運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1991-02-04 第120回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月四日(月曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 大石 千八君 理事 鹿野 道彦君    理事 近藤 鉄雄君 理事 二階 俊博君    理事 増岡 博之君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       浅野 勝人君    粟屋 敏信君      内海 英男君    小此木彦三郎君       越智 伊平君    加藤 紘一君       狩野  勝君    金子 一義君       倉成  正君    後藤田正晴君       佐藤  隆君    志賀  節君       武部  勤君    戸井田三郎君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田  憲君    松永  光君       松本 十郎君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    五十嵐広三君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       辻  一彦君    戸田 菊雄君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       武藤 山治君    和田 静夫君       日笠 勝之君    冬柴 鐵三君       佐藤 祐弘君    藤田 スミ君       正森 成二君    中野 寛成君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 左藤  恵君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 井上  裕君         厚 生 大 臣 下条進一郎君         農林水産大臣  近藤 元次君         通商産業大臣  中尾 栄一君         運 輸 大 臣 村岡 兼造君         郵 政 大 臣 関谷 勝嗣君         労 働 大 臣 小里 貞利君         建 設 大 臣 大塚 雄司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     吹田  愰君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      谷  洋一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 池田 行彦君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      越智 通雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      山東 昭子君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 愛知 和男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 西田  司君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房会計課長  荒田  建君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       公文  宏君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         警察庁長官官房         長       井上 幸彦君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁長官官房         会計課長    菊地 徳彌君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         経済企画庁調整         局審議官    土志田征一君         経済企画庁国民         生活局長    加藤  雅君         経済企画庁物価         局長      田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      田中 章介君         科学技術庁研究         開発局長    井田 勝久君         科学技術庁原子         力局長     山本 貞一君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      伊藤 卓雄君         環境庁大気保全         局長      古市 圭治君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部大臣官房長 坂元 弘直君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房審         議官      田中 健次君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省年金局長 末次  彬君         社会保険庁運営         部長         兼内閣審議官  大西 孝夫君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       坂本 吉弘君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         運輸省国際運輸         ・観光局長   寺嶋  潔君         運輸省航空局長 宮本 春樹君         海上保安庁次長 豊田  実君         気象庁長官   立平 良三君         郵政大臣官房長 木下 昌浩君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         労働省職業能力         開発局長    菊地 好司君         建設大臣官房総         務審議官    青木 保之君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房総         務審議官    紀内 隆宏君         自治省行政局公         務員部長    滝   実君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 一月三十一日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     愛野興一郎君 二月四日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     浅野 勝人君  小此木彦三郎君     武部  勤君   加藤 紘一君     金子 一義君   村田敬次郎君     狩野  勝君   不破 哲三君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   浅野 勝人君     阿部 文男君   狩野  勝君     村田敬次郎君   金子 一義君     加藤 紘一君  武部  勤君     小此木彦三郎君   正森 成二君     藤田 スミ君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成三年度一般会計予算  平成三年度特別会計予算  平成三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  平成三年度一般会計予算平成三年度特別会計予算平成三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、以下、湾岸戦争中心にして質問をいたしたいと思います。  湾岸戦争状態は、大変深刻な事態を迎えていると思います。今政府においても、これが問題解決に向けてどういう貢献策をとるべきであるかということを、今この国会にも具体的に提示をいたしておりますが、私は、悲惨な今の戦争状態テレビや新聞その他で見るたびに、これは何としても早く、一日も早く、一刻も早く、この戦争状態を終結させなきゃならぬ、早期停戦こそ最大の我が国の貢献策ではないだろうか、こういう立場に立ちまして、私ども社会党は既に議運を通して中東湾岸戦争即時停戦に関する決議要求をいたしております。  こういう立場から考えまして、まず総理お尋ねをいたしますが、この即時停戦に向けて政府国連中心関係各国に対して停戦の呼びかけをやる用意があるかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今湾岸で起こっております武力行使について、私も藤田委員と同じく、一日も早くここに平和が来なければならぬという願いは全く同じものを強く持っております。そして、そのことにつきましては、きょうまでも、昨年の八月二日にイラクのあのような武力による侵略が始まった直後から、国連が重ねて何回も決議しましたような原則に従った平和が訪れるように、国連の場を通じたり、あるいはその他いろいろの外交努力を重ねて行ってきたこともそのとおりでございます。私は、それによって一日も早く平和が実現しますように、公正な平和が来ますように、日本国憲法には、我々は正義と秩序を基調とする世界の平和を誠実に希求すると憲法で宣言しておるわけでありますから、その精神に沿って、大いにできる限りの努力をしたいと決意しております。全く同じ方向であります。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 お互いに決意をしたり願望したりすることも大事でありますけれども、今我々に求められているものは、具体的に何をなすべきかということであろうと思うのですね。そういう点からいきますと、ただいまの答弁ではありませんが、幾ら原則が通りましても、お互い人殺し合いが展開されておるわけですから、人間の殺し合いをもうこれ以上拡大してはならぬという立場から、日本外交として具体的にどういう手だてがあるか。今、政府がやろうとしておる九十億ドルの多国籍軍に対する戦費の支援の問題あるいは自衛隊機を派遣する問題は、私は、湾岸戦争の火に油を注ぐことになっても、停戦問題解決の決め手にはならぬと思うわけであります。  そういう私の考え方からいきますなれば、せんだっての、二十八日でございましたが、米ソ外相会談アメリカにおいて持たれました。内容は省略しますけれども、ここで確認をされた三つの条件、これはもちろんクウェートからイラク軍撤退を確約することが前提でありますけれども、イスラエル問題を含めた中東和平条件の問題を含めて、ここの三条件中心にして、私は、今動きつつある米ソ関係フランスも八月二日以降二回にわたって和平提案をしております。中国も、水面下ではありますけれども停戦和平に向けての動きを示しておりますし、あるいはイラク首脳イランに行く、また、フランス外務省関係の高官もイランに乗り込んでいくということで、停戦に向けての動きが具体的になってきておるわけですから、この機会にこそ今総理が言われたような立場日本調停役の一翼を担う、こういう具体的な動きこそがこの湾岸戦争に対する貢献策最大条件ではないかと思うわけです。そういう意味において、日本政府の具体的な、私は抽象的なことを聞こうとは思っていません、具体的な解決シナリオというものを日本政府が持っているのかどうか、このことをお尋ねいたしたいと思います。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今お示しになりました多くの国々からの出されておる停戦案も、また私どもの考えておる停戦案も、公正な平和をあの地域に確立させるためにどうしたらいいかということをまさに去年の八月二日以来、国連でいろいろ議論をしてきた。藤田委員もおっしゃったように、今のこの局面を打開して、そういった話し合いに入ることのできる、その局面打開のかぎを握っておるのは、イラクの、あえて言えばフセイン大統領その人の反省に基づいた決断だ、私はそう思うのです。  ですから、求めるなれば、イラクフセイン大統領にそのことを強く求めるべきであって、そのための努力をいろいろなところでしてきました。それは、直接の手紙もあれば、副首相に対する物言いもあれば、とにかく、フランスもあるいはアメリカも、クウェートから兵を引く、新しい国際秩序の中で実力で一つの国を侵略、併合してはいけないという、このことについて、侵略をもとへ戻しなさいというのが、それが局面打開第一歩だ、戦争をやめるためにはそれをしなければならぬということを、皆が、言い方にはいろいろな差はあっても、提案をし、各国のすべての人々が乗り込んでいって努力もし、私はその直前には親書も出し、国連事務総長にも大使を通じてその行動全面的支援もやり、社会党土井委員長も直接会って、それは撤兵しなさい、平和的解決しなさい、二時間にわたって話をしてこられた。みんなが努力をしたのでしょう。その五カ月以上にわたる努力を毫も顧みないで反省の色が見えないということが一番いけないので、せっかく新しい平和秩序をつくっていこうというときですから、イラクに、国際社会がみんなの意思として、国際の総意としてこれを伝えておるわけでありますから、私はそれが行われるように、侵略の排除、そして平和を回復するための今二十八カ国とも言われる多くの国々国連決議に従ったやむを得ざる武力行使が行われたということでありますから、これをやめるときにはこのままの状態で、とにかくやめなさいということだけで、それではきのうのいろいろな議論テレビを通じて見ておっても、クウェートの現状はどうなるんですか、これを撤兵をするという明確な意思表示があったところから局面打開が始まるんだということは、これは国際的に言われておることでありますから、私は、国連決議原則に従って、そこが平和への入り口、第一歩になるんだ。恒久平和に対するいろいろな考え方は持っております、後ほどお答えしますけれども、そこに至る今日の第一歩は、平和回復努力が一日も早く成功することであり、それはイラク反省イラク撤兵という行動にある、私はこう思います。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はそういう演説を聞こうとは思ってないんです。そういう経過は私ども十分踏まえた上です。私が今も指摘しておりますように、それではイラククウェートから撤兵する、これが大前提だ、そのことは私どもも認めておるわけですよ、あなたから聞かされなくても。その条件は、私は内容を省略しましたけれども米ソ外相会談の中にも入っておるわけですよ。ですから、それではイラク撤兵をさせるためにはどうするのかと言えば、私は、ソ連はあの国連決議に従っておりますけれども、この武力行動戦闘行動にはソ連は参加してないんですね。まだイラクとの関係においては軍事顧問団もいるというようなことも聞いておるわけです。イラクに対して一番影響力をある意味において持っておるのはソ連ではないか。あるいは中国が、この国連六百七十八号の決議のときにも、武力行動には参加してない、認めない、いわゆる棄権の立場をとっておるわけですね。そういうイラクに対して影響力のある国々に対して、日本政府がやはりフセイン大統領を説得するような外交行動を展開する、こういう具体的な実効の上がる方策を日本政府が今とるべきではないか。そして、米ソ外相会談でああいう三項目で大方の合意を見ておるわけですから、日本政府としてはアメリカに対して、多国籍軍といえどもその中心アメリカですから、このアメリカに対して戦争をやめましょうよ、一方、イラクに対してはクウェートからの撤退を求めていくんだ、お互いにそういう前提で撃ち方待ての状態をつくろうではありませんか、このことを、日本政府がそれこそ命がけの外交を展開することが今当面の一番大事な条件ではないか。  私は政府ばかりを責めようとは思っていませんけれども、八月二日以降日本外交は何をやったんですか。和平に向けて何もやってないじゃないですか。目に見えるものを何をやったんですか。私はそのことを考えるときに、今我々のサイドでやれることは、土井委員長イラクにまで乗り込んだ。いやいや、笑っていますけれども、私はそういう過程が大事だと思うのですよ。何の努力もしないでおしゃべりだけやっておったのでは問題が解決しない。そういう意味で、私はぜひ中東即時停戦に向けて具体的なアクションを起こすべきである、そのシナリオが具体的にあるのかないのか、そのことを聞かしてもらいたいと思う。  それといま一つは、中東戦争に対して即時停戦決議要求をしておるのですけれども議運サイドでは自民党の抵抗に遭ってこれが取り上げられない、こういう局面でありますが、総理総裁としてこの決議に対してどういうお考えか、聞かしてもらいたい。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 米ソ共同声明の中にも、イラククウェートから撤退する旨明白なコミットメントを行えば戦闘行為の停止が可能であると考えるという項目が確かにございますし、またイラクから撤退をするということが絶対の大原則であるということも、それは委員も認めておられることでございます。――クウェートからの撤退、失礼しました。イラククウェートから撤退するということであります。ですから、それが累次の国連決議によって明らかにされておることであって、とにかく力によって侵略、併合することはいけないという原則はきちっと守っていきませんと、今のままで、これで戦争さえ、弾の撃ち合いさえ、停戦さえすればそれでいいんだということはアメリカソ連も言っておるわけではなく、その次のステージのときにおいてはどのような恒久平和をお互いに打ち立てるかのいろいろなステージが出てくるということは述べておるとおりであります。  私もまたきょうまでいろいろな機会を通じて、例えばイラクの副首相にも直接申し上げましたし、また大統領にも直接書面を書いて届けましたし、その他湾岸諸国首脳とも直接話をしていろいろなことを言っておりますが、前提が実行されれば日本中東和平問題についても、これは国連決議の二四二、三三八に従ってきょうまで態度を表明してきたわけでありますから、それによる和平には積極的な協力もしますし、同時にあの地域経済復興のためにも努力もします。  しかし、もう一つ言いたいことは、あの地域に今日の状況を持ってきたのは、兵器の移転について、私はこれは率直に言って、この五年間一番たくさんイラク兵器を移転したのはソ連であり中国であり、この二国が合わせれば約七〇%近くのものが行っておるんだということもこれは事実であります。こういったことを全部将来の問題としてそれらの管理までやっていかないと安定した和平は来ない。  そういうようなこと等も全部含めて、同時に経済協力とかそれらの国々が自立していくような問題とか、すべてを含めて日本として提案すべき具体的なプログラムは持っており、アメリカへ行ったときにはニューヨーク大学でも私は講演の中でこのことも申し上げてきました。けれども大前堤は今の局面を打開しなければならぬということでありますから、それに対しては条理に従ったこのような原則的解決が行われることを私も強く望んでおりますし、何もしなかったとおっしゃるが、そうではない、あらゆるレベルを通じてこういった意見の伝達や、首脳会談を通じてや、いろいろな外交努力をしてきておったということをこれはやっぱり申し上げさしていただきます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 国民の目に映るような具体的な動きはなかったことを私は指摘をしておるわけであります。  そこで、総理は、イラクは力によってクウェート侵略したことはけしからぬ、全く私はそのとおりだと思う。ところが今度もまた、このイラクの不当な行為を排除するためにこれまた力によって問題を解決する、いわゆる戦争という手段によつて問題を解決する、このこともやっぱり私は間違いじゃないかと思うのですよ。――いや国連憲章のあの決議は何も武力だけで解決しろとは言ってないんですよ、必要な手段を講じるということですから。だから私はそういう点において、大変これ時間をとるようでありますが、総理は、あの開戦直後の言葉を聞きましても、同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツのコールさんがこの開戦になったことを聞いて、大変なことになった、これは何としても早く、一日も早く停戦しなきゃならぬという談話を発表した。あなたはどういう談話を発表したか。断固この戦争を支持する、こういう談話を発表しておるんだ。大体問題の出発はそこにある、間違いが。  私はやはり今この段階で大事なことは、私ども社会党提案をしておりますように、即時停戦に向けて具体的な動き国連に対し、関係国に対して呼びかけの行動を起こすことがもう何よりも大事ではないか。そうして何の罪もないこの中東地区の人々が次から次へと殺されていく。そうして、けさのニュースではありませんけれども、あの地上戦に向けて多国軍同士で誤殺、いわゆる間違って射殺をしたような事件さえ起こっておる。そうしてまた一方では、下手をするとこの戦争が長期化する、泥沼化に入りていけば核兵器まで使うかもわからない、こういう重大な、人類にとっても重大な事態が起ころうとしておるわけですよ。そうして、石油の流出問題を含めて地球の環境汚染もまたさらに拡大するかもわからない。こういうときに当たって、停戦に向けての具体的なシナリオがないということは、大変これは無責任ではないかと思うのですが、どうですか。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この問題に関する考え方は、私はいろいろな視点があろうと思いますけれども、私は従来の、国が交戦権を発動して一国と一国がいろいろな理由でやったという、どっちも悪いがこっちも悪いという、そういった意味戦争ではなくて、これはあくまで国連憲章に基づいて、去年の八月二日にクウェートイラク武力侵略して併合した。――いや、イラククウェート侵略して併合したんです。このイラクの間違った行動に対して、国連は何度かにわたって、これはクウェートから引くべきであるということを国連憲章で決めておるわけです。それに対して二十八とも言われる国が共同軍事行動を起こしたということは、これは国連憲章そのものが国際の平和及び安全を維持するそのことを目的にできておって、いろいろ決議をした中で、どうしても平和の破壊とその鎮圧、そしてその除去のために有効な集団的措置をとること、これはまことにやむを得ない最後の手段として決めておる集団的行為なんです。  ですから、これは、やはり平和を取り戻すためには国と国との従来の、いわゆる物じゃなくて、国連決議に基づく平和回復のための共同行為である。武力行使に対しては、これは一日も早く終結することを願いながら、これによって――もしこういう行為がなければ、一体武力によって侵略されたクウェートの現状は、これは放置することになるんでしょうか。そうすると、世界の秩序というものはどういうことになるんでしょうか。  これを八月二日以来五カ月以上にわたって国連の場で協議、そしてソ連も参加した安保理事会において、これはやはり許してはならない平和の破壊だから、国連憲章に従っての軍事的な武力行使が行われた、私はこう理解をしておりますから、これは一月も早く解決することが必要であるという基本は全く同じでありますけれども、原因をつくったのはだれで、平和の破壊を現にしたのはだれだということがわかれば、そこが局面転回をしてくれれば、そこから次々に事態は広がっていくのではないでしょうか。あらゆる機会を通じて、そういったチャンスがあれば日本停戦に向けての、原則的解決に向けての外交努力を続けることは当然のことであります。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大変総理は気長いことを言っておるようですが、私はもう今直ちにこの戦闘状態を停止する、そういうアクションを、そういう政治行動を起こすことが大事だということを訴えておるわけですよ。先ほどからのお話を聞きますと、残念ながらこの戦争は長期化の方向に向かっている。そうして、これから質問をいたしますが、九十億ドルの戦費をつぎ込んでいくというようなことを貢献策の方向に重点を指向していきますと、この戦争はそれこそはかり知れない犠牲を求める泥沼戦争になるんじゃないか、このことを私は政府に警告を発しておきます。  これ以上この問題だけで時間をとることはできません。ただ、国連中心に今の局面に当たって具体的な停戦に向けての行動を起こすことを強く要求をいたしておきます。  そこで具体的な問題に入りますが、九十億ドルの資金援助の問題であります。  これは新聞その他を含めてかれこれ議論もなされているところでありますが、どうでしょうか、この九十億ドルのアメリカ側の要求、この性格及びその積算の基礎ですね、そういったものについて簡単にひとつ説明をしてもらいたいと思います。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほどの御質問の関連で一言だけ冒頭に言わしていただきますが、日本国憲法にも「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する、憲法前文では、そういった平和の追求を日本は国家の名誉にかけてやる、こう書いてあるわけでありますから、私は、それについてはきょうまでも国連に対して、そのような平和努力に対しては全面的に積極的な支持もしてきておりますし、そういった機運やそういった動き、それに対しては、先ほど申し上げたように、あらゆる機会を通じて外交的な努力を続けて,まいります。  それから、九十億ドルについてでありますけれども、これは私自身も、やはりあのような現実の、きょう現在のクウェートの実情というものを見逃しておくわけにはいけません。あそこに国際的な正義と秩序に反する大変なことが起こっておるわけでありますから、それを見逃してしまうわけにもいきません。私はそういった意味において、この平和回復への努力というものに対して、日本はその置かれている国際的な地位、今日好むと好まざるとにかかわらず経済的にはいろいろな影響力を、また政治的にもいろいろなことを期待され、影響力を発揮していかなければならない国の一つになっておるわけでありますから、そこはお互いに、あすの世界の平和の枠組みづくりの中では、やはり暴力でもって秩序を乱してはいけないというこの原則を貫いていくためにもできる限りの支援をすべきである、こういう観点に立って、総合的な角度からそのような平和回復支援を決意したわけであります。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が九十億ドルの支援の目的、性格、積算の基礎を聞いておるのに何も答弁しない、何を考えておるんですか。
  14. 渡部恒三

    渡部委員長 海部総理大臣。ちゃんと答えてください。
  15. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ちゃんと答えております。  それは、国際の平和を回復するために日本としても応分の支援をしていく。それは国連決議日本は支持しておりますし、国連決議の六七八によってあらゆる国に対しては適切な支援が求められておるわけであって、日本もそういったものを願うからそうするわけでありますし、また九十億ドルについては、今日の日本の置かれておる国際経済の中における立場、例えば世界のGNPの日本は一五%近くを持っておる国である、世界貿易の中における日本立場も大きくなってきておる。日本のそういったあらゆる状況を総合的に判断しで、自主的にこれは九十億ドルを支援して、これによって国際的な平和回復活動というものが一日も早く成功をして、あの地域の平和が回復されるように、回復されたらその後に恒久の平和が続いていくように、日本としては力でもってお役に立つことはできないわけでありますから、許される範囲内でそれではこの支援をしよう、こう決めて、九十億ドルを決めたわけであります。
  16. 藤田高敏

    藤田(高)委員 お互いに効果的な、時間が制約されておるわけですから、具体的に質問したことについては具体的に答えてほしい。  そうしたら、私の方から言いましょう。  まず、この九十億ドルは、ベーカー国務長官ではありませんが、アメリカに対する戦費として、そういう性格の金として、表向きは多国籍軍に対する支援ということでありますけれども、ベーカー発言ではありませんが、この九十億ドルは全部アメリカにもらうんだという点からいって、兵器弾薬を含めた戦費に使う性格のものであるかどうか、これが一つですね。  そして二つ目は、積算の基礎というのは、戦争がこのまま続いて、三カ月間続く。一日の戦費が約五億ドル、それで三カ月で四百五十億ドル。その四百五十億ドルの約二割が九十億ドルという形で日本に要請されている。こう伝えられておりますし、私どももそのように理解をしておるんですが、そういう理解で間違いがないかどうか。  このことに関連をしていま一つお尋ねをしたいのは、もう既に昨年の国会で十億ドル、十億ドルという形で二十億ドルの資金援助がなされておりますが、この資金援助は兵器弾薬類、そういったものについては使用しない、こういう前提に立って政府は措置をしてまいりました。そういう性格のものとして、そういう要素を含めて、九十億ドルというものを再び政府は支出しようとしておるのかどうか、この三点について具体的に、簡明にひとつお答えを願いたい。
  17. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アメリカ側の報道によると、今藤田議員おっしゃったこともあれば、そのほかいろいろな報道がなされておることは私も承知いたしております。それはいろいろな立場の人があるわけですから。日本としては、それは先ほどから申し上げておるように、国連決議六百七十八に従って二十八に及ぶと言われる国が平和回復活動に従事しておるわけであります。これを多国籍軍とくくるなれば、その平和回復活動に従事しておる国の行動に対して支援するものでありまして、あくまで多くの国々平和回復活動に対する支援である、これが第一であります。  それから、その計算の基礎について言えということでありますが、いろいろ言われても、アメリカ側から報道されるものもいろいろ差があるし、また、私の方としても考えるときには、日本が今日平和な社会の中でどれだけの世界のGNPを保持する国になり、どれだけの貿易の位置を持っておるのかということをいろいろ考えますと、やはりGNPでは世界のGNPの一四%近く、貿易では九・八%を占めるようになり、いろいろな意味影響力を持つ国になっております。したがって、それらのことを総合的に勘案して判断しない限り、これは今現に先行き不透明で行われておる平和回復のための活動でありますから、それに対して使うということについて、前提も不透明な中で、日本としてはでき得る限りの支援はこれぐらいだということで、これはやはり総合的に判断して九十億ドルという数を決めたことであります。  また、それは前回も湾岸平和協力基金へ出しておるわけでありまして、日本政府としては、今回はこの資金協力でありますけれども、これは国民の皆さんに結局はあまねく負担もお願いしなければならぬ問題になりますから、国民感情にもいろいろな御意見があること、十分よく承知をしております。したがいまして、これらの問題は、平和回復活動のために充てられるものであり、湾岸平和協力基金においていろいろと議論をしてそこで最終的には決定するものでありますけれども政府としてはこれは平和協力に役立つように、食糧とか生活関連とか事務関連あるいは輸送関連、医療関連、そういったことに使われるように充当していく方針を決めております。
  18. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理にしては大変歯切れの悪い、実にわかりにくい、そういう答弁ですね。やはりそのものずばりで、本音でお互い議論をしたらどうですか。私はその点では、これだけ積算の基礎というものについて、今の答弁を聞いておりますと、日本が独自に判断をして、そして九十億ドルを決めたようですけれども、これは大蔵大臣もG7の会議で行かれて、ああいう経過というものは詳細に電波に乗って我々は承知をしておる。こういう経過からいっても、これはアメリカから戦費として要求されたことは間違いないわけですよ。そしてその後、ベーカー国務長官もあるいはアメリカの予算局長も、そういった主要な幹部が次から次へとこの九十億ドルの性格なりその積算の基礎について関連するようなことを言っておるわけですね。そういう点からいって、私が先ほど言ったように、この九十億ドルというものは、積算の根拠としては、三カ月ぐらい戦争が続いた場合に一日五億ドル程度でこういうことになるんじゃないかというのは、今や国民考え方としては常識化しておると思うのです。そういうことにまともに、素直にお答えになられたらどうでしょうか。どうですか。
  19. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのお述べになった報道や考え方があったことも素直に私は知っております。それは聞いておりますが、そのほかにももっと膨大な額を述べる人もあれば、もっと少ない数を言う人もあれば、大体一日五億ドルでこうなるというようなことが私はその数字の根拠として説明を受けたこともありませんし、また、それより上回る数を言う人もあれば、少ない数も言う人もあれば、不透明なものであるというのが本当のところではないでしょうか。本音の議論をして、弾をどれだけ撃って、何カ月かかってと。三カ月と言った人があったって、私は三カ月以内に終わることを期待しながらいろいろなことを対応するんですから、そこで九十億ドルが、それは平和回復のための活動費に対する支援である、そしてやはりそれを出すことを決めるのは、日本政府が、日本としてこれだけの平和を享受し、これだけの立場にある以上、これは平和回復のために協力しようと決めて出すわけでありますから、それはそうであります。
  20. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは抽象的などういう言い回しをしようとも、この戦争に対するアメリカの戦費として九十億ドルを出すということについては、これはもう紛れもない事実だと思いますよ。そのことをごじゃごじゃごじゃごじゃ言ってオブラートで包んだようなごまかしを言っても、これは始まらない。  私は、この積算の根拠にあわせてお尋ねしますが、それであれば、あってはならぬことですが、戦争はさらに長期化するということになった場合に、これはもう九十億ドル以上に追加というものは来ないのですか、そういう来ないような、エスカレートしない性格のものかどうかですね。  これはもう後で指摘をいたしますけれども、これは日本政府は九十億ドルというのは一兆二千億もの増税で、国民に増税を求めて支払おうとしておる金ですね。アメリカは全然これ増税しないんですよ。これも後で具体的に指摘しますけれどもね、アメリカ国民には、アメリカは全然これ増税をしない。去年の秋の九一年度のアメリカの予算で百五十億ドルの防衛費を組んでおる。このうちのわずか五十億ドル程度を使えば、まだアメリカにしてみれば百億ドルぐらい残るような計算の中で増税はしない。日本には一兆二千億の増税をする。そうしてこの九十億ドルの戦費の中身は、あの米ソ対立時代のいろんな兵器弾薬、そういうものを倉庫の中にいっぱい積んでおる、まあいわばスクラップ兵器を排除するための金に使うんだということがアメリカの側から具体的に報道がどんどんどんどん入っておるじゃないですか。そういう性格であるかどうかということを私はお尋ねしておるのですよ。そういう問題の焦点に答弁を合わさないで抽象的なことを言っても、これは私は納得することはできません。  したがって、私は、具体的に指摘をしておるようなそういう積算の大方の根拠があるのかどうか、根拠があるのかどうかということ、あなたが答弁したんだから、総理答弁してください。総理答弁してからどうぞ大蔵大臣。
  21. 渡部恒三

    渡部委員長 どっちが答えますか。  では、橋本大蔵大臣。
  22. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 お許しを得て発言させていただきます。  先ほどそのG7の中において云々という御論議がございました。そして、いろいろな報道が国内にありましたことを私も承知をいたしております。しかし、その時点で具体的に一日の戦費云々といった数字が出てきてはおりません。  その証明として申し上げたいことは、米国議会予算局が一月に発表いたしました「軍事行使に係る追加費用」というものがございます。これには低く見積もった場合と高く見積もった場合と二つのケースが、たまたま今私の手元に資料として置いておりますが、低く見積もった場合、合計の費用として二百八十億ドルというものが想定をされております。そして、高く見積もった場合には八百六十億ドルという数字がここには出されております。  このとおりに、アメリカにおける数字そのものが非常に幅のあるものであり、固定して一日五億ドルといった戦費をベースにしておるものではございません。また、スヌヌ・アメリカ大統領補佐官が述べておりますのに、地上戦が仮に開始をされたとすると一日の戦費は十億ドルに達するということが述べられております。そのように、戦闘の態様によりまして戦費というものが変化をするわけでありまして、固定をされた根拠が云々という点につきましては、そうではないという事実を申し上げたいと存じます。  また、これはよその国のことでありますけれどもアメリカが増税をしないという御発言がございました。アメリカは昨年の十一月五日に増税策を決しております。そしてその内容は、五年間に千四百六十六億ドルの歳入増加策であります。そして、それ以上の増税をする意思がないという発言と私は理解をいたしておりまして、その内容にはさまざまなものがございますが、例えばガソリン税の引き上げでありますとか所得税の最高税率の引き上げ等々、増税が千六百四十六億ドル、減税が二百七十四億ドルでありまして、ですから、増税はしないと先ほどお話がありましたけれどもアメリカは既に十一月五日に決され、ガソリン税の引き上げは十二月一日から行われておりますし、また、一月一日から他の施策も実施されているという事実を申し上げます。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理や大蔵大臣の答弁聞きましても、全く九十億ドルの積算の基礎というものはない、もう極端に言えばつかみ金みたいな感じで、ですから、大蔵大臣がこの九十億ドルの関係で要請を受けて帰ってきた、そうしたら、ある党の幹部が十億ドルふやせ、あるいは九十億ドルだ、百億ドルだなんというので自民党の中でもごたごたしたようなことまでありましたが、そういうごたごたが起こるぐらいであれば、その積算の基礎は何だというぐらいなことはきちっと国民に説明があってしかるべきでしょう。こういう情報化時代で、私が指摘したようなそういう情報によって国民が大方理解をしておるわけですよ。そのことにまともに答えができないなんというのは、そうして、まともに答えができないようなものに対して増税をやる、やれ石油税だ、法人税の値上げだ、たばこだ、こういうわけでしょう。そんなことで国民が納得すると思いますか。九十億ドルというものは戦費であれば戦費、こういうふうにはっきり言ったらどうですか。どうですか。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは何度も申し上げておりますように、国連決議に従って行われておる平和回復活動に当たっておる、その日本の応分の支援であるということであります。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほど大蔵大臣の答弁にも、積算の根拠には、二百八十億ドル説あるいは――ちょっと待ってください。戦費の積算の基礎として二百八十億ドルとかあるいは六百八十億ドル、こういったことはもう既に情報で流れておるわけですよ。大体アメリカのダーマン行管予算局長なりスヌヌ大統領補佐官が同じ日に、たしかあれは二十七日だったと思いますが、片やアメリカのCBSテレビを通じ、片やABCテレビを通じて、当面この戦争の戦費は五百億ドル、その五百億ドルというのは今大蔵大臣が言われた上限、下限があるかしらぬけれども、この二人が、責任ある予算局長大統領補佐官が全米テレビを通じて全国に報道したものが五百億ドル、こう出ておるのでしょう。大体、私が先ほど指摘したように、それはこういう積算の基礎には若干の振れがあるかもわからぬが、一日五億ドルで約三カ月で四百五十億ドルというのは今や一般化しておるわけですよ。そういうものであるかどうかということをこちらが材料を提供して聞いておるのですから、それにまともにお答えになることが当然じゃないかと思うのですが、どうですか。  そして、その性格はベーカーさんも言っておるように、これは、九十億ドルというのは戦費としてアメリカが全部もらうんだということを、これまたベーカーが言っておるわけですよ。これをお認めになりますか。どうですか。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ベーカー国務長官がそういう発言をしたということは、報道で私も聞いております。(藤田(高)委員「おりますね」と呼ぶ)はい。それから、日本政府としてはあくまで、膨大にかかるであろう平和回復活動に対する費用を、日本は何もしないと言ってひとりだけで引いておるわけにいきませんから、あらゆる状況を総合的に判断をして九十億ドルの平和回復活動のための資金として拠出を決断をした、こういうことであります。  そして、その中のまた計算の幅は、アメリカにもそれぞれの立場、それぞれの人によっていろいろな幅があるということは、先ほども詳しく申し上げておるとおりであります。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大変私自身が理解できないぐらいですから、テレビを通してお聞きになっておる国民の皆さんも理解しにくいと思うのですよ。私はあえてお尋ねしますけれども、ベーカー国務長官が言っておるように、これは、九十億ドルは戦費だ、しかもこの戦費は全部アメリカがちょうだいをするんだ、こう言っておるのですね。これをそのまま日本政府海部総理はお認めになりますか。認めるか認めないか言ってください。肯定するか否定するか言ってください。
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのような発言がなされたということは報道で認めておりますが、我が方が提出するのはあくまで湾岸平和協力基金へ前回同様に出すわけでありますから、そこで我が方の考え方も述べて、湾岸協力基金の理事会で決定をして、そしてそれは平和回復のために使ってもらうことになる、こういうふうに我が政府は考えております。
  29. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういうことになりますと、今の総理の御答弁では、GCCにこの金を出して、湾岸協力会議にこの金を出してそこで決めてもらうということは、ベーカーさんの考え方を否定することになりますね。否定することになるわけです。ベーカーさんは全部もらうと言うわけだから。ベーカーのその発言をあなたは否定するのですか。
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 さっきから申し上げておるように、ベーカーさんの発言はベーカーさんの発言ですから否定はいたしません。そのことは聞いて知っておると申し上げておるのです。ただ、日本政府はそのとおり行うのではなくて、きょうまで同機GCC、湾岸平和協力基金へ拠出するんですとこれは何回も申しておりますし、それは二十八とも言われる多国籍軍、それはやはりリーダーシップをとっており、大宗を占めておるのは御指摘のように米軍でありますから、アメリカ中心としたいろいろな平和回復活動の費用というものは、それが大宗を占めることに前回のときもなりましたが、アメリカがすべて使ったということでもないわけでありますし、また今回も、湾岸平和協力基金へ拠出をしてそこの運営委員会で話をして、そこで決めていくんだというのが日本政府考え方でありますから、そこに違いがあることは、これはそのとおりでしょう。けれども日本政府としてはそのような態度をとっていくわけであります。
  31. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この九十億ドルについては一月二十六日ベーカー国務長官の記者会見、この会見の内容の記録も私取り寄せておりますが、それによれば、この九十億ドルは厳格は米国の費用のためのものです、こういうふうにはっきり言っておるのですよ。これはいわば戦費だということをはっきり言っておるわけですよ。そのこと自身を、今海部総理がそう言っておりますけれども、ベーカー、アメリカの意向を否定するようなことはできますかということを一つお尋ねをしておるわけです。  もう一つは、既に十億ドル、十億ドルで日本協力をしておるわけですが、そのうちの九七%までが、総理は今湾岸協力基金、GCCを通してやってもらうんだと、あたかもそこでやればベーカーさんが言っておることとは違うような形で使われるんだというようなニュアンスのことを言っておりますけれども、既に日本が十億ドル出しましたね。あるいはまた十億ドル追加して出したですね。その金のうちの九七%までが米軍に使われておる。だれが言っておるかと言えば、アメリカ日本大使館がそのことを、十億ドルのうちの九七%までがアメリカの戦費に使われておるということを言っておるじゃないですか。これと同じような形のものが、この九十億ドルも戦費として使われるということは余りにも明々白々じゃないか。そのことを私は聞いておるわけですよ。そういうものに使われるのかどうか、そのことを重ねてお尋ねします。
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何%が何に使われておったかという具体的な数字は事務当局から数字を報告させますけれども、私が言っておるのはあくまで、ベーカーさんの言ったことはそれは報道を通じて知っておりますけれども日本政府考え方も何回も繰り返して申し上げておることでありまして、湾岸平和協力基金へ拠出をする、最終的にはそこの運営委員会で決められて配分は行われていく、そのときには、日本側としては何に使われるかということについては、先ほど申し述べたように我が方としても主張をするということになっておりますから。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ベーカーさんは、これは全部戦費としてアメリカがもらうんだ、こう言っておるわけですね。戦費ということになれば、当然兵器弾薬の費用にも使われるということは常識だと思う。きのうの新聞を見ると、兵器弾薬には政府は使わないんだというようなことを言っておるようでありますが、これは事実かどうか、まずお尋ねをしたいと思う。
  34. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私にいろいろわかりやすく答弁しろということでありましたが、何回も言っておりますが、ベーカーさんの意見は、そのとおりベーカーさんが言ったことは知っておりますけれども日本政府の言っておることは、私の言うことが言っておることでございますから、湾岸平和協力基金へ提出をするということでございます。  それからもう一つは、どうするかということでありますけれどもアメリカも、ベーカーさん以外の人もこれぐらいお金は要る、平和回復活動にはこれぐらい要るという、異なる数字をいろいろ言われるわけで、アメリカ自身も根拠を、一人できちっと述べた根拠はありません。私は具体的にその根拠の説明を聞いたことはないということ、これは申し上げておるとおりでありまして、今から戦費は幾らだということを、アメリカだって計算をして有権的に日本の私に説明をしたということはございません。いろいろな報道は聞いております。ですから、その報道を受けて、私は総合的に判断をした。何が総合的とおっしゃるから、先ほど来申し上げておりますように、日本の置かれておる国際的な地位、日本の経済的な影響力、例えば世界のGNPとか貿易総量とかいろいろなこと、また、日本があの地域から受けておる恩恵、そういったようなことを全部総合的に考えますと、その程度のことは日本としてもすべきだということを、これはあらゆる状況を総合的に判断をしたと申し上げる以外にないわけであって、具体的に、戦費は幾らでこれだということは私は言えるところはないと思っております。だから、アメリカの計算でも随分幅があって違うことになっておるということは、これは私は御理解を願わなければならぬことだと思います。  また同時に、政府は、今回の資金協力はあくまでも国連決議の六百七十八号に基づいて、そして加盟国に適切な支援を求められたわけでありますから、それに対して日本はこたえることができる分野においてはできるだけこたえる。こたえたならばどうするか。これは湾岸協力基金の理事会に諮ることになりますけれども、先ほど申し上げたように、従来は輸送関連費用等資金協力に限ってきましたけれども、今回も、輸送関連とか医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費に充てることを予定しておる、そういったことに充てん、充当してほしいということを湾岸の運営委員会で日本は言うわけであります。それを予定しておるということであります。
  35. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではお尋ねしますけれども――いや、そんなのいいですよ。そんなこと聞いてないんだから、私は。そんな時間稼ぎみたいなことやらぬでよろしい。
  36. 渡部恒三

  37. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いや、私が今、先指名されているんだ。私は先指名されているんだ。私は先指名されておるので、引っ込みなさい、そんなもの。私が先指名されているんだから。
  38. 渡部恒三

    渡部委員長 今の細かい質問に答え……
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ちょっと待ちなさい。それは求めてない。  お尋ねします。
  40. 渡部恒三

    渡部委員長 せっかく出てきたんだから、聞いて。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そしたら、私が質問をしてから答えてください。私が質問をしてから答えてください。
  42. 渡部恒三

    渡部委員長 では、藤田君。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 重ねてお尋ねしますが、それでは、総理の見解とベーカー国務長官の見解が食い違ったままでこの九十億ドルというものをお出しになるのですか。これが一つです。それと、この九十億ドルは、既に支出をしておる二十億ドルと同じように、兵器や弾薬といったようなそういう武器支出にはこの金は使わないのですか。これはどうでしょう。その二つ、お尋ねします。
  44. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ベーカー国務長官の意見は、私も報道等を通じてよく承知をいたしております。それから、私の方で決断しました政府考え方がそれと食い違うとおっしゃいますが、それは我が方の自主的な判断でありますから、それは食い違いがあるということはアメリカにも十分既に伝えてあるところであります。違いが出るのは、これはやむを得ぬことだと思います。  それから、先ほど九七%とおっしゃいましたが、その数字が私はいささか違うように思いますから、我が方でわかっておる、報告を受けておる湾岸平和協力基金からの実績等について、ここで局長から数字をお答えさせたいと思います。もう少し、アメリカ日本湾岸協力基金とのやりとりの数字は違っておるわけでありますから、それも報告させていただきます。
  45. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先ほど先生からの、従来の湾岸平和基金に出したお金の使い方に関しまして御質問ございましたけれども、私どもが現在運営委員会から報告を受けております実績を申し上げたいと思います。  御案内のように、湾岸平和基金には十九億ドル、円にいたしまして約二千五百二十九億円を出しておりますが、現在までのところ約七割が支出ないし契約済みでございます。その対象となっておりますのは十カ国ございまして、これを全部申し上げますと、アメリカ、イギリス、シリア、エジプト、モロッコ、バングラデシュ、セネガル、パキスタン、サウジアラビア、フィリピン、以上十カ国でございます。これらの国に向けまして約千七百二十八億円が支出ないし契約済みでございまして、その中心は、先ほど総理も御答弁で申しておられましたけれども湾岸に兵力を展開しております中核はアメリカでございますので、アメリカ向けが中心でございますが、数字は約九一%でございます。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が先ほど何回かお尋ねしておりますが、食い違ったままこの九十億ドルを支出するのかどうか。この点、総理アメリカにも日本政府考え方を伝えたと言っておりますが、これは伝えっ放しであって、アメリカがどう答えてきておるのか、これを明らかにしてもらいたいと思うのですね。そして、先ほどから何回も言っておるように、この九十億ドルは、ベーカー国務長官が言っておるようにこれは戦費であることには間違いないんですねと、そして兵器弾薬の費用はこれには含んでいるのか含んでいないのか、こういったことについて先ほどから答弁ないのですよ。少し委員長も注意してください。
  47. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは何度も繰り返すようになりますけれども、ベーカー国務長官の……
  48. 渡部恒三

  49. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 発言の許可を得て発言していますが、委員長が待てとおっしゃるのですか。
  50. 渡部恒三

    渡部委員長 いや、まだしてない。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そうですか。わかりました。
  52. 渡部恒三

  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 もう一回申し上げますけれども、ベーカー国務長官の九十億ドル発言、しかしほかの人はそれと違う発言もしております。例えば政府がいろいろなことを決める、これはベーカー長官に言われて、それと全く同じことを言わなきゃならぬという考え方を私は持っておりません。日本政府としてはこういうことをできますという内容を決めて言ったわけでありますし、ベーカー長官以外の方の中には、その日本の貢献に対して、多国籍軍に対する日本のなし得るこういった支援は評価する、そういうコメントも出ておるわけで、ただ、これはアメリカ日本との二国間で決めていくんじゃなくて、湾岸平和協力基金の運営委員会で最終的には決めることになっておるのでありますから、そこへ日本政府は九十億ドル出すということを言っておるのでありますから、そこがアメリカのベーカー長官の言い分と違っておると言われれば、それは違っておる、結果として違っておりますということを申し上げる、それが事実だと思います。
  54. 藤田高敏

    藤田(高)委員 国民に増税を求めてまでこの九十億ドルの戦費を支出するのに、そういう重大な点が不明確なまま、食い違ったまま出すなんということは、これはもう許すことはできないんじゃないか、こう思います。  それで、私はあえてお尋ねしますが、これは戦費であることについては日本政府も認めているんですね。これははっきり答えてほしいと思うんです。  それといま一つは、何度もお尋ねしておるんですが、委員長からも注意してもらいたい。この金の中には兵器弾薬類にかかわる戦費は含まれているのですか、いないのですか、これはどうですか。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはまた繰り返しになりますけれども国連決議の六七八号に従って、湾岸の平和を回復するための国際社会の共同行動に対するコストがかかるからそれに適切な支援をしろというのが国連決議でありますから、この決議と要望を受けて、そこからは私の方、日本政府が独自の判断に立って、日本の今世界において占めておる立場、世界の、地球上のGNPの一五%近くを持っておる国、貿易の総量が一〇%にも近くなってだんだん大きくなっておるということ、好むと好まざるとにかかわらず世界と日本との相互依存関係が非常に高まっておるということ、貿易黒字も昨年は一年間で五百二十四億ドルに上っておるということ、そういう平和な状況の中に日本が置かれ、今日平和をお互いに享受しておるわけでありますから、そういう国として、その秩序を暴力で乱すようなことを放置できないから、日本としてできるだけの、応分の協力をすべきである、こう考えた考え方の基礎を説明しておるわけでありますから、どうぞそれは御理解をいただきたいと思います。
  56. 渡部恒三

    渡部委員長 ちょっと待ってください。――続行してください。
  57. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はかなりわかりやすく質問しておると思うのですけれども、重ねて言いますけれども、それではこの九十億ドルは、兵器弾薬を含む、そういう戦費であるかどうか、これが一つ。そして、先ほどから言っているんですが、この九十億ドルの積算の基礎は、何だかんだとこう言うんですけれども、積算の基礎はきちっとしたものがあるのかどうか。積算の基礎のないものを、これは出せぬですからね。これは増税までやって出せませんから、その積算の基礎があるのかどうか。それともう一つ、あえて言えば、この九十億ドルの中には兵器弾薬の費用が入っているのかどうか。この三つ、ノーかイエスかで答えてください。
  58. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 申し上げますけれども、何回言っても同じだと言っておしかりになるかもしれないが、積算の基礎とおっしゃるけれどもアメリカ自身も、この湾岸平和回復活動にどれほど費用がかかるかということについては物すごい幅のあること、人によって言い方が違うこと、これは報道を通じても御承知のとおりではないでしょうか。ですから、その中の一つだけとらえて、これが積算の基礎でこれに従ってやろうということは、不透明な状況のもとでは間違いが起こるのではないでしょうか。アメリカ自身の積算問題にも非常に幅がありますから、協力する側の日本としては、それを全額もし持てということになれば話は全く違いますが、応分の適切な支援をしろということでありますので、では日本としては、どれだけかかるか、膨大なものがかかるだろう、だからできるのはこれぐらいだなということを決めるために、今申し上げたような日本の経済力や貿易量や平和の中で今享受しておることを全部総合的に判断して決めたということでありますから、そう御理解をいただかないと、その大前提となる数字すらないわけでございます。はっきりこれは申し上げさせていただきたいと思うのです。  それからもう一つは、湾岸平和協力基金へ出して、あの地域の平和協力のために使ってもらうという大きな願いを持っておりますから、そこに充当するものは、従来の輸送関連に加えて、今回は医療関連、食糧、生活関連、事務関連など、それらの経費に充当する方針で湾岸の運営委員会で決定される、我が方としてはそれに充当する考えでございますと申し上げております。
  59. 藤田高敏

    藤田(高)委員 お互いの、個人の生活に引き直して考えましても、これだけのお金は要ると、仮に九十億ドルのお金が要るという場合に、日本の金に直して仮に一兆二千億ですが、一兆二千億は何に使われるんだろうかというものが不明のまま、何だかこうぼやっとした総合的な関係で金を出すんだなんということは、本会議の我が党の同僚議員の質問じゃないですけれども、地方自治体が国に国庫補助を求めてきたりする場合は、こんなに資料をたくさんなにして、積算の基礎をきちっとして政府に求めるでしょう。そこまでいかないにしても、アメリカ側からも言っておるように、例えば三カ月間この戦争が今の規模で続くとすれば約五百億ドル要る。そのためにはサウジが百三十五億ドル、あるいはクウェートが同じように百三十五億ドル、日本が九十億ドルということになれば、おのずからこの四百五十億ドルなり五百億ドルというものは出てくる。アメリカ側もそういうものを前提にして、大体日本協力は満足しておると、こう言っておるんでしょう。それは何に使われるのか。戦費に使われるんでしょう、兵器弾薬にも使われるんでしょうと、こう言っておるんだけれども、肝心なことは何にもお答えにならない。兵器弾薬、使わないのですか。そこだけ言ってください。
  60. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も申し上げますが、我が方は、あの地域平和回復のために湾岸平和協力基金へ九十億ドル拠出をしようということを決めたわけです。その大前提となる、何日間で戦争が終わって、一日幾らかかって、何発撃てばどうなってというようなことはだれも予測できないし、アメリカ側にも大変な計算の幅の広いものがありますから、そのどれか一つだけをとらえて、それがこうだというようなことはここで御報告するわけにはまいらないし、我が方が決めるときはあくまでそういった情勢全部を踏まえて決めたということでありますし、また湾岸平和協力基金の運営委員会で最終的には決定しますが、日本政府としては、従来からの輸送関連経費に加えて医療、食糧、生活、事務関連等のそういった経費に充当してもらうという方針でおります。
  61. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そうすると、これはここだけでとどまるわけにはいきませんが、結局、米国にもいろいろな意見があると言うが、何といっても国を代表する発言としてはベーカー国務長官の発言が一番重いと思う。そういう場合に、アメリカ側の意向と日本の意向、ここには、この九十億ドルの支出に当たって、性格の問題については食い違ったまま九十億ドルを支出する、こういうふうに理解せざるを得ないわけですが、それでよろしいかどうか。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 食い違っておるということは、ベーカー長官の言った記者会見の内容、そして私が政府として決めた方針、これが食い違っておるということは御指摘のとおりですが、両方ともに湾岸に平和を回復するために国連決議に従った平和回復活動を一日も早く成功させようという基本は全く同じでありますから、それに向かって応分の協力をするということを、日本日本立場で決めて実行をしていくということでございます。
  63. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大変残念ですけれども、積算の基礎についても極めてあいまい、そしてその使い道についての性格も納得することができない。この兵器弾薬には使わないということは、去年の国連平和協力法以来、日本がこの種の支援をする場合にはそのことは絶対に使わないということを、外務大臣あるいは大蔵大臣、総理含めて御答弁になっておるわけですよ。これはもう一々議事録を私出しませんけれども、そのことはもう明々白々なんです。そういったことについては、これほぼかしたまま進もうとしておるわけですね。少なくとも、この九十億ドルも兵器弾薬類には使わないということはお答えできませんか。
  64. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは何度もお答え申し上げますが、私の方は、一日幾らお金が要って、何日かかってということは予測のしようがありませんから、根拠についてはどれだけお尋ねいただいても、具体的な説明を受けたことがありませんので、いろいろな状況を判断して拠出をしようと、それから、拠出をするのは湾岸平和協力基金へ九十億ドル拠出をするということは何度も申し上げますし、湾岸平和協力基金の運営委員会に拠出をすれば、今度はそこでは、従来の輸送関連経費とともに医療、食糧、生活関連、事務関連等の経費に充当していく方針で我が方は臨んでいきます、これを申し上げております。
  65. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、もう時間が大変このことで堂々めぐりになりまして食ったものですから、次に進みますが、私は、少なくとも質問者として、この九十億ドルの積算の基礎は理解することはできません。了承することはできません。そして、この戦費であるかどうかという点については、これまたアメリカの戦費に使われるということは、これは今やもうアメリカ政府の言明からしても否定することはできない性格のものである、そういうものに対して日本政府が増税によってまでこの資金調達を援助をしようとしておるんだ、こういうふうに私は理解をして、そういった九十億ドルの支出については了承することはできませんということを明確にして、次に進みたいと思います。  そこで、三つ目の問題は、自衛隊の海外派遣の問題であります。  時間もありませんから率直にお尋ねしますが、総理、去年の臨時国会の国連平和協力法が廃案になったというのは、これはどこに原因があったんでしょうか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 与野党の間でいろいろ議論をいただきましたが、結果として審議未了になりました。その根本的な原因の一つは、私は、あの平和協力法案というものは、明確に武力による威嚇または武力行使を伴わないものという大原則を前に置いてできておる法案でありましたけれども戦争か平和か、憲法違反ではないかという角度の御議論の中で妥結点が見出されずに審議未了になったことでありまして、甚だ残念なことであったと心得ております。
  67. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大変責任を他に転ずるような御答弁でございまして、私はこれほど、戦後四十数年、自衛隊を海外に出すかどうかという点については国の根本方針として議論をされてきた。私は一口で言えば、この国連平和協力法が廃案になった最大の原因は、自衛隊を海外に出すことはいけません、これがいわゆる国会の結論として出されたと思うんですよ。そういうはっきりした事実認識がなければ、これは私は大変な問題だと思うんですね。総理どうですか、自衛隊を海外に出すことがいけないという結論になったんじゃないですか。
  68. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法によりますと、武力の威嚇、武力行使を伴う、そういった目的を持って武装部隊を他国の領土、領海、領空へ出すことは海外派兵となって、これはいけないということが国会の議論の中でいろいろ言われてきておる問題であることは、私もそう受けとめました。ただ、ですからあの法案には、武力行使武力の威嚇を伴わないものということを冒頭にきちっと条文の中に書いてあるわけでありますから、それは海外派兵とか憲法違反の問題ではなくて、日本として新たなる国際社会に対する協力の中で何ができるだろうかということを模索してあの法案を提案したのでありますが、残念ながら先ほど申し上げましたように武力行使と紛らわしいような議論になって、戦争か平和かという議論になった。戦争をやりに行こうというのではなくて、平和を回復するための協力をしたいということまでいけないという問題ではないと思って私どもはいろいろと御説明をしてきたわけであります。  ですから、あくまで武力行使を伴わない、武力の威嚇を伴わないという大きな枠の中で平和的協力の方途はないのだろうか、これをいろいろと模索したわけであります。結果はそうなっておりますから、自民党は――ですから答弁しているのです。そういう意味で、廃案になったことは、国会で審議未了になりましたから残念ながら廃案になりましたということを申し上げておるわけであります。
  69. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そういった国連平和協力法を審議したそのときのことをあれこれ聞いているのじゃないのです。なぜこの重大な法案が、法律がああいう形で廃止になったか。最終的には自民党さんも、これは取り扱いを含めて廃案にせざるを得ないだろうという結論になった最大の原因は、自衛隊を、平和協力隊という名においてですよ、海外に出すことの是非について、自衛隊を海外に、外に出すことはいけませんということが最大の原因になってこの法律が廃案になった、こういうふうに私は理解するのですよ。そうじゃなかったですか。あれだけの時間をかけてやった結論はそこにあったと思うのですよ。そのことを含めて、総理はどういうふうにその責任を感じていますか。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法によって禁止をされておりますものは、武力行使の目的を持って武装部隊が海外に出ていくということである、それから、武力行使を伴わない、そういった国際社会平和回復のための協力、これは憲法の禁止するものではないという議論をしたのでありますけれども、それは、その議論の中でいろいろな問題について、審議未了になったということはそのとおりでありますが、自民党、公明党、民社党三党合意に基づいて、新しい国際社会に対する協力はいかにあるべきか、お金だけ出して知らぬ顔しておるのはいかにもいけないということはあの議論を通じて深まってきた問題だと思います。だから、そういった意味で今後いかなる形で協力ができるかということは今鋭意成案を得るべく、これは別の次元の問題でありますが、努力を続けております。
  71. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の質問に対してすりかえ答弁が多いのですね。全くすりかえ答弁が多い。しかし、そこだけでこうやっていたら、全く私は、極端に言ったら、答弁で時間稼ぎをやられて肝心なところが議論にならない。ですから、私は前に進みますけれども。  この国連平和協力法が廃案になった最大の原因は、だれが何と言おうとも、自衛隊を海外に出すことはいけませんというのがこの国会の意思であったと思うのです。この厳然たる事実を否定するようなことを言ったのでは始まらない、このことだけはきちっと踏まえてもらいたいと思うのです。  そこで申し上げたいのですが、今ちょっと出ましたけれども、この国連に対する平和協力のあり方、これについて、実際これ、二カ月も三カ月の間政府は何をやったのか。何もやってないでしょう。それは三党合意も大事ですよ。私ども社会党は独自の国連に対する平和協力機構というものを、そういうものまで出しておるわけですから、そういうものについていわゆる一つのコンセンサスを求めるような政治的な努力は今日まで何もない。私はそのこと自身でもうこれ以上議論しようと思いませんが、やはりここまで、自衛隊機を飛ばすとか九十億ドルの金を出すとかという問題以前のこととして、そういうことの合意を図る努力は、これは政府の責任においてやらなきゃいかなかったんじゃないかということを申し上げておきます、この問題の所在として。  そこで次に進みますが、今度自衛隊法の、自衛隊機を派遣することですね。これは政令で、自衛隊法百条の五にいわゆる特例政令をつくって派遣する、こういうことですが、総理はこの問題の処理に当たって、本来筋であれば、筋論からいけば、あなたはよく原則だ、やれ国連決議の何はこうだと言うのですが、これは筋論から、原則からいけば、やはり自衛隊法、法律を改正しなければできなかったことじゃないでしょうか。これは過去の、後で指摘をいたしますけれども、もう何度かこの議事録の中を通して見ても、自衛隊を海外における邦人を救出する場合といえども、これは法律の改正なくして、政令では今回のような自衛隊機を飛ばすこともあるいは自衛隊を海外に出すこともできませんというのが、これはもう国会の意思であり内閣の意思であったと思うのです。どうですか、筋としてはこれは法律を改正しなきゃ、総理、できないんじゃないですか。今もそう考えられておるのじゃないですか、腹の中では。どうですか。
  72. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな御意見やお考えのあることは私もよく承知しておりますが、しかし現在自衛隊法という法律に今御指摘いただいた第百条の五というのがありまして、そこに国賓、内閣総理大臣及び政令で定める者、こう明らかに書いてあるわけでありますから、法律の根拠がありますので、素直にそれを読めば、その内閣総理大臣及び政令で定める者というのは、必要なときに政令できちっと定めればこの第百条の五によって行い得る授権の範囲内である、こういうふうになるわけでありますから、素直に読んでそうなるわけでありますから、それで私は政令をきちっとつくることによって第百条の五において根拠がある、行い得る、こう判断をしましたし、そのような措置をとって準備をしたわけであります。
  73. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今総理がおっしゃっておるのは百条の五ですね。自衛隊法の百条の五の中に「その他政令で定める者」、これを引用してやれるんだということでありますが、この百条の五を設定するときの国会の論議はどうであったか。  これは時間の関係もございますから、例えば昭和六十一年十二月四日の参議院あるいは昭和六十一年十月二十八日の自衛隊法百条の五による輸送について。前段のことも、大体参議院も同じでありますが、あるいは同じく昭和六十一年十一月二十日の衆議院内閣委員会の自衛隊法百条の五、いわゆる国賓等の輸送の警護についてという、やはり百条五の論議ですね。さらには、同じく昭和六十二年八月二十日衆議院内閣委員会における自衛隊法百条の五と海外邦人の救出について。こういう百条の五に対する議論があったときの答弁は、その一つの代表的なものを紹介しますと、政府答弁としては、先ほど防衛庁から答弁があったように「その他政令で定める者」の内容はまさに政令で定めるわけですが、国賓、内閣総理大臣というような例示、列挙がありまして、この例示、列挙されたものとおよそかけ離れたものはこの百条の五には該当しないのです、こういうことをはっきり答弁をしております。  特に、時間の関係で私の方から材料を指摘いたしておきますが、現在防衛庁の防衛事務次官である依田当時の官房長ですか、彼の答弁も、百条の五による海外邦人の救出に当たっては、海外邦人の救出ということになりますと、武力行使なんという場合はもろちん海外派兵で、憲法上は認められておりませんが、平和的手段で救出するという場合においても現在の自衛隊法では任務が与えられていない、したがいまして、この百条の五でそこまで読めないというように考えておりますので、その場合には自衛隊法の改正が必要であります、極めてこれ、明快なんですね。いわゆる自衛隊法に自衛隊が海外に出ていくことについての任務規定がない、法律に任務規定のないものを政令でやることはできませんと、これはもう日本人の、邦人が海外におるのを救出することについてもできませんと、こう言っておるのですよ。  今度の場合は難民の救済ですね。私どもはこの難民の救済については今別途いろいろな救出の方法を考えておりますけれども、法律上は今度の法律改正はこういう過去の経緯からいってできないことを、法律改正をやるとこれは時間がかかる、あるいは二院制度の関係からいってこの法律が通るか通らぬかもわからぬ、そういったことまで考えて、こういうこそくな手段でいわば法治国家の根本を否定するような、政令によって法律を動かすような、こういう不克上的な手段を選んでおると思うのです。これは日本国の国会の名誉にかけて、この種のことは絶対できないと思うのですが、どうですか。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国が法治国家であることは当然のことでありますけれども、私は、この問題が起こって、そして関係国際機関からも要請があるというならば、どこで読めるだろうか、いろいろ考えてみました。第百条の五には「内閣総理大臣その他政令で定める者」となっておるわけです。ですから、この法律を、法律をきちっと素直に読むということが法治国家においてはこれは政府のとるべき態度であると私は思うのです。ですから、この法律が内閣総理大臣に限るとでもなっておれば別でありますが、「その他政令で定める者」と書いてあるのに、内閣の責任で政令を定めた場合に、それが法治国家に反する、下克上だという御指摘は当たらないのではないでしょうか。忠実にこの授権に従ってやっております。明確に書かれております。
  75. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは余り詭弁を弄したり、無理な解釈をしてこじつけ論で問題の結論を出すほど簡単なものじゃないと思うのですよね、自衛隊が外に出るかどうかという重大な問題ですから。  そこで、私はあえて指摘しますが、過去、この百条の五によって自衛隊が動く場合には、百条の一として国内における土木工事の受託をやる場合、二つ目には教育訓練で、特定な教育訓練の目的を持って外に出る場合「あるいはオリンピックに代表されるような運動競技会に対して自衛隊が動く場合、これは国内ですね。あるいは南極観測に関するような平和目的を持って科学的な活動に協力する場合、そしてこの間のような東京サミットのときに、外国から来た国賓を国内輸送をする。国内輸送をするように限定されたものであっても、百条によって、一、二、三、四、五というふうにその都度国会で議論してきた、法律改正について。そのことの是非を国会で議論したことが、今先ほど私が読み上げたのがその代表的なものであります。  この常識からいって、政府答弁というのは、内閣法制局を含め、内閣総理大臣の答弁を含めて、今回、このように海外に自衛隊を派遣するような場合には、法律を改正しなければ、これは今日の自衛隊の法律には自衛隊の任務規定というのが入っていないから、自衛隊員を海外に出すことはできませんというのは、これはもう一致した見解だったんです。一致した、だれ人もこれは否定しなかった。それを今度政令で自衛隊を動かそうとしておるわけですから、これは依田防衛庁の現次官の発言ではありませんけれども、これは全く過去の政府見解を否定することになるんじゃないですか。  そういうことは、お互い決めてきたことを立法機関みずからが――今日、三権分立の建前からいっても、国会は言うまでもなく国権の最高機関ですよ。最高機関のやるべきことを内閣が、行政府がこの立法機関を拘束し侵害するようなことは、絶対これは法治国家としてできない。これを認めるということになれば、これはまさに行政のファッショですよ。イラクフセイン大統領のやっておることを笑えないですよ、これは。そんなことを指摘できないですよ。私はそういう意味で、この自衛隊を政令によって派遣しようとしておることは直ちに中止してもらいたい、このことを要求して政府の答弁を求めます。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラクフセイン大統領があのような無謀なことをやる結果において被災民が出るというときに、その被災民の対応にいろいろ場合があることは承知しております。したがって、既に国際機関から要請を受けて、なすべきことはいたしました。でき得ることで、既に民間航空の四便がカイロまで飛んで運んでおることも事実であります。しかし、いろいろな面、場合を想定して、政府としては、これは人道上の問題であり、非軍事的な面でありますから、法案を考える前に、自衛隊法というものをずりと去年来勉強もしてきました。けれども、この法律にもやはり「内閣総理大臣その他政令で定める者」と書いてあるわけでありますから、この法律を素直に読んで、政府の責任においてこれは政令をきちっと決めて、非軍事的な、しかも人道上の面で国連機関からの要請にこたえるべきである、これが国際国家としての責任でもあり、人道上の対処である、こう判断して、行政府の責任で政令を決めさせていただいたわけでございます。御理解をいただきたい。
  77. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、先ほどから事例を挙げて、過去の国会審議の結論は、この種の場合の対応策として、法律改正をやらずして自衛隊を海外に出すことはできない、これは国会の意思であったと思うのです。その点について、政府の今日までの今私が指摘した解釈を否定するのかどうか。これは、そんなことはできないと思うのですよ、先ほどから指摘したように。その点をひとつお答え願いたいと思います。
  78. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回湾岸に起こった状況というものは、全く新しい事態が前に出たわけで、それに伴う人道上の問題で、非軍事面の問題でなし得ることをこの百条の五に基づいて政府は政令をきちっと決めて、それで追加をすることによってなそうとしたわけでありますが、専門的な問題について御必要ならば、法制局長官からお答えをいたします。
  79. 藤田高敏

    藤田(高)委員 法制局なんか私は求めてないんだから。
  80. 渡部恒三

    渡部委員長 いや、法律の今、解釈の問題だから、せっかく答えに来ていますから。  法制局長官。
  81. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 委員にお答え申し上げます。  ただいま自衛隊法の百条の五に基づきます政令の件でお尋ねがございました。法律的な見地から、多少敷衍して私の方からお答え申し上げたいと思います。  まず第一に、過去におきましてのこの百条の五が追加されましたときの答弁、これとその際の話と食い違うんではないか、あるいはそういうふうなお尋ねであろうかと思いますが、実はこれは海外邦人の救出等につきまして過去に政府委員の答弁があることは御指摘のとおりでございますが、これは自衛隊に海外邦人の救出というものを一般的な任務として与える、こういうことにするためには、任務を付与する明確な規定が必要であろう、こういうことでございますが、今回のような特に人道的な見地から緊急に必要とされる、こういうふうな臨時応急の場合、ここまで想定したものではまずないということが一点でございます。  それから第二点といたしまして、かけ離れているというふうな答弁のあることもまた事実でございますが、この百条の五というのは、実は「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」と書いてございます。この「国賓、内閣総理大臣」といういわゆる代表列挙したもの、これは決してVIP、いわゆるVIPといったような高位高官を念頭に置いたということでは必ずしもないわけでございまして、むしろその者の置かれた状況なり、国としての輸送の必要性なり、こういうものから規定されるところでございまして、そういう観点から、いわゆる今回の避難民、これを臨時応急のものとして政令で指定していく、かようなことは決して外れたものではない、かように考えております。
  82. 藤田高敏

    藤田(高)委員 内閣法制局長官の解釈も聞きましたが、これはまさに先ほどから言っているように、我々が過去いろいろ議論をしてきた法律解釈を曲げるものだと思います。邦人の救出について人道上というけれども、難民救済の問題も人道上という。過去の議論でも、邦人を救出する場合の議論というのは、やはり人道上の問題だったのですよ。同じ人道上の問題が、過去においてできなかったことが、今度だけ難民の救済に、自分の国の国民を救出することさえ自衛隊の派遣が人道上できなかった、それが今度だけできるような、そういうねじ曲げた法律の解釈なんというのは通用しない。しないですよ、これは。我々はそういう意味において、国会のシビリアンコントロール権を否定するようなそういう行政の、今回行政がやろうとしておる自衛隊の派遣は認めることはできない。過去の法律解釈を否定するようなことは認めることはできません。(発言する者あり)
  83. 渡部恒三

    渡部委員長 では、質疑を続行ください。藤田君。
  84. 藤田高敏

    藤田(高)委員 政令の効力というのは、これはもう言うまでもなく法律を媒介として、法律にかくかくの規定がある範囲内で政令というものは機能し、効力を発揮するというのは、これは常識です。憲法があって法律があり、法律があって政令がある。今度の場合は、この政令によって法律をこう規制しようとしておるわけですから、これはもう法治国家の根本原則を否定するものであり、今日までの国会で議論をしてきたこの自衛隊法の百条の五の解釈を否定するものでございまして、私はみずからの良心において、政治家の良心において、このような国会の権能を行政府の力でねじ曲げられるようなことは断じて許すことはできない。そういう意味において、これ以上私は審議することはできません。
  85. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 政令で法律をねじ曲げることは許されないとおっしゃいますが、それはそのとおりでしょう。しかし、既に国会でできておるこの自衛隊法の第百条の五は、「国の機関から依頼があった場合には、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる。」これだけ書いてあるんです。そうしたら、これはどうしてそのときにこの法律に「政令で定める者」ということが出ておるんでしょうか。これはおっしゃるように、法律に従った政令で定めなさい、政令で定めもしない者を運ぶことはいけないけれども、政令で定めた者は運んでもよろしい、本来の任務に支障の来さないようにやれ、こう書いてあるわけでありますから、私は政府の責任においてこの「政令で定める者」ということを政令できちっと書いた場合には、この百条の五の授権の範囲内であって、どう考えてもそのようにこの第百条の五は読むことができるものである、こう考えましたから、法制局長官にも答弁をいたさせたわけでございます。
  86. 渡部恒三

    渡部委員長 じゃ、藤田君。じゃ、藤田君。――藤田君に申し上げますが、総理も一生懸命答弁ているようですし、しっかりした、わかりやすいしっかりした答弁を総理もしてください。じゃ、藤田君。
  87. 藤田高敏

    藤田(高)委員 委員長に一言申し上げますが、総理は一生懸命で答弁しておると。私の方も一生懸命質問しておるんですからね。これは率直に言って真剣勝負の気持ちで私はまじめにやっておるつもりです。私は、今審議が一時こういうことになりましたが、国権の最高機関である国会の権威を守るために、私は今皆さんで御相談願っておる間、質問を控えたわけでございまして、単なる従来の国会審議が一時ストップしたりする性格とは今回のこの問題の所在というのは違う、この認識だけはお互い冷静にかみしめる必要があるんじゃないでしょうか。これは、お互いに国会議員として、しかもこの立法機関の権威を守っていく、それこそ国会の名誉ある地位を守っていくためにも、今の議論というものは、法律、政令によって、これは解釈はいろいろあるかもわからない、百歩譲って。しかし政令によって法律を動かすようなことは、これは私どもとしてはできないと思うのです。さればこそ総理もああいう記者会見の談話にもなったと思いますし、自民党の皆さんだって、やっぱりこれだけ議論をするようなやり方をしないで、人道上の問題であり、国連からの要請があってやるというのであれば、法律改正で堂堂とやったらいいじゃないか。堂々とやったらいいじゃないかというのは自民党の諸君の中にも良心としてあると思うのです、私は。そういう正攻法でお互い議論をし合うことが私は大事じゃないかと思うのですよ。  そこで私は、私の見解を申し上げますが、意見を出しますが、今日までの国会でお互いが認め合ってきたことを政府は今回は否定するのかどうか、この点をもう一度確認をしたい。  いま一つは、この自衛隊機を派遣しようとしておるわけですけれども政府は、政令の改正によって派遣しようとしておるのだけれども、これは国連から正式な要請があったのでしょうか。私は、これは国連からは正式な要請がないと理解しておるのですよ。口を開けば国連国連、こう言う。言うけれども国連からこれは正式な要請があったのでしょうか。その点をひとつ明確にしてもらいたいと思う。
  88. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まず第一の点でありますけれども、従来の政府の解釈というものを否定するのではありません。これははっきり申し上げておきます。  今回起こったことは、従来起こったり、従来議論の全くなかった問題でございます。サダム・フセインが出てきてこのような横暴なことをするということは、起こる八月二日までだれしも予測もしなかったことではないでしょうか。したがって、新しいこのような事態に対する対応を政府は判断をした、こういうことでございます。ですから、それについては、百条の五の文言で「政令で定める者」と書いてありますから、政令で定めて政府の責任を果たす、こういうことでございます。これが第一であります。  IOMというのは国連国際機関であり、そこから一般的要請が来て、それについては局長から答弁をいたさせます。――要請が来ておりますから、答弁させます。
  89. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生に御答弁申し上げます。  第二番目の御質問は、避難民の移送の問題につきまして国連から要請があったのかどうかという御質問かと思います。  事実関係の問題、今後この委員会でも相当いろいろ御質問があろうかと思いますので、事実関係を整理させていただきたいと思います。  まず第一点、国際社会におきましては、避難民を扱ういろいろな機関がございます。その中には国連の機関もございます。しかし、このIOMは国連の機関ではございませんで、避難民の移送ということを国連から委任を受けて担当しておる機関でございます。  まず、その国連から委任を受けておりますこのIOM、国際移住機構と呼ばれておりますが、これが一月の十七日の段階で、今後湾岸でいろいろな戦争が起こった場合に避難民が非常に大量に流出してくるであろう、そのときに備えまして、各国がどのぐらいの飛行機、船舶を出せるか知りたいという要請を一月の十七日に日本を――今御説明申し上げております。そういう書簡を日本を含む三十三カ国の国に出しております。  IOMといたしましては、いろいろな国がどのぐらいの飛行機を提供してくれるのかという情報を集めておりまして、それを受けて、一たんいろいろなことが起こったときに、それではこの国にはこの程度頼む、この国にはこの程度頼むというのが二つ目に来る具体的な要請でございまして、この点は、先般の一月二十八日の本会議におきまして総理大臣から土井委員長に対しまして次のような答弁をいたしておりますが、そこにも考え方は明確にあらわれてございます。  「現在、現地情勢の把握を含め所要の準備、調査を行っておるところであります。なお、難民輸送の経路の問題を含めて、現地の情勢、国際機関からの具体的な要請を踏まえて行うものであります。」そういう意味での二段目の具体的な要請というものはまだ来ておりません。しかしながら、一般的に日本としてどのような準備をできるかという要請が来ております。検討して回答してほしいという要請が来ておるわけでございます。
  90. 藤田高敏

    藤田(高)委員 今の国連局長の答弁を見ても非常に明快でありまして、正式な国連からの要請でないということ、それはもうIOM自身が、これは国連の正式な機関でないということが一つですね。したがって、国際機関ではあっても国連の直接の機関ではないということ。そういう機関が、政府に対して、具体的な要請ではなくて、いわば事前調査的なそういう照会が来ておる、それに向けて今政府がやろうとしておるのは、法律を曲げてまで自衛隊機を飛ばそうとしておる、こういう事実行為だけは明確にしておかなきゃいかぬと思うのですね。私は、今そういう状態にあるということは、今の答弁を聞いても事実問題として否定することはできない、そういう無理をしてまでこの自衛隊機を派遣することについてはやはり慎重でなけりやいかぬ、我々の立場からいけばこれはやっぱり中止しなきゃならぬ、こう思うわけであります。  それに対する見解をお尋ねすると同時に、難民避難の問題について、自民党の調査団等が現地に行ってあれこれしておりますけれども、何だか、ヨルダンだったらヨルダンとカイロの間を自衛隊機がどうだこうだと言っておりますけれども、ヨルダン自身も正式にこの自衛隊機を受け入れるなんということはまだ言ってないわけですね。あそこを飛びますと、ちょうどイスラエルの上を飛ぶんです。戦闘区域です。国連平和協力法のときでも、後方支援でいろんなものを運ぶにしたって、危険な区域には平和協力隊は入れないんだとさえ言ってきた。それが今度は、この戦闘区域の中に入れるというわけでしょう。そういう現実的に想定されることを考えても、これはまあ極めて重大な問題でありまして、私どもは、それにかわるべき手段として、アンマンからアカバまでバスで、そして海路で、それからまたカイロにという形で、陸路による輸送をやれば十分手段方法があるということも考えておるわけでございまして、この自衛隊を使うことについては、そういう現地の事情を考えても大変これは無理であり、やるべきではない、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  91. 渡部恒三

    渡部委員長 国際連合局長、先に説明して、それから総理にしっかりした答弁を。
  92. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  もう一度繰り返して申し上げたいと思いますが、第一点、それは、国際移住機構と申しますのは、先ほど申し上げましたとおり国連の委任というものを受けて人道的な分野で、避難民の移送という分野で活動しておる立派な国際機関でございます。日本といたしましては、そういう国際機関の要請により、先ほど申し上げましたとおり、まず第一に、要請があった場合には民間機を活用する、民間機を活用できないような場合には必要に応じ人道的な見地から自衛隊の輸送機にも輸送をお願いすることがある、こういう考え方で対応してございます。  先ほどの二つ目のアンマン―カイロの問題でございますけれども、先般ベトナム人の移送のときには、アンマン―カイロ間はバスと船の交通手段を使いましたけれども、あのときはIOMは非常に状況が混沌としておりまして、当初はアンマンからカイロの間を飛行機を使うことを検討いたしました。しかしながら、サウジの領空が閉鎖されておるとかあるいはアンマン―カイロの航空路が非常に不安定であるという状況であきらめまして、次に考えましたのは、ダマスカスへ陸送してそこから飛行機で運ぶということも検討いたしました。  私がこの例を申し上げました理由は、IOMはこういういろんな状況を全部判断した上、この場合はバス、あるいはこの場合は大量なのでどうしても飛行機だと、いろんなことを考えた上で、この国には飛行機でお願いする、ここはバスでお願いするというのがIOMの判断でございまして、そういう要望を受けて日本としてどう対応するかというのが、まさに今この世界の中で日本が人の面においてどう貢献するか、そういう問題になるわけでございます。
  93. 藤田高敏

    藤田(高)委員 先ほど局長が答弁した限りにおいては、事前の調査の段階だ、具体的な第二弾の要請は来ておりませんと。今の答弁を聞いておりますと、具体的な要請があって何か行動準備に入っておるというような答弁でございますが、私は、こういう法律を超えてまで自衛隊機を派遣する、そして危険な区域に自衛隊機を入れようとしておる。それ以外に手段がないのか。いわばヨルダン航空自身が今アンマンからカイロまでの間をやりますと、こう言っておるわけでしょう。そして、私が指摘したような陸路による、バスによる輸送も可能なんですね。むしろその方が有効じゃないか、しかも安全じゃないか、それこそ人道上からいってもその方が安全じゃないかという手段が幾つか残されているにもかかわらず、こういう法律違反の自衛隊機を派遣するようなことは、これは大変問題があり過ぎると思うのですよ。そういう意味合いにおいて総理の見解をただしたいと思います。
  94. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 IOMからいろいろな連絡が来ており、それに対して日本も非軍事的な、人道的な面では対応しよう、避難民の輸送の問題なんかにはできる限りしようということは、これは多くの人々の一致した御支持もいただける考え方だと私は思いました。前回の貢献策のときも、遅過ぎる、少な過ぎるといって随分内外から御指摘もいただきました。ですから、具体的な要請を受けたときに、それからいろいろなことを考えておったのではこれはいけませんから、そういう一般的な照合があり、民間機、軍用機、とにかく避難民輸送のために日本協力の用意があるのかという問い合わせがあれば、協力の用意がありますと言う以上、そのための準備と心構えはぎちっとしてその調査を始めなければならぬことも、これは御指摘のとおりでございますから、国際機関からの要請を受けて、具体的な要請も既に来ました。来た要請については、これは民間航空にお願いをして四機、二回にわたってベトナムの搬送をやったことは、これは御承知のとおりであります。ですから、そういった場合に、いろいろな場合を想定してこのようなことができるようにしたい、それがあの政令を作成するに至った政府の態度でございます。
  95. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、この百条の五の解釈は、これによって、自衛隊機を今の政令によって派遣することは断じて許すことはできない、こういったことを申し上げて、以下意見を保留します。というのは、同僚議員の時間の中にこれは食い込んでいくような格好になりますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  96. 渡部恒三

    渡部委員長 大変御苦労さまでございました。  この際、武藤山治君から関連質疑の申し出があります。藤田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。武藤山治君。
  97. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 ただいま二時間二十分、同僚の藤田議員から質疑がございましたが、この質疑応答を聞いて、私も大変海部総理に注文をつけなければいかぬなと感じました。それは、政令で自衛隊機が海外に出ていけるようにするのは法律に反しない、また政令をつくれば何でもできる、そういう行政府の思い上がりというものがありありとわかるのですね。  憲法第七十三条第六項には、総理も御案内のように、内閣のやるべき仕事、権限というものはきちっと書いてあるわけですね。その中に、内閣は「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること」ができる、こう書いてある。だから、あくまで法律の委任がなければ政令というのはつくれない。その法律自体は、自衛隊の飛行機が海外へ行くようなことは想定していないのですよ。想定していないことを、外国人を今度は人道的立場だからといって、戦争に関連のあるそういう状況下で自衛隊を使おうということは、この憲法の精神に反する。憲法違反であるかどうかはだれも決める人がいないのですから、お互い言ってみるだけでありますが、いずれにしてもこの精神に私は反すると思うので、行政がそんなに思い上がったことを勝手に政令で何でもやれるとなると、かつてのヒトラーみたいになっちまう。まずいです。小さな穴から、政治というものは国民がずっと見ているのですから、日本の民主主義が崩壊する、そういう危機を私は感じました、きょうの二時間を聞いて。しかし、これは注文であります。今後、十分そういう点については、これから藤田君の持ち時間もあるだろうし、我が党の質問者もありますから詰めると思いますけれども、私は感想をまず申し上げておきたいわけであります。  さて、海部総理戦争とは何か、戦争の定義のようでありますが、戦争とは何かをこれから総理大臣と外務大臣を中心に少々論戦をしてみたいと思うのです。総理の考える戦争とは、何ですか。
  98. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 最初に私も考え方を述べさせていただきますけれども、法律のどこを読んでも、「その他政令で定める者」と書いてないことにまで勝手に政令をつくってこれでやるというのは、おっしゃるように行政府の越権だと言われても仕方ありませんが、「政令で定める者」と法律にちゃんと書いてあることでありますから、政令で定めてやるということが、私はむしろそれをやらないことは、法律にちゃんと書いてあることでありますから、それは私の考え方として申し上げさせていただいておきます。何も書いてないことをやっては、それはいけないという点は、その点でございます。  それからもう一つ戦争というのは、これは今度の国連憲章の前文にもありますように、我々の世代が生涯のうちに二度にわたってあの悲惨な戦争を体験した、この戦争というものをなくさなきゃならぬ、繰り返してはいかぬということを大きな前提に置いてできたのが国連憲章であります。  その国連憲章の中を全部読んでみますと、これは委員も百も御承知と思いますが、今新しい秩序の模索中だというのが私の認識でございます。だから、ついこの間までアメリカソ連の、いわゆる二大超大国がみずからの力で、世界を力で抑えてきた。あるときには恐怖の均衡とも言われたし、力の均衡による平和とも言われてきました。それが冷戦時代の発想を乗り越えて、力の平和ではなくて、話し合いによる、道理に裏づけされた平和をつくりたいというのが、新しい国連に負わされている、いわゆる国連憲章が当初掲げた理想を本当に達成するための大きな筋道ではないでしょうか。  私は、そういった意味戦争というものが二度と起こらないようにしたいという基本は全く同じでありますし、そういったものをなくしていくための努力国連がしておるわけでありますから、公正な平和がもたらされるような努力、それが大事だと考えております。
  99. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私の質問に全然答えていない。私は、戦争とは何かという戦争の定義を今聞いているわけですね。あなたはそうじゃなくて、戦争が起こらないように国連ができたんだという説明をしている。全然これは違うことを答えているのですね。  それから委任、政令の問題は、自衛隊というのは専守防衛で海外には出ていかない、攻められたときにだけの用意として準備をしておくというのが建前でしょう。海外に出ていくということを法律は全然予定していないのですよ。政令で何でも決められるという限界があるのですよ、法律は。それを、その限界を踏み外すところに問題があるんだ、今の問題は。しかし、これは私、今論争をしようとしていないのですよ。これは一応私は感想を述べただけなんです。しかし、それはもし時間があればやりますが、もう私の時間かなり食い込んじゃって予定が全然質問できない状況でありますから、先へ進めます。  戦争とは何ですか。答えられないのですか。外務大臣はどう思いますか。戦争とは何かと聞かれたらどう答えますか。
  100. 渡部恒三

    渡部委員長 外務大臣、外務大臣、委員長の許可を求めて発言してください。外務大臣。
  101. 中山太郎

    ○中山国務大臣 戦争とは、私の頭の中で考える考え方というものは、国家がみずからの国の権益を守るために、あるいはまたみずからの国家の利益が損害される場合に相手国に対して武力行使して、武力を持った集団が他国の領空、領海、領域に侵入して相手国と交戦状態に入る。そしてその国の持っているみずからの国に対する意思を粉砕するために戦争というものが今まで存在してきた、私はそのように理解をいたしております。
  102. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務大臣の答弁は大体私の考えと一致します。戦争というものは政治家が、最高権力者が政治目的を実現するために武力を用いて行う行為なんですね。あくまで政治目的を実現するためなんですね、戦争が起こるのは。  そこで私は聞きたいのですが、外務大臣でも総理大臣でもどちらでもいいです、答えられる方から答えてもらいたい。それは、フセインが考えておる政治目的は何だと日本政府は心得ておるのですか。フセインの政治目的、さらにブッシュ大統領の政治目的、この両方の権力者の、最高権威者の政治目的は何だと心得ておりますか、湾岸戦争をめぐっての。
  103. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 前提は、戦争というものの考え方、国が実力行使をして、あるいは宣戦布告をして、いろいろな政治目的を持って武力によって争うものが戦争でありますから、そういった意味からいくと、例えばイラククウェートへ入っていった昨年の八月二日の問題なんかは、あれは戦争だと私は見ていいと思います。ただ、宣戦布告はされておらぬという全く違った面もあります。  戦争目的は何だと言われると、私はラマダン副首相にずぱっと聞いたときに、それはこう言いました。クウェートはもともとイラクのものだから、アラブのことはアラブで片つけるから、歴史的の上からいって、いろいろなことをアメリカその他の国が言うべきではないということでありました。  しかし、それは国際社会のルールを力で変えようという大変な原則違反があるわけでありますから、私どもはそういったものは戦争目的として、一国には通用しても国際社会の大義には通用しないものである、そのイラク戦争目的は。そのように受けとめておりますから、国連のああいった決議が出るわけです。そう受けとめております。
  104. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 イラククウェートに入る直前の七月二十日ごろから三十一日までの新聞を私ずっとはぎ取って読んでみたのでありますが、事の始まりは領土問題じゃないのですね、総理が行ったころは、あるいは領土問題だと言ったのかもしれませんが。最初はやはり油の問題なんですね、当面の、直接の原因は。それは、外務大臣、どうですか。
  105. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員御指摘のとおり、油の問題がその基盤にあると思います。  御案内のように、イランイラクは八年半に及ぶ戦火を交えました。そして、その間に石油価格は極めて大きく上昇したわけであります。その上昇によってイラクは膨大な利益を得ましたが、その利益を経済力のいわゆる活性化に使わないで、軍事力の強化に使ってきた。そういう意味から、莫大な負債を抱えることに相なったわけであります。その負債は、あの地域全体を含めてみても、大体千六百億ドルぐらいの負債になるだろうとジョルダンの皇太子は私に説明をしておられました。その負債を解消するためには、極めて豊かな油田を持ち、極めて豊かな富を持った隣国を攻撃するということが一つあったと思います。  しかし一方では、イラクが抱える債務を弁済するためには、石油価格は当時バレル当たり十五ドルでございましたから、いわゆるOPECの会議のときに十七ドルぐらいになっておるわけでありますから、それが二十五ドルになると大体負債の返済ができて経済の再建ができる、このような考え方イラクにあったとジョルダンの皇太子は私に説明をされておられました。
  106. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 いずれにしても、イラククウェートを占領し合併したことは罪悪であります。犯罪であります。許すまじき行為であることは、私は皆さんと同じ見解であります。しかし、だからといってどこまでも徹底的にイラクを追い詰め、フセインが自害するまで徹底的に国土を破壊し、民衆を殺すことがいいんだろうか、それ以外に方法はないのか、そういうことをやはり政治家はもっと追求しなければいけないのじゃないかと思うのであります。  この間、ドイツの前総理のブラントさんが日本に来た新聞が出ておりました。プラントさんはそのときに、結局フセインは最後に殉教の精神で自爆するまでこの戦いは続くかもしらぬという読みを申し上げておりました。大変不幸な予感がするわけであります。その間に何十万の子供が殺され、女性も、戦場にかかわりない人が死なねばならないのかなということを考えると、大変不幸なことだなと私自身心を痛めておるわけであります。  ですから社会党は、早く停戦をとりあえず一回して、それから真の安定と平和を話し合っても遅くはないんじゃないか、だから停戦決議を国会に提案をしている社会党なんであります。それはどちらがいいとかどちらが悪いとかという意味ではないのであります。人の命を尊重する、大事にするという立場からは、即時停戦の論理しか私は出てこないと思うのであります。  だから私は、総理総裁である総理にはぜひ停戦国連に、あるいは世界の先進国に、日本としてはこういう意思だということを国会決議をして送ることは意味がある、こう考えるから、できれば早くあの決議をした方がいいんではないか、この見解も総理に伺いたい。  第二には、ブッシュ大統領はどういう政治目的を中東に持っているのか、これは非常に複雑ですね、新聞を見ていると。表向きは、フセインのやったクウェートから直ちに撤退をさせるのが大目的である、それは間違いない。しかし、その後に中東にプレゼンスを確保しよう、中東アメリカ軍の軍事基地を持ち、同時にアメリカのオイルの権利を、メジャーの確保を、アメリカとしてはきちっと油に対する発言権を確保しよう、さらにイスラエル並びにアラブの問題について、アメリカがイニシアを持った和平なり安定ということを考えようという複雑な、重層的な政治目的をアメリカは持っておるような気がしてなりません。ですから、クウェートから撤兵をしても、その後真の中東の安定、平和というものは、大変私はジグザグないろいろな問題をはらんでおるな、こう見ているのであります。  その辺についての、中東湾岸戦争はやがては終わるわけですから、永久に続くわけじゃありませんから、近々に、戦争が終わった後中東に対して日本政府としてはどういう結論を導き出そう、日本政府はフリーハンドで中東で地位を保障されるような日本になるためには、今、何はしてはいけない、どこまではすべきであるということを冷静に政府は解析、分析をして、この事情に対処しなければいかぬと私は思うのであります。  そこらについて、総理外交に弱いようでありますから、外務大臣からひとつ答えていただきたいのであります。
  107. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 お答えさせていただきます。  アメリカがどのような意図でどのようなことをしたか、これは私に言わしむれば、あの地域における力による平和の破壊をあれ以上してはいけないというので、八月二日以来アメリカはあの辺にいろいろな安定をもたらさなきゃならぬ、湾岸の平和解決のための戦闘に立ったと理解しております。  同時に、それで二十八の国が今参加をして、思想、信条を超えて、ヨーロッパの国もアラブの国もアジアの国もあそこへ行って平和回復のために努力をしておるというのでありますから、私は素直に、クウェートの主権を回復して、同時に湾岸の平和的な安定を図るために、これは世界の平和のために自由と民主主義を信奉するアメリカがその価値観に基づいてやったことであると、こう受けとめますし、同時に、九月のニューヨークの国連総会でブッシュ大統領のやった演説の中にも、クウェートからの撤退をすれば、イラククウェートの国境問題についても、またパレスチナ問題を含むアラブ・イスラエルの問題についてもさまざまな解決のための機会が生まれてくる、こういった提案もしておるわけでありますから、中東の安定的な将来の和平に向かって考えがあることはこれは間違いないし、私はそのように見ております。  日本はそういったものに対して日本独自の立場で、例えば今現実に流れておる緊急の問題としては、湾内に石油の、戦争になればどのような使い方をしてもいいんだというようなサダム・フセインの考え方は間違っておりますから、国際的にあれについては、またどのようにして油の被害を少なくするようなことをすべきか、これも提案しておりますし、環境庁長官も至急OECDの会議に行ってその日本考え方も述べておるし、また恒久和平については日本のきょうまでの外交的な考え方、それを伝えてありますし、また果たすべきは国連だと思いますから、言われるまでもなく国連には日本の大使もおりますし、国連を通じて、あるいは国連を通じなくても、そういう可能性が出てくるときにはあらゆる機会をとらえて、原則に従った停戦と平和の確立のために日本も大いに外交努力をしていかなければいけないから、具体的にどうするか、そのことを真剣に考えながらあらゆる可能性を検討しております。
  108. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 イランイラク戦争八年間で、アメリカソ連もみんなイラクを応援してイラクに膨大な武器を売りつけ、自分たちでつくった兵器を今自分たちが多額の費用をかけて壊している、これが今の戦争状態ですね。こんなあほらしい愚かなことを今やっているわけでありますが、この愚かさを見て、総理、どんな感想ですか。  自分たちが売った兵器を自分たちが多額の費用をかけて破壊をする戦争に今なっているわけですね、イラクは。こういうことが今後も、この戦争が終わった後も予想されるわけでありますから、ソ連ばかりじゃないんだ、アメリカも売っておる、フランスも売っておる、みんな売っておるんだ。ですから、そういうものをとめない限り、今後もこういう問題が起こる。これは国連で武器の輸出は一切禁止する、そういうようなことを日本提案しなくてどこの国ができますか。武器輸出禁止三原則を持っている日本がそういう平和の国としてのリード、こういう戦乱のときにあっても常に私は先駆けた発言をしていくのが日本の政治でなければならない、そう感じるのですよ。こういうあほらしい愚かなことをやっているということについての反省を含めた政治家としての感じはいかがですか、総理
  109. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘の問題について率直に申し上げますが、八年間に及ぶイランイラク戦争の間にいろいろな武器の移転、大量破壊兵器の移転があったことは御指摘のとおりであります。  私は、このような紛争をなくするためには、特定の地域においてずば抜けて大量破壊兵器を持つ、いわゆる強大な力を持つ国が出ることも危険であれば、極端に弱い国が出て力の真空地帯ができてしまうこともまた危険である。そういった意味で、現在は軍備管理・軍縮というものの大きな流れを、冷戦時代の発想を乗り越えた今日、いろいろなところで努力をしていかなければならぬと思っておりますから、この問題については、私自身が九月にニューヨーク大学でこのことを講演の中で指摘もしてまいりました。特に大量破壊兵器、化学兵器その他の移転については、これは今国連で禁止条約が議論されておりますから、私はそこで、日本はイニシアチブをとって積極的に締結に努力をしていくということも申し上げましたし、また核の拡散はこれは絶対に防止しなければなりませんし、究極的には廃絶を目指していかなければならぬという動きもあります。通常兵器についても公開性、公明性を持たなければならぬということも私は主張をしてまいりましたし、日本としては国連の場でそれらのことを続けていく決意でございます。  なお、武藤委員の御指摘にお言葉を返すわけじゃありませんが、過去五年間、イラクに対してそのような武器輸出をしてきた国はどこか、いろいろございます。けれども、その最たるものはソ連であり、ソ連中国とを合わせると、これで七二%になります。それから、五年間の間にフランスも幾らかございました。これも認めます。けれどもアメリカがどのような兵器をどのような形で出したということは、私の方では把握いたしておりません。  ですから、それらのことを考えますと、今、そういった愚かなことを繰り返してはいけないという立場に立って、そのソ連も参加をして、国連決議イラクに対して反省を迫っておるわけでありますから、同時に、国連の場で、これらに対してはもっと前進させていこうという機運も出ておると私は信じますので、日本が先頭に立ってこれらの問題の努力を続けていくことは、そのとおりでございます。
  110. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日本経済新聞が二十九日から三十一日までの三日間、世論調査をやりました。それが新聞に報道されておりますね。今回のイラククウェートの問題で武力行使に賛成か反対かという世論調査では、男は五七・七が賛成、女性は五八・五が反対ですね。日本の女性と男性がちょうど同じような数字で、片方は賛成、片方は反対、女性は武力行使に反対ですね。それから、お金を日本が援助することについて、男は支持が四〇・九。過半数いってませんね、四〇・九。女性は、全く出すべきでないのとこれを支持しないというのを合わせますと五六・五、日本の女性。この世論調査では、五六・五%の女性は、お金を援助することもやるべきでない。もちろん、これは増税が後に控えているから、一人一万円も負担をしなきゃならぬという損得の勘定がありますから、恐らく世論調査にそういうのも反映されていると思いますけれども、いずれにしても、こういう日経の世論調査の結果について、政府はどんな感想を持っていますか。
  111. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 その結果は、私も新聞で読みましたけれども、仕方がないとかやむを得ないという数もたしかあったのではないでしょうか。そして、そういったものを加えていろいろ判断しますと、やはりそのようなときに、絶対的に、どんなことがあっても武力行使はいけないのだということに徹し切ってしまった場合には、現に行われているクウェートの現状はどうなるのだろうか、イラクが今度やった力の横紙破りは、あれは定着してしまうのだろうかという心境があって、やむを得ないこととして、最終的な武力行使は認めるのだという非常に苦渋に満ちた決断がそこに出ておるのではないかと私は思うのです。それでも仕方がない、国連が普遍的な武力行使をするのも仕方がないと言い切ることができるのかどうか。私はいつか、その同じ日経新聞で読んだことがありますが、社会党の皆さんの中にも、一部の新人のグループの皆さんは、普遍的な武力行使というものは憲法の禁止する武力行使戦争ではないのだという考え方もきちっと述べておられる。ただ結論として、自衛隊は憲法違反で認めておらぬからそれはいけないのだという結論が出ておったことも私は申し上げておきますけれども、そういう考え方というのは幅広くあって、どうしてもいけないときに武力によって排除して、侵略を排除して平和を回復するという目的があるなれば、これはやむを得ないという答えが出てきておるということも、私はそれなりの御意見だと思って受けとめさせていただくとともに、私自身は、やはり国際平和秩序回復が大切だ、このように考えております。
  112. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 結局、武力行使するというまでの我慢というか理性というか、そういうものが本当に限界に達していたのだろうかどうか。国連があらゆる手段を講じてクウェート撤退を迫るという際に、一月十五日という期限が本当にもうどの角度から考えてもぎりぎりでやむを得なかったのか、あんな小さな千七百万の人口のイラクをもう少し経済的に制裁を長期に加えれば、何とか平和的に話し合いで処理ができたのではないか、そういう期待も、何も知らない国民は持っていたと思うのですよ。あの当時の状況からいって、あんなに早くアメリカ武力によってクウェートの解放をしようとは思わなかった人が多いと思うのですよ。だから、そういう点から我々は、あらゆる努力をしたが、やむにやまれずここにこうなってしまったのだということをもっと総理大臣なり外務大臣の口から聞きたかったのじゃないでしょうか、国民は。だから、そういうことの本当がわからぬからこういう世論調査も出てくると思うのです。しかし、もうそんなことを言っても死んだ子の年を数えるようなことですから、議論しても仕方がありません。  それよりも、これからの問題が大切なのでありますが、あの決議はあらゆる手段を講ずるという中に、核兵器を用いてもやむを得ない、これからイラクあるいは中東の他の国から原子爆弾が投下されないとも限らない、そういう不安も国民は新聞を見ながらいろいろ感じています。国連のあの決議は、そういう原子爆弾まで使用しても許されるという決議なのか、核兵器は一切使ってはならぬという意思決議の中に含まれているのか、その辺はどうなんでしょう、日本政府の見解は。
  113. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいまの先生の御質問にお答え申し上げます。事は国連安保理決議の解釈の問題でございますので、私から御説明申し上げます。  御承知のとおり、決議六百七十八のもとでクウェート政府協力しておる加盟国は、決議六百六十及び累次の国連決議を堅持し、かつ実施し、湾岸地域における国際の平和及び安全を回復するために、現在武力行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を与えられ、その権限のもとで行動しておるわけでございます。  この六七八の決議の中では、武力行使の態様については触れていないのは、先生もお読みで御承知と思います。また、安保理決議の有権的な解釈につきましては、実は安保理事会のみが行い得るものでございますけれども、六七八の採択の際の安保理会合におきます討議におきましても、実は核兵器の使用については明示的な議論は行われておりません。  日本といたしましては、この武力衝突におきまして、核兵器が使われるような事態ということはあってはならないと考えてはおりますが、いずれにせよ、イラクがすべての関連安保理決議を完全実施することが、イラククウェート侵攻によって破壊された湾岸地域における平和と安全の回復に不可欠であるということでございまして、そういう意味で、イラクが一日も早くこの十二本の安保理決議を受け入れるということが、何といっても唯一平和の一番の道ではないかというふうに考えます。
  114. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 外務大臣、フランスのミッテランは、この武力行使する場合の態様について、大変いろいろな自制をしなければならぬという意味のことを言っておりますね。すなわち、フランス軍は、クウェート以外は攻撃しない、本土の方の攻撃には加わらない、そうして、目的はあくまでクウェートからの撤兵であるから、クウェートから撤兵させるための直接的攻撃にフランスは限って、戦後の復興の問題で大変またイラクが苦労する、あるいは無差別攻撃で子供や婦人が殺される、そういうことを極力避けようというフランスの考えのようでありますが、そのフランス国連においてミッテラン大統領が演説をして、和平提案をしたり、あるいはアラブの国々を何とか話し合いで解決したいと、最後の最後までフランス努力したようでありますが、フランスのこの対応とアメリカのブッシュ大統領の見解と、どうも私は少しニュアンスが違うような気がするのでありますが、日本の外務省としては、どんな解析、分析をしておるのでしょうか。
  115. 中山太郎

    ○中山国務大臣 フランスクウェートだけを攻撃をする。しかし、フランスだけがそのようなことを考えているわけでは私はないというふうに認識をしております。  すなわち、ブッシュ大統領は、一月十七日、武力行使国連安保理への通報で、安保理決議六百七十八に従い、米国及びクウェート政府協力している他の諸国は、一九九一年一月十六日十九時に安保理決議六百六十及び関連諸決議に従ったクウェートの解放、クウェートの正統政府の権威の回復及び地域国際の平和及び安全を回復するための軍事行動を開始した。これらの行動の目的は、クウェートの解放であり、イラクの破壊、占領もしくは分割ではないということを国連安保理に通報いたしておりますし、イギリスは、一月十七日に米国、英国、サウジアラビア、クウェート及びフランスにより開始された軍事行動は、安保理決議により要請されるクウェートの解放のためであって、イラクの破壊、占領もしくは分割を意図したものではないということを国連安保理に報告をいたしておることでございます。
  116. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 アメリカは、ミッテランの中東における包括的和平テーブル、この場合にフランスにイニシアチブをとらせない、アメリカはやはり中東におけるこれから強い拠点をあそこに持つ、そういう政治目的があると私は見ているものですから、これはミッテランの工作にアメリカ協力的でないな、こう見ているのです、私は。やがてこの戦争が終わった後、中東がどうなるのか、どうすべきなのか、いろいろな問題が出てまいりますが、日本政府としては、一九六七年にイスラエルが占領したガザ地域とあの川の西側です ね、ヨルダン川の西岸、この占領地域をイスラエルは返すのが当然だ、そして、パレスチナ人の国家をあそこへ認めるというような話し合いでもしない限り、中東の真の平和はできないんじゃないか、私の個人見解ですね。そういう場合に、日本政府としては、このイスラエルとパレスチナの問題についての終着点はどこに求めようとしているのか、どんな形にしたいと考えているのか、やはりそういう中長期的展望を持たなければ、世界じゅうから物を買う、特に中東から油を買う日本としては、そういう将来の見通しまできちっとある程度政府は持ってかからぬといかぬと思うのですが、その辺はどんな分析を一応しているのですか。
  117. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは、過日国連の事務総長にも私は申し上げたところでありますし、また国会を通じても申し上げておりますが、国連決議の二百四十二号、三百三十八号、ともに御承知のとおり第三次中東戦争、第四次中東戦争、その後におけるいろいろな問題の中で、占領地からイスラエルが撤退すること、そのかわりイスラエルの国家としての存在をアラブ側が認めること。ですから、一昨年になりますか、PLOのアラファト議長を初めて私が政府の賓客として呼ぶ決心をしたときは、テロは今後行わない、イスラエル国家の存立は前提として認める、二つのPLOの政策変更を明確に通達がありましたから、その二つを守ってもらうならば、これは中東の恒久和平に役立つ、こう信じて賓客としてお呼びをし、アラファト議長ともその点については会談の中で確認をいたしております。ですから、局面が転回されて、そして恒久和平の話に入るときは、これはミッテラン大統領も言ったでしょうが、ブッシュ大統領も言っておるし、さらに開戦直前のぎりぎりの状況のときに、なお最後の努力として、国連の事務総長は、その提案を声明にまとめてイラク側に届けと悲痛な提案をしておることも御承知で、その中にもクウェートからの撤退があれば、この問題については各国首脳の同意も得てあるから必ずこの話には入るんだということを国連事務総長も言っておるわけですよ。私は、それには全面的に支持をするということを国連大使を通じて直接伝えてあるわけでありますし、二度会談したときも申し上げてありますから、日本としては、その線に従って行動していく、そのことはここでもう一回申し上げさせていただきます。
  118. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 その場合、アメリカがイスラエルを本気で説得すると見通しを立てるか、なかなか今までのイスラエルとアメリカとの関係から見て大変難しいいろいろな問題があるな、その場合、アメリカ側に日本政府はつくのか、中東の真の安定と平和のためにパレスチナ人国家建設に賛成をするのか、日本政府の態度はどちらでしょうか。
  119. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 中東の恒久平和を目指してすべての人が努力をする国際的な話し合いの場において、だれの側につくとかかれの側につかないとかいう発想ではなくて、中東の本当の平和が来るように、それは申し上げたように、国連の二四二、三三八で原則として出されておる決議の中にそのパレスチナ問題は入っておりますし、同時にブッシュ大統領もミッテラン大統領も、国連の演説において、これは私も聞いておったのですけれども、パレスチナ国家の建設を含むアラブ・イスラエル問題についてもさまざまな機会が提供されるということが明らかになっておりますから、日本政府としては、中東の恒久平和のために、志を同じくするすべての国々と力を合わせて努力を続けてまいります。
  120. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 なぜ私がそういうことを今聞いているかというのは、今の自民党政府は、アメリカの言うことには忠告をしたり、ノーを言ったりができない。とにかくアメリカに頼まれりゃ何でもイエス、イエス。今回の九十億ドルも、最初は外務大臣がブッシュ大統領と会ったときの記者会見の新聞記事の中にもうはっきりコミットして、いや、もう応分の協力はいといませんというような意味のことがばんと出ている。その後、今度橋本大蔵大臣がブレイディ財務長官との会談の中でも、もうお金のことは協力せざるを得ない。大体アメリカの言いなりになっているから今聞いているわけなんですよね。何でもアメリカの言いなりになるのかということを聞きたいわけなんだ。  そこで、アメリカという国は世界の警察国家だ、七つの海のシーレーンを守るのはアメリカの責務だと。私は、去年宮澤先生と一緒にアメリカに行ったときに、ブッシュ大統領あるいはベーカー国務長官、チェイニー国防長官とお会いさせてもらったわけです。そのとき質問をしたときに、チェイニー国防長官は、アメリカは海洋国家であります、太平洋と大西洋に囲まれた海洋国家であります、したがって世界の海のシーレーンを守るのはアメリカの責務である、したがって海軍の軍縮は当面考えていない、そういう発言を長官から聞いたわけなんです。アメリカは世界の警察なんですね。目下まだそういう発想なんですよ。ソ連もつい最近までは、ソ連圏、共産圏の警察国家として多くの国を統治し、支配し、管理し、守っていく、こういう発想があったわけですが、ついに崩壊をしたわけですが、アメリカは依然として国際国家としての地位を今後も持ち続けようと考えている、本当に。  そうすると、グローバルパートナーだ、パートナーシップだという、何でもアメリカと仲いい友人だからということで、この警察国家のやることを、守備範囲、そういうところまでだんだんだんだんお手伝いをさせられていくのかという不安なんですよ、私が今聞いているのは。今度の自衛隊機を派遣するのもその一環だ、そういう発想から今この質問をしているわけなんですが、このアメリカの世界警察国家という認識の中で、ここまでは賛成できるが、ここはだめじゃということを、パートナーであればあるほど率直に言うべきなんですね。  それは、国連決議においてもそうだと思うのです。隣の中国は大国ですから、武力を使うことは反対です、棄権。ソ連は、武力行使することにはソ連は手伝いません、そこは拒否する。そういう点が日本外交というのは、国が小さくて、島国で、資源がなくて、世界の国々から品物を買ってもらわなきゃ生きていけない、さっき総理が盛んに言っているように、貿易国家だ、いやGNPは一五%だと。そのことが、だからアメリカの言いなりにならなきゃいけないんだ、やむを得ないんだ、そういう卑屈な外交になるのか、それともやはり国を動かす基本は憲法ですから、憲法の命ずる理念と思想というものを外交に貫けるのかどうか、そういうことを私は大変危惧するんだ、今の内閣に。その点をきちっとひとつ答えて、ちょうど私の持ち時間になりそうでありますから、あとは午後の質問になると思います。
  121. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日米関係というもの、それが非常に重要なものであることは委員も御承知と思いますけれども、だから何でも言いなりになって、アメリカに言われたことをそのままイエスと言っているだけでは全くございません。一々ここでは言いませんが、日本立場をきちっと述べるべきは述べ、そうして世界に対して自由と民主主義と市場経済の価値が認められたからこそ、ソ連経済というものはあのような状況になってきたのだ、ソ連が東側の警察官の地位を放棄しなきやならなくなったのも、それが背景にあったからだと思いますし、また私は、アメリカのみならず、過日のサミットでも、アメリカ初め多くの国々が、中国が天安門事件以来あのような状況であるから中国との交流は今早いと言われたときに、日本立場を主張して、隣国の日本である、中国を孤立させるわけにはいけない、したがって徐々に第三次円借款は開始するということで、アメリカやヨーロッパの国々に対して、八千百億円の第三次円借款の必要性、中国を孤立させることは、アジア・太平洋、世界の平和と安定に反するんだということを私は主張をして、それなれば日本の独自な立場は認めようという合意も取りつける努力も現にしておるわけでありますから、そういったようなことを積み重ねて日本独自の外交というも のを、日本で言うべきことは言い続けておる。  午後の時間にさらにお尋ねがあったら御説明をさせていただきたいと思っております。
  122. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 午後一時からの質問時間に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  123. 渡部恒三

    渡部委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  124. 渡部恒三

    渡部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  125. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日銀総裁、大変御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。参考人でございますから、冒頭日銀から見解を承りたいと思います。  昨今の経済指標を見ると、昨年十二月ごろから大変さま変わりに経済の動向が変わりつつある。鉱工業生産指数も好ましくない方向に向かいつつあるし、住宅建設もかなり落ちてきたり、大変国民は心配をしていると思うのであります。この経済動向についての全般的な見解をまず冒頭に承りたいと思います。
  126. 三重野康

    ○三重野参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり国内の景気、確かに一部景気減速をあらわす指標が出ておりますが、全体として見ますと、まだ足元の経済は個人消費、設備投資を中心として非常に強い、そういうふうに判断しておりまして、これはつい先日の私どもの全国支店長会議での報告でもそういうことでございました。  先行きでございますが、これは湾岸戦争の行方もありますので、幅を持って考えなければならないと思いますけれども、現在の足元の景気の腰の強さから見まして直ちに大きく落ち込むことは可能性は少ない、こういうふうに判断をしております。  ただ、四年間五%成長が続いておりますので、製品需給あるいは人手不足がかなりひどくなっておりますし、石油の価格もまだどうなるかわかりませんので、物価に対する圧力というのはかなり強い。したがいまして、これにはなかなかまだ全体としての物価観は壊れておりませんが、目は離せないというふうに考えております。  いずれにしましても、景気の先行きは企業マインドによって大きく左右されますが湾岸戦争の推移によってどういうふうに変わるかよくわかりませんし、その点も含めて、今後の景気の推移については注意深く見てまいりたい、かように考えております。
  127. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今までの日本経済の、この四年間大変好況が続いたわけでありますが、その弊害としてバブル経済などと言われる投資が、土地投資、株投資、それが大変な事態を生み出した。  そこで、日銀の通貨供給量ですね、マネーサプライをちょっと調べてみますと、ドイツとアメリカと比較して調べてみたんでありますが、日本の場合は一九八六年からふえ始めまして、前年比八・七、八七年が一一・二、八八年が一〇・八、八九年が一〇・三というようにマネーサプライが伸びましたね。そういう伸び方は、経済成長率と比較した場合に、実体経済の成長率よりもかなり多いパーセントを示しますね。八六年が四・三%過剰、八七年が六・一%過剰、さらに八八年が四・九、八九年が三・四と、GNPよりも伸びが高い。そういうことが、この通貨供給量がだぶついたために過剰流動性という問題が起こってきて、土地投機とか株投機でたあっとその資金が流れたんだろう。アメリカは、一九八七年に成長率の伸びよりマネーサプライを下げた。ドイツも、八八年に成長率と同率ぐらい、八九年には成長率以下にマネーサプライを抑えているのですね。ところが、日銀は、そういうドイツやアメリカの情勢と比較するとかなり通貨供給量が多かった。これは、マネーサプライというのは結果ですからね。日銀総裁がどうこう言ったって、経済がそれだけのものを必要として金が出てしまったんだと言えばそれまででありますが、それ前にやはり気がついてコントロールするのが日銀の私は役目だと思うのですね。そういう点、過去三、四年間をちょっと振り返ってみると、ちょっとマネーサプライの動向から見ると、金融政策余り上手にやらなかったんじゃないかな、こういう感じがしてなりません。  そこで質問なんでありますが、そのバブル経済というものはやや解消したと見るか、解消しつつまだあってどの程度まで今進行しているのかな、そうして今の総量規制、さらに公定歩合操作によって、こういう条件が整ったら公定歩合をいじることができるんだが今のところバブル経済はこんな状態だということを、日銀の把握はどんな状況なんでしょうか。
  128. 三重野康

    ○三重野参考人 先生御指摘のとおり、長年の金融緩和の間に資産価額、株とか土地の値段というものの上昇が実体経済を離れて、これはバブルと申しておりますが、上昇したことは事実でありますが、一昨年の五月以来の金利引き上げをきっかけといたしまして、このバブル経済が徐々に是正されつつあります。マネーサプライも徐々に減少しつつあります。  例えば、マネーサプライに関して申しますと、M2プラスCDは昨年の四―六月一三・一%というのがピークでありまして、その後漸次減速してまいりまして、十二月は八・六%まで落ちております。株価について具体的に申しますと、昨年の初め、年初は日経ダウが三万九千円でございましたが、一時二万円まで下がりまして、現在は二万三千円前後で推移しております。土地の値段、これはアップ・ツー・デートの数字はございませんが、先日の私どもの支店長会議の報告によりますと、いわゆる都市部中心に土地の価格の増勢は鈍化している。ただし、非常に上がりました近畿地方その他においては中古マンション等は二、三割の減少を見ているということでありまして、全体に見てバブルは徐々に是正されつつある、そういうふうに判断をしております。  そこで、先生の御質問で、いつ今の多少引き締めぎみの政策を変えるかということでございますが、これは先生もう特に御存じなことではございますが、金融政策は、私どもは臨床医みたいなものでございまして、相手の状態いかんによって変えるわけでございまして、景気、物価、それからマネーサプライ、それから為替相場、それから海外の経済情勢、もちろんこのバブルも十分視野に入れておりますけれども、それだけで金融政策を動かしておるわけではございませんものですから、今のところは、やはり現在は私どもの基本的なスタンスはこれまでとった政策効果の浸透を見守っているということでございまして、一義的に先生の御質問にはお答えできないのは残念でございますが、そういうわけでございます。
  129. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、公定歩合はこのまま当面様子を見る。窓口規制の総量規制ですね、貸し出しの、そういうような政策、あるいは日銀の買いオペはまだ続ける、売りにはまだちょっといかない、こういう認識でいいですか。
  130. 三重野康

    ○三重野参考人 金融政策の場合、金利とボリュームとなかなか離してできませんものでございますから、ただいま先生のおっしゃったとおり、今のところは今の状態を続けていきたい、かように考えております。
  131. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それから、この間日銀総裁は大蔵大臣と一緒にG7に出席をして国際協調の話をいたしました。そのときにグリーンスパン連邦準備の総裁は、アメリカはできるだけ金利を下げてほしい、できるだけ金利を下げよ。アメリカは今不況に入ったようですから、金利を下げるのは当然であります。新聞報道によると、そういう方向に協調してもらうのがアメリカの期待のように受けとめます。間もなくドイツが急に金利を上げました。これはどうも、国際協調の話し合いをして余り日数がたたないのにドイツは金利を上げた。もちろん上げる理由がありますけれども、東ドイ ツへの支援や失業手当やいろいろな通貨を出さなきゃならぬ、インフレの心配がある、だからドイツは金利を上げるという理由はわかるのでありますが、そういう事態になってきてG7で合意をしたような腹合わせが崩れた、崩壊をしちゃった。これは大変心配なんでありますが、私が特に、今世界経済を論ずる場合に心配しているのは、アメリカが公定歩合六%、日本が六%という同じ金利水準になったときに、アメリカは一体三千億を超える財政赤字を埋める資金が流入するんだろうか、そういうようなことでアメリカ自身もこれは大変なことになっていくんじゃないかな。そういうことを日銀総裁として、ドイツの利上げ、アメリカの利下げ、そして日本立場、どういうぐあいに、今後これをうまく調整していくにはどの程度の差が維持されなきゃいかぬとか―言えないことがあると思うんです。日銀総裁がうっかりなことを言うとすぐ殊にはね返ったり為替に影響したりしますから、答えられる範囲はごくごく狭いと思いますけれども、ちょっとその辺のあれを説明してください。
  132. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えします。  まず最初に、先生がちょっとお触れになりましたように、G7でどこが上げるからどこが下げてほしいとか、そういうふうな具体的な話は何もございませんでした。  それで、G7のコミュニケ、これは先生も御案内のとおりでございますが、健全なる財政政策と安定志向の金融政策が世界的な金利低下と世界経済の強化を図るというコンディションをつくり出すんだ、そういうふうに言っておりまして、これはまた逆に言いますと、金利低下と世界経済の強化のためには健全な財政政策と安定志向の金融政策が必要だということになるわけでございます。  安定志向の金融政策というのはどういうことかと申しますと、それは結局はインフレなき安定成長をねらうということでございまして、アメリカが景気が悪くなり、いわゆる銀行の貸し出しが乏しい、しかもインフレの圧力がやや減少したからといって金利を下げる。ドイツの方は、これも先生御指摘のとおりでありまして、旧西独がブームである、旧東独のことを考えて財政の赤字がかなり大きくなる、したがって、インフレを未然に防ぎたいということで上げる。これらはいずれもそういうコミュニケの安定志向の金融政策ということに即したものでございまして、これによってG7の結束がばらばらになったというふうには私どもは考えておりません。  それから、もう一つ先生御質問の日本アメリカの公定歩合が一緒になると向こうへ金がなかなか行かなくなるんじゃないかということでございますが、公定歩合は一緒になりましたけれども、長期金利がいまだ一・五%近くの差がございます。かつ、金利差もありますけれどもアメリカのいわゆる金融市場というのは懐が深い、したがって流動性を確保するための魅力も引き続きございますので、そう急激なフリクションをアメリカのあれに与えることはないというふうに考えております。  いずれにしましても、先ほど申し上げましたとおり、そういった状態のもとで引き続き今の政策効果の浸透を見守っていくというのが私どもの考えでございます。
  133. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日銀総裁、時間、結構でございますから御退席を、どうぞ。  総理、先ほどの藤田君の質問で、九十億ドル、約一兆一千九百億円の支払わねばならない根拠がどうもあいまいだと、総理の答弁が。どういう積算根拠で九十億ドルをはじき出したのか、諸般の情勢を考えて総体的にとにかく九十億ドルと決めたんだと。しかし、それはアメリカの指図などは受けていない、日本独自で決めたんだ、こういうわけなんですが、この根拠を、出さなければならない根拠と積算の根拠、これをちょっと明らかにしてください。もし数字のことにわたって総理で無理ならば、大蔵大臣、わかりますか。ちょっと説明してください。
  134. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げました答弁、重複することになると思いますけれども国連決議の六百七十八に基づいて、その中に平和回復のための経費を関係諸国は適切な支援をしてほしい、こういう決議に基づく要請がございました。日本の場合は国連決議を支持しておりますし、何よりも新しい世界の秩序は、力によってよその国を侵略することを許してはならぬということでありますし、また日本憲法にも、我々は正義と公正というものを世界の秩序に求めておるわけでありますから、国連の要請にこたえて支援をすべきである、このように決めたわけであります。
  135. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それは支援の理由であって、積算の根拠じゃない。積算の根拠はどうか。
  136. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 積算の根拠につきましても、先ほど申し上げましたが、平和回復活動にそれじゃ幾らお金が要るかということを具体的にきちっと私に示されたということはございません。アメリカではいろいろな数字が言われておることは報道によってよく承知しております。けれども、この武力行使がいつまで続くのか、この一日の武力行使の費用その他それに対する補給や後方の問題やいろいろたくさんある平和回復活動に関する総額が幾らになるかということは、これは寡聞にしてわかっておりません。わかっておらないから、いろいろな情報を聞いて、そして日本の置かれている地位から考えると、先ほど申し上げたように世界のGNPの中でどれだけ日本が占めておるか。世界の地球の総生産、委員も御承知のとおり、粗っぽく言えば二十兆ドルある中で、アメリカが五兆ドル、日本が三兆ドル、ヨーロッパのECが全部で五兆ドルということに相なれば、日本としてはどれくらいの影響力とどれくらいの責任を持たなきゃならぬかということを、いろいろな面でやはり考えていくのが私は当然だと思いますし、また日本の置かれておる貿易立国の立場からいって貿易の総量は世界でどれくらい占めておるか。昨年は三百八十億ドル、アメリカ日本の間の通関関係だけでも日本が黒になっておる。数年前まではそれがもとで大変な日米の貿易摩擦があったというような国力の問題もあります。そういったことを全部総合的に判断して、この際日本が自主的に出せるものは九十億ドルということを決めたわけでありますから、それを出していこうということでございます。
  137. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日本政府はその九十億ドルがいいと思って出すんだ。しかし、出すのは海部総理が出すわけじゃなくて、国民一人一万円平均の負担なんですから、積算の根拠も使用途も何にどう使うかも国民につまびらかにしないで、そんな大ざっぱな見解で九十億ドルが決まったなんということじゃ国民は怒るのじゃないでしょうか。もっときちっとした、何かアメリカとの話なり多国籍軍との話なり、あるいは湾岸協力基金なりと話し合った結果、日本の負担はこのくらいだよということで九十億ドル決まったんじゃないですか。どうですか。
  138. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アメリカとの話し合いとか湾岸協力基金との話し合いで決めた数字ではございません。終局的には、湾岸協力基金へ日本は拠出をして、そこの運営委員会で、それでは使い道、使い額、どうなんだということはそこへいってからは日本が使途に予定しているものなんかを申し述べて決めていきますけれども、九十億ドルを決める前の段階では、決める大前提も正直言ってありませんし、アメリカ自体も統一的にこれだけ平和回復に金がかかる、あるいは国連もこれだけかかるということを決めたわけでありません。そういったものの報道はありません。  ただ、国連は六百七十八号に基づく平和回復という目的を達成するために適切な支援を加盟国はしてほしい、こういう決議があったので、それを受けてあくまで自主的にやったものでございます。
  139. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 新聞報道によると、戦費の負担の割合が報道されていますね。ドイツが一〇%、サウジ、クウェートで五〇%、日本は二〇%、アメリカが二〇%、こういうことの報道がなされ おります。この負担割合の報道はうそですか、真実ですか。
  140. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、率というお話がございましたけれども、それが事実でないことを一つの数字をもってお答えを申し上げたいと思います。  先ほど来御指摘のように、日本が総合的な判断の中で、この平和回復のために支援を決定いたしました総額は九十億ドルであります。委員の今御引用になりましたそのマスコミの報道からまいりますと、ドイツが一〇というお話でありました。ドイツは現在の時点におきまして、この戦いが始まりました後、これは明らかに戦費という言葉で、アメリカに対して特別軍事援助という言葉で支出を決定いたしましたものが五十五億ドル、そして英国に決定をいたしましたものが五億四千万ドル、合わせて六十億四千万ドルでございます。これを一つ申し上げましても、その比率といったようなものが成立をしておらないということは御理解がいただけると思います。  しかも、我が国と異なりましてドイツは、NATO軍の範囲内でありますが、トルコまで作戦機を十八機、四個対空ミサイル中隊を派遣をいたしておりますし、東地中海にNATO軍としては掃海艇などを十一隻、連邦軍としてNATO南欧軍の指揮下に入る予定の艦船六隻を提供をいたしておる。さらに、対イスラエルに対しては武器供与、装甲化学偵察車五十八両を初めとした、むしろ兵器の供与まで行っておるという状況でありまして、私は、それぞれの国がそれぞれの置かれた状況の中において、この平和回復に対する努力の負担を応分にしておると判断をいたしております。
  141. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると、あれですか、幾ら質問をしても積算の基礎、数字はないのだから出せないと。つかみ金で総合判断で九十億決めたのだ、アメリカから頼まれたわけでもないと、この程度までしか幾ら質問しても答えられないのですか。  日経新聞によると、橋本大蔵大臣は二十五日午前の記者会見で、これはアメリカですね、九十億ドルは中東へのエネルギー依存度などを勘案し総合判断で決めた、こういう記事なんですね。総合判断で決めたというのが結論なんですが、しかし、国民から税金を一兆一千九百億もいただくのに、計算の基礎はないというばかな話はないと思うのですね。それはやはり全体が幾日分ですか、これは。三カ月分の戦費の大体二割に当たる金額が九十なんですか。もしこれが五カ月、六カ月と長期戦になったときに、さらに出す考えが独自に日本政府としてあるのですか。もし戦争が長引いたらどうするのですか。三カ月以上続いた場合、答えちょっと出してください。
  142. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先刻も藤田委員にお答えを申し上げましたが、一日何億ドルという数字がマスコミの上にさまざま踊っておることは、よく私も承知をいたしております。しかし、米国予算局そのものが見積もりをした中に、ですから、低く見積もった場合の二百八十億ドルという数字と、高く見積もった場合の八百六十億ドルという数字、二つのたまたま数字の手持ちがございますけれども、それぐらい実は数字というものに、自信を持ってこれという数字をどこも出しておるわけではございません。その中におきまして、アメリカ政府も、例えば一日何億ドルで戦いが済むとかそういう数字を公表してはおらないと思います。例えば議会証言等見ましてもさまざまなケースが述べられておるようでありますし、少なくともマスコミに報道されるものだけでありましても、いろいろな数字がございます。  ですから、日本としてはいろいろな情勢を判断しました上で、その中には他国の負担というものも当然ございます。そうした中におきまして、例えば同じような状況にあるドイツがNATOのエリアの中には軍隊を動かしている、日本は全く軍隊はないのですから、自衛隊は外へ出られない、戦いのために出ないという中において負担をすべき相応の金額として九十億ドルというものを見積もった、そのとおりにお受け取りをいただきたいと存じます。
  143. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 どうも説明、納得いかぬですね。これ、三カ月間で終われば九十億ドルで済む、国民は大体そう思っていますね、新聞報道がだあっと大体そういう報道ですから。もしこれがそれじゃ五カ月、六カ月続いたらまた出さなきゃならないのか、また増税が待っているのか、これは国民の率直な不安だと思うんですよ。じゃ、長引いてもあと追加は出さないと、総理大臣として海部内閣が続く限り九十億ドルで、以後戦争が長引いても出さない、こう言い切れますか。
  144. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは一日も早く平和が回復されることを強く願っておりますし、三カ月が五カ月になるというような仮定の前提を置いての議論は、私は今はむしろ、今回決めた分が、これが国会の審議を通じて、これが認めていただくことに当面全力を挙げておりますので、仮定の御質問にただいまお答えすることは、これはお許しをいただきたいと思います。
  145. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今隣の増岡君は、三カ月以上続くことを武藤君は期待しているのか、戦争長期化を期待しているのかなどという意見を述べておりますが、私は、戦争は一日も早くやめるべきだ、即時停戦をする決議をしろ、こう言っているんであります。しかし、国民立場から見たら、一兆一千九百億円の増税するんでしょう。石油税も上がり、法人税も上がり、たばこも上がるんでしょう。そして一兆一千九百億円を国民からいただきたいんでしょう。国民立場から見れば、そういう増税がいとも簡単に次から次へやられてはかなわぬ、みんなそう思いますよ。早く、一日も早く戦争をやめてくれ、九十億ドルを出したやつが、戦争短かったら返してもらえ、これ国民の意見ですよ。十億で済んだら、あとは八十億は日本に返せ、そういうきちっと証文つけて金出せというのが国民の意見ですよ。  だから、この金の積算根拠はどういうことなのか。三カ月分のうちの負担分がこれだと考えて総合的に勘案したんだ、六カ月分までの戦争を勘案して九十億ドルに決めたんだというのか、そこのところはっきりしてくれと言っているんですよ。ただ総合判断で、日本は貿易が全世界の一〇%近くいっているし、GNPは一五%いった大国だから応分の協力をしなきゃならぬ、それはわかるんです、応分の協力は。しかし、応分の協力のあれがなぜ九十億ドルなのか。五十億ドルもあれば三十億ドルもあれば、今まで既にもう四十億ドルは出すこと決めてあるんですからね。二十億ドル、二十億、融資と両方でね。ですから、大変な金なんですよ。僕ら、初めこの四十億ドルで済みだと思ったんですよ。二十億の融資と二十億のあれでね。そうしたらまたばっと出てきたわけでしょう。もう二回目でしょう。また出てくる可能性がないとは言えない。だから、積算の根拠というものをきちっと決めて、あとはもう出さないんだ、こう言い切れるのか。いや、言い切れないんだ、出せと言ってくるかもしらぬという気持ちなのか。本当の気持ちを聞かしてくれというんですよ。無理じゃないでしょう、私の今言っていること。
  146. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今度の湾岸における武力行使がいつ終わるのか、どの程度の規模のものであるかということは、もし武藤委員の方でこういうこともあるではないかという具体的なお考えがあったら、私は教えていただきたいと思うぐらい非常に不透明なものであります。だから、一日も早くこれが解決することを私は願っておるわけであります。だから、三カ月になるとか六カ月になるとか、前提を置いてお話しになりますけれども、私は、三カ月になるとか六カ月になるとかいう前提を置いての平和回復活動について、具体的にお答えを申し上げる根拠を持ち合わせておりません。だから、一日も早く終わるように願いつつ努力をするというのは、これは当然の心構えではないでしょうか。  同時にまた、終わったならば返してもらえというお話でありますけれども、私は、この平和回復武力行使が終わったならば、それはその後、垂れ流しにされた原油の問題に対する処理やその後の周辺国の問題や、いろいろと協力しなきゃならぬ問題も出てくるだろうと思っております。それらを踏まえて、一日も早く平和解決が終わるように願うわけでありますから、具体的に三カ月とか六カ月とか言われても、それは何ともお答えをすることがない。それはむしろサダム・フセインにこちらが厳しく要求して、一日も早くやめてもらうことではないでしょうか、私はそう考えております。
  147. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今公明党も九十億ドルの使い道についていろいろ注文をつけていますね。これが武器弾薬にならない保証があるかどうかということをいろいろ公明党さんも政府と意見を今闘わしていると思うのですね。今のような答弁で九十億ドルが、これ、どういう名目でどういう積算で何に使うかも全く考えずに九十億ドルをぽんと湾岸協力基金に出すんですか。そんなことないでしょう。ちゃんと計算は頭の中でしていて、こういう理由でこういう積算でこうなるんです、しかし一日も早く平和が訪れるように政府は願っております、最善の外交努力します、そう言うんならわかるけれども、積算の根拠も何に使うかもきちっとしてないんでしょう、ここで。弾丸や武器に一切この九十億ドルは使わないと総理、言い切れますか。
  148. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 何度も申し上げておりますけれども、積算の根拠というのは、国連からもそれからアメリカからも湾岸平和基金からも、戦争は何カ月ですとか武力行使は何カ月ですとかあるいはお金は幾らですとか、そんな根拠は出てきておりません。ですから、自主的に判断をするときには、一体国は貿易の中でどれほど世界との間であるのか、あるいは日本の今の国力というものはどの程度のものなのか、どのぐらい期待されているのか、これはあらゆる状況を判断して、貿易における地位とか地球上のGNPで日本の占める地位とか、いろいろなものを考えて総合的に判断するのは、これは当然のことではないかと私は思います。  また、提出する先も湾岸平和基金であるということは何度もお答えをしてまいりました。同時に、それは今後政府としては、今回の資金協力については医療関連、輸送関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費に充当される、そういったことを提出に当たって主張する方針でありますということも何度も申し上げてきております。一日も早くこの目的が達成されることを強く願っておることも何度も申し上げております。変わりございません。
  149. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 それでは総理湾岸平和基金に九十億ドルは出すんだ、これはいいですね。間違いないですね。湾岸平和基金に出すんだ。  そうすると、湾岸平和基金は交換公文を締結していますね。今までの二十億ドルの使い方、交換公文をきちっと。そうなると、交換公文を結ぶときに何に使うかは必ずわかるはずですね。わかったら国会に報告しますか。これは担当だれだ、交換公文の担当は。
  150. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 交換公文はその都度きちっと決めておりますから、今回の九十億ドルの提出に当たっても湾岸平和協力基金と交換公文を締結いたします。その内容については締結が終わった後で国会にお示しをして、このような交換公文でありますということは明らかにいたします。
  151. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今総理の答弁を信用すれば、これは武器弾薬に使わない金だということになると思いますね、裏解釈すれば。そうすると、新聞報道やベーカー国務長官などの発言は違うのですね、それと。大体これはもう戦費に皆なっていくんだ。  今までの二十億ドルの使い道をちょっと調べてみますと、輸送協力が、航空機借り上げ、昨年九月以来五十四便、船舶の借り上げ、米船、アメリカの船籍一、日本船籍二隻を年度末まで契約、これが約百十八億円。医療協力二十三億円。これは昨年九月十八日から十月十九日の先遣隊派遣、東部州出張を含めたサウジ側の関係者との意見交換、病院の視察。このように細かく中身が全部今までの援助はわかっているんだ、わかっている。今度の九十億ドルだけはこういうのが先にわからないというのはどういうわけだ。その次の物資協力については全部交換公文締結。約一千二百二十九億円を平和基金へ拠出済み。十二月二十四日交換公文締結。追加一千三百億円を同基金へ拠出済み。そういうように一応我々に、中身の詳しい具体的なことはわからないまでにも、大きな款項目の款までぐらいのところはわかるのですね。九十億ドルは事前に何にもそういうことの計算が我々の前に説明できないというのは納得いかぬですよ、総理。幾ら早稲田の先輩、後輩の親しい間でも、これは総理、僕は理解できないな。それはやはりもっと中身を突っ込んで説明しないと国民に不親切じゃないのでしょうか。もうちょっと説明できるのじゃないですか、中身を。
  152. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 先生からの今御指摘ございましたのは、従来の十九億ドルがどのように運営されて、どのような実績かというのは、先生御自身が今お触れになりましたけれども、昨年の十二月の通常国会の際に補正予算を計上させていただきました十億ドルにつきましてもまさに同じような御質問がございましたけれども、そのときにも、先ほど来総理が今回の九十億ドルについて申し上げておられるように、その当時はこの資金協力の輸送関連経費に充てられる、それに関しては、まさに交換公文を結んで、そしてその湾岸平和基金に払い込み、そして運営委員会で具体的な決定を行って支出していくということを申し上げてございますが、今回の九十億ドルも同様でございまして、先ほど総理が申されましたように、これは新たにGCCと日本政府の間で、国会で全体について御承認を得た後でございますけれども、交換公文を結びまして、このGCCの湾岸平和基金に拠出する。その運営に当たりましては、運営委員会というのは、このGCC六カ国を代表するGCC事務局長と、それから日本を代表する、日本政府を代表しております在サウジアラビアの日本国大使、これがまさにこの資金協力に関しまして、各国からの具体的な要請を踏まえて、その都度それを審査し決定して支出していくということでございまして、そのことに関しましては、先ほど来基本方針は総理が申し上げられたような基本的な考えで日本政府としては今度の九十億ドルの運営に当たっても対応していくということでございまして、それで従来の十九億ドルに関しましてまさにそういうことで対応いたしまして、先生が前半に読み上げられましたのは、日本政府直轄の協力でございますけれども、後半で読み上げられました物資協力と資金協力はまさにそういうことで対応した結果でございます。
  153. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 だから、基金に九十億ドル出した場合に、日本人でこの運営にかかわり、中身がわかるのはサウジにいる日本の大使、サウジにいる日本の大使が運営に参加をする。その場合、多国籍軍がそれぞれ要求を出してくる、その運営委員会に。その場合に、武器弾薬、そういう直接戦闘に必要なものが含まれていてもこの運営委員会は拒否できないのかできるのか。そうすると、武器弾薬にもこの金が使われるか使われないかが聞きたい。
  154. 松浦晃一郎

    松浦(晃)政府委員 基本的な方針は先ほど総理が既に御答弁されておられますので、私は具体的なメカニズムに関して一般論でお答え申し上げたいと思いますけれども、まさに先生が御指摘のように、湾岸平和基金の運営委員会はこのGCCの代表と日本政府の代表で当たっておりまして、先ほどちょっと私が触れましたように、湾岸平和回復活動に従事しております各国から具体的な要請がこの運営委員会に提出される、その具体的な要請を踏まえて運営委員会で審議をし、そして日本政府の代表である大使は日本政府の考えを踏まえて対応するということでございまして、そこで審査の上決定を行って、それから具体的に支出をする。それに当たっての基本的な考えは、先ほど総理が申されたとおりでございます。
  155. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そうすると総理、そこで、サウジにいる日本の大使が本国の訓令で、武器弾薬に使われては困る、日本の拠出金は、そういうことを大使に主張するように総理として下命をするんですか。武器弾薬に使っては困るんだ、日本の九十億ドルは、それ以外の輸送とか医療とか食糧とか平和のための金にこれは使うんです、人道のための金に使うんです、それ以外困る、日本政府としては、それをきちっと条件つけますか、この基金の方に。
  156. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 九十億ドルを湾岸協力基金に拠出をする、それは、何度も申し上げましたが、平和回復活動に対する日本側の拠出であります。したがって、そのときにいろいろな御議論等もございます。私は、先ほどから答えておるように輸送関連、医療関連、食糧、生活関連、事務関連等の諸経費に充当する方針でありますから、その方針を大使に伝えて、湾岸協力基金ではその旨を、我が方としてはこれに充当させる方針であると政府の意向として伝えるのは、これはそのとおりでございます。
  157. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理がそういう平和のために使うんだということをはっきり今ここで聞きましたので、後で交換公文でどういう取り決めになるかによって結果ですぐ判明することでありますから、それが守られたかどうかは後ですぐわかりますから、そのときにその後の処理の仕方についてはここでまたお尋ねをする、そういたしたいと思っております。  それから、ソ連の状況がいろいろ問題になっておりますが、この間橋本大蔵大臣、アメリカへ行ったときですか、バルト三国の武力制裁ということはイラククウェートに侵攻したのと本質的には同じである、こういうようなことを、新聞報道をここに持っておりますが、書いてあるのであります。そして、ソ連への援助は好ましくないというような趣旨をそこで言いたかったんだと思うのですね。あのクウェート侵攻とバルト三国への武力干渉が本質的に同じだという発想が私にはよくわからないのですが、その辺をちょっと説明してください。
  158. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 多少その新聞報道は不正確であります。  対ソ経済支援について、G7におきましてさまざまな議論がありましたことは御指摘のとおりであります。そして、その席上で私が最終的に申し述べましたことは、中国の天安門事件が起こった際、中国に対して我々は極めて厳しい姿勢をとった。そして本年、私は中国を公式に訪問したが、依然として各国との関係はその状況が解消されてはいない。さらに今回、今全く違った状況の中でクウェートに対するイラク武力侵略の結果、湾岸に起きている状況は各位が御承知のとおりである。そして、今日バルト三国において自由と独立を求める民衆に対して武力行使されたという報道がある。これは、ちょうどその会合の直前に、第二国目における武力行使テレビ報道が流れた、それを受けてのことであります。我々としては、こうした情勢を公平に判断しなければならない。すなわち、例えば天安門事件で厳しい対応をとるならば、独立を求めるバルト三国の住民に対してソ連がとっている行動に対しても同じ対応が必要になる。こうした情勢を踏まえた上で、政治的、経済的にいかに行動を判断するかである。私が申しましたのは、そのようなことであります。
  159. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理大臣、それでは、バルト三国に武力干渉したからソ連への経済援助、そういうことは一切日本はここでストップだ、あるいは何らかの制裁措置を政府としてはとろうとしているのか、その辺をちょっと明らかにしてください。
  160. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連日本との関係というのは、基本的に言いますと、ただいまのところ技術調査団の受け入れとか、知的交流とか、人物交流とか、あるいは宇宙衛星の中における共同の行動とか、やけどの坊やを治療するとか、幅広く実にやっておりますけれども、ただ、経済援助とか資金援助の問題については、東西関係の残滓である北方領土の問題を解決して平和条約が締結されるということが日本にとっては大きな大前提条件でもありますから、拡大均衡の中でその問題は解決をしたいという基本的な考えを持っております。いわゆる無原則に政経分離はしない。ただ、最近の一連のソ連の窮状にかんがみて、人道上の問題については、食糧援助とか緊急援助とかいろいろなことを始めました。  それはそれとして当然行っておるわけですが、それと今度のバルト三国における二度にわたっての武力行使というものは極めて憂慮すべき問題でありますから、この問題については強く、平和的な民主的な方法で解決するように日本の意向というものは伝えて、ソ連に対するこの対応を平和的、民主的にやるように求めているということであります。
  161. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 日本政府は、バルト三国の今の動きから独立が当然だと認識しているのか、それとも、あの三国はヤルタ体制以前に併合した地域であるからヤルタ体制の崩壊と同列ではないと理解すべきなのか。この辺は、一応外交的な立場から日本はどう認識しているのか、これは外務大臣でしょうかね。三国の独立運動は当然だと考えるか、それともあれは嫌なものを併合された、ヒトラーとスターリンの密約でやった話だからこれは認めないという立場なのか、日本政府はどちらの立場ですか。
  162. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私どもは、バルト三国のソ連邦への併合の歴史的な過程というものが厳存することは事実でございます。ちなみに、この機会に、どのような歴史でこうなっているかということも、少しお話を申し上げた方がよくおわかりだろうと思います。  一九一七年に結局ロシアの内戦の結果、連合軍の干渉によってバルト三国も混沌とした状態になった。一九二〇年にエストニア、リトアニア、ラトビアがソ連との間に平和条約を締結した。三九年にソ連はバルト三国と相互援助条約を締結して、赤軍の、つまりロシア軍の駐留権を獲得しております。そして、一九四〇年にソ連は親ソ政権の樹立を要求いたしまして、リトアニア、ラトビア、エストニアに人民政府の成立が行われまして、八月三日から五日の間にソ連最高会議は新しく選出された三国の人民議会の要請を入れて三国のソ連邦編入を決議した、こういう一つの経過がございまして、九月の五日、日本政府は上記の通告を受けて在リガ公使館、在カウナス総領事館、タリン外交官出張事務所を閉鎖したというような、日本国とソ連との間のこの三国に関する関係がございます。  以上のような観点から、バルト三国の連邦からの離脱の動きにつきましては、これらの共和国の国民意思が十分尊重されるべきものではないか。これが一つの側面でございますが、一方、ソ連邦全体としては、連邦と地方政府の根幹にかかわる問題でございますから、この難しい問題をどのようにゴルバチョフ大統領がこれからやっていかれるか。  先般、私はソ連を訪問しました際に、ゴルバチョフ大統領じきじきに申し上げたことは、軍隊が国民を殺傷するというようなことは人道的に好ましくない、これはぜひひとつ平和的に解決してもらうように日本政府としての意思をはっきりとお伝えしたいと申し上げたら、大統領は、自分は政治的に解決するために努力をするというお話があったことも御披露申し上げておきたいと思います。
  163. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 バルト三国は、日本でいうと昭和十五年ごろですね、ヒトラーとスターリンの相談で吸収されてしまった。日本政府は、結局それは認めたわけですね。アメリカは認めてないのですね。アメリカは五十一年間ずっとバルト三国の併合を認めてないのですよ。だから、アメリカ立場で言える主張と、承認をした日本立場とはおのずから濃淡、違うわけですね。  私は、アメリカ外交のそういう点の何といいますか、かたくなというか一貫性というか、何かこうすごいものを持っているんだな、こういう感じを、このバルト三国問題のいろいろの資料を調べていって感じたのでありますけれども、いずれにしてもゴルバチョフのペレストロイカは、これは上手に達成できるのか、挫折なのか。ある評論によっては、既にもうペレストロイカは終わりになったという評論もありますね。ああいう七十年間の管理と統制と中央集権の政治が続いた後、市場経済の導入というようなことが容易にできるのだろうか。この市場経済が導入されるための条件は何と何と何だ、そういうことを外務省はどんな分析をしているのですか。うまくいきそうですか。
  164. 兵藤長雄

    ○兵藤政府委員 ゴルバチョフ大統領の始めましたペレストロイカ、あの行方に大変な困難な問題が横たわっていることは御承知のとおりでございます。  中山外務大臣がゴルバチョフ大統領と会談をいたしました際に、ゴルバチョフ大統領は、いろいろなことはあるけれども、ペレストロイカ路線は自分としては断固堅持したいということを明言をされております。私どもとしては、そのゴルバチョフ大統領の御発言どおりに、ペレストロイカ路線が堅持されることを強く期待をし、中山外務大臣も、日本政府としてのその期待を強く表明された次第でございます。
  165. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 市場経済がうまく作動するためには、かなり苦労してまずソ連の財政赤字を解消しないとうまくいかぬと思いますね。通貨が国際的な信認の得られるような国際性を持たない限り、市場経済なんかうまくいくはずないですね。それから、労働者の賃金がやはりお互い自由に相談をして決められるという情勢、そういう条件が四つ、五つきちっと整備されないと、私は市場経済というのはうまくいかないと思うのですね、導入できないと思うのですね。  ですから、まあ他国のことをここで干渉する気持ちはありませんけれども、やはり日本ソ連との関係を考える場合には、そういう運営のノーハウ、技術者あるいは学者、そういう人たちと、ソ連はもっともっと日本と交流をして、日本のそういうノーハウをやはりどんどんソ連に輸出してあげる、そういうことが前提にならないと、ちょっとぐらいな応援ではどうにもならぬ、私はそんな見方をしているわけなんであります。  そこで、今度欧州復興開発銀行がいよいよ発足をしますね。この欧州復興開発銀行、フランスのアタリさんが総裁です。私、アタリさんと二回ばかりエリゼ官で会談をした経験があるのですが、この人が今度総裁ですね。この欧州復興開発銀行は、東ヨーロッパ並びにソ連支援する銀行でありますが、この出資を日本も今度の国会で恐らく決めるんだと思うのでありますが、総額で幾らになって、そしてソ連に対して、こういう事態では援助を当面はしないということになるのか。その辺の外交チャンネルからの情報では、この復興銀行はどういうことになりますか。日本の負担が幾らで、総枠が総額で幾らで、ソ連に対してはどういう態度をとるだろうか、その辺をちょっと聞かせてください。
  166. 千野忠男

    ○千野政府委員 お答えいたします。  資本金の総額は約百二十億ドルでございます。それから、日本の出資の予定は千四百四十七億五千四百万円でございます。
  167. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今、数字につきましては局長からお答えをさせたわけでありますが、欧州復興開発銀行の対ソ支援というものにつきましては、この協定上、ソ連への投資額は、ソ連が実際に払い込んだ資本の範囲内に制限をされております。協定の八条の四において、払い込みの資本の範囲内ということでございます。これについてもさまざまな論議があることは事実であります。実際これがスタートをいたしました後どう対応していくかということにつきましては、四月に予定をされておりますこの銀行の発足の後に、具体的に加盟国間において検討することになるであろう、そのように考えております。
  168. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 隣国でありますし、また地下資源の大変豊富な国でありますから、ソ連との関係はやはりかなり長期的な視野に立った諸施策を私は考えなければいかぬだろうと思います。  時間の都合でこればかりかかっているわけにいきませんので、先に進みますが、次に、先ほどの九十億ドルの今度は財源の問題でありますが、政府は法人税の税率を引き上げる、さらに石油の値段を上げる、またたばこも十円上げる、こういうことで閣議決定をいたしたようであります。この税法が通らなければこれは執行できないのでしょうね、予算は。どうなんでしょうか。
  169. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 税法と申しますよりも、これは今鋭意国会に御提出をいたしますように補正予算案、平成二年度補正第二号とあわせまして作業いたしておりますけれども、まず第一に、平成二年度において既に我々として財源を持っておるわけではございません。そのために、その資金手当てとして今委員が御指摘になりましたような三税によります法律通過、成立後の税収というものを前提にいたしまして、年度内に短期の国債、TBを発行させていただくわけであります。そしてそれによって手当てをいたしました資金を湾岸平和基金に対して拠出をいたしますとともに、その短期国債につきましては税収の入ってまいります次年度において返済をしていくという形になります。ですから、税法以前の問題といたしまして、その年度内におきますTBの発行そのものが法律を必要とするわけでありまして、その法律が通過をしなければ拠出はできません。
  170. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 補正予算だから、予算だけ通れば参議院で否決されても一カ月後には成立するという安易な見方をする人がいるものですから、ちょっと取り上げているわけですが、赤字公債を発行する特例法がまず通らぬ限り金は出せない。仮にそれが通って、借金だけは一応して九十億ドルをそろえた、一兆一千九百億そろえて湾岸基金に送金をした、そうしたとしても、今度は埋め合わせる税法の方がやはり衆参両院を通過しなければ、これ、金が取れない。その場合は赤字公債発行のままずっといくのか、それとも何か別な名案があるか、大蔵大臣、どうですか、その辺は。
  171. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一に、今回の湾岸平和基金への拠出につきまして、平成二年度において我我に既にお許しをいただいております二年度予算の範囲内における財源の拠出というものは、全くどうにもならない状況であります。その結果として、私どもが考えました選択肢の中に今委員が述べられました非常によくないケース、要するに財源の裏打ちのない、従来ありましたと同じような赤字国債をお願いをし、財源のみを国債によって調達をする、そして他の国債と同じように累積させ、その返済というものは子供や孫の代に送ってしまう、そういう安易な考え方というものも、検討の対象としてはございました。しかし、今必死で財政再建を叫び、節減の努力をし合理化の努力をし、ようやく特例公債に依存しない予算というものをつくれるようになりました状況の中で、国債残高の累増にいかに歯どめをかけるかというのは非常に大切な我々の課題であります。  こうした情勢の中におきまして、我々が全く予定しなかったサダム・フセインのクウェートに対する侵略という行為から起きた今回の負担につきまして、それを安易に後世代に譲るということは我々はとるべきではないと考えました。その結果として次年度における増税、国民にお願いをする、大変御苦労をかけることになるわけでありますけれども、それを財源とするつなぎのいわば国債として短期国債をお願いをするという考えをとったわけであります。
  172. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 この問題には、短期国債が通らなかった場合、あるいは通った場合、しかし通っても次は税法の問題が通らなければこれもまた実行できないという二つのひっかかりがあるわけですね。ですからこれ、政府は大変な重みで、これを突破するにどうするかは深刻に考えておると思うのですね。  小沢幹事長は、新聞報道によると、過般、この九十億ドルの関連法案が国会を通過しなかったときは責任問題である、幹事長をやめる決意だというようなことが新聞に報道されております。もしこの赤字公債法と税法改正が衆参両院を通過しなかったときは、内閣総理大臣は、総辞職をするか、信を国民に問うために解散・総選挙をするか、いずれかの選択が迫られると思うのであります。そういう場合に、この局面をどのように切り抜けようと考えておるのか、総理大臣の見解を聞きたい。
  173. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 この世界的に大きな問題、平和の枠組みの中で力でもって支配をすることを認めるかどうかという、この侵略排除のための国連の活動に対して日本ができる限りの応分の支援しなければならぬということで取り組んでおる問題でありますから、私は、これは一内閣、また一党の幹事長の責任問題ということで、そんな次元のレベルで話のできる問題だとは受けとめておりません。したがって、これは将来の国際社会における日本立場に響く問題でありますから、そういう次元に立って十分御論議の上ぜひ適していただきたい。そのときになって示された方策のどちらをとってどうやるかということは、そのときまで全力を挙げて努力をして、その段階で私どもが決断すべき問題だと心得ております。
  174. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 総理は行政預かっておる立場で、そう軽々と言えないと思いますが、幹事長はそういうことを新聞で述べていますからね、責任問題で辞職問題に発展するという。まあ新聞によると、それは野党におどしだ、そう言えば、非常事態だ、戦争だということで野党も乗るだろうというような気持ちがあるいは腹の底にあるのかもしれませんが、いずれにしても大変な事態であることだけは間違いないわけですね。こういう事態に、金のある人もない人も、生活保護家庭であろうと何であろうと、すべての人に負担をさせるのが公平公正だという意味でたばこまで値上げするのかもしれません。  しかし、こういうときに政府はその前に、国民に何か頼み、訴え、こういう方策はどうだろうかというようなことの案を苦心する必要があるんじゃないのか、私はそう思うのです。例えば寄附金で、政府が寄附金を集める、その場合には税の控除を認める、財団法人のように。そして、この湾岸危機に対応する国民的な応援をしてくれと声涙ともに下る、国民に訴える、総理が腹からの訴えを、寄附金募集をやったらどうだ。日赤は今始めましたね。湾岸戦争救援のための募金運動を始めた。政府がそういうことをやっちゃいかぬのでしょうか。そして、金のある者は金を出してくれ、知恵のある者は知恵を出してくれ、力のある人は力を出して、大いにひとつこの難局を切り抜けよう、そういうことを総理として訴えることがなぜできないのか。私は残念でたまらない。ぜひ所得税、法人税の控除を認める寄附金で湾岸支援を集めようという呼びかけ、そういうところまでは気が回らなかったのか。一兆円は集まらぬと思うけれども、かなりの金が集まることは間違いないと思いますね。どうですか。
  175. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今とっさの御提案でありますが、確かに税法上の特典を指定された寄附金に対して適用することは可能であります。しかし、果たしてそういう形でどれだけの金額が集まるか。これは、はっきり申し上げて、私には全く予測が立ちません。  そして先ほども申し上げましたように、例えばドイツが六十・四億ドルを既に拠出を決定している情勢の中、しかもNATOのエリアの中とはいいながら、トルコまで戦闘部隊、戦闘機を送り、その要員を送り、また海軍力まで送っているくらいの態勢をとっている中において、お隣の韓国は資金負担だけではなく、軍の輸送機を五機、乗員とともに提供しております。  日本は残念ながら今その金額しか負担ができないという状況の中におきまして、私どもは確かに九十億ドルという拠出の判断をいたしました。しかし、それが、政府が知恵を絞れとおっしゃいますけれども、それがその指定寄附という形でそれだけの財源に対応するということは、私は責任を持ってそれで了とするとは申し上げかねることであります。むしろやはり湾岸のこうした平和回復というものに結びつく、御理解のいただきやすい一つの税としての石油、また全法人、もちろん一定以下の、所得のない法人は外しますけれども、全法人に御負担をいただく法人税、こうしたものを中心に税を組み立てていく、そしてそれを前提にしたつなぎの国債によってできるだけ早く資金の拠出を行いたい、私はそう考えておる次第であります。
  176. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私もそういう寄附制度で一兆一千九百億円集まるなんて思っていないのですよ。姿勢なんですよ。国民に本気だというその姿勢が重要なんですよ。安易にたばこも上げた、石油も高くなったで埋め合わせをする、そんな安易な姿勢ではいかぬということを言いたいわけなんです。それだったら、もっと金のある者にはこういう協力でひとつ政府に拠出をしてくれというそういうことができるんじゃありませんか。今回は、ソ連に対する援助の場合も、今度は指定寄附で控除を認めてとにかくやろうじゃないかということが出ているわけですね。そういうことを政府が本気でやろうという努力をすれば、国民は、同じ税をいただくにしても、考え方がもっと私はやわらかくなると思うのですよ。どうも積算根拠も示さない、何に使われるかもどうもようわからない、そうして一兆一千億円も取られるとなれば、国民はかちっと頭へくる人もかなりいるわけであります。そう言うて私は今ちょっと提案をしてみたわけであります。  外務大臣、防衛庁長官でもいいのかな、今一日湾岸戦争五億ドルかかると新聞はこう書いていますが、かつての朝鮮戦争、ベトナム戦争、一日どのくらい戦費がかかっていたと承知していますか。
  177. 池田行彦

    ○池田国務大臣 突然の御質問でございますし、かなり時代を経た話でございますので、正確な戦費の額についてはお答えできません。お許しください。
  178. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 朝鮮戦争のときが一日四千万ドルぐらいだと言われております。ベトナム戦争は一日一億ドルかかったという発表であります。今回はそれが五倍ですね。五億ドル金がかかる戦争ですから、これは長引いたら本当に大変で、世界じゅうが経済的におかしくなってしまう。さらに、油がペルシャ湾にどんどん流されて生物がみんな生息できなくなる、飲み水も飲めなくなる、そしてまた油田の油が宇宙を汚染して酸性雨だ、温暖化だ、もう大変な被害を人類に与える戦争になりつつある。だから、理由のいかんを問わず早く停戦をしろ、停戦をしてからまた裁きをやり、いつでも制裁はできるわけでありますから、そういう努力をやはり日本は世界に向かってやるべきじゃないんでしょうか。パートナーであればあるほど、アメリカに本当の心情を訴え、言いづらいことも言うというのが本当の友人だと私は思うのであります。  そういう意味で、外務大臣にぜひともそういう今の、宇宙を汚染したりいろいろな被害が出ている戦争の事態というものをとにかく早く話し合いできるようなことに最善の努力を注いでもらいたい。例えば、中国は今回の場合は武力行使もしないし、拒否の発動をした。したがって、一応無傷だから調停に入る資格があるような気がしますね。ソ連武力介入はしないと言うんでありますから、そういう国々を通じて何かフセインにきちっと交渉できる国際的なそういう手段というのは全くもう途絶えちゃったんでしょうか。もうフセインがとにかく自発的にやめるなり降服するなり、あるいは自殺をするなりして国内がおさまらなくならない限りしょうがないんだということなんでしょうか。全然、そういう調停の可能性はゼロだ、こういう状況なんでしょうか。
  179. 中山太郎

    ○中山国務大臣 私は今日まで、八月二日にイラククウェート侵略があったわけでありますが、今日まで五カ月と十数日経過したわけです。その間に、国連では十二回の決議が行われた。そこでいよいよ最終的ないわゆる一月十五日を迎えたときに、私はちょうど一月十五日の午前十時に国連本部でデクエヤル事務総長にお目にかかりました。そして、デクエヤル事務総長にこの事態の収拾の見通しはどうかということをお尋ねいたしましたら、事務総長は、あらゆる努力をした、しかしサダム・フセインは撤退するということを一言も言わなかった、あと十四時間しか残っていない、こういうお話でしたから、私は、まことに御苦労だけれども、最後まで停戦努力をしてもらいたい。もし、この時間が切れて戦火が交えられるという事態になりましたときでも、国連事務総長の出ていただく停戦機会というものは必ず訪れるに違いない。そのときには、日本政府としてはデクエヤル事務総長に十分な支援をするということを申して帰ってきたわけでありますが、私は、現在の時点ではサダム・フセイン大統領撤退をする意思を一日も早く明示して撤退を開始する、そこで直ちに停戦の話が起こってくる、このように信じております。
  180. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 割り当て時間は終わりました。  終わります。
  181. 渡部恒三

    渡部委員長 これにて藤田君、武藤君の質疑は終了いたしました。  次に、増岡博之君。
  182. 増岡博之

    ○増岡委員 私は、まず最初に、今度の湾岸紛争のことにつきまして総理大臣の御見解を承りたいと思います。  ときに、ことしはちょうど日米開戦以来五十年目に当たります。したがって、この五十年間の日本の歩みというものも顧みてみなければならないと思います。戦争はもちろん敗戦に終わりました。その後、食糧のないときには米国が日本に食糧の援助をしてくれました。飢え死にをしなくて済んだわけであります。日本はその食糧を国民に売ることによって資金を得ました。それが復興開発銀行であります。その資金のおかげで日本が経済をだんだん力をつけてくることができました。その間一貫して大きな軍隊は持たなかったことはもちろんであります。  そうして、昭和四十三年になって初めて、好況のときでも、日本国内の景気がいいときでも、国際収支が黒字になる、イザナギ景気のときに、昭和四十三年に貿易収支が黒字に転換したわけでありまして、それから後は経済自立の国でありますから、世界各国に対して政府の経済援助はずっと続けられております。卑近の数字を申し上げましても、我が国の昨年の経済援助は額において世界一であります。また、一人当たりにいたしますと、人口の関係から十一位あるいは十位ということもあり得るわけでありますけれども日本がそれだけの経済援助をしても、世界からは世界の国際政治の傍観者、見物人であるというそしりを受けてまいりました。今回、総理がこの決断を行われたことによって初めて、我が国は国際政治に、人の目につくような、世界の国民に目につくような貢献を行うことができるわけであります。したがって、総理は、この仕事を実行なさいましたら、現在の閣僚の諸君もそうでありますけれども、政治家としてこれだけ大きな仕事をやった、男の本懐だと思うぐらいの感慨を覚えていただくことができると思います。しかし、そのことは何年か後にお尋ねいたしたいと思います。  目下、今、湾岸におきまして戦争が行われておることは明らかであります。この発端は、イラクによるクウェート侵攻、侵略で、八月二日であることは間違いございません。そしてまた、その後国連イラクに対する非難、制裁の決議を十二回も行っております。その半分ほどは全会一致であります。反対が出るのは何回かありますけれども、必ず二国に限られておるわけでございます。こういう政治情勢を考えましても、世界じゅうがイラクを非難しておる。したがって、一月十七日の日は、これはクウェート国民クウェートの領土と富とを奪還してやるためのクウェート支援の連合軍が反撃に出た日にすぎないと思います。今、国民は、恐らく一月十七日が戦闘開始の日だと思っておられるに違いないと思いますけれども、事実は、昨年の八月二日から戦闘が始まって、戦争が始まっておるわけであります。  その戦争の理由。理由があり、決意があり、行動があるわけでありますけれどもクウェートイラクイラン戦争に対して、多額の資金援助をイラクに対して行っております。開戦前、クウェートの持つイラクに対する債権は一兆五千億円ないし二兆円だろうと言われております。クウェート国民は、イランイラク戦争が済んだのですからこれは当然返してもらえるだろうと思っておりましたら、借金を返すどころか国を丸ごととられてしまったわけであります。このようなことが許されるなら、私から申し上げておるのではありませんが、テレビでもよく、シンガポールもブルネイも日本も危ないじゃないかということを言う人すらございます。それだからこそ多国籍軍湾岸に出動をいたしておるわけであります。  したがって、日本の歴史の中に残るような偉業を達成しようとされる総理並びに閣僚でありますから、今日総理は、私の質問に対してよりも国民に対して、今なさなければならぬその決意のほどを、時間もたっぷりとっていただいて結構ですから、お述べをいただきたいというふうに思います。
  183. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私の考えを率直に言わせていただきます。  御指摘のように、戦後の世界の中で、日本は自由と民主主義の価値観を大切にする、そういう陣営の一員となることを選び、まさに御指摘があったように、私どもの青年のころを振り返ってみますと、いろいろ物質的に苦しいときやあるいは東西の対立の激しいさなかにあって、日本の国は、安全も、そして経済も生活も、そして生活文化に至るまでもアメリカとの間の二国間関係というものの中でいろいろ恩恵を受けて育ってきたことも、これは事実として御指摘のとおりだと思います。  また、私が国会は初めて議席を持ちました昭和三十五年に安全保障条約というものが改定になったのでありますが、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」ということであり、ただ単に安全保障だけではありませんでした。自由な国と国の諸制度とか福祉の条件の助長であるとか、国際経済政策における違いをなくしながら経済協力をしていこうということが日米安全保障条約の相互協力及び安全保障条約というタイトルになった、昭和三十五年の一つの節目であったと思います。以来きょうまで安全保障の面でも経済の面でもいろいろと深い関係を持ってきた大事な二国間関係であることは、これは御承知のとおりでございます。  世界はそのころ、アメリカ中心とするグループとソ連を頂点とするグループと、この二つの巨大な国の軍事力によって平和を保っていこうという機構が働いておりました。当時、国連では安全保障理事会、そこでは拒否権の制度がありましたから、いろいろなことで国連の目指す平和を維持し確保していくための機能というものは、残念ながら発動されることはありませんでした。  この東西の対立時代というものの終わりを告げたのが、御承知のベルリンの壁の崩壊に象徴されるような、冷戦時代の発想を乗り越えて、力の支配ではなくて話し合いによって平和を解決する。それは新しい世界の平和を守る秩序、枠組みづくりをするという意味において国連というものが機能するようになってきた。ソ連中国も、アメリカやイギリスやフランスとともに安全保障理事会を形成して、昨年八月二日のイラクによるクウェート武力による侵略、併合という事態に関しては厳しくこれを非難する決議を何回も累次にわたって行うとともに、今回の六百七十八号の決議もそこで成立をしてきたわけであります。  したがって、政治家として私どもが遭遇したこの節目というものは、世界の平和を守っていく枠組みや秩序というものが今まさに質的に大きく転換し、力による東西の対決時代を乗り越えて、国連というものに、みんなの合意によって、話し合いによって平和を守っていかなければならぬという新しい秩序づくり、枠組みづくりを模索しておる大切なときに遭遇しておると私は思っております。したがいまして、去年の八月二日に行われたイラクによる武力侵略というものを、新しい秩序づくりのときにはこれは容認しておいてはならぬというのが私の基本的な考え方であります。国連がこれ以上の平和の破壊は許さない、そして国連憲章そのものがスタートのときから持っておっここういったものは排除して、新しい世界の平和を、秩序を守っていかなきゃならぬという行動に対しては、日本はこれを支持をする。  同時に、日本憲法も「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」すると、これは第九条に書いてあるわけです。日本憲法の平和主義というものの大前提は正義と秩序を基調とする国際平和であって、やられたものはやられっ放し、武力による侵略や併合があっても、まあかわいそうなことだ、どうのこうのということを言わないで、原則に基づいて国連が果たすべき役割を果たすべきであるというところに、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという憲法の宣言の文言も精神もそこにあると私は思います。しかも「いづれの国家も、」と、いずれの国家とも、世界じゅうの国を名指して、自国のことのみに専念してはならないのであって、他国のことをきちっと顧みながら世界恒久の平和のために努力をし、その中で「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と憲法の前文に宣言しておるわけでありますから、力を合わせて解決すべき問題、平和の破壊をこれ以上拡大させてはいけない、道理に従った国連決議に従って解決しなきゃならぬという基本を私は支持をし、これが一日も早く行われるように考えておるんです。  したがって、今度の湾岸の不幸なこの状況というのは、委員おっしゃるようにその起源はあくまでも八月二日のイラクによるクウェートに対する侵略であって、これが今回のスタートであることは間違いありません。ただ、歴代、累次の決議に従ってこれに対して排除のためのいろんな努力が行われましたが、結局イラク反省クウェートから撤退という国連決議に、原則に従った行為が行われなかったがために、これをいつまでもほうっておくということは世界の平和、新しい秩序づくりに対してもこれは好ましいことではないし、断固排除しなければならないというのでやむを得ずとられた武力行使でありますから、これが一日も早く終結することを心から願いながら、日本としては、世界に向かって言っておるように、国際協調主義のもとで、日本としてもなし得る限りの応分の協力をしていかなければならない。  ただ、武力の威嚇や武力行使を伴う戦闘部隊の参加は、これは許されないということを踏まえて私は物を申し上げておるわけでございますから、委員の御指摘の方向と私ども考え方と、目指しておるところは同じであると考えております。
  184. 増岡博之

    ○増岡委員 ただいま総理からかたい決意をお伺いいたしました。  まさに、今や米ソ冷戦後、新しい世界秩序が確立をされようとしておるときであります。その事態に対して挑戦をいたしておるのがサダム・フセインだということは、これは紛れもない事実であり、世界じゅうの国民が認めておるところでありますから、我が国としてもできる限りの、この場合は応分という言葉を使いますけれども、多少は背伸びをしてでもその協力をいたすべきではないかというふうに思っておるところであります。  ただ、日本の中にもいろいろな意見を申す人がございます。この今行われております戦闘行為、例えばイスラエルをミサイルで攻撃しておりますけれども、これは私は戦闘行為とは思いません。ミサイルを使った国際テロだと思っております。それからまた民間人、一番多いときは七百二十五名の捕虜を盾にして、そうして自分の国に踏み込むことができないようにしておる。これは完全に戦争犯罪行為であることは間違いないというふうに思います。そういう残虐非道と申すべきか不法行為をしておるイラクに対して、何らかの、世界じゅうの国連で集まった意思表示に対して、貢献をしようとするのが我々の立場でありますけれども、逆にそういう貢献をしなくても、例えば中国ソ連の例を挙げる人があります。しかし、ソ連だりて軍艦を派遣しております。中国だって国連の席で何がしかの協力を、相当な協力をやっております。にもかかわらず、あの人たちは何もやってないけれども国際的に孤立をしていないではないか、そういう議論が巷間行われておる。まことに残念なことだというふうに思います。  私は、そういう意味でも、我が国が掲げております憲法その他、我が国の憲法に、九十八条には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と書かれております。それから、国連憲章の第二条には「すべての加盟国は、」「この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。」こう国連の憲章に書いてあり、我が国も加盟をいたしておるわけでございますから、今回の措置は私は法的に言っても行うべき義務を持っておる。正確に言って法的であるかどうかは判断の分かれるところであるかもしれませんけれども、少なくとも世界の一員としての我が国あるいは世界の中で生きておる我々といたしましては、これは全くそういう義務を持っておるものであると思いますが、中国ソ連を例に挙げて、そして、何もやらなくてもいいじゃないかという意見もあります。その意見に対して総理の御見解をお尋ねいたしたいと思います。
  185. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように中国ソ連そしてアメリカ、ヨーロッパというのは、ついこの間までは東西対立の枠組みの中で全く対立、対決をし、それが冷戦状態という言葉で呼ばれるような状況でありました。だからそこでつくられた平和の枠組みというものが力の均衡あるいは恐怖の均衡とも呼ばれたものでありまして、そういったものではいけないから、自由と民主主義と市場経済という共通の価値を求めて、そして東西関係が終わりを告げて一つになろうとしておる。ですから、力で抑えてきた平和の枠組みを話し合いによって、協力協調によって築き上げていこうというのですから、私はそういうときにはまさに孤立をしないで皆が協力協調をして築き上げていかなきやならぬというのは当然のことであって、日本憲法にも、そして国連憲章の前文にも、それはお互いに、国連憲章の前文なんかは、善良な隣人として助け合いながら、協力しながら平和を守っていこうと、こう書いてあるのです。私ども日本国憲法でも、すべての人々の公正と信義に信頼して生存と安全をゆだねていこう、みんな前提は今後皆が話し合って協力をし合って仲よくやっていこうとなっておるとすれば、新しい我々の目指す世界の秩序の中で、まず第一に基本的に大切で皆が合意しなきゃならぬことは何であるかというと、力でもって侵略、併合はしない、力でもって国を奪わないというこの大原則を皆で認め合い、これを守り抜いていくということが不可欠な大原則になるのは、これは当然のことだと私は思うのです。そういうときに協力しなくても孤立しないからいいという考え方は私はとりませんし、一国平和主義と言われておるようでありますが、自分さえよければいい、あとはどうでもいいという態度は、これはとるわけにまいりません。  また、それを日本にとってみても、きょうまで平和な国際環境の中で、お互い相互依存関係の中で生きてくることができて、これだけの生活を平和の中に保つことができるのは、先ほど来申し上げておりますように、世界の中における日本の貿易の量あるいは世界の総生産の中で日本が占める割合、最近は一五%近くなった、こうなっております。また、世界じゅうに在外資産というものを一番たくさん持っておる、投資残高の一番多いのはこれは日本であるということも評価されておる。これらのことごとを全部あわせてみますと、日本が好むと好まざるとにかかわらず世界に経済的に影響力も与え、また与えられる面もあります。日米の貿易不均衡でつい二、三年前までは五百億ドルを超える日本の黒字があったときには、これが日米の経済摩擦の発端になったことも御承知のとおりでありますし、これは日本の市場を開放して消費者中心のそういった政治にしていくために門戸開放しよう、SIIで構造協議をやろうといってお互いに話し合いをし改めるべきの努力をしてきたのも、日本の経済力というものが好むと好まざるとにかかわらず大きなものになって世界に影響を与えておるようになったんだということでありますから、そういったことを踏まえながら、世界に対して日本がやらなければならない役割というものが非常に大きくなってきておると同時に、サミット参加国の一員として、しかも対外的なODA、経済開発協力援助なんかには世界で一番多額の支出もするところまで来ておるわけでありますから、謙虚に、これだけの立場になったことは世界の平和と自由な貿易体制の中でそれぞれの国との相互依存関係で我々はここまで来たんだ、これは世界が平和だという大前提があったからだ、その平和を力で侵すようなことを許したんでは我々のあすにも希望はないということで、応分の協力をし、参加をしていかなければこれは孤立してしまう。  孤立してもいいというようなことをおっしゃった方は、私もテレビを聞いておって知っておりますけれどもソ連はそうしたらあれでいいんでしょうか。ほっておいていいんでしょうか。いけないから緊急援助をするんでしょう。IMFがやるんでしょう。中国もあれでいいんですか。孤立しちゃいけないから私どもは、サミットでも私も主張をして、第三次円借款八千百億円はアメリカやECもいろいろ意見はありましたが、日本は隣国であって、中国を孤立させてはならない、国際社会で一緒にやっていくことがアジアと世界のためになるといって私は主張をし、孤立しないように八千百億円の第三次借款も去年から始めておるというのは、そういう意味の、広い意味で世界の平和と繁栄のためにみんなが孤立しないように努力をしていこう、こういうことでありますので、私は増岡委員に、どうぞこういったことについて政府も同じような気持ちで努力をし、認識をしておるといることをお伝えをさしていただきたいと思います。
  186. 増岡博之

    ○増岡委員 私は、冒頭に申しましたように、総理がそこまでの決意をなさったということは、これは我が国が今まで経済発展を遂げながらも世界に貢献するところが少なかった――事実は違うのです。相当な貢献をいたしております。ODAその他の数字を御存じの諸君はおわかりいただけると思いますけれども。しかし、そういうふうに思われておるけれども、今回思い切って海部総理がそのような考え方を発表し、国会のその審議を図っておられるということは世界じゅうの人が知っておるわけでありますから、我々の審議は世界の耳目を全部集めておると言って差し支えない、それだけ大事な国会であろうかというふうに思います。  そこで、イラクの暴虐性のことについて多少申し上げますけれども、イスラエルに対するミサイル攻撃にいたしましても、あるいはペルシャ湾に原油を流した行動にいたしましても、私どもの、自分自身の過去の経験に照らしても、これが純粋に軍事行動と言えるかどうか。私は、完全にテロ行為、あるいは環境に対するテロ行為、そう言わざるを得ないと思うわけであります。また、捕虜を盾にするという、軍人の捕虜を盾にしてはいけないということは国際法上はっきり書いてあります。  実はフセイン大統領が十二月七日に人道的な意味で捕虜を解放しますということを発表いたしました。私の友人がそれを聞きまして、先生、案外サダム・フセインは人道的ですね、こう言うのです。それで、そのとき私は、本当にもう少し日本人は国際化をしていかなきゃならぬなというふうに思ったのです。  それはなぜかというと、人質というのは、軍人の捕虜は禁止されております。しかし民間人の捕虜が七百二十五名も人質に捕らえられておりましたね。日本で人質という言葉が我々の頭に残っておりますのは、徳川家康が織田家に人質になっております。四百何十年前でございますね。その捕虜を捕らえて自分の戦闘を有利にしようと思ったけれども、逆効果であったということで、人道上の立場から七百二十五名を解放しますと言ったのです。それを私の友達が、先ほど言いましたように、案外人道的だと言う。何だ、あなたはもう少し歴史というか、ついこの間、四カ月、五カ月前だ、人道的な人が何で一般国民を捕らまえて自分の軍事施設その他の盾に使うのかと言いましたら、頭を抱えて、そうだったなと言う。まことに残念なことでありますけれども日本国民の中には、日本人は昔から飽きっぽいとか熱しやすく冷めやすいとか言われます。そういう傾向があらわれておりますので、念のためにそのようなお話もさしていただいておるわけでございます。  また後ほど、この油流出の問題につきましては、環境庁長官国際会議にいらっしゃいましたので、お尋ねをいたしたいというふうに思います。  それからもう一つ自衛隊機使用について、百条の五で、国賓その他を運びなさい、その他は政令ですと書いてある。今回、避難民を運ぼうとなさっておられるわけです。これは御答弁は要りませんが、避難民を運ぶことは反対だとおっしゃることは、それでは、国賓や総理大臣、閣僚は運んでもいいけれども、無辜の民は運んではいけない、そういう御意見に聞こえてならないのであります。これは微妙な問題でありますからどなたの答弁も要りませんけれども、私の意見として申し上げてあります。  法律改正は、常に何回も繰り返されるような、そういうことを法律でやろうとして、臨時特例の措置というのを、そういうものを認めるために政令というものがあるんじゃありませんか。法的根拠に基づいた政令によって行われておることだと思います。  そこで、その背景となる、今いろいろ意見があるようでありますけれども、こういうことを行う背景としては、やはり国連イラクの非難決議あるいは制裁決議が十二回も行われておる、その状況あるいは最後の六七八号に対する各国協力状況について、外務省事務当局から御説明を願いたいと思います。
  187. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生の御質問にお答え申し上げます。  先生おっしゃいましたとおり、ただいままで、八月二日以来安保理決議が十二本成立してございます。簡単に概要及び賛否の状況を御説明申し上げますと、まず決議六百六十号、これはイラククウェート侵略を非難する決議でございまして、投票状況は十四対〇ということで、イエメンは実は訓令未着を理由に投票不参加になっておりますけれども、十四対〇。六六一、これはイラクの経済制裁決議でございますけれども、十三対二で通っております。反対はキューバ、イエメン、先生が先ほど言われたとおり。決議六六二はイラククウェート併合非難決議でございますが、これは全会一致で通っております。六六四、これは在留外国人の保護決議でございますが、これも全会一致で通ってございます。六六五、これは海上部隊の必要な措置を要請する決議でございますが、十三対二で通っております。反対の二はキューバ、イエメンでございます。六六六、これは対イラク食糧、医療品輸出関係決議でございますが、やはり十三対二という圧倒的な採決でございます。六六七、これは外交特権を侵害することを批判する決議でございますが、全会一致。六六九、安保理制裁委員会に関する決議でございますが、全会一致。六七〇、対イラク空域封鎖の決議でございますが、十四対一。六七四、これは対イラク損害賠償決議でございますが、十三対二。反対の二は先ほど申し上げたとおり。六七七につきましては全会一致。最後の六七八につきましては十二対二で、中国が棄権しておるということでございます。  私の記憶いたしますところ、国連が成立して以来今日まで四十五年の間に、これほど重要な決議が一回の拒否権もなくこれほど連続して多く採択されたことは一度もないというふうに記憶してございます。
  188. 増岡博之

    ○増岡委員 今、国連決議の概要を承りましたけれども、それに対する各国協力状況についてもお話し願いたいと思います。
  189. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  現在、安保理決議六七八に基づきましていわゆる多国籍軍武力行使が行われておるわけでございますけれども、この武力行使そのものに既に参加しております国は九カ国ございます。これが米国、英国、フランス、イタリー、カナダ、それからサウジアラビア、、クウェート、カタール、バハレーンでございます。もともとこのいわゆる多国籍軍につきましては、これに陸海空の兵を派遣して参加をしております国が二十八カ国でございますが、このうち地上軍を派遣しております国が十七カ国、それから艦艇を派遣しております国が十五カ国、航空機を派遣しております国が十カ国という数でございます。さらに、軍を直接派遣はいたしておりませんが、資金援助ないし物資の援助を行っておる国が十二カ国ございますし、それからもう一つは、この多国籍軍に対する医療の面での協力ということで医療団を派遣しておる国がございます。この中には特にアジアの韓国、フィリピン、タイ、それから太平洋のニュージーランド、オーストラリア、カナダ等があるわけでございまして、この医療団全体で恐らく千二百人から千五百人の規模に全体としてなっておると考えられます。  そういう意味で、この全体の多国籍軍に対する協力を行っております国を、今申し上げたすべての分野での協力を合わせて延べで教えますと、全体で三十五カ国になるわけでございます。
  190. 増岡博之

    ○増岡委員 今各国協力状況をお話しいただきました。今回の紛争が、米ソ和解による冷戦構造緩和、新しい世界の秩序を求める大きなうねりの中に、そういう平和への世界の働きに挑戦するかのようなサダム・フセインの戦闘開始だと思うわけであります。したがって、私はその資料の中で特に申し上げたいのは、チェコスロバキアが兵員を送っておるということであります。このことは、東西の垣根が除かれたというのは昨年のことでありますけれども、もう既に世界連帯の意識があらわれ始めておる、そういうことの象徴だというふうに思います。  したがって、そういう観点から申しましても、あるいは従来から世界の環境、フロンガスのことにしましても、二酸化炭素のことにしましても、世界でその対策を立てなけりゃならぬということが言われておるわけであります。そういうさなかに、自分の戦闘目的を達成するためにクウェートの石油をペルシャ湾に流している。大変な量であります。しかも対外的に宣伝活動に利用するために、アメリカの空爆によってタンカーがつぶれたからそれで重油が流れたんだという、こういう発表をアメリカ駐在のイラクの代表が言っておるわけであります。日本国の中でもアメリカの空爆によって原油が流れ出たということをまるっきり信じて国会でも議論をする方がございます。これは直ちに我が党の質問によって否定をされました。  たまたま環境庁長官はこの間国際会議においでになりました。その席上、ほかの問題もおやりになったと思いますけれども、この湾岸、ペルシャ湾における石油流出のことも議題になったと聞いておりますので、できるだけ詳しく時間をとってお話をいただきたいと思います。
  191. 愛知和男

    ○愛知国務大臣 お答えをいたします。  去る一月三十日と三十一日に、OECD環境大臣会議というのがかねてから予定をされておりました。この会議は、そもそも経済政策と環境政策の統合というテーマで、ことしは、これは五年に一度開かれる会議でございますが、そのようなテーマで開かれる予定でございましたが、急速、湾岸の問題が出ましたので、この会議に私も、総理の御指示をいただきまして、日帰りでございましたがパリへ行ってまいりました。  そこで、この会議におきましてはいろいろな問題を討議をいたしましたが、このペルシャ湾の原油流出の問題につきましては、特に特別声明を出すということに相なりまして、特別声明を全会一致で採択をいたした次第でございます。  その内容につきまして、概略を原文を引用しながら御説明を申し上げますと、イラク戦闘行為としてペルシャ湾へ膨大な量の原油を意図的に放出したことを非難する。これは国際法違反である。この環境に対する犯罪により、ペルシャ湾の生態系全体、数百万に及ぶ湾岸地域住民の飲料水供給が危機に陥っている。閣僚及びEC委員は、環境破壊を戦争の手段として用いることをやめるようイラクに対し強く要求する。こういうことで、今後とも汚染の除去、防止のためのあらゆる努力を行うことをお互いに確認をいたしました。そして、かかる惨事に今後対応する能力を国際的にも強化していこう、こういうことにつきましても合意をいたしました。  なお、これらの議論の中で、今、委員御指摘になりましたけれども、今度の原油流出の原因がイラクによるのかアメリカによるのかというようなことが日本の国内でも一部言われておりましたこともございましたけれども、そのような議論は全くございませんで、イラクのこれは意図的な行為だということについては、この会議ですべて意見が一致した、何の疑いもなかった、こういうことをつけ加えて御報告をさせていただきます。  さらにもう一つ、特別声明以外に今回のこのOECD環境大臣会議におきまして、本来予定をされておりました会議のコミュニケにも、急遽一項目割いて、この問題について新しい項目がつけ加えられました。この内容を簡単に御説明いたしますと、油汚染に関する国際海事機関、これはIMOと言っておりますが、この条約の早期完全履行ということが盛り込まれました。  このことにつきましては若干御説明いたしますと、この条約は、一油汚染に対する準備、対応及び協力に関する国際条約と申しまして、これは平成元年七月、アルシュ・サミットにおきまして、IMO、これは国際海事機関に対して、海洋の汚濁防止に関する一層の活動のための案を提示するようにというサミットの指令に基づきまして、関係者が集まり、平成二年十一月、昨年でございますが、この条約が採択になりました。この条約には、参加国九十カ国のうち十五カ国が最終的に文書に署名いたしておりますが、我が国はまだでございます。この条約の早期署名、履行が合意をされたということでございます。このほか、各国の対応能力、情報に関する登録制度の整備などをしていこうということがこのコミュニケにも盛り込まれました。  以上、概略を御報告させていただきました。
  192. 増岡博之

    ○増岡委員 日本人というものは、御承知のように島国であり、また防衛庁の自衛隊の諸君も、少ない人数ながら精強部隊であるために他国から侵略されるということは、この四十五年間なくて済んだわけでございます。しかし、よその国ではいるんなことがございます。今度のイラククウェート侵略は、先ほど申し上げましたように、借金を返せと言われたら、なに借金返すどころかその国を全部丸ごととってしまうという、そういうふうなことも行われておるということを私どもはよくよく認識をしていかなければならないと思うのです。  それで、最初総理の場合にちょっと触れましたけれども、我が国の憲法九十八条の二項に「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」なお、国連憲章にも第二条「すべての加盟国は、」云々を省略しますけれども、「この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。」こうあります。したがって、この二つを読み合わせをいたしますと、私は、今度の湾岸貢献は貢献策ではない、我が国が負っておる国際的な責任、責務であると言わざるを得ないと思うわけであります。法制局長官、私はそのような解釈をしております。これが厳格に法的な義務であるかどうかは別として、人間としてそのように受け取るのが穏当であろうと思います。しかし、私はこの条文を読む限りは、法的にも拘束をされるものであろうというふうに思います。いかがですか。
  193. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘の点でございますが、まず昨年の安全保障理事会の決議六百七十八号がございます。ここにおきましては、そのうちの一部でございますが、「すべての国家に対し、この決議の第二項を履行するためにとられる行動に対し、適切な支援を与えることを要請する。」こういう規定がございます。  国際連合の安全保障理事会の決議に関しましては、ただいま委員は二条を御指摘になりましたが二条もさることながら、さらに端的には国連憲章の「第五章安全保障理事会」の章の規定の中におきまして二十五条という規定がございます。そこでは、「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する。」こういう規定もございます。  したがいまして、まず国際連合のそのような二十五条の規定あるいは我が国の憲法におきます九十八条の、これは委員御指摘のところでございますが、九十八条の二項におきまして「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」こういうふうな一連の規定を読み合わせますれば、単にやってもやらなくてもいい、こういうふうなことではございませんで、それはもちろん具体的な中身、これにつきましては各国の自主的な判断はあろうと思いますが、そのやりますこと自身、これにつきましては今のような規定で当然のことと考えております。
  194. 増岡博之

    ○増岡委員 今の解釈を砕いて申しますと、お金持ちの国はお金を出しなさい、軍事力の強い国は軍事力を出しなさい、両極端を言いますとそういうことになろうかと思います。また、その双方のない国は、何らかの形でその決定をサポートする意思表示ぐらいはあってしかるべきだ、そういうふうに解釈して結構ですか。
  195. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 今委員が御指摘のように私どもの方も考えております。
  196. 増岡博之

    ○増岡委員 外務大臣留守でしたから、もう一遍質問を繰り返しますけれども日本国憲法には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とあって、国連憲章の中に今回とられております対イラクの制裁決議が正当化されておるわけであります。ですから、たまたま湾岸貢献をするんだということが言われます。日本国として貢献策は何かという言われ方をしますが、今法制局長官にお尋ねしましたら、それは何をするかという分類、分野は違う、量も違うだろうけれども、法的には義務でありますということでございました。外務大臣も同じようなお考えですか。
  197. 中山太郎

    ○中山国務大臣 同じ意見でございまして、国連憲章の前文にも、加盟国は国連の要請にこたえて協力する義務があるということは明記されております。
  198. 増岡博之

    ○増岡委員 私は、これから貢献策として支弁されるべき金額が日本経済に占める意味合い、端的に言いますと比率と申しますか、そういうものについてお尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、通産大臣にお尋ねいたしますけれども、一兆二千億円のお金は、日本平成二年度、二年度はもう出ていますね。まだ出ていませんか。ともかく、直近の国際収支の黒字額と比べてどのくらいの比率になりますか。事務方でも結構。
  199. 堤富男

    ○堤政府委員 お答え申し上げます。  平成二年度の貿易収支が政府見通しでは七・九兆円程度になっております。したがって、一兆二千億円といいますと、約十数%になるのではないかと思っております。
  200. 増岡博之

    ○増岡委員 今の日本国際収支の黒字、これは貿易収支の黒字ですね。その程度は今まで何年間ぐらい続いておりますか。
  201. 堤富男

    ○堤政府委員 六十一年度の貿易収支を申し上げますと十六・二兆円、平成二年度の約二倍になっております。六十三年度で申しますと十二・二兆円、平成元年度では十兆円ということになっております。したがいまして、平成二年度は最近五年間の中では非常に小さいという感じをしております。
  202. 増岡博之

    ○増岡委員 この貿易収支の黒字幅が減っておるということは、私は純粋な経済行為の結果ではないと思います。国際世論、日本だけがひとり勝ち、ひとりもうけをしておるではないかということに対して、かなりな厳しい制約をみずから我が国に加えることによって漸減をしておる数字であろうかというふうに思いますけれども、それでも今お聞きのとおりの黒字を出しておるわけでございます。  一兆二千億円といいますと、非常にごろがよろしゅうございますので、一人一万円ですね。それで、一人一万円だということから、赤ん坊にも年寄りにも一万円ずつ取るんだということを、そういう意味合いのことを、そう思わせるような報道がたびたびなされてまいりました。日本人の頭には、おれの赤ん坊の三歳の子供まで一万円取るのか、こうなったわけであります。人間というものは、一たんそう思いますと、何カ月か後にああそうじゃなかったと思っても、人前でおれの孫にも一万円取るんだと言った、その発言をしたことに対する精神的な、うまい言葉が見つかりませんが、言った手前、もう許してやるんだという、今回はもうそうじゃなかった、わかったと言っても、なかなかおれは間違っておったとは人間は言わないものですよ。私は、そういう意味では、報道関係の方々に対してももっと、どういう財源でどういう金額を捻出するのかということがわかるまでは決して、一人頭一万円だというようなことを、人を惑わすようなそれを自制をしてもらいたいと思うのです。そうして、そのことを証明するために平成二年の貿易収支の黒字額も、通産省の事務方、御発表願いたいと思います。
  203. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 増岡委員にお答えいたします。  平成二年度の貿易収支そのものは七・九兆円程度となる見込みでございます。  最近の貿易収支の実績を見ますると、昭和六十一年度の十六・二兆円をピークにいたしまして、六十三年度は十二・二兆円、平成元年度は十兆円、こうなっている次第でございまして、かわりましてお答えいたします。
  204. 増岡博之

    ○増岡委員 我が国が貿易収支でひとり勝ちをするということは世界から批判の的になるわけでございますので、政治的な意図のもとに漸減傾向に持ち込もうとするこの政策は私は正しいことだというふうに思います。したがって、この数字あるいは貿易黒字が減少しておるということは、我が国の経済力が落ちたとは判断いたしにくい、むしろ経済力が強い日本が貿易の面では自制措置をしておるということを申し上げておきたいというふうに思います。  そこで通産省の事務方の人にお尋ねいたしたいと思います。  サダム・フセインが一時期、原油価格を高騰させるために、クウェートあるいはあわよくばサウジアラビアを勢力下に置くことができればあるいは一バレル五十ドルあるいは百ドルということが実現するかもしれない、そうなればイラククウェート、サウジアラビアの巨大な産出量によって世界経済を支配することができる、こういう発言を行った報道を見ております。もし仮にねらいどおり五十ドルになりあるいは百ドルになった場合、日本がその原油を得るために、値段が上がるんですから少しは量が減るかもしれませんけれども、もし仮に今と同じ程度の量を輸入するとするとどれだけ日本の負担がふえるか、その面について通産省の事務方、御説明を願いたいと思います。
  205. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 御質問の仮定を前提を置きまして計算をいたしたいと存じますが、まず一九九〇年の輸入の実績でございますが、通関ベースの数字で、量にいたしまして二億二千五百二十一万キロリットル、金額にいたしますと四兆四千六百五十六億円でございました。これは九〇年の実績でございます。  これと同じ量が仮に一バレル当たり五十ドルということになったといたしますと、為替レートを仮に百三十円で計算をいたしますと約九兆二千億円という数字になります。したがいまして、四兆四千六百億円余であったものが九兆二千億円になるということでございます。仮に百ドルということで計算をいたしますと、他の前提条件を同じにいたしますと、金額は十八兆四千億円という数字になります。これはもちろん一年間その数字でずっと同じであったという前提での計算でございます。
  206. 増岡博之

    ○増岡委員 ちょっと待ってください。今の数字と現在日本が輸入しておる石油、原油その他の金額と、その差額がどのくらいになるか、すぐ出ましょうから計算してください。
  207. 渡部恒三

    渡部委員長 これはエネルギー庁長官、大事なことですから、わかりやすく、詳しく。
  208. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 一九九〇年の輸入総金額が四兆四千六百億、約四兆五千億でございます。これが同じ量だけ、同じ量を仮に一バレル五十ドルで輸入したとなりますと九兆二千億になるわけでありますから、その差額つまり四兆七千億少しというのが余計にかかる、高くなる分という計算になります。
  209. 渡部恒三

    渡部委員長 百ドルの方、まだ言わなかった。じゃ、百ドルの方。
  210. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 同機に、仮に一年間一九九〇年と同じ量を百ドルで輸入した場合との差額を計算いたしますと、先ほど申し上げました十八兆四千億円と四兆五千億円の差でございますから十三兆九千億円余計にかかるという計算になります。
  211. 増岡博之

    ○増岡委員 今仮定の数字を計算していただいたわけでありますけれども、しかし、確かにサダム・フセイン大統領クウェートとあるいはあわよくばサウジアラビアを支配下に置くことによってそれだけの金を受け取ろうということには、あるいは私は、長い間のイラクとの戦争あるいはその後の軍備拡張の費用を賄うためにはそれだけのものが欲しいなという邪悪な意思を持ったのであろうというふうにも思います。  そこで、もし仮にそういうことになれば、今日本の貿易黒字が大き過ぎるから少しは減らそうというのでだんだんに減らしてきておりますけれども、もし今連合軍が、多国籍軍がこの障壁をつくり、サウジアラビアに侵入させない、あるいはクウェートの領土も回復してあげましょう、そういう作業がなかったら、今のような数字は空想物語ではない。そのときに日本がどういう立場になるかということは、賢明な議員の同僚諸君もあるいは国民の皆さんも、とても、私ども一生懸命働いて、働き過ぎたから黒字が多うなったから減らさなぎゃいけませんという作業を先ほど申し上げましたけれども、その逆になるのではありませんか。もっと働け、もっと働けではありませんか。あるいは働いても追いつかない結果になるのであろうかと思います。  そういう観点から考えましても、あるいはまた、クウェート自体の政権がまだサウジアラビアの中で健在であります。そういうことを考えた場合には、我々は、もし仮にサダム・フセインのねらいどおり油が五十ドルになり百ドルになったとしたら、その塗炭の苦しみを味わうことを考えれば、今我々政府が行っておりますように、いわゆる多国籍軍支援をするのが国民生活を守る上で当然の責務だというふうに思います。そしてまた最初に申し上げましたように、一兆二千億円の金は確かに一人一人にとりても大金であります。一人で一兆二千億円払うわけではありませんけれども、分担して三千万人か四千万人が払うといたしましても大金でありましょう。しかし、今申し上げましたような今度はそれをやらなくては失う逸失利益というものを考えた場合は、これは国民の皆さんは御納得をいただけるというふうに思うわけであります。  しかし一面、そうはいっても石油の備蓄が百四十日分あるではないか、あるいはそれを取り崩しておる間に何とかなるんではないかということも言われております。しかし私どもは、そういう姿勢を示すことの方がサダム・フセインに対して、あなたが頑張ったらおれたちは参るんですよということを示す以外の何物でもないと思うのです。ですから、この際はそのような議論はいたしませんけれども、もし仮に長引いても国民の皆さんに御迷惑をかけることはない、これはアドリブでありますけれども、通産大臣ひとつよろしくお願いを申し上げます。
  212. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 増岡委員にお答えいたします。  アドリブと申しましたが、非常にある意味において的確なアドリブではないかと私は思うわけでございまして、どのような形における国民不安を、そういう形の取り崩しが果たして行き渡ってしまうのか、こういう御疑念も重ねての御質問であろう、このように考えましてお答えしたいと思うのでございます。  IEAでございますね、国際エネルギー機関におきましては、湾岸戦争が開始されました場合、石油供給の一部が一時的に不足する可能性というものがあることに対応するためには、日量、大体一日の量が二百五十万バレルの石油というものを市場に供給することを可能とするという形の緊急対策といたしまして、その呼称も緊急時協調対応計画というものを事前に合意し、この事変の勃発後、即時実施に移したわけでございます。この勃発に先立ちまして先進国が協調対応計画に合意したこともございまして、戦争勃発後も国際石油価格は安定的にある意味において推移していることは決定的でございますから、その点だけは御理解願い上げたいと思うわけでございます。御示唆ありがとうございました。
  213. 増岡博之

    ○増岡委員 先ほどから申し上げておりますのは、一兆二千億円の出費はいかにも大きい出費であることは間違いありませんけれども、しかしながら、我が国の経済がここまで大きくなっておるからには、私はこれを賄い得る力は十分過ぎるほどあるというふうに思うわけでありますし、そうしてまた、この資金が有効に活用されるならば、先ほどは原油が五十ドルになる、百ドルになるなんということを言いましたが、今現に二十一ドル前後であるわけでありますから、したがって、この湾岸危機に際しての多国籍軍の活動が今現在我我の生活を助けてくれておると言わざるを得ないと思うのであります。  また、この多国籍軍は決してイラクを壊滅させようとする軍隊でないことは、新聞やテレビで報道されておるとおりでありまして、クウェートを奪回しようというだけであります。クウェート国民が自分の国に帰り、正常な経済活動に入れるように、そういうことを求めておるわけでございますので、私はこの一兆二千億円が国民生活にどのくらい影響を与えるのかということもあわせて考えなければなりません。したがって、そのことについて経企庁長官からお話を承りたいと思います。
  214. 越智通雄

    越智国務大臣 一月三十一日に一兆一千九百億円の支援策の中身が決まりましたが、まだその具体的な細かい点は作業中でございます。  その一番の大もとになっておりますのは法人税の付加税三・二%でございますが、それによって大蔵省の試算では五千九百億円の税収を考えてございますが、付加税を本税率に直してみますと、三七・五の法人税率に一・二足すことになりますので、法人税率の一・二は企業の収益にとりまして決して軽いものではないと思いますけれども、直ちにそのビヘービアが変わるほどの重荷ではあるまい、このように考えておりまして、今その作業を進めさせているところでございます。  また、その次の石油税の関係は、これは一リッター二円四銭の値上げになるわけでございますが、バレルに直しますと今の為替換算で大体二ドル数十セント、一つの石油の値段のいろいろな変動の幅の中に入るぐらいのものでございまして、先ほど通産大臣はニューヨーク相場の値段でおっしゃいましたけれども、東京で多く使われておりますドバイ石油の値段でございますと、現在は湾岸の紛争が始まります前の七月三十一日の十五、六ドルベースに戻っておりますので、これが二ドル何がしかいわば値上げしたと同じようなことになるわけでございますけれども、石油を消費する段階でいろいろ吸収する向きもあるのではない か。通産大臣のところで現在、電力会社、ガス会社その他とお打ち合わせ中と伺っておりますけれども、そうした作業の結果も伺いまして、消費生活の方にどの程度の物価面での影響が出るか考えていきたい。ことしは、幸いにしてと申しますか暖冬でございますから、灯油その他は大変低い値段のところで低迷いたしております。そういう面でも大丈夫かなと思っております。  たばこにつきましては、一本五十銭ということでございますので、一箱で十円になるわけでございますが、これだけはじかに消費者の方に御負担いただくわけでありまして、たばこを吸われている方が、現在減少してきておりますが、大体人口の中で三千万人と推定いたしておりますが、そうした面での物価の影響をできるだけ吸収できるようにしていきたい。  今申し上げましたのは、どちらかと申しますと物価面が主でございますが、経済成長に対しても、これで経済運営の基調が急に変わるという問題でもないであろう。また、国際収支に関しましては、御説のとおり、国会の承認を得てこの九十億ドルが支出された場合には、年度内ということでございますので、平成二年度の経常収支の中で移転収支が九十億ドル出るということでございますが、その他の要素でいろいろ変わってまいりますかもしれませんが、平成三年度の見通しに関しては直接に影響は出てこない、このように認識しているところでございまして、できる限り国民生活に対する御負担を少なくするために努力をさしていただきたいと思っております。
  215. 増岡博之

    ○増岡委員 今度の対策の一兆二千億円の財源の中身を見ましても、主として法人、個人にかかわるものは嗜好品であるたばこということになっておるように思います。したがって、これはむしろ、今長官からお話がありましたように原油が低レベルに抑えられておる企業からいただくことになり、奢侈品であるたばこからいただくということでありますから、私はこの選択は正しい選択であったというふうに思います。そこで、先ほど申し上げましたが、いっとき人頭税で一人頭一万円かという錯覚を起こして、腹を立てた人がおると思いますので、これから先もそれにお答えをする、そうではありませんよ、みんなで考えていくことでありますよというふうな、特に経企庁、通産省の責任者の方々はお話をいただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。  そこで、これは機微な質問でありますけれども、難民救済のためにいろんな手段を考えられるわけであります。これもやはり、今日世界じゅうの国民生産の相当の部分を占めるようになった日本としましては、何らかの貢献策をやらなきゃならぬということであります。国会での議論を見ておりますと、航空機によるのかあるいはバス輸送をするのか、この二種類に分けられるように思います。航空機の中でも、どの航空機かという議論はありますけれども、私は、バスを使えという人の議論日本から航空機をヨルダンまで飛ばすなという主義主張に基づいて行われておるように思います。  そういうことを考えますと、私は、そういう政治的な立場を除いても、六〇%のパレスチナ人がヨルダンにおるわけでありますから、これはむしろ今度のイラク大統領の作戦支持者に近い存在ではなかろうかと思います。このパレスチナ人が六〇%もおる国内をバスで通行するのと航空機で運ぶのと、私は常識で考えたら、空港周辺だけが警備されておれば航空機の方がずっと安全だ。バスで十数時間も港まで運ぶということ、その安全性を図ることとどちらがよいかとお尋ねするわけですが、これはだれが考えでも私の御意見に賛成をいただけるのではないか、そういうふうに思いますが、外務大臣、何か御意見ありますか。
  216. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ジョルダンにおけるパレスチナ人の人口比率が六〇%に近いということは、委員御指摘のとおりでございます。ここで戦火が拡大してジョルダンに大量の避難民が出てくるといった場合の輸送方法は、IOMが中心となって関係各国と調整をしながら最もよい方法で運ぶ方針を決めてくるだろう。そのときに、日本政府としては国連の委託によるこのIOMの方針に沿うべく努力をしなければならないと考えております。
  217. 増岡博之

    ○増岡委員 まだ具体的な要請が来ていないわけでありましょうから、仮定の問題にお答えするわけにはいきませんということはよくわかります。ただ、私がそういうことを申し上げておる意味合いというものも御配慮を願いたいというふうに思います。  よく、外国との交渉、しかも大国との交渉を報道し、その報道を聞く人の立場というのは、やはり何といっても日本人の判官びいきがありますから、弱い者を助けろ、強いやつはけしからぬ、こういう感情の方が本当の理路整然としたものよりも先走ってしまうおそれは、これは否めない事実だというふうに思います。そういうことも踏まえて私は、これは古いことを申し上げたいと思うのですけれども、日米構造協議の際、米国に一方的に押し切られた、米国側の要求はこうこうだということは新聞報道に発表されております。しかし、日本側は日本側の主張を入れております。向こうにも、のましておるわけです。そのことは一切報道はされておりません。これは通産省の諸君に、通告漏れになっておるかもしれませんと思いますけれども、我が方がアメリカ側に主張してアメリカ側がテークノートしたもののリストというのは、今手持ちありますか。それじゃやってください。
  218. 畠山襄

    畠山(襄)政府委員 日米構造協議は、委員御指摘のように、双方がお互いにアドバイスをして構造協議を進めていくということでございまして、先方は日本の輸入がふえるように、それからこちらは向こうの輸出が結果としてふえるようにというのが大筋でやっているわけでございます。そうした観点から、先月例えば東京で行われました第二回のフォローアップ会合におきましても、これは外務省、大蔵省、通産省三省でやっておりますので、私どもの方から通産省だけについて恐縮ですがお答えをさせていただきますると、こちらから米国に指摘をした点といたしましては、まず、海外からの直接投資は米国産業の国際競争力を強化するという上で重要な役割を果たしますので、開放的な投資政策を進めてもらいたい、規制的な動きには反対をしてもらいたいということを一点指摘をいたしました。  それから、製造物の責任制度というのが米国内でございますが、あれが各州でばらばらになっておりまして、米国政府としてもこれを連邦で統一をしたいということで法案を出しておったわけでありますけれども、それが不成立になったわけでありますが、それを引き続き連邦で統一するように、そして米国の企業が各州のばらばらな制度で競争力が弱まるというようなことがないようにということも指摘をいたしました。  また、メートル法でございますけれども、米国産業の国際競争力を高めていく上でその採用が重要でございまして、連邦政府の調達に関して、メートル法を米国は入れる計画が九二年の九月にあるわけでございますけれども、そういったことへ向けてどうした進展があるのかということについても指摘をしたわけでございます。  また、米国産業がとかく短期的な利益を志向しがちだという中で、長期的な展望に立った経営を進めてもらいたい、そのために関連する諸制度について再考をしてもらいたいというような点について指摘をしたところでございます。
  219. 増岡博之

    ○増岡委員 その概要を私は実は持っておるのですけれども、全文ではありませんのでお尋ねをしたわけでございます。  アメリカの財政赤字の問題に触れておりますし、特に私が申し上げたいのは、アメリカ人の個人貯蓄を奨励しなさい、日本でいえば昔のマル優制度をやりなさいというところまでやっておりますね。それから、メーカーが何かをつくり損なったときの損害賠償責任の問題についてもやりております。いろんなことをやっております中に、先ほど話が出ましたように、メートル法を採用してはどうかということまでやっておるわけであります。したがって、このことを考えると、私はあながち日本政府は米国の言いなりになっておったわけではない。もっとひどいのは、増税をしたらどうですかというのがありますね、あるでしょう。米国政府の赤字対策。増税の必要性を認めるとともに、既定予算の削減手続を簡素化するなんというのがある。あるんですけれども、これは今のような戦争状態になると、これにあるんだからやっぱりやんなさいということは言えないというふうに思いますね。ともかく、そういうふうに日本と米国とは本来のパートナーシップに基づいて行われておると思うのです。  ところが、新聞報道によりますと、いつもいつも米国から言われたことを、この日米構造協議にしましても、日本側に対する要求は書きますけれども日本側が要求して米側がのんだ項目は新聞には一切出ないじゃありませんか。この点は私はまことに残念だというふうに思います。今後もその交渉が行われると思うのですけれども、しかし、人間と人間との交渉でありますから、幾ら理性でやれといったって、やはり感情というものが入ることを一切排除しろというのはどだい無理な話だろうというふうに思います。そういう意味からも、今後いろんな交渉が行われると思いますが、アメリカ側に一方的に押し切られて独禁法や大店法だけをやったということではないという意味合いで、これは通産大臣、アドリブですけれども、御決意を……。
  220. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 ただいま委員御指摘のとおりでございまして、昨年も確かに、昨年の暮れの向こうの法案に対しましても、増税なども出ておるわけでございますが、そういうようなことも踏まえまして日米構造協議の中の推移を見ましても、先ほど事務方から説明がございましたように、メートル法の問題から、また、御指摘ございましたいささか内政干渉的なようになるかもしれませんが、増税の問題に至るまでも、こちらの言い分はずっとやっております。ウルグアイ・ラウンドにいたしましても、私どもの主張は述べるものは全部述べておる次第でございます。  そういう中でございますから、日米パートナーシップ、グローバルパートナーといいましょうか、お互いにイコールパートナーであるがグローバルの中における世界的視野の上に立ってもお互い協力すべきものは協力する、また譲り合うものは譲り合う、あるいはまた協力し合うものは協力し合う、こういう決意の中でやっていきたいと思っておりますが、決意のほどだけを述べさしていただきます。
  221. 増岡博之

    ○増岡委員 今通産大臣の御決意を承りました。まさにそのとおりだろうと思いますから、議員としてあるいは大臣としての熱情をささげて御実行をいただきたいというふうに思います。  そこで、湾岸問題に対する日本貢献策を一応終わらせていただきたいと思います。  次は、我が国並びに周辺諸国に関する海外派兵、これは幻影であることはもちろんであります。御承知のように、我が国の憲法でも禁止をされております。また、その憲法のもとで我が国の兵力数もかなり削減されたものになっておることは、御承知のとおりであります。  そこで、防衛庁の事務方に聞くわけでありますが、私の手持ち資料によりますと、兵員数、韓国が六十五万人、北鮮が百四万人、中国が三百三万人、ソ連が五百万人、これは、正規軍四百二十五万プラスKGBその他を含めまして五百万人、こういう数字になっておりますけれども、防衛庁として把握された数字と大差ありますかどうか。事務方から御説明願います。
  222. 内田勝久

    ○内田政府委員 お答え申し上げます。  諸外国が保有しております兵力総数につきましては、必ずしも各国ともこれを公表していない場合もございますが、したがいまして必ずしも容易ではございませんが、ただいま委員御指摘の韓国、北朝鮮、中国それからソ連につきましては、ただいま御指摘のあった数字、韓国約六十五万、北朝鮮が約百五万、中国約三百三万、ソ連につきましては四百万から五百万という数字が、おおむね実態に近いものであると私どももこのように評価している次第でございます。
  223. 増岡博之

    ○増岡委員 私は、ここにあります「ミリタリー・バランス」という本、これは英国の国際戦略研究所の編さんであります。これによる数字を先ほど申し上げたわけでございますから、これが世界で一番権威のある本だと言われております。したがって、大きな間違いはないと思うわけであります。  そこで、我が国は、もちろん紛争処理のために国外に出ていくことは禁じられておりますし、また、そういうことをいたそうとも思わないわけでありますけれども、今の数字を見ただけでも防衛庁長官は何らかの御感想をお持ちだと思いますので、お答え願いたいと思います。
  224. 池田行彦

    ○池田国務大臣 増岡委員にお答え申し上げます。  このたびの湾岸情勢に対応いたしまして、我が国としていろいろな貢献と申しましょうか、支援措置を講じていく、この状態の中で発生いたしました避難民の輸送につきまして我が国としてその役割を担っていく、これは既に国際連合並びにIOMからの要請に応じて民間航空機で行われたところがあるわけでございますけれども、今後そういった民間航空機で対応できないような場合に、そうしてまた、国際連合並びにその任に当たります国際機関から要請があります場合に、場合によって、必要に応じて自衛隊がその任に当たるということを考えておるわけでございますが、この行為が全く非軍事のものであり、人道主義的な観点に出るものであるということは、けさほど来総理の御答弁にあったわけでございますし、また我が国の憲法上全く問題のないものであり、むしろその趣旨といたします平和主義に合致するものだと考えておりますし、また、法的な根拠も十分備えておるということは御承知のとおりでございます。  今回の情勢に際しての自衛隊の問題はそういうことでございますが、ただいま委員の御質問は、周辺諸国の持っておりますいろいろな国防力、それとまた我が国の自衛隊の力とを比べてどうなんだろうか、一部に懸念されます、将来の自衛隊の海外派兵なんかへの突破口を開くんではないか、そういう懸念があるけれども、そういうことはないんじやないかという御趣旨の質問かと存じますけれども、私もそのとおりだと思います。  これは何と申しましても、我が国の憲法のもとで認められております自衛隊は、専守防衛でございまして、専ら我が国を防衛するためにあるわけでございます。そういったことでございますし、先ほどのお話にございました各国の国防力に比較いたしましたとき、総兵力で申しますと、現在の自衛隊は約二十四万数千という規模でございます。そういった兵力だけではなくてその態様から見ましても、専守防衛というその本来の趣旨にふさわしい姿になっております。  例えて申しますと、陸上自衛隊でございますと、我が国の国土防衛に当たるわけでございますので、師団の規模も、通常、他国におきましては一万数千というのが標準的な師団でございますが、我が国の場合は九千人というようなことになっておりますし、また、その師団の中におきましても、輸送その他の後方の支援に当たる部分が少なくなっております。それは、他国へ出ていっていろいろ作戦を展開するということを考えておらず、専ら我が国の国内において動くわけでございますので、そういった後方が小さくなっているということでございます。さらに、海上自衛隊なんかにおきましても、例えば攻撃型空母なんというものは、これは憲法上も認められないものでございますし、専守防衛の立場からそのようなものは持たないわけでございます。さらに、航空自衛隊におきましてもそのようなことでございますので、防空作戦を目的といたします要撃機、侵略があった場合にそういう迎え撃つといったようなもの、あるいは、そういった侵略に対応するためのミサイルといった、そういうふうな姿になっておるわけでございまして、自衛隊の実態、それは数量的な面から申しましても、また、それの備えております組織なり武器なりの機能面から申しましても、これは専ら我が国の憲法のもとでの専守防衛に徹するものだ、こういう姿になっておるわけでございます。  さらに、我々といたしましてこれからも憲法の範囲内において自衛隊に課されました任務を果たしていくという、こういう気概があるわけでございますので、一部に懸念されているようなことは全くないというふうに申し上げてよろしいかと存じます。
  225. 増岡博之

    ○増岡委員 要約しますと、海外において紛争処理をするほどの力は持っていないということだろうというふうに思います。もちろん、日本国憲法その他の法規に照らしてそういうことであるのが当然だと思います。  そこで、順序がちょっと逆になったのですけれども、人間というのは、何かやりたいという動機があり、それができるかどうか考えて、それでやろうという意思決定をして実行をするわけであります。  そこで、通産大臣にお尋ねしますけれども、今、日本経済は大変順調でございますから、恐らく外国の権益を侵害しなければ日本の生活、経済が立っていかないということはないのだろうと思います。もう一遍念のためにおっしゃっていただきたいと思います。そういう行動を起こす必要があるかどうか、海外まで攻めていって資源を確保しなければならぬというような。
  226. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 ちょっと今うかつに聞き漏らしましたが、あれでございますか、日本の国の――あと一回、御質問、繰り返していただけますか。
  227. 増岡博之

    ○増岡委員 経済企画庁長官、後ほど通産大臣にお尋ねしますけれども、当面、今、日本ほどこかの権益に手を伸ばさなければ食べていけない、そういうものはないと思いますよ。それで、経済企画庁長官は、長期的な観点から、将来そういう必要性が起こり得るかどうかということについて御意見をお聞かせ願いたい。
  228. 越智通雄

    越智国務大臣 私どもは五カ年計画をつくっておりまして、現在は六十三年につくった五カ年計画が動いておるわけでございますが、その中におきましては、そのようなことは全く想定いたしておりません。  また、経済審議会の中に二〇一〇年委員会をつくりまして、二十年先までの計算をいたしておりますが、そもそも我が国は平和主義でございまして、相互依存が非常に強まっている世界の経済風潮の中でございますので、そのようなことは全然想定せずに作業をいたしております。
  229. 増岡博之

    ○増岡委員 通産大臣、当面の問題を……。
  230. 渡部恒三

    渡部委員長 ちゃんと聞いていてくださいね。
  231. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 はい、まことに申しわけございません。  ただいま、まず冒頭のそういう日本にビヘービアがあるかどうかという問題でございますが、これは私がちょうど三年前の経済企画庁長官をやっておりましたときに、向こう五カ年の経済計画を策定させていただきました。そのときにも、そのことを随分念頭に入れまして、そして私どもは考えておりましたものですから、そのようなことは全くございません。それから、まずその意味においては、武力行使というものについての経済権益の保護は不適当であるということが、これが第一点でございます。  第二点は、今回の、ただし湾岸対策そのものは経済権益保護というものを目的にするものではなくて、あくまでも国連決議に賛同して行うものであるという点におきましては、総理が先ほどから御答弁を賜っているとおりでございます。  第三点といたしましては、通商政策を通じまして、世界の平和というものとそれから国際秩序というものに貢献をするということがまずポイントでございます。これが一番重要でございますが、その意味におきましては、海外における我が国の資源、権益等の経済的利益の保護については、通商交渉等によりましてまず平和手段によるべきであって、海外派兵とか海外に私ども侵略するとかというような武力行使でもって行うべきものではないということが明らかであろうと思うのでございます。  今回の我が国の一連の湾岸対策は、海外派兵等の武力行使に当たらないものであるということはもちろんのことでございますが、先ほどからお話し合いになっておりまする石油権益の確保のために実施するものではなくして、あくまでも世界の平和と国際秩序というものを維持していくために、侵略はあえて絶対に許さないのだということにおける国連決議の趣旨に沿うものとして賛同しておる次第でございます。  さらに、一般論として最後に申し上げますると、通商関係の多角的な発展、あるいは武器輸出規制等の通商上の諸政策を通じまして、国際紛争の未然防止にこれ努め、そして我が国が今後とも一層世界の平和と国際秩序というものの確保に貢献していくことが肝要であるということの認識に立って、私どもの通商政策を行っている次第でございます。  以上でございます。
  232. 増岡博之

    ○増岡委員 通産大臣、詳しくおっしゃっていただきましたけれども、要は、そういう武力行使をしなくても、日本国民はやっていけるんですよということだと思いますね。企画庁長官も、まだ決まった数字は、五年後だ十年後だと、かもしれませんが、政治家としてお考えになって、今後ずっとそういう状態を続けよるとお考えではありませんか。もう一遍、念のために。
  233. 越智通雄

    越智国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、私どもの経済計画の作業の上ではそのような想定をすることはふさわしくないと考えております。
  234. 増岡博之

    ○増岡委員 そこで総理、そういうことですから、また憲法が許しませんから、日本が海外に派兵をして何らかの利益を得るということは、全く法律上も、また事実上の必要性もないわけですから、総理はここでそういう御意思の御発表をお願いいたしたいと思います。
  235. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 我が国は、御承知のとおりに、過去の歴史の反省に立って、二度と侵略戦争はいたしません、憲法には武力行使の目的を持って海外に武装部隊を送らないということはきちっと定めてあり、それがアジア・太平洋地域の平和と安定にも役立っており、日米安全保障条約という枠組みの中で日本の平和と安全もぎちっと守られておるわけでございます。それらを一体のものとして考えて私は行動をしていきたい、こう考えております。
  236. 増岡博之

    ○増岡委員 総理にわざわざ今お尋ねしましたのは、今回の海外派遣は必ず将来の派兵につながるんだという議論で国会の中でいろいろやりとりが行われるわけでございますから、まずその根源としてと申しますか、一国を代表する総理として、そのようなことを考えもしないしできもしないという意味合いのことを今おっしゃっていただいたというふうに思いますから、これから先その議論を進めてまいりたいと思います。  総理や私どもはそういう意見でおります。しかし、いろんな、自衛隊を海外へ派遣をすると必ず将来は海外派兵に通じるんだ、昨年の協力法案のときもそうでありました。したがって、その海外派兵が、将来起こるかもしれない海外派兵が憲法違反であるかどうかという議論がここで行われるわけであります。その場面だけを見ておる国民から見ますと、国会でそれだけ議論が行われるということは、政府あるいは政府の内部で、だれかそういう意図を持っておる人がおろからそういう議論が野党の諸君から出るのではないかという疑問を抱く人がおることはやむを得ないこと、むしろその疑問を抱かせようとする質問かもしれないというふうに思います。  そこで、今自衛隊の勢力は御承知のとおりでありますから、先ほど言いましたようにね。防衛庁、自衛隊の人数を聞くのを忘れたから、もう一遍やってください。――言いましたね。先ほど申しましたようなことでありますから、もし仮にそういう意図を持っておる人が総理大臣に、仮定の話ですからそういうふうにお聞き取り願いたいと思います、仮にサダム・フセインのような人が総理になって、これは自分の野望を極東において、東南アジアにおいて達成するためには、二十六万定員、二十四万実員じゃ少ない、ふやそうとしたって国会の審議が要るわけでございますよね。  そこで、私、計算したんですけれども、今、八百五十一人の防衛二法改正案、八百五十一人増員してほしい、これは実は防衛大綱によっている。もう陸上自衛隊は限界に達しましたから、航空、海上だけの人数に防衛大綱に達成するまでの間こういうふうにふやしてくださいという法律案、二年間たなざらしである。日本首相サダム・フセインが今の定員に二十七万人ふやそうという悪い計画を持ったといたしまして、八百五十一人が二年かかってまだ成立しないんですけれども、毎年八百五十一人が成立したとすると何と三百二十年かかります。この三百二十年という数字は、いかに我々国会が自衛隊に対するシビリアンコントロールをしておるかという証明だというふうに思いますよ。  ですから、もし仮に、こんなことをしておったらいずれ海外派兵になるんだろう、どうだ、法制局長官に言います、こういう場合どうだ。法制局長官は、そういう場合は海外派兵でありますから憲法違反になりますと答えざるを得ませんわね。それを何回もやりますね。しかし、先ほど防衛庁長官も言われたように、今現在の人員ではとてもそんなことができるはずがないし、倍にしたところで韓国の六十五万人より少ないんです。むしろ我々は、韓国、北鮮合わすと百七十万人だからもう少し減らしたらいいじゃないかぐらい思いますけれども、まだ合併しておりません、対立状態ですからやむを得ないと思いますよ。  その三百二十年かかることをいかにも本当に実現できるかのような印象を与えながら、海外派兵は合憲か違憲かということを法制局長官に尋ねられることが何回もある。法制局長官はいわゆる内閣の内部での法の責任者でありますから、それは問われた質問そのものは、そのものにそのとおりの答えをしなければならぬことは私はよくわかります。しかし、この席であなたは、今私がこういう問題は海外派兵に当たって憲法違反になると思うかという質問をすると、なるかならないかということしか答えられませんね。今まで私が言ったように、倍にするにも三百二十年もかかるんですから、そんなことはあり得ませんという答弁はできませんね。そのことを強制されながらあなたはいつも答弁をしておられるわけであります。  そこで、話のついででありますけれども、今国会は大変なシビリアンコントロールのチェック機能を発揮しておると思うのです。ですから、将来派兵につながるおそれがないかという議論をする人は、みずから国会でのそのチェック機能と権威とを否定しておる立場でなければこの議論はなされないというふうに思います。  したがって、法制局長官、むごいことを聞くようですが、あなたが嫌だったら答えなくていいですよ。国会で海外派兵の法律論争を行うことは、以上のことから空想物語の中での役割を法制局長官が演じておることになる。感想はいかがですか。これをあなたが答えると野党からさんざんにつるし上げを食って、今度は三十時間も五十時間も審議をあなた一人に集中されますよ。だから、そういうことは言わないんでしょう。まあ黙っていなさい、あなた。しかし私は、あなたも内閣の一員ですよ、法律の番人だといったって内閣の一員であることは間違いないのです。そのことをよく承知をしておいていただきたいというふうに思います。  それでは、次の問題に移りたいと思います。行政ニーズと総定員法との絡みであります。外務大臣にお尋ねしたいと思います。  今、米ソ間の軍縮交渉が行われておることは御承知のとおり、だれも知っておるとおり。それから、ヨーロッパにおいても軍縮に向かいつつある。ただ、これは軍縮を行いながらもお互いの力は均衡をしていなけりゃなりませんよという大前提がありますね。そういうもとで、世界じゅうが努力をいたしておる。今度のイラクの挑戦は、そういう新しい秩序をもってむだな軍備を使わないで、みんなが幸せになりましょうよという世界新秩序結成への挑戦だと私は思うのです。依然として自分の力でクウェート侵略し、あわよくばサウジアラビアに侵略して一バレル百ドルくらいに上がてやろうというのがフセイン大統領の意図だったと思うに違いありません。通産大臣、うなずいておられるから、そうでしょう。そういうことを今許してはならないのが、我々の責任だと思うのです。  そこで、繰り返しになりますが、クウェートイラク侵略したのは、クウェートイラクもほぼ石油埋蔵量で世界じゅうの一〇%ずつ持っております。それから、食べさせる人口がクウェートの方がうんと少ないわけですから、差し引き計算すると大変なプラスであることは間違いない。それでフセイン大統領侵略をしたわけであります。そういうことがもし今、まさに東西冷戦も終わって世界の長い平和の時代に突入する、それに挑戦したわけでありますから、国連も当然決議を行い、解決をしたいということであろうかと思います。先ほども申しましたが、こんなことが平生白昼堂々と行われるようであれば、ブルネイもシンガポールも、行く行くは日本も危ないのじゃないかという戦慄感すら覚えるわけでございますので、以上のことにつきまして、外務大臣から適切な解説をお願いしたいと思っております。
  237. 渡部恒三

    渡部委員長 外務大臣、わかりやすく、詳細に。
  238. 中山太郎

    ○中山国務大臣 軍備のない世界というのは人類の夢と言っても過言ではないと思います。しかし、現実の国際政治において、長い人類の歴史においても、国との戦争というものはずっと行われてきた、また、地域紛争も現在起こっております。  こういう中で、ヨーロッパでは、全欧安保会議というものが開催されて、しかもこの地域はいわゆる大陸でございました。そして、この地域考え方というものは二つのいわゆる戦後の安全保障条約、ワルシャワ条約機構と北大西洋条約機構というものが対峙しながらそれぞれのグループに分かれて、均衡ある抑止力を持ちながら平和を維持してきた。その背景にあったものがアメリカ合衆国でありソビエト連邦であったと私は思います。  しかし、米ソの超大国が、膨大な軍備競争の中で国民の税金を使っていく。さらに、新しい兵器体系を開発していく中で、両国とも膨大な軍事費の財政にかかわる負担というものが増大をしてきた歴史がございます。そういう中で、核弾頭つきの大陸間弾道弾をそれぞれ一万発ずつ持つというような異常な事態にまで到達する中で、それぞれの国の指導者が、これ以上の兵器体系を整備することは無意味に近いという考え方な持ち出したと私は認識をいたしております。そのようなことで、一九六〇年代から七〇年代の初頭にかけて極めて激しい対立があり、冷戦がございましたけれども、七〇年代からはそろそろと対話をする時代が始まる。そして、八〇年代になって協調をする、あるいは現在は協力をするという一つの歴史の流れの中に我々はその日々を送ってきたわけでありますが、一昨年の十二月三日、マルタにおける米ソ首脳会談において、冷戦の終わりの始まりという言葉が述べられて、世界じゅうはこれで米ソの対立が終わり、世界は平和が来るというふうにみんなが拍手を送ったと思います。  一方、ソ連においては、新思考外交というものがゴルバチョフ大統領のもとで積極的に進められた結果、ヨーロッパにおいては戦後の大きな問題であったいわゆる二つの軍事条約の対決の中で、ドイツ、東ドイツと西ドイツと分かれてきた両独が合併をするという、統一をするという歴史的な事実が起こりました。こうしてヨーロッパは平和の中に日々を送ることが可能な時代がやってきたと思いますけれども、しかし、その時点においても、このワルシャワ条約機構と北大西洋条約機構の間に属するそれぞれの国においては、それぞれが軍備の削減を抑止力を持ちながら行っているという現実を見忘れるわけにはいきません。  一方、米ソにおいては、SALT交渉等も進んで、それぞれ一万発ずつの核弾頭つきミサイルを持っておった両国が話し合いをしながら、これを六千発ずつの水準にまで落として均衡させるという外交戦略を現在展開していることはよく御案内のとおりであります。しかし、私どもの位置するアジアにおいては、このヨーロッパに起こってきた全欧安保会議、また昨年の十一月に行われたパリ宣言、このようなことで平和の構築がなされる中で、アジアとヨーロッパというものが果たしてどうだろうかということを考えてみると、私は、アジアとヨーロッパを同一に考えるわけにはいかないというのが日本外交考え方であります。  御案内のように、地理学的にも地政学的にも、ヨーロッパとアジアは異なっております。またキリスト教を信奉するヨーロッパの人たちとアジアにおける各国の宗教の違い、またそれぞれの民族の違い、しかも海洋を抱えたこの巨大な地域において、安全保障に関する面を見ますと、ヨーロッパの二極対立の軍事条約に対抗して、アジアでは二国間の軍事条約が多数存在をしているという複雑な軍事機構を持った地域でもあります。また、ヨーロッパのような二極だけの対立ではない、中国という存在を無視してアジアを考えるわけにはしかないのでありまして、こういう中で朝鮮半島における南北の対立、カンボジアにおける内戦あるいは北方領土問題を抱えた日ソの関係、こういうものを考えてまいりますと、ヨーロッパで起こってきた総合的な安全保障政策と、アジア・太平洋における安全保障政策とは根底からその考え方の発想の原点が違っているわけでありまして、こういう中では私どもは、アジアの国々がヨーロッパに比べて一体どこに大きな差があるかといえば、一番ヨーロッパとの違いは、いわゆるその国その国の一人当たりの国民の所得が極めて大きなハンディキャップがあるということではなかろうかと思います。そういう意味で、この地域の安全保障を推進していく基本となるものは、各国の経済力を高めることによってそれぞれの国民所得を豊かにし、そして民族間の対立を和らげて、その地域紛争を少なくしていくという外交努力というものがこの地域には必要だと私は考えております。  しかし、一方におきまして、我々海洋国家としての日本は、貿易を行わないと、この一億二千万人の国民は今日のような高水準の生活を維持するわけにはまいりません。しかし、専守防衛の日本の安全保障政策の中では、アジア・太平洋の地域の海洋の安全性というものを確保する方途というものは極めて難しいのでございまして、そういう意味で、専守防衛の日本の安全保障政策を裏づけているものが日米安全保障条約というこの抑止力でありまして、これは単なる日本の平和のみならず、極東全域の平和と繁栄に大きな貢献をしてきたことは、この三十年間の安保の歴史を振り返ってみても明白であろうと考えております。  そういう意味で考えてまいりますと、私は今回のイラククウェートの侵攻、侵略、一夜にして国土が占領された、こういうことをもし日本に当てはめたときにどうなるのか、これだけの豊かな国が、どこかの国が突然侵略を起こしてきたときに一体この国の防衛をだれが責任を持つかといえば、言わずもがな、それは我々の国の自衛隊であります。しかし、自衛隊だけでは巨大な国家の侵略を防御するわけにはまいりません。そこで日米安全保障条約がその機能を発揮してくる。一国に与えられた攻撃は日米両国に対する攻撃と同じような条約が結ばれているのでございまして、アメリカの青年は、日本がもし他国からの侵略を受けたときに、この国の国土の安全と国民の生命と財産を守るために、この国土の中で、あるいは周辺でみずからの血を流してでもこの日本を守るという条約を整備してあるわけでございますから、そういう意味で我々のこの国家というものの安全性というものは今日極めて安定しておりますけれども、これから先の新しい人類の歴史の中でだんだんと軍備を削減し、均衡のとれた少ない軍備の中でお互いの国家が安全を保障し合うという姿がアジア・太平洋に構築されてくることを私どもは心から念ずるものでございます。
  239. 増岡博之

    ○増岡委員 今外務大臣の答弁がございましたけれども、私は、外務省というのは大変な仕事を抱えておるということは承知いたしております。しかし、日本には総定員法というのがございます。それによって総役人の数が決まり、各省庁間のやりとりというものが行政管理局長の手で行われております。昭和四十四年からであります。大変苦心をなさっておられると思うから、私は国会の場でもその状況を御説明いただきたい。いわば昭和四十四年、法施行後今日まで、どのくらいの人を減らし、どのくらいの人をふやしたかという概略を答弁願いたいと思います。
  240. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 お答えを申し上げます。  この公務員の定員をどのようにして適正に管理をしていくかということは行政改革を進める場合の大変重要な仕事である、こう認識をしてございます。  そこで、私どもとしましては、この行政需要、世の中が変化してまいりますから、行政需要につきまして、まあ衰退部門とでも申しますか、あるいは要合理化部門とでも申しますか、こういうものにつきましては定員を削減さしていただく、一方、この新しい行政需要の強い分野につきましては増員の措置をとらしていただく、こういうことでやってまいりました。総定員法が施行されましてから二十数年たちますけれども、その間におきましてそのような観点で削減をいたしました総数は二十四万二千百三十二人でございます。一方、増員をいたしました総数は二十万六千六百十九名でございまして、差し引き、ネットで三万五千五百十三人の減少ということになってございます。  以上でございます。
  241. 増岡博之

    ○増岡委員 長官に細かい数字まで御説明いただきまして、ありがとうございました。  実はそういう大変な努力が行われておることも事実であります。しかし、片やそうかといってこういう事実もあります。例えば外務省の職員数でありますけれども、現在四千三百二十八人、これをイギリス、英国と比べると、英国が八千二百四人であります。ですから、人数からいけば一・八九倍でありますけれども、これを対人口比で見ますと、イギリスは日本の四倍になります。その対人口比でいきますと、フランスは三・三六倍、西独は三倍、イタリアは二・三九倍、カナダは驚くなかれ五倍になります。あれだけの長官がおっしゃったような努力をなさっても依然としてそういう数字は残っておるわけであります。  ちなみに厚生省の例を申し上げます。総理、新聞で一度はごらんになったと思うのですけれどもお忘れになったかと思います。三時間で三分というのがあります。三時間待って三分しか診察してもらえない。これは厚生大臣、悪口だと思いますよ。実際はそんなものじゃない。もっと親切にやっていると思いますが、そういう悪口を言われるということはなぜそうなるのか、御説明願いたいと思います。
  242. 下条進一郎

    ○下条国務大臣 先ほど来定員の話が出ておりますが、国立病院・療養所の面におきましては厳しい定員法の中にありまして、過去十年間見ましても毎年純増はしておるわけでございます。各方面の御協力によりましてそのような状態にあるわけでございます。  しかしながら、ただいまお話がありましたような大変短い時間の診療しか受けられないということにつきましては、各患者さんがやはり国立病院あるいは大学病院、そのような大きな施設に対して非常な魅力と安心感を持って、ちょっとした風邪でも何でも言っていかれる。もちろん重症の方も来られます。そういうことが殺到するがために、やはり診療の時間が待つ時間の方が多いという御不平、御不満も出ておるわけであります。こういう点につきましては、やはり機能を上げていく、専門化するというようなことを考えながら、あわせて、ただいまの定員の問題についても配慮しながら対処しているところでございます。  以上でございます。
  243. 増岡博之

    ○増岡委員 先ほど挙げましたように外務省の人員は、あるいは厚生省の人員は、各省の中では大分たくさんにふやしていただいた役所でございます。しかし、それにしましても、先ほど申し上げましたように英国では八千二百四人だけれども日本では四千三百二十八人なんです。カナダですら四千六百六人もおるわけです。こういうものをいわば各省別の行政ニーズに合った適正配分することも政府の役目であろうかというふうに思います。それを総務長官以下、行政管理局長中心になってやってくださっておるわけでありますけれども、それを毎年おやりになる分は、いわば行政需要にアンバランスが起きない平穏なときには、私は総務庁長官と行政管理局長でおやりになると思うのです。しかし、今申しましたように、厚生大臣は少し上手におっしゃいましたけれども、三時間待って三分しか診察されない、あるいは外務省におきましても、人口当たりでいけば、これは適正かどうか知りませんけれども英国の四分の一、カナダの五分の一、こういうことは、国政を預かられる立場総理といたしましては何がしかの目をあけてやる御努力をいただきたいという陳情を今いたしておるわけです。  したがって、そういう日常の仕事の観点からの作業は総務庁長官局長でできますけれども、御承知のように縦割り行政でございますから、もらう方は幾らでももらう、出す方は嫌だ、この壁にぶつかることは歴然といたしておることは御承知おきいただいておると思いますよ。それは、私がお役所の人になってみますと、自分が事務次官のときに毎年五百名減っておったのが五千人減ったなんていうことは、これは個人としては耐えられないことでありましょうから、最大の抵抗をするであろうことは火を見るよりも明らかでございます。その壁を破ることが一局長あるいは一国務大臣でできるかどうかということをお考えいただければ、これはやはり、毎年毎年そんなことをしていただきたいというのじゃないのですけれども、そういう政策的な転換をしなきゃならぬ場合の人員再配置については、やはり総理みずからが乗り出していただかなきゃならぬというふうに思います。  また、総理も忙しいのですから、その実務は官房長官が実際にやってあげるぐらいなことをしなければ、本当の各省庁ごとの行政ニーズに見合った人員配置というものは不可能だと私は思うのです。そのことを思うものですから、わざわざさっきからやらしていただいておるわけです。  総理、何か御感想があればおっしゃっていただきたいと思います。
  244. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国家公務員の定員管理というのは、これは重要な課題であり、その管理についていろいろ各省がそれぞれの立場に立って、これは税金のむだ遣いをできるだけ省くという観点から努力をしておることも一面ございますが、しかし、御指摘のように、新しい必要な需要が生まれた場合に新しい必要なもののところにどのように定員の適正配置をするかという別の視点の問題も一つあるわけでございます。  具体的な例にお触れになった外交の問題等については、これはもう随分前から議論の対象になってきておることも私も承知いたしておりますし、また、そういう必要なところにはふやしていかなければならない、必要でないところは削減していかなければならない、こういうことで昭和五十七年以来の努力が続いておりますけれども、例えば、私の手元では、外交に関しては八百五十六名ふえておるとか、あるいはその他減っておる部門等もございます。こういったことについては、国のためにどうしても必要だと思われるところについては、数学的な数の問題だけじゃなくて、必要に応じては足していくということをそれぞれの担当の閣僚にも私は要請をしておるところでありますし、今後とも御質問の御趣旨を十分踏まえながら対処してまいりたいと考えております。
  245. 増岡博之

    ○増岡委員 官房長官の御決意を承りたいと思います。
  246. 坂本吉弘

    坂本国務大臣 定員の適正な配置について、内閣全体の問題だ、それで、今までのようなやり方では本当に内外のこの変化に対応して、そして真の行政効率を上げることはできない、そこはしっかり内閣全体として考えるという御趣旨でありました。  私も全くそのように存じます。特に人の配置の問題は役所間では大変な問題だということもよくわかっております。しかし、今申されました御趣旨にのっとって、内閣全体の問題でありますから、私もなるほど内閣法によりますれば行政各省庁の総合調整ということになっておりますので、定数の問題につきましても今後一生懸命頑張っていきたいと思って、御期待にこたえたいと思っております。
  247. 増岡博之

    ○増岡委員 私が今申し上げておるような適正配分ということは、行政管理局長のもとでは真剣に考えられて、そのとおり実行されておると思いますよ。ですから、昭和四十四年法施行以来、二十万人以上の人の配置、定数配分があったわけです。しかし、私はそこに限界があると思うのですね。私が念のために取り寄せました資料によりますと、外務省の定員増の要求が、昭和六十二年、百十六名で九十五名もらっております。六十三年に百十六名で百二名もらっております。元年が百十六名で百六名、二年度が百十六名で百八名、三年度は百十六名で百十名の予定だということになっておりますから、この数字で見る限りはかなり配分が行われておると思う。  しかし、今さっき外務大臣がおっしゃいましたようなことを実行しようと思えば、本当の本心は五百人か六百人ふやしてほしいということではありませんか。厚生大臣も、お医者さんや看護婦さんの人数がちょろちょろとふえていって、それで間に合っているという、そんな建前よりも、本音の話をしましょうよ。ですから、私はそういうことが帳面上もっともだと思われる数字というのは、これは信用できないと思うのです。外務大臣、どうですか、五百人か六百人ぐらいずつふやしてもらいたいと思いませんか。思うと言ったら勇気があるし、また内部でしかられるかもしれませんけれども……。ですからお答えにならぬで結構です。  こういう、いかにもだれが考えても作文でございましょう。それは、私は先ほどから言っておるように二十何万人も動かしたんだから行政管理局は歴代うんと仕事をしているということは認めますよ。認めますが、局長限りあるいは総務庁長官限りでは限界があるのではないですかということを申し上げておるわけであります。  したがって、この際私はあえて要求みたいなことをいたしますが、総理大臣の御意思でもって、手足としては官房長官をお使いになって結構だと思うのです。そういうものをやるということは、これは並み大抵のことではありませんよ。先ほど申し上げましたように、外務省の人数を五倍にしてもカナダと人口当たりが同じなんですから、とても五倍にするということは私はできないと思います。思いますけれども、過去において私ども議論したころ、西独が、日本の人口の半分で外交官が日本の四倍だったわけですね、人口対比。今、数字をもらってみると三倍に減っておりますから、かなり努力はしてきておると思いますけれども、そういうことについて、総理並びに官房長官、外政は外交でございますよ。  それで、恐らく外務省も、こんな資料を私のところへ持ってくるときは、こういうことに使われるとは思わなかった、先生そんなひどいことをやってと思っているに違いないと思いますよ。みんなにしかられる話だ。だけれども、あえて私は申し上げておるわけであります。したがって、そういうことはやはり総理の背景で、総理の御意思でもって許されることなら、総理がそうお考えなら、官房長官あたりが、毎年やっちゃいけませんよ、毎年のものでなくして、政策転換の意味でのある時期には、何年かに一遍そういうことをなさるべきだというふうに思います。官房長官、どうですか。
  248. 坂本吉弘

    坂本国務大臣 御趣旨まことにもっともだろうと思います。しかし、これは実際やるときは確かに並み大抵ではございません。日本の官僚は、私はもう世界一誠実で勉強家でと思っております。ただし、役所に対して非常に忠実であります。つまり、定員の問題などについては、これは大変な抵抗があなたのおっしゃるようにあるだろうとも心配をいたしております。  そういうようなことでございますから、並み大抵の仕事ではないのでありますので、これはひとつ総理の御指示を得て、そして、私どももよく検討をしてみたいと思っております。
  249. 増岡博之

    ○増岡委員 並み大抵のことでないから総理にはお話を申し上げ、総理の背景のもとに官房長官しっかり頑張りなさいと、一総務庁長官も頑張っていると思いますけれども、一統務庁長官や行政管理局長の仕事ではないんです、しかっかりやってくださいという意味合いでこういうことを申し上げておるわけであります。そういうことで、この問題については終わりたいと思います。  次は、高齢化社会問題についてお尋ねしたいと思います。  私は、本来的には、一個人としてはこう考えるのです。お年寄りというのは、若い人に対して医療費が一人当たり五倍かかります。今お年寄りの人口というものは、六十五歳以上が一一から一二%の間だと思うんです。それが将来二三%になると言われております。したがって、そういう意味で医療費なり年金なりがふえていく。そのことは、いわゆる国民負担率、御承知のような税金と年金と健康保険の負担、これがふえていくということは、ある意味ではやむを得ないことだというふうにも思うのです。ただ、日本民族はまだ若いのですから、高齢化社会には到達をしていない。世界の定説によりますと、六十五歳以上が七%になれば初めて先進国になります。それが一四%になれば、これが高齢化社会という範疇に属するわけです。そこで、七%から一四%になるスピードが問題だと言われておるわけであります。フランスは二百年かかりました。アメリカでも七十年、日本は三十五年で七%から一四%になると言われております。したがって、我々が今急がなければならぬ問題は、そういう高齢化社会対策であり、総理も高齢化社会を迎えて民族の活力を失わないように配慮しなければならぬと言うのは、まことに達見だというふうに私は思います。そういう意味で、高齢化社会を迎えたときの我が国の対応について若干お尋ねをいたしたいというふうに思います。  まず、高齢化社会を迎えたとき、国民負担率が高くなるということを申し上げました。そこで、労働大臣にお尋ねしたいと思います。  国民負担率の高い国と低い国とがいろいろあることは、御承知のとおりであります。この間テレビを見ておりましたら、ある番組で、国民負担率が何%の国は、いわゆる無断欠勤、おサボりですね、が何時間だということをやっておりました。これは今ちょっと資料が見当たらないものですから捜しているのですが、大体でいきますと、七三%のスウェーデンでは無断欠勤が二百二十時間、六〇%のフランス並びに五六%のイギリスは、一年間百二十時間なんです。それで、三九%の日本は三十六時間なんです。ですから、日本人が勤労意欲を持っておるということ以外にも、そういう要素があるのです。  それで、この数字をどうやって調べたかということまでは申しませんけれども、労働大臣、そういう傾向にあるだろうなということはおわかりいただけると思うのですが、どうですか。
  250. 小里貞利

    ○小里国務大臣 増岡先生の御指摘になり、私に問われておりまする問題点を私なりに簡潔に申し上げますと、要するに、社会的な福祉関係等の国民負担がふえることは、本格的な高齢化社会がやってきた今日の労働情勢下において一体どういう影響を与えるのかという意味ではなかろうかと私なりに解釈をいたします。  もちろんのこと、それらの社会保障等の一切を含めまして過度の負担は、これは勤労者の意欲を抑止するあるいは阻むものであるという認識を私は持っております。しかしながら、勤労者は将来の自分の方向に向かいまして一定の展望を持つ、そしてまた希望を持つ、そしてまた一つの人生設計をきちんと持つということは大事でございますから、それらの面を、あるいは社会的に、あるいはまた政策の面できちんと方向を示してあげるということも私どもの任務の一つではなかろうか、さように理解をいたしておるところでございます。
  251. 増岡博之

    ○増岡委員 今、国民負担率とずる休みの時間の比較を申し上げたわけであります。国民負担率でありますから、当然企業にも負担がかかってまいりますね、社会保障費と税金とを足したものを国民所得の分母で割るわけですから。もし仮に七〇だ六〇だというような高い負担率であれば、企業として、国際競争力をつけるだけの合理化ができるかどうか。今の問題にお答えいただきたい。経済企画庁長官。
  252. 越智通雄

    越智国務大臣 企業に対しましてのそうした社会保険等の企業負担分が今以上ふえてまいりましたときに、どのように企業の態度が変わってくるか、まだ試算はいたしておりませんけれども、現状を変えることはなかなか難しいのではないか、このように考えながらやっております。
  253. 増岡博之

    ○増岡委員 今お尋ねしておるのは、日本はかなり低い国民負担率でありますけれども、スウェーデンのごとく日本の倍になった場合には、会社の中の合理化資金にすべき積立金もほんのわずかになって、税金にほとんど取られるわけですから、そういう意味のことで企業というものがどういう状態になるかということをお尋ねしておるわけです。
  254. 越智通雄

    越智国務大臣 それでございますので、いろいろな想定がございますのでなかなか今のところ計算してございません。お話し申し上げにくいわけでありますが、一般的に申しまして、企業の負担の多い社会保険をたくさんやりました国の経済そのものはそれほど伸びておりません。したがいまして、活力ある日本の経済を維持していくという上で、そのような負担を増大させることはいかがかというふうに申し上げた次第でございます。
  255. 増岡博之

    ○増岡委員 私は数字をお聞きしておるのではないので、傾向としてはそういうことでしょう、そういうお尋ねをしておるわけです。  したがって、私はここでもう一度労働大臣にお尋ねしたいのですけれども、私は、そういう国民負担率を少なくする意味ではいろいろなやり方があると思いますけれども、減税もそうでしょう、社会保障の範囲内では、なるべく長く働く、そういうことは、年金にしましても今六十歳支給ですけれども、六十五歳まで定年になれば、そうするとその五年間というのはもらう立場の人が働くのですから、出す立場になるから、プラス・マイナス大きい数字になるだろうことは間違いないと思います。  そういうことで労働大臣にお尋ねしますが、今法律は六十歳定年、あるいは六十五歳まで引き続きなるべく雇いなさいということが言われておりますけれども、ところがそれは拘束力がないはずですね。ですから、実際には今民間の定年が幾らぐらいであるか、あるいはその後の――その後のことはまた私がお尋しますから、どういう状況であるか、おっしゃってください。
  256. 小里貞利

    ○小里国務大臣 ただいまのお尋ねは、六十歳定年を六十五歳定年に引き上げる方向を示唆しながらお尋ねであったと思うのでございます。  御案内のとおり、今日の高齢化社会のもと、いわゆる本格的な高齢化社会でございますから、六十歳から六十五歳までのいわゆる雇用の機会を拡大、確保するということはお説のとおり大事であると思っております。私どもは、そのような一つの政策目標設定のもとに今日、先生もちょっとお触れございましたように、六十歳という定年は公務員においては固定せられておりますけれども、民間におきましてはそれがまだ強制せられておる措置がとってございませんから、言うなれば義務づけられてはおるけれども、この実効性が乏しい。御承知のとおり、その数字を示せという話でございますが、私の記憶では六五、六%がその六十歳定年という目標に達しておると思っておりますから、これらの六十歳定年制というものを十分完全に定着せしめるように目下努力をいたしておる最中でございます。  同時にまた、この六十歳を六十五歳に持っていきますというお話でございますが、なかなかこれを義務づける、そして例えば先生、言葉お使いになりませんでしたけれども、処罰規定などで拘束するということは、おのおの企業の状況もあり、あるいはまた賃金あるいは労働条件そのほかの労務管理等の問題がございまして、一定のもとにこれを義務づける、拘束するということはなかなか至難なことではなかろうか。そういうような観点から私どもは、労使円滑なる協調のもとに話し合いを持ってその方向で処理を願いたい、かような観点から啓発、御指導を申し上げておるというのが実態でございます。  以上です。
  257. 増岡博之

    ○増岡委員 私はかねてからそういう定年延長論を唱えております。  皆さん個人の立場でお考えいただきましたら、六十歳になったら老人クラブ加入資格があるんですね。六十歳の方はいっぱいいらっしゃると思います。六十歳で老人クラブへ入れと言われてきたら、大概はおれはそんな年寄りじゃないぞと怒りますよね。そういう時代ですから、定年延長を考えたらどうかということを言っておるわけであります。  そこで、今お話がありましたけれども――いや、それはまた別途お話しします。今現在は六十歳定年でありませんから、五十五歳、六歳がありましょう。その方々は定年を迎えても再就職をしておられますよ。これは労働省の集計ももらいたかったのですが、なかなかそういうものがないというので、厚生省の集計で、推計です、実質調査ではありませんけれどもね。一体、六十歳から六十四歳ですね、六十五になるまで、どのぐらい人が働いておるだろうかということを調べてみました。そうすると、在職年金、減額年金、それから全然もらっていない人という数字がいろいろありますけれども、年金をもらっている人に対して減額年金、退職者全員の中で三六%の人は減額年金をもらっておるんです。三六%の人が減額年金をもらっておるということは、六十歳から六十五歳のうちの三六%は何らかの形で働いておられるということの証明だと思いますね。  ですから、そのことを考え、また、今は五十九歳定年だから、社長さんに頼んで、一遍退職金もらって、再雇用で月給安くてよろしゅうございますからいうんで頼んでもらう。ところが、六十五歳定年ということが定着しますと、これは頼まなくても自分の権利だということになりましょう。そういうことを考えると、労働省の方で何歳まで働きたいかというので意識調査しておられます数字とは、頼んで雇ってもらうのと権利として働くのとは別でしょうから、違う数字が出てくるはずだというふうに思いますけれども、ともかくそういうことをやっていくことが私は高齢化社会を乗り切る基本だというふうに思っておりますから、今現在、六十歳定年という法律がせっかくあるのですから、それをうまく実行できるようにお願いをしたいというふうに思うわけです。これはお答えにくいですかね、労働大臣は。法律があるけれども、強制力がないから一〇〇%ではありませんね。
  258. 小里貞利

    ○小里国務大臣 大変労政に対しまして理解ある御意見をお聞かせいただいておるところでございますが、誤解があると困ると思うのでございますが、私、先ほど申し上げておりますのは、六十歳定年という現行制度を一つの基軸にいたしまして、そしてこれを完全にひとつ各企業、民間、完熟させよう、実行をしていただこう、その方策を講じておるわけです。そしてまた、これをきちんと履行することによりまして、体制の整備をすることによりまして、先生が御指摘の六十歳から六十五歳まで延長をすることに事実上つながる、このような観点でございます。  ただし、それを絶対的に拘束する措置はないかというお話でございますけれども、これはそれぞれの労働条件なりあるいは労務管理上の問題あり、あるいは基礎的に労働者の体力、健康上の問題あるいは就労に対するニーズの問題等が個人差が非常に大きくなってまいっておりまして、その辺の複雑な問題等がございますので、熟慮いたしておるところである、こういうふうに申し上げておるところでございます。
  259. 増岡博之

    ○増岡委員 今申し上げたようなことが今後の高齢化社会を乗り切っていくための基本だろうというふうに思います。この中にはやはり、労働大臣は民間の立場でありましょうけれども政府みずからそういう方向に進む見本を示すことがあろうかと思いますから、何らかの機会にしかるべき方法であなたなりの対策を講じていただきたいというふうに思います。  時間でありますからもうそれでやめます。  残余の時間は浜田幸一君に譲ることにいたしまして、私の質問はこれで終わります。
  260. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、浜田幸一君から関連質疑の申し出があります。増岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。浜田幸一君。
  261. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 まず最初に、総理並びに政府、官僚諸君の多大な努力と、議会の、子供たちの時代に備えての論議に対して敬意を表します。  そして、総理にお伺いします。  もし仮に、先ほど野党との間で議論をされておりましたが、その議論の中に隠された部分はなかったかどうか、もしあったとしたら、それを言うと逆に混乱をするから言わなかった、そういう部分があったらお教えいただきたいと思います。
  262. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 やるべきこと、言うべきことについては言わせていただきました。したがいまして、隠された部分とか、あえて言ってない部分というものは特にございません。
  263. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 外務大臣にお伺いします。  現在の日本外交の姿勢の中で、本当に日本国家が長期的に安全に生存するためには、やはり人が血を流して守っている国を我が国も血をもって流さなければならないという絶対的な条件が存在すると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  264. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員お尋ねの、日本立場で血を流して人のためにやる、人の国を守るといったようなことは、現在の憲法のもとではそれは枠として認められておらないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  265. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 もう一点お伺いします。  仮に、我が国に与えられた占領憲法、その憲法下において血を流すことは絶対にできない、それはどういうことかというと、略奪や自分たちの生存のために他国を侵略して戦うことは絶対にいけないと憲法に書いてあります。しかし憲法を真に学んでみれば、世界の中において逆にそういう行為をする者があり、正義感の上に立って人命を守り地球全体の安全を守るためには、その行為に参加しても憲法違反ではないと書いてありますが、その点はいかがでしょうか。
  266. 中山太郎

    ○中山国務大臣 国連加盟国の日本として、武力による国際紛争の解決はやらないという国連憲章の条文がございます。私どもはこの国際紛争を武力によって解決することを今後やめるという一つの大きな国連憲章考え方というものを安保条約の中にもちゃんと記録をいたしておりますし、私どもの国家として、与えられているこの憲法の枠の中でどのようにして国際貢献ができるかということについて、これから真剣に議論をしていかなければならないと考えております。
  267. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは専門家にお伺いします。  担当はどこになりますか、私が指定はいたしませんが、現行憲法を考えるときに、アメリカ合衆国の青年が、あるいはそこに旗を持ってきてきょう旗を使わしてくれと言ったのですけれども、これの、多国籍軍といいますか、この二十八カ国の中の若い青年諸君がイラクの不法な行為に対して血を流して守っているときに、我が国の置かれている立場の中で最大限やらなければならないことはどんなことであるか、お教えをいただきたいと思います。  先ほどから質問を聞いておりますと、九十億ドルが高い、安い、もっとほかに使うべきだ、もしそれが長引いた場合にはどうするのか、当然それは負担するのが当たり前であります。しかし、その問題は別にいたしまして、ただいまの質問に的確にお答えください。
  268. 丹波實

    ○丹波政府委員 私なりに先生の御質問にお答えいたします。  御承知のとおり、日本国の憲法にはいろいろな制約がございます。しかし、私は、一番重要なことは、アメリカがあそこで血を流している、そのほかの国が血を流している、その痛みを日本は共有するという考え方、これを世界に示すことが一番重要だと思います。
  269. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私は、答弁の簡潔性に感激をいたしました。そのとおりです。これは笑うことではなくて、我々が子孫に伝えなければならない基本的な物の考え方です。  私は、今の問題についてもう一点お伺いいたしておかなければなりません。  我が国においては、若い外国の人々が血を流して守ろうとしているときにどんな議論をしているかというと、そこに飛行機が行ったらいけない、避難民を救うことは憲法違反である、そういうことが平気で議論をされております。このことはまた後ほど結論づけるといたしまして、なぜ私がそういう問題を言うか、これから総理大臣に御質問したいと思います。  総理、ここにパネルがありますが、今度の戦争で一番悪い国はどこですか。――委員長、聞いてください。
  270. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 イラククウェート侵略し、これを併合したということであります。イラクが一番原因をつくったいけない根本の国だと思います。
  271. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 だとすれば、前国会において国際協力法案と言われる、加藤紘一君が特別委員長をやりましたあの委員会において、質疑応答が十二分に行われていながらなぜ採決をさせなかったか、答えてください。
  272. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会の運営上の問題に行政府の者がここでとやかく言うのは、これは慎まなければならぬことだと私は思いますので、なぜ採決ができなかったかということは、当時の委員長にお聞きいただかなければならぬことだと思います。
  273. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは、私がお答えいたします。  それは簡単なことです。もしあそこで採決をして一つの結論が出た場合に、世界に奉仕するために――じゃ、次。  この日本と主要国の中東における石油依存度及び派兵状況、アメリカ二二・四、イギリス二五・九、フランス四三・六、日本七一・二〇、実はこういうことになっているわけですけれども、実は兵員が四十二万五千、それから二千、これは戦車が二千、作戦機が二千五百、艦船が百八、それからイギリスが三万四千、百六十の九十の十六、それからフランスが一万七千、日本はゼロ、ゼロ、ゼロ。これをよく見てもらいたいのですけれども、実際に同じような条件下にあるものがこれだけ、片方はこれだけ負担をしている、片方はゼロなんですね、我が国の場合は。これで本当に救いがあるかどうかということなんです。  私は、この状況を見るときに、イラクがこの隣の島をとった、これだけのものを取り上げて、そしてそれに対して我々が何をすればいいのか。我我がすることは一つしかない。彼らがやっていることは間違いである、誤りである以上、そういうことは再びやらしてはならない、このことをはっきりさせなければならないと私は思うのです。  ところが、これは長過ぎて申しわけありませんが、それを言う場合に、先ほど総理に質問があった。もしこれが長引いた場合には、もっと金はふやすのかという質問がありましたね。しかし、これがもし三カ月で終わるのか、六カ月で終わるのか、あるいは百カ月――百カ月ということは言えないけれども、一年で終わるのかわかりませんが、それが終わらない間は、日本国はこれを終わらせるための予算の負担をしなければならない立場にあると私は思うのです。この問題について何かお考えがあったら、御指導いただきたいと思います。
  274. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今示されたその数字はそのとおりだと思います。同時に私は、その地域において力でもって侵略してはいけないという新しい世界の平和の秩序を守らなければならぬということは繰り返し申してきました。そして、力でお役に立つことのできない日本立場をそれらの国々にも理解してもらうためには、日本としてできる限りの応分の支援をしていかなければならぬという考え方もここで申し上げたのであります。  また、最初に言われた、日本アメリカとの日米安全保障条約において、バンデンバーグ決議の唯一の例外になっておる、そういう中で日本の戦後の今日の繁栄があったんだ、平和の中で我々国民が非常に高いレベルの生活ができるようになってきたことは、世界の国々との相互依存関係の中でその恩恵に浴してきたんであるということ等もすべて総合的に勘案すれば、できる限りのことをしなければならぬというのが、総合的に、自主的に、許される範囲で支援策を決定した、その根底にある考え方でございます。
  275. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 総理大臣、再度お伺いしますが、実際問題として、やはり日本国がしなければならない問題は、他国に負けないようにあとう限りの努力をして協力をしなければならないのではないでしょうか。  例えば、大蔵大臣が、外務大臣がアメリカに飛び、そして九十億ドルの約束をしてきた、帰ってきたら政府閣僚会議において、もしそれは、確かに君たちの努力は認めるけれども、いま一歩考えてみた場合に、我が国が軍を派遣しなければならないものを派遣しないでこの問題を解決するためには、その予算はプラスアルファ二十億ドルとか三十億ドルとか、そういうものをプラスアルファしていくのが当然ではないのかというそういう議論があっていいのではないでしょうか。  なぜそれを言うかといいますと、韓国から経済協力を求められたときに、四十億の要求がありましたものを二十億で解決をつけたときがあります。このことについては大蔵大臣がだれであったときということは申し上げませんが、ありますが、今回の場合でもそうなんです。本来であれば、これらの問題についてはやはり我が国が、あなたの国の青年は血を流して死んでいくんだけれども、我が国にはあなた方に与えられた憲法があるために血を流して平和を守ることができないので、その分だけ三〇%プラスをして、あなた方の血を流して犠牲になっていく人たちの生活保護あるいは国民保護のために負担をさしていただきたい、こういう議論がもっと閣議で議論をされて全面的に進められていいのではないかと私は思いますが、その点はいかがですか。
  276. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな計算の数字の基礎があったことは申し上げました。けれども、その幅の中で私どもも総体的に考えて、日本の国の置かれた立場日本と今示されたようなその地域における石油の依存度、国際社会の大義に対する日本の貢献のあり方、そういったことをすべて総合的に判断して、いろいろ議論をして決定をした数字が今回の追加支援の九十億ドルであるということであります。そのようなお考え方は十分理解して物事を判断しております。
  277. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私がこれをしつこく言うのはなぜかといいますと、この絵を見ていただけばわかりますとおり、日本の資源というものは皆無です。資源なき国家が今日まで繁栄できた理由は何かといえば、日米安全保障条約を中心として、我が国が資源確保はできた、そしてそれを賃加工してつくり上げた物をまた買ってくれた国が世界じゅうだったからですね。だとすれば、そういう状況の中にあって、その最大の基本である石油なら石油をサウジから一七・五%あるいはカタールから五・七、アラブ首長国連邦から二〇・五%、オーマン五・九、イラン九・六、イラク四・一、これは数字でございますが、この状況下にあるこの石油資源というものが我が国に正しく正当に、長期的に輸入されなければ、我が国の経済繁栄は今日までなかったと思うのです。  ところが、幸いにして、あなた方の努力によって、先輩の努力によって、今日まではそういうことの心配はなくここまで経済成長はしてきたけれども、今日これを根底から破壊しようとする者があらわれてきた。りそれがだれであるかというと、イラクだった。イラククウェート侵略した。クウェートまで侵略した者がもしサウジまで侵略するようなことになった場合に、日本の、あるいは世界の経済はどうなったかというと、世界のことを言う前に日本そのものは一体どうなったであろうかというと、我が国の子供たちの将来の安全性というものは話し合い、議論すらすることができないような苦境に陥っていたであろうと思うのです。そういうことを阻止するためにアメリカ合衆国は軍隊を派遣した。しかし、我が国は、あなた、総理大臣と話をするとき、総理大臣と大統領と話をするとき、アメリカ合衆国はこれだけの軍隊を派遣する、総理、あなたの国は何々をしてくれ、これだけのことをしてくれ、私はこの話というのはあったと思いますが、それは今ここで私は申し上げません。ただ、あとう限りの努力をしないと我が国の将来が危険だと私は思って質問しているのです。  ところが、先ほどまでの質疑の間の中で隠された部分がある。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━しかし今は腹を決めましたから明確にしておかなければなりません。  それはどういうことかというと、どうしても日本国として、たとえどんな努力をしても果たすべき責任だけはびしっと果たしておかなければならない。アメリカ合衆国、日米安全保障条約を正しく守り、そしてともに行動し、我々の平和、世界の平和を守っていくために、この問題が解決するまで、たとえだれがやめろと言ってもやめることのできないことがある。それは何か。もし派兵ができないならば、それにかわるものとして人間の、我々日本人の正しい物の考え方、感情、そういうものをきちっとあらわしていかなければならないことだと思いますが、その点はどうですか。
  278. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際社会の大義を守らなければならぬという大きな大前提については、私は何回も申し上げましたように、それは正しく認めていかなければならないし、日本としてはそれに対して支持を確固たる態度で与えていく。それは、日本国際社会の大義を守る側に明確に立っておるんだということを世界に明らかにいたしましたし、同時にまた、新しい世界の秩序武力でもって侵略してはいけないんだ、これは排除しなければならぬという点についても、明確にそれは支持をするわけであります。それがなかったら世界の秩序は守れません。そういった意味において、なし得る、でき得る限りのことはしていこうというのが許された範囲内で私どもがやろうとしておることでありまして、それが日本の現在の立場で許されたもの。日米安保条約の重要性は、私も委員と同じように非常に重く受けとめておりますが、それの中においても――ちょっと待ってください。いろいろあって、日本アメリカとの間柄についても日米の信頼関係の中で一つの枠がある。その枠の中で日本にできるだけのことは、応分の支援はしてほしいという要請はある。できるだけのことは我々が自主的に考えていたしますという関係で臨んでおるわけでありますから。
  279. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 私は、文章で朗読しないと子供たちの時代に間違った報道がされるといけませんので、急いで読ましていただきますので、ひとつお聞き取りをいただき、後ほど御批判をいただきたいと思います。   まず第一に、国連中心とした世界平和の新しい秩序をつくろうとしているときに、その国際秩序原則を破りクウェート侵略したイラク行為を黙認してしまったら、同じように武力による侵略を行う国を誘発し、国際秩序は崩壊してしまう。イラク行動は決して許されない。   二、国連の安全保障理事会は、国際秩序を根底から揺るがすイラクの暴挙に対し、国連憲章に基づき、即時無条件撤退を求め、経済制裁を行い、五カ月間にわたってあらゆる平和的解決へ向けて努力を続けてきた。   三、イラククウェート侵攻後、世界は、イラクに十分な時間を与えて外交努力を重ねてきた。しかし、イラクは、最後の最後まで撤退を求める声に耳をかさなかった。世界が待っている間に、イラクは化学兵器や核兵器などの開発を進め、クウェート占領を既成事実化しようとした。これ以上待てば、多国籍軍の生命にかかわる危険が生じた。外交努力を十分に行った後に武力行使を行った。国連国連憲章に基づいて、{無条件撤退命令(四十条)、経済封鎖(四十一条)、軍事行動(四十二条、安保理決議六百七十八号)}行動してきたのである。   四、侵略という国際秩序において最大級の破壊を行い続けているイラクに対し、最後の手段として国連憲章四十二条及び安保理決議六百七十八号に基づき武力行使が行われたことは世界の平和と安全のために認められることである。   国連加盟国は国連憲章第二十五条に基づく安全保障理事会の決定を受諾し、履行するのであって、米を中心とする多国籍軍は、国際社会の平和と秩序を回復するために、国連憲章に基づいて協調行動をとっているのである。   国連中心主義、平和国家であるはずの日本が、国際秩序を無視し公然たる侵略を行う者を排除し、真の平和を回復しようとしている国連の軍事的行動を理解せず、協力を拒否するのは、戦争と平和についての基本的な認識ができていないからだとしか言えない。  今この問題、公明党さんに対して私が申し上げなければならない問題は朗読の後に発言をいたしますので、それまでお待ちをいただきたい。   日本国憲法第九条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」のであり、国連憲章同様、侵略戦争侵略的な武力行使を放棄しているのである。   国際紛争解決の手段としてでない戦争国連への軍事行動への参加、侵略者に対する集団的自衛権の行使などは、戦争放棄の対象から疎外されている。侵略的な武力行使を永久にしないというのが第九条の核心である。   国際秩序を乱し、他国を侵略する国に対し、国連がその侵略を排除し、平和を回復するためにとる軍事行動に参加しても、それは国際的紛争解決の手段としての武力行使でない。何ら憲法に抵触しない。   平和な世界をつくり上げていくためには、侵略が発生したとき国際社会が最終的には武力行使をしてでも侵略を排除し、平和を回復することが必要だ。   戦争が絶対悪なのではない。国際秩序を無視する侵略こそが絶対悪である。侵略を阻止し、国際秩序の回復のためには、武力行使もやむを得ないというのが国連憲章の精神であり、世界の常識である。  実は、これから先、まだ三ページもありますが、時間の関係がありますので、一たんはここで中止をいたします。  ただ、ここで総理、お答えいただきたいことがありますことは、あなたが今日先頭に立って答弁している姿勢は、日本国の総理大臣として私は決断ある行動をとっていることもよく知っています。  しかし、もしでき得るならば、もしでき得るならば、我が国に自衛隊という組織がある、この自衛隊という組織に対してその行動の自由、あるいは命令系統はあなたしか持っていないのですけれ ども、他国に対して、他国の軍に対して、これから百年も二百年も遠慮をしながら、あるいは屈辱に耐えながら生きていかなければならないような自衛隊でなくていいような命令の御発声を賜れば幸いだと思います。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  280. 渡部恒三

    渡部委員長 取り消させる。(草川委員「それは責任を持ってやってくださいよ。こういうことでは我々だって議論に参加できませんよ」と呼ぶ)委員長が責任を持ちます。  じゃ、浜田君、質問を続けてください。
  281. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 それでは、今のお答えをお願いします。
  282. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は、日本が現在置かれておる立場の中で、あらゆるいろいろな国との関係、仕組みの中で目指すべきことは、やはり世界の平和と安定だと考えております。そして、アメリカ日本の日米関係は、先ほどもちょっと触れましたように、日米両国において安全確保、安全保障のために、日本アメリカとの間でバンデンバーグ決議の唯一の例外になるようなことで、アメリカ日本のためには血を流してでも守ってくれるが、日本アメリカが攻められたときは守りに行かなくてもいいんだという、ある意味でいうと、非常に日本にとってはアメリカとの間で負担の問題において差が非常にあるのは、アメリカ日本との間、日本憲法考え方、そういったことを背景に踏まえて、戦後、日米の両国の間で結ばれた規定だと思うのです。  同時にまた、その枠組みの中で、アメリカ日本のみならず極東とアジアの地域の安全を確保するという枠組みの中でそのようなことが行われたから、先ほども申し上げたように、アジアの国々の指導者も日米安全保障条約の枠組みをアジアの平和と安定のためには大切だと言っておる人が、私との首脳会談でもそれを言った人がある。そこで私は、自衛隊は日本の平和と安全のためにみずからの国を守っていくという大きな重い任務のために全力を挙げて対処してもらうということに理解をしておるわけであります。  今回の問題については、これは国連決議によって二十八の国々が多国籍軍となって平和を守るために行っておることも間違いございません。日本はそれに対してできる限りの、許される限りのことをしていこうと決断をして処置をし、ここで御説明をしておるところであります。
  283. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 国連の軍事的強制に否定的な態度をとり続けていくようでは、真の平和国家と言えないし、国際社会において名誉ある地位を占めることは到底できないばかりか、逆に孤立化してしまうであろう。   日本湾岸からの石油に七割近くを依存している。石油がイラクのような国際社会の法と秩序を無視する国の支配下にあるのなら、日本の国益に対する大きな脅威となる。   日本国際社会秩序回復のためにも、国益のためにも、国連決議を尊重し、進んで協調行動をとらなくてはいけない。   米は中東に石油を依存していない。日本の経済と安全を守るために米を中心とする多国籍軍がサウジアラビアに展開し、血を流している。日本の繁栄は多国籍軍によって維持されているということを忘れてはならない。   九十億ドルの追加支援を決定したが、米の態度が依然厳しいのは、湾岸戦争に対する日本政府の姿勢や原則がさっぱり米国には伝わらないからである。   日本の負担すべき責任も果たせないでいると、湾岸戦争が終わった後日米関係は極度に悪化することを肝に銘ずるべきである。私たちの後の子供たちの時代は非常に厳しい事態になるであろう。   日本国際連合の活動を支援する、日米は運命共同体という言葉どおりに従えば、湾岸戦争にできる限りの協力をすることは当然の国際責任となる。   日本国憲法の前文にも「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」とある。今はまさにこれに従って行動するときである。  実は、この問題についてどこか意見の違うところがおありでしょうか。
  284. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 憲法の前文に書いてあることを引用され、また、いろいろとその意見については、私は国際の平和をきちっと守っていくためにできる限りの努力をしなければならないという点においては全く同じでありますから、だからそのような面においてできる限りのことをしていこう、日本立場というものもぎちっと世界に理解をしてもらうためには、日本が何もしないというのじゃなくて、許される範囲内で貢献策を出して、そして、国連平和回復活動にできるだけの支援をしなければならぬというその基本的な認識においては何ら変わるところはありません。  ただ、その額の問題とかいろいろお触れになったことについては、私どもが総合的に判断をして、これが必要なものである、なし得る限りのものであるということを決定をしたことは、これはその点については委員といささか、先ほどの御説明を聞いておると違う点があるようでありますが、お認めをいただきたいと思います。
  285. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 さっきちょっと説明のときにあれだったのですけれども総理、日米安全保障条約を通じて考えなければならない問題の中で、これだけ例えば依存している国に対して、地域に対して、アメリカが今回四十二万五千人、例えばイギリスが三万四千人、あるいは一万七千人のフランス、そういう形で人を派遣し、赤い血を流そうとしているとき、我が国はゼロですね。それはなぜゼロかというと、それは憲法上派遣ができないからゼロだとお答えになられてきましたね、これは。しかし、本当にそうでしょうか。ここは法制局に後ほど検討してもらわなければいけないのですけれども、現行の憲法の中においても、共同の責任を持って不法な行為をする者に対して我が国が海外に派兵をした場合にそれが憲法違反であるのかないのかは、これは新しく法的な根拠をもって法の上で争っていかなければならない問題だと私は考えています。  私は、やはりここで自衛隊員に誇りを与え、そして派兵をすることによって、アメリカ合衆国並びに派兵各国との協調の精神を前面に押し出すことにより、日本の正しい行動を理解してもらいたいと思いますが、考え方の上でもあなたと私では絶対に同意できないかもしれませんが、もう一回お答えをいただきたいと思います。検討するかしないか、ひとつお答えください。
  286. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 海外派兵の問題については、きょうまでいろいろと言われてきましたように、日本国憲法の中において、武力による威嚇、武力行使を目的として武装部隊を他国の領土、領海、領空に出さないということが、いわゆる海外派兵と言われてまいりました。これがいけないということは、きょうまでの憲法の解釈上明らかなことでございます。  そして、国連の問題については、さらに国連の機能が理想的に高まり、国連の中で普遍的な武力行使になった場合には、この前提についていろいろ御研究なさっている意見は、私は、いろいろな党の中にもある、文書においてそれを示されておることも知っております。そういった議論、そういった考え方については、これはこの場での議論には、私は、政府としては現在の憲法を守るという立場でおりますから、集団的自衛権の問題に今ここで入り込んでそれを云々することは答弁として差し控えなければならぬことでありますし、または、してはならない武力行使だと考えております。
  287. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 外務省にお伺いします。  大体今の総理大臣の意見は世界の中であと何年間ぐらいもつでしょうか、お答えください。
  288. 中山太郎

    ○中山国務大臣 世界におきましてこれからいろいると全面的な平和の社会がやってくるとは考えられませんけれども国連中心とする地域紛争の調停あるいは解決の問題は、しばらくの間引き続いていくものだろうと考えております。そういう中において日本考え方というものがどうかといえば、この考え方が何年もつだろうかという委員お尋ねでございますけれども、我が国の憲法、また国連憲章を条約として結んでいる国連加盟国としては、この今の考え方で生きていくということが当面内閣としては堅持しなければならない憲法上の義務であると私は判断しております。
  289. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 今野党からいいぞ、いいぞというやじが飛びました。これはもう……。  ここに今回イラクに対して兵を派兵し、また協力を、イラクに対する制裁を行っている国々を実はかいてあるわけです。幾つあるかというと、二十八と答える人もいますし、二十六と言って答える人もいます。だから色合いを薄めたりいろいろな努力をしてつくってみましたが、実際問題として、これだけの国が世界の中で今回の問題に対して行動をしているときに、日本国はなぜこの中に入れないのですか。やはりそれは憲法があるからですか。どうでしょうか、総理
  290. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 日本国の物の考え方の基礎には、やはり平和を求めていかなければならぬという平和主義、国際協調主義、そういったものを踏まえた憲法があります。憲法に従ってやはり院も構成され御議論も出されておるのです。私は、そういった意味日本のきょうまでの基本的な立場の中でなし得るすべてのことをしながら、この問題についてはその立場をきちっと守って、そのような侵略は許さないという国連決議の精神を支持をしてできる限りのことはする。したがって、武装部隊を多国籍軍の一員としてそこへ送るということは、これはできない政策でございます。
  291. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 だとすれば、あなたは他の方法によってということを言われましたけれども、日米安全保障条約の締結をした、その結果、固定延長されていた日米安保が自然延長されるときに、私たちはあくまでも日本の安全のためにいましばらく十カ年間の固定延長を主張いたしました。しかしそれは自然延長という形で改革をされて、現在は自然延長のままであります。日米安全保障条約のみならず国家間の安全保障は、一方的に一国が宣言をし一年たった場合には、その安全保障条約というものは自然解消されるというふうに私どもは教育をされてまいりました。その宣言を受けて日米安保を改悪しないために、我々は、相手国が血を流して努力しているときに、それにかわるものとして血を少しでも流さないで済むような条件をつくり上げるために決断をしなければならないと思うのです。  しかし、いかがでしょうか。現在の日本の中において、先ほどからの議論を聞いていると、一兆二千七百億円になりますか一兆三千七百億円になりますか、いずれにしても百億ドル。差は変動をいたしておりますから変わることになるかもしれませんが、きちっとしておかなきゃいけないのは、この戦いがもし三カ月が六カ月になった場合に、その延びた場合に必要となるイラク対策の経費というものは、当然日米安保の責任を果たす上において、その状況に応じて負担はふやしていかなければならないものだと思うのです。私はその点を、今ここではっきりとお答えをいただきたいと思っているのはこの点なんです。  普通の人はそうではないのです。出すものはできるだけ少ない方がいいし、利益は多い方がいい。犠牲者を出さないで地球上に安全に生活できる方がいい。しかし、世界はそんなに甘くないと私は思うのです。例えば三ヵ月間で戦争が終了したとします。しかし、軍隊は残さなければなりません。クウェートから撤兵をしても、イラクの軍隊がそこに残ったとき、それを再びそういうことが起こらないように安全保障上、警備隊を残さなければならないでしょう。その警備費等について日本国は一銭も負担しないでいいという理論は成り立たないと私は思うのです。  ですから、この問題について、これはあくまでも私の私見ですから、一緒に行動してきた、考え方を持ってきた者はもう大体死にまして、残っている人は考え方が変わりまして出世をいたしておりますが、私はいつまでたっても考え方が変わりませんから、ここで明確に申し上げておきますが、いずれにしても、好むと好まざるとにかかわらず、日米安全保障条約を維持していく上においては、本問題の解決が完全にされるまで経費負担の原則は守り通さなければならないというのが一国の総裁の答弁であってほしいとあくまでも願っておりますが、いかがでしょうか。
  292. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、国際社会の大義を守っていくために、国連決議を支持をするという明確な立場に立ってでき得る限りの協力をしておるわけでありますし、また、この戦いが終わるとか終わらないとかおっしゃいました。その後の問題等もいろいろ言われた。私は、長いステージ国際社会に対しては、特にアメリカとグローバルパートナーシップを持って、世界の環境問題や、その後の安定や、あるいはその後の経済開発や、いろいろなことに協力をしていかなきゃならぬわけでありまして、日本のなし得る限りの協力の中で一番有効にできるものはやはり資金であり、技術の協力であり、そしてその他の経験を踏まえた許される範囲の協力ですから、そういったことを続けていかなきやならぬのは当然のことであります。  今議論になっておるのは、国連決議を踏まえての多国籍軍武力行使に対して力でお役に立つことができないならば、せめてそれ以外のことでできるだけの支援をしようというところで支援の額を、当面必要なものはこれだというので九十億ドル決めましたけれども、それは三カ月で終わるのか六カ月で終わるのかというような議論でございません。一日も早く終わることを念願としながら終わるための努力をし、終わった後のことも、その後の安定のことも、やらなければならぬことがたくさんあると思います。日米のこの基本的な考え方、同時に、世界の総生産の四割近くを日米で出しておるという関係からいっても、できるだけその信頼関係に乗って地球的規模の協力支援を続けていかなきゃならぬということは当然のことであると私も受けとめております。
  293. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 実は先日、私のところに世界の各国からの新聞記者の懇談会から講演に来るようにという依頼がありまして、私のような落第生をなぜ呼ぶのか私はわかりませんでしたから、実は一回目にはお断りをいたしましたが、やはり一回ぐらい君が来た方がいいということでしたので参りました。そのときにこの問題がやはり質問に出ましたので、私はこう答えておきました。  現在それが百億ドルであろうと、百五十億ドルであろうと、二百億ドルであろうと、日本国が生存するための絶対的な条件として、アメリカ合衆国がこの世界の平和を守り続けていくために、我我がその目的を達成させるために、達成していただくために我々が負担しなければならないものは、国民一人一人の御理解を得てこれに対して実行していかなければならない。その理解ほどのようにして受けるかといえば、我々にもう一回あの終戦当時と同じような苦しいことがあってもいい。それには耐えていきましょう。しかしかわいい子供たちの五十年、百年後のその時代、この地球の上で、本当に平和で安全な暮らしができるようにするためにその負担はしていかなければならないと私は申し上げました。  そのときに彼らは私に対して質問はいたしませんでしたが、それは当然私をそんなに信頼していないから質問をしなかったと思います。ただ、今世界各国の状況の中で、指導者たちが考えていること、そして日本に対する評価をしていること、これは官僚諸君もよくわかっていると思いますが、今総理大臣が答弁している問題、日本の国会が解決しようとしている問題を通過させた場合、そして協力ができた場合、本当に今のままで日本の信頼を取り戻すことができるでしょうか。私は取り戻すことはできないと思う。それはなぜかといえば、我々が、本当に国家、国民が力を合わせて自由と正義を守るために、あなたの青年の血で守られたこの自由を守るために、我々は食う物を食わなくても我慢をして必ず協力していきますという宣誓、行動が行われない限り、私は安全を保持することはできないと思います。その点はいかがでしょうか。もしでき得るならば、外務省の官僚からお答えをいただきたいと思います。――外務大臣はかわる可能性がありますから、当分かわらないということであれば結構でございます。
  294. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員からいろいろと、日米安全保障条約を中心に日米間の信頼関係あるいは協力関係について突っ込んだお話がございました。  私は、日米間に信頼がなくなれば、いかに条約がありましても、日本侵略されたときに米軍が果たして我々の家族、我々も含めて、血を流して守ってくれるかどうかということを我々は真剣に考えておかなければならないと外務大臣としては絶えず考えております。御案内のように、条約はありましても、戦争宣言権はアメリカの議会にあるわけであります。日米安保条約にはもちろん国連憲章を遵守することが書かれておりますけれども、もし我々の国が、これからの未来いずれかの国家から侵略された場合に、この日米安全保障条約が存在をしておることが我々の安全を保障する大きな一つの盾でありますけれども、それがあっても、信頼関係が崩れてアメリカの国会が戦争宣言を決定しない場合においては、アメリカは果たしてこの日本を守るかどうかということを私は大変大きな疑問に思っております。  そういう点から考えますと、アメリカ日本の間の信頼関係を維持するために、我々はできるだけの努力をしなければならない。我々は軍事的にこの問題の協力ができない憲法の規定がございますから、軍事上以外のことで我々ができることはできるだけのことをやらなければならない、私はそのように信じております。
  295. 浜田幸一

    ○浜田(幸)委員 今、担当理事から五分前までに終わるようにということでございますので、あと三分間だけございますので、私はあとはお願いだけをして終わらしていただきます。  それはどういうことかといいますと、はっきりしたことを言えばしかられる、しかられることが嫌だから物を言わない、物をはっきり言えば損をする、だから物はできるだけ言わないようにする、私はやはり非常に危険だと思います。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  これで私の質問を終わります。(発言する者あり)
  296. 渡部恒三

    渡部委員長 先ほどの公明党に対する発言、ただいまの浜田君の社会党に対する発言は不穏当と存じますので、委員長の職権でこれを取り消し、速記録より削除します。  これにて増岡君、浜田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前九時より委員会を開会する こととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会