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1991-02-05 第120回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月五日(火曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       阿部 文男君    相沢 英之君       愛野興一郎君    粟屋 敏信君      井奥 貞雄君    小此木彦三郎君       越智 伊平君    加藤 紘一君       狩野  勝君    金子 一義君       倉成  正君    後藤田正晴君       佐藤  隆君    志賀  節君       田邉 國男君    戸井田三郎君       萩山 教嚴君    林  義郎君       原田  憲君    原田 義昭君       松永  光君    松本 十郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       石田 祝稔君    市川 雄一君       日笠 勝之君    二見 伸明君       冬柴 鐵三君    佐藤 祐弘君       吉井 英勝君    伊藤 英成君       川端 達夫君    神田  厚君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  新野  博君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁施設         部長      大原 重信君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁調整         局審議官    土志田征一君         経済企画庁国民         生活局長    加藤  雅君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局長 篠沢 恭助君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         文部省高等教育         局長      前畑 安宏君         文部省学術国際         局長      長谷川善一君         文化庁次長   遠山 敦子君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房審         議官      田中 健次君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省保健医療         局長      寺松  尚君         厚生省薬務局長 川崎 幸雄君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         林野庁長官   小澤 普照君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       坂本 吉弘君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         中小企業庁長官 高橋 達直君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         海上保安庁次長 豊田  実君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房経         理部長     吉高 廣邦君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     原田 義昭君   加藤 紘一君     金子 一義君   浜田 幸一君     狩野  勝君   松永  光君     萩山 教嚴君   市川 雄一君     石田 祝稔君   冬柴 鐵三君     二見 伸明君   藤田 スミ君     吉井 英勝君   中野 寛成君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   狩野  勝君     浜田 幸一君   金子 一義君     加藤 紘一君   萩山 教嚴君     松永  光君  原田 義昭君     小此木彦三郎君   二見 伸明君     冬柴 鐵三君   川端 達夫君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   神田  厚君     中野 寛成君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  この際、増岡博之君から発言を求められておりますので、これを許します。増岡博之君。
  3. 増岡博之

    増岡委員 昨日の私の関連質問に立った浜田委員の社会党に対する発言については、自民党として十分精査をいたしましたが、発言のような事実は全くございませんでしたので、報告をし、陳謝いたします。
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 引き続き、加藤万吉君から発言を求められておりますので、これを許します。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 我が党の名誉にかかわる発言について、自民党を代表して増岡理事から陳謝の発言がありました。  我が党は、かかる事実無根の言動について抗議を表明するとともに、湾岸戦争を初めとする内外の政治課題をいたずらに延引することは、国民の皆さんの期待に反することであり、この際、再びかかる事態のないことを強く自民党に求めてまいりたいと思います。      ────◇─────
  6. 渡部恒三

    渡部委員長 平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  7. 市川雄一

    市川委員 私は、きょう、今焦点になっております自衛隊機の派遣問題、それから湾岸関連での九十億支援問題、あるいは今後五カ年の防衛力整備を決めた中期防衛力整備計画、あるいは政府のこの湾岸九十億ドル支援に関する歳出削減努力姿勢ありやなしや等を中心に、あと今深刻化する看護婦さんの問題、含めて御質問を申し上げたいと思います。  まず総理、ことしの一月十七日から多国籍軍武力行使に踏み切ったわけですが、きょうで十九日を経過しておりますが、これはもう戦争反対、だれでも戦争反対です。もう戦争に賛成する人は一人もいないと思います。戦争反対と。同時に、早期にこの事態がおさまる、早期停戦、そして平和的に和平が図られる、平和解決、これを望む声が日増しに強くなっていると思います。そういう中で、今回の湾岸戦争停戦終結等を含めて総理は今後の事態をどういうふうに見ておられるのか、総理のお見通しについてまず伺いたいと思います。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 市川委員もおっしゃいましたとおりに、ああいった武力行使というものが賛成か反対かといえば反対に決まっておるわけでありますし、また、一日も早く終結させるようにしたいという強い願いも私も市川委員と同様に強く持っておるところであります。  きょうまでも私は、公正な平和が回復されるようにいろいろな努力を積極的に続けてきたつもりでありますが、現段階においても、この局面を打開して次のステージであるあの地域の平和と安定を確保するにはどうしたらいいかという外交上の、あるいは政治上のいろいろな動きが出てくるときには、日本もそれに積極的に参加をして恒久和平のために努力を続けていきたい、一日も早く平和を取り戻したいという強い願いでございます。何カ月、どれだけという見通しをということでありますが、私は、ただ一日も早く終わることを強く願っておるということでございます。
  9. 市川雄一

    市川委員 戦争長期化ということになりますと、非常に人命が数多く失われたり、あるいは既にあらわれておる原油の流出、環境破壊、非常にはかり知れない犠牲をもたらすわけであります。政府は、武力行使はやむを得ない、確固たる支持、そこで一切を割り切ってしまって、何かずるずるずるずる日本政府がこの戦争に、ずっと歯どめのないまま行くのではないかという危惧を私は多くの国民が抱いていると思うのです。やむを得ない、こう総理は思いつつも、やはり早く戦火をおさめたい、あるいはイラククウェートから撤退する意思を早く表明させるように和平努力をするとか、そういう、一方で強い平和への努力というものを総理が強く持ち続けているのかどうか、この辺がやはり一番国民の聞きたいところではないかと思うのですが、総理はどういう姿勢で臨んでおられますか。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国憲法も、私たちが願うのは正義と秩序を基調とする国際平和であって、それを誠実に希求しているわけであります。この平和主義願いというものは、国連の憲章に書いてあるやっぱり公正な平和、私は、国連決議に従った平和が一日も早く回復することを心から強く願っておるわけであります。  繰り返すまでもないことですが、昨年の八月の二日にイラクによるクウェート侵攻ということが起こって、侵略、併合が行われて、あれは新しい世界の平和の枠組みの中で許しておいてはいけないことだというのが国際社会の大きな意思でありました。それをそのまま放置しておいてはいけないというので今回のような武力行使決議になったわけでありますから、やむを得ない最後の手段として、これは確かな支持をいたします。それは問題解決のためにまことにやむを得ないことであって、一日も早く終わっていくようなその努力日本日本なり立場で、力でもってお役に立つことはできないということはここの場でも何度も御議論しておるところでありますが、なし得る限りの協力をし、一日も早く平和が回復するように努めていかなければならないというのが私の決意であり、考え方でございます。
  11. 市川雄一

    市川委員 戦後、平和憲法というものを国民が支えてきた、戦争反対する反戦平和主義、これは非常に重要な憲法の原則でございます。私も、この戦争反対する反戦平和主義というものを強くこれからも日本の国が尊重していかなくてはならない、こう考えております。  しかし同時に私は、戦争反対するだけの平和主義日本の国はこれから国際社会でやっていけるのか、一国平和主義でいいのか、こういう疑問があることも事実であります。平和が破壊された、そのとき破壊された平和をどう回復するのか、あるいは、新しい平和をつくり出すために国際社会努力をしている、その努力に対して日本が何の役割も果たさなくていいのか、やはり何らかの役割を果たさざるを得ないのではないのか、こういう考えを持っております。  しかし、今回の政府決定の中で極めて残念に思いますことは、一つは、自衛隊機難民救出に派遣するという決定でございます。私たち自衛隊を違憲とする立場ではありません。したがって、そういう立場からこの問題を議論しようというふうには思っておりません。しかし、昨年の臨時国会におきまして国連平和協力法があのように議論をされ、国会議論とあわせて世論一つの大きな声がございました。やはり自衛隊海外に派遣するということはやめるべきだ、こういうことで昨年の国会での結論が私は出たと思います。ですから、その国会審議結論日本が何らかの国際貢献をしなくてはならない、お金と物だけではそれはだめだ、人の貢献が必要だ。しかし、人の貢献は必要だけれども自衛隊機を今出すことについては国民のコンセンサスが得られない。したがって、自民党公明党民社党の間では、もちろん、和平後という、今回の事態とは事態の想定が全く違いますが、PKOということを中心にして一つ合意が生まれた。その合意の文書の中にも、自衛隊と別個の組織で難民救援活動をやるということもうたわれておるわけであります。  そういう趣旨から考えても、政府が国際的にどういう判断でやったのか。ただ人道と言うだけで、国民世論が十分に合意ができていない。非常に、極めて私は残念だと思うのです。大体、この自衛隊問題の経緯というのは、何か政府がなし崩し的にずるずるずると法の拡大解釈をする、あるいは憲法拡大解釈をするという形できた嫌いがある。ですから、そういう点で、今回の措置というのは、昨年の臨時国会でのあの十分な議論あるいは世論というものを何か、舌の根が乾かぬうちにという表現がありますけれども、そういう感じがしてならないわけでございまして、総理、どうして昨年の国会議論とか世論というものが頭にありながらこういう決定を下したのですか。まず総理のお考えを伺いたいと思います。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 市川委員指摘のように、昨年の法案審議の中でのいろいろな議論の中で、日本国憲法でなしてはならないことは、武力による威嚇もしくは武力行使である、いわゆる海外派兵と言われるものは、武装集団武力行使の目的を持って他国の領土、領海、領空へ行くことである、そういうことは私も何度も申し上げましたし、同時に、この間の法案には、そのことはしないということを条文にきちっと書いて御審議をお願いしたのでありましたが、議論の中では、それは憲法違反になる、それは戦争につながる、いろいろな御指摘があったことも、これは事実でございました。  そのことを念頭に置きながら、私は今の御質問にお答え申し上げるとすれば、確かにおっしゃったように、あの法案審議未了で廃案になったときに、我が党と、失礼しました、自由民主党と公明党、そして民社党との間で三党合意をいただき、今御指摘のようにいろいろなことを成案を得るべく、これは新しい国際化時代国際協調主義を述べておる日本憲法の宣言の理念からいきましても、何もしないでいいということではない。憲法の枠の中で、武力行使を伴わないものであるなれば許されるものがあるはずだ。それは人に関する問題で、お金の問題もいろいろあるはずだ。それは三党合意を踏まえて成案を得るための努力政府は今鋭意努めております。  それから、今回のこのことは、まさかサダム・フセインというような横紙破りの人があのようなことをする、それによって現実に避難民がたくさん出てきておる。人道上の立場でこれは対処しなきゃならぬ。そのときには、前回の御議論になったような軍事面ではないところで、憲法の禁止する武力行使を伴わない面で協力できる面はあるのではないだろうか。できる限りの努力をすべきであるということを誓っておりますし、また、いずれの国家も、自分の国のことのみに専念して他国を無視してはならないということも、日本憲法の前文で理念として宣言しておるわけでありますから、他国避難民人たちが現にいらっしゃる、それを国連の委託を受けた国際機関がこれの本国への移送その他について要請をする。私どももいろいろな場面を考えました。そうして第一回目の具体的な要請については、これは民間機にお願いをして既に処置も始めております。けれども、どうしてもそれができない場合があり得る。  例えば示唆一つとして、今度もIOMからのお話によれば、どうしても集まるところはアンマンの周辺とか、それからカイロまではどうやって運ぶのか、カイロからはどうやって運ぶのか、いろいろ具体的な示唆もあります。民間にお願いできるのはカイロからの路線であるということは何回もいろんな角度から協力要請したわけです。具体的要請があった場合におこたえができませんというのでは、日本ができる限りのことをする、憲法違反にならない武力行使以外のことでできる限りのことはすると言った以上、できるようなこちら側の準備と心構えをしっかりしておく必要があるというので、いろいろなことを考えてきました。  そうして、自衛隊法の第百条の五というところに、国賓内閣総理大臣及び政令で定める者を輸送することができると、こう法律に明文で明確な規定がございます。――それは横紙破りじゃなくて、法律を素直に読んでください。「政令で定める者」と書いてあるんですよ。総理大臣以外は運んじゃいけないなんという書き方じゃないのです。ですから、例示的に出ておって、そしてプラス「政令で定める者」と出ておるわけですから、私は素直にその条文を読んで、それでは政令できちっと定めて、避難民の人の移送で、いろいろな場合があって、必要なときには対応することが、日本国際化時代に極めて人道的な立場世界に向かって汗を流す対応の一つではないか、こう思ったから政府の責任で政令に踏み切ったわけでありますから、それはどうぞ御理解をいただきたいと考えます。
  13. 市川雄一

    市川委員 総理の方から政令ということがおっしゃられましたので、この自衛隊法百条の五、「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」、これについてはもう既に御承知のように国会でいろんな方が答弁されているわけですね、責任ある方が。  昭和六十一年の十二月四日、参議院の内閣委員会大森内閣法制局第二部長、「「その他政令で定める者」の内容はまさに政令で定めるわけではございますが、「国賓内閣総理大臣」という例示、列挙がございます。したがいまして、この例示、列挙されたものとおよそかけ離れたものは予定してないという場合にこのような表現を使うわけでございます。」こういうふうに、「国賓内閣総理大臣」こう列挙した。  さらに、あるいは六十一年十月二十八日、防衛庁官房長友藤官房長、当時ですね、「今回の百条の五の規定は「国賓等の輸送」ということでございまして、この範囲は、私どもの方といたしましては在外邦人救出とか緊急援助隊、こういったものについては含まれないというふうに考えております。」こういう答弁もありますし、あるいは今防衛庁の事務次官、当時官房長であった依田官房長も、自衛隊法の改正がなければそういうことは、在外邦人救出ということはできない、こういう、かなり政府の高官の方の国会における答弁があるわけでして、国賓総理大臣、これは例示なんです、したがって、それとおよそかけ離れたものはできないんです、こうはっきり言っているじゃありませんか。  国賓総理大臣避難民、これが何か同じものでしょうか。例示から離れるのではないでしょうか。これはおかしいのではないでしょうか。まず、ここはどうお考えですか。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、先ほどお答え申し上げましたように、この場合は「その他政令で定める者」こうなっておりますから、それを素直に読んだわけであります。  それから、これは、このような事態が起こるということは、その、その他の問題を議論したときとはちょっと環境や背景も違っておったと私は思うのです。それは、ですから、そこに「政令で定める者」という法律ができておるんじゃないでしょうか。法律に全然書いてなければ別でありますけれども法律に書いてある以上は政令で定めることによって輸送を行うことができる。それは、私もそこに例示されておる総理大臣でございますが、避難民の人と私と、人間の尊厳ということからいったり、この緊急性ということからいったり、助けてあげなければならぬという点からいったら、私は、それはお助けできるなればしようと私が思ったということについては、その考え方はおわかりいただけないでしょうか。私はそう思って、政令できちっと条件を書くべきだ、こう判断をしたんです。
  15. 市川雄一

    市川委員 避難民の救済は、これはすべての政党が賛成だと思うのです。反対する人はいないと思うのです。ただ、手段について意見が食い違っているわけです、という問題だと僕は思うのです。ですから、避難民の救済はどうでもいいのかというのは、ちょっとそういうのは当たらないと思うのです。我々もそれはやるべきだと思っているわけですから。ただ、自衛隊機を出すということについては国民合意ができていない、去年論議したばかりじゃありませんか、それを何でこういう性急な手続でやるのか、これを問題にしているわけであります。勘違いしないでいただきたいと思います。  それで、「その他政令で定める者」この政令があります。自衛隊法百条の五一項に規定する「政令で定める者は、次に掲げる者とする。 一 天皇及び皇族 二 国賓に準ずる賓客 三 衆議院議長及び参議院議長 四 最高裁判所長官 五 内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」、「前二号」というのですから衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、「に掲げる者」、「その他政令で定める者」というのはこの政令で定めているのですよ。総理が今言うような、そんなあいまいな余地はないのです。政令できちっと五項目掲げている。しかも前二号、こう言っているわけであります。  ですから、これははっきりしているのじゃないでしょうか、この法律の解釈というのは、政令上も。こういう方をやるのですという。こういう難民をやりなさいとかやっていいとか、そんな解釈が入ってくる余地が全くないというふうに私は思いますが、どうお考えですか。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この政令の、今お示しになった国賓等の範囲の百二十六条の十六の第五号というのは、その第五号をつくりましたときに「前二号に掲げる者に準ずる者」、こういうことを縛りにかけたのだと思います、それはそのときに。ですから今度は、第五まで出ておるわけですから、あるいはここへ第六として書いてもいいのかもしれませんけれども、そういう恒久的、永続的なことではなくて、先ほどの三党合意に基づく問題の成案作業の中にもそれは入るわけでありますから、今回は単独の政令でやる方がいいということを専門家が決めてくれたわけでありますので、その問題については法制局長官から必要があればお聞き取りをいただきたいと思いますが、あくまで「政令で定める者」というのは、そのときそのときの必要に応じて政令で定めていくことができるという可能性を排除しているものではないと思いますし、そうでなければ「政令で定める者」というこのことをなぜ百条の五に書くのかということまでさかのぼらなければならぬわけになりますから、これはこれで、新しい事態が起こったときにそれに責任を持って政府が対応することは、この政令をつくるということで歯どめになるのだ、それがシビリアンコントロールである、私はそう思っております。
  17. 市川雄一

    市川委員 余り答弁になっていませんね。だって「その他政令で定める者」で、ちゃんと政令で定めているのじゃないですか。「前二号に掲げる者に準ずる者」、衆議院議長または参議院議長、最高裁長官、それに準ずる者というところへ難民が入ってきますか。これはおかしいと思いますよ。  それから、今までの国会答弁は、法律というのは書く場合、国賓とか内閣総理大臣というそういう例示をする、その例示をなぜするかというと、そういう例示とかけ離れたものを政令ではできない、やはりその例示に沿った趣旨のもので政令をつくるべきだという趣旨で法律例示を書いているんだ、こういう答弁をしているじゃありませんか。例示に沿ったのですか、難民は。沿ってないんじゃないですか、と思いますが、どうですか。この例示に沿っているか、沿ってないか。
  18. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの委員の御指摘は、いわゆる自衛隊法の百条の五に掲げております「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」この国賓あるいは内閣総理大臣という代表列挙、これについてかけ離れているかどうか、こういうふうなお話だと思います。お尋ねだと思います。  それで、これは決して、昨日も実はお答え申し上げたところでございますけれども、いわゆるVIP、高位高官と申しますか、そういう人のみを念頭に置いたわけでは必ずしもないのでございます。この百条の五の一項にございますように「国の機関から依頼があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、」航空機によるこれこれの者の「輸送を行うことができる。」というふうに規定してございまして、そういうところから申し上げれば、いわゆる輸送についての国としての必要性、そういったものをここで考えることは決して外れているわけではない、かように考えております。
  19. 市川雄一

    市川委員 VIP、高位高官を念頭に置いたものでは必ずしもない。  それではお伺いしますが、今までの国会答弁は、在外邦人が緊急事態救出しなければならない、その場合自衛隊法百条の五で自衛隊機を出せるのか出せないのかという質問をしているわけですね。緊急事態ですよ。在外邦人救出するなんという事態は、これは緊急に決まっているんですよ。それから人道上なんです、日本人ですから。日本人を緊急事態で救うという事態人道ですよ、これは。難民救済よりプライオリティーは高いはずですよ、政府の責任は。日本国民が非常事態にあって、しかも救出しなきゃいけない。もうこれはきのう法制局長官が答弁した臨時応急の場合ですよ、これは。しかも人道上ですよ。臨機応急の場合であって、人道上ですよ。しかも難民よりも、政府としては、在外邦人救出ですから、これは非常にプライオリティー、優先順位が高い。それでも、それでも政府自衛隊機法律改正しなければだめだと答えたんじゃありませんか。おかしいじゃありませんか。
  20. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  過去にそのような、今委員指摘のような答弁があることは私も承知いたしております。こういう際に問題になりましたことは、詰めて申し上げれば、結局自衛隊海外邦人の救出海外邦人の救出が大体その場合の答弁例だったと思いますが、海外邦人の救出というものを一般的な任務として恒常的に与える、こういうことでございますれば、任務を付与するような規定が必要であろう、こういうふうなことだと存じます。  今回のような特殊のケースにつきまして、具体的に申し上げれば、政令で書いてございますのは、「当分の間、」途中省略いたしますが、「湾岸危機に伴い生じたイラク、クウェイト及びこれらの国の周辺の国からの避難民として、避難民についての輸送その他の支援を」云々「する国際機関から我が国に対しその本国への輸送その他の輸送の要請があった者」、かようなことでございます。  そういう見地から見ますと、むしろ百条の五に照らして見れば、航空機による人の輸送というのが百条の五の考え方でございます。その人について、かけ離れていないということは先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。そういうことから、今回の措置につきましては、百条の五に基づきます暫定政令としてこれを定めることができる、かように考えたわけでございます。
  21. 市川雄一

    市川委員 私の質問に法制局長官は答えていないんですよ。何で答えていないか。この過去の、いいですか、吉國法制局長官とか、友藤防衛庁官房長とか、依田防衛庁官房長とか、大森法制局第二部長とか、この方々がこの国会の場で答弁したその質問はどういう質問だったかということをよく読んでいただきたい。要するに、この自衛隊法百条の五で、自衛隊の一般的任務として在外邦人救出ができるようにしろということを言っておる人は一人もいないのです。一人もいない。一般的任務として恒常的に、いざというときに在外邦人救出できるように自衛隊法を改正しろとは言っていない。この百条五の法律議論がされたときに、この法律で緊急事態のときの在外邦人救出ができるのかできないのか、自衛隊機が出せるのか出せないのかという議論をしているわけでして、一般任務としてという想定は、もちろんこれはないわけですよ。また、そんなことを要求していないわけですよ。答弁する人もそんな意識は全然置いていないんですよ。  もし法制局長官の言うようなことが正しいとするなら、じゃなぜ、一般任務としての御要求であれば自衛隊法を改正しなければできませんが、臨時応急の場合、人道上ということであればやれると思いますという答弁が何で出ないのですか、今まで。おかしいじゃありませんか。だから、一般的任務の問題にすりかえているのですよ、あなたの答弁は。だれが考えたってそういう論理じゃありませんか、これは。だから、今の答弁は答弁になっていません。
  22. 渡部恒三

    渡部委員長 法制局長官、ちゃんと答弁になるような答弁をお願いします。
  23. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、私、過去の、四十八年におきます吉國元長官の答弁あるいは六十一年におきます友藤政府委員の答弁等々を一応ずっと読んではおります。  それで、そこにおきまして問題になりましたのは、やはり自衛隊がやる、このことについてのいわば在外邦人救出というのがそのときの中心であったということは今もお答え申し上げましたけれども、そういうふうな形で在外邦人救出、あえて申し上げれば在外邦人救出一般といいますか、そういうふうなことを任務として与えるという問題、これを恒常的に行えるという問題についてのお答えであったと私は理解しております。  今回のようなイラクの、特にこういう場面についての、しかも国際機関から要請があった、それを当分の間の措置としてするということは、百条の五の第一項の規定、これを見ますれば、百条の五におきましては、航空機による一定の者の輸送を行うことができるということでございます、この百条の授権の範囲内に入っている、かように考えております。
  24. 市川雄一

    市川委員 例えば当時防衛庁官房長でいらっしゃった友藤さんの答弁、よく引き合いに出るのですけれども、この前段の質問というのは、緊急時に在外邦人救出するというのが問題になったわけです。緊急時ですよ、恒常時じゃないんですよ、緊急時なんです。全部臨時のものなんですよ、法制局長官。だれもそんな問題意識で聞いてないのですよ。恒常的に日本人を自衛隊が運ぶなんということはだれも考えないわけです、そんなことは。緊急時に決まっているじゃないですか。緊急時ということは臨時ですよ。ずっとということじゃないですよ。そういう事態をちゃんと限定しているわけです。そして聞かれているわけです。  もちろん難民の命も大事だ。日本人の命も大事だ。しかし、日本政府としては在外邦人救出というのはプライオリティーでいったらこれは高いでしょう、優先順位は。それが緊急時、百条の五で自衛隊機を出せるのか。自衛隊法を改正しなければできませんと答弁しているじゃないですか。これがどうしてできるのですか。  したがって、私が指摘しているように、一般的任務の規定としてできないと言ったのであって臨時応急の場合はできるのですと、こうあなたは答弁しているのですけれども、一般的任務としてだれも要求してないのですよ。ずっとここで答弁してきた方々も一般的任務として答えていないのです。臨時応急の場合ということで質問され答弁しているんじゃありませんか。ですから、今のお答えはお答えになってないわけですよ。  それから、臨時応急の場合は想定されてなかったということを百歩譲って認めたとしても、想定されてないからやっちゃいけないのであって、想定されてないからやっていいという論理はおかしいんじゃありませんか。法律に想定されてないものはやるべきでないんでしょう。想定されてなかったから政府が勝手に判断してやっていいということにはならないと僕は思うのですよ。その点、答弁になってないと思うのです。  ですから、今までの国会答弁を、じゃ全部否定されるわけですか。この整合性はどうするのですか。それをお聞きしたい。
  25. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  今までの答弁を否定するということではございませんで、先ほども申し上げましたが、例えば友藤政府委員の答弁というのも、確かに御質問の、当時川端委員だったと思います、川端委員のお話として「当然仮定の話ですけれども、」という前提を置きまして、「そういうときに、緊急時に在外邦人救出というのが今までいろいろ問題になってきたわけです。そういうものにこの専用機等を利用するということが可能かどうか、」こういうふうなお話だったと思います。それにつきましての友藤政府委員の答弁が先ほど申し上げたようなことでございます。これはあくまでもやはり一般的、恒常的に、あえて政令の形を申し上げれば、自衛隊法施行令の先ほど委員指摘になりました百二十六条の十六にあえてもう一号加えるような、こういうふうな形であれば確かに一つの問題点かもしれません。今回のは暫定措置として、あくまでもこういうものを一つの単独政令として決めた、かようなことで法律の授権の範囲内であろう、かように思っております。
  26. 市川雄一

    市川委員 要するに一般的、恒常的任務としては、もしやるとしたら、これは自衛隊法の改正をしなきゃいけないんだ、こういう論理を今回新しくおつくりになったわけですよね。今までなかった論理を新しくおつくりになって、今回はそういう一般的、恒常的任務として自衛隊機が行くわけじゃないんだ、臨時応急で人道的だからいいんだ、こういう論理になっているわけですよね、法制局長官のお答えは、きのうの答弁をずっとよく拝見しておりますと。  だけれども、過去の答弁は、質問も、そういう趣旨で聞いていないし、一般的な任務としては自衛隊法を改正しなきゃできません、臨時応急の場合なら別ですがという答弁はしていないのです、だれもそんなことは。全部緊急時、全部緊急時なんです。臨時応急の場合なんです、全部質問は。お答えもそうなんです。しかも在外邦人避難民はないとおっしゃいますが、そんなことありませんよ。  昭和四十八年九月十九日の衆議院決算委員会、内閣法制局長官吉國一郎長官の答弁として、「避難民を輸送するという全くの平和目的であるというふうに限定されますならば、これは憲法上第九条で問題になるような事柄ではあるまい。」しかし「現在防衛庁なり自衛隊なりの任務として規定されておりませんので、これは当然法律の手当ては要ると思います」、こう言っておるわけであります。これは避難民ですよ、避難民在外邦人じゃないんですよ、これは。しかも、人道ということを明確に自覚された答弁ですよ。平和目的とおしゃっているわけであります。これは人道ですよ。避難民というのは大体緊急的に発生してくるわけでしょう。緊急ですよ、これは。臨時応急ですよ、避難民というのは。避難民、臨時応急、平和目的、人道。だけれども自衛隊法を改正しなければできない、法制局長官はこう答えているのです。昭和四十八年。今の答弁と全然違うじゃありませんか。
  27. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  先ほど海外邦人の救出が主であるというふうに申し上げました。それは私、違っていないと思います。過去から、どちらかといえば海外邦人の救出ということについて焦点が合ってきたわけでございます。ただ、この際、避難民であるか海外邦人であるかということは、特に私どもの方の論拠ということではございませんので、私どもの方としましては、むしろ海外邦人の救出あるいはそういうものを、繰り返しになって恐縮でございますけれども、一般的な任務として恒常的に与える、こういうふうなことはやはり過去においての答弁として問題であろうという御答弁を申し上げているのであって、今回のようなことにつきまして百条の五というものを見ますれば、それは百条の五の授権の範囲内である、かようにお答えしているところでございます。
  28. 市川雄一

    市川委員 よくおわかりだと思うのですね、委員長。要するに、かつての答弁と今回の政府の行った措置と整合性がないのですよ。矛盾しているのです。この矛盾しているのを唯一橋をかけた、その橋をかけた部分が今まさしく法制局長官がおっしゃった、過去の答弁は一般的任務として恒常的に行おうとした場合は法の改正が必要なんだということで答えたんですと、こう言っておられる。ところが、そんなことをだれも質問もしていないし、答えている人もそんな意識で答えていないんです。在外邦人救出というのは緊急事態だというのです。それから人道ですよ、これは。難民の場合も人道。プライオリティーは高い、優先順位は。それで自衛隊法百条の五ではできません、法律改正しなきゃできませんとはっきり言っておるわけですよ。これは明らかにすりかえだと思いますね。したがって、従来の政府見解との整合性が明確でない。明確にきちっとしてもらいたい。  それから、こうした措置を、立法の趣旨というものと法律を行政府が自由な裁量で何か政令がつくれるのかどうか、行政権の限界というのはどうなっているのか。やはりこれは法律改正をしてやるべきことを、そうでない手続によってやるがゆえに起きた矛盾だと私は思います。したがって、法律を基本とした行政府法律に対する行政権の権限の限界、あるいは政令で委任されている範囲はどこまでなのか、こういうことをひとつ政府の統一見解として出していただきたい。
  29. 渡部恒三

    渡部委員長 内閣法制局長官工藤敦夫君より、ただいまの市川君の質問に対して明確な御答弁を願います。
  30. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 二点お尋ねがあったと存じます。  第一点は、過去の答弁との整合性の問題でございます。この点につきましては、立法経緯というものを尊重すべきではないかというお話でございます。当然のことと私どもも承知しております。立法経緯というものが法解釈をいたします場合の一つの大きなよりどころであるということはもちろんでございます。決してそれを私どもは無視しようとか、そういうふうなことではございません。  それから第二の問題でございますが、政令委任と申しますか、これは政令委任につきましては、過去たびたびお答え申し上げているところでございます。立法、法律に基づきます政令につきましては、一つは、例えば手続的事項あるいは細目的、技術的事項というふうなことが政令委任できるというふうに書いてございます。もう一つ挙げてございますのは、事柄の性格に応じまして臨機応変に対処すべき事項、かようなものも政令委任の範囲として挙げられている。これは過去何回も御答弁申し上げているところでございます。
  31. 市川雄一

    市川委員 過去の政府の見解は、緊急時における在外邦人救出ということが確かにテーマとしては多かったんですが、しかし、先ほど御指摘申し上げましたように、四十八年九月十九日の決算委員会におきましては、吉國法制局長官が避難民、まさに今回の難民のケースに当たる答弁をされているわけでして、この答弁を拝見しましても、避難民の救済、避難民というのは大体もうこういう緊急事態ですよ、臨機応急の場合ですよ、避難民は。それから平和目的、人道、であっても自衛隊法の改正をしなきゃできないと言っているのです。それをできると強弁するために設けた論理が、この答弁は、あくまでも一般的任務としてはできません、一般的任務としてやろうとした場合は自衛隊法の改正が必要になるんです、今回は一般的任務としてやるわけではありませんといって逃げようとしているんですが、そんなこと書いてないんです、全然。解釈の変更でしょう、これは。どうなんですか。解釈の変更かどうか明快に答えてください。
  32. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、ただいま申し上げておりますことは決して解釈の変更というふうに私ども考えておりません。
  33. 市川雄一

    市川委員 それじゃ整合性だ、整合性。
  34. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 重ねての御質問でございます。お答えいたします。  私ども、一般的な任務として恒常的に行うということを過去でお答えしているというふうに申し上げております。  例えば避難民救出というのは、確かにおっしゃるとおり、そのときそのときにおきまして確かに緊急的であり、人道的見地から行わなければならないもの、かようなものをいわば永続的に恒常的に行っていく、こういうふうなことでございますれば、はっきりとさせることはむしろ望ましいし、そういうふうなことだと思いますけれども、今回の特にこういう事態に限っての暫定措置、こういう見地で今回の政令はつくられたものでございますし、そういう意味のいわゆる授権の範囲である、かようにお答えしているところでございます。
  35. 市川雄一

    市川委員 それじゃ、あなただけがそういう解釈で、歴代の法制局長官は違う解釈をしてきたということですか。そういう意味ですか。
  36. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 実は、時点のことは余り申し上げたくなかったわけでございますが、先ほど御指摘の昭和四十八年の吉國答弁あるいは昭和五十五年の角田答弁というのがございます。実は、百条の五という規定が入りましたのは昭和六十一年のことでございまして、その角田答弁あるいは吉國答弁の時点におきましての百条の五ということは、問題になっていなかったということは一点ございます。これはつけ加えて申し上げます。  それで、その後の昭和六十年以降の答弁につきましてそういうふうなことがございますが、そういうことは先ほど申し上げたような一般的な任務、恒常的に永続的に繰り返し反復して行い得る任務、こういうふうなことで想定された答弁であろう、かように考えている次第でございます。
  37. 市川雄一

    市川委員 それじゃ平成元年十二月一日の答弁なら文句ないんでしょう、そこまでおっしゃるなら。  平成元年十二月一日、内閣委員会。「海外において緊急事態が発生したため、例えば在外邦人救出をさせるため政府専用機を使うこともあり得ると思います。」というその場合どうなんだと。これに対して日吉政府委員、今防衛庁官房長日吉さん。「これにつきましても、」「仮定の問題」云々と言いながら、「現行法制上、防衛庁自衛隊の任務、権限として規定されておりませんので、これを実施する場合には、所要の法改正等の手続が必要になるのではないか」と思います、こう答えておるのです。全部法改正と言っているんですよ。だから、あるいはこの法律が、百条の五ができてからの昭和六十二年の八月二十日、ここでも当時の依田官房長が同じような答弁をしております。ですから、従来の政府答弁を否定するのかしないのか。それから、もし否定しないというなら、従来の政府答弁と今回の措置、一般的、恒常的というやつ、これの整合性を明確に言っていただきたいんです、明快に。そうしませんと、要するに一般的、恒常的な任務として想定してなかったとこう言うんですけれども、しかし、最近の答弁からも明らかなように、じゃ、そういう法制局長官がおっしゃるような百条の五がプラスされてからも、法改正が行われてからも、同じ問題意識でずうっと答弁の基調は続いているじゃありませんか。決してあなたがおっしゃるような答弁をだれもしてませんよ、だれも。あなたが突如されたのですか、これは。そんな気がしてならない。ですから、文書で出していただきたい。どうもそうしないと、これはこれ以上の質問ができない、なかなか。
  38. 渡部恒三

    渡部委員長 ただいまの市川委員の御質問に対しては、後日文書をもって明快な回答を願うように政府側にお願いし、質疑を続行願います。市川君。
  39. 市川雄一

    市川委員 ここで押し問答をしてもあれですから、この質疑を踏まえて一回整理していただいて、その文書に基づいてまた質問させていただきたいと思います。  次に、九十億ドルの支援問題についてお伺いしたいと思います。  世論調査でも賛否が非常に分かれていますよね。女性の方々は反対意見が多い、男性に限ってみると賛成意見が多い。まさに世論が真二つに割れている感じがします。公明党も今マスコミから真二つなんとこうからかわれながら、しかし、まじめに議論をしております。やはり率直に言って、国際貢献はやむを得ない、必要だ、こういうふうに思う人でも、やはり九十億というのは大きいんじゃないか、大き過ぎるんじゃないか。それから、いつだれが決めたんだ。まあ大蔵大臣には大変失礼なんですけれども、大蔵大臣がアメリカへ行ったら決まっちゃったんじゃないのかという、そういう印象をみんなテレビや新聞で一つは受けている。アメリカの言いなりじゃないのか。  それから、何に使われるのか、使い道。戦費という概念は非常にあいまいなのですけれども、そういう使い道という問題。  それから、全部増税なのか、政府は歳出削減とかそういう努力をしないのか、こういう声が非常に強いわけですが、同時に、九十億ドルというのは、積算根拠はどうなっているのだ。つかみ金なのか。まさかつかみ金にしては九十億ドルは巨額じゃないか。したがって、九十億ドルの積算根拠――積算根拠といいますと、GNPがどうで貿易収支がどうで、世界に占める日本の経済力の割合がどうで、応分の負担で、こう総理おっしゃるのですが、私たちが伺いたいのは、なぜ九十億ドルかという、その九十億ドルという金額を特定する、何で九十億ドルなんだ、この積算の根拠はどうもわからない。どうも政府の答弁聞いておりますと、算数がないのですね。考え方はあるのだけれども、算数がない。足し算も引き算も掛け算も全然出てこない。何と何を足すと何と何になって、何と何を掛けると何になって大体九十億ドルという、こういう積算根拠、これはよくわからないのですが、その点、昨日から一晩明けて総理や大蔵大臣の方も大分整理されたと思いますが。ぜひ伺いたいと思います。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 積算の根拠を具体的にきちっと数字で示せということでありますが、これは昨日もいろいろ私申し上げましたけれども、一体、国連決議に基づく平和回復活動に二十八の国が参加して、そのかかる費用が幾らになるか。主として努力をしておるアメリカ自体が今回の問題に対して、積算の根拠について明確な、具体的なものは正直言って存在しない。そのことは、二月四日のアメリカ大統領の予算教書の演説というのを私はずっと聞いて分析をしましたけれども、その中にも、今の段階では信頼できる試算は存在しないということを正直に述べておりますし、また、追加費用としてアメリカの予算教書の中に出ておる三百億ドルという数字もこれは仮置きの数字であって、このことは米国の会計検査院が武力行使が始まる前に、戦闘開始にはならないだろうという予測に立っての、しかも試算でしかないわけでありますから、それがこの三百億ドルという仮置きである。したがって、アメリカ自身でも見通しがより明確になれば、その時点で補正予算を要求することになるという、これは具体的な事実だろうと思いますし、また、アメリカの議会の予算局の試算というのは、きのうも申し上げてありますが、幅が非常にあって、二百八十億ドルというところから八百六十億ドルというところまで出てきておるということは、これは委員も御承知のとおりだと思います。  したがいまして、まだ何日で終わるかとか、幾らかかるとか、それを一日に割るとどうだとか、そういう数学的な数字がきちっと出るような現状でないし、不透明なものが非常に多いということ、これは私もそうだろうと思うのです。そういう中でこの平和回復活動を支えていくのですから、終わっちゃってから出せということは、ちょっとこれは国際協力をする姿勢としては私はいかがなものか。やはりその決議があって、平和回復をしたいというのですから、日本も力でお役に立てないならば、せめて資金協力協力をすべきである、それはふさわしい協力をすべきであると、これは総合的に率直に言って判断しました。  今委員がいろいろお述べくださったこと、例えば日本はサミット参加国の一つであるということも、同時にまた日本国民総生産が世界の総生産の一四%近くにきちっとなってきておる。また、貿易額も最近非常に伸びてきておる。同時にまた、日本世界との自由な貿易の中で、例えば八九年には七百六十九億ドル、こういった黒字を持っておるとか、いろいろなことを総合的に判断しました。どれがだから九十だということは、言えと言われると具体的にありませんけれども、いろいろなことを総合判断いたします。  特にまた、あの中東地域には、日本国民生活をここまで豊かに合理的にしてきた石油の七割以上を輸入に頼っておりますけれども、それがもし十ドル上って一年続けば日本の支出は百六十四億ドルというのが余分に支出になるとか、いろいろな数字があるわけです。そして、国際的地位にふさわしい支援というものを自主的に決めようということで判断したのがこの九十億ドルでございました。決定に至った経緯についてはそういうことでございます。
  41. 市川雄一

    市川委員 金額がなぜ九十億ドルに特定されたのか。六十億ドルじゃだめで九十億ドル、五十億ドルじゃだめで九十億ドル、こういう意味で積算根拠というものを我々は知りたいわけですけれども、どうもそういう答弁にはきのうからずっとなっていない。どういう経緯でこれが、経緯というか今考え方をお述べになった。どこかから要請があって決めたのか、日本政府考えて決めたものなのか、あるいは米国から強い要請があったのか、多国籍軍から要請があったのか、国連から要請があったのか、その辺のことはどういうふうに受けとめておられるのですか。
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国の外交は国連中心主義の外交ということを主張し続けてまいりましたし、冷戦の発想を乗り越えてから、世界の平和の枠組みの中心国連が果たすべきである、また国連の安保理がそのような機能を果たし始めたという、こういう時期でありますから、その国連の累次の決議の中で、日本に対しては、そして世界の国すべて加盟国に対して適切な支援の要請があるわけでありますから、それに国連中心主義を唱える我が国としてはこたえなきゃならぬというのはまず第一に当然のことでございます。そういう判断をしました。  それから、あの地域の平和回復活動はアメリカを中心として二十八と言われる多国籍軍が現に多くの犠牲を払い、自国の抱える経済的な問題を乗り越えて、それでも平和回復のために行動をしておる。それには日本もそれを支持する立場に立っておるのですから、できる限りの支援はすべきである。また、そのほかアメリカと日本とは二国間関係において極めて重要な間柄であり、ヨーロッパの国々ともサミット参加国としていろいろな協調、協議もしてきております。そういったいろいろな情報を総合し、また直接話し合いをしてきた外務大臣、大蔵大臣、それらの意見も聞き、政府で判断して、政府・与党のこれは重要な問題ですから会議もして、そして決断をして決めた数字でございます。
  43. 市川雄一

    市川委員 政府が自主的に決定したと。そうするとまた矛盾するのですね。自主的に決定した、それで積算根拠が何かよくわからない。こういう何かぐるぐる回っちゃうのです、この話は。  そこで、この九十億ドルを総理はGCCに拠出するとおっしゃっているのですが、使い道については何か制限というか、無制限なんですか、もう無条件で渡しちゃうんですか、GCCに。それとも何かそこへある程度の原則というか考え方をきちっとつけてGCCに渡すのかどうか。この点はどうですか。
  44. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げましたように、湾岸の平和回復のために関係諸国がしておる回復活動に、せめて日本は資金援助の支援をしなきゃならぬということでありますから、湾岸平和基金というものがありまして、そこに既に拠出をした経緯もありますが、今回の追加支援の分も同じ湾岸平和基金に対して拠出をしたい、そして、我が国の考え方や意向というものをそれは明確にしておきたい、こう考えております。で、そのことについては、輸送関連の経費とか医療関連の経費とか食糧、生活関連の経費、事務関連の経費などのそういったものに充当をするように我が国の方針を伝えてまいりたいと思っております。
  45. 市川雄一

    市川委員 今総理がおっしゃられたような趣旨のことが交換公文にはうたわれるのですか、うたわれないのですか、その辺はどうですか。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは究極的には、湾岸平和協力基金の運営委員会で使途その他については具体的に決定されることになると思いますが、我が国の意思に反した使われ方がないように、これは我が国の意思が確保されるような仕組みに平和協力基金はなっておりますから、その中で先ほど申しましたように我が国の意向を伝えて、そのように使われるようにするつもりでございます。  交換公文については、これはその拠出を認めてもらって拠出する段階で交換公文をきちっと結ぶわけでありますから、その交換公文を結ぶときにも我が方の意向というものはそこできちっと伝えるわけであります。
  47. 市川雄一

    市川委員 総理は、きのうの御答弁を伺っていても、従来は資金と物資、輸送関連、今回、従来に比べて食糧とか医療とかそういう枠を広げて、しかし、そういう生活関連、事務関連と、こうおっしゃるのですが、我々は、この戦費という概念が極めてある意味ではあいまいな概念、一方では戦費だ、戦費だ、こう何か議論がある。これは非常に我々も、そこである意味では党内で意見がぶつかっている面がありまして、まじめにある意味では苦しんでいるわけですね。国際貢献は必要だ、戦争反対だ、一日も早い和平が必要だ、これはもうだれでもそう思っているわけでして、それを言っている人だけが平和主義者じゃ僕はないと思うのです。そうじゃなくて、私たち戦争反対する、反戦平和主義、これは当然です。しかし同時に、今日本が国際的に置かれている立場は、ただ戦争反対するという、一国だけが平和ならいいという平和主義では生きていかれないのではないのか。やはり世界が平和で日本が平和、これを日本は目指さなければならないのじゃないのかということをみんなおぼろげながら感じ始めている。感じ始めているがゆえにみんな苦しんでいるわけですよ。だから、それをただただ反対すればいいというふうに我々は考えてないわけでしてね。だからこそ、やはり政府に一定のスタンスというものをしっかり持ってもらいたいという思いが同時にあるわけでして、ですから、少なくとも武器弾薬には使われない、こういうことが言えるのかどうか。今総理の答弁の中には、生活関連あるいは医療関連、輸送そして事務関連、こうおっしゃった。その中にこの武器弾薬というのは入ってないのですが、武器弾薬は入ってないということは、この範囲に使いますと、こう総理はおっしゃっておるわけですが、武器弾薬には使わないと、こう私は理解してもよろしいのですか、今の総理の答弁を。どうでしょうか。
  48. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昨日来のいろいろな御議論の中で、私はやはりあの地域の平和回復、それを一日も早く達成することを願って支援をするんでありますから、日本政府の意向というものも、言うべきことはきちっと貫きたい、このことを申し上げてきました。きのうの御議論の中でも、しかし片方には、そうではないという意見もあるではないかという厳しいやりとりがありました。私は、平和を回復するための目的に使ってくださいと言って出すのですから、私が昨日言ったことで御理解をいただきたいと思いますけれども、今あえて武器弾薬ということを使われて、それは含むのか含まないのかというお尋ねであります。  私は、今回追加支援をするに当たっては、これは広く国民の皆さんに御理解と御協力をいただかなければならぬ問題だということを基本的に考え、同時に市川委員の今の質問もそういったことを踏まえての御質問であろうと受けとめました。政府は、この国民感情も十分考えながら、従来の資金協力という一方的な言い方じゃなくて、それらのことの中で戦費という概念は必ずしも明確じゃありません。したがって、今御指摘になるようなことに日本政府が野放しでどんどんどんどん使っておるのではないんだということを、これは国民の皆さんにもよく理解をしていただきたいと思いますし、率直に申し上げますが、輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等に充当する方針でありますと、こう言いましたことは、それ以外のことには充当しない方針であるということと同じでありますから、このことを湾岸理事会できちっと伝えて、我が国の考え方やこういったことに充当したいという、あくまで平和回復への強い願いを持った決意だということをわかっていただくようにしたいと考えております。そのようにいたします。
  49. 市川雄一

    市川委員 輸送、食糧、事務、生活、医療関連に充当する方針である、それ以外のものには充当しない方針と、わかりました。  そこで、次に総理、さっきから何回も申し上げているのですが、私たちも政党ですから、あけっ広げに申し上げて、この問題が地方選挙にどう響くかということは、これは政治家であればだれでも考える問題です。地方選挙ということだけを考えれば、それは野党ですからある意味では反対した方が楽だという、そういう意見も随分ある。だけれども、地方選挙のことだけで判断していい問題かという強い党内の意見がまた一方にある。やはり日本がこれから国際社会の中でどう生きていくかという、そのまさに選択なのであって、ただ地方選挙に有利か不利かというだけのレベルで議論すべきじゃないんじゃないのかという、こういう強い議論がある。率直に言ってそういうことなんですね。  ですから、そういう中でさっきから九十億ドル、積算根拠、GNP、貿易収支、置かれている日本立場湾岸の石油の依存度などなど、総合して考えて応分の負担で九十億ドル、こういう御答弁なんですが、この負担の仕方ですね、全部増税でということなんですね。それで、こういう事態ですから、国民に負担をお願いする。しかし、その前提として総理、やはりこういう緊急にやるわけですから、今平成二年度の年度末で政府お金がない、ですから増税でと、やはりその前に歳出削減努力というのをやるべきじゃないかというふうに思うのですね、政府自身が。  そういう前提でお伺いしたいのですが、栗山外務省次官、一月三十日の講演で、日本の対応が不十分な場合は日米間の信頼もしくは日米関係の崩壊は必至ですという趣旨の話をされているわけですね。そうするとこの九十億ドルという問題は総理にとってプライオリティーはどのぐらいあるのですか。通っても通らなくてもいいという問題なのか、これは非常に内閣にとって重要な問題なのか、その辺の総理の御認識はいかがなものでしょうか。
  50. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど市川委員も、こういった国際協力、国際協調の問題は日本の将来、むしろ私たちの次の世代が国際社会でどういう評価を受けるかということを考えると、一地方選挙のことを考えて態度を決めるのはいかがかという率直な御意見を私は承って、まさにそのとおりだという気持ちがいたします。  そして、今回のこの問題もサダム・フセインがあの無謀なことをやったがために、新しい世界の秩序づくりの第一歩に世界の人々の希望を打ち砕くようなことをしたのですから、二度とこのような力の支配を許してはいけないという国際社会の大きな大義に立ちますと、また、日本のように平和憲法を持っておる国が、力でもって現状を変えてはいけないんだということを未来に向かっての大きな理念として押し立てている上からいっても、それを達成するために、それぞれ持ち分に応じた、応分の許される限りの支援をするということは極めて大きな重要な問題でありまして、私は、これは日本の将来に向かって、国際社会の上において日本立場というものが、大変なことが起こったときに、人類共通の平和に対する運命が左右されるような問題に、現に目の前に起こっておったときにも日本は何ら取り組まないのかというようなことを言われないようにするためにも、これは極めて重要な大きな重い問題であると受けとめております。
  51. 市川雄一

    市川委員 極めて重要で重い問題なだけに、国民に増税をすべてお願いするのではなくて、政府みずからが、既に平成三年度の予算を組んでいますけれども、まあこれは平成三年度の予算は去年の暮れに組んだわけでして、一月十七日にこの事態は起きたわけですから、予算を組んだ後に起きた事態ですから、平成三年度の予算の予算審議が始まったばかりですから総理は言いづらいのだろうとは思いますが、やはり歳出削減努力という、まあ私たちは一兆二千億、その半分ぐらい、約五千億ぐらい政府は歳出削減の努力ができるのじゃないのか。  七十兆の予算を組んでいる。毎年、大体年末に補正で経費の節減額がずっとこの四、五年、五千億とか六千億とか、平成二年度だけは二千四百億でしたけれども、そのくらいのお金も出ていますし、あるいは防衛費、五年で二十二兆七千五百億。そのうち正面装備は約五兆一千億ではありますが、新規に買う物は五兆一千億。この五年間で五千億の防衛費、世界のデタントという中で、まあヨーロッパは不戦条約、不戦宣言を結ぶ世界情勢の中で、防衛費の緊急性というものを考えた場合に、五カ年で五千億を削るということは一つの選択としてあるのじゃないのか。あるいは政府が全体の経費の中で防衛費を含めて削減することは、当然やっていいんではないのか。総理は絶えず力でお役に立てませんから、力でお役に立てませんから、こうおっしゃるわけですが、素朴な国民世論としては自衛隊を出すべきではない、出してはいけない。力ではお役に立てない、まあ総理のおっしゃるそこへつながるわけです。  それだったら自衛隊のそれなりの予算をきちっと見直したらどうなんだ、こういう意見も強くあるわけでして、それだけ総理にとってプライオリティーが高い、重要性が高い、緊急性が高いなら、全部を国民に負担してくださいというのではなくて、やはり政府のいろいろな知恵を絞った歳出削減の努力というものがあって、そういう姿勢をまず政府が示すことが先決じゃないんですか。その点については総理はどうお考えですか。
  52. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政府が先頭に立っていろいろと削減の努力をしろという御指摘に対しては、私はそのお考えを率直に大切なものだと受けとめております。  政府は現実にそのような努力をしながら、きょうまでも累次の行政改革その他についての努力を続けてきた。予算編成に当たりましても、例えば去る補正予算のときにも努力をして、その数字を皆様にお示ししたこともございます。平成三年度予算編成に当たっても、各省庁からいろいろの要望を聞きながら、財政当局にできるだけの冗費の節減、削減、精いっぱいの努力をさせて編成をいたしましたのが、今御審議をお願いしておる平成三年度の予算でございます。ですからその努力、それをしろというお考え方を念願に置いて今後とも政府の中でそれらの考え方に従った努力を続けていくことは当然でありますし、そのために新しい行革審もつくってむだを省く努力は今後とも一層続けていく決意でございます。  同時にまた、予算の項目はそれぞれ国民生活のために組んである予算でありますから、これは今度の平成三年度予算を実行することは国民生活のためにお役に立てると考えて組んでおるわけでありますので、国民の皆さんの側に立ってお考えになるときに特に御理解願いたいことは、それは政府もみずからの冗費節約のみならず、例えば減税の問題にしてもあるいはいろいろ原油価格の上下のときにも、この三カ月は累次直ちに業界を指導して、値段なんかが消費者の手に渡るときに下がるように、このさなかでも三カ月の間毎月下げ続ける行政指導の努力も続けてまいりましたから、だからそういったようなことを今後ともできるだけ続けていくことによって、政府自身のそういった努力はお認めをいただきたい。そしてその上に立って、国民の皆さんにはどうか御理解と御協力をいただきたいとお願いを申し上げておるわけでございます。  最後にお触れになった新中期防の問題につきましては、確かに五カ年間という物差しで一つの案をつくってお示しをいたしました。しかし、冷戦構造の変化以来、非常に不透明な状況の中で急速な変化が起こっております。アジア・太平洋地域におけるいろいろな枠組みが、我々の予想どおりというかあるいは予想をもっと超えてというか、劇的な変化が起こってくるときにはそれに対応していくことも当然でございますし、またいろいろな緊張が起こってきたり、日本自身がいろいろな不幸な状況に追い込まれるときにはどうしなければならぬかということも考えなければなりません。  そのときどきの実情を踏まえて十分に対応してまいりますけれども、この間この新中期防を決めますときには、節度ある防衛力の整備を行うというその精神は引き続き尊重してまいりますが、三年後に諸情勢を勘案して、総額の範囲内で必要に応じて見直しをしようということも定めておりますから、毎日毎日、国際情勢の変化とか防衛力の現状というものをきちっと眺めながら、今の御質問の御趣旨にあるように、必要にして十分な節度あるものにするにはどうしたらいいかという検討、努力も怠らずにやっていく決意でございます。
  53. 市川雄一

    市川委員 私たちは、公明党はこの九十億ドル支援に賛成なのか反対なのか今意見を交わしている、それに政府自民党が配慮している、何かそういう新聞報道が多いのですけれども、私のこの質問も、何か総理や大蔵大臣に配慮してくれなんというそんなみみっちい考えで申し上げておるわけではないわけです。要するに、政治家の一つ考え方として、こういう非常に、日本の国がどうするかというぐらいの危機感を持っていらっしゃるわけでしょうから、そういうときに国民に増税をお願いするに当たって、政府みずからが自分の身を切らないというそんなばかな話があるのですかという、こういう意味で申し上げておるわけですね。特に配慮をしていただく必要は全くないわけでして、総理なりに総理政治家としての信念は信念でいけばいいわけで、我々も我々の政治家としての信念で判断をする問題ですから、何か特に配慮してくれとか条件をつくれとか、そんな考えは毛頭ありません。最終的にはそういう覚悟で我々は党内で議論して決めなければならぬ。合意が得られなければこの法案反対するということを決めるしかないわけでして、別にどうしても何をしなければいけないとか、そんな考えは毛頭ないことを申し上げておきたいと思うのです。  ですから、何かこれをやってください、あれをやってくださいという感覚で受け取っている方が中にいらっしゃるようですが、私たちにはそんな思いは全くありません。これだけの重要な緊急の問題で、やはり国民の理解を得なければならない。国民の理解を得るのに安易に九十億ドル全部増税で、では、その九十億ドルの積算根拠はどうなんだというと、余り明快な答えが返ってこない。まあ考え方で決めたんだ、それも一つのお考えかもしれませんが、したがって、そういう意味から考えて、この歳出削減というものは、総理がこの難局を乗り切る政治家として当然の信念としてやるべきじゃないかというように私は考えているわけでして、総理、閣僚全員が反対しても、総理は正しいと思ったことはやるくらいの、そのくらいの総理でないとこの場面は私は乗り切れないのではないかと思います。  したがって、平成三年度予算は既に組みましたからとか、そんな形式論じゃなくて、もうそんな過去がどうだとかこうだとかじゃない、やるべきことはやる、やはりこういう考えで臨まなければならないと思うのですが、予算修正するぐらいの決意ありますか、総理。どうですか。
  54. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、中期的にも長期的にも、また過去も未来も、できる限り経費を削減してみずからを正していかなきゃならぬという決意は表明をいたしておりますし、また、閣僚全員とともに、国民生活のためになる予算編成のためにいろいろと努力をしながらつくり上げた平成三年度予算の御審議を今まさにお願いしておるさなかでありますが、今後とも政府としては、行政経費の削減やむだ遣いの廃止ということについては全力を挙げて努力をするとともに、国民生活を守るために毎月毎月でも、例えば石油製品の消費者に渡るときの値下げの努力なんかもきめ細かく続けておるということもあわせて申し上げさしていただいておきたいと思います。続けて努力はいたしていきます。
  55. 市川雄一

    市川委員 私たちが何か防衛費を、ただ防衛庁を目のかたきにしているわけではありませんでして、それは勘違いしないでいただきたいのですが、何で防衛費ということを言っているのかという論拠を示さなければなりませんから、本当はもうちょっと時間があれば、十分時間をかけて三つの角度から防衛庁議論をいたしたいと思っていたのですが、時間が大分詰まってきました。  したがって、大枠で申し上げたいと思うのですが、昨年の四月、この予算委員会で私は総理に申し上げました、政府の防衛計画の前提に、ソ連を仮想敵国、潜在的脅威としている、これは、ベルリンの壁が崩壊し米ソがデタントに劇的に進んでいる状況下でソ連を潜在的脅威とするのはおかしいのじゃないのかと。総理は、やや方向としては認めつつも明快にはお認めにならなかったのですが、その後、昨年八月の防衛白書のときにソ連脅威というものを記述から削除した。  細かい議論を抜きに申し上げますと、防衛計画の大綱を昭和五十一年につくった。今回、大綱の前提になっているこの国際情勢の部分だけ書きかえた。言ってみれば、本の表紙だけぽんと取りかえてしまって中身はそのままという、表紙だけ取りかえた、中身はそのまま。しかしこの大綱をつくったときに、だれが読んでも、前提とする国際情勢が大きく変化したときはこの構想は、この大綱は再検討されるべきであるということを大綱自身の中にも書いてある。それから、大綱を発表した防衛白書にもそういう説明がされている、前提とする国際情勢が大きく変化したときはこの構想は再検討されるべきである。あるいは大綱の冒頭に、当分の間、国際情勢が大きく変化しないという前提に立てばと、大きく変化した場合は検討しますと何回もここでも答弁してきておるわけです。  まず、大枠で申し上げますと、国際情勢は大きく変化しました。東西冷戦でした、大綱ができたときは。東西対立が、対立の要因が根強くあるということを、大綱のまた国際情勢で指摘しておるわけです。今、東西冷戦は終結しました。ベルリンの壁は崩壊しました。東西ドイツは統合されました。大綱が前提とした国際情勢は大きくまさに変化した。大綱は見直しをしなきゃいけない、再検討しなきゃいけない。なぜ大綱をそのままにしてまた五カ年間中期防という計画を組んだのか。これは大綱で約束したことを破ったことになりませんか。大綱が前提とする国際情勢が大きく変化したら見直します、見直します、もうずっと内閣委員会、安保特別委員会、予算委員会でずっと答えてきた。国際情勢は大きく変化した、表紙だけ取りかえて中身はそのまま、こんなやり方は決して正しいやり方じゃないと思うのです。国際情勢は大きく変化した、大綱を見直すべきではないか、こう思いますが、総理はどういうお考えですか。
  56. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 確かに、国際情勢が変化をしつつあるということは私も何度も申し上げてまいりました。そして、大綱を作成しますころも、東西の対立というものは、デタントという言葉があのころ出てきましたように、緊張緩和の方向に向かっておったことも事実でございます。それは力を背景とした恐怖の均衡とも言われる背景もありましたが、とにかくそういうときでありました。それが好ましい方向に向かって動いてきつつあるということを私も率直に昨年でしたかお答えしたことを覚えております。  したがいまして、今委員は表紙だけかえて中身を変えなかったとおっしゃいますけれども、むしろ表紙はかわらずに中身が変わったと言われるぐらい、大綱の、大綱という表紙ですけれども、中の国際情勢の分析その他については、欧州において好ましい状況があったということ、それからソ連を今まで防衛白書でも明らかにこれは脅威だと、潜在的脅威という表現がございましたのがそれがなくなったのは、いろいろな変化やいろいろな流動を見ながらのことでありますから、そういう国際情勢の変化というものについてはきちっと閣議決定で認識をしております。  それから、あの大綱というものはもともと平和時における必要な節度ある日本の防衛力、それは東西対決のときに、これは西側の力の、ここなんだというカウントをされていなかった日本独自の専守防衛の部面であったと私は理解をしております。ですから、日米安全保障条約というものがあって、日本の防衛のために安全保障条約との、その中で抑止力になっておったということですから、東西対立が終わって軍備管理が始まったから、直ちに日本の兵力もこれだけに下げてもいいんだというようなところにむしろ入っていない、カウントされていないものであった。平和時における必要な限度であった。  ですから、東西の対立は確かに終わりましたが、どうでしょう。あのころ、まさか中東にこんなサダム・フセインが出てきてまた武力侵略を始めるということは予想もされておらなかったと思いますし、また同時に、東西の対立が終わってもそれぞれの国内にいろいろな武力をめぐるトラブルの芽が出始めてきておるという非常に憂慮すべき事態も起こっておるわけでありますから、民族紛争とか、宗教上の問題の紛争とか、国境をめぐる紛争とか、いろいろなものはあのベルリンの壁の崩壊とともに一挙に吹き飛ぶであろうと思ったバラ色の予測というものは、私に言わしむると、その後停滞状態に入って、いろいろ不安定、不確実な問題も出つつあるというのも、これは事実だと思います。  ですから、そういった流れ全体を踏まえながら世界は変わりつつある、そのとおりであります。その中で、日本は平和時においてどのようなことをすべきか。日米安保条約のもとにおいて、必要な節度ある限度の整備をすべきである。しかしながら、こういう変化もあったから、例えば今回の中期防では正面装備の新規契約分の伸び率をマイナスにしていくとか、あるいは今までおくれぎみであった隊員の後方支援に力を入れろとか、いろいろな問題をそこに提起をしながら固めてきたものでありますので、内容においてはいろいろと政府なりに努力をして、変化もあると私は申し上げたいのであります。
  57. 市川雄一

    市川委員 総理がおっしゃった東西冷戦にカウントされてない平時の防衛力、それは五十一年の原点はそうだったのですよ、総理。まさにおっしゃるとおりなんです。だけれども、今度はアフガニスタンに対するソ連の侵攻が始まった時点から、東西にカウントされてないはずの防衛力がカウントされる防衛力になったのです。そして、大綱は平和ぼけとかデタントぼけとか、シーレーン千海里だとか日本列島不沈空母、バックファイアを日本の上空で撃ち落とす、三海峡にソ連太平洋艦隊を封じ込めるとか、勇ましいことがどんどんどんどん始まって、いつの間にか大綱が形骸化されたわけですね。GNPの一%、五十一年に決めたとき持っていた枠組みも壊しちゃった。ですから、総理、それは昔の話を言っているのであって、今はそれをもうさんざん壊したあげくの果てにある大綱なんですよ。  ですから、やはり防衛問題というのは、私は国民に正直でなければいけないと思うのです。そうでないと、本当のコンセンサスをつくれないのじゃないかと思うわけです。一生懸命私たちもそれなりに防衛というものを考えている。政府が何か急に今までの答弁と違うことを始める、これが一番いけない、防衛問題においては。せっかくつくりかかった国民のコンセンサスが壊れていく。それをさんざん今までやってきたのです。だから、そういう意味では、五十一年に大綱をつくったときに、こういう国際情勢を前提とします、国際情勢が変化したら、大きく変化したら見直します、時の総理防衛庁長官が何回言ったかわからないわけです。ですから、素直にやはり見直しをするというのが、私はこれが政治だと思うのですよ。それを、ああでもないこうでもない、ああでもないこうでもないと言うのは、これは国民から見てやはりシビリアンコントロールではない。総理、それを申し上げている。  それから、あとシーレーンの問題をやりたかったのですが、シーレーンだって昭和五十六年、鈴木元総理がアメリカへ行かれてレーガン大統領に会って、北西太平洋、バシー海峡、台湾海峡までの千海里、こういう発言をプレスクラブでされて、そこから当時の外務大臣が辞任する騒ぎになったりなんかして、まあシーレーンという問題が起きてきた。ワインバーガー国防長官はアメリカの国防報告で、大綱には千海里シーレーンは入ってないって指摘をしているわけです。ですから、そういうことをもうさんざん言われ尽くしてきたわけです。ですから、こういう大きな変化が起きたのですから、大きな変化が起きたら見直しますと政府は言ったのですから、素直にそれを見直すというのが僕はわかりやすい政治だと思う、わかりやすい政治。それを、ああでもないこうでもないと理屈をつけてまた中期防をつくっちゃう。ここが非常にわかりづらい。政府の信頼感がぐっと弱まっちゃう、シビリアンコントロールをやっているのか。  そういう意味で、シーレーンという問題も私はそろそろ再検討すべき時期に入っているんじゃないのか。中東で有事がある。まあそんな、防衛庁がこの大綱で書いてある限定的小規模侵略なんというのはもうあり得ない、安保条約の抑止がきいている限りそんなのはない。中東で有事だ、ソ連が出てくる、アメリカの空母、第七艦隊が中東に派遣される、ソ連がそれを邪魔をする、したがって日本がそれを協力して海峡封鎖をする、バックファイアをやっつける、こういうことをもうさんざん言われ尽くしたわけです。今どうですか、それ。中東で有事が起きている。別に何か日本が三海峡封鎖したりしなければならないような事態ではないじゃありませんか、また一面、総理。ですから、もう変わったのですよ、冷戦が終わったのです。中東で有事ですよ、今。だけれども、シーレーンを何か防御しなければいけないような事態は何も起きてない。ソ連とアメリカはデタントですから、ある意味では。もちろんゴルバチョフのペレストロイカが非常に危ぶまれているということもよくわかりますけれども、そういう意味でここは、防衛支出というものはきちっと見直すときに来ているのじゃないのか。  しかも、この中期防を決めた中に、「この計画については、実施に際して随時必要に応じて見直しを行い、」と、こう書いてある、新中期防。「実施に際して随時必要に応じて見直しを行い、三年後には、その時点における国際情勢、技術的水準の動向、経済財政事情等内外諸情勢を勘案し、この計画に定める所要経費の総額の範囲内において、必要に応じ、計画の修正を行う。」こう書いてあるのですが、昨年組んだ予算、ここにも「経済財政事情等内外諸情勢を勘案し、」とこう、これは「三年後には、」という文章は入っていますが、もう三年たたないうちに大きな財政事情の変化が起きちゃったじゃないですか。一兆二千億を増税で賄わなきゃならないという事態が起きているじゃないですか。しかも、随時必要に応じて見直すということは、年数に関係なく書いてある。  国際情勢は変わった。大綱では見直しますと約束している。また、中東で有事があった。しかしその当時予想していたような第七艦隊が出ていく、ソ連が妨害するというような、そういう国際情勢はもうなくなってしまった。シーレーンというものを再検討すべき時期に来ていますよ。そういう意味で、僕らは五年間で二十二兆七千五百億というのは、五年間で五千億ぐらい削れるんじゃないのか。一千億ずつ削ったって五年間で五千億、まあ後で申し上げますけれども、細かいことは。  そういうことで、総理の見解は、何か御用意されていますけれども、どうですか。
  58. 渡部恒三

    渡部委員長 内閣総理大臣、素直に正直に答えてください。
  59. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いつも素直に正直に答えております。
  60. 渡部恒三

    渡部委員長 いつものとおりお願いします。
  61. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今おっしゃいました市川委員のお考え方、私もよく聞いてまいりました。そうして、米ソの対立状況がなくなったときに、いわんや三海峡封鎖であるとかこれの封じ込めとか、そういったようなことが必要だなんということは毛頭考えておりません。米ソの対立、対決が終わりを告げたということは、確かにおっしゃるとおりであります。  しかし、米ソの対立がなくなったというときは、先ほど言ったように世界じゅうが本当に平和と安定のバラ色になるかと世界の人々がそう思ったのに、その期待を打ち破るような武力侵攻が現に起こって大変な迷惑を世界に与えておるということでありますから、私は、日本における我が国の平和と安全を確保するにはどうしたらいいかということは、これは大綱がつくられた当時の米ソの対立の中で、しかもデタントの方向に向かっておるというこの状況の中で、日本が必要とする節度ある十分なものであった、こういうことを申し上げたわけです。  その後、大綱に示したその基準というものは、平成二年度の予算までにおいておおむね達成されたということになりました。ようやくおおむね達成したという段階になりましたので、そこでこれを見直しをして、今後正面装備の契約高は伸び率ダウンをしていくとか、あるいは整備の結果、その都度その都度いたしますから、これはそのときになってまた御発表もできると思いますけれども、保有する例えば戦車の量とか航空機の量とか、いろいろなものについてもその都度いろいろ身を削るような努力をしていかなきゃなりません。同時にまた、今後は隊員の処遇とか後方支援と言われるようなくくって言える部分があるとするなれば、そちらの方に重点を置いて、正面装備の方のこととのバランスについても配慮しながら整備をしていく。  そして、これは見直せとおっしゃいましたが、やはり五年ぐらいの区間を区切って継続的に計画的に見ていきませんと、国際情勢はいつどこでどういう変化が起こるかわからないということは、イラククウェート侵攻によって世界がこんなに劇的に変化をしたということでもわかるわけでありますから、政府は、そういったときに国民の皆さんのためにも我が国の平和と安全をきちっと確保するという大きな任務もあるわけでありますから、私は、今の新中期防による整備計画は、これはお認めをいただきたい。そのかわり、その中にも示しておりますように、毎年御指摘のように鋭意検討をして努力をして、必要なものはその都度改革をしていく、三年たったら計画全体の上においていろいろな見直しも行う、これも表明をしながら対応していきたいと考えております。
  62. 市川雄一

    市川委員 そういう意味のことを申し上げているわけじゃありませんでしてね。五十一年に大綱をつくった、国際情勢を想定した、大きく変化したら見直す、それからやはりこれは大きく変化した、見直す、これがわかりやすい政治だということを申し上げたわけであります。防衛問題に関しては、そういうことが一回も行われてないんですよ。どうもこう拡大解釈拡大解釈。だから、さっきの自衛隊機の問題だって同じなんです。アリの一穴論、将来もっと別の形の自衛隊の派遣がこれを突破口に行われるんじゃないかという懸念を持つ人がふえちゃうわけです。そういう懸念はないんだと言いますけれども、そういうことをおっしゃるんだったら、やはり一つ一つきちっと約束したことを守る政府にならなきゃだめだと思う。言ったことはきちっと守る、できないことは言わない、言ったことはやる、こういう政府にならなければ、防衛問題に関しては国民合意がふえませんよ。いつまでもこういう繰り返しになってしまうんじゃないか。  例えば、中期防で護衛艦を十隻建造する。うちイージス艦が二隻、通常の護衛艦が八隻。この十隻の護衛艦の代替建造に当たっての積算は、護衛艦の退役年限というんですか、これは二十四年としているわけですね。しかし、今までの護衛艦の除籍の実績を見ますと、昭和六十二年「おおなみ」が二十八年、「まきなみ」が二十八年、「いすず」が二十七年、「もがみ」が二十七年、「きたかみ」が二十六年、「おおい」が二十六年。昭和六十二年、六十三年、平成二年、護衛艦を防衛庁が除籍したわけですけれども、竣工から、鑑齢というのか船の年齢として二十八年、二十八年、二十七年、二十六年、こういう実績なんですね。しかし、この中期防の五年間の計画では、全部これは一応二十四年になっている。ですから、まあ艦齢を二年、この十隻について全部とは言いませんが延ばすという、従来もさんざん行われてきたことでありますが、これをすればかなりの財源の調整、削減というのはできるのではないのか。何で二十四年にこだわって、まあ二十四年というのは別に根拠があって、自衛隊に書いてありますけれども、実際は二十八年、「あまつかぜ」なんというのは三十年ですから。ですから、二十四年で組んであるものを多少やりくりすれば、ここからだって十分防衛費の削除はできるのではないか。防衛庁でお答えがあればしていただきたい。
  63. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答えいたします。  自衛隊の装備品の使用年限につきましては、装備品の種類ごとに技術的あるいは経済的要因等を総合的に勘案して決定しているところでございまして、特に耐用年数といったようなものが画一的にあるわけではございません。  また、ただいま御指摘の艦艇につきましては、艦艇の艦種に応じましてその安全性等を保障するとかそういったことも目安にしながら、いろいろ技術的な調査も行いながら使用年限を決定しているところでございますが、その点詳細につきましては事務当局から補足させていただきます。
  64. 市川雄一

    市川委員 いいです。  したがって、二隻の新船の建造を二年おくらしただけで千二百億円のお金が出てくるわけです。それから戦車の購入費、九〇式戦車百三十二両、千五百八十四億円、一両約十二億、百三十二台。この中期防期間中に百三十二両購入する。平成三年度予算では二十八両、約三百三十六億円。  私は、ずっと内閣委員会、安保特で、日本の防衛構想、前提となる防衛のポリシーがきちっとできてないんじゃないのか。どうしても空は要撃戦闘機、海は七つの海を遊よくするという昔の旧軍の発想から抜け切れない。四個護衛艦隊、それから最新鋭の戦闘機を持ちたいという、それから戦車。だけど、日本の国を急迫不正の侵害から守るということは、日本の国は出ていかないのだ、もし急迫不正の侵略があった場合は他に手段がなくて自衛力で排除するんだということを本当に真剣に考えるなら、それでいいのかというと、問題がたくさんあるわけですね。  戦車というのは、大体これは日本を侵略する国の戦車が日本に上陸が完了して、戦車と戦車で戦うという想定で戦車を一つは置いている。もちろんそれだけではない。日本に上陸したら戦車があるぞという一つの抑止という面もあると思います、それは。だから、全く要らないとは申し上げませんが、そういう点から考えて、戦車を百三十両買う緊急性というもの、もうちょっと計画をなだらかにしたってできるんじゃないのか。どこに置くのですか。北海道しか置きようがないじゃないですか。そういうことから考えても、平成三年度でこういう金額が想定される。  あるいはP3C一機百億、百機持っているわけですね。日本は百機、アメリカが二百十八機、イギリスが二十八機。一機で大体四国から九州の大きさの海を見ることができる、潜水艦を見る。百機持っている。もちろん、一遍に百機飛ぶわけじゃありませんが、整備とか練習とかいろいろ運用の仕方はあるんだろうと思いますけれども、百機持つ必要があるのかどうか。米ソ・デタント、シーレーンというものの持つ日本の防衛に当たっての意味は、全然戦略的に変わってきている。アメリカもフィリピンから引こうとしている。そういう中で、旧態依然としてP3C百機、こういうのは幾らでも後へずらしたり、もっと計画をなだらかにできるんじゃありませんか、こんなのは。そう思いますし、この辺、まあ防衛庁に聞けばこれは絶対反対ですと言うに決まっているのですが、総理、どうですか、感想を聞かせてください。総理もなかなか、防衛庁の手前やりますとは言えないでしょうから。そういう国際情勢が変わっているという中でもっと政治家が切り込んでいいんじゃないですか、いろいろなことを、防衛庁についても。聖域としてはいけないと思う。総理、どうですか。
  65. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本の場合はやはり専守防衛でありますから、私は、日本の国の周辺に対するいろいろな、何というのでしょう、警戒、そして情報収集能力、そういったものについてP3Cが果たす役割とか、いろいろなものを十分これは評価していくべきである。ただ、上陸されて、戦車を何台使えば安全で、戦車をどうしろとかこうしろとか言う前に、日本にはそういった侵攻がないようにしなきゃならぬということで日米安全保障条約もあり、また、そういう常に日本には対応する能力があるんだから意思を持っておっても侵略しないでほしいという抑止力としての役目を強く、大きく期待しておるわけでありますから、そういう角度に立っての別表の作成であった、こう考えます。  ただ、日本自衛隊の練度が高かって減耗率というものが当初の予想よりもはるかに少なかったということなども勘案しながら、今後はそういった補充とか更新のときにも、私は細かい数字は今手持ち持っておりませんから、必要があれば専門家から答えさせますけれども、戦車においても砲においても、それは数を減らしていく方向で整備をしていくものである、新中期防の作成に当たってはそのような検討をし、そのようなことで決断をしたわけでございます。  お考えはよく理解できますので、今後ともそういったことを考えながら対応をしてまいりたいと思います。
  66. 市川雄一

    市川委員 防衛費に関して具体的な一つ例示ですね。何もそれを削れという意味ではないのですが、我々が見て、我々の考えで見るとやりくりがきくじゃないかという、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。  あるいは予備費の減額ですね、予備費。平成三年度予算で三千五百億予備費が計上されていますね。大体、ずっとこの四、五年ですか、見てきますと、毎年千億近い予備費が減額修正、補正というのか、減額されている。特にことしは三千五百億の予備費にプラス公務員給与改善費が別途千三百五十億円計上されているわけですね。公務員給与改善費が千三百五十億。ですから、三年度において合計しますと、予備費と公務員給与改善費で約四千八百五十億の予備費が見込まれているわけです。ここから一年で千億、平成三年で千億、平成四年で千億削減努力するのはそう私は難しいことではないんじゃないだろうか。実績があるわけですから、ずっと。結果論であるにせよ、千億ぐらいのものが、予備費がやってきた。  あるいは既定経費の削減というのでは、毎年四千億程度のお金が各省庁の不用額、不用額というか経費節減ということで節減されている。平成二年度は二千四百億円でございますけれども、大体過去の大蔵省からいただいた表を見ていますと、五千億のときもあるし、六千億のときもあるし、四千億のときもある。平成二年度は二千四百億、そこから二千億ぐらい出せるのじゃないですか、一年で。合わせると、両方で、予備費と合わせて三千億、二年で六千億のお金が出ますよ、これだけでも、二年間で。  あるいは、もう一つ、ODAですね。もちろん海外経済協力費ですからこれは重要な予算ではありますが、無償協力の食糧増産等の援助費、これをかなり見込んで毎年大体二百九十五億円とか二、三百億のお金が毎年残っているわけですね、使わないで。それで翌年に繰り越しになっている。ODAの予算。  どれをやるか、これは政府の判断ですけれども、要するに九十億ドル全部を増税ということじゃなくても、こういうところを我々が見ても、やろうと思えば過去の実績からいって決して無理なことを言っているものではない。それは政府立場に立てば一回組んだ予算をかえるというのは、これはもう大問題かもわからない。だけれども、予算を組んでからこの事態が起きた。総理にとっては非常に、内閣にとっても非常にプライオリティーの高い問題だ。国民に理解を求めなければならない。政府みずからの身を切ってでも理解を求めなければならない。そういう意味で、歳出削減というものを政府は姿勢としてやるべきではないのか。予算修正を辞さずと、このぐらいの総理の覚悟が必要なのではないのか。あるいは中期防を見た場合に、防衛費にある程度手をつけるということも可能なのではないのか。いろいろなところがある。これについて総理の御決意のいかんを伺いたいと思います。どうですか。
  67. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来の御議論に私はその都度お答えしておりますが、そういうことを念頭に置いて今後の政局の運営に当たって行政のむだを省く、政府自身がむだを省く努力をする。毎年、御指摘になったように予備費だって残っておるではないかというお話でございますが、今回もよりそれにまさるような努力をして、そういったものはむだ遣いをしないようにしていく努力をすることは当然のことでございます。  なお、御指摘のいろいろな問題については、ただいま突然聞いた問題等も私にはございました。いろいろなことについては、さらに関係各省と具体的な話をいろいろ研究してみたいと思います。
  68. 市川雄一

    市川委員 るる考え方を述べたつもりでございます。総理一つの信念として、政治判断として政府はそういう姿勢を持つべきだという立場で申し上げました。我々は、何かそれを公明党のためにやってくださいとかやってほしいとかという考えは毛頭ありません。どうぞそのことを誤解のないようにしていただきたいと思います。  これで問題を変えます。  今、昨年来医療の現場で看護婦さんが不足しているという問題が非常に深刻になっております。この問題を伺いたいと思います。  この予算委員会で看護婦さんの問題をぜひ取り上げてほしいという御要望がありまして、これは何も看護婦さんから来たわけではありませんでして、党内のいろいろな関係者の方から来まして、看護婦さんに何人か大分お会いしました。あるいは党の社労の関係者に精力的に国立病院とかいろいろな病院に行っていただいて看護婦さんと懇談していただきました。私も十人ぐらいの看護婦さんにいろいろお会いして、看護婦さんの労働現場の実態というものを伺いました。  例えば国立病院。これは看護婦さんの意見ですとわりかしいい方だ、こう言われているのですが、そのいい方だと言われている国立病院でも最近起きた現象ですが、二十二名いた看護婦さんが突然退職者が出て困っているとか、あるいは定員を二十四名にしたいんだけれども、今二十名で、一番やはり看護婦さんが訴えているのは、労働が非常に重労働だということですね。例えば十八時、六時終了といっても、大体終わるのが十九時から二十時、一時間か二時間、看護日誌をつけたり申し送りをしたりというので時間かかってしまう。ですから、午前零時から朝八時半までやっても、終わるのが大体午前十時か十一時。しかも、夜の夜勤はたった二人の看護婦さんで五十名から四十名の患者さん診なきやいけない。二人です。夜中、五十名から四十名の患者さんを診なきやならない。  大体伺っていて共通しているのは、二名で夜勤、五十名ぐらいを診なきゃならない。看護婦さんが不足している。それから、やめていく人が多い。それから、ベテランの看護婦さんが少ない。したがって、准看護と言われる若い准看護の方が、経験の余り積んでない方がふえてくる。看護婦さんに負担が重くなる。現場の労働というか、高齢化した。しかも高齢者の重症患者がふえた。高齢者、重症患者。医療が高度化した。点滴一つやるにも非常にいろんなメンテナンスが大変で、看護婦さんがそれこそ必死になって一人の患者つきっきりで点滴全部終わるのを維持しなきゃならない。そういう高齢化によるお年寄りの重症患者がふえた。しかも手数がふえた。医療が高度化した。にもかかわらず、看護婦さんは足らない。不足している。悪循環する。  ですから、一カ月に夜勤が二人で八回、二・八体制と言われているのですが、これが実際は二人で十四回とか十五回とかというふうに行われたり、たまに土日休みになると、土曜日一日休みになっても泥のように寝て眠るだけとか、非常に労働条件がきつい。  しかも、待遇が余り優遇されてない。夜勤手当が安い。十年間でたった千円しか夜勤手当が上がってない。十年でたった千円です、夜勤手当。二千六百円、これは今度はたしか三千六百円ですか、なりますが、十年で約千円しか上がってない。  看護婦さんが足んない。大変だ。魅力がない。人が不足しているから労働が強化される。労働が強化されて待遇改善されないから現場に魅力がない。毎年五万人の看護婦さんを養成しながら四万人の人がやめていってしまう。悪循環している。こういう中で日本は高齢化社会に今向かおうとしているわけでして、まさにこれからは治療の医学から、治療するということも大事ですが、ケア、看護と介護、これは非常に重要な意味を私はこれからの日本の社会において持ってくると思うのです。このケアの医学、介護、看護という意味においては、看護婦さんがケアの医学の主役であるわけですが、非常に現場はそういう状況でありまして、一昨年来、とにかく看護婦さんを集めるのが大変だ。何かマンション借りて安い家賃で提供するとか、そういう住宅条件をよくするとか、とにかく看護婦さんを確保するのが大変で、看護婦さんが確保できないから病棟が閉鎖されたとか、そういう事実も起きておりますし、こういう今看護婦さんの働いている医療の現場というものに深刻な看護婦さんの問題が起きている。この点について厚生大臣は、そういう深刻な事態だという御認識があるのかないのか、まずその辺からお伺いをしたいと思います。厚生大臣、どうぞ。
  69. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  最近の医療のあり方につきまして、ただいま先生からのお話が出ましたように、極めて行き届いた医療をしよう、しかも技術も非常に高いものになってきたという、そのような状況の中で看護職員が不足しているということは事実でございます。現在の看護職員は八十万二千人でございますが、需要はさらにそれを上回っておりますので、現状は厳しいということでございます。しかも、お話のように労働条件が必ずしもよくないということで、お話の夜勤の問題につきましても、大変に皆様苦労していらっしゃるということでございます。  ただ、夜勤の問題一つとりましても、すべて同じような状況での夜勤というわけではございませんで、その病床のぐあい、患者さんの内容等々によりまして、ただいまのような先生御指摘のような形で行われている面もあろうかと思いますけれども、さらに充実した手当て、看護が必要な場合には、より濃い看護の制度もまたあるわけでございます。しかしながら、全体の勤務状況といたしましては、必ずしも一般の職種と比べまして楽であるということは申せませんので、そういう意味におきまして高齢者のゴールドプランの実施をするに当たりましても、今の看護状況、これが一体どの程度に実際の需要に追いついていけるか等、長期的な見通しを今立て直しているさなかでございます。  それはそれといたしまして、昨年、看護の職員の……(市川委員「深刻な事態と見ておるのかどうか聞いているのです」と呼ぶ)はい。そういう事態はもちろん、先ほど一番最初に申し上げたように、需要に追いついていないということが事実でございます。そこで、いろいろ手だてをしておるわけでございますけれども、昨年の医療職の手当の改正をいたしまして、御承知のように看護職は医療職の第三種になるわけでございますけれども、この引き上げの割合はほかの業種に比べまして相当高目にいたしまして、おくれている部分の取り戻しについてもある程度配慮してきたわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても……(市川委員「簡潔にしてください」と呼ぶ)はい。まだまだ需要に追いつかない、労働条件が十分に恵まれていないということもございますので、その点についてはこれからも鋭意改善に向かって努力をしていく所存でございます。
  70. 市川雄一

    市川委員 質問に簡潔にお答えいただきたいと思います。  看護婦さんの医療の現場が非常に深刻だ、看護婦さんが足りない、深刻だという実態があるが、厚生省はどういう認識か、これを聞いているのです。大臣、明快にもう一回答えてください。
  71. 渡部恒三

    渡部委員長 厚生大臣、簡潔に、明確に答えてください。
  72. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  確かに、看護の職員の不足ということについてはお話のとおりでございます。それについて我々もその手当てをいろいろと講じておるさなかでございます。  以上でございます。
  73. 市川雄一

    市川委員 わかりました。  そこで、お伺いします。看護婦さんの需給見通しというのをどういうふうに数字の上でお立てになっていらっしゃるのですか。需給見通し平成元年度に六年度までの看護婦さんの需給見通しというのを立てたと思いますが、これは大臣ではなくて局長さんでも結構ですが、この看護婦さんの需給見通し平成元年度に立てた需給見通し、これはここに厚生省からいただいた表がありますが、今どんな見通しを持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  先生、お話がございましたように、六十三年をベースにいたしまして平成六年までの看護婦需給数の見通し平成元年に立てたところでございます。その計画によりまして、平成六年までには需要数と供給数が一致するような形で供給数を増してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。現在のところ、六十三年、平成元年の数字が出ているわけでございますが、現在のところの見通しにおきましては、予想しておりました就業数よりも実際の就業数が多いということで、これからさらに就業数をふやすあるいは離職者数を減らすというようなことをやりまして、その計画の達成を図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  75. 市川雄一

    市川委員 総理、ちょっと、厚生省が需給見通しというのを持っているのですよ、看護婦さんの。この数のつくり方が私に言わせると極めて納得ができないのですね、この需給見通し。例えば平成元年で看護婦さんの必要数が八十五万一千、平成元年の年末、看護婦さんの就業者数が七十九万一千人、これは明らかに足りないわけです。足りない。六万人ぐらい足りないのですか、そうですね、六万ぐらい足りないのですね。これが平成六年度になりますと、需要数が九十三万五千で、年末、看護婦さんの就業者数が九十三万五千、こうぴしゃっと帳じりが合うのです。  こんなにうまくいくのかしらというので、この表をずっと僕はにらめっこした、この一週間ぐらい。それで、何かやはりこの需給見通し、からくりがあるんじゃないのか、おかしい、現場はこんな簡単に数学的にうまくいくわけがない、もっと深刻な事態が病院で起きている。それで、神奈川県だとか東京都だとか、厚生省から資料要求して、いろいろ資料をいただきました。そうしたら、驚くことなかれ、需給見通しというこの表の一番肝心の根本になる需要数、看護婦さんがこれから何人必要か、平成元年は何名、平成六年は何名必要だ、この何名必要かという、これが一番基本の数だと私は思うのです、計画なり需給見通しを立てる場合。では、この需要数がどういう積算でできているのかというその積算の根拠を聞きましたら、厚生省からこういう文書が返ってきた。各都道府県に需給見通しを聞きました、それで各都道府県から需給見通しが上がってきたので厚生省で調整して一覧表にした、こういうことなんだろうと思うのですが、そういうことを言っておるわけですが、この「看護職員需給見通しの基本的考え方」、これは厚生省が私によこした文書です。「1 基本的事項」その(2)にこういうことが書いてあるのですね。「見通しの目標水準は、都道府県における看護職員の需給の実情を踏まえ十分な検討の上で決定すべきものであるが、」ここまでは非常にまともなことをおっしゃっておるのですが、ここから先です。「現有及び将来の養成力に即した妥当なものでなければならないこと。」何人必要かと計算をするのに看護婦さんが何人養成できるかという数で妥当なものでなければいけないと決めたら、これは何人必要かという数は出てこないじゃありませんか、だれが考えても。こういう通達を各県に出しているわけです、厚生省が。これは各県に出した厚生省の通達の写しです。厚生省、どうお考えですか、これについて。後で総理に、この問題じゃなくて、ずっと行ったときにお伺いしますので、聞いておいていただきたいのですが。
  76. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 先生のお尋ねの「基本的事項」の(2)でございますが、「現有及び将来の養成力に即した」という言い方は、現実その県におきましては、いわゆるいろいろな形での試算をいたしまして、そこの平成六年までの必要な看護婦の数を出すわけでございますが、それに合わせまして、それの供給を図るために現有の看護婦の養成、それから、これから六年までの間にそういう養成に満たない場合におきましては、新たな養成の増強というのを踏まえて計画を立ててくださいよという意味でございます。  そういう面で、先生の、こういう形で私ども各県からいろいろ将来計画も踏まえまして試算を出していただきまして、それを全体的に調整をして総体的な数をまとめたということでございます。
  77. 市川雄一

    市川委員 「現有及び将来の養成力に即した妥当なもの」。現有、看護学校が何校あって、定員が何名で、何人卒業生がいる。将来の養成力、今ある計画として、何年に看護学校が開校されて、定員が何名で、一年に何人卒業してくるという意味だと僕は思うのですよ。それに合わせて妥当でなければならないと言っているんじゃありませんか、これは。だから、看護婦さんは何名足りないのかという数字を、あるいは何名必要なのかという数字をつかもうとしているときに、看護婦さんの養成力と見合った数で抑えろということを言っているだけじゃありませんか、早く言えば。何人必要なのか、「都道府県における看護職員の需給の実情を踏まえ十分な検討の上で決定すべきもの」、ここまでなら僕も理解できるのですよ。それにプラス「現有及び将来の養成力に即した妥当なもの」と加えちゃえば、都道府県はやはり養成力の見合いで、五万人必要なんだけれども三万五千人しか養成できないから三万五千人で抑えて国に報告する、こういう通達文書じゃありませんか、これは。看護学校についても同じことを書いているじゃありませんか。今ある学校、今現在計画しているもの。計画してないものは入れてないじゃないですか。あくまでも根っこにある考え方が養成力じゃないですか。看護現場、医療現場から何名必要かという立て方じゃないと思う、議論の立て方が。それを言っているのですよ。こんな悠長な考えで需給見通しをやっている限り、この問題は解決しませんよ。違うんですか、この通達は。
  78. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 各県のそういう需要数と供給数をまとめますと、県によりましてはいわゆる供給過剰のところ、あるいは供給不足のところとさまざまございます。そういう面で、需要数と供給数につきましては、その当該県におきましてできるだけ一致させるような形でいろいろ計画してくださいよ、足りない県におきましては養成力増強について配慮していただきたいというような意味でこのような文書を差し上げたわけでございます。結果的には、県によりましてはいわゆる過剰のところ、不足のところとさまざまございまして、全国的にはそれを合わせますと大体需要数と供給数が一致するというような考え方で計算いたしているわけでございます。  これにつきましては、これは先ほど申し上げましたように平成元年につくったものでございますから、その後の新しい需要増があるわけでございますので、そういう面で、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、新たな見直しの作業を現在やっておるところでございます。
  79. 市川雄一

    市川委員 今のも答弁になってないのですよ。要するに需給見通しの基本の考え方がおかしいのですよ。養成力に見合った数を出せと言えば、必要数なんか出るわけないじゃないですか。だれが考えたって当たり前の話じゃないですか。出てきた県、多いところと少ないところあります。そんなの知っていますよ、いただきましたよ。鳥取県は看護婦さんが余っている、皆さんがスカウトに行くという話も聞きました。そんなこと聞いてないのです。看護婦さんの実態がわかってないのですよ、事ほどさように。だから、こんな考え方の需給見通しをやっておる限り、看護婦さんの問題は解決しませんよ。現場へ行っていらっしゃい、現場に。聞いていらっしゃいよ。じゃ、どういう基準でとったんですか、どういう基準で。看護婦さんが何人必要か。需要数。その需要数を各県から聞くためには、例えば患者さん四人に一人という一対四の基準がある。この基準が今守られてないところもある。週休二日制、これをいつまでに実現する、そのためには何名必要だ。人事院が勧告した二・八という夜勤の体制がある。守られてない、なかなか。これさえも労働条件としてはきつい。三人にしてもらいたい。あるいは三人で六にしてもらいたい。こういういろんなものがあるのであって、どういう基準で必要数をとったのかという基準を言ってくださいよ、基準を。
  80. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  各県におきましてそういう今後の将来の需要数、供給数の見通しを立てていただいたわけでございますが、各県におきましては、それぞれの病院におきます現状の把握の上に現在あるスタッフを、先行き平成六年におきましてはどういう形で病院がなっているか、その時期におきます、先生お話ございましたように、二・八体制あるいは週休二日制の推移等もいろいろ勘案しながら、それぞれの県におきまして、各施設からいろんな状況を聞きながら、積算といいますか試算を行っておるわけでございます。そういう面で、例えば病院におきましては病院の種別なり病床規模、勤務条件、これには夜間看護体制、労働時間の短縮、週休二日制の動向等もあるわけでございますが、そういう面、それから診療機能、組織、その他いろんな面から、各県におきましてはそれぞれの施設ごとに検討し、積み上げを行ってまいったということでございます。
  81. 市川雄一

    市川委員 そんなのは基準になってないじゃないですか。週休二日制を何年何月までに実現するという前提で看護婦さんの必要数を出しなさいというなら計算は可能ですよ。週休二日制普及の動向と書いてある。動向をどうやって見るのか、どうやって計算してどうするのか、何も指示になってないじゃないですか。だから神奈川県の場合なんかは、県が国に出した数は四万四千八百五十人、平成五年度。平成五年しかないんです、数字が、申しわけないんですが。神奈川県医療審議会の答申に基づく看護婦さんの必要需要数、平成五年で四万四千八百五十人。国が平成六年で持っておる見通し、神奈川県について持っておる見通し、四万八百人です。平成六年。一年先なんですよ、平成六年。国は神奈川県は四万八百人でいいと。県の方の医療審議会の答申は平成五年で既に四万四千八百五十という数が出ている。何でこの四千八百五十人もの差が出てきたのか。これは今言われた週休二日制というのは大きな問題になっているわけです。週休二日制だけではありませんが、週休二日制というものをもしかなり導入するとしたらこれだけの数が必要になる。それが四万四千八百五十人。国は四万八百人しか見てない。だから各県は厚生省がそういうたらんたらんの通達なんか出しておるから、このたらんたらんに合わしてたらんたらんの数出しているだけなんですよ。何年何月までに週休二日制を大体めどとして何割ぐらい実現しろという、それならその数は出てくる。だから週休二日制の普及の動向など多角的な視点からなんと、何だかわからない。  もう一つ申し上げたいことは、じゃ、そこまでおっしゃるなら平成六年度に九十三万五千。九十三万五千で看護婦さんの需給バランスができ上がるというふうに平成元年度に計画をつくって、六十三年度につくって元年度からスタートした。ところがこの数字を読みますと、離職者、看護婦さんやめていく人が五万二千五百人見込んでおるわけです、再就業者数二万四千人を見込んでおるわけですね、平成六年度で。要するに、看護婦さんをやめて、結婚したりなんかしてやめて、また看護婦さんに戻ってくるという方を二万四千四百見込んでいるんですが、そんなにふえるかというと、そんなにふえてない。ところが、再就業者数だけどんどんふやして、平成六年に二万四千四百人がふえるはずだ、こうなっているのですが、じゃ、何でそういう数字が出てくるのか、その根拠を調べてみましたら、厚生省が出した私の方に対する書類の中に、この看護婦さんの再就業者数が倍増している理由についてどんなことが書いてあるのかなと思って読みましたら、「ナースバンク事業の強化により再就業者数をほぼ倍増することとし、平成六年には二万四千四百人の再就業者を見込んだ。」これは願望ではないですか、願望。「ほぼ倍増することとし、」これは簡単ですよ。今、医療の現場はそんな安易じゃないんですよ。一回、三年でも二年でも離れちゃったら、機械がかわっちゃったり医療が高度化して、簡単に戻ってこられない。戻るとしても再教育が大変なんだ。それから、夜勤をみんな嫌う、家庭を持っていますから、夜勤は嫌だ。だから、なかなか潜在の看護婦さんの人口が起きない。それを平成六年度には「ほぼ倍増することとし、」と、厚生省が勝手に決めているんじゃないですか、倍増すると。何でこんなのが計画なんですか。こう言うと、ナースバンク事業が云々、こう恐らく答弁されると思うのですが、ナースバンク六万人、ふえてないじゃないですか、それ以降。  ですから、結論として申し上げたいことは、需給見通しにおいて、「現有及び将来の養成力に即した妥当なもの」と枠をはめて何名必要かと都道府県に需給数を聞いていること。それから、需給バランスの中で、再び看護現場に戻ってくると厚生省が勝手に、倍増すると勝手に決めちゃっていること。裏づけがない。こういう考え方で需給見通しをつくって平成六年に九十三万五千。九十三万五千で看護婦さんの不足が見事に解決するんですというこういう行政でいいんでしょうかね、総理、こういう数で。もっと現場は深刻なんです。こんな議論をしている場合じゃないんです、本当は。もう看護学校をふやすとか看護婦さんの夜勤の回数をもっと減らすとか、あるいは二対五十人というこの夜勤の体制を三人に最低限するとか、もっとてきぱきとした手を打たないと、医療が崩壊するんじゃないかというぐらい深刻な事態が起きているんです。それをこういう見通しを立てて、あぐらをかいているとは言いませんが、と言いたくなるような厚生省の姿勢、これは納得できませんね。大臣、どうしますか。
  82. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまのお話のように、看護婦の諸条件は大変厳しゅうございます。  したがいまして、過去の統計でつくりました資料ではこれは実際にマッチしないということで、先ほど御説明申し上げましたように、ただいますべて洗い直して、基準もそれぞれ、御指摘がありましたような勤務の状況、あるいは人事院判定から出ておりますところのいろいろな条件、あるいはその他の状況を十分とらえたところで、新しい資料をもととしてその需要供給の姿をつくり直すという作業に取り組んでいるわけでございまして、ただいまのいろいろ御示唆がありましたところを十分踏まえて答えを出すように努力してまいりたいと思っております。
  83. 市川雄一

    市川委員 見直すとおっしゃるんですけれども、六十三年につくって平成元年度からスタートした六カ年計画ですよ、六カ年計画。平成六年まで。今もう平成三年。六カ年計画がもう二年で見直しだ。  しかも、その見直しにも二つあると思うんですよ、厚生省の言う。例えばゴールドプラン、寝たきり老人ゼロ作戦あるいは訪問看護、そういう厚生省が考えた新しい事業を実施するために看護婦さんが必要になる。だからこの需給見通しじゃ足らなくなる、だから見直す。それはそれでそのとおりなんですが、私が問題にしているのは、このそもそもの需給見通しの数の算定がしっかりしてないということを言っておるわけです。これを認めてもらわないと、こういう算定基準で幾ら需給見通しをつくっても意味がないんですよ、これ。  だからもし、今大臣は見直すとおっしゃったんだけれども、それだったらあれですか、例えば、まあ私はもっと改善すべきだと思いますが、現行で考えても、例えば二・八体制、二人で一カ月に八日間、八回夜勤勤務するというのを二・八と、こうなっておる。これは労働省がもっと本気で考えなきゃいけないことなんですけれども、労働省がなかなか手を出さない。したがって人事院が二・八ということを考えた。この体制もなかなか守られてない、実際は。二人で十四回。看護婦さんは、三人にしてもらいたい。こういう基準だって、二・八体制、本当は三人で六に基準を改正してもらいたいという意見があるのですが、じゃ、まず二・八体制を実現しろということで、必要数を出してみろ、あるいは週休二日制を何年何月ごろまでに実現できるように考えてみろとか、あるいは患者四人に一人、四十三年前に決めた基準ですよ、これは。四十三年前ですよ。この四人に一人も守られてない。六〇%ぐらいの病院は守られていますが、かなりの病院が守られてない。これだって改善してもらいたい。三対一にしてもらいたい。四十三年前の医療の現場と四十三年後の今日の医療現場は大きな変化があります。高齢化、重症化、医療技術の高度化、手数が多くなる。一人の看護婦さんが一人の患者にやるケアが、回数がうんとふえる。したがって負担が重くなる。四十三年間それが同じ基準できているというところに大問題があるんだ。その基準さえ変えようとしない、あるいは守られていない。  そういう基準というもの、看護現場でいろんな不満がある、その不満を、基準というものをどうするのか。将来改善しようと考えているのか、今のままでいこうとするのか、その辺のことも明確にして、ある程度厚生省がこういう基準で看護婦さんの必要数を出しなさいと言わなきゃ、何の意味もない数が集まってくるだけですよ。何の問題解決にもつながらない。厚生省の方が自己満足するペーパーになるにすぎない。  ですから、今大臣は、見直します、こうおっしゃったのですが、そういう基準もきちっと決めて需要数をとる、そして見直す、こういう意味ですか。
  84. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 本件につきましては、かねてから先生の方から御提言をいただいておりまして、我々も承知しております。それらの御提言の中には極めて示唆に富むものもございますが、また、直ちにこれを適用するということも困難なものもございますので……(市川委員「基準、基準」と呼ぶ)その基準につきましても、すぐに実行可能な分とそうでないものとそれぞれございますので、十分検討して、大体来月の末ぐらいまでに基準その他をまとめまして直ちに調査に入るという段取りをつけておるわけでございます。
  85. 市川雄一

    市川委員 ですから、もちろん、恐らく今申し上げたような基準を設けて数をとるともう現実との落差がすごく激しくなると思いますよ、恐らくね。だから、実行可能性という点では確かに疑問は出てくるのですが、実行可能性、すぐできそうもない、だから数を初めから抑えてとっちゃうというのじゃだめですよ、これは、行政の姿勢として。そういう深刻さが伝わってこない。どんなに実行が難しくても、まず数は正確に掌握しなきゃ。その上で、いや、とても三年じゃ無理です、五年じゃ無理です、十年かかりますというなら、これは話はわかりますよ。看護婦さん、急にできるわけじゃないのですから。学校もふやさなきゃならない。ところが、その数の把握に真剣でないでは話になりませんということを申し上げているわけでして、実行可能性を今問うておるわけではない。  ですから、やはりこの需給見通しをとる場合に、ちゃんと基準を設けますか。四対一の人員基準、週休二日制、それから人事院の言った二・八、夜勤の回数、二人で月八回、これはこのままなのか、どうするのか。こういうことをきちっと指示して都道府県から需給見通しをとるのかどうか、大臣、明快に答えてください。
  86. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 ただいまの三点につきましては、極めて重要な項目でございますが、これを直ちに全部実行できるかどうか、またそれを今度の調査の中に全部入れるかどうか、どの部分を入れるか、これらはこれから検討してまいります。
  87. 市川雄一

    市川委員 全部入れてとったらどうですか。それで、できるところからきちっとやっていくという考え方の方が堅実ではないですか。初めから、見るのは怖いから抑えちゃうという考え方でしょう。それじゃだめですよ、そんなんじゃ。全部やればいいじゃないですか。今の基準だって決して理想的な基準じゃないんじゃないですか。最低ラインでしょう。四対一だって最低のガイドラインじゃないですか。二・八だって、看護婦さんは今もうきゅうきゅう言っていますよ、守られてないのですから。週休二日制、これはかなり、まあ四回休むか二回休むかというその段階はあると思いますよ、僕は。いきなり土曜日が全部休みだというのはなかなか難しいかもしれない。しかし隔週に休んでいく。で、行く行くは四週全部休む。何か計画、そういう基準をつくって需給を出さないと出てこないと思う。  何でこういうことを言うかといいますと、その必要数を深刻に理解しませんと、今度は養成に力を入れないでしょう、養成に、国は。養成は民間任せでしょう。これだけ必要なんだという深刻な認識が生まれれば、やはり国としても養成に力を入れなきゃいけないという、これが生まれてくるのです。実態の認識に深刻性がないから、養成も民間任せ。ですから、実行可能ということももちろんあると思いますが、その辺、この三つについてぐらいはもうある程度の見通しがあっていいんじゃないですか。  四対一なんというのは四十三年前に決めたんですよ。二・八体制だってもう随分前じゃないですか。いまだに何もそれについて将来見通しが持てないというのは、これは厚生省の怠慢ですよ、だれが考えたって。これだけ高齢化社会と騒がれ、高齢化社会をどうするんだということが言われ、看護婦さんが不足しているということが言われて、四対一の基準が、三対一にしてほしいという現場の強い声がありながら、現実、四対一が守られない。  二人で八回がきつい、三人にしてもらいたい、昼間重病がふえるわけじゃない、こう言うのですよ、看護婦さん。夜になると病人がみんな健康になって、昼間になると急にみんな病気になるという考え方だという、この体制は。五十人のベッドを昼間は五人とか六人で持っているのを、急に夜になると二人になっちゃうのですから。すると、夜は看護婦さんは保安要員という発想じゃないのか。だから二人でいいという考え方。ところが、高齢者の場合はもう夜ほど緊急事態が多い、逆に。お医者さんはいない、なかなか連絡がとれない、看護婦さんの対応というのは非常に迫られている。ですから二人で月八回、体もきついけれども、むしろ体のきつさよりも、こういうことでいいのかという疑問を持っているわけですね。それさえも守られていないと、こうきている。  厚生省は、これについてやはり先行きいつごろまでにどうしようとかと考えるのが厚生省じゃないのですか。二・八、四対一の人員基準、それから週休二日制、そういうことがわからないと考えない。厚生省は要らないです、これは。もう看護婦のことをやらなくて結構です。民間でやらした方がよっぽど早い。まじめにやってくださいよ、もっと。基準どうしますか、これ。あいまいな答弁じゃ困る、明確に答えてください。
  88. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまのそれぞれの、二・八の問題にいたしましても、現状は国立病院について九・二回というところでございますので、これをどの程度時間をかけてやれるかどうかとか、あるいは週休二日制の問題にいたしましても、例えば国家公務員は現在すべてが週休二日制にはなっておりませんで、第二と第四が週休二日になっております。そういういろいろな諸状況を十分検討の上で、先生のおっしゃったとおりに、何とかこの厳しい看護状況を打開するようにどうやっていったらいいかということを真剣に検討してまいりたいと思っておりますし、また同時に、先ほどお話の中に、看護婦のまた供給問題についてちょっとお触れになりましたけれども、これは准看の手当の問題につきましても、制度上いろいろと工夫をやっておりますし、また平成三年度の予算におきましても、看護婦養成等につきましては約四割の増という大変な予算の裏づけもとられておりますから、それらをあわせながらこの厳しい状況の打開に努めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  89. 市川雄一

    市川委員 その四割の増とか四〇%と言うと何かすごくふえたみたいに思うのですけれども、絶対額でやりますと、そんなでもないんですよね。例えば看護婦さんの夜勤手当なんかも、パーセントで言うと大きいのですけれども、十年で二千六百円が三千六百円になった。十年で千円ですよ。午前零時から朝の九時までずっと徹夜で二人で五十人の患者さんの面倒を見て、わずか二千六百円、夜勤手当が。三千六百円、十年で千円。  看護婦さんのやはり夜勤の労働基準というか、夜勤の基準をつくるべきですね、労働省は。そうしないと、「女工哀史」じゃないですけれども、非常にひどいですよ、これ。コマーシャルに、「疲れていては他人に優しくなれない」というのがあるのですが、看護婦さんはみんな言っています、優しくしたいんだけれども、自分自身が疲れているからなかなかできないんだと。ですから、そういう問題。  あるいは夜勤手当。もっと抜本的に考えていいんじゃないですか、夜助手当というものを。それから四十三年前の人員基準。四十三年間放置してきた。これは改正すべきじゃないんですか。  それから、看護職の等級を上げるべきだと思うのです。看護職の等級が六級で終わっているから、婦長さんでもずっとほかの行政職に比べると給料が低過ぎる、三十五万とか。普通の人は四十五万とか五十万だ。三十七、八万で抑えられちゃう。等級を上げるべきです。  あるいは看護学校。これは国が本気で一県一看護大学ぐらいつくる考えでやりませんと、これ間に合いません。  一つ一つこういう問題を厚生省の対応をただそうと思って用意したのですが、大もとの需給見通しを申し上げましたので、私の質問は以上で終わりまして、関連、二見委員に譲りたいと思います。  以上で終わります。
  90. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、二見伸明君から関連質疑の申し出があります。市川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。二見伸明君。
  91. 二見伸明

    二見委員 きょうは、湾岸戦争の話が前半にあったわけでありますが、私は、湾岸戦争、結局これは日本の経済あるいは世界の経済に大きな影響力を及ぼす大変な事件だと考えておりますので、そうした観点から、日本経済あるいは世界経済について若干の質疑をいたしたいと思っております。  きのう経済企画庁長官は、経済の運営基調は変える必要はないという御答弁をここでされたように私は記憶いたしておりますけれども、私はそんな生易しいことではないんではないか。確かに八七年以来四年間、日本経済は実質五%の、五%前後の高い成長を遂げてまいりました。しかし、九一年度では、政府自身三・八%と成長率を低く見積もっております。しかし、このときにはまだ湾岸戦争は起こっていなかった。しかも、きのう発表されたアメリカの予算教書によりますと、アメリカは完全にデフレ基調です。マイナス〇・三%成長。よくありません。そうした状況を考えたときに、私は日本経済というのは先行き決して明るいものだという認識をいたしておりません。  確かに政府は一月の月例経済報告では、我が国経済は拡大局面にあるとしておりますけれども、十一月の景気動向指数は、足元の景気を示す一致指数は、景気判断の分かれ目となる五〇%を二カ月割っております。先行指数も四〇%で、九月以来三カ月連続して割り込んでおりまして、景気後退の兆候があらわれております。そうした中での湾岸戦争であります。  経企庁長官に伺いますけれども、私は、例えば九十億ドルの支出というのは、我が国にとってはGNPにとって〇・三%、乗数効果を二倍と考えると、〇・六%のマイナス要因だと思う。そして一方、今度は増税しようというわけでしょう。これはプラス要因ではない。これもやはりマイナス要因であります。そうなると、私は、今政府は、これから予算を、三・八%の経済見通しを基準にして予算の編成をしたわけだから、それは見通しは変えられないとおっしゃるかもしれないけれども、実態的には経済見通しは変えなきゃならない。早晩変えなきゃならないと思いますけれども、その点はいかがですか。
  92. 越智通雄

    越智国務大臣 二見委員にお答え申し上げます。  まず、昨日の増岡議員に対しますお答えは、九十億ドルが日本経済にいかなる影響を与えるか、こういうことについてお答えさせていただきました。今の二見議員の御質問は、それをも含めまして、日本経済の今後の見通しについてのお話でございます。  これは、私が本会議で経済演説で申し上げましたように、五十カ月目に入った景気上昇、確かに減速はいたしてまいりましたけれども、五・二%が三・八になだらかに下がってきておりまして、三・八自身は、私どもが五カ年計画で考えております三・七五の成長率、いわゆる巡航速度は近いものでございまして、決して急に悪くなってきたわけではない。設備投資はまだ大変力強いものがある。これは先ほどの日銀三重野総裁が日銀各地の支店長の意見としても申しておりましたし、大蔵省の財務局長会議でもそのように出ております。  消費につきましては、現在のところこの冬の数字が多少甘くなっております。これは消費の購買力が落ちたと言うべきか、あるいは非常に暖冬の結果としての一時的なものか、まだ見定めがついておりませんが、私どもは、設備投資並びに消費需要、そうした二大柱でやってきました景気の上昇局面は、たとえ減速してもまだ続いていくものと、このように考えているわけであります。  その場合に、この九十億ドルの影響につきまして、今、二重にカウントされておっしゃいましたけれども、きのう説明申し上げましたように、九十億ドル、円貨に直しまして一兆一千九百億円の半分は法人税でございますけれども、これは来年度に入ってから、法案が通していただければ実施するわけでございますが、、基本税率に直せば一・二%でございますので、三七・五の法人税に一・二乗せて、それが直ちに設備投資意欲を減殺するとか、法人のビヘービアを急速に大きく変えるというふうに私どもは見ておりません。  また、一兆一千九百億円の約四割が石油でございますけれども、これもまた多くのものが電力とかガスの方に使われておりますが、その料金でどういう格好になってまいりますかは、現在通産省の方でお調べ中と申しますか、いろいろ打ち合わせ中でございまして、その結果によりましては物価面へのはねっ返りは余り大きくない、このように見ているわけでございます。  たばこに関しましては、申しわけありませんが、一箱十円上がりまして、約三千万人でございますので、お一人様大体一年間四千七百円たばこ代が上がる、たばこを同じようにお吸いになった場合ですね、平均でそのような計算でございますが、いずれにいたしましても、このこと自身が急速に日本の三・八と見た成長率を大きく引き下げるということは考えておりません。今内容に及んで詳細な数字を検討させておりますが、主として物価面の影響が一番気になるというか、注意をしながら見ているところであります。  なお、二見議員は今アメリカの経済についてお触れになりました。アメリカの経済は十月からリセッションに入ったと言われております。御高承のとおり、四半期の数字を年率に直してあの国では計算しておりまして、四半期が二度続いたときに初めてリセッションという呼び方をするわけでございますが、大統領経済諮問委員会のボスキン・ドクターは、十二月に、プロバブリーという言葉を使いながら、リセッションに入ったであろう、そしてグリーンスパンさん、連邦準備制度の議長は、一月に入りましてから、リセッション、同時に大統領もリセッションという認識を示されました。ただ、これは非常にマイルドなものである、こう彼らが言っておりまして、その言い方は第四・四半期、十―十二月はマイナスの二・一でございますけれども、その後の一―三月、まだ終わっておりませんのでわかりませんが、マイナス二・一よりも少ないという見通しが向こうの方では見えておりまして、大体ことしの夏、ドクター・テーラーというのが、ボスキンの次の方でございますが、東京にお見えになりまして私懇談いたしましたときに、彼は、アーリーサマー、こう言っておりましたが、六月ごろにはピックアップするであろう。ですから、きょう出ました、きょう私どもが入手いたしました予算教書におきましても、今お話しのようにこの一年はマイナス〇・三でございますけれども、その次の年は彼らはプラスの三・一%という経済見通しを立てているところでございまして、アメリカの景気が直ちに日本の景気の足を引っ張って急速に変えていくということはまずなかろうかと、このように見ているわけであります。  なお、全体を通じまして為替の状況が、こういう事態にもかかわらず、きょうも一ドル百三十円でございます。このこと自身が日本の経済にとりましては、ある意味におきまして大変いい兆候ではないか、このように思っておりますので、目下のところ経済見通しは、今後の湾岸の展開その他を見て注意深く考えていかなければならないとは思いますけれども、直ちに改定するという考え方はございません。
  93. 二見伸明

    二見委員 見通しの問題をここでいろいろ議論しても、これは水かけ論みたいな話であります。しかし、戦争長期化して先行きが不透明になりますと、私は消費生活も抑制ぎみになってくるだろうと思うし、企業も設備投資を控えてくるだろうと思います。三和総研では、湾岸戦争長期化の場合、実質経済成長率は一・一ポイント下がって二・五%ぐらいになるだろうという民間の予測もあります。今この時点で経企庁長官は細かい議論はできないし断定的なことは言えないと思うけれども、しかし、そうした危険をはらんでいる今度の戦争だという認識だけはしていただかなければならぬと思う。  今物価のお話が出ましたけれども、物価は、例えば今度の経済見通しでは二・四%ですね。しかし、東京区部では一月は四・二%です。物価はかなり私は厳しく見ていかなければならないのではないか。果たして二・四という政府見通しどおりにおさまるかどうかということも私はこれは大変疑問視をいたしておりますが、その点について経企庁長官は全く不安を感じないでいるのか。確かに石油税の二円四銭は、四分の一は電力です。残りの四分の三はいろんなところに吸収されてしまって、ストレートに例えばガソリンが二円上がるというものじゃないことは私それはわかっている。また、石油自体は変動があるものです、価格自体が。だから二円四銭というのは意外とその中に吸収されてしまうのかもしれない。しかし、東京区部で四・二%消費者物価が上昇したということは、これは九一年度の物価は決して安心はならないんだという一つの私は兆候ではないかと思うけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  94. 越智通雄

    越智国務大臣 お答え申し上げます。  今、まず物価のお話がございました。東京の四・二というのは、これは一月の中旬の、かつ二十三区の数字でございまして、その中に含まれておりますのは暖冬に伴います生鮮野菜のアップと、暖冬に伴いますそうしたいろいろな季節にない状況から起こったものがかなり影響しております。決して心配していないわけじゃございませんけれども、そうしたものを捨象して、かつ全国的な数字でもう一遍よく見てみなきゃいけない。直ちにこれが二・四の見通しを狂わせるものとは私どもは判断いたしておりません。  なお、今石油に関しまして、電力とかガスの問題には吸収の可能性もあろうかと思っておりますけれども、ガソリンそのものに関しましては、かなり、御存じのとおりに、きのうも申し上げましたドバイ物で申し上げますと、紛争の始まる前がバレル十五、六ドル見当でございました。一番のピークが十月の初めで、上旬でございます。約三十ドル、倍に上がっております。そして今日また同じ十五、六ドルベースまで戻ったわけでありますが、その間大変しばしばスタンドには、便乗値上げがいけなければ、原価が下がったのなら下げるということで、いろいろ通産省が御指導いただきまして下がって、変わってきておりますので、二円のコストが上がった分は恐らくこれは転嫁されるのではないか、このように私どもは計算いたしておりますが、いずれにいたしましても物価の動向を心配していないかと言われたら、そんなことはございません。私は大変あいまいな言い方かもしれませんが、交通信号で言えば青ランプがフラッシュしているぐらいの感じで、十分注意しながら運転しなければいけない経済運営ではあるまいか。  なお、付言いたしますと、むしろ世界の情勢が大変に心配なものですから、今国際会議ほかのもので出ております経済企画庁の審議官、次官に次ぐ地位の者でございますが、土曜日に、二日の日に、私は直ちにドイツとアメリカに回るように指令いたしまして、今週末ぐらいに帰国するかと思いますけれども、よく現地の情勢、ドイツの利上げとアメリカの利下げの情勢も聞きますし、また一番最初に御質問になりました長期化した場合にどうなるか、これは全く私どもいろいろな前提を置かなければ計算できないことでございますが、経企庁なりにいろいろな経済効果について検討するよう特別のチームをつくりまして、既に検討を開始さしていただいております。
  95. 二見伸明

    二見委員 物価を考えた場合に石油、政府の思惑どおりいけばリッター二円四銭石油税が高くなるわけです。これが吸収されるという安易な考えではなくて、それが価格にカウントされるという立場で計算してもらわなければ、これは物価問題は議論できないだろうと思います。  ただ、今長官は、生鮮野菜その他が上がったんだとおっしゃいましたけれども、確かに東京区部の場合は生鮮野菜は一・二九ぐらい上がっている。しかし、それと同じように工業製品も一・二九%上がっている。この事実も見逃してはいけないのではないか。暖冬による特異な現象ではなくて、一方では物価を押し上げる基調と言うのかな、そういうものがあるんだということを私はやはり指摘しておかなければならないと思います。  きょうは日銀総裁がお見えになられておりますので若干お尋ねいたしますけれども、その前に、もし政府考えているとおりに、赤字国債と言うと語弊がある、つなぎ国債と言えば正しいのかもしれないけれども、一兆一千九百億円の公債を発行することになる。大蔵大臣に伺いますけれども、これはだれが引き受けて、どんな条件でこれを消化をされる気ですか。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今般の追加支援の財政措置につきまして、石油税、法人税及びたばこ税の一年限りの臨時的増税措置による所要額の確保を図るという考え方を持っておることは御承知のとおりであります。しかし、これらの措置によりまして税収を確保いたしますまでの間、つなぎのための臨時的な短期国債、いわゆるTBでありますが、を発行することによりまして所要の資金調達を行おうと考えております。  こういうふうに考えてまいりますと、やはり迅速かつ円滑に大量の資金が確保、調達されることが必要でありますから、このための資金調達の手段としては、現在発行されておりますTBと同じような内容とさせていただきたい。そして全額市中公募入札の方法によって発行されることが適当であると考えております。  条件につきましては、これは入札でありますので、あらかじめ申し上げることは困難でありますけれども、その発行時点におきます金融情勢などに応じた適正な金利水準になるもの、そのように考えております。  なお、御参考でありますが、一月のTB入札、一月十四日でございましたけれども、平均利回りは六カ月物七・四四三%でありました。
  97. 二見伸明

    二見委員 日銀総裁、伺いますけれども、一兆二千億円近い公債が発行されるわけです。これはまず銀行と証券が引き受けて、それから法人が買うことになるのだろうと私は思います。ディフュージョンインデックスではマイナス二・三という数字が出てまいりまして、民間の資金需要というのはかなり既にタイトになっている、きつくなっております。そうした中で一兆二千億円近い公債が発行されるということは、私は資金需要にどういう影響が出てくるのか、それは国内の金利にどういう形で連動してくると日銀は考えているのか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  98. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えします。  今委員がおっしゃったとおり、今度の一兆二千億は追加発行でございますから、当然やはり国債の需給、ひいては金利に何がしかの影響はあると思います。  ただ、実際にどういう影響が出るのかは、発行したときのマーケットの地合い、それからそのときの日銀の日々の金融調節の態度その他によって変わりますので、ここで定量的に幾ら金利に影響があるかということは申し上げることができません。  それから第二に、この入札で発行されたTBは、恐らくマーケットが持っておりまして、一般の企業その他には、まあ一部は行くかもしれませんが、行かないかと思いますので、そちらの方には余り関係はないのではないかと思います。  それから、なお一言つけ加えますと、現在、TBに対するマーケットのニーズは非常に強うございますので、この程度の発行であればその消化にはさほど難しいことはないのではないか、そういうふうに考えております。
  99. 二見伸明

    二見委員 この際ですから、日銀総裁に二、三さらに伺いたいと思いますけれども、ドイツは〇・五%金利引き上げましたですね。アメリカは逆に〇・五%下げました。我が国は今現在六%の公定歩合が続いているわけでありますけれども、これが続いた場合に、ドルが今百三十円ぐらいですね、それがさらに百二十九円とか百二十八円とかというふうに、ドルが下がる、円が高くなるということは、いろいろな条件はあるだろうけれども、そこいら辺については、そういうことについては日銀としてはどういうふうに見ておられますか。
  100. 三重野康

    ○三重野参考人 委員御承知のとおり、為替相場は、国際収支を含みますいわゆるファンダメンタルズが一番もとになりまして、その上で金利差であるとか政治情勢、軍事情勢その他が材料になって形成されるわけでございます。委員が御指摘になりましたように、先日のアメリカの利下げ、ドイツの利上げというのは、その筋道から申しますとドルが安くなるのは当然と言っていいかと思います。  実際にはどうかと申しますと、確かにドルは安くなりましたけれども湾岸情勢の不透明性、これはドルが強くなる方に、それからソ連情勢の不透明性、これはマルクが弱くなる方に作用します。そういったこともございまして、ドルはマルクに対しては多少弱くなりましたが、円については、先生御指摘のとおり一円ほど円高になってほとんど変わってございません。そういうふうに今の相場観というのは比較的交錯しておりまして、一方的に大きく動くという状態にはなってはおりません。これは現在のところでございます。  今後でございますけれども、私が私の立場でどうなるかということはなかなか申し上げにくいのですが、いずれにしろ、今後の為替相場については十分注意をしてまいりまして、もしそれが非常にぐあいの悪いこと、例えばドルの急落ということは世界の経済情勢に大きな悪影響を及ぼしますから、そういう場合には、先日発表されましたG7のコミュニケの一番最後に書いてございますが、国際協調のもとに適時適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  101. 二見伸明

    二見委員 それともう一つ、総裁、G7では経済政策の協調や世界的な金利の低下、これを共同声明でうたいましたですね。我が国では、既に経済界からは、もう公定歩合下げてくれというかなり強い意向があります。と同時に一方では、インフレを懸念して、今ここでは公定歩合を下げるべきではないという議論もある。また、長期と短期の金利を見ると逆転しておりますね。この逆転をどう見るかということもある。日銀としては、これは解散と公定歩合の上げ下げは絶対言っちゃいけないことになっているのはわかる、うそをついてもいいことになっているのはわかるけれども、これは、こういうことは日銀としてはどういうふうに念頭に置いておられますか。  また、さらに伺いますけれども、春闘の結果というのは、金利を、六%の金利水準を考える上で何らかの参考材料にはなるものですか。
  102. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えいたします。  まず第一に、長短金利の逆転、これはやはり金利が自由化された場合にはしばしば起きることでございまして、特にそれがおかしいから直さなきゃならないということはないと思います。  それは別にしまして、私どもの金融政策のスタンスを申し上げますと、まず現状の景気判断でございます。これは、先ほど委員が御指摘になりましたように、国内景気は、確かに景気減速を示す指標がぼつぼつ出ておりますが、まだ全体としては個人消費、設備投資も強くて堅調であろうという判断をしております。これはさっき企画庁長官も申されましたが、つい先日の私どもの全国の支店長会議の支店長の報告によってもある程度裏づけられるのではないかと考えております。  先行きについてでございますが、これはもちろん湾岸戦争がどうなるかによって非常に変わりますので幅を持って考えていかなければなりませんが、足元の経済の腰の強さから見まして、直ちに大きく落ち込むことは、その可能性は少ない、こういうふうに判断をしております。  物価でございますが、これも先ほどから先生しばしば御指摘のように、確かに最近じりじりと上がっております。国内の卸売物価は、湾岸危機が始まる前、〇・五%ぐらい、前年比が、今は二%の半ばになっておりますし、消費者物価も湾岸危機の始まる直前は二%台であったものが、例えば東京については四・二%になったことは先生が御指摘のとおりでございまして、これは九年ぶりでございます。ただ、私どもは、幸いにして全体の物価観、企業とか消費者の持つ物価観は落ちついておりますので、その点は幸いだと思っておりますが、しかし、いかんせんこの四年間五%成長が続いておりますので、製品の需給、人手不足というのはかなりタイトになっております。かつ、石油事情も一時四十ドルまで上がって、今は二十一ドル台で落ちついておりますが、これも湾岸戦争の推移いかんによってはどうなるかわかりませんし、いずれにしろ現在は物価からはなかなか目が離せない状態だ、こういうふうに考えております。  そういうことでございますので、私どもは現在の金融政策のスタンスとしましては、内外、これはもちろん湾岸戦争の推移も含めてでありますが、内外の情勢を注視しながら、今まで金利を上げてきた政策効果が徐々に浸透しておりますので、その浸透の効果を見詰めてまいりたい、こういうふうに考えております。  もう一つ、先生が最後に御質問になりました春闘の関係でございますが、これは、春闘は私の立場からあれこれ申し上げることはできませんし、またそれぞれの経済情勢のもとで労使が自主的にお決めになることだというふうに思っておりますけれども、いずれにしろ、もし、まあ今はその可能性は少ないのですが、もし消費者物価が非常に高騰し、それが賃金にはね返り、もしそれで賃金と物価の悪循環が起きるようになれば困るということは思います。しかしこれが今すぐに起きるというふうには考えておりませんが、そういった点も頭に入れて、春闘は注目してまいりたい、こういうふうに考えております。
  103. 二見伸明

    二見委員 総裁、ありがとうございました。  いずれにいたしましても、総理、今回の九十億ドルにしろあるいは湾岸戦争それ自体にしろ、日本経済にいろんな形で影響が出てくる。日本は九十億ドル、もし国会が九十億ドルの支援を決めれば、それは言うなれば一種の贈与だ。ドイツも五十五億ドルを資金援助する。まああそこにどれだけのお金が、四百五十億ドルなのかあるいはもっと多いのか少ないのか、これは決算をしてみなきゃわからぬけれども、あそこにたくさんの資金が集まってくる。しかし、それは物をつくる資金ではない。  じゃ日本はどうかというと、例えば八八年には海外に投資したいわゆる長期資本収支というのかな、これは千三百九億ドルだ。八九年にはこれが八百三十億ドルぐらいに減っているはずです。日本海外の資金需要にこたえられるのは、八八年よりも八九年の方が少なくなっている。恐らく九〇年度はあるいはもっと少ないかもしれぬ、わからぬけれどもね。と同時に、それは日本だけではない。ドイツだって同じように、開発途上国やいろんなところで金が欲しい金が欲しいというそのことにこたえられないような環境になりつつある。日本もこたえられないだろう。ドイツだって、東ドイツを抱えて、しかも五十五億ドルも湾岸に出していて、そうそうほかの国のところまで手は回らないだろう。  ところが、先進国に対する資金需要というのは、ソ連も含めてかなりこれからふえてくるんだろう。戦後の、この戦争もいつまでも続くわけじゃない、必ず終わるんだ、終わった後の復興の金もある。ということになると、これは世界的な資金不足、これに拍車をかけることにもなりかねないのかね、この戦争は。それは金利上昇にもなりかねないのかな。国内や国際経済にもいろいろなダメージを与えてくるのではないか、こういうふうに考えておりますが、大変これはマクロな言い方で、またマクロの御答弁をお願いするわけですけれども総理、どういうふうに御判断されますか、この辺は。
  104. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大きな方向性で考えますと、今の平和回復活動が終わったとしても、その後に経済の復興とかあるいは新しい秩序づくりとか、また予想できないように、原油の戦略的な流出の結果が、まさに我々が初めて体験する規模と大きさの問題ですから、これに対する対応もございましょうし、同時に、自由と民主主義の価値を求めて動こうとする東欧の経済改革にもおっしゃるように資金需要が随分出てくると思っております。そういったものにできるだけこたえていかなきゃならぬのは我が国の立場として当然のことでありますが、そのためにも、それらのことに協力できるような資金というものに対する考え方は常に十分念頭に置きながら、あらゆる政策に取り組んでいかなきゃならぬことであると私は考えております。お考えはよく理解できます。
  105. 二見伸明

    二見委員 湾岸戦争というのは、経済の面でもはかり知れない傷跡を残すわけです。ですから私たちは、一日も早い停戦、一日も早い対話、これがどうしても必要だと思うし、もちろんそのためには、まずイラククウェートから撤退を表明することが恐らく前提にはなるでありましょうけれども、そうしたチャンスというものを絶えずうかがって探りながら、停戦への、即時対話へのチャンスというものをつくり上げていかなきゃならないと思います。  それはそれとして、私はもう一つ、これは経済の面とは別なんだけれども、やはり湾岸戦争というのは恐ろしいなと思いながらお尋ねいたしますけれどもイラク湾岸戦争において化学兵器を使用するのではないかという懸念や不安が高まっています。英国の報道によれば、フセイン大統領が前線部隊に化学兵器の使用を認めた、こういう報道もある。もし化学兵器をイラクが使用するようなことがあったならば、特にそれが多国籍軍だけではなくてイスラエルに対して使用されるようなことになったならば、これはもう核による報復ということだって予想されるわけであります。これはチェイニー・アメリカ国防長官もそうしたことを示唆している。これはもう大変恐ろしい事態としか言わざるを得ません。  私は、総理がこのイラクの化学兵器の使用の可能性についてどういう認識をされているのか、どういうふうにお考えになっているのか、まず伺いたいと思います。
  106. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 化学兵器がイラクにあるということとイラン・イラク戦争のときに使われたという報道を、私は今御質問を聞きながら非常につらい気持ちで思い出しました。絶対に使われてはならぬものであるし、またそれを使ってはいけないということは多くの世論だと思います。これにイラクのフセイン大統領がこたえて、化学兵器を使っては絶対ならぬということも私は強く主張したいのですけれども、それについては正直なところ極めて不透明であります。私は、使ってはならぬということと使うことは国際法にも厳しく禁止されておる問題であるということを強く述べたいと思います。
  107. 中山太郎

    ○中山国務大臣 イラクが化学兵器についてどのような考え方を持っているかということにつきましては、総理からもお話しのように、昨日あたりの報道によりましても、化学兵器を使用する準備が行われているとも聞いておりますけれども、このようなことがあっては相ならないと私ども考えておりますし、化学兵器の早期廃絶を求めている日本政府としては、フセイン大統領が国際世論にこたえるということの判断をぜひされるように期待をするものであります。
  108. 二見伸明

    二見委員 総理どうですか、これは日本立場としてイラクに言えるのかどうかわからないけれどもイラクに対して、クウェートの侵攻それ自体がまず国際法違反ですね、その国際法違反の上にさらに化学兵器の使用という国際法違反を積み重ねることがないようにイラクに対して厳しい申し入れなりなんなりをできるのかどうか、それをまず総理に伺いたいのと、もう一つは、戦況いかんによってはアメリカの核兵器の使用という可能性も、私は全く否定できないのではないか。多国籍軍に対して化学兵器を使ってくる、イスラエルじゃなくて多国籍軍に対して使ってくる場合に、アメリカがその報復措置として核を使うことだって戦術上あり得るわけです。  我が国は世界でたった一つの被爆国である。化学兵器を使いあるいは核兵器を使うことになったならば、これは大変なことになる。私は、戦争の是非を超えて、アメリカに核兵器だけはどんなことがあっても使うな、このことだけは強く要請をしてもらいたい。強い決意でもってこれはぜひとも言っていただきたいと思います。  また、安保理事会の六七八決議武力行使は一応是認しているけれども、果たして核兵器まであそこでは是認しているんだろうか。このことについても、日本政府としてはきっちりした物の言い方をしなければならないと思いますけれども、その点についての総理あるいは外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 化学兵器を絶対に使ってもらいたくないということを、伝えられるあらゆる方法で私は伝えたいと思います。ところが、それよりも、国際法違反であろうが何であろうがクウェートという国を武力で侵略、侵攻した国です。五カ月半にわたる国際的ないろいろな問題、それについて何の反省も示さなかった国であります。また、先ほど言ったように原油まで、地球の汚染というかつて経験したことのない問題まで行うようなところもあります。私は、ですから御質問の最初から非常につらい、暗い気持ちで御質問を聞きながらいろいろなことを思い出したと言いましたけれども、それは我が国の立場としては、絶対してはならぬことでありますから、どのようなことが行われるのか、どうするのか、それについては、私がそこでいろいろと御質問を聞きながら思ったことを今率直に申し上げておるところであります。  そして核についても、我が国は核被爆国であります。核も二度と使われてはならぬという基本的な態度、立場できょうまで物を言ってまいりました。イラククウェートに対して行ったこと、またイスラエルというその問題とは直接関係ないところにいろいろミサイルを撃ち込むようなこと、そういったようなことを含めて今度のこの問題が一日も早くおさまるように、私はその問題も含めていろいろな手だてを尽くしていきたいと、こう考えます。
  110. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員から御指摘のように、安全保障理事会の決議あるいは議論の中では兵器の使用の制限を決めていないわけでございまして、このようなことで私どもは、この核兵器の使用あるいは化学兵器の使用については重大な関心と、また関係国に対して強い、そのような兵器の使用を禁止するような、使わないような要請をいたしたいと考えております。二度の被爆国であります、総理も申しましたけれども日本としては、核兵器がこの地上の戦闘において使われないということを心から期待をするものであります。
  111. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、九十億ドルの支援について我が党で今議論している最中であることは、先ほど市川委員質問の中でも明らかになったわけであります。ただ、これはある一社の新聞だけを取り上げて言うのは公平を欠くのかなと思うけれども、たまたま目の前にあった新聞の社説を読んでみました。朝日新聞一月二十八日付の社説では、「湾岸戦争が不幸にも始まった以上、戦禍をできるだけ低位にとどめ一日も早く平和を回復するために、わが国が応分のコストを負担することは必要だと考える。」そしてさらに行をあけて、「わが国の支援が戦争と戦禍の一層の拡大に直結するようでは、支援の趣旨に反する。」と朝日新聞は書いている。これは私は素直な、率直な国民の感情だと思うのです。  この九十億ドルについては、党内でいろいろなまさに真剣な議論をしています。戦後四十五年間初めての経験。ですから、いろいろな議論が出て、行け行けどんどんだ、あるいは何でも反対、単純に割り切れるものではないから、本気になって議論をしている真っ最中だ。ただ、そこでやはりいろいろな形で疑問に思ってくるのは、この九十億ドルを例えば政府が支援したとする、そうするとそれがアメリカに対して、この戦争に関して大きな発言権を持つことになるのかどうか。今我我が欲しいのは、イラククウェートからの撤退の意思を表明して停戦することです。そのためにはいろいろな局面がある。イランのラフサンジャニ大統領が何か提案するというニュースもあった。これから各国が戦争をやめるためにいろんな提案、いろんな局面が出てくるんだろうと思う。そうした局面を日本は見ながら、これは日本はあそこで武力行使しているわけじゃないのだから、やはり停戦のきっかけをつかんでいく、イラククウェート撤退が第一義的ではあるけれども、そこにアメリカに対してもそうした停戦への働きかけ、とことんまで追い詰めるんではない、戦線を拡大するんではない、あくまでも何らかのチャンスを見出してこれが撤退できるように、そして中東に新たなる平和が戻ってくるように、そうした意味での物を言える大きな発言権を持つことができるのかどうか。停戦へのイニシアチブをとれるのか、あるいはただ金を出すだけなのか、ここら辺も私は国民の非常に疑問に思っている点だと思う。金は出しました、結局この戦争には日本は何のイニシアチブもとれませんでした、こんな情けいことはない。私は総理大臣の決意も伺いたいと思います。
  112. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 平和回復を一日も早く願って拠金をするということは、これは戦争と戦火の拡大を願ってやっておるのでは決してありません。また同時に、二十八の多国籍の人々がやむにやまれぬ最後の措置として武力行使に入っておるのも、国連決議の最初の、クウェートからの撤退ということをまずきちっと決断して行えということがその目的になっておるわけでありますし、また、先日の米ソの共同声明をお読みいただいても、そこにはクウェートからの撤退ということがきちっと出てきておって、それが行われることが今度のこの紛争解決にとっての大きな原則的な入り口になることは、委員も御承知のとおりでございます。日本はそのことに関して、二十八の国の中へ日本も力でもって参加することはいたしておりません。したがって、日本は一体どうしておるのだ、アメリカやヨーロッパのいろいろなマスコミや新聞の報道を私も再三読んでおります。けれども日本には日本のできる限りのことを議論をしてできるだけの御協力をするということで決めておりますのが今回の支援策であります。  これについては、日本は、その後のことについても、あるいは停戦をぜひ早くやりたいということについても、参加をしてそして物を言うということ、戦後のいろいろな平和解決のためには日本も力をかしていくということ、協力をしていくということ、それは限られた分野ではありますけれども武力行使以外の面ではありますけれども、できるだけしなければならないし、していくことは、新しい国際秩序づくりに積極的に日本も参加をして平和と安定のために貢献をする国でありたいとの願いがあるからであります。その決意でございます。
  113. 二見伸明

    二見委員 時間が迫ってまいりましたので、質問はかえたいと思います。  これは企業の社会的責任という問題で、労働大臣、お尋ねいたしますけれども、経済が発展すれば暮らしは豊かになる、ゆとりも生まれる、企業が発展すれば暮らしは楽になると、日本人は夢中になって戦後四十五年間走り続けてきた。その結果、確かに車もある、ウサギ小屋に不満を持たなければ着る物にも食べる物にも困らない、飽食の時代になった。じゃ、それではゆとりはあるのかというと、そうではない。長時間労働、長時間通勤、単身赴任、そして一番極端な例が過労死です。豊かになっているはずにもかかわらず、現実では生活は破壊されている。これは企業の責任であると同時に政治の問題でもあると私は思っております。  長時間労働について伺いますけれども一つは長時間労働。日本では、労働時間の統計といいますと、ドイツやアメリカとは違う統計の仕方をする。例えば、日本では、朝九時から五時まで働くと、十二時から一時の間は食事の時間だから休憩時間で、この場合は八時間ですね。会社に拘束されている時間は九時間だけれども日本の労働統計では、これは八時間とします。ドイツやヨーロッパでは、これは九時間と見ます。有給がある、五日間休んだ、そうすると、それは日本は労働時間の数から減らします。しかし、ドイツではカウントをいたしております。ですから、実際に出てくる数字というのは、日本はお昼休みの休憩を除いた、一時間を除く、あるいは有給をとれば有給を除いた数が実労働時間、ヨーロッパではそれも全部入れて労働時間。そこに統計の違いがあります。しかし、そうした統計の違いを日本並みに同じようにカウントをして、日本と同じようにカウントをした場合どうなるかというと、日本では、これは一九八九年、労働省からいただいた資料ですからね、二千百五十九時間、ドイツでは千六百三十八時間、五百二十一時間違います。日本とアメリカは、アメリカが千九百五十七時間ですから二百二時間違います。日本とドイツでは約三カ月間違う。アメリカとでは一カ月間違う。それだけ日本人は夢中になって働いている。しかも、働いて帰るところも往復三時間も四時間もかかって帰る。労働条件以外にもこんな過酷な条件のもとで働いている日本人というのは先進国の中でも珍しいだろうと思う。この点について労働大臣はどうする気ですか、これは。  私は時間がないから端的に言う。私たちの主張を申し上げますけれども、労働基準法を改正する必要があると思います。年次休暇を完全取得するように義務づける。あるいは年次休暇をサラリーマンはどうやってとっているかというと、病気になったから、風邪を引いたからといって年次休暇を使っている。リフレッシュするために年次休暇を使っているんじゃない。病欠、病気で休まなければならないというのは別に休暇制度をつくればいい。リフレッシュするための年次休暇と病気で休むための休暇とこれは分ける必要がある。そうした労働基準法の改正に私は取り組むべきだと思いますけれども、その点についてはいかがですか。
  114. 小里貞利

    ○小里国務大臣 時間がないようでございますから、簡潔に要点を整理してお答え申し上げたいと思います。  議員も御承知のとおり、六十三年の五月に、我が国の経済大国という背景のもと、豊かな、ゆとりある勤労者の生活の位置づけはいかにあるべきか、言いかえますと、「世界とともに生きる日本」経済運営五カ年計画におきまして、勤労者のただいま御指摘の労働時間等についての位置づけもなされております。御案内のとおり、一年間総労働時間一千八百時間ですよ、週に四十時間だ、あるいは、先生もただいまお触れになりましたように完全週休二日制、この辺を一つの目標にしていこうじゃないかということで、国民各界各層の協力をいただきまして鋭意努力中でございます。さらにまた、六十三年、労基法を改正いたしまして、それぞれの協力をいただきまして具体的に、必ずしも満足はいたしておりませんけれども、労働時間の短縮は成果を上げてまいっておることも御承知のとおりでございます。  これから具体的に、当面労働省としてはそれらの問題解決のためにどのように考えておるか、これを一言で申し上げますと、ただいまも先生若干触れていただきましたが、まず第一に完全週休二日制を実施するべきであろう、この方向でございます。現在は、週四十四時間に政令を改正いたしまして四月から実施する段取りでございますが、これは隔週二日制でございますから週を隔たっての週休二日制でございますが、これをおっしゃるように完全週休二日制に持っていこう。あるいは年次休暇を拡大する必要があるというお話もございましたが、そのとおりでございます。あるいはまた、私どもは連続休暇を拡大することも必要であるかな。あるいはまた、そのほか、法定外時間と申し上げておりますけれども、いわゆる時間外労働、超過時間労働、これも短縮に努めていくべきではないか。これらの具体的な項目を掲げまして、関係機関、団体、各層、あるいは企業、事業主の協力をいただきながら、先生御指摘の方向で目下努力をいたしておるところでございまして、御理解をいただきますと同時に御協力願いたいと思います。  以上でございます。
  115. 二見伸明

    二見委員 労働時間の中に昼休みの休暇をカウントしないとか、そういうこそくなことじゃなくて、ドイツと同じように休憩時間もカウントするような、そうした形でもって労働時間の短縮をよろしくやっていただきたいと思う。  もう一つ、過労死なんですけれども、これは確かに深刻な問題です。八七年には、労災に申請されたのが四百九十九件、認定されたのが二十一件。八八年は六百七十六件で、認定されたのが二十九件。八九年は七百七十七件で、三十件認定です。しかし、過労死一一〇番には千六百件の電話が入っている。ところが、このように非常に過労死に対する認定が低い。これはなぜ厳しいかというと、例えば過労死認定の判断材料とされている昭和六十二年十月二十六日の労働基準局長通達、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」については、発病前一週間以内に日常業務に比べて特に過重な業務に就労したか、一週間前、冗談じゃない。過労死というのは一週間の労働が厳しかったからじゃない。三月も半年もあるいは一年もストレスのたまるきついきつい仕事についていた結果、過労死なんです。一週間だなんて、こんな甘い基準でもって過労死が防げますか。これはぜひとも改めてもらいたい。  と同時に、過労死というのは、考えてみれば企業の人為的災害でしょう。企業が過労死の問題をみんな協力してない、これは。取材してもみんな嫌がって。私は、過労死は企業の責任が非常に大きいので、労災に認定され国が支払った遺族補償年金の一部を企業に負担させてもいいんではないかと思う。大体過労死なんて言葉は日本だけなんだから。ヨーロッパにはありゃしない、こんな言葉は。こんな言葉が日本の字引にあるようでは恥ずかしい。私はこの認定基準はきちんとやってもらいたい。一週間なんて、こんなばかな認定基準はあるものですか。三月とか半年とかそういう長い時間でもって過労であったかどうか、そういう私は基準改定をぜひともしていただきたい。そうしなければ日本の国は本当の意味での豊かな国にはならぬと私は思います。これは労働大臣にお伺いをし、そして最後に総理大臣にこの点について御見解を承って、ちょうど時間となるようであります。
  116. 小里貞利

    ○小里国務大臣 御指摘のように、過労死の問題は極めてゆゆしき大きな問題であると注目をいたしております。先生御指摘のように、また要求も述べながら、中でも一週間前後にわたるいわゆる認定基準云々のお話もございましたが、それらの問題も重要な参考にしながらこれから検討を、先ほど申し上げました労働時間の短縮問題等とも十分絡ませながら検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 資源のない我が国が、戦後きょうまで皆さんの働きによってこの国の基盤を支えてきた。そのために勤労時間というものが諸外国と比べて日本は非常に長いということは、るる御指摘になったとおりであろうと私は思っております。そして、そのために死に至る過労死の問題は、これはもうぜひとも解消しなければならぬ問題でありますから、労働時間の短縮の問題については今後とも鋭意努力を続けていかなければならない問題である、このように受けとめております。
  118. 二見伸明

    二見委員 終わります。
  119. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて市川君、二見君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  120. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨日、我が党の藤田議員が九十億ドル問題並びに自衛隊海外派遣問題をめぐりまして質疑をいたしましたが、まだ政府の方ではその問題に対してきちんとした回答が出ていないというふうに私は判断をいたしまして、藤田さんの質問を受け、同時に公明党市川さんの御提起を受けまして、まず最初に、自衛隊の派遣問題から入りたいと思います。  問題の自衛隊自衛隊機C130は、小牧基地で態勢を整えていつでも飛べる態勢になっているやに報道されておりますが、五機のうち二機は現地とか一機は我が国とかその他とか、そういう態勢ができているやに報道されておりますが、実態はどうなっていますか。
  121. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊輸送機の派遣につきましては、政令の措置はいたしました。そして、国際機関からの要望がありました場合に、それにこたえて実施できるような態勢を整えておるところでございます。その態勢を整えるという意味は、想定される現地の事情等を調べる、十分に掌握することがございますし、また、国内におきまして、実際に輸送に当たる場合に、その機体とかあるいは人員等につきまして所要の備えをするとか、こういう面もあるわけでございます。  機数のお話がございましたけれども、現在自衛隊ではC130は十五機保有しておりますけれども、常時、何といいますか、点検というようなことで、実動は十三機ということになります。もとよりこれは国内でのいろいろな任務に必要なわけでございますので、そのあたりを極力絞ってまいりまして、何とか今回想定される任務に充当できるのは最大五機かなと思っておりますけれども、その五機の中でも常に予備というものが要る。そうなりますと、実動というのは最大限四機かな。しかも、こういった航空機というのは、一定時間飛びますと整備その他が必要でございますので、常時そういうわけにはまいりません。交代などを考えますと、実際に稼働するのは場合によっては二機、それが重なります場合に最大四機になるかな、こんなことでございます。
  122. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 飛行機が飛ぶときはだれが最高責任者として押す。総理大臣じゃありませんか。
  123. 池田行彦

    ○池田国務大臣 自衛隊の最高司令官は内閣総理大臣になっておりますけれども防衛庁設置法あるいは自衛隊法におきまして、防衛庁長官自衛隊の指揮に当たることになっております。
  124. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だれがボタンを押すのですか。だれがいつ飛ぶということを指示するのですか。
  125. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ボタンを押すという質問の御趣旨が必ずしも明確にわからないわけでございますけれども、実際に今想定されております任務につきますためにはいろんな段階の、何といいましょうか、前提と申しましょうか、あるいはその手順がございます。  まず、何と申しましても、今回の湾岸の危機的な状況に起因してかなり多数の避難民が発生する、そしてその避難民を輸送するということが必要である、しかもその避難民の輸送に当たる輸送手段といたしましていろんなものが想定されるわけでございますが、そういった避難民の輸送の任に当たるということで、国際連合の委任を受けてこの任に当たっておりますIOM、国際移住機構というのがいろいろ判断してまいりまして、こういった、現実にここで発生した避難民についてはどこの場所へどういう輸送手段で運んだら適当であろう、そういう判断がまずあるわけでございますね。  そういうものがございましてから、具体的な要請がある。民間、軍用を含めた航空機が提供できるかどうかという一般的な要請は既に一月十七日に来ているわけでございますけれども、さらに具体的に発生した事態に対応してどういう輸送手段が欲しいという要請があるわけでございます。  そういうことが日本政府に対しまして、これは所管は外務省になるんでございましょうけれども、そこに要請がある、そうしてまた、御承知のとおり民間航空機によることができないというような、そういう状況も踏まえて、必要に応じ自衛隊がということになるわけでございますから、そういった、まず国際連合の委任を受けてこの任に当たっているIOMからの要請という、具体的な要請ということが一つ手順として必要でございます。その後日本政府の中で、また国の機関からの依頼を受けて自衛隊はその任務に当たることになるわけです、百条の五によりますと。その依頼という行為もこれは必要になると思います。これは外務大臣の方から私どもの方にあるんだと思います。そして、しかる後に具体的な任務に当たるということになってまいります。
  126. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 僕の聞いているのは、先ほどあなたのお答えにありましたように、要請があればという前提ですから、その要請があればまずどこに一番先に来ますか。まず、今の話だと外務大臣ですね。そして、その外務大臣は、さあ飛行機をいよいよ飛ばさざるを得なくなった、飛ばそうということになりますと、閣議を開くのですか。防衛庁長官の判断でやるのですか。総理大臣の判断でやるのですか。いずれですか。
  127. 中山太郎

    ○中山国務大臣 まず今お尋ねの、難民が多数発生するという事態ができますと、国連の委託を受けたIOM、国際難民機関から連絡が来るわけでありますが、これらの具体的な要請を受けたが、民間機の活用をまず優先的に考える、こういうことが第一前提であります。その民間機の活用ができないという状況に立ち至った場合にのみ自衛隊の輸送機を実際に派遣をするかどうかという問題が起こってくるわけでありまして、湾岸危機対策本部、安全保障会議及び閣議に対して外務大臣が報告をするという手続がまずとられるわけであります。
  128. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 外務大臣の報告を安全保障会議その他で聞いた上で閣議が開かれて、そして防衛庁長官からの提案があって、内閣の責任において結果として飛ぶ、そういうことになるんじゃないですか。
  129. 池田行彦

    ○池田国務大臣 ただいま外務大臣から御説明がございましたように、そのような情勢になりました場合に、安保会議あるいは閣議等の手順を踏みまして、私の方から提案という話がございましたけれども、むしろ要請をIOMから受けますのは、日本政府といたしましては外務省でございますので、恐らくその段階では外務省の方から御提議があるんではないかと思います。そして、安保会議あるいは閣議等の手順を踏みました上で外務大臣から私どもの方に御依頼をちょうだいできるんじゃないか、そういうことになろうかと存じます。
  130. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 総理大臣はその際に、全体の総責任者として理解してよろしいですね。
  131. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 対策本部も安保会議も閣議も私は責任者でありますから、当然、私の責任において最終的には処理をされることになると思いますが、手続としては、今申し上げたように、外務大臣から防衛庁長官への要請になるということです。
  132. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昨日、我が党の藤田さんの質問に対しまして、外務省の方の国連局長からの回答で、IOMからの要請を受けたということを聞きましたが、いつ受けたのか、まずこれが第一。二番目。その要請を受けたのがきのうはたしか三十三カ国で、回答したのは五カ国と言っていましたが、そう確認してよろしいか、この二つをまず聞きます。
  133. 中山太郎

    ○中山国務大臣 一月十七日のIOMの事務局長の書簡がございます。これは極めて重要な問題でございますから、一応読ませていただきます。「国連は、再び、ペルシャ湾地域における」……。お持ちですか。それじゃ、お持ちの資料、十七日にいわゆるあったわけであります。
  134. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 何カ国送って、返事は何ぼあったんですか。
  135. 中山太郎

    ○中山国務大臣 細目につきましては、政府委員から答弁をさせていただきます。
  136. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  昨日申し上げましたとおり、国際連合の委任を受けまして避難民移送を担当しております国際移住機構、IOMと略称されておりますが、そのIOMの事務局長の名前で十七日に各国に書簡が発出されておりまして、東京の事務所、IOMの事務所によりますと、三十三カ国に発出しておるというふうに聞いてございます。  このIOMのアピール、これは昨日も簡単に御説明申し上げましたが、いざというときに、いろんな国がどのくらいの飛行機と船舶を出せるかということを検討し、かつそういう報告をしてほしいということを要請したものでございまして、これに対して各国は今のところ、私たちが二十八日の段階でIOMに問い合わせましたところ、フランスそれからアルゼンチンそれからスイス、韓国が政府として航空機を提供する用意があるということを言ってきていると聞いております。  なお、IOMはこのように難民移送ということを専門にしておりますものですから、別途民間航空会社と非常に関係が深いわけでございまして、いろいろな、アメリカそれからスイス、スリランカ、カナダといったような民間会社がそれぞれ手を挙げている、用意があるということを言ってきている模様でございます。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 我が国の政府としてこの要請に答えた、回答した日はいつですか。
  138. 丹波實

    ○丹波政府委員 簡単に御説明申し上げます。  一月の十七日にそのような書簡を受け取りまして、一月の十七日に御承知のとおり総理談話が発表されまして、その中で総理が、被災民――当時は被災民という言葉ですが、被災民の移送については、人道立場から民間航空会社に要請するとともに、いろいろな場合を想定し、必要に応じ自衛隊輸送機の使用を検討する旨総理発言されたわけでございますので、私たちは一月の十九日に、民間航空機については、政府としては、もしIOMから具体的な依願があった場合には、政府としては民間航空機が行ってくれるように要請する用意がある、ただ、自衛隊の輸送機の問題につきましては、この言葉そのもの、政府としては検討することになりましたということを情報として言ったということでございます。しかし、民間航空機については日本政府としては説得する用意がある、そういうふうに伝えたということでございます。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、一月十九日に政府としてはIOMに回答したということですね。では、回答した文書を提出してください。
  140. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは、ジュネーブに我が方の代表部がございますが、そのジュネーブの代表部とIOMの責任者とが口頭でやりとりしております。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 回答せよという要請に遭って、それで回答するのは口頭でやったのですか。正規の文書は出していないのですね、日本は。よその国はどうしましたか。
  142. 丹波實

    ○丹波政府委員 口頭でやりとりしております。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは情報を歓迎すると言っているのですよ。「民間及び軍用機の調査を開始した。」それは各国に向けて。そして、シリア、エジプト、スーダンへの海上による大規模な避難が必要となった場合に、諸政府が船舶を供与できるか否かも含めて情報を歓迎すると言って、そして、このIOMの中にインプットしておきたいので、そのデータの収集と集中化を開始することは重要なことだと信ずる、こう言って、そして「国際移住機構に民間機または軍用機の輸送力を提供する可能性を検討するよう、また、もし可能であれば、提供可能な輸送力及び要請を実施するまでに要する準備期間についての詳細に関する情報を提供するよう、貴政府要請したい。」こういう文書ですよ。  したがって、外務省としては、民間機または軍用機の輸送力を提供する可能性を検討して、これを報告したんですね。これはできると言っているんだな。それで、可能であれば、軍用機の場合は今ちょっとクレームついていますが、しかし十九日にこれを受けて総理は談話を発表して、自衛隊の派遣について検討するという談話を発表したのが十九日が起点だということになりますね。
  144. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生の御質問取り違えたら申しわけございませんけれども民間機につきましては、先ほど申し上げましたように、一月十九日に、一般的に政府としては民間会社を説得して避難民の輸送ということで協力する用意ありということを連絡いたしました。  先生が現在読まれたパーセル書簡のこの後ろの方は、確かにお読みになられたとおりですが、どの程度の詳細な情報まで与えなければならないか、それは必ずしも義務というような感じでございませんので、できるだけの情報が欲しいということでございました。当時としては、日本政府としてどれだけの民間会社のどれだけの飛行機を説得できるかわからない状況でございましたけれども、それは御理解いただけると思いますけれども、できるだけのことはしたいという、恐らく、恐らくといいますか、そういう内容の伝達をしたということでございます。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今口頭で伝えたとおっしゃいましたが、文書をお読みになっているようだが、口頭で発表したその中身を委員会に提出できますか。
  146. 丹波實

    ○丹波政府委員 これは外務省の出先に対する訓令ということで伝達しておるわけでございまして、政府の部内文書ということで御理解いただきたいと思います。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 現地に出した訓令でしょう、そして国際的にオープンな場であった要請でしょう。それに答えたものが、なぜその訓令は出せないのですか。というのは、自衛隊についての検討を始めるということを明記していることになるのですから。これ今、私は後でも議論しますが、一月二十九日の官報に告示されて以降は、我が国の国会は違憲の状態、憂うる状態にあるよ、これは意見が違いますよ、皆さんと違うでしょう。しかし私は違憲の状態にあるような、現実にこれはいつでも、当日から施行するのですから、二十九日に、その日からこれは効力を発する公報ですから、いつでも飛べるのです、もしこれならば。  したがって、そういう状態にありますだけに、いつその自衛隊の検討に入って相手国に知らせたか、世界に知らせたかというのは非常に重要な、我が国の主権の立場からすると重要である、こう考えるがゆえに、その出された文書は外交文書だといったって、何も秘密文書でも何でもないでしょう、今言えたのですから。それを正規にお出しなさい、こう言っているのです。
  148. 丹波實

    ○丹波政府委員 自衛隊の輸送機の問題につきましては、日本政府としては、IOMに対して出す用意ありということを言ったことは一度もございません。現にその飛ぶルートとかいろいろなことがまだ調査を終わっておりませんし、そういうことは一度もまず言っておりませんということを明確に申し上げたいと思います。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の口頭で、あなた、こうやってそこで見ているのだから、それを我々に、委員会に提出できますかと言っているのですよ。どういうふうに、やはり日本政府としてこういう、向こうは詳細に回答してくれと、「詳細に関する情報を提供するよう、貴政府要請したい。」と。日本がどれだけまじめに難民を救済するかということですよ。それに際してどれだけ誠意を持って答えるのかということですよ。そういう大事なことを、民間機が出るか出ないか、回数も、何機が応援できるかもわからないというような回答では困るので、こういうものを出すについて、軍用機というのは、これは別枠ですよ、憲法。しかし、我我は難民救済には積極的に貢献しなければならぬ、日本は。そのときに日本政府が、詳細な回答をと言ったら、今の回答は何ですか、あれは。ただ、まさにデータを口頭で漠然と通報しただけじゃないですか。何をどうするかということを何も書いてないじゃないですか。だから、出せというのですよ。そんなことをやっていたのでは国際的な評価にはならぬということだよ、日本は。出しなさいというのですよ。
  150. 中山太郎

    ○中山国務大臣 御要請のとおり、出させていただきます。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ありがとうございました。  それで、こんなものに時間をとっていたのではどうもならぬのだけれども、手続というのは大事ですからね、我が国の意思を国際的に伝えるということですから、役人の判断でなくて、やはり政府において日本の国際的貢献ということを含めて判断できるようなものにしなければ、これは信用を得ませんよ。  さて、そこで、十九日に自衛隊の派遣ということを検討するということを総理は談話で発表し、相手国にその内容を伝えている、そういうことでしたね。後で文書で見て正確に言いますが。そうすると、自衛隊派遣の政令を決めることを決めた閣議は二十四日ですね。どうですか。
  152. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 突然の御質問ですから記憶で言いますが、二十五日じゃなかったでしょうか。先生のお手持ちが二十四日となっておったら、私が至急今調べさせておりますが、二十五日だという記憶でございます。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 金曜日ですから、二十五日だと思います。  そうすると、検討を開始して五日後に閣議で政令なるものの方向を決めて、そして二十九日に官報で発表した、公布した、そういう過程ですね。
  154. 池田行彦

    ○池田国務大臣 そのとおりでございます。閣議決定は二十五日でございまして、官報公布は二十九日火曜日でございます。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 十九日に返答する際に、検討を内外に明らかにして、二十四日までの間にどこでどのような議論を党並びに政府としてやりましたか。
  156. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題は既に前々からいろいろな場合を想定して検討もしてまいりました。また、派遣する、しないの前提を抜きにして、このようなことができるかどうかは国連平和協力法の第三条に示された具体的内容にも我々は想定しておった一項目でございます。またその後、廃案の後を受けて民社党公明党自民党がつくりました三党合意の中にもこの問題は含まれておりました。したがいまして、このことについては私は私なりに随分前から検討も研究もしましたし、法制局も担当官庁もこれについての知識、準備はいたしておりました。たまたま今回具体的な要請が参りまして、その可能性について検討をしてほしいという国際機関要請でありましたから、それをするにはどうしたらいいかという検討をその後法制局、外務省、防衛庁その他と精力的にしたわけでございます。そして閣議で、さっき申し上げましたように二十五日に決定をした、こういう経緯であります。
  157. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その際に、前臨時国会国連協力法案が廃案になったという事実を踏まえて、自衛隊海外派遣という問題については、法律改正というのはなかなか難しいが、緊急を要するので政令で対処するというようなことを含めて議論したのですか。前国会の廃案の意味というものと、今度出すことの関連についてどのような判断をしたのですか。
  158. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前国会の御議論の中で、私は、自衛隊海外派兵というものは武力行使を伴う武装部隊の派遣であるということを、そしてこの法案ではそれは含まれておらぬのだということを何回も申し上げましたが、残念ながら御理解はいただけず、結局戦争か平和かという角度の議論になったということ、それは十分に踏まえております。そして、日本憲法で許されておらぬのは武力行使または武力による威嚇でありまして、そういったものに伴う問題はいけないということは十分に踏まえて検討をいたしました。
  159. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もう既に藤田議員から言われていますから結論だけ言いますけれども、前国会では、やはり自衛隊海外派遣はこれは憲法の上から見ても好ましくないということで、あれは廃案の手続をとったのですよ。審議未了じゃないですよ、自民党理事を含めて廃案の手続をとったのですよ。非常に重大なことです。審議未了だけれども、事実上廃案なんです。だから参議院に送らなかったのです。その意味で一つの決着がついた問題。これを今国会には、国会開会中ですから、休会でないのだから、国会開会中であるにもかかわらず、国会について意見を聞くような努力は、緊急の委員会を我が党は提案をして、そしてあの緊急の国会の本会議を開きまして質問をいたしました。そうしたらその直後に、もう既に長い準備だと言って、いつからといったって前国会終わってからの後の話ですから、その間に検討した結果、非常に短期間にこれを出した。これは後で言う恐らく人道上とか緊急性という意味でしょう。それは後でまた議論しましょう。  そういう意味で、この出し方がまずもって議会制民主主義という大変重大な問題を内包しているだけに、内閣の一存でその方向性を早く決めて打ち出せる性質のものなのかどうか、これが今からの議論の焦点であります。  さて、今度の政令は特別な、特定政令という言葉が新聞にいろいろ言われていますが、特定政令という言葉、ありますか。
  160. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  新聞等では特定あるいは特定政令、特例政令といったような表現で紹介されておりましたことは私も存じておりますが、今回の政令の正確な名称、題名は、湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令ということでございます。
  161. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 こういうタイプの政令は、過去十年間に閣議で政令として出した経験が幾つあると思いますか。
  162. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 過去十年間というお尋ねでございますが、かようないわば、ちょっと限定して申し上げますと、このようなという意味が、一つはまず法律があって、法律の、いわゆる暫定措置法でなくて恒久的な法律があって、それを受けた政令がある。施行令のようなものでございますが、それがある。それに対していわば別系統といいますか、その同じ恒久法の同一条文を根拠としながら、暫定的に、あるいは特例的に定めた政令、こういうふうに今委員質問を理解いたしますと、過去十年間でございますと数本、あるいはもうちょっと申し上げますと、同じ形式のものが毎年出ているのもございますものですから、それを入れますとかなりな本数になりますが、タイプで申し上げれば数本かな、こういうことでございます。
  163. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私が内閣からの資料でいただいたのは六本です。その六本のうちきちんとした法律があって、そしてその法律に受任された範囲内での政令というもので、何ら異論のないものが六本あります。ただし、期限のついてない組織法に関する政令はありますが、それ以外のものは全部期限つきであります。いつからいつまで、お金がこうなったのをどういうふうにやるとか。例えば郵政省関係でいいますと、昭和六十一年五月十九日から昭和六十三年三月十五日までの間に第一回目の積立分が預入される特定の預金者に係る郵便貯金の利率に関する郵便貯金法の施行の施行令、こういうものです。非常に期限がはっきりしている。今度のやつは「当分の間、」という仕組みのやつですから、これもちょっと今までのそういう暫定措置的な政令としては異常だと私は思います、まず形式の上で。  第二番目に、そして期限が「当分の間、」とここで言っている意味はどんな意味ですか。
  164. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま委員指摘の第一番目でございますが、確かに先ほど挙げましたものは、いわゆる何月何日というふうなものを書いたものが多うございます。ただ、多少さかのぼりますと、例えば沖縄の保母養成施設卒業者等に対する保母の資格の暫定措置に関する政令といったようなものもございます。  「当分の間、」と今回申しましたのは、そういう規定を置きました理由というのは、やはりこれが最後いつで終わるのか。要件としましては、湾岸危機、湾岸危機もこの政令の中で定義いたしまして「イラクのクウェイトに対する侵攻及び占領以降国際連合安全保障理事決議第六百七十八号に基づく国際連合加盟国のイラクに対する武力行使に至る一連の事態及びこれに引き続く重大緊急事態」こういうことで湾岸危機を定義いたしました上で、それに伴って生じたいわゆる避難民として、その国際機関から輸送の要請があった者、これを対象にしているわけでございますから、そういう意味では、これを確定期限で例えばことしの三月までとか四月までというふうに規定するわけにはまいりません。そういう意味で「当分の間、」としたわけでございます。ただ、逆に申しますと、当然のことながら、この湾岸危機に伴って生じた、あるいは国際機関から要請があった、こういったことでおのずからそこの後ろの終期と申しますか、それはおのずから決まってくるもの、かように考えております。
  165. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 安保理決議の六百七十八号ですね、第二項でこういうふうに言ってますよ。イラクが一九九一年一月十五日以前に、上記第一項に規定されるように、これまでの決議を十分に履行しない場合、クウェート政府協力している加盟国に対し、安保理六百六十及び累次の関連決議を堅持かつ実施するとともに、同地域における国際の平和及び安全を回復するためにあらゆる必要な手段をとる権限を与える。としますと、ここに言っているのは、クウェート政府協力している加盟国に対して、同地域における国際の平和及び安全を回復するためにあらゆる必要な手段をとる権限を与える、そういう過程に起きてきた難民の問題について、我が国は積極的に協力するということを意味することになりますね、この政令は。
  166. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  六百七十八号の第二項に言っております「同地域」の範囲の問題かと存じますが、この範囲につきましては、御承知のとおり決議の中で明示的に説明をされておりませんけれども、現下の事態に照らしまして、イラククウェート両国及びその周辺国を含むいわゆる湾岸地域というふうに解して差し支えないというふうに考えております。
  167. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、政令で言う「当分の間、」というのはこういう条件を満たされる時期までのことなのか、それとも、IOMから我々に要請があれば我々飛べるよと仮にしたとしましょう、そうした要請があれば、イラクに対して戦闘が依然として続いているというような、クウェートに入っていくだけではなくて、クウェートからの撤退というのがここで決めた枠だと僕は思うけれども、本国に向けても何がここに将来起きてくるかわからぬような状態に今日あることは皆さん御承知のとおりであります。そうしますと、ここで言う「当分の間、」というのは、戦闘状態が終わるという時期を頭に置いているのか、それともいつまでも、この後の影響まで含めて、この戦争がやや長期化すればもっともっと難民はふえます。数百万という、百万を超えるという話すらそこらじゅうで報道されている。そうしますと、この派遣問題はそこまで含めて「当分の間、」というふうに理解することになりますが、いかがですか。
  168. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この難民輸送にかかわるすべての基本的な問題は、国連要請を受けたIOMからの要請にこたえて行われるものでございまして、難民が発生した数によってすべてこれが判定をされるものあるいは連絡が来るものと認識をいたしております。
  169. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、この「当分の間、」は、IOMから要請があればかなり長いものだという判断になりますね。
  170. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 お答えいたします。  先ほど法制局長官からもお答えの一部にございましたけれども、この「当分の間、」と申しますのは、終期は避難民の輸送の必要性がなくなった時点というのが文理上の解釈でございますが、今中山外務大臣からもお話がありましたように、それはIOMからの要請がある時点までということで御理解をいただきたいと思います。
  171. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 政令にはこう書いていますよ。「国際連合安全保障理事決議第六七八号に基づく国際連合加盟国のイラクに対する武力行使に至る一連の事態及びこれに引き続く重大緊急事態をいう。」と書いてありますよ。ここに書いてあるとおりに言わないとおかしいですよ、そう書いてあるのですから、政令に。長いよ。その後、「これに引き続く重大緊急事態をいう。」こうなっているのですよ。だから、要請があれば、ドンパチが一時終わっても、そしてクウェート問題がまだ解決しない、ないしは解決したとしても、中東にまた再度大変な難民、新たな課題が起きる。それに対して我が国がいかに国際貢献をするかという観点からの政令じゃないですか。そうじゃなきゃおかしいよ。ここに書いてある意味をもっと正確に答えなさい。
  172. 畠山蕃

    畠山(蕃)政府委員 まさに今御指摘のとおり、政令にはそのとおり書いてあるわけでございますから、その事態から生ずる避難民につきましてIOMからの要請がある時点までというふうに御理解いただきたいと思います。
  173. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 したがって、この政令には二つの要件があるのです。一つは、「当分の間、」この沿岸危機に伴い生じたイラクイラク周辺の国に対する避難民というこの場合の「当分の間、」はかなり長いということ。二番目には、「国際機関から我が国に対しその本国への輸送その他の輸送の要請があった者とする」、要請がなければ発動しないというそういう二つの要件の政令だ、こういうものだということを確認しますね。  そこで聞きます。なぜ独立して特定の政令の形をとったのですか。
  174. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答えいたします。  まず第一にお答えすべきことは、なぜ独立の政令の形をとったかということについての観点が、二つと申し上げてよろしいかと思いますが、あると思います。  一つは、いわゆる施行令がございます。施行令に、現在法律内閣総理大臣国賓が書いてありますほかに「その他政令で定める者」ということで、政令として施行令に百二十六条の十六がございます。これはいわば一般的、恒久的な輸送対象として考えているものでございます。  それに対しまして今回のは、先ほどから議論ございますように、当分の間の措置である。そういう意味におきましては、いわばこの本則に置くものではございませんで、別途のところに置くものでございます。そういう暫定的な措置としてそういう形になります。  それでその場合に、置き方としましては、例えば附則に書いた例もございます。その施行令の附則に書く例もございます。それから、このように独立の政令とする例もございます。今回のものにつきましては、やはりその範囲をはっきりさせる、こういう趣旨であるということを考えますと独立の政令。附則によるか、独立の政令によるかは私どもの方も検討いたしましたけれども、独立の政令による方がより適当ではなかろうか。これはもう全く法技術的な観点でございますから、附則によります場合も決して意味が違ってくるわけではございません。そういう意味で独立の政令にしたわけでございます。
  175. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ちょっとわき道にそれますが、自民党の国防部会で艦船も政令でもって将来決めなきゃならぬという議論がありますが、艦船は政令で決められますか。
  176. 池田行彦

    ○池田国務大臣 お答え申します。  自由民主党の部会の方で、これからの将来にわたってのいろいろな貢献の仕方あるいは協力の仕方についていろいろ御検討になり、党内で御提言があったということは承知しておりますけれども、私ども政府といたしましては、現在のところ、これまで湾岸対策本部、安保会議、そうして閣議を経まして決定いたしました支援策ということで進めているところでございまして、私ども防衛庁といたしましては、現在、自衛隊の輸送機による輸送という役割について考えておるわけでございまして、その他については考えているわけではございません。
  177. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはおっしゃるように、第百条の五というのは、「航空機による国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」と書いているのですから、絶対戦艦はだめですね。戦艦なんて言うたら今たたき上げようと思ったんだけれども、ありっこない、あり得ないことであります。これがこの政令の特徴なんです。範囲の問題なんです。重要な範囲の問題です。  そこで、今の法制局長官の説明によると、法律があって、法律は御承知のように百条の五ですね。この百条の五に言うところのここが問題なんだ。「航空機による国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」ですね。これに基づいて、そして独立した政令を出す、こういう判断に立った、こう理解してよろしいですね。
  178. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 先ほども申し上げましたように、まず百条の五の「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」、この政令の授権の範囲内にある、そして一方でそれは当分の間の措置であるということでございますからそういう措置をとった、こういうことでございます。
  179. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、僕の聞きたかったのは、百条の五で、ここで言っている「その他政令で定める者」という授権の枠の中で今度の政令をつくったということなんですね。そうしますと、この百条に基づいて、百条の二項で、主文がありまして、「前項の事業の受託に関し必要な事項は、政令で定める。」とし、自衛隊法施行令でもって、先ほど市川さんの議論にありましたように、この施行令でもって例示をしたわけですね。例示をしましたね。例示をしまして、百二十六条の十六の施行令という政令では、五号で「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」と書いてあります。ここでも「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」という、この場合の前二号に掲げる準ずる者とは、きのうの話じゃないけれども、VIPという一定の範囲とその類型というものを明示している、そういう意味に施行令の五号を理解してよろしいですね。
  180. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいまの御質問、私正確に受けとめたかどうかちょっと自信がございませんが、自衛隊法の百条の五の第一項で「政令で定める者」という規定がございまして、それを受けまして自衛隊法施行令の百二十六条の十六という規定がございまして、百二十六条の十六では「政令で定める者は、次に掲げる者とする。」ということで、今委員指摘のように一号から五号まで書いてあるわけであります。それの五号のお話だと存じますが、五号で「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者に準ずる者」、こういうことでございます。  実はこういうことでございますが、これは大変法技術的なことで申しわけございませんが、まず法律に戻りまして、「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」というときには、政令では国賓内閣総理大臣は繰り返して書く必要がない、こういうふうな一応約束事になっております。そういう意味でこの政令では国賓あるいは内閣総理大臣というそのものの人は出てまいりません。それに対しまして、ここで書いてございますのが、例えば二号で「国賓に準ずる賓客」、こういうふうなことが書いてございます。いわば公賓といったような方でございます。それで、同じように今の五号は「内閣総理大臣又は前二号に掲げる者」、要するに衆参の議長と最高裁判所長官内閣総理大臣、こういう方に「準ずる者」ということでございますので、そういうふうなことでいわば、例えば副総理でございますとかあるいは最高裁判所の長官代行でございますとか、そういう方はここで読めるだろう、かように考えております。
  181. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、今までは自衛隊法という法律があって、そして自衛隊法の三条では自衛隊の任務というものをきちんとして、専守防衛という枠をきちんと決めて、海外には行かない、そして日本の国内を防衛していくためにこの自衛隊法という法律をつくった。ところが、その枠からはみ出る部分というか、海外に出かけるというような場合、南極に出かけなきゃいかぬとか、そういう場合の扱い方について、わざわざ百条で起こして、そしてみんな特定化したわけですね、特定化してきた。  そこで最後に、この第百条の五の「政令で定める者」というところに来て、その自衛隊法の枠の中で今まではみ出る部分については皆特定化してきた、それはみんな法律改正をやってきた、その前は一、二、三、四とありますからね。本来なら、法律改正するとこの後に来なきゃいかぬ、今の政令の文言は。法律改正をするとこの後に来なきゃいけない。施行令で扱うとすると、きのう総理は言いましたが、総理は、施行令で扱うとするとこの施行令の五号の後に入れるのが筋かもしれぬとおっしゃったんですよ。そうしますと、今度のいわばこの政令は、自衛隊自衛隊法という枠の中ではみ出る部分についての一定の特定化していくものについて、法律的整理と特定化する今までの考え方と違って、この法律の委任された範囲だといって、新しい政令を出したということで法律に直結したわけですね。今まではちゃんと施行令の中の政令で処理してきた、これを独立させた、こういう扱いになっていますね。
  182. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 どういうふうにお答え申し上げますかちょっとあれでございますが、まず百条の五、ここで「政令で定める者」というのが出てまいります。これを現在自衛隊法施行令の百二十六条の十六で一号から五号まで掲げて規定しているわけでございます。この後ろの六号に並べるということは、いわば恒久化するといいますか、本来の恒久措置という形でございましたら、例えば「天皇及び皇族」とか「国賓に準ずる賓客」というのは、先ほどのお言葉を使いますれば、一般的に任務として与え、かつ恒常的に行うということになります。今度の場合は当分の間の措置、湾岸危機に伴って生ずる難民についての当分の間の措置ということでございますので、いわば法令的な扱いから申し上げれば、ここの六号に入るのではなくて、むしろ、先ほど法技術的と申し上げましたけれども、附則に置くなり独立の政令にするなり、これが従来の法技術的な扱い、かようにお考えいただきたいと存じます。
  183. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 細かく議論していると時間がありませんから。  そこで、先ほど市川さんの質問にもありましたし、それからまた我が党の藤田議員の質問にもありましたが、今日までの国会での議論では、自衛隊法百条五の二項に言っております一連の解釈について、衆議院の内閣委員会、参議院の内閣委員会その他で非常に明確な考え方が今日まで決められてきております。  時間がありませんから全部内容を省きますが、一つだけ典型的なやつを申し上げますと、我が党の副委員長の久保田真苗さんが六十一年の十二月四日、参議院の内閣委員会で、これについて逐条審議をした上で、「法制局にお伺いしますけれども、ここに言う「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」というものについての解釈をお願いします。」こう言っているんですね。この政令の解釈です。内閣法制局は、第二部長ですが、当時は、法制局が答えたのは、「「その他政令で定める者」の内容はまさに政令で定めるわけではございますが、「国賓内閣総理大臣」という例示、列挙がございます。」例示、列挙です。これは非常に大事なことです。範囲の問題と類型の問題に関係があります。「したがいまして、この例示、列挙されたものとおよそかけ離れたものは予定してないという場合にこのような表現を使うわけでございます。」と言っていますね。これは明らかに、ここでいうところの政令に委任するものは同一の範囲で、同じ類型のものだ、列挙したものに類型のものだという解釈なんだ、だから一般的にはできないという回答をしてきましたね。  そうして防衛庁は、当時の防衛庁の依田さんは、これは例の日本人の救出問題に関連してですけれども、「平和的手段で救出するという場合においても現在自衛隊法では任務が与えられてない、したがいまして、この百条の五でもそこまでは読めないというように考えておりますので、その場合には自衛隊法の改正が必要であると考えております。」非常に明快ですね。非常に明快です。  中曽根総理に対しても、総理は本会議で非常に明快に、ある意味じゃ明快に答えております。「憲法違反自衛隊国賓総理大臣を輸送することができるようにした本改正案は、自衛隊の国際緊急援助隊への参加、ひいては海外派兵に道を開くことを意図したものではありませんか。」この質問に対して総理は、「今回の自衛隊法の改正中第百条の五の規定は、自衛隊が航空機による国賓等の輸送を行い得るようにするものでありまして、同条の規定により国賓内閣総理大臣等を海外へ輸送することも排除はされない。」こう言って、「しかし、国際緊急援助隊への自衛隊の参加は、国賓等の輸送とは性格を異にするものであり、今回の改正はそこまでは想定しておりません。」と言っていますね。明快ですね。総理大臣ですよ、中曽根さんが答えている。  さあ、こういう一連の今までの法制局の答弁、防衛庁の答弁、内閣総理大臣の答弁、こういう一連の答弁がある中で、きのう来総理大臣と法制局長官の回答がございました。議事録は全部とってありますから、正確に論争をいたしましょう。  そこで、つまりこういう今までの考え方に対して総理大臣は、まず海部さんに聞きますが、総理大臣はきのうえらいことを言っちゃっているんだよ。重要な部分だ、全部読んでもいいけど、時間がかかるからね。総理大臣は、第百条の五は、航空機による国賓内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる、これだけ書いてあると言って、後にこう言ったんです。これはおっしゃるように、法律に従った政令で定めなさい、政令で定めもしない者を運ぶことはいけないけれども政令で定めた者は運んでもよろしい、本来の任務に支障を来さないようにやれと書いてあるわけだから、私は政府の責任においてこの政令で定める者ということを政令できちっと書いた場合にはその百条の五の授権の範囲内であってと、こう言ったのです、総理は。今度の政令を皆さん方決めた。それは、政令ではきちっともう書いたんだから、もう政令に書いてあるんだから、したがってこれは法律の枠の中での授権の範囲内であって、どう考えてもそのようにこの百条の五は読むことができるものであると考えたから法制局長官にも答弁をさせました、こう言っているのです。  さて、今度の政令が第百条五の授権の範囲内、どういう意味ですか。今までの回答あるんですよ。今までの国会におけるきちんとした、法律改正しないとできませんという議論があるんだよ。それを前提にして総理は、百条五の授権の範囲内でこの政令は出ていると言っているんです。今まで内閣総理大臣はそれはできぬと言ったんです。できぬと言ったのですよ。それを今度は、あなたは百条の五の授権内だからどう考えてもいいと言った。それなら何でも、政令憲法自衛隊法やそういうものと緻密に関連を考えずに、あなたが主観的に考えてかどうかは別として、そういう政令が出せると判断して政令を出したら、みんな授権の範囲内だということになっちまいますよ。これは一般論で言っているんだよ。一般論で言っているんですよ。どうですか。
  184. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、「政令で定める者」とここに書いてあります。これは書いてなければできませんけれども、書いてあるわけですから、そして本当にこれが例示列挙であって制限列挙でないというならば、「その他政令で定める者」というのをこの第百条の五のときには書かなかったはずであります。ですから私は、この条文を素直に読んで、政令できちっと定めることによって対応すべきとこう判断をいたしましたし、また、今回特別の問題が起こったことについてどのような扱いをしたらいいかということは、まさに法制局長官にそのことは指示をして、法制局長官にいろいろ専門的な立場できちっと考えて筋道を立ててもらったのが今るる御説明のあった特別政令ということであります。  それから、きょうまでの御議論をいろいろ言われましたけれども、今、今回このようなことが現実に起こったという前提を踏まえてそれに対応をしたわけですし、国際機関からは要請が来たということを受けてその可能性を検討すると言ったわけでありますし、法律を調べたら法律にきちっと「政令で定める者」という規定が百条の五にはあるわけでありますから、私は今回のこの被災民の救済、それに対する対応、日本のなし得るぎりぎりの国際協力、こういったことを考えますと、できることはやりたい、そういったことでやらなきゃならぬ、どうしたらいいか。法律に根拠がなければだめですけれども法律に明らかに「政令で定める者」と書いてあった。そのことを素直に、おっしゃったとおりにきのうは私はここで御答弁申し上げておるつもりでございます。
  185. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」というふうに規定した規定の仕方は、国賓総理に準ずる者、同じ類型に属する者に限ってその範囲内で政令に委任しているということです。その範囲と類型というものがあるんです。だから例示しているんですよ。だから、同じ類型に属するものに限ってその範囲内で政令に委任したものであることは、法律を解釈していく場合の基本なんです、これ。基本なんです、ここが。それを、委任を超える、範囲を超えそしてそういうふうにこういうものを出すとすれば、これは当然法律的には無効なんです。執行の余地はないんです、これは。執行の余地はないんです。これが極めて重大な我々との争点です。差、対立を鮮明にしておきます。争点なんです。したがって、これは後で、あなた人道上、緊急と言いますから、それをまたもう一遍やりますから。例えば前回法律を提案するときに、法律とか省令でやるときに、提案者がきちっと法律を解釈して、これは法改正が必要だという前提に立って議論してきた。そしてその提案者の解釈が、我々の方できゅっきゅきゅっきゅ詰めていった結果がさっき言った議事録なんですね。ちゃんと、枠がきちんと決められた。その枠の中で処理するということは、ここで言う国賓総理に準ずる者、同じ類型に属するものに限るんです。さっき市川さんの質問にありましたように、イラン・イラク戦争のときに日本人の、邦人の救済ということ、あれは緊急ですよ、戦争なんですから、イラン・イラク戦争。緊急で人道上の観点だからやれるかといったら、法律改正しなきゃできなかったんです。(「戦争の意味が違うよ」と呼ぶ者あり)戦争の意味って、戦争戦争ですよ。同じ避難民じゃないですか。今までの国会で決めてきた解釈の仕方や、きちっと行政府と立法府との間で、行政府が、内閣の責任の中には法律に基づいてそれを実施するために政令を出すことはできる、しかし、その政令はあくまで立法府との議論の中で、国における最高機関である国会が行政府に対してチェックをかけて、そして解釈をした上で枠をはめて今まではみんな来たんですよ、これは。今回のは明らかにこの類型の範囲を超え、新たな問題であるがゆえに、政令で処理すべきものではなくて、法律改正をしなければおかしいと言っているのです。そういう重大な問題、過去の議論、どう総理は受けとめ、それを三百代言で、言葉の上でごまかせば事は済むというものじゃない。それだけにこれをもう一遍きちっと議論をしなければだめだと言っているのです。市川さんも同じことを言った。法制局長官は、今の議論に対して別の、一般とか例の人道上、避難というのをきのう言ったやつがあるでしょう。どうぞもう一遍言ってください。
  186. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  昨日あるいは本日先ほど何回か御答弁申し上げました。まず先ほどの「国賓内閣総理大臣その他政令で定める者」というときのその類型でございます。これにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、実はこの国賓内閣総理大臣、こういう代表を列挙いたしました者、これは決してVIPというそういう高位高官のみを念頭に置いたものではなくて、そういう、むしろその者の置かれた状況とか国としての輸送の必要性、そういったことから範囲、いわゆるカテゴリーとして決まってくるもの、かように考えております。そういう意味で、今回の避難民が国としての必要性、そういうことから政令で指定した、こういうことが第一点でございます。  それから第二点の、先ほどの過去の答弁との関係とおっしゃいますが、これまた昨日あるいはきょうお答え申し上げたところでございます。自衛隊在外邦人救出というふうなものを一般的に任務として与えるということを念頭に置いて答えられたというふうに考えますし、例えば先ほど委員指摘の、政令の一号から五号までありますそういうところと、それは一般的な任務として恒常的に与えられているものでございますけれども、そういうものとは違いまして、今回の任務、これにつきましてはっきりした限定を付しました上で、しかも百条の五は、任務に支障がない場合には航空機によるこれこれの者の輸送を行うということでございまして、まさに今回の要件に該当するもの、かように考えているわけでございます。
  187. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 もうここは、これは大変重大なことなんで、わざわざ今まで百条に基づいた施行令にはきちんとした列挙をして、個別を列挙して、五つを挙げてちゃんと具体的に示してきたんです。今回は、その他の政令というのは、今までの施行令で言うような個別とは違うんや、勝手にVIPに関係ないものだ、だれが解釈したんですか。そんな解釈は自衛隊法百条の解釈にはなりません。御無礼だけれども、あなたは法曹資格をお持ちですか。僕は調べてあるから答えなくていいです。だけれども、こんな重大な、今までの、さっき僕は議事録を読み上げたでしょう、あんなに明快なんですよ、総理も、防衛庁の事務次官も、もう一人官房長か、それから法制局も。あれだけ明快な今日まで解釈をしてきたのを、今回は人道上と緊急性というだけで、今までの列挙とは別の範囲、外のものを省令、政令で決めることはできません。  したがってこの問題について、今までの皆さんの解釈は解釈です。これ、行政府の解釈です。立法府はどう解釈するか、有権解釈、もう一遍やり直さなければいかぬ。法制局は皆さん方の行政権の、ある意味では法制局という事務方なんですから。我々の方にも本来ならば法制局というのはあるのですよ、国会の中にも。それは別として、いずれにしたって、行政権の側の有権解釈として今の省令は合法であり合憲である。我々はこれはだめと言っているのですから。僕らは、これは委任の範囲を超える政令は当然に無効だと言っているのです。執行の余地はないと言っているのです。  例えば仮に、ありませんけれども、仮に自衛隊の飛行機が飛ぶということになったとしましょう。自衛隊員が行かないと言ったらどうしますか。このときは、この人は懲罰できますか。この政令に基づいて懲罰できますか。裁判やったら負けますよ、政府は。負けるに決まってますよ、最高裁に持っていって。  また同時に、これをだれがやるかという場合に非常に重要なのは、行政権が法律でなしに、法律をいじらずに、直接法律の委任と称して、法律の枠を超えた、そういう列挙をしたんですから、あなた方の方はそれは合法的だと言うでしょう、それは。しかし、立法府としてはその有権解釈は成り立つかどうか検討する必要がある。これが憲法四十一条の、国会は国権の最高機関で唯一の立法機関といったのです。唯一の立法機関というのは、法律国会が独占権があるのです。昔の帝国憲法のときなら天皇の勅令でできたのです。あなたたちのやっていることは勅令と同じなんです、我々から言わせれば。形だけは、形だけは法律政令の形をとっているけれども、現在の内閣がそんな一方的な解釈でもってやることに対しては承服できません。  そうすると、どういう問題が起こるか。昭和二十九年の参議院の例の決議、参議院の決議に対して、参議院はまだ有権解釈をやっておりません。今まで皆さんの回答は、あの参議院の決議について、参議院で有権解釈をなさるべきですと、みんな政府は回答してきたよ。今度は皆さんが出してきているものに対して、我が立法府として、最高機関の立法府がこれについて違憲の疑いがある、こう判断を我々がするとすれば、立法府として有権解釈をやる手続法は、国会でいまだかつて一度もありません、どうするのですか。  こうなりますと、院の構成の問題になってくる。院の構成です。あなたたち政府ですから、我々立法府の側から、このような省令が、政令憲法違反の疑いがあるということになれば、我々の側の院としてこれの違憲性についての有権解釈が成り立つかどうか検討せざるを得ません。そうなったらあなた方に質問したってしようがないのですから、委員長、あなたの責任においてこれをどう処理したらいいと思われますか。
  188. 渡部恒三

    渡部委員長 私は、文学部出身で、法律専門家でございませんが、法制局長官の解釈を信頼しております。
  189. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 憲法四十一条は、国会は国権の最高機関で唯一の立法機関という独占権があるのです。勅令なんかで出せないのです、民主的手続なんですから。それに基づいて内閣は法律を実行するために政令を出すのです。そのときには法に委任、受任された範囲でしかできないのです。それをやったら四十一条に返って、国会は国権の最高機関という立場から我々が有権解釈する義務があると思う。本来最高裁へ持っていくのですよ。そのときは飛行機飛んでみなだめや、これは。飛行機が飛んだときに、さあ飛行機が飛んだ、これがいよいよ憲法違反かどうかとならなければ最高裁は判断できません。だから今の段階では、立法府の手続で今議論しているのですから、我々の側の有権解釈をするための初めての経験だ、衆議院として。初めてのことが出てきたのですから、初めての経験として我が立法府はこれにどう対処すべきかということについて、委員長、院の対応というのはどうあるべきだと思う。――あなたに聞いているんじゃないもの、政府に聞いているんじゃないもの、院のあり方やから、今度は予算の委員長がどうするのということだよ。
  190. 渡部恒三

    渡部委員長 法の解釈は、これ国会議員全部弁護士でありませんから、法制局長官を信頼しております。――嶋崎君に申し上げます。ただいまの問題は後刻理事会で協議しますので、質問を、予 定された時間の質問を継続してください。嶋崎君。――嶋崎君に申し上げます。質疑を継続してください。――ただいまの問題は後刻理事会で協議することといたし、質問を続行いたします。嶋崎君。――これにて本日の嶋崎君の質疑は終了いたしました。残余の時間については、後刻理事会で協議します。  次回は、明六日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会