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1991-02-22 第120回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月二十二日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君      小此木彦三郎君    越智 伊平君       倉成  正君    古賀  誠君       後藤田正晴君    佐藤  隆君       志賀  節君    田邉 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       萩山 教嚴君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       町村 信孝君    松永  光君       松本 十郎君    光武  顕君       村田敬次郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       石井  智君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    日笠 勝之君       宮地 正介君    山田 英介君       佐藤 祐弘君    菅野 悦子君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       公文  宏君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         北海道開発庁総         務監理官    松野 一博君         北海道開発庁計         画監理官    平工 剛郎君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         環境庁企画調整         局長      渡辺  修君         環境庁企画調整         局環境保健部長 柳沢健一郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省社会局長 長尾 立子君         厚生省年金局長 末次  彬君         厚生省援護局長 岸本 正裕君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省畜産         局長      岩崎 充利君         農林水産省食品         流通局長    馬場久萬男君         通商産業省通商         政策局次長   麻生  渡君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         運輸省地域交通         局長      佐々木建成君         郵政省貯金局長 松野 春樹君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省河川局長 近藤  徹君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     光武  顕君   越智 伊平君     萩山 教嚴君   加藤 紘一君     古賀  誠君   浜田 幸一君     町村 信孝君   武藤 山治君     石井  智君   石田 祝稔君     山田 英介君   冬柴 鐵三君     宮地 正介君   古堅 実吉君     菅野 悦子君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   古賀  誠君     加藤 紘一君   萩山 教嚴君     越智 伊平君   町村 信孝君     浜田 幸一君  光武  顕君     小此木彦三郎君   石井  智君     武藤 山治君   宮地 正介君     冬柴 鐵三君   山田 英介君     石田 祝稔君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 今朝八時三十五分、歴史の転換期にあるいはなるかもしれないというほどの重大ニュースが飛び込んでまいりました。それは、もう祈るような気持ちで世界人々が望んでおりました中東湾岸戦争和平停戦、この光が少し見えてきたという方向ニュースがございました。つまり、昨日来からイラクソ連との話し合いによる和平の道が見えるのかどうか期待をしておりましたところ、イラクソ連との会談の結果、クウェートからの即時無条件撤退などを中心とする八項目にわたる合意ソ連イラク間でできたという報道がございました。  これは、解説はする時間がありませんけれどもイラク無条件撤退を行う。停戦の二日後に撤退を開始する。撤退一定期間内に行われる。撤退が三分の二以上実施された後、国連で決めた経済制裁は解除させる。撤退完了後は、安保理決議の背景にあった事態はなくなることになる。撤退終了後すべての捕虜は解放される。撤退戦争に関与しなかった国が安保理事会に監視を委託されるということ。八項目目は、詳細な点については話し合いがこれからも続いていく、その内容安保理事会の諸国に通知される。  急いで申し上げましたけれども、こういうソ連イラク話し合いができた、私は重大と受けとめているわけであります。この両国合意、これをどう日本政府は受けとめますか。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 本日朝報道されたこのソ連イグナチェンコ報道官発表によりますと、今委員指摘の八項目が示されているわけでございますが、日本政府といたしましては、いずれにしましてもこの湾岸の平和の回復が一日も早く行われるということが基本的な政府の考えでございますから、私は率直に申し上げて、この安保理の六百六十の決議完全実施するということにイラク政府が踏み切っていただくことが一番早道であると考えておりますが、いずれにいたしましても、ソ連との間にこのような話し合いが行われている、また、安保理国々ソ連連絡をするということでございますから、なおきょう一日このアジズ・イラク外相ソ連政府との間で話し合いが行われるということでございますので、事態推移を十分見ながら、一日も早く平和が回復するように心から祈念をいたしております。
  5. 串原義直

    串原委員 今外務大臣が言われるように、一日も早い平和回復、私も望んでいるところでありますけれども、私の見ますところ、まさに従来から言われておりますように、これは若干の条件もございます。私は、和平のためならば当然の条件だというふうに受けとめているところであります。基本原則は、イラククウェートからの無条件撤退、これは大きな柱ですね、これが約束されている。ということになりますと、従来からこの議場議論をしてまいりました日本政府考え方あるいは私ども委員考え方議会側考え方も大筋理解できるものだ、こう私は受けとめるわけであります。  したがいまして、さらに突っ込んで言いますならば、イスラエルの問題あるいはパレスチナ問題等々の関連はない、一言も載っていない。ということになりますと、まさにイラククウェートからの完全無条件撤退、これが柱になっておりますから、これは日本政府として評価すべきではないのか。いかがですか。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 問題は、この無条件撤退ということの最初の宣言がございますけれども、その下の六項目ほどは、いわゆるイラク側条件と考えられるものであると私は思います。この条件が果たして、いわゆる安保理構成メンバーあるいはまた現在平和の回復のために戦っている各国指導者、この人々がこの条件を受諾するかどうか、そこいらのところが問題ではないか。  問題は、調停をされておるゴルバチョフ大統領の御苦労を私どもは高く評価をいたしますが、ソ連は多国籍軍参加をしていないというところに、これからの交渉推移を見きわめていかなければならない、私ども政府といたしましては、慎重にこれからのモスクワにおける協議の状況を見てまいりたい、このように考えております。
  7. 串原義直

    串原委員 外務大臣、それはそのとおりでしょう。ソ連は多国籍軍参加をしていない、だから、この和平のための努力ができる立場にあるわけですね。でありますから私は、ソ連を初めとする関係国のこの和平努力評価すると同時に、敬意を表したいと思っているわけであります。ソ連が多国籍軍参加をする、少しでも支援をするという立場をとっていたならばこの行動には出られなかった、ここに大きな原点があるわけであります。  私は率直に感想を申し上げますけれどもアメリカ並びに多国籍軍がこの今朝の両国合意をもし拒否するようなことがあるならば、私は、大変に国際的な非難も受けるだろうし遺憾なことだ、こういうふうに考えているわけなのであります。このチャンスを生かさなきゃいかぬ、最後といってもいいようなこのチャンスを生かさなければならない、私はこういうふうに思うわけであります。  したがって、クウェートからの撤退によって中東湾岸戦争は終わるのであります。まず何をおいてもクウェートからのイラク軍撤退、これが先決であります、こういうふうに言い続けてきた日本政府としては、まさに同盟国であると言ってきたアメリカに対して、この際、最後チャンスではありませんか、最後チャンスですよ、若干の条件があるにしても、それは大いにこれから話し合いを、最後項目に載っておりますが、するというふうに載っているわけであるから、何としてもこの話し合いには乗るべきだという立場アメリカ提言、進言あるいは交渉なりをすべきではないか、日本政府としてですよ、アメリカの皆さん、一緒に頑張って何とか和平の道を探ろう、こう提言するというのが今、日本政府のとるべき態度ではないか、こう考えているわけであります。いかがです。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 多国籍軍を構成している国は、アメリカを初めイギリス、いろいろと各国、二十カ国近い、ちょっと数字を訂正しますが、相当数の国があるわけでありまして、アラブ国々も、このアラブの大義というか正義のためにきちっとこの安保理決議の受諾に努力している最中でございますが、日本政府はもちろん、先ほどの情報によりましてもゴルバチョフ大統領ブッシュ大統領連絡をしているというようなことでございますから、我々は、現実に調停をするこの作業、これがどういうふうになっていくのか、日本政府はもとより平和の回復を祈念している国でありますから、これはもう平和が実現されることは何よりもであります。その、何といいますかプロセス、そのプロセスが今モスクワで行われているということでございますから、我々の意思は明確であります。平和の回復安全保障理事会決議完全実施、これを我々は基本にしておりますから、サダム・フセイン大統領の今朝、日本時間の午前二時の演説、この演説は我々に大きな失望を与えたわけであります。しかし、このイグナチェンコ報道官の発言は一条の希望を与えた、これがわずかの時間の間に同じ政府代表者大統領外務大臣とが全然違うことを外へ流しているわけですから、私ども事態推移を、関係国協力しながらどういうふうな方向に流れていくか、日本政府としても慎重に検討していきたいと考えております。
  9. 串原義直

    串原委員 今お話しのように、私もさっきこの議場に入ってくる十五分前ですね、十時十五分のときにニュースを聞きました。ブッシュ大統領ゴルバチョフ大統領に、努力してくれてありがとう、提言の点は、連絡の点は検討する、こう返事をした、こういうニュースをお聞きをいたしました。そうであってほしいと思うわけであります。  したがって、先ほど申し上げますように、ソ連イラクと話をした、このことは大きなきっかけですね。今、外務大臣が言われるように、フセイン大統領声明とずれがあるというふうな話があったけれども、私も最初そう受けとめた。しかし私は、あのフセイン大統領声明を聞いたときに、これは何かあるなという予感を持ちながらけさを迎えたわけであります。少なくともイラクという国を代表する外務大臣ソ連へ行って、ソ連大統領と話をしたときの合意事項、これは正式な話し合いであると受けとめるべきだと私は思う。したがいまして、ここにチャンスを見つけなければいけない、世界が志向する、外務大臣が言われる平和の回復、このことに対してチャンスをつかまなければいかぬ、みんなで汗を流してこれを具体的なものにしなければいかぬ、こう思うわけであります。  まだ不透明の部分はある、それはわかりますよ。それを取り除く努力を今こそしなければならない。そのために日本政府、あなたは総理にも話をして、アメリカにも、大統領にも、この際若干の問題点は乗り越えて努力しようではありませんか、これが世界の願いです、こう提言してもらいたい。これは日本政府のとるべき、まさに平和を志向する日本態度でなければいかぬ、こう思う。いかがでしょう。
  10. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、イグナチェンコ報道官のこの発表項目の中にも問題が幾つか私はあるんじゃないか。例えば、クウェート正統政府の復活の問題等には触れられておらない。つまり、我々は平和を求める国家として国際正義を確立するということが基本でございますから、私はこの事態を慎重に見つめながら、日本の国の外交を預かる者として総理に適切な助言ももちろんいたしておりますし、総理総理として各国協議をされることもあろうと思いますが、我々政府は、外交の責任を預かる者として、国民に対して期待されるような平和が実現するように努力を続けてまいるということを申し上げておきたいと思います。
  11. 串原義直

    串原委員 確かにクウェートのこれからの問題につきましては、この文言から見る限り触れていませんね。わかりません。お話のとおりでございましょう。しかし私ども日本政府態度として受けとめてきた言い方は、まずイラククウェートから撤退することである、これがまず先決なのであります、これをずっと言い続けてきた、またそのとおりだと思いますね。そのことを実現することから、後のことは次から次へと話し合い解決が行われていくという理解に立っているわけであります。  したがいまして、外務大臣はこのクウェートの問題に触れて、この八項目の中に入っていない、こういう話がありました。けれども、そのことはこの次に来る問題であって、まずイラククウェートから無条件撤退を行うということを言い続けてき、それを望んできて、それが平和回復の唯一の道である、こう話し合ってきたわけであります。あなたは随分と答弁した、総理もここで答弁をされた。したがって、このことに大きなよりどころを見つけて、この際チャンスをつかまなければいかぬ、そのために日本政府世界から評価されるような努力をしなければいかぬ、こういうことを私は言っているわけでございます。ここでもう少しあちらこちらの様子を見ないと何とも言えませんというようなことでもたもたした態度をおとりになっていて一日二日経過をするとすれば、まさに私は世界の笑い物になるんじゃないかという心配をするわけであります。なるほど日本は真に平和回復のためにそう考えていたのか、そのためにはこういうことをやろうとして行動を起こしたのか、これが見えてくることが最も大事なことであると思っているのです。それは外務大臣の言わんとすることはわからないわけじゃありませんよ。しかし、ここは私は日本政府外交方針として腹の据えどころだろうというふうに考えまして発言しているわけであります。いかがですか。
  12. 中山太郎

    中山国務大臣 日本国外交をお預かりしている外務大臣といたしましては、国民の皆様がこの事態がどのように収拾されるのか、恐らくこのテレビのニュースを見ながら、本当に全国民が考えておられると思います。そういう中で、日本政府考え方は平和の回復原点、これは原点でございます。その原点の中で、今委員からも御指摘のございましたように、具体的な細目というものはまだ日本政府に見えておりません。問題は、モスクワでこの協議が続いているわけでございまして、問題は、この平和へのチャンスをつかむのはアメリカではない、イラクであります。私はそこが一番の原点だと思うのです。イラク和平へのチャンスモスクワでどうつかむか、それは一にかかってイラク政治家たちの決断によるものだ、私はそのように考えております。
  13. 串原義直

    串原委員 それはそうでしょう。それはその点も私も理解をいたします。したがって、私が言っておりますことは、ソ連イラク話し合い、前進をしたと見ているわけであります。この両国話し合いは前進したと見ている。したがって、このチャンスを生かそうではないか、全世界協力をして、汗を流して生かそうではないか、そのためにこの両国話し合い、八項目合意評価しながら、努力しようではありませんか、こう言っているのであります。アメリカ、多国籍軍に対して提言し、発言することも当然、私が数回ここで強調したとおりであります。と同時に、イラクに対しても、このチャンスを生かそうじやないか、まず第一項目にありますようにイラク無条件撤退を行うという腹を据えたのだから、若干のことはあろうけれども、ときによってそれを乗り越えても平和回復のために全力を挙げようではないか、こういうことをやっぱりイラクの側に提言することも必要でございましょう。  したがいまして、その立場に立って、両国話し合いは、これからの問題は残しているとしても評価をする、この話し合いの上に立って評価をしつつ、全世界平和回復、つめがかかりそうになったところの平和回復に向けて全力を挙げようではないか、この両国話し合い評価する、こういう立場でいきたいと思うのです。いかがですか、外務大臣
  14. 中山太郎

    中山国務大臣 平和の回復を願う日本政府としては、このようないわゆる努力をもちろん評価をしておりますが、問題は、まだ内容十分政府として公式に確認をされていない段階での政府の国会における見解の発表というものは、しばらく御猶予をいただきたい。事態はまだ非常に流動的であります。お許しをいただきたいと思います。
  15. 串原義直

    串原委員 和平努力に対する日本立場全力投球されることを強く強く御要請を申し上げてきたいと思います。  そこで大蔵大臣、関連して一言伺います。  私は、この両国、今質疑してまいりました両国話し合いきっかけにして、大きく平和の回復は前進すると思う。そのときに、改めて伺っておくわけでありますけれども、私ども議論をしてまいりました九十億ドル、支援金ですね、これは言われるところ、あなた方は明確にしなかったけれどもアメリカからの要請による三カ月分の戦闘に対する支援金、こういうふうに言われてきているわけでありますから、これは幸いに和平が実現をしたといたしまするならば、論議をされてまいりましたようにGCCを通じて支援をするという手法でなくて、より国民的な合意を得られる手法、戦費に使われるのではないかという懸念がない方法、これを改めて模索すべきではないか、考えるときに来るのではないか。これは議論をして、審議をして、仮に、私ども反対でありますけれども審議をして、この九十億ドルが了解されてということになっても、四月になるわけでありますね。このお金の移動が、支払われるのが四月になっていくということになっていくでしょう。そういうことになって、それ前に急速に合意ということになった場合には、戦争終結、停戦合意ということになった場合には、支援の仕方、戦後復興に重点を置いて、例えば社会党が重ねて主張してまいりました戦後の復興、周辺国の援助、石油流出による海の汚染回復等々に使われるような具体的な支援金の支出方法に変えるべきではないのか、こう考える。いかがですか。
  16. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、率直に申し上げまして事態をそれほど現在楽観をいたしておりません。八月二日以降、何回か和平への願いが裏切られてまいりました。それだけに、昨日といいますか、けさほどといいますか、フセイン大統領の放送を聞きましたとき、本当にがっかりしましたし、そのがっかりした感情と、現在進行中という中で伝えられた範囲内におけるソ連イラク話し合い内容というものが、どうしてもまだ自分の心の中ですとんと落ちない部分がございます。  しかし、同時に私が申し上げなければならないことは、委員はこの資金の拠出は四月に入ると、仰せられましたけれどもども平成二年度の補正予算(第2号)においてこの九十億ドルの予算化をお願いをしたいと考えておるわけでありまして、年度内の歳出をぜひお願いを申し上げたいと考えておるという点が第一点であります。  同時に、湾岸平和基金に拠出するお金でありますから、湾岸に平和が回復した後においてさまざまな論議が、平和が回復した後においてはあるいはあろうかと存じます。そして、委員がお述べになりましたようなものに使えるような状態が来れば本当に幸せなことでありますけれども、今こうしておる間にも戦争状態というものが継続をしておるわけでございますし、私はそれほど情勢を今楽観をいたしておりません。
  17. 串原義直

    串原委員 幸いに急速に終戦ということを迎えた場合には、私が申し上げましたように、従来議論をされてきたという方向ではなくて、戦後の平和回復、復興、私が先ほど申し上げましたような方向に供与の手法を変えていくべきではないか、こう言っているわけであります。それは、あなたは甘く考えてはいないということも、それもないとは言えないでしょう。しかし私は、急速に話し合いが進んでいくことを心より期待をしている、そういう立場の中で申し上げたわけであります。平和が成った場合には、従来議論されてきた手法でない供与の仕方、これを考えるべきではないか、こう言っているのでございます。いかがですか。
  18. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、例えばドイツの今回の事態における負担の仕方と違いまして、日本湾岸平和基金というものに拠出をいたしておりますから、そうした好ましい情勢が生まれました場合には当然湾岸平和基金における協議内容が今日までとは変わることがあるのかもしれません。しかし同時に、本当に私は、大変恐縮でありますけれども委員がお述べりなりましたほど明るい見通しを心の中に自分で持てずにおりますだけに、今委員の仮定をされましたような状況が生まれ、我が国が拠出いたします九十億ドルというものについて、湾岸平和基金の中においてそのような論議ができる情勢が生まれれば本当に幸せだという気持ちは持ちますけれども、そこまで率直に申し上げて今申し上げられる状況にはないように思います。
  19. 串原義直

    串原委員 もう少し推移をそれでは見ることにいたしましょう。  一言これに関連して、防衛庁長官、この湾岸戦争、急速に解決するかもしれないという曙光が見えてきた、心から私は期待しています。そこで、けさ、これは日本経済新聞ですけれども、出ていますね。「自衛隊機派遣見送りへ」と、こう記事が出ていますね。これは結構なことだと思う。どうしてあれだけ国民的に反対する自衛隊機海外派遣、日本の法曹界の皆さんもほとんど反対している、どうしてあんなに政府はこだわるのかなと思っているのでありますが、直ちにあの政令を廃止しなさいと言っても、そうですねとあなたは言えないでしょう。恐らく言わないだろう。そこで一言聞いておくのでありますけれども、急速に和平の曙光が見えてきたということになります場合を私想定しながら伺うのでありますが、これだけ反対する自衛隊機の海外派遣問題、よろしいことじゃありませんね。やめた方がいい。だから見送るというようなこの記事が出てくる。「自衛隊機派遣見送りへ」、こういう記事が新聞できょう報道されるようになった。  そこで聞きますけれども、この政令は、幸いに停戦が成ったときには直ちに政令廃止をいたしますか。いかがです。
  20. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま御指摘のございました報道は私も見ておりますけれども政府におきましてそのような方針が決まったということは承知しておりません。それが一点でございます。  それから二つ目に、湾岸の情勢、今御指摘のようにいろいろ動いております。私も、できることならばイラククウェートからの全面撤退ということが早期に実現するということ、これを願うものでございますけれども、先ほど外務大臣からもるるお話がございましたように、まだなおその情勢の変化を注視する必要があろうか、このように考えておる次第でございます。そして、もとより、湾岸の危機的な状態が解消し、そして避難民の輸送というニーズがなくなるということになれば、これはそれで幸いなことなのでございますけれども、現在の段階においてはまだそこまでの楽観的な見方はとるわけにはまいらぬ、こう思っております。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、今回の自衛隊輸送機による避難民の輸送というのは、国際機関からの要請があって——ということでございますので、その辺を見ていきたい。  それから、御承知のとおり今回の政令は、今回の湾岸危機の状態の中で発生した避難民の輸送、これの任に当たるために「当分の間」という書き方になっておりますので、もし委員指摘のように湾岸平和回復が成り、避難民の輸送のニーズがなくなるということになれば、この政令は事実上効力を失うというそういう姿になるんだ、このように理解しております。
  21. 串原義直

    串原委員 環境庁長官はいませんね。建設省もいませんな。建設大臣いませんね。じゃそれは後にいたしましょう。できるだけ早く来てくれるように。  それでは農林大臣に伺うことにいたしますけれども、一九六一年、昭和三十六年、農業基本法が制定されまして以来三十年になりますね。その間社会情勢が大きく変わりました。農業情勢も大変大きく変わってまいったこと、御承知のとおりであります。一九六一年に制定されました、農業事情は大きく変化をしたわけでありますけれども、この基本法の志向いたしました農業、農村づくり、これは、ある人に言わせますというと失敗をしたという指摘もありますね。私はそれも否定できないと思う。今日の日本農業の実態、つまり学卒の新規農業後継者、全国で二千百人しか誕生してくれない、こんな数字を見ますときに、まことに、今申し上げたように基本法が目指す農村づくりは成功しなかったというふうに言わざるを得ない。  そこでこの際、今日の時代に即応いたしました日本農村再構築の視点に立ちまして法改正を検討するときに来ているんではないか、それは食糧安保等を一つの大きな柱とする方向でなければならない、こんなふうに考えています。大臣どうですか。
  22. 近藤元次

    近藤国務大臣 農業基本法は、先生御案内のように昭和三十六年に制定されて以来今日まで経過をいたしておるわけであります。当時の状況の中から考えると、日本の国も、戦後工業化時代に入って勤労者所得が増大をする一方、農業所得との格差が非常に出て顕著になってまいりました。他産業との所得格差を初めとして価格政策だけではこれに対応し切れないだろう、少なくとも構造政策をやっていかなければならないというそういうものを基本に置きながら、学識経験者を初めとするあらゆる人たちからの御意見をいただいて基本法が制定されたと、こう認識をいたしておるわけであります。もちろんそれだけではありませんけれども。以来今日まで、農業基盤整備を初めとする、あるいは構造改善、いろんなところで構造政策というものが農業基本法においてつくり上げられてきた役割というのは、私は評価していいのではないだろうか。  しかし、今御指摘のように、社会環境も変わってまいりましたし、経済環境も変わってまいりましたし、また食生活も変わってまいりましたし、国際化の時代を迎えてきておりますので、私は農業基本法をもう一度自分でまず勉強してみたいということで、先般質問に対してお答えを実はいたしたわけであります。  ただ、私が目下勉強させていただいておる過程でございますので、それが、自分の勉強ができ上がった段階で事務当局にまたそのことの検討をお願いをするかどうかという判断をさせていただきたい、そう思っておるわけであります。
  23. 串原義直

    串原委員 大臣が記者会見等で発言をして、この基本法について勉強するということを伺っていますが、その勉強するということは結構でありますけれども、この基本法改正に対する論議は、学者の間、農業団体側も指摘をしているところであります。勉強するということは大変に結構でありますよ、理解するといたしましても、さわらぬ神にたたりなしで時間を経過するということはいかがかというふうに思いますね。  したがいまして、あなた、農業に対する関係は専門家で大臣になったわけでありますから、つまり基本法改定に向けて、例えば諮問機関等々をあなたの立場で設置をして、それからの意見を求めるなどをいたしまして一足前に出るべきときではないのか、こう思う。いかがですか。
  24. 近藤元次

    近藤国務大臣 今私自身が勉強しておる最中でございますので、改正に対しての自分の総括的な考え方がまとまった段階で、それぞれ専門家をあるいは学識経験者を、あるいは広い立場でいろいろ御意見なり御批判をちょうだいをしながら手続をしていきたい、こう考えておるわけであります。さわらぬ神にたたりなしというようなことがあれば毛頭私が発言をいたしていないわけでありますので、それもできるだけ自分の勉強時間は短縮をしていきたい、そう考えております。
  25. 串原義直

    串原委員 そこで大臣、農林省は三十年ぶりに地域区分の見直しをするという報道がございました。私もこの方向は結構なことだというふうに思うのでございますけれども日本農業新聞等の報道によりますというと相当詳しく報道されておりますが、これを詳しくここで申し述べるという時間もありませんけれども、大きく言いますというと、土地利用面を重視するなど、より実態を反映するということで区分を見直すというんですね。  私は、この区分は従来統計上に主として使われてきた。そうではなくて、これからは農業の指導あるいは育成、助成、農政上の上から、行政の立場からこれを積極的に生かしていく区分に変えていかなきゃいかぬのではないか、統計上だけではなくて。例えば平たん地農業の育成、中間・山間、中山間農業地域との差のある指導、育成、援助を含めて農政の上から検討していくべき区分に使うときに来ているのではないか、そうしなきゃいかぬ、こう思う。そうしないと、中山間地域における集落は存在しなくなる、こう心配しています。どうですか、その辺に対する考え方
  26. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 お答えいたします。  従来から、農政推進の参考資料としますために農村地域につきまして地域農業の構造を把握、分析というような観点からの地域区分ということで今御指摘のような都市、都市近郊、平地農村、農山村、山村という区分を設定したわけでございます。  その設定の基準につきましては、御案内のとおり農家数の割合でありますとか産業別の就業人口とか人に着目した指標と、それから土地利用、農地率とか森林率というような土地利用に着目した指標等を使っていたわけでございますけれども、市町村におきます広域合併あるいは混住化、兼業化の進展によりまして、地域区分と農山村の実態が必ずしもしっくりしないというような向きが出てきまして、かねて来その改善につきまして学者等からの意見もございまして、また私どもとしましても、そういう方向につきまして改善すべきではないかということで学識経験者の意見を聞きまして検討を進めてきました結果、今先生の御質問ありましたように、むしろ土地利用を中心とした地域区分にした方がいいのではないかというようなことで、昨年十一月の研究会でそういう方向を打ち出し、今後そういう方向で地域類型を明らかにすることにしたわけでございます。制度その他につきましてストレートに結びつけるわけではございませんけれども、今後このような新たな区分に基づきまして分析をし、地域の特性に応じた施策を展開していきたいというふうに考えております。
  27. 串原義直

    串原委員 そこで大臣、この前もちょっと触れましたけれども、このところのアメリカの農業保護の姿勢というのは、何とも私は納得できない方向である。つまり、アメリカの九二年度予算は大幅にふえまして、九一年度についても当初予算の二倍以上に当たる補正予算を組んだ。九二年度は前年度に比べて輸出補助金を四倍の十二億ドルを見込んでいる。九〇年農業法を制定するなどしてアメリカの姿勢は農業保護の方向にますます加速度を加えている。好ましくない、日本には市場開放を求めておきながら、おかしい、こういう指摘をいたしました。しかるところ、十九日のまた報道によりますというと、さらにアメリカの議会は法案を、議員は法案を提案をして、農業輸出補助金拡大の声が上がっていて、予算を五年間で五十億ドルに増額させようということで議会筋はこれから議論が行われるというふうに伝えられている。私は何ともアメリカの真の姿勢、わからない。何をお考えになっているんだと言わざるを得ないのであります。大臣、所見いかがですか。
  28. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生今御指摘のとおり、輸出補助金増額というような形で今予算が組まれて議会に提案されて、また、それを裏づけするように下院で議員が法案提案をいたしておるということが報道されてまいりました。内容は、いわばアメリカの今のルールの中で国際農産物の価格が下落をすれば、予算上は多くなっていくということになっておるわけであります。ただ予算上が大きくなるだけではなしに、法改正をするとか上限を撤廃するということは、今の時期、輸出補助金を削減しようという提案をしておる国のやることにしては甚だ残念なやり方だ、そう理解をいたしております。
  29. 串原義直

    串原委員 大臣、今残念という表現がありましたね。私は、残念程度の表現じゃないと思う。遺憾至極だと思っているのですよ、日本立場からいうならば、アメリカの姿勢は。こう思うのです。いかがですか。私は、この際きちっと、日本はこう考えますと、あなたの方でもただすところはただしていかなければうまくないではありませんか、こういう立場に立つべきだ。遺憾至極だと思う。どうですか。
  30. 近藤元次

    近藤国務大臣 人それぞれに表現の違いはありますけれども、私の方の立場とすれば、かねてからもう輸出補助金については農産物価格を歪曲するものだ、こういう意見でガット・ウルグアイ・ラウンドでも前大臣を初めとする我が国の政府として主張を貫いてきておることでありますから、それに逆行するという立場では私ども厳しく申し入れをしていくつもりでございます。
  31. 串原義直

    串原委員 アメリカのことについて私は触れましたが、これは二月十六日の農業新聞にも出ていますね、ほかの新聞にも出ていますよ、ECも農業予算を大幅に増額するという報道があります。何%、何年度が幾らということはここでは繰り返しませんけれども、十数%ずつ、農業保護、輸出補助金等々を含めて、ECにおきましても予算をふやすという報道があります。これを含めて、ただいまアメリカに対する姿勢についての話がありましたけれども、ガット・ウルグアイ・ラウンドに対してこれからこういう姿勢できちっと発言してまいりますということ、いま一度御答弁ください。
  32. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生御案内のように、昨年年末での交渉が延会をされた大きな理由は、アメリカとECの輸出補助金による対立から年を越えて本年に延会をされたという経過もこれあるわけでございますし、もう一つは、輸出補助金については、ルールを変えないである程度予算がふえるということは、国際価格が下がっていくというときにはある程度はやむを得ないことだと思うわけでありますが、従来から我が国は、輸入国として輸出補助金をとやかく言う必要もないではないかという意見は相手国からありましたけれども、それぐらい前大臣を初めとする政府として厳しく輸出補助金については申し入れをしてきておるわけでありますから、私も引き続いてその問題点指摘をしていきたい、こう思っております。
  33. 串原義直

    串原委員 繰り返しませんけれども、まことにアメリカ、ECの農業保護増強の方向、しかし逆に日本には市場開放を求めるという全く矛盾した政策をきちっとウルグアイ・ラウンドの中で強調しつつ、前回御答弁をいただきました方向を踏まえてこれから交渉に臨んでいただきたいと強く要請をしておく次第でございます。  そこで、新中期防衛計画、次期防と言ったらいいのでしょうか、伺ってまいります。  私は、この次期防の要綱等々につきましていささか検討させていただきました。最初に伺いますけれども、これは官房長官に伺ったらいいでしょうか、安保会議の事務局長ですから。  新中期防は、一応新たな国際情勢には触れております。しかし、どう判断をしても現在の中期防までの作戦構想そのままであります。三海峡封鎖、千海里シーレーン防衛あるいは北方防衛、この基本は変わっていないように見える。むしろ従来より内容は充実しているのではないか。既存の装備は量の上から大綱水準に達しておりますので、減耗更新が中心ということになりまして、次の防衛計画では今の中期防のような高い調達のペースは必要としない。したがって、新中期防は量では抑制されておりますけれども、しかし、新鋭装備の新規の調達、統制・指揮・通信・情報体制の整備、研究開発の充実、戦力水準の質的向上が著しく図られております。今、米ソの対話と協調、東西ヨーロッパのパリ宣言に見られる新時代、この流れから見られますように、世の中大きく変わっている、それとの時代認識の差が大き過ぎる、こう私は判断をいたします。これは大河の流れという表現はどうかと思うけれども世界は軍縮の大きな流れになってきていますね。それに逆行するように受け取られかねない。国民的な合意を得られるような再検討をすべきではないのかと思います。いかがですか。
  34. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、現在国際情勢は非常に大きく変わっておると思います。これまでの冷戦構造が終えんし、そして、いわば協調と対話の時代に入っていく、これが大きな流れである、このように考えております。しかし、大きな流れはそうではございますが、現段階ではまだいわば過渡期でございまして、まだ不透明な部分等々もあるわけでございます。  御承知のとおり、軍縮あるいは軍事管理の面におきましても、ヨーロッパの方ではいろいろな動きがございましたけれども、例えば、通常兵器の削減条約の中につきましては、ソ連側のいわば約束違反ではないかというような問題が障害になりまして、しばらくこの会議を、交渉を先延ばしするというような動きもあるわけでございますので、大きな流れは確かに対話と協調の方に向かっておるけれども、まだまだ不透明な部分があるということは言えようかと思います。とりわけ、我が国を取り巻くアジアの情勢ということでまいりますと、これは、流れはヨーロッパ等と同じかもしれませんけれども、一層複雑さあるいは不透明さが多いのではないか、このように考えておる次第でございます。  さて、次期防と国際情勢の動きの関係につきましては、御承知のとおり、昨年次期防、新しい中期防を決定いたしましたのが十二月の二十日でございましたが、その前日、十九日に閣議で新しい決定をいたしました。つまり、「平成三年度以降の防衛計画の基本考え方について」という閣議決定をいたしまして、現在の大きな国際情勢の動きというものを考えまして、それとこれまでの大綱の基本的な防衛計画の進め方との関係を整理いたしまして、そういった作業を経た上で新中期防が翌日策定されたわけでございます。そして、そういった中で我々基本的に考えましたのは、もともと大綱というのは既に昭和五十一年に策定されたわけでございますが、当時もデタントのいわば盛りのころでございまして、国際関係の安定化の努力が続けられておった、そういうことに着目しながら、それからまた国内の情勢、あるいは日本の地理的な特性と申しましょうか、四面海に囲まれておる、アーキペラゴウ、弓状列島というのでしょうか、非常に南北に長い、そういった地勢的な状況なんかもいろいろ勘案して、均衡のある組織あるいは配備の体制をとって、平時における十分な警戒態勢、これがとれるということを中心に大綱を考えたわけでございます。そういった大綱で考えました防衛力の水準というものがこれまでの現行中期防においておおむね達成された、こういうことも勘案いたしました。そういうことと先ほどの国際情勢の流れというものを、変化というものを十分考えまして新中期防を策定したわけでございます。そういったことで、私どもは決して今の国際情勢の大きな流れと新中期防とが逆行しているとか矛盾しているというふうには考えておりません。  それから中身につきましても、委員も御指摘ございましたけれども、量的な面につきましてはぐんと落としております。例えば正面装備につきましては、平均の伸び率で申しますと、契約ベースで大体マイナス二・三%というふうに抑え込んでおるわけでございますし、整備の水準で申しましても、例えば戦車であるとかあるいは作戦用の航空機なんというところでは、調達の数量が半減あるいは三割減というような姿になっておるだけではなくて、全体としての保有量の水準においても、戦車や護衛艦につきましては現時点よりもむしろ落ちる、こういうことをしているわけでございますので、新中期防というものは、そういった意味で十分に今日の国際情勢の動きも見ながら、しかしなおかつ平時において十分な警戒態勢をとるという考えで策定したものでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 実は、このことはしばらく時間をとって、長官言われたように、確かに量は減っている。数量の立場では減っていますよ。内容から言うと実に充実したものである。予算も現実には減っているわけではない。  それから、統幕議長が中心になって作成するところの統合中期防衛見積もり、これなどは、昭和で言うよりも、八九年の十一月ごろつくられたものじゃないですか。今から一年半も前につくられたものがたたき台になって新中期防ができている。その間に大きく国際情勢が動いた。これを見逃すわけにはまいりません。これは真剣に国際情勢を踏まえてもう一度点検する必要がある。これ、時間が来ましたから多く質疑をする時間がなくなって残念ですけれども指摘をしておきたいと思っているところであります。
  36. 池田行彦

    ○池田国務大臣 時間の関係もございますので簡潔に答弁させていただきます。  まず、量的にはともかく質的には向上しているではないかという点でございますが、やはりこの間の軍事技術の水準の向上というもの、あるいは諸外国の持つ装備等々も勘案しながら近代化、合理化をやっていくということは必要なわけでございまして、やはり相対的なものだという点があると思います。  それから二つ目には、統幕議長のもとでの見積もりは一年半も前だという御指摘がございましたけれども、新中期防の策定というものは、もとより統幕議長のもとでいろいろ検討いたしましたものも参考にするわけでございますが、これは内閣官房におきまして、安全保障会議において決定されるわけでございますので、このメンバーにはもとより外務大臣も入っておられまして、国際情勢その他も十分勘案しながら策定されたものだということだけ申し上げておきたいと存じます。
  37. 串原義直

    串原委員 いや、それはメンバーもそうでしょうけれども、この新中期防作成に当たってそんなに長い時間をかけて閣僚がけんけんがくがく議論をしたということではないわけですよ。つまり、たたき台になっておるこの統合中期防衛見積もりが一年半前にできたものである。それを踏まえて作成しておるだけに時差があるということを私は言っておるわけですよね。これは再検討をする機会を早く持つことを強く要請しておきたいと思う。  次に、この新中期防と関連して、AWACSの問題について触れたいと思っています。  このAWACS、つまりE3A、今度これを計画によりますと四機入れるというのですね。この前のE2C導入のとき、これはミグ25事件によってこれを入れることになったわけでありますけれども、八十七国会、このときに、このE2Cを入れますときの審議が詳細に行われております。当時の防衛局長、これはE2CとE3Aとを検討比較した。海外に調査団を派遣して勉強した。ところが、「E3Aというのは単なる防空作戦だけでなく、その地域におきます陸海空の指揮までできる機能を持っております。私どもの防空作戦のためにはちょっと機能が大き過ぎる、値段も一機約三百億円いたしますし、重さもたしか百五十トンで、いまの自衛隊の基地では使えない、」こう答弁していますね。  それから、時の防衛庁長官は、先ほど防衛局長から説明いたしたところでありますけれども、E2Cが最適だ。ほかにはE3Aがございますけれども、これは一機三百億円近いお金が要る。そうして「しかもその機能は、わが国の防衛という立場からするならば、ここまでは必要でないのじゃないか。」と、こう言っていますね。それを今、大変高いと言われているE3A、これを採用するということになった理由、何ですか。
  38. 池田行彦

    ○池田国務大臣 現在のE2Cを採用します段階で、政府側から今委員指摘のような御答弁を申し上げたことはそのとおりでございます。そういうことがあったにもかかわらず今回そのAWACSを導入するのはなぜかという点でございますが、実は、やはりこれも航空軍事技術の水準の向上といいましょうか、そういうことがございますと、ある時点においては適当でなかったけれども現時点においてはそれが必要だ、こういうことがございます。と申しますのは、最近になりまして爆撃機の足が非常に長くなってくるとか、低空から侵入してまいりまして我が国の国土から離れた洋上から目標に向かって正確に攻撃するなんて、そういった力を他の国が有するようになってきたというような点がございます。  それからまた、何といいましょうか、指揮所的な機能につきまして、かつてはそういったところ、地上にございます指揮所の防備は、そういったAWACSがなくても十分だったわけでございますけれども、先ほど申しましたような爆撃機の性能の向上であるとかあるいはミサイルの向上等によりまして、そういった地上にございます指揮所の脆弱性が最近増してきた、こんなことがございます。  そういったこともございまして、かつては必要でなかったAWACSの持つそうした地上のレーダーサイトであるとか指揮所の代替機能というものが、現在の防衛においては必須であるというようなことがございます。そういう機能面で当時と事情が変わってきたという点がございます。  それから第二には、おっしゃいましたのは、そういったものを購入しても使える飛行場はないじゃないかという点でございますが、これもAWACSのその後の改良によりまして、エンジンのパワーアップによって離着陸の滑走の距離が短くなったということもございまして、現段階においてはほとんどの飛行場が使用可能であるという、こういうような変化がございます。  それから三番目に、コストの面からいってどうかという点でございますけれども、これも先ほど申しました機能面でいろいろ対応しなくちゃいけない、何といいましょうか、防空の体制が変わってきたということで、コストベネフィットの面から申しましても現時点ではAWACSの導入が適当である、このような変化があったわけでございます。  なお、詳細につきまして必要でございましたら、政府委員から御答弁申し上げます。
  39. 串原義直

    串原委員 私は、今の長官の答弁わからない、あのときはそうだったけれども今必要になったということ。局長の答弁必要ありませんけれども、そんな程度の答弁じゃ私はまことに理解できない。比較検討をあのときにした、さっき申し上げた時点でした、詳細にした、海外にも出張して調べてきた。あれは過大で日本には要らないという結論が出たのに、今になって必要になりましたという戦術的な、戦略的な理由、何とも理解できないわけですね。  一体これは幾らするんですか。私の方からちょっと言っておきましょう。これは「エアワールド」。E2Cはあのとき、買ったときには七十七億円程度だった。この「エアワールド」という雑誌ですね。急いで読んでみます。  四機を買うとすると、このプログラムコストは二千八百億円とも言われる。一機当たりにすると七百億円になる。つまり、このAWACSはアメリカの会社がもう生産をやめた、日本から注文もあるとすると、新しく工場をつくって生産をやり直さなきゃならぬ、こういうことでコストも高くなる、こういう報道も幾つかございますね。  例えばこのニューヨーク・タイムズ、二月十一日、日本はもっとAWACSを買うべきだと、こう促した記事が出ていますね。これによりますというと、AWACSは、同機種を使う給油機をあわせ少なくとも十四機の注文がなきゃ生産ラインは閉鎖すると言っているというんですね。これは報道がここにございます。七百億円もする高価なAWACS、必要もないと公式に予算委員会で答弁した飛行機を今なぜ必要かということになりますと、あのときは必要なかったけれども今度は必要になった、まことに理解できない。  これはここで長時間議論する時間がありませんから、私は委員長要請しておきますが、八十七国会で必要でないと答弁したAWACS、E2Cは七十七億円くらいで買えたもの、これで十分だとアメリカでも言っておりますのに、今度AWACSを買って、この一機、場合によると七百億円もするのではないかと報道されておる機種をなぜ入れなければならないのか、これは文書で後ほど御回答願いたいと思う。委員長、取り計らってくれませんか。
  40. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議させていただきます。  畠山防衛局長
  41. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 ただいま大臣からも御答弁申し上げたとおりでございますけれども、E2Cを導入する当時にそのような選択を行ったことは事実でございますが、E2C導入の際は、地上レーダーサイトの覆域をカバーする、つまり低空侵入してまいりますと地上レーダーサイトが把握できませんので、その覆域カバーという補完の機能のみを要求されたということでございまして、その観点だけからいたしますと、当時E3Aは過大な機能を持ち過ぎるということであったわけでございます。  しかし今日、ただいま大臣から申し上げましたとおり、相手国の能力が変わってきた、つまり飛行機の、爆撃機の航続距離が大幅に延びた、それからミサイルの射程も大幅に延びた、したがって、あり得べき事態というのが変わってきたということでございまして、それに対して平時から対応できる能力を我が国として持つことが、ほかの国においてもとられているわけでございまして、要するに目的が変わってきたということでございます。したがって、当時の事情がそうであったからといって、現在それと同じ事情にあるというわけではございませんので、我々としては、そこを前提にして判断したということでございます。
  42. 串原義直

    串原委員 再度要請しておきます。  いいですか、去年の八月十四日、これは日本経済でありますが、「AWACS・空中給油機 米、日本に導入要請」と出ているわけですね。これは防衛庁が発表したと言うのであります。「防衛庁筋は十三日、米政府が先週来訪米した防衛庁の藤井防衛局長に対し、九一年度からの次期防衛力整備計画で米国製の高性能装備であるAWACSと空中給油機を導入するよう求めたことを明らかにした。」こう言っているのであります。さっき申し上げた二月十一日、ニューヨーク・タイムズ、これは千海里航路防衛は鈴木善幸訪米以来、十年来の公約である。アメリカがそれを求めるように要請したという報道があるわけでありますから、委員長要請いたしましたように、AWACSを導入するという理由、その経過を文書で後ほど委員会に提出願いたい。要請しておきます。
  43. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来御答弁申し上げておりますように、私どもといたしましては、今日の情勢の中で日本の防衛の任に当たっていくためにAWACSがどうしても必要であるし、適当であるという、こういう判断でございます。  そうしてまた、新聞報道のお話がございましたけれども、私どもは諸国の国防力であるとかあるいは軍事技術とかそういった中で日本の安全性をいかに確保するかという観点からいろいろ検討いたしまして、AWACSの導入を決めたところでございます。
  44. 串原義直

    串原委員 先ほど申し上げたように、委員長要請しておきます。いいですね。
  45. 渡部恒三

    渡部委員長 今答弁ありましたけれども、御理解いただけませんでしたか。
  46. 串原義直

    串原委員 いやいや、今の答弁とかやりとりでは理解できない。
  47. 渡部恒三

    渡部委員長 防衛庁長官と畠山防衛局長の……
  48. 串原義直

    串原委員 でありますから、正確に文書で後ほど委員会に提出を願うように要請をいたします。
  49. 渡部恒三

    渡部委員長 今の答弁を理事会で協議します。
  50. 串原義直

    串原委員 はい。それじゃそうしてください。  遺憾ながら時間が来ましたので伺いますが、中国の問題について二、三触れていきたいと思いますが、遺憾ながら、例の六・四天安門事件以来、日中の交流、公的には停止されておりました。ところが、その後中国の情勢、あるいはヒューストン・サミット合意の後、第三次借款も動き出したわけであります。あの借款が動き出したということは、九五年まで八千百億円の竹下訪中の際の合意事項、これは九五年までに完結をする、こういう方向で進められる、こう理解してよろしゅうございますか。
  51. 中山太郎

    中山国務大臣 お答えを申し上げます。  第三次円借款にかかわる対中経済協力につきましては、中国国内の情勢、国際的な動向を見きわめつつ慎重に検討するとの立場でございますが、昨年七月のヒューストン・サミットにおいて、海部総理から本件の解除について強く要請をされておられました。中国を孤立さすことは世界の平和のために好ましくないということで日本政府考え方を主張してまいりましたが、この九〇年度分のうち成熟度、緊急性、さらには民生、優先度が比較的高い案件から円借款を供与しておりまして、委員指摘のように先般第一回決定したわけでございますが、引き続きやっております。  九〇年度分の残りの案件につきましては、最終的なコミットメントは諸状況を種々な角度から総合的に研究しながら決定をしてまいりたい、実施をしていきたいと考えております。
  52. 串原義直

    串原委員 だから大臣、これは一時凍結していたけれども、旧に復して、竹下総理が訪中のときに約束した八千百億円、九五年までというのは予定どおり実施、供与されていくというふうに理解してよろしゅうございますかということであります。
  53. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員お尋ねの件につきましては、政府としてはこれからの事態、中国側の状況等十分勘案しながら、目的に向かって政府としても努力をしていきたいと考えております。
  54. 串原義直

    串原委員 大蔵大臣に伺いますけれども、このところ報道を繰り返して読むという時間がないから申し上げますけれども、六十億ドルと言われていますけれども、五つの油田、炭田、これに対してつまり開発融資をやってもらいたい、供与してもらいたいという要請が中国側からあった。これに対してどう取り組んでまいりますか。私は、これは重要な開発事項であるというふうに受けとめておりますから、できるだけ早く積極的に取り組んで供与する方向を出してやるべきである、こう考えているわけであります。いかがですか。
  55. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 誤解のないように申し上げたいと存じますけれども、現時点において具体的な要請はございません。まだ具体的な要請はございません。したがって、それに基づいての検討というものも行われておりません。ただ、ちょうどことしの一月に私が中国を訪問いたしましたとき、七中全会が終わりました直後でありましたことも多分中国側の事情としてありましたでしょう。第八次五カ年計画についての大変詳細な御説明がありまして、その中において今委員が御指摘になりました幾つかの地域を挙げての資源開発バンクローンについての言及はございました。  そして、それに対して私が申し上げましたのは、具体的な要請が出てくれば検討する用意はある、しかし、相当規模の新規資金協力を検討することでありますから、国際社会の反応というものもこれは考えに入れておかなければならない、中国自身が開放、改革の努力について国際社会の理解をさらに得る努力をしてもらいたいということを私はその席上申し上げました。ですから、正式に具体的な御要請があれば検討する用意があるということは、そのときに申し上げたわけでありますが、その後、具体的な要請は今日まで参っておらないということでございます。
  56. 串原義直

    串原委員 なるほど。具体的な要請がまだ現実にないということ、私は実は具体的な要請があったと仄聞しているわけでございます。そういう報道もあります。したがいまして、あったということになりましたなら、これは前向きに検討する、こういうことですね。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 前も後ろも横も向かずに検討させていただきたい、検討する用意はあると確かに私は申し上げております。  ただ、やはり相当規模の資金協力になるわけですから、これはやはり国際的な反響というものを考慮に入れないわけにはいきません。そして、その点では中国側にさらなる改革、開放の努力とともに、その実績を各国に対して説明する努力を払ってもらいたいということを私は中国側に申し上げてきたということであります。
  58. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、じゃ最後の質問になりますか、長良川河口ぜきの問題について伺うことにいたしますが、実は私は縁がありまして一九五五年、昭和三十年ころから私の地元の暴れ天竜と言われる天竜川問題、治水問題について取り組んでまいりました。なかなか水と人間の共存というものは水害と関連して難しいものであるということを痛いほど知ったわけでありますが、しかるところ、私が当選しましてすぐに衆議院の農林水産委員会が濃尾地方の視察をいたしました。そして長良川三川の治水の歴史を知りまして、改めて水との闘いの難しさを知ったわけであります。そこで、有名な杉本さんの作品である「孤愁の岸」なんという本も買い求めて読んで、大変私は宝暦のころ薩摩藩士が苦労した歴史を知って感激をしたところであります。私は、木曽川の上流に住む一人でありますから、この治水の問題は大いに関心を持ってきたところでありますけれども、そこで伺います。  長良川河口ぜきの工事現場を実は私もそんなことで先日見さしてもらったのでありますけれども、去年の十二月十八日、環境庁長官から見解、提案が出されましたね、建設省へ。この調査検討すべき事項について、建設省はどう取り組んでおりますか。中には工事を中止して環境問題を検討しろという意見もある。工事を再検討しろという意見もある。これは建設省はどう対応いたしますか。
  59. 大塚雄司

    大塚国務大臣 お答えいたします。  先生が現地を御視察になり、また、この問題について大変な御関心をお持ちであることを伺っておりました。ただいまお話がございましたように、この三河川の流域は日本全体のいわゆるゼロメートル地帯の約四割を占めるというほどでございまして、あの伊勢湾台風で五千人の生命を失うという大惨事以来、建設省といたしましても、生命と財産を守ることは極めて大事でありますから、検討をずっと続けてまいった経過がございます。  今お話しの十二月十八日の前北川環境庁長官の御発言でありますが、この御見解につきまして前建設大臣の綿貫大臣と北川前長官とでお話し合いをされまして、まず、河口ぜきの建設工事の継続につきましては建設省が判断することである、そしてまた、追加的な調査が両省庁間の今後の調整の上で必要となる事項について行われるものであって、あの時点での特定の事項の調査を行うことを求めたものではない、こういう確認がされたところでございます。しかし、なお現在両省庁の事務レベルで、既存の調査について点検を加えましたり、あるいはまた追加して調査すべき項目について調整を図っておりまして、必要なものについては早期に追加をいたし、調査を行い、環境の保全に万全を期することといたしております。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、河口ぜきの建設を一時中止して再検討をしてはどうかというお声は一部にあるようでありますが、他方、愛知県、岐阜県、三重県の三県を初め沿川の地方公共団体や議会から強い促進決議も出されておるような状況でございます。この地域の抜本的な治水対策は、住民の長年の悲願であることでもございますし、環境保全に万全を期して、粛々と現在工事を進めている状況にあるわけであります。  今後とも地元と密接な連携を図りまして、環境庁長官の見解も踏まえまして、環境につきましてはもちろん大事でございますから、その保全には一層の充実を図りまして、河口ぜき工事の計画的な進捗を図ってまいりたい、このように考えてはおります。
  60. 串原義直

    串原委員 環境庁長官、今建設大臣は建設を進めつつ調査検討をするというふうに言われましたね。あなたの方で指摘をいたしました提案事項、建設を進めつつ環境問題に取り組んでいくということで解決される、こう長官理解いたしますか。
  61. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  ただいま建設大臣からお話もございましたが、環境庁といたしましては昨年末の環境庁長官の見解に基づきまして、長良川河口ぜき設置に伴う水質や自然環境への影響に関する追加的な調査検討の内容について建設省と協議を進めておるところでございまして、この環境庁長官の見解に沿った調査検討が行われておる、このように考えております。  今後とも、建設省と密接な連絡調整を図りつつ、長良川の良好な河川環境の保全のために現段階でとり得る最善の措置がとられるよう、環境庁としても努力をしてまいりたいと考えております。
  62. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、建設省に伺いますけれども、今、建設を進めつつ、継続しつつ検討するというふうな答弁がありましたけれども、その場合、これの竣工は、私が聞くところたしか平成七年ころを予定しているわけですね。したがいまして、建設を進めつつ重要な環境問題を検討していくということでありますが、そうなりますと、環境問題の検討に時間がしばらくかかるということになりますと、建設は進める、環境問題についてはそれと並行して進めるということで、環境問題の解決の方がおくれをとる、遅くなるということになっては、これはまた問題だというふうに思うわけであります。したがいまして、工事は進めつつということになればなるほど環境問題にする取り組みは急がなきゃいかぬ、答えを早く出さなければいけないと思うのであります。  いつごろまでに環境庁から指摘をされました事項についての環境問題に対する調査検討の答えは出しますか。
  63. 近藤徹

    近藤(徹)政府委員 河口ぜき建設に伴う環境保全につきましては、事業着手に先立つ五年前から、昭和三十八年からでございますが、五年間にわたって木曽三川河口資源調査等を徹底的に行ってまいりました。その後も、陸上動植物も含め幅広い環境調査を行い、適切な環境保全対策に努力をしてきたところでございます。環境庁長官の見解も踏まえまして、現在、環境庁との連絡の場におきまして、建設省が既に実施した調査結果について点検しておるところでございますが、既往の調査の確認も含め、追加調査の必要な項目については検討して、これに基づき補足調査を行うこととしているわけでございます。  調査内容によりましては通年、四季を通じて現地調査を必要とするものも出てくると予想されますので、それらを取りまとめる時間等も考えますと平成三年度いっぱいと考えておりますが、私どもとしては既存の調査の中で大きな問題については十分調査が進んでいるというふうに考えておりまして、なお確認の調査について、平成三年度いっぱいと考えております。
  64. 串原義直

    串原委員 これは重要なところだから確認をいたします。  今まで調査をしてきたこともある、ありますけれども、環境庁から指摘されたことも含めて検討を追加してやるけれども平成三年度中には調査の結論が出ます、そして対応できるようになります、こういうことですね。
  65. 近藤徹

    近藤(徹)政府委員 そのように考えております。
  66. 串原義直

    串原委員 それでは建設省、もう一度。この問題は、環境問題は非常に大事であります。それから、水を守ることも大事でしょう。問題は、やはり地元が大事ですね。関係する県、関係する市町村、地域の住民、これらの皆さんの意向、希望、意見、これに十二分に対応しなければいけませんね。ともいたしますと建設省はこの問題に、手抜きがあったとは決して言いませんけれども、もう一つ努力が足りなかったのではないか、こういうふうに感じられる節がないわけではない。大事なところですよ。対応してください。どうですか。
  67. 大塚雄司

    大塚国務大臣 環境保全につきましては極めて大事なことでありますが、生命財産を守ることも大変に大事なことであります。今関係の市町村から、決議をして、早くやれというお声もありますけれども、あの一番突端にある長島町の町長さんは、伊勢湾台風で奥様、子供を亡くされて一人で頑張っておるわけでございますが、先日お会いをしたら、切々と、命を守るために頑張ってくれという御激励もいただきました。また一方、環境を守るという意味でも幅広い方々から御意見も寄せられております。  御指摘のようは、環境を守る姿勢はしっかりと持ちながら、工事の方も粛々とやりまして、平成三年度末の結果等も待ちまして対処をしてまいりたい、このように思っております。
  68. 串原義直

    串原委員 済みません、最後の質問。  環境庁長官、先ごろの提言というのは、これからの各種の開発、建設にある意味で大きな示唆を与えたと思うんですよ。今後ダムあるいはせき、いろんな各種開発事業、これを推進するに当たりまして、環境問題について常に考えられなきゃいかぬ、各省庁と連絡とって。これが大事だと思う。ところが、環境アセスメントに関する閣議決定、これを見るというと、環境庁長官に意見を聞くということだけになっているわけですね。これは何とも歯どめがきかない。ないと言ってもいいわけですね。したがって、本当は法ができることを私は期待をする、検討すべきだと思うけれども、いかがですか。  それと、この閣議決定を当面よりどころにするとするならば、閣議決定をいま少し補強して、各省庁が環境問題に常に連絡、協調の場を常設をして、話し合って各種の建設事業を進めていく、こう直すべきではないか、補強すべきではないかと考える。いかがですか。
  69. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  閣議決定に基づく環境アセスメントにつきましては、御指摘のように、主務大臣より意見を求められれば、環境庁は必要に応じて意見を述べることになっておるわけではございますが、意見を求められなかった場合におきましても、主務大臣から環境影響評価書は環境庁に送付されることになっておりますので、環境保全上問題がある場合には、主務大臣に対しましてその旨指摘するなどの対応は可能だと考えております。  これらの措置とあわせて、個別法等に基づく協議を通じまして適切な環境アセスメントの実施が確保されると考えておりますが、環境庁といたしましては、今後とも関係省庁と十分連絡を図りながら適切な環境影響評価の推進に努めてまいりたいと考えております。  なお、法制化につきましては、閣議決定の実施状況等をこれからも見つつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。
  70. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、終わります。
  71. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて串原君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時四分開議
  72. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新盛辰雄君。
  73. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ODAの諸問題でこれから各大臣にも御意見をお伺いしたいと思います。  ODAの援助政策決定のメカニズムに問題があるのではないか。不透明である。あるいは経済協力費の情報公開がなされていない。現在のところでは外務省のODA白書らしきもの、あるいは通産省の「経済協力の現状と問題点」がありますが、その内容については極めて情報の公開に至っていない。どのような国々に、いかなる開発事業に、どういう条件で、どれほどの予算が使われるのか、またどう決定されていくのか、国民には一切わからないので、その実態が極めてやみの中にあるように思われます。したがって、国会に報告もなければチェック機能もない。これでよいのかという意見があるわけですし、哲学なき援助、あるいはばらまき援助、あるいは追従型で一向に改善をされていない、こういう状況を踏まえて、その衝に当たる外務、大蔵、通産、経企庁の各大臣、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  74. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねのODAのあり方につきまして、日本は第二次世界大戦後、貧困から立ち上がるときに多くの国から、あるいは国際機関から援助あるいは協力を求め、この経済大国を築くことができたわけでございますが、その背景には、やはり基盤となるものは国民の皆様方の自助努力に基づいたものが極めて大きかったと私は考えております。我が国のODAは開発途上国との相互依存関係が非常に高い。他のOECDの国々と比べましても依存率は相当高くなっております。  そのようなことで、人道主義的にも、また相互依存の観念から協力をしていくという基本的な考えを持っておりますが、開発途上国の多くが食糧や医療、保健、教育といった基本的な社会的なサービスすら事欠いて困難を来しておるというような状況の中で、相手国の経済社会開発、すなわち貧困の除去、人づくり、国づくり等にもお役に立っていくという考え方が我が国ODAの基本的な考え方でございます。もちろん途上国自身の国民の自助努力が必要なことは言うまでもございません。  我々は、日本国国民の善意が伝わるようにこれから努力をさらに続けていかなければならないと考えておりますが、仕事のやり方につきまして、累次にわたって定めた中期目標の中において内外にこのODAの状況を説明する等、明確な方向づけを行いながら着実な努力も続けておりまして、今後とも積極的に努力しなければならないと考えております。
  75. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 新盛委員にお答えいたします。  私どもの国の経済協力そのものは人道的考慮といいましょうか、そういう基本的理念に基づきまして発展途上国の経済発展、あるいは飢餓と貧困といいましょうか、そういうものの救済、あるいはまた国民生活の向上、これへの貢献を目的とするというのが私どもの大きな前提に相なっておるわけでございます。このような観点で、私ども国といたしましての第四次中期目標のもとでODAの量的拡充というものが図られているということは、私どもの一致した見解でやっておると言うても差し支えないと思うのでございます。  経済協力の実施に当たりましては、私ども通産省としましても、発展途上国の経済社会開発に対する自助努力支援するために、国ごとの発展段階に応じまして、まずは資金協力、それから技術協力等の各種協力を効果的、効率的に実施していこうということを考えてまた今までもやってきたつもりではございます。確かに、はた目から見ますると新盛委員の御指摘のとおり、むだな金もちょっと行き過ぎているのではないかと思われる点も、これは私自身も感ずる点が幾つかありましたが、しかし内容を掘り下げてみますと、そういう前提の中で非常に緻密にやってきたということは否めない事実として受けとめても賜りたいな、こう思っておるわけでございます。  また、援助のみならず、投資、貿易をも含めました三位一体型の総合的経済協力というものを、言うなれば、形をかえて言うなら世界全体の発展は先進国と発展途上国の経済発展及び政治的安定なくしては達成できないという、その目標のもとに積極的に推進することが必要である、このような考え方で推進しておる、このように御承知おき願いたい、御理解も賜りたいと願っている次第でございます。
  76. 越智通雄

    越智国務大臣 経済企画庁といたしましては、ODAの基本計画を立案作成するというのが本来の仕事になっておりまして、先生御存じのとおり、六十三年に二百五十億ドルを倍にするという計画を立てておりまして、九二年までということになっております。そうした面でこの問題に一生懸命努力をさせていただきたい、こう思っておりますが、技術援助その他は大変多くの十幾つの省庁に関与しておりますので、それぞれの省庁でお願いしている、こういう状態でございます。
  77. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今それぞれ各大臣からお述べになりましたように、日本の経済協力というものが国際社会の相互依存、人道的配慮、この二つを基本理念として実施をされておるということは御承知のとおりであります。この中におきまして種々問題が今日までも提起をされてまいりました。その中には、相手国政府の方針の変更に伴い問題の生ずるケース、相手国政府と地域との間の連携が不足したために生じたケース、さらには我が方の技術的な検討の未熟さ等さまざまな問題があろうかと存じます。  従来からそうした御指摘を受けながら今日の努力を積み重ねてきておるわけでありまして、大蔵省の立場から申し上げますならば、政府開発援助の予算につきまして、厳しい財政事情の中でありましても真に必要な経費を計上するという考え方のもとに、積極的に今日までも取り組んでまいりました。姿勢としては反省すべき点は反省しながらも、今後ともにその役割を果たしていくべきである、そのように考えております。
  78. 新盛辰雄

    ○新盛委員 このODAのこうした不透明に当たるという諸問題は、いわゆる四省庁体制にあるのじゃないかと言われているわけでありますが、ODAは円借款、四省庁体制の中で無償協力等については十六省庁が関与している、このために計画をするにしてもプロジェクトにしてもばらばらで各省庁の縄張り争いが、こうした面では整合性を欠いたり効率性が欠けていたり、あるいは国民にとってもまた極めて複雑でわかりにくい。このために、ODAを国民に身近なものにするために思い切って一元化体制を整えていく必要があるのではないか。  後ほど予算のことも聞きますが、本年度予算ベースでも一兆五千億を超えようとしているこのODAを運営をしていくために、国際開発協力庁という、ある意味では各省庁のそれぞれの支援にかかわる各機構を一つにまとめていくという必要もあるのではないか。そして国際協力事業団、JICAあるいは海外経済協力基金のOECF、こうしたものもこれは一つの国際開発協力庁と、これは仮称しましょうが、それに統合して、その中の一つに国際開発協力事業団という一つの形をつくったらどうか。  これは、我が党が既に四党合意によって前から提出をしているODA基本法、この内容にも触れていることでございますが、こうしたことについて、各所管にございます大臣の見解をいただきたいのであります。
  79. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 私はちょうど経済企画庁の長官のときにもこのODAにかかわらせていただいて、また計画やその俎上にのせたこともございましたが、四庁体制が確かにいろいろとかえって不手際な立場になるのじゃないか、私も当時そのように感じたこともございました。しかし考えてみますと、大蔵省は財政をそのまま出していただく、その前に事前に外務省が非常に情報を早くキャッチしていただく、それを企画立案を経企庁がしていただく、それでまた、ある意味においてはその核として、むしろ何といいましょうか経済協力的な立場としての先兵としては通産省がやらせていただく、このような持ち場持ち場の立場をそれぞれ考えていくという点においては、四庁体制も決して決して悪くはない。けれどもしかし、新盛委員がおっしゃったようにそれを一つの融合体にして、少なくとも一兆数千億なんという金を預かっている限り、その形をむしろかつての何といいますか国際協力的な立場のものをもっと存続させた形でやった方が有機的でないか、この意見もあろうかと思います。  しかし、いずれにしましても、我が国の経済協力の実施体制を全体として順調に機能させていくということを考えていくのがODAの一層の効果的なことであろうと思いますると、実施機関で密接な提携を図っていくという点においてはその運用改善を図っていかなければならぬということはただいまおっしゃられたとおり受けとめますけれども、その中で、援助としての基本法というものを特別に制定する必要はあるんだろうかということは、私の疑念としても残っておりますし、今の段階ではそのような考え方にとどめておる、こういうわけでございます。
  80. 中山太郎

    中山国務大臣 委員お尋ねの件につきましてお答え申し上げます。  御指摘のように、関係省庁十七省庁ございます。それでこの問題、それぞれ各国のプロジェクトごとに専門的な内容の援助を実施する必要がございまして、各省庁及びその関係機関の専門性、経験、ノーハウを活用することが不可欠な状況になっております。  対外的には、外交の一元化の見地から対外関係を預かる外務省が関係省庁と協議の上一本化をして現在実施しておりますが、今後とも現行の体制のもとで、対外経済協力関係閣僚会議等を通じまして運用の改善に十分意を用いつつ、効果的、効率的な援助の実施に努めてまいりたいと考えております。
  81. 越智通雄

    越智国務大臣 先生のおっしゃるお気持ちがわかるつもり、わかる感じはいたしますけれども、相手国によりまして有償、無償の取り合わせ等もいろいろございますし、今の行政機関以外に何かつくったらそれが物すごくうまく機能するかどうかということも、大変わかりにくいと申しますか、むしろうまくいかないのじゃないかなという感じがいたしまして、まして各省庁の上に乗っかりますと、そのまた関係が大変難しくなるのじゃないか。  目下のところは、やはり現体制におきまして、現在ございます閣僚会議をもっとうまく活用する、またその下で、余り御報告されてないかもしれませんが、局長課長レベルの連絡会議もさせておりますので、それをさらに一層強化することによってできるのじゃないか、私どもの関係しております計画の企画という点では十分それでまだ対応できる、このように考えているところでございます。
  82. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員が御指摘になりましたような御意見があることは私も承知をいたしております。しかし、率直に申しまして、私はそのお考えとは全く反対の考え方を従来から持っておりました。党において行政改革の責任者を務めておりましたときにも、この問題に随分メスを入れてみたことがございます。そして、その四省庁体制と言われる体制の中で、関係各省庁の持っているノーハウを十分に駆使していないところにむしろ問題があるという考え方を私は持ちました。そして、当時党側から政府要請をして関係閣僚会議をおつくりをいただくと同時に、その従来の四省庁体制という考え方ではなしに、官房長官を座頭として関係省庁が連携をとる仕組みに考え方を変えてきたわけであります。むしろ私は、各省庁の持つノーハウをいかにして効果的に引き出し、援助担当省庁の独善性に陥らない援助をするかの方が大切ではなかろうか、その方がはるかに実効が上がると考えておりまして、遺憾ながら委員のお考えには私は賛成できません。
  83. 新盛辰雄

    ○新盛委員 外務大臣は後で時間をかけてあれしますが。  それで、今縦割り行政としてこれは非常に欠陥があると私どもは見ていたのですけれども大蔵大臣が代表して、特に今の状況ではまだそういうことになっていない。現実的に、この問題についてはアメリカ議会調査局の報告書を見ましても、援助目的の再確認、援助内容の再検討、実施体制の再検討などを踏まえて既に議論がされておりますし、カナダの議会下院、外務通商常任委員会では、一九八七年五月にこのカナダにおける政府開発援助に関する証言、こうしたものを聴取しながら、どうしても日本のようにこうして、日本はそれこそ援助国第一位ですから、そういう意味でその行く先がどうも不明であるというのでこの報告書をまとめておるのですね。だから、このいわゆる官僚主義的なやり方で運営されているという全般的な各国々の様子もあるわけですけれども、これはガラス張りにして国民に明らかにせしめる、こういうことは必要じゃないか、それから来ていると思うのです。  ここに紹介しますが、西ドイツのブリギッテ・エルラーさんという人が一九八三年十月にODA、いわゆる西ドイツの担当官であった。三週間にわたってバングラデシュの現地を視察旅行に出かけてこの現地を見てみたのだが、もうびっくりして、帰国後直ちに辞表を出した。これは有名な話であります。自分が手がけた開発援助プロジェクトが、その目標であった最貧困層の救援と自助努力によってやられているだろうと思っていたけれども、全く役立っていないばかりか、この援助プロジェクトがあったばかりに逆に貧民の生活が甚大な被害をこうむっているという結果を目撃をして辞任をしたというのです。そして本を書かれたわけですね。この内容を見まして、私も本当にそうだろうなと。  それは、私も去年の九月に今こういうふうに本をつくったのですが、この中にも紹介されておりますように、インドネシアからマレーシアあるいはスリランカなどをずっと見て回りました。「光と影」、松浦委員がさきの委員会で紹介しましたように、光の部分は非常に立派なのですが、影の部分は一体何に使われたのか、何が目的だったのか、本当に開発援助という名のもとに、中間に入っておりますプロジェクトあるいは商社あるいは建設会社などを初めとして、こういう関係の利益になる、あるいは相手の国から非常に、ある意味では逆にこういうODAのやり方まずいのじゃないか、こういう指摘も受けたわけであります。  それで、私どもはODAをふやすことは賛成です。世界の貧しい国々の経済あるいは社会開発に貢献をして、また貧しい人々の生活水準の向上に寄与するというこうしたことであれば、日本国民だってこれは地球社会の一員ですから当然のことだと理解を示すのでしょうけれども、今こうした状況で、ある場所では全くむだ遣いをしているやに見受けられるこの海外援助というのは、もう一回、カナダでもそうでありましたように、あるいはアメリカでもそうでありますように、あるいはドイツでもそういう反省をしておられるように、日本は経済大国、しかも援助第一位の国、こういうことになっているわけですから、そうした面で皆さんがこうしてもっと現地の生々しい実態を把握をした上でやっていただきたい。  海部総理が途上国の方に行かれて、ポケットから出すわけじゃないでしょうけれども、ばらまきをしてきたじゃないかと世間では風刺しているわけですね。こういうことではよくないのじゃないか。こうした面のその中心的衝に当たられる外務大臣としては、これからこうしたことを直していくためにどうすればいいのか、第一、予算の中でも数量がはっきりしない、そして予算、決算が出るわけじゃありません。国会に承認を求めるわけじゃない。ある意味では会計監査人でも入れて何かきちっとしたチェックをということであればいいのですけれども、そういうものが定かでないわけでありまして、このような状況を踏まえて、ぜひともこれは外務省として今後の明確な指導体制をつくり上げてもらいたい。そういう意味で、今申し上げた諸点について御答弁をいただきたい。
  84. 中山太郎

    中山国務大臣 我が国が援助大国となってきた今日、このODAの実施体制の強化をもう少し整備しろという委員の御指摘は、私は非常に高い評価をいたすものでございます。私自身が外務大臣になりましてから、やはり委員と同じようにODAに問題点が一体どこにあるのか、これはやはり事前調査の問題、それから相手国との話し合い、それから評価の体制が整備されなければ援助の効果が上がっていない、こういうふうな考え方から評価のシステムを就任後相当強化をしてまいりました。それで、実施をしているプロジェクトごとにこの状況を調査するようないわゆる職員も配置をするべきであるということも既にやっておりまして、御指摘のような点を十分踏まえながら、国民の貴重な税金が有効に使われるように努力をしていかなければならないと考えております。
  85. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この無償資金協力の拡充だとかあるいは国際協力事業団、JICAあるいは技術研修員の受け入れとか人づくりあるいはまた青年海外協力隊の事業、こうしたことでことしの予算の中でも既に人づくり協力体制でも六千三百七十人、青年招聘計画でも千三百人、青年海外協力隊事業も一千人、こうして医療協力の拡充を初めとして極めて有効適切な増員もされているわけですが、私どもは現地を見まして、これだけ一兆五千億を超えるODA予算を消化していくには、あるいはそれぞれの百三十八カ国を一応公認をして、そのほか今現実対象になっている国々、こういうところに派遣をしているJICAの皆さん、本当に頭の下がる思いで見ましたよ。この方々は日本を本当に背負っている、その決意でやっています。しかし、人手が足らない、より技術者が足らない、そういう面ではそういう各縦割り行政の弊害から生まれてきているいろいろな問題もあるのでしょうけれども、ここのところはもっと力を入れていただきたいと思うのですが、どうですか。
  86. 中山太郎

    中山国務大臣 現場を見ていただいている先生方からもそのような御指摘も受けておりますし、私自身も海外出張すれば、機会があれば、実際に実施しているプロジェクトを、現場を見てきたりしておりますけれども、今御指摘の点は十分注意をしてまいらなければならないと考えております。
  87. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、防衛庁長官に伺います。  政令八号による自衛隊機C130Hの派遣、午前中の質問にもお答えになったのですが、湾岸情勢が急激に変化しました。結論からお答えいただきたいのですが、この八号は公布の日から実行するというので、一月二十九日でしたね。現実もうそういう環境がない。いわゆる海外に派遣するようなことにならない。この現実は認識しておられるのかどうか。また、当然撤回をしてもいいのではないか。公布をして、このままこの政令はずっと永遠に、また有事の際に活用するために残していくのかどうか、それを伺いたい。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  88. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  三点あったかと思うのですけれども、まず、現在の情勢をどう認識して、自衛隊の飛行機による輸送の必要性はあるかないか、その点はどうかということでございますけれども、現在の時点におきましていろいろな動きが進んでおることは承知しております。私どもも、クウェートからのイラクの完全な撤退が実現して、そしてまた避難民を輸送しなくちゃいけないといったような事情にならなければそれは幸いだと思っております。しかし、まだ現段階で、本当にそういった完全な撤退ということが実現するかどうか、なお注視すべきものがあろうかと存じておる次第でございます。  それから二つ目でございますけれども、そういったことでございますので、私どもといたしましてはまだ今の段階で、もし避難民が大量に発生し、そして国際機関からの要請があり、そして民間機の活用によって対応できない場合には自衛隊で輸送するというこの態勢はなお引き続きとっておかなくちゃいけない、このように思っております。  それから第三点、この政令八号を廃止すべきときじゃないかというお話でございました。その点につきましては、政令をごらんいただければおわかりのとおり、これは「当分の間」、そして今回の湾岸危機で発生した避難民、この輸送のニーズに対応する、そういう書き方になっておりますので、もしその政令の目的としますような情勢が完全になくなったということが明確になれば、これはその政令そのものが効力を失っていく、このように考えております。
  89. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、防衛費の一千億減額の問題ですが、九十億ドルの財源問題にかんがみて出てきました問題です。これは、総額二十二兆七千五百億の中で完全に減額をするという、いわゆる本年度の規模にわたるものから減額をする、その方法によって内容は変わってくるのですが、当面一千億の減額はどこを減額をするのか、削減するのか、それはどういうことですか。
  90. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 お答えいたします。  お尋ねは、一千億の減額の平成三年度の契約ベースのどこを減ずるかというお話でございますが、主な削減内容といたしましては、九〇式戦車二両、対戦車ヘリコプター二機、それから輸送ヘリコプター一機、ミサイル艇一隻、練習艦一隻、輸送機C130一機、中等練習機T4一機などでございます。
  91. 新盛辰雄

    ○新盛委員 正面装備の特定的な削減だということですが、これは九一年度の予算限りのことであって、九二年度以降は一体これで復活されるのかされないのかという、これはこれから防衛庁長官、いろいろとちまたで言われておったことですから、これの全体枠は明確になっている、だけれども一千億はここで削減だとなれば、当然予算措置としてもそこは明確に出てこなきゃいけないでしょう、内容として。今の九〇式戦車二両とかミサイル艇の一隻だとかなどを含めた削減計画だというのは、買い物ですからね、予定していた買い物を買わないということですから、これはそれなりに防衛庁としては済まされない話でしょう。これはどうですか。
  92. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 平成三年度の予算措置につきましては、歳出に係る分はその分が減額されることになりますし、それから契約ベースがほとんどでございますが、国庫債務負担行為の限度額が「それに相当する分だけ平成三年度につきまして減ぜられるという形になるわけでございます。
  93. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、二月二十六日から空の日米共同訓練で、在日米軍の輸送を航空自衛隊が肩がわりとして行うこと。これは二月十九日防衛庁が明らかにしたことですから。一九七八年以来初めてのことなんですね、これ。中東派遣で米側の輸送力が非常に減退している、それに応じた肩がわりじゃないか、私どももそう認識をしますが、ある意味では、間接的な湾岸戦争への支援策ではないか。集団的な自衛権行使にもかかわる問題だ、そう思います。第一、日米地位協定、日米の経費負担のことなんですが、米軍の兵員、物資を運ぶことは、日米間の支援の中で定めてはいないんでしょう。それを防衛庁設置法六条の規定を整合化して、海外に出るとか出ないとかの、海部総理もここのところはいいんじゃないかと言われたところなんですが、ここで今度は解釈を拡大をしまして、日米共同訓練の中で自衛隊機でもって米軍の物資や兵員を運ぶことができる、こう解釈をされたのはどういうことですか。
  94. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答えを申し上げます。  我が国有事の場合に日米は共同して対処しなくちゃいけないという事態は、当然想定されるわけでございます。そういったことに備えまして、その訓練を行っていくということは、日米安保体制の信頼性向上のために当然必要なことでございまして、自衛隊の任務遂行のために必要な訓練の一環として、今回のような自衛隊の航空機による米軍の輸送ということをやったわけでございまして、これは従来にも例のないことじゃございません。
  95. 新盛辰雄

    ○新盛委員 例があるとすれば、これはどういうときにあったのですか。
  96. 池田行彦

    ○池田国務大臣 やはり日米共同訓練の中で、先ほど申しましたような有事の際の日米共同対処の訓練ということで行われたわけでございます。
  97. 新盛辰雄

    ○新盛委員 せっかくきょうあす中に大転換をするであろう湾岸情勢になっているわけですね。こういう中で、二十六日から始められるという日米共同訓練というのは、ある意味では少し配慮すべきことじゃないかと思うのですが、どうですか。
  98. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員おっしゃいます配慮という意味を私十分に理解しているかどうかでございますけれども、御承知のとおり、私ども自衛隊が米軍との間で共同訓練を行いますのは、我が国の安全保障の見地からの我が国の防衛のための訓練でございますので、これは湾岸情勢がどうであるからやるとかあるいはやらないかとか、そういう性格のものではないのではないか、こう考えます。
  99. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、鉄道整備基金問題について質問をしていきたいと思います。  このたび新幹線鉄道、都市鉄道の計画的、着実な整備促進を図るために鉄道事業に対する助成を総括的かつ効果的にという、そういう一面を持ちながら新しく鉄道整備基金という法案が、既にこれにかかわって三本ぐらい運輸委員会にかかる予定になっていますね。私は、この組織、運営について運輸委員会等でも慎重に論議されるだろうと思いますが、この整備新幹線財源確保の主たるものが何であるか。新幹線保有機構のリース、これまで払っておりましたものを譲渡方式によりて売却をしましてそして財源の一助にする、そういうような面で三年度予算では一般会計から千二百二十三億、昨年度は九百七億あったものでありますが、これを助成をしながら譲渡していく。今プールしてあるわけですね。そしてさらに、〇・五%の通勤定期券の引き上げをも予定をしていたんですが、それは私どもが強く事前から問題ありとして、生活権の問題ですからおやめなさいと、おやめになっているわけですね。ところが片側では、通勤混雑緩和対策というのは、これは鉄道整備基金ができてからその問題は考えるということになっているのかどうかわかりませんが、現実の問題としてそれは入っていない。  こういうことなどからまずいろいろ各面にわたって問題提起をしますが、第一に、この新幹線鉄道保有機構の存在したことについては、国鉄から分離分割をし民営化をしていったということの中に生まれたわけですし、リース料をもってこの借金返済のためにもかかわったことでありますね。これは三十年間はひとつこのままにして、その上で話し合った上でどうするかを決めるという手続になっていたやに私は思うんです。それが急遽新幹線整備計画に伴う財源の問題として譲渡する、売却をする、こういうことになったわけですが、そのスタンスは何でしょうか。
  100. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 一つには、国鉄改革時におきましては東北、上越両新幹線の開業後、日がまだ浅い等から、各新幹線の収益力の見通しが不透明であり、その経営基盤が不安定である状況を重視して、リース料等に収益を調整する必要があると考えたためでありますけれども、改革後四年経過した今日におきましては各新幹線の輸送量等の推移が安定をいたしておりまして、また各新幹線の収益力の見通しが出てきたこと、本州三社は当初予想していた以上に順調な経営実績を示していることであります。  二つには、このような状況の変化のもとで、国鉄改革の一層の進展を図る上で重要な課題であります本州三社の株式の売却、上場は際しては、現在保有機構から借り受けております巨額の新幹線資産とこれにかかわる債務の確定がなされていないこと、設備の維持、更新に必要とされている内部留保が十分でないという財務体質上の問題があることによりまして、今回保有機構が保有する新幹線施設を適正な譲渡価額、その他一定の譲渡条件で本州三社に譲渡することにしたものであります。
  101. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そこで、この譲渡するということの新幹線譲渡価格配分率なんですが、JR東日本、JR東海、JR西日本、残存のリース料の相当分、もう金額は省略をします、上乗せ部分というのがあるわけですね。この上乗せ部分というのが一兆円なんです。この上乗せは、これは今の土地価格の問題とか経済動向にもよることなんですけれども、根拠は一体何だろうか。それも再調達価額として二回も三回も、しかも二年、三年ですか、JRになってから、四年、それまでのうちに再評価を再三おやりになるのですね。再三というより再々評価で今度出されているのが一兆円の上乗せを含めた価格なんですよ、九兆一千億なんですね。これはゆゆしきことだと思うのですよ。これから先経済が一体どうなるかということは見通しつかないわけですけれども、それこそJR各社は民間会社として輸送力の中においての輸送コストの問題もさることながら、経営に圧迫を受けるんじゃないか。逆に、この買い物のために大変なことになりはしないかという危惧を持つのは私一人だけでしょうか。そのことについて、なぜ一兆円なのか、なぜこの再々評価ということになったのか、教えてください。
  102. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 新幹線はいわば国民共有の財産ともいうべき公共性の高い資産であり、また収益力も持ったものでございますので、これを譲渡するに際しては譲渡時点、現在ことしの十月一日を予定しておりますが、譲渡時点における取得価額で譲渡することが適当であると考えたわけでございます。  九・一兆円という額につきましては、学識経験者から成るJR株式基本問題検討懇談会において十分検討したものであり、土地につきましては市町村別、用途別に譲渡時点における価額を推定し、償却資産につきましても、それぞれの種別でその時点での価額を積み上げたわけでございます。  またJR各社に対する譲渡価額につきましても、同じ懇談会で長期的な収益及び費用の見通し、また各新幹線の資産を勘案して配分額を決めたところでございます。
  103. 新盛辰雄

    ○新盛委員 新幹線買い取りで経常利益が減少するあるいは設備投資にも事欠く、抑制しなきゃならないという事態は発生しませんか。
  104. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 新幹線譲渡に伴う損益への影響でございますが、リース料が必要なくなりますが、一方で譲渡に伴う金利、それから減価償却費が増加します。その点で経費が若干増加いたしますけれども、現在の各社の経営状況から見まして所要の経常利益というのは十分確保でき、経営に悪影響を与えることはないと考えております。
  105. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大塚政府委員はそうおっしゃいますが、運賃値上げなどということは発生しないわけですね。
  106. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 今申し上げましたようにJR三社とも所要の利益を確保できますので、譲渡に伴う運賃値上げということは全くないと考えております。
  107. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今回この通勤定期値上げの〇・五%は除外されましたが、通勤混雑緩和対策は当初計画では入るんですか、入らないんですか。
  108. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 通勤混雑緩和対策の納付金につきましては、平成三年度は創設を見送り、引き続き検討することとなっておりますが、今回の鉄道整備基金によりまして、通勤混雑対策として、地下鉄整備の補助金の大幅増額、あるいは大都市鉄道の整備に対する無利子貸付制度の創設など十分充実し、その整備が促進されると考えておりますし、また、駅施設等の改良につきましては、開銀に新たに通勤混雑緩和対策工事という枠が設けられ、これを活用して促進したいと考えております。
  109. 新盛辰雄

    ○新盛委員 新幹線保有機構の廃止で、そこに働く労働者は雇用の保障がされるんですか。
  110. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 現在、新幹線鉄道保有機構には役員を除いて約六十五名の職員がおりますが、今回設立する予定の鉄道整備基金は、新幹線鉄道保有機構の債務の償還業務あるいは新幹線施設の登記業務等を引き継ぎますので、職員の相当部分は鉄道整備基金に引き継がれるものと考えております。その他の職員につきましても、今後本人の希望等を十分調査し、問題のないように対処するよう機構を指導していくつもりでございます。
  111. 新盛辰雄

    ○新盛委員 国鉄清算事業団が抱えております国鉄債務は合わせて何兆円に今なっていますか。それで、汐留地域を初めとして全国的な用地売却益はどういう見積もりで、予算の中では一兆五千億と概算入れてありますね、この辺は変動があるんじゃないかと思うが、どうですか。
  112. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 現在、国鉄清算事業団の抱えております長期債務は二十七兆円でございますが、平成三年度首には、営団の出資持ち分の政府への一括譲渡等により二十六・二兆円に減少すると予定しております。  また、土地の売却につきましては、平成二年度には一兆円を予算計上しておりまして、現在、不動産変換ローン等地価を顕在化させない方法により処分を促進しており、ほぼ一兆円に近い額が達成されるものと考えております。  また、三年度は一兆五千億円を予算計上しておりますが、いろいろな方法を用いてこの目標額を達成するべく清算事業団を指導していくつもりでございます。
  113. 新盛辰雄

    ○新盛委員 平成三年度末には二十五兆九千億見込んでおられますね。そして、株式売却収入をこれは見込まない場合の結論です。今おっしゃいました平成二年度は二十七兆一千億、平成三年度は二十六兆二千億、平成三年度末は二十五兆というような非常に速いスピードで消化していただくわけですが、またそうなければならぬのだけれども、果たして経済的な変動もどう起こるかわかりませんのでね。  ここで株の問題を申し上げますが、株式上場が九一年度までにやらなければならないというふうに、JR株式基本問題検討懇談会で、これは株式の問題を議論されたわけですが、過去に、去年の三月から暮れの十二月まで七回もおやりになりまして、「平成三年度におけるJR株式の売却に関する意見」を発表されています。ここで、株の上場の額面も変わってくるのでしょうが、こういう売却とかあるいは売り買いがあっていろいろと大変なときなんですが、果たして本年度中に、九一年度ですから、株の上場ができるんですか、できないんですか。  それと、大蔵にお聞きしますが、NTT株の状況がかっていろいろと議論されました。当初は非常に格好がよかったんだが、その後いろいろと問題が生じた。今回のJRの株式上場はそういう懸念はないのかどうか。両者お答えいただきたい。運輸大臣。
  114. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 JRの上場のためには、上場企業にふさわしい経営基盤の確立が必要であります。その一環として、既設新幹線鉄道施設の譲渡を行う等、平成三年度にJR株式の売却が可能となるよう所要の検討、準備を今現在鋭意進めているところであります。——まだ今検討を鋭意進めているところでありまして、その時期はまだ申し上げることはできません。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 国鉄改革に携わりました者の一人として、JR株式の放出は、私自身一日も早く行いたい気持ちでいっぱいであります。しかし、この売却が市場に与える影響等考えますと、売却時の市場動向あるいは数量、方法などにも非常に影響がありますので、現段階においては何ともちょっと申し上げようがありません。ただ、いずれにしましても、JR株式の売却というものが市場に大きな影響を与えないように、市場動向を十分見きわめながら、タイミング等につきましても検討していく必要があると考えております。
  116. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ここで現実的な方向へ行くのですが、今回、三線三区間の整備新幹線着工という極めて歴史的な決定が行われて予算措置をされているわけですし、また、その背景には鉄道整備基金が成立をしなければできないわけですから、私ども最善の努力をしたいとは思います。ただし、在来線廃止が踏み絵になって、そしてその上でこうということで、ここで申し上げると大変、大蔵省としては、運輸の方ではいろいろと相談があったがという話になるんでしょうが、これは、旅客は第三セクター方式で可能かもしれませんけれども、全国ネットワークを持っている、一貫輸送であり、しかも貨物二法で今度新たに変わりましたね、この鉄道貨物輸送は一体どういうことになるんだろうか。このことに対して、ひとつ明確にお答えいただきたい。  詳細の議論はまた運輸委員会でやるのでしょうから、第二の問題。  整備新幹線は、高崎—軽井沢間はフル規格、しかし他はミニ新幹線、スーパー特急などなど、それぞれ様式が違うのですね。しかし、将来はこれはフル規格にしなければならないじゃないか、我々はそういうことで一生懸命やっているのですが、当面は従来の新幹線規格かもしれませんけれども、フル規格にすることによって高速交通の、名実ともに日本国土の経済発展を促すという意味で大事なことではないかと思うのです。これに対する展望があるのかないのか。  それと、今日の清算事業団にかかわる問題もございますけれども、今現実に経営が輸送コストの面においてバランスがとれているという形をとらなきゃならないJRなんですが、国の負担が三五%でJRが五〇%で地方が一五%というこの割りつけ方は、本当にこの地方の皆さんにとっても問題があるし、国は今度の鉄道整備基金でもって相当金の面では基金の活用としては出てきていると思うのですね。その面では、国がやるべき国家プロジェクトとしては少し問題がありやしないか、そう感ずる向きがありますので、ここは大蔵大臣でしょう。それで、さっきの申し上げた在来線廃止に伴うことについてお答えいただきます。
  117. 大塚秀夫

    大塚(秀)政府委員 貨物は私から答弁させていただきますが、JR貨物による鉄道貨物輸送の重要性は十分私ども認識しております。整備新幹線を建設する区間で並行在来線についてJRから分離する区間につきましては、JR貨物の貨物輸送について、新線を活用するか、あるいは並行在来線について第三セクターができた場合には第三セクターを活用するか、その点につきましてはJR貨物と十分協議し、全体としての全国的なネットワークの貨物輸送に支障を来さないよう対処してまいりたいと考えております。
  118. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 御質問ありました、将来フル規格とするか否かの判断は、基本仕組みに基づく建設の進捗状況、収支、採算性の見通し、並行在来線の取り扱い、財源問題、国民経済上の投資効果等を見きわめつつ、その時期も検討することになると考えております。
  119. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今回、基金構想が国会で御審議をいただき一日も早い成立をすることを私は期待をいたしております。従来から整備新幹線の問題のみが鉄道整備の中でクローズアップをされておりました。確かに中距離間の都市間輸送としては非常にすぐれた交通機関であることを、私は決して否定をいたしません。また同時に、レールというものが、殊に安価な、大量な輸送を必要とする貨物の世界において非常に大きな役割を果たすことも間違いがありません。ところがもう一つ大きな問題は、都市における通勤通学線の新設の問題でございます。これらを総合して考えたとき、私は今回の基金は極めて時宜を得た構想であると信じておりまして、これが活用されることによって、それぞれの地域の実態に合った鉄道整備計画が進められることを心から願っております。
  120. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、がらりと趣旨を変えまして、それぞれ五分間ずつとなりますと四項目は大変難しいのですが、育児休業法の問題で、私さきの総括の際に労働大臣の極めて積極的な御回答をいただいたのであります。実は労働省がこのたびおまとめになりました育児休業法案、労働団体が求めております休業期間中の賃金補償など経済的援助と違反した場合の罰則規定、これは法律で枠をはめるのはいかがなものだろうかとか、あるいは行政機関による適切な指導によって可能じゃないかとかいう言いわけがついておりますが、確かに政府はノーワーク・ノーペイの原則を主張するということで、これは公益側の委員が例のこの審議会における議論の中で出しておられるわけですね。姿はつくったが魂は入れないという形ではこれはどうしようもないわけでして、いわゆる休業補償がなければ、赤ちゃんが一年末満ということで男女にかかわらず休業する際にいわゆる多少の補償はしてあげなければ、何の労働時間の短縮かということにもつながるわけです。いわゆる労働の対価として当然この休業補償というのはあってしかるべし、連合などの御要求は六〇%持ちなさい、こうおっしゃっているわけですから、この際、労働省としてまた労働大臣として、一生懸命前向きですからなおのことこれに対する、このいわゆる育児休業補償を認めるのか認めないのか、また、企業に対しても罰則をもって規制をきちっとさせるとか、そのことについてお伺いをしたいと思います。
  121. 小里貞利

    ○小里国務大臣 先生御承知のとおり国会内外の長きにわたる懸案事項でございましたが、ただいまお話ございましたように、私ども労働省といたしましても婦人少年問題審議会に検討を依頼いたしまして、そしてこれがいよいよ集約されるかなというところまで進んでまいっておりますこと、これは各位、関係機関の御協力のおかげであると思っております。しかも、近々婦人少年問題審議会におきまして一定の集約を行われまして、私ども労働省に対しまして建議がなされるやさきでございますが、幾つかの、ただいま先生がお話しございましたような休業中のいわば賃金補償問題等を含めまして数多くの基本的な、これから探求をし、そして整理をしなければならぬ問題がございます。しかしながら端的に申し上げまして、先生、きのうの公益委員がたたき台を出しましたあのことなどを一つの基準にしてのお話であろうかと思うのでございますが、総じて申し上げまして、賃金補償の問題あるいはまたただいまお話しの担保の問題、処罰の問題等が若干まだ残っておるな、そういう感じでございます。  私ども立場といたしましては、ただいま申し上げましたように、この婦人少年問題審議会の建議を得まして、そしてそこできちんとした責任ある一つの整理をいたしまして、できるだけ早い機会に再諮問をいたしまして、そしてこれが正式の答申を待って責任ある政府としての法案審議をお願いする一つの手続の途中にあるわけでございまして、現段階で、ただいま新盛先生から前向きの、積極的な意見を問いただされたわけでございますが、いささか今の立場で私が具体的に申し上げる状況にないこともまた御理解いただきたいと思います。  しかしながら、せっかくお尋ねでございますから私の感覚を若干申し上げますと、国内におきましても、民間企業等におきましてはもう既に従業員三十名以上の企業で二〇%前後が実施もいたしております。そしてまた、この実施の中身を検討していきますと、先生のただいま希望がありましたような問題に対しても、若干ながらもこれにこたえておられる企業もありますし、あるいはまた、先般の先生の質問の中でお話がございました諸外国の実態等を見ましても、必ずしもこれに対しまして温かい配慮が加わっていないものばかりであるとは言えない状況でございます。でき得る限りこの際、お話がございましたことなども参考にしながら、そしてこの際は一つの作品にすることがまず最大の要諦であると思っておりますから、ざっくばらんに申し上げまして、国会内におきましても、特に参議院等では与野党あるいはまた一般的な意味で申し上げまして労使の関係におきましてもそれらの問題等で対立点もあるようでございますけれども、この機会は、譲るべきはお互いに譲って、そして公約数を見出して作品を得たいものだ、そういう国民的な悲願もございますので、先生方のお力添えもこの機会にお願い申し上げさせていただく次第でございます。
  122. 新盛辰雄

    ○新盛委員 前向きの御答弁でございました。ぜひひとつ今回の国会で成立ができるように、よろしくお願いします。ありがとうございました。  次に、原爆被爆者の取り扱いでございます。  御案内のように、私どもとしては、社会、公明、民社、共産共同提案で一九七四年三月以降二十四回を数えているのでありますが、原子爆弾被爆者等援護法案を提出をしました。一昨年の参議院本会議ではこれが可決をされました。しかし、結局衆議院の方は審議未了、廃案になったわけでありますが、提案としての趣旨はそのまま残していることを冒頭申し上げておきます。この扱いについて政府としてまずどうお考えかをお聞かせください。
  123. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答えいたします。  今先生のお話がございましたように、一昨年は参議院の方の議員立法でこれが通りまして、衆議院に参りました。現在、昨年のその後の段階といたしましては、参議院の方で同じような議員立法が提出されまして、これが審議継続となっておるわけでございます。現状はそういう状態でございます。
  124. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それで、現行の、政府が取り扱っております原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、いわゆる原爆二法と言っているわけでありますが、この取り扱いの内容で以下申し上げてみたいと思うのです。  所得制限でありますが、九一年度の予算案では、去年千二百六十一億円からことしは千三百二十三億と、こうなっております。被爆者に対する健康管理手当、特別手当、保健手当等の所得制限が改善をされて、その結果、九〇年度の支給率九六%から九一年度は九九%になる計算です。これは事実上所得制限の撤廃として受けとめてよいかどうか、どうですか。
  125. 寺松尚

    寺松政府委員 お答えいたします。  原爆被爆者対策につきましては、先生御指摘のとおり、平成三年度においては被爆者の高齢化に対応いたしまして諸手当の大幅な改善を行うこととしており、所得制限の限度額の大幅な引き上げもその内容の一つでございます。諸手当の所得制限につきましては、被爆者の障害の実態に即した対策を重点的に実施する観点から、原爆被爆による健康障害を現に有している被爆者に対しましては、支給される医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当については御承知のように所得制限を設けておりません。これに対しまして特別手当、健康管理手当等、放射線障害が現にない、あるいは原爆放射線との関連が明らかでない場合にも支給される手当については、一般の社会保障との均衡を考慮いたしまして、所得制限を設けているところでございます。これを撤廃することは困難だと考えております。
  126. 新盛辰雄

    ○新盛委員 撤廃できないということなんですけれども、もう近時状況は変わってきたわけですからね。ほかとの関係でとおっしゃいますが、それは理由にならないと思うのですよ。この点については、厚生大臣、もう撤廃されるべきだと、こう思うのですが、どうですか。
  127. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申します。  ただいま局長からお話を申し上げましたように、この所得制限は実質的には先生がおっしゃったようにもう本当に形骸的なものになっておりますけれども、全体のこういう問題を扱う制度的な中から考えますと、やはりこの部分でも所得制限としての一部を残さざるを得ないというのが今日の考え方でございます。
  128. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、死没者への弔意ですね。被爆死没者慰霊祭の事業が行われることに九一年度予算ではなったのですがね。これはいいことですが、この新規予算は九千二百万円、これはどういうことにお使いになるのですか。  それと、死没者を慰霊をすることと死没者に弔意をあらわすこととは一体違いがあるのですか。またどう違うのでしょうか。
  129. 寺松尚

    寺松政府委員 お答えいたします。  三年度に予定しております慰霊事業の内容について先に御説明申し上げたいと思います。  平成三年度におきましては、原爆死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するため、新たに財団法人放射線影響研究所を活用いたしまして被爆に関する調査研究啓発事業あるいは国際交流事業を行うとともに、都道府県等を通じまして慰霊事業を行うほか、広島、長崎に原爆死没者慰霊等施設を検討するための施設整備検討調査費を計上いたしておるところでございます。  それから、先生の御質問の弔意と慰霊事業との違いでございますが、私どもは次のように考えておるわけでございます。原爆死没者に対する弔意のあらわし方につきましては、平成二年五月の原爆死没者実態調査の発表を契機といたしまして、一般戦災者との均衡の問題に波及しない範囲内でどのような形が適当か、これを検討いたしてまいりました。その結果、政府といたしましては、弔意のあらわし方として原爆死没者を慰霊するとともに永遠の平和を祈念することが適当である、このように考えまして、新たに慰霊等のための諸事業を実施することとしたものでございます。したがって、弔意のあらわし方というものの中に慰霊の一部が入っておるというふうに理解いたしております。
  130. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そこで、九千二百万円のうち四千二百万円は、自治体及び民間団体の行う慰霊事業に対しての補助率三分の二の補助ということになっていますね。これは、他方を見れば国として特段の慰霊事業は予定をしないということにもつながるんじゃないかと思うのですが、そう理解していいですか。イエスかノーかでいいです。
  131. 寺松尚

    寺松政府委員 お答えいたします。  今先生の御質問の件でございますが、この慰霊事業につきましては、従来から広島、長崎両市の主催する慰霊式典に対して国が助成しているところでございます。これにつきましては引き続き行うことといたしておるわけでございますが、そのほかに、平成三年度におきましてはこれ以外に、地域、職域単位と申しましょうか、草の根の慰霊式典、そういうふうなものを助成するとともに、死没者を悼む出版物の刊行等に対しまして新たに都道府県等を通じて助成することとしておるわけでございます。この慰霊事業につきましては、他の事業と同様に、地元の広島、長崎両市の意見を聞いてまとめたわけでございます。
  132. 新盛辰雄

    ○新盛委員 死没者遺族の求めておったということは、これは例えば死没者とその遺族に対して国が弔意をあらわすことじゃないか、これが皆さんの要求だったと思うのですね。それが自治体や民間団体の慰霊事業を補助してもらいたいというふうに変わったのはどうも納得できないわけです。いつごろからこういうふうに、どのような団体からこんなふうになったのか、寄せられたのか。結局判断とすれば、せっかくの九千二百万円ですからね、そういうことに本当に身を入れて、国が誠意を持ってするということでない限り、戦後処理の中途半端な形態というのが出てくるのじゃないか。だから私ども野党が今四党で、参議院では成立をしたけれども衆議院では廃案になったが、こうした被爆者援護法の中にこうした問題が糾合してあるわけです。だから、この点は今後の問題として積極的に死没者遺族あるいはこれに納得が得られるように一段の措置をしてもらいたい、こういうことを要望しておきます。よろしいですか。  その前段を一つだけ答えてください、団体からの要請があったかどうか。
  133. 寺松尚

    寺松政府委員 先生へのお答え、先ほどのお答えに一応私申し上げたつもりでございますが、地元の広島、長崎両県市の理解協力を得ながら取りまとめたものでございます。この際いろいろな被爆者団体等の意見も、特別どこというわけではございませんが、お聞きいたしておるわけでございます。  それからまた、この慰霊事業の中で国の責任の話がちょっとございまして、先生からは御要望ということでございましたけれども、私どもは、いわゆる死没者の慰霊とそれから永久の平和祈念というようなことで施設をつくりたい、こういうふうに考えておりまして、これは私ども、検討委員会をつくってやる、こういうことになっておるわけでございます。
  134. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、軍人恩給欠格者問題で、昨日、我が党の武藤委員から極めて適切な質問があったのですが、回答がまことに、厚生大臣、これじゃ私、納得ができません。  既に前回にも質問しましたが、あなたは、国民年金、厚生年金との制度の違い、そういったところをもう少し説明してみた場合に、直ちにこれを一概に官民格差だというふうに言い切れない面があると考えております、こうお答えになったのです。私ども社会党が既に去年来要望書をもって海部総理に申し入れをしておりますのは、内閣委員会で、「恩給欠格者等の処遇について検討の上、適切な措置を講ずるよう努めること。」この「適切な措置を講ずる」、これにより踏み込んだ内容として附帯決議事項がなされているのです。基金の事業を行っているからといって、平和祈念事業基金をやっているからといって、もうすべてが終わったという理解じゃないのです。我々としては、年金通算問題は片がついていない、この年金通算問題をこの平和祈念事業でもってすべて終わったというふうにしていないわけですから、ここが、「適切な措置」としてこの決議をどういうふうに考えているのか。だから、官民格差はあるのですよ、そのことについて適切な措置を講じなさいよ、こういういわゆる附帯決議ですから、これについてもう一回お答えください。官房長官の方もお願いします。
  135. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答えいたします。  官民格差という考え方、これは、同じような条件の同じような事例に対しまして、官であるがためによいとか悪いとか、民間であるがためによいとか悪いということでございますから、今の先生のお尋ねの話は、きのうも武藤委員の御質問のときにお答えいたしましたように、先生十分御承知かと思いますけれども、歴史的に成り立ちが違いまして、そして、今あります厚生年金、国民年金というものは、それぞれの加入者の掛金をもととしてそれぞれの条件が整ったときに支給するということでございますから、そういうものに掛金を掛けていないいわゆる恩給と共済というものを一緒にするということは非常にできにくい、こういうことできのう申し上げたわけでございます。
  136. 新盛辰雄

    ○新盛委員 官房長官、この「適切な措置を」という文言は重く受けとめておられますか、どうですか。
  137. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 これは私も心情的には非常に重く受けておるわけでありまするが、この官民格差の解釈については、政府とすれば、ただいま厚生大臣が申し上げたことだと思うております。  私の、政府立場といたしましては、もうこの方々の心情は非常にお察しをいたしますけれども、なかなか、戦後処理問題懇談会等において長い間論議をいたしたわけであります。官民格差問題も含めて二年半、三十五回ということを聞いております。その結果、どうしても政府としては戦争損害についてもう全部を償うということはとても事実上不可能なものですから、その心情は本当に胸を打つものがございますが、どうかひとつ御勘弁を願いたいという趣旨で平和祈念事業を起こして、その基金によって慰藉事業をやっておるというのが偽らぬところでありまして、どうぞひとつ御理解のほどをお願いをいたします。
  138. 新盛辰雄

    ○新盛委員 環境庁長官、おいでですか。——厚生大臣、もう私の方はいいですから。  この水俣病問題は、前回の総括質問の際にも取り上げたわけです、昨年の補正予算の際でしたけれども。一向にテーブルにお着きにならないわけですね。和解をしたらどうかとあれほど裁判所が言っているのに、国の見解は、要するに水俣病訴訟における国の責任論、平等論について当事者双方の主張が余りにも隔たっておるということで、この和解の合意が得られることは到底考えられないから現時点においては和解の勧告に応じない、これが一貫した流れですよ。裁判所の方も、政府がテーブルに着きさえすればあなた方の意見は十分に聞きますよ、こう言っているわけですよ。にもかかわらず、テーブルに着けない、まだ係争中であると逃げる。そこであなたが就任されて、今度、水俣病に関する関係閣僚会議でおっしゃっておられます内容、「健康不安の解消を図る等の見地から、所要の方策について、」こうおっしゃっておるわけですけれども、「健康不安の解消」などというのは、これはよって立つあなた方の感覚を疑いたくなるわけですよ。これは全く政府としてはただもう水俣病から早く逃げ出そう、逃げ出そうと考えている。今「所要の方策」というのは環境庁の側では健康相談、健康管理サービス、ヘルスサービス等の事業を言っているのだ、こういうことらしいのですが、しかし、これでは現地の皆さんは納得しないのです。確かに、二千九百二十九人ですか、既に仲裁しているよということだけで、二千二百人からの人がまだ現在係争中ですね。それに、水俣病被害の実態について環境庁はこんな感覚でもってやっている、そしてまた裁判所の勧告に応じない、また、裁判所や地方自治団体、国民をこうして愚弄し続けて国はそれでいいのか、こういうことがちまたにもう大変な声としてなっているわけですよ。北川長官も苦労されましたけれども、今度はあなた、新人の環境庁長官ですから、ひとつ前向きにどうするということをお答えください。
  139. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  国といたしましても水俣病の早期解決に向けて努力をすべきものという認識は強く持っておりますが、訴訟の問題につきましては、これは国の行政のあり方の根幹にもかかわる問題でございまして、裁判所の判決をいただいた上で判断していくべきものと考えておりまして、現時点において和解勧告に応ずることは困難であると申し上げざるを得ないわけでございます。  しかし、この早期解決をしなければならないという認識は強く持っておりまして、行政施策として所要の対策を進めていくことが当面肝要なことだと認識をいたしております。今後とも国、県一体となって水俣病患者の認定業務の促進に努めるとともに、残された問題の早期解決を図るための総合的な対策につきまして、平成四年度からの実施を目途として検討を進めてまいりたいと考えております。
  140. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この問題で去る二月十七日、水俣病被害者原告たちが熊本と鹿児島でそれぞれ総会を開きました。水俣病被害者救済解決案を決定をして既に要望書が出されていると思うのですが、この内容については御存じですか。
  141. 柳沢健一郎

    ○柳沢(健)政府委員 今先生がおっしゃいました内容につきましては、これは原告団が裁判所の方へ提出したものでございまして、私ども国の立場といたしましては和解に参加しておりませんので、新聞報道等でもって知る限りでございますけれども、四つの基本原則等々の中身についてはそういう新聞報道等で承知いたしております。
  142. 新盛辰雄

    ○新盛委員 もう既にこれまでこの水俣病問題、三十五年間の長きにわたってそれぞれ本当に大変な、被害者の方々も家族の方々もそしてお年を召している方々も、もう既に亡くなられた方々も、この水俣病の救済については本当に怨念を持ってそれこそ見ているのですね。で、ここはわかるんだが、どうも両者の言い方が隔たりが大き過ぎるから和解に応じぬ、現時点では、ということになっているんですけれども、国が責任を持って救済をするといういわゆるスタンスがない限り、これはただ公害問題として、しかもただ発生した次元でとらえて、いろいろ病状の問題あるいは責任論の問題等いろいろ議論はあったとしても、問題は実行力を持って救済に当たるという姿勢があればこれは当然和解のテーブルに着くはずのものなんですね。何かもうこのままいけば、時間がたてばたつほどこれは消え去っていくんじゃなかろうかという期待があるのかもしれませんが、そうはいきませんよ。これはあくまでも皆さん方の今当面の大きな課題、これからの公害問題の中心課題でありますが、もう一回聞きますが、テーブルに着くように最善の努力をすることをお約束できますかどうか。
  143. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 再度のお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたけれども、国の行政のあり方の根幹にもかかわる問題でございますので、裁判所の判決をいただいた上で判断をしていく、したがいまして、現時点で和解勧告に応ずることは困難である、こういうふうに申し上げざるを得ないのでございます。
  144. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  145. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 これにて新盛君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  146. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最初に、本題に入る前に、きのう来本当に大変な歴史的な転換期を迎えて政府としても大変であろうというふうに思うのでありますが、どうかこの大事なときに歴史的選択をもちろん誤らないように、またお願いをしたいのは、日本というほかの国とは違う性格というものの上に立ってひとつ頑張ってほしい、こう思うわけです。  とかくアメリカに追随だとかいろいろな意見があるわけでありますが、しかし、日本アメリカとほかの国より一層密接な関係にある国であるということはもう当然の話だ。しかしまた一方、中東とも古いまた密接な関係があるわけで、イラクとも、これは日本の場合には従前ほかなりいい関係にあったわけであります。あるいは中東には、よく言われるように我が国としては武器輸出はしていない。さらにまた、国連だとかあるいはこの間国際赤十字委員会における各国湾岸戦争における仕分け表なんか見たのですが、日本はドイツとともに非交戦国、こういう仕分けにも今日なっている。直接の武力参加はしていない。幸いC130もまだ飛ばさない段階である。それで、しかも何よりも日本は平和憲法を持っている国家である。経済力においては大変な今日実力を持って、大きな影響を与え得る国でもあるというような、この我が国の持っている一つのそういう他国と違う有力な個性といいますか、そういうものの上に立った独自の外交政策というものをひとつ展開してほしい、積極的に今日のこの湾岸戦争における和平への役割というものをひとつ展開してほしい、こういうぐあいに思うわけであります。なかなかこういう重大なときでありますから簡単なコメントができるような状況ではないというふうに思いますが、そういう要望を強く外務大臣に申し上げておきたいというふうに思いますが、一言所感があればいただきたいと思います。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 中山太郎

    中山国務大臣 昨年八月二日以来、イラククウェートに対する武力の侵攻ということで併合されるという悲劇が起こって「世界じゅうがこの問題の早期解決を期待しておったわけでありますが、残念ながら一月十五日の一つの期限が過ぎても安保理の六百六十の決議の実行がされなかったということから、多国籍軍平和回復のために武力を行使するという悲しい出来事が起こったわけであります。  こういう中で、昨夜来のイラクのサダム・フセイン大統領演説は、多くの人たちに期待を抱かせただけに失望感を与えた。一方また、モスクワを訪れているアジズ外相はフセイン大統領演説とまた違ったソ連との和平への協議、それの条件を現在出している。そういう中で現在夜になっておりまして、交渉がどのような形になって継続されているか定かでございませんが、現在、ソ連から安保理各国、また特に米国大統領との間には直接電話で話し合いが行われているという中で、日本としては、この事態推移を見ながら一日も早い平和の回復のための決断をイラクのサダム・フセイン大統領がされることを心から期待をしますし、日本政府としては、国際社会の正義とそれから平和を志向するという、この二つの基本的理念を堅持しながら事態に対応してまいりたいと考えております。
  148. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それでは本論に入りたいと思いますが、官房長官お忙しい折だろうと思いますので頭のところでお答えいただきまして、後、御退席いただいて結構だと思います。  これは古くて新しい問題なんでありますが、アイヌ新法の問題であります。  まずお伺いしたいと思いますのは、アイヌというのは、あるいはアイヌ民族というのは、我が国における北海道であるとかあるいは千島であるとかあるいはサハリンの方だとか、そういう地域における先住民族というものなのかどうか、これをお伺い申し上げたいと思います。
  149. 公文宏

    ○公文政府委員 私からお答えするのはどうかという点があるかもしれませんが、アイヌ新法の検討問題の事務方をやっておりますので、私の方からお答えさせていただきます。  アイヌの人たちが北海道を初め千島などにおいても古くから住んでいたということについては、文献等からも通説となっているというふうに政府としても理解をしております。
  150. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは事務方のお答えではないと思いますが、アイヌ民族は、あるいはアイヌの人人は、一つのこれは民族というものかどうか。国連では国連の一つの規定といいますか、そういうものもあるようでありますが、どういうぐあいにお考えか。
  151. 公文宏

    ○公文政府委員 お尋ねの、民族とは何かという点についてはいろいろな考え方があろうかなというふうに思いますけれども、仮にアイヌの文化をみずからの文化と認識しているという意味においてアイヌの人たちが一つの民族であるということであれば、それはそういう民族として言い得るのではないかということでございます。  国連の問題につきましては、外務省の方から……。
  152. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生御承知のとおり、いわゆる自由権規約の第二十七条が一つの規定として国連の関係した条約にありますけれども、「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」こういうふうになっております。
  153. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 つまり、そういう規定から言うと、アイヌは一つの民族かということなんですよ。これはどちらからでもよろしいですけれども、お答えはありませんかな。
  154. 丹波實

    ○丹波政府委員 今、内政審議室長からもお答えがあったわけですが、一般論としてアイヌの人たちが少数民族であるかどうかについては言及する立場にはございませんけれども、文化の独自性を保持しておるということからして二十七条に言う少数民族であるということは言えるのではないかということは、政府が従来から答弁申し上げているところです。
  155. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 北海道、千島等に古くから先住する者である、しかもそれは今のように一つの民族である。これは、民族というのは、国連には国連の今お話しのような規定がありますし、この前、これは一九八九年六月に日本民族学会で「氏族の規定に当たっては言語、習慣その他の文化的伝統に加え、主体的な帰属意識が存在するとき、この人々は独立した民族とみなされる。」こういう見解が出ておりまして、今お話しのように、まあ少しあやふやではありますが、民族という見解を政府は当然持っていただけるのだろうというふうに思うのです。  そこで、古くからおられる方々でそれは一つの民族であるということであれば、それは先住民族という表現は格別問題ないのです。なぜかといいますと、実は後ほどまたちょっと時間があれば聞きますが、国連総会が去年の暮れ一九九三年を先住民国際年にする、こういうことになったわけです。そして我が国もそれに賛成票をもちろん入れているわけなんですがね。それで先住民の問題というのは、今のさまざまな人権の中で、やはり一番おしまいに残された重大な問題として国連ではいろいろ御論議になっていただいているわけです。そういう意味から、我が国におけるこのアイヌ民族の位置づけというものも我々は非常に重大な新しい意味合いで見なければいけないのではないか、こういうぐあいに思うわけなんですが、官房長官、いかがですか。
  156. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 今、国連の国際先住民年というものがある、ですから先住民ということでアイヌ民族に対してやはり何らか特に考えていかなければならぬとおっしゃるような御趣旨だと思いまして、そういう趣旨をよく理解した上で勉強を続けていかなければならぬ、そう思っております。
  157. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあ、困った答弁ですな。  しかし進みますが、官房長官、これはわかっているのでしょう。アイヌ新法というものを要請があって、そうしてこれは今おたくの方の所管でそして検討委員会をつくってちょうど一年ぐらいたったのじゃないですか、検討委員会で。それでアイヌ新法を作成するということで一生懸命やっているわけだ。これはもちろん、アイヌ新法というのはアイヌ民族の民族という立場を認めて、そしてこれをどうするかということの検討をなさっているわけですね。そのアイヌ新法の検討をしながら、今の問題についてどういう認識でやっておられるわけですか。これはもうウタリ協会というところで決めて、そして知事の諮問機関ででもこれを決定して、知事あるいは道議会の意見書や陳情書で政府に出されて、それに基づいて政府は今検討しているわけですね。だから、まるきりどうも何かちっともわきまえていないというようなお答えでは、これはアイヌの人怒りますよ。まさかあなたそんないいかげんに検討しているわけじゃないでしょう。どうなんですか。
  158. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 おっしゃるとおり、官房の内政審議室などが中心になりまして、九省庁で鋭意検討をしておるということでありますが、私の聞いたところによりますと、いろいろ問題がたくさんある、広範多岐にわたっておるというようなことを聞いております。アイヌ人の権利宣言の問題、人権擁護活動の強化とか、アイヌ文化の振興とか、自立化基金の創設とか、審議機関の新設とか、非常に難しい、広範多岐にわたる部分が多いと聞いております。  特に、九三年、国連で先住民年というものが、制度が動こう、そういうときに当たりまして、我が国においてはこの先住民族権というものをいかに法律的に位置づけるかということはなかなか研究を要する問題だ、その辺が非常に問題がたくさんある、この辺をよくよく勉強して検討を続けなければならぬ、そういうふうに聞いております。
  159. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これはつい最近なんですが、二月の三日の日の新聞なんですが、地元の北海道新聞ですが、北海道選出の衆参国会議員三十四名を対象に、このアイヌ新法に関するアンケート調査を行った。その結果、回答者の全員がアイヌ民族対策を重要な政治課題と考えている。新法の必要性については、回答が来たのは三十四人のうち三十三人なんですが、そのうち二十八人が新法が必要、各党網羅してですよ、そういう回答があった。その残った五名にしてみても、いわばどちらとも言えないというような慎重な態度であって、これは三十三名の回答のうち二十八名が、もちろん与野党含めて、これは必要だという答えになっているわけだ、北海道選出の国会議員は。それから道議会は、これは満場一致で意見書を決めて出してきている。私はきょう、一年たったからどのぐらい進んだかなという感じでお聞きしたのですが、非常にどうも印象からいうと、真剣な御討議というような印象が受け取られないのは非常に残念に思います。  それで、今言いましたように一九九三年は国際先住民年でありますので、ぜひひとつそれまでにこの問題をしっかり固めて、できればアイヌ新法をつくってほしい、こういうふうに思いますが、重ねていかがですか。
  160. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 非常に高度な法律問題も含んでおりますし、いろいろ実務面でも広範多岐にわたっておりますから、そう簡単なものじゃないと思いますが、鋭意検討を進めさせます。
  161. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ、毎月一度ぐらい検討委員会は開いて御検討いただいているようですが、そして最近は道庁なんかとも一緒に協議をしたりしているようでありますが、ウタリの皆さんは本当に真剣に、首を長くしてその推移を待ち望んでいるわけでありますから、どうか真剣な御議論を続けて早目に結論を出していただくように要望を申し上げておきたい。いずれまた、これは殊に従前の中曽根発言等もあった経過もございまして、単一民族であるかとか、あるいはそうじゃなくて多数民族かというようなこともありますが、改めてまた海部総理の御意見なんかもいただきたい、こういうぐあいに思っておりますので、この問題はきょうはこの程度にさせていただきたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドの問題をお伺いしたいと思いますが、三月一日がアメリカの議会に対する報告の期限ということになっていて、しかし、昨年の十二月以来交渉が中断をしていたというようなことで大変みんな心配をして、殊に我が国の場合農業交渉等について注目が集まっているわけでありますが、最近それらの問題を含めて一つの前進を見たというような報道もありますが、そのウルグアイ・ラウンドの農業交渉の経過と現状あるいは見通しというようなことについて、農水大臣から、手短で結構ですが、お答えいただきたいと思います。
  162. 近藤元次

    近藤国務大臣 農業交渉の部分についてお答えをいたしたいと思います。  ガット・ウルグアイ・ラウンドは、御承知のように昨年末ECとアメリカの輸出補助金の対立が激しくて、越年をして今日まで来ておるわけであります。その後ダンケル事務局長が、プラットホームをつくって再開をいたしたい、こう考えながら、主要国、関係諸国との話し合いを進めてまいりましたけれども、たたき台をつくるのに大変困難な情勢になってまいりまして、主要国との協議の上で二十日再開をすることになりました。再開に当たっては、国内支持あるいは市場アクセスそして輸出補助金というようなことを中心にしてステートメントを出して、来週あたりから交渉委員会を再開されるのではないか、こう予想いたしております。  今先生御指摘ありました、三月一日のファーストトラックの分野については、アメリカ政府としても議会に手続をする、そういうように聞き及んでおるわけであります。  いずれにしても、来週から交渉委員会が再開されるという、今、日程になっております。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕
  163. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 少しこの交渉の土俵が大きくなったといいますか、そういうことであろうというふうに思うのですが、しかし最近のアメリカの輸出補助金などの増額の状況、あるいはECも同じようなことらしいのでありますが、西アフリカの小麦をめぐってのECとアメリカの輸出競争というようなものもあって、随分輸出補助金が目立ってふえている。したがってそれぞれの、殊にアメリカの場合の、それに備えた予算が実は半年ぐらいですっかりなくなっちゃったというようなことなども伝えられていて、これに対して、オーストラリアあたりでは強い非難をしているようであります。  我々見ていましても、どうもこういう状況というのは、一方でアメリカが我々に対しては輸出補助金はゼロにしろというようなことを強く言いながら、しかし自国では、これは大変な増額をしている。一九九一年のEEP、輸出奨励計画予算が四億二千五百万ドルでありましたのを、これを今度の補正で九億ドルに倍増する、あるいは一九九二年は十二億ドル、物すごいものでありますが、そういうような輸出補助金の大幅増額をしているというような姿を見ると、本当にどうも納得がいかない。外向さと国内政策がまるきり違う。ECもそれに巻き込まれながら一四%輸出補助金の予算をふやしたというようなことも伝えられていますが、納得がいかないという感じがするのですね。これは大臣、いかがですか。
  164. 近藤元次

    近藤国務大臣 午前中の質問の中にもございましたけれども、少なくとも輸出補助金において年末、対立が激しくて延会になっておる今日、しかし一方では、国際価格がかなり下落をしておるものですから予算の増額をせなければならないという、ある意味の今ルールをつくられた範囲内の予算増というものは了解をしてやむを得ないものだ、そう判断をしておるわけですが、やはり上限を撤廃するとか法律を改正するという準備をしながらやるとしたら、これは甚だ遺憾なことである、こう思っておるわけであります。輸出補助金を伴わないで輸出をしている国はそれはもう無論でありますけれども、私ども輸入国といたしましても、農産物価格を歪曲するものだ、そういう判断に基づいて前大臣以来今日までこのことについて強い指摘を実はいたしてきたわけでありますから、私もその趣旨に沿って厳しく指摘をしていきたい、こう考えております。
  165. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それから、よく言われるところでありますが、ウェーバー条項があるとか、中でも我々は比較して頭にくるのは、随分米のことも言われますが、しかし、アメリカ自身で見てもたくさんそういう問題があるわけですね。殊に乳製品なんかは、これは実は外国から入れているのはアメリカにおける消費量のうちの一%切っているというじゃないですか。〇・三%というような数字も我々は聞いているのですが、後でもしそれが何%という数字がわかればお知らせもいただきたいのですが、それは日本の場合だって五万トンぐらいの米は入れているわけですから、これは〇・五%、それを下回るような現状なわけですね。そういう実態というものがアメリカにもある。あるいは、砂糖の場合もそうですね。砂糖の場合にしたって、ミネソタの砂糖を使うために国際価格の何十倍ものものをやはり買ってやっている。フィリピンあたりはもうそれで悲鳴を上げているという状況ですね。落花生についても同じだ。  そのことは、私はただアメリカを非難しようということよりは、それぞれの国にそれぞれのやはり固有の事情があるのではないか、農業に関しては。ですから、そういうものをやはり大事にしていかなければならないわけであって、そんな意味では、私は、お互いに農業に関してはそういう大事なことはきちっと認め合っていかなきゃならないんではないかというふうに思うのですね。  それで、今度のプラットホームですか、なんかでも、今度示された方向でいえば、一九八九年の中間報告見直しのあれの枠内でということだということは、その中に我が国の主張をしていた部分が食糧安全保障に関して含まれていますから、我々としてはそういう点も一応十分に尊重される期待を持っていいのかなというふうには思いますが、今のような状況について農水大臣はどういうぐあいにお考えか、御意見を。
  166. 近藤元次

    近藤国務大臣 先生お話がございましたように、中間合意に基づいて今度再開されたわけでありますから、我が国が主張して努力をして一九八九年に盛り込んだ中間合意の安全保障、基礎的食糧というものは、今回再開に当たって含まれておるという理解をいたしておるわけであります。  我が国が安全保障の問題を取り上げるというのは、それぞれの国に大切にしてきた特定の農産物もあるし、これからも大事にしていかなければならぬというものもあるわけですから、そういうものを一律に扱ってミニマムアクセスというようなところで議論をするというのは間違いだ。ですから、安全保障という問題、基礎的食糧というものをそれぞれの国があったらそこでどうするかという、国境措置を、国境規制というものをするべきだという主張を続けておるわけでありますから、今ウェーバーの問題も出てまいりましたし、そしてまた、我が国が閉鎖的なような誤解が生まれがちで、実はマスコミの情報にも国の内外を問わず入ってくるわけでありますけれども、そういう意味で我が国は、私は輸入国としては優等生な方だ、こう理解を実はいたしておるわけであります。それだけに私ども、ガット・ウルグアイ・ラウンドがスタートした四年前のここを基準年にしてやるべきだ、この間の四年間の我が国の自由化の努力というものも評価をしてもらわなければいけないことだ、そういうことを考えたとき、あわせて輸出補助金等を今動かすということは問題があるという認識に立って実は交渉を進めていくわけであります。
  167. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ、そういう基本的な政策をしっかり堅持しながらこれからの山場に向かって全力を挙げていただきたい、こういうぐあいに思います。  結局、我が国としては、今大臣がおっしゃったような点、例えば食糧安全保障の問題であるとかあるいはガット十一条二項の(C)の強化の問題であるとか、こういうような我が国の主張、今大臣がおっしゃっていたような主張、これがいわばプラットホームをつくるのならばつくるときに我が国が参画する一つの条件というものであろうと思いますが、そういうことですか。
  168. 近藤元次

    近藤国務大臣 昨年ヘルストローム議長からノンペーパーが出されたときこの事項が落ちておりましたので、この事項を明記するべきだという主張を続けてきたわけでありますから、それが今度はダンケル事務局長から、たたき台はつくらなかったけれども中間合意に基づくということになれば、その問題がそこの中に入って明記をされておりますので、その問題は私ども議論していくのに十分だ、こう思っております。
  169. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 米のいわば主役が少し土俵が広がったということであろうと思いますが、しかし一方で、例えば乳製品であるとかでん粉であるとか、この種のものが今年の三月いっぱいが期限とされてどうこうということもありますし、しかし、我が国のまたそれに対する認識は違うと思うのですね、留保されていたはずだという認識があるわけでありましょうから。非常にそこが当面の問題になってきたというふうに思いますね。しかし、うっかりすると米のところに目が奪われながら、でん粉であるとか乳製品であるとかという、例えば北海道なんかでは基幹作物として非常に重要な農作物なわけでありますが、これらの問題がやや犠牲的に扱われるということになると大変だというように思うわけであります。したがって、これらに関しましても現行の国境調整措置というものをしっかり保持して、関税化に応じないという努力が必要ではないかというように思いますが、大臣、いかがですか。
  170. 近藤元次

    近藤国務大臣 乳製品、でん粉の問題については決して忘れておるわけじゃございませんで、食糧安全保障の問題と同じように、十一条二項の(C)を明確化をしたいということで努力をさせていただいておるわけであります。  御案内のように、二年前にガットでクロということに判定をされましたけれども、我が国はそれには疑義がある、こういうことで実は今日まで来ておるわけでありまして、たまたまガット・ウルグアイ・ラウンドですべての農産物を交渉する機会がございましたので、そこに提案をいたしておるわけであります。しかし、昨年末で本当はガット・ウルグアイ・ラウンドが終結をして、その後乳製品、でん粉の三月に向かう予定で実はございましたけれども、御案内のような延会になったことで順序が逆になってまいりました。それだけに、十日条二項の(C)をガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の中で明確にできないままに日米間の交渉をガットの場で交渉がされるわけでありますから、非常に厳しいことになるだろうと思いますけれども、我が国としては、従来ガットの場で十一条二項の(C)を明確化をするという主張をしておる以上、それまで現状のままで、ガット・ウルグアイ・ラウンドが成功するまでは現状のままで推移をしていきたいということでアメリカとの交渉を始めたい、こう思っております。
  171. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ、これらに関しましても、農水大臣はもう大ベテランで、私どもが言うまでもなく御努力いただいておると思いますが、なお一層の御協力、御支援をお願い申し上げたい、こういうぐあいに思います。  いよいよもうゴルバチョフ大統領が来日する日にちも近くなってまいったわけでありますが、この機会に、北方領土絡みのことについて少しお伺い申し上げたいと思います。  これはこの前も外務大臣と総括質問の折に少しお話をしたわけでありますが、やはり今度のチャンスというのはそう来るチャンスではない。あらゆる意味でもう今度のチャンスというのは絶対に我が国としては逃すことのできないタイミングだというふうに思うわけで、そのためには本当にお互い力を尽くして四島返還のために協力し合いながら努力していかなきゃだめだ、こういうふうに思うわけであります。  それで、四島返還というのは当然のことであります。それは強く我々も要求していくということだろうと思いますが、そういう四島返還の大枠が合意方向に仮になると考えた場合に、実際に具体的な返還の方法だとか、あるいは一つの期間だとか、そういうようなものに関しては、これはやはり交渉の中で、しかも現に三万一千人あそこにソビエト人がいるわけでありますから、したがって現実的な処置というものは必要でないかというふうに思うのですが、大臣、いかがですか。
  172. 中山太郎

    中山国務大臣 四島の返還問題につきまして、今日まで日ソ両国政府の間には平和条約作業グループが設置されていろいろと協議を続けてきております。最近、二月十七日でございましたか、モスクワにおいてこの平和条約作業グループが、小和田外務審議官が当方の代表となってやってまいりましたが、それらの件に関しまして、同行いたしました兵藤欧亜局長から説明をさせていただきます。
  173. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 十八日に行われました日ソ平和条約作業グループでございますが、従来に引き続きまして法律論、歴史的な議論をさらに進め、若干の整理を行いました。さらに、平和条約そのものの中身、概念の問題等につきましても若干の議論を進めた次第でございます。  そういう中で、先生今お尋ねの、もしもこの問題が前に動く場合にさらにどういう方法、手続というお尋ねでございますが、まさに交渉の中身でございますので、今ここでその点について御報告申し上げるということにつきましては御容赦と御理解をちょうだいしたいというふうに考えます。
  174. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それはまあ立ち入ったお話をこの場でというわけにはなかなかいかぬというふうにも思いますが、しかし、もとより一つの大枠の方向合意されるというようなことになってくれば、現実の問題として返還を具体化する上で手順だとか方法だとか期間だとかいうものをどう持っていくかということは出てくるわけであって、そういう面については、いわゆる従前、一括即時というようなことが言われておりますし、またそれはそういうことであろうというふうに思いますが、この一括という意味合いも、外務省ではまた必ずしも通常言う一括というか、やはり外交上の一つの意味合いといいますか、現実的な意味合いがいろいろあるようでありますが、ぜひそこは弾力的に、大枠が決まれば、一体それをいつまでにどういうことでというようなことに関して思い切った、強調すべき点は強調しつつ、この機を逃さずどうしてもひとつ返還を実現をしてもらいたい、それを契機にして日ソ間の飛躍的な両国関係の改善と発展を期待したい、こういうぐあいに思います。大臣、一言ありますかな。
  175. 中山太郎

    中山国務大臣 長い年月の間の日ソ間の平和条約の締結に向けての努力両国政府の当事者間で進められてまいりました。いよいよゴルバチョフ大統領というソ連の最高指導者日本を訪問されるという歴史的な日程も、私が先般モスクワ大統領自身からカレンダーを見せられて示されたわけでありまして、私は率直に申し上げて、委員と同じような心境に立ちながら、ゴルバチョフ大統領ソ連の責任者として、訪日のときに、この頭土問題を含めて日ソの関係が発展するために決断をされる時期にしていただきたい、日本政府もその問題についてはできるだけの努力をするということを申しておるわけでございます。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 最近、ソ連のペレストロイカ、それから市場経済への移行、それからもう一つはいわゆる地方分権という、まさに大きな改革が音を立てて進んでいると言っていいことであろうと思うのですね。連邦から共和国に、あるいは共和国の内部から見ても州に権限が大きく移ってきている。そのためにまた、そのきしみが大変複雑で難しい現象というものを生んでいるということには違いないのでありますが、しかし現状は、そういうふうに地方に権限が相当移譲されてきているというふうに思います。  北方領土の問題も、私ども殊にこの前サハリンに行ったりいろいろなつき合いの中から感じますのは、やっぱりモスクワだけで決まる、ゴルバチョフの考え方で決まるというような状況では全くなくなってきた。それはやっぱり共和国の意思だとか、あるいは北方領土は行政区域でいくとサハリン州に所属するわけですが、サハリン州の考え方だとか、あるいはあそこに住んでいる三万一千人の人たちの考え方だとか、そういうものを含めた地方の意思というものが実は北方領土の解決の上では非常に大きなウエートを占めるようになってきた。これは昔とは随分変わった状況だと思うのですね。ですから、今我々が北方領土の返還を具体化していくという上では、こういうところへの積極的なアプローチというものが実は非常に重要になってきた、こういうふうに思うのですよ。我々、サハリン友好議員連盟というのを超党派でつくってこの前参りましたのも、そこにも一つの目的があるということは御承知であろうというふうに思うのです。  そういう状況になってきている中で、大臣は、連邦との交渉を積極的に、もうとにかくいい状況に持っていくという御努力はもとよりでありますが、この分権化された今のソ連邦の社会の中で、そういう地域に対するアプローチというものをどんなふうにとっていこうとするのか、あるいはその重要性というものをどういうぐあいに御認識になっておられるのか、この辺のところをお伺いしたいと思うのです。
  177. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 それでは、事実的な関係について若干御報告申し上げたいと思いますが、まさに先生の仰せのごとく、この問題につきましても、ロシア共和国あるいは直接関係のございますサハリン州の果たす役割というものが重要になりつつあるという認識は、私どもも同じように持っているわけでございます。例えば、先ほど御報告申し上げました平和条約作業グループにおきましても、今回もロシア共和国外務省の参事官がオブザーバーとしてずっと同席していたという事実がございます。  そういう認識に立ちまして、私どもも、例えば昨年の秋でございましたが、都甲北海道大使をサハリン州のみならず周辺の州、地区に派遣をいたしまして、それぞれの州、地区の知事、あるいは第一書記あるいは議会の議長さん等々と大変に突っ込んだ意見交換をいたしました。その後にいたしましても、例えば極東地域に日本語・日本研究事情調査チームというものを派遣いたしましたり、あるいは例えば日ソ・ソ日経済合同委員会が参りましたときに、サハリン州の知事初め周辺の知事、六知事が参りまして私どもと一夕突っ込んだ意見交換をさせていただきましたこともございます。また、近々、今月末でございますけれどもソ連にございます日本大使館の主催で映画祭あるいは日本の写真展を開くというようなことで、まさに先生がおっしゃるような観点も含めまして、サハリンあるいは周辺地域との交流、相互理解を通じましてこの問題についての理解も深めるように努力してまいりたいということを考えておる次第でございます。
  178. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ、もちろん四月十六日ですか、という時点を目標にしながらやることも大事だし、また、その時点で万事解決というようなことにはなかなかなるものではないわけですから、その後も含めて、こういう新しい分権化の状況に対応した我々の積極的な政策というものを外務省に特に望みたい。もうその点については、今の兵藤局長さんのお話にもあるように、十分お気づきになって手はお打ちになっておるようですが、しかし、スケールからいうともっともっと大きなスケールでやる必要があるというように思うので、この機会に特に御要望申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、この間、十九日の閣議で法務大臣がこれに関連して御発言になっておられるようであります。これは新聞に出ているものですからあれですが、閣議のというのは、余りこの種のことはそう外側で議論するのもいかがかという感じもしないわけではないですが、しかし一応新聞に出て、みんなそれなりの関心を持っておりますので。  記事によれば、北方領土返還が実現した場合、四島に四十年以上も住んでいるソ連人の永住資格や漁業権、財産権などの問題も起こることも考えられるので、あらかじめ勉強しておこう、こういうようなことであろうと思いますが、私は、内容自身はそういうものだと思うのですね、いろいろなことを想定しながらやるわけでありますから。もし一言あれば法務大臣から。
  179. 左藤恵

    左藤国務大臣 今お話しのとおり、二月十九日の閣議におきまして私が申しましたのは、ちょうど総務長官から北方領土のことで総理に対して御視察願いたいというような御要望がありましたので、そのことの御発言に関連して申し上げたことでございますけれども、日ソのこれからの外交交渉の結果北方領土が返還されたというような場合に、いろいろな問題が考えられるだろうと思います。解決されなければならない問題がたくさんある、そういうことで一つの仮定の問題としてそういう問題の所在を申し上げたわけでして、これからそういったことにつきまして我々が勉強しておく必要がある、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  180. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それはそうですね。ある期間日本人とソ連人が同居する、混在するということは当然現実の問題として想定されるわけですから、やっぱりいろいろなことがあると思うのですね。昔の権利と今のソ連側の住んでいる人の権利、これをどう調整するかとかいろいろなことがあると思いますから、そんな意味での御検討であろうというふうに思うわけであります。混在するということは、考えればそれは当然考えられる、なかなか難しい調整を必要とする課題がそこにあるというふうには思われますが、それは外務大臣どうですか、やっぱりそういうことだと思いますか。
  181. 中山太郎

    中山国務大臣 今、領土が返還されたという前提に立って、一つの考え方を組み立てられておられる御質問だと思います。私は、そのような考え方が現実の問題としてこの平和条約の作業グループの作業の中で話し合われることが行われる、話し合いが行われるということは、もちろんソ連政府、また憲法上のいわゆる外交権の確認のある相手との交渉の中で、日本政府として協議、考えることではないか。まだそこまで話を具体的に検討する段階には達しておらないと私は判断しておりますが、委員の御指摘は極めて重要な点でございますので、政府といたしましても、慎重に検討をしてまいりたいと考えております。
  182. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 サハリン残留韓国・朝鮮人問題に関してお聞きしたいというふうに思います。これは法務大臣、ちょっと関連が出るかもしれませんので、もう少し恐縮ですが……。  私どもはこの問題を超党派で、これも百三十人ぐらいですかの議員懇談会を持っていろいろやっているわけですね。原文兵衛先生が会長で私が事務局長なんですが、これをやりながらいつも思うところなんですが、一体なぜ彼らがあの戦争が終わったときに帰れなかったのか。あのときは日本人は約三十万人いた。それで、朝鮮人が四万三千人いた。ソ連引揚米ソ協定というのがちょっと間を置いてできて、日本人の三十万人は引き揚げた。しかし、四万三千人の朝鮮人というのは、常識から考えると、あのとき戦争が終わったんだからいわば彼らにしてみれば解放されたわけでありますから、日本人よりも先に彼らが引き揚げて不思議でないような感じもするのですが、そうでなかった。日本人は引き揚げて彼らは残った。残りも残ったり、結局半世紀近く彼らはそのまま残留せざるを得なかった。  このことを考えますと、私どもなぜそうなのかということはよくわからないのですよ。いろいろそれは、我々なりに昔の文献を調べてみたり、聞いたりするのですけれども、やはり腑に落ちるところまでいかないですよ。それはそれなりに僕たちの推測はあります。それは例えば、あの戦争が終わった後ですから、日本人は三十万引き揚げれば、一体当時の樺太、サハリンはだれがどういうぐあいにパルプ工場を動かしたり、炭鉱を動かしたり、鉄道を動かしたり、どうやるのかということになると、これは大変なことだ。ヨーロッパロシアから労働力持ってくるなんていったって、そんなわけにはいかないのですから。北朝鮮からはある程度来たようですが。あるいは四万三千人の当時の日本によって強制的に連れていかれ、働いていた人たちがやはり必要であったのかもしれぬというようなことをちょっと思ってみたり、あるいは日本だって、あの状況の中で四万三千人のこの朝鮮の方々が国に入ってくることについては歓迎しなかったのかもしれぬ。アメリカはその両方に関して特別な状況ではなくてそれに賛同したのかもしれぬなどということは我々議論の中で、こう推測でいろいろ出てくるのだけれども、しかしそれは単なる推測の話で、事実はどうだかわからないです。なぜ一体残されたのか、これは私は、あれからもう半世紀近くたったけれども、やはり日本の政治責任、歴史的な政治責任としてしっかり一遍きわめておかなきゃだめなことだというふうに思うのですよ。  そういうことから考えて、それはなぜでしょうと聞きましても、それは我々も一生懸命やってもわからないのだし、なかなか大臣にしてみても御返事できるようなことではないというふうに思いますが、当時このアメリカソ連に対して日本から残留朝鮮人に対する引き揚げの要請だとか連絡だとかそういうようなことだとか、あるいはGHQ、アメリカソ連側からこれに関する命令だとか連絡だとか、そんなような何か今のようななぞを解く上での資料のようなものはないだろうか。これはもうこの間からもちょっとお願いはしているのですけれども、なかなか得られないのですが、いかがですか。
  183. 岸本正裕

    ○岸本政府委員 先生御高承のとおりでございますけれども、第二次大戦後、我が国は連合国の占領下にありまして、引き揚げはその指令に基づいて行われたわけでございます。政府はその指令を実行する責任を有しておるということでございます。昭和二十一年の十二月十九日に締結されましたソ連地区引揚を関する米ソ協定によりましてソ連邦、ソ連邦支配下の領土よりの引き揚げの対象とされたのが日本人俘虜及び一般日本人の二者に限られたわけでございます。そういう意味で、朝鮮、韓国人の方々の引き揚げが行われなかったわけでございます。  今いろいろと働きかけというようなお話がございましたけれども、実は終戦直後からGHQの個別指令というものをもとにいたしまして、海外同胞の引き揚げ業務が開始されたわけでございます。これらの個別指令というものが昭和二十一年の三月十六日には、引揚に関する基本指令としてまとめられたわけでございます。しかし、ソ連軍の管理地域におきます日本人の保護及び引き揚げにつきましては、これらの指令から除外されておりました。当時全く見通しが立たない状況であったわけでございまして、日本政府といたしましては、GHQに対しましてしばしばその促進方についての要請を行ってきたわけでございます。私どもはそういう事実は伝え聞くわけでございますけれども、今具体的なその文書等は把握をいたしておりません。
  184. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ協力をしてほしいというふうに思います。お互いそこのところはきちっと確認をしておかなければ、この間我々も行ったときに、やはり二百人ぐらい集まりまして随分しかられたり、お話を受けました。それは我々またそう言われるのは、日本の政治家として当然なことですから、それなりにお答えしてきましたけれども、やはり僕なんかも、自分ではどうしてもそれを突きとめてみたいという気持ちがあるので、協力をしてほしいと思うのです。  そこで一つ、一九八七年四月二十八日付ソ連赤十字社べネディクトフ総裁から日本赤十字社社長あての書簡の中で、こういうのが出てきているのですね。朝鮮人については、日本当局はポツダム宣言を引用して、以後日本公民とみなさないように公式要請をした、こういう事実が書かれているわけです。これは委員長のところとそれから大臣のところにはこの文書、この訳文を差し上げてありますが、五ページのところの下の方の二行のところからそれが記載されているわけであります。こういう公式な要請があったというふうにされているのですが、そういう公式な要請の事実はあるかどうか。
  185. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまの先生のお話の書簡の存在については私どもも承知しておるわけでございますけれども、他方、何分古い話でございまして、我が国がただいまのお話のようにサハリン在住の朝鮮半島の出身の方々の引き揚げについて当時の連合国側にどういう接触を行ったのかということにつきましては、私どもに関する限りなかなか記録がないということでございまして、当時の事情は残念ながらつまびらかにすることができないということでございます。いずれにいたしましても、あの当時はソ連の占領地区でございましたけれども、その引き揚げにつきましては、日本に関する限りはお話しのよるに連合国の責任でこれが遂行されたということは事実のようでございます。
  186. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 あるいはソ連側に要請すれば、こういう文書まで来ているのですから、向こうでも何か持っているのかもしれませんが、しかしそんなことをソ連に聞いて資料をもらうのも、我々日本の政治家としておもしろくない話ですね。やはりそれは我が国の資料の中からぜひひとつ見つけ出してもらって、我々も当時の事実の一面を知ることのできるように、これはひとつぜひ協力をしてもらいたい。厚生省及び外務省になると思いますが、その資料をお探しいただいて提供してもらうことについて御要請申し上げておきたいというふうに思いますが、外務大臣よろしいでしょうか。
  187. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員の御要請については、私は、貴重な歴史の一つの確認でありますから、それは当然やるべきことであると考えております。
  188. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 これは厚生大臣、法務大臣は帰ったですね、外務大臣になりますか、戦後サンフランシスコ平和条約発効の日に日本国籍を喪失した、こういう見方が一つには、さっきのなんかもそうですね、あるのでありますが、サンフランシスコ条約は一九五二年四月二十八日、昭和二十七年ですか、そうなんだけれども、一方で、さっきもちょっと答弁の端に出たと思いますが当時出入国管理令なんかがあって、外国人とみなすというような扱いが当時あった。また同時に、ソ連引揚米ソ協定の中では引き揚げ対象者を日本人捕虜と一般日本人、こうなっている。そうなりますと、引揚者協定の中で一般日本人というものの中に当時朝鮮人が入るべきであったのか入るべきでなかったのかということなんですね。一九五二年にサンフランシスコ平和条約が発効して、その時点で我が国は国籍の扱い方は日本国籍から外しているわけですから、それまでは日本国籍なわけですから、そうすると、引揚者協定における一般日本人というのは、これは当時としては朝鮮人も入っているのではないかという感じもするのですがね。この辺のところはどんなものですか。
  189. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 平和条約関係につきましてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、我が国はサンフランシスコ平和条約第二条におきまして朝鮮の独立を承認したわけでございます。したがいまして、戦後の領土問題の処理は正式にはサンフランシスコ平和条約でなされたわけでございます。このときをもちまして朝鮮の方々は日本国籍を失ったというふうに考えられるわけでございます。  ただ、その以前の段階におきまして、特に連合国との関係でどういうふうに取り扱われたかという点につきましては、私承知しておりません。朝鮮の独立につきましては、カイロ宣言そしてこれを引いたポツダム宣言でその方針は決まっておりましたけれども、正式にはサンフランシスコ平和条約で決まったということでございます。
  190. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 その辺についてもぜひひとつあわせていろいろお調べおきいただきたい。一遍また機会を見てお伺い申し上げたいと思うのです。  そこで次にお伺いしたいのは、サハリン残留韓国・朝鮮人に関して、まあ韓国・朝鮮人というよりはサハリン残留韓国人に関して、日韓条約における請求権放棄というものは彼らに及ぶのかどうかということなんですね。これはどうですか。
  191. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の日韓請求権・経済協力協定でございますが、御案内のとおり、この協定の第二条におきまして日韓両国及び両国間の請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたということが確認されておるわけでございます。そしてこの第二条の規定、もう少し詳しい規定がございますが今ちょっとそれは省かせていただきますが、いずれにいたしましてもこの第二条の規定は国民という点に、国籍に着目しているわけでございます。したがいまして、この協定及びこの協定を受けまして、我が国では韓国の方々の請求権、財産請求権の問題を法律で処理しております、消滅させておりますが、一定の例外はございますけれども、原則的には消滅をさせております。このような処理は、もしサハリンに残留された方々の中で韓国籍をお持ちである方々があれば、その方々にも、この協定と法律の適用があるということでございます。
  192. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そういうことでしょうね。つまり、日韓基本条約協定時にサハリンにいた当時の朝鮮人の皆さんの国籍はどうなっているかということになると、もちろん韓国籍というのはないわけですね。それはすべてソ連国籍か北朝鮮国籍か無国籍ということですね。今の現状でいくと大体七五%ぐらいがソ連国籍でしょうか。それから無国籍者が五%かそのぐらいですね。北朝鮮国籍が二〇%ぐらいということだろうと思いますが。そこで、そうしますと今のお話のように、サハリンには当時、もう既に韓国籍の人はいないわけですから、したがって、これは日韓基本条約における請求権はサハリン在住者については及ばない、つまり韓国籍でない人には及ばない、こういう解釈でよろしいですね。
  193. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほど御説明申し上げましたのは、もし韓国籍の方々がおられればという全く理論的なことでございますが、もし逆に韓国籍の方方が全くおられないという状況で、ただいま先生がお話しになったようなことが恐らく実態だろうと思いますが、その場合には日韓請求権・経済協力協定に基づく処理はサハリンの方々には及ばないということになるわけでございます。  御案内のとおり北朝鮮籍の方々の財産請求権の問題につきましては、いまだ処理がなされていないわけでございまして、最近始められました日朝国交正常化交渉の中で北朝鮮側と話し合っていくということになろうと思います。
  194. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 郵政大臣にちょっとお伺いしますが、これはこの前私、外務委員会で少し質問した折に、去年の四月なんでありますが、もう少し関係各省と協議をして解決したい、こうお話しになっていた。それからやや一年近いわけでありますが、お手元のところに資料で行っていると思いますが、郵便貯金、サハリンの人たちは当時一生懸命働いて五円だとか三円だとかずっと預金をしていた。それが、帰ってこれないのですから、払い出すことも何もできないわけですね。それでそのままになっちゃっている。これは確定債務であるということはおっしゃっているわけですが、これについては支払えるということになったかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  195. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 サハリンに在住している朝鮮半島出身者の郵便貯金につきましては、先ほど先生おっしゃられましたように、確定債務であるということがまず基本的な考え方でございまして、郵便貯金法上支払いの義務があるものと考えております。  先ほどまた先生おっしゃられましたように、サハリンに在住している朝鮮半島出身者のうちでソ連籍と無国籍の方に対しましては、請求があれば郵便貯金法令に定める利率で計算をいたしまして、利子額を加えた額を支払うことといたします。  なお、北朝鮮籍の方に対しましては、先般、日朝国交正常化交渉が開始されまして、我が国と北朝鮮との間で両国及び両国民の間の財産あるいはまた請求権問題が話し合われているところでございますので、現時点では、その交渉の成り行きを見守って北朝鮮の国籍の方には対処をしていきたい、そのように考えております。
  196. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そこで、先ほどの局長の御答弁、それから今の大臣の御答弁で共通している点があるわけでありますが、北朝鮮国籍の方に関しては、これは今、日朝の交渉が現に行われているわけでありますからそれの成り行きを見たい、そして判断したいということだろうと思います。したがって、それ以外の人に関しては請求権はあるし、請求があればすぐ払う、こういうことだろうと思うのです。  そこで、北朝鮮の方々に関してですが、今その日朝正常化交渉推移を見て判断をしたいということは、要するに、かつて日韓基本条約を制定したときに、それぞれの個人の請求権というものを一括して国家がそれについての国家間の交渉をして解決をしたというようなことがあるわけですね。今回の日朝交渉というのも、そういう意味で一括した交渉の中で解決をすることがあり得るということでこれを留保しているというように解してよろしいですか。
  197. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 御案内のように交渉が、まだ話し合いが始まったばかりでございまして、ただいまの主題になっております個別の問題はまだ日朝間で話し合いの段階に至っておりませんけれども、私どもの現在の考え方は先ほど来御説明しておりますように、北朝鮮籍の方々につきましては、せっかく進行中の正常化交渉の中で、財産請求権の問題が話し合われるその中で、ただいま仰せのように一括して解決するということが私ども考え方でございます。
  198. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 そうですね。そういうこともあり得るからここで留保するということであろうと、今のお答えのとおりであろうというふうに思います。これはもちろん今のは郵便貯金の話ですが、郵便貯金にかかわらず、一般的な請求権に関して、そのような判断でよろしいですか。
  199. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 仰せのとおりでございます。
  200. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 この後少し、なお一、二歩踏み込んで聞きたい気持ちもしますが、この問題はこの程度にいたしたいというふうに思いますので、どうぞお帰りいただいて結構です。  あと残った時間わずかでありますが、サハリンの残留韓国・朝鮮人問題の経緯は今もう改めて言うまでもない、御承知のとおりで、大変御苦労をおかけしたし、我々としても贖罪の気持ちが大きいのでありますが、在韓被爆者に対する基金制度というものを四十億で去年決めて、平成三年はそのうちの十七億を予算化しようとしているわけですが、もうそろそろサハリン残留韓国・朝鮮人に関しても、毎年、以前は五千八百万、一億になり、ことしは一億二千万お願いをしておるわけでありますが、そういうことよりは、大体まあおかげさまでこの一月現在で一時帰国と肉親再会は二千七百人ぐらいになった。今年末で三千八百人ぐらいの人たちが一時帰国できるような状況にもなってまいりましたし、韓国とソ連の間も非常に友好的な状況になってきたわけでありますから、したがって、かなり韓国側に主体を持たせて、そしてもちろん母体としては日韓両赤十字の共同体でも結構だと思いますが、そういうようなところで自主的な運営をしていく、さまざまに、帰国費用だけでなくて、実態を見てみますと、なかなか永住帰国したお年寄りが生活に困っているとか待ちぼうけしていたおばあちゃんがこれまた年とってどうにもならないとか、いろいろなそういう細々した問題も実はあるようでありますから、そういうことに現実的に対応するという意味からいうと、やはりそれに即したような制度というものをそろそろつくった方がいいのではないか、毎年予算を組むよりは、基金のようなものをつくってそこで自主的な運営をしていくということが好ましい状況の時代に入ったのではないかというふうに私は思うのですが、その点についていかがですか。
  201. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 五十嵐先生からつとにそういうお考えを伺っておるわけでございますけれども、韓国政府は当面今のような、渡航費の支援を行っておるわけですが、そういう形の支援を続けてほしいということを言っております。  ただ、貴重な御意見でございますので、引き続き検討させていただきたいと思いますが、私どもはとりあえずは今お話しの被爆者の手当ての方に今全力を注いでおりまして、御審議いただいております予算案でも何がしかの経費を計上させていただいておるわけでございまして、当面そちらの方をよろしくお願いいたしたいと思います。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  202. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 当面そちらの方も力を入れてもらわなきゃ困るのですが、ひとつ諸般の、先ほどからずっとこう話が出てきていることを総合的に考えれば、やはり必要でないか、私はそう思いますよ。個々にややこしいことではなくて総体的に解決する上では必要になってきている。例えば、今北朝鮮とのそういう国家間の交渉の中でそれを解決するということになったとしても、北朝鮮国籍以外の請求権が未解決のサハリンの人たちは一体どうなるのか、これはどこかやらなきゃということになるわけでしょう。それはやはり日ソ間でしょう、そんなような気もしますね。ですから、そういう課題も残っているということも含めながら我々が一体どうするのかということになると、こういう問題についてひとつ前向きに検討していただきたい、こういうことを、時間もありませんので御要望を申し上げておきます。  最後に、関係大臣来ていてもらって本当に申しわけなかったのでありますが、ちょっと時間がありますからまとめてお聞きします。  先ほど外務大臣からのお話も、サハリン、極東というのは今非常に重要な、さまざまなことで重要性というのは高まってきているというような意味からいって、サハリンとの直行便、これは飛行機それから海路があるわけですが、これらについてひとつ積極的にその開設促進をしていいのではないか。フェリーの場合は両国間でいろいろ話をしていて、定期航路もそう遠くないというふうには聞いておりますが、それをお願いしたいと思うし、それから飛行機に関しては、この間初めて民間航空機で北海道からサハリンに我々は飛ばさせていただいたのですけれども、一時間で行くのですね。今まではどうだったかというと、北海道から行くといったら、新潟へ出て、ハバロフスクへ出て、そして向こうへ行くわけですから、新潟で一泊し、ハバロフスクで一泊して二泊三日かかったのですから。それが、真っすぐ行けば一時間で済むのですから、それはぜひひとつそういうことの促進をしてもらいたい。  この促進に当たって、ちょっと聞きますと、あそこは自衛隊の訓練空域になっているというようなこともあって、それが航路開設について問題があるやの意見もあります。しかしそうでもなさそうなようでありますが、この辺は防衛庁長官からちょっと御意見をいただきたいものというふうに思います。  これらにつきまして、恐縮ですが、簡単でようございますから、それぞれお答えいただいて終えたいと思います。  そしてまた、ちょうどきょうは開発庁長官も通産大臣もお見えいただいておりますので、天然ガスの問題が一つありまして、これの促進をぜひお願いしたい。かつ、我々が本当に期待しているのは、北海道にパイプライン構想をすること、これはもう二十何年も前からの構想で、それを願望しているわけですよ。ぜひこれについて通産大臣及び開発庁長官のお考え等も承れればと思います。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 サハリンと北海道の間において人的交流が活発化することは、両国国民間の相互理解を深めるということで望ましいことであると考えております。  先生先ほどおっしゃいましたとおり、今月の六日及び七日に東京で開催された日ソの海運当局間協議での合意に基づきワニノとかコルサコフとか、ウラジオストクは今後検討するということでございますが、日ソ間の海運企業の間で航路開設につき具体的な検討が鋭意進められると思いますので、その動向を見守りたい、こう思っております。  また、航空の方につきまして、先生、十一日と十三日、新千歳とユジノサハリンスクでございますか、チャーター便ということで行ったようでございますが、チャーター便につきましてもケース・バイ・ケースで認めている、こういうことでございます。  なお、いろいろ先生おっしゃいました先ほどの状況の中で運輸省としては別に支障はない、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  204. 池田行彦

    ○池田国務大臣 サハリンと北海道の間の直行便ということにつきましては、私ども、今具体的に照会なり打診というものがございませんので何とも申し上げられないわけでございますけれども、仮に一般論として申し上げるとすれば、そういうようなお話があり、そしてそれが訓練空域との関係で何らかの影響があるということになりましたら、それは運輸省の方とよくお話しまして調整してまいる、こういうことになろうかと存じます。
  205. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 先ほどからの先生のお言葉を聞いておりまして、確かに日本の固有の領土というのは、明治十二、三年のころの唱歌集を見ましても、私どものころは台湾の果ても樺太もというような言葉がありましたが、千島の奥も沖縄もという意味で、確かに今もって歯舞、色丹、国後、択捉、これを私どもの固有の領土として主張する気持ちはわかりますが、サハリンはそういう意味では郷愁はございますけれども、そういう点では私どもの固有の領土ではない。そういう中に、今日の推移を見ましても、かといって天然ガスを初め、先生の御指摘のとおり大変に大きな資源宝庫である、これは無視できないと思うのです。  私も、この間サハリンの問題をちょっと研究してみましたが、例えば場所からいってもオドプトですか、それからチャイウォ、これも私も天然資源の問題としてとらえてみましても、十六年前にも経団連などを中心に即座にやっているのですね。その経緯を、推移をたどりますと、全く先生の御指摘のとおり、北海道とパイプラインをつないで国内に、これは非常な大きな日本における天然ガス、ナチュラルリソーセスとしては大きな意味を持つものだなという感じはいたします。これは鋭意いろいろと研究する、検討する課題でございますから、エネルギー庁の方にも強く申し入れまして、私どもからも大きくこれは参考資料にしたいと思っております。ありがとうございました。
  206. 谷洋一

    ○谷国務大臣 お答えいたします。  三点あろうかと思うのですが、第一点は、サハリンは何といっても北海道に一番近いところでございますし、従前は近くて遠い存在であったかもしれませんが、今後は近くて近いおつき合いを願うところだと思います。そういう意味におきまして、長期的に友好関係を結んでいくべきだと思っております。  第二点につきましては、北海道開発局は寒冷地帯における地域開発の手法だとかあるいは寒冷地帯における土木工法であるとか優秀なものを持っておりますので、その技術を生かすことが可能であると思っております。  第三点につきましては、今後の外交交渉等の推移を見まして、私ども政府の一員としての協力をさせていただきたいと思っております。  以上でございます。
  207. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 委員長、どうも時間を経過して申しわけありません。どうもありがとうございました。
  208. 渡部恒三

    渡部委員長 御苦労さまでした。  これにて五十嵐君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  209. 宮地正介

    宮地委員 最初に、私は今大変な湾岸戦争の問題について、地上戦突入か、あるいは和平か、こういうことで全世界が注目をしておりますけさほど発表されましたイラク、ソビエトの八項目合意について、若干御質問をしたいと思います。  まず、この八項目合意について、日本政府としてどういうような見解を持たれているのか、御報告いただきたいと思います。
  210. 中山太郎

    中山国務大臣 イラクの八項目提案というものは、ソ連和平提案に対するイラク側の意思の表示というふうに認識をしておりますが、昨晩、日本時間の今朝におきますサダム・フセイン大統領演説とは別に、このような提案がアジズ外務大臣からゴルバチョフ大統領に伝えられたということには、一つの新しい大きな動きがあらわれ始めているのではないかという認識を持っておりますが、なお私どもの手元には正確に御答弁申し上げるだけのまだ公式な連絡が参っておりませんので、この程度でひとつ、第一回のアジズ、ゴルバチョフの両者の会談の評価というものは、私、第二回の会談が近くまた行われるとも言われておりますので、正確に情報を確認いたしましてから政府としての公式な意見を申し上げたいと考えております。     〔委員長退席、大石(千)委員長代理着席〕
  211. 宮地正介

    宮地委員 ただいままでの、特にアメリカあるいはソビエトの報道官の発表をいろいろ情報をとってみますと、まずブッシュ大統領が、二月二十一日現段階で緊急会議を開いておる。フィッツウォーター報道官の発表によりますと、この八項目合意事項には問題がある、二月二十二日までに検討を詰めてまいりたい、またアメリカとしては、ベーカー国務長官各国連絡を今とり合っているところである。また一方、ソビエト・ゴルバチョフ大統領は、今お話しのとおり、このイラクとの合意内容について早速ブッシュ大統領に電話会談をしておる。その雰囲気につきましては、ソビエトのグリゴリエフ大統領報道官が、友好的な雰囲気で行われた、その中で注目すべきことは、この八項目合意事項について、クウェートの独立問題については触れていなかったわけでございますが、クウェートの独立と正統な主権の回復は、いわゆる第一項目の無条件完全撤退、ここに含まれておるのだ、こういう副報道官の回答があったようであります。また、二月二十二日には国連安保理事会が、非公式の会議が行われる、こういう情報も今入ってきておるわけでございまして、既にこうした電話会談等が、ゴルバチョフそしてブッシュ会談、またアメリカの国務長官関係国に電話でいろいろと打診しておる。  日本政府として公式見解はこれから出すというお話でございますが、こうした水面下で外務大臣あるいは総理が、こうしたアメリカの、例えばブッシュ大統領等に電話会談等やっている事実はあるのかどうなのか、この点はどうでしょう。     〔大石(千)委員長代理退席、委員長着席〕
  212. 中山太郎

    中山国務大臣 ホワイトハウスとワシントン駐在の日本村田大使との間ではいろいろと連絡がございますが、まだ公表できる段階には達しておりません。
  213. 宮地正介

    宮地委員 外務大臣、大変にお忙しい状況、国会に張りつけで大変と思いますが、やはり外務大臣みずからも、例えばアメリカのベーカー国務長官等と電話会談をやるぐらいの行動があってよろしいのではないか。なぜこれをおやりにならないのですか。
  214. 中山太郎

    中山国務大臣 時差の関係がございまして、日本の現在の時間とアメリカの東部の時間との時間差が相当ございますから、適当な時期に私はアメリカ政府当局者と意見の交換をすることも十分考えております。
  215. 宮地正介

    宮地委員 外務大臣は、今新しい進展が見られたと。私は総理も、きょうはおりませんから申し上げられませんが、ぜひブッシュ大統領に、これは電話で、ホットラインで、当然この内容を精査するに当たって、日本国政府としてもどういう説明がゴルバチョフ大統領からあったのか、こういう点は積極的に総理あるいは外務大臣がやはり行動を起こすべきではないか。  九十億ドルの支援はしたけれども、やはり今世界がのるか反るかの重大局面にある、そういうときに総理あるいは外務大臣がそうした行動がとれない、これは大変私は残念なことだと思います。どうか、外務大臣はそうした行動をとりたいということでございますが、総理にもぜひ進言をしていただいて、やはり地上戦の突入にならないように、イラクが六百六十号の国連の決議、これを守って即時全面撤退、これはもう当然のことでございますが、また地上戦にさせないという、これも非常に日本にとっても大事なことであろう。特に我が国は、世界でも唯一の被爆国であります。地上戦に突入して化学兵器が使用されたり、場合によっては核兵器が使用されるのではないか。我が国が一番この核兵器による悲惨な戦争を体験しているわけですから、今こそそうした被爆国日本がオピニオンリーダーを発揮して、この地上戦突入を防ぐための行動ある努力外交的に必要なときではなかろうか、私はこう思うわけですので、もう一度外務大臣の御決意と今後の外交展開についてお伺いしておきたいと思います。
  216. 中山太郎

    中山国務大臣 もちろん、重大局面に立っているわけでございますから、外務大臣としては米国のベーカー国務長官とも十分連絡をとりながら日本政府としての意見も申し、またアメリカ考え方あるいはモスクワとのいろいろな話し合いといったものも、日本政府として聞き得るものは十分検討しなければならないと考えております。
  217. 宮地正介

    宮地委員 もう一点、非常に大事な問題は、国連決議六百六十号のイラク軍クウェートからの完全撤退、全面撤退、これを、この決議は遵守するという立場日本はあくまでも貫くべきである。この原点をしっかり踏まえて外交を展開すべきである。最近いろいろブッシュ大統領の発言を聞いておりますと、どうもその陰にフセイン体制の崩壊、これが非常につきまとっておる。いろいろ戦後の戦略の問題等があることは我々も十分理解はできるにせよ、まず日本国政府としてはこの国連決議の六百六十号の原点に戻す、ここをきちっとけじめをつける。それから先の、フセイン政権が倒れなければこの和平が終わらないんだというところまで踏み込んでいくことが果たしてどうなのか、こういう点も非常に我々は懸念をしているわけでございまして、まず私はこの国連決議六百六十号の遵守、この原点に立っての外交を展開すべきではないか、こう思いますが、外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  218. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりでありまして、きょうの委員会でも申し上げておりますように、日本政府としては、安保理決議の六百六十号の受諾、無条件撤退クウェート正統政府の復活という問題を含めて安保理決議六百六十号を、イラク政府がこれを完全に受諾するということが原点であるということはお説のとおりであります。
  219. 宮地正介

    宮地委員 我が党もこれに対する談話を出しましたが、湾岸和平への重要なステップとして一定の評価はできる、こういうことを我々、談話として出させていただきました。外務大臣は、新しい展開、こういうふうに言っておりますが、私はそういう点では、先ほどから申し上げておきましたように、この六百六十号、国連決議原点を踏まえて、そして即時停戦、ここに私は力点を置いて対応すべきではないか。そういう点では政府としても公式見解、いろいろ精査しなきゃならない点、十分わかりますが、やはり先ほど申し上げた日本としての特有のオピニオンリーダーとしての発揮をしていただきたい。  そこできょうは閣議後、通産大臣もこれについてコメントしているようですが、通産大臣は今回の八項目合意、これについてどういう見解を持っておるのか、お伺いしておきたいと思います。
  220. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 私はまず、コメントというのでしょうか、一番最初に申し上げたのは、まずこれをどう思うか、こういう点に対しまして、私は昨晩十二時半、ずっとテレビを見ておりまして、はっきり申し上げてショックを受けた。それはフセイン大統領のあの演説そのものはもう少しマイルドな、ナイーブなものかと思っておったけれども、さにあらず、相当強い姿勢のものであった。同時に、さはさりながら、現在アジズ外務大臣ソ連の方に行ってまたゴルバチョフ大統領の方に報告をしておる、その線においての明快な答弁、回答というものはまだ受け取っておりませんから、その点の不透明度というものはまだある。したがって、イラク撤退提案というものについては内容を今聞いたばかりであるから、というのは私どもは閣議をした後ですから、今後十分に分析していかなければならない。しかし、無条件撤退を宣言したという点においてはこれは非常に歓迎できるのではないか。ただ、これについても、さはさりながら経済制裁の解除等幾つかの条件がまだ付加されておる。そのときに私の耳に入っておったのが四つか五つございましたでしょうか。これでは今後多国籍軍との意見調整というものを見ながら慎重にこれは対処していかなければならぬ問題点であろうな、こういう話はした覚えはございます。  それに対しまして、関連することでございますが、ソ連イグナチェンコ報道官日本時間の午前八時半、ちょうど私どもが閣議が終わるころに、ちょうど私がやっているころに会談の結果について記者会見を行った旨も聞きました。同報道官は、フセイン・イラク大統領ソ連の提案に前向きであって、双方は何らかの形で軍事的対立が打開できるとの意見で合意したと発表しておるけれども、これも完全に定かな形で発表されたという形ではまだ到達しておりませんから、不透明な部分が多い。そこに八項目が出たわけでございますが、八項目の問題は、先ほど宮地委員がおっしゃったように、これもフィッツウォーター米大統領報道官等々の問題を見ますると、二十二日までは何も行われないという形で言われたようにたった今これまた報告を受けました。  というようなことで、これはるるいろいろな問題が錯綜いたしますけれども、時間を追ってそれぞれ不透明な部分が出てきたり、あるいはありがたいなと思う部分が出てきたり、また時にはまだそこまで至ってないのかというようなリグレッタブルな問題も出てきたりしますから、これは私自身もまだ完全に、今の外務大臣の御答弁同様に、しかとした、はっきりした、クリアポイントとしてのお話ができ得ないことを残念に思う、こういう点でございます。
  221. 宮地正介

    宮地委員 ぜひこの問題についても、非常にのるか反るかの重要局面でございますので、政府の積極的な外交活動を期待して、次の問題に移りたいと思います。  防衛費の今回の一千二億円の削減の問題について、少しきょうは私は角度を変えまして若干御質問をしてまいりたいと思います。  昨日の我が党の近江委員の質問に対しまして、防衛庁長官は、三年後の中期防の見直しのときに結果として反映できるように努力したい、こういう内容の答弁が行われました。そこで、この防衛費一千二億円の削減が具体的に正面装備の変更とかあるいは部隊の編成とか、こういうところにやはり重大な影響が出るもの、こういうふうに私は理解しておりますが、この点についてまず防衛庁長官の、状況を御報告いただきたいと思います。
  222. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の一千二億円の削減措置が自衛隊の部隊編成等々に大きな影響を与えるおそれがあるというのはそのとおりでございまして、実は平成三年度の予算では正面装備の契約額は前年度、平成二年度に比べて当初からもう七%落とす予定にしておったわけでございます。それがさらに今回の措置によりまして実に一六%を超すような前年対比での落ち込みになりますので、これは大変な影響を与えます。  それからさらに具体的に、例えば一例を挙げさせていただきますと、今回の削減措置の中で九〇式戦車を二両削減する、こういうことにしております。実はこの九〇式戦車は、現在使っております六一式戦車が減耗してまいりますので、その穴埋めをするという意味でどうしても入れなくちゃいけないものなんでございますが、平成三年度で予定しておりましたのは二十八両の購入、これを二両削りまして二十六両にしたわけでございます。この二十八両と申しますのは、一個中隊が十四両での編成になっておりますので二個中隊、こう考えておったわけでございます。しかし、やむを得ずこういう二両削減いたしましたので、結局一個中隊が十三両になる。本来必要な数量が確保できませんので、本来でございましたら戦車に乗車すべき隊員の一部が乗るべき戦車がない、こういうことになるわけでございまして、これを一体どう対応するか頭の痛いところでございます。例えば、その隊員はジープなどほかの車両に乗って追いかけるとでも申しましょうか、随伴する、こういうことになるわけでございますけれども、そうしましても、戦車というのは大体キャタピラで動きますので、いわば道路外を走行するのが通常でございますが、ジープはタイヤですから道路でございますね。そうすると、うまく一体としての中隊としてまとまった行動ができるのかどうなのか、本当に頭が痛いところでございまして、部隊隊員の教育訓練にも支障が生ずるおそれがあります。  例えがちょっと悪いかもしれませんけれども、最近若い方が二輪車でツーリングなんかなされますね。みんながナナハンの立派な車で来ているところに、一台だけ奥様方が買い物に使われる五十ccのバイクで入ってきてどうなるんだろうか。それにちょっと似たような面もあるかと思いますけれども、いずれにしましても、今回の削減措置がそういった教育訓練なり部隊編成の上でもいろいろな支障が出てくる。これをどういうふうに影響を最小限にとどめ得るか、これから私ども本当に頭を悩ませなくちゃいけない、甚だ苦慮しておるところでございます。
  223. 宮地正介

    宮地委員 今防衛庁長官は、いわゆる一千二億円の正面装備を中心とした防衛費の削減が結果として現場の部隊の編成や運用、教育訓練に大きな支障が生じる、こういうことでございますから、現実的にはやはり一千二億円の歳出削減というものがきちっと認知された、こういうふうに理解しておりますが、間違いありませんか。
  224. 池田行彦

    ○池田国務大臣 委員指摘のとおりでございます。
  225. 宮地正介

    宮地委員 そこで、私は今度は財政上の立場からこの問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。一千二億円のうち、平成三年度はいわゆる頭金的なものとして十億円、後年度負担に平成四年から残りの九百九十二億円が回るわけでございます。  そこで、防衛庁に伺いたいのですが、この後年度負担の九百九十二億円が、四、五、六と三カ年でこの後年度負担がついていくわけでございますが、もし平成三年度に一千二億円、九百九十二億円の分が契約されたとした場合、この平成四、五、六は九百九十二億円がどういう額で繰り延べになっていくのか、この点についての予算額を示していただきたいと思います。
  226. 村田直昭

    村田政府委員 お答えいたします。  御指摘の千二億円のうちの九百九十二億円でございますけれども、後年度負担の年割額につきましては、各年度の歳出予算において決定されるものであるため、現時点ではその年割額を確定することは困難でございますが、平成三年度予算計上に当たり考慮した一応の見積もりであるということを前提に申し上げますと、平成四年度に二百四十億円、平成五年度に五百九十二億円、平成六年度に百六十億円ということを予定しております。
  227. 宮地正介

    宮地委員 ただいまの御報告ですと、見積もりということの前提条件がついているにせよ、平成四年度で二百四十億、平成五年度で五百九十二億円、平成六年度で百六十億円、こういう後年度負担で、もし平成三年度が削減されなければ今後平成四年度の歳出予算に、あるいは平成五年度の歳出予算、平成六年度の歳出予算に計上される、こういうふうに理解をします。しかし、それが今回削減をされたわけでございますから、本日閣議決定で出されてまいりましたいわゆる関連法案の中で、この三条のところに、一般会計からこの九百九十二億円においては国債整理基金特別会計に特例として入れる、こういうふうに示されているわけでございますから、当然一般会計の中にこの二百四十億円、例えば平成四年度の場合には歳出に計上される、この点について予算書の書きかえをどういうふうにして、また、国債費に計上されるのかな、我々こんな感じがしておるわけですが、この辺の予算上の措置について大蔵大臣、どういうふうに対応するのか、御説明いただきたいと思います。
  228. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 実態、今防衛庁長官から御説明がございましたが、平成三年度の防衛関係費につきましては、今回の措置によりまして契約ベースで一千億円以上の削減になるわけであります。この結果、当初政府案に比べまして、今後四年間で支出されていくはずの経費が平成三年度の予算編成という時点において見ますと、現実に一千億円以上減ることになります。  予算書上には、甲号歳入歳出予算、歳出におきまして、組織、防衛本庁の項、武器車両等購入費等の金額が減額をされます。同時に、丁号国庫債務負担行為中六事項、教育訓練用器材購入、武器購入、通信機器購入、弾薬購入、航空機購入、艦船建造の各限度額が減額されることとなります。  なお、丁号国庫債務負担行為の事由欄におきまして、航空機の機数及び艦船の隻数が変更となるわけでございます。
  229. 宮地正介

    宮地委員 今大蔵大臣非常に慎重にメモを見ながら答弁されましたが、簡単に言いますと、いわゆる大蔵省の中の国債費というところに新たに項を設けて、そして平成三年度からこの項に今申し上げました金額が組み込まれていく、平成三年度については予備費の二千億と十七億が加わりますから、二千十七億が国債費のところに新しい項として入る、平成四年度のところには、その新しい項にこの二百四十億が入る、平成五年度においては先ほど示された五百九十二億が入る、平成六年度には百六十億が入る、そしてさらに新目も立てることにもなる、こういうことで理解しておりますが、間違いございませんか。
  230. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 非常に大事な点でありますので、正確を期すために読み上げをお許しをいただきたいと思います。  つなぎの臨時特別公債の償還に当たりましては、三年度には防衛関係費、予備費及び公務員宿舎施設費の節減相当額二千十七億円、また四年度以降には防衛関係費の支出予定額に係る節減相当額九百九十二億円を国債費に計上し、国債整理基金特別会計に繰り入れることといたしております。  具体的には、予算書におきまして、三年度は予算修正により国債費の増額を行うとともに、その分につき国債費の内訳として新規に立目及び事項立てを行い、明確化を図ることを考えております。四年度以降につきましても、この新しい目及び事項に防衛関係費の支出予定額に係る節減相当額を計上することとなると考えております。  また、本日提出をいたしました補正予算(第2号)関連の財源法案におきましても、臨時特別公債の償還に充てるため、平成三年度の二千十七億四百八十六万五千円のほか、平成四年度から平成六年度までの間に九百九十一億六千百六十六万五千円を一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れるものとする旨規定し、四年度以降の防衛関係費の支出予定額に係る節減相当額の国債整理基金特別会計への繰り入れを義務づけておるところであります。ですから、今委員が御指摘になりましたように、平成四年度以降の臨時特別公債の償還費の元本分に係る各年度の国債費の額、これは先ほど防衛庁から御答弁がありました一定の前提を置いた金額というものを勘案して、各年度の予算編成において計上されることとなります。
  231. 宮地正介

    宮地委員 ということでございますから、結論から申し上げれば、一千二億円の削減というものは、平成三年度で十億円の実額の削減、後年度負担においても、平成四年、五年、六年で国債費に計上され、それは直で今回の九十億ドルの財源として、今回は国債整理基金特別会計に、本来は直じゃないんですが、今回は特例として直でこういうふうに入る。ですから、当然当初は一兆一千七百億については法人税、石油税、たばこ税というすべてを増税という形で国民に負担を強いる、そういう第一回の閣議決定をした。しかし我々の予算の修正要求五千億の削減をした、その中の一千二億円についても、結果としてそうした九十億ドルのいわゆる財源として、特にこの国民の税負担の軽減にこれが役立つんだ、こういう私は結論に財政上なるんではないか、こういうふうに理解しておりますが、大蔵大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  232. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 湾岸平和基金に対して新たな九十億ドルの拠出をいたしますための財源措置につきましては、委員が御指摘になりましたように私どもは当初考えておりました。しかし、院における御論議等を踏まえまして、平成二年度におきまして税外収入の確保などを行うとともに、防衛関係費を含む平成三年度一般会計予算の歳出予算等の節減を図りました上、なお不足する財源については新たに臨時的な税制上の措置を講ずることとしたところでありまして、したがって、今回の防衛費の削減措置が現実に国民の税負担の軽減につながったという委員の御指摘はそのとおりであります。
  233. 宮地正介

    宮地委員 この問題の最後に、きょうは官房長官見えておりますので、与野党合意の二月十五日の「湾岸地域における平和回復活動に対する我が国の支援に係る財源措置について」の二項目の(2)の中にある「防衛関係費(国庫債務負担行為に係る平成四年度以降の支出予定額を含む)等の減額」により約一千億円を確保する、私は、この項目についてはしっかりと政府として、公党間の合意でありますので、今後においても厳守をしていただきたい。昨日は、誠実に対応するという答弁があったようでございますが、この点を防衛庁長官内閣官房長官に確認をしておきたいと思います。
  234. 池田行彦

    ○池田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私どもも公党間のお約束を踏まえて、政府として今回の一千億円の削減措置を講じたところでございます。そういったことで、昨日も御答弁申し上げましたが、私どもも今回の措置、誠実に実行してまいりたい、こう考えております。
  235. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいま防衛庁長官の申したとおりであります。誠実に履行していきたいと思っております。
  236. 宮地正介

    宮地委員 ぜひこの点についてはよろしくお願いをしておきたいと思います。  そこで、時間も大変限られておりますし、きょうは関連質問の関係の方にもバトンタッチする都合もございますので、特に今回の湾岸危機の自衛隊機の派遣の問題についての特例政令のところについて、少しお話を伺っておきたいと思います。  時間もありませんのでぜひ簡明にお答えいただきたいと思いますが、今回の特例政令、政令第八号で、湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令、こういうふうになっているわけです。この中にまず、「自衛隊法第百条の五第一項に規定する政令で定める者は、当分の間、自衛隊法施行令第百二十六条の十六に規定する者のほか、湾岸危機(イラクのクウェイトに対する侵攻及び占領以降国際連合安全保障理事会決議第六百七十八号に基づく国際連合加盟国のイラクに対する武力行使に至る一連の事態及びこれに引き続く重大緊急事態をいう。)に伴い生じたイラク、クウェイト及びこれらの」云々、こうあるわけでございますが、この「当分の間」とは、これはどういう状態になったときに「当分の間」が解けるのか。またこの国連決議の六百七十八号に基づくクウェートからのイラク軍の全面撤退、これが行われたときには、この湾岸危機の定義が終わるわけです。このいわゆる特例政令を廃止をするための条件といいますか状況といいますか、どんな状況なり条件が整ったとき、この特例政令を廃止する閣議を政府は行うのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  237. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  政令八号の「当分の間」と申しますのは、イラククウェートに対する侵攻及び占領に始まる今回の湾岸危機に伴い生じた避難民の本国等への輸送の必要性が存在する期間、これが「当分の間」であるというふうに考えております。  そうして、どういう状況になったときにこの政令を廃止するのかという点でございますが、それは今回の湾岸危機が解決し、さらに先ほど申しましたような避難民の輸送の必要性が完全になくなった時点におきましては、これは廃止という行為をするまでもなく政令の持ちます実効的な効力が失われる、このように考えております。
  238. 宮地正介

    宮地委員 例えば、和平が成立して停戦、そしてイラクと多国籍軍の軍事行動がとまったとき、これはこのいわゆる特例政令は必要がなくなる。もう自衛隊機を派遣する必要はなくなる、そういう状況というものができるわけです。この停戦のときはどういうふうに理解をすればいいんでしょうか。
  239. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほども御答弁申し上げたところでございますが、停戦になり、そうして完全にイラク軍クウェートから撤退するということがまずなんでございましょうけれども、政令の言っております目的というのは避難民の輸送でございますので、そういった避難民の輸送の必要性がなくなった、そういう状態が必要であると思います。そうなりますと効力が失われる、こういうことだと思います。
  240. 宮地正介

    宮地委員 避難民の輸送が必要なくなる。そうなりますと、もう民間機で委託なり、戦端が閉じられればこれは民間機で代行ができるわけですね。あえてそこに自衛隊機を飛ばす必要はなくなる。それでも自衛隊機を飛ばす、そういう条件が整っている、こういうふうに長官理解しているんですか。
  241. 池田行彦

    ○池田国務大臣 これは、一体これから湾岸情勢がどういうふうに展開するかまだ不透明な部分も随分ございますので、余りここでいろいろな仮定、仮説を置きながら議論申し上げるのはいかがかと存じます。しかし、私ども考えておりますのは、とにもかくにも避難民の輸送ということが必要がない、こういう状態が実現する、こういうことだと思うのでございます。  それで、停戦になったら民間機で全部対応できるじゃないかというお話でございましたけれども、それは実際にそういう事態になってからどういうふうに事態が展開するか、避難民の関係でですね。これを見なくちゃわからぬと思いますけれども、一つだけ申し上げますと、実は昨年の八月、イラククウェートへの侵攻という事態が起きましてから、そしてこの一月の十七日に多国籍軍の国連決議に基づく平和回復の活動が始まる、その間におきましても避難民は相当数発生いたしまして、その際に各国の民間の航空機あるいは軍用の輸送機がその避難民の輸送に当たった、こういう事実はあるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、先のことはもう少し事態推移を見きわめてから考えてまいるべきものではないか、こう考えております。
  242. 宮地正介

    宮地委員 非常に大事なことは、この特例政令は、この湾岸危機に対する定義は、この国連決議六七八号に基づく、それから国際機関からの我が国に対しその本国への輸送その他の輸送の要請、具体的にはIOMなどの要請、こういうふうに歯どめがかかっておるわけですね。ですから、当然要請がなきゃ飛ばせない、これは当たり前です。しかし、要請が来たって民間機で飛ばすことはできるわけですね。必ずしも自衛隊機を飛ばさなければならないということもない。また、この六七八号の決議が、これによって湾岸危機の定義ができているわけですから、六七八号が、これがきちっと、この決議がその目的を達成したときには、この決議がなくなったときには、当然この特例政令の必要性は私はなくなると思うのです。法制局長官、この点については法的立場から見てどうなんですか。
  243. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま防衛庁長官の方からお答えがございました。今委員もこの暫定政令をお読み上げになりましたけれども、ここの湾岸危機の定義は、まずイラククウェートに対する侵攻、占領、これ以降いわゆる安保理決議の六百七十八号に基づく武力行使に至る一連の事態及びこれに引き続く重大緊急事態、このように湾岸危機を定義しております。したがいまして、そういう重大緊急事態ということがいわゆる湾岸危機でございますし、また、湾岸危機に伴い生じた避難民として、そこから後もまた委員お読みになりましたけれども、国際機関から要請があった者、こういうことになっております。したがいまして、湾岸危機に伴い生じた避難民、そういうものとして要請がある、そこまでがこの政令の要件でございまして、そういう意味では、停戦というふうなことで直ちに今回の暫定政令が廃止されるべきである、かようには必ずしも言えない、こういうことでございます。
  244. 宮地正介

    宮地委員 私は常識的に見まして、この避難民の輸送については、停戦になればもう自衛隊機の必要はない、民間機でこれは代行できる、これが私は国民の偽らざるいわゆる一般常識だと思うのですよ。停戦になってもまだこの特例政令が生きているなんて、これは言語道断でありまして、やはり今回のこの特例政令のつくり方についても、本来これは、自衛隊の任務というものは自衛隊法の改正で、国権の最高機関である立法府を通して、そして正々堂々とやりなさい、何でこの特例政令をつくって、こそくにも内閣の決定でやるんだ、こういう厳しい批判も国民の間にあるわけです。それを、停戦になってもまだ自衛隊機の派遣でこの避難民の輸送をやる、そこをまだ法的に残しておく、これはもう私は大変国民の声というものを無視したものだと思うのです。停戦をしたら即特例政令を廃止する閣議を開く、このくらいのことがあって私は当たり前だと思うのです。官房長官、その点について、そういう対応をどういうふうに今後検討していくか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  245. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  私どもも、本当にいっときも早くクウェートからのイラク軍の全面撤退、そして平和の回復、そういった中で避難民の輸送の必要性がなくなる、こういうことを願っているものでございます。しかし、まだ現在の段階でどういう事態の展開になるかわからない。それから、即時停戦になりましてもやはり避難民の方々が大勢出てこられて、それでその輸送をするという必要性が、人道的な観点からもあるいは国際的な観点からもあるということは、残るということは考えられるわけでございますので、そういったことを踏まえれば、私どもはやはり停戦になったからすぐにこれまで我々として、いろんな条件がございますけれども、国際的な要請にこたえて、人道的な立場から貢献していこうといった備えと申しましょうか態勢というものはやはり引き続き維持しておかなくてはならないのではないか、このように考えております。
  246. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 もともとこの避難民の輸送につきましては、総理初め政府の関係者がずっと今まで、今日のこの事態になるずっと前々から、もうこれはできるだけ民間機でやるんです、だけれども、民間機で飛べないような状況があったときには、最後の手段として自衛隊の輸送機も、人道上の都合だし、国連関係の要請だし、これもひとつ最後の手段としては考えておこうという趣旨であったと思うております。  私は法律家じゃありませんから詳しいことはちょっとできませんけれども和平が返ってきて、そして避難民も出ないようになってということになれば、今回限りの六七八に基づくこの避難民でありますから、そんなようなことになればもうこの政令自体は私は自然消滅する、これは常識的に考えておるのです。もう効力はないんですから、それに限るんですから自然消滅する、こう思っておりますけれども、しかしそこは法的にどっちの方がいいのか、政治的にどういうふうにいいのか、改めてこの政令を廃止するとやった方がいいのか、それとも、しなくたって自然消滅することは間違いないとは私は思いますけれども、どっちがいいのか、今ここでちょっと急に申し上げられませんけれども、そんな気持ちがいたしております。
  247. 宮地正介

    宮地委員 これはけじめをきちっとつける意味で、自然消滅なんというそういう考え方でなくて、やはりきちっと廃止のための政令、これで閣議決定する、きちっとけじめをつける。やはり和平がきちっと成立したら、停戦即廃止のための閣議をする。それは状況はいろいろあるにしろ、いずれにしても、もう自衛隊機を飛ばす必要がなくなれば、私は速やかに廃止をすべきである、このことを強く主張して、次の方にバトンタッチしたいと思います。
  248. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、山田英介君から関連質疑の申し出があります。宮地君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山田英介君。
  249. 山田英介

    山田委員 まず、けさソ連大統領報道官イグナチェンコ氏から、ソ連ゴルバチョフ大統領イラクのアジズ外相会談の合意項目ということが明らかにされたところでございます。  それで、ひとつ確認でございますが、午前中、中山外務大臣は記者会見におきまして見解を表明されております。一つは撤退のタイムリミットが示されていない、いま一つは、国連安保理決議を無効にした場合にはクウェート正統政府の復活を困難にするのではないか、したがって直ちに歓迎はできない、こういう趣旨かと存じますが、恐れ入りますが確認をお願いしたいと思います。
  250. 中山太郎

    中山国務大臣 けさの私の閣議後の記者会見で発言をいたしました内容は、今委員がお話しになりましたとおりでございます。
  251. 山田英介

    山田委員 それで、ちょっと細かいところで恐縮ですが、また逆に言えば極めて大事なところと私は思いますのでお伺いするわけですが、この合意項目の中の五つ目、撤退完了後は国連諸決議は効力を失うという、こういう項目についてですが、実際、米国を中心とする多国籍軍の国連決議六百七十八号に基づく武力行使の公式な目標というのは、クウェートの解放とかあるいはクウェート正統政府回復、もう一つは湾岸当該地域の平和と安定、こういうふうに理解をしているわけでございます。その公式の武力行使の目的の一つに確かに正統政府回復というのは入っているのですが、これは国連諸決議を無効にした場合にその回復というのが困難になるんじゃないかという、そのつながりはどういうことなんでしょうか、ちょっと整理をして教えていただきたいのです。
  252. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、安保理決議六百七十八自体は、クウェート政府協力している国連加盟国に対して、累次の安保理決議を堅持かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するためにあらゆる必要な手段をとる権限を与えているということでございます。  ただ、関連の国連決議は六六〇以降十二本にわたってございまして、そのうちクウェート正統政府の権威回復というのは決議六六一にあるわけでございます。それからあと六七四という決議に賠償の問題その他若干の戦後処理の問題が残っておりますので、そのような意味で、すべての安保理決議をその撤退完了後効力を失わせてしまうということには若干の問題があるかと存じます。
  253. 山田英介

    山田委員 それで私は、決議六百六十号、これが当然基本でございます。即時無条件、完全撤退。そこからこう見てまいりますと、この八項目の中で、要するに特に条件ということではない、こう思われる項目と、これは明らかに条件をつけているなというふうに思われる部分とはっきり分かれているように私は読めるわけです。  そこで、大臣の御見解を伺いたいのですが、二番目の、撤退停戦後二日後に始まる、これは一日後にするか二日後にするかということですから条件と言うほどのことではないだろうと思うのです。  それから三つ目、撤退は一定期限内に行われる。ここのところを実は外務大臣はけさの記者会見で、何といいますか、タイミングとかあるいは完了するまでの期間がこれは極めて重大なポイントだ、したがって、タイムリミットが示されてないからという趣旨の御見解の表明があった。ここについても、これはまさに手続の部分だろうと思うのです。しかし、大変長い期間で撤退、短い期間で撤退というのは、戦車などの装備を持ってイラクの本国へ撤退するのかどうかということにかかわる部分でもありましょうから、極めて大事な問題ではありますけれども条件ということではないのだろうというふうに思うのです。どのくらいの期間にするかというのは、まさに撤退するための条件そのものということではないと思われます。  四つ目の、実は四項目目と五項目目条件をつけてきているのかな、即時無条件、完全撤退の中の無条件のところとぶつかるところが四番目と五番目。三分の二以上イラク軍クウェートから撤退した段階で経済制裁を解除させる。それから、撤退完了後は国連決議は効力を失う。ここのところが、言ってみればいわゆる即時無条件、完全撤退の無条件というところとぶつかるところだろうというふうに私は思うわけです。  六番目の、停戦の後すべての捕虜は解放される、これは全く問題ないだろうと思いますし、撤退は、七項目目ですが、直接戦闘に関係してない第三国がモニターをする。このことも、これは一つの停戦とか和平をきちっと確保するための当然の措置と思われますので、これは条件と見ることはできないだろう。  ですから問題は、四項目目と五項目目のところが極めて大きなものである、私はこう認識をいたしますが、中山外務大臣の御認識はいかがでございましょう。
  254. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員がお話しになりましたイラクのアジズ外相が出しましたこの条件といいますか項目、これにつきましてさらに詳しい情報の収集が現在まだ手元に届いておりません。今私が持っておる情報は、モスクワにおいてアジズ外相がソ連のべススメルトヌイフ外相との会談に入っているということでございまして、今晩、深夜になろうかと思いますが、私自身がベーカー長官とも電話でいろいろと意見の交換をしながら、日本政府としてこの平和の回復のためにどのようなことができるか十分検討いたしたいと考えております。
  255. 山田英介

    山田委員 それは第二回目の会談が行われているあるいは行われる、その後に公式なというお話でございますが、しかし、少なくともイグナチェンコさんという方はゴルバチョフ大統領報道官、その方が記者会見の場で明らかにした八項目、その中で、私が先ほど申し上げました四項目目と五項目目が特に問題なのではないか、大臣の御見解いかがですかと私聞いているわけですから、それは大臣は正面からお答えください。
  256. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおり四項目、五項目というのは一つの大きな問題点をはらんでいると認識をいたしております。
  257. 山田英介

    山田委員 そこで、きょうの零時ということでしょうか、きのうの深夜、国営放送を通じましてフセイン大統領声明発表する。そしてけさの報道にかかったわけですが、アジズ外相がモスクワで全く逆のこういう動きが、展開があったということですが、実は私は、即時無条件そして完全撤退、六百六十号決議が満たされれば、これは当然多国籍軍は武力行使をやめるべきです。これは当然のことです。そこに、無条件というところにひっかかりがあるものですからということに理屈はなっているんだろうと思います。  そこで、サダム・フセイン大統領の昨晩の声明を聞きますと、もしモスクワに行ったアジズ外相の提案を米国を中心とした多国籍軍、米国が拒否するということであれば、それはもう最後の一兵まで戦うというような趣旨の声明の中身があるわけでございます。それはよく言われますアラブ的な交渉のやり方だというような側面もあるのかしれませんけれども、しかし、本当にすべてを犠牲にしてまで最後まで戦うんだというところまで追いやっちゃった場合の悲惨さというものは、これはもう想像を絶するものがあるのだろう。そしてそういう観点からすれば、何としてもこの八項目の中の四番目と五番目、この二項目について、外務大臣も問題がここにあるのだ、ネックがあるのだというふうに今お示しになられましたように、この二つ何とかできないのかというところが実は極めて大事なところだろうと思うのです。  そこで、我が国政府の対応として九十億ドルという巨額な資金供与、援助というものを決めておるというような状況の中から、それは確かに憲法の制約とか、あるいは憲法の枠組みに基づく平和諸原則とか、国民のコンセンサスとかというそういう角度からすれば、いわゆる国際法上の軍隊、自衛隊というものは派遣できない。けれどもしかし、平和回復活動のために我が国がこれだけの資金を拠出するわけでございますから、やはりそこにおいては、せっかく、要するにクウェートから初めて撤退します、それから十九番目の州であるということを言わなかったりまた言ったりするわけですけれども、それはいずれにいたしましても、我が国政府として、我が国外交のあり方として、この二つをクリアさせるために、悲惨な本格的な地上戦あるいはさらに拡大をした戦火というものを防ぐために、やはり我が国外交としてこういうふうにやりますというところがないとならないのじゃないかな。特に、ブッシュ大統領は多国籍軍を構成している各国の首脳と電話でもっていろいろ相談をしている、またこれを、八項目合意をどう評価するかということについて各国と相談するということになっているわけでございますが、日本政府にもブッシュ大統領、米政府からどうするかという相談はなされる可能性は、大臣どうなんでしょうか。
  258. 中山太郎

    中山国務大臣 ブッシュ大統領から日本政府にどうするかというような確認があるかどうかというお尋ねでございますけれども、既にけさの段階におきまして、日本政府はホワイトハウス、国務省、国防総省、緊密に連絡をしながら情勢の分析を行っておりますし、特にワシントンにおります村田大使は、いろいろとできる限りの話し合いを、情報収集をしながらやっております。政府といたしましては、国民が願望をされていると思われる平和への回復が少しでも速やかに行われるように、この一つの大きな転機に当たって最善の努力をいたさなければならない、このように考えております。
  259. 山田英介

    山田委員 そこで、外務審議官お二方を、モスクワ経由でお一人は中近東地域へ、もうお一人は直接中近東地域へ、こういうことで報道で承知をしているところでございますが、その中で、せっかく外務審議官を、政府高官を中東地域へ派遣をする。伝えられるところから私の承知している範囲では、それは戦後のいわゆるその地域の復興というものを、何といいますか勉強するためにというか、その方法を模索するためにということが主目的というふうに言われておりますけれども、訪問国がシリア、エジプト、サウジ、アルジェリアと伺っております。何でイランもお訪ねにならないのでしょうか。あるいは訪問するスケジュールになっておるのでしょうか。イランだけ何かこう除いてあるような感じがするのですけれども、そこのところは、事実関係で結構です。
  260. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  今回の渡辺、小和田両外務審議官の訪問につきましては、ただいま先生御指摘のとおりの訪問先国を訪ねることにしておるわけでございます。私ども、一つ一つの出張につきまして、そのときの時間的な要素でございますとかそれからそのそれぞれの国の位置、地域的なバランス、いろいろなことを考えてやっておりますけれども、たまたま今回はそういうことでイランには参りませんけれども、イランにつきましてはまず昨年の十一月に、松永外務省顧問、前駐米大使を総理の命で派遣をいたしておりますし、この際にこの湾岸危機の問題につきましてもイランといろいろ意見交換をしたわけでございます。私ども、イランの重要性というのは当然のことながら十分に認識をいたしておりますし、今後イランを含みまして関係国との間のその関係強化にいろいろと手を打っていくつもりにいたしております。
  261. 山田英介

    山田委員 これはさきに申し上げましたとおり、八項目が現時点でとりあえず明らかになった、そこで四項目目、五項目目、八つの中の二つが特段に問題だ。ということになれば、ここのところを、要するに我が国政府としてどういう外交努力をするか、したかというところがまさに問われるところでありまして、昨年の暮れに高官が行かれたからということではなくて、この湾岸情勢の新たな、そして重要な局面展開というものを踏まえた我が国外交のあり方でなければならないということを私は申し上げているわけでございます。  したがいまして、これは中山大臣も、昨年春にカンボジア和平に関連をして東京会議をみずからイニシアチブをとられて、そして私は大変な成功をおさめたと評価をさせていただいているわけでございますが、常々外務大臣は、地域紛争の、あるいは紛争解決のプロセスに我が国としては積極的にかかわりを持ってまいりたい、こういう御所信を述べられているわけでございます。そういう点からすると、確かにカンボジア和平問題とこの湾岸問題というものはある意味においては比較にならないほどのまた大変な展開であろうかとは思いますが、しかし、その我が国外交外務省、政府の姿勢というのがまさに今問われているわけでございまして、そういうことからすれば、今回のこのイラクの説得といいますかイラクに対する影響力の行使というのは、一にソ連、二にイランと言っても言い過ぎではないというふうに言われているわけでございますから、せっかく派遣をなされるのにイランを外しておるというのは理解できないわけです。なぜ外されるのかということになるわけですね。  それから、特に戦後をにらんでも、イランのこの地域において果たす役割というのは極めて重大だというふうに言われておりますし、また我が国政府もそのような御認識を当委員会において答弁をされているわけでございます。残念なことに、アメリカとイランの関係というのは国交が正常化になっておりません。不正常な関係にあります。ただ、我が国とイランとの関係というのは非常に良好であると認識をいたしております。やはり和平の兆しを見逃してはならない。そこに、成否はいずれにいたしましても、日本外交が最大限の努力をするというその姿勢、姿というものが国民の共感を呼び、あるいは各国の我が国に対する理解を生み、ということにもなるわけでございますから、私は、外務審議官を中東諸国に派遣をするということであれば、イランも加えて、ラフサンジャニ大統領ときちっとお会いをして、この二項目が実は問題なんじゃないですかと、言い方はいろいろあります、御専門ですから、外務省の幹部の方は。それはやはり外交努力を展開すべきだ、私はそのように思います。  したがいまして、こういう重要局面で我が国外交の出番ということを考えたときに、大臣、やはりイランに外務審議官、派遣すべきじゃないんでしょうか。
  262. 中山太郎

    中山国務大臣 イランの重要性については私もかねてから十分認識をいたしておりまして、私自身が実は出向く計画も昨年の暮れにいたしておりましたが、国会等の都合でできなかったという残念なことがございますが、今委員指摘のように、イランがこれからの中東の和平ができ上がるプロセスにおいて非常に重要な役割を果たしていくことは間違いございません。私自身も、委員の御指摘も十分踏まえて十分対応してまいりたい、このように考えております。
  263. 山田英介

    山田委員 大変恐縮ですが、イランに政府高官を派遣をすることについて検討なさる、していただくというふうに受けとめてよろしいんでしょうか。
  264. 中山太郎

    中山国務大臣 政府高官になりますかあるいは極めて最もその任にふさわしい方、こういう方を含めてイランとの接触を行うという考えを持っております。
  265. 山田英介

    山田委員 既に明らかなように、ソ連ゴルバチョフ大統領は、この湾岸問題についての停戦あるいは和平調停の実現に非常に強い意欲を示していると思われます。実際には、ソ連報道官等の発言を見ても、ゴルバチョフ大統領は政治生命をかけておる、あるいはまた、仮に米国がこのソ連調停案について拒絶をするというようなことになれば、今日までの良好な米ソ間の関係というものは維持されがたいのではないか、維持されがたいというような趣旨の発言もある。それはいろんな綱引きですから、力の、パワーポリティックスの部分がありますので、ということは重々わかりながら御質問を申し上げているわけですが、仮にこの合意項目、これからのいろいろな展開の中で、仮にアメリカが最終的にこれでは不十分、これでは不満足だということで戦闘を続行し、あるいは先ほどの報道に接しておりますと、既に本格的な地上戦に入ったのではないかというような報道もありますけれども、まさにその本格的な地上戦に、アメリカが最終的に拒否をして突入した場合に、私は、目に見える形で、一昨年暮れのマルタにおける米ソ会談、そこから始まってきたいわゆる冷戦時代の終えんというような、ずっと一連の対決から米ソ協調の時代へという、こういう大きな世界史的な流れに水を差す、あるいは米ソの関係というものが一定の重大な影響というものを受けざるを得ないというふうに心配をするわけでございますが、外務大臣の御認識を御披瀝をいただきたいと思います。
  266. 中山太郎

    中山国務大臣 先般行われました米ソ外相の会談におきまして、この両国首脳、両外相とも、米ソ両国安保理六百六十の完全実施ということについて合意をいたしておりますし、この問題に関して米ソ間にそういう基本的な認識の違いはないというふうに私は信じております。  私は、モスクワにおいてゴルバチョフ大統領にも本件に関しましてお話をいたしましたときに、ゴルバチョフ大統領は、安全保障理事会決議を実施させるということについてはソ連政府もその方針に変わりはないということがございました。また、けさのゴルバチョフ大統領からブッシュ大統領への電話による三十分に近い話し合いに対して、ブッシュ大統領は、感謝しているという言葉まで述べられておられる。米ソ間は極めて緊密に連絡が行われていると私は信じております。
  267. 山田英介

    山田委員 ちょっと角度を変えさせていただきますが、不幸にして——そうなってほしくない、和平の兆しが見えた、大きくまたある意味では見えたこのチャンスをどうしても生かしたいということは十分念頭に置いて、またそれは前提でありますが、しかしどのように展開をするかということは何人も予測ができないのかもしれません。ということでお伺いをするわけでございますが、二十日付のイギリスのザ・タイムズという、これは新聞でしょうか雑誌でしょうか、ちょっと確認しておりませんが、その報道によりますと、不幸にして地上戦に突入をしてしまった、本格的な地上戦に入ってしまった、地上戦の結果、クウェートから要するにイラク軍を全部追い出した、排除した、しかし、交戦状態が続いて、その勢いでといいますか、一つの陸上戦の軍事的には当然の帰結として、このクウェートの大きな補給基地であったイラク第二の都市バスラへ多国籍軍が進攻した、そして、このザ・タイムズの報道によりますと、アメリカの第三機甲師団クリス・バッチェルダー少佐の発言として、まず一時的にクウェート解放後軍民の合同の行政機関をクウェートに設置をする方針である、そして、地上戦の結果バスラを占拠することになったときにはそのイラク領バスラにも同様の軍民合同行政機関を設置をする方針である。バグダッドについてはどうするのかという質問に答えて、それを明らかにすると作戦の一部が明らかになってしまうのでそれは言えない、こういう報道がなされたわけでございます。  私が伺いたいのは、これは仮定の話だからということで答弁差し控えますという問題ではなくて、要するに地上戦を避けられると思いますか、避けられないと思いますかという次元の話じゃないわけでございまして、これは国連安保理決議、特に六百七十八号第二項でございますか、必要なあらゆる手段をとることを認めるという趣旨の決議に基づいて武力行使を多国籍軍はやっているわけですけれども、バスラまで進攻した場合、そしてそこに軍民合同行政機関を設置をするという事態が起きた場合、日本政府としてはそれは決議六百七十八号の許容した範囲を超えている、このように御見解をお持ちですか、あるいは超えていないという御見解ですか、これは簡潔にお答えをいただければと思います。
  268. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 仮定の状況ということでの御質問でございますが、幾つか御質問があったと思いますけれども最初にまず安保理決議六七八との関係で申しますと、決議六七八は、累次の安保理決議を堅持かつ実施し、湾岸地域における国際の平和と安全を回復するという目的を置きまして、その目的のためにあらゆる必要な手段をとるという規定になっておりますので、文理上は、そこで例えば地域的な制限はないということであろうかと思います。ただ、米国、英国等が一月十七日に武力行使を開始いたしましたときに、安全保障理事会に対して正式な通告をいたしております。その中で両国とも、その武力行使の目的はこの安保理決議の実施である、したがって、イラクの破壊それから占領もしくは分割を目的とするものではないということを正式に通報しておるわけでございます。  それから、具体的にイラクあるいはクウェートに米国が軍事行政機関を置くのではないかという新聞報道、私どもも、これは二十日付のイギリスのタイムズ、それからその後日本の新聞にも報道されておりまして、承知をいたしております。これは具体的な事実関係でございますので、現在確認中でございますけれども、まだ結果を得ておりませんので、これ以上はコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  269. 山田英介

    山田委員 そうすると、地上戦の結果バスラに多国籍軍が進攻をしたという事態は、安保理決議六百七十八号の容認の範囲内である、こういう御答弁と確認させていただいていいですか。
  270. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 あくまで仮定の問題という御質問で、そういう前提でお答えをいたしましたけれども、そういう意味で申し上げれば、ただいま御指摘のとおりであろうかと思います。
  271. 山田英介

    山田委員 バグダッドに地上戦の結果進攻するという事態になった場合は、これはどうでしょうか。
  272. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 これもまたあくまで仮定の前提でございますけれども安保理決議六七八の解釈から申し上げれば、これは決議に規定しております目的の範囲内であれば、それに対して、その行動に対して限定はないということだと思います。
  273. 山田英介

    山田委員 これは大変なことでございまして、安保理決議六百七十八、仮訳ですけれども、その第二項で、もう皆様御案内のとおりですけれどもクウェート政府協力している加盟国に対し、安保理決議六百六十及び累次の関連決議を堅持かつ実施するとともに、次が大事なんですが、「同地域における国際の平和及び安全を回復するために、あらゆる必要な手段をとる権限を与える。」恐らく今の御答弁は、この安保理決議の六百七十八の二項のこの部分だと思うのですね。同地域における国際の平和及び安全を回復するために、あらゆる必要な手段をと。それを後ほど確認をいただきますが、仮にそうだとすると、バスラはおろかバグダッドはおろか、イラク全土を占領することも読みようによっては決議の範囲内だ、こういうことになりかねない。ここのところを御見解をお示しいただきたいと思います。これは大臣からお願いします。
  274. 中山太郎

    中山国務大臣 多国籍軍の一国である米国の外交を預かる国務長官と、それから多国籍軍参加をしていない、しかし国連決議を採択するに際しては賛成をしたソ連、この両国の外相の共同記者会見の文章がここにございます。それにはこのように両国外相は言っております。「イラククウェートから撤退する旨明白なコミットメントを行えば、戦闘行為の停止が可能であると引き続き信じる。両国外相はまた、かかるコミットメントは安保理決議の完全履行につながる即時かつ具体的な行動によって裏付けられねばならないと信じる。」現在調停をやっているソ連外務大臣がこのような共同声明を出しているわけでありますから、基本点というものは、また、原点というものは米ソとも一緒だろうと思います。  ただ、今委員が御指摘のように、この安保理の六百七十八の中にあります今お示しになられましたパラグラフのところ、これにつきましても、私は先般のソ連訪問に際して、ゴルバチョフ大統領及びべススメルトヌイフ外相に対して質問をしましたときに、明らかに六百七十八の決議ソ連は支持するということを明快に言われておりまするから、ただいま近ア局長が御答弁申し上げた解釈というものは、この両国の外相の共同声明によって裏づけられていると認識をいたします。
  275. 山田英介

    山田委員 それではもう一つ確認でございますが、私のちょっと聞き方、こちらも交通整理できておりませんで失礼いたしましたが、決議六百七十八号に容認されている一つの形として、バスラあるいはバグダッド、そこに地上戦の結果として多国籍軍が進攻するという形は、これは決議の範囲内だと、それはわかりました。  そしてもう一つは、占領政策ですね。私がさっきザ・タイムズの記事を引用して伺いましたのは、そこに軍民合同行政機関というものを設置するということは、まさにこれは進攻ということと占領政策ということと、それは明確に違うんだということですね。それは今事実関係を確認中だというふうにおっしゃいましたけれども、それは確認してもしなくても結構ですから、仮に軍民合同行政機関をバスラ、そしてバグダッドに、仮に地上戦が進んでいった結果としてそれを置くというようなことになった場合に、それは決議六百七十八号に容認されている事態ではない、こう理解してよろしいのですね。
  276. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 具体的に、例えばどういう行動があった場合にどういうことになるのかというのは、ただいまの問題は私は余りに仮定が多いという感じがいたしますのでございますが、いずれにいたしましても、安保理決議六七八の上で申し上げれば、ここにございます目的、すなわち、これは具体的に申し上げれば、クウェートの解放あるいはイラク軍クウェートからの撤退、それからクウェート正統政府の権威の回復、それからこの地域における国際の平和と安全の回復ということだろうと思いますが、それを目的としております限りにおいては、そのあらゆる必要な手段をとるということになっておるわけでございます。  他方、先ほども申し上げましたように、米国それから英国もそうでございますが、この武力行使を行いましたときに、安保理に対しまして正式な通告の中で、この武力行使の目的はこの六七八の目的であって、イラクの破壊とかあるいはイラクの占領、それからイラクの分割というようなものを目的としているものではないということを言っております。
  277. 山田英介

    山田委員 そういう事態にならないためにも、冒頭以来申し上げましておりますとおり、ぜひひとつこの和平への重大な兆し、重大な展開というこのチャンスを逃さずに、日本国外交にありましても最大限の御努力外務大臣に特段にお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  278. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて宮地君、山田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十五日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十九分散会