソ連になってもらわなければいけないわけでありましょうから、その仲立ちを日本がすることができるのかどうか。これはしなくちゃいけないと思うのですけれども、ソ連は何といっても隣国でありますし、アメリカは同盟国ということですから、そしてこれからの世界の枠組みをつくる上において米ソに何とか仲よくやってもらわなければならないという立場からして、日本の役割といいますか可能性といいますか、それはどうお考えですか。
  233. 中山太郎

    中山国務大臣 今中東を回っておられるベーカー国務長官は、最終的にソ連を訪問して中東問題の協議をしてアメリカへ帰るというお話でございますし、また私も、国会のお許しをいただければ、近いうちにアメリカへ行って外相会談を持ちたいと考えておりますが、今月末にはソ連のべススメルトヌイフ外相も日本に来られて、外相会談を持って、国際情勢全般について日ソの外相でいろいろと話し合うことも持ち得るわけでございますので、今後この中東問題についても日本としては一層の努力をして、平和の確立のために協力をしていかなければならないと考えております。
  234. 新村勝雄

    新村分科員 以上申し上げたわけでありますが、日本の出番が必ずあると思います。既に日本の出番があらわれているんじゃないかと思いますけれども外務大臣初め皆さんの御健闘を、ここが平和を基調とした日本外交の正念場とも言えますので、十分御活躍をいただくようにお願いしたいと思います。終わります。
  235. 串原義直

    串原主査代理 これにて新村勝雄君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  236. 沢田広

    沢田分科員 大臣予算委員会からずっとでありますからお疲れだと思います。また、発言の機会も多かったしあるいはそれぞれの質問も重複する点なしといたしませんが、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。  その一つは、今まで同僚の議員からもいろいろとお話があったと思うのでありますが、PKOのあり方の問題でちょっとお伺いをしておきたいと思うのであります。ピース・キーピング・オペレーション、そういう形でいろいろ各党も動いているようでありますが、やはり一番問題になるのは、武器の携帯、それから訓練、同時にまた正当防衛の限界、武力の行使ということにつながらないかという危惧がありますね。その点、まずお伺いをしておきたいと思います。
  237. 中山太郎

    中山国務大臣 国連平和協力につきましては、ただいま内閣官房を中心に、さきの国会におきまして結ばれました自民、公明、民社の三党合意の覚書を下敷きにいたしまして、いろいろとこれからのあり方について検討中であると承っております。そのような流れの中でどのようなことを政府としてなすべきか、十分お話を承りながらこれから作業に入っていかなければならないと思っておりますが、委員から御指摘のございましたように、正当防衛の範囲はどのような形で行えるのか、あるいはまた、武器の携帯の範囲をどうするのか、いろいろと問題点、御指摘の点など、極めて重大な問題点でございまして、この点につきましても、これからいろいろと各界の御意見を聞きながら、政府としてはこの平和協力のあり方について考え方をまとめてまいりたいと思っておりま す。
  238. 沢田広

    沢田分科員 これも、議論しているうちにすべてが円満に終わってしまえば、そういう発言はかえって幸せになるかもわかりませんが、私も同じ軍隊に行きましたが、例えば訓練一つとらえてみましても、どういう兵科であるにせよ、今の近代技術のものでは、最低半年以上、本当に詰め込みで朝から晩まで動かなければ一人前にはなっていかないというふうに思うのですね、それがどういう関係分野であったにいたしましても。昔は三カ月で一期の検閲、こういうふうに言ったのですが、一期の検閲で物になったというものはないのですね。それは、その後もずっと訓練していくわけでありますから、もしそういうものをつくるとしても、今言った問題以外に、体力、訓練、それから生活上の試練というものに耐えていかなければならぬ。ですから、そう言葉どおりにいかないのじゃないかというふうに思いますが、これは自衛隊を含めても同じことが言えるのだろうと思うのです。そういうような立場で、外務大臣が余り焦った形で送って、間違いを起こせばかえってマイナスになってしまう、こういうことになるわけで、そこは慎重に対応をしていただきたいと思うのでありますが、その辺の訓練については、大臣としてはどのように考えておられるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  239. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ具体的に訓練をどうするといったようなことを、私自身が決めておるわけでもございません。あくまでも、御協議をいただく中で政府としてはどのような形のものがつくれるのか、委員から先ほど御指摘ございましたように、携行できる武器の範囲がまず決まらなければ、武器を持たないという方針でいくならば武器を持たない訓練をしなければなりませんし、そこらの点も、まだ具体的に決定をするというような状況に至ってはおらないということを私は申し上げておきたいと思います。
  240. 沢田広

    沢田分科員 ただ、今のこの戦勝ブームの中では、ある意味においては、ちょうちん行列でもしたいような気持ちでいるんだろうと思うのです。大臣がと言いませんよ。そういう人も多いのじゃないかと思う。そういうことが実は危ないのです。ですから、よほど慎重に後々を考えて対応しませんと、前の大戦の瞬間的な勝利が奈落の底に入ったのと同じようなことになりかねない。ですから、やるならよほどそういう訓練をしませんと、これは大変なことになるというふうに思いますので、話がついたから直ちに行動できるものでもない、これは一年先ぐらいのことに考えなければならぬだろうと思うのです。その間には世界情勢も変わると思いますから。  もう一つ、そこで、これも同じ検討なんでしょうが、現在の国家公務員等の災害補償等の問題、こういうものについては、また特別に法律をつくるという方向なのか、これはまた、身分が何になるのか、これもまだはっきりしていないですね。公務員なのか準公務員なのか、単なる雇い兵なのか、その辺も不明である。これも輪郭はまだなし。それで、我々のいないところなんと言うとひがんだ物の言い方になりますが、ぱっとつくっちゃって、後は多数だよというような、そういうことはやらないでしょうな。念のためですが、お伺いしておきます。
  241. 中山太郎

    中山国務大臣 少なくとも、国家が国際社会の平和のために協力をする人たちを組織として派遣をするといった場合のいわゆる保障問題、そのような問題は、国会の御審議なしに政府が一方的に決めて実行できるようなものではございません。私どもは慎重に対応してまいりたいと考えております。
  242. 沢田広

    沢田分科員 それから、今度の湾岸戦争を通じて痛感したことに二つあるのですが、一つは在外公館強化、特にまた、情報戦争と言われるくらいに情報の的確な把握ということが求められると思うのでありますが、その辺に対しては、今度の予算を見たらそこは書いてないようでありますが、大体どういうふうに位置づけておられるのでしょうか。
  243. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま御指摘の在外公館機能の強化という点でございますが、まさしく私どもといたしましては、今回のような緊急事態というものが生じたときにどう対応するかという問題意識を常々持ってまいりました。しこうして、あのような事態が起こったわけでございますから、我々としてはいろいろな角度から、この在外公館機能強化ということを一層見ていかなければならないというふうに思っております。それは単に、いわゆる建物の整備強化をするということだけではなくて、情報の伝達の手段を整備強化する、あるいは情報をとるのは結局人間でありますから、いわゆる外務省の出先の公館員が十分働けるように、厳しい環境に勤務する人たちのための生活環境整備というようなことも考えてまいらなければならないというふうに思っております。特に来年度に向けましては、私ども、今回の教訓にも見られますように、緊急事態に対して大使館がどういう機能を果たすべきかという観点からの強化策もお願いをしている次第でございます。
  244. 沢田広

    沢田分科員 一つは、これは大臣にお願いするわけですが、公のものだけに限定されるでしょうけれども、直ちにファックスが使えるくらいのものは、当面早急に設定する必要があるのじゃないかということが言えると思うのです。それからもう一つは、大使その他の定年の延長ということについて考慮する必要があるのではないかというふうなこと。この二点、とりあえず大臣に。これは見解です、確約でなくて結構です。一応見解をお伺いしたいと思います。
  245. 中山太郎

    中山国務大臣 ファックス等の機材の整備というものは、予算措置をすればすぐにできることでございますから、それはこの問題があろうとなかろうと、大使館の機能整備ということで、これは拡充してまいらなければならないと考えております。  大使の年齢につきましては、私は、余り現在の制度をいじくる必要はないんじゃないか、このように考えております。
  246. 沢田広

    沢田分科員 ただ、それが必要な場合に、的確な判断のできる人がいることが望ましいという意味で、当面の問題だけに限定して言ったわけでありますが、それで運営されれば、それにしくはないのであります。  それから、今大臣がこれから世界を歩いていくのに肩身の狭い思いをするという場面はどういう場合であろうか。私たちも大臣の立場になって考えてみると、どういう場合が、やはり人を出さなかったことなのかしら、金がすぐ出なかったことなのかしら、あるいは国際的な約束を守らなかったことであるのかしら、いろいろとこう考えられるわけですが、何も支障がないかどうかというのが第一問なのであります。  第二問としては、もし支障があるとすればどういうことなのであろうか。これはまあ大臣からは言いにくいかもわかりませんが、そういう点についてはどう理解をされているか、お伺いをしたいと思います。
  247. 中山太郎

    中山国務大臣 現在のような経済情勢の中で、日本が肩身が狭いという思いをすることといえば、突然の御指摘でございますから、私が今感じたことを申し上げますと、やはり外国と比べて、国連の平和回復に対する資金の協力の拠出の時期が他国よりもおくれたということが一つ。日本政府としては、今回の国連関連国家の中で、経済大国でありながらおくれたのは少し残念であったなという気持ちが率直にいたしております。  もう一つは、人の協力が具体的にできなかったことがまことに残念でございます。それは、先生のさきの質問にもございましたけれども、医療協力をやった国家の数を先ほど申し上げておりましたけれども、韓国もやりましたしフィリピンもやったとか、いろいろな、日本よりもはるかに経済力といい、弱い国でもそういうことをやった。日本は残念ながら、努力はしましたけれどもこれができなかったというところに、今後我々がどのような形でこういう協力ができるか、真剣に考えなければならない、私はそのように率直に申し上げ たいと思います。
  248. 沢田広

    沢田分科員 続いて、外国人労働者の問題で若干お伺いするわけですが、今、建設業界ばかりじゃないと思うのでありますが、特に三Kだとか五Kとか言われるような分野においては大変な人不足で、官庁の工事発注も、入札しても落札しない、どうしても人が集まらないというようなことも起因しております。これはどこの省がそもそも一番問題になっているんだろうといえば、結局外務省のようだ。外務省は何を心配して、これを公安的な立場でとめているのかというようなことでいろいろ言われて、まさに人的インフレになりかねない状況に今日至っておる。このことをある程度、どの程度かは一年とか二年でしょうが、制限をしながら、芸能、いわゆる技術研修生は別だ、こう言っておりますけれども、やはり余りにも厳し過ぎるのではないかというように、今の状況を考えてみると言える。  それから、私はもう一つ大臣に申し上げたいのは、日本人が外国語に極めて弱い。これをどうして直していくかということの課題は、これは今のままでいったらますます鎖国政治になってしまう。ですから、政治家ももちろんでありますけれども、公務員であっても、それぞれがやはり通訳なしには物が言えないということの状況を脱しなければいかぬ。  それはどうしたらいいかということになると、学校を今さらということになりますから、まあ、ある程度試練でありますが、外国人労働者を入れながら、中国語もできる、あるいは台湾語も韓国語もできる、あるいはソ連語もある程度わかる、あるいはフランス語もある程度わかるというぐらいに、やはり日本人はこれから国際人としての教育をやっていかなければならないと思うのですね。そういうものとの関連で外国人労働者というものをどういうふうに考えていくかという課題を担っていると思うのです。これは大臣もいろいろ渋い問題だろうと思うのですが、私は、あえて刺激を与えながら、日本人がそういう分野においての力量を持って諸外国に出られる、こういう条件づくりのために、これは教育、文部省じゃないからまあいいやということになるかもしれませんが、そうでなくて、そういう条件が必要なのではないでしょうか、こういうふうに聞きたいわけなんですが、外国人労働者とあわせて、国際人としての日本人になるためにどうしたらいいかということを、ひとつどういうふうにお考えでしょうか。
  249. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、外国人労働者を日本に入れて、それによって日本の人たちが外国語になじむというのは、日常会話の一部だろうと思います。率直に申し上げて、学校教育において読む能力だけの語学力でなしに、しゃべる能力をつけるということを、義務教育の課程で政府が責任を持ってやることが極めて重要である。それは、やはり子供たちの選択も認めるけれども、言葉については、外国の専門の先生に来てもらって、そして授業を受けるという、会話の授業というものを徹底的に若い時代にやらないと、大学を卒業してから会話の勉強をしてみたって、そう上達するものじゃございませんので、私は中等教育、高等教育において必須科目としてやるべきだという考えを持っております。
  250. 沢田広

    沢田分科員 今おっしゃっていることは、これは閣議か何かにかけなければならないのでしょうし、文部省審議会にかけなければならないのでしょう。ですから、それはひとつ、言われたらそれを実行してもらわないと困るのですね。ここだけで終わっちゃって、後は消えちゃったんじゃ何にもならないのでありますから。  それから、外国人労働者がそのことにプラスにはならないかもわかりませんが、今の人不足対策というものはやはり深刻ですから、いろいろな分野で言われておるだろうと思うのでありますけれども、ぜひそういう点については、まあ治安の問題とか何かありますけれども、それは日本人にだって変なのがいるのですから、そういうことを考えれば、まだ十分対応できるのではないか、こう思いますので、十分にそれを配慮していただきたい、こういうふうに思います。  それから最後に、肩身の狭い思いの中で、実は各条約の批准状況というものを、細かいことはもう省略しますが、やはり条約の批准の進行状況というものが、日本のこの差別とか、あるいは日本だけがこういうものを批准していないとか、そういうことによって、日本がまだ先進国の肩並びにはなれないということになりはしないかというふうな我々は危惧を持っておるわけです。この間も大蔵の委員会でありましたが、なぜ理事になれないんだ、こういうふうに質問をしました。これだけ大勢に金を配っているのに理事になれないというのはどういうことなんだというふうに言ったわけですが、それは講和条約が全部終わってないからだ、こういうふうに回答があったというわけじゃないですよ、私が解釈すればそういうことであるというふうに思っておりますが、やはりそれぐらいの意欲を持って対応することが必要なのではないかというふうに思いますが、その点はいかがでありましょう。
  251. 丹波實

    ○丹波政府委員 いわゆる国連等の場で作成される条約というのは大変に数が多うございまして、例えば、分野といたしましては、人権、労働、れから環境、テロ、軍縮、原子力、それから知的所有権、麻薬、漁業、それだけでも九つありますけれども、そういう各分野でたくさんの条約がつくられておりまして、日本も確かに未加入の条約はたくさんございますけれども、それじゃ、ほかの国が未加入の条約をどれほど持っているか、必ずしも調べたわけではございませんのでわかりませんけれども、ほかの国に比べて日本が特段ひどくおくれているということではないのではないか。確かに重要な条約でまだ加入しておらないものがありまして、先生方に督促いただいているものがございますが、例えばここ二、三年をとりましても、非常に重要な条約として、御記憶と思いますけれども、女子差別撤廃条約に日本は入りましたり、向精神薬の条約に入りましたり、あるいは国会におかけしようと思っておりますけども、いわゆる麻薬新条約、それから、昨年の秋に郵便関係の六件の条約に入ったりして、それなりの努力はしておるつもりでございます。  繰り返しますけれども、まだ未加入の条約がございますので、鋭意そういうものにも入っていきたいと思います。そういうことで、ぜひ先生のお力も得たいというふうに考えますので、よろしくお願い申し上げます。
  252. 沢田広

    沢田分科員 今度の戦争が非常に、これはいろいろ言われていると思ったら簡単でいいのですが、情報戦争ということで、とにかくその状況が直ちに我々の目に映るという状況で、これはいろいろな分野で言われていると思うのですね。これはどういうふうに解釈していったらいいのかというのが極めて重要だと思うのです。これは世界に皆映っていくという格好になりますから、日本海の上にも停止通信衛星をやったらどうだとかあるいは南太平洋にどうだとかいうふうな案も、五十億ぐらいでできるのだと思うのですね。郵政省に聞けば、今でも回線はあるのだそうですね。自由にお使いくださいというのですから、外務省もそれぐらいの予算はとって、やはり特別のチャンネルで世界との交信が可能になる、こういうような方法は、大使館のファックスよりも、まずその方が多角的、多層的に使っていけるのではなかろうか、特にまた、それが平和に使えるということであれば、それは安いものだということになるのだろうと思うのですね。ですから、そういう意味においては、今の予算の中でどうにもならなければ補正予算になるのでしょうけれども、郵政と一応話をして、外交的な宇宙衛星を上げて、それで世界各国の大使館との連絡は直ちにとれる、こういう状況をつくることも大変大切なことではないかというふうに思いますが、この点、御見解を承りたいと思います。
  253. 中山太郎

    中山国務大臣 通信衛星を使って世界各地におります日本在外公館との通信システムを完備するという御発想は、極めて重要なことだと考えて おります。一応十分検討をさせていただきたいと思います。
  254. 沢田広

    沢田分科員 大臣、もう精いっぱいとにかく答えていただいたと思いますから、時間いっぱいやるのも必要ないと思いますので、今後大臣の善処を期待して、私の質問は終わりたいと思います。
  255. 串原義直

    串原主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、筒井信隆君。
  256. 筒井信隆

    筒井分科員 きょうは外務大臣に、主に環日本海圏構想との関係での外務省の職務の内容についてお聞きをしたいと思います。  今、東京太平洋ベルト地帯、この太平洋ベルト地帯があらゆる分野にわたって偏重されている結果、いろいろな障害が生じている。一極集中とか過疎過密とか、あるいはさらには中央集権的な日本の害悪といいますか、それもそのことから一つ出てきている。さらには、対外的には輸出依存型との関係もありますが、日米経済摩擦の深刻化というふうな形でも出てきている。やはりこういう状況を正すためには、太平洋側偏重ではなくて、日本海側のところでのあらゆる分野での発展、これを目指さなければならないのではないか。環日本海圏構想というのが今いろいろなところでいろいろな人からまた叫ばれておりますが、それが今言った一極集中とかあるいは大規模集中型の日本の社会からそれらの害悪を取り除く形になるのではないか、国土の均衡ある発展を実現して、小規模分散型といいますか、あるいは地域自立型といいますか、そういう社会を目指す一つの大きな手段となるのではないかというふうに考えるわけでございます。  環日本海圏構想といった場合には、もちろん中心となるのは日本日本海側の地域であるし、あるいはソ連全体というよりもソ連の極東地域であるし、中国全体というよりも中国の東北三省といいますか東北地方であるし、それに朝鮮半島の国が参加した形でのいろいろな分野での交流が必要であろうというふうに考えております。外務省の方でも、今政府開発援助拡充とか、それから平和のための協力、あるいは国際文化交流強化、これをあわせた三本の柱に立脚した国際協力構想推進しているというふうに聞いているし、見ているわけでございますが、こういう三本柱の国際協力構想というのを、特に環日本海圏を対象としても、協調して進めなければならないと考えるわけです。その点に関する外務大臣意見をお聞きしたいと思います。
  257. 中山太郎

    中山国務大臣 沿海州、サハリン、北海道あるいは裏日本全体、また朝鮮半島といったものを周辺に控えた環日本海における交流、貿易の促進、地域の開発といった問題は、これからの新しい世紀に向かっての一つの大きな構想でありまして、私は外務大臣としても、その方面に力を入れることに大きな注意を払っております。
  258. 筒井信隆

    筒井分科員 ぜひその方向で進めていただきたいわけです。  やや具体的な質問になりますが、一九九〇年にウラジオストク国際会議というのが開かれて、そこでソ連のシェワルナゼ外相が基調演説をして、全アジア諸国外相会議の開催を提唱したというふうにお聞きをしております。その際に、その国際会議のときに、アメリカ代表が同時に分科会で報告をいたしまして、環日本海圏構想の促進を提唱したというふうに聞いておるわけでございます。その構想によれば、日本海側の新潟、富山、秋田、北海道などが連合体を設置して、対岸のソ連極東の各州及び中国東北部の各省、韓国、そして北朝鮮の各道などを相手方に文化経済交流の促進を図るべきだというものである。つまり地方とか州、道単位での国際交流促進をうたった。つまり国家単位、国同士だけの促進ではなくて、それとは独自に、地方各自治体あるいは地域同士の交流、こういう形でのアメリカ代表の提唱だというふうに聞いているわけですが、そういう事実についてと、それからそれに対する外務省の見解をお聞きしたいと思います。     〔串原主査代理退席、主査着席〕
  259. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 今先生御指摘になりましたとおり、いろいろな場所において地方レベルにおける交流についての検討が進められているのは事実でございます。今先生おっしゃられましたアメリカ側のアイデアにつきましては、いずれ十分に資料を整えましてお答えいたしたいと思います。  日本政府としましては、地方公共団体、例えば新潟県あるいは富山県、このようなアイデアに基づいていろいろ環日本海交流のための活動をしていることを歓迎し、いろいろなところでこれを支援しております。
  260. 筒井信隆

    筒井分科員 基本的には外務省としてもアメリカ代表が提唱したその方向性を目指すというふうに今お聞きしておきたいと思います。  同時に、その際に、シェワルナゼ外相が全アジア諸国外相会議、これを一九九三年にウラジオストクで開催するということを提唱したようでございまして、もちろん全アジアですから、環日本海圏よりもっと広い範囲のものでございますが、この提唱についての外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  261. 中山太郎

    中山国務大臣 一九九三年にウラジオストクで全アジア外相会議を開きたいというシェワルナゼ外相のお話、私もよくわかっております。  私も重要性を認識しておりまして、昨年の九月二十七日、国連総会の場においてたくさんの外務大臣が集まりましたので、私とインドネシアのアラタス外相が共同ホストで、このASEAN各国、それからアメリカ、カナダ、オーストラリア、それと中国、韓国、それからソ連のシェワルナゼ外相もお招きをして、初めてこのアジア・太平洋の外相の会合を持ったということも、この機会に申し上げておきたいと思います。
  262. 筒井信隆

    筒井分科員 今いろいろな形で新しい世界の流れがあるというふうに言われているわけですが、一つの方向として、今の環日本海圏に関係する方向として、国家の機能が一方では国際化をして、一方では地域化をする、そういう形で二方向に分解といいますか、一方向では上がって一方向では下がる、そういう方向に進んでいるというふうに見られているし、私もそう考えるわけでございまして、だから、地域が同時に国際化する、自治体が同時にまた国際的な交流に直接参加をする、そういう時代に入っているというふうに考えるわけでございます。  環日本海圏構想となった場合には、もうそういう新しい動きとともに、ソ連全体ではなくてその一部地方である、中国全体ではなくてその一部地方であるということから、自治体外交自体が積極的に推進されなければ環日本海圏の形成自体が不可能であるし、それ抜きにしては考えられないというふうに思うわけでございまして、その自治体外交そのものに対して、外務省、どういうふうに考えておられるか、見解をお聞きしたいと思います。
  263. 中山太郎

    中山国務大臣 自治体外交を進めていただくことに外務省は全く賛成でありまして、できるだけの御支援を申し上げてまいりましたが、今後とも外務省は、自治体からの要請があれば、あらゆる協力をいたすことでやってまいりたいと考えております。
  264. 筒井信隆

    筒井分科員 既に外務省が、一部分においてはその自治体外交といいますか、そういうものについて援助をしているというふうにお聞きをしておりますが、具体的に今どういう形でその自治体外交についての援助等があるのか、それらについてお聞きをしたいと思います。  外交青書でもその点が出されておりまして、姉妹都市提携とか海外技術研修員の受け入れなどの活動、こういう自治体の活動に対して援助している、積極的な支援をしている、さらには、国際化相談センターを設けたり、一日外務省国際交流人材育成講座等の各種事業を行っておる、こういう記載もあるわけでございますが、それをもっと具体的に、どういう形で自治体外交を既に支援しているか、その説明をいただきたいと思います。
  265. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 お答えいたします。  今先生御指摘のとおり、外務省の外務報道官組 織の中に国内広報課というのがございます。その課の中に国際化相談センター、これを設けて、交流計画あるいは行事、これらがどういうところでどういうふうに行われているか、特に国際交流に関する情報、ノーハウの提供を行っております。また、自治体の方々が外国に行って大使館の話を聞きたいとかあるいは便宜供与、これらの依頼があるときには、できる限りの支援をしてきております。また姉妹都市提携、このような場合にも、助言を与えたり、在外公館の出席あるいは代表の出席等を行っております。  またいろいろ、ミニ外務省国際化相談キャラバンというのがございます。一日外務省の場合には大臣に出席していただいております。ミニ外務省の場合には評論家あるいは局長クラスの者、国際化相談キャラバンの場合には課長クラスが行って、それぞれ地方自治体の国際交流のための相談にあずかっているというのが実態でございます。  そのほか、今先生おっしゃられました国際文化交流情報センターによる経済協力面での支援、これをやっているのも事実でございます。
  266. 筒井信隆

    筒井分科員 従来、そういう二自治体間の動き等々あるいは個別の自治体との、日本の自治体との交流、それらについて行われてきたことを大きく評価するわけですが、ただ、今国際的には二つの自治体間の交流だけにとどまらず、多くの自治体が一緒になって一つの大きな共同体といいますか、経済協力関係といいますか、そういうものをつくりつつある、そういう動きだというふうに聞いているわけでございまして、これは欧州共同体でも、四つの州あるいは県、地方が地域共同体というのをつくって、その提唱者がドイツのバーデン・ビュルテンベルグ州の首相だそうでございますが、これが提唱者になって地域共同体をつくったというふうに聞いておりまして、そういう地域共同体をつくると同時に、そこのそういう動きに日本やカナダの自治体の参加を呼びかけているというふうにも聞いているわけですが、こういう動きが実際にECの方にどの程度あるのか、日本の自治体がそれらの呼びかけを受けているのかどうか、それらについて、もしわかったらお答えいただきたいのです。
  267. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 先生の御指摘のとおり、バーデン・ビュルテンベルグ州のシュペート州首相の提唱によって、一九八八年九月にこの地域共同体が結成されております。目的は、地方レベルにおける経済、科学、文化等、幅広い分野における協力体制を確立する、こういうふうなことでございます。日本の神奈川県、カナダのオンタリオ州等に参加が働きかけられておる、こういうふうに承知しております。
  268. 筒井信隆

    筒井分科員 そういう呼びかけ等は直接自治体に来るのでしょうか、外務省を通じてされるのでしょうか。
  269. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 これは今のところ確認してございますが、外務省を通じてというよりは、むしろ直接地方自治体の方に連絡が来ております。それが今の現実でございます。
  270. 筒井信隆

    筒井分科員 そういう外国での動きと同時に、日本でも、例えば神奈川県等で、七カ国の自治体代表が多地域間の協力関係づくりの協議をする、そういうふうな動きもあるというふうに聞いておりますが、これはそういう動きがあるのかどうか、それから、これは神奈川県だけにとどまるのか、それ以外にも日本の自治体で結構広がっているのか、その点について、これも、今わかったらで結構ですが、お答えいただきたい。
  271. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 神奈川県の方が活発に国際交流活動しているのは承知しておりますが、具体的に今先生のお尋ねの点については、いずれ確認した上でお答えしたいと思います。  我々が承知している限りでは、北海道が北方圏に属する国々の地方自治体との間で交流をしている、こういうことは承知しております。
  272. 筒井信隆

    筒井分科員 さらにもう一点、事実関係の質問なんですが、外国から自治体に対して、これも外務省を通じてでも自治体直接でも、外務省の方でわかっている範囲でよろしいですが、産業とか技術とか公害とか環境とかあるいは都市問題、自治制度などについての協力依頼がやはり結構ふえているというふうにお聞きをしているのですが、そういう事実があるのかどうか、それから、その内容についてお答えいただきたいと思います。
  273. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 今の詳しい内容まで、ここに書類もございませんですが、私ども、東京都あるいは島根県、大阪等々と連絡を密にしておりまして、その連絡の席上、特に環境、下水等の問題についてニューヨークその他の大都市と話し合いを行っている、また、太平洋に面する地域の間では、米国、日本を初めとする地域諸州の間で、今先生がおっしゃられたような問題についての意見交換の場があると承知しております。
  274. 筒井信隆

    筒井分科員 今聞いたような日本国内での動き、多地域間の協力関係とかあるいは外国から自治体に対するそういう協力依頼等、これは環日本海圏の地域に入る日本海側の自治体との関係ではどうですか。ちょっとこれも突然の今の質問なので、後でも結構ですが、わかれば……。
  275. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 最近になりまして、環日本海交流圏につきましての活動は非常に活発になってきております。姉妹都市提携数におきましても、韓国の場合には五五%が日本海側自治体、ソ連につきましては七六%、中国につきましては、姉妹都市全体の三七%が日本海側に面している日本の自治体が提携先になっておる、こういうふうに承知しております。
  276. 筒井信隆

    筒井分科員 あるいは重複した質問になるかもしれませんが、そういう従来の姉妹都市間とか二自治体間の関係ではなくて、そういう他地域の協力関係、しかも公害とか産業と技術とかそういうものについての積極的な協力、これらについても外務省の方は積極的に支援する、そういう意向であるというふうにお聞きしてよろしいのですね。
  277. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 そのとおりでございます。ただ、一つだけ私どもの方でいつもそういう自治体の方々との交流について申し上げておりますのは、ぜひとも国の外交政策との整合性を保っていただきたい、そういうことをお願いして御協力を得ております。
  278. 筒井信隆

    筒井分科員 念のため、国の外交政策との整合性、抽象的な形でよろしいですが、例えばどういう場合が反して、どういう場合だったら整合性があると言えるのでしょうか。
  279. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 今の場合にすぐ例をと申し上げられても浮かんでまいりませんが、まだ国交が未回復な国との場合に、例えばその日本人の生命、安全について我々が責任を持てないような地域がございます。そういう場合には、地域間の交流が先に進んでも我々としては責任が持てない、こういうようなことが一つの例かと思います。それ以外にもいろいろあり得ると思いますが、今思いついただけを御説明させていただきます。
  280. 筒井信隆

    筒井分科員 そうしますと、例えば北朝鮮のように国交がない国の自治体に対して一定の経済的な協力をする、これは国の外交との間で整合性がないことに入るのでしょうか。それ自体としては別に構わないということになるのでしょうか。
  281. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 自治体にせよ、政府ベースの経済協力にせよ、その点につきましては、北朝鮮との場合でございますが、せっかくただいま政府ベースで正常化へ向けて交渉が進行中でございますので、今しばらくその帰趨を見守っていただきたい、こういうふうに申し上げております。
  282. 筒井信隆

    筒井分科員 今実際に、北朝鮮とソ連と中国との間で豆満江自由貿易構想というものが始まりつつあるというふうに聞いているわけで、その場合、北朝鮮とは特に外交関係がないものですから、それに環日本海圏の構想の一つの発展としてある程度それを支援する、こういうのを例えば新潟県がやった場合にどうなんでしょうか。それは、今のでいくと政府の方針から反するということになってしまうのでしょうか。
  283. 渡邊泰造

    ○渡邊(泰)政府委員 事実上可能な限りにおいて、我々は基本的にそういう交流を援助するという方針をとっております。例えば鳥取県の場合には、民間ベースで先方より歌劇団の来訪とか、あ るいはこららの方から訪朝団というものを派遣する際には、我々は十分に連絡を得て、そのときそのときの事情に応じて判断、協力をしております。
  284. 筒井信隆

    筒井分科員 次に、この環日本海圏といいますか、自治体外交ODA政府開発援助との関係についてお聞きをいたしますが、もちろんODAは国対国の関係が基本であることはわかるわけですが、そういうふうに、これから自治体外交の必要性がだれから見ても叫ばれているし、また客観的な事実であるというふうに考えた場合に、このODA予算の編成あるいは執行に関してある程度、まず当面は少なくとも自治体の意向を反映するとか、あるいは自治体の関与を認めるとか、そういう方向性を考えなければ、これからの時代の流れに合わないのじゃないかと思うのですが、その点について外務省としての見解をお聞きしたいと思います。
  285. 川上隆朗

    ○川上政府委員 先生御指摘の点でございますけれども、まず近年途上国側の期待が非常に高まっているということと、ニーズが多様化しておりまして、その観点から政府といたしましても、このODAの面で地方公共団体との連携というものの強化に非常に努めておる次第でございます。また、この点は同時に、地方の国際化にも資するというふうに我々考えております。  具体的に申し上げますと、外務省及び国際協力事業団でございますが、地方公共団体の途上国からの研修員受け入れ事業に対しまして補助金交付ということをずっと続けておりまして、先生御案内のとおりでございますが、来年度からは専門家派遣事業に対する補助金というものも新設いたしております。そのほかJICAの研修員受け入れ事業実施に際しての地方との連携、地方公務員の専門家、青年協力隊としての派遣等々といった施策を講じておりまして、地方における技術協力事業、開発途上国との人的交流推進のための協力実施しております。今後ともこのような連携協力事業の拡充を図っていくということが基本姿勢でございます。  御指摘の点でございますODA予算関係でございますが、基本的には、今のような形で地方とのいわば協力関係というものを国が図ってきているということでございまして、これは予算制度の問題としまして、地方公共団体の活動は基本的には国と別個の予算ということでございますので、今のような体制のもとで、今後ともこの流れのもとに拡充を図っていくということが妥当ではないかと考えておる次第でございます。
  286. 筒井信隆

    筒井分科員 先ほどちょっと挙げました北朝鮮、ソ連、中国の豆満江に関する構想、これを国のODAの対象にするのは、北朝鮮は国交がない国ですからもちろん無理。しかし、自治体の方の形で、自治体がODA予算を使って協力する、あるいはODA予算をもらって協力する、これは現行でも可能ではないかと思いますし、かえってそういう形で進めていくことが今求められているのではないかというふうに考えているわけで、ぜひその方向を進めていただきたいと思います。  今既に外務省はNGO、民間援助団体に対するODA予算補助金交付をしていると思うのですが、その補助金交付をしている理由、NGOであれば、相手国民に草の根レベルで直接働きかけることができるし、緊急かつ必要性のある場合に柔軟、迅速に対応できる、きめ細かい援助ができる、こういうふうな判断からNGOを積極的に支援していると思うのですが、自治体の場合、まさに同じ理由があるのではないか。自治体の場合に、なおさらもっとそのことを強調して、ODA予算の自治体の補助金として出すとか、あるいはもっと関与を認めるとか、この方向を強めるべきことは、今までのNGOとの関係からいっても言えるのではないかと思うのですが、その点どうでしょうか。
  287. 川上隆朗

    ○川上政府委員 御指摘のとおり、NGOにつきましては、先生が今言われたような基本的な考え方のもとにこの予算拡充するということに努めております。  自治体につきましても、今おっしゃいました基本的な考え方は妥当すると思います。ただ、自治体の出します予算によります援助は、DACにカウントされる場合には、国のオフィシャル・デベロプメント・アシスタンス、つまりODAということになりますので、そのODAの特色というものが、NGOの場合とはやや違った形で出てくる面はあろうかと思います。その辺を勘案しながら、どういう援助をやるのが適当かということを考える必要はあろうかと存じます。
  288. 筒井信隆

    筒井分科員 最後ですが、今の問題で、ODA援助の対象には、国だけではなくて地方自治体も入っていると思うのですが、開発途上国の地方自治体を対象にしてODAによる援助を行う、それを小規模無償資金制度というふうに呼ぶのでしょうか、その対象に、国ではなくて自治体が入っている。これは、援助する方もまた、自治体の方を通じて、自治体の形で援助することにした方が、より均衡するし、対等の関係になるのじゃないかと思うのですが、その点、最後に一点お聞きしたいと思います。
  289. 川上隆朗

    ○川上政府委員 今後の途上国側のいろいろな多様なニーズというものに援助の面で対応するためには、先生御指摘のとおり、いろいろな工夫が必要だということはそのとおりだと思います。我々も、今御指摘の途上国の地方公共団体あるいは各種団体に対して小規模無償という制度を新設いたしまして、きめの細かい援助に努めるということを二、三年前から始めております。  このような考え方は、供与する側の方にも当てはまるのではないかという御指摘だと思いますけれども、その面は確かにあろうかと思います。先ほど申しましたように、研修事業、それから専門家の派遣事業というものは自治体も既にやっておるわけでございますから、それプラスどのような援助形態がODAのきめの細かさというものを助けることになるのかということについては、我々も今後工夫してみたいと思います。
  290. 筒井信隆

    筒井分科員 どうもありがとうございました。終わります。
  291. 林義郎

    林主査 これにて筒井信隆君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十二日火曜日午前九時から開会し、外務省所管及び大蔵省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会