○小平忠正君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案のありました
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案について、
総理及び
大蔵大臣に
質問をいたします。
質問の第一は、
土地税制改革についてであります。
我が国は、
世界に冠たる経済大国として揺るぎない
地位を占めておりますが、
国民の日常生活には先進国にふさわしい豊かさが全く感じられません。その
最大の要因は、異常な地価高騰による劣悪な住宅事情であります。
国民の利益を後回しにし、利益誘導と官庁の縄張り優先の縦割り行政を続けてきた歴代
政府・
自民党の貧困な
土地政策が残した禍根は極めて大きく、地価税の創設などによって今になってようやく
土地税制の抜本
改革に
政府が本腰を入れておりますが、遅きに失したと言わざるを得ません。
我が党は、都市計画の再
構築や
土地本位の金融構造の
見直しと
土地税制改革を有機的に結び。つけて、これらを三位一体として、異常に高い地価を半分に引き下げるよう提言をいたしております。
土地税制についても、保有
課税は当然のこと、
譲渡課税、取得
課税についても思い切った
改革が必要であることは言うまでもありません。本
法案には、我が党が求めてきた
譲渡益
課税の
適正化などが盛り込まれており、この点は評価いたしております。
個人及び
法人の長期
譲渡益
課税、
法人の超短期
譲渡益
課税の強化についても当然のことと考えます。しかし、地価税についても言えることでありますが、これらの
税制改革によって地価がどうなるのか、何%下がるかという具体的なビジョンを
政府が全く持ち合わせていないことに強く不満を感じております。
一体
政府は、地価をどれだけ下げるために
土地税制改革を行うのか。例えば本当に首都圏のサラリーマンが住宅を買えるほどまで地価を下げるのか。具体的目的及び
税制改革による地価引き下げのシミュレーションを、
総理及び
大蔵大臣に示していただきたいのであります。また、一部のワンルームマンションなどが財テクや節税に利用されていることを封じる施策が盛り込まれたなど
土地投機
抑制策が盛り込まれており、この点は妥当な
措置と考えております。
しかし、これらの施策の中に一つの重大な欠陥があることを
指摘したいのであります。それは、長期所有
土地等から減価
償却資産への
買いかえ
特例の廃止であります。確かに、この
買いかえ
特例制度が、
土地購入による節税対策や
土地投機の温床となった点があることは否めません。しかし、だからといって、一律にこれを廃止するというやり方は、余りにもきめ細かさに欠けるものと断ぜざるを得ません。この制度は、構造的な不況に直面している製造業にとってなくてはならないものであることを強調したいのであります。
これらの産業にとって、諸外国との競争に勝つためには設備の近代化が不可欠でありますが、そのための資金に利息のかかる借入金を充てる余裕など到底あり得ません。結局、そのための資金については、
土地を売却し、減価
償却資産への
買いかえができる
特例措置を利用するしか道がなかったのが
実情であります。実際、第一次石油ショック以降の困難な時期に、この
特例措置を活用し、辛うじて倒産を免れたり設備の更新を進めてきた例が数多くあります。
今日、経済の本来の目的である物づくりをおろそかにし、マネーゲームに狂奔する傾向が強い中で、まじめに努力を続ける製造業業者が大勢いることも忘れてはなりません。そのような業界にとって、この
特例制度は、経営を守る最後のとりでとして重要な意味を持っております。この制度を乱暴にも一律に廃止すれば、そこで働く勤労者やその家族の人生に深刻な影響が出ることは火を見るよりも明らかであります。確かに、この制度を利用して財テクに利用する者がいるかもしれませんが、そのような目的の場合は認めないとか、既成市街地内の減価
償却資産への
買いかえのみを禁止するとか、幾らでも工夫できるではありませんか。
この
買いかえ
特例については、我が党の主張に沿うよう抜本的に修正することを
政府に強く求めるものでありますが、
橋本大蔵大臣にお考えをお聞きしたいのであります。
質問の第二は、
消費税問題についてであります。
イラクのクウエート
侵略以来、これまで重大な課題であった
消費税問題が影を潜め、これをいいことに
政府・
自民党は、
消費税の欠陥是正に真剣に取り組まなくなったのではありませんか。
平成三
年度予算案は、現行の欠陥
消費税のまま編成されるという最悪の結果となりました。我が党の提案により設けられた
税制問題等に関する
両院合同協議会で、与野党は
消費税欠陥是正案をまとめました。にもかかわらず、一部の勢力が、食料品が非
課税とならなかったことを口実としてすべてをぶち壊してしまいました。我々も食料品の非
課税化を盛り込むよう今後とも強く求めていく決意でありますが、まず与野党で合意した点は早急に実現すべきであります。
しかも、これを
実施すれば、自然増収が
確保されることは明らかであります。
自民党の加藤政調会長も、益税の七、八割は解消すると断言をしているようであります。仕入れ控除の圧縮、教育、福祉の非
課税化なども含め、与野党合意を
実施すれば、平
年度で少なくとも四、五千億円の税収増となることは明らかであります。これは
国民が納めた税金が国庫にきちんと入らない点を
中心に是正するものであり、大衆増税とは全く次元が違います。五つの会派が与野党合意の早期
実施を求め、
消費税の欠陥解消を急ぐよう主張いたしております。全政党で一致しないうちは何もできないとすれば、
国民がただ
犠牲になるだけではありませんか。まとめる考えのある政党だけで
法案をつくり、成立をさせようではありませんか。
自民党総裁でもある海部
総理大臣にこの
決断をしていただきたく、強く要望いたします。
質問の第三は、
不公平税制の是正についてであります。
本
法案には、
移転価格税制の
適正化による国際
課税の
見直しなど、
不公平税制の是正が一部含まれておりますが、極めて不十分なものと断言せざるを得ません。
国民から不公平と不満のある項目についてはすべて論議の
対象として、必要なものは見直すべきではありませんか。
また、与野党で総合
課税体制を確立するため、プライバシー
保護や金融市場に配慮して、
国民合意のもと
納税者番号制度を導入することを合意いたしましたが、
政府は何
年度からこの制度を
実施する意向なのか、
橋本大蔵大臣にお伺いをいたします。
最後に、
所得税の
減税について
お尋ねをいたします。
湾岸地域の
平和回復のため、九十億ドルの
追加支援を迫られるなど、現在の
我が国の
財政は大変厳しい
状況下に置かれております。しかし、
消費税の欠陥を解消したり、
不公平税制を是正すれば、自然増収が
確保されることは明らかであり、そうなれば
国民生活向上のために大幅
減税を行うことも可能であります。
政府に対してその実現を提唱するものであります。
まず教育、住宅、通勤費
減税の拡充、背広や靴なども含めた必要経費を完全に認める制度の創設など、サラリーマンの生活に役立つ施策の
実施を求めるものであります。とりわけ住宅
減税は最優先させなければなりません。本
法案には、家を建てた人のためのローン
減税について、一年に税額控除できる
限度額を二十万円から二十五万円に引き上げる
措置が盛り込まれております。これは民社党の主張を取り入れたものであり、一歩前進と我々は評価いたしております。しかし、家を持っている人だけを
対象として、借家世帯に
減税を行わないことは断じて容認できません。自分の家を持つか借りるかは個人の選択の自由であり、どちらの人にも快適な住まいを与えることが国の責任ではありますまいか。だとすれば、持ち家世帯に
減税するなら、当然借家世帯にも
減税をすべきであります。毎月の家賃を
所得控除する制度を早急に創設するよう要求するものであります。
また、女性の社会進出を妨げているゆがんだ
税体系を一日も早く直していただきたい。特に、パート、内職の
課税最低限を現行の百万円から百五十万円に引き上げることを要求するものであります。さらに、乳幼児を育てる家庭には、三十五万円の扶養控除に加えて十万円の育児控除を加算するなど、思い切った
減税を実現すべきであります。以上の諸点について、サラリーマンと女性が納得できる答弁を
総理及び
大蔵大臣からお伺いいたしたいのであります。
また、地価税を導入するのであれば、
所得、
消費、
資産のバランスを図るためにも、増収部分は
所得税、
法人税の
減税に充てるべきであり、
政府としてこれを約束実現するよう強く求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣海部俊樹君
登壇〕