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1991-03-13 第120回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十三日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席分科員    主 査 松本 十郎君       魚住 汎英君    越智 伊平君       小森 龍邦君    新村 勝雄君       竹村 幸雄君    安田  範君       草川 昭三君    鳥居 一雄君       東  順治君    古堅 実吉君       楢崎弥之助君    兼務 五十嵐広三君 兼務 伊東 秀子君    兼務 沢田  広君 兼務 田並 胤明君    兼務 山中 邦紀君 兼務 和田 貞夫君    兼務 石田 祝稔君 兼務 冬柴 鐵三君    兼務 川端 達夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         内閣総理大臣官         房管理室長   櫻井  溥君         総理府賞勲局長 稲橋 一正君         総務庁長官官房         審議官     小山 弘彦君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         総務庁恩給局長 高島  弘君         科学技術庁長官         官房審議官   石田 寛人君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         科学技術庁原子         力局長     山本 貞一君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    井上 達夫君         防衛庁人事局人         事第二課長   太田 述正君         国土庁防災局防         災調整課長   速見 統一君         国土庁防災局震         災対策課長   山田 俊郎君         法務省人権擁護         局調査課長   濱  卓雄君         大蔵省主計局主         計官      浜中秀一郎君         大蔵省主計局主         計官      中川 雅治君         文部省高等教育         局学生課長   喜多 祥旁君         厚生省年金局年         金課長     江利川 毅君         自治省行政局振         興課長     斉藤 恒孝君         最高裁判所事務         総長      川嵜 義徳君         最高裁判所事務         総局総務局長  金谷 利廣君         最高裁判所事務         総局人事局長  泉  徳治君         最高裁判所事務         総局経理局長  町田  顯君         最高裁判所事務         総局民事局長  今井  功君         最高裁判所事務         総局刑事局長  島田 仁郎君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事長)     石渡 鷹雄君         参  考  人         (動力炉核燃         料開発事業団理         事)      橋本 好一君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 分科員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     小森 龍邦君   草川 昭三君     鳥居 一雄君   古堅 実吉君     佐藤 祐弘君   楢崎弥之助君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   小森 龍邦君     竹村 幸雄君   鳥居 一雄君     東  順治君   佐藤 祐弘君     木島日出夫君   江田 五月君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   竹村 幸雄君     安田  範君   東  順治君     草川 昭三君   木島日出夫君     山原健二郎君   楢崎弥之助君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   安田  範君     新村 勝雄君   山原健二郎君     東中 光雄君   江田 五月君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     古堅 実吉君 同日  第二分科員和田貞夫君、冬柴鐵三君、第三分科  員川端達夫君、第五分科員五十嵐広三君、第六  分科員石田祝稔君、第七分科員伊東秀子君、田  並胤明君山中邦紀君及び第八分科員沢田広君  が本分料兼務となった。     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算  〔裁判所及び総理府所管総務庁科学技術庁)〕      ────◇─────
  2. 松本十郎

    松本主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算及び平成三年度政府関係機関予算内閣及び総理府について審査を進めます。  科学技術庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。鳥居一雄君。
  3. 鳥居一雄

    鳥居分科員 南関東地域地震対策につきまして的を絞ってきょうはお伺いしたいと思うのであります。質疑に際しまして、決して危機感をあおろうなどという目的はございませんで、実情に即した適切な対応を切望して、以下伺ってまいりたいと思っております。  南関東地震切迫性につきましては、直下型のマグニチュード七クラスの地震発生する可能性がある、こういうことで中央防災会議あるいは研究者の間で警告がなされているのが現状だと思います。これまでに溝上東大地震研究所教授は、これまでの例からいうと関東周辺でM七以上の地震が起きる可能性が高いと、さらに、地震予知連絡会会長力武日大教授は、一九九〇年から二〇〇〇年までの十年間に首都圏直下型でM六以上の地震が起きる確率が四〇%であると、平成二年版の防災白書によりますと、東海南関東は近い将来発生する可能性が強いといたしまして、東京圏への一極集中を是正することが急務である、このように指摘をされていますし、さらに六十三年六月、中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会中間報告は次のように言っております。このタイプの地震はある程度の切迫性があるけれども予知は非常に難しい。  そこで、国土庁に伺いますが、南関東地震切迫性についてどう御認識されていらっしゃいますか。
  4. 山田俊郎

    山田説明員 御説明いたします。  ただいま先生指摘のように、いろいろな地震学者の方々から地震切迫性について御指摘がございます。私どもでは昭和六十三年六月に、先生も御指摘になりましたような中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会にお願いしまして中間報告を受けておりますが、これによりますと、南関東地域におきましては、相模トラフ沿いマグニチュード八クラスの巨大地震発生する可能性は百年か二百年先とされる一方で、同地域直下におけるマグニチュード七クラスの地震発生につきましては、この地域大陸プレートフィリピン海プレートあるいは太平洋プレートが互いに接しておりまして、複雑な応力集中が生じているということなどからある程度の切迫性を有しているとされておりますので、私どももこのように認識している次第でございます。
  5. 鳥居一雄

    鳥居分科員 二月四日付の新聞の報道によりますと、南関東地域の大地震に備えた震災対策推進方針、これの検討策定に踏み切ったという報道がありますけれども検討内容目途国土庁から伺いたいと思います。
  6. 山田俊郎

    山田説明員 御説明いたします。  南関東地域におきましては、これまで、中央防災会議で決定いたしました「大都市震災対策推進要綱」や「当面の防災対策推進について」あるいは地方公共団体の「地域防災計画震災対策編)」等に基づきまして、関係省庁関係地方公共団体を挙げまして各種震災対策が講じられてきておるところであります。しかし、さらに同地域震災対策を一層充実強化していくためには、当面する直下地震焦点を当てまして、政府全体として取り組むべき対策推進方針策定し、その強力な推進を図る必要があると認識しております。このため、平成三年度予算案に所要の経費を計上いたしまして、南関東地域直下地震に備えた今後の震災対策推進方針としての大綱策定を図ろうと考えております。  大綱課題抽出型の政策方針として策定したいと考えておりますが、その具体的内容につきましては今後の関係省庁との検討を待つ必要がございますが、検討に当たりましては、一つに、対策を講ずべき地域範囲の考え方、二つには、ライフライン被害等都市型地震災害の防止、軽減方策など、さまざまな問題について議論を深めてまいりたいと考えております。  なお、大綱策定時期につきましては、できれば平成三年度中を目途に取りまとめられますように鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  7. 鳥居一雄

    鳥居分科員 そこで、この策定に当たって、大震法で言う強化地域指定、これを前提にした対策なんでしょうか。つまり、直下型は非常に予測しにくいということが理由になって、いわゆる大震法における強化地域指定というのは難しいという経過が実はあったと思います。財政上、観測やあるいは測量を強化する、応急対策をとらなければならない、これはもう全部国の財政上の特別措置にまたなければならない現状だと思うわけです。したがいまして、今策定を急がれているものは、南関東大地震前提にした強化地域指定前提にしているのだろうか、あるいは準じた措置がとれるのだろうか、こういう疑問を持つのですが、御認識を伺いたいと思います。
  8. 山田俊郎

    山田説明員 南関東地域につきましては、いわゆる関東地震の再来のようなものは百年か二百年先ということでございますので、当面は直下地震について検討してまいりたいと考えております。  先ほど御説明しましたように、昭和六十三年六月の専門委員会中間報告におきましては、マグニチュード七クラスの南関東地域直下地震発生はある程度の切迫性があるというふうにされておりますが、同時に、その報告におきまして、その予知は非常に困難であるというふうにされております。このため南関東地域につきましては、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域指定して、地震直前予知に基づく警戒宣言の発令、警戒宣言に基づく地震発生前の応急対策の実施など、東海地震に対しましてとられているような対策を講ずることができない状況にございます。  こうした状況の中でさらに同地域震災対策を一層充実強化していくためには、ただいま御説明しましたように、当面する予知困難な直下地震焦点を当てまして、政府全体として取り組むべき対策推進方針として大綱策定し、その強力な推進を図ってまいりたいと考えております。大綱検討に当たりましては、対策を講ずべき地域範囲をどのように考えていくべきかという問題も重要な検討課題一つと考えておりますので、これを含めまして今後さまざまな角度から検討を深めてまいりたい、このように考えてございます。
  9. 鳥居一雄

    鳥居分科員 科学技術庁国立防災科学技術センターにおきまして、首都圏で三カ所、埼玉県の岩槻市、府中市、千葉県の下総町に三千メートルクラスの深い観測井を掘りまして、高感度の震度計、セットを含めまして一基三十億円、これを設置いたしまして、微小地震の震動の状況、このメカニズム解明に当たっていると伺っております。これはまず、南関東地震前提としているのかどうなのか。それから、岩槻昭和四十八年から観測を行いまして、三カ所で約百億円をかけてデータを重ねてまいりましたけれども地震発生予知データの積み重ねが、深井戸が有効である、この状況ですね。さらに三本の観測井で十分なのかどうか。特に南関東地域東京の東側、千葉県の房総が研究陣によると手薄だ、こう伺っておりますけれども、早急な対策が必要ではないのか。この三点について伺いたい。
  10. 井田勝久

    井田政府委員 まず最初のお尋ねでございますけれども岩槻下総府中に設置しました三カ所の深層観測施設、これはまさに南関東直下型の地震というものを対象としているものでございます。それで、今先生もいろいろお話がございましたように、ただいま首都圏発生が懸念されておりますマグニチュード七クラスの直下型地震というものにつきましては、この地震が地中深い断層で発生する、しかもそのエネルギーマグニチュード八に比べまして約三十分の一くらいの小さいエネルギーしか出ないということでございます。それに対しまして、一方この地域は大変厚いローム層に覆われておりまして、また社会経済活動のノイズが大変多うございまして、なかなか観測が難しいということがございます。したがいまして、観測施設岩盤深くつくる、こういった深層観測施設が大変有効でございまして、先ほどお話がございましたような岩槻下総府中といった三カ所に設置しました深層観測施設によりまして岩盤の微細な地震波形をとらえることが可能になったわけでございます。これによりまして、今まではとらえられなかった東京直下地震群を発見するなど、小さな地震首都圏で多数発生していることが明らかになってまいったわけでございます。さらにこのデータを分析した結果、首都圏中心とする地震の起こる仕組みが明らかになっているわけでございます。  しかし、現在の三カ所は、当初いろいろ考えてつくったわけでございますが、どちらかといいますと、関東地方全体を見ますとやや西に偏っているということでございまして、今後東京湾北部ということにつきましては、観測施設データから見ますとかなり多くの地震発生しているということでございまして、この地域観測を強化しなければいかぬということでございます。そういうことで、平成三年度におきましては、まず東京湾北部に三千メートル級の深層観測施設を整備したい、このように考えておりまして、予算案を計上しているところでございます。  今後とも、御指摘千葉方面を含めまして地震予知観測研究の一層の推進を図ってまいりたい、このように考えているわけでございます。
  11. 鳥居一雄

    鳥居分科員 海溝型、また直下型、メカニズムからいって直下型は非常に観測が難しい。これまでに各地地震が起きてきておりますけれども関東地震がM七・九、最近のサンフランシスコ地震がM七・一、イラン北西部地震がM七・六、フィリピン地震がM七・七、いずれも七クラス、しかも直下型で、極めて大きな被害を出している、こういう状況だと思うわけです。  そこで、予知に関する研究ですけれども文部省の方の測地学審議会の第六次地震予知計画平成五年までの計画ですけれども、これに基づきましてマグニチュード八クラスの解明をやりたい、引き続いて後半は、エネルギー規模からいって三十分の一と言われるマグニチュード七の研究をしたい、こういう第六次地震予知計画というのを持っているわけですが、今マグニチュード七クラスの予知についてどうなっているのでしょうか。
  12. 井田勝久

    井田政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、マグニチュード七クラスの直下型地震につきましては、まだその予知が完全にできているという段階ではございません。そういう意味科学技術庁防災科学技術研究所、これは先ほど申しましたように深層観測施設によりましてその正確なデータをとるということを中心にやっておりますが、そのほか、気象庁でございますとか工業技術院地質調査所国土地理院国立大学、そういった関係機関総力を結集しているところでございます。科学技術庁といたしましては、こういった深層観測施設によります微小地震観測で正確なデータを得ますとともに、各省庁連携のもとに科学技術振興調整費を使いましてマグニチュード七クラスの内陸地震予知に関する研究というものを総合的に実施しておりまして、こういうことで政府全体の研究能力を活用いたしまして、できるだけ早くこういうことの予知ができるよう努めているところでございます。
  13. 鳥居一雄

    鳥居分科員 これは国土庁資料ですけれども、もし東京圏マグニチュード七・九、震度六、これは烈震ですけれども関東大震災級地震発生したと仮定するとどのくらいの被害が出るのか、こういう資料があります。死者十五万人、焼失棟二百六十万棟、被害総額八十兆円。平成二年に作成した「南関東地域地震被害想定調査結果」という国土庁資料でありますが、大変な被害だと思います。巨大な中枢機能集積地であり、世界でも類例を見ないような集中の仕方、これが東京の実態だろうと思うわけです。  平成三年度の地震予知関係予算を見てみますと、関係省庁が六省庁にまたがっているわけですが、科学技術庁文部省、通産省、運輸省、建設省、郵政省、トータルしまして七十億円、井戸にして二本分、こういう状況だと思うわけです。極めてお粗末といいますか、これは何とかしなければならないという現状だと思うわけです。これは何といっても予知体制を強化する、これに尽きるのだろうと思うのですけれども、今後の取り組みにつきまして、科学技術庁長官が音頭をとってこの充実強化に当たっていただかなければならないのだろうと思います。真剣な取り組み、強力な対策、これをひとつ関係閣僚に働きかけて実現をさせていただきたい、こういう思いですが、いかがでしょうか。
  14. 山東昭子

    山東国務大臣 とにかく地震は一たび発生いたしますと、人命はもちろん、社会経済に大きな混乱を与えるものであり、特に地震の多い我が国にとってその予知は重要な課題であり、また非常に難しい問題でございます。  政府といたしましては、御指摘地震予知推進本部を通じまして、防災科学技術研究所やあるいは気象庁観測研究並びに国立大学における基礎研究など、さまざまな角度から進めておりまして、その成果も国の防災対策に反映されておりますけれども、今先生からも御指摘がございましたように、私自身も地震はどうも苦手でございまして、本当に重要なこの予知に関しまして、今後ともなお一層充実強化努力をしてまいりたいと思っております。  予算面につきましても、昨年度の予算六十二億円から、今年度は六十七億円とちょっぴりふえておりますけれども、なお一層充実強化努力をしてまいりたいと考えております。
  15. 鳥居一雄

    鳥居分科員 忘れたころにやってくると言いますので、予知対策を考える部門としてぜひ取り組みだけは盤石の取り組みをしていただきたいと思います。  それで、昨年から国際防災十年というのが始まりました。全世界発生する地震、その実に一割が我が国絡み地震であります。また、今日の我が国の国力、科学技術力、これを有効に地震予知のために、また国際協力に向けていく、こういう役割があるのだろうと思います。  ことしの十月東京開催される国際地震サミット、この開催地東京であるということと、国際サミットリーダーシップをとって有効な機会にしていく、これはまた別な問題だと思います。ぜひリーダーシップをとりその実を上げていただきたい、こう思いますが、取り組みはいかがでしょうか。
  16. 速見統一

    速見説明員 先生指摘のとおり、政府国際防災の十年推進本部東京都等の共催によりまして、本年十月、国際地震サミット開催すべく企画を進めております。  この会議は、特にこの二、三年、ソ連のアルメニア共和国でございますとか、サンフランシスコイランフィリピン等世界各地地震による大きな被害発生していることを踏まえまして、地震大国と言われる我が国におきまして、最近の各国での地震による被災体験等に関します情報交換を行いまして、日本の震災対策推進上参考にすべき点を見出すとともに、我が国各種震災対策のノーハウを海外に提供していく、こういった方策を見出すことを目的として開催しようとするものでございます。  このように、ことしの秋に開催予定国際地震サミットは、我が国開催するものでございます。海外からの参加者を含めまして多くの防災関係者参加を得まして、有意義な成果が得られますよう、引き続きその開催の準備に鋭意努力してまいる所存でございます。
  17. 鳥居一雄

    鳥居分科員 最後に、さまざまなデータが集まってきて、そのデータをもとに解析という非常に大事な作業があるわけです。今どうなっているかといいますと、測地測量から得られる地震予知情報国土地理院データ発生源ですね。国土地理院地殻活動検知センター、これがやっております。また、大中小の地震につきましての情報、これは気象庁地震観測センター、それから一方大学関係ですけれども地震研究所地震予知観測情報センター、ここでデータが出てまいりまして、国土地理院地震予知連絡会というところに総合的に集まってくる、そして解析作業が行われる。しかし、この解析という作業が、やはり相当な体制ができていなければならないんだろうと思うのですが、脆弱だと言われる現状だと思います。これをどのように充実強化していこうとされるか。それから、これは国際的な解析作業がなされるべきだという、これも非常に大事な点だと思っております。  この二点について伺いたいと思います。
  18. 井田勝久

    井田政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように地震地殻変動等の主要な観測データ、ただいま機関ごと集中解析がなされまして、それらの機関が構成いたします地震予知連絡会、これが定期的に開催されまして、関係機関相互情報交換が行われまして、この場で情報検討評価が行われている、これが大まかな体制でございます。  ただ、マグニチュード八クラスの地震東海地震でございますが、これにつきましてはかなりデータを集めまして、評価解析するということが実用化できる段階に至っております。関係機関主要データ気象庁にテレメーターで送って、これで集中解析がなされる、こういう体制が整備されているわけでございます。  それ以外のデータ、例えば首都圏直下型の地震データでございますが、これにつきましては、先ほど御説明しましたように、正確なデータをどのように得るか、また得られたデータをどのようにきちっと処理するかということを今集中的にやっておる段階でございます。例えば、ある程度深い、深層観測施設、こういったものが幾つか整備されまして、こういうものが送れる体制ができた段階、これにつきましてはこういった集中的な解析体制が必要かと思います。したがいまして、現状ではまずそういった深層観測井を整備し、それがきちっと送れるような体制をまずきちっとつくりまして、その後関係機関連絡をとりつつ、ただいま御指摘のような総合的な解析をする体制というものも検討する必要があろうと私ども認識しているところでございます。  それから、国際的な問題をどうするかということでございますが、これは世界的に見まして、地震予知に必要な情報、これが各国で非常に必要であることはまさに御指摘のとおりでございまして、そういった研究が米国、我が国、そういったところで進められているわけでございます。これがまだ世界的な完全なネットワークができているような形になっていない。大変残念でございまして、そういう意味で、今後国際的な情報交換を行う、相互の有益な情報を確認する、どういう情報が必要か、あるいは国によっては、情報をきちっととるまでに至っておりませんので適切な援助が必要かもしれません、そういったことも含めましてきちっと詰めまして、検討を進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
  19. 鳥居一雄

    鳥居分科員 万全を期していただきたいと思います。  以上で、質問を終わります。
  20. 松本十郎

    松本主査 これにて鳥居一雄君の質疑は終了しました。     ─────────────
  21. 松本十郎

    松本主査 次に、総務庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川端達夫君。     〔主査退席、魚住主査代理着席〕
  22. 川端達夫

    川端分科員 長官、どうもご苦労さまでございます。よろしくお願いいたします。  非常に日本は豊かな国になったということで、世界の中でも非常にいい国だというふうによく言われるわけですけれども、実際にその豊かさというものを見ていきますと、いろいろな問題で、中にはそう世界に自慢できないこともたくさんある。そういう中の一つに部落差別の問題というのがいまだにあるということでございますが、やはり世界に誇れる国にしていくという部分でこの人権の問題、とりわけこういう差別の問題というのを本当に根絶しなければいけない。そういうふうに国民ひとしく思っているはずなんですけれども現実にはそうではないという部分でありますが、冒頭、こういう差別を根絶していくというための総務庁長官として国としての基本的な考え方と、それから施策について、まずお伺いをしたいというふうに思います。
  23. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 お話ございますとおり、日本は世界で先進国だ、こう言われておるわけでございますけれども、そうした中にありまして、今お話ございましたような差別問題と申しますか、そういうものがございますということは、これは大変遺憾なことであると思います。申し上げる必要もございませんけれども、私どもの憲法の中で基本的人権、これはもう一番の大事なことでございますし、国民が全部平等でお互いの人権を尊重し守りながら国を発展させていく、こういうことでなければならないわけでございまして、そういう意味合いから申しましても、こうした問題がなお存在するということは大変残念なことだ、一日も早くそういうものを解消しなきゃならない、こう思います。  また、御承知のとおり、今までその問題の解消のために物的な面あるいは心理的な面での解消に向かって努力をしてまいりまして、この環境の整備と申しますか、物的な面では私は相当の成果を上げつつある、こう認識をいたしておりまして、今の特別法がございますけれども、その期間中にひとつ全力を挙げてその面は整えてまいらなければならない、こう思います。他方、心理的な面はなかなか根強い、また長い、深いものがあるわけでございまして、これはなかなか今すぐに完壁なところまで持っていくというのは、私は率直に申しまして難しいだろうと思いまして、これまでもやってまいりましたが粘り強い努力というものを、国はもちろんですけれども、地方団体、そうしてこれは社会がつくった問題でありますから、国民全体ひとつ力を合わせてそういう心理的な面での問題の解消にも引き続き粘り強く努力をしてまいらなければならない、このように思っておる次第でございます。
  24. 川端達夫

    川端分科員 長官おっしゃるように、いわゆる物的な部分のいろいろな対策と、それから心理的ないわゆる内面的な部分の差別の解消という両面あると思うのです。おっしゃるように、環境整備といいますか住宅、住環境の問題等々は、長年にわたっていろいろな施策を講じてきていただいた。まあ相当な改善が進んだことは事実だというふうに思いますし、評価をしたいと思うのですが、この地対財特法の期限切れの問題に関してはまた別の機会に譲るといたしまして、きょうはその一番難しい心理的な差別という部分に関してのことをお伺いをしたいと思うのです。  同対審の答申でも、いわゆる心理的な差別を解消しなければいけない、こういう精神でずっと来ておられることは事実なんですが、例えば今の対策事業なんかの一つの指針として、地域改善対策協議会の意見具申というのが六十一年に出されているわけです。これの評価もいろいろあることも承知いたしておりますけれども一つの基準にしておられることは事実だというふうに思います。その中では、これは六十一年の意見具申でありますが、「心理的差別についても、内外における人権尊重の風潮の高まり、各種の啓発施策及び同和教育の実施、実態面の劣悪さの改善等によりその解消が進んできている。」、こういうふうにこのときは分析をされているのです。  私はやや異議があるのですが、総務庁とされましては、少なくともこの意見具申から五年たっているわけです。この時点でも相当心理的な差別は解消してきているんだ、こういうふうに認識をされているのですが、それを受けて五年を経過し、いろいろな努力をされてきた中で、現状はどういうふうに認識をされているのか。要するに、経時的にそういう部分は解消してきているということなのかということが一つ。それから、これから具体的にどういう手法というものを考えておられるのかというふうな展望についてお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 小山弘彦

    ○小山政府委員 ただいま委員の御質問でございますけれども、確かにこの同和問題につきましてはハード的な面とソフト的な面がありまして、私ども昭和四十四年以降三度にわたる特別措置法に基づいていろいろな事業の改善推進をやってまいりました。それとあわせて心理的な差別、いわゆる心にかかわる問題につきましても、広く国民が理解し合うということの努力をしてまいったところでございます。  それで、ただいまの昭和六十一年の意見具申におきまして、確かにおっしゃいますようなことが記述されております。啓発効果というような側面につきましても広く理解を得ているところであろうと思っております。その後につきましても私どもはいろいろな立場で啓発活動を続けてきておりまして、具体的には国家公務員、それから都道府県の同和関係者並びに都道府県自身、地方公共団体自身で行う研修、やはりこの問題につきましては、根気強くいろいろな場でいろいろなターゲットに基づいて啓発を続けるということが大事なことであろうと思います。現在もそのような活動は続けているわけでございまして、解消へ向かっての道を歩んでいることは事実であろうと思います。しかし、社会的、歴史的背景のある問題でもございますので、今後とも一層啓発については重視してやっていきたい。そのときには、いわゆる研修というような形での啓発、これはもちろんあります。そのほか、いわゆるいろいろな媒体を活用した広報活動、これは電波もありましょうし、それからいろいろな活字の媒体もありましょうし、目的に応じましていろいろ効率のいい手段を使って活動を続けていこうという所存でございます。
  26. 川端達夫

    川端分科員 いろいろな研修、啓蒙を諸団体、地方公共団体、学校含めてやっておられるというのは承知をしております。それなりに成果があるという評価もあると思います。ただそういうときに、私は差別がなくなるということになっているのか、認識しているのかというお伺いをしたのは、要するに成果をどういうふうに評価をしておられるのかなということなんです。一生懸命やるということ自体は否定するものではありませんし、評価をしたいと思いますが、具体的にどうなのかなということで、例えばいろいろな差別事件というのは相変わらず起こっているわけです。そういう部分で、例えば部落差別問題というものが各地発生をするという部分で、こういうものを所掌される総務庁としてその情報というものはどのように把握をされるのか。  例えば、一年にそういう案件が何件くらいあったのがこのいろいろな啓蒙をしていくことによってだんだん減っていっているというのであれば、最終的に五年、十年、もう少しかかるのかということも含めてかなりなくなるのではないか、こういうやり方をして随分効果があった、そういうことだと思うのですね。一生懸命やっているからということは、評価というものとつながらないとむだな努力をしていることもあるかもしれないということだと思うのですが、例えばその点、何か具体的に事件、差別事象が起こったときに、そういうものはどういうふうに取り扱われるのかということと、どれくらいそれが発生していると掌握されているのか、お伺いしたい。
  27. 小山弘彦

    ○小山政府委員 いわゆる差別の問題に関する事象の把握ということにつきましては、私ども国の関係省庁連絡会議等で出てくるものは報告として受けているというようなことでありますし、それから地方公共団体との関係におきましては、国と一体で部落差別の解消へ向かっていくという観点から、事務的な会議はもちろんのこと、各年度の予算地方公共団体との関係において組み立てるときには、地方公共団体の意見を十分聞きながらやっていく、そういう過程におきまして、諮問題について出てくるというようなことがあるわけでございます。  委員おっしゃいますように、確かに心の問題に関する効果の測定、計量化、こういうものは非常に評価の難しいところがあるわけでございます。そのような種類のものであるということが一つ啓発の問題についてはございますので、やはり基本的に啓発を継続して効率よくやっていくということ、これを第一に置いているわけでございます。個々の事象につきましては、その問題に応じまして関係省庁の協力、それから関係省庁努力という過程において、私どもそのときそのときで報告を受けているというところが実態でございます。
  28. 川端達夫

    川端分科員 どうもよくわからないのですが、個々には、いろいろな地域で個別にこういう事象が起こる、そのときに、その件に関しての対策というのはその地域でいろいろ御努力をされるということがあると思います。この部分に関して、国がこれはこういうふうに解決しろとか個別に言われることは私はないと思います。それはそういうものだと思います。ところが、実際にどういうことが起こっているのか、それからその地域ではどういうふうな対応をしたのか、そういう部分、確かにその評価は難しいというのは難しいのですけれども、大きく分類をしていき、あるいはその地域対策を講じた結果も含めて、ほかのところにもこういう事象がある部分でこういう対応がされてうまくいった、あるいはうまくいかなかった、こういう問題があるということをトータルで国として集約され、対策を立てていくということをしていかなければ、こういうものはなくならないのじゃないのですか。予算をつけてお金を出す、これはハードな部分が主ですけれども、そのほかの啓蒙もこういうふうにやりなさい、お金はつけましょう、いろいろあったらおのおのやりなさい、具体的にどういう件数でどういうことが起こっているのか、おのおの頑張ってやりなさいよということで、本当にこの差別をなくすというコントロールセンターである総務庁の役割を果たしているのだろうか、私は非常に疑問に思うのですね。  例えば、個々に何かが起こってということで、人権擁護局から来ていただいていますが、その部分に関して法務省ではどういう立場でかかわりをお持ちになるのか、お聞かせをいただきたい。
  29. 濱卓雄

    ○濱説明員 お答えいたします。  我々は、同和問題に対する根本的な解決に向けていろいろ努力をしてまいっておるわけであります。しかし、同和問題に対する国民の理解と協力が何よりも重要だという考えを持っておりまして、従来から国民の理解と協力を得るよう啓発活動を行っているところであります。  先生の御質問の個別的な問題でございますが、差別事件が発生した場合は、普通被害者本人の申告、あるいは各種の新聞とか雑誌等から得た情報、あるいは各市町村におられます人権擁護委員さんの通報、それから関係官公署からの通報のほか、人権相談というものを我々絶えず行っているわけですが、そこから端緒を得て人権事件あるいは人権相談として個別的にそういう問題に対して対応しているところであります。
  30. 川端達夫

    川端分科員 今言われたように、法務省の人権擁護局といいますかそういう担当としては、個々に人権侵害があるという訴えがあったり、そういう事象があったときに、それをお調べになって人権を保護するという観点で、まさに個々なんですよね。それを人権侵害としての分類とかはされるかもしれない。しかし観点として、総務庁は部落差別といういわれなき差別をなくするということでいろいろな施策をやっていこうというお役所なわけでしょう。それを責任を持っておられる。そのときに、いろいろな事象をトータル的に情報収集し、そして分類し、対策を講じるという作業、仕事自体は、今どうなんですか、やっておられないのじゃないですか、現実に言えば。例えば何件ありましたかとお伺いしたら、こういう対策を打ってだんだん減ってきていますよ、そういうものは数字的にあるのでしょうか。
  31. 小山弘彦

    ○小山政府委員 数字のカウントにつきましては、個別の事象の報告把握ということが非常に難しい面がございまして、はっきりした数字を把握しているということではございませんけれども、その事例につきましては、措置された形それからその過程というようなことを研修の場でいろいろ紹介し合ったり、そのものにつきましては事例集としてまとめまして都道府県等に紹介する、こういうような方法をとっているわけでございまして、それで事例の数の推移的なものに関しましては、各地方公共団体それから関係省庁の最近の扱いに関する認識ということで情報交換を行って、解消の方向へ向かっているという共通の認識は持っていいのであろう、こういうような感じでいるわけでございます。
  32. 川端達夫

    川端分科員 もう一つはっきりしないですね。私はその分、地方おのおのに非常にあなた任せで、総務庁がそういう部分の采配を振るっておられるという姿がどうしても見えてこないと思います。現実にどういうことが起こっているのか。本当に減ってきているのだろうか。昔の、我々が子供の時代の非常に劣悪な住環境とか、仕事、就職の問題、経済状態等々で非常に厳しいところに置かれていたという状態から見れば、確かに随分解消された、これは事実だと私は思うのですね。ところが、心理的な差別というのはむしろ悪質、陰湿化してきているのではないか。私たちが子供のときにそんなことがあったかなというふうな事象が最近むしろ出てきている。そういう部分にどういうメスを入れていくのかという動き、姿が全然見えないということを非常に残念に思います。  私は滋賀県でございますが、ある中学校で八八年から九〇年にかけて起こった事例であります。  これは千人ぐらいの中学校でございまして、二十六名のいわゆる地区の生徒がいる。千人にうちの二十六人、ほんの一部ということであります。しかも、この中学校自体は、人口急増でいろいろな新しく転入してきた人もおられる。そういう中学校で起きた事件ですが、初めは、例えばある日学校へ行けば、自分の机にこういうふうにマジックで「エタ」「アホ」「死ね」と書いてある。机に例えば自分の子供がこんなことを書かれたら、本人あるいは子供がどんな気持ちになるか。別に何か悪いことをしたわけでも何でもないわけです。そういうところから端を発して、学校へ行けば靴がなくなる。上靴がなくなった。しばらくしたら、とんでもないところから出てきた。そうしたら、またこういうことが書いてある。こういうふうに出てくる。これだけでも子供は相当傷つく。  しかもその途中で、学校で本人のノートがなくなった。これは学校の中のだれかがやっているというふうに想像できますから、字を書けば筆跡がわかるということでいろいろな活字を拾ってきまして、当地区の名前で「みなごろし」云々と、こうしてかなりひどい落書きをいっぱいする。あるいは、高じてきますと、学級日誌というのがありますね。皆さんが順番に毎日当番を決めてきょうはこうだったと書く学級日誌があって、先生がチェックをする。それがまたなくなって、その地区の生徒の欄だけはバツで消してしまったりというふうなことが起こってきた。  それで、同じ生徒の中でそういうことがあるということで、本人たち、そういう人たちも大変なつらい思いと怒りとを持って、みんなで調べる。要するに、夕方になったら当番で教室の見回りをしようというふうになったら、今度は、余りこんなところでこんなものを読むのも恥ずかしいのですけれども、「えたのおんなへ ほうかごがっこうのなかでうろうろするな。 けがれる しね あほ」、あるいは「何々 ちゅうは」、別の中学校なんですけれども、「えたがいないからよくなる。」こっちの中学校は「えたがいるからわるくなる。 くらいがっこうのなかで」云々とありまして、かなり性的な卑わいなことが書いてある。そして、「おめでとう へいせいがんねん さべつはずーとつづく にんげんのよがつづくかぎり しょうがっこうのときはよかった」、「これでおわりじゃない」、そして、今までは「えた」「しね」とか「あほ」とか書いてあったのですけれども、今度は一月三十日に「ころし」こういうふうに書いてある。  当事者でない者からいいますと、ここに「ころし」と書いてある、今まで「しね」というのが「ころし」と書いてある、「一月三十にち」と書いてある、ひどいことを書くなと、例えば何にも関係ない人だったらそう思うと思うのですよ、こういうものを見たら。ところが、この子供たちそれからその親たちが現実にこれをどういうふうに受けとめたか、いかに傷ついたかといいますと、本当に一月三十日に何か殺されるのではないか。だから、その日がもう大変怖い日になってしまう。その一月三十日に、お弁当を持っていきますから、お弁当を持っていってどこかへ置いておいたら、例えば隠されて、あるいは何かのすきに毒でも入れられて殺されるのではないか。だから、お弁当は食べなければいけないけれども、学校にそれを持っていくのが危険である、だから、親がみんなで十二時前まで家にお弁当を置いておいて、お昼の時間に学校へ届ける。それから、お茶を飲むではない、お茶に毒が入っているかもしれない。あるいは、生徒が当番で給食室か用務員さんの部屋にお湯を取りに行ってお茶を入れるのですが、一人で行けば何か入れられるかもしれない、だからその日だけは必ず二人で行く。ただ「ころし」と書いてあるということでそこまで追い詰められておるのが差別の実態なんです。  そして、ある子供が、二十六人おるうち一人だけが、こういう隠されたりなんとかという一種のいじめというか差別に全然遭わなかった。その子とその親は、あの子だけがそういうことに遭わない、靴を隠されたりノートに書かれたりしないということで、あの子が何か怪しいのではないか、あるいは一人だけ残っておるが次にあの子が、自分がやられるのに間違いがないというその恐怖の状態をずっと続けて、最後に結局隠されたりしたのです。そのときに何と思ったかといったら、ほっとしたというのです。  それだけ深刻かつ陰湿な、しかも私はこれで非常に深刻だなと思うのは、やっておるのはそのクラスにおる中学生のだれか、子供なんです。子供がこんなことまでするという。そうすると、その家庭あるいはその周辺でどういう教育がされておるのか。その子にそこまでやらせる環境というものが日本にはまだまだ残っておる。この件は、その学校の関係者、生徒たち、親御さん、そのほかのクラスの仲間を含めてがこの問題を取り上げて、全校集会等々をして、みんなでこれを乗り越えていこうという相当な努力の中で、私は子供というのはそういう部分では偉いな、強いなと思ったのですが、乗り越えていこうと今も一生懸命頑張っておるわけですけれども、そういうときにこんなことを聞くと、いまだにこんなことをやっておるのというより、むしろ、昔よりひどいのではないかと私は思うのです。  だからそういう意味で、おのおのの立場で、そういう差別を受けた人もみずから頑張らなければいけないこともある、周りもきちっとしていかなければいけないこともある、学校もしなければいけない、地方も公共団体もしなければいけないというときに、こういう事象が全国あちこちで現に起こっておるときに、果たして国はどういうことをすべきなのかということがどうも見えてこないような気がするのですが、この件も含めて長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  33. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私もそういう差別に関するいろいろな事例を聞かせてもらっておるわけでありますが、今お話しいただきました中学校におけるようなこと、これは大変衝撃的な出来事だろうというふうに私は受けとめております。  私は自分の少年時代を振り返ってみましても、そういう差別を受けたことはございませんけれども、いろいろなことを考えてみますと、被害を受けた生徒あるいはその御父兄の皆様の御心痛というのは大変なものでありましょうし、また、その生徒さんにそういうことが一生の間つきまとっていくだろう、大変な精神的な打撃を受けたことだろうと思います。幸いにいたしまして、今お話しのとおり、そうした被害を受けた生徒さん御自身あるいは周りの同僚の生徒あるいは学校の先生方、そして地域の皆さんがそういう問題を乗り越えようということで今努力していただいておる、私は大変ありがたく思っております。  それで、先ほども申し上げておりますけれども、こうした問題はかなり長い間前からの日本の歴史の中で、日本人、日本の社会がそういうものの土壌をつくってきたわけでありまして、これは、今こういう時代にやはりあってはならないことでありますから、みんなで努力してやっていかなければならない、こう思います。国は、先ほど来政府委員が答弁しておりますけれども、一般的に媒体を使っての啓発活動、それから個々具体の問題が発生したらそれぞれの当局においてその一つ一つを的確に解決をしていく、そして総務庁は全体を取りまとめていく、件数、その効果測定というのは難しいと思いますけれども、全体を取りまとめて、政府部内でそのための会合がございますから、そこでいろいろと原因の分析、反省もして、そして指導的立場でこういう問題の解決に当たっていくというのが国の立場でなかろうか、私はこう思っておりまして、いろいろまたお話も伺いながら、全力を尽くしてまいりたい、このように思っております。
  34. 川端達夫

    川端分科員 時間が来てしまいましたので終わりますが、こういう議論の中で、そういう差別をされる側にも何か悪いところがあるんだみたいな議論とか、この地対協の中にもそういう表現があったと思うのですけれども、行政が民間団体に圧力をかけられて主体性を欠くからいかぬのだみたいな、そのような議論があるということ自体が私は非常に残念なことだと思います。差別される側に何にも悪いことはないのです。しかも、こういう日本のこれだけ先進国と言われる中で、こんなお粗末な話をいつまでもやっていなければいけないということ自体が、日本はまだまだだめだと言われることだと思います。  そういう部分で民社党も、基本的な人権は憲法で保障されているといいながら、実は保障されていないという部分での、いわゆる人権基本法あるいは部落解放基本法というものを各界の英知を集めてつくっていくべきだと思います。  時間が来てしまいましたので終わりにいたしますが、また長官、その部分に関して御所見がありましたらひとつお聞かせいただいて、終わりにしたいと思います。
  35. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 本当に人権というのは、これは私どもがのっとるべき一番大事な問題でございますので、皆さんと御一緒にそれに取り組んでまいりたいと思っております。  ただ、今お話ございました、この基本法という法律をというお話になりますと、これは、私はまた私なりの考えを持っておるわけでございまして、今にわかに、わかりました、こう申し上げる立場にございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  36. 川端達夫

    川端分科員 どうもありがとうございました。  終わります。
  37. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。  次に、和田貞夫君。
  38. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 時間が限られておりますので、簡潔にひとつ大臣の方もお答えいただきたいと思います。  実は、山形県の地元の二月二十三日の河北新報にこういう記事が載っておるわけです。「国体開催を来年に控え、「部落」の呼称見直しに取り組んでいる飯豊町で二十二日、部落長役員会が開かれ、今後「部落」に代えて、「地区」を使用することを決めた。町では三月議会に呼称改正条例案を提案、部落の呼称を廃止することにしている。」ここまではいいわけです。その次の記事が全くけしからぬ話でございますが、「県内では集落を指す呼び方として、一般的に「部落」が使われているが、」、大阪の方でも部落というのを使っております、「県外の人には「被差別部落」と受け取られかねない。呼称見直しは、国体開催中などに、県外から来る人たちに誤解を与えないための措置。」この飯豊町だけでなくて、もう既に櫛引町においても、昨年の九月から部落区長を区長というように改正しているということもつけ加えて記事が載っておるわけであります。  三月一日のことでございましたが、山形県のある障害者運動にかかわっておられるお母さんから電話がございまして、今のような新聞の記事が一つの例でございますが、県においても、その他の町におきましても、今の記事と同じように、部落の呼称を来年の六月の国体の開催を目指して公的な、条例だとかあるいは例規集からこれを排除しようというような動きが、実質的には、部落長の会合だけではなくて町の議会、県の議会で取り上げてやっているというようなことを、いても立ってもおられぬということを訴えてきているわけです。  大臣、このことを差別というようにお思いになるか、いや差別ではないんだというようにお思いになるか、まずお答えいただきたい。
  39. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私も東北の人間なんでございますけれども、私の地域でも部落という集落というものを、これは農業の中心地、生活の中心地、こういうものは部落と呼んでおりまして、部落の運動会、何々、いろいろございます。  私は、この新聞記事をきのう拝見させてもらいましたけれども、この問題を差別だ、差別のためにこの言葉があるんだというふうな理解をされることは正しくないだろう、こう私は思っております。これはその地域地域でのいろいろな歴史的なことがございますから、これはそれなりにそういう立場に立って呼称というのはあるわけでございまして、今お話がございましたようなこと、もし部落という名前を使えば差別問題につながるというようなことでこの名前を使っていいかどうか、そういう判断をするのは私は適当ではないんじゃないか、こう思っております。
  40. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 ちょっと大臣、よく聞いてくれなければいかぬ。質問の内容をよく聞いて答えてください。部落という言葉が差別用語だとだれも言っていない。それは住民の自治組織として、部落と呼ぼうが区と呼ぼうが自治会と呼ぼうが町会と呼ぼうが集落と呼ぼうが、そんなものはそのときのその地域地域の生活文化の中で生まれてきた言葉なんですよ。たまたまこの山形では、総体的にその集落のことを部落というふうに言っておる。その部落という言葉を来年の六月の国体開催までに改称しようじゃないか、やめようじゃないか。その理由は、部落という言葉を使うことによって被差別部落と間違われる、県外の選手の諸君がたくさんやってきて非常に不快感を与えるから、この部落という言葉を改称しようじゃないか、この呼称を変えようじゃないか、こういう動きを町の議会で決めたり県の議会で議論をしたり、そういうことをすることが差別であるかどうか、大臣どういうふうに思っておられるかということを私は聞いておるのですよ。
  41. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 いや、私はそういうことで、名前をどう変えるか、どうつけるかはその団体の問題ですから、ただそういうことで部落という名前を使わないようにしようじゃないかということは、私は適当でないと思いますよ。(和田(貞)分科員「それは差別でしょうか」と呼ぶ)差別だと思います。そういうことでそれを変えるんであれば、それは差別の問題につながる、そういうことでは同和問題の解決にはつながらない、私はこう思っております。ただ、名前をどうするかは、これはその自治体、住民の方で決めるべきものでありますけれども、総体的に見れば私はそう思っております。
  42. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 大臣も認められたように、明らかに差別がひとり歩きしているのですよ、山形県では。今私はたまたま申し上げましたが、一番最初のこの振り出しは遊佐町という町です。さかのぼって去年の四月の十八日遊佐町の中央公民館に町が主催で、町長が主催しておるのですよ、町長が主催で部落長の全体会議をやっておる。百八の地区の区長が集まっておるのです。町長も出席しておる、助役も出席しておる、町の幹部も出席しておるのです。そういう中で複数の区長の方から、部落は場所によっては嫌われている、そういう言葉だ、できれば使わない方がよいではないか、こういうような提案をした。その区長の中には、いやそうじゃない、部落という名称は、呼称は地域に溶け込んでいる表現であるので、住民自体も差別用語とは意識していない、むしろ温かみのある言葉じゃないかというふうに反論している者もある。  ところが、ここに出席をしておった町長が、町の条例、規則、要綱、こういうような町で使っておる例規から部落という言葉を削除して、別の表現に言いかえる見直し作業に入るということを約束しているのです。そういうふうに町長が引きずっていっておる。そしてまた助役も、部落という表現で県外の人に悪いイメージを持たれても困る、こういう発言を助役がやっておる。こういうようなばかげたことがひとり歩きしているのですよ。  県は県でどうかというと、県におきましても県議会で、国体を前にいたしましてこの議論をしておるわけです。堂々とこういうことを県の議会においても町の議会においても、そしてもう既に、先ほど申し上げましたように三月に条例改正の用意をしているところもあるし、二月には既に決議をしてしまった町もあるわけです。  そういうことに対して、これは今大臣が差別だということを認識をされておる以上は、何かの措置を国としては講じなきゃいかぬでしょう。  自治省来ておりますか。この事実を見きわめて自治省はどういうように県なり自治体に対して指導しようとしておるのか、また、したのか、してないのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  43. 斉藤恒孝

    ○斉藤説明員 ただいま御指摘の事例につきましては、最近承知したところでございます。誤った部落差別意識に基づくものかどうか、かなり問題があるところでございますが、御指摘のように同和問題に対する正しくない認識に基づいて条例等の改正をしようということであれば、これは同和問題の解決に役立つものではないと考えておるところでございます。山形県当局を通じて事実関係を調査しているところでございまして、今後必要があれば啓発を担当しております総務庁等関係省とも対応策を協議してまいりたいというふうに考えております。
  44. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 まだしてないわけね、自治省は。総務庁長官、これは今始まったことじゃないのですよ。去年から始まっておる。自治省はまだ何にもしてない。  私はここでひとつ長官に認識を新たにしてもらわにゃいかぬのは、なぜこういうようなことがまかり通るかということなんです。山形県の一つの実態というのは、今申し上げました遊佐町あるいは温海町、飯豊町、それぞれの町の隣接には被差別部落を抱えた自治体、例えば酒田市あるいは鶴岡市、朝日村、米沢市、あるいは新潟県の村上市あるいは神林村、県を境にいたしまして隣接しておるのですよ。  そういうことであるにもかかわらず、この山形県では、今大臣が差別だという御認識をされたようなことがまかり通っておる県下であるにもかかわらず、同和対策事業をやられていない。今日まで地域指定がなされておらない。こういうところに私は問題があると思う。部落が県内に現存しておる。現存しておるにもかかわらず、地域指定を行って事業を今日までやってこなかったので、堂堂と部落に対する差別事件がまかり通っておるという原因がつくり出されておる。同和事業をやっていないから、同和教育をやっていないから、社会的な啓発活動をやっていないから、県民に対する啓蒙活動をやっていないから、平気でこういうことがまかり通るわけです。これについて総務庁として一体どんなに考えておるのか。
  45. 小山弘彦

    ○小山政府委員 この件につきましては、私、昨年の河北新報の四月二十二日の記事でございましたか、御承知申し上げておりますけれども、要するに委員おっしゃいますように、その部落という呼称が被差別部落という観点で言われている、こうすれば非常に同和問題の本質的な解決にはつながらない話であって、残念だ、こういうふうに思っております。  この辺につきまして総務庁としましては、やはりその啓発活動というのが部落問題解消の大きな柱であるということであろうと思います。社会的、歴史的過程、これをしっかり認識しまして、そうしてその問題について国民的コンセンサスあるいは理解を得ていくということで、総務庁といたしましては、やはりもっともっと将来へ向けても啓発活動の推進ということをやっていかなきゃいけないという認識でおりますし、そのときには関係する省庁それから地方公共団体とも協力し合ってやる。国としましては国としての姿勢で啓発活動をやりますし、地方公共団体におきましては地方公共団体の特徴ということもございましょうから、国の基本方針は理解してもらって、さらにその都道府県における特徴を出しながら啓発活動をやるということがまた大切なんじゃないかと思います。  と申しますのは、いわゆる国民との間の行政的な距離は、国よりは都道府県、都道府県よりは市町村が近いというような事情もございますから、お互いの立場を認識してやらなきゃいけない、こういうふうに思っております。
  46. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 ここであなたそんなことを言ってもしようがない。現実にこういうものがあるということを認識すれば、まだまだ同和行政というものは不十分であったということは言えるでしょう。
  47. 小山弘彦

    ○小山政府委員 昭和四十四年以降二十年を超える間、物的側面それから心理的側面、やってきたわけでございますけれども、特に心の面についての啓発ということにつきましては、非常に難しい問題でもございますし、それから期間のかかる問題でもあるということを承知しておりますけれども、一層やっていかなければならないという認識でおります。
  48. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 やってないんじゃ、これ。手をつけていないわけや。地区しかやってないじゃないですか。事業全然やってないです。こういうのが残っておるわけや。ここにおる被差別部落の当人にとってみたら一体どうなるんだ、これは。そんな心やと、お念仏を唱えていたって心は済まぬのや、これは。こういうことを堂々とやられておるという実態を把握すれば、素直にまだまだ同和行政については不十分だということを、認識を新たにする言葉をここでもらわぬと私は帰れぬがな。
  49. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 これは先ほど来申し上げておりますとおり、いわゆる被差別部落と間違われるのではないかというような発想で部落という呼称をやめようじゃないかというようなことになると、これは私は適当な発想ではないと思います。しかも東北の山形あたりで、いわゆる指定地区にはなっていませんけれども、これは同和問題というのは全国的な問題でございますから、国民の中に、あるいは全国の地方自治体の中に、そういうことで同和問題に対する考えの間違っておる人があるとすれば、これはもう私どものやり方が足りなかつた、こう申さざるを得ません。これからもひとつ全力を挙げて取り組みます。
  50. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 時間がありませんので、長官、私はこの問題で極めて大事なことは、国体、国民体育大会という国家的な行事を開催するに当たってこの呼称を変えようじゃないか、その呼称を変えることについて発意をした人たちが関東や関西に行ったというのです。行って、うちの部落はな、部落長会議ではなということを日常の生活になじんだ言葉で話をしていると、おかしな目で見られた。よくよく考えてみると、これは被差別部落というように思われていたので、部落という呼称があると被差別部落に間違われる。国体が開催されると他府県から選手がたくさん来る。そこで不快感を与えてはいかぬ、そういう発想で呼称を変えようとしておるわけでしょう。  しかも、今日まで同和事業をやっておらない県下ですから、部落問題に対するところの正しい認識というものは、住民どころか町長、議会の議員、本来ならばそのことを積極的にやらなければならない立場の人が、公的機関が住民に対して誤った後押しをしておるという格好じゃないですか。私はここに問題があるということを言っておるのですよ。したがって、この問題については自治省は自治省として謙虚な指導をしなければいかぬ。  と同時に総務庁長官は、総務庁としては、所管の国の機関としてこれは責任持って努力しますとかどうだとかいうことじゃなくて、部落解放行政、同和行政が手が届いておらなかったところにこういう原因があるということを深く認識をして、まだまだ同和行政については不十分だった、そういうことを率直に認めながら、きょうは山形県の例を挙げましたけれども、福島に行っても例がある。青森にも例がある。東北六県全部例があるのです。時間があったらしゃべりたいのだけれども、きょうは時間がないから山形のこれだけしかしゃべることができませんでしたが、単に東北のことだけじゃないのですよ。  あなた方は一生懸命やってきたというように言われておっても、現実に一つの例を挙げて、このことを通じてまだまだ同和行政というのは行き届いておらない、やらなければならない県、やらなければならない遅きに失する町が今日までなお地区指定を受けずにいる。同和行政の一片たりとも行っておらないという自治体がまだ全国津々浦々にあるという認識をこの際新たにしてもらいたい、こういうように思いますが、大臣ひとつそのことをお答え願いたいと思います。
  51. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私どもは、今の基本的な人権尊重の日本において、そういう差別問題があってはならないということで啓発活動その他をやっているわけでございますが、これは関係の地区だけではなく、地区はもちろん大事でございますけれども、広く日本国民全体に啓発をすべき問題であると思っているわけでございます。  そういう意味合いで、先ほど御指摘いただいたようなことが、被差別部落と間違われるのじゃないかというような発想で部落という言葉が取り上げられて論議されるとすれば、これは私は大変ゆゆしい問題だ、こう思っておるわけでございまして、そういうことが現実に行われているということは、おっしゃるとおり足りない点があったと思いますよ。ですから、国民全体に対します啓発活動を一層続けてまいりますと同時に、今お話しの具体のケースにつきましては、私も少し勉強させてもらいたいと思っております。
  52. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 どうぞ頼みます。ひとつ決意を持ってやってもらいたい。  自治省、大臣も今言われているようなそういう認識の上に立つならば、差別的な発想で公的な自治体の条例あるいは規則だとか要綱というのを変えたとするならば、これは変えたこと自身に問題があるのだから、行政指導によってそのことを改めさせていくという指導も怠ってはいかぬと私は思うのですよ。そういう指導を含めて自治体に指導しますか。
  53. 斉藤恒孝

    ○斉藤説明員 同和問題について正しい認識を持つようにそれぞれ行政機関に対して日ごろから要請しているところでございますが、改めまして、地方公務員全体あるいは関係の行政機関が正しい認識を持つように努力してまいりたいというふうに考えております。
  54. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 何かわからぬようなわかったような答弁でございました。  時間が来ましたのでもうやめということでございますのでやめますけれども、長官先ほど言われたように、心新たに同和行政について、被差別部落があろうがなかろうが、全自治体の課題として行政の大きな柱としてやっていくようにひとつ努力してもらわなければならぬけれども、現実にそのような措置を受けて今日まで事業をやっておらない自治体がまだたくさんあるから、山形の例もその一つの例ですが、こういうことは事業が進んでいる県や自治体の住民から見たら何をしておるのだということですよ。それだけやはりおくれたところもあるということを深く認識をしていただいて、これからひとつ同和行政について出発点だという気持ちで積極的に取り組んでいただきたい、こういうことを強く要請いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  55. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。  次に、小森龍邦君。
  56. 小森龍邦

    小森分科員 それでは、私の方からお尋ねをいたします。  まず総務長官にお尋ねをします。  先ほど来、いろいろと具体的な事実が挙げられて、大変厳しい差別というものをこの場で議員の方から提示をいたしておるわけでありますが、総務長官はかかる差別、簡単に言うと心理的差別、その心理的差別のよって来るところの原因を同和対策審議会の答申ではどのように分析をしておるか、どういう分析に対する認識を持っておられるか、まず冒頭にお聞かせをお願いします。
  57. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 同対審の御認識というものでございますが、これは日本社会の歴史的発展の過程において形成された身分階層構造に基づく差別だ、そして日本国民の一部の集団が経済的、社会的、文化的に低位の状態に置かれ、現代社会においても、なお著しく基本的な人権が侵害されておる、こういうふうに同対審では認識しておられるというふうに承知しております。
  58. 小森龍邦

    小森分科員 長官、私はきょうでちょうど八つ目の分科会を回っているのです。そこで現在の内閣の閣僚が一つとしてまともな答弁ができない。あなたは書かれたものを今読んでいるわけでしょう。それに類似した質問が出たらこれが答弁だ、こういうことでしょう。そんなことじゃないのですよ。心理的差別がなお存在しておるということはどういう認識かと言うたら、同対審答申は昨年ここで確認した、実態と心理の相互因果関係ということなのです。その点は、長官理解できますか。
  59. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私もそう思います。
  60. 小森龍邦

    小森分科員 はい、わかりました。大臣がそう思ってもらえるのなら、少し審議官なんかを教育しなければいけませんよ。  例えば、これは初歩的な作業でありますけれども、差別事件がどのくらい起きておるかということに対する質問が、先ほどの和田先生、その前の川端先生ですか、私はそのころ入ってきて聞いておりましたが、数字的にもよく把握をしていない。これは第一に、ふまじめということが一つあるでしょう。もし数字的にそれが連発しておれば、偶発的事件というよりは我が国社会の本質的な問題だ、こういうことになると、いかなる実態があるのかということを突き詰めなければいかぬでしょう。実態というのは人間の心的活動とは違う世界の、いわば人間の心を包み込むところの社会の全体的な環境、言うなれば制度、政治の方針、そういうものがあるから差別が起きると同対審答申は書いておるのでしょう。そういう意味で長官は理解されるのですか。
  61. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、実態と申しますか環境面の立ちおくれ、劣悪と申しますか、そういうものと心理的な差別意識と申しますか、そういうものは相互連関関係にある。したがいまして、環境整備が進めばこの差別的な感じもだんだん直っていくであろう。差別的な感じがだんだんなくなっていく、それを土台にしてまた環境の整備も進めていかなければならない、そういう意味で相関関係にあると私は思っておるわけでありまして、今の段階では私の見るところ、物的な面、環境整備の面は、これは整備が進んできておる。しかし、心的な面はやはりまだまだ根強いものがあるのではないか、私はこういうふうに認識をしておるわけでございます。
  62. 小森龍邦

    小森分科員 今お話しになったことは私も肯定します。しかし、残念ながら長官の考え方は、木を見て森を見ざるのたぐいなのです。人間の心というものは、例えば部落の住宅の条件だけがよくなったことによって変わるものではありません。例えば家の前の下水がよくなっただけでも変わるものじゃありません。つまり、人間社会を包み込むすべてのことがよくならなければならぬのであります。私がこの八つの分科会を非常に激しい時間的な流れの中で議論をして回っておるということは、各省庁すべてに関係がある行政だから回っておるのであります。  そこで、なるほど今言われたことはそのまま正しいのですけれども、それは部分的なことですね。だから、同和対策審議会の答申はそこのところをさらにわかりやすく、部落差別が温存されておる最も大きな理由は我が国の経済の二重構造、これがそのまま社会構造に反映し、それがさらに精神、文化に反映をしておる、こういう分析なのです。だから審議官が言うようなことは、これはポコペンです。全然話になっていない。したがって、我が国の同和行政を主導しなければならない、指導でなくて主導ですよ、主導しなければならない総務庁が、審議官なんかがあんなことを言いよるから、各省大臣は、我が国の経済の二重構造がどういうように精神、文化に影響しておるか答えられる大臣、一人もいないじゃない。とんちんかんになっておるじゃない。根本的に頭を切りかえてもらわなければいかぬと思う。  それで、ついうっかりすると、あれほど全国民に評価をされた同対審答申を八六年の地対協の部会報告ではどう書いていますか。我々はこの同対審を再検討するというわけではないが、同対審のちょっと変なところは言及せざるを得ない。何様だと思うておる。官僚どもが、この分析をしたものが、あれほど各界各層の人を集めて英知を絞って何年もかかってやったことをつるつると文章で同対審を批判するようなことを書くということは何たることかと私は思っておるのであります。  総務庁長官は今、環境が心に影響するということを言われました。それは一番小さく考えたら、実態と心理の関係はそこにあるでしょう。しかし、その環境は何によって形成されておるのですか。何というたって経済の現実の動きでしょう。その点についてはどういうお考えを持たれますか。
  63. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、環境が人間の心理に影響を与える、人間の心理全部を動かすものだとは思っておりません、人間の心理というのはいろいろな複雑な要素で動きますから。しかし、環境の整備が人間の心理をいい方向へ動かすことは、これは間違いないだろうと思っておる。その環境がなぜ発生したかといいますと、私はそれは長い歴史の経過の中で発生してきたものだ、こう認識しておるわけでございます。あるいは経済の二重構造もあったかもしれません。これは長い日本の歴史の中でこういう問題が発生してきた、だからこそ一刻も早くこれを改善していかなきゃならない、心理的な面の啓発と同時にやっていかなきゃならない、こういうふうに認識をいたしております。
  64. 小森龍邦

    小森分科員 長官、今議論をしておることは――それは議論を望まれるならやりますよ、私は。今議論しておることは、人間の持っておる未来的な性質、つまり環境に影響されないというか、環境はどうあろうが人間が持っている性質のところを議論しているんじゃないですよ。それはつまり、学問の世界でいえば人間学とか広義な意味での哲学とか宗教の議論とか、そういうところですべきことなんであります。問題は行政、政治の面で、環境というものによって人間がどういうふうに動かされるか、そこを何とか解決をしなきゃならぬ、こういうことで議論しているんですから、そこはひとつよく考えてお願いしたいと思いますよ。  それで、長い歴史の過程においてつくられたと言うけれども、それは確かに時間は長いですよ、時間は長いけれども我が国歴史の発展過程において形成された身分階層構造ですよ。自然にできたものじゃないですよ。さかのぼれば徳川幕府というものが意図的に、上見て暮らすな下見て暮らせ、上見りゃ切りなし下見りゃ切りなし、何事もあきらめが肝心と、これで士農工商、えた非人という身分階層構造をつくったわけでしょう。それを今日の我々が解決しようとしておるわけでしょう。だから、環境環境と自然的なことになすりつけてはいけませんよ。問題はどうやって行政的に解決していくか、こういうことなんです。  それで、御承知かと思いますが、私は部落解放同盟の中央本部の書記長です。この運動に十歳代のときから、何としてもこれは世代をかけて解決しなきゃならない、こう私は決意をしました。そこでどういうことが言えるかというと、長官、私がこういう立場だから物を言っておると考えたらだめですよ。現に党をまたがった議論になっているでしょう。民社党の川端先生がやられたでしょう。ほかのところでは公明党の先生もやっていますよ。そして私どもの党の和田貞夫先生が先ほどやられたわけですね。  つまりこの問題は、部落という被差別部落を差別し、その差別を温存し続けることによって日本の不合理な問題がその上に覆いかぶさって、ずうっとそんなことが続くから、ひとり部落差別の問題を解決しようと思っているんではなくて、全体的に我が国の社会を合理的な方向へ持っていこうと思っているんですよ。  申し上げましょうか。今のような悪質な、川端先生が靴なんかも出してやられたじゃないですか。あんなことと、きのうも何か裁判の第二審が始まったというが、女子高校生を二階へ引っ張り上げて何カ月も監禁してなぶり殺したというあの残虐な事件があるでしょう。これは人権尊重ということできちっと結びつくものですよ。部落問題をちゃらんぽらんにしておったら、やはり人を傷めてもいたぶっても平気だという気持ちがずうっと続くでしょう。そのことが総務庁の官僚諸君にはわかってないのですよ。政治家はもっと指導しなきゃいかぬのですよ、これは。  どうですか、そういうふうな部落の人権が侵害されるということと、世間一般の人権が侵害されるということと、そして長い間そういう問題が続いておるから、部落問題のそこのところをしっかりと直していけば、全体によい効果が生まれてくるということを、長官、あなたはわかりませんか。あなた、そこはどういうように考えられますか。
  65. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 日本の人権尊重という基本的な立国の建前、そういう基本方針の中で、いろいろ人権問題がなお各方面で出てきているということは、これは大変遺憾なことだと思います。ですから、同和問題に限らず、広く日本の人権問題がもっと高められていかなければならない、私は基本的にはこう思っております。それで、この同和問題でいろいろなことが起こらないようにすることが、おっしゃるとおり日本全体のほかの分野にもいい影響を与えて、そうして全体として日本国民が平等の中でお互いに人権の尊重し合える社会につながっていく、こう考えております。
  66. 小森龍邦

    小森分科員 それだったら、長官の所管をされる総務庁の行政、八六年の地対協部会報告なり意見具申なり、その後の非常に悪意に満ちた啓発推進指針なりをもう一度読んでごらんなさい。どんなことを書いているか。差別をなくするために努力しようとする者を敵対視し、そして、私なんかも自分の生涯をかけた問題だからついこんなに声が大きくなるでしょう。熱意のほとばしり出るところでしょう。差別事件を起こした者に腹が立つから大きな声で物を言うでしょう。そうしたら、それが怖いという原因になって差別がずうっと広がっていくんだという、全く物を逆転した分析をしておるでしょう。ひどいのは、そういうことになったらすぐ警察へ行けと、こう言うておるでしょう。長官、それが今の我が国政府総務庁が行っている指導方針ですよ。だから、人権擁護委員らも萎縮して、民間人といろいろな接触をしてやろうとして、陰に隠れてやっておる人がおりますよ。総務庁にしても法務省にしてもどういう方針かといったら、人権擁護委員、さわるなさわるなと、しばしばさわるなという通達を出していますよ。これは根本的に考えを変えてもらわなければいかぬのです。  そこで私は、就任間もない大臣が一体どういう考え方を持っておられるか、先般来国会での議論を多少注目をして聞いておったのです。どういうところを注目しておるかというと、先ほど部落という地名を使うということについて、最初勘違いをされた答弁をされた、先ほどの和田先生の質問に対して。私はそういう論理の形式というか構造というものはそれだけに限らないと思う。例えば、千地区のいまだ法律の適用を受けていないものが二十何年間もそのままずっと続いておる、これに対してどうするかと言ったら、総務庁長官は、多分予算委員会であったと思うけれども、いや、それをやったら今から新しい差別が起きる、こう言ったのですよ。新しい差別じゃない。古くから続いている差別を解決するためにどうするかという質問なんですよ。古いものを解決するための施策をするのが何が新しい差別が起きるのですか。それをちょっと聞いて、次へ移りましょう。
  67. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 予算委員会で、たしか武藤委員だったと思いますが、それから野坂委員の御質問にも関連をすると思いますけれども、私が申し上げておりますのは、これは誤解をされると困るのでございますけれども、その新しい差別が発生する地域をいろいろ、言葉は適当でございませんけれども掘り起こすと申しますか、そういうことになると新しい差別が発生するんだと、こういうことを私の考えとして申し上げたわけではございません。もしそういうふうに受け取られたとすれば、これはもう言葉足らずでございますから訂正を申し上げなければなりませんが、私が申し上げたいと思っておりましたことは、同和対策事業というのを行いますと新しい差別が発生するんじゃないかという声も一部にある。私もそれは聞いておるのですよ、聞いたことはある。そういうことで、例えば事業の申請というものが出にくい、そういう事情があるんじゃないかと、そういう客観的な認識を申し上げておるのでございまして、私はそういう差別が出るんじゃないか、新しい差別が発生する、そういう私の気持ちを申し上げておるわけじゃございませんので、これは言葉が足りませんでしたことをおわびしますけれども、そういうことでございます。
  68. 小森龍邦

    小森分科員 大臣、そこが非常に大事な問題なんですね。要するに、そういうふうなことを言う者がいるのでもうやらない、しかし物は残っている。考えてみなさい、日本列島におおよそ六千カ所の部落があるということは、これは大正年間の調査から引き続きの調査で大体の見当はついているのですよ。そのときそのときの社会の雰囲気によって、いや私のところは申請すまいというようなものも出てくる場合があるから、多少伸縮があるのですよ。しかし、それは世間、隣近所は皆部落ということは知っておるのですよ。そこで、その部落の人が、うちも同和対策事業やってくれと言うたら、ほとりの者が、わしら何とも思うとらぬのに本人だけ言うて出るんじゃけ、そんなものかなと、こう言うて、どう言いますかな、なぶるのですよ。あざけるのですよ。そんなことがあるから、なかなかよう申請しない、そういう状況がずっとありよるのを、今長官がそういうことを危惧する者もおるということを、あたかも正当であるかのごとく引き合いに出して言うて、そして全体をばしっとストップをかけたらどうなりますか。部落問題というのは、これは人間の心に何百年来深く食い込んだ心のひだにまつわりついておる問題ですよ。  そうすると、六千部落のうち四千五百とか四千八百とかが仮に全部きれいに環境だけ整ったとしますか。しかし、まだ教育の問題、仕事の問題、いろいろ残っていますよ。しかしながら、丸ごと千カ所がぱらんぱらんと残っておったらどうなりますか。いや、あそこの部落はようなっておるけれども、あの部落とあそこは親戚関係で、昔は一つ部落じゃ、だからあそこが今きれいになっておっても余り威張ることはないんだ、我らと同類だ、差別はこういうことになるのですよ。私どもの大先輩の元参議院副議長松本治一郎、この人が若いときに差別されて腹が立ってかなわぬから、ようし、ひとつ博多じゅうで一番よい着物を着てやろうか、よい帽子かぶってやろうかと思うてやったら、何だあれは、あんないい格好しておるけれどもあれは部落民だ、こういう難しい心の問題なんですよ。  それで、心の問題は難しいということを総務庁長官も言われ、小山審議官も言われた。難しいのなら、なおさらお互いがすぐ手の届く、環境条件の整備がなお不徹底であるということは明確なのでありますから、どうやったらこれができるかということを考えるのが、本当に民主国家の政府のとるべき態度なのです。何ですか、今はやめますやめます。そのやめます理由は、この法律が最後の法律だと。いつ最後の法律というて決めたのですか。あなた方が受けとめられている雰囲気はそうかもしれませんよ。どこの条文に最後じゃと書いておるのですか。審議官、へ理屈を言うことはないですよ、時間がないから。条文にそういうことが書いておるか書いておらぬか、言うてみなさい。
  69. 小山弘彦

    ○小山政府委員 条文にはないと思います。
  70. 小森龍邦

    小森分科員 したがって、私はああいう答弁を受けるから、さきに言いましたよ、雰囲気があるということは。政府の提案の気持ちもそうであったということはわかりますよ。しかしながら、社会党も全会一致で賛成しておるじゃないかというのは、これは少し言い過ぎですよ。確かに全会一致ですよ。しかしながら、あのときにその法案に反対のことを言うたら全部なくなるじゃないの。だれだって次善の策をとりますよ。そういうことを官僚の立場にあっては、余り政治の領域に踏み込まないように、国民の幸せをひたすら守るために政治の動向というものをよく見きわめながらいろいろなことを言うべきなのです。  私は、非常に残念だったのは、審議官、あなたも責任があると思うのですよ。私は以前に内閣委員会で塩崎総務庁長官に質問した。地対協が長くずるずるして何にもやろうとしていないから、地対協はいつ再開するかと言うたら、本国会会期末にも再開したい、それが昨年の六月のことです。十二月まで延びた。そして、私はそのときに、委員を選任するに当たっては公平にやっていただけますか、公平にやりますと。私がいろいろ誘導尋問したのじゃありませんよ。公平にやりますかと言うたら、公平にやりますと。なぜならば、あらゆる層の意見を聞かなければならぬから委員の選任は公平にやります。それから実際はどうですか。差別を受けている当事者を全部外して、そして我々の方の運動がだんだん高まって、世論が高まるものだから、そそくさと部落の差別を受けた経験者を排除するために次から次へ手を打って、とうとうこれは自民党の先生方の協力もいただいて、そしてついに一人だけ差別の経験を持った人を委員として選任することになったわけでしょう。余りこそくなことをやってはだめですよ。長官、それは聞いておいてくださいよ。  それで、現状段階を申しますと、今、私どもとは違う団体の全国自由同和会、これは簡単に言うと自民党と支持、協力関係にある団体でありますが、人権基本法プラス事業法が必要だ、こういう主張をなさっておるのであります。私どもは部落解放基本法という主張をしているのです。いずれにしても、これはすり合わせをしたいということを私は言っている、どこがどう違うかと。余り違わないのです。九割五分ぐらいまで一緒です。すり合わせはできると思います。そして、今日の現実存在している我が国の政党の中には同和対策基本法、君らは部落解放基本法と言うけれども、行政用語で同和対策基本法がよい、こう言われる政党もございます。私は、名前だけの問題だからそれは全く一致していると思っている。  それから、もう一つ言います。地域改善対策協議会の会長をされておる磯村先生、この間私とシンポジウムを岐阜でやりました。これは全国自由同和会の主催であります。全国で四、五カ所やられたその中の一つであります。何を言われたかというたら、人権対策審議会設置法をつくるべきだ、そしてそれが日本の国のもろもろの人権対策を審議しよる間はとりあえず今の地対財特法を存続すべきだ、こういう意見であります。これは、いずれもお互いが頭を痛めながらどういうふうにこの局面を解決するかという意見なのでありますが、官僚主導型で千部落どっちになってもええんだというようなことが横行していますから、政治の水準において真剣に大臣、考えていただきたい、かように思います。  そして、この間は衆議院の第一議員会館で同和問題の現状を考える連絡会議というものを結成しました。解放同盟、全国自由同和会、愛媛同対、全国隣保館の連絡協議会、そして全国同和教育研究協議会、物すごいですよ、全国同和教育研究協議会なんかは大会やったら二万数千人集まるのですから。世論の帰趨はもう既にわかっているのですよ。しかるに、なおそういうことを言うておる。庁内で今までの方向がこうであったということは自由だ。庁内でいろいろそういうことを考えておられるということは自由だ。政治的に決着がついたり、運動的に帰趨が決まるまでは自由だ。だから私は、山田官房長ですか、山田官房長にも去年の夏、あなたは簡単に言うたら日本の政局の動きの事務局だろう、事務局が方針を決めて政治家に押しつけるな、こう言うていったことがあるのであります。そういう水準で大臣に物を考えていただきたい。  そして先ほど来の、事件がずっとあるということは、心が本当に前向きになっていないから、そういう事件があるとすればというような答え方をついされるのですよ。この間も法務省の人権擁護局長が、そういうことがあるとすればというようなことを言われて、ちょっとみんなから失笑を買われておりましたけれども、どうですか、弁護士が請求用紙を横流しする、行政書士はまたそれを横流しする、税理士がやる。パケット通信いうて、無線を使うてやる。そして、さっきのような小学生をいじめる。先ほどの地名のような問題が出てくる。さまざまでしょう。あるとすればというような他人行儀なことを言わないでくださいよ。日本国政府は、正当に選挙された国会における代表者を通じて政治を進め、その恵沢はすべて国民が受けるべきものなんです。何々があるとすればというようななまぬるいことでは同和問題の解決になりません。  ちなみに、一つだけ例を出しますが、総務庁が啓発センターというところへ委託をして作成した「翔べ、熱気球」という小学校、中学校向きの劇画みたいなものがあります。それには一番最後のところに、もう差別はないと書いてありますよ。差別はないと言うて物をけ散らかして問題を未解決にしようという意図が、官僚の世界においてはありありと見えるのであります。大臣、あなたはその「翔べ、熱気球」を見られましたか。見てなかったらよく見てください。官僚の審議官の方からそのことのコメントをもらいましょうか。
  71. 小山弘彦

    ○小山政府委員 この「翔べ、熱気球」というのは啓発教材でございます。対象は小学生、こういうことで製作したものでございます。同和問題につきまして、小学生にもわかりやすく理解していただくことを念頭に置いてやったわけでございます。委員が指摘されるようなことを意図したということではないわけでございまして、そのような内容を含んではいないと私どもは意識しております。今後ともその啓発というのは、小学生においても中学生においても、なおやっていくつもりでおります。
  72. 小森龍邦

    小森分科員 ないと言うのは簡単だけれども、もうこんな差別はなくなったと書いておるのだから、ないということでしょう。大臣、目を通してください。そして、大臣にそのことを申し上げるのは、文部省の小学校や中学校の社会科教科書には差別はまだ厳しいという意味のことが書いてあるのに、総務庁がそんなものを配って小学生の頭の中まで混乱さすことはないでしょう。ああ、差別はないのだ、何ぼやってもこれは差別じゃないのだということで、さっきのようなズックの話やノートの話が出てくるでしょう。大臣、ひとつ真剣にお考えをいただきたいと思います。  終わります。
  73. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて小森龍邦君の質疑は終了いたしました。  次に、冬柴鐵三君。
  74. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 本日は、軍人恩給未受給者の問題に絞ってお尋ねをしたいと思います。  この問題は、全国軍人恩給未受給者連盟、以下軍未連と略称したいと思いますが、この多くの会員や長年月全くのボランティア活動によってその基礎を築き、今日までこれを支えてきた役員各位の血のにじむ努力によりまして、平和祈念事業特別基金等に関する法律の制定を見ました。この基金運営委員会の報告に基づきまして、内閣総理大臣の認可を得て、平成元年度より、個別的な措置の一環といたしまして、書状と銀杯の給付の慰藉事業、平成二年度からは、加えて額縁、時計等の給付の新規事業が行われることとなったことにつきまして、所管の内閣官房長官及び担当部局の方方のこれまでの御努力に対しまして深い敬意を表したいと思っております。  この問題は、内閣委員会あるいは予算委員会においてもつとに多くの与野党議員によって詳細に論じられてきた課題でありますが、私もこれに重大な関心を持つ議員の一人として、予算委員会分科会の機会を得まして本日お尋ねをさせていただくこととしたものでございます。  さて、政府は、軍未連関係者を含む軍人恩給欠格者に関する基礎的データを得て基金事業の推進に資するため、昭和六十三年以来基礎調査を進めてこられたと承知いたしております。そこでお尋ねしたいのですが、恩給欠格者であって、軍に実役一年以上服務した者は何名ぐらいいらっしゃるのか、そのような結果がわかればお知らせいただきたいと思います。
  75. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  平和祈念事業特別基金が昭和六十三年度から平成元年度にかけて行いました恩給欠格者に係る基礎調査の結果によりますと、平成元年十月現在のいわゆる恩給欠格者の総数は約二百五十三万人でございまして、このうち内外地を問わず実在職年が一年以上の方は約百九十万人と推計いたしております。
  76. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 そのうち、現に行われている慰藉事業は、外地勤務者で加算年を含め三年以上の者を対象に行われていると承知いたしておりますが、この対象者は何名ぐらいになっているわけですか。
  77. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  恩給欠格者基礎調査の結果によりますと、恩給欠格者二百五十三万人のうち、外地等勤務の経験を有し、かつ、加算年を含めて在職年三年以上の方は約百二十五万人であると推計いたしておりまして、これから基金法に基づく書状、銀杯及び慰労金の贈呈対象者たるシベリア抑留経験者の推定数、約十七万人でございますが、これを差し引いた百八万人が現行の書状・銀杯贈呈事業の対象者というふうに推定いたしております。
  78. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 この百八万人の対象者のうち、慰藉事業につきまして、あるいは新規事業につきまして、書状、銀杯、時計等の下付について現に申請手続をとっておられる方、その内訳についてもお示しいただきたいと思います。
  79. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  平成元年九月一日に恩給欠格者に対する書状・銀杯贈呈事業を開始して以来、平成三年一月末までの間に基金に寄せられました請求書の数は約二十三万七千件でございます。  新規慰藉事業につきましては、書状及び銀杯の贈呈を受けた方に、その方が希望する慰労の品一点を年齢の順に、これは平成二年度ではおおむね八十歳以上になろうと存じますが、これらの方に贈呈しようとするものでございまして、該当者にその旨を連絡して給付の手続をとっているところでありますけれども平成三年一月末現在では一万七千件の御回答をいただいている状況でございます。
  80. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 平成元年九月一日から平成三年一月末までで二十三万七千件の申請があるということでございますが、今後、対象者は百八万人という分母に対して最終的にはどれくらいの方々が下付申請をしてこられると予想しておられるのか。これは予測値ですから正確でなくてもいいと思いますけれども、大体の予測値をお知らせいただきたいと思います。
  81. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生お示しのとおり、本事業を開始して以来一年半でございまして、現在までのところ全体の約二割の方々から請求をいただいているところでございます。何しろ事業を開始して以来まだ日が浅うございまして、今後の申請の推移、これを十分に見定める必要があろうかと存じておりまして、先生指摘のとおり、現時点でこれがこれくらいになろうということはなかなか申しがたいところでございまして、どうぞ御理解を賜りたいと存じます。
  82. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ちょっと通告していないので申しわけないのですが、この書状にはどんな文言が書かれているのですか。今お示しいただけますか。
  83. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  書状には「何々殿」というはしりがありまして、「あなたの先の大戦における旧軍人軍属としての御労苦に対し衷心より慰労します 平成 年 月 日 内閣総理大臣海部俊樹 印」かようになっております。
  84. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 さて、冒頭述べました軍未連という団体では、この基金事業の対象者を、冒頭お尋ねをいたしました、軍に一年以上服務した者に内地、外地は問わずに拡大していただきたいということを関係先に強く訴える運動を展開しているわけでございます。もちろんもっと正確に言いますと、軍に一年以上服務した者及びその者が死亡している場合にあっては生存の配偶者ということでございます。そういたしますと、先ほどの百九十万人は生存者でございましょうから、配偶者まで入れますと若干ふえると思いますが、いずれにいたしましても、そういう人たちにまで広げていただきたい、こういう切々たる訴えをしているということはもう皆様方御存じのとおりだと思うわけですが、この点につきまして、もし、これを二百万人と仮定いたしまして、最終的に申請する人を二五%と見ましても五十万人ということになります。そうしますと何とかできるのじゃないかなという感じもするものですからお尋ねをするわけですが、こういう要望をお受けになって実施を検討されたことがあるかどうかが第一点。もし、その実施が、まだ検討を全然していないというのならそれはそれでいいのですが、検討はしたけれどもこれは何かの障害があって難しいなということがあれば、どういうことが挙げられるのか、その二点についてお尋ねをしたいと思います。
  85. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお示しの、その一年以上の方に対しましても同様の御措置をという御要望のある向きは私ども重々承知はいたしております。しかしながら、本件は、恩給欠格者に対する書状・銀杯贈呈事業の資格要件と申しますのは、基金の運営事項の重要事項を審議するという運営委員会を基金に設けておりますが、この運営委員会におきまして種々検討されまして、関係者の方々の御要望や他の戦争犠牲者との均衡も考慮されて慎重に検討された結果、さよう措置を講ずるべきであろう、こういう御建議をいただいて、それを踏まえて措置しているところでございます。現在その請求のあった方々に対しまして私どもといたしましては一日でも早くこれが交付できますようにということに誠心努めておるところでございまして、御指摘のような現時点で事業対象者の見直しを行うということは極めて困難であって、これは考えられない、考えていないところであります。
  86. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 今の事業、慰藉事業あるいは新規事業を一生懸命やっているときであるから、それ以上に拡大するとかいうことは現時点では考えられない、そういうふうに受け取ってよろしいですか。
  87. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  舌足らずで恐縮でございましたが、本件措置に当たりましては、基金の運営委員会ではいろいろな戦後処理問題のことを御考慮されまして、他の戦争犠牲者とのバランス、こういうことも慎重に検討しなければいけない、同時に、これは広く国民の納得を得る、こういうことがまず前提であろうということも踏まえてさようの結論をいただいた点でございまして、先ほども申し上げましたけれども、何しろ私どもの方は、先生にただいま申し上げましたように百八万人に書状と銀杯、さらに新規慰藉事業を行うということで、こういう請求があった方に対して一日も早く、何しろ御高齢の方でございますので、これに精いっぱいということで、目前はこの仕事に全精力を挙げている、こういう状況でございます。基金の運営委員会からは、先ほど申し上げましたようにいろいろの戦争犠牲者とのバランスだとか、そういうことも重重考慮された結果、踏まえられたものであって、私どもとしては、その答申を踏まえて一生懸命これをやっている、これに手いっぱいで今やっている、こういう意味でございます。
  88. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 話は変わりますが、私のもとには、軍未連を初めさまざまな戦争体験者の方々から切々たる悩みの声が届いているわけであります。  例えば、京都にお住まいの方ですが、戦傷病者の石橋さんという方なんですが、当時アリューシャン列島で不幸にして右大腿部に被弾をされまして、復員後、復員患者療養を申請したものの却下されました。この申請には直属の上官の証明書や国立病院医師の診断書を添えながらも却下されているわけで、その後各種不服申し立てを重ねていますがいまだに成就しておりません。私も、この分厚い記録をお送りいただきましたので目を通したわけであります。  私は、何もこの場所でこの事案についてその判断の当否を問題にしようとしているわけではございません。ただ、この石橋さんのような方が全国には大変な数に上っており、現在では非常に高齢者となりながら不自由な身で細々と暮らしているという実態を官房長官にも知ってほしい、そういうふうな気持ちで今例示を申し上げたわけであります。一体この人たちにとって戦後処理問題というのはどういうことを言うのだろうか。  また、原点に返って、この軍未連というのは非常に高齢者の方ばかりですけれども、過去十年以上全くボランティアでこの運動を続けてこられた、その原動力というのは一体どこにあったんだろうというふうに私は思うわけであります。政府の赤紙一枚で徴用をされ、そして、服務の場所とかその機関、そこは危険かどうかということは、いずれも全部軍の命令に従った兵であります。そして今その人たちが老境を迎えながら、国家から、先ほど読み上げていただきましたような慰藉の言葉、御苦労でありました、そのねぎらいの一言もかけてもらえないという無念さがこの人たちをこのように駆り立てて長い運動を続けてこられたように思えてならないわけであります。  官房長官、非常に答えにくい問題ですけれども、この戦後の未処理の問題というのは、シーソーゲームみたいに、ここを解決したらこっちが出るということがあるわけですけれども、特に軍人恩給の未受給者という人たちが訴え続けている原動力になったのは私が言ったようなものでいいのかどうか、御認識をお示しいただけたらと思います。
  89. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 私の友人にも選挙区にも軍人で恩欠者の方々がよくおります。話はよく承ります。あなたと同じようなお話を私も長い間聞いてきたということは間違いはありません。十二年以上でないと恩給はもらえない、三年以上でないと慰藉事業の対象にもしてくれない、もうちょっと下げてくれればいいんじゃないかという切々たるお話はよく私も聞いております。  私自身は軍隊では外地に行きましたけれども、三年足らずで楽な方でした。命も、五体満足で帰ってきましたから、私個人にすれば、まあまあ私よりはひどい人が随分おったんだから、ありがたいことだと思っております。しかし、ほんのちょっとのすれすれのところで上下するんですから、どこかで線を引かなければならぬことはあるでしょう。だけれども、そういう皆さんのお気持ちに立てば、苦労してきたのに賞状一枚ももらえないということは、私どもとすればまことにお気の毒だな、何とかしてあげたいなという気持ちはございますけれども、どこかで一応の線を引かなきゃならぬということになりますると三年という線を引かざるを得なかったんだろう、こう思うて、申しわけないと思うけれどもどうぞひとつ御辛抱を願います、あなたのお気持ちはよくわかっておりますという気持ちでいっぱいであります。  しかし、これは私の考えですけれども、いわゆる軍人として赤紙一枚で戦地に行ったという人の苦労はもちろんでありますが、広い意味で戦争の被害者、犠牲者というものは、内地、外地、老若男女、年齢が若かろうと年寄りであろうと、容赦なく同じ運命を忍ばれた、こういうふうにも私は思います。我々みたいに五体満足で帰ってくればありがたいという気持ちにもなりますけれども、そうかといって、私も南方へ行っておりまして、帰ってきて、横須賀へ上陸したときに、富士山を見て、おれは生きて帰ってこれたぞ、そこにおる看護婦さんを見て、日本の女性は美人だなと感激をしたことを今でも覚えております。それから、私の母の里が東京にありまして、上野の近辺ですけれども、そこへ行きましたが、戦前とは打って変わったような焼け野原になっておって、夕方でしたけれども、人っ子一人歩いていないような状態でありました。戦争に行った者だけが苦労したわけじゃないぞ、ここにおった人の方が考えようによってはもっとひどい目に遭ったんだなという気持ちで、私は行ってみたら、ぽつっとその一画が、母の里だけ幸い焼け残っておりまして、まことに私は幸せ者だなと思ったことを思い出します。  冬柴さんの羅津から撫順の御苦労された話もよく聞いております。そういう意味におきまして、私は戦争そのものが大変な人類最大の罪悪だという気持ちはいたしますが、そこを細かく見れば、中には運がよくてという私みたいなのもおりますし、非常に運が悪くて、内地にいても大変な戦災に遭ったりする人もおりますし、兵隊でなくたって引き揚げのときに軍人以上の苦労をした人もおります。  ということになりますと、どこかでひとつ我慢をしていただきたいな、お気持ちは重々わかります、申しわけのないことだなと思いますけれども、その辺でどうかひとつ我慢もしていただきたいなという気持ちがしておるので、率直に申し上げた次第であります。
  90. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ちょっと官房長官からお触れになりましたけれども、用意していますので、私ごとで恐縮ですが、私にも戦争体験があるわけです。  私は、このたびの中東湾岸戦争を報ずるテレビに映し出される曳光弾それから高射機関砲による弾幕とか空爆による閃光とか大火災等、バグダッド空襲の画面を涙なくして見ることができなかった一人でございます。それは、四十五年前の自分の姿を空爆のもとに重ね合わせて考えることから逃れられないからでありまして、あのバグダッドの空襲のもとで身を震わせて逃げ惑っている子供たちの姿がある、このように思うわけであります。  私は、終戦の昭和二十年、九歳の少年でありましたが、朝鮮半島北端の町、羅津小学校の三年生でありました。町の北側の小山に登りますと、晴れた日にはソ連の軍港ウラジオストクが眼下に一望することができる美しい町でありました。  このような町も二十年の初夏のころからアメリカのB29が飛来して爆撃を始めるようになりましたけれども、それがやがて波状的に猛烈な爆撃になりまして、我々、父、母と姉は着のみ着のままで多くの日本人とともに山中に逃れまして、自来、昼は息を殺して潜み、夜陰に乗じて満州国境へ向かって、二十六里と言われましたけれども、その道を数日をかけて逃れたわけでございます。  朝満国境の町図們まで逃げ延びたときに、ソ連が日ソ不可侵条約を一方的に破棄して参戦をしまして、この図們の町に大規模な空襲をかけてきたわけであります。その際、私は家族とはぐれてしまって、満州大陸でただ一人となってしまったわけであります。この日多くの人が亡くなりましたし、私は父母や姉の名を大声で呼び、泣き叫びながら捜し回ったのがつい昨日のように思われるわけであります。  私は捜すのをあきらめまして、日本人の群れにまじって満州の奥地へ流れていったわけでありますが、今最終的に着いた撫順市までの距離を地図の上ではかってみますと、直線距離にして約六百キロメートル、東京―大阪間の距離を超える距離をひとりで移動したということになります。  撫順市では収容所とされた小学校の校舎に収容されたわけであります。しかし、生命を賭して父母は私を捜してくれて、そして奇跡的にその小学校で再会することができました。母は、一人息子の私を見失ったという自責の念から、はぐれた日から食事ものどを通らず、睡眠もとれず、再会のときには衰弱の極に達していまして、再会間もない日、四十五歳の若さで去っていったわけであります。  戦争ほど残酷なものはない、戦争ほど悲惨なものはない、これが少年であった私の生命の奥底に刻み込まれた思想でありました。しかし、官房長官もおっしゃったように、私は母を失ったとはいえ、生きて再会できた。そして引き揚げて母国で成長することができたこの私は、中国で四十年余り残留して父母の顔も知らず、母国の言葉も失ってしまって望郷の念にいまだ涙を流し続けているであろう日本人残留孤児を思えば、私の苦しく悲しかった体験など、比すべくもないと言えると思います。  すなわち、当時を生きた日本人は大なり小なりこのような悲しい体験を持っているわけであります。そして私たち引揚者に対しましては引揚者給付金が支給されました。もっとも私は申請もせず時効となりましたが、私の父は引き揚げ当時四十七歳、配偶者をなくし無一文となって引き揚げ、老後はまさに塗炭の苦しみを味わったと思います。しかし、満州へ渡ったのはみずからの意思に基づいているものでありますから、私ども一家はこれに対して国に何らかの要求をするとかしたことはもちろんありませんし、国が特段の配慮をされなかったとしても納得をする、このように思っています。  しかし、赤紙一枚で強制徴用されて生死の苦役を科せられた兵に対して、恩給要件を充足していないということで国が補償はもとより慰労の言葉すらあらわさないということに対しては、義憤に駆られるわけであります。  そのほかいろいろな不公平はあります。みずからの意思と何ら無関係に決せられた出征地の位置によって甲乙丙丁と戦地加算年が異なるために、片や恩給を昭和二十九年以来ですか、受けられる。片や全然受けられないという不公平があります。また偶然に傷痍軍人となってそのような認定を受けた人は、軍歴には関係なしに恩給を受給をすることができる。それから、恩給受給権のなかった従軍看護婦に対して、終身慰労給付金という名目で恩給類似の補償をずっと重ねていられる。それから、シベリア抑留者には軍歴には関係なしに慰労の品とか十万円の慰労金が既に支払われている、これに細々と政府の弁解があることは全部知っています。細かな理屈は抜きにしても、国家の道義に照らして無視できないのじゃないか、このように思うわけであります。せめて慰藉の気持ち、それぐらいはすべきではないか。  非常に長々と申し上げたわけでありますが、再度官房長官のお言葉をいただいて、私は終わりにしたいと思います。
  91. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 冬柴さんのお気持ちは私にはよくわかるような気持ちがいたしますが、先ほども申し上げましたように、やはり戦争には個人の意思をはるかに超えた大きな動きがありまして、その被害たるや、これはもう個人の意思をはるかに超える、老若も男女もあったものではない、すべてに犠牲を与えるものでございます。  そういう意味で、それは確かに比較の問題で不公平はあろうと思いますけれども、やはり三年以上なら三年以上とかというふうに線を引かないと、制度としてはなかなか適用ができませんし、先ほども申し上げましたように、官民ということになりますと、私は苦労は本当は一緒だと思います。そういう意味で、そういうことになりますと、とてもとてもこの範囲が広がりまして、それを一つそこから拾うとかえってまた不公平が広がってくるというようなこともございまして、気持ちの上から言えばまことに御苦労さまでありましたと、至らぬ点はありまするが、ひとつそこは御勘弁をお願いをいたします、こういうふうに私どもは心からお願いをしておるというところでございます。
  92. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 終わります。
  93. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて冬柴鐵三君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  94. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 休憩前に引き続き会議を開きま す。  総務庁について質疑を続行いたします。竹村幸雄君。
  95. 竹村幸雄

    竹村分科員 総務庁長官にお伺いいたします。  部落問題は深刻な差別問題であり人権問題であり、民主主義の根幹にかかわる重大な問題であります。この問題を解決するのには、よくこの問題について理解をしておる人、知っておる人、正しく理解をしておる人々の意見をよく聞き、地方自治体や運動団体と協力して差別をなくすように努力していくべきだと思いますけれども、長官の御意見をお伺いしたいと思います。また、本問題解決のために情熱を持ってひとつ解決していこうと努力されるかどうか、その決意のほどもお聞かせをいただきたいと思います。
  96. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 お話がございますとおり、我が日本はみんな平等で、そして人権を尊重し合いながら国づくりを進めていこうということでございますし、また先進国として今内外から評価を高く受けている点もあるわけでございますが、そうした中で、こうした日本社会の歴史的発展の中からとはいえ、差別の問題が今日なおございますことは、これはもう大変残念なことである、こういうふうに思います。私どもの力でひとつ解決に向かって全力を尽くしていかなければならない、このように考えておる次第でございまして、国も地方公共団体も、また地域の皆さんも、そして幅広く全国民の御理解、御協力のもとに進めなければならないと私は思いますが、その中で国はやはり主導的な立場で取り組んでいくべきだ、このように考えております。
  97. 竹村幸雄

    竹村分科員 今御答弁いただいたわけでありますけれども、本問題を解決するのには、まず何よりも現場を知ることが大事だというふうに思います。長官もまだ就任されて日も浅く、ずっと国会が開かれておりましたので、実地視察はなかなか今までは難しかったんだろうと思いますけれども、できるだけ早い機会に現場を十分視察し、そして自分の足で歩いて目で見て、そして住民の皆さん方といろいろ意見を交換しながら、意見を十分聞いて肌で感じて進めていかなければならぬというふうに思うわけであります。  足を踏んづけておる者は踏まれておる者の痛みがわからぬわけであります。差別しておる側にしたら、差別されておる人々の苦しみや悩みというものがわからぬわけであります。そういうことを解決するためにはぜひ現場を視察し、現場の皆さん方の意見を聞いていただきたいと思うわけであります。  そこでお伺いをいたしたいと思います。  同和問題の早急な解決は国の責務であり、国民的課題だというふうに思いますけれども、その点についてどう思われますか。端的に、あとの時間の関係もありますので、そうだとか違うとか、そういう単位でひとつお答えをいただきたいと思います。
  98. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 全く国が主体的に、主導的な立場で取り組むべき国民的課題だ、このように思っております。
  99. 竹村幸雄

    竹村分科員 同和行政は、基本的に国の責任において行う行政であって、過渡的な特殊行政でもないし、ましてや行政外行政でもない、部落差別がそこに存在する限り、国が責任を持って積極的に進めるべき行政であるというふうに思いますけれども、長官の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  100. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 全く国が責任を持って主導的立場で進めるべき問題だと思います。ただ、そのためにはやはり地方自治体とかあるいは地域の皆さんとか、広く国民の皆さんの御理解と御協力がなければできませんので、そういうことで国が皆さんの御協力を得て責任を持って進めるべきものである、このように考えます。
  101. 竹村幸雄

    竹村分科員 部落差別には実態的差別と心理的差別があるわけでございまして、これが相互に関連をしながら進んでいるというふうな状態でございまして、すなわち心理的差別が実態的差別の原因をつくっておる、さらに実態的差別がまた心理的な差別の原因をつくっておるわけでございます。こうしたことが助長しながら、相関連をしながら部落差別の再生産に進んでいる、再生産の悪循環を繰り返しておるというふうに思いますけれども、その点についてお考えを聞きたいと思います。
  102. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私も環境整備、物的、実態的問題と申しますか、それと心理的な問題、これは相互に相関関係にある、このように認識をいたしております。ですから、そういう物的な環境条件の整備によって心理的問題も前進するでしょうし、心理的な問題が前進すればまた物的な整備の方も前進するでしょうし、お互いに相関関係にあるだろう、このように思っております。
  103. 竹村幸雄

    竹村分科員 その点では、今三点についてお伺いしたわけでありますけれども、全く私の意見と長官の基本的認識とが一致をしたわけでありまして、そういう立場に立って部落問題の解決のためにひとつ御努力いただきたいと思うわけであります。  私は京都市の出身でございますので、ここで京都の実態を申し上げてひとつ御理解をいただきたいと考えておるところであります。  京都でおりて駅を出ますと、すぐ横に七条部落があるわけであります。七条部落というのは、今全国の部落も恐らくそうであろうと思いますけれども、京都の部落の持っておる、高齢化を初めとしていろいろな矛盾、問題がここに集約をされておるわけでありますから、この七条問題について具体的な問題を申し上げて、長官の御意見を承りたいと思うわけであります。  この七条部落は、面積が二十五万六千平方メートル、そして住民が三千四百八十人、そして世帯数が千四百二十五世帯ある、まさに京都では一番規模の大きい部落でありますし、全国でも五本の指に入る大きな部落であるわけであります。  ここで大正の初めに米騒動が起こりました。これは京都で最初に起こった米騒動の土地でございますし、長官御存じのように、京都では岡崎公会堂におきましてあの有名な水平社宣言が行われまして約七十年になるわけであります。その七十年間、部落解放同盟を初めとして多くの皆さん方の血のにじむような努力の運動が積み重ねられてまいりました。  また、御存じのように、昭和二十六年には有名なオール・ロマンス事件が京都で起こりました。オール・ロマンス事件というのは、御存じであろうと思いますけれども、オール・ロマンスという雑誌に投稿されまして、被差別部落という名前の投稿がございまして、まさに差別の実態が、小説の形では書かれておりますけれども、その舞台になったところがこの七条部落であったわけでございます。そして、その作者が京都市の職員であったわけであります。ですから、京都市の職員がやるということは市長を初め認識が足らない、こういう反省の上に立って、京都市としては国が施策をやるずっと以前、昭和二十六年から、この問題が起こったことを契機にして同和問題を市政の最大、最重要目標として四十年にわたって取り組まれてまいった、この舞台になったところであります。  そして、先ほども言いましたように水平社宣言以来七十年、米騒動はちょっと前でありますけれども、そしてオール・ロマンス事件以来四十年、さらに特措法が施行されて以来二十二年間、いろいろな施策が講じられたにもかかわりませず、例えば改良住宅の建設一つをとりましても、一九九一年三月一日現在で、千八百五十五戸の計画の中で、できたのは九百八十四戸にすぎぬわけでございまして、率にいたしますと五三%にしかすぎないわけであります。  しかも、これは京都市が発表いたしました同じ時期の残工事でございますけれども、残工事が何と四百七十七億一千七百万円もまだ残っておる。そのうち住宅関係は四百二十億程度あるということであります。七十年間運動し、四十年間京都市が行政の最重要目標として取り組んで、さらには特措法その他で措置したにもかかわらず、そういう鉄とコンクリートの問題については大体できたというふうな答弁をしばしば政府側から聞くわけでありますけれども、鉄とセメントのそういう問題ひとつにいたしましてもまだ五三%の進捗率しかないという現実があるわけであります。  そういう中で、例えば中学生の進学率をとりましても、全日制にいたしますと、この七条地区では六六・六%、全市平均八七・八%から見ましたら極端に低いわけであります。しかし、統計上見ますと、これは何と進学だけとりますと、七条地区は九五・八%ある。全市平均が九五・三%にしか過ぎぬことから見ますと、何かそこそこ施策が成功しているというふうにとれるわけでありますけれども、実態は全日制で見ますと六六・六、片や八七・八という非常に格差がある、こういう問題。だれしも全日制で勉強したいというふうに思うのは当たり前でありますけれども、そうした意味でこれだけの格差ができて、それだけ全日制に行けないという事情があるわけであります。  ですから、一般的な統計と実態とはこれだけかけ離れているという問題も含めまして、これが他の同和地区の平均をとりましても八一・八%あるわけでありますから、他の同和地区と比べても、七条地区の進学率は全日制だけとりますと非常におくれておる、低いというこの事実の中で、長い間やってきてもなお五三%の事業の進捗率、四百七十億という工事が残っておる、こういう状態の中で、やはり相関関係があるのではないかというふうに思うわけでありますけれども、この実態についてどのように考えられますか。
  104. 小山弘彦

    ○小山政府委員 ただいまのお話でございますけれども、私ども確かに昭和四十四年以降、同和関係につきましては物的な側面と、それから心理的な側面につきまして重点的に行政をしいてまいったわけでございます。二十年余りを経過いたしまして、実態につきましては一般的に見て相当程度改善されているというふうに意識しておりますし、そういういろいろな評価も得ていることは事実でございます。  そこで、最近のいわゆる地対財特法でございますけれども、これ自身は最後の締めくくりとしまして、同和の諸問題に関しての解決を見ていきたい、こういうことでやってまいりました。国、地方公共団体一体となってその計画策定、それから実施状況推進及び結果のフォローということをやってまいったのですが、確かにその事業を行うに当たりましても地域の間における調整がうまくいかないとか、それから用地の問題でちょっとデッドロックに乗り上げている等がございまして、おくれている地域はあると聞いております。  しかし、私ども地方公共団体と一体となっていわゆる平成三年度、完全に事業が実施できることを目指してやってまいります。やってまいりますけれども、残る部分が出てくるというようなことはあろうかと思います。そういうことにつきましては、今度は一般対策の中で重点的にフォローしてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、物を見ますときに、私ども日本国全体ということで大きく見るようにしているわけでございますが、それは部分についても無視しているわけではございませんで、集団を限っていきますと、やはり格差というものが見えてくる面は確かにあろうかと思います。その辺も十分配慮しながらやりたいと思っています。
  105. 竹村幸雄

    竹村分科員 今の答弁は非常に不満であるし、そういう考え方自身が私は間違っているというふうに思うわけであります。  先ほども指摘をいたしましたとおり、七十年にわたって運動し、そして京都市では四十年間かかって改良事業に取り組んできたにもかかわらず、まだ半分しかできていない。そのことは認めていただけると思うのです。京都の七条部落ですね、まだ五三%しか進捗していないじゃないか。だから、一般行政ではだめなんだから特別措置法をつくり、いろいろ名称は変わりましたけれども、そういう法律を特別につくって対処してきた。しかも、対処してきたにもかかわらずまだ五〇%、半分しかできていないじゃないか。こういう状態の中で、一般行政に移行してできるはずがない、私はそう思うわけであります。  そういうことではできないことをあたかもできるように、さらにはそこそこできたと言いますけれども、先ほども言いましたけれども、統計的には進学率だけとらまえてみますと、そこだけ見ますと、なるほど七条地区は九五・八%ある。一般進学率は九五・三%、それだけ見ますと、なるほどこれもきちっと成功しているじゃないかということでありますけれども内容は六六・六対八七・八、これだけ格差がある。しかも、今改良住宅一つとりましても、二十二年前にわずか二間の小さい小さい改良住宅ができたときには、その時点では非常に立派な改良住宅だなということになったわけですけれども、二十二年たった今、やはりそのこと自身が住民のニーズに合っていない、いろいろな問題が起こっていることは御存じだと思うわけです。  例えば市営住宅にいたしましても、最初に建てた市営住宅を今京都ではつぶして、新しく今の市民の要求、住民ニーズに応じたところの市営住宅に建てかえているわけです。事同和地区の改良住宅だけは二十二年前に建てたそのまま。そこそこ事業は進捗してきたというふうにとること自体が非常な誤りがある。やはり今、二十二年前に建てたその改良住宅がどういう問題になっているか、どういうふうな状態になっているか、今住民にはどういうふうに受けとられているか、そういうことをきちっと調べなければ具体的に差別を解消することにはならぬというふうに私は強く要請をしておきたいと思います。  さらに、先ほど言いませんでしたけれども、大学になりますとさらに格差が開いてくるわけでございまして、大学の進学率になりますと、もう半分ぐらいしか部落の子供たちは行っていない。こういう実態もまた御存じだと思いますけれども、そういう問題をずっと一つ一つ取り上げてみましたときに、一般施策の中でやれっこない。やれっこないことをやると言っているというふうに私としてはとっているわけでございますので、その辺については十分にひとつ考慮をいただきたいというふうに思います。  特に、今度心理的差別の問題でありますけれども、結婚差別が最も深刻な差別であることはもう御存じのことでございます。私もいろいろな運動の中で、青年運動を通じ、やはり市会議員の活動やあるいは政党の責任者、また今国会議員の活動を通じてそういうことは認識はしておったわけでありますけれども、そういうことを認識しておる私でも非常にショックを受けたわけでございます。  かつて私の友人に、息子が結婚するので仲人になってくれと頼まれたわけであります。私は心安く、長いつき合いでありますからその青年も知っており、なかなか優秀な青年で、よろしい、仲人になりましょうと。それで、理由を聞きますと、実は好きな彼女ができて結婚したい、こういうふうに言って、二人はそういう気持ちであったけれども、向こうの親が、正式に仲人から申し出てくれぬとそんなものは話にならぬ、こういうことで頼みに来たわけでございまして、私は気軽に、なかなか立派な青年であるし、よしそれなら仲人をしようということで、青年と一緒にその彼女の家に打ち合わせに行ったわけであります。  そしたら、仲人を立ててくれというのは口実で、実はその青年が部落の青年であったから結婚はさせない、こういうことで何回も足を運び、しまいには玄関払い、ずっと居留守を使われて、そうした中でやっと判明をしてきたわけでございます。一体どうするんだということでその青年と彼女に聞いたわけでありますけれども、親が何ぼ反対してもどうしても結婚したい、しかも、そうした部落の青年だから、どさくさに紛れて結婚式も挙げぬと結婚したと言われるのはかなわぬ、だから結婚式も挙げたい、こういうことでございましたので、私は急遽仲人をやめまして親がわりに、その女性の親は、それだったら勘当すると言うものですから、私は親がわりになって結婚式を挙げさせることにいたしました。私は仲人から親がわりになって、私ら夫婦が親になる、そして新郎新婦の結婚式を迎えたわけであります。  そこで困ったのは、御存じのように、神式でやりますと、片や新郎側、片や新婦側と並ぶわけでございまして、新郎側は親戚が全部来ますからずっとこう並ぶのですけれども、新婦側は親がわりの我々二人ということではこれは格好がつかぬ。それで、キリスト教でやらなければしようがないなとか、いろいろ苦労しながら、それでも立派に結婚式を挙げさせようということで、私の友人や知人に頼んでにわかに親戚になってもらった。格好はそれで、両方新郎新婦側に並んで結婚式を挙げるということになったのですけれども、そのときに、私と運動なんかやっておりましたから、昔青年運動の仲間であった人に全部頼んで新婦側の親戚ということで並んでもらったわけです。  そのときに、私の友人の母親がちょっと話があるというので私は行って、あなたの言うことだから何でも聞きたいけれども、結婚式に息子が、部落の青年と結婚する新婦側の親類として出席するという話だが、本当は出さぬようにしてほしいけれども、もう出ることになっているのだからこれはしようがない、しかし、出ても、済まぬけれども親類の集合写真の中にだけはどうぞ息子を入れぬといてくれ、こういう要求があったわけであります。なぜか、そういう親戚が全部そろって、部落の青年と、そして片や我々がつくったこの結婚式を挙げるためのにわかな親類とで一緒の写真を撮ってもらったのでは、どこかでこの写真が出てだれかに見られたときに、後々その母親や、妹とかあるいは孫とかが結婚するときに差しさわりがある、これだけは絶対言うことを聞いてほしいというこわ談判を受けたときに、私は初めて、自分はわかっておるつもりでも、結婚差別というのが、そこまで深刻なのかということで改めて愕然とした経験があるわけであります。  そうした意味で私どもは、これは大変だ、こういう差別を何とか解決するために努力をしなければいかぬ、そういうこともあって今一生懸命頑張っておるわけでありますけれども、そうした本当に目に見えぬところの、最初はきれいごとを言って、親戚になってもらいますよ、ああどうぞと言っても、写真だけは困る、それがぎりぎりの話し合いの中で、写真を撮ってもらったのではやはり親戚になるじゃないか、親戚の写真になると。そんな写真がよそで万一見られたときに、私の友人の子供なり孫なり、あるいはまたおいっ子なんかが結婚するときに差しさわりがあるということでその母親にきつく言われたことがあって、その経験上、大変だなということを今改めて私は考えるわけでございまして、そうした意味での差別というのは本当に深刻な差別があるということをひとつ御認識をいただきたい。  ここにこういうビラを持ってまいりました。ここのところに紙が張ってありますけれども、こういうビラがことしの正月以来、大原地区といいますから、御存じのように大原地区は今京都では有名な観光地でございまして、三千院とか寂光院とかあるところでございますけれども、そこにこういうビラがまかれたわけでございます。このビラは、ここにだれだれと何か書いてあるわけです。これは特定できるわけです。屋号か何かで書いてある。大原の人なら全部わかるわけであります。こういうビラがまかれて、「〇〇〇の嫁は部落出身。デカイ面をスルナ!!大原を汚スナ!ダマサレナイゾ」こういうビラがまかれる。これが今現在の実態だということもひとつ認識をいただきたいというふうに思うわけであります。  さらには、今問題になっております京都市の消防局の差別事件であるわけです。これはもっと悪質で、十二月十八日にいろいろ交渉をやり、そういう中で、これはことしに入って一月の二日といいますから正月休みの最中でありますけれども、消防局の便所の中にこういう落書きがしてあるわけであります。これは一月の二日ですから一般の人は入れないだろうというふうに私は思います。だれが書いたかわかりませんけれども、ここのところに「エッタコロせ」と書いてあるわけです。こういう悪質な落書きが今現在なお行われているということ、「エッタコロせ」というのは、部落の人の生存権までも奪おうとする最も悪質な差別が今現実に行われているということを、今の時間にでも行われているということをひとつ長官の方もよく認識をしていただきたいと思います。  その他いろいろ、水道局の便所に落書きしてあったとかそういう問題はまだたくさんあるわけでございまして、そうした点についてどのように考えておられるか、ひとつ答弁願います。
  106. 小山弘彦

    ○小山政府委員 国、地方自治体初め、国民に広くその基本的人権にかかわる理解を得るというようなことを第一にやってまいったわけでございますけれども、その結果につきましてはかなりの程度改善されているという情報は得ておりますが、確かに細部に至りまして委員おっしゃいますような差別にかかわる事象が起きているということも承知しております。そのようなお話を聞くたびに、まことに残念な気持ちがいたします。しかし、これは日本の社会的、歴史的な一つの問題として来ておって、今後とも啓発によって広く自由と平等の関係を国民全体のコンセンサスにするという努力を息長くやっていかなければいけないだろう、こういうふうに思っております。
  107. 竹村幸雄

    竹村分科員 いや、そこのところが間違いだということを指摘したいわけであります。この事実は事実として今認められたわけでありまして、啓発その他でこんなことが、差別が解消するはずがない。先ほど長官言われましたように、心理的差別と実態的差別が相互的に関係あるということはもう認められたわけでありますから、そうした中でこういう差別がどんどん起きてくる、これは心理的差別だから啓発でいける、そういうものでないわけであります。実態的差別をここで徹底的になくしていく、こういう努力があって初めて心理的差別がなくなるのであって、啓発だけやってもこんなことはなくなるはずがないということを私は指摘をしたい。  だから私は、もう時間がなくなったから言いますけれども、先ほど来小山審議官がおっしゃっていますように、今地対財特法がことしで切れる、来年から一般施策の中でやっていくというふうに言われたことが間違いだということを私は指摘をしているわけなんです。こういう問題があるじやないか。しかも、五三%しか今進捗率がない。学校の進学率だって、全日制なら八七・八と六六・六の差があるじゃないか。一般的に、統計から見たら九五・八対九五・三、これは達成していますよ、こうなるけれども、実態はそうなんだということをよく理解をしてやってもらわぬと、統計統計ばかり言っていても、実態的に差別が解消しなければ何にもならぬ。差別を解消するためには、やはり努力をする、先ほど情熱を持って努力する決意だというふうに総務庁の長官おっしゃいましたので、そういうふうにやってもらわぬと、京都市で七十何年やってきてまだできていない、これは一般的政策ではいかぬから特別立法をやったのではないか。  だから、部落の差別を解消するのには何らかの基本的な法律、部落解放基本法がどうしても必要なんだということを私は強く要請をして、時間が来ましたから答弁は要りませんけれども、先ほどの審議官の答弁では答弁そのものが不満であるし、間違いなんだ、考え方を変えてもらわなければいかぬということをここでもう一回要請して、質問を終わります。
  108. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて竹村幸雄君の質疑は終了いたしました。  次に、田並胤明君
  109. 田並胤明

    ○田並分科員 それでは、時間が三十分でございますので、要点に絞って質問を申し上げます。  中身は、今の同僚議員の質問に関連をして、特に同和対策事業の中の啓発、教育事業の関係についてお聞きをしたいと思うのです。  戦後四十六年たって、我が国も国民の並み並みならぬ努力で経済大国にはなりました。今、政治大国を目指しているんだそうでありますが、それ以上に日本が人権大国にならなくちゃいかぬ、私はこのように思うのですね。非常に残念ながら、元閣僚であった方が差別発言をしたりして国際的なひんしゅくを買うという、まだまだ我が国にとっては人権大国にはほど遠いという状況にあると言わざるを得ませんし、しかも、国際的な人種差別撤廃条約あるいは子供の権利条約、これらは先進国の中ではもう既に相当数批准をされているにもかかわらず、我が国ではまだそれがされておらない。非常に私どもとしては残念なことだというふうに思うのです。  そのことはまた後の機会にすることにして、まず長官に端的にお尋ねをしたいのは、憲法上部落差別は絶対に許されるものではない、差別はあってはならないんだということをまずお尋ねをしたいと思うのです。
  110. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 それは御指摘のとおり、憲法上そういうことがあってはならないものだと私は思います。お話のとおり、経済大国あるいは政治大国にしろ、その根本には基本的人権の尊重というのがあってこそ意味があるのだと私は思っておるわけでございまして、これは日本国憲法を我々はもとにして国づくりをするわけですから、根本には基本的人権が確立する、尊重される、そういう社会でなければならないと思います。
  111. 田並胤明

    ○田並分科員 そのとおりだと思うのです。  そこで、憲法上からも許されないということで、長年かかって、運動団体あるいは行政の皆さんあるいは学識経験者、それらがこぞって、一九六五年、昭和四十年に例の同対審答申を出したわけですね。その同対審答申の精神というのは今でも脈々と波打っていると私は思いますし、そのことが現在の同和対策事業の根本でなければならない、このように思うのです。  先ほど同僚議員の方から、特に部落差別の解消のための内容について同対審答申に盛られていることを述べられました。私は、もう一回そこで繰り返して申し上げたいのは、この同対審答申の抜粋をして要約を申し上げますと、部落差別というのは心理的な差別と実態的な差別があるんだ、しかも心理的な差別と実態的な差別は相互に因果関係を持ちながら相互に作用しあっている、そして差別の再生産、悪循環をするものなんだ、こういう認識から、この同和行政というのは基本的には国の責任において当然行うべき行政であって、特殊な行政や行政外の行政ではない、部落差別の現存する限りこの行政は積極的に推進されなければならない、このように同対審答申の中でうたっておるわけですが、この認識は今でも変わらないわけですね。
  112. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、基本的には変わっていないと思います。全くこれは国の責任で、国の主導で進められるべき行政である。ただ、国と申しましても、国だけでできるものではございませんで、地方団体とか広く皆さんの御理解と御協力を得て、そうして国の責任で行われるべきものだ、このように考えております。
  113. 田並胤明

    ○田並分科員 そこで、私はずっと先ほどの質問のやりとりをお聞きしながら考えておったのですが、確かにこの同対審答申に基づいて昭和四十四年、一九六九年に例の同和対策事業特別措置法ができました。それ以来法律の名前は幾つか変わりましたが、二十一年間同和行政として実施をされてきたわけですね。確かに実態的な、物的な現象というのは相当部分改善をされたというふうに私ども認めます。ただ、対象地域になっておらないところがあることも事実ですから、それはまた別の問題として、すべてがよくなったということにはなりませんが、この期間大変な努力をされて、それぞれ地域改善が進んだということについては敬意を表したいと思うのです。     〔魚住主査代理退席、新村主査代理着席〕  ただ問題は、今の同対審答申の中にもありますように、心理的差別と実態的差別というのは車の両輪なんですね。現在までは実態的差別を解消するために、それがまた進めば心理的な差別もなくなるのではないかという思いを込めてやっていらっしゃったと思うのです。しかし、私どもの今の考えは、やはり心理的差別と実態的差別というのは同じくらいの比重か、この時期ではそれ以上に心理的な差別を解消するための啓発あるいは教育活動というのは非常に重要になってきているのではないか、このように考えるのですが、長官いかがですか。
  114. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 それは私もお話のとおりの現状認識を持っております。確かに環境の整備等の物的な面はやればやるだけ効果があるわけでございまして、それがまた心理的な方へ好影響を及ぼすことは事実だと思います。  しかし、やはり感じとしては、やや心理的な面の方がおくれているのではないか。その証拠に、先ほど来いろいろ少なからざるそういう人権問題等が指摘されておるわけでございますから、両方に力を入れていかなきゃなりませんけれども、むしろ心理的な面、これもひとつ頭の大きなところへ置いておかなきゃならぬのじゃないか。これはなかなか根深いものがあると思いますだけに、粘り強い努力が払われなきゃならぬのじゃないか、このように考えております。
  115. 田並胤明

    ○田並分科員 私もそのとおりだと思うのですが、今の長官のお気持ちというのはよくわかります。私が先ほど申し上げましたように、やはり車の両輪のように事業の推進をしていかないと、心理的な差別が残ったまま実態的差別を解消しても、結果的にはまた差別の悪循環ということで、具体的な差別事象というのは今、後を絶たない、かえって今までよりも非常に陰湿で、しかも悪質になっているという実態が先ほど同僚議員から申し上げられましたが、残念ながらそういう事例が結婚差別にしても就職差別にしても、あるいは一たん就職をした後、今度は被差別部落の出身だということが職場の中に流されていたたまれなくなってやめてしまうという実態があるんですね。これは実態的な差別解消がかなり進んでいる中で起きている差別事件なんです。  そういう観点から見ますと、私は、これまでの同和対策事業の中で大きな欠陥として啓蒙、教育活動の対応のおくれをどうしても指摘せざるを得ないのですよ。その辺について、審議官でも結構でございますが、どのようにお考えか、お聞かせを願いたいと思います。
  116. 小山弘彦

    ○小山政府委員 同和問題に関しましては、ただいま委員のお話にもありましたように、言葉としては物的、心理的という二つの言葉を挙げますけれども、おっしゃるように両者とも車の両輪であり、相互にまた干渉し合うという部分がかなりあるということであります。ですから、一方に力を入れたら他方が付随的にということを安易に考えていてはいけない、こういうふうに思います。  先ほど来お話ありますように、物的な面については成果が計量的にあるいは客観的に見えるものですから、非常に心理的な面とのギャップを感じるようになってくるだろう、こう思います。確かに見えるものはよくなっているという評価を得ているのでありましょう。しかし、やはり心の問題というようなことは、人間存在する限りあり得る話でありまして、ここ自身は、物では解決できない、金では解決できないという部分があると思うのです。  つきましては、私どもの事業の投資の角度で、額面的には確かに啓発の方の費用が予算的にも少ない投資になっているということは事実でございます。これは、物的な面というのが非常に多額の費用を要するということが基本的にはあろうかと思います。公共事業にしましてもそれから住宅諸問題にしましても、非常に額の大きい投資になっている。それは啓発につきましても息長く、経常的あるいは定期的あるいはその対象をよく見て啓発を行う、そのための媒体の選択というようなこともいろいろ考えてやる。それから国と地方公共団体一体になってやるわけでございますけれども、お互いの持ち分というところもお互いよく認識しておくことが大切だ、いわばむだのない啓発を行わなきゃいけないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。  そうしますと、例えば私どもは国としまして、とにかく全国を見て基本的な方針をつくったり、それから広報も行います、啓発も行います。地方公共団体に参りますと、当該地域の特性というものもございましょうから、その辺もよく認識していただいていい広報をやっていきたい。とにかく現実面としましては、対国民という角度で見ますと、行政的な距離というのは国よりも地方公共団体の方が近いはずでございますから、その辺は地方公共団体の特性も配慮してやっていただきたい。結局、広報の効果というものが即目に見える計量的測定ができないというところに一つじれったさを感じる面がございますけれども、私どもは、言えば物以上に心ということにウエートを置きつつある、少なくとも私はそんな意識でおります。
  117. 田並胤明

    ○田並分科員 今審議官の方で予算面まで触れられましたが、確かに言われるとおり、例えば昭和四十八年、啓蒙、啓発あるいは人権思想普及、総務庁、法務省で予算化をしたのが八百三万円、当時の同和予算の総額が四百三十億三千五百万円ですから、〇・〇一九%という数字ですね。それがずっと上がってきまして、平成二年度、昨年ですが、これが総務庁、法務省、労働省、いわゆる啓発予算と言われているものを合計をすると十億二千五百九十三万、同和予算の総額が一千五百十三億七千百五十万、この総額に対する啓発の予算というのは〇・六八%、本年度の予算を見ますと啓蒙、啓発が十一億四千八十一万円、これは総務庁、法務省、労働省合わせて。同和予算の総額が一千五百五十九億三千九百五十五万円、全体に占める啓発の予算が〇・七三%、こういうことなんで、一%に満たないのですね。国民一人当たりに直すと、単純計算で九円ぐらいですね。  ですから、今審議官言われたように確かに計量的に測定はできないかもしれません、国だけじゃなくて地方自治体も一体になってやる内容ですから。これは確かに言われるとおりのことかもしれませんが、余りにも少な過ぎるのじゃないかと思うのですね。こういう予算で果たして、今審議官が言われ、あるいは長官が言われたような本当の意味の、憲法上も許されない、あるいは同対審答申の精神から見ても、差別が一日も早く解消することが全国民の願いですから、そういう意味からすると、実態的な差別の予算はもちろん重要でありますが、それと同じぐらいの比重でもって啓蒙、啓発の予算、教育の予算というものを、国の責任においてやるという以上はもっともっと盛り込むべきじゃないだろうか、こういう気がするのですが、長官としてどうお考えですか。
  118. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 確かに御指摘いただいたような数字をお聞きしておりますと、非常に一%にも満たない少ない額だな、こういう感じがいたします。しかし、私どもは啓発のためにもし必要なものがあれば、これはひとつ積極的に取り入れていきたい、こういう気持ちでございます。  一言に啓発と申しますけれども、しからばどういうことをやれば効果があるか、私どもも非常に知恵を出して予算を組んだのだろうと思いますけれども、こういう種類の仕事というのは、物をつくるのと違ってそう莫大な金を要する問題じゃございませんので、もし必要な、効果のある啓発の方法がございますれば、これはもう予算を組むことは当然だと思います。これからもひとつそういうことで啓発の仕方について検討をして必要なものは予算化してまいりたい、こう思っております。
  119. 田並胤明

    ○田並分科員 ぜひ今長官が言われたように、必要なものは相当思い切って、やる仕事が見つかれば予算措置をする、この決意をぜひお忘れなくお願いをしたいと思うのです。  そこで、先ほど結婚差別の一連のお話が同僚議員からございましたが、どうしても実態的な差別が、かなりの予算をつけてもらって行政が一生懸命やって、運動団体の協力もいただきながら進行している中で、依然としてこの結婚差別というのはなくなりません。これは本当に私の近くで起きた事例ですが、しかも相手は教育者です。会場まで決めて結婚指輪を両方が買って、御両家祝福をされて、いよいよ日取りまで決まって会場まで決まったにもかかわらず、被差別部落の出身だということがわかったら途端に手のひらを返すようにして、残念なから幾ら説得をしても、幾ら啓蒙しても、その結婚が破談になってしまったという実例がございます。  あるいは職場で働く前に、部落の出身者ではないかというようなことで、残念ながら身元調査をするというような事例だってまだ枚挙にいとまがないわけですね。あるいは、きょうは郵政省の質問じゃないから聞かないですが、郵政省の職場でも差別落書きが出てくる。あるいは駅の構内にはこれまた書かれる。とにかく今まで実態的な差別の解消のために全力を挙げ、しかも心理的差別を解消するための啓蒙、啓発の事業もやりながら、しかもそういう事実がなくならないということ自体、これはゆゆしき社会問題ですね。人権問題ですよ。  ですから私は、例えば啓蒙、啓発をする事業の本当の目的というのは、差別は絶対に許さないし、しないし、させない、そういう気持ちを国民一人一人かどう持つか、そのための啓発活動であり、あるいは学校教育、社会教育の場におけるいろいろな場面を通しての教育活動、啓発活動というのが非常に重要だ。「翔べ、熱気球」というのを総務庁が出したそうですが、私なんか、ざっとあれを見ると、何か本当にこれで差別を解消するための啓発の材料になるのかな、こういう感じがしないでもないですね。  要するに、被差別部落の暗いといいましょうか悲惨な状態だけを、「翔べ、熱気球」だけにこだわらずに、今まで出されてきたものが、差別の本質がどこにあって、なぜ今差別が温存されておるのか、こういう社会的な存在意義、意義というとおかしいのですが、なぜ存在をしているのかという、その辺に視点を当てた内容のものが非常に乏しいのじゃないだろうか。何か知らぬけれども、気の毒だから差別してはいけないんだよ、同情的な、融和的な感じの差別をなくすための啓蒙あるいは教育、啓発になっているのじゃないだろうか。  やはりもっと根本的に、絶対に差別は許してはいけないのだ、許せないのだ、憲法上からも同対審答申の精神からしても。とにかくその根源がどこにあり、なぜ今もって差別が存在をしているのかという本質まで迫った啓蒙、啓発をしない限り、これは単なる同情心だとかあるいは融和の心でもって逆に差別を温存しちゃって、内蔵しちゃって、ある日突然ばあっと出てくる、差別を再生産してしまうのじゃないだろうか、教育だとか啓発のあり方によっては。これは絶対にやめてほしいし、これはもちろん国が地方に指導するわけですから、地方に対しても差別をなくすための本質的な啓発のあり方、教育のあり方、これを真剣にひとつ指導してもらいたいと思うのです。その辺審議官どうですか。
  120. 小山弘彦

    ○小山政府委員 差別にかかわる啓蒙の基本的な考え方については、私も委員と全く同感でございます。それは、消極的意味において啓蒙を行うという意味ではなくて、この問題の生じたいきさつ等をしっかり認識して、能動的に啓発をやっていくということでなければ、プラスの方向への解決の道は見えてこないというふうに認識しております。  国としての置かれた立場から、いわゆる同和問題につきまして正しく理解しようということを基本に置き、さらにその対象としましても児童生徒、いわゆる小学校中学校とかそういう学齢のステージのところとか、それから国の公務員、地方の公務員かつ同和問題に関する指導者をつくるという意味での研修とかいろいろ場をつくりながら、対象を見きわめながら目的をはっきりさせてやっているというのが事実なんでございますけれども、しかしこれは、本当にある意味ではこういう啓発というのは、やっている自分たちはかなり満足しているかもしれないけれども、外からは見えない、こういう面が確かにあることは事実だと思いまして、そういう意味でいろいろな角度で知恵を出し合って、私は啓発というのは知識ではなくて知恵じゃないか、基本的なことをしっかり認識していれば、こういうふうに思っております。  ついでと言っては申しわけございませんけれども、委員先ほど国の予算のかかわりで啓発の件についておっしゃられましたとおり、物的な面との割合で見ますと低いわけでございます。ただ、私どもが力を入れております一つのあれとしまして、私弁解するわけではございませんけれども、最近の五年間の啓発に関する対前年の伸び率でいきますと、各年度一〇%を超えた伸びを続けてきている。ちなみに、昭和六十二年が七億三千七百万という啓発でございましたけれども平成三年度、現在は予算案でございますが、十一億四千百万、こういうオーダーになっていまして、それは金だけが啓発ではないかもしれませんけれども、知恵と誠意と努力でそれを今後とも続けてまいりたい、こういうふうに思っております。
  121. 田並胤明

    ○田並分科員 審議官の言われたとおり、確かに予算的に見ると対前年比一〇%ぐらいずつ伸びておるのです。しかし、総枠としては少ないのですよ、実態としては。ですから、それは先ほど長官が言われたように、ぜひひとつ今後の一層の努力目標として、心理的な差別は、私の判断では決して解消の方向に向かっていないと見ているのです。逆に、年々ふえているのですから、差別の事象というのは。ですから、今正しい理解と言いましたが、正しい理解の中に正しい基本的な認識を持つ教育、啓発をやってもらいたい、こういうふうに思うのです。  総務庁昭和六十年に部落問題に対する意識調査をされております。それを見ると、例えば部落の起源は何かという質問に対して、政治起源説というのが五九・四%、約六割、残り四割というのは職業起源説、人種起源説、貧困起源説、要するに誤った起源説を持っているのですね、まだ約四割が。政治起源説で正しく認識して、歴史的な経過の中でつくられたものだという認識をそれなりに持っている方は六割おりますが、まだ四割の方がそういう認識を持っている。完全な職業起源説、人種起源説、貧困起源説。  それから結婚に対する態度としても、親として子供の結婚相手が部落出身者とわかった場合どうするか、子供の意見尊重が三四・二%であります。しかし、子供が結婚したいというのじゃ仕方がないと、消極的な反対なんでしょうね、本心は。子供がどうしてもと言うのじゃしょうがない、こういう気持ちを含めた消極的な反対を含めて、絶対だめだというのを含めて六五・八%、被差別部落の人との結婚についてはそういう感覚を持っているということなんですね。これは今から五年ほど前ですか。これはゆゆしきことなんですね。  それで、その後は総務庁は意識調査をしておりませんから、その後どういうふうに変わったのか。これは先ほど計量的にかわらないと言いますが、この意識調査というのは計量的にわかる一つの方法なんですね。ですから私は、ぜひひとつ、これまで啓蒙、啓発のための予算を、総務庁も地方自治体に対しても督励をし、総務庁自身も法務省あるいは労働省と一緒になってやってきて、それなりの成果が上がっていなくてはいけないと思うのです。私が考えるのは、決して心理的な差別の解消が相当な勢いで解消している方向にあるなどとは思えません。  そういう意味でも、計量的にはかる意味でも、この辺で総務庁中心になって意識調査を実施したらどうだろうか。意識調査をして、今の心理的な差別あるいは実態的な差別についてどう国民の皆さんが考えるか測定結果が出ますね。測定結果が出れば、それに対してまた次の施策を進めていくというのが一番科学的なのではないだろうか、こういう気持ちが私はいたします。せっかく予算を投ずるわけですから、それがどのように、非常に前向きにその効果が上がっているのか上がっていないのか、それを測定をするのはやはり行政の責任でもあるし、次の同和行政を進める上でも非常に大きな参考になる、私はこういう気がいたしますので、ぜひこれの取り組みを強く求めたいと思いますが、いかがでしょうか。     〔新村主査代理退席、魚住主査代理着席〕
  122. 小山弘彦

    ○小山政府委員 いわゆる実態の認識を計量的に把握するという方法の一つとしては、意識調査があるということは事実でございます。  昭和六十年のときに確かにそういう調査を実施しまして、その当時の現状を把握した。その後、私ども調査については考えておりませんけれども、とにかく例年、いわゆる同和問題に関する事業、これは啓発も含めてでございますけれども現状がどうなっているかということを知って、そして翌年度の事業の計画を立てるということをむしろ現実の事務的な問題としてもやってきております。年度の予算をやる前には、関係省庁それから地方公共団体にいろいろ来ていただきまして、実態をよく知って、そして解決の道をたどるということでありまして、いわゆる現実面での実態のフォローはしているということで、即調査をやろうということは現在のところ考えておりませんけれども、実態把握の必要性は認識しております。
  123. 田並胤明

    ○田並分科員 実態意識の意識調査の認識はしているというのですが、最後に長官、もう時間がないものですから、私は、どうしてもこの効果を測定して、次の同和行政を具体的に推進をするための大きな参考にするためにも、この意識調査というのはやるべきだと思うのですよ。今、審議官の方は、もう前の年にどの程度行われたか実態を正確に調べて翌年の予算に盛り込んで施策をすると言うのですが、それだけでは、では何をやっているのですかと聞きたいのですが、聞く時間がありませんから、私の方としては、より正確に実態を把握をしてもらって施策に生かすというのが一番効率的ですし、また必要なことだということを非常に強く感じます。  そのことも含めて、最後に長官に、今までいろいろ私が申し上げたこと、あるいは長官が答弁をしたことで共通できることは、政府の啓発事業、この政策をもっともっと積極的に進めるべきであるということを強く思っておりますが、その二点について答弁をいただいて、質問を終わります。
  124. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 啓発の仕事は、御承知のとおり環境整備という物的な仕事と違いまして、いろいろお話、やりとりがございますわけですけれども、なかなかこの効果が見えにくい。これは私どもは、さっき予算に関連して申し上げましたけれども、もし本当に有効な啓発の手段がございましたら、それは物的なものをつくる場合と違ってそんなに大した予算が要らないわけですから、啓発の問題ですから、そういうことでございますので、立派な手段がございましたら、予算化すべきものはして取り組んでまいりたいと思います。  なお、実態調査につきましては、やる必要がないと言いますけれども、私はもう一遍事務当局と相談をして進めます。
  125. 田並胤明

    ○田並分科員 ぜひお願いします。  以上で終わります。
  126. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて田並胤明君質疑は終了いたしました。  次に、東順治君。
  127. 東順治

    ○東(順)分科員 東順治であります。私も引き続き、部落問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  今国会の本会議で、海部総理がこの部落問題につきまして、憲法に保障された人権にかかわる重要な問題である、こういう認識を示されましたけれども、私もこの言をまつまでもなく極めて重大な問題である、このように受けとめております。  この長年にわたる同和対策事業においては、確かに住環境の改善等には一定の成果があった、このように認識をいたしております。他方、今なお千カ所に上る未指定地区等がございまして、また、被差別地区では病気がちの人の比率が全国平均の二倍から三倍、このようにも言われております。また、生活保護受給者の比率も七倍以上、さらには高い失業率あるいは高校、大学の進学率の低さの問題、また近年、パケット通信を利用した 部落地名総鑑の大量流出事件、あるいはまた昨年の九月ですか、東京の行政書士が大阪の興信所からの依頼で他人の戸籍謄本を不正入手して興信所へ横流すという、あるいは一昨年の九月、福岡市でも、二人の弁護士が職務上の立場を利用してやはり興信所に横流しをするという、こういうことで不正入手された戸籍謄本というものが就職差別や結婚差別、こういったものの調査に利用される可能性も非常に高いわけで、こんな重大な人権侵害の問題が今なお続発をしておる。  こういう事実にかんがみまして、部落問題という名前で、この国にそれこそ何百年もの昔から続いてきた人が人を差別する、こういう厳しい現実が、明治の太政官布告から百二十年、また同対審答申から二十六年になってもなお依然としてあるという、したがってこの問題を見るときに、幾世代、何百年にもわたって続いてきたその延長の中に今があるというこの視点が非常に大事な視点だろうと私は思います。この長い歴史的視点から見て、むしろ、特別措置法二十年による施策の成果を土台として、今ようやくこの国で部落差別解消の実を上げようという段階をやっと迎えたのではないか、このように思うわけでございます。  この人権という問題は、平和、環境と並んでやはり政治の大テーマだと私は思います。特に人権赤字国というような非常につらい呼び方をされるこの日本に、これから国際化時代にふさわしい人権意識をしっかり根づかせていく、そういう極めて大切なときが今到来しているのではなかろうか、このように思うわけでございます。幾世代に及ぶ差別というものは、その歳月が長ければ長いほど深刻なものがあると痛感するわけでございます。単に表面的な地域改善等ではやはり、先ほどからもいろいろ議論があったようでございますが、決して本質的な解消ということにはならない、私はこのように思うわけでございますが、まず、この点に関しまして長官の所感を伺いたいと思います。
  128. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 今、こういう日本が先進国であると言われておるわけでございますけれども、そういう中にあってこの人権問題がいろいろと言われておりますことは、大変残念なことであると思います。この同和の問題につきましても、先ほど来御議論ございますけれども、これは同情論だとかかわいそうだからやるとか、そういうものであってはなりませんで、日本国憲法の基本的な問題でありますし、これは日本の国づくりの根本だというふうな認識で取り組んでいかなければならない、このように思います。  お話しのとおり、また御承知のとおり、いろいろな物的な仕事、環境整備をやってまいりましたけれども、しかし心理的な差別というのがなお後を絶たない、これは本当に残念なことでありまして、お話しのとおり、長い歴史の過程、社会の運営の過程からこういうものが出てきたわけですから、これを直すには、日本の社会の中でこれは直していかなければならない、私はこう思うわけでありますし、また、社会の中で直すのですから、みんながその気になれば直らないはずはないわけでありまして、粘り強く努力をしていかなければならない、このように考えております。
  129. 東順治

    ○東(順)分科員 今の、日本国憲法の基本である、それから国づくりの基本の問題であるというこの御認識、私は非常に大事な認識だと思います。そこから考えていったときにさまざまな問題があるわけでございますけれども、私は国づくりの基本というこの問題を考えたときに、特に教育ということが非常に大事な問題じゃなかろうか、このように思うわけでございます。例えば進学の問題ですけれども文部省、現在、同和地区の大学進学率と全国平均の進学率を比べてどのようになっておりますでしょうか。
  130. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 大学進学率でございますが、平成二年度で全国平均が三〇・五%でございます。対象地域につきましては、関係府県市の調査によりますと一九・七%でございます。
  131. 東順治

    ○東(順)分科員 約一〇・八%、この差があるわけですね。これはやはりこの数字だけ見ても非常に大きな差である、このように私は思います。しかし、これを丹念に精査し、考えてみたときに、実はこの数にはもともと浪人生というのが含まれていないわけですね。今度は、全国平均の中の浪人生、それから同和地区の浪人生を比べたときに、やはり一度受験に失敗すると大学進学を断念するという生徒が同和地区の方に圧倒的に多いわけで、したがって、浪人率というのでしょうか、これは圧倒的に差がある、このことを考慮に入れますと、この一〇・八%という差がもっと現実は開いておる、これが実態であると思うわけでございます。  それに加えて、もっと大きな問題として、この大学進学率を見る場合に、分母になる地区の生徒数の掌握なんですけれども、現在高校奨学金を受給して卒業したそういう生徒のみを分母にしておる同和地区、この数字の中には、実は一般地区の三倍と言われる高校中退者というのが含まれておらない。したがって、この数を現実に分母に加えてみると、恐らく一般と比べて三分の一以下になるのではなかろうか、このようにも推定されるわけでございます。  この同和地区の学力問題というのは、古くて新しい問題、このように言われます。しかし、この古くて新しいという実に悲しい表現ですが、ずっと以前から現実が続いてきて今なおという意味合いがこの古くて新しい問題という言葉の中にあるわけです。こういったことを見ますと、この背景に、同和地区の皆さんの義務教育率、あるいは高校中退者が多い親御さんたちの教育水準、あるいはまた家庭とか地域の文化水準、経済状況、こういったことがいわばバックグラウンドにずっと幾世代にわたってあり続けてきておるわけでございまして、こういうところにしっかり思いをはせないと、単なる表に出てくる数字のみで判断をすると、先ほどの長官の答弁ではございませんけれども、根本的な視座になかなか立てないのではないか、このように思うわけでございます。  中でも最大の問題というのは、やはり家庭の文化水準というものが大きな問題であろう、このように思います。言語文化あるいは文字文化、このように言われますけれども、したがいまして、進学問題というのは環境、経済あるいは文化的な問題である、このように思います。さまざまに実態的な改善というのは進んだ、一定の進捗は見られるという状況であるけれども、実際に環境面、経済面あるいは文化水準、さまざま総合的に見ていったときに、依然として深刻な状態というものがあるわけでございまして、子供たちに勉学の意欲をなかなか起こさせにくいそういう環境、実態というものがある段階で、奨学資金の制度というものを給付制から貸与制に九年前変えた、そういう実態があるわけですから、早過ぎたのではないか、このように私は思うわけでございます。逆に、せっかく進学意欲というものを、給付制で高まってきておったものを鈍らせるという結果につながってきたのではなかろうか、このように思うわけでございます。当時、貸与制に変わったときの政府答弁では、悪影響が出ればこの制度は考え直す、こういう答弁があったようでございますけれども、いかがでしょうか、この制度を再検討なさる、このようなおつもりがありますかどうか、これを伺いたいと思います。
  132. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 文部省におきましては、昭和四十九年度以来進学奨励事業を実施してきたところでございます。この事業につきましては、昭和五十七年度の地域改善対策特別措置法の制定に際しまして、従来の事業の見直し、特に個人給付事業の見直しが行われまして、従来の給付制から貸与制に切りかえたところでございます。貸与制切りかえに当たりまして、文部省といたしましては、この事業がこれまで果たしてきました役割を十分考慮いたしまして、返還免除制度を導入し、経済的に就学が困難な方の大学進学を阻害することのないよう配慮いたしておるところでございます。  なお、現行の地対財特法失効後におきます進学奨励事業の取り扱いについてでございますが、地域改善対策協議会の審議を踏まえて検討させていただきたい、かように考えておるところでございます。
  133. 東順治

    ○東(順)分科員 育英資金という言葉がございますね。これは勉学意欲のある生徒を対象としての制度である。地区奨学金というのは、勉学意欲を起こさせるためにやる制度である。こういうことから考えますと、実は貸与制に切りかわって九年目になるわけですけれども、大学進学率というのは実際のところ、例えば全国平均と対象地域の格差が昭和六十年一一・四%、それから六十一年一一・二%、六十二年一一・七%、六十三年一一・六%、それで先ほど御説明のありました一〇・八%、ほとんど横ばいの状態です。つまり格差が縮まっていない。同時に、実態的差別がこの九年間解消されてきたと政府は言いますけれども、実態的差別が解消されてきたら、この格差がそれに比例して締まってくるというのが本来の姿だろう、私はこのように思うわけでございますけれども、現実は今申し上げたように横ばい状況である。ということは、実態的な差別の解消が進んだというようなことであれば、現実に進学率が横ばいということは、実際は格差が開いているのではないかというようにも、相対的に見れば言えるのではなかろうか、このように思うわけでございます。  したがって、もう一度伺いますけれども、一番大事な国の基となる教育というところでこの進学意欲を鈍らせる大きな原因の一つのファクターとして貸与制というものがあるのではなかろうか、このように私は思うわけでございます。この見直しについていかがでしょうか、給付制に戻すべしと私は思いますけれども、もう一度お願いいたします。
  134. 喜多祥旁

    ○喜多説明員 先ほど申し上げましたように、貸与制に変わりましたときに返還免除制度を設けましたし、また、元年度から要綱を改正いたしまして、一年ごとに返還を免除するという方式から五年ごとにその間の返還を一括して免除できる方式に改めたところでございます。  この進学奨励事業の取り扱いにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、地域改善対策協議会の審議を踏まえて検討させていただきたい、かように思っております。
  135. 東順治

    ○東(順)分科員 ぜひ私が今申し上げたような実態というものを考慮に入れていただきまして、しっかり御検討をということでお願いしたいと思います。  それから、私は先日地元の福岡県の北九州市小倉南区の北方地区というところと、それからまた同じく北九州市内でございますけれども、小倉北区と八幡東区の境目にございます泉台、槻田地区という二カ所の地区を視察をさせていただきました。御存じのとおり、この北方地区というのは現在改善事業が進んでいる地区でございます。事業費ベースで進捗率七五・八%、これは平成二年十二月末現在ということでございますが、面積が三十一・二ヘクタール、人口四千九十一人、世帯数、これは五十九年十月当時一千五百八十七世帯。不良住宅の買収、除去、良住宅の移転、改良住宅の建設、道路整備、都市公園、児童センター、体育施設等々、もちろん実態面のみの視察をさせていただいたわけでございますけれども、関係方面の大変な御努力で五十九年十二月から着手以来ずっと改善事業が進められておる。大変広大な地域で、道路の問題からいろいろな問題に取り組まれておられました。  他方、槻田、泉台地区、二百五十戸ほどの地区でございましたけれども、ここは地区指定は受けていますが、いまだ改善事業には未実施、未着手の地区でございました。私もこの地区の中をくまなく歩かせていただきまして、いろいろ御説明をいただきながら見させていただいたのですけれども、北方と対比して、実施する前と実施した後の余りの違いに私は大変びっくりいたしました。  家が密集してびしっと建っているわけですけれども、家々の間が、道というよりもむしろ通路というぐらいの本当に狭い通路でございます。したがって、そうやって密集しているものですから、どの入り口がどのうちの入り口なのかがよくわからない。だからもちろん玄関なのか裏なのかもさっぱりわからないというような状況で、したがって非常に日当たりが悪い。そうやって密集していますから、一たん火事かなんかがどこかのうちから出たときには一気にその地区は燃えてしまうなというような恐ろしさを覚えたほどでございます。したがって、当然火事かなんかで消防車が飛んできても、ホースなんかも細かいところまではなかなか入りにくいだろう。救急車なんかが来ても、急患をぱっと運ぶみたいなこともなかなか難しいだろう。ちょうど行ったときは雪が降ってその直後でございました。それでその地区以外の付近の広々とした道路のところは日当たりがいい、したがって雪が解けているわけですけれども、家々の通路なんかは日当たりが悪いものですから、雪が解けないでそのまま残っておりました。大変に対照的な姿を私は勉強させていただきました。  そこで、本当に素朴に実感として思ったことは、ともかく未実施地区の事業というものは早急にやはりやるべきであるということでございます。痛感いたしました。そして、全国にはまだまだこうした未実施地区がたくさんある。こういう中でこの残事業、未実施地区の事業ということに対してどのように対処なさるのか、それを伺いたいと思います。
  136. 小山弘彦

    ○小山政府委員 いわゆる地対財特法が実施されるようになりましてから平成三年度というのは最終年度にかかっていく、こういう時期でございます。私どもは各年度地方公共団体等からいろいろ事業の実施状況報告を受け、そして翌年度の実施計画についてもまた情報を得ているわけでございますけれども、確かに委員おっしゃいますように、どうも平成三年度では片づきそうもないというようなところが一部あるのは事実のようでございます。私ども地方公共団体と一体となって、とにかく現時点において目指すところは平成三年度に計画どおりのものを完成させるということをまず柱としてやっているわけでございますが、どうしても残るというような事情が出てきたときには、それはそれでやはり一般対策の中で重点的にやらなきゃいけない、こういう事態にまでなってくると思います。  いずれにしましても、平成三年度内完成というようなことに重点を置いてやってまいりたい。先ほど申しましたように、ただ地元調整のおくれとかそれから土地取得の難しさ等々があって、少し着手がおくれているというようなところが出てくるようなことはあり得るかと思っております。
  137. 東順治

    ○東(順)分科員 ひとつ全力を挙げて取り組んでいただきたいというふうに私は思います。  それで、この背後にさらに千地区以上に及ぶ未指定地区があるということも思いますと、実態面が進んだとはいいながらまだまだ大きな大きなものを残しておるということが私どもの率直な実感でございまして、そういう中で最後の質問になりますけれども、今おっしゃいました明年三月で地対財特法の期限切れを迎えるということで、同和地区を抱えている市町村はもちろん、抱えていない市町村まで含めて、今、実に一千三百六市町村が、法期限後そのまま一般対策に移行させるのではなくて何らかの法的措置が必要である、こういう声を上げていらっしゃる、意思を表明されている、要望や決議いろいろなことで。また、同和行政を行っておる都府県及び政令都市で構成しております全同対も、近々その意思というものを表明されるやに私は伺っております。私はこういう自治体の声、意思、これはやはり大変に重たいものがある、したがって決して無視はできないだろう、こういうように思うわけでございます。この意向というものを尊重されるか否か、これをぜひ長官、伺いたいと思います。
  138. 小山弘彦

    ○小山政府委員 事務的な流れというものもございますので、その辺を先にちょっとお答えさせていただきます。  現在の法律が平成三年度で切れるという、これはもう行政事務の流れとしてそうなっているわけでございまして、その後どういうふうに同和問題を配慮しなければいけないのか、これをきちっと認識する、それから方向を立てるということが大事でございますから、私ども地域改善対策協議会というのを、昨年の十二月七日だったと思いますけれども、第一回総会を開きまして、この協議会は学識委員十名と、それから関係省庁事務次官十名という構成になっておりますが、そこでまず啓発も含めまして現在の事業の現状認識をやる。それから特別対策から一般対策へという移行をやるときに問題になる部分があるわけでございまして、その部分は、一部については委員御指摘になった面もございます、どのように対処しなければいけなくなるかというようなことを一つやる。それから事業の残が出たときにどういうふうにやるか、それから息長い仕事として意識する面もあるかもしれません。そういう面で今後同和問題というのはどういうふうに認識して行政をしいていくか、そういうようなことをいろいろ検討していただくということで、事業の完全実施ということと同時に、協議会における審議の状況というものを私どもも現在のところ非常に重視しているわけでございます。  その協議会におきまして広く関係者の意見を聞く、こういう場がございまして、ことしの一月に入りましてから都道府県の代表の方々の意見を聞き、それから関係団体の方々の御意見を聞きという過程を経てまいってきておりますので、その辺ちょっと事務的に御報告させていただきました。
  139. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私どもの基本的な考えは、今お話ございましたが、とにかく現在の法律の期限中に全力を挙げてやるべきものはやる、しかし、諸般の事情で残るものがあればそれは一般対策の中で重点的にやる、こういうことなんでございます。そこで、いかにして一般対策に円滑に移行するのか、できるのか、どうすべきか、こういうことについて地対協の方へ今御検討をお願い申し上げておるわけでございます。  地方公共団体というのは、これは国が主導権を持ってこの同和事業をやるわけですけれども地方公共団体は私どもと一緒になってやっていただかなければなりませんし、現在もやっていただいてきておりますので、地方公共団体の御意見は十分反映されるべきだ、こう思います。今もお話ございましたとおり、地対協でもそういう御意見というものをお聞きをしてよく意見交換をなさるということ、また事実やっておられるようでございますけれども、そういう過程の中で地対協でどういう結論をお出しになられるか、それをいただきまして、それに沿って対策を講じてまいりたい、このように考えております。
  140. 東順治

    ○東(順)分科員 ありがとうございます。  今、長官、自治体の意向を十分反映させていきたい、尊重する、このように私は受けとめたいと思います。一千三百六市町村もの多くがそういう声を上げているという、これをぜひしっかりと反映させていただきまして万全の対応をしていただきたい、このように思うわけでございます。よろしくお願いいたします。  以上で終わります。
  141. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて東順治君の質疑は終了いたしました。  次に、石田祝稔君。
  142. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 本年は太平洋戦争が始まってから五十年目の年であります。今改めて私は戦争の犠牲となられた方々の御冥福をまずお祈りをしたいと存じます。  さて、私は数点にわたり恩給の問題、特に軍人恩給を中心に質問をしたいと思います。  昭和六十三年の第百十二回国会におきまして、平和祈念事業特別基金等に関する法律案に対する附帯決議の中で、何点かお伺いをいたします。  「慰労金の支給を受ける権利の認定については、受給者の高齢化等の実情にかんがみ、速やかにこれを行うこと。」こういうふうにございます。慰労金の支給を受けようとする者は、原則として昭和六十八年三月三十一日までに請求を行わなければならない、こういうふうになっておりますけれども、この慰労金の支給対象者は何名でありましょうか。
  143. 井上達夫

    ○井上説明員 お答えいたします。  今お尋ねの件は、基金法に基づいてシベリアの戦後強制抑留者に対する慰労金の支給の話だと思いますが、対象者は二十八万余だと考えております。
  144. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 その慰労金、現在までどのくらいの方が請求をなさっておりますか。  それと続けて、昭和六十八年、すなわち平成五年の三月三十一日が請求の期限ということになっておりますけれども、これは一日でも請求がおくれたらだめだ、こういうことでしょうか、その二点をお願いします。
  145. 井上達夫

    ○井上説明員 まず一点目の、慰労金の支給に関する現在までの請求の受け付け状況でございますけれども、一月末現在で十六万五千でございます。  また、二点目のお尋ねの六十八年、平成に直しますと五年三月三十一日になるかと思いますが、請求期限ということで理解しておりますので、法律上はその期日までに御請求いただくということでお願いしたいと考えているところでございます。
  146. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 二十八万余の方が一応対象である、こういうことで事業を進めてこられて、現在まで十六万五千人ということでございますから、あとおよそ十二万人、これらの方々は、もう御自分が御存じの方はすぐに手を挙げて請求なさっているでしょうから、残りの方はなかなか厳しいのではないかと思います。そういう意味で、あと二年しか残っておりませんが、できるだけ周知徹底をしていただくようにして、当初の予定どおりの方に慰労金が行くように、私はお願いしたいと思います。  最初に長官にお伺いしたいと思いましたが、ちょっとお留守だったものですから、この恩給について、長官が恩給とはかくあるべし、こういうふうな長官御自身の個人的な見解でも結構でございますけれども、思いがございましたら、まずそのことをお伺いしたいと思います。
  147. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私の理解しておりますところでは、昔の軍人を初め、国家公務員として、昔は官吏と申したわけでございましょうが、そういうことで国家社会のためにお尽くしいただいた、国が使用者という関係だろうと思いますけれども、そういうことに対する退職後の生活の保障、このための仕組みであろう、このようにまず理解をいたしております。
  148. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 私は長官のお考えも大体そういうことだろうと思いまずけれども、基本的にはやはり国家補償という精神で、恩給、特に軍人恩給はなされるべきだと私は思いますので、まずその点を確認して、私は質問を続けてやらせていただきたいと思います。  先ほどもお話しいたしましたけれども、附帯決議の中でさらにこういう決議がございました。「恩給欠格者に対する慰労の個別的措置については、引き続き検討を加えた上、速やかに実施するよう努めること。」このようにございますけれども、具体的になされたこと、またこれから予定されていることがおありでしたらぜひお述べをいただきたいと思います。
  149. 井上達夫

    ○井上説明員 基金におきます恩給欠格者に対する個別的な慰藉事業の件でございますが、ただいま御指摘の基金法審議の際の附帯決議あるいはその後の関係者の御要望等を踏まえまして、平成元年から、恩給欠格者のうち一定の資格要件に該当する方に対しまして、書状、それからさらにこのうち七十歳以上の方には高齢の順に銀杯を贈るという事業を始めております。  また平成二年度、今年度でございますが、十月から、今の書状、銀杯の贈呈事業により書状、銀杯を受けられた方のうちから、高齢の方の順に慰労の品を贈るという事業を新たに開始したところでございます。
  150. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 これは私もパンフレットを持ってきておりますが、この平和祈念事業特別基金を利用しての制度ですか。
  151. 井上達夫

    ○井上説明員 御指摘のとおりでございまして、 いずれも基金の運用金による、果実による事業でございます。
  152. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 この平和祈念事業特別基金は、戦後処理問題懇談会というところが昭和五十九年の十二月二十一日に、いわゆる戦後処理問題は云々と、特別の基金を創設することを提唱する、こういう提言を受けて基金が設立されたわけでありますけれども、私は、基金の現在の事業の進捗状況についてお伺いをしたいと思います。  当初の目標から大きく金額等も伸びまして、現在四百億円の目標ということで基金を進めていらっしゃる、このように伺っておりますけれども、その中で、その果実をもって事業をやっていく、こういうお話でございました。その事業の対象者という方はもちろん何名ということを絞り込んでおられる、予定されていると思いますけれども、現実にきょう現在、また一番新しい数字で、その対象になっているうちの何割まで、例えば銀杯とか書状、それプラス、それをもらった人に対して新たに――多分この事業だと思いますね、パンフレットを私いただきましたけれども。どこまで現実に進んでおられるのか、その現状をちょっとお願いしたいと思います。
  153. 井上達夫

    ○井上説明員 基金でやっております事業のうち、恩欠者に対する事業についてのお尋ねだと思います。  先ほど御説明しましたように書状、銀杯それから慰労の品というものを贈っているわけでございますが、まず書状、銀杯の方の申請状況でございますが、本年の一月末、少々古くて恐縮でございますが、一月末現在までの申請者二十三万七千件でございます。これに対しまして審査その他を行った上で書状の交付が六万三千件、銀杯が約五万件、合わせて十一万三千件の贈呈を行っているところでございます。  それから、先ほど御説明しました新規の慰藉事業は、これは書状、銀杯をお贈りした方々に基金の方から連絡をとって、その慰労の品のメニューの中から一つを選んでいただいてお贈りするという事業でございまして、今年度一万件をめどに贈呈を行う予定で作業を進めておるところでございます。
  154. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 私も自分の選挙区、高知県でありますけれども、参りますと、あらゆるところで恩給欠格者の方々の悩みと申しましょうか、苦しみの声というのですか、だんだん御自分が年をとってきて、ある意味でいえば先が余りない、そういうところで何とか、自分たちが一生懸命苦労してきたことの思いというものがだんだん風化していくのじゃないか、みんなの胸の中から、頭の中から我々のやってきたことがだんだん消えていくのじゃないか、そういう思いが片やありまして、また片や正直な気持ちとしては、何か実質的なものもいただきたい、こういうふうなことをよくお聞きするわけであります。  我が党は、この戦後処理の問題をすべて平和祈念事業基金で決着をつけることは、私はこれは正直言って難しいと思います。政府・自由民主党等は、もう大体終わった、あとは慰藉事業として人人の心から風化させないようにすることが大事だ、こういう立場だと思いますけれども、我が党も、また私も、これは平和祈念事業基金で決着をつけられる、または決着がつく問題ではないだろう、私は実感としてそのように感じます。そういう立場で、またこれからこの基金の事業の進捗状況も見守っていきたい、このようにも思うわけであります。  続きまして、別の角度からちょっとお伺いをいたします。  実は私もこの「恩給のしくみ」というのを読ませていただきました。今まで余り読んだことがなくて申しわけなかったのですが、この中で「恩給計算の基礎」という項目があります。その項目で「公務員以外の期間の通算」、こういう項がありまして、そこでずっと(ア)から(カ)まであるのですが、その(カ)というところにこういうふうな文章があります。「日本赤十字社の戦時救護員としての在職期間」、これが公務員として通算されるのだよ、そしてその条件として、内容としてはこういうふうに書かれています。「日本赤十字社の婦長以上の救護員の戦地勤務に服した期間及びそれに引き続く戦後の抑留期間が、公務員期間に加えられます。」私はこれを読んだときに、「婦長以上」となぜそういうふうに切らなくちゃならないんだろう。当初は、この日本赤十字社の戦時救護員の方は全員が対象になっていなかったわけであります。それをあるとき、正式な時期は忘れましたけれども、ともかくも一緒に苦労したんだからそういう方たちも恩給の通算の対象にしようじゃないか、そういうことで入ったと私は思うのです。戦前の兵隊さんとか恩給の対象の方は、例えば判任官以上の方は恩給の対象、それ以外の方はその当時の共済組合、こういうことで分かれて入っておった。しかしながら戦後、状況が変わってきて、その赤十字の戦時救護員の方も入れる、そういう非常に温かい、ありがたい制度をやっていただいたのだけれども、その中で、その赤十字社の救護員の方を、全体として救護員がいらっしゃって、その中で婦長以上だよ、このように切ったという理由は何なんでしょうか、これをお伺いしたいと思います。
  155. 高島弘

    ○高島(弘)政府委員 ただいまお尋ねございました件でございますが、恩給というのは官吏を対象とした制度でございまして、一定の身分を持っておる方々が対象ということでございます。したがいまして、今御指摘の日赤看護婦の婦長さん以上ということでございますが、実はこれは、同様の職務にございました陸海軍の看護婦さん、この場合も、戦前から判任官以上の相当の方として婦長以上の方を対象にしておったわけでございます。その陸海軍看護婦の方とのバランスでこの日赤看護婦の方も対象に取り入れたという経緯がございまして、恩給制度としては非常にぎりぎりの処置を講じてきたというのがこの趣旨でございます。
  156. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 最初に申し上げましたように、戦前の官吏という方、いわゆる判任官以上の方はそういう制度があって、そういうことはある意味でいえば就職するときの条件と申しましょうか、暗黙の了解というか、全体的に、すべてが承知してなっていっている方はいないかもしれませんけれども、制度としてそれ以上の方が対象になるんだよ、そして文官でしたら十七年勤めたら恩給の対象ですよ、こういうことで入ってきているわけですね。ですから、それらの人たちが今いろいろ言っているわけではなくて、新たにそういう制度の、いわゆる恩給の通算の該当者、そういう制度に光を当てていただくことになったときに、全体として一緒に仕事をした方をどうしてちょん切らなくちゃいけないんだろう。制度とくっつけるときに他との均衡を図ってもちろんやられたのではないかと思いますけれども、私は素朴な疑問として、これは一つの職制上の区別というか差別というか、それ以上の人はいいよ、一緒に苦労したんだけれども、一緒に同じ所で同じかまの飯を食って血のついた包帯をかえたりしたんだけれども、私は婦長以上だから入ったよ、あなたはだめだったよ、こういうことになるんじゃないか。これは極論かもしれません。いろいろな制度があって御苦労されてやったと思いますけれども、そこのところをもう一度ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  157. 高島弘

    ○高島(弘)政府委員 先ほどもお答えをいたしましたが、恩給が一定の身分を持った方を対象とした制度であるということでございまして、陸海軍の看護婦さんの場合も、婦長以上の方だけが恩給の対象になっていた。ですから、それ以下の方は陸海軍の看護婦さんの場合も対象になっていなかった。もともと日赤の関係は恩給の対象には入っておりませんでしたが、先ほどの陸海軍の婦長さんとのバランスで、戦後お帰りになって、国立病院等の婦長としてまたお帰りになったような場合は、それ以前の日赤で御苦労された期間も通算しようということでこれが入ってきたわけでございます。そういう事情でございます。
  158. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 ちょっと納得はできませんが、どうもこれ以上お聞きしても同じようなお答えだと思いますので、ちょっと角度を変えてお聞きをしたいと思います。  この中で、看護婦等処遇経費の中で慰労金が給付されておりますね。この慰労金というものについてちょっとお伺いをしたいと思いますが、現在、元年度の金額でずっといっていると思いますが、三年以上六年未満の方で十二万円、以下ずっと数字が並んでおりますが、この数字の支給の対象の方はどういう方でございますか。
  159. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまお尋ねの件は、旧日赤救護看護婦並びに旧陸海軍従軍看護婦さんに対します慰労給付金の支給の内容につきましてのお尋ねかと思うわけでございます。  先生御案内のとおり、年数別に応じまして金額を確定してございます。平成元年度が現在の支給金額でございまして、今先生のお尋ねは、その支給金額別の対象人員ということ……(石田(祝)分科員「いや違います、この給付金の対象ですから結構です」と呼ぶ)そういう制度は、現在実施しているわけでございます。
  160. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 この対象になっていらっしゃる方は、先ほど私がお聞きしました日赤の看護婦さんは婦長以上が恩給の対象になる、こういうお話でした。そうすると、この慰労金の対象になっている方は、そういう婦長さん以上も含めて全員が対象になっているわけですか。
  161. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 先ほど御答弁申し上げました従軍看護婦及び救護看護婦さんの恩給に準じた十二年以上、戦地加算を加えて十二年以上の方を対象といたしまして慰労給付金を支給しておるわけでございます。それからもう一つ、先ほどの恩給法との関連でございますけれども、これは恩給法の対象となっておる期間は一応除いて、その他の期間につきまして十二年以上というふうに区切りをつけた方々に対してのみ支給されておるわけでございます。
  162. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 済みません、ちょっと細かいことで申しわけないのですけれども、たしか兵隊さんは十二年で、准士官以上は十三年というのが最短の期限だと思いますが、私のもらっている資料は、十二万円の対象の方は勤務期間が三年以上六年末満ということになっております。先ほどのお話ですと十二年以上、これは戦地加算も含めてだと思いますが、そうすると、戦地加算等いろいろな加算もこれはいわゆる軍人の方と同じように加算をされて、実勤務年数が三年以上あって、なおかつ戦地加算を含めて十二年以上なければならぬ、こういうことですか。
  163. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 そのとおりでございます。
  164. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 それで、これは当初が五十四年度からスタートしていると思いますが、六十年、六十四年と改定をされてきております。その改定のもとの数字というのは消費者物価指数、これをどうもお使いのようです。最近は恩給の上昇等のときは総合勘案方式とかいうことになっているようですが、今年度は予算に盛っていないと思いますので、平成四年度となりますと三年たつわけですね。そうすると、平成四年度ぐらいに見直して消費者物価指数にかかわる分ぐらい上昇の予定がおありかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  165. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまのお尋ねは慰労給付金の額の改定に関することだろうと思うわけでございます。  御案内のとおり、この制度が発足して以来、昭和六十年それから平成元年度の二回にわたりまして増額改定を行ったわけでございます。したがいまして、そのときには消費者物価指数の増高等を勘案いたしまして定めたわけでございますが、過去二回行われましたベースアップといいましょうか、過去の改定の経緯を踏まえた上で今後検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  166. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 ぜひともこのようにお願いをしたいと思います。  それから、ちょっと細かいことを幾つかお聞きしたいと思いますが、現在恩給は三カ月に一回、一月、四月、七月、十月と、これの六日に支給をされていると承知しております。私は地元の人からもいろいろお願いをされたのですが、厚生年金も国民年金も二カ月に一回来ている、恩給もぜひ二カ月に一回にしてもらいたい、こういうお話がございました。そのことが第一点。  それから、ことしに限って見ましても、一月、四月、七月、十月の六日というのがそれぞれ日曜、土曜、土曜、日曜なんですね。金融機関は、今サンデーバンキングとかもやっておりますけれども、まだまだ土、日が週休二日制とかで休みが多い。こういうふうに土、日に重なったときにぜひとも手前に出していただきたいと私は思うのです。これは現状を私もはっきり認識しないで言っているので、現状もそうであるということであれば結構でありますが、現状がそうでなければ、ぜひとも手前に出すように御検討いただけないかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  167. 高島弘

    ○高島(弘)政府委員 最初に、恩給の支給回数を年六回にということでございますが、御指摘のほかの公的年金の場合はいずれも拠出制の年金でございまして、恩給は全額国庫負担ということでやっております。そこが他の公的年金と基本的に異なっておるところでございまして、そういう全額国庫負担ということでやっておりまして、これを他の公的年金並みといいますか、掛金をもとにしたものと一緒にそろえるということはなかなかいろいろ難しい問題がございます。ただ、まだほかにも全額国庫負担でやっておる年金がございますので、そちらの動向等をよく見まして将来検討したいと思っております。  もう一点は、恩給の支給期日でございますが、六日ということでございまして、ことしの場合は土曜、日曜日に重なっていることが多いということでございます。これは私ども郵政省の方へお支払いをお願いしておるわけですが、六日というのは実は郵政省の省令で決まっておりまして、私どもの方でこれをどうしろと言うわけにちょっとまいりません。  ただ、現実を申し上げますと、先生言われたように前日に繰り上げて支給ということはやっておりませんが、かなり受給者の大半の方が振りかえ預入というような方式で支払いを受けておられるようでございまして、大半の方は土曜日になってもちゃんと通帳の中に払い込まれている、最近は土曜、日曜あたりも支払い磯が稼働しているケースが多いようでございますので、そういった点御理解をいただきたいと思っております。
  168. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 ぜひともこれはお考えをいただきたいと思います。我々も歳費をいただいているのですけれども、土曜日が歳費の日だったらちゃんと手前にもらっているわけです。これは郵政省が六日になっているからと言うけれども、六日のものを五日にしろと言っているわけじゃないですからね。六日だけれども、銀行とか金融機関が休みのとき、行きにくいときにとにかく手前にやる。これは暦を見ればことしは何日がどうなるかというのがわかるわけですから、それを前もってプログラムしていただければいいわけですし、そのあたりをぜひとももうちょっと、全体的にじゃなくて、そういう人が少しでもいたらやはりサービスする方向で考えた方がいいと私は思います。これは強くお願いをしておきたいと思います。  それから、老齢福祉年金の所得制限の基礎となっている所得、ある一定の所得以上は老齢福祉年金が出ないようになっておるわけですけれども、この恩給が老齢福祉年金の算入基礎に入っている、このように聞いておりますけれども、私はこれは外すべきではないかと思うのです。恩給は併給が認められておるわけですから、そういうことにもかんがみて、私は恩給というものは老齢福祉年金の所得制限の算入基礎から外す、こういう方向でぜひともお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  169. 江利川毅

    ○江利川説明員 お答え申し上げます。  御質問で、恩給の給付が老齢福祉年金の所得制限の所得に入っておるということでございましたが、特に内閣委員会におきまして附帯決議でありましたのは、併給制限を廃止しろという御指摘でございます。老齢福祉年金につきましては、これは御案内のとおりでございますが、昭和三十六年に国民皆年金がスタートしましたときに、既に高齢で年金制度に入れない方に対しまして、保険料の負担を求めることなく全額国庫で年金を出しておる、そういう制度でございます。したがいまして、他の制度から老後を支える給付があるという場合には老齢福祉年金の給付を御遠慮いただくというふうなことになっている次第でございます。ただ、現実に受け取っております老齢給付が低いという方もいらっしゃいまして、そういうような場合には、一定の限度まで公的な給付と老齢福祉年金を併給するという仕組みになっておるわけでございます。そういうことでございまして、恐らく先生の御指摘は附帯決議の趣旨を踏まえてのことだと存じてお答えしているわけでございますが、恩給受給者については老齢福祉年金の支給制限を撤廃するというのはなかなか難しい問題ということでございまして、御理解を賜りたいというふうに思っておる次第でございます。
  170. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 時間がありませんから、最後に、こちらのお願いということで何点か言わせていただきます。  まず第一点は、恩給は拠出していない、こういうお話がずっとさっきからありますけれども、これはそういう制度なわけですから、今さらそういうことを言うのは私はおかしいと思います。もともとそういう制度の中でやってきておるわけですから、今さら出していないから出している人との差が云々ということは、私はこれはおかしいと思います。  それから第二点目ですけれども、これは在職年の加算について、昭和十六年五月まで中支方面の加算年が三年であったのが十六年六月以降加算年が減った、そういうふうに現実に兵隊さんに行った方が途中で減らされた、こういうふうな御意見もございました。これは何とかしてもらいたい、私も強く要望しておきたいと思います。  それから、戦後恩給の通算の問題で、やはり戦後公務員になった者はそれが通算されている。しかしそれが、公務員にならなかった者で恩給該当者にならなかった人は全然何もならない。やった期間通算もされないし、年金にも通算されないし、恩給もいただけない。結局、自分たちは何だったのかなという思いがお年がいくに従ってだんだん強まってきているということを私はあちこちでお話を聞きますので、この点もなかなか難しかろうと思いますけれども、ぜひとも何かいいお知恵があればそこのところもお願いをいたしまして、ちょっと時間をオーバーしました。ひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  171. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて石田祝稔君の質疑は終了いたしました。  次に、安田範君。
  172. 安田範

    安田(範)分科員 私は、東京一極集中の問題、さらにまた自治、分権の確立の問題、財源の配分関係の問題、さらには補助金に係る問題等について若干触れさせていただきたいと思うのですが、例えば一極集中排除の問題等については国土庁、さらにまた財源配分については大蔵省、そして自治、分権ということになれば自治省、そういうようなことでそれぞれの形があろうかと思うのでありますが、そういう分野は別にしまして、これから日本の政治のあり方という関係からしまして、これは総務庁がきちんとそれらを踏まえてかじ取りをすると申しまするか、そういう方向づけをしていくというような関係も含めまして、受けとめ方としてはそういう方向で受けとめて御答弁をいただきたい、かように考えるものですから、ひとつよろしくお願いしたいと思うのであります。  一極集中の問題につきましては、いろいろ今日までたくさんの議論がありました。もちろんそれなりに政府も取り組んでまいったという状況については承知をいたしておりますが、ただ、今日の状況から考えますると、どうも一極集中というもののトーンダウン、こういう状況に来ているのじゃないか、一般的に国民にそういうふうな受けとめ方をされている向きも否定し得ない、こういう状況にあると思います。それはなぜかと申しますれば、当然のこととして計画がなかなかはかどっていかない、進捗の度合いがどうなんだろうか、こういうことが表に出てまいりませんものですから、そういうことでトーンダウンという印象を強く与えているのじゃないか、かように考えているわけでございます。  したがいまして、その前段といたしまして、長官が今日の一極集中というものについてどういうふうな認識を持っておられるか、もう一つは、一極集中についてこれを解消するための方針というものが出されているわけでありますけれども、その方針は今日どういう形で推移をしているだろうか、言うなれば進捗状況はどうなんだろうか、こういうことについてひとつ適切な御答弁をいただきたい、かように思うのであります。
  173. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、狭い日本でございますから、一極集中ということでなしに、地域全体をうまく活用して国づくりをしていくということがこれからの政治、行政の目指すべき方向だろう、こう思います。今、いろいろ土地問題等言われておりますが、あるいはそのほかにゆとりのある生活ですとかいろいろなことが言われておりますので、いろいろなことを考えてみまして、やはり国土というのはバランスをもって、多極分散という言葉が適当かどうか知りませんけれども、要するにバランスをとって、そして生々発展していくべきものだ、このように考えておるわけでございまして、決して政府におきましてトーンダウンしておるということであってはいけないし、私はないと思います。それぞれの課題につきまして、その方向に向かって諸般の施策が進められておるもの、このように理解をいたしております。
  174. 安田範

    安田(範)分科員 基本的な認識といいますか、それについては私もそのとおりだというふうに理解をいたします。ただ、今日の事業の進捗状況については、さっぱり国民の前に映ってこないわけであります。例えばそれぞれの省庁の一部を移転をする問題だとか、あるいはまた産業、企業関係の工場移転の問題だとか、いろいろ助成措置まで手当てをしましても、その実というものがどのくらい上がっているのか、その経過あるいは結果というものがさっぱり理解ができない、こういうような状況があるのではないかというふうに思うのですが、その点につきましてはいかがでしょうか。
  175. 増島俊之

    ○増島政府委員 御質問の中に二点、国の行政機関の関係とそれから企業の関係とございますけれども、国の行政機関の関係につきましては、平成元年八月に移転対象の機関、それからそれがどこに移転するかということが取りまとめられまして、その移転条件が整備され次第に逐次移転するということになっております。それで、昨年の十月に国の機関等移転推進連絡会議というのがございまして、そこで埼玉県大宮、与野、浦和地区に集団的な移転が行われます地方支分部局の移転を円滑に進めますために、集団的移転関係省庁部会というものを設けまして検討をいたしております。この移転問題につきましては、内閣官房それから国土庁中心になりまして、この移転の具体化に向けまして鋭意努力をいたしておるわけでございます。  それから企業の関係につきましては、あるいは国土庁の方からお答えすべきことなのかもしれませんが、基本の流れとしましては、先ほど長官から御答弁のありましたように多極分散型の都市形成といいますか、そういうのが基本の流れであるということで関係省庁努力しているというふうに理解しております。
  176. 安田範

    安田(範)分科員 率直に言いまして、この移転推進連絡会議ですか、そういうものがあってそれなりに取り組んでおられるという話もお聞きをいたしておるのですが、ただ、お話にありましたように最も近い埼玉県のそれぞれの市に、こういうことですね。したがって、そういう面からしますると、先ほど長官が一つの理念といいますか、これからの将来の方向としてこの狭い日本をそれぞれ均衡ある発展に、こういうことで考えた場合にそぐう立場なのか、それにふさわしい状況なのかどうか、これについては極めて疑問なしとしませんね。したがいまして、これはここで終わりという話じゃないと思いますから、ぜひこれからの問題としてもっともっと広い視野で地方移転についてはお取り組みを考え直してもらわなければいけない、こんなふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  177. 増島俊之

    ○増島政府委員 実際関係省庁が移転することになりますと、その移転先の用地の確保とか、それから職員が当然移動していくわけでございますので、その種の基本的な基礎的な準備とか庁舎等の建設とか、あるいはまた職員の勤務条件とかそういうことに係ることでございますのでそういうことの配慮とか、あるいは現在建っておりますその移転しました跡地の利用とか、いろいろあるわけでございます。したがいまして、それらの手落ちのないような準備の上で進められるというふうに理解しておりますので、やはり時間がかかると思います。ただ、一応今のあれは五年以内ということで国土庁の方の御方針もありまして、そういうことで準備をいたしております。先生の基本的なお考えは全くそのとおりであると理解いたしております。
  178. 安田範

    安田(範)分科員 時間がないものですから、残念なのですけれども大ざっぱにしか申し上げられません。  率直に申し上げまして、広く均衡あるそれぞれの地域の発展と申しますか、そういうものを目指しているということ、これは何かといえば、すべての国民が同じような生活水準が保てるように、あるいは同じような文化水準が確保できるようにと。いろいろな問題はあろうと思うのです。そういうものを含めて考えていかなければならないのが今日の一極集中排除であったり、あるいは分散型の都市ということになろうと思うのですね。そういう面からしますると、今の御答弁のように、最も近い、しかも地価も非常に高い埼玉県、そういうところを対象にして、条件がそろったのかそろわぬのかわかりませんけれども、一部国の機関を移転する、こういうふうな形そのものが言うならば趣旨に沿うのかどうか、これについては大変疑問なしとしない、このことだけは申し上げさせていただきたいと思うのであります。  私どもはずっと考えてみまするのに、あの政府案と申しまするか、それぞれの国の機関を一部移転をしましょうというふうな話が出てまいりましたら、例えば埼玉だとか千葉だとかそういうところではなしに、もう少々広い範囲の自治体が、ぜひ私の方へ来てくれないかという運動も展開をされている、こういう状況は御承知だと思うのですね。したがって、そういうものについては、今お話しのように条件が整わないとかなんとかいろいろありますけれども、条件は整えようと思えば十分整えられる話だと思いますから、そういう面でやはりもうちょっと感覚を変えて、本来の目的に沿った形でこの問題については取り組んでいただく必要があろう、かように考えているわけであります。したがって、今日の政府が考えている手法と申しますかやり方、これでは本来の目的の達成というものは極めて困難だ、こう言わざるを得ないのではないかと思います。  それで、私は、この一極集中を解消していくために、ただ移転をすればいいのかどうか、例えば省庁なりの移転があればいい、あるいは企業の移転があればいい、そういうことでよろしいのかどうかということで大変な疑問を持っている一人なのであります。そういうことで考えますると、もう一つしっかりした基本理念といいますかそういうものを樹立する必要がある。それは何といいましてもやはり地方自治、分権、そういうものをしっかりした形で整えて、そういう中でそれぞれの地域の活性化が図れる。したがって、それぞれの自治体が主体的に自主的にぜひここへ来てくださいよ、うちの方はこれだけの態勢は整えますというような形まで整えられれば政府目的も達成できるのじゃないかと思うのです。  言うならば、今日の一極集中解消のための手だてというよりは、むしろその実を上げるためには、それぞれの自治体の活性化、分権、自治の確立、こういうものが前提にならなければこの問題はとても解決しないのではないかというふうな気がするのですが、御所見はいかがでしょうか。
  179. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 現在決まっておりますものにつきましては、先ほど来お話のございますような経過のもとに決まって現在進められておる、こういうことであろうと思いますけれども、大きく考えますと、私はおっしゃるとおりだと思います。やはり国の全体のバランスを考えながら、国の機関もバランスをとって配置すべきものである。それは、個々のものにとりますといろいろな事情がありましょうけれども、そういう大きな視野でとらえて対応すべきものであると考えます。  それから、今お話ございましたように、そのためにはやはりいろいろな努力が必要ですけれども、それぞれの地方で十分受け入れ可能なそういう基盤をつくっておくこともこれまた必要なことだ、こう思います。  私は、これは私見にわたりますけれども、地方分散と申しますか多極分散と申しますか、一極排除と申しますか、これを進めていきますためには、言われております四百三十兆の公共投資、こういうものもそういう頭でもって配分して実行されてしかるべきものじゃないだろうかな、そう思います。そういうことをやって、地方が活力を持って、そして受け入れ態勢も十分できる、そういうようなことをしながら両々相まって進めていかないと、なかなかこの多極分散型の国土形成というのは難しいのではないか、そういうふうなことを考えております。
  180. 安田範

    安田(範)分科員 時間の関係もありまして細かいことを申し上げられなくて残念なんですけれども、率直に言って、この過度の一極集中排除ということにつきましては、やはり国土全体の均衡ある発展だとか、それに伴う国民生活の安定、さらにはいずれの地域においても同じような人間らしい生活ができる、心豊かであってゆとりのある生活が持てる、こういうことが基盤になってこういう発想が出てまいったと思うのですね。そういう面からしますると、やはり一極集中、これを排除するということができればいいですけれども、例えば、政治的にもあるいは経済的にもあるいは金融、情報、たくさんの問題ありますが、そういうものを押しなべて集中排除といいますか、一極集中にならないような方向というものがとれればいいのですけれども、なかなか今日の世界、言うならばグローバルに見た形での経済の問題やらあるいは政治の問題を考えますると、なかなかそこまでは行き着くことができない、こういうような外的な条件というものも否定するわけにはいかないと思うのですね。とすれば、この考えている一極集中排除という考え方の実をどう上げるか、このことはやはり絶えずついて回らなければならない話だろう、こう思うのですね。  そういう面で考えますると、私はどうしてもやはりこの際、地方の権限をさらに強めること、あるいは財源の配分というものをもっと充実させること、このことが極めて肝要であろう、かように強く思うのでありますが、それについてはどうでしょう。所管が違うということではなくて、グローバルな見方でひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  181. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私は、国全体を見まして、片一方では過密地域がある、そこでいろいろな問題が出てきておる、他方では過疎地域がある、そこでまたいろいろな問題が出てきておる、こういうことを考えますと、国づくりの面で、あるいは国の活力を高めていくという面でやはりこういう問題は解決しなければならない、かねがね信念としてこう思っておるわけであります。  今までは、いろいろな国際的な競争とかなんとかということで、そういう一極集中と申しますか、そういう物や金や人を集中して、そして効率的な経済をつくる、これは必要だったかもしれません。私は必要だったと思います。しかし、ここまで来ますと、やはりそれを見直しをしてバランスをとっていくという考え方が絶対必要であろう、こう私は思っております。  それから、行政につきましては、やはり身近なところでやるのが一番大切だ。したがって、国からなるべく地方へおろす、その地方も県から市町村へおろす、こういう流れが必要であろうと私は思います。当然、それに当たっては財源の再配分もやるべきものだ、私はこういう基本的な認識を持っておる次第でございます。
  182. 安田範

    安田(範)分科員 佐々木長官、今の御発言、私は評価に値すると思います。政府全体がそういう考え方になってくれれば、もう少し民主的な財政運営あるいはまた地域の活性化、こういうものも当然期待できるのじゃないか、かように思うのですが、なかなか今日の政治の流れはそうではないようであります。非常に残念ですけれども指摘せざるを得ません。  そこで、一言申し上げれば、今日政治あるいは財政、そういう面での枠組みといいますか流れというものは、一つはやはり大変大きな部分を補助金で賄っているという状況があるのですね。本来ならば交付税にしまして、言うなれば自主財源にしてそれぞれの県や市町村が独自の計画をきちんと進められる、その地域に合った特性ある政治ができる、こういう形でどんどん進められ、一番住民と密接な政策実現という道をたどると思うのですけれども、今日そういうわけにはまいりません。  御承知のとおりなんですけれども平成二年度の予算の中では、一般会計が約六十六兆ですか、そしてそのうち十五兆円が補助金でしょう。そのうち、民間の高等学校とかその他の補助金がありますから、それが約二〇%ぐらいあるのですかな。ですから、実際には八〇%ぐらいの補助金によって賄われる、こういう状況になってきているのですね。そういうことになりますると、当然のこととして、ひもつき財源ということになるわけですから、自治体の勝手な計画、勝手な政策は推し進めることはできないという話になってしまいまして、特性がそこで芽を摘まれるという状況があるわけですね。  したがって、今長官から御答弁いただいたように、特に財源の再配分、これについては今後機会をとらえるごとに私も主張してまいりたいと思いますし、ぜひ閣内におきましてもその御発言の内容というものを内閣に反映させるようにひとつ御努力をいただきたい、このことを強く要請しておきたいと思うのであります。  そこで、出てまいりました補助金の関係について申し上げてみたいと思うのですが、長官は国家公務員もおやりになったり、あるいは秋田県ですか、県の高級役人ですか、高級職員ですか、言うならば県幹部もおやりになった、こういう経験をお持ちでありますね。したがって、そういう面からしますると、みずから御経験なさっておられると思うのですけれども予算編成期になりますと大挙して陳情行動が行われるわけですね。  御承知のように、憲法第十六条の国民の権利としての請願とか陳情とか、そういう意味ではありませんけれども、自治体として、ぜひこの事業に補助金をつけてくれとかこの事業を優先的に採用してほしいとか、そういうことを盛んにやるでしょう。これは大変なものです。私はすさまじい勢いだなと考えているのですが、十二月の時期になりますると、一つの県で大体延べにしますると五百人ぐらいは普通でしょうか。これは大変ですよ、全国ですから。もっともっと数が多いかもわからない。しかも、遠隔の地におきましては三泊四日、いや四泊なんという、そういう状況予算要求の行動をやるわけですよ。これはどういうものかというふうに私は考えているのですが、その行為というものについて長官はどんなふうにお考えになっておられるか、ひとつお聞かせいただけませんか。
  183. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 これは、自分のところの補助金をたくさんもらうために運動しておる人もあるだろうと思いますけれども、自分らの抱えておる仕事全体を国家予算の編成の中で確保していきたい、例えば社会福祉なんかやっている人は社会福祉全体を大きくしていきたい、そういう意味の陳情とかいろいろなものはあるだろうと思います。私は、それが悪いのかと言われますと、一概に悪いと申し上げるわけにはまいりませんが、いいのかと言われますと、あれでいいのだというふうにも申し上げられないわけでございまして、いずれこれからのみんなで検討していかなければならない課題だろうと思います。
  184. 安田範

    安田(範)分科員 答弁しにくい話だと思うのですよ。私も実は三十年近く地方議員なんかやってまいったものですから、私自身もその行動に参加をしたことがあるのです。しかし、そういう反省の上に立って、これは不思議な話だ、こんなことでいいのかな、こういうことをしみじみと感じつつ今答弁を願っているわけなんです。  率直に言いまして、今お話しのように、言うなれば国全体の制度、政策を要求していくということの陳情であれば、それなりの効果というものはあっていい、なければいけないと思う。ところが、実際の陳情行動はどうかということになりますると、今の長官の話とは全く違った形で、私のところの農業改善の仕事をやらしてくれとか、あそこの橋を何とか予算化してくれないかとか、道路をひとつ補助してくれ、こういうことの方が多いのですよ、率直に申し上げますけれども。御承知でしょう。そういう面で考えますると、そういう行動が全国各地から来るわけですね。そうでしょう。受ける方の側は、窓口は一つです。それぞれの省庁別に、事業ごとにそうですから。同じようなことについてたくさんの陳情がある、そのことに対してどうさばいていくのかという一つの問題点があると思うのですね。  この間ちょっとよその人に、よその人といいますか政府の関係者にお話を聞きました。そうしましたら、熱意があるというふうに見られるんじゃないでしょうかという答弁が返ってきたのですよ。こんなばかな話があっていいのかなと思って、実は私も考えました。強い要請があったところにだけ、あるいは何かの別の圧力がかかったところにだけ予算が多目に配分をされるとか、運動がなかったから予算が少なかったとか盛られなかったとか、そんなことがあっていいはずはないですね。  これは、あくまでも財政運営というものは公平、公正の原則というものを基盤にして運営されなければいけないはずですから。本来はやはり省庁ごとに全国の実態というものを事業別にきちんと見きわめて、最も必要度の高いもの、緊急度の高いもの、これは何だという見きわめをすることが大切だと思うのです。そのために、いろいろなヒアリングもやっているわけですから。そういう面からしますると、陳情がずっとのべつ幕なし、同じような陳腐な行動をやり返すというのは、今日の日本の体制というものは大間違いではないかと私は考えているんです。  どうなんでしょう。率直に申し上げまして、これは人の力もあるいは財政に関しましても大変なロスです。これが全国規模でやられているのですから、これは一体日本のどういう政治の姿なのかな。言うならば、大変失礼なんですけれども、高級官僚の人は陳情されて優越感に浸る場所があるのかもわかりません。しかし、それは今どきの状態では余り歓迎されない話ではないかと思うのですね。官僚の皆さん、優秀ですから、もっとみずからの判断というものを毅然と持つということ、そしていろいろな話があっても、きちんと説明をして予算の配分を公正にやっていく、これだけの自信というものがなければいけないんじゃないかと思うのです。言うならば、陳情によって強いところが多くもらえるという保証があるのでしょうか。  答弁の時間がないから私は一人でしゃべっているんだけれども、本当は答弁してもらいたいんですよ。もう一つお願いします。答弁してください。
  185. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 これは補助金制度に絡む問題だろうと思うのですけれども、私は、この補助金というのは国全体での行政水準を確保していくというために必要な部分もたくさんあると思うのでございます。しかし、できればこれは地方が自主財源を持って自分自身のところで町づくりや村づくりの設計をして、そして自由にやれる、こういう体制が私は望ましいものだろうと思うのです。そして、そのためには、地方もやはり専門技術的に勉強したり能力を持ったり体制を整える、こういうことも必要だろうと思うので、これは両々相まっていかなければならぬのじゃないか、こう思っております。
  186. 安田範

    安田(範)分科員 長官の言われる話は私も理解ができます。  ただ、全国的に一つの水準を保つための補助金、これは当然だと思うのですが、そういうことだけではなしに、本来は地方の権限にゆだねてもいいという事業は、実際には数限りなくあるわけですよ。そういうものを放置しておいて、国の方で財源をしっかり握っている、それを補助金でつまんであげる、それはやはりひもつきになったり、時には利権の温床にもなりかねないという指摘も今日までずっとあったわけですから、そういうことを含めて反省すべきが今日の状況ではないかと思うのですね。  先ほど申し上げましたように、強い力で陳情されれば、あるいは圧力をかけられればそこに厚い補助金が行くというようなこと、現実にあるのでしょう。あるから多分やっているのでしょう。なければあんなばかな話はやるはずがないんですよね。ばかと言っては大変失礼だ。私は田舎者で言葉が悪いものですから、不穏当な言葉があったらそれは訂正をいたしますけれども、いずれにしても不必要な行動です。ああいうものがもし長官の言われるようにそれ以外のものとしてあるとすれば、本来公平にやられるべきものが力の強いところに多く行くということはないよというふうな話があるとすれば、あの陳情というものはまさに無益の行動、こう言わざるを得ないと思うのですね。だからその辺をやはり今日の政府自体がきちんと整理をしてくれないと困るんじゃないかと思う。  もう一つは、今長官が答弁されましたけれども、それぞれの地方自治団体の中でももっといろいろな知識あるいは技術、そういう面で錬磨をされてという話がありました。しかし、今日は大分変わってまいっていますよ。いずれの地域におきましても、いろいろな仕組みもありますしあるいは研究機関も相当整備をされている、企業もそれなりにそれぞれの研究機関を持っているという状況がありますから、そういう意味ではもうちょっと地方を信頼してよろしいんじゃないかと思うのです。地方を信頼しなさいよ、そして権限も移譲する、財源についてもきちんと配分をするものは再配分をする、そういうシステムをつくっていかないと、これからの日本の政治というものは、なかなか考えているような地域の活性化あるいは国民生活の全体の水準の向上、こういうものまでは到達し得ない、かように考えるわけであります。  時間がちょうど参りましたから、以上で私の質問、意見を交えましたが、発言を終わらせていただきます。  なお、これらの問題についてはまだまだたくさん私申し上げたいことを持っておるものですから、後の機会にまた関連をして触れさせていただく、このことを申し上げまして終了いたします。ありがとうございました。
  187. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて安田範君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  188. 新村勝雄

    新村分科員 賞勲局局長お見えですね。私は、栄典制度についてお伺いをいたしたいと思います。  栄典、これは賞勲局では叙勲、それと叙位は別ですか。賞勲局では勲章、褒章、記章、これをおやりになっているということですか。そうしますと、栄典には位がありますよね。位とそれから勲章、褒章、記章とありますが、これは統一的に、同じ栄典ですから両方同じようにおやりになることの方がいいのじゃないかと思いますけれども、これはなぜ分かれているのでしょうか。
  189. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃったように、勲章、褒章、記章、それからおっしゃられました位階、これは栄典というふうになっております。ただ、位の方だけは昔からのいきさつがございまして、従前賞勲局は今言った、私どもが今現在持っているその範囲のことをやっていたわけでございます。それで、位の方といいますのは宮内庁、昔は宮内省と言ったそうでございますが、宮内省が所管しておった。どうして宮内省かといいますと、位というのはどうも宮中席次の話であるということでもって宮内省が所管しておりまして、戦後になりましていろいろな機構改革があったときに、総理府でございますが人事課がそれを引き取っている、こういう経緯がございまして現在のような状況になっているわけでございます。以上でございます。
  190. 新村勝雄

    新村分科員 この位、叙位ですね、叙位と叙勲とは、これはお互いに関係があるわけですね。当然あると思います。我々が見ておりますと、高い位を授けるけれども勲章は割合に低いというようなケースもありますし、勲章は高いけれども位は低いというのも見られますが、この両方は当然相関関係があるんでしょうね。その場合に官庁が別ですと、もちろん連絡はおとりになるんでしょうが、どういう相関関係があるんでしょうか。
  191. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 先生おっしゃられたように、非常に似ているといえば似ているわけでございます。といいますのは、両方とも戦前は公務員が、民間の人に関係なく公務員、要するに軍人と官吏を対象とした制度でございましたので、そのときの同じ身分制度のもとでございましたので非常に似ているのでございますけれども、若干ずつ違うようでございます。詳しいこと、実は位の方はやったことございませんので何とも答えようがないのですが、ほぼ八割か九割方ほとんど似ています。ただ、勲章の一等が向こうの一位になるのじゃなくて、勲章の一等が向こうの大体三位くらいにはなるという平行移動の関係でもって平行している。ただ、公務員の年数のとり方などのところにちょっと戦前からの違いが尾を引いているのがありまして、それで若干ずつ違ってくる面はあるというふうに私理解しておりますが、詳しい話になりますとちょっと私も答える能力ございません。
  192. 新村勝雄

    新村分科員 これは人様の叙位、叙勲を拝見すると経験的にわかるわけでありますけれども、勲章の一等は大体正三位、従三位ですね。ところが従三位勲二等というのもある。従三位瑞二というのもありますよね。従三位勲三等というのは余りないのですかね。必ずしも一致しないということですね、それでわかりましたが。  それから、これは所管外ですけれども、叙勲については叙勲基準というのがありますね。昭和三十九年四月二十一日閣議決定で、これは公表されております。これは叙位についてもやはり叙位基準というのがあるんでしょうか。所管外だからこれはお答えできませんか。
  193. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 所管外でございますので余りはっきり申し上げられないのですが、位階令という戦前から引き継いだものを、現在どうなっているか知りませんが、少なくとも本体の方というのですか、その位階令が仮に今でも生きておるのか死んでおるのか私わからないのですが、その実体の方というのですか、先例の方として残っていて、したがって、全然ないわけではなくてそういう意味ではあるというふうに考えますが、出せという話になってきますと、私の方も所管ではございませんので何ともお答えできかねるのでございます。御了承願いたいと思います。
  194. 新村勝雄

    新村分科員 それでは勲章、褒章、記章だけに限ってお伺いをしますが、この勲章、褒章、記章は、栄典制度はいずれも明治憲法時代からの慣例を引き継いでいるわけですね。いろいろ経過は知っておりますが、経過はありましたけれども、法律事項ではない。  それで、上位からでは、菊花章が二つある。それから旭日章が八等から一等、一等が二つある、 一等のさらに上がある。それでこの菊花章については、大勲位菊花大綬章それから大勲位菊花章頸飾、これは最高のものでありましょうから。これは男性だけですね。それから旭日章は八等から一等さらに一等と九等級に分かれているのですが、これもやはり男性だけ。それから宝冠章は八等から一等まで、これは女性だけ。瑞宝章は八等から一等まであって、これは男性、女性両方に授けられる。それから文化勲章、これは等級はない。これは文化の発達に卓越した勲功のあった方に授けるということでありますね。  そうして問題は、やはり男女が平等でない、こういうことが言われるわけですよ。女性の宝冠章は八等から一等まであって、これはまあ女性だけですけれども、言ってみれば旭日章に対応するものですね。女性で男性の旭日章に相当する勲功のあった者には宝冠章をやる。それから端宝章、これは男女ともに授けるけれども、男性の旭日章及び女性の宝冠章よりも一段下がる。同じ等級であっても、同じ勲一等であっても、瑞宝よりは宝冠章及び旭日章の方が上だ、こういうことになっているようであります。そうしますと、女性は勲一等宝冠章が最高ですね。それ以上は女性の勲章はない。皇太后さんでも皇后さんであっても皇族であっても、最高は勲一等宝冠章ということですね。  一方、男性は勲一等旭日大綬章が勲一等宝冠章に当たるわけですね。それで、勲一等旭日桐花大綬章になりますと、これは勲一等宝冠章及び勲一等旭日大綬章よりも上位だ、それから菊花章はもちろん上位だということになって、しかもこの勲一等旭日大綬章及び菊花章は男性だけにしか授けられない、女性には授けられないわけですね。そうなりますと、これは明治憲法時代の思想でしょうが、明らかに男性と女性とが差別があるということになるわけなんですが、この問題については新憲法が決まったときに、新憲法の中にも栄典という言葉がありますから、一部には――一部にはというか、人間に差別をつけるものだという議論はありますけれども、憲法では栄典というものを予想しておりますから、現にそういう制度があるわけですから、これはやはり新しい時代に即応した運用があってしかるべきではないかという議論があるわけでありますが、その点についてはどうお考えですか。
  195. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 何点か御質問があったかと思いますが、まず第一点申し上げますと、新しい時代の新憲法に則してというお話でございますが、これは先生もとうに御存じのように、政府としましても、三回ほど国会に提出して結局成立しなかったという点がございまして、その時期がちょうど昭和三十年代最後になっていた。日本の復興がなってきて、国連にも加盟して戦後の復興がなったときに、一生懸命働いた方々が非常な高齢になっておって、これ以上もう栄典なしというわけにはいきますまいというので、国会は通らなかったけれども、その状況を踏まえまして、当時の内閣におきまして、まだ制度としては生きていたわけでございます、勲章制度自身は。それで、生きていた制度を活用させて生存者叙勲を復活した、こういういきさつがございまして今日に至っておるわけでございます。  それからもう一つ、最初の方に先生がおっしゃっておられました旭日章あるいは宝冠章、瑞宝章の関係でございます。栄典制度といいますのは、先生も先ほど御指摘になられましたように、明治時代につくった古い制度でございます。したがって、新しい制度にそぐわないのじゃないかという面がないわけじゃないのですけれども、そうであるならば現在ある勲章の運用の面で何とかカバーしていけないものかということでもって、生存者叙勲が始まってからもう四半世紀たつわけでございますが、その間にいろいろ努力をしてきたわけでございます。  先ほど一番上位の勲章の菊花章というものを女性には出せないのじゃないかという話でございますが、現実には、日本の国民に対しましては出した経験はございませんが、外国の元首、エリザベス女王等に対しまして菊花章の頸飾を出しております。それから、アキノ・フィリピン大統領、この方にも菊花大綬章を出しております。こういう格好でもって、運用の面でそういう点を補っていこうという考え方でもって古い制度を活用しながらやってきているのが現在でございます。
  196. 新村勝雄

    新村分科員 法制化しようとしたときの経過はよく知っておりますし、それはいろいろ経過はありましたけれども、このときの構想としても、やはり従前のものを踏襲するということだったのでしょうね。恐らくそうだったと思いますよ。  そこで、男女同権といいますか、男女を同じように扱うという構想はそこにもなかったのではないかと思いますが、法律として整備することはなかったわけですが、旧来のものを踏襲しているわけで、栄典というのは、これはまさに栄典ですから、古い伝統を無視することはできませんし、古いものを守っていくことがかえって権威を高めるということは言えると思います。言えると思いますが、ただ、気になるのは、先ほど申し上げたように、男女が明らかに差別をされているという運用がどういうものであるのか。今お答えでは、国内の人、これは皇后、皇族を含めて国内についてはやらないけれども、外国の元首等については菊花章頸飾あるいは菊花大綬章を贈っているということになりますと、そこらの点も運用の点でどうかという気がするわけです。それからもちろん勲一等旭日桐花大綬章も、旭日章は全部女性にはやらないということですから、そうなってくると、外国の元首については、外国人については男女平等だ、男女の区別はしない、国内だけは依然として今までの伝統というか慣例を守っているというあたりの整合性といいますか、それはどうなるのでしょうか。
  197. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 二つ御質問があったと思いますが、一つは、先ほど私も申しましたように、日本では勲等の話じゃなくて、該当者がいなかった、したがって出てこないというふうにも考えられるわけでございます、現実には。私どものところに申請が来ませんので、例えば菊花章の大綬章を出してください、あるいは菊花章の頸飾を出してくださいという申請がなかった、出さないというよりは、先に確かに該当者がいなかったというふうにまず一つ考えられます。外国人につきましては、エリザベスさん、それからアキノさんという方々に出しておりますので、今後出てくれば、これらの例に倣ってそのとき考えざるを得ないのじゃないかと考えておりますが、先生おっしゃるように、それなら例はあるかと言われますと、これはございません。これが一つでございます。  それからもう一点、先ほど勲一等の中には瑞宝章は共通にある、その上に、男性に対しては旭日大綬章と桐花大綬章があります、女性に対しては宝冠章だけじゃないですかという話でございますが、これもいろいろ考え方があるわけでございまして、現実に候補者が挙がってこなかったものですから、私たちも具体的に一つの例を出すというわけにはいかないのでございますけれども、考え方は、例えば運用の面で一等の中に瑞宝章というここまでのものがある、その上に、同じ一等の中でございますから、男性については、これはちょっとぜいたくかもしれませんけれども、旭日大綬章と桐花章がある、女性の宝冠章の方はその両方をカバーしているんだ、要するに功績の大きさをカバーする勲等の範囲でございますが、これは紙一枚の話じゃございませんので、ある程度各勲等ごとの幅がございますので、そういう考え方もあり得ようと思います。  あるいはまた、おっしゃられるように、そうじゃなくて、やはりそれに該当するような勲章を考えるべきじゃないかというような課題も一方ではあることも私どもは否定しませんけれども、いずれにしましても、先生おっしゃられたことも一つ課題だというふうに心得ておりますが、現時点ではそのように私どもは考えております。
  198. 新村勝雄

    新村分科員 そうしますと、今まで女性では大勲位をもらうような人がいなかった。将来、女性の総理が出たり、女性で抜群の功労のある人が出た場合には大勲位を国内の女性でももらえる、もらえないことはないんだというふうに解釈していいわけですか。  それから、旭日章については、旭日章に対して宝冠章があるのでしょうから旭日章を女性にやるというのはおかしいのでしょうが、宝冠章は八等から一等までで、今おっしゃったように一等は男性の桐花章と大綬章を両方含むのだ、そういう解釈もできると思うのですけれども、それだったら、女性でそういう該当者が、抜群の功績のある人が出た場合には桐花大綬章を女性に上げるという道を開いてもいいだろうし、また、おっしゃったように菊花章についてもそういう大人物、大功労者が出た場合には女性に上げられるというふうに解釈できるわけですか。
  199. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 これは法律論とかあれではなくて、明治時代のものの運用論で考えざるを得ない、現実はそういうわけでございますが、例えば戦後、菊花章の頸飾を授与された方は、吉田茂元総理、佐藤栄作元総理でございますが、女性でそういうような方が出たときにこれは果たして宝冠一等でいいのか、これは当然の議論になって、現に出てきていないので私は何ともこの場で実態上の話ができないのですが、私どもとしてはそういう検討をせざるを得ないというふうに考えております。
  200. 新村勝雄

    新村分科員 わかりました。  その次に、褒章というのがありますね。紅綬、緑綬、黄綬、紫綬、藍綬、紺綬とありますが、緑綬というのには孝子節婦という言葉がありますけれども、孝子節婦という言葉が新憲法下で必ずしもなじむかどうかということもあります。そこで、実際に六つありますけれども、六つの褒章が年間どのくらいいただいている方があるのか、数は。
  201. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 お答え申し上げます。  紅綬褒章でございますが、これは最近ございません。緑綬褒章と紅綬褒章は昨年ございませんでした。そのほかの褒章で申しますと、黄綬褒章は六百二十一、紫綬褒章六十九、藍綬褒章九百十九、それから寄附をした方に差し上げる紺綬褒章というのがございます。これが多うございまして八百五十七、こういう数になっております。
  202. 新村勝雄

    新村分科員 それから、この紺綬褒章、これは私財を寄附されたということですが、これは今でも五百万ですか、五百万以上。そうすると、五百万というのを決めたのはかなり前だと思いますけれども、そこらの点は――結構です、時間がありませんから。  次に、記章ですけれども、記章については従軍記章と記念章ということですね。従軍記章は、当然これは新憲法下で予想されないということでしょうから、しかも二十一年の三月に、大東亜戦争従軍記章、支那事変従軍記章は廃止をされたということですね。そうすると、それ以前の従軍記章は生きているわけですか、それが一つ。それから廃止されたということは、授与されなかった、授与されたという行為が取り消された、消えたということですか。
  203. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 第一点の、それ以前のものは現在まだ生きているということでございます。ただ、もらった方々はもう御存命じゃないかもしれません。それから、授与されてそれが、金鵄勲章と同じでございまして、要するに持っているけれども、それはもう栄典としての価値がないのだ、こういうふうになっているわけでございます。取り上げたというようなことではございません。
  204. 新村勝雄

    新村分科員 そうすると、これは国が授与したというその行為を取り消したということですか。それとも、行為は行為としてこれは取り消したのじゃないけれども、その授与した記章そのものが消えたということですか。そこらのところを。
  205. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 これはやはり金鵄勲章と同じでございまして、授与したこと自身は過去の事実でございますので、それを取り消すというわけにいきませんので、要するに、持っていてもそれは栄典としての価値はないんだ、言葉は悪いのですが、言ってみればワッペン、そういったようなものだという話になるわけでございます。
  206. 新村勝雄

    新村分科員 それからもう一つ、記念章というのがありますが、記念章については、過去において十二種類出ているということのようですね。記念章は取り消されないわけですね。それで、新憲法になってから記念章は幾つぐらい出ていますか。
  207. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 一件もございません。
  208. 新村勝雄

    新村分科員 そうすると、記念章というのは従軍記章と違いますから、国家の大きな記念行事があったという場合には出すことはできるわけですね。出すことはできるけれども、戦後はそういうこともなかったということですね。ただ、今後は出す道はあるということですか。
  209. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 今後は出す道はあろうとは思いますが、非常に難しいと思いますのは、戦前に出しました記念章の配るというのですか、授与する相手方を考えてみますと、大体公務員、例えば最近の事例でいいますと、即位の礼みたいなことがありますと、戦前はやっていたわけでございます。その人たちは即位の礼にやはり公務員がいろんな形で協力されまして、そこでいろいろな係員になったり企画委員になったり、いろいろな役についたりしてやる、その人たちに広く配っておったという話になっているわけでございます。  そうすると、戦後もしそういうのをつくるとしたら、そういう人たちだけで配って、果たして範囲はいいのか、この問題があろうと思うのです。国民全部が祝うのだから、それなら全員に配ったらどうだ、こういう議論もあろうかと思いまして、難しい問題がありますが、多分そういう話になりますと、なかなかつくる機会というのはないのじゃないか、かように考えております。  しかし、先生お話のことですと、つくる道は開かれていることは確かでございます。
  210. 新村勝雄

    新村分科員 いろいろの御答弁で、制度的にはやはり男女の区別があるように見えるけれども、実際の運用で基本的には男女区別はないのだというふうに了解してよろしいですか。
  211. 稲橋一正

    ○稲橋政府委員 少なくともそういう方向に持っていくように運用は努めていきたい、かように考えております。
  212. 新村勝雄

    新村分科員 ぜひ男女区別がないように、事実上の運用としてそういうことがないように、ひとつ運用をお願いをいたしたいと思います。  以上で終わります。
  213. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて新村勝雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総務庁についての質疑は終了いたしました。     ─────────────
  214. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 次に、裁判所所管について審査を進めます。  最高裁判所当局から説明を聴取いたします。川嵜事務総長。
  215. 川嵜義徳

    川嵜最高裁判所長官代理者 平成三年度裁判所所管歳出予算要求額について御説明申し上げます。  平成三年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は、二千六百七十五億一千二百六万円でありまして、これを前年度補正後予算額二千六百八十億二千九百八十七万二千円に比較いたしますと、差し引き五億一千七百八十一万二千円の減少となっております。  これは、裁判費において一千八百二十七万六千円、施設費において六億六千三百十四万八千円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において八億九千五百四十四万円が増加し、退職手当等の減少により、人件費において二十億九千四百六十七万六千円が減少した結果であります。  次に、平成三年度歳出予算要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。  まず、人的機構の充実、すなわち増員であります。  民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び工業所有権関係事件の適正迅速な処理を図るため、判事補五人、裁判所調査官二人、裁判所書記官十五人、裁判所事務官四十八人、合計七十人の増員をすることとしております。  他方、定員削減計画に基づく平成三年度削減分として、裁判所事務官等三十七人が減員されることになりますので、差し引き三十三人の定員増となるわけであります。  次は、司法の体制の強化に必要な経費であります。  裁判運営の効率化及び近代化のため、庁用図書等裁判資料の整備に要する経費として六億八千百五万九千円、複写機、計算機等裁判事務能率化器具の整備に要する経費として七億一千七百八十二万七千円、調停委員に支給する手当として五十二億五千七百三十五万三千円、裁判費の充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十四億五千九百五十九万円、証人、司法委員、参与員等旅費として七億百二十七万一千円を計上しております。また、裁判所施設の整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百十一億二千百九十六万七千円を計上しております。  以上が平成三年度裁判所所管歳出予算要求額の大要であります。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  216. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  217. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山中邦紀君。
  218. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 私は、最高裁判例集の編さん方法について質問をいたしたいと存じます。端的には、刑集四十三巻十三号千三百二十六(四百八十六)ページの八行目の注記二行に関してであります。その内容は後で申し上げます。  これは、いわゆる岩教組事件と言われる、昭和四十九年春闘のストライキに関する地方公務員法違反事件の平成元年十二月十八日最高裁第一小法廷判決の、判決の後に続く検察官上告趣意の内容に関するものであります。なお、この事件は、一審無罪、二審検察官の控訴棄却、そして、ただいま申し上げました最高裁判決におきまして原判決破棄、仙台高裁への差し戻しということになった事件であります。したがって、申し上げました控訴趣意は、検察官が最高裁に提出をしたものでございます。  ところで、最高裁判例集の編さんは、どのような経過でなされておりましょうか。
  219. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所判例集の編さんにつきましては、最高裁判所の中に判例委員会という組織がございます。そこの判例委員会で登載する判例を決め、または登載する場合に判示事項をどういう表現にするか、あるいは判決要旨、決定要旨をどうするか、どの範囲の上告趣意書等を登載するかということを決めていただいております。
  220. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 最高裁判例委員会、これはどのような委員で組織をされておって、だれに責任を負う委員会ですか。
  221. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所判例委員会の委員と申しますのは六名おりますが、現在は各小法廷、第一、第二、第三、三つの小法廷がございますが、そこから二名ずつの裁判官に出ていただきまして、六名の委員で構成いたしております。その他、幹事というのがございまして、最高裁の調査官等が幹事をいたしておるところでございます。
  222. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 事務的に扱う部局はどこですか。また、答弁に立たれておる局長はこの判例委員会に参加されたことがありますか。下級裁の場合であっても、事務当局としてもその場所に臨まれたことがございますか。
  223. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 最高裁判所から公式に発しております最高裁判所判例集の刊行は総務局が所管いたしております。そんな関係で、私は、所管局の局長ということでございます。また、判例委員会の関係では、総務局長として出ることはほとんどないのでございますが、昔最高裁の調査官をしていたこともありますので出席したこともございます。
  224. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 最高裁判例集を編さんする理由はどこにありますか。また、どういうところへ配付をしておられますか。
  225. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 何と申しましても最高裁の判例というのは、日本の最上級裁判所の判例でございますので、それを公にいたしまして、我が国における法律学の進歩のための一つ研究資料とする意味がございますし、また実務上非常に参考になるものでございますので、裁判官初め裁判所内部に知らせ、あるいは弁護士、検察官にもお読みいただきたいということで編んでいるものでございます。
  226. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 財団法人最高裁判所判例調査会、これが編集兼発行者になって、最高裁判所判例集、これが販売されているといいますか、売られているわけでありますけれども、これと、最高裁が編んだ最高裁判例集との異同関係はいかがでしょうか。
  227. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 失礼いたしました。先ほどお尋ねの一部にしかお答えいたしませんでしたが、私ども最高裁判所の方で出しておりますものは裁判所部内用が基本でございます。それに、最高裁判所から、例えば国会その他、他官庁に提供するもの、あるいは資料の交換をいたしております団体等に提供するもの、そのために最高裁判所で編んだものを使っております。  それ以外に、学者個人あるいは弁護士さん個人がそれぞれお買い求めになるものにつきましては、先ほどの判例調査会というところが売っているものでございまして、市販用は判例調査会の方で出している、こういう関係でございます。
  228. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 ところで、本件で問題にしたい判決は、判例集におきましては事件の表示、当事者の記載、それから判示事項、判決要旨、そして主文、理由、こう続きまして、本件は検察官上告でありますから上告趣意、さらに参照として一審判決の主文及び理由、二審判決の高等裁判所刑事判例集三十九巻四号に記載されている旨の注意書き、こういうふうに順を追って印刷がされているわけでありますけれども、最高裁の判例集におきましては上告趣意あるいは上告理由が必ず登載されているものか、またその登載の理由はどこにあるのでしょうか。
  229. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 一般的に刑事事件を例にとって申し上げますと、上告趣意が必ず登載されるというものではございません。しかし、ごく普通に言えば、最高裁判所の上告審としての判断は、上告趣意に記載されましたその趣意に対する対応ということが基本的に行われるわけでございまして、そういった点から、判示事項、判決要旨として上がる部分に関係いたします上告趣意につきましては、最高裁の判断内容を一層正確に理解していただくためには掲載した方がよかろうというところから載せているものでございます。  そんなところで、事件によりましては上告趣意に対する判断としては判例集に載せる必要がない、しかし上告趣意に書いてない職権判断として行われたものは参考になるということで判例集に載せられる場合は、上告趣意は全部省略されることもございますし、あるいは何通かの上告趣意が出ておりまして、弁護人の上告趣意を載せておれば判決を正確に理解していただくのに十分であると考えた場合には、被告人本人の上告趣意が省略されたりする場合もございます。
  230. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 ついでながらでありますが、一審判決が記載をされている、あるいは二審判決が公的な判例集のどこに登載されているかを表示する理由はどこにありますか。
  231. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 一審判決、原判決を登載するのも、これは最高裁判所の判断を正確に理解してもらうために役立つであろうというところから載せるものでございますが、ただ一審判決なり原判決が、私ども最高裁の事務総局で発行しております判例集に、例えば高等裁判所判例集に既に出ている場合には、重複のむだを避けますために最高裁判例集の方ではその部分を省略しまして、そして出ている判例集の巻、号、ページを掲載して読者の便に資するということでやっております。
  232. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 一、二審の判決そのもの、あるいはその所在を明らかにするというのは、上告趣意あるいは上告理由の理解の参考のためにもなることで大事なことではないかというふうに思います。上告趣意として判例集には記載があるんですが、これは上告趣意書そのものをそのまま印刷するということでやってきているのでしょうか。
  233. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 原則的にはおっしゃるとおりでございます。ただ先ほども申し上げましたとおり、判示事項になった部分あるいは判決要旨として挙がっている判断部分に関係のない場合は省略することもございます。
  234. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 ところで、冒頭申し上げました「注」の部分でありますけれども、ここには「検察官は、平成元年一〇月一九日付の上告趣意書訂正申立書等において、上告趣意書中の証拠の援用に関連する記載等につき、一部訂正を加えている。」こういう付記がございます。この注記を見ましても、ただいまのお答えのとおりに、判例集には上告趣意とは書いてあるものの、上告趣意書をそのまま印刷するということがうかがわれるわけでありますけれども、こういう例はございますか。上告趣意書を引用して上告趣意として判決の後に続けておいて、その末尾にこれまで印刷した部分には訂正があるというふうに注記をした例がございますか。     〔魚住主査代理退席、新村主査代理着席〕
  235. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 今回調べました限りでは、こういう上告趣意の訂正があるという注記をした例は見当たりませんでした。
  236. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 上告理由の場合はいかがでしょうか。また、今回検討してくださったそうですが、最高裁判所判例集としてこれまで公にされたもの、その初めから現在に至るまでこの一例限りである、こういうことでございましょうか。
  237. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 取り急ぎ調べましたのであるいは漏れているかもしれませんが、現在報告を受けているところでは、こういう注記のあるのは岩教組の事件のみであるというふうに聞いております。
  238. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 上告理由については。
  239. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 上告理由についても同様でございます。
  240. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 これはどうしてこういう注記の形がとられるようになったのでしょうか。
  241. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 判例委員会の幹事の方から聞いたところによりますと、この事件につきましては、検察官の方から上告趣意書が提出されました後に、この趣意書の記載の削除訂正をめぐって弁護人の方から、削除訂正の申立書あるいは追加削除訂正の申立書といったもののやりとりがあり、最終的に口頭弁論期日で削除訂正が行われた、そういう一連のやりとりがございましたために、上告趣意をそのまま載せたのではそれが全部維持されているかのように受け取られる面があるので、あえてこういう注記がなされたというふうに承っております。
  242. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 この注記の中には、その前半におきまして「上告趣意書訂正申立書等」と書いてありますが、これは何を指すものでございましょうか。
  243. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 これは私の理解でございますが、先ほど申し上げましたこの事件の上告審における経過からいたしますと、訂正申立書あるいは追加の申立書あるいは口頭弁論期日における口頭での陳述、そういったものを含む趣旨で「等」と記載されたのではないかと理解しております。
  244. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 また、注書きの後段におきましては「証拠の援用に関連する記載等」と、ここにも「等」がございますが、これについてはいかがでしょう。
  245. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 この点につきましても私の理解になるわけでございますが、証拠の援用に関する訂正、あるいはそういう表現だけでは包括し切れないような部分が含まれているのではないか、例えば、私の知っている限りで申し上げますと、法廷で訂正書の何項何項に書いたところと抵触する範囲の部分も訂正するといったようなやりとりが行われたために、言ってみれば非常に特定しにくいような形での一種の訂正削除等があったために、そういうことも包含して「等」という表現がなされているのではないか、こう理解いたしております。
  246. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 局長の理解している限りではとおっしゃいますが、これは判例委員会の経過をお確かめになっての理解と、こういう御趣旨ですか。
  247. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 判例委員会の詳細な経過については聞いていないのですが、本件が判例集に載せられたいきさつといたしましては、こういう上告趣意を載せること及び訂正記載をすることも判例委員会にかけられ、そこで承認が得られて載せられたということと、それとともに、今回お尋ねがあるということで判例委員会の幹事から聞いたところに基づいて私が理解したところを申し上げたわけでございます。
  248. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 こういう注記をした理由に、当初検察官が提出をしました上告趣意書そのままで最後に至ったということでは誤解を与えるので一部に訂正ある旨を書き加えたんだ、こう述べられたわけでありますけれども、その訂正部分に関し、ささいな訂正である、したがって注記を行う程度で足りるというような判断が判例委員会にあったのでしょうか。
  249. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 その点については把握いたしておりません。
  250. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 局長は、一体上告趣意書のどの部分をどのように加除訂正があったかということはおわかりですか。
  251. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 詳細は調べていないのでございますが、当初の訂正申立書で記載されたところについては、きょう来る前に確かめて見てみた次第でございます。
  252. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 全体で八カ所ございます。お聞き取りを願いたいというふうに思いますけれども、一二六七(四二七)ページ。これは上告趣意書訂正申立書によりまして削除がなされております。その十一行目から十五行目まで、  七四春闘の具体的なすすめ方につき、①地教委対策として地教委に対し、スト当日は臨時休校とすること、不当労働行為を中止すること及びP・T・A、地域反動の介入禁止を申し入れること、②P・T・A対策としてP・T・A役員及び学級P・T・Aに協力を要請すること、③スト当日は要求貫徹集会に参加し支援活動を実施すること、④スト前日には、校長に対し分会長を中心に口頭でスト通告を行うこと、⑤児童に直接課題を与えること、などを決定し、また、 この部分が削除でございます。  二番目は、一二六八(四二八)ページ。これは平成元年十月二十三日公判における検察官の口頭の訂正でございます。「支部長・書記長会議綴中の」の次でございますが、「一九七四年三月二七日新旧支部長・書記長会議の部分、」とあるところを「一九七四年」から「会議」までを削除しまして、「七四春闘における反弾圧のたたかいについて」と改める。これが二番目でございます。  三番目は、一二六九(四二九)ページ。これは六行にわたり「岩教組は前記第六回中央委員会で決定された具体的戦術等を次のように実施した。」とありまして、「ア」のところに、公園広場において開催された公務員共闘スト宣言集会で組合員ら約四千人が参集し、そこで被告人が決意表明を行ったとか、そういう部分でございます。これは一つの項目が全文削除でございます。  それから四番目は、一二七〇(四三〇)ページ。「全分会闘争委員長集会において、「このストライキを必ず打ち抜こう。」」「などと挨拶し、」の中の「において、「このストライキを必ず打ち抜こう。」」と同闘争委員長が述べたという部分を削除したという点に意味があるわけです。「を開催し、同闘争委員長集会においては、」というふうに改まっております。  五番目、これは引用の証拠を削除したものであります。同じページの九行目一行と十行目の上の一字、「右アにつき、前記昭和四九年四月五日付け岩教新聞第七八八号、符一八・「東磐井支部機関紙ひがし」など、」これが削除。  それから六番目は、十一行目の「符三四五・岩教新聞昭和四九年四月六日付け号外、」これも証拠の削除であります。  七番目は、一三一二(四七二)ページ。これも公判で削除しましたもので、四行目の下から五行目一行全部と六行目の「号外、」と書いてあるところまでであります。  八番目は、一三一三(四七三)ページでありますが、四行目の「同委員会議案書の書きこみの記載からみても、」という部分を訂正申立書で削除をしたものであります。  この削除部分をどう評価するかという問題はおくとしまして、局長がおっしゃったように、弁護人もいろいろ上告趣意の記載について争ったということがおわかりのようでありますけれども、これらの削除あるいは訂正部分につきまして、先ほどお述べになりました上告趣意を判決の後に記載する理由に照らして、検察官がみずから加除訂正を行った後のものを記載するというふうにならなかったのは何かわけがあったのでありましょうか。
  253. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 御指摘のような方法をとらなかったわけというのは、私の方から申し上げることもできないわけでございますが、察しますところでは、先ほども申し上げましたとおり、口頭での訂正というのは、包括的なこれこれに抵触する部分を削除するといったようなことも包含しております。そんな関係もあって、訂正部分を特定して記載するというようなことが困難であったというようなことが原因ではないかと思われるわけでございます。  それから、何分基本的には上告趣意書を掲載いたしますのは、最高裁判所の判断部分を正確に理解してもらう、一層正確な理解に資するという意味で上告趣意書を載せ、一、二審判決を載せというところでございますので、判決自体の中に前提となる事実関係等がきちんと書かれておって、十分理由が書いてあるということであれば、非常に細かい部分にわたる場合にはその部分までもきちっと訂正しなくてもよいという場合もあろうかと思います。これは私の理解ですが、そういったところから全部訂正済みのものを載せるという形をしないで、当初の上告趣意書を掲載し、それについて先ほどのような注記がなされたのではないかと理解いたしております。
  254. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 もともと出された上告趣意書あるいは理由書につきその後訂正申立書が出され、あるいは口頭で訂正を申し立てたものに関し、これまでの取り扱いはどうなっておりましょうか。注記を行ったのはこの一件のように伺いますが、ほかの場合はいかがでしょうか。
  255. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたとおり、こういう注記のある例というのは、私、今回調べましても見当たらなかったわけでございます。趣意書自体が訂正される例というのは、比較的というのですか、非常にまれではないかと思います。それからまた、仮に訂正されたとしても、それが判例になるケースとなりますとさらに確率が低くなりますので、そういった関係から、こういう訂正の注記のある例が見当たらなかったのではないかと考えている次第でございます。
  256. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 この注記が初めてであるということは、訂正申し立てがあった場合には、元来の訂正申立書をその訂正申立書によって改めて上告趣意として登載しておるのではないかというふうにも思われるわけであります。それであるからこそ上告趣意と印刷してあるわけであって、上告趣意書と書いてない理由もそこにあるのではないかと思います。  私は今までのやりとりを聞いておりまして、上告趣意を載せるというのは、最高裁の判決をよりよく理解をする、あるいは上告趣意に従って判決をするのであるからというような点に理由があるのであれば、載せる以上は訂正したものを載せる、あるいは原文のほかにどこをどう訂正しているかを明らかにして載せる、これが本来ではなかろうかというふうに思います。  それから、判例委員会には、聞くところによりますと、各最高裁小法廷から任命の順によることが多いと聞いておりますが、二名ずつ委員会に入っておられる。そういうことになりますと、この判決は第一小法廷の判決でありますが、実際にその判決を下した方の二名が入っている可能性も大いにあるわけでございます。むしろ上告趣意を載せないのであればそれなりのことであります、苦労して研究者は経過を調べるでありましょう。載せる以上はやはり付記をして終わりというのでは足りないのではないか、私はこの点の改善を求めたい。  また、同じ趣旨におきまして、私が挙げました判決についてしかるべき方法で訂正箇所を明らかにして、これを判例集の配付先と同じところに配付をするというようなことを要望したいと思いますが、いかがでしょう。
  257. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 ただいま委員から、上告趣意について訂正のあった場合にそういう扱いをすべきではないか、こういう御指摘のあったことはここで承らさせていただきまして、これは判例委員会の幹事の方にも伝えたいと思います。  ただ、今回の件につきまして、さらに重ねてその訂正の措置をとるかとか、あるいは配ったところへ再び配るかということになりますと、これは率直に申し上げまして大変困難だろうと考えております。そのあたりを御理解いただきたいと思います。
  258. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 困難だとおっしゃいますが、ひとつその要望、こういう意見があったということは十分お伝え願って、検討を求めていただきたいと要望申し上げます。よろしいでしょうか。お答えだけいただいて終わりますから……。
  259. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、承りましたので帰りまして内部にきちんとお伝えいたします。
  260. 山中邦紀

    山中(邦)分科員 終わります。
  261. 新村勝雄

    新村主査代理 これにて山中邦紀君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  262. 沢田広

    沢田分科員 限られた時間でありますが、二、三の問題でお伺いをしていきたいと思います。  一つは、簡単なことからでありますが、法務省でも実は去年、ことしと二回したのでありますが、去年までタイプライターが使われていたのですね。裁判所も使われていたところもあるようでありますが、予算を見ると、今度複写機とかそういうものについて若干の補強がされているようであります。とにかく今になってタイプライターというのは人力車を見るようなもので、これは驚いたなといったが、まだあるんだそうですね、日本全国には。そういう状況ですが、どうですか、裁判所のこういう機械化というものについての予算は今度ついているようですが、どの程度までこれは普及しているのですか。感覚的でいいです、細かいことは要らないですから、大体どの程度の普及になって、まだタイプを打っているところはあるかないか、それだけお答えください。
  263. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 タイプライターあるいはタイピストについては、委員から御指摘のとおりの社会情勢でございますので、裁判所の方でも、従来たくさんのタイピストを抱えていたわけでございますが、最近はどんどんワープロによる処理に切りかえております。最高裁判所の中にもタイピストというのはゼロになりました。  ただ、裁判所の場合はたくさんの組織を抱えておりまして、そこで大勢のタイピストがもともといたわけでございます。生首切るというわけにもまいりませんし、またすぐ一般の事務官にかえるということもできがたい人もございますので、そういう関係でまだ少しではございますが下級裁判所には残っておりますが、おっしゃるとおり、むしろどんどんワープロが主流になって、最高裁ではタイピストはいないという形でございます。  その他の面におきましても、事務の改善ということにつきましては、最近のOA化時代でございますので、裁判所の方もそういう時代におくれないようにできるだけ効率的に事務処理をしたいということで、OA関係を含めましていろいろの事務機器の改善の予算につきましては財政当局にお願いいたしまして、御理解を得てそういう手当てをしていただいておるところでございます。鋭意努めております。
  264. 沢田広

    沢田分科員 続いて、それは結構なことですが、まだ三年ぐらいかかると法務省は答えていましたから、裁判所の方もまたそのぐらいかかるのじゃないかなという気もしないでもないのですが、これはまた次の質問と一緒に答えてください。  もう一つは、ファックスの普及度はどのくらいになっているか。各全国の、最高裁から高裁、地方裁判所に対する伝達、連絡、そういうもののファックスはどの程度の普及度にあるのか。見当でもいいです、これも。
  265. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 まず前段のお尋ねでございますが、公務員の場合定年というのがございまして、やはりそこまで待たなければタイピストはなくならないというところもありまして、できるだけ一般の事務官にできる人はする形で進んではおりますが、一部はもう二、三年は残るのではないか、こう思っております。  それから、ファクシミリの関係でございますが、これは当初裁判所におきましては、いわゆる裁判事務の部門ではありませんで一般の司法行政事務の部門で導入いたしまして相当活発に使っておりましたが、最近では裁判関係におきましても、弁護士さんとの連絡用等にはやはり有効であるというようなところから導入を図りました。いきなりのお尋ねでございますので、厳密な台数、現在数字は申し上げられませんが、そういう状況でございます。
  266. 沢田広

    沢田分科員 だから、タイピストさんという固有の職名で給与が決まっているようにはなっていないでしょう、やはり一般事務じゃないですか。だから、ああいうのを肩張らして打たなければならぬ職名はもうないと思うのですね。これは私も一つ見たのです、浦和でタイプ打っているのを見たのですよ。大変だなと言ったら、いや参った、もう肩張っちゃいますよと泣いていましたよ、泣いていましたというかこぼしていました。  それで、私は去年それを見て、この時代にタイプ打たせているなどというのは時代おくれだ、ファックスがあるじゃないか、特別タイプだって秘密は守れない場合は同じくあるのですから、ファックスがあるのになぜしないのだ、こう言って、それから去年は大分改善されたわけなんです。タイピストという職名があるからとしたとしても、ほかの業務、ファックスならもっと仕事が倍にも三倍にもなるのですから、今あなたの答弁を聞くと、職名があるから定年まではタイピストで打たせておくのだ、こういうふうに聞こえたのですが、そういう発想ですか、簡単に答えてください。
  267. 金谷利廣

    ○金谷最高裁判所長官代理者 そういうふうに受けとめられたとしたら私の表現が悪いわけでございまして、決してそういう趣旨ではございませんで、こういう時代でございますので、できるだけタイピストという形でなくて一般の事務官にかわれる人はかわっていただきたいということでやっておるわけでございますが、ごく例外的には、タイピストという特殊専門的な技術でやってきまして、相当高齢になっておられる、あと定年まで一年、二年であるという方の場合に、すぐにタイプライターを捨てて一般の事務だけをやれということも言いがたい人もございます。そういうのが少し残るということでございまして、基本的には委員のおっしゃるとおりの姿勢で臨んでおるわけでございます。  ただ、裁判所の場合、先ほどタイピストとファクシミリの関係というようなことでおっしゃいましたが、裁判所の場合は裁判書がどうしても必要でございますので、それをタイプライターで打つかワープロで打つかという問題でございまして、浄書ということは必ず必要な部門でございます。それに相当人が必要なことは御理解いただけるのではないかと思っております。
  268. 沢田広

    沢田分科員 私は余っているからとか減らせとかと言っているわけではなくて、当然の時代の事務の合理化は必要だ、こういうことを言っているわけで、その点は別に困らせようなどと思って言っているわけではない。  せっかく来ておられるから、皆さんの職員もこれは末端にいくまで旅費は大変苦しいのですよね。なかなか文句も言えないで、調査に行くにしても何にしても大変厳しいのです。これは来られている人事局長と、あなたは総務局長ですね、その辺は、これは身分別旅費について、随行のときはいいけれども、そうでなかったときは大変苦しいんだということはわかっていますかな。わかっていれば、あと余計なことは言わないので、改善は人事委員会なりその他を通じてやるにしても、やはり相当旅費が苦しいという状況がわかっているかどうかだけ、ひとつ言ってください。あなたは高くもらうからわからないのかもしれないけれども、その点どうですか。
  269. 町田顯

    ○町田最高裁判所長官代理者 御承知のとおりだと思いますけれども、公務員の旅費につきましては法律できちんと規定がございます。私ども、その法律に従って支給をしているわけでございまして、それが高いか安いかということは、ちょっと私どもの立場で申し上げることではないのではなかろうかと思っております。
  270. 沢田広

    沢田分科員 前は、この旅費というのは随分、いわゆる二等をもらって普通列車で行って差額で何とか余計飯を食ったという時代が、我々が入っていた時分は、あなたなんかもそういうことだったと思う。二等で行けるんだけれども、二等で行かないで普通で行って、その差額で何とか補おうというのが常識なんですね。だから、そういうふうに、旅館の、泊まる場所もこのごろは高くなって、一万円とかというように高くなっているのだから、それに合ったような、だから、苦しいのかどうかという実態を皆さん方がどう把握しているかということを聞きたいんで、上げてくれと言っているんじゃない、上げなさいとも言っていない。問題は、その実態をどう把握しているのかということを今私は聞いているわけだ。みんな満足して十分ですと言うのかというとそうじゃないでしょうと私は言っているわけで、その辺は、時間を余りとりたくないのです。弥富さんのところへ行って旅費は改正しなくちゃなりませんよと言う手もあるわけだから。  それから、我々としては、勅任官、高等官、それから判任官、それから傭員、個人、こういう身分差別がいまだに続いているでしょう。旅費の金額に日当、それから弁当代といいますか夜食代なんかには差がついているわけですよ。それだってなかなか厳しいはずなんだ。それを何とも矛盾を感じていないのかどうか。このことが専門で聞いたんじゃなかったんだけれども、とうとうそっちへいっちゃったけれども、その点だけ、やはりどうなのかということに対して率直に答えておいてくださいよ。
  271. 町田顯

    ○町田最高裁判所長官代理者 今委員御指摘のとおり、法律の改正がございまして、今のグリーン料金が出る範囲が狭められたという経緯があることは事実でございます。その結果、昔と比べまして、先生の言われたような操作がしにくくなったという点はあると思いますし、今の旅費でみんな十分満足しているかというとそういうことではないというふうには理解しております。
  272. 沢田広

    沢田分科員 では、本論に入りまして水問題で若干、これは民事局長になりますか。私も、ちょうど二十八年からですから四十年近く水問題に携わってきました。水害に年じゅう遭いながらやってきたわけでありますが、これでも完全に終わったかというと終わっていないのですね。未知数が残る。これは、人間の体じゃないけれども、どこかがよくなったかと思うとどこかが悪くなる。年輩者と同じように年じゅうどこかしらが悪く残っているものなんですよ。だから、そういう条件というものは全体的なものなんだ。  この間の具体的な判決の中に入ろうとは思いませんが、いわゆる管理者の義務を怠ったということで責任が追及されたという判決が出たのであります。その前の判決には、床下浸水は受忍限度であるけれども床上になれば人災である、こういうふうに一回判決が出た例があります。これは、記憶というか、最高裁判所でだれか見た人はおりますか。そういう記憶はありますか。それだけ答えてください、あるかないかだけ。
  273. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 今御指摘の点でございますけれども、特にそれがどの事件かというのは、今ちょっと頭に浮かばないわけでございます。
  274. 沢田広

    沢田分科員 荒川は、荒っぽい、昔から荒れていた川だから荒川という名前がついた。大東水害も私も見てきました。大東水害は水害の原因がはっきりしている。APでいくか、TPでいった方がいいのでしょうが、大体堤防の高さは十四メートルぐらいなんですね。こういう江戸を選んだというのは、荒れ地のところであり、河川が多くて攻めにくい場所に大体城というのはつくるものですよね。もともといい場所へつくらない。そして、ほかから攻めてこられても安全な場所をそれぞれ選ぶわけですね。ですから、もともと地形が悪いという大前提があるわけですね。だから、十四メートルの堤防以下のところに人間をみんな住まわせていけば、十四メートルの水位の段階に至ったときには、満潮にでもなれば内水面は完全に上がってくるし、当然そこで水害が起きてくることは、地形的に必然性があるのですね。  問題は、そういうところに住まわせていった国の政策というものが、基本的にどうしてそう住まわせていったかというと、やはりそこに城があったからということが原因なんですね。そういう理解というものを、皆さんの方ではどう受けとめているのか。歴史的にそういう地形的なものがあった。そういう場所における災害というものが、果たしてどこにその責任があると言えるのだろうか。そういう点はどういうふうにとらえているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  275. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。  裁判所でこの河川の管理の瑕疵ということで争われております事件は、主として国家賠償法の二条の関係でございます。「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」こういう規定がございまして、主として河川瑕疵という点で争われているわけでございます。  判例なんかを見ますと、その瑕疵といいますのは、通常備えるべき安全性を備えておるかどうか、こういう点から争われておるわけでございまして、裁判所としましては、原告がそういうところに瑕疵があるんだというふうに争われた場合に、果たしてそれが本当に瑕疵なのかどうか、こういう観点から判断をして判決をしておるということでございます。
  276. 沢田広

    沢田分科員 ここで裁判の蒸し返しをして論争しようと思ってないんですよ。いわゆるグローバルな物の見方をすれば、大阪城もやはり地形の物すごく悪いところにつくった歴史がありますね。その歴史の中に大阪というものが生まれて、その中に大勢の人が住むようになってきた。地形上のマイナス、デメリットというものは本来的に存在しているわけですね。  私の方の埼玉の場合でも、いわゆるAPにしても四・八メートル、海抜にして二メートル東京湾の水位があると仮定をすれば、せいぜい三メートルのところに住んでいるのですね。荒川の堤防は十四メートルもあるのですが、荒川の二つのダムでも放流されてくれば六十センチの水位が上がってくる。そうすれば逆流も起こる。逆流が起きなくても上流からの水は流れなくなる。そういう地形のもともと持っている体質というものが存在しているということ。これは多摩川にしてもある。そういう地域に住まわせていった行政というもの、起こった事件よりもそういう行政の指導というものに裁判所も目を向けていってもらわないと困る。そこで起こった事態だけが問題であるのではなくて、そういうところになぜ人間を集中的に住まわせるような行政をしてきたかというところに根本の原因があるということをぜひひとつ理解しておいてもらいたい。きょうはここで論争しません。そういう意見があったということを頭に入れておいてください。  堤防より低いところに住めばいつかは水につかるのは当たり前ということになるわけですよね。だから、そういうことの根本的なあり方というものについてどういうふうにすべきかということは、行政も努力するでしょうけれども、いわゆる裁判においても――それは住民はかわいそうですよ、知らないで買われたりなんかするんですからね。だまされて買う人もいるんですから。それはかわいそうです。しかし、根本はそこにあるということをまず前提として頭に入れておいてもらいたいのです。  それからもう一つは、公費の徴収の問題で、我我は一般的に土地改良法だけを限定にしていえば、排水路の使用料であるとかあるいはその水路は土地改良区の財産ですから、当然それを使わせてくれといったときに使用料を取ります。その使用料は、我々としては、土地改良法という公法に基づいて農民のためにつくられる土地改良区が都市側サイドのものに利用される、あるいは予定外の廃水は認めなくてもいいという法五十七条もありますね。五十七条だったと思いましたが、あるわけです。それを認める場合には、やはり必要な料金を取るというのは当然のことだと思うのですね、これは農地保全の前提に立って。それが例えば裁判所に行った場合には、時効が存在するという論理を出す、これはもう時間の関係でいいですけれども、時効が成立するかのごとき判断をされる方もある。いわゆる民法を適用するという判断ですね。  それからもう一つは、最も遺憾な問題は、それは四十万くらいの金だったのですが、五万、十万の金を取るのにも、行政の平等というのは、十万円かけても五万円取るために努力をするのが行政の公平なんですね。まじめに納めた人と、サボタージュして納めなかった人が同じに扱われることに対しては行政は許さないというのが基本的な考え方ですよ。しかし、裁判所の中には、一万円取るのに五万円かけるなんというのはあほうだという解釈の人もいるのです。経済効果からいえば確かにデメリットが多いのかもしれません。しかし、我々行政的な物の見方をすればそれが公平だ、どこまででも迫っ駆けていって徴収をすることが正常に納めた人との平等じゃないかというふうに言うわけですが、皆さんはどちらに――いや論告するつもりで言っているんじゃないから、大体皆さん方ではどちらが正しいというか考え方でいるのか、これは刑事さんでも民事さんでも、両方からひとつお答えください、こういう考え方はどうなんだということで。
  277. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 民事裁判について申し上げたいと思いますが、やはりこれは国民の権利でございます。国民といいますか、例えば税金でもそれが国の権利でございますから、権利が十分保護されるということが裁判の基本でございますので、その権利が保護されるように裁判所としては適正に運用していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  278. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 刑事の裁判について申しますと、刑事の裁判は正義の実現がねらいでございますので、例えば罰金刑、五万、十万の罰金刑であっても、多大なる国家の予算を使ってあくまで罰金刑を言い渡し、それを徴収するということにおいては経済効果を離れた目的があると思っております。
  279. 沢田広

    沢田分科員 これは高裁で言われたことなんですけれども、そういう民事になると経済効果の論が出てきて、刑事になるとやはりあくまでも公平を求めるのが正しいという論理が出る。これは人によってこういうふうに違うのかなというふうに思うのですね。  これは今それぞれの立場でお話しになったのですが、そういうことで時効はあるんだよ、そんなのは取り立てするのはあほうだよということになると、極めてこれは我々としては常識的に言って納得しないのですね。じゃ、納めない方が得なのかな、頑張っている方が得なのかなということに発想が転換するんです。大体法務委員会とかというのは弁護士さんの集まりみたいなところですから、お互いにまあまあになりがちだと思うので、我々の庶民的な感覚というものが入らない場所なんですね。ですから、こういうような質問もするし、我々から見てそれが正常だとは言いがたい。  一つあえて最後に言いますが、新しい弁護士さん、司法修習生から弁護士さんになったり、皆さんのように検事なり判事になる人がだんだん、弁護士の方は多いけれども少ない、こう言うのですね。あんなかた苦しいところで、ちょっと寄り道して赤ちょうちんで酒も飲めない、下手な冗談言ったら大変なことになっちゃう、料理屋なんかとても足は向けられない、女房にもおまえ変なところに行くなよ、それから物が来たら断れよ、こういうようにかたくなな生活を今強いられているんだろうと思うのですね。  ですから、そういうものからやはり解放していける仕組みというものは、私は社会的に見ると、一年くらいは外の民間会社に働いてもらってもっといろいろな訓練なり経験をして、そしてそれからそれぞれの場所につけるようにするし、それからもう少し待遇よくしてやれば判事さんにでも裁判官にもなるわけですから、その辺は弁護士ばかりしてもうけ仕事ばかり夢中になられていたんじゃ、日本の正確な司法というのは――そんなことを言うと失言になってしまうといけませんけれども、今のは取り消しますが、要すればいわゆる正常な司法というものをきちっとつくっていく、そういう立場で皆さんがその任に当たっているんだろうと思うのです。どうかそういうことで、これからはそう逃げ出さないように、皆さんの地元にちゃんと残って、温かい周りの目を持って住みやすい条件をつくるということで、行政府に注文があったらひとつ言ってくれませんか。今で満足しているのか、そうじゃなくてこういう点は直してもらいたいとか、こういうときでなければ言えないのですから、思い切って言ってみていただけませんか。どうですか。
  280. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘になりましたように、裁判官というものは社会の常識を踏まえて裁判をしなければいけないというふうに考えております。それはまことに御指摘のとおりでございまして、我々も常にその点を心がけているところでございます。ただ我々も、先ほど御指摘にいろいろございましたけれども、普通の市民と全く同じ生活をしております。電車で通勤をし、スーパーで買い物をし、赤ちょうちんで酒を飲むといったことをやっているわけでございまして、先ほどの御指摘はやや実際の姿とは違うのではないかと思っております。  しかし、それにいたしましても、変化の激しい社会の中にあって社会の要請にこたえて適正な裁判をするということにつきましては、やはり広い視野と高い識見というものを身につけなきゃならない、そういう観点のもとに、私どもは今御指摘のありました民間企業等に年間十八名程度の裁判官を研修に出しております。それからそのほかにも、司法研修所というところに年間六十名程度の裁判官を集めまして、法律以外の今現に社会で起こっている問題、医療問題でありますとか教育問題、こういった問題について外部の講師を迎えてそこで研修をする、こういうことをやっております。こういう研修の機会もこれからもふやしていくように努力していきたい、こういうふうに考えております。
  281. 沢田広

    沢田分科員 そういう社会の皆さんから見れば一般庶民感覚、こういう言葉で表現されるのですが、主人公は国民ですから、どんな偉い人がどうこう言おうと主人公は国民である、だから国民の意見のない判決というものはやはりこれは支持されなくなってくる。そういう意味においての何らかの、陪審員制度をそのまま復活しろとは言いませんけれども、何らかの国民的な意見というものを参考に聞いていくという、その体制をとってもらいたいと思うのです。  もういよいよ時間ですから最後になりましたが、証人と司法委員、参与員の旅費は大体一日日当幾らなんですか。それから国選弁護人の報酬は幾らなんですか。もし陪審員みたいに一般の人から意見を聞くとしたら、どのくらいの費用を払うのですか。
  282. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 刑事の関係でとりあえず国選弁護人でございますが、平成三年度、いわゆる三開廷の一応の地方裁判所の基準としましては六万五千円というものでございまして……(沢田委員「一日ですか」と呼ぶ)いえ、三開廷基準でございます。ですから、三日法廷に出た普通の事件を想定いたしますと、報酬が六万五千円でございます。それからもちろんそのほかに日当もありますので、日当の方は一日当たり上限が六千六百五十円、予算単価は三千六百五円ということで、その日当プラス報酬その他旅費等が支払われることになっております。一応国選弁護人の関係で今お話がありましたので。
  283. 沢田広

    沢田分科員 証人の方は、わかればちょっと言ってください。
  284. 島田仁郎

    ○島田最高裁判所長官代理者 証人の方は、日当につきましては規則の上限額は六千九百五十円、予算の単価三千四百七十五円ということでございます。
  285. 沢田広

    沢田分科員 時間がなくなってきましたから終わりにしますが、この日当じゃ来るのがなかなかおっくうですね。最低平均二百二十日として、七百万の給料をもらう者が二百二十日働いたとして日当は三万円ぐらいになりますね。ですから、割り算をしてみればその程度の金額になるわけですから、これは早急に改善しないとみんな出渋ってしまってうちで働いている方が得だ、こういうことになりますから、これは速やかに改善することが必要だなと思いました。  多くを申し上げたいことがありますけれども、処遇の改善について、司法だからといって遠慮していないで言うことは言って、そしてきちんと職員が安心して不満を持たずに働けるように、皆さんもそれだけの責任があるわけですから、そういうことはひとつ堂々と言って直してもらうようにした方がいいし、こういう証人とかの費用もそれに見合ったものを出すようにしてください。ここへ来て参考人で言う人だって、せいぜい三十分か一時間なんですがもっと多いですよ。ですから、その辺の差をなくすようにちゃんと責任を持ってやってください。  以上で私の質問は終わります。どうもありがとうございました。
  286. 新村勝雄

    新村主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、伊東秀子君。     〔新村主査代理退席、魚住主査代理着席〕
  287. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 最高裁判所は、昨年の十二月十三日に多摩川水害に関する訴訟の判決を下しまして、それまでの住民敗訴の高裁判決を破棄差し戻ししたわけでございます。これに関しては、それまで高裁判決が多摩川を改修済み河川ではないとして住民側の請求を退けていたことに対して、非常に非常識であるというマスコミや国民各層の批判が続いていたわけでございますが、この最高裁判決に対しては、当然の常識にかなった、普通の庶民感覚にかなった判決である、つまり、多摩川は改修済み河川である、それで改修の段階に対応する安全性を事案に即して具体的に検討するべきであるという形で破棄差し戻しをしたわけでございます。  なぜこれが歓迎されたかといいますと、その前の五十九年一月の大東水害訴訟第一次上告審判決を境に、下級審の水害訴訟が軒並み住民敗訴になっている。それはこの大東水害訴訟第一次上告審判決が分岐点となって、ここで示された判断基準に右に倣えの形で、それまでほとんど住民側が勝訴していたにもかかわらず大きく流れを変えたと言われております。  この大東水害訴訟判決の中身に入りますと非常に時間がかかりますので、中身はカットいたしますが、なぜこの大東水害訴訟第一次上告審判決が分岐点になったかといいますと、国の管理責任を示す基準に財政上の制約とか技術、社会的制約があるんだということを初めてうたったわけでございまして、この判決が出る一カ月前に最高裁判所は民事事件担当裁判官協議会というものを開いて、まさしくこの最高裁判決の中身に関与するような実体的な問題についてテーマにしていた、それは河川における営造物の瑕疵とは何かというそのものを論議していた。そこで出された民事局の見解がそのまま大東水害訴訟第一次判決になったと言われているわけでございますが、そういう形で、この裁判官協議会に対する国民の問題意識は大変高く持たれているわけでございます。  そこで最高裁判所にお伺いいたしますけれども、この裁判官協議会というものは、昭和六十二年以降で結構でございますので、どのようなことをテーマにして、今日まで年に何回ずつ行われているかについてお伺いいたします。
  288. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  その前に、最高裁判所の判決と協議会の関係をお述べいただいたわけでございますが、実はこの最高裁判所の判決と協議会は全く関係がないものでございまして、協議会につきましては、各裁判所の協議会、研究会というものが開かれておるわけでございますが、最高裁判所の判決というのは我々の事務当局とは全く関係がない裁判部において行われたものであるということを一言申し上げておきたいと思います。  それで協議会でございますが、ほぼ毎年、年に一回程度最高裁判所において開いておるということでございます。最近の協議問題でございますが、民事訴訟の審理の充実促進に関し考慮すべき事項ということで協議会が開かれたことがございます。また、最近民事保全法が改正されましたが、それに関係いたしまして仮差し押さえ、仮処分制度の改正に関し考慮すべき事項というようなことで協議会が開かれております。
  289. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今裁判官協議会と最高裁判決は無関係であるというふうに最高裁判所の方はお答えになりました。裁判所の方がそのようにお考えであっても、裁判の根幹は国民の裁判の公正に対する信頼にあるというふうに一般に考えられているわけでございます。その一カ月前に行われた協議会の中身における民事局の見解がそのまま判決の中に出てくるということは、今の裁判の公正に対する国民の疑いを生む一つの大きなポイントになるのじゃないか、そういった疑惑を生むようなことは最高裁判所としては決してやってはならない、そのための努力をしなければいけないのではなかろうかという立場から私は申し上げたのでございます。  つまり、今の裁判官協議会の中身については、議題が何であるのか、いつ開かれるのか、そしてその結果はどうであるかは全く公表されておりません。今回の水害訴訟に関する五十八年十二月の裁判官協議会の中身についても、国会議員である私が正規の手続を踏んで要求したにもかかわらず、ありませんという形で正規には断られております。なぜこういう形で公表しないのかについてその理由をお伺いいたします。
  290. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 裁判官の協議会と申しますのは、そのときどきに裁判所が抱えております問題につきまして、各裁判官にお集まりいただき自由な研究をしていただく、いろいろな方面からの意見を述べていただいて、それを事件処理の参考にする、こういう趣旨で開かれるものでございます。その中には、例えば民事事件ですと最高裁判所の民事局の係官も出席しまして意見を述べることがございます。これは民事局の係官と申しましても、もとは裁判官でございます、一裁判官ということで意見を述べるわけでございまして、決してそれ以上のものではございません。こういう協議会は戦後裁判所ができましてからずっと今日まで開かれてきたものでございまして、協議会の性格がそのようなものであるということは、出席する裁判官、これはもう皆さん十分御承知のことでございます。したがいまして、民事局の意見と申しましても、決して一裁判官の意見以上のものは出ることがないということ、これを十分御理解いただきたいと思うわけでございます。  そうしまして、そういう協議会の結果でございますけれども、これも、やはりそういう研究会でございますので自由な意見を発言、発表していただかなければならない、そういう趣旨から、その協議会の結果について、あるものについては部外には出さないというような取り扱いをしておるのもございます。しかし中には、これはむしろ逆に外部に知っておいてもらった方がいいというようなものにつきましては部外にも発表するというような取り扱いをしておるわけでございます。
  291. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 裁判は公開性の原則があるわけで、裁判の結果の形成過程が国民に公開されていなければならない、それが公正さの担保にもなるわけでございますけれども、大東水害訴訟判決の管理基準に関する一つの判断が、それに類するテーマが五十八年の十二月の裁判官協議会で取り扱われたことは事実でございますね。
  292. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。
  293. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 とすれば、そういった重要な裁判の結果の形成過程にかかわる協議会であればなおさらのこと国民に公表されなければいけない、公開されなければならないのではなかろうか。裁判に興味を持つ、国民一般ではなくても司法関係者にだけでも、要求があれば明らかにするということが必要かと思いますが、その点についてはいかがですか。
  294. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 今申し上げました裁判官協議会でございますが、これは前にもちょっと申しましたが、最高裁判所の大東水害の判決の形成過程とはこれは全く関係がないわけでございます。どうしてこういう協議会を開きましたかと申しますと、これは昭和五十八年でございますけれども、その当時、全国の裁判所に相当多数の水害の関係の事件が係属しておったわけでございます。その中でいろいろな問題が出てきておった、そういうことで全国の各裁判官から、このような問題について全国の裁判官の意見を聞くような研究会をしてほしい、こういうような要望がございまして、民事局としましては事務当局という立場でこういう会を開いたということでございます。(伊東(秀)分科員「公表の問題」と呼ぶ)ですから、今申しましたように、そういう自由な協議の場でございますので、そういうものを担保する、自由な発言を確保するためには公表しない方がいいというものもございます。  裁判官が裁判の過程でしんしゃくするものといたしましては、これはもちろん最も基本的なものは法廷における主張立証でございます。これはもちろん公開の法廷でございますからオープンになっておるわけであります。そのほかに、裁判官が各種の文献を調べたり判例を調べたり外国の立法例を調べたり、こういうことがいろいろございます。そういうものにつきましては、これは公表するということはされておらないわけでございまして、その研究会というのもそういう裁判官がいろいろな勉強、研究をする一つのあらわれである、一つの形態であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  295. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 端的に伺いますけれども、それでは今後も公表する気は一切ないという御趣旨であるかどうか、簡単にお答え願います。
  296. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 裁判官の判断の過程と申しますのは、その判決の中におきまして理由ということで十分示されるわけでございます。その判決の理由において示されておるところは、まさにその裁判官が判断をした理由ということでございます。それに至った経過というものについては必ずしも全部公表するという建前にはなっておりませんし、場合によっては、あるものによっては公表するものもあるでしょうけれども、それがふさわしくないというものもあるわけでございます。
  297. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 最高裁判所の事務総局は司法行政権を握っているわけでございますが、この司法行政権が肥大化しているのが現状ではなかろうかという批判もございます。具体的には、裁判官から事件報告制度あるいは裁判官考課制度というものを通じて情報を得る、それで裁判状況や訴訟指揮などの詳細な把握をして人事を決定するというような状況がございまして、そういった人事権を握っている事務総局が事件に関してまでもこういった形で何らかの民事局見解というような形で出していくということは、裁判官の独立を侵すのではなかろうかという批判があるということ、そういう意味で謙抑的であってもらいたいということを述べて、次の質問に移らせていただきます。  次は、判検交流の問題でございますけれども昭和四十五年ころから国が被告となる民事行政事件が大変増加してきた。それで昭和四十六年より、一覧表を見ましても明らかなように、かなり判検交流が活発になってきております。それで、平成二年十月一日現在で法務省に出向中の裁判官を調べましたところ、全員で七十六名、その中で四十八名が訟務局ないしは法務局、つまり訟務検事にかかわる仕事をしておられます。それで、大東水害第一次判決以降水害訴訟が軒並み住民敗訴になっている背景には、この訟務検事だった裁判官が水害訴訟を担当している関与率が高いということで批判があるわけでございまして、この判検交流の問題点も指摘されております。  そこで伺いますが、なぜ四十六年ごろから急増したのか、判検交流の目的について、さらには、訟務検事の中に昭和六十三年九月一日現在でも約六〇%裁判官が占めているわけでございますが、それはなぜか、この三点について簡潔にお伺いいたします。
  298. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 まず最初に、先ほど伊東委員から裁判の内容によって人事権を行使し、人事権の行使が裁判内容に影響を与えているのではないかという御指摘がございましたが、私ども人事を預かる者といたしまして、裁判の結果によってそういうことをいたすということは全くいたしておりません。  それから、訟務検事の関係でございますけれども、裁判官から訟務検事に転官するという制度は、これは戦後からずっとあったわけでございますが、初期の段階におきましては、行ってからずっと行きっ放しといいますか長年ずっとおられる、行ったままであるということがあったわけですが、その後は三年程度で戻ってくるといったことが要望されまして、そういう交流が短期間になったものですから交流人員がふえたということがあろうかと思います。それから、訟務側の事情といたしましても、国が当事者となる事件がふえてきた、そういったことから派遣の要請といったものがふえてきたのではないかというふうに考えているわけでございます。  それで、なぜこういう訟務検事と裁判官との交流があるのか、どういう目的かということでございますけれども、訟務当局側にとりまして、民事訴訟実務の経験がありましてかつ民事法規に精通している法律実務家の派遣を求めるという要望が強うございます。それから一方、裁判所側にとりましても、裁判官が裁判所以外の職務を経験するということは、その視野を広め、識見を高める上に役立つということがございます。裁判官としての成長に資すると考えているわけでございます。そういうことで訟務検事と裁判官との交流がある、こういうことでございます。
  299. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 訟務側の要請とそれから裁判所側の勉強してもらいたいという要請が合致しているということでございますけれども、やはり裁判所の役割というのは、裁判が裁判官の独立、つまり憲法と良心に基づいて裁判が行われているということ、さらには裁判官の中立性ということが命ではなかろうかと思うわけでございます。国が被告となる事件において、そういった裁判官の中立性を疑わせるといいますか、大型の訟務事件においてはたくさんの国民が関与いたしておりますし、国民の関心も大変高い、そういう場合に国側の代理人に、本来中立であるべき、つまり裁判の公正の担保をするべき裁判官が、国側の代理人になるということはおかしいのではないか、本来は弁護士なりあるいは訟務検事として、別途、裁判官ではなく、要請された人が当たるべきではないかと考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  300. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 訟務検事のあり方と申しますのは、これは法務省の問題でございまして、私どもが意見を述べさしていただくのは差し控えさしていただきたいと思っております。  ただ、先ほど裁判所側でもメリットがあると申しましたが、私どもも現に訟務検事に転官した人たちの話を伺いますと、当事者席に座ってみると、裁判官席に座っていたのでは気がつかないような当事者の痛みそれから気持ち、当事者が裁判官に対して抱く要求といったものがよくわかるということを言います。また、いろいろな法廷でいろいろな裁判官の訴訟指揮を見て大変勉強になった、そういう指摘もございます。訟務検事になって、裁判官としてのあり方についていろいろ反省させられる点が多かったということを言っているわけでございます。このように、民事訴訟に裁判官とは異なった立場で参加するということは、これは裁判官に戻り、訴訟運営、訴訟指揮に当たります上におきましてもプラスとなって生きてくるというふうに考えているわけでございます。
  301. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 そのような裁判所目的であれば、訟務検事にさせるだけではなくて、法曹一元という立場から考えてもっと判事と弁護士との交流、それを一層進める、そして判、検、弁のバランスのとれた交流ということを考えるべきではなかろうか。一応弁護士が裁判官になる道も開いてはおられますけれども、かなり極端に数は少ないということで、やはり判、検だけが一体化しているのではなかろうかという疑惑があるわけでございます。そういった点についての簡単な御見解と、さらにはもう一つ、刑事事件において、捜査・公判検事と裁判官との交流を行っておりますが、これは非常に自分の身柄を、自由刑を科せられる被告人にとっては、裁判に対する信頼を失わせるものではなかろうか、直ちに廃止すべきではなかろうかと考えるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  302. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 前段についてでございますが、最高裁判所といたしましても弁護士から裁判官になることを歓迎いたしております。委員御承知のように、昭和六十三年の三月に弁護士からの裁判官採用の要領というものをつくりまして日弁連にもお示しして、その御協力を仰いだわけでございます。その結果、七人の弁護士が判事になっております。また、四名の方が判事補に来ております。こういった弁護士からの裁判官任官というものは我々としても非常に歓迎しておりまして、これからも拡大する方向で検討していきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、後段の捜査検事の問題でございます。我々法曹というものは一元的な法曹養成制度を通じまして裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場に立ってもそれにふさわしい活動をすることができるというふうに教育されております。検察官や弁護士でありましても、一たん裁判官になれば、国や依頼者の立場を離れて公正、中立な判断を下せるというふうに訓練されておりますし、またそういった資質を備えているわけでございます。現に裁判所法もそういった意味におきまして検察官や弁護士である者を裁判官に任命するという道を開いているわけでございます。  それから、裁判官の中立性といった問題にお触れになりましたけれども、我々裁判官というものは自分の納得する判断を自分の名前で世に問うということを誇りにいたしております。しかも、そ の判断というものは上訴審で必ずレビューされるという関係にあります。訟務検事でありますとか捜査検事を経験したからといって国側に有利な判断をするといったことは全くないわけでございまして、それは誤解というふうに申し上げていいかと思います。  ただ、訴訟には勝敗がつきものでございまして、国側を相手にした訴訟におきまして敗訴した側の訴訟代理人の方が今御指摘になったようなことを強調される向きがございますけれども、現に訟務検事等を経験した者が裁判官に戻りまして国側に不利な判断をしたということは幾らもあるわけでございまして、そういったことを我々一般的には宣伝するといったことはいたすべきではないと思っておりますから申しておりませんけれども、裁判官の公正にかかわる問題でございますので、一言触れさせていただきたいというふうに思います。
  303. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 刑事事件についてのお答えがありませんけれども
  304. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 刑事事件におきましても私どもは基本的に同じ考え方でございまして、捜査検事に戻るなりそれから裁判官に戻りましても、決して捜査側といいますかそちらの方に有利な判断をするということはあり得ませんで、訴訟法規にのっとりまして、証拠に基づき当事者の主張を踏まえて判断をしている、こういうふうに確信しております。
  305. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 人間は神ではないというところから裁判が出発していると思いますので、制度的にやはり被告人ないしは被告に当たる国民が、裁判は裁判官の良心と憲法だけに基づいて行われる、本当に信頼できるんだという信頼をそぐような要素はなるべく少なくするような努力を一層していただきたいということをお願いしたいと思います。  さらに、判事と検事は任用が全く別個の体系になっておりますが、このように判検交流が行われている身分上の取り扱いについて伺います。  裁判官が検事になる場合、一たん退職してさらに三年後に戻ってくる場合には再任用する、そして報酬上は対応する俸給表が作成されているために身分的な不利益がないように行われているということでございますが、間違いないでしょうか。
  306. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 裁判官から検事になります場合には、一たん退職して採用というわけじゃございませんで、転官と我々称しておりますが、裁判官から検察官に身分が切りかわる、こういうシステムをとっております。検察官になりましても裁判官当時に受けていた報酬を引き継ぐ、それから共済組合等も通算される、退職手当についても在職期間が通算されるということで、その間、特段の不利益といったものはございません。
  307. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 転官という言葉をおっしゃいましたが、制度上は全く違う任用制度に基づいて裁判官と検事は任用が行われている。だから転官という言葉の中身を私は伺ったわけでございまして、裁判官が検事になる場合に、裁判官の任用制度のもとに基づく裁判官は退職するのではないかということを伺ったのでございます。さらに復帰するときには再任用という形になるのではないかということでございます。
  308. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 その点は御指摘のとおりでございます。
  309. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 そこで防衛庁にお伺いいたしますけれども、今政府の方で退職自衛官をPKOに採用したいという問題が出てきておりますが、自衛官が一たん退職してPKOにつく、そして三年なり五年なりしてPKOを退職してさらに再任用を希望した場合に、再任用が可能なシステムというのが制度上あるのではなかろうかということが第一点。それで、今考えている退職自衛官をPKOに採用していくシステムというものの中では、全くもう自衛官には戻れないということを前提に考えているのかどうか、この二点についてお答え願います。
  310. 太田述正

    ○太田説明員 先生PKOに言及して御質問でございましたけれども、一般論でお答えさせていただきます。  自衛官は再任用制度がございまして、かつて自衛官であった者の志願によりまして、その者の在職中の勤務成績に基づいて選考を行いまして、退職時の階級と同位の階級またはそれより下位の階級に再任用する制度がございます。
  311. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 とすれば、一般論として、あるいは仮定のこととしてお答えいただいて結構でございますけれども、防衛庁は、PKOに行くために一たん自衛官を退職した者がさらに再任用を求めてきた場合には、今の形で身分上本人の不利益にならない形での再任用が可能であるということでしょうか。
  312. 太田述正

    ○太田説明員 一般論として先ほどお答え申し上げたとおりでございます。(伊東(秀)分科員「もう一回繰り返してください」と呼ぶ)かつて自衛官であった者の志願によりまして、その者の在職中の勤務成績に基づいて選考を行いまして、退職時の階級と同位の階級またはそれより下位の階級に再任用することは可能でございます。
  313. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 今のは自衛官を引いて民間に行くなり、自分の都合で退職した場合かと思いますが、私が今仮定の問題として伺ったのは、PKOなりなんなりかの国家機関で働いた場合に、やはり判検交流と同じような、裁判所の方が転官とおっしゃっておられましたけれども、そういった形の一たん退職、再任用ということで、身分上の不利益取り扱いをしないことも可能になるのではないかということについてでございます。
  314. 太田述正

    ○太田説明員 では、これも一般論で他省庁にいわゆる出向した場合について御説明申し上げますと、防衛庁といたしましては、官庁間の人事交流の一環といたしまして、いわゆる出向の形式によって自衛官に他省庁の事務官等の身分を取得させて当該省庁の事務に従事させることがあるわけでございます。したがいまして、他省庁に出向し、自衛官の身分を喪失した者が人事交流の目的を達して、改めて自衛官の身分に復帰することがございます。その場合には、例えば退職手当につきましては在職期間を通算することとなっておりますし、また年金につきましても組合員であった期間を通算すること等ができることになっておりまして、本人の不利益にならないように措置することは可能でございます。
  315. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 最後に一点だけお伺いいたしますが、他省庁に出向と今おっしゃいましたが、その場合も、防衛庁は特別職、一般職の職員になる場合にはやはり退職、再任用というふうな手続を踏んでいるのでしょうか。
  316. 太田述正

    ○太田説明員 そういうケースもございます。
  317. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 特別職から一般職に行くわけですから、どうなっているのですか。
  318. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 質問者に申し上げますが、もう時間でありますので。
  319. 太田述正

    ○太田説明員 あくまでそういうケースもございますということでございます。
  320. 伊東秀子

    伊東(秀)分科員 では、終わります。
  321. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて伊東秀子君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして裁判所所管についての質疑は了いたしました。     ─────────────
  322. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 次に、科学技術庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。五十嵐広三君。
  323. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 わずかな時間でありますが、放射性廃棄物の問題で、特に幌延の貯蔵工学センターの問題を中心にお伺い申し上げたいと思います。  実はきのうなんですが、三月十二日に、幌延町の隣に豊富町というのがある、稚内の手前隣になるのですが、ここで、隣の町である幌延町に動燃が立地を計画している高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センター、内容的には目の玉が二つあって、一時貯蔵施設、もう一つは深地層試験場、こういうことになるのですが、これの設置反対の決議が行われた。八対四ということであったようであります。実は九カ月前にこの豊富町では推進決議が行われていたわけなんです。推進決議は行われたんだけれども、そのときの議事運営に非常に問題があったということで町民から批判が出て、町議会の議長と特別委員長に対する解職のリコール運動が起こった。その結果十一月にリコールが成立いたしまして、大差で、大体七割ぐらいが解職賛成ということでこの二議員は解職されてしまったわけなんですね。そういう大変な経過というものを踏まえながら今回の改めての町議会の決議ということで、九カ月前の推進決議とは百八十度変わって今度は反対決議がなされたということなわけであります。劇的な変化があったわけであります。ここの町長さんは、これはまた一貫して反対ということを貫いてきております。これで、幌延町の周辺の町村、というのは今言う豊富、天塩、それから猿払、そして中頓別、浜頓別、それから中川を含めて六町村になりますが、これがいずれも実は反対もしくは慎重ということに足並みがそろっているわけであります。  この機会でありますから、最近のそういう北海道内の状況をちょっとあわせてお伝えしておきますと、去年の七月に北海道議会の第二定例会で、道議会としての反対決議が行われたのですね。横路知事は御承知のように一貫してこれに反対ということで、知事も反対、道議会も反対、いわば道民の意思としてパーフェクトに公式に反対の意思が確認をされていると言っていいのではないかと思うのです。それから去年の十月には札幌市議会で反対決議、北海道の首都札幌で反対決議が行われた。十二月には、北海道は各支庁別にあるわけですが、留萌支庁というところに幌延があるのですね、その留萌支庁の支庁所在地の留萌市でありますけれども、ここでも凍結決議というものがなされた。こういうようにいずれの自治体でも反対の決議が次々になされている。世論調査なんか、各新聞だとかテレビなんかで時々やるのでありますが、これはもう圧倒的に反対、推進なんというのはごくわずかな数しか出てきていないわけなのであります。今度統一地方選挙がありますが、ここでも大きな争点になろうというふうに思いますので、統一地方選挙の結果も道民の幌延に対する意思を問うという意味で重視をしてもらいたい、こういうぐあいに思うわけなのです。  そこで、長官、歴代の長官の皆さんに私はずっとごあいさつみたいなもので御質問申し上げさせていただいているのでありますが、もとより、高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵、一時といったって三十年ないし五十年ですね、あるいはまたそれの深地層処分について、永久処分、最終処分のための試験、こういうふうになりますけれども、道民側からも大きな疑いを持ってそれらについて見ているわけであります。狭い地域じゃなくて、非常に広い北海道に大きな影響を与える施設でありますだけに、私はぜひ、貯蔵工学センターの立地の決定に当たっては、北海道、つまり知事だとか道議会だとか周辺を含める関係の地元町村等の意思というものを十分に尊重してほしい。その了解なくして立地を一方的に決めるというようなことがあってはならないというふうに思いますので、この点につきましての長官の御所信を承りたいと思います。
  324. 山東昭子

    山東国務大臣 私事にわたって恐縮でございますけれども、私の曾祖父は実は明治の初めに北海道開拓使判官という立場で北海道に渡りまして、北海道の開拓に力を注いだ人間でございますの、大変北海道には親近感を持っている次第でございます。その北海道の幌延町におきまして大変御熱心に貯蔵工学センター計画の誘致ということがあるということ、大変私ども喜んでいる次第でございますが、今先生の御指摘がございましたように、隣接の町村において反対あるいは慎重にというような意見があることは十分私ども承知をいたしております。  とにかく、この貯蔵工学センター計画は、御承知のように我が国の原子力開発利用を進める上で大変重要なプロジェクトであり、原子力委員会の原子力開発利用長期計画昭和六十二年の六月にございましたが、その計画にのっとりまして着実な推進を図ってまいりたいと私どもは考えている次第でございます。  この立地につきましては、歴代科学技術庁長官がお答えをしているとおり、やはり地元や道の理解と協力を得て進めることがもちろん基本であると認識をいたしておりまして、そのために今後ともなお一層努力をしてまいりたいと考えております。
  325. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 今の長官の御意見は、つまり言いかえれば、地元の理解、協力というものを得られない中で一方的に立地を決めるというようなことはないということと同じだろうと思うのですが、念のためにもう一度お答えください。今のこと、イエスかノーで結構でありますから。
  326. 山東昭子

    山東国務大臣 やはり我が国は民主主義社会でございますから、いろんな御意見があることは本当にすばらしいことであろうと思いますし、そのいろいろな意見というものを十分踏まえた上でできる限り私ども努力をして、道や地元の皆様方の御理解を得るべくこれからも一生懸命努力をしていきたいと考えております。
  327. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 今までも努力しているわけです。歴代の長官を初め動燃でもあそこへ事務所を置いていろいろ努力しているのですが、今言うような、私がずっと述べたような道内の世論の状況なわけですね。しかし、これから努力を続けるというのは、それはおたくの方が続けるのだからしようのない話であります。しかし、続けるにしてみても、道内の、あるいは隣接の町村の考え方が、同意でない、賛成でない、大勢がそういうことの中で踏み切るということはいたしてはならないことではないか、こう言っているのですよ。だから、そこのところについての、もう長い御説明は要りませんが、端的な、それは尊重するんだ、そういうものを無視して強行するようなことはないんだということであろうと思うのですが、いかがですか。
  328. 山東昭子

    山東国務大臣 もちろん地元や道の御理解と御協力を得るための手だてを尽くさずに事を進めることはしない、そういう方針でございます。
  329. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 長官は強行する意思ですね。手だてをある程度すれば強行してもいいという考えですね。そうでなきゃ今のような答えにならないでしょう。例えば知事だとか道議会が反対だ、あるいは周辺の自治体も反対だということの中では、やはりやってならないことだ。だから、今のところもいろいろな手だてをして努力しながら、科学技術庁も動燃も一応慎重な対応で今日あると思います。しかし、今の新長官のお話を聞くと、努力すればやってもいいような印象に受け取れますよ。どうですか。それはあなたが初めてですよ、歴代の長官の中で。お答えください。――いや、長官でいいです。長官の意見です。
  330. 山東昭子

    山東国務大臣 ですから、ずっと申し上げているとおり、やはり地元の皆様方の理解と協力を得るために最大限の努力を払っていきたい、そう考えている次第でございます。
  331. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 答えにならないですよ。  委員長、これはだめですよ、答えじゃないですよ。やるのならやるように言ってください。
  332. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 何か補足してありませんか。科学技術庁山本原子力局長
  333. 山本貞一

    ○山本(貞)政府委員 ただいま長官から答弁がございましたが、先生おっしゃいましたように、地元や道の皆様方あるいは道の御理解と御協力を得るために私ども努力してきたし、今後とも努力する。おっしゃったように、まだ御理解をいただいていない面があることは事実でございます。そういう意味で、私どもはこれからの過程においてそういう努力を最大限やっていく、その先に私どもとしてはお願いをする立地というのがあるか、そういうことでございますので、その過程において最大限努力をしていくということを申し上げた次第でございます。
  334. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 今のは要するに、了解を得る努力を続けていって、了解を将来得たいと思う、そういう努力は続けていきたい、しかし、そういうものを得ないうちに一方的に立地を決めるようなことはやはりしてはならぬことだというニュアンスのようには僕は聞こえましたけれども、長官、短い言葉で結構です、今の答弁も踏まえながら長官のお答えをもう一遍してください。
  335. 山東昭子

    山東国務大臣 原子力に関しましての御意見というものは、我が国の歴史を振り返ってみましても、本当にいろいろな御意見があったことであることは私どもも承知をいたしております。いろいろと学者の方のお話を伺いましても、初めて原子力発電所ができたときには、何やら郷土の誇り原子力というようなことで、水戸の方では地元の方が原子力ようかんなどというのも売り出したというような話も聞いておりますけれども、やはりそれぞれのいろいろな御意見というものを踏まえた上で、科学的知見に立って今日までそうした原子力というものはいろいろな形で発展を遂げ、そして最大限安全確保ということに力を入れて今日まで来た次第でございます。ですから、やはり地元の皆様方の御理解と御協力を得るということがもちろん一番大切でございますので、先ほどから申し上げているとおり、私どもは時間を尽くしてできる限りの努力を払いながら、御理解を得るべく最大限努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  336. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 お答えにならないですね。いや、いずれの答えでもいいのですが、はっきりしてください。
  337. 山本貞一

    ○山本(貞)政府委員 長官から今答弁がございましたとおりでございます。私先ほど申し上げましたが、その立地の私ども努力、あるいは御理解をいただくための努力を今鋭意やっておる過程であるということを申し上げました。今後とも、原子力長計で示されました基本的な方針に従って御理解と御協力を得るための努力を続けてまいりたいと思っております。
  338. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 今のようなお答えであれば、従前もいつも議論になっているのですが、つまり、この際はっきり条例制定の住民運動でも起こそうかという意見はかねがねあるのですよ。そういうようなことで確定しなければ承知していただけないのですか。これだけの、道議会も反対、知事も反対、周辺の町村も皆反対、もしくは慎重だ、こういう中では、そういう全体の意思を無視して立地を決定するようなことはしませんということは言えないのですか。これはしかし、驚くべきことだと思いますよ。これはつまり歴代の長官の答えと違いますからね、新長官。
  339. 山東昭子

    山東国務大臣 私が長官に就任をいたしましてから、地元幌延の皆様方がお越しになりまして、ぜひとも誘致をしたいというようなお話もございました。大変御熱心な地元の方のいらっしゃることも、そして先ほどから申し上げているように、隣接の町村で反対の声のあることも、いろいろな意見があることも十分承知をいたしておりますので、歴代大臣と同じく道民の理解と協力を得て進めていきたいと考えております。
  340. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 歴代長官のお答えと同じように、道民や地元の町村、周辺町村も含めて理解と協力を得て進めなければならないものだということですね。――わかりました。ぜひ慎重に事を運んでいただきたいと思います。  思わぬところで時間をとってしまって、もう後の質問にも何もならぬことになったと思いますが、きょうお忙しい中、動燃の理事長さんにもおいでいただいているのであります。歴代の動燃の理事長さんにも同様の御質問をいたしていたところでありますが、道や周辺を含めて、全体の地元の理解と協力を得て初めて立地の確定はすべきものであると思いますが、動燃の理事長さん、いかがですか。
  341. 石渡鷹雄

    ○石渡参考人 お答え申し上げます。  歴代長官並びにただいま山東新長官の御答弁があったわけでありますが、その御趣旨を体して進めるのが我々の任務と心得ております。
  342. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 今、幌延町に動燃が科学展示館と動燃事務所を新たに来年度建設するというようにお伺いしているわけであります。しかし、動燃の事務所があそこにできましたのは、もっとも町長さんの公宅を借りて事務所を張って、それから展示室を昭和六十一年におつくりになられた。そう大してたっていないわけです。展示室もなかなかな内容になっているようであります。しかし、これを今度新たに億単位、億単位といったってずっと下の方だろうと思いますが、億の金額での展示館と動燃の事務所も併設するというような計画があるというのであります。町議会の議論なんか聞きましても、例えばこの間、十二月に幌延の上山町長さんは、平成三年度、展示館と事務所の新設が実現することになったと冒頭町議会で報告をなさっているようであります。しかし、平成三年度の予算を見ますと、国の方も動燃の方もそれらしい予算は別に見当たらないわけであります。ただ、この前の町長選挙では上山町長はこれを公約なされていたかに聞いているところでありますが、動燃はこれはどういう計画でおられるのですか。
  343. 橋本好一

    ○橋本参考人 お答えいたします。  今先生も御指摘のように、貯蔵工学センター計画につきましては、我が国の原子力開発利用を進めていく上で重要なプロジェクトでございます。原子力開発利用長期計画に沿いまして、地元の理解と協力を得て着実に推進を図ることとしてございますが、事業団は、先生もおっしゃいましたように、昭和六十年に幌延町の旧町長公舎をお借りしまして事務所を設置しました。また、六十一年に事務所に併設して展示室を設置しました。地元の理解と協力を得るための広報活動等を展開しているところでございます。  今般、実は、幌延町役場庁舎の建設及び道路整備等の周辺整備計画策定されました。これは先生も御承知だと思いますが、現在の事務所もその計画地区になってございまして、幌延町より当該箇所からの立ち退きの協力要請を受けているところでございます。また、事業団といたしましても現在の事務所がかなり手狭になってまいっておるというふうに認識しておりまして、これを考慮し、事務所及び展示室の移転を計画しているところでございますが、具体的内容等につきましては現在検討をしているところでございます。
  344. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 しかし、予算は全く計上されていませんね。これは一体どういうことかということと、それから、庁舎の移転、新築というのは仰せのとおりですね。しかし、道路の拡幅ですか、これは建物そのものはかからないのではないですか。そして、なるほど庁舎の構内ということ、構内といったって別に建物がダブってしまうという感じのものではなくて、我々お聞きしているところでは、あるいは拝見しているところでは、そう撤去しなければならぬような感じではないのですけれども、その辺も含めて……。それで予算はどうなのか。今年着工、こう言っているのですが、そうすると予算はどうなのかと思うのですが、いかがですか。
  345. 橋本好一

    ○橋本参考人 お答えいたします。  今先生指摘のような側面があることは事実でございますが、現在、私ども政府原案として予算をお示しいただいているところでございますけれども、その中の貯蔵工学センター立地対策費、こういうものを使いましてやっていきたいと思っているわけでございますが、先生指摘のとおり、新設するとなりますとかなりのお金になるということもございます。そういうことも含めまして現在検討をしているということでございます。  それから、もう一点の道路計画その他につきまして、今先生から御指摘ございましたが、それについては私どもは町から言われていることを信じるしかないということでございます。
  346. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 貯蔵工学センター関係予算が手元にありますが、これを見ましても、この中のどれになるのかちょっとわからないですね。しかし、恐らくお考えになっているのは動燃自体が建てるという考え方ではなくて、工夫をしたいという意味ではないかというふうに思うのです。しかし私は、例えばこういうような建物ということを注文して、その注文に応じて建設会社等が建てて くれて、そしてそれを一定期間借りるということは、いかがなものかという感じがしますね。ぜひ後で問題にならないようなことを考えていかなければならぬというふうに思います。また、私どもとして感ずるのは、先ほどからお話ししているように、道民の、あるいは周辺の町村等、そういう世論があるわけですから、そういう中で何か既定の事実を積み上げていくような印象の強いようなことはお避けになった方がいいのではないかというふうに思うので、その点をぜひひとつ、まだ決めていないようでありますから、そうであればその計画自身についても慎重に検討してもらいたい、こういうぐあいに思う次第であります。  さて、もう時間がないようでございますね。随分予定をしていたのでありますが、また改めて機会を得て科学技術委員会等でお伺いを申し上げたいと思います。  山東大臣、どうかひとつ慎重に、あなたのおっしゃったように、愛する北海道のために慎重に対処してもらいたい、この点を改めてお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。
  347. 魚住汎英

    ○魚住主査代理 これにて五十嵐広三君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして科学技術庁についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後六時五分散会