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1991-02-21 第120回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月二十一日(木曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君      内海 英男君    小此木彦三郎君       越智 伊平君    狩野  勝君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    佐藤  隆君       志賀  節君    田邉 國男君       武部  勤君    津島 雄二君       戸井田三郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       松永  光君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    近江巳記夫君       竹内 勝彦君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    佐藤 祐弘君       古堅 実吉君    吉井 英勝君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       有馬 龍夫君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       矢部丈太郎君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         総務庁統計局長 井出  満君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         科学技術庁原子         力安全局長   村上 健一君         環境庁企画調整         局長      渡辺  修君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁水質保全         局長      武智 敏夫君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省民事局長 清水  湛君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         文化庁次長   遠山 敦子君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省児童家庭         局長      土井  豊君         厚生省年金局長 末次  彬君         厚生省援護局長 岸本 正裕君         林野庁次長   入澤  肇君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       向 準一郎君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   大塚 秀夫君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部長      黒野 匡彦君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設大臣官房総         務審議官    青木 保之君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治省行政局長 浅野大三郎君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     中野 寛成君 同月二十一日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     武部  勤君   浜田 幸一君     狩野  勝君   石田 祝稔君     竹内 勝彦君   日笠 勝之君     近江巳記夫君   辻  第一君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   武部  勤君     小坂 憲次君   近江巳記夫君     日笠 勝之君   竹内 勝彦君     石田 祝稔君   吉井 英勝君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任  小坂 憲次君     小此木彦三郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。粟屋敏信君。
  3. 粟屋敏信

    粟屋委員 本日は、大臣委員会出席の御都合もありますので、質問の順序を変えながら御質問をさしていただきたいと思います。  まず、原爆被爆者対策の問題について厚生大臣にお伺いをいたしたいと思います。  私は、原爆被爆最初の地でございます広島の出身でございます。当時の惨状を知る者の一人として、核廃絶核軍縮への思いは切なるものがございます。広島の市民ひとしくそうでございますし、また、広島おいでになられて資料館おいでになって当時の状況をごらんになった方は、ひとしく同じ気持ちであろうと思っておるところであります。  幸いにして核軍縮、これは世界の風潮となっておると思います。中距離核兵器、これは全廃条約が締結をされましたし、戦略核兵器につきましても米ソの間で削減交渉が進んでおります。また、短距離核兵器についてもヨーロッパにおいて削減交渉がその緒につかんとしておるところでございまして、私は非常にいい傾向である、こう思っております。これからさらに前進することを希望をいたしております。ただ、先般、湾岸戦争に際しましてアメリカチェイニー国防長官が、イラクが化学兵器を使えば核兵器の行使も辞さずという発言をされたようでありますが、これは私はある種のブラフ、おどしであろうとは思いますけれども、その発言は極めて遺憾な発言であると思っております。核兵器が行使されないことを切に希望し、また確信をいたしておるところでございます。  そのような流れの中にあってやはり忘れてならないのは、当時被爆をされた方々対策改善の問題でございます。野党におかれましては、百十六臨時国会におきまして原爆被爆者援護法をお出しになりました。これは、参議院は可決をいたしたのでありますが、衆議院で廃案になりました。さらに、百十八国会に再び同じ案を参議院に提出をされております。原爆被爆者対策向上を願う思いは、野党の方たるとを問わず私どももひとしく同じでありますけれども、その内容を拝見をいたしますと、去る五十五年十二月十一日の原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告、この考えからは大分飛躍をされておるようでございますし、特に一般戦災死没者等に対する処遇とのバランスから見ますと、なかなか国民全体の合意を得ることは困難ではないかと思うわけであります。  さはさりながら、原爆被爆者対策向上を願う心は我々も同じでございますので、自民党におきましては、社会部会の中の原爆被爆者対策小委員会で一昨年来この問題を真剣に検討をしてまいりました。  原爆援護法に盛られております年金の問題がございますけれども、現在健康管理手当等年金に近いような手当を既に差し上げておるわけでございますけれども、これらの手当充実をして実質年金化を図ろうではないか、また、亡くなった方に対する弔意の措置を講じようではないかということで、自民党委員会において検討を進めてまいったわけでございます。  一応の結論が出まして、厚生省にこの旨を伝達をし、ぜひ実現をお願いをしたいということで処理をしてまいったわけでありますけれども、厚生省におかれましては、我々の意のあるところをお酌み取りいただきまして、完全、十分とは言えないにしても相当程度前進措置平成三年度予算でおとりいただいたと思っております。その内容につきまして、厚生大臣からお話ちょうだいをいたしたいと思います。
  4. 下条進一郎

    下条国務大臣 粟屋委員にお答え申し上げます。  原爆被爆の悲惨さ、これはもう幾ら言葉を尽くしても尽くし切れない、本当に人道にもとる悲惨さでございます。粟屋委員広島という世界でもまれの被爆の地に実際におられて、その悲惨さを目の当たりにごらんになったお話を切々と訴えられました。私も、このことについてはまことに心の痛む思いでございます。実は、あの被爆のときに私はすぐ近くの姫路におりまして、その惨状を朝も晩も刻々と聞きまして本当にもうひどいものだということで私も非常に悲しんだことを、今、つい先日のような気持ちでお言葉を拝聴しておった次第でございます。  被爆者の救済問題につきましては、既に先生お話の中にありましたように、原爆二法で一応処理するように体制が整ってきておりますけれども、まだ必ずしも十分でないということで、この前の参議院の、おっしゃられましたような野党提案が一応参議院だけ通ったという事実もございます。そういう事実を前提といたしまして、平成三年度の予算相当程度充実を図るように努力してきたわけでございます。  原爆被爆者対策につきましては、被爆者の実態を踏まえ、原爆二法を中心として、保健医療、福祉の各般にわたって施策の充実を図ることとするのが前提でございます。また、ただいま申し上げましたように、平成三年度におきましては、被爆者高齢化に対応いたしまして健康管理手当認定期間の延長をいたしました。これは、一年のものを三年にするとか、あるいはまた三年のものを五年に延ばすとかいうことでカバレージを広げるということにいたしました。それからまた、諸手当所得制限限度額引き上げをいたしました。これは、年間九百八十万円の所得制限を千六百万円に引き上げる、相当思い切った引き上げをいたすことになっております。また、事務手続簡素化考慮をいたしております。さらにまた、介護手当額の大幅引き上げ、これもやはり一・五倍から二・五倍、いろいろのものがございますけれども、やることになっております。などの改善措置を行うこととしているほかに、諸手当の額につきましても、平成二年の消費者物価上昇率に見合った引き上げを図る、これは三・一%ということでございますが、そのような措置をいたしております。  また、原爆死没者に対する弔慰のあらわし方につきましても、原爆死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するため、新たに広島長崎原爆死没者慰霊等施設を建設するための施設整備検討調査費を計上する、第一歩を進めるということとともに、財団法人放射線影響研究所を活用いたしまして、被爆に関する調査研究、啓蒙、啓発事業国際交流事案を行うほか、都道府県等を通じて慰霊事業を行うこととしておるわけでございます。  そのようなことで、かなり突き進んだ措置を講ずることに相なっております。
  5. 粟屋敏信

    粟屋委員 厚生大臣の御説明かなり前進措置をとっていただいておること、よくわかりました。ただ、この問題につきましては絶えず御検討ちょうだいをいたしまして、前進策検討を進めていただきたいと思っておるところでございます。  広島長崎もそうでございますけれども、原爆被爆世界でも唯一のところであります。そのために原爆被爆者に対する医療、これは私はかなりのノウハウを持っておると思うわけであります。ソビエトにおきまして、チェルノブイリ原発事故が起こりました。また、核実験地と言われておりますセミパラチンスク、ここでも相当数被曝者がおられるようであります。私は、この原爆医療ノーハウ、これをやはりそれらの方々にも及ぼしていく必要があると思っております。現に広島県におきましては、県医師会、さらに県、市協力をいたしまして、チェルノブイリ、セミパラチソスクからの研修生受け入れ、また医療団派遣等を行って御協力をいたしておるわけでございます。こういう仕事はやはり我が国の一つの責任でもあろうかと思うわけであります。  今回、予算国際交流事業予算が計上されたわけでございますけれども、厚生省でお考えになっております国際交流事業の中身、また私が申し上げましたような原爆医療ノーハウ伝達、そういうものにつきましてどういうふうにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  6. 寺松尚

    寺松政府委員 お答えいたします。  御質問は、慰霊事業におきまして国際交流事業をどう考えているか、こういう御質問でございます。  来年度予算においては、新たに原爆死没者を慰霊し永遠の平和を祈念するため各種事業を行うことといたしておりますが、このうち国際交流事業につきましては、唯一被爆国であります我が国は、原爆放射能人体影響に関する治療疫学調査等において多くの情報技術を有していることは先生指摘のとおりでございます。国際的にもその科学的知見の提供あるいは技術指導等を行っていくことが必要であると考えております。  その具体的な内容につきましては、放射線被曝に関する日本人の専門家派遣や外国からの研修生受け入れ国際会議の開催などを考えており、医療の実施に当たってはこの分野の専門研究機関であります世界的に評価の高い財団法人放射線影響研究所を通じて行うことといたしております。なお、先生の御指摘チェルノブイリ等につきましても、緊急度必要度考えましていろいろ御相談しながら対応してまいりたい、このように考えております。
  7. 粟屋敏信

    粟屋委員 今のソ連関係原爆医療につきまして積極的な貢献をこれからもお願いを申し上げたいと思っております。  広島長崎被爆をされた方で被爆後海外に移住をされた方々、これがかなりの数おられると思うわけであります。私も、先般IPUの会議の帰路サンパウロに寄りまして、ブラジル原爆被爆者協会森田隆理事長といろいろとお話をしてまいりました。森田さんは、広島被爆をされまして、その後ブラジル移住をされた方でありますが、在外被爆者の問題に思いをいたされまして、奥さんと一緒にボランティアで、ブラジルにおられる方々健康管理あるいはその援護に当たられておられる方でございます。  森田さんから伺いますと、だんだん被爆者高齢化してきている。確かに今厚生省外務省あるいは県、市医師会在外被爆者に対する巡回医療をやっているけれども、御高齢でなかなかその診療の場所に来られない、あるいはブラジルも今若干鎮静はしておりますけれども、猛烈なインフレで生活上の困難があってそこへ行く費用もない、そういう方々についての憂慮をお話しになっておられました。また、日本国内被爆者に対してはいろいろな手当が交付されますけれども、これは一種の社会保障であるから日本国籍のない者に対しては払えないんだ、こういう問題についても御陳情があったわけであります。  手当の問題については属地主義という観点から非常に難しい点はあろうかと思いますけれども、巡回医療については最大限考慮を払う必要もあると思いますし、また同時に、帰日帰国治療等についても配慮をしていく必要があると思うわけでございますけれども、この在外被爆者に対する措置について厚生省はどういうお考えをお持ちになっているか、伺いたいと思います。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  8. 寺松尚

    寺松政府委員 お答えいたします。  在外被爆者の問題につきましては各地で若干いろいろと対応が違いますので、それぞれに分けまて御説明を申し上げたいと存じます。  北米在住被爆者数は約千人と推定されておりまして、主としてアメリカの西海岸あるいはハワイに居住している、こういうことでございます。これらの被爆者に対しましては、昭和五十二年以来隔年に財団法人放射線影響研究所広島県医師会中心となりまして専門医師等米国等派遣いたしまして、健康診断健康相談を実施しているところであります。国といたしましても、これにつきまして助成をいたしております。  次に、南米在住被爆者数についてでございますが、平成二年までに百九十四名と確認していると私ども聞いております。これらの被爆者に対しましては、昭和六十年より四回にわたりまして厚生省外務省広島県、長崎県が共同で専門医師等ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア及びペルーに派遣いたしまして、健康診断健康相談を実施しているところでございます。  このほか、北米南米在住被爆者に対しましては、広島県、市や広島県医師会長崎市が協力しまして、治療のために日本へお招きしまして、その旅費を助成するとともに、その治療については国が負担して行っておるところでございます。  さらに、在韓被爆者につきましては、韓国政府登録者数平成二年九月現在では二千百七十三名と聞いておりまして、韓国政府推定数は約三千人ぐらいではないか、このようにおっしゃっておるわけでございますが、在韓被爆者協会の、民間の団体の推定では二万名、こういうふうに言われております。これらの在韓被爆者につきましては、人道上の見地から昭和五十六年より五年間渡日治療を行ってきたところでありますが、昭和六十一年に韓国側から継続しない旨の申し出がございまして、現在は中断いたしておるところでございます。仮に、渡日治療の再開につきまして韓国側から要望があれば誠意を持って対応していく考えでおるわけでございます。  また、昨年五月でございますか、盧泰愚大統領訪日時に、我が国としては今後医療面での支援を行うこととされておりますが、厚生省といたしましても協力できるところがあれば最大限協力を行ってまいりたい、このように考えております。
  9. 粟屋敏信

    粟屋委員 今御報告がございましたけれども、やはり在外被爆者に対しても常に温かい目を向けていただきたいと思っております。  在韓被爆者問題につきましては、後ほど外務大臣にもお願いいたしますけれども、厚生大臣もお時間の都合がありましょうが、最後に被爆者対策、これはやはり放射能という特殊な障害でございまして、後遺症が残っている方も少なくないと思うわけでございます。  また、厚生省も死没者調査を先般行われましたけれども、私はこれはやはりある程度限界があった、こう思っております。直爆死をされた方々、この方も多いわけでございます。それから、被爆者手帳を持っておられる方について聞き取り調査をおやりになったり被爆者手帳を持っていない方もおられるわけでございますけれども、こういうことを考えられまして常に原爆死没者、障害者についての調査をお進めいただき、また被爆者対策向上について御努力をちょうだいをいたしたいと思いますが、厚生大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  10. 下条進一郎

    下条国務大臣 戦後四十五年をけみした今日におきましても、原爆被爆者が大変苦しんでいらっしゃるということを承知しておりまして、本当に心の痛む思いでございます。  この問題につきましては、先ほど来委員からのお話もございましたように、それぞれ非常に大事な問題を含んでおりまして、厚生省といたしましては、このような方々が年々高齢になっていらっしゃることも考えながら、また今おっしゃいましたような在外の方もいらっしゃるなどの問題を含めまして、我々としてはできる限りの対策を講じてまいりたいと思います。  特に、この問題は、先ほどもお話しいたしましたように原爆二法がございますので、原爆二法を中心として我々の施策の充実を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  11. 粟屋敏信

    粟屋委員 厚生大臣、どうもありがとうございました。  先ほど保健医療局長から在韓被爆者問題について一部御報告がございました。申されましたように、八五年までは帰国治療等を行っておったわけでありますけれども、八六年に韓国政府は、渡日治療が必要な者はほぼ治療を受けた、韓国の医療水準向上により国内での治療が可能になったということで、渡日治療がそこで途絶をいたしたわけであります。ところが、八七年、在韓被爆者協会会長が梁井大使に面会をいたしまして、在韓被爆者の損害補償として二十三億ドルの支払い及び原爆病院の建設を要求をされた。それからまたこの問題がクローズアップをされてまいったわけでございますが、中山外務大臣も八九年の九月、国連における日韓外相会談の席上、崔長官から要望があったのに対しまして、日本政府としては人道的、歴史的経緯にかんがみ誠意を持って可能な限りの協力を行う旨の発言をされておられます。そして、九〇年五月、盧泰愚大統領訪日時に海部総理より、在韓被爆者支援のため医療面で総額四十億円程度の支援を行う旨を表明をされたわけであります。  私も子供のころから広島に住んでおりまして、広島には韓国人の方がたくさんおられたわけでございまして、これが、あるいは動員により、あるいは家庭においてかなりの数被爆をされたことは明らかであると思います。今広島でも、韓国人の方々の慰霊碑が元安川河畔にございますけれども、これを平和公園内に移してくれという御要望もございまして、今、市において善処方を検討をいたしておるところでございます。  そこで、盧泰愚大統領来日の際の四十億円、この支出、これからの計画、どういうふうになっておりましょうか、お伺いをいたしたいと思います。
  12. 中山太郎

    ○中山国務大臣 盧泰愚大統領が訪日されました際に、海部総理より人道的観点及び福祉向上の観点から決着されました四十億円程度の支援の中身につきましては、平成三年度予算案には十七億円を計上をいたしております。  また、この資金の使途につきましても、これまでは韓国政府と協議してきた結果、在韓被爆者方々治療費及び健康診断費の支援並びに健康福祉センター建設の支援に充てることを考えておりますが、具体的にはさらに韓国政府と協議を続けてまいりたいと考えております。
  13. 粟屋敏信

    粟屋委員 韓国政府と十分御相談をいただいて、在韓被爆者援護に役立つようにお使いをいただきたいと思っております。  次に、土地対策についてお伺いをいたしたいと思いますけれども、最近の地価の動向というのはいかなるものでございましょうか、御説明をいただきたいと思います。
  14. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 お答えいたします。  本年一月一日現在の地価公示を現在土地鑑定委員会で審査中でございますので、数字を挙げて明確にお答えできない点申しわけございませんが、不動産鑑定士等の地価動向精通者からの情報を集約いたしますと、最近の地価の動向は.全般的には、昨年前半期はまだ上昇傾向が見られるところが多かったわけでありますが、したがって三大圏の周辺地域等ではかなり高い上昇を示したところが多かったわけでございますが、後半に入ると多くの地域で上昇はとまり、横ばいから地域によっては下落傾向に転じたところが出始めております。この傾向は、年末からことしにかけてさらに強まっていると思われます。  さらに、ごく最近の状況を地域ごとに概括いたしますと、東京圏については、東京都及び神奈川県では昨年秋以降各地で、これは小幅ながら下落が見られる模様であります。最近まで高い上昇が見られました千葉県、埼玉県においても、市場の急速な冷え込みを反映して総じて上昇はとまりつつあります。大阪圏においては、昨年夏以降急速な鎮静化が見られ、これは各地で下落が生じているようであります。また、名古屋圏におきましては、昨年秋まで依然上昇が見受けられましたが、それ以降鎮静化の兆しがあらわれております。さらに、地方圏では、三大圏の周辺地域、山梨県とか滋賀県等でございます、またブロック中心都市等におきましては、昨年前半まで高い地価上昇が認められまして地価上昇の拡散傾向が懸念されたわけでありますが、最近に至って多くの地域で上昇率は鈍化する兆しが認められております。  以上でございます。
  15. 粟屋敏信

    粟屋委員 一昨年、百十六国会におきまして、私は土地問題について当委員会質問をさせていただいたわけであります。その際、この認識の前提として、地価高騰はここ数年著しい、特に商業地、東京の商業地でありますけれども、ピークは昭和六十一年で五三・六%の値上がりを一年間にした。また住宅地についても、区部南西部、世田谷、杉並等については、六十二年、ピーク時でありますが、実に一〇二・二%の上昇をした。この三、四年間に地価が三倍から四倍になった。これはゆゆしいことであるということを前提に御質問をいたしたわけであります。  今、土地局長お話を伺いますと、確かに下落傾向はあるわけでございますけれども、横ばいあるいは若干の下落、小幅の下落というような御報告のようであります。私は、これは高値安定ではないかと思うわけでございまして、さらに一段の地価鎮静の御努力をお願いをいたしたいと思うわけであります。  その際に、地価対策として何が必要かということについて述べたわけであります。  今のような異常な高騰というのは国民の、特に大都市圏に住む人の住宅取得難、これが深刻化する。これはモラルに影響をしてくるという面が一つ。さらに、道路をつくろうといたしましても、東京あたりでは用地費が九十数%を占めることになって社会資本整備も進まない、国民の生活にも支障を来す。さらには、経済活動から見ましても、こういう地価、高地価というのは大きなコスト負担になってはね返ってきて経済活動にも影響を与える、こういうことで、どうしても今解消策を講じなければならない。そのためには、まだ当時は土地基本法ができておりませんけれども、土地に対する国民の共通の認識を確立する、そういう意味でまず土地基本法の成立を促進する必要がある。幸いにいたしまして、各党の御努力によりまして土地基本法は成立をいたしたわけであります。そして同時に、土地基本法が成立をしても、個別政策をきちんとやらなければ土地政策の効果が上がらない。そのためには、国土利用計画法の的確な運用が必要である。また、土地融資の規制も必要である。さらに土地税制、これは今まで補完的と言われておったけれども、ある程度主役に立ってください、こういうことを申し上げてきたわけであります。  幸いにしまして、政府においても御努力をしていただきまして、国土利用計画法の監視区域について土地転がしを防ごうということで、届け出の内容に目的も加えていただいて、そしてその施行に一生懸命努力をいただいた。土地融資の規制についても、ことしの二月に総量規制に踏み込んでいただいた。また土地税制も、先般来、政府税調、土地税調、いろいろな論議がありましたけれども、地価税を創設をした。さらに土地の譲渡・取得についての、優良宅地は除きますけれども、重課制度をしいていただいてキャピタルゲインを取り上げる。あるいは、土地は有利な資産でないという認識を植えつけるという税制措置もとっていただいたわけであります。そういう点で、かなり前進はしたと思いますけれども、その効果が上がる必要があると思うわけであります。  そういう点で、先般政府は、一月二十五日、総合土地政策推進要綱というものをお決めになりましたけれども、その内容について、ごく簡単で要点だけでよろしゅうございますが、御説明をいただくとともに、これをどういう姿勢で実施をしていくかについて、国土庁長官の御決意を伺いたいと思います。
  16. 西田司

    ○西田国務大臣 まず最初に、私の方からお答えをさしていただきます。  委員御存じのとおりに、土地問題、地価対策というのは現在内政上の最も重要な課題として政府一体になって取り組んでおるところでございます。  先ほど御指摘がございました高値安定ではないかということでございますが、私は、若干の鎮静化あるいは部分的には値下がりの地域があるにしても、土地価格、地価というのは油断のできないものだ、こういう基本認識をいたしておるわけでございます。  そこで、当面の地価対策につきましては、現在までも、監視区域制度の的確な運用を図ってまいりますとか、あるいはお話にもございました土地関連融資をさらに規制をしていくとか、また一番大事な住宅宅地、こういうものを計画的に供給していくとか、それからもう一つございます、よく一極集中是正、多極分散型ということが言われておるわけでございますけれども、東京からどのように機能分散を地方へやっていくか、こういう各般のことが過去においても続けられてきたと思うわけでございます。そういうことを踏まえて、私の基本認識といたしましては、当面の地価対策として、二度とこのような地価高騰を引き起こしてはいけないということ、それからもう一つは現在の地価をどう引き下げていくか、この二点に絞ってこれから進めていかなければいけないものだ、このように思っておるわけでございます。  お話にございましたように、去る一月の二十五日に、土地基本法を踏まえた、あるいは土地政策審議会からの答申を踏まえて総合土地政策推進要綱を閣議決定をいたしたところでございます。その中に三つポイントがございまして、一つは土地神話をどうしても打ち崩していかなきゃいけないということ。それから「適正な地価水準の実現」となっておりますけれども、これは実質的には適正な地価水準に引き下げていくということ。あわせて有効な土地利用ができるような計画を各般にわたって進めていかなければいけない。こういうことから、税制あるいは金融、土地利用、そういうことを総合的に力強く進めていくのがこれからの基本姿勢ではなかろうか、こういう考え方でおるわけでございます。
  17. 粟屋敏信

    粟屋委員 大体のお考えはわかりましたが、私は、土地政策というのは、土地対策というのは一つだけで効果が上がるものではないと思っております。今長官からお話がございましたように、規制も必要だ、金融も必要だ、あるいは税制も必要だ、あるいは首都移転を含む多極分散型国土構造の形成を目指すことも必要だ、あらゆる面をきちんとやって初めて私はその効果が上がるものだと思っておるところであります。  国土庁という役所は、田中内閣時代に列島改造ということでまずは法案化がされましたわけですが、当時の異常な地価高騰に対応して、国土庁によって総合政策を立てて、そして土地対策を強力に推進をしようということでできたわけでありますから、国土庁は前面に出ていただいて各省との調整を図りつつ的確な施策を推進をしていただきたいと思っております。  なお、土地局長に伺いますけれども、今度の土地政策推進要綱の中で「公的土地評価の均衡化・適正化」、こういうことが言われておるわけであります。そして地価公示価格をすべての評価体系の中で中心に据えようということになっております。これは百十六臨時国会におきまして社会党の土井委員長が提唱をされましたことでございますし、土地基本法もそういう趣旨、またどうしてもこれをやらなければ土地評価に対する国の信頼を失わせるということで、一元化を図ろうということも決議をいたしたわけでありますが、そのためにはやはり地価公示あるいは地価調査、この地点をふやすことが必要ではないかと思いますが、平成三年度の予算においてどういう措置がとられたか。また、今後これを拡大をしていく必要があると思いますが、その辺の気構えについて伺いたいと思います。
  18. 藤原良一

    ○藤原(良)政府委員 御案内のとおり、土地基本法でも、また先月閣議決定いたしました土地政策推進要綱におきましても、公的土地評価の均衡化、適正化を推進することといたしておりまして、特に相続税評価、固定資産税評価につきまして、地価公示価格の一定割合を目標に、それぞれ税の性格等も考えながらその均衡化、適正化を推進するということになっております。そういう意味で、地価公示の重要性はますます強まってくると考えておりますが、そういう意味で、ただいま御質問にありました地価公示の標準地点の拡充が非常に重要だと思っております。  現在、この地価公示の標準地というのは、土地鑑定委員会が類似の利用価値を有すると認められる地域におきまして土地の利用状況、環境等が通常と認める土地を選定して、その土地について評価することとしておりますが、この標準地は毎年鑑定委員会において設定方針を決めまして、それぞれ具体のポイントを決めております。  平成二年の地価公示の場合は、住宅地で一平方キロメートル当たり一地点、商業地ではやや密度が高く約〇・三平方キロメートル当たり一地点の割合で選定しておりまして、全国で一万六千八百九十二地点となっております。この地点につきまして、できるだけふやしていきたいということで努力をしておりまして、平成三年度地価公示におきましては、予算をお認めいただけますれば二百二十三地点増加が図れるという見通しになっております。
  19. 粟屋敏信

    粟屋委員 今後とも地点の拡充について御努力をいただきたいと思っております。  先般、当委員会の総括質問において菅委員が、計画なければ開発なしということをおっしゃいました。私も本当に適切な御提言であろうと思っております。やはり土地利用計画とそれから開発というものがきちんと整合性を保っていかなければならない。とすれば、今の土地利用計画関係法制はこれでいいのだろうかという問題が出てくると思います。  先般、建設大臣は、現在都市計画審議会に図って検討中であるというお話でございましたから、その検討をお進めいただきたいと思いますが、私見を申し上げますと、私は今の都市計画法、確かに地区計画等かなり詳細計画の分にも踏み入ってきているとは思いますが、やはり何分にも、あれができましたのは昭和三十年代のいわゆるスプロール現象の激しいときに、スプロールをある程度抑止しよう、そこで調整区域は原則開発はさせない、そのかわり市街化区域をつくって、そこは計画的な開発を図る、こういうことでつくられた法制であります。ただ、時代も大分変わってまいりましたから、もう一遍都市計画法制を見直していただいて、市街化区域、調整区域という区割りがいいのかどうか、まだもう少し詳細な計画、そういうものを中心に据える法制が必要なのではないかということを考える。建設大臣はお見えになりませんが、簡単に私だけの意見を申し上げさせていただくわけであります。  いずれにいたしましても、先ほど長官がおっしゃいましたように、土地政策、これは内政上の最大の課題でございますので、今後とも御努力のほどをお願いを申し上げます。国土庁長官、ありがとうございました。  今、湾岸戦争は、ソ連の和平提案をめぐりまして、地上戦をやるのか和平に向かうのか、その岐路に立っていると思うわけでございます。イラクのアジズ外相も、本日の午前中には立ってモスクワへ行って回答をするようでございますけれども、このソ連のゴルバチョフ大統領の和平提案、この中身につきましてはいろいろ報道があるところでございます。ドイツのビルト紙、これについては、最初ソ連の副報道官のグレゴリエフ氏は大筋でそんなものだと言ったようでありますし、その後イグナチェンコ大統領報道官は、これは必ずしもソ連提案と一緒ではないというような発言もいたしておるわけでございます。また、海外各紙、いろいろな報道をなされておりますけれども、外務省としてはソ連の和平提案の中身についてどの程度把握をされているのか、伺いたいと思います。
  20. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お尋ねのソ連の和平提案、この内容につきましては、日本政府としては直接内容を一々確認をしているという立場ではございませんが、関係各国から種々の情報は確保をいたしております。しかし、この場におきましてこれにコメントをすることは、政府としては御遠慮させていただきたいと存じております。
  21. 粟屋敏信

    粟屋委員 局長でもよろしゅうございますけれども、和平提案がなされた後における各国の動向等についてどの程度把握をされておられるか、外務省の認識なり情報をお聞かせいただきます。
  22. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 ソ連の和平提案につきましては、イラクにつきましては先ほど先生指摘のとおり、これがバグダッドに持ち帰られまして検討の上、近くもう一遍イラクの外務大臣がモスコーに帰るという情報がございます。  それから米国でございますけれども、米国はそのソ連提案の中身が必ずしもその平和的解決のために十分なものではないという感触を公にしておりますけれども、同時にソ連からのこの内容についての通報を感謝する、それからソ連のその動きをいわば慎重に見守るという立場を現在とっておると承知をいたしております。  それからフランス、ドイツ等では、やはりこの問題の解決のためには、即時に明確に安保理に合致した形でイラクがクウェートから撤退すべきことが必要であるという立場を表明をいたしております。
  23. 粟屋敏信

    粟屋委員 各国いろいろな反応を示していると思うわけでございまして、ソ連でございますとか、またアジズ外相が接触をしましたイランの大統領、外務大臣、それぞれ、これは受け入れられるであろう、非常に楽観的な観測を漏らしているところが多いと思うわけでございます。また、米ソ問題については後ほど外務大臣にお尋ねをしたいと思いますけれども、きょうの報道によりますと、イタリアのアンドレオッチ首相がこれに賛意を示した、こういうことのようであります。  イタリアの首相の発言というのは、今度の湾岸戦争、同盟国の一国であるということにまた重みがあると思うわけでございますが、私はイラクの動きはどうもわからない点があるなという感じがいたしておるわけであります。昨日も、アジズ外相がイランから陸路バグダッドへ帰ったその日に農業改革会議を革命評議会がフセイン大統領の出席のもとに開いたというような報道が前面に出てきたわけであります。どうもフセインさんの動向というものがやや不明である。また、けさのNHKテレビによりますと、イラク国内においても反戦運動が盛んになってきて、そうしてかなりの衝突があったというような報道もある。そうして、イラクは、確かにアジズ外相はもう一遍訪ソをして正式な返事をすることになっているので、沈黙を守っているということもわからぬではないですけれども、イラクの動向というのはやや不透明な点があるわけでありますけれども、その辺何か情報をお持ちでしょうか。
  24. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 イラクの動向につきましては、私ども公開情報のほかにも周辺国からの種々の情報等を得ておりまして、慎重に分析をし見守っておるところでございますけれども、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、今や問題の解決のかぎと申しますのは、イラクがクウェートから撤退するということを非常に明確な行動で示すかどうかということにかかっているというふうに考えております。そういう観点から、現在情勢を十分に見守っておるということでございます。
  25. 粟屋敏信

    粟屋委員 やはり各国の反応のうちで一番注目をされ、かつ大事なのは、米ソの反応だろうと思っております。アメリカは、ブッシュ大統領が昨日、ソ連の和平提案は米の要件を満たすには不十分で譲歩するつもりはない。ところが、後、フィッツウォーター大統領報道官が、大統領の発言は必ずしも提案の拒否を意味するものではない、こういう発言をいたしております。片やソ連はべススメルトヌイフ外務大臣、これはイラクは友好国である、イラクの領土を保全する必要がある、戦争終結後、中東の安全保障体制の話し合いからイラクを排除してはならない、こういうような発言をしているわけであります。  そうなりますと、その提案の内容、これは必ずしも明らかでない、こうおっしゃいましたけれども、ドイツのビルト紙、大体こんなものかなというのが私は各国のコンセンサスじゃないかと思いますけれども、その中で問題は、フセイン・イラク大統領の処罰を含めソ連はすべてのイラク制裁に反対だとかいうのがあるわけでありまして、いわゆるイラクの現政治体制というものを残す、こういうことに提案のポイント、また対立点のポイントがあるのじゃないかというふうに考えます。その辺はそういう認識でよろしゅうございますか。
  26. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 米国を初めといたしまして、現在いわゆる多国籍軍に参加している諸国につきましても、あくまでもこの現在行われております武力行動の目的と申しますのは、国連の安保理で採択をいたしました決議六百七十八号の目的、すなわち累次の安保理の決議、これはイラクのクウェートからの無条件撤退を求めたものを初めといたします累次の安保理決議の完全な実施を確保してこの湾岸地域に平和と安定を回復すること、それを目的としているというふうに、これはこれらの国々の正式の発言から理解をいたしております。  また、ソ連につきましても、ソ連はあくまで安保理決議に従ったイラクのクウェート撤退ということを基本に対応しておるというふうに理解をしておりまして、米ソ間ではいろいろ緊密な話し合いも行われているようでございます。
  27. 粟屋敏信

    粟屋委員 今お話がございましたように、イラクの現体制存続、これはある種の条件的なものだろうと思います。無条件即時撤退というのが国連決議でございますから、あくまでも即時撤退、私は、これが今回の地上戦を回避し和平に向かう道であろう、こういうふうに考えておるところであります。  ソ連の和平提案、それなりに評価できる点はありますし、その努力は買うわけでございますけれども、このソ連の意図というものが何であろうかということを考えざるを得ないと思います。六百六十号決議あるいは六百七十八号決議にもソ連は賛成をしたわけでありまして、イラクの即時無条件撤退、この考えは同じであろうと思いますけれども、この和平提案等を通じてソ連が今後中東における発言力、これを確保しようという意図があるのではないかと思うわけであります。  それと同時に、よく言われますけれども、内政が混乱をした場合は外に向かって政策を、スポットライトを当てる。バルト三国の問題、グルジア共和国に対する武力行使の問題、またエリツィンがゴルバチョフもう引退をしなさいというようなことを言って、それにまた反発をする、そういうようないろんな動きがソ連内にある。とすれば、中東地域における発言権の確保と内政問題の困難から外に向かって国民の目をそらす、そういう意図もあるのではないか。これは私の観察が入っているかもしれませんが、そういう感じがいたします。  ただ、一番恐れますのは――米ソ和解が進んできたわけであります。これは東欧の変革以来、ヤルタからマルタへというマルタ会談以来急速に進んできたわけであります。そうして国連安保理が六百六十号決議をいたしました際に、今まで地域紛争が起こりますと往々にして米ソ両大国が拒否権を発動して安保理の決議というものがなかなか実現できなかったわけでありますけれども、六百六十号決議というのはそういう意味で非常に大きな意味合いを持っておるわけでございまして、いわば米ソ協調関係のもとにおける一つの国連の行くべき道のモデルともいうべきものが六百六十号決議、それから相続く六百七十八号決議に至る、そういうことであろうと私は思うわけであります。  それで心配しますのは、そういうような米ソの協調、和解ということが、今度のソ連の中東地域における勢力を温存をしよう、また強めようという意図が表面に出過ぎて崩れるのではないかということを危惧をいたしておるわけであります。これは外務大臣にお聞きした方がいいのかもしれませんけれども、コメントがありましたらひとつお聞かせください。
  28. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ソ連の提案の背後にありますいろいろな考慮、意図につきましては、先生おっしゃったいろいろな考慮があろうかと存じますけれども、今この場で私からその真の意図は何かということについての憶測をすることは避けたいと存じます。
  29. 粟屋敏信

    粟屋委員 外務大臣がお見えになってからまた見解を伺いたいと思いますけれども、あとは戦争終了後の中東地域の処理の問題であります。  外務省は、聞くところによりますと、小和田外務審議官が東欧に行かれて、それから帰途、西欧の主要諸国に寄り、また中東諸国にも寄って、その各国の意向を探り、日本の将来の参考にしようというようなお考えのようでありますし、最近はもうお一方の審議官も行かれて検討を進められるということのようでありますけれども、両審議官派遣、それは私が申し上げたようなことでよろしゅうございますか。
  30. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 私どもといたしましては、この湾岸危機の終了後の中東におきますいろいろな問題、その解決のために我々としてどういう貢献ができるかということについて真剣な検討を開始しておるわけでございます。その検討の一環といたしまして、渡辺務審議官をアラブの中の主要国でございますサウジアラビア、エジプト、シリア、それからアルジェリアの四カ国に派遣をするということを決定をいたしております。それから小和田外務審議官につきましては、従来から欧州、東欧その他各国との種々の意見交換を行ってきておりますが、イスラエルにつきましては従来から大体毎年一回このレベルでの意見交換をいたしておりますので、その機会を利用いたしましてやはり同様の意見交換をすることを考えておるわけでございます。これらの派遣、さらに今後も同種のことが考えられると思いますけれども、それらの関係国との意見交換をも通じまして、さらに戦後の問題についての検討を進めたいと考えておるわけでございます。
  31. 粟屋敏信

    粟屋委員 外務大臣御不在の間に、ソ連の和平提案、ソ連の意図、まあ言い過ぎかもしれませんけれども、戦後における中東地域における発言力を保存をしたい、それともう一つは、今のソ連の内政状態から見てこういう問題で点数を稼ぎたい、そういう意図があるのではないか。しかしまた、ソ連が余りその面を強調し過ぎますと、せっかく米ソ協調関係、特に六百六十号決議から六百七十八号決議に至る国連の中の協調関係、これが崩れるおそれはないか、そういう危惧を持っておりますが、外務大臣の御所見を伺いたい。
  32. 中山太郎

    ○中山国務大臣 中東の、このイラクのクウェートからの撤退ということをめぐる各国の協力というものは、私は相当深い場所で十分行われているという認識を強く持っております。特に、米ソの間では、両外相の共同声明にも見られるように、安保理決議の六百六十を完全実施するということを両国外相確認をいたしておりますから、ソ連もこの決議の早期実現のために、従来ソ連とイラクの関係は極めて深い関係がございますから、そういう意味で、今回ゴルバチョフ大統領がこの安保理決議六百六十の実現に向けて従来ソ連とイラクの間にあった深い関係の上でこのような和平の行動に出られたものだろう、あっせんに出られたものだろうと考えております。
  33. 粟屋敏信

    粟屋委員 いずれにいたしましても、米ソ協調のもとにおける世界の新しい流れが壊れないことを希望いたしておりますが、私は、きのう国連のデクエヤル事務総長が発言をしたといいますことに非常に感銘をいたしておるわけであります。地上戦の流血を避けるチャンスである、ソ連提案、それを受諾をするとすればという前提でありましょうが、ブッシュ大統領の発言も提案を拒否したものとは思っていない、またさらに進んで撤退を監視する技術的方法を検討している、こういうことであったようであります。私は、この国連事務総長のそういう発言が実現をされることを心から期待をいたしておるところでございまして、外務大臣におかれましても、今後とも御努力をちょうだいをいたしたいと思っておるところでございます。  私は、今度のイラクのクウェート侵攻、これをどうとらえるのか、国民に対してどういうふうに説明をしていくか、政治家にとって非常に大事なことではないかと思っております。一九八九年の九月以来東欧が大きく民主主義と自由市場経済を求めて変動をいたしてまいりました。そうしてマルタ会談が十二月に行われてヤルタからマルタへの風潮を確定をした。さらにドイツの統一が思ったより早く一九九〇年の十月三日に実現をした。ヨーロッパではNATOの首脳会議が一九九〇年の七月に開かれてロンドン宣言を採択して、加盟二十二カ国、これはワルシャワ条約機構を含めて二十二カ国が互いの不可侵宣言をやった。それを受けて十一月の全欧安保協力会議もそれを歓迎をした。そういうふうにヨーロッパ全体は平和の方向に向かっている。この流れが世界全体に行き渡って、世界全体に平和と発展への望みが出てきた、そういうときにおける行動であります。世界が新しい秩序を求めるのは確かに大変であります。いろいろな苦悩が伴うわけでありますけれども、そういう努力をしておるさなかに主権国であるクウェートをイラクが武力をもって制圧をした、これは何としても許されることではないわけであります。  我が国はいわば米ソ対立、東西対立、そういう緊張、まあ緊張下にあるとはいえ、ある意味では安定の秩序もあったと思うわけでございますが、そういう中で平和と繁栄を保ってきたわけであります。その新しい秩序を世界が求めようとするときにこういう事態が起こった。そうして、こういう事態を放置しておけば主権国の主権の侵害というものがまた起こり得ないとも限らない。これを国連の場においてきちんとして、再びこういうことが起こらないようにして世界の平和と発展を確保しようというのが国連の決議であるし、またそれに従って多国籍軍が行動をする、それに対して我が国が支援をする、これは当然のことであろうと私は思うわけであります。戦争か平和かとか、若者に銃を持たすな、これは我々としても切なる願いであることは間違いないわけでありますけれども、ただ、そういう言葉に置きかえ得ない問題が私はあると思うわけであります。そういう意味で日本の恒久平和また世界の恒久平和、これを確保するためのやむを得ない多国籍軍の行動であるというふうに理解をし、これに支援をしていかなければならないと思うわけであります。  今まで日本は、先ほど申し上げましたように、緊張のもとにおける安定の中で平和と繁栄を保ってきた。その中で世界にどう貢献をしたか、これが今問われる時期に来ていると思うわけであります。確かにODA、これは総額においてはもうアメリカをしのいで世界一の額になっていると思いますけれども、それだけでは済まない貢献、貢献というよりもむしろ世界の平和と発展、新しい秩序づくりにおける責任分担というものが問われているのではないかと思うわけであります。今度の九十億ドルの支援、また自衛隊機の難民救出のための海外派遣、一つの試金石であろうと思っておるわけであります。  九十億ドルの問題につきましては、今までも論議をされ、総理からも明確な御答弁をちょうだいをいたしておるわけでございますけれども、きのう和田委員の御質問に対する政府の見解として書面が配られたわけでありますけれども、これは過去の秦豊議員に対する政府の答弁書、それを背景にしながら出されたと思うわけでございますけれども、その問題につきまして外務省の御見解をここで明らかにしていただきたいと思います。
  34. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 これは御提出させていただきました政府の統一見解に明記してあることでございますけれども、今回のこの湾岸平和基金に対します九十億ドルの追加拠出と憲法第九条との関係でございますが、集団的自衛権を含めおよそ自衛権とは、国家による実力の行使に係る概念でございまして、湾岸平和基金に対する拠出により我が国が単に費用を支出するということは、実力の行使には当たらず、我が国憲法解釈上認められていない集団的自衛権の行使には当たらない、こういうことでございます。
  35. 粟屋敏信

    粟屋委員 それは、実力の行使をやるわけではないからこれは集団自衛権の範囲ではない、金だけ出すのならばこれは憲法違反ではないというような解釈であろうと思うわけでありますけれども、私は、今度の九十億ドル支援、先ほど申し上げましたような、意義のあるお金だと思っておるわけでございますので、まだ補正予算の審議の上においても御議論がありましょうけれども、これは出すべきものだというふうに考えております。  防衛庁長官、自衛隊機の難民救出のための海外派遣問題、これを政令でやるか法律でやるかという御議論がございました。これはさておきまして、私は、先ほど申し上げましたような激動する、また新しい秩序を求めようとする世界の中における日本にとっての責任分担、貢献策の一つの試金石であるということを申し上げたわけでありますけれども、何回も御答弁をいただいておりますけれども、憲法の関係も含めてお考えをお聞きしたいと思います。
  36. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来委員指摘のとおり、現在世界は大きく変わっておりまして、米ソを両極とする冷戦構造が終えんし、対話と協調の時代に入っておると思います。そういった中で、今回の湾岸におけるイラクのクウェート侵略、併呑という大変不幸な事態が起きたわけでございますが、これに対しまして、国連が中心となって平和を回復していくという、これは本当に新しい時代を迎え、新しい秩序を模索している世界にとって本当に大切な、モデルというお話がございましたが、これからの世界安定のための一つの仕組みがうまく育っていくかどうかのそれこそ試金石であろうと思います。そういった中におきまして、我が国としていかなる貢献というよりも役割を果たしていくべきか、我々本当に真剣に考えなくちゃいけないところだと思うのでございます。  そういった観点から、今回政府におきましても、九十億ドルの支援とか、また避難民の問題に限りましても、既に国際機関に対する三千八百万ドルの金銭面での拠出、あるいは我が国の民間航空機による避難民の輸送ということを行ったところでございますし、さらに民間におきましても、ボランティアの方々の拠出によって、外国の航空機を使用しての避難民の輸送というものも行われておるわけでございます。こういったことすべてが、新しい世界の中で日本がどういう役割を果たしていくかということの本当に試金石だと、御指摘のとおりだと思います。  今回私どもが考えております自衛隊機による避難民の輸送も,そういった大きな意味での新しい世界における日本の役割という観点から考えてしかるべきだという御指摘は、そのとおりであろうと思います。私どもも、そういった意味におきまして、避難民の輸送が本当に必要になり、しかも国際機関から我が国に要請があり、民間機による対応ができる場合はいいのでございますが、そういった民間機による対応ができない場合には、これは人道的な見地からの、そうして非軍事的な行為であり、さらに、先ほど申しましたような世界の中での日本の役割、こう考えまして自衛隊の輸送機がその任に当たろうということを考えておるところでございます。  そうして、憲法との関係というお話がございましたが、御承知のとおり、憲法では、禁止されておるのは自衛隊のいわゆる海外派兵、武力行使の目的を持って武装した部隊が他国の領土、領空、領海へ出ていくということが禁止されておるわけでございまして、今回のような自衛隊輸送機による避難民の輸送というものは憲法上は全く問題がないということはこれまで政府が終始明らかにしてきたところでございますし、また、国民の皆様方の中においてもこのことは大方の御理解を得ていると思います。  それからさらに、法律、政令の関係につきましては、私どもは、現行の自衛隊法第百条の五による、法律による内閣に対する授権の範囲内において今回の政令を制定させていただいた、このような次第でございます。
  37. 粟屋敏信

    粟屋委員 国連平和協力法案は不幸にして廃案になりましたけれども、三党合意のもとに今後検討を進められるということであります。私は早期にこれが成案を得て国会に提出をされることを希望いたしております。  ただ、私思いますのは、どうも対応が遅過ぎるのではないかという感じがいたしております。かつてイラン・イラク戦争の際に、中曽根内閣のときに、海上保安庁の巡視艇あるいは海上自衛隊の自衛艦をペルシャ湾に派遣をして掃海業務に従事させるかどうかということについて大議論があったわけでありますけれども、そういうようなことは当然頭の中に置いて、日本が国際社会の中における責任を果たす意味において、そのときから既に検討をされておくべきではなかったかなという感じはいたしますけれども、せっかくの御努力をお願いをいたす次第でございます。  先ほど、国連デクエヤル事務総長の言葉に、停戦監視について技術的な検討を行うというような発言があったわけでありますが、やはり湾岸戦争終結後の問題、これは大きな問題でありまして、先般も宮澤元副総理が一つの私案を提案をされておるところでございます。短期的な問題と長期的な問題がこれにはあると思うわけでありますが、まずは停戦監視、これをどういう方法でやるのがいいのか。特に、宮澤元副総理は、これはアラブ諸国が中心になった国連平和維持軍でやった方がいいというようなお考えのようであります。私もそうではないかと思いますが、それと同時にやはり、空爆等によって多数の被災民が出ておるわけでございまして、これに対する人道的援助、これをまず急ぐべきではないかという感じがいたしております。それから、長期的問題としては、やはり安全保障の枠組み、これを早期につくることが必要であります。先ほどヨーロッパの例を引いて申し上げましたような、NATO首脳会議における二十二カ国のワルシャワ条約機構を含めました不可侵宣言、それを受けたパリ憲章の宣言、そういうようなことをやはり中東一帯においてきちんとやるべきではないかという感じがいたしておるわけであります。それから、宮澤元副総理の御提案にもございますように、中東の安定復興基金とでも申しましょうか、東欧のああいう変化に即応して、EBRDですか、ヨーロッパ復興開発銀行、そういうような何か機構が必要ではないか。さらに、今度の、イラクがこれだけ強大になったことを考えますと、これはソ連なりイギリスなりフランスが武器輸出をして、そうしてそれを蓄積した結果がこういう強大な軍事大国をもたらしたわけでありますから、先進国の武器移転の抑制ということも重要であろうと思うわけでありますが、そういうようにいろいろな問題がこれから出てまいります。先ほども伺いましたけれども、外務省では外務審議官派遣をして、既にその検討に着手されたようでございますが、これに取り組まれる外務大臣の御決意を伺っておきたいと思います。
  38. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、宮澤元副総理の御提言も踏まえて、いろいろと戦後の中東地域の問題についてお触れをいただきました。  政府といたしましては、御指摘のようにまず戦後の経済復興をどうするかという問題がございましょう。また続いて、この地域に集まってきた膨大なあれだけの兵器、これをどのように処理をしていくのか、この問題が一つ戦後の大きな課題になって残っていくものと思います。これはちょうど、ヨーロッパでCSCEが一応パリ宣言をやった後のNATOとワルシャワ条約機構との間での兵器をどうするかという問題がございました。同じようなことが中東で起こってくる可能性は極めて大きい。  もう一つは、やはり安全保障をこれからどうするかという問題。  それから、この地域は御案内のように油の出るアラブの国と油の出ないアラブの国が共存をしておりまして、富者が貧者に富を渡すことは当然のことであるという一つの大きな考え方が現存している地域でもございます。このような中で、この地域が抱えているこの戦争による消耗、またそれまでに至るいわゆる債務、国際的な債務をどのようにこれから返済していくような構造をつくっていくのか。やはりこれには、原油の値段がどういうふうな価格で安定すればこの地域の経済も全体的に安定していくのであるか、ここいらも踏まえて、我が国としてはこの地域に重油の六五%を依存している国家でございますから、重大な関係を持っているわけです。また、我が国はそれによって経済を繁栄させた経済大国として、また技術大国としてこの地域の戦後の復興にできるだけの協力をしなければならないと考えております。
  39. 粟屋敏信

    粟屋委員 時間も迫ってまいりまして、最後に原子力発電並びにその事故の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど来、中東湾岸問題について論議を交わしてまいりましたが、今外務大臣お話しのように我が国の石油、これは六五%あるいは七〇%とも言いますけれども、中東に依存をしておるわけでございます。そうしますと、必ずしも安定をしたエネルギー源とは言えないわけでございまして、やはりエネルギー源の多様化を図っていく必要があると思うわけであります。通産省からいただいた資料によりますと、昭和六十三年、火力は六〇・一、水力は一三・三、原子力は二六・六、そのウエートはかなり重いと思います。また、昨日NHKテレビを見ておりますと、スウェーデンで、これは原子力発電所を全面的に廃棄しようという計画であったようでありますけれども、水力発電は環境問題でなかなか進まない、火力発電も二酸化炭素の放出の問題で制約がある、もうこれを見直した、原子力発電の廃棄を見直したというようなことが言われておるわけであります。そういう意味で、原子力発電、これは国民の御理解を得ながら推進をしていく必要があると私は思いますけれども、しかし、事故だけはなるべく起こらないように、なるべくといいますか絶対起こらないように対応を講じていかなければならないと思っておるわけであります。  そこで、例の関西電力の美浜発電所の事故の問題でありますけれども、時間がございませんので簡単にお答えをいただきたいと思いますが、関西電力美浜発電所二号機で非常用炉心冷却装置が作動して自動停止した件について、マスコミでは炉心溶融、メルトダウンといいますか、それの一歩手前でようやくとどまった等の報道があったが、非常用炉心冷却装置が作動したことについて通産省はどのように評価しておられるか、仮に非常用炉心冷却装置が作動していなかったならメルトダウンに至ってしまっていたのか、その点についてお答えをいただきたい。  それから、引き続きまして、今回の自動停止に伴って放射能が放出されたと言われるが、どの程度の量が放出されたのか、周辺の海域や大気に及ぼした影響はどの程度のものと見込まれるのか。特に自然界の放射線等と比べてどのように評価されるのか、その二点についてお答えをいただきたい。
  40. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 初めに、原子力の位置づけでございますけれども、先生指摘にありましたように、現在の湾岸情勢さらには地球環境問題というようなことを考えましたときに、やはりエネルギーの安定供給あるいは非化石エネルギーというものへの依存度を向上させることが必要でございまして、その中で先生指摘のように安全の確保というものを大前提にして、そして国民の御理解を得ながら、事故は絶対に起こさないように注意しながら着実にその開発利用を進めていかなければならないと考えております。  さて、御心配をいただいております関西電力の美浜二号機の問題でございますが、今、非常用炉心冷却装置というものについて御質問でございますので御説明いたしますと、よくマスコミでは、アメリカで起こりましたスリーマイルアイランドの事故と類似のものであって、がけっ縁まで行ったのではないかというようなことが言われているわけでございますが、かなり様相は違っております。スリーマイルの場合には、冷却水を循環させるポンプの故障から始まりまして、蒸気の流出がとまらずに、さらに運転員が判断を誤って原子炉に水を注入していたECCSを手動でとめてしまうというような運転ミスがあったわけでございまして、冷却水の大量流出、炉心損傷ということが起こったわけでありますが、今回の美浜の事象につきましては、これまでの調査結果では二次冷却水側に流出したと考えられます一次冷却水の流出量というものはスリーマイルなどに比べて大幅に少ないわけでございまして、十分余裕を持って設計をされているその範囲内でとまっておりまして、炉心損傷に至るような事象ではございませんでした。そして非常用炉心冷却装置は完全に作動し、運転員の操作ミスもなく適切に対応しているわけでございます。  そして、この非常用炉心冷却装置と申しますのは、原子炉の中にございます今回のような非常に小さなパイプの亀裂あるいは小さなパイプの破損事故からもっと大きなパイプの破断までを想定をいたしまして、数トン程度から数百トン程度までの一次冷却水の流出に対応して原子炉の冷却をするためにタンクにあらかじめ貯蔵してある水を炉心に送り込むという装置でございます。一般に、流出する一次冷却水の量が多いと炉心内の圧力が急激に下がりますが、小さいリークの場合には炉心の中の水圧はまだ依然高いわけでありますので、高い圧力で注入することが必要でございます。低下をしていくとさらに低圧で大量の水を入れなければならないということになっておりまして、段階的に働くような多様なシステムになっているわけでございます。しかもポンプあるいはタンクの各系統は独立をしておりまして、独立をした電源が二個ずつ設置をされておりまして、いずれか一個が作動すれば十分全体が動くような多重性を持った安全設計になっているわけでございます。今回は、直径二センチメートル程度の破断口から数十トン程度の一次冷却水が出たわけでございまして、流出時現象としては初期段階のものでございました。高圧系の二台のポンプが働くことで安全にとまったわけでございます。以上のようなことでございますので、ECCSについては安全に作動したわけでございます。  最後に、二番目の放射能の放出でございますが、まだ正確な調査をしておりませんので暫定的な推計値でございますが、希ガスにつきましては五掛ける十の九乗ベクレル程度、液体については七掛ける十の六乗ベクレル程度と推定をされております。いずれも周辺環境には有意な影響を及ぼすものではないと考えられております。  今回放出されました放射能によります影響というものを日常的な例に例えて申しますと、通常一年間に受けます自然放射線の影響というものの約百万分の一程度でございまして、医療用の胸のレントゲン写真などの数十万分の一程度の量、こういうことでございます。長くて恐縮でございました。
  41. 粟屋敏信

    粟屋委員 原子力発電、安全を確保することが何としても第一条件でありますし、新聞報道による関電副社長の発言等、極めて適切でないと私は思います。政府も頑張っていただきたいと思いますし、電力会社も独占企業であるからということで安住をしてはいけないということを要望いたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  42. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて粟屋君の質疑は終了いたしました。  次に、武藤山治君。
  43. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 きょうは、一般質問に入りまして総理がおりませんので、個別の、個々の小さい問題に及ぶかもしれませんが、官房長官の時間の都合で順序が狂いますので、外務大臣、大蔵大臣、大変恐縮ですが、お許しをいただきたいと思います。  官房長官、平和祈念事業特別基金というのはなぜつくったのか、その発足の経緯は官房長官は御存じですか。
  44. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 これは、日本の前の第二次大戦におきまして、いろいろな大変な被害を受けたり、それから損害を受けたりした方は大変たくさんおられます。だけれども、全部を国家的な補償で手厚く、恩給とかそういうようなもので手厚くやるということはなかなか全部に手が渡らないという点がありまして、そして、広いそういう手の届かないようなすそ野の方々に対して、せめてひとつ気持ちだけでもできるだけの慰藉を申し上げたいということで発足したということを聞いておりますが、いろいろと恩欠の方とかシベリアで苦労された方とか、それからまた引揚者の方とか、こういう方々に対してはなかなか手厚いことはできませんので、しかしできるだけという気持ちでスタートしたんだと私は思っております。
  45. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 戦後処理問題ということでいろいろ私も運動をいたしまして、自民党の櫻内先生が会長で、渡辺美智雄さん、小林進さんなどが副会長で、私幹事長で十年いろいろ政府と折衝をやった経験があるわけであります。その最終的な締めくくりがこの平和祈念事業という形で処理をされた、そう記憶をいたしているわけでありますが、この事業でいろいろなことをやるわけでありますが、この二十七条の中でしたか、いろいろソ連に墓参をしたり、あるいはソ連の死亡者や抑留者の名簿を渡してもらう努力をしたり、そういういろんな運動をした場合には、当然この二十七条で補助、助成をすべきだ、こう思うんですね。その点は官房長官、どうお考えになりますか。
  46. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 政府委員から答弁させます。
  47. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生お示しは、基金から各面の諸事業に対しての補助をどういうふうにいたせばよろしいか、やるべきである、こういう御指摘かと存じます。  それで、総理府が所管いたしております平和祈念事業特別基金が行います慰藉事業のうち、関係者の団体に助成もしくはその委託をいたしておりますのは、関係者の労苦に関する調査の委託、それから慰霊事業の助成、かようなものを対象といたしております。  そこで、このうち労苦調査の実施に当たりましては、関係者の労苦を後世に語り継ぐ、こういう事業の目的を踏まえまして、関係団体の御意向もお聞きした上で委託先を決めて、シベリア抑留関係については平成元年度、二年度ともそれぞれの団体にお願いをいたしておるところでございます。
  48. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それぞれの団体とはどの団体か。
  49. 文田久雄

    ○文田政府委員 先生御承知のことと存じますが、総理府の所管には全国強制抑留者協会という団体、これは総理府所管の公益法人でありますが、これが一つ。それからもう一つ抑留者団体の大きな団体が、これは任意団体でございますが、俗に斎藤団体と申されますが、この両団体に対しても行っておるところであります。
  50. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 全抑協、斎藤さんの方にはどういう補助金を出しているのですか。どういう援助をしているのですか。具体的に金額を示してください。
  51. 文田久雄

    ○文田政府委員 具体的な金額で申し上げますと、平成元年度は、申しましたように二つの団体に労苦調査をそれぞれお願いいたしておりまして、斎藤団体には約四百万円の委託をいたしております。あとは、斎藤六郎団体に対しての措置は今申し上げたとおりですが、全国強制抑留者協会に対しましては二千万余の委託を労苦調査に対しては行っております。
  52. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私がここで取り上げたいのは、全国強制抑留者協会、これは一応財団法人にしたんですね。ここには五億円の金を出しているわけですね。それから、全国抑留者補償協議会、斎藤さんの方は、会員も圧倒的に多くて、片方よりもはるかに多いソ連抑留者の人たちが構成しているのですね。ここには一銭も、五億円、出さないのですよ。何でそういう片手落ちの取り扱いをするのかということが問題なんであります。それは、財団法人という名前を、どさくさに組織を分裂させて、金を使わせるためにぱっとつくったということは明らかなんでありますが、そのいきさつはともかくとして、片方の団体には五億円使えるようにしてやって、片方の数の多い方は面倒見ないというのは片手落ちであるかどうか、官房長官に聞きたいのです。
  53. 文田久雄

    ○文田政府委員 ただいま先生から御指摘のありました全国強制抑留者協会に対するその五億円の件でございますが、その経緯等につきまして、私から事務的な御説明をさせていただきたいと存じます。
  54. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いや、片手落ちであるかどうかを聞いているのだ。経緯じゃないんだ。片手落ちであればある、なければない。なかったら、その理由を明らかにしてくれ。
  55. 文田久雄

    ○文田政府委員 この理由でございますが、この五億円は、戦後強制抑留者の方々が戦後その酷寒の地で強制労働に従事させられるなど大変な御労苦をなさったわけでございまして、また、その戦後強制抑留者に関する措置を確定、終了させる、こういう趣旨から、平成元年度に限り平和祈念事業特別基金に対してまず国から補助をすることとして予算計上されたところであります。  ところで、その五億円の具体的な使途については、平和祈念事業特別基金の運営の重要事項を審議するという運営委員会がございますが、この運営委員会におきまして御審議されまして、その結果、すべての戦後強制抑留者のために、単年度ではなくて永続的な事業として有効かつ効率的に実施することができるよう公益法人が、全国強制抑留者協会でありますが、この協会が造成いたします慰藉基金に対してその助成を行うことが適当である、こういう基金の運営委員会の御建議を賜りまして、それを踏まえまして、内閣総理大臣の認可を得まして元年度九月に総理府所管の全国強制抑留者協会に助成金の交付を行った、こういう次第でございます。  ところで、この慰藉基金をもちましてすべての戦後強制抑留者を対象とするこういう慰霊だとか相談などの事業が行われておりまして、関係者の参加を広く新聞広告を行う等いたしまして、慰霊に関しても新聞広告を行う等をいたしまして、その公平の確保に努めている、かように承知しているところであります。
  56. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 かように承知していても、片方、現に何万人という人たちが組織しているのですよ。それで一番仕事をやっているのはどっちかというと、この任意の方の斎藤さんの方じゃありませんか。そのいい証拠は、ソ連の墓参、労働証明、名誉回復などを目指してソ連に何回も墓参に行ったり調査に行って、ソ連がそれを認めて日ソ相互信頼協定というのは締結されたじゃありませんか、この民間団体の方が。それで名簿も、亡くなった人の名簿、ここへまず最初第一回、この間ソ連は渡したわけですね。今度ゴルバチョフが来るときにもその名簿をたくさん持ってきて全部日本に渡しますと、こういう協定結んだんですよ、全抑協の方はね。そういう今までのソ連に行って調査をしたり墓参をしたりした経費について、当然公平に補助金を出すべきじゃないですか。私は総理大臣に、この問題は政治的な大きな判断だから聞きたかったんですが、この時間、官房長官の時間もあって、私は十分ぐらいでこれを終わらさないとあとの項目ができないのでやめますが、この財団法人をつくったときのそれぞれの払い込み、基金を出した人の氏名、財団の規約、それから運営委員の名簿、だれがそういうことを、金を自由に使えるような、運営委員会が決めるというが、その運営委員はだれか、そういうような資料、とにかく要求して、この質問は十分間しか私予定とってないものだからできないのでありますが、そこで外務大臣にちょっとお尋ねしたいのは、このゴルバチョフさんが持ってくる名簿を外務省は、これは民間の団体に渡すのはまずいという意向なのか、それとも政府のメンツなのか、この名簿は政府が管理するということを強く主張しているようなんですね。私は両方へ渡していいと思うのですよ。片方は何百万も紙代からコピー機械から全部、斎藤さんの方は全国の仲間から金を集めて、ソ連に紙代まで持っていっているのですよ。そういうことで、民間の仲間、戦友、それに知らせてやろうということでいろいろな仕事をやっているわけなんだ。外務省はこの名簿についての管理、どういう考えで今おりますか。
  57. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答えいたします。  このシベリア抑留に関します死亡者名簿の引き渡し、墓地の調査等の問題につきましては、政府といたしましても人道上の見地から大変重視をいたしまして、一貫してソ連政府に対していろいろな形でこの問題を提起をいたしてまいっております。今先生指摘の名簿につきましても、そういう折衝の中から昭和三十四年に第一回の名簿、墓地が出てまいりまして、それ以後何回かその名簿、資料を受理をいたしております。  私どもは、この問題の資料、名簿も含めました資料につきましては、ソ連の外務省と私どもとの間の外交ルートを通じて授受をされるべきものであるという認識に立って一貫してこの問題を扱ってまいりました。今回ゴルバチョフ大統領が参りますときにソ連側もこの問題について真剣に対応するという姿勢でございますが、その場合におきましても、両国政府間でこの資料を受理をすべきであるという方針に変更はございません。ソ連外務省もまたそのような認識でおります。
  58. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 しかし第一回のは、日ソ相互信頼協定を結んだ全抑協とソ連の間でもう一回は渡されているでしょう。その問題の取り扱いはどうなったんですか。外務省と両方へ渡したのですか、ソ連は。
  59. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生仰せのさような事実がございましたことは私ども承知をいたしております。その件につきましては、私どもは早速ソ連政府に対しまして、民間に最初に名簿が渡されたということについては、私どもはそれは従来からの了解に異なる、また、渡されるべきものではなかったという申し入れを早速いたしております。それにつきましてもソ連の外務省は、以後外交ルートを通じて受理を行うことにしたいという回答を得ているわけでございます。
  60. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 トンビにさらわれるという言葉がありますが、一生懸命骨を折ってきたこの民間団体、もう何千万円、何億という金をみんなから集めてやって、ソ連とのこういう友好関係をずっと維持してやってきた団体が、自分たちの戦友の所在や遺族の場所もそういうのをちゃんと調べて持っておるわけですね。そういう団体に名簿を渡すことがなぜいけないんですか。なぜ役所がそういう官僚的な発想で独占をし、管理をしなきゃならぬのですか。私は日本の政治のそういう点がどうも納得いかぬのですね。もっとオープンに、家族はわかってくれたらかえって喜んでくれるし、いいんじゃないですか。何で民間の手に渡ることがいけないんでしょうか。官房長官ですか、これは。
  61. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 今先生指摘のように、斎藤六郎会長等の団体がいろいろな形で御心配、御尽力していただいていることは私どもも重々承知いたしているわけでございますけれども、この問題につきましては、これに関連いたします資料につきましては、私どもは筋として外交ルートで受理をされた後、日本側におきましてはこれを厚生省にお渡しをし、また厚生省におきまして必要に応じて御遺族の方々にきちんと通報を差し上げるということがまずなければならないというふうに認識をいたしておるわけでございます。
  62. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは重要だ。確認しておきますよ。  外務省は名簿をもらったら厚生省にそれを渡して遺族にわかるように通知をするのがしかるべきだというのが今の答弁ですね。いいですね、厚生省、きちっと今度はそれをしてもらうかどうか、後でもってきちっと調べますよ。  それから委員長、今私、財団法人の設立の当時の基金の拠出者氏名、役員構成、運営委員、これを資料で理事会に提出を願いたいと思いますが、いかがですか。
  63. 渡部恒三

    渡部委員長 理事会で協議いたします。
  64. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間が、いずれにしても大変な項目を通告しておりますので、一項目十分ぐらいしかできないのでありますが、今の取り扱いを見ると本当に不公平、でたらめですね。これは背任罪で告発されれば、私はいろいろ問題も起こるような気がしてならぬのであります。ぜひひとつ金を出す大蔵省も、平和基金にとにかくこれだけのお金を出すわけですからね。二年度が平和祈念事業だけで六十五億、特別補助金五十九億五千九百万、百二十四億五千九百万、金を出した。三年度が七十六億四千六百万。この使い道がどうなっているかということについての今の財団の取り扱いについては特にひとつ調査をしていただきたい。片方の団体だけやるんなら、片方も財団の申請をすれば、直ちに財団、許可するかどうかも問題なんです。この財団を許可した役所ほどこですか。総理府ですか、厚生省ですか。
  65. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘の全国強制抑留者協会は総理府が所管し、認可したのも総理府であります。
  66. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 官房長官、総理府が認可責任官庁でありますが、他のもう一つの団体の方が数がはるかに多い。こういう人たちが正規の手続をとって財団申請した場合、拒否できますか、法的に。どうですか、官房長官
  67. 文田久雄

    ○文田政府委員 まず私から事務的にお答えさせていただきたいと存じます。  先生御案内のとおり、公益法人の申請はその公益性、その他公益法人としてその維持ができるかどうか、こういうことを基準にしまして判断されますので、具体的な御提言がありましたならば、御申請の内容をよく審査しまして、慎重に検討させていただきたいと思っております。
  68. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その場合、同じ目的だけれども団体が違う場合、二つそういう団体があってもおかしくないと私は思うのですが、二つあってもそれが拒否条件にはなりませんね。
  69. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  具体的なその申請の内容はよく承知しておりませんので、どのようにその申請の、実施の具体的な活動が、範囲があるのか等々慎重に検討させていただきたいと思います。
  70. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 官房長官、今の話をよくひとつ事実関係を調べていただいて、やはり総理とも、こういう差別、不公平な取り扱いというのはよくないですから、きちっとひとつ官房長官として調べてみる、そのくらいの約束はできますか。
  71. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 せっかくのお申し出でございますから、総理ともよく相談して検討します。
  72. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから、時間の約束がそれぞれあるものですから順序が狂って申しわけありませんが、過般の本会議で土井委員長質問に対して海部首相は、部落差別、同和問題について「憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題である」そういう認識を示され、また森井忠良議員の質問にも「人種、信条、性別、社会的身分または門地によって差別されてはならない」という、憲法第十四条の条文を引用してその認識の深さを示されました。このことに私も大賛成であり、敬意を表するものであります。また、この予算委員会における野坂議員の質問に対しても、総理及び総務庁長官が、地対協の意見を幅広く聞き、けじめのつくようにしたい、こういう答弁をしたのも一歩前進であり、大変納得のいく答弁であります。  ただ、あの議事録を読んでみて私どうもまだ積極性を感じないなと思うのは、一千地域に及ぶ未指定地域の問題、この問題を総務庁長官、もう少し答弁のしようがあるんじゃないのか、努力の必要があるのではないかなというのが私の感じなんであります。それは、地方自治団体、市町村が実際の仕事をやるわけですから、その市町村にそういうまだ未指定地域がある、まだ事業もやらなければならぬ、かなりおくれたそういう地域がある、そういうところは積極的に市町村はやはり指定をするようにして、一千地域は早く解消しようじゃないか、そういう積極的に政府が市町村に通達ぐらい出していいんじゃないでしょうか。どうでしょうか、長官
  73. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 これは武藤さんよく御承知でありますが、昭和四十四年にこの同和の特別措置法ができましてから今日まで相当な期間が経過しておるわけであります。そういうことでございまして、私どもは特別事業を行う必要のある地域はまず出尽くした、こう考えておるわけであります。  御承知のとおり今私どもやっておりますのは、そういう経過を踏まえまして一般対策へいかにして円滑に移行させるか、こういうことで協議会で御審議をいただいておるわけでありまして、もしそういうものが、また必要なものがあれば、これはその協議会で相談するわけでございますけれども、関係省庁あるいは関係の自治体、地域の皆さんと御相談をして、一般対策の中で重点的に行われるべきではないか、今そう考えております。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  74. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 一般対策の中でやる方がいいということになると、それぞれの市町村は補助金も今よりも低くなってしまう。この同和事業で、補助金もいい補助金をつけてやる、そういういろいろ特典があって、各市町村は、積極的にやっているところはどんどん予算を消化してやってくれているわけですね。そうするとこの一千カ所というのは、恐らく長官の頭の中は、寝た子を起こすな、希望してこないものを行政が掘り起こすなんという余計なことまでやる必要ない、こういう発想だと思うのですね。それが消極的だと言うのですよ、私は。それよりやはり自治体に対して、こういうせっかく国が取り上げた大きな事業なんだから、差別をなくすための一環としてやっているのだから、それぞれの自治団体は積極的にそういう地域についてはこれから再検討してみろ、そういう趣旨のことをやることが積極的な親切な行政なんだ、こういう私の言っていること、意味はわかりますね。そういう方向にもう少し、とにかく協議会が結論を出す前でも行政のやるべきことがあるのではないか、こう言っているのです。積極姿勢を示せということを言っているのです。その点についてはいかがですか。
  75. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 この問題につきましては、私ども常時関係の県それから関係の市町村とよく相談をして進めてきておるわけでありまして、もしそういう必要なものがあれば、これはもう十分検討して一般対策の中で対処すべきものだ。  ただ、私がこの前御答弁申し上げたのが誤解されていると困りますけれども、手を挙げないところは掘り起こす必要がないじゃないか、そういう表現を使ったかどうか記憶がありませんけれども、私が申し上げている趣旨は、要するに、平穏に行われている場所に同和の関係で仕事がないかとこういうことで申し上げますと、それをきっかけにして新しい差別がそこに生ずるのではないか、そういう心配をしておるわけであります。そのことはひとつ御理解をいただきたいと思いますが、関係の市町村とよく御相談申し上げることはこれは当然なことでございまして、そういうことで対処してまいります。
  76. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 相談することが当然のことだという答えですから、ぜひそういう方向で前向きに対処してもらいたい。希望しておきます。  それから平和基金の問題の中で、今度書状と記念品をくれるわけですが、現在は七十歳以上ということですね。七十歳以上というのはちょっと半端だなと。ちょうどあの戦争で現役の最後が私の年なんですよ。私が現役日本帝国海軍の最後であります。陸軍もそうでありますが。ですから大体六十五、志願をした人で六十二、三歳。あの予科練とか少年戦車隊とか行った人で今生きている人が一番若い人で六十三歳。ですから六十五以上、現役でとられた人、この人は全部同じに、七十歳なんという線を引かずにもう現役の最後の人以上の人は同列に扱うべきだというのが私の一つのお願いなんです。これが一つ。  それからもう一つは、外地勤務を含めて三年以上の者という、外地に行った者だけと制限するのもいかがかと思いますね。戦後処理をしよう、戦後処理のすべての問題をこれで片づけようというのがそもそものこの事業の始まりなんですから、だとしたら外地という枠は取っ払って、まあ三年が必要か、一年以上にするか、一年未満は兵隊に行ったとも言えない程度の年数ですからこれはいいとしても、それ以上の人には、感謝状一枚の話ですからね、あんなのは現役で行った者以上の者の六十五歳以上ぐらいは全部くれる、そのぐらいに踏み切ったっていいんじゃないのかな。  それから、今記念品をくれているのは、お金が間に合わないことと人間が間に合わないことで、八十歳以上の人ですか、目下やっているのは。どんどん死んじゃうよね。もたもたやっていたら、もう七十七、八の人はみんなどんどん死んじまう。だから、みんなが喜んでくれることをやるいい事業だというなら、やはりもっとスピーディーにやることをよく考えてやってもらわぬと困るな。  この三点、私、希望しますが、改善できるかな、どうかな、そこをちょっと答えてみてくださ
  77. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えを申し上げます。  先生御案内の恩給欠格者に対します書状・銀杯贈呈事業等の資格要件につきましては、これは基金の重要事項を審議いたします運営委員会におきまして慎重に御審議を賜りまして、その結果を踏まえてまず適当と判断して措置さしていただいたものでございます。  ところで、銀杯の贈呈を七十歳以上といたしておりますのは、本事業が基金の果実によって賄われるものである、こういうことを勘案いたしまして、高齢者の方々を優先させる、こういう御提言がございましたので、これを踏まえまして措置さしていただいているものでございます。  また、外地勤務の経験を有しまして加算年を含めて三年以上という要件につきましても、今次大戦は国民がひとしくそれぞれの立場で大変な御労苦をいただいた、こういうことを勘案しまして、他の戦争犠牲者との均衡も十分に勘案した結果得られました御結論でございますので、これらを踏まえて私どもとしましては措置をさしていただいている次第でございます。  もう一つ、さらに一層の事務の促進方、御指摘を賜りましたが、私どもはただいま御指摘のとおり、御請求のありました方々に対しましてすべてに速やかにこれが贈呈できるようにということで一生懸命頑張っておりまして、授与対象範囲の拡大ということは困難であって、現在のところ考えられないということであります。
  78. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 答弁にならぬね。その運営委員会というのが決めたら、金科玉条、永遠にこれは改正できないというものじゃないんだよ、物事というのは。八年間も戦争してきたイランとイラクが突然手を握る、赤色帝国主義と言っていたソ連とアメリカが情勢の変化で手を握る、物事というのはそういうものなんだよ。だから、やはり現役で出た人が最低今六十五歳だとなったら、六十五までぐらい入れてみる、そういう努力を運営委員会に諮ってみましょう、それがまじめな答弁だよ。決まったことはもう動かぬなんといったら、もう政治は要らぬ、それは。
  79. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えをいたします。  先生御案内のとおり、この恩給欠格者の対象者と申しますのは、現下の資格要件でも対象者は百八万人に上ります。以後、その申請の状況にもよりますが、これが処理というのはなお大変なことでございまして、私どもといたしましては、本事業がこの基金の果実によって行われるものである、こういうことを踏まえまして、まず行われるべきなのは御指摘のとおり御高齢の方、こういう御条件もよく理解をいたしておりますが、そういうことで七十歳以上の方を一応の区切りというふうにさせて処理をさしていただいているところをひとつよろしく御理解賜りたいと思います。
  80. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこまではわかっている、それを何とか六十五歳までできないかと。できませんということだな。
  81. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えいたします。  現下の情勢では困難であります。
  82. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは官房長官なり総理大臣がいなきゃ、一役人とやっても、これは情勢の変化に対応する姿勢の問題だから、幾ら議論しても役人ではしようがない。先ほどの粟屋さんの質問なかなか立派で、外務大臣との応答を聞いて私ちょっと感じたんですよ。ゴルバチョフ提案について外務大臣つまびらかにわかってますかと言ったら、外務大臣、わかってない、間接的な情報しか大臣も得ていない。アメリカに渡った情報アメリカから日本に来たものを日本政府はキャッチする。そんなことしかできないのかなと、大変に私、寂しく思ったんですよ。  そこでやはり、ゴルバチョフがイラクの外務大臣と会って決めた、その後こういう情勢になったといったら、隣の国なんですから、外務大臣がモスコーに吹っ飛んで行って、ゴルバチョフ、ちょっとおまえはどういう腹づもりなんだ、日本も隣国なんだから教えろ、そして世界平和のために隣国同士でお互いに大いに意見交換しようや、そういうことで外務大臣がもう少しぱあっと吹っ飛んで行く。それから、中立だと言ったイランがああいうことにだんだんなっているんだから、イランは日本と国交を回復しているんでしょう。ですから、イランには行けるわけですよね外務大臣。だからイランにも、中立的なイランなら日本もこれから油を買ったり何かまたするんですから、アメリカが行っちゃいかぬとは言わぬと思うのですね。外務大臣、こんな、今世界が大激動、大変動、まさに地殻変動の時代なんですね。これはソ連の今の様子を見ても、シェヮルナゼさんがやめた後、今度はエリッィンがきのうは連邦議会から糾弾決議を受ける、これは、ソ連がどうなるかも、中東と同じように、もっと大きな、世界にインパクトを与えるソ連の大問題も今起こりつつありますね。内乱にならなきゃいいなと私はひそかに思っているんですが、そういうような情勢を的確に把握するためにも、外務大臣どうですか、吹っ飛んで行って、少しソ連圏とイランあたりへ行って、もっと的確な、肌で感じた情勢を総理大臣報告する、あるいはお金の問題だったら橋本大蔵大臣に連絡をとる、私はそのくらいな迅速果敢な外交を外務大臣に期待したいんですが、どうですか。
  83. 中山太郎

    ○中山国務大臣 実は、昨晩も外務省の幹部といろいろ日本の外交の問題点、これからの新しい国際社会に対応していく日本外務省としてはいかにあるべきかということの議論をいたしておりました。その中で、今委員が御指摘の点が極めて大きな問題であるということを出席した者が皆確認をしたわけであります。  といいますのは、これだけ長期の国会が続きますと、外務大臣国会のお許しをいただいて海外は出張するということは、総括質問中とか一般質問の間にはなかなか院のお許しが得られないわけであります。これは率直に申し上げて、私は、外務省官房長に、一体世界の各国の外務大臣が年間どの程度に情報の収集のために移動をしているか、この一覧表をつくることを昨晩命じたところであります。そして、日本の外務大臣がどれぐらい動いているか。これからの日本の国のあり方というものは、私は、平和外交をやろうと思えば、外務大臣及び外務省局長、これが海外に国会中にお許しをいただいて必要なときは必ず出られる、この態勢を整えないと、日本の外交はやっていけなくなってくる、こういう実は考え方で一致したわけであります。  これは極めて重要なことでございまして、私どももCNNを通じて、ヨーロッパのECの外相会議、あるいはルクセンブルクが議長になってモスクワへ乗り込むとか、いろいろなことが起こっております。しかし、この国会開会中は、外務大臣が自由にお許しをいただいて出かけることは現実的には不可能でございますし、また政府委員局長答弁がございますから、局長が政府委員を外して行くということもこの役所の機構の上では困難なのでございます。そういう今日まで我々がやってこれた外交も、この新しい本当の局面の転回する新しい時代に対応するためには考え方の発想の転換というものをやると同時に、国会先生方におかれましても、外務省の人間が働きやすいようにひとつ格段の御配慮を願いたいと、私は外務大臣として心からお願いをいたしたいと思っております。
  84. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私は、中山外務大臣というのは最近の歴代外務大臣の中で、私はですよ、最も信頼性の高い外務大臣だと思っているのですよ。能力もある、そしてやはり物事を、ゴルバチョフと会った会談なんかを読んでみても、ずばりずばり国益を忘れずに主張してくれていますよ。だから、私はあなたは非常に立派な外務大臣だと実は思うからこそこういう発言をしているんですよ。  実は、この発言をする前に、私が党の方針や国対の方針に反するようなことになったら悪いと思って、ちゃんと理事諸公の了解を得て、国対委員長の了解を得て、こういう重要なときには外務大臣がもっと自由に飛んで歩けるようにすべきだという発言をするがいいかと、よろしいと、国対はそういうことを了解をしてくれたわけですよ。ですから、やはり日本国会も重要だけれども、今地殻変動が起こるような世界の大動乱のときなんですよ、火花こそ散っていないが、経済的にももはや戦争状態なんです。世界の各国の経済を分析してみたらそら恐ろしい将来がちょっと予想されるんですよ、経済だって。そういう事態に、間接的な情報しか入らぬということではちょっと日本の国益上よろしくない。ぜひひとつ、社会党は応援しますから、こういう情勢の中ですから、少し確実な情報を握ってみようと、こういう決意をもう一回聞かしてください。
  85. 中山太郎

    ○中山国務大臣 社会党の先生から大変日本の外交のあり方について御激励をちょうだいし、また、社会党の国対も御同意をいただいた上での御発言ちょうだいして、大変感激をいたしております。  私どもは、昨晩も実は十時まで幹部を集めて日本の外交のあり方を議論をいたしておりました。そういう中で出てきたのが一つのその問題でございました。そういうこともございまして、ひとつ社会党からまた野党の各党にもお話しをぜひお願いをしていただいて、自社ひとつよく御協議の上で、もうこのような新しい歴史の転換期には行動できる外務省ということにぜひひとつ御協力を願いたいと思っております。
  86. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 四月にソ連のゴルバチョフ大統領が十六、十七、十八日ごろ日本に来る、こういうことで外務大臣が一月にモスコーにいらっしゃって大統領と会談をした記事が日本の新聞に報道されております。その中で、読んでみると、大統領が北方四島の問題は、「この問題はいろいろな困難な側面を持つ。領土問題は第二次世界大戦の結果として出てきた問題という側面がある。七千キロに及ぶ中国との国境の交渉も、中国といろいろな関係が転換を見る中でスムーズに進んでいる。北方領土問題はどこから見ても複雑。現実的に考えていく必要がある。今すぐ解決策が出る性格のものでない。」とゴルバチョフ大統領が答えた、こういう報道なんですね。  外務大臣は、領土問題の先送りはだめだ、日本政府はとらない、やはり領土問題が優先するよということをしきりに大統領の前で主張しているわけですね。この姿勢は私はいいと思うんですよ。ただ、国民が今いろいろ期待しているのは、ゴルバチョフが来ることによって北方問題に何か明るい見通しが立つんだろうなというのが国民の期待なんですよね。しかし、こういうものを読むと、これはもう全然難しいなという感じを持つ。  たまたま、今度はきのうの新聞でしたか、おとといでしたか、小和田外務審議官が今一生懸命モスコーで交渉をやってくれていますね。この中の議論が、ヤルタ協定とポツダム宣言は同次元で同一のものだという受けとめ方をソ連はしているんですね。これだと、これはなかなか解決しなくなっちゃうんですね。ですから私は、ポツダム宣言を受諾した日本がヤルタ秘密協定を自動的にそのまま引き受けたものだとは理解しない。  それともう一つ。北方の戦争中に司令官か参謀をやっていた人で、去年亡くなりましたね、あの本ですね。あの本を私は涙をこぼして読んだんですよ。北方四島の千島から下の四島にソ連が上陸したのは、本当のことは昭和二十年何月何日なんでしょうか。外務省はそういう事実というものもきちっと踏まえて交渉しているのでしょうか。その四島にソ連軍が上陸をした日がわかったら、ちょっと外務省、発表してみてください。
  87. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 先生指摘お話は、水津満参謀がまさに水先案内人として、ソ連の言葉で言えば解放ということで南下してきたそのときの事実関係をお尋ねと思います。  私どもが水難参謀から伺っております話、またその他の話からいたしますと、ソ連が南下を開始いたしまして占守島に参りましたのが八月の十八日でございます。それで、得撫まで参りまして、そこで一回反転をするわけでございます。それが八月の二十七日だったと承知しております。その後もう一回御承知のように南下してまいるわけでございますが、全部この上陸を完了いたしましたのが、私どもの承知いたしておりますところでは、国後島に九月の二日でございます。最後に歯舞群島、細かい島がございますが、水晶島に九月の三日に最後に上陸してきたというのが私どもが承知している記録でございます。
  88. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務大臣、八月十五日に日本は全面降伏してポツダム宣言を受諾した、直ちに連合国もあるいは枢軸国もすぐそれは知ったと思うんですね。テレビはなくとも、当時の電波ですぐわかったはずですね。その後にこういう形で北方の島々に上陸をしたということは、国際法上はどうなんでしょうかね。許される行為なんでしょうか。これは、ポツダム宣言受諾後は戦争状態――日本はもう降伏したんだから、その後の領土を取ったのはポツダム宣言で言う戦争による占領の範疇に入らないんじゃないですか。それはどうなんでしょうか。
  89. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国際条約上の問題でございますから、条約局長から答弁をさしていただきます。
  90. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生より御指摘のとおり、我が国は既に八月十五日の時点におきましてポツダム宣言を受諾しておるわけでございます。したがいまして、このようなソ連による我が国北方領土の占領というものは到底受け入れることはできない状況でございます。  また、御承知のとおり、先ほど先生よりヤルタ協定、そしてポツダム宣言についてお触れになったわけでございますが、ポツダム宣言の中におきまして、この第二次世界大戦の連合国が確認いたしました領土不拡大原則というものを再確認しているわけでございますので、このような観点からもソ連による北方領土の占領というものは到底正当化できないものであるというふうに考えておる次第でございます。
  91. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 小和田審議官など第一線で折衝窓口をやっている日本の外交官は、こういうことまでソ連と話し合いのときには出しているのでしょうか。もし出したとした場合に、ソ連がいやそれは違うと反論しているのか、日本の証拠は信頼できないと言っているのか、それともそれは事実だが、いずれにしてもポツダム宣言とヤルタ協定があるんだ、こういうソ連の主張なんでしょうか。事実関係の認定についてのソ連側の姿勢、態度というのはどういうものなんですか。
  92. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 お答えいたします。  先生指摘の話は、今月の十八日にモスクワで行われました平和条約作業グループにおきます議論であるかと存じます。この平和条約作業グループにおきましては、歴史的な観点、法律的な観点からいろいろな議論をしておりますが、その中で、御指摘のごとくヤルタ協定並びにそれとの関連でのポツダム宣言の法的な効力の問題についても議論がございました。その中でソ連側は、ポツダム宣言はヤルタ協定を前提として出されている、したがってそのヤルタ協定は日本も拘束するものであるという議論をいたしました。私どもは、それに対して、ただいま条約局長から答弁申し上げましたように、ヤルタ協定というのはポツダム宣言受諾の時点におきましてそもそも我々は知らなかった条約である、したがって、このヤルタ協定を受諾する、しないということがそもそもあり得なかったわけでございますが、それを受諾もしていない、また日本が当事国でもないこのヤルタ協定に日本が拘束されるということはないという法律議論をしたわけでございます。
  93. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いや、私が聞いているのは、八月十五日以降に占領したものだというのが日本側の大方の主張なわけですね。ソ連はその事実についてはどうなんですか。八月十五日以降上陸したんだということは認めているのですか。
  94. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 その点に関しましても、私どもは、史実としてその事実をまず指摘して、これは私どもとして認められないことであるということを何回も提起をいたしまして、その点についてソ連側から明確な答えはなかったということでございます。
  95. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務大臣、この平和条約作業部会あるいは平和条約を結ぼうというところまでは、今度の四月の大統領訪日で約束される見通しなんでしょうか。それとも平和条約がないことにはソ連と日本の間柄の根本的な相互依存関係は確立できないんだ、だから平和条約をソ連側はかなり譲歩しても早急に結びたいというのか。北方四島問題は全く棚上げにして平和条約の作業は進むとも私は思えないのですが、その辺のかけ合いというのか、これは一体どういうことで話がなされているのか。  それからもう一つは、ゴルバチョフ大統領が来たときには、平和条約は抜きにして、これからソ連と日本の相互依存関係を、シベリアを含め、隣国なんだからということで結ばれるとすれば、どういう細かい条約、今まだ結ばれていないいろいろな細かい個々のものが五つか六つ締結されるという見通しなのか、それともやはり根本問題の平和条約を締結するという前提での話が中心で大統領と総理大臣の話になるのか、その辺の見通しで、外交上支障のない範囲内でちょっとここで説明をしていただきたいと思うのであります。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日ソの両国間に未解決の問題、これが領土問題であるということは、もうこれは日ソ双方が確認をいたしております。平和条約は領土、主権に関する問題をこの平和条約で解決をするわけでございますから、私ども政府といたしましては、領土問題を抜きに平和条約を結ぶということは現実問題として国家のためにとり得ないことでございます。  いずれにいたしましても、日ソは隣国でございます、委員の御指摘のように。ソ連もまた日本との友好関係の強化を望んでおると私は信じております。日本もまたソ連との友好関係を一層深めたい。新しいアジア・太平洋の時代に日ソがどのような友好関係を発展させていくか、拡大均衡で発展させていくかということは非常に重要なことでございますが、この領土問題がひっかかっているために、実は戦後四十五年間、日ソのいわゆる平和条約が結ばれなかった。しかし、私は先般ゴルバチョフ大統領に対し、次のように申しました。ゴルバチョフ大統領が訪日される時期にこの問題解決の突破口をつくっていただきたい、ソ連も英断をしていただきたい、日本政府もできるだけの努力をする、このように申して会談をやってまいりました。私どもは、来月末に予定をされておりますソ連の外相の来日を機に日ソ外相会談を行い、大統領訪日前の外務大臣レベルのいろいろな問題の討議をさらに詰めてまいりたいと考えております。
  97. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 閣僚の中で、北方領土に住んでいるロシア人の取り扱い問題で、今から少し準備して国内法に適用させるような研究をしたらどうかと、こういう話が出て、総理大臣、外務大臣のコメントがちょこっと新聞に載っているのでありますが、こういう問題は、閣僚として表へ出して議論をすべき時期なのか、こういうのは内密で法整備のこういう問題、こういう問題があるということをやるべき範囲の問題なのか。相手を刺激し過ぎて逆にマイナスになるという場面がこれはあるのじゃないかというちょっとおそれのある取り扱いの仕方だなと。外務大臣、これに対してはどういう見解を法務大臣に述べたんですか。
  98. 中山太郎

    ○中山国務大臣 閣議におきます閣僚間の議論は公開をしないことを原則といたしております。御了承願いたいと思います。
  99. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 次に、やはり私、ソ連を大変心配をしているのですよ、隣国なものですから。エリッィンがきのう連邦議会で糾弾されたという意味ですね、これ、外務省はどの程度に受けとめているのでしょうか。エリッィンが糾弾をされたことによってロシア共和国の議長の地位が危なくなるのか、あるいはロシア共和国の議会と連邦議会との真っ正面の衝突になるのか。また、保守派が主導権をどんどん強くしているようでありますから、軍部がそういう形で弾圧をするような形になって改革派はほとんど後退をしちゃう、結局ペレストロイカというものは成功せずに幻で終わり、こういう運命をたどりそうなのか。それとも保守派の諸君もソ連の今の経済のていたらくではどうにもならぬ、したがって、やはり政治は経世済民なんだ、そういう発想で、経済と政治権力の所在との問題の争いはしない、別問題だ、こういう形でペレストロイカなり経済政策というのはうまくこれからも改革的に進むと見るのか。ここらのソ連の見方というのは、これからのイラクの終結後の問題にまでずっと尾を引くんです、保守派が完全に主導権を持ったときには。それをさらに延長して見ると、アメリカとソ連の大きな対立ではないか、また、対立部分が多くなる米ソ関係になる危険もはらんでおるんですね、この内部の今の事情を自分なりに考えると。したがって、日本外務省としてはその辺のシェワルナゼ外相辞職以降のここの一カ月間のソ連の動きというようなものを用心深くこれは分析をしておかぬといかぬなと。これも差し支えある範囲と差し支えない範囲があるから、すべての感想を言うわけにもいかぬと思いますけれども、そこらの問題を外相としてはどんなぐあいに全体の情勢把握、大ざっぱに見てどんな把握をしているのですか。
  100. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げる前に、私が申し上げることは、ソ連政府を誹謗しない、否定することではないということをまずお断りをして意見を申し上げたいと思います。  一九八五年以降ゴルバチョフ書記長が就任されて、経済改革のためのペレストロイカあるいは民主化のためのグラスノスチ、あるいは外交面においては新思考外交、こういうことで米ソの対決も、実は委員いつも御指摘のように、一昨年の十二月三日マルタにおける米ソ首脳会談で、冷戦の終わりの始まりという言葉が出て、世界の政治家は、これで米ソの対決が終わった、こういう一つの歴史がございました。その後私どもは、このペレストロイカの正しい方向性を日本政府としては支持をしてまいりました。そして、ゴルバチョフ書記長が大統領制をしかれて、そうしてペレストロイカが進み、ソ連の民生あるいはまた産業が活性化してくる、こういう中で世界経済に貢献する、ソ連の経済というものが相当大きな貢献をするだろうという期待も持っておりました。私もまた、日本に来られるいろいろな研究所の所長、エリッィン氏も含め、いろいろな方にもお目にかかって日本政府の考え方をお伝えをしてまいりました。  最近のシェワルナゼ外相が辞任をされるという事態を私もテレビで生々しく拝見をし、ソ連の中でいわゆる経済改革がうまくいっていない、ペレストロイカの先行きが不透明になってきている、また、新しいマーケットメカニズムの導入が機能していない。こういう中で、対ソ支援ということがECを初めサミットにおいてもいろいろ出たわけでありまして、我々の国もまた隣国としても、ソビエトのチェルノブイリ原子力発電所の被曝者医療の救済のために二十六億円の国民の税金を拠出する、あるいはまた食糧援助、医薬品の援助等を含めて国会にもお願いをして御承認をいただいたわけでございますが、最近の状況は、実は、私はこのペレストロイカがどうなっていくのかという心配をいたしておりますが、心配と同時に成功をしてもらいたい。そして、バルト三国で起こった軍隊による人民への殺傷という問題は、これはぜひひとつやめてもらって、平和的に問題を解決するようにということも、先日ゴルバチョフ大統領に直接私は、日本政府のあるいは日本国民の意思としてお伝えをしてきたということをこの機会に申し上げ、ソ連のペレストロイカの成功をいまだに私は期待をしているということを申し上げておきたいと思います。
  101. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ソ連の問題で、外務大臣が大統領にはっきり、一度ならず相当数の死傷者が出たことは極めて遺憾で、断じて容認できないと、バルト情勢について率直に懸念を表明していますね。武力行使はペレストロイカの目的とは相入れない、これ以上の事態の悪化を防いでほしい、民主的、平和的方法でぜひ収拾してほしい、こう大統領に申し上げたら、大統領は、この問題は大変複雑だ、少々ペンキを塗りかえただけでは済まない、経済、政治、社会、文化、民族問題などあらゆる側面がかかわっている、自分は政治的解決をする強い決意を持っている、複雑な問題だが、見通しは絶無ではない、しかし、ほかにバルト三国の動きを利用して――今起こっているものですね、南の方、これは大変ですね。そういうのを利用する、ほかの問題から、目をそらそうという動きがあると、なかなか苦衷、苦しいところをゴルバチョフ、率直に述べているんですね。しかし大統領もなかなか率直な人だなと、この会談を読んでみて……。  そこで、バルト三国問題以外に、ロシア共和国以外にも、昔から、あれは第一次世界大戦直後に併合しているわけですね、今起こっているところは、グルジアは。だから、第一次世界大戦以降併合したところが今みんな騒ぎを起こしちゃっているわけですね。そういう情勢を権力としては、やはり話し合いでも相手がどうしても応じないというときには、政治というものは国家統合の力ですから、やはりある程度のことはやらざるを得ないし、許されるのだろうと思うんですね。政治論からいけばですよ。しかし、民主主義とか人権とか人命とかということになると理屈抜きに、よい戦争はない、悪い平和はないとくくれば、悪い平和はないんで、いい戦争は絶対ないんでね。しかし、そういう論理で割り切れない国内の問題のときには、政治というものと国民統合の力の発動の範囲というのは非常に微妙なものがあるのだと私は思うのです。天安門もしかりですね。それぞれの国の進歩の度合いや国内統合のいろいろな難しさということからいくと、そういうことはあるわけですね。アメリカだって南北戦争をやって武力で結局統一の実現を図った経験があるわけですね。ですからそういう場合に、このバルト三国の国内の問題と今回のフセイン大統領がクウェートを侵攻した問題とは本質的に違う。そこらを見分けをしながら平和外交をやらなければならぬというところに、大変選択幅が狭い道に今なっている。  それで、ヨーロッパは特にこのバルト三国問題をめぐって、援助をひとつ控えよう、ソ連を助けるのをやめよう、こういう空気が非常に強い。そうなってくると、欧州復興開発銀行はソ連に対して援助を今差し控えようとしているのでしょうか。これからやろうとするのか。これは大蔵大臣だな、金のことだから大蔵大臣なんですが、大蔵大臣時々いいことを言うんですよ。この間の新聞で宮澤さんは、中近東の復興資金を新たな機関をつくって、復興銀行をつくってそこを通じて金を出そうという発想はどうだ、こう打ち上げたのですが、その翌日の新聞に大蔵大臣は、いや、すぐ間に合ってすぐ使えるのはやはり世界銀行であり、IMFであり、あるいはアジア開銀もある、そういう既存の機関を通じてやる方が早いしということが新聞に出た。私は、早いだけじゃなくてスタッフもそろっている、それぞれの国情というものを把握する専門家もこれらの既存機関にはいる、だからやはりそういうものを屋上屋をつくらずに、今回の中東の問題をやる場合も、私は、橋本大蔵大臣が言うような発想の方がベターのような気がするんですよ、宮澤案よりも。その点を一つ。  それからもう一つ。大蔵大臣アメリカへG7で行ったときに、これは新聞報道が正確かどうかはわかりませんが、バルト三国、リトアニア、エストニア、ラトビアなどの共和国へのソ連政府の武力行使はクウェート侵攻と本質的に同じだ、こういう報道なんですよ、報道が。そこで私は本質的に違うんだということを感じたわけなんですよ。あれは国内問題、ソ連の場合には権力が国家統合の象徴として発動されているというものと、片方は、他国を侵略した。だから本質的に違う。これは橋本さんの真意をひとつ聞きたかった。  もう一つは、欧州復興銀行の出資が今、法案が上程されているわけでありますが、大蔵委員会でやっておるわけですよね。この日本から出る金は幾らで、東欧だけに限るのか、ソ連まで当初は含めるのか含めないのか、この復興銀行の融資。この辺をちょっと大蔵大臣の認識している範囲内で結構ですから。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ちょっと金額的なことを今私失念いたしましたので、必要がありましたら後刻政府委員から補足をさせたいと思います。  まず第一に、欧州復興開発銀行についてのお尋ねでありますが、これは出資の範囲内においてソ連も利用できる仕組みになっております。ただ、この設立の過程における論議の中で、他の東欧諸国に対すると同様にソ連に対しても枠を広げて融資を行うべきであるという意見が一部の国々から出ておりました。それに対し、ソ連という国の広大な面積と抱える人口の多さを考えますと、欧州復興開発銀行が実態としてほとんどソ連に資金が回ってしまうのではないかという東欧諸国の不安も取り次がれ、そうした点についての論議がございました。そして、本来ならば昨年のヒューストン・サミットにおいてこうした点についてもなお深い論議が交わされる必要があったのかもしれません。しかし、欧州復興開発銀行そのものではなく、対ソ連経済支援というものの位置づけをめぐりましてもう一つ大きな次元での論議が出てしまいましたために、サミットにおきましては、ソ連経済の実態をIMF、世銀、OECD並びに今般創設されます欧州復興開発銀行によりまして分析をし、それを年内に終了した後において改めて議論をしようという形でその議論はとどまっておりました。  そうした中で、先般の一月のG7が行われたわけでありまして、当然ながら実はこの四機関報告に基づいて論議が交わされると私は想定をいたしておりました。その内容は、現時点におけるソ連に対する金融支援というものには否定的な内容を持っておったものであります。ところが、このG7の開始されます三十分、まさに本当に三十分前に、リガにおける発砲と同時に死者が出たという報道が出ましたために、G7における論議の雰囲気は大幅に変わりまして、むしろ対ソ経済支援問題は今後の推移を見ようということで、完全に先送りになりました。  ただ、その中で、たまたま私の発言を御引用いただきましたわけでありますが、重大な問題が一つ落ちております。と申しますのは、私はそれ以前から、正確には昨年の四月のパリのG7以来、中国をこれ以上国際的に孤立させることの是非というものをG7の中の論議に提起しておりました。そして各国は、サミットで決まったものだからサミットで方針が変わるまでは世銀等の融資についても凍結状態を続けるべきであるという議論を出しておりましたときに、サミットで決まった方針には従うが、同時に、第三次円借款という日本と中国とには別途の問題がある。これは日本と中国の問題であるから、日本政府はその行動については自由を留保するということを言い切ってまいりました。そして本年の一月私は、中国を訪問いたしましたその結果を持って、G7のワーキングディナーの際約四十分間、中国を私自身が見た感じを各国に伝えておりました。その中で、ソ連に対して、バルト三国における発砲事件等が起因し態度が留保される、しかし何とかして開きたいという雰囲気があるのなら、中国の天安門事件以来の状況というものも同列のものである、また別途今湾岸において戦闘が起きておる、私はそういう発言を確かにいたしました。  私が対比をいたしましたのは、対中国と対ソ連という問題でありまして、たまたま湾岸の戦闘行為は数日前に始まっておりましたから、それも確かに発言の中にはございましたが、私が同列に扱いましたものは中国とソ連、天安門事件とバルト三国における発砲行為というものであります。
  103. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 あと十五分になってしまいまして、厚生大臣の時間が十一時五十分ごろということで約束したものですから、厚生大臣に一点だけ質問して、お帰りになって結構です。  厚生大臣も多分戦争の経験がある、兵隊の経験がある年代だと思うのですが、あの戦争で駆り出された兵隊が十一年、外地勤務通算まで含めて十一年以上年数ある人は恩給というもので全部カバーされたわけですね。それから、十一年以下でも兵隊に行くとき既に公務員また準公務員、地方公務員ですね、であったものも全部通算をされたわけです。それから、戦後日本に帰ってきて役所に勤めた人も軍歴は全部共済に通算になったわけです。そうすると、役所、官ですね、官に就職した人、官にいた人はそっくり年金、恩給の通算になっている。ところが、厚生年金と国民年金、これは後からできたものですから、もう厚生年金はありましたけれどもね、昭和十六年、七年ごろのときからあったのですが、この厚生年金と国民年金の該当者の兵隊経験者は全く通算がないわけですね。まさに官民格差なんですね。官は優遇されてきちっとなっている。それは恩給があったからという理屈なんですが、そんなのは戦争の異常時で理由にならぬというのが私の立論なんです。  要するに、兵隊で苦労した人は全部厚生年金に通算すべきだ、あるいは国民年金に通算できないとすれば、その分だけでも、平均寿命を計算して何らかの形で色をつけて片づけるとか、そうしないと官民不平等、官民格差というものは解消しないじゃないか。戦後処理は平和祈念ですべて終わったと政府は言い張るけれども、この官民格差は解消してない、こう私は認識する。厚生大臣はどう考えまずか。
  104. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいまのお話、一応武藤先生のおっしゃる筋論というのか、一つはあると思うのでございます。しかしながら、もともと恩給というのは国民年金、厚生年金と立て方が違っておりまして、要するに、国家公務員なりあるいは軍人さんは一般の民間人と異なる職種である、給料は民間より低いとか、あるいはまたそれに相応してほかの職種を兼務できないとか、いろいろな制約の中にある。したがって、それでいわゆる年金と制度の違う恩給というものの中に入っていた。したがって恩給というものは、掛金の制度によって運営されていくという立て方とまた異なっている。国が恩給は保証していく。そういうことでございますから、もともと制度が違うわけでございますね。ですから、制度の同じ軍恩と公務員とは合算したということには相なるわけでございますが、今お話しの国民年金と厚生年金は、掛金を掛けていって、それから運営していって、また払っていくという制度でございますから、これを一本化するということはどうもなじまない。そしてまたさらに、今入っておられる方、その方々の拠出金というものが積み重なって運営されておりますね。その方に、さらにそれを全然そちらの中に入っていなかった方にまで支給を拡大するということは、必ずしもこれは御納得いただけないのではないかということがございますので、今直ちに、せっかくの武藤先生お話でございますけれども、はいと申し上げるわけにはいかない、こういうことでございます。
  105. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 これは、そう厚生大臣が簡単にはいと言える問題でないのは百も承知している。これは昭和四十七年の予算委員会で、私がここで最初取り上げて始まった議論なんでありまして、それで櫻内先生渡辺美智雄さんも唐澤さんもみんな賛成して、超党派の団体をつくろうというので、軍歴通算議員連盟というのができて、それで毎回厚生省や総理府、総務庁ともやってきたわけですね。ですから、百も承知しているのです、私は。  しかし、この官民格差という発想が残っている限り、全国の運動が終わらないのですよ。まだ各県の兵隊で恩給をもらってない、兵隊に五年、六年、七年行った人たちが、私のところへ来ているだけでもこれは膨大な嘆願書ですね、各県別に嘆願書を送ってきているのですよ。それで、私は大変しかられているんですよ、櫻内さんと一緒にやっていて、何であの団体解散しちゃったんだ。それは、自民党は、平和祈念事業ができて戦後処理はこれで一切終わりだからというので解散になっちゃったんですけれどもね。各県から来ている年寄りの、私は八十歳です、私は七十五歳です、こういう文書をもらうと、一回どうしてもこれは政府の見解をきちっと聞いてやらないことには政治家としての良心が許さぬ、こういうことで今ここで質問台に立っているのですけれども、私は、やはり官民格差という問題については何らかの措置考えてやらぬといかぬな、それは一時金的に考えるか、平均寿命を計算してどうするか。そうすると、これは一厚生大臣では無理なんですよ。大蔵省に頭下げて予算をちょっぴりもらうのに大騒ぎしている厚生大臣に、こんな大きな、でかい話持っていったってこれはどうしようもないので、これはいいです。橋本さんが総理大臣にでもなったときに、大蔵大臣の経験を踏まえて、この官民格差解消しろ、こういう、総理大臣が政治的に大きな見地から判断する問題ではあるのですね。しかし、官民格差が、どういう理由であろうと、恩給はどうのこうの、官民格差という言葉を使われていることについては厚生大臣はどう思う。官民格差があると言っている全国の兵隊の経験者の言い分について、官民格差だという言い分についてはどう思う。
  106. 下条進一郎

    下条国務大臣 恩給が十一年のところで仕切りをしております。それ以下の短いところは一時恩給という制度で一応救ってあるわけでございますね。したがって、そういうことを考えながら、また先ほど申し上げた恩給制度と、それからいわゆる国民年金、厚生年金との制度の違い、そういっだところをもう少し説明してみた場合に、直ちにこれを一概に官民格差だ、こういうふうに言い切れないような面があると私は考えるわけでございます。
  107. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれにしても、時間がありませんので、あと大蔵大臣に一問と、企画庁長官、悪かったね、本当は専門家と経済論争やりたかったんですけれども、もう時間がなくなりました。  橋本大蔵大臣には約束ができるかどうかという質問であります。  その一つは、自民、社会、公明、民社、与野党が何回も何回も、加藤政調会長を中心に消費税問題の見直しを議論をしてまいりました。その議論の前は、海部内閣が抜本的見直しをいたします、こういうことで国会に改正案を出したわけですね。しかしこれが流れてしまった結果、議会における協議でひとつ見直しをやろう、それで、いろいろ大きな見出しで七項目の合意ができたんですが、最後の段階で食料品の非課税範囲の問題をめぐって野党の中で乱れが出てだめになっちゃった、こういうわけなんですね。  そこで橋本大蔵大臣に、これは陳情と言ってもおかしいけれども、政治家としての要望ですが、与野党がもう一度税協を開いて、今まで合意した七項目、もしこれにプラスするとすれば、前回海部内閣が提案した食料品の消費段階では免税、中間で一・五、ここまでを一つこれに加えて、合意できたなら、大蔵大臣として、政府案として税制改正案を提案する、まとまるなら。その決意のほどを聞かしてもらいたい。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 院の意思として結論を出されたものにつき、政府が責任を持って法案を提出しろという御指示がありますなら、誠実かつ迅速にそれに対応いたしたいと思います。
  109. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは大変ありがたい答えであります。この前のときは議員立法だ、議員立法だということでかなり議論がもめたわけであります。今度は、一致すれば大蔵省は責任を持って院の意思として政府案で提出をする、こういうことが確認されましたことは大変うれしいことであります。感謝をいたします。  それから、最後に企画庁長官、一問だけ。  ことしの経済がいろいろな問題をはらんでおることは、企画庁長官、百も御承知でありますね。住友銀行をめぐってイトマン問題がああいうことになり、土地の取引が多かった不動産会社がぼつぼつ沈没をしている。アメリカでは大変大きい銀行が倒産をして、SアンドL以外に商業銀行までがいかれてきた。日本アメリカの金融事情というのは、大変厳しい情勢に今変わってきておりますね。それから鉱工業生産の状況は、十、十一月ちょっと落ちたようで、一月はちょっとまたよくなったようですが、全体の指標を見るとどうもやはり不況の方向に入る心配がありますね。そういうときに、企画庁の発表では雇用者所得が幾ら伸びるかという、企画庁の試算では六・五%雇用者所得が伸びる。六・五%雇用者の所得がふえるためには、今度は私どもの立場は、春闘でどの程度の賃上げ水準を確保しなければ六・五の平均雇用者所得にはならないぞ、こういう逆算を我々の方としてはするわけなんですが、この六・五の雇用者所得の伸びというのは、企画庁、大体間違いなくそこはいける、経済情勢が変わってきても大丈夫だ、こういうことをはっきり言える数字ですか。
  110. 越智通雄

    越智国務大臣 手短にお答えさしていただきます。  六・五というのは、一人当たりの所得の伸び約四・四と見ておりますが、それと雇用者数の増加とをかみ合わせたものでございます。春闘で何%ということは通例私どもは計算いたしておりません。これはあくまでも労使の間で決まることでございますので、健全なる労使の御判断によってお決めいただければ結構か、こう考えておりますが、今の雇用者の伸びその他を見ますと、また消費の動向等を見ていますと、大体雇用者所得という名目では六・五の伸びは達成可能だ、このように考えております。
  111. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間終了と相なりました。しかし通告はいっぱいしておいたんですけれども、企画庁長官と論戦できません。ただ、今の湾岸の戦争で、今までクウェートに輸出した金額、イラクに輸出した金額などなど、あるいはプラント輸出で中東だけでここ四、五年で一兆円の契約ができるだろうと予想されたものも、みんな一応ここの段階でパアですね。それで国内経済がこういう状態になったら、果たして三・八の経済成長が実現できるかどうか。ちょっとこれは下方修正しなきゃいかぬのではないか。いや、その場になってからやるよと言うけれども、やはり一種のガイドラインですからね、経済成長というのは。これはやるべきときは早くやった方がいいと思う。この点の結論だけ聞いて終わります。
  112. 越智通雄

    越智国務大臣 五十一カ月目の拡大局面を続けておりますけれども、昨年、一昨年の五%の成長には及ばない、しかしながら三・八、私どもはこれを巡航速度と呼んでおりますが、五カ年計画で望んでいるスピードは保てるもの、このように考えております。
  113. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  114. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。嶋崎譲君。
  115. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨日、朝鮮民主主義人民共和国の最高幹部であります金容淳書記が、三十名の大型団で初めて我が国を訪ねてまいりました。一月末には日朝国交に向けての政府間の第一回の会談が行われ、今後東京、北京と会談を積み重ねていくという新たな情勢となっております。昨日お着きになった金容淳書記とお会いしたときに、ピョンヤンから我が国には二時間十分で到達されたそうで、向こうから朝鮮の方の直行便で入られたということも画期的なことでございますが、二時間十分で来れるというのは、まさに近い国であるはずであります。今日まで近くて遠かった日朝関係が新たな段階を迎えるに至りまして、我が党が一九七〇年代から努力をいたしてまいりまして、今日、海部内閣のもとで、自民党の皆さんとも御協力をいただきましてこういう新しい時代を切り開くことができたことを喜んでいる一人でございます。  そこで外務大臣にお尋ねいたしますが、昨年の九月に金丸さんと田邊さんを団長とする団が出かけまして、朝鮮労働党、自由民主党、日本社会党との間に結ばれました日朝共同宣言、これは党レベルにおける宣言でございますが、今後これを尊しつつ日朝関係の国交回復に向けての交渉が行われると存じますが、その日朝共同宣言の意義について御見解を賜れればと思います。
  116. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年秋の自民党、社会党訪朝団の御尽力のおかげをもちまして、北朝鮮側より提案がなされて、今般、日朝間において国交の正常化のための本会談が開始されるに至ったことは、私どもは大変高く評価をいたしておる次第でございます。  このいわゆる三党の共同宣言は政党間で署名された文書でございますが、政府として対応困難なものももちろん含まれておりますけれども、他方、旅券の渡航先の記載の変更等、政府としても可能な範囲でこれに沿った対応をとってきております。いずれにいたしましても、日朝国交正常化交渉では、日本政府としては言うべきことを言い、納得のできないことは納得できないということを申しますけれども、誠意を持ってこの交渉が早期に実るように努力をいたしたいと考えております。
  117. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 日韓条約を前提にした日韓の関係も我が国では国家間の関係として重要な関係でございますが、全世界で一つの民族が二つに分かれて、新たな統一へ向かって南北も努力されている折でありますだけに、我が国の政府もまた、日朝間の国交をさらに前進していくことを通じて朝鮮民族の統一に向けての条件に貢献できればと願うだけに、今後とも誠実な日朝国交の回復に向けての交渉に対応をしていただきたいということをお願いを申し上げる次第でございます。  そこで、共同宣言の第一項には、「過去に日本が三十六年間朝鮮人民に与えた不幸と災難、戦後四十五年間朝鮮人民がうけた損失について、朝鮮民主主義人民共和国に対し、十分に公式的に謝罪を行い、償うべきである」というようにうたわれておりますが、この戦前三十六年、それから戦後四十五年を含めての提起に対して、大臣はいかにお考えでございましょうか。
  118. 中山太郎

    ○中山国務大臣 三党のお話し合いの中で、戦前の三十六年、戦後の四十五年というお言葉委員からも出ておりますけれども、政府といたしましては、戦前御迷惑をかけた時期というものが三十六年間であるということを考え方として持ちながら、この日朝間のこれからの交渉において、いろいろと双方意見を交換しながら、誠意を持って努力をいたしていきたいと考えております。
  119. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 戦前の三十六年問題は、同時に戦後四十五年問題であろうと私は考えております。後でやってまいります強制連行問題、原爆の被災者の対応、それからまた民族的権利の問題、つまりお金の額の話ではなくて、戦後四十五年には新たな三十六年の継続としての諸課題を抱えているわけでありますから、それを含めまして今後とも交渉が進められるものと確信をいたしております。  そこで、宣言の第二項と第五項との関係でございます。  御承知のように第二項は、日朝両国間にある「非正常な状態を解消し、できるだけ早い時期に国交関係を樹立すべきである」として、そしてこういうふうにうたっているわけでありますが、今までは朝鮮民主主義人民共和国の側は、韓国と北、南北の関係をクロス承認は反対だ、こういうふうに言ってきたわけでありますが、そのクロス承認反対の片一方である朝鮮民主主義人民共和国が、我が国と国交を結ぶということはそれと矛盾しないかという点が、これとの関連で第一点です。  ところで、片や第五項においては、朝鮮は一つであるということをお互いに確認したわけでありますから、他方で北との間に国交の正常化に動き始めていくとすれば、二つのクロス承認ということを意味する対応になるのか、それとも、片や第五項で言っている「朝鮮は一つ」ということでありますから、その一つということを想定しつつ、日韓、日朝の関係を通じて、南北朝鮮の統一に向けて新たな情勢に発展する、こういうふうに理解するのか、どちらでしょうか。
  120. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の方からお答え申し上げたいと思いますが、委員も御案内のとおりでございますけれども、北朝鮮はかねてから、いわゆる二つの朝鮮ということについては強い反対の意向を示してきたわけでございますが、今般先方から日本と正常化の話し合いに入りたいと申します場合に、当面、この日本と韓国との関係を問題にしておるような節はございません。したがいまして、私どもは、日本と韓国の関係はそのまま維持強化しつつ、北朝鮮とも正常化の話し合いに入らさしていただくということが第一点でございます。  他方、いろいろな場合に総理以下が申し上げておりますように、朝鮮半島の将来は、これは南北が十分にお話し合いになって決められることでございますけれども、南北、北も南も将来は統一ということを言っておられるわけですから、そういう前提日本政府としても、その朝鮮半島の統一ということについては、引き続きこれを支持していきたいということもあわせて申し上げておるところでございます。     〔委員長退席増岡委員長代理着席
  121. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨年の秋に、私、党の団長として、衆参十五名の団を引き連れまして、新たな段階で向こうに行ってまいりました。今日、我が国を御訪問中の金容淳書記とも政治会談の中でこの日朝共同宣言についての理解をただしたところ、その考え方は、やはり中国の経験が一つの経験としてあるやに受け取れました。  御存じのように、アメリカと台湾との間に米台相互援助条約というものがあった。日本と台湾との間にも日台の条約というものを持っていた。その後、国交回復が米中の間で行われ、我が国と中国との間に行われることによって、中国は一つという形になることによって、米台、日台の条約の関係が新たな段階を迎えるに至った。  こういう過去の日中の経験から見ますと、南北朝鮮の場合におきましても、日韓は日韓として今日存在しているが、南北の間に新たな情勢が生まれてくるとすれば、そこで朝鮮半島全体と我が国になるか、もしくは当面の間、過渡期として日朝、日韓両方やりつつも統一の情勢を待つか。そういう情勢を迎えるということを想定しますと、クロス承認という考え方ではないんだということをはっきり申されておられましただけに、今後の日朝交渉に当たりましても、我が国の方からクロス承認を前提とした外交交渉に入りますと、なかなか事態の議論が難しくなるということが予想されますだけに、今政府委員が御説明になったような柔軟な対応で当面正常化に向けて一歩一歩積み重ねていく、そういう外交的な対応がよろしいのではないかなというのが私の判断でございますので、御提言を申し上げさせていただいた次第でございます。  さて、第一回の会談が終わりました後に、向こう側の団長が記者団に向かいまして、日朝関係の第一回会談を受けての総括的な記者会見が行われております。その中でも、在日朝鮮人法的地位問題と在朝日本人問題について、つまり向こうにいる日本人の問題、それからこちらにある在日朝鮮人の問題という一つの項目を設けられまして、記者団にいろいろお話があって集約されておりますが、その中で、在日朝鮮人の問題に関連して、三十六年問題は今まで日韓の間には、後で、まあ強制連行という言葉が正確であるかどうかわかりませんからかぎ括弧にしておきますが、いわゆる「強制連行」問題もこれから日朝の重要な議題の一つであるということが北朝鮮側からも提起されております。同時にまた、盧泰愚さんが昨年五月お見えになりまして、その後の外務大臣級の連絡の中で、いわゆる強制連行問題について我が国として新たな対応をとってくれという要請があって、そして日韓会談を契機にいたしまして政府側がいろいろ対応を今日までとられてまいりました。  したがいまして、今後の日朝交渉に当たりましても、日韓の間で問題になったいわゆる強制連行問題と同じ問題が提起されてくることになるわけであります。したがって、我が国がどのようにこの問題に対処していくかということは、また同時に、日朝関係の問題を交渉のテーブルに着いて発展させていくときの一つの重要な側面であろうと思います。  そこで、昨年、廬奏愚大統領がお見えになった後の外務大臣級のお話の中で、政府が受けとめられまして、いわゆる強制連行と言われる問題について政府が対処されてきた経過、それからどのような報告を韓国になさり、現状はどうなっているか、簡潔に御説明を願います。
  122. 小里貞利

    ○小里国務大臣 ただいま先生指摘の問題は、お話でお触れいただきましたように、昨年の五月二十五日の日韓外相会談におきまして、韓国の外相より我が日本の外務大臣に対して要請があったことが始まりでございます。その後、内閣官房におきまして取り仕切っていただきまして、政府関係省庁五省庁でいろいろ協議をしていただきまして、その結果、私ども労働省が主宰して本問題の調査に当たる、かような経緯がありましたこと、御承知のとおりでございます。  私ども労働省といたしましては、事外交問題でもあり、慎重に、かつまた秩序正しく、そしてまた丹精込めてこれに当たってまいりました。労働省の本省を初め、出先の機関及び自治体、県、市町村関係等、さらにまた、ただいま先生お話がございました朝鮮人徴用者にかかわる以前の事業所あるいはそれに何らかのえにしがあるんじゃないかと思われるようなところを、ざっと申し上げまして八百カ所前後を対象にいたしまして調査をいたしまして、その結果、名簿として、一つの名簿、目録と申し上げますか、総数おおむね八万人を昨年の八月の七日、政府を通じまして在日韓国大使館にこれを御報告をいたした、そういう経緯でございます。  以上でございます。
  123. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 政府が対応されて韓国側報告されたのがほぼ概算で八万ということです。  そこで、今労働大臣おっしゃいましたように、徴用者というふうに考えられたわけですね。そうしますと、徴用者と言われるのは、時期はいつごろ、そしてどういう性格のもので、そして日本のどんな法律に基づき、日本のその他の法令に基づいて、一定の枠の概念を頭に置いていないと、徴用者といったって、例えば昭和十年か昭和六年ぐらいも頭に置くのか、それとも昭和十五、六年を置くのか、こうなってくるわけであります。その辺について、調査をなさる対象の概念についてどのように整理されておられますか。
  124. 小里貞利

    ○小里国務大臣 端的に申し上げまして、私どもは先ほども若干触れましたように、目録という言葉を使わしていただいたのでございますが、ただいま先生が御指摘になりましたような性格、目的あるいは徴用管理、あるいは就労の実態あるいはどういう事業所がどこにあったか、そのような具体的な精査をするに至る調査ではございませんでした。あくまで名簿、目録の調査であったことを申し上げます。それ以上のことについては、私の立場においてはお答えする立場でないのではないか、かように思っております。
  125. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 労働省としてはお出しになった行政の職業安定局の庶務課長の名義で出された諸文書、各市町村におりたもの、そういうもの、ここにありますが、これはこれなりに努力されたもので、私は一定の評価をしてよろしいと思っております。  ところが、このいわゆる徴用者という場合でも、その時期と地域ほどこなのかということをひとつ頭で考えてみなければならぬと思います。私は、広くとれば戦前ずっと我が国に朝鮮から渡ってこられた人たち含めればいいと思うが、徴用者というふうに言うとすれば一九三九年から一九四五年、国家総動員法が施行された前後、一年前からその後、第二次世界大戦までという時期を区切るのが妥当ではないかというのが私の意見であります。  移動の地域というのを考えてみますと、朝鮮の中にも移動がありましたが、問題なのは朝鮮半島から我が国へ、朝鮮半島からまた我が国以外の外地へ、東南アジアの諸国もあります。しかし、この場合に地域と言えば、朝鮮半島から外の地域に動いた場合のいわば移動地域というふうに考える方が妥当ではないか、そしてそれが強制連行的性格かどうかを調べるときには、個人の自由裁量で来たのか、それから集団でもってこちらに渡航したか、これが一つの重要なメルクマールになると思います。個人で来るのは、これは当時は同じ日本人のあれですから自由ですが、集団でもって一定の時期に移動するという、ここに、集団をもって動かすときに強制連行的性格というものが出てくる。  その際の、今度はどのような募集の、連行の方式かということを考えてみなければいけません。そうすると、方式は、募集もあれば官のあっせんもあれば徴用というのもあると思うのです。今問題になった、労働省はこれを徴用という概念でとらえられている、それはそれでいいだろうと思います。  それで、今度は連行の目的は何かということも考えてみなければなりません。目的は、一般労働で来ているのか、軍人で来ているのか、軍属で来ているのかという問題もあれば、余りいい表現ではありませんが、従軍慰安婦で来ているかという問題も出てくるわけでありまして、その連行の目的というものでも、また全体の概念をくぐらなければならぬと思います。そして、その当時の適用法令は何だったのかということを我が国の立場から考えてみなければならぬと思います。そうしますと、これは軍事関係のいわば法令もありますが、主として国家総動員関係法令というふうに考えるのが妥当ではないかと思います。  それで、こういうふうに政府が調査をなさるときには、時期はどこをとるか、それから移動地域、移動はどうなのか、それから連行の形態はどういう形態か、そしてそれがどういう目的で来たのか、そしてそれが我が国のどういう法令に基づいていたか、このぐらいのいわば条件をつけますと、おのずから数が確定してまいります。  この国家総動員法を前提にしまして、一九三九年から四五年という時期を仮にとったとしましょう。どのぐらい徴用で日本に渡られて、この中には、軍人軍属を除いてどのぐらいと御判断をなさいましたでしょうか。
  126. 若林之矩

    ○若林政府委員 ただいま御質問いただきましたことにつきましていろいろ御説明申し上げます。  韓国政府から協力を求められましたものは、終戦前に徴用された者の名簿の入手についてでございました。時期につきましては、先生指摘のように、国家総動員法ができ、徴用令ができた昭和十三、四年以降というふうに考えております。それから終戦までということでございます。  あっせんの形態につきましては、徴用ということにつきましては国民徴用令で規定があるわけでございますが、国民徴用令では、「徴用ハ特別ノ事由アル場合ノ外職業紹介所ノ職業紹介其ノ他募集ノ方法ニ依り所要ノ人員ヲ得ラレザル場合ニ限リ之ヲ行フモノトス」ということでございますので、その前に、自由募集でございますとかあるいは官あっせんというものがあって徴用ということでございます。  しかしながら、これをよく見てまいりますと、なかなかやはりこちらに来られた労働者の方々の入国の経緯を明らかにすることは困難でございます。したがいまして、私どもは、徴用令が施行されました昭和十四年以降、終戦までの間に、入国の経緯にかかわらず、国内の事業所において労働に従事していた朝鮮人労働者の方々についての名薄を調査する、これを対象にした次第でございます。  そこで、ただいまお話しの全体の数でございますけれども、これにつきましては確たる資料はございません。ただ、アメリカの戦略爆撃機関係の資料といたしまして、日本に連れてこられた朝鮮人の方々の数ということで六十六万人という数がございます。
  127. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私の手元にあるのは日本政府の国勢調査、内務省警保局人口調査、一九四六年は今の連合国の司令部の指令による調査の記録、そして一九四七年から一九八〇年までの間の資料は外国人登録による法務省の統計、これだけを整理してみますと大枠が出てまいります、正確かどうかは別として。非常に明快なのは、これは必要ならばそちらに今後のためにコピーを渡しますが、昭和十四年、一九三九年という年を境にしまして、前の年までは増加が六万ぐらい、増加人口の数だけでいきますと十三年は六万四千百七十六と出ていますが、これが一九三九年、昭和十四年になりますと途端に十六万一千七百二十六になります。そして、それから後は二十二万、二十七万、二十六万というふうにふえていって、終戦の年までこれがふえ続けていますから、この間の人口、この間の移動、入ってきたのを、今までの明治三十八年からのずっと全体の中で、昭和十三年までのやつを全部引いてしまいます。引いてしまいますと、ほぼこの時期に、つまり国家総動員法の当時に来た我が国への徴用者ないしは朝鮮の方々は百十三万六千ぐらいになりますから、今の米軍の出した六十万よりはもっと、まあ百万台にはなっているなというのが大体の常識と判断してよろしいと思います。  そこで、労働省が去年おやりになった数字は八万なんです。八万ですね。このときは南への報告ですから、そのときは北が含んでいるのかどうか、この辺も含んでいるはずです。八万ですから、古い資料を全部を集めてお届けすることは、これは四十五年、五十年、あの歴史のことですから難しいとは思いますけれども、我が国としては最大限これに対する誠意ある回答をしなければなりません。八万という韓国への届いた数は少な過ぎると言わなければならぬと思います。  そこで、労働省からの指示「いわゆる朝鮮人徴用者に係る名簿の調査について」で調査指示をしています。この指示に基づき、簡単に言いますと、労働省の縦割りの所管を軸にして、県段階の職業安定課などを通じてやった。それで精いっぱい努力されて八万という数字が出た、こう理解していいと思います。福島県の一番、数は私が調査した分をどかんと足しましたから、恐らく一万ぐらいふえたのであります。  そこで、改めて政府に、こういうふうに今後、日朝、日韓含めまして、我が国として最大限の努力をした結果を出すためにはどうしたらいいかとうことについての私の知恵と資料を御提起いたします。ここにこれだけ資料を持ってきました、典型的なのを。これは、一番上にあるのは寄留日記であります。つまり向こうからいらっしゃるときには、日本に寄留の届けが出ます。そうすると、各村役場や市でもって、この寄留のこれができ上がってきますから、これが入手できるとなれば、昭和十五年、この時期さえ調べればその時期に寄留した人たちをつかむことができます。  そして問題は、今度は労働省でも出しております職業、どんな企業、どんなところで仕事をしていたかということは、いろんな調査で調べれば出てまいりますけれども、内閣の統計局でやっておりますかつての調査表というのには、こういう職種ごとの、例えば古河炭鉱にはいついつ、だれだれ、何人というやつが、こういう表、ちゃんとあります。ですから、こういうものを見れば、こちらに移ってこられて、そしてどういうところで仕事をなさったかというやつがわかります。同時に、民間企業だけじゃなくて、今度は集団で置いておくというのは治安上も問題がありましたということから分散をさせました。そうすると、今度は国の事業をやります。国有林野事業それから県の河川の事業それから市町村の事業などにその人たちを分散をさせております。しかしこれは県の方のデータとして、そういうものはみんな書類がありさえすれば過去のものはございます。  もう一つ重要なのは、特高関係の警察資料であります。ここに、特高がどういう指示をして、そして各県の警察署にどういう報告が行われたかということに基づいて外国人の調査が特別行われておりますから、よかったか悪かったかは別として、名簿を捜そう、そしてどんな人たちが日本に来てどんな仕事をしていたかということは、これもまた重要な材料になります。  それで、事業所ごとのその調べは、これは日本鉱山協会、これは鉱山関係だけですけれども、日本鉱山協会が出しました昔のものに「半島人労務者に関する調査報告」というものがございまして、全国の炭鉱地域でどういう形で働いていて、どんなふうになったかというデータは今日でもございます。同時に、亡くなられた方については、常磐炭鉱の場合を私は調査してまいりましたが、殉職者の名簿が朝鮮総連でつくられております。こういう努力をすればかなりの数字が出てくるし、名簿をつかむことができます。  特にもう一つだけ御注意を申し上げておきますと、戦前の日本の、我が国の歴史資料という意味で、国立大学の研究所に資料として相当あちこちに分散しております。例えば福島大学とか、私が昔いました九州大学産業労働科学研究所、ここにも北九州関係のその他資料があるはずであります。そういうふうにして、各大学の中にも調査研究の名目で資料が集積しております。  こういうふうな一連のものを後で必要なら政府の側に皆見て目を通していただきたいと私は思いますが、こういうものを見ますと、労働省の側からお出しになって各市町村にこういう調査をしてくださいと言ったのでは出てこないわけであります。したがって、内閣を挙げて、官房長官のもとで、昨年さあどうしようかという話で各省が御検討いただいた結果、労働省の所管を中心にということになったわけでありますが、そこの縦割りの今までの調査の延長線上では恐らくそう事実を的確につかみ得ないと、今日までの調査の結果について私は判断せざるを得ないように思います。  そこで、これを官房長官にお聞きしていいのか、総理がおれば一番いいのですけれども、いま一度日朝の中でも新たにいわゆる強制連行問題が国交の一つの三十六年問題として提起されてきている。韓国からも提起されている。そして我が国に出てきている資料は、概算でも百万を超える人たちがそれと関係があった。現に亡くなられた人についても、いろいろな殉職者の名簿やなんかは出ていますし、役場に行きますと死亡届が出ます。死亡届には必ず診断書というものがついています。我々もみんなそうですね。診断書というものがついておりますから、その死亡届というもので一定程度戸籍をめくっていきますと来られた方がどこで亡くなられたかというのもわかります。この診断書を見ますと、当時我が国が大変残酷なことをしたなというのが出ていないわけではありませんから、それはここでは申しませんが、しかし大事な資料として、死亡届というものとそれに関連する診断書というものも重要なものであります。  こう見ますと、私はここで政府を追及するという立場ではなくて、朝鮮半島に与えた我が国の戦前支配というものを考えてみて、改めて四十五年の戦後総括をするということで日朝、日韓が始まるとすれば、もう一度誠意を持って対応していくために政府として窓口をどうするのか。そしてこのような資料収集の、全省にまたがりますから、自治省とも関係すれば警察庁とも関係すれば、人口調査ですから総務庁、まあ昔のことですけれども総務庁とも関係すれば、それから職業ですから労働省とも関係する。そして今度は企業ということになりますと、その当時あった企業でつぶれて現在継承されている企業という問題になると、通産が役割を果たさなければなりません。全省にわたって誠意ある対応というものを改めてなさる必要があると思いますので、この点についてどのように今後検討していただくか。今すぐ、じゃ、こうしましょうということにならないにせよ、今までの総括の上に立って、官房長官のところで改めて全体をこういう観点ででき得るようにするためには何をなすべきかということについて御検討をいただきたい。これがこの問題の締めくくりでございますが、いかがですか。
  128. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 昨年五月の日韓外相会談の際に韓国側から、終戦前に徴用された者の名簿の入手について協力をせよ、こういうことにお話がありました。  そこで、これはもう相当時間のたっておる話でもありますし、すぐさまどこを特定するというわけにもいきませんけれども、戦前この事務を担当しておった厚生省勤労局及び国民勤労動員署が沿革的には労働省職業安定局及び公共職業安定所の前身であることから、労働省が中心になって関係省庁が協力の上調査を行うとした方が最も効率が上がるのではないかというて内閣官房で調整をしまして、そして全省庁に、ほとんど関係全省庁に対して協力をするように、特に、やはりこういういきさつがありますから労働省が中心になるだろうということで、労働省をコアにして、そしてほかの各省にわたっても全部調査をして、そして誠心誠意これに当たるべしということにした結果が今日までの状況であります。  今いろいろと嶋崎議員からあっちこっちにまだもっと調査をすればあるのではないかというお話がありましたが、今までも確かに、特に労働省などは大変誠心誠意やってくれたと私は感謝しております。しかしその後あっちこっちあなたのおっしゃるように情報があって、また出てくるというところもあるようでありますから、そういうときはもう早速その情報に基づいてそして調査を入念に進めるようにということにしてあるわけであります。そこで官邸が関係全省庁に対して協力お願いして、そしてここまで労働省が中心になってやってきた。この体制は私は間違いではなかったろうと思います。それが一番今までなれたやり方でもありますし、新しい情報を得次第そこに連絡をとって、そして誠心誠意名簿の充実を図るというふうにした方が私は一番効率的ではないかな、こういうふうに思うております。今後ともそういうような情報がありましたら、労働省が中心になって、各省にわたりますればまたその関係各省と連絡をとりまして、そして督励をしてまいりたい、こう思うております。
  129. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がありませんから、このデータ、後で官房長官にお渡ししますけれども、見てくださればわかりますが、今の労働省でやった御指示で各県ではどうなっているか。福島県に熱心な方がおられまして、その人とコンタクトをとって私は福島県に出かけました。そして県の方々と話し合ってみると、今、国からおりてくる調査資料でやれることは、私たちはこれ以上のことはできませんと言うのです。できませんと言うのです、守備範囲がありますから。皆さんの場合でも、設置法がありますから、それぞれの役所がこういう問題を改めて取り上げる任務が特別あるわけじゃないです。しかし、国を挙げて対処しなければならぬという特別なテーマでありますから、その際に、今までなさった御努力を多とし、私は労働省のやったことがだめだと言っているんじゃない、それなりにやって八万出たんですからそれを評価するが、これではだめよ、これでは全貌をつかめませんよ。そのためにはどうしたらいいかという、さっき私が言った、時期もはっきりさせようとか範囲だとか連行の形態とかそれからその目的とか、そういうことをちゃんと閣議で意思統一なさって、その中で全体を、ではこういう問題はどこでどうするということでもってくくって指示をおろすとかいうきちんとした対応をしなければ集まりません。それを申し上げたんです。したがって、改めて再検討をしてほしいということを言っているのでありまして、どういうふうに今後やられるかはぜひ官房長官のところで改めて御検討――今の延長線上でどうぞ労働省やってくださいと言うたら、何も出ません。出ません。これはもう関係機関当たりましたから、私は。数県当たりました。出ません。したがって、警察庁の関係の資料もあれば、それからもろもろの、それはみんな県にあるんですよ、僕のやつは横から引っ張ってきたんじゃないですよ。県内にあるものがなかなか出てこない、守備範囲が違いますから、役所の。そういう意味で改めて検討なされたいと言うのです。これで余り時間ばかり取ってもしようがないのですが、これだけ提起をしておきます。  そうしますと、ひとつ自治大臣と大蔵大臣、まあ自治大臣ですけれども、やはり福島なら福島、石川なら石川でそんな問題を担当しようとすると、市町村にはそれに必要なやはり需用費があると思うのですよ。そうすると、そういう問題について特別交付税か何かで賄っていないと、これまた人を配置したりなんかして調査することできません。したがって、自治省のいわば設置法の中や労働省の設置法を見たって、こんなものを調査するというようなことがあるわけじゃありませんから、改めて、全体の問題なんですから、どうしてもそのためには措置をして、そして担当ができやすいような、下からそういう仕事をした場合にできるような措置を自治大臣のところで御判断をいただき、同時に大蔵とも相談していただいて、特別交付税的な調査の需要にこたえられるような仕組みを考えていただく必要があるんじゃないか。いかがでしょうか、自治大臣
  130. 吹田愰

    ○吹田国務大臣 お説のことにつきましては十分我々も、昨年の七月から全地方公共団体に対しましても調査を行っているところではありますが、今お話にありました地方交付税で云々という問題は――特別交付税、当たらないと思う。これは国の仕事ですから、だから地方の仕事じゃありませんから、これは国費で賄うべき問題である、こう思います。
  131. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国費だけれども、実際は市町村がするんだよね。それで僕はぽっと思いついたので、どういうお金の流し方があるのか少し検討していただきたいと思うのだけれども、やはり担当者がいなきゃそんなもの資料集まりません。日常の仕事をやっていてやっていたのではやはり集まらないので、そのための手だてを措置することを御検討いただきたいということを、では申し上げておきましよう。  厚生大臣ともう一人運輸大臣、お二人がすぐもう時間が来ておりますので、この次のテーマです。  共同宣言の第四項に、在日韓国・朝鮮人の人権問題というものを今後位置づけるということが決まっています。昨年の予算委員会で私はお聞きして、厚生省の方は、昭和六十一年に国籍条項がなくなって、在日韓国・朝鮮人いずれも日本人と同じように健康保険その他について対処できる、こういうことになっているのでありますが、ただ一つちょっと気になるので、そんなことがないと思うが、これは文部省とも関係するのですが、先にお聞きします。在日朝鮮人ないし韓国人の母子家庭で、子供が日本人の学校に行かずに朝鮮人学校に行ったという場合であります。そういう場合に、今まで母子家庭としての児童扶養手当とか子供が障害の場合には障害児手当とかそういうものがあったのが、日本の学校に行かずに朝鮮人学校へ行った瞬間に母子家庭としての平等な、国籍条項なしの対応でないようなことが、あり得ないと僕は思うが、いかがですか。
  132. 下条進一郎

    下条国務大臣 先ほどお話がありましたように、国籍条項はなくなっております。  それで、児童扶養手当制度については、支給対象児童については昭和五十年十月一日から、受給資格者である生別母子家庭の母等については五十七年一月一日からなくなっております。したがって、それは、どこの学校へ行ったかということでは別に取り扱いの差はないことになっております。
  133. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私は、厚生行政を見ている限りそうだと思っているんだが、後の文部省関係の民族学校との関連でもう一度改めて聞きますが、大臣の今おっしゃられるようにそういうものはない、差別はないということさえここで御確認いただけば、そういうケースの場合には市町村の段階でちゃんと処理できるはずでありますから、我々も、仄聞すればそれに対処できるということで、ありがとうございました。  済みません、運輸大臣。去年運輸大臣にJRバスについて、在日朝鮮人の子供、小中高等学校、大学生含めてバス問題をお願いをいたしました。運賃が値上がりする時期を見て対処するというのが前大臣の答弁だったのですが、もう一年たちました。いよいよ日朝国交始まりました。国交の中にも、在日朝鮮人の権利の中に非常に重要な民族学校という問題が今後の日朝交渉の課題になります。そういう新たな段階を迎えましただけに、JRバスについても積極的な対応をしていただく必要がありはしないかということで、積極的な御答弁を賜ればと思います。
  134. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 JRと民鉄の間の通学定期割引の取り扱いの相違につきましては、今後の課題として検討さしていただきたいと考えており、そのため、JR各社と運輸省との間で検討会を設置いたしまして検討しているところであります。  今先生の御質問の問題でございますが、今後は、次の運賃改定の時期までに結論を得るよう真剣に検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 去年も運賃改定の時期と言っていたんだが、今度新たに日朝の国交が始まろうとする、交渉は始まっていますから、我が国の側が積極的な対応をしているということを明らかにしておいていただく方が、外務省が交渉していく際に、こんな問題もこんな問題も解決できますとパスできる条件を早くおつくりになることがいい。そういう趣旨でありますだけに、今の答弁を積極的に具体化していくようによろしくお願いいたします。  今度はもとに返ります。  官房長官、さっき私が言ったのは、労働省の縦でやって今までやった成果の御努力を評価しつつ、さっき申し上げましたように、仮に一九三九年から四五年までの六年をとるとしても、その間に百万ぐらいの人たちが動いて来ている。そのほかに軍人軍属が三十万おりますから、百五、六十万の人が動いていると僕は見ていいと思うのです。ですからそれだけに、誠意ある回答を南北それぞれの国に我が国が答えるためには、改めて労働省が担当なさるのでも構いませんけれども、今までのような延長線上では現実的な調査にならないということを申し上げ、政府側の検討を改めてお願いをしたいと思います。いかがですか。
  136. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 労働省が中心になって、そして労働省と連絡をとって全国全官庁、労働省が中心になってやれというのではないのです、全部に、全地方団体にお願いをしてこれが一斉にやっていく。しかし、労働省は今までのいきさつがありましたからここが一番多いだろう、中心だろうということで連絡機関を設けた。私どもの方は全部にお願いをした。こういう体制でここまで来ておりますので、しかしそうかというて、あの省庁は少ない、この省庁は少ないとお考えになっておられるかもしれませんが、それはできるだけ一生懸命に皆やった結果だなと、結果とすれば労働省が一番多かったですけれども、ほかのところも全省庁押しなべて市町村に至るまで一斉にやっていただいたものだ、そういうふうに私どもは思うておりますので、情報がもしあれば、そこがこういうのがあったぞと言うたらそこへすぐ飛んでいってそして精査をするという体制でいく、今までの体制をきめ細かく進めていくようにと、私どもの方からまた各省庁に依頼をしてもよろしゅうございます。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ナマズ論議みたいな話になってどうもならぬですが、例えば、職安では警察関係にこんな資料ありませんかと言えないんですよ、県の段階では。それからまた、県の段階の職安から各市町村の戸籍みたいなところに一々、おまえのところにこういうタイプのものありませんかというようなことまで含めて、一定の具体的判断を持たないと指示がおりないんですよ。今までの労働省からのやってくる徴用者という考え方で各県におろしただけでは、それが下まで調査におりる仕組みにならないんですよ、日本の行政の機構が、残念ながら。これは固有の事務と別の事務ですから。日ごろの仕事とは違うんですから。国が独自にやるのを改めてやろうということですから、それなりにすべてにわたってそういうデータ収集できる権限を労働省から職安を通じて与えないことには、県の方じゃとてもそういうことはできませんと、こうなるんです。それだけに問題を、先ほど申し上げました資料はいろんな、多岐にわたりますから、そういうものをまた努力して集めなければ名簿というのはできないんです、徴用者名簿というのがあるんじゃないんですから。日本人もそこに働きに来て移動したんです。朝鮮の人も来たんですから、同じ日本人二人で、片や半島から来た、片や日本という中で抽出しなきゃならない作業なんですから。そんな作業は簡単にできるものじゃありません。それはみんな民間人の努力とか県の特別の努力があってこういうデータが集まるだけに、そういう人たちに手の届くような、つまり国交関係を我々大事にするならば、誠意ある対処の仕方というものについて改めて検討してくださいと言っているんです。今までどおりに、やっておりました、これだといって官房長官言ってたんじゃ、何も回答にならないということでございます。どうですか。
  138. 若林之矩

    ○若林政府委員 労働省が今後とも中心になって誠意を持ってこの問題に対応していきたいと存じますけれども、その場合におきましては、より一層各省庁の連携を強化していくべきだというふうに考えております。御指摘ございましたように、河川関係、林野関係、公共事業関係等ございますけれども、これも、その関係の省庁に労働省の方から要請をいたしまして出先の方に流していただくということも進めていきたいと存じますし、大学につきましても、御指摘をいただいてまいりましたので、これも文部省と連携をいたしまして関係のところに要請をしていくというような体制で今後進めてまいりたいというふうに考えております。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあしっかりやってくださいよ。どうせ一定の時期に数字であらわれるんですから、改めてまた総括さしていただくということにして、再検討の課題だけを提起しておきます。  さて、在日韓国・朝鮮人の法的地位、入管法問題や永住権問題をめぐって、日朝共同宣言の第四項にもその課題が提起されておりまして、法務省の方でも御努力をなさって、いよいよ九一年問題がこの間の日韓会談で妥結をいたしまして、一定の方向が打ち出され、法改正の方向が打ち出されつつあることをお聞きしておりますが、その対応について、ほかの点もありますから、簡潔に御説明願えればありがたいです。
  140. 左藤恵

    左藤国務大臣 在日韓国・朝鮮人の方々の法的地位につきまして、その歴史的経緯及び定住性を考慮いたしまして、これらの人々ができる限り安定した生活が営めるようにすることが重要である、このように認識をいたしております。法務省といたしまして、こういった見地から、これらの人々の法的地位の安定化を図るために出入国管理及び難民認定法の特例法案を今国会に提出いたしたいと、このように鋭意準備をいたしております。  なお、その際の同様の歴史的経緯と定住性を有します在日台湾人の方々の存在についても念頭に置いて検討をいたしておる、こういう状況でございます。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 細かな議論はもういたしませんが、前向きに、台湾は今一応同じ扱いになりますが、朝鮮でいいますと、南北についてはそれぞれ、片一方は条約に基づく特別法、それから片一方は難民法の附則で扱ってきた永住権、こういういろんな今までの違いがございました。こういうものを一本にして、そして我が国における在日韓国・朝鮮人を法的地位として平等の方向に持っていくという形で新たに立法されるということでありますから、非常にいい前向きの対応であると私は判断をいたしております。  ただ問題は、国籍条項問題、かつて国籍条項については、韓国は国籍と認めるが、朝鮮籍はこれはいわば名目的な扱いという統一見解が出ております。そういうものもこの辺で清算しなきゃなりませんし、というのは、結婚してどの姓を名のるかという場合に、北の戸籍法と南の戸籍法、違います。そうしますと、南の戸籍法を前提にして日本にいる在日朝鮮人を扱いますと、意に反した戸籍を、日本籍をなくするというようなことができない、そういう危険があったりした制限条項があります。したがって、そういう戸籍の問題なども含めてこれから前向きに検討される必要がありますし、入管手続についても、韓国と北朝鮮との間には入管の手続についても今まで北の方には割と制限がございました。そういう制限なども今後撤廃していく、前向きに進むということは聞き及んでおりますので、そういう一連の問題も含めて、日朝国交の問題について人権保障に向かって我が国は動いている、そういう方向を明示していただくようにお願いを申し上げたいと思います。  さて、法務省は前向きになってきた。さっき言った厚生省はもう国籍条項ありません。運輸省はもう前向きにすべてJRパスその他検討すると変わってきた。政府全体が変わってきています。さあ、残ったのは文部省だ。文部大臣は、私はこれでもう五、六年これやってお願いしていますが、今までは検討も言ってこなかった。在日朝鮮人学校というのは、もはや高等学校を卒業した人は東大でも京都大学へでも資格の取れる、それだけの実力のある人です。だのに、いまだに国立大学の入学資格ありません。こういう問題、それから、それは公立や私立はあるんですよ。国立だけないんですよ。だから、例えば朝鮮人の高等科卒の人に受験資格がないのはなぜなのかとか、それから同時に今のパスの問題、そういう一連の問題の根幹はどこにあるかというと、在日朝鮮人の学校が、学校教育法第一条に準ずる学校として扱うかどうかですべてが解決できるんです。すべて解決できます。もうそろそろ日朝の問題なり日朝関係が新たな段階に入って、日朝共同宣言の第四項にも、民族教育と民族学校の問題が重要な国交の議題になっておりますだけに、我が国としてもこの学校教育法第一条に準ずる、朝鮮人学校、各種学校の格上げ問題について文部省は検討する用意ありやと、お聞きしたいと思います。
  142. 井上幸彦

    井上国務大臣 お答えいたします。  もう先生よくおわかりのように、学校教育法第一条に規定する学校というのは、まさに「小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。」ということでございますので、我が国国民の育成を期して行われているものでありまして、御指摘の件につきまして、これは学校教育制度の根幹にかかわることでございますので、先生指摘でございますが、将来にわたり慎重に対処すべき課題であろう、このように思います。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もうその答弁は五年間聞いているのです、僕は。根幹にかかわるものという話はもう五年聞いたんです。  それで、日朝国交という新たな交渉の議題の中に、人権と民族教育問題というのはこれからの交渉の場に重要な話し合いの材料になるのですから、それだけに、根幹にかかわるものですからといっていつまでも言っているわけにはいかぬのじゃないかと思います。したがいまして、今のような答弁は、もう本当に何年も何年も同じことを言うものですから、もう市町村段階ではみんな措置を始めたのです。都道府県段階や市町村段階では助成が始まりました。そして、公立大学の入学試験はみんな認めています。働いてないのは国だけなんです、はっきり言えば。スポーツ、体育についても高等学校が参加を認めて、去年私はここで大学生まで認めていただきました。上がったのです。だんだん広がっているのです、全体が。そのときに残った文部省だけがこの問題についていまだに方針を出さぬ。根幹にかかわるものですと。根幹にかかわるものを地方自治体がどんどん進めているのを、それは地方自治の自治だからいいと言っていて、そして国がそれを、現実に進行しているものについて後追っかけて、それがいいのか悪いのかも何らはっきりしない。そうして、かつて出た次官通達はいまだに生きておる、昭和三十年代の次官通達は。そんな時代おくれの話はないんじゃないか。もう何回も言い続けていますから、各委員会においても再度またきゅっきゅきゅっきゅ詰めていただきますけれども、文部省として、新たな段階を迎えたという意味で今度は積極的に検討していただくかどうか、御返答願いたい。
  144. 井上幸彦

    井上国務大臣 再度お答えいたしますが、私どもも、日朝国交正常化交渉におきまして北朝鮮側から朝鮮人学校の取り扱いにつきまして言及があったこと、よく承知いたしております。また、私自身も小沢幹事長のお供で北朝鮮へ行ってまいりました。今後、日朝国交正常化交渉の中で必要なのは、先方の意向も聞きながら、我が国の制度について十分に私どもも説明して御理解を求めてまいりたい、このように考えます。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 我が国は人権規約は批准しているのですよ。人権規約のA、B、批准しているのですよ。その批准に合わせて国内法というのは整備しなければならぬ義務があるのです。これももう十年たっているのです。だから、根幹に触れることはわかる、今までの経過があるから。しかし、根幹に触れるにせよ、人権規約もちゃんと批准して、そこに書かれたA規約の十三条とかB規約の何とか、それと国内法との関連をやらないというのはもう全然、行政の怠慢です、これは。そういう意味で検討願いたい。日朝会談で向こうから出されたら検討しますなんというような姿勢では、外務省、苦労すると思います。  さて、次に行きましょう。  子供の人権規約について、文部大臣、署名をなさいましたが、批准の手続をとるための方向はいかがですか。
  146. 井上幸彦

    井上国務大臣 お答えいたします。  児童の権利に関します条約は、今日なお世界の多くの児童が飢え、また貧困等の困難な状況に置かれている現実にかんがみ、グローバルなる観点から教育を含む児童の権利保護の推進を目指したものと認識いたしておりまして、我が国としても、昨年九月本条約に署名し、この趣旨に賛意を表したところであります。  本条約に盛り込まれている個別具体の事項につきましては、我が国の国内関係法規との関連等について、現在関係省庁による検討が行われているところであります。  お尋ねの国内法の整備につきましては、確たることを現在の段階で各省庁の関係で申し上げられないことを御了承願いたい、このように思います。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それは法改正の課題を解いたら批准する、そういう意味ですか。そうじゃないでしょう。どっちですか。批准をして、批准に基づいて今後また新たに検討。準備はしなければなりませんよ。準備はなさるけれども、批准をなさる意思が外務省、文部省、それぞれあるのですか、ないのですか。
  148. 井上幸彦

    井上国務大臣 これは、各関係省庁と相談するときも、批准におきましては外務省の関係です。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務省、外務大臣、どうですか。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今国会にやらせていただきたいと考えております。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そういうふうにすかんと言ってくださるというのは、さすが外務大臣だ。  ただ、日本は、署名は世界で何番目にやったか。百七番目と聞いていますが、何番目でした。
  152. 丹波實

    ○丹波政府委員 御承知のとおり、まず、この条約は一昨年の十一月に国連で採択されまして、昨年の九月に発効しております。日本は、署名いたしましたのは九月の二十一日で、ちなみに世界で署名国は現在まで百三十カ国ですが、順番はそれは先生のおっしゃるとおりでございます。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国連加盟国というのは幾つあるのです。百八くらいじゃないのですか。
  154. 丹波實

    ○丹波政府委員 国連加盟国は百五十九カ国でございます。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しかし、随分遅いが、署名も批准もしていないのは、典型的なのはアメリカでございまして、日本アメリカに学んでいるわけではありませんが、署名も遅かったが、いずれにしても批准は外務大臣の言うように今国会でやっていただくということになれば、これからは国内法整備問題ですから、国内法整備については、特に一つだけお聞きしますが、自治大臣、子供の権利条約の子供というのは十八歳までですよね。そうしますと、十八歳から大人になって今度は別建ての法律で対処するのですから、選挙権は十八歳というふうに選挙制度上の判断をしなければならぬことと関係があると思いますが、いかがですか。
  156. 浅野大三郎

    ○浅野政府委員 選挙権年齢を幾らにするかということにつきましては、各国いろいろな考えをとっているわけでございますが、やはりこれは民法の成人年齢その他の関係との整合性ということも必要でございます。現在のところ、日本の場合は二十歳ということで国内的にバランスはとれているのではないだろうかと思っております。
  157. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いずれにしましても、子供に関係する法律は多岐にわたっていますから、それ全体を、子供の権利条約を批准しますとすべてにわたって再検討していかなければならぬことになりますから、我が党は、十八歳の選挙権というものをこれにかかわらせて改めて主張していかなければならぬ、こういう考え方を持っていることを申し上げておきます。  さて、もう時間もなくなってまいりましたが、日米構造協議問題、昨年の予算委員会で日米構造協議問題を扱わせていただいて、その後社会資本問題、四百三十兆円問題が具体化し始めてきた。ここで農水大臣と思ったけれども、これはちょっと時間がないから御無礼します。飛ばしますので、農水大臣、よろしいです。  それから、土地税制をやるつもりでいましたが、我が党の土地税制小委員長でございまして、我が党案があるのでちょっと一言やりたかったのだが、これも時間がありませんから、国土庁と建設省は大臣はどうぞお出になってください。  そこで、日米構造協議問題の最終報告でも大変な対応で大きな問題になったのは、日本の独禁法の体制、公取委員会のあり方、それと系列取引、この二つがポイントとなってきたと思います。先般、日米フォローアップ委員会で第二回の会議が行われまして問題が絞られてまいりまして、日本の独禁法の強化に関して、アメリカ側との間で大体課徴金問題と系列問題に今のところ絞られてきた、こういうふうに判断してよろしいですか、公取委員長
  158. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 SIIにおきましてはいろいろな角度から議論をしておるわけでございますけれども、制度につきましては今委員が御指摘になりました二点であろうかと思います。
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、皆さんのところから報告書が出ました。平成二年十二月二十一日に課徴金に関する独占禁止法改正問題懇談会報告、これが出ました。これに基づいて法律の改正提案はいつ出されますか。
  160. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 現在、内閣官房に手続をお願いいたしておりますけれども、私どもが聞いております範囲では、来週以降なるべく早い機会に国会に御提案申し上げる運びになるということでございます。
  161. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、大体この課徴金に関する独占禁止法改正問題懇談会の報告書の趣旨に基づいて法案の作成にかかっている、こう判断してよろしいですね。
  162. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 懇談会の御報告の趣旨をそのまま法案として実現するということで手続を進めているところでございます。
  163. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで問題は、課徴金を課す場合の率ですね。この問題について時間のある限り少しお聞きをいたします。  今度の独禁法改正の最大のものは、この課徴金の納付を、七条の二で言っている「命じなければならない。」ここに関連してくると思います。最大の問題は、課徴金の納付を命じなければならないという場合に、裁量という考え方を公取がとるかとらないかということと、それから画一的な課徴金率の現行制度を踏襲したままで二%を六%に引き上げる、こういう二つの側面を持っていますね。いいですね。
  164. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず最初の裁量性でございますけれども、この裁量性というのは二つ問題があると思うのですが、違反事実があったときにそれに課徴金を課すかどうかという裁量は独禁法では認められていないわけです。だから、今委員がおっしゃったのは、課徴金を課す場合にその内容といいますか、そのレベルについて裁量があるかないかということでございますが、今回国会に提案を予定いたしております法案では、従前どおり裁量は行わない、これは先般の懇談会の報告にもその考え方についてるる述べられておりますけれども、その意味では、一定の率を適用するという形においては現行の課徴金制度と変わりません。ただ、組み立て方は多少変わる部分が出てまいります。
  165. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この六%という率は制度的に見て不公平なんです、今から問題にしますけれども。これは経済企画庁、通産大臣、それぞれ議論をお聞きしていただきたいのですが、例えば去年の暮れ公正取引委員会が勧告したセメントカルテル、あのセメントカルテルでも二つの地域だけで課徴金が百億円ですよ。今度の改正後になりますと、これは課徴金が二百億円になるのです。もしこれが、二地域ですが、全国だったら恐らく二千億ぐらいの課徴金になりますよ。こんな例ほどこの国にありますか。こんなことになっちゃうのですよ。セメントが問題になった去年の暮れのときには百億ですよ。今度の改正後でいくと二百億になりますよ。これは大変なもの。こんなこと具体的にできますか。世界にこんな例ありませんよ。そういう事態が起きます。これは一つの例として申し上げる。  そこでお聞きします。  課徴金率を画一にした、今までの現行制度を踏襲したもので二%を六%に引き上げる。諸外国は違いますよ。諸外国は非常に明快です。そのカルテルによって利益を上げたと思われる部分の一倍とか二倍とか一・五倍、それをとるか、さもなくば率のうちの高い方のどっちか選べ。非常に単純です。日本世界にないややこしい。後で問題にする売上収益率なんてややこしい言葉、実際僕はできるのかどうか疑問だと思うが、いずれにしましても課徴金率が一律的であるというのは、例えば卸、小売、製造業、それぞれを分けて課徴金率を定めているのです、御承知のように。時間がありませんから細かな数字は挙げませんが、課徴金率というのはそれぞれの分類内で、卸売、小売それから製造業、それぞれの分類内で同じ率なんですね。卸、小売、製造業、その他では六%画一になるのです。そうしますと、カルテルの形態というのはさまざまですから、その態様がさまざまで六%徴収ということになりますと、全く実態に合わせると不公平になります。なぜならば、産業界にとっては、一%ぐらいしかカルテルでなかったものが六%取られるのです。二〇%ぐらいカルテルでやっているところも六%なんです。そうすると、でかいカルテルやったところは六%やったって大したことないわとなるのです。小さいカルテルでもカルテルはカルテルですから、一%、二%カルテルのところへ六%適用したら、業界はたまったものじゃないです。だから、一律というやり方を外国ではとらぬのです。カルテルによって上げた利益の何倍、つまり二度とできぬような仕組みにしておいて、最高、上限を決めておいて処置するのです。ところが、これを一律にしたのですから、業態によってはこれによって、何じゃ大したことないですよと、こんな厳しい、こういう二つに分かれちゃう。これがこの画一性ということの第一の問題です。欧米にこんな立法制度をとっている国は一つもないと思うが、どうですか。
  166. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御指摘になりました事項でありますが、どういう順序で御説明申し上げますか、一定率が非常に不公平である、複雑である、外国にそういう制度があるかといったような御指摘がまずあったかと思うのでございますけれども、まず、一律制度は複雑であるというのは、私どもはむしろ逆だと考えておるわけです。  そこで、ヨーロッパの制度等は最高の率を設定して、日本で言えば公正取引委員会に相当するような各国の競争機関が事案ごとに裁量によって決める。これは懇談会でも随分議論があったわけでございますけれども、なるべく簡潔に申し上げたいと思うのですが、我が国の独占禁止法の課徴金の制度を制度比較論として考えます場合に一番特徴的なことは、我が国の場合は行政措置としての課徴金と刑事罰が並列しているということなんです。アメリカは刑罰一本で組み立てておりますし、ヨーロッパの多くの国はほとんどは刑罰がないわけであります。したがって、ヨーロッパの日本で言う課徴金に類似した制度がございますけれども、これは法的性格は全然違うわけでありまして、むしろそれに制裁的要素を加味できるという部分があるわけでございます。日本の場合は、あくまでこの二重処罰を回避しなければならない、しかも、その範囲内で許容される抑止効果を期待できるような水準を一体どこまで認めることができるのかということで、この懇談会で随分学者方が議論された結果が今回の結論になっているわけであります。  おっしゃるように、一律の率を適用した場合に、カルテルあるいはそのカルテルの形態とか業種の態様によって不公平といいますか不均衡が生ずるという議論はあるわけです。それは、この報告にも書いてございますけれども、個々のカルテル利得と課徴金というものを厳密に照応させるということは、二重処罰の観点からいって必ずしも必要ではないということでございます。むしろ、制度が非常に簡明である、透明性も保つことができるということであるとすれば、一定率ということでこの課徴金制度というものを仕組むのがやはり一番合理的だろうというのが今回の懇談会の結論であったわけであります。  おっしゃるように、業種とかカルテルの態様によりましていろいろ不均衡が生ずる。それは不公平という議論じゃなくて不均衡が生ずるということなんだろうと思いますけれども、そもそもカルテルの利得というのは、この懇談会の報告にも書いてございますけれども、観念上は存在するのです。それはどういうことかというと、カルテルの利得というのは、カルテルの結果行われた、例えば売り上げなら売り上げでよろしゅうございますけれども、それがカルテルがなかった場合に一体どれぐらいあったのか、その差額が実はカルテル利得だ。ところが、カルテルがなかったときにどういう状態であったかというのは、そういう事実は地球上には存在しないわけなんですね。何らかの形でカルテル利得の理論について擬制する方法を考えなきゃならぬ。その場合に、値上げカルテルとかあるいは維持カルテルとか談合等によりまして、これは、いろいろカルテル利得の水準というものは、観念上の水準といえどもそれをはじき出す方法論というのは違ってくるわけでございます。その結果、そういう難しいカルテル利得という概念であるとすれば、むしろ一定率、しかもそれは客観的に、これは法人企業統計に依存しているわけでございますけれども、売上高営業利益率によって画一的にこれを決める。その水準がかなり高いものであるとすれば、今日のように経営と所有が分離している現在の企業体制のもとでは、それがかなりの率であれば必ず抑止力として働く。したがって、観念上のカルテル利得というものと厳密に照応させるということは、制度上これは恐らく不可能であります。その意味で、今回いろいろな議論の経過をたどってこの一定率という考え方が一番適当だろうという御結論をいただいたわけでございます。
  167. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の委員長のやつで二つ問題点があるのですよ。刑事罰と行政罰問題ね。だけれども、あなた方はやっぱり刑事罰問題を先送りしてしまったじゃないですか、今度。簡単にはいかぬですよ。それをやっていると時間がなくなるからやめますけれども、それが一つね。先送りしているからまだ何も結論ない。今までに刑事罰で対処したことありますか。一件しかないでしょう、恐らく公取では。だからできはせぬのです。今までできてないのです。だから、ただ制度的にはこういうものがあるということだけであって、実際には公取で対処できなかった現状があるということです。だからそういう意味で、言葉を返すようであれだが、片一方、観念的な、抽象的なものだと言いますけれども、これはそんなに難しい話なんじゃなくて、要するに、違反行為前の出荷価格と、それから行為後の出荷価格というものを判断すれば、その差額はわかる。それも推定でしかありません。だから、それが危ないとなれば法定化しておけばいいのですよ、法律で。こういうふうはするといって、例えば七条の二にそれを明記しておけばいいのです。こういう形でこれは対象にしますよというふうに法定化しておけば、あとは対処できないことは絶対ありません。  その根本はどこにあるかというと、今度の我が国の独禁法で問題にしているところの課徴金率六%の基礎になるものを、売上高利益率というものを上げているからです。売上高の利益率というものは、これは超過収益金額とは何の関係もないのです、経済学的に言ったって。結局、売上高利益率というのは、売上高からもろもろの経費を引いた利益金を売上高で割ったものでしょう。だから、この率を売上高に掛けると、それは利益金相当額にはなっても、カルテルによる超過収益の金額の根拠は何もないですよ。だから、その基礎にしている根拠そのものがあいまいなんだ。だから外国ではそういう方式ほどこの国でもとらずに、例えばアメリカでは、カルテルによる超過収益額、それの二倍、ないしドイツの場合は三倍、そうしていって率というものと二つの組み合わせで上限を決めておいて払いなさい。よその国ではみんなそれできているのですから。なぜ日本ではそういう仕組みをとらずに、いわば余り理論的根拠のない――いや、長い議論だ、これ僕皆精読しました。最初はようわからぬかった。何でこんなわからぬ議論するのかな、読めば読むほどわからなくなった。経済学的に考えてみたら余り根拠は、連動しないなというのが私の結論ですけれども、いずれにいたしましても、我が党の議員、あとまた独禁やりますから、問題点だけ言っておきますが、この課徴金制度に当たって、現行制度を前提に率を上げるという形で処理したから、我が国の、価格カルテルを頭に置いていらっしゃるでしょうけれども、それに対するきちんとした対処になるのかならぬのかという点であります。  それで、現に報告書の中にも「課徴金の対象となったカルテル事件の実態に照らしてみると、カルテルによる経済的利得の水準は現行の課徴金の水準をかなり上回っているものが多数ある」と書いてある。しかし、資料は一つもないですよ。今まで公取でもってきちんと審決してやった経験は余りないのですから、だから、こんなことらしいということはわかるが、何も資料的根拠ないのですから、これも報告書はもっと基礎資料というものを公表しておかなきや、立法府で議論するときには議論の対象にはならぬと私は思う。  いずれにしても、この率という問題を、今のような考え方、アメリカはこれ一〇%の線になっている。これもアメリカはむちゃくちゃな話だ。日本の現行制度の問題点もよくわからぬで、自分の国は別の方法をとっておいて、それで日本の率は低いからもっと上げろと、こんな日米構造協議はこたえる必要はありませんよ。こたえる必要はないが、しかし、我が国で独禁法を強化するという場合に、現行制度の率の上乗せでもって処理できることになるのかどうか、これは問題だという点を一点申し上げておきます。  もう一つだけ問題点を指摘しておきます。あとは今度はガイドラインだ。  今度は、系列取引に関連して皆さんのところからガイドラインが出ました。ガイドラインを読んでみました。ところが、このガイドラインというのは、私によりますと、独禁法の法律の条文を解釈して運用することをガイドラインと提起したのではありませんか。
  168. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 今度のガイドラインは、自由で公正な競争、そういう観点から我が国の取引秩序というものをもう一度総点検していただく、それで独禁法の観点から見てどういうことが問題になるのかということを、一つは取引条件、特に価格というものは事業者が自由に決めるのだ、これは競争の基本的条件でありますね、それが一つと、もう一つは、市場への参入の自由といいますか、これは別の側面から言えば、市場とか取引というものの閉鎖性とか排他性の障害になっているようなものは取り除く、これで競争を確保していこう、そういうことに焦点を合わせて、流通段階それから生産財の段階等に分けて、起こり得べき問題をこのガイドラインに書き、しかもなるべくそれが具体的にわかるように集約したというのが今回のガイドラインの性格でございます。
  169. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 あなた方がまとめたものを僕は精読してみまして、共同ボイコット、これは法三条の適用をきちんとすればできると書いてある。それから、単独の取引の拒否、これは、一般指定二項を厳格に運用すればできると書いてある。要するに、ガイドラインというのは、今ある法律を厳格にやらないでいて、これからやりますよという解釈を提起したにすぎぬという意味では、僕はガイドラインにならぬと思う。なぜならば、ガイドラインになるものは、今まで公正取引委員会できちんとした審決があって、審決が積み重ねられてきたときに、その全体にガイドラインというものができなければいけないのです。法律は既にあるのですから、その法律の解釈を適用することによって実際に公取が仕事をした、それは審決で出るんですから、それでもっておのずからガイドラインというものが出てくるはずなんです。それを、法律の解釈を厳格にやればこういうふうになりますというふうに解釈したのなら、なぜこれどおりに今までやらなかったんだということが問題になるだけであります。したがって、このガイドラインというのは、私から見ますと、これをガイドラインと言うのかなという疑問を提起しておきます。今後とも、我々の仲間の委員で問題にさせていただきます。  それで、最後にもう一つ申し上げておきますけれども、やはり公取委員会のメンバーは役人の天下りが、委員長が悪いといった意味ではありませんが、天下りじゃなくて、かつてのように学者や裁判官をきちんとして、そして公取委員会というものがきちんと独立した運営をできるように、そういう権威あるものにしないといかぬということも申し上げておいて、時間が参りましたので、後を言いっ放しになって大変御無礼だったと思いますが、終わります。
  170. 増岡博之

    増岡委員長代理 これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次に、新村勝雄君。
  171. 新村勝雄

    ○新村委員 私は、先日総括質問の中で、環境と廃棄物の問題について若干触れたわけでありますが、再びその点から確認をして、お願いをいたしたいと思います。  人間は、文明の進展とともにおびただしい種類の、そして量の物質をつくり出し、流通をさせ、消費をし、廃棄をする、こういう膨大な物のサイクルをつくってきたわけでありますけれども、今、この製造から廃棄に至るサイクルが一つの重大な転機に来ていると思うわけであります。このような状況を放置することができないということで、政府もその対策には苦慮をされていると思います。  また、湾岸戦争が仮に終結をしたとしても、中近東の国際紛争の火種がなくなるわけではありません。しかもこの地域は、いわば全世界の石油貯蔵庫ですから、そこの石油供給に依存している日本を初め世界の国々は、戦争終結にも戦後の復興にも、また戦争の火種を完全になくする取り組みにも、武力を用いることなく、共同連帯して最善の努力をすべきであると考えるわけであります。  そこで、資源エネルギーの多くを他国に依存することの危険を回避をするもう一つの取り組みとして、産業構造を初め社会全体を資源循環型に転換し、石油資源に頼り過ぎない社会の形成を図るべきであると思うわけであります。今、政府が準備中の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正、これは厚生省ですね、それと再生資源の利用の促進に関する法律案、これは通産省でありますが、これらの法律案の考え方は、資源循環型社会への転換という考えに立っていると考えてよろしいですか。厚生省並びに通産省のお答えをお願いいたします。
  172. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 厚生省といたしましては、廃棄物が深刻な問題になっておりますが、その問題の内容といたしまして、廃棄物の排出量が増大をし、その質が多様化しておりますこと、一方、減量化、再生利用の動き、活発ではございますが必ずしも盛んという状況ではないこと、不法投棄が依然として目立つこと、さらに、埋立地を初め処理施設が不足ぎみであること、これらの認識に立ちまして審議会の答申もいただき、廃棄物の処理、単に出てきた廃棄物を焼却し、埋め立てるということだけでなしに、廃棄物の全般的な減量化、再生の促進を図りながら、適正処理を確保し、そのため処理施設を整備促進をする、こういう観点で廃棄物処理法の改正を行いたいと考えておるところでございます。
  173. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 委員にお答えさしていただきます。  考えてみますると、今度の国会ほど、再処理の問題であるとかごみ処理の問題、あるいはリサイクルの問題、あるいは地球環境の問題等々、このような我々にとりましては今までに考えられないような問題が山積したときはないような感じがいたします。きょう国会で通していただきましたオゾン層の問題なども、その一環と考えなければならぬような感じさえいたします。  そういう中にありまして、国民生活が非常に向上しておる、ライフスタイルが変化している、こういう中で廃棄物の排出量が増大しておりますから、廃棄物問題が深刻化しておって、廃棄物の問題の解決は緊急の課題となっているということは御指摘のとおりでございます。そこで、昨年夏以降、産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会におきましても検討いただきまして、十二月に答申を得たばかりでございます。  そこで、その答申の内容をごく簡単に申し上げますと、一つは、行政、消費者、事業者それぞれが役割分担のもとに問題解決に当たる必要がある。第二点は、廃棄物として処理処分されるだけでなく資源として有効に利用して、また、廃棄物となった際にも処理処分が容易となるように工夫することが必要であるため、生産段階にさかのぼって再資源化ということが非常に大事になってくる、それに取り組む工夫が大事である、こういう点。そういう観点から、事業者については、業種ごとに製品ごとの特性を踏まえて、再資源化処理の容易化を念頭に置いたきめ細かな製品供給対策に取り組む自主努力の必要性が認められておる、このように考えておりますので、私ども通産省といたしましては、簡潔に申しますと、本答申の趣旨を関係者に幅広く周知徹底させまして、そして、事業者の自主的努力を現在求めているところでございます。私も毎朝のようにその事業者団体の方々に会いまして、この問題については一番強く訴えておる点であるということも付言さしていただきたいと思います。  以上であります。
  174. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、繰り返しますが、厚生省においては廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正、それから通産省では再生資源の利用の促進に関する法律案、この二つを今国会にお出しになりますか。それからまた、この二つの法律のねらいというかその考え方は、今までの廃棄物に対する行政の考え方を転換をして、いわゆる資源循環型社会を目指すという思想に基づくものかどうか、この点をお伺いします。
  175. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話しのように、二つの法律を前提にいたしまして、厚生省では廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正を提案をさせていただきたいというふうに考えております。私どもの廃棄物処理法におきましても廃棄物の減量、資源化につきましては十分配慮をし、かつ再生資源の法律の方との連携もとるということで、現在内容を詰めておるところでございます。
  176. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 現在通産省におきましては、お話のございましたように再生資源の利用の促進に関する法律案というものを検討いたしておりますが、その考え方は、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、近年の経済成長あるいは国民生活向上に伴う廃棄物の発生の増大、あるいは処理・処分場の不足という状況下にあって、この問題を処理するためには、生産、流通、消費の各面にわたって取り組んでいく必要があるという考え方から、再資源化、資源の有効利用ということを盛り込みまして、さらにその廃棄物の発生の抑制、環境の保全ということに資することもねらいといたしまして、現在法律案を取りまとめ中でございまして、近く国会に上程させていただこうと考えておるところでございます。
  177. 新村勝雄

    ○新村委員 確認しますけれども、この二つの一部改正案及び新しい法律は、資源循環型社会を目指すのかどうかということについてはどうですか、間違いありませんか。
  178. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、資源を一回で使い切ってしまうのではなくて、できるだけ使えるものは、ごみとして埋めてしまうというのではなしに、再資源としてもう一度生かしていこうという考え方でございますので、ねらいとするところはいわゆるリサイクル社会の形成を目指していくということを考えているものでございます。
  179. 新村勝雄

    ○新村委員 ただいまのお答えからして、資源循環型社会、あるいはそういう思想のもとにつくられるというふうに理解をいたします。  そうだとしますと、環境庁が準備をしている、循環型社会形成法案というものを環境庁は用意をしておられるというふうに聞いておりますが、その法案において今申し上げた循環型社会の形成を目指すというふうに理解してもよろしいですか。
  180. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  環境庁として一時、今先生指摘のようないわば理念をうたった法案を準備しようとした時期もあるわけでございますが、政府部内の調整あるいは立法技術上の点から申しまして、結論としまして独自の理念の法案を提出するということはせずに、ただいま通産省から御説明がございました再生資源の利用の促進に関する法律案の主務大臣の一人としまして、環境庁が環境保全の観点から参画するということにいたしまして、その中で御指摘のような方向を示していくという所存でございます。
  181. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、循環型社会形成法案は構想していたけれども断念をした、それで通産、厚生両省主導のもとに環境庁も同じ方向に向かって努力をするということのようでありますけれども、これでは我々とすると大変不本意なわけでありまして、むしろこの問題は環境庁主導のもとに構想し、そして行政を進めていかなければいけない問題だと思うのですね。  物の生産、流通そして廃棄、この流れは、例えてみれば通産省はこれをつくってそして流通に投入するわけでありますから、まあ人体に例えてみれば動脈、そして厚生省はこれを消費をして廃棄をするということですから静脈、そして、この循環系の中心である、これはもちろん心臓でありますが、この心臓の役割を環境庁は果たさなければいけない立場にあると思うのですよ。そういう観点からしますと、循環型社会形成法案は極めて時宜に適した、そうしてまた、環境庁さんがぜひやらなければならないことであるというふうに考えるわけでありますけれどもそういかなかった、これは極めて残念なわけでありますが、そこで、この循環型社会の形成に当たって通産、厚生両省の果たす役割、これはどういうふうに理解をされておりますか。
  182. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 通産省といたしましては、先生お話しのように、まさに物を生産し、流通し、消費していくわけでございますが、そのプロセスで出てまいります資源をできるだけ有効に使っていこうという観点から、例えば製造段階で出てまいります副産物、これをまた資源として使えるように戻していこうということでございますし、使用し終わった家電製品でございますとか自動車といったようなものも、これも資源という観点から見れば鉄くずとして使える、あるいはプラスチック素材として使えるということでございますので、これもできるだけ資源として再利用のルートに乗せてこようということを考えておるわけでございます。しかし、すべてのものを再利用というわけにはまいりません。最後のところは厚生省の廃掃法の中で処理をしていただくことになるわけでございますが、両省よく連絡をとりながら、この両法相まって資源の有効活用を図っていく、あるいは廃棄物の量をできるだけ減らしていくようにするという考え方でこの問題に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  183. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 廃棄物の処理におきましては、ごみを分別をし、資源に回りますごみは資源系統の分別ごみに回すことによりまして廃棄物の量を減らすとともに資源に回る量を多くすること、それから廃棄物の処理の過程におきまして再生に十分配慮し、廃棄物の中から有効なものを取り出してリサイクルの流れに回していくこと、こうした点を通じましての適正処理を図っていくことということとしております。
  184. 新村勝雄

    ○新村委員 そこで問題が一つあるのですが、我が国の行政が縦割り行政であって、これはもちろん縦割りでいい点もあるのでしょうが、特にこのごみ問題、廃棄物処理等についてはその弊害もあらわれているわけですね。そういうことを考えた場合に、今例えた、通産は動脈、厚生は静脈ということになるとすれば、この両方を総合的に企画、調整するのはどこが担当するのか、例えて言えば、この循環系の中心になる心臓の部分ほどこが担うのかという問題が残るわけでありますが、その問題については、官房長官、どうお考えですか。
  185. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 最近の廃棄物の問題に対応して資源の有効利用、廃棄物の減量化を推進するために、近々改正を予定しております廃棄物処理法という法律と、それから再生資源利用促進法、これはまだ案ですね、次の閣議あたりにかけたいと思っております。この二つのシステムを、動脈と静脈だから真ん中に一つ心臓を置けとおっしゃるけれども心臓を置くということをしないで、動脈も静脈もうまくくっつけまして、そしてスムーズに、心臓を置かずしてもスムーズに回転できる、お互いに連携をとりながら施策を進めていくということにしたいというのがこの両法案の改正の問題だ、そう思っております。
  186. 新村勝雄

    ○新村委員 官房長官、動脈と静脈をうまくつないでと言っても,心臓がなければ働かないのですよ。その点で、どこが中心になってこの循環を作動、機能させるかということを伺っているわけなんですよ。  ですから、私は、環境庁がせっかく循環型社会形成法案を構想されながら、これが消えてしまった過程がおかしいと思うのですよ。なぜ消えたのかということなんですけれども、これを成立させて、そして環境庁が中心になって機能させていかなければうまくいかないだろうというふうに考えるわけでありますけれども、もう一回、官房長官お願いします。
  187. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 環境庁は人間と環境との調和を図るためにあるものだと思っております。そういう大きな、哲学的な意味を引用されて、そして資源の再利用、廃棄物処理、これについても環境庁が小型心臓を持って入れというようなお考えかとも思いますけれども、しかし、環境庁は大きく人と環境との心臓の役を果たしておるわけでございますから、廃棄物のこの点については、法案の中で両方が調整できるようなシステムを自動的につくってあればそれも大過ないのではないか。  これ以上申し上げますと、環境庁長官の所管に入り込みますので、これで勘弁をさせてもらいます。
  188. 新村勝雄

    ○新村委員 環境庁にもう一回お伺いしますけれども、せっかく最も時宜に適した循環型社会形成法案を構想されながらこれが流れたというか、それを放棄したその過程というか、その心境をまず伺いたいと思います。
  189. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  環境庁という役所はいわゆる総合調整官庁という役割でございますので、そういう立場から、独自の法律を出すということは立法技術上からいいましてもなかなか難しい面がある、こういうことでございまして、環境庁のこの問題意識、つまり今日のこの大量消費、大量廃棄の社会のあり方を見直して、政府、国民、事業者が一体となったリサイクル社会をつくっていくという、そのことが実現できればいいわけでございますから、そういう点で、環境庁といたしましては、事業者等はおける再生資源利用の促進あるいは適正な廃棄物処理の両方の施策が車の両輪としてうまく機能して、全体として環境保全型の社会が形成されていくようにということで関係省庁との調整を進めてまいったわけでございます。委員指摘の趣旨をこれからも体しまして、総合調整官庁として各関係省庁との連携を強化をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  190. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、通産省、厚生省がそれぞれ準備中の案では、環境庁はどのようにこれに関与をされるわけですか。環境庁がどういう位置づけをされるわけですか。
  191. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 今検討を進めておりまして、近く上程させていただきます通産省の法案の中には、環境保全という観点を入れて法律を運用するために、環境庁長官を一人の主務大臣として入っていただくという位置づけでございます。
  192. 新村勝雄

    ○新村委員 そうだとすれば、両省案においては、主務官庁の策定する計画ないし方針について環境庁が環境保全の立場からそれを書き直してもらうとか、またそれが与えられていないとすれば、環境庁は単に他省庁のアリバイづくりに利用されるだけではないかというふうな感じもするわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  193. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 ただいま愛知環境庁長官及び通産省の方から御答弁申し上げましたように、リサイクルを中心といたしました新規立法、再生資源の利用の促進に関する法律案、今最後の調整段階でございますが、私どもは主務大臣の一人として参画をするということでございますので、環境保全に関しましては主務大臣としての役割をきっちり果たしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  194. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、両省の案ができ、これが成立をして実施をされる段階で環境庁は十分にその独自性を発揮をして、場合によってはその方針の変更を要求したり、また十分なアセスをする、その主張をそこで貫徹する御自信がありますか。
  195. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 関係省庁との連携を十分密にして、環境庁としての役割を十分果たしていく決意でございます。
  196. 新村勝雄

    ○新村委員 ですから、両省が主導的に、所管省として主導的に動くわけでしょう。その場合に環境庁が十分にその独自性を発揮をして、その主張をその中で貫徹できるかということなんですけれども、それを貫徹してもらわなければ、これは今廃棄物行政の一つの転換期と言われている中で、そういう状況の中で新しい立法が行われる、こういう状況の中でその新しい立法が生きてこないという心配があるわけですよ。ですから、その点についてはひとつ十分に環境庁の独自性を発揮をしていただいて、頑張っていただきたいということなんですよ。  それで、政府は中長期の経済計画を初めとして、防衛計画、公共事業の基本計画、国土利用計画などの治山治水、道路、港湾、空港、住宅など、十五個の個別の公共事業が中長期の計画をもって進められております。これは結構でしょう。結構でしょうけれども、そして、その各計画は比較的安定した財源の裏づけのもとに計画が進められているわけですが、その中で、今これほど重要な部門である環境行政、特に廃棄物処理の問題を含めて、環境保全計画というものがないんですよね。これはなぜでしょうか。
  197. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 今先生が御指摘のものは、いわゆる公共事業の五カ年計画のお話だと思います。私どもとしては、その公共事業の中でも環境保全に関する事業、例えば下水道事業、こういうものについてはその都度協議を受けて環境保全の観点から関与をしておりますし、また、公害防止が緊要な地域につきましては、公害対策基本法に基づきまして公害防止計画を定め、公害財特法といった補助率をかさ上げする仕組みも自治省にお願いをして設けて、推進をしているわけでございます。また、そのほかにも環境庁では、現にございますのは六十一年十二月に策定したものでございますが、環境保全長期構想というものを策定して環境政策を推進しているところでございます。  現在、各省の権限の配分というものがきちっと設置法で決まっておるわけでございますが、それぞれの省がそれぞれの権限に基づいて環境保全に資する事業を実施する、私どもはそれを総合的に調整をするという立場でございまして、これからも関係省庁との連携を密にして環境保全に万全を期していきたい、こう思っている次第でございす。
  198. 新村勝雄

    ○新村委員 長官として環境庁の立場から、今答弁ありましたけれども、大臣から、環境保全計画、総合的な、全国的な、それがないわけなんですよ。ですから、それをぜひ策定をしていただきたいわけでありますが、この全国規模の環境保全計画を策定する御意思がありますか。そして、あるとすればどういう日程で、どういう手順でおつくりになりますか。
  199. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  今局長からお答えを申し上げましたけれども、環境庁の役割というのは総合調整官庁という役割がございまして、そこで計画というものを仮につくったといたしましても、その裏づけといいましょうか、それを実施する部分がなければ絵にかいたもちになってしまうわけでございまして、そういう意味では、むしろそれぞれの担当の官庁にきちっとやっていただく、その調整をするという役割で環境庁としての役割を果たしていくのがふさわしいのではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  200. 新村勝雄

    ○新村委員 そうではなくて、やはり環境庁が一歩を進めてもっと権限を充実をさせていくべきであるということなんで、この点については総理に要望すべきことなんでしょうが、その点を特に大臣にも要望いたしておきます。環境庁がもっと主体的にこのサイクルの中へ介入というか、介入じゃなくて、そのサイクルの中心になって機能できるような、そういう体制をぜひひとつ目指していただきたいということをお願いをいたしておきたいと思います。  そうして、通産省も厚生省もともに環境保全に立脚をしたシステムをつくらなければ、実際上不都合が生じるわけであります。例えば廃棄物の埋立処分場に持ち込まれた有害物質がやがて土壌や水質の汚染源になってしまうわけでありますから、厚生省は、一般廃棄物であれ産業廃棄物であれ、最終処分場には環境と健康に有害な物質を一切持ち込まないというシステムを準備すべきでありますが、そういうことになっておりますか。
  201. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 有害な廃棄物に関しましては、環境に支障のない状態まで処理をいたしまして、その上で埋立最終処分をするという基準に現在なっております。その対象としております廃棄物、現在の状況を考えますと少し広げるべきではないか、こういう観点の御指摘も審議会の答申にございまして、対象廃棄物を拡大をし適切な管理、処理を行う体制にしたいということで現在法案を準備しておるところでございます。
  202. 新村勝雄

    ○新村委員 これは最終処分場ですから、最終ですから、いつまでもそこにとどまっているわけですね。未来永劫にそこにとどまっているわけでありますから、これはどうしても有害物は一切そこに入らない、有害物は完全に排除するという体制、そういう着想のもとに進めなければ困るわけなんですね。ところが、今のお答えでは必ずしも十分な自信がないようでありますが、これは完全に有害物を排除していくということが絶対必要だと思いますけれども、大臣はいかがお考えですか。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 有害物につきましては、その有害物が入っているということが問題ではございませんで、その有害物が溶出をしあるいは環境に出るというところが問題でございますので、有害物を含みます廃棄物については、有害物が入っているということを前提にいたしまして、その固化及び遮断型の最終処分場と言っておりますけれども、外と隔離をした状態で保管をするという考え方に立ちます最終処分場の基準をつくりまして、外の環境に悪影響を与えないような形で最終処分をする、こういう考えに立っております。
  204. 新村勝雄

    ○新村委員 今のお答えでは、有害物があってもいいのだ、それを溶出しないようにすればいいのだということでありますけれども、溶出を防止するということ、これは一時的にはできても、これは最終処分場ですからいつまでもその物質がそこに堆積をされて残っているわけです。ですから、その中に有害物があっては困るわけなんですよ。それは現在は何らかの方法で溶出をしないようにしておいても、これはどういうことをするかについては今伺っておりませんが、将来ともに完全に流出あるいは溶出をしないかというと、これは必ずしも保証の限りではないわけですから、その中に有害物があっては困るわけですよ。その点でやはり環境上大変な問題だと思いますけれども、環境庁長官はどうお考えですか。
  205. 武智敏夫

    ○武智政府委員 お答えいたします。  廃棄物にはいろいろな種類があるわけでございまして、委員指摘のような有害な物質、例えばカドミですとかあるいは有機水銀ですとか、そういったものがございます。現に発生することがございますので、これらにつきましては三つのタイプに分けまして最終の埋め立てをやることにいたしております。  御指摘の有害廃棄物を含んだ廃棄物につきましては、いわゆるコンクリートで囲いまして、しかも終わった段階ではふたをするということで、しかもその遮断型の有害廃棄物を含んだ埋立地であるということを表示するというようなことにいたしまして、一切外には漏れないというような形で、将来にわたって環境の悪影響がないというような形で処理をいたしておるわけでございます。  現在、厚生省におきまして、先ほど部長さんからお話ございましたけれども、そういったことが第三者との間におきましてまたいろいろ将来において問題になることがあろうかと思いますので、そのあたりも含めまして、廃掃法の中でいろいろ議論をして収れんしつつあるような段階でございます。
  206. 新村勝雄

    ○新村委員 溶出しなければそこに有害物があってもいいんだという考え方は、これは納得できませんね。やはり有害物は完全に排除をするんだという、そういう目標でやらなければこれは困るわけですよ。ですから、ぜひそういう目標でやっていただきたいということを強く要望をいたしたいと思います。  そして、現在不法投棄の主役とも言える建設廃材など、不法投棄にもかかわらず、再生資源と称して埋立用材や地盤改良材に利用される場合はないと言えるかどうか。  また、通産省案には不法投棄と再生資源を区別する仕組みがきちんと用意されているかどうか。
  207. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 不法投棄の問題につきましては、通産省所管物資でよく問題になりますのは自動車なんかがあるわけでございますが、これにつきましては、そういう事態が起こらないように、販売のルートを通じてこれを回収するように現在そのシステムづくりをいたしておるところでございまして、メーカールートを通じた自主的な努力によってこれを解決する方向で指導いたしておるところでございます。  建築廃材の御質問がございましたが、この点につきましては建設省の問題でございますので、ちょっと私から御説明するのは適当でないと思いますので、通産省の所管物資についての説明で御勘弁いただきたいと思います。
  208. 新村勝雄

    ○新村委員 焼却による最終処分量を減量化する方法、これが一つの方向ですね。それから、再資源化の徹底による減量化の方向、この二つを比較をすると、焼却の方が容易ではあるが、二酸化炭素の排出など環境への負荷が大きいわけです。したがって、環境保全に立脚した廃棄物の減量化は当然のことながら再資源化の徹底でなければならないと考えますが、そうお考えですか。
  209. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話ございましたように、廃棄物の減量につきましては、まず廃棄物を出さないこと、それから、廃棄物になりました後、資源に使えるものは資源として再生をすること、この二点にまず力を入れる必要があるというふうに考えております。次いで、日本の土地利用の状況及び衛生的処理という点を考えますと、焼却という方法によりまして廃棄物の質を安定化し、かつ量を減らすという点で極めて有効でございますので、焼却施設の整備及びその最後の埋立地の整備、これも廃棄物処理にとっては欠かせない事業、要素であるというふうに考えております。  以上、全体を総合いたしまして廃棄物の減量化を図っていくべきものというふうに考えております。
  210. 新村勝雄

    ○新村委員 そうだとすれば、厚生省で準備中の地方廃棄物処理センターまたは既に予算補助事業となっているリサイクルプラザの再資源化機能は極めて重大であると思います。そこで、これらが担う再資源化事業は採算を度外視しても環境保全の立場で推進すべき性格のものと考えますが、そう考えてよろしいのか、それともあくまで独立採算で経済的に引き合う再資源化に傾いていくのか、どちらであるか、お答えを願います。
  211. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 廃棄物処理事業におきましては、従来、直接処理を要する費用とそれ以外のリサイクル等の費用とを比較しまして選択をしてきたという状況がございますが、最近の市町村の状況を見ますと、直接の費用以外の要素も考えて集団回収に助成をいたしましたり、分別収集に踏み切ったりというケースもふえてきております。しかしながら、経済性をすべて無視して資源化、技術的にできる範囲までとことんやるというところまでは来ておりませんで、やはりある程度経済性も配慮しながら合理的な範囲で再資源化のための努力を重ねていく、こんな段階であろうと私どもは考えております。
  212. 新村勝雄

    ○新村委員 どうもはっきりしません。あいまいなような感じを受けますが、循環型社会、環境保全型社会への大転換は、今要請をされておる最大の問題であると思います。経済原理を越えても成功されなければならない課題であると思いますが、国会提出までの間になお一層この問題について検討をいただくようにお願いをいたしたいと思います。  長官、お答え願います。
  213. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  委員指摘のとおり、日本の社会を環境保全型社会に変えるということはなかなか大変なことでございまして、それぞれまた痛みを伴うところもございますし、負担もあるわけでございますが、国民が、全員がその負担をそれぞれの立場で負担をしていくというようなことも必要かと思いますが、いずれにいたしましても大変大きな課題でございますので、私ども環境庁といたしましても、十分役割を果たしていくように努力をさらにいたしてまいりたいと思います。
  214. 新村勝雄

    ○新村委員 次は外務大臣にお伺いいたしますが、今湾岸においては極めて不幸というか遺憾な事態が進行いたしております。この事態を一日も早く収拾をして平和を回復しなければならないと思いますけれども、それにつけても考えられますことは、全世界がやはり平和を追求をしていくというその姿勢をあらゆる施策に盛り込んでいかなければいけないと思うわけです。  そこで、今回の問題について、ここでもしばしば繰り返されたように、あの問題の発端はもちろんサダム・フセインの無謀な覇権主義というかこれに基づくものでありますけれども、同時にまた、これを可能ならしめた条件がイラクにあるわけですよね。中東とすれば、あるいはいわゆる先進工業国ではない国があれだけの武力を蓄積をしたということについては、やはり世界も反省をしなければならない点があると思うのです。既に繰り返されたように、多量の武器を売り込んだ国がある。あるいは経済援助をした、そのことがやがて回り回ってイラクの武力になったという一面もあると思います。  そういうことを考えた場合に、我が国はこれからODAを初めとして、世界に平和的な手段であるいは経済的な手段で貢献をしていかなければならないわけですね。そういう場合に、やはり世界の平和ということを十分念頭に置いてそれらを進めていくことが必要だと思います。  例えば、最近のODAの実績を見ましても、イラクに対して約七千億円の借款、無償援助も含めてあるということでありますけれども、これもやはり考えてみれば、もろちん日本はイラクの軍事力を強化するためにやったのではありません。ありませんけれども、一国の財政の中に一定の資源を投入するということは、それはそれがめぐりめぐって戦力になるということは、これはないわけではない、あり得ることであります。そういうことを考えた場合に、やはり今後の、例えばODAの実施についてもそういう配慮を念頭に置くべきではないか。  大蔵大臣は先日ここで、日本はイラクに対して、イラクだけではありませんよ、対して、全く武器を売っておりませんということを国際会議発言されたそうでありますけれども、これは大蔵大臣に限らず、全国民が世界に向かって誇ることのできる一つの実績といいますか、だと思いますよ。そういうことを考えた場合に、やはりこれからの日本のあらゆる施策、対外的な施策、対内的な施策において平和主義を貫徹するということが極めて重要だと思います。  そういう観点から、まず外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  215. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ODAそのものは、我々の国もかつて援助を受けた国家でございました。そして、私どもの国民の自助努力によりまして今日の経済大国になってまいったわけでありますが、そのような過程の中で、世界でまだ貧しい国が随分多くある、その国々の国民生活向上あるいはインフラの整備、いろいろなことが要求されるわけで、我々がかつて外国から資金を借りたように、我々もまたその資金を回すということによって、地球社会全体の経済活動は向上していくように考えているわけでございますが、我々の考え方の基本は人道主義であり、相互依存の観念というものを強く持ってこの経済協力をやっていかなければならないというのが、原則の考え方であろうと思います。  その中で、今委員から御指摘のように、平和を目的としてきておる国家でございますから、提供したものが軍事に使われるというようなことがあってはならないというのは、もうお説のとおりであります。我々は目的を十分調査をし、それがその国の国民生活向上に役立つというものに限って協力をするということを原則にいたしております。
  216. 新村勝雄

    ○新村委員 今大臣が言われたように、我が日本も、かつては世界の好意といいますか、によって敗戦から立ち直ったことは事実であります。しかし日本は、少なくともその金を軍事に流用したということはないでしょう。しかし、現に世界の各国を見ると、そう言うと言い方は悪いかもしれませんけれども、国民所得が極めて低い、生活にも困るような国が核兵器の開発を急いでおるということも聞いております。そういう事実がやはりあるわけでありますから、ODAだけに限りません。対外援助、ODAを中心とする対外援助においても十分にその相手国の状況を調査をして、核兵器を開発をしようとしておる国等には、これは援助はしないという、まあ全然しないということではないですが、そういうことを念頭に置いてやはり政策を進めていく必要があるのではないかと思います。  そして、具体的に言うならば、ODAを実施するに当たっては、その国の核の査察を条件とするというくらいのことができないものかどうか、あるいはまた、核だけではなくて、例えば麻薬を栽培をして、これはまたその国の政権が半ば認めているということも聞いておりますけれども、そういう人間の、人類の生活にとって害悪を流すようなことを黙認をしている、あるいは国策とはしないでしょうけれども、そういうことを黙認をしている国に対しては、厳しくその政策を変更してもらうように忠告をする。あるいは核の拡散、兵器の拡散については、少なくとも日本の金でそういうことを、直接ではないにしても、間接にしてもそういうことに絶対使われないという保証をぜひとってからやっていただきたいというのが、これは国民の率直な願いではないでしょうか。  そういう点からして、いろいろそれを実施をすることについては手続や技術的な問題があるでしよう。それから外交上のいろいろな難しい点はあるでしょうけれども、そういうことを念頭に置いてこれからやっていただきたいわけでありますけれども、大臣はどうお考えですか。
  217. 中山太郎

    ○中山国務大臣 核物質の拡散、特に核兵器の拡散ということを、私ども被爆国である日本は最も好んでおらないわけでありまして、そのような国が核物質の製造をやる場合にも、それが兵器に転用されるのかどうかということをもちろん政府は調査をいたしますけれども、問題は、援助をしたものが、それがやがてそういうふうな兵器に転用されていくということだけは、政府としては国際原子力機関等とも十分連絡しながら最善の注意を払っていかなければならないと考えております。  一方、麻薬の栽培問題について先生お触れになりましたが、国連におきます麻薬の特別総会におきましても、世界でこの麻薬による被害というものは、人類が大変大きな被害をこうむっている。しかし、そのもとは一体何かというと、一般の農作物よりも麻薬を栽培して得る所得が農民にとって極めて大きいというところから、この麻薬栽培がなかなか撲滅できない、こういうことでございまして、日本政府は麻薬栽培をやっているような地域がある国家に対しては、麻薬撲滅のために農民の再訓練あるいは付加価値の高い農産物の作付のための協力あるいは援助、そのようなものをやって、人類の敵である麻薬の撲滅のために日本政府としては努力をいたしておるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  218. 新村勝雄

    ○新村委員 麻薬を含めるということを申し上げたわけでありますけれども、あくまでやはり日本の援助の政策あるいは基本的な考え方、思想というのは、世界の平和を推進するためのものであるということを強く念頭に置いていただかなければいけないわけですよ。そのためにはやはり日本が先頭に立って、今までやっちゃったことはしようがありませんから、これから先進国が絶対に武器の輸出はしない、日本は既に今まで武器の輸出をしないできたわけですから、自信を持って大きくこれを主張できるのは日本だけだと思います。ですから、その発言権を国際社会において強力に発揮をしていただきたいと思うわけです。そして、日本の、これは日本だけじゃなくて世界の援助あるいはODAが結果的に特定国の武力を育成することにならないように、そういう運動の先頭に日本は立っていただきたいということをお願いをしたいわけであります。これは直ちに実行することはいろいろ手続上問題があるでしょうけれども、日本外交の基本として、やはりこれは常に念頭に置いていただきたいと思うわけでございます。  そこで、話は若干変わりますけれども、核兵器の拡散、これが今一番心配になるわけですね。イラクにも核兵器があるというようなことも言われておりますし、中東にも、ある国にはあるということが言われておりますけれども、核拡散あるいは核兵器の開発をどう抑制、抑止していったらいいかという問題が今世界的な大変な問題であると思いますが、これについての大臣のお考えはいかがでしょうか。
  219. 中山太郎

    ○中山国務大臣 我々の国は非核三原則ということを原則にして、この国の国民は一つのコンセンサスを形成をいたしております。国際社会におきましても核の不拡散、これが一つの大きな理想でございます。  そういう中で、国際原子力機関を通じて、いろんな核物質を持っている国の核の生産施設の査察を行う。この査察を受けないという国もございますけれども、私どもはそのような国に対して、IAEAの査察を受けるべきであるという要請を強くいたしておりますが、私どもは、この核の不拡散を目的として、国際社会において、日本被爆国としての大きな理想を追求していかなければならない。また、今まで国連総会等の場におきまして、日本政府はそのような理想を強く訴えておるわけでございます。
  220. 新村勝雄

    ○新村委員 この問題については終わりますけれども、念のために最後にもう一回大臣から、日本のODAを初めとして対外援助等の対外的な日本の政策は、平和を基調とする憲法の精神に沿って、特定国の武力を育成するような政策は絶対とらない、また、核の拡散を防止をすることを念頭に置いて進める、そしてまた、武器の輸出等については、日本はもちろん今までやっておりませんから、日本を先頭として先進国も武器輸出をしないという、そういう先進国の合意を取りつけるような外交をこれから推進していくということについて、もう一回結論的にお答えをいただきたいと思います。
  221. 中山太郎

    ○中山国務大臣 重ねて申し上げますが、日本国のODAは、その援助を提供する国家が、その援助を受けて軍事大国化しないような措置を、実施に当たっては事前の調査を十分行って実施をいたしていくということをはっきり申し上げさせていただきたいと思いますし、また、一般兵器の拡散につきましても、移転等につきましても、これを公開すべきであるということを国連総会で私は昨年も演説をいたしております。我々は、この武器輸出三原則、厳重に守ってまいりました。が、世界には、兵器を輸出して国家として利益を上げており、会社として利益を上げておる国がたくさんあるわけでございまして、また一方、全面的にこれを禁止するようなことをさせるということは、一つの国が独立するための安全保障上の問題も反面また存在をするわけでございますから、我々は、一つの理想に向かって、我々の国家が持っております非核三原則あるいは武器輸出三原則、このようなものが世界に広がっていくように、一つの理想を追求していくべきだと考えておりまして、委員のお説と全く一緒でございます。
  222. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣の御決意を伺いまして、大変心強く感ずるわけであります。  そしてまた同時に、安全保障の面がありますけれども、これはやはりあくまでも国連を中心としたシステムによる安全保障を追求するということでなければなりませんし、そうしていけば、弱小国であろうとも不安を与えないで済む。システムによって守るんだという、そういうことを確立をしていけばいいと思うのであります。  そこで、あとは安保理の問題でありますが、国連が最初結成をされたのは、第二次大戦が終わったあの時期でありまして、東西ともにこれから長く平和を享受できるであろうという、いわばバラ色の幻想に包まれていた時代であろうと思います。そういう中で国連のチャーターができたのでありますが、残念ながら冷戦によって国連が機能しないという時代が長く続いたわけであります。長く続いて、そうしてまた冷戦がようやく解決をした段階で、突如としてイラクの侵攻が起こったということでありますから、そういう点では、やっぱり安保理がこういう本当の意味の危機管理をするという体制にはなっていないというふうにいろいろお答えを伺っておりますと感ずるわけであります。  例えば、イラクが侵攻したという場合に、安保理で討議をされるわけでありますが、しからばこの侵攻に対してどういうふうに実力で阻止をするかということについての手続なりなんなりが必ずしも整備していないというような感じがするわけでありますね。本来ならばチャーターにある国連軍を編成して、軍事参謀委員会をそこで組織をしてやるわけでしょうけれども、なかなかそうはいかない。そういうところから、確かに多国籍軍は安保理によってオーソライズされているということは言えましょう。そういう限りでは正当性を持っていないとは言えないと思います。思いますけれども、やはり、この安保理との関係で、法的にといいますかチャーターの上からいって、多国籍軍と国連あるいは安保理との関係がどういうものであるかということについての基礎づけがやや弱いんではないか、これが本当に国連軍であったとすれば、その正当性はさらにさらに強化されていったと思いますけれども、なかなかそこまでいっていないということなんですが、そこらについて、やはりこれから日本が国連の中で、危機管理についての国連の機能、これをさらに強化をするための役割が日本にあるのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  223. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年の国連総会におきまして、日本政府といたしまして、今までのような考え方もさることながら、これからは国連事務総長を中心に、危機が発生しようとしたときにあらかじめ予告的に警告をするべきシステムをつくることが必要ではないか、それに各国が協力をしていくという考え方がこれから必要になってくるであろう、日本政府としてはそのような考え方が必要であるということを国連総会の場で演説をいたしたことを私は記憶をいたしております。
  224. 新村勝雄

    ○新村委員 それからまた、国連のチャーターの中で、武力の行使というものがどういう規定をされているのか。もちろんそのチャーターは今回のようなケースについては武力の行使は否定をしていないというふうに大臣は答えていらっしゃるわけでありますし、まあ否定はしていないだろうと思いますが、国連のチャーターの中では、国連軍というケースが一つ、それから地域的な取り決めというのですか、そういった場合が一つ、それから正当防衛の場合には武力の行使が認められる、こういうことのようでありますが、やはりこれからの世界は、いかなる場合でも武力に訴えないという、そういう人類的な合意といいますか全世界的な合意が必要ではないかと思う。国連のチャーターでは、国際間の武力紛争についてどう管理していくかということが基本的な構想になっていると思いますけれども、国際間の武力だけではなくて、国内の武力についても、やはり武力の行使については絶対避けるべきであるという、こういう全世界的な、全人類的な合意ができませんと、世界の恒久的な平和がなかなか確保できないと思うわけです。  第二次大戦後の歴史を見ましても、国内の紛争、例えば革命勢力と時の政府との武力衝突、あるいは革命勢力に対して時の権力がこれを武力をもって抑止をするという、こういったことがしばしば、しばしばでもありませんが幾つかあった、そのことが国際問題に発展していくという事態が幾つかあったわけです。ですから、そういうことについて、これが国連の場で、国内の問題についてはこれは国連憲章ではなくて、武力の行使というとらえ方ではなくて、やはりこれは人権の問題ということになるんではないかと思いますけれども、この人権の問題ということであっても、いかなる場合でも武力の行使はしないという人間の、五十億の人間の全体の合意がなければいけないと思うんですよ。かつては主権国家は、常にとは言いませんけれども、政治の一つの手段として戦争に訴えたわけですし、また一国内では革命権というものが認められていた時代もあると思いますし、革命のためには武力もやむを得ないということも歴史の一段階においてはそういうことが認められていた時代もあったと思います。しかし、今はそういう思想は認めるべきではないし、その思想は認められないと思います。  そういうことで、国際、国内を問わず、政治目的の達成のために武力を行使することは不可であるという、そういう世界的な合意をやはり国連の場を中心にして形成をしていく必要があるのではないか、その先頭にやはり日本は立つべきではないかと思いますが、大臣はいかがでしょう。
  225. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員からいろいろと国連のこれからのあり方について高邁なお話を承りました。私どもも敗戦を体験した国家でございまして、この憲法の規定によって、再び戦争はやらない、戦争を放棄する、交戦権の放棄をやったわけでありますが、我々の国を守るための考え方の基本は、武力の行使を行わないという基本が私はあると思います。その中に我々の、国連憲章を遵守するという、日米安保条約の第一条にはそれが明記されておりますけれども、この国連憲章というものは、委員も御指摘のように、あの戦争が終わった時点で国連がつくられたわけでありますが、そのときに既に、今日の世界が共同しながら人類の共同の利益のために戦うといいますか行動するということが憲章によってつくられていたということは一つの達見ではなかったかと私は思っております。ただ、それに至るまでに安全保障理事会の運営をめぐりて、戦勝国で構成される常任理事国が拒否権を行使するということが行われてきた。そのためになかなか国連の機能が発揮できなかった。  私は、今日のようなこの常任理事国が拒否権を発動しない環境ができてきて、それぞれがいろいろと話し合いをする、こういう中で国連の四十五年前につくられた理想が今やっと花を開き始めたのではないか、私はそのように思いながら、日本政府としては、国連憲章が遵守される国際社会が樹立されることを心から念じていかなければならない、このように考えております。
  226. 新村勝雄

    ○新村委員 ぜひ大臣のその理想と、それから理想を踏まえた現実的な政策を国連の舞台を初めとして世界の外交の舞台で力を発揮していただきたいわけであります。  そこで今、湾岸の戦争あるいは侵略を抑止をする行動というのですか、戦争だと思いますけれども、これに対する和平への望みがあらわれていると思います。これについて、もうここで何回も繰り返されておりますけれども、ぜひ日本が指導的な立場に立って活躍をしていただきたい。日米基軸ということは、これはあるでしょう。アメリカに対しては日米基軸という関係があるわけですけれども、ソ連に対してはやはり隣人という、隣国という関係があるわけですから、その二つを問題の解決のために協力してもらうという、そういう仲立ちをするには日本が一番適任ではないかと思うのですが、そういう点で、やはり和平への曙光があらわれたこの段階で、もう繰り返しになりますけれども、ぜひ大臣の御活躍をいただきたいわけであります。  それと同時にまた、戦後の問題についても既に多くの方々が言及されておりますが、アメリカが多国籍軍の中核として、中核というよりはほとんど全部を占めているんでしょうけれども、中核として侵略の排除のために努力をされたという事実はあると思います。しかし、それだからといって、戦後の中東の安全保障あるいは中東の枠組みが一国の覇権主義によって支配されてはならないと思うのですよ。と同時に、あの地域が再び米ソの角逐の場になってはこれはまた困るわけでありまして、それを何とか抑えてアメリカあるいはソ連の両方の顔を立てながら戦後の枠組みにスムーズに移行していかれる、その先導役を日本が果たすことができないのかどうかということでありますけれども、大臣は、いかがですか。
  227. 中山太郎

    ○中山国務大臣 中東地域における日本のプレゼンスというものが、私は昨日も委員会で少し他の委員の方にお答えいたしましたけれども、過去の歴史の中に日本が国家としてあの地域に深いかかわりを持った時期というものはほとんどなかったのではないかと私は思います。そういう中で、石炭鉱業が疲弊をして、油を使うといういわゆる石油産業、石化産業というものが繁栄した戦後、ここから中東と日本の関係は急速に拡大してきた。そういう中で、我々は工業国家として、安い原油を石炭にかわって巨大なタンカーで日本のいわゆる湾岸の工業基地に横づけさして、そしてそこから工場へ原油を流し込むというような大きな構想で日本はこの中東の原油を六割、六五%依存するというような戦後の工業化の歴史をたどってきたと私は思います。その中に、日本はこの地域との関係をどのように強化していくかということがあの第一次石油ショック以来日本の大きな政策でもございましたし、民間の企業もまたこの地域の淡水化の問題等にも随分技術を移転していった。私は、そういう中で日本が受けた利益、日本が与えた利益とのバランスはどうかというと、日本の受けている利益がはるかに大きいと思うのです。それだけに、なかなか日本のこの地域におけるリーダーシップというものの確立が難しい、これは率直に私は国民全体に御理解をいただかなければならないと思うのです。  しかし、このような国連が中心となったような一つの平和への模索の時代が起こってまいりますと、この地域の紛争が終わった後での中東全体の長期の安定化のための安全保障の問題とか、あるいはまた経済の復興の問題とか、あるいは環境の汚染を排除していく問題とか、いろいろな問題が出てまいりますが、この我々の国の日本があの地域に協力できるものは、我々がかち得た経済力と技術力、それと生産管理能力、こういったものを提供しながら、ここに油を持った国、持たない国、またこの地域に一つの利権、石油利権を確立している企業群を持った国家、このような中で日本はみずからの得意とするところでこの地域の繁栄のために努力をしていくことができるかと考えております。
  228. 新村勝雄

    ○新村委員 いずれにいたしましても、今後の世界の秩序は、特定国の覇権によって維持されるものであってはいけないと思いますよね。同時にまた、今危惧されているように、あそこの場所が米ソの角逐の場になっても困るということです。やはり、今後の世界の秩序はシステムによる、当面これは国連中心ということでありましょうけれども、システムによる安全保障機構をつくっていく、中東においても、全世界においてもだと思います。そういった点で、ぜひ大臣の御活躍を御期待をするわけであります。  次に、厚生大臣いらっしゃいましたので厚生大臣からお伺いをいたしますが、先ほど廃棄物の問題でいろいろやりとりがあったわけでありますが、廃棄物の問題の核心は、やはり製造業者の責任、それからまた流通段階の責任、消費者の責任、それから行政の責任というようなものが合理的にその責任の度合いが配分されて、そうしてサイクルが円滑に進行していくという、そういう状況であると思うのです。ところが、今までの廃掃法というのは自治体にだけ過度な負担をかけて、製造業者あるいは消費者もやはり負担をしなければならない責任があると思うのですけれども、そういったものについての面が軽視をされていたということがあると思うのです。最近になって消費者に対しても厳しく分別を要求をするとかということがあります。しかし、そういう段階で一番欠けているのは、やはり製造業者の方々がもう少し責任を負担していただきたいということなんですけれども、そういった点についての大臣のお考えはいかがですか。
  229. 下条進一郎

    下条国務大臣 お答えいたします。  廃棄物の問題につきましては、ただいま委員から御指摘ありましたように、各段階全部がそれぞれ責任を分かち合ってこの問題に取り組んでいかなければならない、こういうことだと思います。  確かに、メーカーの問題につきましては、特に粗大ごみ、処理の不可能な大きなごみが盛んに今出ておりますが、それを製造の段階からいかに扱うか、その責任はどうするのか、また、その製造の中で、部品を最終的に回収するに適したような形に最初のところから配慮していくというような問題もございます。それから、流通の段階では、この前問題になりましたように、流通の各段階での過剰包装というような問題がございますし、そこらの配慮も必要でございます。  そして、今お話がありましたように、それらが現在の段階におきましては、その回収処理につきましてほとんど市町村に責任を負わせている。費用の問題でもそうでございます。そういうことでは、これから増大いたします粗大ごみを含めいろいろ一般の廃棄物全体にわたって円滑な処理をすることはなかなか困難でございますから、したがいまして、その一般の家庭から出る段階におきましても消費者がこの問題についての認識を高めて協力してもらう、こういう体制づくりが必要でございますし、さらにその後で、その物がただ捨てられることによって一層ごみが拡大することのないように、ごみの中でリサイクルの可能なものはリサイクルに回していけるようにする。そして最終的には公害に支障のないような形での焼却炉の開発なり、また工夫をしてこれを処理していくというようなことが全体的な循環の中で考えていかなければならないことでございまして、その意味において、現在までは善意に期待をするというような体制でございますので、これではなかなかうまくいかない。ある意味ではやはり責任をその各部署部署において自覚していただいて、それに対して厚生省といたしましても所要の御依頼を申し上げて御協力を願う、そういう体制づくりをしていきたいということで法案の準備をしているわけでございます。
  230. 新村勝雄

    ○新村委員 あと一問お願いしますが、それは今深刻になっている看護婦を含めたいわゆるパラメディカルの方々の不足、それからまた、こういう人たちを養成をする教育機関が極めて不備であるということなんですね。そのことについて、第一線、特に診療所あるいは小規模病院においては看護婦の確保が非常に難しいわけです。ところが一方では、看護婦を希望する人たちがないわけではないんですね。というのは、私の近所での、これは私が実際に調査をしたんですが、看護婦学校に希望する人たちが定員の二倍、三倍とあるわけです。ところが学校の施設がもちろん制約されておりますから、心ならずも落としてしまうということがあるわけです。ですから、少なくとも希望者には全部入ってもらって准看なり正看なりの資格を取ることができるような看護婦養成機関あるいはパラメディカルの要員の養成機関、これを充実をすることが必要ではないかと思うのです。ところが、現状ではほとんどのところが医師会立、何々市の医師会立あるいは場合によっては農協で病院をやっているところがあります、そういうところの農協立の看護婦養成所ということであって、公立、国立のところは地方に行きますと極めて少ない、例外的にしかないということです。そこで、やはり看護婦充足のためには国公立の施設を飛躍的に拡充をする必要があるのではないかと思います。  医療というものは、特に終末ケアということを考えた場合には、その終末ケアの支え手というのは、医者よりはむしろ看護婦なんですね。医者は時々来て、一日に一回来て二、三分診て、それで看護婦に指示を与える、この患者に対してはこういうことをやってくれという指示を与える程度であって、その患者を看護をし管理をしということは全部看護婦がやるわけです。ですから、終末ケアに至っては、この患者はもうだめだということになりますと、ほとんど医者は診ない。後は一切看護婦に一任をして終末を迎える、こういうことなんです。  ですから、いかに看護婦というものが医療にとって重要であるか、医療の支え手は実際は看護婦なわけですから、この看護婦の確保、それから看護婦さんに対する処遇の改善、これについてはぜひとも発想の転換をしていただいて、御努力を願いたい。  それからまた、養成機関についても全力を挙げてその拡充に努力をしていただきたいと思うわけでありますけれども、これはいかがでしょう。
  231. 下条進一郎

    下条国務大臣 看護婦のあるいは看護職員の責任の重大さ、またそれへの信頼、これがまた患者の医療に非常に大きなウエートを占めているということは、先生おっしゃるとおりでございます。  今試験の問題のお話が出ましたけれども、この試験はかけ持ち試験もできるわけでございまして、その意味で、倍率だけとらえて需要者の数が実際供給と見合ってどうなのかということを即断はできないのでございますが、それが一つでございますし、それからもう一つは、やはり大変高度の医療の補助者であるということでありますから、希望者をそのまま全部合格させてしまうというわけにもまいりませんので、その意味ではやはりスクリーンをするということは避けられないと思います。  いずれにいたしましても、非常に需要が多く、そのための供給が不足しているということで、マンパワー対策というもので、厚生省といたしましても、保健医療、福祉関係のマンパワー全体にわたっての人員の確保についての対策を今進めておりますし、その中でも看護職員の充実については、今のお話のような点を考慮しながら対策を講じているわけでございます。  また、待遇等の問題につきましても、もう既に、この予算の中で御審議をいただくわけでございますけれども、画期的な待遇の改善を図っておりますし、また、養成に対してのいろいろな施設あるいはそれの補助等についての手当てもしておりまして、特段の増強の取り組みをしているわけでございます。
  232. 新村勝雄

    ○新村委員 ぜひ大臣の御努力をお願いをいたしたいと思います。  終わります。
  233. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて新村君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、まず初めに湾岸支援九十億ドルに対しますこの財源問題についてお伺いしたいと思います。  御承知のように、この二月の十五日、党首会談におきまして、「湾岸地域における平和回復活動に対する我が国の支援に係る財源措置について」、総理の方から四項目にわたりましてこの財源措置が示されたわけでございます。また、みずから予算修正などの措置を明らかにされたわけであります。  その中で、防衛費につきまして、「防衛関係費(国庫債務負担行為に係る平成四年度以降の支出予定額を含む)の減額により約一千億円を確保する。」このように明確にお述べになっておられるわけでございます。  その後、この十八日、参議院の外交・総合安全保障調査会におきまして、防衛庁長官は、来年度以降復活されるととれるような答弁が行われておる。これは非常にもうゆゆしき問題でございまして、少なくとも党首会談におきまして示されたこの項目でございます。これが政府部内から、また復活をするというような、それにとれるような、そういうような発言があったということ、これはもうまさに、それが事実であるとするならば、これは本当に国民を欺瞞するのも甚だしいと私は言わざるを得ないと思うのですね。  まずそこで、この問題につきまして、改めて政府の見解につきまして確認したいと思うわけでございます。この防衛費の一千億円を実質的に削減されるのかどうか、これをひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
  235. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の防衛費の削減措置につきまして、私の参議院における発言があたかも実質的な削減につながらないというようなお疑いを招くようなことになりました。しかし、決してそうではございませんで、今回の防衛費の削減措置は大変厳しいものと私ども受けとめておりますし、しかし、また今委員指摘のように、これは公党間のお約束、またそれを踏まえて、政府といたしましても実行した措置でございますので、これは何としても、厳しくてもそれに従ってやっていかなくちゃいけない、こう考えているところでございます。  そこで、今回のその措置につきまして、政府としての受けとめ方、どのように受けとめておるかを御答弁申し上げたいと存ずるのでございますが、まず平成三年度の防衛関係費につきましては、今回の措置により契約ベースで約一千億円、一千二億円でございますが、の削減になります。そうしてこの結果、当初政府案に比べまして、今後四年間で支出されていくはずの経費が、平成三年度の予算編成という時点において見ますと現実に約一千億円減る、こういうことになります。  次に、いずれにいたしましてもこの計画、中期防衛力整備計画と申しますのは、五年間の事業とそれから総額の限度として定めておるものでございますので、その実施に当たりましては、各年度ごとの予算の編成に際しまして、そのときどきの事情を勘案して精査した上で、一層の効率化、合理化に努めまして、極力経費を抑制するよう努力しつつ決定されるものでございます。  また、この新しい中期防衛力整備計画に盛り込まれております三年後の見直しに当たりましては、「その時点における国際情勢、技術的水準の動向、経済財政事情等内外諸情勢を勘案し、」と書いてあるところでございますが、そういった内外の諸情勢に合わせまして、今回の一千億円の削減という措置を重要な要素として勘案してまいりたい、このように政府として考えております。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、この新中期防の、この計画の総額二十二兆七千五百億、これから一千億円を間違いなく削減されるのかどうか、こういうことであります。もう一度御答弁願いたいと思います。
  237. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の一千億円の削減というものが新中期防の執行に影響を与えるということは事実でございます。そうして、計画期間中各年度年度の予算の編成に当たりましては、何と申しましょうか、今回の一千億円削減の措置というものを念頭に置きながら実施してまいることになりますので、結果といたしまして今回の措置が総額に反映される、こういうことになるわけでございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 重ねてお伺いいたしますけれども、二十二兆七千五百億から間違いなく一千億円削減される趣旨と理解していいのですね。
  239. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、結果として今回の一千億円の削減措置が総額に反映されることになる、こういうことでございます。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 官房長官にお伺いしたいと思いますけれども、ただいま防衛庁長官の答弁で、この一千億円の削減ということが明確に示されたんじゃないか、このように私は思うわけでございますが、この防衛庁長官の答弁をどのように官房長官はお受けになっているか、聞違いなくこの一千億円が削減されるのかどうか、重ねてお伺いしたいと思います。
  241. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 防衛庁長官の申したとおりであります。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 この一千億円の削減、これにつきましては先ほども御答弁が両大臣からあったわけでございますが、この公党党首会談におきまして、総理もここできちっとみずからがお示しになった額でございます。そういう意味におきまして、今後いささかもそういう誤解を招くような、そういうことがあってはならぬ、私はこのように思うわけでございます。政府として信義を尽くして、間違いなく国民に約束をされたその削減をきちっとやっていただく、これはもう当然のことであると私は思います。  最後に、官房長官から決意を伺いたいと思います。
  243. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 ただいま防衛庁長官が申し上げたとおりでありまして、政府としては誠実に約束を守っていくつもりであります。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、次の問題に移りたいと思います。  まず、湾岸問題でございますが、御承知のように停戦になるのか地上戦に突入するのか、もう極めて重大な段階に今差しかかっておるわけでございます。そのかぎを握る今回のイラクに対するゴルバチョフ・ソ連大統領の和平提案というものがあるわけでございますが、当然我が国としては、アメリカを初めとしていろいろと情報も交換されておると思うわけでございますけれども、まず外務大臣にお伺いしたいと思いますが、この提案につきましてどのように受けとめておられるか、お伺いしたいと思います。
  245. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今回のゴルバチョフ大統領の和平への提案につきましては、ソ連政府から公式な発表がございませんので、公式発表のない時点で日本政府としてのコメントをすることは僭越であるということで、お控えをさせていただきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、激しい空爆の続いている中で、地上戦闘が始まろうかというような状況の中で、一つの和平への端緒をつくられた。もうあくまでもこれはイラク政府の決断によるものでありますけれども、私ども日本政府としては、サダム・フセイン大統領が一刻も早く安保理の決議六百六十号を即時実施をし、撤兵されることを心から期待するものでございます。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 今大臣もおっしゃったように、六百六十号、これを受け、イラクが無条件でクウェートから撤退をする。本当にこの悲惨な状況というものをマスコミを通じてみんながかいま見、本当に心の休まる間はない、このように思うわけでございます。本当にだれしも平和を願っておるわけでございます。  そこで、イラクが無条件で撤退する、こういう意思が明確になった場合は、表明されたならば、多国籍軍は直ちに攻撃を中止して停戦を行うべきだと、私はこのように思うわけでございます。大臣はこの点につきましてはどういうお考えをお持ちでございますか。
  247. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この一月二十九日に、アメリカのベーカー国務長官とソビエトのベススメルトヌイフ外相との共同声明が出ております。それには、イラクがクウェートから撤退する旨の明白なコミットメントを行い、かかるコミットメントが安保理諸決議の完全履行につながる即時かつ具体的な行動によって裏づけられるのであれば、戦闘行為の停止が可能である旨を実は述べておるわけでございまして、ここに米ソの合意ができ上がっていると私は判断をいたしております。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 一日も早い停戦を願うわけでございますが、いずれにしても早期和平、これが期待されておるわけでございます。そして、この停戦ができた、こうなったとき、我が国のいわゆる貢献ということ、これは非常に期待といいますか役割というものは重いと私は思うわけでございます。そういう意味で、場当たり的な準備であってはならぬと私は思います。そういうことで、いち早く我が国が率先してこの問題に対処しなきゃならないんじゃないか。その中で最も大事なことは、中東の包括的な平和の枠組み、こういうことが非常に大事だと、このように考えるわけでございます。  この国連のリーダーシップによります中東和平国際会議の開催、これは大事であろうかと思いますが、今後の中東の和平といわゆる安定、どのように確保していくか、この点について外務大臣はどのようにお考になっておられるか、お伺いしたいと思います。
  249. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この湾岸地域に平和が回復された暁には、この地域の諸国の努力を支援しながら、中東地域全体の安定と繁栄のために日本は長期的に協力をしていかなければならないと考えております。特にこの地域の経済の復興、また、いわゆるパレスチナ問題がこの地域にはございます。こういうふうな長い歴史の中で解決を見なかった問題、この問題をこの戦火がおさまったときに解決するために国際社会がどのように協力をするか、私はここが非常に大事なところであろうと思いまして、この問題をとにかく避けて中東の長期的な安定は考えられない。こういう意味で、日本政府はかねてからパレスチナ問題の解決に、イスラエル政府に対しても、このパレスチナの民族の自決による国家の建設、またパレスチナのPLOのアラファト議長に対して、私は、イスラエル国家の存立を認めるべきである、そしてテロをやめるべきだということも言ってまいりましたが、そのような中で、私どもはこの地域のこれからの長期的な安定のために、武器の管理、軍備管理と申しますか、あるいはまた長期の安全保障政策、そういうものについて関係各国と協力をしなければならないと考えておりますが、日本政府といたしましては、既に渡辺務審議官に周辺国との協議に出発をさせるように命令を出しております。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣の方からお考えになっておられる点をお聞きしたわけでございますが、この中東のいわゆる平和のそういう枠組み、また戦後復興に対する我が国対策というもの、これはやはり政府案を早急に取りまとめる必要があろうかと、このように考えます。大臣はその点についてどのように取り組んでいかれるか、お伺いしたいと思います。
  251. 中山太郎

    ○中山国務大臣 周辺国に対しましては、ただいま申し上げましたように、渡辺務審議官に出張を命じておりますし、小和田外務審議官はヨーロッパの各国の担当者と協議のために既にヨーロッパに出ておりまして、私どもといたしましては、できるだけの政府として努力を現在から続けなければならないと考えております。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 この戦後復興につきましては、これは何といいましても資金といいますか、これがもう非常に大きなものが要求されるんじゃないか、このように思うわけでございます。我が国としましても、御承知のようにこれだけの大きな債務もございますし、財源があるのかといえば、非常に厳しい状況じゃないかと考えるわけでございます。当然そのように世界から要求されるわけでございますが、この点につきまして、資金対策につきまして、大蔵大臣はどういう心構えを持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  253. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、本当に私どもが祈るような気持ちで、イラクが即時撤退の意思を表明し、かつその意思が明確にあらわれるような行動をとってくれることを願っておりますが、現実の問題として、今後の状況がどう変化をするか全くわからない状況であります。そして、この湾岸に平和が回復をいたしました後に、関係地域の復興にどれだけの経費がかかるものか、今日では全くわかっておりません。  ちょうど一月の二十日から二十一日にかけましてニューヨークでG7が開かれたわけでありますが、この時点におきましても、七カ国の財政の責任者たちとして、平和が回復した後におけるコストまで到底論議をする状況ではございませんでした。と申しますよりも、八月二日以来の状況の中で、ついに侵略した地域から立ち退かないイラクを実力によってクウェートから排除しようという行動が起こった直後の状況の中で、そのためのコストすら実は到底論議のできる状況ではなかったわけであります。それだけに、現時点において財政当局としてと言われますならば、確たる論拠を持った数字を申し上げる状況にはございません。ただ、当然のことながら、ODAを駆使する方法もありましょうし、さまざまな手法を講じていくことになろうと存じます。  同時に、この機会に申し上げておきたいことは、東ヨーロッパにおける劇的な変化が生じましたとき、欧州復興開発銀行というものが論議の対象として出てまいりました。我々もこの構想に賛成をしたわけでありますけれども、間もなくこれは誕生することになりますが、東ヨーロッパの変化が生じましてから新たな国際金融機関としての欧州復興開発銀行が創設されるまでに約二年の歳月を要しております。その間に状況は刻々変わりました。こうしたことを考えてみますと、まさに私見でありますけれども、私はやはり現に存在しております国際機関、例えばIMFあるいは世銀、こうした国際的にでき上がっております仕組みを、しかもそれぞれに日本はその構成国として重大な役割を果たしておるわけでありますから、こうした機関の中においてまず我々が何ができるかから議論をしておく必要があるのではなかろうか、今日そのように考えております。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 この資金の問題が極めて一番核になる問題でございますし、十分なひとつ政府として今後のそういう対策をお考えになっておく必要がある、このように思います。  それで、これはちょっと添えて申し上げておきたいと思いますが、既存のそういう機関を利用される、それも結構だと思いますが、そこで、絶えずこれは問題になっておるわけでございますが、いわゆる国連あるいは国際機関におきます日本人職員の問題でございますが、今おっしゃった機関、IMFをおっしゃっておりますが、私のデータでは、IMFを初めICAO、国際民間航空機関、これは金融の問題ではありませんけれども、一応国際機関として申し上げますけれども、万国郵便連合、世界気象機関、国際海事機関、世界知的所有権機関、今申し上げたIMF、国際復興開発銀行、国際開発協会、国際金融公社、それからガット、これは幹部職員は一人もいてないですね、日本は。私はいろいろな、後で申し上げようと思いますけれども、今後は国連あるいは国際機関を本当に重視して、本当に我が国としてそれ相当の働きを展開しなけりゃならぬと思うのですね。そういうときに幹部職員が、これだけの大きな国際機関であっても、一人もおらない、こういう現状なんですよ。  それからさらに、国連職員にいたしましても、現在日本は九十一名ですね。分担率というのはアメリカの次でしょう。これだけしかいてない。ですから、望ましい職員の範囲として、最低でも百五十二人、上限では二百六名、中位点をとりましても百七十九名、このぐらいなけりゃいけないのですよ。それでもこういう状況なんですよ。  ですから、今後、今申し上げた国際国家の中で我が国の占める立場というものは、経済的にも大変な立場にもうなってきている。そういう中で、いわゆる我が国のそういう職員が少ないということ、どう思われるか、今後またどう改善されていくか、この点についてお伺いしたいと思います。
  255. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連及び関係機関における日本人の職員の数が少ないという御指摘は、そのとおりだと思います。率直に認めたいと思います。  私も外務大臣に就任してすぐに国連総会へ一昨年出まして、まず会ったのが明石という国連事務次長であります。それで、日本政府は国民に納めていただいた税金から拠出金の額にすると世界第二位ぐらいの額を拠出している、しかし職員は比例しているかということをまず質問をいたしました。しかし、残念ながら職員は今委員指摘のように非常に少ない。それはどういうことかということを、理由をただしましたところ、幾つかの理由が私に説明をされました。  一つは、まず、我々の国が国連へ加盟したのは、国連が設立されてから相当時期がたっておったという問題が一つございます。そして、主だったところは戦勝国がこの人事権を握っておったという現実の問題がございます。そこで、国連に加盟後、日本の職員もだんだんふやしていくように努力をいたしましたけれども、初めの間はどちらかといいますと為替の関係で、給与の面でも国連職員の方がニューヨークの総領事館の人間よりもコストが高いというケースがある。ところが、円高になってまいりますと、これがまた変わってきております。ここに一つの問題点がございます。国際機関に勤めると給与が下がる、ここに一つの問題がある。  それからもう一つの問題は、言葉の問題でございまして、少なくとも二カ国語、三カ国語を流暢に操り、国際法を習熟したヨーロッパの人たち、こういうふうな教育を受けた人たちと、日本の戦後育ちのいわゆる国際機関で働いている人間とのハンディキャップというものが能力的に現存していることは否めない事実でございます。  しかし、さはさりながら、今回国連難民高等弁務官になられました上智大学の緒方貞子教授、これはもう国際社会から見事に推薦されて八代目の高等弁務官は就任されましたし、WHOの事務局長の中嶋先生もこれまた日本人でございまして、私どもは、できるだけ日本人の職員が国際機関にふえるように、政府としては各国と協力をしながら努力をしているということをこの機会に申させていただきたいと思います。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 今私、一例申し上げたわけですが、これはDレベル以上の幹部ということで、そういうガットであろうがIMFであろうが、今申し上げたこれは本当に非常に重要な機関ですね。こういうところに人材といいますか、おらないということ、非常に残念に思うのですね。これはひとつ今後政府全体として努力をしていただきまして、きちっとそういう有能な方がどんどんとまた出ていただくように大いにひとつ努力をしていただきたいと思うのです。大蔵大臣、このことにつきましてお伺いしたいと思います。
  257. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今たまたま外務大臣のお口から名前の出ましたWHOの中嶋さん、西太平洋地域の事務局長につけますとき、私はちょうど厚生大臣のころでありました。そしてその当時、今外務大臣から述べられましたようなハンディの中で、十分その任にたえ得る人であるということを各国に理解させることに非常にてこずりました。幸いに彼の場合にはその後能力を買われ、今日がございます。  ただ、その中で非常に私は問題だと思いますのは、例えばせっかくアジアのコミッショナーとしてだれかが着任をした。その人のいる場所を守っていき、育てていき、より上のポストにつなげる努力というものをバックアップする姿勢は必ずしも我が国は十分ではないと思っております。こうした点にも我々が今後考えるべき要素があろうかと感じておりまして、委員の非常に適切な御指摘を受けました機会に、今後院におかれましても、こうした場面における日本人職員のより高いグレードを目指す努力に対しサポートをお願いを申し上げたいと存じます。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 限られた時間でございますので、ポイント、ポイントをお伺いしていきたいと思います。  今回の湾岸支援につきまして、GCCのところに拠出をしたということになっておるわけでございますが、国民の理解として、今後やはり国連中心に事を進めていくべきだと私どもは考えるわけでございますが、今後そういう受け皿をぜひつくるべきじゃないか、これについてどうお考えかということが一つ。  それから、今後はさらに国連の機能というもの、これを本当に高めなきゃなりません。あらゆる点で今後は改革をしなきゃならぬわけですね。そういう中で、例えば一つは我が国の敵国条項、これなどは何回もまた申し上げておるのですけれども、これなんかもやはり政府として真剣な努力をしてもらわなきゃなりませんし、国連改革というものにつきまして、国連総会のときにも我が国として一遍改革案を提出するぐらいのそういう決意また準備があってしかるべきじゃないか、このように考えるわけでございます。その点ひとつ簡潔にお伺いしたいと思います。
  259. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連憲章におきます旧敵国条項が存在しておりますことは、国連に既に加盟してもう二十数年たちました、もっとたっておると思いますが、まことに平和国家として残念に思っております。  昨年の秋の国連総会で日本政府としてこの敵国条項の廃止を要請をいたしております。これを廃止するためには、憲章改正委員会が設置されて、そこで合意がとられて、そうして安全保障理事会の常任理事国のすべての国が同意をし、総会の三分の二の議決がなければこれがなかなか成立をしないということでございまして、私どもはこれから積極的にこの旧敵国条項の解除に向かって国家として全力を挙げて努力しなければならないと考えております。
  260. 近江巳記夫

    ○近江委員 今申し上げた国連のそうした改革しなきゃならない点、ひとつ大胆に今後取り組んでいくべきであるということを重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、さきの国会で三党で約束したPKOの問題があるわけでございますが、この組織づくりのためのいわゆる法案、この準備等々、これに今どれだけ取り組んでおられるか、当然これは停戦後いろいろな形でなってくるわけでございますので、そういう点、現在の取り組み状況、また今国会に提出をされるのかどうか、それにつきましてお伺いしたいと思います。
  261. 中山太郎

    ○中山国務大臣 官房長官中心内閣官房でこれを所掌することに閣内では合意ができておりまして、これから作業をすることになろうかと思いますが、問題は三党合意の覚書、これを中心に三党の政策の担当者の間でいろいろとこの法律に対する解釈あるいは考え方というものの整合をしていただきまして、政府側にもひとつまたお示しをいただけば大変ありがたいと考えております。
  262. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後法案の作業ということになってくるわけでございますが、この合意におきましても自衛隊は一切派遣しない、このことを我々としては言っておるわけでございます。自衛隊とは別個に国連の平和維持活動に協力する組織をつくる、そのことを重ねてここで申し上げておきたいと思いますが、外務大臣としては、この合意の特に自衛隊は一切派遣しないということについての約束、これにつきましてはどういうように受けとめられるか、変わりがないかどうか、ひとつ大臣にお伺いしたいと思います。
  263. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年御審議をいただきました国連平和協力法、この法案はいわゆる不成立に終わったわけでございます。そういう中で、この国会の場におきまして三党の責任者の間でいろいろ今後のあり方について覚書の交換がされたわけでございまして、政府としては、その覚書がさらぬ整備をされまして具体的な御意見として政府側に御要請があれば、それに沿った努力をしなければならないと考えております。
  264. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと日ソ関係もいろいろ聞きたいと思っておりましたが、時間がありませんので、関連で我が党の竹内君がやりますので、そこへ譲りたいと思いますが、何点かお伺いしておきたいと思います。  一つは、この湾岸戦争で外交日程というものが相当いろいろな点で影響されると思うのですね。そういう点で一つは、三月ブッシュさんが来るというような話もあったようでございますが、それがどうなっておるか、それから四月のゴルバチョフ大統領の訪日は、予定どおり来られるのかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  265. 中山太郎

    ○中山国務大臣 アメリカのブッシュ大統領の訪日につきましては、私が一月十四日に大統領とお目にかかったときに、大統領御自身から自分は訪日を楽しみにしているという言葉がございましたから、私は大統領の訪日は既定の事実というふうに考えておりますが、国際情勢の変化によって変動があるかもわかりませんが、しかし大統領自身がそうおっしゃったわけでありますから、私はそのままお受け取りをして海部総理に報告をいたしました。  なお、ゴルバチョフ大統領の訪日につきましては、私が先日モスクワでゴルバチョフ大統領とお目にかかりましたときに、大統領御自身から四月の十六日から十九日の間に訪日をさせてもらいたい、こういうお話がございまして、先般、二月の十七日に行われました小和田外務審議官中心としたソ連側との協議の中で、大統領の訪日というものの日程はそのままのスケジュールで作業が進められており、ソ連の外務大臣がそれに対応するために三月の末に日本に来られて日ソの外相協議を開くことに相なっております。
  266. 近江巳記夫

    ○近江委員 ゴルバチョフ大統領の訪日があるわけでございますが、懸案の北方領土の問題、現状におきましては余り期待できないんじゃないかという、そういう悲観論も出ておるわけでございますが、外務大臣の見通しといいますか、どういう感触か、お伺いしたいと思います。
  267. 中山太郎

    ○中山国務大臣 北方四島の返還は、国会の数次にわたる御決議もございますし、五千万人に上る国民の署名が行われてきた一つの大きな民族の悲願でございます。私は、大統領に対しても、大統領が訪日をされるときに大統領として決断をされることを心から期待をしておりますし、日本政府としても返還のためにできるだけの努力をいたしたい、このように申しております。
  268. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、原発のことについてお伺いしたいと思いますが、きょう、これはマスコミから出ておるわけでございますが、柏崎原発二号機、原子炉が自動停止、蒸気タービン系のポンプの圧力が低下しておる、こういう報道、ニュースが入っておるわけでございますが、美浜二号に続きまして、これは全然また性質が違うわけでございますけれども、いずれにいたしましても今後究明しなければならない問題でございますが、自動停止がある。こういうことで今後のエネルギー問題を考える上におきましても、原発の相次ぐこういう事故というものは、本当に国民全体にとりましても非常に心配の大きな焦点である、私はこのように思うわけでございます。  それで、一つはこの柏崎の件につきまして簡単に御報告いただきたいこと。  それから、もう時間がありませんのでまとめて申し上げますが、先般来政府としても調査委員会もつくられ、いろいろな指示も出していらっしゃるわけでございますが、いろいろ調査をやってまいりますると、いわゆる原発の比率、これが関電では四〇・五%、九州電力では四〇・二%、四国では三八%、東京電力では二八・七%、中国電力二五%、こうなっているのですね。  いわゆるモニターの点で二〇%数値が上がれば停止をするということはおっしゃっているわけでございます。関電の副社長ですか、クレームを言って異論を唱えて後でまた謝罪されたということもございますが、そこには絶えず経済性そしてまた安全性、これがてんびんにかけられておる。だんだんこの比重が高まってきますと、やはり何といいましてもその稼働といいますかそちらに頭がいく、比重が高まれば高まるほど。したがって、安全性はシビアに、うんと力を入れなきゃならないと言いながらもそういう状況になるわけですね。ですから、今後この原発の推進ということ、長期エネルギーの需給計画を見ましても、今後四十基つくっていかなきゃならぬというようなことでございます。  こういう点で、この見通しをつくられました稲葉さんでしたか、あの人自体も、これはひとつもう一度見直さなければならぬということもおっしゃっておるようでございますし、今後の需給見通しにつきまして、今もう一度そういう見直しをする時期に来ておるんじゃないか、安全性というそういう点からたたいていった場合、我が国のエネルギーという点におきまして原発の占める位置づけというものにつきまして、今ここで本当に真剣にもう一度見直すときが来ているんじゃないか、このように思うわけでございます。  以上二点、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  269. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 大臣のお答えの前に、事実関係だけ簡単に報告させていただきます。  まず、東京電力の柏崎刈羽発電所の二号機の停止でございますが、本日の午前六時二十四分ごろに、これは原子炉ではなくて発電機のタービンの方でございますが、タービンの油圧が下がったという警報が出ましてタービンが自動停止をし、それに伴って原子炉が自動的に停止をした、こういう事象でございます。原因については、現在調査中でございます。  それから、美浜の二号機の損傷事故について現在調査委員会の設置をし検討している状況でございますけれども、この件につきましては、原因、対策、それから今後の原子力発電所の安全確保対策に反映すべき事柄について専門的、技術的に検討を行うために特別委員会を設置をして、昨日初会合を開いて原因の究明に乗り出したところでございます。これらのいろいろな、金属材料あるいは非破壊検査、原子炉工学、放射線等、その各方面の権威者を集めまして、十八名の専門家から成る委員会をつくったわけでありますが、それらの先生方の専門的な知見を伺いながら徹底した原因究明を図っていきたいと考えております。  そして、原因究明をされますまでの間、既存の発電機の、同じようなタイプの発電機の運転につきましては、慎重の上にも慎重を期するという観点から、暫定的に当面講ずべき措置を非常に慎重にやるように、データを詳細に監視をしておりまして、二次冷却水のデータの方にいささかでも有意な差があらわれたというような段階では直ちに原子炉をとめるようにという暫定的な措置を各社に指導したところでございます。  私からは以上でございます。
  270. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 まず第一に、御質問にもございましたエネルギーそのものとしての原子力というものをどう考えていくかというような基本的な問題にもなろうと思いますから申し上げたいと思うのでございますが、これは、やはりこの十年間というもののエネルギーに対する世界の対応というものは大きく大きく変化してきているような感じがいたします。  例えば石油そのものでも、第一次石油危機のころでございましょうか、あのころの私どもの使っておった石油量というのは七〇%を超えておった、現在ではもう既に五〇%ちょっとというところでございましょうか、もうそれも割っていくような状況にございます。そういうような方向づけの中で考えますと、何といいますか、石油のみならず、今私も石炭問題も取り組んでおりますが、一時期は五千万トン以上生産しておった国内炭も、今や千万トンをどうするのかというような大きな課題にまでなってまいりました。  そういう中にあっての原子力そのものの平和利用というものは、もうなかんずく今から真剣に、ただ、委員がおっしゃいましたように、この問題には実に細心な注意を払って、払う以上にまで払うという気持ちでこの問題は考えていかなければなるまい、このように考えているわけでございまして、まず今般の湾岸危機、さらには地球環境問題等の最近のエネルギー情勢をめぐる諸情勢というものを見たときに、エネルギーの安定的供給というもの、とりわけ非化石エネルギーへの依存度の向上を図るということは必要ではないか、このように考えるわけでございます。特に原子力発電は、供給の安定性、経済性あるいは環境問題などにおける負担などの面ですぐれた電源でございまして、電力需要が増大する中で我が国にとりましては必要不可欠なエネルギーであると感ずる次第でございます。  ただ、今回の美浜発電所の二号機の事象あるいはまたけさほどの問題でございましょうか、私はまだ確実な報告は受けておりませんが、警報が鳴ったというだけでもすぐにストップを作動するという形を、私はこの間もエネルギー庁の方にも下命を申し上げたのでございますけれども、そのような形で、一応いろいろな形で事象が起こることは間違いはない。出てくる。それだけにこの問題は真剣に、なおかつナーバスに至るまで考えなければならない。神経質にまで考えて安全性というものは確保されるものだ、このように私どもの心の中で食いとめておくべき問題ではないかと考えるわけでございまして、今後とも安全確保には最大限の努力を払っていくということを原子力開発の問題点としては進めてまいりたいという考え方でございます。  以上でございます。
  271. 近江巳記夫

    ○近江委員 じゃ、山東長官も来ていただいておりますので、一言。
  272. 山東昭子

    ○山東国務大臣 お答えいたします。  今回の事故を教訓といたしまして、万全の安全対策が講じられることが大切だと考えております。しかし、我が国のエネルギーの安定供給の面からあるいは環境影響の面からも申しまして、クリーンなエネルギーとして原子力発電は今後とも推進してまいる所存でございます。
  273. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ譲ります。
  274. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、竹内勝彦君から関連質疑申し出があります。近江君の持ち時間の範囲内でこれを許します。竹内勝彦君。
  275. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 湾岸戦争の問題に関してまず聞いておきたいのですが、目まぐるしく状況がいろいろと変化する中で、ソ連の新提案そしてそれに対する各国の反応、特にイラクの対応というものが、これが一番注目されるところでございますけれども、現在ただいまの時点におきまして、外務省としてどういう情報を得ておるのか、まず御説明いただきたいと思います。
  276. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 まず、いわゆるソ連提案なるものにつきましては、けさほどから大臣も何回か御答弁でございますけれども、私ども、複数の国との意見交換を通じましてその基本的な内容を承知しておるところでございます。  イラク政府は、これをタリク・アジズ外相がバグダッドに持ち帰りまして、革命指導評議会をやり、その結果、近くアジズ外相をこのイラクの指導部の回答を伝達するためにモスコーに派遣するという決定をいたしまして、それがイラク国営放送でけさほど放送をされました。その後いろいろなニュースがございますけれども、今のところアジズ外相がどういう状況になっておるのか、私どもとして最終的にまだ確認をしておりません。
  277. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこでお伺いしておきますが、二十一日付のワシントン・ポストにおきましては、ブッシュ米大統領がゴルバチョフ・ソ連大統領に対し、多国籍軍とイラク軍との戦争停止の条件として、イラク軍のクウェート撤退宣言の後四日間以内に撤退する、それから第二の条件はすべての捕虜の釈放、それから第三の条件はすべての地雷の位置の明示、こういうような報道がございますが、これはどうでしょうか。
  278. 渡辺允

    渡辺(允)政府委員 現在の米国の考え方は、いわゆるゴルバチョフ提案というものがこの問題解決のための必要とされる要件とはかけ離れているということを申しておりますが、これはこの提案を拒否するということではないという立場でもあるというふうに承知をいたしております。  そのほかの問題につきましては、私ども詳細を承知いたしておりません。
  279. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それでは外務大臣にもう一度。  今までいろいろな情報がふくそうしております。ただ、ブッシュ大統領が不十分である、そういうものと、それからさらに英国におきましてもそういう考え方を持っておる、ただイタリアに関してはこのゴルバチョフ提案に関して理解を示しておる、こういうような状況の中で、日本国政府としてまた外務大臣として、この問題に関して現在の心境を御答弁いただきたいと思います。
  280. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外務大臣といたしましては、イラクのサダム・フセイン大統領が安保理六百六十号の決議を直ちに受諾される、それによってこの撤退を直ちに開始をする、こういうふうな安保理決議の実行に対する、受諾に対する決断を心から期待をしておるというのが率直な心境でございます。
  281. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、次にお伺いしておきたいのは、イラクのアジズ外相とソ連のゴルバチョフ大統領の会談が行われ、そうしてそれの和平提案なるものが出され、それに対してブッシュ大統領は、今申し上げましたとおり、フィッツウォーター報道官の発表によりますと不十分、こういうものでございますけれども、この和平に向かって、それから一刻も早い停戦に向かって各国が努力しておるということは、これはもうだれしも認めるところでございます。  さてそこで、それならば日本におきまして、我が国におきましてどういうアクションを起こそうとしておるのか、今後の問題でございますけれども、外務大臣としてただいまの状況の中でどういうアクション、具体的なものとしてどのようにしていこうとしておるのか、御答弁いただきたいと思います。
  282. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在の私どもに入ってきております情報では、アジズ・イラク外相がバグダッドを立ってモスクワへ向かったという情報まででございます。それがどのようなサダム・フセイン大統領のゴルバチョフ大統領に対する返事になるのかということが一切わからない段階で、日本政府としてここで一つの仮定に基づいて行動をすることは差し控えたいと考えております。
  283. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それで、この湾岸戦争に関して地上戦突入かあるいは和平か、そしてまたみんなの努力があって、そうして何とか早く終結に持っていかなきゃならない、こういうものに関しては、これはもう外務大臣もそのとおりであろう、こういうように思います。  そこで、どっちみち戦争というのは終わるわけですから、その停戦後の中東の新たな枠組みと申しますか、それをどのようにつくろうと、そういう議論があるわけでございますけれども、政府としてこの中東の新しい秩序、そういったものに対してどう考えておるか、日本として独自のプランの提出をする用意があるのか、そういった面を御答弁いただきたいと思います。
  284. 中山太郎

    ○中山国務大臣 日本政府といたしましては、基本的にはこの域内の国々のイニシアチブを我々は期待したいと考えております。  なお、この域内各国の政治指導者たちとの考え方を調整するために、先ほども御答弁申し上げましたが、中近東に対しては渡辺務審議官、ヨーロッパに対しては小和田外務審議官を出張さしておりまして、それらの連絡を待ちながら、日本政府としてはこの戦火がおさまった後のこの地域の長期的な安定のために応分の努力を、協力をしなければならない、そのように考えておりますが、委員も御指摘のように、この地域のいわゆる軍備管理、それから軍縮あるいは地域の復興、このようなものを含めながら、除外視できないのはパレスチナ問題をどう解決するかという問題を我々は避けて通ることはできないのでありまして、この問題も含めて関係各国との十分な協議をやってまいらなければならないと考えております。
  285. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それは中東の復興、そういった面に関して、それでは資金的な面での援助をしよう、こう考えておると受けとめてよろしいでしょうか。
  286. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私自身、率直に申しまして、今祈るような気持ちでイラクから明確なクウェートにおける撤退の意思表示が行われることを期待をしておりますさなかでありますが、この先行きの全くわからない状況の中で、一体その復興のためにどのぐらいのコストが必要になるものか、全くわかっておりません。これは私個人がわからないと申しますよりも、先般行われましたG7におきましても、各国の財政担当者、だれもこの点について予測ができませんでした。  今日、さまざまな構想が平和回復後の中東において描かれております。これは、例えばODAのような形もありましょうし、さまざまな形が考えられると思います。そしてまた、例えば欧州復興開発銀行に似ましたような組織をつくる案でありますとか、あるいは湾岸諸国を中心に舞台回しをしていく案、さまざまな案が考えられると思いますが、私個人は、これは大蔵省の意見ではございません、私個人はやはり一番早い手を差し伸べる手法としては、既にでき上がっております国際機関、例えばIMF、世銀、こうした機能を使うことが、専門家の数も十分におりますし、また経験も多いだけに一番望ましい姿ではなかろうか、またこうした機関を活用するということになります場合には日本もそれぞれの役割をその中において果たし得る場を占めておる、そのように考えております。
  287. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 それから、湾岸戦争はハイテク武器の実験場とまで言われるぐらいのハイテクを駆使したものになっている。それはもう悲惨なもの、こういうように私どもには映っておりますし、当然のことでございます。  これが生物・化学兵器、こういうようなことを、フセインが追い詰められたときにそれを使用するというようなことがあった場合には、これはもう大変なことでございます。例えば化学兵器、神経性とかびらん性、窒息性の有毒化学薬品を使用するわけでございますけれども、これは簡単に殺虫剤の製造能力さえあればそれをつくれる、こういうようなものである、こう言われておりますけれども、化学兵器については一九二五年のジュネーブの議定書で使用の禁止が定められております。イラクも批准しておりますですね。しかし生産や保有は禁止していないわけでございますので、核兵器と比べて抜け道が多いわけでございますので、例えばこの湾岸地域の軍備管理であるとか、あるいはまた大量破壊兵器拡散防止のためのそういう会議の開催の提唱であるとか、あるいはこういった生物・化学兵器、こういったものは生産、保有も一切禁止していかなければならない、こういったものをどうつくろうとしておるのか、日本政府としてどういうような対応をしようとしておるのか、お伺いいたします。
  288. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問、幾つかの点にわたっておると思いますけれども、まず化学兵器の使用の問題でございますが、先生おっしゃったとおり一九二五年のジュネーブ議定書がございまして、これには、日本はもちろん締約国でございますが、イラクも締約国でございまして、このジュネーブ議定書は戦時における使用というものを禁止しているということでございます。おっしゃるとおり、開発、生産、貯蔵、保有、そういったものは触れておりません。したがいまして、国際社会にはその後一つの条約、これは生物兵器禁止条約というものができておりまして、これはまさにその使用のみならず、開発、生産、貯蔵、保有、そういったものも禁止しておる。実はもう一つ欠けたものがございまして、それは化学兵器の包括禁止条約ということでございまして、これは今交渉中でございます。したがいまして、こういうものが将来できていけば、まさにこういう分野における兵器の包括的な禁止という枠組みが国際社会にできてくるというふうに考えます。  もう一つの問題は、何度も当委員会でも御議論の対象になっておりますけれども、イラクをあれだけの軍事大国にした国はだれかという問題がございます。したがいまして、私たちはまさに人類の一つの教訓として、この湾岸危機後、国際社会がこの問題にやはり国連を中心として取り組んでいくべきじゃないかという点で先生の御意見と全く同意見でございます。
  289. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで、日本世界唯一被爆国ですよね。そして平和憲法を持って、あの終戦のときに、終戦と、これで終わりだということを宣言をしたわけでございます。そしてさらにその後、例えば非核三原則だとか武器輸出三原則だとか、あるいは閣議決定によって防衛費のGNP一%枠を守ろう、こういうようなことを努力をしてまいりました。そして世界におきましても、核拡散防止条約、さらにはまたオーストラリア・グループあるいはココム等、いろいろなものでその努力をしてきたことは事実ですよね。  そういう中で、私は今回、例えば核兵器を地球上のすべてから廃絶、それからまた通常兵器に関しましてもこれを縮小撤廃、それは国連が機能していかなければなりません。そういう意味におきまして、そういう提唱をできるのは、またそういうイニシアチブをとれるのは、唯一被爆国である、あるいは平和憲法がある、こういうものから考えて、私は日本の立場というものは実に重要な立場ではないか、こう思います。したがいまして、外務大臣としてこの核廃絶、それから通常兵器も縮小撤廃、そういう状況に、そしてこの地球上から本当の終戦というそういったものをつくり上げていく、そういうものへの外務大臣の御所見を、そういうものへ日本としてどう努力していくのか、外務大臣としての御所見を伺っておきたいと思います。
  290. 中山太郎

    ○中山国務大臣 世界唯一被爆国である日本国といたしましては、国民のコンセンサスである、我々は再び戦わないという考え方、またこの非核三原則を堅持していく、こういう国の考え方でありますけれども、世界は残念ながら現実には核が、もう本当に私は各国がそれをいかにして持つかということに狂奔している残念な姿ではないかと考えております。  しかし、最近に至りまして、米ソの間では核弾頭つきのミサイルの所有数を削減していく交渉が順調に進んでおりますし、私は人類が理性を取り戻し始めたというふうに認識をいたしておりますが、そのような流れを少しでも大きくするために、被爆国被爆の被害を少しでも世界に知らせるとともに、人類が再びこういうふうな科学のマイナスの面で影響を受けないように日本国としては努力を続けなければならないと考えております。
  291. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そこで通産大臣にお伺いしておきますが、先ほど私ココムのことも言いましたが、これは一九四九年に設立されて十五カ国が参加しておりますね。そういう中で、対共産圏、こう言ってももう既に東欧諸国の民主化、あるいは対共産圏というそういう範疇が明確ではなくなってくるのではないか。そういうようなことから、このココムという問題に関してはもっと違った意味での、今私が申し上げましたような、兵器を撤廃していく、それからまたそれを手助けするようなあらゆる、例えば輸出一つ考えてみても武器輸出三原則があるわけでございますけれども、そういったものへの、すべてへの対応というものでこれは見直していかなければならぬのではないか、こういうように思いますが、日本政府としてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  292. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 率直にお答えをさせていただきます。  私も、全般的な流れからずっと竹内委員のお言葉、そのまま全面的に賛成でございます。  私の記憶する範囲、大体生物化学兵器などがつくられたのがジュネーブ協定の議定書、一九二五年、それからまた不戦条約が結ばれたのが一九三〇年ごろだったと思いましょう。そのころにもその問題点は触れておるわけでございますが、日本としては一九四九年でございますか、ココムの問題等が十三カ国の中でとらえられた。しかし、その中には、武器輸出三原則の一項目の中に、共産圏に向けてはいけない、こういう言葉がございますが、これはもう既に死語になってしまったんじゃないか、こういう先生の御指摘、これも非常によくわかるわけでございます。しかし、それだけにその言葉を死語にせず、何も共産圏に限らずこの問題点を普遍的に世界に流布していく、その役割こそイニシアチブをとって日本考えていくべきではないか、この考え方の基本にあるコンセプトは全く賛成でございます。  そこで、武器の輸出についての平和国家としての我が国の立場からは、それによって国際紛争を助長するということを回避するために政府としては従来から慎重に対処してきた、こう考えていただきたいと思うのでございます。政府といたしましては、総理が今国会においても施政方針演説で示しましたように、核兵器、生物化学兵器、ミサイルの拡散防止を徹底するとともに、通常兵器の移転についても透明性、公開性、これの増大やあるいはまた各国による適切な管理の強化が必要であって、これに関する国際的取り組みの強化が急務と考えておる、こう言っておりますが、まさにそのとおりであると思います。そこで日本の国といたしましては、先ほど来委員が御指摘のとおり、ただ唯一被爆国でございます。それだけに武器輸出規制の所管大臣としても、かかる考え方のもとに、武器輸出三原則等に基づく厳格な武器輸出規制というものを実施するという考え方に我が国は立たなければなりませんし、また同時にその考え方を、普遍的に世界の恒久平和を目指していくのが理想だというならば、それをまた逐一各国においても吐露していき、我々の誠意を示していくという態度こそが必要ではないかという点においては全く同感でございます。  以上でございます。
  293. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 外務大臣、もう一点お伺いしておきますが、今回のこの湾岸の問題は、イラクのクウェートへの侵略、併合、そういった暴挙によってこのようになっておる、これはもう周知の事実でございます。その中で国連の決議、幾つもあるわけでございますけれども、その国連の機能を良好に働かせていく上からも、各国の代表が参加して、そしてそこにおきましてのあらゆる決定があり、そして機能を働かせておるわけでございますけれども、それとは別に、むしろもうボーダーレスの時代、そういうものがどんどん進んできておる中で、地球環境問題やらいろいろと地球自体が危ないんだと言われておるこういうときにあって、私はこの国連はもちろんどんどん発展させていかなければならない、そういう中に、それとは別に世界のあらゆる階層の人の中で代表を、いわゆる仮称ですが世界賢人会議というようなものをもうそろそろ考えていかなければならない、そういうところへ来ておるのではないか、こう思いますが、外務大臣として、そういった私の提案に対してどのような感想をお持ちでございましょうか。
  294. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員指摘の、国連とは別に世界賢人会議といったようなもの、その考え方についてどう思うかというお尋ねでございますが、第二次世界大戦後の人類の反省というものから国連ができて、この国連ができた当初は国連を中心に動こうとしておりましたけれども、米ソの冷戦が始まった一九四九年ぐらいから六〇年代にかけて、次第に国連は拒否権を発動するという姿が出てまいって、当初の、みんなが二度と再び人類の社会において戦火を排除するという大きな理想からはほど遠い姿が数十年続いてまいったわけでありますけれども、余りの米ソの対決、その背景にある膨大な軍事力、それに使われる消費、しかもそれが非生産的な流れになっていく、こういう中で、米ソは話し合いにより世界全体の調和というものを考え始めて、これまた常任理事国五カ国が拒否権を発動せずに世界全体を調和に持っていこうという流れが出てまいったわけでありますから、私は国連総会に二度参りましたけれども、あそこはまさに世界賢人の会議であります。世界じゅうの外務大臣が集まってきている。そうして、私は十日間ニューヨークにおりましたが、六十何カ国の外務大臣と個別に会議をいたしました。ほとんど自分の自由時間はございませんでした。記録をごらんいただければよくわかります。それを各国の外務大臣がそれぞれのカウンターパートとやっているわけでございますから、私は、現在ある国連の機能をいかに活用するかということがこれから各国の賢人に求められる一番大事なポイントじゃないか、このように認識をいたしております。
  295. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 大臣に私が言っている意味は、それは一生懸命やっておる、ただ、各国の代表となるとどうしてもナショナリズムになるわけでございまして、その自分の国のことをまず第一番目に考える。もちろん、国連でございますから全世界のことをと、こういうようなことで、その大きな立場から、グローバルな立場からいろいろとやっていっておるものがあることは、これは当然でございます。だから今大臣が言われたことを私は否定するわけではないのですが、それはそれとして、ますます発展させていかなければならない。同時に、例えばこの湾岸の問題にしても、もう一歩この国連のイニシアチブというものがなかったのかなということは、やはり世界の民衆の否めない考えではないか、こう思います。したがいまして、私は、それにさらに、そういうものと一切関係なく、ボーダーレスの時代ということを先取りしてそういうような提案をしたわけでございまして、それはもう感想だけでございますので、次の問題に移らせていただきます。  そこで、防衛庁長官、お伺いしておきますが、今この時点にあっても、この自衛隊機派遣という問題に関して、国際移住機構からの要請がありましたならば、この自衛隊機派遣考えておりますか。
  296. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  私どもも、何とかイラクのフセイン大統領が国連決議、そうして国際社会のいろいろな努力と願望というものを理解してくれまして、イラクによるクウェートに対する侵略というものが終わる、即時に全面的に撤退してくれる、そういった状態が実現することを念願しておるものでございますし、またできることならば、避難民の方々が大量に発生するなんという事態が出来せずに済めばと、こういうふうに願っておるところでございます。  しかしながら、今後の事態いかんによりまして大勢の避難民の方が発生する、そうして国際連合の委託を受けましたIOMから我が国政府に輸送について依頼があり、なおかつ我が国の民間航空機による対応ができないといった状態が生じます場合には、私どもはやはり人道的な立場からそういった要請にこたえていかなくちゃならぬのじゃないか、このように考えている次第でございます。
  297. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 現在、IOMから要請はあるのですか、ないのですか。
  298. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  一月の十七日にIOMのパーセル事務局長から三十三カ国、日本も含みますけれども、政府に対して、一般的にどの程度の航空機、船舶、民間、軍用機を問わず、をいざというときに提供できるかの検討をして教えてほしいという一般的な要請が来たことは御承知のとおりでございまして、そういう一般的な要請に加えて具体的な要請が一つあったものですから、先般、ベトナム避難民の輸送を行ったわけです。その後は、具体的な特定の期間あるいは人員を、避難民の数を定めた特定の具体的な要請というものは来ておりません。
  299. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 そうすると、この問題に関しては、民間機か自衛隊機か、こういうふうになりますと、私は、十分民間機でこれは対応できる。もちろん、日本だけの民間機ということを言っているわけではございません。ヨルダンを初めあらゆるところの民間機で対応していくならばできる、このような状態があるならばこれは自衛隊機派遣というものはあり得ない、こういうふうに解釈してよろしいのでしょうか。
  300. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  この点は、総理の一月二十五日の施政方針演説の中でもはっきりと、「関係国際機関の具体的要請があれば速やかに出発できる準備を整えました。」これは民間航空機を言っておりますが。「なお、民間機が活用されないような状況において、人道的見地から緊急の輸送を要する場合には、必要に応じ自衛隊輸送機により輸送を行うこととしました。」ということで、政府といたしましても民間機が活用されるような状況においてはまず民間機を活用するという考え方で、今日も変わっておりません。
  301. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 自衛隊の中で防衛大学校それから防衛医学校の件に関してお伺いしておきますが、まず、防衛大学校におきましては今後学位の授与というような動きはあるのでしょうか。
  302. 井上幸彦

    井上国務大臣 お答えいたします。  結論といたしましては、ぜひそうしてあげたい、このように考えます。  大学審議会答申の趣旨を踏まえまして、生涯学習体系への移行に即応するとともに、高等教育機関の多様な発展を図る観点から学位授与機構を創設することとしており、このための法律案を今国会に提出をいたしております。同法律案におきましては、新たに学位授与機構を創設して、学位授与機構が大学そして大学院と同等の教育研究を行っていると認める各省庁大学校修了者に対しまして、その水準に応じて学士そして修士、博士、この学位の授与をする、そういう道をぜひ開いてあげたい、このように考えております。
  303. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 その場合、理学士とか工学士とかあるいは教養学士とか、あるいは医科大の方は医学士とか、どういうようなものになっていくのか、その中身はどうなっているのでしょうか。
  304. 前畑安宏

    ○前畑政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げました大学審議会の答申の中には、同時に学位制度の改善ということも考えておりまして、従来のような何々博士といったようなことではなくて一般的な博士ということにして、あとは大学の判断でその学問分野にふさわしい名前をつけてはどうか、こういうような方向が出されております。そういう方向からいたしますと、仮に防衛大学校がそういうふうな教育施設として認定をされました場合には、そこの卒業生に与えられる学士の学位につきましても、防衛大学校の御判断によって適当な名前がつけられる、こういうことでなかろうかと思っております。
  305. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 環境庁長官、お待たせいたしました。  この湾岸戦争によっての原油流出、それ以外、地上戦へ入っていきますとこれはもう大変な環境の汚染、これは目に余る大変なものになっていくのではないか、こういうように言われておりますけれども、私はまず、この原油流出による汚染回復についての技術的な措置、これを日本としてどう対応していこうとしておるのか、また、どんな要望があって、どのように対応していこうとしておるのか、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  306. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  この原油流出の事態、私どもも大変これを憂慮しておるわけでございますが、総理が本会議でも御答弁申し上げましたけれども、我が国の国内での海洋汚染とこれに対応したというその経験を生かして、この問題に対して国際機関との協調あるいはアメリカなどとの協調を踏まえて可能な限りの協力をしていきたいと考えております。  今日までの対応を申し上げますと、環境庁において、この原油流出が明らかになりました直後、一月二十八日に庁内にプロジェクトチームを設置いたしまして、情報の収集、分析、対応策の検討などを行ってまいりました。また、二月の五日、六日には、ジュネーブにおきまして国連環境計画の会議が開催されましたが、ここに、我が国からも海洋汚染あるいは野生生物などの専門家を三名派遣をいたしました。このジュネーブの会議におきまして、UNEPでこれからの対応につきまして長期の行動計画を作成するということが申し合わされましたが、これにも積極的に参加をしております。ただいま現在では、あの地域、戦闘が行われておりますので、なかなか調査をする面でも限界があるわけではございますが、一日も早く戦闘が終わることを願いつつ、終わった暁には直ちに行動が起こせるように、目下専門家のリストアップ等々を進めて対応策を準備をいたしておるところでございます。
  307. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 今UNEPの話が出ましたが、UNEP地球環境保全技術センター構想についてお伺いしますが、UNEPにおいて我が国との間で検討が進められておるこの地球環境保全技術センター構想なるものはどういうものですか。
  308. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  地球環境分野における技術の発展途上国への移転を図るということが大変大事な課題でございまして、その意味でこの環境保全技術の移転を国際的に促進することを目的といたしましたUNEPの施設を日本に誘致をしたい、こういうことで外務省あるいは関係自治体と協議を進めながら、この誘致に努めているところでございます。
  309. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 時間ですので、では最後の一問で終わりますが、まずイラク、御承知のとおり、あちらの中東方面はすべてそうでございますけれども、大変な遺跡、文化遺産と言われるものが多くあるわけでございますが、こういったものの保護という面でぜひ何らかの動きをしていかなければならないのではないか。そういう意味で政府として、この問題に関してどういうように取り組もうとしておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  310. 井上幸彦

    井上国務大臣 今回の湾岸危機が解決されるのを待って、いかなる協力ができますか、そういうことで文部省としては対応をいたしたい、このように考えております。専門的な技術の面から専門官の派遣、調査、そういうものをいたしたいと思いますが、湾岸危機が解決するのを待って、そしてその状況を把握した上、文部省としては対応いたしたい、このように考えております。
  311. 竹内勝彦

    竹内(勝)委員 終わります。
  312. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて近江君、竹内君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五分散会