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1991-02-26 第120回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月二十六日(火曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       内海 英男君    越智 伊平君       狩野  勝君    金子 一義君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    志賀  節君       田邉 國男君    津島 雄二君       戸井田三郎君    萩山 教嚴君       鳩山 邦夫君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       原田 義昭君    船田  元君       町村 信孝君    松永  光君       松本 十郎君    御法川英文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       柳本 卓治君    綿貫 民輔君       五十嵐広三君    石井  智君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    木島日出夫君       佐藤 祐弘君    吉井 英勝君       伊藤 英成君    中野 寛成君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       徳宿 恭男君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         北方対策本部審         議官      池ノ内祐司君         北海道開発庁総         務監理官    松野 一博君         北海道開発庁計         画監理官    平工 剛郎君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         通商産業省通商         政策局次長   麻生  渡君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         資源エネルギー         庁石油部長   黒田 直樹君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸省国際運         輸・観光局長  寺嶋  潔君         海上保安庁次長 豊田  実君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         建設省道路局長 藤井 治芳君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房審         議官      二橋 正弘君         自治大臣官房審         議官         兼内閣審議官  谷口 恒夫君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     船田  元君   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     萩山 教嚴君   越智 伊平君     柳本 卓治君   加藤 紘一君     鳩山 邦夫君   佐藤  隆君     町村 信孝君   浜田 幸一君     狩野  勝君   松本 十郎君     御法川英文君   新村 勝雄君     石井  智君   木島日出夫君     吉井 英勝君   中野 寛成君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   萩山 教嚴君     小坂 憲次君   鳩山 邦夫君     金子 一義君   船田  元君     粟屋 敏信君   町村 信孝君     佐藤  隆君   御法川英文君     松本 十郎君   柳本 卓治君     原田 義昭君   石井  智君     新村 勝雄君   伊藤 英成君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     加藤 紘一君  小坂 憲次君     小此木彦三郎君   原田 義昭君     越智 伊平君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成二年度一般会計補正予算(第2号)  平成二年度特別会計補正予算(特第2号)      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計補正予算(第2号)、平成二年度特別会計補正予算(特第2号)の両案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。船田元君。
  3. 船田元

    船田委員 平成二年度の補正予算案(第2号)に対します質問を始めたいと思います。私に与えられた時間は極めて限られた時間でありますので、恐縮でありますが、御答弁はなるべく簡潔にお願いいたしたい、このように思います。  まず最初に、先週は地上戦が間近であるという中東状況背景としまして、イラクソ連との間の八項目合意、それに対するアメリカからのブッシュ大統領撤退要求、さらには再度ソ連イラクによる六項目合意など、ぎりぎりの交渉が展開をされたわけであります。しかし、とうとう時間切れで、日本時間での二十四日の午前十時過ぎ、多国籍軍による地上戦開始をされたわけであります。まことに残念な事態ではありますけれども国連安保理決議六百六十及び累次の関連決議を完全に実現する、この目的のための最後の手段としてまさにやむを得ざる行動であった、こう思いますけれども、改めて総理の御見解を伺いたいと思っております。  また、実はけさ七時三十五分に、イラク国営バグダッド放送が、フセイン大統領クウェートからの撤退を命令をした、ただしそれはソ連和平提案に従うものである、このような新たな情報が入ったわけでありますけれども、もしこの件に関しまして事実関係あるいは総理自身の御感想がございましたら、あわせて御披瀝をいただきたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初のお尋ねに関しましては、私が繰り返し主張しておりましたように、国連決議に従った公正な平和をつくり出さなければならない。そのために、イラク無条件即時クウェートからの撤退をすることが局面転回をしていくかぎであると言い続けてまいりました。多国籍軍行動というのは国連決議に基づいたこのような平和回復のための努力である、これは、私どもは公正な平和のために強く支持をするという基本的な態度で、一日も早く武力行使がおさまることを強く求めてまいりました。  後半の放送は、けさ私も七時半過ぎに聞きました。無条件即時撤退につながっていくなれば、これは局面転回になるわけでありまして、私は、そのような国連決議を受けた無条件即時撤退に直結していくことを強く期待しておりますが、今のところ、まだ一方的な放送だけが私のところにも届いておるわけでありまして、全貌をもう少し把握したいと思っておりますが、いずれにしても一日も早い和平への進展を強く求めておきます。
  5. 船田元

    船田委員 まだ状況はなかなか把握しにくいわけでありますけれども、この状況和平というものにつながることを心から期待をし、なお注意深く見詰めていきたい、このように思っております。  次に、イラクのいろいろな行為でございますけれども、二、三指摘をいたしておきたいと思っております。  一つは、イラクが多国籍軍による空爆開始直後にペルシャ湾に相当規模原油を故意に流出をさせたという事態、これによって深刻な環境汚染を引き起こしております。また、地上戦開始直前から、イラククウェート内の多くの油井、いわゆる石油の井戸に放火をし、その黒煙クウェートあるいはサウジ東部を覆うようになってまいりました。これらは明らかにイラクによる環境に対する犯罪行為である、こう私は考えております。  また一方で、アムネスティー・インターナショナル指摘によりますと、イラクは昨年八月のクウェート侵略以来、クウェート領内で婦女子を含む罪のないクウェート人相当数でありますが、数千名とも言われております、この多くの人々を公正な裁判なしで投獄あるいは拷問、そして処刑をしている、このような報道がなされております。もしこのようなイラク行為、事実であるとすれば、人権上からいっても重大な犯罪でありまして、政府はこのアムネスティー・インターナショナル指摘を承知をしておられるかどうかということ、そして、もし事実であるならば、このことについて日本としては国際社会により声を大にして訴えるべきではないか、こう思いますけれども、いかがでございましょう。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のような報道を私も承知いたしておりますし、またモスクワで、ゴルバチョフ大総領のおひざ元で、アジズ外相が平和への話し合いをしておるその同じ時間に、今御指摘になった原油の垂れ流しのほかに、クウェートにおける油井その他油の施設を破壊をし、放火をするという行動に移っておったことも、これも報道されておるとおりでありまして、今お触れになりましたアムネスティー・インターナショナルの幼児を含むクウェート人処刑、虐殺の報道等も、これは私も、国際法上も、むしろ人道上も、人間的にも許すべきことではありませんし、激しい憤りを感じますので、これらの点については即時中止することを強く求めますと同時に、そういった一連の行動がいかに今回の湾岸紛争というものを解決するために阻害要因になっておるのか。また、あの地域の本当の平和回復安定回復のためには、そういったことがまず大前提としてとめられて、それから撤退の話が出てくるべきではないだろうか。いろいろと私は真意をつかみかねておりますけれども、いずれにしても、一刻も早く国連決議に従った完全無条件撤退と平和の回復が行われることを強く訴えておきたいと思います。
  7. 船田元

    船田委員 ぜひこの問題もしっかりと日本政府としてお調べをいただいて、ぜひ強い態度で対処していただきたい、このように思います。  次に移りますが、これは文部大臣にお伺いいたしたいと思います。  多国籍軍による空爆模様、これは私どももつぶさに見ていたわけでありますが、この模様テレビを通じまして日本国じゅうにも報道をされました。特に、ハイテク兵器のすごさというのを本当にまざまざと見せつけられたという場面でありました。  私は、非常に心配しておりますのは、このことを子供たちが一体どう見ているかということなんでございます。あるいは今の子供たちテレビゲームというのが非常に好きなわけでありますが、このテレビゲームを見るような感覚でこの映像を見てしまってはいないだろうかということを非常に恐れておりまして、学校の現場ではやはりこれを是正するような配慮というのが一つは必要ではないだろうか、こう思っております。  しかし同時に、学校教育の中で、例えば戦争は嫌だ、あるいは戦争は反対だ、こういう表面的な皮相浅薄なとらえ方だけをしている、あるいは、イラクも悪いけれども国籍軍も悪いといったような偏った教育が行われているとしたら、これはもっと心配なことであります。イラククウェート侵略という国際犯罪がまず最初にある。そしてそれに対して、これをいさめ、国際正義を守るという多国籍軍のいわゆる国連決議に従った武力行使が行われているんですよ、こういうような因果関係をはっきりと子供たちに教える。もちろん子供発達段階ということもあるわけでありますけれども、それを考慮しながら、しかしながら、今言った因果関係をしっかりと教えるということが私は学校教育の中で今一番求められていることではないかな、こう思うわけでありますが、文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  8. 井上裕

    井上国務大臣 お答えいたします。  湾岸危機については、主として社会科の地理や公民などで必要に応じて取り扱うことが考えられます。今先生おっしゃるとおり、指導に際しましては、児童生徒発達段階に即して、その原因、また背景、さらに国連活動などを正確にかつ公正に教えることが大切である、このように考えております。
  9. 船田元

    船田委員 次に移りますが、いよいよ九十億ドルの支出の問題でございます。  私は二月の上旬にワシントンを訪問いたしまして、ホワイトハウス、国務省、国防総省の実務担当者と会談をしてまいりました。主に九十億ドル支出を含む我が国湾岸支援策をめぐってのいろいろな議論をやってまいったわけであります。この中で、九十億ドルの支出という決定に対して、彼らの反応は、その決定のタイミングの早さ、それから額の大きさ、いずれもまずまずの評価であったと私は印象として受けております。ただ、同じ政府関係者の複数の方々から、万一これが実現をしないという場合には、日米関係は極度に悪化するというような懸念も同時に表明をされたわけであります。  もちろん、このようなアメリカ側反応を待つまでもなくて、国連安保理決議六百七十八は、国連加盟国に対して、同決議に従った多国籍軍武力行使に適切な支援を与えることがそれぞれの加盟国に要請をされているわけでありますし、とりわけ国連中心外交を標榜する我が国として、さらには国連責任ある一員を目指そうとしている我が国としては、この九十億ドルの支援はまさに当然の義務である、こう私は考えております。  まさにそのための補正予算並びに財源法案ということでありますけれども、一日も早い成立を私自身も切望しております。総理の御決意、あわせて大蔵大臣にもこの財源問題で大変御苦労いただいたわけでありますが、あわせて大蔵大臣の御決意も伺っておきたいと思います。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議によって適切な支援を求められております。同時に、国連のたび重なる平和回復への決議というものは、私は政治的に日本支持をして、侵略は許してはならない。力による侵略と併合を認めることは、これからの世界秩序の上からいっても、国連の果たすべき平和の枠組みという秩序を守っていく上からいっても、よくありません。けれども日本は憲法による立場において、力によってお役に立つということはできないというこの立場世界人々にも認めてもらいたい、しかも、それでもなおかつその立場に対する正当な認識と連帯感を持つためには、でき得る限りの、許される限りの協力をすべきであるというので、自主的に判断して九十億ドルの協力を決めたわけであります。したがいまして、これは日本のなすべきぎりぎりの問題として、各党各会派の皆様にもこうして連日御理解を求める議論を願っておるわけでありますから、国際社会に今日これだけの影響力と地位を占めるに至った国として、応分の、できる限りの支援は一刻も早くしなければならない、こう決意をしておりますので、御理解と御協力を重ねてお願いを申し上げておきます。
  11. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今総理がお述べになりました考え方、その御指示を受けまして、財政当局立場として一言申し上げたいと思います。  この問題が起こりましたとき私の頭にありました第一の問題は、これ以上我が国の累積した国債費、これを増大させ、後世に負担を求めることは避けたいということでありました。同時に、日本として責任を果たしていくためにこれだけの資金を拠出するとなれば、国民に新たな御負担を願わなければならないという思いでありました。  しかし、その後、従来の特例公債によることなく、新たな臨時の税制上の措置を講ずるという考え方を御説明を申し上げました後、院における御論議というものを拝聴しながら、今回政府としては、歳出の節減合理化、最大限の努力を払い、あわせて平成三年度の予算につきましても政府自身の手で一部修正を行うなど努力をいたしました上で、なおかつ不足する財源について、国民臨時拠出お願いをするという決断をいたしました。  国際社会の中で我々が責任を果たしていきますためには、本日御論議をいただいております平成二年度の補正予算並びにその裏打ちをいたします財源確保のための立法措置、これらが一体として一日も早く通過、成立することを心から願っておりますし、そのために全力を尽くしたいと考えております。
  12. 船田元

    船田委員 次に、この湾岸危機後の復興の方策について若干お話をいたしたいと思いますが、主に外務大臣にお答えをいただきたいと思っておりますが、確かに我々は今この地上戦の推移を注意深く見ているわけであります。しかし同時に、この湾岸危機後の同地域復興ということに対する政府の対応も早目早目に考えていくということも、極めてこれは重要だと思っております。もちろんこの湾岸危機の終結の仕方ということによって、その戦後の復興策という対策も変化をせざるを得ないという微妙なことがあるわけでございますが、現段階で私は、次に申し上げますけれども、幾つかの対策が考えられるんじゃないかということで、若干申し上げたいと思います。  まず第一には、この戦災をこうむった地域、これはイラクを含むのかどうかということは極めて微妙な問題でございまして、これは別といたしたいと思いますけれども、この戦災をこうむった地域における緊急復旧作業、それから被災者への人道的な緊急援助を行うということ、これがまず第一としてあると思います。  第二には、これはいろんな方面で提言をされているようでありますけれども、例えば湾岸復興基金というようなものが設置をされるとした場合には、それに対する拠出、あるいは通常のベースを上回る規模のODAの配分によって中長期的な経済復興を図っていくということ、これが第二であります。  それから第三といたしましては、これは中東地域ではありませんけれども、この湾岸危機によって例えば出稼ぎ労働者が働けなくなったということなどの経済的ダメージを受けた、そういうアジア近隣諸国への配慮ということもやはり一方では必要ではないかということ。  そして第四番目には、流出原油それから油井火災などへの対処、そしてまたそれを通じた湾岸地域への環境協力。  この四つぐらいが当面緊急の課題として挙がってくるのだと思いますけれども、このことにつきましての外務大臣の御見解はいかがでありましょうか。  そこで、例えば、実は今申し上げた二番目のところで、ODAの配分を通常ベースを上回る形でやるというふうに言いましたけれども、実はODAを出せる国、相手国というのは、これは平均の所得などの計算によりまして基準が決まっております。それからしますと、例えばサウジだってあるいはクウェートだってこれは通常のODAでは出せないという、そういう状況があるわけですので、私は既存の援助のやり方あるいは援助の基準というものそのものを残したままでこの戦後の復興策ということを考えるのは、これは非常に難しい、無理のあることではないだろうか。この基準やあるいは制度というものをできるだけ柔軟に運用していく、柔軟に対応していくということが戦後の復興の政策においては非常に重要じゃないかな、こう思いますので、これもあわせて御見解を伺いたいと思います。
  13. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員からお尋ねの戦災をこうむった地域への緊急復旧、これをまず第一にどうするかという問題でございますが、この戦災を受けた地域への復旧につきましては、中東経済の復興に関連のある各国とも十分協議をしながら、日本としてどういうことができるかということをしっかりと検討をして、そして相手国の要請もよく聞きながらやっていくことが必要ではないかというふうにまず考えております。  また、援助の問題にODAを使ったらどうかというお話でございますけれども、現在戦火にさらされているクウェート、サウジ等は極めて豊かな国でございますから、この国に対してODAというものの概念で支援被災者のために行うということは、その国の経済状態をよく研究をして、その資金量等も考えた上で、日本政府としてはどのようなことが協力ができるか、人道的に協力するべきものは協力しなければならない。ただし、ODAの基準をはるかに超える豊かな資金量を持っている国家でございますから、そういう面でODAというものの概念でこれをやるということについては慎重に検討していかなければならないと考えております。  また、アジアの近隣諸国で出稼ぎ労働者が随分とこの地域に行っておりましたが、この戦後復興が完了するまでやはり祖国に帰っている出稼ぎ労働者の救援等に当たりましては、各国との十分な意見の調整をいたしまして、その国に対する二国間の協力というものをどうするかということを日本政府としては考えてまいりたいと思っております。  なお、環境汚染の問題は極めて重大な問題に相なろうかと思っております。油井の火災による大気の汚染、また海洋の汚染、このような問題につきましては、一昨日、私はサウジアラビアの恩田大使に真接電話でいろいろと話を聞いてみましたが、当面一番大きな問題は環境の汚染を排除するための技術者の派遣が考えられるということでございましたが、技術者が派遣される場合にはもちろん資材を、どのような資材が必要かということも日本政府としても考えなければなりません。そういう面におきましては既に中近東アフリカ局長責任者に対してそれの対応をするように依頼をしております。
  14. 船田元

    船田委員 いずれにしましても、従来の援助のやり方あるいはその基準とかあるいは制度とか、そういったものに固執をしていては、復興のためのこの地域への援助というのはなかなか難しいと思います。ぜひ柔軟なる対応、検討を進めていただきたいと思います。  次に移りますが、やはり我が国として、この戦後復興等において極めて重要であるという問題があります。それは、我が国の新たな人的貢献策ということであります。主に総理に御答弁いただきたいと思いますけれども、東西冷戦後の国際社会の新秩序づくり、とりわけ平和秩序の維持ということについて、我が国はただ単に財政面の貢献のみではなくて、人的貢献の必要性というのを私も痛感をしております。二月初旬の先ほど申し上げた訪米の際にも、アメリカの一般の人々からは、アメリカの若者が中東平和回復のために汗を流し、そして場合によっては血を流すかもしれない局面に立たされているとき、果たして一体日本人はどこにいるんだろうか、こういう大変厳しい反応が示されました。  昨年秋の国連平和協力法の廃案後、自民、公明、民社三党の合意が行われ、国連が行うPKOへの参加のための新たな立法措置を検討する方針が打ち出されております。今回の湾岸危機あるいはその後には間に合わないというふうな状況でありますけれども、しかしながら、私は、早急にこのPKOへの参加ということについて新たな立法措置を講ずべきだと考えております。これまでの政府部内の検討状況もあるわけでありますけれども、特にこの件についての総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  15. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際社会において、アメリカソ連の二つの超大国が力によって世界の平和の枠組みを維持してきた冷戦時代というものが終わりを告げて、その後、それにかわるべく国連が平和の秩序を守っていく、その中心的存在として機能し始めたという希望を皆が持った瞬間に今回のフセイン大統領の暴挙が起こったということは、やはり話しておるだけでは、いけない、いけないと言うだけでは、現実に力による侵略を防ぐことはできないということを事実として今回の事件は提起しておると思うのです。  私は、そういった意味で、国連の権威を高めるために、どうしても世界のすべての国々が戦後の平和への枠組みづくり、どのようにすべきかということには真剣に取り組んでおるわけであって、アメリカを初め多国籍軍の首脳も、それぞれの国が持っておる厳しい経済状況を乗り越えて、しかも場合によっては自分の国の有為な青年男女が犠牲になるかもしれぬという具体的な問題を抱えながら、苦脳の中で、しかし国際社会の正義は守らなきゃならぬというので決断をしたのが今回の平和回復活動であった、こう信じております。  そういったときに、平和の秩序の中でこれだけ戦後歩みを続けてきた日本が黙って何もしないで見ておるだけでいいかということは、今船田議員が御自分の海外での体験を通じて指摘、披瀝されたとおりであり、また私も、アメリカやヨーロッパその他の国々の新聞論調その他を読むにつけても、やはり日本は何か、もしかすると一歩下がったところにおって、世界とともに生きるという皮膚感覚よりも世界を見ながら生きておるという感覚があるのではないかという海外の指摘に対して、我々もやはり一歩中へ入っていって、ともに生きておるんです、ともに苦しいときは苦しみます、ともに努力もしますという考え方、基本というものが打ち立てられなければならぬということを強く思っております。  先回の国会におけるいろいろな御議論の中で、武力の威嚇、武力行使を伴わないという大前提に立っての議論でありましたが、これは結果として審議未了、廃案となりました。けれども国際社会に対してこのまま、だからといって黙っておっていいものではないという立場に立って、自民党と公明党、民社党との三党合意の基本に基づいて、新しい国際社会に対する日本協力のあり方、何ができるのか、また、何をしたらいいのかということについて、いろいろ合意事項を踏まえながら、政府としては今成案を得るべく努力を続けておるところであります。  幸いにして、そういった作業の進展の中で成案が出ましたならば、国会のまた御論議をいただくわけでありますので、各党の皆様の御理解を賜りますようにお願いを申し上げておきます。
  16. 船田元

    船田委員 大変私は時間を急ぐ問題ではないかと思っております。できれば総理に、今国会中にこの成案を得て出したい、こういう御答弁をいただきたいのでありますが、重ねていかがでございましょうか。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前回の国会の御議論の中で、いろいろな角度から非常に厳しい御議論をいただいたことを肝に銘じて、一日も早く成案を得て、国会の御理解のいただけるような成案を提案したい、こう思って鋭意努力を進めてまいります。今委員の御指摘を私は貴重なものとしていただきながら、できる限りの努力をさせていただきます。
  18. 船田元

    船田委員 ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  この後、鳩山邦夫議員から関連質問がございますので、私の質問は以上で終わりにいたしたいと思います。ありがとうございました。
  19. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、鳩山邦夫君から関連質疑の申し出があります。船田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鳩山邦夫君。
  20. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 今の最後の質問の関連で申し上げれば、私ども、山口敏夫団長のもとに、私は、党の国際局長として、一月の二十六日から二月六日まで、エジプト、ヨルダン、そしてシリアと回ってまいりまして、ムバラク大統領、ハッサン皇太子、そしてフセイン国王、これはヨルダンでございまして、シリアではアサド大統領、それぞれ三時間ずつぐらい会談をいたしまして、まことに実りが大きかったわけで、そういう体験を踏まえてきょうは御質問をいたしたいと思います。  今の船田委員の最後の質問の関連で申し上げれば、シリアへ参りましたときに、もちろん湾岸戦争についての大いなる議論をアサド大統領ともいたしました。その内容は山口敏夫団長からの報告が既にあっていると思います。ところが、まあその議論もいいけれども、とにかくゴラン高原を見てくださいというところでゴラン高原へ連れていかれて、イスラエル軍が撤退をしたときにビルを全部壊しながら帰っていった、もちろん多少の宣伝はあるけれども、湾岸戦争はあるけれども、その議論をする前にまずこのゴラン高原を見ていただきたい、こういうことで、雪の降る中、行ってまいりました。  私は、そのときにPKOというもの、この委員会で、前の国連平和協力特別委員会でもいろいろ議員がいろんな質問をされておられたけれども、初めてこのPKOというものの実態を見て、国連の旗とかいろんな国の旗が立っている、こういう中に日本の旗もあってもいいんじゃないか、文民だってこの兵力引き離しのPKO、国連平和維持活動で幾らでも活躍できるのではないかと、非常に寂しい思いがしたし、これからはこういうところで日本の旗が立って、日本が国際貢献をしている、そういう姿を見てもらえるようにしなければいけない。それが、経済力は大きくなったけれども、人間の徳を人徳といいますが、国の徳、国徳などという言葉はないけれども、国の徳という意味ではまだ世界からの評価というのがいま一である。それは、お金は出す、口は出す、しかしどぶさらいはしない、汗はかかない、エゴイスチックな日本ではないか、そういう批判をどうしてもぬぐい去ることができない。私は、ゴラン高原へ行って、ここに日の丸が立つようになれば随分評価は変わってくるのではないかと思ったわけで、そういう意味で、先般の国連平和協力法は残念ながら廃案になりましたが、その間に三党の確認文書も残されたわけでございますので、一日も早く、船田議員が質問されたように一日も早く成案を見なければなりませんので、いま一度総理からお話を承りたいと思います。
  21. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国際社会において占めておる地位というのは、例えばサミットの参加国の一人にもなっておりますし、また、世界人々世界のGNPを調べるときに、必ず日本は一国で上から二番目、世界的な二十兆ドルという生産の中で三兆三千億ドル近くを日本が出しておる。一五%ではないか。そういうようなことをずっと見てきますと、やはりもう少し一緒になって、先ほど申しましたように世界とともに生きるんだという、こういう感覚を持って世界を見ながら、あれも悪いがこれも悪い、これもああでこうでという演説だけではいけないということを世界の人は言っておるわけでありますから、そのことは私もいたく感じておりますので、今どのような形でそのような新しい国連協力のあり方があるのかということについて、一刻も早く成案を得るべく努力をしておるところでございます。
  22. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 ぜひお願いをしたいと思います。  たしかエジプトの外務大臣であったかと思いますが、日本人は演説は上手で、非常にいい演説をする、しかしそのうち立ちどまってしまって、そのうち消えてしまう、国際政治の舞台で日本というのはそういう評価を受けていますよ、そういうことを言われて非常に愕然とした思いがいたしましたが、今の総理の力強い御発言を信じて、これはぜひ実行に移していただきたいとお願いをする次第であります。  私は、田中角榮先生が総理大臣になられたころに一番末端の秘書になりました。そのころ、今評論家の早坂茂三先生の運転手を私はやっておったわけですが、総理公邸の一室に早坂総理秘書官がおられて、そこに総理大臣の所信表明演説の原稿が届いていろいろ早坂さんが打ち合わせをしているのを私は聞いておったことがある。そのときに、お役所側がこう言っているのです。この演説の中にある平和の創造という言葉は絶対に困る、削ってもらいたい。いや、平和をつくるというのはだめですか。これはだめだ、今それほど大きな紛争があるわけでない、今平和なのに何で平和をつくる必要があるのか、平和は維持であって創造ではないということを、もう十数年前のことですが、随分激論がなされておって、とうとう平和の創造という文句は総理演説から削られたという記憶がございます。  私は、そういうふうに何にもしないで平和が維持されるというのは大変な思い誤りであって、間断なき不断の平和の創造という行為が初めて平和の維持につながると考えるべきで、そういう意味では宗教家の皆様方の方がよほど活発に行動しておられて、創価学会の皆様方も平和のためにいろいろ国際的な活動をして高く評価されておられると聞いておりますし、立正佼成会の庭野開祖会長先生が世界宗教者平和会議を主宰されている、これは平和の創造者としての国際的な評価というのがあるわけでございまして、そういう意味で先般までの、昨日の本会議を含めて総理あるいは閣僚の皆様方の御答弁にはまことに頼もしいものは感じますけれども、いま一つ、もうちょっと前向きであってもいいんじゃないか、もっと平和をつくるために日本が汗をかくという姿勢がもう一歩あってもいいんではないか、もっとたくましい海部内閣であってもいいのではないかと思うのは私だけではないと思います。  本日、読売新聞が社説を載せております。「社会党のおかしな「湾岸見解」」という題でございまして、国際社会が絶対受け入れられない国連決議の無効化などを含んだソ連イラク和平合意、それに対するブッシュ大統領の拒否をした態度とそれを否定したイラク態度が同列に並べられている、すなわち多国籍軍イラクと両方が同じ責任があって地上戦に突入してしまったということを言っているのはまことにおかしいと、読売新聞がすぐれた見解を述べているわけであります。そして、「社会党は、「国連を中心とした和平、避難民の救済、停戦監視、復興のための積極的協力」を訴えながら、九十億ドルの支出や避難民輸送のための自衛隊機の派遣には反対している。では、具体的に何を、どうせよというのか。」これは私が社会党に聞いているのではなくて、読売新聞が聞いておられるようでありますが、実際そういう意味で、国会としての責任とか与党の責任、野党の責任というのではなくて、外国人から見れば、日本という国の責任日本がどれだけ責任を果たしているか、汗をかいているかというふうに見ていくわけでありますから、どうぞそのような点で内閣にも大胆に行動をしていただきたいとお願いをいたします。  そこで、避難民の問題について、昨日、UNHCR、例の緒方貞子さんがなられました国連難民高等弁務官事務所、それからIOMの最新の数字が、開戦時からそれぞれの周辺国へ、イラククウェートの周辺国へ流入した被災民の数、これは被災民もあるしイラク人もいますから難民もあると思いますが、ヨルダンが一万八千人、そのうちほとんどは、これは民間機もベトナムの方を運びましたから、鈴木外務政務次官が乗ってこられて、山口敏夫先生や私どもがお迎えして、ベトナムの方が帰っていかれましたが、国内には今千六百人しか残っていない。トルコには二千二百五十一人、イランには九千八百三十一人、シリアに七百九十五人、これぐらいがイラククウェートから被災民として、難民として開戦後に流出された数の総計でありまして、確かにこれを足しますとそれほどの大きな数にはならない、三万になるかならないかという数だろう。  ところが、昨日の衆議院本会議での質問の中で、日本の民間の善意でロイヤル・ジョルダンをチャーターしてアンマンからカイロまで運ぶ、これは大変結構なことで、日本の評価を高めるためにも大いに役立つわけですが、昨日の本会議の社会党さんの質問は、もうこれで十分足りるんだ、こういうようなことでありました。これはいわゆる難民学、まあそういう学問があるわけではないでしょうが、難民学の基本というのを全く理解をしていないことでありまして、少なくともUNHCRは、ヨルダン、トルコ、イラン、シリアにそれぞれ十万人ずつ出てきて、最低四十万人の被災民は出てくるだろうと。今でもその数字は変更はしていないわけでありまして、なぜならば、戦争が始まったときには、いわばほんの出稼ぎというような方々はすうっと出てくるわけであります。ところが、実際には、イラクに根をおろして若干の生活基盤を置いて仕事をしている方の方がはるかに多いのですね。  エジプト人は、我々が現地で、エジプトで聞いた話では、イラクに公式百二十万人、実際には八月二日の時点では恐らく二百万人いただろうと言われているのです。そして現在でもイラクのパブリックな部門で働いている方が、エジプト人二十五万人はいるでしょう、イラクで家や土地を持っている人、エジプト人だけで十五万人はいるだろう、こういうふうに言われているわけであります。そういう方たちが、戦争の末期あるいは戦争状況によって、あるいは戦争終結と同時にどっと出てくるわけでございますから、被災民の救出とか移送の問題というのは、私どもが三カ国を回った最大の課題でありましたが、これからまさに本番ということになります。  そこで、ちょっとお尋ねを申し上げたいのは、今後の被災民の流出については、私はみずからの想定や見解を述べましたが、外務省はいかがお考えでしょうか。
  23. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  今先生が引用された数字は、基本的には正しい数字だと思っております。一月十一日に避難民関係の国際機関が会合をいたしまして、その行動計画というものを発表しておりますが、そういうものを見ますと、現在、イラククウェートには約七十四万人の第三国人が滞在しておるという見方、それから百二十万人の第三国人が滞在しているという見方が行われておりまして、先生が今おっしゃいましたとおり、戦闘が始まれば四十万人の避難民が出てくるであろうという予想がなされております。現在までのところは予想を相当下回っておりますけれども、私たちは、地上戦開始されたということで、今後の避難民がどのように出てくるかということを現在注目して、情報収集に努めておる段階にございます。
  24. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 昨日もIOM、UNHCRとお話をしたときに、彼らが言いましたことは、とにかく自由に使えるプールされたお金というものをジュネーブできちんと我々が持っておれば、避難民、被災民が出てきたときにすぐ対応ができる、そして、いわゆる輸送機材、飛行機などを現に我々に持たせてもらって、これをどこかに保管をしておくことができればこれはすぐできるので、これが最高の、最大限の希望であるということは明言をしているわけですね。およそ難民とか被災民というような問題は、問題が起きて最初の三日間が勝負であって、これはスピードの問題だということは、UNHCRの特別顧問である松元さんという日本人の方も論文で述べておられるわけでございますから、とにかく十分な準備を彼らができるように、日本が最大限の協力をするということをお願いをしたいわけであります。  例の、国会でもさんざん取り上げられたIOMのパーセル事務局長からの書簡の話でございますが、あれは口頭でしか返事をしていないわけですね。そして、その後のベトナムのときは具体的に飛行機を四機出したということだと思うのですが、もっとIOMと、どういう書簡が来たからとかどういうというのじゃなくて、とにかく徹底して相談をして、やりとりをして、非公式会談でなくていい、例えば公式会談までセットしてもっとよく打ち合わせをして、被災民の問題に対応をする、今度具体的な要請が来るまで待つという待ちの姿勢ではなくて、国際機関と積極的にお話し合いをなさる用意はございませんでしょうか。外務大臣にお尋ね申し上げます。
  25. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国際機関、IOM等との十分な関係を今までも持っておりますけれども、今委員指摘のように、これから戦が終わるという時点で被災者がどのような形で難民として出てくるか、IOMと十分緊密な連絡をとりながら、いつでも対応できるように日本政府としては努力をしたいと考えております。
  26. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 そこで御提案がありますが、実はエジプトの避難民のオペレーションセンターというのがありまして、そこへ山口敏夫先生初め四人の自民党の国会議員で参りまして、地図でいろいろと、ここがアカバだ、ヌウェイバまで船だとか、陸路の場合の話、空路の場合の話、いろいろしておりまして、私たちはこれからヨルダンのアンマンへ行って同様の調査をしたい、こういうことを申しました。  御承知のように、エジプトとヨルダンはこの戦争については相当立場が違いますし、ヨルダンは国民の九割以上がサダム・フセイン支持といううわさもありますから、国家指導者同士はなかなか微妙な関係にあるのですが、そのときに、エジプトの難民の責任者である、オペレーションセンターの責任者であるホスニーさんという方は、ぱっと電話をとって、何かプッシュホンではなかったかと思いますが、ちょっちょっとやったらもうヨルダンのオペレーションセンター、アンマンに電話が通じておる。ホットラインを持っているんですね。そして、向こうのハマド委員長という方に、今、日本の代表団が来ていて二、三日中にアンマンに行くから十分打ち合わせをしてくれと言ってオーケーをとった、こういうシーンを我々は目の前で見た。アンマンとカイロはそういう道義的問題では、人道上の問題ではホットラインでつながっている。  そして彼らが言うのは、国際機関の協力はありがたいけれども、実は、特にヨルダンが言っておったのは、国際機関に頼む、ところがやはり国連にも官僚制というのがあって、書類を整理している間に砂漠で子供が死ぬというような状況も随分ありますよ、こういうようなことも話をしておられました。山口敏夫さんも提案をされているのですが、アンマンのセンター、カイロのセンター、そして国際機関、そしてこの日本がそこへ乗り出していってすべての連絡網をつくってやるというぐらいのお考えはございませんでしょうか。
  27. 丹波實

    ○丹波政府委員 今の点でございますが、先生の御一行が現地に出かけられて、今後の避難民移送対策につきましての関係国との意思疎通を図っていただいたこと、大変感謝申し上げております。  先生御自身、今おっしゃいましたとおり、ジョルダンとエジプトのいろいろな問題についての態度も違いますので、そういうことも念頭に置きつつ、かつ、せっかくの先生方の御提言でございますので、現地の意向を十分徴しながら検討させていただきたいというふうに考えます。
  28. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 今のはわかりましたが、ちょっとお尋ねしたいことがございまして、ヨルダン政府が、恐らく八月二日以来ヨルダンを通過していろいろな国へ帰っていった被災民の数、これは百万を超すようなことも言っておるのですが、あるいは戦争後でも一番ヨルダンに多く出てきている。彼らは少なくとも、警察とかあるいはインフラとかいうことは別にしても、政府として六千万ドルや七千万ドルはそのために使った、国際機関からもいろいろもらっているしテントも張ってもらっているけれども、そういうものは合わせても二千万ドルにはならないだろうと言うのです。そうしますと、いわゆる持ち出しが四千万ドルというような数字だろうと思うのですが、こういうお金はまさに人道的な問題で使われているわけですから、こういうお金をヨルダンに補助するという方法はないでしょうか。
  29. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  我が国は、昨年八月─九月のICRC、UNDRO、それからIOMの避難民救済活動、本国移送経費に関します拠出アピール、及び本年一月のUNDROによる避難民救済本国帰還計画の初期コストへの拠出アピールにこたえまして、御案内のとおり、これら関係国際機関に総計、先ほどもおっしゃいました六千万ドルの資金協力を行いましたが、ジョルダン政府に対しましても、総計約一・五億円相当の毛布、乾パン等、援助物資を六回にわたって供与いたしております。  また、ジョルダン及びエジプト、トルコの三カ国に対しましては、総額二十億ドル相当の周辺国支援の国別配分に当たりましても、ジョルダンに対しましては、御指摘のございました難民の流入問題のほか、輸出の減少、海外労働者の送金の減少、観光収入の減少等によって生じました経済的損失が絶対額において極めて大きいという事実を踏まえまして、また国の経済規模に比しても格段に大きいということでございますので、この点を考慮に入れまして、同国にはトルコと並びまして七億ドルの配分を行ったという事実がございます。
  30. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 私どもがエジプトからヨルダン、シリアと回ってきた内容について三十分の質問時間ではとてもお話ができませんが、私どもと全く同時期に犬養道子さん、あの有名な犬養さんが同じようなルートで、我々も被災民のキャンプの中へ入って、もう零下一度、二度という中で一緒に話をしてきたのですが、この犬養さんも同時期に行かれて、毎日新聞のインタビューに答えている。これをお聞きいただいて、ぜひ閣僚の皆様方もよくお考えをいただきたい。「少しでも早く救援が欲しいときに、日本では自衛隊機か否かの議論でもめて、実行が遅れているのはピントがずれていますよ。」「日本の主張はエゴイズムで、いま困っている対象はだれで、何をすべきなのかに目が向かない。」「日本は金だけ出せばいいと思っている、何もしないというのが世界中の評判です。社会党への批判も厳しい。反対党の大きな使命は代案を出すことなんですよ。与党に反対をいうだけ。最も困っている人のことを考えていないからだ、と非難されています。」こういうことを書いておられるわけで、非常に鋭い内容でございますので、よくお考えをいただきたいと思います。  私どももいろいろ地ならしはいたしましたから、実際山口団長とハッサン・ヨルダン皇太子とのやりとりというのは相当迫真のものがございまして、要するに、政治を超えた純粋道義的、人道的なことで国際機関や国連の要請を受けたときにはC130いかがですかということで、ああそういうことだったらよくわかりました、歓迎しますというのを、私メモをとってありますが、それはハッサン皇太子の歓迎しますというのが最後の言葉なんで、条件つきで受け入れをすると言ったのではないです。実態がわかったから、ああそういうものならば受け入れますという、そういうやりとりがあったわけであります。  そこで、最後に経済協力のことですが、ムバラク大統領は私どもに相当厳しいことを言いまして、アメリカはお金持ちである、戦争をやっているのは大変だ、我々も一緒にやっている、しかし、そういう国には九十億ドルをただで上げるのに、周辺国には何で有償のローンなんですか、強い国にお金をただで上げて弱い国には有償だというのはどうしても理解ができない、これはムバラク大統領はもうそのことを大変にしつこいほどおっしゃいまして、要するに、経済協力してやるよと日本は言うけれども、受け取る我々からすれば借金がふえちゃうよということであって、国民は借金がふえることには恐怖感すら覚えているのだ、こういうことなんですね。  我々も経済協力、例えばODAとか考える場合に、日本の国内で議論するとどうしても金額が先行して、余りこの有償、無償の区別をしないで議論をする、そういう傾向があるのですが、本当はその辺はもっと考えを変えて、有償、無償、一億ドルの有償よりも一千万ドルの無償を欲しいという国もあるのかなというような気がしますし、そんなことで経済協力のことについてはまた十分にお考え直しをいただきたいと思います。  また、周辺国援助を決められたときに、シリアが入っていなかったわけですね。湾岸周辺国ということの考え方も相当これからは幅広く考えていきませんと、まあ政府も既にお考えを述べられておられるかもしれませんが、インドあたりも相当な影響を受けております。自国内にイスラム教徒も大量にいる、またイラクから帰ってくる人も大勢いるという中で、湾岸周辺国に相当幅広く援助をする、それもできる限り有償でなくて無償でいくというのがやはり、お金のばらまきという批判はあるかもしれませんけれども、どうせ経済協力するんだったらできるだけ評判のいい経済協力をしていただきたいと思うのであります。  時間がありませんからしり切れトンボになってしまいましたが、三国を回ってムバラク大統領そしてフセイン国王並びにアサド大統領が異口同音におっしゃったことが一つだけあります。私のメモに残っておりますが、三人ともおっしゃったことは、日本の平和憲法、広島、長崎、よくわかっています、そして日本の経済力が大変強い、そして経済協力をしていただくこと、感謝をいたしますけれども日本はもっと中東に政治的、外交的な努力をしてもらいたい、興味を持ってもらいたい。この中東から石油の七割、八割を輸入している日本だから、もっともっといろいろと協力をしてもらいたいんだ。アメリカという国は何かといえばやっぱり当事者、アラブ対イスラエルという問題でも当事者というような見方を我々はしてしまうので、日本は中立であり得るわけだから、特に戦争後のあるべき中東秩序については外交的、政治的な積極的な役割を果たしてもらいたい、こういう要望がございましたので、それにこたえて総理から御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  31. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 るるお述べになりましたが、私はエジプトもヨルダンも、ともに長時間会話をしてまいりました。シリアの大統領とはまだお話をしておりませんので、委員の御指摘をそのまま留意させていただきます。  いずれにしても、日本がきょうまで中東で果たしてきた役割の基本に従って、あの地域の恒久な和平が実現するように積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  32. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 ありがとうございました。
  33. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて船田君、鳩山君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤敬治君。
  34. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 けさ七時半に、イラクフセイン大統領が、全軍に対してクウェート撤退する、イラクソ連の六項目合意に従って全面的にクウェートから撤退することを軍に命じた、こういうニュースがありました。大変残念なことに、もう二日前にこれが出ておればああいう地上戦に入らないでもっと円満に物事が進んだのじゃないか、こう思いますけれども地上戦が始まってからのことで大変遅きに失した、大変残念に思っております。  しかしながら、これは一つの大きな契機でありまして、地上戦に入ってまだ二日しかたっておりません。この時点において全面的に撤退をするという表明をしたということは大変いいことでありまして、できるだけこの事態を速やかに平和に結びつけるように政府は動く、これが大切であると思いますけれども、いかがお感じでありますか、お伺いしたいと思います。
  35. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 けさ放送を私が聞いた瞬間に感じましたことは、きょうまでも国連決議に従った無条件撤退即時撤退ということが局面転回のかぎになるんだ、フセイン大統領はそのことを一刻も早く決断して実行に移すことを強く求めると言い続けてきた私としましては、今委員指摘のように、もう二日早かったらなという思いが一瞬すると同時に、しかし、今からでも遅くないから、国連決議の趣旨に従って無条件完全撤退を実行に移してくれることを強く願った次第でありまして、この間うちのいろいろなやりとりの中でも、撤退をするときには受諾を正式に国連に通報してくることをということがアメリカを初めとする多国籍軍からも出ておるわけでありますし、同時にまた、国連の安保理が断続的に行われるという状況でもあるようでありますから、公式に明白にその意思を伝えるとともに、具体的な行為に一刻も早くわかりやすく移してもらうことが和平につながっていく端緒になると私も強く期待をしております。
  36. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私はニュースを見てすぐ出てきたので、その後の推移はわかりません。  外務大臣にお伺いしますが、ニュースによりますと、ソ連イラクイラクソ連に六項目合意を受諾する、こういうことを言ったと言っております。しかし、国連アメリカもどこもまだ何も受けてない、そんな知らせは知らない、こういうふうに言っておりまして、まだ事態の行き先は少し霧に包まれておるようでありますが、その実態がおわかりになったら御報告をお知らせ願いたいと思います。
  37. 中山太郎

    ○中山国務大臣 あくまでもイラクのサダム・フセイン大統領クウェートからの軍の撤兵、撤退ということを命じたというのは一放送局の放送でございまして、まだ正式に国連安保理決議を受諾するという状況には至っていないと思います。  今、我が外務省としてのニューヨークにおける国連の安保理非公式会合の状況をこの機会に御報告させていただきたいと思います。  湾岸情勢に関する安全保障理事会非公式会合が、ソ連の要請により、二十五日午後四時五分、日本時間にいたしまして二十六日の午前六時五分でございますが、から午後五時二十分まで、日本時間の午前七時二十分まで開催をされた。  その会合におきましては、まずソ連より、同国が地上戦開始後もバグダッドと接触を続けており、イラク側より、もし安保理がイラク撤退の日付を定めるのであれば、イラクはそれを受け入れると信ずるに足るインディケーションを受け取ったと述べた。  第三、これに対し、アメリカ、イギリスより、要するに我々が必要なのはイラクからの公式の回答であり、ソ連やその他を通じた間接的な情報ではない。同盟国が表明した案は机の上にあり、イラクがこれを受諾すれば地上戦は終結されると述べております。  四番、オーストリアより、議長はジンバブエでありますが、オーストリアの代表から、議長はイラク代表とコンタクトをとり、ソ連がもたらした情報を確かめるべきであると述べた、こう言っております。  第五、これに対し、議長から、本二十五日、既に二回にわたりモスクワよりニューヨークに戻ったイラク国連常駐代表にコンタクトをとったが、同常駐代表はかかる情報には接していないと述べた旨紹介した。これをもって会合を終了した。  こういうのが公式な連絡でございまして、日本政府といたしましては、あくまでも安全保障理事会の議長がイラク政府からの正当な意思を受諾をする、そこからすべての問題の解決に向かって動かなければならないと考えております。
  38. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今一番最後に、最後のこれを受諾するか否か、これは安全保障理事会の議長の受諾があれば、こういうことであります。私はできるだけこの問題を平和裏に進めることができるようにひとつ日本が大いに動くべきである、行動すべきじゃないか、こういうふうに考えますが、総理、いかがですか。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ニューヨークに駐在します日本国連大使を通じて、国連事務総長並びにイラクの大使とも常に接触をとりながら、あくまでもこれは平和解決のためにはイラク無条件完全撤退をすることであるということは繰り返し伝えてあるわけでありますので、不幸にして今安保理の日本はメンバーでありませんが、引き続き国連活動を通じてそのような我々の考えておることがイラクに伝わり、イラクの決断を促し、これが平和に進展していくように、できる限りの努力を続けていきたいと考えております。
  40. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 非常にこの事態の難しいのは、今多国籍軍クウェートイラクに入っていきまして、ほとんどイラク軍が壊滅状態になっている。いわば、簡単に言うと降伏寸前である、こういう状態のところにこの六項目を受諾する、こういう問題が出てきた。まあ何といいますか、簡単に言うと全面降伏みたいな形で出てきた、ここに非常に難しい問題があると私は思っております。  国連決議すべてが大体クウェートでもってとどまるべきだ、こういうような意味の決議でありますけれども、そこまででとどまるのかどうか、非常に微妙な時期でもあります。それだけに、非常に難しい時点に今遭遇しているんじゃないか、こういうふうに考えますので、ここのところは、ひとつ日本としても、いわば今まで中東で手を汚さない、全く中立の状態にあるわけでありますので、先ほど鳩山委員からもありましたが、日本は中立だ、こういう立場にありますので、この間に立ちまして難しいところを大いにひとつほどいて、何とかしてこれを、せっかくの提案を受諾に結びつけて平和裏に進行するように努力していただきたい。特に外務大臣、大変お忙しいでしょうから、ぜひひとつこれで行動していただきたいと思いますが、いかがですか。
  41. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府国連加盟国として国連安保理決議の完全実施を要請している立場にございまして、日本政府は中立の立場はとっておらず、多国籍軍支持するという立場に立っております。それは御理解をいただきたいと思います。  一方、我々の国は、一日も早くクウェートからイラク軍が撤退をし、クウェートの正統政府が復活をする、そして併合の無効が確認される、こういうことが我々の第一の目標でありますから、その目標を完全に実施するための、イラク政府国際社会に通る手続を行うことが極めて緊要であると考えております。
  42. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この問題は、これからどんどん新しい事態が出て推移していくのでありましょう。よくひとつそれを見きわめまして、適切な行動をしていただくことをお願いして、終わります。  非常な人類の念願にもかかわらず、ああいうような大きな災害をもたらす戦闘が行われまして、本当に残念でありました。地上戦になって、イラクがこの六項目を受諾する、こういうことになりまして一日も早く平和が到来するように祈っております。  ただ、問題はこの後に来るところの救済、被災地の救済あるいはそれの復興、これが最大のこれから問題になってくるわけであります。  今度の湾岸戦争、まことに大変な物量が投下されたのでありまして、報道によりますと延べ十万機がクウェートイラクを爆撃した、こういうようなことが言われております。想像もつかない数であります。したがって、それによって、しかも昔と違って大変なハイテクの武器によって爆撃された地域というものは、それこそ想像も絶するところの大きな災害を受けているのではないかと思います。恐らく、イラクあるいはクウェート、こういうところでは、今世紀にはとても復興できないだろう、こういうふうに言われるぐらいの大きな災害を受けておるわけでありますので、これに対して世界じゅうが手をとって復興して、再びこういうことのないようにしなければいけない、こういうふうに考えておるところであります。  私ども社会党も、この戦後の復興については大いに頭を悩まし、一生懸命考えているところでございます。私ども立場を鮮明にしておきますと、戦争に対する費用、戦費に対しては反対である、しかし平和、救済、復興、こういうものに対してはできるだけの金も出し、人も出し、大いに協力すべきである、こういう態度をとっておるわけであります。  先般、我が党の土井委員長が盛岡市におきまして、社会党の復興、救済、こういうことのための具体的な提案をいたしました。私は、この問題が直接題材になって、議題になって、今議論されております補正を審議しているこの委員会におきまして、改めて補正の修正を含むところの私どもの具体案を提出いたしたいと思います。少ししかないですから、これ一応読み上げてあれします。  「停戦・和平復興へ─支援の具体的提案」として提案しております。  一つ、基本的な態度。「即時停戦」、これはもう今申し述べたとおりであります。「地上戦反対」、これも既に入っておりますので少しずれておりますけれども地上戦は反対する。「戦費負担反対・和平復興のための積極的な協力」、これが基本的な態度であります。  具体策といたしまして、まず一つは緊急的な対策、「緊急対策」、平成二年度補正予算、今の予算でもって対応したいと思っております。「避難民などの救援対策費として国際機関への拠出」、これは約五億ドル、六百五十億、それから「紛争周辺国への援助・アジア諸国の経済困難国への支援」で二十億ドル、二千六百億円、合計三千二百五十億円、平成二年度補正予算で、今の予算でもって対応すべきじゃないか。非常に急を要する、こう思いますので、補正予算で対応したい。  財源は、政府案によるところの二千億円に一千二百五十億円を追加いたしまして、政府案での九十億ドルのGCC経由米国国防協力基金への振り込み、戦費使用はこれは停止していただきたい。  二番目は、「和平復興対策等」でありまして、これは時間を要する問題でありますので、平成三年度予算で対応していきたい。「停戦にかかわる費用」、これはこれから停戦監視団、和平交渉あるいはPKO等、いろいろな問題が出てきますので、これに対する応急の協力として一億ドル、百三十億円。  それから、「復興対策」としてこれから大切になってまいりますけれども、「戦災者への食料・医療等の支援」、「住宅・交通・通信・病院等の復旧整備」、「石油設備破壊の復興」あるいはまた、「環境破壊への対策等」、一年に約二十億ドル、これを五年間通じて大体百億を計上したいと思っております。これはある程度、先の見通しがはっきりつきませんので、一つの見通しであります。  「その他」、「周辺諸国・アジア諸国への援助」、これらは平成三年度予算の組み替えによって執行いたしたい。  財源は、防衛費の削減、次期防を現中期防と同額にすることで五年間に約四兆数千億円が出るのではないか。さらに、NTTの株の売却益の使途を投資のために国債整理基金に繰り入れることをやめる。それからたばこの株式の売却、さらに法人税の増税四千五百億円程度。この執行は一般会計、財投、国際機関への負担、基金への拠出などの方式の組み合わせで行いたい。また、民間の金融支援ども積極的に行われる。「これらの財政対応は中東の平和国際秩序づくりへの積極的な提案と参加の外交活動と一体のものとして行われる。」これが骨子でございます。  今、自民党の中にも宮津私案というものが出て、我々の案とかなり似ている案でもあります。政府もこれをやっておるようでありますし、また、各党でもいろいろなことを今考えているようであります。私どもはこの案を絶対に固執するつもりはございません。各党の案をすり寄せまして、本当に超党派の合意できるものをつくり、国民合意の上にこの膨大な金を駆使しまして中東復興のために尽くすようにしたい、こう考えております。  これに対して、特に今要求したいのは、今審議が行われておりますこの補正予算に、緊急を要するところの対策費、この問題に対しては早急にひとつ御協議をお願いいたしたい、こう思います。総理大臣の御所感をお願いいたします。
  43. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今具体的に御説明をいただきましたが、政府としましても、まず第一には一刻も早い平和の回復を願っておるということは大前提として繰り返し申してまいりました。それが終わってから和平復興の底固めのため積極的な協力が必要になるわけでありますが、どうか一刻も早く和平が来るための努力に対してももう一歩前進して御協力をいただき、早く和平を達成させることが早く復興にも着手でき、また、徹底的な破壊が行われる前に差しとめをするような努力も極めて大切だなということを私は考えながらお聞きをしておりました。  同時に政府は、このお示しになっておる経済復興の問題とともに、我々が想像もできないような環境破壊が行われておる、例えば原油の海に対する垂れ流しに対してもでき得る限りの今対応策をし、協力しておりますが、地上の油井のあの無法な爆破炎上の現状を見るにつけても、あれがどのような影響を及ぼすのか、環境方面、将来の地球環境という面の項目もございましょう。ですから、そういったようなこと等もひとつ含めて御議論は進めていただきたいと、こう心から願いますし、また、百億ドルという金額をお示しになりましたが、極めて率直に、見通しは不明なのでこれは一つの見通しの試算である。私どもも総合的に判断してこれくらいということを申し上げておりましたが、これも見通しとして、仰せられるのは私も十分記憶にとどめておきますが、我々が考えますと、これは大変な規模の破壊が行われ、大変な復興が必要でありますから、この中東地区の問題に限ってもこういった試算でおさまるのかどうか、さらに慎重に情報等も集め、検討、研究も加えていかなければならぬものだと、こう心得ておりますし、後半でお示しになったアジア諸国への問題は、これは湾岸危機とかかわらずきょうまでもODAその他でアジアに対しては二国間並びに多国間の援助、協力を続けてまいりました。これに対してどのような対応をしていくか。もちろん積極的に対応をして本当の意味の平和と安定に役立っていかなければならない、こういう積極的な気持ちを持っておる次第でございます。  とりあえず、私の今感じましたことを率直に申し上げさしていただきました。
  44. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私ども社会党は、平和が来る、できるだけ早くこの戦争がおさまるように、こういう願いは人後に落ちるものではございませんし、皆さんと一緒でございます。その点は御理解をいただきたい。どうかぜひひとつ、私どももせっかく提案いたしたのでありますので、先ほど申し述べましたようにいろいろ事態の変化がありまして対応には大変でありますけれども、超党派で国民的な合意のもとにこの大事業に日本が乗り出して、先ほどから論議になっておりますように、目に見える貢献をするためにひとつ頑張っていただきたいと思います。私どもその点では協力するにやぶさかでないことを申し上げておきたいと存じます。  それでは本論に入っていきたいと思います。  まず第一に、きのう我が党の野坂委員から質問がございましたこの九十億ドルというあなたから言わせると平和協力資金、これが、この間のアメリカ政府が議会に提出した湾岸戦争の経費に対する補正予算で、日本の多国籍軍への九十億ドルの拠出が全額米国向けとして計上された、こういうことでありますが、今までの質問を繰り返しますが、今までは湾岸協力会議、いわゆるGCCに行って、そこから配分しろ、多国籍軍の主力はアメリカであるのでアメリカに大部分行くだろうが、全部行くわけではないと、こういうことは再三にわたって政府から明確に声明されたのであります。このことについて、この矛盾をどういうふうに一体説明するのか、もう一遍御説明を願いたいと思います。
  45. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 このことは、おっしゃるように何回もここでお答えしておりますが、湾岸平和基金に拠出をいたします。そして、湾岸平和基金の運営委員会で、日本政府の意向をそこで表明をいたします。そしてそこで、おっしゃるように、多国籍軍平和回復活動に対する支援としてこの拠出金は使われるわけであります。その大宗は米軍が中心となって行われておる多国籍軍平和回復活動でありますから、第一回目のときも九一%余りが米軍に行っておるということはここで御報告をさせたとおりでありますけれども、そのような方法で行っていくという政府の考えには変わりございません。
  46. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私はそういうことを聞いているのじゃございません。あなたがそういうことを今まで言ってきた、ところが、アメリカからの補正予算案によると、九十億ドル全部がアメリカへ行っている。あなたの言っていることとアメリカで現実に行われているその金の動きというのは矛盾しているから、その矛盾をどう説明するかと聞いているんです。
  47. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本政府考え方日本の国会で私が申し上げておるわけでありますから、それに対してアメリカでどういうことが言われた、こういうことが言われるということと私の答弁とは、別にすり合わせたり打ち合わせたりしてしておるわけじゃございませんから、日本政府の意思を自主的に申し上げておるわけであります。
  48. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなたは何回もそうして同じことを言っているけれども、これは一回だけじゃないんです。──いや、あなたが言っているのが一回だけじゃない。あなたも何回も言っているけれどもアメリカからこういう報道が入ってきたのも一回だけじゃないんです。これは何回もアメリカから入ってきている。  一番先は、一月の二十七日のスヌヌ大統領首席補佐官のABCテレビ放送ですね。米国の戦費負担は、議会で合意された百五十億ドルにとどまって増税しないと言っているけれども、その内容、なぜ増税しなくてもいいかという内容は、その計算には日本の追加支援の九十億ドルということがはっきり入っている。さらにまた、同じ日に、ダーマン行政管理予算局長、これがCBSテレビでもってやはり同じことを言っておる。日本から九十億ドル、その他からみんな入ってくるから、もうアメリカの財政は戦況と同じように財政もまことに順調だと、こういうことを言っているんです。その中にはっきりと九十億ドルが入っておるんです。人の金を相手にして順調だと言うのもちょっとおかしいと思うけれども、まあそういうことを言っております。  二回目は、これは二月の七日、ブレイディ財務長官がやはり同じようなことを言っている。これは大蔵大臣関係ありますけれども、ブレイディ財務長官が七日の米下院で証言して、日本の多国籍軍への追加支援に関して、米国が九十億ドルを要請し、日本がこれに応じたと。後で聞きますけれども、これに対して橋本さんは、そんなことはない、あのときはまだアメリカが決まってないからそんなはずはないと言うけれども、この中にもはっきりと、アメリカ日本に対して九十億ドルというのを要請していると。これは事実であると私は思います。これが二回目です。  そうして今回のこういうことがまた起きてきた。一遍だけじゃないんです。うそも三遍言えば本当になるといいますけれども、三遍もこれ出てきているんです。一遍ならいいんですよ。三遍も同じようなことがアメリカから次々と入ってきている。それが全くうそだということはだれもちょっと信用できないのです。いかがですか。
  49. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今スヌヌさんとかダーマンさんとかいろいろな人の名前と、うそも三遍言えば本当になるなんて、これは冗談だろうと思いますけれども、おっしゃいました。私の方は三遍でも四回でも同じことを言っておるのです、同じ人間が。  日本政府としては、自主的にこれは必要だと決めて、これを湾岸平和協力基金へ出します、そこで使途その他についてはきちっと日本の意向を反映して定めます、こう言っておるのでありますから、アメリカ側がいろいろなことを言うということは、それはアメリカ側の期待とかアメリカ側の思惑を込めていろいろな人が言うかもしれません、そういったことをお答えしておるのでありまして、一々それに答えておるわけにはまいらぬと思いますし、アメリカの議会予算局の試算でさえ二百八十億ドルから八百六十億ドルまでさまざまあるということは、何度もこれもここでお答えしておるわけでありますから、そういったものをひとつお取り上げいただいて、だれがいつどこで言ったというのは、それはいろいろ報道されておることは私もよく承知しておりますが、日本の基本的な態度はここで私が申し上げておることでございます。
  50. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は、きのうからの政府の答弁を、それからその前からですがいろいろ聞いて、大変おかしいと思っているのです。大体この九十億ドルというのはあなた方から言わせるとつかみ金だ、周囲の状況を見て決めたので積算の根拠はない、こう言っております。それも大変残念なことでありますけれども、今あなたが申されましたように日本アメリカ日本日本の勝手だしアメリカアメリカで勝手にやっているんだ、こういうような解釈というのはだれも信じません。信じませんというよりも、ひどい答弁だと私は思いますよ。  九十億というのは一兆何千億という大変な金なんです。これが根拠もなしに、しかもこっちは勝手に、湾岸へ行ってアメリカへみんな行かないんだ、アメリカの方はみんな来たんだと。九十億という大変な日本国民の血と汗でできた金を、おれの方はおれの方だし、もらう方はもらう方で勝手だ、こんな解釈が一体できますか。いつもあなた方は日米は協力してがっちり組んでいかなければいかぬ、最大のパートナーだと言っているじゃないですか。それを、おれはおれだ、アメリカアメリカだ、そんな答弁、一体信用できますか。けしからぬ至極ですよ。すれ違ったら、向こうとしっかり一遍、一番先の一月二十七日のああいうあれが出てきたら、二度と出ないようにアメリカとなぜ協議しないのですか。国民があなた方に不信を持つのは当たり前じゃないか。冗談じゃないですよ。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本が自主的に物を決めてやっておるということとアメリカの言いなりになるなということはいつもおっしゃることじゃありませんか。言いなりになっているんじゃない、自主的に決めて出しておるのでありますから。湾岸平和協力基金へ出します、そこの委員会で使途等については決めます、使途についてはこれこれこれという意向を持っておりますから、これを日本側の意向としてそこで反映するようにいたします、こう答え続けておるのであります。それを、アメリカの方もいろいろな人がいろいろなことを言ってきた。それは私は、アメリカがいろいろなことをおっしゃるのは、これはそうだろうとここでも申し上げました。けれども日本の国会で日本政府が言うことは、これは日本の意思でございます。自主的に決めた判断であります。これを言うことは、アメリカも受けとめて、ブッシュ大統領日本のそういった協力に対しては感謝をすると受けとめておるわけでありますから、その方法で行っていくということは、従前同様これを変えるつもりはありません。
  52. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それではお聞きしますが、実際に九十億ドルは全部行っているんですか、アメリカに。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大変申しわけありませんが、その九十億ドルを拠出できるかどうかということについてまさに今議論を願っておるわけでありますから、国会で議決、承認がいただけなければこの九十億ドルを湾岸平和基金へ出すということもまだ言えないわけでありますし、私どもアメリカに対してもそれだけを自主的に決めて、国会にその審議を要請し、提案しておるところである、こういう言い方をしておるわけでございます。だから、まだ実際に行ってはおりません。
  54. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いや、私は、まだ金が行ってない、それは知っていますよ。しかし、いいですか、一番先に出てきたのは今言ったように一月の二十何日ですよ。その間に三回も矛盾ができてきている。あなた方の言っているのとアメリカの言っていることと違っているでしょう。  まず聞きなさい。今私どもはここで議論しています。この金はあなた方は九十億ドル皆行くはずはないと言っている。向こうではみんな来るはずだと言っている。それを聞いている国民は何と思いますか。一体どっちが何か、さっぱりわからないじゃないですか。国民に対してあなた方は、この九十億ドルを、今は何ぼか違ったけれども、税金でもってこれをやると、増税でやると言っているでしょう。この金の行方というものはやはり国民にとっては大きな問題なんです。あなた方は全部やらないと言っている、向こうはいやみんな来ると言っている。一体どっちが本当なんだ。それがだめだというとまた向こうから出てくる、だめだというとまた向こうから出てくる。これでは一体我々の税金はどういうふうに使われているんだかわからない。国民に対する不信感が出てくるから、それを出ないように、あなた方の言うことが正しいならばきちっと向こうに言って、お互いにそうして不信感を起こさないような方法をとるべきじゃないか。そうでないと、ただ、おれの方はおれの勝手だ、おれは日本だし向こうはアメリカだ、向こうは向こうで勝手にやればいいという、こういう理屈は、実際に動く金を出す国民に対して言いわけが立たないじゃないかと言っているのですよ、私は。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前回も湾岸平和協力基金に出しまして、湾岸協力基金の運営委員会で決めたものを配分をし、多国籍軍の中心になって動いておる米軍にその大宗は行くでしょうけれども、結果としてたしか九一%ぐらいのところが行っておるという御報告をしたこともそのとおりでございます。  アメリカはこの間の事情もよく承知しております。また、今度日本が自主的に出し得る金額は九十億ドルだということで、これを国会に諮って、湾岸平和基金に拠出をして、また平和回復活動のための日本の応分な協力金として拠出をする。使い道については拠出国である日本の意向を反映できるように、そういった仕組みになっておりますということは、ここでも申し上げておりますし、結果として、その大宗はアメリカが多国籍軍の中心的な活動をしておるわけでありますから、そうなると思いますけれども、しかし決定はあくまで平和基金の運営委員会で決まることになっております、その総額は九十億ドルの拠出ですということはアメリカにも伝わっておりますし、アメリカも承知をしておることであると私は考えます。
  56. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今もそっちからお話が、後ろの方からやじみたいに話がありましたけれども、これは、ただ来るとか来ないとかという、そういうことじゃないのですよ。補正予算という予算案でもってきちっと出しているのですよ。これは明らかにこっちへ来るという一つの意思表示なんです。ほかのものじゃないんです。ただ来るとか来ないとかと言って水かけ論して、何もないことをやっているんじゃないんですよ。アメリカ補正予算ではっきりと計上して出しているんですよ。それを、いや向こうは勝手に出しているんだし、何も意味はないんだ、そういうことは言えないと思うのです。やはり向こうははっきりとそういうことを確かめながらきちっとした形でもって九十億ドルということを出しているに違いない。日本予算だってそうでしょう。何の根拠もなく、ただぽんと置くわけはないんです。同じことでしょう、向こうだって。それほど予算というものはでたらめなものじゃないと思うのですよ。しかも補正予算なんですよ。  私は、出す出さないは別にして、あなた方の言っていることと、それを大部分受け取ると言われているアメリカの言うことが全く違う。しかも、まだ補正予算を出さない段階ならば勝手だということは言えるかもしれないけれども、はっきりとした補正予算案で出している。この事実というものはやはりどうにもならないのですよ。だから、そこのところを、本当にあなた方がそれを主張するならアメリカとよく話をして、これはこうですよ、そういうことをやられちゃ日本国民に不信を買うからこれはしっかりとしてくださいよとよく話をして、二度とこういうことが出てこないようにするべきじゃないですか。三回も出てきているんですよ、同じ話が。そこのところを私は言っているのですよ。
  57. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 九十億ドル日本拠出をする、それは前回の例に踏まえても、多国籍軍の大宗を占めて活動しておるアメリカの方に使われることになるであろうということは、これは予測をし、ここでも何度も申し上げておりますけれども、私どもはあくまで平和協力基金に出す、それは九十億ドル、それを日本の国会に今審議をお願いしておるということは伝えてありますから、アメリカの方としては、そういった日本が九十億ドルを国会の議決をいただくことができるなればこれは日本が提供する額である、このように受け取ることは、これはごく自然の受けとめ方だと思いますが、全額アメリカがということがまだ決まったわけでもありませんし、我々は、きょうまでもそうであったように、湾岸の運営委員会の理事会で決めていく、こう申し上げておるわけでございます。
  58. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 必ずしもそうとは言えないと思うんです。この前に十億ドルでしたか、出したでしよう。あのときはアメリカにみんな行ってない、そうでしょう。それはアメリカの方では、湾岸協力基金、GCCに出しても、この前来ないからわかっているはずなんです。それをわかっていながら、何回もこうして九十億ドルが来るんだ来るんだ、こう言っているということは、やはりそこに一つの矛盾がありますね。初めての例じゃないんです、九十億ドルは。前のものは湾岸基金に出して、GCCに出して、そして確かにGCCから配分した。そしてそれはアメリカへ全額行ってないんです。だから、GCCに来れば全部来ないということをアメリカは知っているんです。それにもかかわらず補正予算に計上して九十億ドルが来ると言って主張しているんです、アメリカは。だから私どもは、おかしい、こう言っているのです。おかしいでしょう。アメリカが知らないこれが初めてのケースならば、あなたが言っているのもある程度当たるかもしれない。湾岸協力基金から配分したということは前に一遍例があるんです。そのときはアメリカに全額行ってない。今度は、それを覚えておりながら、GCCを経由してくるということをわかりながら、しかも、なおかつ執拗にはっきりとした補正予算に九十億ドルが皆来ると書いているのです。だからおかしいんじゃないですか。
  59. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 多国籍軍に対して平和協力のために湾岸平和基金へ出したのは、最初は確かにおっしゃるように十億ドルでしたが、その後十億ドル追加が行っておりますから、合計二十億ドルになっておるわけでありまして、それがすべて行ってないということも御発言のようにアメリカはよく知っておることだと思います。九十億ドルの問題についても、前回と同様の仕組みで日本拠出をする準備をしておる、国会に提案しておるということが伝えてあるときに、今お触れになりませんでしたけれども、たしかアメリカのべーカー国務長官の発言であったと思いますが、日本から八十億ドル・プラスアルファのものが来ることを期待をしておる、こういう意味の発言があったと私は記憶しておりまして、いろいろな発言もありますが、日本としてはとにかく、アメリカのどなたがどうおっしゃろうとも、こちらは九十億ドルを国会で議決願ったら、GCCを通じて平和回復活動に協力として拠出をする、大宗はアメリカの使用することになるであろうけれども、それはここで決めるべきことでもないし、湾岸協力基金が最終的に決めることになります、これを繰り返し繰り返し御答弁しておるわけでございます。
  60. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなたはそう言っても私どもはそうすぐ納得できないんです。これはさっきから言っているとおり、物が今までの物と違って、これははっきりとしたアメリカ予算書なんです。その中にはっきりと出ている。しかも九十億ドルというものが今初めてじゃない。今あなたが言ったように十億ドルに十億ドル足して二十億ドル、それがアメリカにGCCを通して全部行ってない。そのことも、アメリカは現実にもらっているのですから、もう承知の上だ。そうすると、GCCを通ってくれば、九十億ドルが歩どまりであれば、GCCを経由すればみんな来ないということはアメリカはわかっている。それを執拗に九十億ドル来ると言って向こうは出して、最後には予算書にまではっきりと計上している。予算書は権威のあるものですよ、これは。日本予算書だってそうでしょう。権威のあるものなんです。それの中にはっきりと書いてあるんです。それを、なおかつこれは九十億ドル行かないと。そうすれば、日本アメリカというのはもうあなた方は本当のパートナーだ、アメリカは大切だ、向こうもそう言っている、その中でこんなおかしいことはないじゃないですか。なぜその権威のある予算書に九十億ドル来るとつくって、しかも、前例があってみんな行かないことを知っているならば、アメリカがこういうことをやるはずはない。ここのところに合点のいかないところがあるんです。あなたは何ぼやっても、ただこっちはこっちで勝手に決めている、向こうは向こうで勝手に計上している。それだけでは話は進まないんですよ、これは。
  61. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アメリカの内部のことについて、余り固有名詞を挙げてとやかく言うのはいかがなものかと思って控えておりましたが、そこまでおっしゃいますからこちらも違う発言を言わせていただきますが、アメリカ国会の下院外交委員会で二月の六日、ベーカー国務長官は、日本のコミットは八十億ドルを超えるもの、こういうことをアメリカの下院の外交委員会で発言をしておりますし、また、ブレイディ財務長官は二月の七日の下院の今度は予算委員会の場で、九十億ドルの一部は英国及びフランス向けとなるであろうということも発言をしておるわけでありまして、アメリカ日本のそういった物の考え方や、きょうまで同様湾岸平和基金を通じて行くときには九十億ドルがすべて米国向けとなっていないんだということについて、国務長官と財務長官の下院の委員会における明確な発言があるということもここで申し添えさせていただくことは、私がここで申し上げておりますことはこれは日本の国会で日本立場を申し上げておることであり、それとアメリカの国会で述べられておることと必ずしもそれを打ち合わせてやっておるわけじゃありませんけれども、そういうふうに両方でそれぞれの受けとめ方をめぐって、拠出者の日本の意向がこの際は尊重されるべきではないかということを私はここでもう一回申し上げさしていただきたいと思います。
  62. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなた、今ブレイディ財務長官がそういうことを言ったと言うけれども、ここに出てきているこれもブレイディ財務長官なんですよ。だから、それはわからないはずはないんですよ。あなた方は実際にこの補正予算案というものを、アメリカ補正予算案というものを調べればすぐわかるじゃないですか、提出されているのですから、九十億ドルが入っているのか入っていないのか。それは何か外務省から電話でも何でもいいから聞き合わせればわかるじゃないですか。いいですか、それほど、ベーカー長官もそれからブレイディ財務長官も、九十億ドルじゃなくて八十何億ドルだ、こういうことだと発言しているのに、なぜそれじゃこの一番新しいところの補正予算案の中に九十億ドルというのが入ってくるのですか。あなたが、その外交委員会やら何やらでベーカー国務長官やブレイディ財務長官がそう言った、そう言うのならば、これに出てくるはずはないじゃないですか、本人はわかっているのに。おかしいじゃないですか。言っておるならば出てくるはずはない。
  63. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生にぜひ御説明させていただきたいと思いますのは、今回の補正予算の主目的は、あくまでもアメリカ自身の砂漠の盾、あらし作戦に関する経費、これは百五十億ドルでございますけれども、この予算権限を大統領として議会に求めるということでございまして、その関連でそのための運営基金口座を設けるということが今回の大統領が議会に出しました補正予算の主目的でございまして、その関連で参考資料の中に、先ほど来先生が引用しておられます各国の貢献額というのが言及してございますけれども、先生がおっしゃっていますように補正予算そのものに日本の貢献額を計上したのではなくて、補正予算そのものは、繰り返しですけれども、この百五十億ドルというアメリカ政府自身予算でございまして、その参考資料の中にこの各国からの貢献額として五百三十五億ドルというのを掲げておりまして、その中に日本のが入っております。  先生がいろいろおっしゃっていますので、ちょっと念のため申し上げますけれども、このテーブル三というのがまさに九一年度、一月から三月の末まででございますけれども、このところには日本の九十億ドルというのはきちんと、まさに今日本の国会で議論しておりますこれは、全額アメリカ向けというのはこの中には明示してございません。
  64. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 参考資料としてただ単に出していると言うけれども、はっきりとした補正予算という一つの権威のあるものに対するきちっとした裏づけなんですよ。そんなでたらめなものを出してくるはずはないのです。日本予算書だってそうでしょう。大蔵省が予算をつくって、それに次から次へと出てくる参考資料、こういうものが中がでたらめじゃ、これはもう審議のしようがない。まして、きちょうめんなアメリカがそんなでたらめなものを出してくるはずはないと思うのですね。だから、それはやはり補正予算全体としての一つの資料であり、確実な数字でなければいけないのです。これはおかしいじゃないですか。きちっと補正予算の、参考資料でもいいですよ、権威のあるものの資料として出ている。資料なら資料でもいいのですよ。出ているのです。私は、出すとか出さないとかを別にしているのですよ。こんな大きな金額が、日本で言うこととそれをもらうアメリカの言うことと全然食い違って、それがあなた方が何回も否定するにもかかわらずまた出てくる、否定するとまた出てくる、国民に不信を招かないか、こう言っているのですよ。もう一遍。そう思いませんか。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そう思いませんかとおっしゃいますが、私はそう思ってないから何回も同じことを繰り返しておって大変申しわけありませんけれども日本としては総合的に判断して、九十億ドルは日本の応分の支援として拠出しよう、こう政府が決めて、今、国会の御意思を問うておるところであります。同時に、それが可決されるなれば、湾岸平和協力基金の方へこれまで二十億ドル拠出したと同じような方法で拠出をします、こう決めておるわけであります。  それで、アメリカ側のことについていろいろおっしゃいますが、アメリカの国務長官アメリカの財務長官もいろいろな意見は述べておりますけれども、それは今北米局長が答弁しましたように、これは参考資料の中に言及されているだけで、我が国の九十億ドルが米国の予算に直接に計上されているわけではないというのであります。  それからまた、米国の予算書にどう書いてあるかについて日本の国会で云々するのは、これはいささかいかがなものでしょうか。他国の審議を始めた予算の中にどうのこうのということをここで私が申し上げることは差し控えて、我が方としては九十億ドルをこのような方法で出すのですと日本政府決定した立場を、これは何回も申し上げ続けてまいりましたが、変更する気持ちはございません。
  66. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は、出すなとか出せとか、そう言っているのじゃないのですよ。この食い違いがあるから、それをはっきりさせるべきじゃないか、こう言っているのです。  いつまでもやってもだめですから、もしできるならば、この補正予算の出ているところの資料として、アメリカのこの補正予算、今度出された補正予算の資料をとれるものならひとつとっていただきたいと思いますが、どうですか。
  67. 渡部恒三

    渡部委員長 松浦北米局長。わかりやすく説明してください。
  68. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今回の大統領がアメリカの議会に送りましたこの補正予算案の最大の目的は、アメリカが多国籍軍の一員として今現在展開しております砂漠の盾、あらし作戦にかかわる経費につきまして、運営基金の口座を設けることでございまして、その運営基金の口座にアメリカ政府として百五十億ドルの予算を払い込みたい、そういう権限を大統領に与えてほしいということが主目的でございます。その関連で、各国から受け取ります貢献額が、これは従来からも御指摘ございますけれども、財務省の防衛協力基金に入りますから、それをまた、その資金を移転するということも入っておりますが、主目的はアメリカの百五十億ドルの予算権限でございます。その関連で、この補正予算案の参考資料の中に各国からの貢献額が表になっておりまして、全体として五百三十五億ドル、これは九〇年度と九一年度と合わせてでございますけれども、その中で九一年度に関しましては日本からの九十億ドルというのが書いてございますが、これはまさに日本の国会で現在審議中ということで明記してございまして、これは全体の表にはアメリカ向けというのは書いてございますけれども、九一年度に関しましては、アメリカ向けと明示はしてございません。  いずれにいたしましても、先ほど来総理が御答弁申し上げておりますように、日本側の基本的な考えは累次アメリカに伝えておりまして、アメリカ側も承知しております。
  69. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなた方、その資料を持っているんですね。今北米局長が詳しく説明した。説明するには、資料を持っているのでしょう。その資料をひとつ出してくれませんか。
  70. 渡部恒三

  71. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いや、答えてください。
  72. 渡部恒三

    渡部委員長 それはまだ委員長に求めていない。
  73. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今申し上げましたが、詳しく北米局長から説明がありました。そうすると、詳しく説明するからには、アメリカ補正予算案に対する参考資料、ついてきた参考資料、そういうものを持っていると思いますが、それをひとつ委員会に提出していただきたい。
  74. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議いたします。  佐藤君、質問を続行ください。
  75. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それでは、その参考資料をひとつ早急に出していただきたいと存じます。  政府は、今度の九十億ドルについて、これは戦費でないと言っています。いつまでも、平和協力の金であって戦費ではない、こう言っておりますけれども、これは戦費でないと今でもお思いですか。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議に基づいて国際の平和を回復しなければならないという多国籍軍武力行使が行われておりますが、日本政府は、国連の適切な支援を求めるという要請に基づいて平和回復活動を支援するため、所要経費の一部を協力をしている、このように受けとめております。
  77. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなたはこの前に、これは戦争ではない、こういうふうに言っておりましたけれども、今でもこれは戦争ではない、こう思っていますか。
  78. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戦争というものをどちらの角度からとらえられておるのか、私は、従来の戦争、いわゆる国権の発動として、宣戦布告をして国と国とが争う武力行使、こういったものが従来の概念の戦争であったと思います。そうして国連でたび重なる決議があって、国連が、平和の破壊者がここにいる、これを排除しなければならないという決議をしたわけでありますから、国連決議に基づく平和回復のための武力行使である、私はこのように考えて、そのように申し上げております。
  79. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 武力行使して、けれども戦争でない、こういうのは程度の問題もあるかもしれない、程度問題だと思います。そこいらでこちょこちょっとやっているのは、武力行使してもあるいは戦争でないかもしれませんけれども、例えば日本の、満州事変だシナ事変だと言って、事変事変と言って戦争でないと言っておきながら最後にああいうふうな戦争になって敗退するというようなことになっておるわけで、今この湾岸、あなた方に聞けば湾岸危機だと言う。湾岸戦争でさっきも言ったとおり、延べ十万機という膨大な攻撃が行われ、それに対して反撃が行われている、これが実質的に戦争でない、こう言うことはちょっと普通の考え方ではできないと思うんですが、これは明らかに戦争だと思いますが、これは実態から見てあなたはやはり戦争でない、こういうふうに思いますか。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、実態として武力行使である、こう思っております。そして、へ理屈を言うわけじゃありませんが、戦争という言葉の極めて厳しい定義とか概念とか使われ方、例えば冷たい戦争とか経済戦争とかいろいろ社会で使われてきたこともありましたし、また、従来、戦争というのは一国と一国が宣戦布告をしながら一国と一国の利害に基づいて相争うものを我々の頭では戦争と受けとめてきました。それが、冷戦時代に入ってから、米ソの巨大な力があったから、力の均衡のもとで恐怖の平和、恐怖の均衡というものもありました。あのころから私は、世界はもう二度とこういった戦争はないであろうと強く期待をしておったんです。したがいまして、今度のことは極めて残念なことでありますけれども武力による侵略、併合があったわけでありますから、私は、この地域の平和を回復するための国連決議に基づいた武力行使である、やはりこう思います。
  81. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 だけれども、あなたはそういって戦争でない戦争でないと言っているけれども、そうでもないんですよ。ほとんどの出てくる言葉は、湾岸危機と言っていないで湾岸戦争と言っているんですね。ほとんど全部です。私はいろんなあれを調べてみました。これは全部湾岸戦争と言っているんですよ。テレビでも湾岸戦争と、NHKでも湾岸戦争と言っていますし、今鳩山委員が、今聞いておりましたが、今度の湾岸戦争とはっきり言っているんです。鳩山委員がそう言いました、私はここへメモしておきましたけれども。みんな湾岸戦争とはっきりと言っているんです。そうすれば、普通の常識からいってこれは戦争だということはもうだれも否定できない、湾岸戦争である、こういうふうに思うんです。  私は、今あなたが言った、一つの国が他国を侵略した、それを抑えるから、抑えるためのあれだから平和回復のあれであって戦争でない、こういうふうに言いました。しかし、ほとんどの戦争は同じような格好でできているんですよ。日本が満州を侵略した、中国を侵略した、これでもって戦争になっているんです。フセインと同じような独裁的な性格を持ったあのヒトラーがポーランドかどこかへ侵入した、それをみんなたたくために第二次世界大戦が起こった。これはもう当然の事実で、みんな知っている事実です。これを戦争でないと言うならば、同じような状態ですよ。これを戦争でないと言うならば、第二次世界大戦というのは戦争じゃない、第二次世界大危機になる。明らかに戦争なんです。そう思いませんか。
  82. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現象面だけを形式的に見ると、やはり弾の撃ち合いとか戦車が動くということ、そのことだけをとらえれば、おっしゃったように日露戦争とも太平洋戦争とも同じような現象面ですが、国連決議があるという内容が質的に全く違ったものであるとともに、戦後初めて国連の平和機能が安全保障理事会の決議で、イデオロギーを超えて対立しておった二大陣営の巨頭同士も入っているところで決議をされて、国際社会の大義としてこの侵略は戻さなければならぬ、無条件完全に撤退しろという決議から始まった武力行使でありますから、私はこの移り変わる世界情勢とともに質が変わってきた、国際社会の総意がそこに入ってきたというふうに見ますと、やはり武力行使と私は受けとめて、そのように言い続けてまいりました。
  83. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 武力行使しても戦争にならない、こう言いますけれども、例えばベトナムの戦争、あれもやはり宣戦布告なき戦争、ああいうことがずっと出ているじゃないですか。例えば朝鮮戦争などでもそれは一方の侵略から起こった。それを何とか防ごうというのが戦争であって、いきなり両方が犬のけんかみたいにばあっといくケースだけとは限らぬのですね。私はそう思います。明らかにこれは内容ははっきりとした戦争である、こう思っております。お互いの、両方の利害が対立して、そこでぶつかり合って武力行使しているのですから、これは戦争に違いない、こう思っているのです。あなた方がこれを戦費だとこう言わないで、全部平和協力だ平和協力だとこう言っている一つの理由としてあるのは、これを戦争だと言うと、出した金が戦費になってしまう。そうすると日本の憲法に触れるんじゃないか、そういう懸念があるからどうしてもこれを戦争だと言わない。したがって、出している金は戦費でない、こういう理由をどこまでもやろうとしてこういうことを言っているのではございませんか。
  84. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は何回も思ったとおりのことを申し上げますが、これは、平和の破壊者に対して平和回復をするために国際社会がその大義として侵略は許さない。日本立場からいっても平和の中で初めてここまで豊かに質の高い生活が享受できるようになったのですから、武力侵略は認めないという基本的な立場をとっております。したがって、国連決議の趣旨にも全面的に賛成であります。ただ日本は力でお役に立ちましょうと言って出ていくことができない。したがって、その平和回復活動というものが一刻も早く終了するように適切なできる限りの支援をしようとしておるわけでありますから、あくまで今回行われておるのは、平和回復を目指す国連決議に基づいた平和回復のための武力行使である、日本はそれに対して一日も早くそれが終了するようにできる限りの支援を行っていく、この基本的立場には変わりございません。
  85. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 何と言うか、いろいろなところにそれがあらわれているのですね。今、湾岸戦争と絶対言わない。あなた方の立っているのは何ですか、これは。湾岸危機対策本部となっているのですね。しかし、自民党の方々も湾岸危機対策なんて言ってない。もう湾岸戦争だ湾岸戦争だと。今、鳩山さんの例で言ってもわかるように、みんな湾岸戦争だ湾岸戦争だと言っている。実質的に戦争だ。しかし、これをあなた方が戦争と認めると、これはこのまま出す金が戦費になって憲法違反の疑いがある、懸念が出てくる。だから、これを絶対に戦費だと言わせないために戦争でない、こう頑張っているとしか私は思われない。  その一つの例として、例えばあなたがさっきから言っているGCCを通じて金をやるという。しかし、この金は単にGCCを通過するだけで、もういきなりアメリカの国防協力基金ですか、あの中に入っているのですね。いきなり入っている。これはまさに目玉のあれとして入っているのですから、まさにこれは戦費である。しかし、GCCというものを通すためにこれは戦費でないと強弁しているわけですけれども、向こうへ行けば皆全部同じような戦費になると私は思っております。現にドイツなんかが出せば、いきなりアメリカに直接出している。それと同じ金を日本はただGCCというフィルターを通して、私はフィルターにもならぬと思っていますが、日本の大使とGCCの事務局長とたった二人いて、そこをどうしてどういうふうな形で通っていくのかわかりませんが、フィルターにもならないと思っていますが、要するに戦費でないということの証明のためにGCCを通しているだけで、事実は直接に国防協力会議の基金に入っている、こういうことなんですね。このことからもわかるように、これは明らかに私は戦費だと思う。しかし、戦費をごまかすためにGCCを利用している。  もう一つ私はあると思うのですよ。この前ここでも、委員会でも問題になりましたけれどもアメリカのブレイディ財務長官アメリカの下院で証言した。日本の多国籍軍への追加支援に関して米国が九十億ドルを要請し、日本がこれに応じた。G7のとき、橋本さんとブレイディ長官とで決めた。こういうふうに証言した。これに対して橋本さんは、そんなことはない、こう言っております。そのときのその発言の中に、新聞によりますと、こういうふうに橋本さんは言っているのですね。橋本蔵相は、ブレイディ証言が金額は一月の日米蔵相会談で事実上決定されたとしている点について、「数字はその時点で確定していなかった。米国は湾岸情勢の推移の中でどれくらいの費用がかかるかの積算を持っていなかった」、積算を持っていないからそのとき決まるはずがない、こういうふうに語ったと言っているのですね。そういうふうに言っているのです。  私は、そのとおりかもしれないけれども、これはやはり九十億ドルにあなた方は積算の基礎はない、つかみ金だ、こう言っているけれども、明らかに、これを見ますと積算の基礎があると私は考えます。例えば、なぜそのとき決まらなかったかというその証拠に、そのときはアメリカではまだ積算を持っていなかった、持っていなかったから決まらなかった。そうすると、後になってきますと、九十億ドルというものをアメリカが積算をして、それを見きわめた上で九十億ドルというものが決まった、こういうふうに考えられる。それがつかみ金であるかないかは別にして、アメリガの積算を見てそして決まった、だから何かしらそこに積算の基礎があるに違いない、私はこう思っております。しかし、積算の基礎があると言えば、この積算の中にあらわれてくるものはアメリカ戦争経費、戦費であります。したがって、その戦費を基礎にしてその上に九十億ドルを決めたということになれば、これは明らかに戦費になるので、積算の基礎はない、周囲を総合的に考えて出したつかみ金である、こういう漠然としたことしか言わないのです。なぜそういうふうに──増税をして、しかも一兆何千億という金を出す、それが漠然とした単なるつかみ金だということは国民としてはこれは非常に残念なことである。しかも、なおかつそれを乗り越えてこれは積算の基礎がないつかみ金であるとあなた方が言わなければいけないか。この一つの理由として、積算の基礎がはっきりすれば、その積算はアメリカの戦費をもとに積算したものであるから戦費になるからこれを言われない、こういうのが一つの根拠になっているのではないか。簡単に言うと、さっきから言っている、戦争と言わないのも戦費と言いたくないからだ、積算の根拠を出さないのも戦費と言いたくないからだ、GCC、湾岸協力基金を通ずるのも戦費でないという証拠にしたいからだ、いわば戦費でない、こういうことを言いたいからあなた方はこうして戦費でない戦費でない、こう言っているのではないですか。
  86. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 前回申し上げました答弁を引用されましたが、私は確かにG7の直前、一月二十日にブレイディ財務長官と会談をいたしました。そして、その際、湾岸危機についての支援における日本の重要性について、協力の重要性について発言がありましたことも、また、日本としても国際社会における日本の地位にふさわしい協力をする用意があるという意思を表明したことも申し上げております。同時に、繰り返し申し上げてまいりましたけれども、その当時アメリカが数字の具体的なものを示し得る状況になかったことも、委員御承知のとおりであります。議会予算局が出しました試算にいたしましても、相当な幅を持っておる数字が公表されておりました。  そして帰国後、私は、自分の得てきた感触を総理に御報告をし、政府・与党首脳会議で意見交換を行い、総理が最終的に九十億ドルというものを決断をされました。その九十億ドルというものについて総理が決断をされました理由、委員は今つかみ金と言われましたけれども日本中東における経済的なウエートあるいはその他の数字を挙げながら、繰り返し総理はその旨、その決断に至った理由というものを述べておられます。  委員が御納得がいただけるかどうかわかりませんけれども、事実問題は事実問題でありまして、私は、今申し上げたとおりのことをこの前も御答弁を申し上げたところであります。
  87. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あなた方のような頭のいい人が何の根拠もなしに九十億なんという膨大な金を出すはずはない。根拠があると私は思います。その一つの証拠としてこれを今申し上げたのです。積算の根拠がないから九十億ドルだか何ぼだかその数字は決められなかった、その裏を返せば、積算の根拠があったから九十億ドルが決まった、こうしか言えないと思うのです。まあそれをいつまでも議論していてもあれですけれども、いつまでもそういうことを議論していてもなんですから、ここでやめます。  しかし、私はこの際総理お願いしておきたいと思うのです。  今申し上げました、これは戦争でないあるいはこれは戦費でない、九十億ドルはつかみ金だ、何も根拠がないんだ、いろいろなことを言っております。しかし、これは私は、かなりこの中には、ごまかしとは言わないけれども、はっきりしない点が、非常に疑わしい点があると思います。今申し述べたとおりであります。あなた方と私どもの主張が違う、このところが一つの疑問点になっておるわけですけれども、私はあなた方の気持ちはわからないでもないんです。これは明らかにだれが見たって戦費なんです。公式の場で言うと戦費でないと言うけれども、自民党の皆さんと私、お話しすると、あれは戦費だなんて言っているんですね。だから、だれも腹の中ではみんなこれは戦費だと思っているんです。これはもうそれでいいと思いますよ。  ただ、私は、あなたは戦費を九十億ドルなり何ぼなり負担するとアメリカと約束してきた、これは公約だ、ある程度そうだろうと思うんです。ごまかさないで、本当のことをどんどんどんどんはっきり言って、そして本当にかみ合った議論をここでやればもっと本当の盛り上がったいい議論ができて、国民は納得するんじゃないか。あなた方は、私どもが一生懸命になっても絶対に本当のことを言わないで、いつもすれ違いになって、空虚な議論が積み重なっている、このところをもう少し何とか踏み越えて、そうしてあなた方はどんどん本当の資料を出し、本当のことをどんどん言って、そして私どもの言うこととあなた方の言うことがいいのか悪いのか国民によく聞いてもらって、そうしてここで結論を出して、国民的な合意のもとにいろいろなことをやるようにした方がいいのではないか。さっきから言いました、GCCというものは何の形も持たない、ろ過装置にもならないような、これを通してやったってごまかしにすぎないのです。あるいはまた、これを戦費でないと言ったってやはり戦費だとみんな思っている。それを、ここで今やったように何十分も延々として議論しても何にもならない。何で本当のことを言って私どもとかみ合った議論をして国民に聞いてもらうことができないのか。どうも私どもはそこいらのところに非常にもどかしさを感じるのです。  本当の資料を出し、本当のことを言えば共通の土俵ができる。その土俵の上で本当の相撲をとることがいいじゃないですか。あなた方が強いから、負けますよ、私どもは。そこで勝つんだから、本当のことを出したらいいじゃないですか、何でそう一々ごまかさなければいけないような、まあごまかしと言ってはあなた方に怒られるかもしれないけれども、ごまかしのようなことをやるんですかね。幾ら説明しても、すとんと私どもの胸に、国民の胸に落ちてこない。ここのところが大変残念だと私は思っておるわけでありまして、どうかひとつこれからのいろいろな議論には、まああなた方はこれは本当だと言うかもしれませんけれども、それでもやはりなかなか信じ切れないところにいろいろな問題があるので、どうかひとつそういう態度でこれからの議論に臨んでいただきたい、こういうふうにお願いいたしたいと存じます。いかがですか。
  88. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 本当のことを何回も申し上げておるんですが、それは佐藤議員のお考えになっておる考えと私の答弁が違うものですから、そのすれ違いに対する委員の御不満もあろうかと思いますが、私も、では本当のことを言わせていただきますが、先ほど議員も正直に、社会党が出された具体的提案の計数百億ドルというところで、見通しが不明なので、この金額も一つのまあ見積もりではあるがというようなことを正直におっしゃいました。私も、きょうまで正直に本当のことを言ってきたつもりで、これは積算の根拠はこうこうですということは見通しが立たない、同時にまた、アメリカのいろいろな試算を見ても、あるいは日本立場からいっても、それは見通しが立ちませんから、つかみ金だと言ったことは一度もありませんが、総合的に判断して、我が国立場にふさわしいものとして九十億ドルを決めたんです、こう申し上げておりまして、これは本当のことでございます。それ以外に、何も包み隠しておることはございません。そして、これを湾岸平和協力基金へ出すというのも、これも本当のことでございます。ほかへ出して、そしていろんなことをしようなんということを思っておるわけでも決してございません。  そういった意味で、それについて一日も早く湾岸の平和回復活動が実を結んで、恒久の平和が訪れてくるきっかけが生まれるようにと、このことを願っての協力をする、日本の応分の協力、そして多くの国が、多国籍軍が自国の犠牲まで顧みずに、厳しい経済状況を乗り越えて協力しておるというあの決断とあの姿を見ますと、一刻も早くこれはやめさせなければならぬという強い願いもありますから、積極的に日本で許される限りの、力ではないけれども、お金を出すことによって少しでもこれは平和回復が早く来るように応分の支出を決めたということでございます。御理解をいただきたいと思います。
  89. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 よくわかりましたから、これからもひとつお互いに本音でもっていろいろな議論をするようにいたしたいと存じます。  それから、これは総理からもこの間ちょっとお話、総理だったか橋本さんからお話があったんですが、九十億ドル、この金が、今戦争がもうどうも早期に終結しそうなんですが、これが早期に終息して余ってくると、これは日本に返ってくるんですか。
  90. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは総理からも御答弁をされたことがあると思いますし、私も同様のことを申し上げましたが、例えばドイツがアメリカに対して拠出しております五十五億ドル、あるいはイギリスに対して拠出をしております五億四千万ドルと、日本が湾岸平和基金に拠出をいたします九十億ドルとは性質が異なると思います。あくまでも湾岸の平和と安定の回復のために拠出する費用でありますから、今クウェートの領域内からイラクを排除するために行われております行動が停止をいたしたということでそれが不要になる性格のものではないと思います。
  91. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 もうちょっと教えていただけませんか。ドイツの五十五億ドルと日本の九十億ドルとは性格が違うと言いましたね。どういうふうに違うか、もうちょっと教えてくれませんか。
  92. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ドイツはアメリカに対してまさに戦闘の費用としての五十五億ドル、イギリスに対して五億四千万ドルを直接二国間の関係において供与をいたしております。同時に、トルコまで戦闘機を中心とした部隊も送っております。日本はあくまでも、先ほど来総理が御答弁になっておりますとおり、湾岸平和基金に対してこれを拠出いたします。そしてその後に交換公文に基づき各国に対する配分が決められていく、そしてそれは相手国から出てきた申請を受けて支出されていく性格のものだと私は理解をいたしております。これはまさに平和と安定の回復のために支出する費用でありますから、今クゥェート領域内からイラクを排除するための行動が停止をいたしましたとしても、その後に安定の回復のためには、先般来も御論議がありましたように、また、先刻委員から社会党としてのお考えを御説明いただきましたように、多額のコストを必要とするであろうと思います。そうした状態になれば、当然平和回復後の安定のための費用として使用されていくであろう、私は今そのように思います。また、そういう使われ方になる日が一分一秒でも早いことを願っております。
  93. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今、ドイツの五十五億ドルと日本の九十億ドルの違いをお聞きしました。違っているところはたった一点であります。ドイツは直接アメリカの国防基金に行くし、日本はGCCを通っていく、それだけの違いですね。目的はもうほとんど同じです。同じなんです。そしてドイツのやつは明らかに戦闘費用として使われる。戦費なんです。日本のやつもGCCを通っていっても同じところに入ってしまう。これは明らかに戦費なんですね。だから私さっきから言っているのす。戦費なのになぜ戦費と言わないか、こう言っているのです。今の大蔵大臣の説明で、明らかに戦費なんです。これを戦費でないと強弁せんがためにGCCを通っていっている。利用しているだけの話なんです。明らかに戦費じゃございませんか。
  94. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 日本は、本日までも繰り返し申し上げてまいりましたように、湾岸における平和と安定の回復のために拠出をいたしております。そして、クウェートという小国に対しイラクという大国が昨年八月二日に突如侵略開始し、そのまま占領状態を継続し、国連のたび重なる決議によりましても立ち退く意思を示さなかったために、今多国籍軍によって実力で排除するという行動がとられておるわけであります。日本は湾岸の平和と安定の回復のために湾岸平和基金にこの基金を拠出をいたしております。
  95. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ますますおかしいですね。そうするとあれですか、ドイツの五十五億ドルというのは湾岸の平和のための金じゃないんですね、あなたから言わせると。
  96. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはドイツ政府がどのように理解をし、どのようにドイツ国民に説明をしておられるか、そこまで私が詳細に存じておるわけではございません。しかし、アメリカのまさに財務省の口座に直接に振り込まれている経費であります。
  97. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 日本の金は同じところへ振り込まれて、こっちは湾岸平和のための金だし、ドイツのは向こうへ入って戦闘用の金だというのは、ちょっと西ドイツを、おまえら戦争好きだな、こういうような指摘をしておるようなもので、これは大変失礼な話だと私は思いますよ。目的はどっちだって同じなんです、同じところへ入って同じ人が使うのですから。これはちょっとうまくないのじゃないかな、こういう気がしますけれども、今のお話でわかったように、日本の九十億ドルもドイツの五十五億ドルも同じところへ入って同じように使われるから、日本のあれが湾岸平和のあれならば、ドイツのあれもやはり湾岸平和のために使われる金なんですよ。私はそれでいいと思いますよ。あなたが言うように、ドイツの金は戦闘用の金だし、こっちは平和の金だ、こういう理屈はこれは本当にへ理屈というものだと私は思います。  そうするとあれですか、これは結局はもう戦争が早期に終結して金が余っても返ってこない、こういう金ですね。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 このことはたしか武藤委員からも同じ趣旨の御指摘があって、私は一日も早く武力行使が終わって、平和回復が達成されることを願っておると再三申しました。そこで、じゃ、終わったら余ったお金はどうするのかということでありますから、平和と安定の回復のために拠出したのでありますから、いろいろな面でそちらの方向に使用されるものでありますから、これは返してくれという性質のものではないと、私はそう考えております。
  99. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、この九十億ドルというのは多国籍軍に出したものですか。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸平和協力基金へ提出をして、あの地域平和回復と安定のために使用してもらうための拠出金でございます。
  101. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、この金は湾岸協力基金に残っているわけですね、もし余れば。
  102. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 余るか余らないかを今からここで予断と憶測で断言できません、先ほど委員もおっしゃったように、行き先不透明でありますから。けれども、湾岸平和協力基金に出して、そこの運営委員会を開いて、その都度決定をして使っていくものでございます。
  103. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 余るか余らないかわかりません。その上での話ですけれども、これから戦争が終わって復興事業が始まるわけですね。そうしますと、もしGCCで金が余っていれば、その金をGCCと一緒になって、そして日本も一緒になって、その金を当てにして、それだけじゃ足りないでしょうけれども、その金も当てにして、そして日本の救済復興活動、こういうことはできることになりますか。全く行きっきりで、GCCはGCCで勝手にこれを使う、こっちはこっちで勝手にやるということなんですか。GCCに余っているのを、それも一部日本に取り込んで、日本に返してくれとは言わないけれども一つ日本の、例えば湾岸平和基金とか湾岸復興基金とか、何かそういう基金ができれば、GCCからその基金に振り込むことはできますか。
  104. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和の回復と安定という大きな目標を決めて拠出しておりますから、その中で日本の意向も反映しながら、湾岸の平和協力基金でその使途についてもいろいろの可能性が展開されることになるであろうと、現段階ではそう考えております。
  105. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、戦争が終わってもし金が余っていても、アメリカへは行かないでGCCに残っている、そういうことですね。それを、GCCのその金を、どこで使うかわかりませんよ、一つ湾岸復興基金なら基金というものがもしつくられれば、そういうもののところにGCCから、アメリカへ行かないでGCCからそういう基金に返ってくるということはあり得ることですか。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 予断と憶測でもってここで物を言うのは慎まなきゃならぬことだと思いますが、目的は湾岸の平和回復と安定のために出すものであり、湾岸平和基金においてその使途を、日本の代表の意向を反映しながら決めていく、こういうことになります。
  107. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私どもが言っていることは、そのままGCCから、金が余っても直接アメリカへ行ってしまって、何の足しにもならないじゃないかということを心配しているのですが、今はいろいろな場合が考えられるでしょう。GCCに残った金はそのままアメリカへ行かないで、直接この湾岸を救済するために、復興するための基金として使われることもあり得ると、そういうふうに理解しておきたいと思います。  米国の戦費負担は議会で合意された百五十億どまりで、あとは増税しないと一月二十七日にスヌヌ大統領首席補佐官がABCテレビ放送したということが報道されております。  私は、この間から橋本さんの説明を聞いて、アメリカも増税しているんだ、こういうことだから増税しないことじゃない、こういうような説明をお聞きしておりますけれども、それにしても、先ほどから議論になっております四百五十億ドルの戦費、四百か五百かわかりませんけれども、戦費がもしそれでおさまれば、日本やあるいはクウェート、サウジアラビアさらにドイツ、こういうところから出た金で全部余れば、この百五十億ドルはもう一遍アメリカの国庫に返すのだ、こういうようなことを書いておりますが、そういうあれになっておるのですかね。  もしそうだとすれば、私がお聞きしたいのは、戦争の金を全部外国から出させて、自分の金は運営資金で、これは余れば自分の国庫へ返すんだというふうに聞こえるんですけれども、そういうことなんですか、これは。
  108. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず委員に申し上げたいことは、その予算の数字以前の問題として、現にアメリカの兵士たちは前線において血を流しておる、みずからの命をかけておるということであります。  その上で、今委員の御質問にお答えをいたしますならば、私は、実はアメリカ予算書を全部読んでおるわけではございませんので、細部がどうなっておるかわかりません。ただ、先ほど来の御論議の中で補足して申し上げたいと思っておりましたことは、九十億ドルがアメリカにと常に仰せられますけれども、ブレイディ財務長官自身アメリカ予算委員会におきまして、英仏という国名を挙げ、九十億ドルがすべてアメリカに向けられるものではないということを申しておられる。私はその上で、先ほどから考えておりましたのは、現に御審議中のこの補正予算支出が決まるものでありますから、その配分額が決まるのはまだ先のことであり、いわば枠取りのような形でアメリカは資料に掲載をしたのかなという感じでお話を伺っておりました。  同時に、アメリカは、理由のいかんを問わず昨年、たしか十一月の五日ぐらいであったと思いますけれども、増税案を決定をし、たしか増収努力も含めまして、五年間に千四百六十六億ドルぐらいであったと記憶をいたしております。当初大統領と議会が合意をいたしました千三百三十六億ドルというもの自体が、千三百七十二億ドルぐらいに最終ではふえておりましたでしょうか、そして、その上に増収努力九十数億ドルを加え、たしか千四百六十六億ドルの増税案を決定をし、既にガソリン税等は十二月一日から引き上げられ、その他の項目も一月一日から増税が実施されたと理解をいたしております。  そうした背景の中で、私はこの補正予算に関連するアメリカ政府当局の説明を聞いておりました。
  109. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 アメリカも大変だろうと思います。リセッションの景気の悪いときに戦争が始まって、何百億という金を出すということは大変だからこういうことになるだろうと思いますけれども、どうも釈然としない。戦争をしているアメリカが増税しないで日本が増税しなければいけない、こういうことには少し釈然としないところがあるので、私はお聞きしました。もうこれ以上、これは追及いたしません。  きのうの当委員会における議論を聞いておりまして、大変心配なので再び自衛隊機の問題についてお伺いします。法制局長官にはもう聞きませんから、御安心ください。  この間の二十二日の衆議院の当予算委員会でもって、難民救済輸送のために湾岸への自衛隊機派遣について、防衛庁長官ですか、停戦になっても国際的な要請にこたえて貢献していこうという態勢、備えを引き続き維持していかなければならないと述べた、こういうふうに言っていますけれども、これは本当ですか。
  110. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の自衛隊機による避難民の輸送と申しますのは、昨年の八月二日のイラククウェート侵略に始まり今日に至る湾岸の危機、こういった状態の中から避難民が出てくる、そうしてそれに対してはIOM等の国際機関が中心になって対応するわけでございますが、そういった国際機関から日本に対して、この避難民の輸送の面で貢献してくれ、協力してくれという、こういった要請がある場合に、我が国としてどうするかということでございます。そうしてその場合も当然日本の民間航空会社で対応すればそれでよろしいわけでございますが、そういった日本の航空会社が活用できないような状態になった場合に自衛隊の輸送機が輸送を行う、こういう仕組みになっているのは委員御承知のとおりでございます。  そうして、けさども議論ございましたけれども、仮に停戦と申しましょうか、武力行使武力の衝突が終えんいたしましたとしましても、あの地域での生活の基盤は相当荒廃していることが予想される、そういった中で避難民が発生するという可能性はあるんじゃないかということが言われておるわけでございます。そういうことになりますと、私どもといたしましては、武力行使が終わったから直ちに避難民輸送というニーズがなくなるとは申せませんので、依然として、そういう国際機関からの要請がある場合に備えてそういった態勢は維持していかなくてはならないのではないか、このように考えておるところでございます。
  111. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この前もいろいろな議論をこの問題で随分やってまいりました。あなたの理論に対して私もいろいろ反発してまいりました。安全なところへしかやらない、安全なところへしかやらなければ自衛隊機というものの価値は、行く必要はないんですよ。自衛隊機というのはたった九十人しか乗れない。乗員から何からして荷物をあれすれば六十人か何ぼしか乗れないんです。民間機をやれば何百人も乗れるんですよ。しかも、危険なところには自衛隊機をやらないと言う。安全なところになったら、自衛隊機じゃなくて民間の方がずっと効率がいい。またまた地上戦になったから、今度はまた難民が出てくればまた出番が来ると思っているかもしれませんけれども、危険な間は行かれないんです。危険な間は行かれない自衛隊機をなぜこうして飛ばそうといって固執して、またまた停戦になっても飛ばすんだといってこうして頑張っている。そこのところが納得できないんですね。本当の意味は、日の丸をつけて中東の砂漠の上を飛ばして、日本も働いているんだ、難民救済よりもそっちの方が主になっているから、あなた方はどうしても日の丸をつけた軍用機を飛ばさなければだめだ、そう言っているようなものだと私はこの間から指摘しておりますけれども、もうそういう時代は過ぎてしまった。戦争はもう二、三日で私は終わると思います。イラクはもう全面降伏みたいなものですよ。それにまたまた自衛隊機を飛ばさなきゃいかぬ、こういうのは、本当に私は、難民救済が目的でなくて自衛隊機を飛ばすのが目的だ、こういうふうにしか思われませんが、いかがです。
  112. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  私どもは、今回の措置というのは、あくまで避難民の輸送という人道的な見地から考えているわけでございますし、委員もとっくに御承知のとおり、国際機関からの要請があって初めて我々の方の手続が始まるわけでございますので、決して何が何でも自衛隊の飛行機を持っていきたい、こう考えているわけじゃございません。自衛隊には、我が国の安全保障をしっかりと守っていくといった大切な任務があるわけでございますので。  それからもう一点、危険なところへは飛ばさないという話でございますが、これはやはり危険にもいろいろな度合いがあるわけでございまして、本当に避難民の輸送の任務そのものがおかしくなるようなそういった状態の中では、これは飛ばさないのは当然でございます。しかしながら、いろいろな状況の中で民間機は運航できないけれども自衛隊機ならばという、そういった状態もあるんだと思います。  それからさらに、危険の度合いだけじゃございません。これまでも御答弁してまいりましたけれども、民間機の活用により対応できない場合というのはいろいろな格好があると思うんでございますね。危険の問題もございますけれども、例えば、民間会社は、そのお気持ちがございましても機材のやりくりがつかないなんということもあると思います。あるいは、営利会社でございますから、当然経済的な観点の配慮も働くのでございましょう。そういったいろいろな要因、そういったものを踏まえながら、民間機で対応できないような状態になったときに必要に応じて私どもは考えていくということでございます。
  113. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今言ったことは本当に的外れだと思うんですよ。営利会社だから、金がないから出ないかもしれない。金を出してやればいいじゃないですか、あなた。避難民をあれするために自衛隊機を飛ばす、自衛隊機を飛ばすには大変な金がかかる、その金を民間機へ出してやればいいじゃないですか。金がないなんということは理由にもならぬ。それから、全然武器を持たないで飛ばすという。武器を持たないで飛ばせば民間機と全く同じですよ。そんなことは理由にならないですよ。  これは大体、そうすると、この間もちよっと私は聞きそびれていましたが、この政令というものはなくなるんですか、戦争が終われば。
  114. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  まず最初に、経済的と申しましたのはいろいろございます。先ほどその経済的と申します前に私、機材のやりくりということを申しました。例えば、今こういった状況の中で世界的に航空需要は非常に落ち込んでおりますけれども、今後事態の展開によっては、そういったものが非常に復活してくるということもあり得るだろう。そうすると、民間の航空会社としては、そういった本来の事業でございますね、そちらの方の需要に対応するためにも機材を回さなくちゃいけない、こういうこともございましょう。経済的というのはそういうことも含めての意味でございます。  それから、二つ目の武器も持たないでというお話がございました。この点についてはあれこれ申しませんけれども、これまでの御答弁でも、要するに安全を確保するためにいろいろ考えていく、それは具体的なケースで考えていくんだ、こういうことを申しておるところでございます。  それから、三つ目に政令がどうなるかということでございますけれども、これは政令をお読みいただきますとおわかりになりますように、「当分の間」、こういう言葉がございます。「当分の間」でございますね、そうしてまたその輸送の対象を、今回の湾岸危機によって生じた避難民であって国際機関から要請のある者というふうに書いてございます。だから、そういった対象がある場合、そうして輸送のニーズがある場合、そういった間について適用される政令でございますので、そういった対象というものが存在しなくなれば、その段階でこの政令は実際上の効力を失うものである、このように考えておるところでございます。
  115. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、その避難民がいなくなればこの政令はなくなるんですか。消えてなくなるんですか。廃止になるんですか。
  116. 池田行彦

    ○池田国務大臣 避難民がと申しましょうか、この政令に書いてあるようなニーズが、必要性が存在しなくなった場合にはこの政令の効力が失われる、こういうことでございます。
  117. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 政令は、そうするとそのまま文章はあの中に残っていくわけですね、なくならないんですね。
  118. 池田行彦

    ○池田国務大臣 仮にその政令が目的としております必要性が最終的に存在しなくなった場合には、仮に形の上で政令はございましても、実体的にこの政令の効力はなくなる、そういうことでございます。
  119. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それではお伺いしますが、なぜ「当分の間」という字がついているんですか。「当分の間」というのは非常に漠然としているけれども、ある期限を区切っていることなんです。
  120. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほどから御答弁申し上げておりますとおり、文字どおり「当分の間」というのは、今回の湾岸の危機の中で発生してきた避難民を輸送するという必要性の存在する期間でございます。だから、そういう必要性が最終的になくなれば、この政令というものはその効力はなくなる、廃止をするという行為を待つまでもなくその効力が失われる、こういうことを申し上げておるところでございます。
  121. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 効力を失っても文句が残っていればまた生き返ることがあるんですよ。  お聞きしますが、自治大臣、おりますか。──地方自治体が起債を起こす。借金をするために起債を起こす。そのとき、当分の間自治省がその許可権を持っているんですね。認可する許可権のところに「当分の間」という文字がある。知っていますか。
  122. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 承知いたしております。
  123. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 あれが施行されてから今日まで何年になりますか。
  124. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 急に予定外の質問でありますが、二十二年から始まっていますから、四十何年になりますか四、五年になります。
  125. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は長いこと地方行政委員会におりました。この「当分の間」が大変問題になったことがあるんです。そのとき、ある大蔵省の役人さんが来まして、「当分の間」というのは九十九年だと言ったことがあるんです。遼東半島の租借権みたいなことを言うんです。今、見なさい。「当分の間」ですぐやめると言ったのが、もう四十何年も続いているんです。「当分の間」という言葉はまさに当分の間で、さっぱり先のわからないことだ。だから私はこれは、自然に効力を失う、「当分の間」はいつまでだということをいつの日にか決めて、そしてそこでもってこれを廃止すべきだと思う。そうでなければ今までの議論というのは役に立ってこない。「当分の間」というのはいつかをやはり区切って、そこで、なくなったときで政令を廃止すべきだ、こう思います。
  126. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  それは、「当分の間」と規定されておる法令の中で、かなり長期間に存在しているものがある、そうして効力を持っているものがあることは私も承知しております。しかし、それはその対象とする中身いかんによるわけでございまして、今回の政令八号は、委員御承知のとおり、今回の湾岸危機に伴って発生した避難民の輸送という、こういったニーズに対応するものでございますから、これはもうおのずからその期間はそんなに長いものでないということはおわかりいただけると思います。ただ、いつまでと言われますとまだこれから、一日も早く武力行使が終わり、そうして避難民の方も発生しなければそれにこしたことはないわけでございますし、それからまた、それぞれの方が所を得てその生活を営まれる、こういう状態になることが一日も早いことを期待しておるわけでございますから、決して、こうなっているからいつまでもとかそんなことではないというふうに御理解をちょうだいしたいと思います。
  127. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そのお話を信じたいけれども、どうも信じられない。いつの日にかこれをはっきり区切って、きちっとなくすべきだ、こう思います。  五十五分から国民の大変大切な天気予報が始まります。それを食いつぶすわけにはいきませんので、ここで午前中の質問を終わらしていただきます。
  128. 渡部恒三

    渡部委員長 午後二時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ────◇─────     午後二時三十分開議
  129. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤敬治君。
  130. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今度の戦場の、戦争じゃなくて戦場の特色は、石油の上に、石油のために戦争している、こう言われておりますが、もう結果は惨たんたるものでありまして、勝敗にかかわらずクウェートにある約千本の油井が二百本以上も火がついて爆破されて天を焦がしている、こういう状態であります。また、次から次と、タンクが壊されたのか、油の船が爆撃されて壊れたのか、放出したのわかりませんけれども、とにかく大量の油がペルシャ湾に流れ込んで、もうどうにも収拾がつかない、こういう状態になっております。まさに国連の人間環境会議の共通認識である、戦争こそ最大の環境破壊だ、これが如実に今あらわれてきているわけでございまして、戦後復興の大きな問題が、この戦争によって破壊された環境をいかにして回復するか、これが一番大きな問題になるかもしれない、こう考えられるわけであります。これに対しまして、一体我が国はこれに協力していくどういう体制があるのか、それをお伺いいたしたいのですが、どなたに聞けばいいのですかな。
  131. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 お答えさせていただきます。  湾岸地域油井破壊を中心としたあらゆる形における破壊行為その他が行われているけれども、どのように考えていったらいいか。むしろ中長期的な見通しをお尋ねかと私も思いますので、その点についてお答えさせていただきたい、こう思います。  まず、クウェート油井が破壊されているという場合、その破壊の程度にもよりますけれども、復旧には数カ月からあるいは数カ年、こういう程度の期間を要するという懸念があるわけでございます。その間クウェートからの石油輸出に支障が生じる可能性もございます。  当面の石油需要という問題につきましては、産油国からの供給が順調に進んでいることに加えまして、国際的にも確かに高水準の石油在庫がありますから、需給は安定しておりまして、我が国の石抽需給につきましても、これまでのところは産給国からの石油供給の安定に加えまして、かてて加えて一月末から、現在百四十二日分の備蓄というものを擁しているということは既に委員も御案内のとおりでございますが、特段大きな影響は生じないのではないか、このように考えております。  中長期的な石油需要に与える影響につきましては、クウェート石油の主要輸出国でございましたために、国際石油マーケットの需給に一定の影響が発生する可能性はございますが、具体的な影響については各国の石油の需要の推移、他の産油国の生産の状況等による、現時点で一括して、一概にこれだという見通しをすることは多少困難かと思います。  いずれにしましても、内外の石油需給動向を十分に注意しながら、石油の安定供給に万遺漏なきようにしたい、こう考えております。
  132. 中山太郎

    ○中山国務大臣 我が国のこの油の除去の問題、今委員からも大変な問題だという御指摘がございますが、全くイラク軍の撤退に当たる暴挙と言う以外に方法がない。これに対しまして、今回、日本政府は今日まで、この五日から二十三日の間に、サウジアラビア、カタール及びバハレーンにとりあえずオイルフェンス三十一キロメートル分を送付いたしました。右三カ国は引き続き流出原油対策のための資機材を必要といたしておることにかんがみまして、その要請を踏まえて、次のように追加をすることを決定いたしました。  オイルフェンスは約十六キロメートル、オイルスキマー三十台、油吸着剤五十トン、小型油回収船十ユニット、こういうことを決めましたが、後刻官房長官から発表をされることになっておりますが、一応官房長官の御了承を得て御答弁を申し上げておきます。
  133. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 環境庁の立場からお答えをさせていただきます。  原油流出に加わりまして、今度油井等の大規模な炎上という事態が起きたわけでございますが、これに伴って発生する大量の硫黄酸化物あるいは窒素酸化物あるいはさらにばい煙、こういったようなものの影響で、酸性雨あるいは気温の低下等々いろいろな影響が予測をされております。しかしながら、初めての出来事ということもございまして、どういう影響が出るかなかなか予測が難しい面もございますが、現在のところ、より詳細な情報収集に努めるとともに、短期的、長期的影響に対する調査研究を早急に行うべく、国内、さらにはほかの国々、さらには国際機関等々とも連絡をとりながら検討しているところでございます。
  134. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 何か日本でこういう環境汚染、こういうような汚染の問題で統一して研究しているところはあるのですか。何かこういう問題、環境汚染、油、煙、こういういろいろな問題があると思いますが、これを総合的に研究している機関が日本にはあるのですか。あるいはまた、なければ、国際的な機関があるのですか。
  135. 加藤三郎

    加藤(三)政府委員 国内におきましては、私ども環境庁に国立環境研究所というのがございます。その環境研究所の中に、昨年十月に地球環境研究センターというものができております。この地球環境研究センターというのは、もとより通常の環境汚染問題というもの、例えば温暖化でありますとか、フロンによりますオゾン層の破壊だとか、そういったようなことを本来なら研究するところでございますが、現在こういうような事態も発生しておりますので、とりあえずそういった今までの知見を利用いたしまして、どんなようなことになるのか、いわば試算的な、ごく初歩的な研究はいたしておるところでございます。そのほかに、我が国に民間会社、民間のいろんな研究機関がございまして、民間の研究機関もいろいろと本件につきまして関心を持ち、試算などをやっているようでございます。  それから国際的には、大臣も御答弁申し上げたと思いますが、国連環境計画、UNEPというのがございまして、ここでこの問題を非常に重大視いたしまして、早速専門家による会合を二月の五日、六日ジュネーブで開催いたしております。この会合に対しましては、私ども環境庁からも外務省などともども専門家を派遣いたしておりまして、情報の収集などに努めております。  いずれにいたしましても、この国連環境計画を中心に中長期的な環境対策というのは実施されるのではないかというふうに思っている次第でございます。
  136. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 この環境問題は、本当に今までにないような大規模環境汚染で、破壊でありまして、これに対していろいろな意味で基礎研究あるいは応急の対策、それをやっていく必要があると思います。  この戦争、戦後の問題につきまして、資金を出したり援助をしたりいろいろなことをするのでしょうけれども、この問題についても特段に資金あるいは技術の援助が必要かと思いますので、その点の御配慮をぜひひとつお願いしておきたい、こう思いますが、いかがですか。
  137. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのような考え方に立って我が方としてもできる限りのことをすべきであると考えております。
  138. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それはそれで終わります。  今度の戦争の勃発した意味ですね、例えばイラクがなぜああいうふうに軍事大国になってこういうような状況になったか。これはいろいろ言われておりますが、非常に大きなこれからの戦後処理の問題になってくるのではないか、こう思いますので、一言申し上げておきたい、こう思います。  今日イラクが、工業国でもないのにあれほど軍事大国にのし上がった、これはもう言われておりますように大量に武器を売るところがあって、それを買って、そして百万の軍隊を備えて、怖いものなしでああいうふうな暴挙をした、こういうことであります。したがって、この問題について我々は、今後再びこういうような問題が起きないためには、この武器輸出の問題について重大な関心を払っていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えております。まさにイラクは大した工業技術もない、何にもないのにこれほど大量に武器を備えつけることができた、まさに先進工業国が武器を売ったその結果である、こういうふうに言われております。多国籍軍は、何といいますか、自分の国を含めて味方である西側諸国あるいはイラクへの制裁を決めた国連の安全保障理事会、そういうところの主要国がせっせと武器を売り込んだ、その武器によって逆に今度は今反撃されている。世界イラクを有数の軍事大国に育て上げたために生まれたところの戦史にもまれな皮肉な戦争である、こういうふうに言われております。今戦っている両軍の兵器というのは兄弟だ。同じ国でつくられた兵器でもって戦っている。外国の兵器を大量に買って、買い入れた国を相手にして戦争をしている、今回の戦争は今までになかったようなもうへんてこな戦争であります。このことは大変重要なことであります。  今総理は、アメリカの若者が血を流している、日本はそれを知らぬ顔していいのか、こう言っていますが、その若者の血を流しているのは、同じ国でつくった、おやじさんがつくった兵器であるかも知れない、こういうことを考えれば、これは大変不幸な出来事であります。何としてもこれからの戦後の処理としてこういうようなことのないようにしなければいけない、こういうふうに考えるわけであります。  例えばこういう事実があります。たった一年か二年前の話でありますけれども、イラ・イラ戦争がありました。今と同じようにイラクがイランに攻め込みました。同じようなこれは侵入の状態なんですね、イラクによる侵入の状態です。しかしそのとき、だれもイラクを批判しないで、どんどんイラクに味方をして、武器をどんどん輸出してやりました。全く今と同じなんです。その同じイラクが今クウェートに侵入した。傍若無人、大変な大悪人で悪魔だ、こう言われております。この前イランにイラクが侵入したときは、だれも悪魔だとも何にも言わないで、一生懸命それに味方して応援してやった。これは大変皮肉なことなんです。これは十年も二十年も三十年も前のことじゃないんです。ついこの間、去年のことなんです。ここのところが非常に私は、正義とは一体何であるか、結局正義とは力ではないか、こういうふうなことを強く感じるんです。ついこの間の問題なんですね。ついこの間の問題。  ちょっとさかのぼればイスラエルの問題があります。今、ヨルダン川西岸あるいはガザ地区を占領しています。国連がちゃんと決議しております。しかし、それに対しては何の手もだれも、国連も何も打たない。何にもやらないんです。そして今、同じイラククウェートに侵入したならば、もうめちゃくちゃに悪魔のごとくたたく。非常に大きな矛盾があるんですね。矛盾があるんです。同じ国連というならば、イスラエルが行ったのも、国連がちゃんと撤退しろと決議しているんです。何にもしていない。ここのところがこれからの非常に大きな矛盾として私どもは考えていかなければいけない。  例えば化学兵器、いわゆる毒ガスの問題にしても同じです。この前イラクがイランに侵入したとき、クルド族を毒ガスでもって虐殺した、非常に大変な事態だと思います。これに対して何の制裁も加えられない。今度は、大変だ大変だ、兵器を使って悪魔だ悪魔だと言っている、化学兵器で悪魔だと言っている。ここいらにも非常に大きな問題があるんです。どこでも、毒ガスを使っちゃいかぬといったら、どこが使ってもだめなんです。これは絶対だめなんです。それが現実に使ってあれほどクルド族を虐殺をしたにもかかわらず何の制裁もない。ここにこういうようないろいろな問題がある。だから私はやっぱり、武器をどうするか、武器を管理する、こういうことが一番大きな問題じゃないか、先進国が絶対に発展途上国へ武器をどんどん入れるようなことをしちゃいけない、こう思います。  これは名前を言っていいかどうかわかりませんが、新聞に出ていたからはっきり言いますけれども日本から多国籍軍への九十億ドルの支援をめぐって今国会で議論が起きているけれども、石川要三前防衛庁長官はこう言っています。個人的な見解と前置きしながら、各国がどんどん武器を売り込んだ結果イラクが軍事大国になり、戦争が起きた、戦争の費用は武器の売上高に比例して負担すべきじゃないか、こうも言っているんです。いろいろなこれは問題があるでしょうけれども、こういう問題は一面では非常に確かなことであります。したがってこれから、戦後処理でいろいろな国連の問題やら、いろいろな場でこういうことが議論されてくるであろうと思いますけれども、ひとつこの問題は国際的に考えまして十分にこれから警戒をしていかなければいけない。まあ幸いにして日本は武器輸出三原則等がありまして、こういう問題には一切手をかさなかったということは大変すばらしいことである、日本が中心になってこの問題を処理していくようにひとつお願いをいたしたいと思います。総理大臣の御答弁をお願いします。
  139. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お話の御趣旨につきましては私も方向性は全く同じように見ております。そうして、ニューヨーク大学においてもこのことについては触れまして率直に主張をしてまいりました。  ただ一点、ここで私も気になりますから申し上げさしていただきたいんですが、イラクに各国が武器をたくさん移転した、それは事実でございます。そして私が、アメリカの青年が血を流して戦っているときにと。そうしたらその青年は、今私の聞き違えならばよろしいんですけれども、そのおやじさんもつくっておるかもしれぬというような御発言がございましたが、私が調査した限りにおいてはアメリカからイラクへ武器が行っておるということにはなっておりません。そのほかの国の方から武器がたくさん行っておるということでありますから、いずれにいたしましてもこういった問題については、戦後の安全保障のためにも、こういった紛争を防ぐためにも努力を続けていかなければならぬことはそのとおりだと考えております。
  140. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 いや、私は別にアメリカだけを特に取り上げて言ったのではございません。多国籍軍の中のと、こう言いました。──そうですね。私も知っています。  もう一つ。もう時間がありませんからもう一つ申し上げたいと思いますが、国連の問題であります。  今まで国連は、米ソという二大超大国があって、お互いに拒否権を発動しましてどうもうまくいかない、非効率的だ、こう言われて国連の価値が問われておりました。ようやく今、ようやくと言っては語弊があるかもしれませんけれども、東西の壁が取り払われましてこの国連がいよいよその本領を発揮することになるんじゃないか、その試金石が今度の戦争じゃないか、こういうふうにも思われておりました。しかし、今の情景を見ておりますと、非常にまあ国連そのものが必ずしも期待どおりに動いていないのではないか、こういうふうな気がいたします。二大国の場合にはお互いに拒否権を発動しておったけれども、お互いにそれによって、牽制していることによって奇妙な、奇妙と言っていいかどうかわかりませんが、バランスが成り立ってお互いに勝手なことができなかった、そういう取り柄もありましたけれども、今度のことは、ソ連がある程度そういう力を失ってきたので、何か今度のあれを見ますと、国連からのお墨つきはあるけれども国連はさておいて、アメリカがどんどんどんどん進攻している、中心になってやっているんじゃないか、こういうふうな気もいたします。  私どもはこれから、やはり戦後の東西冷戦の時代が終わったのでそれに即応するような新しい国連の場をつくるべきではないか、こういうようなことも考えます。例えば、今の戦争の経過を見ておりますと、一月の十六日の開戦以来ほとんど音なしの構えを余儀なくされておりました国連が、イラク撤退と戦後処理の問題で再び発言と活動の時期を迎えよう、こう思って期待しておりました。国連として何ができるだろう、あるいはあの時期にまず停戦決議をするしかないだろう、こう思っておりましたけれども、残念ながら国連はあらゆる手段を使うことの容認決議はいたしましたけれども、残念ながら戦争をしているのは国連でもありませんし、国連戦争を勧めたわけでもないし、開戦したわけでもない。主導権は、国連を主宰しているところの主権国家の集まりである国連というのは、それに対して何の力もない。あるいは仮に停戦決議をするとしても、米国、英国を含む安保常任理事国が賛成しなければ開かれない。これはこの間、とうとう安保理事会が二十何日でしたか、三日だか二日の日に開けないで終わったことも事実であります。あるいはまた、国連が何も知らぬ顔をしておっても、国連が関与しなくても、米国や英国を含む戦争当事者が停戦すれば、国連決議がなくても戦争は終わってしまう。国連というのは、結局何の力もないで、ただ力の強いところの言いなりになっている。何といいますか、開戦あるいは停戦できなかった国連に残っているのは、戦争が終わった戦後処理だけだ。戦争前には何の力もない、こういうことでは、非常にこれは残念なことでありまして、こういう問題に対しても、これから国連が新しい戦後世界の中心になって平和を求めていくとすれば、こういう国連のあり方についてやはりかなりこれから考えていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えておりますが、いかがですか。
  141. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連が果たしてきた役割というもの、同時に、これから国連がますます平和に対する役割を果たしていかなければならぬということは、委員指摘のとおりでございます。私は、今この状況国連がその権威を回復する大きな大きな一歩を踏み出すときであると期待をいたしております。きょう、日本時間でいいますと十二時四十分、それから非公式会議が始まりましたが、ソ連代表から、ゴルバチョフはフセインよりイラク軍は撤退する旨連絡を受けた、イラク軍は指示を待っているところだという発言が国連の安保理であったようであります。そのとき他のアメリカ、イギリス等の代表が、意味するところが不明である、なぜ安保理に表明してこないのか、また、その他の安全保障理事決議との関係はどうなるのか依然不明であるという指摘があったということであり、現在安保理は公式会合に切りかわっておるということでありますが、願わくば国連の権威を高めるためには、イラクが、フセイン大統領が演説をするだけじゃなくて、直接その場に来てその旨を言うことと、それから他の安保理の国々が抱いております疑念にその場で明確に答えることと行動に移していくことがあれば、国連の権威は、まさに今委員もおっしゃるように、私も願うように高められ、今後の役割を果たしていくことができるようになるであろう。みんなでこの国連の権威を守っていくように努力することも大切であると考えております。
  142. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 外務大臣はいいですか。
  143. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今総理からお話がございましたように、やはりこの国連決議を踏まえてすべての関係国が行動している以上は、イラクのサダム・フセイン大統領は、イラク代表から国連の安保理の議長に意思を明確に伝達されることが最も肝要かと考えております。
  144. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そういうふうにならないところが国連が権威を失墜している証拠でありまして、そういうふうになるようにひとつ頑張っていただきたい、こう申し上げているのであります。  関連に五十嵐議員がおりますので、私はこれで終わります。ありがとうございました。
  145. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、五十嵐広三君から関連質疑の申し出があります。佐藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。五十嵐広三君。
  146. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 佐藤議員の関連で二、三お伺いしたいと思いますが、まず、今ちょっと御配付いたしましたが、例のきょう午前中も問題になったアメリカ補正予算の資料、これは個人的に私が入手しておりましたので、ちょっとごらんをいただきたいというふうに思います。  余りこれにも時間がかけられないのでありますが、このほかいろいろその付随の書類があるのではないかと思います。しかし、ここにテーブル一、二、三という三枚の資料がある。ここで九一年の米国の補正予算について湾岸戦争関係を集計しているわけであります。題名は「一九九〇年と一九九一年の米国に対する外国の契約」、コミットメント、こうなっているわけですね。これはテーブル一の方でありますが、その中に日本、一九九〇年の方で十七億四千万ドル、一九九一年九十億ドル、トータルで百七億四千万ドル。このうち現金、物品で受け取ったものが十三億二千三百万ドル、それで差し引いて、ここのところに書いてあるわけですね。将来的な受け取りというのが九十四億一千七百万ドル。これはまあ二、三も同じようなことになっているわけでありますが、二、三というのは、二が九〇年の分で、テーブル三というのが九一年の分、その二つを足すと、今言いましたテーブル一の分になるわけであります。  このうちの一九九一年、「ジャパン」の備考欄みたいなところがあるわけです。そこに審議中というのがある。これは国会で、日本側で今審議中なものだよ、しかしこのコミットメントとしては日本から入る契約に九十億ドルとなっている。入ったものはこれだけで、将来的な受け取りとしては差し引いて九十四億一千七百万ドル、こういうぐあいに書いておるじゃないですか。これは午前中のお答えと全然違うんじゃないですか。しかもコミットメントですよ。契約ですよ、これは。大臣、いかがですか。
  147. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 午前中も御説明申し上げさせていただきましたけれども、今回、アメリカの大統領が議会に提出いたしました歳出予算案の主眼は、アメリカ政府の資金協力費のために百五十億ドルの予算権限を獲得すること、そのために運営基金口座を設けるということでございます。それから同時に、各国からの貢献額が払い込まれます防衛協力基金からの資金移転に伴う権限も求めておりますけれども、これに関しましては、一般的な権限でございまして、今先生が言及されました具体的な点は、参考資料(付表)ということで出ております。  私どももまだ予算書の全文は入手しておりませんけれども、ホワイトハウスが要約いたしましたこの要約に基づいて今御説明しておりますけれども、あくまでも今申し上げましたようなことで、参考資料としてアメリカが、ホワイトハウスが発表しました文書によりますと、「各国の貢献額として期待している」、英語で申し上げますとアンティシペイトしている額ということで、先生の御指摘の額が挙がっております。  ただ、これは午前中も総理が繰り返し申し上げておられましたけれども日本側の基本的な考えに関しましてはアメリカにも伝えてございますし、それからこの具体的な資料につきましても、アメリカ側に私ども注意を喚起いたしましたところ、アメリカの回答は、米政府関係者の回答でございますけれども、各国の貢献額の内容については、関係各国とも必ずしも調整をしないまま作成したものである、こういうふうに述べております。
  148. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 あなた、これはアメリカ政府の正式な文書ですね、言うまでもなく。そこにコミットメントとしてそれぞれ書いてあるんです。ドイツの場合は五十五億ドル、これは日本を書いた上の行のところに五十五億ドル。何の差もない。同じように並んでおる。戦費ですね。きょう午前中もいろいろ議論があった。ドイツは明らかにこれは戦費だ。日本は格別だなんていうことはちっともないですよ。ここで、御承知のように各国から協力をしてもらうのが全部で五百三十五億ドル、それにアメリカが百五十億ドル、合わせて六百八十五億ドルで一月から三月までの戦費を調達しよう、こういう計画になっておるわけですね。そういうプールの中で、これはひとつ武器購入に充てよう、弾薬購入に充てよう、輸送に充てよう、燃料に充てよう、こういうことになるわけでしょう。  そういう意味からも、この前も申し上げましたけれども、使途論というのはおかしい話なんです。同じ一つの金庫の中にみんな金入れて、そこから出すのに、別にお札に色分けはないわけですね。ですから僕は、そういう意味では使途論というのは、この間から聞いていても、およそナンセンスと言うとしかられるかもしれぬが、それに近い話だなという感じがしていたわけであります。そのことを指摘を申し上げ、これはいずれ政府からも公式に、きょうの理事会に基づいて資料が出るわけでありましょうから、その折にまたしっかりひとつ論議する、こういうことになろうと思います。しかし、そういうことで納得がいかぬということだけは委員長に申し上げておきたいというふうに思います。  さて、今のことも一つの例なんだけれども、きょう午前中の議論でも、この湾岸戦争というのは、どうも海部総理に言わせるとこれは戦争でないんだ。言い回しとしては平和復興のための武力行使だ、戦争ではない。これは国民は聞いていたって納得がいかないですよ。戦闘機だけでも十万機の出動、落とした爆弾がこの一カ月で三十万トンになっているんですね。この三十万トンというのは、ベトナム戦争のときの半年分、朝鮮戦争のときの一年半分に値するようです、今湾岸で落とされたこの一カ月の爆弾が。これが戦争でなくて、一体歴史上何をもって戦争と言いますか。明らかにそれは戦争であります。それも、しかしそうは言わない。したがって、戦費とも言わない。戦費と言わないったって、今のアメリカの資料で見ましても、これはもう明らかな戦費であるわけであります。  あるいはまた、先ほど佐藤委員もお話しになりましたが、GCCを通過してアメリカの防衛協力基金に入っている、こういう仕組みにいたしましても、あるいはC130の扱いにしたって、何で一体、やるんなら法律でしっかり変えりゃいいじゃないか。特例政令などという苦肉の策で遠回しに出してくるというようなやり方。どうもこういう一連の今回の論議というものを聞いていますと、全く真正面からの論議になっていない。とにかく迂回して迂回して、言いくるめていこうとするように我々には聞こえて仕方がないんです。非常に全体の構図というものが、今回のこの議論というのは、湾岸戦争をめぐる大事な大事な議論というものがストレートでないんです。いわば虚構の議論の構築の中に私はどうも進められているような気がしてならないんだ。この大事な、国民の重大な選択を得なければならないという問題にこういう議論の展開というのは、非常に私は残念に思います。  我々は、きょうそれぞれ佐藤さんからもお話があったけれども、例えば今の九十億ドルにしたって、これが湾岸復興であるとか難民救済であるとか、あるいは周辺の国々の支援のためであるとか、あるいは医療支援であるとか、そういうさまざまなものであれば、そういう目的のものであれば、この九十億ドルに我々はいつだって賛成できる気持ちなんですよ。しかし、人殺しの金には我々は協力できないのであります。戦費というものには我々は賛成することはできぬ、そのことを、これはこの間来社会党の各委員は次々に申し上げているわけであって、ぜひひとつそういう気持ちも私は海部総理にわかっていただきたい、こう思いますね。  この前、これは総理の耳にもちょっと入れたけれども、きょうは国民の皆さんにも少し手短に聞いていただきたいと思うのですが、昭和二十九年、参議院で「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」というのが行われ、このときの趣旨説明を、当時、鶴見祐輔議員がしているわけです。「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。 右決議する。」こうなっているわけですが、その趣旨説明の中で、「如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮窟であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。」こう言っているわけです。そして「条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。」こう鶴見議員は提案説明で言っているのですね。  これは、こういう大事なときには原点に戻らなければだめですよ、原点に。それは私は、こういう殊に海部総理の場合はどちらかというと国民もいわばハト派として見ていて、一つの期待が私はあったと思う。どうも今回の海部総理のおとりになられているこの一連の行動というのは、非常に我々は納得のいかないものがある。本当にもうこんなことを言っちゃなんだけれども、鶴見祐輔さんの今の議事録の隅っこの方を我々も一緒に、海部総理、せんじて飲まなきゃだめなぐらいな気持ちがするですよ。ぜひひとつ御理解をいただきたい、こういうぐあいに思うところであります。  こういう一つ海部総理の今回の湾岸問題についての政治姿勢に対する疑問、これに総理から一言お答えをいただきたいと思います。
  149. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私も一緒になって平和平和と言っておれば平和が守られるなれば、それも一つの行き方であろうと思いますけれども、平和と言っておるだけでは平和が来ないということは、今委員もいみじくも原点に戻れとおっしゃいましたが、八月二日に戻った場合に、イラククウェートを殺し始めた、とにかく一国をつぶすわけですから。今私は、平和回復のための武力行使日本支援する。委員は今、人殺しのための戦費は出さない、その後の復興のためには幾らでも出す、こうおっしゃいました。人殺しとおっしゃいますが、今クウェートで行われておることは御存じだと思いますけれども、ああいったことはほっておくわけでしょうか。やられたらやられっ放し、そして終わるまで待っておって、終わったら支援だけはするよというのでは、これはいかにも私は納得できない議論だと、今聞いておって率直にそう思いました。  したがって、国際に平和を回復するということは、現に武力による侵略が行われた、現に毎日毎日クウェート人が殺されておるということや、そういったことがアムネスティー報告なんかで広く伝わってきておるにかかわらず、それはほっておいて、そしてそれをやめさせよう、逆に言うと、先生の言葉をかりて言えば、人殺しをやめさせようという国際社会の大義に基づいた行動は、それは日本はだめだ、ほっておけ、やられたらやられっ放しでおれということに通じるような気がして、私にとってはとることのできない考えでございます。したがって、一日も早くそういった状態がおさまるような努力をして、なおかつ終わってから一緒になって復興のために協力しようということは、これは賛成でありますから、その一歩前の段階で一日も早く、今行われておる、現に起こっておる問題を、平和の破壊をおさめるための努力もともにやろう。ただ、それには許される限度と枠がありますから、日本武力部隊を送ることはできない、力でお役に立つことはできないけれども、せめてその平和回復のためのいろいろな支援にお金を出そうというのでありますから、それはどうぞ御理解をいただきたいと思います。
  150. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 本当に今のお話聞くと、僕なんかも帝国軍人の最後の兵隊ですけれども、当時の軍の話とちっとも変わらないようなものだ、同じ戦争でも正義の戦争ならいいんだ、こういうような議論に聞こえて仕方がない。私は、やはりそういうような経験を踏まえながら我々は新しい憲法を持ったんだから、しかも、それは一国平和主義だというようなことを言うけれども、そんなことではない、あの平和の崇高な精神というものを我々は積極的にむしろ世界に広めていこう、こういう考え方でいるわけだから、それは誤られては大変困ると思うのです。  そこで、総理ひとつお伺いを申し上げたいのは、やや戦争は終末の状況に向かってきたようだ。しかし、一体どこで戦いが終わるか、殊に多国籍軍がどこまで一体攻め込んでいくのかというところが非常に我々としては注目をし、心配をしているところなんです。これはきのうの新聞なのでありますが、おとつい、アメリカの議会の有力者のアスピンという下院軍事委員長が、バスラ以南のイラク領を米軍が占領し、対イラク交渉の材料に使うべきだ、バスラ以南のイラク領返還と経済制裁解除を交渉のカードに使って、イラクに対して平和条約の締結を要求してはどうか、こういうようなお話をしているんですね。私は、こういう記事なんか見ると、やはり心配ですね。これはやはり国連決議の六百六十号あるいは六百七十八号、こういうような精神に、あの範囲というものを逸脱するものではないか、そう思われて仕方がないのですよ。私はやはりここで海部総理、大事なところですから、戦いというのはどうしてもやはり弾みがついていきますね。これは海部総理、ここで国連決議の範囲内というものに立って日本政府はしっかりした見解を示していかなくてはならぬ、こう思うのですが、いかがですか。
  151. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議に従って平和回復活動をする、それを日本支援をする、これが基本的な考え方でございます。ただ、私どもアメリカ国連決議を守れということを言っておるわけでして、ですから、モスクワで行われたソ連イラクの話し合いも、初め八項目が六項目に修正されてくるときに、私はあの最初の第一項目の発表を聞いたときに、即時無条件撤退を受け入れると流れましたときには、その瞬間ふっと希望を持って、これが平和への端緒になっていくんだと希望を持って聞いておりましたが、次々に条件がついてきました。そして、撤退をしたら国連決議はすべて無効にするんだということまで出てまいりますと、これはやはりもう少し無条件撤退でなければならない。クウェートの主権を回復するために、力による侵略を排除するために行われておるのが国連決議でございます。ただ、ややもするといろいろ情報が入り乱れておりますけれども、私はブッシュ大統領の声明もチェイニー国防長官の発表も注意深く聞きましたが、国連決議を守るということ、クウェートからの即時無条件撤退を求めておるということでございます。  そして、つい今終わりました本会議で、社会党の代表の方も私の質問の中で、しかも攻撃を受けながらの撤退という軍事的に不可能な条件を突きつけてはいけない、アメリカは何が何でも戦争をしたかったのだと言える、こう言われましたので、そういう誤解はやめてください、撤退するものを攻撃するということは、そんな無理な条件は突きつけておりませんということを私も申し上げたわけで、議論をするときはやはり冷静に正確にきちっとした枠の中で議論をしませんと、ああだろうこうだろうという推測だけで議論をしていったのではいけないと思います。私は、国連決議を守って無条件完全撤退するということをイラクが声明することが今回の局面転回のかぎである、このように受けとめております。
  152. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 質問に十分にお答えいただいたとは思われないので残念でありますが、しかし時間でありますから次の機会にまた。  どうもありがとうございました。
  153. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて佐藤君、五十嵐君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  154. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  156. 渡部恒三

    渡部委員長 次に、草川昭三君。
  157. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川であります。  湾岸戦争地上戦に移行したということについては極めて遺憾なことだと思っておるわけでありますが、一日も早い停戦、和平を心から念願したい、こういう立場から、まず総理に質問を申し上げたいと思うわけであります。  けさほど来からいろいろなニュース、情報が飛び交っておりまして、フセイン大統領撤退命令があったのではないだろうかとか、また先ほども安保理の中でのいろいろな報告がございましたけれどもソ連の六項目の修正案というのが一番新しいところの提案ではなかったか、こう思うのでございますけれども、それらのものを含める今日までの、本日までの、ただいままでのいろいろな情報を見まして、国連の諸決議の内容というものを本当に満たしているのだろうかどうか、改めてまず冒頭にその問題についての質問を申し上げたい、こう思います。
  158. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お触れになりましたソ連イラクの修正された後の六項目、これは十分御承知と思いますから全部重複することは避けますけれども、結局、停戦の後で撤退、こうなりますけれども、いつ停戦するのかということが極めて不明瞭であるということが一つと、それからもう一つは、撤退するとその他の国連の諸決議が全部失効する、こうなっておりますが、国連の安保理で決めた決議が効力を失うかどうかということを決められるのは、私が素朴に判断するとそれは国連の安保理だ、こう思いますから、ソ連イラクの間でそれを決めたり決めなかったりということはちょっと筋が違うのではないかなという感じがいたしております。  ですから、あれは不十分であるという評価で、ゴルバチョフ大統領から電話がかかってきましたときにも私はその点は率直に申し上げて、不十分なままで持ち出してもこれは完全な合意が得られないから、あなたの説得力でイラクの方に対して、フセイン大統領無条件完全撤退ということをまず決めて正式に表明されることが問題解決のかぎだ、こう言いました。その受けとめ方は今も変わっておりませんし、日本時間の一時ちょっとから安保理が開かれておるようですが、そこにもまだソ連の代表を通じての話があっただけで、イラクから国連に対しては明確な意思表示が今の段階で届いておらぬということでございますので、明確な意思表示をする、明確な撤退行動に移る、私はぞれが一番大切だ、またそれを強く期待もいたしております。
  159. 草川昭三

    ○草川委員 有権解釈はまさしく国連安保理ですからおっしゃるとおりだと思うのですが、そういう姿勢の中で国連の役割というのがこの和平努力の中では一段と強くなってきておるのではないだろうか、また国連というものをこの解決のために前面に出す、そのために日本はもっと力を尽くすべきではないだろうか、私はこう思うのですが、その点の決意について総理の御見解を賜りたい、こう思います。
  160. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連の事務総長とも東京でもニューヨークでも会談をして、私は、国連の機能というものが戦後四十五年して初めて、東西の対立が終わったことを背景にして機能し始めたわけでありますから、今後は、いま一歩国連の権威を高めるとともに、国連が中心となって、世界じゅうが安心できる新しい時代の平和の枠組みは国連秩序であるということになるように、日本も大いに協力をしていかなきやならぬと思います。現に分担金の拠出ども日本は国力にふさわしいものをきちっと提出して行っておるわけでありますから、今後とも一層に努力をいたします。
  161. 草川昭三

    ○草川委員 その国連決議、またその実効性を確保する、平和努力に対して我々は応分の協力をする、負担をする、こういう立場から、少し具体的な問題点について、我々が今まで主張してきたことを含めて総理見解を改めて問いたいと思うのです。  先ほど来も問題になっておりますが、アメリカ政府が議会に提出をした九一年度の補正予算では、九十億ドル全額がアメリカの国内向けのいわゆる補正予算に計上されている、こういうような報道があるわけであります。いわゆる九十億ドルの使途、特に武器弾薬には使わないという担保について、この際総理からお答えを願いたい、こう思います。
  162. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の追加九十億ドルは、湾岸平和基金に対して拠出され、湾岸地域における平和回復活動を行っている関係諸国に対し資金協力を行うということを予定しております。具体的な使途については、今後、湾岸アラブ諸国協力理事会及び関係諸国と協議の上で、最終的には湾岸平和基金の運営委員会で決定されることとなりますが、政府としては、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの諸経費に充てる方針でございます。  従来、湾岸平和基金への拠出に当たっては、同基金に対する拠出金は、交換公文上、湾岸の平和と安定の回復のため、資金協力または物資協力に使用される旨規定されており、その具体的な使途は、我が国政府及びGCCの代表から成る運営委員会により決定されることとなっております。また、運営委員会は、日本政府拠出金がこれらの使途に使用されるよう確保する旨規定をされており、我が国の意に反した使途に充てられないように確保し得る仕組みとなっております。さらに、我が国政府は運営委員会を通じて、資金供与の後、その使用につき報告を受けることとなっており、今回の九十億ドルについても、基本的に以上のような仕組みに従うことによってその使途の確保につき十分な手当てがなされるものと考えております。
  163. 草川昭三

    ○草川委員 実は、過日のこの予算の集中審議の際でございますが、私どもの矢追副委員長の方からも今の趣旨の質問をしたわけであります。たしか北米局長から答弁が出ておるわけでありますが、今総理からはっきりとおっしゃったわけでございますが、いわゆる日本政府拠出金がこれらの使途に使用されるように確保する旨の規定がある、これはもう間違いがないかどうか、もう一回念を押す。いわゆる我が国の意に反した使途に充てられないよう確保し得る仕組みになっている、さらに、我が国政府は運営委員会を通じ、資金供与後、その使用につき報告を向こうから求める、今回の九十億ドルについても基本的に以上のような仕組みに従う、だからその使途の確保について十分な手当てがなされている、このような趣旨でございますが、もう一回、それは間違いがないかどうか、確認を求めておきたいと思います。どうですか。
  164. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府はその代表を湾岸平和基金の運営委員会に出しまして、そして湾岸平和基金の運営委員会で決めるときに我が国の意向に反した使途には充てられないよう確保し得る仕組みとなっております。そして、その報告も受けることになっております。
  165. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ次に、いわゆる防衛費の問題についてお伺いをしたいと思うのでありますが、今回の湾岸地域における平和回復活動に対する我が国支援に係る財源措置の一環として、平成三年度の防衛関係費については、契約ベースで約一千億円、歳出ベースで十億円、これはもう生の金でありますけれども、削減を行ったということでありますけれども、まず、この削減の具体的な内容について、これは防衛庁の方から現場の声を聞きたい、こう思います。
  166. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 お答えをいたします。  今回の措置によりまして、平成三年度の防衛関係予算のうち、契約ベースで御指摘のとおり約一千億円を削減することとしたわけでございますが、主な削減内容といたしましては、いわゆる九〇式戦車二両二十三億円、対戦車ヘリコプターAHIS二機四十七億円、輸送ヘリコプターCH47J一機四十五億円、ミサイル艇PG一隻六十六億円、練習艦TV一隻三百三十億円、輸送機C130H一機四十九億円、中等練習機T4一機二十七億円等でございます。また、歳出ベースでの十億円を削減したところでございますけれども、主な削減内容といたしましては、いわゆる乙類で七億円、練習艦の初年度歳出分一億円、輸送機の初年度歳出分一億円等でございます。
  167. 草川昭三

    ○草川委員 今、乙類七億円というような答弁があったわけでございますが、いわゆるこの乙類というのも非常に専門的に難しい言葉でありますので、その具体的な内容は一体何かお伺いをしたい、こう思います。
  168. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 乙類と申しますのは、正面経費の一部に分類されるものでございまして、例えば戦車とか火砲等の陸上装備がその機能を発揮するために必要とされる際の支援する器材というところでございまして、その品目は非常に多岐にわたっておりますけれども、例えば今回削減の対象となりましたものといたしましては、トレーラーとかダンプカーといったような装輪車両、それから、例えば通信等を行いますために必要となる発電機といったようなもの、その他もろもろでございます。
  169. 草川昭三

    ○草川委員 俗に言うところの正面装備の後方部門だというように理解をしてもいいと思うのでありますけれども、今回削減されたこの装備品は、これが削られたことによって何か具体的に支障があるのかどうか。確かに、三年度の歳出の十億円というのは実際にキャッシュで支払うという、こういうことになっておるわけですから、これは削られたということの効果というのはよくわかるわけでありますけれども、いわゆるその支障があるということの具体的な問題点として、例えばこの一千億のうち、十億は三年でありますけれども、あとの九百九十億というのはもともと後年度負担なんですね。いわゆる月賦払い、こういうことになるわけで、後へツケが回る金額ですね。ですから、これを削ったからといって平成三年度に支払う金額には何らの影響はない、全く支障がないということになるのではないだろうかという素朴な疑問があるのですが、それをもう少し具体的に答弁をしていただきたい、こう思います。
  170. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 支障のある点につきまして、すべて私どもは必要最小限のものを当初計上する予定でおりましたから、これらのものについてすべて何らかの支障があるわけでございますけれども、その中でも例を挙げて若干説明させていただきたいと思います。  例えば、九〇式戦車二両削減ということでございましたが、これは本来二十八両調達予定のところを二十六両ということになったわけでございます。これは、本来ですと一中隊当たり十四両ということで、二個中隊分の戦車二十八両ということで考えておったわけでございますけれども、二両削減ということでございますので、本来の十四両から一中隊当たり十三両ということになりまして、そういたしますと、変則的な形になりまして、戦車に乗れない一部隊員がジープ等ほかの車両でもって対応するということになりますと、これが戦車に随伴できずに、部隊としてまとまった訓練ができないというようなことに相なるわけでございます。  それからまた、練習艦TVでございますけれども、これは実は今まで使用しておりました練習艦の「かとり」というものが平成五年度に、これは老朽化によりまして使用ができなくなる見込みでございます。そこで、調達期間を考慮に入れまして、平成三年度にその代替艦といいますか、後継艦を手当てする予定にしておったところ、これを削減することといたしましたので、平成六年度になりますと練習艦を使っての遠洋練習航海ができなくなるのではないかというようなことも考えられます。  さらに、航空自衛隊のペトリオットでございますけれども、これは平成三年度は第六番目の高射隊群で、現行のナイキをペトリにかえよう、換装しようという計画でございました。現在もそういう計画でございますけれども、そのうち、これは通常でございますと、全周囲をカバーするということで四高射隊を整備するということでございますが、今回それを三高射隊に削減したということでございますので、全周をカバーすることができなくなるのではないかというような支障が現に生じているわけでございます。  しかしながら、我々としても、これは与えられた条件の中で何とか工夫、努力をして対応してまいらなければいかぬというふうに思っております。
  171. 草川昭三

    ○草川委員 今の答弁によりますと、例えばパトリオットの場合も防空任務にも支障が生じる、あるいは部隊の編成や運用、教育訓練にも支障が出ることは事実だ、これはもうはっきりしたわけですね。それは長官から一回答えてください。
  172. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま防衛局長からお答え申し上げましたように、今回の削減によりまして訓練その他においても大変な支障が予想されるわけでございます。もとより私どもといたしましては、何とかその支障を最小限にとどめるためにこれからいろいろ努力をしてまいらなくちゃいけない、このように考えておるところでございます。
  173. 草川昭三

    ○草川委員 今回の措置で、自衛隊にとって痛みという言葉になるのですか、大変任務に支障があるということはこれで明らかになったと思うのでありますけれども、ところで今回のこの一千億円の削減の措置は、三年後の中期防衛計画の見直しに当たって一千億円を削減するということでいいのかどうか、これは本会議でも答弁もありますし、あるいは同僚議員の質問でも答弁が一応出ておりますが、防衛庁長官にこの点について、一千億円を削減するという理解で本当にいいのですねという念押しの質問をしたい、こう思いますが、どうでしょう。
  174. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  新中期防と申しますのは、五年間の経費の総額の限度として定められているものでございますが、その実施に当たりましては、各年度の予算編成におきましてそのときどきの事情を十分に勘案しながら効率化、合理化に努めて極力経費を抑制してまいる、そういう努力をして決定してまいるものでございます。  また、ただいま委員指摘の三年後の見直しでございますが、これが新中期防に盛られております。その見直しに当たりましては、その時点における国際情勢、技術的な水準の動向、あるいは経済財政事情等内外の諸情勢を勘案してということになっておりますが、そのような内外諸情勢にあわせまして、今回一千億円の削減を行ったというこの措置を重要な要素として勘案してまいる、こういうことでございます。
  175. 草川昭三

    ○草川委員 要するに、中期防衛計画というのは上限という数字なんで、その中で、三年のこの見直しの中でマイナス一千億になりますよと長官は答弁をした、こういうことですね。  そこで、三年後のこの見直しに当たって、今答弁があったのですが、今回の措置を重要な要素として勘案するという、これは非常にこの辺は難しい言葉なので、私、念を押すわけでございますが、要するに中期防衛計画の総額を一千億円削減をするということの意味に我々が理解をしていいのかどうか、もう一度これは改めて、もうこれは何回繰り返しておってもあれでございますから、きちっと一回長官の方から答弁をとりたい、こう思います。
  176. 池田行彦

    ○池田国務大臣 一千億円の削減という今回の措置が新中期防の執行に影響を与えるということは、これまでも申し上げておりますように事実でございます。そしてそれは、計画期間中の年度年度のその防衛予算の編成に当たって、今回一千億円の削減という措置がとられた、このことを十分念頭に置きながら予算の編成を行ってまいりますので、したがいまして、結果として今回の措置が総額に反映されるということでございます。
  177. 草川昭三

    ○草川委員 これは本当に我々がくどいように申し上げておるのは、我々も、これは必死になって今回の措置をとるためにいわゆる切り込んでおるというつもりで申し上げておるわけですよ。  それで、その念頭に置くというのは、防衛庁長官だけが念頭に置いてもらっては困るわけなので、これはきちっと政府として担保してもらわなければいけない。これはもう本当に我々は、苦悩の選択の中で、日本のあるべき将来のことを考えながら質問に立っておるわけでございますので、ここはひとつ最後に総理から、この中期防の総額を一千億円削減するということをきちっと確約をしていただきたい。これはもう念を押して国民の皆さんの前に約束をしていただきたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  178. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府としてはこれを誠実に処置いたします。
  179. 草川昭三

    ○草川委員 では、これで日本国の総理大臣として今の政府の答弁をきちっと担保していただいた、約束をしていただいたということで、私どもが長い間いろいろと本会議あるいは本委員会で具体的な問題提起をしてきたわけでございますが、これで私どもは了解をしたい、こういうように本件については思います。以上でございます。  それで、次に、いわゆる先ほど来もいろいろな意見が出ているわけでございますが、なぜイラクというのが軍事大国になったんであろうか、こんなに多国籍軍というのが、あるいは連合軍というのでしょうか、近代兵器を使いながらも大変強い抵抗をしている、これは今さら申し上げるまでもございませんけれども、武器輸出をしたところの、武器を供与したところの大国に責任があるのではないだろうか。これは過日の予算委員会でも私自身が問題提起をしたところでございます。  それで、この一九八四年から五年間の間にイラクが購入したところの武器というのは二百九十六億に達している、こういうわけでありますから、相当な近代兵器を蓄えているわけでありますね。それで、しかも、多国籍軍が恐れているところの地雷というのが約五十万発だそうですが、この五十万発の地雷も実はアメリカがかつて売った事実があるというようないろいろなニュースもあるわけであります。今、世界で、あるいはまたアメリカでもそうでございますが、武器輸出についての規制をする動きがあるというような報道も我々聞いておるわけでございますが、ひとつ私ここで具体的な問題を若干申し上げながら、一体イラクというのはどういうことを考えて今まで軍事大国になってきたのかということを少し触れてみたい、こう思うのです。  まず、建設省にちょっとお伺いをしたいと思うのでありますけれども我が国には武器輸出三原則があります。これはもう言わずもがなの話であります。例えば、日本の建設業者が海外において軍事関連の施設の工事を受注する場合どのような指導を建設省は行っているのか、ここから質問を始めたい、こう思います。
  180. 大塚雄司

    ○大塚国務大臣 お答えいたします。  我が国の建設業者の海外におきます軍事施設の関連工事の請負につきましては、昭和四十二年の武器輸出三原則、昭和五十一年の武器輸出に関する政府統一方針の趣旨に沿いまして対処をしてまいったわけでございまして、関係業界の団体を通じましてしかと指導をしてきたところでございます。
  181. 草川昭三

    ○草川委員 その次に、じゃ、建設工事の中には工場の建設だとか病院なんかの建設があるわけでございますが、そういった場合の海外の請け負う場合の取り扱いはどのような仕組みになっているのか、お伺いをしたいと思います。
  182. 大塚雄司

    ○大塚国務大臣 お答えいたします。  海外における建設工事の請負に際しまして、発注者が軍であるかまたは施設完成後の管理者が軍である案件であるかどうか事前に調べまして、申し出を求めることといたしております。工場建設や病院建設の場合も、軍が発注または完成後の管理を行うものについては申し出を受けまして、先ほど申し上げましたように武器輸出三原則と武器輸出に関する政府統一方針に基づきまして、これも対処をしておるところでございます。
  183. 草川昭三

    ○草川委員 その次に、これもやはり建設省になりますけれども、五十六年前後にイラクにおいて病院建設があったというふうに我々は聞いておるわけでございますが、我が国の建設業者によるところの俗に言う軍事施設関連の受注はあったのでしょうか。そこをちょっとお伺いします。
  184. 大塚雄司

    ○大塚国務大臣 イラクにおきましては、我が国の建設業者によるいわゆる軍事施設関連の病院建設の受注実績はないと承知しております。
  185. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、今はないというお話でございましたが、我が国の建設業者のイラクにおける海外の軍事施設建設にかかわる申し出対象、今のは申し出対象ですね。申し出対象以外の病院の建設の実績はあったのでしょうか、お伺いをします。
  186. 大塚雄司

    ○大塚国務大臣 社団法人海外建設協会の調査によりますと、同協会のメンバーである我が国建設業者においては、過去、イラク各地で計十三カ所の病院建設を行ったと承知いたしております。
  187. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、十三カ所の病院建設を行ったという答弁がございましたので、その病院が今どういうような状況になっておるのかということ、あるいはまたそれに関連する、その病院に特定をするかどうかというのはまた別な話でございますけれども、実は私がこの問題をなぜこの本委員会で持ち出したのかといいますと、実は十年ほど前になりますけれども、私自身イラクへ行ったわけでありまして、かかる病院の建設の現場の実態を私なりに見たことがあるのです。当時は砂漠の中で、どうしてこんな砂漠の中に、二百床ぐらいの病院なんですが、建っておるんですか、聞いたら、これは実は十三カ所あるという今のお話なんです。これは別に日本の経済協力で建てたという建物じゃないのです。そういう案件じゃないのです。イラク自身がそれを発注をしたわけですが、それを日本の方々が受けて一生懸命やっておみえになりました。それで、つい最近、御存じの人質で向こうへ行ってみえた方なんかにお伺いをしますと、その病院が一体どうなっているんですか、こう聞くと、いや実はあの病院の地下には大変なシェルターがあって、もう病院の前はこんな厚いコンクリートのいろいろな工事が行われていて、もうあれは滑走路になっておるんですよ、こういう話なんですね。いやこれは大変なことをイラクというのは考えていたんだなと、私は、砂漠の中に病院をつくる、やはり砂漠の国だからそんなものかな、こう思っていたのですが、おかしいなとは思いながらも私は来たわけでございますが、それが現実には、シェルターも完備をしながらでかい病院になってきておる、こういう事実を私は知りまして、これは驚いたというよりも愕然としておるわけなんです。  きょうはそんなことの一つの具体的な例なんでございますけれども、ここにたまたま十年ほど前の、当時の医療関係者に医療施設の引き合いが来た仕様書があるのです。この仕様書をいろいろと見ておるわけでございますが、この仕様書によって日本の医療関係者は打診をされたわけでありますけれども、当時はイラクの厚生省の方からこの引き合いが来たというつもりでいたわけですね。ところが、これを今改めて本人たちが見直したというのですか、十年前にたしか来たんだけれども、これはどうなんだろうな、こう思って見ると、実はそのときの仕様書というのは、イラクの厚生省ではなくてイラク共和国国防省軍事管理委員会、それで陸軍病院の仕様書があったということが、今本人が改めて発見をしまして、これは大変なことだったんだな、こういうことで改めて、当時のイラク日本というのは非常に、俗に言う友好関係にあったわけでございますから、驚いたという事例を今私が申し上げておるわけであります。  しかも、この陸軍病院の仕様書の中には、シェルターという項目がきちっとあるわけであります。手術室、これは常設手術室設備及び器具だとか、それから常設のベッドルーム、これは一室当たり患者五十名入れます。それを五十室、だからこの場合は二千五百床の病院になっておるわけでありますが、そのシェルターの中に何を入れるかといいますと、いわゆる呼吸剤、それから必要の際に避難ごうの扉をあけることができる道具一式、その次に毒ガス浄化剤、こういうのがあるのですね。それから二個の殺菌装置を含む一般設備、こんなのがもう十年前にイラク側では準備をされていたということが今ようやく我々にもわかりまして、これはやはりサダム・フセインという人は我々日本人の常識でははかり知ることができない中東の、大きな野望、展望を持った政治家ではなかったのか。こういうものを、我々は非常に甘く物を見る日本人の反省というのがあるんじゃないだろうかということを、これは私自身の反省として今申し上げておるわけです。それで、やはりこれはこのことがいいとか悪いとかということをきょう私は問題提起するつもりは全然ありません。  そこで、ところで一体イラクというのは、日本との関係はどういうことかというのですが、一九八六年、我が国が最大の援助供与国となっている国の一覧表があるのでございますが、イラクというのはどの程度の地位になっているのか、これは外務省の経済協力の方からお伺いしたいと思うのです。念のために、一九八六年、一九八七年と二つありますが、私の手元では、シェアは七三%で八六年はトップですね、日本の援助供与国。一九八七年もイラクというのは八八・六%で、援助国の中ではそれはイラクがトップだと思うのですが、このことは間違いないでしょうか、お伺いしたいと思います。
  188. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  ただいま手元にちょっとシェアの数字はございません。一九八七年、我が方は技術協力につきましては二億九千万円、一九八八年の段階ではやはり技術協力三億三千万、緊急援助四億五百万といったような技術協力の数字が出ております。これ以外に、先生御指摘になりましたODAのプロジェクトの関係では、従来から五件ほど化学肥料工場それから医療機器供給プロジェクト等に対して、イラクに有償資金協力をやっているというのが実績でございます。
  189. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、イラクという国とは友好状況があったということなんでしょうけれども、私が先ほど申し上げましたように、相手の国のフセインという指導者というのは大変な野望家であり、既にそのときに化学兵器ということを念頭に置きながら、あるいはまた毒ガスということを念頭に置きながら病院建設の準備をしておった。そういう国に対して私どもは少し人がよかったと言えばそれで終わりでございますけれども、もう少し対応の仕方があったのではないだろうかということを、これは別に政府だけを責めるつもりはありませんが、私も現実にそこの現場を見てきたわけですから、私にも反省の念を込めながら、本当に世界平和というものはもう少し厳しいものだということを念頭に置きながら平和というものを我々は叫ばなければいかぬのじゃないだろうか、こういうことを実は申し上げたいところであります。  そこで、ひとつ具体的に今度は外務省の経済協力のあり方について質問をしたいと思うのでありますけれども日本として、紛争当事国あるいは紛争地域、あるいはそういうような危険のある国、そういう地域への経済協力、輸出取引等に際しては、それらが軍事的に転用されることのないような厳重な注意が肝要だ、必要だということを私は言っているのですが、その点についての答弁をひとつお伺いしたい、こう思います。
  190. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  我が国の経済協力は、その受益国の経済社会開発を目的として、軍事的用途にこれを供さないということをその基本的な考え方にいたしております。その趣旨は、我が国とそれぞれの途上国側との例えばプロジェクトについて交換公文などを結ぶときに、その目的をきちっと確認するということをやっておる次第でございます。
  191. 草川昭三

    ○草川委員 今そういう交換公文で処置をしておる、こう言いますけれども、実際経済協力といっても、あるいはまた技術協力という面もあるわけでありますし、軍事目的への転用というのは、一たん一つの個別物体を援助する、あるいは技術協力をしても、それは手元から離れる場合にまた新しい事態というのが生まれるという可能性もあるわけですよね。いわゆる軍事目的へ転用されてしまう、あるいは当初の目的以外に使用をされる、その防止をするための措置を講じたらどうだろうか、こういうように思うのでございますが、その点はどうでしょう。
  192. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  転用の措置という御質問でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、基本的には目的のところで、交換公文上、これは国際約束でございますから、我が国の経済協力はかくかくしかじかの計画のために、その国との友好関係及び協力関係を増進する、経済協力の目的のためにこれを供与するということで相手側と合意をいたしておりますので、その点は法律的にも確認されているというふうに我々は考えております。
  193. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、仮に軍事目的への転用が確認をされた場合、政府はいかなる措置をとられるのか、明らかにされたいと思うのです。これはひとつ大臣の方から答えてくださいよ。
  194. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  仮に軍事目的に転用されるということが確認された場合という仰せでございますが、こういう場合には被援助国による我が国援助の確認ということが、万が一にも確認されたというような場合と存じますけれども、その態様や状況に応じて事態の是正を求める等適切な措置をとらしていただくということになろうかと思います。
  195. 草川昭三

    ○草川委員 適切な措置と言ったって、返してくれと言うわけにいかないわけですから、あるいは隣近所と違いますから一々文句をつけに行くというわけにはなかなかいかないからこそ、転用についての事前のいろいろなルールというものを今のうちにつくっておかないと、私は、サダム・フセインの例を申し上げたことが生きてこない、こういうことが言いたいわけなんですよ。  ですから、これは今から問題にしたいのは、過日のこの委員会でも日笠委員の方からも質問があったと思うのですが、化学兵器というような問題も一つ現実の問題として出てきているわけであります。いわゆる化学兵器の禁止条約というのが国連の場でもいろいろと議論になっておると思うのでございますが、なかなかこの交渉が長引いているというように我々聞いておるわけであります。これが長引けば、ますますこの化学兵器というのは拡散をしていく、こういうようなおそれもありますし、いわゆる廃絶をするということがますます困難になってくるということにもなるわけでございまして、現在いかなる国がどのような化学兵器というのを持っているのか、こういうことをまず政府に聞きながら、この禁止条約の問題の展望をお伺いしたい、こう思います。
  196. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  現在、世界で自分の国が化学兵器を持っているということをはっきり宣明しておりますのはアメリカソ連でございます。しかしながら、それ以外の国も保有しておると見られておりまして、たしかブッシュ大統領の演説では二十カ国という数字が挙がっております。
  197. 草川昭三

    ○草川委員 その二十カ国の主な国の名前を挙げることができますか。
  198. 丹波實

    ○丹波政府委員 御承知のとおり、代表的なものはイラクでございますけれども、その他の国の名前につきましては、ちょっと手元に現在持っておりません。
  199. 草川昭三

    ○草川委員 イラクを中心とする化学兵器が、どちらかというならば今日のような敗退の時期で一種の大混乱の中でもしこれが発射をされたということになりますと、はかり知れぬ悲劇が生まれるのではないだろうか、私はこう思います。この化学兵器禁止条約の一日も早い締結をする必要があると思うのですが、その点の見通しはどうでしょう。
  200. 丹波實

    ○丹波政府委員 せっかくの御質問でございますので、この機会に生物・化学兵器につきましての世界における取り決めの仕組みがどうなっておるかということをちょっと御説明させていただきたいと思いますけれども、先生御承知のとおり、一番古典的な議定書、条約は一九二五年のジュネーブ議定書というものがございまして、これは毒ガスその他の戦時における使用というものを禁止しておるわけです。これには二つの問題があると私たち考えておりまして、一つはこの一九二五年以来生物・化学が非常に進歩してきたものですから、これはその範囲が非常にそういう意味では欠点が出てきたということが一つ。それから、ここで禁止しておりますのは戦時の使用だけが禁止されている、こういう意味では禁止の範囲が狭いということで、二つの条約が問題に、問題といいますか交渉されまして、一つは生物兵器禁止条約、これは既にできておりまして一九七五年に発効しておりまして日本も加盟しております。  現在交渉されておりますのがまさに先生が問題にしておられますところの、非常に重要だという意味で問題にしておられますところの化学兵器の包括禁止条約だと思います。これは一九八〇年ぐらいから交渉が始まっておりますが、特に一昨年の春、一月でございますが、パリにおきまして非常に大きな国際会議が開かれたことが非常に大きな政治的な弾みとなって交渉に弾みがつきましたけれども、難しい問題点が実は三つぐらいございます。  一つは、化学兵器を廃棄する過程で各国の安全保障をどう担保するかという問題。それからもう一つは、その検証の問題がございますけれども、化学物質を生産する民間会社にいつでも入っていくという検証が問題になるわけですが、これは他方において、産業秘密をそれではどう保持するかという問題との絡みで難しい問題の二点目として挙げられています。それから三つ目は、条約の実施のための機構の設置あるいは行財政的諸問題をどう処理するかという大きな三つの問題がございまして、私たち鋭意努力いたしてはおりますけれども、恐らくもうしばらく時間がかかるのではないかという見通しになっております。
  201. 草川昭三

    ○草川委員 その見通しを今述べられたわけでありますが、本当にこれは一日も早く我々は急がなければいけない。本当に人類の破滅を救うためにも、一方ではこのようなものについて促進を図っていただきたい、こういうように思うのです。  そこで、経済援助についてひとつここで絞ってみたいと思うし、私も提案をしたいわけでありますが、これは総理なり外務大臣からぜひお答えを願いたいわけでありますが、軍事費の支出の多い国、こういう国に対する経済援助というのをある程度規制というのですか一つのルールをつくって、もうフリーで出すようなことをやめようではないかということをこの際積極的に提案をしたいわけであります。  いわゆる軍縮の達成の度合い、スケールは別としまして、要するに軍縮をやるという国、そういう国には、もし我々が援助できるようなそういう余裕があるならば積極的にやろうじゃないか。ところが、私が先ほど申し上げましたように、砂漠の中にぼんと病院だと言ってつくってしまう、後で気がついてみたらそれが飛行場になっていた、あるいは兵舎になっていた、あるいはシェルターがあった、その中には防毒マスクの毒ガス用の一つの設備があったというようなことを二度と我々は繰り返したくない。いわゆる軍縮ということに日本はもう積極的に国連の場で声を大にしていただきたい。これは今、日本が唯一国際社会の中で発言ができる場所だと私は思うのです。遠慮なしにこういうような趣旨を言いながら戦後復興協力をしていこうではないかと思うのですが、この軍縮達成に応ずる援助方式の見直し、一つのルールをつくろうという提案について総理からお答えを願いたいと思います。
  202. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 貴重な御意見として私も今承っておりました。そうして、軍事費を多額に使っておる国に対する援助の問題、もう一つは、私自身が体験したサミットの議論の中の一つでございますが、他国に軍事援助をしておる国の経済復興に対する支援のあり方ということも議論になったことがございました。今後の我が国の経済協力の基本的な取り組みの中で、これはどのように取り扱っていくのか、今の委員の御指摘等も念頭に置きながら、うんと勉強させていただきたいと思っております。
  203. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ、これは本当に総理の決断で私できることだと思うし、あるいは今これだけ国際的にも注目をされている問題でございますから、私は、ぜひ積極的に、勉強などと言っていなくて、何らかの具体的な方針というもの、あるいは理念というものを打ち出していただいて、これは声を大にし、胸を張って私は提言をしていただきたい、こう思うのでございますが、いま一度総理、お答えを願いたい、こう思いますが、どうでしょう。
  204. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、貴重な御意見として私は傾聴いたしておりました。その意見に従いまして、私も今勉強させていただくとちょっと謙虚に申し上げましたけれども、前向きに積極的に勉強を続けて反映させていきたいと考えております。
  205. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。  そこで、この湾岸の問題の一つの公明党としての提言があるわけでございますが、実は、湾岸戦争後の復興問題というのについて各方面からいろいろな今御提言があります。これは私どもも新聞等で承知をしておりますし、与党の中でも具体的な提言をなすっておみえになる方もお見えになるわけであります。公明党は、中東湾岸地域復興に対して、民生の安定、それから、先ほど来からも出ておりますが、環境破壊の防止、それから恒久的な平和秩序の促進のために中東平和復興基金の設立を図ろう、こういうことを提案をしておるわけであります。政府としても積極的にこのような基金の設立に取り組み、関係諸国にも協力を呼びかけていただきたいものだ、こういうように思うのですが、その点はどのようにお考えになっておられるかお答えを願いたい、こう思います。
  206. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この湾岸の戦火がおさまった後の中東全体の復興のための基金をつくるという構想、これは一つ考え方としてあろうかと思います。あの東ヨーロッパのために欧州復興開発銀行ができ、アジアのためにはアジア開発銀行がある、こういうふうに地域の関連する経済の開発のための銀行がございますが、IMFとか世界銀行というようなものも現存をしながら機能している中で、この戦後復興については、日本だけではなしに、関係各国が協力し合えるどのような組織が最も望ましいものか。それは私は、このイラク撤退が完了した時点でいろいろな国際会議が開かれると思います。そういう中で日本政府としては、この地域の富める国、貧しい国等の立場というものも十分検討しながら、できるだけの経済協力はいたしたい、このように考えております。
  207. 草川昭三

    ○草川委員 これはいろいろな立場の違い、意見の違いもありますけれども日本が謙虚に、そして本当に世界の平和のために、みんなで力を出し合ってというところまで来たわけでありますから、戦後復興にこのようなさまざまな提唱の方々にお集まりをいただいてそして理解をし合って、一つの方向をぜひ打ち出していただきたいということを強く要望を申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、その次に、パレスチナの方々の援助問題について申し上げたいと思うのです。  私は、去る二月八日の当委員会でも、ガザ地区あるいはまたヨルダン川西岸にお見えになりますところのパレスチナの方々、全部で百七十万お見えになるわけでありますが、すべてこれは難民ではない、こういう前提で前回も申し上げたわけでございますが、イスラエル政府によって一月十五日以降ずっと外出禁止の措置になっているわけであります。外出禁止でございますから男の方々は働きに行けないわけです、仕事に行けないわけですね。そしてまた、家族の方々は買い物にも行けないという、こういう状況にある。一時、ちょっと外出禁止が解けたというような報道もありましたが、また最近禁止の状況になっている。  それで、この国際連合のパレスチナ難民救済事業機関の呼びかけ、いわゆるUNRWAと言っておりますけれども、ここの呼びかけで食糧援助をしよう。一人一日千カロリーです。我々は今一体幾らの──昔よくエンゲル係数だとか二千四百カロリーだとかいろいろなことを言っておりましたけれども、わずか一日千カロリーの食糧の救援を世界に今呼びかけているわけですね、このUNRWAが。それで、日本政府に対応を求めた、二月の八日でございますけれども。しかし、残念ながら今日まで日本政府の対応というのはなされていません。これは、前回の場合も海部総理から、できる限り早急にやるようにしたいという答弁を私ここでいただいておるわけでございますが、残念ながらそのままの状況になっております。  今さら私がこのパレスチナ問題を申し上げるのはあれだと思いますけれども、やはりこの中東の紛争の原点というのは、何といってもパレスチナです、これは。私もあのレバノンのベイルートへ何回か行きまして、シャティーラ・キャンプにも行きました。何回かこのキャンプに行き、子供さんたちとお話をしたこともありますけれども、その当時でさえ、私が行ったのは十年前でありますけれども、クレヨンが欲しい、こう言うんですね。絵の具なんというのはとんでもない話だ。私は絵をかきたい、子供が絵をかきたいんだけれども、クレヨンすらないという、そういう悲痛な叫び。もちろん住宅なんというのはないわけですよ。れんがが積んであって、全く素朴な中で生活をしてみえる。そこへイスラエルの爆撃が行われる。もちろん彼らの中にも、ゲリラというんですか、テロをするというような方々がいたからこそ、大変なまた仕打ちを受けるわけでございますが、もっともっと私は、国際連合で何回かの決議もあるわけでありますから、イラクのフセインの言っているリンケージの問題とは別にして、パレスチナ問題についてこのUNRWAが救済を求めておるとするならば、一刻も早く食糧を出そうじゃないかというようなことを私はしていただきたいと思うのです。  これは二月の二十日現在のUNRWAの情報でございますけれども、緊急食糧供給活動の各国の協力状況はどういうことになっているかといいますと、ちょっと時間がかかって申しわけございませんが聞いていただきたいのですが、食糧援助関係では、ECは現物で一千百万ドル、小麦粉、食料油。オーストラリアも現金で四十万ドル、カナダも現金で百七十二万ドル。ドイツもオランダもスウェーデンもスイスもトルコも、小麦粉だとかチーズだとか、いろいろなものを出しております。あるいはフィンランドも出しております。それから、公式な通告はないけれども、期待されるものとして、ベルギー、デンマーク。ECはさらに二百七十七万ドル、フィンランドもさらにプラス三十万ドル、それからノルウェー、それからアメリカも二百万ドルというのが二月の二十日現在で援助の約束をしておるわけです。  残念ながら、日本は早急にやろうとおっしゃっておられますけれども、ただいまのところ具体的な動きがない。非常に残念なことだと思うのですが、改めて政府の対応を求めたい、こういうように思います。どうでしょう。
  208. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年度は二百万ドル日本政府拠出しておりますけれども、昨年の十二月にこの地域の方々のために十億円相当の食糧を現物で提供をいたしました。なお、現在のこの地域の方々の窮状を私どもよく存じておりまして、ただいましかるべき時期に、つまり早急にこの地域の方々に援助するべく財政上の手続をやっておるということで御理解をいただきたいと思います。
  209. 草川昭三

    ○草川委員 今財政上の手続をやっていただいておるという答弁でございますから、ぜひ新しい年度もこれで始まると思うのでございますから、早急に対応を立てていただきたいというように思うわけでございます。  パレスチナ問題については、言わずもがなの話でございますが、中東の本当に原点でありますから、そこに手を当てながら将来展望を立てていただきたいということを強く要望して次に移りたい、こういうように思います。  大変お待たせして恐縮でございましたが、日銀の総裁もお見えになっておられますのでお伺いをしたいと思うのでございますけれども、一番最初に、このところ国内の卸売物価あるいは消費者物価がともに上昇ぎみである、こんなことを日銀としてもある程度お認めになっておられるようでございますが、どのように見ていられるのか、お伺いをしたいと思います。
  210. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えします。  今、委員指摘のとおり、最近の物価はじり高の傾向をたどっておりますが、もう少し具体的に申しますと、国内の卸売物価、この湾岸危機が生じます前、直前、昨年の七月は前年比がプラス〇・五%でございましたが、現在はプラス二・六%、消費者物価は昨年の七月がプラス二・五%ぐらいでございましたが、最近は四%台に乗せております。  こういうふうに上がってまいりました主因は、国内卸売物価につきましては石油関連、消費者物価につきましてはそれに加えまして生鮮食料品の値上げが主因でございますが、このところ注意しなければなりませんのは、その他の品目におきまして、いわゆる人件費の上昇あるいは物流コストの上昇を製品価格へ転嫁する動きがじわじわと出てきたことでございます。しかし、全体として企業並びに個人の物価観は幸いにして落ちついております。ただ、四%成長が四年間も続いた後でございますので、製品需給、人手不足は引き続きタイトでございますので、引き続き十分注意をして見てまいりたい、かように思っております。
  211. 草川昭三

    ○草川委員 今、人件費だとか物流等についての影響力があるという意味で注目をするという、こういう御発言だったと思うのでありますけれども、私ども、本委員会でも湾岸問題というもの、この問題が経済にどのように及ぼしていくのかということ、これは大変難しい問題であり、重要な問題だと思っておるわけでございますが、特に我が国に影響のあるところのアメリカですね、この米国にどのように湾岸戦争というものが経済的に影響を与えているのか、米国経済の先行きについての日銀の見解を教えていただきたい、こう思います。
  212. 三重野康

    ○三重野参考人 米国の景気でございますが、昨年来ずっと下降傾向をたどっておりました。昨年の八月以来のいわゆる湾岸危機アメリカの企業マインド、消費マインドがさらに落ち込みましたので、景気後退はよりはっきりいたしまして、十─十二月は実質GNPはマイナスになりまして、恐らく一─三月においてもマイナスだろうと思います。  これから先行きにつきましてでございますが、これはやはり湾岸情勢がどう決着するかによってまたいろいろ違いますが、向こうの連銀、中央銀行等におきましては、これ以上どんどん悪くなることはあるまいと言っております。これは理由がありまして、一つは、公定歩合を下げた、金融緩和がこれから効いてくるだろう。あるいは石油の値段が最近ちょっと低迷してきましたから、それは恐らくプラスの効果が出るだろう。在庫水準は低い、それから輸出は底がたい。こういうことから、どんどん悪くなることはあるまいというエコノミストが多うございます。  ただ、実際にどうなりますかは、湾岸戦争の帰趨を含めましてもう少し様子を見なければわからないというのが正直の感想でございまして、十分注意してまいりたいと思います。
  213. 草川昭三

    ○草川委員 その次に、これは今の答弁に関連するわけでございますが、米国経済の見通しについて、いろいろな私どもがつかんだ報道では、やはりこの内容というのはよくない、非常に悪い、こういう背景があるのではないかと思うのですが、そういう中で、日本アメリカとのいわゆる日米間の摩擦というのは、これから経済的な面で一層深まっていくような気がしてなりません。例えば金融面でも、いわゆる金融報復条項というのですか、この法案が、米国の上院でございますか通過をする、あるいは下院でもというような報道がなされておりますが、このような摩擦現象がふえてきておるのではないかと思うのですが、どのように把握をされておみえになるのか、お伺いをしたいと思います。
  214. 三重野康

    ○三重野参考人 アメリカの景気は先ほど申し上げたとおりでございますが、金融の実態につきましても、いわゆるSL問題あるいは不動産不況ということがアメリカの金融機関に対して非常な影響を及ぼしております。そういう状態でございますので、非常に神経質といいますか、そういう状態にあると思いますので、金融摩擦がこれから大きくなることを望んではおりませんけれども、いろいろな意味でよくお互いに協調して話し合っていく必要はある、そういうふうに考えております。
  215. 草川昭三

    ○草川委員 ここでちょっと、日銀さんにはあれでございますから大蔵大臣に、同様な質問になりますけれどもアメリカの国内における金融報復法案というものが再提出をされているというふうに聞いておるわけでありますが、大蔵省としてどのように対応されるのかお伺いをしたい、こう思います。
  216. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員がお述べになりましたのは、本年二月二十一日にアメリカの上院で可決されました国防生産法改正法案に含まれておりますいわゆるリーグル・ガーン条項のことであろうと思います。  これは大蔵省といたしましては、法律上の内国民待遇ではないあいまいな概念に基づいて、外国金融機関の米国への市場アクセスを一方的に制限できる規定を含んでいる、このような規定は、運用のされ方いかんでは自由競争を前提とした世界の金融市場の発展に悪影響を及ぼすおそれがあるという問題点を持っている法案だと考えております。  前回これが出ましたときにも、大蔵省としては、いわばカウンターパートに当たりますアメリカ財務省に対して、我々はこうした法律案に対しては非常に懸念を有するという意思を伝えてまいりました。その時点におきまして、アメリカ政府としてもこれに対しては反対の姿勢をとっておられたわけでありますが、今日も米政府として反対の立場をとっておられるという点には変わりがないと承知をしております。しかし、やはり我々としては非常にこれは心配な問題を持つ案件でありますから、いろいろな機会をとらえながら、米国関係者の理解を得るような努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  217. 草川昭三

    ○草川委員 じゃ、もう一度総裁にお伺いをするわけでありますが、今、金利、金融の自由化というのがアメリカ側からも強く要望があるわけでありますけれども、これはさらに進んでいくと思われます。  ところで、日本の国内における金融機関の経営をめぐる環境というのは今後ますます厳しくなっていくと思われますね。したがって、金融機関としては、これまでにも増して経営体質の強化に努めなければいけない、こういうように思います。この点日本銀行として、金融機関全体の置かれた経営環境をどのように今見ておられるのか、あるいはまた今後金融機関に対してどのような指導監督を行っていくのか、こういう点についての考え方をお示し願いたい、こういうように思います。
  218. 三重野康

    ○三重野参考人 今、委員指摘のとおり、これから金融機関の経営環境は非常に厳しくなると思います。それは、委員も御指摘になりましたように、いわゆる自由化、国際化が進んでいくという中にあってそうでございますが、さらに加えるならば、いわゆるバブル現象の是正ということも大きく影響すると思います。こういう中にあって、金融機関の経営というのはやはり真ん中に自己責任原則というのを据えまして、いろいろございますが、つまるところは二つ、リスク管理の徹底と自己資本の充実、これを相努めていくことになると思います。私どもといたしましても、今申し上げたことを日ごろの接触あるいは実地考査等を通じまして金融機関にアドバイスかつ徹底さしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  219. 草川昭三

    ○草川委員 これは本来大蔵大臣に先に聞かなければいかぬことかもわかりませんが、米国との関係から、今後は日本としても小口金利の自由化がどんどん進んでいくということになると思うのですが、金利自由化に対する大蔵省の臨む態度あるいは指導する態度というのはどのようなものかお伺いしたいと思います。
  220. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 預金金利の自由化につきましては、預金者と金融機関、借入者との公平な所得分配の実現であるとか、競争原理の導入による金融機関経営の効率化及び資源配分の適正化などの観点から、従来から我が国の金融環境にふさわしい手順によりながら信用秩序の維持に配慮しながら前向きに進めてまいりました。  しかし先般、日米の金融協議が行われたわけでありますが、我々が考えておりますよりも極めて早いピッチでアメリカは預金金利の完全自由化を実現するように求めてまいりました。日本側としては、預金金利自由化はあくまでも日本自身の意思で、日本の金融環境というものを踏まえながら、自由化に伴う混乱を招かないように環境整備をしながら進めていくんだということを意見として、意思として述べ、その部分については平行線に終わったわけであります。  私どもは今、しかし自由化は目指しますけれども、国内の特に中小の金融機関等の経営環境を考えますと、暴走することはできません。今後の小口預金の金利自由化につきましては、銀行局長の私的研究会として金融問題研究会というものがございます。この報告を踏まえまして、昨年の六月にスケジュールを公表いたしました。平成三年の四月に小口MMCの最低預入金額を現在の百万円から五十万円に引き下げる。平成三年の秋には三百万円以上の定期性預金を自由金利とする。そして定期性預金金利の完全自由化の時期については、金利自由化の定着状況などを十分見きわめながら、できるだけ早く、遅くとも今後三年ぐらいの間には定期性預金金利の完全自由化を図るべく努力をしたい。また、流動性預金の金利自由化につきましては、今この研究会で検討を開始していただいておりまして、本年前半には結論を得ていただけると考えておりますので、その後、早期に自由化に着手したいと考えております。しかし、やはり預金者の保護ということも我々にとっては大切なことでありますし、中小金融機関の自由化への対応など十分配慮をしながら着実に進めてまいりたいと思っております。
  221. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、今度は総裁にお伺いします。  今、小口金融の将来展望について大臣からも御答弁があったわけでありますが、最近、中小金融機関で合併の機運が高まっていると思うのですが、こうした動きについてどう思われますか。
  222. 三重野康

    ○三重野参考人 先ほどお尋ねになりましたように今後の金融機関の経営環境は厳しゅうございますから、先ほど申したようなことでやらなければなりませんが、これは中小金融機関についても同じだと思います。ただ、合併というのはそういった問題の一つの選択肢である、合併すれば強くなるという問題ではないと思いますが、条件さえ整えれば合併ということも一つの選択肢と思いますが、やはり基本は、先ほど申し上げましたようにリスク管理の徹底と自己資本の充実ということに地道な努力を続けていくべきだ、こういうふうに考えております。
  223. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、これは非常に言いにくい質問なのですが、最近金融機関をめぐる一連の不祥事件というのが新聞で随分報道されてくるようになりまして、国民から非常に強い不信感を買っているのではないだろうか、こう思います。個別の名前がどうのこうのということではございませんけれども、かかる不祥事件の発生について、これは日銀総裁と大蔵大臣から、どのような御見解かお伺いをしたい、こう思います。
  224. 三重野康

    ○三重野参考人 今、委員指摘の一連の金融機関の不祥事件、大変残念なことと思います。  金融機関の業務は、これは当然のことでございますが、預金を預かる、決済をする、貸し出しをする、いずれも世の中からの信任を前提として行われているものでありまして、それを言葉をかえて申しますと、いわゆる金融機関の公共性、それから金融機関の健全性、この二つが金融機関の経営の原点だと思います。長い間金融緩和が続いている間に、一部にそういった原則をなおざりにする風潮が出たことが一連の不祥事件につながったものではないかと思います。  これを機会に、金融機関はやはり原点に立ち戻りまして、襟を正して、一日も早く信任を取り戻すべきだというふうに考えますが、私どもといたしましても、公共的性格、健全経営、この点については従来もいろいろな場合を通じて接触しておりますが、今後ともその趣旨を一層徹底させたい、こういうふうに考えております。
  225. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員から御指摘を受けましたが、最近金融機関に関連する不祥事件につきさまざまな御批判を受けるような事態が生じておりまして、私どもとして大変情けない思いでありますし、本当に残念という一言に尽きる状態であります。  今、日銀総裁からも述べられましたように、金融機関がその業務の公共性というものを忘れ、社会的責任というものを忘れたときには大変な問題を起こすことになります。大蔵省の立場といたしましても、公共性の適切な発揮の実を上げ、社会の期待にこたえてくれるように、引き続き厳正な指導、深みのある検査とでも申しましょうか、実施に努めてまいりたい、そのように考えております。
  226. 草川昭三

    ○草川委員 最後になりますが、経済企画庁長官にお伺いをします。  私、三十七分まででございますので、その間に二つ、もう時間ぎりぎりで答弁をしていただきたいのですが、いわゆる湾岸のこの戦いが長期間続く場合に、日本経済の先行きにどのような影響があるかというのが一つ。  それから、もし追加支援ということをしなければいけないような状況になった場合に、日本経済に及ぼす影響は非常に大きいと私は思うのですが、その点についてどうか。時間まで答弁をしていただいて終わりたい、こういうように思います。
  227. 越智通雄

    越智国務大臣 大変難しい問題を二ついただきまして、長期化した場合どうかという問いに対しましては、今日の情勢の中で私の方からお答えする立場ではないのじゃないか、難しいと思っております。  また、戦後の問題を含めまして今後さらに大きな貢献がもし要求されるのであれば、やはり日本の経済にとりましてはそれなりの負担になるのじゃないか。目下のところ九十億ドルの支援策につきましては、経済の運営に大きな負担にならないという格好でやっと運営しているというのが実情でございます。
  228. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  229. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  230. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私は、日本共産党を代表して、政府の九十億ドルの追加支援、すなわち一兆一千七百億円の補正予算案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。  湾岸戦争は一昨日、ついに地上戦に突入いたしました。これによって、生まれかけていた平和的解決の機会が閉ざされたことは極めて残念であり、我が党は、戦火の拡大がさらに多くの人命を犠牲にし、中東に公正な平和を実現する上でも新たな困難をつくり出したという点で、これに深い憂慮を表明するものであります。問題解決を阻んでいるのは、最大の障害はイラク態度にあります。イラク・フセイン政権はあれこれの条件をつけることなく、クウェートから即時無条件、完全撤退、一刻も早い停戦への道を開き、無益な殺りくと破壊に速やかに終止符を打つべきであります。我が党は改めてそのことを強く要求するものであります。  報道によりますと、けさイラククウェートからの撤退を軍に指示したとのことでありますが、これが平和的解決への新たな機会になり得るかどうか、重大な関心を持って注目しているところです。今重要なことは、情勢の展開の中で生まれてくるあらゆる機会をとらえて、中東の公正な平和の一刻も早い達成のためにあらゆる努力を尽くすことであると考えます。  我が党は、これまで一貫して平和解決を主張し、戦争に反対してきました。今の戦争についても我が党は、単純に国連戦争ではないということを主張し、無条件協力するべきではないと主張してまいりました。以上のことを前提とした上で、この戦争に対する九十億ドル、一兆一千七百億円の追加支援について質問をいたしたいと思います。  まず第一に、九十億ドル、一兆一千七百億円に上る追加支出について、海部首相や大蔵大臣は、アメリカからの九十億ドルの説明を受けていない、日本政府が自主的に決めたということをたびたび答弁をしてこられました。この九十億ドルを受け取る側であるアメリカのブレイディ財務長官は二月七日の下院歳出委員会で、アメリカが九十億ドルを要請し、日本側がこれに応じたんだということを証言しております。アメリカの議会で公式に発言した財務長官の証言について訂正を求められますか、まずこのことをお伺いしたいと思います。
  231. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一に、私ども日本の議会における我々の発言に責任を持っております。その上で率直に申し上げますが、私自身が一月の二十日にブレイディ財務長官とお目にかかった当事者でありますが、その際、いろいろなお話はありましたけれども、九十億ドルという数字についてお話が出てはおりません。何回も実は本院でも申し上げております。そしてこれが、皆さんがお認めをいただけるかどうかわかりませんけれども、私が帰国後、総理に情勢を御報告をし、政府・与党首脳会議で意見の調整をし、総理が最終的に決断をされた後、所要の手続を終え、海部総理からブッシュ大統領に、日本政府として多国籍軍に対する資金協力についてこういう方針を決めたという連絡をとられたわけでありますが、それを受けたアメリカ大統領報道官のフィッツウォーターさんの記者会見の中で、日本政府の多国籍軍に対する資金協力の意図表明に対して感謝するという言葉が出ております。
  232. 吉井英勝

    吉井(英)委員 大蔵大臣は今そういうふうにおっしゃいました。アメリカのブレイディ財務長官の方は、これはアメリカの議会での公式の発言、証言として、これは日本に対して九十億ドル要請したと言っているわけですね。ですから大蔵大臣のおっしゃるのが、それがそのとおりであれば訂正を求められたらいいと思うのです。この点はいかがなんですか。
  233. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 アメリカの議会と行政府関係に私は介入するつもりはござません。
  234. 吉井英勝

    吉井(英)委員 これでは国民の皆さんはとても納得できないと思うのですよ。やはりアメリカ政府は、議会で政府の財務長官は証言し、日本の国会で日本大蔵大臣は全く違うことをおっしゃる、どっちが正しいんだ。私はこれは全く違う問題については、こういうことでは信頼は得られないと思いますし、私自身そういうことではこれは信用できないということを申し上げておきたいと思うのです。  二月の二十二日にブッシュ大統領は湾岸戦争の戦費としての補正予算案を議会に提出いたしました。午前中からも議論がありました。私も、ここに二月二十二日付のホワイトハウスの補正予算についての文書を持っております。この文書、もちろん総理大蔵大臣もごらんになっておられるようでありますが、その際、日本など同盟国がアメリカに約束した戦争費用分担金を発表しておりますね。総額は四百三十八億ドル、日本は九十億ドル、注意書きで、日本の国会で審議中となっています。つまり、アメリカ日本に要請したとも言うし、そしてアメリカ予算書の中では九十億ドルが入っているわけですね。だから、やはりこれは要請があった、それにこたえて九十億ドルが組まれた、こういうふうに見るのが至当じゃないでしょうか。  まず、この予算書に九十億ドルが載っていること、これはこのとおりですね。
  235. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 アメリカの議会に提出をされました予算書の附属資料の中にそういう数字を掲載しておる部分があることは、先般来も議論があり、よく承知をいたしております。ただ、これはアメリカがどうお考えになりましょうと、日本政府は湾岸平和基金にこれを拠出する、何回も申し上げております。  また、大変アメリカの方の御発言の引用をお好みのようでありますので、大変失礼でありますが、同じ日の下院の証言の中で、ブレイディ財務長官は、全額がアメリカではない、英、仏と例示の国名を挙げて、ほかの国にも配分されるということを述べておられます。これもアメリカにおける議会の証言であります。
  236. 吉井英勝

    吉井(英)委員 英、仏の問題についてどう述べたかはともかくとして、日本について食い違いがある分についてはきっちり訂正をされるべきだということを申し上げているのです。  それで、このアメリカ補正予算の資料の中では、九十億ドルというのはこれはちゃんと入っているわけですよね。これは日本の国会の場合でも、歳入について例えば税について書くでしょう。これは税収が入る年入らない年があって、過不足は出るでしょう。しかし、アメリカの方は、これは予定をして九十億ドルを入れているわけですね。ですから、これはちゃんと約束があってのことじゃないのですか。
  237. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 何回同じことを申し上げたら御理解がいただけるのでしょう。九十億ドルという資金は、日本は湾岸平和基金に拠出する、何遍も申し上げております。そして、その湾岸平和基金で決められました配分の内容によって、多国籍軍を構成する各国に当然送られるでありましょう。アメリカが一番大きな構成要素でありますから、その大宗を占めるでありましょうけれども、九十億ドル全額がアメリカに供与されるというものではないということは繰り返し申し述べているところであります。
  238. 吉井英勝

    吉井(英)委員 政府が言うように、湾岸協力基金に入って、そこで運営委員会で決めるからというのであれば、アメリカの方は予算書で九十億ドルを書いているわけですから、そうすると、どのようにその九十億ドルが湾岸協力基金から各国に割り当てられるのか、この基準はありますか。
  239. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 九十億ドルに関しまして、総理を初め私どもから何度も御説明しておりますが、湾岸平和基金に拠出いたしまして、そこの運営委員会で各国からの具体的な要請を踏まえて検討し決定するということでございまして、現在までのところ、もちろんアメリカも大きな期待を抱いておりますが、そのほかイギリス、フランス、それから相当多くの開発途上国も期待をかけております。従来の十九億ドルに関しましては、ちなみに従来この委員会で対象が十カ国と申し上げましたが、その後三カ国ふえまして今十三カ国ございます。つまり、アメリカ以外に現在も十二カ国を支援しているということでございまして、今度の九十億ドルに関しましても、相当多くの国が期待をかけているということをこの場で申し上げたいと思います。
  240. 吉井英勝

    吉井(英)委員 今おっしゃったのは九〇年度分のことなんですね、十月の一日から十二月の三十一日までの。それは、おっしゃるように二十億ドルのうちの十七億四千万ドル、つまり全額がアメリカへ行ったのではない、いろいろな国へ行ったというのは、これはおっしゃるとおりなんです。それはこの予算書に書いてあるわけですね。それで、九一年度、ことしの三月三十一日までの補正分については九十億ドル、日本から、日本の国会で審議中と載っているわけですね。湾岸協力基金に行った、そこから先が九十億ドルという約束がなければ書くことはできないわけですね。ですから、その協力基金の運営に当たって何か基準があるならば、基準をちゃんとお示しいただいたらいいと思うのです。
  241. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生が繰り返し基準ということでございますけれども、これは具体的な使途ということでございますと、総理が繰り返しおっしゃっておられますように輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等ということでございますが、具体的にどの国に出すかという点に関しましては、先ほども申し上げましたように、運営委員会で各国からの具体的な要請を踏まえて検討するということでございまして、現段階で国別配分は決まっておりません。  ただ、今大蔵大臣が申し上げましたように、湾岸におきまして平和回復活動を行っております中心はアメリカでございますから、当然大宗はアメリカに参りますけれども、私が先ほど申し上げましたのは、従来の十九億ドルで十三カ国を支援しているということで、これらの国々がみんな今度の九十億ドルにも期待をかけているわけでございまして、アメリカ以外にもかなりの国を支援するということが期待されているということを申し上げた次第でございます。
  242. 吉井英勝

    吉井(英)委員 アメリカは九十億ドルの要請をした。そしてGCCの運営委員会の、その中で配分の基準は今お示しにはならなかった。いろいろな国の要求があったが、お話ありましたが、それは九〇年度分についてはこの予算書にも載っているから私はわかっているわけです。そして、GCC運営委員会で配分を決めるといっても、多国籍軍に参加しているGCCの中心メンバーであるサウジアラビア百三十五億ドル、クウェート百三十五億ドルなど、これは、GCCのこれらの国はむしろ拠出する側なんですね。その金もアメリカ予算書には載っているのですが、それを受け取る側はアメリカなんです。その受け取る側のアメリカが九十億ドルを計上しているということなんですよ。ですから、結局これはすべて九十億ドルはアメリカに入るということじゃありませんか。この点が私は大事な問題の一つだと思うのです。  九十億ドルの使途についても引き続いて伺っていきたいと思いますが、この予算委員会の東中委員の質問に対して、日本の九十億ドルがGCCの基金に拠出され、そこからアメリカの防衛協力基金に拠出されるということは、これは政府も認めておられました。そのアメリカの防衛協力基金の金は、米軍の人件費や主要な兵器システムを除く砂漠の盾、今戦争が始まってからは砂漠のあらし作戦でありますが、それに使うと説明しています。そして、防衛協力基金は、この砂漠のあらし作戦遂行のために必要な経費、つまり燃料であり輸送であり装備の補給、整備及び装備の購入、修理、その他基地の運用、そして部隊の維持に使うとなっております。  実際その分は、今度の補正予算としてアメリカ側が発表しているものの中でもこれは具体的に紹介されておりますが、例えばその「○」の四つ目には、これは「当面必要な特定の弾薬及び消耗品の補充、装備の取得及び兵器システムの改修」、つまり、武器弾薬の購入ということもやはりその予算の中では当然のことながら含まれているわけです。日本のお金が湾岸協力基金を経由して防衛協力基金に入って、そしてそれは武器弾薬の購入にも使われるということですね、お金に色はついておりませんから。これは、武器弾薬に使わないと言ってこられたことは何の保証にもならないんじゃないですか。
  243. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘の防衛協力基金でございますけれども、防衛協力基金に関します設立の法律を見ますと、その第h項に「条件の通報」というのがございます。この「条件の通報」というのは、防衛協力基金に寄贈者より付された条件を行政府は議会に通報するということになっております。  先ほど私、従来の十九億ドルの実績に触れましたけれども、この従来の十九億ドルは現在まで約八割が支出ないし契約しておりますが、そのうちアメリカ向けに千百三十三億円が資金協力として提供されております。これは輸送関連ということで提供されておりまして、そういう条件が付されて湾岸平和基金より米国政府に提供されておりますが、米国政府は、今私が触れました第h項の条項に従いまして、議会に対しましてこの資金協力は輸送関連経費に充てることになっているという通報が行われております。  したがいまして、同様なメカニズムに従いましてこの次の九十億ドルも私どもまず、総理が繰り返しおっしゃっておられますように、湾岸平和基金に払い込みますが、その先は、先生御指摘のように、財務省の口座、これは防衛協力基金という名称でございますけれどもアメリカの場合につきましては防衛協力基金でございますけれども、その防衛協力基金が、今申し上げましたようにこの条件を議会に通報する、そして、それに従ってアメリカの行政府は使用するということになっておることを改めて申し上げたいと思います。
  244. 吉井英勝

    吉井(英)委員 そこで、今おっしゃったh項ですね。つまり、「国防長官はこの節の権限のもとで長官が受け取ったあらゆる寄附の使用に関して提供者から申し出のあったいかなる条件についても議会に報告する。」と、今おっしゃったとおりなんですが、そうすると、武器弾薬には使わないと、この条件は付したのですか。
  245. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今までの例で申し上げたいと思いますけれども、従来の十九億ドルは、先ほども申し上げましたように、今十三カ国に提供されておりますが、そのアメリカ向けに提供されました資金協力は、輸送関連経費ということで湾岸平和基金から米国政府に提供されております。これが、先ほど申し上げましたように、そういうことを前提にして米国の行政府より議会に対し、この資金は輸送関連経費に充てることになっているという通報が行われているということを申し上げた次第でございまして、今度の九十億ドルに関しましては、私どもは、基本的には同様のメカニズム、同様の枠組みを念頭に置いておりますので、これは今後のことでございますけれども、湾岸平和基金が従来と同様にこれを運営委員会で基準を決定し、そしてそれを各国に払い込んだ際は、日本側が、総理が繰り返しおっしゃっておりますように、具体的な使途に基づいて行っていくということになると考えております。
  246. 吉井英勝

    吉井(英)委員 輸送協力等に使っていただきたいという条件を付したということで、武器弾薬には使わないという条件を、これはちゃんと湾岸協力基金のところの運営委員会でアメリカに対してつけられたのかどうかですね、この点はどうなんですか。
  247. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど申し上げております輸送関連経費というのは、運営委員会の決定によりますと、具体的には航空機及び船舶の借り上げ経費、その他の輸送関連経費でございますので、要するに航空機及び船舶の借り上げ経費でございます。
  248. 吉井英勝

    吉井(英)委員 これは主要兵器システムの購入以外には使えるわけでありますし、それはきっちり条件をつけない限り何の歯どめになってもいないんだということをまず申し上げておきたいと思います。  さて、そうすると今度は、輸送協力ということを今おっしゃいました。二月十三日の我が党木島議員に対して松浦局長は、何を運ぶかは制約を付しておりません、日本の資金協力は武器弾薬の輸送にも使われるという、そういうことを認める答弁をなさったわけでありますが、総理はたしか、武器弾薬の輸送には使わないとおっしゃったような感じがするのですが、ところがその後、新聞記者の方との中で訂正されたようにも聞いております。武器弾薬の輸送についてはこの輸送協力のお金は使わない、こういうことを総理はちゃんと言われるのですか。
  249. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この場ではっきりと申し上げておりますけれども、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針でありますということを申し上げました。その他のことについては申し上げたことはございません。
  250. 吉井英勝

    吉井(英)委員 ですから、その輸送関連の中には武器弾薬輸送も入るわけですね。
  251. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 武器弾薬を購入することに使うのか使わないのかという具体の質問が随分ございました。そのときに、そのやりとりの中で、私としては、平和回復活動に日本としては拠出するわけでありますが、しかし、結果として武器弾薬の購入には充てられないように我が国の意向を、最終的には運営委員会で決まるのですけれども、反映させていき、結果としてそのようなことにならないようにする、こういう言い方をいたしました。輸送関連の中身の問題については触れたことはございません。
  252. 吉井英勝

    吉井(英)委員 ですから、今改めて聞くのですが、武器弾薬の輸送については、この輸送には使われるわけですね。
  253. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 船とか飛行機とか何で輸送するか、輸送に対する費用、かかる費用、それにどうぞ使ってください、こういう意味でございます。
  254. 吉井英勝

    吉井(英)委員 何を運ぶか制約は付していないというのがこの間の局長の答弁でした。それで、あなたは、武器弾薬の輸送には制約を付していないのですからね。ですから、この輸送には使われるということは、これはお認めになるわけですね。
  255. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和回復活動のために拠金しておるわけでありまして、その使途についてはこれだけだということを何回も何回も申し上げておるわけでございます。
  256. 吉井英勝

    吉井(英)委員 輸送の協力について結局答弁を避けていらっしゃるのですが、武器弾薬の輸送にこれは使うんでしょうということですね。これは使わないなら使わないと言っていただいたらいいのです。
  257. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が方はあくまで国連平和回復活動に対する拠金でありますから、そして、その内容についてはいろいろな御議論がありましたので、私は、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などに充当をします、このことは、言葉をかえて言えば武器弾薬の購入には充当しないという意向をここで、やりとりの中で申し上げました。輸送関連の内容については申し上げておりません。
  258. 吉井英勝

    吉井(英)委員 ですから、購入のことを聞いているんじゃないんです。その輸送関連で、武器弾薬の輸送ということは輸送の中に入っているんですねということを聞いているのです。入らないなら入らないと言っていただいたらいいのです。
  259. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 総理が先ほど来繰り返し御答弁しておられますように、輸送関連につきましては航空機及び船舶の借り上げ経費、その他の輸送関連経費に充てるということでございます。
  260. 吉井英勝

    吉井(英)委員 結局、武器弾薬の輸送については、これはやらないということをおっしゃらない、そのことがはっきりしていると思うわけです。  それで、輸送の中で、これは戦争が始まる前の輸送と違って、戦争が始まってからの輸送というのは非常に大事な意味を持っているわけですね。例えば、私の選挙区に東大阪市がありますが、ちょうどその人口は今サウジへ行っているアメリカの兵士の数に匹敵します。つまり、その東大阪市の五十万を超える市民の水道水を賄うということ、これは大変なことなんですね。つまり、そういうふうに、戦争というのは武器や弾薬や戦車だけでできるわけではありませんでして、例えば戦車が一台走れば、それに対して大体給水車が十数台から二十台は伴っていかないと、あの砂漠では戦争はできない。  つまり、輸送といっても、水の輸送も食糧の輸送も全部ひっくるめて戦争というのは成り立つわけですね。これは、輸送というのは兵たん活動、後方支援の最も大事な部署だということ、これなしに戦争継続はできないということは、昨年の協力法案の審議のときに当時の防衛庁長官を初め防衛庁の皆さんも認めておりました。総理は、一兆一千七百億円の追加支援は食糧、医療、生活関連などと答弁し、武器弾薬の購入以外なら戦費でないかのように言っておられますが、戦争というのは兵たん活動がないと遂行できないのは明らかです。結局、九十億ドルというのは、これは戦費そのものであります。  ところで、戦争が終結したときに、このアメリカ補正予算によりますと、余った金はすべてアメリカの財務省に入るとなっていますね。日本国民は一人当たり約一万円ですか、一世帯四万円ぐらいの税負担に結局なってくるだろうということで九十億ドルを負担をするという話が今出ているわけですが、積算根拠も十分お示しにならない九十億ドルで、しかしそのお金が残ったときには、これは防衛協力基金から今度の砂漠の盾のための特別会計に移転してよろしいという、これが今度の法律案でありますし、そうすると残ったお金は結局財務省のお金に入ってしまう、これが今度の予算書の持っているもう一つの大事な意味ではないでしょうか。この点はどうですか。
  261. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘の砂漠の盾運営基金口座は、これは今回ブッシュ大統領が要求しておりますアメリカの百五十億ドルの受け皿でございまして、この百五十億ドルに関しまして、今先生御指摘のように残れば国庫に返納するということでございまして、防衛協力基金はこの砂漠の盾運営基金口座に移されるわけではございませんで、そこから直接個々の口座に移されるということでございます。
  262. 吉井英勝

    吉井(英)委員 外国からの拠出金、防衛協力基金からの移転を認めるとなっていますね。それがもう一つの方であって、もう一つ今あなたがおっしやったそのいわゆる砂漠の盾、砂漠のあらしのための運転資金会計、特別会計、これは残余が生まれれば財務省へ返す、こうなっているんですね。ですから、諸外国の拠出金は、これはこの特別会計へ移転できる、その特別会計が砂漠のあらしの作戦が終わったときにお金が余れば、これは財務省に入る、こうなっているんでしょう。
  263. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 一般論で申し上げますと、アメリカ政府が今回補正予算で要求しております、これはアメリカ政府のお金でございますが、この百五十億ドルが砂漠の盾の運営基金口座に払い込まれまして、それが余れば財務省に戻されるということでございまして、先ほどから申し上げておりますこの防衛協力基金というのは、これは財務省の所管にございまして、今回補正予算でここに言及ございますのは、防衛協力基金からその他の口座、これは今私が申し上げております運営基金口座でございません、別の個々の口座に移す権限を求めているということでございます。  それからさらに、日本の貢献との関係で申し上げますと、先ほど来申し上げておりますように、湾岸平和基金におきまして、アメリカを含めまして各国からの実際のニーズを踏まえました具体的な要請を踏まえて検討を加え、そして支出するということでございますので、ほかの国の防衛協力基金の払い込みについては存じませんけれども日本に関して申し上げれば、今申し上げたようなことで、アメリカであれ、アメリカの具体的なニーズを踏まえて、具体的な要請を踏まえて、この湾岸平和基金の運営委員会で検討するということでございます。
  264. 吉井英勝

    吉井(英)委員 アメリカの方は日本に対して九十億ドルの要請をした。そして、アメリカ予算書では九十億ドルが予算化されていて、そして一方、その予算の中では砂漠のあらしという戦争のための特別会計に対して、日本などが拠出した九十億ドルですね、これがGCC、協力基金をトンネルにして通ったにしても、防衛協力基金口座に入る。防衛協力基金口座のこのお金というのは、これは砂漠の盾のための、砂漠のあらしという戦争のための特別会計に移転することもてきるとなっているわけですね。そして、この特別会計で残余のお金が生まれたときには、戦争が終わって残余のお金が生じたときには、これは財務省のつまり国庫へ納めてよろしいとなっているわけですね。これがこの問題なんですね。日本国民戦争が終わるまで、これは戦費の負担としてこの九十億ドルを負担するわけですが、戦争が終わったらその残ったお金はアメリカの国庫に入る、これがこの問題でしょう。そのために今、日本国民は、これは一人当たり一万円、一世帯四万円というこういう負担ですね。この今度の九十億ドル、一兆一千七百億円というのは、ちょうどこれは日本の生活保護の年間予算に匹敵するわけですね。それくらいのお金が、これが戦費として投入されるわけであります。やはりこういうふうなやり方については、日本国民の皆さん、こういうやり方ではそれは納得できない、こういうふうに思います。  国連憲章の前文では、「われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、」つまりあの二度にわたる大戦の教訓の中からこの国連が誕生し、その第二条では、国際紛争を平和的手段によって解決をする、これが国連の原則的な立場です。日本国憲法も、これも第二次世界大戦を初めとする戦前のあの侵略戦争の教訓の中から、そこから日本国憲法の前文が生まれているわけです。そして日本国憲法第九条では、日本は国権の発動としての戦争はこれをしない、放棄する。そして国際紛争の解決に当たっては武力行使はしない、武力による威嚇はしない。また第二項では「交戦権は、これを認めない。」つまり、日本立場は、平和的手段で国際紛争を解決するという立場です。そして、国連憲章の立場もまた、これもまた平和的手段で解決するという立場です。これが、日本の平和的手段で世界平和に貢献するという国際的貢献の立場であるはずです。  こういう立場からしたときに、この戦費協力のための、憲法違反の戦費調達の一兆一千七百億円、こういう補正予算案については……
  265. 渡部恒三

    渡部委員長 吉井君、時間が参りましたので、総理大臣に答弁をお願いいたします。
  266. 吉井英勝

    吉井(英)委員 撤回されることを求めて、時間が参りましたので、質問を終わります。
  267. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ちょっと言わしてください。  いろいろお述べになりましたけれども、日ごろ批判的なアメリカの議会の資料をそこまで御信用なさるなら、アメリカ大統領の声明ももっと読んで、今度の戦いは平和回復のための国連決議に従った秩序を守るための共同行動である、この武力行使に対して適切な支援を求められて、その適切な支援を湾岸平和協力基金へ日本が自主的に判断をして九十億ドル提出を決めた、こういうことでありますから、ここは日本の国会でありますので、日本の答弁、日本がこのような意向でやりますと言ったことは、これを信用されることの方が、私は国会の論議としてはぜひお願いしたいことである、このことだけは時間がないから申し添えておきます。
  268. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  269. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 一昨日、二十四日の正午に、地上戦突入に当たってのブッシュ大統領の記者会見を私はテレビの生中継で見ました。そのときに、大統領が、仕事をちょっとやめてと言ったと思うのですが、神に祈ってほしいという話をされました。私はそれを見ながら、黄色いリボンのついている情景も思い浮かべながら、本当に無事に帰ってほしいと心から願ったわけであります。  きょうはできるだけ基本的な問題から議論をしたいと思いますけれども、私の質問時間も余り多くありませんので、簡潔に御答弁をぜひお願いを申し上げたい、このように思います。  まず、この湾岸戦争について、日本支持をしております多くの決議国連決議がありました。そして、その国連決議あるいは多国籍軍をリードしているアメリカの大義といいましょうか、基本的な価値観というのはどういうものであるというふうに考えておられますか。
  270. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように決議はたくさんございますが、私は、その根底をなすものは、力でもって侵略をし併合するという行為は許すべきものではない、これは国連憲章にも書いてあります平和の破壊と名指されるものであって、それを許してはならぬということがすべての決議の根底になっており、公正な平和を確立しなければならない。  アメリカが今度、多国籍軍の先頭に立って多くの人的犠牲も払って、今委員おっしゃったように、アメリカの若い男女の犠牲という現実の問題を乗り越えてなお守らなきやならぬとしたのは、国際社会の大義であり、力でもって他国を侵略してはいけないということをきちっと、世界じゅうの先頭に立って認識をしなければならないという理念に基づいた行動であると私はこのように受けとめており、日本もそういった意味でそれを支持しておるわけでございます。
  271. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今総理の言われたように、日本もそうした大義を考え、そしてまた、いわば自由と民主主義あるいは正義のためにこの大義を支持して、日本もそういう外交の方針をとっていると思うのですね。  そこで、伺うわけでありますが、国連が、いわば今言われた平和とあるいは国家の主権を守るために数々の決議をして、あるいは決議の六百七十八では武力行使も容認をいたしました。そして、米国を中心としたその多国籍軍平和回復のために行動する、そのための費用ということで九十億ドルの支援日本がしようとするとき、そういうふうにするとしたときには、その使途について制限をするということは、私は国連決議の否定になるんではないんだろうか。それはひいては国連を、国連の力を弱くするものではないんだろうか、こう思うのですね。そしてまた、我が国がそうしたような行動をとることは、いわば国際社会の常識からは逸脱している話ではないだろうか。したがって、国際社会の中で見れば、いわば軽べつされる話になるという性格のものではないかと思いますけれども、いかがですか。
  272. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国の許される範囲で、できる限りの支援をするということが基本的な立場でございまして、我が国の場合は、委員も御承知のように憲法の制約もございます。この委員会でのたび重なる御議論の中でも、私は委員のようにそういった高い次元に立って率直な御質問をいただくこと、こういうお立場もございますが、まるっきりそれと相反するお立場の御意見もあるわけです。それが国会の中の各党各会派の御議論の実態だと私は受けとめさせていただきながら、政府としてはそのときにどこまでできるか、何ができるかということを御説明させていただき、その線に従っております。  したがいまして、今言われたような御批判がいろいろなところからあるということが起こったとしても、その批判は政府責任として受けながら、できる限りの協力をしておりますから、ブッシュ大統領初め、いろいろな国の首脳も私どもに対し、日本の置かれた立場はよく理解しながら、そこの中でこれだけしてくれたということに対しては、日本も我々を支持しておってもらう、非常に感謝しておるという、そういった表現の意思も私に伝わってきておりますので、日本日本独自の立場で、しかられたり批判されたり激励されたりしながら、一歩一歩前進をしていきたいと考えております。
  273. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今総理も言われましたので御認識かと思いますが、例えばアメリカの議員の発言なり、あるいはアメリカの雑誌なりを見ますと、例えばアメリカの雑誌に、つい最近の雑誌ですが、こういうふうに出ているのですね。あるコラムニストが書いております。最も重要な疑問は、そのコラムニストが考えている最も重要な疑問は、日本の一般大衆が西側諸国の国民とどれほど価値観を共有しているんだろうか、そういう疑問さえ最大の問題として感じますよというふうに言ったりしているのですね。これは総理も認識されていると思うのです。  そういうふうに考えたときに、こういう今申し上げたように使途を制限するということは、制限しないのと比べて、国際社会の中において日本の発言力は低下をする、比較の上でですよ、発言力を低下させるものであって、そしてまたこの中東問題、この戦争後の問題もかもしれませんが、日本の発言力を低下する、弱めることであるというふうに認識をされますが、いかがですか。
  274. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この立場でできる限りのことをして、そして国会でその審議をお願いし続けて提出するということについて、世界の国々がその立場理解してくれるように私どもとしても精いっぱいの努力をしていかなきやならぬ、こう思います。
  275. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 努力をしなきやならないということでありますけれども、現在のこういうことを、今私たちがやっているそのことの意味は一体何だろうかということはちゃんと踏まえておいた方がいい。そういう意味で考えたときには、こういうものに使途を設ける云々というのは本来意味のないことというふうに考えられますよね。だから、そういうことをやっていると、これまたやはり、これは最近のニューズウイークに出ていますが、まさに内向きの大国日本、先ほど総理のちょっと言われた話に関連するわけでありますが、内向きの大国日本だ、こういうふうに言われたりしていますよね。こういうことをしていると、本当に日本の発言力も弱くなるよということだと私は思うのですよ。ひょっとしてこのために、例えば一月十七日のあの開戦のときも、日本には十五分前でしょうか、そのときに連絡があった、アメリカから連絡があったようであります。あるいはソ連には一時間前に連絡があったようでありますよね。こういうのは本当に、日本がいわゆるパートナーとして見たときに、発言力を弱くしている、あるいはその信頼関係をだんだん薄くしているということだと私は思うのです。ぜひそういうふうにお考えをいただきたい、こういうふうに思います。  ところで、一月に総理がASEAN諸国各国に歴訪する予定になっておりました。あれが、あの計画が国連決議の六百七十八号のあの武力行使のデッドラインの一月十五日をまたいで計画をされていたのはどういうことかですね。あのときに戦争になる確率はかなり低いと判断されたんでしょうか。
  276. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 海外を訪問しますときは大体半年ぐらい前から計画を立てるということで、そしてちょうど一月十五日のデッドラインがその後決まったわけでありますけれども、そのときに私はいろいろなことを考えました。けれども、総合的に、結果としては決定は閣議決定もいたしませんでしたし、行くこともできませんでしたが、各国首脳と直接電話で話をして、その情勢を説明して、あれは取りやめたわけでございます。
  277. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私が申し上げたのは、本当に戦争になる確率は低いと思われたんだろうかということでありますが、私は、去年の十二月初めにニューヨークの国連に参りました。あのときにいろんな多くの大使等にも話も聞いたりいたしました。そしてまた、総理も御承知かと思いますが、十二月の初めに、十二月二日号だったと思いますがニューヨーク・タイムズに、この国連決議六百七十八号を結ぶに当たってゴルバチョフとベーカーの対話の話が細かく新聞に報道されておりました。そして、本当にああいう決議を、デッドラインを設けて決めた場合には、ゴルバチョフがこう言うんですね、決めた場合には、もしもそれまでに平和的に解決されなかったら武力行使をしなければならぬ、いいだろうか。そしてそのときにベーカーは、ブッシュの言葉として、もちろんである、そのつもりだという話をいたしました。それに対してゴルバチョフも、そういう決議ならやりましょう、そしてそのために具体的な手続まで、こういうやり方をしてというふうに、いわば私は米ソが合意をして、いわば合意をしてああいう決議になったと思うのですね。私は本当にこういう状況を見たりしていまして、あるいは向こうの人の話を聞いてみても、戦争になる確率は極めて高い、こういうふうに思いました。だから、そういうふうな意味で考えてみたときに、ああ本当にいいのかなということを感じます。  私は、今、日本が危機管理不在の、一人前じゃなくて半人前の国家ということを日本は言われたりいたしますよね。それでひょっとしたら、こんなことはないと思いますけれども政府に外交が、日本の将来を文字どおり決定をする、そういう真剣、真剣さはあると思いますが、そういうものも疑ったりする、あるいは総理の外交に対するリーダーシップも大丈夫だろうかと思ったりするのですよ。  二つだけ例を挙げます。  一つは、これまたアメリカの新聞に出ています。日本の外交は、いわゆる外交の一元化というのはどこに行っちゃっているんだろうか、だれに話をすれば日本の外交は決まるんだろう、だれが外交を決めるんだろうというふうにアメリカの新聞にも出たりいたしました。こういう外交一元化に関する問題。これは実は与党の幹部の人たちについての話でございます。  そしてもう一つ、これは野党第一党の人たちについての話でございますが、元駐日イギリス大使が日本の新聞に投書をしております。その新聞を読みますと、ことしの一月中旬に湾岸問題でバグダッドに野党第一党の党首が行かれました。そのときに、ちょうどあの時期にデクエヤル事務総長を何時間も待たせて、そしてその行動日本の威信を失墜させ、世界の物笑いになった、こういうふうにその元大使は書いておられます。どうなんでしょうかね。しかし、これは考えてみれば、政府の外交のリーダーシップのなさがこういうふうにさせている、その裏返しかもしれないと思いますね。いかがでございますか。
  278. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御批判は率直に承っておきますけれども政府として外交の責任を負うのは政府であるという基本を踏まえて、いろいろと努力もいたしておりますし、また責任を持って危機管理においても諸方面との外交政策においてもいたしております。また各党あるいはいろいろな立場のお方がいろいろ心配をして動いてくださったこと等もこれはよく承知いたしておりますが、一々それについてここでコメントすることは差し控えさしていただきたいと思います。
  279. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これはあえてもう一度申し上げますけれども、私は本当に日本の、これからの国際社会の中でどうやってやっていくかというのは、文字どおり外交がそれを決めるわけですね。そういう意味でぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。  そこで、ソ連ですね。ソ連はバルト三国に対して武力行使をして、多くの犠牲者を出しております。さらに、私は去年の十一月以降、十一月と言っていいかどうかわかりませんが、十一月以降のゴルバチョフ大統領あるいはソ連は、かつてのソ連に戻ってしまっているかもしれないというふうに思います。そういうふうに考えたときに、ゴルバチョフ大統領は予定どおり来日をされることになりますか。  これは冒頭お話をいたしましたけれども日本が、これは総理も言及をされましたけれども、自由のために、正義のためにこの湾岸戦争支持し、あるいはその大義のためにと、こう言われました。自由や民主主義やあるいは人権、そういうことを基本として据えようとするときに、ソ連のゴルバチョフ大統領がこの春に来られることは、日本の外交のひょっとしたら基本に抵触しやしないかしらんということで、無条件にゴルバチョフ大統領の来日を受け入れるべきではないじゃないかと言う専門家もいらっしゃいますけれども、いかがですか、予定どおり来られますか。
  280. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 無条件に受け入れるべきではないというその専門家の意見の御披瀝もありましたが、私はゴルバチョフ大統領にも言うべきことはちゃんと申し上げておりますし、また最近のペレストロイカの現段階を見ると、バルト諸国における武力行使とかあるいはグルジアにおける力による抑えつけ、ああいったものに対しては私も憂慮をいたしておりますし、ペレストロイカの方向性は支持しておりますから、ペレストロイカが成功することを願っておりますから、これに対しては平和的な方法で国内は解決をされて、さらに前進することを強く期待をしておるところでございます。  話が長くなりますから結論だけ申し上げますが、来日されることを私は強く期待しておりますし、それは大切なことだと思っておりますし、二十四日の未明の電話でいろいろ話しました。その最後に、四月には日本に来てもらうことを自分も待っておるからと言いましたら、ゴルバチョフ大統領自身が、自分も四月に日本へ行って会うことを大きな期待を持っておるということでありますから、現段階において、私は迎える、そして四月の来日はある、こう見ておりますし、これは大切な、抜本的な関係改善をして、北方領土の問題やあるいは平和条約の問題や、真に安定した日ソ関係をつくっていくためにはこれほど重要な節目はない、こう思っておりますので、積極的に対応していきたいと思っております。
  281. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の環境は非常に変化している、私はこう思いますが、今総理が言われたように、もしも来られる、こういうことを期待したときに、大統領が来られたとき具体的にどういう成果を期待されますか。何を大統領に認識をしてほしい、こういうふうに思われますか。
  282. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本ソ連は隣国であります。そして、真に安定した友好関係を築いていかなければなりません。御承知と思いますが、私が就任以来、ソ連から日本に対する経済調査団とかあるいは行政機構の調査団とか価格メカニズムの決め方の調査団、四回も来日がありました。その都度、熱心に日本の各界の人と語り、各界を視察してまいりました。職業訓練所とか中小企業庁とか、そういったところとか、あるいは学者に会って直接意見を聞いたり、いろいろしていかれました。その報告書の結果というものは、ソ連の近代化というもの、それはアメリカやイギリスやフランスのことよりも、どうもソ連が近代化していくためには、日本のように戦後四十五年のこのはい上がりの動きの中に経済の繁栄もあり、いろいろ手本にすべきところがあるのではないか、こういう強い興味があるから四回も来るんだというお話もございました。積極的に対応をいたしております。  そうして、本当に安定した関係をつくることがアジア・太平洋地域の平和と繁栄にも役立っていく。東西の対決の終わりはヨーロッパだけではいけない、アジア・太平洋にも持ってきたい。東西関係の残滓がもしあるとすれば、それは北方領土の問題であって、これを解決をして平和条約を結んで、真に安定的な日ソ関係に抜本的に改革をしていきたいというのが日本の願いであり、事ごとにこのことは、メッセージとしても、あるいはついこの間も中山外務大臣を派遣した日ソの外相会議でもそのことについては共通の認識を得ておりますので、まだつい二十四日の日に私は電話で直接確認もしたことでございますから、そういう安定的な方向に向かっての抜本的な改善をしていきたい、そのための大切な節目にしたい、こう思っております。
  283. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ちょっと突然でございますけれども、五時二十九分のファックスで流れたわけでありますが、イラクの大統領が二十六日中に撤退を完了すると発表したようでございますが、どのように考えますか。
  284. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今のお話は、先ほど私どもの手元にも、サダム・フセイン大統領日本時間の午後五時に演説をするというニコシアの放送局からの放送を連絡として受けておりまして、今委員がお示しの撤退に関する事項については、まだ外交チャネルを通じての公式な連絡はございません。
  285. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 次に、この湾岸戦争後の問題について伺いますけれども、この湾岸戦争が終わった後、そのときの損害賠償責任の問題についてお伺いしたいわけでありますが、イラクのために、クウェートにいた日本人あるいは日本の企業、あるいはサウジにあった日本の企業あるいは個人ですね、そういう人たちに対して、国際法日本イラクに対して損害賠償を請求する権利があると思いますが、いかがですか。
  286. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国際法にかかわる問題につきまして、私の方からお答えをさせていただきます。  イラクによるクウェートの侵攻及び不法な占領の結果もたらされましたクウェートあるいは第三国並びにそれらの国民及び法人につきまして生じた損失、損害等に対しましては、イラク国際法責任を負っているということを国連安保理決議六百七十四号、これは第八項でございますが、この決議におきまして言及されているわけでございます。また、イラク行為によりまして損害をこうむった我が国あるいは第三国の国民は、その損害等につきまして同国に対し損害賠償を請求する私法上の権利を有しているわけでございます。  しからば、国民のこうむった損害との関係におきまして、その所属する国は国際法上いかなる権利を有するかという点があるわけでございますが、この点につきまして一般論を申し上げれば、国家は、自国民が国外におきまして外国の国際違法行為によって損害をこうむった場合、被害者である自国民について生じた損害に関しまして適当な救済が与えられるように必要な措置をとるよう、その被害を与えた国に要求することができることになっております。  現状では、なかなか現地の損害の実態はつかみにくい状況でございますが、基本的な考え方を述べさせていただければ以上のとおりだと思います。
  287. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 請求できるということでありますが、それでは日本は戦後、請求をしますか。
  288. 久米邦貞

    ○久米政府委員 イラクが、クウェートの侵攻及びその不法な占領の結果もたらされた損害について責任を持つ、有するという点については、先ほど条約局長から答弁がございましたとおり、国連決議六百七十四号にも書いてございますけれども、具体的などういう形で追及するかという点については特に決議には言及がございませんで、これから各国間で緊密な連絡をとりながら考えていく問題であると思っております。
  289. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の話は個人の財産についてもこれは含むのですね。個人の財産も当然含みますね。
  290. 久米邦貞

    ○久米政府委員 含みます。
  291. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 そのときに、当面イラクにはなかなか賠償する能力がないかもしれませんね。そのときには政府が何とかするということでしょうか。
  292. 久米邦貞

    ○久米政府委員 ただいま申し上げましたとおり、具体的にイラクに対してどういう形で責任を追及していくかということについては、戦争の終結を待って恐らく各国の間で協議が行われるんであろうと思います。それで、イラク側から実効性のある形で責任を果たすことを追及するためには、やはりこれは国際協調、関係国の間で緊密な協調を保ちながら事を進めていく必要があるという認識でございまして、既に各国とも連絡をとっておりますけれども、現在ほかの国もこの点について、すなわちイラクにどういう形でこれを追及していくかという点についてはまだ検討に入ってないという状況でございます。
  293. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 各国、他の国等は連絡をとりながら検討しているようでありますが、先般も人質として日本人がイラクにいたときに、なかなか外務省も、帰ってこられてからいろいろな事情をヒアリングするとか、そういうこともしなかったようなことがいろいろ報道されたりしております。したがって、そういう方々との連絡等もしっかりやっていただきたい、ぜひ思います。  それから、時間がありませんのであと一つだけお伺いしたいと思いますが、この戦後の貢献策の一つとして、ペルシャ湾に多くの機雷があると思うのですね。それを取り除くために掃海艇を派遣する考え方があるかどうか、その準備をしているかどうか。やろうとすれば、余りもう時間がないわけでありますが、しているかどうかをお聞きしたい、こういうように思います。済みません、時間がほとんどありませんから結論だけお願いいたします。
  294. 池田行彦

    ○池田国務大臣 仮に武力衝突が終わりましても、日本としていろいろな面で協力支援する必要があることは御指摘のとおりだと思います。しかし、ただいま御指摘の機雷の掃海につきましては、防衛庁としても検討しておるわけでございませんので、ここであれこれ私の方から申し上げるのは差し控えることが至当かと存じます。
  295. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これで終わります。──大臣、お願いします。
  296. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先ほど委員からお話のございましたサダム・フセイン大統領の演説について、ただいま手元に情報が入りましたが、現在サダム・フセインはまだ演説中でございます。それで、先ほどのきょうじゅうに撤退するとの話はニコシア発の放送局の放送で我々が情報をとっているということでございますので、御理解を願いたいと思います。
  297. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 終わります。
  298. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず総理大臣にお伺いをいたします。  自衛隊機派遣特例政令の根拠法規であります自衛隊法第百条の五「長官は、国の機関から依頼があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」この「国の機関から依頼があつた場合」、この「国の機関」とは具体的にどういう組織ですか、あるいはどういう人ですか。
  300. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回のケースに即して申しますと、難民の問題は日本では外務省の担当だと思いますので、外務省からの御依頼ということになろうかと思います。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、早まっちゃいけませんよ。まだ特例政令を言っていないんですぞ。その特例政令の根拠法規である百条の五、今読みました。これの「国の機関から」はどういう機関ですかと、それを──違うんです。ああ、そうですか。ちょっと答えてください。今のでいいんですか、総理大臣。今のでいいですか。時間がないから的確に答えていただきたいから言っているんです。特例政令のことを今言っているんじゃない。これは後で聞きます。
  302. 渡部恒三

    渡部委員長 畠山防衛局長
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、ちょっと誤解があるようです。いいですか。じゃ、ちょっと後で答弁をいただきます。私はなぜこう言うかといいますと──いや、違うんですよ。
  304. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 委員長から御指名をいただきましたので……
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうして防衛庁が出てくるんですか。
  306. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 自衛隊法の規定でございますので、私の方から答弁さしていただきますが、「国の機関」ということでございまして、国が国賓等の要請をすべき立場にある、その所管、所掌事務にある官庁からの、あるいはそういう立場からの、機関からの要請ということでございまして、現に過去にも外務省以外の機関からの要請もございました。それは、その場合に応じての適切な機関からということであると思っております。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今のを要約すれば、関係の省庁ということになるのでしょうかね。そうでしょう。防衛庁だけじゃないでしょうが。どうして私がそれを聞くかというと、いいですか、私は根本法規を聞いているのです。例えば、この百条の五を受けた施行令、第百二十六条の十六、これはこの百条の五の政令を羅列しています。例えばその一に「天皇及び皇族」、こういう場合、総理大臣、こういう「一 天皇及び皇族」、この場合は要請をするのはどの機関ですか、防衛庁ですか。
  308. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 素直に考えますと、宮内庁が国の機関として要請するのだろう、私はそう思います。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私もそのように思いますよ。  それで、法制局長官にお伺いしますが、これまで今の百条の五の「国の機関から」と、この「国の機関」は国会では論議がありましたか、詰めが行われましたか。
  310. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  ただいま総理からもお答えございましたように、国のいわゆる依頼する事項を所管する行政機関ということだと思います。そういう意味で格別のここのところについての御議論があったとは私は承知しておりません。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私も随分調べてみました。私の勉強不足かもしれませんが、ないのです、国会論議、昭和六十一年にこれが出たときに。こういう重大なことを何でないんだろうか。今法制局長官にお伺いしたのは、念を押したのです。私が調べた範囲内ではなかったから、あるかもしれない。ところが、ない。ないということになると、もちろんこの、今お答えになりましたそのそれぞれの関係の省庁、念を押しますが、それでいいんですね。それは海部内閣の確定解釈でいいんですね。つまり、六十一年のときには、六十一年のときはあなたは内閣総理大臣ではなかった。だから、今の御答弁は確定解釈と承ってよろしゅうございますか。
  312. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、先ほど素直に答えて、国の機関というものは、それぞれ国の職務を担当する機関が要請するものだ、こう考えましたから、そのようにお答えをいたしました。それで、確定解釈とかなんとかになってきますと、これは法制局長官が控えておりますから、法制局長官から答えてもらいます。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 必要があればお答えをいただきたいが、さっき早まって特例政令のことについては外務大臣とおっしゃいましたね、「国の機関」は。外務大臣の依頼があった場合、防衛庁長官に、そういう答えでしょうが。そうでしょう。そうなんですよ。そう今まで新聞にも載っておったし、今までないのです。  では、確かめましょうか。いや、そうじゃないんだよ、国の機関の依頼があった場合というのは、特例政令による、そうあるじゃありませんか。いいですか、こうあるでしょう。特例政令のその提案理由の、国の機関から依頼があった場合ということ、ここに書いてありますから、この場合の「国の機関」というのは外務大臣防衛庁長官答えたはずです。  時間がありませんから、先に進みます。  何で私がこういうことを言うか疑問があるようでございますから言っておきますけれども、法制局長官も聞いておってくださいね。あなたも一緒になって、あなた、執筆者になっている。これまで林さん、高辻さん、吉國さん、角田さん、茂串さん、これが編集委員になっている法令用語辞典というものがありますね。あります。この中にこうなっていますね。国の機関は、いいですか、三権分立ですから、立法機関、司法機関、行政機関。司法機関といえば最高裁長官も国の機関になる。いいですか。国会、国会も国の機関になる。  それで私がお伺いしたいのは、この百条の五、特に特例政令は国論を二分し、憲法にも違反するのではないかという大きな疑問が出ているから、この特例政令の国の機関からの依頼の場合に、あなたの解説にもあるとおり、国会であってはなぜいけないのですか。それを私は聞きたかった。
  314. 池田行彦

    ○池田国務大臣 今回の場合は、国際機関からの依頼を受けて、要請を受けて避難民を輸送するという仕事でございますから、この仕事は、現在の国家行政組織法なりあるいは外務省の設置法なりを見てまいりますと、これは外務省の所掌事務になるであろう。したがいまして、今回の任務につきましては、第百条の五の「国の機関」というのは外務省になるであろう、こういうことでございます。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりました。総理大臣は、皇室や皇族の場合には宮内庁が内閣に言ってくるであろう、宮内庁の発議で。そして内閣が機関として、これは内閣法にあるでしょう、閣議というものが。これは機関なんですよね。だから、それも国の機関です。そして国の機関として依頼をする、こうなるんじゃありませんか。だから私は、先ほど言っているように、外務省に来るでしょう、IOMから、特例政令の場合。外務大臣は単独ですぐ防衛庁長官にお頼みになりますか。閣議に諮るんじゃないですか、こういうことが来ましたと。つまり、さっき総理大臣がお答えになったとおり、宮内庁から要請があっても宮内庁が直接防衛庁長官に言うのではない、一遍閣議に諮る、これが順当ではないのですか、手続としては。いかがですか。法制局長官、いかがですか。
  316. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  この場合の「国の機関から依頼があつた場合」、これはまず一般的にお答え申し上げれば、例えば天皇及び皇族であれば天皇及び皇族の関係の事務をつかさどっております宮内庁から、あるいは最高裁判所長官を輸送の対象──対象と言うと失礼ですが、最高裁判所の長官を輸送する場合には当然その事務総局から、こういうところから依頼があるということだろうと思います。したがいまして、例えば内閣総理大臣の場合に、これを必ず閣議にかけなければならないかということになりますれば、そういうことにはならない。  先ほどの、今回の政令で申し上げれば、IOMからの要請を受けて、それでその要請に従って、それが妥当であると外務大臣が判断した場合には外務大臣からと、こういうことになろうかと思います。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間ですからこれでやめますが、今までこういう大事なことを詰めていなかったのは、私自身も大いに自責の念に駆られております。この次時間がありましたとき、これは初めての問題ですよ、国会で取り上げた。だから、重要問題だと私は思うから、時間があるほかの党がやられてもいいし、もう少し詰めたいと思います。  終わります。
  318. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会