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1991-02-06 第120回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君      内海 英男君    小此木彦三郎君       越智 伊平君    狩野  勝君       金子 一義君    倉成  正君       後藤田正晴君    佐藤  隆君       志賀  節君    田邉 國男君       戸井田三郎君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    光武  顕君       村田敬次郎君    村山 達雄君       山本  拓君    綿貫 民輔君       五十嵐広三君    串原 義直君       嶋崎  譲君    新村 勝雄君       新盛 辰雄君    辻  一彦君       戸田 菊雄君    野坂 浩賢君       藤田 高敏君    武藤 山治君       和田 静夫君    石田 祝稔君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       佐藤 祐弘君    辻  第一君       不破 哲三君    吉井 英勝君       中野 寛成君    米沢  隆君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         警察庁交通局長 関根 謙一君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         会計課長    菊地 徳彌君         総務庁長官官房         交通安全対策室         長       徳宿 恭男君         総務庁人事局長 石川 雅嗣君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         国税庁次長   福井 博夫君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省教育助成         局長      菴谷 利夫君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         文部省体育局長 野崎  弘君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省児童家庭         局長      土井  豊君         厚生省年金局長 末次  彬君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         農林水産省構造         改善局長    片桐 久雄君         食糧庁長官   浜口 義曠君         林野庁長官   小澤 普照君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       坂本 吉弘君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         海上保安庁次長 豊田  実君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         郵政省電気通信         局長      森本 哲夫君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省都市局長 市川 一朗君         建設省住宅局長 立石  真君         自治大臣官房総         務審議官    紀内 隆宏君         自治大臣官房審         議官      二橋 正弘君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君         消防庁長官   木村  仁君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月六日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     津島 雄二君   内海 英男君     井奥 貞雄君   越智 伊平君     光武  顕君   加藤 紘一君     金子 一義君   浜田 幸一君     狩野  勝君   村田敬次郎君     山本  拓君   吉井 英勝君     不破 哲三君   中野 寛成君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   金子 一義君     加藤 紘一君   光武  顕君     越智 伊平君   山本  拓君     村田敬次郎君   不破 哲三君     辻  第一君   米沢  隆君     中野 寛成君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。不破哲三君。
  3. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表して、湾岸戦争の問題を中心に、総理関係閣僚に質問したいと思います。  まず最初に、一番緊急を要する自衛隊機中東派遣の問題ですけれども、総理は、IOM国際移住機構からの要請があってこれを考えたということを答弁されています。このIOMからの要請総理が知ったのはいつのことでしょうか。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 IOMから要請があったということは、十七日の日に、私は直接その要請文書等を見て知りました。
  5. 不破哲三

    不破委員 十七日の何時ごろですか。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 一々それは記録しておりませんので、今私の記憶の中でお答えしておるわけでありまして、何時ごろということは具体的にちょっとお答えいたしかねます。わかりません。
  7. 不破哲三

    不破委員 海部総理自衛隊機の難民輸送問題での派遣について検討するということを記者会見で言ったのは、十七日の午前十一時四十分からの記者会見でした。ですから、私は疑問に思うのは、開戦の連絡があってから、それからIOM会議があったわけですから、それから各国に対する要請が出されているわけですから、総理記者会見自衛隊機派遣の問題について発言されたときには、恐らくまだIOM要請なるものは見ていなかったのではないかと推測するので、あえて質問したわけです。  それで、この要請は、もう御承知のように自衛隊機を出してくれという要請ではなしに、貴国政府民間機または軍用機による輸送能力IOMに提供する可能性について検討し、その結果を知らせてくれという要請でした。それで、私が政府のそういう行動を見てみますと、この輸送能力を提供する可能性について余りまじめに吟味した形跡がない。それで自衛隊機派遣という結論だけが、ひょっとすると要請以前に問題になっている。そこに大変な疑問を持つわけです。  それで、具体的に伺いたいのですが、まず、自衛隊機のC130を中東に送るということで検討を始めた。そのC130の部隊ですね、特に今派遣を予定されている機長の、機長といいますか自衛隊では、パイロット部隊、この部隊は、南回り、今度問題になっているカイロまでの南回り航路を飛んだ経験のある人が含まれていますか。防衛庁の方でお答え願いたい。
  8. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 アメリカから飛んできた経験はございますけれども、南回りで飛んだ経験はございません。
  9. 不破哲三

    不破委員 私は民間航空国際線ベテラン機長にいろいろ聞いたのですけれども、アメリカまでの航路南回り航路は決定的に違う。  第一にまず、飛行機が飛ぶ場合には、ATCといってステーションからの無線通信を聞き取るのが非常に大事です。これは全部英語でやられておりますけれども、アメリカへ行く空路はほとんど米軍関係ですから、日本で使っている米軍基地との交信で大体間に合う。ところが、南回りというのは御承知のように、例えば香港に行けばホンコン・イングリッシュ、あるいはバンコクに行けばその手の方言インドへ行けばインド方言、ともかく英語が聞き取りにくいというのでは有名なコースだそうです。それで、ベテラン民間機機長でもこれを聞き取るまでになるのには大変な苦労が要るということを聞きました。これが第一。  それから第二に、無線ステーションによる、地上からのステーションによる援護が非常に弱い。まずステーションの数が少ないわけですね。少ないわけですからどうしても遠距離の通信によらざるを得なくなる。そうしますと、VHFという超短波受信が不可能になって、HFという短波受信しかできなくなる。この短波受信というのがまた大変技術的に難しいそうです。それからまた、この短波受信をする場合に、普通の民間機は高度三万フィートを飛びますけれども、C130の高度は二万フィートで、一番受信しにくいところを通過せざるを得ない。  それから、三番目に言いますと、気象が非常に不安定な地域ですけれども、気象情報自体もそういうステーションからの情報で聞くわけですから、ベテラン機長でも本当に通過するのには困難で、例えば米人のパイロットと一緒に飛んでいても、英語が聞こえない。これは何と英語言っているのだ、一体空港へおりろというサインが出ているのか、おりるなというサインが出ているのか、それの判定さえ困難だということを聞きました。  そういう点で、一体今防衛庁派遣を予定しているC130の部隊がそういう点で十分な準備を整えているのかどうか、その点について自信のあるほどを伺いたいのです。
  10. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 そういうこともございますので、現在、調査員も先般派遣をいたしまして、いろいろと現地の方と実情を調査いたしておりますし、それから外交ルートを通じましてもその辺のところを把握に努めている、現在鋭意準備中という状況でございます。  なお、参考のため申し上げますと、同じように韓国のC130は南回りで支障なく飛んでいったし、これからもまた飛ぶ予定であるというふうに聞いております。
  11. 不破哲三

    不破委員 私は韓国人たち訓練程度を聞いているのじゃないのです。日本自衛隊がそういう経験があるかないかを聞いているのです。ちなみに民間の場合を見ますと、そういう新しい空路を飛ぶ場合には、まず日本でみっちり基礎的な知識を頭にたたき込んで、それから二人操縦体制で行って、ベテラン機長と新しい空路につく機長が二人でまず実地の飛行をする。それでベテラン機長の方がATCという無線関係を全部引き受けて、それで一遍往復してみて、それから帰ってきて初めて、帰って試験を受けて、チェックして合格したら飛び出せるというぐらいのことをやっているわけですね。ですから、いろいろな現地事情を調べていると言っていますけれども、そういうことが果たして、実際に乗っていく人にとっては大変かわいそうな目に遭わせるのじゃないかということが航空界で話題になっているということを私聞きましたので、あえて伺う次第です。  それからもう一つ伺いたいのですけれども、それはC130という飛行機装備の問題です。  それで、御承知のようにこのC130という輸送機は、戦術輸送機でありまして、大体拠点間の近距離輸送を担当しているわけですね。ですから、いわゆる航法装備航法というのは飛行機が飛ぶ、飛行の方法の航法ですが、航法装備についてはそういう近距離輸送装備しか備えていないと聞いています。今、国際線を飛ぶ場合でも国内線を飛ぶ場合でも、航法装置としてはINSという慣性航法装置が問題になりますが、このC130は慣性航法装置を積んでいますか。積んでいるとすれば何台積んでいますか。
  12. 関收

    関政府委員 先生御指摘のINS航法装置装置をいたしております。台数は二台でございます。
  13. 不破哲三

    不破委員 二台ですか。
  14. 関收

    関政府委員 はい、二台です。
  15. 不破哲三

    不破委員 このINSというのは、前の大韓航空機撃墜事件があったときに大変問題になった装置です。それで、コンピューターで飛行機を動かしていけるので大変便利なんですけれども、間違うときがある。ですから、間違わないときに予防態勢が大変なんですね。  それで、運輸大臣に伺いますが、民間国際線の場合には何台積んでいますか。
  16. 宮本春樹

    宮本政府委員 お答えいたします。  原則として二台と承知しております。
  17. 不破哲三

    不破委員 それはちょっと常識がなさ過ぎますよ。このINSというのは、例えば一台狂うと、しかし二台があって一台狂ったら、どっちが狂ってるか判定がつかないのです。Aという答えとBという答えが出て、Aが正しいのかBが正しいのか判定がつかないのです。だから三台積むのが現在の原則なんですよ。あの撃墜された大韓航空機だって三台積んでいました。それで、三台積んで、一台狂った場合に二台正確なものがあれば多数決で決めるというのが慣性航法装置原則なんですね。ですから、今の日本航空にしても全日空にしても、全部三台積んでいて、私が機長に聞いたところだと、一台故障しても絶対に搭乗しない、これはもう答えが出なくなるからだ、航路を失うからだということを言っていました。それで、軍用機でも戦略輸送機のギャラクシーはちゃんと三台積んでいるわけですね。それを、つまりそういう点でも、そういう海を渡っての国際航空にたえ得る条件を持っていない飛行機がC130なんだということを心得てこの計画に当たられているのかどうか、そのことを伺いたいのです。
  18. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御議論を聞いておりまして、私がまずお答えしなきゃならぬと思ったことは、そういう長い距離を飛ぶということ、特に南回りを飛ぶということは、それはおっしゃるように、C130の輸送機よりも民間航空の方が経験もあり、すぐれており、能力もあることは、これは当然のことだと考えております。同時に、輸送する人員についても非常に多いわけでありますから、具体的な要請を受けたときも直ちに民間航空にまずお願いをいたしました。今回のIOMからの要請の第一回のベトナムに対する難民の移送の問題は、民間航空が、カイロまでの輸送を引き受けてもらいましたから、カイロまで民間航空が飛び、そして運んだことは御承知のとおりであります。  また、私が当初申し上げましたことは、IOMの方からも民間もしくは軍用機で提供できる用意があるか、その可能性について検討してほしいという要請でありますから、私は、避難民輸送というのはこれは日本憲法下でできる範囲のものであると考えて、その可能性について検討を始めたわけであります。そうして例示として示されたことは、カイロまでの間、例えばアンマンから、あるいは例えばダマスカスから、あの周辺に今度の湾岸の紛争を通じてイラクによる行為によって出てくる避難民がおったときは移送してほしいということでありますから、私は、長距離の場合と短距離の拠点輸送の場合等、いろいろ具体的な要請が来た場合にはあるなということが例示的に示された問題にもあるわけでありますから、そこでそのようなことを検討を始め、態度を決めたわけでありますから、あくまで長距離で、そして太平洋上の問題とか、大量輸送することが避難民にとってもこれは適切なわけでありますから、そのような対応をしていくわけであります。
  19. 不破哲三

    不破委員 今首相現地事情についてIOMとの接触のことを言われましたが、そういう構想を立てられたからには、やはり現地と緊密な連絡をとって、ヨルダン政府IOMアンマン事務所ですね、とられていたのでしょうね。その質問です。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 IOMからはそういう要請を受けて、民間機軍用機要請した場合に対応できるかというあれが来ましたから、例示としてそういうようなことで、だってあの地域イラクがクウェートに対して侵略、併合して、そこから出る気の毒な避難民の人でありますから、それ以外の遠いところから出ることは、これは常識的に考えて想定いたしませんから、それを頭に描いたということはごく常識的なことだと思います。
  21. 不破哲三

    不破委員 首相が頭に描いたときに、それをすぐ現地アンマンの大使館に連絡して現地事情を調べるということはされなかったのですか。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、具体的な要請があったら、個々別々の具体的な要請があればそれに続いてするというのが、これは私どもの考えであって、だからIOMから続いて、たしか二十一日であったと私は記憶しておりますが、具体的にベトナム避難民カイロまで行ったら日本輸送してくれるかという具体的な要請がありましたから、それは直ちに日本航空全日空にお伝えして協力要請して、困難な中から協力を受けて、四機派遣をして実施をした、こういうことでありますから、具体的にそれが来れば当然具体の対応をしますが、具体的な要請が来ないということは、いつ、どこで、何人程度、どのような需要が起こるかということは、はっきり言って未確定なことですから、確定されたときに具体的に対応するのが政府の立場であります。
  23. 不破哲三

    不破委員 私、この問題が起きてからずっと、新聞もう一遍繰ってみたのですけれども、新聞報道政府アンマンカイロ間にC130を飛ばしてピストン輸送をするという構想政府の中で浮上したと報道されたのは、一月十七日の朝刊なんですね、政府筋からの話として。それで、私たちはすぐ「赤旗」の特派員をヨルダンのアンマンカイロ派遣しまして、アンマンには二十日に着きました。それで、ちょっと驚いたことがあるのですが、大使館に連絡してみましたら、これは二十八日の時点ですけれども、もう日本政府の方は政令の準備を進めているという段階ですが、問い合わせてみたら、この件は東京から一方的に伝えられてきたもので、自分たちは困惑している、それで、アンマンカイロ間を政府が飛ばせるという構想を持っているという決定を我々は現地新聞で知った、そして、だから、そういうことはわからぬから自民党に聞いてくれ、東京で、という説明が大使館から電話であったということを伺いました。ちょっと私たち自身驚いたわけですね。  それから、私たちの特派員は、二十日にアンマンに到着してすぐ、二十二日、二十四日、二十六日と、IOMの事務所に毎日行って連絡をして事情をつかんだわけですけれども、それで、IOMの事務所でわかったことは、ともかくアンマンカイロ間を飛行機で飛ぶとしたら、これは民間機の方が安全で、その方がいいというのは責任者の一致した結論でした。これはカイロの方は、責任者がカイロの場合には、軍用機の使用は差し支えないという点で非常に軍用機に寛容なんですけれども、しかしヨルダンはだめだよというのがカイロの責任者の話でした、軍用機は危険だと。  それで、そのときにIOMアンマン事務局で聞いてみても、日本の大使館の代表がこのことで来たのが二月二十四日だと言うのですね。二月二十四日に軍用機がいいだろうか……(海部内閣総理大臣「まだ二月二十四日は来てませんよ、正確に言ってください」と呼ぶ)失礼、一月二十四日です。あなたも時々間違えるじゃないの。一月二十四日にこの問題で初めて来て、軍用機がいいか民用機がいいかということを聞きに来た。それで私は、人道上の問題で、本当に現地事情からいってどういう手段が適切かということをまず考えるのが人道問題といったら先であって、それだったら、当然ヨルダンに大使館もあるわけですから、それからIOMとも接触をして、実際にどうなっているか、実際には全部アジア系の難民は、バスで来て、船で渡ってエジプトへ入ってカイロへ行くというコースをとっているわけですね。大体交通時間十四時間ぐらいです、我々の代表が走ってみたら。そういうコースをとっている。全部こなしている。そういう事情を全部つかんだ上で決めるべきものがこういう計画であると思うのだが、実際には現地のそういう日本の代表部等を通じての事情をつかむ手だても講じられないまま、この計画だけがひとり走っているというように、この経過から見て判断せざるを得ないわけですね。この点は一体どうなんでしょう。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 出先の大使館のやりとり等については担当局長から答弁させますが、私が基本的なことを申し上げますのは、日本はできる限りのことはしよう、そしてできる限りのことをするためには、前回の国会のやりとり等もあり、国際機関から要請を受けた場合に、日本で許されることはやろう、できるだけの努力はしよう、こういう対応を決めるわけでありますから、一々どこで何がどれくらい起こるかということは、正直言ってよくわからない状況だから、国際機関を中心に、国際機関が判断をして、これは必要だ、そしてこれはこのようなことが依頼ができるという可能性を持ったならば、国際機関の判断で具体的な要請が出るわけです。来てからまたイロハのイから考えておるのでは、こういったことに対してはツーレート・ツースモールという御批判がいろいろなところから出るが、そういったことはできるだけ避けていこう、対応準備だけは、日本でできることは、日本の腹構えはきちっと決めたいということで対処しておるわけでありますから、具体的な要請があるときには要請にこたえられるような措置をしておるというふうに御理解いただきたいし、また第一の要請に対しては、民間航空カイロからベトナムまで率先して応じたということでございます。
  25. 不破哲三

    不破委員 第一の要請についての対応は、別に我々異を唱えているわけではない、評価しているのです。  それで、問題はカイロアンマン間なんですけれども、今の御返事から承って、カイロアンマン間の輸送について、自衛隊機派遣という問題が国際機関から要請がない限り、これは発効しないんだというふうに理解していいんですね。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 必要がなければ要請がないでしょうし、要請がないところへ出ていくことは考えておりません。必要なときにお役に立とうということです。
  27. 不破哲三

    不破委員 これは大事な点なんです。国際機関から自衛隊機派遣要請がない限り出さないということが確認されたので、私は次に進みたいと思います。  それで、総理は今、要請があってからばたばたしたら大変だ、今から用意しておくんだというので言われましたが、現実には、今ヨルダン事情を調べてみますと、現地から私のところに刻々情報来ますけれども、大体全部難民は順次こなされているという報告ですから、今すぐそういうことはないと思うのですね。それで、その要請が将来来た場合に備えるといって政府がやったのが政令による自衛隊機派遣という措置でした。それで、このことに関しては、憲法にかかわる重大問題だということで、この予算委員会でも随分議論がありました。  憲法にかかわるという場合、二つの問題があります。それは何といっても、戦争の周辺地域自衛隊機を送る。これは単なる飛行機が二機、四機、五機と行くだけじゃなしに、それに伴って送られる部隊が聞くところによりますと二百名というのですから、要するに二百名という自衛隊の大部隊が戦争周辺地域に送られる。これは去年は国連平和協力法案の中に一項目入っていた問題で、それが否決された段階で、廃案になった段階であえてやろうというわけですから、内容的に重大な憲法違反の問題がある。これが一つです。  それで、二つ目の問題は、その内容的に重大な問題を一片の政令、つまり政府の決定でやろうとする問題ですね。これについてもずっと議論がありましたので、私、できるだけダブりを避けて、少し整理をしていきたいと思うのですけれども、この予算委員会でも随分過去の政府答弁ということが問題になりました。ただその中で、過去の政府答弁といってもいろいろ種類があります。一番重いのは例の百条の五ですね、自衛隊法の。百条の五が制定されたときの国会で政府がどういう答弁をしているかということが私は一番問題になると思うのです。  それで、これは一九八六年十月から十二月にかけて衆参両院で議論をされているわけですけれども、そのときに各党の質問に対して政府が、この条項はこの範囲で解釈されるものだから採択をしてもらいたいということを説明しているわけですね。その説明の中に、これは何遍も言われていますから余り詳しくは繰り返しませんけれども、そうむやみにこの範囲を拡大することはないという言明がある。それから、具体的に、イラン・イラク戦争のときの在外邦人の救出のことが具体的な問題になって、そういうことを自衛隊が任務としてやる場合には明確な法改正が必要だということを、つまりこの百条の五を制定した国会で答弁している。だから、そういう条件でこの百条の五というのは国会を通過しているわけですね。だから、その条件の枠を越えたことを政府がやるとすれば、これはいわば国会がだまし討ちされたことになる。つまりこの法改定は、こういう内容でこれ以上の限度はないんですよということを繰り返し繰り返し言明した上で通過したものですから、それが非常に大事な点だと思うのですね。しかも、その点で、その国会答弁の直後に、政府は政令なるものを定めて、ここで言われている政令で、自衛隊法で「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」についての政令を決めていますね。  その政令で「その他」を含めて決めた内容は何なのかということを、これは法制局長官ですか、伺いたいのですが。
  28. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  現在、ただいま御指摘の自衛隊法の施行令で定められておりますものでございますが、自衛隊法の百条の五第一項に基づきます政令としまして、自衛隊法施行令の百二十六条の十六がございます。ここで掲げてございますのは、現時点においては一号から五号まででございます。  私の記憶いたしますところ、ちょっと時点がはっきりいたしませんが、この自衛隊法の改正が行われましたとき、そのときに制定されましたものは、たしか「国賓に準ずる賓客」以下四号だったと存じます。それ以後、一度改正をいたしまして、第一号として「天皇及び皇族」を追加したことがある。この結果、現在一号から五号までになっている、かように……(不破委員「読んでくれませんか、一号から五号までを」と呼ぶ)第一号が「天皇及び皇族」、第二号「国賓に準ずる賓客」、第三号「衆議院議長及び参議院議長」、第四号「最高裁判所長官」、第五号「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」、こういうことでございます。
  29. 不破哲三

    不破委員 首相はこの条項を素直に読んでくれと言いますけれども、議事録を含めて素直に読んでみると、この百条の五が制定されたときに、政府側はむやみに拡大解釈しないんだと言い、それから在外邦人の救出なんかは法改正が必要なんだと言い、そういう考え方で政令は既に定めてあるわけですよね。政令が決まってなくて、任意に放置されていて、海部さんがたまたま見つけて、それで新しくつくればいいというものじゃなくて、既に政令は定めてあるわけですね、これは。いわばその点では解決済みの問題なんですよ。しかも、そのときの、この法律を定めたときの国会の、それを前提にして国会が承認した政府解釈によれば、邦人救出のようなものは、これには入っていない、そうは読めない、それをやるときには新たな自衛隊法の改正が必要だ、そういうことまで政府が約束をしているわけですから、それが国会との間に、立法府である国会と行政府である政府との間に成り立っている合意なんですね。その合意が踏みにじられるとしたら、国会の大問題になるんですよ。だから、単に過去の政府答弁との整合性云々という問題じゃないのです。そういう合意のもとに承認した法律を後から政府が勝手に解釈をして、政府の独断的な政令を出して、何でもそれにつけられるということになったならば、これは法治国家の根本が問われるし、国会の根本が問われる、こういう問題だと思いますが、総理、いかがですか。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日来御議論のたびに私は自衛隊法の第百条の五というのを私なりに素直に読んで、「内閣総理大臣その他政令で定める者」、その「輸送を行うことができる。」こう書いてあるわけです。それの解釈について、一体制限列挙なのか例示列挙なのか、それは例示列挙だからという御意見が随分ございました。それなれば、この法律をつくるときに、どうして「その他政令で定める者」という書き方がなされておるのか。事態は刻々変われば、それについて政府が責任において政令で定めなきゃならぬ状態も起こるのではないか。それも認めない、許さないとおっしゃるならば、この百条の五のときに、「その他」この範囲とこの類型を超えないものを定めることができるとか、これは制限列挙の規定の法律にされるべきではなかったのではないか。私は、法律の解釈というのは、あくまでそこに出ておることを素直に皆が読んで、そこに書いてあることを行う。だから、「政令で定める者」というものは、書いてなければ、制限列挙であれば、私はそれはそうだと申し上げます。けれども、制限列挙でないわけですから、そういった状況を踏まえて、政府の責任で政令をきちっとつくらせていただくことは、この法に基づいて、法で、「政令で定める」となっているのだから定めた、こう素直に受けとめて御報告を申し上げ続けておるということです。
  31. 不破哲三

    不破委員 素直に読んだ場合には、海部首相記者会見で言ったという法改正が筋だという感想の方が素直なんですよ。  それで、この法律が発効したときに、同時にさっき言った自衛隊法の施行令はでき上がっているのです。つまり、自衛隊法が改定されたのが、公布されたのが八六年十二月十九日ですが、今言った、さっき法制局長官が読み上げた「天皇及び皇族」を除いた部分、この政令が発効したのも同じ十二月十九日なのです。だから、別にこの法改定をやったときに政令で後に残したわけじゃなくて、法律をつくるというかでき上がって発効するときには、もう政令も同時に発効するということがやられていたわけですよ。だから制限列挙なのですよ、これは。だからあなた自衛隊法施行令を見てごらんなさいよ。自衛隊法施行令にはそのことをちゃんと、この法律によって与えられた権限で、政令でここを決めますというのを制限列挙で書いてあるのです。現状では一号から五号までですが.それに対して、そのレベルといわばカテゴリーの全く違うものをそれに一挙につけ加えるというのは、完全な政府の越権行為ですよ。  それで、法解釈について言えば、大体委任命令というのは非常に限られたものであるということは、もう憲法でも、執行命令と委任命令とあって、執行命令の方がまだ多少は権限があるけれども、委任命令というのは非常に、いわば昔の表現で言えば、憲法を逆読みしなければ出てこないような、いわば権限の弱いものだ。その弱いもので国会の合意を覆すようなことをしてはならぬというのは昔からの鉄則なんですね。その点どうですか、法制局長官。
  32. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  今委員、何点かにわたって御指摘になりました。まず第一点でございますが、この法律の百条の五が改正されまして追加されました際、確かにその際に同時に施行令の、先ほど読み上げました部分のうちの二号から五号までが確かに制定されたわけでございます。ただし、その後、先ほどもちょっと触れましたけれども、一号を追加する、「天皇及び皇族」でございます。その後の事態で必要性が出てきたということで一号は追加になったわけでございます。したがいまして、百条の五が制定された場合に、現在の姿が全部出ているわけではございませんで、その後の必要性に応じて実は一号、「天皇及び皇族」は追加になっている、こういうことで、その百条の五が制定されました時点、それがそのまま現在まで及んでいるということではないということは、まず第一点として申し上げたいと思います。  それから、第二点の委任の範囲でございますが、これは先ほど総理からもお話ございましたけれども、私の方からあえてつけ加えさせていただければ、いわゆる政令におきまして代表列挙された国賓、内閣総理大臣、こういうものとかけ離れたものを規定すること、これはもちろん問題でございましょう。しかし私どもは、先日、昨日、一昨日でございますかにこの場でも申し上げましたけれども、かけ離れているかどうかという判断基準、それはいわゆる高位高官、いわゆるVIPと申しますか、そういう社会的な地位にのみとらわれるのではなくて、いわばその者の置かれた状況、特に国の、国としての輸送の必要性、こういった事情を総合して判断すべきものである。そういう点から申し上げますと、今回の湾岸危機に伴って生じたこういう避難民につきましては、いわゆる輸送の対象として定めることが今の、かけ離れているものではない、輸送するのが相当なものである、航空機によって輸送するのが相当なものである、こういう範囲内に当然入るものだ、かように考えております。  それから、第三点の委任の問題でございますが、委任政令の問題につきましては、これも昨日でございましたがお答え申し上げたところでございますが、政令の委任された範囲につきましては、いわば従来お答えしておりますのは、手続的、細目的事項とかあるいは技術的事項というのにつけ加えまして、臨時応急に、臨時応変にと申し上げましたですかね、対処すべき事項、こういうのが委任政令の範囲として許されているんだ、かようなことはこれまでも繰り返し御答弁申し上げているところでございます。
  33. 不破哲三

    不破委員 それが政府の解釈であるなら、なぜ百条の五を国会に提案したときに、そういうことを説明しなかったのですか。イラン・イラク戦争での邦人の救出ということが問題になったときに、そういうものはカテゴリーが違うんだ、入らないんだ、そこまで読めませんということを政府が責任ある見解を示して国会通したわけでしょう。それでむやみに枠を拡大しません、国に輸送を頼まれたものは何でも引き受けますという条項ではないんだということを国会に説明して、百条の五というのは成立したんですよ。今あなたが言われるようなことは腹の中で考えていて、それで百条の五を通して、そのときの国会で成立させるときにはそれを隠していたのだとしたら、私はだまし討ちと言ったんですけれども、だまし討ちではありませんか。そうでなくて、そのときはそう思っていなかった、今無理になってそう解釈を変えたのだというのだったら、これもやはり大変な越権ではありませんか。  それからもう一つ、臨機応変ということが言われましたが、委任命令のことで臨機応変という言葉が問題になったことは確かにあります。それは何かというと、私の記憶では、憲法が制定された一九四六年の憲法制定議会ですね。あのときにこの委任命令の問題というのは大変な国会論争になって、そのときに随分議論されていますよ。法制局長官ですから、そのときの金森国務大臣の臨機応変と、あなたが言われた言葉についての御答弁、御記憶でしょうが、何と言われました。
  34. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまその答弁、実は手元に用意してございませんので、恐縮でございますが、正確にはお答えするわけにはまいりません。
  35. 不破哲三

    不破委員 こういう重大なことをやって、委任命令には臨機応変の措置があるのが従来の政府解釈だということを答弁しておきながら、この憲法を決めたときの国会論議さえ振り返っていないというのは、私は正直に言って失格だと思いますね。  それで何が問題になったかというと、委任命令で何でも委任できることになったら、官僚独裁の復活じゃないかということがあの国会で問題になったのです。そのときに、質問者が臨機応変の措置をどうするのかというときに、金森大臣は答えて「我々過去何十年ノ日本ノ此ノ立憲政治ノ経験ニ徴シマシテ、間髪ヲ待テナイト云フ程ノ急務ハナイノデアリマシテ、サウ云フ場合ニハ何等カ臨機応変ノ措置ヲ執ルコトガ出来マス、」何かというと、議会を召集して対策が立てられる、衆議院が解散されているときには、だから憲法で参議院の緊急の会議の召集を決めてある、そう言っているんですよ。委任命令で何でもやっちゃいかぬということをいうために言っているわけですよ。どうしてもやむを得ない場合というのは、とっさの場合に、災害で交通なんかが断絶して議会も召集できないというときに、そういう非常の場合に処するためにわずかばかり、主として警察法規などが主眼になると思うけれども、考えなければいかぬ場合があるかもしれない、こういう極めて限界されたものが委任命令だということが憲法制定議会で言われているわけですね。これは衆議院の四六年七月二日の議事録ですが、貴族院の四六年八月二十九日の議事録では、やはり金森大臣が、我々の考えるところは委任命令が乱用せられてはならない。議会が最高の立法府であるということの本質を壊すような委任命令は絶対にこれを認めるべきではない。そこまで言い切っているのですよ。こういう議論を経て生まれたのが今の委任命令の問題なんですね。  私は繰り返して言いますが、この自衛隊法の百条の五で、これを国会で成立させたときに、この百条の五の解釈はこれ以上は拡大しないんだということを政府は明示した。それがこの国会で成立した枠内でした。それ以後の政令は、改定がありましたけれども、やはりカテゴリーからいえば、その政府説明の枠内だったと私は思います。  しかし、今度のは違うのですよ。去年、国連平和協力法案で、法律をあえて制定してやろうとしたあの中にもありますよ。被害を受けた住民の救済のための活動、そのために自衛隊機を出すということはあの中にあったのです。それが国会では通らなかった。それを今度は五年前の国会での公約を投げ捨てて、単なる公約じゃないですよ、国会と、立法府と行政府の間のこれは確認事項ですよ。それを投げ捨てて、しかも委任命令でやる。この委任命令というのは、この憲法制定の経過からも、立法府である国会の権限を侵してはいかぬと厳然と定められている。臨機応変の措置なんということは、これはもう言いわけにならぬということが厳然と言われている。私は、この政令の撤回を政府に求めたいと思いますが、同時に、これは国会自身の問題ですから、国会の権威が政府によって覆された問題ですから、これについて国会が無効の措置をとることができるかどうか、そういう問題を理事会で検討いただきたいということを渡部委員長にお願いいたします。
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 渡部委員長に御検討を願うという質問者の御意思でございます。委員長が院の意思というものをお決めをいただけるとすれば、立法府はそれに従わなければならぬと思いますが、しかし、私からも言わしていただく――そうでしょう。私は、行政府の方は……(不破委員「あなたには撤回を求めた」と呼ぶ)私は、何回もお答えしておりますように、この問題は人道的な問題であり、現に起こりつつある問題であり、国際機関から要請を受けて多くの国が困難を乗り越えて協力をしようとしておる事項でございますから、法律に全然何も書いてなければこれは別でありますが、「政令で定める者」という規定があります以上、その政令を定める責任は内閣にあるということでこのような措置をとらしていただいたということに対して、これを、具体的な要請を受けたときにはそれをしようという準備でありますので、撤回をせよと言われても、直ちに撤回する気はございません。  したがいまして、行政府がこのような態度をとったということに対して、立法府の御意思をお決めになるのは立法府でございますけれども、憲法の、きのうも四十一条に照らして、国の唯一の立法機関だと仰せられました。最高決議機関であるということは私もよく承知いたしております。  しかし、違憲立法審査権は、御承知のとおり八十一条という規定もございます。政府政府の責任で、それらのことも念頭に置きながら、これでできるのだと確信を持ってとった措置だということでございます。
  37. 渡部恒三

    渡部委員長 今、不破委員の御質問は、きのうも嶋崎委員からの御質問もあり、理事会で目下協議中で、勉強しております。
  38. 不破哲三

    不破委員 その勉強の中に、今言いました国会の権限の侵犯という問題を含めていただきたいということを重ねて申します。  それで首相は、人道的、人道的と言われますけれども、この経過を見てみますと、人道的処置を本当に考えるのだったら、実際に難民をヨルダンから出すのにどういう処置が一番いいかというこ とを、現地事情も調べて判断するのがいわば人道的立場にある政府の当然のことだと思うのですね。ところが、事情も何もわからない、それからまたC130という飛行機がどういう能力が現にあるかもわからない。しかし、戦地に日の丸を飛ばしたい、その一念でやっているとしか見えないのが政府のこの間の行動だった。私は、さっき言いました、現地から、本当にIOMから、自衛隊機を出してくれと言われない限り出さないということを、その点は一歩前進ですけれども、確認して次へ進みたいと思うのです。  次は、やはりこの問題が起きてきた一番の根源は、何といっても湾岸危機、湾岸戦争にあるわけですね。それで、もうこの問題では、私、党首会談でも、あるいは政府申し入れでも何回も政府に申し入れた、話したのですけれども、こう長期化してきた、しかも今後の見通しは非常に困難だ、拡大の危険もある、ガス兵器が使われるとか、それからそれに対応して核兵器が使われるとか、そういう問題も新聞の話題をにぎわすようになってきている。非戦闘員である市民が双方とも犠牲者が増大している。さらに環境破壊の問題、こういう問題を目の前にして、一体、あの国連の期限切れのときに、あんなに急いで戦争を始める必要があったんだろうかという疑問が、イラクの侵略を非難している人々の間からも非常に広く起こっているというのは、これはもう疑いない現実なんですね。  それで、実際に考えてみれば、イラクがクウェートを侵略してから国連が経済制裁を決めた。これを平和的な解決をしてほしいというのは世界の圧倒的な世論でした。それで、今南アフリカではアパルトヘイトの廃止に向かっていろんな措置がとられていますけれども、これは時間はかかったが、経済制裁という平和解決で、あれだけ頑迷な政権を譲歩させて一歩前進をかち取った大きな先例ですよ。それで、仮に時間がかかっても、平和解決でイラクのフセイン政権のクウェート侵略、併合という問題を解決することができたらば、それは南アフリカの問題以上に大きな、これからの世界の平和の構築にとって非常に重要な、しかも新しい局面を開くものになったことは間違いないと思うのです。ところが、もしこれが、力による圧服になった、力による圧服によってこれが仮に成功したとしても、その後に来るものは、これは力による平和にならざるを得ない、また新しい形で軍事力と軍事同盟中心の冷戦体制が復活して、依然としてそういう世界を我々は迎えざるを得ない、これはもういや応なしの現実だと思うのですね。日本中東に石油依存しているんだからという議論がありますけれども、そうであればあるほど、日本が依存している石油地帯が戦火にさらされないことを、最も力を尽くして防ぐというのが我々の責務だったはずです。ところが、実際にそうならなかった。私は、この問題は単に過去の問題として過ぎ去って見るのじゃなしに、やはり今日の湾岸戦争に対する我々の態度という問題にもかかわり合いがありますし、それから湾岸戦争の解決の展望にもかかわり合いがありますし、なぜあの一月十五日にこういう方向に進んだかという経緯はもう一遍改めてここで吟味し直してみる必要があると思います。この点は緊急本会議での質問でも質問したことですが、的確な御答弁が得られませんでしたので、もう一度、再度伺います。  やはりあの一月十五日のときに、この歴史的な瞬間に、フランスの和平提案が葬り去られた。これはやはり今日の事態を生む上で決定的だったと思うのですね。クウェートからイラクをまず撤退させる、その上でパレスチナ問題を含む中東和平国際会議を開く、これがフランス提案の骨子でした。これがアメリカの反対で葬り去られた。その問題を私が質問したときに、あなたは、フランス提案の趣旨は我々も同感なんだというように答えられました。もしそうであるならば、あのときに国連の安保理事会でアメリカがこれを反対して、そのときにはEC諸国も圧倒的に賛成、それからアラブを含む非同盟諸国も賛成、安保理事会の構成国十五カ国の三分の二以上が賛成をしていて、イラクの国連大使でさえ歓迎ということを言わざるを得なかった状況で、明らかに一つの平和的解決の可能性があったわけです。そして、それが実現して、安保理事会の総意を代表して交渉が再開されていたら、たとえ一月十五日の後数日かかったにしても、新しい局面が生まれ得たかもしれません。仮にイラクがこれを拒否したとしても、今のように開き直った形で、アラブの大義は我にあり、こういうような開き直りはできない羽目に追い込まれていたはずです。それであるからこそあの提案が大事だったわけですが、アメリカがあの提案を葬り去った、反対してつぶしてしまった、このことについて海部首相が今どう考えておられるのか、伺いたいと思います。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今いろいろお話の初めに、なぜあんなに急いでと武力行使に至ったことの非難でありますけれども、私は、なぜあんなに早く無謀なことをしたかという言葉は、イラクのフセイン大統領にこそ示さなければならぬ言葉であると、基本的にそう考えております。というのは、八月二日の前の、七月のたしか三十一日と思いますけれども、イラクのフセイン大統領は、サウジアラビアのファハド国王やエジプトのムバラク大統領とサウジアラビアで会ったときに、武力でもってクウェートを攻めることはしないと約束をし、公言をした、それで話し合いで解決できると思っておったのだということを私はいろいろなところから聞きました。本人からも首脳会談の席上で、残念ながらその事実があったということを私は聞きました。なぜそのような無謀な武力行使に入ったのかという点は、フセイン・イラク大統領にこそ向けられるべき問題提起である、私はそう考えております。  その後、八月二日にあのような武力侵略が行われたときに、私は、新しい世界の秩序というものは、平和を守っていかなきゃならぬというときに武力侵攻はいけないというので、累次にわたる国連決議が行われたときに、その一日も早い成功を心から期待をしておりました。五カ月以上にわたって累次にわたる議決が行われました。にもかかわらず、イラク側に何の反省も何の態度の変化もなかったことは御承知のとおりであります。  また、ぎりぎりの十一月二十九日に六百七十八号の決議がなされた。これは、ある意味では武力行動容認の決議ということになりました。そのときでも、すぐ翌日、アメリカの大統領の方からアメリカイラクの直接対話の呼びかけがあって、何とか平和的に解決したい、それは公正な平和をつくるための解決の努力だ、この提案であったことは委員も御承知のとおりであります。  九月の国連総会でブッシュ大統領は、イラクが反省をして、イラクから行動が起これば、すなわちクウェートから撤兵するという行動ですが、それが局面転回になって、イスラエルを含むアラブとの問題についてもさまざまな機会が生まれてくるだろうということを率直に申し上げておった。ミッテラン大統領も同じような線に立って和平提案を出されたことは承知のとおりであります。米ソの首脳会談もその後ありました。  私は、そういう一連の流れを見ながら、五カ月半にわたるこの国連の努力の中で、しかも事務総長自身はぎりぎりのときにイラク訪問に立ちました。私は直ちに日本の国連大使を通じて私のメッセージを文章にして伝えて、全面的に支持するから平和解決のために最後のぎりぎりの努力をしてほしいということを強く求めました。国連でいろいろなやりとりがございました。しかし、原則に基づいた誠実な平和努力をしなければならぬという点では全員一致しておったのです。そうしてそれは、姿にあらわすことになれば、クウェートからの撤退ということがあくまで避けて通れない第一条件であることは、これは世界じゅうの認めるところであります。そのことをめぐっていろいろ夜を徹して最後のぎりぎりの意見がありました。安保理事会でいろんな国のいろんな意見をまとめながら徹夜に近い努力をして、デクエヤル事務総長が最後に発表した声明というものが日本時間の十六日の朝出ております。これを読んでも、中東和平に対する各国首脳の了解もあり、これを行うと書いてあるのですから、すべての国の意向が取りまとめられて、将来の中東和平のことまで視野に入れながら、国連事務総長の平和解決のための提案があったということ、それを日本も積極的に努力するからぜひ成功してほしいということを言ったということ、これは紛れもない事実でございますし、フランスの提案のことにお触れになりましたが、ミッテラン大統領は翌日のフランス国民議会で、昨日までぎりぎりの努力をしたけれども、イラクからは何の前向きの反応も示されなかったということを議会で宣言しておるわけでありますから、それぞれの努力を無にされたことは総括的に極めて遺憾なことであったと私は考えております。
  40. 不破哲三

    不破委員 私が聞いているのは、その中で、長い説明だったけれども聞いていることには答えないんですね。フランス提案に対してアメリカが拒否したことをどう考えているかという質問にはどうお答えですか。
  41. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは国連事務総長の考え方の中に全部入れる中で、ああだこうだという意見のあったことは、それはございましょう。けれども、採決をして、フランス案を採決して拒否して、アメリカ案を採決してどうして、そしてこうしてという、そういう状況ではなかったんではないでしょうか。その辺の詳しいことは私は、国連局長から必要ならば答弁させますけれども、まとまって事務総長の声明の中にアメリカの考えもフランスの考えも皆入っておるんだ、日本の支持するという考えもその中に入っておるんだ、このように御理解をいただいて違わないと思います。
  42. 不破哲三

    不破委員 あの国連の安保理事会でどういうやりとりが行われたかということを、もし首相も外相も知らないまま今の行動をとっているんだとしたら、僕は本当に怖いことだと思うんですね。これは世界周知ですよ。中山さんは特にあのときにアメリカにいたんでしょう。途中まではいたんでしょう。(中山国務大臣「採決のときはいない」と呼ぶ)参加はしてないけれども、しかし日本の外務大臣が行って、アメリカにいて、ワシントンにおられてニューヨークにはおられなかったかもしれないけれども、しかし――逆ですか、ニューヨークにいてワシントン、ごちゃごちゃしたかもしれないけれども、しかし、あそこでもう本当に戦争か平和かの議論が行われているときに、何が行われているかの情報を収集しない外務大臣がいるとしたら、これはちょっと不思議だと思うんですね。本当にフランス提案がアメリカによって拒否されたということを御存じないんですか。国連局長じゃないです。日本総理、外相が知っているか知らないかです。事実を……。
  43. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 日本は安保理のメンバーではございませんが、私どもの承知しておりますところでは、いわゆるフランス提案につきましては、米国だけではございませんで英国からも異なる立場の表明がございまして、それで安保理の中での協議の結果取りまとめられたものが事務総長のステートメントとなったということでございます。
  44. 不破哲三

    不破委員 これはあの安保理の最中に、私どもはUPIと特約していますから刻々来ますけれども、刻々情報は来るわけですよね。  ちょっと紹介しますと、例えば十五日午前七時二十八分国連発のUPI通信では、「フランス提案は、米国の怒りの反応を引き出した。米国の言い分は、イラク軍撤退と中東国際会議とのいかなるリンケージもあってはならないとの、米国のかねての主張に反するものだというものであった。」それから、UPI十五日午後零時五十四分発の国連からの通信、フランスは「フランスの和平計画にたいするアメリカの反対をあらがいがたいものと認め、デュマ外相のバグダッドへの土壇場の訪問はおこなわないつもりであることを示唆した。」それから、同じ十五日午後六時四十四分発の国連からの通信、「米国は、フランスのイニシアチブにたいし、それが湾岸危機とパレスチナ問題をリンクさせているとの理由で、強く反対した。フランスの計画は、安保理の非同盟諸国代表によって支持された。理事会の一部代表は、フランスの計画を問題にすることをのぞんだが、フランス政府は米英の強い反対のために実現のチャンスはないとして、」引っ込んだ。それからまた、同じころパリで発表されたフランス外務省の報道官のベルナール氏の発表によっても、フランスは最後の瞬間までやるつもりだったが、フランスの提案に対してアメリカの高官が批判を表明したので、これをあきらめた。アメリカの反対によってフランスの提案が葬り去られたということはもう天下周知の事実なんですよ。それを一体、それで、あなたは国連の事務総長の中にも入っていると言うけれども、もうそのときにはアメリカの強い反対で、これは安保理事会の総意になっていないということが鮮明になっている中での事務総長の声明ですから、これに力がないのは明瞭なんですね。この大事なチャンスをアメリカが、反対によってつぶした。それをどう考えているのかということを私は伺っているんです。
  45. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来御説明しておりますように、私どもが、国連が決めておるのは正義と秩序を基調とした公正な世界の平和を求めておるわけであって、そして、現在のこの力による武力侵略を認めてはいけないというのが大きな大前提ですから、まず第一にイラクはクウェートから撤兵をすること。それで局面転回を図るとともに、反省の意を示すとともに、それを国際社会が認めて中東恒久和平のいろいろな機会を提供していく。これは物事の当然の順序であるし、世界に求められる平和の秩序というものは、力でもって現状を変えてはならない、それを認めてはならぬというのが国際社会の大義でありますから、私は、今回の場合には、この国連の決議の精神を踏まえての解決が大切であり、フランスもそのことは明らかにしており、アメリカもその他の国々もそれを明らかにしたから国連の決議に参加しておるわけであります。そこの部分だけじゃありません。世界全体の平和と秩序を守るための根本的な理念、原則をどうするかということで議論が行われ、国連事務総長がまとめたものでありますから、事務総長のあの徹夜の努力のまとめの中にみんなの考えが入って発出されておるものであると、私はそのように理解しております。
  46. 不破哲三

    不破委員 イラクの侵略が元凶だ、これはもう議論の余地ないんですよ。それから、イラクのクウェートからの撤退が第一条件だ、これも議論の余地ないんですよ。だから、フランス提案は第一項目で、安保理事理事国が、イラクが計画された日程に従ってクウェートから撤退する、その表明を促して、それが解決してから中東和平の問題へ進むというように言っておるわけですね。問題はないんですよ、これは。  それに対してアメリカが反対している理由といるのは、私は、明らかにされない方の理由は、もう戦争計画立っているんだからこれは邪魔されたくないという理由、これは公然とは言えません。もう一つの理由は、中東和平国際会議が入っているから結びついているんだ。これが反対の理由なんだ、公然と言われた。ところが、イラクが撤退した後で、問題が解決した後で中東和平国際会議を開こうというのはむしろ国連の総意なんですね。  これは外務大臣に伺いますが、国連が武力容認決議をした十一月の二十九日からちょうど一週間後、十二月六日に国連総会で中東についての国際和平会議の呼びかけについての決議が行われましたが、それについて日本はどういう態度とりました。――ちょっと外務大臣に聞いているんですが。  国連が武力容認の決議をした十一月二十九日のちょうど一週間後に国連で中東和平国際会議についての呼びかけの決議が行われました、国連総会で。それに日本はどういう態度をとりましたか。
  47. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいまのパレスチナ問題につきましての決議の問題でございますけれども、安保理におきましては決議六八一というのが採択されまして、それでその際に議長声明がそれに付随して出ております。その中に中東和平の国際会議について触れられております。
  48. 不破哲三

    不破委員 安保理じゃなくて、十二月六日の国連総会の決議。――わかりませんか。  時間がありませんから、わからないようでしたら後で調べてもらうことにして、十二月六日に国連総会で中東和平国際会議の呼びかけの提案が行われているのですね。これは日本も賛成して、賛成百四十四カ国です。その中には、和平の原則として、エルサレムを含め、一九六七年以来占領されているパレスチナ領土とその他のアラブ占領地からのイスラエルの撤退ということが五原則の冒頭にうたわれています。それで、そういう問題を含めて、安保理事会の常任理事国を含め、関係諸国、PLO、そういうものが入った中東和平国際会議を開こうという提案です。日本は、それに対して賛成しているのですね。百四十四の一です。それで、圧倒的に採択されました。そのときに、この圧倒的に採択された国連の総意に反対している国が二つあるのですよ。それがアメリカとイスラエルなんです。  つまり、この決議そのものは、イラクに対する武力行使容認決議が行われた一週間後ですよ。そういう事態のもとでも、国連の総意としては、パレスチナそれからイスラエルの占領領土からのイスラエル軍の撤退を含めた、そういう問題を含めての国際会議の呼びかけを国連は行っているのです。だからフランス提案で、イラクがクウェートから撤退した後に、国連で決めたこの中東和平国際会議を開こうじゃないかと言っても、これは何にも不当なことはないし、道理なんですね。まさに国連決議そのものなんですから。  ところがアメリカは、それはリンケージだと言って断った。リンケージというのは、イラクがパレスチナ問題を解決する前に撤退しちゃいかぬ、撤退しない口実として言っているからリンケージなんですよ。関連づけて撤退しない。そうじゃなしに、フランス提案というのは、撤退をちゃんとさせて、それを国連が保証して確認して、それから国連決議どおりの中東和平国際会議を開こうじゃないかという提案を行って、それをアメリカがつぶしたとしたら、これは百四十四対二で、もうイスラエルに不利になることは一切御免だというアメリカの立場を盾にとってつぶしたとしか考えられないことなんです。つまり、今度の開戦事情というのはそれだけ複雑なんですよ。  つまり、アメリカ中東問題に対する国連では圧倒的少数のイスラエル固執論、それも根底にあって、それと矛盾するものであればどんな和平解決案もつぶしてしまう、そういう態度で開戦に至った。そういう経過までちゃんと踏まえなければ、日本中東和平国際会議のこの提案に賛成した国なんですから、どうも担当局長まで賛成したことは記憶がないというのは、私はどれだけ熱意を持って賛成されたかよくわからないんですけれども、それだけの問題があって無理やりの開戦が急がれた、せっかくの和平の機会がつぶされた。私は、そのことをきちんと踏まえて今度の湾岸戦争に対処しないと、ただもう開戦になったんだ、この裏には国連決議があるんだ、開戦になった以上は多国籍軍に応援すればそれで貢献が果たせるんだというような態度に終始したのでは、今日の国際外交の中で日本にふさわしい独自の役割は何もできない、そのことを申し上げたいんです。  ちょっと質問になりませんでしたが、御見解なり感想なりがあれば、伺いたいと思います。
  49. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本の立場というのは、中東の恒久和平というものを正義と秩序に裏づけられた恒久なものにしたいという基本的な考えがあることは、何回も申し上げたとおりであります。また、私は、デクエヤル事務総長のぎりぎりまでの努力を支援をして、平和的解決を行うようにということも、何度もメッセージも親書も出しております。そして、同時にイラクの方も、一切の妥協はしない、クウェートは手放すものではない、何回も何回も言い続けて、いまだ何の反省的な態度も示されておりません。それのみならず、原油を使うことだって正当化されるんだというような、あのような発言を聞くと、今、国際社会の総意に基づいてそういう恒久和平の条件ができるような動きが出ておらぬ。そのフランスの国民議会でもぎりぎりの努力をしたが、イラクは何の反省的な態度もなかったということが言われておる。けれども、今からでも遅くありませんから、原則に従った局面打開の決断をイラクの大統領がするように強く求めるとともに、それが行われてくれば、その次のステージにおいては、日本は恒久和平のためにいろいろな努力を、きょうまで同様の態度、基本原則で続けていく、積極的に行っていく用意があるということを申し上げさしていただいておきます。
  50. 不破哲三

    不破委員 今の御答弁は、フランス提案を葬り去ったアメリカの態度について日本が何らかの独自の考えを持っているかどうかについての説明にはなっていませんでした。やはり、そういう国際政治について独自の態度を持つぐらいの外交でないと、この九〇年代の波乱と激動の中で、本当に国民を代表しての外交はできないということを私は申し上げて、次に進みたいと思うのです。  それで、そういう政府の態度から多国籍軍への追加支出も出てきました。これは、実はさっき中山外相の名前を申しましたが、国連安保理事会がこの議論をやる前に、たしかあなたはブッシュ大統領に会って、戦争が始まったら全面的に支持しますよという約束をされている。だから、もう日本の態度は、国連の安保理事会でどういう議論があろうがこれは決まっているということだったわけですね。それが追加支援九十億ドルになって実っている。  私は、それで伺いたいんですが、これが、首相がよく応分だ応分だと言われるんですけれども、何が応分なんでしょう、この九十億ドルが。
  51. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今、私がこの一月十四日に、アメリカ大統領を初めアメリカ政府首脳と話し合ったことについて委員からお話がございましたが、詳細にそのときの話を申し上げておかなければならないと思います。  それは、日本政府としては、アメリカ政府に対して、この国連決議が期限切れになる一月十五日まで最大限の和平の努力をしてもらいたいというのが日本政府の大きな希望である、これを伝えたわけであります。そして、イラクがどうしてもこの国連決議を尊重しないでクウェートから撤退しないといったような事態が継続された場合に、アメリカを中心とする多国籍軍が国連決議の安保理の六百七十八によって行動する場合には、日本政府としては支持をする、このように申したということを明確に申し上げておきます。
  52. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本の今置かれている国際的な立場、あるいは私たち自身が自覚している、あるいは好むと好まざるとにかかわらず、世界経済に対する影響力が非常に大きくなっておる。同時にまた、最近は東西の対立が終わって世界が力を合わせて平和と繁栄を求めていこうと願い、日本にはそれなりの協力や責任も求められておる。これはもう世界各国の最近の新聞論調とか、また私がいろいろ旅行しますときに、欧州でも東欧でも南西アジアでも、あるいはアジア諸国との首脳会談でもいろいろ言われることは、もっと政治的、もっと経済的に日本は世界に向かって発言してほしい、責任を分担してほしい、協力をしてほしい、いろいろな要望があることも事実であります。  そういうことから考えますと、今日の置かれておる立場というのは、サミット参加国の一員でもあれば、また世界のたたき出しておる総生産の粗っぽく言えば二十兆ドルという中で、アメリカが五兆ドル、ECがくくって五兆ドル、日本は一国で三兆ドル・プラスアルファ、こういうようなこと。貿易収支の帳じりを見ても、日本は八九年七百六十九億ドルの黒字が残っておる。また、対外的な日本の資産保有額は世界一で二千九百三十二億ドルになってきておる。また、中東諸国から石油を輸入しておる分も日本が全体の七〇%以上、非常に多くのシェアがある。日本の国民生活や世界の経済生活が安定的に推移していくためには、石油の安定的な供給ということが果たしてきた役割はきょうまで大きかったということは、率直にそのとおりであります。もしあれが十ドル一バレル上がったとすれば百七十五億ドルというものが日本経済に影響があることは、最近国会でそれでも大丈夫か、国民生活は大丈夫かといういろいろな御意見もある。  私は、そういうようなこと等を全部総合的に判断をして、今私どもの置かれておる立場、同時に世界の二十八と言われる国が、世界の繁栄と世界の大義のために、あの地域に、国の抱える財政事情を乗り越えて、また膨大な戦費が要ることも承知の上で犠牲も出しながら、多くの国が平和と安定のために平和回復の努力を行っておる。日本はそれはできませんということを理解し、納得してもらうためにも、日本としてはできるだけのことを、応分の努力はしなければならない、私は、そういったことを総合的に勘案し、判断し、そして協力をしていかなければならぬと決めたわけでありまして、いろいろなことが私の念頭にありました。そして、自主的に決めた応分の努力の範囲でございます。
  53. 不破哲三

    不破委員 何遍伺っても、いろいろなことがまとまるとなぜ九十という数字になるのか全然わかりませんが、しかし日本の国民の側からいいますと、この九十億ドルというのは本当に莫大な数字ですよ。実際、例えば最近十年間考えてみても、財政再建ということで国民の福祉の面とか教育の面で随分たくさんの負担と犠牲が強要されました。  例えば、お年寄りの問題が問題になりますが、老人福祉が無料から有料になりました。それから福祉関係の諸施設ですね、これの運営費も、かつては国が八割持っていたのが五割に削減されました。生活保護の国の負担も削減されました。それからまた、国民健康保険料の国庫負担も、かつて四五%負担していたものが今では三八%に削減されました。こういう削減のすべてが国民の生活の上にいろんな悲劇になって、きしみになって生まれているわけですね。  じゃ、それと今度の九十億ドルを比べてみますと、例えば老人医療を無料化に復活させたら、私の試算ですが二千億円、十五億ドルですよ。それから、福祉関係の国庫負担を八割に復元したら五千億円、約三十八億ドルですよ。それから、国民健康保険の国庫負担を四五%に復元したら二千八百億円、約十七億ドルです。この三つをもとに戻しただけで七十億ドルですよね。つまり、あれだけ財政再建ということで国民に負担と犠牲をかけてきた、この大項目の三つを合わせたら七十億ドル。残り二十億ドルで、まあこう言ってはあれだけれども、今政府が十カ年戦略と称して高齢化社会のために介護型のホームヘルパーを現在の三万人から十万人にふやそうとしている。この十万人分の人件費を、現状の二分の一と違って全部国が持ったとして二十億ドルですよね。だから九十億ドルというお金は、国内で使えばそれだけのことがでぎるお金なんです。それがなぜ今度の湾岸危機の中で、湾岸戦争の中で、あなたがいろいろ総合すると九十億ドルになってしまうとなるのか、これがわからないのです。  ちょっと質問しますが、去年はあなた方は二十億ドルが日本の国力からいって応分だと考えられたようですね。ことしは九十億ドルが応分だと考えられている。GNPも変わらない。世界の貿易の中での日本の位置も変わらない。石油依存も変わらない。去年は二十億ドルが応分だと考えたのに、ことしは九十億ドルが応分だと考えたのは何が根拠なんですか。
  54. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今御議論を聞いておりますと、大前提が平和で豊かで幸せで、日本の国のことだけを考えていればそういう御議論もあるいは成り立つ、組み立てられるかもしれませんが、このような状況になれたその背景は、日本一国だけでやってきたんじゃなくて、世界との相互依存関係の中で、平和な状況の中で、安定した中で繁栄してきたのではなかったでしょうか。  私は、そういうことを考えると、この大前提を守らなければ、そのような自分の国さえよければいい、また世界でそういうようなことが起こっても日本は知りませんよといって、小ぢんまりとつじつまを合わせて国境を閉鎖しておればこの平和やその価値が守られるものであるとするなれば、それはまことに夢物語です。将来の日本のことを考え、この国際化時代の日本のことを考えて、今の国民の生活レベルや今の予算規模なんかが何の関係もなく、ぷっとこう玉手箱から出てきたような発想で物を考えるわけには私はいきません。  政府としては、今後のことを踏まえて、この国の将来のためにどうしていくかということも考えますと、世界との間の共存が必要で、だからこそ日本の憲法の前文にも、いずれの国も自国のことのみに専念して他国を顧みないのではいけないということを宣言しておるじゃありませんか。私はそういった意味で、国際化時代、世界との相互依存の中で、世界があれほど困り、あるところでは平和を奪われ、血を流してまで頑張っておるときに、日本だけが、いや、おれの国はこちらに使う、おれの国は国内のこれだ、全部だめだというようなことを言っておるのは、世界の世論の中からどのようなつまはじきをされるのか。最近の新聞論調を見ても、それは方々から外電が入っておるとおっしゃいましたが、そういう外電もうんと取り寄せて、日本の態度をどう言われておるのか、もっと国際的に協調すべきだということが言われておるということも御理解をいただかなければならぬということを強く申し上げさせていただきます。  また、前回のことは、私もでき得る限りのものとしてやったのでありますけれども、ツーレート・ツースモールという御批判は党首会談のときにも一部の党首から受けたわけでありますし、マスコミからもそういう御批判、世論の中にもあったことは引き受けて、この日本の地位にふさわしく、少な過ぎる、遅過ぎると言われることはなおいけないという判断から、総合的に今申し上げたような日本の立場、日本の地位、日本が世界にいろいろと迷惑をかけておる経済上の問題、その他のことも踏まえてやっておるわけでございます。
  55. 不破哲三

    不破委員 平和が大事であるからこそ、私は、ああいう歴史的瞬間に、日本がたとえ国連の安保理事会の理事国でなくても、最大限の平和解決の努力をすべきだった、その点の態度を聞いたわけですよ。あなたは、もうそのときには軍事解決不可避、戦争になったらそれ以外ない、そういう態度で見ているのが正当だと言われる。それがやはり大きな間違いだと思うのです。あなたは一国平和主義と言うけれども、私はあなたの立場は世界をアメリカの窓からしか見ていないと思うのです。私が聞いているのはそういう、あなたは私の具体的質問に対して一般論で答えるからそういうことを言わざるを得ないのですが、私が聞いているのは、なぜ九十億ドルかということなんですよ。  私の承知しておるところでは、この九十億ドルを決める会議では、政府と党の三役、四役の間の会議を経ていると聞きました。その方々の方がもっと率直に物を言っていますよね。例えば、ここに自民党政調会長の加藤六月さんの日本経済新聞の一月三十日のインタビューがあります。「九十億ドルの積算根拠を自民党はどのように理解しているのですか。」と聞かれて、彼は政府・党の首脳会談に参加したでしょう。参加して決めた後で、「一日の戦費が五億ドルとして戦争が三カ月続くとすれば総額で四百五十億ドル。これは米議会予算局の推計などからみて妥当な線でしょう。その二〇%を日本が分担するというのも、」「こんなところかなと思います」率直に述べているわけですよね、二〇%負担だと言って。その間にあなたが言われるGNPとか国連の、いろいろ出ていますけれども、もう戦費の二〇%負担だということを当の政府・自民党の首脳会談に出た当事者が平気で言っている。だから、それをあえてなぜこの国会で否定されるのか、私にはわからないのです。  それで、アメリカ側から伝えられるところによると、去年のアメリカの戦費が百億ドルだった、十二月末まで。日本はそのうち二十億ドル出した。これが固定比率になって、今度も四百五十億ドルのうちの二〇%、九十億ドルになったと言われている。私は、そういうことがあるんだったら率直に国会に認めて、新聞でしゃべるけれども国会ではしゃべらない、国会が一番この点では責任のある府なんですから、そういう態度をとってもらいたいと思うのですね。しかし、今までの経過を見ていますと、これは必ず押し問答になって時間の浪費になりますから、私は次に進みますが……。
  56. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは言わしてください。  いろいろな議論があるということは、私も何回の答弁でも認めておりますし、それから、今委員長が挙げられた一日五億ドルで何とかかんとかというのがアメリカの議会予算局の試算だと、こう言われますけれども、アメリカの議会予算局の試算というのは、少ないときは二百八十億ドル、多いときは八百六十億ドルと、これは公式に出しておるわけでありますから。それから同時に、アメリカのブッシュ大統領が四日に国会で予算教書の報告をしましたけれども、あのアメリカ大統領の二月四日の予算教書演説の中を読んでみましても、これははっきりと見合う積算の基礎が出ておりません。したがって、三百億ドルというのは、あくまで仮定計算に基づいたものであるということを当のアメリカ自身が言っておるわけでありまして、これは米国会計検査院が、戦闘が開始されないとして試算を下したものであるから仮置きである、信頼できる計算はアメリカにも存在しないということはアメリカ大統領が予算教書においてはっきりと世界に言っておるわけでありますから、一人の人が言ったということがすべてで、それ以外のものは皆間違いだというのも、これはちょっと計算の基礎として議論する材料にはふさわしいものではないと私は考えておりますので、その点は訂正をしていただきたいと思います。
  57. 不破哲三

    不破委員 私は訂正する必要はないと思うのですね。この九十億ドルを決める過程で、自民党と政府の首脳会議に参加した人が、自民党の側はどう考えているかと聞かれてそう答えているのですから。訂正を求めるのだったら、加藤六月さんの方に訂正を求めてほしいと思うのですよ。  それから、伺いたいのは、この九十億ドルが一体何に使われるのかという問題です。これはやっぱりアメリカの戦費でしょう。何に使われるのか、アメリカの戦費ではないかということです。
  58. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戦費という概念はいろいろありますので、戦費という言葉の定義についてここで議論しようと思いませんけれども、これは国連決議六七八に基づいて平和回復のために活動をしておる多くの国々の平和回復活動のために日本協力をし、支出するお金であります。国連の平和活動に必要な資金を日本が支出をするという考え方に立っておりまして、戦費の支援、戦費を出すという考え方は私はとりません。
  59. 不破哲三

    不破委員 しかし、今までの政府の答弁でも、このお金の圧倒的部分がアメリカに流れること、それでそのアメリカがそのお金を戦費と称して、今あなたもまだ決まってないと言われたけれども、その一部に充てようとしていること、これは明瞭ではありませんか。
  60. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和回復活動に使ってもらう、そして終わった後に、いろいろな経済の秩序回復とかあるいはその他のことについても有効に平和の確立のために使うということは、それは考えられることである、私はこう思っております。
  61. 不破哲三

    不破委員 あれですか、平和回復活動というのは戦争の別名ですね、あなたが言う。今湾岸戦争をやっているわけですから、湾岸戦争中東の和平を回復するためだと言ってやっているわけですから、まさに平和回復活動といっても、湾岸戦争に参加している多国籍軍の軍事費用に充てるわけでしょう。そうすると、専らそれとも戦争が終わってからの復興費用に充てようというのですか。軍事費用に充てるわけでしょう。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和回復活動に充てると言っておりますし、また、あそこの武力行使というものは、国連決議に基づいて二十八と言われる国国が多国籍軍を構成して、あの地域の平和回復のために努力をしておりますから、普遍的な武力行使であります。それは平和回復を目的としておるものであります。何回も申し上げておるとおりでありまして、それに支援をしておるわけです。
  63. 不破哲三

    不破委員 どんな戦争でも、無限に戦争をやろうという戦争はないのですよ。最後には平和を回復するためにやるんですよ。  もうちょっと具体的に言いましょう。では、どんな内容で使われるものですか。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラクがクウェートから撤退をするということが、これがいつまでも続く武力行使ではなくて、国連決議の第一を守り、局面転回する問題だということは、米ソの共同声明でも、先ほどから固執なさるフランスの提案でも、あるいは私が主張する国連の事務総長の声明にしても、全部そこははっきりしておるわけでありますから、きょうでも局面打開するためにイラクがクウェートからの撤兵を決断して、目に見える実行に入れば、それはこの武力行使は終わるわけであります。けれども、そのためにはいろいろな部門、部面で各国がそれぞれの厳しい状況の中で支出をして参加をしておるわけですから、力でお役に立つことのできない日本ですからせめてお役に立とう、そして支出したものは湾岸の平和基金というものができておりますから、その湾岸平和基金に拠出をします。  ただ、平和回復活動の先頭に立って大宗を占めておるのはアメリカでありますから、その大宗は、きょうまでの経緯にも踏まえて、アメリカが大宗はそれを受け取ることは、そのとおりでしょう。そして、その平和協力基金の運営委員会で何に使うかということは明らかにされていく問題でありますが、提出国の日本としては平和回復活動に使ってもらいたい。同時に、いろいろな最近の国会の御議論や国民の皆さんの世論を通じて、使われるものは、日本から提出する分はその一部でありますから、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の経費に充当する方針で平和基金に拠出をするということを申し上げております。
  65. 不破哲三

    不破委員 運営委員会、運営委員会と言われますけれども、運営委員会というのはたった二人でできているのでしょう。それで、一人は日本の恩田大使で、一人は湾岸協力会議の事務局長、この二人でできているのですから。何か政府から聞いていると、運営委員会という大きな会議があって、そこで集団的に議論して決められるように錯覚しますけれども、要するに、日本の大使が金を出した者として代弁してやりくりしているということですね。それで、それにつけている注文が今あなたが言われたようなことなのですか。この範囲なら、要するに二人が判こを押せば支出できる。今言われた範囲なら支出に応じて構わないということですか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国権の最高機関である国会でお許しがいただけませんと、湾岸協力基金でそういう話をするわけにいきませんから、お許しがいただけたという前提で物を申し上げますけれども、湾岸諸国の代表がGCCの事務局長、そして我が方の恩田大使がそこでこのような話をするときは、日本の使途に対する予定というものも明確にしますし、我が国の意に反するような使途はしないということを日本側からきちっと伝えることにしております。
  67. 不破哲三

    不破委員 いかにもそれで総理は条件がついたように言いますけれども、例えば輸送といっても、これは戦争をしている部隊に対する武器弾薬を含む、そういう必要な兵器の輸送ですよね。兵員の輸送ですよね。医療といっても、これは野戦病院ですよ、要するに。前線の兵士や傷病者を手当てする、これも軍事活動ですよ。それから生活といっても、これはそういう戦闘部隊を維持するための食糧の補給やいろいろな生活関連施設の整備でしょう。だから、これはやはり幾ら言っても戦費以外の何物でもないのですね。  それからまた、もうこれはマスコミでも言われていることですから、あえて詳しく繰り返しませんが、一たんこれがアメリカの戦費の中へ入っちゃった以上、この金は日本の印がついているからこの部門に充てて、このお金はついていないから前線で使うとかいうわけにいかないわけで、これは紛れもない戦費の五分の一を負担しているんだという覚悟で事を見ないとだめだと思うのですね。だから、アメリカはミサイルを撃つ。五発撃てば一発は国民の税金があそこに体現されているんだ、砲弾が撃たれれば、その一発は日本国民の税金が体現されているんだ、それが実態だと思うのですよ。  しかも、私は今度の戦費の支出で問題なことがあるのは、日本は多国籍軍にあなたが言うように参画しているわけじゃない。だから、この多国籍軍、アメリカを中心の多国籍軍がどんな軍事行動をとろうが、そのオプション、選択に対して日本は全く発言権を持っていないのですね、これは。発言権を持っていないまま、そのアメリカを中心にした多国籍軍の軍事行動のすべてに対して二〇%支援という態勢をとった。いわばこれは財政面たけれども、あなたの言葉で言えば確固とした全面的な支援なのですよ。どんな軍事行動をとっても、これに対して日本は財政的には二割の連帯性を負っているということになるのです。  それで、私はそこから非常に重大な問題がたくさん起きていると思うのです。例えば今双方に無辜の非戦闘員に対する被害が拡大している。こういう問題に対しても、日本はやはりその戦費の支出国としての責任を持たざるを得ない立場に立たされている。  それからまた、この間イラクの核施設に対するアメリカの爆撃が行われました。これは外務省に伺いたいのですが、平和目的の核施設に対する攻撃を行ってはいけないという決議が国連でしばしば行われていること、特に昨年十二月四日の国連総会で行われたことは、外務省御存じでしょうね。
  68. 丹波實

    ○丹波政府委員 そのような決議が国連総会及びIAEAの会議で行われていることは、御承知のとおりです。
  69. 不破哲三

    不破委員 そのときにも、日本は賛成しましたよ。ただ一国だけこの決議に反対した国があるのですよ。アメリカなんです。それはやはり核施設に対する攻撃を予定しているから賛成できないわけですね。しかし、このイラクの核施設については、国際原子力機関が去年十一月に査察をやったばかりなんですよ。公式査察をやって、それで、四月に査察したときと全く状態は変わりがない、これは軍事目的に転用されている危険はない、その保証を行ったばかりなんですね。ところが、その国際原子力機関が保証した核施設に対して、国連決議を無視して爆撃が行われた。国連側がこの問題を議論したのは随分前からで、イスラエルがイラクの核施設の攻撃を行った一九八一年から、それからまた八六年にはイラクがイランの核施設の攻撃を行い、そのたびに平和的な核施設を攻撃することが放射能の問題でいかに危険であるかということは随分議論されて、毎年のように決議されている。まさに国連が武力行使容認決議をやったもとでも、これをやっちゃいかぬということが決議されている。ところが、それをあえてアメリカはやるわけですね。そういうことについて、日本政府は参画していないわけだから、参画者としての責任は問わないけれども、しかし、無条件でアメリカが行う軍事的行動のすべてを容認する立場に立つ、そういうことまで被爆国の日本が連帯する立場に置かれざるを得なくなる、こういう問題だと思うのですよ。  最近特に私たちが非常に憂慮しているのは、核攻撃の話が何遍も出てくるわけです。それで、例えばつい最近ですが、アメリカのクエールという副大統領がイギリスのBBC放送に出て、アメリカはいざという場合にイラクに対する核攻撃を行う可能性を排除してないんだということを言いました。その数日後にチェイニー国防長官は、今のところはそういうことを考えてない、しかし、将来の展開いかんでは、すべての判断は大統領にゆだねられている、私が先立ってそれを言う権限はない、こう言いました。それからまたニューズウイークの一月の号では、湾岸派遣されている最高司令官がもうそろそろ核の攻撃をやりたいということを大統領に提案して、そのときに却下されたという報道がされています。それぐらい今度の湾岸戦争で核兵器を使うか使わないかという問題は、架空のことじゃなしに、もうリアルな生きた今の問題として、アメリカの軍政首脳部では日々議論されているのですよ。  それで、もし万が一イラクが毒ガス兵器なんか使う、それに対抗手段としてイスラエルやアメリカが核兵器を使う、そんなことになったら、それこそもう我々が考えている最悪の事態が来るわけですけれども、そういう選択を万が一アメリカがやったとしても、その行動に対して日本は財政的には二割の責任を負わなければいけなくなる。被爆日本国民がそういうことになる。  私は、問題は、ただお金を出しているから事は軽いんじゃないのです。そのお金を無条件で出しているために、あなたは輸送と言われるけれども、核兵器の輸送だって含まれるのですから、これには。ですから、そのお金を無条件で出しているために、日本が武力紛争に、武力行使にそこまで連帯の責任を負わなきゃいけない立場に日本と国民が立たされることになる。そこまで考えて、私は、日本政府は行動すべきだと思うのです。だからこそ、この多国籍軍への九十億ドルの追加支援という問題、私たち昨年も反対しましたが、まさに戦争は始まっているわけですね。始まっている戦争に対して、その戦争の、戦っている当事者に戦費を支出するという問題は、それだけのことを負うんだ。そうなったら、日本が本当に憲法の平和原則を持った国として、いろいろな時期に、あなたが言うように平和的解決に向かってのイニシアチブをとろうと思っても、もうこれは多国籍軍の、アメリカの追加部隊みたいなものですから、それはもう世界から相手にされないですよ。アメリカの側からいっても金しか出してくれないじゃないかと言う、相手の側からいえば金でアメリカを応援しているじゃないかと言う。本当に道理を持った国として、このイラクの侵略に対して、憲法の平和原則を持ち道理を持った国として堂々と行動して、世界から尊敬される、信頼を得る、そういう道とは全く違った道に立たざるを得ない。  もし万が一核戦争ということになっても、日本は、日本政府は、あれだけアメリカで熱い議論が行われているのだが、万が一そういう軍事的選択が行われても、それはイラクが侵略者であり国連決議が背景であるのだからこれは容認できる、そういう立場をとるのですか。
  70. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどの、先生がお触れになられました平和的目的の原子力施設への攻撃の問題につきまして、若干補足させていただきたいと思います。  一つは、国際連合総会におきます先般の、先生のおっしゃっておられる決議は、あくまでも勧告的なものでございます。  二つ目は、アメリカにとりまして、そういう施設を攻撃するということを禁止する実定法上のものはアメリカにとっては存在してないということが二つ目でございます。  三つ目は、アメリカが一体それではいかなる原子力施設を攻撃したのかという点について私たちも照会しておりますが、現在のところ事実関係がまだ完全にはわかっておりませんので、なかなかコメントを差し控えさせていただきたいということだけを補足させていただきたいと思います。
  71. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本は唯一の核被爆国として核兵器が使われないことを強く強く求めておることは、これは御承知のとおりであり基本原則であります。その意味において、関係が、今のイラクとクウェートの間で関係がない立場にありながら挑発的なミサイルを撃ち込まれても、核兵器を持っておるのか持っておらないのかわかりませんが、反撃に出ておらないイスラエルの行動は、戦火をこれ以上拡大させない、平和の破壊をこれ以上拡大させないという態度において、私は非常にこれを評価するものでありますし、同時に、核兵器が使われないで、一日も早く戦闘が終了することを強く願うとともに、あくまで今度は国と国との戦闘ではなくて、国際社会の大義を背景にした、国連決議による武力の行使でありますから、しかもその方法は、武力で侵略をしたクウェートから兵を引けということに今局面打開のポイントは集約されておるんですから、この声はむしろ率直にイラクのフセイン大統領に伝えてフセイン大統領の決断を強く求めていかなければならない、そうして一日も早く平和的な話し合いに移行していくことを強く求めていきたい、こう思っております。積極的に考えております。
  72. 不破哲三

    不破委員 核兵器の使用の問題についてアメリカが、今私は、熱い議論をやっておると言いましたが、万が一核兵器の使用を決意するようなことがあっても、これを支援する立場は変わらないのですか。もしそうでないとしたら、被爆国の日本政府としてアメリカに、どんなことがあっても核兵器を使用して核戦争をこの地上に再現することだけはしないでくれというぐらいの要請は、自主的な日本の外交としてやることはできませんか。
  73. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本の基本的な考え方は、これはアメリカも十分承知をしておる問題でありますし、アメリカ自体もなるべく被害を少なくして、なるべく一般人に迷惑をかけないようにして、イラクが、国連の目的に達せるように、クウェートからの撤兵を決断するようにするための武力行使をしておるんだ。いろいろ苦労の跡は日々の報道その他についてもにじみ出ておると思います。  私は、そういったことに対して、いろいろな機会をとらえて日本のこの基本的な考え方はアメリカに通じておる、こう思っておりますし、またそのことを要請されれば、私自身としていろいろなことを考えておりますが、要は一日も早く戦闘状態が終わるようにすることである、原子爆弾が使われる戦争は日本としては基本的に、これは被爆国として認めたくないものだと、こういうことを申し上げます。
  74. 不破哲三

    不破委員 国会でそれは言われるけれども、今アメリカがそのことについて真剣に検討しているときに、日本政府としてアメリカに核兵器の使用だけはしないでくれということを直接言うつもりはありませんか。
  75. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 核兵器の使用だけではなく、一日も早く武力行使が終わるようにイラクに対して強く求めたいというのが私の基本的な考え方でありますから、どっちが悪い、こっちが悪い、ここだけやめればこうだというところの議論はしません。基本的な考え方を申し上げておる次第でございます。
  76. 不破哲三

    不破委員 イラクが侵略者で、元凶で悪いということは明瞭なんですよ。だから我々も、日本でも世界でも、侵略者イラクを孤立させる運動を起こしているんです。しかし問題は、今この戦争が核戦争にまで拡大することをいかに防ぐかということが同時に一つの重大な問題なんですよ。  さっき私はチェイニー米国防長官アメリカのABCインタビューでの発言を挙げましたが、今の状況なら私は通常兵器で解決できると信じると言いながら、しかしイラクが毒ガスなどを使った場合には一線を踏み越えることがあり得る。一線というのは核兵器使用なんですね。一線を踏み越えることがあり得る。米大統領はどのような対応を進めるかについて幅広い権限を持っていて、その対応について我々は何の予測もしない。つまり、そこまで言いながら、やはり核兵器の使用、戦術核兵器の使用ということは選択の中に入っているんだということを国防長官がぎりぎり言うわけですね。そのときに本当に核戦争を防ぎたいという気持ちがあるんだったら、世界で一番言い得る立場にあるのが日本なんですよ。その日本政府の代表として、まあ向こうから電話がかかってくるのを待つばかりじゃなしに、こちらから電話で、ホットラインだってあるんでしょう、それだけはやめてくれ、日本国民の要望なんだ、世界の願いなんだとなぜ言えないのですか。
  77. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的な立場は、私は何度も申し上げたとおりであります。同時に、このような武力行使をしておる国連に対して、国連の決議そのものが正しかったということを私は認めておるわけでありますから、一日も早くあの地域の平和回復活動に参加をしておる国々の、特にその大宗を占めておるアメリカの努力が実ることを強く期待をいたしますし、またアメリカ自身もそこは厳しく自制をして物を言い行動しておることである、私はそう信じております。
  78. 不破哲三

    不破委員 そうすると、アメリカが苦労してこれしかないと考えた場合には、国防長官が言う一線を踏み越える場合があっても、これは日本政府として支持する範囲内だ、そうお聞きしていいんですね。
  79. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは予測できない不透明な問題を踏まえて一点だけをおっしゃいますが、相手の出方論といういろいろな議論もあって、相手がどのようなことをするのか、あるいは抑止力というものはどういうものであるのか、いろいろな角度、いろいろな判断の中でアメリカもぎりぎりの苦悩の選択をしながら、しかも使わないで、通常兵器で、しかもそれも一般民衆には犠牲を少なくするようにしておることは事実であります。そういったことを一々どういう表現でアメリカと話しておるかということはここでは申し上げませんけれども、日本が平和的に解決してほしいという願いを持っておること、そして一日も早く終わること、それを期待しながら、相手に対してもやはりそういう自制の要求は厳しくしてもらわなければいかぬと思うし、私もそれはあらゆる機会を通じて言っていく決意でございます。言わないとか、黙っておるとか、引っ込んでおるとか、そういうことではありません。積極的に平和解決を願って努力をしてまいります。
  80. 不破哲三

    不破委員 平和解決の一般論じゃないのですよ。問題は核兵器の問題、核戦争の問題について、被爆国である日本政府の代表としてアメリカの大統領にじかに物を言う気はないのかと、今。これだけ世界で心配しているのですよ、本当に。アメリカの副大統領がイギリスのBBCの放送で核兵器の使用はあり得ると言った。世界が騒然とするんですよ。そういうときに被爆国日本の代表が、政府がそのことについても何にも言わない。ただイラクに対して――イラクが侵略者であるのはわかっていますよ。世界じゅうがわかっていますよ。それを非難している人たちの中から核戦争だけは避けてくれと言っている。それに対して、一番言う資格と責任がある日本政府の代表がそれについて平和解決一般論で、平和回復一般論で逃げるというのは、私はこれは本当に何といいますか、言葉がないですね、この総理の態度を見ていて。
  81. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ブッシュ大統領とは私も電話で話しますが、その内容を一々ここで申し上げるわけにいきません。同時に、平和的な解決をしなきゃならぬ、核兵器のみならず通常兵器、それによってでも一日も早く終結することを、犠牲が必要以上に広がらないことを、そういったことの気持ち、そういった要望というものは日本の気持ちを十分に伝わっております。ですから、それをああ言ったか、こう言ったか、核兵器だけのことを言えとか。では生物兵器、化学兵器のことはどうするのか、通常兵器はどうするのか、いろいろあります。私は、あわせて平和的解決が一日も早く行われることを望む、そのための努力を望む、いろいろ言っておりますから、この場で首脳同士のそういったことを言うか言わぬか、あるいは言ったか言わないか、それを言うことは差し控えさしていただきます。
  82. 不破哲三

    不破委員 大体真相はわかりますよ、それで。いろいろ言っているから差し控えると言うんだけれども、やはり、こういうときに日本政府として核兵器の使用はやめてくれと、核戦争になることだけは防止してくれと言えないというのがあなたの立場だとよくわかりました。  それからまた、この九十億ドルの追加の支出の問題については、これに対する批判の声というのは国民の間に非常に多い。  私ここで紹介しますが、昨日、国会の中の野党の女性議員の全員が、  積算根拠や使途不明のままの九十億ドルの追加支援は米国の戦費分担になる恐れが強く、また戦争の長期化、拡大化を助長することになりかねない。  日本が国際的貢献として資金援助をする場合には、ペルシャ湾からの原油の除去その他、地球環境保全や戦争終結後の中東の安定復興のための資金とすること。 を要望したい、こういうことを含む、自民党を除く女性議員の全員の声明が出されましたけれども、私は、ここには本当に今このお金の問題でも、この戦争の問題でも、多くの国民が望んでいることが語られていると思うのですね。  私たちは、あなた方よく国際的貢献、国際的貢献と言いますけれども、人の貢献であれお金の貢献であれ、戦争による貢献を国民が望んでいるんじゃない、また世界の良識ある人々も望んでいるわけでもない。現実に昨年国連平和協力法案が廃案になったときに、世界が励まされたという声を、あなた方は聞かないかもしれないけれども、私たちは随分各国から受けましたよ。ですから、そういう点で私は今度の多国籍軍への追加支出九十億ドルについては、憲法の問題もかかわって賛成できないということを申し上げておきたいと思うのです。  特に、それを弁護するために国際的孤立論ということをよくあなた方言いますけれども、これはもうまさにアメリカ即国際社会だという立場で、私は今これは非常に今後の世界を考えた場合危険だと思いますね。この間ブッシュ大統領が一般教書を発表しました。今日急速に変わりつつある世界にとって米国のリーダーシップは不可欠のものになっている、世界じゅうで我が国だけが平和のための軍を束ねることができる、これは指導する者の責任だ。これぐらい世界の指導者ということをあからさまに押し立てて、自分を中心に世界を組み立てようじゃないかということを宣言した大統領は歴代でも少ないですよ。  私はそういう中で、本当に戦後の、この戦争を一日も早く終結させて、そして公正な平和的解決に向かって局面転換に日本は、無理かもしれないが政府としても国民としても働かなければいかぬなという立場にあると考えていますが、そういうことを考えても、そういう自分を中心にした世界の軍事態勢ということをあからさまに言っているアメリカが即国際社会だとして、それに協力することが国際貢献だ、もう戦争が始まった以上、九十億ドルであれ自衛隊機派遣であれ、そこへ応援していくことが世界の声にこたえる道だ、そういう道を進むとしたら、これは非常に危険な立場に私たち日本は達することになる、このことをやはり重ねて言いたいと思うのですね。  本当にあなたが言うイラクの侵略者を世界に最も犠牲の少ない形で、それから日本の経済にも石油にもそれからまた世界の諸国民の経済生活にも政治生活にも最も苦痛の少ない形で解決しようと思ったら、やはりこれは多少時間はかかっても平和的な解決の道以外ないということを、私たちはこの二十日間で嫌というほど経験しているわけですよ。だからこそ、そのときに日本外交の自主的な努力が求められるわけで、私はこういう世界的な危機の時代であればあるほど、日本がさっき言ったように求められてもいない自衛隊機中東派遣なんということはやらない。それからまた、アメリカの戦費の事実上二割を無条件で分担して、ブッシュ大統領の言明によると三カ月分だとはっきり言っているわけですね。四月以後に戦争が続いたらさらに追加要請があるということをはっきり言っているわけです。そういうものに日本がお金と手を出すこともやめて、やはり憲法の平和原則に立ち返ることを強く要望したいと思います。
  83. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 二十日間にわたっていろいろ考え、苦悩したとおっしゃいますが、私は八月の二日以来五カ月以上にわたって、平和を守っていくことは難しいということを本当に考え、苦悩いたしました。  また、アメリカを中心として云々とおっしゃいますが、どうでしょう。アメリカと対立しておったソ連は、今、共産主義、一党独裁をやめて自由と民主主義、新しい秩序の方向に行こう、アメリカを中心とする西側サミットにも、支援をしろ、応援をしろ、そして共通の価値観をそこに置いてやっていこうというふうに動き出しておるではありませんか。私はそういう世界の大きな動き、大きな流れを好ましいものとして見ておるのです。そうであるとするなれば、アメリカの自由と民主主義の価値観というものを共有する日本は、それを支持し、それを助け、世界が平和と繁栄に導いていかれるように、体制が変わるならば、民主化するならばソ連もその枠組みの中へ入ってきて一緒に力を合わせて世界の平和と繁栄を握っていくのが当然の方向だと思いますから、ただ、その先頭に立ってリーダーシップを発揮してきたのがアメリカであるということは、これはだれも否定できない事実でありますから、そこに一つの支持を与えて日本協力をしていくというのは当然のことである、私はこう思っておるのです。  同時にまた、今度の国連の決めた平和回復の大きな動き、これが一日も早く達成されることを私は強く願いますし、国連がそういった機能を果たし、国連の安全保障理事会で東西の対立を乗り越えたいろいろな決め事がなされていくときには、それに刃向かってきて、そこで平和の破壊者だと認定されるような人、そういう国際法的にもいろいろ型破りなことをする者と同列に置いて議論をして、あっちも悪いがこっちも悪い、片方の手だけを縛れというような言い方は、これはこの際問題をきちっと解決する上においてとるべきものではないと私は考えますから、両方のそういった立場、置かれたものは、国際社会の総意を背景とした国連決議に従ったもので、その中心になってアメリカがリードしてきた今度の多国籍軍の湾岸における平和回復活動というものが成功するように応分の、できるだけの責任分担をし、支援をしていこう。  これは二〇%を分担するとかいろいろおっしゃいますが、そういうものではありません。あくまでこちらが、先ほど再三詳しく数字を申し上げましたように、きょう現在日本がこの平和な生活を、豊かな生活をお互いに維持しておるというこの現状、戦後四十五年の歩みの中で今日この安定した状況になってきたこと、この成果の上に立って次の世代にも自由と民主主義と、こういった平和の価値というものを高めていこうと思いますから、憲法にもきちっと書いてありますように、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求していこう、自分の国のことだけ考えないで、世界のこういう努力のために日本は国際社会の中でできるだけの協力をしよう、そういう大きな基本があってやっておることでありますから、どうぞその意味で、これらのことについては、新しい冷戦時代を乗り越えた世界の平和秩序の枠組みづくりの大事なときなんだ、暴力でもってよその国を侵略することを許してはいけない、これを排除するということが新しい秩序の第一原則だということを重ねて繰り返しここで申し上げさせていただこうと思います。
  84. 不破哲三

    不破委員 あと一分ですから、ソ連論など詳しく言う必要ありませんが、言う時間がありませんが、東の激変で東側の軍事同盟体制は崩れ始めた。世界が望んでいるのは、軍事同盟のない世界にこの動きが結びついていくことこそ世界政治の観点からいえば世界が望んでいたわけですね。ところが、それに対して今起こっているのは、東側の軍事同盟は崩れたが、アメリカの方は軍事同盟の店じまいをしようとはしないで、むしろこのチャンスを……
  85. 渡部恒三

    渡部委員長 時間が参りました。
  86. 不破哲三

    不破委員 アメリカ中心の軍事同盟体制の構築に結びつけようとしている、それが問題なんですよ。そういう中で本当に日本が世界の平和に、冷戦の終結というなら、冷戦のない世界に向かって貢献することは何かということを考えてこそ……
  87. 渡部恒三

    渡部委員長 不破君、時間が参りました。
  88. 不破哲三

    不破委員 本当の国際的貢献があり得るということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  89. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて、不破君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  90. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米沢隆君。
  91. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、目下最大の政治課題であります湾岸問題、そして時間が許されるならば土地税制の問題について、政府の見解をただしてみたいと思います。  冒頭私は、今日湾岸戦争も微妙な段階に入り、戦況は刻々テレビニュースで伝わってまいりますが、あの中東の地で平和回復活動に命をかけて頑張っていただいておる皆さん方に、そしてまた、戦争終結に向けて腐心をしていただいております皆さん方に心から敬意を表しつつ、質問に入りたいと存じます。  御案内のとおり、昨年八月二日、イラクのクウェート侵攻、併合という両暴挙に端を発しました中東湾岸危機も、世界の皆さん方の平和解決への願いもむなしく、ついに戦火を交えることになりまして、まことに残念のきわみでございます。  言うまでもなく、かかる事態に至った原因は一にかかってイラクの暴挙にあり、自来、国連は国連安保理事会による十二本の決議によって平和的解決を試み、各国はあらゆる外交努力によってイラクの撤退を促し、最後のぎりぎりの段階までデクエヤル国連事務総長は調停のための努力を惜しまなかったにもかかわらず、なおこれをすべて拒否し、クウェートを占拠し続けたイラクに対して、ついに国連決議六百七十八号の発動をせざるを得なかったというのが客観的な事実ではなかろうかと思います。  この経緯につきましては、それぞれの立場からさまざまな議論はあると思いますが、唯一言えることは、この段階においてもイラクは国連決議を遵守し、即時無条件にクウェートから撤退をし、クウェートの独立を旧に復するならば、あしたからでも戦争は終わるということだけは事実ではないかと存じます。その意味で、遅きに失したかもしれませんけれども、フセイン大統領の賢明な決断と翻意を強く促したい気持ちでいっぱいであります。  戦争は、どういう名目で戦われても、どの時代におきましても、悲惨なものであることは事実でございます。この湾岸戦争も、戦端が開かれて既に三週間目に入り、また、イラクがクウェートを侵攻して、そしてクウェート国民を武力で制圧している状態に入ってから既に六カ月目に入りました。そういう事情もあるのでしょうか、最近耳に入りますのに、イラクも悪いがアメリカも悪いとか、どっちもどっちだという議論が横行しております。同時にまた、武力行使の期限がある一月十五日を過ぎてもなお平和解決の努力を続けるべきであった、努力すれば戦争は回避できたはずだ、アメリカはけしからぬの論もございます。しかし、私は、この論には見解を異にするものでございます。  イラクも悪いがアメリカも悪いではなくて、事の発端は、イラクの暴挙と、国際社会の総意にかたくなにそれを拒み続けているフセイン大統領にそれはあり、また、あのぎりぎりの時点、一月十五日の時点でまだ平和解決への可能性が果たして残されていたのか、私は、神ならぬ身の人知の及ぶところかなり絶望的ではなかったかと判断せざるを得ないのでございます。もしあったとすれば、それは不当な暴挙を試みたイラクに対して利益をもたらすような妥協案でしかなかったであろうと私は考えるのでございます。それはまた、国連の権威を冒涜し、また今日までの国連の努力を無にするに等しいものだと言わざるを得ないと思うのでございます。まず、総理の基本的な見解を伺っておきたいと存じます。
  92. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の湾岸で起こった問題のそもそもの原因は、御指摘のとおり昨年の八月二日のイラクによるクウェートの武力による侵略、併合ということであります。そうして、その直前までエジプトの大統領やサウジアラビアの国王がサダム・フセイン大統領を呼んで、平和的な話し合いをしたらどうかというアラブ内の努力のあったことも、その後の首脳会談で私は聞いてまいりました。絶対にこれは武力行使はしないとイラクは直前まで約束をしながら、それを踏みにじって武力で侵略をした。国際社会の総意は、相次ぐ国連の決議によって、五カ月以上にわたって平和的に解決をしろという努力が行われたことも御指摘のとおりであります。  そうして、十一月の二十九日に六百七十八号の決議が行われました。これは、国際社会の大義を守るために、力によって国を侵略、併合することは国際社会の認めるところではないというその決議でありますけれども、そのためにはあらゆることが行われる、武力行使の可能性も含まれるという内容の厳しい決議になりました。  その翌日、アメリカイラクに対して直接対話の申し入れをしたことも、これは何とか平和的に解決したいという国際社会の世論を踏まえての二国間の努力であったと私は思います。フセイン大統領に私も直接親書を出しましたし、同時に、周辺の首脳を初めあらゆる立場であらゆるレベルの交渉が行われたことは御指摘のとおりであります。最後は国連の事務総長がイラクに行って大統領との直接の話し合いの中でいろいろな提案をいたしましたが、一切の妥協はしない、クウェートを手放すことはない、これが一貫したイラクの態度でございました。  これをこのまま放置することは、新しい世界の、東西対立以後の世界の、力によって紛争を解決してはいけない、侵略してはいけないという大きな大きな基本原則を力で曲げたイラクをそのまま認めることになりますので、国連決議に従った二十八カ国にわたる多国籍軍がアメリカを先頭として、平和の回復、侵略の排除というこの共同の目的を達成するために起こったのが今回の湾岸危機の当初から今日までのいきさつであって、たび重なる、五カ月以上の世界あらゆるところの努力が重ねられた結果の今日の武力行使に至ったものだ、私はこう思いますので、これを確固たる支持をして、一日も早く回復し、平和がよみがえるように強く願っておるところでございます。
  93. 米沢隆

    米沢委員 私がなぜ冒頭この議論を始めたかといいますと、どっちもどっちというものならば、それはもう我が国の湾岸貢献策は宙に浮いてしまってそのスタンスを失うからでございます。結果として何もしなくていいという論にくみすることになるからだと思ったからでございます。  同時にまた、まだ平和解決の道が残っておる、時間を稼げというような話ということになるならば、この戦争終結に当たりやはり結果としてイラクに利する妥協もやむなしとする傍観者的な無責任な論にくみすると私は思ったからでございます。  同時にまた、時間が長引くことは、単に今行われている戦争の悲劇だけを言われておりますが、六カ月前からイラクはクウェートを侵略し、暴行、凌辱、略奪、この前クウェート大使にお会いしましたら、回教徒の同士とは思えないほどの暴虐の限りを尽くしておるという言葉で表現をされておりましたが、そういうものを見過ごしてしまうということにもつながってしまうのではないかということを考えたからでございます。  さて、ここでこれまでの経過を振り返って政府の見解を承っておきたいことは、午前中も同僚委員から質問がありましたけれども、私はあのぎりぎりの時点で和平交渉を一体どう見たらいいのかということでございます。  ちょっと長くなりますが経過を振り返ってみますと、あの安保理決議の定めた十六日午前零時ですね、期限を目前にいたしまして、デクエヤル国連事務総長によるフセイン大統領への説得工作が不調に終わった。その後を受ける形で、フランスは、十四日、イラクの即時撤退を前提に、パレスチナ問題を話し合う中東和平国際会議を盛り込んだ新たな和平案を安保理に提示し、それを軸にいろいろと議論がなされた。結果として、この提案にはソ連やスペインやイタリアが支持ないし評価する姿勢をとったものの、アメリカ、イギリスが反対した。フランス提案には湾岸とパレスチナ問題のリンケージが見受けられるという理由で反対の方向を表明をされたということを聞いています。  しかし、あの段階でイラクがこのフランス提案を受け入れた、わかったと言うた場合には、これはアメリカは厳しい判断を迫られるかもしれませんけれども、和平案実現の機運が高まる公算も大ではなかったか、そういう新聞報道も伝えられております。  しかしながら、イラク側は、国連大使がフランス提案を歓迎する意向は漏らしたものの、フセイン大統領からは全く反応も示されなかった。こういうことで結局不調に終わり、デクエヤル事務総長は、ここで調停努力を事実上断念し、そして十五日の夜、イラクのフセイン大統領に対し即時完全撤退を呼びかける最終声明を発表して、万事休すということだったわけでございます。そしてロカール・フランス首相は、我々は戦争回避をするためにすべてのことをやったが、ついに武力行使のときがやってきた、すべての責任は和平案に反対したアメリカにあるのではなく、対話へのあらゆる申し出を拒んだイラクにあると、フセインのかたくなな姿勢に強い失望と批判を表明した。これがあの和平交渉の最終段階でのくだりだと思うのでございます。  こういう状況を念頭に置いた上で今お聞きしたいことは、その間、日本政府はどのような動きをしたのか、同時にまた、最終段階のフランスの和平案をあなた方はどう判断したのか、そしてその認識を伺った上で、あの時点で本当にまだ和平への努力がなされたならばうまくいったと判断をされているのかどうか、そのことを明確にお聞かせいただきたいと思います。
  94. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員から今国連の事務総長を中心に安保理におけるいろいろな最後の局面の説明が御紹介がございました。私は、ちょうど一月の十五日午前十時でございましたか、国連本部にデクエヤル事務総長を訪ねまして、デクエヤル事務総長がイラクを訪問されてサダム・フセインに交渉された経過を承ってまいりました。  そのときにデクエヤル事務総長は、サダム・フセイン大統領はクウェートから撤退するということを一言も言わなかった、自分は大変大きな失望をした、こういうお話を私にされたわけであります。そして、和平までの残された時間はわずか十四時間だ、この間に自分としてはこれからいろいろと協議を続けるけれども、最後までこの会議がどうなるか見通しは明らかでない。私はそのときにデクエヤル事務総長に、自分は海部総理からの親書もメッセージも受け取って預かって持ってきている、いろいろな努力もしている、そういう中で事務総長は大変な苦労をされておられて憔悴されておられましたが、私はこう申しました。日本政府としてはぎりぎりまで国連事務総長としてこの和平解決に努力をしていただきたい、しかし、もしイラクのサダム・フセインがこの国連の決議を尊重して撤退をするということをしなかった場合に、この安保理決議を受けて多国籍軍が平和を回復するための武力による行使を行うかもわからない、しかし、和平が話し合われる時期が必ずやってくるに違いない、そのときまでひとつどうか事務総長は御苦労でも努力をしていただきたい、日本政府は事務総長に全面的にこの御苦労に御協力をし、御支援を申し上げると私は申し上げて帰ってまいりましたが、事態はまことに残念なことながらサダム・フセインはついに撤退をしなかったわけでありまして、我々は昨年の八月二日以来、国連のこの安保理の決議を受けていろいろな努力をしてまいり、また、海部総理もラマダン副総理にも会われて、いろいろと日本政府の熱意を伝えられ、現地の片倉大使も何遍か日本政府の意思を伝え、また外務省の小和田外務審議官は世界じゅうの主要国を飛び歩いて、政策担当者と直接協力をいたしてまいりましたけれども、まことに残念な結果に相なったことを遺憾に思っておりますが、今日なお現在、サダム・フセイン大統領がこの国際社会の要請をいま一つ真壁に改めて冷静に考えて、一日も早くこの和平のための撤兵の決断をされることを政府としては心から期待をしているものでございます。
  95. 米沢隆

    米沢委員 今外相からお話がありましたように、フセイン大統領は、国連事務総長との話の中でも、あるいはまたフランス提案を説明されるその過程においても、一言もパレスチナ問題を議論する中東和平会議を開くならばクウェートから撤退するという言葉を発しておられないというのが事実ですよ。そうなりますと、八月のクウェート侵略から十日目ぐらいに、いかにもあの占拠はまさにパレスチナ問題を解決しなければならぬという意図をフセイン大統領は言われましたけれども、実際は、リンケージで議論すればイラクはあきらめる余地はなくて、そういう議論はただの一方的な話のついでであって、結果としては、我々は、イラクは絶対に手放さない、その議論から一歩も出なかったというところに私はこの不幸な戦争が始まったと思わざるを得ないのでございまして、その点を明確に確認をしておきたいと思うのでございます。  とはいいながら、この戦争も大変長期化、拡大していく様相を見せておりまして、大変心配の種でございます。しかしながら、今なお戦争終結に向けての外交努力がなされねばならぬことは事実でございまして、私は今日まで政府湾岸危機に対処する基本的な立場なり方針については聞かされてまいりましたけれども、いまだかつて停戦や終結に向けての努力や意欲や方針や展望を聞かせてもらったことがない。この際、総理の所信を聞かせていただきたい。  といいますのは、このままいきますと、単に日本政府アメリカ、いわゆる対米追従外交のみでということで喧伝をされ、結果として戦後の中東和平に関する発言権も失ってしまうのではないかと思うからでございます。総理の見解を示していただきたい。
  96. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の武力行使はアメリカイラクの間のものではなくて、国連決議に従って国際的な、二十八と言われる国の共同の武力行使になっておる。それから、武力行使には直接参加できない日本も、これに対しては立場を明確に、支持をして協力をしております。  したがって、侵略者が侵略したことによって利益を得るような、逆の言い方をしますと力によって侵略することがまあまあといって認められてしまうような、そんなことがあってはならないので、原理原則に従った解決が必要だということを国連決議に従って定めておるわけであります。この国際社会の大義に従った解決がなされなければならぬということは、関係諸国と協調して共同してこの目的が達成されるように、それぞれの分に応じた支援を力いっぱいしていくということが各国に課せられた世界秩序を守るための責務であろう、こう考えます。  日本といたしましては、日本の態度の中においてでき得ること、これは各国とも政策協調をしながら、そして目的は一刻も早くイラクが反省に立ってクウェートから兵を引くという決断をしてそれの行動に移ることでありますから、それに入れるようにあらゆる機関を通じて申し上げるとともに、一つ言われておりますことは、中東の恒久和平の問題と今回の問題とどのような扱いをしていくかということも、一つの大きなテーマになっております。日本としては、ブッシュ大統領の国連演説あるいはフランスの提案、最後にはぎりぎりにわたって行われた国連の事務総長の世界に対する声明、そういったものの中において、日本も国連決議の二百四十二号、三百三十八号、あの決定に参加をし、支持をしたとき以来、中東の恒久和平に対してはそのような気持ちで積極的に取り組んでいかなければならないという気持ちも持っておりますので、この問題の次のステージにはそのような国際的な話し合いの努力をするということ。  同時にまた、直接の戦火と結びつかない格好で重油を、原油を戦略物資として使うことも自由だといってあの垂れ流しの問題が起こってから、環境に対する初めての経験としてはかり知れない心配を世界の人々にも巻き起こしております。こういったことに対しても、それをやったイラクはけしからぬと言うのは簡単ですが、けしからぬと言っておるだけではあの重油の問題も、世界の人々の環境に対する心配も片づきませんから、それに対しても積極的に協力をしていく、恒久の平和と安定のために日本としてできる限りのことは積極的に取り組んでいこう、こういう決意でおりますし、でき得ることから着手を始めておるところでございます。
  97. 米沢隆

    米沢委員 次に移ります。  財政支援の問題でございます。  政府は、御案内のとおり、先般九十億ドルという追加支援を決定されました。今回の多国籍軍に対する追加支援は、国際社会の一致した平和回復活動への財政支援とはいえ、既に戦端が開かれた後の、それも長期化する様相がある中での財政追加支援の決定だっただけに、私は、その賛否については国民の皆さんの心の中には内心じくじたるものがあるだろうと推測をいたします。しかし、昨年八月以来今日までの経過からいたしまして、不当な侵略を排除し平和を回復するためのやむを得ざる最後の手段としてとられた今般の国連を中心にした活動に対しまして、これがイラクのクウェートからの撤退を求める国連決議に沿ったものであり、そして多国籍軍の軍事展開がこの実行を迫る枠内にとどまる限り、私たちは、国連中心主義に立つ我が国として時宜に適した貢献をすることは当然のことだと思っております。こうしたときに、我が国だけが手をこまねいて傍観者を決め込んで、日本の特殊事情だけをわかってくださいと世界に訴えることは、私は許されないことだと思うからであります。  さてしかし、そうはいえ、九十億ドルといえばこれは余りにも大きなお金でございます。平成三年度予算の政府開発援助、ODA、財投まで入れて約一兆五千億、大体それと似たようなお金を今から拠出しようというわけでございます。それもまた増税までして拠出しようというわけでありますから、もっと政府はまじめに、真剣に国民の理解を得る努力をしてもらわねばならぬと私は思うのでございます。  再々この問題はこの席上でも取り上げられてまいりました。しかし、何か聞いておりますと、弁解しておるような感じに聞こえてなりません。後ろめたい気持ちがあって何かこう一生懸命抑え抑えながら、後ろめたい気持ちを隠しながら何か説明されておるような気がするのでございます。私は、本当に追加支援を政府政府の責任で決定されたならば、それは自信を持ってそれなりの理由を述べ、国民の理解が欲しいと訴えるのが宰相の責務であって、お答えを聞いておりますと、何かおどろおどろしく答えておられる。私は、私だけの感覚ではないと思うのであります。私は、なぜこの九十億ドルもの大きな金を、政府はいかなる外交理念をもって追加支援することにしたのか、もし追加支援を断ったならば一体日本はどういう影響を受けるのかというところまで説明しながら国民の理解を得るのが当然ではないかと思うのであります。  同時にまた、どんな支援をするか、あるいはどういう計算をしたら九十億ドルということになったんだということぐらいも、もっと率直に語ってもらっていいのではないかと思うのでございます。この席上でもいろいろ議論がありましたけれども、九十億ドルの積算根拠も、支援を決定するに至った経緯も、今後長期化した場合果たして追加の追加支援をするのかしないのかという問題も、全然私には定かになっていないのでございます。ぜひ、総括的な御説明をいただきたい。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何回も申し上げましたように、国際社会の一員として日本が今日置かれておる立場、日本の経済力というものが世界平和の中で、今日自由な貿易体制の中でここまで上がってきたという過去の経緯、そういったようなことすべてを総合的に判断をして、国連が決議によって適切な支援を加盟国に要請もしたわけでありますし、また、国連の決議によって示されておる平和の破壊は許さない、侵略を排除して平和を回復するというあの決議の趣旨、これは新しい世界秩序として日本は賛成をいたしておりますし、日本は明確にその立場に立っておりますから、その態度をきちっと支援するとともに、それにふさわしい日本の役割として支援をしなければならぬという考え方は、何回もここで述べたと思いますが、改めてそのような背景があるのだということを申し上げさせていただくとともに、きょうまで日本がこの地位になるに至った状況というのは世界の平和、世界の秩序があったからであります。日本の憲法にも「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると書いてあります。そうやって世界に平和を守っていこう、冷戦時代が終わって、力の均衡の平和じゃなくて話し合いによる国連中心の世界の平和機構というものを日本も先進民主主義国の一員として支えていかなければなりません。参加していかなければなりません。自分の国だけはそれは関係ないぞと言って、一歩後ろに引いておるわけにはまいりません。資源のない国は、小ぢんまりとつじつまを合わせて、国境閉鎖をしてやっていけるものでもありません。そういったことを考えますと、国際社会に対する応分な支援はすべきであると明確に態度を決めて、そして堂々とこれはすべきである。  ただ、やるといいましても、今の制度、仕組みの中で、最終的には国民の皆さん方に日本の立場に対して、そのような支援をすることについて、国連の決議の精神を守っていくことにおいて、また新しい世界の秩序の中に、力でもって侵略したり併合するようなことは許してはならないという国連決議の精神を日本も支持していくんだというその立場を明らかにし、責任を分担するためにはこのような行動をするんです、それには国民の皆さんの御理解と御協力をいただかなければなりませんのでどうかお願いしますということは、これはこの事態に入ってから繰り返し一貫してお願いし続けてきておることでございますので、改めてここでもお願い申し上げますが、どうぞそういった日本の置かれておる立場、孤立しては生きていけない国だということを、世界の国がこれだけ厳しい状況を乗り越えて、犠牲を払って軍事行動にまで出て頑張っておって、世界の秩序が守られるか守られないかという大きな境にあるわけでありますから、一層の御理解をいただきたいと思います。
  99. 米沢隆

    米沢委員 総括的には御説明をいただきました。しかし、まだ腑に落ちないことがございます。  これも何回もここで取り上げられておりますが、例えば九十億ドルを決定された経緯等について、日本は自主的に決定したとおっしゃいます。しかし、アメリカの方は、数字を挙げて日本側に要請したとおっしゃっています。これは完全に反対のことでございますね。日本は、多国籍軍への経費の追加支援であるとおっしゃっている。しかし、アメリカはすべて米軍の戦費だという話が出てきている。一月から三月までの経費を賄う米軍の戦費へいただくのだ、こうおっしゃっておる。そして、日本はこの金をGCCの湾岸平和基金に入れられる。これを経由してアメリカに行くのかもしれませんが、アメリカの方は国防協力基金に繰り込む、そういう報道がなされる。使い方はGCCで協議すると日本は言いながら、これを使うな、これを使うなとアメリカに陳情される。やることなすこと、報道はいろいろあるかもしれませんが、日本の説明とアメリカから伝わってくる報道とが余りにも違い過ぎるものだから、一体政府は何を考えておるのだ、何かまた隠しておるのじゃないかというような話につながっていくんですね。そのあたりを明確にしてほしいんですよ。
  100. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 隠しておるわけでもありません。同時に、きのう以来ここで申し上げておることがすべて政府の決めたことの御報告でございます。  例えば、きのうもアメリカ側は数字を日本に具体的に示して言ったのではないか、それを隠しておるのではないかとお話がありましたが、アメリカの大統領の予算教書が二月の四日発表されて、そのアメリカ自身の大統領の予算教書の中で、信頼できる計算は存在しないということをアメリカ自身の大統領が言われておるのですし、また一千億ドルの費用に追加費用として三百億ドルを仮置きしたと予算教書の中にもありましたが、仮置きしたというのは、アメリカの会計検査院が軍事行動の開始前に戦闘は開始されないものと予想して試算をして下した数がこの三百億ドルであって、それを仮置きしたのだという前提で物を言われておるし、また、アメリカの議会予算局もいろいろな試算を出しておりますが、低いものは二百八十億ドルから多いものは八百六十億ドルまで出てきております。どれもこれも、私は具体的にこれがアメリカの必要とする回復費用だけれどもどうだろうか、何%はどうだろうかというような具体的な問い合わせや相談を受けたことはございません。  同時にまた、日本協力するときに何を根拠に決めたのか、いつ決めたのかということでありますが、アメリカ自身も、そしてその他の二十八に及ぶ多国籍軍も、これが平和回復に要る総費用だということを具体的に決めてそれを発表した国はないわけでありますし、またできないだろうと思います。それだけに、いつまで続くのか、早く終わってほしいという希望や期待をみんなが持ちながら取り組んでおる作業でありますから、日本としては日本の置かれておる立場で、これはやはりどの程度がいいのかなということは、自主的に最後は決めなければならぬことになるわけであります。  したがいまして、外務大臣、大蔵大臣のいろいろな話も聞きました。御指摘のように、アメリカから流れてくるいろいろな報道等も全部知っております。アメリカ以外の国々からもいろいろな要請が出ておることもよく承知しております。そして日本は今国際社会の中でどれくらいの立場のどれくらいの国であるのだろうかということも、物事を決めるためには総合的判断の前にやっぱり考えてみなきゃなりません。世界が地球上で二十兆ドルという総生産を出しておるときに、アメリカ一国で五兆ドル、ECくくって五兆ドル、日本が三兆ドル・プラスアルファあるということも、また、八九年の貿易の黒字を見てみても七百六十九億ドル自由な貿易の中で日本は黒字を残した。対外資産保有世界一になりましたが、二千九百三十二億ドルの対外資産の保有国になっておる。このような国際社会の中における地位。そして世界が今平和を守るために血を流して、そのために努力をしておってくれる国に、日本はいろいろな制約があって力でもってお役に立つことはできませんが、できるだけのことは積極的にするんだということを言う以上、ぎりぎりできるだけの支出協力はしなければならぬではないか。  また、外国の論調を読んでおりますと、あの地域の油によって一番安定的に平和的に大きくなったのも日本ではないか。言われるとおり、中東地域に七割以上の油を依存しております。もしあの辺の平和が乱れ、あの辺の平和回復がいつまでもいつまでも続かないようなことになってきたと考えますと、一バレル当たり十ドルの原油の値上げは日本経済には百七十五億ドルの影響を与えるということも、私はいろいろなことを考えました。そういった中で平和回復、その行動に対して日本がやらなきゃならぬぎりぎりの努力として追加支援九十億ドルをしよう、これは政府部内で意見をまとめ、政府・与党で合意を得、それを決定をし、議会にお願いをしておるところでございます。御理解をいただきたいと思います。
  101. 米沢隆

    米沢委員 絶対に認められないと言うておるのじゃありません。今いろいろと御説明いただきましたが、確かに戦争を計算しながらやっておるはずはない。また、どれぐらい金がかかるかも実際わからぬだろう。しかし、そういうものが全然わからないままに九十億ドルがまさか出てくるはずがない。論理からしてそうですよね。  だから、いわゆる一日五億ドルぐらい要るそうだ、三カ月をめどにすれば四百五十億だ、日本は昨年約二〇%負担したから約二〇%掛けたら九十億ドルだ、そういう概算の目算を立てられて、かというて二〇%なんというのを認めたらこれからの追加支援に必ず二〇%おつき合いせにゃいかぬ、これはまた大変なことだから二〇%を消そうといって九十億ドルが走り始めた、そして余りアメリカ要請を受けて計算したんだったらまた怒られるんじゃないかというて、また総合的に決めたという言い方をしようじゃないかというのが本音でしょう、これは。どうですか。
  102. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アメリカに頼まれてやっておるというのではなくて、国際社会の正義を守るために、日本が将来国際社会で「名誉ある地位を占めたい」と憲法でも宣言しておるのですから、そういった理念に従ってできる限りの努力をし、できる限りの協力をするということがその理念にふさわしい、こう考えたからそのような結論を導き出したものでございます。
  103. 米沢隆

    米沢委員 水かけ論だからこれでやめますが、あとは今後の歯どめの問題ですね。  常識的に言うならば、戦争は長引いてもらっては困りますが、長期化していきますとそれだけ戦費はかさむ。今日本が拠出した九十億ドル以上にまた追加してくれぬかという話が来る可能性だってある。可能性だけで答えはできないとおっしゃればそれまでだけれども、やっぱり追加の追加支援が来たときに、政府としては応じるのか応じないのか、ノーと言えるのか言えないのか、そのことをまた国民も知りたがっておるということもこれは大事なポイントじゃないでしょうか。ところが、その部分についてずっと答えをはぐらかしてきておられますね。どうなんですか。  同時にまた、きのうの新聞報道でしたか、五日に湾岸危機金融調整委員会、何とか金融調整グループというんですか、それが開かれて、単に戦費の調達だけではなくて、今後、紛争周辺国や湾岸危機で経済的損失をこうむっている開発途上国への新たな資金援助を強く要求する見通しを米財務省高官が語ったという記事になっておりますが、その委員会の名前は正確にはわかりませんが、湾岸危機金融調整委員会等では、新たにこの九十億ドル以上にまた新たな追加支援を欲しいという動きが出ておるわけですよね。その点についてどう対応されるのか。そのことは、同時に、九十億ドルが単に戦費に消えていくのかそれとも九十億ドルの中には主要周辺国に対する経済援助等も含まれておるかどうか、そこらの論点も非常に大事なことに私はなってくるんではないのかな、こう思うのです。  そういう意味で、これからの追加の追加支援等については答えにくい問題かもしれませんが、筋からいいますと、日本政府の考え方の延長線で言うならば、追加支援にも場合によっては応じるということであり、それで戦費以外の問題等についてもこのような会議等が開かれて、周辺国をどうするか、開発途上国をどうするかという議論にはつき合っていかねばならぬ。その分の負担を一体またどうするんだという議論もこれから出てくるんじゃないでしょうか。  平成三年度のODA予算にはまたそれなりの予算が組んであって、昨年と同じように流用する準備はできておるとおっしゃればそれでようございますが、それ以上にまだ大きな金が要るとなったときに日本は一体どうするんだ。これは単に九十億ドルをどうするという議論以上に、追加支援、九十億ドルの戦費の追加支援だけではなくてもっとほかの面での財政支援等が出てくるだろう。そういうものに一体応じていく財政能力はあるのですかという問題もまたこれは問われておるのですね。また、どんどんどんどん増税になっていくのじゃないですかという不安にも答えてもらわなければいかぬのです。だから、その歯どめ論をもっとまじめに私は答弁してもらいたいと思うのです。
  104. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から御指摘のありました湾岸危機資金支援調整グループ、GCFCG、この二月の五日の会合についての部分について事実関係を御報告申し上げます。  これは委員がよく御承知のように、昨年八月二十九日、政府中東における平和回復活動に係る我が国の貢献策を発表いたしました。そして、これを受けて九月十四日、貢献策の中で中東関係国に対する支援、いわゆる周辺国支援というものにつきましては、その当時既にクウェートが侵略されたという状況の中で、非常に大きな経済的な損失をこうむっておりましたエジプト、トルコ、ジョルダンといった周辺諸国に対し、総額二十億ドル程度の経済協力を実施するということを決めたわけであります。  その後、それぞれの国々に対し、例えばエジプトに対しましては、昨年の十月二日、三億ドルの緊急商品借款のプレッジ、またトルコに対しましては、十月五日に二億ドルをプレッジ、ジョルダンに対しましては、十月三日、一億ドルをプレッジ、また、そのほかにも、総理が関係各国を訪問されました際、それぞれの支援を伝えてまいりました。  そしてその後、この二十億ドルのうちの全部をその時点で支出をいたしたわけではございません。そしてその後におきまして、この開戦という事態になりましてから、この湾岸危機資金支援調整グループの会合の第四回目が二月の五日に開かれたわけでありまして、その開戦後という新しい事態のもとでの周辺国支援のあり方について、援助国が集まり、意見を交換したということであります。  その中におきまして、日本政府といたしましては、この二十億ドルという昨年の時点において支援を約束をいたしております残額が十億三千万ドルございました。その十億三千万ドルを、今次の開戦によります特別の事態への移行というものに伴いまして深刻な経済的影響を受けておりますエジプト、トルコ、ジョルダンの三カ国に対し、その資金不足の程度、あるいは資金支援の緊急性などをその席上論議し、総合勘案した上で、日本政府として、例えばジョルダンに対しましては四億五千万ドル、トルコに対して四億ドル、エジプトに対して一億八千万ドル、全額アンタイドの超低利一%の緊急商品借款を供与する旨表明をいたしたところでございます。  事実問題を御報告いたします。
  105. 米沢隆

    米沢委員 今、湾岸危機金融調整グループでの新しい局面での今後の支援のあり方等の勉強をするということはわかりましたし、過去の残高について、ヨルダンにまた援助をふやすということもわかりました。  私が聞いているのはそういうことじゃありませんで、戦費の追加支援について総理はどういう見解を持っておられるのか、追加の追加支援について。それから、周辺国支援や開発途上国の支援につきましては、いわゆる昨年の二十億ドルの部分ですね、そういうものを新たに今から議論される中で出してくれよとなったときに一体どう対応されるのか、そういう対応する金は平成三年度のODA予算に組んであるんですかということを聞いておるんですね。はっきり答えられる話でしょう。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今、大蔵大臣がお答えしましたこの周辺国に対する援助の予算、これは最初の貢献策発表のときに二十億ドル既に表明してありまして、その中において今新たな割り振りを決めておるのですから、これが円満に消化されていくことを強く願っておりますし、その次の分につきましては、平成三年度の予算の中にそれはODAの大きな枠の中で組み込んでありますから、必要に応じてそれは出ていくものと私は考えております。  また、九十億ドルの問題も、一日も早く戦争が終わることを期待しておりますが、いつまでかかるかわからない。それからお金も、いろいろな計算の基礎をひとつアメリカから言われたのではないかということでお示しになりましたが、そのとおり進むのか進まないのかもこれは不透明なものだと私どもは思います。したがって、そういう問題を前提に置きながら現段階においてできる限りのものをまず拠出しようというので、九十億ドルの問題は当面の支援活動として決定をしたものでございまして、これがまず認めていただくことができるように、これが湾岸協力基金に拠出できるように、これに最善の努力を今続けておることでありまして、その先の問題については、今ここで、当面御議論の材料として数とかいろいろなことについて考えてはおりません。今出した九十億ドルをとにかく現実のものとして拠出して、平和活動のために寄与したい、この気持ちでいっぱいでございます。
  107. 米沢隆

    米沢委員 ということは、ペンディングだと。先のことはペンディングだ、不透明だから、そう一言お答えになればいいんですよ。  さて、新聞なんか読んでいますと、単にアメリカが戦費をくれというだけではなくて、イギリスもフランスも日本に対して欲しいと言っているんだと、現にイギリスあたりは、在日大使館を通じまして何か外務省と話し合いがあるようなないようなことが書いてありますが、このイギリスに対する援助あるいはフランスに対する援助、また場合によっては、今ドイツやEC外相会議で決まったように、イスラエルに対して、戦争をあれだけ抑止し、よく自制していただいておるという、そしてまた不当なイラクの攻撃によって約三十五億ドルの損失をこうむっておる、そこらの支援が必要ではないかという話があって、ドイツやEC等もそれに対処されておりますが、日本としてはそういうものに関心を持たないのか持つのか。イギリスが言ってきた場合どうなりますか。フランスが言ってきたらどうなりますか。イスラエルに対して関心はありませんか。もし出すとすれば九十億ドルの枠でございますか。質問はよくわかりますね。
  108. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 多国籍軍の平和回復活動に対する支援でありますから、関係国の意向等も聞きながら、大宗は米軍が行っておる行動でありますから、大宗は米軍に使われることに湾岸平和協力基金を通じてなっていくと私は思いますけれども、その他のことについてはその場において話し合いをし、運営委員会の決定によって行われるものと考えております。  なお、具体的な各国との交渉ややりとりのことについては外務大臣から答弁をいたします。
  109. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お尋ねのイスラエルにつきましては、私ども日本政府も、イスラエルが挑発に対して極めて自制的な姿勢をとっておられることに高い評価をいたしております。  他方、イスラエルはこれに対する報復攻撃を自制をされておりますけれども、このイスラエルに対しての財政援助をどうするかというお尋ねでございますけれども、現在特に考えてはおりませんが、今後とも我が国中東政策の一環としてのイスラエルとの関係強化につきまして、種々の角度から中長期的な課題として取り組んでまいる考え方でございます。  なお、先ほどお尋ねのございました先般の拠出に対する配分の状況でございますが、アメリカ合衆国が千五百八十億円、英国が六十五億円、シリアが三十五億円、エジプトが三十四億円、モロッコが五億二千万円、バングラデシュが二億二千万円、セネガルが二億二千万円、パキスタンが一億九千万円、サウジアラビアが一億一千万円、フィリピンが〇・四億円、四千万円、こういうことになっているわけでございます。  イギリスが資金面での援助に期待を表明しているのは政府承知しております。追加九十億ドルの国別配分につきましては、同基金に設けられている運営委員会において決定されることになりますが、いずれになりましても、ただいま御審議をいただいております問題が御承認をいただいた後で、平和協力基金に振り込まれた後の運営委員会での決定ということに従うことに相なろうと思っております。
  110. 米沢隆

    米沢委員 このGCCというやつですね。もともと昨年の段階で、できるならばこういう多国籍軍への支援は国連を通じてやりたい、もし国連にそういう基金があるならば一番それがベターだ、ところがそれがない、したがって、GCCというのが担ぎ出されて平和基金を設立し、そこで運営委員会で議論することになったんだけれども、どうもGCCというのは、運営委員会、運営委員会と言われますが、実際そんなに、失礼だけれども、機動的に判断できる委員会なんですか。これはほとんど日本がうまくやっておるだけじゃないですか。ただそこで、そこを通じた方がいいものだから、GCC、GCCと言っていかにもそこが権能のあるような話ばかりされますが、実際は日本政府のかいらい的なものじゃないですか、あれは。
  111. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御案内のように、GCCは八一年の五月に湾岸アラブ六カ国からできておりまして、しっかりした国際機関でございます。これは、イラン・イラク戦争を背景といたしましてこの周辺地域の情勢がいろいろ激動いたしましたので、その機会に、経済、軍事、文化等幅広い分野でこの六カ国の間で協力関係を増進していく、そしてその結束の強化を目指すということでできた国際機関でございまして、先生御案内のように、昨年九月、日本が最初の九億ドルを、このGCCと日本政府の交換公文によりまして、その下に総理が繰り返し言及しておられます湾岸平和基金というのを設けまして払い込んだ次第でございますけれども、その運用は今先生が言及されました運営委員会が当たっております。  この運営委員会は、確かにGCCの事務局長とサウジアラビアの日本国大使の二人でございますけれども、この事務局長は今私が申し上げましたGCCの六カ国、国の名前を申し上げますと、アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、バハレーンでございますが、この六カ国の代表として運営委員会に参画しております。日本の大使は無論日本の代表でございまして、この運営委員会で最初の九億ドル、それからその次の十億ドル、合わせまして十九億ドルの運営にしっかり当たっております。
  112. 米沢隆

    米沢委員 そのいわゆるGCCの運営委員会の決定に対しては、ほぼ日本政府の意向が網羅される、逆にそこは追認するようなものになっていくであろうと、私はそう想像するにかたくないと思うのですね。まあそういう意味で、GCCというものを使いながら、でき得る限り、それがもし日本政府の意向が全部伝わるものであるならば、日本政府が責任を持ってその九十億ドルの配分等について私はちゃんとやってもらいたいということを言うためにこのGCCの問題を持ち上げたわけでございます。  さて、今度はその財政支援の財源の問題等についてお尋ねしたいと思います。  政府は、この九十億ドルの財源につきましては、短期国債を発行し、そして石油臨時特別税、法人臨時特別税、たばこ臨時特別税、それぞれ四千六百億、五千九百億、千四百億、計ちょうど九十億ドルに匹敵する一兆一千九百億円の増税案をセットで提案するということを今のところ決定されていますね。  私は、大内委員長の本会議での質問等でも述べましたように、今増税を国民にお願いして、そしてこの財政支援をしようというからには、単に安易な増税ではなくて、行政そのものも骨身を削って歳出削減をし、できれば九十億ドルよりも増税の金額が少ないという状況をつくることこそ国民に説得力のある話だということを主張してきましたし、現に我々はそれを求めておるわけでございますが、今から議論があるとはいえ、出てきたものは九十億ドルとんとんの話ですね。全然、行政改革や行財政のいわゆる経費の削減等に努力はするとはいいながら、数字には何にも出てこない。全く不満でございます。一体、これはどういうことですか。
  113. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から御指摘を受けましたけれども、政府として安易に増税にと言われました点につきましては、私は大変情けない思いで拝聴をいたしておりました。私ども、ただ単に安易なと、そんなつもりでこれを考えたつもりはございません。そしてまた、行財政改革の努力ということについての御指摘でありますけれども、行財政改革の努力というものは今回に限らずふだん政府が持たなければならないことであります。そして毎年の予算編成の過程におきましても、また執行過程におきましても最大限の努力を払ってまいったつもりであります。今まで本院におきましても、概算要求基準が厳し過ぎる、あるいはゼロ・シーリング、マイナス・シーリングというやり方については、むしろもっとふやすべきだという御意見もありました中で、政府はある意味ではかたくななまでにそうした姿勢を守ってまいりました。そしてようやく赤字公債依存体質から脱却するところまでこぎつけてきた今日であり、その中において安易にと言われることにつきましては、私は大変残念な思いがいたします。  確かに今回、この湾岸の戦闘勃発という情勢の中で、多額の平和回復努力に対する資金拠出を日本政府として決断をしました中で、私どもはこれを増税という形で国民にお願いを申し上げるという、本当に苦渋に満ちた決断をいたしました。しかし、それは、少なくとも私どもは、平成三年度の予算編成におきましても、各省庁そのものの非常に厳しい中での要求をさらに精査に精査を重ねた上で平成三年度予算というものを編成してまいったつもりであります。そして、少なくとも不要不急の経費を平成三年度予算の中に私どもは組み込んでおるつもりはございません。  また、この二年度の補正予算(第2号)というものを御審議をいただきます際に、当然のことながら二年度予算の既定経費の見直しという御意見も出るでありましょう。昨年十二月に補正予算(第1号)を御審議いただきました際にも御説明をいたしましたとおり、例年に比べまして、既に昨年十二月の補正予算策定の際に既定経費の見直しにつきましては、通常の年の五割増し近い歳出を削減をし、編成をいたしてまいりました。  既に二年度予算の終期も近づいている時期におきまして、今般の追加支援に必要となる財源を捻出するということは事実上なかなか困難なことがございます。個別の、例えば委員から項目の御指摘をいただきますならば、それについて私どもなりにこう考えておりますという実情を申し上げることに決してやぶさかではありませんけれども、私どもが安易な気持ちで増税をお願いしたのではないということは御理解をいただきたいと思います。仮に我々が安易な道をとろうとするならば、御論議がいかになるかは別といたしまして、赤字公債を再び発行するという選択肢はあったはずであります。しかし、今日いかにして国債残高の累増を防ぐかという、私どもには一つの至上命題が課せられております。百六十八兆に上る国債残高を考えますときに、これ以上子供たち、孫たちの世代に負担を安易にお願いをするということはいかがなものでありましょうか。  そうなりますと、仮にこの九十億ドルの支出をお認めをいただけるとするならば、私どもの世代においてその財源というものもまたつくり出していかなければなりません。そうした中で、国民に御理解のいただきやすいテーマ、また、直接国民生活の中で御理解をいただきやすいテーマ、いろいろなことを考えまして私どもとしてはこの案を御審議を願いたいと考えておるわけでありまして、その平成三年度の税収を見合いにしてこの二年度においてはつなぎの国債を発行するという、TBを発行するという選択をいたしたということであります。
  114. 米沢隆

    米沢委員 私が安易だと言うのは、少なくとも行政経費の削減等に努力をしなければならぬ、したいと言いながらとんとんの増税の案を出すということ、それを安易だと言うておるのです。行政経費の削減等について、もし本当に努力目標があるならば、私は、短期国債は九十億ドルであっても、実際は増税の部分は、増税でいただく分はその三分の二とか半分だとか、そういう一つの枠をつくって、それを今我々が政府として姿勢を示す努力目標として、この分はマイナスになっておりますがこれから一生懸命頑張りますと言うのが本当ではないか。そういう策をとらないことが私は安易だ、こう申し上げておるわけでございます。どうですか。
  115. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員が御指摘になろうとするお気持ちが理解できないわけではありません。現にきょう、たまたま私は愛知県の竜南中学という中学校の生徒さん、一クラス全員からの今回の事態に対する御意見をちょうだいをいたしました。その中には、私どものとりました対策に賛成、反対、さまざまな御意見があります。そして中学生なりに真剣に検討した、考えた意見と、私は大変それをうれしく読んでおりました。その中に、政治家自身ももっと努力することがあるだろうというような大変厳しい指摘もございました。これも私は謙虚に耳を傾けなければならないことと思います。  しかし同時に、御理解をいただきたいことは、この平成三年度の予算自体につきまして、国債費が二割を超える状況の中におき、一般歳出につきましてもむしろもっと増額をというお声を各方面からいただきながら、我々は非常に厳しい査定をしてまいったつもりであります。そして、一方では高齢化社会というものをにらみながら、社会保障あるいは福祉関係というものにつぎ込んでおります費用をこの事態の中で減額することはできないと私は考えます。  また、例えば二十一世紀までの間に私どもの生活環境の質を高めろという御指摘はしばしばございましたけれども、公共投資基本計画の中において、その初年度として積み上げてまいりましたものを安易に削るということにも問題はありましょう。  また、しばしば御論議のあります防衛費につきましても、新しい中期防をお調べをいただきますならば、先般来御審議をいただき、御論議をいただいております例えば戦車の数は、大綱の水準を概成いたしました後、次の五カ年間においては減少させております。あるいは艦艇にいたしましても減少させております。そして、平成三年度の例えば防衛庁の予算にいたしましても、例えば前の契約を引き続いてきて支払わなければならない経費でありますとか人件費、糧食費といったもの、あるいはどうしても湾岸の事態の中から原油価格が上がりまして燃料費等がかさんでまいりましたもの、こうしたものを除いてお考えをいただきますと、少しふえた形になっておりますが、実質的にそこを見ていただければ、駐留軍経費の増を減らしますと、防衛費の減額をいたしております。  三年度予算の編成に当たり、私どもはそれだけの切実さを感じながら査定をしてまいったつもりでありまして、御指摘があり、例えばこうした項目について削減を検討しろという御指示がありますならば私どもは真剣に検討いたしますけれども、少なくとも、私どもは政府として野方図な財政を行っておるつもりはないということだけは御理解をいただきたいと思います。
  116. 米沢隆

    米沢委員 予算をつくる場合に、それぞれもっと欲しい、もっと欲しいの理想があって、それには金がついていきませんから我慢してくれ、我慢してくれで組んで、それからまた削れと言われるのはせつないと。そんなの常識でわかりますよ、よく。しかし、この緊急事態において国民に増税をお願いするならば、もっと政府としても、そういう事情をわかる中でもっと何か削るようなものを考えることが政府の姿勢ではないかと言うておるのです。その基本姿勢を問うておるわけであって、無理でございます、無理でございますというのをだらだらと聞くようなつもりで質問しておるのじゃない、そんなのは。総理、あなたの姿勢だ。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 行政経費の節約とか政府自体がいろいろなところで見直しの努力を厳しくしていけ、その心持ちを持ち続けながら今後いたします。同時にまた、それらの問題についてなおぎりぎりの努力をした後でも努力をする余地がないかということは、担当各省とよく具体的に研究を進めてまいります。
  118. 米沢隆

    米沢委員 今大蔵大臣の話を聞いておると、全然行政経費の削減はできませんから、しません、だから今の案でそのままでいきますということですね、これは。
  119. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はそこまで思い上がった答弁をいたしておるつもりはありません。しかし、政府として少なくとも最善を尽くした三年度予算を今国会に御提案を申し上げ、御審議をいただいているという事実の上に立ったお答えを申し上げております。
  120. 米沢隆

    米沢委員 確かに平成三年度予算はまだ今から審議だ、審議もせぬうちにあれを削れ、これを削れはできない、通ったならばまだ削りようもあるという話も聞こえるのですが、そのときに今増税として出しておる部分をちょっとは削るということを考えてもいいですよというふうに聞こえるのですが、そういうことですか。
  121. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、この湾岸に対する多国籍軍資金協力につきましての補正予算は現在鋭意作成中であります。関連法案をあわせまして本院に御提出、御審議を願えますのは恐らく二月の二十日ごろになろうかと存じます。これが成立をさせていただき、平成三年度予算が成立をさせていただきました後、どういう努力ができるか、これは本当に私として今お答えのできることではありませんで、いずれにしても、行政経費の節減、行財政の改革の視点というものは今日までも私どもは持ち続けてきたつもりでありますし、そして平成二年度の予算の中におきまして補正予算(第1号)を御提案いたしますときには、通常の年の五割増しに近い節減を現にいたし、政府として国会にその姿勢をお示しをいたし、御賛同を得ました。平成三年度以降におきましても、不断に節約の努力をいたすということについては当然のことであると考えております。
  122. 米沢隆

    米沢委員 けさの新聞なんか読みますと、今増税案と短期国債の部分とセットになっておるが、あれを切り離すというような話があるのだけれども、あれはその気があるのですか。
  123. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はその新聞が報じておられる記事も拝見をいたしました。しかし、今回の多国籍軍に対する資金協力と申しますものの性格から、先ほど申し上げましたように、私は後世代に負担を残すべき性格のものではないと考えております。そして、それは確かに短期の国債、つなぎ国債としてTBを発行させていただくわけでありますから、その部分が通過、成立をさせていただけるならば、それなりに資金の手当てはできましょう。しかし、その返済の財源というものを切り離しましたときに、将来に赤字国債、今まで私たちがその発行をとめるべく努力し、今その残高の累増に苦しんでおりますものと同じような結果を生むことは耐えられません。私どもとしては、財源としての新しい臨時の税とそしてこの臨時の税収が入ってまいりますまでの間のつなぎ国債の案というものはセットのものと、少なくとも私はそう考えております。
  124. 米沢隆

    米沢委員 いろいろとその財源に関してこういうものの努力があるではないかという議論はあると思いますが、我々は、少なくとも平成三年度予算において.やはり節約、不要経費の削減をすることが政府の姿勢としてやっていかねばならぬ、いただかねばならぬ問題である。確かに毎年毎年積み重ねての予算でございますからという話はよくわかりますが、同時に、今日まで毎年そのような節約したり不用額を出すという実績もあるわけですから、今回に限り積み重ね積み重ねでもう一銭もこんなのは削減できないのだというのは詭弁だと私は思います。昭和六十二年にも千四百三十九億円、昭和六十三年は千七百十九億円、平成元年度は千六百九十四億円、平成二年度は二千四百一億円、先般節約、不用額をカットされたわけでございまして、そういう意味では努力目標として、これを平均いたしますと、大体一般会計の〇・三%くらいは、大変御苦労ではあるけれども、努力をされて出されておるという実績があるのですから、ここらにも私は財源はあると思っております。  あるいはまた、一つのこれは問題提起でございますが、消費税の欠陥是正ですね。まあ、長いこと与野党テーブルを囲んで、さてどうするかという議論をしてまいりました。特に益税みたいなものは、本当は国民が消費税として払っても、それが国税庁には届かない。それも、全くその部分も問題ではないか、それが消費税の最大の欠点だと言われた。そういう益税あたりも、もしこの欠陥是正をするならば四千八百億円ある。もっとこれは大きくなっておるかもしれない。あるいは与野党で合意いたしました仕入れ控除の圧縮、これでも大体二千八百億円ぐらいある。だから、欠陥消費税を是正するだけでも、本当は入らなかったものが、これがみんな宙に浮いておったものが当たり前のごとくに入ってきて自然増収となり、その分だけでも五、六千億あるという計算なんかはされないのでしょうか。
  125. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員から消費税の見直しについての御提起をちょうだいをいたしました。私どもといたしましては、委員も御記憶のとおり、昨年政府として消費税の見直しについての考えをまとめ、法律案として国会に御提案をいたしました。一院は通過をさせていただきましたが、他の院においてこれは廃案となりました。同時に野党が提出をされました御意見というものも同様の運命であったわけであります。そして、その結果として、両院の意思として合同の御論議の場が生まれ、そして国会の御意思によってこれを決するということになり、私どもは今日までその御論議というものをずっと待ち続けております。そして、院の御意思としてその消費税の見直しの内容が確定をいたしました場合、私どもとしては、消費税というものが国民により定着、受け入れていただけることを心から願っておりますけれども、そうした視点から見直しの考え方というものをおまとめいただきました場合には、これに対しては誠実、迅速に対応いたしますということも繰り返し申し上げております。いわば消費税の見直しというものを院が院の意思として行うということを決せられました以上、私どもとしてその結果を待つという以上の姿勢のとりようがございません。そして、その院の御意思をそんたくしながら、それを財源の中に組み入れて考えるほど私は思い上がってはおらないつもりであります。
  126. 米沢隆

    米沢委員 今回政府の提案の中で石油税の増税がありますね。また、一番話の突端、その話が出てくる前後の話の中で情けなかったのは、経済界の偉い人が、この中東湾岸戦争は油の戦争だ、したがって石油税から取ればいいじゃないかというまさに安易で軽薄な短絡的な議論をされた。結果として石油税が指名されたとはいえ、最初の段階で、中東湾岸戦争というのは、我々としては、中東に七割を依存する日本としては、石油の話なんだから石油税から取ればいいじゃないか。ふざけるんじゃないと私は本当に思いましたね。そんな話をするから、いかにも日本は石油のために戦っておるとか石油のために貢献しておるとか、だからアメリカの人は、石油のために戦う、我々は血を流したくはないと言い、反戦運動家も石油のためになぜ我々は血を流すかと言い、いかにも外から見たら日本の考えるようなことだと。まさにエコノミックアニマルの発想の延長だと私は思いましたね、本当に。  そういう、まさに日本経済界を代表している人やあるいはその周辺、あるいは政府の中からも、石油税でいいではないかという議論の一つの背景に、中東は石油の問題、だから石油を守るために我々石油税から増税だなんという。そんなはずじゃなかったでしょう。確かに我々の国益に通ずるものではあるにせよ、平和回復活動のために、国際の正義のために戦っておるんだ、だから我々は追加支援するんだということなんですから、私は、余り石油というものを一つの名目にして、だから石油税なんという議論をしてもらいたくない。一切そんな議論をしてもらいたくない。アメリカの皆さんが、なぜ石油のために戦わねばならぬのだ、石油といったら日本だ、なぜ日本のために戦わねばならぬのだ、そういう背景につながっていくということを私は恐れるものでございます。  そういう意味で、総理として、なぜ石油税を採択したのか、その部分をはっきりしてもらいたい。
  127. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 おっしゃるとおり、私も初めから、国際の大義のために平和回復活動が行われる、それを支援するために日本はできる限りのことをするのだと、それを繰り返し繰り返し言い続けてまいりました。そうして同時に、今平和な中で生活をしながら、世界のこの秩序の中で、安定した秩序の中で生きてきた日本としては、今日に生きる我々がその応分の負担をする以上、皆で支えて皆で負担をしていこうという、そういった基本を最初に考えたわけであります。  後世にツケを回すような赤字公債に安易に頼らない、せっかくきょうまで努力をしてきたこの道は守っていこう、そこで、負担をしていただくためにいろいろな問題を考えたわけでございます。初めに、おっしゃるようなそういう安易な考え方で私どもが決めてきたわけではございません。  内容については大蔵大臣から答弁してもらいます。
  128. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私どもは、今回国民の御理解と御協力を得て、この追加支援の財源というものを新たな臨時的な税制上の措置というものを基本に考えてまいりました。  その際、新たに御負担をいただくことになります増税項目の検討に当たりましては、さまざまなものをその検討の俎上にのせてまいったことも事実であります。そして、臨時的に国民に広く御負担をお願いをするという基本的な考え方を踏まえた上で、所要財源の規模というものを念頭に置きながら、一つは国民の御協力を得ていく上でわかりやすい内容であること、また、国民生活に与える影響などという視点ももちろんありましたし、税収確保の確実性や納税者の便宜といった視点をも考えましたあげく、石油臨時特別税、法人臨時特別税、そしてたばこ臨時特別税というものを考えたわけでございます。  なお細かく申し上げるならば――申し上げますか。いいですか。では、ここでとめますけれども、私どもなりにいろいろなものを考えたあげく、今申し上げたような視点でこれらの税目を選んだということであります。
  129. 米沢隆

    米沢委員 今度の例えば石油税や法人税や、臨時特別税という、これは(仮称)と書いてありますが、官僚的な言葉があるのですが、私は湾岸協力税とすべきだと思いますね。転嫁をスムーズにやる場合にも、戦争が終わった場合にぱちっとその転嫁をのけるときにも、のど元過ぎれば熱さ忘れるという話がありますが、こういうややこしい何とか特別税、臨時特別税なんというのは、国民にわかりにくい、本当に。私は湾岸協力税と名称を改めるべきだ。  同時に、我々はしょっちゅう言っておりますが、石油税のタックス・オン・タックスは排除してもらいたい。それぐらいの配慮はあってしかるべきだと思うのですが、大蔵大臣。通産大臣も何か所見があればどうぞ。
  130. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 先ほどから米沢委員のお話を聞いておりまして、大変にむしろ教えられるものがございました。  同時に、考え方、コンセプトのみならず、グローバルな世界的な見地というものは全く御指摘のとおりでございまして、石油の税を取ることにいたしましても、私はその業界の責任者といたしましても、そのようないたずらな言葉を連ねたような人に対しては厳重に私は忠告も発したいと思うくらいの気持ちでございます。すなわち、ノー・ブラッド・フォア・オイルといいましょうか、オイルのために血を流すんじゃないんだというアメリカの気持ち、これは共通して世界を愛する、世界の平和をあるいは秩序を愛するという人間の当たり前の根性であろうと思うのでございます。  タックス・オン・タックスの問題点もございましたが、そういう意味におきましては、これは、石油の臨時特別法におきましては、その負担は痛みを確かに伴います。しかし、これはもう随時的なものでございますから、したがって、また国際正義の観点から行うことは先ほど御指摘申し上げたとおりでございますし、そういう点では広く、しかもなおかつ今度の場合は深くやったらばこれはまた皆さん方に大きなバードンになりますから浅く、これを広く国民の各位に求めるということにおいて考えているわけでございまして、また具体的な内容につきましてはそれぞれの当局からも御答弁がありましょうけれども、そのような形で対応したい、こう思っておる次第でございます。
  131. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、湾岸協力税という名称という御意見をいただきました。私は必ずしも名称にこだわるものではございませんし、今回の三つの分野における臨時税というものがそれぞれその湾岸協力税という名前になりましても、それは必ずしも問題はないのかもしれないと思います。しかし逆に、例えば税目として石油あるいは法人、たばこというものを考えた上でそれぞれその湾岸協力税という名前を付しますことは、かえって混乱が生ずるもとになるのではないかという感じがいたします。そして、全く別種の税を考えろということでありますならば、これはちょっと私どもとして今考えてまいっている内容ではございません。  また、タックス・オン・タックス、こういう御指摘でありますけれども、石油税あるいはたばこ税などの個別間接税と申しますものは販売価格の構成要素でありますから、消費税のような一般的な間接税はその販売価格に対して課税されるもの、この取り扱いというものは諸外国の間接税、個別間接税と一般的な間接税におきましても通例でありまして、今回の石油臨時特別税及びたばこ臨時特別税の御負担をお願いをいたします場合にありましても、これら個別間接税を含め価格に消費税は課税されることになるわけであります。  いずれにいたしましても、今般決定いたしました湾岸平和基金に対します追加支援の財源措置というものにつきましては、私どもは、従来の特例公債によることなく、新たに臨時的な税制上の措置を講ずることを基本としたところでありまして、国民の皆様方に広く御負担を求めるということになるわけでありますが、今国際社会の中におきまして我が国の国民があまねく平和を享受している、こうしたことにかんがみまして、御理解と御協力を心から願っておる次第であります。
  132. 米沢隆

    米沢委員 次は、避難民輸送自衛隊機使用の件についてお尋ねをいたします。  御案内のとおり、この湾岸戦争によりまして数十万から百万単位の大量の避難民が発生するかもしれないということが憂慮されております。私は、こうした情勢の中で我が国が人道主義の立場に立って非軍事・民生面でかかる避難民の救済と輸送活動を率先して行うことは、我が国が果たさなければならない重要な国際協力の一つだと思います。  既に我が国は民間航空機を使って東南アジアの避難民輸送し、国際的に好評を得ておりますが、この延長線上に、今回政府は、人道的見地から、国連の避難民救済関係機関の要請を受け、自衛隊輸送機を使う方針を決定されました。民間機をお願いしてもできない場合、避難民輸送という業務を完結させるため場合によっては自衛隊機輸送機を使おうという方針は、万やむを得ざる措置として私は了といたします。しかし、人道的目的であるにせよ、初めてこの自衛隊機輸送機を海外に派遣しようという重要な問題を決定するに当たって、法改正の要らない、政府の考えだけで自由にやれる政令で処理するという考え方や政府の姿勢が私は納得できません。特に、シビリアンコントロールの関係からも非常に大きな問題だと言わざるを得ないのであります。  この自衛隊機の海外派遣の法的根拠を求めるに当たりまして、例によって政府は二転三転されました。そして、結果的には自衛法百条の五に基づく自衛隊法施行令百二十六条の十六を改正して特別政令を新設して落着したわけでございます。しかし、それを決めたその同じ日に、これもよくここで議論になりましたが、総理自衛隊法を変えるのが筋だと言われ、また一悶着を起こしたそうでございます。(海部内閣総理大臣「言っていません」と呼ぶ)本当なんです、それは。同じ日に総理が言われた、自衛隊法を変えるのが筋だというのが本当は筋なんですね。避難民救済のため自衛隊の皆さん方に重要な任務を担っていただくというならば、やっぱり自衛隊法を改正するのが当然のことだと私は思います。ために、いわゆる自衛隊機派遣をするのが嫌で、自衛隊法を早く改正して、どうせその法律は通らぬだろうからつぶしてやろうなんという意地悪な理屈を言うておるんじゃありません。基本的な気持ちとして、あなたは自衛隊法の改正をしてこういうものには対処するのが法治国家の宰相としては必要なことだということを私は訴えたいのであります。総理、どうですか。
  133. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回この問題に対応しようとするのは、IOMから要請があって、民間機軍用機の提供の要請を受けられたときに、私の方では最初からきちっと調べて百条の五でいくべきだと決めて、そして政令をつくるということで、その日のうちにその判断を示し、一貫してその作業を続けてきたところでございます。  委員が今法律改正でやるべきだという御意見をお述べをいただきました。私は、そういうお考えのあることもよく承知はいたしております。ただ、法律にすべて何もよりどころ、根拠がない場合には当然そうしなければならないでしょうが、自衛隊法の第百条の五というところにこれも規定がございまして、「政令で定める者の輸送を行うことができる。」こうなっておりますから、当初から政府の今回の根拠は、この百条の五において授権の範囲内における政令をつくることが今回のIOMの要望にこたえることのできる一番筋道として早い確実なものである、政府の責任でできるということで、したわけでございます。
  134. 米沢隆

    米沢委員 全然今までの動きを知らなかった人が総理の答弁を聞くと、ああそうかなと素直に私は聞くと思いますね。いかにも正論に見えるけれども、あの二転三転されたのは一体何だったのか。このねじれ国会を見る限り、政令でなければならなかったんでしょう。そこから本当は始まったのだと僕たちは思いますよ。そして二転三転して、特別に政令をつくるということで決着をする、本当は筋道としてはそういうのが――本当は国民はもうわかっておる、それは。しかし、それをいかにも正論らしく、法律があったんだからそこを政令を変えてこうしましたなんという議論は、いかにも国民に対する説得力がないんですよ、本当言うて。私はこういう大事なことこそ、それほど、自衛隊機派遣するというのは本当に国民的には非常にセンシティブな問題ですから、また初めてそれをやらせようというのだから、せめてそのあたりは堂々と国会で議論するようなことがあって初めてあなたは宰相なんだ。ところが、まあねじれもある、急がにゃいかぬ、それならば政令でまずどこか探さなければいかぬといって、おたおたして出てきたんでしょう、これは。  私は共通して言えることは、そういう今までのやり方ですね。そのことがいかに日本の戦後の安全保障論議や防衛論議や、いかに不毛な論議を生む土壌をつくってきたか、そのあたりを本当は考えてもらわなければいかぬのです。単に自衛隊機そのものを派遣しようという、だからただ政令をうまくやったからそれで行けるんですという、そんなのっぺらぼうな議論ではなくて、深い議論を、洞察をする限り、いつも政府は、何か困るときにはいつもこうこうこうして、こう次から次に取り繕いながらやってきた。それがもう、日本の安全保障や防衛を考える、あるいはまたそれを論議する場合にいかに大きなダメージを与えておるか。防衛庁長官、そんなふうに感じませんか。
  135. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま米沢委員御指摘の点でございますけれども、私どもは、今回の緊急事態に際しまして、全く人道的な見地から、そうして非軍事的な形態で、しかも国連から委任を受けた国際機関の要請に応じて、必要があれば自衛隊輸送機避難民輸送する、こういったことにつきまして、委員もその実態としての必要性をお認めいただきましたことは、私どもも深く御理解をいただいたと感ずるところでございます。  さて、それを実行していく上におきまして、堂堂と自衛隊法の改正をやるべきじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、先ほど総理から御答弁がございましたように、また、ここ数日来政府側から繰り返し答弁しておりますように、私どもは、今回の自衛隊輸送機派遣ということがございましても、これは憲法上は何ら問題がない、これは大前提でございます。そうしてまた、現在法律において授権をされている範囲内で行政府の判断において対応できるものである。こういったことで政令を制定して対応しているところでございますので、私どもは今回の事態に対応して、適切な、また、胸を張った対応をしておる、こう考えております。  したがいまして、自衛隊のあり方につきましても、先生御指摘のように、いろいろな声がこれまであったことは事実でございますが、今回の件に関する限り、私どもは、現在の国際的な情勢の中で日本として何かやっていかなくちゃいけない、そうしてそういった中で我々自衛隊の方にこういった役割をということを果たしてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  136. 米沢隆

    米沢委員 ここでもいろいろと議論がありました。私は大変問題だと思いますのは、自衛隊法第百条の五の性格の問題だと思います。御案内のとおり、自衛隊の任務については、第一章の「総則」第三条に、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」主たる任務とし、「必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」と規定されております。第百条の五というのは、第八章の「雑則」に規定されているわけでありまして、少なくとも自衛隊を、主たる任務だから頑張ってくれじゃなくて、従たる任務、まあこんなことが起こりましたから何とか頼みますわぐらいの任務という規定の仕方しかこれはできないのです。それで防衛庁長官、胸を張って自衛隊の皆さん頼むと本当に言えるのですか、気持ちの底から。そこを私は問いかけたいのです。
  137. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、自衛隊の主たる任務は我が国の防衛でございます。我が国の安全を保障していくということでございます。そうして、そういった主たる任務を果たしながら、また一方において付加的な役割も果たしていくということが自衛隊法の中にあるわけでございまして、百条の五もそういった自衛隊の職務の一つであろう、こう考えております。  私が胸を張ってと申しましたのは、そういった我が国の、我が国自体の防衛をするという自衛隊の主たる任務ではございませんが、今回のような湾岸情勢の中で、我が国としてそれなりの役割を果たしていかなくてはならない、そういうことで資金面の協力もしておりますし、また、民間航空機による避難民輸送も行われたわけでございますが、そういったもので対応できないケースが出てきた場合に、国際機関からの要請に応じて、必要に応じ我々自衛隊がそういった役割を果たしていくということでございますならば、自衛隊法に規定される主たる任務ではないといたしましても、そういった任務に当たる自衛隊員は、それだけの自負とそうして自信を持って、しっかりと任務を果たすに違いない、このように信じている次第でございます。
  138. 米沢隆

    米沢委員 この百条の五が決まりました経緯等については再々ここで議論になっておりますから、私は割愛をさしていただきたいと思うのです。ただ、法制局長官、いわゆる在外邦人の救出とか緊急援助隊は含まれていませんという、そういう答弁の中で、結局、今回のような臨時応急的な場合を想定したものではないとして、一般的な任務では法改正が必要で、臨時的な任務では要らないと説明をされました。しかし、翻って考えてみますと、国際緊急援助を行うための国際緊急援助隊派遣法、これもまさに国際的に緊急だといってつくったのですが、このときはちゃんと、臨時応急的なものでございましたが、法律をつくってあるのですね。  そのときは、まだ自衛隊はまさに軍事活動ではない、自然災害等に協力するために自衛隊の皆さんに汗をかいてもらうことも必要ではないかという我々の主張は残念ながら受け入れられませんで、絶対に自衛隊派遣しないんだとおっしゃった。そういう話と全然矛盾していくんじゃないですか、この話は。
  139. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊法の百条の五関係につきましては、もうこれまで繰り返し御答弁申し上げておりますので、細かくは省略させていただきますが、要するに、百条の五、一項で政令委任がされている。そして、今回の政令というのは湾岸危機という、そういう緊急事態からということで、先ほど総理あるいは防衛庁長官からお答えがあったようなそういう事態のときに、そういう事態に置かれた避難民自衛隊輸送機によって輸送することはできるものとして定められるので、それは政令のいわゆる授権範囲内である、かようにお答えしているところでございます。  今お尋ねの国際緊急援助隊の方でございますが、国際緊急援助隊と申しますのは、いわゆる被災国政府等からの要請があって外務大臣が必要と認めたときには、その被災国政府等がどこで、どういう国であるか、主として開発途上国というふうに法律にも書いてございますけれども、そういう被災国政府等がいずれであるかを問わずに、国際緊急援助隊という組織をもってそういうことで派遣し得る組織なり手続なり、そういう仕組みを定めたものでございます。そういう意味で、今回のものとは違っておりますし、私、決してこれまでの答弁でも、臨時応急だから政令でできるのだとか、臨時応急だから法律改正せずにできるのだとか、そういうふうなことでお答え申し上げたつもりはございませんで、むしろそういう臨時応急に運ばなければならないというのは、国がそういう輸送をしなければならない必要性、こういうものに合致するので、そういうものに合致すればいわば百条の五で考えている航空機による人の輸送、こういう概念の中に入ってくるであろう、かけ離れたものではない、こういうふうな論理で御説明申し上げているつもりでございます。決して臨時応急だから政令でできるんだとか、さようなことを申し上げていることではございません。御理解いただきたいと思います。
  140. 米沢隆

    米沢委員 自衛隊機派遣に関連しまして、また昨年と同じように武器の携行の問題がいろいろと取りざたされております。  防衛庁長官にお伺いしたいのは、いわゆる身を守るための自衛上の防御のための武器の携行と自衛隊輸送機の安全性という意味からの問題と、あるいはまた、大変、今まで行ったことのないところに行って、またそういう砂漠の上で使用するような仕様でできていない自衛隊機でやるわけですから、いろいろな難しい問題があると聞いておりますが、そのあたりを含めて、今防衛庁長官としてどのような見解を持って対処されようとしているのか、聞かしてもらいたい。
  141. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、もし具体的な要請があり、我々自衛隊輸送機がこの任務に当たるということになりますと、やはりその安全に十分な配慮をしなくてはいけないのは当然のことでございます。それも御指摘のように、その任務に当たります自衛隊の隊員の身の安全、あるいはその輸送の任に当たります航空機の安全、これもございますが、とりわけ今回の任務と申しますのは避難民の方々を輸送するということでございますから、その避難民の方々を安全にお運びするという、この観点からも安全対策には十二分な配慮をしてまいらなくてはならない、こう考えております。  しかし、その安全対策と申しますのはいろいろな観点からなされるべきものでございまして、具体的にその移送、輸送を行う状況がどうであるかということも判断しなくてはいけませんし、そうしてまた、恐らく今回の場合その安全の面で一番注意しなくてはいけないのは、テロとかゲリラとかそういうものが紛れ込む可能性がある、これだと思いますので、そういった観点から申しますと、具体的に、その避難民の方々を輸送するときの事前の十分なチェックということもやらなくてはいけないと思います。  さて、そうして、そういったいろいろな安全対策の中で御指摘のような面でどう対応するかということでございますが、これは、具体的に我々がそういった任務に当たることになりました場合に、その状況をいろいろ調査いたしまして、そうして各面の安全対策をどのように組み合わせていくか、こういうことで判断してまいりたい、こう考えておりまして、現在の時点で御指摘のような面でどのようなものを準備するとかしないとかということは、ちょっと答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  142. 米沢隆

    米沢委員 まあ、率直なところそういうことかなと思いますので、深追いはいたしません。  次は、医療団派遣の問題でございます。政府は、昨年の八月、多国籍軍への人的貢献策として百人をめどとした医療班の派遣を打ち出しました。その先遣隊十七人がサウジアラビア東部のダーラン近くのアル・コバルなど、約一カ月間滞在されて努力をなされた、そして昨年の十一月は第二陣も行かれたと聞きます。  さて、その後この医療班の派遣は今一体どうなっておるのか。今回の貢献策にはどこにも書いてありません。完全に外されているわけであります。政府の国際的公約とも受けとめられかねないこういう問題がさたやみになろうとしておりますが、内部事情もいろいろありましょうが、余りにも情けない話ではないか、そう思います。  仄聞するところ、いろいろと、開戦前夜にこんなことがあった、十七日の湾岸危機対策本部の第一回会合においてどうだこうだという話があります。医療団派遣を入れようか、盛り込もうか、いやよせ、首相サイドからはいつ実現するかわからぬから削ろうと、こうなった、いかにも情けない話に聞こえてくるのでございますが、総理でも、外務大臣でも、いろいろとお医者さんの募集で苦労されておる厚生大臣でも、それぞれの立場から御答弁いただきましょうか。
  143. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お示しになりましたことはちょっとそのとおりではございませんので私から率直に申し上げますが、医療班を編成して派遣をし、お願いをして派遣してある先へ私自身もサウジアラビアで派遣班とお目にかかっていろいろ話を聞いてきました。またヨルダンの難民キャンプの方へも先遣隊の一部が回って実態調査もしてもらいました。私もそこへも行ってまいりました。既にそこに医療の手当てがしてあるからそこでは必要がないという場所もございました。同時にまた、我が方の準備対応できる問題と現地要請する問題との間に食い違いがあったことも、これは事実でございました。例えば長期滞在するのか、一定の期間で交代になるのかとか、いろいろな問題がありました。現実の問題として、ただいま先遣隊の一名が、サウジアラビアで引き続いてどのような需要があり、どのような分野で協力できるかということについての調査、連絡をしておるということでございます。  引き続いて外務大臣、厚生大臣、文部大臣等にも医療団の派遣のことについてはどのようなことができるのか、一人一人に当たってでもこれは要請をして、相手方の要請に合うような医療班が出ていくように努力をしておるところでございます。
  144. 中山太郎

    ○中山国務大臣 昨年、医療団を派遣するということで先遣隊をまず出しましたが、サウジアラビア政府の考え方、また我が方の考え方の間に大きな差があるということが先遣隊の調査で明確になったわけでございます。当時まだ戦争状態はなく、日本の医療団としてはアル・コバルにいわゆるメディカルセンターといいますか、診療所をつくるということしか当時方法がなかったわけでありまして、その診療所の認可基準というものがサウジアラビア政府の保健省の基準が非常に厳しいために、日本政府が考えておりましたドクターの構成等の要素がなかなか満たされないということで、この認可がなかなか取れない。また、後続する医師たちが、いつ戦争があるかわからないというようなところに出かけるということについてのいわゆる一つの逡巡があったことも事実でございます。また、向こうの要請する整形外科あるいは頭部外科の専門家を入れていないと困る、あるいは最低の滞在期間が三カ月、あるいは語学の問題、このような問題の難しい条件の中で大変困惑をいたしまして、第二次まで出しましたけれども、結局私はそこで決断をいたし、日本の医療関係機関の長を二十団体外務省にお集まりをいただきまして、二回にわたって各人から御意見を聴取をいたしました。そこでいろんな御意見が出ましたが、それぞれの責任者は、戦争のあるところに自分の部下を行けということを命令することは非常に難しいという御意見を持った方がほとんどでございましたし、また、チームでないとそのような場所での医療活動は不適格であるという御意見がございました。  そういう判断の中で、今回の医師派遣の問題につきましても、改めてこの難民といったような一つの対象が明確な対象の場合、その場合には派遣できるのではないか。一切戦闘行為のあるところには行かずに、いわゆる難を避けて集まってきて、祖国に帰れなくてテントの中で苦労している人たちの医療をやるという場合には、医師としての参加者があるのではないかということで、厚生大臣、文部大臣、自治大臣と御協議を申し上げて、現在それぞれ、所管の関連の医療機関にこの希望者についての意見を調査をお願いしている、このような段階でございます。
  145. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  総理及び外務大臣からお答え申し上げたことが全体の状況でございますが、当省といたしましては、外務省、文部省、あるいはまた自治省等と連絡をとりながら、さらに具体的に各医師団のそれぞれの段階に連絡をとりました。主要な国立病院長、それから全国の療養所長、さらにはまた各医務局長会議を招集するといういろいろな手だてを通じまして、それぞれの医師の方々、あるいは看護職の方々、その他の方々の具体的な御意向を確かめるために今日まで努力をしてまいりました。  その結果は、当省に関する限りで申し上げれば、医師団といたしましては数チームも編成することができる方の御返事を一応いただきました。しかしながら、チームを編成するにつきましては、医師だけのことでは編成はできません。さらに専門職、あるいはまた看護関係の方々の御協力も得なければなりませんので、その点につきましてまだ十分なる回答をいただいておりませんので、今日までのところの状況を申し上げれば以上のような形になっておるわけで、さらに努力をしておる次第でございます。
  146. 米沢隆

    米沢委員 いろいろと難しいものはあると思いますが、医師団の派遣というのは当初から我が国が国際公約したようなものでございますので、ぜひそれが実現されるように格段の努力を願いたいと思います。  あと五分しか残されておりません。土地税制の問題についていろいろと議論をしたかったのでございますが、余り時間もありませんので、その土地税制の中の一つ、買いかえ特例の問題でひとつ御見解を伺っておきたいと存じます。  今回の土地税制改革では、土地の資産としての有利性を減殺するために、土地の保有と譲渡に係る税を強化するとともに、買いかえ特例措置の整理を行うという案が出されております。買いかえ特例措置の経過についてはもう言うまでもありませんが、このうち本日私が問題にしたいのは、弱い立場の事業者に重大な影響を与えるであろうと思われる、今回の長期所有土地から減価償却資産への買いかえ特例措置を廃止するという問題でございます。  現行の制度では、十年を超えて所有していた土地を譲渡した場合には、地域に関係なしに建物や機械等の減価償却資産に買いかえることができるということになったわけでございますが、今回はこれが廃止されましたので、どうなるかというと、誘致区域等以外の土地を売って誘致区域等以外の地で減価償却資産等を買う場合、あるいは誘致区域内から誘致区域内に減価償却資産を買う場合、誘致区域等内の土地を売って誘致区域等以外の減価償却資産を買う場合、これは全部これはかからなくなりましたから、どういう税金の状況になるかというと、現行の制度では譲渡益に課される法人税は約一〇%でした、八〇%の圧縮がありますから。今度追加課税がありますが、それを入れても一二・四%ということでございます。ところが、この特例を廃止されますと、圧縮記帳がございません。譲渡益の全部に通常の法人税のほか約一二%の追加課税がありますので六二%も取られるわけです。今まで一〇%で済んだところが追加課税されて一二・四%ぐらい払えばいいところが、一挙に六二%も取られて、これはもういじめ以外ないな。これはいじめるという感じでしかない。それぞれの理由があったかもしれませんが、逆に、長期所有土地を売って別の建物をつくる、機械を買う、そういう行動を行う、ここで助かってきたものが一挙に一〇%から六二%も取られるというのは、いかに大蔵省でもやり過ぎだと私は思うんですがね。通産省、これは本当に小さな企業にとっても大変なことなんです。大蔵省もこれは取り過ぎですよ、いかに土地の何だかんだ理屈はあったにせよ。  私は、そういう意味でこういうやり方は非常に問題だ。廃止はやめてもらいたい。なぜこうなったかの理由の中にさまざまありましょうが、特例してそんなのは排除するようなことをつくればいいのであって、十年以上持った土地で、そしてそれを売ってさて建物をというときに、また工場新設をというときに、拡張をというときに、これは余りにもひど過ぎると私は思うんですがね。  大蔵大臣、優しい声でお答えいただきたい。
  147. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 非常に技術的な問題を含みますので、正確にこの文章をそのままに読み上げさせていただきたいと思います。  長期所有土地などから減価償却資産への買いかえが廃止をされ、土地の譲渡益の課税が強化されると、工場の近代化などの阻害の要因はなるという御指摘でありますが、土地基本法におきましても土地は公共的な性質を有する資産であり、その価値は公共投資や経済活動の集積など主として外部的要因により増加するものであることから、その価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担が求められていること。土地を所有している企業が土地の譲渡益をもとに有利に設備投資を行い得るように税制においてまで優遇をするということには、公平の視点から問題があること、こうした優遇措置が広く認められる結果、やはり土地ほど有利な資産はないという土地神話を助長することとなり、土地政策上に問題があることなどは考慮する必要があると思います。  なお、構造的に体質強化が必要な業種などに対しましては、これまでも特別償却などの措置を講じてきたところでありますし、今回の廃止に際しましては、既に進行している事業計画に支障を来さないよう所要の経過措置を講ずるなど相当な配慮を加えているところでありまして、今回の措置につきまして、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  148. 米沢隆

    米沢委員 もう時間もありません。大蔵省が答えたらそんな話でしょう。通産大臣あるいは建設大臣、にこにこそこで雑談されておりますが、もっとまじめに聞いてもらいたい。大変な問題だと思いますので、また改めて土地税制は議論させてもらいたいと思います。  これで終わります。
  149. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之肋君。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、十二日の日の総括に残しておこうと思ったのですが、今米沢委員が取り上げられましたので、昨年の第一次医療団先遣団、この問題について若干触れておきます。  先遣団の方々と、私は複数の方とお会いをいたしました。総理がサウジでその方々を激励されたのも聞いております。それを前提にしてお伺いしますが、この先遣団は余りいい待遇を受けなかった。どうしてか。百人をめどとする医療団を送るというキャッチフレーズが余り行き過ぎまして、向こうは百人で来ると思うておったら十七人しか来なかった、まずは。そこで、ウエルカムではなかった。これはいろいろ日本側には事情がありますから、言い分はありましょうけれども。  そこで、いろいろあるうち一つだけ言っておきますが、その先遣団に対してサウジアラビアの保健省が求めたことがありますね。移動病院車六台、大型救急車百台、通常の救急車四百台、それに通信施設が不足しておる、日本は自動車産業が盛んなんだから早急につくって送ってください、こういう要望があった。外務省、これに対してどういう手当てをされましたか。
  151. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 サウジアラビア政府から我が方に対しまして医療機材の供与の要請がございました。私どもは現在のところ、救急車五十台とそれに搭載をいたします通信機器について先方に提供する手続を進めております。  それからさらに、移動病院車の件もございますので、これに対してもサウジアラビア政府とは、先方が具体的にどのようなものを必要とするかについて話し合い中でございます。     〔委員長退席、大石(千)委員長代理着席〕
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと大事な点を省いていますね。最初、普通の救急車を二十台送る、こういうことになっておって――外務大臣、聞いておってくださいよ、いずれあなたに聞きますから。二十台送るようになっておった。その二十台の車はどこの車ですか。時間がないから私の方から申し上げましょうか。フォードでしょう。しかも、このフォードは、この救急車をつくっている工場はオーストラリアにある。間違っておったら後で間違いだと言ってください。そして、それをまず二十台送る。そのうち十二台着いてみた。オーストラリアはハンドルが日本と同じように右ですね。向こうは、総理御存じのとおり左です。それから向こうでは、ガソリンを使うこと相ならぬ。どうしてか。引火しやすいから。軽油の車にしてくれ、こう言われておるはずです。そこでこれは使い物にならぬということで、十二台が着いた段階でサウジの港の保税庫に今入れられておるはずでしょうが。そして、二十台のうちの十二台の残の八台はまだ向こうに行っていない。どこにあるのですか。横浜ですか。  この値段は一台九百五十八万円。そこで急遽、今さっき局長が言った、新たに五十台注文するということで、フォードのクレームをそれで防いだのじゃないですか。どうしてこういうむだをやるのです。これはだれの金ですか。どういう責任をとるのです。つまり、五十台引く十二台、あるいは二十台でもいい、その差額はどうなるんです。そして、この金はどこから支払われるのですか。私はフォードの代理店から聞いている。どこから支払われるのです。GCCですか。よく言われるいわゆる湾岸の平和基金ですか。外務省が払うのですか。そこだけはっきりしてください。
  153. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいまの救急車の問題について経緯を正確に申し上げますと、救急車五十台を当初から提供することにいたしまして、先方も非常に早急にこの救急車を必要としているということで、非常に緊迫した状況のもとでとりあえず入手可能な十二台がございましたので、これは本邦でございますが、それを提供することにいたしました。  それで、その場合に提供いたします救急車の仕様の問題についてサウジアラビアと鋭意連絡をとっておったわけでございますが、最後の段階で行き違いが生じまして、そのこと自体は大変遺憾なことだと思っております。現在、この問題につきましてどう処理するか、そう遠からず結論を得ることができると思っておりますけれども、当初の目的を達成できるような形でこれを処理をいたしたいということで鋭意調整中でございますので、申し上げます。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言ったとおりでしょうが。私がそういうことを言わないと白状しないでしょう、国民の税金をむだ遣いしておって。どうしてこんなずさんなことを、総理が幾ら、自分はずっと努力してきた、昨年八月二日以来ずっと貢献策で努力してきたといかにあなたがおっしゃっても、やっていることがこういうことじゃどうなるのです。しっかりしてくださいよ、外務大臣。  それから、今移動病院車も検討しておるということですが、今日本にありますか。
  155. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 移動病院車は非常に特殊なものでございますので、これは注文生産によることになるわけでございます。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本に今ないということですか、それを聞いておるのです。
  157. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私どもは、現在サウジアラビア政府に対しまして、先方がどういう仕様の移動病院車を必要とするかを確認をしているところでございます。それに基づきまして注文生産をするということでございます。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 移動病院車はあるかと聞いているのです、日本に今。
  159. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先方が考えておりますような移動病院車は、現在はないということでございます。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 移動病院車、ないということですか。
  161. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 いや、移動病院車と申しましても、いろいろなものがございますので……。
  162. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どういういろいろなものがあるのです。どこにあるのです。それを聞いておるのです。
  163. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 移動病院車につきましては、私の承知しておりますところでは、非常に小型の簡便なものから比較的精密な機械を積みました大型のものまでいろいろございます。それで、今までの話し合いの中で、サウジアラビアが恐らく必要としておるであろうものにつきましては、我が国で注文生産をするということになるということでございます。
  164. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もしございましたら、どこにどういう型があるということを後ではっきりしてください。今あなたのような答弁は非常にずさんですよ、私の質問に対して。移動病院車、常識でわかるでしょう。ちゃんと手術の設備もある、極端なことを言えば、そういう、あなた、ちょっとけがしたような、あれするような病院車じゃないのですよ。防衛庁長官防衛庁にありますか。
  165. 玉木武

    ○玉木政府委員 お答え申し上げます。  移動病院車と言えるかどうかわかりませんが、いわゆる今先生御指摘の手術ができる機能を持った病院車両、これが一つは手術室のついた車両、それから滅菌とかいわゆる手洗いとか手術のための準備の部屋を持った車、それから補給関係、それに電源車、そういう四つの車が一つのセットになったものを二セット、陸上幕僚関係が持っております。  以上です。
  166. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、わかりましたか。総理大臣、今話のとおりです。もう少し詳しく言いましょうか。今幕僚にあるんじゃないですよ。二つある。陸上自衛隊旭川駐屯地、それから自衛隊の中央病院、三宿衛生学校。中身は今おっしゃったとおりです。手術準備車、手術車、滅菌車、四トンぐらいのはずです。衛生救急車、約二トンぐらいのはずです。それに電源車。それに水タンクトレーラー、これも二トンぐらいでしょう。これは一トン入り。これらをセットしてあるんです。ほとんど使っていない。調べた。もし使っていなかったら、サウジが要求しておるならばそれをいわゆる政府の、自衛隊から外して、サウジの方と相談をされて、こういうことではいかがでしょうかと。現にあるんですから。そういう実のある具体的な努力をしたらどうですか。知恵を出せば出せるということを言いたいんです。金を大事に使ってもらいたい。それを私は申し上げたい。残余は十二日にいたします。  そこで……
  167. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今先生から税金のむだ遣いをしておるという御指摘がございますが、私はこの二十三億円の医療の日本政府の援助の中で当初の一次派遣、二次派遣の報告を聞き、現地に私自身も電話を入れて調査をして、これ以上この計画を継続することは無意味であるという決断をし、国民の税金をむだ遣いしないために二十三億円のうち約一億円でこの予算の執行をとめさせているわけであります。そして、この病院車、救急車というものは全部注文生産であります。残念ながら、日本にはこの病院車の予備がございません。そこで、ヨーロッパ各地で持っております病院車の中古のものがないか、そこまで手配するように指令を下しております。  そのようなことをかいつまんで報告したのが局長の答弁でございますが、この話をお聞きの国民の方々は、政府がどのような形でこの問題に対処しているかということの実態だけは御理解をいただかないと、一方的に税金のむだ遣いをしていると言われたんでは、予算をお預かりしている私の立場は許されません。
  168. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 冗談じゃないですよ。何ですか。向こうから要求されたら、どういう仕様の車か、それぐらい聞くのが当たり前でしょうが。ハンドルはどっちか、左か。当たり前でしょう。聞いていないんでしょう。聞いていないから右ハンドルのものを送ったんでしょうが。軽油でないガソリンのやつを送ったんでしょうが。ここにありますよ、これがそうです。だから、やろうと思えばチェックできることをやらないから結果がむだ遣いになる。そこで、金はまだフォードに払っていないからフォードからクレームがついた。そこで、新しく五十台買いましょうということでやっと話をつけたというのが実際の話ですよ。それは救急車ですからふえた方がいいでしょう。しかし、きちんと金を使うなら国民の税金だからしてくださいということを私は申し上げている。チェックが足らぬではないか、そういうことです。――もういいですよ。
  169. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は委員の御指摘には服しかねます。私自身がこの予算の執行については細部目を通して、むだなことは一切やるなということを局長に厳命をしてこの仕事に当たらしておりますから、当初の一次派遣、二次派遣以降の問題点については、予算が二十二億円まだキープされておるということをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  170. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何言っておるんです、あなた。突っ返されたでしょう。それで、送った十二台は向こうのサウジの港の保税庫にそのままあるんでしょう。二十台のうちの八台は、クレームがついたから送られずに横浜の港にあるはずだ。金はまだ払っていないからフォードからクレームがついた。だから五十台新しく買いましょうということでやっと話をつけたのが真相なんです、これは。間違ったら私も責任とりますよ。ちゃんと代理店に行って調べたんだから。だから、注意してくださいということを私は言っているんですよ、チェックを。開き直ることはないですよ、あなた。――いや、あんなふうに言わなければ、何回でも時間をむだに使うから私は言っているんです。     〔大石(千)委員長代理退席、委員長着席〕  それじゃ、次に移りますが、総理、問題の九十億ドルですね。この九十億ドルはまだ審議していますね、ここで。そしてその関連のいろいろなあれが出るんでしょう、大蔵大臣の言葉によれば。きのう、おとつい以来、この九十億ドルは、結局GCCの平和基金に振り込む、その運営はサウジの日本大使と、クウェートの方ですけれどもGCCの事務局長と二人で決める、こういうことですね。この運営委員会のお二人の方が配分を決められるときの配分の基準というのはあるんですか。
  171. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 細かいことは事務的にお答えすると思いますが、今おっしゃるように、湾岸平和協力基金へ日本の拠出金を提出いたします。湾岸諸国の代表としてGCCの事務局長が我が国の駐サウジアラビア大使とそこで協議をして決めることになっておりますから、最終的にはそこで決めますが、拠出する我が方としては、昨日来申し上げておりますように、これは湾岸の平和回復のために拠出するお金でありますから、その使途その他については日本側の希望をそこで述べて、そのとおり行われるようになっていく旨、運営をしていきます。
  172. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはおとついからよく聞いております。  そこで、私が聞いておるのは、九十億ドルは大変ですね、これ。だからいろいろ与党も苦労なさっているし、政府も苦労なさっているでしょう。国際的な信義もかかっている。その辺はよくわかっています。そこで問題は、運営委員会お二人、米沢委員も聞きました。お二人にすべての責任がかかるわけですか。配分の基準というのは一体何です。私がどうしてこんなことを申し上げるかというと、これは常識で考えられない、たった二人で決めるというのは。つまり、フィクションではないか、あるいはアピアランスではないか、こういう疑いがあるのです。この疑いを晴らすために説明をしていただきたい、以下申し上げることについて。  まだ九十億ドルの配分は決まっていない、運営委員会で。決まるわけないです、通るか通らぬかわからぬから。それなのに、何ですか、四日に国務省のタトワイラー報道官、九十億ドルは全部後方支援に使います。何か総理はこれを聞かれて、ああ、自分が国会で答弁しておったことの裏づけになったと喜んでいらっしゃる。そうですか。  しかし、ちょっと聞いてください。しかし、私は新聞の報道によって聞いているのです。まだ決まっていないのに、九十億ドルは全部米国の、いわゆる後方支援に充てるのだ。どうしてアメリカのタトワイラーがそんなことを言えるのですか、まだ決まっていないのに。運営はその運営委員会で決めるのじゃないのでしょうか。その辺、よくわからないのです。
  173. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その話は、その前日にここの委員会で私に、ベーカー国務長官記者会見が流れてきた、それを、何というのでしょう、引用されて、ベーカー国務長官は九十億ドル全部アメリカの費用に使うと言っておるが、おまえの言うこととそれは一緒か違うかという質問をいろいろな角度から受けました。そこで私は、ベーカー長官はそう言ったかもしれぬ、その放送は私も問いた、内容は知っておるが、私の考えとは違いますということをここで申し上げたのですよ。そうしたら、それは、じゃあどちらが正しいかというような話でしたが、正しいも正しくないもない、出す方の私が日本政府を代表して、こういうことに使われる意向です、こう言っておるのであるし、最終的に決めるのは、私とベーカー長官で決めるのじゃなくて、湾岸平和協力基金で最終的には決めるんですということをここでお答えし続けたのです。そのことは必ず電波で通じますから、通じたら、今度はホワイトハウスの記者会見のときに同席されたある記者の人が、総理はこういう答えをしておるがそれでいいのかという質問をなさったということです。そこでそのような答弁を報道官がしたということでありまして、それ以上のことは私は関知しておりません。  私が言いたかったことは、この前ここで答えたと同じように、湾岸平和協力基金へ提出をいたします。その運営委員会で決めてもらうことであります。これだけです。
  174. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、総理のおっしゃっておることはもう頭の中にいっぱい盛りこぼれるくらい入っているのですよ。そして、ベーカーさんがおっしゃったことに対する反論としてあなたがおっしゃったこともわかっています。まだ使い道が決まっていないのに、使い道を決めるのはGCCの運営委員会であるのに、どうして今ごろになって、今度はベーカーさんじゃなしにタトワイラーさんがまた何で言うのですか。さもアメリカに渡る、ただしそれは後方支援に使うというようなことをどうして言われるかというのは素人の私の疑問なんです。  そこで、時間がありませんから、今度別の角度から――後で一緒に答弁してください。別の角度からお聞きしましょうか。  一体、この昨年の二十億ドルもそうでしょうが、今度新しいから九十億ドルにしましょうか。この金の流れ、もし決まったらこの金の流れはどういうふうになって、総理がおっしゃるようなことならどういう姿で、経路です、どういう姿でそのGCCの平和基金に入るのですか。流れをここで解明してください。
  175. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私がここで答えましたことが電波に乗ってすぐアメリカへ行って、アメリカの報道官は新聞記者に質問をされたのです。日本総理大臣はこういうことを言っておるけれどもどう思うかという質問をされた。私はそのときに、いろいろありますけれどもこれは国民の皆さんに御理解と御協力をいただかなければならない問題であるし、日本政府としては国際の平和回復のために支援協力をする拠出金でありますから、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の経費に充当する方針ですと、こう言いました。その方針でいいのかという角度の質問を受けてアメリカの報道官が答えたということが、今度は報道で私は知ったわけであります。  ですから、どういう理由で言われたのか、質問があったから答えたのじゃないでしょうか。  それから、決まっていないのはそのとおりですが、決まっていないけれども、だから私も議会へお願いしておると、どういうことに使うか使うかといって聞かれますから、私はこういうことに使う予定でありますと。だからここで決めてもらったら湾岸協力基金へ行って、日本の意向はこれだからこれらのことに使ってくださいとこう言えば、向こうは湾岸協力基金で決めて配るわけですね。どういう経路で流れるかということまでは私はあれですから、専門家から流れ方などは御説明させますけれども、決め方まではどうぞ国会で決めていただきたいし、私はアメリカの報道官の答弁に至った理由までは、それ以上のことは報告を受けておりません。
  176. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一言申し上げますが、だからあれですね、タトワイラーさんがこういうことを言う権限はないのですね、まだ決まっていないから。はずだと私が言っているのです。総理の言われる方が正しいですよ。それは運営委員会で決めて使うんだ、まだ決まっていないはずだ、そうでしょう。それだけはっきりすればいいです。  そこで金の流れ。実はそう言われるから、余り安心されてはいかぬから言っておきます。実はタトワイラーさんの言っておることは本当なんですよ。それは後で私はあかしをはっきりさせたい。それで、金の流れを言ってください。
  177. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 具体的なお金の流れに入ります前に、先ほど来先生が御質問していらっしゃいますタトワイラー国務省の報道官の発言を御紹介させていただきますと、これはまさに総理が今繰り返しおっしゃっておられますように、総理の国会での答弁を受けまして、どう考えるかという質問がございまして、それに対して答えたものですが、タトワイラー報道官の答えとして、日本政府としてはこの追加の拠出金が湾岸に展開する多国籍軍のロジスティック面での支援に使う意向である旨述べているということで、要するに、総理の国会での発言をこういうふうにタトワイラー報道官は理解して、紹介しているということでございます。  それから次に、具体的なお金の流れでございますけれども、これは今までの十九億ドルを例にして申し上げた方がおわかりいただけると思いますので申し上げますと、これは昨年九月に九億ドル、十二月に十億ドルを日本政府よりGCCの湾岸平和基金に払い込んでおりまして、その湾岸平和基金からどういうふうに各国に払われるかと申しますと、これは資金協力と物資協力と両方ございますので、資金協力の例で申し上げますと、まずこの資金協力は、去年の十二月の国会でも何度も御説明申し上げましたが、各国の輸送関連経費に充てられますが、具体的な要請を各国から受けまして、運営委員会でその要請を審査して決めます。そして、その決定が行われますと、要請政府の指定する口座に平和基金から払い込まれます。具体的にアメリカについて申し上げれば、これは財務省に設けられた口座でございますし、イギリスの場合について申し上げますと、バンク・オブ・イングランドの口座に払い込まれております。
  178. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が以下申し上げることがどこが違うか言ってください。  まずこれは日本ですから、円建てですね。九十億ドルが先にあるわけじゃないですね。まず九十億ドルに匹敵する金、日本円、これを日銀にあれするのじゃないですか、円建てですから。そして、ドル建てに直して送金する。そして、それをまずアメリカの日銀ともいうべき連邦銀行、FRB、ここにまずドル建てで行くのじゃないですか。そして、形式上はそれからGCCの平和基金に行くのではないですか。そして、今言っているのは形式的にはですよ、そこで決まってアメリカの財務省の、これは基金は防衛協力基金ですね、防衛協力基金です。ここに全部プールされる、湾岸関係の費用は。全部プールされる、九十億ドルだけでなくて。だから、プールされた以上は、きのう、武器弾薬には使いませんとおっしゃっておりましたが、それが何の意味があるのであろうか。日本からの金、日本という正札がついておるわけじゃなし、一遍プールされているのですから、どの分が日本の金、どの分が日本の金なんというのは実際問題としては検証がしようがないのではないか。  そこで、形式的には今言ったような金の流れでしょうが。政府から日銀、そしてFRB、そして実際には、直接アメリカの財務省の今言った防衛協力基金にプールされるのではないか。そして、この防衛協力基金はGCCの委託を受けてプールされたその資金の運営管理をする。そして、その平和協力基金の形式的な決定によって、必要に応じてその財務省にプールされた防衛協力基金からずっと出ていく、これが私は実際の動きであろうと思いますね。  そこで私は、G7の前に大蔵大臣は、先月の二十日でしたか二十一日でしたか、行かれた。その前に、国務省のフィッツウォーター報道官は既にこういうことを言っているのですね。「日本の追加支援資金は米財務省の防衛協力基金にプールされることになっておる。」既にこういうことを発表しています。そして、G7の前、一月十九日、ニューヨーク・タイムズがこういうことを書いています。問題の、関係のあるところだけ言ってみましょうか。「サウジアラビア及びクウェートはそれぞれ百三十五億ドルを現金もしくは物品で、日本は九十億ドル、さらにドイツは十億ドルが約束された。これらの資金は財務省に設立された防衛協力基金に戦費として振り込まれる。」ザ・ディフェンス・コオペレーション・ファンドとなっておりますね。そして一番最後はツー・ペイ・フォー・ザ・ウオー、戦費、こう報道されておる。これが一月十九日。  そして、ベーカーさんが、問題の、総理が気にされておるベーカーさんの発言は一月の二十六日でしょう。今のニューヨーク・タイムズの記事が十九日に出て、ベーカーさんの発言は同じことをおっしゃっておる。一月二十六日。  そして今度は、そのベーカーさんの発言後、三日後、一月二十九日、ニューヨーク・タイムズが再び、社説ですよ、今度は。社説でこういうことを言っていますよ。「財務省の防衛協力基金には、サウジアラビアとクウェートから百三十五億ドル、日本から九十億ドル、ドイツから十億ドル」、同じことです。戦費としてです。そして、「戦闘期間を三カ月と見て、見込んだ戦費は六百億ドル」、これは関係のアメリカの財政担当者も同じことを言っていますね。  だから、ずっと流れは、流れはもうアメリカの戦費として組み込まれているんだ、流れは。それを今ごろになって、総理がここで苦心されているからといって、タトワイラーさんが助け舟出したってもう、吉幾三の「雪国」じゃないが、もう遅いですよ。もう今さらそんなこと言ったって遅いんだ、これ。そして、戦費、武器弾薬には使わないとおっしゃるけれども、これの検証しようがないのです。それは願望としてはわかりますよ。希望は幾らでも言えるでしょう、日本の金ですから。しかし、これが武器弾薬に使われないという保証ほどこにもない。どこにもないんです。そうでしょう。会計検査院だってODAを検査する権限ないでしょう。私、ここで質問した、昨年。だから今度の金だってそれは検査は及ばない、主権が及ばないから。そこで私は、幾らタトワイラーさんが後方支援に全部使いますとおっしゃっても、これは、昨年やったじゃないですか、平和協力隊法のとき。戦力とか武力というのは、正面装備があって、後方支援、兵たんです、兵たんがあって全部で総合して戦力になるんだ。兵たんつまり後方支援に金を使うことは戦力の一部をなすんだ。もう去年それはここでさんざん言って証明されておるところじゃないですか。じゃ、タトワイラーさんはこの後方支援の具体的な内容を明らかにしましたか。
  179. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど申し上げましたように、タトワイラー報道官は国会での総理の御答弁、具体的にはこの月曜日の御答弁に対するコメントとして言ったということで、具体的にタトワイラー報道官が、英語で申し上げますとロジスティカルサポート、ロジスティック面における支援というのを、何を意味しているかということは言っておりませんが、これは国会で月曜日、総理がここに答弁されたことに言及して言っている言葉でございます。
  180. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、時間がございませんからそれだけ指摘しておきますよ。実にむなしい話です。武器弾薬には使わないと言ってみたってその保証はない。後方支援に使うと言ったってタトワイラーさんがその中身を言うわけない。言うわけありませんよ。戦費に使われるからです。  それじゃ、もう一つ観点を変えてお聞きしますが、午前中も質問があっておりましたIOMから依頼がある、民間機軍用機か。もし今度それがあったとき、まず民間機というのは日本民間機だけに限りませんものね。まずそれを当たってみますか、まず民間機、チャーターするところがあるかどうか。どうですか、もしそういう依頼があったとき、まずは。まずは民間機から探してみるという、そういう手だてをするつもりですか。いきなり軍用機ですか。
  181. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的な要請が既にございまして、具体的な要請があったときに具体的に民間会社に当たってみたら、今回はあらゆる困難を乗り越えて応じてあげようということで四機出動してもらって、立派に要請にこたえられたということは御承知のとおりだと思います。
  182. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、私が聞いているのは、カイロから運ぶあれじゃなしに、アンマンからカイロ。そうでしょう、もし自衛隊機使うとしたらそうでしょう。そのアンマンからカイロに運ぶについて、民間機を当たりますかと、日本民間機だけでなくて広く外国の民間機も含めてチャーター、そういう努力をするつもりですかと私は聞いておる。
  183. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連からその委託を受けたIOMは、当然それらの前提になる努力をすべて尽くすもの、それは、国際機関の委託を受けたものの責務であって、そこから具体的な要請が来たときに我が方がどう対応するかというのが我が方 の態度になってまいります。
  184. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はなぜこういうことを言うかというと、私はロイヤル・ヨルダン航空にも行きましたよ。外貨がないからぜひ使ってくれと言っているのです、アンマンカイロ間を。いいですか。そうして今アンマンカイロのほか、今飛んでいるのは、これはロイヤル・ジョルダンです、アンマンからスーダンのハルツーム及びアンマンからイエメンのサヌア、飛んでいる。だから自衛隊機を使う必要ないのです。しかも、いいですか、そのアンマンからカイロまで五万ドルですよ。六百五十万円ですよ。  防衛庁長官、あなたは下命があったらいつでも出る用意をしてあるそうですが、一体何機持っていく予定で、何人連れていく予定で、その費用はどのぐらいかかって、概算でいい、どの費用から出すか、はっきりしてください。
  185. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先日来累次御答弁申し上げていますように、私ども自衛隊輸送機が出ますのは、国連機関から委任を受けておりますIOMから具体的な要請が我が国に寄せられ、そして我が国政府としまして所要の一連の手続をとりまして、そして外務大臣の方から私どもの方に御依頼がある、そういうことがありましてから出ていくわけでございます。現在のところ、IOMの方からは、一般的な要請と申しましょうか、民間機軍用機含めての提供の可能性についての要請はございましたけれども、自衛隊機についての具体的な要請もない段階でございますので、現在の段階で一体どこからどうするんだ、何機どうするのだ、あるいはその経費がどうかということは、これはまだ御答弁ができる段階ではございません。
  186. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何のために政令をつくったのですか、それじゃ。要請があってからつくればいいじゃないですか、それじゃ。何を言っているのですか。
  187. 池田行彦

    ○池田国務大臣 具体的な要請がありました場合に、必要に応じそれにこたえてその任務を果たしていく、そのために必要な措置として政令の措置もしたわけでございます。
  188. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、もし派遣するようになった場合の金はどのぐらいかかるかというような概算のあれもできていないのですか。それをはっきりしてください。そういうこともできていないのですか。もしそれを出さなければならぬときには、経費はどの項目から出すかも決まっていないのですか。悠長なものですね。
  189. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、具体的な要請を受けて、そうしてまた、政府でも一連の手続を経た上で具体的にその必要に応じた派遣の計画が決まりませんと、具体的な経費の所要額もそれは決まりようがないわけでございますので、そういうことでございます。
  190. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは予算委員会ですから、私どもがそういうことを聞くのは当然でしょうが。そうじゃないですか。だからつかみ金と言われるのです。国民の皆さん聞いていますから。そういうずさんなことで、法律を改正せずに自衛隊法の百条の五の超法規的なやり方でやるんですか。どうしてそういうことが許されます。言っておきますが、もし派遣するようになって費用を出すようになったら、それは違法な行為だから、これは自衛隊法違反による支出だということで訴訟が起きますよ、言っておきますが。  そこで私は、民間の人がいろいろ心配していますよ。政府だけが心配しているのではない。例えば、湾岸避難民救援実行委員会がある。ここも募金しているんです、一生懸命募金を。そうして、今さっき届いたところでは、四千二百二十七万円集まっている。これはチャーターするとしたら六機分に当たります。そして、これはロイヤル・ジョルダン航空に既にオープンでチャーターをお願いしているそうですよ。それからロータリークラブ、これは募金が五機分集まっている。それからそのほかに、十仁病院が一機分とか、あるいは仏教関係が二機分とか、個人として一機分。みんなそうして募金しているんですよ、自衛隊機が行かないでいいように。いいことじゃないですか、これ。国民の皆さんに聞こえますよ。そんなことは必要ないんですか。そうですか。国民がそういうことに関心を持って募金することはよくないことですか。冗談じゃありませんよ。――いや、そんなこと言っているじゃないですか。まじめにやりなさいよ、あなた。自衛隊機を飛ばして金を使わないで済む方法があるということを私が今訴えているのですよ。どうしてそれをまじめに考えていただけないのか。――あなただけでしょう、まじめに考えているのは。  では、もう一つ聞いておきますよ。防衛庁長官、もし自衛隊輸送機が飛ぶようになったら、いいですか、百人か二百人か知らないけれども、その自衛隊の人は、もともと自衛隊法は外国勤務を予測してないから、外国に駐留した我が国の自衛隊を規律する法律はない、そうでしょう。じゃ、その行く自衛隊員は丸々、部隊も丸々自衛隊法を背負っていくんですか。それとも別に法律あるんですか、どうですか。
  191. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 自衛隊員につきましては、自衛隊法によって規律をしていくということでございます。それから、航空機につきましては、国際法上の定められた航法その他の国際的な法規に従っていくということになります。
  192. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は時間がないから多くを次に譲りますけれども、やめますよ、心配なさらぬでも。自衛隊法はかぶるんでしょう、全部背負っていくんです、総理。もし全部背負わないならば、自衛隊法のどの部分がついていかないんだ、どの部分がついていくんだ。例えば九十五条「武器等の防護のための武器の使用」、これはかぶるんですか。これは航空機を守るということは入っている。そのためには防護をする。ところが、外国に行ったときには、それを守る義務はその行った外国が当たることになっているでしょう、国際法上。その辺の話はどうなっているんです。
  193. 渡部恒三

    渡部委員長 楢崎君、時間が参りました。
  194. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それから武器の話もありましたけれども、自衛隊法が丸々かぶるのならば、武器は何でも使えるようになっているじゃありませんか、自衛隊法で。その辺をはっきりしてもらわないと、これはなかなか前へ進まぬと思いますよ。  時間が来ましたから、また次に譲ります。
  195. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君の残余の質疑を許します。嶋崎譲君。
  196. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨日は、今までに経験のない、我が予算委員会の委員長に立法府としての、法律違反の疑いのある政令なるがゆえに、我が立法府としてもそれについての一定の判断をするということが、我が国の現行の憲法を中心にした法体制のもとではちょうどエアポケットみたいな部分であります。これから憲法学者その他などにも一つの問題として御審議いただくように、またお知恵をかりるような学界でのテーマであると私は思っております。我が国の制度のエアポケットみたいな部分で、さあどうするんだという話を予算委員長にお聞きしたのでありますから、これの考え方の背景にある制度、僕はみんなわかっています、最高裁判所のあり方とか、それからまた立法府が行政府に委任している範囲の中で行政権として政令を制定する権利があり、提出するという権利、権力分立でありますから、そういう仕組みを全部承知した上で、今日のような新しい政令が出た場合には立法府としてどう対処すべきかという課題が初めての課題としてあるよ、したがってハウスとしてはこの問題にどう対処したらいいかということを予算委員長を中心にして、議長に向けて、具体的には衆議院議長だと私は思いますが、議長の方に向けて、ハウスとしてのこの問題の扱い方を現行の法体制のもとで、我が国の制度、憲法その他の制度のもとでどう考えたらいいかということについての真摯なる御提言をお願いしたいということで、きのうの質問はちょっと途中何かとめる意思のないものがとまっちゃいまして、残されたのは五十分でございますので、あと残余の質問に入りますが、きのう来の私の提案で、委員長の方でどのようなお計らいになろうとしているのか、その御報告をお聞きして質問に入りたいと思います。
  197. 渡部恒三

    渡部委員長 昨日の御意見については、理事会で協議し、勉強中であります。
  198. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まだきのうの夕方で、きょうまだ理事会ですから、勉強中でしょう。
  199. 渡部恒三

    渡部委員長 一生懸命勉強しておりますから。
  200. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私の方でも党の役員と一緒に事務総長のところにもお伺いをして、初めての問題提起でありますのでひとつまじめに御検討をいただきたいと申し入れてありますので、理事会の方でのお計らいを前提にして予算委員長に提案する以外に、ハウスの中での運営問題ですから、ないので、改めて再度議長の方にまでこの問題の考え方や対処の仕方などについて御検討いただくことをお願いを申し上げまして、私の質問に入ります。  続けます。大蔵大臣、この総括討議で議論になっております平成二年度補正予算並びにその関連法案、いつ、どのような形でお出しになる予定ですか。
  201. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今御指摘になりました補正予算と申しまするものは、湾岸平和基金に多国籍軍支援のために拠出をしようとしております九十億ドルの財源を賄うべきその一連の問題だと思います。  これにつきましては、私どもといたしましては、従来からの赤字公債という考え方ではなく、国民に臨時の御負担をお願いするという決断をいたしまして、その上で税収というものが平成三年度にならないと入ってまいりませんので、その税収をいわば担保とした形で短期の国債、TBを本年度中に出し、それによって財源を捻出したいと考えております。その考え方のもとに現在鋭意法制局等の作業をお願いをいたしておるところでありますが、予算書の印刷等の日数を考えますと、大体二月の二十日ごろに国会に御提出させていただくことになろうかと考えております。
  202. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 いつもの補正と今度の平成二年度補正というのは、相当中身の性質が違う補正であります。いつもですと、災害とか公務員給与だとか、ある意味では次年度予算の審議が始まっていても途中で出してきて処理できる代物だったと思います。ところが、今度の平成二年度の補正は新しいタイプの短期の国債を出すということ、しかもそれを裏打ちする税制の法案もかなり国民生活と関係があり、我が国の経済全体にも関係のある問題です。  それだけに本来ならばこの予算委員会に入る前に、少なくともその一定の考え方みたいなものが出ていなければならないというので私たちは詰めました。理事会で仲間に詰めていただきました。その結果、理事会に、二月一日に私たちの手元に届いたものはその要綱、アウトラインです。これじゃ何もわかりません。予算書はどうつくられるかわかりません、予算書がないですから。したがって、それを担保する法律というのはどんなタイプか、歳出関係の法案はどうなるのか、歳入関係の法案ほどうなるのか。そしてこれは、今年度の三月までに上げなければならない歳出関係の法案と、それから来年度以降にかかわる、歳入にかかわる法案という二年度にまたがる法案が出てくるわけであります。しかもそのテーマそのものは、九十億ドルというこの問題をめぐる補正であり、それに関連する法案でありますから、本来ならばこの審議の過程ではせめて予算は提出されているべきものだと思います。  しかし、緊急だから、その補正に当たって予算の印刷その他おくれているというのはわかりますが、二十日というふうに先々まで行きますと、この予算委員会は総括が終わり、いつ公聴会へ入るか知りませんが、大体一般質問が方向づけられてしまう時期になってしまいます。肝心のその時期に来ますと、この予算委員会で一般質問の対象になる素材にはなりません。直ちに大蔵委員会に行ってしまうという姿を持たざるを得ない時期になりそうであります。それだけに、事が重大であるだけに、印刷は時間がかかるかもしれませんが、できるだけ早く、総括の中では無理だと思うけれども、総括というのはもう一週間以内ですから、それ以内に出せれば一番いいと思うが、できるだけ早い時期に予算の提出並びにその法案の提出を強く要望したい。大臣いかがですか。
  203. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 委員が御主張になるそのお気持ちが理解できない、あるいはその必要性が理解できないと申し上げるつもりは毛頭ありません。  しかし、昨年の暮れに平成三年度予算を編成いたし、そしてそれが印刷校正が上がり、国会に提出されるまでにも相当の日数を例年要しておりますことは、委員承知のとおりであります。そして、この一月十七日に湾岸における戦闘行為が発生をいたしました。そして、それを受けた中において日本政府としての対応を決してまいりました。そして、その対応を決し、国際的な一つの公約として、湾岸の平和回復努力に対する多国籍軍に対する資金協力として日本政府が九十億ドルの支出を決定をした。そして、それを公表いたしました。  そこから鋭意我々は財源を検討し、国会に御報告のできる状態にまで持ってまいり、そして、法律を起草し、それを法制局の審査を願い、印刷を行い、しかも、その印刷にミスは許されないということで非常に厳密なチェックを要するわけでありますから、事務方に最善の努力は尽くさせるようにはいたしますけれども、現時点において二十日ごろをめどと申しますのは、相当程度な事務方へも無理をかけ、また、印刷局の諸君にも無理をかけながら、ぎりぎり申し上げておる日程であることも御理解をいただきたいと思います。少しでもその時間が縮まるよう、なお努力はいたしますが、物理的にどうぞ無理のかからない範囲の日数はお与えをいただきますようにお願いを申し上げます。
  204. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 簡潔に。五十分しかありませんで、もう四十分、時間ないですからね。  簡単に聞きますが、予算書と、それから歳出関係の法案と歳入関係の法案を同時にお出しになる、そういうことですね。簡潔に。
  205. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 簡潔にということでありますから、そのとおりであります。
  206. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、それは今のところ二十日めどですね。それを確認して、今からの予算委員会全体のこのテーマは理事会で考えなければならぬ、我が党も考えなければならぬことですから、二十日めど、それともそれ以前、私はなるべく早くと言っているんだが、大体二十日前後には出ますね。
  207. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 二十日前後という……(嶋崎委員「前のこともある」と呼ぶ)前後という言葉を申し上げております。その時期に間に合うように、最善を尽くしてもらうように事務方を督促いたします。
  208. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて、あとは九十億ドル問題の積算根拠と使途、これをめぐる討論に絞ります。  今まで何度もいろいろな角度から質問がございました。その中で、私もまだわからない部分がございますので質問をいたしますが、きのう来の発言、一昨日以来の発言で、総理は、いわゆるベーカー発言についてよく存じていると言うが、どのようにベーカー発言の中身を正確につかんでおられますか。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 テレビのニュース番組のときに報道されまして、そこに出てきました字幕を正確に読みました。九十億ドル全部は米国の取り分だという言い方をしておられたのではないか。私は多国籍軍に出す、こう言っておるんだから、そこが違うなという受け取り方をいたしました。
  210. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務省では、このような九十億ドルのアメリカ側の理解というものが報道された際に、直ちに現地の大使を通じてどんなタイプの記者会見でどのような報道であったか、これを正確につかんで総理に伝達をしておりますか。
  211. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 それは、外務省を通じて報告は聞いております。
  212. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それなら原文とちょっと、一言大事なところだけ読み上げましょう。ベーカーは、おっしゃるように大ざっぱに、皆、総理のおっしゃった結論と同じです。同じだが、非常に言葉は正確に言っております。例えば九十億ドルというのは、「ジス・イズ・ストリクトリー」厳格に、「フォー・ユナイテッド・ステーツ・コスト」、「コスト」と書いてあります。これは、厳格にアメリカの軍事的なコストにかけるものです、こう記者に答えています。非常に具体的で正確なものです。そして同時に、このお金は、その当時はまだドイツの問題、入っておりませんから、クウェート百三十五億ドル、それからサウジアラビア百三十五億ドル、そして日本からの九十億ドルを合わせて一九九一年初めの三カ月間の国際支援の現時点での総計では、この当時は三百六十億ドル、こういう数字をきちんと挙げて、そして、この金は厳格に米国の費用そのものであります、こう記者の質問に答えています。したがって、この三カ月というのは、戦争が始まったのは一月の十七日ですから、まあ一月という月、半分かもしれません。しかし、一月からかかって一、二、三、この三カ月間のアメリカ側の戦費を想定して見積もられた額に充当するもの、こういう正確な記者会見であります。その証拠に、これは単にアメリカだけじゃなくて香港の新聞も、シンガポールの新聞も、アジア諸国の新聞に、数字は全部正確に世界じゅうに報道されています。それは後に、資料は全部持っておりますから、いつでもお見せすることができます。  したがいまして、ベーカー発言というのは、我が国の九十億ドルはアメリカの戦費である、こう言ってきたのです。ところが、今までの総理の答弁は、これは我が国の自主的な判断で、武器弾薬等の正確に言えば正面装備にかかる金ではなくて、その背後にある輸送その他の金ですから、これがきのうから問題になりますところの、今度はタトワイラー発言というのと結びついてくるわけであります。  タトワイラー発言は、これはちょっと後で説明しますが、したがって、もし日本がこの九十億ドルについて、戦費でない、戦費に使わないんだというふうに断言してここで御説明をなさっているようだが、平和回復のためにというお言葉を総理は使っておられますが、向こうは戦費として受けとめておりますから、その戦費でないというふうにこの場ではっきり言うことができますか。
  213. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生からベーカー発言等に関しましてお話がございましたので、私から、その前に一月二十四日に、総理からブッシュ大統領に電話で御連絡をいただき、これは関係諸国による平和回復活動に対する支援として九十億ドルの拠出の決定を行ったということを言われたわけでございますが、それを受けまして、ホワイトハウスのフィッツウォーター報道官がこういうふうに当時述べております。ブッシュ大統領が、日本が今般多国籍軍に対して新たに九十億ドルの財政支援を行うことを決定したことに感謝の意を表明した、こういうふうにはっきりと多国籍軍に対しということを述べております。  それから、ベーカー長官の発言に関しましては、先ほど総理からも御答弁がございましたけれども、私どもはそれを受けましてアメリカ側に対しまして日本側の考えをきちんと伝えております。これは第一点は、日本側としては、これは関係諸国が当面要する経費に充てるということであるということ。それからその大宗は、この湾岸におきます平和回復活動の大宗を担っているのがアメリカであるのでアメリカ向けになろうが、最終的には湾岸平和基金に設けられております運営委員会によって決定されるということ。それから第三番目は、これも総理が繰り返し国会の場で申し上げておられることでございますけれども、いろいろなことを総合的に勘案して日本の自主的な判断として行ったものであるという三点をアメリカ側にも伝えております。  それから、先ほどもお話し申し上げましたけれども、タトワイラー報道官の発言は、国会での総理の発言を受けまして、先ほども御披露したような形で多国籍軍のロジスティック面での支援に使われること、そういう意向を日本が有しているということを言及したということで、これが私どもが了解しておりますアメリカの高官の発言でございます。
  214. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私の聞いているのは、政府委員の説明は、バック資料はみんなあります。お聞きしているのは、ベーカーの御発言は、多国籍軍だけれどもアメリカのコストだと言っているのです。「ユナイテッド・ステーツ・コスト」と言っているのです。「ストリクトリー」と言っているのですから、厳格にアメリカのコストだというふうに言っている。今度は言っているのです。前の二十億は違いましたね。運営委員会でやって、九一%アメリカで、その他は幾つかの国にみんな分けたのですから。だから、前回は違うが、今回は九十億ドルについては、厳格に「ユナイテッド・ステーツ・コスト」と言っているのです。そのベーカーの判断と、連絡はとられたそうだが、日本政府としては、この金はそのような戦費として扱うのではなくて、運営委員会で決めた上で扱い方をアメリカに申し出る、そういう条件づきの金として確認してよろしいかと聞いているのです。
  215. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはお取り上げになるのがベーカー発言だけでありますけれども、しかし最初に申し上げたときには、アメリカに対して、これは多国籍軍の国連決議に基づく平和回復活動に対する日本の支援であるということははっきり言ってありますから、ですから、そのことについては、私の方の、要するに日本政府として提供する側の意思というのは、湾岸平和協力基金の運営委員会で最終的には使途を決定するけれども、これは米国というよりも、米国がその大宗を占めておる多国籍軍でありますが、あくまで平和回復のために努力をしておる多国籍軍に対する支援のお金であると、このことをはっきりしておりますし、また、昨日来いろいろ申し上げましたが、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連などの経費に充当する方針でありまして、我が国の意に反するような使途には充当させないように確保するという仕組みとなっておりますし、その旨を政府代表からきちっと主張をし、そのように払いますということを申し上げております。
  216. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の総理のやつはきのうから耳にたこができるほど聞いていますから、何度も御説明なくても、私は前提にして議論していますから。  さてそこで、タトワイラーというあの女性の報道官は、ここではっきり今度の九十億ドルというのはロジスティックサポートと言っている、今度は。後方支援です。後方支援として使っていく、こう言っています。だから、前回は、ベーカーのときには厳格に「ユナイテッド・ステーツ・コスト」と言った。これは修正してきた。今度は後方支援、こういうふうにこれは扱われるだろうというふうに、トーンは少し変わったのです。そう総理はつかんでいませんか。簡潔に答えてください。
  217. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の支援しようという態度や方法や目的は一貫しておるわけでありまして、その私の発言をとらえてどう思うかという質問に答えた報道官の発言、そういったものとの食い違いについては、私は存じません。私は私の考え方を述べております。
  218. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そこで外務省に聞きますが、けさ私はニューヨーク・ヘラルド・トリビューンできのうの発言を、要約をつかむしかありませんでした。というのは、外務省に、きのうの彼女の記者会見について外務省としては正確につかんでおられるでしょうから、英文の原文をいただけませんかと、けさ申し入れました。そうしたら、返ってきたのはこういう回答です。ちょっとこの回答は、まあ偉い方には悪いかもしれませんが、変な回答が来ました。これは北米局北米課から来ました。外務省は通信社より配信を受けており、著作権の関係から資料として提出することはできません、こう来ました。ここには二つ問題があります。  一つ、配信されておるとすれば、この発言についてつかんでいるということですね。配信されているのですから、つかんでいる。つかんでいたら、日本政府は、アメリカの報道官が記者会見をして発表しているんですから、日本の記者もそれに出ているんですから、日本ではそれはどんな正確な報道であるかという裏をとる努力を外務省はしなければならぬと思います。これが第一点。  その裏をとるときには、向こうには大使がいるんですから、大使に直ちに指示して、あの発言について正確に外務省に伝えろという努力をすべきだと思う。  この二点について努力をした結果、私に、そこに、通信社の秘密だからくれない、こういうふうに言ったのかどうか簡潔に答えてください。
  219. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御指摘のように、タトワイラー報道官の国務省の定例記者ブリーフの関連部分に関しましては、大使から報告をいただいております。
  220. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大使から報告いただいている文書は、私たちに知らしてくれと言ってもそれは知らせないんですね、全部は。新聞でこれだけ公になっていても、外交機密で、外務省は私たち委員会には出さないんですか。
  221. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 御要望であれば、差し上げることにいたします。
  222. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 我々が何もむちゃくちゃを言っているのじゃないのですから、何でももう少し正確に我々国民に。日本新聞にはみんな書いてあるのですから。これはどういうことかいなと、せめて我々国会で予算委員会やっているメンバーは国の資料、正確な資料に基づいて判断せないかぬがな。それでどうですかと言ったら、いや通信社からもらっているから出せません。こんなものは外交じゃないですな。それを申し上げたんです。  さて、時間がありませんから、問題のポイントに入ります。  今までの議論でいきますと、総理は今度の九十億ドルは武器弾薬に使わない、それでその他輸送とか事務とかエトセトラだ、たくさん言ったから。それに使うという条件で例の基金の運営委員会に我が国の意思として伝えるということですね。これは間違いありませんね。
  223. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのとおりです。
  224. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 先般の二十億ドルのうちの前半の十億ドルの交換公文、ここにあります。この交換公文には、まずこの基金にお金を出すときのお金の相手、使うところのやつは、まず非常にはっきり前段に書いてあります。「湾岸の平和と安定の回復」ここを総理は一生懸命言う、だから戦費じゃないというふうに言っているのです。「平和と安定の回復のため」に、次にこう言っています。「国際連合安全保障理事会の関連諸決議に従って活動している各国」これを「支援するため」です。  さて、ここで聞きます。国連安保理の「関連諸決議に従って活動している各国」とは、軍隊を派遣している国ですか、軍隊を派遣しないで協力している国をいうのか、どっちですか、外務大臣。
  225. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 ここで言及しております国連安保理の関連諸決議と申しますのは、安保理決議六六〇以降の一連の決議でございますけれども、今先生御指摘の軍隊を派遣している国かということでございますが、私どもはそのように了解しております。
  226. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 どっち、軍隊を派遣している国を関係国と言っているの。軍隊を派遣していない国、日本派遣していませんね、その国も含めてと、どっちだろうと聞いているのです。
  227. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 もう一度申し上げますけれども、軍隊を派遣している国を中心ではございますけれども、それ以外の国も排除しておりません。
  228. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、軍隊派遣しているものもしていないものもある、こういうことになりますね。フィリピンはその中に入りますか、入りませんか。この関係国の中にフィリピンは入りますか、入らないのですか。
  229. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私ども、現在多国籍軍に参加しておりますのは二十八カ国と了解しておりますが、その中には入っておりません。
  230. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 十億ドルはフィリピンにも配分されているのではありませんか。この間からのあなたの答弁の中にフィリピンがありました。入っているのですか。今のやつと違ってくるよ。
  231. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 私が先日御報告申し上げました、現在までの十九億ドルの資金の供与先の中にはフィリピンが入っておりますが、フィリピンは、今申し上げましたようにいわゆる軍隊は出しておりませんが、医療団を派遣しております。
  232. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、さっき言ったこの関連諸国というのは相当広い範囲を含むな、限定なしにかなり広いなということにこの意味は解釈しなければなりません。  さて二番目。この公文書によりますと、今言った、総理は我が国の九十億ドルは武器弾薬その他の、我々の言葉で言うと正面装備的なものには使わない、その他のものに使うということをはっきり条件づけられたのですから、だとすると交換公文の二号、そこには「資金協力」以外に協力の中身が書いてありますが、今度の交換公文にはこの二号にその文言を入れますね。
  233. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 今までの二つの交換公文は、先生御指摘のように「資金協力」、それから「資磯材の調達、輸送及び据付けに係る協力」ということで書いてございますが、今度の九十億ドルに関しましては、国会の御承認を得た後、同様の交換公文を締結することを予定しておりますが、そこには資金協力ということに書くことになろうかと思っております。
  234. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 資金協力は、これは一は額なの。二番目は、その金をどう使うかにかかわる協力の中身が書いてある。だから交換公文に書くとすれば、今まで総理が発言してきているようなことであるとすれば、一は資金ですから総額です。そして二番目に「資金協力」と書いてありますから、これは後で通報することになっていますから、そのうちの何ぼ日本アメリカに持っていって、それ以外のところへ行ったかというのは、これにはちゃんと通報することになっていますから、それはいずれ来るでしょう。だけれども、最初に交換公文を結ぶときには、それだけ総理がはっきり国会で明言されているんですから、ここの二項か一項には武器弾薬には使用しないという形で挿入しておかなければ交換公文にはなりません。やりますね。
  235. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 従来の十九億ドルに関しましてちょっと一言御説明さしていただきたいと思いますが、今申し上げましたように、交換公文では「資金協力」となっておりまして、それを受けまして運営委員会でこの資金協力を具体的に何を使うかということで、輸送関連経費ということを決めております。したがいまして、私どもが今念頭に置いておりますのは、先ほど来の総理の御答弁を踏まえまして、まさにここで言います資金協力は、総理が繰り返し述べておられるような分野を対象にするということを運営委員会の決定事項として決める。それで、総理もおっしゃっておられますように、まさにこの運営委員会に臨みます日本政府の代表がそういう日本政府の基本的な考えを踏まえて対応するということでございまして、まさに運営委員会でそういうことをきちんと決めるということを念頭に置いております。
  236. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 運営委員会で決めれば、共同の資金の運営委員会で決めれば、交換公文に書いておかないとだめじゃないですか。そんな、今のような交換公文に書かずに口頭で伝えた、そしたらアメリカや世界に日本のこの金は武器弾薬には使わないんですと伝わった、そんなことにはなりませんよ。これだけ国会で明言されているんですから、ここに書かなければおかしいと僕は思う。今まで総理がそういうことをおっしゃったのを書くことは日米の外交上いいかどうかは別ですよ、外交というのはそういうものだ。しかし、そういう大変な重大なことを総理は簡単に、我が国の出す九十億ドルは武器弾薬には使いません、こういうものに使います、それを明言しますと言った。明言した以上は交換公文に書かなければいけません。書くことが日米関係にとっていいのですか。外交というものはそんなものじゃないと僕は思う。しかし、あれだけ言うとすれば書かなきゃおかしいと言うのです。いかがですか。総理、これから先は総理です。
  237. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに私は、国会のいろいろな議論の場で、国民感情を踏まえながら、国民の皆さんみんなに御理解と協力をいただくべきものでありますから、平和回復活動のために役立つように使ってもらいたいということを決めて拠出をするのです、累次の質問に、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の経費に充当する方針であると何回も答えました。私は、それを運営委員会で決めるときに、我が国のこの意思が、きちっと使われるように、また我が国の意に反した使途には充当されないように確保する、その仕組みにもなっておりますから、その場で明確に今言ったことを伝えさせると、これは何度も申し上げました。
  238. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしたら、ここでそれを伝えれば、運営委員会は二人なんですから、その協力会議の代表である事務局長のサウジの人とそれに我が国の大使と二人なんですから、日本大使がそれを伝えてつくるこの交換公文には書かなければ僕はならぬと思う。将来この交換公文は公表しないということがちらっと新聞に出ていますが、そんなことは、今まで公表したのですからこれからのものは公表しないということにはならぬと思う。  したがって、ここの四項には「日本政府は、基金に対する拠出金の使用につき、委員会の決定する適当な経路で通報を受ける。」と書いてありますから、ここで決めたことは我が国に正規に通報されるということになります。だから、十億ドルについての使途は今まで出るようにわかっています。したがって、その通報が来れば明確になると思いますが、しかし、これだけ国民の前で総理が約束をしたのですから、交換公文の中にはそれを入れる努力をするというぐらいのことは言えますね。
  239. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 交換公文を公表すると私は申しましたし、しないなんて一度も言ったことはありませんし……(嶋崎委員「いやいや、新聞で言われている」と呼ぶ)いや、新聞にどう書かれようとも、ちゃんと官報にも告示されておるじゃありませんか。きょうまでの交換公文について、そのような疑惑はありません。よく政府筋ということでそういうことが新聞に出ますが、私は、そういったものを信頼されないように、私がすると言ったことを信頼してください。  それから、交換公文がどういう性格のものであるかということは、まさに外交上の文書でありますから、外交上のいろいろな筋道がございましょう。それによって決めますが、その場で日本側の政府のこれに充当してほしいという意思は明白に伝えるようにいたしますから、書くなれば、事務局長日本の代表とでどういう方法があるのか、どういうものをつくるのか、意思は必ず伝わるように、それは指示をいたします。
  240. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 じゃ、総理の今の発言は重要ですから、書くように二人で話し合って検討するというのですから、結果として書かないことになるかもしれぬ。それはいずれまた通報もらえるから、今はもう答弁要らぬ。もう時間がないから次の質問に行きます。  次に聞きます。――いいです、いいです。結構、結構。(海部内閣総理大臣「ちょっと待ってください。委員長」と呼ぶ)結構です。
  241. 渡部恒三

    渡部委員長 総理大臣。
  242. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 結構じゃない。交換公文の中にそういう細かいことをああだこうだと書く……
  243. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 細かくはないよ。武器弾薬に使わないと言っているのでしょう、あなたは。それ以外のものに使うというクレームをつけると言っているのでしょう。ここでただ言えば済むというものじゃないのよ、外交というものは。
  244. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 委員が御指摘の点は、総理がここで言われておられる日本政府の基本的な考えが、実際に日本が拠出したお金がそういうことにしっかり使われる、それを確保するということだと私は思います。それは総理が繰り返しおっしゃっておられるように、私どもはそういうことを運営委員会の代表として対応する者にしっかり訓令を打ちます。そして対応させて、その結果についても御報告を申し上げます。  従来も、先ほどちょっと申し上げましたけれども、資金協力についてまさに同様な御指摘がございましたけれども、私どもは、交換公文上というのは非常に一般的に「資金協力」と書いて、運営委員会の決定としてこの資金協力輸送関連経費に充てますということを決め、そして、そのまた決めた結果を、関係政府が具体的な資金協力要請を出した場合にはそれを踏まえて関係国政府に伝達をし、そしてその結果もきちんと運営委員会に報告があり、また運営委員会から日本政府に報告があるというメカニズムでございますので、今度の九十億ドルに関しましても、繰り返しでございますけれども、先ほど来総理が申し上げておられる基本的な分野を対象にしてやっていくということはしっかり私ども対応したいと考えております。
  245. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間がありませんから、資料要求しておきます。  最初の十億ドルについて今まで説明がありましたから、アメリカに九一%、その他の国、だあっとフィリピンまで並べました。その国々について、どのような資金でどのような協力であったか、これについて我々に資料の提供を一つ。それをやれば、二回目のを含めまして大体十九億ドルぐらい使っているのですから、大体金の使い道の大枠の傾向がつかめる。  そこでもう一つ、九十億ドルについては、今のような努力をされるとして、交換公文に書くか書かないかというのは非常にまだあいまいですが、金の流れはこうなるんじゃないですか。先ほど楢崎さんは自分で説明されたが。日本のお金で連邦銀行の日本の口座に振り込む。向こうでドルがえにする。そして、それが財務の基金に行くのか防衛の基金に行くか、それはどっちの流れになるかわかりませんが、そこに金が動く。そして、金が動いていて、こっちの共同委員会でその金の使途や何かについて決める。そうすると、これは伝票、一種の帳簿方式です。ここではこれはこういうふうに処理するといって、後の金の流れがアメリカに行くやつとそうでないやつが分かれる、こういう金の流れになると理解していますが、それでよろしいか。改めて説明せぬでもいい。正しければそれでいい。間違っていたらどこか、直してください。
  246. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 お金の流れについては、基本的には日本政府、これは具体的には日銀でございますけれども、湾岸平和基金の口座に払い込みます。そこから、先ほど資金協力については申し上げましたけれども、各国の指定する口座に払うわけでございまして、直接日銀からアメリカとかイギリスに払われるわけではございませんで、一度湾岸平和基金の口座にしっかり入れられて、そしてそこが運営委員会の決定に従って払い込むということで、アメリカに関しましては、先ほども申し上げましたけれども、財務省に設けられた口座でございますし、イギリスに関しましてはバンク・オブ・イングランドに設けられた口座でございます。
  247. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これをやっていると時間ないからな。その辺にしておこう。  いずれにしても、僕の言いたいのは、日本の場合は国連に最初お金を出したいと言ったけれども、国連にはそんなものを受けるあれはないと。それで結局議論した結果、今の基金、湾岸の基金制度というものを設けた。だから一種の、日本の場合は、ここ経由でアメリカに行く場合あっちに行く、こうなるわけですね。ドイツはストレートにアメリカへ行きますね。その他の国もストレートにアメリカへ行きますね。日本はここ経由で行くという、違ったのは、日本の平和憲法や日本の特殊な国内条件があるからこういう新しいタイプのものができた。それは特殊性だと思う。しかし、仮にここを経由しても、もとにたどり着くときは、前の二十億ドルについては九一%アメリカへ行っているのですから、そのような形で日本からも来た、それから今度はサウジからも来た、クウェートからも来たという形の基金に、全部突っ込みになるかどうかはわかりません、帳簿で動かすのですから、現金を動かすんじゃありませんから、なるが、これは突っ込みで、きのうのタトワイラーさんによりますとこれがまさに後方支援のコストだと、結果としてそうなるわけ、結果として。  さて、後方支援について聞きますが、この間、女の看護婦さん、女の兵隊、アメリカの兵隊が捕まりましたね、防衛庁長官。あの人はどんな業務でしたか。後方支援の業務でしたか、それとも戦闘の第一線の業務でしたか、防衛庁長官
  248. 内田勝久

    ○内田政府委員 米軍の女性兵士が一人、御指摘の一人、女性兵士の担当業務でございますが、私の記憶する限りは、たしか兵たん業務に従事していたというように報道されていたように聞いております。  以上でございます。
  249. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 つまり私の言いたいのは、あの人は輸送なんです、新聞の報道によればですよ。政府からは今正確じゃないですから、私も同じ情報でしかありません。これは後方業務、後方支援の仕事をしていた。そしたら捕まっちゃったの。ということは、戦争の中では前面の戦争と後方支援は区別ができないということの一つの証拠なんです。  さて、日本のお金は、基金の運営委員会を経るにしたって、まあ九割以上、前は九一%ですが、大半は、ベーカーによればほとんど戦費だと言っている。今度は、向こうの女性の報道官はこれは後方支援だ、こう言っている。したがって、基金経由で後方支援だという場合に、後方支援で総理が言う弾薬以外、武器弾薬以外のエトセトラで幾つか挙げられましたが、それは実は多国籍軍の軍隊に必要な費用の一部であるという意味の後方支援のお金でしかないのです。  大蔵大臣と総理大臣にそれぞれお聞きしますが、大蔵大臣としては、このような共同委員会で決めて武器弾薬に使わないといって行くお金、この性質について、総理は今までこれは平和回復の基金、こう言ってきた。大蔵省の立場から、お金を動かす実務の官庁として、この金は後方支援の枠の中に入る金だとすれば、戦費とは言わぬでもいいわ、後方支援というこの枠の中に入るお金と考えていませんか。総理、大蔵同じ意見ですか。総理は今までそう言ってないのですから。大蔵大臣から。
  250. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に申し上げたいことは、イラクのクウェート侵略という状態からその状態を原状に回復する、もとの状態に回復する、すなわち、クウェートが独立を回復し、もとの状態になるためにイラク軍の撤兵を求め、その撤兵に応じないために多国籍軍が平和回復努力として武力を行使している、それに対しての支援の一部であり、しかもその使途については、先ほど来総理が述べておられるような日本政府としての要望を付し、その範囲内で使われる資金、そのように理解をいたします。
  251. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう時間がありませんが、我が友党でありますドイツ社会民主党は、五十五億ドルについては、これは戦費だからドイツの立場からしては直ちに拠出できない、憲法改正をやろうという提案をした上でこの処理をやろうというのが我が友党ドイツ社会民主党の立場であります。  我が日本社会党は、今日まで護憲の党としてやってきておるわけで、少なくとも後方支援ということであれ、戦争という武力行使が行われている、戦争にかかわる経費であれば、武器弾薬でなくてもこれは戦争の経費と考えざるを得ない。その意味で、これをやるときには、我が国の憲法に照らしてみてこのような支援が直ちに、支援することは私は否定しているのじゃないのですよ、支援が直ちにできるかどうかの検討が要ると思う。  そこで、提案します。我が党はただ反対しているのではありません。うちの党は、九十億ドルというお金の中で、例えば石油の問題にどうするの、サウジの水をどうするの、それから避難民をどうするの、そういうところに必要な諸経費の問題といわゆる戦時色を持つと考えられそうな後方支援のお金を区別して、軍事のための、軍事にと予想される後方支援の金はだめだと言うが、この九十億ドルの使い方はそのような今日の、後の議員がやるでしょうが、環境破壊の石油問題や水の問題や、それから避難民の問題や多くの問題にいかに貢献するかという観点で我が国の支援は行うべきである。それを前提にした上で、どうしても今の段階でやるべき最低のことは、軍事に協力しないでやれることはないのかといったら、恐らくないと思う。出す以上はみんなそうなっちゃうんだ。だとすると、ただ武器弾薬に使いませんということだけを本会議で、この委員会で総理が私たちにただ説得をしさえすれば――我が国の現行憲法体制や今日まで武器輸出を初めとして平和憲法の立場で国際的に貢献する金を我々は出すのに惜しまないという立場から、九十億ドルの積算根拠並びに使途についてこれから我々の同僚議員もさらなる討論と追及をしなければならぬと決意しています。  時間が参りましたので、これで終わります。
  252. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて嶋崎君の質疑は終了いたしました。  次に、戸田菊雄君。
  253. 戸田菊雄

    ○戸田委員 質問通告は、一、湾岸戦争、停戦・平和的解決の見通し、こういうことですが、順序を変えまして、九十億ドルと財源問題についてまず質問してまいりたいと思います。順序を変えます。  それで、本題に入る前に二つほど伺っておきたいと思うのですが、その一つは、今、軍隊の輸送機、これを戦闘地域に配置をしているのはどこでございますか。輸送機を戦域に派遣をしている国。
  254. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私どもで把握をいたしておりますのは、いわゆる多国籍軍の参加国のうち、航空機を派遣している国として公表されておりますのが十カ国ございます。
  255. 戸田菊雄

    ○戸田委員 参戦国以外で派遣しているのは、あなたの方の資料によるとニュージーランド、これはノルウェーと二国配置されておったんですが、しかし、開戦後撤退したんじゃないですか、ニュージーランド。参戦国は別ですよ。
  256. 内田勝久

    ○内田政府委員 湾岸地域に空軍を派遣しております国の中にはニュージーランドが含まれていると私ども理解をしておりますが、現在ニュージーランドが戦闘、航空爆撃に参画しているという情報には接していないというのが私どもの理解でございます。
  257. 戸田菊雄

    ○戸田委員 日本政府が一応、IOM、この事務局長から、民間軍用機及び船舶提供を要請された。その対象国の中で日本は軍隊の輸送機派遣をする、こういうことを現地記者会見をしましたら、それは二十八カ国、総理も言っているように参戦国でありまするからね、それはトルコもイギリスもフランスも、そしてアメリカ合衆国はもちろん、非常に戦域が広範にわたっている、まさに世界大戦ですね、そういうところに軍隊の輸送機が来ることは非常に危険だ、標的にされる、こういうことを見解として言っているんですね。それは御存じですか。
  258. 丹波實

    ○丹波政府委員 先ほどから外務省側及び防衛庁側の政府委員が御答弁申し上げましたのは、多国籍軍との関係で輸送機派遣しているという御質問と受け取ってお答え申し上げたんですが、今の先生の御質問は、要するに避難民輸送という関連で、いわゆるパーセル書簡を受けて各国が反応しているうち、どこの国が軍用機避難民輸送機として手を挙げているか、まあ俗に言う、そういう御質問でございますですね。  その点でございましたら、私たち一月の二十八日の段階でまさにそういう質問をIOMにしたんですが、IOM答えは、国としてはフランス、アルゼンチンそれからスイス、韓国、こういう名前を挙げておりまして、特にアルゼンチンにつきましては軍用機C130ということを言っております。ただ、フランス、スイス、韓国民間機軍用機をあわせて出そうとしているのか、民間機だけであるのか、その点はちょっと明確にはなっておりません。
  259. 戸田菊雄

    ○戸田委員 本見解はきのう同僚の嶋崎委員が随分質問をいたしましたから後は割愛をしますけれども……。  もう一つだけ総理輸送機が行くときは日の丸をつけて行くんですか。
  260. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日ごろの、ついたままで行くと思います。
  261. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それじゃ、財源問題に入りたいんですが、まず湾岸協力会議ですね、これはどういう国が加盟をして、そしてどういう性格でどういう機構、運営でやられるんですか。まずその見解を。
  262. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 GCCについて御質問と思いますけれども、このGCCは八一年の五月に六カ国をメンバーとして発足しておりまして、このメンバーは、アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、バハレーンでございます。この契機になりましたのはイラン・イラク戦争でございまして、このGCCは経済、軍事、文化等幅広い分野での協力関係を増進し、その結束の強化を目指して結成された国際機関でございます。
  263. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いわゆるサウジアラビア、クウェート、バハレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、この湾岸六カ国で形成をしているんですね。それで目的は、イランとイラク戦争があって、イランの、何といいますか、一つの圧力が加わってきた。そういう名目で湾岸六カ国結合してこういう湾岸協力会議をつくった。だから国連の下部機構でも何でもないんですね。まさに各国の常識的な、自主的なそういう会議でしょう。権威が何もないのですね、これは。
  264. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 湾岸協力理事会そのものは、先ほども御説明申し上げたように八一年にイラン・イラク紛争がきっかけとなって設立されたものでございますが、これは一つの国際機関として、国際政治、経済その他幅広い分野において、この関係国間の協力を行っておるものでございます。  それで、憲章がございますけれども、その憲章はアラブ連盟及び国際連合にこの機関が登録されるということを定めております。
  265. 戸田菊雄

    ○戸田委員 この設立趣意からいきますと、サウジアラビア、クウェート、バハレーン、カタール、アラブ首長国連邦、オマーン、この湾岸六カ国、一九八一年五月末、首長国連邦の首都アブダビで首脳会議を開き、共同体化を目指す活動に合意した。その後、治安、国防面での結束を強め、イラン革命の影響の阻止、イラン・イラク戦争におけるイラク支持などでほぼ統一歩調をとっている。しかし、一九八七年のペルシャ湾危機で米ソの介入を招いたクウェートのタンカー防衛政策は、他の加盟国から全面支持を集めることができず、クウェートは孤立し、GCCは弱点を暴露した。これはあくまでも六カ国の自主的会議なんです、国連の下部組織でもなければ。こういう権威のないところを通じて膨大な九十億ドルの支援金を送り込むということは、これは全く場当たり的じゃないですか。どうですか総理
  266. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど来も御説明しておりますように、このGCCはしっかりした国際機関でございます。今回の湾岸危機は、これは総理が繰り返し御説明申し上げておりますように、まさにイラクがクウェートを侵略、併合したことから始まったわけでございますけれども、まさにこのGCCは、そのクウェートを初めといたしまして、この関係諸国でつくっておりますしっかりした国際機関でございます。ですから、そういうここのしっかりした国際機関と手を結んで私どもは平和協力基金を設けて、そこを通じて湾岸地域の平和回復活動に従事している各国を支援する、これは非常に適切なメカニズムである、こう考えております。
  267. 戸田菊雄

    ○戸田委員 総理の今までの各般のやりとりの中で、今回の九十億ドルはあくまでも平和条項に使用していただく、そういう趣旨で、輸送とか医療とか等々の支援金として拠金をする、こういうことを言ってこられましたが、それは国連とは何にも関係ないんですね、この機構は。
  268. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連決議に基づくあの地域の平和回復活動に日本としてはできる限りの支援をするために拠出をする、こういうことでございまして、拠出先が湾岸平和基金であるということを何度も申し上げてまいりました。
  269. 戸田菊雄

    ○戸田委員 しかし結果的にはここへ行った金がアメリカに九〇%行くわけでしょう。それはさっき嶋崎委員も言ったとおりである。だから、そういう重大な金を扱う場所としては、本来なら、国連決議というなら国連の平和機構の中であるいは何らかの機構の中で、そこが全部多国籍軍に使用させる、こういうことでなければ筋として通らないんじゃないでしょうかね。
  270. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生御記憶のように、日本が最初に湾岸の平和回復活動に対します支援策を打ち出しましたのは八月の二十九日、それから十億ドルが翌日の三十日でございますが、私どもはその前後から、こういう私どもが意図した平和回復活動への支援というのを、どういう受け皿が一番効果的に私どもの資金を使ってくれるか、いろいろ検討いたしました。その一つとして、先生が御指摘の国連というのも検討いたしましたけれども、国連では財政技術上の理由でこういう基金は設けることができないということでございます。他方、GCCの方は、GCCの目的からしてこういうことをするのは非常に歓迎されるということでございましたので、私どもといたしましてはGCCと組んで湾岸の平和回復活動の支援活動を行っていくということで、最初の十億ドルのうちの九億ドルがこの湾岸平和基金でございますが、その後補正予算で十億ドル認めていただきましたので、今まで十九億ドル払い込んでおりますが、私ども見ますところ、非常にしっかり私どもの意図するところを踏まえてこの湾岸におきます平和回復活動に支援をしてくれている、こういうふうに私どもは見ております。
  271. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ですから、結果的には、一応この会議を通じても、結局アメリカへ大部分行っちゃっているんでしょう。そうでしょう。
  272. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 きょうまでの貢献策をどのように使ったかということの結果においても、結局、あの湾岸地域の平和回復のために一番大宗を占めて行動しておるのはこれはアメリカでありますから、アメリカがその活動費の大宗を使用した結果になっておる。九一%でしたか、それはそのとおりでございますし、私は、それは湾岸の平和回復のために日本が拠出しておるのでありますから、その結果についてはそれでいいと思っております。
  273. 戸田菊雄

    ○戸田委員 極めて筋が通ってないですね。筋が通っていません。決議による行動はやっていますが、金がそういう権威ある国際連合、こういう機構の中で扱われていないんです。ストレートでアメリカへ行っちゃっているんですからね、アメリカに。
  274. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国連の平和基金に金をうんと出せという御指摘が党首会談であったことは私も記憶しておりますし、そういったことも念頭にございますから、国連の大使を通じていろいろ言ったんですが、国連に現在その基金がございませんでした。私はデクエヤル事務総長とお話をしました。私の方から、そういった基金を国連につくるとか、あるとかいうようなことはないのか、日本としては、そういったものができれば一番そこへ出しやすいんだということも率直に申し上げました。しかし、現在ないんです。ありませんから、国連の決議をしている湾岸の平和協力に対して日本が基金を拠出する、そのためには、問題の起こっておる湾岸の平和協力基金にそれを出すということが最も考え方としてはいいと私が判断をして、政府はそのようなことに踏み切ったわけでありますから、それで国連の決議に従った平和回復の活動が一日も早く成功して、あの地域に平和が戻ってくることを心から期待をしておるところであります。
  275. 戸田菊雄

    ○戸田委員 まあ、納得ができませんけれども、別な角度で。  総理が言われる後方支援、この中に輸送とか医療とか等々おっしゃられました。後方支援というのはどういうことですか、防衛庁長官
  276. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 これは先ほども申し上げましたけれども、英語でロジスティカルサポート、ロジスティック面における支援というのはアメリカのタトワイラー国務省報道官が使っておる用語でございまして、総理が国会の場で繰り返し申し上げておられますのは、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費ということでございまして、総理は後方支援という言葉もロジスティックスという言葉も使っておいでにならないということを改めて申し上げたいと思います。
  277. 戸田菊雄

    ○戸田委員 防衛庁長官、後方支援についての見解を申し上げてください。
  278. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 後方支援について定められた定義が明確なものがあるわけではございませんが、我々の防衛庁におきまして考えておりますのは、普通用いられておりますのは、直接攻撃に携わらない、それをサポートするための経費を一般に後方支援と称しております。
  279. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは明確に防衛庁見解、載っているんじゃないですか。一九八八年の防衛白書、後方支援とは、   整備・補給・輸送・衛生などの後方支援は、作戦実施のための基盤であり、これが戦闘部隊と均衡をもって維持され円滑に機能することが必要である。具体的にいえば、装備品の絶えざる整備が必要であり、整備用部品はとだえることなく輸送され、補給されなければならない。また、弾薬類、燃料、武器なども不足することがないよう継続して輸送され、補給されなければならない。さらに傷病者などに対しては、手厚い治療・看護や後方への安全な移送が必要となる。 百三十五ページ、明確に防衛庁見解、載っているんじゃないですか。
  280. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 ただいま委員が読み上げられましたのはそのとおりでございますけれども、ただいま私の答えましたのは、定義について明確なものが定まっているわけではございませんということでございまして、今読み上げられましたのは後方支援についての説明あるいはその必要性についての記述でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、直接戦闘に用いられる経費以外の、それを全体としてサポートするものを通常後方支援、こういうふうに称しているわけでございます。
  281. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは、単に日本防衛庁の見解だけじゃないんですよ。国際的な問題ですよ、これは。各国がこういうことで対応している、国際的なもの。それはどうですか、防衛庁長官
  282. 池田行彦

    ○池田国務大臣 先ほど防衛局長からお答え申し上げましたように、後方支援という言葉について厳格な、きちっとした定義があるわけじゃございませんけれども、一般的に、先ほど、防衛白書にも記載されておりましたような輸送その他の業務が後方支援と国際的にも言われているという点は、御説のとおりであろうと存じます。
  283. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そういうことであるとすれば、総理、今まで輸送とか医療と言われたもの、これは全部戦費ですよ、戦費。そういうことになりませんか。
  284. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戦費という概念がどのようなものか、幅広いと思いますけれども、私はあくまで、国連の決議によってあの地域に行われておる侵略を排除して、平和を回復するための国連決議を支持し、そのためにいろいろな困難を乗り越えて、犠牲を払って二十八に及ぶ国が活動しておってくれる、それに対して日本の側から適切な支援をする、その支援のときに日本は武力でもってお役に立つことはできませんから、せめて日本の許される範囲でお金を出すということを決めて、言ってきたんです。何に使うか、何に出すか、武器弾薬はどうするかという御質問が毎日続きましたから、私なりにきちっと整理をして、輸送、医療、食糧、生活、事務関連などの経費に充当する方針でありますと方針を申し述べたわけでありまして、あくまでその方針に従ってそのお金を充当してもらい、一日も早く平和回復することを願っております。  以上です。
  285. 戸田菊雄

    ○戸田委員 戦費かどうかということを私は問うたんですがね。現に支援金をもって大輸送作戦、こういうものが日本の資金を土台として使われているんでしょう、現地は。現に使われている。これは明らかに戦費じゃないですかね。
  286. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 侵略排除の目的に合うようにいろいろな努力をしておるわけで、国家による実力の行使を伴うことに直接加わっていかない、私が例示的にいろいろ申し上げましたけれども、そういう部面に平和回復活動のために使ってもらいたいという願いを込めて所要経費の一部を拠出しておるんです。あくまでそうであります。
  287. 戸田菊雄

    ○戸田委員 戦費というのは、こういった事態の中では、例えば自衛隊だって人件費あるいは食糧費、それから各般の車両あるいは兵器弾薬、こういったもの全部総合して防衛費になっているんでしょう。今出している支援金でもってこの戦争に対して、平和条項だと言うんだけれども、これは明らかに戦費じゃないですか、戦費。今の総理の見解じゃ納得できませんね。
  288. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 戸田委員は戦費とおっしゃいますし、私は国連の決議に従った平和活動に必要な費用であると、こう言い続けてきておりますし、それはやはり私はそう思っておるのですから、何度お聞きになっても、国連決議に基づく平和回復活動に必要な諸経費の一部を我が国が拠出をする、そして国連の決議が達成されるように我が国は適切な支援を要請された国として資金の提供をした、そういうことです。
  289. 戸田菊雄

    ○戸田委員 明確に防衛白書にその意義として、国際的にも、さっき申し上げたような状況、これが後方支援だ、こういうことになっているんですね。これは明らかに戦費じゃないか。今の総理の話では、それは平和行動に対してと。しかし現地は戦争ですからね。そこへやって、それに使われているんですから、これに該当しないんですか、こういうことなんです。
  290. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回行われておりますことは、戦後初めてと言ってもいいくらいのイラクの武力の侵略、侵攻を国際社会の場で、しかもアメリカもソ連も含めた安全保障理事会で、平和の破壊はいけません。国連憲章に基づいた普遍的な武力行使なんです、これは。ですから、いわゆる昔一国と一国が宣戦布告をやって戦争をするという、そういった意味のときの概念じゃなくて、国連の平和活動、平和回復活動、それの支援でありますから、これはやはり新しい形の武力行使なんです、国連の決議を支持するための。これは、新しい世界の平和の国際秩序をつくるときに、今までのように力の均衡で――力で抑えようという考え方ならばだめですけれども。だってそうでしょう。社会党の新人議員の皆さんたちの内部文書も、私検討させていただきましたけれども、普遍的な武力行使は違うんだ、新しいものなんだとお書きになっておるじゃありませんか。ですから、そういう意味でそれを助けていこう。ただ、結論は違いますよ。はっきり言いますが、それは結論は違います。自衛隊は、憲法で認めておらぬから自衛隊はだめだということになっていますから我々の結論とは違いますけれども、しかし、国連が決めた普遍的な武力行使というものは、従来の一国と一国が宣戦布告をやる戦争とは違うということは、いろいろな方がいろいろなところでお考えになっておる概念ではないでしょうか。私はそう思いますから、従来のいわゆる一国と一国の戦争の後押しじゃなくて、国連の決議に基づいた平和回復活動に対する日本のでき得る限りの協力でありますから、あくまで平和回復のための拠出金である、私はそう受けとめておるのです。
  291. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そういう見解なら、何も総理が今まで言ってきたように平和条項どうのこうの区別する必要ないんじゃないですか。輸送や医療とかこういうことで区分けする必要ないんじゃないですか。弾薬武器には使わせない、そんなこと言う必要ないんじゃないですか。今の総理の見解なら全部含まることになるんじゃないですか。平和行動だ、現下の戦争は平和行動だと、こう言うのですから、それなら何も区分けする必要ないんじゃないですか。
  292. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何回も申し上げておりますが、私は、国連の平和回復活動を支援するため所要経費の一部を日本が提供するということを決めたのですが、委員会のやりとりの中で、何に使うか、何に使うかという重ねてのお尋ねがございましたから、私の考え方として、輸送、医療、食糧、生活、事務関連等の経費に充当するということを申し上げたわけでありまして、お聞きになったからそれはお答えしたのであって、初めのうちは私は、国連の平和回復活動を支援するために拠出するお金でございますと、それだけお答えしておったのですから。それはわかってください。
  293. 戸田菊雄

    ○戸田委員 そういうことであれば、今私が読み上げたような、武器弾薬その他も全部包括されるんだ、こういう見解に修正するわけですな。
  294. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 あくまでここで申し上げた見解を私は貫きますし、また湾岸平和協力委員会の理事会において、我が国の代表にこれらのものに充当するようにということは、もう一々言いませんけれども、何遍も申し上げたから、それは考えを変える気持ちはありません。この充当してほしいという我が国政府の立場を伝えてまいります。
  295. 戸田菊雄

    ○戸田委員 非常に矛盾を感じますが、先に進みましょう。  大蔵大臣、財政法が成立をされたのはいつごろで、どういう趣旨で財政法を制定されましたか。
  296. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、私の幼いころのことであると心得ておりまして、いつごろできたかということまでは存じません。
  297. 保田博

    ○保田政府委員 昭和二十三年でございます。――二十二年だそうでございます。
  298. 戸田菊雄

    ○戸田委員 どういう趣旨で財政法が……
  299. 保田博

    ○保田政府委員 財政運営の憲法というような立場としまして、それから、戦前の財政運営に対する反省等含めまして、財政民主主義の立場から制定されたということでございます。
  300. 戸田菊雄

    ○戸田委員 どうも明快な答弁とは言えませんね、主計局長。戦時中、大量の戦費調達で、それで公債というものが発行されていった。その結果、戦後大変な大インフレを招来をした。そういう反省に立って財政法というものが成立をしたんじゃないんでしょうか。そして第四条、これは財政法のかなめでしょうけれども、自後、公債発行というのは一切まかりならぬ、国家の収支関係は財政法に基づいて運営しなさいということを明確にうたわれたんですね。それはやっぱり戦前の反省から来ているわけですね。そういう状況が財政法というものができた経緯なんでございますが、そのことによって、大蔵大臣、四十一年に福田大蔵大臣でございましたか、そのときに建設公債、こういうものが発行されました。財政の特別措置という方法でやられたわけであります。で、自来、発行し続けて百六十八兆円、こういうことになりました。しかし、現在大蔵省が考えておるように、今度の湾岸支援金の調達について、一つは法人税、三・二%引き上げる。一つはたばこ税、一本当たり五十銭上げる。マイルドセブン二十本で十円ですね。なおかつ石油税を倍にして、そして一兆一千九百億、これを調達しようとしておるわけですね。それで、一年間かかりまするから、当面の措置としては公債発行で立てかえねばならぬ、こういう処置をということなんですね。そういう今後の支援金調達の方式については、間違いないですか。
  301. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありませんでしたが、先ほど主計局長の説明を聞きまして、私が小学校の四年のときに財政法ができたということを改めて知りました。  そこで、今委員が御引用になりました財政法第四条「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」この第四条が、先ほど委員が述べられましたような第二次世界大戦以前あるいは第二次世界大戦中における我が国の巨額な公債による軍事費の調達というものからの反省だという御指摘は、私はあるいはその時代を振り返ってみればそのとおりかもしれない、感覚的にもそう思います。  しかし同時に御理解をいただきたいことは、財政法第四条というものは、あくまでも健全財政のための財政処理の原則を規定しているものでありまして、今委員が述べてこられましたような戦争危険防止というものが立法趣旨と言うことは私はできないのではないかという感じがいたします。  同時に、現在検討しており、やがて国会で御審議をいただくことになります臨時の特別な公債というものは、臨時の特別の税で、国民からお許しをいただき、その収入が入ってくるまでの間のつなぎのための臨時的な国債であります。そして、その臨時の税収によって償還をされるものでありますから、特定の償還財源が定められておりません従来の特例公債とは異なりまして、償還財源の面からも発行の歯どめがかけられておるもの、私はそのように理解をいたします。
  302. 戸田菊雄

    ○戸田委員 殊に、今回の支援金というのはこれは戦費でしょう。そういうものを、一時的にせよ暫定的にせよ、公債を発行して充当させるということはできないんじゃないでしょうかね、この財政法の状況からいきますと。これは明確じゃないでしょうか。「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」こういうことで、第一項でぴちっとそれはできませんよ、こういうことを明確にしているんですから。
  303. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、私どもは国会の議決を経ずして国債を発行しようとはいたしておりません。国会の議決を経ずして公債を発行しようとは今回いたしておりません。そしてまさに私どもは、イラクがクウェートに侵入し、侵略し、占領し、そしてたび重なる国連決議によってもクウェートから立ち退かないという状況の中で、湾岸地域に改めて平和を取り戻すために、そしてクウェートが原状を回復するために、いわばイラクをクウェートから立ち退かせるために努力を続けてきた上での多国籍軍の武力行使というものは、まさに中東湾岸地域における平和回復のための活動であると理解をいたしております。そして、日本はその平和回復活動に対し資金をもって支援を行おうとしている、私はそう理解をいたしております。
  304. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは、この前も二十億ドル支出の際に私は大臣の見解を伺いました。しかし、そのときも今の同様趣旨の見解でございましたがね。原則的には、私は、一定の財政措置、特別措置、こういうもので政府が出してきていますから、確かに国会議決を経るということにはなりましょう。しかし、基本をなすものは、そういうものの発行は禁じられているんですから、だから節減とか、それから新規財源を確保するとか、そして九十億ドルの調達をやっていく、こういうことでないと困るんじゃないでしょうかな。ドイツ自体も、五十五億ドルですか、これに対しては節減と、それからそういう一つの新規財源確保、こういうことで対処しているようです。だから公債発行などはやってない、それはドイツも大体日本と同じような財政法を持っていますから。そういう状況を見ますると、この調達の方式に若干無理があるんじゃないだろうか、このように考えますがね。
  305. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変お言葉を返して恐縮でありますが、この経費というものは、イラクがクウェートから今日ただいま立ち退けば、それをもって必要となくなる種類の経費であります。これだけは委員に申し上げなければなりませんが、クウェートという独立した国をイラクという国が侵略し、しかも、各国が国連の場を通じ、その立ち退きを何回も何回も要請したにかかわらず、現に居座り.戦いが始まった今日もそのクウェートから撤退しようとしないところに原因のあることはお認めを願わなければなりません。  そして、私どもは何とかしてその中で必要とする九十億ドルという我が国の負担を今拠出しなければなりませんが、今委員は一つは節減と仰せられました。平成二年度の予算の中におきまして、私どもが今日まで、殊に平成二年度補正予算第一号を編成いたしますときに、例年よりもはるかに厳しい節減を各省にお願いをし、五割ほど多くの金額を捻出をいたした経緯も委員はよく御承知のとおりであります。そして、もうあと残りがわずかになりました平成二年度、その二年度の中においてこれだけの経費を捻出することは不可能であります。そして国民に、苦渋に満ちた選択ではありましたけれども、臨時の税による御負担をお願いをしたいということを私どもは考えております。  それは、赤字公債、従来と同じ型の赤字公債というものによってこれを捻出する場合には、それこそ子供たち、孫たちの代にまでその負担を及ぼすことになるわけでありますが、今起きている湾岸の平和回復活動に対する負担は、我々の世代でやはり負担すべきものだと私は思います。そしてその中で、臨時の税というものでお願いをするにいたしましても、それは年度がかわります。ですから、その税収が入るまでの間を短期の国債でつながせていただきたい、そういう考え方を繰り返し述べているのであります。
  306. 戸田菊雄

    ○戸田委員 現下の石油の中東地帯一帯で、埋蔵量どのくらいございましょう。
  307. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 世界の石油の埋蔵量でございますが、いわゆる確認可採埋蔵量というものは、世界全体で約一兆バレルあると言われております。そのうちで中東に約六六%が存在をしております。
  308. 戸田菊雄

    ○戸田委員 最近クウェート、イラク等々からの輸入は大分減少しておりますね。その分はどこで増産をされて日本に来ておりますか。
  309. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 昨年の八月二日のイラクのクウェート侵攻に基づきまして、国連で決議をいたしまして、制裁決議として一切の輸入を禁止する措置をとりましたので、日本を含め、主要国においてイラクあるいはクウェートからの石油の輸入は現在ゼロになっております。
  310. 戸田菊雄

    ○戸田委員 したがって、その見返りをサウジアラビアあるいはUAE、アラブ首長国連邦、イラン等々、OPEC、石油輸出国機構全体で一日当たり三百五十万バレル増産をして、そこから今穴埋めをやりている、こういう状況ですね。そして国内の石油を初め油が今大分値上がりしておりますが、この動向はどういう状況ですか。昨年の九月、十月、この動きでいいです。
  311. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 昨年の八月以降の世界の原油の需給につきましては、先生おっしゃいますようにイラク、クウェートから出なくなった分をサウジアラビア、UAE初め他の産油国が増産をいたしましてその分を供給しておりますので、世界的に原油の需給が逼迫をするという事態には至っておりません。  価格でございますが、昨年の八月以降原油価格は一時高騰したわけでございますが、その後また下がってきております。日本に一番関係の深いドバイ原油というもので月間の平均値、ドル建ての数字を申し上げてみたいと思いますが、事件が起こります前の七月のドバイ原油の一カ月平均値でございますが、十五ドル二十八セントでございました。八月の平均が約十ドル上がって二十五ドル六セントになり、九月は三十ドル四十一セント、十月は三十一ドル五十二セントまで上がりました。十一月には下がりまして二十七ドル八十八セント、十二月は二十三ドル二十一セント、そしてことしの一月には十九ドル十六セントに下がっております。これは世界の原油のスポットの価格でございまして、日本に入ってまいります原油はこれらの指標原油に関連づけられて規定をされる部分が非常に多うございますので、ほぼ似たような経過で上がったり下がったりしております。  それを受けまして、国内の製品価格につきましては、マーケットメカニズムで決定されるのが基本でございますけれども、非常に影響するところ大でありますし、石油といるものの重要性、国民生活への関連の深さということから、通産省といたしまして、昨年の九月以降、国内の石油製品価格につきましてはそのコストの動向をヒアリングをしておりまして、国内での卸売価格がそのコスト変動の範囲内におさまるように、監視を続けております。  先ほど申し上げた海外の市況を受けまして、約一カ月のタイムラグで日本に原油が国内の製品として出てまいりますが、したがいまして、日本の国内では九月の後半以降価格が上がりました。九月、十月と上がりまして、その後十一月はほぼ横ばい、会社によって上がったところも下がったところもあるという状態になりました。そして十二月は下がりまして、ことしの一月はまたさらに価格は下がっております。二月はこれからでございますが、これからコストのヒアリングを私どもやる予定にしておりますが、先ほど申し上げましたように一月のスポット価格の平均値が下がっておりますので、正確なことはまだ申し上げられませんけれども、方向としては価格は下がる方向にあるというふうに考えてございます。  そういうことで、一時非常に上がりましたけれども、そのうちの半分、現状では約半分ぐらいはまたもとへ戻ってきている、こんな状況であると御説明したいと思います。
  312. 戸田菊雄

    ○戸田委員 確かに一方で増産体制で輸入されておりまするから、今のところは石油不足というようなことは招来していませんが、そしてまた値段も、円高、最近は円レートで大体一円程度これが上がっておりますから、それでこっちの石油の値上がり分と調節をされている、こういう調子だと思うから、今おっしゃられたようにそう値上がりもせずに来ている、こういう状況だと思いますが、しかし、この円レートの、あるいは円安その他、そういうことになってきますと、いただいた資料によってもこれは大分値上がり傾向にあるわけですね。  この間石油連盟会長の健内さんは、資源庁のある部長と話をして、そして一定の灯油その他引き上げを図った、生活石油ですね.こういうことを聞いているのですが、こういうのは共同カルテルに該当するんじゃないでしょうか。どうですか、そういう事実はありますか。
  313. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 石油の価格を決定する要因といたしまして、先ほど御説明をした海外でのドル建ての原油の価格とそれから為替レートが影響してくることは御指摘のとおりでございます。そこで、両方の要素を合わせまして、それ以外に船賃、フレートでありますとか保険料、あるいはそれに関連する金利というようなものも影響してまいりますけれども、基本はドル建ての価格と為替レートというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。私どものコストのヒアリングではそれらの要素は会社別に詳細にヒアリングをしておりますので、すべて反映をされたものが私どもの手元に記録されているということになってございます。  なお、石油の価格につきましては、御指摘のようにこれは公共料金でありませんので、基本的にはマーケットにおいて市場メカニズムで決定されるのが基本でございます。ただ、昨年八月二日にイラクのクウェート侵攻が起こりまして海外の市況が急騰した状況を受けまして、やはりこの石油というものが持つ国民生活に与える影響の大きさあるいは日本経済に与える影響の大きさ、そしてまたいわゆる便乗値上げというものを懸念する声、こういうものがありましたので、そこで私どもの方で行政的に最低限の介入といたしまして、先ほど申し上げました価格の絶対水準ではなくて、海外で変動するコストの変動要因、つまりドル建てでどれだけ上がるのか、為替レートでどれだけそれが動いてくるのか、その要素を正確に把握をして、要すればそれ以前の状況に比べてその分が転嫁されるのは便乗ではないだろう、その範囲内で価格転嫁というものが行われているのかどうかというのを見届けるという行政措置をとったわけでございます。  したがいまして、これは通産省・資源エネルギー庁が各企業ごとに個別にヒアリングをし、その結果、各社がその範囲内で、もしそれに反したことをやれば私ども行政指導をする覚悟でおりますけれども、幸いその後の各社の価格改定の動向はその範囲内にとどまっておりますのでそういう介入はいたしておりませんけれども、個別に私どもが行政指導をしているということで、カルテルに類似するような行為ではないというふうに理解をしているところでございます。
  314. 戸田菊雄

    ○戸田委員 石油の価格はどのようにして決定されていますか。
  315. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 国内における石油価格の決定メカニズムという御質問であろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、これはマーケットメカニズムで決まっているのが基本でございまして、売り手と買い手との間のバランス、交渉によって決定するというのが基本でございます。  先ほど申し上げました介入は、そのときのコストの変動が海外要因で非常に大幅に動いたものですから、先ほど申し上げましたようにバレル当たり約十ドルの値上がりがあったものですから、それが国内価格にどのように転嫁をされていくのか、その間にいわゆる便乗値上げというようなことが行われないのかどうか、それを見届けるために、それ以前に形成されていた価格に対してどれだけの幅でコストが変動し、転嫁がその範囲内に行われているかどうかを見るというのを私どもが行政で介入をした、こういうことでございます。
  316. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは通産省の資料でありまするけれども、世界的に決定される石油の価格、七年前まではニューヨークの先物取引市場、いわゆるWTI、ここで上場されて、世界的な石油の先行指標を示す。その次に国際石油資本、いわゆるメジャー、それからトレーダー、これは仲介人ですね、等々入りまして、あるいは銀行、証券会社加わって株式と同じような市場形成でもって決められていくんですね。だから非常に投機的な性格を持っている。そういうものを受けて日本が取引をやっているわけですから、だからこういう価格の決定を少しやはり合理的に、そういう投機的な対象として指標をやるというようなことじゃなくて、変更していく、あるいは規制をしていく、こういうことが必要じゃないかと思いますね。そうでないと、今国民はまさに油の上で生活しているのですからね。例えば産業関係を見ても、電力会社しかり、あるいは鉄鋼しかり、すべて油を原料にしてやられている。あるいは合成樹脂あるいはプラスチック製品、それから玩具、食卓用品、発泡製品あるいは容器、包装、住宅資材、電線、ケーブル、家電製品、自動車等、魚の釣りざおの糸まですべて油を土台にしてつくられている。こういう状況ですからね。だから、この価格操作が結局我々国民に対する大変な影響を与える状況確なります。  もう一つは、やはり今の湾岸戦争、そういう意味合いからいっても、これは早期に停戦をさせていきませんと、世界の供給の七〇%をここで占めているわけですから、日本は六十数%ここから持ってきているわけですから、そういう面からいって非常に影響力がありまするから、だから何としても早期にこの停戦というものに持っていかなければいけません。  同時に、そういう状況の中で、大蔵大臣、どうでしょう、石油税を二倍にする、国民の生活に与える影響は相当あるんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  317. 越智通雄

    越智国務大臣 消費者を中心としました国民生活を守るという立場の役所でございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。  なお、委員がおっしゃいました数字、多少私の方から見解を申し上げさせていただきますが、灯油は値下がりいたしております。六十円のものがリッター五十五円まで下がっております。石油は湾岸紛争、武力行使が始まりましてから既に一ドル八十セント下がっております。この紛争が始まったために、紛争と申しますか、武力行使が始まったために上がっているという状況では全くございません。  なお為替は、きょうは百二十九円十三銭で引けましたけれども、これも湾岸紛争が始まった日から見ますと七円以上円高に振れておりまして、七円の円高というのは石油に直しますと原油で一ドル以上安くなっている計算でございまして、石油の需給が国民生活に物価上昇という格好で影響を与える状況にはいまだなっていないと私どもは考えております。
  318. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大蔵大臣、増税対策は少し無理があるんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  319. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、増税対策と言われます……(戸田委員「支援、調達の、今回の第三次補正で」と呼ぶ)補正の関係の財源という意味でございますか。今その増税対策というのを私ちょっと意味がわかりませんで、失礼をいたしました。  無理があると仰せられるのがどういう意味かわかりませんが、確かに、全く本来イラクがクウェートを侵略せず、あるいは侵略をした後においても、国連のたび重なる決議を受けてクウェートから撤退をしておれば不要な経費であった、その不要な経費を負担する状況が現出したという意味では、確かに無理を国民にお願いを申し上げることになっております。そして、仮に委員が御指摘になります意味がそういう意味ではなく、税目としてお願いをする項目が不適当であると言われる意味でありますならば、先般来もお答えをいたしておりますように、私どもは、これだけの財源というものをどう国民に御負担を願うかについて、本当に苦渋に満ちた選択の中から、国民に理解をしていただきやすい、また国民生活を直接大きな渦に巻き込まないとか、さまざまな観点を考えました上で臨時の石油税、臨時の法人税、臨時のたばこ税という税目を選択をいたしました。
  320. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いずれにしても、この増税策というものは、最終的には、この石油税にしてもあるいはたばこ税にしても国民の負担になってくるわけですからね。今少なくとも石油関係に対してこの国民負担は大変多いでしょう。例えば、平成三年度の税収等を見ましても、これは非常に高額な負担をしているわけですね。例えばたばこ税は九千八百七十億円、ようやく今まで労使協調、とにかく合理化をして一生懸命経営が成り立つように頑張ってまいりました。それに、今度はさらにたばこ、とにかく一箱、マイルドセブンが標準ですけれども、これに対して六〇%でしょう、税金。今度たばこが上がると、六一%くらいになりますね、税金の割合が。こんな品物はほかにないじゃないですか。酒はまあ四九%ぐらいになっているのですけれども。だから、こういったたばこに対しても、やはりそれは愛煙家からすればやり切れない気持ちだと思うんですね。これはどうですか。
  321. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 愛煙家という意味では私は人後に落ちない愛煙家でありますけれども、確かに千本当たり四百三十五円の御負担を願うということになります。  しかし、今委員からさまざまな御論議が展開をされたわけでありますけれども、私どもが考えてみまして、我が国の第一次エネルギー源の五割超が石油で占められておる状況であります。そして湾岸地域の平和回復というものは、日本の、これは石油の安定的確保という視点、先ほど来委員からもお触れになりましたけれども、こうした視点からも、また日本経済の良好なファンダメンタルズを維持するという意味からも、私どもとして選択肢の一つとして石油税を今回お願いを申し上げたいと考えまして、これは一リットル当たり二円四銭の御負担になるわけであります。  しかし同時に、これは我々が申し上げるべきことではないかもしれませんけれども、先ほど来エネルギー庁長官あるいは経企庁長官からお述べになりましたように、石油の価格というものが非常に変動幅の大きいものでありますだけに、この中で吸収し得る余地もあるのではなかろうか、そんな感じもいたします。また、法人税に臨時の御負担をお願いをいたしましたのも、法人一般ということでありまして、特定の業種に偏るものではないという視点もございます。こうしたことを私どもなりに、知恵がないなりに苦しみながら考え、決断を下したということは御理解をいただきたいと思います。
  322. 戸田菊雄

    ○戸田委員 平成三年度の税制改正の要綱、これを見ますると、源泉所得税総額で二十兆円ちょっとですよね。一人当たり二十八・一万円、この負担ですね、源泉で。申告の場合で、これは総額にいたしまして五兆六千四百三十億円。とうとう目いっぱい、これも大部分勤労者、四百七十五万円程度以下の人が八〇%これは納入しているわけですね。そういう上に立って、さらに今言うように石油税、これは揮発油税が一兆五千三十億円あるいは石油ガス税百七十億円、航空機燃料税六百五十億円、石油税四千九百億円あるいは自動車重量税六千四百億円、この大体八〇%は勤労者、六千三百万人、これらの人が全部負担しているのですよ。だから、国税部分の二七・何がしの担税率といっても、こういう部面を考えると大変な負担なんです。だから、その上に立ってまた支援金のために、たばこはさっき言ったように値上がりをする、石油税が値上がりする、あるいは公債発行なども含めてと、こういうことになりますと、これは全部国民が負担するわけですから、だから増税対策というものは私は今回やめていただきたいと思う。いかがでしょう。
  323. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変恐縮でありますけれども、その増税対策をやめろとおっしゃいます意味は、その湾岸平和基金に対する拠出、すなわち、この今起こっております戦争の中で多国籍軍に対する資金協力をやめろという御指摘でありましょうか、あるいはその金額についてはよろしいけれども、臨時の増税という手段によってその財源を賄うことがいけないと仰せられるのでありましょうか。  仮に湾岸平和基金に対する拠出は認めるが、その財源対策として増税という手段を排除しろとおっしゃるのでありますと、これは赤字公債へのまさに道をたどることになりはしないでしょうか。しかし、今既に私どもは国債の残高の累増にいかにして歯どめをかけるかに苦しんでおります。平成三年度末において百六十八兆に達しようという国債の残高の中に、仮にこの湾岸の平和協力のためのつなぎの国債、我々は本当に次年度の税収をもってそれを償還しようとしておるわけでありますけれども、その償還財源を否定されたまま公債を発行するとなりますと、まさに今回起きております湾岸の戦争の影響の中で平和回復のために今私どもの世代が支払おうとするその負担を子供たち、孫たちの代に残すことになります。それは私はとるべきことではないと考えておりますし、そうであるならば、臨時の税の御負担を願うということをお認めいただけないということには理解のできない部分がございます。
  324. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今米ソ首脳会談によって、マルタ会談、ポスト冷戦ということで世界的に軍縮方向、こういう状況に行っていることは間違いないと思いますね。ですから、アメリカも、今年度の予算教書を見ますると、一定の軍縮態勢を打ち出している。ところが日本の防衛費は一貫して伸びてきておりますね。今年度は新中期防衛計画、この防衛計画でおおむね二十三兆円、五カ年で投じるということ。アメリカから新兵器のトマホークその他も購入する、こういうようなことを言っておりますが、日本のこの今後の軍事拡大方式というものは、この辺を契機にして私はやはり縮小の方向に向けて検討していくべきじゃないか、このように考えるのですが、いかがでしょう。
  325. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は委員の御指摘が気分的に全くわからないと申し上げるつもりはございません。ただ同時に、新しい中期防の内容、また平成三年度の防衛関係費をごらんをいただきたいと思うのであります。  例えば、新中期防は、正面契約ベースにおきましてはマイナス二・三%であります。マイナスであります。主要装備の調達をフローのベースで見ましても、中期防期間中には、例えば戦車、よく例に出ますけれども、二百四十六両を調達をいたしました。新中期防の期間内におきましては、これは百三十二両であります。そしてストックベースで申し上げましても、中期防計画の千二百五両から、新中期防のストックベースは千百三十六両でありまして、六十九両減らしております。これがもっと減らせるとか減らせないとかという御議論はあるかもしれませんが、減らしておるという事実はまず御認識をいただきたい。それは例えば艦艇、護衛艦におきましても、この期間中には現在より四隻減るわけであります。  また、平成三年度の防衛関係費というもので申し上げますならば、人件・糧食費、これは確かにふえております。また、既往の契約を引き継いでおります歳出化分、これも確かに過去の契約の支払いでありますから、その残というものはふえております。しかし、一般物件費をお調べをいただきますと、確かにオイル価格の変動によりまして油の購入費はふえておりますが、そのほかについては、ふえております金額はトータルで六十三億円であります。その六十三億円ふえておりますその他の経費の中には、駐留軍経費の新たな負担増百二億円というものが含まれておりますから、実質的には平成三年度予算査定の対象となりますその他の部分につきましては、平成二年度より防衛庁の費用というものは減っておるわけであります。  この減額の幅が少ないか多いかということについてはいろいろ御論議はありましょう。しかし、私どもが防衛費というものをいわば聖域扱いの中でふやしておるという御指摘でありますならば、それは事実に反します。
  326. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これは防衛庁の三年度業務計画主要項目でありまするが、これでいきますと、平成三年度、自衛官定数十八万人。しかし、実際は十八万充足されていないのでしょう。二万人ぐらい不足しているのでしょう。だから、これは私はやっぱり十六万で、現在充足率が十六万、こういうのならもうそこで凍結をする、凍結。あるいは各兵器の装備にいたしましても、――定員の関係で陸自が八四・五%の充足でしょう。海自は九四・五%、空自が九四・五%、予備自衛官員数増、これがまあ充足はされておりまするが、これは全部三年度はなくなるようでありまするけれども……。  それから主要装備でも、非常に高価な飛行機アメリカから再度また数機購入するというようなことになっているようでありまするが、こういうものも正面装備その他全部点検をして、ここから節約をして、そうして湾岸戦争による避難民救済とかあるいは平和条項に対する、そういうものに使っていくというようなことを考えてはいかがなものでしょうね。  定員の充足率、これはどうですか。
  327. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申し上げます。  今定員とその充足率のお話がございましたけれども、御指摘のとおり、例えば陸上自衛隊でございますというと、十八万の定員に対しまして、現在は十五万数千ということで充足率は八四%くらいになっております。また、海・空におきましては、陸の場合におけるほどの乖離はございませんけれども、やはり定員どおりになっていないのは御指摘のとおりでございます。しかし、これは、陸につきましては、やはり平時におきましては定員いっぱいではなくて、その編成なりその装備なりを十分に運用するに足る数で賄っておきまして、有事のときに定員をやる、そういう仕組みになっておりますので、したがいまして、予算面におきましても、単年度の予算においてもそうでございますし、また新しくつくりました中期防衛計画におきましても、これは定員ではなくて、そういった充足率を見込んだ実員でいろいろ経費もはじいているところでございます。  具体的には、とりわけ新中期防におきましては、陸上の定員におきましては、大体現在の水準を維持しよう、もうそれよりふやさない、この五年間の期間中ですね。具体的には十五万三千の水準でこれから平成七年までこれをやっていこう、こういうふうに考えております。  海・空につきましては陸の場合のように、陸の場合は人数だとかあるいは師団の数とか、そういったものが自衛隊の基本的な枠組みになってまいりますので、定数あるいは実員とかいろいろ言われるわけでございますが、海の場合はむしろ艦船の数であるとかその種類であるとか、それからまた空でございますと、航空機の数とか種類とかそういうものがその基本になりますので、定員の考え方とそれから実員の考え方とちょっと違うわけでございますけれども、こういった面につきましても、海・空につきましても、やはり人員の方につきましては極力合理化を図りまして、増員をしないで済むような方向で持っていきたい、こう思っている次第でございます。  それからまた、防衛費全体につきまして、決してむだなことはやっているものではない、極めて抑制的な、節度のあるものをしているということは、先ほど大蔵大臣からも詳しくお話がございましたので繰り返しはいたしませんけれども、まず基本的に、我が国の自衛隊というものは、平和憲法のもとで、しかもその大綱のもとで、それから最近の国際情勢の動向というものを踏まえながら、非常に節度のある必要最小限のものに限定されておる。現在では、具体的に、平時における警戒態勢、それから極めて限定的なしかも小規模な侵略に有効に対処する、そこまでを前提にしてやっておるわけでございます。  そういったことでございますので、我々といたしましても、財政事情、経済事情も勘案しながら、経費の有効的な活用あるいはその節減に努めていくのはもとよりでございますが、これまでも、また新しい三年度の予算あるいは新しい中期防におきましても、決してむだがあるというものではない、むしろ極めてそういったところは抑えに抑えて必要最低限のものを見込ませていただいておるということを申し上げさせていただきたいと存じます。
  328. 戸田菊雄

    ○戸田委員 防衛庁長官、僕の言っているのは、陸自、海自、空自等々予備自衛官を含めまして充足率が一〇〇%いってない。だから、これは現下の充足率で凍結してはどうか、こういうことなんですよ。どうですか。  例えば、全体の日本国内の配置状況を見ましても、北海道等は非常に多いのですね。今まで政府の考えは反ソキャンペーンで来たようですが、ソビエトはそんな状況じゃないですよ。ちゃんと米ソ首脳会談で約束して軍縮に踏み切ったのですから、そういう状況からいっても、こういう地域的な配備状況も十分検討して、そして要員を、現行の充足率、そこで凍結をしてしまうというようなことでひとつ検討していただいて、それで初年度、新中期防、ことしから出発するわけですが、そういうものを含めて一定の軍縮態勢、予算の面でも節減をする、こういうことで積極的に取り組んでもらいたいと思うのですね。
  329. 池田行彦

    ○池田国務大臣 御指摘のとおり、最近の国際情勢が、かつての冷戦構造から打って変わりまして、基本的には対話と協調の方向へ向かっている、そのとおりでございます。私どももそういった国際情勢を十分勘案しながら、これからの安全保障政策あるいは防衛費の問題についても取り組んでまいりたいと考えております。  現在、実は防衛力の大綱というのが基準になっておりますが、これも既に昭和五十一年当時、ぼつぼつ始まってまいりましたデタントの傾向というのに着眼しまして、そういうものがどんどん進んでいくことを期待しながら、そうしてまた、先ほど申しましたように、それにしても日本がすべての防衛を自力でやっていくんじゃないんだ。それは日米安保体制というのが一方にございます。我が国の自衛隊というのは、先ほども申しましたようないわば平時の十分な警戒態勢というものを基本にして最小限でやっておったわけでございますが、それがまた、その後、いろいろ国際情勢が変化したということも踏まえまして、今回の新中期防におきましては、先ほど大蔵大臣からもお話がございましたけれども、正面装備につきましては、もう基本的に更新を中心にしてやっていくんだ、こういうことでやっておりまして、ぎりぎり抑えてきたところでございます。しかし、これからも、それは国際情勢の動向あるいは経済、財政その他もろもろの諸情勢を勘案しながら一層効率的な運用をやってまいりたいと思いますし、また、現在想定されている以上の大きな国際情勢の変化があった場合には、それに対応してまたしかるべく考えなくちゃいかぬということは、そのとおりだと存じます。  それからもう一つ、定数の点につきまして、定員とそれから充足率の関係について先ほど御答弁申し上げたつもりでございましたけれども、私の御説明の仕方が足りなかったと思いますので、ちょっと補足させていただきますけれども、陸上におきましては、基本的な枠組みというものが、師団を幾つにするかとか、それについてどういう編成にする、どういう装備を持つ、こういうふうになっておりまして、そういったものを運用していくために人間をどれだけつけていくかということで、そういった編成とそれから人というものが二つの大きな要素になっておるわけでございますね。しかしながら、完全にそういったものを使っていくというのは、これは有事のときでいいんであって、平時はぎりぎりそれを動かしていく、それでやっていこうというので、いわば意識的に定員に満たない数で運用している、こういうことでございます。  そういうことではございますが、先ほども申しましたけれども、新しい中期防の期間中におきましては、定員は十八万であるけれども、その実数は現在の水準である十五万三千でやってまいろう、こういうことにしておるわけでございますので、私どもも、先生御指摘のような大きな世の中の変化というものは十二分に考えながらこれからの日本の安全保障に取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  330. 戸田菊雄

    ○戸田委員 総理の見解はどうですか。
  331. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 東西の対決が終わってから、私は、日本はみずからの平和と安全を守るためには専守防衛の基本方針とともに、やはり日米安保条約の円滑な運用の中で平和を確保していくべきであるという考えに立っております。  先ほど来御議論のありました充足率の問題につきましても、予算措置その他の問題について、きょうまでもう必要にして十分な最小限度のものは何かということを政府部内では何回も議論をいたしてまいりました。そういったこと等を踏まえて、国民の皆さんにも理解できるような歯どめ、納得の線をきちっと決めていこう。  装備についても、平和時はおけるあるべき姿というものが大綱の姿ですが、それは平成二年度の予算においておおむね達成するところにまで来ているということを認識しておりますから、今後は、先ほど大蔵大臣が詳しく申し述べましたから、正面装備の契約率が下がっておるとか数がどうなるとかいうことは重複いたしませんけれども、全体として必要な、そして節度あるものはどこかというところに焦点を置いて努力をいたしております。  なお、今国会のいろいろな御議論も踏まえながら、私は、従来以上に我が国の安全と平和を守りながら、しかも節度ある限度というのはどこかということに重点を置いて考えをまとめながらこの政策は続けていかなければならないものである、このように判断しております。
  332. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今、湾岸戦争ですね、多国籍軍が使われている兵器はどういうものが多いですか。
  333. 池田行彦

    ○池田国務大臣 詳しくは政府委員から答弁させますけれども、私ども承知しておりますところでは、ミサイルにおきましては、イラク軍においてはスカッドなどを使っておりますし、多国籍軍側におきましては、要撃用のペトリオットとかいうようなものを使っております。  また、航空機におきましても、我が方は――我が方と申しましょうか、平和回復のために全力を尽くしております多国籍軍は、F15であるとかあるいはB52であるとか、そういったものを使っているところでございます。  詳しくは政府委員から答弁させます。
  334. 内田勝久

    ○内田政府委員 ただいま防衛庁長官から答弁がございましたとおりでございますが、もう少し詳しく御説明申し上げます。  多国籍軍側でございますが、ミサイルにつきましては、大臣が答弁されましたとおり巡航ミサイルでありますトマホーク、これは船から、あるいは戦艦あるいは潜水艦からも発射できますが、トマホーク。それから、地対空のミサイルといたしましてペトリオットがサウジ、あるいはこれはイスラエルにも配備されております。  それから艦艇でございますが、米国の空母が六隻近隣海域に配備されておりまして、これが戦闘に、主として艦載機の攻撃という形で戦闘に参加しております。それから、戦艦としてウィスコンシンとミズーリ、その他巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦等が戦闘に参加しております。  航空機につきましては、戦闘機として、いろいろございますが、F15、F16、F14あるいはA10、あるいはヨーロッパ系のトーネードとかジャガーといった戦闘機が参加しております。爆撃機としてB52、その他武装ヘリコプター等が参加しております。  戦車、陸上戦闘はまだ本格的に行われておりませんけれども、多国籍軍側の戦車といたしまして米国のM1、それから英国のチャレンジャーというものが参加しております。  イラク軍の方でございますが、これは地対地のミサイルといたしましてスカッド、あるいは改良型のスカッド、アル・フセインといった名前で知られておりますスカッドBの改良型、それからフロッグという、より短距離の地対地のミサイル。  それから、航空機につきましてはミグの23、ミグの25といったものでございます。  それからイラクの戦車でございますが、Tの55、Tの62、Tの72、これはいずれもソ連製のものでございまして、こういうものが参加しているということでございます。
  335. 渡部恒三

    渡部委員長 丁寧な答弁、御苦労さまです。
  336. 内田勝久

    ○内田政府委員 大体以上でございます。
  337. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。  これは図書館の調査ですがね、「多国籍軍の主要兵器の価格」、F117ステルス爆撃機、これは百三十億ですね。一ドル百三十円、こういうことにしまして百三十億円。トーネード六十二億八千万、F14トムキャット五十八億円、F15E戦闘爆撃機四十七億六千万円、ミラージュ二〇〇〇四十五億五千万円、A6攻撃機四十二億四千万、FA18ホーネット四十億三千万、F16戦闘爆撃機二十一億一千万、AH64アパッチ・ヘリ、これが十一億一千万円、B52九億一千万、M1戦車三億四千万、巡航ミサイル・トマホーク一億七千万、パトリオット地対空ミサイル一億四千万、HARMミサイル三千五百万、マベリック二千六百万、今多国籍軍として持っている。主としてこれはアメリカでございますがね。だからあそこの湾岸戦争アメリカが一日五億ドル、最終的に三百六十億ドルかかるだろうと。それで、アメリカは増税なし、そして負担分を全部同盟軍に拠出を仰ぐ、こういう状況なんですよね。殊に、アメリカの場合は、経済は大体日本の十一倍と見ればいいでしょうが、そのうち三〇%軍備費でしょう。だから、こういうことでやっているから、まあ他国干渉することはやめますけれども、いずれにいたしましても双子の赤字が解消できない、こういうことですね。  だから、こういう問題について、アメリカもことしは一定の軍縮をやりましたから、そういうときですから、日本もそういう状況で行ってもらわなければ困るのですが、いずれにしても、こういうものに、総理、実際は九十億ドル使われていくんですよ。だから総理が言われるように、今まで平和条項で輸送、医療等を中心にということは、総理がそう考えておったって、出した金はそう使われていくんですから、こういう部面をやはり検討していただきたいと思うのですね。どうですか。
  338. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理のお答えの前に、事実関係のみ一つ申し上げたいと思います。  アメリカは既に昨年の十一月五日、今後の五年間において千四百六十六億ドルに上ります増税をいたしております。そして、特にガソリン税の引き上げにつきましては、もう既に昨年の十二月一日から実施をいたしておりますし、その他の増税策は本年一月一日から実施をされるということでありますので、誤解のないようにその点だけ申し上げます。
  339. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、兵器の問題とか兵器の価格というのを今詳しくお述べになりましたが、それに精通しておるわけではありませんけれども、軍事評論家のこの間テレビの対談を聞いておりましたし、それから文章でも読んだことがあるのですが、今行われておる飛行機、そういったものに使われるんだとおっしゃいますが、今できちゃった飛行機はできちゃっておるわけでありまして、そしてアメリカの持っておる軍備の飛行機に使うんではないからということを、僕が言うんじゃないです、軍事評論家が言っておったのが一つと、それからもう一つは、そういったものを動かすためにも、先ほど来のお話のように、食糧とか医療とか水とかいろいろなものも要るわけであって、そういったお金も、日本の出す九十億ドルというのはほんの一部であって、そして戦費全部をどうのこうのというような角度で議論されるようなことではなく、私の方からは食糧、生活関連、輸送、医療、事務関連などの経費に充当してもらいたいということを日本政府の意思として述べるということを言いました。それについて、それがいいとか悪いとかの議論じゃない、こちらがそれを出すと言ってその意思を述べるのでありますから、直ちに兵器にして戦闘部門に使うように、短絡的に直結していくとは私はどうしても思えませんので、私どものこの考え方を申し述べていきたい、こう思っております。
  340. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今の総理の御見解ですけれども、そういう見解の内容ではないのですね。実際、アメリカの統合司令部、これはサウジにありますよ。それで、おおむね六十万程度、あそこで対峙して、多国籍軍がやっている。実質的にはアメリカがすべて、兵器その他も九〇%全部持っていってやっているのですから。そうなんだ。そういうことですからね。全部このGCC、ここから行ったものはそこへ行っちゃうんですよ。どうですか、それは。
  341. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸に一番大宗になって抑止力として最初から配備されたのは米軍が中心であったということは、それはそのとおりです。私もそう言っております。米軍のあのいち早い展開があったから平和の破壊があれ以上拡大されなかったとも評価をされております。私はそう考えております。  同時にそこへ、イギリスもフランスも、そういったヨーロッパの諸国、それからアジアの国々やアラブの国々や、二十八の国が、多国籍軍と称されるグループですけれども、国連決議に従ったやむを得ざる軍事行動に入っておる、けれども、その大宗はアメリカである、これも事実ですから。ですから結局、湾岸平和協力基金から支出された先も、追跡調査した結果をここで政府委員が御報告しましたが、九一%がアメリカで、その他はこういう国でということを御報告したとおりでございます。  それは全体が平和回復活動のために、国連決議六七八に従って行っておる問題でありまして、そのことは国際社会の大義でありますから、国連決議に従ってそれぞれの国は適切な支援をしろと求められるわけでありますから、力でお役に立てぬ我が国ですから、そこへ、平和協力基金へ協力基金を拠出する、その内容についてはいろいろお尋ねがありましたから、こういうものに使う日本政府の考えでありますということを申し上げてきたわけでございます。
  342. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今後の湾岸戦争の展開を私なりに考えますと、恐ろしい戦争状況、そういうものが実現されていくのではないだろうか。例えば、今アメリカがペルシャ湾一帯に六百五十基、巡洋艦にトマホークを積んでいるというのですね。このトマホークは弾頭ミサイルをつけるにいいのですから。それからまた、イラク自身としても、ソビエト導入のスカッド、これをイスラエル等に何回か撃っている。こういうものに化学兵器、生物兵器あるいは核等々に行きますと、これは地球の死滅、人類の死滅ということになりかねない。アメリカも現在核専門委員というもの、そこに委託をして核を使うべきかどうか、こういう検討をしておりますね。イラクのフセイン大統領自身は言明しているわけです、最終的に化学兵器、そういったものを使うと。そういうことになったら本当に悲惨なものでありまするから、何とかここで即刻停戦、平和裏に決着をつけるようなそういう、もちろんフセインの侵略行為、これは大前提ですから、これは悪い、これはもう直ちに撤退してもらうことですが、含めまして、この即時停戦、これをまずかち取ることが私は大事だと思う。総理、これらに対しての今後の構想というものを持っておられますか。
  343. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、日本国憲法に書かれておるように.信義と公正に裏づけられた平和というものを強く希求しております。同時に、日本がそれらの問題について懸念を持って、そして憂慮の念を持つ。持つだけではいけませんから、何とか一日も早くこれらの問題が解決するように、国連決議の原則に従った解決がなされなければならないということであります。あらゆる機会を通じて積極的にそういったことが実現するような努力は、今後至るところでいろいろなケースがあると思いますから、積極的に取り組んでまいります。
  344. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私も非常に、自分らがああいう戦争状況、私は戦前、兵隊を経験していますからね、殊のほかわかる。例えば二十年の三月九、十日と五月二十四、五日、B29による東京大空襲があった。全く無辜の国民がそのことによって大量死滅をしている。もう、堀に入ったりなんかして、そういう状況。もちろん最終的には原爆被爆、こういう経験を持つわけでありまするから、その戦争の悲惨さというものはどこの国民よりも日本がわかっておると思うのですね。  だから、そういう状況ですから、一刻も早く今の戦争を停戦をさせるということになれば、総理、僕はやはりお願いをしたいのは、一番調停、あっせん、そういう立場にあるのは国連だろうと思うのですね、国連。デクエヤル事務総長も大分頑張って、イラクまで足を運んでいろいろやったけれども成功しなかった。しかし、そういう戦争の悲惨さというものを考えれば、これは何としても早期にとにかく停戦をすること、それがために常任理事国ないし理事国、アメリカを含めてソビエト、中国、フランス、イギリス等々の常任理事国に対して、首脳に対して、あるいは理事国十五カ国ありまするけれども、こういった首脳に対して積極的に総理が足を運んで、そして即刻停戦をするような方式を努力をすべきではないだろうか、私はこのように考えるのですが、どうですか。
  345. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 きょうまで五カ月以上にわたってあらゆる国が努力をし、私自身もいろいろな積極的な努力をしてきたのを、毫も反省がなくてイラクは手放さないと、このことを重ねてイラクは言います。イラクはやっぱりクウェートを侵略したんだから、その局面を打開しろという国際世論の声に耳を傾けてもらわなければいけません。私は、こっちも悪いがこっちも悪い、これはかわいそうだからこうしろという現象面だけで、今新しい世界の平和の枠組み、秩序をつくろうという一番大事なときですから、この無理押しやごり押しや国際法違反や許されない行為をそのまま黙って見逃すことはいけないというのが、あの苦渋に満ちた国連の決議ではなかったでしょうか。  だから、言うべきことは、イラクのフセイン大統領に、今こそこのような立場に立って国連決議を受け入れ、国連の事務総長が今後果たしていかなきゃならぬ平和秩序づくりの中心であることは、この点は戸田議員と私は方向を同じくします。国連事務総長にもっと権威を持たせて、国連事務総長にもっといろいろな権威を与えることをみんなが認めていく努力がこれからの世界には必要になってくると思うのです。  ですから、そういった意味で、国連の強化とか、どのようにしたら国連の権威が高まるかということも大いにこれから議論をしていかなきゃならぬ問題であり、日本としてもそれにはできる限りの協力をしていきたいと考えております。
  346. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これはアメリカの議会における、元アメリカの統合参謀本部議長クロウさんという方がいる。この人は公聴会で、経済制裁をあきらめる前に、その効果を見きわめる忍耐力を持つべきだ、経済制裁の効果があるまでに一年から一年半かかっても、戦争に伴う犠牲を考えると十分報われる、フセイン・イラク大統領は面目を保つ形での撤退を模索しており、経済制裁に必ず屈服する、公聴会で元統合本部議長のクロウさんという人はこう進言をしているのですね。で、ブッシュ大統領もそういったOBの皆さんの参考意見を幾つか聞いたと、こういうようなことが言われております。そういってデクエヤル事務総長が引き受けて、それであの調停に行った、こういうことなんですね。  これは七月三十一日、クウェートとそれからイラクと交渉をやっているのですね。どういう交渉かというと、イラク側は、あの湾岸、クウェートにおけるイラクの領分の石油を盗掘した、その賠償として二十四億ドル払え、こういうことなんですね。それからもう一つは、あそこの湾岸の二島、これを使わしてくれないかという交渉だったと、こういうんです。ところが、それが決裂をして、翌日直ちにクウェートに侵攻した、こういう実相だと、こういうんですね。  だから、イラクとすれば、フランスのミッテラン大統領等が一定の仲裁案として出したあの平和的解決方式というものにリンケージ論をとって、そして提案をしたわけです。だから、それをデクエヤル総長もおおむね心に秘めて行ったんだけれども、最終的にはだめだ。  だから、ここを総理の方も十分検討していただいて、ともあれ停戦、多国籍軍もどっちも、それから交渉に入る、そういう平和的解決に向けて十分御努力をしていただいたらどうか、こう思うのですが、いかがですか。
  347. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ぎりぎりの努力ということを私はこの間も申しましたが、デクエヤル事務総長と、私も東京で一度、ニューヨークで一度、この問題についても直接お話し合いもしましたし、またデクエヤル事務総長が最後にイラクの大統領のところへ平和的解決の最後の努力をするために訪ねられた前後のこともよく承知しております。そして、デクエヤル事務総長が日本時間の十六日の朝八時になって発表されておるこの九項目の問題にも、フランスの提案や、アメリカのブッシュ大統領も九月の国連の演説では、クウェートからイラクが撤兵をすることによってパレスチナ国家樹立を含むアラブ・イスラエル問題、あるいは今お触れになったイラクとクウェートとの国境をめぐる問題、その他の紛争についてもいろいろな場面が提供されるということを提案をして、そして中東の問題は、恒久和平のために話し合いをしようという提案はいろいろなところから出ておって、それを最終的に総括的にまとめたのがデクエヤル事務総長の声明であり、具体的に言えばブッシュ大統領の演説やミッテラン大統領の提案もあります。  日本としても、最後に私がイラクのフセイン大統領に出した親書の中には、その展望の問題も書いてあれば、日本イラクのきょうまでの関係、例えば七千億に上るいろいろな債権債務の問題、これらはきょうまでの経済協力の積み重ねの結果であって、それが再構築されるということがイラクの経済のためにも必要なものであるではないか、そのためには原則に従った停戦をして国際社会に復帰してもらうことが、これが何よりも先決な条件であるということも直接届けてあります。意向はみんなから伝わっておるのに、最後までクウェートは手放さない、あらゆる手段をもって勝利を目指してやるんだという一辺倒の態度にいささかの変化もなかったことは極めて残念であり、特にフランスの国民議会は翌十六日に、昨日まであれだけ努力をしたのに何の反応もなかったのはいけないということを表明しておるわけでありまして、私は、今からでも遅くないから、これは局面を打開するかぎはいろいろありますけれども、みんなが努力をしたんだけれども、イラクの大統領、その人の決断がすべてにつながっていく。それは国連事務総長が言っておるように、そのことが行われればパレスチナ問題を含むアラブ、イスラエル紛争解決努力が包括的に行われることを、諸政府の首脳部の了解もあり、私は確約すると、これに書いてありますけれども、私もそれは全面的に支持するということを事務総長には伝えてありますから、そういったことには積極的に力をかしていきたいし、そのために早く局面を打開してほしいということを改めて強く求めておきます。
  348. 戸田菊雄

    ○戸田委員 最後に農林大臣、ウルグアイ・ラウンドにおける米の開放阻止等の問題については、今回の国会におきまして総理が、完全自給でいきますよ、こういうことで言明をいたしております。農林大臣もそういう御意思ですか、ちょっと……。  それで、私は、やはりガット協定その他の今までの、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンドありまするが、そこを一たん通じてやってきているのは、この日本の米の開放等に対する、そういうものが主要な議題で来たと思うのですね。これらに対するひとつ対応策、これはどのようにお考えになっていますか。含めて二点。
  349. 近藤元次

    近藤国務大臣 お答えをさせていただきます。  ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉は今鋭意継続をいたしておるわけでありますけれども、総理も御答弁を申し上げたように、従来の方針に変わることなく、米の重要性にかんがみ、国会の決議にもありますような内容で対応してまいりたい、そう考えております。
  350. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間でありますから、以上で終わります。ありがとうございました。
  351. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて戸田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十三分散会