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1991-02-14 第120回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月十四日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       井奥 貞雄君    内海 英男君       越智 伊平君    狩野  勝君       金子 一義君    倉成  正君       小坂 憲次君    後藤田正晴君       志賀  節君    田邉 國男君       津島 雄二君    戸井田三郎君       萩山 教嚴君    林  義郎君       原田  憲君    増田 敏男君       町村 信孝君    松永  光君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    綿貫 民輔君       五十嵐広三君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    石田 祝稔君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       矢追 秀彦君    木島日出夫君       佐藤 祐弘君    菅野 悦子君       東中 光雄君    中野 寛成君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         労 働 大 臣 小里 貞利君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法政局第一         部長      大森 政輔君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁水質保全         局長      武智 敏夫君         国土庁防災局長 鹿島 尚武君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 篠沢 恭助君         国税庁次長   福井 博夫君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    菱村 幸彦君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         林野庁次長   入澤  肇君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省通商         政策局次長   麻生  渡君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         中小企業庁長官 高橋 達直君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         海上保安庁次長 豊田  実君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     増田 敏男君   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     萩山 教嚴君   越智 伊平君     小坂 憲次君   加藤 紘一君     金子 一義君   佐藤  隆君     町村 信孝君   浜田 幸一君     狩野  勝君   石田 祝稔君     矢追 秀彦君   菅野 悦子君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   金子 一義君     加藤 紘一君   小坂 憲次君     越智 伊平君  萩山 教嚴君     小此木彦三郎君   増田 敏男君     愛野興一郎君   町村 信孝君     佐藤  隆君   矢追 秀彦君     石田 祝稔君   木島日出夫君     東中 光雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、湾岸問題等を中心とする集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松永光君。
  3. 松永光

    松永委員 いわゆる湾岸問題については、予算委員会総括質問の間で各委員からいろいろな方面から質問がなされ、そして総理も懇切丁寧に答弁をしてこられましたのでありますけれども、したがって、私がこれから質問することは場合によっては重複するかもしれません。しかし、基本的な事柄について整理する意味も含めて、私は総理質問をしたいと思うのです。  湾岸平和回復のための武力行使についてどう思うかという点について、アメリカでは八六%の国民がこれを支持する、不支持は一二%、こうなっているそうであります。フランスではミッテラン大統領武力行使支持について、ミッテラン大統領支持するというのが七二%に達しておる。武力行使前に比べてミッテラン大統領支持率が一二%も上昇した、こういうことであります。ところが、我が国では、ある新聞社世論調査によると、武力行使支持が三九・二%、不支持が四七・二%、こうなっておるようでありまして、湾岸平和回復のための武力行使についての国民の意識が、アメリカあるいはフランス我が国との間には相当な乖離があるように思われますね。  なぜそういう乖離が出てくるのだろうか。私は、日本国民侵略戦争を許さない、そういう正義感が薄いとは決して思いません。じゃ、何でこういう結果が出てくるのか、こういえば、いろいろな情報のはんらんもあるでしょう。しかし、イラククウェート武力侵略が起こったのが去年の八月二日、相当日時がたっておる、それに日本の人質も解放されたということ等もあったので、この今回の湾岸戦争がそもそも何で起こったのか、湾岸戦争のそもそもの発端、だれが平和を破る行動をしたのか、そういうそもそもについての認識に相当甘い面があるんじゃなかろうか、私はそう思わざるを得ない。  そこで、くどいようでありますけれども、何度も私はこの今回の湾岸戦争原点というものを確認しながら、明確にしながら議論を進めていかにゃならぬ、こう思うわけでありまして、そういう点からいうと、今次の湾岸戦争というものは去年の八月二日、イラククウェート武力侵略し、そうして併合した、このことに湾岸戦争は始まっておるんだと思う。このイラク行為というものは真っ正面から国際法に挑戦するものであり、国連憲章をじゅうりんするものでありますから、全く許されざる侵略行為である。  そこで、国連は直ちに安全保障理事会を開いて、イラク侵略を許さない、即時無条件撤退をすべしという決議をしたわけですね。これが安全保障理事会決議最初の六百六十号。それ以来十数回の安全保障理事会決議が採択されたけれどもイラクは一向に安全保障理事会決議を受け入れようとしなかった。そこで、やむなく去年の十一月、最終的な安保理事会決議と思うのでありますが、六百七十八号、すなわち本年一月十五日までに撤退をしなければ武力行使も容認する、こういう決議が採択されたわけですね。  そしてさらに、いろいろな人がイラクに赴いて、フセイン大統領安全保障理事会決議を受け入れるように、そしてクウェートから即時撤退するようにと、随分勧告をされたわけです。最後にはベーカー国務長官ジュネーブに赴いてイラクアジズ外相と会談して、この安全保障理事会決議を受け入れるようにと、長時間の協議をしたわけです。そしてさらには、デクエヤル事務総長までもがバグダッドに赴いてフセイン大統領と会談して、とにかく安全保障理事会決議を受け入れろ、そして即時に全面的にクウェートから撤退すべしということを勧告したけれどもイラク大統領は一向にこれを聞き入れるそぶりすら示さなかった。  逆に、アメリカ軍武力行使をするならば血の海に泳がしてやる、こう豪語して安全保障理事会決議を全く受け入れる意思を示さなかった。かくなる上は、このまま放置しては国連そのもの権威も失墜してしまう、侵略行為をこれ以上許してはならぬということで、湾岸平和回復のために武力行使に入ったというのがことしの一月十七日であった。こういう経過であるわけですね。  したがって、今次戦争を始めたのはイラクである、平和の破壊をしたのはイラクである、多国籍軍行動安全保障理事会決議を執行するための武力行使である、これがこの湾岸戦争本質であり、そもそもの原点であるというふうに思うのでありますが、これはもう総理も何回もおっしゃっていることでありますけれども、繰り返し繰り返し私は確認をした上、そしてまた機会をとらえては総理みずからが国民に、この今次湾岸戦争の実態、本質、こういったものを訴えられる必要があると思うのです。そこで、総理の見解を改めて伺っておきたい、こう思うわけであります。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 松永議員がおっしゃるように、今回の湾岸に起こっておる問題の一番の根本は、昨年の八月二日イラククウェート武力侵略をし併合をした、そこから問題が始まったわけでありますし、またおっしゃるようなことは世間でもいろいろな角度から議論せられ、きょうも私は朝、新聞の社説で湾岸問題の本質を見誤るなという一文を読んで、今委員の御質問と非常に重なる点が多い。要するに、東西の力の対決というものが、力による均衡の中で、あるときは恐怖の均衡とか、あるときは力の均衡とか言いながら世界の平和のバランスをとってきた。世界が平和でいくための枠組みは東西の冷戦であったと言われた時期もありましたが、それを乗り越えて、そして国連が初めて安全保障理事会でも平和を果たしていかなければならぬという立場で機能するようになってきた。  極端に言えば、歴史の流れの希望を打ち砕くようなイラク暴挙でありますし、また我々は、新しい世界の理想というものは、日本平和主義であり、国際協調主義であり、憲法第九条にも「正義秩序基調とする国際平和を誠実に希求し、」と書いておるわけでありまして、私どもは、正義秩序基調とする国際平和を力でもって乱すことはしてはならぬというのがこれからの平和な世界の中においてまず守らなければならない基本的なルールだと思うのです。  今度、このイラク行為、これでクウェートがどれだけ長い間、半年近くにわたって国民が虐げられ、苦しみ、主権を侵されてそれっ切りになっておるか。これをただ武力行使はだめだ、だめだ、すぐに停戦だ、公正な平和じゃなく物事の本質を見誤った解決をしてしまいますと、何か力で侵略されたときには、された方はされるがままで黙って耐えていなければならぬのかという深刻な疑問が出てまいります。非武装中立で、そういうときは降伏した方がいい場合もあるよということ が言えるならばいいのですけれども、降伏する、世界正義がなくなる、正義秩序のない世界の平和は日本国憲法でも求めておるものではありません。  したがって、私どもは、国連が何回も決議してイラクに強い反省を求め、クウェートからの撤退を再三にわたる決議国際社会の総意として求めたのですが、残念ながら反省も、撤退意思表示すらされなかった。それどころか、イラククウェートを絶対手放さない。それでは国際社会秩序は守られなくて、強い者が弱い者を勝手に、恣意に虐げるということを認めてはいけませんから、国連憲章に定められた国連意思によって武力行使をして平和を回復する、これ以上の平和の破壊は許さないという行動が起こっておるのが一月の十七日からの現象だろうと思いますから、あくまで正義秩序基調とする国際平和をきちっとつくれ。  せっかく戦後四十五年、東西対決が終わって、米ソ対立が終わって、イデオロギーの対立が終末を迎えつつあって、自由と民主主義に基づく世界の平和があらわれようとしておるときでありますから、力による他国の侵略は許さないという鉄則は、国際社会全員意思として、おっしゃったように国連権威としてこれは守り抜かれなければならぬことでありまして、あくまでイラククウェートからの撤兵、反省を強く迫っていかなければ問題の根本的な解決はできない。私は委員と全く同じ考えを持っております。
  5. 松永光

    松永委員 イラクの今次侵略戦争は許してはならない、こういうふうに言いながら、しかし一方においては、米国を初めとする多国籍軍は一月十五日の撤退期限が来てももっともっと待つべきだったのだ、それを十七日に武力行使に入ったのは早過ぎる、こういうふうに非難する人もおりますね。きのうもそういう議論がこの委員会でありました。  しかし、安全保障理事会最初イラク非難即時無条件撤退を求める決議がなされたのは去年の八月二日。イラク侵略開始も八月二日。それから計算すると百六十五日も待ったわけですね。武力行使を容認する決議からしても六週間待った。この間、先ほども言ったようにいろいろな人がイラクに対して国連決議を入れてクウェートから撤退するように勧告をした。先ほども言いましたけれどもベーカー国務長官がわざわざジュネーブに赴いてアジズ外務大臣と会って、これまた長時間会談をして、安保理決議を受け入れて撤退するように、即時無条件撤退をするように、こういう勧告をし、そして最終的にはデクエヤル国連事務総長バグダッドに赴いてサダム・フセインイラク大統領と会談して、ぎりぎり最後まで実は勧告をし説得をしておる。  これほど辛抱強く説得した例は私は今までなかったのじゃなかろうか、そう思うのでありまして、であるにかかわらず、イラククウェートからの撤退を断固として拒否したわけですね。撤退するそぶりすら示さなかった。それのみならず、先ほども言いましたけれども、来るなら来てみろ、血の海に泳がしてやる、こう豪語しておったのでありまして、これをこのまま放置しては国連権威も落ちるあるいは平和回復のための活動がむしろさらに難しくなるかもしれぬ、そういう判断もあったのでしょう。あるいはまた国連権威を保つ上からもこれ以上は待てない。さらにはまた、イラクから侵略されたクウェート国民はどうなっておったのか、まだまだ解放されるのを待てというのか、こういうふうにもなってくるわけでありまして、したがって、もっともっと待つべきだったのだという非難というものは成り立つものじゃない、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連安保理決議最初行われてから、六百七十八号の決議が行われるまでにも随分いろいろな経過があったことは、これは委員御承知のとおりであります。五カ月以上にわたるたび重なるいろいろな努力が行われたこともそのとおりであります。ただ単に決議をしておったというだけじゃなくて、あらゆる国の首脳がいろいろな努力をしてこの問題についてイラクに迫ったことも事実でございます。私どもも、直接あるいは文書でもって意向を伝え続けてきました。  また、国連努力の中で、たしか十一月の二十九日でございましたか、六百七十八号の決議があり、そしてあらゆる手段をとることができる決議が行われた直後で、これはイラクに対して平和に向かって反省をする最後機会を提供するのだという意味のことが言われ、直ちにアメリカイラクに対して直接対話を呼びかけて、私たちは、その直接対話で本当に腹を割って話し合ってもらいたい、強い期待を持ったことも思い起こします。また、国連事務総長は、最後まで和平のための努力を続けました。  また、国連総会で、私もブッシュ大統領演説も聞きましたし、またミッテラン大統領演説も、その中の提案も聞きましたけれども、皆が国連決議に従って、まず力でもって侵略したという事実をもとへ戻して、国連決議に従った第一歩を踏み出せば、中東の恒久和平とかあるいはアラブとイスラエル、パレスチナ問題を含むいろいろな問題について話し合っていく機会が提供されるということを何回も繰り返し呼びかけた。最後最後まで、国連事務総長は夜を徹して声明を出してぎりぎりの努力をしたのですが、果たされなかった。  私は、この五カ月以上にわたる各国のあらゆる努力というものは、これはやはり忍耐強いぎりぎりの努力が行われたものと率直に認めます。そして、イラクが悪い、けれどもアメリカも悪いというような、もう一日待てないか、もう二日待てないか。たしか十二月三十一日までに事態を解決したいといった当初の提案は、ソ連その他の国のやはり十五日まで、もうちょっと待ったらどうだという話し合い等があったということも私は当時の報道で詳しく聞いておりました。ぎりぎりの努力の結果でございます。  現在はまだ絶対平和が世界に実現しておるわけではございません。現在の国際社会において、反対するだけではなくて武力侵略行動そのものを結果的に容認してしまうことは、これはとるべき態度ではない。国連加盟国がみんな一致して平和の破壊をこれ以上してはいけないということは、これは権威として守っていかなきゃならぬと思うのです。  私は二月二日の新聞で読んでなるほどと思ったから控えておきましたけれども、「反戦を叫ぶだけで済ませたり、絶対平和の手段のみで対処することは武力侵略行動を結果的に容認し、利することにつながり、逆に戦争への道に近づいてしまう。一番喜ぶのはフセイン大統領だ。」これをお書きになったのは、新聞報道によれば、社会党の新人議員でつくられるニューウェーブの会の人の意見だとして新聞に出ておるのです。だから私は、この点に関しては全く同感をして、こういった話し合いをさらに進めていくべきではないだろうか、こんなことを思ったわけであります。  ですから、そういった意味で、やはりこの問題の本質というものをよく考え、国連平和回復への努力というものが一日も早く成功することを、そして世界にジャングルの中のおきてだと言われないように、正義秩序基調とした平和が達成されるように心から願っておる次第でございます。
  7. 松永光

    松永委員 イラクという国はクウェート侵略併合しておきながら、クウェート領土はもともとイラクのものだったんだ、クウェートイラクの十九番目の州である、こういうふうな主張もしておったようですね。これは侵略併合後にそういう議論主張しているようでありますが、これぐらい今日の国際社会原則をじゅうりんし、あるいは国連憲章を無視する主張はないと思うのですね。  国連憲章精神というものは、決められた国境線はいかなることがあっても実力をもって変更はしない、これは認める、これが大原則の一つでしょう。もしそれを許すことになれば、これは紛 争は絶えなくなるわけでありますから、この国境線あるいは国の領土、それを実力をもって変更してはならぬ、国連憲章精神とはこれはそういうものであるというふうに思うのですが、外務大臣どうですか。
  8. 中山太郎

    中山国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、国際的な紛争あるいは解決のために武力行使しない、これは国連憲章精神でございます。
  9. 松永光

    松永委員 第二次大戦後も今まで随分国境紛争というのはありましたね。しかし、国を丸ごと侵略し、占領し、併合したというのは、第二次大戦後今日までの四十数年間の世界歴史の中で今度が初めてではないか。それだけに許すべからざるイラク暴挙であり、イラク侵略行為である、こういうふうに私は見なければならぬと思う。極めて悪質、そう思うのですけれども、いかがですか、総理
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 新しい世界秩序というものの中で第一に守られなきゃならぬ基本的な原則は、力で、武力侵略併合はしない、この原則を立てるべきだということは私も常々申し上げておるところであります。そして、一国が一国を丸ごと侵略して併合してしまったというのは極めて希有な例ではないかとおっしゃいますが、私はこれは、国と国とが宣戦布告をし合って国権の発動たる戦争をするという従来のパターンでとらえるべきものではなくて、それはイラククウェートの問題はそうかもしれぬけれどもイラクに対する国連決議に基づく共同の武力行使というものは、これは従来のそういった概念とは違うのではないか、こういう感じがいたします。  それからもう一つは、クウェート侵略併合しただけではなくて、全く関係の直接なかった国々に底知れぬ恐怖を抱かせるような、原油を戦略的に海へたれ流すということ、あれを公然とやるということはまさに環境テロであって、人間にとって底知れぬ恐怖を与えるし、世界が地球的規模でこれだけ今力を合わせて世界環境を守ろうとしておる、この努力に対して、これは真っ向から挑戦する許されない問題でありますし、恐らくこんなことは国際法も予想していなかった暴挙じゃないでしょうか。  もう一つ言えば、これまた関係のなかった、直接関係のないイスラエルという国へ向かってミサイルを撃ち込み続けておるということも、この挑発に耐えておるイスラエルに私はむしろ、戦線を拡大しないという意味で、平和回復を早めるという意味で、歯を食いしばって我慢しておるイスラエルの心情を思うときに率直に敬意を表したいと思うわけです。  ですから、そういったことが次々次々重ねて行われることは平和の破壊以外の何物でもありませんから、これはおっしゃるとおり国際法違反であり、戦後初めての暴挙であると言って決して言い過ぎではないと思いますから、一刻も早い反省撤退をこの場で改めて強く求めておきたいと思っております。
  11. 松永光

    松永委員 それからもう一つ、イラク主張の中には、いわゆるパレスチナ問題とのリンケージというのがあるわけですね。これはクウェート侵略併合前には言っていなかったわけでありまして、クウェート侵略併合した、そうしたら国際社会が一致してイラク非難した。そしてまた、先ほど言ったように安全保障理事会でも八月二日、侵略をし併合したその日に満場一致でイラク行為は許されない、イラク武力侵略は許されない、そういう非難決議をし、同時に、即時に無条件でクウェートから撤退すべしという決議がなされた。この国際世論の厳しい反撃を受けて、そうしてこれに驚いて、何とか自己弁護をしなければならぬなというわけで持ち出してきた議論というものがパレスチナ問題とのリンケージ論。全く詭弁としか言いようがない、こう私は思います。  そもそも、イスラエルがガザ地区その他を占拠しておる、そうして国連決議に従わない、だからおれはクウェート武力侵略するんだ、こういう論理が成り立つはずはないわけですね。泥棒にも三分の理という言葉がありますけれども、仮に三分の理があるとしても泥棒は泥棒ですな。この場合には強盗ですけれども、強盗は強盗であることに間違いないわけでありまして、人がしたからおれもするということは絶対国際社会では許されない。もしそれを許すとすれば国際の平和は壊れてしまう、こういうことではないかと思うのでありまして、この問題について総理はどう考えておるか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 八月の二日にイラククウェート侵略する前に、七月の三十一日とか八月の一日の前後のところでサウジアラビアのファハド国王がフセイン大統領を直接呼んで、そこにはムバラク・エジプト大統領も同席をしていろいろ話をされたということを私は首脳会談のときに聞いてきましたが、その時点においても問題になっておったのは、油田の地下が通じておるのが一つあって、その盗鑿問題、それに対する賠償の問題とか、海に出口がないから島の租借権を認めるか認めないかとか、あるいは、イラン・イラク戦争のときのいろいろな貸借関係があるけれども、それを棒引きするとかしないとか、そういう話がイラククウェートの間であったことはこれは事実で、それを心配をしたサウジ、そしてエジプトの大統領が直前にフセイン大統領話し合いをした。そのとき、力で侵略することは絶対にしないという約束もし、そしてさらにそれらの問題を話し合いによって解決するんだということで合意を得ておったのに、突然一方的にあのようなことになって非常に残念であった、その日直ちに、なぜそんなことをするんだ、約束違うじゃないか、話で片つくではないかと言おうと思ったが、もうその後電話には出てくれない状況になったんだという発端の事情を生々しく語られたことも私は覚えております。  それから、私がイラクのラマダン副首相と会って話しましたときも、結局なぜそのようなことになるのかという理由の中の一つに、これはアラブの問題だから、クウェートとサウジの問題はアラブの問題だからアラブに任せておいてくれればいいのをアメリカやヨーロッパが出てきたから、それが間違いであるという、こういうお話。それともう一つは、歴史をもう少し調べてくれ、歴史を調べればクウェートイラクのものなんだ、この点を非常に強調された、そのことを私は思い出します。  私はそのときに、アラブのことはアラブでというのは非常に結構ですけれども、もう今日世界の平和と世界の経済と世界の安定に大きな影響を及ぼすことになってしまい、国連という世界の平和に責任を持つ機構がこれだけ心配をして国際社会の総意にしておるのだから、もうこれは国際社会の出来事であるし、同時に、アメリカを初めとする多国籍軍がいち早くこれ以上の平和の破壊はしてはいけないというのでサウジに抑止線を張ったということが、平和の破壊をこれ以上させなかったということで私は評価すべきだと思うので、そのところは、国際問題としてアラブだけでとおっしゃらずに、その肝心のアラブの首脳国会議も決裂をしたし、肝心のアラブの方からも多国籍軍に加わる軍隊が出てきておるということをもう少しフセイン大統領は謙虚に反省すべきではなかろうか、こう思った次第でございます。  なお、もう一つの問題、イスラエル問題は非常に長い経緯がありまして、歴史の問題を言えば、それは一九一七年のイギリスの歴史にも、それはもう線引きの歴史に戻るでしょうが、もっと前のオスマン・トルコの歴史に戻れば、トルコの大統領は、歴史のことを言うと歴史上あの辺は我が国のものであったと言ってオスマン・トルコ時代の地図さえ見せられるような、だから、余り古い歴史のことを言ってそれを全部リンケージしなければいけないというのは現実の侵略を肯定的に放置することになりますから、それはそれ、これはこれときちっと段階を分けて考えて、まず局面を打開すれば、続いてパレスチナ問題を初めアラブとイスラエル問題についてもさまざまな恒久和平のための話し合い機会が出るでしょうということにやはり耳を傾けて、その道を選んでいくことが 真の恒久和平に通ずるものである、私はそう考えますので、率直にお答え申し上げます。
  13. 松永光

    松永委員 パレスチナ問題、これもいずれは平和的な解決をしなきやならぬ問題でしょう。しかし、現在の問題は何かというと、イラククウェートからの即時全面撤退ですから、クウェートからの即時全面撤退がなされてあそこが一応おさまって、そして新しい湾岸地区の秩序を構築する場合には、当然のことながらパレスチナ問題も平和的に話し合いをして解決をされなきゃならぬ問題でしょう。しかし、現在のクウェート侵略併合、これからの撤退をしないという状況のもとでイラク側のいわゆるリンケージ論に理解を示すことは、これはむしろ問題解決にとって有害ではないか。イラクのサダム・フセイン大統領は、自分の主張が理解されたなんというようなことになりまして、クウェートからの撤退意思をなかなか示さないという結果になるわけでありますから、したがって、イラククウェートから全面撤退をしない限り理解などは示すべき問題ではない、私はそう思うのですね。  ことしの一月十五日の撤退期限直前に、日本のある有名な政治家がイラクフセイン大統領と会われたときに、リンケージ論に理解を示されたというような報道もありましたけれども、あれなどはクウェートからのイラクの全面撤退をさせる上でむしろマイナスであったと、私はそう思うのですけれども、やはり理解を示すのではなくして、それは別だと厳しく撤退を迫るのが私はとるべき態度ではないか、こう思うのですね。簡単に理解などを示してはならぬ、こういうふうに思うのでありますが、このリンケージ論について総理の考え方、これをお聞きしたい。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、現在の局面を打開して──今毎日毎日どのような苦しみの現実があるかということを考えますと、あの地域の平和を回復しなければならないという問題と、それから、これは国連の事務総長も提案しておりますように、中東和平のためにパレスチナの問題を含めてアラブ、イスラエルの問題等さまざまな問題について、恒久平和のために解決のための話し合いをしていかなければならぬという問題は、これは次元が違う問題でありますから、先ほど申し上げたように、まず局面を打開して、その次それに入っていくという道筋が正しいのではないかと思いますし、また、我が国としてはこれは経緯や歴史を無視しておるわけでは全くないわけでありまして、国連決議二百四十二号.続いて、次の中東戦争のときにできた三百三十八号については、それでもって恒久平和の道のりを明確に示したものだというので支持をし賛成をし、同時にまた、私が総理に就任しました後に、いろいろな方からPLOのアラファト議長に会えと言われました、政府が賓客で呼べと言われました。  これは、与党のみならず野党の皆さんからもそういう御要請も、御要望も受けて、私は、アラファト議長がイスラエルの国家としての存立を認める、要するに二百四十二号の決議に従ってイスラエルが占領地から撤兵をすれば、そうすると今度は、イスラエルの存在を認めて、あの国は認めない、海へ追い落とすと言っておった態度を改めるということと、テロ行為からは手を切るということをきちっと声明されるということでありますから、それなれば、政府としても中東の恒久和平のためにはそれは政府賓客として招いてお話をして、自分もそういったことを言うというので、アラファト議長を首相官邸にお招きをして首脳会談をしたこともございました。  それは、中東の恒久和平というものは、それまでも、あるときはベーカー提案とかあるときはムバラク提案とか、あるいはエジプトとイスラエルの二国間の問題とか、いろいろな積み重ねや努力が続けられてきておるわけでありますから、今回のこの問題のさなかに、問題と一緒にというのではなくて、局面転回をして平和をあの地域にきちっともたらしながら、世界の総意で、国連事務総長の言うように国連の場を通じてきちっとした恒久和平が達成されるようにすべきであるし、日本もそれらの動きに対しては積極的に協力をし、何ができるか、貢献することがあればこれからも引き続いて貢献していきたいと決心をいたしておるところであります。
  15. 松永光

    松永委員 先ほど総理の方からも積極的に発言があったわけでありますが、とにかく戦争は嫌だから武力行使即時にやめてもらいたい、こういう叫びをする人もたくさんいらっしゃるわけですね。しかし、今回の米国を中心とする多国籍軍武力行使というものは、先ほども申したとおり、イラクの起こしたクウェートに対する違法な侵略戦争武力侵略、占領、併合、これをやめさせるために、国際正義の実現と国際平和の実現のためになされた、言うなれば国際的な警察活動、こう言ってもいいでしょう、そういったものなんですね。  こういう武力行使すら戦争は嫌だから早くやめてくれと即時中止を叫ぶならば、先ほど総理のお話にもありましたけれども、喜ぶのはだれか、これはクウェート侵略しておるイラク大統領イラクだ、こうなってくるわけでありまして、だれだって平和を求める、平和を希望するんだ、戦争は嫌なんだ。しかし、平和の恩恵を受けるのと、平和を回復し平和を維持し、そして継続させるのとは、平和の恩恵を受けるだけならばこれはもう簡単なことなんだ、しかし平和を回復し維持し継続させるためには相当な苦労と努力が要るわけですね。その苦労、努力、あるいは時には血を流すという、そういうこともあるでしょう。そういうことをしなければ平和は確保できない、回復できない、そういう厳しい面があるわけですね。  だから、武力行使にいたしましても、私は大体三つぐらいのカテゴリーがあると思うのです。一つは、今回のイラククウェートに対して行ったあの武力行使、これはもう許すべからざる侵略戦争でありますから断じて排除されなければならぬと思うのですね、こういう形の武力行使というのは。もう一つは、武力侵略を受けた側が、その侵略を排除するために行う武力行使ですね、これはいわゆる自衛のための武力行使でありますから、国連憲章も容認しているところですね。三番目は、今回のまさに多国籍軍武力行使でありますけれども国連決議に基づいて、決議を執行し国際平和と正義を回復するための武力行使、これは正義の実現のために、平和の回復と確保のためになされる武力行使でありますから、これは正義武力行使として認めなければならぬし、支援しなければならぬ問題だ、こういうふうに私は思うのでありますけれども、どうですか。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、侵略戦争というものは絶対に起こしてはならないということと、また絶対にそれを認めてはならない。しかし、現にそれが目の前に起こっておるわけでありますから、目の前にそういったことが起こっておるんだけれども、だめだ、何もだめだといって手をこまねいておりますと、侵略されても我慢しておれということになってしまうわけで、これは日本憲法が宣言しておる正義秩序基調とした国際平和にはほど遠いものであります。  日本は、そのときに、二十八もの国々がアメリカを先頭として、平和の破壊を許してはいけない、それぞれの国に経済の困難もありましょう、また兵を出すことに伴う多額の出費も伴いましょう、また現実に犠牲者も出るという日々の報道もなされる中で、なぜそれをするかというのは、ただ一つやはり力による侵略国際社会のために認めてはいけないし、そういったことを認めてしまうと自分たちの国の生存にも直接間接いろいろな影響があるから、世界正義というものを守るために平和の破壊はやめさせよう、こういう行動でありますから、私は、それらの問題については、国連決議に従う平和回復武力行使というものは従来のいわゆる戦争のパターンとは違うし、また、侵略ということと、それから国連決議に基づく武力行使、平和の回復への努力ということ、これは日本憲法の制約のもとでそれに力でもって参加することはできない立場にありますけれども、しかしそれが行われて一日も早く平和が回復しなければ ならぬということを願う気持ちは、これは全く世界の国々と同じだと思います。  許される限りの、できる限りの支援をしなければならぬ。もし、これ、何もしないで日本が見ておるだけでありますと、これは国際社会の信頼というもの、きょうまでこの世界の中で、防衛は日米安保条約でアメリカにゆだねる、貿易の方では世界の国々と交易をして、アメリカからもヨーロッパからもアジアの国々からも、毎年輸出をし輸入をする、その中で貿易黒字がうんと残る。アメリカ一国との間でも三年前まで五百億ドルを超える黒字が残って、それが経済摩擦を起こしたことも記憶に新しいところです。  国の安全も、そして我々国民の平和な生活の享受も、豊かな社会も、それらすべては国際依存、国際協調の中で初めて達成されたことであって、その平和の利益、安定した国際秩序の利益を一番受けてきた日本にとって、これ、一歩引いて、いけない、いけない、何もしないと言っておるだけでは、これは今後の日本国際社会における立場とか信頼とか、もっと素朴に言えば、一体何考えているんだろうか、自由と民主主義を守る国というけれども、これはルールが違う国ではないか。  一時、外国からのマスコミで日本はルールが違う国だ、修正主義者ではないかという極めて厳しい、国際的に協調しない国だと言われた。日本憲法の理念には、「いづれの国家も、」と世界じゅうに向かって、「自国のことのみ」を考えてはいけない、他国のことも考えて行動し、日本はその中で「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とまで憲法にきちっと宣言しておるわけであります。  私は、そういった平和主義国際協調主義の理念からいっても、今回のこの国連決議世界の国々に訴えておること、平和の回復を図れということ、これに対しては全面的な支持をすると同時に、今度のイラク行為というものはどう理解をしようと思っても理解することのできない、国際法的にも、人道的にも許されない行為である、これは繰り返して申し上げさせていただきました。
  17. 松永光

    松永委員 ソ連がプリマコフを特使としてイラクに派遣をした。フセイン大統領と会談をしたようでありますが、その会談の内容、新聞で私どもは承知しただけなんでありますけれどもフセイン大統領は、対話の姿勢は示したようでありますけれども、しかし、クウェートからの撤退については何らの気配も示さなかった、こういうふうに報道されておるわけでありますけれども、どうだったのでしょうか。詳しいことがおわかりならば、お知らせ願いたい。
  18. 中山太郎

    中山国務大臣 今お尋ねのソ連のプリマコフ特使がイラクを訪問されたことに関連する詳しい内容の情報はまだ私ども確認をいたしておりません。そのために、特にコメントをすることは差し控えたいと考えておりますが、いずれにいたしましても先般米ソ外相会談が行われております。そこでの両国外相の共同ステートメントにこのような言葉が書かれている。「イラクがクウェイトから撤退する旨明白なコミットメントを行えば、戦闘行為の停止が可能であると引き続き信じる。両国外相はまた、かかるコミットメントは安保理諸決議の完全履行につながる即時かつ具体的な行動によって裏付けられねばならないと信じる。」これが米国とソ連の外相の共同ステートメントでございますから、こういうことから考えますと、ソ連もまたこの安保理の六百七十八の決議を完全に支持している。これは、先般私がモスクワへ参りましたときも、ゴルバチョフ大統領もそのようにはっきりと言われておったということもこの機会に明確に申し上げておきたいと思います。
  19. 松永光

    松永委員 結局、クウェートからの即時全面撤退、これがすべての前提条件だ、これなしに和平などということになりますというと、結局、侵略者、占領、併合者が得をする結果になる、そういったことは国際正義の上から許されない、こういうふうになるわけですね。したがって、撤退の兆しがないときに、戦闘はやめろ、和平だ、こういうふうにやることは、あるいは言うことは、むしろ侵略者を撤退させる上でのマイナスになる。そのことだけは厳しく間違いのないようにやっていかなければならぬ、こういうふうに思うわけですね。そういうふうに伺っていいですね。
  20. 中山太郎

    中山国務大臣 お説のとおりでございまして、昨日の午後、私は、日本におられるイラクの大使を外務省にお招きをいたしまして、この一月十七日以来まことに残念な状況が続いておる、これを一日も早く回復させるために、平和のために、イラククウェートから即時撤退されるように日本政府としては改めてここに明確に政府の意思をサダム・フセイン大統領にお伝えを願いたいということを昨日申し上げた次第でございます。また、その機会に、この報道されている化学兵器等の、生物兵器等のいわゆる我々が好まない兵器の使用は厳にひとつ慎まれたい、このようなこともあわせて昨日、日本政府として改めて申し入れを行ったということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  21. 松永光

    松永委員 そこで今度は、この湾岸平和回復活動についての、あるいは平和回復活動に対する日本の支援あるいは貢献をいかにすべきかという問題に入りたいと思いますが、まあアメリカを中心とする多国籍軍、これはもう本当に生命の危険を冒しながら、あるいは血を流して平和回復活動に頑張っておるわけですね。これに直接的に参加している国あるいは間接的に参加している国、合わせると二十八カ国。中でも私は注意しなければならぬのは、アメリカ、イギリスはもちろん、フランス、イタリー、カナダ、ドイツ、サミット参加国はすべてこの湾岸平和回復活動に対して汗を流している、生命の危険を冒して頑張っている、こういう状態になっておるわけでありまして、国際連合に加盟して国連中心主義を日本外交の中心に据えてきた日本としては、口先で平和回復を唱えるだけではなくして、積極的にこの平和回復活動に協力をしていかなければならぬことは当然のことであるというふうに私は思います。  日本は国際平和と国際協調によってここまで大きな経済を築き上げてきたし、国民の生活の安定、向上をもたらすことができたわけでありますから、日本の国力にふさわしい貢献をしなければならぬことは当然のことであると思います。ただ、日本には憲法があります。また、憲法の解釈にいたしましても、ある程度定着したものがありますから、その許す範囲内での協力、貢献でなければならぬことは当然のことでありますが、そういうことを考えて総理は、日本の経済力にふさわしい、あるいはそれに応じた協力の仕方として九十億ドルの資金を提供する、こういったことを決断され、同時にまた、金だけの支援、協力ではこれは足りない、金は出すが汗はかかないのか、こういうような非難も出てくるので、そこでいろいろ考えられた上、何か汗を流して貢献することはないかと研究された上、それならば日本の飛行機を使っての避難民の輸送をしよう。しかし、民間航空機で避難民の輸送をすることを第一義とするけれども、万が一民間航空機を飛ばすことができない場合には、自衛隊のC130をやむを得ざる場合には使えるように準備をしておこうということで今回のその政令の制定、これで汗をかく貢献の準備をしよう、こういうふうに決断をされたと思うのでありまして、私はその決断については賛意を表するものであります。  そこでお尋ねするわけでありますが、この今回の政令制定、人道的見地から臨時応急の措置としてこの制定、私はやむを得ざるものとして認めます。そこで、総理の答弁の中で、民間航空機が使用できる場合は民間航空機をチャーターして避難民を輸送しよう、しかし万が一民間航空機を飛ばせぬ場合には、その場合にはやむを得ざる措置として自衛隊のC130を使えるような準備をしておこう、こういったことで今回の措置がなされたというふうに理解をしておるわけでありますが、その理解でよろしゅうございますか。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の点につきましては、今回の避難民の輸送をする、そのことについては日本憲法のもとにおいてもこれはなし得ることである、またなさねばならぬことである。日本は 今、国際社会の中で右にするか左にするかの断崖に立たされておると言っても言い過ぎではないわけでありますから、やはり日本の今日の立場、世界から求められている責任分担の要求にふさわしい役割をどこかで果たすべきである。  前半お触れになりました九十億ドルの支援の問題につきましてもその一環でありますし、ただ前回のようにツーレート・ツーリトルと言われ、しかもお金だけで済ますつもりか、日本は一体どこにいるんだというような国際的な論調や世論というものを耳にしますと、日本が戦後きょうまで人に迷惑かけないで自分の国が幸せであれば、ひとり片隅でひっそりとささやかな幸せを享受していこうというひとりよがりの考え方から、もう世界にそれだけ影響力を持ち、世界からそれだけいろいろな目で見られ、協力を期待されるならば、しなければならぬ。それは避難民の輸送を日本はしてくれるのかという要請が、国連から委任を受けたIOMからも来ておるわけでありますから、これにこたえるためにはどうすべきかということで率直に、示唆のあったクウェートイラクの周辺国の避難民をカイロを通じて出身国まで移送することに協力をする用意があるか、こういう要請があれば協力をする用意があるという答えをしなければなりません。するためには対応と準備をしておかなければなりません。  率直に申し上げて、民間航空にまずこの事情を話して、こういう一般的な要請だけれどもどこまでこたえてもらえるか、いろいろ相談もいたしました。カイロまでならば今回の状況で協力できるということでございました。その先のことについては確たる御返事はいただけません。しかし、示唆として来ておるのは、あの周辺の地域から出身国まで送り返せということでありますから、どうしてもそれができない地域については、それでは自衛隊の輸送機によって運搬することはできないか、その可能性について検討するということを、私は勃発の日の内閣の総理大臣の記者会見のときに可能性について検討すると申し上げました。それは民間航空についても、そして輸送機についても全く同じ次元でございます。その後具体的な要請が参りましたが、これは民間航空に要請して日本航空と全日空で四便出してもらって、具体的にアジアのベトナムへ移送するということを要請にこたえていたしました。また、lOMからの要請で、要ると言われた三千八百万ドルの拠出金は全部日本が拠出をすることにいたしました。  さて、その次に、もし、行くという準備をするわけですから、ここへも来てほしいと言われたときに、民間航空でカイロから先は行けないというときにどうするか、この具体的な問題については自衛隊の輸送機を使ってそして難民の輸送をする。いろいろ御議論があって、自衛隊の海外派兵がいけないということは前回の国会の御議論を通じてよく知っておりますけれども、私も武装部隊を武力行使の目的を持って海外へ派兵することができるとは決して思っておりません。それをするときには、もっともっといろいろな角度からの御議論が必要であります。けれども、私は、そういう中にあっても、自衛隊法の百条の五というところを素直に読んで、あの法律に出ておりますから、具体的な要請が来た場合には、相手国の支援、協力も得ながら避難民の移送ということについては万全を期していきたい、こう判断をし、政府の責任でそのような措置をとったわけでございます。
  23. 松永光

    松永委員 日本の民間航空機が飛べない場合であっても外国の航空機があるじゃないか、外国の民間航空機をチャーターすればいいじゃないか、具体的にはヨルダン航空の飛行機をチャーターすればいいじゃないか、こういった議論も随分ありましたね。しかし、私は、日本の航空機を使っての避難民の輸送というのは、結局日本人が働いてそして輸送するわけでありますから、日本人が汗をかいたということになるでしょう。しかし、外国の航空機をチャーターして輸送した場合には、金を出すだけのことでありますから、結局は。したがって、それは汗をかいたことにはならぬ、金を出しただけである、こういうふうにとられかねませんね。やはり汗をかくということを事実として示すためには、日本人が汗をかくこと。したがって、この場合の民間航空機というのは日本の民間航空機というふうに私は理解しておるわけでありますが、どうですか。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 常識的に言いますと、IOMという国際機関が国連から移送を委託されたわけでありますから、その国際機関が最初世界の協力できそうなと思われる三十数カ国、これは加盟国かもしれません、日本はオブザーバーですけれども、それらの国々に対してこういう需要が起こってきた、民間機でも、軍用機でも、要請するから可能性について検討してほしい、各国へこれは要請をしたわけです。日本は国家として要請されたから、国際機関に日本としての民間航空機、そしてそれがどうしてもいかぬときは自衛隊の輸送機、とにかく要請にはこたえて、人道的な非軍事的な面で協力をするということは、これはなすべきことである、積極的になすべきことである、こう判断をして行ったわけであります。  国際機関であるIOMがそれぞれの国に要請しておるわけでありますから、それぞれの国が出そうということになればIOMに民間機でも軍用機でも出すわけです。そのとき、IOMが払うお金が初め要るからと言われたので、IOMの方へまとめて全額日本からお金は拠出してあるわけでありますから。今の理屈でいきますと、日本から出したお金でどこのお金ということではなく、国際機関のお金でやっておるわけですけれども、お金を出したらいい、お金がどうだこうだという問題じゃなくて、これは。お金のもとは日本が全部まず出しました。国際機関が各国に要請しております。各国は要請にこたえて準備をすべきですから、よその国のことまで私は言わないで、自分の政府ででき得る日本の民間航空と日本の自衛隊の輸送機のことについてその対応を検討してIOMに返事をしておる。具体的要請があったときはそれに従って解決をしているということでございます。
  25. 松永光

    松永委員 ちょっと事務方に聞きますが、今避難民というのはどの程度いるんですか、当初どの程度避難民が予想されておったか、現在はどういう状況になっているのか、それを説明してください。
  26. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  避難民を扱います国際機関、いろいろございますが、ことしの一月の十一日に戦闘が発生した場合の対応策を取りまとめまして行動計画というものを発表しておるわけですが、そういう会議を通じていろいろな推測を国際機関が行いました。幾つか関連の数字を申し上げますと、これらの国際機関の推定によりますと、現在イラククウェートに滞在している第三国人は、IOMによりますと約七十四万人、UNDROによりますと百二十万人という推定の数字がございます。これらのうち戦闘が始まった場合にどのぐらいの数の避難民が流出するかという点についてまさに行動計画が触れているわけですが、約四十万という推定をしたわけです。しかしながら、今日までのところ、それほどの避難民は出ておりません。恐らく、周辺諸国四カ国に出てきた数字として丸い数字で申し上げますと、大体一万五千から二万じゃないかというふうに見られております。  それでは、なぜ国際機関の推定値と現実の避難民の数にそれだけの差があるかという点については、これらの国際機関の専門家たちは幾つかの理由を挙げて説明しております。一つは、現在の多国籍軍イラクに対する攻撃が軍事施設を中心として行われておる、したがって一般国民、一般国民と申しますかその住民はそれほどの危険を感じていないからではないかというのが一つの理由。それから、二つ目の理由は、イラクがこれらの潜在的な避難民の出国を抑えているんじゃないかという見方が二つ目としてございます。そのほかありますけれども、大体以上が二つの主要な理由ではないかというふうに見られております。したがいまして、今後地上戦が始まった場合に、その地上戦の対応いかんによりましてはその国際機関が推定するような数の避難民が出てくる可能性はあ るのかもしれません。
  27. 松永光

    松永委員 このC130という飛行機のことですけれども、これはプロペラ機でスピードも遅い、それから余りたくさんは乗せられない、だからこのC130を使うのは余り合理的じゃないんじゃないか、こういう意見もありますね。実際、湾岸地域で外国がC130で避難民等を輸送したという事例はあるんですか。
  28. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  昨年の秋、御承知のとおり八十万ぐらいの避難民が流出したわけでございますが、それに対して各国政府が協力をしたわけですが、軍用機の利用につきましてIOMに問い合わせましたところ、特にC130につきましては、ニュージーランドがC130で二百八十五名をアンマンからカラチ及びマニラに移送したという例、それから二つ目は、シンガポールがC130を利用してアンマン─コロンボの間を七十人を移送したという二つ目の例、それから三つ目にブルネイがC130を利用しましてアンマン─コロンボ間を七十人移送したという例をIOMが私たちの方に伝えてきております。
  29. 松永光

    松永委員 じゃ、次に、九十億ドルの資金の援助の問題について議論を移していきますが、私は、九十億ドルの資金援助、これは日本が国際公約をした資金援助でありますから、何としてでもこれが実行されなきゃならぬ。もしこれが実行されないというそういう事態にでもなれば日本国際社会での信用、日本に対する他国の信頼、これは全く地に落ちてしまうだろう。日本は資金面の協力すらしないのか、国際正義の実現を図るというそういう正義感が乏しい国じゃないのか、乏しい国民ではないか、こういった非難を受けるだろうと、私はそう思いますね。何としてでもこの支援というものはやらなきゃならぬ、こう思うわけであります。  こうした日本に対する非難とか不信感というものは、我々の時代だけの不信感や、あるいはまた非難、軽べつにとどまらず、これは長く続くものですね。日本という国はこういう国だ、日本国民というのはこういう国民なのだ、こういう非難や軽べつというものは子や孫の代までこれは受けるおそれがありますから、そのためにも我々はそういう非難、軽べつ、これを受けないように、きちっとした協力をしたのだ、資金の面での協力をしたのだということを私は実行しなきゃならぬと思う。これが憲法で我々がうたっておる「国際社会において、各誉ある地位を占めたいと思ふ。」これを我々は国の目標としておるわけでありますから、この憲法の我々の目標とも大きく違ってくるわけでありますから、何としてでもこうした国際的な非難、軽べつあるいは正義感が足りない国民か、こういう侮りを受けないようにきちっとしなきゃならぬというふうに思うのでありますが、総理の決意はどうですか。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私たち日本人が自分で意識するとしないとにかかわらず、戦後の小さな片隅から出発した日本が、今世界の中で好むと好まざるとにかかわらず、経済的にはいろいろ大きな影響力を持つ国になっております。  そしてまた、東西対立の時代には西側の陣営の一員として、サミット参加国として世界の西側の秩序の中で生存もし、繁栄もし、物も言い、世界の一員としての役割も果たしてまいりました。けれども、その冷戦の発想が終わって、国際社会が一つになろうとしておる。今後の世界の中心はやはり国連に移っていくでしょう。現に、今回開かれておる国連安全保障理事会も、日本日本としての発言をしたいということで──特別の発言を求めてでなければ安保理事会では今発言することができません、今度はいたします、特に希望をして。  そういったようなときに、国際社会の一員だ、国連中心だと言いながら、さあというときには結果は国連の要請に何もこたえない国であるということになると、西側の信頼を失い、貿易もおかしくなり、日本の将来は大変なことになります。それは何も今日に生きる我々が、この間うちの二度にわたる石油ショックのときに物不足に困り、三〇%前後のインフレに悩み、非常につらかったなというあの程度のことで済まないようになってくる。おっしゃるように将来にわたって、子供や孫の代にまで日本という国が国際社会でどういう国なのだ、あれは民主主義というけれども、ルールが違うのではないかというようなことがもし世界の常識として定着してしまったら、それは大変なことになる。  私は、そういった意味で、世界が今挙げて平和の破壊を防ぎ、平和の回復のための共同行動をしておるときには、許される範囲内でできるだけの協力をして、参加をしていかなければならぬということを、これは積極的に行っていこう、こう考えておりますのも、そういった日本が今将来の国際社会において名誉ある立場を得ることができるかどうか、日本憲法にも「名誉ある地位を占めたい」ということを世界に宣言しておるわけでありますから、そのための努力は積極的に続けていくべきものであると私は考えております。
  31. 松永光

    松永委員 この日本の九十億ドルの資金援助の使途についてでありますが、何か質問の趣旨を取り違えて答弁が訂正されたとかなんとかいう記事にもなっておるわけでありますけれども、この使途の問題で、総理の見解を改めてここではっきりしていただきたい、総理みずから。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 九十億ドルの支出につきましては、それをどのようなことに充てるのか、こういう角度の質問がございました。初め本会議のやりとりのころには、私自身、これは湾岸平和協力基金で、その運営委員会で決まるものでありますから、国際の平和回復活動に対する支援としてこれを使うのだということを申しておりました。しかし、国民の皆様の広く理解と協力を求めなきゃならぬ問題でもありますし、また、国連決議によって各国は適切な支援をするようにという要請も受けまして、あらゆることを判断しながら支出をすることを決めたわけです。  その使途はということになって、ここでのやりとりの中でも、率直に言えば武器弾薬に使うのか、使わないのかということを、いろいろな角度から皆さんに質問をいただきました。私はそれに対して輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針でありますということをお答えをいたしました。それは、湾岸平和協力基金の運営委員会で決めることでありますけれども、そこでは我が国の意向に反した使途には充当されないように確保し得る仕組みになっておりますから、そのようなことに充てる意向であるということを申し上げました。  そうしたら、武器弾薬にはそれは充てないのだなということでございますから、それ以外のものには結果として充てない、武器弾薬を購入することにこの九十億ドルは充てないのだということをここで再三申し上げました。  その中の輸送関連、医療関連といった輸送関連の中身についてはどうかということでありますが、中身については私はここで触れませんでした。それは湾岸平和協力基金の理事会で決まることでありますけれども、輸送関連ということは輸送に対する支払いの費用、医療関連は医療、食糧、生活、事務関連、その他のものはそのようなものに充てていくということでございまして、武器弾薬の購入には充当しないという意向を申し上げて、その意向が反映されるような、確保される仕組みとなっておる運営委員会で、そのことをきちっと主張していくということでございます。そして、これはあくまで平和回復活動に対する日本の応分の支援であるというふうに私は考えております。
  33. 松永光

    松永委員 今の総理の答弁でよくわかりましたが、私個人の考え方を言いますと、結局は平和回復活動の資金として使われる。しかし、日本側としては国内の事情等もこれあり、こういう希望を申し述べる、その希望は平和協力基金の委員会ですか、そこで希望に沿った措置がなされる、こういうふうに私は理解しておるわけでありますが、そうした理解でよろしゅうございますか。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和協力基金の日本側の拠出の基金というものは、一体どれくらいのものに なるのか。日本からは九十億ドルと決めて九十億ドル出しますけれども、今巷間言われております、いわゆる平和回復活動にかかる武力行使に伴う費用というものは一体幾らなんだということになりますと、これは何度も申し上げるように、アメリカ大統領自身が、二月四日の予算教書において具体的な、明確な積算の根拠はない。アメリカの議会の予算局の試算でも、二百八十億ドルから八百六十億ドルまで非常に幅がある。一日も早く終わることを願っておりますけれども、それは不透明な前提を置いての問題になってきます。  したがって、その一部を日本は充当する、こういうことでございますから、その全体がどれだけかかるか、その中の全体を出すというのなら別ですが、一部を出すわけでありますから、日本の世論とか国会におけるいろいろな議論というものは、これはその日のうちに世界にも伝わっておるわけです。私は適切な支援というものは平和回復活動のためにお出しするんだということを本会議で何回も答えたのですが、委員会になっても、それでは武器弾薬には使うのか使わないのかというその点が非常に各党が懸念を示しながら御質問なさった点でございましたので、私も、一部を出すのですから日本としては輸送関連、医療関連、食糧、生活、事務関連などの経費に充当する方針、そういった意向を伝えて、それ以外のものには使わない、すなわち武器弾薬には充てない方針だということを明確にして、意に反した使途には充てられないように確保し得る仕組みになっておる、こういったことをここで再三申し上げておるわけであります。
  35. 松永光

    松永委員 私はよくわかるのですわ。できれば野党の人たちも理解をしていただいて、九十億ドルの資金協力すら日本はしなかったということによる日本の受けるダメージ、これは大変なことであると思うのですね。日本の国際的な信用、そして日本という国は国際平和、国際政治実現への意欲を持たない、そういう国民だというさげすみを受ける、そういったことは国際社会で名誉ある地位を占めたいと思うという憲法の理想にも反するし、のみならず、日本という国の国情からいって国際社会で信用を失った場合に日本の将来がどうなるかと真剣に考えなきゃならぬ問題だと思うのですね。  これも私はテレビで直接見たのでありますけれども、ある政治家が、湾岸平和回復活動に貢献しなくとも日本は孤立したりすることはないです、ソ連や中国見てごらん、孤立してないじゃないか、こういうことを言っておられる人もおりました。しかし、これは大変な間違いでありまして、ソ連、中国、これは日本と全く立場が異なるわけですね。  第一に、ソ連や中国は国連の原加盟国です。安全保障理事会の常任理事国なんですね、これ。国連において大変重要な地位を占めておる国でありますから。日本の場合にはようやく昭和三十一年に国連加盟を認められた国であるわけでありまして、国連における地位がソ連や中国と日本とは全く異なるわけですね。  二番目に、経済余力といいましょうか、それが違うのですね。日本の場合にはGNP三兆ドル、一人当たりGNPは二万五千ドルですね。ソ連は幾らか。一人当たり千八百ドルぐらいでしょう。日本の十五分の一ぐらいです。中国は四百ドルぐらいと言われておるわけでありまして、日本の六十分の一です。経済余力が違うのですね。日本の方がはるかに豊かな国ですわ。豊かな国は豊かな国としての国際貢献、これをする責務があるわけですね、国際社会において。この点が二番目に違いますね。  三番目には、これは日本という国は無資源国でありますから国際協調の中で、国民生活を安定させ向上させる上で、あるいは日本経済を円滑に動かす上で必要不可欠の基礎資源というものはほとんど全部これを輸入に頼らなきゃならぬ国ですね。そうしてまた輸出も、これはしていかぬというと日本経済というものは成り立ちません。国民生活の安定というものも成り立ちません。ソ連や中国というのは、国内に相当の基礎資源を持っておる国ですね。基本的には自給自足のできる国です。こういった国の違いからいって、ソ連や中国は孤立してないじゃないか、だから日本国際社会でさげすまれる立場になることはないし、仮に孤立するようなことがあっても心配ないなどという議論は私は成り立たないと思うのですが、総理いかがですか。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連、中国と日本との立場の違いというもの、安保理の理事国であること、日本はそうでないこと、今お述べになりました、すべてごもっともでございます。それから、資源のない日本と資源を持っておるソ連、中国との違い、それもそのとおりでございます。  しかし、私が率直にもう一つ端的に言わせていただきますと、ソ連、中国が今行おうとしておることは、孤立から国際協調の社会の中へ、名誉ある地位と豊かさを求めて協調していこうという大きな政治的な意思決定と政策変更のさなかにあるということではないでしょうか。  私は昨年のサミットのときに、他の西側諸国が、中国は天安門事件以来人道主義の立場からこれはまだ経済協力の手を差し伸べてはいけないんだ、逆に言うと天安門事件以来孤立状態にある中国に対して、私はアジアの一員の立場から、中国をこれ以上孤立させてはいけない、改革、開放路線の政策は日本としては隣国として協力していきたいんだ。たしか八千百億円の第三次円借款を中国が非常に強く求められたことをECの他の諸国やサミット参加国が反対したときに、私は日本の立場、アジアの立場から、中国を孤立させてはいかぬというので日本が第三次円借款八千百億円を徐々にスタートしたいということを主張をして、日本が独自の立場でこれを行うということを他のサミット諸国は認めるべきだ、それは中国が改革、開放路線を通じて国際社会の一員としての歩みを進めることがアジア・太平洋のみならず世界の平和と安定にも合致するはずだということをサミットの場で主張をして、中国と日本との関係を強く述べてきたことを今思い起こしております。  同時に、ソ連もまた今、共産主義よさようなら、一党独裁さようならということで、ペレストロイカという方向に向かってきておる。そうなりますと、そこに人権的な立場から緊急な食糧援助やあるいは資金援助もしなきゃなりません。日本が経済援助しないのはけしからぬではないか、政経不可分と言わないで、領土問題は領土問題、援助問題は援助問題、援助したらどうかということは逆にサミットの場でECの一部の国の首脳から私は名指しで言われたこともありました。けれども東西関係を本当に解決する残滓としては北方領土問題が日本に固有の問題として残っておる、東西関係をヨーロッパだけで終わったからといってあなた方終わりにしないで、アジア・太平洋地域でも東西関係の終えんをきちっと目で見えるようにしてください、無原則な政経分離はできませんということを言いましたが、ソ連は今世界じゅうに経済援助、人道的な援助を求めなきゃならぬということは、ある意味ではこれは改革のまさにさなかであるということでありまして、私はそれは孤立ではなくて、同じテーブルに入ってお互いに協力しながら、お互いに決断しながら安定的な友好関係をつくっていこうとしておる状況でありますから、国連に協力するという以前の問題として、それぞれの国の経済が安定するように人道的な立場の援助あるいは緊急援助をソ連には日本世界の国もしておりますし、IMFや世銀が中心になってソ連に対する長期の融資の問題について相談が今着々と進められつつあるさなかでありますし、中国には八千百億円の第三次円借款のスタートを昨年から徐々に日本は協力で開始しておるわけでありますから、経済的な問題という意味からいくと多国籍軍に、国連にお金を出すということができる状況の国とできないのだということがわかった国とがあるならば、できる状況だと言われた、名指しされた日本が、世界のGNPの一五%近くを占めておる日本が、これはやはりその面では積極的に協力をしていく、先頭に立ってやらな ければならぬということもまた次元の違う問題として御理解をいただかなきゃならぬのは当然の筋道ではなかろうか、私はこのように認識をいたしております。
  37. 松永光

    松永委員 先ほども申したとおり、我が国は国際平和と国際協調の中でここまで発展を遂げてきた、これからの発展も国際平和と国際協調の中で、それで初めて日本の将来があり得る。これはもう日本の置かれている基本的な条件であり、それを無視しては日本の存立はあり得ない。我々は何も経済的に豊かになろうと、そのために国連に対する貢献をするわけではないが、やはり日本国民として、子孫のためにも日本国の名誉を守っていきたい、国際社会からすばらしい国だ、そう信頼され、尊敬される国になるために、貢献というものは、人から言われるまでもなく日本の国力、日本の経済力にふさわしいものをきちっとやるというのでなきゃならぬと思うのですね。しかし、同時にまた政治というものは、国民生活の安定、日本経済の発展、これも当然考えていかなければならぬわけであります。  最近いろいろな方面から私どもが聞く話としては、アメリカにおける対日批判、大変厳しいものがあると聞いております。数年前から特に経済摩擦、大変厳しくなってきておるわけでありまして、それを国際協調の中で、信頼の中で解決をしながら経済の発展もなされてきたわけですね。日本に対する非難が厳しくなってきた状況のもとで、日本の貢献が、今次の平和回復活動についての日本の貢献がなされないということになりますというと、先ほど言ったように、日本の国際信用は失墜する、日本に対する信頼も失われる、軽べつされる、そういう状況になった場合には、私はやはり心配するのは日米関係ですね。日本アメリカとは日米安保条約に基づいてあらゆる面での協力をし合うという同盟国の関係、この関係にひびが入った場合には、私はいろいろな面で大変厳しいものが出てきはせぬかということを心配するわけであります。  そこで、通産大臣にお尋ねしますが、日本の貿易政策あるいは資源政策、通産政策を預かる大臣として、日本のこの国際貢献のあり方、それを失敗した場合における日本の受けるダメージ、それに基づく日本の経済、果たして将来の発展が保てるか、国民生活の安定を保ち得るか、あるいは安全保障上、これは外務大臣もそうでありますけれども、こういった問題についての通産大臣の所見を伺っておきたいと思うのです。
  38. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 日ごろ大変兄事しております松永委員から、特にまた通産行政にもベテランでございます松永委員からの御質問でございますが、私も率直に、私のまた考え方も述べながら申し上げたいと思うのでございます。  まず私は、今のお触れになりましたこの現局面が貿易関係あるいは日米摩擦関係あるいはその他その他の問題に対してもどのような結果をもたらすのか、こういう御質問になりまする前提として申し上げなければならない立場もございます。  そもそも御案内のとおり、この二、三年は世界は激動期でございます。なかんずく昨年に至っては、考えられもしない世界の蠢動、激動があったことは申すまでもございません。先ほど申し上げましたような、総理の御答弁にもございましたような考えられもしない七十年の、言うなればロシア革命以来の伝統が破られてあのような形にもなりました。そしてまた、中国の異変もございました。かというて、アジアに異変がなかったわけでもございません。  そういう中にあって私が思い出しますのは、どうしましても、あの十数年前に田中内閣総理大臣とそれからニクソン・アメリカ大統領との間にグアム・ドクトリンというのが発せられたことがございます。その際に言われた言葉の中の何項目かは定かでございませんが、ともどもオープンソサエティーであるべき、開かれた社会を堅持するために、あくまでもコンテインソサエティー、すなわち閉ざされた社会をオープンにしていくことに我々はともども協調していこう、チャレンジしていこうということを述べたことがございます。まさにそれから十数年、完全にある意味においてはオープンソサエティー、開かれた社会に世界はなったわけでございます。このときにこの不祥事が起こったことも、これまた現実の姿でございます。  そういうことを考えますると、その十数年前の日米関係の状況はどうであったかといいますと、貿易インバランスが百億ドルレスでございました。百億ドルレスであった貿易のこのインバランスが百億ドル以上になったらばアメリカ日本の国は許すまいぞということは、アメリカの議会のほうふつたる声として聞こえてまいったことも事実でございます。それから十数年間、私も日米関係の貿易摩擦を常に心配をしながらもやってきた人間ではございますけれども、その間にまさに五百数十億ドルに至るまでもこのインバランスは伸びていった。昨今は多少減りましても、まあ少なくとも四百億ドル内外というものを絶えず上下しているわけでございます。これではアメリカの不定愁訴が高まるのみでございましょう。  そういう意味におきましてこの湾岸問題をとらえて考えてみましても、ここに私も総理が絶えず読み続けておられる憲法の問題にも触れなければなりますまいが、ここに、憲法の中に明快に書いてある言葉の中に、  人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。 私は憲法を間違えた読み方をしてはいけませんので、そのまま持ってまいりました。そこで今読ませていただきました。  この中にあって、日本の国の世界の中における立場というものは、孤立して生きるわけにはいきません。そして、保護貿易に世界がなるような方向に行ったらば、日本の生存権は奪われます。あと一つ、もっと単刀直入に言うならば、自由貿易を閉ざされて日本の生きる道はないのでございます。したがって、私どもは、他国から資源を輸入し、それを再加工し、それを外国に買ってもらう、これが戦後少なくとも四十数年の間一貫して灰じん、廃墟の中から立ち上がった日本の国が積み上げてきた日本努力であり成果であり今日の日本の繁栄である、これは私の考えでもあり、全国民の考えであるべきであろうと思うのであります。  その考え方の中に立って考えてみますると、もし日本の国が、先ほど総理が申し上げておりますように、この名誉ある日本の国の世界におけるステータス、これを失った場合に、日本の国にどこにレーゾンデートルがあるのか、どこに生存権があるのか、どこに一体日本の行くべき道があるのか。我々は子孫に必ず不名誉を残すだけであるということを考えたときに、何をとっても日本の国は自由貿易に立脚して、保護貿易に移行するような世界というものを我々はなすべきものではない。そのことを脱却するためには、私どもは命がけでこれを守っていく、そのためのすべてが所作でなければならぬ、すべてがそのことにかかっておるということを、私は申し上げておきたいと思う次第でございます。
  39. 松永光

    松永委員 今、中尾通産大臣が申されたとおりでありまして、国際協調、相互信頼関係、これが自由貿易体制を維持する土台ですね。その中においてこそ日本というものが生きられるという条件下に我が国はあるわけでありますから、生きていくためにも、先ほど来申し上げておりますように、国際社会日本の国力に応じた貢献をし、そして日本の信頼をあるいは信用をずっと保持し続けていくことが、これが生きるための前提条件でもある。孤立しては生きられない、そういう日本であるということを我々はかみしめなければならぬと思うのです。そのためにも、総理、この九十億ドルの資金面の支援、これは何としてでもなさなければならぬわけでありまして、そのためにはより一 層、国民の負担も伴うことでありますから国民の理解をいただき、また野党の理解もいただいて、何としてでもなし遂げることができるように、ひとつ総理、大いに頑張っていただきたいと思うし、また国民に対する訴えもあるいは御説明も総理から直接いろいろな機会を通じてしっかりやっていただいて、国民の理解と協力が得られるように頑張っていただきたい、こう思うわけでありますが、総理、どういう御決意ですか。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私がきょうまでいろいろと考えて申し述べてきましたことは、今松永委員おっしゃるように、これは日本の国のきょうまで置かれてきた立場、我々が今日この平和を享受しながら生きておられるという、安定した、しかも正義秩序基調とした世界の平和があくまで大前提でありますから、その平和を守っていくために、その平和の中で豊かさを享受し今日の平和を満喫してきた日本が、国際社会の大義を守るという立場に立っておるということを明白にすると同時に、戦後自分の国のことだけを考えて、人に迷惑をかけないようにして、人に迷惑をかけなければ、ひっそりと生きていけばいいというような、目立たない、小ぢんまりと自分の国のことだけを考えておればよかった時代はもう終わっておるのだ。好むと好まざるとにかかわらず、世界にこれだけ大きな相互依存関係を持ち、恩恵を受けながらその中で生きているということは、それなりのやはり責任と分担と応分の支援を国連決議で要請されたらそれにこたえていくということは、まさに今回九十億ドルを決断をしてそれに対する御議論をいろいろお願いをしておる背景でもあるわけであります。  そして、そういった中において、日本が今後国際社会の中において、ともに日本とつき合っておっていい国だ、皆がそう認めてくれるように、ややもすると日本は調子よ過ぎるのじゃないか、ルールが違うのじゃないかと言われないように、でき得る限りの努力をしていかなければならぬわけでありますから、私は、今回のこの現実の御審議願っておる九十億ドル支出の問題についてはもちろんのことでありますけれども、平和が回復し同時にその後あの地域の経済の再構築のためにも、また先行きどうなるかわからない垂れ流しにされた原油による海洋汚染に対して、どのような国際的協調、協力ができるかという問題についても日本は今後とも積極的に参加をして、日本の持っておる経験とか知識とかいろいろなものをでき得る限り提供をしながら協力をしていかなければならない。そういうことに対して真摯な努力をしていくということが国際社会において名誉ある地位を占めることができる、憲法で宣言をしたような、そのような日本の行方につながっていくのであると私も確信しておりますので、ぜひ御議論、御理解の上、九十億ドルの問題についても、近く提出いたします予算のために皆様方の御理解あるお力添えを得たいと思うわけでございます。
  41. 松永光

    松永委員 この湾岸平和回復活動、すなわちクウェートからのイラク撤退、これは一日も早く実現することが望まれるわけでありまして、しかし私は、そうそう冷静な判断力や理性をフセイン大統領持ち合わせていないんじゃなかろうかというそういう話も聞きますけれども、しかし、それにしても私は、いずれは、あるいは近いうちにはクウェートから撤退するでしょう。またそれが一日も早いことが望ましいわけでありますが、それが、一日も早くその日が来るように外務大臣もきのうイラクの大使を呼んで説得されたということでありますけれども、そういう説得活動、あくまでもクウェートからの撤退というのが前提条件でありますが、これからも和平の日が一日も早く来るようにそういう活動は大いにひとつやっていただかなければならぬ、こう思うのでありますけれども外務大臣どうですか。
  42. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員御指摘のように、イラククウェートから撤兵をして、安保理決議六六〇を遵守していく、そしてクウェートの正統政府の復権を認めるということで国際社会は、この紛争は終わるわけであります。子供たちも死ななくなるわけであります。この決断をするのはイラクのサダム・フセイン大統領以外にないのであります。私は、テレビのニュース等でたくさんの子供が死に婦人が傷ついている姿を見てまことに気の毒に思っている一人でありますけれども、それは、その国の為政者の国民に対する一つの大きな責任ではないか。我々の国もかつて過ちを犯したことがあった。我々はその反省に基づいて、イラクに対して海部総理は何遍かこの無謀な考え方を変えるように忠告をされてきました。  私どもは、今平和を求めながら、きょう日本時間で十四日の午前六時五十八分から国連の安保理におきまして、安保理の公式会合、湾岸情勢に関する安保理の公式会合が非公開とすることの動議でこれが採択をされまして、そしてきょうの審議が終わり、次回の会合は十四日午前十一時、日本時間の十五日の午前一時に予定をされておりまして、この場で、日本理事会のメンバーではございませんけれども発言をすることになっております。日本政府の考え方は、国連決議の遵守と一日も早いクウェートからのイラク軍の撤兵、平和の回復ということをこの場で強く主張いたしたいと考えております。
  43. 松永光

    松永委員 イラククウェートから撤退してそして平和が回復したならば直ちにやらなければならぬ問題は、荒らされたといいますか、破壊されたでしょう相当、その復旧作業、クウェートもあればイラクもあるかもしれない、その地域の復旧作業、これは大変な作業だろうと思いますね。あるいはまた相当の人が傷ついておるかもしれない、これに対する医療活動、あるいは先ほど総理の話にもありましたけれどもイラクによって流された大量の原油、これによる海の汚染、これをどう復旧していくか、こういったもろもろの復旧活動あるいは医療活動、こういったものが実はあると思うのですね。今度の平和回復活動についての日本の協力の仕方はあるいは余りにも遅いという批判があったかもしれません。しかし、そうした平和回復後の復旧活動その他については、遅いという非難が起こらぬように、私は迅速に取り組むべきじゃないか。  幸いに、去年の十一月、この三党合意事項というのがあるわけでありまして、この中で、やはり国際緊急援助隊法の定める災害救助活動、こういったものもきちっとやらなければならぬということが合意されているように私は受けとめるわけでありますが、この三党の合意、覚書、これはまあ三党間の覚書ではありますけれども、やはり政府がある程度案を用意して、それに基づいて各党の合意を得る、そういった上で遅いなという批判が起こらぬように、平和回復後のもろもろの復旧活動や医療協力活動やあるいはまた海上汚染を除去する活動、これはてきぱきとやらなければならぬと思うのですね。その場合に、能率的に仕事のできるチームを編成することが一番大事なことですね。そういったことに手抜かりがないようにしなきゃならぬと思うのでありますが、その点について、まず三党の合意、覚書に基づく作業というものは粛々と進んでおるのじゃなかろうかと思うのでありますけれども、事務方どうですか、これは。じゃ、大臣よろしく。
  44. 中山太郎

    中山国務大臣 ただいま委員御指摘の、自民、公明、民社三党による国連の平和協力活動に対する前国会での合意事項というものは、現在もそのまま議論の資料として、覚書として生きておりまして、三党間でいろいろと御協議をいただく、また政府もその御協議の進行状況について十分御意見をちょうだいしながら、政府は政府なりに研究をしなければならないと考えております。
  45. 松永光

    松永委員 今も申し上げましたけれども、今までの法制で果たして迅速な、そして有効、適切な災害復旧活動というものが海外でできるかどうか、この点もこの三党間で議論をして、そして現在の国際緊急援助隊派遣法、これが十分であるかどうか、十分でないならば、より充実したものに直しておく必要があるのじゃないか。また、医療協力についてもしかりでありまして、これも今までの仕組みのままでいいのかどうか、これも検討 する必要がある。あるいはまた、流出原油に汚染された海上の浄化作業、これも果たして十分な浄化作業ができるようなチームの編成が速やかにできるのかどうか。いずれにせよ、そういう諸般の準備というものは、平和が実現したならば素早く対応して、今度は、遅かったなどという批判を受けないようにしっかりやってもらいたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 激励を交えて、また、私の尊敬する松永先輩がいろいろな御議論を展開をしていただきました。きょうのこの議論を念頭に置きながら今後さらに進めてまいりたいと思いますが、二点について端的にお答えいたしますと、湾岸危機が幸いにして一刻も早く平和解決するようにという願いが達せられたときに、その地域に、遅くならないように、遅過ぎると批判を受けないように直ちに対応しろということでございました。当面私どもは、二つの点は直ちにしなきゃならぬと思っております。  その一つは、各国の実情に応じた経済の再建、復興のために日本が協力をするということであります。同時にまた、被害を受けた国のみならず、イラクとの間にもきょうまでは長い間経済協力の積み重ねがあったわけでありますし、イラク侵略をする前日の八月一日までは混合借款の問題等についてのいろいろな経済協力の話が続いておったわけでありますから、七千億に上る債権債務関係が残っておるということも長い間の積み重ねがあったわけですから、国際社会の一員として国連憲章原則を守って復帰されれば、経済の再構築をするとともに、イラクを含むあの地域全体の国の経済復興、再建に日本は直ちに積極的に取り組んでいかなければならない、二国間も国際協力間も両方踏まえてしなきゃならぬと思っております。これが一つです。  もう一つは、原油が大量に流出されるという極めて多くの人々にとって深刻な問題を提起しておりますから、これはこの間のOECDの環境閣僚会議環境庁長官、国会中でありましたが直ちに飛んで参加をして、国際的なスキームをつくること等についても議論してまいりましたが、この問題は直ちに取り組んで、あの問題についての協力体制の中に日本も入ってやらなければならないと思っております。  少し中長期になるかもしれませんが、一つは、先ほど来申し上げましたように中東和平問題について、パレスチナ人の民族自決権の実現、イスラエルの占領地からの撤退と生存権の承認を基礎に置く公正な、包括的な和平の追求をするために、国連の場を通じながら国際的な話し合いの場というものを積極的につくり、日本もそれに参加をしていかなければならぬということでございます。  もう一つは、なぜあのようなことが起こり、なぜイラクにてこずったかということの歴史を振り返ってみると、イラン・イラク戦争並びにその前後を通じて大量破壊兵器というものをイラクがたくさん持つようになった。核の拡散とか大量破壊兵器の製造の協力とか、あるいは通常兵器でも余り野方図な移転ということはやめていかなければならない。そういった兵器の透明性、公開性といいますか、地域の安定、地域の安全保障のためにやらなきゃならぬ多国間の枠組みが必要であります。  こういったこと全部を統合して達成されるあの地域の平和というものを永続的なものにしていくように日本努力を続けなきゃならぬということは当然のことであり、また遅過ぎるという御批判を受けないように積極的に対応をしてまいりたい、こう考えております。ありがとうございました。
  47. 松永光

    松永委員 しっかり頑張ってください。  これで終わります。
  48. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて松永君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  49. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今まで約一週間にわたって当委員会におきまして、湾岸戦争をめぐる諸問題、特に前国会で廃案となった自衛隊の海外派遣という問題を新たに政令として公布した、この事実についての委員会での深い討論がございました。また同時に、この湾岸戦争に対して我が国としては貢献をしなければならぬという熱意から、九十億ドルの湾岸戦争への支援というものを決断をされたことをめぐっても、その性格、その積算根拠、その使途などについて深い討論が今日まで行われてまいりました。きょうは集中の審議でございますから、我が党の委員が幾つか議論をして積み残しているものも含めながら、総理並びに関係大臣に御質問をさしていただきたいと思います。  最初にお聞きしますが、一月の十七日に湾岸戦争が始まったのを契機に、アメリカ側から、日本の自衛隊の協力ができないかという意味のお尋ねがありましたか、なかったのですか。
  50. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 お答えいたします。  アメリカから先生が御指摘のような具体的な形ではございません。ただ、アメリカの一般論として、従来から日本の人的貢献を期待するということは言っております。
  51. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、日ごろからアメリカから日本に、軍事的な国際的な協力に日本の軍事力を援助願いたいという要請は今まであったということですか。
  52. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生が御指摘のような軍事面での貢献ということはアメリカは一切期待しておりません。私が申し上げましたのは、一般的な人的貢献ということでございます。
  53. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、私が最初ここで御質問をさせていただいたときに、IOM、国際移住機構ですから、国際連合で今度のような戦争が始まったときに難民などとして住居を移すその移住という問題についていろいろ便宜を図ろうとしている機構、これがIOMというのだと思いますが、この国際移住機構から、重大な、新しい、湾岸戦争的性格を持つようになった段階であらわれる避難民などについて、今後我が国が貢献するとすればどのような貢献ができるかという情報を三十三カ国に出しまして、日本では民間の航空機、飛行機などでもって協力ができるの、さらには自衛隊の輸送機なども含めて協力ができるの、さらには船舶などでそれに対して協力できるのという、お問い合わせが一月十七日にこちらにありまして、それに対して我が国としてその要請について情報として回答をなさった。その回答の文書について御質問を申し上げ、その回答はどんな形で出されましたか、どんな形で回答なされましたかということについての文書を提出していただきたい、こう申し上げてきたのでありますが、ようようけさに至りまして日本政府の当時の回答を文書にしてお出しをいただきました。外務大臣の御答弁のおかげと感謝をいたしております。  ところで、その文書によりますと、関連する部分だけ申し上げますと、「民間航空機については、もしIOMから具体的な要請があれば、政府として、安全確保を前提として民間航空会社に要請する用意があると共に、」IOM、国際移住機構の方から民間航空機について援助してくれということが要請があれば、政府として安全確保を前提にそれを要請する用意があるということを言うとともに、「他に方法がない場合には、」民間航空機では、それ以外の、その方法がない場合には、「自衛隊輸送機について色々な場合を想定し必要に応じ、その使用を検討することとなった。」こういう回答文書であります。「他に方法がない場合には、」というのは、恐らく現地の情勢の中で民間ではどうも輸送する諸般の情勢がないなという、そういう状態を判断をして、IOMがやはりこの際は軍用の輸送機がいいなというふうに判断して要請するという意味だろうと思いますから、ほかにはない場合には「自衛隊輸送機について色々な場合を想定し」というのは、どういうふうにお考えになったか知りませんが、きょうは時間も、午前中はこの派遣問題に絞りたいと思いますから、この中身については後の同僚委員に審議を譲るといたしますが、ここで「自衛隊輸送機について色々な場合を想定し必要に応じ、その使用を検討することと なった。」こういう文書が公に回答されたわけでありますから、私の判断しますには、国際的に公の機関に我が国が、必要があれば、IOMからの要請があれば自衛隊輸送機というものを、軍用機ですが、これを派遣する用意があるための準備にかかっているということを公に示したのがこれが初めてだと思いますが、総理、いかがですか。
  54. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題がありますので私の方からお答えさせていただきたいと思いますけれども、まず、先般先生御自身に私から申し上げましたけれども、このIOMの回答の中での自衛隊輸送機のところにつきましては、先般まさにそういう言葉を私使いましたけれども、まさに情報としてIOMにそういうことを伝えたということを申し上げたわけです。  この背後にある考え方は、海部総理が一月の十七日の段階で記者会見におきまして、当時は被災民という言葉が使われていましたけれども、被災民の輸送については、人道的立場から民間航空会社に要請するとともに、いろいろな場合を想定し、必要に応じ自衛隊輸送機の使用を検討する旨発言されました。それから、十八日の国会の演説におきまして総理から、避難民の移送を安全確保を前提として民間航空会社に要請を行う、他に方法がない場合には、必要に応じ、自衛隊輸送機の使用についてもその可能性を検討する旨発言がございましたので、この発言を念頭に置きまして、まさに情報としてIOMに同様なことを伝えたということでございまして、その検討の結果可となるか否となるかということまでは言っていないということはぜひ御理解いただきたいと思います。
  55. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 総理が国会内外で自衛隊派遣の検討をなさっているということを外務省がつかんでいるので、外務省はこの回答に当たってその総理の意向を踏まえて、この派遣について今検討することとなったという情報を公式にお伝えになったということでございますね。
  56. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいま申し上げましたとおり、自衛隊の輸送機を現実に使うことになるかどうかという点については触れずに、検討することになりましたということを情報としてIOMに伝えたということでございます。
  57. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その回答文書をおつくりになるとき、外務大臣は関与なさいましたか。
  58. 丹波實

    ○丹波政府委員 事実関係の問題でございますので。これは、先般先生に私お答え申し上げた中で、ジュネーブの代表部に対する訓令を発したと。その訓令を発出するに当たりまして外務大臣の御了承を得るのは、当然の手続として踏んでおります。
  59. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その際に、我が国では前国会におきまして国連平和協力法が廃案になった過程で、日本国民意思は、日本国憲法という条件があるので、国際的には大いに協力をしなければならないと考えるけれども、そういう経過があるだけに、自衛隊の派遣は、緊急で人道的ではあるけれども、これについては検討はしているが、日本の国内でのその状況も同時に大使に伝え国際的に明らかにしておきませんと、我が国で、何でこの大変な大事な人道的、緊急な課題のときに、日本という国は積極的に協力するとなぜ言わないで、おかしな議論を国会でやっているじゃないかと諸外国の人が思うと思います。  したがいまして、我々は国連に対して物を言い、世界に物を言うときには、我が国の主権に立って、主権の立場に立って、日本国民意思がどのような、憲法という考え方に基づいて、今世論の動向がこうであり、国会としてはこうなってないということぐらいは言える立場の情報を同時に提供しないと、いろいろな場合を考えて検討いたすこととしております、これじゃ世界のだれもわかりません、何のことか。それだけに、我が国の平和憲法のもとにおける外交のあり方というものについても、このような文書の中にはもう少し配慮すべきだと私は思います。外務大臣、いかがですか。
  60. 中山太郎

    中山国務大臣 私は率直に申し上げまして、IOMから日本政府に寄せられたこの公文書によって記せられておりますように、IOMがさらなる輸送努力に要する商用機の数は、その努力を増加しても、一生懸命努力をふやしてみても恐らく不足するであろうと国際移住機構は予測をしておる、こういう前段の文章がございまして、もう民間機はどうにもならないということで、その場合に対応するために関係国に軍用機の手当てはできるかどうかという問い合わせをしてきたことに対する日本政府の考え方を伝えたわけでございますが、日本憲法の考え方というものは、委員もよく御存じのとおり、長い戦後の歴史の中で各国は十分日本のこの厳しい憲法第九条の考え方というものをよく認識しているということを、私は外務大臣として自信を持っております。
  61. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 繰り返し言う必要もありますが、我が国が国際移住機構、国連の正規機関から情報提供を言われたときに返す回答の一つの文書になるわけであります。これは初めて海外への我が国の自衛隊の派遣ということを決断するかどうかという我が国の国政上の基本問題でありますから、それだけにシリアスな扱いをすべきであるというのが私の主張でありまして、これ以上議論をしてもしようがありませんから、私の考え方を申し述べさせていただいたまででございます。  さて、このときに既に総理は、今度はこれを検討するときには国会で議論をしなくても政令で出せばいいと既にそういう回答の当時に御判断をなさっておりましたか。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、要請を受けたときには、これは日本としてあらゆる可能性を検討しなければならない、そう判断をして、それからたしか二十何日でございましたか、きちっと決まるまでの間、いろいろなものを調べたり、また昨年以来、どのような姿かたちの貢献ができるのか、そういったようなことについてはいろいろな角度から検討も続けてきておりましたので、早急に対応するためには、ここに法の根拠がある、これに従って、要請が具体的にあった場合、どうしても出さなければならぬ場合、出し得る準備をしなければならぬという判断をいたしました。何月何日の何時何分と言われるとちょっと困りますが、そんなに時間的な、日時的な幅のないときでございました。
  63. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、我が党の部会長藤田議員がこの当委員会最初にテレビを通じて御質問をした際に、総理は、自衛隊法第百条の五で自衛隊の海外派遣を可能にしていく、政令で処理をする考え方を述べられました。  ここに議事録がございますが、自衛隊法の第百条の五は「航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」これだけ書いてあると言って、そして、どうしてこの法律に「政令で定める者」ということが出ているんだろうか、これはおっしゃるように、法律に従って政令で定めなさい、政令で定めもしない者を運ぶことはいけないけれども、政令に定めた者は運んでもよろしい、本来の任務に支障を来さないようにやれと書いてあるわけですから、私は政府の責任において、この「政令で定める者」ということを政令できちっと書いた場合には、この百条の五の授権の範囲内であって、どう考えてもそのように百条の五を読むことができますとお答えになっていますね。これは確認できますね。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その考え方でございます。
  65. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 前もって明らかにしておきますが、私たちも、この湾岸に起きている事態というものを、人道的見地から緊急に対処しなければならない国際的な課題を私たちは担っていると思っています。そのために我が国が何をすべきかということを皆さんと同じ立場で考えております。  違ったのはどこかというと、違っているのは、これを、前国会で廃案になったにもかかわらず、自衛隊の海外派兵が国民意思として認められなかったにもかかわらず、緊急なるがゆえにできるんだというふうにして政令という形、国会の審議抜きに、法律でなくて政令という形で、一種の行政命令でこれができるという方法をとろうとしているところが皆さんと私たちの意見の違っているところです。  そこで、もう一つお聞きします。  こういうふうに問題を立ててまいりまして、今民間の方々が努力をして、政府の皆さんも今日まで随分御努力をなさって民間の航空機をチャーターして飛ばされました。それの評価は、高く評価します。それでもまだだめだということで、同時にまた日本国民の中には、日本では自衛隊を海外派兵するということは憲法があるからできぬのじゃないか、そういう気持ちも一方に働きながら、しかし貢献しなければならぬと思うから、民間の人たちも自分たちでお金をつくって、アンマンからカイロに向けて飛行機を飛ばせる努力をし、我が党の土井委員長もその任務の一翼を担って、お送りすることを成功させてきたわけであります。  さて、そこで、したがいまして、皆さんと共通の緊急性、人道上の必要性という政策上の問題では一致していますが、その扱い方について、今の法律でいくのか、政令でいくのかというところが今国会の大争点になっているということでございます。  さて、そこでお聞きしますが、先般我が党の佐藤敬治委員が第百条の五について質問をなさいました。その際にこの百条の五の見出しというのは非常に簡単なことが書いてあるということから、見出しについて法制局長官に御質問がなされました。そのときの法制局長官の回答は、ここに議事録がございますが、この法律の中に、この百条の五の法律の横には国賓等を輸送するという見出しがついております、この見出しは、いろいろおっしゃった後、理解に資する等々の役割が当然ここにあるものだと考えておる、つまり、六法の勉強なんかするときにそこを見ると、何が書いてあるなということがわかるものとして、資するものとしてある、こう言われ、そこで我が党の佐藤委員は、百条の五の右肩に「国賓等の輸送」と書いてあるが、「等」というのはどういう意味ですかということで、その「等」の中に国賓その他の、例えば今の難民や避難民、これも含まれるという理解を法制局長官は何度も今までのように御説明をなさいました。  その中で我が党の佐藤委員は、「国賓等」の「等」の中に、どう見ても、国賓、それに準ずる者を「等」というのであって、国賓に準じない、外に相当離れた避難民はこの「等」の中に含まれないのではないですか、こう質問されましたのに対して、工藤政府委員はこういうふうに明快にお答えになっております。「見出しに「国賓等の輸送」とございます。したがいまして、国賓あるいはそれ以外の者、等の範囲の者の輸送をするというのがこの見出しの趣旨でございます。」こうおっしゃっています。「したがいまして、国賓あるいはそれ以外の者、」ですよ。「国賓あるいはそれ以外の者、等の範囲の者の輸送をするというのがこの見出しの趣旨でございます。」とおっしゃっていますが、これはお変わりございませんね。
  66. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先日の百条の五の見出しに関します御質問につきまして、内容の理解あるいは検索の便に供する、こういうふうなお答えを申し上げました。その際に、この条文では「国賓等の輸送」という見出しがついております。「国賓等」というのは、国賓とそれ以外の者、そういう意味で「等」がついている、それの輸送、こういうことであるという趣旨で申し上げました。
  67. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 「それ以外の者、」とおっしゃっています、あなたは。「国賓等」というのは、これは後で言いますが、「国賓等」というのは国賓ないしはそれに準ずる者という意味の「等」であって、その「等」の中に、この百条の五は国賓も運ぶんだが、同時に難民も運べるという中身が含み得る政策上の判断があるからこの「等」の中に含むんだ、その意味でその他の、こうおっしゃっている事実だけをまず確認しておきます。  きょうはこれだけで時間とると大変ですから、そこで一つ申し上げます。  皆さん方法制局が出すあんちょこは「法令用語の常識」といって司法官試験受けるときもみんなこれが大事なテキスト、重要な基準でございます。これをお書きになったのは元の法制局長官林修三さんでございます。この中にはわざわざ「見出し」という項を置いて、法律で書く見出しというのはいかに重要なものであるかということを説いておられます。そこの一部分だけ引用しましょう。  「一つの条文についてだけつけられている見出しは、」今回のような場合ですね。「一つの条文についてだけつけられている見出しは、その条文と常に運命をともにすべき性格、」言葉をかえて言えば、「その見出しのつけられている条文の一部といってもよい性格をもっている」ものであります、こう非常に明快に述べておられます。二つある場合にも、二つをくくってつけることがあるが、一つの場合には非常に明快なわけです。そして、「見出しの書き方が、その見出しによってカヴァーされる条項を解釈する上の一つの手かがりを提供しうるものであることは、当然考えてよいこと」であります。そして、その後に重大なことをおっしゃっています。最高裁判所が判決を行う場合にも、見出しの文言から、その条文の解釈をしたこともございます。見出しというのはそういう大変なことなんです。だから、百条の五に言っているところの見出しの「国賓等」というのは、まさにこれが中身そのものを意味する性格の見出しだ、そう考えなければならぬということをこの見出しをつけるようになった以降の判断として元法制局官は、これが皆さんのあんちょこですから、司法官試験受ける人も、法律家になる人はこれは常識になっているのですから、そこで明快に述べている。  一番最後に、特にこれは注意しなければならぬ、見出しというのは簡単なものじゃないということをおっしゃったのは、編集するときに見出しを編集者がつけるのと、法律を出したときに、つまり出した見出しとは区別しなければならぬ。便宜上にある見出しじゃないんです。ここに、法律を発布するときにつける見出しは、法律のその中身を規定する重要な見出しだから区別しなければいけませんということをわざわざ、「六法全書を利用する人は、この両者を見誤らないようにすることが必要」でありますと書いてあります。  この趣旨から見て、法制局長官が今までお述べになった、先ほど議事録を述べましたが、「国賓等の輸送」の「等」は国賓に準ずる者、だからこれに合わせた施行令は三権の長それから国賓などの具体的な例示でもって施行令で示してある、こういうふうに理解すべきだ、こういうふうに思いますが、法制局長官、いかがですか。
  68. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 見出しの議論につきましては、先日佐藤委員にお答えいたしましたときの議論、中身で申し上げますと、昭和二十二年あるいは二十三年ごろ以降見出しが原則つけられるようになった、それ以前にはついていなかったということ。それから、見出しというのはいわゆるそこの条文の内容の理解なり検索のためにつけられており、これは法律を、例えば今回の自衛隊法でございましたら自衛隊法の改正を政府提案いたしますときに、もうその時点から当方としてつけておりますということ。それからさらに、いわゆる条文の内容の理解あるいは検索ということで、言ってみれば条文の内容を端的にあらわすようなもの、こういう趣旨でございますから、そういう幾つかの観点を申し上げたわけでございます。また、いわゆる法規範といいますか、規範性を持つものは、その見出しというよりは、むしろその条文のそれ自身に書かれていること、こういうことでございます。  それで、そのときに申し上げましたが、「国賓等の輸送」、こういうことはまさに書かれておりますように「国賓等の輸送」でございます。それは百条の五、一項にもそのようなことが書かれております。それを内容を端的にあらわすものとして見出しがつけられた、かように考えております。
  69. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まあ、これを議論していたら、明確に違っているところだけ申し上げます、国民の皆さんわかるように御判断いただけばいいのですから。明確に違っているところ、この百条の五の見出しの「国賓等」の「等」は、先ほど述べたように、最高裁判例を下す際にもこの見出しで判決が下さ れるほどの、内容を特徴的に示した、シンボライズしたものだということです。したがって、簡単にこの「等」を、「国賓等」の「等」の中に、ここの法律で言っているこの「等」に難民と国賓、何も今難民の方々を人権的に差別する意味ではなくて、国賓という立場、国賓というのは皆さんから尊敬されるような賓なんです。それと、不特定な難民と個人の賓とは違うのです。それを区別した上でこの中に入れているのですから、この法律の条項では、後の条文で言うことも見出しで言っていることにも違いはないということであります。そこの違いだけを述べて、次に入ります。  皆さん方から統一見解が出ました。この統一見解は、私によりますと、根本的に物の考え方が区別されていないところに特徴があります。どういうことかというと、政策上の問題、今は湾岸地域で大変な事態が起きた、難民が出ている、早く人道的に救済しなければならないというこのとき、こういうときに国際協調という我々の政策の意図からすると、これに対して何か手を打たなければならぬ、それは政策上の議論であります。政策上の議論でありますから、必要なときには、それによってお金が伴うから、法律を改正するのです。法律というのはお金を使う基準だから、我々は言うのです。法律でもって、政策の問題を法律で出してきている。今、私が法制局長官とやっているのは、今ある法律をどのように解釈して運用するかという重大なときに、政策の問題と法律論の問題をごっちゃにして問題を提起するから、大変事態が混乱するのであります。  結論だけ言います。  したがって、ここで最初の「自衛隊法第百条の五の授権の範囲と今回の政令制定との関係について」という統一見解ではその一の(二)のところで「社会的地位にのみ着眼して判断すべきものでは」ない、高位高官は。「その者の置かれた状況、国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべき」だというのは、新たな事態に対する国の政策判断であります。政策判断は、ここで改めて今までの国会の討論などを受けて見ると、新たに法律として起こさなければこの政策判断は具体化できないぞというふうに判断することになりますから、本来は法改正という手続をとらなければなりません。その意味で、政策の問題と法律論をごっちゃにした統一見解であるというふうに私は思いますが、政策論と法律論を区別した上でこの政府見解は出したのですか。
  70. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 百条の五の第一項におきまして「長官は、国の機関から依頼があつた場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者(次項において「国賓等」という。)の輸送を行うことができる。」かように規定してございます。その場合におきまして、その「政令で定める者」というものの解釈につきましてこの前の見解で申し述べたところでございまして、それは、これに即して申し上げれば、今も読み上げましたような輸送の対象、「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」と規定されており、「政令で定める者」の範囲を特に限定していない。その場合に「前記の政令において、前記文言に代表列挙されたものとかけ離れたものを規定することは予定されていないが、かけ離れているか否かは、高位高官であるか否かという社会的地位にのみ着眼して判断すべきものではなく、その者の置かれた状況、国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべきである。」これはまさにいわゆる解釈論だと存じております。
  71. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この見出しを含めて「国賓等」は普通用いられる意味に解釈すべきで、「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」の「国賓、内閣総理大臣」はこれが例示なんです。これが例示ですけれども、国賓、内閣総理大臣及びこれらに準ずる者という内容としてこれを理解すべきであるというふうに読まなければなりません。したがって、法制局長官と我々との見解はこれもまた違う、これが今日までの予算委員会における基本的な論点であります。きょうはここで大論争して結論出すような過程ではございませんから、論点を国民の前に明らかにしたのでございます。  さてそこで、戦前の我が国憲法は、御承知のように帝国憲法の八条で重要な規定をいたしました。これは、古い憲法で定められた緊急命令というものであります。同時にまた、八条、九条にかけてこの緊急命令権というものを昔の憲法で決めています。この憲法が今度の新しい憲法に変わりまして、今やこの緊急命令的な省令、政令の扱いについては、次のように今や常識になっているのが、今日の世の中の常識でございます。  「新法律学辞典」の第三版、有斐閣の中で出ている「緊急命令」というところを読みますと、こう書いてあります。「旧憲法もこれを」、つまり命令ですね、これはドイツのものを学んでやったやつです。「旧憲法もこれを認め、天皇は緊急の場合に法律に代わる命令(緊急勅令)を発することができるとした。」これが昔の憲法であります。ところが、これに対して「現行憲法は、緊急の場合に処する制度としては、参議院の緊急集会を認めるが、緊急命令は認められていない。」緊急なときは憲法体制のもとでは直ちに休会中は参議院を召集しなきゃいけないのです。そして、それを直ちに処理することは認められていない。これが普通の考え方であります。  ですから今度、緊急にして人道的ですから急ぐという理由は同じでありますが、旧憲法のもとでは国会を無視して勅令で出すことはできましたが、現行憲法の上では国会の承認や国会の手続を踏まずしてできないというのが今の憲法の行政立法の趣旨であります。これがこういうふうに言われていることについては法制局長官もそのとおりのお考えと思いますが、今の百条を言っているのじゃありませんよ、今一般的な憲法論の解釈についてのみ聞いているのですから。
  72. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 「新法律学辞典」の「緊急命令」の項に、今委員お読み上げになりましたような記載があることは事実でございます。  それで、もう一つ私の方からお答えします場合に、いわゆる大日本帝国憲法のこの緊急命令というものを八条、先ほど委員も八条とおっしゃいましたが、第八条の第一項でどういうふうに規定していたかということでございます。「天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由り帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス」、こういうことでございまして、法律にまさにかわるべき勅令、こういうことでございまして、今回の百条の五のごとき委任政令とは当然その緊急勅令とは性格が違うわけでございます。
  73. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 こういうスコラ的な議論をやっていてもしようがない。我々の議論というのはわかりやすくせぬといけません。  そこで、これ以上この議論は進めませんが、先般相当やってみて最後に私が申し上げたのは、政府からこの政令に関する統一見解が出てきた、先ほど申し上げた。これは政策と法律論が混同している、そういう性質のものだと私は思うが、出てきた。しかし、これは皆さん方の有権解釈であります。ところが、こういう形で我が国の新しい憲法のもとで行政立法をやる場合に、行政の側では、提案することを委任していることまでは憲法に書いてありますが、中身まですべて皆さんに委任しているわけではありません。  したがって、委任をするという手続はよろしいが、中身になってきますとその枠を超えたか超えないかが問題になるというところで、では、行政権で行政側、皆さんの政府の側で考えた統一解釈と私たち立法府との間に意見の違いができたら、我が国の現行法制のもとではどうしたらいいのという質問がたくさんの委員からございまして、総理は、我が国は最高裁判所という制度があって、そこに違憲立法審査権のあれがあるので、それにお願いをする以外に制度的にはありません、こうお答えになっておりますが、それでよろしいですね。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の基本的な考え方は、今もわかりやすく言えと議論の中でおっしゃってい ますけれども、法律を読むときには、私はやっぱり六法全書に書いてあるものを、見出しも大事でしょうけれども、本文に書いてあることの方がもっと大事だと私は思うのです。そうして、法律をつくるときには法律にきちっと書くわけですから、国賓、内閣総理大臣に限るとか、あるいは国賓、内閣総理大臣または別に法律の定める者と書いてあれば、それはもう勝手にその幅を広く解釈する余地は全くないということになるわけですから、このときどうしてそういう立法の趣旨であったらそのような書き方になっていないのかなというのが私の素朴な疑問でございます。  そうなっておれば、政令で定める者と書いてないから政令で定めるだけではだめなんだなということを素直に受けとめますけれども、「内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」こう書いてありますから、政令で定めてやれということは行政の責任においてやれということですから、こちらの責任でやらせていただける範囲である、こう受け取るのはこれは素直な受けとめ方だと私は思うのです。  そして、八十一条のこと。これはいつでしたか、私が議論しているときに、そのことは憲法違反だと言って法学部の学生のころに言ったら、そういうおまえが憲法違反だと断言するのはおまえ自身が憲法違反だということを友達かなんかから言われて、よく調べたら八十一条に、憲法違反かどうかということを決めるのは最高裁判所の権限であって、一学生がおまえは憲法違反だというようなことを言うこと自体が憲法違反だということを我々の議論の中でやったことが今も頭にありますから、さっき読んでみたら、八十一条にはちゃんとそう書いてあるのですよ。そして、違憲立法審査権というのは一、これは私自身の体験からいっても、国会でつくった法律でもこの法律が憲法違反だということを判定されるのは、これは最高裁判所によって指摘されるわけなんです。  そうすると、それに従って国会はその法律を改めていかなきゃならぬ、改める努力をしなきゃならぬ。私の記憶に誤りなければ、尊属殺の刑罰が憲法違反の決め方だという判定を受けて国会でいろいろ超党派の努力をしたことがございましたから、そういうことを言っておるわけでございます。
  75. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 最近はバグダッドからアンマンに行くまでのあの道路は、避難民たちが通っていったんだが、多国籍軍の爆撃で現に死傷者が出ておることは御存じでしょう。だから今度はテヘラン、イランの方に出ているのですよ。そんな状況の中に我が国の自衛隊を派遣するんでしょう。そうすると、仮にこの自衛隊機で事故でも起きたときはどうなると思いますか。自衛隊を出すのは、自衛隊法第七条で総理がそれを命じ、八条では長官が命じているのでありますから、そんな事態が起きたときには、その人たちは、国家賠償法一条による損害賠償というものを請求する権利が出てまいります。そういう際に国は、この政令が法律に基づいた枠のものなんだからと言うだけでは済まないんです。正規の国家賠償法第一条に基づいてどのような損害賠償にこたえるかというときにこの根拠が問われる。しかも、その出動をさせたのは自衛隊法で総理とそれから防衛庁長官ですから、その意味でこれは政令で扱うものじゃなくて法律で扱わないと、そういう問題にも対処することを含めて限定的に国賓その他と書いてあるので、そんなに何でも広げていいということにはならぬのですよ。  そこで、もう時間も午前中はあと十数分ですから、私がこの間提起しました、立法府は行政府の統一解釈に対してなすべきことはない、それは、今長々と演説なさいましたが、最高裁によってやるんだと言っている。世界の国は全部違うんです。我が国でもこれは緊急に検討しなければならぬことになっております。  総務庁長官、来ていますね。昭和五十八年の臨調の最終答申、その中で、行政手続法の必要性を説いているということ。第二番目に、同じく昭和五十八年ですが、行政管理庁の諮問機関として行政手続法研究会というものができておりまして、その提言が出ていることを御存じですか。知っているか知っていないかだけです。
  76. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 承知しております。
  77. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ここにその文書はみんなありますが、時間がありませんから省きます。しかし、我が国としては非常に──これにはちゃんと法案の要綱まで準備してあります。これは昭和五十八年十一月に出ましたものです。この中で、行政立法というものをやるときに、その立法が法律に基づいているかどうかなどについて、どのような審査をするかということを含めて立法府として対処しなければならぬということの提言があることは御存じのとおりです。  そこで、申し上げます。私も勉強しました、自分で言ったんですから。ここが日本の制度の穴だなと思ったんだけれども、よくわからなかったから、それ以来勉強しました。非常にわかったことは、ここに一冊のイギリスの行政法の本があります。これでイギリスの制度を調べてみましたら、明確にイギリスの立法府の中にはきちんとした審査委員会というものが常設的にございます。その審査の委員会はセレクトコミッティーというんですが、その審査の委員会は必ず野党が委員長になるといって、行政府の出してきたものについて問題がありと思うときに、そこの委員会にかけることになっております。その場合の問題になるという判断の基準は何かといいますと、こうその中で説かれております。サム・アンユージュアルですから、ユージュアルでないというんですね。異常なという、普通でないといいますか、アンユージュアル。そして、アンエキスペクテッドですから、予想されない場合。異常であって予想されないような事態の行政立法の場合には、直ちにこの審査委員会にかけることによってそれの判断を仰ぐ。四十日以内に結論が出ないときはその行政立法は無効とする。こういう手続がとられることになっております。これはイギリスも、一九三〇年代からあそこは判例主義の国ですから積み上げてきた結果、行政の独裁に対して、あそこの国も我が国と同じ議院内閣制ですから、それをチェックするための制度がつくられているのが今日の姿であります。  ドイツはどうでしょう。ドイツの場合には一九七六年に行政手続に関する法典が出まして、そしてドイツの社会民主党、例えば我々の仲間であるSPDが、今度のような行政立法がありますと、これは具体的な訴訟事件もなしに直ちに憲法裁判所に提訴するという手続が備えられております。  アメリカの場合には、一九四六年以降行政手続法典ができておりまして、こういう問題は相当な皆さんの意見、関連諸団体、立法府の意見を聞いてある程度の結論が出るまでは、ここに提出することは、行政権として確定的な方向づけとして出すことはできません。  今例を挙げたのはイギリスとドイツとアメリカの例でございますが、したがいまして、我が国においても既に臨調や行政管理庁の諮問機関などを通じて、緊急に、行政立法の扱いについて行政手続法的に対応せよというのが世界の趨勢だという提言が行われているということを踏まえてみますと、私が御質問をしたときに、私も勉強足りませんでしたが、まだ全体の体系がわかりませんでしたが、その後専門家やなんかを通じて勉強を始めてみると非常に明快な諸外国の制度があるという観点からして、我が国においても、今度のこの政令が出たのを機会にして、これだけ大議論になる、立法府で大議論になる。法律に基づく政令として授権の範囲を超えたのか超えないのか。  私は、迎賓館というものがありますから、国賓が来たときは迎賓館に泊めるんですから、その中に、「等」に入れるんなら、避難民の皆さんもまさか迎賓館にお呼びするために迎賓館をつくったのではないと思うけれども、しかし、いずれにしても、この「国賓等の輸送」に関する「等」はそこの類型を言っているのであって、みだりにそれを避難民にまで拡大解釈して、緊急だという政策論でもって省令で、政令で出すことはできない、これが私たちの判断であります。  今のような諸外国の──最初に私が言って、国会では皆さんの回答がないままああいう形になりましたが、今後これを扱うに当たりましては、まず総務庁長官は、そういう一連の答申を受けて今後どう対処すべきかということの検討に入らなければならぬと思うし、その答申を受けての情勢の中で、総理は、このような大きな議院内閣制のもとで、憲法四十一条に言う国会は国権の最高機関であるという立場から、行政権の独裁が戦前の勅令的性格の扱いで扱われないようにするためにできた新しい憲法のもとで、そのきちんとした手続をとる必要があろうと思うので、後で総理の御見識をお伺いをして、午前中の質問を終わりたいと思います。まず、総務庁長官
  78. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私も詳しく諸外国の法体系を承知しているわけではございませんけれども、今お話しいただきましたような大まかな知識は私もございますし、そのとおりだと思っております。ただ、そういうことになりますと、これは私どもの所管を越えた国の法体系全体をどうするかという問題になろうか、こう思っております。  私の所管いたします行政手続法の関係で申しますならば、私はこの行政手続法というのは、政府と国民との関係をいかに律するか。いろいろ言われております、行政手続は煩瑣だ、それから各法律によってまちまちだ。それを一本にして公明、公正、透明性のある簡素なものにしよう、こういう立場からの議論でございまして、立法府とこの行政命令との関係になりますと、これは私の権限を越える問題でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  79. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今のやつはこの行政手続法研究会報告には、「命令制定手続」という項があって、こういう問題を処理しなさいという、二十七ページ以下にありますから、これはもう法案の要綱ですから、だからそういう意味で、総務庁が扱うかどうかは別として、少なくとも行政管理庁、もとは行政管理庁、今は機構改革になっていますから総務庁管轄でこの問題の問題提起をする任務はあるという意味で、御検討賜りたいということであります。総理、もう一回。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 行政手続制度の問題については、委員御指摘のとおりに、私も五十八年の臨時行政調査会の最終答申を読み返してみましたけれども、やはり国民の参加を実現するという観点から、行政の意思形成の過程においてできる限り国民の意見を尊重するようにということを中心にしていろいろな答申が出ておりました。  そこで私は、平成二年十月三十一日の臨時行政改革推進審議会、これの最初の会合においてお願いしてきたことは、我が国の行政手続の内外への透明性の向上、公正の確保を図るための法制の統一的な整備について、既往の閣議決定等を踏まえ、本審議会で早急に御検討をお願いしたいということを申し上げてまいりました。この問題は現在行革審で検討が進められておると思いますし、また早急に御結論をいただきたいと言ってまいりましたから、その検討状況を踏まえて対処してまいりたいと考えております。
  81. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まだちょっと時間がありますから、総務庁長官、たしか今月の初めにその行政手続に関する審議会が発足したと聞いておりますし、十一月にはその答申をするための作業に入っていると、これは今言った広い意味の行政手続ですよ、委任命令問題というのはその中の一つでありますが、その作業に入ると聞き及んでおりますが、そのとおりですね。
  82. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 そのとおりでございます。  今総理からお答えございましたけれども、行政立法、これにつきましては、先生御承知のとおり、この御答申でも、行政手続法の中に行政立法の問題を含めるかどうかについて検討しろ、こういう答申になってございますから、恐らくこの行政改革審議会、その部会で、これを取り上げるかどうか、取り上げるならばどうするか、こういう御相談が進んでいくと思います。
  83. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大体政府の審議会は、役所の方がちゃんと裏からテーマを決めて根回ししながら動かしていくのですから、皆さん方の方で重要なものについては……(発言する者あり)何もそれがいい悪いと言っているんじゃない、それをどう判断するかは審議会が自主的なんだ。そういうことであるだけに、こういう問題が答申があって今後扱う機関を設けつつあるわけですから、今後そういう課題を扱うように努力していただきたい。これが一つですね。  それで最後に、あと二分ほどありますから申し上げますが、先ほどからの議論は、午前中はこの問題でテーマを終わりたいと思いましたから、細かな一問一答、議論はいたしませんでした。はっきりしていることは、自衛隊法百条の五では、「国賓等」という見出しもさることながら、それによって委任された政令の枠の中では難民は含まれない、これが大方の我が国会の野党の意見であります。それだけに、行政府と私たちの意見の相違というものがある今日の状況で、しかも、諸外国のような民主的な国会運営の制度がいまだ確立してない我が国の状況でありますだけに、緊急、人道ということがあっても、前国会の結論を受けて、それ以外のことで我が国が国際的に貢献をする、そのためのいわば努力をしなければならぬ。したがって、この政令は、法の趣旨から見て違法であるという私たちの判断で簡単に発動してはならぬということを申し上げて、午前中の質問を終わります。
  84. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  85. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。嶋崎譲君。
  86. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 午後は最初に、この委員会湾岸戦争に関する支援の、重要な資金的な援助としての九十億ドル問題というもののその性格、その積算根拠、その使い方、これらをめぐって各委員の方々の御熱心な御討論がございました。この九十億ドルの問題について委員の御意見を整理しながら、ひとつ、何が今国会で大きな問題になっているのかを国民の皆さんにわかるように討論をさしていただきたいと思います。  最初に、一月に中山外務大臣、中旬ごろですね、日にちは言いませんが、続いて橋本大蔵大臣、それぞれ御任務を持ってアメリカに行かれました。そういう過程の中で、今までの討論ではどうもはっきりしてないのでありますが、大変な重大な新たな情勢が湾岸にできているので、我が国としては国際的に貢献しなければならぬ、その意味外務大臣も御対応をなさったし、橋本大蔵大臣も同じ対応であったと思います。その限り我々と意見を異にしておりません。今のような大変な事態に対して、今日いわゆる経済大国、余りいい言葉ではありませんが、そう言われている、世界から見られている我が国が、この際に何をなすべきかということを真剣に考えるのは、国政にある者としての全員の任務だと思います。  ただ問題は、貴重な国民の税金を使って御支援を申し上げることでありますだけに、国民の御理解を得て、皆さんが御提案になるものが本当に日本国民意思としてお役に立てるようになる方向でなければならぬ、こう私も念じております。それだけに、今まで行われましたこの委員会での討論の論点について、整理しつつ御質問をさしていただきたいと思います。  最初に聞きますが、中山外務大臣や橋本大蔵大臣が訪米されて御尽力されてきた過程で、九十億ドルの、いわば支援の要請というのはアメリカ側からあったのでしょうか、アメリカ側からある程度の要求ないしは示唆があったのでしょうか、これをお尋ねしたいと思います。
  87. 中山太郎

    中山国務大臣 私が訪米をいたしましたときには、委員がお尋ねの九十億ドルといったような金額を示しての話は一切ございませんでした。私は、この協力については、今後の協力については慎重に検討してまいりたい、このようなことを申して 帰ってまいったわけであります。
  88. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私が参りましたのは、御承知のとおり予定されておりましたG7、その会合に参りました機会を利してブレイディ財務長官と一月二十日に会談を持ったわけでございます。そしてその際、確かに湾岸危機への支援における日本の協力、その重要性についての発言はございましたし、私自身からも我が国国際社会における地位というものにふさわしい協力をする用意がありますということは申し上げております。ただ、今委員が限定して数字を挙げられた点につきましては、数字をもってそうした御要請というものはございません。  ただ、これを客観的にそれでは証明できるかと言われれば、これは証明のしようのないことでありますけれども、その後のいろいろな報道等をごらんいただきましても、アメリカ側自身がこの平和回復努力に要する経費というものについての確たる具体的な積算というものを持っておらない状況でございますから、これをもって傍証として申し上げる以外にないことでありますが、具体的な数字というものはこの場合にはございません。いろいろなお話はございました。
  89. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今までの審議の過程でも、そのようにアメリカ側の示唆ないし要求に基づくものではないということを言明されておられますから、それを確認さしていただきましただけですが、ただ、元我が国の経済企画庁の事務次官であられた方が、幾ら有事とはいってもこんな予算の説明は前代未聞、太平洋戦争中でも政府はもっと突っ込んだ説明をしたはずですと見解を漏らされていることが、皆さんも御承知のように報道されております。私もこの委員会での審議をお聞きいたしまして、この九十億ドルの性格やそれの積算の根拠やどう使われるかということについては私もまだよく皆さんの御答弁では納得できないところが、わからないと言う方が正確かもしれません、理解できないと言うのが正確かもしれません。  そこで、最初にお聞きしますが、多国籍軍国連憲章で言う国連軍ではありませんね、外務大臣
  90. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答えを申し上げます。  国連憲章第四十二条、第四十三条で規定されておりますところの国連軍ではございません。多国籍軍は、国連安保理決議六百六十号以降の一連の決議に実効性を与えるために国連加盟国が展開をした軍でございます。
  91. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これをわざわざお聞きしたのは、今までの答弁でもはっきりしていることだけれども、改めて国民の皆さんの前に確認をさしていただきたかっただけであります。  さて、そうしますと、この九十億ドルという多国籍軍、そこには、結果として多国籍軍になるかどうか知りませんが、途中には共同基金のところ、後でまた議論しますが、持っていって、一定分をアメリカへ行ったり他国に行ったり配分されるということになることも承知した上でございますが、この九十億ドルという支援は戦費ですか戦費でないですか、大蔵大臣。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 湾岸平和回復のために我が国として負担する費用、そのように理解をいたしております。
  93. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今までの委員会での審議でも、これは戦争に使われる費用ではない、平和回復のための努力の過程で起きている武力衝突に絡まって御支援をするお金です、これが総理外務大臣その他の大体共通した定義になっている、そう私は理解いたします。総理、それでよろしいですね。たくさんしゃべらないでいいです。
  94. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議に基づいて湾岸平和回復のために関係諸国が行っております活動に対して我が国が協力するための資金協力であると、きょうまで言ってきたとおりであります。
  95. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まずそこで、では我が国の政府は、九十億ドルというお金については戦費ではないということですね。戦費ではない。そして、国連の六七八号決議に基づいてとられた湾岸、当時は紛争でしょう。紛争に当たって支出するためのいろんな手段がとられたときに御支援を申し上げる資金なんだ、こういう性格のものと、こう理解してよろしいですね。  では第二番目に聞きます。この積算根拠は日本でお決めになったと思いますが、大蔵大臣、この九十億ドルはどのような積算根拠に基づいてお決めになりましたか。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず、事実的なことを申し上げますならば、この九十億ドルというものにつきましては、私自身がアメリカに参りました際得ましたいろいろな感触というものを総理に御報告を申し上げ、その後政府・与党首脳会議で意見交換を行いました上、さまざまな要素を、この要素というのは既に総理も何遍か本委員会でお答えになっておられますが、総合的に勘案をした上で政府として決断をしたものでございます。  その中には、委員がこれを御理解いただけるかどうか、今まで議論がなかなか各委員との間でもかみ合わない部分でありますけれども安全保障理事会決議というものに基づいて湾岸平和回復のために行動している関係諸国、さらに大きな負担を余儀なくされております湾岸情勢の現状、また日本国際社会に占めている地位にふさわしい支援という、こうした諸点を総合的に勘案され、決断をされたものであります。
  97. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 積算根拠というのは、大蔵省では今まで大変精密になさるんだが、もちろんODAその他ありますから、何もかも地方自治体が国へ要請するような細かな積算根拠でなくて支出をしていくという形態のあることも全部知っております。しかし、それにしても今のお話で、九十億ドルはどのぐらいの国際的な支援の中で我が国が負担すべきものなのかというようなこと、それからそれに当たって我が国の経済、財政というものの現状と将来を見て、これだけ負担するのがいいのではないかとか、そういう幾つかの、積算にはそれなりの根拠がなければならぬと思います。  さて、総理にお聞きしますが、総理は今まで積算根拠についてかなりまとまった御意見で御発言をなさっておられます。それ応分の負担、一言で言えばそういうことですね、我が国応分の負担。その応分の負担の根拠を説明してください。もう一度説明してください。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現在行われております武力行使、これが先どうなるかということは極めて不透明な問題でありますし、またアメリカ大統領の教書を読んでみましても、アメリカ自身が教書の中で仮置きという言葉を使って大統領が示した三百億ドルについても、これはアメリカの会計検査院というものが武力行使の始まる前に、武力行使には至らないだろうと思って仮に置いた数字であるということでありますから、大蔵大臣にいろいろ聞いてみましても、また外務大臣にいろいろ聞いてみましても、報道で伝わってくる数字はアメリカ側にもそれぞれの方によっていろいろ異なった意見、異なった数字が出ております。委員御承知のように、アメリカの議会予算局の試算でも大変な幅があることは御承知のとおりでございます。  そこで、私はお答えで何回も申し上げましたが、日本の置かれている現在の立場、そして国連決議六七八で適切な支援を求められておる、二十八にも及ぶ国々が多額の財政負担をしながら、犠牲も顧みずに平和回復活動のために多国籍軍を派遣しておるときに、それができないという我が国の立場を理解してもらうとともに、それに対する応分の協力をするんだという我が国の立場を示すためにも、日本としてはやはりできる限りのことをしなければならぬ。答弁でいろいろ申し上げてきました数字は繰り返しませんけれども日本が──繰り返しますか。(嶋崎委員「どうぞ」と呼ぶ)  そうしましたら、日本は現在、世界のGNPを粗っぽく言いますと、世界は二十兆ドルございます。そのうち五兆ドルがアメリカ、約五兆ドルがEC、日本は三兆ドルプラスアルファございます。そして、日本は最大の対外資産保有国であって、二千九百三十二億ドルの対外資産を持っております。また世界の国々と、この平和で秩序ある貿易環境の中でいろいろな国々との貿易をいたしまし た。毎年やっておりますが、結果として平成元年は、日本の黒字は六百四十三億ドルという計算と七百六十九億ドルという計算がございます。また、平成二年は通関ベースでは五百二十四億ドルと出ております。(嶋崎委員「そんなたくさん言わなくたっていいよ」と呼ぶ)いや、詳しく言えとおっしゃったから詳しく言っているんです。よければやめます。  そういうことを念頭に置いて、日本の置かれている地位、国際的にこれだけ大きな影響を及ぼすようになっておるということ、片隅でひっそりと暮らしておる国ではなくて、世界の国々にいろいろ貿易を通じても影響を与え、また平和を享受し、恩恵を受けながら生活しておる国という立場から考えて、私は最終的に決断をしたわけでございます。
  99. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それがどうして九十億ドルという数字にすっと結びつくのですか。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 途中でもうやめるとおっしゃるからやめますが、すっといく前に。それはなかなか九十億ドル、これがこうでこうでというわけに正直言っていかないのです。ですから、見通しも不透明であるし、我が国の立場に対してどの程度のものがあるのか、そういうようなことを考えますと、これはその全額を負担するんじゃない、一部を我が国は負担して適切な支援をするというのが国連の要請ですから、我が方でその一部を決めて、日本としてこれくらいはしなければならぬと決めたわけであります。
  101. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いや、それならば百億ドルでもいいし、それから三十億ドルぐらいでもいいだろうし、八十億ドルぐらいでもよかろうと幾つかの選択肢は僕はあると思う。  というのは、後でアメリカの高官が言っていることを全部正確に対置させて、国民にわかるように説明をいたしますが、九十億ドルという数字だけはアメリカの期待とそして日本の期待とどうも一致しているようであります。もちろんそのときにアメリカは、九十億ドルという数字の根拠は、積算根拠はちゃんと出しています。後で言いますが、ベーカーにしても、それから皆ちゃんと根拠があります。しかし、今のは三カ月、一、二、三カ月ぐらいに多国籍軍やこの共同的な行動をとっていくときに必要なお金の根拠だというのでもなければ、また同時に、大体四百五十億ドルぐらいの二〇%とかいうような話もいろいろあるが、そんなような根拠もなければ、結果として九十億ドルという数字はぽっと浮かび上がっているが、日本のGNPが大きいとか海外資産が大きいとか、そういう大きさで言うならば、負担の中の半分以上ぐらい日本が背負ったってちっともおかしくないと言ったら、物すごいお金になってしまいます。  そんなことはできぬでしょう。それにはおのずから我が国の持っている経済の、どんなに大きいといったって経済のそれなりの枠がある。財政運用上の枠がある。そういうものの中で、まあ九十億ドルなら三カ月でこれ以上の追加がないのならば何とか仕切れるが、これが大体期待されている世界の貢献になるのだなという世界を見た目安を立てて九十億ドルという数字を立てなければ、今のようなGNPだとか対外資産というような数字何ぼ立てても、それを根拠に九十という数字は出てきません。それだけに、貢献しなければならぬという総理の意図はわかるが、その意図と具体的な積算根拠は直ちに結びつかない、これが私の今の感想です。これは二番目の、したがって後でもう一遍ここに返ります。  さて、九十億ドル以上に今後多国籍軍、つまり湾岸基金に、GCCに入れて、後で説明しますけれどもアメリカにかつて二十億ドルのうちの九一%、これがアメリカに行った、その他イギリスその他の国々に配分していった。そのかつての四十億ドル、二十億ドルがあって、そして今度新たな湾岸戦争の事態が起きて九十億ドルとなった。根拠は、今僕はないと思うが、これ以上、そう今までのようなタイプ、かつての二十億ドル、後の二十億ドルじゃないですよ、湾岸諸国やODAなんかと組み合わせるやつじゃなくて、多国籍軍を想定されて入れた二十億ドル、そして今度の九十億ドル、これも中身は後で使途のところで明らかにしますが、こういうタイプのお金をこれ以上支出するということはあるのですか、ないのですか。
  102. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私どもとして、この湾岸平和回復努力というものが実り、一日も早くイラククウェートから撤収することを願っております。それが我々の希望とたがい、イラクがいつまでもクウェートに居座り、結果として平和回復努力のための時間が長くかかるという事態になりました場合に、改めてどういう問題が惹起されるか、今私の想像の外であります。むしろ、我々としては、イラクが一日も早く反省をし、クウェートから撤収することを心から願っております。
  103. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 日本の国が援助するときには、援助するに当たってのお金の性格というものがある。だから前の二十億ドルは一つの性格を持っていた、今度もどうも九十億ドルに一定の性格がありそうです。そうしますと、今の話じゃないですが、最初アメリカが、多国籍軍が一月十七日に軍事的武力行使でもってクウェートからのイラク撤退実力でやろうと考えた最初の当時は、短期決戦で事が行われそうだという報道でありました。ところが、今やどの新聞やどの世界の世論を見ても、これは長引くな、長引くなというのが今の世界の諸判断のように思います。  後でまた地上戦にいつ入るかが問題になる時期などについて御議論申し上げますが、いずれにしても短期に終わらない。長期か、まあ中期という言葉がいいかは別としまして、最初に緒戦に考えたようには短期にはいかないというのが今や情勢になってきていると思います。したがって、今大蔵大臣がおっしゃられました、長引けばというその可能性は秘めていると思います。それだけに、今までのような二十億ドル、さらなる今度の九十億ドルという延長線上の支出はできるのですか、できぬのですかと僕は言っているので、国際的貢献をするためにはいろいろなタイプの貢献がありますから、今までの二十億ドルと九十億ドルの延長線上の援助のようなタイプのものは、これが終わりなんですか、そうじゃないんですかと僕はこう聞いているのであります。いかがですか。
  104. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 少なくとも二年度内においてそうした追加に応ずる余地は全く我が国の財政上ございません。
  105. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 やはり我が国の財政を考えてみると、今までのような延長線上で九十億ドル、さらには四十億、五十億ドル、ひょっとすると足してみたら百億ドルになってしまうというほど引き受ける財政的余裕はない、そう……(橋本国務大臣「二年度においてですからね」と呼ぶ)二年度……。次年度、三年度ですか。(橋本国務大臣「二年度」と呼ぶ)二年度でしょう、二年度は三月までだから。だから来年度では、大蔵大臣、今のようなタイプの短期の国債でもって、そして借金をしてでも援助するようなタイプの事情があり得る財政だとお考えですか。
  106. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますけれども、私は、それまでに早く平和を回復してもらうことが先でありまして……(発言する者あり)そういうやじを飛ばしていただいても来ないと思うのです。むしろ、私どもとして、このイラクがどうやればクウェートから出ていくかを本当にみんな考えているときでありますから、それがいつまでたってもイラククウェートに居座る状態を想定して私は論議を本当にしたくありません。しかし、そういう情勢がいつまでも続くのであれば、改めて私は日本としての貢献を考えなければならない時期は来るのかもしれないと思います。しかし、そういう事態を起こしてはいけないんじゃないでしょうか。そういう事態を起こしてはいけないんじゃないでしょうか。
  107. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 やじにお答えになるんじゃなくて、私の質問に答えていただきたいと思います。  そこで、大体大枠として、性格は戦費でなくて平和回復のための世界の諸活動に対する資金、そしてその積算根拠は総理が言われました大枠の判断ですね。応分の負担というふうにおっしゃられ た方がむしろ一口でわかるかもしれません。それで今後の支援については情勢が変わるまでは今は定かでない、そう理解しておきましょう。  さて、返りますが、今行われている湾岸の事情は、これは戦争ですか、戦争じゃないですか。
  108. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来政府側よりしばしばお答えしているとおりでございますが、現在の事態は、まずイラクによるクウェート侵略がございまして、これに対して国連が平和の破壊であるというふうに認定いたしまして、そして御案内のとおり累次の決議をもって平和の回復の努力をしているわけでございます。したがいまして、これはイラク侵略を排除するための国連加盟国による共同の努力であるということでございます。いわゆる伝統的な意味での、戦前の国際法で認められておりましたような戦争というものではないわけでございます。  御承知のとおり、現在の国連憲章のもとでは、戦争という観念はございませんで、一般的に原則として武力行使というものを禁じているわけでございまして、その禁じられた武力行使イラクが行って、これに対して各国が実力をもって侵略の排除の努力をしている、こういう状態でございます。
  109. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 我が党の串原委員がこの委員会質問された際に、外務大臣の方は前におっていたのですけれども、今の政府委員の説明は、一口に言うとややこしい。ちょっと今のやつは不明確ですが、「戦争という観念は現在の国際法上は禁止されているものでございます。」国連憲章ではそういう戦争を予定していない。「先ほども申し上げましたとおり、国連憲章のもとではあらゆる形態の武力行使が禁止されているわけでございます。」俗に言う戦争ではないというふうに理解すべきだと思います、こう政府委員は前回我が党の串原委員に答えています。外務大臣もそれを受けて、こんな大事なことは外務大臣だと思うけれども外務大臣、同じ見解ですね。
  110. 中山太郎

    中山国務大臣 私が申し上げたことは、今政府委員が答えたとおりであります。
  111. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて、これで日本側の九十億ドル支出に当たってのお金の性格、それから積算根拠などについて、大体私の質問で整理したことになるのです。  さて、そこでアメリカはどう言っているのでしょう。まずここから入りましょう。アメリカは公式の文書、先般一般教書が提出されました。この大統領の一般教書では、まず湾岸問題は湾岸戦争と規定しております。ザ・ウオー・イン・ザ・ガルフ、もう一般教書では明確にこれは、湾岸戦争は、我々が欲しているような戦争ではないが、戦争だと、そして、我々はこの戦争を避けるために力いっぱい努力をしなければならなく働いていますと一般教書で述べております。それから、もう全部、これは政府が、ジャーナリズムで言っているんじゃないのですよ、政府が一般教書でやった今日の軍事的行使というものを、みずから期待しないが戦争だと、残念ながら戦争だと、それをとめるために働いている。概念規定は非常に明確であります。ザ・ウオー・イン・ザ・ガルフです。  さて、アメリカはまずこれを国連憲章を頭に置いて、第二次世界大戦国連憲章のもとでは想定していなかったが、湾岸戦争と呼んでいるとすれば、国連憲章で言うところの戦争ではないにせよ、新しい国際的な多国籍軍という、これは軍なんですから、ミリタリー・フォースと書いてありますから、多国籍軍によって行使されているいわば性格の戦争というふうに理解するのが常識的であり、正しいのではないでしょうか。外務大臣、いかがですか。
  112. 中山太郎

    中山国務大臣 いろいろと国連決議、文書、たくさん六百六十から六百七十八までございますけれども、この中にはウオーという言葉は一言も出てきておりません。
  113. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのとおりです。国連憲章では、戦争を予定しないで、戦争が起きる紛争にしては、事前にチェックするための任務を位置づけたのが戦後の国連憲章の特徴ですから、その限りでは古典的な意味戦争でないことは明らかです。しかし、それをなぜ戦争と呼ばないでいるかということと、最初私がお聞きしたことと関係があるのです。つまり、今の多国籍軍国連軍ではないということであります。これは多国籍軍です。そうおっしゃいましたね。これがまた後で密接不可分になってまいります。したがって、アメリカはまずこれを新しいタイプの、だから性格づけをやるためにザ・ウオー・イン・ザ・ガルフと言っていますから、湾岸戦争という新しいタイプの言葉で教書でも説明し、それにかかるコストの問題というふうにして位置づけておるということであります。  同時に、そこでもう一遍、今度は戦争、この九十億ドルの性格に関連して、アメリカの政府要人はどう言っているか、これをまず最初に御紹介いたしますが、もう既に我が党の藤田委員がこの委員会質問をいたした中で提起されました、二十七日、ベーカー国務長官のまず記者会見が一つあります。ベーカー国務長官の記者会見では、我が国が負担することになった九十億ドルについての積算根拠を明確にしつつ、このお金の性格を明らかにいたしております。べーカーはこう言っております。  サウジアラビアからの百三十五億ドルは、クウェートからの百三十五億ドルと日本からの九十億ドルを合わせて国際的支援にこれを充てるということを前提にして、一九九一年、当初三カ月と、正確です、非常に。ファースト・スリー・マンセス、だから一月、二月、三月と、三カ月間というその根拠に基づいた経費となりますと。まず、積算根拠はここで三カ月は言っています。四百五十億とは言っていません。後にドイツが五十五億出てきたり韓国が出てきたりしますから、総額はもっとふえてまいりますが、この際、最初我々九十億ドルということが日本の判断として伝えられた中で、べーカーさんは、まず、今の湾岸戦争、一月十七日から始まっていますけれども、一月、二月、三月、この間のファースト・スリー・マンセス、非常に明確な三カ月、今からの当面三カ月、こういうふうにまず期限を付している。  そしてその後に、これは米国の支出に充てるのですかという質問に対して、この間私はここで申し上げましたが、ジス・イズ・ストリクトリー・フォー・US・コスト、明確に、すべて厳格にこれに充てます、こう最初に言いました。そして、したがって、米国の支出をこの援助でカバーできますかという質問に対して、三百六十億ドルは当初三カ月分だと非常に明確に三カ月の積算というものを頭に置いて答えております。  そして、その後に、その後はどうなりますかという質問をしています。それに対して、より多くの貢献を期待している、これがべーカーの回答であります。  したがいまして、三カ月という期限で積算の一つの根拠だと、そして、その上でより多くの貢献を期待していますですから、さらに追加はあり得るということをサゼスチョンしているのです。これがまずベーカーの発言であります。  しかも、べーカーの方の発言では、非常に明確なのは、日本が自主的に、先ほど言いました応分の負担を自分の判断で決めたので、アメリカからの要請じゃないと答えられていますが、ベーカーさんは、この金は我々がクウェート並びに日本に対してアスク、アスクですから、要請したという文書であります。だから、アメリカ側は日本に対しては、ベーカー国務長官は要請して、そして三カ月間という積算根拠をもって、そして当面お願いする。そして、それは全部アメリカのUS・コストに充てる、こう言って、その上であとの追加ありますかということについて、その含みを残している。これがベーカー発言であります。これが第一。だからアメリカ側はかなり正確。性格とそれから積算根拠、使途についても割と明確です。  それに続きまして、我が国で行われているこの予算委員会が向こうに伝わりました。そこでアメリカの、今度はマーガレット・タトワイラー報道官は、二月の四日に至りまして、このベーカー発言はちょっと日本の国会にとっては大変だと御判 断をされまして、少し修正をされました。修正をされました。ところが──この訳は外務省の訳です。私が訳しないで外務省で訳する方が政府のちゃんとした訳になると思いましたから、外務省の訳をいただきました。このタトワイラー報道官の二月四日のアメリカ国務省レポートに対するコメントとして、九十億ドルは平和確立のために使用されるであろうと、そういう意味では平和のために使われる、こう言っていますね。この論争は、先週ベーカー国務長官が九十億ドルは真に米国の費用であると述べたことから日本における国会は大論議が始まった。そして日本のマスコミの多くは、米国の費用の意味は、武器、弾薬、航空機、タンクなどの購入費であると報じています。米国の費用の意味、九十億ドルをどう思いますか、こういう質問です、記者団の質問は。それに対して報道官はこう言っています。我々は日本政府の九十億ドルの追加拠出の公約を高く評価します。日本政府はその拠出が湾岸の我々の軍、アワーフォーシズと言っています、その兵たん支援、ロジスティカルサポートと言っています、兵たん支援に使用されることを望んでいると表明しました。皆さんがですよ。日本政府はこの九十億ドルというのは湾岸に必要な我々の軍の兵たん支援に使用されることを望んでいることを表明しましたと。その後に、兵たん支援、ロジスティカルサポートの我々のニーズは日本からの追加資金を超えるものと見込んでおりますので、さらにふえると考えられるので、使途の制限は実際的な問題にはならないと思います、こう言っています。これは我が日本予算委員会議論されたのが報道されて、ベーカーさんは軍事費に使われるという観点だけが議論されたのではこれは日本の国会困ろうな、そういう意味で御援護されたという意味では日米なかなかいい友情だと私も思います。  ところが、ここで明確なのは、我々の軍の兵たん支援であるということを日本が望んでいる、皆さんが、総理が武器弾薬等々、つまり平たく言えば正面装備です、正面装備などにお金を使うのは我が国憲法その他からして一定の限界を超えるので、そうではないとおっしゃった輸送、それから医療、それから生活、消費物資、事務費、こういうものに使うということを日本は望んでいる。しかし、それはこのタトワイラーさんの表現によれば兵たん支援、これは外務省の訳が兵たん支援なんです、僕は後方支援と訳すべきだと思います。兵たん支援に使用されることを望んでいるということの反映だというのがタトワイラーさんの認識であります。したがって、タトワイラーさんは、日本が支出するお金は依然として我々の軍の兵たん支援に使用されるということを明確に言っています。  そこでお聞きしますが、もう一つ、ではその後にブレイディさんの発言がありますが、これは外務省にお聞きしましたが、これは正確な委員会での発言でありますから僕は正確なやつがとれぬかと思ったけれどもアメリカの議事録がとれないというので新聞報道でしかつかんでおりませんが、これでも日本の援助については今後の可能性を秘めておりますし、かなり正確な多国籍軍に対する後方支援的性格のものということを位置づけているように思います。  さてここで、したがって非常に問題がはっきりしてきました。日本側の政府の言っている九十億ドルの性格は、今言った国連決議に基づいて多くの国々が行動しているその活動の費用です、戦費ではありません、こう言っていますね。ところが向こうは、今度の今起きているのは国連憲章で言う戦争概念には当たらない新しい時代に起きたものだが、湾岸戦争と名づけられる戦争だと言って、これは戦費の一部で、その戦費の一部は正面装備ではなくて後方支援、兵たんの費用として使われる、こういうふうに言っていますから、兵たん、つまり後方支援のお金であろうが、それから米軍の正規の軍隊の費用であろうが、戦費であることには変わりません。したがって、米軍の方はこれは戦費と理解しなければなりません。  そこで性格が全く違う。日本は戦費ではない、戦争ではないから戦費ではない。向こうは戦費である、こういう判断に立って現にミリタリーフォーシズのコストという言葉がちゃんと一般教書に出ていますから、そういう明確な違いが一つあります。  二番目の違いは、向こうは当初三カ月、一、二、三カ月という積算の根拠に基づいて今の米軍のコストの中、アメリカのコストの中で必要なうちの一定部分という意味で一つの積算根拠が出ています。三カ月、当面の三カ月。ところが、我が国の場合はそれは三カ月でもなければ、まして先では支援があるかもわからない。いずれにせよ九十億ドルというお金の額だけは非常に具体的だが、それの積算根拠はちっとも明確でない。ここが違いですね。これが二番目の違いです。  三番目の違いは、大蔵大臣は私がお聞きしたときに、昨年来の二十億ドル、これからの九十億ドル、その延長線上にあり得るかどうかというのは戦争の状況いかんで決まるといってお答えにならない。しかし、アメリカはさらなる支援というものを期待している。日本側の判断がどういう判断か知りませんが、アメリカの判断とそこが違っている。これが、九十億ドルという問題をめぐってこの予算委員会で政府側が答弁した日本の自主的な世界への、いわば応分の負担という抽象的原則に基づくところの積算根拠と、アメリカが提起している少なくとも一定の積算根拠。これでもまだあいまいですよ。しかし、三カ月というのは当初三カ月ですから、その意味では三カ月の積算根拠があるから、それをサウジが幾ら、クウェートが幾ら、日本が幾ら、そしてドイツが幾ら。アメリカは実際にはそれには直接やらないのですから、国際的ファイナンスでもってその基金をつくる一定の積算の上に立って日本は九十億ドルぐらいが相当と判断されたものと想定されます。数字は言ってません、おっしゃるように。ところが、一致しているのは九十億ドルに高い評価があって日本が九十億ドル、結果だけ一致しておるわけです。  つまり、こういう両方の違いがあるということから、私たちはこの九十億ドルについて、もしアメリカが言っているようなアメリカ軍の兵たん支援という性質の戦費的性格のものであるとすれば、我が国憲法に照らしてみて、そのような戦費というものを公然と出せるのかどうかという疑義があるというのが我が党の和田静夫議員の先般の質問であります。  さあ、この違いを私は両方浮き彫りにしましたが、皆さんどう、アメリカ側の主張が、僕の言っていることがどこが間違っているとか何か御意見があれば、どうぞ大蔵大臣でも総理大臣でも答えてください。
  114. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 事実問題として私から一点、委員の御指摘になりました時系列的なアメリカのそれぞれの方々の発言につけ加えたいものがございます。  一番最初アメリカ側の九十億ドルという数字に触れました発言は、委員は今御省略になりましたけれども海部総理からブッシュ大統領日本側が判断の結果九十億ドルを支出する決心を固めたという電話をされました後、その大統領の意を受けて大統領報道官フィッツウォーターさんが記者会見をされた時点であります。その席上で、日本の多国籍軍に対する資金協力九十億ドルという数字は初めて出てきております。これは海部総理からブッシュ大統領にかけられた電話の内容を紹介しておるわけでありまして、それ以前に九十億ドルという数字がアメリカ側にあったわけではない、私はそう思います。これはお調べをいただければ結構でありますが、大統領報道官の海部総理からブッシュ大統領への電話の後の会見の中で九十億ドル、しかもそれは多国籍軍に対する資金協力という形で出ておるのが当初であると思います。  その後においていろいろな御発言があったことは、私も存じております。そしてその御発言にも、委員がはしなくも御指摘になりましたように、さまざまな言い方がなされておることも御承知のとおりであります。日本政府としては、総理が先般 来御答弁を申し上げておりますように、さまざまな要素を勘案した上で九十億ドルという、多国籍軍によって湾岸における平和が回復されることを期待しつつ資金協力の意思を表明したという事実を申し上げます。
  115. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私が言っているのは、中山外務大臣最初おっしゃられましたし、橋本さんもおっしゃられましたように、アメリカの要請じゃない、ここは前提ですね。ところが、九十億ドルをめぐって、日本加藤六月政調会長と橋本大蔵大臣が百億ドル、十億ドル足すべきだというようなことをめぐって、一月の十七日の晩でしたか、結論が出なくて明くる日に持ち越して、そして九十億ドルに落ちついたことなどは、もう全部新聞に発表されているとおりです。それは正しいかどうかわかりません。しかし、九十億ドルという数字が、日本が言って向こうが非常に歓迎した中には二つの意味が僕はあるように思うのです。  一つは、過分の負担をしてくれたな、物すごく大きいからです。九十億ドルという金額は、我が国の今年度予算と比較してもめちゃくちゃ大きい金です。例えば、ODA予算の四〇%増ですよ。それからまた、防衛費の約三割です。それを一気に平成二年度の補正で出すのですから、我が国の財政から見たらやはり大変なことですよ。しかも、アメリカは御承知のような状況ですから、九十億ドルというお金にひょっとしたら、当面する三カ月ではびっくりされたかもしれぬという側面。  もう一つは、大体四百五十億ドルぐらいは要るな、その二〇%を計算してみると九十億ドルになるな、よく一致しておるなということで評価されたかもしれません。わかりません、それは外交ですから、おっしゃるとおりで何もないというものをあったでしょうと僕は追及する意思はありません。しかし、ただ結果として日本の財政の今後も考えてみて、この九十億ドルという多額な金を大いに国際的に貢献しなければなりませんから援助しなければなりません。しかし、その場合の援助は、アメリカ側が言っているような戦費的性格のものとして支出するのであれば、これは非常に性格を異にし始めるというところに自衛隊の海外派遣と同じ問題が出てきます。  そこで、このタトワイラーさんがおっしゃっている後方支援、日本の外務省の訳では兵たんですね、その支援と今まで総理がおっしゃられているところの九十億ドルのお金の性格とは同じものですか、違いますか。
  116. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 最初に、先生に申し上げたいと思いますのは、先生の御依頼でタトワイラー報道官の発言の英語と仮訳を差し上げましたけれども、私どもが差し上げた仮訳には兵たんという言葉は使っておりませんで、私どもはロジスティック面での支援ということで差し上げております。したがいまして、私の発言でもロジスティック面での支援ということで御説明したいと思いますけれども、これはあくまでもタトワイラー報道官が、そういうことで総理がその前の日、日本の国会で説明された輸送関連経費その他の具体的な分野を言及してタトワイラー報道官がそういうふうに解釈して説明しているということでございまして、私どもの基本的な考えは、総理がこの予算委員会の場で繰り返し述べておられます輸送関連経費その他総理が具体的に申し上げられた分野に充当するということでございます。
  117. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは外務省ですよ、あなた違うと言っているけれども、あなたのところから資料要求して持ってきたものですよ。それで、原文はこうなっている、はっきり。原文は、湾岸におけるアワーフォーシズ、軍の、我々の軍のサポート、それにロジスティカルサポートというのですから、後方支援なんですから、だから明確じゃありませんか。いずれにせよ、正面装備費、武器弾薬、タンクなどではないけれども、後方支援という性格の戦費の一部だとタトワイラーさんは言っているのですよ。だからそう理解するのですかと僕は総理に聞いているのですから、この言っているのが間違っているのか、それとも総理が今まで言っている医療、運輸、生活、食糧、事務、こういうふうに言ってきて、特定化しているこの我々の拠出金は、アメリカに行ったときにこの兵たんの費用として使われるとアメリカは考えている。わざわざ今度はベーカーは、限定したのです、ベーカーさんのときは思い切ってUSフォースのコストと考えたのだけれども、今度は日本の国会の論議もあるというので一歩後退した形をとって、日本は平和憲法その他あるということを前提にしてこれが出てくるのです。  だから、次のブッシュ大統領が行いましたエコノミッククラブの演説では非常に性格が変わっていますが、それでも結論は大変重大なことを言っておられます。  日独が、第二次大戦の結果として憲法上の制限を有しているという事実を忘れてはならない。太平洋地域諸国、ASEAN諸国等においては、日本が全面的に再軍備することへの懸念は依然としてあり、日本の国会でもこの懸念を有する者も多い。我々は両国に対し、戦車、戦闘機、軍事力等の面でより貢献せよと求めるべきではない。 これは総理の発言が向こうに伝わっているということだし、それでいいのだと思います。しかし、その後に、  日独ともに、原油を湾岸に依存している以上、費用の増大に伴い両国が貢献を継続するということを、世界が理解するよう希望する。 と言っていますから、やはり依然としてこのタトワイラーさんが言っている今後の支援の拡大の希望と同時に、ここに限られたもの以外のもので支援をいただくという理解でブッシュもエコノミッククラブで、ちゃんと日本の国会の論戦を聞きながらお答えになっている。  したがって、私が聞いているのは、総理が言っている医療、輸送、生活、消費、その他事務費、こう後でクレームをつけて渡すにしても、それがアメリカに行きますと後方支援の費用として位置づけられるのではないかという疑問を持つので、その後方支援と関係がない形でお出しになるのか、ここで言うミリタリーフォースですよ、アメリカのアワーフォーシズ、アメリカの一部としての兵たんの費用でないものとしてお出しになるということなのか、その一部になってもいいという判断なのか、どっちですか。
  118. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは繰り返して申し上げてまいりましたけれども、あくまで私どもは、国連決議に基づいて関係諸国が行っておる平和回復活動を支援するという立場で応分の支援をしなければならない、これは日本の意見です。アメリカでいろいろなことを言われる。しかし、ベーカーさんはその立場上中山外務大臣のカウンターパートですし、ブレイディさんは橋本大蔵大臣のカウンターパートですから、それぞれ会っていろいろ話をしたり意見を聞いたりしたことは私は聞いております。けれども、この間もこの国会で議論になりましたが、ベーカーさんがどのような記者会見や発表をアメリカでなされようとも、日本はそれに完全に従わなければならぬという立場ではありません。日本には日本の意見があるのです。アメリカ一辺倒になるな、日本の自主性を持てということは時々皆さん方の御議論の中にも出てくることではないでしょうか。  私は、日本としてできるだけのことを日本の考えでやるんだという立場に立って、今申し上げたように平和回復活動を支援するために、分に応じた拠出をする、こう決めておるわけであります。そうして、これについては輸送関連、医療関連、おっしゃるとおりです。食糧関連、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針を日本はとっておるわけです。これは湾岸平和基金の運営委員会で決められることになるわけですが、そのとき我が国の意に反した使途には充てられないように確保し得る仕組みになっておりますから、提出する日本がこれこれのものに使ってください、こう言いますから、ですから結果として、武器弾薬には充てられないことになるということは私が何度もお答えしたとおりでございます。
  119. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これだけ議論しておりますから、問 題点はお聞きになって国民の皆さんはおわかりになったと思う。あとはどう判断するかということでございますが、意見の相違は、私は戦費でしか使われない、それであなた方は、注文つけたら戦費でなくなる、そういう意見の相違だということが明確になりました。  そこで、先般和田静夫議員がここで質問をされまして、戦争というものでないにせよ、今次のような実力組織による実力行使に係る形で武力行使が行われているということと、我が国憲法九条との関係では、単に経費を支出するのは武力行使に当たらないという立場をとっておられるのが工藤政府委員の立場でありますが、この考え方について、政府側の考え方、憲法九条と今度の九十億ドル支出との関係をどのように解釈するか、どのように理解するかのきちっとした見解を出せというふうに言って、出しますと最初はお答えがあり、後を見ますと理事会に諮ってとありますが、この点については今後理事会で御検討いただくことには御異議ありませんね。
  120. 渡部恒三

    渡部委員長 ただいま理事会で協議いたしております。
  121. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで、今度はお金の流れで、今の総理の話ですと、我が国から出しましたお金は湾岸協力会議の平和基金のところに行く、これは交換公文でこの間も議論したとおりです。そこに行きますね。本当は日本のお金は国連に持っていって国連にお役に立つようにという提案だったのだが、国連の方ではそんなお金を預かる基金の制度はないからというので湾岸協力会議という、GCCというのですけれども、このGCC基金、ここに入れて、そこからアメリカへ行ったりそれからイギリスに行ったりフィリピンに行ったりする、こういう仕組みで、悪い意味ではトンネル的性格のものを設けるということになったというのがこの経過でありますね。  それで、この基金は運営委員会で決める、こういうことでしたね。運営委員会は、湾岸協力会議を代表してそちらの事務局長、そして日本のサウジの大使、このお二人でお決めになる、性格について、お金の使い方についてお決めになるという方針というのはそのとおりですね。
  122. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、GCC六カ国を代表するGCCの事務局長日本を代表いたします在サウジアラビアの日本国大使の二人で構成しております。
  123. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それにアメリカは参加していませんか、今までの会議に。
  124. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 アメリカは参加しておりません。
  125. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 本当ですか。その会議アメリカは出ていませんか。
  126. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 運営委員会のメンバーは今私が申し上げた二人でございまして、アメリカは入っておりません。
  127. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 メンバーにはなっていないが、オブザーバーとして入っていませんか、必要な会議のとき。
  128. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 オブザーバーとしても入っておりません。
  129. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 政府の正式答弁ですから、ないことにしておきましょう。私はある大使館の筋からは、御参加いただいていることを聞いております。  ではお聞きしますが、前の二十億ドルについての各国への配分の資料要求をこの前いたしまして、私の手元にあります。そこでお聞きしますが、一つか二つ例を挙げましょう。平和協力基金へ日本からのお金が行きますね。そこでそのお金を配分しますね。そのときに、交換公文の中では、資金と資材その他というふうに指定がありますね。さて、そういう場合に、エジプトでいきましょうか、エジプトについて三十四億円がこの湾岸基金から行っておりますが、何に使われたかわかりますか。
  130. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、今までのところエジプトに三十四億円支出しておりますが、これは二つございまして、第一が資金協力として輸送関連経費でございまして、これは十一・七億円、それからもう一つが物資協力でございまして、具体的には救急車、小型移動病院車、合わせて二十二・三億円、合わしまして三十四億円でございます。
  131. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それで、これによりますと、支出した場合と同時に契約済み、契約するのですね。その支出はどんな契約になるのですか。契約と関係ありますか、ないのですか。なきゃないでいいです。
  132. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 資金協力に関しましては支出済みでございますけれども、物資協力に関しましては契約済みの数字で申し上げてございます。したがいまして、私が今エジプトについて申し上げましたのは、契約済みということでございます。
  133. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 契約済みですと、その契約に関する書類はあるのですね。
  134. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 お答えいたしますが、物資協力に関しましては、これは運営委員会が直轄で実施しておりますけれども、運営委員会日本側代表、つまり在サウジアラビアの日本大使から具体的な物資の品目、供与先、その他関連事項の概要について連絡を受けております。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この辺でこの問題に関しては打ち切ります。  今までの私の質問でまだ私のわからないのは、タトワイラーさんが言っている、アメリカの軍の経費の一部としての後方支援ないしは兵たんですね、その兵たんの中の一部として、今言ったようなものを、総理が言っているような幾つか個別を指定したような枠の中で使っていただくという意味で兵たん支援の中に含まれるのか、それともその以外のものとして総理は判断をされて問題をこの運営委員会で提起されようとしているのですか、どっちですか。
  136. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 総理が今まで繰り返しおっしゃっておられますのは、今度の資金協力は湾岸平和基金を通じて輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費に充てる方針である、最終的には運営委員会で決めるということでございますけれども、これは具体的なメカニズムといたしましては、現在資金協力は輸送関連ということになっておりますが、この輸送関連を今申し上げました分野に広げるということで運営委員会で決定をするということが必要でございますので、日本政府としてはそういう方針で臨みますが、最終的には運営委員会の決定にまつということでございます。その決定を踏まえまして、各国から具体的な要請が運営委員会に寄せられることになっておりますので、それに対しまして、その要請を審議し、最終的な決定が行われれば資金が関係国に支払われるというメカニズムになることと思います。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨日からきょうにかけて総理がおっしゃった運輸、輸送の中で、武器弾薬、恐らく軍人なども含めてですが、その輸送は含まないんだというふうにおっしゃって、そしてゆうべの記者会見か何かで、北米局長にそんな使用の制限はできる性質のものではないというふうに言われて、そしてこの点について考えを改められたかのように聞き及んでいますが、事実の真偽はどうなっていますか。
  138. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 九十億ドルの使途について、それを武器弾薬に充てるのか充てないのかということをはっきりせよという角度の御議論が随分ありました。本来ならば、適切な支援をするということでありますから、私どもはどのようなことに使われるか、それは平和を回復するための活動支援として一部出すわけでありますから、どのような支援に使うかというところで、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針であると。ということは、ここで議論になった武器弾薬の購入には充てないということを念頭に置いてここで御答弁をしたわけです。  すれ違いみたいにとられてもいけませんのでもう一回改めて申し上げますけれども、そのことにつきましては、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等と私がここで挙げましたのは、裏を返せば、ここで御質問者が武器弾薬は購入するのかしないのかということを何度もお聞きになっ たので、結果としてそういうものには充てない方針でありますということを申し上げたわけでありますから、改めてお尋ねがありましたからそのように申し上げさせていただきます。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それはちょっと議事録を見ないとわかりませんが、いずれにいたしましても、輸送等と──私の言っているのは、きのうきょう総理の答弁が途中で変わったのではないかと見ますが、それは後の委員にお願いするとして、ポイントは、あなたはその出したお金を運営委員会で輸送とか医療とかという形で日本は御援助申し上げますと口頭で強く要請をすると。ところが、アメリカの方の政府要人や政府側の報道官などは、それは戦費の中の一つである、後方支援並びに兵たんの費用であると向こうは言っているのです。こちらは条件をつけているのです。しかし、条件は交換公文に書きますかと言ったら、そんなこと書くものじゃないとおっしゃった。僕もそうだと思う。しかし、こっち側で条件をつけたらあたかもそのお金が条件づきのように使途がされるかというと、相手のアメリカの方は、制限はありませんと、先ほど読み上げたように非常に明快です。だから、先にもっと追加があり得るんですとはっきりしているのです。それは、戦争が長引くことがあり得るからです。だから、アメリカ側の方は戦費の一部だと言っているのに、日本の方は戦費と関係なしにこう使いなさいと言って、それで国民が納得できますか。
  140. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げておりますように、武器弾薬に充てるということはいろいろな意味でここで御議論がありました。法律的な、憲法的な解釈でいきますと、たしか、この前のやりとりを私も聞いておりましたが、国家による実力行使がそれを意味するのであって、国家による実力行使でない場合には、資金の提供というのは、国連決議に基づいて適切な支援を求められたのでありますから、それは憲法違反には当たらないというお答えをしておるはずでございます。     〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕  また、我が方の提出は、輸送関連、医療関連、食糧関連、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針です、こちらの意向でそれを出すわけです。だから、日本の意向はそれが反映されるような仕組みになっておるということもここで申し上げておりますから、出す日本の政府として、こういったものに充ててください、こういったことに充当されることを日本の政府は考えております、こう言って湾岸委員会で決めるわけでありますから、それを認めていただかないと、いろんなことは、相手の立場に立ってみればそれはやはり協力は少ないよりも多い方がいいということに、発言を求められればなるでしょうし、多国籍軍を出して現に血を流して戦争をやっておる最中だとアメリカの人が言うのはそれはそのとおりだと思うのです。けれども日本は武装部隊を出してすることはできない、だからせめて資金の一部を提供して、平和回復活動に日本もできる限りの支援をします、それでいいんだということに合意したのですから、日本の気持ちというのはそこにあるということをやっぱり私はここで繰り返して申し上げるわけであります。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 総理の熱意は買いましょう。まじめに御努力される過程は、日本政府としての対応を現地の大使がなさるのですが、やっても、アメリカはそれを軍費の一部の後方支援だと言っているのに対して、そうではないということを証明することができぬじゃないですか。後方支援もこれは戦費なんですよ。この間申し上げたように、後方支援の仕事をやっておって、女性の捕虜の方のように向こうで捕虜で捕まるのですから。だから、簡単な話じゃないのはなぜかというと、戦費という性格に日本国憲法のもとで私たち国民の税金を出すということができるかできないかという重大な問題がやっぱり背後にあるのです。だから、お金は国際的援助のために、戦費でない形でならば要請に応じて日本のやるべきことは何でもやらなきゃならぬと僕は思う。しかし、その際に、戦費という性格を持つものに、そうではないように使ってくださいと総理や大使の側が湾岸で言っても、前回の場合でも九一%アメリカに行っちゃって、そのアメリカの方が、これは軍費の一部の後方支援だ、こう言っているのですから、そこはどうしても、ただ会議で言っている話じゃなくて公の記者会見でアメリカ全体に語り、我が国にもそれが伝わって日本新聞に書かれる、そんな状況ですから、それに対して一定の疑惑を解くべきだと思うが、今の議論じゃ解けませんね。僕は納得できません。恐らく野党の皆さんも納得できぬと思う。  そこで、最後に一つだけ聞いておきますが、では総理の言う運輸、輸送関係に武器弾薬その他は輸送しないということですね。
  142. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 輸送関係の中身については私は何も申し上げたことはございません。輸送関係は輸送関係、医療関係、食糧関係、生活関係、事務関係などの経費に充当する方針であります。武器弾薬を購入するかしないかという使途の問題については、いろいろありましたけれども日本政府の意向としてはそういった武器弾薬の購入には充てないということを何回も御説明したのです。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 武器弾薬を運ぶ輸送には金の支援はしないというのが今まで総理の言ってこられた主張だと思うが、そうでないとすると、依然としてこのお金は軍費、戦費の一部だ、こういうことになりますな。やはり我々の主張していることと違います。  そこでこの問題は打ち切りますが、私たちが言っているのはこういう意味です。平和基金やその他に、おっしゃるように我々は日本のお金を九十億ドルなら九十億ドル、この性格やその他については今まで論点をはっきりさせましたが、支出するために、金の額そのものがこれで相当な額ですから大変な努力を我々はすることになります。ところが、私たちと皆さん、私と皆さん、今総理との意見の違いは、戦費ならば日本国憲法という枠の中で簡単な支出はできませんよ、だから戦費ではないという形をとるならば私たちはそれをいろんな形で運用して国際的に貢献するやり方はある、そこが皆さんと私たちの意見の相違です。例えば戦費でない形で、今問題になる、後で言う石油の問題とか難民の問題だとか、湾岸諸国への援助の問題だとか経済の将来のインフラの問題だとか、その後の経済復興の問題とかなどにこれが使われるということであれば、これは大いに世界に貢献すべくやるべきであると思います。戦費ならばまかりならぬ。そんな使い方をすることは、戦争への積極的協力という意味になるという意味で、日本国憲法のもとでは許されない。あなた方は戦争でないと言うが、相手国は皆、戦争と言っているのですから、その意味でそういうふうに使われるべきではない、これが今の問題の論点であります。  それで私たちは、この財源などについても、我が党の政策審議会長が言っているように、九十億ドルの財源は、一方では長い間我々が主張している、軍縮の時代に防衛費を削減せよと言ってきました。同時にまた、公共投資などについても、日米構造協議で四百三十兆円という十年の計画があるわけですから、繰り延べてでも一定の融通は可能でないかどうか、さらには行政経費の節減などを含めて、またそれとODAなどを組み合わせ、歳出歳入を組み合わせて、新たな国際的貢献のやり方はあるというふうに、つまり九十億ドル問題を戦費でない形で国際的に貢献するというのが我が党の主張であるということを申し上げて、論点だけを明らかにしておきました。  そこで、大蔵大臣おらぬな、経済企画庁長官でいくか。  ことしのアメリカの予算で借金の分、つまり累積債務ですな、借金の分で国民が税金として負担する分、まあ国債の依存率ということですな。わかりやすく言えば国民の税金でもって今年度予算で何ぼ税金を払うか、利子の分を払うかということですが、率はアメリカは何ぼだと御存じですか。
  144. 越智通雄

    越智国務大臣 申しわけありません。突然の御質問でございますので、数字を持ち合わせておりませんが。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 我が国の場合は何%ですか。
  146. 保田博

    ○保田政府委員 お答えをいたします。  予算に占める国債費の割合ということでございますが、アメリカの場合、九〇会計年度でいきますと一四・七、それから日本の場合、日本平成二年度の当初予算におきましてはこれが一六・七ということでございます。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 アメリカよりも日本の方が金利の負担が多いんです。日本の財政の累積債務を考える場合、米国と社会経済のファンダメンタルズが違いますよ、双方の。しかし、財政という面から見ると、借金を、つまり利息を国民の税金で払う負担率は、アメリカの方がまだ日本より低いんですよ。ということは、日本の方が財政的な負担、財政の中での税金の負担が大きい、税金による利子負担が大きいということです。そんな中で、今度の九十億ドルを決めたんですね。九十億ドルというのは量は大きいと僕は思うのです。非常に莫大な金です。今年度予算で一つの例を挙げますと、政府開発援助約八千七百億円のこれは大体約四〇%増、それから、日本の防衛費約四兆四千億円としてみて、その三割ですよ。アメリカは、これを当初三カ月と言っているんだ。一、二、三ですよ、一年続くことはありませんと。あっては困りますけれども、先に続いていってさらにふやしていったら……。日本の防衛費の三割のものを平成二年度予算の補正でもって財源手当てをするというのでしょう。海外援助の四〇%増のものを補正で出すという金額なんです。九十億ドルというのは決して小さな額じゃありません、依存率を見たって、比較してアメリカの方が日本よりまだ低いのですから。それだけにこのお金は、これから先も追加されていったら日本経済どうなるかという問題がありますが、時間がありませんからこれは議論しません、申しわけない、せっかく来ていただいて。  簡単に日本の財政運営、これから日本の経済見通しを考えてみると、今回までならば日本経済はことしは三%そこそこの成長を維持できても、これから先五十億ドルや何かの追加をやらざるを得ないなんてことになると、日本経済にとっては簡単じゃないし、財政にとっても簡単じゃない。そういう意味では、これは高い金だということを我々国民は考えて、それだけにそのお金は大事に国民の税金だから使わにゃいかぬと言うのです。それを、戦費になるのか、クレームをつければ戦費にならないかもしれぬというあいまいな回答で私たちは納得できぬと言っているのです。これが九十億ドル問題です。  さて、最近の湾岸をめぐる情勢というものをちょっと外務大臣にお聞きします。湾岸戦争の状況ですね。  この二月の大体十日前後を境にしまして、アメリカの動き、チェイニー国防長官、パウエル統合参謀本部長などが現地に飛んで、さて地上戦というものにいつ参加するかなということの慌ただしい動きが始まっています。御存じのとおりです。また同時に、それに対してイランは調停役の提案をいたしております。例の三条件の提案は御存じのとおり、今時間がありませんから。いずれにしても、仲裁して早く停戦に持っていかなければならぬという動きが始まっております。このイランの提案は、アメリカは拒否しています。ヨルダンはヨルダンで、ヨルダン政府の基本的姿勢として、イラク撤退を前提にしながらアラブの中での政治的解決の道はないか、そのために即時停戦を頭に置いてイラクアメリカイラクとサウジアラビアの会談というのは可能でないかどうか模索し始めて、動きが始まっております。こういう一連の動きの中で、片や地上戦というものに備え始めた、片一方も地上戦というものを意図をしたという形で情勢は動いていることは御承知のとおり。  さて、地上戦突入ということについて、これらの一連の報道で、我が国の外務省はこういう一連の動きにどういう判断をお持ちですか。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 直接多国籍軍として参加をしておらない我が国の政府としては、各種の情報を集めておりますけれども、これはあくまでも軍事作戦上の機密に関することでございますし、私ども直接参加をしていない、軍事力の協力者でない者には、その極秘情報というものは、我々が入手することは不可能に近いと判断をいたしております。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しかし、日本の主要なる新聞の論説は、地上戦突入だけは何としても世界的に食いとめなければいかぬというふうに有識者たちが訴えていることは御存じのとおりです。だから、軍事情報はわからぬけれども我が国としては、この地上戦突入前に戦争の停戦というものが可能であるか、世界の動きなどを見て何かなすべきではないかという意味で、けさ外務大臣がおっしゃいましたが、我が国は安保理のメンバーになかなかなれません。アジアの信頼がないからです。だからなれませんが、せっかくこういう機会に発言の機会を得たとすれば、こういう情勢の中で、地上戦というものの前に停戦に持っていくための必要性をぜひ訴えていただきたいと思いますが、いかがですか。
  150. 中山太郎

    中山国務大臣 御指摘のように、地上戦に入る前にイラククウェートから撤退するという停戦の問題が話し合いの場に出てくるということは極めて重要でございまして、そういう意味からも昨日、在京のイラク大使と直接話し合いをいたしておりますし、また、安保理事会において、理事国ではありませんが特に日本政府として発言を求めて、明日発言をいたすことに相なっております。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まずその観点をぜひお願い申し上げたかったわけです。  さて、イスラエルのパレスチナ人地区に対して、ヨルダン川西岸並びにガザ地区にあるパレスチナ人に対して、ここは大体百七十万ぐらいですが、三十万家族、大体百五十万ぐらいが水の問題、食糧の問題で湾岸戦争以来外出禁止になって、大変な状態にあるということは御存じのとおりです。この緊急食糧などの援助について、国連パレスチナ難民救済事業の機関などが直ちにこれに援助の手を差し伸べるということが行われ、現にECにおいても、日本のお金にして約十四億円ぐらいの援助を行っているということも伝えられております。日本政府の対応が遅いとも言われておりますが、このパレスチナ問題の今日の状況に対して、今までに何をし、今何をしようとしているのですか。
  152. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府も、これらのパレスチナ人の大変な生活上の苦難について重大な関心を持っておりまして、昨年の暮れに約十億円の資金を拠出をいたしております。ちなみに、平成元年度においては七億八千八百万でございましたが、そのように拠出しておりますし、必要とあれば今後これらの方々に対する食糧援助というものも、政府としては国連機関を通じてやっていかなければならないと考えております。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 必要とあればじゃなくて、これはかなり緊急な課題ですよ、国連で問題になっていますし、ECの対応も非常に速やかですから。日本政府も速やかに積極的な対応をどうするかということが、また、これはイラク問題と直ちには結びつきませんが、アラブ諸国とイスラエルが共存の中で将来のアラブの方向を決めるときの一つの我が国の外交の方向だと思いますから、速やかな対応をすべきだということを御提言申し上げておきます。  今バグダッドからアンマンに行くあの輸送路が多国籍軍で爆撃されちゃった。それで、難民はあそこを通れなくなったというのでイランに行き始めた。そうすると、今度テヘランから動かなきゃならなくなってきますね、飛行機で行くとすると。こんな状況の中で、しかも、アンマン内部においてはイラク問題に対しての反応はイスラエルとはちょっと違う。そういう状況でありますだけに、現に多国籍軍が道路の切断、爆撃したために、避難民が死者を出したり傷ついたりしていることも事実であります。今度難民はイランの方に移るわけですから、自衛隊を派遣、派遣なんて言っていますけれども、今度はテヘランからどこに動くかというのはこれは大変なことになります。これはもう戦場の上を飛ぶか飛ばないかが問題になるの ですから、飛び方が非常に問題になります。ですから、簡単に自衛隊の海外派遣というような問題で、輸送が要請があればと言っていても、本当に戦場に送るようなものだという雰囲気がなきにしもあらずという想定ができます。  いずれにいたしましても、こんな状況ですから、地上戦をいかに回避するか、こんな状況のときに地上戦になったら大変なことになると思う。それだけに、その外交の姿勢を御提言申し上げたわけであります。  そこでお聞きしますが、あの湾岸に出ている油の量というのは、どのように外務省の方は数字をつかんでいますか。
  154. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  現在湾岸に流出いたしております原油につきましては、この流出量を含めまして各種の事実関係の調査が、関係の国際機関あるいはサウジアラビア等を中心といたしました関係国の間で行われております。ただ、現在現地の状況がなかなか正確な事実関係の把握を困難にしておるというふうに承知をいたしております。  私どもは、公開の情報のほかに、これら関係機関あるいは関係国政府、当事者等とも種々意見交換を行ってきておりますけれども、流出量につきましては若干の幅のある推計がございます。一番大きいもので千百万バレルぐらい、それからさらに非常に小さい推計もございますが、サウジアラビアの政府当局者等の見積もりで申しますと、大体八百万バレル前後という数字で考えておる者が多いという状況であろうかと思います。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 米軍側の発表やサウジアラビア側の発表は物すごく大きいんです、私の情報では。新聞情報しかないが、皆さんも新聞、テレビ情報ですから。それは一千万バレルを超えるなんて片一方で言っている。時には八百万バレルと言う。時には七百万バレル、三百万バレル、これは莫大な量ですよ、油の量としては。最近、国連の環境計画は、二月六日に発表したのは五十七万から百四十三万バレルだと言っているのです。片や一千万バレルですよ。そうかと思うと三百万バレルとか七百万バレル。そうかと思ったら国連の環境計画は、おくればせながら二月六日に五十七万バレルないし百四十三万バレルぐらいではないか、こう言っているのです。こういう情報国民はみんな新聞で見ているんですから。そうすると、これはペルシャ湾というのはどえらいことになるぞ、こういうことになるわけ。そうして、これはだれがどうしているかさっぱりわからぬ中で起きているのです。イラクがこうやって油の栓を抜いて放したんじゃないかとか。同時にまた、タンカーならば、タンカーは二十五万トンで百八十万バレルですから、ですから国連が発表している数字ぐらいですと、タンカー二つぐらいで出た油でしかありません。そうすると爆撃かもしれません。わかりません。  ですから、一千万バレルとか七、八百万バレルということになりますと、これはイラク軍がむちゃくちゃな環境破壊を意識的にやったという側面だけが強調される報道になります、いい悪いは別として。そして、ここで今国連計画が言っているように、五十七万ないし百四十三万バレルというとある意味では常識的でありまして、二十五万トン型の大型タンカーでいわば二台、全部一度に出れば一台で済みますけれども、そんなことはありませんから、一部分やられて一部しか出ませんから、タンカーの部分が爆撃でやられたのか何でやられたのか、こうなるわけです。したがって、こういういわば今ペルシャ湾で起きている状況が戦争状況でありますから、我々に入る情報というのは限られておりますが、こういうやはり物すごい数字の差のあるときには、我が国としてもその情報の中で一定の客観的な判断を持たないと外交を誤ると僕は思います。その意味で、今局長は七、八百万バレルなんて大きな数字を言いましたが、こんな数字だったら国連の数字の十倍になるんですよ。十倍になるんです。これは大変なことなんです。  水島の事故は、どうですか環境庁、少し環境庁その他、僕ばかりしゃべっているわけにいきませんから、水島事故がどのぐらい、それからエクソン・バルディーズ、例のアラスカのやつはそれぞれどのぐらい油が出ていましたか。
  156. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  水島の重油流出事故の場合には約五万から六万バレル、それからエクソンのバルディーズ号の場合は二十六万バレル程度ということでございます。
  157. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのアラスカの二十六万バレルというのは三年越しで、あそこは寒いところですから半年ようできぬということがありますけれども、まず三年越しで海の手入れをやっていてもいまだにできていない。ことしの予算でもまだ動いているんですよ。御存じですね、三年越しの対策をやってもまだ終わってないと。
  158. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  この油除去作業した人員が約一万二千人、船その他で一千四百隻、こういうような大量の人なり何なりを出して、大体終わったように聞いておりますけれども……(嶋崎委員「終わってない」と呼ぶ)私ども情報としては大体終わっていると。どこまでいきますとこれが終わったと判断できるか、なかなか難しい点もございますけれども、大体今のところはそんなところと承知しております。     〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 水島の場合は、おたくからいただいた資料は二十五万人ぐらいと言っているんですが、別の私の資料では三十六万人ぐらいの人間が携わっているんです。航空機三百十八機、その他の船の利用は四万二千六百十一隻、大変なものです。これがせいぜい、せいぜいというか大変なことなんですが、六万ないし四・五万バレルぐらいの油だという話ですよ。これが今のやつは、今の局長の説明でいくと数百万の話ですから、数百万バレルのものが流れているなんていう話になったらこれは大変なことになっちゃう。国連の言っているのは幸いにして七十、八十万バレルと言っているが、その辺は物すごい差があり過ぎる。しかし、いずれにしてもこの油による環境破壊というのは、これはもう大変ないまだかつてない大事故と見なきゃならぬと思います。  これにかかる経費は二兆数千億円なんて試算しているところもありますが、またもとに返るのに百年かかるんじゃないかというようなことを言う学者もいます。そんなのは正確じゃありません。いずれにいたしましても、人類では考えられない、歴史では考えられなかった大変な油の流出があることは事実であります。そしてクウェートの場合は、水は淡水化に主に頼っているんです。サウジアラビアは割と井戸がいいんです。イランもいいそうです。私、現地へ行って調べたわけじゃありませんが、私の情報はそうです。そこで今問題になっているのは、その油が淡水化施設の手前まで来ているということは、もう大体そこらじゅうで言われている現状であります。これは今度そこに生活している人間の水の問題になってきます。こんな事態が今や起きて、淡水化施設の寸前で、もう既に淡水化の施設に油がかかったからといって掃除せにゃいかぬというような話も出ている。こんな状態ですから、我が国としても政府の中に湾岸原油汚染対策検討プロジェクトチームが官房の中にできまして、そして鋭意御努力されていることは存じております。そして、もう既にオイルフェンスなんかを送っていることもみんな承知しております。しかし、これは早いうちにやらなきゃだめなんですよね。時間かけてしもうたらあれはもう全然だめなんです。早くやらなければならぬ。残念ながら戦争をやっている。しかし、海員組合の諸君はかなりのところまで入って物を運んだりしています。だから、いろんな御援助ができるはずですが、そういう状況の中で、こういう大変な汚染の状況を我々は目の前にして、水と油の問題で我が国が積極的にこれこそそれ相応の負担。特に我が国の海上保安庁は油の汚染に対処する技術は世界最高です。単純な仕事なんだけれども、技術は最高なんです。それだけに国際的に貢 献できることがある。そういうことに向けて、まさに九十億ドルのような問題が使われなければならぬと私は思います。  環境庁長官、御存じと思いますが、もう昨年の予算委員会からCO2問題が世界的な課題になってきていて、それに関連して我が党の森林政策を問題にし、自民党の皆さんや野党の皆さんと相談した上で、日本の森林を二十一世紀豊かにする方針をことしの予算でやっていただきました。今でも、イラク戦争が起きなくとも、大変な地球温暖化、温度の上昇、海面の上昇等で大問題が起きて、森林計画その他が問題になっているやさきに起きている事件で、あんなところに油を流すなんというのはまさに非人道的です。そういう意味じゃイラクのやっていることはけしからぬと思うし、またそういう事態を招く爆撃があってもならぬと思う。したがって、この人類の環境問題を考えると、今や地上戦に突入する寸前という状況と判断をして、さらに人的被害、それから原子力施設、化学兵器、こういうものを含めて異常な事態が起こり得ることを想定するとすれば、我が国は今こそ即時停戦に向けて行動を起こすべきだと思うし、これは全人類的な課題。つまりイラクのやっていることはけしからぬということは当然でありますが、こんなものを続けていたら人類の生存に問題になるような事態ですから、停戦という課題を我が国の外交が国連を中心にして動き出すべきときだと私は思いますが、外務大臣、環境庁、それから担当関係大臣それぞれの御所見を賜りたいと思います。
  160. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員御指摘の海洋の汚染問題等を含めまして、この地域の戦闘が即時停戦になるように、日本政府としては関係各国と十分協議をしながら、国連を中心に全力を挙げて努力をしておる最中でございます。
  161. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 嶋崎委員のおっしゃられる意味は、もうよくわかります。また、先ほど来話題になっておりますような八百万バレルとか百四十万バレル、いろいろな説があり過ぎるのもこれまたいかがかと思いますが、しかしいずれにしても、流出したこの実績だけは事実でございますから、これは一刻も早くあらゆる形で、先ほど総理が御答弁賜っておりますように、もうこれこそ人類、人道上の問題であり、またこれは救わなければならぬ私どもの使命だと思っておりますので、あらゆる角度における調査と、あらゆる角度におけるまた救助策をやりたい、こう思っております。
  162. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 海上保安庁としては十キロのオイルフェンスを供与したところでございますが、さらに追加があればそれに応じてまいりたいと思いますし、その他の状況がサウジアラビア政府から参りましたときにも可能な限りの範囲でぜひとも協力していきたい、こう考えております。
  163. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。  委員御指摘のとおり、この環境問題で国際社会に貢献するというのは、我が国にある意味では最もふさわしい貢献の分野だというふうに認識をいたしております。今度のこの湾岸の問題につきましては、御指摘のようにまだ戦闘行為が行われておりますので、なかなか直ちにその環境の面から取り組むことは難しい面もあるわけでございますが、この戦闘が終わったら直ちにいろんな意味で出動ができるように、専門家のリストアップをしてみたり、それから国際機関との連絡あるいはアメリカその他の国々との連携などを十分図って今対応しているところでございます。
  164. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 環境庁は去年私がここで、予算委員会質問して以来、昨年以来御努力いただいて、環境庁内部にも地球対策の新しい部門ができて、しかも環境庁が唯一、世界じゅうに環境問題の窓口と、国際的な情報をつかむパイプを持っているのですから、その意味で外務省の情報と同時に、環境庁の果たす役割は極めて重要だ。そういう意味で、大臣の就任された大事な仕事として、今の湾岸戦争などについても環境庁というのは違った視点でもってこの戦争というものに地球環境という観点からも対処すべき役所でありますから、相対的独自性を持って問題の追求をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  さて、残念ながら今日のような湾岸戦争が起きる事態に立ち至っておりますが、この事態の一つのきっかけは国連の六百七十八号決議であります。一月二十九日の決議であります。この一月二十九日の決議については、確かにそれを境にして多くの世界の国々が協力して多国籍軍を構成して、イラク侵略に対してどう食いとめるかと、引っ込めさせるかというので今日までの努力が続いている。しかし、これから長い国際連合の歴史の中であの決議が今日の事態に対処する最良の、最善の決議であったかどうかということについては歴史家が検討すべきことでありますが、我々政治家としても今日の段階での一定の判断を持ちつつ、足りない部分は補わなきゃならぬと思います。  私が申し上げたいのは、アメリカとソ連は国連の分担金の率でいきますと、それぞれどのくらい分担金の負担率になっていますか。
  165. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  アメリカの分担率は二五%、ソ連は九・九九、ちなみに日本は一一・三八でございます。
  166. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 アメリカが二五%ですね。日本が一一・三八。まあソ連、貧之ですから九%。さて、外務省からこの資料をいただいたんです。アメリカが昨年、一九九〇年、今までにない多額の分担金を急に納めています。一九七〇年までは非常に支払いがよかった。それがだんだん支払いが悪うなってきて滞納額がふえてきておった。ところが昨年になって急に分担金を納めました。前の年は一億五千八百八十四万ドル、途端に倍の三億ドルを昨年ぱたんと納めたのです。このデータはそういう数字です。この数字の特徴。  それからもう一つ、八月二日にいよいよイラククウェート侵略が始まった。それから何回か国連安保理事会が開かれました。その安保理事会が開かれるごとの議長というのは、一回ごとにかわっていますか、それとも議長は何度か経験してかわるというかわり方をしていますか。八月二日から十一月二十九日までの間の国連の安保理の総会における議長がどういう交代のルールで動いておりますか。
  167. 丹波實

    ○丹波政府委員 もし先生のお許しをいただけるのでしたら前の問題について一言だけコメントさせていただきたいと思うのですけれども。  確かにアメリカは滞納額を昨年から減らし始めましたけれども、私は、その一つの動機は、八七年からソ連も非常な勢いで滞納額を減らし始めたということに対応した動きもあり得るのではないかと考えておりますので、恐縮でございますが、一つコメントさせていただきたいと思います。  それから、二つ目の点でございますが、先生よく御承知だと思いますが、毎月安保理の議長はかわっておりまして、昨年の八月はルーマニア、九月はソ連、十月はイギリス、十一月は御承知のとおりアメリカ、それから十二月はイエメン、一月はザイール、今月はジンバブエ、こういうふうになっております。
  168. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国連の分担金を見ますと、米ソの軍縮が問題になってきて、国連でお互いに対立しているのじゃなくて協力しなければならぬという情勢の中で変化していることの数字として読み取れる側面もありますが、昨年の暮れに慌てふためいて納めたことの中には、決議のときの議長の役割というものがあったのではないかな、これが私の推測であります。  ところで、ひとつ議長のこの交代を見ますと、おっしゃるように八月はルーマニア、ルーマニアでもって国連会議は五回開かれました。ソ連の議長のときには、それまた同じく九月には五、六回開かれております。アメリカが議長になったとき、これは順番ですから、おれがなりたいといってなるんじゃないんです、アルファベット順ですから。アメリカがなったときが問題の一月二十九日前後であります。そして、ここですぱんとあの六七八号が決定されました。  そしてその後今日まで、次はイエメンですから、イエメンはあの決議に反対の国であります。だから、アメリカが自分の番に回ったときにあの決議 をやったという節があるのですが、したがってあの決議が、アメリカが考えている安保に依拠しつつ今度の多国籍軍の軍事的行動に持っていけそうな状況をつくるべくこの決議の背景がつくられていないかなということを恐れるのです。金も納めた。自分の議長のときに決議した。次のときは反対するイエメンが議長だ。それだけにこの決議の決められたときの議事録、これも外務省から原文をみんないただきまして読みました。非常に微妙な発言、賛成はしているけれども武力行使はだめよと言っているマレーシアのような国もあれば、中国は棄権に回っていますが、それも、イラクのやっていることはだめというのでは共通していても、対応の仕方については非常に多くのクレームをつけている国々がたくさんあります。  その中で、国連のあの決議は、御承知のように、決議の前文を見ますと、国連憲章の一、二、三、四を決める前段は何かといいますと、「国連憲章による国際の平和と安全の維持の確保における安保理の義務と責任に留意し、完全なる履行確保を決定し、国連憲章第七章のもとに行動し、」と書いてあるのです。  国連憲章の第七章というのはたくさん条文があります。それを全部ひっくるめて「第七章」というものでくくっておいて、次のようなことを一決める、二決める、三決めるというふうに決めた決議であります。  第二番目の決議には問題の、「同地域」ですから恐らくイラクが侵入しているクウェート、そのクウェートにおける国際の平和及び安全を確保するにはそこから撤退してもらう、そのためにあらゆる必要な手段をとる権限を与える、こうなっていますね。ここに二つ問題がある。  一つは、この決議に言う国連憲章の第七章の条項で適用する行動が、今とられている多国籍軍行動として国連安保理決議として合法性を持ち得るか、これは一つの議論だと思います。これからの議論になると思う。なぜならば、片一方は多国籍軍です。国連軍ではありません。国連軍ならば、明確に第七章の中の第四十三条の適用とか四十二条の適用、非常に具体的になります。ところが、それが言えないものだから、この決議は「第七章」と抽象的なことでくくって多国籍軍にフリーハンドを与えた、これが「第七章」という見出しのポイントだと私は思います。  そしてもう一つは、クウェートからイラク軍が引き揚げるということのために、そこが目的で、イラクの政治体制やフセインをどうするかというのは、この決議ではそこまで踏み込んでいない、こう私は理解します。  この後段は、外務大臣、どう思いますか。前段の第七章は、国連軍でない、多国籍軍なるがゆえに、「第七章」と抽象的に規定して多国籍軍にフリーハンドを与えるような形をとったというふうに理解ができないでしょうか。
  169. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の前段の方につきまして、御答弁申し上げます。  御指摘のとおり、現在展開しております多国籍軍は、国連憲章四十二条、四十三条に言うところの国連軍ではございません。一連の安保理決議に実効性を与えるために加盟国が展開したものでございます。そして、先ほどお引きになりました安保理決議六百七十八号におきましては、確かに何条ということは言っておりませんが、前文におきまして国連憲章第七章のもとに行動する、この主語は安保理でございますが、と言及しているとおり、国連憲章第七章に基づきまして、イラクが本年一月十五日以前に安保理決議六百六十及び累次の関連諸決議を完全に履行しない場合には、クウェート政府に協力している国連加盟国に対し、武力行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を与えたものと理解しております。これはまた、おおむね本件決議を採択いたしました安保理主要理事国の共通の理解であるというふうに認識しております。
  170. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務大臣、どうですか。
  171. 中山太郎

    中山国務大臣 この決議は、イラククウェートからの撤退ということがその主目的でありまして、イラク国家のいわゆる破壊あるいは分割、そのようなことを考えていないということをイギリス、フランス等も安保理に通告をしております。
  172. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 残念ながら、時間が参りました。  アメリカのスタンフォード大学の国際法の教授がこの決議に関連して次の三点を指摘しています。  この決議の問題点の第一は、六百七十八号決議には決議の有効期間も定めていない。有効期間を定めていない。武力行使を実施する国家が安保理に告知する義務も与えられていない。これが第一点。そして、この際にどのような破壊手段まで認められるかも特定していない。そして三番目に、民間への攻撃や大量破壊兵器というものの使用について、何の留保もしていない。これを国連憲章精神から見ると、こんな決議をするときには瑕疵があるよという意見を述べておられます。  それだけに、我が国国連の名においてとか国連国連と言うのであるとすれば、我々こそが本当に国連を動かす我が国の外交として、アメリカへの貢献と同時に、それとは相対的独自性を持った、国連に対して日本独自の外交をやることが国連中心主義であり、また同時に、いつまでたっても安保の理事にもなれない我が国は、東南アジア、ASEANの諸国からの支持がないからです。アジアの一員ではないからです。そういう意味で、西側の一員であるとともに、国連外交を重視し、アジアの一員という観点から国連というものをもっと大事にして、アメリカとの関係も重視しながらも相対的に言うべきことは言う、そういう外交の姿勢をとっていくべきだというように思いますので、それを私の最後主張として、大臣の所見をいただいて終わります。
  173. 渡部恒三

    渡部委員長 大臣の答弁、簡単にお願いします。
  174. 中山太郎

    中山国務大臣 今委員から国連の安保理の理事国になっていない、アジアの国々から信用がないという御批判がございましたが、今まで日本は六回理事国に当選をいたしておりますし、来年の改選に当たりましても、多くの国から支持をいただくようにただいま努力をしておるということをこの機会に明確に申し上げておきたいと思います。
  175. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ありがとうございました。
  176. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次に、矢追秀彦君。
  177. 矢追秀彦

    矢追委員 湾岸危機の問題につきまして、きょうは集中審議でございますので、その問題に限りまして質問をしたいと思います。  まず最初に、自衛隊機の派遣問題についてお伺いしたいと思います。  予算委員会が開かれまして、随分議論も行われてまいりました。私どもは自衛隊機の派遣には明確に反対でございます。その理由はいろいろございますが、自衛隊の今回の特例政令によるやり方では将来の自衛隊の海外派兵に道を開くことになる、こういうことはまずい、こういうことを中心として反対をしておるわけでございます。  そこでお伺いをしたいのでございますが、現在はまだ自衛隊機は飛んでおりませんね。どういう状況になれば、どういう手続等も含めて飛ぶのか、お伺いしたいと思います。
  178. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、現在自衛隊はまだ飛んでおりません。どういう状況の中でということでございますが、御承知のとおり、今回制定いたしました政令におきましても明らかなように、今回の湾岸の情勢によって発生いたしました避難民、そういった方々を輸送する、そういった任務を持っております国際機関、そこからの要請がございまして、そしてまた我が国政府の中で一連の手順を踏みまして、外務大臣の方から私ども防衛庁の方に御依頼がありましたときに、必要に応じ自衛隊機で避難民の輸送に当たるわけでございます。しかしその場合も、必要に応じと申しましたのは、要請がございましても、まず我が国の民間機での対応ができるかできないか、そういうことも考えた上で、民間機で対応できない場合に自衛隊機での輸送ということになろうか、このように想定さ れます。
  179. 矢追秀彦

    矢追委員 もう少し明確に言っていただけませんか。あれだけ法律論争をしているわけですから、これはまた後で触れますけれども、今申された点では余りにも不明確です。IOMからの要請がまず第一番、これは既にあったのかなかったのか、いかがですか。
  180. 中山太郎

    中山国務大臣 IOMから具体的に航空機の提供といったような要請は現在まだ来ておりませんけれども、今までの中には、御案内のように先般ベトナムの難民を運ぶことができましたが、これ等はIOM等との連絡をやりながら政府が民間機を利用してやったケースでございます。
  181. 矢追秀彦

    矢追委員 次に、自衛隊機が仮に飛ぶといたしますと、一つは、今申し上げたIOMの要請がある。しかもこれは、もう既に一月十七日のアピールによりましても軍用機及び民間機と書いてあります。これは全世界にやったアピールでございますから、日本のように海外に派遣できない自衛隊を持っている国と他の国とは全然性格が違うわけですから、ある意味では民間機だけと私たちは考えておりますが、とにかくそのIOMの要請がある。  仮に自衛隊機が飛ぶとした場合、各地中継をしていかなきゃいけませんね、一遍には行けないわけですから。その国の了解等も必要だと思いますが、そういう調整は今もう既にやっておられるのか。それとも、IOMから要請があって、それから各国にお願いをして、そこで、それじゃこの国へ、フィリピンならフィリピンへ自衛隊機がおりて結構です、こういうふうなことになるのか、その点はいかがですか。
  182. 池田行彦

    ○池田国務大臣 御指摘のとおり、仮にこの任務に当たります場合、C130の航続距離から申しまして何カ所かの経由地が必要であろうと思います。その経由地あるいはルートをもちろん確定したわけではございませんけれども、幾つかの想定される場所を考えまして、技術的な面から可能であるかどうか、駐機とかあるいは給油等という問題、あるいはその当該国がそれを受け入れてくれるかどうかという点につきまして、ある程度の調査とかあるいはそのサウンディングをそちらにございます在外公館等を通じまして行っておるのは事実でございます。しかしながら、正式の当該国への要請等は、当然のことながら今具体的な計画のない段階においてはいたしておりません。
  183. 矢追秀彦

    矢追委員 ということは、やはりIOMから正式な要請があって初めて自衛隊機を出すと決まってからお願いをする。それも大変時間のかかる問題です。  もう一つは、今IOMから日本の自衛隊機を特に指定をしてきていないということは、やはり私は今の難民の状況が現状においてはC130が行くような状況にはない、こういう状況ではないかと思われるわけでございます。既に日本政府は二機のチャーター便をやりました。また既にボランティアの方々は二十三機分の資金を集められたわけでございます。さらに、もう既にそのボランティアによるチャーター機も飛んでおる状況です。そういった中で今IOMから要請が来ていないということは、日本の自衛隊機を必要としていない状況にある、こう私は理解をしたいと思うわけでございますが、現在の難民の状況はどうなっておりますか、また今後の予想、これについてお伺いをしたいと思います。
  184. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  この湾岸に関連しますところの避難民の移送その他を扱う国際機関が幾つかございますけれども、一月の十一日に行動計画というものを発表しております。その中で、もし戦闘が開始された場合にはトルコ、イラン、シリア、ジョルダン各国に約十万人ずつの避難民が流出するという前提で行動計画を発表したわけでございます。しかしながら、今日までのところ、丸い数字で申し上げて、戦闘開始後出てきております避難民は、トータルで恐らく一・五万から二万というのが現在の推計値でございます。そういうわけでございまして、あくまでもこれは国際機関が使った数字でございますけれども、予想値よりも相当下回っておるということでございます。  原因につきましては、現在アメリカを中心とする多国籍軍が行っておりますところの戦闘というのが軍事施設を中心にねらわれているということで、一般生活するに当たっては、さほど、考えられていたほど危険を感じていないのではないかというのが一つ目の理由。二つ目の理由は、イラクがこれらの潜在的な避難民の出国を抑えているんじゃないかということを国際機関の専門家たちは理由として見ております。  しかしながら、今後遺憾ながらもし地上戦が行われるというような状況になれば、避難民があるいは国際機関が予想しているとおり出てくるのかもしれません。それは地上戦の態様その他の状況によるかと考えております。
  185. 矢追秀彦

    矢追委員 今一万人を超えると言われましたが、私のところにいただいた資料では二千二百八十五人となっておりますけれども、その点いかがですか。たしか二月六日現在ですが。
  186. 丹波實

    ○丹波政府委員 私が今御説明申し上げましたのは、戦闘開始以後トータルで出てきた人間の数を一・五万から二万ということで申し上げました。もう一つの側からの数字といたしましては、現在の時点をとらえた場合にどのくらいの人間がジョルダンに滞留しているか、恐らくその数字を先生は念頭に置いておられると思いますが、そういう観点から二月十一日のUNDROの数字を使いますと、ジョルダンには千四百三十四人。毎日変わっております。二月十一日現在では千四百三十四人の避難民がジョルダンに滞留しておる。ちなみに、イランには約五千人、トルコには約九百四十、シリアには約四百、そういう数字をもらっております。
  187. 矢追秀彦

    矢追委員 したがいまして、IOMから自衛隊機を飛ばしてくれというのは、現状においては必要ない、だから、私は来ないと思うわけでございまして、もちろん今後長い間戦争が続けば問題でございますが、少なくも早期停戦ということが私たちの願いでもあるし、またそうしなければならないわけでありますから、そういった意味で、まず現状において総理、あなた最高指揮官ですから、飛ばす必要はない、将来、これぐらいの規模であれば無理な特例政令までつくって飛ばすようなことは私は必要ないと思うのですが、いかがですか。
  188. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今るる御説明しておりますように、避難民の輸送ということについて国際機関が判断をして要請を受けた場合には、日本は協力をするというオファーをして、そして既にきょうまで民間の大型の輸送機で四便にわたってベトナム難民輸送等の要請を受けたときにはカイロからそれを実行をいたしましたが、防衛庁長官が言いますように、具体的な要請がないということは、難民の集まりぐあいも予想したよりも少ないということと、同時に、カイロまでのいろいろな便等も皆さんの御協力、各国の協力で行われておるものと、こう見ておりますので、要請がないときにこちらから行くことはございません。
  189. 矢追秀彦

    矢追委員 先ほども申し上げたように、日本はそうやって民間では協力をしておられます。また、政府も一生懸命やった。民間のボランティアもやっておられる。さらに、今総理の言われたように、この避難民援助につきましては、国際機関を通じて相当の資金協力をしておる。これは大変感謝をされておるわけですね。そういったことこそ私は日本の平和貢献として必要なことである、これはいいと思うのです。だから、せっかくここまで感謝もされ、そしてしかも既にやっておる。またこれからもやろうとしている。なのにこれだけ国内でも議論がある、また反対も強い、しかも、東南アジア諸国を中心として、日本の自衛隊には大変な神経を使っている、そういうふうな状況の中で無理をして、今総理、こっちから飛ばすことはないとおっしゃっていますけれども、この特例政令までつくり出して、無理をして私は飛ばすことはないと、こう判断をしたいわけです。  そこで、この問題に入りますけれども、二月五日の我が党の市川書記長の質問に対しまして政府 から統一見解が出されたわけでございますが、これは到底私たちは納得のできるものではございません。  そこでお伺いをしたいわけでございますが、この政府の統一見解では、「前記の政令において、前記文言に代表列挙されたものとかけ離れたものを規定することは予定されていないが、」こうあるわけですね。これは再三議論をされておりますのでこちらから申し上げますが、「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」、すなわち、その範囲として「一 天皇及び皇族 二 国賓に準ずる賓客三 衆議院議長及び参議院議長 四 最高裁判所長官 五 内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」と、こうなっておるわけですね。そうして、かけ離れたものは予定されていないと、こうきちっと出ているわけですね。にもかかわらず、後で問題になるわけですが、このかけ離れたと考えられるものが出てくるわけです。  しかも、昭和六十一年の十月二十八日の衆議院の内閣委員会におきまして友藤官房長は、「百条の五の規定は「国賓等の輸送」ということでございまして、この範囲は、私どもの方といたしましては在外邦人の救出とか緊急援助隊、こういったものについては含まれないというふうに考えております。そういったものを想定したものではございません。」と、こうなっているのですね。にもかかわらず、この「かけ離れているか否かは、高位高官であるか否かという社会的地位にのみ着眼して判断すべきものではなく、その者の置かれた状況、国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべきである。」かけ離れているかいないかの判断を政府が勝手に決めると、こう設定をしておるわけですね。こういう新しい基準を政府が勝手に決めること自体が内閣の授権の範囲を著しく超えておる、逸脱しておる。それで私たちは、この答弁と統一見解は納得できないと、こう申し上げたいわけでございますが、法制局長官、どうですか。
  190. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員は、このかけ離れているか否か、それが高位高官であるか否かという点にのみ着眼して判断すべきものではなくて、「その者の置かれた状況、国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべきである。」これはいわば政府の勝手な解釈ではないか、こういう仰せかと存じます。  私どもの方としては、決してそれは私ども勝手にといいますか、そういうふうなことではございませんで、自衛隊法の百条の五の枠組みというのがまずございまして、自衛隊法の百条の五第一項でございますが、その枠組みとしましては、防衛庁長官は、「国の機関から依頼があった場合」、まずそういう場合を限定し、さらに「自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、」という限度を言い、それで「航空機による」という手段を言い、その上で「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」かように書かれているわけでございまして、そういう意味で、今の私どもの方の基準というのは、そういう点から判断して、その者の置かれた状況あるいは国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して評価すべきである、こういうことを申し上げているわけでございます。
  191. 矢追秀彦

    矢追委員 そうすると、私が今の御答弁から申し上げたいのは、私が先ほど読み上げた六十一年十月二十八日の衆議院内閣委員会における友藤官房長の答弁はどうなりますか。これはかなりいろいろな、在外邦人の問題とか議論をずっとされてきておりますね、この本委員会においても。相当これは言っておるわけですよね、過去に。そのうちの一つですけれども、これは割合はっきり言っているのですね。「この範囲は、」ということも書いてあります。「在外邦人の救出とか緊急援助隊、こういったものについては含まれないというふうに考えております。そういったものを想定したものではございません。」と、これは明確じゃないですか。今あなたがおっしゃったように、百条五の規定は「国賓等の輸送」と、そこから始まっているわけでしょう。その範囲は、在外邦人の救出とか緊急の援助隊は入っておりませんと、こう言っているのですから、これは入るわけないじゃないですか、範囲の中にも。範囲は、その後の政令でまたちゃんと書かれているわけですからね。今の答弁では到底だめです。
  192. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 過去の国会答弁との関係につきましては、先日のペーパーにもお示ししましたように、過去のこの答弁は、自衛隊法に自衛隊機による国賓等の輸送の、いわゆる百条の五を加えるための改正案、これを御審議願う際等に、自衛隊に、自国民の保護としての邦人の救出、こういうものを一般的な任務として恒常的に行わせる、このためには法律上任務を付与する明確な規定が必要であろう、こういう趣旨を述べたもの、先ほどの友藤政府委員の答弁もそのような趣旨を述べたものと、かように考えております。
  193. 矢追秀彦

    矢追委員 長官、そこまで言われるなら、これは後でこの問題をやろうと思っていたんですけれども、今申し上げます。  私は法律の専門家じゃないんですよ。法学部も出ておりません。しかし、「一般的な任務として恒常的に行わせるためには、法律上任務を付与する明確な規定が必要であろうという趣旨」と、「一般的な任務として恒常的に行わせるため、」要するに難民、これは在外邦人のことを書いていますけれども、今まで過去の議論というのは一般的、恒常的なものじゃなかったんですか。要するに緊急なんでしょう。在外邦人の救出ということは一般的、恒常的ですか。私、これがわからないんです。また、難民も一般的、恒常的ですか。三百六十五日、難民がいるんですか。今これは湾岸の危機のためにつくったんでしょう。そういうふうになっているじゃないか、この特例政令は。それを今までは法律改正しなきゃできないとこう言っておきながら、今回は特例政令でやる。それを後から理屈をくっつけるために、これも非常に無理をしてこういう統一見解。だからうちの書記長が質問したときも、納得ができないということで、統一見解を出しなさい、出てきた。その統一見解は、今私が申し上げているように、これは到底納得ができないわけです。  そこでもう一回聞きますよ。在外邦人の救出あるいはまた難民、これは恒常的に行わせるんですか、自衛隊機に。「国賓等の輸送」、範囲が決まっております。こんなのこそ緊急でしょう。これは緊急じゃないですか。私、このように「一般的な任務として恒常的に行わせるためには、」これがわからないです。
  194. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 「一般的な任務として恒常的に行わせる」、これがどういう意味かという御質問だと存じますが、邦人の救出あるいは避難民の今回の輸送、こういうものが緊急事態である、これについては委員仰せのとおりだろうと思います。まさにそういう緊急事態であるからこそ邦人の救出とか避難民の輸送という問題が出てくるだろうと思います。  私どもの方で「一般的な任務として恒常的に行わせる」というのは、言ってみればあらかじめ一般的にこれに対応し得るような仕組みを設けるといいますか、そういう趣旨でむしろここは書いているわけでございまして、そういうふうなものであれば、法律上明確に任務を与えて書く、規定を設ける、こういうことが必要であろう。あらかじめ一般的にこれに対応し得る仕組みとして恒常的に設けておく、こういうことでございます。
  195. 矢追秀彦

    矢追委員 そういう仕組みをつくるためには法律改正が要ると言ってきたんじゃないですか、今まで。違いますか。それを過去は過去だ、今度は仕組みをつくるんだ、仕組みをつくるから特例政令でやるんだ、これはおかしいじゃないですか。そういう仕組みをつくって、しょっちゅう自衛隊機が今まで決められたような国賓等ではなくて、難民とか在外邦人の救出に動かせるんだ、それこそ恒常的な仕組みをつくりたいというなら、こんな特例政令じゃだめじゃないですか。法律改正が必要じゃないですか。それを過去何回と言ってきたじゃないですか、政府は。私がきのうからいろいろやっただけでも五十五年以降で一、二、三、四、 五、六、七、八、九、十回ですよ。これだけやっているんですよ。議事録を全部精査してください。これだけ同じこと言っているんですよ、在外邦人の救出については法改正がなきゃできないということを。今長官言われた仕組みをつくるといったら大変なことじゃないですか、これは。一片の政令で、しかも今までの政令ならこれは百歩譲ってもできる。今度は特例政令ということで、今度ははっきり今回の湾岸危機に関する難民の輸送ということで自衛隊機を出そうとしている。だから、こそくな手段でありだめだともう全部追及してこられたじゃないですか。  もういいかげんにこれは撤回されたらどうですか、この政令を。撤回したらどうこう言いませんよ。海部さんやめろなんか言いません、私は。間違ったら素直に改めればいいのですから。長官、どうですか。
  196. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 どうも仕組みをつくるという私の表現が御理解いただけなかったようでございますが、実は今回の政令は、自衛隊法の百条の五という、いわばそこで自衛隊の航空機による輸送、こういう百条の五の仕組みの中において、それに当てはまるものとしてかけ離れていないものを政令で決める、こういうことでございまして、例えば仕組みとしてというのは、私も特に事態を想定してではございませんけれども、そういう緊急事態が生じたらいつでも出動し得る、あるいはどういうところにもそういう緊急事態が起こったときには出動し得るという意味で、一般的にと申し上げているわけでございます。
  197. 矢追秀彦

    矢追委員 この百条の中に一、二、三、四、五とあるわけですよね。三では運動会競技、あるいは四では「南極地域観測」、五に「国賓等」こう出てきて、私は本当に今までの答弁、これは国民の皆さんだってわかられると思うのですよ。今言うた百条の五の中の仕組みと無理してやらなくてもいいじゃないですか。どうなんですか。だから、さっき言ったように、現実に自衛隊機も余り必要ではない。それを、あなた、無理して今──撤回されても私はいいと思うのですよ。  まあそれはそれといたしまして、今申し上げたかけ離れているかいないか、これも私今議論したように問題ですね。それと、かけ離れているかいないかを判断するのが政府だというのはどういうことですか、これは。
  198. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 百条の五第一項におきましていろいろな文言が書かれておりますが、要するに輸送対象としてある特定の人、者を輸送する、物資ではございません、人を輸送する、こういうことになっております。その場合に、その輸送対象となる人につきまして「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」、かように書かれているわけでございます。そういう意味におきまして、その「政令で定める」ということにつきましては、政令委任をいただきました範囲内におきまして政府で決めていく、こういうことでございます。その政府で決めていくときの判断基準が、いわゆる先ほどから議論になっておりますかけ離れているかいないか、こういうことであろうと思います。
  199. 矢追秀彦

    矢追委員 ちょっともう一回言ってくださいね。私が先ほど聞いたのは、要するにかけ離れているかいないか、「国賓等」のこの項目にかけ離れているかいないかを判断するその判断の基準を政府が決めること自体大きな問題があるのじゃないか、授権の範囲を超えているのではないか。かけ離れているか、これはかけ離れています、これはかけ離れていません、だから政府は、これはかけ離れていないから、自衛隊機の派遣は結構です、難民の場合はよろしい、こうされておるわけですけれども、難民とそれが、あるいは在外邦人の救出とこれがかけ離れているかいないかの判断を政府が決めるということに私は問題がある。どういう基準で、じゃ、政府はこの授権の範囲というのはあるのですか。どこまでなんですか。やはり私は国会というのがあるわけですから、法律というのはやはり国会ですから、何でもかんでも政府にこれを与えていったら、これはぐあいが悪いですよ。いわゆる議会制民主主義をとっておる日本の国のあるべき姿ではない。  だからもう一回聞きますけれども、このような新しい判断基準を政府が勝手に決めること自体、内閣の授権の範囲を逸脱しておるのではないか。仮にそういうふうにしたい場合はやっぱり法律改正という形をとって国会で議論すべきである、こう言っておるわけです。いかがですか。
  200. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほど申し上げましたところでございますが、百条の五第一項のまず枠組みというものがあるわけでございます。そこでは防衛庁長官は国の機関の依頼を受ける、要するにそういう依頼があり、任務の遂行に支障の生じない限度で、しかも航空機によってそれで「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」を輸送することができる、こういう法律上の仕組み、いわば受動的、受け身であり、限度も限られ、しかも輸送の手段、こういったものを明確に限定されているわけです。そういうことから考えてまいりますと、輸送の対象たる者につきましては、国賓、内閣総理大臣以外の者、これを先ほどのペーパーにございましたように「高位高官である」と、そういう点にだけ着眼して判断すべきものではなくて、「置かれた状況、」あるいは「国による輸送の必要性その他諸般の事情を総合して」判断すべきである。こういう百条の五の第一項の枠組みの中からそういうふうなことは解釈として出てくるであろう、かように考えておりますし、それはまた政令に、政府に、受任された、授権された範囲であろう、かように考えているわけでございます。
  201. 矢追秀彦

    矢追委員 そこですね。今その最後のところの、これは政府で受容された授権の範囲内である、こうおっしゃっているわけですね。また、今さっき長官言われた、「置かれた状況、国による輸送の必要性」その他の諸般の情勢を考慮すれば、自衛隊機は逆に派遣すべきでないと出るのですよ、これは。  それは別といたしまして、そこら辺なんです、今おっしゃったところ。要するに、「諸般の事情を総合して評価」する、そういう言葉で言ってしまえば、将来どうなるんですか。事実上、政令はもう全部政府に白紙委任したことになるじゃないですか。今、枠組み枠組みとおっしゃっていますけれども、その枠組みはこれの政令にちゃんと書いてあるんじゃないですか。これが枠組みじゃないですか、国賓等の範囲というのが。まだもう一つ別の枠組みがあるのですか。政令というのは、法律の中を具体的にいろいろなことをやるのが政令でしょう。これは国賓等の範囲、きょう午前中嶋崎委員も見出しのことを一生懸命追及されておりましたね。国賓等の範囲と、こうはっきりしてあるじゃないですか。その範囲以外の在外邦人であり難民であるわけですから、この枠組みの外じゃないですか、あなた、枠組みの中、中とおっしゃっているけれども。それを、仮に外であったとしても、それを勝手に政令で、しかもこの政令じゃないのですよ。特例政令というもので持ってきて、しかも統一見解ではそれとまた在外邦人の問題を一緒くたにして、そして何でもかでも政令でいけるように、特例政令をつくれば何でもできる、何としても自衛隊機を飛ばさないと今後ぐあい悪い、こういうことでもう必死になって、矛盾がわかった上でやっておられるわな。歴代の法制局長官というのはこんなことなかったと思うのですよね。日本の法律体系は割合ちゃんとしていたと思うのですよ、それなりに。いろいろ議論も私どもしてきましたけれども、今度のような、こういう特例政令は初めてです。  それは確かに湾岸危機は初めての状況でしょう。だから去年だってあれだけ国連平和協力法案で議論したじゃありませんか。自衛隊はだめと、任務の中にはいろんなものはないと、だからそれは法律改正なんだと。今度になったら、法律改正しないでもいいと。そんなことをここでこだわる必要は総理、ないでしょう。世界じゅうは日本の平和憲法を知っているんじゃないですか。自衛隊の海外派兵はだめだということも知っていますよ。  特に東南アジアは、私も東南アジアの大使館の 人たちや向こうの人たちといろいろ話します。もう自衛隊がと聞いただけでだめなんですよ。あのPKOのときにも自衛隊はだめですよと言われました、私も。OBはどうですかと聞いたら、OBもだめと言うのですから。それぐらい厳しいのですよ、東南アジア諸国は日本の自衛隊に対して。かつて侵略されていますから。そういうことなんですから、何も自衛隊機を出さなくても、これだけ先ほど申し上げたようにあの湾岸諸国は感謝しているじゃありませんか。各国だって日本からのいろいろな経済援助に対して感謝している国もある。ところが、この自衛隊機を飛ばすことだけによって反発が出てくるわけでしょう。しかも国民の理解も得られないんじゃないですか、こんな状況の議論では。  総理、どうですか。私が申し上げたいのは、自衛隊機につきましては飛ばすべきでない。まず一つ、その理由は、今申し上げたように法律的にはいろいろな問題がいっぱいある。しかも統一見解ではちっとも我が党の市川書記長の質問に対する答弁になっていない。しかもこれは特例政令というこそくな手段でやろうとしている。こういうことでまず一つ法律的に問題があってだめ。  もう一つは、現在、先ほど申し上げたように難民も少ない。必要性がない。また、自衛隊員も国民の理解を得て初めて難民救済だという使命感に燃えて行くのでしょう。ところが、国民が理解しない。しかも世論調査ではやっぱり自衛隊機の反対が強いです、これは。そういう中で飛ばすべきでない、しかもまだ要請は来ていない、難民も少ない、ここでやっぱり自衛隊機は飛ばさない、少なくも当面はだめ、この問題の議論解決するまでは飛ばさない、そのかわり民間機の方の難民救済には日本政府はほかのできることで一生懸命やる、こうやったらどうですか、総理
  202. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自衛隊法の第百条の五の解釈その他の問題については、法制局長官がここで詳しく申し上げましたから重複を避けますが、しかし、本来の「任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」と書いてあるわけですね。これは何回も議論したことですけれども、もしそれ以外の者は絶対にいけないんだというのが院の御意思であるなれば、この法律ができるときにこれは制限列挙としてこれ以外の者はいけないよというふうに示してもらえば、その枠を取っ払おうというような強引な考え方は毛頭持ちませんし、ただ、国際機関から要請を受けたときに、避難民がある、これを移送しなければならないという要請があったときに、いや、日本憲法があることは知っているから断ればいいんだとおっしゃっても、政府の立場では国際機関から要請を受けると、平和の回復は大事だと思っておりますし、イラクのあの態度によって出てきた避難民の人のことは十分配慮しなきゃならぬ。そこで、民間機も軍用機も提供できるものはオファーをしてほしいという国際機関の要請があったときにはそれはすぐに準備と対応を始めなきゃならぬ。  私は可能性について検討する、こう申し上げました。可能性について検討すると申し上げて、こう見ましたら、素直に読むと第百条の五で「その他政令で定める者」と書いてあるのですよ、これは。そうして、この法律のここの中にそれ以外の者はいけないとか内閣総理大臣に限るとか、そんなことは書いてありませんし、私も内閣総理大臣、しかし、今、クウェートから出てきて困っているあの避難民の人も私も、人間という原点に立ち返ると、人間性の尊厳では同じだな、こう考えますので、人道的な立場ということ、それから委員おっしゃったけれども、これは絶対に憲法で禁止されている海外派兵ではないわけでありまして、武装部隊が武力行使意思を持って海外に行くということが海外派兵というものであることは、きょうまでの御議論で十回も二十回もここでも議論したことであり、私もそれは率直に認めております。  そして、今回の湾岸危機に伴って生じた避難民の輸送は極めて人道的で、非軍事的な分野において関係国際機関からの要請のあるもののうち、民間機が活用されないような状況において人道的な見地からというきちっとした前提と段階があるわけですよ。そうしてきょうまでもできるものは民間機を四回も四機も出ていってもらって、アジアのベトナムに対する輸送を民間が引き受けてくださるというところはやったわけでありますから、それによって我が方は今無理に、無理やり出せとかそういうことはしません。それは要請がないのに、相手国との話もないのに無理やり出そうなんて、そういうことはこれは国際協力じゃありませんので、それはいたしません。
  203. 矢追秀彦

    矢追委員 今総理は、百条の五にもしあれするならそのときの議論でなかったかとおっしゃる。だから私は先ほどから過去の議論の中でだめだ、改正が必要だと。難民の問題は言ってないじゃないですか、難民を救済することがだめなんて、私、一言も言っていませんよ。自衛隊機を使ってやることに問題がある。海外派兵だって、それはそのものじゃないでしょう。しかし、将来、こういうことを許しておけば、海外派兵の道も開かれるし、国会のシビリアンコントロールもなくなってしまう。何でも政府の裁量でできる。自衛隊の任務に差し支えなければ、人道的な立場なら何をやってもいい、こうなるわけでしょう、何でもできる。  それなら、それこそきちんと規定をつくらなければいかぬのじゃないですか。そのために政令ができているのでしょうが。法律ができているのでしょうが。今申し上げたように、南極とか国賓等の輸送とかここに書いてあるでしょう、運動競技会とか、これは全部非軍事じゃないですか。だからもう一つつくるべきだ。だから法律改正しかない。それをしないで無理しようとする、そういう姿勢が私、いけないとこう言っているわけですよ。この問題も本当に、先ほど申し上げたように、私たちはそういう意味でこれは反対です。将来に禍根を残す、こういうことをやれば。しかも過去の答弁と違っているじゃないですか。  それから、もう一つ今聞きたい、シビリアンコントロール。これは昭和六十一年の五月二十日、参議院の内閣委員会で、当時の加藤防衛庁長官が「第一に、自衛隊の自衛官の定数、部隊などの組織、編成の大綱、装備その他重要事項については、国会において法律、予算等により審議、議決され、また防衛出動や命令による治安出動については国会の承認が必要である、」その後四つ挙げておられるわけでございますが、今回このような湾岸危機があり、難民を運ばなければならぬ。初めてのケースですね。ある意味では自衛隊機がこういう、仮に非軍事であり、人道的であったにせよ、一応はいわゆる紛争に絡んだ地域における出動であるわけですから、私は、これは重要事項に当たると思うわけです。したがって、やはりこれは国会にかけるべきである。シビリアンコントロールの第一は国会だと防衛庁長官明確におっしゃっているわけですから、国会にかけるべき。ということは、法律を改正するように出すべきである。それをしない、特例政令でやるということは、シビリアンコントロールを損なうものである、こう指摘をしたいのですが、防衛庁長官、いかがですか。
  204. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今回の自衛隊機の派遣、この考えが法律の授権の範囲内であるということは政府側からるる申し上げておりますし、先ほど法制局長官からも御説明がございましたので、私から重複はいたしません。  今の御指摘は、これはシビリアンコントロールの観点からいってどうかということでございました。国会にかけるべきではないか、こういう御指摘でございますが、先ほど引用されました昭和六十一年五月二十日、当時の加藤防衛庁長官からの御答弁におきましては、シビリアンコントロールにつきまして四つの観点と申しますか、段階について御答弁申し上げております。  まず第一に、今御指摘のございました国会におけるコントロールでございますが、これは例えば自衛隊の自衛官の定数であるとか部隊などの組織、編成などの大綱だとか、あるいは大きな装備 でございますね、そういった重要事項については国会において法律とかあるいは予算におきまして御審議いただいておる。また、自衛隊の任務の中で本務でございます防衛出動だとかあるいは治安出動という事態になります場合には、国会の御承認が必要である、これがシビリアンコントロールの第一段、こうなっておるわけでございます。  それから二つ目の観点といたしまして、国の防衛に関します事務は、これは内閣に属しているわけでございます。そして、内閣総理大臣が内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を持っておるわけでございますし、また、防衛庁長官は文民たる国務大臣をもってこれに充てる、そして、最高司令官でございます内閣総理大臣の指揮監督を受けて自衛隊の隊務を統括する、これが二つ目のシビリアンコントロールの観点でございます。  それからさらに三番目に、内閣には、国防に関します重要事項を審議するために安全保障会議というのが置かれております。この加藤答弁の時代はまだ国防会議と言っておりますけれども、現在の安全保障会議でございます。この安全保障会議におきまして、「国防の基本方針」だとか「防衛計画の大綱」だとか、そういった事柄、国防に関する重要事項につきまして、これは内閣総理大臣は安全保障会議に諮らなければいけない、こう言っておるわけでございます。これが第三番目のシビリアンコントロールの仕組みでございます。  さらに第四番目に、防衛庁内部の話でございますが、先ほど申しましたように防衛庁長官は文民でございますが、その文民たる防衛庁長官が、シビリアンコントロールの観点から政策統制をしっかりやっていく、そういった点を確保するために、長官を補佐するために、文民たる参事官という制度を設けておりまして、いわゆる内局が自衛隊の隊務の統括をいたします長官の判断といいましょうか、その仕事に遺漏がないようにしていく、こういったシビリアンコントロールにつきまして四つのことを申しておるわけでございまして、そして今回の件につきましても、もとより防衛庁内におきましても文民でございます私を中心としていろいろ考えておるわけでございますし、また、内閣全体といたしましては、内閣総理大臣の監督のもとにやっております。  それからさらに、今回の決定をいたしますに際しましては、安全保障会議を開催いたしまして、そこに内閣総理大臣からお諮りになって決定をしたわけでございます。そういった意味合いにおきまして、今回の件につきましてもシビリアンコントロールはしっかりと守られておる、このように考えておる次第でございます。
  205. 矢追秀彦

    矢追委員 ただ、総理、私は先ほども言ったように、もちろんそういう意味でのシビリアンコントロールという手続はやられたと思いますが、やはり大変重要な問題なのですよ、これは。というのは、今回だけの問題にとどまらない、将来のことも考えて私たちは憂えているわけです。だから、きちんとしておかなければいけない。だから、これは先ほど私が指摘しましたように重要事項に当たる、だから、国会に出すべきである、こう言っておるわけですが、総理、いかがですか。
  206. 池田行彦

    ○池田国務大臣 重要事項でございますから、シビリアンコントロールはしっかり確保してまいらなければなりません。しかしながら、それを先ほど申しましたような四段階にわたるシビリアンコントロールのどれによって確保していくかというのはまた事柄によるのかと存じます。  先ほども申しましたけれども、例えば安全保障会議には国防に関する重要事項を諮らなければならないと言っておりまして、そういった手続をとったわけでございます。そして、そういったものを安保会議にかけたり、国防の重要事項をすべて国会にお諮りして決めなければいけないかどうかはまた別の問題でございまして、例えば、現在防衛力の整備を進めておりますのは防衛計画の大綱、御承知のとおり昭和五十一年当時に閣議決定いたしまして、これにのっとって進めておりますが、これも国防の重要事項でございますので国防会議に諮り、その上で閣議で決定したわけでございましたが、防衛計画の大綱につきましても国会にお諮りし、国会の御決定をちょうだいするということはしていないということでございます。
  207. 矢追秀彦

    矢追委員 議論は平行線でございますが、私たちはあえてこの自衛隊機の今回の派遣については反対を明確に表明していきたいと思いますし、今後IOMから要請がないことを、そういう状況を期待するとともに、そのためにも早期停戦、和平の実現を強く願うわけでございまして、これに関してはまた後ほど御質問いたします。  次に、九十億ドルの問題でございますが、これも先ほど来も随分九十億ドルの使途、目的等についていろいろ議論がございました。総理から使途についての明確な答弁も出たわけでございますし、また、ブッシュ大統領もそれに近い発言をしておることは十分承知をしております。ただ、これをどういう形で具体的な保証措置としてやるのか、交換公文ということが言われておるわけでございますが、過去の二十億ドルについての交換公文、これではどうなっておりますか。
  208. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今まで二度交換公文をGCCと結んでおりますけれども、ここにおきましては、GCCのもとに湾岸平和基金という特別基金を設ける。それは、適切に、かつ、専ら、湾岸の平和と安定の回復のため国連安保理の関連諸決議に従って活動している各国を支援するために使用されるということになっておりまして、従来、具体的な協力の形が二つ、資金協力と物資協力がございましたので、それがそれぞれそこに明記されております。
  209. 矢追秀彦

    矢追委員 これは過去のものですから、これから結ばれる九十億ドルに関する交換公文、これは前回の交換公文と全く同じ形式になるのか。総理の答弁を踏まえた日本政府の意思というものが、要するに武器弾薬には使わない、そういうことをきちんと明記されるのかされないのか、いかがですか。
  210. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 交換公文の形式とか手続、その他についてどういう書き方がなじむのかどうか、それは担当の方から答弁させますが、私は、日本平和回復活動を支援するため所要経費の一部を協力する、そのときには、これはいろいろ国会の御論議もあり、国民感情もあり、また同時に、一日も早い平和回復活動を心から日本が願っておるという立場から、その使途としては輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針というのを政府が決めたわけでありますから、これは究極的には湾岸平和基金の運営委員会で決められることになるわけでありますので、我が国意思に反した使途には充てられないように確保できる仕組みにもなっておるわけですから、我が方の代表にこれらの使途に充ててほしいという政府は意向を持っておるんだということを伝えて、それが相手方との間で明確に伝わっていくようにそういった努力を続け、それとともに、何らかの形でそういったことを湾岸協力運営委員会に反映させなきゃならぬわけでありますから、私の国会における答弁を明確に反映させるようにいたします。
  211. 矢追秀彦

    矢追委員 この前の交換公文は、もう御承知のように、「この拠出金は、適切に、かつ、専ら、湾岸の平和と安定の回復のため国際連合安全保障理事会の関連諸決議に従って活動している各国を支援するために次の使途に、使用される。詳細は、3にいう運営委員会により決定される。(1)資金協力(2)資機材の調達、輸送及び据付けに係る協力」、これだけしか書いていないのですね。したがいまして、これは「日本国政府は」ですから、日本政府の方からのコメントといいますか、文章ですよね。したがって、この文章の中に、今総理の言われた基本方針は政府はこうである、したがって、こういうことを中心とした上で資金協力ないし資材をやる、この基本的な考え方くらいはきちんと書かないと、やはり先ほど来のいろんな議論で、結局何に使われるかわからない、武器弾薬に最後はいくんだろうとかこういうことが出てくるわけですね。ですから、そういう保証措置としての交換公文しかないとすれば、やはりここできちんと していただきたいし、それ以外に今総理の言われたようなことができるとしたならば、どういう形でどうなるのか、それをしっかり示していただきたい。
  212. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 従来の例を最初に御説明さしていただきたいと思いますが、今先生御指摘のように、交換公文上は資金協力それから資機材の調達等ということになっておりますが、それを受けまして、運営委員会で資金協力に関しましては輸送関連経費を対象とするということを決めておりまして、これは国会の場で明らかにさしていただいております。今度も、今総理が言われましたように、具体的な分野に関しましては運営委員会で決定する。運営委員会の決定事項は不公表でございますけれども、これに関しましても国会の場などで明らかにさしていただきたいと思います。  それから、さらに申し上げたいと思いますのは、その交換公文の中に、まさに運営委員会は、日本の拠出金が日本が考えている使途に使用されるように確保するということが書いてございまして、したがいまして、運営委員会として決定事項で資金協力は今総理が言われた分野に充てるということが決められますと、運営委員会はまさにその決定に従って日本の拠出金が使用されるように確保する義務を負います。  それから、さらに申し上げれば、その結果に関しましても運営委員会に関係国政府から報告があり、それをまた日本政府が運営委員会から報告を受けるという形で、さらに私どももそれがきちんと確認できるメカニズムができております。
  213. 矢追秀彦

    矢追委員 総理、今の北米局長の説明で、国民に対し、総理のいわゆる御意図というものがきちんと国際的にもいわゆる承認されるというか、また国民も理解ができるにたえ得るきちんとしたものである、こう確信を持って言えますか。
  214. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的な使途については運営委員会理事会で決めることになっておりますので、そこには我が方の代表が一人きちっと出ておるわけであります。私が国会で御答弁しておりますことは、皆さん方との議論の中で武器弾薬の購入に使うのではないかといういろいろな角度からの御懸念がありました。私はそういったこと等も踏まえて、輸送関連、医療関連、食糧関連、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針でありますということを何回も申し上げ、また、湾岸の運営委員会理事会の場で、私のこういった考え方を日本政府の考えとして代表からきちっと相手方にも伝えるとともに、その日本政府の意向が確保されるような仕組みになっておるわけでありますから、そのようにいたします。
  215. 矢追秀彦

    矢追委員 ぜひ今総理の言われたとおり、私は、この保証措置というのは交換公文も含めて非常に大事である、先ほど北米局長の答弁に、国会にも報告をするときちんとおっしゃっておるわけでございますから、それはきちんとやっていただきたい。そうしないと、大変な金額、この九十億ドルというのは大変多いという国民の声もあるわけです、仮に支援やむなしという方の中にも九十億ドルは大変多い。しかもこれは国民の血税でありますから、そういった中での、しかも日本は、経済力はついたというものの国家財政はまだまだ大変な赤字、累積赤字の国債を持っておるわけですし、こういった国債残高もある中で出す九十億ドルだけに、私はその点だけは総理は責任を持ってやっていただきたい、これは強く要請をする次第でございます。  次に、湾岸戦争が始まりまして、その後九十億ドルの追加支援を決められました。これは一月の二十四日に追加支援を決められたわけですね。その明くる日に平成三年度予算案が国会に提出をされた。始まったのが十七日。私はここで、もちろん予算編成されたのは、昨年の末に大体の大綱が決められてそうして印刷等に回されましたから、実際決まったのは年末ですから、それはむちゃなことは言わないのですが、少なくも武力行使が始まった、そしてまた九十億ドルが出てきたこの段階で、この平成三年度予算案なるものをもう一回検討し直す、そのまま出すにしてもですよ、一遍検討をする。これは、いろいろな経済見通しも狂う場合もあるでしょうし、今の九十億ドルの財源問題もあるでしょうし、いろいろな大きな変化です。緊急事態です。だから、ここでもう一回、仮に国会への提出をおくらせても、そこでもう一回見直して、これはこの九十億ドルをどうするかということを検討した上で、それから国会に提出されて、仮にそれがおくれても、私たちはそれによって審議をおくらせて暫定予算を組ますとか……、緊急事態ですから協力しますよ、私は。  そこでなぜできなかったか。というのは、結局そこで何の見直しもなく、例えば平成三年度予算の説明書の中にも「湾岸情勢の推移如何により世界各国に物価上昇や景気鈍化への圧力が加わることも懸念されるところである。」これしか書いてないですね。これが出たときにはもう、それは印刷が前だったか知りませんけれども、始まっているわけですよ。九十億ドルも出ているわけですよ、もう話が。だから、私はそこで本気になって、総理がもう一政府の問題ではない、一政党の問題ではない、本当に国家としての問題だとおっしゃるなら、まずその時点でこの平成三年度予算というのはどうあるべきなのか、このまま出していいのかどうか、検討されるべきであった。そのため、場合によっては野党の党首とも相談されても私は何ら相談に乗らないわけではなかったと思うのですよ。まずここでどうだったか、大蔵大臣。
  216. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理へという御指摘でありますけれども、財政当局、予算提出の責任者として私からお答えをすることをお許しをいただきたいと存じます。  確かに昨年の末、平成三年度予算の編成を行っておりますとき、私ども湾岸の情勢というものを非常に心配はいたしておりましたが、何とか武力行使に至らずにこれが無事に解決をすることを祈るような気持ちで作業をいたしておりました。しかし、それと同時に、全くこれは通常の手続と言われればそのとおりでありますけれども、各省庁が概算要求を御提出をいただきました八月三十一日という時点は、既にイラククウェート侵略し、そのまま居座っているという状態は出ておったわけであります。当然、各省庁もそうした情勢はにらみながら概算要求をおまとめになったと思っておりますが、私どもとしては、そうした状況を頭に置きながら、一方で平和解決を祈りつつ、それぞれの各省庁の御要求というものを念査に念査を重ねて平成三年度予算を編成をいたしました。  そして、確かに委員が御指摘のとおり、国会に予算書が提出をされ、御審議をお願いをいたしましたのは二十五日であり、政府が多国籍軍に対する追加の資金協力というものを判断をいたし、決定をいたしましたのはその前日でありますが、これは平成二年度の中において支出をいたす金額であります。ただし、残念ながら、平成二年度において到底これだけの財源があるわけではございませんので、私どもとしてはそれを国民に御負担を願わねばならない情勢の中でその財源をいかにして捻出するかについて、本当に苦しんでまいりました。今も苦しんでおります。  しかし、同時に、その九十億ドルの資金というものは、国会のお許しが得られた段階でできるだけ早く拠出をしなければならない性格のものであります。それだけに、つなぎの国債というものをその場合には発行させていただき、国会でお許しをいただきました後の増収措置というものでその償還を早期に行うことによって、平成三年度末には百六十八兆円に上る国債残高の累増により重みをかけないで済む仕組みをとりたいと今本当に願っております。  と同時に、平成三年度に入りましてもなおかつ湾岸において平和回復のための武力行使というのが継続する事態を当初から想定をして三年度予算を見直すということも、現実に今の情勢の中で行うべきことではないであろう、私は率直にそういう判断をいたしました。当然、平成三年度予算もそのときの状況により変化を生ずる性格であることは、委員の御指摘のとおりであります。  また、そうした異常な情勢がなくとも、政府として当然ながら節減の努力を重ねていくことは例年と変わらないわけでありますが、今回の多国籍軍に対する拠出と平成三年度予算との関係という意味でお答えをいたしますならば、私どもは、この多国籍軍に対する追加協力というものが湾岸平和回復を一日でも早く実現するために役立ってくれることを心から願いますと同時に、四月以降になりましても延々と戦闘の続く状況といったことにならないことを、イラクが本当に一分一秒でも早くクウェートから撤退してくれることを願っておる次第であります。
  217. 矢追秀彦

    矢追委員 大蔵大臣、大蔵当局としてはそういうことになろうかと思いますが、やはり私は、事態が大変なんですから、だから平成三年度予算もこれはもうやり直すぐらいの気持ちでやらなきゃいかぬ。とともに、平成二年度の第二次補正、まだ出てきていませんよね。それこそ年度末に出さなきゃいかぬのはもっと早く出さなきゃいかぬわけですよ。おくれているわけですね、私から言わせれば。もう一月は終わったわけですから、言われておるところの三カ月分となればもう三十億ドルは出していなくてはいかぬわけです、まだ請求は来てないようですけれども。まあ、それは別といたしまして、とにかく私は平成三年度の予算をもう一回ここでやるべきであったと。  次に、この平成二年度の補正予算、これはどういうふうな形になるのか。今大蔵大臣は短期国債とおっしゃいましたが、じゃ、一兆一千九百億円というものをすべて短期国債、要するに一兆一千九百億、これが歳出、歳入として一兆一千九百億の短期国債と考えているんですか。
  218. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 歳入歳出の項目というお尋ねでありますならば、先刻来総理からも御答弁がありましたように、今回の九十億ドルの追加支援、これは湾岸における平和回復活動を行っておりますアメリカを初めとした関係諸国を支援するわけでありますが、これは湾岸アラブ諸国協力理事会、GCCに設けられております平和基金に拠出を行います。  また、財源措置といたしましては、従来の特例公債によらず今申し上げたような手法をとろうとしておるわけでありまして、歳出といたしましては、今確定的なことは申し上げられませんけれども平成二年度補正予算の第1号の場合と同じように、外務省所管の組織、外務本省、項、国際分担金其他諸費に湾岸平和基金拠出金を、歳入には大蔵省所管の部、公債金、款、公債金、項、臨時特別公債金、仮の名前でありますけれども、臨時的な短期国債の公債金収入を計上する方向で検討いたしております。
  219. 矢追秀彦

    矢追委員 今のところすべて短期国債ですね。私は、平成二年度の予算、まあ残りはもう少ないと思うのですが、平成二年度中の予算で少しはお金は集められないのかどうか。というのは、いつも自然増収が出ておりますね。今回、第一次補正でかなり補正をされましたので、一兆一千二百七十億補正されておりますから、なかなかそれ以上の増収がどれくらいあるか、私も最近のデータ、ちょっと見ておらぬのですが、お示しをいただきたいと思うのですが、そういう税収の問題が一つある。いわゆる自然増収がまだどれくらいあるのか。それから、現在、予備費、今回は大分お使いになったことも承知しております。今までのようには残らないと思いますが、予備費も残っているはずです。さらに、前年度剰余金、こういうことで、平成二年度の中で今どれぐらい不用額というか余っておるか。それを財源に少しでも充てれば平成三年度への影響というのは少しはカットできますね。これはどれくらいいけますか、三百億という説もあるし、五百億という説もあるし。
  220. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 平成二年度の補正予算第1号を組み立てます際に、既に委員が御承知のように、例年よりもはるかに厳しい歳出削減策を各省に御協力をお願いしてまいりました。(矢追委員「時間がないから」と呼ぶ)はい、わかりました。しかし、これは大事ですから申し上げさせてください。  そして、例年よりも五割増しぐらいの各省から節減、不用を立てていただいて、第一次補正予算を組んでおります。それだけに、各省のところに残るものもそう多いものではないと存じます。  また、予備費は今日までにさまざまな形で拠出をいたしてまいりまして、残額は九百二十二億円でございます。しかし、例えば福岡、愛知、新潟の参議院補選の経費といったものは、これだけでも二十六億かかったわけでありますが、今後、現に執行中の青森県の参議院補選等いろいろな予備費の使用問題というのが実は出てくるわけでありまして、この中から一体どれだけを不用、節減という状況に持っていけるのか、そう状況は甘いものではないということは御理解をいただきたいと思います。  また、自然増収という言葉をお使いいただきましたけれども、確かに過去数年、税収の見込み違いがプラスに大きく響き、それが我々にとって補正予算等を組みますときに、ある意味で我々の負担を大変軽くしてくれたことを私は決して否定をいたしません。しかし、現在日本経済は、なお本当に持続的な内需中心の成長を続けているとはいいながら、その足元にいろいろな変化が起きておることも委員は御承知のとおりでありまして、自然増収といった形で安易な財源が調達できる状況にないことだけはどうぞ御理解をいただきたい、こう思います。  そうした状況の中で、先ほど来私は苦慮している、苦しみ続けていると申し上げているわけであります。
  221. 矢追秀彦

    矢追委員 ことしは、確かに大蔵大臣言われたとおりなかなか残っている金が少ないことは、私も最初も申し上げたように承知しておりますが、たとえ三百億でも削る努力はまず平成二年度でもやってもらいたいのです。これが第一点。  次に、平成三年度、私たちはいわゆる安易な増税は反対です。あくまでも防衛費を含めた経費削減をやって、できれば増税はゼロにしてもらいたいぐらいの気持ちです。  そういった意味の上から、財源問題について申し上げますが、ことしは不用額は少ないと言われたかもわかりませんが、過去におきまして相当既定経費の削減はやってきているわけですね。予備費も崩し、それでもなおかつ不用額というのは出ているわけです。六十年度からお示しいただけますか、数字。
  222. 保田博

    ○保田政府委員 一般会計の不用額でございますが、手元にはちょっと六十年度を持っておりませんので、六十一年度からで御容赦いただきたいと思います。  六十一年度が千五百四十億円、六十二年度千十四億円、六十三年度千二百六十二億円、元年度千二百二十八億円、それから平成二年度でございますけれども、これはまだ決算が済んでおりませんが、第一次補正予算で不用といたしましたものが千九百八億円でございまして、例年の不用額の約七百億円を上回るものを既に第一次補正の財源として使用しておる、こういう状況でございます。
  223. 矢追秀彦

    矢追委員 いや、私、不用額だけ聞いているのじゃなくて、じゃ、もう一回聞き直しますね。  既定経費の削減を、六十一年度からでも結構ですよ、六十一年度から既定経費の削減は幾らやられたか、予備費は幾ら削られたか、そして、不用額は幾らになったか、それを合計したらどれくらいになるか。
  224. 保田博

    ○保田政府委員 補正予算におきまする既定経費の節減でございますが、昭和六十年度から申し上げますと、千八百十三億、それから六十一年度が四千五百二十億円、六十二年度が五千五百五十八億円、六十三年度が五千九百九十九億円、元年度が六千百五億円、こういうふうになっておりますが、このうちの非常に大きな部分は国債費の不用でございます。  それで、御承知のようにこの期間は大変な自然増収がございましたために、そしてまた金利が非常に安かったために、国債費の不用が非常に大きかったわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました数字から国債費の不用を除きましたものを並べますと、六十一年度は千九百八十 二億円、六十二年度が千四百三十九億円、六十三年度が千七百十八億円、元年度が千六百九十四億円、それから平成二年度は先ほどの数字に節約を加えますと二千四百一億円ということで、この数字で見ましても例年の数字を相当大きく上回った節約、不用を立てております、第一次補正におきまして。そういうことでございます。
  225. 矢追秀彦

    矢追委員 時間が余りございませんので。まず私の言いたいことは、もう大蔵大臣も百も承知と思いますが、要するにまず既定経費の削減は一生懸命汗をかけばある程度はできるということ。それからまた予備費も削減はできます。全部崩せという意味じゃありませんよ、少なくも半分はできる。それでなおかつやはり不用額というのは出ているわけです、過去。それからまた会計検査院で指摘されている不当事項というのだってあるわけです。これは平成元年度は百三億あるわけですね、これは少ない数字でございますけれども。そういうわけで、平成三年度においても歳出削減は私は可能である。特に先日も市川書記長が指摘をしましたように、防衛費、二十二兆円を超えるこの中期防については、これはいろいろな形で耐用年数を延ばす、あるいは必要ないものは後に回す、そういったことでかなりの経費削減の提案をされておるわけですね。もちろん財政が苦しいことは私は百も承知です。だからといって、すべて増税で一挙に、しかも一年間で全部九十億ドルを国民に負担させよう、こういうことはやるべきではない、政府がもっと努力をすべきであるし、私は知恵を出せばできると思う。私は一つの、いろいろな手だてを考えてほしいということなんです。  例えば一つ、この短期国債を市中にやれば六・七%の金利を払わなければいかぬ。資金運用部にやれば四・五%でいけるわけです。そうすると、お金は浮いてくるのですよ。そういうふうな工夫だってできるわけでしょう。そういった点もできるわけです。NTTの株のこともあります。国有財産の処分もできる、全部売り払えとかね。だから、一生懸命考えて、できる限り国民に増税という形をとらない、少なくも、本当は増税ゼロというのが私の主張なんですけれども、これはまあ極論で、無理かというふうな話に恐らくなってくるかと思うのですが、その前に政府が汗をかいて、これはもう随分私たちの各委員も指摘しているところです。私は本気になって大なたを振るってもらいたい。  補正予算というのは元来、私も昨年も指摘をしたようにいろいろなものをつけてきましたよね、この前は。今回の補正はやむを得ない面もある、この九十億ドルはあると私は思っています。しかし、まあ新聞情報等によりますと、法律を全部くっつけて出してくるとか、そういうことを言われているわけです。非常に私は問題だと思うのですね。しかも一年間で全部やってしまう。平成三年度、四年度予算というのはこれからですから、償還だって延ばしてもいいと思うのですし、今言ったように償還財源利払い費だって今言った市中に任すか、あるいは資金運用部であれば工夫はできるわけです。その間いろいろな手だてを講じて、市川書記長は防衛費を含めて少なくも五千億カット、二十二兆の中で五千億カットということも言われました。幾らでも私はできると思う。またやるべき知恵を絞ってもらいたい。秀才の大蔵当局がいっぱいいるじゃないですか。私は、それを全部税金、石油税と法人税とそれからたばこ税と、この三つに全部持ってくる、こういった姿勢では──先ほどの自衛隊機もなかなかはっきりしない。今度は増税だ。仮にこの九十億ドルをやむを得ない、平和回復のためには日本は資金供与をすべきであると考えている人の中にも、九十億ドルは多過ぎる、九十億ドルが全部税金でかぶってきたらたまったもんじゃない。そうでなくても今金利がぎゅっと締まって困っている、そういう状況にあるわけでございますから、本当にできる限り国民の負担を軽くする、こういう意味で思い切った削減をやるべきです。  何ぼ、幾らできますとか、そこまでは私も申し上げません。私は私なりにいろんな計算をした考え方もつくっておりますけれども、それはここで示すような問題ではありませんし、これは大蔵当局が考えていただきたいことでございますが、まず大蔵大臣の決意。総理も検討するとおっしゃったのでしょう。その経費削減といったって、いいかげんなのじゃだめですよ。予備費ちょっとだけ削るとか、三百億とか四百億じゃだめですよ。これは相当の大なたを振るわなきゃ国民は納得できないし、少なくも公明党は賛成できない。これははっきり申し上げます。いかがですか。
  226. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先般来、市川書記長の御質問を初めさまざまな御意見を拝聴しながら、現に私は今も苦しみ抜いております。  ただ、おわかりをいただきたいことは、平成二年度の内側におきましては、先ほど予備費の状況を申し上げましたとおりでありまして、そう大きなものを現時点において拠出できる情勢にない。既に例年以上の節減もやってきているということはまず御理解をいただきたいと思います。  また、平成三年度予算が通過、成立をいたしました段階において、その折々の経済情勢を見て節減の努力をしていくというのは、これは当然のことでありまして、今までもこれは実行いたしてまいりました。しかし、今委員が御提起になりました、そのつなぎの短期国債というものを例えば資金運用部で引き受ければ安く抑えられるんじゃないかというお話でありますけれども、これは基本的にはやはり資金運用部が国債の引き受けは市中レートによることとしておるわけでありまして、利払い費に差が出るという性格のものではないことも御理解をいただきたいと思います。  また、防衛費についての御発言がございましたが、これは長々と申し上げるつもりはありませんけれども、既に実は平成三年度予算は実質的に平成二年度よりもマイナスの予算になっているということはぜひ御承知をいただきたいと思います。  人件糧食費、これは当然のことながら、ベースアップ関連でふえております。また、前の契約を続けていきますための歳出化経費は、これはいや応なしにふえていく性格のものです。しかし、一般物件費の中をお調べをいただくならば、駐留軍経費の新たな負担の部分を除きますと、前年度よりは防衛予算というのは減額しているという事実も国民にはぜひ御理解をいただかなければなりません。  また、装備そのものを見ましても、中期防の中におきまして、例えばよく例に出ます戦車でありますとか、あるいは護衛艦でありますとか、ストックベースで見ましても、前の中期防の期間よりは、戦車であれば六十九両、護衛艦でありますならば四隻減らしております。そうした状況の中で、委員が仰せられるほど防衛費というものがそう簡単に削れるものであるのかどうか、我が国の安全保障というものを考えますときに、私どもなりに苦しまなければならない多くの問題を持っておる、私はそう理解をいたしております。  しかし、我々なりに本院の御論議というものを踏まえながら、苦しみつつも努力はできる限りのことはいたしていかなければならないと考えておりますけれども、一点、どうしても御理解をいただきたいことは、そのつなぎ国債の裏打ちの財源としての税収というものを来年一年でなくてもいいではないかと仰せられましたけれども、私はその点については、これはできる限り早く償還し終わってその問題を消してしまうことの方が大事だと思っておりまして、このつなぎ国債の負担というものを長い期間国民に分けて御負担を願うということは、必ずしも私は望ましいことではないと考えておることだけは申し添えさせていただきたいと思います。
  227. 矢追秀彦

    矢追委員 防衛費について少しおっしゃいましたが、これはもう答弁結構です。やはりこれから、もちろん湾岸は終わらなきゃなりませんし、早期に終わってもらいたい。この後はやはり南北なんです。次はアジアの問題に入ってきます。となると、アジアのデタント、東西から南北。そして特にアジアというのが、これからまた、ますます平和ということにしていかなきゃならぬ。ヨーロッパ のCSCEのようなものがアジアにもできる、またつくらなきゃならぬ。日本がイニシアチブをとってもらいたい、とらなきゃならないと私は思っています。そうなったら、余計防衛費というのは、どんどんデタントしていっていいわけですから、しかもそれを大幅削減じゃなくて、耐用年数を延ばすとか後へおくらすとか、そういう形で市川書記長は提言をしているのですから、私は、その点もひとつしっかり含めて検討していただきたいと思うのです。  日銀総裁、せっかくお見えで恐縮です。  湾岸危機によりまして日本経済に大変不安が出ておりますし、また、それに関して、もともと金利がずっと高過ぎる、そういうことで、もちろんバブル経済ということに対する金融の引き締めということはそれなりの効果があったと私は思います、しかし、ちょっと締め過ぎているのではないかという意見も特に企業の方からは強うございますし、土地とか、いわゆる不動産とか株とか、そういうことではなくて、ほかの方も締められてしまっている。金融の引き締めは、これ以上限界ではないかと私は思いますが、それに対する御意見。  もう一つは、米国の金利、またドイツの金利の動向等、それを含めましてこれからどうなっていくか、もう時間がございませんので、簡単にお願いしたいと思います。
  228. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えします。  結局、委員の御質問は、現在の日本銀行の金融政策のスタンスだということだと思いますが、日本経済に対する現状認識からごく簡単に申し上げてみたいと思います。  現在の国内景気、これは委員御指摘のとおり、幾分景気後退の指標も見えておりますけれども、全体としてはなお強いという判断でございます。先行き、これはもちろん湾岸戦争、石油情勢の帰趨がございますので、幅を持って考えなければなりませんけれども、引き続き、今の景気の腰の強さから見て直ちに大きく落ち込むことはない、こういう判断でございます。  一方、物価でございますが、これは最近じり高の傾向が続いております。国内の卸売物価、昨年の夏は前年比〇・五%ぐらいでございましたが、現在は二%台の半ば。消費者物価、昨年の夏は二%の半ばでございますが、ことしの一月の東京は四・二%。九年ぶりに四%になっております。幸い、企業、個人の物価観というのは崩れておりませんけれども、過去四年間、高い成長を続けてきましたので、非常な人手不足、製品需給というものの引き締まりがございますので、今後の物価については注意深く見ていかなければならないというふうに考えております。  したがいまして、こういうことでございますので、金融政策といたしましては、内外の情勢は注意深く見てまいりますけれども、引き続き現在までの政策効果を見守っていきたい、かように考えております。  もう一つ、海外のいろいろな公定歩合引き下げ、引き上げでございますけれども、これはそれぞれの国の固有の経済情勢に応じて上げたり下げたりしておりまして、アメリカ及びイギリスは公定歩合を下げましたが、これはやはり景気が悪くて、物価もようやく落ちついてきたということで下げました。ドイツ、これは非常に景気がよくて、かつ、東独の応援で財政が負担が大きい。したがって、インフレ圧力を未然に防ぐということで上げたわけでございますが、いずれもインフレなき持続的成長ということでとった処置だというふうに理解をしております。
  229. 矢追秀彦

    矢追委員 最後総理、これで終わりですから要望として申し上げます。  こうやって議論している間にも中東においては血が流れているわけです。少なくも、一刻も早い停戦、これは国民、また世界が望んでいることです。どうか日本政府も、いろいろなことがあるでしょうけれども、この早期停戦へ向けて特に総理行動を起こしてもらいたい、これを強く要望して、私の質問を終わります。
  230. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて矢追君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  231. 東中光雄

    東中委員 総理は午前中の質疑の中で、パレスチナ問題の解決について、まず局面を打開して、続いてパレスチナ問題などを話し合う、イラククウェートから撤退後パレスチナ問題を解決する、こういう段階的解決の方向を示されました、たまたまけさの質問を聞いておりまして。この総理の御見解は、撤退期限とされた一月十五日を前にして国連安保理事会提案されたフランス提案と、パレスチナ問題の解決の点では全く一緒なんです。その点はどうでございましょうか。
  232. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 重ね絵のように合わせてみるといろいろ相交わるところはあるかもしれませんが、私がそういったことを念頭に置いておりますのは、これはもうずっと、局面を打開しなければ、国連決議に従ったイラククウェートからの撤退ということが行われないと、次のステージに入っていくことができないというこの原則問題、同時に私の念頭にありましたのは、実は最終日ぎりぎり、撤夜のような状況でデクエヤル事務総長がアピールを発表しました。あの中に書いてあることの考え方等も念頭に置いて、日本の協力の姿をそのように申し上げました。
  233. 東中光雄

    東中委員 フランス提案、私、ここへ六項目持ってきていますが、撤退解決つけて、そしてその後でパレスチナ問題を含めて国際会議を開くようにする。だから、言われている提案、同じなんですよ。この提案ですね。だから我が党は、このフランス提案というのは道理にのっとっているから、これに従って平和解決を図るべきだということを安保理事会十五カ国に要請をしました、電報を出して。総理にも申し入れました。そしてこの提案は、安保理理事国の十五カ国中十一カ国が支持を表明しました。それから、イラク国連大使も歓迎と言うた。それから、安保理事会に関係のない、例えばヨーロッパのドイツやイタリーやベルギーなんかも賛成と言いました。アラブ諸国も、サウジやエジプトも賛成だ、こういう意思表明をしていたのです。だから、これが安保理事会決議されたら、理事会の決議になったら、これは平和解決への大きな道を開くというときだったのですが、ところがアメリカは、このフランス提案をリンケージだと言うて難癖つけて、拒否したんですよ。リンケージだとはっきり言ったでしょう。リンケージでないものをリンケージだと言ってそれで拒否をして、決議をしないままで、もう期限が来たら十数時間で戦争に突入した。だから、これは私たちは、急ぎ過ぎなんだ、もっとそこで努力をすべきじゃなかったかということを主張しているのであって、急ぎ過ぎであったというのは違うという趣旨のことを言われましたけれども、これはアメリカの高官でさえそういうふうに指摘しているぐらいであります。  私は、フランス提案が安保理でまとまれば、今の事態とは違って、イラクフセイン大統領をさらに追い込んで、平和的解決へ大きく局面を転回することができたのではないかというふうに、この歴史的な事実をやっぱりはっきりと認めて問題解決の方向に進まなきゃいけないというふうに我々は考えておるのであります。朝の総理の御答弁を聞きまして、そう思っておりますので、申し上げておきます。  本論に入ってまいりますが、九十億ドルの性格の問題ですが、これはアメリカの戦費分担であって、総理の言う平和協力行動に対する応分の分担というような何のことかさっぱりわからぬものじゃないんだということを私たちは思っています。憲法上外国の軍隊の戦費を負担するというようなことは断じて許されないという考えに立っておるわけであります。  それで、九十億ドルの支出の仕方について北米局長に聞きたいのですが、これは、日本から支出をするのは湾岸平和基金へ支出をする、それで湾岸平和基金からアメリカの分はアメリカの防衛協力基金に入れる、そしてそれが国防長官の権限で支出がされる、そういうことだと思うのですが、間違いありませんか。
  234. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 基本的な資金の流れについて申し上げますと、国会で御承認を得た後、日本政府とGCCの間で交換公文を締結いたしまして、それに基づきまして湾岸平和基金に日本政府から払い込みます。それから具体的な要請を運営委員会で関係国政府から受けまして、それを審査の上決定いたしまして、その上で関係国政府が指定する口座に払い込むというメカニズムになっております。
  235. 東中光雄

    東中委員 アメリカはどうです。アメリカの防衛協力基金に入るんだということをあなたこの前も答弁したんじゃないですか。そうでしょう。
  236. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 アメリカについて申し上げますと、アメリカが指定する口座というのは財務省の口座でございまして、これは先生が御指摘の口座でございます。そこに、日本政府が払い込みました湾岸平和基金から払い込むということになります。
  237. 東中光雄

    東中委員 それで、財務省につくられておる防衛協力基金とか防衛協力会計とかいうことが言われておりますけれども、北米局長、この会計、基金は、いつ、何という名前の法律によって設定されたのですか。
  238. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今の先生御指摘のディフェンス・コオペレーション・アカウントは昨年の十月一日に成立しておりまして、アメリカのパブリックロー一〇─四〇三でございます。
  239. 東中光雄

    東中委員 アメリカのPL一〇一の四〇三という法律であって、その法律の名前は砂漠の盾作戦のための追加歳出法、こう言われておるのですが、そうじゃございませんか。
  240. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 法律の名称でございますけれども、これは今私が申し上げましたパブリックロー一〇一─四〇三でございます。その文章の中に砂漠の盾、つまりオペレーション・デザート・シールドに言及がございます。
  241. 東中光雄

    東中委員 普通、局長が認めましたように、砂漠の盾作戦のための追加歳出法と言われているアメリカの公法一〇一の四〇三号によって設置されているのです。ここに入れられたものは何にどのように支出をするのかということがこの関連の法律で決まっておりますけれども、それを明らかにしてください。
  242. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 この法律によりますと、この基金の支出に当たりましては、アメリカ議会の歳出権限によらなければいけない。つまり、アメリカ議会から歳出権限を事前に与えておらなければいけないということが一つと、それからまた、各国からの寄附の利用に当たりましては、寄贈者から付された条件につき議会に通報する義務を有するということになっております。
  243. 東中光雄

    東中委員 そういうふうに問題をごまかすようなことを言うのはやめなさいよ。  はっきり申し上げましょう。この基金に対しては、砂漠の盾作戦といえば中東、沿岸戦争をやっているあの作戦ですよね、それの追加。それの資金を外国政府または国際機関から寄附なり寄贈なりをもらう。それはここへ入れるんだ。どこから来ているかといったら、サウジからは例えば百三十五億ドル、それからクウェートからは百三十五億ドル、そしてドイツからは五十五億ドル、日本からは九十億ドルか少し減るか、とにかくそういうものを入れようということになっているんです。そして、何に使うのかといったら、その作戦に使うんだ。ところが、作戦遂行のための経費ですから、だから軍に何でも使うたらいいのかというたらそうはいかないので、アメリカも一九九一年度の国防予算権限法、一九九一年度国防予算歳出法、ここで予算化されておる経費があります。それは本来の軍事費、軍事予算ですね。ところが、この基金へやる分は米軍の人件費に使ってはいけない、及び主要兵器システムの購入に使ってはいけない。だから、航空母艦や戦車、そういう兵器の新たな購入にこの外国からもらったやつを使ってはいかぬ。それから、もし人件費に使うとすれば、アメリカ軍が外国からもらった金で雇われているような格好になるからそれはいかぬということになっています。それ以外の砂漠の盾作戦、そのうちの一部である砂漠のあらし作戦、それの費用に使うんだ、こういうふうに全部の法律を整理したらはっきり書いてあるんです。その中身は何かといえば、燃料、輸送、装備の補給、整備及び装備の購入、基地の運用、部隊の維持、作戦行動を行うそういうものは全部ここから出すんだ、こういうふうになっているんですよ。これはまさに戦費そのものじゃないですか。そこへ入れるんでしょうが。そうじゃないのか。
  244. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生お手持ちの法律の第h項をぜひごらんいただきたいと思いますが、ここには先ほど私が申し上げました寄附者の条件について言及がございまして、「寄贈者より付された条件を議会に通報しなければならない。」ということになっているということを御指摘申し上げたいと思います。  これをさらに敷衍して申し上げれば、これは総理が繰り返しおっしゃっておりますように、日本政府の考えを踏まえてこれを従来の十九億ドルについて申し上げれば、湾岸平和基金の運営委員会で資金協力の対象は輸送関連経費にするということを決めております。したがいまして、アメリカとの関係におきまして資金協力を提供するのはあくまでも輸送関連経費に限定されるということでございまして、アメリカの政府の方から輸送関連経費にこれこれの資金を要するということで湾岸平和基金に要請があり、それを受けて湾岸平和基金で決定を行い、そしてその結果についてまた湾岸平和基金に報告があるということでございまして、今私が申し上げましたこの第h項の点はまさにそういうメカニズムを裏づけているものでございます。
  245. 東中光雄

    東中委員 湾岸平和基金からそういう条件がつけられたということをアメリカはその規定に基づいて報告をしているんですか。いつどういう報告をアメリカの議会ですかにしていますか。
  246. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 最初に申し上げたように、今先生は議会に対する報告のことに言及されましたが、この法律を引用しますと、確かに各四半期ごとに寄附財産について議会に報告するということになっておりますが、私どもが承知している限り、現時点ではまだ議会に対する報告は行政府からは行われていないと承知しております。ただ、私が先ほど申し上げました報告というのは、この湾岸平和基金に対する報告でございまして、十九億ドルのうちアメリカに関しまして資金協力として輸送関連経費に使ったものに関しましては随時報告を受けるということになっておりまして、まだ全部についてではございませんけれども、一部報告を受けております。その報告は、これこれしかじかの輸送関連経費に使ったという報告を運営委員会にしておりまして、運営委員会から私どもはその報告を受けております。
  247. 東中光雄

    東中委員 その会計帳簿上の計算がどうあろうとそんなことは問題にならないのです。この基金へ入るのは、先ほど言いましたように百三十五億ドル、サウジとクウェート、そしてドイツが五十五億、それから日本は九十億というふうに予想をして、そしてブッシュ大統領は二月四日の予算教書で、この砂漠の盾作戦の経費として百五十億ドルの補正予算を措置をとるということを言うていますね。だから、それだけ全部足して今のあの砂漠の戦争をやっていくんでしょう。だから日本は九十、アメリカは百五十、会計へ入ったらこの金はこっちだ、この金は大砲だ、そんなばかなことできますか。ここに書いてあるように明らかにこれはもう砂漠の盾作戦経費に充てる。文字どおりこれは経費じゃありませんか。これが作戦経費でないというふうなことを言うたって、会計へ入っていくのは皆そうなんですよ。サウジは戦いをやっているでしょう。だから言葉だけでこれが経費でないなんというようなことを言うのは、これはもう許されない。  総理、政治的評価を平和回復行動と言うのはそれはいいですよ、性格を。しかし、平和回復行動ということでやっているのは武力行使だということは、これはもうはっきりしているでしょう。アメリカ国連に報告をした。アメリカ国連に報 告したあの一月十六日に、アメリカ時間で十六日に報告したときには、はっきりと軍事行動、ミリタリーアクションというふうに言うていますよ、この作戦行動は。そして先ほどの話にもありましたように、砂漠の盾作戦というのは戦争である、ウオーであるということはベーカー国務長官も一般教書の中でも使うています。それに対する経費、その何分の一かということで入っていることはもう明白じゃありませんか。そういう外国のための、外国の、アメリカの戦費を、九十億ドルもの膨大な経費を出す、憲法上断じて許せぬ。これは結局戦争に参加することになるということであります。こういうことは許されない。これは予算から削除すべきだというふうに思いますが、どうでしょう。
  248. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘の報告に関しましてもう一言つけ足さしていただきたいと思いますけれども、今までの十九億ドルのうちアメリカに対しましては千五百八十・六億円支出ないし契約をしておりますが、そのうち千百三十三億円が資金協力として輸送関連経費、これは具体的には運営委員会の決定に従いまして、航空機及び船舶の借り上げ経費その他の輸送関連経費ということになっておりますが、これに充てるということでアメリカに支出しております。それに関しましては先ほど私申し上げましたように、全部ではございませんけれども、これこれしかじかの輸送関連経費に充てたという報告をアメリカ政府から運営委員会に行われておりまして、それにつきまして、私どもも運営委員会から報告を受けているということを改めて申し上げたいと思います。したがいまして、先生が申されたような形で使われているわけではなくて、きちんと日本政府が当初意図した、そして湾岸平和基金の運営委員会が決めました形態で使われているということを改めて申し上げたいと思います。  それからもう一つの形態の物資協力がございますけれども、これは物で提供しておりますので、これは四百八十三・五億円でございまして、これは水関連等で、物で提供しているということでございます。  改めて申し上げたいと思います。
  249. 東中光雄

    東中委員 総理は今十九億ドルについて報告があったとかなかったとか言っておるだけのことであって、これから出される九十億ドルはアメリカが百五十億ドル、日本は九十億ドル、戦っているサウジは百三十五億ドル、同じ基金へ入れるのです。そして砂漠のあらし作戦を遂行していくんだ。その金のうちのどれをどこへ使うておるか、そんなことを輸送だと言っても、核兵器を輸送するのも輸送ですね。戦術核を使うかもしれない、それの輸送に使うのですか。それならいいというのですか。どっちにしても戦費に使っているということは明白じゃないですか。これくらいはっきりしておるものを、まさに言葉でごまかそう、これはもう国民が承知しないですよ。これははっきりしてもらわないと困る。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 第一幕、第二幕というものがあってから第三幕が起こるんですけれども、この問題の本質、第一幕でだれが何やったかという。イラククウェートへ攻め込んだのは侵略戦争ですよ。しかし、今第三幕になって第二幕の努力が終わって、どうしても決議をしてもイラク反省しないから、だからそれに対する国連の共同の武力行使であって、日本はそれを支持するという立場をとったのは、今後の世界は力によって相手の国を併合侵略することはいけないというこの考え方を支持しておるわけでありますから、平和の破壊はもとへ戻さなきゃならぬ。五カ月以上のいろいろな努力によって行われたこと、その結果の武力行使でありますから、だから日本は、平和回復活動を行っておる二十八に上る多国籍軍平和回復活動に対して、力でお役に立つことはできませんから、応分の支出をして、そして協力をする、そういうことですよ。
  251. 東中光雄

    東中委員 武力活動に対する武力行為をやっている、武力行使をやっているということを言われました。国連のと言われたけれども、あれは国連じゃなくてアメリカ中心の多国籍軍武力行為に対する協力だということが言われているわけです。それを平和回復活動でないとは、私、一つも言うてないのですよ。むしろ平和的に侵略イラクを追い詰めて、そして侵略をやめさせようというのが国連の六百六十一号、二号の決議じゃありませんか。そういう線でやるべきことを急いでやった、急いで戦争をやったら、今度はそれに協力をしていく、戦費が非常に大きくなる、これはいかぬということを言っているのであります。そういうことで時間をとっても困ります。次に移ります。  もう一つ言いましょう。この九十億ドルの積算の根拠について、これもまた判を押したように総理と大蔵大臣は同じことばかり言っている。これは国民が──趣旨が同じようなことばっかり言っておる。だから、私は角度を変えて聞きたい。  あの多国籍軍に対して協力をするのについて、一番最初海部内閣が決めた貢献策というのは、八月二十九日の夜でしたね。そのときは、どれだけの金額を支援するのか、拠出するのかということについては大蔵省、外務省、いろいろ検討したけれども、よう決めなかったでしょう。そして、ブッシュ大統領に返事をしたですね。連絡をした。その後、その日徹夜で作業をして、日本では明くる日の朝、アメリカでは同じ日の二十九日の夜です。十億ドルというのを出したじやないですか。この間まで、八月二日から八月の二十九日まで金額が出せなかったのが、夜を徹して十億という数字が出るんですよ。そして、それについては、九月の七日の日に中山外務大臣は衆議院の外務委員会で、この十億ドルというのは三月までの拠出金だということを答弁していますよ。それを過ぎたら、まだ紛争が続いておればどうなるかわからぬという趣旨の答弁をしています。私、会議録を見てきました。ところが、その日にブレイディ長官が来たのでしょう。そうしたら、それから一週間たったら今度は多国籍軍への支援が一遍に倍になったじゃないですか。追加十億ドル。そのほか周辺国に二十億ドル、ぼーんと変わったじゃないですか。それはどういう積算の根拠なんですか。それも同じことですか。それから四カ月ほどたったら、去年の十二月にその十億ドルについて予算措置がとられた。それから一カ月そこそこで今度は九十億ドルというのが、追加するんだと出てきたのでしょう。なぜ九十億になるんですか、なぜ十億じゃないんですか、なぜ五十億じゃないんですか、九十億なんですかと、その積算の根拠を何ぼ聞いても、要するに国際的責務だとか抽象的なことばかり言っておるわけでしょう。これで国民が納得すると思いますか。本当に茶番劇ですよ。だれが考えたって、どうして一晩でぽっと十億が出る、二週間たったらそれが四十億になる、そして二十億の四倍半また追加をやるんだ、それでそれはいつまでだと言ったら、わからない、四月になったらまた今度はそれの倍になるかもしれない、こんなことを根拠もなしにできますか。なぜそういうことになるのかといえば、その戦争をやるのはアメリカで、日本は何の決定権もないんだから。やる者自体でも戦費というのはなかなか試算できないのです。ところが、戦争をやることについて何の権限もない、何の相談にもあずからない、規模も何にもわからないのが、起こった事態に応じて負担していくからこういうことになるのでしょう。言えないのでしょう。私は、こういうむちゃくちゃなことは断じて許せぬと思うのです。  だから、なぜ八月二十九日は金額を示せなくて、明くる日になったら十億になって、そして二週間たったら四十億になって、そして今度さらに九十億追加するようになぜなったのか、その説明をしてください。
  252. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 端的に御説明をしろと仰せられますならば、クウェート侵略したイラクがそのまま居座っているからであります。これが問題の根源であり、そして今日まで国際連合が努力努力を重ね、加盟諸国が努力努力を重ねた中で、今委員の御指摘の中で私が疑問に思いましたのは、そのイラクが占領してそのまま居座っている間のクウェートの人々というのがどういう状況に あるかということが御議論の中にございませんでした。私は、一番気の毒なのは、みずから一つの国として生きていたクウェートという国が大国イラクというものの侵略を受け、それを世界じゅうの国々が批判を加えてもそのまま居座り、五カ月以上の日にちが経過したということであります。そして多国籍軍がこのクウェートからイラクを追い出すために確かに現在武力行使をいたしております。  そして、今委員は数字数字と言われましたが、むしろ、戦費、戦略あるいは戦闘そのものの相談を日本が受ける立場になかったこと、それは私は幸せだと思っております。我々は、まさに平和回復のための努力に対し資金協力をいたしておりますが、日本が戦闘にみずから参加する状況でなかったこと、それは委員の御評価にはないのでしょうか。そして、その積算と言われますけれども、どこかの国からきちんとした積算を突きつけられてそれを支払うような状態にないことを、日本自身の判断でこの資金協力が行えることを我々はむしろ感謝すべきではないでしょうか。委員の御質問に対する直接の答えにはなりませんが、私は今伺っておりまして、まさにそのような感じを持っております。
  253. 東中光雄

    東中委員 大蔵大臣みずから言われているのですから、直接の答えにならぬというお答えをされたわけですから。私は直接の答えを求めているわけであります。それはできないんですよ。できないんだ。直接の答えはできませんとあなたが今おっしゃったから、私そう言っているわけです。問題は、イラク侵略をやめさせる、撤退をさせる。それは世界の世論で、経済封鎖でやっていこう、経済制裁でやっていこうということでいろいろ努力をしてきた。私たちもそのために努力してきた。十分成果が上がってきたという、アメリカの中でもそういう評価があるじゃないですか。あの開戦に入ったのはわずか五票差でしょう、上院で。あれ、反対だと言ったら行かないのでしょう。それに何にもなしに無条件に協力をしているということは、これは許されない、こういうことであります。  時間がありませんので、次の問題に移ります。  これは、本会議の、避難民の自衛隊機の輸送、派遣の問題でありますが、これは最初に言われたのは、先ほどもありましたが、一月の十七日の日に総理湾岸戦争が始まったのに際しての談話を言われた。その中に、閣議で了承された談話に書いていないところで、つけ加えて、輸送協力として、被災民の輸送については、人道的な立場から、民間航空会社に要請しますとともに、いろいろな場合を想定し、必要に応じて、自衛隊機の使用を検討したい、検討もいたします、こういうふうに言われた。  それが次の段階で、一月十八日の本会議では「避難民の移送という人道的かつ非軍事的な分野においては、安全確保を前提として民間航空会社に要請を行うこととするとともに、」ここまでは私たちも大いにやらなければいかぬことだと思います。「ほかに方法がない場合には、必要に応じ、自衛隊輸送機の使用についてもその可能性を検討する」、これは、民間機じゃなくて、ほかに方法がないという場合のことで検討する、こう言われました。これは本会議場。  一月二十五日の本会議の施政方針演説では、「民間機が活用されないような状況において、人道的見地から緊急の輸送を要する場合には、必要に応じ自衛隊輸送機により輸送を行うこととしました。」こう言われました。  そこでお伺いしたいのですけれども、ほかに方法がない場合あるいは民間機が活用されないような状況、そういう状況があって初めて自衛隊機の派遣という問題が起こるのだということのようでございますね。ほかにも、防衛庁長官は五日の日のここでの答弁で、民間機によることができないという状況の場合にやるんだ、こういうふうに言われました。外務大臣は、民間機の活用ができないという状況に立ち至った場合のみ自衛隊の派遣を考えるんだ。  そこでお伺いしたいのですが、民間機の活用ができないような状況に立ち至っている場所があるのですか、現在あの湾岸地域で。それをお伺いしたいのです。
  254. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 国際航空運送協会、IATAからの情報によりますと、現在例えばヨルダンのアンマン空港、シリアのダマスカス空港については、民間の航空会社は全面的に運航停止の状況でありまして、例外としてヨルダンのロイヤル・ヨルダン航空、シリアのシリア航空が臨時的に運航しているのみと聞いております。  以上であります。
  255. 東中光雄

    東中委員 そうすると、そのヨルダンの空港というのは、空港が民間空港ですね。ロイヤル・ヨルダン航空、民間機が入っていますね。民間機が入っているんだから、民間航空機によることができないという状況ではないということになるわけですね。
  256. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 ベトナムあるいはタイ人の千四十六名、日本航空あるいは全日空にお願いをしてカイロから避難民を救済したことは御承知のとおりでございますが、この民間航空機、我が国の民間の場合は、第一番に安全の確保、こういうものが条件になっておりまして、以上、先ほど述べたような日本航空及び全日本空輸は、他の民間航空会社が運航していないアンマン、ダマスカスなどの危険地域の運航は、運航の安全が保障されないので、それらの地域への運航はできないといたしておりまして、政府といたしましても、民間航空会社に対しそのような運航についての協力を要請することはできないと考えております。  以上でございます。
  257. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、民間機の活用ができないという状況に立ち至っているアンマン、これはなぜそうなっているのですか。危ないからですか。どうして民間機が入れないのですか。そのどうしても入れない、民間機が入れない状態になっておるときに、自衛隊は、C130にしろYS11にしろそこへ今度は軍用機として入っていくのだというのですか。民間機は危なくて行けない、そういう状態になったら自衛隊は軍用機として行くんだ、そういうことですか、防衛庁長官
  258. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  民間機が活用できない状況というのはいろいろな観点があろうと思います。危険の度合いであるとか付保の困難性、保険を掛ける困難性であるとか、そういったもろもろの状況を総合的に判断いたしまして民間機が活用できない場合、こういうことでございます。
  259. 東中光雄

    東中委員 時間が来ましたからやめます。ただ、実際に民間機が動いているのに、日本の民間機は安全が確保できないということで行かないと言えば、もう自衛隊機を今度は送るんだ。自衛隊機は行って危なくないのか、一層危ないじゃないか、そのことだけを指摘して、そういうことは憲法上も許されないだけじゃなしに……
  260. 渡部恒三

    渡部委員長 時間が参りました。
  261. 東中光雄

    東中委員 政令でやったということもけしからぬことでありますが、あわせて許されないことだということを申し上げておきます。
  262. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  263. 中野寛成

    ○中野委員 戦争がいっときも早く終わることを全世界の人が願っている、このことに変わりはないと思います。問題は、その戦争を終わらせる方法であります。そのことを中心に、なお具体的な各論については、私に割り当てられました時間は四十分でございます、具体論を詰める時間がございませんから、むしろ政府の政治姿勢を中心にしてお尋ねを申し上げたいと思います。  国連における武力行使、いわゆる平和回復のための武力行使について設定された時間切れ一月十五日を迎えたときに、ロカール・フランス首相、先ほどフランス提案がたびたび評価をされておりますが、その提案をしたフランスのロカール首相はこう申しました。フランス提案が実現できなかったそのすべての責任は、フランス和平案に 反対した米国にあるのではなく、対話へのあらゆる申し出を拒んだイラクにある、こう申しました。十七日、武力行使が始まりました段階でデクエヤル国連事務総長は、この多国籍軍行動国連決議の範囲内である、こう申しました。二月八日、ミッテラン・フランス大統領はテレビ演説で、多国籍軍が介入しなかったら、二、三年後ないしは四年後に第三次世界大戦を誘発するような紛争が生じていただろう、こう申しております。すなわち、今回の多国籍軍による平和回復への行動は平和のための行動である、より大きな戦争を引き起こさないための、未然にそれを防止するためのやむにやまれぬ行動であるということを、あの内外で評価をされる和平案を提案したフランスみずからがそう申しているわけであります。そのことを私どもはしっかりとまず基本に据えなければ、あらゆる議論がかみ合わないということになるであろうと思います。  果たしてクウェート侵攻をしたイラクフセイン大統領の目的は何だったのか。それはアラブの大義なのか、単なるみずからの野望を実現せんがためであるのか。またイラク軍がなしたクウェートにおける数々の残虐な行為、すなわち青年を殺し、婦人が凌辱され、保育箱の中にいた赤ちゃんたちが引きずり出されて何百人と殺されるという、そしてその行動をとった人たちが今なおクウェートに駐留しているという現実、その中から、人道的に、また国家の存亡をかけて、そしてまた国際平和のために全世界の人々が何らかの行動をとること、しかもそれは効果的な行動をとることは、人類の一つの責務であると言わざるを得ないと思います。そのことについて、日本政府としても厳然たる姿勢を保ちながら、国民に対して、また国際社会に対して、いかなるごまかしを言うのでもなく、堂々とそのあるべき姿について御説明されることが肝要かと思うのでございます。まずその基本姿勢について総理にお伺いいたします。
  264. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今湾岸で起こっております問題の発端が昨年八月二日のイラクによるクウェート侵略併合であったことは、これは何人も認めることであり、そのようなことを許すということは、これからの新しい世界の平和の枠組みの中において、これを許して放置しておいてはいけない問題であるというので、国連が累次にわたる決議を行ったことも御指摘のとおりであります。そしてまた国連決議によって、六百七十八号という決議が行われて、平和の破壊というのをこれ以上許してはいけないし、同時に、二十八にも及ぶ国が平和回復活動のために多国籍軍と言われるものに参加をして、それぞれの国の経済の事情や、同時にたくさんの出費や、今日に至っては犠牲を伴いながら国際社会平和回復のために活動を続けておるという事実に対しては、日本は、力でお役に立つことができない国です、したがって、その平和回復活動のためにできる限りの協力を許される範囲ですべきだというのが政府の基本的な態度である、立場であるということは繰り返しここで申し上げたとおりでございますし、また、この問題を根本にさかのぼって考えますと、日本国の憲法にも、やはり正義秩序基調とする国際平和を誠実に希求すると憲法第九条はそれをまず書いておるわけでありまして、そういった正義秩序基調とした平和をあの湾岸地域に取り戻してくれるように、国連決議に従って行われておる平和回復活動というものはぜひ一日も早く成功させたいというのが私どもの願いでなければなりません。これをもしだめだということになるならば、侵略されても我慢しておれということになってきます。何をやってもいけないということは、それは平和主義というよりもむしろ無責任主義になるのではないかと私は考えておりますから、公正な平和が一日も早く湾岸に戻るために、局面打開できるのはイラクですから、フセイン大統領の決断によってクウェートからの撤退、それに従って国連決議というものが実効性を持つということ、その行動を起こすということ、それを日本政府としては強く求めておるところであります。
  265. 中野寛成

    ○中野委員 戦争は始まりました。戦争は始まったその瞬間から終わりを考えなければならないと思います。終わるためにはどうしたらいいのか。単に即時停戦を唱えるだけで耳をかしてくれる相手ではない。ならば我々は具体的な停戦へのプログラムを持たなければならない。そのためには、残念ながら硬軟両様の構えが必要でありましょう。最善の方法は外交交渉による平和的解決であります。しかし、先ほどロカール首相の言葉などを引用いたしましたけれども、それに耳をかさない相手に対して、しかも残虐な行為を続けている相手に対してとちれる行動は、残念ながら次善の策としてこの国連決議に基づいて多国籍軍がとった行動以外になかったであろうと思います。もとより目的が目的でありますから、当然手段も選ぶべきであります。核兵器の使用や、また残虐な行為をこちらもするということであっては断じてなりません。その注意は常に日本政府としてもまた多国籍軍の皆さんに呼びかける必要があるであろうと思います。  さてそこで、軍事行動をとりつつも、その軍事行動の効果とあわせながら常に外交交渉が行われて初めて平和が一日も早く訪れるということになるはずであります。同時にまた、中近東の状態はなかなかに難しゅうございます。政治的に民主主義が進んでいる国ばかりとは言えません。むしろそうではないと言われる国々の方が多いという状況。しかし、アラブのプライド、民族自決の原則国際社会への影響、そしてもっと広く言えば、中近東のみならず世界の国々の利害と思惑の複雑な交錯の中で、これは例えが悪いかもしれませんが、イラクが弱くなってそのかわりに相対的にイランの方が強くなってもいいのかという声さえ聞かれるような交錯した情勢の中で、日本がいかなる方法をもって中近東の人々に平和をもたらすためにお役に立つかというプログラムをまた日本なりに持たなければならないと思います。即時停戦、即時終戦を唱えることは結構でありますけれども、その世界じゅうの人々の声を背景にしつつも政治家は具体的な提言と行動をとらなければなりません。日本として現段階においていかにあるべきか、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  266. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日、中山外務大臣に、イラクの駐日大使を呼んで今まで何回も伝えております日本政府の考え方をさらに本国に率直に伝えるように要請するとともに、また明日は国連安保理事会日本も発言を求めて意見を述べる、そういった表向きのいろいろな外交努力、さらには、裏とは言いませんが、水面下においてもいろいろな外交努力、現地の人脈やいろいろな努力を通じて日本政府の意向というものを繰り返し伝え続けてまいりましたが、結果として、イラクがそれに対して何ら態度で反省を示していない、国連決議を現段階で受けようとしていない、いないどころかすべての人類が非常に恐怖感を覚えるようなあの原油を海に大量に押し流す、この環境破壊に対しては、どのような考え方であんなことをするんだろうか、あるいはクウェート侵略併合がいけないということはもう百も承知ですが、何ら直接の関係のないイスラエルに引き続いて無差別でミサイル攻撃を続けるということも、国際法上も人道上もこれは許されない、非難に値する蛮行だと私は受けとめております。  そういったときにどのようなことをしたらいいのか、これは多国籍軍に参加していない日本としては、これは多国籍軍武力行使というものが一日も早く国連決議の実効性を確保して終結することを願うわけでありますから、それに対する応分の資金協力をしなければならぬというのは政治的な立場を明らかにした我が国としてはなすべきことだと受けとめて、それは今やっておることであります。  それからもう一つ、委員が二番目におっしゃったこと、すなわち戦争が始まった途端に終わったことを考えていかなきゃならぬ、日本は何考えておるかということでありますが、当面直ちに手をつけなきゃならぬと思うことは、あの地域の各国の戦後の経済の復興あるいは再建に対する協力ではないかと思います。特に、今当事国になってし まった侵略者であるイラクとも日本は長い間経済技術協力の関係がございました。現に、去年の八月二日の侵略が始まる直前まで日本は経済の、混合借款のその続きをどうするかとか、それまでの七千億円に近い債権債務関係で、日本が債権ですけれども、それをどう解決していくかとか、いろいろな話もしておったくらいですから、これは戦後の復興あるいは経済協力には、原則に従った局面打開と解決の道にイラクが入ってくればという条件つきで経済を再構築する用意はありますということは、これはメッセージとして伝えてあります。周辺の国々にはいろいろな立場で協力をしていかなきゃならぬことはわかっておりますから、それがまずやるべき第一だと思います。  もう一つは、先ほど少し触れましたが、いまだ経験したことのない海に大量の原油の垂れ流しというのは、あのテレビに映る鳥の姿を見て感傷的にかわいそうだなと思うのみならず、あれが及ぼす人類に与える環境破壊の影響というものはどうなるだろうか.はかり知れないことがありますから、これは国際会議を持って、世界の知見や技術をもってこれに立ち向かっていかなきゃなりません。環境庁長官にOECDの閣僚会議に急遽行ってこいと言って参加をさせてそれらの問題について話したのも、この原油問題については、戦争が終わっても今でもすぐ始めなきゃならぬ大切な問題だと考え、我が国としては、オイルフェンスを送るとか淡水化装置のいろいろな問題について技術情報を提供するとか努力をしております。  中長期の問題はあと二つございます。一つは、中東問題の恒久和平のためにパレスチナ問題を含んでアラブ・イスラエル問題の解決をしなければならない。もう一つは、今度の原因をつくったのは大量破壊兵器の無責任な移転やその他によってイラクを強くし過ぎたという反省も出ておるという御指摘があるように、そうだと思いますから、あの地域の平和のために武器輸出あるいは大量破壊兵器、そういったものについての取り扱いを国連を通じて積極的に日本努力をしていかなければならぬことである、こう考えております。
  267. 中野寛成

    ○中野委員 戦争は始まったときに終わらせることを考えなければいけない、こう申したわけでありますが、終わった後のことについて総理は言及をされました。しかし、それはそれで結構です。というのは、そのこともまた終わらせるための心理効果を発揮することは事実でありますから、それはそれで持っていないよりもむしろより一層明確なものを持っておるべきであります。むしろ総理が今述べられたことをもっと具体的にもっと強力に強化してお持ちいただくことをむしろ要望をしておきたいと思います。  終わらせる方法は、先ほど申し上げましたように、武力行使をしつつありますが、国連を舞台にしながら我々としては平和的な解決のための提言を外交努力としてすべきであると申し上げているわけでありますが、その国連の役割であります。  東西の冷戦構造が終結をし、イデオロギー戦争はまあ言うならば解消された。同時に、そのことは国連機能が改めて回復をし、それで国連機能とは人類の歴史的経験から生まれた唯一の平和へのメカニズムだと言っても過言ではないと思います、現在において。ならば、その国連権威を我々は守ることが世界の平和の最も大切な要諦であるということになりましょう。国連権威がもし破られれば、決議をしてもそれが常に無視される、破られるということであれば、世界はまさに群雄割拠、戦国時代、弱肉強食の世界、すなわち世界じゅうが常に戦争に脅かされ続けなければいけない時代が来る。すなわち世界じゅうが戦争の時代が来る。日本の周辺がたとえ平和であったとしても、世界のどこかに戦争が起これば、それは経済的に国民生活の上において最悪の影響を世界じゅうに与えることはもはやだれしも否定できない事実なのでありますから、そこで我々としては、国連中心主義は、名実ともに国連日本以外にあるのではなくて日本国連の一員として努力をするということが必要でありましょう。その場合、他国が国連で何かを決めたそのことに従うというのではなくて、決める前に、日本が積極的に国連において貢献することをも条件としつつ、あわせて積極的な発言、提言を行うべきであります。その上で、決定したことには忠実に従うべきであります。それが国際平和主義であり、国際民主主義原則だろうというふうに思うのであります。  ただ、その中で、まだまだ、単に政府に対する反対陣営の声というだけではなくて率直な国民の声として、果たして、中山外務大臣のせっかくの努力もあったとしても、しかし日本が果たしてどれだけの積極的な貢献をしたのか、提言をしたのか目に見えてこない、耳に聞こえないという国民のいら立ちがあることもこれは残念ながら否定できない事実であります。ここで総理がどんなに力説をされましょうとも、国民はそういうイメージを持っていることは残念ながら事実であります。なお一層積極的な提言を、貢献をなされることが肝要だ、こう思うのでありまして、国連に対する日本の役割、そして本当に世界の人が評価をし、日本国民が満足できる、そのことを単なるPRではなくて、口先でもなくて具体的な行動と貢献策をもって示すべきであると思います。このプログラムについて御説明いただきたいと思います。
  268. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世界の力と力の対決のころには、アメリカとソ連という二つの超大国のその陣営に分かれた枠組みというものが世界の平和をある意味では確保してきた、恐怖の均衡とも言われましたが、力の均衡の中で冷戦構造というものが世界秩序であった時代も確かにございました。その発想を乗り越えて、戦後四十五年たって初めて国連安保理事会がイデオロギーの対立を乗り越えて国連の理念に立ち返って、ここに平和の破壊者がある、世界秩序を守っていこうという機能をし始めたときでありますから、私は、国連権威を守るとともに、国連というものが、今後世界のいかなるところでいかなることが起こっても、国連が力で平和を守るというのではなくて、道理と話し合いによって平和を世界じゅうに守っていく場であってほしいという強い願望を持っております。したがって、今国連決議に従う平和回復活動や、国連決議に従う適切な支援にもでき得る限りこたえていかなければならぬという態度を示しておりますことも、また国連の行ういろいろな難民の輸送事業とかこういったものに日本として応分の拠金を出せということについても率直にこたえ続けておるのも、国連中心主義でいきたいという政府の願いの一つのあらわれでもございます。  これからは、今度安保理事会日本も積極的に発言をする、同時にまた、先ほど私が触れましたように、核兵器や化学兵器や生物兵器の使用の問題や、あるいは通常兵器の移転に対する透明性や公開性の問題等を通じても、もっと国連の場で日本主張をして、そういったものがきちっと世界の平和の仕組みの中におりていくような、そんなことにも積極的に取り組んでいかなければならない、国連中心であくまで頑張っていくべきである、こう決意をいたしております。
  269. 中野寛成

    ○中野委員 そこで、資金協力の問題についてお尋ねをいたしますが、まさに今御答弁がありました。私もまた指摘をいたしました。九十億ドル支出をする、拠出する、これはGCCを通じて多国籍軍へ出すということになっております。先ほど来、それが戦費であるか否か、また、武器弾薬に使われるか否か、いろいろな論議がなされております。それぞれの御質問や指摘は、国民感情として私もまた同感であります。しかし、現実にはその区別をすることは不可能と言っても過言ではないであろうと思います。逆にこれは、GCCを通じようと多国籍軍であろうと、実質上政治的には国連に拠出することと同じだとむしろ考えるべきではないでしょうか。その方が素直であると思います。国連憲章国連決議による平和回復を目的とした行動日本も具体的な実力では参加できないから資金で参加しよう、こういうふうに素直に考えるべきだと思います。むしろ言葉の解釈で云々しておりますと、また、政府の答弁もそれによってあいまいであったりいたしますと、国民の 皆さんはかえって不安になってしまいます。その目的が肝心であり、そして国際社会国民への理解が大事だと思うのです。ゆえに、日本国民には目的を明確に伝えることです。国際的な貢献、すなわち日本国際社会における発言権の確保も含めまして、日本の地位を国際社会でしっかりと示したい、湾岸諸国、米国、英国、フランス等々との友好も大事にしていきたい、そのための九十億ドルである。  また、用途についても、国際社会に対して日本の姿勢を明確に伝えるべきであります。それは、平和憲法精神国民の平和を願う感情などを率直に伝えるべきであります。しかし、そのことによって後方支援かどうか、戦費かどうかということについての明確な証明というのは残念ながらできるものではない。日本国民の感情と、日本政府の政治姿勢を伝えるということによって、具体的な日本の立場を説明、国際社会に立証することにつながるということが一番肝要なのではないでしょうか。そのことを一点まずお聞きをいたします。
  270. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の御趣旨は私も全くそう思って、日本国際社会に力でお役に立てない者が、しかし国を挙げての気持ちとしては、これは国連平和回復活動に協力するんだという気持ちで拠出をいたしておるわけでありますから、そのような御質問の御趣旨に沿った気持ちでやっておるところであります。
  271. 中野寛成

    ○中野委員 そこで、財源であります。  私どもはたびたび、先般の大内委員長質問以来、まずその財源については、行革や経費削減等、せめて九十億ドルの半分くらいは政府がまず汗を流してつくり出す、非常事態でありますから、国民に増税を求めるくらいの非常事態なんでありますから、既に決められた予算案といえども、その非常事態という感覚の中で、大蔵大臣大変御苦労のようでありますけれども、しかし苦労の上にも苦労を重ねて何とかその経費を政府みずからの努力によって生み出すという努力がまず必要だと、こう申し上げたいのであります。  この九十億ドルでとどまるならいざ知らず、戦争が長引けば大変でありますが、もし長引かなかったとしても、この終戦後の湾岸諸国等の復興への経済協力の能力は日本は残しておかなければなりません。その幅は持っていなければなりません。なぜならば、アメリカ、財政的に無理でしょう。ソビエトの財政事情では無理でしょう。フランス、イギリス、とてもとてもその余力はないでありましょう。ドイツまたソビエトに対する経済協力等で手いっぱいというような状況下にあって、どうしても国際社会の目は、その戦後の復興についての経済協力は日本に目が向けられるでありましょう。そのときにもし日本が手を抜いたとしたならばどのような状況になるか、むしろそのことの方が恐ろしいと言わなければなりますまい。そのときのためのことも含めまして、現在我々はこの財源対策を考えておく必要があるということをまず念頭に置いていただいて、そして政府の御決断をお聞きしたいと思うのであります。
  272. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員がお述べになりました基本的な考え方に私は異論があるわけではありません。ただ、そうした情勢を頭に置きながら、なおかつ、私はでき得る限り、先ほど他の委員の御質問にもお答えをしたことでありますけれども国民にできる限りの増税に御協力をいただき、しかも、それを単年度にし、その財源を前提にしたつなぎ国債によってこの九十億ドルの負担を行いたいと考えております。  なぜなら、まさに委員がお述べになりましたように、行政改革あるいは行政経費の節約の努力というのは必ず我々が常に行わなければならないことでありますし、このような状況になれば一層大きく努力をするのは当然のことであります。現に二年度の補正予算第1号を編成いたしますときに、従来以上の節減を各省に協力をしていただき、例年の五割増しの節減を立てたということは委員も御承知のとおりであります。  同時に、仮に政府自身が汗をかけと言われますことは、逆に国民に対して、二年度の予算におきましても、御審議をいただいております平成三年度予算におきましても、それだけの、経費ではありませんが、政府の行政サービスの形において御負担を願うということでは変わりはありません。その場合に、増税という目に見える形でこの金額を御負担をいただくのと、政府の行政サービスをある程度低下させても既定の財源の中からその資金を捻出をいたしますのと、外から見たとき、一体どちらが日本が苦労しながらその拠出に応じてくれたという印象を持ってくれるかということもぜひお考えをいただきたいと思うのであります。  私どもは、努力をしないと申すつもりはありません。現に、本当にもう補正予算提出の日限が迫りながら今日なお私は苦しんでおります。最大限の努力をしてまいるつもりではありますけれども、基本的に政府自身が汗をかけということは、国民に対する平成三年度予算において行うべきサービスを低下させるということであることはどうぞ御理解をいただきたい、どうぞそこは御理解をいただきたいと思います。
  273. 中野寛成

    ○中野委員 行政改革や国有財産の処分等も含めまして、私は政府みずからがまずできることに全力を尽くすべきであると思います。また、分野においては、大蔵大臣言われましたように、サービス経費の削減ということもあるかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、増税をして後でまたサービスを削るのか、サービスを御辛抱いただいて、どうしても足りません、国際社会のためにひとつ増税で御協力をお願いをしたい、いずれにいたしましても同じことであります。そのことについては、我々といたしましては、むしろまず政府が姿勢を示すということが大事なのであります。どちらにいたしましても国民の財政でありますから、国民が負担をするのであります、結論的に言いますと。しかし、そのときに政府が少しでもまず先に努力をしたというその政治姿勢こそが国民の理解と協力を得られるもとになるんだということを重ねて申し上げておきたいと思います。  なお、あわせまして、人的協力のあり方についてであります。  今、自衛隊輸送機の問題がとかく言われております。時間がありませんのでそう多くを申し上げることはできませんけれども、例えば、多国籍軍に対するというよりも、周辺諸国に対します各国の医療協力の現状の方を申し上げてみますと、例えば韓国は医療協力団百五十四人のサウジアラビア派遣、タイ、医療団三十三名のサウジアラビア派遣、フィリピン、医療団百九十名のサウジアラビア派遣、カナダ、国防軍医療チーム五百五十名を野戦病院設営のため派遣。ほかにも、オーストラリア、ニュージーランド、イタリア、オランダ、スウェーデン、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ほかに国境なき医療団等も活躍をしております。  また、イギリスによって七百ベッド数程度のものをリヤド空港付近に野戦病院としてつくる計画がある。しかし、自分たちだけでは医師をそろえられないということで周辺国へ協力を申し入れたところ、即座にスウェーデンから五百名のボランティア、うち百五十名が看護婦を主体とする女性が名のり出てくださった。二月十一日から機能をする。この治療対象は、イラク軍の捕虜、難民、多国籍軍の兵士等々となっております。  このようにして、言うならば世界じゅうがこの戦争で傷つく、被害を受ける人たちのために努力をしているのであります。日本は果たしてどれだけのことができているか。結果として極めて残念な状況にあることを憂うるものであります。  また、自衛隊輸送機の問題も、そしてこの医療団の派遣の問題も、これは難民を救うという一つの目的があります。輸送だけであれば、それはほかのいろんな方法もありましょう。先ほどのヨルダン航空の話もございました。日本からの大衆の拠金によって運用されている話も聞きます。すべてが大変すばらしいと思います。しかしながら、日本日本の姿勢を示すことについては果たして どうすればいいのだろうか。そのときに、この医療団の問題にしろ自衛隊輸送機の問題にしろ、特に今回医療団についてはとても政令で云々できる状況ではない、ゆえに、自衛隊輸送機だけを政令でやった、やろうとしているという状況下にあります。しかし、私はこれはどう考えてもこそくな手段だと思います。私は今ここで法制局長官にお聞きしようとは思いません。これは政府の政治姿勢の問題であります。法律の解釈をゆがめても、またゆがめないまでも国民の納得が得られないままに政令に逃げるとは一体何事か。これだけ重要な問題。しかも、過去オリンピックの協力や南極観測隊の輸送等々についてさえ自衛隊法の改正をしたのであります。緊急事態とはいえ、危険なところに派遣をするのであります。これはやはり自衛隊法を改正し、しかるべき任務と名誉と使命感を持って行っていただかなければなりませんし、国民の協力、理解が必要であります。国会にこれを提案した、野党が反対してつぶれた、しかしその場合にも、これは国民意思でありますし、もって瞑すべしであります。また、そのことによって国際社会から非難を受けた場合には、与野党どころか国民みんなそろってその国際社会の批判を受けとめざるを得ないでしょう。それが民主政治というものではないかと思うのであります。  また、もし政府がどうしても国家国民のために、国益のために、政令でもってしてでも、ごまかしてでも自衛隊機を派遣しなければならないというのであれば、どうも済みませんでした、国会の意思に沿わない勝手なことをいたしました、国民の皆さんに御心配かけました、法制局長官にもえらい御苦労をかけました、済みませんでした、よって我が海部内閣は総辞職をいたしますと、そこまでの決断をして政令改正でやるというなら、それはおやりなさい。しかし、それだけの決断がないというのであれば、これはやはりごまかしです。  私どもとしては、そういう状況の中でこの問題について海部内閣の改めての見解を問いたいと思います。
  274. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の事態を目の前に見たときに、先ほど来申し上げておりますように、イラククウェートに対する侵略、そういったようなものから避難民がある、国際機関からそれの移送をしてほしい、そういう要請を受けましたときに、私はこれは日本としてできる限りの協力をすべきである。しかもこれは極めて非軍事面のことで、極めて人道的な問題でもございます。したがって、憲法の禁止しておる武力行使を伴う海外派兵ではありませんし、人道的な面でお役に立てるならばやるべきだ、政府はそれで考えたわけでありまして、これはごまかしでも何でもありません。それは、この国際社会の中で、相互依存関係の中で、今日この平和を享受する中でここまで歩みを進めてきた日本の国にとって、今まさにこれから平和主義国際協調主義の中でどのような生き方をしていくかということが世界的に問われているときであります。ですから、その中で名誉ある地位を占めたいと思って、考えて、決断したことでありますから、ごまかしでも何でもありません。そして、内閣の責任においてでき得ることが何であろうかときちっと調べて、自衛隊法の百条の五によってきちっと政策を立てて、政令を決めて、今回のことに限ってこれはしようという決断をしたわけでありますから、これは後世の歴史家からよきあしきの御審判はいただきたいと思います。
  275. 中野寛成

    ○中野委員 この問題については、自衛隊輸送機等の派遣、医療団の問題等、自衛隊の協力を私ども民社党は否定するものではありません。原則的にむしろ賛成であります。しかしながら、そのためには、まさに自衛隊法の改正をして、そして国民のコンセンサスや国会のシビリアンコントロールがきちっと機能しているんだという国民の安心感のもとに、後はイエスかノーか、一か十かの話ではなくて、程度の問題としてお互いの論議ができるような国会をつくりたいのです。そのためには、こういう状況のときに、今回だけの問題ではないのです、これから先の日本国家の国際社会における位置づけを安心してつくり上げていくためにも、ここで手順を間違いのないようにきちっと踏んでいきたいのです。そのためには、このような政令というやり方はやはりどうしても納得がいきません。そういう意味で私は総理の政治姿勢を問うたのであります。先ほど来の御答弁、極めて不満足でございますが、改めて御再考を要請をいたしたいと思う次第であります。  なお、湾岸地域の日本人労働者の労災保険適用問題についてお尋ねをするつもりでございましたけれども、時間が参りましたので、改めて同僚議員に譲りたいと思います。  終わります。
  276. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、ただいまの中野委員の一番最後のくだりは共感いたします。正論であろうと思います。  きょう私は十分、あしたが六分、二日間かけてわずか十六分ですから、きょう、あしたに連動させて質問しますので、そのつもりで受けとめていただきたい。  二月六日の日に私は質問をいたしました。夕方でした。私の第二議員会館、院内の進民連の控室、社民連の本部、地元福岡の私の自宅、事務所、北海道は旭川から九州は宮崎まで、数十本も電話が入りました。また、たくさんの手紙をいただきました。私どもはそれを国会に伝える責任があると思いますので、その中の一つだけ特徴的なあれを披露させていただきます。  私どもは、えてしてこの院内の三階、第一委員室のこの部屋の中だけで物事を考えてはいけない。院外の国民の皆さんがどういう真剣なまなざしでこのやりとりを見ていらっしゃるかということを私は痛感したのです。  これは現金封筒です。「私は七十六歳、七十歳の妻と二人でささやかな年金で生活している者です。昨日、あなた様の予算委員会での質問を拝見しました。失礼ですが、小さな政治団体で、スタッフも多くはないことと存じますが、よく資料を調べて質問を展開され、持ち時間も少ないのに頑張っておられるお姿を拝見して感服いたしました。」これは私の宣伝じゃないんです。「戦争には正義、不正義、善、不善はなく、国家の利害の衝突にすぎないと思います。私も鬼畜米英とののしり、聖戦と称して四年間兵として従軍させられました。戦争の愚かさと悲惨さを身をもって体験しました。」途中を省きますが、「私の小遣いから一万円、家内が生活費から一万円.ここに二万円同封いたします。わずかのものですが、貧者の一灯として活動費の一部に充ててください。」私は非常に感動と責任を覚えました。これは単に私が宣伝しているんじゃないんです。やはり総理もおわかりいただけると思うのですが、総理総理の立場がありましょうが、国民がそういう目で見ておるということもひとつテークノートしていただきたい。  そこで私は、昨年暮れの協力法の特別委員会でも予告をいたしておりました。自衛隊の派遣、自衛隊の装備がついていく、果たしてあの湾岸の気候あるいは砂漠地帯という、そういう地域に適合した装備であろうか、自衛隊の装備が。そしたらそのときやじが後ろから飛びました。ちゃんと適合するというやじが飛びました。C130ハーキュリーズ、これは米軍と同じですね、C130Hです、今度やるやつです。ヘリコプターもそうですが、このC130ハーキュリーズというのは、米軍の場合でもあの湾岸地域にやるのに非常に苦労しているんです。  きのうこういう記事が報道されました。「湾岸戦争による避難民を輸送するため、C130H輸送機の中東派遣への準備を進めている愛知県小牧市の航空自衛隊小牧基地で、同機の砂漠の離着陸を想定した”砂防実験”に失敗、派遣用機一機が飛行不能に陥ったことが十二日、明らかになった。」「現地での砂漠対策に最も気を使ってきたが、万全とみられてきた砂防装置の不調に大きなショックを 受けており、砂防システムの見直しを迫られることになった。」実験に使用されたのは、今度もしかしたら派遣するかもしれない第二陣の二機のうちの一機である。それで、「エンジン部分の空気取り入れ口にサンドプルーフィングと呼ばれる砂防フィルターを装着し、機体前方に大型扇風機を配置。砂を舞い上がらせてエンジン機能の状態をみた。 エンジンが始動しプロペラが回転した際、フィルターが十分働かず、」細かい砂が内部に入って「右翼のプロペラ二基が全く動かなくなってしまった。」「こんな準備体制ではとても飛べない」と小牧基地の諸君は言っている。  これは事実ですか。
  278. 池田行彦

    ○池田国務大臣 まず、C130は米軍のほかにエジプト初めかなりの国が保有しておりまして、湾岸の地域でも活動しているということを申し上げたいと存じます。  それから二つ目に、ただいま御指摘のございました記事でございます、報道でございますが、昨日の朝刊の報道であろうと存じます。私も拝見いたしました。そうしまして早速調査いたしましたところ、全くの事実無根であることが判明いたしましたので、当該新聞社に対しましてそのことを指摘し、善処を求める考えでございます。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、しかと抗議されますね。
  280. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほども申しましたように、事実無根である旨を指摘し、善処を求める考えでございます。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今のは朝日新聞じゃないんですよ。今度は朝日新聞。  これはけさでしたか、元海上自衛隊輸送隊司令、名前もちゃんとここへ出されておる。投書であります。伊藤治義という方です。元輸送隊司令ですよね。こういうことを言っておられますね、投書の中ではっきりと。こういう湾岸地区でやるような訓練のことでしょう。「平素の訓練は皆無と言ってよい。それに日本には自衛隊が海外、まして戦闘地域に出動する法体系が全くない。」「異常事態に対処するための法令は整備されておらず、何かあったら超法規的処置をとらざるを得ない、」これが元海上自衛隊、まさに輸送隊司令の投書です。堂々たる投書です。  そこで私はお伺いしますが、ここに「超法規的処置をとらざるを得ない、」とこの海上自衛隊元司令は言われておりますけれども、自衛隊はそういう非常事態に対して超法規でやるというような思想を研究もしくは教え込んでいるんじゃないですか。
  282. 池田行彦

    ○池田国務大臣 大勢の人数の中でございますから、いろんな考えをお持ちの方はおありだと存じますけれども、今回の構想につきましては、繰り返し申し上げておりますように、私ども憲法のもと、そうして法律の授権の範囲内において必要な政令を制定するという法的な措置を講じ、そしてまた実態面におきましても、十分その任務にたえられるような準備を整えてその任務を遂行する、こういうことでいろいろ進めておるところでございます。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうこれでやめますけれども、あしたに譲りますが、昭和三十三年、第一次防が発足した年です。防衛研修所、「自衛隊と基本的法理論」第六編、二百四十九ページ、そこに何と書いてあるか。非常事態とは、「武力のさなかにあって法は沈黙する」、そういう事態だ、こう教えている。  総理大臣、今度の、中野さんも指摘したけれども、無理がありますよ、特例政令でやるのは。超法規的な措置ですよ、これは。こういう思想が今になって生きてくる。つまり、「武力のさなかにあって」、ああいう湾岸のような状態が勃発したときには「法は沈黙する」、法律は沈黙してしまうんだ、超法規にやるんだとちゃんと自衛隊のそういう研修所の本にある。だから私は、あとは明日に譲りますけれども、楽しみにしておってください。  これで終わります。
  284. 渡部恒三

    渡部委員長 答弁、いいですね。──これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  285. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、平成三年度総予算の公聴会の件について申し上げます。  公述人の選定につきましては、さきに委員長に御一任いただいておりましたが、本日の理事会において協議いたしました結果、お手元に配付いたしました名簿のとおり決定いたしましたので、御報告いたします。     ─────────────    予算委員会公述人名簿 一、意見を聞く問題 平成三年度総予算について  ○二月十六日(土)     国立環境研究所副所長     東京工業大学教授   市川 惇信君     横浜国立大学     経済学部教授     岸本 重陳君     名古屋大学法学部教授 森  英樹君     立正大学法学部教授  星野安三郎君     成蹊大学教授     牟田口義郎君     中央大学教授     一河 秀洋君  ○二月十八日(月)     青山学院大学教授   伊藤 憲一君     日本大学法学部教授  浅井 基文君     放送大学教授     仲村 優一君     財政金融研究所顧問     青山学院大学教授   館 龍一郎君     青山学院大学国際政治     経済学部教授     阪中 友久君     東京大学教授     佐藤三郎君     ─────────────
  286. 渡部恒三

    渡部委員長 次回は、明十五日午前十時より委員会を開会することとし、本日に引き続き集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会