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1990-12-12 第120回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十二月十二日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 近藤 鉄雄君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 宮下 創平君 理事 加藤 万吉君    理事 佐藤 敬治君 理事 村山 富市君    理事 草川 昭三君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       池田 行彦君    石井  一君       稲村 利幸君    内海 英男君      小此木彦三郎君    越智 通雄君       河村 建夫君    工藤  巌君       倉成  正君    小坂 憲次君       後藤田正晴君    左藤  恵君       田澤 吉郎君    戸井田三郎君       葉梨 信行君    長谷川 峻君       浜田 幸一君    林  義郎君       原田 義昭君    増子 輝彦君       松本 十郎君    村田敬次郎君       村山 達雄君    持永 和見君       井上 普方君    川崎 寛治君       串原 義直君    嶋崎  譲君       新村 勝雄君    新盛 辰雄君       戸田 菊雄君    藤田 高敏君       松浦 利尚君    武藤 山治君       和田 静夫君    石田 祝稔君       市川 雄一君    日笠 勝之君       二見 伸明君    冬柴 鐵三君       佐藤 祐弘君    三浦  久君       中野 寛成君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         法 務 大 臣 梶山 静六君         外 務 大 臣 中山 太郎君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君         文 部 大 臣 保利 耕輔君         厚 生 大 臣 津島 雄二君         農林水産大臣  山本 富雄君         通商産業大臣  武藤 嘉文君         運 輸 大 臣 大野  明君         郵 政 大 臣 深谷 隆司君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         建 設 大 臣 綿貫 民輔君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     奥田 敬和君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 坂本三十次君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 塩崎  潤君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      木部 佳昭君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 石川 要三君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      大島 友治君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 北川 石松君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 佐藤 守良君  出席政府委員         内閣官房長官 大島 理森君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       米山 市郎君         内閣法制局長官 工藤 敦夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         給与局長    森園 幸男君         警察庁警務局長 城内 康光君         警察庁刑事局長 中門  弘君         警察庁警備局長 吉野  準君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  小山 弘彦君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  新野  博君         総務庁人事局長 石川 雅嗣君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  富田 駿介君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁参事官  玉木  武君         防衛庁参事官  宝珠山 昇君         防衛庁参事官  上原 祥雄君         防衛庁長官官房         長       日吉  章君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練         局長      小池 清彦君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         防衛庁経理局長 村田 直昭君         防衛庁装備局長 関   收君         防衛施設庁長官 児玉 良雄君         防衛施設庁総務         部長      箭内慶次郎君         防衛施設庁建設         部長      黒目 元雄君         防衛施設庁労務         部長      竹下  昭君         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         国土庁長官官房         長       八木橋惇夫君         国土庁長官官房         会計課長    森   悠君         国土庁土地局長 藤原 良一君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         法務省入国管理         局長      股野 景親君         公安調査庁次長 古賀 宏之君         外務大臣官房長 佐藤 嘉恭君         外務大臣官房文         化交流部長   小倉 和夫君         外務大臣官房領         事移住部長   久米 邦貞君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省経済局長 林  貞行君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      赤尾 信敏君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  日高 壮平君         大蔵省主計局長 保田  博君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君         文部省体育局長 野崎  弘君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         農林水産大臣官         房長      鶴岡 俊彦君         農林水産大臣官         房予算課長   山本  徹君         農林水産省経済         局長      川合 淳二君         食糧庁長官   浜口 義曠君         通商産業省通商         政策局長    畠山  襄君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         資源エネルギー         庁長官     緒方謙二郎君         中小企業庁長官 高橋 達直君         運輸大臣官房長 松尾 道彦君         運輸大臣官房会         計課長     岩田 貞男君         運輸省運輸政策         局長      中村  徹君         労働大臣官房長 齋藤 邦彦君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設大臣官房総         務審議官    青木 保之君         建設大臣官房会         計課長     小野 邦久君         建設省建設経済         局長      鈴木 政徳君         建設省都市局長 市川 一朗君         建設省住宅局長 立石  真君         自治大臣官房長 森  繁一君         自治大臣官房総         務審議官    紀内 隆宏君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君         自治省財政局長 小林  実君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      多田 俊幸君     ───────────── 委員の異動 十二月十二日  辞任         補欠選任   稲村 利幸君     小坂 憲次君   内海 英男君     井奥 貞雄君  小此木彦三郎君     原田 義昭君   長谷川 峻君     増子 輝彦君   林  義郎君     持永 和見君   原田  憲君     河村 建夫君   市川 雄一君     石田 祝稔君   冬柴 鐵三君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     内海 英男君   河村 建夫君     原田  憲君   小坂 憲次君     稲村 利幸君  原田 義昭君     小此木彦三郎君   増子 輝彦君     長谷川 峻君   持永 和見君     林  義郎君   二見 伸明君     冬柴 鐵三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成二年度一般会計補正予算(第1号)  平成二年度特別会計補正予算(特第1号)  平成二年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ────◇─────
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成二年度一般会計補正予算(第1号)、平成二年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田昇左右君。
  3. 原田昇左右

    原田(昇)委員 去る十一月二十九日、国会議会開設百年を迎えました。まことに意義深く、幾多の先人によって築かれたとうとい歴史を思うとき、私どもは決意を新たにして、国会国権最高機関として真に国民負託にこたえられるように最善の努力を払わなければならないと痛感する次第であります。  さて、このような記念すべきときに当たりまして、総理は、政治改革について不退転決意でこれに取り組んでいくと述べられております。政治改革総理の最大の政治目標一つであります。総理の言われる不退転決意は今も変わりないかどうか、現在の決意のほどをまずお伺いしたいと思います。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、ことしは議会制度百年の記念すべき年であり、皆さんとともにお喜びをし、決意を新たにしたところでございます。  私の政治改革にかける決意は変わりございませんし、現在、政府からいただいております審議会答申もとに、自由民主党でも政治改革基本要綱取りまとめ政治改革本部でまとめていただきました。政府といたしましては、これらをもとに、この機会に国民信頼を確立するために政策本位の、そして政党中心選挙制度政治資金に関するいろいろな問題点について改革を強く進めていきたいと決意をいたしております。
  5. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今お話のありました政治改革基本要綱案についてでありますけれども、自民党内においては依然として党内に厳しい議論があります。これを取りまとめることは容易ではないと思うわけであります。さらに、野党の方々に伺いますと、小選挙区制絶対反対といった全く隔たった議論が聞こえてきておるわけであります。このような状況のもとで、意見の集約は容易ではないと思うわけであります。一方、衆議院選における一票の格差は、住民基本台帳からの調査によると、既に違憲状態とされる三倍を超えておるわけであります。今月中には国勢調査速報値が発表されるそうでありますが、三倍を超えることはほぼ確実でありましょう。このことからも、選挙制度改革は緊急の課題となっているのであります。  今こそ総理は勇断をもって指導性を発揮して政治改革を断行しなければなりませんが、今後具体的にどういう手順でおやりになるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな御意見があることはよく承知しておりますけれども、それを精力的に議論、検討を願い、また全国に、ことしの夏は夏休みも返上して、政治改革本部と党の選挙調査会皆さんも出かけていって直接対話をされたり、あるいは報道界、学者、一般の方の代表等との意見交流も随分何回も重ねていただいたという報告を私も受けております。今のままでいいという問題ではなくて、一歩前進して政治改革をしていかなきゃならぬということについてはおおよその認識合意があったと承っておりますし、そうであればこそ、御議論の結果の政治改革基本要綱取りまとめを願っておると思います。  政府として、答申で示してあります方向とこの基本要綱方向と相重なるところが非常に多いと思っております。私は、これについては、皆さん方の御理解と御協力をいただきながらぜひこれは実現をしていかなきゃならぬことであると心得ておりますし、また、具体的にお示しになった国勢調査の結果につきましても、二十一日にとりあえずの速報値が出るということに相なりますれば、それによっていろいろな問題がまた提起されると思います。しかし、憲法で定めております違憲状態の疑いが出てくる幅よりも、要綱で示してもらっておりますこの制度の基本的な改革の中では、選挙区当たりの票の格差は一対二以下ということを非常に厳しく決めていただいておる。また、当然そういったことによって基本的な改革ができれば、それは国民信頼を確保していくための大きな前進にもなるわけでございます。  したがいまして、私はそれらのことを考えながら、諸外国においても選挙制度調査をずっとしていただいた、またそういった制度で行われておることは既にわかっておるわけでございますから、選挙制度の仕組み、政治資金のあり方、一票の重みの格差の是正、こういった問題がいろいろテーマごとに書かれてありますけれども、私は、それはこの改革に取り組んでいくことによって解 決がされていかなきゃならぬ問題であると、このように考えております。
  7. 原田昇左右

    原田(昇)委員 問題は、結局与野党の間で合意がなければこのような選挙制度改革というのはできるものじゃないと思うのですね。余りにも意見が隔たり過ぎている。例えば、小選挙区制は絶対嫌だという、そういう意見で対立してしまったんでは、いかに自民党党内調整を進めていい案を出しても国会では通らない、こういうことになってしまうわけですね。その辺の手順をもう少し掘り下げて、何か対話ができないかなと、こういうように思っておるのですが、いかがでしょうか。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 選挙制度というのは、まさに議員と、同時に政党の存立の基盤でもありますし、また、選挙制度そのものによって政策論争が行われるということが議会制民主主義の健全な発達の上からいったら非常に大切なことではないかと私は思います。したがいまして、現在の世界にもまれな制度だと私は率直に思っております。同時に、その制度なるがゆえに、いろいろそれに伴って政策中心以外のことで選挙を争わなきゃならぬというような御苦労も日々体験されることもあろうかと思うのです。いろいろな問題を総合的に判断した結果、こういった制度、仕組みがよろしいという結論を審議会も党の改革本部もお出し願ったのですから、これは各党ともにいろいろな御議論はありましょうけれども、各党の持っていらっしゃるそれぞれの政策政策本位のものとして議論をしていく、現に先進民主主義国の間で行われておる選挙制度というものはこのような方向に既になっておると、私はいろいろと見たり聞いたりしてもおりますので、その辺は率直に、虚心に話し合っていただいて、各党間の御議論、御協議も願っていきたい、このことを強く期待する次第であります。
  9. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひとも総理のリーダーシップを発揮していただきたいと思います。  さて、政治改革と並んで、あるいはその中の重要な一環かもしれませんが、国会改革も欠かすことができないと思います。  十二月一日に、議会開設百年を記念して両院主催講演会、シンポジウムが国会内で開かれまして、この模様は国会内のテレビで放映されました。この中で、国会改革への注文が相次いで出されたわけではございますが、これを聞いて私は、能率的で一層開かれた国会に対する必要性を痛感したわけであります。  国会改革については、議会制度協議会も設けられておりまして、各党から意見が出されていると聞いておりますが、なかなか前進しないようであります。しかし、能率的な国会、開かれた国会にするためには、法改正をしなくても、その気になれば今すぐにでもできることは我々としてもあるのであろうと思うのです。今すぐにでもできることから改革していかないと、国会国民はますます遊離していき、それが政治不信政治への無関心層を拡大することになるのであります。総理自民党総裁でもありますので、国会のことは国会で決めろなどと言わないで、国会改革でも指導性を発揮していただきたいと思います。  例えば、通常国会が百五十日間と言っておるわけですが、実質的に予算委員会以外の委員会が実際に活動できるのは一カ月程度なんです。なぜなら、自然休会が一カ月以上ありますね。そして、予算委員会総括質問などで全閣僚がこのようにくぎづけになるわけでありまして、他の委員会は開けないのであります。こういうことからまず改革していかなきゃならぬと思うのですね。これは、国会決意をすればできるはずだと思うのですね。ぜひ、この点等についても総理の所感を伺いたいと思います。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国会国権最高機関であり、国の唯一の立法機関であると憲法にも書いてございますから、同時に、私はそのことを尊重して行政府立場で申し上げたのでありますが、御質問に具体的に指摘がございましたので、私も申し上げさせていただきますが、かつて私自身も議院運営委員長という仕事をさせていただいたときに、各党皆さんとともに議会制度協議会国会改革案というものを具体的に提議をして議論をしたことがございました。そのときに、今御指摘のように、一体国会の召集は十二月末でいいのか、一月初めに召集することの方が形式と実質を分けて考えれば実質的に理解ができるのではないかというような点の主張とか、あるいは、率直に申し上げますが、この予算委員会総括質問の中にすべての大臣が足どめされておるよりも、その時間の間、質問のない人はよその委員会へ行って、自分の担当するこの予算委員会以外の委員会へ行って審議をするとか、あるいは役所へ帰って行政指示監督に当たるとか、いろいろそれぞれのことをするようなことを認めたらどうかというような議論等も私が座長をしておるときの議会制度協議会で取り上げたことも事実としてございました。  また、政治活動公的負担の問題については、一部野党皆さんとも合意をして、議員に対する公的扶助の問題、それをもう少し充実したらどうだ、アメリカ議会のように秘書というものの立場、その制度をもう少し具体的にしたらどうか、調査権能というものを持たせたらどうかというような議論をしたことも私は思い出すのでありますが、そういった問題点が提起されきょうまで来ておりましたが、さらに本年の六月に、議会制度協議会国会改革に関する具体的な要請というのが十項目既に提案をされておるということでありまして、それに従って各党間で協議会議論を進められておるわけでありますから、私は議会各党間のお話し合いに期待をしておりますと先ほどこう申し上げましたけれども、これらの問題については具体的に成果を積み重ねていただきたいということも強くお願いをしておきたいと思います。
  11. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは、国会改革は私たちが国民負託にこたえてみんなで話し合ってやっていこうということを改めてお誓い申し上げることにいたしまして、湾岸危機問題について申し上げたいと思います。  私は、ことしの夏から秋にかけて東欧及びソ連に旅しまして、ベルリンの壁の崩壊、ドイツ統一への動きとかペレストロイカのソ連をこの目でじかに見てまいりました。世界冷戦から平和、繁栄へ向かって大きく流れ出したと思います。こうした東西関係の変化で、世界不安定性と不確実性をはらみながら新しい国際秩序の構築を模索していた、そういうときにイラクによるクウェート侵攻が起こったと思います。こうした事態に対して、国連安保理事会イラクに対する経済封鎖を初め、去る十一月二十九日には武力行使を容認する決議まで、累次の決議を行いまして、一方、アメリカを初めとする多国籍軍はこれらの決議実効性を確保するために湾岸地域に展開したのであります。  これからの世界にとって、クウェートのように金持ちであっても軍事力の弱いというような国が他国から侵略を受けるということがまかり通るようでは、世界の平和の維持は困難になるわけであります。結局、これに対して国連中心でみんなで世界の平和と安全を守るしかないわけでありまして、我々も今回、多国籍軍湾岸諸国に対して四十億ドルの協力を約束したわけでございますね。そして、この補正予算にも十億ドル相当の湾岸平和基金拠出金を計上して、その他の人員輸送などの協力も行ってきておるわけであります。  現状においてはできるだけの協力を行っていると思うわけでありますけれども、今日までの我が国が行った努力が果たして国際社会がいかに評価しているかという点でございます。これについてお伺いしたいと思います。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、湾岸に起こりました今回の問題は、力のある国が力の弱い国を侵略して併合してしまうという、平和の破壊として国際社会から糾弾されるべき行為があったわけでありまして、あのようなことをもしだれも阻止しないで、演説のビラだけで反対をして黙って見ておるとあれが既成事実になってしまう、それはいけないから、そういったことは国際社会意思として改めさせよう、もちろん平和的解決が大切でありますから、決議もそういった平和的解決を目指しての、撤収しなさい、正統政府を復帰させなさい、人質は釈放しなさいということに限定されておりますが、それに対してどうしても効き目のないときにはあらゆる手段を講ずることがあるんだぞという、そういった最近の決議も出てきておって、国際社会の強い意思によってあの問題を解決していかなきゃならぬというのは、おっしゃるとおりであります。  私は、せっかく東西の力による対決の世界の枠組みが、冷戦時代の発想を乗り越えてとよく言いますけれども、自由と民主主義市場経済という一つの価値を求めて、人類が平和で安定的に生きていこうというときに、それを全く真っ向から否定するような力の欲望達成ということは、これは許してはならぬというのはそのとおりでありますから、我が国としてはでき得る限りの貢献をしなければならぬというので、今仰せられたように、すべてのものをまとめて四十億ドル程度の貢献策を決め、その拠出をし、協力をしておるわけなんです。  各国はこれに対していろいろなことは言います。けれども、率直に言ってEC全体と比べてもこれは劣らない額でございますし、遅過ぎる、少な過ぎるとよく私は人々から言われましたけれども、少な過ぎるとか、何を基準に少な過ぎるとおっしゃるのかよくわかりません。日本としては自主的にできるだけのことをしたら、EC全体と比べて少なくないということでありますし、できるだけのことをやった。それから、遅過ぎるとおっしゃいますが、八月二日に湾岸であの危機が起こった、その直後に世界に先駆けてクウェートの資産凍結という行動をしたり、あるいは、これは平和的に解決するためには国際社会の総意に基づいて経済制裁によってイラクに反省を迫らなきゃならぬというので経済制裁に加わる、それを忠実に履行するという決定も国際社会の決定の前にしておるわけでありますから、そういった意味で私は、遅過ぎるとか少な過ぎるとかいう批判は、これは当たらないと思いますし、現に御即位の礼のときに訪日された多くの国々の首脳とお目にかかってお話もしましたし、また九月の国連子供のためのサミットのときにあらゆる国の人々とできるだけお話もしましたけれども、日本のそういった行為に対しては、資金面における協力はよくやってくれておったという評価を受けたことは、これは率直に事実でございます。
  13. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大蔵大臣、拠出額等について御意見を、御所感をいただきたい。
  14. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今総理から御答弁がありましたように、この評価につきましては、私は資金的な面としては国際的に十分以上の評価を受けておると考えております。  ただ、問題は、ちょうど九月のIMF・世銀総会に参りました際の外国人記者会見の席上でも、遅過ぎる、少な過ぎるといった趣旨からの御質問がございました。ところが、各国と比較をしながら内容を御説明いたしますと、それ以上の質問は出てまいりません。と申しますことは、政府ベースにおいて日本の今回の貢献策というものに対して十分な評価が得られており、また、日本の財政事情の中において我々としてもぎりぎりの決断を迫られる中で決断をしたものでありますから、それだけの評価をしていただきたいと本当に願っておりますが、必ずしも民間一般の方々にまでこれが十分知られているとは言えない部分があるようであります。  ですから、確かに各国の評価は、ヨーロッパを回りましても、IMF・世銀総会の際に各国の代表とお話をしましても、非常に日本はよく努力をしてくれているという評価を受けておりますし、また周辺国支援等につきましては、より幅の広い支援を求める声もございますが、少なくとも外人記者団との会見の席上ではその評価とは違った質問が出、説明の必要が生じたということは事実でありました。
  15. 原田昇左右

    原田(昇)委員 せっかく我々は苦しい中一生懸命協力をしておるわけでございますので、ぜひとも正当な評価が得られるように、政府側としても御努力をいただきたいと思うわけであります。  さて、湾岸危機への貢献策として、我が国は金や物だけでなくて人も出すべきだという議論がありまして、先国会、国連平和協力法が提案されたわけでありますが、残念ながら廃案になりました。この法案は、首相も審議の中で繰り返し武力行使は行わないのだということを答弁されたにもかかわらず、あたかも憲法をねじ曲げて我が子を戦場に送るというような方向で世論形成が行われたことはまことに遺憾で、残念でなりません、事実と全く違うのですから。この点について、総理の所感を伺いたい。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 法案が結果として廃案になりましたことはまことに残念でございますが、その結果を私は厳しく受けとめております。  御指摘のように、武力による威嚇または武力の行使をしようということは全く考えないものであって、しかも国際社会における平和の破壊、そしてそれに対するたび重なる国際の総意、国連決議が四十五年ぶりに初めて行われるようになった、みんなで平和を守っていかなきゃならぬというときに、日本として何ができるかということを法案にして、憲法の枠内でできる限りのものを提案をしたのでありましたが、結果は御指摘のとおりでございました。  私は、しかし、国際社会に対する協力のあり方というものはお金だけではいけないんだということを——先ほど触れようか触れまいかと思って考えたのですが、首脳会談の評価は非常によろしいのですが、特にある評価なんかは、日本はA、B、Cと分けるとCだという評価が出ておったということも新聞に伝えられるとおりです。あれだけ出して、あれだけ早くやりながらなぜCなんだろうと思ったら、お金だけで済まそうと思うのは、こんなものは国際社会の評価としてはCだという評価をされたということなんかも、私にとっては心にとどまる問題でございました。  許されるために何ができるか、幸い、国会のあの議論を通じて、金だけではいけない、人の面での許される協力もすべきだということの御理解と認識はいただいてきたと私は考えておりますし、また、自民党と民社党、公明党の三党の合意というものによって、その直後、新しい国連協力のあり方というものをお互いに話し合って見出していくべきだという合意ができましたことも一つでありますし、また、社会党の皆さんからも新たに国連平和協力機構というものが提案をされて、それはお金だけではいけないから、こうこうこういうことに協力しろという例示的な協力の姿かたちを具体的に示しておられる。だから、それも一つの土俵に乗ってもらって、許される範囲、やれるべきことは何であるか、やらなきゃならぬ問題があるということの認識は理解が深まってきたと思っておりますから、新しい国際協力のあり方を、お金だけではなくて、日本も運命共同体の社会に生きている一人として責任を持って共同作業、共同行動をしていくためには何ができるだろうかということをこれから私は検討を続け、努力をしていきたい。一日も早く与野党皆さんの御理解と御協力もいただきながら、日本が国際社会に果たすべき役割について共通の認識を得たいものだ、こう思って前進を続けますので、どうぞ御理解を、御協力を賜りたいと思っております。
  17. 原田昇左右

    原田(昇)委員 総理の今御答弁ありましたように、この法案の審議を通じて、与野党あるいは国民の間に新しい国際情勢への我が国の役割について強い関心が生まれまして、お金、物だけでなくて、国連に対する人的な面の協力も必要であるという認識が生まれたということは大変大きな収穫だったと思いますし、自公民合意にありますように、国連協力のあり方についての基本的な方向も出たということは、私は大変よかったと思うんです。  そこで、今総理がいろいろおっしゃいましたように、協力のあり方をさらに詰めて、成案にしてまいらなければなりません。例えば国連平和維持 活動といっても、通称停戦監視団と言われるものと、通称平和維持軍と言われるもの、二つがあるわけですね。この二つを含んでいると思うのですが、前者は非武装ですが、後者は軽武装をやるわけであります。そういうところもさらに詰めていかなきゃならないし、自衛隊との関係も実質的な面でいろいろ議論があろうと思います。  いずれにしても、今総理のおっしゃったように、国連の平和維持活動への人的、人の面での協力、参加という準備は急がなきゃならぬと思うのです。近くカンボジア和平も成立が見込まれておりますし、もし湾岸危機についても平和裏に解決されるという場合には、直ちに国連による平和維持活動が必要になると思うのです。我が国としては、この意見を早く集約していただいて、それに間に合うように法案を、新しい合意に基づく法案をひとつ提案していただかなければならないんではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  18. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりの考え方でございまして、カンボジアの問題にしても、これは一日も早く平和的に解決されること。  それから、湾岸危機の問題については、幸い国連決議の三つの原則のうちの一つであった人質問題は解決をいたしました。残るのは、イラククウェートから撤兵することと、クウェート正統政府を戻すこと。そのことについて、アメリカの提案によるイラクアメリカとの直接対話も、これが実現する可能性が強くなってまいりました。ブッシュ大統領の国連における演説等を思い起こしましても、クウェートからの撤退があれば、そこで今度は恒久和平へのさまざまな問題を話し合う機会が生まれるであろうということでありますし、日本としても、一日も早く平和的に解決をすることを強く願っておりますから、それが終わった後にはどのような問題が国際社会で必要になってくるのか予断を許しませんけれども、いろいろな場面が想定されます。  そういったことを考えますと、私は、先ほども申し上げましたように、三党合意の基礎に立って、また、人の協力は必要だという社会党の提案もございます、そういったものをみんな視野に入れながら、どのようなところに協力の具体的な姿を求めていくのか、一日も早く議論、研究をし、また、これには各党の御理解と御協力が要るわけでありますが、それも強くお願いをして成案を得てまいりたいと考えております。
  19. 原田昇左右

    原田(昇)委員 しっかりやっていただきたいと思います。  私は、実は、人質解放のために、中曽根元総理大臣自民党代表団の一員として先般イラクに赴いて微力を尽くさしていただきましたが、今回全員解放ということになりまして大変喜んでおります。  ところで、今直接交渉のお話がありましたが、まず私は、ベーカー長官がこの間言われた中に、イラククウェートの領土問題への不干渉、不介入ということを表明しておられます。これが事実かどうか、そして事実だとすれば、かなりこれはアメリカの柔軟な姿勢が出てきておるのかなというように思われますし、平和解決が図られる上に大変大事な一つのポイントではないかなと思います。  それからもう一つ、この湾岸危機によって、石油のない開発途上国、アジアとか東欧諸国、東欧もせっかく自由になったのにもう大変な経済負担を負うというようなことで、アジアでもそういう諸国がたくさん出ております。経済面で深刻な打撃を受けている国々、こういう国々に対して、今後どういうようにこれらを自立さしていくのか、そのための応援をするのかということも頭へ入れていかなきゃなりません。これらについて一括して御答弁をいただきたいと思います。
  20. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今お尋ねのイラククウェートの国境問題についてのベーカー長官の発言は事実でございます。極めて意味の深いものだと認識をいたしております。  なお、今回の中東湾岸危機によって、石油を生産しない国家、また、多くの人たちをクウェートあるいはサウジに出稼ぎ労働者として出しておる国家、あるいはその国との貿易がとまっている国家、こういうところは大変経済的に深刻な打撃を現在受けております。アジアだけではございませんで、東ヨーロッパにおきましても、チェコ、ブルガリア、このようなところでは、ソ連からの石油の生産がダウンしているために供給が削減を通告されておりまして、さらに石油の代価の支払いがハードカレンシーでやるという新しいシステムになってきておりますために、東欧諸国も一様に今回の中東の大きな経済危機のあおりを受けているという認識を持っておりますが、日本政府といたしましては、このアジアの国々は日本としても近い国でございますから、力を入れて協力していかなければならないと思いますし、東欧各国につきましてはEBRD等を通じまして協力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  21. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは対ソ外交についてお伺いしたいと思います。  来年四月、ゴルバチョフ大統領が来日されるわけでありますが、対ソ関係の抜本的改善をする大変重要な機会であると思います。我が国としてどのような対ソ政策を展開しようとしておるのか、北方領土問題が解決し平和条約が締結されるまでは、政経不可分ということで方針を貫いて、一切経済問題はやらないということでいるのか、その点についてのお考えを聞きたいと思います。
  22. 中山太郎

    ○中山国務大臣 隣国であるソ連と日本は、第二次世界大戦以来平和条約がまだ結ばれていないというまことに残念な関係にございます。このような中で、民間貿易等におきましては西側の、西側という言葉が現在いいかどうかわかりませんけれども、例えばフィンランドとか西ドイツに次いで日本は民間貿易で年間六十億ドルぐらいの通商を行っておりますし、人物の交流も盛んになっておりますし、また航空路線の乗り入れも行われておるという状況の中で、政府間の平和条約というものが領土問題が解決しないために締結がされていない、こういう両国にとっては一つの問題が存在をいたしております。  私どもは、領土問題を解決して日ソの抜本的な関係の改善に努力をいたしたいという念願を持っておりますし、来年日本を訪問されるゴルバチョフ大統領という方の訪日は、戦後の新しい日ソ関係を構築する大きな一つの転機になる、このようなことで国際社会が歴史的な変革を遂げております中で、日ソ関係もまた大統領の訪日を機会に新しい歴史のページをめくるべきだ。そこでひとつソ連側にも、積極的に日ソ関係の改善のために我々が平素話し合っていることについて努力をいたしてもらいたいと心から期待をいたしているものであります。
  23. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は九月にモスクワを訪れましたのですが、そのとき日本の新聞社の特派員の方でしたが、モスクワのテレビは東京の国会中継よりおもしろいよ、というのは最高会議でもう何でもかんでも議論する、そしてそれを全部細大漏らさずテレビ中継をする、東京のテレビは、国会中継もやっていただいておりますけれども、大事なことはどうも我々の目の届かない国対政治で行われておるというようなことを特派員が言うんですね。だからテレビはモスクワの方がおもしろい、こう言うくらいペレストロイカ、グラスノスチが進行しておるんだ、こういうことを聞きまして、こんなにも変わったかなということを痛感したわけですが、しかし、物資は非常に不足しております。国営商店に肉もない、魚もない、野菜もない、こういう状況であります。しかし、自由市場へ行けばたくさんあるのですね。それから、ことしは最大の豊作だ、畑へ行けば確かにバレイショとかたくさん収穫はされておるのだけれども、トラックで持ってこれない、こういうことで立ち腐れ、こういう状況だとも聞いております。そういう状況でありますので、流通、輸送面の問題も非常に多いのじゃないかと思うのです。  きょうの新聞で、「大規模飢餓が始まる」、こういうでっかい見出しでソ連の今の惨状を報じてお りますが、私はやはり、先ほども御答弁いただいたように、ゴルバチョフ来日を機に、日ソ関係、善隣友好関係を築き上げる大変大事なときだと思うし、明治以来百年、我々は北方の脅威、ソ連を仮想敵国とまでしてやってきたわけですから、これが本当の意味で善隣友好関係が築けるということは、もう画期的なことですね。我が国外交にとりましてもこの上ないことなんであります。  したがって、この辺のことを踏まえて、そしてソ連に対する医療、食糧面の協力について、長期的な視野の中でどういうように位置づけてお考えになるのか、それを聞かしていただきたいと思います。
  24. 中山太郎

    ○中山国務大臣 現在のソ連は、委員お尋ねのようにペレストロイカ、経済改革が進行しつつあるわけでございますけれども、現実のソ連の社会は、かねての共産党一党支配の中央統制経済、このメカニズムを自由経済に変えていく、マーケットメカニズムに変えるという一つのはざまにあって、すべてのものが混乱状態に現在あると思います。  ことしは穀物は史上最大の豊作と言われておりますけれども、輸送、流通経路においてそのシステム上の欠陥があるという報告も受けておりまして、政府はこのような関係の方々を日本にお招きをいたしまして、調査団を受け入れて、流通問題の改革のための協力をいたそうといたしておりますけれども、特に医薬品が不足をしておるという報告がございます。東ヨーロッパから入ってきておった医薬品が、輸入が障害を起こしている。こういう中で今回補正でお願いしております、チェルノブイリ被曝者の医療協力費のために二十六億円予算を計上いたしておりますが、私どもは、隣国として、このソ連の人たちのために人道上やらなければならないことは積極的にやってまいりたいと考えております。
  25. 原田昇左右

    原田(昇)委員 先般、欧州安保協力会議、CSCE首脳会合に際しまして、欧州通常戦力削減条約が署名されたわけでありますけれども、ソ連はこの条約の署名に先立って、戦車、火砲等の兵器が兵力削減によって当然余剰ができますから、余ったやつをウラル山脈の東部に移転してくるという報道があります。事実関係はどうか伺いたいわけでありますが、いずれにしても、こうした移転が我が国の防衛の脅威になるというようなことでは大変でございます。  さらに、先般、ことしの九月四日ですか、シュワルナゼ外相がウラジオストクを訪れた際のスピーチで、一九九三年にすべてのアジア諸国の外務大臣を招待して全アジア外相会議を開いていきたい、そして北東アジアの安全保障の問題を討議しよう、こういう提案をしておるわけでありますが、これらについて政府の見解を承りたいと思います。
  26. 中山太郎

    ○中山国務大臣 シェワルナゼ外相がウラジオストクで全アジアの外相を集めた外相会議を開こうという呼びかけをなさったことは私よく存じております。  その後、日本に来られまして日ソ外相会談をいたしましたが、私ども外相間の話で、私は率直に申し上げました。ヨーロッパの安全保障は、地理的には大陸の国々の間に起こっている。軍事同盟もワルシャワ条約機構と北大西洋条約機構という二つの条約機構が対峙した形、しかもその背後にはソ連アメリカという強大な力があって、話し合いは非常に積極的な努力によって効果を上げることができた。アジアは御案内のようにヨーロッパと異なりまして、地勢的にもまた文化的にも宗教的にも、また軍事同盟の面でも二国間の軍事同盟が極めて多くこのアジア地域には結ばれておりますし、広大な海洋を抱えているというヨーロッパとの違いがございまして、ここでアジアのいわゆる軍縮を目的とした安全保障面の協議をやる前に、我々はカンボジアの和平の実現、あるいは朝鮮半島の安定、あるいは北方領土の問題の日ソ間の解決といったような問題を解決した上で、私どもはアジア・太平洋の安全保障に各国が集まって協議をすることが好ましいということを私は申しておる次第でございます。
  27. 原田昇左右

    原田(昇)委員 もう一つの、兵器、戦車の移動ということについてはどうですか。
  28. 赤尾信敏

    ○赤尾政府委員 欧州の通常戦力の削減につきましては、十一月十九日に署名が成立いたしまして、これは戦後初めての通常戦力の軍備管理及び軍縮に関する合意であるということを非常に高く評価しております。署名前にソ連が戦車、火砲、装甲車等をウラル山脈の東側に移したという情報に私たちも接しておりまして、ただいま米国、NATO諸国がソ連側に対してその具体的な数字を今要求しております。ただ、極東地域に移転されたという情報はございません。  なお、CFE条約の署名後におきましては、これは憲章等もきちっとしておりますので、ソ連がその条約に違反して極東あるいはウラル以東に移すということはないというふうに私たちは確信しております。
  29. 原田昇左右

    原田(昇)委員 それでは次に、最近に激発しております暴力事件についてお伺いしてみたいと思います。  まず、即位の礼当日、四十件のゲリラがありましたね。それから、過激派が八十四件、即位の礼期間を通じてテロ・ゲリラ事件を連続して引き起こしております。その中で、警察官一名が殺傷されました。そして十一名の重軽傷者を出すなど、大変な被害を出しております。その横暴は目に余るものがあるわけでありまして、ことしに入って百四十三件の事件が起こっており、警察官が殉職されたことは痛ましい限りでありまして、心から哀悼の意を表したいと思います。  また、即位の礼など皇室関連行事の挙行は警察の空前の大警備が必要でありまして、それによって初めて所期の目的を達することができるというような、まことに残念な事態であります。しかし、事前に予告の上このような凶悪な犯行を繰り返し、事後に堂々とその自認をしているような団体を放置しておくことは、法治国家として許されるものじゃありません。  さらに、成田空港の問題についても、国際化時代を迎えて完全空港化がおくれるのは日本の国際的な信用にかかわる問題であるのに、かつて過激派により開港が阻止されたばかりでなくて、今もなお暴力によって空港関係職員が被害を受けたり、収用委員会が解体されていまだに再建のめどすら立っていないという状況でございます。このようなゆゆしい事態を踏まえて過激派の検挙について徹底した措置をとるべきだと考えるけれども、どうでしょうか。  私はこの三月、これについて御質問申し上げました。総理や国家公安委員長は、過激派の暴力にはきちんとけじめをつけて対処しなければならないとお答えいただいたわけであります。その後、消防士や一般家庭の主婦を含む犠牲者がさらに続々と出てくるという深刻な事態であります。これらについて関係大臣の所見をお伺いします。
  30. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 ことしに入って過激派によるテロ・ゲリラ事件は御指摘のように百四十三件を数えました。そして警官一名、消防士そしてまた民間の奥さんを含む三名のとうとい命が失われ、十数名にわたる重傷者を出したということは歴然とした事実でございます。  また、過剰な警備をしかざるを得なかったという点においてまことに残念でございましたけれども、しかし、国民の御理解もとにこれらの諸行事が立派にできたことを本当に国民、市民協力のおかげであったと感謝しております。  今御指摘のように、これらに対する規制は、ことしに入って既にいわゆる秘密部隊員二十八名を含む二百名以上の検挙者を現実には出しております。しかし、これらの組織維持というのが、このゲリラあるいはテロ工作をやる要員というのは全部秘密部隊によって行われているのが現状でございます。そして資金提供、あるいは公然活動をして、カンパに応ずる、一般労働者を含むそういった形によって支えられておるというのが集団の現状でございます。  したがって、警察としてはこれらの犯罪立証に おいて、個人責任主義と申しますか、細かくこの犯罪を立証していく過程においては非常に困難を伴っておることは事実でございます。私たちとしては、団体指定そのものの案件は法務省、法務大臣でございますので、ただし、今御質問がございましたからあえてお答えするわけでありますが、こういった集団実態にかんがみまして、何としても資金提供を含む犯罪予告、そして犯罪の結果、それを公然と発行している新聞、それを買って、それでまた——買ってというわけじゃありませんけれども、それを売って、その資金が地下に流れていくというこの実態を突かなければ、どうしてもこのテロ集団のいわゆる国民、市民のまことに敵であるこういった形、壊滅することは難しい。したがって、私どもとしては、団体指定することによってこれらの効果を最大限に防ぐ、国民、市民に迷惑をかけない方向で奉仕できる、そういった形で思っております。
  31. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 具体的な事件については国家公安委員長からお答えをしたとおりでありますが、悪質過激なこの暴徒は許されるものではございません。ですから、破壊活動防止法のいわゆる団体適用問題については、公安調査庁においては、今回の即位の礼や大嘗祭等に関連して発生をした事件をひっくるめて、証拠関係や団体規制処分を行った場合の効果あるいは影響、そういうものをあらゆる角度から慎重に検討をいたしているところであります。
  32. 原田昇左右

    原田(昇)委員 断固たる決意でやっていただきたいと思います。  さらに、暴力団の抗争事件も相次いでおります。これについても私は、警察庁の方で新たな法制度の策定に向けて暴力団対策研究会を発足させたと聞いておりますけれども、厳しくこの規制についても対処をしていただきたい。時間がございませんので要望しておきます。  さて、今度の予算にスポーツ振興が取り上げられております。スポーツは、心身を鍛錬し、人間の可能性の極限への挑戦をすることによって不屈の精神力や強健な体を養うなど、それ自体極めて意義のあるものだと考えますが、スポーツ振興について文部大臣の見解を承りたいと思います。  なお、昨日私は、私の同県のJOCの古橋会長、もとのフジヤマのトビウオと言われた人ですが、この古橋さんから伺ったのですが、先般行われた北京アジア大会でも、前回のソウル大会から金メダルを二十個も減らしてしまった。そして中国、韓国に次いで第三位という大変厳しい結果に終わった。今のまま手をこまねいていれば、目前に迫っている平成四年二月のアルベールビル・オリンピックや平成四年七月のバルセロナ・オリンピックにおいてもこの長期低落傾向が続くと憂慮されておる。そこでJOCにおいても、緊急行動計画として、一競技三拠点ぐらいを全国に設けて重点的な選手の強化対策に乗り出すということをやりたいと言っておりましたが、国としてもその実現に積極的に応援していかなきゃなりませんし、また、スポーツのすそを広げるということもやっていかなきゃならない。そういう意味で、この基金、まことに時宜を得た基金であろうと思います。ぜひ実現をしていただきたい。
  33. 保利耕輔

    ○保利国務大臣 スポーツ振興の意義でございますけれども、人がこの世に生を受けましてから明るく充実した人生を送りますためには、まず知的、文化的な教養を身につけ、さらにまた社会の中で人々と円満に折り合っていくためのいわゆる社会規範をきちんと身につける、そういったことも必要でございますが、同時に、健康で強い体力を持つということが必要だと思います。現代社会では体を動かすということが非常に少なくなってまいりまして、そのため、人間が持っております本来の運動機能というものが退化をしていくということが非常に懸念をされるわけでございます。そういう意味で、スポーツの振興というのは非常に大事でございます。  同時にまた、先生御指摘のように競技スポーツ水準が下がってきている、総体的に下がってきているということを考えますと、そうしたものの振興というのは非常に大事でございますし、競技大会で我が国の選手団が活躍をするということは国民に明るい話題を与えますし、さらに我が国社会の活力を示すバロメーターにもなろうかと思います。また同時に、そうした選手の活躍というものは、少年少女に夢を与えるというような意味からいいましても大変重要なことだと思います。先生御指摘のように今回基金を設けることにいたしましたのも、そうした選手の活躍を励ます、そして支援をするという意味から設けたものでございます。
  34. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そろそろ時間でございますので、最後に日米問題。  日米構造協議の報告には、大店法の規制緩和措置が盛り込まれてきております。それに対して、今回の補正予算で、個別の店舗に対する低利融資の措置を講ずるということでかなりの予算を割くことにいたしたわけでありますが、この措置は大変大事だと思います。しかしながら、中小小売業の振興のためには、商店街全体としてのコミュニティーホール、イベント広場あるいは駐車場、こういったものの整備が必要ですし、町全体としての新しい町づくり、魅力のある町づくりという観点からやっていかなきゃならぬ対策が裏打ちされなければならないと思うわけでありますが、これについて、ぜひともそういった面で自治省、建設省、通産省共同してひとつ総合対策を打ち出していただきたいと思うわけでありまして、必要な予算を本予算においてぜひとも計上していただきたいと思います。  さらに、アメリカとの日米両国の緊密な関係をより一層強固にするために、両国が世界的視野に立ちながら両国の対話交流を強力に進めるという必要がますます起こっていると思うのです。このような意味から、補正予算に日米親善交流事業を行うための政府出資が計上されております。まことに時宜を得たことであり、また意義深いことであると思います。これをぜひ、日米が真の友邦として相互理解と相互信頼に基づく確固たる関係が築けるように、有効に使っていただくように要望をしておきます。通産大臣ひとつ……。
  35. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今御指摘のとおり、今回の補正予算におきましてもいろいろと中小小売商対策を計上していただいておりますが、これだけではもちろん不十分でございますし、今関係省といろいろと協議をしながら町づくりの中での商店街対策というものを考えておりまして、所要の予算についても財政当局にお願いをしておるわけでございます。
  36. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私の質問はこれで終わり、残余の問題について宮下創平君に質問をしていただきます。
  37. 越智伊平

    越智委員長 この際、宮下創平君から関連質疑の申し出があります。原田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。宮下創平君。
  38. 宮下創平

    ○宮下委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、激動する内外諸情勢のもとにおきまして我が国が直面している重要な諸課題の幾つかについて御質問をいたしたいと存じます。  まず、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉でございますが、このウルグアイ・ラウンド交渉は、一九九〇年代の新しい貿易づくりの最終合意を目指して行われた新多角的貿易交渉である交渉でございまして、農業分野を中心とした対立が解消しませんで、交渉を中断し、改めて来月以降ジュネーブで交渉を再開することを決めて閉幕いたしました。この間、出席されました中山外務大臣武藤通産大臣山本農林水産大臣におかれましては、困難な状況にもかかわらず大局的な見地に立ってこの交渉に臨まれ、その解決に向かって懸命の御努力を払われたことに対しまして、まずもって敬意と感謝を表するところでございます。  ウルグアイ・ラウンド交渉は、世界貿易をめぐる近年の保護主義あるいは二国間主義、地域主義やブロック化といった好ましくない傾向に歯どめをかけまして、世界経済のさらなる発展を目的として行われていることは御案内のとおりでございますが、同時に我が国としては、農業問題、とり わけ米の輸入自由化阻止の方針が貫き通せるのかどうか、国民の最大の関心事でございました。こうした点から見まして、今回のウルグアイ・ラウンドの交渉結果を我が国としてこれをどう受けとめ、今後はいかなる展望をお持ちになっておられるのか。また、ウルグアイ・ラウンドの今次会合での結果は我が国の対外経済関係に対しいかなる影響をもたらすものとお考えでしょうか。これらの諸点について、まず総理の御見解を承りたいと存じます。
  39. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のように、七日までの間に行われましたガット・ウルグアイ・ラウンドの閣僚会議で、従来の交渉の経緯を踏まえていろいろ真剣な議論が行われたことは御承知のとおりでございますが、共通の認識を得るに至らなかったということも事実であります。  したがいまして、世界の多角的な自由貿易体制をきちっとつくっていこうというガット・ウルグアイ・ラウンドの成功ということに向けては、これは我が国もでき得る限り議論をし、それぞれの国の抱えておるそれぞれの難しい問題について率直な意見の交換が行われたのですが、アメリカあるいはケアンズ・グループ、それに対してEC諸国、それから日本も、日本の食糧輸入国としての立場、また日本の持っておる食糧安保論についての見解、カロリーベースでも日本は四九%というのは先進工業国の間ではこれはもう最低のところでありますし、穀物の自給力は実に三〇%という、そういったような状況、輸入国の立場も十分理解しながら物を考えてほしいという立場の説明等も十分にいたしました。  そういった結果、共通の認識を得るに至らなかったために、会議はさらに来年に持ち越されて継続ということになっておりますので、これからも日本の立っておりますこの立場、抱えておる難しい問題を国際社会議論の中で率直にこれは反映をして、誠意を持って話し合いをしながらウルグアイ・ラウンド成功に向けての共通の認識を得るような努力をさらに重ねていかなければならない、私は基本的にそのような認識を持って対処していきたいと思っております。
  40. 宮下創平

    ○宮下委員 外務大臣にお伺いいたしますが、ただいま総理からウルグアイ・ラウンドの全体的評価並びに今後の決意について承ったわけでございますが、外務大臣は実際に閣僚会議に出席されまして精力的に御努力をいただいたわけでございますけれども、今回の十五分野にわたる交渉は、一体全体としてどのような経過であったのか、お伺いしたい。  また、農業分野以外の他分野での交渉で合意あるいはまとまりかけた内容も、今回の中断によりまして凍結状況となりました。特に、例えば日本がニューラウンドの重点課題に掲げておりましたアメリカ通商法三〇一条等一方的措置の封じ込めも、その実現が先送りされまして、今後引き続いて交渉を行うこととされました。今後の交渉が具体的にいかなる日程で行われ、最終的にどの時点で合意が確定することになるか大変心配ですが、私は、我が国の基本的な主張とガットの基本原則を踏まえつつ一刻も早く合意を完成させ、最近における保護主義、二国間主義、地域主義といった傾向に歯どめをかけましてさらなる世界経済の拡大、発展にスタートを切ることが重要であると考えますが、外務大臣、いかがでございましょうか。  また、これまで我が国は、ウルグアイ・ラウンドへの積極的貢献とともに、対外貿易不均衡の是正でありますとかあるいは構造調整等に多大の努力を払いまして、世界経済の拡大、発展に貢献する努力を重ねてまいったところでございます。かかる努力は今後も続けていく必要がございますけれども、外務大臣は、今回の交渉の中断により、特に今後の日米経済関係がどのように展開していくとお考えでしょうか。とりわけ三〇一条等一方的措置の発動や二国間主義、保護主義的傾向といった好ましくない動きに今回の交渉結果がどのような影響を与えるものでございましょうか。これらの諸点につき、外務大臣の御所見を承りたいと存じます。
  41. 中山太郎

    ○中山国務大臣 先般ブラッセルで行われましたガット・ウルグアイ・ラウンドでは、各国の代表がそれぞれ努力をいたしましたが、特に食糧輸出国であるケアンズ・グループ、それとアメリカ、またECとの間の対立は極めて激しいものがございました。御案内のように、アメリカは幾つかの農産物についてウエーバーの条項を持っておりますし、ECは可変課徴金あるいは輸出奨励金、国境措置といったような独特の制度を持っております。我が国、また韓国等は食糧安全保障の問題でこの主張をしておりますけれども、ECは、全体的にこの十五の項目について議論を進めるべきだ、一方アメリカ及びケアンズ・グループは、農産物の問題を先に片づけないとほかの問題は片づかない、ほかの問題はむしろ後ですぐ片がつくというような考え方の対立の中で、ついに五日間の会議は延長を宣告されたということに相なったわけであります。  私は率直に申し上げまして、我々の国はこのガットの最大の受益国であります。そういうことから考えますと、この会議が延会になりましたときに、議長は次のような宣言をされたわけであります。つまり、これは中断ではない、延長である。こういうことで、直ちにガットのダンケル事務局長を中心に各国の交渉者との交渉を続ける、そして年明けの早い時期に会議を開く、こういうお話でございますが、もしこれが会議が開かれずにずるずると延びていくということになりますと、問題は、保護貿易主義が台頭してくるという大きな一つの懸念を貿易国の日本としては持たざるを得ないわけであります。  一方また、貿易の不均衡によって過大な黒字を計上している日本にとって、赤字を計上している国家から見ると、いわゆる一方的な制裁措置を打ってくる可能性もそこにあるわけでございまして、私どもはこの受益国としての日本ができるだけ早期にガット・ウルグアイ・ラウンドの会合が再開されるように努力することが当面の緊急の課題である、このように考えております。
  42. 宮下創平

    ○宮下委員 次に、通産大臣にお伺いいたしますけれども、今回の交渉に当たりましては農業分野以外のサービス貿易、繊維、関税、原産地規制あるいはセーフガード及び紛争処理等の分野でも交渉が行われまして、それなりの成果が得られたと伺っております。しかし、それらは今回の交渉中断によりましてその実行は先送りをされたわけでございますが、これらの状況について、大変御苦労いただきました通産大臣の御所見を承りたいと存じます。  なお、いろいろ米自由化問題等通産大臣の発言が報道されておりますけれども、米自由化問題に対する通産大臣の真意のほどをお伺いしておきたいと存じます。よろしくお願いします。
  43. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今全体的なお話は外務大臣からございましたけれども、個別の問題につきまして、例えば農業とともにテキストがジュネーブででき上がらなかったアンチダンピング、これにつきましても、おかげさまで何とか今よりも規制を強化しようと、一方において迂回措置を条件つきながら認めるという、そんなパッケージでアンチダンピングはまとめようではないか。あるいはまた、もう一つテキストができなかったのはTRIMでございますけれども、これも最初はASEANあるいはその他南米のラテン系の国々が相当抵抗いたしておりましたが、最終的にはある程度これも条件があればのむこともできないわけではないというような感じまで進んでおりました。あるいはまた、先ほど御指摘のございましたいわゆる三〇一条などの一方的措置については、おかげさまでジュネーブのテキストの中で、そのようなものは認めちゃいけないということになっておったわけでございます。あるいは原産地規則などは、おかげさまでもう合意に達しておりました。それから繊維につきましても、おかげさまで今のMFAをガットのルールの中に入れて、そして十年先には一応完全な自由化にしようというようなことも大体合意方向に行っておりました。  言ってみますと割合進んでおったところも相当あるわけでございますけれども、先ほど外務大臣からお話のございましたように、残念ながらEC対アメリカ、ケアンズ・グループとの対立という形において農業問題が非常に暗礁に乗り上げ、結果的に最終の六日の晩においては、一応農業が解決をしない限りはほかの部門も凍結だという形で会議が進まなくなったというのが現状でございます。  最後に、私がこの間発言を新聞記者会見でしたということについて御指摘をいただきましたけれども、どうも私が農業と言うと、みんな新聞記者が米とこう言うわけでございまして、私はいつもその米という表現は一回も使っていないわけでございます。確かに、今のようなことで農業でうまくいっておりませんので、日本としてもこれからぜひ、まあたまたま私が総括グリーンルームが終わった直後に、ブラジルの大使でありますけれども、これがブラジルの代表でございましたが、とにかく日本がもっと積極的な役割を果たして成功に導いてほしいと、大変強い要請も受けました。  その他いろいろの会合で会っても、とにかく日本がもっとイニシアチブをとってくれというようなお話もございましたし、日本としても農業を含めてできるだけ早く解決の方向努力をしていく必要があるんじゃないだろうか、こんなようなことを私が申し上げたのがああいう形で報道されたと思うのでございますけれども、私はどこの国の人に会っても、日本は米については少なくとも国会決議があってどうにもならないんだということだけははっきり申し上げておるわけでございまして、今回も記者会見でそのようなことからいって米の市場開放というようなことは一切私は示唆もいたしておりませんので、この点はこの機会にはっきり申し上げさせていただきたいと思います。
  44. 宮下創平

    ○宮下委員 通産大臣の御真意のほどを承ったわけでございますので、その方向でぜひとも今後強力に交渉を展開していただきたいと存じます。  次に、今回交渉の焦点になりました農業分野の交渉に当たりまして、我が国の基本的立場を一貫して貫き通し交渉に当たられ、大変御苦労いただいた農林大臣にお伺いいたします。  戦後我が国は目覚ましい経済発展を遂げてまいりましたが、その背景には、勤勉な農村社会と安定した貿易体制の存在、この二つがあったことは否定できないことでございます。特に我が国の農業は、言うまでもなく、長い歴史と伝統を有しまして、相互扶助の精神に支えられた農村社会を基盤といたしまして、食糧の供給及び労働力の提供という、経済発展に不可欠の役割を果たしてまいりました。現在では農業が、言われますように食糧安全保障のみならず、国土・環境保全、地域社会の維持など非貿易的な面で重要な役割を果たしていることは御承知のとおりでございます。  他面、今御議論がありますように、戦後の貿易体制の確立に当たってガットが果たしてきた役割は、数次にわたるラウンド交渉の結果を見ても明らかでありますし、とりわけ今回のウルグアイ・ラウンド交渉は、二十一世紀に向けての多角的な自由貿易体制の再構築を図るということを目指した極めて重要な交渉でございまして、本交渉が成立することは日本の国益にとっても大変重要なことでございます。国際社会の枢要な一員である日本としてはこれを果たしていかなければならないと思うのですが、一方、我が国農業の有するそういった多面的な役割に着目いたしまして、輸入国としての立場を十分反映させて農業交渉を成功裏に終結させることが、我が国の今後の経済社会の安定と発展を図る上で極めて重大な課題であることは申し上げるまでもございません。  しかしながら、今回の農業交渉を見ておりますと、この原因は、八〇年代における農産物の過剰な状態の中にありまして、ECと米国あるいはケアンズ・グループ、特にECと米国でございますが、この輸出補助金を伴う輸出競争の激化、対立、こういう事態を解決することとして開始されたというように見られております。このため、今回の交渉の中断に当たりましても、米国、EC間の激しい対立が見られて中断をしたわけでございます。  そこでお尋ね申し上げたいのですが、米国とECの対立、過剰、そういう根本的な原因の除去を考えずに、ただ我が国の米が問題であるかのように言われるのは事態の正確な判断を誤るものでございまして、今回の交渉に当たりまして、農林大臣、このあたりをどう考えて行動をとられましたのか。  さらに一部には、我が国の農業を維持するための各種の輸入制限措置を除かなければウルグアイ・ラウンド交渉は成功しないという見解も見られましたけれども、我が国としてはむしろラウンド交渉の成功に向けて努力する、これは一方重要なことでございます。しかし他方、農業の特性、食糧の安全保障面に配慮した対応を行っていくことがどうしても必要でございます。  今回、交渉の中盤に当たりまして、スウェーデンのヘルストローム農業分科会議長の試案が突然提出されまして、農業保護の五カ年間での三〇%削減、米等の輸入禁止農産物の国内消費の五%輸入義務づけ、いわゆるミニマムアクセスでございますが、これを盛り込んだ調停案が出されましたことは、にわかに米市場開放問題が閣僚会合の話題に上ったことで、私ども大変なショックでありました。しかし、EC、日本、韓国等の反対によりまして、試案をもと議論がなされなかったわけでありますが、この五%のミニマムアクセスが次回交渉の基礎として下敷きになるのかどうか、大変心配になります。  また、日本の食糧安保論が国際的に通用しない、必ずしも理解が得られなかったという現実に、今後の交渉の前途が容易でないものを感じますが、いかがでしょうか。  お尋ねするまでもないこととは存じますけれども、改めて、どのような姿勢と基本方針でこれらの事態に対処されたのか、経過と今後の見通しを含めまして農林大臣にお伺いをしたいと存じます。
  45. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えをいたします。  大変微力でございましたけれども、中山大臣あるいは武藤大臣と一緒にひたすら一生懸命やってまいりました。また総理からも刻々御指示もございまして、総理の御指導も得ながらやってまいったつもりでございます。  今委員の御指摘にずっとございましたように、私ども出発する前に総理の御指示をきちんと仰いでいったのですけれども、このラウンド交渉は必ず成功させなければならない、これはもう自由貿易体制を維持発展させるということは我が国にとっても至上命令なんだから、そのことは心得て行けよ、ただ従来の我が国の農業政策、これはきちんと守れというふうな御指示もいただいていったわけでございます。  そこで、私どもがこの会議を含めまして随時随所で主張いたしました基本は、今委員も御指摘になりましたけれども、そもそもウルグアイ・ラウンド農業交渉が始まったその原点は一体何かということでございまして、これは今お話しのとおり、つくりにつくって、そのつくった農産物が世界の市場にノールールであふれて、無秩序であふれて、そのために生産者あるいは各国々の財政状況まで非常に大きな圧迫を受けた、これを何とかしなきゃいかぬというふうなことがそもそもでございまして、我が国にはそういう事情はもともとないわけでございます。ですから、それらの国々が自分のところでつくる農産物について秩序正しくやっていただくということになれば、目的は基本的に達せられるんだ、こういうことが一つ。  それから二番目は、あくまでもこれは、輸出国と輸入国と両方ございまして、輸出国の代表がアメリカなら輸入国の代表は日本でございますから、日本は世界一の農産物の純輸入国なので、その立場をきちんと踏まえてもらわないと、輸出国の論理だけでやられたのではたまったものじゃない。そして、この農業交渉が進んだ場合に負担を負うのは輸入国の方なんだ、輸入国が実行可能な 案でなければこれはできないんだということなどを基本に主張いたしました。  さらに、委員からもお話しのように、農業の生産の持つ特殊性ですね。農業は工業と違う、一言で言えば。それから、あるいは農業が持っている多様な役割、国土を維持する、環境を維持するなどなどの多面的な、非貿易的な面も十分あるということが交渉結果に十分反映されなければならないということを基本にしてずっとかなり積極的にやってまいりました。我慢するところは我慢いたしましたけれども、言うべきことはきちんと言ってきたつもりでございます。  しかし結果を見ますと、外務大臣からもあるいは総理からもお話がございましたが、入り口のところでもうECとアメリカ、ケアンズとぶつかってしまいまして、そして手続上の問題もございます。また、輸出補助金をめぐるさまざまな事前折衝、これらが全然ジュネーブで事前の段階で実りませんで、そのまま生でブラッセルまで来てしまった、何のたたき台もなしに来てしまった、そこにそもそも無理があったんではないかと私思っておりますが、そのまま会議に突入いたしまして、結局厳しい状態というのが最後まで解けませんで継続ということになりました。  これからジュネーブで引き続き年を越して行われるそうでございますが、どういう状態になりますか、今のEC対アメリカ、ケアンズなどの対立がどの程度までこなし得るのかというふうなこと等もございます。いずれにしても予断を許さないというふうな状況で年を越したわけでございます。  我が国としては今申し上げたような姿勢、とにかく各論に入っていないわけでございまして、総論のところで今私が申し上げたようなことを随時、随所、公式、非公式の場所で申し上げただけでございますから、これからが本番ということになるわけでございまして、食糧輸入国としての立場をしっかり踏まえながら交渉をやっていく、こういうことに尽きると思います。
  46. 宮下創平

    ○宮下委員 今回の交渉がこのような形で閉幕、中断を見たわけでございますけれども、ガットにおける今後の展開方法、これはなかなか予測できないように思いますが、交渉のタイムリミットとしては、一九八八年の米国の通商法で規定されておるとおり、米議会政府に対して交渉権限を一括して与えております「ファーストトラック」との関係上、米国政府がラウンドの関連協定の無修正一括承認を議会に求めるための協定内容を米議会に通告する期限が三月一日だと聞いておりますが、これまでに結論を得なければならないとも伺っておりますが、この点はいかがでございましょうか。
  47. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員指摘のように、三月一日がこのガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の議会への報告の最終のタイムリミットということになっておりまして、それまでにこの事務局案を全部整理する日数が必要と考えられます。そうすると、それを約二週間と見ますと、少なくても、二月は二十八日でございますから二月の第一週ぐらいまでにはこの会合を開く必要がある、このように逆算してカレンダーを見ていかなければならないのではないか、それなりの対応を我が政府としてもやっていかなければならないと考えております。
  48. 宮下創平

    ○宮下委員 それでは、農林大臣に再度ちょっと最後にお伺いしたいのですが、今回のウルグアイ・ラウンドの閣僚会議が中断されまして、その決着が持ち越されたことによりまして、日本にとって最大の関心事となっております米市場開放問題が日米二国間交渉の課題として急浮上することが濃厚になってきたとも伝えられております。また、対立しているアメリカとECが今後双方の妥協点を探り、精力的な交渉が行われると見られておりますが、妥協が成立した場合には、米問題に一気に圧力が集中するのは必至の状況であろうかとも考えられます。  米国はかねてから、米を初めとする我が国の輸入制限品目につきまして関税化による完全自由化の要請を繰り返したところでございますけれども、今回の交渉の中断に伴いまして、このような要請はどうなっていくのか、今後はより一層困難な、厳しい再交渉となるものと思われますけれども、今回の交渉結果を踏まえまして、引き続き我が国の米に対する基本的主張を各国に理解を求める努力を精力的に継続する必要があると存じます。  特に米国にとりましては、今回の結果が大きな不満として残っておりまして、通商法三〇一条による全米精米業協会、これはRMAでありますが、その提訴の危険性も高まり、日米二国間の政治折衝を強いられるおそれなしとしないというようにも考えられます。これらの点は、今後の再交渉の結果次第でもございますけれども、我が国としても重大な関心と決意を持って、交渉再開前にさらに米国側の理解を求めていかなければならないのではないかとも思います。農林大臣の御見解と御決意のほどを改めてお伺いをしたいと存じます。
  49. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えします。  まず第一に、この二国間のお話が、今先生から出ましたけれども、私はそういうふうに考えてはおらないんです。事農業問題に関しては、これは今までいろいろな経過がございまして三〇一条提訴というふうな経過もあったわけですね。その中で、当時のアメリカの首脳がこれは多国間でやりましょうということで多国間、いわゆるウルグアイ・ラウンド交渉に移った。我が方も多国間でやりましょうということで、このスタンスに終始変わりはありません。したがって、今そのバイの話をするなどということは早い話でありまして、これはあくまでも世界全体の貿易交渉の中で、多国間の交渉の中でこの農業の問題は解決をしていくべきものであるというふうに私は思っております。  それから、今後それは確かに厳しい対応が迫られるというふうなことになるだろうと私は思います。しかし、日本が今まで主張してまいりました基礎的食糧の問題、食糧安保論、その他たくさんございますが、それらは一つ一つ十分理由のあることでございまして、そして、その十分な理由を土台にして、かつての首脳会談、サミットもあった、あるいは中間レビューもあった、そしてオファーに至ったということを考えれば、日本はまじめに一つ一つやってきた。  まじめにといえば、とにかく私いつも論より証拠ということを、どういうふうに英訳をしているかわかりませんが、日本語で論より証拠だとこう言うのですが、証拠が大事だ、口じゃだめだ。では、一体日本は何をしたんだ、アメリカは何をしたんだ、ECは何をしたんだということを比べてみようじゃないかという話を必ず私はするわけでございまして、その場合にアメリカのウエーバーはどうなっているんだ、ECの可変課徴金制度は一体どうなっているんだ、そのことが基本的にきちんと議論されないうちに日本の米の問題などにいくのは、それは全く理論的には飛躍だということを常々言い続けてきたわけでございます。しかし、それにしても現実はなかなかそうまいりません。米のことを必ず言うわけでございますから、我々とすれば従来の主張をしっかり繰り返すということでやってまいる以外に私はないのではないかというふうに考えております。
  50. 宮下創平

    ○宮下委員 農林大臣の御決意のほどを承りまして、引き続き精力的にひとつ取り組んでいただきたいと存じます。  次に、次期防衛力整備計画についてお伺いいたします。  次期防を近く策定するわけでございますが、まずその前提として、現下の国際情勢についての的確な情勢認識と将来の見通しについての判断が前提になろうかと思い、その必要性があろうかと思います。  今日の国際情勢は、米ソ関係が対話と協調を基調とする新たな関係に進みつつございまして、また、欧州においても、先般のCSCE首脳会議におけるパリ宣言に見られますように、冷戦後の国 際秩序が真剣に模索されております。一方、アジア・太平洋におきましては、若干の好ましい変化があらわれておりますけれども、基本的にはこうした東西関係進展の兆候は余り見られずに、また、今回のイラクによるクウェート侵攻のように、従本米ソ関係によって均衡が保たれてきた地域にこのような民族的、宗教的対立や地域ナショナリズムによる紛争が発生しているということも見逃してはならないと思うのでございます。  いずれにいたしましても、このような冷戦が終わりまして、東西間の緊張緩和が進みつつある国際情勢下において、我が国の防衛力はむしろ余り増強する必要はないのではないか等々の意見も見られるところでございますけれども、そこで、まず今回の次期防の策定に当たりまして、政府としては、我が国を取り巻くこの地域を含めまして、この国際情勢をいかに認識し、また今後の見通しについていかに判断しておられるかについて、総理並びに外務大臣の御所見を承りたいと存じます。
  51. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 国際情勢の認識について申し上げますが、御承知のように東西の力による対決というものがヨーロッパの一連の大きな動きによって変わりつつある、冷戦時代のように東と西に分かれて、それぞれ超大国の軍事力によって世界の秩序、枠組みをつくっていこうという時代は終わりを告げつつあるということは非常に明るい情勢の変化だと思っております。  ただそれが、私は、ヨーロッパだけで展開されて、ヨーロッパだけで目に見えて具体的な動きがあるのではなくて、アジア・太平洋地域にもそのことは押し及ばなければならぬと思っておりますし、また導いてくるような努力も日本はしなければならぬという基本的な考え方を持っておるわけでございます。現に、お隣の朝鮮半島の問題や、あるいはアジアの一つだけまだ火種が残って、戦火がおさまっていないカンボジアの問題とかいろいろございますけれども、こういったものに対しても国際的な努力が行われ続けておるということも、これは非常に歓迎すべき傾向であると考えておるのであります。  ただ、そういった歴史の大きな変化の中にあって、しかも国連の安全保障理事会が戦後四十五年ぶりに初めていろいろな決議をすることができるようになった、イデオロギーを乗り越えて平和のための決議ができるようになったという好ましい状況はありますけれども、まだ湾岸情勢は依然として片づいておりません。一日も早くこれが平和的に解決することを強く私は願っておりますけれども、ただ、地域における紛争やあるいは宗教的なあるいは民族的ないろいろな対立のもとに非常に不安定な状況が続いておることもこれまた事実でございますから、そういう国際情勢の大きな流れの中で、日本がきょうまでとってきた我が国自体の防衛計画の基本というものは、これは正しかった。  それは、東西両陣営がまだ対立のさなかに、今日のような出来事が想定されない時期でありましたが、両陣営が力による対決を乗り越えて協調していこうとしておる大きな流れがあるという大前提に立っている。しかも、日本の自衛力というものは、東西の力の対立の中にお互いに計算されない部分のものとして、言葉をかえて言えば、専守防衛のものであり、しかもそれだけで確実に十分に防衛する能力がないという判断に立って、日米安保条約のもとにこれを戦争抑止力として、日本の安全保障のためには大きな枠組みとして持っておった。それがまたある意味では、この地域の平和と安定に大きく役立ってきたという事実もございますから、この間うち、安全保障会議でそれらの問題点を十分検討しながら平成三年度以降の防衛力整備はいかにあるべきかということに議論を続けておりますけれども、いずれにいたしましても、文民統制を的確に機能させていくことと、それから今申し上げたようなきょうまでの日本の防衛の姿というもの、我が国の防衛と我が国の平和のためにするという専守防衛の考え方に立った防衛力の計画的、継続的な整備だけは、これはその方針に従って続けていこう。ただ、そのときに、節度ある防衛力の整備のために昭和五十一年の閣議決定の精神は、これを尊重していくということを考えておるところでございます。
  52. 宮下創平

    ○宮下委員 我が国の安全保障を考える場合に、従来から我が国の基本的な枠組みとしては、日米安保体制、それから今総理のおっしゃられた節度ある防衛力ということによって安全を確保しているところでございますけれども、今回の湾岸情勢における米国の対応を見ましても明らかなように、こうした地域紛争の拡大を抑止し、国際秩序を維持するという平和管理機能を十分備えた国は私は率直に言って米国のみであるということは、疑問の余地がないように思います。他方、その米国は、厳しい財政事情を含む経済力の低下あるいは財政赤字及びそれに伴う海外米軍の撤退が避けられない状況であります。チェイニー国防長官もアジアの撤収を言っておられますね。  他方、我が国は、経済力の向上及びこれに伴いまして国際社会において地位がますます高まってきておりまして、我が国がその国力に応じた国際社会に対する役割と責務を一層拡大していかなければならなくなっていることも事実であります。しかし、我が国が、このような米国の国力の低下に伴いまして、アジア・太平洋地域において米国の果たしてきたような軍事的役割を果たし得ないことも、また果たすべきでないということも明らかであります。  こうした状況の中で次期防の整備計画を策定するわけでございますが、一体我が国が基本的にこのアジア地域等のこの地域においていかなる役割を果たすべきなのか、また二十一世紀に向けて米国との同盟関係を今後どのように持っていくべきかという観点から、そのあるべき姿が基本的に追求さるべきであると私も考えます。まあ一例でございますが、在日米軍駐留経費の負担増の問題等も提起されておりますけれども、こうした問題もこうした大局的判断から前向きに検討さるべき課題であるというように存じておりますが、これらの点についていかようにお考えか、お尋ねしたいと存じます。
  53. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 アジア・太平洋地域における日本の果たすべき役割というのは、これはアジア・太平洋地域の国々の平和と繁栄のために貢献をしていくこと、去年一年間でもアジア地域から日本が六百四十億ドルの物を輸入してきたということは、これはこのアジア地域が世界の経済成長率の中で、それよりもずば抜けて目立って顕著な成長を遂げることができたということの裏腹をなすものであって、日本がアジアに対して貢献している一つの大きな平和と繁栄のためのいい貢献の例だ、こう思っております。ただ、それがそのようにできたのは、日米安全保障条約のもとで、日本は限られた節度ある防衛力で自分の国の安全を確保することができたんだというこのことも事実でございますから、これを忘れてはならないと思っております。  そうしてまた、アジアの国々と今後もそれらの問題を、私は日本が果たさなきゃならぬ役割というものは変えてはならぬと思いますから、日米安保条約というものを有効に、そして円滑に運営していくためには、従来も自主的に日本はできる限りの協力をしてまいりましたけれども、具体的に今お尋ねの駐留軍経費負担の問題については、これは安全保障という大きな国の利益の立場、そのこと自体がまたアジア・太平洋地域の平和と安定のために果たしてきた役割、これは評価されなければならぬことだと思いますので、今後も自主的にでき得る限りの対応をしていこう、これは今、次期防衛力整備計画の問題、次期防の問題と絡めていろいろ安全保障会議等でも検討を続けておるところでございます。
  54. 宮下創平

    ○宮下委員 次期防についてもいろいろ詳しくお尋ねしたいわけでございますが、時間がございませんので、一、二の点だけちょっとお伺いしておきたいと思います。  次期防の具体的な内容について一番重要なことは、我が国がどの程度の防衛力を持つべきか、今 の国際情勢その他の点から判断する、これが大変重要な点でございますが、今総理からお話のございましたように、防衛計画の大綱、五十一年に策定されたものがございます。これは基盤的防衛力構想ということで、脅威に直接対抗することを目指すのではなくて、我が国自身が力の空白となって、この地域の不安定要因にならないようにする、いわば基盤的な防衛力ということで基本的な考え方をとっておるものと承知しております。  このような経過をたどっておるわけですが、今お話しのように、五十一年大綱制定時には国際情勢が安定化の方向に向かいつつありました。いわゆるデタントと言われる時代でございます。そしてまた、現在の国際情勢も安定化の方向に進んでおるということでございまして、私は現行の大綱を一応下敷きに堅持して、大綱に従って防衛力整備を進めることは妥当な選択だと思っております。  ただ、国際情勢は、大綱にとっての国際情勢の持つ意味は同じであっても、国際情勢それ自体は大綱策定時に比べて大きな変革を遂げているのも事実でございます。したがって、次期防の策定に当たりまして、何らかの方式によりまして国際情勢に関する政府の見解を表明する必要があるのではないか、こういうようにも考えておるのですが、いかがでしょうか。  それからまた、よく新聞報道等では、次期防期間中に大綱を見直す、次期防期間中にですよ、大綱を見直すというような報道もございますけれども、実際のところは一体どうなのかという点。  それから、いろいろお伺いしますが、内容につきましては、私は正面装備は一応の数量的な水準には達した、今次防衛計画によって達成したということで、今後この水準を維持していくための更新、近代化が着実に行われなければならないという点。特にまた充実すべきは後方分野でございまして、自衛官の待遇その他の問題。汚く、厳しく、格好の悪い、いわゆる三Kの代表的な職業ともみなされるような自衛隊の現状は改善しなければならないと思っております。計画期間を五年にするとか、あるいは国際情勢の変化を踏まえて三年後見直しとか、あるいは総額明示方式の採用等、いずれも妥当なものと私は考えておりますけれども、次期防につきまして、これらの諸点を踏まえどのような方針で臨まれるか、簡潔に御答弁いただきたいと存じます。
  55. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、安全保障会議でただいまいろいろな角度から検討しておりますので、簡潔に答えろと言われても、ちょっとそれは今この段階で結論をお答えできる状況ではございませんので、今後の安全保障会議のさらなる検討にお見守りをいただきたいと思いますけれども、申し上げたいことは、平成二年度予算までにおいて、基盤的防衛力整備の中でいわゆる別表とされておったもの、そこの整備は大体到達をした。したがって、それをさらにどうするかということについてもいろいろ検討をしてまいりますけれども、平和時において日本が保有すべき必要にして十分な節度のあるものは何であろうかという角度できょうまで保持してきたものでございます。  これは東西対決のときに、力関係の枠組みの中へ日本も力でお役に立とうといって入り込んでおったものではありませんから、あくまで専守防衛で、しかも日米安保条約というものによって、それが抑止力として働くようになっておったということ等も総合的に勘案いたしますと、これは東西関係とともに、日本の現在あるべき立場においてどうすべきかということが極めて大切でございまして、これは安全保障会議で引き続き議論を続けるわけでありますから、本日の御質問の趣旨等も念頭に置きながら議論を進めていきたいと考えております。
  56. 宮下創平

    ○宮下委員 時間がございませんので、最後に土地対策、土地税制改革についてお伺いしたいと思います。  昨今の地価の異常な高騰は、土地を保有する者と保有しない者との間におきまして著しい資産格差をもたらしました。大都市圏に居住する勤労者の住宅取得が不可能となるなど、このまま放置すれば、その格差を縮小することはほとんど不可能な状況にございます。その結果、自由、公平、平等という我が国の経済社会に大きな問題をもたらしております。二十一世紀に向けまして、公正で活力ある我が国の経済社会を維持発展していくためには、この土地問題は克服すべき最大の課題の一つでございます。  これに対して我が党は、昭和六十二年十月には緊急土地対策を提言しておりますし、また政府はこれを受けまして、土地基本法を国会に提出いたしまして、昨年十二月にその制定を見ております。また、この土地基本法を踏まえまして、土地政策審議会や税制調査会で種々検討が行われまして、十月末にはそれぞれの答申が行われております。我が党におきましても、緊急土地問題協議会で総合的な土地対策の推進を提唱いたしてまいりましたし、そしてそれによって地価を今回の地価高騰以前の水準にまで引き下げることを目標に土地対策を強力に推進することといたしております。それから、金融問題調査会におきましても、土地関連融資の適正化の推進を提言しております。  将来、これまで三回起きました土地高騰を二度と起こさせないという決意から、構造的かつ抜本的な土地改革を講じなければならないということは、現下の最も重要な課題であると考えております。大都市圏での過剰な土地需要と値上がりの期待感をなくしまして、東京一極集中構造を打破するとともに、多極分散型の国土形成を確立して、国土の均衡ある発展を図るためにも土地問題は避けて通れない喫緊の課題であると考えております。  そこで、内政の最重要課題の一つである土地政策につきまして、まずもって総理の御所見を承りたいと存じます。
  57. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 土地につきましては、かねてから内政の極めて重要な問題であると認識をいたしまして、土地基本法の基本理念を踏まえてあらゆる努力を重ねていかなければならないという強い決意を持っております。  そうして、現在土地税制改革の問題がテーマに上がってきておりますが、私は新しい土地政策の中には、これは税だけで片つくものではないと思いますが、しかし税も大切な柱の一つでありますから、各界の御意見を聞きながら、今国会中に政府は実現を図るための、土地改革のために税制に関する法案を取りまとめて提出をしたい、こう考えておりますが、その中には、やはり土地の保有、そして固定資産税の評価の適正化、譲渡課税の負担の適正化、相続税評価の適正化、三大都市圏の農地課税の見直し、土地を利用した節税策への対応、優良な住宅宅地の供給促進のための課税の是正、こういったことをいろいろ考えまして、保有・譲渡・取得の各段階における総合的な抜本的な税制の仕組みを組み立てて議論に供したいと思っておりますから、一層の御理解をいただきたいと思いますし、さらに、土地の資産としての有利性の縮減ということも大切でありますから、有効利用の促進、仮需要の抑制、住宅地の供給の促進、地価の抑制低下につながっていくようないろいろな政策努力を積み重ねて土地問題の解決に取り組んでいきたいと考えております。
  58. 宮下創平

    ○宮下委員 今総理のおっしゃっていただきましたように、総合的な土地対策が必要でございまして、税制だけではございませんけれども、その中で金融問題ですね、大変私はウエートを占めていると思うのです。  今回の土地高騰におきましては、土地利用計画が不十分であるとかいろいろございますけれども、低金利政策あるいは金融緩和のもとで過剰流動性を生じまして、大量の資金が土地市場に流れ込んだことが大きな原因であったと考えます。大蔵省による総量規制も行われました。また、全銀協会も土地関連融資のあり方についての申し合わせを行ったりいたしております。我が党の金融問題調査会におきましても、特に貸金業等の改正を 含めたノンバンク問題についても検討を継続していくことを提唱しておりますし、総量規制も必要です。私は、金融機関がその公共性を忘れて過剰な融資に走ったことが国民信頼を損なったことを金融機関は率直に認めまして反省してもらいたいと思いますし、このようなことが二度と起こらないような制度的なものをしっかり考えなくてはならないと存じます。  そこで、今回の土地高騰における金融の問題について、大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
  59. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今回の地価高騰の原因というものを考えてみますと、これはさまざまな要因が私は絡み合っていると思います。しかし、プラザ合意以降急速に円高が展開していきます中において、内需主導型の経済構造への切りかえを図っていく、そのための金融緩和政策がとられたわけであります。全般に潤沢な資金供給が図られた結果、土地に対する需要が支えられた。そういう視点は、これは否定のできないことでありまして、金融的な側面というものを私どもも問題の一つとして認識をいたしております。  そうした中で、いろいろな手法をとってまいりましたが、ついに総量規制という非常に強い規制まで打ち出さざるを得ないところまで追い込まれた。これは率直に我々としても認めなければなりません。そして、党の方でもいろいろな御論議をいただいて、御提言もいただきましたけれども、私どもとして、やはり金融機関というものが社会の信頼を損ねることのないように適正な業務運営の確保というものについて当然厳正な指導は行ってまいりますが、まずみずからの考えとして、こうした点に思いをいたしていただきたいと心から願っております。  と同時に、やはり将来において金融というものが地価高騰の要因の一つとなることのないように、これからの土地関連融資のあり方というものについて検討を行っております。与党の中での御議論におきましても、ノンバンク等に対しさまざまな検討を行っていただいておることを承知しておりまして、その御意見等も我々は参考にしながら今後の施策を組み立ててまいりたい、そのように考えております。
  60. 宮下創平

    ○宮下委員 経済は生き物でございますが、それに対応する金融政策は、土地問題に対してはおのずから限界がございます。金融政策が仮に土地問題だけに絞られまして、その機動性、弾力性を失った場合は、経済全体を殺してしまう、いわば角を矯めて牛を殺すということになりかねないわけでございます。そこで、地価対策を万全なものにするためには、土地の取得や保有に直接かつ恒久的な影響を与える税制などの措置がぜひとも必要であります。  私は、土地問題とその高騰がいろいろな面で資産格差を拡大させまして、社会的な不公平感を国民の間に広めておりまして、我が国を支えている、まじめに額に汗して働く人々の、勤労者の人々の健全な勤労、事業意欲を損ないかねない状況をつくり出していることに対しまして、深く憂慮の念を抱く者の一人でございます。こういうことがあっては、これからの我が国の活力ある社会は私は期待できないと思うのであります。  土地基本法にも明記されておりましたように、土地は国民のための有限で公共的な資産でございまして、国民の諸活動のための不可欠の基盤として適正に利用されなければなりません。土地神話の打破に向けて、土地選好を弱め、税負担の公平を図り、長期的、構造的、体質改善的の役割を果たすために、土地の保有・譲渡・取得、今お話のございましたこの各面にわたりまして総合的な見直しが必要であると考えます。  我が党は、土地税制につきまして、党税調におきまして精力的に審議を行い、去る十二月六日に土地税制改革大綱を決定したところでございます。この改革大綱では、土地選好を弱めるために、土地の資産価値が高まれば保有コストも高まる仕組みが有効であるとの観点から、保有課税のあり方を見直しまして、国税として土地保有税を導入することといたしております。これは日本経済の活力を損なわない、そしてまた住宅や中小企業者、小規模事業に負担を求めることのないように、経営状況や国民の生活に十分一方配慮しつつも、他方土地政策としても有効な新税の導入という難しいぎりぎりの判断、選択をあえて行いまして、政権政党としての土地問題解決への強い決意国民に示したものであると考えております。  世上この党案に対しまして、政府税調答申を骨抜きにしたものであるとかあるいは土地の値下がりは期待し得ない等の判断がございますけれども、私は、この土地保有税の導入は、土地神話の打開に大きな第一歩を示すものと高く評価できると思うのでございます。私は、この新税が譲渡課税とかあるいは取得課税等の見直しと相まって、土地問題の抜本的な解決に資する第一歩であるということは間違いないと思うのでございますが、これにつきまして大蔵大臣に、我が党の大綱についての御所見、今後の実行の決意のほどをお伺いしたいと存じます。
  61. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 簡潔に要点のみお答えを申し上げたいと思いますが、今回の御提言の中、特に土地保有税の創設につきましては、今回の土地税制改革の重要な構成要素として政府税制調査会の基本答申におきましても、その導入が答申をされているものであります。消費税に続く新税の導入という非常に難しい状況選択の中に置かれ、このような方向に踏み込まれた関係各位の御努力に対して、私は敬意を表したいと思います。  そして、政府立場といたしまして、現在政府税制調査会が行っておられる御検討、今後の御審議等も踏まえまして、政府としての見直し案を取りまとめました上、所要の法律案を今国会に提案し、成立のために全力を尽くしたいと考えております。心から敬意を表します。
  62. 宮下創平

    ○宮下委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  63. 越智伊平

    越智委員長 これにて原田君、宮下君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  64. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤万吉君。
  65. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 最初に、中東情勢についてお聞きをしたいと思います。  国連安保理事会が六百七十八号の決議を採択をいたしました。言うまでもありませんが、同決議は、中東湾岸情勢を生み出したイラクの侵略行為に対して、平和と国際秩序破壊に対して武力行使による事態の解決を容認した内容でありまして、しかもその内容の中には、一九九一年、すなわち来年の一月の十五日という時間的制約の中で、武力による事態の解決の道か、平和交渉による事態の解決を図る道か、二者択一を要する極めて重要な内容と段階に入っていると私は理解をいたします。  中東情勢が我が国に与える経済的な影響、あるいは日米間の友好的な基軸を中心とする我が国の外交上からも、その解決の道の選択をどちらに選ぶかは極めて重要な外交課題であろうかと思うのであります。戦争による紛争解決の道は絶対に避けなければならないと私は考えます。  ところが、先ほどの総理の答弁も、あるいは本会議における総理の答弁もそうでありますが、このような極めて憂慮すべき事態にもかかわらず、総理の答弁は、私は、極めて客観的、まあ情勢認識に対して言えば極めて甘い情勢認識、そんな感じがいたしました。同僚議員からいろいろ御意見を聞いてみますと、どうも中東情勢に対する総理の認識は評論的ではないか、こういう意見さえ聞かれるところでありまして、私は、今の事態に対して日本がどの外交の道をとるか、この六百七十八号という決議を受けて、一体我が国はどういう 事態の解決、すなわち平和解決への道に向かってアクションを起こすのか、ここに期待と、政府のこれからの方向性に対する意見を求めたい、こういう意見が強く存在をしているのではないでしょうか。  外務大臣、この際お聞きをいたしますが、六百七十八号決議が行われた現実の上に立って、今我が国がどのような外交を展開すべきか、さらに、事態の平和の解決への道をとるとするならば、六百七十八号のこの決議の背景なども含めて外務大臣の御意見をお聞きをしたい、こう思います。
  66. 中山太郎

    ○中山国務大臣 イラククウェート侵攻以来、安保理は六百六十号から始まった数次の決議をいたしております。すなわち、クウェートからのイラク軍の即時撤退、クウェート正統政府の復活、あらゆる人質の解放ということを言っておりますが、今日までなかなか各国の人質の解放も行われず、また軍隊の撤退も行われていない。このような状況の中で決議六百七十八号が採択されたわけでございまして、これはいわばイラクに対する今日までの安保理決議を踏まえて、一つの大きな日限を切った警告ではないか、私はそのように認識をしておりますが、その警告にこたえるように、イラク政府は最近あらゆる人質を解放するという決定をされたわけでございまして、この人質の解放は極めて歓迎すべきことでございますが、これを契機に、アメリカイラクの間の首脳間の交渉がアメリカの呼びかけにイラクがこたえるという形で、ここに一つの和平への大きな舞台ができてくる、このようなことで、日本政府としては、かねて申しましたように、イラククウェートからの無条件撤退を含めて中東地域の平和の構築のために日本政府はできるだけのこれから努力をしていかなければならないと考えております。  イラク大統領の言っておられるいわゆるパレスチナ問題というものは長い歴史のある問題でございますが、ひとまずクウェートからの撤退を行うことによって、その後に起こってくる中東問題の解決には、国連安保理を中心にした大きな枠組みの中でこの中東地域の平和のために各国が協力していくもの、私はそのように認識をいたしております。
  67. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 事態の認識とか、それからこの決議が持つ評価、これは総理からも御答弁があったのです。問題は、その上に立って今日本が何をすべきかということなのです。  私は、日米間の従来の友好的な外交からいけば、当然のことアメリカ側から、例えばこの決議が行われた直後、御承知のようにイラクに対する直接交渉の提案がございましたね、こういう問題については日米間ではアメリカ側からの通告といいましょうか、あるいは報告といいましょうか、そういう事態はあったのでしょうか。あったとすれば、当然のこと、それに対して日本側の意見としてどうあるべきか、こういうアクションが行われてしかるべきではないですか。いかがでしょう。
  68. 中山太郎

    ○中山国務大臣 アメリカと日本の間は極めて緊密な関係にございまして、このような大きな一つの変化については米国側から通告を受けております。私どもは米国に対しても、戦争が始まれば数千人の人たちの血が流れるということでございますから、平和のうちに問題の処理をするように日本政府としては強く要望をいたしております。
  69. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 当然のアメリカに対する要請であろうと思うのです。  同時に、この決議が行われた後、事態が急速に変化をいたしていますね。先ほど外務大臣は、人質の解放があった、こう言われました。私は、人質の解放というものはまさに歓迎すべき事態でございます。しかし、人質の解放という問題は、先ほどの決議の背景というものも無視はできないと私は思うんですね。同時に、アメリカのベーカー国務長官が、これは午前中の答弁にございましたが、もしイラクの撤退、クウェート政府の原状回復、両国は双方の相違点について、回復が行われた後ですね、双方の相違点についてアメリカではなく両国の問題である、こう述べられ、いわばクウェートイラク問題は双方の課題であり、アメリカが介在すべき問題ではない、こう理解をしております。  けさテレビを見ておりましたら、クウェートの外務大臣が、今まで流れておるあるものを否定をされました。その一部に流れている報道とは、イラクとサウジとの間で地下水脈的な外交が展開をされているのではないか。すなわち、ワルバ島とかブビアン島とかルメイラ油田の問題をめぐって、その権益の帰属が固まれば云々というようないわば報道でございますね。これをきょうわざわざ否定をしたところを見ると、相当真実性のある地下水脈外交といいましょうか、と見なければならないと思うのです。事態は極めて進展をしているんですね。ですから、この事態に対して日本が何をすべきか。どうでしょうか。いま一度、くどいようですが、この事態に対して日本がどういう外交的な平和への道を探る展開をなされるのか、お聞きをしたい、こう思います。
  70. 中山太郎

    ○中山国務大臣 外交上のこともございまして、逐一公表するわけにはまいりませんが、外務省といたしましては、相当レベルの高い人を各地に派遣をしておりまして、いろいろとこの地域の平和的な解決のために寧日努力をいたしておることをこの機会に申し上げておきたいと思います。
  71. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 相当外交レベルで高い人を送って事態の解決ということでありますね。私は、外交問題ですから、今日機密を要する課題もさまざまあると理解をいたします。したがって、その平和への道を、少なくともいわば武力のあらゆる手段を行使してということに立ち入らないために問題の解決を図るべきだ、その道に向かって全力を尽くしていただきたい、こう思います。  さて、そこで問題の提起でありますが、この国連の決議が行われ、ブッシュ提案が行われた後、フセイン大統領は、この受諾は、従来の政策は変更いたしません、同時に直接交渉の課題はパレスチナ等他の占領下のアラブ諸国の土地の問題が最優先問題となる、いわばパレスチナ問題を含めた包括的解決でなければという意思だろうと思うのです。しかも、その事態がなければということを前提として直接交渉に応ずると受諾をしておるわけですね。このことを私は、相当イラク側の外交的な駆け引きという問題も背景にあるでしょう。あるいは、パレスチナ問題を含めて、まさに私がアラブの盟主であるというようなことなども含めて、相当外交的な彼一流のものがあるというものを私は見逃すわけにはいかないと思うのです。  だがしかし、パレスチナ問題あるいはイスラエル問題というのは、御承知のように国連でもかつて、二百四十二号でしょうか、決議をされた課題でもありますね。また、フランスのミッテラン大統領の提案ですね、イラククウェートからの撤退、同時に包括的な問題を含めたテーブルの用意をする、こうミッテラン大統領は提案をいたしまして、その道が当時のイラク側から見て極めて好感を持った外交課題として評価をされて、フランスは人質の解放が全員行われたという、こういうこともあったわけですね。  外務大臣、これは総理も御存じのように、我が国はイラン・イラク戦争まで起きたときには、パレスチナ問題に対しては極めて理解度の深い外交を展開をされました。PLOの代表も日本にお見えになったし、その際に日本に対して、アラブ地域に対する貢献に対して外交的な行動というものを強く展開を求められたということもこれまた事実です。私は、今起きているこの課題は、もちろんイラクの撤退ということが最優先課題でございましょうけれども、最優先課題と同時に、それを撤退させる条件として日本が、本来はイラン・イラク戦争の当時の日本の外交姿勢とするならば、仲裁的、調停的役割を果たし得たと思うのです。しかし、アメリカのさまざまな、言葉として適当かどうかわかりませんが、圧力といいましょうか、あるいは要請といいましょうか、これによって日本の外交スタンスが私は変わった、結果的に日本の人質問題も解決し得ないような状況が起きてきたのではなかろうか、こう理解をするので す。どうでしょう、この際我が国は、先ほど言いましたように外交レベルで、高いレベルで折衝が行われるとするならば、イラクの撤退、同時にパレスチナ問題を含めて包括的なテーブルに着くような提案を我が国自身ができないのでございましょうか。  聞くところによると、国連に非同盟諸国からこの問題を含めての決議案の提案が用意をされておるというふうに私は聞いております。しかし、事態が極めて流動的ですから、それを表面的に行うことが事態の解決になるかどうかわからない。したがって、国連の決議としては今日提起はされておりませんが、しかし、そういうことが非同盟諸国の間でもあるということになれば、もし日本という国がその誘導的外交展開をするとするならば、事態の解決はもっと平和的な道を選ぶことができるのではないでしょうか、いかがでしょうか。
  72. 中山太郎

    ○中山国務大臣 委員お話しのように、このパレスチナ問題というものは、この中東地域の解決にこれをなくして問題の解決が図られるということは非常に難しいと思います。しかし、今のクウェートイラクによる占領というもの、これの即時撤退とこれとをリンケージさせるという考え方は日本政府はとっておらないところでございます。  しかし、いずれにいたしましても、パレスチナ問題、私もPLOのアラファト議長あるいはイスラエルの外務大臣とも、いろいろこの地域の和平のために日本政府はできるだけの協力もするし、和平後には経済的な協力もするということも申しておりますが、問題は、この地域にはパレスチナ人が随分分かれて各国に点在をしている。これは、ヨルダンの皇太子が私に話したところによると、ヨルダンの西岸だけで八十九万、ガザに四十九万、イスラエルに五十七万、ヨルダンに百二十三万、湾岸地区に五十四万、シリアとレバノンに五十二万、これだけのパレスチナ人がいわゆる各国に散らばっている、この人たちがやっぱり自分のいわゆる国というものを求めているという問題が底の深いところにあるわけでありますから、私どもは、国連におけるいろいろな非同盟国の動きも十分連絡をしながら、恒久的な中東地域の和平をどう構築していくのか、また、この地域が抱えている千六百億ドルに上る大きな負債をどのように解決していくのか、こういう問題に日本政府としても十分これから対応していかなければならないと考えております。
  73. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私は、積極的に展開をしてほしい。これはフセイン大統領が出なければ我々は直接交渉の云々というそれに乗るわけじゃありませんよ。日本の外交の姿勢としてそういう姿勢があってしかるべきではないか、こう私は思うのです。  総理、ここでお聞きをしますが、総理イラクの副首相とお会いになりましたですね。あの際に、イラク問題に対しては今後も継続的にお話し合いをしましょう、こう言っておられましたね。ところがその後、一向に総理イラクのフセイン大統領なり首脳とお会いになるということは聞いておりません。国民から見ますと、先ほどの私の話の経過でもおわかりのように、かつて日本はアラブの各国から極めて好意的に見られる立場にあったわけですね。今外務大臣がお話しになりましたように、パレスチナ問題も含めまして相当重要な課題、深い問題があることは私も理解をします。しかし、そういうことに理解度を、一定のことを示しながら、しかし今イラクのやっていることは侵略だと、こういうスタンスになりませんと、私は、外交はうまく展開しないのではないか。我が国がまさに国際的な評価を得るに至らないのではないか。どうなんですか。あれ、お話しされて以後、その間の外交的な総理のアプローチというのは一切ないのですが、いかがですか。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 問題解決のために一番大切なことは、あの地域の恒久和平であるということ、そのことは私はラマダン副首相に直接時間をかけて伝えてありますし、それからその後のことは、ここで具体的に個々ケースを申し述べませんけれども、あらゆるレベルの接触を通じてその意思や意向を伝えてまいりましたが、しかし情勢そのものが大きく転回したことは、これは委員おっしゃったとおりでございます。  そして、ブッシュ大統領にも私は最近も親書を書いて、ブッシュ大統領がとった今度のイニシアチブを高く評価するとともに、国連の六七八の決議が行われたわずか一週間後にああいった人質の全面解放という行為が行われた、そのこと自体はすべての解決ではありませんが、解決への第一歩につながるものとして私も歓迎しますし、あのような国際社会の強い意思決意を示したことによってそういった行動があらわれ、そこへもってまたブッシュ大統領の方から直接対話を提起した。それにはイラクも応じようとしておるわけです。私は、アメリカイラクの間の直接対話というものが今回の問題の局面打開にとって何よりも大切な、中心的な課題であると思いますから、そのイニシアチブには支持をするとともに、我が方としてもできる限りこれは協力をして、イラク側もまたこれにこたえるべきである、これが問題の解決に直接つながるものであるわけです。  ただ、きょうまでも何も行われなかったかというと、そうではない。例えばパレスチナの問題、イスラエルの問題についても、ブッシュ大統領は九月の国連の演説において、イラクが局面を打開してクウェートから完全撤退をすれば、例えばクウェートとの問題やあるいはイスラエルとアラブの問題についても新たなる局面をつくっていく機会が与えられるということを表示しておるわけでありますし、またアラブのムバラク大統領もきょうまでムバラク提案というものをもって、今おっしゃったアラブの恒久和平のために努力をしてきたこと、アメリカのベーカー提案も非常に出てきておったこと、それが一挙につぶれる状況になったのは、やはりクウェートに対するイラクの一方的な侵略、併合行為がこういう一触即発の非常に厳しい状況をつくったんですから、この局面を打開して、またそのような交渉の場に戻ることのようなそういった提案や機運が出てきておるということを私は非常に歓迎もしておるし、それが成功するように、いろいろな立場で日本としてはできる限りの外交努力を続けておる、こういうことでございます。
  75. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 歓迎をするとかあるいはそういう動きがあるという、それが私がさっき言った、客観的だというのですよ。あるいは事態の情勢に対して、今も後ろからも声が出ておりますように、それじゃそういう事態を生み出すために日本が何をしたかということが見えないでしょう。総理が行かれて話をして、話し合いは継続しましょうと言って、その後の継続が出てないじゃないですか。フランスはそれなりにやっていますよね。私は、そういう意味で、日本は何をなすべきか。しかも今度の決議が極めて重要な、しかも戦争か平和かという分かれ道、日本への影響も大きいというこの段階でも、なおそういう評価では、私はいけない。  どうでしょうか。ブッシュ大統領に親書をお渡しになった。日米間ではそのくらいのことがあって当然だと私は思うのです。事態が極めて平和的な方向に進んでいると私は理解をしていますけれども、しかし、これは外務省が持っているような情報ネットワークを我々は持っているわけではありませんから、正確にはもっとお聞きをしたいと国民も思っていると思うのです。しかし、もしイラクのフセインが提案しているような形で、全体の問題が包括的なテーブルがなければ事態は解決できない、こういうことになりますと、時間的制約は一月十五日となっているのですから、この間にそういう事態が生まれなかった場合には、戦争への道ということはあり得る状況として見なければならぬわけですね。万が一そういう事態になった場合に、アメリカからは日本に対して事前に通告はありますか。ないしはそういう事態になりつつある状況の説明というのは外務省にあるのですか。今はプッシュホンとか言われているネット ワークがありまして、大分お金を出したりあるいは平和協力隊の問題、人の問題などについては総理にしばしばあるように承っておりますけれども、こういう事態こそ、あるいはそういう差し迫った事態に対してこそ、日米間の強いチャンネルが生かされるべきだ。そういう事態のために、あるのでしょうか。
  76. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ございます。  具体的に相手国との関係がございまして、その相手国の国名及び話し相手をしておる人の名前が出せませんが、我が方の担当者の名前は、ここではっきり申し上げますが、小和田外務審議官が、ほとんど日本におらないような姿で世界を飛び歩き、ソ連あるいはアメリカ、あるいはイギリス、フランス、あるいは他のいろいろな国々の首脳と接触をしておることをこの機会に申し上げておきます。
  77. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 日米間にもそれはあるのですか。答弁をひとつ。
  78. 中山太郎

    ○中山国務大臣 ございます。
  79. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 相当ハイレベルの方だと私は理解をします。  そして、事前にあるということでありますから、聞くところによると、イラク側は一月十五日にはこだわらないなどということも、新聞にも、国際的な報道でもされているという事態ですから、私は忍耐強くというのは、もう時間の制限があるわけですから、これはできない。しかし、その間に日本がまさに血を流すくらいの気持ち——血を流すというのは余りいい言葉じゃないですから取り消しますが、そのくらいの努力があっていいと思うのですね。  総理、何かおっしゃりたいことがありますか、今の事態に対して日本が何をなすべきかということについて。
  80. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今の事態に対しては、平和的な解決を図るべきであるということでいろいろ努力をしておりますが、ここで具体的に名前を出したり内容を挙げたりして、あそこでこう言いました、こうしましたということを一々具体的につまびらかにできないことはまことに残念でありますけれども、しかし、その気持ちを持って精いっぱい努力をしておるということは、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  81. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 四十億ドル近い支援協力、財政協力をしておるわけですから、先ほど外務大臣から、事前にはありますと、こういう答弁ですから、極めてそういう時期を大事にして、私どもが望んでいます平和解決への道に日本は全力を挙げる、ひとつ決意を強くしていただきたい、こう思います。  この中東紛争に対する我が国の貢献策、今回の補正予算でも千三百億円計上されているわけですね。まあ平和協力隊法案、御案内のように国会で廃止になりました。我が国の貢献策は憲法の限界を超えてはならない、その制約下にだけ、あるいはその制約のもとにしかといいましょうか、その制約下で中東への貢献策というものは考えられるべきである。これは前国会の廃案の経緯は、国会における論議もさることながら、やはり国民意思表示、意思の決定だ、こう私は見るべきだと思うのです。これは謙虚にやはりそういう気持ちで総理も受けとめていただきたいと思うのです。したがって、御承知のように集団自衛権はおろか、自衛隊の海外派遣については、この平和協力隊法案を通して廃案になったことは御案内のとおりであります。  さて、今回は予備費及び既定予算の中から一部割いていますが、これらをもって千三百七十億円、貢献策として財政支出をされたわけですね。  アメリカ大使館発行の「バックグラウンド・ブレティン」というものがありますが、これはこういうものであります。これは恐らく外務省はお持ちでしょう。これはアメリカ大使館の発行のものですね。英語ですから少しく和訳をしていただきましたが、この中に、二十億ドルの経済援助は、軍事装備及び部隊を湾岸に運ぶため、日本国籍でない航空機と船舶をチャーターする財政支出であると実は書いてあります。明らかにこれは軍事援助ですね。千三百七十億円の中には医療協力なども一部含まれています。あるいは難民救済のための航空機のチャーター料なども入っています。これは私は承知はしていますが、その大半は、できました理事会に対する財政支出ですね、軍事費ですよ。アメリカ大使館発行ですから、恐らく間違いないと思うのです。  一体、こういう性格のものに予備費として出すべきでしょうかね。これは大蔵大臣にもお聞きをしたいところですが、本来予備費といえば、我々の常識的な考えでは、一般会計にある中で過不足が、過という場合はございませんけれども、不足が生じた場合に、例えば今回の場合に給与費あるいは災害、そういうものに対して支出をされるべき性格のものですよ。この予備費から、まずこういうお金、いわゆる多国籍軍に対する軍事費用として支出をすることは、憲法上においても疑義があるし、予備費の財政法上からいっても少しく問題があるのではないか、私はこう思います。これが第一点の質問です。答弁していただきましょうか。
  82. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 GCCにおけるその使用の内容については外務省の方から事務的に御答弁をしていただきたいと思いますが、まず第一に申し上げたいことは、軍事支出という意味のお言葉がございましたけれども、そういう意味合いでこの資金は拠出をされておるものではないということはまず申し上げておきたいと思います。  今、委員が御指摘になりました十億ドル、すなわち八月三十日に発表いたしました湾岸の平和回復運動に対する協力というものは、確かにその若干部分を既定予算から支出をいたしましたが、その大部分はまさに予見しがたい予算の不足ということから、九月二十一日の閣議におきまして予備費使用の決定を行いました。これは憲法八十七条及び財政法二十四条によりまして、予見しがたい予算の不足に充てるため使用することを認められておる制度の使用方法として、全く適切なものであったと私は考えております。  その使用内容につきましては、外務省の方からお答えを願いたいと思います。——いや、事実関係がありますから、これは答えさせてください。今あなた、軍事的な目的に使われたと言われたのですから。
  83. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今の大蔵大臣が御答弁なさいましたように、今回の十億ドルは、これは八月二十九日、三十日と発表しておりますけれども、八月二十九日の閣議了解でもはっきりとこう書いてございます。「湾岸の平和と安定の回復のため安保理の関連諸決議に従って活動している各国に対し、適切な方法により協力を行う。」ということでございまして、具体的には輸送協力、物資協力、医療協力それから資金協力がございますが、もし先生の御質問がそれぞれの協力の内容についてであれば御説明いたしますけれども、繰り返しでございますけれども、大蔵大臣が申し上げましたように、先生が御指摘のような軍事協力ではございません。
  84. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 安保理の決議による、したがって、私は国連に対して拠出をしたというならこれはわかるのですよ。そうじゃないのでしょう。国連は多国籍軍に対する財政援助に対してはこれを受け取ることはできない、したがって、できたのがGCCでしょう。いわゆるその受け皿をつくるためにわざわざこれをつくったんでしょう。しかも、その内容は軍事費でないとおっしゃいましたけれども、先ほど私は、アメリカ大使館のレポートを御披瀝いたしましたよ。その中には明らかに、軍事装備及び部隊を湾岸に運ぶためと書いてあるじゃないですか。それに対して日本政府は二十億ドル支出した、こう言っているじゃありませんか。これが軍事費でなくて何ですか。
  85. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど詳細な御説明は省略いたしましたけれども、輸送協力、医療協力それから物資協力、資金協力の四本柱で進めておりますけれども、この輸送協力と医療協力は日本政府の直轄で進めておりますが、最後の二つの物資協力と 資金協力は、先ほど大蔵大臣からもお話にございましたけれども、この湾岸で従来から活動を行っております湾岸協力理事会、GCCに対しまして拠出したものでございまして、GCCに湾岸平和基金というものを設置いたしまして、そこに払い込んで、物資協力と資金協力を行っている次第でございます。  それから、先ほどちょっと申し上げましたように、この一連の協力は、累次の国連安保理決議を受けて活動している各国に提供しておりますけれども、これらの各国の活動は、これは先般の臨時国会でも繰り返し御説明申し上げましたけれども、イラクのさらなる軍事行動を抑止するとともに、対イラク経済制裁措置の実効性確保等、イラクに対する不断の圧力によって、イラククウェートからの無条件撤退の実現を図り、右を通じて、湾岸の平和と安定の回復を目指すものでございます。  先生が言及されました在京米国大使館のブレティンにどう書いてあるか、私は存じませんけれども、この湾岸地域に兵力を展開している各国の中で中核的な役割を果たしておりますのは、御案内のように米国でございますので、米国に対しまして協力することは、今申し上げましたような事態の公正かつ平和的な解決のための国際的な努力の一環と認識することが妥当である、こう考えております。
  86. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 予備費の千三百七十億のうちの、例えば輸送協力であるとか医療協力であるとか、非常に細かに書いてあるのです。私は、それなりに外務省の資料をいただきまして理解はしますよ。しかし、千二百二十九億円については、例えば、基金に協力した各国の輸送関係経費に使用するため約五百億円を提供、何も書いてないですよ。まさに、先ほど言いましたように、軍事物資、兵員輸送のための云々じゃないですか。これをやっていたら、率直に言えば国連平和特の議論をここでやることになりますから、これ以上は時間的な制約がありますからできません。  ただ、私は少なくともこういう金に、しかも予備費から出して、しかも予備費から出すということは、大蔵大臣からも言われたように政府が緊急、必要として認めたという財政法上から出る。恣意的に決めることができるのですよ。そういうだけに、私は、本来予備費がそういう形で使われることに一つ問題があることと、いま一つは、性格的にこのような軍事的な財政支出が、前回の国会における平和協力隊法案の審議の経過等顧みまして、憲法上においても疑義がある、ここのところだけ問題提起しておきたい、こう思います。  さて、その上に立って、今度千三百億円、予備費で出しているのですね。どういうことでしょうかね。既定事実をつくって、既定事実をつくって政府は予備費からこう出しました。加えて、まあ本当か、事実かどうか、私どもそれを確認する手段はありませんけれども、アメリカ側の要請に基づいて、なおさらに十億ドル追加をする。お金が足りませんから今度は補正予算で組む、こういうことになったわけでしょう。既定事実を国会に押しつけられたという感じですよ、率直に申し上げて。そういう感じを私どもは率直に受けましたですね。私は、そういう形を恣意的につくって、事実行為を先行させて、なおそれを今度は国会の場でというのは少し、予算を執行する上においては越権行為に受けとめられてもやむを得ない行為ではないか、こう思いますね。  さて、今度の予備費は、医療協力とか輸送協力、いわゆる難民救済とかそういうのを一切抜かしまして、GCCに対する協力資金だけですね。なぜ前段飛ばしちゃったのですか。いわゆる我々が提案している国際的な我が国の貢献策として難民の問題であるとかあるいは周辺国における難民救済のための医療救済であるとかそういう予算は何で今度は組まれていないのですか。基金に拠出だけになったのですか。
  87. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず、前段について私からお答えを申し上げ、事務的な補足を外務省からしていただきたいと存じます。  今、委員は予備費の支出自体を問題として提起をされました。しかし、八月二日にイラククウェート侵略という事態が起こりましてからの当時の国際的な世論並びに御党も含め国内でありました御議論をどうぞ想起をいただきたいと思うのであります。日本は各国に先駆けてこの貢献策を公表をいたしました。しかし、依然として余りに遅い、少ないといった御批判がこの院内の御論議においてもあったことは事実であります。——ございました。そして、国際的な流れの中において、また日本の国際社会における地位にふさわしい貢献というものが求められておりました状況にかんがえて、私は可及的速やかに我が国の貢献策というものを実施に移す必要があったと考えております。そうした場合におきまして、その緊要性にかんがみ予備費の支出に踏み切りました行為が、私は誤っていたとは考えておりません。
  88. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先ほど御説明いたしましたように、政府直轄で輸送協力と医療協力を進めておりますけれども、これはそれぞれ百十八億円、二十三億円を割り当てておりまして、輸送協力に関しましては大体めどがついておりますけれども、まだ医療協力は余力がございます。それから、先ほどちょっと私触れませんでしたが、避難民救済ということで、八月二十九日以降、ICRCあるいはUNDRO等に対しまして全部で二千二百万ドル、これは既定経費の中から出しております。こういう形でいろいろ先生御指摘の避難民対策さらには難民対策も進めておりまして、これは今申し上げました予備費さらには既定経費で賄い得るという見通しでございますので、現時点においては追加的な予算措置は必要ないと判断したからでございます。  他方、今大蔵大臣からも御説明ございましたけれども、湾岸の平和基金に対します十億ドルの追加の拠出についてでございますが、これは先ほど来先生がたびたびまさに御指摘しておられますように、湾岸におきます平和と安定の回復に向けていろいろな動きが出てきておりまして、まさに緊急に我が国も協力をする必要があるわけでございまして、私どもは一刻の猶予も許されない、こう考えているわけでございます。したがいまして、九月の十四日の時点で既に追加の十億ドルにつきましては、今後の中東情勢の展開を見つつということでございましたが、協力の用意がある旨表明しております。それを受けて今回補正予算案に十億ドル計上させていただいて審議をお願いしているわけでございますが、これはまさに先生が先ほど来御指摘しておられるようないろいろな動きを踏まえて、まさに緊急に日本としても湾岸における平和と安定の回復のために必要である、こういう判断からでございます。
  89. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 緊急に必要、緊急の必要性を私は否定をしているのではないのです。問題は、私は先ほど当初申し上げましたように、事態はある意味においては極めて緊迫した状況ですよね。それを生み出したのが八月二日のクウェートへの侵攻から始まったことは、これはもう率直に認めますよ。私は、それに対する貢献策をもしやるとするならば、まさに緊急事態に対する国会の召集ぐらいあってしかるべきだったと思いますね。そうですよ。本会議でもどなたかおっしゃいましたが、予備費支出に対して国会の承認を求める、ないしは国会審議を求めていくというそういう政治姿勢のないところに、恣意的に事実をつくり上げて、そして今度は千三百億円、ひとつ補正予算でよろしくお願いします、これでは国会軽視も甚だしくなるんじゃありませんか。  しかも、先ほど私の質問の中で、アメリカ大使館広報文化交流局報道部の発行のこの資料については、外務省としては知りませんがと、こんな情報を知らぬなんというばかなことがありますか。それこそ外務省、先ほど私何回も言っていますが、事態の急変に対して事態を余りに甘く見過ぎている。情勢の発展に追いついていない。日本の外務省の姿勢そのものを出しているんじゃないですか。これはひとつ確認いたしましょうか、外務省。
  90. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 外務省事務当局の答弁の前に、先ほどの外務省の答弁を私から補足させていただきたいと思います。本来、と申しますよりも、実は外務省の事務当局から当然その答弁があると思いましたものが落ちておりましたので……。  と申しますのは、まさに先ほどから問題になっております物資協力というものの内容は防暑機材でありますとか水関連機材など、資金協力は航空機及び船舶の借り上げ費用を対象としておりますが、武器弾薬等に対してはこれは対象となっておりません。  そして、その措置の担保は、湾岸平和基金の中に日本代表として、在サウジアラビアの恩田大使が日本側の代表として、またGCC側の代表委員はGCCの事務局長から構成される運営委員会でこれは管理されておりまして、今委員が御指摘になりましたような方向に使われることはないと私はそのとおり信じております。事務的にその点を実は外務省から説明してもらおうと思いましたところ、その理事会の説明がございませんでしたので、これは私から補足をさせていただきます。
  91. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 今の大蔵大臣の答弁は外務省がすべきですよ。何ですか、けしからぬよ。何ですか、みっともない。こんなことの答弁だから前国会のああいう結果になるのですよ。  さて、時間がありませんから余り……。私は、そういう経過のものが今度の補正予算で提起をされてくるということは、極めて国会軽視の傾向を免れないと思いますよ。  きょう、報道によりますと、アメリカはことしの十月から来年の九月に至るまでの間この費用として三百億ドル必要だ、しかもそのうちの二百億ドルの調達のめどはついたと言われていますね。あと百億ドル各国に協力を要請すると、きょう昼のテレビでも報道されておりました。これは大蔵大臣質問した方がいいと思いますが、我が国の湾岸協力に対する財政支出二十億ドルの問題は別ですよ、この前段の十億ドル、十億ドルについては、これ以上の支出はいたしません、こうされました。今アメリカ側からさらに百億ドル各国に対する追加的な財政支出を求めます、こう言っていますが、大蔵大臣、前にお述べになりました、これ以上の追加支出は我が国では認められないということは間違いありませんか。
  92. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 少なくとも、今委員がお述べになりました最新のニュースというもの、私、この委員会におりましたために、実は昼、聞いておりません。しかし、それはそれといたしまして、現段階におきまして、補正予算に私どもは千三百億円を計上し、GCCへの追加拠出といたしております。  事態が今と全く違う状況が出てくるようなことがあっては、これは大変なことでありますけれども、そういう事態になりましたとき、果たして日本が全くこれでいいのかということは別の問題でありますが、こうした状況の中におきまして、これ以上の追加の支出をいたす状況にはございません。
  93. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 事態が全く変わればということは、まさに戦争、武力衝突のことを意味していると思うのですね。絶対避けなければだめですよ。前段の問題については、大蔵大臣のそういう決意といいましょうか表明をそのまま受けとめておきたい、こう思います。  外務省、先ほど私が質問しました「バックグラウンド・ブレティン」のこの記事、記事というかいわゆる情報ですね、確認できませんか。これだけひとつ答弁してください。  それから、運営委員会への、この委員会に対する拠出をしている国は日本以外にどこかあるのですか、日本だけですか。
  94. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 最初に先生が御指摘アメリカ大使館のブレティンでございますけれども、私は先ほど申し上げましたように現時点では承知しておりませんので、後で調べたいと思います。  それから、先生が次に御質問のGCCに対しますその他の国の拠出でございますけれども、現時点におきましては日本だけでございます。将来ほかの国が拠出するということになりましたらその時点で相談したいと思っておりますが、現時点では日本だけでございます。
  95. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 要するに、このGCCに対する拠出金は、どこかで、だれが、何のために、何を対象に決めたかということはわからないのです、本当は。先ほど国連平和協力特でいろいろ審議がありましたから、私はその蒸し返しは今しようとは思いませんがね。推測してあの議事録をずっと読んでみますと、結局アメリカのプッシュホンによって日本政府が財政協力、財政支出をしたのではないか、こういう疑いは晴らすことが私はできませんでした、残念ながら。  さて、このほかに二十億ドルの湾岸へのいわゆる経済協力資金がございますね。海部総理お出かけになりまして、気前よくどこどこには何億ドルというお話をされたのです。これも私は疑義を持ちます。  というのは、私は、この経済協力というのは、やはりアメリカ側がよくとっております、アメリカ方式とかよく言われておりますが、紛争地域の周辺国に対するいわば経済協力、どうも戦略的な経済協力のような気がしてならないのです。いわゆる合理性を持って、ODAというような形でその国に対する使用目的とその他を明らかにしながら日本が財政協力をする、こういう立場ではなくして、戦略的な資金協力、こういう感を強く持ちます。御見解をお聞きしたいと思います。二十億ドルの性格について、これは外務省にお聞きしましょう。
  96. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ただいま御指摘のございました二十億ドルのいわゆる周辺国経済援助に関しましては、これは、今回の事態の結果周辺国がこうむった経済的な困難に対して供与をする経済協力でございまして、従来からの経済協力、つまり、経済社会的な困難に対応し、経済社会開発を助けるという趣旨と同じ趣旨に出ているものでございます。
  97. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 同じ趣旨じゃないでしょう。だって、どういう合理性があるんですか。あるいは、それを使用するための目的は明らかになったんですか。あるいは、いろいろ海部総理がおいでになって、まあ率直に言えば、私ども庶民ではとてもじゃないけれども、つかみ金を、あれほどの金をやれるのかなと思うほどの振る舞いをされてこられて、まさに戦略的な資金、経済協力でしょう、アメリカ方式の。前段の二十億ドルを含め四十億ドル、日本の金にして五千数百億円でしょうかね。大変なお金ですよ。余りにも私は、外国の要請に安易に応じ過ぎる、もっと日本独自の外交があっていいじゃないですか。もっと、先ほど言いましたようなアラブの大義と言われているものも含めて、アラブ諸国がなるほど日本は今日のクウェートへの侵攻に対してこれほどのイラクに対する経済制裁あるいは国連における諸決議の実行に協力をし、同時に一方では、それによって生じておる経済的な疲弊に対して、こういう合理性とこういう科学的な根拠とこういう使用目的を持って今の日本の経済力として寄与している、こういう日本の自主的な外交がなければ、私は、国民の税金ですから、国民の税を使う立場としては容認しがたい。  私は、そういう観点からも、まあ幸いにしてこの事態が平穏裏に落ちつけば、大蔵大臣が言うようにこれ以上追加はない、こういう話ですから、事態が仮に深刻な事態になるにしても、私はそういう姿勢というものが常に外交の基本的な姿勢として貫かれていかなければ日本が国際的な孤児になるというのは、単に日米間の外交摩擦だけではなくして国際的な摩擦として発展をする可能性がある、このことを強く御注意を申し上げて、ちょっと関連質問がありますから串原議員に譲ります。
  98. 越智伊平

    越智委員長 この際、串原義直君から関連質疑の申し出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。串原義直君。
  99. 串原義直

    ○串原委員 加藤委員質疑に関連をいたしまして、私は、日本社会党を代表して、ガットのウル グアイ・ラウンド閣僚会議について伺いたいと思います。  外務大臣、それから通産大臣農林水産大臣を初め関係する皆さん、大変にこの際、このごろは御苦労さまでございました。本日、私は、主として農業交渉を中心に伺いたいと思います。ここではニューラウンドと言わせてもらいますけれども、結果は合意を見るに至らず継続交渉となったわけでございます。交渉の経過を含めまして、今日農林水産大臣はこの結果をどう受けとめていらっしゃいますか。
  100. 山本富雄

    山本国務大臣 お答え申し上げます。  先週、ウルグアイ・ラウンドを終結させるための閣僚会議がブラッセルで開かれたことは御承知のとおりでございます。特に農業交渉につきましては、従来からの輸出補助金等をめぐるECと米国、ケアンズ・グループの対立が依然として大変厳しく、個別事項の検討に入ることなく会議が延期、継続ということになったわけでございます。  それで、この会議を終始、私、体験しておりまして、今までもこの場でも申し上げましたけれども、農業というものが各国のそれぞれ非常に難しい事情を長い歴史の中で抱えておりまして、それが基本にあって、交渉が非常に難しいということを痛切に感じたわけでございます。それが基本にあってお互いの主張が激烈に行われるというふうなことでございます。  今後、年明け、ジュネーブで引き続き交渉が続けられるということでございますので、我が国といたしましては従来のポジションどおり、食糧輸入国としての立場を踏まえて適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  101. 串原義直

    ○串原委員 先ほど申し上げるように、閣僚会議合意ができなくて継続になったこと、この要因は何であったか、これは通産大臣に伺いますが、どう思いますか。
  102. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農業問題において、EC対ケアンズ・グループあるいはアメリカとの対立が大変激しかったというのが一番大きな原因だと思っております。
  103. 串原義直

    ○串原委員 そうでしょうね、私もそう思う。  そこで通産大臣、あなたは少し発言に気をつけなきゃいかぬ。先日、十日の閣議後の記者会見で、この新聞が報道するところによりますというと、こう言われておる。農業というアキレス腱があるために日本は大変苦労した。それから、「これから国内世論がどうなるかを見ながら、ということではないか。農林省もある程度世界の空気が分かったから何か考えるのではないか」、こう述べたというのであります。  あなたの発言は、今回だけじゃない。たびたびだ。十月九日、ワシントンでベーカー・アメリカの国務長官との会談で、米自由化を約束したと受け取られるような報道が出て、大変大問題になったことがありますね。その前にも一度ありましたよ。どうも一言多い。あるいは一言足らないのか、どっちかでしょうかね。今度の発言の本意は一体何なんですか。
  104. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 必ずしも新聞報道は私は的確だとは思っておりません。先ほど申し上げたように、今度のウルグアイ・ラウンドがまとまらなかったのは先ほど申し上げたことでございます。  ただ、将来において、これからの見通しということについてお話がございましたから、そのときに申し上げたことは、先ほどもお答えをいたしましたけれども、日本に対して非常に期待が多い、そういう点においては、日本だけでない、各国がフェアな妥協をしなければいけない、フェアな妥協にはすべて入っているということを私は申し上げたわけで、農業も入っているということを申し上げたわけでございますし、先ほどベーカー長官とのお話もございましたが、ベーカー長官との話の中でも、米ということは私は一切言っていないわけでございまして、どうも私が先ほど申し上げるように、農業というとみんな米と、こう書くのでございますが、私としては米という発言はいずれもいたしておりません。
  105. 串原義直

    ○串原委員 今、大臣が答弁になったような角度で記者会見をされたならば、それはそれでいいでしょう、その程度ならば。そうでないところに問題があるんですよ、あなた。  それでは、明確に私この際申し上げておきますが、私の言ったことと必ずしも本意なことを報道されていない、こうおっしゃったね。そうであるならば、日本の農業というアキレス腱があるため、この言葉と、どうも世界の情勢が難しいということはわかったから、農林省もある程度世界の空気に合ったようなことをやらなければいかぬという意味のことを言った。これ取り消しましょう、ここで。そうではない、そうではありませんと、こう言いましょう。いかがです。
  106. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほども申し上げましたように訂正をさせていただきます。  先ほど申し上げたように、今後の見通しとして、やはり日本としては農業を含めていろいろフェアな妥協をしていかなければならない場合があるのじゃないだろうか、こういうことは申し上げたわけでございますが、日本が、今度のウルグアイ・ラウンドがうまくいかなかったのは、アキレス腱があったからというのではございません。その辺は訂正をさせていただきます。
  107. 串原義直

    ○串原委員 訂正をされました。つまり、取り消した。いいですか大臣、訂正されましたね。私は、訂正という言葉でも取り消しでも同じことだから、訂正、取り消した、こう受け取りますが、よろしゅうございますか。
  108. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、ウルグアイ・ラウンドがうまくいかなかった。成功でも失敗でもないのですが、継続になったのは、EC対ケアンズ・グループあるいはアメリカとの対立が非常に激しくあって、それが主な原因だと申し上げたわけです。  しかし、今後の見通しという中においては、日本は農業も含めて、これはやはりどこの国もそうですけれども、妥協していかなければならない場合が来るのじゃないだろうかということを申し上げたわけでございます。ですから、日本がアキレス腱があって、それで失敗したというようなことは私は申し上げたわけではございませんということを、そこを訂正をしたわけでございます。
  109. 串原義直

    ○串原委員 だから、誤解されるようなことはやめましょう。だから、訂正ということは、先ほど私が指摘した二点については、訂正、取り消したということをここで確認しようじゃありませんか。もう一度御答弁ください。
  110. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、やはり今世界の経済、少し鈍化をしてきております。そういう中にあってウルグアイ・ラウンドが万が一失敗したら、世界の経済、世界の貿易は縮小いたします。何としてでもウルグアイ・ラウンドは成功させなければいけない。そのためには特に日本が、先ほど申し上げたように本当にたくさんの国の指導者から私どもに、とにかく日本がもっとイニシアチブをとってほしいという強い要請もございました。日本としては、今日まで自由貿易の一番受益国でもございますし、世界の自由貿易の発展、世界経済の繁栄のためには、何としてもウルグアイ・ラウンドを成功させるために日本はこれからとも思い切って努力をしなければいけない、こう考えておりますので、将来のことにおいては日本も、何で妥協するかはいろいろこれから出てくると思いますが、フェアな妥協をどんな部門でしなければいけないかというのは、私は農業も含めて出てくるものと、こういうふうに思ったものでございますから、そういうことを将来の見通しとして申し上げたわけであります。
  111. 串原義直

    ○串原委員 あなた、三回にも及ぶ重要な国会決議、それとあなたの御答弁、認識、相当な時差がある、そのことを私は指摘するわけですよ。将来はウルグアイ・ラウンドを成功させなければいかぬということは、だれも考えている。私も同感ですよ。私の明確に申し上げていることは、あなたの記者会見したあの言葉を訂正、取り消そうではありませんか、誤解を生じるから、こういうことを言っているのであります。先ほど申し上げた二点、訂正、取り消すということを明確にしよう じゃありませんか。なぜそれができないのです。
  112. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げているように、やはり私が言ったことをここで訂正するということは、自分の言ったことに対して間違ったことを言ったということになりますから、私はそれはやはりできないわけでございます。ただ、先ほど申し上げたように言った場所が違うわけでございまして、日本が農業というアキレス腱があって、それでこの交渉が成功でも失敗でもない、継続になったということではないということを、私は、その点は新聞報道が間違っておりますから、これは訂正をさせていただかなければいけない、こういうことを申し上げたわけであります。
  113. 串原義直

    ○串原委員 大臣、ここで私は余り時間をとりたくありませんけれども、あなた、新聞の報道が間違っているならば、間違っています、だから取り消しますと、あのことは違います、取り消しますよと、なぜそれが言えないのですか。こんなところで私は時間をとりたくない。明確に答弁してくださいよ。
  114. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 新聞の書き方が私のを取り違えて書いておられるということを私は申し上げておるわけでございます。
  115. 串原義直

    ○串原委員 つまり、それでは、先ほど申し上げたように、日本は「農業というアキレス腱がある」、これは取り消します、訂正をいたしますと。「農水省もある程度世界の空気が分かったから何か考えるのではないか」、これはどうも言い過ぎであった、こういうことですね。いいですか。
  116. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もし私が言い過ぎたとあれば、農林省がどうかしてくれるであろうというところまで言うことは私は言うべきではなかったと、この点は取り消させていただきます。
  117. 串原義直

    ○串原委員 それでは、これは外務大臣に伺いましよう。  今後の交渉再開はどのようになると予測されていらっしゃるのか。それは、再開の時期はどうなるのか、あるいは閣僚レベルで再開されるのか、あるいは次官レベルの会議なのか、もしくは事務局レベルの交渉がまず先行するのか。いかがです。
  118. 中山太郎

    ○中山国務大臣 この最終日の議長宣言にもございますように、会期は延長されておりまして、ダンケル事務局長を中心に各国の関係者と協議を続けていく、そして明年の早い時期に会議を再開したい、こういうことでございますから、私は、これからしばらくの間各級レベルの交渉が続くものと、このように認識をいたしております。
  119. 串原義直

    ○串原委員 内容はどうなるかわかりませんか。ただいま私が申し上げたような、どんな順序になるかということはわかりませんか。
  120. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今のところ、どのような経過をたどるかということは明確ではございません。言葉をかえて言いますと、アメリカとECの考え方がどうなるのか、ほかのケアンズ・グループの考え方がどうなるのか、そこいらはこれからの調整作業がどのような年末にかけて作業を進めるかということにかかっているものと理解をいたしております。
  121. 串原義直

    ○串原委員 それでは伺いますが、この十一日の各新聞ですね、これの報道によりますというと、外務省は、明春早々閣僚レベルが訪米、協議をする、こう言っているようであります。アメリカ、ECの厳しい対立の中、今言われたような、御答弁にありましたような方向の中で、急いでアメリカへ行ってどんな角度で話し合う方針なのか。私は、ECやアメリカの歩み寄りがなければ前進はない、話し合いは。さっき通産大臣も答弁されたとおりだ。アメリカ、ECの動きを見てからにすべきではないのか、こう思う。この報道もやはり誤りですか。そんなこと外務省は考えているのですか、閣僚レベルを派遣するなどということを、来春。どうです。
  122. 中山太郎

    ○中山国務大臣 絶えず外務省の経済担当の外務審議官が日米あるいは日欧の間でいろいろと協議をいたしておりまして、このような大きな世界的な問題でございますから、それも一応延長になったという、会議としては残念なことになっておりますから、そういうことで意見の調整あるいは情報の交換をいたすということでございます。
  123. 串原義直

    ○串原委員 それでは農林大臣に伺いましょう。  やはり十一日の新聞報道によりますと、米市場開放問題についてこう言っているのであります。つまり、米市場開放問題についてアメリカが、関税貿易一般協定、ガットの多国間協議の場から、アメリカ通商法三〇一条による提訴を受けて、日米二国間交渉に解決を求める姿勢を強めることを外務省首脳は示唆した、こう言うのであります。アメリカの公式機関が別に何も言ってこないのに、先々と外務省が発言するというのは私は問題だと思う。私はガットの場であくまでも話し合うのが筋だ、話し合わなきゃいかぬ、こう思っているわけであります。  アメリカはECとの交渉促進、妥協の材料にするために、ECとの話し合いの前に日本に米の譲歩を迫ってくるのじゃないかという話が伝えられている。この動きに同調してはいけないと私は思います。どうですか。
  124. 中山太郎

    ○中山国務大臣 別に日本が特にそのような行動をとるということでなしに、全体のラウンドを成功させるように日本としては絶えず注意をしなければならないという立場にある国家だと思います。
  125. 串原義直

    ○串原委員 農林大臣、ただいま私が質問したことに対してお答えください。
  126. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  先ほど我が党の宮下委員にも申し上げましたけれども、農業サイドの話し合いというのは、これは今回の会合では総論とか入り口で終わりになっておりまして、各論でやるのはこれからでございます。しかもガット交渉は続いていく。今申し上げたとおりジュネーブに舞台を移すということでございまして、我々の交渉は、基本といたしましてはあくまでも多国間交渉で進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  127. 串原義直

    ○串原委員 重要な点ですから、いま一度伺います。  二国間協定には応じない、基本的にはこう考えています、こういうことですね。
  128. 山本富雄

    山本国務大臣 これは委員、誤解を受けるといけませんから。外交交渉全体については、外交一元化ということで外務大臣が、外務省が窓口でございます。それはもう御承知のとおり。農業関係、今度のガット・ウルグアイ・ラウンド交渉につきましては、私がその分野では責任を負うたということでございまして、その農業分野がうまく進まない、そして継続になった、こういうことでございますから、農業分野につきましては入り口の段階で終わった、継続になった、こういうことでございますから、これから仕切り直しをいたしまして、そして多国間の間で進めていくということが当然ではないか、こう思っております。
  129. 串原義直

    ○串原委員 では、総理に伺いましょう。  今回の交渉の内容を分析いたしますと、まさに通産大臣も答弁されていたけれども、アメリカとECの対立が中心であった。そうして農産物の輸出国の論理ばかりが貫かれようとしていたわけですね。政府がかねてから主張されておりますように、食糧の輸入国の主張を貫くということがますます重要になってきたと私は認識しているわけであります。したがいまして、今後いかなる事態になりましょうとも、あるいはまた農業交渉が再開されましょうとも、我が国政府は従来の交渉姿勢、つまり、米の国内自給堅持を初めとする方針を少しも変更することなく、毅然たる態度で臨むべきである、こう思うのであります。総理の所信を伺っておきます。
  130. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自由貿易体制の仕組みの中で、きょうまで国の政策は貫き通してまいりましたが、それぞれの国にそれぞれの抱える特殊な厳しい問題があるということも、これまた事実でございました。  今度のウルグアイ・ラウンド交渉に当たりましては、その出発前に、日本は食糧の世界で最大の輸入国でありますし、また、カロリーベースで計 算しても自給率は四九%と一番低い国で、その意味からは食糧の安全保障という立場もこれは主張すべきでありますし、また、米というものの持っておる基礎的食糧の性格、同時にまた、それは日本のいろいろな、歴史や文化やあるいは社会生活の中にも米づくり、稲作の重要性というものはいろいろな角度で浸透しておるわけでありますから、そういう日本の立場を十二分に誠意を持って説明をして、各国の交渉の中で各国に共通の理解と認識を得るように努力をしてくるべきだという原則をきちっと踏まえて今度の交渉に臨んだ次第でありますが、長い間の議論の結果、そこに至らなかったという報告を私も受けておりますし、また、アメリカとECという、そういった農業の国内補助の問題についての、補助金政策についての基本的な考え方の違いについても合意が得られなかったなど、それこそ多角的ないろいろな問題で対立が続いておるようであります。  日本といたしましては、国内産で自給するという原則は、これは世界の各国に十二分に説明をし、輸入国の立場というものも主張すべきであるという原則は踏まえて今後の交渉にも臨んでまいりたいと思っております。
  131. 串原義直

    ○串原委員 つまり、米の国内自給はまさに堅持をいたします、そういうことで従来方針どおり変更ありません、こういうことですね。
  132. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自給の方針というものを原則的に堅持して、同時に世界が抱えておるいろいろな食糧事情の中で日本の立場を共通の認識として確立させるように、説得の努力を今後も懸命に続けるようにいたします。
  133. 串原義直

    ○串原委員 農林大臣に伺います。  今回の交渉の中で、グリーンルーム、農業分科会が設置されましたね。同分科会のヘルストローム議長が六日に一つの試案を示したと言われておりますね。この議長から示された幾つかの提案の中に、ミニマムアクセスを国内消費量の五%とする項目が含まれていたようでありますが、最終的には日本やEC、韓国などの反対によってこれは取り上げられなかった、記録にもとどめられないで終わった、こう理解しているのでございますが、ここでお聞きをいたしたいのですけれども、この議長案は再開後の交渉の中で取り上げられるとしても、我が国政府の対応には従来といささかの変更もありません、こういうことと理解してよろしゅうございますか。
  134. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  今委員のおっしゃった、いわゆるノンペーパーでございます。これは日本語に訳しますと、農業改革プログラムに関する合意案の交渉のための要素、こういうふうに訳されて私のところへ配られたものでございます。ですから、私は、この総論のところで、ここだけは申し上げておいたんです。これはノンペーパーである、いわゆる要素である、仮説的な考え方である、こういうふうに私は解釈をしておるということを申し上げ、なおかつこのノンペーパーの出てくる経過の中で、もう少し事前に各国と入念な話し合いがされてもいいのではなかったか、時間の関係もあったのでしょうけれども、そのことも申し上げ、それから日本の従来申し上げてきた基礎的食糧論を初めとして、それらが中に入っておらないということに対しては非常に不満ですということの遺憾の意も表明いたしました。  ただ、項目にわたって逐条的にやろうか、こういう議長のお話がありまして、最初国内支持から入ろうか、そこまでいったのですけれども、結局入らずにおしまいになりました。ですから、項目ごとにやる場合には日本は十分議論をする用意があるということも態度として表明をしておいたということでございます。
  135. 串原義直

    ○串原委員 それでは農林大臣、まあきちっとしたペーパーになって出てきたわけではないということではあるけれども、この試案が再び出てくる、もしそんなことがあった場合に従来どおり日本はこの試案、ペーパーには乗りません、こういうことですね。
  136. 山本富雄

    山本国務大臣 これは委員に繰り返すようですけれども、今申し上げたことに尽きるわけでございまして、あくまでもこれはノンペーパーでございます。それで、そういう認識で終わっておるということをこの際申し上げておきます。
  137. 串原義直

    ○串原委員 よく理解しました。きちっと対処してください。  そこで、基礎的食糧に関する要求及びガット十一条二項(C)を機能的に解釈できるように改正するというのが我が国の政府の提案ですね。それを実現するために農業保護の削減とガットルールの改正を一体的に進めるということが前提になっていると考えるのでございます。このことについては、我が国政府は従来から強く主張してきたところでありますけれども、今後もこの方針に変わりはないか。つまり、一体的に今後も対処していくのか、これは重要な点ですから御答弁をいただいておきます。
  138. 山本富雄

    山本国務大臣 お答えいたします。  結論から先に申し上げますが、従来の姿勢に変わりがありません。十一条二項(C)というのは非常に重要な項目でございまして、我が方としてはこれをきちんと継続をする、また明確化をしていくという態度で従来もやってまいりました。今回もいたしました、これ途中でございましたけれども。今後もこれは非常に重要なので主張をし続けていく必要がある、こう考えております。
  139. 串原義直

    ○串原委員 外務大臣、伺いましょう。  ガット十一条を強化する立場でECやカナダなどとの連携を図ろうということで努力されてきたというわけでございますが、我が国のガットに対する提案を実現するために他の主要な国々との連携強化、これは大事なことですね。ところが、日本はどうも従来このことについての努力が足らなかったんじゃないか、こう言われている。つまり従来の対処の仕方だけでは十分でない、こういう反省もせざるを得ないと思う。特に前回の閣僚会議の際に、米自由化に反対する韓国は、力のある日本がアジア諸国を糾合してリーダーシップを発揮してほしい、こういう発言もあったやに聞いているわけであります。つきましては、基礎的食糧に関する提案を実現をいたしますためにも、ただいまその点については総理も御答弁になりました、今後の交渉においてこのような国際的な連携、連帯、これを強めるためにどう外務省は対応しようとお考えになりますか、大臣
  140. 中山太郎

    ○中山国務大臣 食糧安全保障あるいは貿易外の関心事項というような問題でかねて日本と同じような行動をとっております国が幾つかございます。例えばスイスあるいは隣の韓国あるいは北欧の国、そういうふうな国々と日本は従来も連携をとって非公式閣僚会議ではやってまいりました、私自身が。これからもそのような国々と十分連絡をしていかなければならないと考えております。
  141. 串原義直

    ○串原委員 私に与えられた時間は切れそうでございますからこれで終わらしていただきまして、また加藤委員にバトンをお渡ししたい、こう思いますが、最後に、外交問題ですから外務大臣から御答弁願っておきましょう。  ともいたしますと政府部内でも閣内——総理がお帰りになったから総理に伺うことにいたしましょう。済みません。初めからやることにいたします、今までのはちょっとやめて。  これで時間が参りましたから私終わって、加藤委員にバトンをお渡しいたしますけれども、まさにニューラウンドは正念場を迎えました、論議をしてまいりましたように。非常に大事なところでございますから、少なくとも国論を統一して、まず政府が一体となって頑張ってもらわなきゃならぬ。一つのレールで走っていかなきゃならぬ。ともすると雑音みたいなものが聞こえてくるんじゃないかみたいな錯覚を起こしがちになる、これはいけません。したがって、一体になるという立場で、国内世論統一、国論統一、この立場総理は強力なタクトを振ってもらわなきゃいかぬ。強く強く期待と希望を申し上げて質問を終わることにいたしますが、それに対して、総理一言ありましたらお答えください。
  142. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど中座する前にお答え 申し上げましたように、日本は日本として食糧輸入国という立場もございます。食糧の安全保障という面の御議論もございます。また、食糧の自給率の問題等もございます。そういったきょうまでの立場と、それから農業の果たしておる役割というものを輸入国の立場で十分説明をして、各国はそれぞれ、それぞれの問題を抱えておるわけでありますから、日本は日本の抱えておる問題を率直に誠意を持って話して、共通の認識を得るように今後とも努力をする。今度の閣僚会議に出発する前にも関係閣僚とその原則をきちっと決めておるわけでありますから、それに従って今後とも行動を続けていきたいと考えております。
  143. 串原義直

    ○串原委員 終わります。
  144. 越智伊平

    越智委員長 加藤万吉君。
  145. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 大蔵大臣、先ほど私質問で、予備費の支出については大変疑義がある、問題がある、こう申し上げました。御承知のように予備費支出については、その金額が大きくかつ重要なものにあれば追加予算なり修正予算を提出すべきである、こうあるわけですね。私は十億ドル、千三百七十億円、大変大きな金額だろうと思います。これは御答弁は要りませんけれども、本来、こういう形で予備費を使えば、この補正でさらにそれを加えて、千三百億円にさらに加えて補正として予備費には一遍お金を返すべきではないか、こういう見解を持っています。これは私の意見表明としてお聞き取りをおいていただきたい、こう思います。  それから、湾岸協力についていま一点御質問を落としましたので、この際防衛施設庁、ちょっとお聞きをしておきたいと思うのですが、米軍基地に働く労働者の中東派遣という問題が出ました。これは十一月の二十三日、米海軍横須賀基地における日本人労働者を中東に派遣する、こういう問題です。多くを述べませんが、アメリカの旗艦でありますブルーリッジの修理のためというのがその内容でございました。  さて、日米労務基本協約、基本契約によりますと、基地に働く日本人労働者についてさまざま決めておりますが、海外の派遣については取り決めはないわけですね。その後、アメリカ軍からはこの派遣については取り消しを行いました。神奈川県を初め横須賀もそれぞれに働く労働者で組織される労働組合も反対意思表示をしてようやくそこにこぎつけたわけですが、日米労務基本協約によって米軍基地に働く労働者は、研修とかなんとかという場合は除きますけれども、その他これからも外国に、特に中東紛争のような戦争、紛争拡大になるそういう地域には派遣をしない、これがこの日米地位協定から来る労務基本協約の基本だ、こういうふうに思いますが、御答弁をいただきたいと思います。
  146. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 お答えいたします。  在日米軍従業員の海外への出張につきましては、今委員指摘のとおり、基本労務契約その他の関連の通達におきまして所要の事項が定められております。これによりますと、在日米軍従業員の勤務は日本国内において米軍のために就労するのが原則ということになっておりますけれども、海外への出張につきましては、主にその職務に関連する研修であるとか講習であるとかあるいは訓練、そのほか会議への出席などを目的として今まで行われてきております。  したがいまして、在日米軍従業員の海外出張につきましてはこのような考え方で運用されておりまして、無制限に、いかなる目的、形態のものでも行われるというものではございませんが、個々の具体的な場合に応じまして、基本労務契約に照らし、その目的だとか形態等に即して個別に判断をされるべきものであると考えております。
  147. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 今度のようなことは今後あり得るんですか、ないんですか。今後、日本がそういう要請をされた場合にはお断りをするのですか、しないのですか。それだけでいいです。
  148. 児玉良雄

    ○児玉政府委員 今回、今委員指摘の中東方面への出張につきましては米軍内部で検討中と承知しておりまして、私ども正式に連絡を受けておりませんので詳細は承知しておりませんが、在日米軍従業員の海外への出張につきましては、今ほども申し上げましたように、基本労務契約に照らし、個々具体的な目的、形態等に即して判断をするということにいたしております。
  149. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 先ほどの私の質問の中、引用しましたアメリカ大使館発行の文書について、外務省側から答弁をいただきたい、こう思います。
  150. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 先生から拝借いたしましてアメリカ大使館のブレティンを拝見いたしましたが、そこで、多国籍軍支援の二十億ドルに関しまして、この全体についてちょっと包括的な説明をしておりますけれども、先ほど来御説明しておりますように、この二十億ドルに関しましては四つの柱から成っております。     〔委員長退席、近藤(鉄)委員長代理着席〕  で、この輸送協力と医療協力政府直轄で、この政府直轄の輸送協力に関して申し上げますと、これは民間航空機、民間船舶の借り上げでございまして、これは、そこにございますように兵員、武器、弾薬を運ぶということではございません。むしろ、兵員、武器、弾薬を除いて運ぶということを明確にしております。  それからGCCに対する拠出でございますが、これにつきましては先ほど大蔵大臣から御答弁ございましたように、まさにこれは物資協力と資金協力ということになっておりますけれども、この物資協力というのは防暑機材、水関連機材ということで、具体的に申し上げますと全輪駆動車とか給水タンク車等、それからコピー機、ファックス機、パーソナルコンピューター等でございまして、これにはもちろん武器弾薬は入っておりません。  それから資金協力でございますが、この資金協力は、航空機、船舶の借り上げ経費、その他の輸送関連経費ということになっておりまして、これに関しましては、この航空機や船舶で何を運ぶかということは私ども云々しないことになっておりますので、具体的に何を運んでいるかは掌握しておりません。これは、要するに航空機、船舶の借り上げ、その他の輸送関連経費に充てるということでございます。
  151. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私はそんなことを聞いてないので、私が引用したアメリカ大使館発行のペーパーはその訳でいけばそのまま正確なものであるかどうかということだけを聞いて、その答弁だけでいいですよ、内容的なことは先ほど大蔵大臣からお聞きしましたから。
  152. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今申し上げましたように、全体に関しましてその大使館の報告は非常に包括的に書いておりますので、先生が今現に言及しておられます兵員等の輸送の点に関してだと思いますけれども、日本政府が直轄でやっております輸送協力ではやっておりません。しかしながら、GCC経由の資金協力は、今申し上げたようなことで輸送関連経費ということでございまして、これで何を運ぶかということは私どもチェックしない体制になっておりますので、具体的に何を運んでおるかは承知しておりませんので、アメリカ大使館が言っておることに関しまして私はコメントする立場にございません。
  153. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 余りやりとりが時間的な制約でできませんので、次の課題に移らせていただきます。  大蔵大臣補正予算の歳入を私見まして、四つほど問題点指摘をしたいと思うのです。  その第一は、私は、平成元年度の補正予算の際にも幾つか意見が出ましたが、歳入見込みに対して大蔵省の最近のこの見積もり誤差といいましょうか、大き過ぎるんじゃないですか。今度の場合でも、法人税あるいは有価証券取引税それぞれマイナスですよね。後で消費税の問題を申し上げますけれども、ちょっとこの乖離があり過ぎますね。これは、平成元年度の補正のときに大蔵大臣、その歳入見積もり、あの場合はプラスが多くあり過ぎたわけですが、大変歳入見積もりについての乖離が激しく、今後は注意いたします、していませんね。四千億、マイナスで言うとどのくら いになりましょうか。法人関係で一兆七百四十億ですね、今度。  私は、民間の経済成長率をとりますと、政府が今度中期展望で出しました三・七四という経済成長率より高いのですね。高いのです。ですから、政府が見積もった経済成長率でいくならば、法人関係はこれほど落ち込むはずがない。証券取引で二千億減ったというのはこれはわかりますよ、株の取引が大変低迷していますから。しかし、総体的に歳入見積もりに対する大蔵省の当初予算は甘遇ぎるというか、あるいは誤差があり過ぎるというか、あるいは乖離があるというか、もっと正確にしてほしい、これが第一の疑問点でございました。  第二の疑問点は消費税ですね。消費税、当初見積もり五兆三千二百億ですかに対して四千五百億マイナスですね。何ですか、これは。  結局、消費税における課税最低限度の問題、あるいは帳簿方式の問題、さまざまですね。益税と言われているものが見込み得なかったのではないですか。消費は活発ですよ。消費が落ちているから消費税が減ったというならこれはわかります。しかし消費は極めて堅調なんですね。消費税が持っている欠陥というものがここへ出てきているのではないですか、数字的に。四千五百億円当初見込みからマイナスですよ。こんな見込み違いしちゃまさに大変な迷惑ですよね。  三番目には直間比率。これも大蔵大臣、消費税導入の際にさんざん議論がありました。なるべく直間比率は直接税、今、当時は七対三ぐらいでしょうか、それを六対四ぐらいまで落としたい、そのためには消費税、広く浅く大勢の方にも、そして間接税をもって云々、こういう議論があったのです。今度どうですか、今度二兆九千億、所得税の伸びですよね。きょうのこれ、日経ですけれども、この日本経済によると、「所得税が好調なため直接税比率は七二・五%と当初予算よりアップしたもの」。ならぬじゃないですか。消費税導入によって直間比率は、間接税が多くなって直接税は低くなりますという方向になってないじゃないですか。これが第三の問題です。  第四番目の問題、公債金ですよ。七千五百億円の発行でしょう、今度。  当予算委員会自民党のある先生、これは議事録、私読ませてもらいましたけれども、こう言いましたね。平成二年度予算はすばらしい予算だ、一方じゃ赤字国債はゼロ、一方では四千億円ずつ公債金を減らして、元利償還負担金を減らして我が国の健全な体質をつくる、すばらしいものだ、こう言ったのです。当初予算では確かにそのとおりです。七千五百億円今度は追加でしょう。どうなるのですか、これは。  歳入の面について私は四つの大きな問題点を持ってきた。この四つの欠陥の包括的な見解で結構ですから、大蔵大臣、見解を述べてください。
  154. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 歳入見積もりに乖離が生じておりますこと、そしてそれをこの補正において改めておりますこと、これは私は否定をいたしません。そして、ここ数年間の税収見積もりの誤りが非常に大きく乖離しておりましたことから従来から御批判を浴びており、この点について残念だがあるということを私が申し上げたことも事実であります。  しかし、今委員から御指摘がありましたように、確かに法人税収において一兆七百四十億を減じ、また、これは御指摘がございませんでしたけれども、相続税において千八百五十億円を減じ、また消費税が四千五百億見通しよりも少ない。これは認めてやると言われましたけれども、有価証券取引税において二千百四十億円の減を立て、その一方におきまして、源泉分において一兆八千七百七十億、申告分におきまして一兆九百六十億円の増という数字になっておりますことは、御指摘のとおりであります。  個別項目について一々私は弁解を申し上げるつもりはありませんし、またお許しがあるならば主税局長から個々に御説明を申し上げさせますけれども、ここ数年間のいわゆる三高二安と言われておりました日本経済を支えておりました状況に変化が生じつつあることは、委員も御承知のとおりであります。また、その上に中東における情勢の激変、そしてそれを受けてのオイルの価格の変動といった要因等々、確かに我々が見通せなかった要因を、その責任を回避はいたしません。しかし、消費税について委員から御指摘がございましたが、初めて実施をし、その結果をいわば全部確認いたします前に次年度の推計をいたしてまいりました中で、私は事務方の責任を問うつもりにはならないというのが率直な感じでございます。  また、もう一つ問題点として、確かに今回補正後におきまして直間比率の変動がございます。そして、より直接税にウエートがかかったことも私は否定をいたしません。しかし、もし税制改革なかりせばこの数字がどうなったかということはお考えをいただきたいと思うのであります。これはより極端な形となり、私は非常に大きな混乱を生じたのではなかろうかと考えておりまして、この程度の範囲でとどまりましたことを考えましても税制改革の効果はあったと、私としてはそのように考えております。
  155. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 御説明にもありましたように、所得税、なかんずく源泉所得税は一兆八千億でしょう。一方で、消費税は丸々納めているわけですね、これらの人は。二重ですよ。いわゆる世上言う大衆課税というものは、この部面で明確になってきた。  消費税について申し上げますならば、まあこのくらいの乖離は当初ですから事務屋を責める気はない、こういう話ですが、しかし四千五百億というのは事務屋にしてはちょっとあれじゃないですか、多過ぎるのじゃないですか。もっと狭い乖難でとどまるべきだ。私はプラス・マイナス・ゼロだなんていうそんなことは言いませんよ。それはお互いの計算基礎が間違ったということもあるでしょう。がしかし、この中に益税部分の見込違いなども含め、あるのじゃないでしょうか。消費税の欠陥というものはここに出てきた、私はこう見るわけですよ。  今消費税問題は専門者会議の中で協議をしておるところですから、私はこれ以上言及しませんが、しかしいずれにしてもそういう形で最終的な負担、いわゆるサラリーマンと言われている諸君の負担が極めて大きくなったということだけは、これは事実です。しかも、源泉所得税の場合には一〇〇%捕捉ですから、ごまかしはないわけですから、まあひとつ、今度の歳入面から見てはこのような問題点がある。しかも、大蔵大臣がかねがね主張している直間比率がこんなに変わってきては逆じゃないですか、施策と。本来六対四ぐらいに持っていこうという発想から出ているわけでしょう。これは数字的に正確かどうかは計上するまでの時間的余裕が私はございませんでしたから、七二%対間接税の比率になったというこの日本経済新聞の報道が仮に正確なものだとすると、これは大変なことですよ。私は、かねがねから間接税は地方財源じゃないか、地方財源を補う意味で国がどうすべきかという、そういう意味で直間比率が拡大する、いわゆる均衡がとれるようになるということについては賛成です。今逆の方向に向かっているのですね。  大臣、中期展望を三月の段階で出されましたね。そして、大臣も本会議では、できる限り公債金のいわゆる国債発行を減額をして、元利償還額の方をスリムにして、日本経済を健全にしたい。どうなんですか。仮に七千五百億円公債をここで発行しますと、五年後一般会計に対する公債の発行を五%にしようとしますと、七千五百億円を五で割りますと、千五百億円平成三年度は公債金を減額しなければなりませんよ。そんなことはできないでしょう。中期展望として出された当初の大蔵省の見解は初年度にしてまさに破綻に瀕した、破綻をした。いわゆる中期展望そのものがもはや見直しをしなければならない、こう思いますが、公債のこれからの発行、すなわち元利償還額をスリムにして日本の財政を健全にするという方向は、今後平成三年度予算を編成する段階で、どう 展望を持って平成三年度は予算編成を組もうとされているのですか、見解をお聞きしたいと思うのです。
  156. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに、今回御審議を願っております補正予算には七千五百億円の国債の追加発行をお願いを申し上げております。しかし、ここで委員にお考えをいただきたいと思いますのは、先ほど委員が御指摘になりました予備費の支出につきまして、中東の激変という事態は我々が予算編成時においては全く想定し得なかった事態であります。また、たしか私の記憶では、昭和四十九年以降だったと思いますが、本年度の人事院勧告のために、これを完全実施いたしますために必要な国費はたしか昭和四十九年度以降最高額のはずであります。これほどベースアップが大きくなるという想定は当初なかったと思います。同時に、本年度、御承知のような異常な気象条件の中におきまして昨年に比べまして災害は非常に多く、その災害復旧のための事業費、国費ベースにおきましても昨年のたしか一・五倍ぐらいになっておったと思います。昨年はたしか四千億台だったと思いますので、ことしの数字は非常に大きなものでございます。こうした要素があることも、これは御理解をいただかなければなりません。  そうした上で、我々として本当にやむを得ないぎりぎりの選択として建設国債の七千五百億の発行を考えたわけでありますが、先ほど来委員御自身が御指摘をいただいておりますように、平成二年度末の国債残高は百六十四兆円に達するわけでありますし、また国債費が歳出の予算の二割を超えるという極めて厳しい状況にあり、一度景気の落ち込み等によって著しい税収の鈍化を生じた場合には、再び特例公債の発行に陥らざるを得ないという脆弱性を有しておることも事実であります。それだけに、私どもとしては公債残高が累増しないような財政体質をつくっていくということには真剣にこれからも取り組んでまいるつもりでありまして、今後におきます平成三年度の予算編成等におきましても我々は最大努力をしてまいらなければならないとみずからに言い聞かせておる状況でございます。
  157. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 歳出の面でおっしゃられるような財政需要が生じたということは、これは率直に私も認めたいと思うのです。ただ、湾岸問題は別ですよ。これはそういう情勢があったならば、別に私は補正で組むべきだという見解を先ほどお示ししました。  どうでしょう、来年を展望しまして、平成三年度、サマーシーリングのときには大体財政ギャップが三兆六千億か八千億ぐらいある、こういう大蔵省の試算だったですね。それに今お話ありました給与費を加えてみますと四兆円を超えるだろう。私の試算では四兆五千億ぐらいになるのかな、四兆五千億ぐらいのギャップが起きるのではないか。しかし来年度は、今予算編成段階でも例の生活関連費の二千億円のプラス、四百三十兆円を展望する財政支出というものを当然頭に入れなければなりません。後段私は要請しますが、例えば給与費も一般会計に必ず組み入れるべきではないか。さらには、さまざまな財政需要、いわゆる想定される財政需要が起きるわけですね。そうなりますと、歳入面の把握というものを相当明確にしておきませんと、正確にしておきませんと、私は、さらに国債発行を拡大する方向にならざるを得ない。私は、来年は恐らく中期展望に示された四千億前年度減、仮に今七千億を足しましても、七千五百億を足した四千億減も難しいのではないかと実は思っている一人なんです。国債発行をしなければ日米構造協議の四百三十兆円を賄うだけの財政ギャップを穴埋めすることはできないのではないか、こういうように実は思う一人なんです。  どうでしょう、平成三年度予算を展望して、公債の発行は減っていきますか。さらに、五年後一般会計に対して五%ぐらいに減るという、あるいは減らしたいという願望を込めた中期展望はどのくらい延長するようになりますか。今の段階で大蔵大臣理解できる範囲で結構ですから御答弁いただきたい。     〔近藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今委員の述べられました、三兆八千億と言われました数字は、御承知のように十二月初めの段階で本格的な予算編成を開始するに当たりまして、平成三年度の財政需要の概略の状況というものを検討する必要があることから、二年度補正後税収から三年度への伸びというものを四、五%程度と仮定をした上で、その仮定に基づいた上で単純に四・五%として仮置きをしておいた大まかな試算値、これが大体六十一兆八千億程度、それが要するに二年度当初と比較して出てくる数字のことであろうと思います。これはまさに仮定の、完全な仮置きの計算値でありますから、これ自体が権威を持って確定されるものではございません。これは予算編成段階において、きちんと経済見通し等が出ました段階において、諸指標の検討を基礎として個別の税目ごとに積み上げによる見積もりを行い、その結果として出てくるものが最終のものでありますから、これは今、大変失礼でありますが仮定のものということだけは申し上げなければなりません。  そういうことを頭に置きながら、また委員は人事院勧告の取り扱い等についても御意見が後ほどあるという仰せでありましたけれども、私どもとしてはあくまでも、少なくとも公債の発行額は抑えてまいりたい、全力を挙げて抑えてまいりたいというつもりで今事務方の諸君に編成作業を命じております。これはまさに進行中の話でありまして、確定をして申し上げる段階には至っておりませんけれども、我々としてはあくまでも公債依存度の五%以下への引き下げという目標に向けて全力を挙げて今努力をいたしておる、その中間でありますから、具体的なことはこれ以上申し上げようがありません。
  159. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 予算編成段階ですからそれ以上言いませんけれどもね。しかし願望と、やはり実務を扱う大蔵省ですから、現実の実態とをなるべく私どもと意見を一致しておきたい、私はそういう見解なんです。  したがって、私は、一つは経済成長率の見方が少し甘い、甘いというか低い、大蔵省の場合。民間の経済成長率、今ノーマルな状態というふうに考えましょう、中東問題が影響ありますから。六・一%ぐらいでしょう、実質成長率で四・一%ぐらいと、こう見ているのですよ、各社の経済成長率を総合して実質成長率は。そうすると、六十一兆七千億なんです、来年度の税収入は。今度大蔵省が、平成三年度予算を組むに当たってどのくらいの税収入があるか。中期展望では五十八兆か五十九兆、正確な数字は、これは後で資料でいいです。ところが、今度出そうとしているのは六十一兆七千億なんですね。民間の数字と一致してきたのですよ。そういう意味では、そういう誤差というものが結果的に財政支出、歳入と支出の乖離を非常に深くしている。それが財政問題に対する信頼感を失わせるような結果になりかねませんから、御注意だけ申し上げておきたいと思うのです。  同時に、私どもとその点では意見が一致できるように——願望はいいですよ、公債の発行、やがて五%にという願望はいいけれども、それでは五%にするには日米構造協議の四百三十兆円から来る二千億をどうするのかという問題、これは今自民党に何か任して云々とかいろいろありますから、私どもは中身は言いませんけれども、そういう問題を含めて考えていかなければいかぬと思うのですね。私は、日米構造協議の四百三十兆円、可能だと見ているのです。私の計算が間違いでなければ、今の経済成長率、民間の経済の成長率をもってしていくならば、四百六十兆円ぐらいまで公共投資を拡大しても大丈夫だ。  ただし、大臣、よく聞いてください。その場合、修繕費、修理費、例えば地方団体で言う維持費、そういうものをどこに組み入れるかによって違うのです。これはもう専門家ですからおわかりでしょうけれども、そういうものを加えていけば可能なんですよ。それは、日本の経済の成長と公 共投資額を一致すればその数字が出てくるのです。しかも、それは今までやってきたことでしょう。ついこの五、六年前ですよ、その数字が乖離がしたのは、いわゆる経済の成長率でも公共投資が減ったのは。  同時に、今度はその投資の内容、今いろいろ二千億の配分をめぐってあるようですけれども、できる限り私はハード、ソフト、こういうふうに分けるのはどこで分けるのかという仕切りがありますから言いませんけれども、ハード、ソフトという面で考えて、今ハードの面が五・五対片方が四・五、ないしは四対六ぐらいの比率と私は見ているのです。それを五、五にする、そしてこれから十年後、いわゆる四百三十兆円が可能な時期には、その逆転の状況を七対三ぐらいまでしていく。いわゆる生活関連投資額を拡大をして、結果的にそういう財政、公共投資額からいって結果になる。私は、そういうコンセンサスを得て平成三年度予算をどう組むかという与野党間の話が、あるいは国会のこの場であっていいと思うのです。そういう意味では、平成三年度予算については、私どもが提案している問題も含めて財政当局はひとつしっかりと目配りをしていただきたい、めり張りをきかしていただきたい、こう思います。  防衛費問題をちょっと御質問しておきたいと思うのです。  これも私は、来年度、次期防の改定ですね。さっき総理は、この防衛大綱の改定というものは、次期防の設定も含めてその間、世界の軍縮の流れと合わせて考えていきますと、こういうふうにおっしゃいました、答弁されました。私は、この時期にやるべきだと思っておるのです、防衛大綱の見直しというものは。なぜかというと、御承知のように防衛費の中に後年度負担というのは非常に多いのです。ですから、次期防衛計画を策定して、今防衛庁が言っているように二十三兆何がしという金がもし決まるとしますと、この間に防衛大綱の見直しなんということはできませんよ。もし見直しをするならば、今の時期に行いながら、同時に次期防の出発点である平成三年度をどのくらい防衛予算として軍事費を減らすのか、こういう方向にならなければいけないと思うのです。今、国際情勢は御案内のとおりですね。そして、先ほど総理は国際的な軍縮の情勢というものをできる限りアジアにも及ぼしたい、あるいは導き込みたい、こうおっしゃいました。導き込むなら、日本がみずからやはり軍縮の姿勢というものをこの際示すべきだ、私はそう思うのです。  まあ時間がありませんから細かな防衛費の内容についてとやかく申し上げませんが、私は平成三年度こそ防衛大綱の見直し、同時に次期防衛計画が、日本が世界に向かって、アジアに向かって、今世界の軍縮をそのまま呼び込めるような財政というものをつくるべきだ、そういう予算を提起をすべきだと思う。幸いにして、防衛費の伸びは抑制という方向を大蔵省はとっていると、こういうふうに聞いておりますけれども、どうでしょう、そういう視点から平成三年度の防衛予算というものを考える、私はそういう問題を提起をしておきたいと思いますが、これは総理に聞きましょうか、大蔵大臣に聞きましょうか、お答えいただきたいと思うのです。
  160. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 基本的に世界的な軍縮の流れの中において我が国の防衛費がいかにあるべきか、まさに今政府といたしましては安全保障会議において論議を進めておるところでございます。そして、そうした中におきましていろいろこれから具体的に問題を整理していくことになりましょう。御意見は十分拝聴をいたしました。
  161. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 人事院勧告が例年、御案内のように給与費として計上されておりません。その結果、補正予算でこれだけの額を組んだわけですね。私は、人事院勧告というのはどのくらい出されるか、本年度が一番高かったから財政支出が多いんだと大蔵大臣答弁がありましたけれども、しかし標準的に見て大体このくらいの限度で給与は民間ベースも含めて上がってくるということになれば、もう恒常支出ですよね。恒常的な支出を当初の一般会計予算に組まないというのはおかしいと思うのです。私はぜひ人事院勧告に見合う額を給与費として一般会計に組むべきだ、こう思います。  これは後ほどいずれ議論になりますから置いておきますが、人事院総裁、きょうおいでいただきました。人事院勧告が出て三カ月半ですよね。この国会で給与法がようやく提案されて決まるかどうか。どうでしょうね、人事院勧告が決まって、私はそれを受けとめる内閣が、その閣議決定が三カ月も三カ月半もおくれるということについては、まさに人事院勧告、言葉として適切かどうかわかりませんが、たなざらしですよね。本来私は、人事院勧告が行われれば、まあ直ちにとは言いませんが、少なくとも一カ月ぐらいの範囲内で閣議が決定をして、公務員に対するそういう意味での勤労意欲、あるいは御案内のように十月、各大学の卒業採用があるわけですね。どのくらいの給与になるのか。今、官公庁に就職するよりも民間に就職する率の方が全体として意欲的には高い、こう言われているのです。などを含みますと、三カ月前の人事院勧告が終わって閣議で決まって、公務員給与がこのくらいになるということに対する魅力というものが、当然次期公務員になるべき人に期待感として持たれると思うのです。これだけおくれたことについてどうお考えですか、あるいはどういう期待をお持ちになりますか。
  162. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  人事院といたしましては、先生もう既に御高承のとおりでございまして、人事院勧告の趣旨及び勧告内容というのが四月分以降の給与の官民較差、これを均衡を実現するものであるということを考えますときに、ただいま委員が言われましたとおりに、勧告が速やかに実施をされ、官民給与の均衡が時期を失することなく実現することが肝要であると理解をしておるところでございます。また、勧告を申し上げるに当たりまして、私の方から両院議長、内閣総理大臣にも特にお願いを申し上げている次第でございます。  ただ、実際におきまして、過去におきましても時期がずれているということは今先生おっしゃいましたとおりでございまして、これにつきましてどういうふうな考えであるかということでございます。  御承知のとおりに、公務員の給与というのは給与法定主義でございまして、やはり審議をされる国会の開会の時期やあるいは国政全般のいろいろな関係等から、時期がずれてきていることも事実でございますけれども、本年は国政におきまして例年にも増していろいろな問題が山積していると私も承知をいたしております。その諸問題の中において、政府におかれましては人勧制度というものの意義を十分に認識、尊重をされまして、去る十一月の初旬に完全実施の決定をされているところでございます。  人事院といたしましては、今後ともひとつ人事院勧告の早期完全実施を心からお願いを申し上げる次第でございます。
  163. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 総裁としてはなかなか言いにくいところなんでしょうが、さまざまな問題が政治的に山積しているがゆえにということは、これは含蓄ある言葉ですね。なぜかというと、そうでしょう、大蔵大臣、去年は遅欠配ですよ。何であれ遅欠配になりましたかね。例の法案との関係でしょう。今度の場合でも、さまざまな問題というのは、平和協力隊法案を含めて、そういう政治的背景があるわけでしょう。まあ背景と言っては失礼かもしれませんがね。いわゆる人事院勧告が、私は政争の具になされてはいけない、こう思うのです。素直に、人事院勧告は勧告としてどうあるべきかという閣議決定が早急になされるということ。同時に、もはや賃金が下がるという事態は今日、来年度もないでしょう。再来年ぐらいまではないと見て、見通し、中期的には間違いないでしょう。これから上がるということはあっても、下がるということはない。だとするならば、もう給与費として組むべきですよ。強く申し上げてお きたいと思うのです。  さて最後に、新土地保有税の問題についてお聞きをしておきたいと思うのです。  自民党税調は土地の税制改革大綱を決めまして、各マスコミ、もうそれこそ新聞からテレビ、ラジオに至るまで、率直に言って余りいい評判ではないですね。前の税調の小委員長石先生は、大山蠢動ネズミ一匹、こう言われておりますし、ある人は土地を持たざる者の視点が全くない、こういう報道でございます。新たな新土地保有税、一体この自民党大綱で、私は率直に言って土地が下がるんだろうか。国民の期待は土地の下がる、地価高騰の鎮静化、あるいはかつての勤労者が働いた何年間分によって土地と家屋が持たれるという、そういう期待を込めた税制のあり方、総理がおっしゃったように、私は何も税だけではない。都市計画もありましょう、あるいは土地高度利用計画もございましょう、あるいは金融制度の問題もありましょう。がしかし、税制そのものは、極めて土地を下げる上に重要な柱であることはもう言うまでもありませんね。しかしその期待を、今度の自民党の土地税制改革大綱、これからは自民党案、こういって呼ばせてもらいますが、期待を裏切っている。  どうでしょう、大蔵大臣、これは国税ですから法案の所管は大蔵省になるのかもしれませんが、この自民党案を素材にして法案はつくられるのですか。それとも、ついでですからお聞きしておきますが、税調の方は基本答申をいたしましたね。ある一定の方向性と、税制が国税であるべきだという視点などを加えて基本方針を出しました。しかし具体的な内容は、私に言わせるといま一なんですね。そういう意味では、税調に諮問を再度されて、具体的答申を受けて、それと自民党、これは与党ですから当然自民党の案を横目に置かなければならぬでしょう、そういうものを踏まえて政府案をつくられるのですか、どちらでしょう。
  164. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 まず第一点として委員は、自由民主党がまとめられました大綱にある新土地保有税によって地価下落の効果はあるかというお尋ねをされました。  私は、今委員がはしなくも述べられましたように、地価を構成する、言いかえれば地価を抑制する効果が税だけであるとは考えておりません。ですから、税、金融のみならず、本来の土地政策全体がまずなければならないと基本的には考えております。しかし同時に、今回自由民主党がまとめられました土地税制改革大綱に示されました新土地保有税、基礎控除あるいは税率などは、土地の資産としての有利性というものを政策的に縮減するという観点、同時に現在の我が国の経済や国民生活に過大な負担を与えないようにという配慮から、総合的に勘案されて決められたものと承知をしております。  こうした新しい土地保有税の効果と申しますものは、毎年評価される土地の資産価値に応じて新たに毎年負担を求めるものでありますこと、また基礎控除等によりまして納税義務者の数が相当限定されるということは、逆に言えば土地保有で相当のウエートを占めていると見られる大規模土地保有者に対しては適切な負担を求めるものであること、さらに新税の導入に加えまして固定資産税評価の一層の均衡化、適正化が行われることになっていることなどから考えますと、全体として土地の保有コストの増大によりまして地価の低下、抑制、有効利用促進などに相応の効果を上げてまいると考えております。  そして、今委員は今後どうするのかということでございましたが、この土地税制改革につきましては、新土地保有税の導入のほかにも、固定資産税の評価の適正化、均衡化、あるいは譲渡課税の負担の適正化、土地の相続税評価の適正化、さらに三大都市圏の農地課税の見直し、あるいは土地を利用した従来から本院におきましてもしばしば御指摘を受けました節税策に対する対応、また優良な宅地供給促進のための譲渡課税の軽減等、保有・譲渡・取得の各段階における総合的かつ抜本的な見直しを含んでいるものでございます。私どもとすれば、こうしたものが全体として土地の資産としての有利性の縮減、有効利用の促進、仮需の抑制、また住宅地の供給促進などが図られることにより、地価の抑制、低下につながることを期待をいたしております。  いずれにしても、政府といたしましては、現在政府税制調査会で行われております審議の結果を踏まえながら、もちろん与党とも十分御相談をしながら具体的な見直し案を取りまとめる、そして所要の法律案として今国会に提案し、御審議を願うつもりであります。
  165. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私は、今度の大綱、自民党案、税調の石土地政策委員長が、大山蠢動ネズミ一匹と、こう言われたわけなんで、税調答申自民党案とどこが違うのか、税調側から御意見も拝聴し、私どもへの提言もいただきたかったところでありますが、例えば税率について見ましょうか。〇・三%、初年度〇・二ですね。税調では、土地の資産としての有利性を縮減する程度のものと、こう言っているのですね。各所全部〇・三%では、土地の有利性、たくさんの有利性がありますよ、担保の要因だとか、あるいは土地が持っている資産としての価値だとか、いわゆる利用価値よりも土地の資産価値の方が高くて、それを根っこにしたさまざまな有利性、それを抑止をすることにはならない。例えば、一橋大学の野口教授は、資本化効果は二%前後、〇・四%から二%、こう言って試算をしておられますよ。  あるいは課税最低限については、税調は、基本的には金額にすべきだ、こう言っているのです。今度、課税最低限は十億円、一平米三万円まで課税最低限でしょう。面積を取り入れた。面積を取り入れたことによって、大企業が持っている広大な面積に対する土地保有は、まあ三分の一、その地域の土地価格にもよりますけれども、地価公示価格や相続税価額にもよりますけれども、三分の一まで減った。土地が下がるという要因が生まれてこないじゃないですか。あるいは非課税範囲もそうですよ。千平米、一平米当たり三万円まで。大邸宅を持っている人、今土地高騰の原因になっている、一番阻害している要因を何ら排除することにならぬのじゃないですか。  私は、税調が、政府税調が決めた、あるいは方向性を出したことにある意味においては忠実に沿わなければいかぬと思うのですね。塩川私案というのが途中で新聞で発表されました。一夜にして五億円は十億円になっちゃったですね。こんなことがあっていいのでしょうかね。いわゆる土地を下げるという観点から案が出たというのではなくして、あるいは土地が持っている資産効果、そして資産格差国民の不平等感、不公正感を醸成している、そういうものに対して政策税制としてどういう土地保有税をつくるかという観点よりも、むしろ今持っておる者の権益をどう擁護するかという、その観点から出たのが自民党案じゃないですか。その上に立って政府案がつくられるとするならば、まさに国民の期待を裏切るものですよ。  総論は、私は大蔵大臣がおっしゃるとおりだと思うのです。あるいは税調もそうおっしゃっている。しかし、我々の側から見るならば、総論から今各論に入る段階なんですね。各論に入る段階で一番基本的に思わなきゃならぬのは、今日の情勢の中でどうしたら土地が下がるのか、あるいは土地が持っている利用価値というものが社会的な不公平感を醸成をしているものをどう排除することができるのか、そういう視点に立たなきゃならぬのじゃないですか。いま一度、政府案をつくるに当たってのスタンスを大蔵大臣から御答弁いただきたいと思うのです。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは決して嫌みで申し上げるのではありませんけれども、その政府税制調査会の意見を尊重しなければならないと言っていただけるのであれば、そのお言葉を消費税のときにも伺いたかったな、率直に私は今そういう感じを持ちました。その上で申し上げさせていただきますならば、——いやこれは、ですから私は嫌みととられては困りますけれども、率直にそういう感じを持ちました。  その上で申し上げますならば、政府税制調査会の答申の中に、今委員がお述べになりましたような具体的な数字は記入されておらないと私は存じております。そして、たまたま党の中における作業中における税制調査会長の私案等に言及されながらの御意見でありますが、私は政府の一員として、政党の中における作業の過程におけるその時点その時点の御議論に対し批判を加える立場にはございません。  いずれにいたしましても、私どもは、現に政府税制調査会で御論議いただいております結果を受け、党とももちろん御相談をした上で所要の法律案をこの国会に上程したい、そして御審議を願いたいと考えております。
  167. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 さまざまな審議会答申がございます。視点はそれぞれ違う場合があるわけですから、その選択はいろいろな判断に任されるべきだ、こう思います。  今、具体的な税調からの提案がございませんと、数字はありませんと、そのとおりです。しかし、先ほど言いましたでしょう。例えば課税最低限については、基本的には金額にすべきだ、こう言っているのですよね。私は、金額にするのと面積を取り入れたのとは随分違うと思うのですよ。先ほど言いました。三分の一ぐらいになっちゃうのですから。まあ所によりますけれども。言っているじゃないですか。あるいは前段の、土地の資産としての有利性を削減する、減殺する、そういう要素を盛り込むべきだ。〇・三%は、それはなるのですか。  そういう視点から見れば、私は、この次に政府税調がどういう答申を、第二次答申というのですか、政府案をつくる前につくるかわかりませんが、いずれにしても、政府税調からいま一遍答申を受けられるのですか、あるいはそれを参考にしながら政府案をつくられるのですか、ここだけはひとついま一度ちょっと答弁してください。
  168. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 新たな土地保有税というものの具体的な仕組みの検討に当たって、政府税調の答申に挙げられておりますのは、一つは、公共的、公益的用途による非課税、二つ目には、小規模な店舗の用地などに対する配慮としての課税最低限を設定すべき旨、三つ目に、税率の水準については、土地の資産としての有利性を縮減する観点や、事業経営の継続に配意する観点などを総合的に勘案しつつ定めるべき旨が示されております。  私は、基本的に、自由民主党がおまとめになりましたお考えというものはこれに背馳するものだとは考えておりませんが、いずれにいたしましても、政府として、現在政府税制調査会で御論議をいただいておるわけでありますから、その結果をちょうだいをし、国会に法律案を提案させていただきたいと、先刻来繰り返し申し上げておるところであります。
  169. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 総理大臣、私は、どう見てもやはり自民党案は現状固定化だ、こう批判せざるを得ません。  さて、それを基礎にしてもし法案をつくっていくとするならば、この大綱に基づいて政府案がつくられるとするならば、政府は地価高騰対策に対して土地資産価格の減殺に何ら熱意を示さなかったということになろうかと思うのです。同時に、この国会でもしその国民的な期待を裏切るようなことになれば、せっかく土地問題が土地保有税問題を中心にしてこれだけ議論があり、同時に国民の期待も国会に目が向けられている、国会であれほど土地保有税の問題を含めて地価の値下げについて討論がされたが、意見が出たが、何のことはない、まさに大山蠢動ではなかったか。このことは再び土地による神話を温存させることになりますよ。まさにほほ笑みを持って彼らは乾杯をする、そういう事態さえ予想されると私は思うのです。  この際、総理に、そういう事態にならないためにも、国民的な期待を一つは裏切らない、第二には、まさに現状の固定化にならない、第三には、土地神話でこの時期ほほ笑んでいるような人々をつくらせない。いわゆる土地によって膨大な利益を得た者が、国会で論議をしても何のことはない、この程度かということにならない、そういうためには政府の毅然たる姿勢が私は必要だ、こう思うのです。  この際、総理に、新土地保有税政府案提案に至る、同時に提案をする際、私はできれば事前に与野党間の協議をするという場があってもよろしい、新土地保有税について、こんな気持ちさえ持っている一人ですけれども、総理の見解をお示しをいただきたい、こう思います。
  170. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 土地の問題につきましては、総体的な考え方は委員の御質問を聞きながら私も同感できる点はたくさんございます。土地神話を崩さなきゃならぬということ、土地を持っておる者ばかりが今の制度、仕組みの中からいいことをするのは社会的不公平の拡大につながる、まさにそういう発想に立って土地基本法もできたのでありますし、土地政策というものも総合的にできておるわけであります。  今回、土地政策というものは、何回も申し上げるようで恐縮ですが、税制のみならず土地の取引の規制とか、あるいは関連融資の規制であるとか、あるいは遊休未利用の土地の利用の促進であるとか、いろいろなことに各党の御理解もいただきながら多方面な政策努力が積み重ねられてきておることは御承知のとおりと思います。  今回、固定資産税でいいではないか、あるいは現在の地方税の制度の中でいいではないかという議論もたくさんありました中で、国税として土地保有税という一つの新しいものをつくって進めていくんだということを決意をし、政府税調の答申があり、自民党の大綱が決まり、そういったものを踏まえて政府が初めて新税として出していこうとしておるわけでありますから、これは一つ努力の結果であると私も思いますし、同時に、そういう努力をするときに、これは極端な言い方かもしれませんが、土地でもうけた土地成金だけを対象にという発想でいろいろやりましても、結果として中小企業の方にその大きな影響が行き渡ってしまったり、あるいは今後の、今までの営業利益の面等から考えると、どこで一体妥当とし、どこで我慢をしてもらう基準の線を引くかということについても随分いろんな角度から議論がなされたわけであります。  私は、そういうことを総合的に判断していただきまして、税制のみならず、あらゆる問題の政策努力を積み重ねて土地対策には取り組んでいきたい。関連融資の問題もこの四—六月は前年と比べて低下したという実績も上げておるわけでありますから、いろんな政策努力の中で土地政策に真剣に取り組んでいきたいと考えております。
  171. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 終わります。
  172. 越智伊平

    越智委員長 これにて加藤君、串原君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  173. 二見伸明

    二見委員 総理、私もただいま加藤委員が提起されておりました新土地保有税につきまして、細かい議論は法案が国会に提出された段階で行いますけれども、大筋の議論だけはしておきたいと思います。  私は、土地対策の目的というのは、一つには、土地を持っていれば必ずもうかるという土地神話を打ち破って地価を下げることが土地対策の大きな目的の一つです。もう一つは、いわゆる遊んでいる土地を有効利用する、これも土地対策の大きな柱でなければならないと思います。そうしたことで新土地保有税を私たちは導入すべきであるという主張をしてまいりました。  ところが、自民党の新土地保有税の構想を見てみますと、地価を下げ、遊休地の有効利用を図るようなそうしたものでは決してない。例えば税率が〇・二%、一年後には〇・三%、しかもこれは法人の場合には損金に算入されますから、法人の負担は〇・一とか〇・一五とか極めて低いものでありまして、企業にとっては痛くもかゆくもない負担だと私は思います。  総理は、この新土地保有税を導入することによって国民が納得するような程度にまで地価が下 がるというふうに実感されているのかどうか、まず冒頭に伺いたいと思います。
  174. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 土地問題につきましては、冒頭からこれでは何にもできないと決めてかからないで、我々はいろいろな努力を積み重ねて、その総合的な結果として適正な価格になっていくような努力を続けていかなきゃならぬという一環で、今度も、先ほども申し上げましたが、固定資産税で片つくではないかという御意見もありましたけれども、そうではなくて、新しい国税として土地保有税を新設させていただきたいということを訴えたわけでございます。  税の問題は、いつでもこれは愉快な楽しい話ではございません、それは負担をしてもらわなきゃならぬわけですから。しかし、そのときに、今おっしゃるように土地さえ持っておれば、この土地を利用することによって、売ることによって値上げを待っておっていこうという人と、その土地の上で営業をしておる中小企業のような方もあるわけですから、全国いろいろな場合を考えて、そして税だけではなく、ほかの政策も全部踏まえて片つけていかなければならない。  土地が上がってきた背景の一つには、やっぱり金融の過剰があったと思います。銀行のみならず、ノンバンクの方を調べても、ノンバンクだけで信用金庫よりも上回ったという結果も最近わかってきておるわけでありますから、こういったところの指導を徹底して、そういった流動性が流れていかぬようにするとか、あるいは先ほどおっしゃったように、未利用地が東京圏という範囲で見て二万九千ヘクタール、中部圏で見ると八千ヘクタール、いろいろあるということもわかっております。こういったものを有効に利用するにはどうしたらいいかとか、いろいろな政策を積み重ね、組み合わせて土地政策はしていかなければならない。税制調査会の答申のみならず、土地政策審議会からもそういった土地政策立場に立っての答申も過日いただいておるわけでありまして、そういったものを全部踏まえて政策努力をしていかなきゃならない。その一環が、今御指摘になっておる土地保有税の新設ということでございます。  私はその目標に向かって、全部の政策を組み合わせながら努力を続けていかなければならないと決意をいたしております。
  175. 二見伸明

    二見委員 土地対策は税制だけでないことは事実であります。不動産融資に対する規制もあります。今総理があらゆる手だてを打つんだとおっしゃられたけれども、それでは一点伺います。  ことしの春の予算委員会で、私は土地問題で総理とここで議論をしました。そのときに、土地が高騰しているところに監視区域という指定をする制度がある、しかし監視区域では後追いなので、もっと厳しい規制区域の指定をするべきではないか。それは県知事がやることになっている。しかし、県知事は自分の選挙を抱えて、なかなか規制区域だなんという厳しい伝家の宝刀を抜くだけの度胸がない。だから規制区域、土地が高騰している、高くなりそうだ、土地投機が行われている、土地投機が行われそうだというところには総理大臣が規制区域を指定すべきではないか、私がこう申し上げたときに、総理はこのことについて言を左右にして明確に言われなかった。法律を改正して、土地高騰のおそれがあるところ、あるいは土地の投機が行われるようなところ、現に行われているようなところには総理大臣が規制区域の指定をするというふうに法律をお変えになりますか。そうすれば、それだけでも地価は下がる傾向になってくると思います。いかがですか。
  176. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私は土地問題のときに、そういった監視区域をさらに徹底するということを言いますが、地価の値上がり状況を見ておると後手後手に回っておるのではないかという印象を率直に持ったわけでありますから、土地対策問題の閣僚会議のときに、規制区域のことも念頭に置いて対応を進めてもらいたいと私は言いました。そのことが予算委員会で御議論になって、できもしないことを言うなという御意見や、それから委員のように、法律を変えてまでやったらどうかという御意見や、いろいろいただいたこともございました。私は、それは地方の首長が一番地方と密接な行政を持ち、地方の実情をわかっておるんですから、そういったまた制度も今あるわけでありますから、そういったことを念頭に置いて強力に指導していただくように指示もいたしたわけでございます。
  177. 二見伸明

    二見委員 地方のいわゆる知事さんにはそれができないから、総理大臣がやりなさいと私は申し上げているのです。そのためにそういうふうに法律を変えなさいというふうに私は申し上げているのです。  それでは論を進めますけれども、いわゆる税率や基礎控除等についてサラリーマンからの批判は大変厳しいものがあります。私は、自民党がこの案をまとめる段階では、経済界などいわゆる新土地保有税を納める立場の人たちに立って、何とか税負担が軽減できないものかという立場に立ってこの新土地保有税は求められたんだと思います。今度政府は新土地保有税を法律案化するわけですけれども、自民党案をつくる段階では経済界などの意見を聞いて書いた、今度は批判をしているサラリーマンの意見を十二分に聞いて私は法律案はつくるべきだ、自民党が出した例えば〇・二とか〇・三とかあるいは十億円とか、そうした数字にこだわるのではなくて、むしろより実効性のあるものに私は法律案はすべきだ。極端な言い方をすれば、自民党の税制改革大綱、これを修正して、より実効性のあるものにすべきだと思うわけでありますけれども、その点についてお答えをいただきたいと思います。  と同時に、国土庁長官が規制区域についていろいろお考えがあるような耳打ちを総理にされておりましたので、規制区域について総理大臣が権限を持つように法律を改正される意思があるならば、そのことも改めておっしゃっていただきたいと思います。
  178. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理へということでありますが、主管閣僚として私からお答えをさせていただきたいと思います。  自由民主党におかれては十二月六日に土地税制改革大綱を党議決定をされたわけでありますが、委員の御指摘にもかかわらず、私は、税の負担の公平の観点及び土地選好を弱めていくという観点から、土地の有利性を縮減することが必要であるとして、土地保有税の創設を初めとする保有・譲渡・取得の各段階にわたる具体的な見直し案を決定されております。その内容というもの、しかもその中において、まさに優良住宅地の供給促進あるいは居住用財産を売却した場合の個人に対する配慮、こうした各種の軽減税率の特例措置についても大幅な拡充措置を盛り込んだ案を、考え方をまとめられたというものを、私は素直に評価をいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、政府立場として、政府税制調査会において今行われている御論議の結果を踏まえた、もちろん与党とも御相談をいたしますけれども、政府税制調査会で行われております審議の結果というものを踏まえた法律案を具体的な形で取りまとめ国会に提出をさせていただくということでありまして、私は、委員がお述べになりましたような、偏った視点でこれが組み立てられているとは考えておりません。
  179. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 二見先生にお答えをいたしますが、監視区域につきましては、実は先ほど総理が後手でおくれないようにということで、一〇%上がれば監視区域に指定をする、それから二〇%上がれば届け出面積を百平米にするということに改めておりますから、今度はそういうことはないと思います。  規制区域につきましては、国土利用計画法によりまして、実は総理は指定できますけれども、実は知事がついてこなければ何もできないわけです。  そんなことでございまして、現在考えておりますのは、今の規制区域でできるかどうかという問題でございますが、規制区域の問題というのは二 つございます。一つは地価の凍結です。それからもう一つは必要な土地が手に入らないというこの二点ですが、これは実は検討しまして、いわゆる地価が例えば年成長率ぐらい、あるいは物価の値上がりぐらいは面倒見れるということに考えましたし、またもう一つ、欲しい土地は公共の土地ならばできることにする、こんなことでございまして、実は知事と話しましたが、なかなかうんと言いません。もう恐らく土地局長、十県ぐらい話しましたが、最初はいいのですが、最後になりますと、やっぱり経済界は大変な混乱を起こす、そんなことでございまして、だから何とか運用を改めましてやりたい。今全力を挙げております。
  180. 二見伸明

    二見委員 どうも地価は下がりそうにはない。ローンで家を買った者にしてみれば、私はローンで家を買った三十坪の土地に新土地保有税をかけるなんて、そんなことは全く考えておりませんし、恐らく政府案もそんなことは考えてこないだろうと私は思う。ローンで家を買った者は、今金利が上がってまいりましたから金利負担が大変だし、地価が上がって固定資産税が高くなって、それこそローンで買った者は、マイホームの者も厳しい。家を持ってない者は土地も買えない。  じゃ家賃が安いか。安くありません。例えば東京板橋区の五十八年建設の公団住宅は三DKで十二万四千六百円、横浜市の五十六年建設の公団住宅は三DKで十万一千円です。高い、これも。ところが、最近、港区の公団住宅団地、これは南青山、二LDKの家賃、これが月額二十八万三千四十四円。しかもこの団地は傾斜家賃のため、平成四年四月には三十万六千十三円になる。公団住宅ですよ、これが。これはどんな人が住めるんですか、総理。普通のサラリーマン、住めますか。三十万の家賃で住めますか、普通のサラリーマンが。
  181. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これはよほどのことがない限り、自分の所得の中の二割程度というのが家賃としては目指すべき標準になっておりますから、それの払えるサラリーマンの数というのは、ちょうどそういう公団住宅の数が少ないと同じように極めて少ないんじゃないか、こういうふうに思って聞いておりました。
  182. 二見伸明

    二見委員 土地が高くて買えない。ちょっと良質な住宅に入ろうと思えば、一番新しいので三十万だ。古い住宅でも十何万だ。普通のサラリーマンに住めるものじゃありません。これは国が何とか手当てをしなければならぬと私は思います。  建設大臣、お尋ねをいたします。  建設省は、ことしの九月に発表した平成三年度の税制改革要求の中で、昨年に引き続き家賃控除制度の創設を盛り込んでおります。税金で何とか高い家賃分は負担をしたいという建設省の意図だと私は思います。大蔵省はなかなかこれは厳しいことを言っているんだけれども、建設大臣、どうですか、思いっきり暴れまくってこれをやるように頑張りませんか。御答弁願います。
  183. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 お答えいたします。  先ほど来、公団住宅が高くて一般庶民が入れないとかいろいろなことがございました。今、土地の高騰によりまして住宅政策に大きな影響を与えておるということから、私どもは、より多くの住宅宅地を供給することによってさらに潤沢な住宅を供給したいということから、さきの国会で三つの法案の改正をさせていただきまして、今回の税制につきましても、遊休地、未利用地その他についていろいろとこれを吐き出していただくような施策を講じておりますので、長期的に今後住宅宅地の供給を通じまして土地対策または住宅対策に処していきたいと考えております。  ただいまの住宅の家賃控除についての御示唆は、これは二見さんいつも御指摘のところでございまして、私ども建設省としてもそのような方向でいつも努力をさせていただいておるところでございまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  184. 二見伸明

    二見委員 これはぜひとも建設大臣に二肌も三肌も脱いで頑張ってもらう以外ないと思うのです。  総理大臣、実は家賃補助制度というのは、日本にはありませんけれども、イギリスやアメリカ、フランス、ドイツ等ではむしろ当たり前の制度になっている。日本にはこの制度はない。しかし、日本でも地方自治体では、例えば東京の江戸川区では、アパートを取り壊す、こちらへ移らなければならないという住みかえる場合には、家賃の格差が出てまいりますから、その家賃格差分だけは補助をしようとかという住みかえの家賃の補助というような制度は、東京の江戸川区、江東区、あるいは神戸市、いろいろなタイプはある。一律ではないけれども、地方自治体としてそうした工夫を始めてきている。  総理、私たちはかねてから家賃控除制度、あるいは税金を納めていない所得の低い方々には家賃手当とも言うべき家賃補助制度というのをずうっと主張をし続けてきた。私は、この家賃控除あるいは家賃補助制度というのはこれから前向きに検討してしかるべき課題だと思いますけれども、総理大臣の御決意をお伺いしておきたいと思います。
  185. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理からということでありますが、主管閣僚として私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  またおしかりを受けるのかもしれませんが、私は率直に申しまして、どうしても従来からの御質問に対してお答えをいたしました疑念というものは抜けません。それは何かと申しますと、実際上大都市居住者に対する補助が非常に大きな部分を占めるであろう、今一極集中排除を考えなければならない我が国として、この施策は選択すべきものなのかどうかという基本線でございます。また、私は、従来から財政当局、税制当局としての立場で申し上げておりますような細かい議論を繰り返すつもりはありませんが、今委員が述べられましたように、仮に例えば家賃手当というものを考えました場合、私は、南青山にだれもが住めるような家賃ができるとはこれは思いません。しかし国としては、やはり住宅費負担の軽減というものは、公営住宅等の建設にいかに努力をするか、また、融資や税制を活用していかに賃貸住宅の供給コストを、良質なもののコストを低減することに努めるか、こうした政策努力に向かって励むべきであると思います。  そうした視点から申しますならば、御党が例えば国有地あるいは公務員住宅の調査をされ、その結果我々にいただいた提言等は非常に我々として有益なものと拝見をいたしておりますが、残念ながら、この家賃手当、家賃控除についてだけは、一極集中をますます固定化する危険性の方が強いと私は思います。
  186. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今大蔵大臣が詳細な御答弁をいたしましたけれども、家賃の手当というものにつきましては、家賃というのは今一般的に私が考えましても、食費とか被服費というようなこれは生活費の一部でありますから、その中でそれだけを取り出してということにいろいろ問題がありますので、例えば優良な住宅を提供するための公営住宅の問題とか、あるいは融資の問題とか税制の問題とか、すべてそういったことについての努力を毎年続けておるところでございます。
  187. 二見伸明

    二見委員 私は、改めて家賃補助制度、家賃控除制度というものをこれからも政府が真剣に考えることを要求すると同時に、本予算の段階でもこの議論はさらに継続をいたしたいと思っております。  中東問題について若干お尋ねをいたします。  さきの臨時国会の論議を通して共通の認識となったのは、世界の平和のために日本も物、金だけではなく人の面でも貢献する必要があるということ、そして、人の貢献は自衛隊の海外派兵という憲法違反の物騒なものであっては絶対にならないということ、これが臨時国会での共通の認識だったと私は思います。私は、今、日本が人の面でも物の面でも金の面でも貢献ができないということになりますと、日本は国際社会で孤立をいたしますし、世界の批判を受けなければなりません。  ところで、補正予算には、いわゆる九月に政府 が追加決定した十億ドルの湾岸協力費が入っております。これはこれから支出されるものですね。まだ支出はされていない、これから支出されるものです。私はこの十億ドルというものの性格を考えてみたときに、これが湾岸地域の平和に役立つものであり、世界が歓迎し、国民の納得の得られるものでなければこの十億ドルはならないと思います。しかもその使い道というのは、憲法の精神に合致し、いやしくも武器弾薬等に絶対に使われてはいけないと私は思います。しかし、この十億ドルがどういう性格のもので、どういう原則のもとに、どういう使われ方をするのかということについては明らかではありません。これはぜひとも明らかにしていただきたいと思います。
  188. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今御審議をいただいております十億ドルに関しましては、湾岸平和基金に拠出されまして、資機材の調達、輸送及び備えつけにかかわる協力については、防暑機材、水関連機材等を対象としておりまして、資金協力につきましても各国の輸送関係経費でございまして、武器弾薬の購入に使用されることは絶対にございません。
  189. 二見伸明

    二見委員 これは金の面での国際貢献の一つのティピカルな事例であります。それだけに、この十億ドルの使い方がもし日本の、日本国民の意図に反して使われるようなことがあったならば、それは大変なことになる。万が一にも武器弾薬には流用されないという保証があるのかどうか、その点もあわせてもう一度お尋ねをしたいと思います。
  190. 松浦晃一郎

    松浦政府委員 今大臣から御答弁ございましたように、今回の拠出金の千三百億円が湾岸平和協力基金としてGCCに払い込みました後、その使い方でございますけれども、基本的には今大臣が申し上げましたように輸送関連の資金協力と防暑機材、水関連の物資協力でございますけれども、その具体的な使い方に関しましては、基金の運営に責任を有しております運営委員会により決定されることになっております。しかし、この運営委員会は日本政府代表とGCC代表から構成しておりまして、日本政府の代表が、今先生が御指摘のような点が絶対そういうことにはならないように、きちんと日本政府代表を通じて確保してまいりたい、こう考えております。
  191. 二見伸明

    二見委員 これはこれから支出されるわけであります。私たちもこれが武器弾薬等に絶対使われないように厳しく監視をしなければならないし、また政府からも、その使途について間違いがないように、また国会にも御報告を適時いただきたいというふうに思っております。  それで、さらに論を進めてまいります。  これは外務大臣にお尋ねすることになりますが、去る十一月二十九日に国連安保理において決議六百七十八が採択されました。これは一月十五日に期限を区切り事実上イラクに対して武力行使を容認した内容のものであります。その翌日、ブッシュ大統領はイラクに対し米、イラク両国外相の相互訪問、直接対話を提唱し、これをイラクが受け入れ、また十二月六日にはイラク政府が外国人人質を全面解放する、こういう事態になりました。私は、中東危機問題というのは新たなる局面を迎えたと思います。  しかし、報道するところによれば、クウェートに侵攻しているイラク軍は五十万と言われている、サウジに進駐している多国籍軍アメリカを中心にして四十八万、両方合わせて約百万の軍隊があそこに対峙している。これは大変危険なことであります。私は、武力行使はどんなことがあっても避けなければならない。そのために、日本はありとあらゆる努力、日本の命運をかけてまでこの武力行使が絶対に行われないように努力をしなければなりません。  そうしたことを前提として、万一あってはならないことではあるけれども、我が国の努力むなしく武力行使が行われた場合、この武力行使というのは国連憲章の何条に基づくことになるのか。三十九条なのか四十三条なのか、これはどういうことになるんでしょうか。
  192. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 憲章の関係でございますので、まず私の方からお答えさせていただきたいと存じます。  御承知のように、今回採択されました決議六百七十八号は、その前文の末尾におきまして、安保理は国連憲章第七章のもとに行動しというふうに規定されております。そして主文の二項におきまして、長くなりますので途中は略させていただきますが、あらゆる手段をとる権限を加盟国に与えるというふうに規定しているわけでございます。そして、このあらゆる手段、必要な手段の中に武力の行使も含まれるというふうに解されているわけでございます。  そこで、この根拠は憲章上の何条であるかという点のお尋ねでございますが、国連憲章の第七章に基づくということは先ほど申し上げたとおり明らかでございまして、この点について異論はないわけでございますが、しからば七章の具体的にどの条に基づくかという点につきましては、安保理構成国の間にも必ずしも一致した考えはないようでございます。  なお、国際の平和及び安全を維持しまたは回復するため加盟国に対しまして武力の行使を含む必要な手段をとることを容認する決議を行う権限は、国連憲章第七章によりまして安保理に与えられているというふうに解されます。決議六百七十八号が国連憲章第七章に基づきイラクに対する武力行使を容認しているという解釈につきましては、おおむね本件決議を採択いたしました安保理の主要理事国の共通の理解であるというふうに承知しております。
  193. 二見伸明

    二見委員 それから、もし武力行使の決定は、これはだれが行うのでしょうか。多国籍軍がそれぞれが自主的な判断で武力行使を決定するのか、お互いに相談し合って決めるのか、あるいは新たなる安保理決議を必要とするのか。私がこれを伺うのは、アメリカが独自の判断でクウェートに進攻するようなことがあったんでは大変はた迷惑になる。私たちは武力行使はどんなことをしてでも避けたいという立場からそういう疑念を持っているわけでありまして、その点についてはどういうことになりますか、お答えください。
  194. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の点につきまして、結論から先に申し上げますと、今回、もし将来不幸にして武力の衝突ということになります場合に、この安保理の権威のもとに何らか新たな決議が要るかどうかという点につきましては、今回の決議で明らかなとおり、加盟国に対しまして武力の行使を含みますあらゆる必要な手段をとる権限を与えるということが明記されておりますので、新たな決議は必要ないというふうに考えます。したがいまして、現在湾岸地域に戦力を展開しております加盟国が、その判断で、必要があれば武力の行使ができるということになる、そういう仕組みであると……(二見委員「独自にですね」と呼ぶ)はい、独自にでございます。  ただ、その場合に、相当数の国が兵力を展開しているわけでございますので、その間でどのような連絡調整、協議等が行われるか、現段階では的確に申し上げる材料を持っておりませんけれども、常識的に考えれば、そのような関係国の間で何らかの連絡調整は行われるのではないかというふうに考える次第でございます。まだ幸いにしてそのような状況に立ち至っておりませんし、現在、平和的解決の最後の努力が行われておるわけでございます。一応仮定の問題といたしまして一般的に述べれば、以上のようなことであろうというふうに考える次第でございます。
  195. 二見伸明

    二見委員 それから、決議の三項では、武力行使が行われた場合にはすべての国が適切な支援を与えるよう求める、こうなっておりまして、我が国政府はこの決議を支持することを明らかにいたしております。もし武力行使という最悪の事態になった場合に、我が国は支援の義務を負うことになるわけでありますけれども、この点について外務省はどうお考えになっているのか。まず、支援の義務を負うことになるのかどうか、また、その場合どういう支援が予想されるのか、そのことについてもお尋ねしたいと思います。
  196. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 先ほども申し上げましたとおり、現在、米・イラク間の直接対話の開始が決定されまして、本件危機の平和的解決に向けまして努力が行われておりますので、武力行使を前提とした論議はしにくい面があるわけでございますけれども、一般的に申しますれば、次のようなことになると思います。  国連安保理決議六百七十八号の主文の第二項は、イラクが明年一月十五日以前に累次の安保理決議を十分に履行しない場合、クウェート政府協力しております国連加盟国に対しまして武力の行使を含むあらゆる必要な手段をとる権限を与えたものでございます。そして、先ほど委員指摘のとおり、主文第三項におきましては、これを受けまして、主文第二項を履行するためにとられる行動に対し、すべての国家が適切な支援を与えることを要請しているわけでございます。この要請は、国連加盟国に限らずすべての国家に向けられておりますが、国連加盟国につきましては、この要請に基づきまして可能な範囲で適切な支援を与える一般的な義務を負うものと解されます。  ただ、この決議そのものでも明らかでございますけれども、しからば、個別具体的な措置を、あるいはその内容というものまでは規定しておりませんので、そのような特定の具体的な措置をとる義務まで負うものではないというふうに考えております。
  197. 二見伸明

    二見委員 総理、いずれにいたしましても、この最悪の事態だけはどんなことをしても避けなきゃならぬ。アメリカイラクの間で話し合いがある。これはいろいろな話し合いがこれから行われて、この紛争解決というか武力行使、武力衝突を避けるためにいろいろな各国間の外交努力がこれから行われてまいります。私は総理に、日本もそれこそ国連をかけて武力解決を一〇〇%回避するんだという、そういう強い決意もとにありとあらゆる努力、ありとあらゆる外交チャネルを通しての懸命なる努力をぜひともお願いをしたい、こう思います。総理の御決意を承りたいと思います。
  198. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸危機が起こりましたその後でいろいろな国連決議が行われるたびに、これはやはりここに平和の破壊者がいる、この局面を変えなければならぬ。先ほど、これは言葉じりをとらえるようでまことに申しわけありませんが、アメリカがほしいままに武力行使されたら大変はた迷惑するというような御発言がございましたが、イラククウェートへあんな武力侵攻してくれたがために世界じゅうがこんなに迷惑しておるんだという問題の根源を見据えますと、私はこの局面を転回するかぎを持っておるのはイラクだということを何回も思い、同時に、この解決はもう二度と武力紛争の拡大であってはならぬということを固く私自身は信じております。  したがいまして、あの問題が起こった直後に、アメリカを中心としてあの辺の平和を回復したいという国々がいち早く多国籍軍として展開しましたこと、これも戦争の抑止、より多くの平和の破壊というものを現実的に、具体的に防いでおるんだ、もしあれがなかったならば戦火がどうなったかということも予測できない大変な不透明な状況であったとすれば、あの危機が一応、危機の安定化という言葉があるかどうか知りませんけれども、一応膠着状態に入って、その中で話し合いをするという冷静な余地があの地域に生まれてきたということも私は非常に評価をするわけです。  そうして、国連の六七八の決議があって、いつまでもイラクが反省を示さないときには国際社会は、もう仕方がない、それじゃ既成事実として認めるかというようなことではなくて、何とか平和的に解決したいという強い意思の表示があったものと私は受けとめております。したがって、その直後人質の釈放もあった、アメリカが直接対話を呼びかけた、直接交渉の機運も出てきた。日本の政府立場としても、私は、私とラマダン副首相との対話の継続として意思を直接イラクへ伝えるように、ラマダン副首相というよりもサダム・フセイン大統領に直接、日本の考え方はあくまで平和的に解決しなければならぬということ、アメリカを初めとする国連の意思が強いものであるということ、それに従ってもらいたいというような気持ちも伝えてありますし、同時にアメリカにも、日本はそういった平和解決の気持ちを持っておるが、せっかく直接対話のイニシアチブをとられたこと、これは大きな局面転回のかぎを握るものでもありますので、粘り強い平和的解決への努力を強く望むという意思も伝えて、さらにあらゆるレベルの問題で努力を続けていくところでありますから、御指摘決意は強く持っておるところであります。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  199. 二見伸明

    二見委員 私も、はた迷惑の大もとイラククウェート侵攻であることはそのとおりです。私もあの暴虐には心から憤りを感じておりますし、イラクが一日も早くクウェートから撤退することがこの問題の最大の解決方法だと思います。だからといって、一月十六日、十五日が期限ですから、十六日以降直ちにというようなはやった気持ちをアメリカに持ってもらっちゃ絶対に困る。十五日以降であろうとも、もし解決しなくても、十五日以降であろうとも粘り強い平和解決への努力アメリカにもしてもらわにゃ困る、そのための働きかけを日本はアメリカに厳重に言ってもらいたいと私は思っております。  話を、論点を別にいたしたいと思います。  ソ連支援です。ソ連への支援問題も、私は大きな国際政治の課題になっていると思います。十日のEC蔵相会議では、対ソ食糧援助を緊急に実施すべきだとの方針で一致しまして、具体策としては、一九九一年に十億ドルの援助を行うことが採択されました。また、九一年にソ連は四十二億ドルの輸入が必要という分析もしておりまして、EC、日本、米国の支援が必要だという話も行われております。アメリカも、近く従来の政策を転換して、最恵国待遇をソ連に付与し、ソ連への緊急支援措置を決定するということを明らかにいたしております。  政府もきのう、きようの御答弁の中で、食糧援助の意向を固めたようであります。しかし、日本の対ソ支援というのは各国から比べてみるとまことに微々たる、スズメの涙のようなものであります。例えば、日本は医薬品二十六億円の援助を補正予算に計上しました。食糧援助は、これは今検討中で、民間、自治体の対ソ支援のために外務省に相談の窓口を開設した、これが日本の対応だ。  じゃあドイツはどうか。旧西ベルリン市の備蓄食糧、医薬品五億八千万マルク、約五百二十億円、これを輸送を開始しました。ドイツ統一に伴うソ連軍撤退支援に百五十億マルク、約一兆三千四百億円の援助をする。ECでは、ただいま申しましたように十億ドル、約一千三百億円の緊急食糧援助を固めた。フランスでは五十億フラン、約一千三百億円の金融協定を締結した。スペインでは十五億ドル、約千九百五十億円の借款供与協定の締結、イタリアでは経済再建支援に三兆リラ、約三千六百億円の政府保証融資実施を表明した。アメリカソ連への最恵国待遇付与と政府信用供与を前向きに検討し、医薬品、食糧の緊急援助も積極的姿勢を表明した。各国はもうソ連に対する支援態勢はまことに大がかりなものであります。スペインやイタリアは、経済力では日本よりもかなり下回っている、小さな国ですら日本よりも大型の援助をしようとしている。  そうしますと、私はもうここいら辺で、総理は相当規模のソ連に対する支援の意思というものを、基本方針というものを明示してもいいんじゃないかと思いますが、総理の御決意はいかがでしょうか。
  200. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連に対する支援の問題についていろいろな角度からの議論があることを私もよく承っております。また、ごく最近も直接ソ連へ行ってゴルバチョフ大統領とも会って帰ってこられたある代表団のお話を私も承りましたが、日本が今やろうとしております支援については、ソ連の経済の改革に本当に役に立つような、ペレストロイカが真に成功していくようなことに対す る技術協力、知的協力、支援というものが一番望まれておるんだということです。そうして食糧その他についても、ソ連は豊作であったということはどなたも認められる。それが店頭の国営の売り場には姿を消してしまっておる。しかし自由市場にはたくさん出ておる。値段はただしたくさん高くなっておる。どうやって運送し、どうやって運んだらいいかということを日本の専門家の意見も欲しいし、日本が現に輸送に使っておる、こういうようなもの等がソ連にはないんだというようなお話し合い等もされておるという報告も聞いております。  私は、日本とソ連との関係、ドイツとソ連との関係は、東西ドイツを抱えたドイツの立場と、そしてユーラシア大陸のこの東端で北方領土問題を抱え、東西関係のまだ残滓の中で北方領土という問題を抱えておる日本の立場ソ連には十分伝えながら、ソ連のペレストロイカには協力し、そして前進をしていきますけれども、人道的立場に立って今やらなければならぬことは、医薬品の問題とか緊急援助のことについては、何がどの角度からしたら一番喜ばれるのかということについて今鋭意検討をし、それをしていこうと思っておるところです。相当思い切って、ドイツやあれ並みの多額のということになりますと、これはこの間のサミットのときの議論にもありますが、ソ連自身にもひとつどのような経済改革をして、例えば他国に対する軍事援助の問題とか、国内の軍事費の問題とかあるいは自由経済、自由貿易、自由体制に変わっていくんだという明確な意思表示とその態度の説明、同時に世界の緊張を解くために、日本も東西関係を乗り越えて世界の統一とソ連のペレストロイカの成功に全力を挙げて思い切った協力をしたい、拡大均衡でやっていきたいということで、この一年間に四回も調査団も迎え入れて、すべての調査やまたこちらからも専門家を求められれば派遣して相談に応じておるわけでありますから、肝心なこともひとつ忘れないように、拡大均衡の立場の中で、真に友好的な、真に安定的な関係を打ち立てていきたいという願いもあわせてこの際申し上げさせていただきたい、こう思っております。
  201. 二見伸明

    二見委員 総理ソ連は、つい最近までは日本にとっても西側にとっても軍事的に脅威の存在であった。ところが、大変な激変で、ヨーロッパにとってはソ連の軍事的脅威というのはもう事実上ないのだと私は思う。日本のこの周辺では、それはいろいろ、例えば海の軍縮が進んでないとか、それは防衛庁の中には今まだ、防衛白書の中からはソ連の軍事的脅威は消えたけれども、潜在的には、おなかの中にはそういう考え方が全くないわけではないだろうと思う。それはわかる。  しかし、今はソ連軍事力が脅威なのではなくて、ソ連政治的不安、経済的な行き詰まり、これがまさに国際社会の不安要因になっておる。極端な誤解を恐れずにあえて言わせていただくと、要するに社会主義経済機構というか体制というのは崩れてしまって、しかも市場経済に移行しようとしても、これは全く今まで経験のない分野に、世界に入ってくるわけです。誤解を恐れずに言うならば、日本の終戦直後、経済統制、軍事統制経済が完壁になくなってしまってめちゃくちゃになってしまった。それが今ソ連の経済の実情じゃないだろうか。物があっても流れないのは、ルーブルに信用がなくてストックしちゃうということもあるのだろうと思う。物々交換ですね。そういう考え方だって全くソ連社会の中にはないわけはないだろう。  だから、今ソ連がこのまま経済問題で行き詰まりになる、政治不安が深まるということは、かえって国際不安の種になる。私は、ソ連の経済的困難の打開というのは、ペレストロイカの成否に重大な影響を及ぼすだけではなくて、国際社会の安定にも大きな影響を与えるものだと思うのです。北方領土問題はある、確かに。私は北方領土はどんなことをしても返してもらわなければならぬと思うけれども、しかし、やはり金融支援など中長期的な協力態勢、ソ連の経済を、経済機構を、経済構造を改革できるような金融支援を含めた中長期の協力態勢というのは絶対必要なんだと思う。  総理、私は、総理政府が今まで政経不可分の態度をとってきたことを承知しております。北方領土返還が我々国民の悲願であることも十二分に承知している。しかし、北方領土が返還され、日ソ平和条約が締結されない限り、金融支援を含めた中長期の経済構造の改革に手をかすような支援は絶対できないんだと入り口論でシャットアウトしてしまったならば、私は実質的な対ソ支援というのはできないのではないかと思います。その点については総理大臣はどういうふうにお考えですか。あくまでも入り口論に固執するのですか。私は北方領土は返還してもらわなければならぬということを大前提としながらも、あくまでもこれに固執し抜いていくのですか。その点、いかがでしょう。
  202. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ソ連が今一番必要とするものは、先生今御指摘されたように、社会主義的な統制経済から自由主義的な経済に今移り変わりつつある。従来の経済の仕組み、特に物の輸送とか、あるいはせっかく豊作だということがわかり、生産されたものが市場に姿をあらわさないというこの現実。ただ、自由市場の方には姿をあらわしておるということ。この辺のところの仕組みをどのように日本が協力をしてまず解決をしていくのか。ソ連から一年に四回もいろいろな調査団が来て、中小企業庁や職業訓練所や運輸省や、いろいろなところを見て回り、歩き、相談に乗ってほしいということは、ソ連のペレストロイカ成功のためにそこが一番基本的なところであると私どもは受けとめておるのです。だから、そういったものの協力をして、物が流れるようなお手伝いはまずしなければならぬということ。  同時に、このごろはますます第一線でお困りもあるというから、今度の補正予算にも一部計上してありますように、医療品なんかの緊急援助のことについてはしなきゃなりませんし、人道的な立場という面から諸外国が行っておるような援助にについても、日本としてなし得る立場、なし得る方法は何かということを今いろいろな立場で検討を加えて、それはしようということです。しないと言っておるのではありません。  ただ、北方領土の問題については、東西関係が本当に終わった、新思考外交を志向し、ソ連がやってくださるならば、それをヨーロッパだけで目に見えるようにやっていかないで、アジア・太平洋地域でも真に友好的な安定した関係を持ちたいという国民の願いも聞いてもらわなきゃならぬし、このことは、平和条約の作業グループは始まって続けておるわけでありますし、またこの間のシュワルナゼ外務大臣とのお話でも、ゴルバチョフ大統領の訪日のときには、これを質的に転換できるような、日ソ関係を抜本的に改革するようなものにしたいんだという共通の認識は持っておるわけでありますから、それまでに人道的な問題やなし得べき技術的な支援の問題や知的支援の問題等については、日本もきょうまでと同じように拡大して均衡のとれた関係で前進をしていきたいという、こういう基本を持っておりますから、できるだけのことはしたいということを今検討しておるところであります。
  203. 二見伸明

    二見委員 私は、今ソ連が四回調査団が来て受け入れた、そういうことは悪いことだと言っているわけじゃないのです。だから、ソ連の要請があればいろいろなことを日本はやってやらなければならぬ。しかし、具体的にソ連には金がないだろうと思う。例えば金融支援をしてくれという要請があった場合に、あるいはいろいろなプロジェクトがある、それに支援してくれといった場合に、北方領土問題を入り口論として、これがある限りだめですよというかたくなな姿勢をとるのかどうか、そのことを私は伺っているのです。  あくまでも、北方領土問題が解決しない限り、それはできることはやる、やるけれども、本格的なソ連の経済構造の改革の基本にかかわるような大きな援助はできないということになれば、私は これは問題だろう。医薬品を送ったり食糧を送ったりすることは、それは当然のことなんだ。いろいろなノーハウを、市場経済のノーハウを日本が教えてやることも当たり前の話なんだ。もっと根本的な問題があるのだろう。あくまでも政経不可分でもって、北方領土問題入り口論なんだ、こう言い切っていくのかどうか。北方領土の解決は当然のこととしながらも、そこら辺を柔軟に対応できるのかどうか、そういうことを聞いているのです。
  204. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 北方領土の問題を横へ置いてしまってどうでもいいというような考え方にはどうしてもなれませんから、私は拡大均衡で、ともに解決するパッケージの中で考えてもらわないと、ソ連側にも考えてもらわなきゃならぬことが、真の安定的な友好関係をつくるためには、お互いにそうして話をし合ってできるだけの共通の認識を得ようというのでありますから、そのために必要なノーハウとか技術支援とか知的協力というものはどんどん進めてきましたし、幅広く拡大的に関係改善をしていこうということでありますから、今現在の困っていられる問題については、物資の緊急援助の問題、あるいは今体質を変えていくために、変え方が遅かったがために現に困っておる問題があるなれば、それに対する支援はいたしましょうということになっておるわけでありますから、決して絶対しないとかいけないというのではない、拡大均衡の形で進めていきましょう、こう言っておるわけであります。
  205. 二見伸明

    二見委員 先ほど申し上げましたように、国際政治で最も重要な課題は、今後ソ連問題だと思います。ソ連も体制が大きく変わった。そうした意味からも、ソ連をいわゆる今までの感覚で言えば西側の社会だ。もう西側とか東側とかという観念はそろそろ捨ててもいいのじゃないかと思うのだけれども、今ガットにソ連はオブザーバーとして入ってきましたですね。そうした国際政策協調の場にソ連を積極的に加入させることは大事だろうと私は思う。そういう意味からも、ソ連をガットのオブザーバーじゃなくて正式メンバーにすることについては政府はどう考えるのか。IMFにソ連が加入することはどうなのか。IMFに加入することによってマクロ経済の運営についてのノーハウをソ連は学ぶことができる。場合によってはIMFの融資も受けられる。だから、IMFにソ連が加入することは日本としては推進してもいいのではないか。  それから先進国サミット、これにソ連を何らかの形で参加させるようなことがこれから考えられてもいいのではないかと思いますが、三点についてはいかがですか。
  206. 中山太郎

    ○中山国務大臣 三点お尋ねでございますが、IMFの件に関しましては大蔵大臣からお答えを申し上げると思います。  まず第一に、ガットの問題でございますが、ガットのオブザーバーになることは日本政府もこれを承認したわけであります。ガットは、市場経済を前提として権利義務関係が明確に規定された国際機関でありまして、ガットに加入するためには、少なくともガット上の義務が履行可能な国内経済体制を有していることが必要とされております。ソ連の加入につきましては、まずガット加盟国として果たすべき義務に応じ得る、またその諸原則になじむような国内経済体制の整備が先決でございます。これが整備された暁には、ガットに参加することは当然可能になってくるわけであります。  また、先進国首脳会談に呼んだらどうかという御意見でございますが、先進国首脳会議も、これは世界経済の運営に主要な役割と責任を有する先進民主主義諸国の首脳による意見交換を本来の目的といたしておりまして、これに今直ちにメンバーとして参加されるというような状況にはまだ立ち至っていないと私は推測をいたしております。
  207. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 本年九月のIMF・世銀総会にソ連をオブザーバーとして招くことについて、私どもも同意をし、これを歓迎をいたしました。ただ、今加盟というお話でありますが、これはソ連自身が加盟の意思を有するかどうかの問題がまずございます。同時に、クォータの支払い、払い込み義務、自国の為替政策の適正な運営及び通告の義務、またIMFへの情報提供義務など、こうしたものをソ連が受け入れられるのかどうか、これはソ連自身の判断の問題であります。そして今日までの時点において、IMFにソ連が正式に加盟したいという意思表示をされたと我々は聞いておりません。そのむしろ前段階として、例えば大蔵省に対して協力要請のあります知的支援等、現に実行いたしておりますが、IMF・世銀に参加するしないは、オブザーバーとして我々はお招きしておりますけれども、ソ連自身からそういう希望をまだ述べられておらないと承知をしております。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 二見伸明

    二見委員 残り時間が少なくなりましたので、次期防について二、三お尋ねをしたいと思います。  政府は十二月十九日に、来年度からの次期防を策定しようとしているわけであります。そうすると、その次期防の前提となっている物の考え方はどういうのかなと私もいろいろ考えてみたのですが、恐らくこれはやはり五十一年につくられた防衛大綱だろう。しかし、防衛大綱というのは、前提となっている東西冷戦構造が崩壊してしまった現在、もう再検討されてしかるべき時代に来たのではないかというふうに私は思います。また、東西の対立が激しかったヨーロッパでも、全欧安保会議が開かれ新しい局面に入った。私はこれから、もちろんアジアの軍事情勢というのはヨーロッパと比べれば不安定であり、不確実であり、いろいろな問題をはらんでいることを承知はしておりますけれども、これから課題になってくるのは、アジアの平和と軍縮をどのように進めていくかということだと思うし、私は日本がアジアの平和と軍縮のイニシアチブにどういう態度をとっていくか、、イニシアチブをとるために何をしていくかということがこれから日本に課せられた課題だと私は思います。  私はそうした観点から、現在の防衛大綱というものを、より厳密な意味での専守防衛に徹して、しかもアジアの平和と軍縮の方向を示す防衛哲学を確立して、そうして今の防衛大綱を廃止し、新たな方針をつくるか、あるいは大幅な見直しをするべき段階に来ていると思いますが、総理大臣はこの点についてはいかがお考えでしょうか。何か十五日の安保会議議論するとかいろいろ言われておりますけれども、そうした決意はお持ちでしょうか。
  209. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 現在整備しております防衛力というものは、これは昭和五十一年の閣議決定にもありますように、あくまで専守防衛の大前提が当然のこととしてございますし、また、我が国の防衛を今の防衛力だけででき得るんだということじゃなくて、日米安保条約のもとでの、安保条約を抑止力として、そこの中における節度あるものでございますから、東西の対決のときにもそれにカウントされるようなものでもないし、力でもって日本が何かしましょうというような発想は持ったこともございません。  そして、今のこの東西の対立が終わりつつあるという現状、アジアにもそれが入ってきているということ、ソ連と韓国との国交正常化の問題、南北、北朝鮮と韓国のですが、南北の両首相の会談が続けられるということ、あるいはカンボジアに和平の兆しが出てきているということ、アジアがそれぞれに安定をしていくなれば、それはやはりアジアに空白地帯をつくらないで、日米安保条約のもとで節度ある防衛力を整備してきたということがこの地域の平和と安定にも大きく役立ってきたことは事実でありますから、そういったことも踏まえながら、安全保障会議で今検討を続けておるさなかでございますので、これは近く、予算編成作業に入るまでに結論を出さねばならぬと思っておりますが、御質問の御趣旨等も踏まえながら、専守防衛に徹した、アジアの平和と安定に役 立つものであることは間違いない、そういった前提で頑張ってまいります。
  210. 二見伸明

    二見委員 防衛大綱をつくり直すか書き直すということも視野に入れて現在いろいろ協議しているというふうに理解してよろしいですか。
  211. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 防衛大綱の取り扱いをも含めて安保会議議論をいたしましたが、要するに、あの防衛大綱ができたときというのは、既に世界がデタントの状況に入りつつあるときで、しかもそのとき二度と戦争はしない、脅威を与えるような軍事大国にはならないという防衛の理念をきちっと踏まえてできておる大綱でありますから、そういったこと等も踏まえながら今検討を続けておるところでございます。
  212. 二見伸明

    二見委員 きょうはその議論をするわけじゃありませんけれども、専守防衛とおっしゃいますけれども、最初なかったシーレーン防衛も入っているし、GNPの一%も突破しているし、専守防衛の精神という言葉は残っているけれども、実態はかけ離れたものになってきたことだけはここで御指摘申し上げておきたいと思います。  それで、もう一つ、じゃ具体的に申し上げますけれども、例えば平成四年度までの新経済五カ年計画での実質伸び率は年平均三・七五%ですね。そうすると、次期防というのはこの三・七五%を超えるのか超えないのか、これが一つの防衛の転換点だ、言葉の上ではない目に見える形での転換点だと言われておりますけれども、次期防全体の規模をどう考えるのか。私は、年平均伸び率を三・七五以下に抑えるということに、三・五とか三・四とか、抑えることについては結構なことだと思うけれども、これは防衛庁長官ですか、大蔵大臣——じゃ、厳しく査定したい大蔵大臣に伺います。
  213. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今総理から基本的な考え方を述べられ、その上で今後の安全保障会議においてこれを決する旨の御答弁がございました。私どもとして、現在世界の情勢が大きく変化しつつあり、緊張が緩和しつつある状況は当然のことながら視野におさめております。また、我が国の防衛というものがあくまでも専守防衛に徹するべきものであることも承知をいたしております。他方、既に契約をいたしました兵器等の繰り越し、いわゆる予算上のしっぽが相当大きいことも事実であります。こうしたものを全部勘案をいたしながら、次期防が大体何年計画になるのかもこれから論議をしていくわけでありますが、結果として、国民から時勢をにらんだ次期防であったと言っていただけるようにするよう努力をいたしたいと思います。
  214. 二見伸明

    二見委員 三・七五以下なんて数字言えますか。
  215. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは今、数字を云々する段階にはございません。
  216. 二見伸明

    二見委員 私は、今後の防衛を考える上で、今まで大分この予算委員会でも議論されてきたシーレーン防衛、洋上防空、この考え方はもう要らないんではないか。やめてもよろしいんではないか。来年度予算でAWACS四機、一機三百億円のを四機買いたいという意向が防衛庁にあるわけだけれども、これはまさにシーレーン防衛のために必要な兵器でございまして、もうシーレーン防衛の時代ではない。領土、領空、領海に限定された、まさに厳密な意味での専守防衛であってしかるべきだという立場からいけば、私は、シーレーン防衛を認める、それがまた防衛費の拡大につながっていくわけですから、AWACSの導入は必要ないと思うし、その根本となっているシーレーン防衛政策そのものももう見直してもいいんじゃないかと思いますが、防衛庁長官、これはいかがですか。
  217. 石川要三

    石川国務大臣 次期防についての基本的な考え方につきましては、当然その前提となる国際情勢の認識等があるわけでありまして、この点についての基本的な考え方についてはもう総理からもいろいろとお話をされておるわけでございまして、重複を避けたいと思います。  ただ、今お尋ねのシーレーンにつきましてはどうか、こういうことでございますが、確かに国際情勢の変化というものは十分認識しておりますけれども、先生も御承知のとおり、我が国は四方が海に囲まれておるわけでございまして、この海を通って私どものいろんな生活の必需品というものも入ってくるわけでありますので、そういう国民生活を維持し、あるいはまた継戦能力を保持するというためには、やはりこれはシーレーンというものは私は必要ではなかろうか、かように思うわけでありますが、ここもあわせて次期防の中で検討するわけでありますから、今この段階で云々ということにつきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  218. 二見伸明

    二見委員 あと二、三分しかありませんので、塚原労働大臣、一言簡単に聞きます。あなたも簡単にお答えください。  参議院の社会労働委員会の小委員会では与野党協議して、育児休業法の協議をしてきたけれども、与野党で話が合わずに政府がつくるべきだという考え方をまとめて、労働省にボールを投げたようであります。  この育児休業制度の内容でございますけれども、私は少なくとも一年程度の育児休暇、子育てのために一年間は休んでもよろしい、そしてその期間は所得を保障しましょう。子育てが終わって会社に戻った場合にはちゃんといすがありますよ、机がありますよという、この三つが内容となったものが育児休業制度だと思いますが、そうした内容の育児休業法を私は速やかに制定すべきだと思いますが、今国会に提出をさせ成立させるだけの御決意はございますか。
  219. 塚原俊平

    ○塚原国務大臣 ノーワーク・ノーペイの原則とかいろんな議論というものがございます。今まで参議院の社会労働委員会、小委員会をつくって御議論いただきましたり、あるいは衆議院でも各種委員、先生方からいろんな御指摘もいただきました。ボールを確かに私ども受け取らしていただきましたので、でき得る限り制度が徹底するように、またすばらしいものができますように努力をいたしてまいりたいと決意をいたしております。
  220. 二見伸明

    二見委員 以上で終わります。
  221. 越智伊平

    越智委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  222. 三浦久

    ○三浦委員 今回イラクの人質が全員解放されました。これはイラク糾弾の国際世論の勝利であり、本当によかったと思っています。我が党は、長い間にわたって御苦労された人々とその家族の皆さんに対しまして心からその労をねぎらうものであります。  しかし、イラククウェートからまだ撤退しておりません。我が党は引き続きイラククウェートからの即時無条件全面撤退、クウェートの主権の回復の実現のために全力を挙げるものであります。問題は、平和的に解決をするのか、また武力の行使による解決のどちらを選ぶかであります。我々はあくまでも国際世論と経済制裁の強化によって平和的な解決を実現しなければならないというふうに決意をいたしております。ところが、十一月の二十九日、国連安保理事会決議第六百七十八号を採択をいたしました。この決議は、これまでのイラク問題に関する十一本の国連決議と質的に違って、湾岸等に展開している米軍などに武力行使を容認したものであります。  それで、総理に確認しておきますが、この決議は、来年の一月十五日以降はイラククウェートから撤退しなかったときは米国等の腹一つイラクに対する武力行使ができる、そういう決議ですね。
  223. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 決議が書いてあります文言を読みますと、そういうことになっております。
  224. 三浦久

    ○三浦委員 海部内閣はこの決議を支持されましたね。私はその責任は極めて重大だというふうに思っています。  総理自身はその支持した理由として、イラクに平和解決の最後の決断を求める機会としてこの決議を支持したのだ、こう述べておられますね。それで、平和的解決努力を来年の一月十五日まで というふうに期限を切った、このことは世界の平和と安全にとって極めて重大な状況をもたらしていると私どもは考えています。  例えばベーカー国務長官は十二月の五日、米上院外交委員会で、イラククウェートからの撤退を拒否すれば一月十五日以降は突然に、大規模に、決定的に大軍事攻勢をかけることになるだろうと証言しているのであります。もしそうなれば、世界は極めて悲惨な戦争に突入をすることになります。ジョンソン政権下で司法長官を務めたクラーク氏は、必要ないかなる手段というのは核兵器の使用も認めたと解釈できるとインタビューで答えているほどであります。また、戦術核訓練に精通している在独アメリカ陸軍三個機甲師団も十一月の米軍増強の際、ドイツからサウジに派遣されているのであります。  いずれにしても、不幸にしてベーカー国務長官の言っているように、一月十五日以降米軍等による武力行使が行われると、それが大戦争になることは必至であります。双方で三十万人以上の死傷者が出るだろうとの予測も行われています。世界の経済と国民生活もまた重大な事態に陥ることは言うまでもありません。特に石油の七割を中東地域からの輸入に依存している日本がこうむる被害ははかり知ることができないと思います。石油価格は現在の二倍から三倍に高騰し、まさに石油パニックの再現となるでありましょう。このような事態というのは絶対に避けなければならない問題であります。  ところが、海部総理は、この大戦争に道を開く可能性のある武力行使容認決議を支持したのであります。これは事態の平和的な解決と全く逆行するものだというふうに私は考えるのであります。この大戦争の危険を避けるために、総理、日本政府アメリカに対して、来年一月以降であっても決して武力の行使に訴えることのないように総理自身が米国に働きかけるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  225. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 湾岸危機をめぐる一連の国連の決議というものがなされて、そしてその都度イラクに対して、これは国際社会の世論だから、局面を転回して平和的に解決してほしいということは私も強く言い続けておりますし、またそれは国際社会の世論であると私は思っております。ところが、それに対して事態を少しも解決していかなかったという状況が続いてまいりました。そこで、この六七八の決議がとられたわけでありまして、私は、これはイラクに対して平和的に解決する最後の機会を与えたものであると同時に、国際社会の総意というものがこれを決議で決めたのでありますから、日本としても平和的解決を願いつつこれを支持したというのは、きょうまでの一連の経緯からいってそのようなことでございます。  ただ、これは平和的解決をあくまで求める最後の機会を与えたものだというのが国際社会のおおよその一致した認識でありましたが、それにこたえるように、当初の決議の三つの原則のうちの一つであった人質の全員釈放という問題が約一週間後に起こったということは、これは朗報でございましたが、まだまだクウェートからの撤退という問題については何ら行動も起こっておりません。しかし、アメリカの方もこの決議はしましたけれども、さらに直接対話を呼びかけて、イラクの方もこの直接対話に応ずるような今、日程調整のやりとりが行われております。数日のことが早いとか遅いとか言わないで、イラクもここでひとつ直接対話に応じて、世界の願いである平和的解決にさらに一層外交的努力を進めてもらいたいというのが私の今の率直な願いでありますが、こういった気持ちはイラク当局にも伝えてありますし、アメリカにもそのようなことをぜひしてほしい、平和的解決を粘り強くあくまで追求すべきであるというのが、最初から申し上げてきておる私の基本的な考え方であり、日本政府としてはそういった意思イラクアメリカに伝えて、さらにできることがあるなれば、今後とも積極的に協力をし、努力をしていかなければならない、この考えには変わりありません。あくまで戦争は避けるべきだというのが私の信念でもあります。
  226. 三浦久

    ○三浦委員 総理の言う平和的解決努力をあくまでもやる、そういうお言葉ですけれども、しかしその期限を来年の一月の十五日というふうに限定をしたということに私は問題があると思うのですね。先ほどもベーカー国務長官が十五日過ぎたらやるんだ、こう言っていますね。ブッシュ大統領は、この前の報道によりますと、人質が解放されたから戦争がやりやすくなった、こういうことまで言っておるじゃありませんか。  ですから、平和的な解決をあくまでも求めるというのであれば、私は、そういう戦争の手段に訴えるとか武力によって威嚇するとか、そういうような手段ではなくて、まさに経済制裁を貫徹していくということが大事だと思うのです。経済制裁は無力だとか、経済制裁によってフセイン大統領の政治的な意思を変えることはできないとか、そんなことを言う人がいますけれども、これは私は全く間違った議論だというふうに思っています。国連だって今まで何回も何回も経済制裁の強化の決議を出して今日に至っているわけでしょう。そうして、その経済制裁の効果というものが今出てきているじゃありませんか。  例えば、アメリカだってそのことは認めているのです。シュレジンジャーという元国防長官ですけれども、彼はアメリカの上院外交委員会で十一月の五日に、「経済制裁は予想以上の効果をあげている。イラクの民間総生産は約四〇%低下した。いずれ軍事産業も同じ道をたどるであろう。経済制裁の効果は一年かかるとされていたのであり、六ケ月で思うような結果が得られないとして経済制裁では我慢できないというのは非論理的であることを認識すべきである」こういうように公聴会で述べています。また、クロウとかジョーンズという二人の元アメリカ統合参謀本部議長でございますけれども、経済制裁こそ確実で現実的な解決の道だというふうに、同趣旨のことを述べているのであります。  このように、アメリカの国内でもブッシュ政権の武力行使への批判が高まっているわけであります。戦争の道よりも経済制裁の徹底による平和的な解決というものを来年の一月十五日以降もずっと求めるべきだと私は思います。  そういう意味で日本政府は、米国やその他の国々に対して、武力に訴えることなく、一月十五日以降もこの経済制裁の強化、これを行うことによって平和的な解決のために努力をすべきだということを、総理みずからが外交的な努力によってなし遂げてもらいたい、私はそのことを強く要望します。いかがですか。
  227. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 ベーカー国務長官の発言の一節を今ここで引用して申されましたけれども、ベーカー国務長官も、イラククウェートからの撤兵ということについて行動をすれば武力行使をしようなどということは毛頭考えていないということも言っておりますし、また、私の理解が間違いかもしれませんが、一月十五日にそれがなければ直ちに軍事攻撃が始まるんだという内容の決議ではないわけでありまして、最後の機会を提供するために一応の日にちは区切ってあるわけでありますけれども、その前に直接対話を呼びかけたり、それに応じたり、イラクの方も今言われるように、経済制裁の成果が出てきたとか、あるいは本当に困ったというならばというので、あるいは三つの原則の一つの人質問題に応じたのかもしれません。  そういった動きがいろいろある中でありますから、さらに一層の外交努力によって、武力抗争に絶対に踏み込まないように粘り強く平和解決の努力をすべきだというのは当然のことでありますから、私もそのような考え方をイラクにもアメリカにも日本の意思として伝えながら、さらに両国が直接当事者として話し合いに外交努力を続けてもらうことを強く求めていきたいところであります。
  228. 三浦久

    ○三浦委員 総理の答弁を聞いていますと、第六七八の決議、それによって人質の解放が行われたとか、対話が開始されたとか、そういうふうに 言っておられますけれどもね。そうじゃないですか。そうじゃない。
  229. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そうではありません。あの人質解放のときには、私は、国際社会の一致した世論がこれは国際法的にも人道的にも許されないものであるということを繰り返し繰り返し言い続けてきたことがその大きな背景にあったということと、それから、あの六七八の決議イラクに対して局面を打開するための最後の機会を提供しておる国際社会意思だということとが相まって、そして一週間後のところで人質解放という挙があったんだ。私は、だからその決議だけが人質解放につながったという言い方をしておりませんし、人質解放のときにも、これは国際社会の一致した人道的、国際法上の違反に対する厳しい要求があったからだということも申し上げてきたつもりでございますから、もう一回ここで繰り返しておきたいと思います。
  230. 三浦久

    ○三浦委員 総理、国際紛争を解決する根本的な精神、これは一体どういうものかということをこの際我々はよく考えてみなきゃならぬと思うのです。第六七八は、一月十五日以降はいつでも武力行使ができるんだ、そういう決議であります。そしてベーカー氏も、ある日突然やるんだ、こういうことを言っているわけでしょう。それは単なるおどしというように単純に片づけられない問題ですよ。ゼスチャーだとかおどしだとか、そんな生易しい問題じゃないと思う。現実にそういう事態が出現するという可能性を秘めた決議だということははっきりしていると思うんですね。  国連憲章は、一体こういう国際紛争というものを解決するためにどういう原則を掲げているのかということであります。前文の冒頭で、よく我々が言いますけれども、我々の一生のうち二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨禍から将来の世代を救う、こういうことを高らかに宣言をしているわけですね。これに見られますように、国連とは、第一次、第二次の世界大戦の反省から生まれた組織です。憲章の第二条でも、紛争を平和的手段で解決するということを原則としております。憲章第二条は、国連の目的を達成するに当たっての原則を規定したものであります。  私は、外務省にお尋ねしますが、この第二条三項には一体何と書いてあるのか。
  231. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  国連憲章第二条三項には、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」というふうに書いてございます。国連憲章のいろいろな手続につきましては、御承知のとおり第六章に平和的解決の手続が詳しく規定されておりまして、さらに、平和的解決がもたらされない場合につきましては、第七章で強制的解決の手続を定めているわけでございます。
  232. 三浦久

    ○三浦委員 結局、国際紛争の解決の手段としては、平和的な手段でやるのが原則だというのが国連憲章の定めであります。この決議は、そういう意味ではこの国連憲章の根本的な原則、根本的な精神に私は相反しているというふうに言わざるを得ないと思うわけです。  それで、また外務省にお尋ねしますが、国連憲章第七章に基づいて行動するんだというふうにこの決議では書かれておりますけれども、先ほどの答弁によりますと、第七章の何条によって行動するのかは定かではない、第七章の何条かということにはいろいろ争いがあってはっきりしない、そういうことですが、そういう御確認でよろしいんですか。
  233. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 第七章におきましては、御承知のとおり、軍事的な措置を含めましていわゆる紛争の強制的な解決の措置を定めているわけでございます。また、国際の平和及び安全の維持につきましては、安保理がその主要な責任を憲章のもとで持っているわけでございます。  先ほど御答弁申し上げましたとおり、この決議六七八は前文の最後のところで、安保理は国連憲章第七章のもとに行動しというくだりがございまして、この第七章に基づく決議であるということが明らかにされているわけでございます。しかしながら、七章の第何条に基づくかということはこの決議では触れておりません。また、この決議の解釈につきましては、安保理の構成国の考え方、その審議の経過等が非常に重要な要素になると思いますが、この第何条に基づくかという点につきましては、安保理構成国の間にも一致した考え方はないようでございます。  ただ、国際の平和及び安全を維持し、または回復するため加盟国に対しまして武力の行使を含む必要な手段をとることを容認する決議を行う権限は、国連憲章第七章によりまして安保理に与えられているものと解されます。決議六七八が国連憲章第七章に基づきましてイラクに対する武力行使を容認しているという解釈は、おおむねこの決議を採択いたしました安保理の主要理事国の共通の理解であるというふうに承知しております。
  234. 三浦久

    ○三浦委員 第七章に基づいて行動するという決議でありながら、その第七章の第何条かということは一切言えないということは、これはこの決議が国連憲章の条項に違反をしている決議だということの証拠ではないでしょうか。各理事国がみんな集まって、まあやってもいい、条項のどこに当てはまるかわからないけれどもやっても構わないんだ、だから正当なんだということであれば、それはまるっきり「赤信号みんなで渡れば怖くない」というような論理と同じじゃありませんか。  大体、国連が軍事的な制裁というものを行うことができるのは、国連憲章第四十一条の措置、すなわち現在でいえば経済制裁の効果が不十分であるというふうに認めたときに初めて軍事的な措置をとることができるようになっているのです。  総理に伺いますが、国連が今まで営々としてやってきたこの経済制裁の効果というものは上がっていないというふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  235. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国連憲章の関連につきまして、もう一点だけ私の方からお答えさせていただきたいと存じます。  確かに、この決議の根拠規定が具体的に第何条ということが明らかにされておらないわけでございますが、ただ、国連憲章の解釈と申しますのは、起草時の考え方あるいは経緯のみならず、その後の国連加盟国による憲章の具体的な実施、運用を通じまして確立していくという側面があると思います。  御承知のとおり、従来東西対立という国際関係の基本構造のもとにおきまして国連憲章第七章が発動された事例が限られていたこともございまして、今回のような決議の国連憲章上の位置づけにつきましては、従来必ずしも議論されていない面もあるわけでございます。決議六七八が国連憲章第七章に基づきましてイラクに対する武力行使を容認しているという解釈、またこのような決議を安保理の権威のもとで採択し得るという考え方につきましては、安保理理事国の共通の理解がある、一般的に申しましてこのように考えていいと思います。
  236. 三浦久

    ○三浦委員 質問に対して全く答えていませんね。経済制裁の効果が上がっている、または上がっていないか、どういうふうに認識しているのかという質問なんです。それを、国連憲章のことをだらだら時間つぶしに言われても迷惑です。総理いかがですか。
  237. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的なことを断言するのは非常に難しいのですけれども、私は、上がりつつあるのではないか、こう受けとめております。
  238. 三浦久

    ○三浦委員 そうすれば、その経済制裁を徹底することによってフセインの政治的な意思というものを変えることができるというふうにお考えにはなりませんか。
  239. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのことを強く願っておりますけれども、そのようなクウェートからの撤退という、局面を打開して話し合いの場面に入っていこうとする重要な局面転換があらわれておりませんので、私は、さらに国際社会は一致協力をしてこの経済制裁の効果が上がるような体制は、 きょうまでもとってきたわけでありますけれども、これからも目的が平和的にきちっと解決されるまでの間とり続けていかなければならぬし、効果を上げ続けていかなければならない問題だ、このように考えております。
  240. 三浦久

    ○三浦委員 経済制裁の効果は上げていかなければならぬが、しかし、現在まだイラククウェートから撤退をしていない、だから六七八決議もやむを得ないんだというような、そういう御答弁ですけれども、しかし経済制裁をやって何カ月ですか。まだ四カ月半ですよ。来年の一月十五日だって六カ月にならないでしょう。まだ非常に短い間なんです。そうすると、この短い間にどれだけ大きな経済制裁の効果があったのか。  このことは、片倉という駐イラク大使、彼も認めておりますね。それからまたアメリカ自身も認めています。特に十二月五日のアメリカ下院軍事委員会でのウェブスターCIA長官、この方は、イラクの輸入は九〇%、輸出は九七%がストップした、そのためフセイン政権は深刻な外貨不足に陥り、来春には外貨準備も底をつく、外国からの部品供給も途絶し、外国人技術者が撤退したため工業も重大な影響を受ける、そして生産ダウンに見舞われている、こういうように証言しています。それで、アエラのこの十二月十八日号ですけれども、これにもこの人質の解放というのは経済制裁が効いたんだというふうに断定していますね。そして経済制裁の影響を詳細に具体的に述べています。このような国家財政の目に見えるような破綻というのは、私は必ずフセイン・イラク大統領の政治的な意思というものにも大きな影響を及ぼすことは間違いがないというふうに思います。そうなれば平和的な解決の道が開かれると思うんですね。  私は、まだ四カ月半の経済制裁で、まだ十分な効果が上がっていない、フセインがクウェートから撤退しない、だから来年の一月十五日で期限を切って、そして武力行使をしてもいいんだというような決議をするというのは、こういう平和的な努力というものを避けて、そして武力行使武力行使へと走ろうとしているアメリカのそういう外交政策のあらわれだというふうに見なければならないと思うんですね。ですから私は、大戦争を避けるために辛抱強くこの経済制裁の強化をしていくということを、ここで私は改めて強く強く強調しておきたいと思います。  次に、この武力行使容認決議についてですけれども、この決議は、米軍等が指揮権を持ったままイラクに対する武力行使を認めているものでありますが、国連憲章第四十六条では、兵力の使用計画というのは安全保障理事会が作成するというふうになっています。米国など特定の国に武力行使をする権限を与える条項というのは、例えばいつ、どんな規模で、どんな作戦で武力行使をするかということを特定の国に任せるというような規定は、この憲章第七章にはないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  241. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいまお引きになりましたように、第四十六条では「兵力使用の計画は、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が作成する。」というふうに規定されている次第でございます。先ほどちょっと申し上げましたとおり、この国連憲章の解釈、運用と申しますものは、必ずしも起草当時の考え方に沿っているとは限らないわけでございまして、この四十六条の規定と申しますのは、四十二条で軍事行動をとりまして、そして四十三条で特別協定に従って国連軍を創設する、こういう前提で、起草当時の構造の上に立っての規定であろうと存ずる次第でございます。  ただ、先ほどもちょっと触れましたように、従来東西対立等もございまして、御承知のとおり、この国連憲章が起草当初の形のままで動いてないのは事実でございます。ただ、最近の東西の緊張緩和ということもございまして、安全保障理事国五大国を中心にいたしまして今回のような平和回復のための共通の基盤が出てきたわけでございまして、現実の国連憲章の解釈、運用というものは必ずしもこの条項どおりにいっていないわけでございます。ただ、一つ言えますことは、安全保障理事会は国際の平和と安全の維持に関しまして非常に広範な権限を与えられているということでございます。
  242. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、この決議というのは国連憲章第四十二条の発動ではないということですね。
  243. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 その点につきましては、若干繰り返しになって申しわけございませんけれども、簡単に申し上げますと、当初申し上げたとおり、安保理事国の間におきまして具体的に七章の第何条に基づくという点につきまして必ずしも一致した見解はない。ただ、第七章に基づき、安保理の権威のもとでこのような決議が採択されまして、その中で武力行使を含む措置の権限が与えられた、こういうことでございます。
  244. 三浦久

    ○三浦委員 結局、この第六百七十八号決議というのは、憲章の具体的な根拠がなくてなされているものですね。そういう意味で私は、いわゆる紛争解決の基本的な原則を決めた国連憲章に違反をする、そういう決議だ、したがって、こういう決議が米軍の軍事行動の根拠にはなり得ないということを強く主張したいと思います。  ブッシュ大統領はアメリカ軍をサウジに派遣するときのテレビ演説で、サウジの主権と独立は合衆国にとって死活的な関心事である、我が部隊は米国とサウジ並びにペルシャ湾の友好国を防衛するであろうと述べております。この武力行使決議は、まさにブッシュ大統領がこのように言っている米軍の軍事行動を容認するものであり、国連の平和的解決の原則に違反したものであって、絶対に容認できないものであります。この決議を根拠に武力行使は絶対に行ってはならないということを私は強く主張いたしたいと思います。  こういう米軍に対して、政府は巨額の資金を提供いたしております。もう時間がありませんから簡単に申し上げますけれども、最初に十億ドル、さらに追加して十億ドルです。もう細かいことは言いませんけれども、これはアメリカの強い要請によって行われたものであるということはもうはっきりしていますね。  この当時のニュースステーションというニュース番組がありますが、それを見ておりましたら、打ち出の小づちが出てきました。それには海部総理の顔が張ってあります。そしてだれかが、キャスターがそれを振りました。しかしお金が出てきません。そうしたらキャスターが、これはブッシュさんが振らないと出てこないのですと言いました。そして、ブッシュの人形がそれを振りましたら、十億ドルと書いたお金がころんころんと転がり出てきたのですね。  こういうように、アメリカの言うままに十億ドル、十億ドルといったら千三百億円です。千三百億円というのは、一万円札をずっと新品のお札を積み上げていったら千三百メートルにもなるまさに天文学的なお金なんですよ。そういうお金を、積算の根拠もない、アメリカの言うなりに、応分の拠出だというようなことでどんどんどんどん出していく。国民の血税ですよ、これは。こういうことに対して、私は、国民は大きな怒りを感じているだろうと思うのですね。  それで、大蔵大臣にお尋ねしますけれども、この十億ドル、さらに追加の十億ドル、そうしてまた新たに、戦争になったらまた応分の負担をする、こういうようにあなたはインタビューで答えていますね。
  245. 越智伊平

    越智委員長 時間ですから。時間。
  246. 三浦久

    ○三浦委員 それを、その積算の根拠を私は明らかにしてほしいと思うのです。
  247. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、戦争になったら応分の負担をすると申しておりません。むしろそういう事態が起こらないように、湾岸の平和が回復することを望むと本院でも申し上げております。
  248. 越智伊平

    越智委員長 これにて三浦君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  249. 中野寛成

    ○中野委員 先ほど来たびたび触れられておりますように、国連安保理の六百七十八号決議、これ を前提といたしまして、現在、米国、イラクの直接交渉がセットされつつあります。全世界の人々がもちろん平和的解決を切望しているわけでありますから、この六百七十八号決議も国連がイラクに突きつけた一つの牽制、平和的解決を目指すための一つの戦略だ、そして、その戦略に終わってほしい、そういう気持ちを持っていることは当然であろうと思います。  一つここで総理に御提言申し上げたいと思いますのは、先般我が党大内委員長の要請を受けとめられてブッシュ大統領に親書をお出しになったと聞いております。その内容はいかがなものであるのか。  あわせまして、ここは日本国民の総意として、両国に対し、平和的解決のために全力を挙げて協議されるよう改めて要請することが必要だと思います。特に、米国の忍耐とイラクの良識を全世界の人々が期待をしている、こう思うのであります。イラクがこれ以上武力侵攻をしないようにする抑止力としての多国籍軍の展開を評価しつつも、経済制裁、外交努力等によってイラククウェートから引き揚げることを希望していることもまた否定しがたい事実であると思うのであります。外交努力と先ほど来言われておりますけれども、具体的に総理がどのような外交努力をされますか。とりわけ、そのときに政治家としての総理の御決断を聞きたいのであります。  先般来、よく元が活躍すると言われております。元総理とか元大統領だとか元何々とか、これも言いかえれば、官僚任せではこういう情勢の中ではなかなかにもって通用しない、むしろこれら国際問題、この種類の国際問題は、まさに政治家が政治的決断と政治的責任において行動し初めて効果を上げるものだ、こういうふうにも言われるわけであります。元が活躍すると言われますが、これはまさに比較的フリーな行動がとれる、しかし政治家が活動したということにおける一つの成果のあらわれだと思うのでありますが、このことも含めまして総理の御決意をお聞きしたいと思うのであります。  米国に対する要請と同時に、総理みずからのイラクに対する要請もまたこの機会に、米イ交渉が行われているこのときに改めてなされるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  250. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 先ほど来何回も申し上げておりますように、六七八の決議というのは、イラクに対して平和的に解決のために決断をして局面を解決する、国際世論に従った最後の手段を与えるという意味が私は含まれておったと思いますし、同時にまた、国際社会の総意というものによってこの問題を平和的に片つけなければならぬという基本も強く持っております。  ブッシュ大統領からは十一月の終わり、そして十二月の初め、書簡によりまして現下の湾岸危機に関するいろいろな情勢とか決議に対する物の考え方とか、いろいろなことが親書となって、それはアマコスト大使が持って官邸へ届けて、その文面の背景説明等もしてもらいましたが、これは外交の機微に関することでありますから中に書いてあったことは具体的には申し上げませんが、湾岸危機に対するそういう手紙をもらいましたから、それに対して私の方からは、大使より手渡されたブッシュ大統領の書簡に対して返事の形で、我が国としては引き続いて国際社会と連帯して安保理決議にのっとった湾岸危機の平和的解決に貢献していきたい、そしてアメリカに対しても引き続きそのリーダーシップをとってもらいたいということを書くと同時に、特に決議アメリカが直ちにイラクに対して直接対話の提案をされた、そのことも大統領の手紙に書いてありましたから、そういう直接対話の提案をされたということは、やはり九月の国連演説なんかも踏まえていくと、恒久平和に対する長い解決のための努力の一環のイニシアチブである、こう私も高く評価をし、そのことがぜひ平和裏に解決し、将来への展望を明るくしていくようにぜひ御努力を願いたいし、私もそのことを強く期待しておりますということをブッシュ大統領あてに、アマコスト大使からもお伝え願うように言い、また書面にしたためて発送をしたわけであります。  それからイラクの方に対しては、これはラマダン副首相との対話の継続の一環であるということで、直接フセイン大統領に届くという人脈がありますので、これは日本の意思を伝えて、今度の提案、今度の決議に従って、平和的解決というものは最後のイラクの決断でできる問題であるから、ぜひ真剣にそれに取り組んで解決してほしいということを日本政府意思として伝えてございます。
  251. 中野寛成

    ○中野委員 イラクに対する総理からの要請は、今回の国連決議を受け、かつ米国とイラクの直接交渉がセットされつつあることに対する要請でしょうか。
  252. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そのとおりでございます。国連決議が最悪の状況にならないように、すなわち平和的に話ができるように、それは対話に応ずるとともに、対話に応ずるというだけじゃなくて、本当に平和的に解決をし、クウェートから撤退するということをイラクが本当に決め、実行してもらうことが極めて大切な点である、このことについても率直に申し述べてあります。
  253. 中野寛成

    ○中野委員 次に、緊急事態に対応いたします政治システムといいましょうか、ルールづくりについてお尋ねをいたします。  国連平和協力法案が廃案となり、目公民三党による国際平和協力に関する合意覚書なるものができました。この種の合意は本来全政党が参加して行われるべきものであると思いますし、特に野党第一党の社会党の参加がないのは残念であります。しかし、これはだれの責任と申しますよりも、日ごろこういうことについてのルールがない、そのことが一つの原因ではないかと思うのであります。臨時国会末の、まあ言うならばどたばたの中のボタンのかけ違いみたいなこともなかったとは言えないと思うのであります。この経験からいたしましても、私は、国際化時代の中で、我が国が緊急事態に即座に対応するために外交、財政等に関する与野党協議のシステム、ルール、慣例などを確立しておくことが必要であると思うのであります。  とりわけ衆参両院のねじれ現象の中で野党理解協力態勢、とりわけこのように国際社会の中で国家の命運にかかわる、国民の生活に重大な影響を与えるというような問題については、これは与野党一致してかかるということが必要なわけであります。とりわけ野党理解協力の条件として必要なことは、的確な情報であります。言うならば、政府・与党が国際社会の時々刻々と移り変わる情報をひとり占めするといいますか、独占をしておるという中で、野党に都合のいい情報だけを流して協力を求めるということだけではなかなかそれは難しい状況が続くわけであります。  そのようなことを考え合わせますときに、総理といたしましては、もっとこういう事態に対応できる新しい国会のあり方、政治の果たす役割、そういうものを確立するために、今提言をいたしましたような内容についてどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  254. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 野党の御協力をいただかなければならないということは常々考えておるところでありますが、この前具体的に法案の最終場面のこと等もお触れいただきましたけれども、国会が開会しておるときは、私は、委員会各党の代表の皆さんお出になっておるわけでありますから、その理事会で各党皆さんにいろいろなことをお願いもしなければならぬし、自公民三党の合意事項を覚書として決めていただきましたことも、私はそれを大切に受けとめさしていただいております。そのときに社会党が参加されなかったことは残念であったとおっしゃいますが、私もそれは同じ評価でございます。社会党も国連平和協力機構というものはお示しになって、そこに書いてあること、並んでおることもいろいろ出ておりますから、今後、国際協力の新しいあり方というものを模索していくときには三党合意をきちっと踏み台にして作業を進めますが、社会党の出され た機構についてもこれは念頭に置いて考えていき、また御相談をするときには御相談をしていただかなければならぬことだ、こう考えます。  また、今度の湾岸問題が起こりましたときも、ちょうど八月でございました。そして直ちに、これは国会もないときでございましたので、野党の代表の党首の皆さんにはお知らせをし、お話も聞きたいと思って御連絡をいただき、八月には各党それぞれの御都合もございまして別々でありましたが、九月のときには一連の党首会談というものも持たせていただいて、なるべくそのときそのときの重要な、特に国連に関するような問題については、外交は波打ち際までというような先輩のお諭しもございましたが、何とか国内で合意を得て一致結束して外交問題には当たっていかなければならない、こう考えておりますので、今後いろいろ、どうやって各党にお伝えをしたらいいのか、それぞれ考えさせていただこうと思っております。
  255. 中野寛成

    ○中野委員 与野党が、国難といいましょうか、こういう重大事に当たっては即座に協議をするという慣例をやはりつくる必要がある。これは野党も応じなければいけませんし、そしてまた、とりわけ政府・与党がそのために責任を果たすということが極めて大事だと思うのであります。  その一例として、今回の補正予算に組まれておることを申し上げたいと思いますが、いわゆる中東貢献策の中の四十億ドル、五千二百億円、これは予備費で十億ドル、ODAで二十億ドル、そして補正予算で十億ドル、こういうことで構成をされているわけでありますが、予備費の使い道は政府に権限がありますが、国際的意味がいかに大きいか、また金額が極めて大きいということも考えますと、今回のようなケースでは財政法や国会法上の解釈問題ではなくて、政治的意味において使い道の内容とともに与野党間で事前に協議されるべきではないか、こう思うのであります。これは法律論や制度論を言っているのではありません。政治的な意味でそうされるべきではないかと思います。  またもう一つ、二十億ドルODA予算から捻出をされていると言われているわけでありますが、ODA予算とはそんなに幅があって、ゆとりがあってルーズなものなんでしょうか。ほかに行くべきものを削ったのでしょうか。当初から当該国へ予定されていたのならば、貢献策として新たに加えたとは言えないということになります。諸外国をだましたことになります。ODA予算というものの性格づけというもの、明確な理念、目的、原則というものを定めて、そしてODA、せっかくの国民の貴重な税金を国際社会に有効に使っていただくためのODA、あだやおろそかにされてはならないと思います。このODA関係から二十億ドルと、こう言われるのであります。そういう前提が満たされて初めてこの十億ドルが上程されていますこの補正予算に対する国民理解が得られるのではないでしょうか。  中身にいたしましても、平和協力なのか戦争協力なのか、また先ほど来、武器弾薬に使われるのではないかという質問が出てくる。確かに予算委員会ですから、ここで審議するのは当然のことでありますが、これらにつきましては既に予備費の中から十億ドル支出されているのでありますから、今ごろその議論がなされているということではこれは本来おかしいと思うのです。もっと早くこれらのことについてはお互いの理解、とりわけ国民理解が得られていなければならないはずであります。この政治的仕組みについて、また政治責任について、総理はどうお考えなんでしょうか。
  256. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 総理の御答弁の前に、事務的に私の方から御説明をさせていただきたいと思います。  中東関係国に対する支援につきまして、今次事態により深刻な経済的な損失をこうむっておりますエジプト、トルコ、ジョルダンといった周辺諸国に対しまして、総額二十億ドル程度の協力を円借款、無償資金協力、技術協力などを組み合わせて実施することといたしておることは御指摘のとおりであります。そのうち、その大宗を占める円借款や技術協力につきましては、従来から海外経済協力基金または国際協力事業団の事業予算の枠内で機動的、弾力的に対応をいたしておるところでありまして、今回も政府として、中東危機により深刻な経済的損失をこうむった周辺諸国に対し、その現状にかんがみて、非常に足の速いということから六億ドルの緊急商品借款を中心として合計約十億ドル弱の資金協力を機動的に対応をいたしました。また、無償資金協力につきましては、既に国会で議決をいただいております一般会計の既定予算の枠内で対応することといたしております。  このような経済協力の分野におきまして、従来から予算を全体として確保し、個別の配分等につきましてはその枠内で行政府が予算の執行として機動的、弾力的に対応をいたしておるわけでありますが、これは仮に事前に国別あるいは地域別の配分を明らかにすることによりまして、相手国との交渉が大変難しいものになる、また途上国側の自助努力を阻害するおそれもある、さらに援助実施の機動性、弾力性というものが失われ、実施の遅延、硬直的な実施というものをもたらすおそれがある、こうしたことから、他の先進国の多くでも予算の範囲内におきまして行政府行政権の行使として援助予算を執行しておるといった状況にございます。  日本の経済協力の実施に際しまして、国会に対しましても、また相手国の立場をも配慮しながら随時所要の御報告や資料の提出等は行わせていただきますと同時に、情報の公開にも努めておることでありまして、援助に対し国民の一層の御理解を得るように今後とも努力をいたしてまいりたいと思います。  なお、海外経済協力基金につきましては、今回当初予算で想定をしておらなかった六億ドルの緊急商品借款などから全体として原資不足が見込まれることになりましたため、御審議をちょうだいをいたします二年度補正予算一般会計からの出資金及び財政投融資の追加を計上し、御審議を願うことになっておる状況でございます。
  257. 中野寛成

    ○中野委員 やはり仕組みの問題として大蔵大臣はお答えになりました。私は、今回の場合は中東危機が起こって、そしてそれに対してどういう貢献をするかということで、言うならば日常の予算とは別にオンして中東貢献策として四十億ドル、借款も含めてですが、そういうことになったわけです。言うならば本来の、それじゃそういうものをことしの当初予算の中で、ODA予算の中で、中東危機が起こることを想定してつくられていたんでしょうか。そうではないはずであります。ならば、私たちは、これらのことについては本来であればもっと使い道があったはず。それは例年の積み重ね、経験からくる積み重ねということもあるかもしれませんけれども、しかし今回の場合には、むしろ特別措置として日本がどれだけ貢献するかということが国際社会で問われているというところから始まっているわけです。  そういうふうに考えますときに、やはりこれらのことにつきましては、まさに本来であれば国会で新たに論議し直すべき内容のものだと思います。中東貢献策としてのものにつきましては。本来のODA部分につきましては、それは大蔵大臣御答弁のとおりだと思います。これらのことにつきましては、むしろ政治的な責任を果たすという意味で、そして国民理解野党理解、そういうものも含めてまとめていくという上で総理の決断があってしかるべきであったのではないのかということを申し上げているわけでありまして、財政法上等の技術論を申し上げているわけではないのであります。総理、いかがですか。
  258. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今度の湾岸危機は、通常予想しておったものでは全くなかった、おっしゃるとおりでございます。突然起こったことであって、しかもあの地域に対していろいろな影響も関係も持ち、しかもあそこで行われたことが平和の破壊であったというので、日本としては、前例 も、余り参考書もないことでございましたが、何をどのようにして協力をしていくことができるのだろうか、そこでいろいろ知恵を絞って政府部内で相談して考えていったのがあの貢献策であり、また支出金額でございました。  党首会談のときにも私は率直にそのことを申し上げましたが、党首の中には、ツーレート・ツーリトル、遅過ぎる、少な過ぎると言って冒頭におしかりを受けたこともありました。私は、そのとき謙虚にお尋ねをして、それでは少な過ぎるとおっしゃいますが、どれぐらい想定してこういうときはしたらいいんでしょうか、教えていただきたいとお尋ねしたのですけれども、お答えはございませんでした。私としてはいろいろな方にお願いをしながら精いっぱいできるだけのことをやったわけでありますから、そのことにつきましては予想しがたい出来事であったので、出せるものは予備費から出して協力をした。その次の問題については、今こうしてお願いをしておるということでありますから、今後ともこういう問題のときには、今回の経験等を踏まえまして、どのようにして各党の御理解をいただくのか、同時に、そういった場所でまた各党の御意見も具体的に承りながら合目的的な、合理的な判断というものをしていかなければならぬな、今御質疑を聞きながら率直にそう受けとめさしていただいております。
  259. 中野寛成

    ○中野委員 先ほど申し上げましたように、とりわけ国際情勢のように独自のルートを野党というのはそう持っているわけではないわけでありますから、的確な情報を野党にもお伝えをいただき、御説明をいただき、それに対応するための施策もこういう目的でということを具体的に御説明いただく。国会開会中ではなくても、それぞれの党のリーダー、担当者等々の中でそれらが行われることが国民理解を深めることにつながる、また、より一層思い切った貢献も、国際貢献もできることにつながるということを引き続いてお考えをいただき、総理のリーダーシップを発揮していただきたい。野党ももちろん当然それにこたえなければならない、こういうふうに考えるわけであります。  次に、在外在留邦人の保護の問題についてお尋ねをいたします。  イラクの人質が全員解放されたことはまことに喜ばしいことであります。そこで、現在、約五十九万人と言われます日本人が海外に居住しております。これらの方々の生命財産を守ることもまた日本国、日本政府の責任であります。昨年度に在外公館が取り扱った邦人保護案件は一万二百六十八件にも上っている、その前に比べて二三%の増加であったと聞いております。これは年々ふえ続けているわけであります。しかし、政府は十分な対応がし切れていないということで、いろいろな批判があります。今回のイラククウェートの問題も、現地の皆さん大変な御努力をいただいておると思いますが、それでもやはり人質の皆さんやまた御家族の皆さんからは大変大きな不満の声が出ております。そして一方、そんなことは騒ぎ過ぎだとだれかが言ったといって、またこれは新聞だねにもなったりいたしております。  私は、決して外務省の方々を責めようとは思いません。むしろ在外公館職員の数が諸外国に比べて少な過ぎることや危機管理体制がもともとできていないところに問題があるのではないかというふうに思うのであります。まあ米国の五千九百人は別格といたしましても、西ドイツ、これはドイツは統一されましたが、これは古い資料ですので、西ドイツ時代に四千八十五人、フランスが三千七百五十九人、日本は二千五百七十九人。よく外交官の少なさは指摘されるところでございますが、しかし、こういう事態が起こりますとなおさらその必要性が痛感されるのであります。  これらのことを考え合わせますと同時に、事態の迅速かつ正確な把握を十分やることと同時に、水や食糧の備蓄は在外公館にできておったのか、自家発電の体制はあったのか、それから防弾チョッキなどというものも全く日本の公館にはないという指摘さえあります。また一方では、もういざということが起こったときには日本大使館じゃなくて、他のソ連とか中国とかアメリカの大使館に逃げ込んだ方が安全だよというふうに在外日本人の皆さんがお互いの話し合いの中で言っているという話さえ聞くのであります。こんなことでは我々はそれこそ十分なる役割を果たすことにはならぬと思うのでありまして、この機会に、これは大蔵省としても、外務省としても、そしてトータルとしての判断、総理がお出しになるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  260. 中山太郎

    ○中山国務大臣 今委員から御指摘のように、昨年来の歴史的な変革期の中で、我が国の外交体制に外交官の数が極めて他国に比して少ないという御指摘は全く私もそのように思っておりまして、来年度の予算編成に当たりましても、できるだけ多くの定員を大蔵省にお願いしたいと考えております。  一方、在留邦人の保護につきましては、今御指摘のように在留邦人が五十九万人、海外旅行者が一千万人に及んでおりますが、この人たちの安全をどのように確保するかという問題は在外公館に課せられた大きな一つの責任でもあろうかと思います。私は、率直に申し上げまして、今回のイラクの問題で、事故の起こったところにいる人たちは、一番頼りにするのは情報であります。日本からの国際放送の時間が極めて少ない、こういうことで、NHKに頼んで三時間の時間を十一時間半に延ばしていただきましたが、まだ日本の放送は世界各地に行き渡るほどの整備がされておりません。これをぜひ早急に充実することが国際化する日本にとっては極めて大きな邦人保護の問題である、このように認識をいたしております。  一方、公館における警備の問題、これがアメリカの場合には海兵隊が全部在外公館を警備しておりますけれども、日本の場合はそのようなことができません。例えば麻薬問題とかあるいはテロの問題、いろいろなことがございましたときの大使館の警備というものは、現地の警察に頼むというような状況になっておるわけでございまして、ここいらもこれからどのような考え方でやっていくか、外務省としては早急に検討を進めていかなければならないと考えているところでございます。
  261. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今外務大臣が述べられましたように、我が国の外交体制の上において量的に拡大を求める御意見があることはよく承知をいたしております。しかし、これが量的な問題だけではなく、質をどう確保するかということはより一層重要なことであろうと思います。こうしたことを念頭に置きながら、予算編成時に十分御相談はさせていただきたいと思います。
  262. 中野寛成

    ○中野委員 時間が参りましたので終わりますけれども、いずれにいたしましても、これら極めて重要な時期に日本が海外に在留する日本人を守り、そしてまた国際社会で評価される状況をつくる、そのためには国民のコンセンサス、国論もまた極めて大事であります。防衛は国論の統一によってなされると言って過言ではないと思います。そういう意味では、これからの総理のリーダーシップがまさに問われているときでもあります。この前から、アラビア語ではカイフという文字の意味は何もしない人だなんという意味があるといって冷やかされておりますが、ひとつ万が一にもそういうことでないように、総理のなお一層の御見識を期待をしたいと思うのであります。最後に総理から一言だけお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  263. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 在外公館の質を充実していかなければならぬということ、今度のまた問題につきましても、やはり早く情報をもらったら、もっと早く帰ってきていたんだというようなお話もテレビで聞いたこともございます。でき得る限りそういったような体制が充実していくように努力をしていきたいと思います。
  264. 中野寛成

    ○中野委員 終わります。
  265. 越智伊平

    越智委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、進歩連を代表いたしまして、時間が短いから、きょうしなければならない問題に限ってお伺いをしておきます。  それは、在韓日本大使館の鈴木剛夫という前参事官の不祥事件についてであります。  きょう私がお伺いするのは、総理が来年一月に訪韓される。この問題の処理を誤ると総理の訪韓に微妙な影響あるいは暗い影を差すことになるから、正しい対応をして訪韓をしてもらいたい、そういう願いがあるからきょう取り上げたわけであります。  事件の概要は大体御存じだろうと思います。時間が少ないから簡単に申し上げますと、これは私の選挙区の方ですよ。私の事務所にも陳情に来られました。後藤商会の後藤という社長さんですが、この人が、昨年十月福岡市で行われたジェトロ主催の商談会で韓国の業者お二人から千百万円詐取された、こういう事件から始まっております。  この金を後藤社長は取り返すためにいろいろ奔走して、福岡県警の捜査二課、これは鈴木前参事官がかつておったところでありますが、その捜査二課に後藤社長の知人がおったので相談に行ったら、ああそれは在韓日本大使館の鈴木という参事官に相談されたがいいだろうというサゼスチョンを受けて、ソウルに行き、鈴木さんに会った。そしていろいろ経過があって、結局千百万円を取り返すには向こうの検察の上層部に裏工作をしなければいけない、それでその千百万円の二割の二百万円を工作資金として出しなさい、それで、とりあえず四十万円を取られたわけです、鈴木さんから。それで、こういう事件がことしの十一月十六、七日に明らかになって、新聞はぱっと書きました。そこで外務省はびっくりして十一月二十日に鈴木さんを呼び返した、そして十一月二十一日から三十日にかけて事情聴取を行った。その結果、大体間違いない、この問題は、ということで懲戒処分にした。停職三カ月。そして外務省に出向しておった、その出向元はいわゆる警察庁であります。で、そこの警察庁の警務局に身柄を預けた、そこまでになっておるのですね、そこまでに。  警察庁にお伺いをしますが、どういうふうにこの鈴木さんを処分するつもりですか。
  267. 城内康光

    ○城内政府委員 お答えいたします。  まず、本事案は、公務員の信用を傷つけ、国民全体の奉仕者としてふさわしくない行為を行ったものと認めざるを得ず、まことに遺憾に存ずる次第でございます。  ただいま処分のことについてお尋ねでございますが、本件に関しましては、外務省におきまして既に処分が行われたところでございます。御質問にもありましたように、外務省の職員として在任中の行為であったということでございます。しかしながら、警察庁はいわば親元でございます。そういったことで、警察庁におきましては、こういった処分が行われたという事実を大変重大に受けとめておりまして、今後の処遇につきいろいろと考えてまいりたいというふうに考えております。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんな手ぬるいことでいいのですか、時間があればたっぷり言いますけれどもね。  こういうことなんです、総理。これは鈴木氏を外務省は事情聴取して、そのときに鈴木氏は、その後藤社長からいただいた四十万円は全部向こうの検察の、これは上層部です、名前もわかっていますよ、ここでは言いませんけれどもね、代理人の検事に全部渡したと鈴木さんは言っているはずです。外務大臣、そう言っているはずです。うんと言われているから間違いない。だから、そうすると一体どうなるのでしょうか。今のような警務局長の対応でいいのでしょうかね。もし向こうに渡っておれば、日本には刑法の百九十七条、贈収賄罪、韓国の刑法では百二十九条、内容は全く同じです。もし渡っておれば向こうで問題になる。ところが、向こうの検察当局からは、その当事者は全然そういう事実はない、受け取った事実はないということが来ているはずだ。来ている。鈴木氏と対決していいとまで言ってきているはずです。そこで警務局は、いや、これは制服をはがせます、つまり罷免するといった意味のようなことを向こうに言っているはずです。当たり前の話でしょう。だから、どっちかなんですよ。もし韓国側が言っているとおりならば、鈴木という人は着服している、詐欺になる。もし渡しておれば、これは日本の刑法でも鈴木さんは問題になる。つまり、道義的な責任ぐらいじゃ済まない、刑事的責任が明白にされなければならない問題ではないかと思うのです。  そこで問題は、身柄を預かっている、そういうなまぬるいことではだめです、自治大臣。これは身柄を拘束して、刑事事件の容疑ありとして捜査をして、その黒白を明確にして、海部総理大臣を向こうに送り込まなくちゃこれは大変なことになる、私はそう思うのです。どうでしょうか。
  269. 奥田敬和

    ○奥田国務大臣 今ちょうど警務局長も答弁しましたけれども、異動直後でございますので私の方が事実経過を知っておりますので、私から責任持ってお答えします。  この事件は、外務公務員として本当に著しく名誉を侵害した事件で大変遺憾でございます。ただし、出向で、今帰ってまいりました。外務公務員としての処分は行われましたけれども、これから、当方としては厳重な形で事実調査を目下行っているところでありまして、その事実に基づいて厳重な処分をいたすときもあろうかと存じます。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何回も言うようですが、来年一月総理が訪韓されますから、きちんとした、韓国側も納得し得るような日本の対処の仕方を示していただきたい。  なお言えば、この鈴木という人は福岡県警捜査二課におられたし、本庁の公安にもおられた。公安が出てくる。韓国側では治安本部が出てくる。国家安全企画部が出てくる。安企部です。そういう事件なんですよ。なまぬるいことではございませんよ。  そこで、福岡県警の場合は、この後藤社長は県警からいわゆる脅迫的な言動を言われている。警察を余り甘く見るなとか、警察に抗議しよったらろくなことはないよとかいうようなことも言われておるから、警察関係ですのでこれは組織ぐるみのもみ消し工作が行われておるのではないかと当事者の後藤さんは心配をしておりますから、どうぞひとつこの点は、今厳重な処分を含めてということでございますから、早急なあれをしていただきたい。  それで、次に一つだけお伺いしておきます。これは大蔵大臣でなしに外務大臣に聞いておきます。  この湾岸基金十億ドル、これを実際に扱うのは外務省のどの局ですか。これは本来なら国連の平和基金ですから国連局が扱うのが当然でしょうが。そうじゃないんでしょう。いいですか、資金、物資、輸送、北米局でしょうが。医療に関しては中近東アフリカ局。何で北米が絡んでくるんです、この四十億に。だから、アメリカにやるんでしょうが。この取り扱いの担当局を見てそれがわかります。どうですか、外務大臣
  271. 中山太郎

    ○中山国務大臣 湾岸平和基金に関しましては、委員も御存じのように運営委員会がございまして、その委員会の決定によって基金の配分が行われることになっております。中東、サウジに展開しております多国籍軍の大半はアメリカ軍でございますから、アメリカ軍にもその資金の一部が提供されることは当然でございますが、その他モロッコとかいろんな国にも配分が行われておるということもこの機会に申し上げておきたいと思います。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が来ましたから、要望を一つだけ総理大臣に。これは今言うておかないと間に合いませんから、来年度予算に。実は、交通遺児あるいは災害遺児の方々からの陳情がありますので、簡単ですが申し上げておきます。  遺族基礎年金及びその加給年金、児童扶養手当、障害基礎年金の加給年金の支給停止を満十八歳から満二十歳へ延長してください。つまり、緊 急措置として高校卒業時までそれが行き渡るようにしてくださいという陳情ですから、大蔵大臣も聞いておっていただいたが、ぜひこれは来年度予算で配慮していただきたい。これは要望として申し上げておきます。  終わります。
  273. 越智伊平

    越智委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会