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1991-02-15 第120回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    内海 英男君       越智 伊平君    狩野  勝君       倉成  正君    古賀  誠君       後藤田正晴君    志賀  節君       田邉 國男君    津島 雄二君       戸井田三郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    原田  憲君       町村 信孝君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    山口 俊一君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       小澤 克介君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    石田 祝稔君       遠藤 乙彦君    日笠 勝之君       冬柴 鐵三君    佐藤 祐弘君       東中 光雄君    山原健二郎君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         北海道開発庁総         務監理官    松野 一博君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         国税庁次長   福井 博夫君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         通商産業省通商         政策局次長   麻生  渡君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         海上保安庁長官 丹羽  晟君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治大臣官房総         務審議官    紀内 隆宏君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     山口 俊一君   加藤 紘一君     古賀  誠君   佐藤  隆君     町村 信孝君   浜田 幸一君     狩野  勝君   辻  一彦君     小澤 克介君   石田 祝稔君     遠藤 乙彦君   東中 光雄君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     浜田 幸一君   古賀  誠君     加藤 紘一君   町村 信孝君     佐藤  隆君  山口 俊一君     小此木彦三郎君   小澤 克介君     辻  一彦君   遠藤 乙彦君     石田 祝稔君   山原健二郎君     東中 光雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、湾岸問題等中心とする集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、昨日の我が党の嶋崎議員質問に引き続きまして、以下、湾岸戦争中心とする幾つかの質問をいたしたいと思っています。  けさニュースではございませんが、私どももちろん戦略家でございませんので専門的な判断はできがたいと思うのですけれども湾岸戦争は大変重大な局面を迎えてきたのではないだろうか。その一つのきっかけは、一昨日でしたか、あのバグダッドにおける地下壕における被害者、多国籍軍による大量爆撃の結果、一説では五百名程度だと言われておりますし、一説には三百名程度の婦女子を中心とする一般市民死傷者が出た。戦争にはショッキングな現象はつきものでございますけれども、私ども第二次世界大戦経験者の一人といたしまして、あのB29が東京や大阪を爆撃し、最後は広島、長崎に原爆が投下された。こういう悲惨な体験を持っております私自身にとりましても、あるいは私ども立場から判断をいたしましても、一つには泥沼に発展する地上戦になるのかどうか。それこそけさニュースではありませんが、ブッシュ大統領チェイニー国防相も、場合によっては空爆から地上戦に展開していくのではなかろうか。  こういう重大な局面を迎えながら、一方では、非常にこれは歓迎すべきことでございますが、後ほど具体的な事例を挙げて御質問をいたしますけれども、一方では停戦への動きも大変急速な形で活発化いたしておると私は私なりに判断をいたしております。まさに、もうこれ以上戦争をエスカレートさせてはならない、これ以上人間人間を殺す戦争を発展させてはならない、私自身もこういう悲壮な立場から、今日のこの湾岸戦争を見て、何としても一日も一刻も早い停戦機会を持ちたいという願いと考えを持っておる一人であります。こういう前提に立ちまして、総理外務大臣から、今日ただいまの戦局の状態、予想される展望について見解をまずお聞きいたしたいと思います。
  4. 中山太郎

    中山国務大臣 委員が前回の第二次世界大戦体験をされたお立場、私も同じ世代でございましたから、大都市の集中空襲というものを体験してきた人間として、戦争最終局面を迎える段階でどのように一般大衆被害を与え、死傷者を出すかということは、私自身もよく鮮明に記憶をいたしております。  そういう意味で、いわゆるイラクの本土に住む人、あるいはクウェートの中にいるクウェート人、これらの人たちがこの戦争を通じてやはり平和を求めていることには間違いがないと私は思いますが、一方、国際政治の舞台では、政府の首脳は従来の自分たちの主張、また国民に対する自分たち政治姿勢、そういったもの、あるいはまたアラブの正義というものを考え政治姿勢というものを含めて、私どもは、いかなる理由があるにせよ武力によって他国を侵略してそれを併呑するというようなことは第一に認められないこと、これは国際社会の通念でありますけれども、一たん戦火が開かれた後、私はやはりある時期に戦争を終わらせる、この戦火収拾するということが、当事者のイラク政府はもちろんのこと、周辺国も含めて、世界がこの事態収拾に重大な関心を払っていることは間違いがないと思います。  日本政府もまた同じでございまして、いわゆる地上戦に入る前が一つ戦火収拾するタイミングではなかろうかと思いますが、それをめぐって、私も一昨日在京イラク大使を呼んで日本政府の注意を強く申し入れますとともに、一日も早いクウェートからの撤退安保理決議の受諾ということを強く要請をいたしておりますし、昨日の予定でありましたが、ただいま国連で開かれております安全保障理事会発言希望国が三十カ国に及んでおりまして、当初、本日に予定されておりました日本政府代表発言も実は明日にずれ込んでおるようなことでございます。あす次回の会合が開かれる。日本はインドに続いて日本政府発言をいたすことに相なっておりますが、いずれにいたしましてもソ連初め各国がこの事態収拾に現在動きつつある。今夕は先般バクダッドを訪問されたプリマコフソ連代表も来られるようでありますから、私も夕刻お目にかかることにいたしておりますが、新しい平和への事態収拾というものについて日本政府としてもできるだけの努力をしなければならない。しかし、それにはまず安保理からの決議を受諾するというイラクの決断というのがなければこの事態収拾ができないという前提条件がつきまとっているということを御理解いただきたいと思います。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 国会開会以来、いずれも、どなたもそうでありますが、私は特に湾岸戦争即時停戦、そして戦後の中東地区の政治的な安定、経済復興の問題については、率直に言って政府対応のまずさもあったり、あるいは消極的な態度を責めるだけではなくて、今日ただいまの情勢からいけばやはりお互いこの種の論議を通じて、私は、非常に大事な局面を迎えておりますだけに、実りの多いといいますか一つの具体的な成果を生み出すような、そういう議論をやりたい、こう思っています。  そこで、今外務大臣もお話がありましたように、一つには国連安保理事会が開かれようとしておる。実は私、この理事会日本がどういう内容のいわば停戦に向けての呼びかけをやるのかということを聞いてみたいと思っておったわけであります。この発言機会があすにずれ込んでおるようでありますが、もしお差し支えがなければそのことについての考え方を聞かしてもらいたい。また、ソ連プリマコフさんが二、三日前にイラクに参りまして、フセイン大統領とのあのような会談をいたしております。この重要な人物がいよいよ今夕日本にも来られるということでありますが、これまた私は非常に大事な会談ではなかろうか。日にちはちょっと前後いたしますけれども、前月の二十二日に外務大臣がモスコーにおいて日ソ外相会議をなさった。この延長線上で、共同声明を出すところまではいきませんでしたけれども、四日の質問でも少し触れたかもわかりませんが、昨日総理から戦争終結後の中東地区における経済復興についての枠組みといいましょうか、これを答弁の中で明らかにされました。私は、もう率直な考えでありますが、この考えは非常に味のある中身ではなかろうか。この中身を私は国連安保会議の中に、そして今晩からいつまでおられるかわかりませんが、ソ連特使との話し合いの中で生かしていくことが日本の今具体的な外交の焦点ではないだろうか、私は素人ながらそのように考えているわけであります。そういう点で、ぜひそういう対応の仕方、できれば中身についても御答弁をいただきたい。  私は率直に申し上げて、こういう段階になりますと、あれこれの情報ではありませんが、湾岸戦争後のイニシアチブをソ連なりイランが握るのかそれともアメリカが握るのか、こういう一種の主導権争い的なものも出がちでありますけれども、私はそういう選択肢、立場ではなくて、前段申し上げたような立場から即時停戦に向けてのやはり有効性のある提案というもの、会談というもの、そういうものこそ今求められているんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  6. 中山太郎

    中山国務大臣 お答え申し上げます。  国連安保理におきます日本政府発言内容につきましては、まことに残念でございますけれども、この非公式会合というものが、理事会がいわゆる内容は一切発表しないということに各国申し合わせが相なっております。そういうことがございますので、日本政府発言内容もこの機会には、安保理事会申し合わせに従いまして公表させていただくことをお許しを願いたいと考えております。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理、どうですか。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連中心にしてあらゆる機会を積極的にとらえて日本意向を述べるとともに、やはり国際社会がこれらの問題についても、国連中心に一致協力して停戦の一日も早い実現のために原則に従った解決ができるように努力をすべきだという基本的な考え方を持って臨んでおるところでありますし、また昨日、質問に答えて申し上げましたとおり、私は一日も早い和平を願うとともに、平和的解決がされたならば、その後で日本努力をしなければならない四つ項目について申し上げましたけれども、緊急を要するのはそれぞれの国の実情に応じた経済復興であり、またあの地域安定確保でございますから、それらの問題についての私の考え方についてもいろいろな機会を利用して、直接あるいは間接にもこれを伝えて、国際的な枠組みづくり国際的協調をして、あの地域に一日も早くいい状況が生まれるように積極的に取り組んでいきたい方針でございます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、昨年の八月二日にイラククウェート侵攻以来さまざまな和平提案がなされてきた経過というものをずっと経過的に整理をしてみました。  ヨルダンのフセイン国王アラファトPLO議長との和平案あるいはリビア・カダフィ大佐案あるいはソ連和平案、サウジアラビア・ファハド国王案あるいはミッテラン大統領案フランスミッテランは前後二回出ておることは御案内のとおりであります。また、フランスデュマ外相停戦に向けてのEC緊急会議での提案、あるいはボーゼル国民議会外交委員長の一月五日のイラクフセイン大統領との会談後の提案、こういったものをずっと、あと幾つかもちろんあります。こういう経過と、ごく最近、ここ一週間以来の動きですね。この中で何といっても一番大きく考えられますのは米ソ共同声明であろうと思うわけであります。非同盟諸国も三、四日前から動き始めました。そして、先ほども触れましたけれども、二月の十二日のこのフセイン大統領ソ連プリマコフ特使との会談、こういう経過をずっと内容を踏まえて振り返ってみますと、この中で共通しておる停戦への条件和平への条件は、こういうふうにもう五重六重に重なっておりますが、それをずっとすり合わしてみて共通点は何かということを大きく整理してみますと、やはり一つは、クウェートからのイラク軍撤退、これがやっぱり中心になっていると思います。  それといま一つの問題は、それこそこれは好むと好まざるにかかわらず、パレスチナ問題を含むイスラエル問題ですね。これは一九六七年でしたか、あの国連における二百四十二の決議、これはやはり私は、イスラエルのああいった不法占領に対して、国連がそういう占領地域から出ていきなさいという決議をしているわけですから、これは何といっても底辺の問題として、直接リンケージにするとかしないとかということを超えて、二十数年間アラブ諸国にとってはもう基本的な問題として私は今日まで続いてきておると思うのです。そういう点からいきますと、イラク軍クウェートからの撤退とこのパレスチナ問題は停戦条件であり、和平基本的な条件だと私は考えるわけであります。  そういう立場から見て、先ほど私は昨日の政府答弁の四項目ですね、私なりに評価をしたいと申し上げたのは、その点について政府枠組みは、一つには中東諸国経済復興に対する支援、二つは、当然のことでありますが、イラク原油放出による環境汚染の拡大の防止、三つにはパレスチナ問題を含む中東包括的和平実現への協力、私はこの三項が日本政府として非常にこれはある意味では積極的な考え方を打ち出したのではないだろうか、こう評価をしておる一人であります。四つ目は、これまた当然のことでありますが、中東への兵器移転の抑制など軍備管理の確立。  中身は深くはわかりませんけれども、この字面の上に出てきておる条件を見たときに、私は、この条件日本がいよいよ外務大臣特別特使にするのかどうか、対応の仕方はいろいろありましょうけれどもプリマコフさんを迎えての今晩の会談、これはやはりソ連と直談判のようなものですから、こういう線に沿ってお互い合意を得る、そうしてどなたが特使になるのか、これはいろいろ政府のお考えですけれどもアメリカにも直接こういった線で、ここ二、三日がそれこそ地上戦に発展するかどうかの重大な時期だと言われておりますだけに、この政府提案枠組み一つ出発点として対米交渉日本はやるべきじゃないか。大変これは皮肉に聞こえますかもわかりませんが、まだずっと続くであろう九十億ドルのこの湾岸支援の金も出さなきゃならぬ、自衛隊機も飛ばそうか、こういうような動きをやっておるわけでありますが、平たく言えば、金だけは出すが口は出してはならぬというようなものであってはならないのでありまして、政府はそんなことはないとおっしゃるでしょうけれども、ぜひ私は、ここ二、三日の情勢というものは、前段から触れておりますように大変重要な局面だと思いますだけに、日米との関係においてもどういうような動きをなさろうとしておるのか、その具体的な計画があれば、今私が指摘したことを含めてお考えを聞かしてもらいたい。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的な考え方は、平和回復活動が一日も早く成功してあの地域恒久和平が来ることでありますし、またアメリカとはいろいろな問題を通じて日本考え方はよく伝えてありますし、またこれらの問題についても、今後も協調して行動していかなきゃならぬ場面もあの地域の安定と経済復興のためにも必要なことになってくることは当然のことだろうと思っておりますし、また、今具体にここで一々、だれを派遣してだれに会ったらどう言うとか、きょうプリマコフ特使と私も会いますけれども、その会談の中で何を言うかということを事前に申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、ここで御答弁申し上げておるような基本の物の考え方、そういったものについては、ソ連考え方もお話しのように重ね絵のように合わせれば基本的に交わるところがあるということでございますし、また私は、国連事務総長最後の朝の声明の中にも今の二項目は、表現は違いますけれどもきちっと含まれておるわけでありますから、そういったことについて積極的な枠組みづくりと成功への努力をあらゆる機会をつかまえて積極的に進めていきたいと考えております。そうすることがやはり中東の恒久平和につながっていく一番大きなステップになる、こう考えております。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 外交問題でございますから、それぞれの会談、これから対応しようとしておる中身についてまで言明しがたいことは私なりに当然理解をするものであります。しかしもう大方、先ほど私は、八月以降のいろいろな和平に向けての各国動き政治家の動向、こういう経過から見て絞られてくる基本的な条件というものは、これはだれが考えても大方意見一致を見るわけですから、そこをきちっと踏まえて、問題はフセイン大統領にあると同時に、一つはやはり多国籍軍中心になっておるブッシュ大統領中心とするアメリカ停戦の呼びかけと合意を取りつけることが、これはもう決定的な条件になると思うのですね。そういう点からいけば、これはもうぜひ、アメリカに対する発言力というものは、この時期に日本政府意向というものを具体的に、結果として我々の考え方実現できるようなそういうアクションを具体的に起こす必要がある。そういう意味において、だれを出すかだれを出さぬとかというようなそういうことではなくて、体当たりアメリカともこの大事な時期に日本政府としてはベストを尽くすんだ、こういうひとつ構えで当たってほしい、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど、すべての人々の努力を絞れば二点に集約される、それが基本ではないかと言われた考え方国連決議に従ってのクウェートからの撤退、これが一つと、もう一つ中東和平、二百四十二号決議の精神を生かしての中東和平、この考え方、それについては、私もそのとおりと思ってここでも何回も御答弁を繰り返してきたところでもありますし、私もそうあるべきだと思って四項目の中にもそれをしっかりと踏まえておるわけでありますし、こういった考え方はそのままアメリカにももちろん伝わっておりますし、これはソ連にも話す場合が出てくればもちろん話しますし、その他の国々にもそういった姿で積極的に取り組んでいくわけです。あくまでその二つの問題が段階的にきちっと解決をされていくことがあの地域の恒久平和につながるものと私も深く考えております。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 外交問題ですからなかなか微妙なところもありますが、今までこの国会で海部総理から、私が中心になる条件の二つを申し上げましたが、そのことについてしばしば言明したと言いますけれども、パレスチナ問題ですね、イスラエル問題についてはやはり余り具体的な答弁はなかったと思うのですよ。それが昨日のあの四項目の中でさらに鮮明になってきたという点については私は私なりに評価をしますし、このことがやはりフセイン大統領を説得するある意味では決め手になるんじゃないか、こういうふうに私自身はそういう問題意識を持っているものですから、それなりにきのうのあの四項目枠組みは、これは戦争終結後の復興に向けての条件であると同時に、停戦そのものの、停戦に向けての条件にもなり得るんではなかろうかということを指摘をしたわけであります。  これ以上この問題で時間をとりませんが、ぜひ私なりに言わしてもらえば、非常に大事な局面を迎えておりますだけに、それこそ命がけで日米の交渉、せっかくソ連特使が来るわけですから、このソ連とのきょう今晩以降の会談を成功さしてもらうことを強く要請をいたしまして、この質問は終わりたいと思います。  そこで二つ目は、自衛隊機派遣計画の中止と、この特例政令の違法性、その撤回につきまして質問をいたしたいと思いますが、これは、昨日の我が党の嶋崎質問によりまして、国際的な視野からするいわゆる法律的な国際法上の観点から実に中身の濃い質問がありましたし、きょう午後は同僚の小澤議員、これまた法律専門家でございますので、法的な問題については後刻に譲るといたしましても、私はこの後で質問予定にいたしております戦争とは何か、戦費とは何か、こういうものにつきまして、ややもすると余り専門的過ぎて、一般の国民が我々の審議を聞いておって、何だか国民の素朴な常識あるいは国民の素朴な感性には触れてない。これだけ大きな、一日二千回もバグダッドを中心に爆撃が展開されておる、一日であの十年間続いたベトナム戦争に匹敵するぐらいな爆弾があのイラクに向けて投下されておる、これ自身が国際法上戦争でないとかあるとか、そういう議論をやってみてももうそれこそ国民は、それはもう何を言っておるんだ、国会は何を言うとるんだ、これはもう明らかに戦争じゃないかと、こういうふうにみんなが認識をしておると思うのですね。そしてまた、その戦争に、戦争目的を遂行するために使われておるお金というのは、これはもう戦費というべきものじゃなかろうかと、これまた常識論として私は国民の認識であろうと思うわけであります。  私はそういう観点から、自衛隊の派遣計画の問題について極めて常識論的な問題を含め、今日までの審議経過を踏まえて、以下質問をいたしたいと思うわけでありますが、いま一度こう振り返ってみますと、いろいろ問題がこじれたときには原点に返って考え直せという先人の教えがあります。私はそういう立場から、この自衛隊法百条五による特例政令の問題をどの原点に返って考え直してみればいいんだろうかと、こう考えました。その一つは、六十一年に自衛隊法の一部改正がありまして、そしてこの百条の五の改正案が出されたとき、そのときの政府提案は何であっただろうか、これが一つであります。それといま一つは、二月四日の代表質問の中でも私触れましたけれども、いま一つの原点は、去年の国連平和協力法が廃案になったあの臨時国会は何であったのであろうか、これが私の実は原点であります  その観点からいくと、これを念のために読み返してみますが、昭和六十一年十二月の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律、その前段にこの法律の改正が出された「経緯と背景」というのがあります。それによりますと、今問題になっておる自衛隊の航空機、「航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者(以下「国賓等」という。)の輸送を行うことができることとされたのは、」いわゆる自衛隊の航空機でこの種の国賓の輸送を行うようになったのは、「昭和六一年五月の東京サミットにおける各国要人等の輸送のために購入されたヘリコプターの同サミット後の活用についての検討を契機として、今後国賓等の輸送の必要が恒常的に見込まれ、これを適切かつ円滑に実施することが必要であることから、今後は、航空機の維持管理等の能力を有する自衛隊が国賓等の輸送を行うことが適当と判断されたことによるものである。」と、非常にこれは明快でありますね。  今、特例政令を出して、政令によって法律を変えるようなそういう政府の態度でありますけれども、この提案の原点というものは、自衛隊の航空機が、国内でですよ、国賓等と称せられる人々を送り迎えすることはあっても海外に出るなんていうことは、この百条の五の改正のときにはどこにも出てないんですよ。これがずうっともうきょうまでの審議の中で、いわゆるイラン・イラク戦争のときにも、日本人が海外におる、その邦人を救出するためにこの自衛隊機を使うようなことはできるかどうかという議論をやったときにも、そういうことはできませんと、この法律ではできませんということを、もう内閣法制局を含めあるいは当時の防衛庁の幹部を含めて答弁をしてきておるわけであります。その答弁をしてきておるというのは、今私は少し長くなりましたけれども読み上げましたこの提案説明の中にあるわけですから、それこそ常識論ではありませんけれども、こういう不当な政令改正は直ちに断念をされて、しかも、ヨルダンを中心とする現地の情勢が御承知のようなことでありますから、今こそこういう無理をなさらないで、この百条の五による特例政令の撤回と、自衛隊を海外に派兵することだけは直ちに中止すると、中止してもらいたいと、政府の見解をあえてお尋ねいたしたいと思います。
  14. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  この百条の五を法律に追加いたしましたときに自衛隊を海外に出すことを考えてなかったじゃないかと、こういう御質問でございましたが、実はこれは昭和六十一年十二月四日、参議院内閣委員会におきまして久保田真苗委員の御質問に対しまして政府委員から答弁申し上げておりますが、その中で、海外にも出ることは、派遣することは排除されないというふうに答弁しております。具体的に申しますと、ちょっとその部分だけ読ませていただきますと、「法文上百条の五の規定は地理的範囲を限っておりませんので、法的には、依頼があれば海外へ輸送するということも排除されないというふうに考えております。」このような答弁がございます。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それは、憲法上からいえばそういったことはできないことはないがということが前提で、百条の五によって海外に自衛隊を飛ばすことはできないと。
  16. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま申しましたのは、この百条の五が審議されましたときに、参議院の内閣委員会におきまして、法文上その地理的な範囲を限っていないので、要請が、依頼があれば海外へ輸送するということも排除されない、つまりできるというふうに御答弁を申し上げているわけでございます。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今、こちらの方で不規則発言もありますが、現在の段階政府はそれではどのように考えているのでしょうか。この特例政令という形で出すことの不当性については、本日も引き続いて質問がありますけれども、今までも何回となくお互いが質疑を繰り返してきたところでございますし、それこそ新聞各紙の社説に代表される国民の世論ではありませんけれども、こういったことをやる場合にはやはり法律改正をやって堂々と手続上は、そのことのよしあし、賛成反対は別にして、法律改正という手段によってやるべきであって、政令行為でやるべきでないと、こういう世論が圧倒的であろうと思うのですが、これに対して政府はどのように考えておりましょうか。
  18. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前半の憲法違反の問題につきましては、私は、憲法が許しておらないのは「武力による威嚇又は武力の行使」、ですから、武力行使の目的を持って武装部隊が海外へ出ていくということが、これがいわゆる海外派兵であって、それは許される問題ではありません。これはきちっと申し上げてきております。  また、今回の場合には、避難民の輸送という極めて人道的な、非軍事面の分野において関係国際機関からの要請のあるもの、その要請を受けて、いろいろな場合を想定して民間機が活用できないような場合において行うということでありまして、それは自衛隊法の百条の五の規定の中に基づいてその範囲内で必要な政令を制定をする、必要な政令を制定することによってこれは行うことができる、このように解釈しておるわけでありまして、百条の五に内閣総理大臣に限るとか、あるいはそれ以外の者はできないとか、きちっと法文上規定がありますれば、それを乗り越えて政令をつくるということは、政令でもって法律をひっくり返したとかいろいろな御批判をいただくことにもなろうかと思いますが、法律の中に「内閣総理大臣その他政令で定める者」、こうきちっと書いてあるわけでありますから、それを素直に読んで政府の責任において出ていく対応をしたということでございます。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、今までの審議の一部蒸し返しになるかもわかりませんが、一つは、今総理が憲法上の観点から言われましたけれども、過去の審議の中では政府答弁としてそういったことのあったことは十分承知をいたしております。しかし、昨年の臨時国会における国連平和協力法の審議のときに、今総理がおっしゃったようなことを、この臨時国会というのはイラククウェート侵略が起こった後でやっておる臨時国会ですから、今政府が、総理が御答弁になられたことを含めて、一カ月近くの審議の中でそのことは立法機関の意思として否定されたわけですね。いわゆる平和協力隊という形といえども自衛隊を海外に派兵することはいけませんということの結果が出たわけですよ。ですから、私はそういう点からいって、これは、今回の政令改正というものは政治的にも法律的にも不当であって違法ではないか、こういったことを指摘しておるわけであります。この観点が一つ。  いま一つは、この範囲については、昨日同僚議員からも専門的な立場でいろいろ意見が出されましたが、自衛隊法百条の五によるヘリコプターで、航空機で人を輸送することができるというその範囲は、非常に限定されておるわけですね。限定されておる。それが、再三指摘されておりますように、百二十六条の十六によって「一 天皇及び皇族」から三権の長、そして「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」というふうに非常に範囲が限定され、対象の枠というものが非常に限定されておる。この枠をいわば無条件に広げていこう、無条件に拡大をしていこう、それがしかも法律行為ではなくて政令行為でやるんだ。そして従来、国会審議ではありませんけれども、海外における邦人の救出についてさえできなかったものを、今度の政令では邦人の救出についてもやれるんだということで枠をどんどん拡大しておることは、これは何と見ても不当なそして違法性のある政令改正ではなかろうか、こう考えるわけでございまして、重ねてこの点に対する政府見解を求めると同時に、こういう解釈がもし許されるといたしますなれば、どうでしょうか、百条のこの条文を中心にして艦船の海外派遣も許されることになるのではないかという危惧を抱くものでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初にお尋ねのありました問題ですけれども、この前の国会の国連平和協力法で議論になりましたことは、もう少し幅の広いいろいろな問題、例えば第三条に列挙いたしましたことは、避難民の輸送ということよりも、むしろあのとき中心的に御議論になったのは国連決議の実効性を高めるための多国籍軍に対する輸送協力とか物資協力とかいろいろなものについて、それが憲法で禁止している集団的自衛権行使に当たるのではないかという、その憲法違反ではないかという角度の御議論が非常にあったことが一つ。  それから、あのときあの法案には、条文を立てて、海外派兵はしません、武力の威嚇、武力行使を伴うものはしませんということは、明確に法文の中には書いてあったのですけれども、そこのところに明確なけじめがない、現実的にはそうなるのではないか、戦争につながるのではないか、そういう角度の御議論が非常にあったということも私は記憶いたしております。  そして、結果として審議未了、廃案となり、ただいまは自民、公明、民社三党間のあのときの合意事項に基づいて新しい国際協力のあり方というものはいかにあるべきか、成案を得るべく努力を続けてきたところでございますが、残念ながらその結論はまだ出ておりません。その中には、これは社会党もその後いろいろな機会にお示しになっておる国連平和協力機構というのですか、そういったものに対する内容についてもいろいろ重ねてみると重なる部分の、いろいろな作業の中にはそういったものも入っておる中に避難民の輸送というのも出ておるわけです。  いろいろなことを考えながら今努力をいたしておりますが、今度のこの突発事故の中で避難民がたくさん出てくることに対して、国連の委託を受けた国際機関からこれに対する移送の協力を求めるという、それに対応してくれるかどうかという要請が来ましたときには、これは、それはするべきことだと議論をしてきたことでありますし、また日本はした方がいいと思っておりますから、それに対応をどのような形でできるのか、可能性について検討をすると私は返事をし、そのような努力、準備をしてきたわけでありますから、前回の法律の中身と今回考えておりますこの問題とは大分違うということが一つであります。  それからもう一つは、この百条の五というのは、私は書いてあることを素直に読むと、いつも申し上げますけれども、航空機による輸送を行うことができると書いてあるわけでありますから、今委員御指摘の艦船による移送ということはここには出ておらない、こういうふうにこれまた素直に私は受けとめております。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一番最後答弁のように物の考え方が素直な考え方で対処されれば今回のような、今議論をしておるようなことが起こらないわけであります。  というのは、総理が艦船の派遣はこれは百条の五の規定ではできないということをおっしゃった。これはもうそのとおりでございまして、航空機の輸送、派遣の問題ですから、この条項で艦船までやるということになったらこれは大変なことです。その点についてはさすがきちっと整理をされて御答弁をなさった。こういうふうにやはり素直にだれが見ても、考えてもわかりやすいようなことをやれば、今日のこのような議論はないわけですよ。このことを一つ指摘をしておきましょう。  そこで、私どもが何だか人道上の問題とか今回のような難民救済について、何かそのこと自身がけしからぬというような口吻を時折漏らすのでありますが、決してそうではない。これはもうだれが考えても、人間ですから今の避難民を、その手段方法はどういうものであろうと難民救済に当たれなんということは人道上から考えてこれは万人共通したところでありまして、そういうことについては審議始まって以来、あるいは特に昨日の社会党の同僚議員の質問戦を通じても私ども社会党の立場というものは明確にしてきたつもりでございます。  そこで、私はあえてお尋ねするわけですけれども一つは、こういう政令改正というようなこそくな手段に打って出たというのは、一つには俗に言う二院制のねじれ現象、いわゆる参議院でこの自衛隊を海外派遣する問題が、法律改正という正常な手段でやった場合に参議院で否決されるかもわからないということで、政府は逃げの手を打ってこういうこそくな手段に出たのではないか、こういう疑問が私は依然として残っておるわけであります。このことに対する政府考え方をお尋ねすると同時に、いま一つは、先ほどもちょっと触れましたが、たしか昨日の新聞の社説ではありませんけれども、その一つは、海部内閣はこのような国会無視の既成事実をつくるようなことは直ちに中止すべきである、これが一つの社説の骨子ですね。いま一つは、政府・自民党は国会が定めた法律を遵守する法治主義の原理を忘れてしまったのではないか、これは今回の政令改正に対する大変手厳しい批判であり見解であろうと私は思います。これは新聞の社説オールマイティーとは申しませんけれども、有力新聞の社説に代表される意見というものは大体国民の良識を代表しておる世論ではないかと私は思うわけでありますが、こういう見解に対して、これまたわかりやすく常識論として政府はどのように、総理はどのようにお考えになっているか、これが二つ。  いま一つの問題は、自衛隊機を海外に派遣することは断念してほしいということを私、主張をいたしておるわけでありますが、今現地ヨルダンの情勢というものは従来よりも非常に危険な状態が増しているんではなかろうか。自衛隊機をああいうヨルダンに向けますと、ヨルダン政府自身が非常に困るのではないか。こういう観点から見ましても、今ボランティア活動によりまして、さまざまなボランティア活動を通じて民間機が飛んでおるわけですね。こういう国民の声なき声といいましょうか、何としても自衛隊機を海外に出すことだけはやめてほしい、こういう願いですね、そういうものに対する政府のお考えはいかがでしょうか、見解を承りたいと思います。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 第一に、私は、人道主義の立場に立って、国際協調主義を憲法でも表明しておる我が国の立場として、国際機関から要請を受けて、それに対してできる限りの協力をしたい、こういう気持ちでまず出発したわけであります。ですから、日本としてなし得ることは何だろうか、それは自衛隊の海外派兵はいたしません、けれども人道的な立場で非軍事面の被災者の移送という問題までこれは拒否しては、将来国際社会の中で、すべての国家に対して自国のことのみに専心して他国を顧みないのはいけないということを憲法の理念でうたっておる以上、国際協調主義というものを積極的に貫いていかなければならない、そういった意味でできる限りのことをしたいというのが今度の考え出発点であります。  それから二つ目は、これも繰り返しで申しわけありませんけれども、国会が決めてくださった法律というのは百条の五にこれこれのことができると書いてある。その中に「その他政令で定める者」というのがきちっと出ておりました。ですから、政令を政府の責任において定めるということで、これは国会無視ということではありませんし、また私の乏しい知識からいっても、それなればどうして、内閣総理大臣に限るとかいうような法律の書き方になっておれば、それを乗り越えて許されないようなことをやれるとは決して思いませんけれども、法律を読めば素直に「政令で定める者の輸送を行うことができる。」こう書いてあるのですから、それがああだからできない、こうだからできない、これだからだめだ、だめだと言っちゃうと、最初の原点に戻って、基本的人権を尊重するのは日本国民基本的人権のみじゃない、被災者の人権をも同時に、人間の尊重というところからいったらできることならば救ってあげるのがいいんではないかという原点に返っての行動までそれでできなくなってしまうというのも甚だ遺憾なことでありますから、これはこの法律に書いてあるとおりに限定的な政令をつくる。湾岸のこの問題に限ってイラククウェート周辺国にあふれ出てきた難民の人を、しかしそれは日本がそれだからそれというのじゃありません、国際機関の要請を受けて、当該国の支援を求めながら、民間機でできないところは自衛隊の輸送機に頼る。したがって、具体的に要請が来ましたときも日本航空、全日空に要請をしたら、このときはいろいろな困難を乗り越えて四機の飛行機が協力を申し出てくださったので、それによって片つけてあるということも、これは御承知のとおりと思いますし、移送のために必要なお金は国際機関に、最初の世界に対する要請の全額を、たしか三千八百万ドル、日本が計上して出しております。その国際機関が避難民の出てきた状況等を踏まえながら移送するわけですけれども、今後の状況によっては商用機のチャーター、商用機の利用が非常に困難な情勢が予想されるときには、各国もっと民間機も軍用機も提供するようにという要請があったわけでありますから、それに対する対応の準備をするためにこのような措置をとったのだということでございます。  そして最後の御質問は、じゃ、民間の人がいろいろおやり願っておることはどうか。私はこれもその第一報を聞きましたときに、それは日本は国を挙げてそういった国際協力、憲法に書いてある理念に従って国を挙げてみんながやっておるんだということの一つのあかしになるわけでありますから、そういった行為に対して率直に敬意を表します、こう申し上げましたから、そのことについては今もそのような気持ちでお願いをしております。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今総理が言われておる立場からも、自衛隊機を飛ばすかどうかというようなお互いが議論をやっておるさなかに、もう既にボランティア活動を通じて難民救済がどんどん実行に移されておるわけですね。そうでしょう。これはもう実効が上がっているのですよ。そういう手段方法があるのですよ。それが私どもが今まで指摘してきましたように、ヨルダンのアンマンだったらアンマンから、これは一つですけれども、アンマンからカイロまでの輸送はヨルダン航空会社の飛行機をチャーターしてやったらどうですか。あるいはボランティア活動の諸君がやっぱり私どもと同じような発想に基づいてお金を出し合って難民を輸送しておるわけですよ。政府が今やること以上のことをある意味ではボランティア活動においても成功をおさめておる。そういうところへまず第一義的に政府も我々もこぞって人道上の見地から難民の安全な輸送のために努力をする。そのためにはイラク立場からいけば敵国視されるような軍用機を飛ばすというようなことは、私は、政治的に見ても愚かな判断ではないか、愚かな考え方ではないか。そういうものは社説の論調ではありませんけれども、また今までの新聞の世論調査ではありませんけれども、六割以上の人がやはり自衛隊機を飛ばすことは中止してもらいたい、反対だ、こういう声があるわけですから、今からでも私は遅くないと思うわけであります。そういう意味で、この政令の撤回と、自衛隊機の派遣は思いとどまってもらいたいということを強く要請をするものであります。  そのことに関連をして申し上げますが、海部総理答弁を聞いておりますと、何だか黒を白、白を黒に言いくるめるような答弁にも聞こえるわけですが、私は、大変これは海部総理に失礼な言い分ですけれども、あなたには本当の魂があるのかどうか、政治家としての良心があるのかどうかということを、私は個人的にはあなたを今日ただいまといえども尊敬しておりますよ、しかし、やはり去年の国連平和協力法を提案して以来、あなたの政治家としての志なり魂というものがどこにあるのかということを、私は今首をかしげておるのですよ。というのは、あなたの本心は、去年の国連平和協力法のときには、自衛隊を海外に出すようなことは私はやりませんということが本心であったと思うのです。これは新聞その他で流れましたね。やはり海部さんいいところあるな、こういうふうに我々は評価しましたよ。今度の場合でも、本来筋論からいえば法律改正だ、筋論から法律改正だということで、結果的には朝令暮改式に変わりましたけれども、私どもの聞くところではあれは内閣の番記者との会見じゃないかと思うのですが、そこでわざわざ総理が筋論からいえば法律改正だと言ったことは、これまた私は政治家としてのあなたの良心の発露だったと思うのです。あなたの気持ちを、本当の魂を言ったと思うのですよ。そのことが結果としては裏腹に返ってきて、そうして言葉巧みに答弁なさっておるのです。私はどう考えても、これは総理、一国の総理としての志ある政令の改正案でもなければ法律の改正でもない、こう思うわけですよ。そういう観点からいってぜひ総理、今こそ私は、そういう意味では誤りを正すことにはばかることなかれで、余り強弁をなさることをおやめになって、やはりこれだけ世論の動向も自衛隊機を飛ばすことについて、あるいは政令によって法律を縛るようなこういうやり方については、国民の良識が納得しないわけですから、ここで踏みとどまってはいかがだろうか。これは私、最後機会として総理に注文と反省を求めたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私自身の物の考え方についていろいろ御批判をいただきましたが、御批判は御批判としてそのようなお考えもあるということを今謙虚に聞いておったのですけれども、私も私の考えを率直に言わせていただきます。  この国際化時代に日本がどのような態度で臨んでいくか。今、日本の国は国際社会、特に西側民主主義諸国の間から、自由と民主主義を守る、平和のために努力すると言いながらルールが違うのではないかというような非常な批判や不満や声が上がってきておることも事実であります。そして、日本の憲法には「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると九条に書いてあるのです。私が求めておるのはそのことであって、そのために日本がなすべきこと、やらなければならないこと、これは国際社会の中になし得ることはできるだけしていかなければならぬというのが基本的な考えであります。  したがって、現実の問題に目を落として物を言えば、このようなイラククウェート侵略という大変無謀な出来事が起こって、その結果避難民が出てきておって、それを移送してほしいという国際社会国連の要請がある。その要請を受けてIOMは世界の国々に民間機、軍用機、それによって協力してほしいと頼んできた。要請を受ければ日本もまず第一に、先ほども言ったようにできる限りは民間航空を頼んで、第一回と第二回と四機でベトナムに対する移送を行ったことはこれはもう御承知のとおりです。私はそのときに、避難民のたまり方が今、地上戦闘が行われておらないためなのか、あるいは出国が禁止されておるためなのか、比較的少ないので、ヨルダン航空のチャーター便で運ばれるという面において解決しておることも事実であります。  しかし、政府はそのためにIOMに対して、ヨルダン航空やエジプト航空で移送する費用を三千八百万ドル、最初に全額呼びかけにこたえて拠出しておるわけでありますから、IOMの努力であの地域の民間航空機がチャーターできる分は政府が拠出をして使ってほしい、要請にこたえておるわけです。なすべきことを全部しておるのです。けれども、呼びかけは、民間航空機だけで対応し切れないことが予想されるからそのときにはさらなる協力ができるかということでありますので、そのときに、民間航空が能力を超えたときになおたまっておる避難民に対して要請が来たときに、私は自衛隊の輸送機が出ていってその輸送に当たるということは人道的なことであって、それが愚かな判断だとは決して思いません。そういったものを見逃してしまう、国際社会における人道的な要請まで日本は受けないという立場は、日本の将来にとってどのような史的判断を受けるのだろうか。武装部隊が出ていくというのじゃありません。民間機とともに輸送機が出ていって輸送をするということまで要請を受けたときに、ぎりぎりそれをしなければならぬ段階になったときになおそれをしないということはいけないと思ったから私はこの判断をしたわけでありますから、これは国際社会に人道的な面で、非軍事的な面で協力をしていくのが憲法の理念にも当たっておる、そのような国際社会で名誉ある地位を占めたいと思うとすべての国に宣言もした日本でありますから、できるだけのことはすべきである、こう判断をしたわけでございます。これは御理解をいただきたいと思います。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今までの議論を聞きましても今答弁なさったことに終始なさっておるし、自民党の諸君じゃないけれども手が鳴るのはそこだけです、今までの審議を聞いておりまして。私は一般的な物の考え方として、憲法の前文ですね、その精神というものはもちろん大切にしなければならぬ。しかし、そのことのために日本が自衛隊法で、自衛隊に関する諸君が海外に出る場合はやはりそれなりの自衛隊法の改正をやらなければできぬということは、今日まで一貫した国会審議の経過です。それがもう定説になってきておるのですね。ですから、総理考えられておることをおやりになるというのであれば、もう今までもさんざん議論をしてきたし、私もさっき触れましたが、堂々と正攻法で法律改正をおやりになったらいいじゃないですか。国会の、立法機関の意思をないがしろにしたままで、政府の行政権の範囲でこのような重大な方針を変更することは、これは海部総理、あなたの良心に照らして愚策ではないかということを私は言っておるわけですよ。  私はそこで内閣法制局長官にもお尋ねをしておきたいのですが、私は率直に言って内閣法制局長官は、これまたさっきの総理の番記者との記者会見ではありませんが、当初はやはりこのような政令改正で自衛隊機を海外に出すことはできない、不可能だと、しばらくの間新聞の記事等はそういうふうに報道されましたね。私はこれまた日本の内閣の法制局の良心であったと思うのですよ。ところが、急にこういうふうに変わってきたのは、率直に言って、相当な政治的な圧力があったんじゃないか、これは。政治的な圧力に法制局が屈したのじゃないか。法律の番人ともいうべき内閣法制局は、私は、法制局長官もみずから職を賭してでも、また守るべき一線というのはやはり踏みとどまらなければいけなかったんじゃないか、こういうふうにいまだに私は思っております。内閣法制局長官、これは歴代の内閣法制局長官はこういった、いわば私から言えばだらしない法解釈はやらなかったと思うのです。あえてこの時期におきまして法制局長官の見解というものをお尋ねしておきたいと思います。
  26. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  内閣法制局といたしましては、その所掌事務として内閣あるいは内閣総理大臣、各省大臣に対して、法律問題に関し意見を申し上げる、こういう立場にございます。いろいろ新聞に報道されておりますことを私も読んでおりますが、私としてそういう意味内閣法制局の所掌事務を誠実に実行している、かように考えております。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 以上申し上げましたような立場から、私はこの政令改正による自衛隊機の海外派遣は直ちに断念すべきであり、派遣することを思いとどまってほしいということを強く要請をいたしておきます。  それでは次、これまた随分議論をされてまいりましたが、平成三年度の予算、平成二年度の第二次補正予算とも直接関係をします戦費九十億ドルの問題についていま少しお尋ねいたしておきたいと思います。  その一つは、この九十億ドルの算定の基礎あるいはその性格、そういったものをこれだけ議論をやってまいりましたが、必ずしも鮮明ではない。政府と私どもの見解の一致点というものはいまだに見出せないまま今日に至っておるような気がするわけであります。  そこで、ひとつ個別的な質問でありますが、この九十億ドルの費用はどういう積算の基礎かという点については、私、代表質問の中でも触れましたが、アメリカの側は依然としてその算定の基礎というのは一日五億ドル程度の戦費、三カ月間戦争が続いたとしてその戦費の二割がこの九十億ドルであるというように、アメリカ側から聞こえてくる情報によれば、依然として積算の根拠というのはそういうものだ。政府は総括的に、包括的にGNPの観点からあるいは貿易収支の観点からこういうふうに自主的に判断したのだと言うけれども、ここ四、五日前のアメリカ側からの情報によっても、これはアメリカが要請をしたものだということは極めて明確に報道をされております。そういう一連の経過からいって、算定の基礎というものは大変これは大づかみですけれども、やはり前段触れましたような観点からはじき出された九十億ドルではないのでしょうかということを重ねてお尋ねすると同時に、この九十億ドルの中身は、言うところの武器、兵器弾薬等の費用には使わないということを総理は御答弁になっておりますけれども、一昨日ですか、一昨日の外務省の松浦局長答弁によりますと、この九十億ドルのお金というものはあれに使ったらいかぬ、これに使ったらいかぬという制限はありません、制限はないのですというそういう答弁をなさったように私は理解をしておるわけでありますが、この食い違いというのはどこにあるのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  28. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理を御指名の御答弁であり、また北米局長御指名の御答弁でありますが、事実問題としてひとつ補足をさせていただきたいと思います。  今、昨今のアメリカ側からの情報ということを委員は言われました。昨今のアメリカ側からの情報というものがどういうルートのどのような情報意味しておられるのか、私にはわかりません。ただ事実関係として、昨日嶋崎委員にもお答え申し上げたところでありますが、九十億ドルという数字がアメリカ側から出てまいりました一番最初の時期がどういうものであったかを御想起いただきたいと思います。それは海部総理が決断をされ、ブッシュ大統領に電話で、多国籍軍の平和回復努力に対して九十億ドルの資金協力を行う用意があるということを連絡をされ、それを受けた大統領の報道官、フィッツウォーター報道官が、海部総理から多国籍軍に対する資金協力の申し出を受けた、これを評価するという、記者会見で九十億ドルという数字を述べられたのがアメリカ側の最初の数字であります。  その後、いろいろな方がそれぞれのお立場でいろいろなことをおっしゃっておられることは私も承知をいたしておりますが、九十億ドルという数字が今私が申し上げましたように、フィッツウォーター報道官の大統領にかわっての記者会見の中で、海部総理からの連絡というものを報告する形で出てきた数字であるという事実は、どうぞ御認識をいただきたいと思います。
  29. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一々の数字を挙げることはやめますけれども、我が国が今置かれている国際的な立場、これは好むと好まざるとにかかわらず大きな影響が及ぶようになっております。委員も新聞をいろいろ読んでおられますので、私の言う記事もお読み願ったかもしれませんが、片隅の幸福型国家という記事がございました。私はあれを読んでなるほどと思ったことは、戦後、自由と民主主義の旗印で、世界の道徳国家として、理念型の指導国家としてのアメリカと、同時に日本は、ひとりで片隅でひっそりと人に迷惑をかけずにつつましやかに自分の国の幸せだけを考えて生きていこうという、片隅の幸福型国家とでも言うべき生き方を戦後選んだのではなかったのだろうか。人に迷惑をかけないようにしていこう、自分のことを中心にやっていこう。それが、もう世界の片隅に入っておれないほど大きくなってしまっておるのだということを政治家国民考えろということがその記事にたしか示唆されておった。私はそのことに非常に深い感銘を受けながら、責任を果たさなければならぬ、あるいは我々が、時々世界に対する貢献、貢献という言葉を口にしますけれども、それに対しても、何か日本世界の中に生きている日本だという考えじゃなくて、世界の外にあって世界を見ながら、あっちも悪いが、こっちも悪い、ではいい方にこれだけ貢献しようか、手伝おうか、何かそんなような感覚でおるのではないかという御指摘もありました。世界の中の一員としてならば、貢献というよりも、責任を分かち合って、できることできないことはあろうけれども、できることはやるんだという、一歩世界とともに生きていくという日本の姿勢を、そろそろ片隅のひとりだけの幸せを追求する国家から世界の中の一員に出るべきではないか、こんなような記事でございました、正確な表現はそうだったかどうかは手元に持っておりませんが。  そういう示唆を受けてなるほどと思って調べると、世界に対するGNPもアメリカ日本だけで四割近くも世界経済力を支えておる国ということも、あるいはサミット参加国の一員になったということも、貿易によって毎年何百億ドルと黒字が残る、そのうちアメリカ一国に対して五百億ドル台が三年も続いたことが、世界貿易に対して非常にいろいろなインパクトを与えた貿易摩擦のもとになっておったのではないか。今度もガット・ウルグアイ・ラウンドの問題について、私は、厳しい問題をみんな持っておるけれども、共通のテーブルの上でみんなが共通の認識を得て、このガット・ウルグアイ・ラウンドを成功させて自由貿易体制を守っていくようにしなきゃならぬ、成功させたい、そういう努力をすると言っておりますのは、きょう現在我々が片隅の国家から大きな国家になることができた過程の中には、その自由な貿易の中で日本は平和を享受してきたんだというこの事実があるからでございます。  そういったことを守り、またそういった影響力のある国が、憲法の建前から国連決議をして二十八もの国が武力の行使に入っておるときもそれには参加できませんという、これまた特殊な、特別な立場があるのですから、それを世界に認めてもらうためにもやれるべきことは責任分担はできる方でやりますよ、行ってしなければならないという国際化時代における日本立場、むしろ、将来の世界の平和秩序、枠組みの中へどのような形で日本が参加をしていくかという問題にもこれはつながってくるわけでありますから、そういったこと全部を踏まえてこの額の決定をし、日本の決定としてお伝えをしたんだ、こういうことでありますので、その点はどうぞ御理解をいただきたいと思っております。──二つ目の答えを忘れました。  この九十億ドルの支援金は、湾岸平和協力基金へ日本からは提出をいたします。ここでも問題になりましたけれども、ベーカーさんが記者会見で、これはアメリカのとおっしゃったそうですが、これは湾岸協力基金へ出して多国籍軍、ただ、多国籍軍の大宗を占めておるのは米軍でありますからアメリカにその大宗が結果として行くことになろうということは、第一回の拠金の九一%がアメリカに行っておることでこれはおわかりいただけると思いますけれども、とにかく出す先は湾岸協力基金でございます。  それから、それをどうするかということについては、本来ならば国連決議の六七八によって適切な支援をしろ、こういう要請を受けて日本としてはできる限りの支援をしたのでありますから、これは平和回復活動に使ってもらうためのお金だ、こういうくくり方でこちらは出したのです。けれども、いろいろな御議論がありましたし、また世論の動向等も踏まえて私が言いましたことは、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針であります。御質問は武器弾薬に使うのじゃないかということでありましたから、結果としてそのようなことにならないようにしていきたいと思っておりますと、こう言いました。それは究極的には湾岸平和基金の運営委員会で決められることになるわけでありますから、その湾岸平和協力基金の委員会には我が国の代表が出ておるわけでありまして、提出国の意に反しない、そういう使い道がそこで確保されることになっておるというようなことで、私はこれらの分野に充当する方針だということをここで何回もお答えをしたわけでございます。北米局長にもそのことはきちっと指示がいたしてありますし、また湾岸協力基金に出ていく代表はそのことを、協力基金の場で日本の意図はこれでありますと、分野を特定して拠出をするわけでありますから、それらのことについては武器弾薬に充当されない方針というものを協力基金でも貫いていきたい、こう思っておるわけでありまして、食い違いはございません。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 食い違いがないと言っておるわけですけれども、一昨日の北米局長答弁は食い違いがある、こういうふうに私は判断をしておるわけであります。というのは、この九十億ドルについて、今総理がお答えになられたようなことではなくて、あれこれ制限をつける意思のない、つけることのできない性格のものであるというのが松浦局長答弁であったというふうに私は理解をしておるわけであります。これは後ほど、場合によれば答弁してもらって結構です。  私は、これももうかなり議論をしてきたと思うのですけれども、この九十億ドルの金は最終的にどこへ行くのか。日本がGCCを通して、GCCの運営委員会の湾岸協力基金、平和協力基金を通して、それから先どこへこの金が行くのかということになると、これはアメリカの財務省の中にある国防協力基金に入るのですね。国防協力基金といえばやはり、私のきょうの冒頭からの質問ではありませんが、極めて常識的に、またこの国防協力基金というものの性格を私は私なりに調べてみましたが、これはやはり今度の湾岸戦争のようなそういうものにこの基金が使われるためにできておるセクションだと私は思うのですよ。ですからなるほど、運営委員会に武器弾薬は使わないようにと言ってみても、アメリカの財務省の国防協力基金に入る、その基金に入ってからそれがどこへ使われたかということは、最終的にそのあかしを立てる場所というのはないでしょう。ありますか、これ。あるんだったら言ってください。そこで何に使ったかということは最終的にはわからないでしょう。それをチェックする何かがあるのでしょうか。もう運営委員会で日本政府としては、そこは二人しかいないわけですからね、二人しかいないわけですから、そこまでは日本政府の意思として武器弾薬やそういったものに使わないようにというような、ようにという要望が入れられても、それから先何に使われたかということは確たる保証も、確たるあかしを立てるものもないと思うのです、私は。そういう意味合いから言って、この九十億ドルというものは武器弾薬を含めたいわゆる戦争目的遂行のために使われる諸経費だ、こういうふうに理解することが極めてこれ常識的な判断ではないか、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  31. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は何度も申し上げておりますように、国連決議に基づいて関係諸国が行っている平和回復活動支援するため所要経費の一部を協力するものとしてこの拠出をするわけでありますが、国会のいろいろな御議論等を踏まえ、また国民感情を配慮しながら、私は、拠出するその諸費用は、全体出すというような大それたものでありませんから、その一部を負担するということでありますから、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当するという方針であるという意向を運営委員会に伝えて、そしてその意に反した使途には充てられないように確保し得る仕組みにもなっておるわけでありますから、そのことをここで申し上げました。  なお、先ほど来の御質問とともに、その先の報告を求めること等について、局長から報告をいたさせます。
  32. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 最初に、藤田先生から、私が九十億ドルの具体的な使途に関しまして総理の御答弁と違う形で、制約を付さないということを言ったんではないかという御指摘がございましたけれども、私は一切そういうことを申し上げておりません。私は、九十億ドルの具体的な使途に関しましては、総理が言っておられる輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費等に充てると、それをいかに確保するか、いかに担保するかということはいろいろ申し上げましたけれども、その具体的な使途に関して総理と違うことは一切申し上げておりませんで、もし先生がそういうふうにおっしゃるんであれば、私の具体的な議事録に沿って御指摘いただきたいと思います。  それから、先生がもしかすると念頭に置いておられますのは、十三日の木島先生に対する私の答弁かと思いますが、これは総理の御指示を受けまして、木島先生より具体的分野でのことで、具体的使途のことではなくて、輸送の対象について御質問がございましたので、この輸送の対象ということで御答弁したわけでございまして、具体的な使途のことではございませんので、改めて申し上げたいと思います。  それからもう一つ、今総理からも触れられました資金の流れの関連で、先生から御質問がございました点、総理が申し上げました点をちょっと補足させていただきますと、先生も御指摘のディフェンス・コオペレーション・アカウントでございますけれども、これに関しましては、昨日も申し上げましたけれども、第h項というのがございまして、これは、寄贈者が寄贈したお金につき条件を付した際には議会に通報しなければならないということになっております。これに基づきまして確認をいたしましたところ、今までの十九億ドルの中の資金協力でアメリカに提供しておりますのは輸送関連経費でございますが、米行政府は議会に対しまして、日本からの資金協力は輸送関連経費に充てることになっているということをきちんと通報しているということでございます。  それから、それを踏まえてでございますけれども総理が先ほど御答弁されましたように、運営委員会に対しまして、まだ全部ではございませんけれども、輸送関連経費に使ったという報告をアメリカはしてきておりますので、こういう形で、私どもが当初意図した輸送関連経費に充てるということがきちんと確保されております。  このようなメカニズムで、今後の九十億ドルに関しましても、私ども考えておる、総理が繰り返しおっしゃっております具体的な使途に充てることが確保できると考えております。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 松浦局長の十三日の委員会におけるやりとりの経過も、私は議事録を含めて読んでおります。もちろん輸送関係の業務の問題として答弁をしておることはそのとおりでございまして、私が今指摘をいたしておりますのは、そういう輸送業務だったら輸送業務の中に、兵器弾薬を運んでおっても、あるいはそういった方面にこの九十億ドルが使われても、そのこと自身を具体的に検証するものはないじゃないかということを言っておるわけでありまして、これは政府といえどもそこまで立ち入って検証することはできないし、交換公文の中にそんな条件を設定することもできないというのが今日の現状ではないか、こう思うわけであります。  その点について、後で政府の見解を聞かしてもらいたいと思いますが、さて、この九十億ドルが、私どもの認識と政府の認識の違いが依然としてあるわけですけれども、私は冒頭申し上げたように、この九十億ドルは、国民の理解の仕方としては、湾岸戦争に対する多国籍軍、わけてもアメリカ軍を中心に増税によって賄われる九十億ドルというものが戦争目的遂行のために使われるお金である、経費である、こういうふうに国民は理解をしておるだろうし、私自身もそのような見解に立つわけであります。したがって、この問題は、戦費であるかどうか、私どもはそのように考えましても、政府はあれだこれだという御答弁もありますから、これ以上私はこの戦費問題について議論をやるつもりはございません。  そこでお尋ねしますが、この九十億ドルは、これは新聞の記事でありますからその範囲を超えないわけですけれども、十三日の新聞によりますと、「湾岸戦争の戦費が膨らんだ場合、同盟国と資金協力の「第二ラウンドの話し合い」が必要であり、その協議はすでに電話や相互訪問を通して非公式に始まっている、」これは米国防総省のウィリアムズ報道官が記者会見の中で明らかにしておるということが報道をされています。これまたここでさんざん議論になりましたけれども、算定の基礎は必ずしも明らかでありませんけれども、あってはならない、この局面停戦に向けて最大の政治的努力を払うべき時期でありますけれども、下手をして地上戦になっていくということになれば、この追加、協力資金の追加というものがこのウィリアムズ報道官が指摘をいたしておりますようなことになっていくのかどうか、日本政府に対してこういう相談が非公式になされているのかどうか、このあたり御答弁をいただきたいと思います。
  34. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今先生が言及されましたのは、二月十二日の国防総省の定例記者ブリーフにおきますウィリアムズ報道官の御発言と思いますが、私どもは一切、インフォーマルな形ですらもアメリカからアプローチを受けておりません。
  35. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私も前段言った以上の、率直に言って手持ち材料がありませんからこうじゃないかということは言えませんけれども、少なくともこういうふうに国防総省の報道官が記者会見で言うということになれば、その呼びかけなり相談があるとすれば、これは二十八カ国の中でもう日本以外にないと思うのですね。一番最初相談するのは日本だと思うのですよ。そういう呼びかけが、事前の呼びかけ、相談がないにもかかわらず、こういう記者会見で報道官が発表するなんていうことはちょっと考えられないのですね。そういうことになると、ウィリアムズ報道官の言っておることが、これがいわば本当なのか、今松浦局長答弁をされた、何の相談もないというのがうそなのか、このあたりをやはり明らかにしてもらわないといかないと思いますが、どうでしょうか。
  36. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、少なくとも財政当局の責任者として私はそのような連絡を全く聞いておりません。ですから、これはお信じいただけるかいただけないかの問題でありまして、アメリカの報道官を信じられるのか私を信じていただくか、どちらかであります。  ただ、先ほどから委員大変停戦という言葉をお使いになりますけれども、私はどうしても、先日来の御議論の中で私自身の胸に落ちない部分がございます。それは、一体イラクに占領されたままのクウェートの人々はどうなるんだということであります。アムネスティーの報告は委員もお目通しでありましょう。八月二日以降どれだけの人がイラク軍によってクウェートで殺されたか。例えば、病院の未熟児保育器を略奪したために何百人の未熟児が死んだか。クウェートを占領してからのイラク軍の残虐行為というものは、アムネスティーという国際的に権威を認められた団体において幾つかの報告がなされております。我々はやはり、イラククウェートから立ち去って、その上で中東へ平和が戻ってくるものと思っております。そしてその中において、今委員がはしなくもアメリカの報道官の言を引かれて戦闘が長期化するケースを想定されましたが、我々は戦闘が長期化すること自身を望みません。一日も早く終わってもらいたい。ただしそれは、クウェートを占領したままのイラクを認めるということではない。イラクが少なくともクウェートから立ち去るということが必要であるということだけはお互いに確認をしておきたいことだと考えております。
  37. 藤田高敏

    藤田(高)委員 橋本大蔵大臣が、私が質問していないことまでに丁寧な御答弁がございました。私は、けさから言っておることが胸に落ちぬと言うが、私の言っておることが、真意があなたの胸にすとんと落ちてないとすればあなた自身が偏見を持っておるんじゃないか、こういうふうにさえ思うわけですよ。  私が強調しておりますように、四日の代表質問以来、私はイラクの不当なクウェートに対する侵略はこれはいけません。そうして先ほども総理にお尋ねしましたが、この和平の、停戦基本的な条件というものは、こういうふうに私はゆうべずうっと整理してみましたが、もうかれこれ十何カ国のいろいろな経過があるのですよ。その中でどの各国の首脳も和平提案の中で、イラククウェートからの撤退ということは入っておるんですよ。だから私はさっきも言ったでしょう、それが基本だと。そしていま一つは、そうかといって、パレスチナ問題を何らかの形で問題解決に向けて条件にしていかないと解決にならないのじゃないでしょうかということを言っておるんでして、私に対する偏見がなければ、それで結構。私自身は、今申し上げたように、そういう間違った認識はしていないということを明確に申し上げておきます。  大蔵大臣の発言につり込まれますと私の次の質問のベースが崩れますから、私はそのことはこれ以上言及をしようとは思いませんが、今申し上げたとおり、停戦に対する私の切なる政治家としての要求も政府の皆さん以上に持っているということ。そしてきょうの質問の私は一番大事な点は、けさニュースを聞いて実は私の質問の中とは違った気持ちでやっておるわけです。というのは、何としてもこの二、三日が非常に大事な気がしてきておるわけですね。前段言っておるように、今晩プリマコフさんもやってくる。そういう中で地上戦にこれを発展させたんではどうにもならぬ。それこそ広島や長崎の原爆が落ちたようなさらに悲惨な状態が起こるんじゃないかという、私はある意味では自分自身はそういう悲壮感に満ちてきょうの質問をやっておるわけでして、決して九十億ドルの上に追加の要求が出てくることを私があたかも歓迎するかのごとき、先ほどの御答弁がもしそういう要素があったとすれば、これは大蔵大臣の偏見ですからひとつ撤回をしてもらいたい。これは私の名誉のために。──はい、わかりました。  そういうことで、次に進みます。  それで、この戦費問題及び追加の問題は、お互い政治的努力として追加が来ることのないようなそういう情勢の変化を外交努力中心にやっていかなきゃいかぬということを明確に主張として申し上げると同時に、私はここで聞いておきたいことは、これから予算書に関連をして質問に入りますけれども、いわゆる予算の原案に対して今、けさの新聞ではありませんが、約五千億円程度の修正がなされるというような報道もなされています。ここで、あってはならぬことですけれども、次にまた追加の戦費、九十億ドルに匹敵するようなものがまた出てくるということになれば、これは念のために聞いておくのですけれども、増税によってやるんですか、それとも赤字国債の発行によって始末をつけるんですか。そうしてまた増税による場合は──大蔵大臣、あってはならぬことですけれども、仮に地上戦に発展するようなことになって次の財源が、追加財源の要求があった場合に、増税によっておやりになるのですか。それとも、財政再建途上にあるわけですけれども、残念ながら赤字国債の再発行ということで対応されることになるのでしょうか。これは一つの見通しとしてお尋ねをしておきたいと思う。増税をやる場合は、これは世間で言われておるようにまさか消費税の税率をアップするようなことや、あるいは所得税の率を上げるようなことによって対応しようとはまさかお考えになっていないと思うんですが、これも念のためにお伺いをしておきたいと思います。大蔵大臣は、今停戦に向けてやりおるんだから、そういう長期化して追加要求の来るようなことを考えてないというようなことをおっしゃるかもわかりませんが、やっぱりこれはお互い、我々としてはもしもの場合はどうなるかということも考えながら、今から私の具体的に質問をする九十億ドルの支出について考えなければいかぬ、こう思うわけです。そういう観点からあえてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  38. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず最初、偏見ととられました部分は私の言葉足らずでありますので、これは取り消しておわびをいたします。  それから続いて、今の御質問でありますが、まさに私は本当に先のことわかりませんし、またここでどうお答えを申し上げましても、これが国内だけでなく報道され、他国に要らざる期待をあるいは失望を与えることも望ましいことだとは考えておりません。ただ、平成二年度内においてこれ以上の負担を求められましても不可能であるということだけは率直に申し上げたいと存じます。  また、その上でお答えを申し上げたいことでありますが、たまたま今委員から例示の一つとして消費税が挙がりました。そして本院における御論議の中で、その消費税の益税部分を見直すことによって財源をつくれという御指摘があったことも委員は御承知のとおりであります。そしてそれに対して、消費税についての見直しは、政府としての一応の考え方を国会にお示しをし、一院は通過しましたが、他の院において審議未了、廃案となり、また野党の共同提案で提出をされたお考えというものも同じ状況になった上で、両院の御意思として合同の委員会がつくられ、消費税の今後の見直しの内容というものは両院が握っておられるものであります。その両院が自分たちの見解を示すと言っておられます項目をあらかじめ想定して財源に考えることは私にはできませんということを、この平成二年度における九十億ドルの財源の論議のときにも申し上げております。これでどうぞ消費税というものを財源として考えるのかという御質問に対する答えにさせていただきたいと思います。
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 どう戦局が展開していくかもわかりませんので、その点についてはこれ以上の議論は差し控えます。  そこで、時間の関係もございますので、最後質問をいたしたいと思いますが、私どもは今平成二年度の補正予算もまだ手元に届いてない、そして平成三年度の正式な予算案はここに出ておりますけれども平成二年度の関係において修正をされるであろうと考えておりましたその修正もこの議案書の中にはない。これは我々はそういう意味では正式な議案書だとは思っていない。議案としての資格を持っていない、これは。こちらは、当初二月一日から予算審議が始まるというのが四日にずれたのも、いわゆるこの平成二年度の補正予算案、二次予算がいつ出るのか、出てこなきゃ審議はできないじゃないですか、こう言って、結局、たしか三十日だったですか、三十日に俗に言うお経読みと称する説明があった。そのときに出てきたのは、その翌々日二月一日付で出てきたのが平成二年度のこの補正予算、これが湾岸地域における平和回復に対する我が国の支援に係る財源措置として、いわゆるつなぎの特例公債を一兆一千九百億円出しますよ、その裏づけとして、石油、法人、たばこ三税で一兆一千九百億の財源によってこれを裏打ちしますよという、こういう極端に言ったら半ぺらの資料が出ておるだけであって、いまだにここに補正予算が出てない。これは実際言うと、審議しようとしても審議できない状態なんですよ。そうでしょう。こんなことは私も二十年国会で議案審議をやっておりますが、初めてですね。例えばこちらの方の説明書でいけば、この当初のなにからいけば、一兆一千九百億円の金が入れば、それを特別会計の国債整理基金のところへ、ここへきちっと入ってこなきゃいかぬですね、これ。例えば石油臨時特別税あるいは法人臨時特別税、あるいは当初の計画からいけばたばこ臨時特別税というものがここへぴしっと入ってこなきゃいかぬのです。これが今の段階でも全然修正されてない。そういうままこれを審議をしていいのかどうか、そういう不見識なもので。議案としての資格を持ってない、今我々が審議しようとしておるのは。  それで、しかもけさの新聞じゃありませんけれども、このときの説明では、今言った三税ですね、三つの増税によって一兆一千九百億を穴埋めするのですよ、こう言っておったけれども、どうもけさの新聞あたりでは、たばこ税の一千四百億円ですか、それがどうもなくなるようなのです。ということになりますと、何を中心にして審議をしていいんだろうか、こう思うわけでありますが、これに対する政府基本的な態度をまずお伺いいたしたいと思うのです。どうでしょうか。私、初めてです、こんな不見識な議案書で審議するのは。
  40. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 不見識というおしかりは甘んじて私がちょうだいをいたします。  ただ、同時に、このような形で大国が小国を侵略し、国際機関がたびたびの意思を表明してもなおかつそれが聞き入れられず、平和回復のための武力活動が始まったという事態も初めてでありまして、その意味では、確かに私どもが初めての事態に遭遇をいたしております。  そして、先日来私も何回か御答弁を申し上げておりますように、本院の御議論をも踏まえながら、私自身、なおその財源をどうすべきかについては苦しみ抜いております。あるいは、全く本院の御論議というものに耳をかさず、苦しまず、当初のものを急いで提出すべきであったのかもしれません。しかし、少なくとも私は平成三年度の予算書というものが不見識とおしかりを受けるような作業を大蔵省の事務方の諸君がしてきたとは考えておりませんし、その平成二年度における新たな財源を必要といたします影響というものも最小限度にとどめていきたいと考え、できる限り予算書に影響のない形というものを頭に置きながら現在も悩み続けております。  私自身の力が足らないという点についてのおしかりは甘受をいたします。申しわけありません。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、今大蔵大臣が、この正式議案書と称するもの、これは欠陥があるということを率直に認められたことはそれなりに私は認めましょう、これは。──いや、この予算書を出した、これ自身が不見識だとは言っていないのですよ。ここが修正をされて出てこなきゃいかぬものがいまだに出てこないということは、これは不見識じゃありませんか。  いま一つ言えば、最初はここの中に三つの税金が入ってくると思っておったのがどうも二つになりそうだ、たばこ税がなくなるような政治的な動きが出てきておるということになれば、ここへ修正の条項が入ってくるのが最初は三つだと思っておったのが二つになりそうだ。これはどういうことになるのですか、今の段階では。どちらなんですか。それは審議できないでしょう、そういう基本的なことがこれは入っていないのだから。
  42. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、お言葉を返すようでありますけれども、あくまでも今委員が御指摘になりました部分につきましては、平成二年度補正予算二号を提出をいたしました場合にその財源を得るための措置に係る部分でありますから、平成三年度予算本体に影響のある部分ではないということはまず一点申し上げたいと思います。──三年度予算本体に影響のある部分ではないということは一点申し上げたいと思います。なぜなら、そのつなぎ国債の償還に充てる財源をどう工夫するかという問題点ということでありまして、平成三年度予算本体の問題ではないということは一点申し上げなければなりません。  ただ、今、私自身が今も悩み続けておりますと率直に私は申し上げました。今、税目がどうなるのか、あるいはその本体予算に影響が出るのか出ないのか、お尋ねをいただきましても、現時点、私自身がまだ結論を出し切れておりません。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、私は審議を続けますけれども、本来の基本的な立場からいけば、これは実際審議ができませんね。審議しようとしてもできません。こういったことで、いわば、架空とは言わないけれども、何が本体やらわからない。私は言葉じりをとろうとは思いませんが、平成三年度予算の本体にはかかわりないと言っておるのですが、平成三年度の予算というのは特別会計を含めてが本体じゃないですか。そうでしょう。一般会計の予算だけじゃないでしょう。特別会計も含めて、これが本体でしょう。そういう理解じゃないと、これは、平成二年度のこれだけ増税をやる予算として審議することはできませんよ、やろうとしても。私は、こういう問題については、これは理事会で取り扱うことが適切であるかどうかわかりませんが、やっぱり基本問題として、予算委員会がこの予算審議をやる基本問題として、これはぜひ理事会で権威ある見解を示してほしい。そしてぜひ院としての、予算委員会としてのひとつ統一見解を委員長中心にお出しを願いたい。
  44. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員の御指摘でありまして、もし私の言葉の選び方が不適切であるというならおわびを申し上げます。その本体と申しました意味は、まさにつなぎの国債の償還財源に充てる部分という意味で申し上げたつもりでありまして、関連する歳入部分が予算本体でないと申し上げているつもりはありませんでした。ですから、その言葉、言葉じりと今まさに委員が言われましたが、そういう部分で御指摘を受けるのでありますなら、私はおわびを申し上げます。  ただ、委員も仰せられましたように、私は委員と最初の選挙を初めて当選をした、それ以来の長い時間を経て、こうした戦闘行為が発生し、それが我が国の支出に直接かかわるという事態は、全く私自身体験したことはございません。そうした中で、前に参考とすべき手法もないままに、苦慮しておりますと申し上げたのは、何も私はおざなりで申し上げているつもりではないことも、どうぞ御理解をいただきたいと思います。そして、その苦慮しておること自体がけしからぬと言われるのであるなら、これは私自身の力足らずということでおしかりを受けるなら何をか言わんやであります。
  45. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それはひとつそこで相談をしておいてほしいのですが、これも言葉じりをとるつもりはありませんけれども、一般予算と特別会計予算、これは関連というよりも、私は特別会計と一般予算がやはり一体のもので審議をするというのが本来の基本的な予算審議のあり方ではないかこういうことでございまして、関連するというような、そういう付随的なものではないという基本認識、これはきちっとやはり、釈迦に説法ですけれども、踏まえた上でお互いは議論をする。そういう意味については、物理的、時間的にいろいろな事情があったとはいいながら、国会審議の中でいろいろ議論をすべきことが、外での作業に時間をとられて、そうしてこういった正式な修正なりあるいは再修正をするような議案が提示されないことは、やはりこれまた基本的な考え方からいって、大変これはまずいことではないだろうかと、この点は重大な警告として私は指摘をしておきます。  私は、時間の関係がありますから、このことだけについてもまだ言いたいことはたくさんありますけれども、このことにそれこそ関連をして次に進みます。  そこで、このことについてなにしておきますが、世間では特例法は特例法で出す、あるいは補正予算は補正予算で、あるいは本予算は本予算で出して、何だか法律案と補正予算と、増税案と本予算があたかも切り離されてもいいんだというような説も一部に有力な説として流れておりますが、私はそのようなことを政略的にやるような内閣ではないと思っておるわけですけれども、少なくともこの補正予算の簡単な説明書きの中には「このための法律上の手当てについては、税制上の措置とつなぎ国債を発行するための措置等とを一括した法案により措置するものとする。」と、こうなっておりますね。だから切り離しができぬことになっておるわけです、これは。一括して提案しますよ、ですから正式な補正予算は出てないけれども、皆さん了解をして審議に入ってくれませんかというのがこれなんですね。我々はそういう意味で了解をして入っておる。その中に、これは法案と税制上の措置は一括して処理しますから、どうぞ不十分な段階ですけれども審議に入ってくださいというのがこれなんです。ところが、今世間では、片一方どんどん特例債が出れば、あとはその裏づけ法案が成立しなくとも、あるいは三年度の本予算が通れば、これまた増税案が成立しなくとも、言うたら切り離しですよ、これとは一括ではなくて、分離し切り離してでもやれるんだという動きがありますが、まさかそんなことはおやりにならないと思いますが、この趣旨を踏まえてこれから対処するのですね。
  46. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 この点について、私は何遍もお答えを申し上げてきたつもりでありますが、一番財政措置として安易な手法をとるとすれば、赤字公債を承知で補正予算を提出することであったでありましょう。しかし、こうした本当に歴史上の一瞬に起きた出来事のための負担を後世代に回せるでしょうか、我々は。ですから、委員が今御指摘いただきます以前から、私は本院で何度も、国民に御負担をいただくその裏打ちを持ったつなぎの国債によってこの二年度における負担を償いたいと繰り返し申し上げております。そのためには、私どもは歳入と歳出の対応というものが一体のものでなければ困るということを繰り返して申し上げておるわけでありまして、世間でどのようなお話があるか私は存じませんが、私は切り離すつもりはございません。
  47. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そうあるべきだと思います、それは。それはもう当然のこととして、これだけの提案をして、議案書にかわるべきものとしてこれをお出しになって、一括処理しますから御了承くださいということで審議に入っておるわけですから、対応する措置としては今の御答弁どおりやってもらいたいと思います。俗に言う何だかウルトラC的なもので処置をするようなことでこの問題を処理しないように要請をいたしておきます。  そこで私は、全く時間がなくなりましたので、いずれ一般質問その他でもやりたいと思っておりますが、今大蔵大臣が言われましたように、せっかく昨年から赤字国債ゼロということで財政再建が軌道に乗りかけたやさきにこういう問題が起こった。それで、財政当局としては赤字を、やはり赤字国債を発行してそして後世に残すようなことはいかぬという一つ対応策をとっておることは私はそれなりに理解はできる、こう思うわけであります。  ただ、私は先ほどからも、ずっと以前からもそうですが、日本はこれだけ湾岸問題に対して他国がこうだからああだとかとこう言うのですが、一番ここで誤解を与えてはならぬと思うことは、日本が言われるほど金持ちであろうかという素朴な見解であります。財政のなにからいったら、財政が公債に依存しておるのが二割以上の国なんというのはどこにもない。アメリカフランス、イギリス、ドイツをとりましても、日本が公債依存率が一番高いのですね。そうして、今の財政審あるいは大蔵省が出しておる計画に沿っても、十五年先になりますと、計画どおり進んでも赤字公債の累計額は現在百六十四兆円が百八十兆円にふえていくのですね、こういうふうに。そうでしょう。そういう中で何だか湾岸支援の九十億ドルにしても、日本が大変金持ちだから協力するのが当たり前じゃなかろうかというような考え方アメリカだったらアメリカからの相談があるとすれば、そういう認識はやはり外交交渉の中できちっと折り目をつけなければいかぬのじゃないかということが一つであります。  それといま一つは、私はこの九十億ドルに関連をして今日まで、昨年政府が最初十億ドルの、この湾岸支援費として予備費からこのお金を出しました。予備費については、かつて二、三年前参議院で、決算委員会におきまして予備費支出はこれは不当であるということで否認されたことがございます。今度の場合も、この九十億ドルの援助資金の性格の重要性、そして金額の大きさ、さらには国会の意思を問う時間的な余裕があったと思うにもかかわらず予備費によってこの十億ドルの支出をやった、そして、今日十億、十億、九十億ドルということで問題になっておるわけでありますが、これは財政法の予備費使用についてというこの項目を見ましても、政府、内閣の意思によって大蔵大臣がやれるものというのは非常に限定されておるわけですね。こういうこの九十億ドルにつながるような性格の予算は、これは少なくとも補正予算として国会の意思、国会の議決によらなければ支出することはできないというのが私は財政法の建前だと思うわけでありますが、その点について政府の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  48. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一点、委員が御指摘になりましたのは、日本が金持ちと錯覚してはいないかということでありますが、全くそうした錯覚はいたしておりません。今委員がお述べになりましたように、百六十八兆という平成三年度末の国債残高を考えましても、また国債費が二二%を超えておる状況を考えましても、余裕のある状況ではございません。ただ同時に、例えばドイツが、これは多国籍軍ではない、アメリカ一国に対して五十五億ドル、イギリスに対して五億四千万ドル、そのほかにトルコに対しても十億ドルを超えるこの平和回復活動への負担をしておりますような例、こうした他国の例をごらんをいただきましても、しかもトルコにドイツは戦闘機部隊を派遣をいたしておりながらこれだけの負担をしておるという状況も御認識をいただきたいと思います。  また、予備費の使用について御注意をいただいたわけでありますが、まさに八月二日にイラククウェートに侵入を開始し、侵略し、占領し、それが継続し、さらにそれが拡大する危険性のある中におきまして多国籍軍が展開をするという状況の中で求められました日本の貢献、これは私は、本当に予見せざる事態として予備費を使用させていただきました選択が間違っておったとは思いませんけれども、今後御論議の中でまた御注意もちょうだいをしたいと思います。
  49. 藤田高敏

    藤田(高)委員 時間が──これは理事さんの皆さんの了解を得て十分までやるということで、ちょうど今これで時間いっぱいなんですよ。ですから、その点は約束違反ではございません。  そこで、私、時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、少なくとも予備費支出の問題についても厳正に財政法の立場を踏まえ、そして先ほど予算書の、今取り扱いつつある現状からも、これはやはり私は基本的にこの予算審議の立場から見て、その不当性を指摘されないようなそういう政府対応を強く要請をいたしまして、質問を終わります。
  50. 増岡博之

    ○増岡委員長代理 藤田君に申し上げます。  先ほどの申し出につきましては、渡部委員長と相談の上、本件に対処いたします。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  51. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、小澤克介君から関連質疑の申し出があります。藤田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小澤克介君。
  52. 小澤克介

    小澤(克)委員 最初に、総理にお尋ねいたします。  憲法四十一条には、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」こう明定されております。これは、国会の性格を端的に規定した条文でございますが、同時に、この後半、「国の唯一の立法機関である。」というのは、国会のみが立法権を排他的に独占する、こういう意味合いを持つものだと私は理解しております。この意味ですね。国会が立法権を独占するということがどのような意味合いを持つのか、総理のお考えをまずお尋ねしたいと思います。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法四十一条をそのまま読みますと、国権の最高機関であり、「国の唯一の立法機関である。」こう書いてあります。書いてあるとおりの意味を持っておるものだと私も受けとめております。
  54. 小澤克介

    小澤(克)委員 国会は「国の唯一の立法機関である。」ということは、要するに、国会のみが排他的に立法権を独占している、こういう意味だと私も思います。  ただ、その前提として、すべての国家行為は法律に基づかなければならない、法治主義、あるいは法の支配と言ってもいいと思いますが、それが前提にあるのだろうと思います。法によらない国家行為というものはあり得ない。これは、権利を制約し、あるいは義務を課するといった、国民の権利義務に関する事柄であろうと、あるいは国家機関を組織し、それを運営するという統治機構といいますか、そういった事柄であろうと、いずれにせよ法律に基づかなければならない。法律によらない国家行為の余地がもしあるならば、国会に立法権を独占させた、国会のみが法律をつくることができるということがしり抜けになってしまいます。そういう意味で、この憲法四十一条の前提には、法治主義、法の支配、これが当然あるのだろう。これは近代国家にとっては普遍的な原理でございますから、言うまでもないものとして憲法がこれを当然に前提としているのだろうというふうに私は理解しておりますが、この点いかがでしょうか。当然同意いただけると思いますが、総理、いかがでしょう。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国憲法は三権分立主義をとっており、御説のようなことになっておると、私もそう理解しております。
  56. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、このような法治主義法の支配を前提に、すなわち、すべての国家行為は法によらなければならない、法律によらなければならないということを前提に、ほかでもない、国会に立法権を排他的に、独占的に付与したということは、これはまさに、国会が国民代表の機関である、国民代表の議会が立法権を独占するということこそ議会制民主主義の根幹、本質的な要素だろうと思いますし、さらに、民主主義そのものの本質的な要請からこのような仕組みになっているというふうに私は理解しております。そして、こういう議会制民主主義の理念こそが近代ヨーロッパ、特にアングロ・サクソンの方から定着をしてきて、そして今や東ヨーロッパといいますか、ソ連・東欧圏までもこのような理念が及ぼうとしている。そういう意味で、歴史的には西ヨーロッパで発生したものですが、普遍的な原理として世界に波及しつつある。この日本においては、西へ西へと地球を逆に回ってアメリカ大陸を経由してきたのかどうか知りませんが、我が国も当然このような普遍的な原理を共有する国である、私はこのように理解しておりますが、この点総理、御同意いただけるでしょうか。
  57. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 歴史の流れとして、自由と民主主義というものの価値が普遍的な価値として認められ始めている。現にまた、イデオロギーの対立が終わって、ヨーロッパでは対立、対決、イデオロギー時代は終わりを告げつつある、私はそのように認識しておりますから、表現がちょっと違ったようですけれども、同じようなことだと思います。
  58. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、このいわゆる特例政令、正確に言いますと、湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令、政令第八号に関してこれからお尋ねしたいと思うのですけれども、この件に関してはこれまで当予算委員会でいろいろな角度から既にかなりな程度に議論がなされております。私も、委員ではございませんけれども、傍聴等させていただきました。その法律の委任、あるいは法の授権の範囲と政令の効力というような観点から論じられているわけです。このような物の言い方をしますと、あたかも何か法技術的な次元の問題というふうにとられがちであろうかと思うわけです。私は、この法律が委任しているとか法律が授権しているという言い方は、必ずしも日本語としてわかりやすいものではないんじゃないだろうかというふうに思います。  なぜかといいますと、法律とか政令とかいうものは、これは観念的な存在というのでしょうか、実際に行動をしたりする存在ではありません。したがって、法律が委任をしたり授権したりというような行動をすることはあり得ないわけですね。法律が委任をするとか、政令が委任を受けるとか、法律が授権をするとか、政令が授権を受けるとか授権されるとかいうような表現は、これは極めて特殊、法律家的な表現であろうかと思います。普通の言葉に言い直せば、これは、法律を制定する権限を持つ国会が政令を定めることのできる内閣に委任をした、授権をした、すなわち、国会という国家機関とそれから内閣という国家機関、この両機関の間の権限の授与、受任の問題である、権限の問題である、こういうふうに言えば一番わかりやすいのではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。総理、当然同意していただけると思いますが、いかがでしょう。
  59. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法律の難しい専門的なことになってきますと、例えばこの間の議論の中でも、「その他政令で定める者」と「その他の政令で定める者」と、「の」が入ったときどう思うかと言われて、私は率直に受け取って正直に答えちゃいましたら、それは違うことをおまえはごっちゃにして答えておると、さんざん本の出どころなんかも挙げて御質問いただきました。基礎的、専門的知識が必要となる問題につきましては、これは法制局長官に答えさせます。
  60. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  今委員のおっしゃられました、いわゆる法律が政令に委任している、あるいは政令が法律の授権の範囲内、これはまさに制定権者の方といいますか、そちらの方から見れば、国会が国の唯一の立法機関である、そういう意味で、もちろんこれには憲法上幾つかの例外もございますし、また、運用上幾つかの、運用上というのは変な言い方ですが、憲法上幾つかの例外が認められているということでございますが、それにつきましても、いわゆるそういう規定、四十一条等で規定されております国会が定める法律、それの範囲内で内閣が一定の立法、政令制定といいますか、そういうものができる、こういうふうなことだろうと思います。
  61. 小澤克介

    小澤(克)委員 はっきりしないと思います。必ずしも聞いていてすぐわかりやすい御答弁とは正直言って思いませんでしたが、国会という国家機関が、これが立法権を独占しているわけでございます。憲法四十一条ですね。今例外のお話ありました。当院も持っておりますところの衆議院規則、院の規則制定権、あるいは裁判所の裁判所規則制定権のことをおっしゃった、あるいはまた自治体の持つ条例制定権のことをおっしゃったのかなと思いますけれども、そういう細かい話は、この際法律家特有の話はちょっとやめまして、原理原則的に言えば、まさに立法権を独占するところの国会がその権限の一部を内閣に委任をする、これが委任政令の本質だろう、このことは御異論ないことだろうと思います。つまり、国の組織論的に言えば、国会が内閣に委任をしたんだ、授権をしたんだ、みずから持つ権限の一部を授権したんだ、このことは異論がなかろうと思います。  総理、今のお話は必ずしも法技術的な細かい話ではございません。国家機関の間の問題という側面を持つのではないかという極めて素朴な観点からの議論だと思いますので、これはぜひ総理にもお答え願いたいと思いますが、当然同意していただけると思いますが、いかがでしょうか。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、何を背景にして、どこまでが当然合意していただけるとおっしゃっておるのか、気をつけて答えなければなりませんので、ですから──いや、素直に言って、法律の専門的なことは、「の」の字が加わるかどうかでという御質問にもこの前のときだめだったんですから、私は、そのために法制局長官があるのですから、法律の解釈上の問題については法制局長官に任せ、なぜこれを決めたかという政治的な判断の問題については私が再三ここで述べておりますことでございます。
  63. 小澤克介

    小澤(克)委員 私、別に法的な細かい議論でひっかけようなどということは全く考えておりません。ぜひ率直に、総理の口癖である素直に、率直にお答え願いたいと思うのですけれども、要するに、これは法律問題ではなくて、まさに議会人であられる総理に率直にお答えいただけばいいと思うのです。つまり、国会という国家機関が内閣というもう一つの国家機関に法律制定権の一部を委任したんだ、これが委任政令の本質だ、このことは、そんな細かい議論はともかくとして、御同意いただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 どういう表現になるかは、専門家のおっしゃったことですからそうでしょうが、私は、内閣が政令というものをつくることができるのは、やはり憲法上の規定に従って内閣に政令をつくるという権限が与えられた。それはその淵源をたどれば、国会という立法府がその権限を委任したという国家機関同士の関係があると今おっしゃいました。全体としてそうだろうと素直に受けとめております。
  65. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、これまた細かい話になりますが、政令には、委任を受けた委任政令と、そうでなくて、法律の執行のために、特に委任ということがなくて、執行という範囲内で定められるところの政令もあるわけですけれども、その話はちょっとそばへ置きまして、専ら委任命令に関してお尋ねしたいと思うのです。  そこで、極めて一般論として、決してひっかけとかそんなことを意図しておりません、一般論としてお尋ねするのですが、仮に委任あるいは授権の範囲を超えた政令が存在したとすれば、それは国会の立法権、憲法四十一条に明定されているところの国会の立法権を侵害するものであって、当然そのような政令は執行の余地のない無効な政令だろうと思いますけれども、いずれにしても、仮に国会の委任の範囲を超えた政令が制定されたとすれば、それは国会の権限を侵害したことになると同時に、ひいて言えば議会制民主主義あるいは民主主義そのものの原理に反する、議会制民主主義を否定するものである、ここまでは御同意いただけると思うのです。もちろん、今問題になっているこの政令に関しては、当然委任の範囲内だというふうにおっしゃっておられるわけですから、それはそういう立場があろうと思いますけれども、そのことはちょっと棚に上げて、一般論として、仮にですよ、法律の委任の範囲を超えた政令があれば、それは議会制民主主義そのものの否定につながる、このことはぜひ御同意いただけると思うのですが、いかがでしょうか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会がお決めになった法律に政令で定めることができると書いてないときにやるようなことは、一般論としていけないことだと私は思っております。
  67. 小澤克介

    小澤(克)委員 政令で定めることができるというふうに、政令に委任した場合のことを今前提にお話ししているのですね。委任をしていても、その委任の範囲を外れていれば、それは議会制民主主義の否定である、このことは御同意いただけると思うのですね。だって、外れていないというふうに主張しておられるのだから、今の一般論を承認されても何の問題もないと思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 文言にきちっと書いてあるとおりであります。
  69. 小澤克介

    小澤(克)委員 これはむしろ論理的に当然のことでありますから、当然御同意いただけるものと思います。  そこで、いよいよこの特例政令なるものについてお尋ねしなければならないのですが、率直に申し上げて、私は、こういう国会、しかも予算委員会というような場所は政策を論議する場所だろうと思います。一種法律論のようなものを展開するのは必ずしもふさわしくない、私はそういう意味で残念なことだと思いますけれども、それが一点。  それからもう一つ、問題になっているのは、この特例政令が国会の授権をした、国会が委任した範囲におさまっているのか、それを外れているのかという問題でございますが、これは本来国会みずから立法府として委任をした側で、授権をした側で我々が授権したのはここまでだということを明確にすればよいだけの話でございまして、このことについて行政府に対してあれこれお伺いを立てるということは筋違いかなという議論も当然あると思います。この二つの理由からこのような法律議論をしなければならないのは実は残念なんですけれども、しかし、現実にこの特例政令なるものが公布をされて現に存在している。私は当然無効で執行の余地のないものだというふうに理解をしておりますが、それはともかくとして、現に存在している、そして現に執行されるおそれがあるという状況であれは一体どういうおつもりなのか、これは行政府に対して議会に属する者としてやはりお尋ねしなければならないわけです。  それで、先ほども申し上げたとおりこれまでいろんな議論がなされておりまして、要するにこの自衛隊法百条の五が規定するところの「その他政令で定める者」というのは国賓、内閣総理大臣に準ずる者に限って政令に委任している。それがゆえに今回の特例政令は委任の範囲を外れている。そうなのか。あるいは、総理以下たびたびおっしゃっておられるように、決してこれは授権の範囲を外れたものではないかどうか。この一点だけが結局のところ議論の別かれ目だろうと思うわけです。これに関して統一見解なるものが当委員会に示されました。そこで、この統一見解についてどうしてもお尋ねしなければならないわけです。  この統一見解、「自衛隊法第百条の五の授権の範囲と今回の政令制定との関係について」、この一のところですが、「自衛隊法第百条の五の授権の範囲について」、ここで(一)に、「自衛隊法第百条の五第一項によれば、航空機による輸送の対象は、「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」と規定されており、政令で定める者の範囲を特に限定していない。」こう書いてあります。これがまずなかなか理解しにくいところでございます。政令で定める者の範囲を一切限定がないと本当に内閣はお考えなのかどうか。二つ疑問点があります。  もし政令で定める者の範囲が何ら限定がないのであれば、この(二)以下のるる述べていることは意味がなくなるのではないか。すなわち(二)以下は、この国賓、内閣総理大臣といった列挙されたものからかけ離れたものは含まないんだということを前提に、かけ離れているかかけ離れていないかということについていろいろと述べているわけですね。そういたしますと、(一)のように一切限定がないんだとすれば、このかけ離れているかかけ離れていないかというような議論を展開する必要が全くなくなってくるわけです。その意味で(一)と(二)以下、(二)と(三)とはどのような論理的な関係があるのか、これが私の疑問とするところの第一点です。法制局長官、うなずいておられますから私の言わんとしていることはおわかりいただけたと思います。  それから私の疑問とするところの第二点。本当に政令で定める者の範囲が限定されていないのであれば、この「国賓、内閣総理大臣」という例示列挙あるいは代表列挙という言葉も使われましたが、これは一体いかなる機能を持つのか。何ら限定しないのであれば、このような代表もしくは例示を掲げる必要すらないわけです。この例示列挙したあるいは代表列挙したことはいかなる意味を有するのか。  この二点、私は疑問に思うわけですが、ぜひ明確にお答え願いたいと思います。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私がまず考え方を率直に申し上げますから。  国会の御意思で決めていただいたのが法律であり、それが委員おっしゃるように排他的、独占的というのですか、唯一の立法機関だということはそのとおりです。ですから、これに書いてないことまでやろうという気は毛頭ありませんが、これ読んでみると、やっぱり本来の「任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」こうなっておるわけです。そして、これは民主主義で広く国民のためにこの法律は出るわけですから、みんなが読んで、これを読んでこれに従わなきゃならぬというときには、内閣もこれを読んで「政令で定める者」と書いてあればこれは政令で定める。政令をつくるということはまた別の条文で認められておるわけで、当然の権利でできると思っていますから、責任のもとにおいてつくるということになっていくわけでして、これはどうなんでしょうか。もしそういう議論がいつも起こることになるとするなれば、このときに本当は国賓、内閣総理大臣に限るとかあるいはこの程度のこれに限るとかきちっと制限列挙といいますか、きちっとこうなっておればそれを超えるような読み方の政令はできないんだということは、これは率直に認めなきゃならぬと私は思っておることでございます。ということじゃなかったですか、私の答えるのは。
  71. 小澤克介

    小澤(克)委員 聡明な総理大臣にしては私の質問の全く答えになっていないわけです。私が聞いたのは一項と二項、三項、二項以下二項、三項とは矛盾しないだろうか。一項は全く限定がないと言っている。二項、三項は何らか限定があることを前提にいろいろ釈明といいますか述べておられる。この両者がどういう論理的に関係に立つのかという疑問が第一点。  第二点は、制限列挙でないことはそのとおりです。総理おっしゃったとおりです。例示列挙あるいは代表列挙をした上でその他政令で定めるというふうに政令に委任するというのはいかなる機能を持つのか。当然私は何らか限定的な機能を持たせるがゆえに例示もしくは代表を列挙したんだろうと理解しているんですが、この二つの疑問について率直にお答え願いたいと思います。
  72. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまこのペーパーに即しての御質問でございます。(一)で書いておりますのは、まず百条の五第一項の規定のうち輸送の対象となる者を法律の条文どおりに書きました上で、それで「政令で定める者の範囲を特に限定していない。」ということで、ただいま総理大臣からもお答えがございましたけれども、そういう意味でここに何らかの限定が付されているという意味ではないということでございます。  それからまた、それでございますから当然(二)として、「国賓、内閣総理大臣」、今委員御指摘のとおりでございますが、そういうものを代表列挙しまして、そういうものとかけ離れたものを規定することは予定されていないであろう、こういう意味で(二)が書かれているわけでございます。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕
  73. 小澤克介

    小澤(克)委員 率直に言ってよくわからなかったわけです。今のお答えですが、特に限定していないという趣旨なんですが、全く何らの限定もない。もちろんその輸送の対象者が人であることは、これは「者」という字から当然でしょうが、その点を除けば輸送の対象者としては何らの限定がない。本当にそうおっしゃっているのか。そうではなくて、例示列挙という手法からしても何らかの制約はある、その制約の範囲はともかくとして、何らかの制約はあるということを前提としておられるのか。そして、それを前提に、何らか制約があることを前提に(二)、(三)という論理が展開されているのか。どっちなのかはっきりさせてください。全く無限定だとそこまで(一)が言い切っているのかどうか。
  74. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 (一)におきましては、政令で定める者の範囲を、いわゆる文言上でございます、文言上特に先ほど総理大臣が言われましたように、これこれの者に限るというような限定はしていない。しかし、それは当然何らかのかけ離れていないという解釈上のものはあるであろう。それが(二)であろうと思います。
  75. 小澤克介

    小澤(克)委員 要するに、文言上限定はないが、論理的にあるいはこの例示列挙という法の形式からすれば、何らかの制約はあるのだという御答弁だろうと理解いたします。総理、間違いないですね。
  76. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員の仰せられたような趣旨だろうと思います。
  77. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこでお尋ねするのですが、今の趣旨は、既にもうこれも他の委員がたびたび引用されておりますが、昭和六十一年十二月四日の参議院内閣委員会における議論で既に明らかになっていると思います。久保田真苗委員が「法制局にお伺いしますけれども、ここに言う「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」というものについての解釈をお願いします。」大森政輔氏、この方は当時内閣法制局第二部長であられたと思いますが、「先ほど防衛庁から答弁がございましたように、「その他政令で定める者」の内容はまさに政令で定めるわけではございますが、「国賓、内閣総理大臣」という例示、列挙がございます。したがいまして、この例示、列挙されたものとおよそかけ離れたものは予定してないという場合にこのような表現を使うわけでございます。」このような表現を使うわけでございますという法文の、法の規定の仕方の一般論として述べているわけですね。このことからも明らかだろうと思います。  すなわち、例示列挙した上で、その他政令に定めるというふうに政令に委任した場合は、全くの白紙委任ではなくて、例示列挙からかけ離れたものまでは委任していない、その法の書き方の一般論としてそうなんだと言っているわけでございます。このことはいかがですか。まさかこのことまで否定はされないだろうと思いますが、これは総理大臣でしょうか、法制局長官でしょうか、どちらでも結構です。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員御指摘の答弁、昭和六十一年の十二月四日、これは参議院の内閣委員会だと存じますが、そこにおきまして、久保田真苗議員の御質問に対しまして大森政府委員が答えております。その点は私も承知しております。
  79. 小澤克介

    小澤(克)委員 承知しているというのは、こういう答えがあったという事実を承知しているというふうに聞き取れますが、私が聞いているのはそうじゃなくて、このような考え方についてまさか否定しないでしょうねと。すなわち例示列挙した上で「その他政令で定める者」という規定の仕方は、法の書き方の一般論として何らかの制約を設けるものだ。その範囲はこれから議論するのですけれども、とにかく何らかの制約はあるんだ、全く無制約ではない、このことは御承認いただける、つまりこの大森さんのおっしゃったことは間違いなのか間違いでないのか。現在の法制局としてはどう考えておられるのか、この点明らかにしてください。
  80. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 その点に関しましては、今回のペーパーの一の(二)におきましても、「前記文言に代表列挙されたものとかけ離れたものを規定することは」云々と書いてございますし、そういう意味考えております。
  81. 小澤克介

    小澤(克)委員 要するにこの大森答弁と現在も法制局のお考え方としては同じである、このようにお聞きしたわけです。  そこで、これはこだわるようでございますが、(一)は文字面だけ読みますと、「政令で定める者の範囲を特に限定していない。」限定していないと書いてあるわけですよ。ところが、今の答弁からも明らかになったように、何らかの限定はあるわけですよね。その範囲がどれだけかというのはいろいろお考えはありましょうが。  そういたしますと、これはちょっと(一)と(二)以下とがこのままでは受け取れないわけです。(一)の言わんとしているところと(二)の言わんとしているところがどのような論理的な関係に立つのか。先ほどちょっと文言上という言葉をおっしゃいましたので、半分はわかったのですけれども、もう一つよくわからない。恐縮でございますが、これについてはやはりきちんと文書で、この(一)と(二)、(三)以下とがどのような論理的な関係に立つのか、お示しを願いたいと思います。いかがでしょうか。
  82. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 (一)で自衛隊法の百条の五の一項をそのまま引きまして、そのように「規定されており、政令で定める者の範囲を特に限定していない。」これはここのかぎで書かれましたその範囲で申し上げているところでございます。特に私の方でそれ以上つけ加えて御説明することはないと存じます。
  83. 小澤克介

    小澤(克)委員 要するに、(一)は字面だけ読みますと、政令で定める者の範囲について何らの限定がない、こう読めるわけですよ。「特に限定していない。」と、こうはっきり書いておりますから。ところが、(二)以下は何らか限定があることを前提に論理を展開しておられる。それから、今の御答弁でもこの大森答弁を否定していない。何らか限定があることを承認された。したがいまして、(一)と(二)の論理的な関係がわからなくなるわけです。これについての見解を、これは文書でぜひお願いいたします。いかがですか。文書で出すか出さないか、その一点だけ答えてください。
  84. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  私は法律の専門家ではございませんけれども、この法律なり政令は防衛庁の主管のものでございますので、その立場から常識に近いレベルで御答弁させていただきたいと思います。  先ほどからございますペーパーの(一)でございますが、これは先ほど法制局長官からもお話がございましたように、百条の五第一項には文言上特に限定はしていない、そういうことでございます。これは、わかりやすく申しますと、例を出しましょう。ここに「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」とあって、例えばその後に、ただし未成年者を除くというようなことが法律上ございましたら、法律の文言上政令で定めることはできるけれども未成年者はだめなんだな、こういうことがあり得ると思うんですね、実際のケースで。そういうことだろうと思います。  それから(二)の方は、法制局長官も先ほどからおっしゃっておりますけれども、法の文言上は(一)のとおりなんだけれども、しかしながら、論理上と申しましょうか、解釈上それは全く無限定というものではないということでございます。それで具体的には、およそかけ離れたものは規定できないという大森答弁になるんだと思います。  なお、この大森答弁につきましては、その前の方にいろいろやりとりがございまして、久保田議員の方から御指摘がありましたのは、実は、自衛隊の内部でプライベートな会合がございまして、それへ集まる人が自衛隊の航空機を使ったというケースがございました。これは問題がございますので行政処分されたわけでございますけれども、そんなことはやらないんだろうなという話。それから、あるいは防衛庁長官がたくさんの人を連れてどこかへ行く、そういうときには使わないんだろうな、こういうふうなお話がございまして、そういったところを踏まえた後で、およそかけ離れたものはできないんだ、今質問の中で出ておったのはおよそかけ離れておるんだという、そういったコンテクストの中でお話があったということを御答弁させていただきます。
  85. 小澤克介

    小澤(克)委員 この質問の流れについては私も承知しておりますが、今の御答弁で、要するに文言上は特定、限定していないけれども、論理上あるいは解釈上何らかの限定はある、このようなはっきりしたお答えであったと思いますので、私はそれでよく理解できました。  それでは、次に(二)以降に移ります。この(二)以降です。  これが極めて実はわかりにくい文章でございまして、私も随分いろいろ、何とか理解しようと思って一生懸命悩みました。随分人がいいというふうに思われるかもしれませんが、何とか理解しようと思っていろいろ考えてみました。結局(二)の言わんとしているところは、まあ読みましょう。「前記の政令において、前記文言に代表列挙されたものとかけ離れたものを規定することは予定されていないが、かけ離れているか否かは、高位高官であるか否かという社会的地位にのみ着眼して判断すべきものではなく、その者の置かれた状況、国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべきである。」こういう一つの解釈原理を提起されているわけです。  この言わんとするところは、結局のところこういうことじゃないだろうか。つまり、「国賓、内閣総理大臣」という表現において、こういう列挙において表示した、指し示した類型は必ずしも高位高官といったことを意味するのではない。「国賓、内閣総理大臣」という言葉からは、文言からは、その文理からは我々は高位高官といった類型を思い浮かべるけれども、しかし、そのように言葉のみによって判断してはならない。その者の置かれた状況からして自衛隊機によって運んでもらわなければならない高度な必要性がある、また国の側にも自衛隊機を出動させてでも運ばなければならない、そういった高度な必要性がある、あるいはいろいろな要請もある、そういう場合にはそのような者も類型に含まれる。端的に言えば自衛隊機によって運ばれることがいろいろな諸般の状況から強く要請され、それにこたえるべき者という類型、これを代表するものとして「国賓、内閣総理大臣」という言葉で表現したんだ、このような意味合いかなと私は理解したのですが、間違いでしょうかどうでしょうか。これは総理あるいは法制局長官、あるいは両方にお答えいただいても結構だと思いますが。
  86. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今委員御指摘のように、そこに代表列挙いたしました「国賓、内閣総理大臣」こういうものから、高位高官である、そういうものがこの範囲だというふうなことではなくて、高位高官であるか否か、そういう社会的地位にのみ着眼して判断すべきものではない。この代表列挙されたものからかけ離れたものを規定することは予定されていない。けれども、そのかけ離れているかどうかという判断基準、これはいわゆるその者の置かれた状況、国による輸送の必要性、その他諸般の事情を総合して評価すべきである、こういう意味では大体委員の御指摘と同じであろうかと思っております。
  87. 小澤克介

    小澤(克)委員 この文章の読み方についてはわかりました。私の理解したところがほぼ間違いないというふうに今法制局長官からお答えいただいたわけです。  そこで問題は、このような解釈が果たして成り立ち得るかどうか、そこに次の論点が進んでいくわけです。  もう一度言いますと、この統一見解の御主張は、国賓あるいは内閣総理大臣という言葉で示されている類型は、結局のところ一定の妥当性、相当性を持って自衛隊機で運ぶことが要請される者、このような一つの類型を代表する例示だ、こういう御主張だろうと思うわけです。私も、文理だけで物事を解釈してはいけないということはよく承知しております。法律は言葉によってできておりますからやはり文理、言葉が基本でございますが、しかし、言葉だけで解釈してはならない。もし言葉だけで解釈するのであれば法律家は要らないわけで、言語学者がいればそれで用が足りる、こういうことになるわけです。問題は、その法の精神といいますか、法の趣旨、目的、これが何か、これを探るのが法解釈の基本だろうと思うわけです。  それでは、この百条の五の趣旨、目的が、今言ったように一定の妥当性、相当性を持って自衛隊機で運ぶことを要請される者をまさに運ぼうという趣旨の立法だったのか、これが問題になるわけです。このことを探るには、百条の五の立法時の状況、それから立法のときの提案者側の説明、それから議会側、立法者側の議論、これが最大の、むしろ唯一の判断の基準になると思うわけです。  そこで、まず、先ほど、きょうの午前中の藤田委員からのお話にもありましたが、最初に指摘したいのは、何といってもこのときの提案理由というか、むしろ客観的な状況です。これはたびたび出ておりましたが、東京サミットで使われたヘリコプター、スーパーピューマというのだそうでございますが、これを日本が購入した。当時ドル減らしというような要請もあって三機ばかり購入したわけです。これは総務庁の所管ということになっていました。総務庁だったですか、総理府だったですか、どこでしたかちょっと記憶に間違いがあるかもしれませんが、それをサミットが終わった後どうするかということが議論になって、やはりいろいろな理由から自衛隊に管理してもらおう、こういうことになったわけですね。これがこの法案ができたときの社会的な事情といいますか、客観的な状況です。このことは端的に提案趣旨説明に書いてあります。この第百条の五の追加理由として、百条の五を「新たに一条を加えるための改正であります。これは、主要国首脳会議の際に使用したヘリコプターを今後自衛隊が運用すること等に伴い、必要となるものであります。」こうはっきり提案趣旨説明に書いてあるわけです。  そして本会議場で質疑がありました。児玉健次議員がこれに関連して、「自衛隊の国際緊急援助隊への参加、ひいては海外派兵に道を開くことを意図したものではありませんか。」こういう質問をしておられます。これに対して、当時の内閣総理大臣中曽根さんが、まず第一点、国外へ国賓を輸送することはこの法案では排除されていない、海外へ運ぶこともできます、ここははっきりそう答えておられます。「しかし、国際緊急援助隊への自衛隊の参加は、国賓等の輸送とは性格を異にするものであり、今回の改正はそこまでは想定しておりません。」こう言っておられる。国賓等の輸送とは性格を異にするという理由、こういう根拠で国際緊急援助隊への自衛隊の参加は想定していないとはっきり答えているわけです。  この立法時の客観的な条件については、衆議院の内閣委員会でもさらに敷衍して述べられております。  これは、我が党の田口委員が衆議院の内閣委員会、六十一年の十月三十日に質問している。百条の五に関してですが、「国賓あるいは内閣総理大臣等々、いろいろ説明もありましたが、そういう趣旨から考えてみれば、何も自衛隊に保有をさせなくても、他の政府機関、運輸省もあるわけです。海上保安庁などもあるわけでして、そこに持っていけばいいのではないかというふうに考えるのですが、防衛庁にこれを移すということについては何か特別な理由があるわけですか。」  「○友藤政府委員」、友藤さんは当時防衛庁の長官房長だったと記憶しますが、「この国賓その他の者の輸送につきましては、本来それぞれ所管の官庁が輸送されるというのが筋合いであろうと思います」。──総理府ですね。これまでは総理府が所管をしていた。途中省略いたしまして、総理府にはこういった輸送を行いますためのスタッフ、機材そういったものの用意がないというようなことを述べられた後「やはり継続的にこういった国賓等の輸送という需要がございますのと、特に先生お尋ねのことに対します答えになりますが、こういった航空機等の保守整備、維持管理、こういったものにつきましては、類似の航空機等の維持管理をやっております自衛隊においてそういったものを所管させるのが一番適当であろうという御判断がございまして、自衛隊にそれを移すということの御検討がなされ、しかしながら自衛隊法ではこういった任務を遂行するための明文の規定がございませんので、今回これについての規定を設けて、きっちりした形で自衛隊の業務として行うことにする、こういうのが今回の改正の趣旨でございまして、御理解を賜りたいと思います。」このように、この百条の五改正時の客観的な状況について極めて明確に答えておられるわけです。  質問が長くなりましたからここで一たん切りますが、このような状況にあったことは否定されないだろうと思いますが、防衛庁長官、いかがで しょう。
  88. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま御指摘になりましたこの百条の五制定時の提案理由説明なり御質疑は御指摘のとおりでございます。  確かに東京サミットのときに使いました、国賓等の運搬、そのために使うヘリコプターというもの、それをどこが保有するのが適当であろうかということをいろいろ考えられまして、航空機の保守や運航などに体制の整っておる自衛隊に持たせることが、託すことが適当であろうという判断があったのだと思いますし、また今後ともそういった外国のお客さんなどを比較的恒常的に輸送するという需要があろうという、そういった事情、こういったことがきっかけであり、契機になりこの百条の五ができたというふうに考えられます。  しかしながら、その際に一体どういう者を輸送できるかにつきましては政令に委任されておったというのは、当時具体的にそういうニーズ、需要がありますものだけではなくて、将来そういった需要が出てくるかもしれない、そういったものについても政令において追加してしかるべきではないかという判断もあってそういうことになっておるんだ、こう思います。
  89. 小澤克介

    小澤(克)委員 私がお尋ねしたのは、当時の状況がどうだったかということをお尋ねしたのですから。  そこで、当時の客観的な状況それから提案者の説明については、今私が指摘したとおりです。これに対して国会の側から、議員の中からいろいろな議論があります。その中で、これは民社党の川端委員さんが次のような質問をしておられます。  これは既に当委員会でもいろいろ引用されておると思いますが、「それでは少し観点を変えまして、今回自衛隊法の改正案で、政府の専用機を自衛隊が保有する、それと国賓や総理などの航空輸送を任務に加えることになっているわけですけれども、法の文面から見まして、当面はどうかわかりませんが、将来にわたって政府専用の大型旅客機の導入、あるいは総理などがこれで外国に行くようなこともあるのかどうか、自衛隊がそれを運航することになるのかどうか、お伺いしたいと思います。」こういう質問があります。  これに対して友藤政府委員が、全部読みませんが、要するに論理的には両方可能であるというふうに答えておられます。  これに続いて、川端委員から「これは当然仮定の話ですけれども、法的にそういうことは可能であるということを伺った中でお伺いをしたいと思いますが、そういうときに、緊急時に在外邦人の救出というのが今までいろいろ問題になってきたわけです。そういうものにこの専用機等を利用するということが可能かどうか、お伺いしたいと思います。」  これに対して、友藤防衛庁の長官房長が「今お尋ねの海外におきます在外邦人の救出の問題でございます。これにつきましては、法律の条文をごらんになるとおわかりのとおり、今回の百条の五の規定は「国賓等の輸送」ということでございまして、この範囲は、私どもの方といたしましては在外邦人の救出とか緊急援助隊、こういったものについては含まれないというふうに考えております。そういったものを想定したものではございません。」こうはっきりおっしゃっている。さらに「在外邦人の救出につきまして自衛隊がやれるのかという問題については、現在、自衛隊法上、御案内のとおり任務として明記をされておりません。」ここからなんですが、「今回追加をします規定でも読めないというふうに考えておりますので、こういったことを自衛隊が任務としてやるということにするためには、明確に自衛隊の任務として規定をしていくことが必要であろうかと思います。」こう明確に答えておられますね。  これに対して、川端委員の方から大変重要な指摘があります。「邦人救出に対応する法案の整備の方が国賓や総理を移動するよりももっと重要であり緊急なものであるというふうに考えるわけです。なぜこの部分に関しての法案の提出がされないのか理解に苦しむところでありますが、御答弁をお願いしたいと思います。」川端委員は、むしろ邦人救出の方が優先すべきだ、そういう観点からこういう質問をしておられます。  これに対して、先ほどからの友藤さんが「今回、百条の五で国賓等の輸送権限の付与等の規定の追加をお願いをいたしておりますのは、御案内のとおり、今年五月の東京サミットにおきます各国要人の輸送のために総理府が購入いたしましたヘリコプターを、三機でございますが、サミット後にいかに活用していくかということの検討の中で、今後国賓等の輸送の所要が恒常的に見込まれる、こういった状況を踏まえまして、」あとは省略いたしますが、こういう立法に至ったんだというふうに説明しておられます。そして、「今お尋ねの邦人の救出の問題、これは非常に重要な問題であろうかと思いますけれども、私どもとしましては、やはり国会の御論議あるいは国民世論等の動向を踏まえて、自衛隊がそういうものをやるべきであるということでまとまっていく過程において慎重に対応をさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。」こうはっきり言っておられます。  さらに、この点について川端委員は、もう一度この邦人救出の方が重要なんだということを強調されて、国賓用にヘリコプターを買ったから法律をつくるというふうなものよりもはるかに重要な問題であるにかかわらず、この邦人救出の問題が議論されてないのは理解できない、そして、「国際緊急援助隊あるいは国連停戦監視団等々に関しても、自衛隊がその任に当たるということには自衛隊法の改正を必要とするわけですけれども、」ということを前提に議論をされておられるわけです。  それに対して非常に重要な答弁がまた友藤さんからなされている。「今のお話、私どもそういった役割は非常に重要な役割であろうかと思いますが、御案内のとおり、自衛隊は武力集団でございますし、その行動、任務等につきましてはやはり国民の皆様の御理解、御支援がいただけませんと十分な機能を発揮することができないのでございます。」このようにはっきり答えておられる。  このようなやりとりの末に、さらに参議院では先ほど引用いたしましたとおりの議論があったわけですけれども、こういった議論、こういったやりとりの上で、このやりとりを前提としてこの法案を国会は成立させたんです。ということは、非常にわかりやすく言いますと、委任状を書く段階で委任事項について、これは一体どういう意味なのかということを委任を受ける側から説明を求め、委任をする側として細かく議論をした上で、それでは結構ですと言って委任状にサインをした、こういう状況があるわけですね。この立法時の客観的状況及び提案者の説明、それに対する国会議員側からの質疑、これを超えた解釈はできない、これらの議論を前提に委任状を出したわけです。その委任状の範囲を超えて委任事項を勝手に書きかえる、あるいは読みかえる、これは断じて容認できないし、そのような解釈は成り立たない。  すなわち、ここで繰り返し議論されているのは、特に川端委員は、これでは足りないじゃないかという観点から議論しているわけです。国賓や大臣を輸送することよりも邦人救出の方が先ではないか、どうしてそれを入れないんだという観点から議論しておられる。しかし、一貫して提案者側は、これは国賓及び内閣総理大臣等を運ぶために今回こういう改正を願うのである、邦人救出については別に国民的な議論をお願いしたい、こう言っているわけですね。  この経過からしますと、この百条の五は、要するに輸送について強い要請がある者を、そういう者を運ぶという法改正ではなくて、まさに国賓、内閣総理大臣といった要人を運ぶための法改正に限るんだ、その範囲内でこれに準ずる者を政令に委任したんだ、こう解釈するしかないんです。どうですか、反論できたら反論してください。
  90. 池田行彦

    ○池田国務大臣 決して反論するわけではございません。私ども考え方を御説明させていただきます。  今先生御指摘の点は、文字どおり先般法制局の方から提出されましたペーパーの二枚目のところでございまして、百条の五の立法の経緯におきましていろいろ政府側から答弁を申し上げましたその趣旨は、在外邦人の救出を一般的な任務として恒常的に行わせるには、法律上任務を付与する明確な規定が必要であろう、こういう趣旨を述べたものでございまして、個別具体的な事態対応する臨時応急の措置としての輸送は、これは百条の五の規定の外であるということを言っているわけではございません。  そして今回のケースにつきましては、御承知のように、今回の湾岸の危機というこういう個別具体的で非常に緊急な事態、そうして避難民がこう発生するという状態、その中で国連の委任を受けた国際機関からの要請を受けて、そうして人道的な見地から、また非軍事の形で自衛隊輸送機がその任に当たるというのは、この個別具体の事態対応する措置として今回のような政令を制定していくということは、この法の授権の範囲内である、このように考える次第でございます。
  91. 小澤克介

    小澤(克)委員 今のお答えがどれだけの説得力を持つのか、これは聞いている方に判断していただくしかないと思います。  今の御答弁で、統一見解の二の方に踏み込んでしまいました。これは、過去の答弁との整合性という観点からるる述べているわけですが、私はこれを読んで、全くこれはもうはしにも棒にもかからない、まともに議論するに値しないものだというふうに思います。百条の五を追加した際の提案者の説明は、法案そのものの説明なんです。あらゆる事態を想定した上での説明であることは明らかです。一般的に説明しておられる。どのような状態でも妥当する事柄として説明されているのです。そして、議会の側もその説明を前提にこの法律を成立させた。先ほどの比喩を用いれば、委任事項について十分吟味の上で委任状にサインをしたわけです。後になって、緊急な事態だからあのときの説明とは違うのだ、これは許されないのです。緊急の事態だから委任事項を書きかえるということは許されません。緊急事態であれば、改めて委任者との間で相談をし、これだけの権限が欲しいということを言って委任状の書きかえを求める。そうでなければ、これは私文書変造ですよ。要するに、緊急であるから委任の範囲は膨らむなどという議論は、全くこれははしにも棒にもかからない。何の根拠もありません。  いかがですか。一般的な説明であって、こういう特別な状況になればその説明とは違ってもいい、何を根拠にこんなことをおっしゃるのか。これは説明を願いたいと思います。
  92. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほども答弁申し上げましたように、法の制定時におきまして委任された範囲、その中には、在外邦人の救出等を一般的な任務として恒常的に行うのは、これは法律上の明確な規定が必要であろうという御答弁を申し上げたことからも明らかなように、これは委任の範囲ではないだろうということを、当時政府も立法時に申し上げ、私どももそのように考えておるわけでございます。  しかしながら、個別具体的な事態対応する臨時応急の措置としての輸送は、その個別具体的な事態内容いかん、それからまた、それに対して対応していく措置等をいろいろ勘案して必要な措置をとっていく、そういうことまでがこの委任の外であるということは政府としても申し上げてないわけでございますし、私どもは、それは委任の範囲内である、このように考えておるところでございます。
  93. 小澤克介

    小澤(克)委員 結論だけがあって根拠づけがないのですね。  法制局長官のこれまでの答弁でも、恒常的に対応し得るような仕組みをつくることは予定されていない、しかし臨時の仕組みをつくることは委任の範囲内である、こういうふうに言っています。これは要するに、恒常的に対応し得るような仕組み、つまり普通の政令で輸送機で運ぶ対象の者を避難民であるとか邦人救出に広げることは予定されていないが、臨時の仕組みとして、すなわち特例の政令としてならば範囲に入る、こういう主張だろうと思いますが、なぜそうなのか。政令はすべて政令であります。特例、すなわち時限的な性格を持つ政令であろうと恒常的な政令であろうと、政令は政令であり、法律の委任の範囲内で制定できる。その委任の範囲が膨らんだり閉じたりということはないわけです。恒常的ならば予定されてないことが臨時の仕組みとしてならばどうして許容されるのか、委任の範囲に入るのか。どういう論理なのか、どういう根拠があるのか、ぜひ明らかにしてください。
  94. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 過去の答弁との関係でございますが、基本的には先ほど防衛庁長官がお答えになったことであろうと思います。  多少敷衍して申し上げるならば、このペーパーの二の(一)にございますが、いわゆる過去の答弁、これにつきまして、このペーパーの前半は省略いたしますが、「自衛隊に、自国民の保護としての在外邦人の救出を一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律上任務を付与する明確な規定が必要であろうという趣旨のことを述べたものである。」ということでございますが、私ども一般的な仕組みと考えますのは、あのいろいろな場面で在外邦人の救出といったような御議論がございました。そこにおきましては、言ってみれば在外邦人の救出、自国民の保護としての在外邦人の救出といった事態それ自身は緊急事態であろうと思います。個々の事態は緊急事態であろうと思います。しかし、そういう緊急事態がどこで起こってもあるいはいつ起こっても、あるいはどういう手段でその救出をする、救出というといろんな手段があるでしょうし、また対応もいろんな対応があろうと思うのですが、あらかじめ一般的にそういうことに対応し得るような仕組みを設けるということ、こういうことについて申し上げたものであろうと思います。  それから第二番目の委員の御指摘は、何か臨時応急的な仕組みをつくった、こういうふうに私がお答えしたような御指摘でございましたが、私は臨時応急的な仕組みをつくったという意味で申し上げたのではなくて、長官が国の機関からの依頼を受けて、任務の遂行に支障を生じない限度において、ある一定の範囲の者を航空機により輸送することができるという仕組みが百条の五であって、その中にむしろ当てはまるもの、こういう緊急事態について当てはまるものとして政令指定をした、かように考えているわけでございます。
  95. 小澤克介

    小澤(克)委員 明快だという不規則発言がありましたが、私には全くわかりませんでした。  もう一度申し上げますけれども、百条の五を追加した際の法案提案者の説明は、法案そのものの説明なんです。恒常的事態か臨時応急の事態かを問わず妥当する法案そのものの説明です。恒常的事態か臨時応急の事態かを問わず妥当する事柄として説明しておられるわけですね。そして議会はそれをよしとして、了としてこの法案を成立させた。先ほどの例え話で言えば、委任状にサインをしたわけです。臨機応急の事態だからといってその委任の範囲を膨らませる、読みかえる、委任状を書きかえる、こんなことができるわけがありません。どんなに理屈をつけようと、そんなことはできません。これはもう法律と政令という二つのものの本質的な、何といいますか性格から来る制約ですね。これを言っておりましても結局議論になります。決して委任の範囲を超えたなどと言うはずがない。そんなこと言ってしまったら、皆さん総辞職ですからね。ですから、これは聞いておられる方々の判断に任せるしかないと思います。どちらがより説得的か国民判断する、これが民主主義です。  少し法律論議に過ぎましたと思いますので、少し政治的な政策論、あるいは政治姿勢といった観点からお尋ねをしたいと思います。  私は、このような今回のごとき特例政令を制定することが授権の範囲を超えているとか超えていないとかいう法律議論はともかくとして、政治論、政策論として極めてまずいと思います。  その一つは、このようなことによって立法府と行政府との間の信頼関係が根底から覆ってしまいます。なぜ立法府はその権限の一部を内閣に委任するのか、それはその方が行政が円滑に進むであろう、こういう配慮から、余り細かいところまで全部法律で決めるんではなくて、若干の幅を持たせて内閣に、行政府に委任をするわけです。そこには信頼があるわけです。一定の信頼感があるからこういうことができるわけですね。だれも信頼しない人に委任状は渡しません。一定の信頼感があるからです。もちろん政府の側はなるべく広い裁量権を持ちたい、その方がうまく円滑にやっていけるというふうに考えます。官僚はそういう発想を持ちます。議会人はそれでは困る、国民代表の議会としてやはり立法権はみずからきちんと行使すべきである、このせめぎ合いが立法の際には必ず起こります。すなわち、委任の範囲をなるべく広くしようとするのが行政府であり官僚です。なるべく狭く限定しようとするのが議会人です。  そこでは大変なせめぎ合いがありますが、一たん成立した法律は、一たん与えた授権の範囲は、これは守っていくという暗黙の了解があったからこそ信頼関係が保てたわけです。今回のようなこういうことをやられますと、これは信頼関係が根底から崩れます。今後立法府は政令への委任に対して極めて消極的にならなければなりません。原則として委任はしない、こうせざるを得ないのです。そのことが今後の行政にどれだけ、あるいは行政府と立法府との関係にどれだけの害悪を流すか、そういうことをお考えになったことがありましょうか。総理大臣、いかがでしょうか。
  96. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も申し上げるようでありますけれども、立法府でおつくりになる法律、法律は提案して、御審議願って、それが成立するわけでありますから、その段階にそういう御意思なれば、立法権者が授権をするのはここまでだと、状況が変わろうが時代が変わろうが、だれが読んでもわかるようにきちっとしなければならぬことになるだろうと私は思うのです。そうして同時に、今は議院内閣制でありますから、立法府と行政府が信頼関係を失ってしまったのではこれは成り立たないものでありますから、信頼をいただくためにいろいろ審議をし、議論もしていただいておる、こういうことであります。  同時に、これらの法律ができますときに、法律の文言を読んでそれを解釈するというのが、これはやっぱりそのとおりであって、その当時の議論の、一人一人の議論の言葉とか背景とかいろんなものをお互いに解釈し合って、そしてそれが違っておるからどうなるんだろうかということになれば、最後の責任は内閣が負わしていただかなきゃならぬというのが今日の建前になっておるのではないかと私は思っておるんです。  そういった意味で、この百条の五というものを素直に読んで、政令をきちっとつくって、それは限定的に今度のイラククウェート侵攻によって起こっておる湾岸危機によって発生した避難民を、機関から要請を受けてその国へ送るという人道的な、非軍事的な面に限ってするということに限定した政令をつくってお願いしておるわけでありますから、今の御質問に対する答えとしては、信頼をしていただきながら進めていきたい問題だと思っております。
  97. 小澤克介

    小澤(克)委員 内閣の責任で政令を定めたと総理は再三おっしゃっています。これは責任の問題ではない、権限の問題なんです。それだけの権限を立法府が与えたか与えないか、そこがまさに問題なんですね。我々はこれを権限を外れたというふうに考えます。皆さんはそれは違うでしょうけれども、我々は考える。そうであるとすれば、今後何らか法案の提案があったときに、一つ一つ委任の範囲については厳重にチェックしなければなりません。原則として委任はしない。そうせざるを得なくなります。このことがどれだけ立法府と行政府の間をぎくしゃくさせるか。今議院内閣制というふうにおっしゃいました。議院内閣制のもとでも、この与野党間の関係をどれだけ今後ぎくしゃくさせるか。そのような配慮がなかったことは私は大変残念だと思います。この今後の持つ影響について、これは私は憂うべき事態だというふうに考えます。  もう一つ、このようなやり方で、これはこそくだという御意見が多数の委員から出ております。確かに非常にこそくなやり方だという印象は免れません。こそくそのものですね、正面から議会で議論することを避けたわけですから。自衛隊にどのような任務を与えるかというまさに国民的な課題についてですよ。こそくでありますが、同時にこの持つ意味は、立法府の立法権限を侵害するというまさにクーデター的な意味も持つものなんです。それについては違ったお考えでしょうけれども。  いずれにいたしましても、国会という国民代表議会の場できちんとした議論がなされないままに自衛隊を派遣をする。このことが自衛隊諸君に対して、隊員諸君に対してどれだけモラールに影響するか、そういうことをお考えになったでしょうか。国会できちんと議論をし、多数決で成立させた上で、胸を張って出動していくのと、国民的な議論を回避して、合意のないままに、そしてその出動の根拠について重大な疑義をこういう形で提起されたままで出動していく、命ぜられれば出動しなければなりません。理論一点張りから言いますと、私はこの特例政令は当然無効で執行の余地のないものだと思っておりますから、この出動命令を拒否しても処分はできない。処分すれば、これを訴訟で争えば勝てるものだというふうに考えておりますけれども、それはともかくとして、出動命令があれば命令に応じなければならないわけです。その方々の気持ちということを考えたことがありましょうか。これは総理大臣、それから防衛庁長官、両者にお尋ねしたいと思います。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題を議論するそもそもの発端は、クウェートがあのような状況に置かれて、またイラク周辺国に避難民がたくさん出てきた。国連の機関から委託をされたIOMがその避難民の移送ということを世界に向かって要請をしてきたのです。そのときに、これには日本としてはこたえなければ、日本国際社会の中でいろいろな相互依存関係を持ち、恩恵も受け、また平和であるという大前提が必要なんだ、そのために多くの国が努力をしておる。その中で日本日本の憲法の中でなし得ることは、力によってお役に立つことはできないから、せめてなし得ることをやろうというので、この避難民移送をしてほしいという国際機関の要請にこたえようとしたわけですから、そこで自衛隊法百条の五に内閣総理大臣その他政令で定める者を輸送することができるという項目があり、政令というのは内閣の責任でつくって行うことができ──ですから、それを民間が今はしておってくれます。要請をしたら受けてしておってくれます。しかし、国際機関の想定の中に予想以上の避難民が出てきたり、どうしてもできないときにはいろいろな対応をしなきゃならぬというのでこのような準備をしたのでありますから、それはすべての方々にこのことの御理解をお願いしたい。国際社会に対する日本の国際国家としての責任を果たしていく一環なんだという立場をぜひ御理解をいただきたいと思いますし、すべての人の立場考えて、もちろん民間の人がまず行っておってくれます、今は。けれども、輸送機が飛ぶとなれば、輸送機を運転してもらったり運んでもらう人々のことももちろん考えながらこの政令策定の作業というものをしたわけであります。
  99. 小澤克介

    小澤(克)委員 総理の今の、今回避難民の方々を輸送しなければならないというその必要論、私は率直に言って説得力があると思います。だから、その自衛隊機を派遣しなければならないかについては、私はなお賛成できませんが、しかし、その説得力をもってなぜ法案を提案し、その法案を通すために今の説得力を使っていただけなかったのか。中身を言っているのではありません。手続を言っているのです。どんな立派なことであっても、手続を無視して行われれば、それは通らないのです。目的や手段を正当化しないのです。民主主義とは手続です。私が問題にしているのは、なぜ国民代表の議会で正面からきちんと議論をするということをしなかったのか。それを避けたのか。なぜアボイドしたのか。その政治姿勢を聞いているわけです。  今の総理答弁は、必要性があったということについては一定の説得力を持つと思いますが、なぜそれを政令という形でこそこそとこそくにしたのかという私の問いに対しては何の説明にもなっていないのです。何の答弁にもなっていないのです。これは政治論です。ちょっと待ってください。政治論です。つまり、委任の範囲か範囲外かというような法律的な議論はちょっと棚上げしまして、政治論として、国民代表の国会というこの議論の場でなぜきちんと議論をし、国民の了解を求めていくという正面からぶつかる態度をとらなかったのか、そのことを聞いているわけです。いかがでしょう。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸危機が起こってから、そのための特別の本会議を開いてお話をしたり、また、ただいまここでこうしてこの問題についてお話ししているのも、国会できちんとお話をしていることにはならぬでしょうか。(小澤(克)委員「なりません」と呼ぶ)そうですか。手続論だとおっしゃるから、私はどんなことでもここで何時間も時間をかけてお話をしておることは、与野党の皆さんの御意見を聞き、こちらの考えも聞いていただいておるというのでありますから、これまでならぬとおっしゃれれば、政治論としてのお答え、政治論としての質問をするとおっしゃったから私も政治論で政治家としてお答えしておるのです。  それからもう一つ。こういったことをするというのは政治的な決断でございます。政治的な決断というのは、何回も申し上げておるように、議会を無視してやっておるのじゃありません。議会がおつくりになった法律を素直に読んで、「その他政令で定める者」と書いてあるから政令で定めようとしたわけであり、憲法には、内閣は政令をつくる責任、権限があると、これは別の条文に書いてあるわけですから、それに従って、内閣の政治責任でこれは行わなければ国際国家日本として国際社会に対する政治の立場がつぶれてしまう、こう思ったから決断をしておるわけで、その説明や過程についてお尋ねに詳しく何回でも同じことばかり言うと言われながらもお答えしておるのでありますから、これは国会を大切にしておるからこそ繰り返し繰り返しわかっていただくように御説明申し上げておるつもりでありますから、これが私の政治的判断であり、政治論でございます。
  101. 小澤克介

    小澤(克)委員 今、国会でこうして議論しておりますが、これは本当の議論になっていないのです。なぜかといいますと、既に特例政令なるものをつくってしまった。つくってしまった上で幾ら我々がここで議論をしても、それは本来の議論ではない。特例法案として国会に提出すべきだったのです。その上でこの国会で議論する。そうであれば、これこそ本来の議論になるはずです。そういう正面からぶつかるという態度をとらなかったこと、私は極めて残念に思います。  いろいろ聞いてみますと、政府部内で三つぐらいの方法が検討されたそうです。一つは、正面から自衛隊法を改正するという考え方一つは、自衛隊法百条でいこうという考え方。いま一つは、百条の五でいこうという考え方があった。法改正で臨むのが一番正攻法だけれどもなかなか難しいだろう、政治的に難しいということでこれは取りやめた。百条も検討したけれども、これは御承知のとおり、訓練目的ですかで委託を受けて自衛隊が行動するという規定ですが、これであると、まあ法的にも難しいけれども、範囲が広がり過ぎはしないだろうかということが懸念された。百条を適用いたしますと、自衛隊の行動範囲がどんどん広がってしまうというおそれがある。このことで総理みずからが百条はだめだというふうに決断されたと聞いております。そして最終的に百条の五でおさまった。しかし、法的に一番苦しいのは百条の五であることは皆さん承知の上だ。しかし、あえてそれを選択したというふうに聞いております。  百条を避けたというのは、私はこれは大変見識だろうと思います。なら、なぜ正面から法案として提案しなかったのか。百条の五などという法的には一番苦しい、最もこそくな手段に逃げ込んだ。私はこれは政治姿勢の問題としてやはり批判されるべきだと思います。総理の御答弁にもかかわらず、手続論として批判を免れないと思います。  さて、もう少しその政治論といいますか、政治姿勢の問題を進めたいと思います。  この避難民をどうするかというのは、やはり大変な問題だろうと思います。だからこそ、正面から法案という形で国民代表の議会で国民的な議論にのせるべきだったと思います。このことは先ほどから繰り返して言っております。こういう法案が出たとして、いろいろな考え方が出ただろうと思います。一つ考え方は、自衛隊そのものが違憲の存在であるから、その自衛隊に新たな任務を負荷するなどということはもちろん反対だ、こういう考え方も当然あったでしょう。しかし、率直に申し上げて、この避難民の輸送という問題は武力行使とは無縁のものであります。自衛隊は存在それ自体が違憲だからだめだという議論に立てば、自衛隊の国内での災害救助活動も否定しなければならないということになると思います。そのような議論をする方は余りいらっしゃらないんじゃないでしょうか。  率直に申し上げて、自衛隊の災害救助活動については頭の下がることがあります。例えば日航機墜落事件のときですか、大変な急斜面の山頂付近で、空気密度の低い、空気の希薄なところというのはヘリコプターというのは非常に安定性が悪いわけですけれども、そういうところで、しかも急峻な傾斜地で、気流の状態も非常に不安定な、そういうところで地面すれすれまでおりて、ホバリングというんでしょうか空中停止して救助活動に当たられていた。私はもう率直に感動いたしました。その練度といいますか、パイロットの技量もさることながら、そういう危険を冒して救助活動に当たる犠牲的精神といいましょうか、私は率直に感動したことをこの場で告白いたします。  ですから、何を言いたいかといいますと、自衛隊は違憲だから一切だめだという観点に立てば、国内での救助活動すら論理的には否定しなければならなくなる。恐らくそういう議論は、成り立ち得ると思いますが、国民の支持は受けないんではないかなと私は率直に思います。  そのほかにいろいろな議論があろうと思います。海外に武装集団であるところの自衛隊がたとえ人道的な目的であっても進出することについては、やはりいろいろな抵抗がある。特にアジア諸国、かつて日本が侵略したアジア諸国には大きな抵抗がある。だからまずいという判断も当然あると思います。これは結局、そのような軍用機がアジアの空を飛ぶことによるマイナスと、難民救助という人道的な行動との比較考量の問題だろうと思います。これは価値判断の問題だろうと思います。いろいろな立場でいろいろな議論があろうと思います。それからいま一つの議論は、このような形で海外へ出ていくということは、やはり海外派兵への突破口になるんではないか、そういう議論も当然あり得ると思います。  このような議論が起こるのには、私は政府に大きな責任があると思う。なぜならば、初めに自衛隊ありきという態度だったからです。難民救助についてのいろいろな可能性をあれこれ追求して、どうにもしようがない、最後の手段として、つまり最後に自衛隊ありきという態度で臨んでいれば、あるいは国民の間には理解があったかもしれません。私はそれでもなお賛成できませんけれども、それはともかくとして、いろいろな議論が巻き起こったと思います。だからこそ、やはり国民代表の議会にきちんと法案として提出すべきであった。これを避けた。私は、これは議会制民主主義の観点からして、やはり許されないことだというふうに考えます。  それから、純法技術論からしても、この政令で定めるということ、百条の五の政令で定めるということになりますと、この百条の五の構造からして輸送の対象者を政令で定めるということになります。そうすると、結局のところ、いろいろな制約を、限定をつけようとしても、その輸送の対象者にあれこれの修飾語をつけて制約するというそういう技術に頼らざるを得ない。今回のこれを見ますと、まず一つは「当分の間」という時限立法になっておりますし、それからあれこれの修飾語をつけて、この輸送の対象者についての制約を付している。これはこれなりにいろいろ御苦労されたんだろうと思いますけれども、これではやはり技術的に制約がありますね。自衛隊出動の要件をこの対象者に対する修飾語とは別に細かく規定することは、法案ならばできたわけです。いろいろなアイデアがあると思います。つまり、他の手段が一切ないときとか、そのことを国会に説明して、両院、国会の承諾を得ることを出動の要件とするとか、もちろん時限法にするとか、いろいろな制約を付することが立法技術的にもできるわけです。それから例えばIOMのマークをつけるとか、IOMの人員を乗せるとか、あるいは紛争当事国へ通告をするとか、その他もろもろの要件をつけ加えることが技術的に可能になります。そのような、極めて制約、限定をつけた上で国会に提出するということをすれば、あるいは野党の中にも賛成する党が出たかもしれない。どうしてそういう正攻法をとらなかったのか。大変残念です。  いかがですか。こういう政治姿勢の問題として、総理それから防衛庁長官、両方答えてください。
  102. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 難民輸送をするという行為、行動について、それについては一定の御理解をいただいておる。  それからもう一つは、そのためになぜ手続的に政令に頼って法律に頼らなかったか、こうおっしゃいますけれども、私も何度もそれを申し上げておりますように、国会で制定された法律の中に、政令で定めることができる、こう書いてなければこれはいけませんが、「政令で定める者」、こう書いてあるわけであります。そして例示列挙というのは例えばの話でしょうけれども、たまたま私も内閣総理大臣でございます。今、総理大臣は難民かとおっしゃいますが、そうじゃない。総理大臣も難民も……(小澤(克)委員「そんなこと言ってないですよ」と呼ぶ)いやいや、やじです。ごめんなさい、やじの中で出ましたが、総理大臣も難民も、人間の尊厳という点から見れば同じだという、まことにこれは素朴な発想かもしれないが、私は、人間の尊厳を大切にしていかなきゃならぬという、その基本的人権尊重主義の立場に立ったことと、それからもう一つは、それらの方々を救う方法を最後は自衛隊に頼るとしても、なぜそれ以外の努力をしなかったかという御説ですが、私も何度も記者会見以来申し上げておりますように、これは民間にお願いをして、民間に、まず具体的要請の第一陣はベトナムまでの帰還でありましたけれども四機、日本航空と全日空にお願いして、今回はいろんな事情を乗り越えてやっていただいたからそれで終わっておるわけです。また、社会党の土井たか子委員長を支える会か何かも十機ぐらい予定して、民間でいろんな方が協力をしていただける、そのことについては、国を挙げてのこれは難民対策として高く評価しております。感謝しておりますとも私は申し上げ、同時に、国会のそういう議論をIOMの方へ政府はお伝えをして、日本の国会の議論を通じて、このような民間協力もあるから、十分それは配慮してやってほしい、IOMも、それは要請をした多くの国に対して避難民の方を運べばいいというのがその目的ですから、目的に合うようなことをすればいいので、ただいまのところはそのようなヨルダン航空がチャー夕ーされて運ばれたこともある。チャーターするときのお金は政府が三千八百万ドル、最初にIOMへ拠出もいたしております。  いろいろな意味の協力をし、やれるべきことはやっておるのです。ただ、今後は非常に不安定で、IOMの要請によれば、民間機だけでどうにもならないときにはいつまでも待たせておくというのは気の毒だという判断があるのでしょう、提供する用意があるものは可能性について検討してオファーをしてほしいという要請が来ておるのですから、我々も最後最後の場面として国際機関から要請を受け、おっしゃるように、当事国へ行くときにはその当事国の要請がなければこれは参りませんし、また、ベトナムでも、かつてフィリピンにも輸送したことがありましたが、それらのアジアの国々からも非常に感謝をされたということもございます。やる以上は感謝されるように当事国とお話をするのも、これは政治論としても当然のことと心得ておりますので、そのような手順、手続を踏みながら、あくまで避難民の皆さんの人間性の尊重、そういったものを大切にしてあげたい、そういう気持ちで行っておるわけでございます。
  103. 池田行彦

    ○池田国務大臣 御議論の中で、自衛隊をめぐるいろいろな世論があるけれども、自衛隊の存在そのものを憲法違反と見る意見は少ないという話があり、また、自衛隊の活動についても一定の評価をちょうだいいたしましたことを私どもとしても本当にありがたいと思っております。どうか、委員、所属される政党におきましてもそういった意見を公式のものにしていただきたいと期待申し上げる次第でございます。  それから二番目に、自衛隊が海外へ出ていく場合に、アジア諸国のいろいろなその気持ちというものを大切にしなくてはいけないと御指摘がございました。これは、法律論を離れて政治論として、そのとおりだと私ども考えております。そして、今回の任務は極めて人道的なものであるということで、こういうことはアジア諸国を初め諸外国にも御理解いただけるように努力しておりますし、また、今回仮にこの任務を果たす場合に、アジア諸国の幾つかの国を経由していかなくちゃいかぬわけでございますが、そういった国からも、まだ探りの段階、感触を探る段階ではございますけれども、受け入れるといった好意的な反応をちょうだいしているということは、今回の自衛隊の任務についての適切な妥当なその評価、御判断をアジア諸国にもいただきつつあるものと考えておりますし、これからもなお努力してまいりたいと存じます。  それから、派兵への突破口になるのではないか、あるいは初めに自衛隊ありきではないかという点につきましては、もう総理からのお話に尽きるわけでございますけれども、御承知のとおり、避難民の問題に限りましても三千八百万ドルの拠出もしておる、あるいは日本の民間航空機による避難民の輸送も現に実行したということでございまして、いろいろそういったものをやった、むしろその後ろの方に自衛隊があるというふうにお考えいただきたい、御理解いただきたいと存じますし、これは決していわゆる派兵、武力行使の目的をもって武装した部隊を外国の領土、領海、領空に持っていくなんという突破口になるなんということはあり得ないわけでございますし、そのことは憲法上も認められないことでございますから、どうか、そういったものにつながるものじゃないということは先生からもよろしく国民の皆様方に御啓蒙賜ればと思う次第でございます。  それから最後に、政令でいろいろ限定していくのに、人間について、輸送の対象者について修飾している、いろいろ条件をつけているけれども、出動の要件の方にいろいろそういった縛りといいましょうか、それをかけていったら、あるいは今賛成に回っていない方々の中からも理解が得られ賛成が得られるのじゃないかという御指摘がございました。貴重な御提言だとは思いますけれども、私どもといたしましても、いろいろ対象になるものだけではなくて、そのほかの状況等についてもいろいろな限定を加えているのは御承知のとおりでございます。今回の事態についてもいろいろやっている。あるいは国際機関からの要請であ るとか、あるいは民間機で対応できない場合とかいろいろな条件をつけているところでございますので、我々でもそういった努力はしているということをひとつ御理解いただきたいと存じます。  なお、これは蛇足かもしれませんけれども、出動の要件というお言葉がございましたけれども、私ども、これは自衛隊の出動とは申しておりません。こういった輸送の任務につくわけでございます。出動というのは、自衛隊の本務でございます国内の安全保障をしていく、その中でも極めて重大事態が起きたときの防衛出動とか治安出動という場合に使われる言葉でございますので、その点、蛇足かもしれませんけれども付言させていただきます。
  104. 小澤克介

    小澤(克)委員 誤解をされるといけませんのできちんと申し上げておきたいと思いますが、私は自衛隊の存在が違憲ではないと言ったわけではありません。違憲の存在であるがゆえにすべての行動を、人命救助活動までを否定するという論法は恐らく国民の間で支持を得ないのではないだろうか、こう申し上げただけですよ。そこは確認させていただきたいと思います。  それから、今お話にありましたが、確かにこの特例政令でもあれこれ限定をつけようと努力されていることはわかりますが、しょせんこれは対象者を決めるわけですから、その対象者にあれこれの修飾語をつけるしか立法技術的にできないのですね。ところが、別建ての法案であれば、例えば本当に他の方法かないというようなことを国会に報告し、両院の承諾を得て初めて出動じゃないんでしょうか、その行動に移るというような要件を定めることも立法技術的に可能になるわけですよ。いろいろな要件をつけていくことが可能になるわけですね。どうしてそういう御努力を、国民を説得する御努力をしなかったのだろうか、こそくきわまりない、それでいて実質は国民代表、議会に対するクーデターにも等しいような政令改正という手段によってこのようなことを行ったのか、政治姿勢として大変残念だということを申し上げているわけです。残念ながら私の質問に対する正面からの答弁にはなっていなかったと言わなければならないと思います。  さらに、政治論をもう少し展開させていただきたいと思います。  それは、今申し上げたのは難民救済にどうしたらいいかという観点からの議論をきちんと国会ですべきだということだったのですが、もう一つは自衛隊をどうするかという議論です。これはやはりどこかできちんと議論しなければならないことだろうと思います。  御承知のとおりの米ソ間の冷戦構造というのが音を立てて崩壊しました。そのような中で、自衛隊の存在理由というのがいろんな意味で問われているわけです。  いろんな議論があり得ると思います。例えば、米ソの対立関係が崩壊していく中で、日本と、何といいますか、このポツダム体制といいますか、あるいはミズーリ体制といった方がいいのでしょうか、そういう戦後の状況から、その傘を飛び出して軍事力を持った大国になりたい、そういう願望も国民の一部にはありましょう。まあ端的に言えばノーと言える日本と、こういうのをつくっていきたい、その一要素としてやはり軍事的なプレゼンスが必要だ、その中核に自衛隊を育てていこう、こういうお考えの方も、極めて少数かとは思いますけれどもいらっしゃるでしょう。これが一番一方の極にいると思います。他方の極には、やはり自衛隊というものは即刻解消していくべきものだという考え方があろうと思います。その間にいろんなバリエーションがあると思います。どうするかということは、今まさに国民的に議論しなければならない。その場合には、自衛隊の現隊員の皆さんの立場とかあるいは自衛隊という存在のすそ野にあるいろんな防衛産業、そういったことまで視野に置いて、これをどうするのか、世界有数の軍事力に育ってしまったこの自衛隊をどうするのか、これはまさに議論しなければならない事柄だろうと思いますね。これを避けて通ることはできないと思います。  そのような状況の中で、防衛出動以外の自衛隊の各種の任務について注目が集まるのは、ある意味で自然の流れかなと思います。自衛隊の防衛出動ということは今までもなかったし、今後も多分ないだろう。それよりもむしろ、付随的ないろんな仕事を追加していって、そういう形で自衛隊という組織を生き残らせようという考え方一つのオプションとしてあるだろうと思います。各国の軍隊とも、何も戦争だけやっているのではありません。いろんな付随的な任務を持っております。今の自衛隊法にも付随的な任務はいっぱいあるわけですね。いろんな付随的な業務がありますね。八十二条には「海上における警備行動」、これはいわゆる警察活動の一部だろうと思います。海上保安庁が行っているような仕事だろうと思いますし、八十三条の「災害派遣」というのもあります。それから八十四条「領空侵犯に対する措置」、これはまさに領空保全という、海でいえば海上保安庁が行っているような日常業務であります。それから百条とか百条の三、百条の四、そして問題になっている百条の五等々、付随的な業務がいろいろあるわけですね。こういったものを膨らませていくというオプションも一つはあると思います。その一方で、本当にいわゆる防衛出動について、だんだんその必要性がなくなるのに従って縮小していくということが伴えば、それはそれで政策としての一つだろうと私は思います。それがいいか、賛成は私はしませんけれども。  それからもう一つは、こういったいろんな災害救助であるとかあるいは国際的な貢献等々については、やはり自衛隊とは別の組織でやっていこう。自衛隊というのは基本的にやはり武装集団ですから、兼務とはいえ、そのほかの仕事をするにはいろいろ抵抗がある、いっそ別の組織にした方がいいではないか。その際には、これまで訓練を積んでおられる自衛隊の方々にそれを生かしていただくということに多分なると思います。ほかに方法はないんじゃないかという議論も当然あると思います。このような別組織にしていく、まあ言ってしまえば自衛隊分割論ですけれども、これも一つのオプションとしてあると思います。国連PKO活動については自衛隊と別組織にするというのが国民的な合意であるというのが、さきの臨時国会での結論でありました。  そういった意味で、今、自衛隊をどうするかということをやはり正面から議論しなければならない。その意味でも、自衛隊にどのような任務を与えるかということは、国会で、国民代表の国会できちんと議論しなければならないわけですから、その意味でも、自衛隊にどのような任務を与えるかということは、やはり法案としてきちんと提案していただきたかったと思います。  この政治論についていかがでしょうか、総理、それから防衛庁長官、両方からお願いします。
  105. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 委員のお話を承っておりまして、自衛隊が憲法違反の存在かどうかということについては明確に憲法違反の存在だという立場に立ちながら、災害救助活動なんかの姿を見たときには感動をしたという御発言もありました。そうして今また、自衛隊をどうするかということについて根本的な議論をしなければならないと心情を述べられました。  私は、そういった率直な発言評価をしますとともに、できるならば私に時間をもらって、立場を変えて、社会党はなぜ自衛隊を憲法で認めないのでしょうかということについてお尋ねしたい気持ちがいっぱいですが、それは許されないかもしれません。  しかし私は、自衛隊というものの存在を認めるか認めないかということで、これから、今やっておる議論も全部根本が違ってしまうと思うのですよ。同時に、あの非武装そして中立論というのでいきますと、結局は日米安保条約も憲法違反で認めないということになっちゃうわけですよ。非武装中立論というとこれはどうなるかと言えば、今日クウェートで起きておるような武力侵略があるときでも、とにかく何でも反戦だ、自衛隊は憲法違反だからだめだと言ったらどういうことになっちゃうのでしょうかという、私には根本的な出発点の心配があるわけでありますから。  そしてまた、自衛隊と別個の組織でならば云々というお話がございましたが、昨年の国会の終わりに、自民党と民社党、公明党三党の間の合意をいただいた新しい国際社会に対する協力のあり方の中には、それらの問題も明確にしてあるわけでありまして、私は、もう一歩社会党も前に出ていただいて、それらの議論に加わりながら、自衛隊の問題も議論しながら、政党間の中で日本の新しい国際社会に対する協力のあり方の、今政府は成案づくりのために一生懸命努力をしておるのでありますから、一歩前進した御理解と御協力がいただきたい、また、いただけるのではないかというそこはかとない期待も持ちながら、御質問を今聞いておったところでございます。  そうして、自衛隊というものはあくまで武力による威嚇または武力の行使をするものではないということは、これは何度も繰り返し申し上げましたが、それはそうでございます。  そうして、今回それなればなぜとおっしゃるのは、また問題が振り出しに戻るようでございますけれども、与えられておる政府の責任において、今回に限っての臨時そして特例の措置として、人道的な、非軍事的な面としての避難民の移送ということに協力できるような体制をとってもらった。あくまで民間機にお願いして、それができる間は今やっておりますけれども、今後の展開と、IOMが申しますように予測が立ちません。数がもしどっとふえてくれば、民間機といっても、それは各国に要請してあっても限度が来るのではないか。そういうときに、さらに避難民の立場に立ったときには、日本としてはここまで準備はしてあるということを政治論、政治的判断として決めておるところでございます。
  106. 池田行彦

    ○池田国務大臣 総理の御答弁とはなるべく重複しないようにお答え申し上げたいと存じます。  自衛隊のあり方について、国民の皆様、特にそれを代表する国会の皆様方に常に関心を持っていただき、御論議いただくことは本当に大切なことだと思います。これからもそのように私どもの方でも心がけてまいりたい、こう考えております。  さて、委員御指摘のところは、その中でも、今日のように国際情勢が大きく転換する中で、世界有数の軍事力を持つに至った自衛隊のあり方をどうするんだ、こういうことであったと思います。  まず国際情勢の方でございますが、これは御指摘のように極めて大きな変革の過程にある。戦後の世界を支配しておりました冷戦構造も終えんしたと見ていいわけでございます。それはそのとおりだと思います。しかしながら、依然として、新しい秩序が形成されていくまでにはまだいろいろな障害物もあるいは悩みもあるということも事実でございましょう。とりわけ我が国の位置いたしますアジア地域におきましては、ヨーロッパに比較いたしましてまだ先行きが不透明である、あるいはその現状いろいろ複雑であるということもございます。そういった世界あるいはアジアの情勢も踏まえまして、現在においても世界各国それぞれの国がみずから、あるいは同盟関係を結んだ国の力をかりながら、やはり実力というものを保有してみずからの安全保障に当たっていくという面があるのは否定できないことだと思うわけでございます。  そして、さて一方、自衛隊の方の能力なりあり方の問題でございますが、先生、世界有数の軍事力と言われましたけれども、これはどうか。いろいろ保有する装備だとかあるいは人員だとか、そもそも我が国の憲法の持つ制約というものをお考えいただければ、決して世界有数の軍事力というようなものではないというのは実は御理解ちょうだいしておるんだ、こう思っております。我が自衛隊は、憲法のもとで我が国の安全保障を守っている。しかも独力で守るのではなくて、日米安全保障体制というものがある。そしてそれのもう一つの柱として、みずからも必要最小限の力を持っていくということであるわけでございますし、それに現在は、昭和五十一年につくられました大綱のもとで、基本的にはそのころから始まっておりましたデタントといいましょうか、今日に至る世界の安定化の傾向もにらみながら、平時において十分な警戒体制をとる。それからまた、限定的でしかも小規模な侵略に何とか対応できるという、極めて限られた、制約された目的を前提にして自衛隊の装備なり力というものはあるわけでございます。  そういうことでございますから、現在の国際情勢の大きな変化というものは十分認識しておりますけれども、現在の必要最小限の防衛力でございます自衛隊というものは、引き続きこれを維持していくことが日本の安全保障のために不可欠であると考える次第でございます。  それから、自衛隊のいわば主たる任務といいましょうか、あるいは本来の任務と申しましょうか、それと付随的な任務というお話でございましたけれども、百条系統の任務などですが、それとの関係でございますけれども、先ほど申しましたようなことで、国際情勢の観点から申しましても、やはり我が国の安全のために十分な警戒体制なり小規模、限定的なその種の侵略に対応するという備えは常に行わなくてはならないわけでございます。これが自衛隊の主任務でございますから、この面でしっかりとやっていくことが肝要かと存じます。そしてなお、そういった任務に支障のない範囲内で輸送の任務であるとかあるいは体育大会等への応援任務とか、こういう面も国民の皆様方の御要望にこたえて自衛隊としてもやってまいりたい、こう考えておるところでございます。
  107. 小澤克介

    小澤(克)委員 我が社会党の、自衛隊あるいは安保等についてどうするかということは、さきの党大会で採択されました、ちょっと正式な題名を記憶しておりませんが報告書がございます。極めて明確に我が党の方針が明らかにされております。機会があれば読んでいただきたいと思います。  そこで──総理がいないですね。それでは、私は今回のこの閣議決定に加わった閣僚の方一人一人にお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、閣議決定は一人でも反対する者があれば成立しないということになっております。全員一致制になっております。かつて中曽根内閣当時に、ペルシャ湾に自衛隊の掃海艇を派遣するかという議論になったときに、閣僚のある方が、おれは絶対サインしないと言ってこれをとめたという話も漏れ聞いております。したがって、今回の特例政令については、これに、これだけたくさんの閣僚の方がいながらただの一人もこれは筋論としておかしいと言って拒否した人がいなかったのは、私は大変残念だと思います。閣僚の方一人一人、今回の特例政令については責任を持っておられるわけです。たった一人でも反対すれば成立しなかったわけですから、一人一人が一〇〇%の責任を負っていると言っても決して過言ではないわけです。先ほどからるる申し上げたとおり、法律の委任の範囲内か範囲外かというような細かい法律論は結構でございますが、政治論としてまず避難民をどうするかという問題を正面から議論すべきであった、自衛隊がどうかかわるかという問題について。それからまた、自衛隊を今後どうするかということについても正面から国民代表の議会で議論すべきであった。このような特例政令などという余りにもこそくなやり方をした。このことにどうして皆さんが一人残らず賛成されたのか、私にはわからない。  まず、やはり順序として、総理からお尋ねするしかないと思います。──じゃ、総理最後にしましょう。──いいですか、では最初に。  総理は、議会の子といわれた故三木武夫先生の薫陶を受けたまさにまな弟子だというふうにお聞きしております。全くの筋金入りの議会人であろうかと思います。三木武夫先生はみずからのことを議会の子だと称しておられました。その弟子に当たられるわけですから、これは議会の孫ということになるのでしょうか。議会制民主主義を骨の髄まで体しておられる方だというふうに私は認識しております。その総理が、手続論を言っているのですよ、今回の難民救済に対して何らか国として対応しなければならなかったとおっしゃる。先ほどからたびたびおっしゃっているのは、それはそれなりに一応の説得力があると私も思っておりますが、手続論として、議会の、まさにきっすいの議会人であるあなたがどうしてこのような政令をつくることに賛成されたのか。賛成というよりもむしろ主導的な役割を果たされたのか。先ほど御紹介申し上げたとおり、正面から法を改正するか、百条でいくか百条の五でいくかという議論の中で、あえて最も法理論的には筋の通らない百条の五を採用されたのか。そして、みずから新聞記者に法改正が筋であったとおっしゃった。その本音を貫こうとしなかったのか、重複して恐縮ですが、もう一度お尋ねしたいと思います。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今まで何回も答えてまいりましたから重複することを避けますけれども国際社会における日本立場というものが、戦後の、片隅で自分の国のことだけを考えておればいいというあの時代からは変わってきて、好むと好まざるとにかかわらず、大きな影響力を持つ国家になっておるということ、また、今日の平和な生活の中で日本が受けておる世界からの恩恵というものは、やはり平和と、それから自由貿易の秩序、仕組み、これが安定しておったからだと言って言い過ぎではございません。平和を守り抜くことができたのは、冷戦時代には日米安全保障条約が円滑に動いてきたからであります。  そういったことをいろいろ考えて、日本国憲法の理念でもある平和主義、国際協調主義、それに従ってできる限りのことはやらなければならないという基本にまず立ちました。そして、法律を読んでみたら、法律の中に明らかに内閣総理大臣その他政令で定める者を運ぶことができるという規定があるわけでありますから、この法の規定に従って政令をつくればいいという決断をしたわけでございます。  また、一部伝えられておりますように、私は初めから、法の根拠がなければ法をつくらなければなりませんが、法の根拠があったからこれに従ってやるという決断をしておるわけでありまして、初めからそのように申し上げ続けてきております。
  109. 小澤克介

    小澤(克)委員 法務大臣にお尋ねします。  法務大臣は高等文官試験の司法、行政両方受かっておられます。法曹資格を持っておられる方です。ローヤーでもあられるわけですね。そしてまた郵政畑を歩いてこられたようですが、いわゆるアタッシェとして外交官生活の経験もおありのようです。まさに欧米の議会制民主主義というものを最もよく理解しておられる方でありますし、当選八回に及び、ずっと議会で活動してこられた議会人でもあられるわけです。そういうまさに議会人そのものであるあなたが、このような特例政令などというやり方で国民代表の議会での議論を避ける、アボイドする、このような政令に賛成をされた、サインをされた、大変残念です。どうしてあなた一人でも拒否しなかったのか。あなた一人でも、あなた一人でも議会制民主主義を守ろうとしなかったのか、お答えを願いたいと思います。
  110. 左藤恵

    左藤国務大臣 今の御質問につきましては、今総理がお答えになりましたように、政府のまた統一見解という形でとった方法というのが私は適切な方法である、このように考えたからでございます。
  111. 小澤克介

    小澤(克)委員 外務大臣にお尋ねいたします。  あたたはドクターであられます。まさにその合理主義精神を体しておられる方だと思います。同時に参議院の御経験も長い、これまた議会人そのものであります。その議会人であるあなたが、議会の立法権を侵害するような、議会制民主主義を否定するような今回の特例政令になぜ賛成されたのか、あなた一人でも反対を貫いて、このようなこそくな手段を避けるべきだ、正面から国民代表の議会で自衛隊にどのような任務を与えるかを議論すべきだ、そのように主張しなかったのか、大変残念です。なぜ反対しなかったのか、この政令にあなたがサインされたのか、御答弁を願います。
  112. 中山太郎

    中山国務大臣 内閣では、いろいろと今回の事態、難民の救済に対する事態に対していかに対応すべきかということを協議をいたしましたが、内閣法制局長官中心に法律を解釈あるいは憲法の解釈というようなものを含めて協議の結果、法制局の長官判断をして内閣の統一見解というものがここでまとまってまいるわけでありますが、私は、閣僚の一人として、法制局長官の最終的なこの解釈というものが妥当であるという判断をいたしました。
  113. 小澤克介

    小澤(克)委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。  あなたは、大学時代に剣道部に所属しておられたそうです。あなたの戦法は専ら面をとりにいく、小手をとるなどというまさに小手先のわざは嫌った、そういうふうに伺っております。国会での答弁ぶりなどを拝聴いたしましても、常に正面から立ち向かう、そういう答弁ぶりだと、私がそういう批評めいたことを言うのは僣越かもしれませんが、率直にそのように思っております。私の大学の先輩だから言うわけではありませんが、やはり宰相の器を備えた方だというふうに私はひそかに思っております。そのあなたが、なぜこのようなこそくな、国民議会でのきちんとした議論を避ける、回避する、アボイドする、こういう特例政令にサインをされたのか、私は理解できません。将来宰相たるべきあなたにとって決定的な汚点を残したと思います。御答弁を願います。
  114. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私の脳裏にありましたことを率直にお聞きをいただきたいと思うのでありますが、私は、イラン・イラク戦争の一番激化したときの運輸大臣でありました。そして、私が着任いたしましてから間もなくのうちに日本船の被弾が始まり、そのうちに船員の中から死者を出すといった事態になりました。切歯扼腕いたしておりました。そして日本の船員の方々の中からも、何とかしてくれ、せめて日本の日の丸のついた船がおれたちを守ってくれないのかという悲痛な声を私は毎日のように聞きました。  先ほど委員が引用されました保安庁の巡視船派遣という議論が出ましたとき、私は外務省に、海上保安庁を現地に送った場合いわゆる軍事行動と同一視されないかどうかの確認はいたしましたけれども、その確認が得られれば、巡視船を送ることによってでも日本の船員が安心してくださるならという考えに立ちました。そして保安庁の諸君にも真剣に相談をかけました。省内で大激論がありましたけれども、私は必要があるならば巡視船を派遣するという決断をいたしました。  この湾岸の、イラククウェート侵略という事態が起きましてから、日本が船あるいは飛行機によって協力を求められましたとき、たまたま部署こそ異なれ閣内におり、航空会社あるいは船舶会社との交渉の一部始終を私は見ておりました。そして日本航空あるいは全日空、そして各船会社に対してその協力要請をいたしましたとき、その協力がいかに現実に得ることが困難であったかを身をもって知っておる一人であります。避難民救済という問題が起こり、その協力要請が出ましたとき、率直に申しまして私は委員のような法律論から物事を考えませんでした。そして、日本が避難民の救済に当たる以上、全力を挙げて救済しなければならないが、民間の方々においでをいただけないような場所で避難民が救出を求めたときに、日本政府がそれに対応するならばどのような方法があるかとしか、正直考えませんでした。  ですから私は、実は、よくこのごろ冷やかされますけれども、法制局長官に、非常に厳しい法律解釈をされましたとき、髪の毛一筋のすきでもないのか、何とかしてそういう場所に、避難民を救い出すために、自衛隊機が動けるとすれば方法はないのかというお尋ねもいたしました。私の率直な気持ちはそうでした。それだけに、この形で法制局からの見解が示されましたとき、どうしても民間航空機によって救い出すことができないような場所で避難民が助けを求め、国際機関から協力を求められたときに、日本政府として対応する方法を持ったという思いでいっぱいでありました。  以上、率直に申し上げます。
  115. 小澤克介

    小澤(克)委員 一人一人お尋ねするためにわざわざ集まっていただいたんですが、時間的に難しくなってまいりましたので、全員に一人一人お尋ねして、後で一人一人お答えいただくという形にさせていただきたいと思います。  文部大臣にお尋ねします。あなたもドクターでおられます。まさに合理主義精神そのものを持っておられると思います。そして千葉県議会以来、根っからの議会人であられます。議会制民主主義を身をもって体しておられる方だろうと思います。そのあなたがなぜこのような、自衛隊にどのような任務を与えるかというまさに国民的な課題を国民代表の議会で論議することを避けて、あのようなこそくきわまりない特例政令を制定することに賛成したのか。細かい、委任がどうのこうのという法律論は結構です。議会人として直観的に、これはまずい、こういうことは避けるべきでない、議会で議論すべきだ、それが議会制民主主義だ、そういう感覚をお持ちにならなかったのか、お尋ね──ちょっと待ってください。もう時間がありませんので、一人一人お尋ねしますからお願いします。  それから、厚生大臣にも同じ質問をいたします。あなたは参議院で十四年も議会人を務めておられる。もちろん法律を学んでおられた方です。なぜこのようなこそくな特例政令にサインをされたのか。あなた一人でも反対すればこの政令は成立しなかった、国民代表の議会できちんと議論できた。お尋ねします。  農林水産大臣にもお尋ねいたします。根っからの議会人であるあなたが、なぜ議会での議論を避けるこのような特例政令にサインをされたのか。同じ質問です。  通産大臣にお尋ねします。あなたは英米文学を専攻されている。まさにアングロ・サクソンの文化の精神を体しておられるはずです。議会制民主主義をよく理解しておられる方だと思います。そのあなたがなぜ議会での議論を避けるこの特例政令にサインされたのか、お尋ねします。  運輸大臣にお尋ねいたします。あなたも地方議会を含めてきっすいの議会人です。あなたがなぜこの特例政令に賛成されたのか、御見解を賜りたい。  郵政大臣にお尋ねします。あなたも、カナダに留学をされた。英米法についてよく理解をしておられる。しかも議会人であられます。内閣の一員である以前に、皆さん議会人なんです。なぜそれが議会の立法権を制約するようなことを行ったのか、お尋ねいたします。  労働大臣にお尋ねします。あなたこそ全くのきっすいの議会人です。なぜ議会の立法権を制約するようなこのような特例政令に賛成されたのか、サインされたのか、あなた一人でも反対できなかったのか、お尋ねします。  建設大臣にお尋ねします。あなたは福沢諭吉についての著書がございます。近代合理主義精神、民主主義精神について最も造詣深い方だと思います。議会人であられるあなたが、なぜ議会での正面からの議論を避けるこのような特例政令にサインされたのか、お尋ねします。  自治大臣にお尋ねいたします。あなたも、若いときから青年団運動から政治に入られ、そして県議会での議長の経験もあられます。私と同じ出身地の尊敬すべき先輩であります。また、何事にも真っ正面から力で立ち向かう強い意思力を持った方だと私はひそかに尊敬しております。そのあなたがなぜこのようなこそくな手段に賛成されたのか、お尋ねします。  環境庁長官にお尋ねします。あなたこそ国際派であります。アメリカの民主主義を体しておられる方です。なぜこのようなこそくな特例政令に賛成されたのか、あなた一人でも反対しなかったのか、お尋ねします。  防衛庁長官にもやはりもう一度お尋ねしたいと思います。  経済企画庁長官、同じ質問です。一言ずつお答えください。  総務庁長官、あなたこそきっすいの議会人です。お答えいただきたいと思います。同じ質問です。  内閣官房長官にも、きっすいの議会人であるあなたに、なぜ議会を否定するような、議会制民主主義を否定するようなこの特例政令に賛成されたのか、お尋ねします。  科学技術庁長官、あなたは近代合理主義精神の所産である科学技術を所管しておられます。なぜ近代合理主義を否定するような、議会制民主主義を否定するようなこの特例政令に賛成されたのか、お尋ねいたします。  沖縄開発庁長官・北海道開発庁長官にも同じ質問をいたします。  国土庁長官にも同じ質問をいたします。  どうぞ一人ずつお答えいただきたいと思います。
  116. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑時間が参っておりますので、どうですか、代表して一人で。
  117. 小澤克介

    小澤(克)委員 一言ずつお願いできませんでしょうか。
  118. 渡部恒三

    渡部委員長 いや、時間が参りましたから。
  119. 小澤克介

    小澤(克)委員 それじゃ、まことに申しわけありません、時間が参ったそうですので、どなたか代表してでもお答えいただければありがたいと思います。
  120. 渡部恒三

    渡部委員長 では、官房長官
  121. 坂本三十次

    ○坂本国務大臣 代表するとはいささか私も越権でございますけれども、私の気持ちを一言で申し上げれば、今日の我が国が世界の中で課せられておる重大な責任というものを痛感をいたしました。数年前まではまだ考えつかなかったようなことが大きな責任となって我が国に課せられておるわけであります。そういう面におきまして、国民の期待にこたえてこの問題の処理のために今全力を挙げなければならぬという政治家としての信念から、また法制的手続の面でも確かめてみましたところ、これは特例政令でもよかろうということになりまして、私どもの信念どおり、かく進めてきたわけでございます。
  122. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて藤田君、小澤君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君。
  123. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今回の湾岸危機、湾岸戦争というものは、戦後四十五年間にわたる日本社会に対して、大変深刻な政治課題、政治問題であり、またさまざまに考えるべき問題を突きつけたものと私は理解をしております。いろんな問題点がありまして、必ずしも一面的な見方だけではやはり判断を誤るということでございまして、いろいろな角度からこれを考え抜く必要があるかとは思っております。この予算委員会におきましても、既にいろいろな角度から議論が行われまして、特に九十億ドルの問題、自衛隊機派遣問題をめぐっては種々議論が行われたと承知しておりますが、私はやや異なった角度からこの問題を見て、質疑をしていきたいと思っております。  特に今回の湾岸戦争、一月十七日に勃発いたしまして大変悲しむべき事態であります。一刻も早くこの終結を願うものではございますけれども、他方、非常に深刻なジレンマというものを日本に課しているというふうに感じております。やはりこのポスト冷戦時代における世界の平和のあり方あるいはまた日本としての国家としてのかかわり方ということが問われていることだと思っております。特に、今回非常に複雑な問題になっているのは、いわゆる湾岸戦争と言われているものが従来の戦争とは非常に性格の異なったものであるということがその大きな点かと思っております。特に今回は、いわゆる国連憲章に定めるところの集団的安全保障、極めて不完全な形ではありますけれども、そういった性格が一面にあるというところではないかと思っております。  国連憲章の第一章一条一項、国連の目的のイの一番に平和の維持のことが掲げられてありまして、「国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」云々と掲げられております。このことは必ずしも我が国では余り十分に認識がなかったのかもしれませんけれども、ポスト冷戦時代の開始とともに、東西冷戦の終えんとともに、拒否権が行使されなくなって、突如この集団的安全保障体制的な性格が作動し始めたということではないかと思っております。  特に、このイラククウェート侵略という問題、いかなる理由によっても正当化され得ない、白昼強盗にも似た行為であるし、かつすぐに国連安保理決議を出して、この侵略を認定し、非難し、撤退を求め、原状回復を求め、かつまた経済制裁をし、国連事務総長初め平和への努力が続けられたわけでありますけれども、そういったことが無に帰してこの武力行使となったわけでございます。とともに、日本として、国連の一員である以上、また国連中心主義を掲げる以上、やはりこの集団的な安全保障体制のよりよき機能を目指して、またより犠牲の少ない方向に向かってこれを支持していかなければならないという、少なくとも道義的政治的な義務は負うものと理解されるわけでございます。他方、憲法があって、憲法は戦争を放棄し武力行使を否定をしており、また戦後四十五年間の国民感情、平和というものを愛好し戦争を忌避する国民感情というものが定着をしておって、この二つの間で非常に深いジレンマというものに悩まされているわけでございます。この問題を良心的にかつ良識的に考えれば考えるほど深いジレンマに悩まされるわけで、この回答は簡単に見つけることはできないと感じております。  しかしながら、この湾岸問題が発生いたしまして、日本の社会としては全く心の準備がないままにこの問題に直面をして、非常に苦慮したわけでございますけれども国民の中には、やはり日本としても何かしなければならない、単に一国平和主義だけでは済まない、国際無責任主義では済まないということは最近非常に強く意識が芽生えているんだろうと思っております。また、物と金のみならず人の面でも貢献すべきであろうという意識は国民の間に強く出てきているんではないかと思っております。他方、そうはいっても政府対応国民が必ずしも満足をしておるわけではない。非常に不安を感じている面も率直に言ってあるわけでございまして、特に政府対応の一連の姿は、国民としては対米追随ではないか、あるいは憲法の空洞化ではないかといったことが率直に不安があり不満があるわけでございまして、この点は総理としても御認識はいただいているものと思いますけれども、そこで、やはりこの問題の解決に当たって、いかにして憲法を厳守してかつ国際責任はきちっと果たし、日本としても建設的な形で世界の平和に役割を果たしていくか、そういった筋を探していくことが国民的な課題であると感じておるわけでございます。  そういったことで、私は特に日米関係との関係でこの問題をお聞きしたいわけですけれども、この湾岸危機の問題、突き詰めて考えると国際社会の一員としての責任という問題とかつ日米関係のあり方と、この二つの点が大きな問題点としてあるんだろうと感じております。前者につきましてはいろいろ議論をされておりますので、特にこの日米関係の視点からお伺いしたいわけですけれども、まず、総理としてはこの日米関係の視点からこの湾岸戦争の問題というものをどのように基本的に認識をされているか、この点をお聞きしたいと思っております。
  124. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米関係の視点から湾岸戦争をどう認識するかという御質問でありますけれども日米関係というのは日本にとって最も大切な二国間の関係であって、それは日米安全保障条約のみならず、貿易の上でもあるいは国民生活の上でも、生活文化を日本に導入しておるという上からも、あるいは今の世界の秩序の中で地球の総生産の四割近くを二国で占めておるということは、この二国が好むと好まざるとにかかわらず世界に大きな影響力を経済的には持ってきておるという関係にございます。  そういう大前提でまいりまして、今度の湾岸危機が起こったときに、今委員が最初にるる御説明になった国連憲章の精神に反する平和の破壊が現実に行われて武力による一国の侵略、併合があったときに、これ以上平和の破壊が大きくならないように真っ先に決断をして行動したのはアメリカであったと私は率直に認めております。そして今は二十八の国が多国籍軍と言われるものになり、国連平和回復活動の一環として、あの地域でこれ以上の平和の破壊を許さない、国連決議をきちっと守らせるというために動いておるのだ、そしてまたそのやむを得ず行われた武力行使ではありますけれども、これはきちっと解決をしませんと、もしこれを何もしないで見ておったのでは、何か侵略者が出てきてもなすがままで反戦、平和と口で言っておるだけでは、これは無責任になる。一国平和主義だけではいけない。だからできること、みんな国連の機能を高め、国連の権威を高めるためにしていかなければならぬという立場日本も応分の協力、支援をしながら、一日も早くそれが終わっていくことを、平和的に解決することを願ってきましたが、残念ながら武力行使になった。  しかし、これは犠牲者をできるだけ最小限度にとどめて平和解決が図られるようにしなきゃならぬという願いを持って、アメリカもそういったことをときどきの大統領の演説等でも表明し続けてきておりました。一日も早く戦火が終わってくれることを、そしてまたあの地域の恒久平和が来ることを私は常に願うとともに、日本は力ではお役に立てませんけれども、その後の現地の経済復興の問題とか恒久和平枠組みづくりのための協力とか、なし得る限りのことはアメリカとの間でもう十分に協調、相談をしながら、まさに最近グローバルパートナーシップという言葉がよく使われますけれども、私はそういった関係に立って日米関係というものは世界の平和と安定のために進めていかなきゃならぬ一番基軸であると、このように考えております。
  125. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 私も日米の重要性については認めるにやぶさかでないわけですけれども、問題はそのグローバルパートナーシップの中身といいますか、態様をどうつくっていくかということが大きな問題点であるかと思います。特に国民の率直な印象として、今回の湾岸戦争に至る政府対応というものが、どうしてもアメリカがまず決めてそれを日本に押しつけてくる、それを日本は受け身で受けて応分の負担をしていくという、アメリカは決める人、日本はそのツケを払う人、どうもそういうことが日米関係としてパターンが定着しているのではないか、これを非常に国民は不安に思い、不満に思っているんじゃないかと感ずるわけです。日本として果たして十分に事前協議を受けているのか、通報を受けているのか、あるいはこういった決定に当たって十分にグローバルパートナーとしての話し合いをしているのか、ここら辺が非常に国民としては不安に思い、不満に思っているところではないかと思うわけです。  具体的な点としてこれは確認したいわけですが、今回戦争が十七日に開始されまして、たしか午前八時四十五分ということでしたけれども、一般報道によれば、日本に対してこのことの通報があったのはわずか十五分前ということが報じられておりますけれども、これは事実なのかどうか。それ以前に武力行使開始について日本に対しての相談があったのかどうか、この点につきまして確認をしたいと思います。
  126. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御質問の武力行使の具体的な事前通報の時間でございますけれども、これはベーカー国務長官より村田駐米大使に対しまして、アメリカの東部標準時間午前七時より軍事行動を開始するという事前通報が三十分前にございました。  ただ、ここで先生に申し上げたいと思いますのは、今私が申し上げておりますのは、一月十六日の午後七時でございますけれども、その二日前、一月十四日に中山外務大臣がベーカー長官会談をされまして、その席でも、最後努力はするけれども、どうしても平和的な解決に至らないときは武力行使をせざるを得ないという感触は、その時点でも漏らされておりますので、いろいろなレベルで日米の間には緊密な連絡をとる体制ができているということもあわせて御報告したいと思います。
  127. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 三十分前ということですけれども、必ずしも緊密な体制とは言いがたい点だと思います。  もう一点事実関係として確認をしたいのですが、湾岸戦争に伴って、在日米軍基地から多数の兵員あるいは艦船が湾岸地域へ移動しておるというふうに報じられておりますけれども、我が国政府としては、この点につきまして米側から通報ないし協議を受けているか、あるいはその実態を把握をしておるかどうか、この点につきましてお聞きしたいと思います。
  128. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御承知のように、安保条約上の事前協議の主題というのは、いわゆる戦闘作戦行動でございますので、今回のは米軍が運用上の都合により米軍艦船及び部隊を我が国から他の地域に移動させておりますので、いわゆるこの事前協議の対象ではございませんので、事前協議は行われておりませんけれども、通常の私どもの米側との外交上のやりとりを通じまして、私どもは一般的な形で米軍の艦船及び部隊がどのような形で中東に移動されているかということは承知しております。  例えば具体例で申し上げますと、現在横須賀に乗組員家族を居住させております艦艇は全部で九隻ございますけれども、ブルーリッジ、ミッドウェー以下でございますが、そのうちの六隻は現在湾岸に赴いております。
  129. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 ある程度の連絡はあったということでございますけれども、ただ、日米グローバルパートナーシップというタイトルがついていることから見ると、今回のやりとりで非常にやはり水臭いというか薄い点があって、国民にはその点が非常に不安に映るということであろうかと思っております。これから日米間の責任分担、日本の国力の向上に伴って日米間で責任分担をしていくということは当然のことかもしれませんけれども、それとともに、我が国もそういったグローバルな問題に、政策決定に十分に参与していく、参加していくということがやはり大事な点ではないかと思うわけでございます。その点がなくて、ただアメリカが決定をする人、日本はそのツケを払う人というパターンが、これが定着するということはゆゆしき問題であって、やはりこの九〇年代、二十一世紀に向けてあり得べき日米関係、特に政策決定過程を含めて、日本が十分に参画すると,いうことが大事なポイントではないかと思うわけでございます。  この日米関係のこれからの将来ということを考えた場合、私個人としては三つぐらいのシナリオがあり得るんじゃないかと思っております。  一つは、アメリカが決定をし、強い要求を出す。これはもちろん安全保障、経済、いろいろな分野があり得ると思いますけれども、それに対して日本が決断がおくれて、いつもいつも受け身受け身で対応して少しずつ小出しに出していく、こういった従来型のパターンですね。結局日本がそういった体質を改善できず、お互いに強いフラストレーションを持ちながらこのまま推移していくという、これも非常に好ましくないパターンだと思います。  もう一つは、アメリカがやはりそういった強い要求を出す、それに対して日本もだんだん自信をつけてきて、反米的な感情が、反米ナショナリズムが強まっていくというコース、これも十分あると思います。特にアメリカにおいては、ポスト冷戦以降ソ連にかわって日本こそが脅威であるという認識がかなり強く出てきておりますし、また日本においてもアメリカに対する反発の意識というのはかなり強く出ておりまして、こういった日米が離反していくコースというのも、かなり現実的な可能性のあるシナリオであって、これはもし日米がそういうことになると、将来、日米両国のみならずアジア・太平洋、世界全体にとってこれは非常に危険な状態になるのではないかと考えられるわけで、ぜひともこれは避けなければならないだろうと思っております。  その三つ目の可能性として、今までそういった日米間の摩擦はあれ、やはり日本がもっと政治的に成熟をして相互理解をし、また、日本としても明確なビジョンを持ってアメリカと十分な意思疎通、対話をしていく、相互の役割について十分な主体性を持った対話をし、また日米間の相互依存が進んでいく、こういったことによってより成熟した本来のグローバルパートナーシップというものができ上がるというのも、可能性としてあるのだろうと思っております。  こういったシナリオを前提にして、今後の日米関係はどうなっていくのだろうか、またどうすべきだろうか、総理の認識とその御決意というものをお伺いをしたいと思います。
  130. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アメリカから要求されて日本はただ払う人というような関係であってはならぬという御指摘は、私も本当にそうだと思います。ただ、今回の国連決議に伴う武力の行使ということは、全く今までかつて想像もしなかった、経験もしなかった問題でございますし、また、日本は憲法の制約がきちっとあって、武力部隊が出て行って力でお役に立つことは全くできない国だということをアメリカ側もよく承知をしておるはずでありますし、また私どももそのような中にあっても、なおかつ国連の平和回復への努力というものはこれは支持するという政治的な立場にあるわけでありますから、その中で随分いろいろ苦しいこともありますけれども、積極的に協力はしなきゃならぬ。ですから、おっしゃるように遅過ぎる、少な過ぎるという御批判じゃなくて、アメリカから言われたから渋々払ったというのではなくて、日本自身考え方に立って決断をしてやっていかなければならない。  私自身アメリカから電話で、大使の方から電話が来ましたのも朝の八時半ころであったと思います。電話を受けて、前々からこうなった場合にはこう、こうなった場合にはこうという、いろいろなことが我々も想定しておりましたが、直ちに安全保障会議をまず開く、閣議を開く、いろいろなことを決める、そういった一連の作業の中で、日本としてはやらなきゃならぬことに対する準備、心構えというものを決めてスタートをしていったわけでありまして、これはアメリカ日本との立場の違い、なし得る範囲の違いはありますけれども、それを乗り越えてお互いにできることをやるということで合意をしていこうという、そういったことで進んでまいりました。  なお、今後日米関係を進めていく上において大事なことは何であるか、私は、この数年来日本の貿易というものが非常に伸びてきて、対米の貿易インバランスだけで日本が毎年五百億ドルのレベルを超えておったという時期があのSIIと言われる構造協議に結びついていく日米間の経済摩擦の原因にあった、そこから今度は次々に発展して、民主主義だ、自由だと言うが、ルールが違うのではないかとか、いろいろな感情摩擦みたいなものまで起こりそうになってきたことを私は大変懸念しておりました。  そういった意味で、この前のサミットでヒューストンに参りましたが、そのときもいろいろの日米関係のことについて話をしました。大統領との間では、話せばそれでそこで理解ができる、心の通い路はできるのでありますが、民主主義の国であります。いろいろなレベルで、いろいろな段階でそれぞれのカウンターパート同士でみんなが交流してもらって、日米両国の間で自由と民主主義の価値を共有する国なんだという立場に立って、そしてこれからの十年間は二十一世紀へ向けて、民主主義の十年間だと言われるように、世界の今まで自由と民主主義の体制でなかった国が自由と民主主義に移行しようとするときは協力し、支援をし、できるだけこの価値が普遍的な価値になるように努力をしていこう、こういうことも首脳間では話しておるわけでありますから、一般のレベルにおいても、私はそのとき、SIIからCIIへ、すなわち経済協力の摩擦がもうこれで終わったんだから、これからはコミュニケーション・インプルーブメント・イニシアチブ、あらゆる段階でコミュニケーションを加えていこう。日米交流基金というものを今度スタートさせるようにお願いしましたのも、実はそういう日米関係を、あらゆるレベルで常に接触をし、常に意見の交換もしながら、大きな誤解が起こらないように、地球的規模の問題に取り組んでいけるようにするその背景をさらに強いものにしていきたい、こう思っておるからでございます。
  131. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今後の責任分担に伴い、日本としても政策決定過程に参加するということは、ぜひ今後最大の努力をしていただければと思っております。  もう一つ、九十億ドルがもし実現できないと、国際公約が実現できないと大変だ大変だという声は政府側からよく聞くんですけれども、いま一つ具体的にはどういう不都合があるかということがよく見えないという点があると思います。特にこの日米関係の観点から、九十億ドルがもし公約が実行できない場合、具体的にどういう不都合があるのか、この点御説明をいただきたいと思います。
  132. 中山太郎

    中山国務大臣 九十億ドルの国際約束といいますか、日本政府がみずからの決断で行う国連への協力でありますから、これは一方的に破れる場合にどういうことになるかということは、今から想像することは大変難しいことでございますけれども、今委員日米関係の中でのとらえ方できょうは御質問になっていらっしゃいます。日米安全保障条約、この第一条は、国連憲章の遵守というのが日米安全保障条約の第一条になっているわけです。その中には、   締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。   締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。 これが日米安全保障条約の第一条でありますから、安全保障条約の面から見ましても、日米間は、国連憲章の精神に従って国際連合を強化することをやらなければならない条約上の義務を我々は負っているということを国家も国民も認識していかなければ、アメリカの方が、日本が協力しない場合に、一体日本という国はどんな国なんだ、自分の一国平和主義に徹してしまってちっとも他国のことを顧みない、条約上の責任はどうなるのか、こういうこともアメリカ国民代表者たちが議会で当然議論することはあり得ることだろう。そういうことになることは極めて日米関係にとって不幸なことになるというふうに判断をいたしております。
  133. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 確かに条約上の意味とすればそういうことだと思うのですが、いま一つ本当に大変だということがどうも伝わってこないという面があるのですけれども、やはり政府としてはこの九十億ドル、相当大変だ大変だということで国民に負担も求めるわけですから、大変だという、オオカミ少年に終わらないような、その具体的な危険性というものをもう少し御説明いただきたいと思います。
  134. 中山太郎

    中山国務大臣 総理からいろいろと日米関係の重要性については既にお述べになっておりますが、今晩あたりの新聞等で報道されております中には、いわゆる今年は真珠湾攻撃の五十年の記念の年である、それに関する決議案が米国の議会に議員から提案をされているという報道もなされております。いわゆる大衆民主主義の国家においては、いろいろなふんまんが蓄積をする、そういう中でその国の世論というものが集約されてくる、それが国家の意思になってくるということが、私は、アメリカの長い建国以来の中で、いろいろな国際的な事態対応するときのアメリカ国民の感情の流れ方というものはそういうところにあるのだろうと思います  そこで、日米関係も非常に重要でございますけれども委員も御案内のように、アメリカ人の考え方というもの、また、アメリカ人に日本人の考え方というものはまだまだ十分理解がされているとは私は思っていない。そのために日米交流基金というものを昨年の補正予算でお願いをして、もっと草の根の交流をやるべきだ、あらゆる階層の方々の交流によって真のグローバルパートナーシップとして国際社会日米が手を結んでやっていく、こういうことにならなければ、貿易は一方的に黒字を計上し続ける。構造調整協議をやって日本努力をしておりますけれどもなかなか難しい問題が山積をしておるし、また一方では、農産物の貿易問題についてもガット・ウルグアイ・ラウンドあたりでは激しい対決を続けているわけでありまして、私は、やはりそれぞれの国がお互いのことを認識し合うという努力をやっていかないと、これからの長い友好関係というのを堅持していくことは難しいという認識を持っております。
  135. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 御説明はいただいたのですが、やはり大変だという感じが必ずしも伝わっていないということがあるのです。今回の問題、確かに日米関係が大事なことは私もわかるのですが、国民のレベルでは大変だという実感がまだ伝わっていないということはぜひこの席で指摘をしていきたいと思いまして、もし政府努力をするとすればこの辺をもっとやらないとなかなか国民は納得しませんよということだけはこの席で指摘をしておきたいと思います。  時間がありませんので次の質問にいきますが、次は国際貢献という問題でございます。  今回の問題を通じて非常に痛感されたのは、日本として国際貢献が大変大事であるということと、かつ、それをやろうと思うとなかなか体制が整っていないということで、非常に政府も苦慮したんだろうと思うわけでございます。日本が戦後四十五年の間に大変な経済超大国になったわけですけれども、現在の日本をめぐる国際的な雰囲気というのは決してよくない。一言で言いますと尊敬なき羨望とでもいいますか、非常に金持ちだからうらやましいけれども尊敬はできない。国際的に貢献もしないし、また心も開いていない、コミュニケーションもうまくないということで、何となく国際社会に十分統合されていないという意識は率直に言って国際社会に強くあるわけでして、これはぜひ、日本としては最大の課題として取り組まなくちゃいけない緊急の課題だと思っております。  そういった意味で、何よりも国際貢献、これはいろいろなことがあり得ると思いますけれども、もちろん非軍事的ということであって、軍事的な貢献はもちろんやるべきではないし望ましくないわけですけれども、非軍事的な分野で日本は大いにやるべきであろう。例えば医療とか難民救済、それから避難民の支援、あるいは地球環境破壊の防止、あるいはPKO等の平和維持活動その他災害救済、いろいろなことを日本がし得る、また日本の持ち味を生かしてできることが多々あるわけですけれども、そのための国内体制をつくるということが非常に緊要の課題であると私は思っております。  これは前回、臨時国会の際の委員会の際にも総理に申し上げたと思うのですが、私は次の四点をぜひ御検討いただきたいと思っております。  まず第一点が、国際貢献ということの概念、ビジョンあるいはコンセンサスの確立ということを、まず幅広い国民的討議をしてきちっと固めていく必要があるということだと思います。  それから二つ目に、何といってもお金の問題です。やはり国際貢献するにしても資金の点がネックになることは言うまでもないわけですけれども、これを今後乗り越えていくために、一つ提案として、例えばODAと同じような、似たような国際貢献費というような概念を設定をして、シーリングを外して特に強力に予算の拡充に努めるということ、あるいは、国際貢献の問題が非常に突発的に出てくることもありますのでいわゆる単年度予算主義だけでは対応し切れない面があるものですから、国際貢献基金といったような基金概念をやはりつくって対応することも必要ではないかと思っております。  特に、今経済協力におきましてはGNPの〇・三二という数字になっております。国際的な目標は〇・七ですけれども、まだまだほど遠いわけで、将来的にはこういった経済協力も含めて、国際貢献費全体でGNPの一%ぐらいに持っていくぐらいの日本として姿勢が要るのではないかというふうに感ずる次第です。  それから三つ目に、人材育成ということですけれども、今回特に医療チームの派遣で大変政府も苦慮されたと思いますけれども、いざというときにそういう国際貢献に活躍できる人材が少ない、志の高い人材、そういったノーハウとか能力を持った人材が少ないということでして、これはやはり時間をかけてこういった人材育成のシステムを固め、人材活用のネットワークをつくるということはやはり緊急の課題であろうかと思っております。  それから四つ目に、国際貢献にかかわる法制の整備ということだと思います。これもいろいろな分野があり得ますけれども、いずれにしてもこういった活動を支える法制をぜひ整備すべきだと思っておりまして、こういった四つ、これにとどまらないとは思いますけれども、ぜひ今後の重点課題として取り上げていっていただきたいと私は感じております。  これは、公明党の昨年十一月の党大会におきましても、今後の対外政策の最重点課題として国際貢献ということを言っておりまして、その具体的な国内体制づくりにはぜひとも政府も全力を挙げ取り組んでいただきたいと思っております。  そこで、これに関連しましてまず総理にお聞きしたいと思うのですが、こういった問題点も含めてこれを検討し方針を明示していくために、国際貢献に関する関係閣僚会議といったようなものを設置する考えはないかどうか、この点につきまして御意見をお聞きしたいと思います。
  136. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今述べられました四つの問題点については、政府としても、これは自由と民主主義の価値を共有するそれらの国々に積極的に協力をしていかなければならぬという、きょうまでのODAを初め文化協力の問題も技術協力の問題も全部国際貢献的な要素を広い意味で言えば含んでおるわけでありまして、そしてそれに対する支出、費用の問題についてもいろいろございました。  人材の育成もしなければならぬのは当然でありますが、例えば青年海外協力隊の制度なんかも、私も青年部のころから全力を挙げてやってまいりましたが、ああいったようなこと等も含め、また技術者やその他国際協力事業団で専門の技術者の養成が行われたりいろいろなこともいたしております。そういったきょうまでの制度、政策全体を踏まえながら、今の御質問の御趣旨等も念頭に置いていろいろできるだけのことを考えていこう、こう考えております。  閣僚の間では海外経済協力に関する閣僚会議がございますので、そこで一度議論をしてみて、そして研究をさせていただきたいと思います。
  137. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 ぜひ前向きに、早急に取り上げていただきたいということを要望したいと思います。  続いて、大蔵大臣にもお伺いしたいのですが、大臣は大変国際感覚にも富まれ、特に今回の問題を通じて、国際貢献の必要性は人一倍痛感をされたんだろうと推測をしております。九十億ドルをぽんと出すという非常に腹太いところもあるようでございまして、大変そういう方だと推察いたしますけれども、国際貢献を進めるに当たっては、お金の面が一番ネックになるということはやはり御理解されているのだろうと思いますけれども、今申し上げました国際貢献費概念あるいは国際貢献基金、こういった問題の必要性につきましてどのように考えておられるか、御意見をお聞きしたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事務方の答弁を離れて率直に申し上げますと、私は今の御意見の中で二つ問題があろうかと思います。  一つは、国際貢献という概念と、例えば経済協力あるいは技術協力といったものに果たして線が引けるのだろうかという問題がございます。そして、我が国が行っておりますODAの活動の中で、まさに経済協力にありましても国際貢献に値するようなものは多々ございます。また、それらの予算がそれぞれ専門家集団としての各省の中に点在をしているという意味では、恐らく委員が、これをまとめて計上することはできないかという思いを込めておられると思いますけれども、果たしてその場合にそれが有効に機能するかどうか、必ずしも私は有効な場合ばかりではないような気がします。私自身が中国とかネパールとかの医療協力を通じてそうした問題にしばしばぶつかってまいりましたけれども、必ずしも国際協力という概念ですべての予算を一つにくくってしまうことが可能かどうか。その接点部分あるいは重複部分をどうするか。今とっさに御質問を伺いながら、お気持ちはわかるなと、しかし実質的にそれが可能だろうかという感じが一つございます。  それからもう一つは、これは多国籍軍支援といった不意の出費というものが、国際貢献の世界でありましてもしばしばあらわれては世界としてこれは大変なことでありまして、私は、こんな事態は二度と起こらないことを本当に願っております。それを前提に基金というものを考えました場合に、例えば今回のような事態にまでその基金が対応するということでありますと、これは非常に大きな規模の基金になりますね。これは、私は、逆に予算の効率性をそいでしまう。むしろその基金に相当な原資を固定することによって他の施策への圧迫要因になるのではなかろうか。これはむしろあくまでも予備費でありますとか、あるいは補正予算の形で国会に御審議を願う形の方が、今回のような異常事態に対してはむしろ私は適切ではなかろうか。それを前提に巨大な基金を造成し、これを固定することは、むしろその他全部の施策に影響を生じるのではなかろうか。研究は、せっかくの御指摘でありますから、私自身もしてみたいと思います。しかし、とっさに今御指摘を受けながら私はそのような問題点を感じました。
  139. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今の大蔵大臣の御答弁の中の二点につきまして私自身考えとして申し上げたいのですが、ODAとの重複という問題、これは私の問題意識は、ODA自体は既にもう機能しているわけでして、ODAではカバーし切れないいろいろな国際協力、国際貢献の問題がある。特に先進国とのいろいろな協力等はODAに入らないわけで、非常に効果が大でありながら、なかなか予算が取れないという面もあるわけですね。したがって、ODAプラス狭義の国際貢献イコール広義の国際貢献ということでして、そこら辺の概念的な整理は十分可能であろうし、そもそもODAというものが機能しているわけですから、そこの概念さえしっかりと整理すれば十分に機能し得ると私は感じております。  それからまた、突発的な、今回の多国籍軍みたいな話は、これはもう当然補正予算というようなことにするのが当然効率的だと思います。もっと小規模の事態であって、かつなかなか予算的には機動性が発揮できないような事態、例えば災害の救済とか環境破壊の防止とか、突発的に起きてそれほど大規模ではない、かつとっさの対応が必要なもの、こういったものにはやはり基金といった考え方もあり得るのかなということでございます。この点余り議論するつもりはないのですが、一つの問題提起としてぜひ今後研究をしていただきたいということで、この点は終わりたいと思っております。  次に、停戦和平努力の点につきまして一言お伺いしたいのですが、地上戦が非常に近い、切迫しているという情報がかなり入ってまいっております。地上戦になれば大変な犠牲者が出ることは明らかでございまして、他方、もちろん今回の湾岸問題の解決イラク撤退をする、あるいは少なくとも撤退の意図表明をすることが根本であって、それがなければ解決にはつながりませんけれどもイラク撤退しなければどこまでも武力一辺倒でいくというのもどうかと思うわけでして、特にこの地上戦に入る前の段階でやはりイラク撤退意図表明をしやすいような環境をつくるということが、ぜひこれは試みる価値のあるものじゃないかと考えております。  いろいろ動きがあって、国連安保理の緊急会議も行われておりますし、あるいはイランの提案あるいは中国も何か提案を出したようでございますが、こういった動きをどう評価するか、あるいは我が国としてやはりこの地上戦に入る前にそういった努力をやる意思はないのかどうか、これにつきまして総理の見解をお聞きしたいと思います。
  140. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 停戦をして、今行われておるような武力の行使が一刻も早く終わるということ、これは、それを願うか願わないかと言われれば、強く願っております。ただ問題は、何回もここで御議論になっておりますように、これからの世界の秩序を守っていこうという大切なときに、やはり第一にいろいろな人の言っておる決議を全部、きょうは藤田委員でしたか十六もお並べになって、重ね絵のように全部合わせてみたら二つの問題点があった。  私は、その二つの点については私もそう思うと合意をしたんですけれども、第一は、クウェートからの撤兵ということは、これは国連決議がいつも言い続けてきたことであり、すべての今心配しておる人々が調停に入るときに出しておることです。  そして、二つ目は、必ず皆が触れるのは、恒久和平のためにパレスチナ問題を含めて、アラブ、イスラエルの問題を国際的に話して、恒久平和のための基盤にしなければならぬ、この二つの点に全く賛成であります。ですから、私どももそういったことは決議の二百四十二号以来日本政府としては考え続けてきたことでもありますし、またそのためにいろいろな努力が今行われております。  きょうもこの委員会が終わるとプリマコフさんが来ていらっしゃる、私も会談することになっております。そういったようなときには、その中に人っていろいろ努力をしておる人たちが意見を交換するとともに、そういう共通の認識を持って、そしてこの局面を打開することができるのはイラクフセイン大統領でありますから、そのまず最初の第一の問題点に、決断をするというそういった外交努力をあらゆるところで、至るところで続けていく必要があるわけで、日本としても積極的に参加をしていくつもりでおります。
  141. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 その努力をする姿勢は表明されたんですけれども、具体的にどうするかということですね。特に地上戦に入る前に、イラク撤退意思表明をしやすいような環境づくりのために何かアクションをとるつもりはないかどうか、その点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  142. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ここでいろいろ申し上げておりますことも、撤退して国連決議を認めるならば、日本としてもこれだけの協力をする考え方があるんだということはシグナルとして出しておるわけでありますし、また世界の国々も皆それを言っております。  また、外務省においでになった方だからよくおわかりと思いますけれども、これからやろうとする外交努力中身を一々こういうところで、こうします、ああします、こう言います、ああ言いますということまでは、ちょっとこれは申し上げることは差し控えさしていただくべきことではなかろうかと思いますけれども、それぞれのレベルでそれぞれの人々がみんな今一生懸命外交努力をしておりますし、人脈を伝って、あるいは国連事務総長に対して国連の場で、国連大使は、明日になると思いますが日本の姿勢も発表しますし、またいろいろなルートを伝って接触をしながらそういった意思を伝えたり、イラク日本の将来の、原則を守って社会復帰した後の経済協力の再構築の問題なんかも、これは私からもラマダン副首相にも直接伝えてありますし、その後継ぎの話し合いをしておってもらうルートもあるわけでありますから、いろいろな努力が今行われておりますけれども、その辺で御勘弁をいただきたいと思います。
  143. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 確かに外交の裏舞台の話というのは余り言えないんだろうということは理解できますので、政府は、停戦和平努力に向かって最善の努力をしていただきたい、強く要望しておきたいと思っております。  続いて、湾岸戦争の戦後処理の問題ということでございますけれども、昨日も松永委員質問に対して概要お答えになったんだと思いますけれども、この湾岸戦争の戦後処理というのは、特に我が国は非常に大きな役割を果たし得る分野でもあると思いますし、大変党としても関心事項でございますので、さらにできれば突っ込んで御説明をいただければと思います。
  144. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、昨日、松永委員四つに粗っぽく項目を分けて御説明をいたしましたが、やはり一番最初に着手しなければならぬことは、あの地域経済復興、それはイラクも含めて恒久平和と安定を湾岸地域にもたらさなければなりませんから、それぞれきょうまでの二国間の経済協力関係、技術協力関係、あるいは多国間で何か共同のスキームをつくったときはそれにも積極的に参加をしていく。イラク等例をとってみても、長い間の積み重ねがございまして、七千億円余りと記憶しておりますが、債権債務関係が残るほど長い間の積み重ねがある。それを再開していこうという話も緒についたところであったわけでありますから、大変今日の状況は、私、お互いに残念なことであったなという感じもしております。それも含めてのあの地域経済の再興のために協力をしていくのが第一のテーマだと思います。  二つ目は、原油がたれ流しにされておるということ。あれは底知れぬ不安を人々に与えております。ただ単に気の毒なのはテレビの画面に出る水鳥だけでないと私は思う。将来どうなっていくかという環境問題については、環境庁長官を、国会中でありましたがお許しいただいてOECDの環境大臣会議に参加させましたのも、国際的にああいった問題は共通の経験や体験情報を交換しながら、また日本も既に協力をして、オイルフェンスの提供を初め淡水化装置の技術協力をきょうまでしてきておりますから、そういったことに対する問題についての対応は既に行い始めておりますが、こういったものももう少し幅を広げて、強力にしていかなければならぬ。  それから三つ目の問題は、これはやはり一番大切かもしれませんが、中東恒久和平の問題というのは、これはやはりアラブとイスラエルの問題、それにパレスチナの問題がこう絡んでおります。私は、イスラエル国家の生存権をパレスチナもはっきりと認めるということ。PLOのアラファト議長が日本へ来られるときに、私に対して日本政府の賓客として招いてもらって会いたいということでした。これは、与野党を通じていろいろな御関心のある方から会うようにという御進言もいただきました。その中ではっきりしたことは、パレスチナは、パレスチナの問題を認めるなればイスラエルの国家を承認するんだ、国家の存立を前提として話をする、テロはしないという二つの原則を明確にするということでありましたから、それならばこれは中東恒久和平に前進する話でありますし、日本が賛成しておる国連決議二百四十二の中の一つであります。そうなればイスラエルに占領地帯からの撤退ということも同時にこれは行うことができるような話題として提供されるわけでありますから、そういう恒久和平枠組みづくり日本も積極的に参加をしていく用意がございますし、そういう考え方を持っております。  またもう一つは、なぜこのようなことが起こったかというと、イラン・イラク戦争の間、八年間を通じてだれがあの地域に突出した軍事国家をつくり上げることに協力したのか。協力という言葉が悪ければ、武器の大量移転とかいろいろなことをしたのかという問題になるわけです。今後の問題としては、核兵器はもちろん、生物兵器、化学兵器、ああいった大量破壊兵器というものは国連のコントロールによって、これは製造禁止、保有禁止、究極的に排除というところへ持っていかなければならぬ大きなテーマと思いますし、また、通常兵器というものについても、移転に対する透明性とか公開性というものをもっとわかるようにして、突出した軍事国家もあるいは極端に空白地帯をつくるようなところもないような、みんなの一つの平和を確保する枠組みづくりというものを、これは難しい問題ですけれども、当事国のイニシアチブによって関係国が全部協力して、国際的にみんなができる範囲の協力をしながらあの地域に打ち立てていかなければならない、こう思っておるところでございます。  細かくというお話でございましたので、いささか申し上げました。
  145. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 大変詳細な説明を感謝いたしますけれども、今おっしゃられた四点、これは私たちもかねがね主張してきた点でございまして、ぜひこれは強力に進めていただきたいと思っております。  特に、こういう言い方は語弊があるかもしれませんが、今回の湾岸危機、戦争というものはある意味では中東問題というものを解決に向かって大きく前進させるチャンスでもあるというとらえ方も必要であると思いまして、ぜひそういった湾岸戦争の悲劇を乗り越えて、世界が本当に何とかしなきゃいけないという政治的意思が出ているところをモメンタムを失わないでこれを進めていく。このタイミングが大事だと思いますので、この政治的な意思をぜひ日本も強く持って、この湾岸地域中東地域全体の問題の解決に今までに倍する努力をお願いしたいと思っております。  一点だけ、武器移転の規制の問題です。  これも、私も臨時国会の際に申し上げ、外務大臣から前向きの答弁をいただいておる点でございます。やはり今回の湾岸戦争の反省として、特に先進国が競ってイラクに武器移転をしたというそのツケを今払わされているわけで、特にソ連フランス、中国あるいはドイツなんかも化学兵器の原料を出しているといったいろいろな問題があるわけでして、この点は今後責任をきちっとある意味では追及する必要があるかと思っております。しかしながらそれだけではなくて、やはり建設的にこの教訓を生かして武器移転の規制を強力に進めることが、ポスト冷戦後のこういった地域紛争を抑止していく大変重要な一つの環境づくりだと思います。特に、この武器移転の規制の問題は、日本が最も急先鋒としてこれはやるべき話じゃないかと思っております。特に平和憲法があり、武器輸出三原則があり、あるいはまた非核三原則がある、こういった武器規制関連の最も先進国であるわけですから、ぜひともこういった点は日本が急先鋒としてアクションをとっていただきたい。特に、国連の場で日本提案国になるくらいのつもりで早急に何かアクションをとっていくべきじゃないかと思います。  これにつきまして、総理ないし外務大臣にお答えをいただければと思います。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のように、日本はかねてから武器輸出三原則、これを実施しておりまして、国連におきましても日本考え方というものを強く主張いたしてきております。  昨年の秋の国連総会演説においてもこれを指摘しましたし、一九八八年の国連総会決議に基づいて現在設置されております国際的武器移転の専門家スタディーグループには日本から大塚前駐ニュージーランド大使が参加をして、これの目的を達成するために努力をしております。また、今国会で総理の施政方針演説の中でも、核、生物化学兵器やミサイルの拡散防止を徹底してやっていくというようにおっしゃっておられまして、政府としてはこの方針のもとに今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  147. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 ぜひ具体的なアクションを早急に起こしていただきたいということをお願いしたいと思っております。  最後に、今回の環境問題、原油の流出による環境汚染の問題を一言取り上げたいと思っております。  時間もありませんのでごく簡単にいたしたいと思いますが、まず第一点としては、この原油流出、史上最大の環境破壊ということになって、これの回復のためには数百年はかかるというぐらいの深刻なものでございますけれども、早速各国がまず汚染拡大防止に取り組んでいるわけでございます。我が国も遅まきながらこの努力に参加をしておりますけれども、現状及び今後の取り組みの、何といいますか決意につきまして簡単にお答えいただければと思います。
  148. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お言葉を返すようで恐縮ですが、これはそのような認識が、遅まきながらとおっしゃいましたけれども遠藤議員にも遅まきながらという認識があったとしたらちょっと改めていただきたい。  報道その他ではなされましたが、あの原油の海の放出に気がついたというか発見しまして、そしてテレビのニュースに流れましたのは週末、金曜日の夜でした。そのとき、これはいけないと思ったので、もう遅まきにならぬように、いつもツーレート・ツーリトルといってしかられてきましたから、遅まきにならぬように、私はニュースを見るや否や秘書官に集合をかけまして、これは大変なことになる、しかもあの地域に海水淡水化装置を出しておるのは日本が過半数であるということを、私も商工委員会におりましたころにその工場まで視察に行ってよく知っておりましたから、あの地域の淡水化装置に対する技術は日本が一番あるはずだ、それから、それが汚れたらみんな水に困ってしまう、同時にオイルフェンスもある、日本も小規模ながら油の問題で体験したことがありますから、直ちにやれと言って、ニュースを見るや否や、英語で言ったらアズ・スーン・アズですよ。遅くありません。秘書官を集めてやらせて、土曜日を返上して、土曜日、日曜日、通産省も資源エネルギー庁も一生懸命勉強しましたので、次の月曜日の本会議には私がこれまでやったことを、このように協力しておりますという発言をして、既にオイルフェンスを送ることや、淡水化装置技術の提供のことについてもお答えが月曜日の午前中にできたということは、皆担当官庁がやってくれたということでありますし、オイルフェンスももう現地に届いておりますし、それから、今後ともこれらの問題についてはできる限りのことを早くやっていこう、こう心得ておりますので、どうぞ御理解と一層の御協力をお願いしたいと思います。
  149. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 もちろん政府及び関係者の御努力は大変高く評価をしておるわけですが、私が遅まきながらと言ったのは、具体的事実に基づいているわけで、まず一月二十五日にこのニュースが出て、一番最初に動いたのは二十六日英国です。英国、ドイツ、ノルウェーですね、これがもう既に動いております。それから二十七日にはドイツ、二十八日には今度は英国がさらに石油会社が九十トンの物資を送ることを決めたということですね。我が国が二十九日ということですから、要するに最初じゃなかったという意味で、非常に要求が厳しいと思うのですけれども、やはり我が国の場合、世界の救助隊という、ぜひそういうイメージを持って真っ先に、イの一番でこういう問題にやってほしい、こういう非常に強い希望があるものですから遅まきながらと、ちょっと非常によくない表現かもしれませんけれども、やはり金メダルと銀メダル、全然意味が違いますから、我が国の評価を高める上にもぜひイの一番でこれからこういうアクションをとっていただくようにお願いをしたいということでこざいます。  もう一問だけ。まず、この原油の汚染防止という問題とともに環境保護。  この地域にはいろいろな珍しい生物、マングローブとかサンゴ礁、水鳥、それからタイマイとかジュゴンとか、いろいろな珍しい生物もいるわけでして、こういったものの保護というもの、大変重要な問題だと思っております。今のところちょっとこちらの方にはまだ少し努力が、当面の汚染防止に非常に重点が置かれておって、こういういわゆる環境、ワイルドライフの保護という点はちょっと努力が薄いように思われますけれども、ぜひこの点につきまして我が国がリーダーシップをとって、国際協力等を強力に進めていっていただきたいということで、環境庁のお答えをお願いします。
  150. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  去る二月の五日と六日にジュネーブにおきましてUNEP、つまり国連環境計画主宰によります会議が開かれまして、湾岸原油流出に伴う環境影響に関する関係機関会議と申しますが、ここに我が環境庁からも、海洋汚染、野生生物などの専門家を派遣いたしまして、この会議に積極的に参加をいたしました。  この会議では幾つかのことが申し合わされましたが、一つは、このUNEPでモニタリングを含む長期対策に関する行動計画を直ちに策定するということが申し合わされたわけでありますが、これなどにこれからも積極的に我が国も参加をいたしまして、国際的な役割を果たしていく決意でございます。
  151. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 以上で質疑を終わります。
  152. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  153. 東中光雄

    東中委員 いわゆる自衛隊輸送機の派遣問題についてお伺いします。  外務大臣自衛隊機の派遣要請がIOMからは具体的には来ておりませんね。
  154. 中山太郎

    中山国務大臣 来ておりません。
  155. 東中光雄

    東中委員 そういう状態において防衛庁は自衛隊輸送機の派遣の準備行動に入っておられるようですが、準備計画等どういうふうに進めておられるか、簡潔にお願いしたいと思います。
  156. 池田行彦

    ○池田国務大臣 我が方といたしましては、具体的にIOMからの要請があり、そうして政府として自衛隊機で輸送の任務を遂行させるという決定があるときに備えて、機体の整備であるとか要員の教育といったような準備を進めておるところでございます。
  157. 東中光雄

    東中委員 一月の二十五日に、防衛庁、それから航空自衛隊、外務省、警察庁による現地調査団が派遣を、エジプト、ヨルダンに分かれて調査を実施して二月五日までに全員が帰国することになっておった、そうした。そして一方では派遣要員候補の事前教育ということで、派遣要員は小牧基地の隊員約百三十人、これはC130関係の、輸送機の関係の要員だと思うのですが、そして人間、美保、松島など全国の部隊から選抜された通信、衛生、整備などの支援要員約百十人がそういう訓練といいますか、準備に入っておる。そういう中で派遣計画が、まだ確定的でないでしょうけれども、計画を想定されておるように伝えられておるわけですが、そういう点についてどうなんでしょうか。
  158. 池田行彦

    ○池田国務大臣 任務遂行に当たる場合に備えて現地の調査をしたのも事実でございますし、それからまた要員の候補者につきまして教育訓練も行いました。しかし、派遣の具体的計画につきましては、現実に避難民が大勢出て、発生して、そうしてまた国際機関の方から要請があって、また政府の中で一連の手順を踏んでといったいろいろなこれからまたとるべき前提なり手順があるわけでございますので、現在の段階で一体どういうふうな形態で、どういうふうな規模で、どういうふうな期間この任務を遂行するのか、固めようがございませんので、現在具体的な派遣計画があるわけじゃございません。
  159. 東中光雄

    東中委員 民間機が入ることのできないような地域、きのう私聞いたのに対しては、例えばアンマンのような地域という趣旨の運輸大臣の発言がありました。要するに、ロイヤル・ヨルダン航空が民間機として入っているけれども日本の民間機が入れないような地域、そういう安全確保という点で危険なところへ自衛隊機を派遣するんだ、要請があればですよ、もちろん要請なかったら行けないわけだけれども、ということだった。それでそこへ行くのは百条の五で行くわけですから、あの百条の五で言っている航空機というのは今度の場合はC130を予定しているんだ。それから要員候補ですかの訓練をやっているのもC130関係ですね。それはC130二機で、二班で、一機は予備にするんだというふうなそういう構想でやられているということが、これは確定していないのはもう当たり前のことですわね、要請もないし、どこへ行くかわからぬのだから。しかしそういう方向でやっていることは間違いないわけでしょう。二百人ぐらいの派遣要員が出てくる、搭乗員だけじゃなしに通信、衛生、それから整備なんかも含まれるから、こういうことではないんですか。
  160. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいまおっしゃいました二機とか四機とかあるいは予備機一機というお話は、これは自衛隊として通常の任務ももちろんあるわけでございますから、そういった任務に支障のない限度内であるというのが百条の五の趣旨でもございます。そういったことで通常任務の方をあれこれやりくりいたしましてどの程度の機数を割き得るか、そちらの方の観点、角度から検討いたしまして申し上げました数でございまして、具体的に何機派遣するかというのは、それは現実にそういった需要が出てきたとき、あるいは要請にこたえて決まるものでございます。  それからまた教育なり訓練なりを受けておる人数でございますが、これは候補者と申しましたが、これがそのまま行くわけじゃございませんで、先ほど申しましたように現実の任務に当たる場合の諸条件によりましていろいろ規模も内容も変わってくるだろう、だからそういったことでかなりそういった意味では何と申しましょうか、多目にというか幅広にと申しましょうか、そういったふうに訓練なり教育の対象をとっておる、こういうことでございます。
  161. 東中光雄

    東中委員 派遣要員候補ということで約二百四十人が今事前教育を受けておるということが自衛隊の事実上の機関紙と言われる朝雲には出ておるわけですが、そのことを今とやかく言うのじゃないのです、私の言いたいのは。要するに、それは航空機を送るんじゃなくて、輸送航空部隊ですね。百人、二百人の部隊が長官の指示で動くんですよ。そうじゃないですか。
  162. 池田行彦

    ○池田国務大臣 百条の五で、自衛隊の輸送機によって、航空機によって輸送することは認められるわけでございます。輸送機、航空機でそういった任務を遂行する以上、それを運航するために必要な要員がそれに当たるのは当然のことでございまして、そういった要員を、自衛隊の組織の場合にはそれは部隊という形で編成するということはあり得るわけでございます。またあってしかるべき話だろうと思います。
  163. 東中光雄

    東中委員 あり得るんじゃなくて、部隊としてしか行けないのですよ。そんなばらばらで行けますかいな。自衛隊という部隊じゃないですか。部隊として行く。その場合は自衛隊法の九十五条がかぶさってきます、航空機に対して。ですからアンマンの民間機が入れないような危険なところへ自衛隊が行くんだ、こう言うのですから。そして衛隊は九十五条によって武器を使用することができるんだから武器を持っていかなければいかぬわけです。どういう武器を持っていくのか。そして航空機を防護するために武器を使うこともあるわけですから。  今、例えばアンマンでは随分アメリカ戦争に対する非難のデモンストレーションが起こっていますね、テレビを見たって。そして日本が多額の金を、九十億ドル援助しておると。それも非難のデモが起こっていますよ。そこへ日本の軍用機が──C130といったら輸送機は輸送機でも、YS11というのが自衛隊にはありますね、しかし、C130ということになればこれは戦闘用の輸送機なんですよ。それを持っていくというのでしょう。どういう武器を、どの程度の武器を持っていくのか。そして、防護活動はやり得る、当然やらなきゃいかぬわけですね。そういうことになると思うのですが、どうですか。
  164. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊機がこの任務に当たるのは、民間機が活用できない場合でございます。活用できない場合というのは、いろんな条件があろうと思います。民間の航空会社が考える場合にはそれは危険も考えるかもしれません。それからあるいは保険を付することの難易度も考えるかもしれません。あるいは何といいましょうか、営利法人でございますからそれはそろばん勘定ももちろん入るわけでございましょう。そういういろんなことを考えて民間航空会社がその輸送に当たってくれるかどうか、そういうものが不可能だというときに、できないという場合に自衛隊の輸送機は考えるわけでございますので、自衛隊の飛行機が行くときは必ず大変危険で、何かいろいろな防護をしなければいけないとまで断定されるのはいかがかと存じます。  そうして、現実にC130というのは輸送機であっても軍用機であるとおっしゃいましたが、それは確かにそうでございますけれども、現実にこれまでも同じC130が今回の湾岸危機に際して発生いたしました避難民の輸送に当たった実績もあるわけでございます。そうして、具体的に任務に当たる場合に当然安全に配慮していかなければいかぬ、これはもちろんでございますけれども、それはそのときの具体的な状況に応じていろいろな面で安全面の配慮をしてまいる。それは、本当に極めて危険度が高いときにはそもそも運航しないんでございましょうし、それから国際機関なりその諸外国の政府なり、いろいろな機関とも協力しながらいろいろな措置もとっていくわけでございます。そういった中で、御指摘のような面での安全措置は必要かどうかということは、具体的ケースになって判断してまいります。
  165. 東中光雄

    東中委員 九十五条の適用があるかどうかということと、飛行機が行く場合ですよ、その飛行機の搭乗者は、C130の搭乗者は、その航空機を自衛官として防護する法律上の義務があるわけです。責任があるわけです。そして、そのために武器を使用することができると書いてあるときは、やらなければいかぬときは、やってもいいしやらぬでもいいという問題じゃないんです。できると書いてあったらやらなければいかぬのです。そしたら必ず武器を持っていかなければならぬのです。だから、九十五条の適用があるのかないのかということと、あるとすれば、武器をどういうものを持っていくのか、そのことだけ答えてください。
  166. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊の航空機自体の安全も考えなければいけない、それはそのとおりでございまして、そういう意味では九十五条もこれはもちろん適用されるわけでございます。しかし、九十五条が適用されるからそこに書いてある火器を必ず持っていくんじゃないか、そして、それを使用すると書いてあるから使用するんじゃないか、そういうことじゃございません。それは、現に国内でいろいろ運航している場合でも九十五条は当然適用されているわけでございますけれども、別に火器を携行しているわけじゃございません。
  167. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、やむを得ません。終わります。
  168. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  169. 中野寛成

    ○中野委員 労働大臣にお尋ねをいたします。  湾岸地域で現在もなお働いている日本人労働者が、労災保険適用問題について心配をいたしているわけであります。現在、これら地域で働く在留邦人は、報道関係者、大使館関係者を除いて、サウジアラビアに百九十五人、イスラエルに約二百人となっております。これらの人々は客先との関係で帰国もままならず、危険地帯で働いているわけであります。万一今回の湾岸戦争日本人労働者がミサイルの被弾等により被災した場合、彼らの貢献に対し国は当然補償すべきであり、労災保険が適用されるべきであると考えるのでありますが、労働省の御見解を確認をいたしておきたいと思います。  また、過去に日本人労働者が戦争に巻き込まれて被災した際、労災保険が適用された事例がありますかどうかもあわせてお伺いいたします。
  170. 小里貞利

    ○小里国務大臣 我が国の労働者が海外におきまして事故、被災等を起こした場合に労働災害補償保険法の適用はどうなるか、こういうお尋ねでございます。  端的に申し上げまして、一般的に申し上げますと、一つは、国内の労働者が出張中の場合にそのような被災を起こした場合には、労災法の適用、保護を受ける、これが一つございます。  もう一つは、国内の事業場から派遣されまして海外の事業場に雇用される、かつまた海外派遣特別加入者の場合、そして、しかもそれが業務上の事由である、こういうような判断ができましたときには、法の対象になります。また、特別加入者制度は労災法第二十七条で規定されておりますこと、先生御承知のとおりでございます。  三つ目に、先生ただいまお尋ねの現実に戦争が行われておりまする中東湾岸地域においてそのような被災があった場合どうなるかということでございますが、被災の危険性が極めて高い地域でございます。そのような地域に業務上とどまることを命じられまして労働者がとどまっている、この場合には、当然その業務と災害の密接な関連がある、こういうふうに基本的に判断できるわけでございまして、一般的にはその労災法の適用を受ける、かような観点に立っておるところでございます。  それからもう一つは、過去にそのような実例があったかというお話でございますが、御承知のとおり昭和四十五年、当時、紛争中のカンボジアにおきまして、某報道機関と申し上げましょうか、取材カメラマンが二名、失踪と申し上げますかあるいは行方不明等の事情が発生をいたしました。これも、その後いろいろ調査をいたしまして、遺族補償措置が労災法を適用いたしましてとられた実例がございます。  以上でございます。
  171. 中野寛成

    ○中野委員 御家族の方の御心配もいかばかりかと思うのでございます。不幸な出来事が起こらないことを祈りますけれども、労働省としてはあらゆる事例に前向きに積極的に対処していただくことを御要望申し上げておきたいと思います。どうもありがとうございました。  私の時間は六分間でございまして、情けない話でありますが、最後総理に、これは通告外でございますが、政治姿勢の問題ですからお許しをいただいて、お尋ねをいたします。  きょうソビエトからプリマコフ特使がいらっしゃいます。湾岸問題について突っ込んだ協議がなされるであろうと思います。国際的に見て、行動する日本、行動する政治家、そういう評価を受けたいと思いますし、もちろん外務大臣いらっしゃいますが、日本の外務省の皆さんもあらゆる国々で大変な御努力をしておられることを評価いたします。しかし、こういう非常事態になりますと、政治的に発言権を持った、また力を持った政治家の行動が国際社会においては評価一つの基準となってくると思います。  私はこの際、総理並びに閣僚の皆さんの御決断の中で、この湾岸問題、戦中戦後の問題を含めまして、国連や欧米諸国やそしてとりわけ湾岸諸国の皆さんとの連携、そして日本は皆さんとともにあるという姿勢を示す、そのことのためにも私は、でき得るならば政治家政府特使──今、閣僚、国会答弁でお忙しいわけでありますが、国会もまた大事であります。しかし、あわせて、国会のこの審議にむしろとらわれないという形を与野党申し合わせをする中で、副総理格と申しましょうか、何でしたら総理経験者でも結構でございますが、国際社会の中にあって責任ある政治家として、しかも総理の意を受けて行動する特使もしくは担当大臣、動く大臣を置かれる、そういう提案を私はここであえて申し上げたいと思うのであります。  これは総理やとりわけ外務大臣をないがしろにするというものではございませんで、トータル的に日本政府の意思または日本国の意思を代表して国際社会に貢献をする象徴としての意味も持った、そういう特使なり担当大臣を置かれるお気持ちはありませんか、検討される余地はありませんか、お聞きをいたします。
  172. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 突然の御提言でございましたが、今精いっぱい、力いっぱい皆が手分けして外交努力をしておるところでございますけれども、御発言の御趣旨を私も記憶にとどめて研究をさせていただきます。
  173. 中野寛成

    ○中野委員 終わります。
  174. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、私どもの党の湾岸問題対策の責任者でございますから、一月十七日に戦争になりましてすぐ貢献策のために調査を始めました。いろんな方々にも会いました。関係官庁にも会ったし、関係の会社にも会いました。また、人質として行かれておって帰られた方にも会いました。医療の先遣団にも先日申したとおり会いました。そして十日間でまとめ上げました。それで、一月三十日に私どもの全国の会議がありましてそこで承認をいただいて、その日記者会見もし、大島さんですかね、官邸に行って申し入れをいたしました。総理は読んでいただいておると思いますが、なお、これには口で申し添えた点、若干追加した点もございますのでちょっと明らかにして、御意見を承りたい。  表題は、「米国が世界の警察官なら日本世界の救急車たれ」という表題でまとめております。一つが「当面の緊急策」、二番目に「停戦の早期実現に対する対応策」、三番目に「戦争終結後の対策」、三つに分けておるはずであります。  それで、「当面の緊急策」といたしましては、「1、九十億ドル追加支援は反対である。九十億ドル追加支援金はブレディ米財務長官が言明している通り米軍の一日の戦費を五億ドルとみなし、戦争期間を三ケ月と想定、その二十%を日本が負担するというものである。積算根拠はすべて不明である。」もう一度言いますが、これは一月三十日段階のものですから。「すでにベーカー米国務長官も明らかにした通り、この九十億ドルは米軍の戦費を補充する臨時軍事費(臨軍費)の性格をもつ。」「これによって日本は戦費を通じ名実ともに多国籍軍に加担することになり、自衛隊輸送機とその関係部隊の派遣により、湾岸戦争日本は完全に参戦することになる。われわれは断じてこの支出を認めることはできない。」  「この問題に対するわれわれの代替案は次の通りである。」「イ、支援資金額……四〇〇〇億円。」なぜかは後で説明します。「ロ、その財源……平成二年度末の国債整理基金特別会計(残高九、五五九億円)より一時借出す。」これは法律が必要でありましょう。「或いはゼロ国債、または蔵券より一時借出すことも工夫すべきである。その補充については平成三年度より向う五年間防衛費を分割して削減、」これは特に社会党にお願いしたいんですけれども、「または与野党税制協議会を再開して、消費税是正協議で合意している益税(免税制度、限界控除、簡易課税など──約五〇〇〇億円)を見直して、その補充財源」に充ててはどうか。「ハ、使途」使い道です、「非軍事的、人道的目的に限る。」「ニ、支出先……国際移住機構(IOM)やスイスの国際赤十字など国際平和民間関係機関・団体。」  「2、避難民輸送対策」。「カイロ─アンマン間の避難民輸送に自衛隊機C一三〇Hを使用する必要は全くない。自衛隊法第一〇〇条の五の特例政令で自衛隊の海外派遣を強行することは超法規措置であり、法的改正をさけたのは行政府の立法府軽視で、三権分立を侵害する議会制民主主義の破壊である。さらに文民統制の最高機関である国会のチェックを免れようとする企ては、まさにシビリアン・コントロールを形骸化するものである。 政府自民党の今回の企ては「初めにまず自衛隊海外派遣ありき」で、その目的が先にあってそのために法律の解釈を歪曲拡大するもので憲法侵犯であると同時に自衛隊法違反であることは論をまたない。われわれは絶対に許すことはできない。」  「この問題に対するわれわれの代替案は次の通りである。」「ヨーロッパ便」、これはヨルダン航空ですね、「不定期に飛んでおり、アンマン行きのスケジュールについては三・四日間隔で変更、」これは一月三十日段階ですから、もう一遍言っておきますが。「二月五日までのヨーロッパ便については左の通り」とずっと書いております、二月段階のそのヨルダン航空。  それから、海の方もずっと詳しく書いております、海の方も。そして、時間が参りましたからもうはしょらざるを得ませんが、橋本大蔵大臣がおっしゃったとおり、海上巡視船の「みずほ」を使った場合には、海路幾ら時間がかかるかということもここに書いてあります。  それで、一番最後、これだけお許しください。  「戦争終結後の対策」について。「戦後復旧のための政府出資による民間協力機関及び基金の創設。」
  176. 渡部恒三

    渡部委員長 楢崎君、質疑時間は終了いたしました。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「並びに国際復旧機関、基金の創設」、これは宮澤さんもおっしゃっておるようです。  それから、特にお願いしたいのは、病院船を建造されたらどうか、外務大臣。それから、移動病院車を製造されたらどうか。これは、病院船の場合は平時は離島に持っていけば非常に役に立ちますね。湾岸に着ければ病院になるから。  あとはしょりましたけれども、感想だけは聞いておきますが、大島副長官は一部を除いては大変評価されました。  最後に一言評価を聞いておきます。
  178. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 確かにその書面は私も副長官から受け取ってずっと拝見をいたしました。ただ、九十億ドルの問題についてもこれはだめでありますし、それから避難民輸送対策の問題は、何とかして避難民を助けてあげたいということから出ておる構想でございますから、IOMがこの楢崎委員のお調べになったこれで避難民は全部解決できるんだということになるなれば、要請も来ないでしょうし、私の願っておるまず避難民の対策が打ち立てられなきゃならぬという目的が達せられるわけでありますから、これぐらいの程度で済むということになるなれば、大変幸せな、いいことだと私は思います。  また、病院船の問題、最後のことでありますが、既にこれは私の方でしなきゃならぬと考えまして、今年度予算に頭を出すように大蔵大臣と重々協議をいたしました。外務大臣も参加をしております。これを多目的船にしたらどうか、病院船だけじゃなくて、そういうことで今調査検討を既に着手をいたしております。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ありがとうございました。大島さんが評価したのはそのくだりですよ。ありがとうございました。
  180. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、湾岸問題等中心とする集中審議は終了いたしました。  次回は、明十六日午前十時より公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十九分散会