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1991-03-27 第120回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    第百二十回国会衆議院 予算委員会議録第二十四号(その一) 平成三年三月二十七日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    内海 英男君      小此木彦三郎君    金子 一義君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    志賀  節君       田邉 國男君    津島 雄二君       戸井田三郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       原田 義昭君    町村 信孝君       松永  光君    松本 十郎君       御法川英文君    村田敬次郎君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       串原 義直君    渋谷  修君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    谷村 啓介君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       中沢 健次君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       山中 末治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    山口那津男君       佐藤 祐弘君    三浦  久君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       公文  宏君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁長官官房         会計課長    菊地 徳彌君         青少年対策本部         次長      杉浦  力君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         科学技術庁原子         力局長     山本 貞一君         科学技術庁原子         力安全局長   村上 健一君         科学技術庁原子         力安全局次長  長田 英機君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務大臣官房外         務報道官    渡邊 泰造君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局次         長       須藤 隆也君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局保         険部長     竹内 克伸君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省教育助成         局長      菴谷 利夫君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省児童家庭         局長      土井  豊君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         厚生省援護局長 岸本 正裕君         社会保険庁次長         兼社会保険庁総         務部長     市川  喬君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       坂本 吉弘君         通商産業省通商         政策局次長   麻生  渡君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         工業技術院長  杉浦  賢君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       向 準一郎君         中小企業庁次長 西川 禎一君         運輸大臣官房審         議官         兼内閣審議官  井上徹太郎君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    内田 秀雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 三月十五日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     山口那津男君   冬柴 鐵三君     竹内 勝彦君   三浦  久君     不破 哲三君   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   竹内 勝彦君     冬柴 鐵三君   山口那津男君     日笠 勝之君   大内 啓伍君     中野 寛成君 同月十九日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     大内 啓伍君 同日  辞任         補欠選任   大内 啓伍君     中野 寛成君 同月二十六日  辞任         補欠選任   日笠 勝之君     石田 祝稔君 同日  辞任         補欠選任   石田 祝稔君     日笠 勝之君 同月二十七日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     小坂 憲次君   越智 伊平君     原田 義昭君   加藤 紘一君     金子 一義君   佐藤  隆君     御法川英文君   村田敬次郎君     町村 信孝君   五十嵐広三君     中沢 健次君   藤田 高敏君     渋谷  修君   武藤 山治君     山中 末治君   市川 雄一君     石田 祝稔君   冬柴 鐵三君     山口那津男君   不破 哲三君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     加藤 紘一君  小坂 憲次君     小此木彦三郎君   原田 義昭君     越智 伊平君   町村 信孝君     村田敬次郎君   御法川英文君     佐藤  隆君   渋谷  修君     谷村 啓介君   中沢 健次君     五十嵐広三君   山中 末治君     武藤 山治君   石田 祝稔君     市川 雄一君   山口那津男君     冬柴 鐵三君   三浦  久君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   谷村 啓介君     藤田 高敏君     ───────────── 三月二十六日  平成三年度一般会計暫定予算  平成三年度特別会計暫定予算  平成三年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成三年度一般会計暫定予算  平成三年度特別会計暫定予算  平成三年度政府関係機関暫定予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計暫定予算平成三年度特別会計暫定予算平成三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題とし、審査に入ります。  まず、三案の趣旨について政府説明を聴取いたします。橋本大蔵大臣。     ─────────────  平成三年度一般会計暫定予算  平成三年度特別会計暫定予算  平成三年度政府関係機関暫定予算     〔本号(その二)に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 このたび、平成三年四月一日から同月十二日までの期間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明申し上げます。  まず、一般会計について申し上げます。  暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、今回の暫定予算におきましても、暫定予算期間中における人件費事務費等の経常的経費等行政運営上必要な最小限度のものを計上することとしております。  新規施策に係る経費につきましては、原則として計上しないこととしておりますが、生活扶助基準等の引き上げ、国立大学の学生の増募等教育及び社会政策等への配慮から特に措置することが適当と認められるものにつきましては、所要経費を計上することとしております。  また、公共事業関係費につきましては、新規発生災害に係る直轄災害復旧事業費のほか、直轄維持修繕費等について、暫定予算期間中における所要額を計上することとしております。  歳入につきましては、税収及びその他収入暫定予算期間中の収入見込み額並びに前年度剰余金を計上することとしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は一千二百三十一億円、歳出総額は五兆四千二百十八億円となります。  なお、五兆二千九百八十七億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、十四兆七千億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることとしております。  次に、特別会計及び政府関係機関暫定予算につきましても、一般会計の例に準じて編成いたしております。  なお、財政投融資につきましても、一般会計に準じ、暫定予算期間中に必要になると見込まれる最小限度の額として、住宅金融公庫、国民金融公庫等機関に対し、総額一千五百八十四億円を計上しております。  以上、平成三年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて大蔵大臣説明は終わりました。     ─────────────
  5. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  7. 渡部恒三

    渡部委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田静夫君。
  8. 和田静夫

    和田(静)委員 総理、最初に、統一自治体選挙が始まっているわけでありますが、総理推薦をされる候補者公約については、これは当然連帯責任をお持ちになると思いますが、いかがでしょう。
  9. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自由民主党推薦をしております候補者がいろいろ選挙に関して公約を述べて戦っております。自由民主党総裁としては、それに対して支援をし、そして連帯をして行動をしているわけであります。
  10. 和田静夫

    和田(静)委員 そこで、総理推薦をされています東京都知事候補が一兆円減税という公約をされているわけであります。私は、これは法改正をおやりになって、そして地方税財政法上の整合性をずっと整えられる、その上におやりになるということであったならば、必ずしも反対をするものじゃありませんし、私たちもたくさんの減税公約をいたしていますから、そういう立場に立って質問をするのでありますが、この一兆円減税提案についても責任をお持ちになる、そういうふうに受けとめてよろしいですか。
  11. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 磯村さんは幅広くたくさんの公約をしておりますので、そのすべてについて私どもはできる限りの激励をする、応援をする、こういう立場でございますし、個々の問題については、ただいま選挙戦をやっておるさなかでありまして、各候補者がそれぞれ公約を掲げ、それぞれ論議をしておる真っ最中でありますので、その掲げておる公約の中の一つだけをとらえて、こういう場所で、また政府立場で物を申し上げるのは差し控えさせていただくのが適当ではないか、こう思っております。
  12. 和田静夫

    和田(静)委員 この減税問題というのは、実はいろいろ経過がありまして、例えば秦野章さんが立候補されたときに四兆円という出し方がありました。私は当時参議院ですが、参議院の本会議佐藤榮作総理といろいろの論戦をやらしていただきましたが、自治が尊重をされるという意味でそこに整合性を持っていくということについて、私は反対じゃないんですから、そういう意味自治大臣、この一兆円減税というのは、もうじかに地方財政法五条にひっかかってくるわけですね。これを改正するというふうに受けとめてよろしいですか。
  13. 吹田愰

    吹田国務大臣 お答えいたしますが、地方自治体における諸問題につきましては、物によっては地方自治体の選択によるものもありますし、あるいは政府から、それに対しましては法律によって云々するという場合もあります。それは物によりけりだと思うのであります。
  14. 和田静夫

    和田(静)委員 これは一兆円減税について言っていますからね。
  15. 吹田愰

    吹田国務大臣 一兆円減税につきましては、ただいま総理から御答弁がありましたように、ただいま選挙中であります。選挙中に私がこれについてとやかく言うということは、選挙民を誤らすことにもなりますし、あるいはまた、候補者に対する選挙干渉にもなる場合もあります。これはそういう場合もありますから、ですから、こういう場合は、こういう席では慎重であるべきである、こう考えております。
  16. 和田静夫

    和田(静)委員 こういう席というのは大変気に食わない答弁でありまして、この権威ある予算委員会なるがゆえに私たちは、都民が惑うことがない方向というものをお互いの論議の中で明らかにすべきである。特に自治大臣は、私はその責めを負っていると思う。  地方財政法五条にちゃんと手を入れれば公約公約として生きていくわけでありますから、減税方向も生きていくわけであります。したがって、あなたの責任において、これは改正をするのですと言えば、それで一発終わりですが、いかがですか。
  17. 吹田愰

    吹田国務大臣 今日、そういう改正をするとかしないとかという話し合いになってはおりません。したがいまして、このことについては答弁を差し控えさせていただきます。
  18. 和田静夫

    和田(静)委員 総理が、自由民主党が推されるところの候補者に対しては連帯責任を負われる、こう言われました。そして、政策としてこれは出されているものです。私は、必ずしも政策として反対はしていませんから、しかしそこに整合性を持たせるためには、どうしても地方財政法五条というものの修正行為が伴う。そのことは御認識になっていらっしゃるでしょうし、そのことはお認めになりますね。
  19. 吹田愰

    吹田国務大臣 お答えいたします。  第五条では確かに、その財政の問題から起こす起債の問題につきましては、それはそれなりに地方自治体がその財政需要に基づいてやるんですけれども、ただ、起債を起こす場合に、所定の税をまず徴収しているかどうかとか、標準税率を適用しておるかどうかということになるわけですね。そういった点についてのことからのお話だと思いますが、それはもう法律に基づいて、制度は今すぐ手を入れてどうこうするという問題ではありませんから、現状法律に基づいて所定の方法をとっていくべきである、こう思っております。
  20. 和田静夫

    和田(静)委員 それは一兆円減税現状現行法ではできないのですよ。そこのところを惑わされたら困るわけでありまして、現行法でできないことはしっかり修正をされておやりになるんだ、それがとにかく政権党政策であり公約である、こういうふうなことなんですから、したがって、大臣は、地方財政法五条に深くかかわっています、この手続は必要です、こう言えば終わりなんですよ。
  21. 吹田愰

    吹田国務大臣 このことは、先ほども申し上げましたように、現在選挙中でなければ、私は答弁答弁としていたしますが、選挙中ですから、やはりこの際その答弁については慎重であるべきであるし、またそれに差しさわりのある答弁をすべきではないと思いますので、今日の段階ではこの程度で御了承願いたい、こう思っておるわけであります。
  22. 和田静夫

    和田(静)委員 これはもうとても了承を実はできないのですが、こればかりに時間をとっているわけにいきませんからあれですけれども。  もう一つは、東京都の施策というのは、これは地方財政法上も特別区に及ぶわけですね。そうすると、自治省はこういうものを切り離して処置することができるのだろうか、手当てすることができるのだろうか、こういう点が一つありますね。あるいは固定資産税都区財政制度特殊性でありますが、この五条の適用になる。そうすると自治省は、一つの団体でこのような措置を認めることが一体できるだろうか、こうずっと考えていきますと、やはり一兆円減税についてはこれは全国的な問題なんですね。そうしますと、法の抜本的な改正を今のような形で、まあお考えになっているのでしょうけれども、考えていないようなそぶりをおとりになるということになれば、これはもう都民に対するところの大変愚弄する提案であると言わざるを得ないのです、現行法上はできないわけでありますから。したがって、選挙目的公約ということでやられるということは大変遺憾なことだと思いますよ。  自治大臣選挙中で争いがあるからと言われますけれども、あれだけの公約をされる以上は、政府としてはもはやこの国会地方財政法改正案は提出をいたしますよというぐらいの腹構えでおやりになっているんだと受けとめているのですが、そうじゃないということを確認しておけばいいわけですか。
  23. 吹田愰

    吹田国務大臣 何遍も申し上げますが、ただいま選挙中でありますから、ひとつこの点は、先ほどから申し上げておりますように御理解を願いたい、こう思っておるわけでありますし、法律改正するかしないかの問題につきましては、これは後刻の問題としてまたこの席で御協議をすべき問題である、こう思っておるわけであります。
  24. 和田静夫

    和田(静)委員 我が党の山口書記長は、一兆円減税提案自由民主党推薦候補からあったときに、既に私が述べたような趣旨のことを基本に置きながら見解を表明をいたしています。公約都民の愚弄につながるというようなことのない、そういう政策論争につながっていくことを私は期待をしておきたいと思います。  ところで、三月二十日に私は、春風に乗って海部さんから私あてに一封の私信が届きました。これは私は、これも、このことが許されるのならば大変おもしろいと思って確認をしておきたいのですが、公選法上の判断をする上で私は絶好の材料だろうと思って取り上げるのですが、これが許されるならば大いにみんながやる、あるいはやれることになる、そういう意味で、この際明確な判断をお聞きをいたしたいのですが、検察、警察に対しまして既に私は提示をいたしましたが、海部俊樹さんの名前で私あてに、「ご高承の通り、自由民主党は今春の東京都知事選挙候補者として、公明・民社両党とともに磯村尚徳民を推薦し、党を挙げて取り組んでいます。」「貴殿のご理解と」「ご協力をお願い申し上げます。」「平成三年三月」「海部俊樹」さん、こういう文章が入って、そしてこういうのが入って、こういうのが入って、和田静夫にたくさん協力をしてくれ、こういうことでしょう。  これはまず警察にお聞きしますが、これは一体許される行為でしょうか、許されるのならみんなやるということになるのですが。
  25. 國松孝次

    國松政府委員 お答えをいたします。  一般的に申しまして、文書の頒布があった場合に、それが公選法に違反するかどうかということにつきましては、個々具体的にその頒布の時期、方法、態様などを総合的に勘案して判断すべきものと思われますので、一概には言えないところがあるわけでございますが、先生、委員お示しの文書につきましては、恐らく同種のものが、既に同種の文書の頒布につきまして警視庁に告訴及び告発がなされておるところでございますので、警視庁におきまして適切な対応がなされるものと思っております。
  26. 和田静夫

    和田(静)委員 これは法律上はどういうことになりますかね。例えば、何日ぐらい前までならば、告示の何日前までぐらいならよろしいとかなんとかというふうに基準がありますか。私の場合は告示後に受け取ったわけでありますけれども、その辺のことはどうです。
  27. 國松孝次

    國松政府委員 繰り返すようでございますが、その頒布の時期、方法、態様を総合的に判断すべきものと考えております。
  28. 和田静夫

    和田(静)委員 それでは、これはどうですかね、いつどこから何通ぐらいが出されたというような形の調査の結果を後ほど私に報告をいただけますか。
  29. 國松孝次

    國松政府委員 先ほど申しましたように、同種の文書につきまして警視庁に対して告訴、告発がなされておるところでございますので、その結果につきましては検察庁の方に送付すべきものと考えております。
  30. 和田静夫

    和田(静)委員 総理、今度の訪米の具体的目的は何でしょう。
  31. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米の二国間関係というものは極めて大切だと思っておりますし、また、ブッシュ大統領が日本へ訪問されるように前回の首脳会談のときに話を決めておったのでありますが、いろいろな湾岸情勢の後始末、その後の復興等の問題でこの日程が少し全体として先送りになっておるということになってきましたので、それなれば双方の都合を合わせて、国会のお許しをいただいたならば、私の方から西海岸まで行って今後の日米関係、それについて話し合いをしてきたい、こう思っております。
  32. 和田静夫

    和田(静)委員 外務大臣、訪米をされましたが、アメリカの側から、米市場、米問題は後ほど同僚議員が触れさせていただきますけれども、開放など通商問題の要求が大変たくさん出たというふうに伝えられていますが、そして閣議でもそういう御報告を昨日なされたようでありますけれども、内容的にはどういうことでしょう。
  33. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般の訪米に当たりまして、ベーカー長官あるいはヒルズ代表等との会談において、日米の通商関係の問題が出てまいりました。どんな問題が出たかと言えば、半導体のシェアの問題ですね、それから建設協議の問題等が中心でございましたが、私は率直に申し上げて、半導体問題は、これは民間業界同士で話が進められるべき問題で、政府としてはこれを支援するという形。  それで、八七年の当時の米国製の半導体のシェアが一一%、それが昨年度は一九%に伸びている、また売上高にすれば十二億ドルが二十六億ドルにふえているということで、傾向としては非常にいい傾向になってきている。そういう中で、両国政府がこの民間の業界の双方の話し合いを支援していくという形が好ましいのではないか、私はそのように申し上げておりますし、また建設関係につきましても、日本政府は、これは原則内外無差別になっております。しかし、特別に十七のプロジェクトについて実質的に日本での仕事ができるように配慮をしておりますが、アメリカでは一方、連邦政府が予算でもってつくります飛行場については一切外国企業の参入を認めていない、バイアメリカンの制度をとっているということで、私どもはそのようなアメリカのやり方もあるということを強く指摘をしてまいった。いずれにいたしましても、米国は、これから経済問題を中心にいろいろと米国の政策を立て直すという時期に来ているという認識を強めております。
  34. 和田静夫

    和田(静)委員 そこで、米問題を含めて今後ウルグアイ・ラウンドで厳しい対応を迫られるということになるんでしょうが、どういう態度で臨まれますか。
  35. 中山太郎

    ○中山国務大臣 米問題は、御案内のように国会の御決議もございますし、政府といたしましては、米及び稲作等の重要性にかんがみてこれらはすべて国内で自給するという政策を今日まで堅持をしてきております。現在、いろいろとウルグアイ・ラウンドで専門家レベルで協議が続いておりますけれども、政府といたしましては、今申し上げたような姿勢を堅持しながら、ウルグアイ・ラウンドの成功のために一層協力をしなければならないと考えております。
  36. 和田静夫

    和田(静)委員 問題を変えますが、中東有事を前提にしたグローバルシナリオを作成するという、これは一部報道がありましたが、防衛庁は、昨日の段階で私に対してはこれを否定をされているのでありますけれども、では、これまでの日本単独有事を想定をした日米共同作戦研究を、将来にわたってこの世界同時有事を想定したものに変えるというようなことは決してないですね。
  37. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  日米の共同作戦計画につきましては、御承知のとおり「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインに基づいて研究してきております。そうして、これはいろいろなケースを想定いたしまして、そういった状況の中で米国と日本がどういうふうに有効に共同対処していくか、そういう研究を進めているところでございますが、そういった中で、第一のケースといたしまして進めてまいりましたのが、いわゆる米国と日本だけで共同して対処すればいい、世界的な状況は考えなくていいという、こういうケースでございました。これにつきましては、昭和五十九年に一応のまとめを終えまして、その後は、情勢の推移を見ながら適宜、修正と申しましょうか補正を図っていく、こういうことになっておるところでございます。  ただいま委員御指摘の問題は、私どもがいわゆる新しい研究と言っておる二つ目のケースについてのシナリオだと思います。これが一部の報道で、何といいましょうか、グローバルな有事の体制の中でとかあるいは中東の有事に関連してとかいう報道があったのは承知しておりますけれども、実は私どもがやっておりますのは決してそういうことじゃございませんで、グローバル、世界全体としまして緊張が比較的高まってきておって、日本に対する侵略に対して日米共同して対処するのであるけれども、米国からの日本への侵略に対して対応する力に制約が加わる、こういったようなケースについてどういうふうに対処するかという研究をしているわけでございますので、具体的に、どこで、例えば中東で何があったからどうだとか、あるいは世界で同時にいろいろ有事になったからどうだと、そこまで考えているわけじゃございません。そのことは、このいわゆる新しい研究というのが急に昨今始まったわけじゃございませんで、実は昭和六十三年ごろからこの研究に着手しておるということからも御理解をちょうだいできるかと思います。  将来のことについて御質問ございましたが、将来のことにつきましても、やはり我が国に対する侵略が一体どういうふうな態様で行われるか、そういうことにつきましては、いろいろなケースを想定しまして研究はしていかなくちゃならないと思いますけれども、現在の段階では、先ほど申しましたように、まず、最初のケースについての一応のまとめのあったものに対する適宜適切な補正でございますね、それから、今やっております、二番目と申しましょうか、いわゆる新しい研究というものを当面続けていこう、このように考えております。
  38. 和田静夫

    和田(静)委員 その新しい研究の部分なんですが、日本を巻き込むような世界紛争が起こるとすれば、どのようなものをお考えになりながら研究を進められていますか。
  39. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 二つ目の新たな研究の方の話でございますけれども、これは今防衛庁長官からも御答弁申し上げましたとおり、我が国が単独で有事ではなくてグローバルに緊張が高まっているという制約条件のもとで、米軍の我が国に対する来援について制約条件があるということを想定しているだけでございまして、その際におきます具体的なグローバルの緊張の状態というのがどういう事態かというところについては、あえて前提を置いてございません。
  40. 和田静夫

    和田(静)委員 私は、ちょっとグローバルな緊張問題で、例えば世界のどこかで紛争が起こったときに、世界の警察官を自任をしているアメリカの軍隊が個々の紛争に介入する、そのことによって、日米安保条約のもとで、その紛争にアメリカによっていや応なしに巻き込まれていくということがないのだろうか。当然、この紛争に際してアメリカから自衛隊の出動が要請されてもこれははっきり拒絶をされる、そういうふうに理解をしておいてよろしいですね。
  41. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  これは、グローバルに緊張が高まっておりますけれども、それに巻き込まれるとかなんとかという話ではございませんで、あくまで我が国に対する侵略、それにどのように日米で共同で対処していくかという、そういうスタイルでございますので、そういったことで、日本への侵略に対する対応において米国の来援について制約が加わる、そういうことで研究しているだけでございまして、我が国がいろいろグローバルに緊張が高まっているから他の地域の有事にどうこうということは、全くこれは想定もされていない話でございます。これは当然のことでございます。
  42. 和田静夫

    和田(静)委員 「中東の諸問題に対する当面の施策」という湾岸危機対策本部からの文書をいただきましたが、「中東地域の安全保障」「軍備管理・軍縮」「中東和平」「経済復興」「環境面での協力」、そういう五項目を挙げていらっしゃいますね。そのうち「中東地域の安全保障」については、国連が停戦監視等を目的とするPKOを実施する場合には財政支援その他の分野で協力するということでありますけれども、これは具体的には、財政支援のほかにどのような協力を行われるつもりですか。例えば、ペルシャ湾への掃海艇の派遣などという一部報道されておるようなこと、そういうことも構想されているということになりますか。
  43. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  湾岸地域におきます国連の平和維持活動の問題につきましては、現在、国連で検討が行われておるわけでございますが、ここで私たちが考えておりますのは、その財政的な支援のほかに政務官の派遣といったようなことでございまして、これは過去に先生も御承知のとおり、アフガニスタン・パキスタンの仲介ミッションという平和維持活動がございましたとき、それからイラン・イラクの軍事監視団の設立がありましたときにそれぞれ外務省の職員一名を国連の職員として、政務官として派遣しておりますが、そのようなことを考えてございます。
  44. 和田静夫

    和田(静)委員 参議院の予算委員会総理は、ベトナム戦争当時と今回とでは状況が違うと答弁されました。当時と今回とではどんな状況がどう違うのか、ちょっとわからないのですが、どちらの場合もこの領海外での機雷の除去作業であるということには、これは違いはないですね。したがって、基本的にはベトナム戦争と同じような状況なのではないのですか。総理、いかがです。
  45. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私が考えますのは、あのときのいろいろな速記録等を読んでのやりとりでございましたが、紛争地帯に行くということは、それは紛争地帯というところになりますと、例えばそこは非常に危険な、いわゆる巻き込まれるおそれがあるという角度の議論が随分なされた状況でございました。今日はまだ完全な停戦には国連決議でなっておりませんけれども、しかしだれが見ても、両軍の司令官が出て一応停戦に現場では同意をしておるという状況になりますと、その事情は随分違うなということと、同時に、ベトナム戦争というのはいわゆる国と国が行っておるものでありますが、今回の中東の湾岸の場合は、国連の決議に基づいて、そして国連の決議の実効性をきちっと確保するために多国籍軍が行ったものであるということの違いもあろうかと。あるいはまた、当時の記録等を読んでみましたら、武力の行使というものは、機雷を敷設するという行為そのものも武力の行使であって、その機雷をとるということもまた敵対行為になるような、あるいは広い意味の武力の行使になる範疇にあるというような角度の議論もあったように受けとめておりましたので、そういったこと等をあわせてみますと、今日の状況とは違うものがあるのではないか、私はこういうことを申し上げたわけであります。
  46. 和田静夫

    和田(静)委員 それで、先ほど国連局長から掃海艇の話の答弁はなかったのですが、法制局長官、ちょっと一言だけ確かめておきたいのですが、この湾岸への掃海艇の派遣が法的に可能であるという意見が一部あるようでありますね。ところが、そもそも自衛隊法というのは、自衛隊が直接侵略及び間接侵略から我が国を防衛するという基本理念に基づいたものであることは言うまでもありません。自衛隊法九十九条を根拠に、領海外にまで掃海艇を派遣するということはその理念を著しく逸脱をするものであって、私は決して許されないと思っていますが、あくまでも九十九条を根拠に掃海艇を派遣するということであるならば、三条の「自衛隊の任務」自体の変更が必要となるでしょう。ここのところはその法改正で臨むというふうなお考えになるわけですか。
  47. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま自衛隊法の九十九条を引いての御質問でございますが、自衛隊法の九十九条は、「海上自衛隊は、長官の命を受け、海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする。」かように規定してございます。この規定は、我が国の領海内における航行の安全確保、これはもちろんでございますが、公海におきましての、いわゆる公の海でございますが、公海におきましての我が国船舶あるいは国民の安全確保、このようなものを図るための一連の警察活動を定めたものと、かように理解しております。  そういう意味におきまして、ただいま読み上げましたように、九十九条は海上自衛隊の機雷の除去の任務、これにつきましての地理的な範囲、これについて明文の規定は置いてございません。ただ警察活動としての性格に基づきますおのずからの限界はあるもの、かようには考えます。  それで、具体的にどの範囲まで及ぶか、この問題につきましては、そのときどきの状況等を勘案して判断されるべきであり、一概に言えないということは昭和六十二年でございましたか、六十二年の質問主意書に対するお答えでも申し上げているところでございます。
  48. 和田静夫

    和田(静)委員 そうすると、自衛隊法の三条の修正行為というものを伴わなくてもいけるという判断をされているわけですか、ちょっとそこのところだけ。
  49. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 自衛隊法の三条におきましては、まず三条の一項におきまして自衛隊の本来の任務といたしまして「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」それから「必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」かような三条一項の本来の任務が書かれているわけでございます。  ただ一方、自衛隊法の九十九条の「機雷等の除去」、この問題に関しましては、そういった問題とさらに若干異なりまして、いわゆる雑則におきまして、いわゆる機雷等の除去、処理、これが行い得る、かように海上自衛隊に権限を与えたものと考えております。
  50. 和田静夫

    和田(静)委員 よく了解できませんけれども、次のこのPKOについてですが、政府や自民党の中に、国際的評価を得られるものにしなければならない、文民による停戦後の後方支援活動をするだけでは評価は得られないという意見があるようでありますが、この意見では、例えば今度の戦争に当たって、日本の航空会社が定期便をキャンセルしてまで避難民の輸送を行っていることや、あるいは日本赤十字社の医師たちが中東で避難民などの医療支援をしていることなど、国際的な評価、これは多分にアメリカの評価を指すのだと思うのですが、そういう評価を得られなかったので、そこで別の、例えば軍事的な貢献をした方がよいということになるような見解のように思われますが、自由民主党内で出てきた意見でありますから、たとえ総理があるいはそうお思いになっていなかったとしても、総裁責任として、現状で日本ができる文民による活動ですね、文民による活動ではだめだという理由は何かありますか。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 文民による活動で現に御指摘があったように、きょうまでもできる限りの努力を続けてまいりました。それは現実にあることでありますし、また、垂れ流しの原油に対する対策で専門家チームを派遣することも決定をいたしましたし、またクウェートの油井炎上に伴う人間に与える被害の調査、そういったものに対する協力も、これはできるだけやっていくわけでありますが、今具体的御指摘のPKOの問題につきましては、前回の国会での国連平和協力法案、あれも実はそういった意味でいろいろ具体的に国連協力の姿を示したものでありましたが、審議未了、廃案となって、自民党、公明党、民社党との間で三党合意の覚書をつくって、政府は新しい角度の国際協力のあり方について成案を得るべく今鋭意努力をしておるさなかでございます。それについては、どういったことまでが許されることで、どういったことまでが可能であるかということについての検討を今進めておるところであります。
  52. 和田静夫

    和田(静)委員 今日の中東事情というものをいろいろ考えてみますと、アラブ諸国の間でオイルマネーの偏在による著しい貧富の差がある、このことを見逃すわけにはいかぬと思うのですね。そうしますと、この貧富の差をなくさない限り、アラブ内での民衆の不満は今後もいつ爆発するかもわからないというような状態にあるのではなかろうか。非産油国は、東南アジアの多くの国々と同じように、外貨獲得の手段を産油国への労働力の輸出に頼っている。これはアラブ有数の大国であるエジプトにしても例外ではないわけでありますね。  そうすると、中東の安定のためには、パレスチナ問題の解決とともに、域内諸国の著しい貧富の差の解消が必要となるでしょう。政府の挙げた施策の中にも「経済的安定・発展に協力する」というふうになっているわけでありますが、これは具体的にはどういう方針をお持ちになっているわけですか。     〔委員長退席、大石(千)委員長代理着席〕
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 中東地域の恒久和平のためには、私は、やはり一番根っこにある大きな問題は、何といってもパレスチナ問題を含んであの地域の共存、安定の枠組みをつくっていかなければならぬというところまで究極にはいかなければならぬと思っております。けれども、これはまだ、手のひら返したようにすぐきょう、あすの問題でないかもしれません。世界が集まっていろいろな努力もし、プロセスも要ると思います。  それから、もう一つの面に立って考えると、今御指摘のように産油国と非産油国の間の甚だしい貧富の差というものも、これはそれぞれの国に経済の安定と経済の成長を図っていくということ、それも非常に大切なことでありますから、今度の当面の急務としては、周辺国援助というものを初めエジプト、トルコ、ヨルダンと三カ国としておりましたが、その後、徐々にシリアとかいろいろなところ、あるいはまた、アジア近辺でも影響を受けた国々があるわけですから、それは別のスキームで、それらの国々の経済力がついていくように、また、技術移転等で活力を持っていくように、そんなことを考えていかなければならぬわけでありますし、もう一つは、経済的にみんな豊かになれるように、格差が縮まるように努力するということと同時に、あの地域にどのようにしてああいう不安定要素を醸し出したイラクのような国ができたかということの背景を探りますと、やはり軍備管理の問題あるいは大量破壊兵器の不拡散、最終的には、究極的には廃止、軍縮の問題、通常兵器についてもその移転を透明化する、そういったようなことについての一連の努力をしていくこと、そのみんなが重なって本当の意味の政治的な中東和平というものは達成される、こう考えておるところでございます。
  54. 和田静夫

    和田(静)委員 通常兵器の国際移転問題での「国連を中心とする基準・ルール作り」、また、通常兵器輸出の自主規制の「枠組の整備・強化」を行うということになっていますが、通常兵器の国際移転問題では、ただ全面禁止というだけでは、兵器の輸出国だけではなくて、自前の兵器生産能力を持たない第三世界の国々の賛成を得ることも難しいでしょう。また、日本が率先して兵器を輸入している以上、この問題については日本政府としてもそれ相応の覚悟が私は必要であろうと思うんですね。一体、兵器輸出の問題についてどのようにお考えになっているのか、また、日本政府として自国が大量の兵器を輸入しているという現実をどのように変えていこうとされているのか、その方針がはっきりしない限り、この施策というのは私は実効性を持たないものに終わってしまう危険性があるのではないだろうかと実は読みながら思いました。ただ「軍縮」という言葉を載せただけでなくて、それを本気で実現するのだという態度というものを国民に示す、その意味でも、日本の武器輸入について今後どういう方針をお持ちになっているのか、明確にしてください。
  55. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  通常兵器の国際移転の問題につきましては、確かに先生がおっしゃいましたとおり、各国は国連憲章五十一条によりまして個別の自衛権というものを持っておりまして、その自衛権を実効あらしめるために武器の取得ということを必要としている面があるわけでございます。それから、地域の軍事的なバランスを維持するという点の問題もございますので、一律に世界的に武器の取引を禁止するということが現実的でないことは先生まさに御指摘のとおりでございます。  そこで、現在国際世論のコンセンサスとして考えられておりますのは、一九八八年の国連総会で採択になりました決議がございますけれども、これは、まず当面武器移転の公開性というものあるいは透明性というものを高めていこうではないか、そうすることによって武器移転の自粛あるいは規制というものに発展させていこうということでございまして、そういう国連決議のもとに専門家グループというものがつくられておりまして、このグループがことしの八月にそういう観点から研究をして一応報告を出すということになっております。日本政府といたしましても、ほかの国もそうだと思いますけれども、こういう国連の専門家グループの報告の結果を見ながら、今後、国際社会においてこの武器移転の問題にどう対応するかということを考えていきたいというふうに考えております。  それで、そういう努力の中には恐らく、例えば武器移転に際しては国連に各国が報告するんだというようなそういう考え方も入ってくると思いますが、いずれにしても、今後、この国連専門家グループの検討状況というものを考えながら対応していきたいというのが基本的な考え方でございます。
  56. 和田静夫

    和田(静)委員 核兵器、化学兵器等の大量破壊兵器やあるいはミサイルの不拡散のために、IAEAの保障措置制度やらあるいは国際的な輸出規制の枠組みの整備・強化、化学兵器禁止条約の早期締結の促進、これらを挙げていらっしゃいますね。今ある核不拡散条約というのは核保有国に決定的に有利な取り決めであることは、これはもう周知の事実であります。そこで、核兵器禁止条約へ発展をさせていく時期が来ているのではないだろうかと私は思いますが、外務大臣いかがですか。
  57. 中山太郎

    ○中山国務大臣 核のみならず生物・化学兵器、これらの廃止に向かって、日本政府はこれを廃止する方向に積極的に努力をしているところでございまして、この五月の末にも、京都において国連と日本政府との共催によって軍縮会議、京都会議を開くことに相なっております。
  58. 和田静夫

    和田(静)委員 私は、化学兵器問題も当然でありまして、アメリカなどは、他国が保持しているおそれがある限り禁止を受け入れて廃棄することは望めないなどというふうにアメリカの状態を見ていると考えられますので、ぜひこの化学兵器禁止条約について、アメリカの態度に左右されずに、今おっしゃったようにしっかり日本の態度をお持ちになって早期実現に努力をしてもらいたい。よろしいですか。
  59. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この件は、先般私が、先週でしたか、デクエヤル事務総長とお目にかかったときに、国連の事務次長をやっております日本の出身の明石事務次長からジュネーブにおける化学兵器廃止条約の進捗状況について説明を受けましたが、これは極めて早い時期にこの条約が締結されるように目下国連が積極的に努力をしているという状態でございます。
  60. 和田静夫

    和田(静)委員 日本の外交としてもしっかり努力をしていただきたいと思います。  ミサイルの不拡散のための国際的な輸出規制の枠組みの整備・強化ということになっていますね。そこで、日本が武器輸出三原則の例外としてまでアメリカに対して技術供与を行っていることは、これは私どもは政府の言動の不一致ではないだろうかと思っているのですけれども、今度の戦争でも日本の技術が果たした役割は大きかったと見るのがあるいは順当でしょう。今後、たとえアメリカに対してでも武器技術の供与はしないとか、それとも日米間のことについては国際的な問題とは別だという考えなのか、ここのところは外務大臣、いかがですか。
  61. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本におけるミサイルの問題、これの問題につきましては、私はやはり現在の国際情勢の中で日本の安全保障というものの上から考えていきますと、我が国の防衛に必要なものは整備をしなければならない。しかし一方、国際社会においてはミサイルの拡散というものをできるだけ小さく抑えていく、削減していくという方向に我々が国際社会で行動していくことが、結果として日本が保有するミサイルの数を減らしていく国際環境が醸成されてくる、私はそのように考えております。
  62. 和田静夫

    和田(静)委員 今日、私は、民生技術と軍事技術の分離は極めて困難だろうと思うのですね。例えば、イラクが殺虫剤の工場を化学兵器工場に改造したと言われますが、軍事技術への転用の可能性がある技術、それの第三世界の国々への移転を全く禁止してしまうおそれもあるのではないだろうかという感じがするのですが、そういうようなことになりますと、第三世界の経済発展を著しく阻害することにもなりかねないのじゃないでしょうか、この方針をちょっと読んだだけでは。輸出規制についてはその実効を上げながら開発途上国の経済発展を阻害しないものにしなければならないでしょう。また、ココムのように内容が不明確であったり、一部の国が一方的に内容を決定するというようなものであってはならないとこれまた考えますね。政府としてはどういうような構想をお持ちですか。
  63. 中山太郎

    ○中山国務大臣 公開性、透明性を拡大していくということが極めて大事なのではないでしょうか。例えば、日本の場合には防衛白書を出しておって、あるいは国会にも報告をするということで、極めて予算の御審議等も通じて公開性、透明性が明らかになっておりますが、発展途上国においては、そのようなことは極めて難しい国家体制が多い。こういうことで、国連を中心に公開性、透明性を各国において充実させていくという努力をしなければならないと考えております。
  64. 和田静夫

    和田(静)委員 「中東和平」の項ですが、イスラエルとの各種交流の強化を挙げていますね。これに経済交流は含まれるのですかね。イラクのクウェート侵略の際に日本のとった態度を考えてみますと、他国の一部とはいえ国連安保理決議も無視してとにかく領土を占領しているイスラエル、これと経済交流を強化するというようなことにもしこの趣旨があるとすれば、日本外交の整合性というものが問われると思うのですけれども、いかがですか。
  65. 中山太郎

    ○中山国務大臣 イスラエルとの間に経済援助といったようなものを行うという考え方は、現在、日本政府は持っておりません。今回の中東の戦争における、イラクのスカッド・ミサイルをイスラエルに撃ち込んだ、それに対してイスラエルは極めて思慮深い自制を行ったということについて、新しい中東の和平構想というものがイスラエルの方向によって変わってまいったということは、委員もよく御存じのとおりであります。そういう意味から日本は政治対話をこれからイスラエルとの間に強めていくということを申しておるわけでございますが、私どもは、イスラエルが現在占領いたしておりますパレスチナのガザ地域におけるパレスチナ人に対して食糧援助を一千万ドル程度行うことが極めて重要であろうかということで、今日そういう方向を考えているわけでございます。
  66. 和田静夫

    和田(静)委員 「経済復興」の項に移りますが、経済復興への協力について日本としてできる限りのことを行うべきであることは、これは当然でありますが、一方、日本としては、忘れられがちなアジアや他のアラブ諸国に対する経済援助や技術協力、これにより力を入れるべきだろうというふうに思いますが、外務大臣、いかがですか。
  67. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今回の湾岸戦争によって、アジアの幾つかの国々、特に非産油国、発展途上国においては、相当大きな経済被害が出ております。これらの国々に対しまして日本政府としてはできるだけの経済協力をやってまいりたい、このように考えております。もちろん中東地域においても同じでございます。     〔大石(千)委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 和田静夫

    和田(静)委員 日銀総裁、お待たせをいたしました。  アメリカ議会などから特に強い意見があるというふうに言われている日本とドイツに金利の引き下げを求めるという動きですね、これは、日銀としては現状で金利を下げる方向にあるのですか。景気動向との兼ね合いでどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  69. 三重野康

    三重野参考人 お答えします。  今委員が御指摘になられましたことは、米国の上下両院経済合同委員会の年次報告にそういう記述があるのは事実でございます。そこで、私どもの現状判断でございますが、日本の景気は緩やかながら減速過程にあるというふうに思っております。しかし、今までスピードがやや速過ぎたのをやや減速によってスピード調整することは、むしろ景気を長続きさせる意味で望ましいのではないかというふうに考えております。  減速過程にありますが、現在の景気のレベルはどうかと申しますと、かなり高いところにございます。例えば、需給を端的にあらわします設備稼働率、求人倍率、これはいまだ歴史的な高い水準にございますし、設備投資、個人消費、ともにこれまでのような大幅な増加は望めませんけれども、まだまだ根強いものがあります。さらに、湾岸戦争終結に伴いまして企業の先行き不透明感が解消しつつございますので、これは景気にプラスと思います。したがいまして、現在の景気がすぐに大きく屈折する、あるいは失速するというふうには考えておりません。  その間の物価でございますが、国内卸売物価、消費者物価、ともにじりじりと上がってきておりまして、昨年の夏以来の上昇でございますが、現在、国内卸売物価は前年比二%台の半ば、消費者物価は前年比約四%前後、国内の卸売物価の上昇は主として石油の値段の上がり方、消費者物価の上昇は主としていわゆる生鮮食品の上昇が主因でございます。  これからでございますが、幸いにして全体の物価観は落ちついておりますし、湾岸戦争終了に伴いまして石油の値段が安定いたします、これも物価にはプラスになるというふうに思います。ただしかし、いわゆるその他品目におきましてこれまでの人件費あるいは物流コストの上昇を製品価格へ転嫁する動きがじわじわと広がっていることは、今申し上げましたように製品あるいは雇用需給のタイトなことを背景にして考えますと、まだ目が離せない。さらに、為替レートが最近円安に振れております。このこともあわせ考えますと、まだ物価は目が離せないというふうに思います。したがいまして、現在は内外の情勢を引き続きよく見守って、これまでの政策効果の浸透をもう少し見ていきたいというふうに考えております。
  70. 和田静夫

    和田(静)委員 一部報道にも見られますように、日銀総裁も今述べられたような情勢の認識の上にお立ちになって、大体四月の中下旬から五月上旬にかけて引き下げに踏み切られるのではないだろうか、こういう報道も見られます。その辺のところはいかがでしょう。
  71. 三重野康

    三重野参考人 先生御案内のとおり、金融政策というのは景気、物価、為替レートその他を総合的に勘案しながら運営してまいるものでありまして、あらかじめ、一時的にこういうふうになったらこうする、したがって例えば四月末にどうするというようなことは、とてもまだこの段階では言えない、こういうふうに考えております。
  72. 和田静夫

    和田(静)委員 総裁、どうもありがとうございました。  大蔵大臣、ちょっと基本的な問題で一言だけですが、今回の予算編成において導入された生活関連枠ですね。これは従来の各省庁の固定的なシェアを崩そうとする試みとしては私も評価できると思っている。しかし、どのような予算についてこれを振り分けるのかが不明確である。名称は生活関連枠でありますが、実態はどうも国民生活に余り関係のない予算になってしまったのではないだろうかということをちょっと思うのですけれども、大蔵大臣、見解を。
  73. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 生活関連重点化枠というものを設定いたしました時点で、我々もまた各省庁に対しその概念についてもう少し整理をして要求を出していただくべきであったという反省は、私自身がいたしております。しかし、その結果的にごらんをいただいた御批判は私は委員とは意見を異にいたします。
  74. 和田静夫

    和田(静)委員 新中期防ですが、新中期防の伸び率が年五・四%、これはここ数年の好調な歳入の伸びに支えられたものでありますけれども、昨年来税収の伸びは、特にバブル経済の崩壊に伴う法人税収の伸び悩みに見られますように、減少傾向にありますね。一方で、歳出については今後十年間で四百三十兆円の公共事業費の確保、高齢化というよりももう高齢といった方がいいのでしょう、高齢社会に向かって現状まだまだ不十分である社会保障費の水準、これらの維持、必要経費は増大の一途をたどるわけでしょう。そういうような財政状況の中で実質年三%の新中期防の伸び率というのは、これは大蔵大臣、今後の財政運営をますます苦しくいたしませんか。
  75. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は予算編成に当たりまして、いかなる分野といえども聖域はあり得ないということを申し上げてまいりました。そして、平成三年度予算は新たな中期防のいわば初年度であります。そして、その内容につきましても、既に委員がよく御承知のように、この平成二年度末をもって終了いたします現在の中期防に比べ、例えば正面装備一つをとりましても縮減をいたしておりますし、全体の状況も、例えば人件費関係でありますとか、あるいは歳出化経費でありますとかといった削りようのない分野を除きますと、実質的にマイナスになっておることも御承知のとおりでありまして、我々としては、今委員がお述べになりましたような懸念を必ずしも共有いたしておりません。ただ同時に、現在間もなく終わろうとしております中期防あるいは新中期防、これはいずれもその間における総額を上限を設定しているわけでありますから、今後におきましても、その年度年度におきまして十分精査の上、必要な経費を計上していくということであります。
  76. 和田静夫

    和田(静)委員 多国籍軍への支援ですが、あれに伴う防衛費の一千二億円の削減は、これは新中期防における正面装備の新規契約分の中から削減するということですね。
  77. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 既によく委員が御承知のように、今回政府として減額修正をいたしました部分は、平成三年度予算に計上しております金額そのものはごくわずかなものでありますけれども、その経費が削減されましたことにより、後年度の歳出化経費というものが不必要になるという意味におきまして一千億以上の減額をいたしております。
  78. 和田静夫

    和田(静)委員 ちょっと私の質問の趣旨と答弁が違っているのですけれども、時間がありませんので。  極東地域におけるソ連軍の規模の縮小についてですが、政府の従来の答弁をずうっと考えてみますと、ソ連太平洋艦隊は量的には縮小されているが、それは兵器の更新に伴うものではない、質的には依然として高い水準にあるという見方だったんですね。安保特別委でもそういう答弁がずうっと続いてきたわけですが、現状でその見方は変わりませんか。
  79. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  確かに、世界的なデタントと申しましょうか、そういった流れの中でソ連軍の兵力が若干減ってきておる。そういった中で極東ソ連軍につきましても、ピーク時に比べますとそれが減少しているということは認められるところでございます。しかしながら、非常にまた、全体的として見ますと高い水準にございまして、例えば昭和五十一年、私どもはいわゆる大綱を制定いたしましたけれども、あのときと比べてみますと、例えば地上兵力で申しますと、当時は極東ソ連軍三十万であったのが、ピーク時がたしか三十九万ぐらいに上り、現在削減されたけれども三十六万というふうに承知しております。それから例えば、潜水艦などにつきましても、大綱の時点では百三十五だったですか、それが実質的にはちょっとふえていると思っているのです。百二十五か百三十五でしたか、現在上へいっていると思います。それから作戦用航空機につきましても、大綱制定時の七六年二千三十機であったのがピーク時では二千四百三十機までいき、今若干落ちておりますけれども、二千二百四十機、こういうことでございまして、量的な面でも、潜水艦にしましても作戦用航空機にしても兵員数においても、依然として高い水準にあるというようなことは事実でございます。  それだけではなくて、近代化がどんどん進んでおりまして、質的な面では非常に向上しております。これは例えば、潜水艦の中でも半数は原子力潜水艦になっておるとか、それからさらには、作戦用航空機などにつきましてもいわゆる第四世代のものになっている。それからまた、ミサイル巡洋艦であるとかミサイル駆逐艦なども増強されているということでございまして、現実に現在の極東ソ連軍の勢力が依然として量的にも、またとりわけ質的に、あのソ連の極東地域を防衛するには余りある力を持っているということは、これは否定できないことだと思います、力といたしましてですね。
  80. 和田静夫

    和田(静)委員 そういう分析は分析としまして、それで、やはり引き続いてソ連は脅威である、連邦そのものが大変な危機的な状態の中にあるああいう内的な事情等いろいろなことを考えながらも、なおソ連は脅威なんだ、こういう結論ですか。
  81. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  私どもこれまででも、ソ連あるいは特定の国を我が国にとって脅威である、こういうことは申し上げておりません。脅威と申しますのは、単にそういった力を持っているというだけではなくて、攻撃あるいは侵略をするという意図でございますね、そういった気持ち、これが合わさったときにやはり脅威となるわけでございまして、そういった意味では我々は脅威と考えておりません。しかし、意図というものは、どちらかと申しますと比較的短い時間内でこれは変化し得る。それに対して力というものは、やはり長い時間をかけて整備されていくものでございますから、したがって、現在の状況の中で、私は、ソ連あるいはどこか特定の国が我が国に対して侵略の意図を持っているとかあるいは脅威であるということは我々は考えておりませんけれども、そしてまた全体として見るならば、こういった世界が対話と協調の時代に向かう中で、アジア地域におきましてもやはりそういったふうな、ソ連が大規模な武力を行使するなんという可能性は従来よりもさらに低くなっておる、こういうふうには考えておりますけれども、しかし先ほど申しましたように、物理的な意味での力を依然として持っておるというようなことは否定できない、こういうことでございます。
  82. 和田静夫

    和田(静)委員 現在の中期防でもって大綱の水準は達成されるわけでありますが、新中期防においてさらに正面装備の調達を続ける理由というのが理解できないわけでして、総理がおっしゃっている必要にして十分なものというのは総理はどういうことを根拠にされているんでしょう。
  83. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、必要にして十分な節度ある防衛力の整備をすると常々申しておりますけれども、それは、我が国を防衛するという基本に立って、そして、日米安全保障条約との相互関係の中から、日本の安全というものは日本で守らなきゃならぬその分野はどこであるか、これはもう小規模の通常兵器による侵略に対してこれを阻止する能力、こういうことで平和時における整備すべき防衛力の大綱というものが決められておるわけであります。  ですから、あの大綱に示されたものを一応ほぼ達成をいたしましたから、さらにそれを増強するという考え方ではなくて、今後はその更新ということが主でございまして、それをさらに増強していくというような考え方ではありません。ですから、中期防全体で見ましても、たしか正面装備の新規契約分は三%、前計画に比べて減額になっておるということも、節度ある必要にして十分な限度というふうにお受けとめをいただきたいと思います。
  84. 和田静夫

    和田(静)委員 日本政府のソ連軍に対するこれまでの認識、量から質へとかいろいろ認識があったわけでありますが、そういう考え方に立つと、私は、新中期防でも、正面装備の更新を行っていくのであれば、それに伴って量的には削減の方向に持っていくのが実は当然ではなかろうかと考えているわけです。  今後日本の防衛に必要とされる水準を、量的な水準だけでなくて質的な向上も考慮して、質、量を総合的に判断した基準に改める、大綱をそういう意味では見直す、そういう時期に来ているのではないだろうか。さもなければ、日本の軍事力はどうも今後やはり際限なく大きくなる危険性がある。  例えば、質の向上で言えば、戦闘機の航続距離が少し延びただけでも、これは近隣諸国にとっては、日本がソ連に抱くと同じような意味で軍事的な力、そういうことを感じさせることにもなるでしょう。それに加えて、例えば空中給油機を導入するということにでもなれば、もはや日本に侵略の意思があるかないかというのは関係なくて、近隣諸国は警戒心を持つことになる、こういうふうに思いますが、総理、いかがでしょう。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  85. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  まず第一に、新中期防における正面装備等の整備の考え方でございますけれども、御承知のとおり、現中期防でほぼ大綱で考えました防衛力の水準というのが概成されますので、新中期防におきましてはその水準をいわば維持するということで考えております。  そういうことでございますから、計画ベースで見ますと、新中期防では正面装備の平均実質年の伸び率はマイナス二・三%になる、現中期防が七・七%増である、全体として下がっております。それから、例えば装備の水準で申しましても、戦車等は新中期防完成時におきまして、現在千二百五両ということになっておりますのが千百三十六両というふうに、保有水準としても減ってまいります。それから、護衛艦等につきましてもやはり隻数が減るということになっておるのでございます。だから、基本的に減耗していくものを更新していくということになっているのでございますけれども、装備の種類によりましては、今申しましたようにレベルそのものは下がるというものもございます。  それから、それにしても航空機の航続距離が長くなったり質的な向上があるじゃないかという点でございますけれども、この点につきましては、やはり防衛力というものは相対的な面がございます。他国の水準がどうなっている、技術的な、質的な水準がどうなるかということがございますので、これは各国の軍事技術の動向等も踏まえながら、やはりその更新のときに近代化というものは図っていかなくては、十分なる防衛の任に当たれないのではないか。こういうところはひとつ御理解いただきたいと存ずる次第でございます。  それから、大綱そのものの見直しを考えてはどうかという点でございます。  これは、実は私ども、今回の新中期防を策定いたします際にもいろいろ検討したのでございます。安全保障会議もこの関係で実に十二回にわたって開きまして、いろいろ検討してまいりました。あの当時の国際情勢と現在の国際情勢どうであろうかということでいろいろやってまいりました。その結果、現在の国際情勢というものが当時よりもさらに進んだ形で対話と協調の方向に向かっている、それはそのとおりであるけれども、しかし具体的にいろいろ見ていくと、現在の大綱は、大綱の装備等の水準につきましてはこれを維持するのが適当であろうという結論に達したわけでございます。  いろいろございますけれども、大綱を制定しました昭和五十一年当時というものも、実はデタントが非常に進んでおった時代でございます。米ソの首脳間の交流も随分ございましたし、STARTⅠが調印される、STARTⅡの交渉が始まる、あるいは、昨年のパリ宣言につながります例のヘルシンキ宣言などが採択されたのもそのころでございます。そういったデタントという情勢を踏まえてやった大綱であったということは一つあると思うのでございます。  もちろん、そのころよりも今日の国際情勢はさらに進んだ形で、いわば対話と協調の時代に進んでおりますけれども、そういったことを十分勘案しながら、我々は今回はその大綱は維持する、こういう結論に達したということでございます。
  86. 和田静夫

    和田(静)委員 これは日米の首脳会談の中で話題になるかならないかは別といたしまして、アメリカには、日本にもっと世界の平和のための責任分担を負わせるべきだという考え方が非常に濃厚であるようでありますが、これは、軍事力によって世界の安定に協力しろということを意味しているというふうに総理はとっていらっしゃいますか。そういうような要請がアメリカ政府からあったときに、日本の政府としては、現在の専守防衛の政策を変更するということには、これはならないでしょうね。
  87. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 首脳会談でテーマになるならないは、これは別の問題でございますが、今の御質問のことを私なりに、きょうまでの首脳会談やきょうまでの日米関係というものを立場に踏まえて申し上げますと、アメリカと日本との間は、日米安保条約そのものもいわばバンデンバーグ決議の唯一の例外と言われるように、日本にはそれ以上のことを分担役割として求めていなかったわけでありますし、また同時に、グローバルパートナーシップで日本に最近特に求められておることは、世界的規模における問題の中で両国で力を合わせてやっていかなきゃならぬことたくさんあるではないか、例えば地球環境の問題とか、例えば麻薬の問題とか、いろいろございます。そういった方の問題、日本自身もきょうまで国際貢献の方途としては、平和に対する協力、ODAの拡充、文化の交流、この三つの柱を掲げて、それをアメリカはよく承知の上でそういった問題についても議論をしてきたわけでありますから、今後とも日本が果たしていくべき役割、世界の平和と繁栄のために果たしていくべき役割というのは、おのずと日本のきょうまで歩んできた道にやはりアメリカも強く期待をしておるものであろう、私はそう受けとめております。
  88. 和田静夫

    和田(静)委員 そうこう考えますと、日米安保条約についてでありますが、事前協議の規定などというのほとんど機能していないのがもう実情でしょう、どういうふうに言われてみたところで。世界の新しい秩序の構築の時代に入った現在、もう一度厳格に日本の防衛だけに対処するという原点、そういうような意味をしっかり踏まえながら日米安保条約を私は見直すべき時期に来ているのではないだろうかと思うのですけれども、総理、何か御見解ございますか。
  89. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米安保条約あるいは日米安保体制というものは、戦後きょうまで現実に日本の平和と安全というものを確保し続けてきたということは、これは事実でございましたし、同時に、このことがアジア・太平洋地域の平和と安定の枠組みとしてアジア・太平洋の国々にも理解と認識を深めて定着してきた制度であると私は受けとめております。これは私個人の思いではなくて、つい昨年もサテライトセッションでいろいろ議論しましたときに、アジアのリーダーから、日米安保条約の枠組みの中でこの地域の平和と安定は確保されてきたし、今後もそれが大切な枠組みだという発言等もあり、私はこの問題について、今世界が冷戦構造の発想を乗り越えていきつつあるときであります、これを変える必要はなく、むしろこれをきちっと継続していくことによってよりアジアと太平洋の安定に貢献すべきでありますし、同時に、委員御承知のように、安保条約も改定のときから、ただ単に安全保障じゃなくて、日米の相互協力及び安全保障条約とタイトルも変わったように、条文の中の第二条を初め、相互の福祉の条件とか経済の条件とか、いろいろなことも新たに書き加えられておる、まさに根本的な友好促進を図っていこうという、そういう背景があるわけでありますから、その精神に従って私は持続すべきであると思いますし、またそれで日本の安全も確保できると、こう確信をいたしております。
  90. 和田静夫

    和田(静)委員 外務大臣、ソ連の情勢なんですけれども、大統領が来月お見えになるわけですが、バルト三国の独立問題などでやはり非常に緊迫が続いていますね。今回の湾岸戦争の処理におけるアメリカ寄りの姿勢とでもいいますか、それに対する保守派の反発も非常に大きいようですね。そうすると、政府はソ連の現状というものを概括的にはどういうふうにごらんになっていますか。
  91. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ソ連の国内情勢は、経済的にはペレストロイカがうまく軌道に乗っていない、そのために経済的な不安定が起こっているという認識を持っております。一方、民族運動というものがいろいろな共和国で活発に動いている。先般、この連邦に関する国民投票というものが行われた。一応大都市においては極めて低い支持率が出た。そういう状況の中で、バルト三国の問題も、ソ連の連邦政府にとっては国内問題として非常に大きな問題であろうという認識を持っておりますが、一方、湾岸紛争におけるこの問題をソ連がどう認識したかということについて、米ソの間で緊密な外交ルートでの調整が行われておったということを、はっきりとゴルバチョフ大統領から私は聞かされております。しかし、東ヨーロッパから引き揚げつつある駐留ソ連軍の軍人たちがソ連に帰ったときの就職の問題、あるいは住居の問題、このような問題で軍人の一部に不満があるということも認識を私は持っておりまして、ソ連の政治をやっておられる連邦政府というものの指導者たちは、現在、この歴史的な変革期に当たって大変な苦労をされているという認識を持っております。
  92. 和田静夫

    和田(静)委員 端的なことを聞きますが、現在もドイツに大量のソ連からの移住者がある。私も正月早々ずっと歩いてきましたから、ヨーロッパで聞かされたもう今一番の問題は何かといったらこのことですね。そして、ソ連の事情の変化によっては大量の避難民がヨーロッパに出るだろうと。それに対する対応をどうするかということが、今ヨーロッパの諸国の大変な政策上の話題になっていますね。その見返りで、それはあなた、日本の場合だって全然ないのかという話がありまして、日本への流入ということが将来において起こるということがもしあった場合に、そういうことに対する対策といいますか、政府は何か態度を、協議をされているとかお決めになっているとかということはございますか。
  93. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在、ソ連領内から日本に難民が流入するという可能性については、現在考えられるような状況にはございません。
  94. 和田静夫

    和田(静)委員 私は、そういうようなたくさんの話題があったことを申し上げておきまして、今紋切り型にお答えになったようなことだけでもちろん済めばいいのですが、そうでなかった場合のことを一体私たちはどう考えるのかということも、ひとつ共通の問題としてともに考えたいと思いますね。  そこで、昨年の予算委員会で、私はこの場で二島返還論を、実はいろいろと意見を述べました。いわゆる段階的な返還論、もちろん日ソ平和条約を前提としての話でありまして、外務大臣政府の方針を変更せずと、一言で言えばそういうふうなお答えであったのでありますが、今度の小沢幹事長訪ソなどを経て、今日もそのお考えに変わりがないのだろうか。ゴルバチョフ・小沢会談を通して、北方領土問題の前進というのは、これはございましたか。
  95. 中山太郎

    ○中山国務大臣 四島一括返還というこの従来の政府の方針に変化はございません。また、小沢幹事長がモスクワにおいてゴルバチョフ大統領と二度にわたって会談をされた、その内容については、私どもはまだ熟知をいたす状況にはございません。そういうために、これについてとやかくコメントをする立場にございませんが、いずれにいたしましても、この週末に始まります日ソ外相会議、これは東京で開かれるわけでありますが、さらに来月のゴルバチョフ大統領の訪日と、これに向かって小沢幹事長の訪ソによるゴルバチョフ大統領との会談というものは、一つの大きな環境をつくっていただいているということだけは、現実の問題として高く評価をしております。
  96. 和田静夫

    和田(静)委員 総理、いろいろ報道では読みましたが、小沢幹事長は訪ソをされるに当たって、総理との会談を終えられて行っているわけでありますから、当然昨日来の報告はもうあったと思うんですが、どういうふうなお考えでいらっしゃいますか。
  97. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府と与党は、きょうまで一体となって、日ソ関係をどのように扱うかという基本原則を立てております。それは、北方四島の問題を解決して平和条約を結ぶということ、それから無原則な政経分離はしない、同時に、隣国であるソ連と真に友好、安定的な関係を確保していくために、きょうまでも、その原則に触れないところでは、人道的な食糧援助とか人物交流とか調査団の受け入れとか、あるいはこちらからいろいろ人を派遣するとか、いろいろな交流は続けてまいりましたが、この一番の原則である四島返還、平和条約という原則については、これは曲げないで小沢幹事長も今回のゴルバチョフ大統領との会談に臨むということをきちっと再度確認をして、そして出発をしたということであります。  それで、第一回、第二回とお話し合いがあったんですが、幹事長の方からは、四島の問題について具体的な話を提起したけれども、具体的問題を合意のメモとして発表するには至らなかったということ、けれども、ゴルバチョフ大統領の方も、今後とも領土問題を含めて、もちろん平和条約につながるということで、その他日ソ関係のいろいろな交流につながり得るわけだからぜひ話し合いの対象として前進させたい、四月に日本へ行ったときには首脳会談でそのことを話し合いたい、もちろんそれは領土問題を含んでの向こうの態度でありますから、それぐらいのことしかまだ明確にはここで申し上げる段階ではありませんけれども、小沢幹事長が帰ってきたら内容をきちっと聞きますけれども、きょうまでにない熱意を感じたという幹事長の会談後のお話もあり、私は、それなりに日本の原則を踏まえての話し合いは、今後の日ソ関係にとっていい環境づくりをしておってもらう、このように評価しております。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  98. 和田静夫

    和田(静)委員 領土問題で、これも私、昨年この予算委員会で申し述べたことでありますけれども、ロシア共和国の存在はかなり高い地位を占めるのだろうというふうに思っているわけでありますが、特にあそこは、ロシア共和国の国民投票ということを経ながら領土問題の解決ということになっていますから、過日の投票結果、これは性格が違うにしても、なども勘案をしながら、外務当局としては、エリツィン議長が今度ゴルバチョフ大統領が訪日するときにはロシア共和国の代表を一緒にという話まで出ているようでありますから、その辺のところはどういうふうに御判断になっているわけですか。
  99. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在のソ連の国内法におきましては、外交権というものはやはり連邦政府にあるという認識を持っております。日本の交渉相手はソ連邦の政府である。また、ソ連の現在の政治状況からして、最終的決断を行うのもまた連邦政府であろうと思います。ソ連の中におきましてロシア共和国が従来と異なった役割を果たすようになってきていることは十分承知をいたしておりますが、ロシア共和国の意向をどのように取り込むかは、基本的にはソ連の内部の問題であるという認識であります。政府といたしましては、ロシア共和国との実質的交流の促進に努力しつつ、連邦と各共和国との権限の関係について今後の動向を注目してまいりたい、このように考えております。
  100. 和田静夫

    和田(静)委員 ロシア共和国の代表がゴルバチョフ大統領に同行されるというようなことになると見ていらっしゃるわけですか。
  101. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答え申し上げます。  ゴルバチョフ大統領がお見えになるときにどういう随員になるかということは、まだ正式な通報がございませんので、今申し上げることはできませんが、中山外務大臣とベススメルトヌイフ外務大臣との会談におきましては、ロシア共和国外務省からオブザーバーとして一人同席をいたしておりました。また、事務的な平和条約作業グループの会合におきましても、ロシア共和国の外務省の参事官がやはり同席をいたしておりました。ということを御報告申し上げたいと思います。
  102. 和田静夫

    和田(静)委員 この北方領土問題との兼ね合いでどうしても私たち見逃すことができないのは、ソ連邦が今持っておる国境線のいろいろの他国とのやりとり、あるいは領土問題、これらと北方領土問題というのが全く別の問題として処理をできるのだろうかということが、一つ危惧としてはありますよね。その辺はどういうふうにお考えになっていますか。
  103. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答えいたします。  中山外務大臣が一月にゴルバチョフ大統領と一時間五十分の会談をいたしました際にも、ゴルバチョフ大統領は、この北方領土問題の議論の中で、ソ連邦が有しておりますいろいろな国境線の問題あるいは領土の問題について、ゴルバチョフ大統領の方から具体的な例を挙げての御説明がございました。中山外務大臣の方からは、それはいずれも第二次大戦の戦後処理にかかわる問題と認識しているけれども、我が方の認識は、北方領土四島の問題はそれと性格を異にする問題である、第二次大戦の結果としての領土処理の問題であるならば、それは我が国は既にサンフランシスコ平和条約で南樺太及び千島列島を放棄しているということであるという認識を述べたのでございます。私どもは、北方四島の問題というものはそういう問題ではない、スターリンの時代のいわゆる拡張主義のもとに不当に、不法に占拠をされてしまったものというふうに認識をしておるわけでございます。
  104. 和田静夫

    和田(静)委員 これは外務大臣ですか大蔵大臣ですか、対ソの二百億ドルとも言われる日本政府からの支援、供与、そういう方針を日本政府は持っておる。それでアメリカとの関係は一体これはどうなるのだろうかということが少し気がかりでありますが、これは総理が訪米されるときに、対ソの経済支援等の問題については海部・ブッシュ会談などというような形の中では触れられる予定の一つでしょうか。
  105. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 総理の御答弁の前に、事実関係について私から申し上げたいと存じます。  対ソ経済支援といいますものが論議になり始めましたのは、ちょうど一昨年の秋でありましたか、ECの会合においてミッテラン大統領が欧州復興開発銀行構想を提唱され、そしてこの欧州復興開発銀行というものの中にソ連が入るか入らないかということが論議をされましたあたりから本格化をいたしたと思います。そして、大陸諸国においては、東欧の経済改革の延長線上の問題として対ソ経済支援というものをとらえる論議がそのころから、例えば蔵相レベルの会合等にも姿を見せるようになりました。  しかし、本格的にそれが議論に登場いたしましたのは、昨年のヒューストン・サミットの際、蔵相レベルにおきまして、特定国の蔵相から、ソ連のペレストロイカの進捗を支えていくためにも対ソ経済支援、殊に金融支援が必要という形で問題が提起をされてからであります。その時点におきましてさまざまな角度からの論議が行われた上で、首脳レベルにおきまして、ヒューストン・サミットの際、IMF、世銀、OECD、そして今回創設が決定をいたし、実現を見ますEBRD、この四国際金融機関がソ連経済の実態分析を行って、その結果を見て考えるということで論議が収束をいたしました。  その後におきまして、この四国際機関がソ連経済の分析を行いました結果が昨年の暮れに提出をされまして、それを受けて、本来なら一月のG7におきましてその後の論議を前進させる予定であったわけであります。しかし、このG7の開会直前に、バルト三国における情勢にさらなる変化が生じたということから、その論議は先送りにされました。そして、この四機関の報告の中では、連邦と共和国との関係等、相当数の問題を列記し、こうした問題が解決をされない限り金融支援については非常に消極的な内容であったわけであります。その情勢から変化をいたしておらない状況の中におきまして、金融支援という考え方について変化は生じておらないというのが実態であります。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 全体として申しますと、ソ連のペレストロイカは成功してほしい。ペレストロイカの正しい方向性は支持しよう。昨年のサミットのときにも私は、日本の立場としては、今欧州ではドイツの統一その他東西関係が終わりを遂げた。冷戦時代の発想を乗り越えていい方向に進んでいるのは欧州だけではいけないのであって、アジア・太平洋地域でもこれは発想を乗り越えて解決したい。アジアで残っておる東西関係の残滓というのは、日本とソ連の間にある北方四島を解決し、平和条約を結ぶことだ。  これはサミット参加国の首脳に日本の立場として、そのような行動を日本はとるのはそういうことなんだということを発言をし、そして議長サマリーでもそれをまとめて、日本とソ連の間に北方領土問題があって、それは世界の平和と安定のためにも重要だという共通の認識を得てもらっておるわけでありますし、またそれらの国々の支持といいますか、それはあるべき姿に戻すべきだという、そういうことを私どもも強く期待しながら、これは日ソ間の交渉を進めておるわけでありますから、当然いろいろなところで、また首脳同士で会いますときにはこのことを話しますし、またこの間イギリスのメージャー首相が私のところへ向こうから連絡をしてくださって、ゴルバチョフさんと話したときにあの一項目、日本の北方領土の問題のことについても自分としても留意している問題だということを伝えておいたということまで伝えてくれたわけでありますが、これはサミット参加国が皆この問題については留意をして、平和と安定のためには解決に向かって努力をする方がいいんだという共通の認識を持っておってくれるものと、こう理解をいたしております。
  107. 和田静夫

    和田(静)委員 運輸大臣、たまたまきのう私、きょうの質問のレクチャーをやっているときに文書が来まして、それでその文書全部運輸省に渡しましたけれども、日本貨物鉄道株式会社常務取締役中島啓雄さん、関西支社長の名前で兵庫県立神戸工業高等学校長あてにわび状が出ています。お手元に行っていると思うのですが、「貴校生徒の採用試験に関わる事柄につきましては、大変ご迷惑をおかけ致しまして誠に申しわけございません。今回の件について種々調査いたしましたところ、不信の念を与えた事について、その不注意さを痛感しております。今後は、今回の反省を踏まえての対策、指導強化をはかり、一切このようなことのないよう十分に管理をしてまいります。」こういうことなんですが、労働大臣、複数組合が存在をしているわけですね。そういうJRで、今企業ぐるみの不当労働行為の是正を求める行政処分が労働委員会命令という形で繰り返し出されている。  特定の労働組合の役員の手に、各労働組合に対しては中立であらねばならない人事をつかさどる者やあるいは会社の中枢の者でなければ知ることができない新規採用試験受験者の名簿、これがそっくり渡って、そして身元調査に間違われたかあるいは身元調査に等しい、そういうふうな状態のことが行われた、そして結果的には今読み上げたようなわび状が校長先生に行った。そして、しかもその対象になった子供、青年は不採用になるわけですね。わずかな不採用の人員の中に入ってしまう。これは私は正当な労働組合の行為でないし、これは職安法上大変問題ではないかと思うのですが、疑問が多いと思うのですが、労働省どうですか。
  108. 若林之矩

    ○若林政府委員 就職の際の身元調査につきましては、無責任な予断と偏見が入りまして応募者の適性と能力がゆがめられて報告されることが多いわけでございまして、就職差別事象につながったケースが数多くあるわけでございます。この観点から、企業が採用に当たりまして身元調査をいたしましたことが認められました場合は、この企業に対しまして個別指導を継続して行うことといたしておるわけでございます。  ただいま先生御指摘の件は、平成二年十月に日本貨物鉄道株式会社関西支社が新規高卒者の採用選考に当たりまして、応募者の身元調査を同社の労働組合員に依頼をして応募者の家庭を訪問させたとして、応募者の出身学校から提起された問題でございます。  私どもこの調査の結果、同社は依頼いたしました事実を否定いたしておりますが、労働組合が独自に行った家庭訪問の事実が判明をいたしました。私ども企業そのものが身元調査を行った事案ではないと承知いたしておりますが、採用選考に当たりまして適正を欠いたものでございまして、このような事案が発生したことは極めて遺憾であると受けとめておりまして、平成二年十月から三年二月にかけまして計四回指導を行ったところでございます。  この事業所に設置されております企業内同和問題研修推進員に対します研修を徹底をいたしまして啓蒙、啓発に一層努力をいたしまして、こういった事案が発生しないように努力したいと考えております。
  109. 和田静夫

    和田(静)委員 一方、これは二月二十四日、JR東日本会社の来年度新規採用者を対象にしたイベント列車、銀河鉄道シリウスというのが行われたのですよね。これも一緒にあれなんですが、不当労働行為だと思われるのですが、これ、運輸大臣、どう思います。
  110. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 JRの貨物の問題につきましては、先生おっしゃるとおりであろうかと思います。  それからまたシリウス号でございますけれども、事実関係の詳細までは私わかっておりませんが、JR東日本に問い合わせましたところ、このイベントの列車はJR東日本企画から申し込みを受け、団体列車として設定したものであり、採用内定者が同乗したとは知らなかったが、問題が提起された後の調査で同列車に採用内定者が乗車したことが判明をした。会社側としては名簿の管理については極力厳正に行っており、特定の組合に漏らしたことはなく、どのようなルートから情報が漏れたのかは定かでないと説明を聞いておりますけれども、運輸省としては、特殊会社でありますJRが新入社員を選考、採用するに当たっては特に厳正を期すべきであり、受験生や採用内定者の住所、氏名などが特定の外部の者に不当に漏れるようなことがあってはならないと考えております。もしこのような事実があるとすれば、採用事務上の資料管理を厳正に行うよう運輸省としても指導してまいりたい、こう思っております。
  111. 和田静夫

    和田(静)委員 これは例えばこのイベント列車は「応募状況」というメモがあるのですよ、「応募状況」というメモ。そうすると「平成二年十二月十六日、応募開始。(返信葉書による。)締め切りは平成三年一月末日の消印までとする。」となっているのです。そうすると、十二月十六日以前に部外者に来年度新規採用予定者の名簿と住所録が渡っていたということにこれはなるわけですよ。ここのところは今運輸大臣の見解がありましたから、調査してぜひ私に回答をもらいたい、よろしいでしょうか。
  112. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 調査いたしまして先生にお届けいたします。
  113. 和田静夫

    和田(静)委員 この問題の最後ですが、同じ問題がJR東日本でも発生しているわけです。JR東日本会社はJRグループ内にあってはこれは長男格と言われる会社ですよね。それで労働委員会から一番多くの、例えば国労組合員に対する不利益扱いを正せという命令を手交されている会社でもあるわけですけれども、こういうような不当な行為について、労働省としても、労働大臣、よく調査をして、運輸省同様、回答をもらいたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  114. 小里貞利

    ○小里国務大臣 今、先生の一番最後に御指摘の問題でございますが、今お伺いいたしたばかりでございますが、事実の真否の調査をいたしまして、そしてしかるべき御報告なりあるいは措置をとらしていただきたいと思います。
  115. 和田静夫

    和田(静)委員 福祉マンパワーで少し質問をいたしますが、消費税を導入をするときの名目に「高齢者保健福祉推進十か年戦略」というような形のものがつくられていった。このマンパワーが確保できるのだろうかということを実は考えるのであります。ということは、ホームヘルパー十万人、在宅介護支援センター一万カ所以外に特養二十四万床、老健施設二十八万床など、計画は大変立派なものでありますが、全体として、平成十一年度までにどういうマンパワーがどれだけの人数必要なのか、その教育、その運営予算をどうするのか。きょうは時間がありませんので、これはきちんとした資料を後ほどもらいたいと思います。  そのことを前提にして、現在の福祉マンパワーの総数、平成十一年度の総数、その差の人数の教育養成をどうされるのか、それから、平成十一年度以降の運営費が現状より総額でどれだけ増加しなければならなくなるのか。昨年八月にマンパワー対策本部をおつくりになったわけでありますから、厚生大臣、いかがでしょう。
  116. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答えいたします。  ゴールドプランを実行していきますにはいろいろな施策が必要でありますけれども、その中で、それに従事する、各方面にサービスに参加するマンパワーの確保は一番優先さるべき問題の一つである、このように考えております。  それで、今お尋ねの数字でございますが、代表的なものを申し上げますと、ホームヘルパーは、平成二年度に十万人に対して三万五千九百五人、これが本年、三年度には四万一千人になる予定でございます。そういう進捗状況でございます。よろしゅうございますか。  それでは全体の構想を御説明いたします。  そのようなことで、マンパワーの問題につきましては、不可欠な問題として三年度の予算におきましても重点的に配慮いたしておりますが、具体的に申し上げますと、一つには、国立病院等の看護婦の夜間看護手当の改善等の処遇の改善をいたしております。また次に、ナースバンクや福祉人材情報センター等の整備による就業促進対策の強化を図ることにいたしております。また次に、養成力の拡充強化を図ることにいたしております。また、イメージアップ対策を各方面で取り入れることにいたしております、等の事業を進めることにいたしておりまして、また、昨年八月以来、厚生省内に事務次官を本部長といたします保健医療・福祉マンパワー対策本部を設置いたしまして検討を進めてまいりまして、今後、看護職員、ホームヘルパー等、ゴールドプランの実施に当たりまして特に緊急性の高い職種の現状と検討課題を中心に中間的な取りまとめを行いました。  これによりますと、現状を分析をいたしまして、社会的評価の向上、それから労働条件の改善、養成力の強化、潜在マンパワーの就業促進、またサービス供給体制の改善等についての提言が行われておりまして、国民皆参加、自立自助の促進、マンパワーのすそ野の拡大、人材確保についての公的措置の検討等について新たな問題の提起もなされておるわけでございます。今後、このような報告の考え方を引き継ぎながら、さらにゴールドプランの終局的な目標達成のために鋭意努力を続けてまいりたいと考えております。  詳細の資料につきましては、また別途お届けするようにいたします。
  117. 和田静夫

    和田(静)委員 ちょっと肝心な答弁がなかったのですけれども、後で資料をもらってもう一遍論議し直しますが、私は福祉マンパワーの確保ができるのかどうかということが大変心配ですよ。  そこで、平成十一年度以降の市町村財政措置はどうなるのですかね、ここのところ。交付税なのか、何で措置されるのか、これは自治大臣大蔵大臣、両方から。
  118. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 突然の御質問でございまして、平成十一年以降の点につきましてはまだ十分詰めたものではないということでございますので、御承知いただきたいと思います。
  119. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 平成十一年以降まで予見するほどの力が私はございませんけれども、いずれにせよ、その時点において、御要求があった時点で御相談をすることになろうと思います。
  120. 和田静夫

    和田(静)委員 これは委員長自治大臣経験者だけれども、ここのところ非常に心配なところなんですよね、共通におわかりになるでしょう。今の答弁を聞いていても、何にも対策がなくてゴールドプランだけ出ているのではないだろうかという感じ。税務の担当者に答えさせた方が悪いのであって、これは大臣責任だと思います。私はとにかく、資料を厚生大臣お約束になりましたから、出してもらって、もう一遍基本的に論議をし直したいと思います、きょうは時間がありませんので。  それから、損害保険会社が介護保険に会員組織をつくって、そして在宅介護、入浴サービス紹介など、そういう業務を今掲げているのですよ、これはおわかりのとおりだろうと思うのですが。これは実は余り評判がよくないようであります。  というのは、確かに紹介サービスですから、紹介してくれる人があるし紹介されるのですけれども、紹介先は特別の組織ではなくて既成の組織なんですよ。例えば紹介されても、結局、家政婦さんは病院勤務に忙しくて思うように来てくれないというようなことになっているケースが割合多いのです。したがって、私はこの間分科会で、介護休暇だとか、もっと進んで介護手当を政府は考えなさいという提案をさせていただきましたけれども、民間がやっているこの事情というのを今やはりしっかり調査する必要があるのじゃないだろうかというふうに私は思います。せっかく介護保険等会員組織、これはよく介護クラブと言われておるのですけれども、十分な役を果たしたとはいえないと私は思うのですね。これがこれから先対応できるのだろうかと思うと、これは高齢社会に対応できるような状態ではないのではないだろうか。大蔵省、こういうことはもう調査なりしていらっしゃるだろうし、見聞されているだろうと思うのですけれども、この福祉マンパワー不足の見通しを私は持つがゆえに、将来どうするのか、ここのところの見解はどうですか。
  121. 竹内克伸

    竹内政府委員 先生今御指摘の介護保険、御案内のように、生命保険と損害保険と両方でやっておりますが、今お話がございました損害保険について申し上げますと、商品としてはつい一年半ほど前にスタートした商品でございます。しかしながら、大変ニーズ、関心が強いものがございまして、一年半ではございますが、非常に伸びているという実情にございます。いろいろな介護状態に陥った場合の費用保険をお支払いしようということでございますが、同時に今お話ございましたいろいろなサービスなんかも研究しております。私どもとしても、非常にこれは重要な問題で、単に保険金だけで解決できないという大きな問題をお話のように含んでいるわけでございます。民間の保険としてどういうことができるだろうか。まだスタートしたばかりでございますので、私どもも保険会社の人とよく意見交換をして、民間の保険会社でどういうことがさらにできるだろうかという研究を続けていきたい。きちっとした調査ということではございませんが、こういう問題をめぐってしばしば意見交換をしているところでございます。今後とも意見交換をしながら研究をしてまいりたいと思っております。
  122. 和田静夫

    和田(静)委員 厚生省はどういう認識をお持ちでしょうか。介護保険が今言われるように、かなり伸びているというふうに言われますけれども、介護クラブの会員というのは一体どれぐらいいるのだろうか、そして、将来これはどれくらい伸びるのだろうか、それとの関係でその対応策、特に福祉マンパワーの見直しというのをどういうふうにやろうとされるのか、ここのところは、大蔵省は大蔵省、厚生省は厚生省などという代物ではないと私は思うのですね。高齢社会対策というのは、海部内閣の、総理の言われる目玉の一つでしょう。もっと統一的にいかなければいかぬという感じがしますが、厚生大臣、いかがです。
  123. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 介護の重要性、そういうことで、基本は、介護につきましては国で措置するということであろうと思います。しかしながら、ただいま大蔵省の方から説明ありました民間介護の問題は、そのような国でいたしております介護の一部を補完する制度である、このように私の方は受けとめております。  したがいまして、いずれにいたしましても、介護をするマンパワーの確保ということは大変大事なことでありますので、全体を通じてそういうマンパワーの確保については、今後も十分配慮してまいりたいと考えております。
  124. 和田静夫

    和田(静)委員 今大蔵省と厚生省からそれぞれ答弁がありましたが、特に大蔵省、調査の結果、少し資料を提出願えますか。企業にかかわることだからというような形でもってお出しできませんというのじゃ困るので、これは共通の基盤でやはりお互い検討するということが私は必要だと思うのですよ。  私はもうかなり厳しい見方で言っておいていいと思うのです。福祉マンパワーの要員の確保というのは、平成十一年度の状態までずっと見通してみると、大変私は困難だと思います。厚生大臣立場上きれいな答弁をされていますけれども、その困難をどういう形でもって埋めるのかというのが高齢社会に対するところのやはり一つの対策でなければならぬ、今から考えておかなければならぬことだろうと私は思うのですよ。
  125. 竹内克伸

    竹内政府委員 実情の把握の問題につきましては、資料という形でどういうものがお出しできるか、ちょっと研究をさせていただいて、いずれにしても、おっしゃっている問題意識そのものはよくわかるわけでございますので、民間の保険会社がいろんなそういうサービスというか活動もしております。その実情がどういう状況になっているか、どういうデータでお出しできるかを含めまして、ちょっと研究をさせていただきたいと思います。
  126. 和田静夫

    和田(静)委員 時間なので、通産大臣、どうも相性が悪いのか、中小企業問題いつも残してしまいまして、大変恐縮でございます。  終わります。
  127. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  128. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、辻一彦君から関連質疑の申し出があります。和田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻一彦君。
  129. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょう私、さきの総括、一般質問に引き続いて、原子力の安全性問題とそれからエネルギー政策、それから米の問題等につきまして質問したいと思います。  まず第一に、この美浜の二号炉がかつてない重大な事故が起きて一カ月半たちました。随分と新聞やあるいはマスコミ等に論議をされましたが、国会でも論議が行われたわけでありますが、四十五日間を振り返って、この事の重要性をどういうように認識をしていらっしゃるか、総理にいま一度ひとつお尋ねしたいと思います。
  130. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 原子力発電の問題につきましては、私は、一にも安全、二にも安全対策をきちっと確保していかなきゃならぬという大前提に立って物を考えております。  同時に、今、日本では、電力の中で約三〇%原子力発電に既に依存をしておるという状況になっておりますし、また石油の事情なんかを、先のこと等を考えますと、原子力の発電というものも非常に重要な部分を補っていくわけでありますから、安全確保には万全を期せろということが大前提。  それから、今回の事象につきましては、委員会でも何回も御議論があったと思いますけれども、私は、緊急冷却装置が作動して、そして最悪の事態に至ることはとめてありますから、その意味では不幸中の幸いだったと申し上げておりますが、しかし、なぜ緊急装置が作動したかということの原因をひとつ徹底的に究明して、同じ種類のことを二度と繰り返してはならぬのは当然でありますけれども、なぜこういったことが起こったかということについて徹底した究明をし、よくわかるように対策を立てていかなきゃならぬ、こういう基本で対応いたしております。
  131. 辻一彦

    ○辻(一)委員 前に総理はたしか事故と言われておったのですが、事象というように今言われておるのですが、何か事故と事象は変わったのかどうか、ちょっと一言だけお尋ねしたい。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 チェルノブイリの事故とかスリーマイル島の事故とか、いろいろ言い方があるわけでありますけれども、今回の場合は、正確に言うと事象というのが専門用語としては正しいもののようでありますから、そういったものに従っておるということでございます。
  133. 辻一彦

    ○辻(一)委員 原子力安全委員会の委員長はこれを事故と言い、エネルギー庁は事象と言っておるのですね。私はこの前、科学の委員会で、統一しなさい、こう言ったのですが、厳密な意味にはいろいろ表現があると思うのですが、やはり事故と一般的に、通念でもって言うべきではないか。多く時間をかけるつもりはありませんが、一言それをお尋ねします。事故と統一すべきではないか。
  134. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 原子力関係のトラブル、いろいろ程度に応じまして、日本語としていろいろな言葉があるわけでございますが、何か起こりましたときに、それがどのランクに位置づけられるものかというのを即座に判断するのは、なかなか困難な場合が多うございます。  そこで、非常に軽微なものから重大なものまで含めましてすべてに共通の、何といいましょうか価値判断を含んでいない中立的な言葉として広く用いられる言葉に事象という言葉がありますので、私ども通産省では、非常に軽微なものから重大なものまで含めまして、起こりました一連の出来事をとらえて、すべて事象という言い方で言っているところでございます。
  135. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これに時間をかけるつもりはないのですが、せっかくですから内田安全委員長に、どうおっしゃるのか、ちょっと伺いたい。
  136. 内田秀雄

    内田説明員 今回の美浜二号の蒸気発生器伝熱管破損に関する問題は、安全委員会が決めております安全評価指針では、破断そのものが設計基準事象として扱っております。そして、それから出ます放射能の影響等を含めて評価した結果を踏まえまして事故と言っております。  それから、原子力事故とはっきり定義いたしますと、これはIAEAとかOECDに定義がございまして、チェルノブイル事故とかあるいはTMI事故というようなものが原子力事故でございます。  ですから、今回の美浜二号機の蒸気発生器伝熱管破損の、私たちは事故と言っておりますのは、やはり安全評価では一つの事故として扱っておりますし、社会通念から言えば事故でよいと思っております。  ただ、これを国際的な外国語に翻訳してIAEAとかOECDに報告する場合には、アクシデントとは言わないでインシデントと言うことになっております。  以上でございます。
  137. 辻一彦

    ○辻(一)委員 総理、この問題では日本の一番権威者である内田原子力安全委員長が事故とおっしゃっているのですが、総理はいかがですか。
  138. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 やはり、大変大きな影響が起こってしまったとか、安全装置もきかなかったとか、人に対して被害が具体的な可能性として出てくるとかいうような、どこへ基準を置いたらいいのか、これは本当に専門的なことでありますからわかりませんけれども、私は、とにかく原因をきちっと究明して、再び起こさないようにせろということで、高名な研究者のおっしゃることは、ただいまそのとおり私も忠実に受けとめさせていただきます。
  139. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはそんなに時間をかける問題ではないのですが、わかりました、認識は。  そこで、ともすると事象と言われる中には、事故という表現の中に重大性がある、事象というのは事柄だと言うので軽く見る感じを私は実は受けとめておるのですね。  そこで、ECCSが働いて助かったということは大変結構ですが、それだから安全だとは言い切れない。私は一般質問のときにもちょっと申しましたが、深い谷底はつり橋をかけておる、そのつり橋が古くなった、橋げたはたくさんある、一枚一枚を点検をして、一年間は心配ないと太鼓判を押したのが定期検査。そしてそれを渡るときに、危なければみしみしと早く音がする。渡っても大丈夫だと。それは、大きな事故の前に小さな故障によって予知するという安全の原則ですね。この二つによって原子力の安全性というものが確保されておった。それが今崩れようとしておる。そして、橋げたを安心して渡っておったら、折れて谷底目がけて落ち込んだ。命綱があってぶら下がって助かったんですよ、命綱に。だから、それは助かったには違いないけれども、人間でも命綱に何回もぶら下がりになったら、これは寿命が締まっちゃうんですね。原子炉も私は同じだと思うんですよ。そういう意味でこの問題の持つ重要性を決してそう軽く考えてはならない、こういうふうに思っております。  具体的な質問に入りますが、美浜の原子炉に限らず、こういう事故が起きたときに懸念されるのは、まず一つは、今度の場合は細管が破断をしたということ、これはもう大変な大きな出来事。それからもう一つは、外に放射能や、あるいは水の中に、大気の中に放射能が漏れなかったかどうかということ。三つ目には、これは加圧型ですから圧力の関係が、非常に関係がすべて深い、だから圧力の弁が有効に機能したかということ。四つは、原子炉の炉心の内部に異常がなかったかどうか、こういうことが点検されなくてはならないですね。私は、すべてに触れる余裕はないですから、きょうは、原子炉内部に異常があったかどうか、こういうことについてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  スリーマイルが大事故のときには、これは原子炉の中の水がたんだんだんだん事故によって外に出て、下がってしまったんですね。だからかまの空だきが起こって、何千度という温度で、燃料棒が溶融して底が抜けかかったというところまで行ったわけですね。だから、水が満杯にしてあればまずまずそういう心配がない。だからその水の水位をどう事故のあったときに見るかというのが一番大事なんです。しかし、原子炉は、かまをあけて中を見ることができないから、かわりのものでそれを見なくてはならない。何で見るかというと、加圧器の水位をもってこれを見ておるわけですね。ところが、今度の場合には、その肝心の加圧器が、振り切れてゼロになって、四十二分間回復をしなかった。その間に水がどういうようになるかということを見るのは温度しかないんですよ、原子炉の中の温度。原子炉の温度というのは、水位、それから今言ったこの加圧器の水位、原子炉の水位、それらにかわるものがこの原子炉内の温度なんですね。その温度について、我々がデータ提供を求め、いろいろこの一カ月余り分析をしたのですが、非常に疑問がある。その点についてお尋ねをしたいと思うのです。  まず第一に、これがあるのですが、ややこしいのは別として、この原子炉が自動的に緊急停止をした、後、十分間データの空白がここにあるんですね、左の端のここに、十分間というのが。空白があるわけですね。これは、事故後十分というのは非常に大事な時間なんですが、これが空白になっている。これは、一体なぜここが空白なのかということを、いろいろ聞いてはおりますが、念のためにちょっと報告をいただきたい。
  140. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘の十分間のデータの空白、これは炉心上部の温度ということでございますが、これにつきましては、このコンピューターのPAMと言っておりますが、このシステムで処理の順序というのが決まっているわけでございます。そういうことで、原子炉保護系のデータとかあるいはサブクール、それから今のような炉心の温度というような順序でコンピューターで処理をするということでございまして、コンピューター処理の優先順位が原子炉保護系の方に置かれているということでございます。  それで、我々としましては、その十分間のデータということがあるわけでございますが、炉心出口の温度の指示計というのは中央制御室に取りつけられているわけでございます。これは、そういうことで三十九の温度検出器が炉心の上部についているわけでございますが、それは読み取ることが可能でございます。そういうことで、今回これも正常に動作しているということでございますので、運転監視上は問題はなかったと思いますが、今御指摘のとおり、コンピューターの容量の関係でその十分間データがとれてないということで、これは確かに炉心上部の記録ということから見ますと大事なパラメーターでもあるわけでございます。  そういうことで、我々、今この事象につきまして徹底して原因究明、対策を考えている段階でございますが、この中に、今のお話のような事故後監視計のシステム、この内容につきましても検討いたしまして、必要に応じ見直しはやっていきたいというふうに考えております。
  141. 辻一彦

    ○辻(一)委員 我が国の原子力の安全問題では、スリーマイル原発の事故から随分学んでおると思うのですね。スリーマイルは、さっき言いましたように、原子炉の水位がつかめなくてあれだけの事故になった。だからそれにかわる、温度をつかむということは非常に大事なので、ギネーの原発はスリーマイルの後に事故を起こして、これは炉心頂部に温度計があって、それを運転員が呼び出して、コンピューターで、そしてその変化を見て、この上にたまったあぶくを抑えた、こういうことでNRC、米原子力委員会から表彰というか褒められておるのですが、そういう、スリーマイルのあれだけの事故から我が国は学んだなどと言うなら、一番大事な、基本的な原子炉の大事なデータ、こんなものはわかるぐらいにしておかなければいかぬ。それを優先順位が後になってコンピューターから出てこなかったなんて、こんなものは一番先に優先してわかるようにしておかなければいかぬ。そういう大事なデータを、優先順位が後になってわからなかった、そんなことは、一体何をスリーマイルから学んでおったか、この点いかがですか。
  142. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  スリーマイルアイランドの事故につきましては、我が国、五十二項目のいろいろな事項を抽出しまして、教訓事項を学んだわけでございます。その中で、サブクールということが大変大事であるということで、炉心監視の中のサブクールがどうであったかということで、サブクールをチェックできる方法を考えなさいということも一つの教訓事項でございます。  それで、今回我々、今の御質問のように、炉心に異常がなかったかどうかというポイントでございますが、我々といたしましては、今回いろいろなデータを見まして、一次冷却水の温度、これは沸騰して蒸気になる温度、いわゆる一次冷却水の飽和温度、これを常に下回っているということを確認しております。それからもう一つは、一次冷却水の放射能濃度に有意な変化が認められなかったということで、燃料の健全性が確保されているということでございます。それからもう一つは、燃料の被覆管の周りに気泡の膜ができ、伝熱効率が落ちる、こういうような状態をもたらす最大熱負荷ということにも達していないということで、これは安全解析で確認をしております。そういうことで、炉心の燃料棒の損傷というものはないというふうに考えております。  しかし、いずれにしても、事象発生後、炉心の健全性というのは大変重要な事項でございまして、今回の調査検討でもぜひ詳細を調べまして明らかにしていきたいというふうに考えております。
  143. 辻一彦

    ○辻(一)委員 何もやってないとは言わない。それはそれなりの努力をいろいろしていることは認めますが、やはり大事な点が欠けている。  それだけではないんですね。簡単に申し上げますと、今の温度でも、例えばスリーマイルは事故後、五十二の温度をはかるところに全部五十二カ所を、温度を明示しておるのです、温度は。我が国の場合は、出されているのはこれですよ。三十九カ所のうち、非常の場合は十三カ所、その十三カ所も温度はどこの何度かわからないんですね。一カ所だけが、一番高い温度がコンピューターで出てくる、これだけですよ。スリーマイルは、これはもう十何年前に起こっている事故、あれから随分たっているんだが、こういう面だってまだまだ改善をされなくちゃいかない。  それからもう一つ大事なのは中性子束、核反応が行われているかどうかということが中性子束でわかるわけだけれども、そのデータも出してもらいたいと言っても、これは振り切れて四十二分間か一時間は出てこない、何もないんですね。しかし、スリーマイルの場合には、こういうふうにグラフというか、解析のできるように詳細な資料がちゃんとコンピューターに入って出てきておるんですね。そういうのを見ると、安全の面で極めてまだまだ足りないところがある。とても世界に、もう日本は心配ないと言えるような状況ではまだまだない、こういうふうに思いますが、そういう具体的な点で、ひとつそれから伺いましょう。それを指摘しておきます。  この十分間のことは別にして、今差し上げた一覧表を見ると、この炉心の三十九カ所の温度を平均したのが大体今まであったわけなんですが、それがぐるぐる回った、原子炉が熱くなって外へ出ていく出口の温度にほぼ同じだったのですね。ところが今度の場合は、一時間余りずっと、原子炉内部の、炉心上部の温度よりも、それは最高温度だと、こう言うのですが、それよりも出口の温度の方が高いのですね、出口の温度が。普通ならば出口へ行けば温度は下がっていくのだが、この場合には、場合によって十六度、九度というように出口の温度が高い。中央の、炉心の上部の一番高い温度よりも出口の温度が高いならば、どこかにそれを、温度を上げる熱源がなくちゃいかぬ。上にあるのか中にあるのか、これをどう見ているのか。余り細かいことはいいですから、ちょっとポイントだけ聞かしてください。
  144. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます  今先生御指摘の、ホットレグの温度と炉心の温度との食い違いを御指摘になったわけでございますが、まず炉心上部の温度といいますのは、炉心上部にECCSが注入されるという水の影響もございます。そういうことでホットレグよりも炉心上部の温度の最高値が低くなるというような場合も想定されるわけでございます。  それから、加圧器がございまして、これが熱としては高い温度であるわけでございます。これが注入されることによって炉心の上部の温度が上がるというようなこともありまして、いろいろな事象を詳細に、加圧器の水の影響あるいはECCSの注入された影響等を勘案して、その炉心の温度それからホットレグの温度その他、総体的に検討していく必要があるというふうに考えておりまして、そういう御指摘の点も含めて、我々まだ詳細な検討中ということでございますので、鋭意進めていきたいと思っております。
  145. 辻一彦

    ○辻(一)委員 炉の、原子炉の中央よりちょっと高いところが上部になっていますね。そこの一番高い温度が出口へ行く間に温度が高くなるのです。高くなる。冷たい水を入れれば冷えるはずなのに。だから、ECCSが入ったからそこが高くなるというのは、これは論理が合わない。  もう一つは、加圧器は、こんなものは初めに水が出てしまったわけでしょう、加圧器の。そして、あの中にあった熱い湯はほとんど出て、底に少したまっておるのですよ。それが出口の温度の、温度計の方へ逆流してそしてその温度を上げるというようなことは考えられないので、原子炉の方から圧力でどんどん水が出てきておる中に加圧器から逆流していく、そして温度を上げる、一時間も温度を上げる、そんなことはないのですね。そういう理由で出口の温度が一番高い炉心の温度より上がったということは、常識的に、私もそれは素人ですが、常識的に考えて余りわからない。どうなんですか。
  146. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今申し上げましたように、ECCSが入ることによっての炉心の温度とそれからホットレグの温度の差もあるわけでございますし、加圧器の水が入ることによるアンバランスというのも考えられるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、これらは総合的にやはり判断する必要があるということで、今御指摘の点も含めまして今後の調査の中で進めていきたいというふうに考えております。
  147. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そんなものは総合的に判断したって温度は上がらないやないの。上がる理由にならぬですよ。加圧器、なるほど同じ三百度の温度があったんだけれども、一番先に水が外へ出てしまうのはそこから出るのだから、加圧器を熱くするヒーターも一時四十分に切っておるのですよ。熱くするところはない。そんなところに温めるような作用があるとは考えられない。そんな論理は成り立たぬ。ほかにありますか。
  148. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、やはりECCSの水とそれから加圧器から入る水との、その要因が大きいというふうに我々考えておりますが、それの全体的な流れにおける貢献度その他は、先ほど申し上げましたように今後コンピューターによるシミュレートその他で十分検討していきたいというふうに考えておりまして、今ここで定性的にどうかということはちょっとお答えできませんので、十分検討したいと思います。
  149. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一カ月以上、何回も通産を呼んで説明を聞き、こちらの方も話しているんだから、今答えられないということは、わからないということでしょう。説明がつかぬということでしょう。  もう一つ私は触れたいのですが、炉心の中に余熱というか崩壊熱というか、あるいはまだ熱があってそれが温めるのか、あるいは上の方で温めるのか。一つ考えられるのはギネーの、アメリカの原子力発電所では、炉の上部に高温の水が上がって、その上に高温の水蒸気がたまってあぶくになった。これを画面で見て、いかにしてそのあぶくを消すかということに当時の運転員は腐心をして、ついに成功して、第二のスリーマイルに至らずに終わったという例があるのですが、そういうように水蒸気の塊等が炉の上部にあった事実はないか。いかがですか。そういうのがあれば一つの熱源になる。
  150. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  実は昨日美浜二号の調査特別委員会をやりまして、その時点でわかっておりますことをいろいろ議論していただいたわけでございます。  その中で、我々この状態をシミュレートして、どういうような状態になっていたかということでございますが、炉心の状態で、十三時五十分以降温度というのは低下傾向にある、これは減圧操作を開始するまでの間でございますが、この間は燃料集合体、もちろん炉内で核沸騰というようなことは生じてないわけでございます。それから、一次系と二次系の圧力を均衡させるために一次系冷却水の減圧操作をやったわけでございますが、これで原子炉頂部というのは冷却水の循環が少ない、比較的高い温度の冷却水がある、それがそのまま保存されているというようなことが考えられるわけでございますが、この原子炉の頂部において最大五立米程度の蒸気が発生したものと推定されるという議論は昨日やっております。  しかし、燃料集合体の残留熱、その周辺で沸騰が生じてないということでございますので、燃料集合体の健全性ということは影響がないわけでございますし、先ほども申し上げましたDNBRというようなものを計算いたしましても、二・七六というような数値になっておりまして、これは制限値が一・一七ということで、これを大きく上回っている。これは大きいことが必要でございますが、大きく上回っているということでございますので、燃料の集合体の健全性という観点では問題ないというふうに現在考えております。
  151. 辻一彦

    ○辻(一)委員 水蒸気というのは、沸騰しなければ水蒸気にならないわけですね。圧力の関係があるから三百度か二百八十度か何度かで、いずれにしても圧力の関係で沸騰する、それで水蒸気になる。ということは、炉内に沸騰はあったということですか。
  152. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、一次系と二次系の圧力を均衡させるために一次系の圧力を下げる減圧操作、これをやっておりますときには、やはり頂部の水の温度が高いということで、それが減圧されますと蒸気になるということはあるわけでございまして、その数値が、先ほど申し上げました、最大五立米程度であろうということでございます。そういうことで、今申し上げましたように、減圧操作のときにそういう事象が発生したのじゃないかというふうに我々考えております。
  153. 辻一彦

    ○辻(一)委員 結論を聞きたいのだけれども、蒸気になるというのは、沸騰しなきゃ蒸気にならぬのでしょう。沸騰しないで蒸気になるのですか。それだけでいい。
  154. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  蒸気といいますのは、その圧力に、飽和温度を超えるような状態になれば蒸気が出るわけでございまして、減圧操作、圧力を下げていきますと、温度が高い状態ですと蒸気が出てまいります。それで先ほど申し上げましたように、それが五立米程度、そういうことで蒸気が発生したというふうに我々は言っております。
  155. 辻一彦

    ○辻(一)委員 小学校の理科でも我々は、百度で、水を熱くすれば蒸気になって、沸騰したというのじゃないの。圧力をかければ三百度か二百八十度か何度かで沸騰するのですが、それを沸騰というのですよ。エネルギー庁はそんなのわからぬのですか。それを沸騰とは言わぬのですか。蒸気になった。蒸気になったというのは、沸騰したから蒸気が出たんやないの。どうなんです。
  156. 向準一郎

    ○向政府委員 お答えを申し上げます。  今のように燃料集合体の残留熱によってその周辺が沸騰したということはございませんが、減圧操作でそういう状態は蒸気になるので、沸騰したということも一般的には言えると思います。
  157. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一般的にはじゃないのだ、それは理科の、もう小学校ぐらいの解釈なんですよ。じゃ、沸騰したということなんですよね、今おっしゃったのは。  そこで、沸騰したということは、飽和温度に炉内の水の温度が一致したというか、それを超えたから沸騰したのですね、蒸気になった。そのときのいわゆる頂部の温度は何度だったのか。
  158. 向準一郎

    ○向政府委員 ボイドが発生しましたのは、時間でいいますと十四時四十分以降でございますが、このときの温度というのが三百度以下の、二百九十度とか八十度とかそんな数値でございます。
  159. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは飽和温度が、この時間帯で、差し上げたのを見ますと十四時四十二分、大体ECCSを切った後と思いますが、十四時四十二分に二百八十九・二度、六、七分というから、それが十四時四十九分か八分で二百八十度。だから、この飽和温度に、今二百八十から九十というならば、全く一致をした、それだから沸騰が起こった、こういうことになるわけですね。  そこで、この頂部の温度は何ではかったのですか。
  160. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今申し上げましたこの数値というのは解析でやった数値でございまして、この事象をコンピューターでいろいろシミュレートしてやったものでございます。そういうことで、頂部の温度が測定されている、あるいはそのデータが使われているということじゃなくて、全体の状態をシミュレートした解析の結果、そういう数値が出てきたということでございます。
  161. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、思いますじゃなしに、ギネーの原発はスリーマイルの経験を学んで、頂部に温度計を置いてそれを事故のときに見ておったのですよね。今度の場合はその頂部の温度計はあるのですか、ないのですか、一言だけ。
  162. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  頂部の温度計はございません。
  163. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは、沸騰したという事実があるのですが、これは五立方メーターぐらいか、量としては今回大量というふうには言えないのですが、とにかく原子炉の中が水が満杯であれば沸騰しないのですね、大体。だから、どこかに水が欠ければ沸騰ということが圧力の関係で起きてくる。だから、炉心や炉の内部が沸騰したかどうかということは、安全性の上において非常に重要な問題なんですね。これがもし水がずっと下がっていけば、スリーマイルのように暴走してしまう。たまたま水をつぎ込んだから何とか助かったということなんですね。そこで、これは安全性の論議の上において極めて重要な内容である、これは私は確認しておきたいと思う。  それで、きのう通産の調査特別委員会に資料が出されているはずです。我々がいろいろ資料要求しても、随分資料は出ましたが、そこらはまだ出てきていない。その資料をよく見なければ安全論議はできない。それを直ちに提出してもらいたい。
  164. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘の資料の件でございますが、可能な限り提出したいと思いますが、御承知のとおり企業秘密その他もございますので、確認してやらしていただきたいと思います。
  165. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きのう、あなた、その資料を出して、複数のマスコミの皆さんは、これは論議されたことだってわかっているんですよ。頂部の温度で、八分間ぐらい大体グラフが、飽和とこの温度が一致している。それをいろいろ計算すれば、あぶく、水蒸気、まあ沸騰、五立方メーターぐらいになるだろうと。事実はあるんでしょう。だから、そのデータはグラフで何か出されているというけれども、そのグラフのもとになる数字があるのだ、全部。数字なしにグラフはつくれぬわけだから、だからグラフとそれにかかわる数値、数字、それを一切ここへ出してもらいたい。それがなければ、これは論議できない。
  166. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘の点、最大限努力をいたしまして、先生の御理解をいただけるように最大限の努力をしたいと思います。
  167. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一カ月もデータを出せと。そして資料要求に、私は文書をもって要求しておるのだ。それに回答がある。  三月の二十日と二十二日に文書をもって出した資料提出要求の七番目に、「提出した「炉心上部温度の最高値」以外には、今回の事故当時の炉心の物理的状態を推定するデータは存在しないのか」。それから、これだけではちょっとわかりにくいと思って、差しかえで、コンピューターに残る温度計の記録等を全部出してもらいたい、こう言ったのですね。そして、私のところに来た回答は、七番の答えは、低温のループの温度はある、それは出てきたんですね。しかし炉心の、今一番、炉心沸騰が起こっているかどうか、安全に関係のある、原子炉の水位が見られなければ温度を見なければいかぬという、それに関係のある、この大事なのは依然として出されてないですよ。だからこれはすぐ出してもらいたい。出されなければ、これ以上これは論議ができない。
  168. 向準一郎

    ○向政府委員 最大限努力をいたしまして、先生に御説明させていただきたいと思います。
  169. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最大限じゃだめだ。見なければ論議できないんですよ。ここまで、これは一カ月以上、四十五日間何回も何回も資料要求をし、説明を受けて積み上げてきたんですから、いいかげんな中途半端なデータじゃないのだから、私としては、ここへその資料が出されなければ、この問題については、これ以上論議はできない。
  170. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 辻委員にお答えいたします。  私も専門家ではございませんから余り内容のほどはわかりませんが、先ほどお言葉の中にありました、少なくとも平和利用ということが一番安定になされてこそ初めて原子という問題に対する安定感というものが国民につながるわけでございますし、それあって初めて平和利用にもつながるわけでございますから、その点において、出し得る限りの資料というものはきちっとそろえて出すように、私からも下命いたします。
  171. 渡部恒三

    渡部委員長 じゃ、いいですね。辻君。
  172. 辻一彦

    ○辻(一)委員 資料としては後で出すということを確約いただいて、数値をとりあえずここで報告するということですから、まず数値を伺いたい。
  173. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  昨日議論したことでございますので、早急に資料をまとめまして御報告したいと思います。
  174. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それは、グラフは見ても数字がわからない、数字が。だから、そのグラフを読んで数字をちょっと出してもらいたい。今数値を報告するから私は資料は後でもいいとこう言ったので、数字も出なければそのグラフは、見てもそれは目の見方によってうんと違うんだから、それじゃわからない。
  175. 渡部恒三

    渡部委員長 向審議官、堂々と。
  176. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  今はグラフでございますが、これを数値化しまして御報告したいと思います。
  177. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは、数値を打ってグラフとあわせてきちっと提出できる、これは確認したいのですが、いいですか。
  178. 向準一郎

    ○向政府委員 そのようにさしていただきます。
  179. 辻一彦

    ○辻(一)委員 本当はここで見ないと本格論議ができないので、私はそれが出されてからまた時期を見てなお追及したいと思う。  この問題は、指摘したように、沸騰は起こっていなかったかどうかということが非常に原子力の安全性について関心のある人の中心の内容だった。一つは沸騰があったということですね。それから、じゃどの程度の沸騰が起こり、どうかということは数値を見ないとわからないわけです。しかし炉の上部とはいえ、頂部とはいえ、沸騰はあったという、こういう重大な出来事はきちっとやはり公開をされて、この共通の安全の土俵の上でみんなが論議をする、こうしなければ広く国民の支持を得られた安全性は確立できない、このことを強調しておきたいと思います。大臣、いかがですか。それはいいですか。
  180. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 承知いたしました。
  181. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ECCSであるとかいろいろ尋ねたいことがたくさんあるのですが、どうも時間的にいって無理なように思いますから、多くはまたこの後にして、この原子力の安全問題についてもう一つだけ伺っておきたい。  それは振れどめ金具。美浜の原因は振れどめ金具と言われ、高浜の原子力発電所にも同様な問題が出てきた。今二つとめて点検をしているようですね。振れどめ金具が原因と見るのか、今度の細管破断の原因は何か、これも長い説明要らないから要点だけ聞かしてもらいたい。
  182. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  細管破断が起こりましたのは、破面等を見ますと高サイクル疲労ということでございまして、この高サイクル疲労ということであれば、やはり振れどめ金具というのが主因でございまして、これのあるなしによって振動のモードがえらく変わってくるわけでございます。そういうことで、我々は振れどめ金具ということで、これの有無について調査をし、高浜二号につきましてはECTの結果、入ってなさそうである、一部入ってない、設計どおり入ってないおそれがあるということで、実地に調査をしなさいという指示をしたところでございます。
  183. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その振れどめ金具が主因ですか、主な原因ですか。もう一度。
  184. 向準一郎

    ○向政府委員 お答え申し上げます。  振れどめ金具が主因と考えております。しかし、ノースアンナの件につきましては、先生御承知のとおりデンティングという事象があって、あれにつきましては振れどめ金具というよりはデンティング事象による、それから蒸気発生器の中の循環比が高くなっているというような事象で細管破断が起こっているわけでございます。そういうことで、様相は違う。我が国では、調査をいたしましたがデンティングは起こってないということでございますので、振れどめ金具が主因というふうに現在考えております。
  185. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そのデンティングは起こっておったかどうか、もう少し論議をする必要があるのですが、きょうはそれはなお問題を残して、一応ここでとめておきます。後日にしたいと思うのです。  単なる振れどめの金具だけの問題ならばそこの問題であるが、今言ったように金属疲労であるとかいろいろ原因が出てくると、もっと広範な影響が出てくる。  それからもう一つは、振れどめ金具は細管の内側から十二列から上にかかっているわけだから、十一列から下にはかかってないわけですね、もともと設計上。ノースアンナはその九列目がやられたわけだね。今それはデンティングだということだけれども。だから、この振れどめ金具のかかってないところは、中央のところは別として、十、十一番目というところには問題になりそうなところがいっぱいあるわけですね。それをどうするかという問題がその原因の解明いかんによっては出てくると思うのですね。  そういう点で、この第一世代と言われる古い、相当時間がたった歴年の原子炉があるのですが、この加圧型の古い第一世代等については、やはり早急に点検をやるとかあるいは前倒しでやるとかして、早く調べることが必要じゃないか。というのは、一回はこれで宙ぶらりんに命綱で助かったけれども、また命綱にぶら下がるようなことが二回、三回と起こると、これはもう原子力行政に対する非常な信頼を失っていくようになる、こう思うのですね。そういう意味で、やはり原子力は、この安全は、一面では信頼性がなければ支えられないと思うのですね。そういう点で、大臣、早くひとつ点検すべきだと思いますが、いかがですか。
  186. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 それは委員の御指摘のとおりでございまして、こういう安全性の問題は、先ほど申し上げましたように、平和利用という形であればあるほど、なおかつ安全性というものの信頼性の上に立って国民は信頼するわけでございますから、その点においていささかなりともおくれるようなことがあっては、これは相済まぬことだと思っております。そういう意味においては、私もこのことを教訓にいたしまして、なおかつそのようなことを堅持するように守るつもりでございます。
  187. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは総理にひとつお尋ねしたいのですが、まあやはり通産大臣でしょうね。  原子力の立地町村と非立地の市町村があるのですね。この間福井県の、あそこに十五発電所がありますから、四つの市町村が若狭湾で立地をして、四つは非立地なんですよ。そのときに、事故が起きたけれども非立地のところには通報もなかったのですね。だから町長や村長はみんなから電話で聞かれてもう大変困ったというので、今周辺の七つの非立地の市町村が集まって協議会をつくって、県の方や関電に申し入れをしている。それは通報体制の確立と、もう一つはちゃんと安全協定を結んでそしてきちっとやってもらいたい、こういうことを申し入れておるのです。福井県の議会もこれを、安全協定を電力と非立地の町村が結ぶべきだと決議しておるのですよ。それで国に対しても皆要請しておるのです。それから現に県の知事も、これはやはり関電と非立地の町村の中に入って安全協定を結べるように努力したいと言っておる。私はこういう方向をひとつ、関電は県の指導に従うということを我々が調査に行ったときに言っているのですから、国の方がこれに対して助言をし、県のそういう努力にバックアップをするということをやれば締結される、そういうことによって失われようとした原子力に対する安全性の信頼をやはり地域で取り返すことが大事じゃないか、そういう点で安全協定が締結できるような後押しを政府としてやってもらっていいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  188. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 これは前にも委員から、個人的にも御指導賜りまして、私もそのように考えるのでございますが、特に原子力発電の開発利用に当たりましては、地元住民のまさに理解それから信頼というものが不可欠であることは申すまでもございません。したがいまして、このため電気事業者は、地元自治体との間で緊急時の連絡等を内容とする安全協定を結んでいるわけでございます。安全協定を締結する範囲、内容につきましては電気事業者と地元自治体の間の交渉に全くゆだねられておりまして、国が一律に規制、指導を行うことはなじまないものではないか、このように考えるものでございますが、いずれにしましても、安全協定の有無にかかわりませず、電気事業者は地元住民の理解と信頼が欠けておりましたらばもう何もでき得ないことは御指摘のとおりでございますから、そういう意味においてはその信頼が得られる努力がまさに必要でございまして、通産省としましてもその旨電気事業者にもまたそういう形において指導をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  189. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ということは、県もそういう努力をするならば国、政府の方もバックアップは惜しまない、こういうことですね。  原子力の問題はたくさんありますが、限られた時間でありますので、きょうはこの問題はこれでとめたいと思います。  次に、米の問題を申し上げたいのですが、アメリカの米を幕張メッセに展示をして、それの撤去問題があって、米国産米展示の撤去についてアメリカはどうもちょっと感情的になっているように思うのですが、農相の法的措置云々というような発言があったということが言われておるのですが、私は法治国家としてルールを守るということは、これは当然だと思うのですね。だから、これはきちんとやってもらいたい。しかしまた、農相の真意が曲げられてアメリカに伝わっておってもいかないと思うので、農相発言の真意をひとつ伺いたい。
  190. 近藤元次

    近藤国務大臣 私の発言というよりも、農林水産省がとってきた態度について御報告をさせていただきます。私は、出展者にも在日アメリカ大使館の関係者にも、アメリカのマスコミにも一切お会いをしていませんので、私の発言というよりも、農林水産省が今回の幕張メッセでの出展の問題についての経過を若干お話しさせていただきたい、そう思います。  先生御案内のように、米の輸入についてはもう食管法の中に許可制になっておるわけであります。今回のような市場開発や商業活動においても許可がなければ出展もできないことになっておるわけでありますが、これは実は昨年から引き続きの問題でございまして、昨年も同様のことが行われて、私どもから撤回をしてほしいということで、昨年も撤回をしてまいりました。今回また再びこのようなことは決していいことではございませんので、事前に時間をかけて説明もいたしましたし、また主催者である日本能率協会でも出展者に対する、全員に契約する段階で、日本の法律に触れるような米のようなものは出展をしないでほしいということで、それが契約条項の中に入って双方契約をいたしておるわけであります。  十二日開催をされた日にアメリカ側が米の出展をいたしておりました。同時に出展を予定しておりましたオーストラリアは十二日の日は出展をしておりませんでしたが、アメリカが十二日出展をしていることを見て、オーストラリアも十三日に出展をいたしました。それを確認したものですから、私どもも主催者側も、アメリカ、オーストラリアに対して、法律違反でありますから撤去してほしい旨の連絡を申し上げました。オーストラリアは翌日撤去をいたしましたが、アメリカは撤去していただけませんでした。その間に民間から告発が起きまして、告発によって警察が調査は入ったようでありますけれども、私どもはなお重ねて日本の法律説明して撤回の要請をしてまいりましたが、最終日、十六日の正午にようやく米を撤去していただいたというのが実は経過でございます。  それがどういうことか、日本の政府が逮捕するというようなことでアメリカのマスコミにも報道されましたし、御案内のように外務大臣出かけたときブッシュ大統領からもその旨の発言が実はございました。私ども、逮捕とか、ある新聞では投獄なんという話も出ておるようでありますけれども、そのようなことは一切しておりませんし、まだ政府も告発をしたわけではありませんし、そのようなことを発言をするというようなことはあり得ない状況でもあった、そう思っております。しかし、誤解から出ておるアメリカの政府の発言でありますので、誤解の解消には努力をしなければならない、私はそう考えております。
  191. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはひとつしっかりやってもらいたいと思いますね。  それで、アメリカのほかのことをとやかく言うこともないとは思いますが、向こうの農務長官の手紙が新聞等に報道されているのを見た限りでは、やはり何か実態をよくわかっておってくれないのじゃないかという感じがするのですね。日本は食糧の七割を外国から輸入しているんです。そのうちの穀物の大部分をアメリカから輸入しているわけです。アメリカの比率の二六、七%、七十億ドル、一兆円近い穀物をアメリカから農産物だけでも輸入しているんですね。だから、こういうことをもっとわかってもらわないと、何か何も日本が食糧なんかを買わないような、こういう見方をされてはならぬと思うので、そこをひとつ大臣、何か手紙を持たすとかああいうことならば、また代理の農林省からしかるべき人が行くならば、きちっと言うべきを言い、伝えるべきは伝えるということが大事と思いますが、いかがですか。
  192. 近藤元次

    近藤国務大臣 アメリカの農務長官から私あての手紙のことに触れられたわけでありますから、手紙全文を読むわけにまいりませんが、要点だけを話をさせていただきたいと思います。  米国の農家は、米国の米を教育展示したことをもって、日本政府から逮捕のおどしを受けるようなこと、侮辱をされた、こういうような趣旨のことが書かれてありました。米国の米農家は高品質の米を生産しているし、日本製のトラックを使用しているのに、日本は米国の米を拒んでいると感じている。もう一つは、日本が農産物の厳しい規制をしておるというようなことが実は書かれてありましたし、最終的には米国の二百万の農民が、彼らが日本製品をボイコットすべきか、日米両国の自由貿易のために団結すべきかということで、私に回答を欲しいということが書かれてありました。これがおおむねの要点で実はございます。  私は、まだその返事については全部整理をしておりませんけれども、東部長と高橋部長両名を実はアメリカに、正しく理解をしてもらう努力をしていただくように出張させたわけでありますが、私の回答は両名に持たせてやるなり、在米日本大使館から届けていただくようにいたしたいと思いますが、ここの中の一つは、私は、日本が農産物自由化について極めて規制が厳しいというところは正確に理解をしてないところであろうと思いますので、ここは日本の輸入農産物の中で約四割に近いものがアメリカから輸入されておるという点については、ひとつ明確にしておきたいと思いますし、逮捕などという発言は誤解であるということも連絡を申し上げておきたい、こう思っておるわけでありますし、日米関係大事でありますから、そこはきちんと整理をして理解を求める努力をさせていただきたい、こう思っております。
  193. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これはしっかりやってもらいたいですね。  それから、中山外務大臣にお尋ねしますが、ブッシュ大統領、またべーカー長官と会って、新聞の報ずるところでは米の問題が出ておるのですが、どういうような話があり、どう対応されたか、お尋ねしたい。
  194. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、農林大臣にお尋ねがございましたような件も、お話の中に出てまいりました。私は、この展示の問題とそれからガット・ウルグアイ・ラウンドにおける農産物交渉の過程における日本政府の考え方というものは、本質的に違うということを申しております。また、内外記者会見でも、私、明確に申しておりますように、今委員からお話しのように、我が国は穀物自給率で三二%、カロリーベースで四九%、食糧の最大の輸入国であるということで、島国の国民としては、食糧の安全保障ということに極めて過敏になっているということも申しております。  私は、今農林大臣も言われましたように、日米関係極めて大事でありますから、わずかなことで感情的にこじれるというようなことがないように、日米双方が相当注意をしていかなければならないということを申しております。
  195. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この前国会でも論議をしましたから、国会決議を踏まえた御発言であったということを聞いて、これからとも頑張ってほしいと思います。  最後にこの問題で、総理は近く訪米をされるわけですが、日米首脳会談において、またこの米の問題が出る可能性が非常にあるのじゃないかという感じがします。これはアメリカの方はどうもこういう機会に問題を大きくして、そして米の自由化を迫ろうというような考え方が何か見え隠れするような感じがしますが、ここはやはり国会決議を踏まえて、食糧安全保障、この日本の従来の主張をかたくひとつ貫いていただきたい。首脳会談に臨む米の自由化問題についての総理の態度をひとつお尋ねしたい。
  196. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御承知のように、お米の問題は今ガットのウルグアイ・ラウンド交渉のテーブルの上にのっておりまして、各国それぞれの難しい問題を抱えながら、しかもそれぞれの立場を主張しながら、共通の理解、認識を持とうということで努力をしておるさなかでありますから、私は首脳会談の場で、二国間でお米の問題を取り扱うことになるとは予測しておりませんけれども、しかし、日本の立場、考え方というものは、きちっと必要になれば明確に答えてくるつもりでございます。
  197. 辻一彦

    ○辻(一)委員 限られた時間になったのですが、総理にせっかくですから二、三点、中国の問題をこの機会にお尋ねしたいのです。  欧州においては、ソ連とどういう協力関係を持つかということが欧州の安定、また世界の安定のためにも大変大事だと思いますし、ドイツ等はそういう観点からいろいろなやはり努力をしておると思うのですね。アジアでは、私は隣の中国といかに友好関係を政治的、経済的に高めていくか、こういうことがアジアはもちろん、世界の安定のためにも不可欠の要因でないかと思うのですね。だから、近く日米首脳会談が開かれ、また日ソ首脳会談が今開かれようとしておりますが、それも大変大事でありますが、私は隣の中国において日中の首脳会談を早い時期にやはり持って、腹を割った話をすることが大変大事じゃないかと思いますが、そういう訪中の時期等も含めて、ひとつ総理の考え方を伺いたい。
  198. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大きく言いますと、アジア・太平洋地域で中国の立場、そして日本の立場というものは、友好善隣関係を続けていかなければならない基本的な原則がございます。ですから、この前のサミットのときにも日本は、天安門事件でいろいろな状況があったときにも、しかし中国の改革・開放路線というものを支持して、そして日本は第三次円借款も逐次再開をしながら隣国としての協力をやっていきたいということを、これはサミット諸国に率直に訴えて、中国を国際社会から孤立させてはいけない、同時に国際社会の一員として中国にもいろいろアジアの安定と平和に果たしてもらうべき役割があるということを申し上げ、そのとおり進めてきておるわけでありますから、時期のことについてはいつということはまだ申し上げられませんけれども、私はそういったような立場で、基本的な問題についてお話し合いをする機会が来れば、それは喜んでしなければならぬし、したいと思っております。
  199. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと注文というか要望したいことが一つ訪中に際してあるのですが、私も青年時代から中国の皆さんとは縁がかなり深いものですから、今まで交流が続いておりますが、実は大平元総理が訪中されたときには中日友好病院、中国で一番近代的な病院の建設に我が国が協力をした。それから中曽根元総理が行かれたときには中日青年友好センター、これはこの五月の四日に今落成しようとしておるのですね。協力をされた。それから竹下元総理の場合は、これは中国の環境センターの建設に協力をされておるのですが、海部総理が訪中するときには、記念に後にひとつ残るようなプロジェクトをぜひ実現をしてほしい、日中友好の大きな橋になるようなものをかけてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  200. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的なことを今ここで申し上げる段階に固まってはおりませんけれども、中国側の需要とか中国側のいろいろな要望等も見きわめながら対話を深めて、適切な努力が行えるようにこれは心がけてまいりたいと思っております。
  201. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今具体的なことを聞くのは無理なわけでありますから、これをひとつ総理大蔵大臣も外務大臣も忘れないようにしてほしいと思う。  そこで、時間があればエネルギー政策を少し伺いたいのですが、あと五分では十分でありませんが、ちょっと大筋だけをお尋ねしたいのです。  人類が発展をしていくにはエネルギーが必要だということは言うまでもないと思うのですが、我が国は第一次石油ショックのときに、前後に、二億九千万キロリッターの原油を輸入しておったのが、六十年前後は一億九千万キロリッター。だからこれだけの経済発展をして、そして一億キロリッターの原油を節約したということは、世界のエネルギー政策史の中でこれは特記すべきものでないか。  ところが、これがのど元過ぎれば熱さを忘れるで、だんだんエネルギーの多消費の方向に向いて、省エネのせっかくの日本の政策が非常に弱くなっている。去年は二億二千八百万キロリッターぐらい、もう三千万キロリッターから一時に比べて原油の輸入がふえておるわけですね。そういう点を考えると、省エネ政策ということをもう少ししっかりやることがまず第一に必要でないか。  それから、化石燃料の環境問題を考えますと、これは原子力ということもあるのですが、私は、原子力は廃棄物という点、将来の廃炉という問題等々、またこういう事故があって一斉に点検をしなくてはならない問題が起こると、余り高い依存をこれにするということはやはり避けなくてはならないのではないか。だから、伸びていくエネルギーは省エネによって、それをどうしても超えていくエネルギーは新しいエネルギー源を開拓していく。LNG、液化天然ガスもあります、中国やソ連等々と協力をして開発をしていくとか。あるいは燃料電池というものもあります。無限の太陽を生かす太陽電池もあると思うのですが、こんな方面にもっともっと力をひとつ入れてもらうことが大事でないか。  そこで、たくさんの問題には触れられませんが、ひとつ無限の宇宙の太陽をもう少し生かす太陽光電池、これを、相当日本のレベルは高くなってきたわけですから、今軽飛行機で、太陽電池だけでアメリカ大陸を日本の軽い飛行機ですが、横断をするぐらいになっておるのですね。だから、小学校の建物であるとか市役所や町村の役場の公共建物、雪のある方は無理ですが、雪のない地方にぜひ屋根に太陽光のパネルを張って、その太陽の光を最大限電気にして生かしていく、こういうことをもっと力を入れるべきでないかと思いますが、これについて通産大臣、それから文部大臣自治大臣のひとつあわせてお考えを伺いたい。
  202. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 LNGの問題等もお触れになられましたが、最後に太陽電池の問題を特に強く強調されておりましたので、その問題などを含めまして……。  エネルギーというのは、どうしても石炭から石油、あるいはまたこのような形で代替エネルギーというものがどんどん必要になってくる時代になったなということは、昨今共感をしているわけでございます。太陽光熱電もそういうような面からいきましても大変大事だ、委員の御指摘のとおりだと感じております。及び燃料電池に関する技術というものは、エネルギー安定供給の確保あるいはまた地球環境問題への対応の観点から申しまして、あらゆる観点から重要であると考えなければならないものである、このように思います。サンシャイン計画あるいはムーンライト計画、それぞれその開発に取り組んできたところでもあります。これらの発電システムにつきましては、発電コストを大体西暦二〇〇〇年というところまでには既存の発電システムと同等程度の経済性あるいはまた信頼性を有するレベルとすることがまずもって目標でなければならない、また、目標値に置きたい、このように思っておるわけでございます。  今後とも、これらの代替エネルギーにつきましては、着実に技術開発をするように進めてまいる所存でございますことを申し上げておきたいと思います。
  203. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  学校施設につきまして省エネルギー対策を推進することはもう重要なことと考えておりまして、学校施設の計画に当たって、各学校の実情を踏まえまして、省エネルギーの観点に配慮するよう指導しております。  公立小中学校施設の新築やまた改築の際、市町村において省エネルギー対策の一環として太陽熱利用の温水器等設置する場合には、その経費を国庫補助の対象としているところであります。ただ、今の先生言われました太陽電池、これは電源として天候に左右される性格を有します上に、現在のところ経済的に一般電源に比べてかなり割高である、こういうことで、太陽電池の設置工事費は補助対象にするかどうか、その分野の技術開発の進歩を勘案しつつ今後対応いたしたい、このように考えております。
  204. 吹田愰

    吹田国務大臣 お答えいたします。  この問題につきましては、環境対策、いわゆる大気の問題等を含めての環境対策でありますが、そういったこととか省エネの問題、こういったことから今お尋ねになったわけですけれども、我々としましては、地方公共団体の公的立場にあるそれぞれの建物にそういう施設を施すということは極めて適当である、決して我々はそれに対して干渉いたしておるものではありません。むしろ奨励しても結構ではないかと思いますが、ただ、割高になるのですね。そういった点から、公共団体が自主的にどう判断するかということであります。したがいまして、公共団体で、それぞれの地方でこれを取り入れるという方向であるとすれば、自治省といたしましては、財政的な面におきまして起債措置その他の問題で財政援助を加えていく、奨励の方向に向いて努力をしていきたい、こう思っております。
  205. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  206. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて和田君、辻君の質疑は終了いたしました。  次に、日笠勝之君。
  207. 日笠勝之

    日笠委員 まず、湾岸関連問題について何点かお聞きしたいと思います。  法制局長官、湾岸危機はもう既に終結した、こういうふうに思いますか。どうでしょうか。
  208. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  湾岸危機が終結したかどうかということにつきましては、実体判断でございますので、私の方からお答え申し上げるのは適当ではない、かように思います。
  209. 日笠勝之

    日笠委員 では、外務大臣にお聞きしなければいけませんね。湾岸危機は既に終結をした、ないしはもう終結と考えていい。どうでしょうか。
  210. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務大臣立場で申しますれば、国連の安全保障理事会で停戦決議が決定されるまではまだ戦争状態は終わっておらない、このような認識であります。
  211. 日笠勝之

    日笠委員 そうしますと、輸送機によります避難民の救済は、これは湾岸危機、すなわち「イラクのクウェイトに対する侵攻及び占領以降国際連合安全保障理事会決議第六七八号に基づく国際連合加盟国のイラクに対する武力行使に至る一連の事態及びこれに引き続く重大緊急事態をいう。」という定義がございますが、これは、外務大臣がおっしゃったことをもう一度言いますと、この湾岸危機はまだ終結していない、だからこの避難民の輸送はまだ生きておる、この特例政令は生きておる、こういうことでしょうか。
  212. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  このいわゆる政令八号でございますけれども、これはただいま委員お読みになりましたように、湾岸危機、これを政令で定義しております。これは、「イラクのクウェイトに対する侵攻」から始まりまして、そして国連決議六七八号に基づく国連加盟国のイラクに対する武力行使に至る一連の事態、さらに、及びこれに引き続く重大緊急事態、こういうことを湾岸危機と定義しておるわけでございます。  さらに、政令を読みますと、この湾岸危機に伴い生じた避難民でございますね、これがその輸送の対象になるなにでございますので、そういったことでございますので、仮に湾岸危機が終わったといたしましても、それに伴い生じた避難民があり、その輸送について国際機関から我が国に要請がある場合にはその要請にこたえなくちゃならない、そういうケースもあり得るわけでございます。そういった意味におきまして、今日においてもこの政令に基づいて輸送機による避難民の輸送を行うということはあり得るわけでございます。  そういったことで、現在においてもこの政令は効力を有しておる、こう考えております。
  213. 日笠勝之

    日笠委員 いわゆる国連安全保障理事会における停戦決議をイラクは受諾をして、そして、いろいろ中東貢献で政府もクウェートに調査団を送り、その後また原油流出の問題だとかいう、そういう環境問題等々で国際緊急援助隊を派遣しようというようなことになっていますね。あれが、もしこの湾岸危機がまだずっとそのまま続行しているということであれば、これはもう行けませんですね、危険地域ですから。しかし、行くということであり、そして、イラクが停戦決議を受諾したということであれば、私は、もう実態的には多国籍軍もどんどん引き揚げておるようでございますし、湾岸危機はもういわゆる終結ないし終結状態だということであれば、この特例政令は速やかに、自然死を待つのじゃなくて安楽死をさせてあげなくてはいかぬのじゃないか、こう思うのです。これはどうでしょうかね、総理。もうそろそろ閣議を開かれましてこの特例政令は廃止をする、こういうふうにそろそろ手続をとるときが来たんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  214. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、この政令では、湾岸危機というものもこの政令の中の言葉として定義づけております。さらに、この政令でその輸送の対象としておりますのは、湾岸危機に伴い生ずる避難民でございますので、その間に時間的な差異があるというのは御理解いただけると思います。そしてまた、現在の段階ではまだそういった避難民の輸送のニーズが完全になくなったとか、あるいはこの問題について国際機関からもう要請が来ないんだと言い切れるような状態じゃございませんので、法律的にも現在なお効力を有しておりますし、また、今御指摘のように政令の廃止ということを考えるべき段階ではない、このように考えております。
  215. 日笠勝之

    日笠委員 時間がありませんので議論しませんが、だけれども、防衛庁長官がそうおっしゃるなら、特別手当なんか全然平成三年度予算で手当てしておりませんよ。あしたがあしたもしそういう要請があったら行かなきゃいけないということであれば、特別手当、どうするのですか、なしで行かすのですか、それで、もし万が一のことがあったらどうするのですか、政府は。だから、実態的にはもう湾岸危機は終結した、だから日本もクウェートにいろいろな環境汚染の問題等々踏まえた緊急援助隊を送ろう、危険じゃないから送れるわけです。今またイラクの中での問題は、これは内戦状態と考えればいいわけですね、湾岸危機ではなくてそれに伴うところのイラクの中における内戦である、内紛である、そう考えれば、もうそろそろ総理、この特例政令は、先ほど言いました、ずっとこれからもどうなるかわからないという自然死を待つのじゃなくて、きちっと安楽死をさせるということで手続をとる、近々にとる、こういうことでどうでしょうか。いや、総理に聞いているのです。わかっております。
  216. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  繰り返しになるようでございますけれども、確かにこれから湾岸の復興問題等についても我が国も含めて国際社会としていろいろ取り組まなくちゃいけない、それはそのとおりでございます。しかしながら、この避難民の輸送というのは湾岸の危機に伴い生じた避難民でございますので、そこのところは、復興の方の仕事があるとしても、やはり避難民の輸送というニーズというものは現実としてあるのですね。そこに時間的なタイムラグと申しましょうか、そういったことは事柄の性質上当然あり得るということは御理解いただきたいと思います。そうして、これは国際機関からの要請があった場合にそれにこたえるわけでございますので、まだ現在、もう避難民の輸送の必要はないんだとか、あるいは国際機関からもう要請は来ないんだと言えるような状況ではないということでございますので、これは湾岸の武力行使が今事実上終わっておる云々ということではなくて、それに伴い生じた避難民の輸送ということで御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、いわゆる自然死かどうかという問題、あるいはそれ以外に法律的に廃止等の措置をとるかどうかという、これは二つの道があるわけでございますけれども、そういったことを考えるのもまだ少し早い段階ではないのか、もう少しこれは事態の推移を見なくてはならない、こう考えておる次第でございます。
  217. 日笠勝之

    日笠委員 これは議論の分かれるところでありまして、もうこの特例政令をつくったそういう重大緊急事態は過ぎた、だから、こういう与野党で大変対決するよるなこういうものは、速やかにこれは撤回をする、廃止をするという方向で、これは私は総理に要請を強くしておかなければいかぬと思いますね。どうですか。
  218. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の御趣旨は私もしかと承っておきますが、外務大臣防衛庁長官も申しましたように、その必要がなくなるまでの対応というものもまたこれは大切なことでありますから、それは十分に政府として判断をいたします。
  219. 日笠勝之

    日笠委員 では次は、私は当委員会で二月十二日に、日本は武器輸出三原則を守っている数少ない国でもあり、世界に軍備管理だとか軍縮協定のリーダーシップをとるべきだ、こういう趣旨の御質問をいたしまして、総理は、三月十二日でございましたか、テレビで国民に呼びかけられましたね。五月に東京で軍縮に関する国際会議提案する、これは私高く評価をしたいと思います。  そこで、その二月の十二日にも御質問いたしましたけれども、いわゆる化学兵器、生物丘器の施設設備で、いわゆる転用可能な、例えば除草剤だとか農薬であるとか化学肥料、こういう設備について、ドイツは既にやっております、アメリカも近々にやるでありましょう、私はこう申し上げました。そのアメリカもつい先日、御存じのように転用可能な設備、機器二十三種を輸出承認と、こう義務づけたわけでございます。そしてその対象国も二十八カ国と、このように明確に決めたようでございますが、五月にもこれに関するオーストラリア・グループの軍縮に関する会議がパリであるとか、また今ジュネーブでも軍縮会議が行われておりますが、アメリカがやる前に、私はあのときも実は申し上げたかったのですが、日本がまずこのリーダーシップをとって、日本は転用可能な設備、施設についても、注意喚起じゃなくて、きちっとした法的裏づけのあるようなそういう厳しい措置を日本はまず考えます、やります、やりましたと、こう言って初めて日本がリーダーシップをとれるのであって、アメリカから日本もひとつ同じようにやりませんかという呼びかけに応じて初めて輸出承認を義務づけようだとか、ちょっとやはり遅いと思うのですね。  通産大臣、これは確かに日本の化学工業につきましては、いわゆるチャレンジ査察といいまして突然いろいろな査察が入ってくる、特許の問題、あるかもしれません。しかし、ドイツ、アメリカがやったならば、せめて日本も肩を並べて早急にこういう輸出承認の義務づけであるとか、何らかの法的な規制をすべきである、かように思いますけれども、御決意はいかがでしょうか。
  220. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 これはもう委員前からの御主張でございますね。それで全く私も同感でございまして、先般アメリカが、御指摘のとおり生物・化学兵器の関連物資のさらなる輸出規制強化というものを行ったことは十分承知しております。対象国二十八カ国も伺っております。  そういう中にあって我が国は、生物・化学兵器の拡散防止に関して従来からオーストラリア・グループのメンバーであることも委員御指摘のとおりでございますし、国際的な規制の枠組みに参画しておることも事実でございますし、その際、国際的合意形成に積極的に貢献してまいったわけでございます。  生物・化学兵器関連の輸出規制の強化を図ろうとする余り、結果といたしまして正当な経済活動を阻害するようなことがあってはなりませんけれども、このような点にも十分留意しながら、我が国といたしましても今後とも化学兵器の拡散防止という実効性を高めるべく、規制強化に向けまして他の関係諸国の協調の上に積極的に貢献していくつもりでございますし、もう既に私どもなりに閣内でも話し合いながら、この点は、各国に歴訪していく閣僚やメンバーがおるならば、あらゆる機会をとらえてこれを訴えていくということにイニシアチブと主導権をとっていこうではないか、こういう気持ちでもって総理以下やっておりますので、その点は御承知おき願いたいと思います。
  221. 日笠勝之

    日笠委員 そうすると通産大臣、今後いわゆる輸出貿易管理令などを含めた法的規制も積極的に対応していく、こうとらえていけばいいのでしょうか。
  222. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 委員の仰せのとおりでございまして、むしろ超大国に向かっても、それはまだこれでは足らないということほども言わなければならぬような状況下にもあります。それですから、弱小国だけに求めていくということではなく、超大国に向かってもそれを訴えていく、この態度は崩さないことが一貫していかなければいかぬことだな、このように考えております。
  223. 日笠勝之

    日笠委員 ぜひひとつリーダーシップをとってジュネーブの軍縮会議等々踏まえて、日本がまずこうやっておりますよということを言いながら各国にも協調をお願いしていく、こういう形でぜひともお願いをしたいと思います。  それから石油価格の問題でございます。  湾岸危機発生以来、昨年九月から、便乗値上げ防止のために、原油の調達コストを一カ月ごとにエネ庁は元売からヒアリングをいたしまして、いわゆる月決めの改定の行政指導というようなことでやってきました。しかし、先ほどの湾岸危機が私は終結状態だと思うのです、一〇〇%とは言いませんけれども。そういうことから考えましたら、もうそろそろこの聞き取り調査はやめて本来の市場自由価格に任せていく、でないと、いつまでもこれを続けますと国家カルテル、通産省の行政指導のお墨つきがあるというようなことで、これは国民のために余りならないと思います。この方式はいつまでお続けになるお気持ちでしょうか。
  224. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 私ども、石油の価格につきまして市場メカニズムによるのが基本であるという認識は先生の御指摘のとおり、全く同感でございますが、昨年の九月に石油部長通達を出しまして、先生お触れになりましたように、便乗値上げその他の問題がありませんように、「不安定な国際石油情勢が落ちつくまでの当分の間」行政指導を行う、こういうことにしたわけでございます。そして湾岸の情勢でございますけれども、石油に関します国際情勢というものはなおまだ国際的に非常に流動的な要素が残っておりますので、いましばらく様子を見きわめた上でこのコスト変動をどの時点まで続けるか判断をしてまいりたいと思っております。  いずれにしても基本的な考え方は先生おっしゃいますようにマーケットメカニズムによるのが基本であって、現在行っているのは国際石油情勢が落ちつくまでの当分の間ということで考えている次第でございます。
  225. 日笠勝之

    日笠委員 当分の間続けるとなりますと、四月から大蔵大臣御存じの石油臨時特別税、一リットル一円二銭ですね。これも転嫁を通産省お墨つきで認めるとか、春闘がありますから人件費がアップ、流通諸経費のアップ、これもお墨つきで認める、こういうことになると、これはまさに国家カルテルで、これはやはり先ほど言われたように自由価格に任せないと、こういうことまでお墨つきで、まあコストが上がるのはやむを得ないということになれば、これはゆゆしき問題だと思うのですね。  そういう意味でこれは通産大臣、どうなんですか。これ、「当分の間」ずっとこういうのを認めるのですか。石油臨時特別税、春闘における賃金アップ、流通諸経費のアップ、こういうものを認めてくれということになってきますよ。どうですか、これは。通産大臣
  226. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 今回の場合、この湾岸危機の問題というのは突如として勃発いたしました。だから石油税を云々といったわけではございません。ノーブラッド・フォー・オイルという言葉がございましたように、何も石油の産地の紛争だから石油税を上げたと、こういうわけではないのでございますが、そういう中にあって、通産省が現在毎月行っております石油元売の会社ごとのコストの確認というものは、昨年九月七日の石油部長通達にも出してございます。それはただいま申し上げたとおり「不安定な国際石油情勢が落ちつくまでの当分の間」行うこととしている時限的な措置でございます。ただ、湾岸産油国の動向、あるいは石油を取り巻く国際情勢は甚だ流動的な要素がまだ残っておりますので、いましばらく推移を見きわめさせていただいて、そしてコスト変動の報告をいつまで継続するか判断してまいる所存でございます。  石油税の増税につきましては、先ほど申し上げたような国際正義の観点から行うこととした支援措置に必要な財源対策ではございますが、広く国民に負担を求めるということの趣旨の中において行われたわけでございますから、その負担は痛みを伴うものではございますが、国際社会に積極的に貢献する我が国の国民としての皆様の御理解、御協力を得たものと考えておるわけでございます。  さらに、そういう意味におきましては、私どもの暫時の間というのは、あくまでも国際情勢が今まだ流動的な要素が残っておる、その観点の中で考えておるわけでございますから、しばらく推移の見きわめをひとつお守りいただきたい、このように考えておる、その「当分の間」、これが先ほど答弁のかわりだと思う次第でございます。
  227. 日笠勝之

    日笠委員 湾岸関連について関連質問をお許しいただきたいと思います。
  228. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、山口那津男君から関連質疑の申し出があります。日笠君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口那津男君。
  229. 山口那津男

    ○山口(那)委員 このたび私は、公明党の東祥三衆議院議員及び木庭健太郎参議院議員とともに、湾岸地域の調査ということで、主として難民と環境の問題について、三月五日から十九日までの日程で視察をしてまいりました。その結果に基づいて質問をいたします。  まず、湾岸戦争後初めてクウェートに入った日本人の国会議員ということで、クウェートの状況を見てまいったわけでありますが、油井の炎上の状況はまあ本当にすさまじいものがありまして、今写真でお見せいたしますけれども、これがクウェート上空の油井の炎上の状況であります。ここに黒い煙が立ち上っておりますが、光って見えるところはこれは油が地上に流れ出ているところでありまして、まあ油浸しというところも各所に見られるわけですね。それからこれが地上から、空港から見た、もう空港の間近なところであらゆる油井が燃え盛っているという状況であります。  それから、これは上空から見たところですが、クウェートの市街が眼下に見えます。黒い油の煙の層が大体五百メートルから上空千五百メートルぐらいのところに漂って層をなしているわけですね。その上空は晴れ間が見える、こういう実情でありまして、非常にクウェートの空は真っ黒けという状態が続いておるわけです。  それから、たまたま被災を免れたクウェートの気象庁の電光掲示板の写真です。ちょっと遠いですけれども、時刻が上にありまして、一時四十四分、気温が十七度C、摂氏十七度という状況であります。例年であればもう優に三十度を超える高温の時期でありますけれども、一時四十四分といういわば最も気温の上がる時期で十七度しか至らない、通常よりも十度以上も低いという大変な実情ですね。午後からは、目が痛くなるとかあるいは油のにおいが鼻をつくとかという実態が見られたわけであります。  そこで、先ほど政府の調査団がサウジアラビアの東岸地域を視察して帰ってこられたと思います。クウェートは上空から視察をしたということもあったようでありますが、地上におりてつぶさにこの油田火災の実態を見たという調査はないようであります。この点、クウェートのこの油田火災の実情についてどのようにこれから把握されるおつもりか、環境庁長官、お答えいただきたいと思います。
  230. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  御指摘のとおり、私ども政府の調査団はクウェートには入らなかったわけでございますが、クウェートを上空から、機上から調査をしたという段階でございます。その段階でも、先生御指摘のようにあの辺の地域は大変だということでございまして、この地域に対する調査なり今後の対策につきましては、やはり政府としても取り組んでいかなければならない、こういう認識でございますが、現在のところ、クウェートではなくてサウジアラビアの気象環境保護庁の要請、サウジアラビアからの要請に基づきまして、サウジアラビアに対する専門家の派遣等を現在のところは具体化しつつございます。
  231. 山口那津男

    ○山口(那)委員 クウェート側の要人と会った折に、例えばサアド皇太子兼首相、当時の首相であります。それからナーセル外務担当国務大臣、お二方の発言で共通して見られたのは、クウェート国民の関心の高い課題について、つまり油田の炎上あるいは大気汚染、その健康への被害、こういう関心の高い問題についてぜひ日本の経済力及び技術力の貢献を期待したい、その他いろいろな問題あるけれども、軍事的な側面よりはこういう問題についてぜひともお力をかしていただきたい、そういう強い要請があったわけであります。  具体的に、例えば環境庁で今検討しておられるというお話を聞いておりますが、国連の機関とともにこのクウェートの実態の調査をするとか技術者を派遣するとか、こういうお話もあるようであります。ぜひとも早急に日本の技術、そして機材の提供をお願いしたいと思うわけでありますが、この検討の実情を具体的にお話しいただきたいと思います。
  232. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  国連環境計画、UNEPを中心といたします湾岸環境の調査、アセスメントの実施、またこれに基づく行動計画の策定に関する緊急行動提案が三月の十五日に関係国際機関会議において了承されたところでございまして、我が国といたしましても、この提案を実施するために信託基金に対して一億五千万円ほどの拠出をすることを決定をいたしております。今後ともこの提案の実施に向けて、専門家リストのUNEPへの提示等を通じて積極的に貢献をしていく決意でございます。
  233. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それから、サウジアラビア側から要請があったことでありますが、日本の技術というのは技術の移転を原則としておる。しかし、クウェートもサウジアラビアも同様でありますが、技術を受け入れるという余裕とか人的資源というものは必ずしも十分ではない、むしろ技術を持ってしかも実際に作業できる人そのものが日本から来てほしいのだ、こういう要請がありました。油の除去についても同様でありますし、それから、特に、野生生物救護センターというのがジュベイルという都市にありますが、そこにぜひとも技術者を派遣してもらいたい、こういう要請もありました。この点について、具体的に対策をお立てでしょうか。
  234. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  この点につきましては、先方サウジアラビア政府との折衝は外務省がやっていただくことではございますが、私ども環境庁といたしましては、専門家の派遣、人員の派遣につきましては私どもで派遣をさしていただくということで目下準備をいたしておりまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、サウジアラビアの気象環境保護庁に対する専門家、それから今御指摘の野生生物レスキューセンターへの専門家、ともに人選はほぼできておりまして、外務省を通じての交渉がまとまり次第直ちに派遣できるようにいたしております。
  235. 山口那津男

    ○山口(那)委員 クウェート、サウジアラビアは実際に調査の手が届いたということで具体的な対策が出つつあるようでありますが、もう一つ大事な地域で手の届かないところがあります。それはイランであります。  イランについては、革命後なかなか国交等が活発とは言えない状況でありまして、しかしながら、クウェートと近距離、接しておるということで、この油田の火災の影響あるいは海洋汚染の影響というものは確実に及んでいるわけですね。イランの環境庁長官で副大統領であるマナフィさん、それから保健省のサドリ・ザデという環境担当の次官とお会いした折に、イラン国内でも黒い雨が実際に何カ所かで観測をされているということであります。その聞いたところによりますと、これが湾岸の地図でありますけれども、イランの南西部の中心都市でありますアワズ、それからホラムシャハル、それから海岸の港町でありますブシェール、この至近の距離では既に黒い雨が何回も降っているということ。それから北北西で約四百五十キロ離れたイラム州のメヘランという都市でも、黒い雨が観測されている。おおむね半径三百キロから四百キロのところは、既に各地で黒い雨が観測されているという状況だそうであります。  そうしますと、この南部の平野地帯というのは小麦あるいは野菜の大生産地である。農作物に対する被害が出ておる、と同時に土壌に対する汚染も積もっている、こういう実態が聞かれたわけであります。ところが、この観測の体制が全くできておらない。アワズに観測機関があったそうでありますが、既に通常の値をはるかに超えておってこれが機能しないということであります。ですから、機材そして観測の技術者の派遣を一刻も早く要請をしたいというお話でありました。これについて外務大臣、お考えありますでしょうか。
  236. 中山太郎

    ○中山国務大臣 イランに調査にいらっしゃった委員からのお話を承りまして、問題はイランにも重大な影響を与えつつあるという認識を持っております。現在、公式にイラン政府からこれについての協力要請はまだ来ておりません。政府といたしましては、要請がございましたら積極的にこの環境問題について日本の技術あるいは資金協力等も含めてやってまいらなければならない、このように考えております。  ちなみに、医療関係では、中嶋WHO事務局長が二月中旬にイランを訪問いたしておりまして、クウェートの原油流出や油井の炎上に伴う影響をただいまWHOとして調査をしている、そういうことも含めて積極的に対応したいと考えております。
  237. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今大臣の方から、要請がないというお話でありましたけれども、イランは外交関係が微妙なところがありまして、なかなか率直に要請を出すという状態ではないような面もあるかのようであります。しかし、政府の高官であるお二方から私どもは直接お話を承ったわけでありまして、近々外務大臣、イランを訪問するという予定もあるように伺っておりますので、その中で相手の要請を待つということではなくて、むしろ要請を具体的に引き出すあるいは整えてあげる、こういう配慮が必要ではないかと思うわけであります。ぜひともこの点お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  238. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御趣旨を体して早速連絡をとらせていただきたいと思います。
  239. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それからもう一点イランについて、外務省のアジア大洋州担当局長のルーインセファットさんという方とお会いしたのですが、その際、日本の経済援助について具体的なお話がありました。革命以来なかなか関係が改善されないわけでありますが、特に最近米国との関係あるいはGCC諸国との関係の改善も図っているようでありまして、その中で日本との関係も特に強めていきたい、こういう認識のようであります。具体的な話のあったのはカルーン第三ダムと言われるような円借款の絡む問題でありますが、大きなプロジェクトについて、いろいろないきさつはあるけれども、ぜひとも日本の協力をお願いしたい、こういうお話でありました。  それらを含めて、今後のイランに対する経済援助についてどのような姿勢をお持ちか、外務大臣お答えいただきたいと思います。
  240. 中山太郎

    ○中山国務大臣 イランに対しましては、これまで日本の協力は技術協力が中心でございました。今お話しのダムの建設にかかわる協力要請、これは確かに政府に来ておりまして、このフィージビリティースタディーはカナダの会社が既にやっておりますが、まだ技術的に幾つかの問題点があると報告を受けておりまして、政府としては、それらの点がどのようなことになるか十分検討してまいりたいと考えております。
  241. 山口那津男

    ○山口(那)委員 経済援助は積極的にやっていただきたいと思っておるわけでありますが、湾岸の戦後の安全保障の問題を考えますとき、イランとしても当然軍備を強化をするという方向に行くようであります。現に武器が東欧方面から流れているという情報もありました。さらに、GCC諸国も軍備を強化するということは言明をしておりますので、軍事バランスが一気にレベルアップするということになるだろうと思うのですね。そういう前提でこの経済援助の方針について、援助の戦略について見直すような検討もされておるやに伺っておりますが、この点について、特にイランとの関係でどのようにお考えになられるか。まず経済援助、まあ財政的な面から、外務大臣どのようにお考えでしょうか。
  242. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先生ただいま、今後の湾岸の安全保障との関係でイランあるいはGCC諸国の軍事力増強の問題を御提起になりましたけれども、私どもも、イランが湾岸地域の今後の安定、平和にとって非常に重要な役割を担うであろうというふうに認識をいたしておりますし、その意味で、むしろイランの経済発展あるいは民生の安定化というものが湾岸地域全体の平和と安定のために重要ではないかと考えております。  事実関係で申しますと、イランの軍事支出につきましては、最近の私どもの得ております「ミリタリー・バランス」の推計で申しますと、一九八八年に国防予算が約九十九億ドル、それから次の年、八九年が八十六億ドル、九〇年が八十七億ドルというふうなことでございまして、これまでのところ特別にイランの軍事力が増強されているという感じは受けておりません。今後この点につきましては十分注目しながらやっていきたいと思っております。
  243. 山口那津男

    ○山口(那)委員 物の輸出との関係で、武器輸出禁止の原則の精神からいって、通産大臣、どのようにこの点お考えでしょうか。
  244. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 まず冒頭に、山口委員、イランまでお出かけ願って、そしてあのような悲惨な状況の写真までも御提示いただきまして、感謝を申し上げたいと思います。  まず、我が国は相互依存と人道的な配慮という基本的な考え方に基づいているわけでございまして、発展途上国の経済的社会的開発と申しますか、民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的といたしまして経済協力を実施しているというのが実情でございます。このような基本的な考え方を踏まえまして、政府としましては、軍事的用途に充てられるというような援助というものに対しましては一切行わないというのを基本原則として考えておるわけでございます。  基本的な姿勢の問題としてまず申し上げなければならぬのは、みずからの国を防衛する権利は当然尊重されるべきものでありましょうが、国民生活をさておいて膨大な軍事支出を使って武器を大量に輸入しているような国があるとするならば、これは、その国に対して経済協力を行うに当たっては十分にしんしゃくして行われなければいけないものじゃないのかな、これはまたバランス・オブ・パワーの問題にもつながる問題にもなりはすまいか、このように考えるわけでございます。  このような観点におきましては、その具体的な運用につきましてまず研究すべき点も多いことがございますから、今後の我が国の経済協力、例えば先ほどのお言葉の中に油井の火災の問題もございましたが、これは日本の技術ではできないのでございます。したがいまして、これはやはりアメリカがそのノーハウを持っておる、これをどうしても導入しなければなりませんし、すべてが我々ができるとは思いませんけれども、その経済協力の基本的取り組みの中にいかにして反映させていくかということを政府部内で検討していくことが一番肝要なことではないか、このように考えておりますし、そのようにまたしていきたい、こう考えております。
  245. 山口那津男

    ○山口(那)委員 環境の点からいいますと日本の協力というものについては大変期待が大きいのですが、具体的にすぐやるという状況がすぐには出てこないという点もあるわけですね。現地では必ずしも国内の体制が十分ではないということもありまして、優先課題がどうしても環境の点は低くなる。直接的な被害が先に手がつくということで後回しになる。そうすると、機材がないとかあるいは技術者の不足であるとかということで、たちまちおざなりになってしまうわけでありますね。しかし、本来であればこれはクウェート、サウジアラビア、イラン、これらの観測情報が直ちに集約されて、これが国際的に流れて、パキスタンやインドに対する影響ですとかあるいは東ヨーロッパに対する影響ですとかいうものが直ちに分析され対策が立てられなければならない、このようにも思うわけであります。そんなことで、単に火を消すということだけではなくて、これが地球的な広がりを持つ、あるいは人体の健康にも被害を及ぼすということもあるわけですから、日本のできることは幾らでもあるだろう、こう思うのですね。  そこで、今回の視察を終えて痛感しましたことは、日本の現地の情報の収集が必ずしも十分ではない。収集の体制に問題があるのではないだろうか。例えば外務省の職員の数をもっとふやすとか、機構の改革ということも考えなければならないと思います。それから、政策の立案そして実行が極めて遅過ぎる、ツーレートである、それから柔軟性を欠いておる、援助の政策が硬直的であるということでツーインフレキシブルである、こういう指摘もありました。また、政府の行動には限界もあるわけでありますから、もっとNGOの充実というか育成ということに日本は力を入れるべきではないか、こういう指摘もあったわけであります。  こういう国際的な緊急事態に対する日本のあり方、例えば予備費の枠を広げる、積極的な活用をする、対策を早急に立てるということも含めまして、総理、ぜひともこの緊急対応についての日本の姿勢というものを明確に確立していただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、姿勢をお伺いしたいと思います。
  246. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御議論を聞いておりまして、今回の湾岸危機の対応について、限られた人数でよく全力を挙げて本部員も頑張ったと思いますが、しかし出先におけるいろいろな情報収集に対し、耳となり目となって、点となって散らばっておる人数が諸外国なんかと比べてもいかにも少なかったということも反省材料の一つでございますし、同時にその入ってくる資料をいかにして的確に集約して、そして対策本部、今回は直ちに対策本部もつくり、それから湾岸で危機が起こった日の朝すぐに安全保障会議も開き、いろいろ努力の積み重ねはいたしましたが、そしていろいろな御批判のあったことも率直に受けとめておりますけれども、今後ともできる限りその枠を広げるような努力ももちろんしなければならないことでありますし、御指摘のような情報を今度はどのように処理して、処理したら今度は、政府の手だけでやろうと思ってもなかなか限りがあります。民間団体というのは、今現に日本でもいろいろ動いておってもらいますけれども、そういったような組織に対する情報の交換とか交流とか、あるいは横の連絡をもっと密にできるものは密にするとか、一般の方々の御理解と御協力を、国際化社会においては日本としてもどうしても得ていかなければならない面もたくさんあろうと思います。御質問の趣旨を今念頭に置きながら、御理解を一層求めながら努力をしていきたいと思いますので、どうか御協力も賜りますようにお願いしておきます。
  247. 山口那津男

    ○山口(那)委員 ぜひとも積極的な対応をお願いしたいと思います。  これで終わります。
  248. 渡部恒三

  249. 日笠勝之

    日笠委員 商品切手発行税につきまして、何点か問題点をさらに指摘をしたいと思います。と申しますのも、昨年の六月十五日に税制特別委員会で私、この商品切手発行税なるものが、まさに公平、公正、中立という税の理念から見てこれほどの不公平な、不合理な天下の悪税はないということを指摘いたしました。さらに、それ以降いろいろ調べますと矛盾点が出ておりますので、それをまず指摘をしておきたいと思います。  この商品切手発行税というのは、地方税の中の法定外普通税のうちの一つでございます。全国三千以上もある市町村の中でも、東京二十三区特別区、そしてまた八王子、立川、町田市、横浜、川崎、長野、札幌、名古屋、京都、大阪、堺、神戸、和歌山、北九州、福岡市、飯塚市、熊本市と、十八団体だけで課税をされておるものでございます。そういうふうに一部の地域だけで課税をしておりますものですから、日本の国内においてタックスヘーブンがあるという、租税回避が行われるということでございます。  これは、デパート共通商品券を郵便局で申し込む用紙でございます。これは振替用紙で申し込みます。これは一体どこで発行しているかというと、これは吉祥寺でございます。これは非課税でございます。これは東京のどこかの支店なり本店で発行しますと四%取られるわけですね。ですから、商品切手発行税を課していない吉祥寺でこれを受け付けて、そこで発行しておる。こういうことが、果たして日本の国内にタックスヘーブンがあっていいのでありましょうか。そしてまた、大手六社のクレジットカードも、同じくギフトカードということで申し込みをフリーダイヤルでとっております。どこへ申し込むかというと、吉祥寺と奈良市でございます。どちらも非課税でございます。こういうふうに、国内においてタックスヘーブンができるようなそういう不公平な税制、これはまさに天下の悪税だと思います。  そして、この前も論議いたしましたお酒のビール券、これも東京で買いますと四%の発行税が取られます。しかし、先ほどの十八団体以外で買いますと、本来なら非課税のはずなんですけれども、納税手続が大変大変でございます。ですから、一律全国共通三%をかけておるわけです。ですから、私は岡山でございますが、岡山で買えば本来は非課税なんですが、三%分取られておるわけです。大臣の中にも、今言った以外の市にお住まいの方は、本来ならばこれを買ったときには非課税でありますけれども、納税手続にいろいろ費用がかかるということで、一律全国どこで買っても三%取られておるわけでございます。果たして、こういう商品切手発行税が、今のボーダーレス国家じゃなくてボーダーレス圏ですね、圏をまたがって広域交通網の中で流通転々とするものを、そこだけの地域だけで課税していいのでありましょうか。  これにつきまして、私はまず通産大臣にお聞きしたいのですが、これは商工業者からも恐らくこういう天下の悪税はやめてもらいたいという要請があると思いますし、いわゆるデパート、百貨店の商品券なんかでございますね。そして、通産省はプリペイドカードを導入するときに研究会をつくっておりますね。そこでどういうふうな議論があったのかも踏まえて、通産省としてはこの商品切手発行税をどう思っておられるか、御見解をお聞きしたいと思います。
  250. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 ただいま御指摘の商品券にかかる商品切手発行税という点につきましては、御指摘のような問題もございます。また、私どもの所管の業界では、百貨店協会などがこれについての撤廃をかねて要求をしてきているところでございます。  それから、ただいま御指摘の研究会でございますけれども、平成元年の一月にカード社会への対応を考える研究会というのを私どもの私的諮問機関として設けて、これからのカード社会へのいろいろな対応ぶりというのを勉強していただいたところでございます。この点につきましては、各地域ごとに課税の手続とかあるいは税率等が異なるというような問題につきましては、これは普及への妨げになるということが報告をされております。その他、いろいろな方面から本件については指摘があるわけでございます。  事実関係だけについて申し上げますと、以上のようなことでございます。
  251. 日笠勝之

    日笠委員 大蔵大臣、このビール券、これは当然大蔵省の管轄でしょう、ビール、酒、酒税がありますから。これが三重課税になっていますね。まずこれを買いますと、引きかえるときには当然消費税が入っておりますね。お酒の税金、酒税がありますね。これを買うときには商品切手がある、三重課税なんですね。恐らくこういう業界からも、大蔵省さんが監督、所管でございますから、ぜひそういうものはやめてもらいたい。特に、先ほどのビールなんかはもう一律三%かけている、全国同じビール券の代金でございますから。そういう不公平があるということを、私は実は先ほど申し上げました昨年の六月に大臣にも言いました。大臣の御答弁もここにありますけれども、あれ以来十カ月くらい来るわけでございますが、大蔵省としてはあれからどういうふうな御研究をされ、また御見解をお持ちでしょうか。
  252. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 この前御指摘を受けましてから対象を調べてみました。そうしますと、実は本当に私が予想しないような非常に広範囲にさまざまなものがございます。そしてその中に、おおむね今委員が御指摘になっておられますビール券あるいは清酒券のように、全国団体がその税収に依存する、しないのいかんにかかわらず、全国的に共通して徴収をし、その結果が特定地域に配分をされておるケース、それから特定の業者が、今委員が地域差を幾つか例に挙げられましたけれども、ありながら特定業者として発行しておられるケース、両方のケースがあることがわかりました。そして、納税義務者もこれは発行者でありますから、その業者によって相当まちまちであります。  今委員がたまたまおっしゃいましたけれども、我々の郷里もその恩恵に浴しておらない、他の地域のためにその負担をしている地域でありまして、余り我々としてはうれしい話では確かにありません。ただ、法定外普通税は、これは自治省の所管でありまして、私がお答えをする性格のものではない。感想を申し上げておきます。
  253. 日笠勝之

    日笠委員 そうじゃないのですよ。大蔵大臣が許可しなければだめなんですよ、これは。自治省が許可するのですが、それにいろいろ意見も言えるのですよ、これは、地方税法でいきますと。まあ、それはいいです。  そこで、自治省だということになりますね、何か自治省を悪者にして申しわけないのですけれども。――いや、監督権限があるのです。こういうことです。  平成元年十二月二十日、国と地方の関係等に関する答申、臨時行政改革推進審議会の答申でございます。「国と地方の税制の斉合性等」というところに、こうありますね。「法定外普通税の適時・適切な見直しを行うことについて、関係地方公共団体の自主的努力を促すため、必要な指導等を行う。」とこうあるのです。指導等を行うのはどこでしょうか。もうこれは自治省しかありませんですね。  そういうことで、自治省どうでしょうか。この商品切手発行税、消費税が導入されたときには、同じ法定外普通税でありました林産物移輸出税というのが六団体やっておりましたけれども、これは廃止させました。指導したり、いろいろ連携をとってやりました。残るこの、大体百二十億円くらいの全国での税収規模でございますけれども、この商品切手発行税は今後どのように、この臨時行政改革推進審議会の答申等踏まえてどういうふうにされるか、御決意、これをお聞きしたいと思います。
  254. 吹田愰

    吹田国務大臣 どうも大蔵大臣の方から私の方へ回ってきましたが、これは確かに地方税法の第五条第三項でこれを認めておるわけであります。ただ、この場合、地方公共団体の議会の議決というものによっての条例をまずつくるということから始まるわけでありますし、そして国がこれを許可するということでありますが、国が直ちに廃止すべきであるかどうかということを申し上げることは、ここでは差し控えなければならぬことではないかな、こう思っておるわけであります。  こういう財政状況や社会経済情勢の変化というものを踏まえて、漫然と実施することなく、商品切手発行税のあり方について適時適切な見直しをすべきであることは当然でありますし、そのことにつきましては「平成二年度の地方財政運営について」ということで、実は平成二年六月二十八日に関係の都道府県知事あてに自治省としましても通達を出して、その基本的な姿勢は示しておるわけであります。  今後とも引き続き、今おっしゃいましたこの臨時行政改革推進審議会の「必要な指導等を行う。」、そういう意味におきましての適切な指導を行っていきたい、このように考えておりますので、御理解いただきたいと存じます。
  255. 日笠勝之

    日笠委員 これほどの天下の悪税はございませんから、自治省もぜひ頑張っていただきたいと思います。また、我が公明党も地方議会にはそれぞれ議員がおりますので、条例廃止に向けて頑張ることを、私は決意を表明しておきたいと思うわけでございます。あとは自民党の皆さんや社会党の皆さんの御協力をいただきながら、地方議会でも条例廃止で頑張る、こういうことでございます。(橋本国務大臣「民社は関係ないの」と呼ぶ)いらっしゃらないのです。共産党さんもじゃ、ひとつよろしく。  じゃ、NTTの問題に移りたいと思います。  私、テレホンカードで住宅用、業務用の電話の電話料を決済をすべきである、こういうことを三回取り上げまして、NTTも郵政省さんの御指導のもとに、平成元年十月三十日からこのサービスを開始いたしました。現在、こういう住宅とか事務所用の通話料の決済で使われたテレホンカードの枚数とか金額、トータルで結構でございますが、おわかりでしょうか。
  256. 森本哲夫

    ○森本(哲)政府委員 この問題につきましては、先生から今お話ございましたように再々御要請がございました。  平成元年の十月三十日からテレホンカードによる支払いを実施いたしておりますが、これまで約一年二カ月ばかりに相なるわけでございますが、全体で百七十六万枚、金額にいたしまして十六億円がテレホンカードで支払われておるということでございます。
  257. 日笠勝之

    日笠委員 本来ならば退蔵でポケットに入れるかたんすの中に入れたものがこうやって大きく活用されるということは、私はこれはNTTのサービス、高く評価したいと思うのです。  この際もう一つ、もう少しサービスの枠を広げてもらいたいなと思うのが、基本料金であります回線使用料とか付加価値使用料、プッシュホンの使用料、キャッチホンだとか、それからまた配線使用料とか機器使用料とか、こういういわゆる基本料金等のものにも拡大をしてもいいんじゃないかな。もっと言えば、消費税もこれはどうなのかと思うのですね。こういうふうに、私どもの場合は、家庭用にはちゃんとトータルして三%の消費税を請求されます。テレホンカードで公衆電話でかけますと、実は一般用の家庭でかける電話が例えば九十秒二十円が、公衆電話は八十五・五秒が三十円なんです。つまり消費税を入れ込んでおるわけですね。ということは、消費税もテレホンカードでちゃんと公衆電話の場合は支払っているということなんです。そういう意味も含めまして、このテレホンカードで通話料のみならず基本料金そしてまた消費税も含めて支払いができると、郵政大臣、NTTを御指導いただけませんですか。
  258. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生の御指摘の電話料金のテレホンカードでの支払い可能にいたしましたのは、先生の昭和六十二年あるいは六十三年の大蔵委員会での質疑の結果であったか、こう私は思っておるわけでございますが、そういう意味におきまして、なお一層その適用範囲を広くしろという意図であろうと思いますが、鋭意私もそのように指導をしたいと考えております。
  259. 日笠勝之

    日笠委員 初めて前向きな答弁が出ましたことを高く評価をしたいと思います。  さらに、東京の多摩地域の市外局番、これが大変に複雑怪奇でございます。このことにつきましては、既に平成二年二月に総務庁の行政監察局におきまして「電気通信事業に関する行政監察結果報告書」にも、ちゃんと勧告ということで取り上げられております。勧告です。例えば、東京の調布市におきましては、市外局番が〇三のところもあります。〇四二二のところもございます。〇四二三、〇四二四、何と調布市には市外局番が四つあるわけです。府中市、〇四二三、〇四二四、〇四二五と、これも三つあるわけです。  そのことについて、この勧告におきましては、ユーザーの利便性を考えて、少なくとも同一市町村内の市外局番の統一は速やかに実施するように指導する必要があるという勧告があるのですね。しかしながら一向に、これは毎回言われておりますが進みません。なぜでしょうか。ぜひこのぐらいのことは、郵政大臣、勧告が出ているのですから、速やかにやれと、いつまでどうするのかということぐらい年次報告なりをとる、そしてこの勧告どおりやるように指導していただければ、私はさらに高い評価を差し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
  260. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 〇三化についてでございますが、現在は全国で五百六十七の分野に分かれておるわけでございます。  おっしゃいますように、〇三局とかあるいは〇四二四、〇四二二とか、同じ地域でそういうふうにいろいろ分かれておるというようなことで、問題点を列記いたしますと、行政区画と市外局番地域の不一致の問題がまず一つございます。それから、単位料金区域内における複数の市外局番の先ほど述べましたような問題、それから単位料金区域自体の今度は広域化の問題、この大きな三つの問題が全国的に発生をしておるわけでございまして、振り返ってみますと、NTTが単位料金区域を昭和三十七年に設定をして以来の形が存続しておるわけでございまして、その後の経済社会の急激な変化等に柔軟に対応してないということが大きな原因であるわけでございます。  ただ、御指摘のように、これはどういいましょうか、利用者の負担増というものも実際はあるわけでございまして、その範囲を広げますと今度は逆に基本料金は高くなるということもあるわけでございますが、財務への影響であるとか、あるいは先ほど言いました負担増の問題等を勘案しつつ、推移をまた見守っていきたいと思っております。
  261. 日笠勝之

    日笠委員 行政監察局の勧告でございますから、ひとつ前向きにこれは指導をしていかなければならないということを、さらに指摘をしておきたいと思います。  時間がありません。二問をお二人の大臣に聞きますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  一つは、精神薄弱者、私たちは発達障害者と言っておりますけれども、この運賃の割引制度の適用でございます。我々も平成元年十二月には当時の江藤運輸大臣にも資料を出しましたし、私自身も平成二年四月には当予算委員会でも質問をさせていただきましたし、我が党の、公明党の一つの提言、政策の中にもございます。内部疾患のある障害者の方々も昨年二月から適用対象となりました。まことに高く評価をこれまたするところでございますが、いわゆる発達障害者、精神薄弱者、薄弱児の方々へのこの運賃割引制度、ぜひ積極的に適用へ向けて運輸省は頑張っていただきたいということが一つ。  それから、厚生大臣、パラオという国があります。東経百三十五度、兵庫県明石市のちょうど真南三千キロに浮かぶ二百の島々から成っておりますパラオ共和国、人口一万四千人、そこに実は残留孤児がおります。私、二人に会いましたし、最近の新聞の報道によりますと、さらに何人かいる、こういうことでございます。四十数年間、日本人の父母が、一人は、お父さんは現地召集で戦死をした、お母さんは米軍の機銃掃射で目の前で撃ち殺された、それで四十数年間現地の方に預けられて、今日望郷の念、肉親探しという方もいらっしゃる。援護局とすれば、当然飛んでいってでも現地面接調査をしてできる限りのことをしよう、こうあるべきだと思うのですね。  運輸大臣厚生大臣に対してですが、まとめて御答弁いただいて終わりたいと思います。
  262. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 精神薄弱者に対します割引運賃の問題につきましては、かねてからいろいろな国会請願やありました。また、議員の先生方からもございました。私は、前向きに検討いたします、こういう答弁をいたしましたが、身体障害者の運賃割引とのバランスをとる必要があると考えたため、三月中旬に事務方に対しまして平成三年度内割引運賃の実施を目途に交通事業者及び厚生省を初めとする関係者との調整を急ぐように指示したところであります。
  263. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 精神薄弱者に対します割引の問題は、今運輸大臣からお答えになりましたように、厚生省といたしましても御相談をしながらぜひこの実現化を進めてまいりたいと努力しているところでございます。  それから、パラオの件でありますが、パラオの方は厚生省に正式に孤児の調査等の依頼がまだ来ておりません。ただ、御承知のように、遺骨収集とかあるいはその他の慰霊の巡拝というような形が続いておりますので、そういうような機会をとらえて情報の収集に努め、また検討したいと考えております。
  264. 日笠勝之

    日笠委員 終わります。
  265. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて日笠君、山口君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  266. 三浦久

    三浦委員 私は、国民健康保険料の問題について、総理並びに関係閣僚に御質問を申し上げたいと思います。  国民健康保険料が高過ぎるということがここ数年全国的に大問題になっております。言うまでもなく、国民健康保険はお年寄りとか無職の人、低所得者の人がたくさん加入をされておられるわけでありますので、国庫負担を増大するということが強く求められておるわけであります。  ところが、一九八四年に国庫負担率が四五%から三八・五%に削減をされました。これから逆に全国的に毎年毎年国民健康保険料が引き上げられているというのが実情であります。五十九年度以降の一世帯当たり保険料の推移がどうなっているのか、厚生省、お尋ねいたしたいと思います。
  267. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 国保の保険料の推移のお尋ねでございます。  御指摘いただきましたように、国保の医療費は年々高齢化の進展等によりまして増高を見ているわけでございます。この国保の医療費に対応する形で国保の保険料も年々高くなっております。  その状況でございますけれども、一世帯当たりの保険料調定額の全国平均でございますけれども、昭和五十九年度は十万三千二百円、平成元年度は十四万二千三百円となっておりまして、五十九年度対比で三七・九%の伸びとなっております。
  268. 三浦久

    三浦委員 国保の加入者は年収二百万円以下の人々が圧倒的多数で六六・五%を占めております。この二百万円の所得の人が国民健康保険料を幾ら払うのか、また所得税、住民税、年金の掛金、幾ら払うのか。いかがですか。
  269. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 所得二百万円の人の国保の保険料について申し上げますと、国保の保険料、御案内のように収入から必要経費等を控除したあとの所得を課税対象として賦課する仕組みをとっているところでございます。この所得が二百万円の世帯につきまして、二人世帯という前提で全市町村平均の保険料率を使って試算しますと、平成元年度において約二十万円というふうに試算されるわけでございます。  あわせてお尋ねの国民年金保険料については約二十万でございます。二十万一千六百円。それから、私どもの試算では、二百万の所得の世帯の所得税が四万四千七百三十円、地方税が三万三千八百十五円ということでございます。
  270. 三浦久

    三浦委員 ちょっと計算が違うみたいですね。きのう資料いただいたのによりますと、国保料は二十万一千三百円、そして年金の掛金はそれより少ないのです。十九万二千円です。そして、所得税は七万四千八百円です。住民税は四万四千九百円です。  総理、これが今の国保料の実態なんです。これ、公租公課全部合わせますと、二百万円の所得の人が五十一万三千円支払うことになるのです。この五十一万三千円のうち、国保料は二十万一千三百円を占めている。所得税、住民税の合計の約二倍近いんです。これだけの国民健康保険料を支払わなければならないということです。繰り返しますが、二百万円の年所得のある人が二十万一千三百円の国保料を払う。そして年金、住民税合わせると全部で五十一万三千円も支払わなければならない。これが今の庶民の生活の実態であります。  それで、余りにも国民健康保険料が高いんですね。高いために保険料を払えない。払えませんとどうなるかというと、いろいろ手続はしますけれども、保険証の交付は受けられません。そして、資格証明書を発行されてしまうのですね。こういう資格証明書を発行されている自治体の数、そしてまた発行されている人々の数、これはどのぐらいになっておりますか、厚生省。
  271. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 保険料を滞納している方々につきましては、私どもは市町村窓口で納付相談とかいろいろ相談に応じているわけでありますけれども、それでもなおかつ相談に来られない、あるいはいろいろな形で保険料の納付を拒否される。自主納付制なものですから、そういうことからどうしても――国保の保険料というのは保険財政を支える基礎でございます。したがって、保険料の収納ということ、納付をしていただくということを非常に制度運営の基本にしているわけでございます。そういうことから、私どもで申しますと、悪質な滞納者につきましては保険証にかえまして資格証明書というものを発行することにいたしております。資格証明書というのは、窓口ではお金を払っていただきますけれども、後で償還払いという形になっている制度でございます。  その状況でございますけれども、市町村の数で申しますと六百九十一市町村、それから対象世帯数で三万七百四十四世帯でございます。
  272. 三浦久

    三浦委員 実際は滞納者の数というのはもっともっと多いのですね。私が住んでいる北九州の事例を申し上げますと、この加入世帯数というのは十四万六千世帯あります。そのうち三期以上の滞納者は一万七千六百世帯あるのです。しかし、この保険証を交付するその時期になりますと、北九州市ではこの三期以上の滞納者に対して督促状を三回出します。それから、催告状を二回出します。それから、電話催促も二回やるのですね。そして、出てこい、出てこいとやるわけです。それで、大体一万五千世帯ぐらいがそういう催告、督促に応じて、それで借金をして払ったり、または分割払いを許してもらって、そして分割払いの金を約束をして支払って、そして保険証を交付してもらうというようなことになっている。  あと二千六百世帯が、これはもう市役所に行ったらお金を請求されるのじゃないかというようなことで全然行かない、呼び出しに応じない、そういう人々も二千六百世帯あるということなんですね。ですから、実際に、資格証明書を発行された人たちだけが滞納しているというのじゃなくて、すそ野はもっと広いのですよね。それは高過ぎるから、結局払えない。しかし、保険証交付の時期になれば、やはり自分の命、健康の問題が心配ですから、いろいろな手を尽くして支払っているというのが現状なんですよね。  それで、厚生省にお聞きしますけれども、三期以上の滞納者というのが大体全国で何世帯ぐらいあるのか御存じでしょうか。
  273. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 三期以上納めてない世帯の数ということでございますけれども、私ども手元に持っておりません。私どもは保険の滞納者の数という形で把握いたしておりませんで、収納率という形で見ておるわけでございます。  この収納率について申し上げますと、昭和五十八年に九三・四%でありましたけれども、住民の方の御理解とか保険者の保険の収納努力等が相まちまして、昭和六十三年には九四・一%、平成元年度には九四・二%という形で、若干ではございますけれども収納率は年々向上している、むしろ納めていただく方がふえているということでございます。
  274. 三浦久

    三浦委員 その収納率だけではそれに至るまでの過程というのがわからないのですよ。ですから、滞納者が大体どのぐらいおる、三期以上の滞納者が、そういう実態をやはりつぶさに調査しなければ、本当に保険料を納めている人々の苦しみというものを私は理解することができない、そのことは、したがって各市町村に対する指導も適切にできないというふうに思うわけです。  私、厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、今から四年半前の一九八六年の十月二十八日、衆議院の社労、地行の連合審査で、当時の斎藤厚生大臣が国保料について「国保の運営に国保組合も最近大変努力をしていただいておりまして、保険料も相当引き上げられてきて、なかなか限界に近い状況にきているように私は感じております。」と答弁されておられます。大臣は、現在の国保料について、この元斎藤厚生大臣と同じようにもう限界にきているというふうにお考えでしょうか。
  275. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 国保料の問題についてお尋ねでございますが、今滞納の面からのいろいろな御質問やら御意見を拝聴いたしましたけれども、政府委員の方からの答弁がありますように、国保料の収納率というものも私たちはやはり頭に入れて対処していかなきゃならないと考えますが、その収納率の方は、本当の若干ではありますけれども最近好転してきておる、こういうことも一つの事実でございます。  したがいまして、どの程度が国保の負担の高いか低いかということの問題につきましては、各般の状況を考慮に入れながら、ただいま出ておりますような収納率とか、あるいはまた所得の可処分所得の状況とかいろいろの点から勘案いたしまして決定していかなきゃならないと思いますが、今の状況は適切である、今の水準が適切である、このように考えております。
  276. 三浦久

    三浦委員 元斎藤厚生大臣がこういう、もう限界にきている、限界に近い状況にきているというふうに発言なさったのは、一九八四年の資料に基づいているのですよね。そのときは所得に対する保険料の負担率、これは六・一%なんです。ところが、平成元年度はどうなっているかといいますと、六・七%にまではね上がっているのですよね。  そういう状況を考えますと、私は毎年毎年保険料が上がっている、それからまた所得に対する負担率もふえているというのであれば、当然私は御答弁としてやはり限界に近い状況にあるというお答えが出てしかるべきであって、今のように自殺者が出る、払えなくて保険証がもらえない、お医者さんにかかれないで自殺者が出るというような状況に置いておきながら、それが適切な保険料だというのは甚だ心外ですね。先ほども言いましたように、二百万円の世帯で二十万円以上の保険料が取られるのですよ。私はちょっと納得いたしませんが、時間の関係で、総理大臣にお尋ねいたします。  昨年の十二月二十六日付で我が党の上田耕一郎参議院議員が「国保料の現状をどう考えるのか。」という質問主意書を出しております。それに対して、ことしの一月二十二日付の答弁書で総理は「これまで一連の制度改正等により保険料負担の軽減を図ってきたところである。」こういうように答弁されておられます。これは、保険料が高いのでその負担の軽減を図ってきたという意味でしょうか。
  277. 渡部恒三

    渡部委員長 保険局長。――保険局長がやってから。
  278. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 国保の保険料が高過ぎるというお話でございますけれども、医療費、社会保険というのは受益と負担の関係でございまして、高齢化等で医療費が高くなるとどうしても保険料は高くなっていくわけでございます。サラリーマンの政管、それから健保組合も、国保が一世帯当たり,十四万に対しまして十二万とか十一万の規模になっているわけであります。収入のところでいろいろ御議論があると思いますけれども、私どもはサラリーマンと比べて国保だけがそう過重な負担とは考えておりません。  それから、国庫補助の関係でお尋ねがあったわけでありますけれども、先般の五十九年改正で、サラリーマンのOBはサラリーマンの現役が見なさいという形での退職者医療制度を設けたわけでございます。そういう意味で、国庫補助は、国保が持っておったサラリーマンOBの保険料負担をサラリーマンの現役に肩がわったということに伴います国庫補助の減でございまして、私どもとしては国庫補助の関係で保険料が高くなっているというようには考えておりません。医療費が高くなっておるから、それは受益が増しておるから保険料が高いのであって、国庫補助の関係ではないというふうに考えております。
  279. 三浦久

    三浦委員 それじゃ、なぜ「これまで一連の制度改正等により保険料負担の軽減を図ってきたところである。」というふうに総理は御答弁になっていらっしゃるのですか。
  280. 渡部恒三

    渡部委員長 保険局長。――いや、保険局長が専門的なことを答えて、それから総理答弁
  281. 三浦久

    三浦委員 いや、それではいいです。答弁いいです。これじゃ進めない。ちょっと時間がない。もういいです。いいです。いいって言うのに……。
  282. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 国保の制度改正は、高齢化が進展いたしまして、国保がお年寄りの医療費で大変だということで老人保健制度をつくりまして、サラリーマンを含めて共同で負担する形をつくったわけでございます。それから、先ほど申しましたサラリーマンOBをどうするか、これは退職者療養制度をつくりましてサラリーマンの方に負担を願うという形をつくりました。それから、最近の国保制度改正によりまして、低所得者が多いということで、低所得者の保険料の軽減分について国と地方でその分を負担しようではないかという制度をつくってきたわけであります。そういう形で、私どもの国保保険料に対する考え方は、一連の制度によって極力国保の保険料負担を軽減をしてきたつもりでございます。  その結果、現在の国保制度に対します国庫補助も巨額な保険料国庫負担をしているところでございまして、精いっぱいの努力をしているということで御理解いただきたいと思います。
  283. 三浦久

    三浦委員 冗談じゃありませんよ。あなたたち今までいろいろ制度改正やってきたけれども、しかしそれによって減少したのは国庫負担じゃないですか。そして、先ほどもあなたが言ったように、国保の保険料は毎年引き上げられているじゃないですか。何を言っているんですか。減っているのはあなた、国庫負担だけですよ。  次に進みます。  国保料が相次いで値上げをされている。これは不当な値上げも非常に多いんですよ。ですから、各地の市町村に多額の基金が積み立てられています。厚生省の資料によりますと、一九八四年に基金保有額は千八百八十八億円だったものが、一九八九年には二千四百二十五億円と、二八%ふえている。この基金について厚生省の指導のあり方は、結局保険給付の、保険医療給付の過去三年間の平均の五%以上積み立てなさい、こういうことでしょう。ところがそれを、はるかに高い保険料を取り立てて、それで積み立てているところがあるのですよ。  例えば、秋田県などは、五%ですと二十五億円ですよ。ところが、この基金は四十一億円になっている。新潟は、五%ですと三十八億円です。ところが、基金の保有額は八十五億円なんです。こんな差があるんですよ。確かに五%以上ということになっているから、以上ですから青天井でいいというのかもしれませんけれども、払う国民の立場に立って物を考えるということも必要じゃないですか。そうであればこういう新潟県のように五%が三十八億円で、そして基金保有額が八十五億円、そのほかにも剰余金があるでしょう、特別会計の中に。こういうところに対しては保険料を引き下げるような適切な指導をすべきだと私は思うんですが、大臣いかがですか。
  284. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 保険料は、全体的な水準を維持するように、今お話がありましたような一つの基準で指導はいたしております。しかし、基金というものの機能も、これは非常に大事でありまして、市町村における財政事情は必ずしも同一でございません。また、どのような状態が起こるかも予測できないわけでありまして、したがいまして、中にばらつきが出てくることはやむを得ないとは思いますけれども、私たちの方はその基金の全体的な基準といたしまして五%程度を指導の基準としておるわけでありますが、それによってあとは各自治体のそれぞれの財政状況あるいは財政のみならずその被保険者の状況等を勘案いたしまして、その自主性に任せているわけでございます。
  285. 三浦久

    三浦委員 次に、国保料の値下げに踏み切った市町村があると思いますけれども、一九八八年、八九年、九〇年、それぞれどのぐらいあるのか。もう数字だけでいいですよ、能書きは要らない。
  286. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 それでは、六十三年度三十四、元年度六十八、二年度百五十七市町村となっております。
  287. 三浦久

    三浦委員 それで、順次やはり住民の運動、また各市町村の努力で、この保険料の引き下げというものが行われているのですね。ところが、厚生省は、こういう高い保険料を引き下げたところに対して、特別調整交付金がありますね、これを請求もさせない、そういうペナルティーを科しているのですよ。一体これはどういうことですか。こんなばかげたことがありますか。引き下げというのは国民の切実な願いなんですよ。それを市町村が実行したら特別調整交付金を支給しないなどとペナルティーを科す、そんなこと、あなたたちのやることですか。いいですか、どうしてこんなことをやるのですか。
  288. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 国保の保険料につきまして、私どもは、安易な引き下げというのは、私どもの立場からいうと困りますという形での指導をいたしております。国保の医療費というものは絶えず増高傾向を続けておりますし、絶えず大きな変動が考えられるわけでございます。現にこの国会においても、看護婦問題から診療報酬を上げたらどうかという質問等もたくさん受けておるわけでございまして、高齢化等も控えまして医療費のこれからの将来を思いますときに、私どもは今所得の伸びがかなり高い状況にある中で余裕があることも事実でございます。しかし直ちに、それだからといって引き下げることはいかがなものかという判断をいたしておるわけであります。そして、国保の保険料というのは必ず国保の被保険者の受益となって国保の医療費として返るものでございますので、そういう形での余裕もあっていいのではないかと思っておるわけであります。  そこで、おっしゃったペナルティーでございますけれども、私どもは国保の運営、財政のために特別調整交付金というものを持っております。財政力指数で普通調整交付金を配っておるわけでありますけれども、それ以外に特別な事情に基づくものということで、災害があったときの保険料を免除した場合とか、結核、精神病に医療費が高くかかった場合等、特別な事情の場合に私どもはまた助成をしてさしあげる。そういった具体的な項目以外に、さらに市町村でいろいろ御事情があった場合に、財政が苦しいからという助成の道も開いておるわけでありますけれども、そういういろいろな事情の場合に、保険料を下げているからという中で、いろいろの事情があるから苦しいからといってこられても、私どもは、そこは他の市町村との公平から聞く耳を持ちませんよと、御遠慮願ったらどうですかという事務的な御連絡を私どもの考えとして流しているところでございます。
  289. 三浦久

    三浦委員 それがけしからぬというのです。ことし初めてでしょう、こういう門田通達を出したのは。文書でもって結局、平成二年度に保険料を引き下げた、また、平成三年度引き下げる予定だというところについては、特例交付金は一切出さない、申請すらさせないという、そういうとんでもないことをあなたたちはやっておる。  あなたたちはいつも何と言っていますか。保険料を引き下げるか引き下げないか、それは基本的には地方自治体の問題ですと言っているじゃないですか。それを、引き下げをしたらペナルティーを科すというようなことは、地方自治権に対する侵害じゃないですか。  総理大臣、長野県の駒ヶ根市で……
  290. 渡部恒三

    渡部委員長 三浦君、質疑時間は終了いたしております。
  291. 三浦久

    三浦委員 はい、これで終わります。  駒ケ根市で昨年の十二月に、市長がこの引き下げを検討しますという答弁を本会議でしているのです。ところが、三月になりましたら、国の方から四千七百万円のいわゆる特別交付金、これを出さないと言われるので引き下げはやめますと、こういうような答弁が出て、結局保険料の引き下げが中止になっている、こういう例もあるのです。  総理大臣、こういうことは地方自治に対する国の不当な干渉じゃありませんか。どうなんです。本来、保険料を引き下げるかどうかということは、基本的には自治体の問題じゃないですか。どうなんです、御返事をいただきたいと思う。
  292. 渡部恒三

    渡部委員長 保険局長は、質疑時間が終了しておりますので、簡潔に答弁願います。
  293. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 自治体の指導でございますけれども、国保の運営につきましては、国民健康保険法上明確に、国は国保の健全な運営のために責任を持っているわけでございますし、都道府県は国保の健全な運営のための指導をする任務を負っているわけでございます。そういう意味で、私どもは国保のこれからの健全な運営のために必要な指導はしていくことが必要ですし、当然だと考えております。
  294. 三浦久

    三浦委員 あなたたちの指導のために人が死んでいるんだ。
  295. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて三浦君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  296. 中野寛成

    中野委員 湾岸戦争が終わりまして、これから日本の国際的な貢献、また外交はいかにあるべきか、また再びグローバルな視点に立って考えなければいけない時期を迎えました。  まず、自民党小沢幹事長が訪ソをされておられます。アメリカにもお回りのようですが、その前に外務大臣が訪米をされました。間もなく総理も訪米をされるということであります。それらの一連の働きに関連をいたしましてお尋ねをいたしますが、まず外務大臣にお尋ねをいたします。  先般、訪米をされました。そのときに、幕張メッセにおける米国産の米撤去問題がブッシュ大統領の口から直接発言をされた、こういう報道に接しているわけであります。私も昨年七月に、いわゆる超党派訪米団の一員として訪米をいたしましたが、その際にも米問題が大変大きくクローズアップされておりました。しかし、我々一緒に参りましたメンバーの中で、さすがに大統領は米という言葉を使わなかったな、またベーカー国務長官も、会談が終わり際に一言米問題について触れましたけれども、それでさえも、当時同席した人たちの中では、そういう具体的な問題について直接触れるのはちょっと品位に欠けるのではないかという話をしたこともございました。そういう、ある意味では一つの国際慣例みたいなものもあるだろうと思うのでありますが、にもかかわらず、米の輸入自由化というトータルの問題としてではなくて、この幕張メッセにおける米撤去問題という一つの事象でしょうか、これについて大統領みずから触れるということはよほどのことだ。それには当然大きな背景があると考えなければならないと思います。  日米関係、これはアメリカに、日本に対するいろいろな不平不満があるけれども、それは、もはや湾岸問題は、過去のものとは言いませんけれども、これはそれなりに日本のやったことを評価する、むしろ、現在の日本に対する米国民からの不平不満は、まさに貿易問題である、こういうふうに指摘されたということでありますが、こう考えますと、これからよほど慎重に、かつ真剣に、積極的に、これらの問題に取り組んでいかなければならないのではないか、こう思うのであります。  そこで、この幕張メッセにおける米撤去問題は、人によっては、はかられたといえば語弊があるかもしれません、挑発に乗ってしまったのではないかという表現をする人もおります。去年あってまたことしもあったことですが、むしろこれは、今日の日米関係やウルグアイ・ラウンドの交渉の経過から見て、注意はするけれども、まあ大目に見ておくというか見逃しておくか、そういうふうにした方が米国民の感情を逆なでしないで、結果としていい結果を生むという判断をする考え方もあると思います。  この際、たとえ米一粒たりともという気持ちで日本側の厳格な姿勢を示す、法律は守らせるべきだということで突っぱねるということも筋論。果たして、大所高所に立ってどちらが正しいのか。これは、まさに一つの事例でありまして、このたぐいのことがこれからいろいろと起こってくるのではないかと思います。これについて、政府の基本的な姿勢をお聞きしたいと思います。
  297. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員から、政府の基本的な姿勢はどうかというお尋ねでございます。  政府といたしましては、やはり国会における決議の趣旨を体して、今日まで、米及び稲作等の重要性にかんがみて、これらの食品は国内で自給するという基本方針を堅持しておるわけでございます。もしこれに違反いたしますと、国会の決議を無視した、こういうことになるわけでございますから、私どもは、国会の御決議というものが変わらない限り、政府国会の決議を尊重せざるを得ない、こういう立場にあるということを御理解いただきたいと思います。
  298. 中野寛成

    中野委員 そこで、そのスタンスについては我我全く同じなんです。  この米撤去問題によって、言うならば、余計にアメリカ国民を刺激することによって、これからのウルグアイ・ラウンドの交渉等になお一層アメリカを強硬姿勢にさせてしまうということによって、日本のこれからの交渉がより一層困難になるというふうに考えなかったか。もう一つは、いや、こういうときにやっぱり日本の法律に従ってちゃんと撤去させる、それが正しい姿勢なんだ、それによってアメリカに日本の毅然たる姿勢を示し得たんだというふうに考えるのか。どちらですかと言うているわけです。  その行き着く先、基本は国会決議ももちろんあります。現在の状況、日本の農業の実態の中で、ウルグアイ・ラウンドで米の輸入自由化を認めるというわけにいかない。これは基本ベースは同じであります。いろいろな戦略、戦術が国際情勢の中では駆使されますが、そういう状況の中で、日本として戦術は正しかったのかということを聞いているわけであります。
  299. 近藤元次

    近藤国務大臣 国会決議の問題は米の自由化の問題でありますから、こことは直接関係ございませんけれども、今交渉の過程であることは御案内のとおりであります。  今回の問題は、昨年以来の問題でございますから、再びこのようなことがないように、事前にも時間をかけて丁寧に説明もいたしましたし、また主催者からも丁寧に説明をいたしておるわけであります。そして、開催日に展示をされておりますので、またオーストラリアはその説明によって展示をしなかった。アメリカが展示をしていることで、オーストラリアが実は翌日展示をしたということでございます。  展示の確認をいたしましたので、当初は千葉食糧事務所から重ねて説明を申し上げて、撤去していただくようにお話を申し上げ、そしてオーストラリアからは撤去をしていただいて、なおアメリカ側からは撤去をしていただけませんでした。基本的には、私ども日米関係というものを常に念頭に置いておりますし、ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉のさなかでもございますから、要らざる別の分野で摩擦を起こすことを好む立場では今日ございません。それゆえに、できるだけ時間をかけながら丁寧に事前事後を通して進めてきたわけでございます。たまたま民間から告発が出て警察が調査に入ったということで、政府はそのことについては全く関与をしてないわけでありますから、そういう意味では極めて配慮しながら説明をし、日本の法律を守ってもらうという努力を続けてきたわけであります。  最終的には、その成果があって、法的手続をしなくても撤去をしていただいたし、最終的には、本庁でやるときには、公使に農林水産省までおいでをいただいて重ねて説明もいたしましたし、また撤去する当日、最終日にはアマコスト大使からも農林水産省に御連絡があって、時間をかしてほしいということで、外交ルートを通して、最終的に話し合いで撤去のできたことは、私ども、日本の法律を守ってくれたということ、そして法的手続をしないでそのことが目的を達成したということで、慎重にかつ丁寧に扱って日本の法律を守っていただいたということで、経過はそのようなことでありますし、私は十分先生心配されるようなことを配慮して取り運ばせていただいたわけでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  300. 中野寛成

    中野委員 経過は今農林水産大臣からお答えがあったとおりであろうと思います。にもかかわらず、大統領みずからが中山外務大臣にあのような発言をされたということは、私は今日までの国際慣例的な考え方からして随分と異例のことではないかというふうに思うのです。そこにアメリカ政府のいら立ちというものも感じるわけであります。あの大統領の、今農水大臣がおっしゃったような経過を経ておったにもかかわらずアメリカ大統領があのように具体的に発言されたその背景、その真意をどう考えておられますかと、むしろこれは外務大臣、また、これから訪米されます総理の、日米関係の根底にかかわる問題じゃないかと思いますので、お気持ちをお伺いしたいと思うのです。  例えば九十億ドルの問題も、出したけれども果たしてそれだけの評価、今は感謝しておられますよ、しかしながら、五十七億ドルですか六十一億ドルですか、GCCを通じてアメリカへ出されておりますね。後がどうなるのかとか、または為替差の問題がどうなるのかとか、そういう問題で、派生した問題の処理を誤った場合、または十分な意思の疎通が図られなかった場合に、基本にかかわるそごを生じて、そしてそれが言うならば悪循環を起こしてそしてアメリカから批判される。また日本国民も、何をむちゃなことを言うんだ、アメリカけしからぬという気持ちになってくる。またそれがずっと積み重なっていって決定的な対立状態になってくるということがあってはいけないわけでございまして、十分こういう状態のときに注意しなければいけないと思いますが、どういうふうにお考えか。
  301. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、全体として日米関係をそういう現象面的なことによって大きく崩すことはよくないということは私もそのとおりに思いますが、しかし、ここで農林水産大臣が詳しく御説明しましたことを繰り返しませんけれども、私はあのことは大変残念な誤解というか、そういったところも一つの出発点であったのではないだろうか。  報道によりますと、農林水産大臣が米を展示した業者に対して、これを逮捕するというようなことを言った。それがえらいアメリカ側を、農民に対する侮辱でないかといって怒らせた。これはたしか私の記憶に誤りなければニューヨーク・タイムズか何かの記事を引用しての報道であったと思います。私は直ちに農林水産大臣に、そんな、君、刺激的なことを言ったのといって聞いたのですが、今ここで詳しく御説明しましたとおりに、実に丁重に配慮をしてきちんと手続をとり、法律の原則を曲げるわけにいかないので、理解と納得の上で撤去して守ってもらうように説得これ努めたわけであって、逮捕のタの字も自分は言うはずがないし言ったこともない、こういうことでございます。それなれば、その誤解をきちっと解く必要もあるわけでありますから、丁寧にこのことはホワイトハウスに連絡をして、しかるべき人も派遣して、きちっとしてそれらのことは理解をお互いに共通にしておくようにするべき必要があるのではないか、こういったことを直ちに話して、そのような措置をとっておるところでもございます。  また、九十億ドルのお話にもお触れになりましたけれども、これについては、きょうもこの審議中にフィッツウォーター報道官の記者会見の記事のメモも入ってまいりましたけれども、それについては、日本が既に一部払い込んだわけでありますから、それについては非常に高く評価しておるし感謝もしておる、こういうことでございました。ただ、いろいろ、日本の国会でお願いをした一兆一千七百億円というのが円建ての拠金でありました。第一回のときに払い込んだときは幸い今と逆の為替の状況でございましたから、幾らかプラス分がある価値で円を払い込んだということがありますが、この九十億ドルの方は御指摘のように幾らか為替差損の出る額でございましたけれども、とにかくそれをGCCに全額払い込んで、そのことについては高い評価も得ておるわけでございますが、日本の国会制度、予算の制度、円で決めたということ、それらのことについても誠意を持って説明をして、理解を求めていきたいと私は考えております。
  302. 中野寛成

    中野委員 結局この米撤去問題については、私は日本の法律を守らせたということで、ある意味で我々から考えれば当然のことなんです。それがアメリカの大統領みずからがそのことを取り上げるというようなことになる、そのくらいに日米関係がぎくしゃくしている。この一つの事象は一つの例示であって、むしろ我々としてはこれから、総理もお答えになりましたが、いろいろな視点に立って日米の政府の関係や国民の関係やいろいろな問題をより一層この機会に整理していきませんと、ますますささいなことでさえ大きく取り上げられて悪循環を起こす、致命的な状況になってしまいはしないか。日米安保条約ももう破棄しようかというような声さえアメリカのマスコミから出てくるというふうなことであったのでは、これは大変なことになるわけでございます。これらのことについて私どもは憂慮をするがために、十分注意をしていただきたい、あらゆることに慎重に対応していただきたいということを申し上げたいわけであります。  また一方、よく一国平和主義はだめだ、国際貢献をしっかりしなければ世界の孤児になる、こういうことを私どもも言いましたし、政府の御答弁でも総理以下たびたびお聞きをいたしました。しかし、この内容については実は国民の皆さんの中に必ずしも十分浸透しているかどうかというのは疑問があるのです。抽象的にはわかってくださっている方が多いんだけれども、各論としてわからない。例えば、まだ物価が上がったわけではないし、貿易が非常にやりにくくなったわけではないし、アメリカへ旅行した人が石ぶつけられたわけでもないしみたいな素朴な国民感情があって、何かあれは一種の、おどかしではないけれども大げさに言われているのではないかというふうに思っている方がなおまだたくさんいらっしゃることも事実でございます。  これらのことについては、私は政府として十分、いや国際社会で、別に憲法の前文に書いてあるからということではなくて、本当に具体的にこうなるんですよ、こうすべきなんですよということをもっと折に触れて説明をされる必要があるのではないかというふうにも思うわけでありまして、これからの日本の外交姿勢と国民の国際性が最も問われているときと、こういうふうに思うものですから、トータルとしてのお考えをお聞きしたわけでございます。そのことについて、これからまた訪米をされます総理にもう一度お伺いいたしたいと思います。
  303. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本は大戦後、ある意味ではみずからを世界の片隅の、そして自分は一生懸命働いて人に迷惑をかけなければそれでいいのではないかという、片隅国家のような考え方で歩いてきました。確かに戦後の日本は、経済規模も小さかったし、またアメリカから食糧援助も受けなければやっていけないような厳しい状況、どん底からのスタートでしたから、そのときはそれで済んだでしょうが、今はもうお互い皆さん方の努力によって、事経済に関する限り、日本の規模というものは片隅どころか、世界の真ん中で大きく、大きな存在になって、目につくようになってきました。なぜ大きくなれたかというと、世界の安定した平和と経済秩序の中で日本は能力を発揮し、この高い地位を持つことができるようになってきたと言って決して言い過ぎではありません。  今後そういった意味で、国際的な協調の中で今日世界で日本が最大の対外資産保有国、たしか二千九百三十二億ドルと言われる、これは世界の人の目から見ると、ある意味では非常に目につく、ある意味ではまた率直にうらやましいことかもしれません。国民総生産も世界で日本は約一五%近くを出しておるということになりますと、日米両国でそれが四〇%近くになるなれば、もっと世界のためにも役に立つように、貢献するように、世界との相互依存関係の中で大きくなってきた、強くなってきた、何も日本ひとりの力でこうなったんではないよ、いつまでも片隅で小ぢんまりとつじつまを合わしておらないで、もっと世界に今度はお返しをするときではないかという感情が、考え方が、率直に言ってあるわけであるし、また、それに積極的にこたえていかなければならぬというのが、私が今御質問に素朴に感ずることでございました。  そのような角度に立って、何ができるかということを考えながら、全力を挙げて国際社会の中の一員としての、ちょっとしたことですぐにぴしっと反発が出てこないような、いろんな摩擦を起こさないような、日本と仲よくしておるなればこういったこともあるからいいよとみんなが認めてくれるような国家になっていかなければならない、国民皆さんの御理解とお力添えもお願いしなきゃならぬ、こう考えております。
  304. 中野寛成

    中野委員 せっかく、日本国民の目が国際社会にこれほど向いたときはないと思います。そういう中で、総理の御答弁、基本姿勢はわかりましたが、それをより具体的に、しかも国民の生活実感の中にそれがきちっとおさまっていきますように具体的なプログラムを進めていく必要があるのではないだろうか、せっかくのチャンスだというふうに思いますから、なお一層の御努力をお願いをしたいと思います。  終わります。
  305. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  306. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 科学技術庁長官にお伺いをいたします。  湾岸問題ですが、原油の流出による海洋の汚染あるいは油井火災による大気汚染、これは一次災害ですか二次災害ですか、科学技術的に見てどうでしょうか。
  307. 山東昭子

    ○山東国務大臣 この問題に関しましては、地球環境の面からも非常に残念な結果だと私ども思っております。これは、本来ならば環境庁が今いろいろとやっている仕事でございますけれども、私ども科学技術庁といたしましても、要請がございましたならばお手伝いをしていきたいと思っている次第でございます。
  308. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問は、この大気汚染と海洋汚染は一次災害ですか二次災害ですかと、それだけ聞いておるのであります。
  309. 山東昭子

    ○山東国務大臣 専門的なことでございますので、事務方から答弁をさせていただきたいと存じます。――突然のお尋ねでございますので事務方が来ておりませんので、何か資料などございましたら、また先生の方に御報告をさせていただきたいと存じます。
  310. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 別に私は難しい質問をしているつもりはさらさらないのでありまして、煙が出る、大気が汚れる、それは一次汚染ですかと聞いているのと同じことなんですよ。それは一次汚染じゃないのですか、常識に考えると。
  311. 山東昭子

    ○山東国務大臣 一次災害でもあり二次災害でもあると考えております。
  312. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそういうところがあろうと思うのですよ。分けにくいところがある、これは。それはむしろ立派な答弁です。  そこで、私は愛知長官にお伺いしますが、環境庁としては二次災害という認識なんでしょう。
  313. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  一次災害、二次災害、定義が私よくわからない面がございますが、直接戦闘行為で出た災害ではなくて、フセインがやりました行為というのは、原油を流出させたり、それから、あれだけ油井に火をつけたり、何でああいう行為をしたかということは私ども理解できないわけでございますから、そういう点では、判断できません。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それが判断できないときに、それに対する、この環境破壊に対する貢献策としてその対策チームを出される場合に、これから先が問題です、国際緊急援助隊法に基づいて出されるのは無理があるのではないかということを言いたいわけです。どうでしょうか。
  315. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この地域におきます油井への放火あるいは海洋汚染、こういったようなものはいわゆる二次災害という観点から、私どもはこれを緊急援助隊の法律の中で、専門家たちをこの地域のいわゆる環境の回復のために協力することができるという認識に立っております。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、そこを軽々しく国際緊急援助隊法を援用されない方がいいのではないか、そうされる必要はないのではないか。  六十二年にできたわけでしょう。そのときに、もう外務大臣も御案内のとおり、これは自然災害を基本にしているのですね。戦争による一次災害とか二次災害とかというものを問題にしていないのです、もともとこの法律は。それなのに、戦争によって起きた被害に、これで何とか援用して人間を出すということは無理がある、それを言っているのですよ。  いいですか総理、こういう答弁をなさっていらっしゃるでしょう。戦争、内乱等、戦闘地域における武力の行使によった直接の被害は、この法律はだめだ。直接の被害かどうかよくわからないとおっしゃっているでしょう、大臣は。環境庁長官科学技術庁長官も一次災害か二次災害かわからないとおっしゃっているときに、これを援用されるのは私は無理がある。まだこれからもお考えになるのでしょう、総理、自公民でこの貢献策、PKOの問題について。それで私は、安易にこれを援用されることは問題がある。  野党の有力な一部の一つの意見として、改正ということを言われた方があります。つまり、国際緊急援助隊法の一条に「戦争等により被害が生じた場合に、当該被害を受けた被災国政府等の要請に応じ」ということを一行挿入したらどうかという。これは単なる意見ですよ、党で決まったわけじゃないらしいから。それから、「戦争等による被害の復旧のため」というような文言を入れるという考え方も一部出ておりますけれども、これは大変危険がある。――もうやめますから。というのは、これを入れるとどういう危険があるかというと、例えば、では、地雷を埋めた、その地雷を掃除するのにどうするか、戦後の問題ですよ、復興のときの。そういう問題が出てくる。あるいは今化学兵器等の禁止の問題が出ている。これを廃棄するときに、戦後復興の問題としてそういうことも入ってくる可能性がある。  幸いに、援助隊法には十六の省庁は別表でありますけれども、防衛庁は入ってないが、今までの海部内閣のやり方から見ると、これに手を入れることは十六省庁の中に防衛庁を入れかねぬ、そういう危険を私は感じるから、あらかじめ、これから検討されるはずだから、十分考慮していただきたい。  終わります。
  317. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして平成三年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  318. 渡部恒三

    渡部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  平成三年度一般会計暫定予算平成三年度特別会計暫定予算平成三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  319. 渡部恒三

    渡部委員長 起立多数。よって、平成三年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  320. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  321. 渡部恒三

    渡部委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十二分散会