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1991-04-16 第120回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 近岡理一郎君    理事 柿澤 弘治君 理事 斉藤斗志二君    理事 谷垣 禎一君 理事 虎島 和夫君    理事 町村 信孝君 理事 上田 卓三君    理事 田口 健二君 理事 山田 英介君       今津  寛君    岸田 文武君       佐藤謙一郎君    高鳥  修君       戸塚 進也君    中山 正暉君       葉梨 信行君    萩山 教嚴君       増子 輝彦君    伊藤 忠治君       池田 元久君    北川 昌典君       須永  徹君    山中 邦紀君       山元  勉君    竹内 勝彦君       山口那津男君    三浦  久君       和田 一仁君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長   有馬 龍夫君         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局         管理局長    丹羽清之助君         人事院事務総局         任用局長    大島  満君         人事院事務総局         給与局長    森園 幸男君         人事院事務総局         職員局長    大城 二郎君         内閣総理大臣官         房臨時特定弔慰         金等業務室長  石倉 寛治君         総務庁人事局長 石川 雅嗣君         総務庁行政管理         局長      増島 俊之君         防衛庁参事官  内田 勝久君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         外務大臣官房審         議官      川島  裕君         外務省アジア局         長       谷野作太郎君         外務省情報調査         局長      佐藤 行雄君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      高島 有終君         外務大臣官房外         務参事官    野上 義二君         厚生省健康政策         局総務課長   小沢 壮六君         厚生省健康政策         局歯科衛生課長 宮武 光吉君         厚生省健康政策         局看護課長   矢野 正子君         厚生省保健医療         局管理課長   真野  章君         厚生省保険局医         療課長     小野 昭雄君         農林水産大臣官         房秘書課長   鈴木 久司君         通商産業省産業         政策局国際企業         課長      大慈弥隆人君         特許庁総務部秘         書課長     田中 徳夫君         労働省労政局労         政課長     播   彰君         自治省財政局準         公営企業室長  西川 一誠君         内閣委員会調査         室長      中島  勉君     ───────────── 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   三浦  久君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     三浦  久君 四月十二日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     和田 一仁君 同月十六日  辞任         補欠選任   衛藤 晟一君     佐藤謙一郎君   光武  顕君     萩山 教嚴君   村山 富市君     須永  徹君 同日  辞任         補欠選任   佐藤謙一郎君     衛藤 晟一君   萩山 教嚴君     光武  顕君   須永  徹君     村山 富市君     ───────────── 四月九日  行政事務に関する国と地方関係等整理及び合理化に関する法律案内閣提出第七五号) 三月二十日  自衛隊派遣の撤回に関する請願五島正規紹介)(第一九四六号)  同(中西績介紹介)(第二〇三三号)  海外派兵計画中止に関する請願小森龍邦紹介)(第一九四七号)  同(秋葉忠利紹介)(第一九五七号)  同(長谷百合子紹介)(第一九五八号)  同(秋葉忠利紹介)(第二〇三六号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願外二件(竹内勝彦紹介)(第一九五九号)  同(村山富市紹介)(第一九六〇号)  同(山元勉紹介)(第一九六一号)  同外一件(伊藤忠治紹介)(第一九八四号)  同(今津寛紹介)(第一九八五号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一九八六号)  同(衛藤晟一紹介)(第一九八七号)  同(小沢辰男紹介)(第一九八八号)  同(越智伊平紹介)(第一九八九号)  同(谷垣禎一紹介)(第一九九〇号)  同(戸塚進也紹介)(第一九九一号)  同(葉梨信行紹介)(第一九九二号)  同(長谷川峻紹介)(第一九九三号)  同(増子輝彦紹介)(第一九九四号)  同(町村信孝紹介)(第一九九五号)  同(三浦久紹介)(第一九九六号)  同(光武顕君紹介)(第一九九七号)  同(衛藤征士郎紹介)(第二〇三七号)  子供向けポルノコミック撲滅法制化に関する請願小沢辰男紹介)(第一九八二号)  青少年保護育成のため有害図書等追放対策強化に関する請願住博司紹介)(第一九八三号)  湾岸危機に伴う避難民輸送に関する暫定措置に関する政令廃止に関する請願伊東秀子紹介)(第二〇三四号)  同(江田五月紹介)(第二〇三五号) 四月二日  自衛隊海外派兵につながる新規立法反対に関する請願三浦久紹介)(第二一三七号)  同(小沢和秋紹介)(第二一七三号)  同(金子満広紹介)(第二一七四号)  同(木島日出夫紹介)(第二一七五号)  同(児玉健次紹介)(第二一七六号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二一七七号)  同(菅野悦子紹介)(第二一七八号)  同(辻第一君紹介)(第二一七九号)  同(寺前巖紹介)(第二一八〇号)  同(東中光雄紹介)(第二一八一号)  同(不破哲三紹介)(第二一八二号)  同(藤田スミ紹介)(第二一八三号)  同(古堅実吉紹介)(第二一八四号)  同(正森成二君紹介)(第二一八五号)  同(三浦久紹介)(第二一八六号)  同(山原健二郎紹介)(第二一八七号)  同(吉井英勝紹介)(第二一八八号)  同(三浦久紹介)(第二二一二号)  同(三浦久紹介)(第二二二九号)  海外派兵計画中止に関する請願秋葉忠利紹介)(第二一三八号)  同(秋葉忠利紹介)(第二一九〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第二二一四号)  同(森井忠良紹介)(第二二一五号)  湾岸危機に伴う避難民輸送に関する暫定措置に関する政令廃止に関する請願三浦久紹介)(第二一八九号)  憲法違反海外派兵反対に関する請願古堅実吉紹介)(第二二一三号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願衛藤征士郎紹介)(第二二一六号)  同(衛藤征士郎紹介)(第二二五〇号)  恩給の改善に関する請願仲村正治紹介)(第二二四六号)  同(宮里松正紹介)(第二二四七号)  子供健全育成のため子供向けポルノコミック撲滅法制化に関する請願鳩山由紀夫紹介)(第二二四八号)  子供向けポルノコミック撲滅法制化に関する請願町村信孝紹介)(第二二四九号) 同月九日  子供健全育成のため子供向けポルノコミック撲滅法制化に関する請願渡海紀三朗紹介)(第二三二五号)  同(木村義雄紹介)(第二三四四号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願衛藤征士郎紹介)(第二三二六号)  同(中山正暉紹介)(第二三二七号)  同(山中邦紀紹介)(第二三二八号)  同(衛藤征士郎紹介)(第二三四六号)  同(柿澤弘治紹介)(第二四五六号)  湾岸危機に伴う避難民輸送に関する暫定措置に関する政令廃止に関する請願外一件(岩垂寿喜男紹介)(第二三四五号) 同月十六日  青少年健全育成のためコミック雑誌等有害図書に関する請願園田博之紹介)(第二四八〇号)  旧満州航空株式会社職員恩給法令外国特殊機関職員として追加規定に関する請願栗原祐幸紹介)(第二五九一号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願斉藤斗志二君紹介)(第二五九三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月二十二日  同和対策充実強化に関する陳情書外三十八件(第一号)  自衛隊海外派兵につながる新規立法反対に関する陳情書外四十三件(第二号)  子供向けポルノコミック撲滅法制化に関する陳情書外十三件(第三号)  有害図書等追放対策強化に関する陳情書外五件(第四号) 四月一日  一般職国家公務員育児休業等に関する法律制定についての意見 は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案内閣提出第六五号)  行政事務に関する国と地方関係等整理及び合理化に関する法律案内閣提出第七五号)      ────◇─────
  2. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより会議を開きます。  去る一日、人事院より国会国家公務員法第二十三条の規定に基づく一般職国家公務員育児休業等に関する法律制定についての意見申し出があり、同日、議長より当委員会に参考送付されましたので、御報告申し上げます。      ————◇—————
  3. 近岡理一郎

    近岡委員長 内閣提出国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  4. 田口健二

    田口委員 ただいま議題になっております国家公務員退職手当法の一部改正及びこれに関連をして幾つかの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、昭和六十年から定年制実施をされておるわけでありますが、今年定年退職をされる方というのは、私の経験からいえば昭和二十三年、二十四年ごろの採用者ではなかろうかというふうに思います。多分この時期は常勤職員採用としては非常に数が多かった時代ではないかというふうに私考えるわけでありますが、今後の、今年から明年以降における退職者の数、どういう見通しを持っておられるか、まずそのことからお尋ねをいたしたいと思います。
  5. 丹羽清之助

    丹羽(清)政府委員 お答え申し上げます。  職員離職事由は非常に多岐にわたっておりまして、また、その事情年度ごとに変動しますので、将来の定年退職者数を予測するということは極めて困難でございますけれども、現在の年齢別在職状況にこれまでの年齢別離職傾向というものを機械的に当てはめまして、ある意味で大胆に推計してみますと、今後の退職者につきましては平成三年度で約七千八百人、それから平成四年度で約八千百名、平成五年度で約七千四百名、平成六年度約七千三百人、それから平成七年度約七千百名になるものと見込まれます。
  6. 田口健二

    田口委員 次に、人事院の方では、たしか昭和四十八年以降について、退職をされて共済年金を受給をされておる方々のいわば生活状況調査というのをやっておられるというふうに聞いておるわけでありますが、もし現在もそういう調査が継続をされておるとすれば、とりわけその中でそういう退職をされた人たちがこの退職手当をどのように使われているか、その使い道というものについてわかっておれば、ひとつお聞きをしたいと思います。
  7. 丹羽清之助

    丹羽(清)政府委員 最近の調査の結果を申し上げたいと思いますが、人事院におきまして、昭和六十年度中に退職して退職年金の支給を受けている者を対象に、昭和六十二年三月の時点における生活状況に関して行いました調査結果について申し上げたいと思います。  それによりますと、退職手当使用した者の割合は、九一・七%でございます。退職手当使用済み割合は四四・三%となっております。  ところで、その退職手当使用した者につきまして、その使用状況について調査しておりますので申し上げますと、宅地住宅取得生活費への充当、その他、この三項目について使用割合調査しました結果について申し上げますと、宅地住宅取得につきましては四九・六%、それから生活費への充当が一八・三%、その他が三〇・七%となっております。
  8. 田口健二

    田口委員 次に、人事院勧告の問題について幾つお尋ねをしたいと思うのであります。  総務庁長官にまずお尋ねをいたしますが、四月の十一日、労働団体との話し合いの中で、長官回答がなされておるわけであります。この中で、二項目目に、「平成三年度の給与改定については、国政全般との関連を考慮しつつ、前項の基本姿勢に立って、勧告をできる限り早期完全実施できるよう、勧告後速やかに諸般の準備を進める。」こういう回答がなされているわけです。翌十二日には、海部総理と連合の山岸会長を初めとする労働団体の幹部が会っているわけであります。いわゆる政労会見というのが持たれているわけですが、その中で、「人事院勧告昭和六十一年以来完全実施してきており、今年も完全実施を行っていく考えで、努力する。」こういう海部総理回答がなされておるわけですね。私どもは、今日の民間における賃上げ状況等考えていくならば、八月に予定をされる人事院勧告の中で公務員に対する給与改定勧告は当然出てくるというふうに常識的にも考えられるわけです。そうしますと、この海部総理回答というのは、素直に受け取りますと、今年度の人事院勧告については完全実施をする、こう表明をされておるというふうに私どもは受け取っておるわけであります。  当日、政労会見には総務庁長官は御出席になっておらないようでありますので、本来ならば官房長官お尋ねをすべきところでありますが、どうしても外交上の日程で御出席ができないということでありますので、今のこの海部総理回答について、給与担当大臣である総務庁長官として、ひとつ政府の代表という立場でこのことについて見解を伺いたいと思います。
  9. 佐々木満

    佐々木国務大臣 十一日の私の回答は、ただいまお読みいただいたとおりでございます。  私は、十二日には出席をいたしておりませんけれども、お聞きをいたしておるところによりますと、総理から、人事院勧告が出された場合には、人事院勧告尊重という基本姿勢に立ちまして、その勧告完全実施に向けて引き続き最大限努力を尽くしていくつもりだ、こういうふうに発言されたというふうに伺っておるわけでございます。なお、私は、総務庁長官という立場でございますけれども、もし勧告が出された場合には、その完全実施に向けて引き続き最大限努力をしてまいりたい、こう思っております。
  10. 田口健二

    田口委員 総務庁長官としてのお考えはわかるのですけれども、ちょっとはっきりしないのですが、海部総理が、昭和六十一年以来完全実施をしてきておる、ことし、ここでまだ勧告も出ておらない段階ですから、それは完全実施をしますというのは言えないにしても、こういう表現を使われたということは、当然勧告が出ればことしも完全実施なんだ、そういうふうに我々は理解をするわけですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。ちょっともう一度お尋ねしたい。
  11. 佐々木満

    佐々木国務大臣 私はそういうふうに理解をしておるのでございますけれども総理会見には立ち会っておりませんから、お聞きをいたしたところによりますと、今まで完全実施を数年間やってきた、これはもう人事院勧告制度というものがあるし、それを尊重する基本姿勢で今日までやってきた、その結果である、もしことし勧告が出された場合には、その基本的な姿勢というものに立ってその勧告を受けて完全実施について引き続き努力をしていきたい、こういう御趣旨の御発言だった、こういうふうに伺っておるわけでございます。
  12. 田口健二

    田口委員 それでは完全実施の問題に引き続いて、公務員皆さん方がここ数年強く要望されておることは、実は早期完全実施という問題なんですね。私もこの三十年来人事院勧告にかかわってまいりましたけれども完全実施の問題は、この間幾多の変遷はありましたけれども、今もお答えがありましたように、総理発言の中にもありますように、ここ数年来ほぼ定着をしてきておる、解決をしておるというふうに私ども理解をしておるわけです。残されたのはいわゆる早期完全実施ですね。これは、私もこの数年、本委員会の中で絶えずこのことを申し上げてまいりました。四月に官民比較調査が行われ、八月に勧告が出され、それから閣議決定が行われ、給与法が国会提出をされて、これが成立をして、実際に賃上げ部分公務員皆さん方のところに渡るのが例年十二月。言うならば、勧告からも半年近いおくれになる。民間の場合はほとんど四月で決まって、そこで新しい給与が支払われるわけですけれども公務員の場合には半年おくれというのがもう何十年続いておるわけですね。このパターンというのはもうほとんど変わっていないわけです。  私は、二年ほど前に、早期完全実施の障害になっておる一つに、給与関係閣僚会議が三回も四回も行われておるということがある、これも一つの問題ではないか、したがって、勧告が出されましたら、給与関係閣僚会議というのは一回か、多くても二回でもいいのではないかということをたしか申し上げましたら、二年ぐらい前からそういう形になってきました。ところが、一回目と二回目の会議が三ヵ月もかかるのですよ。これではもう全く何のために回数を減らしたのかわからないという状況になっているのです。  そこで、特に総務庁長官お願いをしておきたいと思うのですよ。まず、勧告が出たら閣議決定を早急にやってもらいたいということですね。これはもうずっと三十年近くの経過をたどってみますと、この五年間だけでも、六十一年では十月二十一日、六十二年では十月二十三日、六十三年では十月二十五日、平成元年では十一月二日、昨年は十一月九日なんですよ。 だんだん閣議決定がこれまでよりもおくれてきている、ここに私は非常に大きな問題があると思うのですね。ですから、勧告が出れば早期閣議決定をまずやっていただく、このことをぜひお願いをしたいと思うのですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  13. 佐々木満

    佐々木国務大臣 私は、閣議決定を早急にやるということは、これはもうそうすべきものだ、これは人事院勧告を尊重するという基本精神に立っておるわけでございますから、早急に閣議決定をするということは、これはもう当然必要なことだと思います。  ただ、閣議決定に当たりましては、国政上のもろもろのことをやはり考えていかなければなりません。したがって、そういう点も早急に煮詰めていきながら一日も早く決定をする、こういう方向へ持っていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思っておりまして、そういう方向努力をさせていただきたいと思います。
  14. 田口健二

    田口委員 人事院総裁勧告をされる側の立場から、この早期完全実施ということについて御見解があればひとついただきたいと思っておりますが。
  15. 弥富啓之助

    弥富政府委員 お答えを申し上げます。  人事院といたしましては、御承知のとおりに、人事院勧告制度というのは公務員労働基本権制約の代償といたしまして、いわば公務員給与改定の唯一の機会でございます。人事院勧告をいたします場合には、先ほどから先生発言のとおりに、その年の四月において官民較差を正確に、精密にこれを算出をいたしまして、結局今のところはずっと八月の初旬に勧告をいたしております。そのときにはもう既に四ヵ月過ぎているわけでございまして、そういう意味からいいますと、人事院勧告をいたしました場合には、官民の均衡の時期を失することないように、できるだけ速やかな実現をいつも関係各位の方に要請をしてきているところでございます。  政府におかれましてもこのような基本姿勢努力をされていることは十分に承知をいたしておりますが、また一方、給与法定主義と申しますか、公務員勤務条件等につきましては法律で定めるようになっておりますので、例えば法律を審議される国会の方の御事情、あるいは諸般の情勢、あるいは国政全般考えからお考えになりまして、過去においてあるいは時期が左右されたこともこれは否定はいたしておりません。しかしながら、いずれにおきましても、人事院といたしましては、先ほど申し上げましたような趣旨によりまして今後ともできるだけ早急に対処をしていただきたい、かようにお願いを申し上げる次第でございます。
  16. 田口健二

    田口委員 次に、週休二日関係についてお尋ねをしたいと思うのであります。  人事院総裁は四月十一日に公務員労働団体に対して幾つかの回答を行っているわけですが、その中で週休二日についてはこういうふうな表現になっております。「完全週休二日制については、国全体の労働時間短縮計画期間内の速やかな実現目標に、民間における普及状況や土曜閉庁定着状況を見極めるとともに、交替制等職員の週四〇時間勤務制試行実施状況等をも踏まえつつ、勧告に向けて対処する。」こういう回答になっているわけですね。私はかなり積極的な回答であるというふうに評価をしています。したがって、この文言から見れば、今年八月に予定をされる人事院勧告の中において当然この完全週休二日制の実施時期が明示をされるというふうに私は理解をしておるのでありますが、それでよろしいでしょうか。
  17. 弥富啓之助

    弥富政府委員 公務におきます完全週休二日制につきましては、今先生の言われましたとおりに、まず民間における週休二日制の普及状況あるいは土曜閉庁定着状況、それからただいま試行に入っております交代制勤務職員の週四十時間勤務制試行状況、あるいは今まだそれまでちょっと入っておりません一部の職員方々のこれからの試行状況等をいろいろと見きわめる必要もございます。  それで、さて本年夏の勧告、対応について、現時点でどういうふうな勧告をするかということを申し上げる段階ではございませんけれども、ただ、私といたしましては、国全体の労働時間短縮計画期間内、平成四年というふうに目標とされておることも十分頭に入れながら必要な条件整備に努めるとともに、その計画期間内のできるだけ早い時期に実現することを目標に、今度の勧告において積極的に検討を進めている、進めていこうということを申し上げた次第でございます。
  18. 田口健二

    田口委員 それでは総務庁長官、今人事院総裁の方からこの週休二日制の問題についてはかなり積極的な取り組みの方向というのがお話があったと思うのですが、政府の側としてこの完全週休二日については一体どういうお考えをお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。
  19. 佐々木満

    佐々木国務大臣 この労働時間の短縮というのは、私は今や国民的な課題であろう、こう思うわけでございます。これは公務部門につきましても例外であってはならない、こう思っておるわけでございまして、政府におきましても、御案内のとおり、閣議決定でもってひとつそちらの方向へ強力に進んでいこう、こういう取り決めをいたしておるわけでございます。  また、これは田口さん御承知のとおり、現在試行をやってございますので、その試行の結果を踏まえて、そして民間における普及状況、こういうものもよく点検をさせていただき、それから国民世論の動向も見きわめさせていただきまして、完全週休二日制へ速やかに移行するように努力をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  20. 田口健二

    田口委員 それでは、少し具体的にお尋ねをしたいと思うのでありますが、閉庁方式による四週六休というのがもう制度として既に発足をしているわけであります。交代制勤務の場合は、週四十時間ということの試行に入っているところ、既に試行が終わっているところ、あるいは未実施のところ、ひとつこういう区分けでお聞きをしたいのでありますが、試行対象の職員というのは一体何名ぐらいいらっしゃるか。既に試行を終了したという人数、それから現在試行中である、それからまだ試行も未実施である、こういうところの人数と、とりわけ現在試行中と試行実施の職種についてまずお尋ねをしたいと思うのです。
  21. 大城二郎

    ○大城政府委員 交代制等勤務職員の週四十時間勤務制試行につきましては、平成二年四月から逐次実施されてきておりまして、平成三年四月一日現在、試行の対象職員約二十一万六千人のうち試行終了職員は約十二万三千人、試行実施中の職員は約二千人となっております。また、文部省国立大学附属病院関係職員約三万五千人につきましては、本年四月十四日から逐次試行実施されているところでございます。これらを合わせますと、試行参加職員は約十六万人、全体の七四%ということになります。  試行実施になっておりますのは、厚生省国立病院関係等職員約五万四千人でございます。職種としては、病院関係のいろいろな職種が含まれております。
  22. 田口健二

    田口委員 それでは、ここで自治省にお尋ねをいたしますけれども、全国の地方公共団体関係の病院における、閉庁があるのかどうかわかりませんが、実施状況、あるいは試行状況、これを把握しておられれば教えていただきたいと思います。
  23. 西川一誠

    ○西川説明員 お答えいたします。  自治体病院における週休二日制の実施状況でございますが、平成二年八月一日現在で調査をいたしております。これによりますと、実施または試行しているものは、全病院事業七百三十二ございますが、六百五十一事業、八九%となっております。前年度が七九・九%でございますので九ポイント増加を見ておる、こういう状況でございます。なお、土曜閉庁により四週六休を実施しているものが四・二%ございます。  三年度以降につきましては、引き続き病院事業等の特殊性を踏まえながら条件整備を行い、速やかに実施するよう指導してまいりたいと思っているところでございます。
  24. 田口健二

    田口委員 今の状況をお聞きしますと、国家公務員の場合に試行に入っていないのは、率直に言って厚生省の国立病院・療養所関係だけなんですね。地方公務員の場合も、今自治省の方からお話がありましたように、病院関係についても既に八九%が試行に入っている。厚生省、これはどうなんですか。先ほどの話から、政府計画期間というのは平成四年四月一日ということを目標にしているんですね。もうあと一年弱なんですが、いまだに国立病院・療養所関係については試行にも入っていないということになれば、これは一体どういうことになるのですかね。現在の状況をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 真野章

    ○真野説明員 交代制勤務職員の中で国立病院・療養所が現在試行に入っていないわけでございますが、これにつきましては、現行の予算定員の枠内で、かつ、行政サービスの急激な低下を来さないという現在の試行の閣議了解のもとでは、国立病院・療養所の看護婦さんなどの勤務ローテーションを組むことが非常に困難であるというようなことから、試行を見送らざるを得なかったわけでございます。  ただ、同じような医療機関という意味では、国立大学の附属病院も昨年度は試行に入っていなかったわけですが、先ほど人事院の方から御答弁がございましたように、ことしの四月から国立大学の附属病院でも試行に入られるということでございますので、そういう国立大学附属病院の例も参考にしながら、厚生省におきましても、国立病院・療養所の週四十時間勤務制試行につきまして業務の見直しや合理化などの自助努力を一層講じますとともに、その実施の可能性につきまして鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  26. 田口健二

    田口委員 今のお答えだと、どうなんですか、今年度、平成三年度中に試行に入るのですか、それはどうなんでしょうか。
  27. 真野章

    ○真野説明員 今お答え申し上げましたとおり、国立大学の附属病院でもことしの四月から試行に入られたというようにお聞きをいたしております。同じ医療機関として国立の附属病院でも試行に入られるということでございますので、そのような例を参考にしながら鋭意検討を急ぎたいというふうに考えております。
  28. 田口健二

    田口委員 まだ私にはわからないのですよ。国家公務員全体から見ても、地方公務員全体から見ても、あるいはその中における医療機関を見ても、そういうものがずっと進んでおる中で、国立病院・療養所だけがいまだに試行に入っていない。いつから試行に入るという見通しもまだ現段階では言えない。私の持った資料では、厚生省は、昨年九月の参議院内閣委員会の中で、現行体制では看護婦さんのローテーションが組めない、それから年度途中ではそれはやれない、こう言っているのですよ。もう平成三年度に入ってしまったのです。来年四月からやるつもりですか。私が心配するのは、公務員全体が既に完全週休二日に入っていく、国立病院・療養所の職員だけがそれが実施できない。御存じのように、公務員法の中には「平等取扱の原則」というのがあるわけですから、同じ公務員によって差別することはできないのですよ。そういう点から見ても、私は厚生省の対応というのは非常におくれていると思うのです。どうですか。もう一遍聞きます。年度中に何とかしますか。
  29. 真野章

    ○真野説明員 実施に当たりましては各病院、それから病棟ごとの状況を把握いたす必要がございます。また、いろいろな制約条件の中でございますので、例えば非効率な病棟を集約して人員を生み出すとか、いろいろな業務の合理化、または外部委託というような私どもとして考えられる自助努力を行いましてその対応をしなければならないというふうに思っております。今、病院、病棟ごとのそういう工夫をいたしておるわけでございまして、重要な課題というふうに私どもも認識いたしておりますので、鋭意努力をいたしたいというふうに思っております。
  30. 田口健二

    田口委員 総務庁長官お尋ねします。  今厚生省の方からお答えがありましたけれども、確かにそういう問題はいっぱいありますよ。しかし、これはきのう、きょう出てきた問題じゃないのです。もう随分前から問題になり、特に交代制勤務職場などでは一体どうするかということでいろいろ苦労されて、そして閉庁方式による四週六休なり、週四十時間の勤務体制なり、それぞれ組んで試行し、今日まで来ているわけです。ですから、私は、今の厚生省の態度というのはやはり真剣にやろうとしていないのじゃないのか、こう思うのです。国全体としてこの問題を整理統括していくのはやはり総務庁ですから、その辺は、総務庁としては厚生省ときちっと調整して、公務員全体が足並みをそろえて完全週休二日に入っていけるように総務庁長官としても努力してもらわなければならぬと私は思うのですが、御意見はいかがでしょうか。
  31. 佐々木満

    佐々木国務大臣 私どもは、行政改革ということで、国家公務員の定員の膨張を抑えながら、いろいろ事務事業等の見直し、工夫をしながら週休二日制へ持っていきたい、こう考えておるわけでございます。それぞれの職場ではそれぞれ難しい問題を抱えておられるし、御苦労もしておられると私は思う。そういうところで、みんなで知恵を出して早く週休二日制に移行しようということで今試行に取りかかって、苦労しながら研究していただいておる、こう理解しておるわけでございます。私は、厚生省さんにはそれなりの難しい問題も十分おありだろうと思うので理解できるわけですけれども、その辺の国全体の流れということも御理解をいただきまして、何とか知恵を出していただいて、そして国家公務員が足並みをそろえて完全週休二日制へ一日も早く進めるように御努力お願いしたいと思っておる次第でございまして、厚生省さんにも改めてまたお願いも申し上げたいと思っておる次第でございます。
  32. 田口健二

    田口委員 週休二日はこの程度にして、次に、看護職員関係について幾つお尋ねしたいと思うのです。  今、看護職員の問題というのは、これから高齢化社会を迎える中で社会的にも大変大きな問題になっておるわけです。私は、二月にもこの近郊の茨城県の公的病院なり私立病院なり、幾つかのところの実態調査に行って、現場も見、それから労使双方からもいろいろ御意見もいただいてまいりまして、今いろいろ検討しておるわけでありますが、厚生省の中にこのほど保健医療・福祉マンパワー対策本部というのを設置されたというのを聞いております。最近、その中間報告が出されておるのですが、その中に一つ、「看護職員需給見通しの見直し等」という項目があるのですね。たしか厚生省の方でこの看護職員の需給見通しを作成されたのは平成元年五月ではなかったかと記憶しておるのですが、一年足らずのうちに今回の中間報告の中で見通しの見直しを各県に指示された、この背景というのは一体どういうものなんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  33. 矢野正子

    ○矢野説明員 今お話がございましたように、看護職員需給見通しにつきましては平成元年の五月ということで策定いたしました。その後、昨年来からいろいろ議論されておりますような高齢化社会の問題に備えまして「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、これは平成元年の末に策定されております。また、今御議論がありますように労働時間の短縮等の労働条件の改善に伴いまして、看護職員の需要につきましても、今までも考慮はしてきたわけでございますが、従来以上にさらに考慮して見直しをする必要があるのではないかということで、見直しの指示をいたしました。
  34. 田口健二

    田口委員 平成元年にまとめた需給見通しを見てみまして、今お話がありましたが、さらに看護職員の処遇、労働条件の改善、週休二日だとか、いろいろなそういうものが入ってくると思うのです。そういうものを見越した見直しをやるということになると、どうでしょうか、全国的にはどのくらいの数値の変動が出てくるというふうにお考えでしょうか。
  35. 矢野正子

    ○矢野説明員 どのくらいの数がこれから必要になるかということにつきましては、一つは、先ほどの十ヵ年戦略に関しましては約五万人くらいという数字が出ておりますが、それ以外、今度指示いたしました四十時間の問題あるいは八日の夜勤の問題とかを含めましてどれくらい要るかということにつきましては、今のところ、まだ見通しの上ではっきりさせてはいない状況でございます。いろいろ議論を踏まえまして、県と議論しながらやって、そこら辺のところも固めていきたいというふうに思っております。
  36. 田口健二

    田口委員 さきに発表された見通しでいきますと、平成六年度で需要が九十三万五千、供給が九十三万五千四百というトータルになっているんですね。これはどうも各種団体が出した数字で相当アンバランスがあるのですよ、数字の差が。これは厚生省がまとめた見通しなんですけれども、ただ、私は、そういうものから考えますと、看護職員のいろいろな労働条件の改善その他を念頭に置いた形での見直しをしていくということになると、相当大きな数字になってくると思うのですね。  そこで、もう一つお聞きをしたいのは、「看護職員需給見通しの見直し」というふうに書いてあるのですよ。ところが、「理学療法士・作業療法士需給計画の見直し」なんです。 これはなぜ看護職員が「需給見通し」であって、ほかのところは「計画」なんですか。これはどうでしょう。
  37. 小沢壮六

    小沢説明員 御指摘のように、看護婦につきましては「需給見通し」、それからOT、PTにつきましては「需給計画」という言葉を使っておるわけでございますが、私どもそれほど厳密に見通しなり計画というものの言葉の使い方をしているわけではございませんで、一般的にOT、PTにつきましては、前の昭和六十年代に一応計画をつくっているわけでございまして、それを見直すとう意味で単純にOT、PTの「需給計画の見直し」、そういう言葉を使わせていただいているということでございます。
  38. 田口健二

    田口委員 単純にということなんですが、私ども考えますと、片一方は計画だ、片一方は見通しだ、それは当然調査の結果見通しが出てくるでしょう。しかし、それはそれで各自治体なりほかのところがやってもらったらよろしい、国は余り責任ありませんよ、こういうことになるのではないかという心配をするわけですね。それで出てきた数によってその数を確保していく、そのために養成計画をどうするかとかいろいろなものが重なって、確保するためのいろいろな手段が講じられなければならないと思うのですが、それはどうなんですか。当然見通しの数によってそういう対策は立てていくということですか。
  39. 矢野正子

    ○矢野説明員 看護職員の確保につきましては、先ほどお話がありましたように、ことしの三月十八日に保健医療・福祉マンパワー対策本部の中間報告が出たわけでございますが、それを踏まえまして看護の方でも需給見直しをしているという状況でごさます。  平成三年度予算におきましても非常に大幅な増を図りまして、どういう対策になるかということになりますが、それはまず養成施設への助成でありますとか、各県に持っております再就業促進のためのナースバンクでありますとか院内の保育施設への助成でありますとか、あるいは今回初めて行うわけでございますが、国民に看護についての理解を深めていただくということで、看護の日の制定、五月十二日でございますが、そういったことを柱にいたしまして、一般会計のベースで四割の増強を図ったということでございます。確かに、これから需要が多く見込まれるということも踏まえまして、中長期にわたりまして看護職員の確保対策ということで、その見直しを含めた見通しというものが非常に重要な大きな意味を持ってくるだろうというふうに思っております。
  40. 田口健二

    田口委員 そこで、この看護職員給与の問題についてちょっとお尋ねをしてみたいと思うのですが、私も実際に現場に行っていろいろ皆さんの御意見を聞きますと、今も厚生省の方から話があったように、なかなか看護婦さんのなり手がない、あるいは定着率が悪いという話の中で考えてみますと、やはり労働条件が他の職種に比べて非常に悪い。いわゆる三K職場である。看護婦さんの場合は五K職場というふうな言葉も使われていますね。夜勤の問題あり、それから今もありました保育の問題あり、いろいろな問題があるわけです。給与の問題もやはり一つあると思いますが、もちろんこれがすべてではないと私も思っているのです。  そこで、公務員の場合は一応原則として民間準拠というのが、公務員給与労働条件の場合には制度としてとられていっているのですが、この看護職員の場合は、やはり官準拠なんですね。公務員の看護職員の給料が医療職(三)表ということになるわけですが、これが決まると大体地方公共団体もほとんどこれに準拠していますし、あるいは大きな公的病院も大体それに倣っている、さらには、それが民間病院にまで広がっていくという傾向が率直に言ってあるわけですね。ですから、そういう意味から考えますと、看護職員対策の中でも、やはり給与問題というのも一つの大きな柱ではないかと私は思っております。  そこで、先日も本委員会で同僚委員の方からこの問題についての指摘もありました。私は、医療職(三)表は構造的に問題があるのではないかというふうに思います。確かに初任給だとか若年層は行政職職員よりも上回っていますね。ところが、これが四十歳代ぐらいになりますと逆転していくのです。幾つか理由があると思うのですが、例えば医療職(三)表は最高号給が六級になっています。これは行(一)対応いたしますと八級だと思いますね。六級もこれは指定が看護部長だとか、総婦長というごく限定をされた方ですから、適用者というのは非常に少ないですよ。下の五級を見ますと、これは行(一)六級対応号給です。行(一)七級対応は医療(三)に入っていないのじゃないか、ここもちょっと欠陥があるのじゃないかという感じがするわけですね。  これは先日の委員会でも同僚委員からも指摘がありましたので、ぜひひとつ人事院の方としてこの医療(三)表の構造的な問題を検討して、これを何らか改善することを考えていただきたい。このことが、今言われておる看護職員の対策の中でも一つの重要な柱になるのではないかというふうに思いますので、ひとつその辺の御見解をいただきたいと思います。
  41. 森園幸男

    ○森園政府委員 ただいま御指摘ございましたように、看護婦問題というのは非常に多岐にわたっておるわけでございまして、解決策としては給与だけではないというのも御指摘のとおりでございます。  それで、俸給表の構造上の問題でございますが、これは全俸給表を通じての共通のことでございますけれども、職務給という原則でございますので、職制等によります職務給の区切りということがそれぞれの職種によって事情が違うということも背景にあるわけでございます。今は五級と六級の間という御指摘がございましたが、今申しましたそういう意味におきまして、職制なり職務段階の切り方をどうするかということをいろいろ検討いたしませんと、直ちに結論は出てまいらないわけでございます。  それからもう一点、年齢と給与曲線の関係の御指摘がございましたが、これも先般、北川先生に御答弁申しましたとおり、行(一)等と比べますと、行(一)が十一級の中でのいろいろな昇格がございますから、看護婦というのは下位の級に構造上もたくさんいらっしゃるということもございまして、較差があるということは事実でございます。  先ほど委員おっしゃいましたように、やはり免許資格を要する専門技術職でございますから、初任のところは非常に高くしてありますけれども、同一の職務に属する限りはおのずと上昇の傾斜についても限界があるということで現在できておるわけですが、現下のいろいろな看護婦問題を考えますと、他職種とのそういう相関関係につきましても再度見直しをする必要があるのではないか、こういうふうに思っております。  なお、国家公務員以外への波及ということも御指摘のとおりでございまして、そういう角度から考えますと、この問題は例えば診療報酬の問題等、所管省庁の行政の見直しというのも当然関連してくるわけでございまして、そういうのを含めました各方面の御意見を聞きながら検討してまいりたい、こういうふうに思います。
  42. 田口健二

    田口委員 それでは、看護職員の問題にちょっと関連をして別のことでお尋ねをしたいのですが、歯科衛生士の問題です。  聞くところによりますと、現在の歯科医療というのは、従来の対症療法を主体とした急性疾患型から原因除去療法、いわゆる慢性疾患型対応というのがこれからの歯科医療に求められておる。そういう中ではこれまでのように歯科医師の手作業による修理中心といいますか、そういう治療から、歯科衛生士、こういう方々を含めたチーム的な医療といいますか、そのあたり、ブラッシングの指導であるとか、食生活の指導であるとか、患者に対するそういう指導というのが再発を防ぎ新たな疾患を予防する、こういうことでこれも非常に大事であるというふうなことを言われておるわけですね。そういう意味では、国民の口腔衛生という立場から見てもこの歯科衛生士の持つ役割というのはこれからもますます大きくなっていくであろう、こういう話も実は聞いておるわけでありますが、現在、この歯科衛生士の資格を有しておられる方が一体どのぐらいいらっしゃるのか、そしてその中で実際に就業されておられる方がどのぐらいいらっしゃるのか、わかっておれば教えていただきたいと思いますし、そしてそういう歯科衛生士という職に対して国としてはどういう基本的なスタンス、位置づけをお考えになっておられるのか、この辺もひとつあわせて見解をお聞きをしたいと思います。
  43. 宮武光吉

    ○宮武説明員 歯科衛生士の免許登録事務は現在都道府県で行っておりまして、免許取得者数の正確な把握はされておりませんけれども平成二年末現在で約十一万人となっております。また昭和六十三年の衛生行政業務報告によりますと、歯科衛生士の就業者数は昭和六十三年末現在で三万六千九百八十六人となっております。就業場所別に見ますと、保健所に五百三人、病院に二千六百三十七人、診療所に三万二千七百七十五人、学校に五百四十一人、その他に五百三十人というふうになっております。  それで、歯科衛生士について現在どのようなことが行われているかということでございますが、委員御指摘のように、長寿社会を迎えまして、歯科保健指導でありますとか歯科予防処置に従事する歯科衛生士は、歯科保健医療サービスの供給を推進していく上で重要な役割を担っていると考えております。このため、平成元年に歯科衛生士法の一部改正が行われまして、免許権者が都道府県知事から厚生大臣に改められるとともに、新たに歯科保健指導が業務として加えられております。また、平成二年から厚生大臣の指定講習会を関係団体の主催のもとに実施をしております。歯科衛生士につきましては、引き続き資質の向上を図るとともに、歯科医療に従事する歯科衛生士の確保が図られるように努力してまいりたいという所存でございます。
  44. 田口健二

    田口委員 今お話がありましたように、約十一万ぐらいの有資格者がいるだろう、実際に就業されておる方が三万六千ぐらいというのは、非常にこれは定着率が悪いですね。私もごく身近な知り合いのところでいろいろ話を聞きましても、率直に言って、こういう歯科衛生士のような医療従事者の待遇というのは余りよくありませんね。ですから、そういう人たちの待遇を改善をしていくということを考えると、先ほどの看護職員の場合もそうでありますが、歯科医師の場合もほとんどが保険診療でしょうから、そうなりますと、やはり診療報酬が一体どうなっているのか、こういう疑問も起きるわけですね。聞くところによれば、歯科の場合は初診料は六年間据え置き、再診料についても四年間据え置かれておる、こういう話も実は聞いておるわけでありますが、この歯科の診療報酬について一体今後の見通しとして改定の考え方があるのかどうか、あるいはその他問題があるのか、御意見があればひとつその辺の状況等もお聞かせをいただきたいと思います。
  45. 小野昭雄

    ○小野説明員 歯科の診療報酬に関する御質問でございますが、歯科の診療報酬、これは医科、調剤も含めてでございますが、中央社会保険医療協議会の場におきましてさまざまな観点から御議論がなされておるわけでございます。通常、物価や賃金の動向あるいは医療機関の経営状態の把握、あるいは社会全体の労働条件の改善等のいろいろな要素を踏まえました御議論を踏まえて私ども所要の対応をしているわけでございまして、直近でございますと昨年四月に全体といたしましては三・七%の医療費の引き上げを行ってきたわけでございますが、これによりまして、おおむね通常の歯科の医療、歯科の経営は確保されているものというふうに考えております。ただ、いずれにいたしましてもその後の医療機関の経営状況、あるいは先生御指摘のような種々の問題がございますので、今後とも中央社会保険医療協議会の御議論を踏まえながら適正なかつ良質な歯科医療が確保できますような観点から対処してまいりたいというふうに考えております。
  46. 田口健二

    田口委員 それでは最後の課題でお尋ねをしたいと思うのですが、さきに第百十六回国会で本委員会でも審議を行いましてこの国会で成立をいたしました臨時脳死及び臓器移植調査会の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この法律は、平成二年の二月一日から施行されておるわけです。設置期間が一応二年ということになっていますから、平成四年の一月までということになりますが、今日までの取り組み、議論を行ってきたあるいは活動を行ってきた経過について、まずお尋ねをしたいと思います。
  47. 小沢壮六

    小沢説明員 臨時脳死及び臓器移植調査会は、先生御指摘のとおり、昨年の二月一日に法律が施行されまして、第一回の会合を昨年の三月二十八日に開かせていただいております。それで今日まで約一年ちょっと経過しておるわけでございますが、この間、十六回の会合を開きまして御審議をいただいております。この会合の審議の中で、十九名のゲストスピーカーから意見を聴取をいたすとともに、それらをもとにいたしまして脳死問題を中心とした主な論点についての討議など、精力的な御審議をいただいているというのが現状でございます。それから、これらの審議に加えまして、国内の救急医療施設の視察を実施いたしておりますし、諸外国の脳死及び臓器移植の状況調査ということで、アメリカ、ヨーロッパ、それからオーストラリア・タイ等の三班で海外調査実施をいたしております。それからまた、国民各層の意見を聴取するため、これまでに名古屋、福岡、札幌で地方公聴会を開催をいたしております。このほか、昨年九月から十月にかけて、もう少し幅広く国民の声を聞くということで有識者千名を対象に意識調査を行ったところでございます。  活動の概況は以上でございます。
  48. 田口健二

    田口委員 次にお尋ねをしたいのは、この法案審議の中でも問題になった点でありますが、それは公開性の問題ですね。提案者の方からもこの点についてはこの調査会の運営の中で十分に配慮をしていく、完全公開とはいかないにしても、議事録的なものも公開をしていくというふうな話がありましたが、私、活動の概要についてパンフレットのようなものを一回もらった記憶があるのです。ところが、その後全然何もないですね。新聞などではちょっと見るのですが、現状は一体どうなっていますか。
  49. 小沢壮六

    小沢説明員 調査会の審議の公開につきましては、御指摘のとおり、国会の審議の経緯の中でも特に重要なポイントとして御指摘をいただいたところでございます。 私どもも、脳死及び臓器移植の問題というのは、国民に審議の経過を十分に知っていただいてその理解を得ることが大変大切なことだというように考えているわけでございます。そういう国会の御趣旨等も含めて調査会に伝えまして、今後公開をどうするかというのを調査会の当初から御議論いただいたわけでございます。  これまでのところの取り組みといたしましては、御指摘ございましたように、まず議事録は原則として公開する、ただ、これは具体的な氏名等は入れておりませんが、すべて公開するというような形で進めさせていただいております。それから、議事録そのものも、当初は記者クラブといいましょうか、マスコミに公開をするという形でやらせていただいたわけでございますが、もう少し幅広く国民の方にも議事録が手に渡るようにということで、その後「審議だより」という雑誌を編集いたしまして、現在まで三号出しておりますが、この「審議だより」の中に議事録を全部載せるようにいたしました。これは公共図書館等に配付されますとともに、政府刊行物センターにおいて実際に入手ができるような形で、さらに公開性を広くするというような努力をさせていただいているところでございます。  これのほか、先ほど活動状況のところで申し上げましたが、調査会の場でゲストスピーカーからヒアリングを行うというようなことをやっておるわけでございます。このヒアリングをする、ゲストスピーカーが意見を発表される場には、新聞記者の方に入っていただいて一緒に聞いていただくというようなこともやっております。  それからまた、毎回の調査会が終わった後、これも一般の調査会の対応よりはかなり詳しいのではないかと思われますが、会長、会長代理、それからもう一名の委員という三名の委員が出まして、マスコミの方に対してかなり詳細なブリーフィングを行うということで、公開について御趣旨に沿うよう努力をしてきているということでございます。
  50. 田口健二

    田口委員 そこでもう一点お尋ねしたいのは、いろいろマスコミなどを見ておりますと、医学界の方では、脳死、それに伴う臓器移植というのを脳死臨調の結論を待ってやるべきだというような見解が出てみたり、いやそれまでは待てないんだという形で現実にこれを実施していこうという動きがあるというふうに報道されているのですが、調査会の方としては、そういう具体的な臓器移植あるいはそういう関係方面に対しての調査会自身としての考え方といいますか、例えば脳死臨調が結論を出すまではやるべきでないとか、そういうお考えは何か持っておられるのかどうなのか。あるいはまた逆に、医学界、各医療機関というのがどういうふうに考えておられるというふうに把握をしておられるのか、その辺は一体どうなんでしょうか。
  51. 小沢壮六

    小沢説明員 御質問の点につきまして、調査会の永井会長がいつも言っておられますのは、この調査会はいわば行政機関ではない、外部に対してこうすべきであるとかああすべきであるとか言う立場にないというような立場を基本的にとりながら、脳死及び臓器移植の問題は国民の大きな関心を引いている問題でございますから、各医療機関におかれては国民の納得のいく良識的な対応をしていただきたい、そういうような発言をされておるわけでございまして、こういったことが調査会の基本的な立場ではないかというふうに思っております。
  52. 田口健二

    田口委員 さっき申し上げましたように、平成四年一月ですから、もう一年間切っているわけですね。今後の状況、見通しというのはどうなんでしょうか。この二年間の期間の中で調査会としては一定の結論をまとめる、こういうことで作業が進んでいっておるのか、それとも今の状況であればどうも二年間では無理だ、結論が出せるような状況には至っていないという判断なのか、その辺の今後の見通しを含めてちょっと意見を聞かせていただきたいと思います。
  53. 小沢壮六

    小沢説明員 先ほど申し上げましたように、調査会ではこれまで十六回の会合を開いて御審議をいただいてきているわけでございますが、現段階では、六月ごろまでに調査会としての中間的な意見を取りまとめてほどうだろうかというような委員方々の御意見でございまして、現在、六月ごろの中間意見の取りまとめに向けて精力的な審議をいただいているというのが現状でございます。  それから、御指摘のとおり、この調査会法は時限立法でございますから、来年の一月末までということでございますので、中間意見を出した上で、さらにそれについての国民の御意見等もお聞きした上で、一月末の最終的な答申に向けて引き続き御議論をいただくというようなことでお願いをいたしているところでございます。
  54. 田口健二

    田口委員 今言われた六月ごろに中間報告をまとめるという話ですね。もう少し中身的にどういう形で中間報告をまとめるのか、ちょっとお知らせいただきたいと思うのです。
  55. 小沢壮六

    小沢説明員 これから調査会の委員先生方にまとめをおやりいただくわけでございますので、具体的な中身までというのはなかなか私どもの方では正確にお伝えできないのが現状でございます。ただ、今までの議論の経過といたしましては、この調査会の課題は「脳死及び臓器移植に関する諸問題」ということになっているわけでございますが、どちらかといえば、まず脳死という問題があって、それからまた臓器移植をどうするかという議論になるのではないかというのが一般的な考え方かと思うわけでございます。したがって、その前提となります脳死をどう考えるかというような点を中心として中間的な意見の方はお取りまとめがされるのではなかろうか。もちろん臓器移植の問題に触れないということではございませんで、臓器移植の必要性そのものについてはどう判断するかという御議論も踏まえた上で、脳死をどう考えるかという点にポイントを置いた形で中間的な意見の取りまとめが行われるのではなかろうかというような見通しを持っておるわけでございます。
  56. 田口健二

    田口委員 それでは最後ですが、今おっしゃったことは、調査会の結論として、脳死を人の死として認めるという結論を調査会では出すということになるのか、あるいは逆に現状では人の死として認めないということか、二者択一になるのですが、いずれかの結論を出す。今までの調査会の議論の経過なりなんなりから考えてみた場合に、そういう方向で結論を出すということでしょうか、それ以外に何らかの結論があるのでしょうか。
  57. 小沢壮六

    小沢説明員 これもどのようなまとめ方をしていただくかはこれから委員先生方に御議論いただくところでございますが、今までの議論の中ではいろいろな意見があったということ自体は、何といいましょうか、外に出す場合にも記録にとどめる形で行わなければいけないのではなかろうかという議論が行われているというふうに承知しております。
  58. 田口健二

    田口委員 済みません、ちょっとはっきりわからなかったのですが、いずれにしても最終的に調査会が結論を出すときには、先ほど申し上げましたように、脳死を人の死として認める、あるいは現段階ではそこまでいくのは適当ではない、こういう結論になるのでしょうかね。
  59. 小沢壮六

    小沢説明員 ちょっとはっきりしない言い方をして大変申しわけございませんでしたが、いずれにしてもそのまとめ方自体はこれから御審議なものですから、断定的なことは申し上げられないということを前提として御理解いただきたいと思います。脳死及び臓器移植についてどのように考えるかというのが調査会に与えられた課題でございますから、それについて多くの委員の方はこういうふうに考えているし、また別の考えとしてはこういうものがあるという形で、やはり一定の考え方というものをお示しするのが調査会の役割ではなかろうかというふうに委員先生方は御理解しておられると思っております。
  60. 田口健二

    田口委員 以上で私の質問を終わらせていただきまして、あと、関連質問の伊藤委員と交代をいたします。
  61. 近岡理一郎

  62. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 関連質問をさせていただきます。  私の方からは、多国籍企業の問題について以下質問をさせていただきますが、主に労働省、通産省になろうかと思います。  近年、我が国におきまして、受け入れ国ということになりますが、多国籍企業が非常にふえていると思います。日本もまた、アメリカを中心にしまして企業が我が国から外国へ進出をしておるのは御承知のとおりでございまして、このように経済の国際化が非常な勢いで進む中でこの種のケースがふえることは、むしろ当然でございます。しかし、その場合、両国間にとってバランスのある経済活動が展開されなければいけないということもこれは当然のことでございます。そういうようなことで、経済の国際化がますますこれからも進展を見るであろうということについて大きな関心を払っているわけでございます。  そういう状況の中で私が問題を提起いたしますのは、日本に来られております多国籍企業も数々ございますが、その中で労使紛争がたびたび起こるわけです。この労使紛争が現実に起こっております特定のケースを取り上げまして、問題提起を含めながら具体的な問題に対する一日も早い解決を我々としては期待をしたい、こういう立場に立って、以下質問なり問題提起をいたしまして、関係省庁の的確な態度表明なり答弁をいただきたい、こう思うわけでございます。  問題の企業はP&G・ファー・イースト社という企業でございますが、これは本店は大阪なんです。P&Gは御承知のようにプロクター・アンド・ギャンブル。どういう製品をつくっている会社なのか、これは御承知のとおり。テレビコマーシャルでも有名ですが、紙おむつのパンパース、あれは非常に人気があります。子供が出てきまして、見ているだけでほほ笑ましくなる、あの製品買おうかというので、非常に宣伝がうまいのです。さらに洗剤ではモノゲン・ユニ、それからウルトラアリエール、こういうものを宣伝するコマーシャルがテレビの画面をにぎわしております。ナプキンの世界ではウィスパーというのが有名なんですが、このように洗剤だとか紙おむつだとかナプキンだとかいうのがコマーシャルでは非常に出ているわけです。  これの本社といいますのはアメリカのオハイオ州シンシナティにございまして、多国籍企業ですから世界各国に工場がございます。もちろんそれぞれの国では何々本店という格好にしているのです。香港にもございますし、フィリピンにもありますし、タイにもありますし、イギリスにもありますということで、日本にももちろん来てもらっているわけですが、売上高が二百四十一億ドル、相当大きな規模でございます。従業員が全体で九万二千五百人。日本にも本店がございまして、これが大阪にございます。日本の会社はP&G・ファー・イースト、極東株式会社、こう言うのでしょうか、国内におきます業種別の売り上げランキングが第三位、平成二年六月現在の売上高一千二百六十億円でございます。かなり大きな企業ですね。従業員は一千九百名。国内に幾つか工場を持っています。高崎、これが今申し上げた製品の主に洗剤部門を扱っています。富士が石けん関係、明石にも工場がございますが、これが紙製品、栃木にも新工場建設中でございます。鈴鹿に、鈴鹿といいますと本田技研、いわゆるサーキットで有名ですが、あそこには製薬工場を持っております。  この鈴鹿工場で、実は問題の労使紛争が今起こっているわけであります。鈴鹿工場は、かつてアメリカ資本、米国の株式会社ヴイックスという会社、これも御承知のとおりです、いわゆるのど薬ヴイックスドロップで有名でございますが、このヴイックスの工場として誕生したわけです。一九六四年に設立されました。そういう工場だったのですが、このヴイックスを生産しておりました鈴鹿工場が八五年にP&Gに買収されたわけであります。現在はP&G・ヘルスケアというふうに名前を変えまして、つくっている製品はほとんど変わりません。むしろメニューをふやしているわけです。対応します労働組合の方は、もともとヴイックスの会社でしたからヴイックス労働組合と名のったわけですが、今日まで組合の方は名前を変更せずにヴイックスのままで来ているわけです。会社の方は買収されまして、ヴイックスという会社からP&G・ヘルスケアに名前が変わっているわけです。こういうふうに変化をしてまいりました。  この鈴鹿工場の従業員は百十六名でございます。そのうち組合員の数が、管理職などを除きますと六十五名。年間売上高が百三十億円、経常が平成二年で九億円、非常に健全な経営をしているところでございます。  このP&G・ヘルスケアから当該労働組合に対しまして、というよりもむしろ組合員に対して、三月三十一日に突然工場閉鎖が通告されました。工場はロックアウトというような格好で閉鎖しまして出入りできないわけですが、従業員は工場外に出ていきなさいということで、作業所を別の場所、離れたところにつくりまして、その建屋の中で今度はサンプルの袋詰め作業をやりなさい、一方的にこう通告してきたわけです。  組合員にはそのように通告をして、入れないようにしておいて、工場内の生産設備──ここは薬品の製品生産工場ですから、医療機械なんかの設備がございます。どうでしょうか皆さん、イメージとして、アメリカなんかに行きますと、広大な敷地にごく一部、隅っこの方に工場が大体平屋で建っていますね、あのままなんです。あのような工場がつくられていますから、ローカルでいいますと、何とすばらしい工場かというイメージですね。芝生がだっと一面植えられていまして、ほとんど立ち木なんか立っていないわけです。 道路から通りがかりの人に中の工場が見えるようにネットのフェンスが張ってありまして、青々とした、そこでゴルフの練習でもやったら非常に楽しいだろうなというぐらい空き地が広いわけですね。向こうの方にしょうしゃな建屋、工場がずっと一階建てで建っているというふうなところなんです。  その工場内の生産設備、機械類というのは、四月九日に皆搬出、持ち出すわけですね。撤去するわけです。工場を閉めておいて、だれも入れないようにしておいて、中の生産設備を一方的に運び出す。こういうふうなやり方というのは、ちょっと日本の経営者では考えられないことですね。何というか、思い立ったら一瀉千里という格好で実行に移すというのは、さすがアメリカの資本主義を目の当たりに見るような思いかするわけですが、そういうところまで今来ているわけです。  次に私がちょっと説明さしていただきますのは、その工場閉鎖に至る経過でございます。時間の関係がございますので余りゆっくりも言えませんが、問題点だけ絞って申し上げます。  今申し上げました広大な敷地、約二万数千坪ございますけれども、これは別にこの会社が自分である日思い立って日本の鈴鹿へ飛んできて、そこで自分で土地が買収できたわけじゃないのです。御承知のとおり、これは地元の市長さん初め市に陳情もいたしまして、市の方も、アメリカの工場が来るらしい、これは御承知のように、一九六四年に設立しているわけですから、あの当時、つまり外資系の工場が来るということになれば、これは市としても大変な関心を示したと思うのです。来てくれれば雇用の確保、拡大になる、町のイメージにもつながるというようなことで、工場誘致に積極的に走りまして、敷地が今言いました二万坪を超えるわけですが、当時あっせんしました価格というのが一平方メートル一千三百六十一円、ただみたいな話です。それで、きちっとそろえて、どうぞお越しくださいというふうに市はサービスしたわけですね。  地元はどうだったかと言いますと、アメリカからヴイックスという有名な会社が来るらしい。市の方がこのあたりに建てたいと言いますと、売りたくないけれども市長さんに言われたらやむを得ないし、自分のところの息子だとかこの村落の人の雇用確保ということになるのだったらというので、後ろ髪を引かれる思いで先祖伝来の田畑も手放そうかという気になったという経過がございます。やっと宅地造成も市の指導によって行われて、しかも鈴鹿市は三年間誘致条例をつくりまして減免措置を行うという手厚い受け入れ態勢でもってヴイックス株式会社をそこに誘致した、こういうことであります。  その当時、もちろん労働組合がございまして、労使関係ほうまくいっていたわけです。七九年の一月現在、私調べたのですが、労使の間に労働協約がございまして、その中の配置転換協約の中身をめくってみますと、労使協議決定になっているわけですね。これは労働協約としては非常に進んだレベルだろうと私は判断をしております。日本の労働組合も数ありますが、労使協議決定をきちっと労働協約にうたっているパーセンテージというのは、日本の労働界を調べましても半数超えるでしょうか、私はそんな感じがしているわけですが、非常に良好な労使関係で、しかも協約の中身も非常に充実したものを持ちまして労使がヴイックスの会社の運営に当たってきたわけです。  ところが、八五年に買収されまして、ヘルスケアに言うならば経営権が移りまして、その後すぐ協約改定がヘルスケアから申し入れがございました。そういう労使協議決定というのはもう不都合だ、全面的に協約を見直すという一方的な改定の申し入れがございました。 労使間で協議が行われましたけれども、そういうふうなやり方ですから、当然協議が不成立になりまして、その後、無協約状態で今日を迎えているわけですね。この一つをとらえてみても、なかなかやり方が厳しい、非常にラジカルなやり方で組合に対応してきているといることがおわかりいただけると思います。  八八年の五月でございますが、今度は第二弾としまして、チェックオフ、組合費を天引きするという制度ですが、チェックオフの拒否を一方的に打ち出してきました。これはもう当然労使間でどうしても議論が激しくなるわけでございます。何ぼ言いましても会社側は聞かないということで、これは大阪の地労委に申し立てをいたしまして、地労委の方もそれはちょっと不自然だ、会社のやり方がきつ過ぎるというので、八九年の五月に会社側が譲歩いたしまして、チェックオフ協定は締結できたわけですね。これも一つの大きな出来事であろうと思っております。  そうこうしておりますと、ちょうど二年過ぎたところで、九〇年の四月ですが、工場の縮小案、まあ合理化案ですが、これが提案されてまいりました。こうなりますと組合の方も会社に対してかなり不信感が募っておりますから、何だまた第三弾のやり方かということになりまして、団体交渉がお互い合意点を見出すために努力をするというよりも物別れになったり不調に終わって、どうしてもそういう関係が続くということになっているわけです。  それで、ヴイックス労働組合というのは、今申し上げました工場の縮小案が提案をされますまでは、ほかの共闘会議というのですか、地域の協議体に全然入っていなかったわけですよ、全く単独の組合で来ているのですね。このことをとらえてみても、言うならばよく民間にある中小のケースですね、もう自分たちの組合と会社との間でうまくやっていこうという姿勢で臨んできたわけで、地域でも立派な会社があそこにあるということはわかっていましたけれども、そこに労働組合があるというのは余り皆知っていなかったというような感じなんですね。ところが、労使関係というのがそのように非常に厳しい状態に組合も追い込まれてきましたので、この工場縮小案が提案をされたときに、これは自分たちだけではとても守れないということに気がつかれたのではないでしょうか、真相のほどは私もわかりません、推測の域を出ませんが、全国一般という労働組合がございます、これは今連合にも入っておりますが、ちょうどそのときにその組合に初めて加盟しているわけです。そして、ここまで来たらひとつ力をかしてくれないかということで、不当労働行為の救済申し立てを九〇年の六月に行ったわけです。  一方、断続的に交渉は続いているわけです。お互いもう余り信頼関係が存在しないというような感じなんですが、九〇年の十二月に会社の方から縮小案の見直しを約束するというところに来たのですね。これはどちらを向いて見直すのか、ベクトルが問題なんですが、そういうことになりました。  しかし、組合の方は、それは中身を部分的に修正するということになっても、今もお話し申し上げたように、従業員がほとんど地元の人でございますし、配転をせよと迫られても、転勤をしなさいと迫られても、全国に散らばっている工場でありますから、行けるところというのは余りない。しかも、非常に奥さんが多いわけですね、三分の二ぐらいは婦人の方がおみえでございますから、それはとても乗れない相談だということになるということがありまして、部分修正にはどうしても応じられない。それはもう生活権そのものまで脅かされることになるということだったと思うのです。  そういうふうな労使間の断続的な交渉といえば交渉もやりながら、一方、並行して地労委に救済の申請をやりまして、九一年の三月に地労委から実効確保の措置勧告というのが出されました。中身といいますのは、いずれにしても、計画縮小案がのめなければ工場閉鎖するぞというふうな非常に高圧的な会社側の態度が労使関係をこのように紛糾させている、だから経営者側はそういう点を考えなさい、組合の方も問題解決に向けて、円満解決に向けて双方が一日も早く努力をすべきである、一口で言えばそういう内容の措置勧告地方労働委員会が結論したわけでございます。  この年の三月五日に地元の市長さん、それから同じく三月の下旬に県の知事さんが、これは大変問題である、地域社会に与える影響も大きい、行政も工場誘致には一連かかわってきておりますから、円満解決を図っていただきたいという要請を正式にやっているわけです。それぞれの議会でもこの問題が取り上げられまして、ちょっとこれは会社の方が行き過ぎじゃないかということで、そういう議会の声を踏まえて地元の市なりあるいは当該の県なりが要請行動に動いたわけでございます。  それで、私たち国会議員団を編成しまして、三月二十九日に現地調査に入りましたら、何とその日に工場閉鎖通告ということになるわけです。私たちを待ち受けていて出したような格好でして、何という会社だというふうに実感をしたわけでございます。  これではたまらぬというので、四月の二日に当該組合は、閉鎖停止と配転命令の効力停止を求める仮処分申請を行いまして今日に至っているというのがざっとした経過でございまして、この多国籍企業の労使紛争問題というのはそのようにひとつ御理解をいただきたい、こう思っているわけでございます。  それで、連合の本部は、この種のケースというのは余り見たことがないと非常に驚きまして、全面的支援に乗り出すことになりました。その文書を私きょうも持ってきたのですが、これも連合としては非常に珍しいケースでございます。四月の八日付で連合本部が三重県の連合と大阪の連合に対して、ヘルスケアの本社が大阪なものですから、この二つの経営当事者に対して行動を起こすことを傘下の関係組合に通達を出しました。これも非常に珍しいケースでございます。  それで、連合が分析といいますか、今回紛争の性格をこのように位置づけております。それは、多国籍企業の横暴さを典型的にあらわすものだ、こういう位置づけをしております。  それで、具体的には、もちろんこれは今紛争が起こっております鈴鹿の現地と本社の大阪に対して支援行動を組むのがまず第一でございますが、二点目には、ICEF、これは国際化学エネルギー労組連盟、六百万の組織でございますが、それから米国日本商工会議所、こういうところに向けて国際的にも要請行動を行うということを決めまして、早急に行動が開始されることになりました。  連合の話を承っておりますと、P&Gという多国籍企業は、出ていっている国あちらこちらで似たような紛争を起こしているそうです。それをよく知っているんですね。ですから、ICEFですか、ここにも問い合わせるというか、ここに要請行動を起こしまして、こんなことが起こっているからひとつ助けてくれないかというようなことで連合が早速連絡をとりましたら、ああP&Gか、また起こしているかというような格好で、国際的にも非常に有名な企業でございます。パンパースも有名ですけれども、労使紛争でも必ず一役買う有名な企業でございまして、これはほっておけないなという国際問題に今労働界では広がってきているということも報告をさせていただきますので、その辺もひとつ御認識をいただいて、以下の点について、労使紛争を、一日も早く問題解決を図っていくために政府としても格段の指導をいただきたい、これが私の質問の趣旨でございます。  そこで、労働省にお伺いをいたしますが、ILOの三者宣言は御承知だろうと思います。一九七七年のILOの理事会で決定されたわけですが、これに照らしましてもこの紛争は、企業側の対応には大変問題があるのではないかと私は考えるわけです。  その中身というのは膨大なものでございますが、三者宣言の中の、特に「雇用の安定」という章がございまして、この中の二十六項ですね、ナンバー二十六で、こういう表現が三者宣言で決定されているわけです。「多国籍企業は、雇用に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当っては、悪影響を最大限に緩和するために、共同して検討を行いうるよう、適当な政府当局、当該企業が雇用する労働者及びその団体の代表に対して、かかる変更についての合理的な予告を行うべきである。」とりわけ「事業閉鎖の場合特に重要である。」こういうふうに三者宣言でほうたっているわけでございます。これはガイドラインということになるわけです。そして「労使関係」の章の四十項目目には「多国籍企業は、関係国において類似の企業が遵守している労使関係の基準よりも低くない基準を遵守すべきである。」だから、受け入れ国の労使関係を最低にして、積極的にもっと労使関係をつくっていくべきであるというのがこの趣旨であらうと思いますし、しかも、受け入れ国の法令,そういうものを遵守するということはもう言うまでもないことでございます。  このようなILOの三者宣言を踏まえて考えますときに、P&Gのやり方というのはどうもそぐわない、非常にきついやり方だ、こういうふうに思わざるを得ませんので、その点について労働省は、いやいやそうじゃない、P&Gのやり方は非常に真っ当なんだというふうにお考えなのか、三者宣言のこれに照らしてみてどうもこれは行き過ぎだとお思いなのか、まずその点の認識についてお答えをいただきたいと思います。
  63. 播彰

    ○播説明員 お答え申し上げます。  このP&Gの事案につきましては、先生からるる経過等お話がございました。私どもも地元の三重県と緊密な連絡をとりつつ事態の把握をしてございます。事件の発端となりました規模の縮小の通告が昨年の四月でございまして、この四月でもう一年が経過しようとしてございます。 働く人々にとって、この一年という期間は決して短いものでないと考えてございます。  それで、お尋ねの三者宣言でございますが、御指摘のとおり多国籍企業というものは、一方では進出先国の雇用をふやすとかそういった積極的な面もございますが、他方ではいろいろな問題点を伴うということもILOは十分承知してございまして、そのマイナス面をできるだけ少なくするように、本国とか受け入れ国政府あるいは使用者団体、労働者団体、そして何よりも進出企業がとるべき方策を盛り込んだものと承知してございます。そして、先生御指摘のとおり、このような大量解雇の場合の指針として、それがたとえ企業経営上やむを得ない閉鎖等であっても、従業員の生活に重大な影響を及ぼす以上、最大限に実行可能な限度においてその影響を緩和するために労使が協力して措置を、知恵を出すべきである、こういう項目が入っていることを重々承知でございます。  昨年の六月、先生御指摘のとおり、事件は不当労働行為を契機として労働委員会の手にゆだねられてございます。労働委員会もことしに入りまして、いろいろ閉鎖提案が出てくるなどの事態の局面に対処するために、あえて和解のテーブルを設定して努力をするとか、あるいは先生おっしゃるとおり円満に解決の話し合いをするようにという勧告を出すなど、懸命の努力をしておりますので、私といたしまして、個別の事業について労働委員会あるいは裁判所が現に扱ってございます事件について申し上げることは差し控えさせていただきますが、今先生の御指摘いただきました特に集団的な解雇を伴う事業所の閉鎖に一項目を割きましてかなり行き届いた指摘をしている趣旨、これは、何としても進出企業が日本で経済活動を行い、そして円満な労使関係を築いていただくべく来ていただいているわけですから、これまでも私どもいろいろな機会をとらえてPRしてまいりましたが、この先生御指摘のILOの三者宣言の趣旨が徹底されますよう、私としてもいろいろな機会をとらえて努力してまいりたい、このように考えてございます。
  64. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 考え方は一致しているわけですよね。非常に理解をされているわけで、問題は、具体的に指導していただくということがやはり大切だと思いますね。仮処分でもって裁判にかかっている部分をどうのこうの、司法にゆだねられていることをどうのこうの言うのは、あなたの答弁のとおりなんですが、いずれにしても、これは第三者に問題解決をゆだねるというのは本来じゃございません。やはり労使間で円満に解決が図れるということが一番いいことだと思いますから、そうなっていくように、そんなものは取り下げればいいのですから、そうなっていくように日本本社、そちらに向けて──ここが実権を握っていますから現地で何ぼやってもこれはだめなんですよ。私も経営者に会いましたけれども、多国籍企業というのはああいう姿勢かなと思いました。日本の労使関係というのは、近代的な労使関係をつくっていこうというのでそこにはあうんの気持ちというか、いかに激しい中でもホットラインというのはあるものです。ところが、お会いして思ったのですが、それが全くないですね。そういう企業はもう来てもらわなくていいわけです。日本だって行ったらアメリカ市場では日本たたきでがんがんやられるわけです。ところが、日本へ来て、日本の慣習とか日本の法令とかそういうものに照らしてみてどう考えてもこれはその線を逸脱した労務政策なりをやって、言うならば利益優先で、地域社会の事情なんかも全然考えずに、調和の問題も考えずにやっていこうというような企業はお断りすればいいわけで、そこが問題だと思いますから、私はっきり言わせていただきますけれども、そういう企業というのは札つきの企業でございますから、極端に言えばそういう企業はもう出ていってもらえばいいわけで、だから労使問題をきちっと責任を持ってやってくれるように、姿勢の転換を図ってくれるように、労働省としては、政府としては具体的に指導を強力にしていただきたい、このことを私は要望いたしたいと思います。  これと付随するのですけれども、本省の方は既にもう御承知だろうと思いますが、もう工場へ入れませんから事実上のこれは首切りみたいなものなんですが、別のところに建屋をつくったわけですね。そこで作業をやらせるならいいけれども、全然作業の段取りができてないわけです。トイレも非常に数が少ないというので、これは労働基準法違反ではないかというようなことを組合としては当然問題にしまして、それで監督署から現地に入られたそうですけれども、間違っておればこれは訂正いたしますが、聞くところによりますと、これは倉庫みたいなものだから労働基準法をきちっと適用をできるかどうかというのは判断がある、倉庫だったらこの程度のトイレでいいじゃないか、これは違法にはならぬというような、そんなやりとりのあったことを私どもちらっと聞いておるわけです。もしそうだとしたらまさにそこが会社のねらいでございまして、そこで働けばいいんだ、雇用は確保しているといいますけれども、仕事がなければ労働者というのはこれはもうとてもじゃないけれども職場にはなかなか居つけないわけですから、事実上そこでもうやめていく、そういうふうなところへ追い込んできているのだというふうに考えることの方がむしろ常識的だろうと私は思うのです。そのときに監督署が入られて、これは倉庫みたいなものだから、このトイレの関係は基準法に照らして判断するというのはちょっと早計なんというようなやり方は全くおかしいのじゃないか。むしろ、作業所というふうに銘打って、従来の工場では閉鎖してやらすことができないからこちらでやれというふうに一方的に持ってきて、そこを職場として位置づけて、建屋もつくった、トイレもつくった、ところが、それが基準法に照らして問題のあるような設置の仕方であるということだったら、監督署はこれは問題だと言うのが当たり前なのであって、いや、これは作業をやっていないから倉庫みたいなもので、倉庫だとしたらこれは基準法に照らして直ちに結論が出ないなんというような対応の仕方というのは、今御答弁をいただいたことと下部でやっていることが随分違うと思うのですが、その辺どうですか。
  65. 播彰

    ○播説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生からの具体的な監督署の指導あるいは点検の問題につきましては、大変申しわけございませんが、初めて私承知したことでございますので、戻りまして労働省の担当セクションに先生からそのようなお話があったということはお伝えいたします。  いずれにしましても、繰り返しになりますが、先生が冒頭におっしゃられた一日も早い解決をという気持ちは、先ほど私申し上げましたとおり肝に銘じて、引き続き地元の三重県と協力しつつ事態の把握等に努めてまいりたいと思います。
  66. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ぜひひとつ実態をつぶさに見ていただいて具体的な指導をいただきたいし、それから会社側にも、早期に問題解決ができるように、従来の態度を踏襲しておったのではそれは無理なのであって、三者宣言の趣旨からいっても常識的な線でやってもらえばいいのです。日本の労使慣行に準じてやってもらえば問題の解決は図れると思いますので、その辺をきちっとひとつ指導いただきたい、このことを強調させていただきます。  通産省に伺いますけれども、通産省としてはどのようにお考えですか。
  67. 大慈弥隆人

    ○大慈弥説明員 お答えいたします。  今先生の方からの御指摘に対しまして、労働省の方から労使関係を中心にしたお答えをさせていただきましたけれども、通産省といたしましては、そもそも外国企業の対日進出、立地の選定それから事業の縮小等の決定に関しましては、基本的には企業の経営戦略であろうということで、経済情勢等各種要因を含めました企業の自主的な判断にゆだねているというのが基本的な考え方でございます。ただし、現在の国際情勢にかんがみますと、外国企業の対日進出というのは我が国産業の活力の維持だとか地域社会の活性化ということで通産省として非常に重要だと認識をいたしておりまして、どちらかといいますと、対日投資を促進し、かつ、地元経済の活性化に貢献をしてほしいという基本方針をとってございます。  既に海外投資を行った企業に対してでございますけれども、進出先国で、つまりこの場合日本でございますけれども、現地法人として事業活動を行う場合、これにつきましては現地、つまり日本が定めております法律だとか制度を遵守するというのがまず基本でございます。ただ、法律にのっとっていれば何でもやっていいのかということになると思いますが、さらに進出した企業に関しましては、よき企業市民ということでその国の風土に応じた行動をとってほしいということを我々としても常々考えておりまして、労使関係につきましても良好な労使関係が確立できるようにということを我々も考えております。  政府といたしましては、国際的にも同じような考え方をとっておりまして、特にOECDの加盟国におきましては多国籍企業行動指針というのを一九七六年に合意をいたしておりまして、この中にも、良好で適切な労使関係の確立に努めるようにという申し合わせをいたしております。当省といたしましても、一般論でございますけれども、機会あるごとに多国籍企業がこの指針に沿うような行動をとるようにということを関係方面に周知徹底をいたしておるところでございます。雇用に関しましても同指針の重要な一部を構成いたしておりますので、良好で適切な労使関係が確立をされるということを通産省としても期待をしているところでございます。経済団体に対しましてはこの行動指針の普及徹底を既に七八年以降数度にわたり実施をいたしておりまして、そのためのフォローアップの調査実施をいたしております。今後ともこの指針を遵守をいたしまして企業は行動してほしいということを我々としても維持をしていきたいと思います。  なお、労働省から、労使の話し合いによる早期の円満な解決をという答弁がございましたように、当省としても、本件の事態の推移を見守りながら適切な対処の方法について検討してまいりたいと思っております。
  68. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 我が国に外国企業が進出してくる水際で一定の判断というのですか、そういうケースがふえれば、あるいは多国籍企業が日本でだんだん数がふえていけばいくほどそういうことは政府立場として必要なんじゃないですか。例えば、労使紛争が起こってからどうするかというのは労働省の問題になる。それは入ってきてから第二段階に起こる問題なんです。水際でそういうあるべき一応の基準というようなものをこれからは持っていく必要があるのじゃないですか。今おっしゃったことはもちろん一つの理念でございますが、それを具体化すれば一定のことは出てくるように私は思うのですね。  なぜこれを言うかというと、例えば鈴鹿工場は二万数千坪あるでしょう。これを恐らく売ると思うのですよ。これは売ってしまうと思いますよ。それで、工場閉鎖の理由がこういう理由になっているわけですね。つまり栃木に同じような、これにちょうどかわるような広さの新工場をつくったわけですね。そちらの土地の取得でお金が要ったわけです。ですから、会社全体としては非常にきつくなってきた。だからここで合理化が必要なんだという格好なんです。そうすると、平米一千三百六十一円で買っておいた土地は、もし売るとなれば、大変お世話になって取得したわけですが、地域社会からもお世話になって取得したその土地を時価で売れば大体坪四十万で売れますよ。あのあたりはまだその程度なんです。東京の真ん中と違いますから、その程度なんです。しかし、一平方メートル一千三百六十一円で買っておいて、これが坪ですから三倍して約四千円ですか、それが四十万で売れるという相場なんですね。それで八十億から九十億ということなんです。それをどこに売るかといえば、これは会社が決めることでしょうけれども、地域社会に与える影響は大変なことですよ。結果的には地上げ屋みたいなものだ、そういうことになるのです。P&Gというのは国際的にも有名な企業ですね、そういう意味での有名な企業なんですが、それが日本へ入ってこられたから問題が起こるのでしょうけれども、多国籍企業に関するガイドラインも国際的にきちっとOECDであるわけですから、その点は通産省もこれから水際でもって一定のチェックと言うと表現が真っ当ではない気がいたしますが、入ってきてからがたがた問題が起こるというのは一体行政として万全かと言われれば、私は打つ手が今後あるのではなかろうかという気がいたします。  それで、これは余分なことかもしれませんが、韓国でも日本の進出した企業が随分問題を起こしておりますが、あれも実際につぶさに中身を見ますと、P&Gのようなことを実際に韓国でやったらあの程度ではおさまりませんよ。日本の企業というのはもっときちっとやっていますよ、はっきり言って。もっとつぶさにやっています。いろいろな資料も私読んだことございますけれども、そういう意味では労働者に対してかゆいところに手の届くような施策なんかをやっております。労働界が非常に歴史も浅いということがございまして、その面だけをマスコミが取り上げたとするとああいう記事にどうしてもなるのですが、それとP&Gのやり方を比べましたら、とてもじゃないけれどもおさまりませんよ。  ですから、私の言いたいことは御理解いただけると思いますが、そういう点からしても、通産省が企業の関係では産業政策で所管されるところなんでございますから、ひとつ今後の課題として検討いただいてはどうなのか、こう思いますが、どうでしょうか。
  69. 大慈弥隆人

    ○大慈弥説明員 お答えいたします。  今先生の方から御指摘のありました水際での規制でございますけれども、この企業が悪い企業、この企業がいい企業というのを事前に特定するのは非常に難しゅうございます。また、OECDの場におきましても、逆に対内投資の規制は極力外すようにということで、現国会でも外為法の改正を御審議いただいているところでございまして、現在、事前に届け出を義務づけておりますのを基本的に事後の報告で済むように、どちらかといいますと国際的には規制を緩和しようという動きがございます。  この観点から、OECDで認められております、国家の安全保障にかかわることないしは公の秩序を害することという場合には事前に審議ができることになっておりますので、そういう意味では法体系としてさらに規制を強化するというよりも現行の法律ないしは改正を御審議いただいています法律の枠内で何ができるかということを検討させていただきたいと思いますし、また、先生御指摘のあるように、確かにこういうようなケースの場合には産業政策として適切に対処をしていく必要があろうと考えておりますので、その点、御理解いただければと考えております。
  70. 近岡理一郎

    近岡委員長 伊藤君、時間が参っておりますので、結論をお急ぎください。
  71. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 時間、承知しております。  時間が参りましたので、これで終わりますけれども、問題が解決しない場合は私、引き続いてまたやらせていただきますから、そのことを最後に申し添えて終わりたいと思います。
  72. 近岡理一郎

    近岡委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  73. 近岡理一郎

    近岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田元久君。
  74. 池田元久

    ○池田(元)委員 私に与えられた時間は一時間でございます。ちょっと基本的なことを申し上げたいのですが、国会というところは言うまでもなく議員同士の討論が中心になるべきでありまして、これはもう憲法を読めばそのとおりになっております。議員同士のディベートが必要なところが国会ではないか。そういった意味では、きょうは総理総務庁長官が来ていらっしゃいますが、やはり大臣委員あるいは委員同士の討論、それが本来の国会のあるべき姿ではないか、このように思っております。こういうことを申し述べましても、そういうものはすぐ実現できるわけではございません。やはり長い道のりをかけて国会の改革をやっていく必要があるのではないか、私はこのように考えております。きょうは防衛庁長官出席されないようですが、政府委員の方を中心にお話を承ってまいりたいと思っております。  前半は、我が国を取り巻く極東を中心とする安全保障問題を取り上げてみたいと思います。その後、総務庁の問題についてお尋ねしたいと思っております。  今回のゴルバチョフ大統領の訪問が大変歓迎すべきことであるということは言うをまたないところです。先ほど、十時半過ぎに羽田に着かれて、歓迎行事に臨まれたということで、これから数日、首脳会談等が行われるわけですが、この訪問によって、領土問題だけでなくそれと密接に絡んだ日ソ間の安全保障問題も前進することが期待されておるところでございます。その辺のところにつきまして、防衛庁長官と言いたいところですが、防衛庁の担当者のお話を承りたいと思います。
  75. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 私ども、もとより日ソ間におきましてより安定的な関係が築かれることが望ましいと考えておるところでございます。  軍事的な面におきます日ソ間の状況につきましては、委員既に御承知のとおり、極東ソ連軍が現在量的にはある程度縮小の傾向も見られるわけでございますけれども、質的にはなお近代化を続けているところでございまして、その状況は、現段階で見まするとソ連の極東部の防衛という範疇を越えまして、はるかにこれよりも高い防衛力の蓄積があるというふうに我々は見ているところでございます。したがいまして、日ソ間において、今回を契機として軍縮といいますか軍備の管理の問題について具体的に話が進むという前提といたしましては、まずもって非常に不均衡な膨大な軍備力の蓄積のございますソ連側において、ある意味で一方的に削減を実施することが望まれるところであるというふうに考えておるところでございます。
  76. 池田元久

    ○池田(元)委員 谷野アジア局長出席されておりますので、あわせてお尋ねしたいと思います。
  77. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 私の仕事の分担の範囲でお話を申し上げますと、もとより今般のゴルバチョフさんの御来日を得て日本とソ連の北方領土を中心とするいろいろな御議論があるわけでございましょうけれども、もう一つ、国際問題、なかんずく最近の非常に動きの激しいアジア情勢全般についてのゴルバチョフ大統領と海部総理とのお話し合いがあろうかと思います。  先生御存じのように、朝鮮半島でも大変いろいろ動きがございます。日本と北朝鮮との正常化に向けての話し合いも始まりました。他方、ソ連は韓国と外交関係までいったということでございます。その辺の朝鮮半島をめぐる両首脳の話し合いというのがあろうかと思います。  それから、もう一つはカンボジアでございますが、これは日本も和平に向けて一生懸命努力をしておりますし、他方、ソ連はソ連の立場で和平へのいろいろな努力を懸命にしておるわけでございまして、そういった共通の立場から、カンボジアの和平にいま一歩近づけるためにそれぞれの立場でどういうことができるかというお話し合いもあろうかと思います。  アジア情勢について、突っ込んだ有益なお話し合いがあることを期待いたしております。
  78. 池田元久

    ○池田(元)委員 そこで、ゴルバチョフ大統領がこれまで幾たびか提案しておりますアジア・太平洋の安保協議機構の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  アジア集団安保構想とかアジア・太平洋安保協議機構とかいろいろ名称はあるのですが、そういった枠組みづくりについて、クラスノヤルスクの演説などでかなりはっきりしたと思うのです。その提案の内容ほどのようなものか、そしてどのように見ているか、お尋ねしたいと思います。
  79. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答えします。  ソビエト側の今おっしゃられましたいわゆるアジア・太平洋地域の安全保障に関する構想ということにつきましては、その後非常に変化をいたしておりまして、その意味でどういうものが今新しい構想であるのか、私たちの方からつまびらかにはいたしません。  実は、大きな枠組みで、CSCEといったようなヨーロッパにおいて進んでおりましたプロセスをアジア・太平洋地域にも適用すべきだというのが少なくとも昨年の段階におけるソビエト側の多くの人が言っておられたことだろうと思います。  ただ、例えば、私、間接的に報告を受けているだけでございますけれども、この四月二日のイズベスチャに出ましたベススメルトヌイフ外務大臣発言一つございます。これは北京に行かれたときの発言でございますが、そこでは、原文のままですが、欧州において適用されていたフォーミュラをこの地域に適用するという考えはナイーブだということを言っておられますし、この間ある新聞に出ておりましたシンポジウムにおける報告、対話でも、IMEMOの次長さん、名前を私ちょっと失念いたしましたが、その方が、CSCEはアジア・太平洋地域は非常に複雑なのでそのまま適用できないのだというようなことも言われております。この点は.昨年の春以来いろいろな形で例えばロガチョフ次官その他が言っておられたこととだんだん変わってきておると思います。その意味ではソビエトの関係者もいろいろな意見に耳を傾けながら考えておられる過程だと思いますので、この段階でソビエトがどういうことを言われるのか、私としても何とも申し上げられません。そういう状況でございます。
  80. 池田元久

    ○池田(元)委員 最近は、こういった構想についてオーストラリアとかカナダも提案しているようですが、その概要で結構ですから、お願いいたします。
  81. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 オーストラリアとカナダのそれぞれ昨年の七月に発言をしておられますことが今御指摘の骨子、ポイントだろうと思いますが、カナダのクラーク外務大臣がブリティッシュコロンビアという州で行われましたスピーチの中で、朝鮮とカンボジア問題を含め、アジア・太平洋地域においては未解決の地域紛争が存在している、そこで、域内諸国間の対話が必要だ、その手始めに北太平洋諸国、そのときは、アメリカ、日本、カナダ、ソ連、韓国、北朝鮮、中国という七つの国を挙げておりますが、この北太平洋諸国の間で話し合いをしてはどうかということを言っておられます。これがカナダの最初の提案であります。  それから、オーストラリアは、同じく七月ごろにエバンス外務・貿易大臣が新聞その他でアジア版CSCEと言われたことでございますが、アジアにもいろいろ政治的な対話が行われているけれども、従来軍事面での対話は希薄であった、今やより広い範囲の討論を行う場も必要である、このような意味でCSCEをアジアに適用することを検討したいというようなことを言っております。  ちょっと補足させていただきますと、私たちもその後いろいろオーストラリア政府とかカナダとかとも意見交換をやっているわけでありますが、オーストラリア政府は,その後だんだんとCSCEはそのまま適用できないのではないかという考えになったようでごさいました。今度ニバンス外務・貿易大臣が日本にも来られて、いろいろなところでお話しになるようでございますので、どういうふうなお話になるかを注目したいと思っております。
  82. 池田元久

    ○池田(元)委員 ソビエト以外のオーストラリアやカナダがこういった提案をするということは、やはりこの極東地域といいますか、アジア・太平洋で何らかのそういった平和を保障する機構とかフォーラムが必要ではないかという空気をあらわしているのではないかと私は思うのですが、前の外務大臣のシェワルナゼ氏も、九三年九月に、全アジア外相会議を開くべしということも言っております。それも一つそういったソビエトの提案の一環だと思うのです。  きのう、各紙が入手したゴルバチョフ大統領の明日の国会演説の草稿というものが一斉に報じられました。これの内容は、これまでの単なる一つのテーブルにつけというものではなくて、アメリカを含んだ三ヵ国協議、それから中、印を含んだ五ヵ国協議、さらには、三番目に関係国の会議というふうにちょっと具体化したと思うのですが、その辺について、明日行われますけれども、ゴルバチョフ提案についての考え方をお尋ねしたいと思います。
  83. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 申し上げるまでもないことでございますが、日本にお招きしたお客様が明日国会の場でお話しになられることでございまして、新聞に出たといえども、それに基づいてあれやこれや申し上げるのは私としては若干礼を失するのではないかと思いますので、むしろこれまでのソビエトとの話し合いを通じての基礎的なことについてお話し申し上げたいと思います。  一言で申しまして、ソ連側の考え方と我々の考え方との違いは、ソビエトは対話の場をつくることを重んずる、我々は未解決の問題の解決を考えることが先だということを言っているところに意見の違いがあるような気がいたします。  我々の考え方につきましては、ことしの一月の外交演説で外務大臣の方から明らかにいたしましたことでございますが、アジアとヨーロッパの違いを踏まえて、アジアはアジアなりの考え方でいくべきであって、未解決の、例えば朝鮮半島とか、カンボジア問題とか、北方領土問題は、当然のことながらそういう問題の考え方を積み上げていくべきである。それから、第二に機構でございますけれども、我々が考えておりますのは、この地域の考え方の中心は経済協力あるいは経済発展ではなかろうかということを考えておりまして、確かにソ連のおっしゃるように安全保障について多国間で語る場がないということは一方で事実でございますが、他方で経済問題を中心としながら発展してきた。例えば、ASEAN拡大外相会議で、マレーシアの外務大臣が日本の軍国主義の不安についての率直な懸念を表明されるとか、経済を中心とした対話の場でありながらだんだんと十年の歴史の中に政治対話も成熟してきている。そういう意味で、我々はそういう問題解決をテーマにしながらだんだん対話を進めていこうというところでございます。ソビエトの方は、まず対話の場を設けて話そうということを言っておられるというところでございます。  今回、恐らくこのとおり御発言になるのだろうとは思いますけれども、そこから先はそれを補足して総理大臣その他にゴルバチョフ大統領の御説明もあるかと思いますので、それも伺ってからまた考えていきたいと思っております。
  84. 池田元久

    ○池田(元)委員 今、情報調査局長がおっしゃいましたが、結局、対話の場づくり、雰囲気づくり、それからその前に未解決の問題があるからそれが先だ。しかし、今の言葉にもあらわれていますように、経済協力も必要なんですよ。ですから、最近は、一つ障害を置いて、障害が除去できなければ次に入れないというのじゃなくて、やはりそういった日ソ間の空気を醸成する、これが必要ではないかというのが支配的な空気になっているわけです。そういった意味から、対話の機構づくりが先か、未解決の問題が先かじゃなくて、やはり両方やっていくことによって日ソ間のそういった対話ができるのではないか。これは常識的なあれですが、なかなかそうならないのであえて私が申し上げるのです。  さて、そうはいっても、日本の外務省といいますか日本政府は、こういったアジアといいますか、アジア・太平洋の安保協議の枠組みづくりについては消極的だ、このように一般的に理解されているようですが、その理由は那辺にあるのか、お尋ねしたいと思います。
  85. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 アジア・太平洋の問題の安全保障について我々が消極的だということはございません。我々は我々なりに、アジアの安全保障について何をすべきかということは政府の部内でも考え、検討しているところであります。  ただ、それに当たりまして、先ほどの話に戻るようでございますが、我々が安全を考える場合には、やはり緊張のあるところの緊張を外していくことが第一ではなかろうか、そういう意味では朝鮮半島の問題であり、カンボジア問題であり、そういうことにまず正面から取り組んでいこうということでありまして、私たちはそれで場をつくらないと申し上げているわけではありません。朝鮮半島については御承知のとおり、南北対話がやっと始まったところでございまして、我々はこれを一生懸命支えていく、どうやって支えていくかということについては、私たちはソビエトとも話をいたしておりますし、中国とも話をしているわけであります。ただ、朝鮮半島をめぐってどういう会議をつくるかということは、やはり朝鮮の南北の当事者の決めるところに従っていくべきではなかろうか、周りから押しつけてはいけないのじゃなかろうか、そういうふうに考えているわけであります。  先ほどちょっとアジア局長から触れましたけれども、カンボジア問題も同様であります。一つのものの会議のあり方をめぐってソビエトのアプローチと我々のアプローチは若干異なっておりますけれども、我々の方が熱心でないということではないということだけは御理解いただきたいと思います。
  86. 池田元久

    ○池田(元)委員 しっかりと理解したいと思います。  さて、去年の九月、中山外務大臣とシュワルナゼ外相の会談で、ソビエト側はいわゆるCBMですか、信頼醸成措置を提案いたしました。それに対して、外務省は、逆に外務省局長クラスで構成する政策企画協議というものを逆提案いたしまして、結局、その協議が昨年十二月に開催されたわけですね。その協議の進展状況についてお尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
  87. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 御指摘のとおり、昨年の九月のシュワルナゼ外務大臣の訪日の機会に両外務大臣の間で合意ができまして、安全保障問題を含めて幅広い問題を議論しようということで、政策企画当事者間の協議を行うことにいたしたわけであります。私が参りまして十二月の三日と四日の二日間にわたりましてソビエトの政策企画局長に当たる人と議論をいたしてまいりました。残念なことに、その方は実はシュワルナゼ外務大臣の補佐官も兼ねていた人物でありまして、かなりお互いに突っ込んだ議論ができたわけでありますが、シュワルナゼ外務大臣がおやめになられるとともに外務省をやめられるということを聞いております。そして実は各国の外務省には政策企画担当者というのがいろいろおりまして、たった今も、実は午前中、来日しておりますフランスの同じような立場の人と議論をしてまいりまして、彼との間でもソビエトの後任はだれだろうかという話をしておりましたが、まだだれが後任かも決まっていない状況のようでございます。私が今フランスの人から聞いたところでは、最近のヨーロッパの会議には次長が出てきた、そこで、私たちとしてもまた今回のゴルバチョフ大統領の訪日を踏まえましてぜひこの協議を続けていきたいと思っておりますけれども、まず相手の後任が決まるのを待ってやりたいというふうに思っております。
  88. 池田元久

    ○池田(元)委員 その政策企画協議ですが、これは何か第二回会合がことしの秋に開かれるというような話を伺っております。それが開かれるのかどうか、そしてまた、その運営について、協議のメンバーに防衛庁と国防省の幹部も含めるというようなことも言われておりますが、その辺はどのようにお考えになっているかお尋ねしたいと思います。
  89. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 お答え申し上げます。  まずタイミングの問題でございますが、そのような新聞報道があったということも私承知しておりますけれども、私に関する限りはまだ先方と連絡をとっておりません。というのは、申し上げましたようにまだ先方が後任者が決まっていない状況でございます。なるべく後任が決まり次第早目に議論をしたいと思っておりますけれども、そういう状況でございますので、秋と決まっているわけではございません。だから、当然ながら今回ゴルバチョフ大統領がお見えになった後を受けて、大体通常こういうのは年に一回やるのが恒例だろうと思いますので、年内には向こうとやりたいと思っております。  それから、防衛庁の方あるいは先方の国防省の方を入れるかどうかということにつきましては、話が若干混同されている部分があるのではないかと思います。実はその政策企画協議と申しますのは俗称政策企画協議と申しておりますけれども、各国の外務省におります政策企画担当者がそれぞれ自由な立場で議論をしようということでございまして、それぞれの各国の外務省の政策企画担当者の限りの間の会議でございます。したがって、これに防衛庁の方に入っていただくとかいう問題はもとから存在しない話でございます。  他方で、御承知のように、ソビエトと我が国との間の安全保障問題の対話を深めていくということ等の見地から、我々の外務省の人間だけでなくて、しかるべき段階において国防政策の担当者の方にも入っていただくことが重要になってくるときがあるかと思います。 そういう問題は、今後の問題として検討していかなければならないことだと思っておりますが、それは今の段階ではまだ何とも決まっていないという状況でございます。
  90. 池田元久

    ○池田(元)委員 ちょっと翻って総論的なことをお尋ねしたいのですが、これまで私が述べてきたように、ソビエト側はアジア・太平洋の安保の枠組みづくりについていろいろ提案をしてきている。しかも、だんだんかなり深まってきているというか、具体的になってきている。それから日本へのCBMの提案もしている。これに対して、日本の方の政策はどうもはっきりしないわけです。あの湾岸危機の後、日本の外交というのは顔がない、顔がない外交だということをアメリカの識者は指摘いたしました。同じように、この極東の安保についても、日本はどういうビジョンを持っているのか、どういった対案があるのか、その辺について、せっかく佐藤さんと谷野さん、お二人来ていらっしゃるので、佐藤さんはたしか県警本部長をやられたのですか、それから谷野さんは総理秘書官もやられた、お二人ともたまたま非常に幅の広い経験もされているので、その辺について、若干総論的になって結構ですから、一言ずつおっしゃっていただきたいと思います。
  91. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 アジア・太平洋の安全保障の問題につきましては、今回の外交演説にも明らかにいたしましたとおり、この関係諸国の間のコンセンサスづくりの中心に日本はなっていくべきだと思っております。そういう意味で、今回の外交演説で我々の考え方を明確にいたしまして、この英文は世界各国の私の関係者とか研究所にはお送りいたしております。 自分で申し上げるのも変なことでございますが、このアジア・太平洋問題についての我が方の考え方というのはかなり各国に知られてきているようでありまして、特にソビエトと非常に意見が違うということがはっきりしてきた。例えば、ロンドンにあります戦略問題研究所の機関誌の中でその部分をドキュメントとして取り上げようというような話もあることを聞きましたし、安全保障の問題というのはかなり一部の専門家の問題にいく部分がありますので、一般論としては申し上げられないかもしれませんが、かなり知られてきているのではなかろうかと思います。そういう意味で、顔がないと言われるとお恥ずかしい話ではございますけれども、我々なりの主張はいたしているつもりであります。  そこで問題は、その場を提案しているか、問題のことを言っているか。 問題の点は常に非常に明らかなことでございますので、何か新しみがないという印象を与えているかもしれませんが、実はアジア・太平洋とヨーロッパを比較しましたとき、一番の問題は、ヨーロッパでは御承知のとおり一九七〇年代の初めに国境問題を決めて、その上でヘルシンキ・プロセスを始めた。我々は、まだ朝鮮半島問題があり、カンボジアもあり、御承知の北方領土問題もあるという状況でございますので、直ちに新しいことを言う前に、やはりここを直視していかざるを得ない、その意味では古い話を繰り返して言わざるを得ない、そういう立場にあるということは御理解いただけたらありがたいと思います。
  92. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 ただいまの御批判はそれはそれとして謙虚に私ども受けとめなければいけないと思っております。他方、先ほど来のお話の狭い意味での安全保障の枠組みといいますか、場を設けるかということにつきましては、実は、日本の考え方もさることながら、この域内に所在します例えばASEANの国々、そしてこの地域の安全保障を語る場合に、やはりアメリカの考え方というのが重要でございますが、いずれにおきましてもその種の枠組みを今この時点でつくるということはまことに時期尚早だし、現実的ではないという非常に強い意見をASEANも持っております。やはりASEANはせっかくASEANという場があるわけですから、その上に何かかぶせるような形で、しかも話してみますと彼らのそれぞれの脅威感も相当違っておりますし、そういうことでつくっても意味のある議論ができないという彼らの考え方ではないかと思います。  朝鮮半島はどうかといいますと、これも先生承知のように、南北対話自身が国会流に申し上げれば今倒れておりまして、南北の話し合いは立ち上がらない状況で、彼らがより大きなこの種のところへ積極的に出てくるとも思いません。そういうことで、将来の課題ではありましょうけれども、今まだ現実的、実際的だとは思えないということでございます。  そういうことで、先ほど来情報調査局長お答えしておりますように、カンボジアの問題あるいは朝鮮半島の問題、それぞれに日本は和平に向けて可能な範囲で努力をしておるということで、例えばカンボジアにつきましては、御記憶のように昨年当事者を東京にお招きして、ここで会議をさせていただきました。  それから、もう一点だけつけ加えさせていただきますと、安全保障というお話でございますが、これもASEANの方々といろいろ話してみますと、今までのお話はいわゆる狭い、かたい意味での安全保障でございます。ところが、ASEANの方々がよく言われますのは、自分たちの安全というのは戦車とか軍艦とかそういうこともさることながら、経済の力をもっと強くする、社会の安定を図る、民族の対立をなくす、そういうことだということでございまして、日本流に言えば総合安全保障という考え方でございます。そういたしますと、日本がこれまで特に経済面で果たしてきた役割は大変大きなものがあろうかと思います。いずれの国にとりましても日本は第一番目の援助の供与国でございますし、そういう面での日本のこれまでの貢献、これは政府だけではございません、民間の企業の活発な投資ということもございますし、貿易もございます。そういったことが東南アジア、ASEANの力をつけていく。それがより幅広い安全保障、安全につながる、安定につながるということでございまして、その面での日本の果たしてきた役割というのは決して過小評価さるべきものではないのではないかと思います。
  93. 池田元久

    ○池田(元)委員 今谷野さんがおっしゃったカンボジア問題への取り組みは一応評価できると思います。まだ貸し座敷という段階ですから、イニシアチブを発揮してどうという段階には行っておりません。今お二人の話を聞きましたけれども、一言でと申し上げたのに大変饒舌な答弁だったのですが、日本の外交というのがぱっと浮かんでこない。それをくしくもお二人の答弁があらわしているのじゃないかと、失礼ながら私は思うわけです。  さて、外交のあり方とかなんとかと言うとまた話が長くなりますので、これは別の機会に譲るといたしまして、去年からことしにかけて対ソ外交というのは時期を失したという見方もできるのではないか。といいますのは、ソビエトの経済危機が深まっていることは御存じのとおりでございます。また、いわゆる保守派、軍部も台頭してまいりました。大統領の指導力も低下していると言われております。また、連邦政府と共和国政府との対立、あつれきも出てまいりました。ですから、歴史にイフはないんですけれども、これは自民党の党内の事情もあったのですけれども、このゴルバチョフ大統領の訪日は、当初考えていたラインより大分おくれました。それで、最適の時間をちょっと逃したのじゃないか。エリツィン・ロシア共和国大統領の発言などを聞いてみると、なかなか難しい局面もあるのではないかということで考えているのですが、しかしながら、まだゴルバチョフさんは対日関係については積極的になっているからこそきょういらしたわけですね。ですから、大きく見ればタイミングがいいのですから、積極的に対応してほしい、このように思っております。答弁を本当に一言お願いします。
  94. 高島有終

    ○高島説明員 申し上げるまでもなく私どもも今回のゴルバチョフ大統領の訪日を極めて重視いたしておりまして、今回の訪日の機会を日ソ関係の抜本的な改善を図るための突破口としたいという考え方でございます。  申し上げるまでもなく、その関連では領土問題を解決して平和条約を締結する、それとともに、領土以外の文化、経済、あらゆる分野でも日ソ関係の飛躍的な拡大の契機としたい、このように考えているところでございます。
  95. 池田元久

    ○池田(元)委員 ぜひタイミングというものを重視していただきたい。これは釈迦に説法ですが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  さて、以下具体的なことをちょっとお尋ねしたいのですが、去年の夏、ソビエト共産党の軍事車門家が、ゴルバチョフ大統領の訪日のときには北方領土からのソ連軍の撤収というのを発表するのではないかと述べている。こうした観測が幾つかあるんですが、それについて佐藤情報調査局長の御答弁をお願いしたいと思います。
  96. 佐藤行雄

    佐藤(行)政府委員 非常に簡潔なお答えしか今回はできないのでございますが、ソビエトがどういうことをやってくるのか我々としてはよくわかりません。北方領土の問題あるいは今回のゴルバチョフ大統領の訪日をめぐっていろいろな意見が出ております。ソビエトの国内でそのようなことが出てきたことはこれまでに比べて大変な変化だろうと思っておりますが、やはり最終的にはゴルバチョフ大統領が海部総理に対して言われることが最後の立場だろうと思います。これからのソビエトの立場だと思いますので、推測は慎みたいと思います。
  97. 池田元久

    ○池田(元)委員 それから北方領土の位置づけについてお尋ねしたいのですが、軍事戦略上どのように考えているか、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  98. 内田勝久

    ○内田政府委員 ソ連にとっての北方領土の軍事戦略的な位置づけでございますが、委員御案内のとおり、北方領土それからそれにつながる北千島というのは、太平洋からオホーツク海を分け隔てる、ある意味で太平洋からオホーツク海に入ってくるところのアクセスのところを扼しているという地点となっているわけでございます。  そこでオホーツク海でございますけれども、オホーツク海というのは、米ソが戦略核戦力で対峙している中で、ソ連が海中発射弾道ミサイルを搭載しました原子力潜水艦をあのオホーツク海の海域に遊よくさせておりまして、そこから現在ではアメリカ本土を直接に攻撃し得る大きな能力を既にソ連も持っていますし、同様の能力はアメリカも持っているわけでございますけれども、そういうソ連としての立場からしますと、オホーツク海というのは自国に近うございますから、自国の陸からの支援も得やすいし、海上戦力もそのオホーツク海には展開しやすい状況になっている。そういう形でオホーツク海というものを自分の内海というと大げさでございますけれども、軍事的に見ますとある種の軍事的な聖域として保っておくことがソ連にとって大変有利なわけでございますので、そういうオホーツク海を自分の軍事的な聖域化するための一つの前進拠点として、北千島から北方領土に至るその地域を重要視している。戦略的にはそういう意味合いが高いのではなかろうか。これはソ連のことでございますので、私どもはそのような推定をしているということでございます。
  99. 池田元久

    ○池田(元)委員 北方領土の戦略的な位置づけについてはもっと議論をしたいのですが、ちょっと時間がありませんので、答弁をいただいたということだけにしておきます。  次に、これも日本の近海の安全にかかわることですが、最近環境保護団体のグリーンピース・ジャパンというのが、アメリカの専門家の調査によるとして、ソビエトの原潜が八五年五月、日本近海で重大な核事故、爆発事故を起こしていたと発表したのですが、事実をどのように承知されているかお答えを願いたいと思います。
  100. 高島有終

    ○高島説明員 私どもも日曜日の新聞報道でこれを知りまして注目しているところでございますけれども、現在のところこのような事故についての情報は一切得ておりませんし、これらの事故についてソ連側から通報があったという事実もございません。
  101. 池田元久

    ○池田(元)委員 日本の近海の安全にかかわる問題ですから早速問い合わせをしたのではないかと思うのですが、問い合わせをしたのかどうか。あわせて、問い合わせをしていないとすれば、ソビエト側に早急に問いただすべきではないかと思うのですが、その点重ねてお伺いします。
  102. 高島有終

    ○高島説明員 ただいま御説明いたしましたように、私どもとしては、今回の事故については残念ながら何ら情報を得ていないという状況のもとで、このような証拠もなしに相手側に照会することが建設的な回答を得られるゆえんでは必ずしもなかろうととりあえず考えておりまして、したがいまして、現在のところ照会はいたしておりません。しかし、今後本件に関連する情報を調べまして、それが必要かつ有意義であるということになりますれば、ソ連側に改めて照会してみたいというふうに考えております。
  103. 池田元久

    ○池田(元)委員 典型的な官僚答弁でありまして、有意義であるかどうか判断してからと、これは失礼ながら本当にちょっとびっくりしたのですが、外交官の場合、私が言わなくてもいろいろなチャンネルがあるわけですね、公式、非公式。問い合わせる方法は幾らでもあると思うのですよ、それが本来業務ですから。やはりそれはしっかりとやっていただきたいと思います。  さて、もう一つまた別の問題を取り上げたいと思います。これも日本というか極東の安全保障にかかわる話なんですが、北の原子炉を先制攻撃するという韓国の国防相の発言なんですが、韓国の李鍾九国防相は十二日開かれた韓国新聞編集人協会との懇談会で、北朝鮮は九五、六年ごろまでに核兵器を開発する、そして北が国際原子力機関、IAEAの査察を受け入れない場合にはイスラエルが行ったエンテベ作戦のような先制攻撃を行う可能性を示唆した。エンテベ作戦というのは、これはどうも違うのじゃないか、これは人質事件ですから。むしろ一九八一年六月に起こったイスラエル空軍機によるイラクの、今問題のイラクのオシラク原子炉の奇襲爆撃事件のことを言っているのじゃないかと思うのですが、この南北朝鮮の緊張に絡む発言政府ほどのように承知しているか、お尋ねしたいと思います。
  104. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 この件は、韓国でも新聞報道を中心にかなりの騒ぎになっておるようでございます。野党からもこの国防長官への辞任要求も出されておるようでございますけれども、いま一つ何をどうおっしゃったのか定かでないという状況でございます。  けさほどソウルの私どもの大使館から報告がありましたところによりますと、その後、国防部、国防省の方で次のようなこの発言についての解明の発表をしたようでございます。 ちょっと読み上げさせていただきますと、問題の答弁の趣旨は、北朝鮮がスカッドミサイルで挑発する際には、消極的な対応で要撃あるいは防護等の方法もあり得るけれども、必要な場合には今のお話のエンテベ式作戦も考えられるという内容の答弁であった。しかしそれが誤って核開発施設に対する攻撃というふうに誤解された。いずれにしてもこの部分は、スカッドミサイルであれ何であれ、この部分に対する発言は全体を取り消すということを国防部で発表したようでございますから、私どももそのように受けとめたいと思います。
  105. 池田元久

    ○池田(元)委員 辞任要求が出されているから日本でも同じように後でいろいろなことをおやりになると私も想像はするのです。  翻って北朝鮮の核開発の問題というのはあちこちで取り上げられているのですが、現状をどのように認識しているか、お尋ねしたいと思います。
  106. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 二つのことを申し上げたいと思います。  まず、国際原子力機関、IAEAという機関がございますが、この報告によりますと、現在北朝鮮におきましては平壌の北方約九十キロメートルのところに寧辺という地名の地区がありますけれども、そこにソ連から導入いたしました二基の研究炉を持っております。そしてこの研究炉は、一九七七年七月に北朝鮮とIAEAとの間で締結されました協定がございまして、ただいま申し上げました研究炉のみを対象といたしまして保障措置協定が結ばれております。そしてIAEAによる査察も実際に行われておるということが前段のお話でございます。  他方、私どもも含めまして国際的に心配されておりますもう一つの問題がありまして、それとは別に北朝鮮は保障措置が適用されていない幾つかの原子力施設を持っておるのではないかということが新聞報道等で言われております。 ただ、私ども日本政府に関します限り、どこにどのようなものがあるか、ましてこれが世上一部で言われておりますように、ここを利用して北朝鮮が核兵器の開発の方向に向かっておるということにつきましては、日本政府としては確認いたしておりません。それが第二点でございます。  しかし、いずれにいたしましても、あえてもう一点申し上げさせていただきますと、国際的な心配はそれはそれであるわけでございまして、御承知のようにNPTに一九八五年に北朝鮮は加盟しておりますから、そこから当然生ずる北朝鮮全体としての査察を受ける義務があるわけでございます。これに北朝鮮はなぜか応じていないということでございまして、私どもはそういった国際的な心配、疑念を晴らすためにも、ぜひ約束された、IAEAとのフルスコープ保障措置協定というのだそうでございますけれども、これを締結されて、北朝鮮としてそういった国際的な心配を除去されたらどうだということを日朝の正常化のお話し合いの際にも強く先方に求めておるわけでございます。
  107. 池田元久

    ○池田(元)委員 これもソ連のイグナチェンコ大統領報道官が、きのう、北朝鮮が査察を拒否すればソビエトは核燃料を与えない、このようなことを東京で記者会見して言っているわけです。やはり日本政府はこういった問題に外国にも増して敏感にならなければならない。これはイラクの例を見ても明らかだと思いますので、その辺について、ソビエト側の見解もありますので、再度答弁をお願いします。
  108. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 これは、おかげさまで北朝鮮とは直接話し合いをする場ができましたので、そこでも強く先方に要請しておるところでございますけれども、それとは別に、この面ではただいまのようなお話の背景で北朝鮮により大きな影響力があると思われますソ連にも力をかりるべき話でございまして、恐らく今度の海部総理とゴルバチョフ大統領とのお話し合いにおきましてもこの問題は御討議の中で取り上げられると思います。ソ連のこの面での影響力を強く私どもも期待したいと思いますし、ソ連側もぜひそれに応じていただきたいというふうに思います。
  109. 池田元久

    ○池田(元)委員 ソビエトの女性科学者、たしか朝鮮に行った方だと思うのですが、ソビエトがあの地に原子炉をつくったのは今から思うと非常に反省している、このようなことが出ておりました。IAEA、国際原子力機関、国際機関の活動といいますか、査察は大変重要ですから、日本政府も日朝交渉でそういった点を、中平代表が話し合いをされているようですが、この点重視して、核開発といいますかそういった問題については日本人、そしてまた日本政府、各国にも増して敏感に対応してほしい、このように申し上げたいと思います。  さて、時間がありませんが、総務庁長官には大変長い間手持ちぶさたにさせて恐縮なんですが、最後に御答弁を賜りたいと思っております。  国家公務員退職手当法案で、非常に細かい点ですが、休職期間の取り扱いについて、給与上の取り扱いとの均衡を勘案して全期間通算することにした。この辺は民間はどうなっているか、お尋ねしたいと思います。
  110. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 ただいま民間退職手当に関しての休職期間の取り扱いはどうなっているかというお話でございましたが、実は今回休職期間の取り扱いについて改正をさせていただきましたのは、昨年の人事院勧告に基づきます給与法の改正におきまして、通勤災害による休職の期間につきます給与法上の取り扱いを改正したわけでございます。これとの関連におきまして、今回退職手当の方も改善させていただいたということでございまして、民間の企業における退職金の中での休職の取り扱いをどうしているかということについては調査いたしておりませんので、大変申しわけございません。
  111. 池田元久

    ○池田(元)委員 それは必要な調査事項だということは局長もおわかりだと思いますので、今後そういったことのないようにお願いしたいと思います。  いきなりそういったところから入りましたけれども公務員労働者といいますか、国家公務員民間退職手当の比較を大ざっぱで結構ですからお願いします。
  112. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 退職手当の給付水準につきましては、広く国民の理解と納得を得る必要があるということから、おおむね五、六年に一回官民比較を行いまして、民間企業における退職金の給付水準との均衡を図っていくことにしているわけでございます。今回、昭和六十三年度に勤続二十年以上で、勧奨、定年等の理由で退職いたしました高卒及び大卒の行政職(一)及びこれに対応する民間の男子職員について、官民の勤続年数別分布を同一とした場合の退職手当退職金の平均給付水準を比較いたしました結果、国家公務員は二千四百二十二万円、民間企業職員は二千三百八十九万円でありまして、民間企業職員退職金の水準を一〇〇とした場合における国家公務員退職手当の水準は一〇一となっておりまして、官民の給付水準はおおむね均衡がとれているものというふうに考えた次第でございます。
  113. 池田元久

    ○池田(元)委員 私は、細かい数字の比較というか、そういった点に立ち入るつもりは全くないのですけれども、それぞれ公務員にしても民間労働者にしても、そんなばっちり同じということは統計上もあり得ないと思うのですが、できるだけ十分な退職手当といいますか、退職金といいますか、これはだれしも望むところだと思うのです。そして、これは国家公務員の問題だけで退職手当法案が出ていますけれども、国内全般からいいましたら、できるだけ同じようにいくのが一番望ましい。別に官が高いとか、民が低いとか、逆がいいとか、決して言いませんけれども、その辺、長官の国務大臣としての基本的なお考えお尋ねしたいと思います。
  114. 佐々木満

    佐々木国務大臣 公務員給与にしろ退職手当にしろ、あるいは勤務時間にしろ、公務員法にもございますとおり、社会一般の情勢に適応するという原則がございますので、民間の勤務条件、もろもろのことをよく検討させていただきまして、それとつり合いのとれたものにしていく、こういうことが大切ではないかな、こう思っておる次第でございます。
  115. 池田元久

    ○池田(元)委員 ありがとうございました。これで終わります。
  116. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員長代理 山口那津男君。
  117. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私の方からは、国家公務員退職手当について若干の質問をした後に、公務員の国際貢献といいますか、海外派遣についてこの際お聞きしたいと思います。  まず初めに、通勤災害に係る退職手当の取り扱いについて、従来、傷病退職と死亡退職とでは差別といいますか区別がなされておったわけですね。今回それを同等にするという改正がなされるわけでありますが、従来、どういう理由でこれを区別ないしは差別していたのでしょうか。
  118. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 退職手当法上、公務外の死亡につきましては公務外の傷病よりも優遇された支給率が適用されることになっていることは、今御指摘のとおりでございます。ところで、通勤災害による傷病または死亡は、それぞれ退職手当法上公務外の傷病または死亡として別々に取り扱われてきたので、両者の待遇は異なったものでございます。ところが、今回、通勤災害による被災者を保護するという観点から、民間の実態等を踏まえて検討いたしました結果、通勤災害による傷病退職に適用される支給率を通勤災害による死亡を含む公務外死亡退職に適用される支給率と同等の水準に引き上げることにいたしたものでございます。
  119. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今のは御説明でありまして、なぜ、今回同等にして、従来区別してきたのか、この理由をお聞きしているのです。
  120. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 これは、これまでのさまざまな経過があると思うわけでございますが、公務外の死亡の支給率につきましてこれまで傷病と変えてきたということは、死亡に至るような重大な事故とかそういうものに遭われて遺族もお気の毒ではないかというような、いわば死者に対する弔意と申しますか、そういう気持ちがあらわれていたのではないかというふうに考えております。
  121. 山口那津男

    ○山口(那)委員 死者に対する弔意をあらわすというのは当然のことでありますけれども、弔意をあらわす制度はほかにあるのじゃありませんか、いかがですか。
  122. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 おっしゃるとおり、退職金のみならずいろいろなものでもってそうした気持ちをあらわす方法は他にも幾つかあるだろうというふうには思います。
  123. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうであれば、過去こういう区別をしてきたというのは合理性がないから今回同等にすべきである、こういうことになったのだろうと思いますが、逆に、今回同等にした積極的な理由というのを念のためお伺いいたします。
  124. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 今回一緒にしたという理由は、先ほどもちょっと触れましたように、民間の大多数のところにおきます通勤途上災害の取り扱いにおきまして、死亡とそれから傷病による退職、この二つを特段区別しておらないというのがおおよその状態であるということによるものでございます。
  125. 山口那津男

    ○山口(那)委員 では、民間の実情に合わせたというのが理由なわけですか。それは余りにも非論理的であると思いますね。私が考えますには、退職ですから、その理由のいかんを問わず過去の労働に見合った対価といいますか手当を出すんだ、こういう趣旨であれば、傷病であろうと死亡であろうと区別するいわれはないだろうと思います。そして、死亡であれば、退職後の労働ということは全くあり得ないわけですから、お気の毒でもあるということで、遺族に対する弔意等をあらわすとか、それは別な制度で考えるべきことだろうと思います。これが主な理由だと私なりに思っているわけですが、いかがでしょうか。
  126. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 おっしゃるように、退職金の性格というものの中には、永年勤続したことに対する報償とかそうした意味合いがあることも当然でございます。また、公務によって死亡された場合に、他の死傷病等と違えてこれを重く見るというような制度になっているということもあるわけでございます。そうしたいろいろな原因と申しますか、死亡に至ったその理由等によりましても、あるいは勤続年数によりましても、細かく支給の率等が変わってくるわけでございますが、最近の状況といたしまして、通勤災害による退職、これにつきまして、やはり一般の民間状況等も勘案するということは私どもとしても必要なことではないかということで見てまいっているわけでございます。  今回は、そうした点で、特に、今まで公務員退職手当につきまして今申し上げました通勤災害での死亡あるいは傷病による退職の間に区別を設けてきたものが、民間状況ではそういうものがないということを私ども承知いたしましたので、その点の改善を行った、こういうことで御承知いただければと思います。
  127. 山口那津男

    ○山口(那)委員 単なる民間との比較だけではなくて、やはり理論的な根拠といいますか、説得力のある根拠というものを国民に示すべきである、このように思います。  結論的には私は今回の改正はいいことだと思っておりますので、これで終わります。  次に、長期勤続者の割り増し措置について整備が行われておりますけれども、勤続二十年以上の人が対象になっているわけですね。この二十年に区切っているのはなぜか。恐らく年金等の関係があると思いますけれども、その理由は何かということと、今後これを引き下げてもっと短い期間でも対象にできるかどうか、この点についてお考えをお伺いいたします。
  128. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 国家公務員退職手当の基本的な性格は、先ほどもちょっと申し上げました長期勤続に対する報償というような性格もあるわけでございまして、定年それから勧奨退職等につきましては、一般的にそうした理由で長期勤続後に退職する者を優遇するという体系になっているわけでございます。  国の退職者の実態を見ますと、勤続二十年未満の定年、勧奨退職者というものは極めて例外的なものでございまして、このようなものにつきまして官民比較を行うということ自体が技術的に大変困難でございますので、定年、勧奨で退職する者の大部分を占める勤続二十年以上の者について官民比較を行い、官民の給付水準の均衡を図るということにしているわけでございます。  なお、勤続二十年末満の定年、勧奨退職者の取り扱いにつきましては、定年、勧奨制度の本来の趣旨から見ますれば現状について特段の問題はないというふうに考えているわけでございますが、今後、これらの者の取り扱いにつきましては、定年、勧奨制度の動向を見守りながら慎重に検討してまいりたいと思っております。
  129. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、二十年に限らなければならないというようなことはない、状況によっては可能性がある、こういうふうにお伺いしてよろしいですか。
  130. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、長期勤続に対する報償というような性格がございます。したがいまして、民間の企業におきましても長期勤続した方の方が一般的にはより多くの退職金をもらえるという仕組みになっていることは委員も御承知のことかと存じますけれども、基本的なそういう性格を踏まえまして、民間における定年退職の実態等も見ながら慎重に検討させていただく、こういうことでございます。
  131. 山口那津男

    ○山口(那)委員 時間もありませんから次へ行きますけれども、高齢化社会に対応する国家公務員の雇用制度を検討するために、人事院として新年度から高齢対策室を設置しまして勤務形態を総合的に見直すという構想があるようでありますが、いつごろまでにどのような点についてこの対策室で検討をなすのか、お教えいただきたいと思います。
  132. 丹羽清之助

    丹羽(清)政府委員 人口の高齢化が非常に急速に進展しておりまして、本格的な高齢社会を迎えようとしている中におきまして、高齢社会への対応は今後の人事行政全般に非常に大きな影響を与える極めて重要なものであると私どもは認識しておるわけでございます。  このようなことから、昨年の十月には高齢対策本部というものを発足させまして、高齢社会に対応した人事行政諸施策の策定に向けて任用を初め勤務の形態、給与体系、能力開発さらには退職後の生活安定など広く人事行政全般にわたる問題についての検討を始めたわけでございますけれども、今年度におきましては、この検討の実務の中心となる高齢対策室を設置しましてさらに積極的に検討を進めていくこととしておるわけでございます。  なお、いつまでにどのような点について検討するつもりかという点につきましては、この問題は、私ども二十一世紀における本格的な高齢社会をも念頭に置きつつ、民間の動向それから公務における人事管理の実態等に留意する必要があり、幅広く調査研究を進めていく必要があると考えております。いずれにしましても、諸情勢の動向を見守りながら適宜適切な対応ができるよう努めてまいりたい、かように考えております。
  133. 山口那津男

    ○山口(那)委員 高齢化社会も漫然と待っていればいずれ来るというものでありませんで、目前に迫っている問題でございますから、ぜひとも対策を早く進めていただきたい、こういうふうに思います。  さて、現在、国及び地方を問わず公務員の人気が低落傾向にある、こういう指摘もなされております。政府は、好景気が続いて民間の人手不足が続く中で、公務員の人材確保の対策をどのように考えていらっしゃるか、非常に重要な問題であると思います。やはり優秀な人材が確保されなければ国家そのものの体制が危うくなってしまうということも言えるわけでございまして、政府としてこの問題にどのように取り組んでおられるのか、主たる対策についてお答えいただきたいと思います。
  134. 佐々木満

    佐々木国務大臣 仰せのとおり公務部門に優秀な人材を確保するということはこれからも特に重要な仕事だろうと私ども認識をいたしております。 そういうことのために、例えば初任給の大幅な改定でございますとか、人事院勧告完全実施による処遇の改善、あるいは週休二日制を中心とします労働時間の短縮、適正化の問題、あるいは福利厚生の充実といった問題に取り組んできておるわけでございますが、こうしたことをこれからも民間の情勢の推移に合わせて進めていかなければならない、こういうふうに私は考えております。  そういうことと同時に、公務というものの重要性あるいは公務というものの魅力、公務に従事することの中での生きがい、こうしたものにつきましても、広く国民の御理解をいただきまして、御協力をいただかなければならぬのではないか、私はこのようにも考えております。人事院におかれましては、応募、募集の段階におきまして、学校や大学等へ出向かれまして、こうした公務の重要性あるいは公務員生活における魅力、生きがい、こういうものについて啓発をいただいておる、こういうふうに承知をいたしておりますが、そういうことと同時に、やや私見にわたりますけれども、私を初め公務員というのがしっかりした仕事をして、そして広く国民と申しますか、社会全般から信頼をいただく、こういうことも大変大事なことではないかな、こういうふうに私は今考えております。  いずれにしましても、大変な人手不足ということが言われる昨今でございますので、公務部門にもひとつ優秀な人材を確保できますように努力をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  135. 山口那津男

    ○山口(那)委員 待遇の改善、給与や福利面のことはもちろんなんですが、民間企業も含めて、ただそれだけでは人が集まらないという状況はあるわけであります。やはり仕事の内容あるいは仕事の中での自分の個性の発揮の仕方、そういうものも大いに関係しているのだろうと思います。その意味で、公務員のやりがいないしは自主性を発揮しやすく、そしていかに効果を上げるかということに積極的に取り組んでいただきたい、このように要望いたします。  続いて、国家公務員の海外派遣といいますか、国際貢献という観点から、海外でどう活動すべきか、こういう視点で幾つかの御質問をしたいと思います。  今回、自衛隊輸送機、これを湾岸の紛争に伴って派遣する、こういう特例政令をつくられたわけでありますが、湾岸の戦争も終わり、停戦の効力も出ました。さらにはIOM等から日本に輸送機派遣の要請はもう必要なくなった、こういう話もあるようでございます。そこで、政令廃止の手続を明確にとるということを政府側も発表されているようでありますけれども、その廃止の手続をとるための要件といいますか、それと廃止の手続をとる時期について、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  136. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 本日の安全保障会議におきまして、外務大臣から、今後IOMを初めとします関係国際機関から、湾岸危機に伴って生じた避難民につきましての自衛隊機による輸送が要請されることはないと判断されるに至った旨の報告がございました。その後、防衛庁長官から、こうした状況におきまして、湾岸危機に伴う避難民輸送に関する暫定措置に関する政令の必要性はなくなったものと考えられるので、このことを明確にするため、今後この政令廃止する方向で所要の手続をとることとしている旨を報告したところでございます。したがいまして、このような方向で今後早急に処理されるということになろうかと思います。
  137. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その際、国際機関からの要請の可能性がなくなったということが重要な問題なんでしょうか。停戦の効力が確定をしたというだけではいけないのでしょうか。
  138. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 これは例の政令の解釈の問題でございますけれども政令には、湾岸危機の定義といたしまして、湾岸戦争といいますか、あそこの武力行使と、これに伴って生ずる重大緊急事態、それに伴い生じた避難民輸送、こういうことになっておりましたので、必ずしも戦闘行為の停止とこの避難民輸送の必要性とが全くタイミング的に一致するものとは限らないというふうに理解しております。したがいまして、タイムラグが若干あるだろうということで、責任ある国際機関でありますIOMにその判断をゆだねたということでございますが、今回IOMからそのような旨の、もうそういったことが生ずる可能性は少ない、将来においてないであろうという趣旨の答えがございましたので、それに基づいて廃止方向で処理をするということでございます。
  139. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、IOMからそういう要請、その派遣の要請をしないという通知といいますか意思表示があったということで、直ちに廃止してよろしいものですか、それともほかにも何か検討すべきことがあって、それを踏まえた上で廃止の手続をとるということになるのですか。
  140. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 この政令には、御承知のとおり「当分の間」というふうに書いてございます。したがいまして、通常「当分」と書いてございます政令なり法律につきましては、その実態がなくなった段階で、何の廃止の手続もとらずともこれが実効性が消滅ということで自然消滅ということもあり得るわけでございます。しかしながら、今回、この辺を明確にするということで、廃止の手続をとるような方向で検討をしているということでございまして、その辺の若干の整理、部内での意見調整を若干経た上で、その方向をまず本日の安全保障会議で示した上で、近々にその廃止の手続をとるということでございます。
  141. 山口那津男

    ○山口(那)委員 自然消滅ということもいろいろな要素があってわかりにくい場合もありますから、今回例外的な政令であったことは聞違いないはずですので、早急に廃止の手続をとっていただきたいと思います。  さて、続いて掃海艇のペルシャ湾の派遣について議論があちこちでなされているようでありますが、この点について国民の間に正確な知識、情報が伝わった上で、世論の理解を得なければならないと私は思っておりますので、その点できる限り明確にしていきたい、このように思います。  さて、機雷敷設の状況あるいは掃海作業の実態についてどうなっておるのか、現状について伺います。  まず、イラク軍がクウェート海域に敷設した機雷の数、これについて一千程度という新聞報道もありますが、この数について承知しているところをお答えいただきたいと思います。
  142. 野上義二

    ○野上説明員 委員承知のように、三月三日に多国籍軍とイラク軍の武力停止が暫定的に合意された際に、多国籍軍からイラク側に対して地雷、機雷等の情報を求めるということがその内容となっていたわけでございますが、そういった点も含めまして私どもが現在知り得ておりますのは、イラクにより敷設された機雷数は約千二百個弱、地理的には北緯二十八度三十分以北かつ東経四十九度三十分以西のペルシャ湾海域におおむね敷設されているというふうに承知しております。
  143. 山口那津男

    ○山口(那)委員 機雷には一般的に種類が二つあると言われております。係維機雷あるいは沈底機雷、この二種だと言われておりますが、その一千二百程度の機雷は何種類あるか。この大まかな二種だけではなくて、最近の機雷の機種というのは相当著しいバリエーションがあるようですから、何種類ぐらいあるのかお答えいただきます。
  144. 野上義二

    ○野上説明員 私どもが現在把握しておりますのはその一千二百は係維機雷等であるということで、具体的にその千二百のうちのどれが係維機雷で、あとどのくらい沈底かということについては把握しておりません。
  145. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その大まかな二種類程度しかわかりませんか、機雷を細かく挙げれば何十種類とあるのだろうと思いますけれども
  146. 野上義二

    ○野上説明員 形態という点から申しますと、今委員御指摘の係維機雷、沈底機雷それから浮遊でございますね、漂っているもの。これがまたどういった形で作動するかといった点、これは磁気によるもの、水圧によるもの、音響によるもの、接触によるもの、またはそれらの組み合わせというように、機能的にはいろいろ分類できるかと思いますが、私どもは現在先ほど申し上げた程度の情報しか把握しておりません。
  147. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは念のため伺いますが、浮遊しているものがあるでしょうか、あるいは将来浮遊する可能性のあるものも含まれているということになるでしょうか。
  148. 野上義二

    ○野上説明員 具体的にどの程度の数が浮遊しているかについては把握しておりません。それから、係維機雷の係維が切れれば理論的にまた浮遊ということもございますけれども、その辺も詳細は把握しておりません。
  149. 山口那津男

    ○山口(那)委員 先ほど敷設された海域についての御説明がありましたけれども、クウェートのサウジアラビアとの国境、南側の国境は先ほどの緯度よりも南ですか、北ですか。
  150. 野上義二

    ○野上説明員 北緯二十八度三十分以北と申しますと、ちょうどクウェートとサウジアラビアの国境周辺、ですから、地名でいいますとアル・カフジ、いわゆる昔ありましたクウェートとサウジの中立地帯、あの辺の北ということだと理解しております。
  151. 山口那津男

    ○山口(那)委員 南側に敷設されたという情報はないわけですね。
  152. 野上義二

    ○野上説明員 今のところ承知しておりません。
  153. 山口那津男

    ○山口(那)委員 現在掃海作業にどういう国が参加しているか、現在の実態をお教えいただきたいと思います。
  154. 野上義二

    ○野上説明員 現在米国、英国、フランス、ベルギー、ドイツ、サウジアラビア、こういった国が掃海艇を派遣して参加していると理解しております。
  155. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それぞれの参加国の掃海艇の隻数、それから将来参加が予定されている国があるとすれば、その国名と隻数についてお答えいただきたいと思います。
  156. 野上義二

    ○野上説明員 各国が今何隻程度を地域に派遣して作業しているかについての詳細は把握しておりません。将来につきましては、これは全くの情報でございますけれども、オランダ、イタリーというような国も挙がっていたかと記憶しております。
  157. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その参加している各国が何隻ぐらい出しているかというのは、現在数字をつかめていませんか。一部新聞報道等もあるようでありますが、わかる限りで結構ですからお答えいただきたいと思います。
  158. 野上義二

    ○野上説明員 確定的な数字は私ども現在のところ把握しておりません。今のところ、大体そういった程度の調査をやっております。
  159. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これだけ国内で議論になって、日本も派遣しようかという話があるわけですから、隻数が全くわからないということはないと思うのですね。流動的な要素はあるかもしれません、これからふえていく、減っていく。しかし、ある時点で把握した数字というのは必ずあるはずですね。お答えできる限りのところで結構ですから答えてください。
  160. 野上義二

    ○野上説明員 今委員御指摘のように、フランスなんかにしましても現在一隻いるという話でございますけれども、他方、それが今後二隻加わって三隻になるのか、完全に入れかえになるのか、その辺の詳細が今のところはっきりしておりません。 ただ、私ども一応、米国が四隻程度、英国が三隻程度、ベルギーが三隻程度、ドイツが五隻程度、サウジアラビア等についてはちょっと確証がないわけでございますけれども、二隻ぐらいと言われております。そういった点、これも今申し上げましたように、必ずしも現時点でどのくらいの数がその地域で活動しているかについては、具体的なところは確証を持っては申し上げられませんけれども、大体そんな感じでございます。
  161. 山口那津男

    ○山口(那)委員 大体はわかりました。  なぜこれを私が聞くかといいますと、現地でどれだけの掃海のニーズ、掃海の必要性があるかということは、やはり数字がある程度なければ、せっかく機雷の個数や種類がある程度わかるわけですから、何隻ぐらい携わっているのかわからなければ、必要性の前提が理解できないわけですね。それで伺ったわけです。流動性があることは承知しております。  さて、掃海作業に加わっている人員といいますか、延べ人数といいますか、これは把握できますか。
  162. 野上義二

    ○野上説明員 具体的な人数につきましては、私ども把握しておりません。
  163. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは、これまでに掃海作業によって除去された機雷の数についてお答えいただきたいと思います。
  164. 野上義二

    ○野上説明員 私どもが把握している限り、三月末の時点において約三百個処分されたと理解しております。
  165. 山口那津男

    ○山口(那)委員 二月末の時点ではどれくらいでしたか。
  166. 野上義二

    ○野上説明員 二月末の時点で処分された個数については、私どもは把握しておりません。
  167. 山口那津男

    ○山口(那)委員 掃海作業はいつから始まりましたか。
  168. 野上義二

    ○野上説明員 多国籍軍は武力行使中においても一部の地域で掃海をやっていたと思いますので、具体的にいつの時点から掃海作業が始まったかということを確定することは若干困難かと思います。
  169. 山口那津男

    ○山口(那)委員 正確な時期はわからなくても、敷設された時期というのはある程度推定できる、それから、二月末現在での除去数がわかれば、三月で引き算すれば何個除かれたかもわかる。つまり掃海作業の進行の度合いというものが知りたいわけです。それについてわかる資料がありますか。
  170. 野上義二

    ○野上説明員 詳細な数字は現在のところ把握しておりません。
  171. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは、三月末現在で三百個程度ということであればあと九百個程度残っているであろうと逆に推定されるわけですね。これを取り除くのにどれくらいの期間を要する見込みですか。
  172. 野上義二

    ○野上説明員 三月末の時点では、その後に約半年ぐらいかかるのではないかという情報がございます。
  173. 山口那津男

    ○山口(那)委員 防衛庁に伺いますけれども、残り九百程度、そして敷設されている海域が特定されている、掃海に携わっている隻数が大体わかっている、この現状で残りどれくらいあれば掃海作業は可能か。今六ヵ月程度というお話がありましたけれども、当たらずとも遠からずでしょうか。いかがでしょうか。
  174. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 私どもも、今の答弁のとおり大体六ヵ月程度かかるのではないか。場合によってはもっとかかるという情報もございます。
  175. 山口那津男

    ○山口(那)委員 一般的に機雷の除去は個数が減ってくればそれだけ位置が特定しにくくなる、要するに除去できる数はだんだん低減してくる、こういうふうに言われておるようですね。そうしますと、その六ヵ月と推定される中で主要な航路を確保するために、つまり航行の安全を大体確保できるというためにはどれくらい期間が必要なのでしょうか。防衛庁、いかがですか、専門的な立場から。
  176. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 まさに御指摘のとおり、機雷の除去という作業は海面を掃除するという作業でございまして、機雷の数が幾つ取れたかということが重要ではないというふうに我々理解しておりまして、その意味では一個でも残っているとするならばその海面は全域にわたって掃除をしなければいけないということでございますので、まさに掃除を必要とする海面の広さによるということでございます。したがいまして、私が先ほど六ヵ月程度と申し上げましたのは、まさに機雷の数をどのくらいの期間で除去し得るかということもさることながら、必要な海面についてすべて、いわゆる掃除といいますか掃海をするのに必要なのが今回の場合六ヵ月程度かかるであろう、場合によってはもう少し、船の数とかいろいろなことにもよると思いますが、もう少し長期を要することにもなるであろうということを申し上げた次第でございます。
  177. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私も詳しいことはわからないわけですが、その海域を掃海艇が一回掃除しただけでは除去できるかどうかわからない、何回も何回も往復する作業も必要だ、こういうふうに聞いています。その掃除をするのに六ヵ月というのがよくわからないのですが、例えば、これから掃海艇をどんどん数多く投入することによってそれがどんどんスピードアップするのか、それとも、一個でも二個でもどこにあるかわからないものがあれば長期を要することになるのか、その辺の感覚についてお伺いしたいと思います。
  178. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 先ほど外務省の方から答弁ございました。ペルシャ湾に敷設されている機雷の種類にもよると思うのでございますけれども、いわゆる磁気なり音響に感応する沈底した感応機雷というものが最近はいろいろな種類のものがございまして、海面を一回通過しただけではあえて反応せずに、二度目あるいは三度目にようやく反応するようにあらかじめ仕組まれたような、そのような機雷もございます。したがいまして、そういう場合にはこれは二回、三回、何回となく同じ海面について掃海をする必要が生ずるということでございますので、あの地域においてどのような種類の機雷がどのような形で敷設されている、ないしは存在しているということによることになりますので、はっきりしたことは申し上げられませんが、それらを含めておおむね六ヵ月程度、ないしはそれ以上の期間がかかるのではないかという情報を得ているところでございます。
  179. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そのお答えですと、要するにどういう機雷が埋められているか、つまり種類、内容、機能、そういうものをやはりできる限り特定することによって効率アップが図られるということになるだろうと思うのですね。それはイラク軍側から直接聞き出すのが一番だろうと思うのですが、そういう情報は、もし派遣を議論するのであれば一番重要なことだということになりませんか。その種類について今後どういうふうに詰められるおつもりですか。
  180. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 もし仮に派遣されるということになりますと、これが現場におきまして、他国も、先ほどの御説明のとおりアメリカを中心に掃海作業を実施しておるわけでございますので、あるいは多国籍軍として参加した国の掃海艇もあるわけでございますから、それらの、まさに実態を現に知っている掃海艇を派遣した国からの情報を極力入手することによって、現場でしかるべく対応するということであらうかと思います。
  181. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そういう掃海作業に携わっている国、あるいはイラク、あるいはイラクに機雷を渡した国、売った国といいますか、それぞれから早急に情報を得ないと、掃海作業のニーズとか期間というのは判断できないわけですね。もしやるのであれば、早急にやっていただきたいと思います。私はその必要はないと個人的には思っているわけでありますけれども。  それで、現在はその状況はつかんでいらっしゃらないということですね。──はい、ではそのように承っておきます。  さて、その掃海作業の経過の中で触雷をして被害が出ているかどうか、そういう報告があるかどうかについて、いかがでしょうか。
  182. 野上義二

    ○野上説明員 具体的な被害があったかどうかということについては、私どもは聞いておりません。
  183. 山口那津男

    ○山口(那)委員 被害があれば当然ニュースになるのでしょうから、報告がないということは今のところ幸い被害は出ていない、こういうふうに理解をいたします。  さて、そこで仮に掃海艇を派遣するとすれば、自衛隊の中でどういう派遣の態勢が考えられるか、これは仮の話でありますけれども、掃海艇は三十隻以上自衛隊は保有しているわけですね。もし派遣をするとすれば、最低の単位といいますかユニット、これだけ派遣しないと作業そのものができない、こういう枠、編成というものがありますか。     〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 これまでも、ペルシャ湾へ掃海艇が派遣された場合に備えまして部内におきましていろいろと勉強なり一般的検討は行ってきたところでございますけれども、本日ようやくといいましょうか、長官から具体的な検討を行うべく指示がございました。したがいまして、現段階におきましては、検討がまだ具体的に緒についたばかりでございますので、内容を申し上げる段階にはございません。ただ、通常、国内といいましょうか近海におきまして、当然掃海についての訓練を行っているわけであります。あるいはまた、今まで近海において戦後の機雷をまさに掃海を行っていたわけでございますが、そういう場合におきましては、通常は掃海艇三隻に掃海母艦を一隻という単位で掃海作業を実施する、あるいは訓練を行うというのが実態でございます。
  185. 山口那津男

    ○山口(那)委員 先ほど日本以外の国の掃海作業に携わる隻数を伺ったわけでありますが、大体三隻ないし五隻活動している国が多いわけですね。今の防衛庁の発言からも三隻が一単位、母艦をセットして四隻、こういうお話がありましたので、大体それが作業の一単位だろう、こういうふうに理解をいたします。しかし、もし派遣をするとすれば、我が国近海ではなくてかなり離れたところ、直線にしても一万キロ程度あると思いますので、そこへ派遣するにはその母艦と掃海艇だけで行けるのかどうか、さらには補給艦というようなものも行かないと効率的な作業あるいは実効ある作業ができないのかどうか、この点についてどうでしょう。
  186. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、現在まだ具体的な検討を行っておりませんのではっきりしたことは申し上げられませんが、常識的に考えまして、非常に遠いところへ参るわけでございますから 他国の例などを見ましても今お話にありましたような補給艦といったものの必要性が生ずることは当然考えておかなければいけないというふうに思っております。
  187. 山口那津男

    ○山口(那)委員 機雷の除去作業は、海上に浮かばせてそれを砲撃する、弾を撃って当てて爆発させる、こういう作業だろうと思いますから、当然その弾というのは相当数確保しなければならない、つまり単独の掃海艇や母艦だけでは足りなくなる場合がある。その他の装備につきましてもやはり補給する必要があるということで、常識的にいって補給艦もあわせて行かないと作業が困難であろう、こういうふうに予想されると思うのです。  さて、その補給艦も含めた上で、これらの一単位がペルシャ湾へたどり着くまでどれくらいの期間がかかるかということについてお考えをお持ちでしょうか。
  188. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 航路の設定いかんにもよりますし、それからどういうところに泊地を設けてどういうふうに行くかということにもよりますので、先ほど申し上げたようにまだそういった具体的な検討を必ずしも行っておりませんから、確たることは申し上げられませんけれども、まあ大体のところ、我が国からあの地域まで距離的にいって七千海里ということでございますので、それから算定いたしまして、大体そのスピードと所要の泊地ということを想定いたしますとおおむね一ヵ月内外ではなかろうか、私の見積もりではそういう形でございます。
  189. 山口那津男

    ○山口(那)委員 船の速力と距離から割り算をして、補給の回数を推定すれば、大体それくらいになるだろうと私も思っております。  さてそこで、たどり着くまであるいはたどり着いてペルシャ湾で作業をするために何か気象上の障害、気象だけではなくてその他自然的な障害というものが予想されるでしょうか。
  190. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 これは時期によるわけでございますけれども、私どもが今までに聞き及んでいるところによりますと、インド洋ないしアラビア海のあたりが五月を過ぎますと、例えば六月以降秋口に至るまでかなり激しい風と、したがって波が高くなるという状況があるというふうに聞いております。
  191. 山口那津男

    ○山口(那)委員 季節風が吹いて波が高くなる、そうなりますと、現在保有する自衛隊の掃海艇が航行困難である、あるいは危険をかなり伴う、こういうことになりますか。
  192. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 物理的に全く不可能かと言われれば、沿岸に沿いながら合間を縫って行くということで、十分な時間をかけて行けば行けないことはないと思いますが、かなり困難を伴うということであらうかと思います。
  193. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、たどり着くのに大体一ヵ月間かかる、そして六月初めからモンスーンが吹いて危険も伴う、沿岸を航行すればさらに膨大な時間がかかる、こういうことを考え合わせると、逆算していくともう五月の初めないしは今月の末に出発をしないといけないと思うのですね。それで、出発をするまでに派遣を決める、そして出発をするまでにどれくらい準備期間が要りますか。
  194. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 準備と申しますのが、例えば外交ルートを通じての寄港地に対する了解でありますとかあるいは滞在許可も必要になるかもしれない、あるいはその他の諸機材を積み込むこともあるかもしれないということで、これからそれらを部内で鋭意詰めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  195. 山口那津男

    ○山口(那)委員 外交交渉をやるあるいは燃料を積み込む、その他の装備を整えるということだけでも準備期間はある程度必要だろうと思うのですね。最低五日ないし十日ぐらいは必要じゃないかと常識的に思うのですけれども、どうでしょうか。
  196. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 まだその検討を具体的にしておりませんので何とも言えないところでございますが、ただいまお話のあったラインとそれほど遠くはないのじゃないかと私自身も思っています。
  197. 山口那津男

    ○山口(那)委員 これから検討してある程度の準備をする、そして決断をする、それから実際の出発の準備をする、そして出発をするということを考えると、もう本当に早急に決断をしないと、実際問題六月前には着かないということになろうと思うのですね。その点について随分準備が不足ではないか、あるいはひそかにやっているのかもしれませんが、拙速に過ぎないように御検討いただきたいと思います。  さて、掃海任務というのは、事実として見た場合には、これは何といいますか、機雷を単に除去する作業ですから、戦争を行っている最中と終戦後ということで区別するいわれはないだろうと思うのですが、従来武力行使に当たるか否かということが議論されたようであります。現在停戦の効力が生じており、いずれの国からも攻撃の意図はなかろうと思うわけでありますが、現在掃海作業をすることが武力行使に当たりますか。
  198. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 お尋ね自衛隊法に基づく掃海と憲法九条との関係についてでございますが、自衛隊法第九十九条による機雷の除去に関しましては、浮遊しているか定置されているかを問わず、遺棄されたと認められる機雷につきまして、それが我が国の船舶の航行の安全にとって障害となっている場合にその航行の安全を確保するためにそれを除去する、そういう行為は憲法九条に言う「武力の行使」には当たらないというふうに解しているわけでございます。このことは既に六十二年九月二十九日付の黒柳明議員に対する政府答弁書において明らかにしているわけでございます。  それではなぜそのように考えるのかという理由について若干申し上げますと、外国により武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去する行為、これはその外国に対する戦闘行動として武力行使に当たるのだ、こういうことでございますが、遺棄された機雷ということになりますと、外国に対する武力攻撃の一環としての意味を失っており、したがって、これを除去する行為はその外国に対する戦闘行動としての性質を持たない。したがいまして、単に海上の妨害物を除去するという性質のものにとどまりますので、武力行使には当たらない、こういうふうに解するわけでございます。  そこで、ポイントは、遺棄された機雷であるかどうかというところがポイントになるわけでございますが、この遺棄された機雷と認められるためには、その地域において戦闘行動状態が完全に終結し、いわば平時の状態に復したにもかかわらず敷設者がみずからそれを除去しない、それを放棄したものと認められることが必要であろうというふうに私ども考えております。  そこで、ではどのような状態になれば平時の状態に復したとかあるいは敷設者が機雷を放棄したものと認められるのかということになりますと、これはもう個々の事例によりましてケース・バイ・ケースで判断すべきものでございまして、結論を一概に言うことはできないであろうと考えるわけでございます。  お尋ねは、今回のイラクがペルシャ湾に敷設した機雷についてでございますが、安保理決議第六百八十七号に基づく恒久的停戦が成立したという事情を踏まえまして、イラク側の機雷の取り扱いについての推定的意思をも十分見きわめて判断すべきものであろうというふうに私ども立場からは言えようかと考える次第でございます。
  199. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今、武力行使に当たらないという理由はわかりました。しかし場合によっては当たるということもあるわけですね。そうすると、片や憲法違反、片や合憲、こういう分かれ目は遺棄されたか否かという基準で見るのかもしれませんけれども、仮に武力行使に当たると見た場合に、それは機雷の除去の作業、つまり消極的な作用ではないかという気もするわけであります。それとも、機雷に銃撃、砲撃してそれを破壊する作業であるからこれ自体実力の行使であって「武力の行使」に当たる場合がある、こういうふうにおっしゃるのかもしれませんけれども、その点はいかがなんでしょうか。事実としての掃海作業が「武力の行使」に当たる場合があるわけですか。
  200. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 正面からの端的なお答えになるかどうか若干疑問ではございますが、例えばこの九十九条では、「海上における機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理を行うものとする。」除去と処理という二つの行為をあわせて書いているわけでございます。したがいまして、機雷の掃海の観念的な形態としては除去と処理というものは別個のものとして考えられるかもしれませんが、通常はこの除去はすなわち処理であろう、すなわち爆発させることによって除去するということであろうと思いますので、二つが分かれて単に消極的な作業だけが行われるということはないのではなかろうか。これは事実認識の問題でございますが、仮に観念的に全く消極的な除去行為ということに限りましても、なおそれが「武力の行使」に当たるということはあり得るのではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  201. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私が伺いたかったのは除去と処理を必ずしも分けるということではなくて、いわば敵対勢力を殺傷するという行為ではない、敵の敷設したといいますかある国の敷設した機雷、攻撃力のある機雷を取り除く、こういう作業であるから、むしろ安全を確保するためのものであって、常識的に武力の行使とは言えない面もあるのじゃないかと思ったわけであります。しかし、憲法上「武力の行使」に当たるという場合もあるとおっしゃるものですから、その点を確認したかったわけです。憲法の解釈による「武力の行使」に当たるのか否か、いかがでしょう。
  202. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 先ほどお答えしたことと関連するわけでございますが、憲法九条が規定しております「武力の行使」というものはどういう概念であるかということでございます。外国により武力攻撃の一環として敷設された機雷、そういうもの、すなわち武力攻撃の一環として敷設されたものを除去するという行為は武力攻撃の一環としてなされた行為を無力化するという効果を持つわけでございますから、それも積極的に爆薬が破裂するとかそういう現象がなくても、やはり武力行使という概念に当たる場合がないとは言えないということであろうかと思っています。
  203. 山口那津男

    ○山口(那)委員 遺棄されたか否かということが結局武力行使に当たるか否かということの具体的な分かれ目になるのであろう、このように理解します。  そこで、公海であるかあるいは他国の領海内であるかによってこれが違ってくる場合がありますか。
  204. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 先ほどお答えで指摘しました六十二年九月二十九日付答弁書は、公海上の遺棄された機雷の除去についての答弁でございます。  他国の領域、領海ということになりますと、その中に入っていくということ自体が領海侵犯の問題が生じますので、通常はそういうことはその面からも行うことができないわけでございます。ただ、これは観念的な議論としてお聞きいただきたいと思いますが、その領海国がその領海内に入ることについて同意をした、同意をしているということになりますと、その公海上における掃海と他国の領海における掃海とは法律上は同じ評価になるのであろうというふうに考えます。
  205. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは、具体的に今回のペルシャ湾のクウェート沖の敷設状況について、今の一般論を当てはめてイラクの敷設した機雷が遺棄されたもの、イラク側によって遺棄されたものと見られるか否かについてどうお考えでしょうか。これは防衛庁の方がふさわしいでしょうかね、外務省でしょうか。 いかがですか。
  206. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 具体的な事実関係を当てはめる前に基本的な考え方だけもう一度確認的に答弁させていただきますと、先ほど申し上げましたように、安保理決議六百八十七号に基づく恒久的停戦が成立したという事実を踏まえまして、なおイラク側の機雷の取り扱いについての意思、すなわち敷設者がみずからそれを除去せずそれを放棄したものと認められることが必要であるというふうに考えますので、現在のペルシャ湾における機雷をめぐる状況が一体どうなのかということは、まさに事実認識の問題でございます。その点については、私どもは現地を把握する立場にはないから結論的にはお答えを申し上げることができないというふうに申し上げた次第でございます。
  207. 山口那津男

    ○山口(那)委員 現地の状況を把握する立場にある外務省、防衛庁、いかがですか。
  208. 野上義二

    ○野上説明員 先ほど御説明申し上げましたように、三月三日の多国籍軍とイラク軍の間での情報交換、これは機雷のみならずクウェートに敷設された地雷等も含んだその数と位置とを通報するということになっているわけでございます。もちろん、その通報を受けた多国籍軍側は、これを除去していくということでその通報を受けているわけで、本来であればイラク側が除去していけばそれはそれでいいのですが、撤退しておりまして、そこの置いていったところだけを言って、それを多国籍軍が除去していくということを当然の前提として通報していったものと理解しております。
  209. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、やはりイラクとしてはみずから支配するという意思は恐らくないのでしょう。遺棄したと見ていいのだろうと思います。  その上で、先ほど敷設の位置の説明がありましたけれども、例えばカフジは日本のアラビア石油の製油所がありまして、ここの船舶の航行の安全を確保することは非常に重要なことであると思います。ただ、このカフジはクウェート国境の南側でありまして、現在機雷は敷設されていないわけですから、カフジの港の出入りには差し支えないと思うのですが、いかがですか。
  210. 野上義二

    ○野上説明員 先ほど申し上げましたように、この二十八度三十分以北というのは基本的にはクウェートとサウジアラビアの国境周辺でございますが、御承知のようにカフジはその国境からすぐ南でございます。そのカフジの沖合にどういった形で具体的に機雷が敷設されているかについて私ども詳細な情報は持っておりませんけれども、基本的にはその周辺から北にあるというふうに考えていただいたらよろしいかと思います。
  211. 山口那津男

    ○山口(那)委員 その二十八度三十分ぎりぎりのところまで敷設されているのですか。それよりもカフジはさらに南ですね。南に数キロあるわけです。それで、先ほど浮遊しているものがあるかというお尋ねをしたときには、確認されていないというお話でしたね。ですから、浮遊するものがなく、その可能性もないとすれば、何もカフジの沖合を掃海する必要性はないのじゃないかと私は思うのですが、その点の前提はいかがですか。
  212. 野上義二

    ○野上説明員 先ほど申し上げましたように、二十八度三十分以北のみに厳に限定されているのか。それから浮遊の問題もございますが、その辺は詳細を把握しておりません。したがいまして、二十八度三十分以南であれば全く問題ないのだというふうには私ども理解しておりませんし、それから、二十八度三十分以北に敷設されたものが浮遊していないということも申し上げておりません。その辺はわかりません。したがって、これは仮定の問題ですけれども、調べなければわからないということだと思います。
  213. 山口那津男

    ○山口(那)委員 カフジの沖合を掃海する必要があるかどうか、わからないことが多過ぎるわけでありますけれども、今回自衛隊法九十九条の解釈によって派遣できるという解釈もあるようであります。これは我が国の船舶の航行の安全確保でありますから、この機雷を敷設する地域について果たしてその必要性があるのかどうか、その点の具体的な必要性がありますか。
  214. 野上義二

    ○野上説明員 カフジの港については先ほど申し上げたとおりでございますけれども、この二十八度三十分以北と申しますと、クウェート港がその対象に入ります。したがいまして、我が国の船舶がクウェート港には入れないということになると思います。  具体的には、従来平時でございますと、この戦争が始まる前にはペルシャ湾に常時日本船籍ないしは日本に雇用された船が大体二十隻ぐらい入っておりました。もちろん戦闘中は急激に減りましたけれども、三月の停戦以降、やはり平時の状況には戻っておりません。それから、クウェートの今後の復興等でクウェート港というのは非常に重要でございますけれども、そこに対して今相当大型船舶の出入りに問題が出ているわけで、危険地域ということになっております。したがいまして、カフジにつきましてはボーダーラインといいますか、カフジの周辺から始まっておるということでございますけれども、クウェート港には完全に今なかなか入れないということでございます。
  215. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私は、三月五日から十九日までこの中東へ行ってまいりまして、実際にサウジアラビア、クウェートの国防次官あるいは担当閣僚とも懇談をしてまいりました。掃海艇について日本が派遣するとしたらそれを受け入れるか、あるいは両国から要請を出すか、こういう質問の際に、サウジアラビアの国防次官は、日本がやってくれるというなら拒否はしない、しかし積極的に要請はしない、こういう話でありました。  それからクウェート、これは外務大臣及び首相、サアド首相でありますが、お二人とも同様に、掃海艇を日本から派遣していただくというよりは、日本にしていただきたいことは経済援助であり、技術援助である、国民の関心の高い点は、例えば油田の火災ですとか、あの黒い煙の除去ですとか、健康被害の防止とかこういうことに日本の協力をお願いしたいということで、掃海艇の派遣については積極的要請を考えていない、こういうことでありました。  それから、私が実際にそれを聞いたのは三月十七日でありますが、四日前、つまり三月十三日ですね、クウェートの商業港、これはシュワイバ港だろうと思いますけれども、既にオープンしている、こういう話もありました。さらにその時点から一ヵ月もたっているわけでありますから、今クウェートの商業港についてどれだけ掃海の必要性があるのかどうか、この点が疑問であります。さらに、先ほどおっしゃったカフジ沖、ここも機雷の敷設の状況すら正確ではない。本当に必要なのかどうか、不明であります。  そうしますと、我が国の船舶の航行安全確保、こういう目的のために、その必要性が十分でないにもかかわらず掃海艇を短期間のうちに早く派遣を決定しなければならない、その前提も怪しいと私は思います。  ついでにもう一つ申し上げれば、これが船舶の安全確保以外にも、例えば国際貢献として、我が国の船に限らずこのクウェートの沖合の危険をすべて除去するために日本が貢献するのだ、こういう目的で派遣をするというのであれば話は別であります。そういう意図はございますか。
  216. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 掃海艇をもし仮に派遣することとなりました場合には、それは先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、我が国の船舶の航行の安全を確保するためということでございます。ただ、それが結果として、同時に他国船の航行の安全の確保、ひいてはそれがその意味で、その限度で国際的な貢献ということに資するということはあり得ることかと思います。
  217. 山口那津男

    ○山口(那)委員 自衛隊の組織としての海外の派遣については、国内でもさまざまな議論があるところであります。我が公明党としては反対論が非常に強いわけでありますけれども、これについて国内の世論がどうなのかということも十分配慮しなければならない。  最近政府が世論調査をしたと言われておりますけれども、どういう調査をされたのでしょうか。──わかりませんか。  では、それは別にして、ある世論調査、これはテレビの視聴率を調査する会社の行ったものでありますが、これについて過半数の方が、派遣は当然である、あるいはやむを得ない、こういう結果が出ているわけであります。しかし、この質問の前提が、我が国の船舶の安全確保というよりは国際貢献というニュアンスでお聞きしているようにも思われるわけでありますね。ですから、一概にその世論というものがどういう前提で、どういう情報のもとに判断をしているのかというのは言いにくい面があるわけであります。したがいまして、これについて正しい情報を与えた上での調査をしてみなければならないとも思うわけであります。  そこで、国際貢献ということは今の自衛隊法にはどこにも規定がないわけでありますから、専ら我が国の船舶の安全確保ということであれば、果たしてクウェート沖合のどこにその必要性があるのかということを具体的に調査をされた上で判断をしなければならない。しかし、今種々質問したところによれば、それが甚だ不明確な点が多過ぎる、そして、今月末にもやるならば決断をした方がいい、こういう状況で派遣するというのはいかにも拙速を招きやすい、そして、国際的な批判あるいは国内的批判も受けやすい、このように思うわけであります。  さて、内閣としてこの点について今後どう対処されるおつもりか、御意見をお伺いしたいと思います。内閣官房の方、お願いいたします。
  218. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 諸般事情を勘案しながら現在検討しているというところでございます。
  219. 山口那津男

    ○山口(那)委員 自衛隊法三条の趣旨からいって、やはり自衛隊の活動できる範囲は地理的限界がある、それは日本近海に限る、つまり、日本の領海あるいはそのごく近辺に限る、こういうふうに理解をしているものでありますので、ペルシャ湾に自衛隊を組織として派遣するということについては消極的である。それから、現地のニーズも非常に怪しいものがある。私は、この二点から掃海艇派遣については反対であります。ぜひこの質問を生かしていただきまして、慎重に検討いただきたいと思います。  以上で終わります。
  220. 近岡理一郎

  221. 三浦久

    三浦委員 私は、国家公務員の定員管理、特に定員削減問題について質問をいたします。  我が党は、公務員の定員管理については、国民にとって不要な部門の定員は削減をしなければならないが、どんどん需要がふえている国民生活密着部門の職員はしっかりと増員すべきであるというふうに考えております。  政府は、一九六七年度末の定員を最高限度とする総定員法の施行以降、今日まで七次にわたる定員削減計画を策定し、二十三年間にわたって大幅な定員の削減を行ってまいりました。  そこで、初めにその結果についてお尋ねをいたしますが、沖縄関係及び自衛官の定員を除く職員の定員は、一九六七年度末から九一年度末までにどのくらい減少したでしょうか。
  222. 増島俊之

    ○増島政府委員 各省庁の定員でございますけれども、一九六七年度末八十九万九千三百三十三人ございまして、一九八一年度八十九万二百九十七人、それから一九九一年度末でございますが、八十五万五千四百二十三人というふうになっております。一九九一年度末の定員はこの一九六七年度末定員に対しまして四万三千九百十人の減になっております。また一九八一年度末の定員に対しましては三万四千八百七十四人の減となっております。
  223. 三浦久

    三浦委員 そういたしますと大体そのほとんどがこの十年間で減員されているという結果になりますね。省庁の一つ二つがなくなるくらいこの十年間で減っている、そういう結果になっているようです。その内容ですが、地方支分部局の職員の減った数はどのぐらいございましょうか。
  224. 増島俊之

    ○増島政府委員 各省庁の地方支分部局の定員でございますが、一九六七年度末では五十九万三千六十三人それから一九八一年度末では五十五万百三十四人になっておりまして、一九九一年度末では五十一万六千四百九十八人となっております。したがいまして一九九一年、平成三年度末の定員は一九六七年度末定員に対しましては七万六千五百六十五人の減、それから一九八一年度末定員に対しましては三万三千六百三十六人の減になっております。
  225. 三浦久

    三浦委員 そうすると全体としては四万三千九百十人の減だ。しかしこの地方支分部局の定員はそれをはるかに上回っているのですね。七万六千五百六十五人ということでございますね。つまり定員削減というのは、主として国民の最も身近な役所であり国民サービスに直結した部門の職員に集中しているということが言えるのではないかと思います。  その細かいことについては、きょうはもう時間がありませんからまた後で機会を見てやりますけれども、この定員削減の影響というのは地方支分部局にとどまるものではございません。やはり本省でもこの業務量の増大というものに伴って超過勤務いわゆる残業、それから労働密度の強化、これによる職員の不満というものは相当なものですね。これはもう、私はいろいろお話を聞いていますと、まさに爆発寸前という状況になっていると思います。ですから、いろんな省庁、今まで運動もしたことのなかったような省庁までが定員をふやしてくれというような署名運動をいわゆる国民に対してやっているというような状況まで出てきておりますね。  これは東京国公、霞国公に寄せられた川柳がここにありますけれども、いっぱいあるのです。ちょっと三つ四つ読んでみますけれども、 「ワープロの画面を見つつカップメン  終電後今夜も泊る仮眠室  朝七時「お帰りなさい」と妻の声  帰り際思わずながむ大蔵省」 これは総務庁も入るかもしれませんよ。こういうのがいっぱいあります。四つぐらい今挙げましたけれども、こういう川柳が労働組合に寄せられるほど皆さん現在の定員についてはもうぎりぎりだ、これ以上減らされたんじゃもう我々の体がもたぬ、そういうような状況になっていると思うのです。  それで、総務庁にお尋ねいたします。  各省庁から毎年出される増員要求がございますけれども、この査定の基準というのはどういうふうになっているのでしょうか。
  226. 増島俊之

    ○増島政府委員 定員につきましては、全体の総数を抑制するということ、この内閣の大変厳しい方針のもとに査定を行っているわけでございますが、各省庁の御要求をもとにしまして行政需要の動向それから行政の適正かつ円滑な運営等の観点を踏まえまして査定に当たっているわけでございます。具体的には、増員に係る施策、事業の妥当性、業務量増大の状況あるいは増員した場合の効果、増員しなかった場合の問題点等々、種々の観点から総合的に判断をいたしまして臨んでいるわけでございます。
  227. 三浦久

    三浦委員 増員しなかったときの効果というようなことも一つ言われましたね。そうすると、増員しなかったら結局職員の残業がふえるというようなことですね。こういうことも当然考慮に入れておられるのですか。
  228. 増島俊之

    ○増島政府委員 定員の御要求があります場合に、各省庁によりましてはそういう残業の実態というような御説明がある場合がございます。いずれにしましても、業務の実態といいますものは十分考慮するということでございます。
  229. 三浦久

    三浦委員 ことしの一月に公務員労働組合で組織する東京国公、霞国公が十二省庁、約七千三百人の組合員に実施した残業・健康のアンケート調査があるのです。これによりましても、通常業務でも四六%の職員、つまり二人に一人の職員が残業しないと業務量がこなせない、こういうように言っているほどなんですね。また昨年十月と十一月の残業時間については七千三百人のうち約二千人が月に五十時間以上残業しておるというのです。つまり三人に一人が五十時間以上の残業をしているということがはっきり出てきております。その原因について一番多いのが業務量が多いということですね。そのほかにも上司が帰らないから帰りにくいとかいろいろなものもありますけれども、半分の人々が業務量が多いからだというふうに述べています。こうした職員労働実態を総務庁としては把握していらっしゃるのか、またどういうようにお考えになっていらっしゃるのか、お答えいただきたい。
  230. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 国家公務員の超過勤務につきましては、人事院におきまして給与実態調査の中で調べておられるというふうに私ども理解をしておるわけでございますが、その結果として、全省庁平均で最も超過勤務の多い月の時間数が三十時間を超える状況になっている、そういうことを承知いたしております。
  231. 三浦久

    三浦委員 そういう状態は正常な状態だとお思いですか。
  232. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 超過勤務につきましては、特に本省庁におきまして予算の時期あるいは国会の開会中に時間数が多くなるというようなことは私ども承知いたしております。ただ、超過勤務時間につきましては、省庁ごとにばらつきもございますし、また、同じ省庁でも担当部局や時期あるいは職員によりましても大変なばらつきがあるというふうに承知いたしております。さらにまた、臨時あるいは緊急の必要がある場合としてやむを得ない場合もあるというような実態もございますことから、超過勤務の時間やその要員等の実態を詳細に把握することはなかなか困難であるわけでございますが、ただ、私どもといたしましては、やはり超過勤務をできるだけ減らしていくための努力というものはしていかなければならないというふうに考えておりまして、各省といろいろ研究をしながらそうした努力を重ねてきているわけでございます。今後ともそうした努力をしてまいりたい、このように考えております。
  233. 三浦久

    三浦委員 それでは、今のお答えを受けて農水省にちょっとお尋ねいたしたいと思いますけれども、農水省は職員の残業の実態の調査をしたことがございますね。それで、その実態調査の内容はどういうものだったでしょうか。
  234. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 農林水産省におきましては、残業の実態等につきまして調べておりますけれども、この二、三年を見てみますと全省庁を通しましておおむね三十五時間前後の残業を行っているという実態にございます。
  235. 三浦久

    三浦委員 残業を減らすためにいろいろ対策をとっておられると思いますが、どういう対策をとっておられますか。
  236. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 職員の健康保持、能率の増進を図る見地から、超過勤務時間につきましては極力短縮を図ることが必要であるというように認識しております。  しかしながら、ガット・ウルグアイ・ラウンドにおける農産物交渉を初め我が国農林水産業をめぐる情勢が厳しい局面を迎えていることに伴いまして、貿易問題担当部局等懸案事項を抱えている部局におきましては、超過勤務時間が増加しているという傾向にございます。このような傾向に対応しまして、庶務課長会議の申し合わせを行うなど、省を挙げまして、毎週水曜日と金曜日を定時退庁促進の日として設定しまして、その日におきましては庁内放送による趣旨の徹底、さらには毎日でございますけれども、午後八時になりますと早期退庁を促すためのチャイム放送の実施とか、予算関係業務の改善、さらに管理職員早期退庁及び職員への指導による帰りやすい雰囲気づくりの推進、こういったものを図りまして、超過勤務時間の縮減に向けて努力をしているところでございます。今後とも工夫を凝らしながら超過勤務の縮減に最大限努力を行ってまいりたいというように考えております。
  237. 三浦久

    三浦委員 この農水省の残業の実態のすさまじさというのは、今平均すると三十五時間と言われましたけれども、これも東京国公、霞国公の調査によりますと農水省の構造改善局、ここで、四百人の職員がいらっしゃるそうですが、昨年十月の残業時間というのは三〇%の職員が七十五時間以上、以上ですよ、七十五時間以上残業しています。うち百時間以上の残業をしている方が一六%の職員に及んでいるのです。これはちょっと考えられない数字です。  その原因は、ここに資料がありますけれども、業務が多過ぎるというふうに言っている職員が五二%、半分です。そういう残業が多い結果、体の調子はついても、疲れやすい、目が疲れるという訴えをしている人が五〇%、寝不足、肩が凝るということを言っている方がこれは四〇%ですね。四〇%の職員が寝不足だとか肩が凝るとかという訴えをされているわけです。私は相当な過酷な労働条件になっていると思うのです。  農水省は残業の規制について今いろいろ言われましたけれども、ちっとも対策の効果が上がっていないのじゃないかと私は思うのですが、いかがでしょう。対策の効果が上がっていますか。
  238. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 超過勤務の縮減対策の効果を計数的に把握することは非常に難しい面がございますけれども、管理職員を初め全職員の超過勤務問題に対する意識も大変高揚してまいっておりますので、徐々にその効果は上がってくるというように思います。私どもとしましても、これからもいろいろ工夫を凝らしながら努力をしてまいりたいというように思っております。
  239. 三浦久

    三浦委員 私が聞いているところによりますと、定時退庁促進日というのは水曜日と金曜日でしょう。さっき庁内放送をするとかと言われましたね。しかし、仕事量は減っていない、ふえているわけだから、それ以外の残業が今度逆にふえちゃうとか、それからまた、ふろしき残業ですね、自宅に持ち帰って仕事をするというふろしき残業がふえているとか、そういうことを私は聞いていますよ。  結局仕事量に見合った定員というものを配置をしない、ここが残業が膨大にふえる一番大きな原因だ、そこにメスを入れなければこの問題の解決というのはないんじゃないですか。例えば今課長さんがおっしゃいましたけれども、定時には帰りなさいといってチャイムを鳴らすとか、八時になったらまたチャイムを鳴らすとか、それからまた十時になると、もうその日にどうしてもやらなくてはならないかどうかを検討した上でなるべく帰りなさいと言うとか、そんな精神的な問題で解決できるような問題じゃないと思うんですよ。  それから、一週間に一度は定時退庁するようにというような申し合わせをしてみたりしていますね。しかし、そんなことを幾ら申し合わせしたって、仕事量があって人間が少ないのですからどうしたって残業になっちゃうんですよ。私はやはり仕事量に対応した定員というものを確保する必要があるんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。庁内のやりくりでそれはできるんですか。定員をふやさぬとできないのじゃないですか。どうですか。
  240. 鈴木久司

    ○鈴木説明員 私どもとしましては、現在行っております業務につきまして、合理化すべきところは合理化を図りながらなおかつ仕事がふえる場合には、それに対応して所要の要員の拡大、定員要求ということを行ってまいっておりまして、本省につきましては、厳しい定員状況でございますけれども、一定の増員を図っている状況にございます。これからも努力をしてまいりたいというように思っております。
  241. 三浦久

    三浦委員 通産省の組合が最近増員要求の署名運動をやっているんですね。そのチラシの中に昨年の五月の一週間の勤務の状況があります。これを見てみますと、まあ九時二十分が始業時間ですね、ところが五時半の定時に帰るなんという人はほとんどいないですね。まず十時、十一時、十二時、夜のです。これはもうざらです。それから、泊まり込んでその日一日やって、そしてその次の日のまた夜の一時までやる。そしてまたその日は定時に出て、また次の日、夜の四時までやるとか、何とまあこれは過労死予備軍をつくり出しているようなそういう実態なんですね。こういう実態。時間がなくなりましたので、質問はやめましょう。そういう実態なんです。これを見るともうおわかりのとおりです。  それで、特許庁の特許情報管理課、電子計算機業務課に勤務していた枝廣康夫さんという方が一昨年の一月八日にお亡くなりになりましたね。三十四歳の若さです。いわゆる過労死として同年の十月に公務災害に認定されているわけですけれども、その医学上の死因と公務災害認定をされた理由、これをお尋ねしたいと思います。
  242. 田中徳夫

    ○田中説明員 御説明いたします。  ただいま御指摘の件は、昭和六十三年の暮れに庁内で今御指摘の職員が意識不明となりまして病院に運ばれたわけですが、翌年の一月に死亡いたしまして、その年の十月に公務災害の認定をいたしたところです。  死亡の原因につきましては、直接的には、いわゆる死亡診断書によりますと急性心不全となっております。ただ、それに至ります疾病の特定というのは非常に医学上も困難だということでございましたが、医学経験則上その職員がその前のある時期に上気道炎、扁桃腺炎のことだそうでございますが、上気道炎に罹患した際に何らかのビールスに感染したものであったのではないか。ただ感染しただけでは無症候状態で推移していたわけですが、昭和六十三年の十月になりまして電子計算機業務課に変わりまして、それまでに比べまして忙しい業務になったということで体の抵抗力が落ちたために、ウイルスが再活性化して、脳炎あるいは髄膜炎を発症した結果、急性の症状を呈して、最終的に急性心不全で死亡するに至ったというお医者さんの判断があったわけでございます。そういうことをもとにいたしまして私どもとして公務災害の認定を関係方面と御相談の上いたしたところでございます。
  243. 三浦久

    三浦委員 要するに公務に起因する災害だということをお認めになられたわけですね。こんなことはもう二度と起きてはならないというふうに私は思うのです。しかし、今の各省庁の定員の状況ですと、いつどこでこういうことが起こるかもわからない状況だと私は思うのですよ。ですから、やはり適正な定員配置というものをやらなければならない、こういう犠牲者を出さないためにもしなければならないと思うのですけれども、総務庁、いかがでございますか。
  244. 増島俊之

    ○増島政府委員 先ほども申し上げましたとおりでございますが、国家公務員の定員査定に当たりましては、業務量の増大あるいは業務の実態等十分精査いたしまして、また、関係各省庁とも十分御相談の上今までも措置してきているわけでございます。今後もこういう方針で臨んでいきたいと思っております。
  245. 三浦久

    三浦委員 口ではそういうことを言われますけれども、それは増員していないとは我々は言いませんよ。しかし、業務量の増大に追いつかないのですよ。現実に減員も行われているのですよ。そういうところというのは今言った通産省とか農水省だけに限りません。税関、国立病院、建設省の公共事業を扱う部門、法務省の出入国管理事務所、それから登記所、もうわんさわんさ、数え上げたら切りがないぐらいあるのですよ。  定員管理にこのようなひずみが生ずる一つの原因というのは、各省の増員の要求に事実上の一律シーリソグをかけていますね。例えば前年度要求の七%以下に増員要求は抑えろ、若干の例外を認めている場合もありますけれども、こういうシーリソグをかけるというようなことはやめて、やはり業務の実態に合った定員の増員に改めるべきだと私は思うのです。それじゃないと、まだまだこれから国家公務員の中に犠牲者が出てくる可能性があると思うのですけれども大臣、いかがでしょう。
  246. 佐々木満

    佐々木国務大臣 御案内のとおり、行政改革というのが目下の国政上の重要課題だ、その一環として私どもは定員の管理を各省庁と御相談の上行っておるわけでございます。この方針はこれからも継続していかなければならぬと思います。先ほど三浦さんにも御指摘をいただきましたが、社会経済情勢が変化いたしますから、そうした中で行政の衰退部門とでも申しましょうか、そういう分野につきましては定員を供出をしていただく、そして行政需要の増大する分野、まあ言葉は適当でございませんが成長部門、そういう部門につきましては定員をふやしていく、こういう方針で対処してまいっておりまして、これからもその方針は堅持すべきものだと私は考えております。  ただ、現に仕事が各省庁ございます。あるいは成長部門についてはさらに仕事が増大してまいります。そういうことをあわせ考えますと、定員の管理も必要でございますけれども、業務量について、必要なものについてはこれを整理する、あるいはまた業務の執行方法につきましても合理化、能率化の工夫もしてもらう。場合によったら民間委託、そういうものも考えていただかなければならぬと思いますけれども、そういうことを総合的に各省庁と御相談をして進めていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに思っておりまして、そういうことでこれから努力をさせていただきたいと思っております。
  247. 近岡理一郎

    近岡委員長 時間が参っていますのでよろしく。
  248. 三浦久

    三浦委員 一言意見だけ。  国家公務員の非常に大幅な定員の削減がある一方、自衛官というのは二十五万三百七十二人から二十七万四千六百五十二人、二万四千二百八十人も増員をされているということなんですね。  それじゃ日本の国家公務員の数というのは諸外国と比較してどうなのかといえば、これは総務庁の調査によりましても対人口比で極めて低いのです。フランスの三分の一、イギリス、アメリカ、西ドイツの二分の一です。これは資料をいただいておりますけれども。ですから、今行革は遂行するんだ、定員削減もこれからやっていくんだとおっしゃいますけれども、それは過労死が出るような定員配置じゃなくて、みんなが定時で帰れるような、本当に業務量に見合った定員の配置をやっていくということを前提にしなければならないと思う。業務量の変化というのはもちろんありますね、部門、部門によって変化がある。それに機敏に対応していくというのは大事ですけれども、今の実態はそうなっていないということなんです。何しろ五年間で五%削減だということでやっておるわけですから、そういう行革のあり方を今根本的に改める時期に来ているんだ、国家公務員の皆さんの仕事の状況というのはもうそこまで切迫しているんだということを申し上げて、私は質問を終わりたいと思います。
  249. 近岡理一郎

  250. 和田一仁

    和田(一)委員 今回の退職手当法の改正は、通勤による傷病で退職した場合に適用される退職手当の支給率を通勤災害による死亡で退職する率と同様に引き上げようという改正でございますけれども、この点について私は若干お尋ねをしたいと思います。  先ほども同僚議員からの御質問があったのですが、従来死亡と傷病とは分けておられたですね。これを今回は死亡と同じに扱う、同率に扱うということでございますけれども、同じ質問になろうかと思いますが、同率にした理由をできるだけわかりやすくお答えをいただきたいと思います。
  251. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 お答え申し上げます。  通勤災害による傷病退職に適用される支給率は通勤災害による死亡退職の場合に比しまして勤続二十年以上では不利な取り扱いになっておりますが、通勤災害による被災者を保護するという観点から、通勤災害による傷病退職に適用される支給率を通勤災害による死亡退職に適用される支給率と同等の水準に引き上げるというのが今回お願いしている内容の一つでございます。  また、今回人事院実施いたしました民間企業退職金実態調査の結果における民間での取り扱い状況を見ましても、通勤災害による傷病退職の支給率と通勤災害による死亡退職の支給率を同じくするものが民間の場合には多いという結果も出ているわけでございます。  そうした状況から、死傷病を問わず通勤災害による退職に支給される支給率は、今回のそうした民間状況等を踏まえまして改正させていただくということになるわけでございますが、ちなみに申し上げますと、この改正によりまして定年、勧奨等に適用される支給率と同じになるということにもなるわけでございまして、これらも、民間の実態を見ましても同様の取り扱いがなされているということを考慮いたしましてそうした取り扱いをさせていただくということにいたしたいというふうに考えたわけでございます。
  252. 和田一仁

    和田(一)委員 まだよくわからないのですけれども民間の実情を調べたらそうであるから右へ倣えであるということのようなんですね。やめていかれるという方は、死亡の場合はこれはやりたくてもできないわけなんですが、傷病によってやめるというのは、そのために通勤が不可能になったというケースもあるでしょう。 あるいは、通勤はできるんだけれどももう従来業務に従事するような状態でないというようなケースもあると思うし、いやそうではないんだけれども、傷病を受けたんでこの際やめたいというようなケース、いろいろケースは出てくると思うのです。これは当然、同じというのには相当な認定基準というものがあっての考え方かなとも思うのですが、その辺はどうなんでしょうか。
  253. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 若干舌足らずの面があったかと思いますが、通勤による災害によりまして退職するケースというのは、その災害の状況がかなりひどいものと申しますか、重いものであるということが一般的であろうと思います。そういう点を考慮いたしまして、今回死亡退職と同じようにしたい。民間が同じように扱っているケースが多いというのも恐らくそうした面に着目してのことではないか、このように考えている次第でございます。
  254. 和田一仁

    和田(一)委員 そうしますと、そういうケースが今まであったのでしょうか。これが通れば適用になるなというようなケース、そういうものがございましたかどうか、あったとすればどの程度の方がやめられたのか、具体的なことがおわかりだったらば教えていただきたいと思います。
  255. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 総務庁といたしまして、通勤災害により傷病を受け退職した者がどの程度いるかということを常時把握しているわけではございませんが、そのような者が現実にいるということにつきましてはこれまでも承知はしているところでございます。今申し上げましたように、正式に調査したというようなことはございませんが、今回の改正に際しまして、昭和六十二年度から平成元年度までの三年間につきまして各省庁に問い合わせをいたしたわけでございますけれども、その結果、今回の通勤災害に係る改善措置の恩恵を受ける方々が年間若干名は生じてくるということを私どもは推定いたしております。
  256. 和田一仁

    和田(一)委員 もう一つ念のために伺いたいのは、いわゆる通勤災害そのものの定義というか、この法案で適用される通勤災害とは一体どういうものをいいますか。
  257. 石川雅嗣

    ○石川政府委員 通勤災害につきましては、国家公務員の災害補償関係の法令に基づきまして認定がなされるわけでございます。その通勤災害という認定がなされたものにつきまして退職手当法上の通勤災害の取り扱いがなされる、このように私ども考えております。
  258. 和田一仁

    和田(一)委員 それでは、ちょっとほかのことを伺いたいと思います。国家公務員ではないのですけれども、これに関連いたしましてこういう機会にちょっと聞いておきたいと思うのですが、元台湾人日本兵への弔慰金支給ということにつきましてちょっと御質問させていただきたいと思います。  さきの大戦で約二十万の台湾の人が日本兵として南方その他の地域で勤務をいたしました。そして多数の人々が戦没をされ、また、重度の戦傷を受けた方がおるわけですが、こういう人たちに対して国としてどういう対応をするかということが長い間の懸案でありました。しかし、これはもう国際的道義の問題として何とかしなければということで、六十二年にこの委員会で、戦没者に弔慰金あるいは戦傷病者に見舞い金というものを支給しよう、こういうことが相談されまして、台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律というのが本委員会で審議されまして、そして成立をいたしました。そして翌六十三年にその実施のための特定弔慰金等の支給の実施に関する法律ができました。これによって、今申し上げたような方々、戦没者または戦傷病者について二百万円程度の支給をするということになりまして、その手続が進んでおるわけでございます。  これは、たしか六十三年の九月ごろからそういった法律に基づいて実態の把握が始まって、支給業務というものが進んでおると思うのですけれども、この法律を審議した委員会としてそれがどうなっているかも一遍伺いたいなとかねがね思っておりましたので、この機会に、進捗の状況等について御報告をいただきたいと思います。
  259. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 お答えをいたします。  御紹介にございましたように、約二十一万名の動員者の中から相当数の戦死者及び重度の戦傷病者が出現したわけでございます。先生方の御努力で、議員立法で一人当たり二百万円の弔慰金をお支払いするという制度ができまして、去る昭和六十三年の九月から申請を受け付けているところでございます。二月末のデータでございますけれども、既に二万七千二百名の方に弔慰金をお届けいたしております。これだけでも総計五百四十四億円になるわけでございます。  この問題の一番難しいところは何かと申しますと、一つは台湾と日本の間に直接の外交を持っていないということでございまして、政府機関が相互にこの仕事を実施するに当たって、政府取り決めで仕事を進めていくということができなかったために、日本赤十字社と向こう側の対応をいたします台湾紅十字会、この両機関が協力をしてくださいまして、この仕事の実施の実際面の努力をしてくださったわけでございます。そういった意味で、二万七千二百名の弔慰金の支給の権利の裁定というのは日本赤十字社にお願いをして、この関係機関の皆様方の御努力の結果、順調に進展をしているというのが現状でございます。
  260. 和田一仁

    和田(一)委員 当初この法案を審議した際は、予想される対象者という数がたしか三万三千ぐらいというふうに言われていたと思います。今の御報告ですと二万七千二百人余ということのようですが、当初予想していた数になるのかどうか。それとも、実際に業務を扱っていただいている感じからいって、これは時限立法になっておりますけれども、期限内に申請してこられる数は大体どれぐらいの見通しか。  そしてこれは裁定もあると思うのですね。言ってきたものは全部自動的ということではもちろんないと思いますが、裁定の結果却下になったという方がどれぐらいおるか、それもあわせてお尋ねいたします。
  261. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 現在の状況でございますけれども、先ほども申し上げたとおり二万七千二百名の裁定をいたしましたが、我が国のデータではおよそ三万人が亡くなっているということを確認いたしております。それに対しまして、台湾側のデータによりますと三万五千名ぐらいになるのではないかという申し出がございまして、私どもとしては予算上三万五千名を上限にして対応してきたところでございます。そういう数字からいたしますと、我が国のデータでいくと既に九割が終了した、それから向こうの三万五千をベースにいたしますと八割近く処理をしている、こういう事情でございます。  したがいまして、今後の問題としては、残っております未申請者に対してどういう対応をするかということが一つの問題になっておりまして、これは現地の台湾紅十字会が現地新聞に広告を出したりいろいろな努力をいたしております。時限立法でございますので、平成五年三月末で申請権の権利が消滅いたしますが、あと二年の間に、五千プラス二千幾らということでございますので、最大限七千から八千の方々が残っていると考えられますけれども、今の処理能力からいたしますと、この二年間弱で十分処理ができると考えております。  もう一つの問題点は、行政不服審査が出てきていることでございます。  御存じのように台湾のこの申請者に対しましても行政不服審査法を適用いたしておりまして、申請を却下した場合には異議を申し立てることができる旨教示をいたしております。現在既に相当数の却下件数がございまして、そのほとんどが戦傷病者でございます。戦傷病者の症状の軽い方は対象になりませんために却下するということになったわけでございまして、その場合に、さらに異議がございますれば不服申し立てができるということを却下書につけて日赤から送っているところでございます。これも既に数十件につきまして不服審査という形で上がってきております。これは裁定をいたしておりますのが日本赤十字社で、異議の申し立ては総理大臣にということになっておりますので、私どもが直接この不服審査を受けるということでございます。  私どもとしては、先ほども申し上げました第一の問題である未申請者をできるだけ早く救済するということと、それからこの不服審査で上がってきました件数につきましてできるだけ御納得をいただいて御理解をいただくような処理をする、このことで日常の業務に追われている、こういう状況でございます。
  262. 和田一仁

    和田(一)委員 三万五千と三万の対象の違いがありまして、これがいよいよ期限がなくなるころになってどっと出てきて業務上却下件数がふえてくる、それが今言ったような不服審査の方へ回ってくるというようなケースがなければいいと思うのですが、それが一つと、それに付随して、こういうやり方に対する現地でのクレームとか不服とかいうほかの声はお聞きになっておるかどうか、それもついでにお聞かせいただきたいと思います。
  263. 石倉寛治

    ○石倉政府委員 幾つかのクレームがございます。先ほど行政不服審査で出てまいりましたと申し上げました、症状の軽い方まで対象にしてほしいという御要望とか、それから一人当たり二百万円というのが安いではないかという御注文とか、不服審査でも出てまいりますし、苦情処理としても受け付けているもろもろの内容がございます。  しかしながら、この方々につきましてもできるだけ御理解をいただくように御相談には応じ、それから日本赤十字社あるいは台湾紅十字会からも説得をしていただくということで、現地ではそれはほとんど大きな問題になっておりません。現実に申請者からアンケートをとりましたところでは、八、九割の方が、いい制度を実施してもらってありがとうということで御満足をいただいているということでございます。
  264. 和田一仁

    和田(一)委員 ぜひ残った時間できちっとやっていただきたいとお願いをいたしておきます。  国家公務員の処遇全体に関していろいろなことを伺いたいのですけれども、時間がございませんので、一つだけ最後にお尋ねしたいと思います。  労働時間の短縮ということが非常に大事なことになってまいりまして、完全週休二日制を導入しよう、人事院勧告も一日も早くそうしたいということでございますが、そういう中にあって、国家公務員だけがいろいろな格好でなかなかそういう方向に行きにくい。一日も早く行ってもらわないといけませんけれども、その中で、特に病院勤務の看護婦さんを中心にした看護職の人たち、こういった人の勤務実態を伺いますと、これはなかなか大変なことだな、こう思うわけでございます。  人事院は四十年に看護婦さんの行政措置要求に対する判定といたしまして、過重労働であるという意味から夜勤、夜勤は特に看護婦さんの場合は一般の女子とは違った扱いになっておりますけれども、その夜勤を二人以上の勤務で月八回以内という体制を出しております。二・八というのですか。しかし、実情が一体どうなっているのか、とてもこれがそのとおりになっていないのではないかと思うのです。同時に、これは二十何年か前、昭和四十年のときの体制の目標ですね。その後、時短ということはどんどん進んでいるのですが、そういう時代の大きな流れの中で、二十数年前に決めた二・八体制すらまだほど遠いという実態であるとすれば、一体これはどういうふうに対応していこうとされているのか、この点についてぜひひとつ明確な方針をお聞かせいただきたいと思います。
  265. 大城二郎

    ○大城政府委員 病院の看護部門におきます勤務体制については、ただいま御指摘のありましたような判定により、いわゆる二・八の体制を目指して改善を進めてきているわけでございますが、同時に、先生のお話にもございましたように、社会経済情勢の変化の中で公務員についても勤務時間の短縮が大きな課題になってきております。そのため、完全週休二日制の実現を中心にしまして積極的に勤務時間の短縮を進めるという方向に進めてきております。既に四週五休から四週六休へ、勤務時間で申しますと四十四時間から四十二時間へという形で全体の時間短縮が進んできているわけでございますが、その中で病院部門につきましても、今先生のお話のような夜勤体制等も含めて、全体の勤務条件の改善を図る必要が特に強いというふうに私ども理解しております。  そのため、現在週休二日制の推進を図る目的で、交代制等の職員につきまして、いわゆる四十時間制の試行というのを実施いたしまして、完全二日制、四十時間制移行のためのいわゆる条件整備を進めてきているわけでございますが、その中でいわゆる夜勤体制の問題についても、あわせて改善を積極的に進めていくべきものというふうに考えて、その方向に今後とも努力してまいりたいと思います。
  266. 和田一仁

    和田(一)委員 時間になりましたので終わりたいと思いますけれども、要するに看護職の需要と供給の度合いだけでなくて、今看護職をやっている方の仕事の内容もやはり見直しをしていただかないといけないと思う。看護すべき大事な職場の人が事務的な仕事までやって、非常に過重な勤務をやっているというようなケースも見られるような気がいたしますので、やはりきちっとしたその職業、職能に合った体制の中で、今言うような時短が可能になるように、ひとつそういった点も見直して努力していただきたい。御要望申し上げまして終わらせていただきます。
  267. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  268. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  269. 近岡理一郎

    近岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 近岡理一郎

    近岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  271. 近岡理一郎

    近岡委員長 次に、内閣提出行政事務に関する国と地方関係等整理及び合理化に関する法律案議題といたします。  趣旨の説明を求めます。佐々木総務庁長官。     ─────────────  行政事務に関する国と地方関係等整理及び合理化に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  272. 佐々木満

    佐々木国務大臣 ただいま議題となりました行政事務に関する国と地方関係等整理及び合理化に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  国・地方を通じ時代の要請にこたえた行政の制度等の実現を図り、国・地方の信頼関係と分担・協働の関係を確立し、多様で活力に満ちた地域社会を実現するとともに、国、地方の行財政改革を推進していくことは、我が国経済社会の発展にとって不可欠の課題であります。  このため、政府は、国と地方関係の見直しを当面の重要課題の一つとして位置づけ、平成元年十二月の第二次臨時行政改革推進審議会の国と地方関係等に関する答申を最大限に尊重して、その具体的実施方針として閣議決定した国と地方関係等に関する改革推進要綱に基づき、所要の施策を確実に実施に移してきているところであります。その一環として、昨年末の閣議決定平成三年度に講ずべき措置を中心とする行政改革の実施方針について」において、「国から地方への権限委譲、国の関与・必置規制の廃止・緩和等を推進し、改革推進要綱の具体化の推進を図るため関係法律を一括法として取りまとめ、今国会提出するとともに、許可認可等臨時措置法について所要の見直しを行う」旨、決定いたしております。この閣議決定に基づき、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。  第一に、権限委譲に関する事項といたしましては、第二次行革審の答申で指摘された国から地方への権限委譲を実施するため森林法等五法律の一部改正を行うとともに、許可認可等臨時措置法を廃止し、実効性を有している権限委譲の措置について恒久化を図るため民法等十五法律の一部改正を行うこととしております。  第二に、国の関与・必置規制の廃止・緩和等に関する事項といたしましては、第二次行革審の答申で指摘された国の関与の緩和等を図るため学校教育法等十三法律の一部改正を行うこととしております。  これらの措置はいずれも、国から地方への権限委譲等を進め、地方の裁量の余地の拡大や地方行政の総合性の強化を図り、地方公共団体が地域住民の要請に責任を持ってこたえられるよう基盤強化を図るものであり、改革の趣旨、目的に統一性、共通性があることから、三十三法律にわたる改正と一法律廃止とを一括法案として取りまとめたものであります。  なお、これらの改正等は、一部を除き公布の日から施行することといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。  ありがとうございました。
  273. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る十八日木曜日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会