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1991-03-15 第120回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 近岡理一郎君    理事 柿澤 弘治君 理事 斉藤斗志二君    理事 谷垣 禎一君 理事 虎島 和夫君    理事 町村 信孝君 理事 上田 卓三君    理事 田口 健二君 理事 山田 英介君       今津  寛君    衛藤 晟一君       岸田 文武君    高鳥  修君       戸塚 進也君    二田 孝治君       増子 輝彦君    光武  顕君       簗瀬  進君    伊藤 忠治君       北川 昌典君    村山 富市君       山中 邦紀君    山元  勉君       倉田 栄喜君    薮仲 義彦君       三浦  久君    和田 一仁君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総務庁長官) 佐々木 満君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議官    文田 久雄君         内閣総理大臣官         房管理室長   櫻井  溥君         総務庁恩給局長 高島  弘君  委員外出席者         人事院事務総局         公平局長    丹羽清之助君         内閣総理大臣官         房参事官    井上 達夫君         厚生省年金局年         金課長     江利川 毅君         厚生省援護局業         務第一課長   村瀬 松雄君         建設大臣官房調         査官      風岡 典之君         内閣委員会調査         室長      中島  勉君     ───────────── 委員の異動 三月十三日  辞任         補欠選任   和田 一仁君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     和田 一仁君 同月十五日  辞任         補欠選任   今津  寛君     簗瀬  進君   葉梨 信行君     二田 孝治君   竹内 勝彦君     薮仲 義彦君   山口那津男君     倉田 栄喜君 同日  辞任         補欠選任   二田 孝治君     葉梨 信行君   簗瀬  進君     今津  寛君   倉田 栄喜君     山口那津男君   薮仲 義彦君     竹内 勝彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第九号)      ────◇─────
  2. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより会議を開きます。  内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑申し出がありますので、順次これを許します。山中邦紀君。
  3. 山中邦紀

    山中(邦)委員 私は、恩給法等の一部を改正する法律案審議に際して、二点にわたって質問をいたしたいと存じます。  その第一は、旧日本陸軍軍人終戦後も中国山西省残留させられていた方々は、恩給問題に当然関連をするわけであります。この方々の問題についてであります。第二は、元日赤救護看護婦、元陸海軍従軍看護婦の皆さんに対する処遇についての問題であります。  それで、まず山西省残留事件に関してお尋ねをしたいわけでありますけれども、これは概要を申し上げますと、昭和二十年八月当時、北支派遣一軍山西省を中心に所在しておったわけでありますけれども、当時、その地区では閻錫山国府軍側司令官でありますが、その方針、指示に従ってその一部を残留させ、協力をして中共軍戦闘行為などをしてずっと残り、最後にこれまた敗れてしまい、捕虜になり戻ってきた。こういう関係事件がございます。  これに関し、残留をしておった方々は軍の命令によって残った、それから厚生省の方では自願残留現地除隊であるということで、恩給期間の問題、その他いろいろな付加給の問題などが発生をしているわけであります。その前提として、恩給局軍人恩給について、受給申請から裁定に至る手続概要を承りたいと存じます。
  4. 高島弘

    高島(弘)政府委員 旧軍人に係ります恩給請求をする場合には、旧軍人を退職した当時の本籍地都道府県恩給請求書履歴書等請求書類提出することになっております。都道府県では請求書類を整備いたしまして、厚生省を経由して恩給局の方に提出をいただくことになってございます。恩給局におきましては、書類を審査いたしまして、恩給資格の存否とか恩給年額の決定、その他恩給裁定を行うことといたしております。なお、裁定根拠条文としましては恩給法第十二条に、請求手続につきましては十八条ノ二というところに、さらに細かい手続につきましては恩給給与規則及び細則規定をされておるところでございます。
  5. 山中邦紀

    山中(邦)委員 もう一点恩給局に。出願並びに恩給の受領に関して、時効ないし除斥期間の定めがあるものかどうか、また出願が却下された場合に、新たに同じ趣旨資料を整えて再出願はできるようになっておるのか。
  6. 高島弘

    高島(弘)政府委員 恩給局におきます裁定に当たりましては、申請者本属庁において整えられた資料をもとに判断することになるわけでございますが、一たん棄却されたケースについて新たに資料を整理して再申請がございました場合には、時効について宥恕すべき事由があるかどうかという点も含めまして新たに検討いたすことにしております。
  7. 山中邦紀

    山中(邦)委員 一律に時効適用をするということでなしに、前後事情を勘案して、よほどのことがなければ時効適用などはしない、一たん棄却をしても、もう一回丁寧に検討して扱っていただける、こういうことですね。
  8. 高島弘

    高島(弘)政府委員 お答えいたします。  時効の運用につきましては、給与事由が生じました日から七年を経過したときに時効によって消滅するというのが原則でございますが、新たな恩給改善によって生じた恩給については請求がおくれることが多いものでございますから、このようなものについては、時効期間内に請求しなかったことについて宥恕すべき事由があると認められる者につきましては恩給を給することといたしておるところでございます。
  9. 山中邦紀

    山中(邦)委員 確認させてもらいたいのですが、請求棄却された場合の再出願扱い、それに絞って、結論だけをもう一回お答え願いたいと思います。
  10. 高島弘

    高島(弘)政府委員 再提出されました資料を私どもでもう一度新しい目で見るわけでございますが、時効に関しましては、おくれることがもっともであるというようなことがわかりました場合は、その時効適用せずに恩給を給するという措置を講じております。
  11. 山中邦紀

    山中(邦)委員 時効棄却後の再出願は別問題だと思いますが、なるべく本人に有利なような形で扱うという方針であることはわかりました。  それで、以下厚生省にお伺いをしたいわけでありますけれども、ここに「岡村寧次大将資料(上)」というのがございます。当時の支那派遣軍司令官、これが岡村寧次さんでありまして、原書房の出版でありますが、六十五ページに「本人希望により現地除隊した者は、極めて小数ながら各地に在ったのであったが、山西省は特異な大量現地除隊があったのである。」こういう記載があるわけであります。  それで、北支那派遣軍一軍将兵の数、そのうち復員した者及びいわゆる現地除隊として厚生省が扱っておられる者の数を御承知であったら明かしていただきたいと思います。
  12. 村瀬松雄

    村瀬説明員 御説明いたします。  山西軍参加しました軍人軍属の数でありますが、約二千六百名でございます。それに在留邦人が三百五十名でありまして、それを合わせますと二千九百五十名となりまして、このうち帰還いたしました数が二千四百でございます。約五百五十名が現地において死亡された、こういうふうに把握しております。
  13. 山中邦紀

    山中(邦)委員 約というお話なんですけれども、先ほど引用した書物によりますと、第一軍終戦時の将兵は約五万九千、終戦現地除隊者六千六百六十七名という数字があるわけであります。端的に、第一軍終戦所属をしておった将兵厚生省現地除隊者として扱っておられる人数のきちっとしたものがあるのでしょうか、それとも概数にとどまっているのでしょうか。
  14. 村瀬松雄

    村瀬説明員 私ども、ただいま申しましたように、山西軍参加した日本人の数、これは内地帰還をせずに現地に滞在した方の数でございますが、これが二千六百という数を把握しております。
  15. 山中邦紀

    山中(邦)委員 何となくぴんとこないのですけれども、今おっしゃっている山西軍というのは、現地残留をして閻錫山協力をして八路軍と対抗した組織を指して言っているわけであります。それが二千六百、それはそれでよろしいのですが、正確に第一軍所属将兵現地除隊をした者はだれであるか、その総人数は幾らだということは把握しているのですか、いないのですか。
  16. 村瀬松雄

    村瀬説明員 ただいま申しましたように、二千六百名につきましては私ども約把握しております。
  17. 山中邦紀

    山中(邦)委員 現地除隊した者の中で山西軍参加をしなかった者もいたはずだと思われますので、そういう趣旨で聞いているわけでありますけれども、それ以上お話が出ませんから、先へ進みます。  現地除隊認定、これはだれがやって、どこに公の記録があるのですか。
  18. 村瀬松雄

    村瀬説明員 ちょっと聞き漏らしたのですが、現地除隊権限ということでしょうか。
  19. 山中邦紀

    山中(邦)委員 現地除隊に関し厚生省一定認定をしているのだろうと思いますが、それでは、各将兵個人について現地除隊を承認するといいますか発令する、そういう権限はだれが持っておったのか。それから、現地除隊がだれからだれに対していつどこでなされたということは個々掌握をしているのか。それから、現地除隊記録した公の帳簿が所在をするのか。いかがでしょう。
  20. 村瀬松雄

    村瀬説明員 初めに、現地外地部隊召集解除いたしますには、当時二十年九月に定められた帝国陸軍外地部隊復員実施要領細則というのに規定されております。これによりますと、復員通常部隊ごとに実施されることになっておりまして、外地部隊復員は「本土ニ帰還完結スルモノトス」と規定されております。また、このほか、「最高指揮官ハ状況ニ依リ一部部隊現地ニ於テ復員させることができるとも規定されております。したがいまして、復員部隊人事処理に関しましては、通常の場合は部隊本土帰還した直後に除隊処理を行うとされておりますが、「外地在留希望スル者」及び「其ノ他必要ト認ムル者」につきましては現地において除隊することができるという特例が規定されております。したがいまして、最高指揮官現地において除隊できる、こういう規定になっております。
  21. 山中邦紀

    山中(邦)委員 今の細則は第四条を読み上げられたものでありますけれども、おっしゃるとおり、現地最高指揮官の委任を受けたということになりますか、下級に当たる指揮官処理をしたというふうに思われます。その第九条には「復員部隊ノ人員ノ処理ニ関シ特ニムルモノ左如シ」とございまして、その第一項第二号に「外地在留希望スル者」、こういう規定がございます。山西軍に投じた者ほか、特異な現象として目されております第一軍現地除隊のあり方、これを厚生省では、どの条項にはめて現地除隊扱いがなされたか、検討しておられますか。
  22. 村瀬松雄

    村瀬説明員 これは、ただいま御説明いたしましたとおり、現地最高指揮官であります第一軍司令官によりまして、ただいまの規定によりまして現地除隊が行われているということでございます。
  23. 山中邦紀

    山中(邦)委員 どうも靴の下からかいているような気がしますが、その実態、そして各個人ごと現地除隊がいつなされたかということを掌握しておられるのですか。
  24. 村瀬松雄

    村瀬説明員 掌握いたしております。
  25. 山中邦紀

    山中(邦)委員 ようやくレールに乗ってきたのですが、どのようにして掌握をしておられるのですか。そうすれば当然総数も個人名もわかっておられるはずだと思いますが、それはどういう経過を経て認定がなされ、あるいは記録に残っているのですか。
  26. 村瀬松雄

    村瀬説明員 これは、現地部隊現地召集解除いたしましたときに、当然その時点記録をされておりますから、それは内地復員のときに部隊が持ち帰っております。それが厚生省記録されております。
  27. 山中邦紀

    山中(邦)委員 当時のシナ、中国派遣軍復員状況は、主に船ででありましょうが、内地帰還したときにその上陸地において処理をして即日復員扱いをする、こういうことだったようですね。そして、簿冊類はしかるべきルートを経て今厚生省にある、こういうことになるのですか。
  28. 村瀬松雄

    村瀬説明員 正規の、通常復員をされた方は、先ほど申しましたように内地上陸地において復員手続をするわけですが、ただいまの御質問の場合、山西省において現地召集解除、この方は、そこで部隊記録されまして、内地に帰りましてからその旨を記録する、そういう手続でございます。
  29. 山中邦紀

    山中(邦)委員 山西省での現地除隊記録というのは完備しているのでしょうか。厚生省においては、この問題について関係者照会状を発するとかいろいろ調査をして、その上で処理をされたと聞いておりますが、この点はいかがですか。
  30. 村瀬松雄

    村瀬説明員 その問題につきましては、厚生省は既に昭和二十八年から二十九年にかけまして、山西軍参加し、帰還した方々に対しまして十分な調査を行っております。その調査の結果につきましては、昭和三十一年に厚生省から国会に御報告いたしております。
  31. 山中邦紀

    山中(邦)委員 恐らく述べておられるのは「山西軍参加者の行動の概況について」、昭和三十一年二月三日、厚生省引揚援護局帰還調査部書類を指すのだろうと思いますが、結局のところ調査を要したというのは、関係者現地除隊の直接の担当者記録はなかった、その上でいろいろ調べて認定をせざるを得なかった、こういうことになるのでしょう。
  32. 村瀬松雄

    村瀬説明員 直接担当者記録と申しますか、当時軍の人事担当者が行った業務でございますの で、それが持ち帰られておるというわけでございます。
  33. 山中邦紀

    山中(邦)委員 それでは、いずれしかるべきときにそれを拝見したいものだと思いますが、昭和六十三年の四月二十八日の当委員会会議録を見ますと、きょうの説明員村瀬さん、あなたが、「昭和三十八年から現地死亡者につきまして現地除隊扱いを個別に見直しをしているところでございます。」こういうお答えもなさっておられるわけであります。これはどういう経過見直しに至ったのか。そして引き続き「昭和四十八年二月の時点でございますが、二百六十名の死亡者について現地除隊解除しておる」、こういうお答えもあるわけであります。これはいかがでしょうか。
  34. 村瀬松雄

    村瀬説明員 ただいま御質問の件でございますが、現地において死亡された方、残留者で死亡された方、その方について、二百六十名でございますけれども、個別に現地召集解除を取り消しまして、それで御遺族に対する援護を行った、そういうことだと思いますが、それは三十一年─三十三年にかけて国会議論がございまして、死亡者については特に遺族の御心情を踏まえてそういう措置をするということで個々見直しを行っております。
  35. 山中邦紀

    山中(邦)委員 結局、死亡なさった方も負傷をされた方もあるいは中共側に抑留されてある程度の年月を経て帰ってこられた方についても、現地除隊見直しをする余地が十分あるということを示しているのではないかというふうに思います。  そして、現地除隊権限現地の軍隊の最高指揮官だということでありますから、これを厚生省が事後、ちょっと言葉は悪いのですけれども、横合いから出て解除をしているということになりますと、どうも現地除隊のはっきりした経緯が明確でない。昭和三十一年ごろ、先ほどおっしゃった引揚援護局調査などを踏まえてその当時現地除隊扱いをしたのではないのですか。そうして、これは証拠による認定であったわけであります。調査なさったといろいろおっしゃっていますから、さらに新しい証拠が出る、あるいは今までの証拠を比較、検討して矛盾をただすということがあれば解除余地がある、こういうことを示すものだと思いますけれども、どうですか。
  36. 村瀬松雄

    村瀬説明員 これは私ども、先ほど御説明いたしたわけでございますけれども、三十一年に調査の結果を国会に御報告しております。それによりますと、第一軍司令官は、当時全将兵に対しまして内地帰還説得をしましたけれども、あくまでも山西軍参加残留された方々については、先ほど申しました規定適用いたしまして現地召集解除をしたということでございますので、これは先ほどの死亡者に対します現地召集解除というものとは異なると私どもは考えております。これは取り消すことができないということでございます。
  37. 山中邦紀

    山中(邦)委員 だれが現地解除を受理してだれが取り消すのか、解除するのかという問題になってくるわけでありますけれども、三十一年の当時の司令官の発言その他の調査を経て、厚生省が事実上現地除隊という一応の認定をした、こういうことなんでしょう。
  38. 村瀬松雄

    村瀬説明員 先ほど申したのですけれども、これは三十一年から三十三年にかけまして大変国会議論になったところでございます。それで、特に現地死亡者につきましては、遺族の御心情ということを踏まえて現地召集解除を取り消した、こういう措置でございます。
  39. 山中邦紀

    山中(邦)委員 それから、当時調査をしたというのですけれども、どういう人たち対象にどういう調査をなさいましたか。
  40. 村瀬松雄

    村瀬説明員 これは、当時山西省残留いたしました方々対象といたしまして、できるだけ多くの方々に対しまして通信調査あるいは本人に直接厚生省の方に来ていただきまして聞き取り調査、こういうことであります。
  41. 山中邦紀

    山中(邦)委員 その調査の要点は、自願残留あるいは現地除隊、それに関連したものですか。
  42. 村瀬松雄

    村瀬説明員 当然でございますが、やはり一番主となりますところは山西省残留した本人意思でございますね。果たして命令で残ったものなのか、御自分意思で残ったものなのか、その点を重点的に調査しております。
  43. 山中邦紀

    山中(邦)委員 そういう経過に照らしてみても、個別に意思確認の問題は当時から引き続き現在まで残っているのだろうというふうにしか思えないわけであります。だんだん関係者も高齢になってまいりましたが、この問題の時期に山西省で軍におられた方々の団体が全国に二十幾つかございます。今度、そのうち二十四が協議会を結成いたしまして、自分たちが好んで残留をして戦闘に従事し、負傷したというような、そういう言われ方を恥辱と考えて、これをそそぎたい、並びに軍の命令で敗戦後も軍役に服していたという立場で恩給受給についても措置をしてもらいたい、こういう要望を出しているわけであります。  それでその方々の主張は、当時第一軍将兵六万のうち一万を残留させよという閻錫山国府軍第二戦区司令長官受降主官──降状を受ける主官ですね、その要求を澄田第一軍司令官が受け入れて、そして第一軍司令部から各将兵麾下部隊長及び兵団参謀を通じて下達をした、こういうことであります。そしてその際の言い方は、引き揚げ促進のため後衛先兵として一時残留せよ、残留将兵任務遂行の上後日帰還する。これは当時閻錫山が第一軍将兵居留民帰国をおくらせてさっぱり進行しなかったという前提がありまして、この方々引き揚げ促進のためにも残れ、こういうことであります。それから、残留は各将兵祖国復興に貢献する崇高な犠牲的精神の発露であるとか、廃墟と化した祖国に向けて我先に帰還を競い末代に汚名を残すより率先残留して皇国の戦士となれとか、こういう言い方をして、本人の納得しないまま、自願残留の形をとって命令でもって残留させた、こういうことであります。この方々はみずから残留をし、そうして友軍の帰国促進し、居留民方々帰国促進をした、その犠牲として軍のために仕事をした、こういう考え方でおられるわけであります。  ただいままでの課長の話を聞いておりますと、三十一、二年当時、当時の司令官から話も聞いた、それから関係者には個別にいろいろ調査をした、これは結局自願残留命令による残留か、現地除隊として扱うべきかを点検したということであろうと思うわけであります。これについてはその後も関係者から何度か、主にはきょうの説明員のあなたとか関係の部局に陳情が行っていると思いますけれども、なお調査を続けて当時の事情を明らかにするというような計画はございますか。
  44. 村瀬松雄

    村瀬説明員 私ども、先ほどから御説明いたしておりますけれども、今先生がおっしゃいましたように当時一万人ぐらいの残留希望者がありまして、それで、これは私ども承知しておりますのでも、一万人くらいに達しないとほかの部隊復員できない、こういうことで当時残留者がたくさん出たということは承知しておりますが、しかしながら、部隊復員に至るまでの間、これは帰還説得の努力に非常に努めております。それで、帰還の直前まで全将兵に対しまして、基本的には全軍が復員するのだ、こういう方針のもとで説得に努めております。その説得に努めた上でなおかつ残留された、こういうことを私ども承知しております。それでやむなく現地召集解除措置をとった、こういうふうに私ども調査の結果承知しておりますので、今後これに対する再調査は考えておりません。
  45. 山中邦紀

    山中(邦)委員 別に私はここで証拠の評価とかそんなことを言うつもりはないわけでありまして、ただ、調査の上そういう認定をしたということであれば、調査に不足がある、根拠を持って申し出があれば調査をすべきだと私は思います。  きょうは大臣おられませんから、業務一課として今までの方針を弁護をし、今後もその方針である、特段変更しないという課長お話はわかりますけれども、これは理屈とすれば、調査をしないという理屈は立たないと私は思うのですね。当 時、関係者に事実調査をする、場合によっては現地除隊としての認定をするというような予告をしておって調査に入り、その結果、ある者は現地除隊、ある者はそうでないというような振り分けをして一定結論を出し、これを公示をしてそうして異議申し立て期間を設けその機会を与え、そうして確定したという種類の問題ではないわけであります。そうして死亡者については再調査をして現地除隊解除する、こういうこともあるわけでありまして、死亡者のことは非常に重大ではありますけれども、しかし、事柄性質は、死亡者であるから別枠だという議論は立たないというふうに私は思っております。  関係者方々は、一課長態度としては、当時複雑な事情があったと考察されるから、問題点については今後さらに情報を整理して、調査し、検討したいという態度だというふうにお答えをいただいたと思っているようであります。私、そこへ立ち会ったわけではありませんから、それはそれとして、事柄性質上は、少なくとも情報を整理し、調査し、検討すべきものだと私は思っております。  重要な問題点については調査したとおっしゃっていますけれども、ここに一つの事実がございまして、昭和二十一年の三月に、第一軍は一向に麾下将兵帰国促進しないということを懸念をいたしまして、何回か電報で総司令部、総軍の方から照会したけれども、らちが明かないということで、主任参謀宮崎舜市氏が太原に来て実情把握をしたということが明らかにされております。そうして実情を知りまして、第一軍残留協力のために命令を発して一部を残留させているということを知って、これをやめさせた。ところが実行されずにそのまま残ってしまったのは遺憾であるというふうに宮崎さんはおっしゃっているそうであります。少なくとも、こういう方々調査をやるべきであると思います。  また、残留された方々は、兵器係の下士官などから整備のよい武器を渡されて、完全武装のもとに、例えば中隊であれば中隊長に整列して申告をして、歩調をとって集結地に向かった、これらを見ますと、すべて軍の命令のもとに行動がなされたというふうにしか考えられないわけであります。  現在のところ調査の予定がないというふうに言っておられますけれども、ぜひこの辺の実情を検討され、局長、大臣とも相談をされて、もう高齢になっている人たちの訴えに耳を傾けて将来の処理に当たっていただきたいと要望を申し上げておきます。いかがでしょう。
  46. 村瀬松雄

    村瀬説明員 ただいまのお話は、伺っておきます。
  47. 山中邦紀

    山中(邦)委員 今の問題は詳細にわたりますと尽きないところがありますので、次に、旧日赤従軍看護婦それから旧陸海軍従軍看護婦方々の処遇の問題についてお伺いをいたします。  最初に恩給局の方に伺いますけれども軍人恩給関係して、その支給基準といいますか支給金額は毎年改善増額をされておりますか、また、その改定基準はどのようになっておりますか。
  48. 高島弘

    高島(弘)政府委員 恩給年額を毎年改定いたしておりますのは、恩給の実質的価値を維持するためのものでございまして、その改定の基準といたしましては、恩給法二条ノ二に規定がございまして、これに基づきまして前年の公務員給与の改定率、物価の変動、その他の諸事情を総合勘案する方式によりまして最近は引き上げを行っております。
  49. 山中邦紀

    山中(邦)委員 毎年のように引き上げを行っているというふうに承知をいたしております。この数年のアップ率といいますか、これはどのような状況になっておりましょうか。
  50. 高島弘

    高島(弘)政府委員 最近でございますと、昭和六十二年から今の総合勘案方式を行っておりますが、六十二年度が二・〇%、六十三年度が一・二五%、平成元年度が二・〇二%、平成二年度が二・九八%、三年度、今お願いをしておりますのが三・七二%の引き上げでございます。
  51. 山中邦紀

    山中(邦)委員 そこで総理府の方にお尋ねをしますが、昨年度の恩給法の一部改正法案の通過の際には、衆議院の内閣委員会では平成二年の四月二十六日、参議院内閣委員会では同年五月二十九日、附帯決議がつけられております。今の質問関係しましては、「戦地勤務に服した旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の増額について適切な措置をとること。」これは両方とも同文のようでありますが、こういう附帯決議が付せられております。三年度の予算案などにおいてこの附帯決議の趣旨がどのように生かされているのか、いかがでしょうか。
  52. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいまお話がございました旧日本赤十字救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦さんに対します慰労給付金の額の改定の件でございます。これにつきましては、先生御案内のとおり、この制度発足以来、昭和六十年度、それから平成元年度の二度にわたりまして額の改定を行ったわけでございます。先ほど先生御指摘がございました国会の議決もございますので、それにつきましては私どもも十分考慮しておるところでございます。
  53. 山中邦紀

    山中(邦)委員 十分考慮とおっしゃいますが、その内容を明かしていただけませんか。どのように十分でしょう。
  54. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 昭和六十年度の改定におきましては、消費者物価指数の変化を考慮いたしまして一二・三%の改定、それから平成元年度におきましては、同じく消費者物価指数に係る上昇率三・五%を参酌いたしまして所要の改定を行ったところでございます。
  55. 山中邦紀

    山中(邦)委員 これまでの改定の実績をおっしゃったわけですけれども、平成元年度で改定を行って翌年の附帯決議であります。言わんとするところは、軍人恩給の方で毎年改正、増額がなされているのですからその線に倣って毎年改めていってはいかがか、こういうのが附帯決議の趣旨であろうと思います。毎年改正を試みるというようなことはなさっているのでしょうか。
  56. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 先生は、軍人恩給と同じように毎年慰労給付金の額の改定を行うべきだという御意見と承ったわけでございますが、御案内のとおり、慰労給付金そのものの性格は、いわゆる年金的な性格を持っております恩給とは異にいたしておりまして、まさに制度発足の当初から言われておりますように、長い間、女性の身でありながら戦地あるいは事変地におきまして戦時衛生勤務に従事し、なお、それが終わりました後におきましてもその地におきまして長期間にわたりまして抑留あるいは留用されたその労苦、この労苦に報いるためのいわゆる慰労給付金ということでこの制度が発足いたしたわけでございます。  そういうことからいたしまして、繰り返しになりまして恐縮でございますが、年金的な性格を有する恩給とはおのずとその性格を異にしておる、ただし、長期間にわたりまして余りにもその実勢的な価値が維持されなくなった場合には、ある程度の許容される範囲内におきましての額の改定というのはあってしかるべしではないだろうかということがございまして、先ほど御説明申し上げましたように、二度にわたりまして額の改定を行ったということでございます。  結論から申し上げて、大変趣旨に沿わないかもしれませんけれども、毎年の改定ということは私どもとらないところでございます。御理解いただきたいと思います。
  57. 山中邦紀

    山中(邦)委員 恩給とその趣旨が違うということはわかりますけれども、しかし恩給法も戦前の官吏というのと戦後の扱いはまた違ったところがあろうと思います。この慰労金制度ができる前段階では、恩給法適用、準用あるいは特例という形で考えようかという立法論もあったように聞いております。違うことは違うでやむを得ないかもしれませんが、その扱いについては、違うからといってただいまの結論にすぐなるかというと、これは速断に過ぎるのではないかと思います。  それでは、今のお答えに従って将来どういう方針で改定をしていくことになるのでしょうか。余 りに実勢にそぐわないときには、その矛盾が著しいときには改定をする、こういうことになりますか。これはどうも附帯決議の趣旨には沿わないと思いますが、何らかの基準を持っているのでしょうか。
  58. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 この制度が発足して以来、二度にわたりまして改定を行ったことは、るる先ほど来申し上げておるところでございます。その趣旨を考えまして、今後の対応の参考にしたい。これにつきましては、一定のルールを設けて額の改定等について対応すべきじゃないかという御指摘でございますが、現在のところは、過去の経緯を十分尊重しながら対応していくということに答えはとどまるところでございます。御了承いただきたいと思います。
  59. 山中邦紀

    山中(邦)委員 そういうことであればもう少しお聞きをしたいのでありますけれども、その基準になった五十四年、これは日赤関係でしょうか、それから五十六年、これは旧陸海軍従軍看護婦さんの場合でしょうか、この数字を物価指数によって変動させているわけでありますが、もともとの数、額は何を基準にして決められたものですか。
  60. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 制度発足当初の慰労給付金の額の算定の根拠でございますが、これは軍人恩給の兵に準ずる金額で、実勤務期間に戦地加算を加え、それが十二年以上、それから五十五歳以上の方を支給開始年齢とする等のこの仕組みにつきましては、軍人恩給の例を準用いたしたわけでございます。  ただ、額につきましては、先生御案内のとおり、恩給とはおのずとその性格を異にしているわけでございますので、恩給法で定められておりますところの特例措置であるいわゆる最低保障額、こういうものは入れないということで、この慰労給付金の当初の額の算定がそのように定められて、現在この制度は定着しておるというふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  61. 山中邦紀

    山中(邦)委員 慰労金給付の制度的な定着ということはあろうかと思いますが、その内容については必ずしも定着をしていないというふうに思います。この措置がとられる前段階では、昭和五十三年八月三日に、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、新自由クラブ、それぞれの党の代表者が組織をした懇談会で一定の合意を見ていることは御承知だと思います。その実施ということでこの制度が発足をしております。その中に「恩給制度を準用し、戦地加算を考慮して、兵に準ずる処遇とする。」こういう記載があります。現在でもこの考えによって運用しているのですか。
  62. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 ただいま先生がおっしゃいました六党合意の内容に即して答弁を申し上げますと、その「準ずる」という解釈でございます。私どもは、その制度の仕組みに準じたということでございまして、具体的には実勤務期間に加算年を加えた年数が十二年以上であること、あるいはまた、戦地または事変地の区域の範囲内であること、さらには支給開始年齢を五十五歳としておること等々の仕組みにつきましては恩給法の仕組みを準用する。額につきましては、先ほどの答弁と重複いたすわけでございますけれども、最低保障額というものは、これはまさに恩給法趣旨からスタートされた恩給というものとは別な制度として発足させなければならなかった、あるいはさせなければならなかったと申しますよりか、これは別の体系のものであるということで額は算定させていただいたということでございます。
  63. 山中邦紀

    山中(邦)委員 専ら金額の点で趣旨が違うということで終始して答弁をしておられますけれども、それならば何を基準に金額を定めるのかという点の考え方がなければならないと思います。  五十三年当時の構想は、皆さん一致をして、なるほど制度は違うかもしれませんが、できるだけ「恩給制度を準用し、」ということだった。ですから、制度的には「恩給制度を準用し、」というところで考え方が示されているわけであります。それから「戦地加算を考慮して、」というのは、これは関係した皆さんのいろいろな御苦労、戦地で仕事に当たられ、あるいは抑留をされるというようなことも考えてというのがここにあらわれているというふうに思います。「兵に準ずる処遇」というのは、これはいろいろなバリエーション、バラエティーがあるのでしょうけれども、一番低い給付額で我慢してください、こういうことを示しておったのだというふうに私は思います。当時の関係者の皆さんもそう思っておったのではないかというふうに思います。ただ、現在の運用がそうでない、別の考え方があるというならそれまでのことでありますけれども、しかしながら、事情が許せば改善をして悪いことは一つもないわけでありまして、この辺は、室長が今までの処理方針前提にいろいろおっしゃることはわかりますけれども、官房長官などとよく相談をされて善処を求めたいと要望をいたします。  それで、看護婦さん方のいろいろな要望事項がございますけれども、ただいまのお話では金額の増額その他については管理室の段階では考えていないということですから、ただいまの要望にとどめるしかあなたのお答えとすればないとは思いますが、受給なさっておられる方々は兵の処遇ということを頼りに数字の比較をしておられます。これはいろいろな条件のもとに比較をしなければいけないわけでありますが、平成二年五月十六日調べでは一対一・七あるいは一対四・〇、大きいところでは四倍からの差がある、こういうことであります。当初金額に特段の根拠がなければこれは実情に応じて改定を考えるということは大いにあってもいいのではないか。要望を申し上げておきますが、よく検討していただきたい、いかがですか。
  64. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 要望として承っておきたいと思います。
  65. 山中邦紀

    山中(邦)委員 それから関係の方が請願書を用意しておられまして、その中に、現在、台湾、朝鮮に勤務した期間が除外されている、これを加算の要素に入れてほしい、こういう要望がございます。このことによって条件が緩和されるといいますか、よくなる方は、人数はそう多くはないようでありますが、軍人の場合には台湾、朝鮮はどうなっておりますか、また、慰労給付金の関係でこの問題を考慮する方で考えてもらえるかどうか、いかがでしょう。
  66. 櫻井溥

    ○櫻井政府委員 先ほどお答えいたしましたように、慰労給付金の対象となります看護婦さんの勤務地は戦地または事変地ということでございまして、恩給法適用と全く同じような扱いとなっておるわけでございます。
  67. 山中邦紀

    山中(邦)委員 「恩給制度を準用し、」あるいは「兵に準ずる処遇とする。」ということから考えますと、この請願項目は必ずしも無理でないわけでありまして、在勤加算として恩給法では一月につき半月に見るというのが台湾、朝鮮、関東州と扱われておりますので、これも要望事項として検討していただくように要請しておきます。  この給付金をお受けになる皆さん、だんだん高齢になっておられます。何年か置きに物価指数で追いつき追いつきということでありましょうけれども恩給法との関係から言えば、仮に物価指数であっても毎年改めて悪いことは一つもないわけであります。一年一年が非常に貴重な年齢に達しておられる皆さん、中には生活保護を受けられ、あるいは老人ホームに入って苦闘しておられる方々もおられるわけであります。単に恩恵的な給付金ということだけではなしに、その方々の生活の基盤といいますか、過去の社会、国家に尽くした功績に対するはなむけといいますか、生活の張りというような意味合いがあるわけでありますから、附帯決議が毎年出ても変えるのは何年かに一遍、その間は、十分考慮をしていると言いながら、実際は具体的な措置がとられない、こういうことでないように、ぜひ室長もそれから関係の皆さんも検討をして改善に努めていただきたい、このように要望を申し上げます。  以上で終わります。
  68. 近岡理一郎

    近岡委員長 北川昌典君。
  69. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 おはようございます。  私は、ただいま議題となっております恩給法の一部を改正する法律案についてお伺い申し上げたいと思います。  現在、厚生年金とか国民年金、共済年金、こういった年金制度が充実いたしております中で、長い歴史を持つ恩給制度、この恩給の意義と性格についてお伺いしておきたいと思います。
  70. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 この恩給の意義、性格ということでございますが、一言で申し上げさせていただくならば、この恩給というのは、官吏、旧軍人等の公務員に関しますところの国家補償的性格を有する給付、年金、私はそういうふうに理解をいたしております。  つまり、これは先生御承知のとおりでありますが、こうした公務員が相当年限忠実に勤務をして退職をした、あるいは公務による傷病のため退職した、あるいは公務のために死亡した、こういう場合におきまして、国がその公務員との間の特別な関係、特別権力関係とでも申しますか、そういう特殊な関係に基づいて使用者として給付をする、そしてそれは生活の支えとなるべきもの、こういうふうに恩給の性格を理解いたしておりまして、いわゆる社会保険とか公的年金、そういうものとは考え方、また仕組みを異にするものである、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。
  71. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 次に進みたいと思います。  平成七年には公的年金が一元化される、こういう方針のようでございますけれども、そういうふうに伺っておりますが、その際に、恩給制度はどういう形でこの中に組み入れられていくのか、そこあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  72. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 今、国全体の所得保障と申しますか、そういう中にありまして、年金という部分に着目をいたしてみますと、恩給で支給されるものも年金であり、老後の支えとなるべきもの、こういう性格でございますから、その面では共通するものがないわけではないと私は思います。もちろん、いわゆる公的年金と恩給、こういうものがバランスをとることができるかどうか。できる部面についてバランスをとることは結構だと思いますけれども、本来違いますから、バランスがとれないものはとれなくて構わない、私はこう思っておるわけでございます。しかし、年金という面から見るとそういう感じがございますけれども、先ほども申しましたとおり、根本的な制度をつくる考え方、したがって、仕組みが違うということでございますから、公的年金一元化、御指摘のように平成七年というものに向けて今進みつつございますし、また、これからも進んでいくと思いますが、そういうものには本来基本的にはなじまないもの、私はこう思っておるわけでございます。  繰り返しになりますけれども、こちらの方は特別な国との間の関係に基づく国家補償的性格のものだ、他方、公的年金の方は、相互扶助の精神に基づいて一定の掛金を納めて、そしていわゆる保険数理でもって運営されるべきものでございますから、全くこれを一緒くたにするということはなじまない、私はこういうふうに考えておる次第でございます。
  73. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 公的年金一元化になりますと、恩給制度そのものは、目的は一緒であっても性格は違うということで、今の内容からいきますと、自然消滅というと語弊がありますけれども、いずれ歴史的な過程を踏みながら恩給制度そのものはなくなって将来は一元化の中での社会保障制度というものが確立されていく、こういう考え方で一元化を考えておられるのか、そこあたりをお聞かせいただきたい。
  74. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 これは、恩給制度が仕組まれました先ほど来申し上げております考え方がございますし、その考え方に基づく仕組みがあって、そのもとで運営されておるわけでございますから、そういう基本的な事由がなくなれば、それはまたその時点で一般的な社会保障と申しますか、そういう形の中で処理されるべきものだというふうに思いますが、そういう制度を仕組んだ仕組みの中で運営が続けられておる、対象者もおられる、そういう限りはこの制度を継続していくべきものである、こういうふうに私は理解をいたしております。
  75. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 次に、恩給の改定方式でございますけれども、これまで何回か変遷を繰り返しておるわけでございますが、特に公務員給与追随方式から消費水準及び物価方式に、さらに恩給審議会方式、こういう形で変遷をしながら、さらに給与スライド方式、給与回帰分析方式、こういう変遷が続けられておるわけです。現在とられておる総合勘案方式は、言うならば公務員給与の改定、さらには消費者物価の変動等を考慮した改正方式のようでございますけれども、この特徴は具体的にどのようなものでございましょうか。
  76. 高島弘

    高島(弘)政府委員 先生から今お話がありましたように、恩給の場合は過去幾つかの改定指標を変えてきたわけでございます。最近、六十二年からは、総合勘案方式と申しまして、公務員給与の改善、それに物価の変動、その他の諸事情を総合的に勘案して改定をしていくという方式をとっておるわけでございますが、なぜこういう形に従来のものから変わってきたかといいますと、これは昭和六十一年に公的年金が一元化に向けまして大改革を行っております。その際には、基礎年金の導入とか、恩給と同じような形で引き上げられてきた共済年金も、公務員給与スライドから物価スライドへ変わるというような非常に大きい改革がございまして、その公的年金とのバランスで私ども恩給についても見直しをするようにという御指摘を臨調、行革審等から数回にわたっていただいたところでございます。それを私どもも尊重いたしまして、どういう点が公的年金と比較ができるかということでいろいろ検討いたしました結果、基本的な枠組みは、先ほど大臣からお答えいたしましたように、公的年金とはかなり性格を異にしておりますので、基礎年金導入というような制度の根幹にかかわりますような改革は行うべきではない、しかし、年金としての性格といいますか、スライド面においてはこれとのバランスを図る必要があるだろうということで、現在のような形にいたしたわけでございます。
  77. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 わかりました。  次に、今回提案されております改善の概要についてお聞かせいただきたいと思います。
  78. 高島弘

    高島(弘)政府委員 平成三年度におきます恩給改善措置は、今回の法案でお願いをしておるわけでございます。  第一番目は、最近の経済情勢等諸般の事情を総合勘案しまして、本年四月から恩給年額及び各種恩給の最低保障額を三・七二%増額をすることでございます。  第二番目には、普通扶助料受給者に支給されます寡婦加算がございますが、これにつきまして他の公的年金における寡婦加算の額との均衡を図るために、本年四月からその年額を十三万五千円に引き上げるということでございます。  第三番目は、遺族加算についてでございますが、戦没者遺族等に対する処遇の改善のため、本年四月から、公務関係扶助料の受給者につきましては年額十一万四千七百円に、傷病者遺族特別年金の受給者に支給されるものに関しましては年額六万八千三百円にそれぞれ引き上げることといたしております。
  79. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今回の改正率は三・七二%となっているようでございますけれども、昨年の公務員給与の改善率が三・八五、物価上昇率が三・二、三・一ですか、こういうことのようでございますけれども、こうした三・七二の改善率の根拠というのはどうなっておるのでしょう。
  80. 高島弘

    高島(弘)政府委員 平成三年度の恩給改善に当たって、恩給は国家補償的性格を有するものであるというこの特殊性を考慮しまして、恩給年額の実質的維持を図るという観点から、本年四月から三・七二%改定をいたしたいと考えておるわけでございますが、この三・七二%の算定の根拠につきましては、一つは公務員給与の改定率、これは行政職俸給表(一)の平均改定率でございますが、これが三・八五%。消費者物価指数の上昇は、予算 編成時の見込みでございますが、三・二%でございました。こういったような数字その他の事情を総合的に勘案いたしまして先ほどの三・七二という数字が出てきたわけでございます。  公務員給与の改定率につきましては、先生言われましたように、一般には官民較差率といいますか、三・六七の数字が新聞等では出ておるわけでございますが、私どもが改定に使っております公務員給与の改定率というのは、従来から行政職俸給表(一)の平均改定率を採用しておるところでございます。昨年の行政職俸給表の平均改定率が三・八五でございましたので、先ほど言いました官民較差三・六七を上回るような三・七二%の改定になったという事情でございます。
  81. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 現在の恩給額を見てみますと、かなり上厚下薄の感を強くいたします。軍人恩給の旧軍人の仮定俸給年額を見てみましても、階級によるかなりの格差が出ているわけでございますけれども、これをさらに一律アップ方式でいきますと、もとが小さい方はそう上がらない、大きい方は大きく上がるということで一層格差が拡大すると思うのです。こうした面から考えますとき、やはり下の方の底上げを考える必要があるのではないかと思うのですけれども、言うならば格差をできるだけ縮小をしていくという考え方はないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  82. 高島弘

    高島(弘)政府委員 恩給の改定に当たりましては、その改善の指標として何をとるかということは、従来からそのときどきの経済社会事情等を勘案しながら最も適切な指標を採用してまいったわけでございます。現在の状況下では、先ほどからご質問に出ておりますような総合勘案方式によりまして恩給の実質的価値の維持を図ることが最も適切と考えておるところでございます。  ところで、平成三年度の恩給年額の改定は、先ほど説明をいたしましたように、総合勘案ということで三・七二%の一律の改定にはなってございますが、これは従来からのベースアップに昭和五十年代ずっと回帰分析方式というものを取り入れまして、先生が御指摘になるような下に厚い改定をずっと十年ばかり続けてまいったわけでございます。そういったことによりまして、一つは上下の格差がかなり縮まってきた、もう一点は低額恩給の改善という観点で最低保障制度を導入してございますので、これによってまたさらに低い方を引き上げるという措置をとってきたところでございます。その結果、上下間の格差がかなり縮小されてまいりましたので、さらに現在受給者の相当部分が最低保障制度の対象者になっているということ等を考えまして、今回は一律の増額改定をさせていただいたわけでございます。今後とも一律アップ方式を続けていくかどうかということは、社会経済情勢の推移とか公務員給与の改定の傾向をよく見守りながら検討してまいりたいと考えております。
  83. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 格差が多い方が七倍、また六・五倍という形でかなり開きがあるわけでございまして、やはり恩給とはいえ、それぞれの方々の老後の生活保障の面もあるわけでございますから、そういった面で将来的にはこの格差をできるだけ縮小するような改善策をとっていただくように要望しておきたいと思うところでございます。  さらに寡婦加算、それから遺族加算の改正が昨年に続いて四月実施となっておりますけれども、従前は七月とか、いろいろおくれての実施となっておりましたが、ここ二、三年は四月実施ということでございますので、言うならばこの四月実施が将来的にも続いていく、定着していくと理解していいのかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  84. 高島弘

    高島(弘)政府委員 恩給の改善の実施時期につきましては、従来は、限られた財源の中でできる限りの改善を行うために、ベースアップ以外の改善については実施時期をやむを得ずおくらせた時期もございましたが、幸い今年度は、昨年に続いて四月から改善させていただくことになっておるわけでございます。私どもといたしましては、今後におきましても、できる限り四月実施ということで努力してまいりたいと思っておりますが、具体的な取り扱いにつきましては、かなり厳しい財政事情もございますので、平成四年度の予算編成の際に改めてまた検討してまいりたい、かように考えてございます。
  85. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 次に、こうした恩給額の引き上げが今審議されておる状況を見ながら、恩給受給者は一つの希望といいますか大変喜びを持って見守っておられるわけでございますけれども、その一方では、みずからが非常にむなしさを覚えながら、また無念さを覚えながら、国の冷淡な処遇に対する憤り、怒り、ふんまんやる方ない気持ちでこの恩給引き上げについて見守っておられる方々もいらっしゃるわけでございます。この数が三百万とも四百万とも言われておりますけれども、こうした人々はだれかといいますと、かつて、お国のためにということで二銭のはがきで召集され、仕事をやめてといいますかやめざるを得なくなり、家族を残して、さらに自分の青春を捨てて兵役に従事させられた方々、また徴用された軍属の方々でございます。  その元軍人軍属のうち恩給受給権を得ていない方々、あるいは復員後勤めたけれども、国家公務員や地方公務員、いわゆる公務員の職についた人たちは共済年金に通算されるが、国民年金、厚生年金関係適用者の方々軍人恩給の欠格者の方々がおられるわけでございます。こういった方々がこの恩給額の引き上げのたびに大変むなしい思いでおられるわけですが、総務庁長官、これらの人々の心情についてどう認識されておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  86. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 私も田舎でいわゆる恩欠者の皆さんからよくお話も伺いますし、私も大変懇意に願っておりまして、いろいろ事情はよくわかります。  おっしゃいましたとおり、ああいう戦争のさなかに身命を賭して国家のために奉公され、その間にこうむりました精神的その他もろもろの被害と申しますか苦しみというのは、恩給受給者と何ら違うものではないだろうというふうに私はかねがね思っておるわけでありまして、何らかの形で国家としてのお報いをすることを考えなくてはならないと思っておるわけでございます。  しかし、恩給ということになってまいりますと、これにはやはり仕組みというのがあるわけであります。それは勤務年数、年限というものがございましょうし、それには加算とかいろいろなこともございますけれども、当初から制度を仕組むときの約束事みたいなものがあるわけであります。それを崩すということはいろいろな問題が出てまいりまして、またそれなりの問題が多い、こういうことだろうと思うわけでありまして、そのお気持ちはわかりますが、恩給の仕組みの中で対応するということは大変難しい。それなればこそ、先般来発足しております平和祈念事業、慰藉事業、こういう形でやらざるを得ないのではないだろうか。  こういうことで、私は、そういう恩欠者の皆さんのお気持ちがわかりますだけに、本当に気持ちの面で同情を禁じ得ないものがございますし、いつもそう思っておるわけですけれども、国の恩給の仕組み上はやむを得ない、こう申さざるを得ないのではないかと思っておる次第でございます。
  87. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今長官がおっしゃった平和祈念基金、平和祈念事業がこの恩欠者に対する補償という面での事業であるとは私は必ずしも見ておりません。この点については、後ほどまたいろいろとお伺いいたしたいと思います。  今おっしゃったような形で、政府は六十三年に戦後処理の一環として平和祈念事業特別基金を設けたわけでございますが、設立当初、その運営資金としては資本金十億円ということで出発しておるようでございます。さらに、六十三年から五年間をめどとして二百億円を積み立てていくということが決められておるようでございますけれども、今日、この基金の資本金の積み立て状況はどうなっておるのか、また、この基金の事業の収支内容、収支状況はどうなっておるのか、お聞かせ いただきたいと思います。
  88. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生お尋ねの基金の積み立ての状況でございますけれども、ただいまお示しがございましたように、昭和六十三年度十億円、平成元年度二十五億円、平成二年度六十五億円を出資いたしておりまして、現在までに百億円の基金が造成されております。なお、平成三年度においては五十億円の出資をただいま御審議いただいております予算案に計上しておりまして、これが成立いたしますれば、平成三年度末までに百五十億円の基金が造成されることに相なります。  もう一つ、基金設立後現在までの事業の執行状況いかんというお尋ねでございますが、平和祈念事業特別基金におきましては、昭和六十三年七月に設立されて以来、恩給欠格者、戦後強制抑留者、引揚者を中心とする、いわゆる戦後処理問題関係者のさきの大戦に伴う御労苦について国民の御理解を深めること等によりまして、関係者に対し慰藉の念を示す事業及び戦後強制抑留者に対する慰労品の贈呈等の事業を鋭意実施しているところでございます。  基金の決算ベースの支出額は、昭和六十三年度約十九億九千百万円でございます。平成元年度は約五十億一千二百万円となっております。  なお、出資金につきましては収入支出外、かようにされておりまして決算額に含まれてはおりませんが、六十三年度十億円、元年度二十五億円と予算どおりに出資されているところでございます。
  89. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 決算状況については、後ほどでも結構ですが、資料をいただけますか。
  90. 文田久雄

    ○文田政府委員 かしこまりました。
  91. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 そこで、その後、平成二年度でございましたか、この基金にあと二百億追加をして四百億円にする、こういうことが決められたようでございますけれども、現在積み立てが百五十億ですね。六十三年の当時からいきますと、五年後といいますと来年平成四年には五年になるわけですけれども、四百億積み立てる考え方からすれば、今平成三年で百五十億、こうなりますと、あと二百五十億ということになるわけです。これは来年度に二百五十億ちゃんと約束ができておるものなんですか、そこらあたりはどうなんですか。
  92. 文田久雄

    ○文田政府委員 先生ただいまお示しの基金の出資額につきましては、平成二年度の予算編成に際しまして、現行二百億円から四百億円に拡大することということが政府と党の合意として方針が定められたものでございます。これは今後の事業の拡大、基金の進捗状況等々にかんがみまして措置されたものでございまして、私どもとしましては、平成四年度に二百億円の造成が完成いたしましたならば、さらにこの二百億円が着実に造成されまするように努めてまいる、かように考えております。
  93. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 六十三年に発足したときには二百億ということで進んだわけですね。その後一年余を経て四百億にということが決まったわけですね。そうなりますと、途中で二百億の倍の増額の出資が決まったということは、それなりの計画変更といいますか、新しい計画というものが生まれてこなければならないと思うのですけれども、そこらあたり事業の変更はどのようなことになっておるのですか。
  94. 文田久雄

    ○文田政府委員 二百億円が当初ありまして、法の附則三条で二百億円を五年度をかけて積み立てる。さらに二百億円をその二百億円の造成後に積み立てる。かように相なりましたのは、特別基金事業が開始された後におきまして、恩給欠格者に対します書状・銀杯贈呈事業が新たに開始されましたこと、さらに加えまして平成二年度から新規慰藉事業にも着手するということにされましたこと等を総合的に勘案しまして、今後における事業を円滑に処理することができるよう、こういうような方針を立てたものでございまして、あくまでも現行計画の円滑な処理を目的とした、かようの趣旨において二百億円のさらなる造成、こういうふうに理解をいたしております。
  95. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 慰藉事業を進めていく上においては少なくともこの四百億ではなかなか不足するだろう。先ほど申しました恩欠者の慰藉についてもできるだけ早く完了していかなければならない問題でもございますし、そう思うのですけれども、今後さらにこの資金については増額されるものか、あるいはする必要があるとお考えなのか、そこらあたりをお聞かせください。
  96. 文田久雄

    ○文田政府委員 二百億円というのは大変な金額だと存じます。また基金法において、その着実な積み立て方につきまして、法附則三条において規定されております。  先ほど申し上げましたように、この事業の円滑な執行、一日も早い交付が行われる、こういう目的でその二百億が積み立てられておりますので、私どもといたしましては、まず平成四年度におきましては今年度の五十億、残り五十億に相なりますので、これの二百億円を法に基づきまして造成する、その後さらに、このプラス二百億円につきましても着実な造成に努めてまいりたい、かように考えております。
  97. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今の恩欠者に対する慰藉事業として進められております書状、銀杯の贈呈、さらに今度新規事業として行われますいろいろな四つか五つかの事業がございますね、こういう事業を進められるに当たってのいわゆる恩欠の対象人員は何人いらっしゃるのか。さらに、三年以上ということになっておるようでございますが、三年以上でなくても、やはり徴兵されて、そして軍歴を持っておられて、年金に通算されてない方々全部含めますと、その方たちは何名いらっしゃるのか、お聞かせいただきたい。
  98. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答えを申し上げます。  平和祈念事業特別基金が昭和六十三年度から平成元年度にかけて行いました恩給欠格者に係る基礎調査の結果によりますと、平成元年十月現在のいわゆる恩給欠格者の総数は約二百五十三万人でございます。このうち外地等勤務の経験を有し、かつ、加算年を含む在職年三年以上の方は約百二十五万人というふうに推定されます。これから、基金法に基づく書状、銀杯及び慰労金の贈呈対象といたしておりますシベリア抑留経験者の数が推定約十七万人と見込まれまして、これを差し引いたのが現行の事業対象者としての百八万人というふうに推定をいたしております。
  99. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 今の基金法からいくならば百八万人が対象になる、こういうことのようでございますが、この百八万人に対してのこれまでの事業の推進状況はどうなっているのか。本人からの申請がありますね。そして、それに対して認定をする、さらにはまた、それによって決定をして贈呈をされると思うのですけれども、この作業の進捗状況はどうなっているのか、現に書状等が贈呈された方たちはどうなっているのか、そこを具体的にお教えいただきたいと思います。
  100. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  まず、恩給欠格者に対します書状・銀杯贈呈事業の申請から、受け付け、贈呈までの事務処理の流れについて御説明を申し上げたいと存じます。  これは、対象者の方から基金に送付される請求書の受け付け、整理というのがまず第一段階でございまして、資格要件の確認、調査を次に行います。さらに、その贈呈者の決定及びこれらの方に対する通知という行為を行いまして、次には書状に係る贈呈者氏名等の揮毫や銀杯の作成、そして書状、銀杯のこん包、発送、こういう各段階を経まして、請求者に対しまして書状、銀杯が贈呈される、こういう流れに相なっております。  それで、お尋ねの実施状況でありますが、この基金において、平成元年九月から請求受け付けを開始して以来、本年の一月末までの間に約二十三万七千件を受け付けております。これについては、資格要件等必要な確認を行った上で、書状約六万三千件、書状と銀杯をあわせた方に対しましては五万件、合計十一万三千件、これを贈呈しておるところでございます。
  101. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 大体三年間といいましても六十三年は途中でございましたから、当然減っていく と思うのですけれども、それにしても、現在までの十一万三千というのは百八万に対しては大変進捗状況が悪いのですね。将来的には、あと何年ぐらいで慰藉事業としてこうした欠格者の皆さん方にこれを全部お渡しするという御計画ですか。
  102. 文田久雄

    ○文田政府委員 先ほど申し上げましたとおり、本年の一月末までに基金に寄せられました請求は二十三万七千件でございますが、平成三年度におきましては累計で二十五万四千件に贈呈することを予定しておりまして、現在までに請求のあった方々につきましては、まず資格要件等に関し必要な確認を行った上で、すべて贈呈することができるものと考えております。  将来の見通しでございますが、これは今後の請求の状況をどれほど見込むかということにかかるわけでございますけれども、なお今後の申請の状況等の推移も見定めないと、しかとこれぐらいであろうというふうにはなかなか申しがたいところでございます。
  103. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 申請が平成三年現在で二十五万ということで、単純に算術計算でいきますと、百八万に対して三年間で二十五万でございますから、どうなりますかね、十二、三年かかる勘定になるわけなんですけれども、今、この基金に基づく慰藉事業の対象になる方は大体七十以上の方で、八十を超された方もたくさんいると思うのです。そこの年齢構成はどのようになっているのか、ここらあたりが私たち非常に心配なものですから、お聞きしておきたいと思います。
  104. 井上達夫

    ○井上説明員 百八万人の年齢構成でございますが、急な御質問でございますので正確な数字はただいまお持ちしてございませんが、平成元年に行いました基礎調査の状態で考えまして、大体七十を真ん中にいたしまして半々という状況でございました。したがいまして、それから二年ばかりたっておりますので、現在では七十以上の方の方が多くなっているという実情であろうかと思います。
  105. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 本当は百八万を消化するには長い年月を要するわけですから、これをできるだけ早く皆さんに贈呈できるように、短縮をする努力をしてもらわなければならないと思いますけれども、特に高齢化しておって、今のお話でも平均七十一か二、こういうことでございますから、大変だと思うのです。ちょっとお聞きしますと、書状、銀盃が贈られて、それを受け取った方々がさらに新規事業の決定通知を受け取られた、そのときには既にその方はお亡くなりになっておる、こういう状態が起きますし、この前も、あるお年寄りとお会いしましたら、私たちは書状、銀盃をもらったら二、三日うちに死ぬかもしれぬ、できるだけ早くしてもらわないと、せっかくの事業としてやるなら、いつまでも待つ身はつらい、こうおっしゃっておったわけですけれども、そういう面で本当に急がなければならないわけですね。これが進まない理由は幾つかあるかと思いますけれども、どういうことなんでしょう。
  106. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  この事業を開始いたしまして、昭和六十三年から行いましたが、当初はその資格要件の確認等事務的な体制の整備、それからまた、非常にたくさんの方々請求がどっと参りました、こういうこともありまして、これの事務処理については大変御迷惑をかけた、こういうこともございました。  平成元年度、二年度と経過してまいりまして、予算的な措置も平成二年度におきましてはしかるべき措置をし、またあわせて、平成三年度におきましては、書状につきましては五万件、それから書状プラス銀盃につきましては七万件の処理をする、こういうふうな努力を重ねております。  先ほど先生、相当年月がかかるであろう、こういう御指摘でございました。私たちも、事業規模の中でも恩給欠格者に対する予算措置として大変な金額を充当いたしておりまして、先ほど申しましたように、どれほどの申請があるかということにかかるかと思うのですが、おおよそどれを例にとってみていいのかというのは非常に難しいところなんですが、かつて恩給法措置されました五十三年の断続一時金、この例で、大体四割かと存じております。受給対象者が約百万でありますけれども、その百万の仮に四割と見ますと約四十万、それで、これまでの措置量というのが五万五千ございますから、残が約三十五万になります。それで書状、銀盃で見ますと、平成三年度が七万処理をいたしておりますので、三十五万割ることの七万ということで五、先ほど申しましたように申請率の状況をさらに見定める必要があるかと思いますが、仮に四割の申請があるとすればほぼ五年というのが私たちの見立てであります。いずれにいたしましても、今後の申請の状況をさらに詳細に見ていく必要があろう、かように考えておりまして、先生お示しのように、これらの方々は大変御高齢であられるということも私ども十分に受けとめて、今後とも一日も早い交付ができるように相努めるつもりでおります。
  107. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 いや、ちょっとびっくりしたのですけれども、百八万の対象者がおられる、それを国としては四十万ぐらいの申請だろうということでこの事業に取り組んでおられるのかと思いますと、非常に私は残念なんです。せっかくつくった事業でございますから、できるだけ百八万の方にこれが及ぶような、そういう展開をしていただかなければならないと思うのですけれども、今のお話を聞きますと、大体四十万で終わる、こういうお考えなんですか。
  108. 文田久雄

    ○文田政府委員 先生、私の御答弁が舌足らずで大変申しわけないと思っておるのですが、私たちももちろんこの基金法は、すべての事業対象者にこれをお受けいただくということでいたしておるわけでございます。十何年かかるであろうということ、百八割るということになりますとまさしくそのとおりでありますが、私たちはさらにこの申請の状況も見定めつつ適切な対処をしてまいりたい、かように考えております。
  109. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 その申請でございますが、申請主義だからだと思うのですけれども、この対象者には、八十過ぎたお年寄り、それから七十過ぎた、体を壊されておるお年寄り等もいらっしゃるわけなので、なかなか申請もままならない、こういう状態もあると思うのですよ。さらに問題は、申請の受け付けといいますか、お世話を市町村役場とか国でやられるわけでしょう。そういう中で、果たして自治体の職員の皆さん方がこの問題について本当に真摯に受けとめて、かつて日本のお国のために一生懸命頑張っていただいた皆さんのために事業を進めていかなければならないという気持ちが出てきているのかどうか。かつて軍人恩給のときには、一定の知識を持ったといいますか、いろんな軍歴なんかの知識を持った方がいらっしゃっているいろ面倒を見ておられましたけれども、今の担当者というのは本当にお若い方で、軍歴とか兵籍簿とか言われてもなかなかわからない職員が多いと思うのですね。申請が進まないのは、そういう面倒なことはもうだめだ、わずか書状、銀杯だけもらうのにバス賃使って行って、若い職員からしかられたり嫌みを言われたりしてまでしたくはないという気持ちが出てきておるのかもしれないと私は思うのですよ。そういった面はどのように判断されておるのか、お聞きしたいと思います。
  110. 文田久雄

    ○文田政府委員 恩給欠格者の方々に書状、銀杯を贈呈するに当たりましては、該当者の方から請求書を直接基金あてに送付していただいているところでございます。その際御本人の履歴を御記憶の範囲内でお申し出いただくということにいたしておりますが、その記憶のところで書いていただいて基金においてこれを確認するなど、請求手続はなるべく簡素にするようにということも心がけております。また、請求書類は、請求者の方々の便宜を勘案いたしまして、基金のほかに各都道府県、市町村にも備えておくとともに、あわせて請求者に対してわかりやすい解説を施しましたリーフレットを配付する等、より周知に努めているところでございます。先生のただいまの御指摘を踏まえまして、今後とも請求が容易に行われて、申請が円滑に行われまするようにさらに努力いたし てまいりたいと考えております。
  111. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 市町村も、今、仕事は増加していく、人は行革の中で減っていくということで、大変厳しい仕事の条件にあると思うのです。したがって、そういう面では片手間でやらざるを得ないという状態も出てきておるだろうし、この慰藉事業の問題について十分勉強もできない、こういう面もあろうかと思います。自治体が怠っておるのではなくて、先ほど申しましたような状況もあるわけでございますから、自治体でこの事業がスムーズに進んでいくようにするためには、何としても自治体に対しての財政的な措置というものが必要だろうと思うのです。そして、年配の方を頼んで嘱託でやるとか、職員一人それに一定期間張りつけるとかいろいろ方法はあると思うのですけれども、何せ自治体の財政の問題もございますので、そういった点、自治体に予算措置を講じる、こういうお考えはないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  112. 文田久雄

    ○文田政府委員 当然ながら県に大変御協力賜っておりまして、この協力なくしては当該事業は推進できませんので、私たちといたしましても、県に対しましては、しかるべき委託費を若干でありますが計上してお願いをいたしているところでございます。
  113. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 それは県でしょう。県が直接するわけじゃございませんね。市町村の窓口がするわけでしょう。そういう面でいけば、そういう事務を担当する自治体に対しての予算措置というものが当然必要になってくると思うのです。そういった点で、ひとつこの点については今後十分御検討いただきたいと思うところでございます。  さらに、なかなか申請が上がってこないという中には、この基金制度を知らない方もいらっしゃるのではないか。もう寝たきりになったり高齢になって余り新聞も見ない、いろいろな情報も見ないという方々もかなりいらっしゃって、この制度自体を知らないということがありはしないか、こう思うのですけれども、この事業の内容等についてどのような形で周知徹底をされているのか、お知らせをしているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  114. 文田久雄

    ○文田政府委員 この恩給欠格者に対します慰藉事業の内容につきましては、政府公報によりまして新聞等の媒体を活用いたしまして周知を図っているところでございます。また、各都道府県、市町村等にお願いをいたしまして自治体の各公報紙への掲載を行うなど、きめ細かく周知徹底が図られまするように努力をいたしているところでございます。さらに、平和基金におきましても、独自に新聞あるいは週刊誌等への広告の掲載やポスターの制作、掲示、あるいは講演会等の開催等の機会をとらえて、適宜基金の事業計画のPRに努めているところでございます。今後ともその御指摘を踏まえまして適時、適切に一層の周知に努めたいと存ずる次第であります。
  115. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 私は、この事業を進めるに当たって心がないと思うのですよ。週刊誌で広報されるとかいっても、週刊誌をお年寄りが見ている姿は余り見ませんね。対象者のほとんどが都会よりも地方に住んでおられると思うのです。そういう中で、ポスターをどこで見るのか、役所なんかにはなかなか行きませんよ。新聞もそういう広告欄とか通知欄というのはそう見ません。そういう血の通っていない広報で、これはもう徹底しているんだという形では、この事業はやはり進みません。型どおりにやっておられるとしか私は受けとめられないわけです。百八万という数を握っておられるわけですが、この中にも不幸にして既にお亡くなりになった方もいらっしゃると思うのです、三年の間ですからね。その百八万という数を把握されておられる以上は、この方々に対して何らかの形で、市町村を通じてでもいいんですが、一遍はお知らせをすることが必要じゃないか、それが慰藉事業の本来の姿ではないかと思うのですが、そこあたりはどうでしょう。
  116. 文田久雄

    ○文田政府委員 私どもの総理府には広報室という部局もございまして、それで各都道府県を通じまして各国民の皆さんにきめ細かく広報ができるという「広報通信」という媒体も持っておりまして、県において、あるいは市町村に流すということにおいて必要な、こういう形で御周知賜りたいというスタイルにしたものを各県にお願いもいたしておりまして、今後先生の御趣旨も踏まえまして根っこにまでそれが伝わりまするように努力していきたいと考えております。
  117. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 先ほどから何遍も繰り返しますけれども、高齢者が多いわけでございまして、心待ちに待っている人もいらっしゃる。さらにまた、今の推進状況からいきましても、申請がありましても本人まで届く時間が長いということで、この点非常にこの事業についての取り組みが積極的でないように私は受けとめますので、できるだけ早くこれが皆さんに行き渡るようにひとつ進めていただきたいと思いますね。特に、先ほど申しましたけれども、資格要件、これについても三年以上ということになりますから、何かいろいろ面倒くさい面があるわけですね。そういったものがさらに簡潔にできないものかどうか、こういった点も十分御検討いただきたいと思います。これはここでは答弁は要りません。  それと、先ほどちょっと触れましたけれども、書状、銀杯をもらって喜んでおられる、そして次の追加事業の通知が来たときにはもう既に亡くなっておられる、こういう状態が非常にあちこちにあると思うのです。したがって、最初の申請をされた時点が銀杯あるいは書状、さらには新規事業を受ける権利の発生の時期、このようにすべきではないかと思うのですけれども、さらに追加事業をやったときにもう既に亡くなっておられたときにはもうその権利は消滅している、今の段階ではこういう状況なんでしょう。遺族に対する慰藉という意味から、そこらあたりをどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせいただきたい。
  118. 文田久雄

    ○文田政府委員 恩給欠格者に対しまする措置につきましては、先生御案内のとおり、基金の運営の重要事項を審議するということで、基金法で設置されております基金の運営委員会でもって検討されまして、私どもに対しまして御報告を受けた、これを踏まえて措置しているわけでございますけれども、これは危険な戦務に従事したにもかかわらず軍歴期間が短いために年金、恩給等を受給できない、こういう恩給欠格者御本人に対して慰藉の気持ちをあらわすことを目的とする、こういう趣旨で行われたものでございまして、基本といたしましては御本人でございます。  ただいま先生お尋ねの、申請はしました、それで交付の措置が講ぜられない、その間にお亡くなりになられた方は、申請はしたけれども手に届かなかったということが大変御無念なことでございますし、私たちとしましては、相続人の方に御本人の名によってこれを措置しているところでございます。
  119. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 例えば、一等最初に七十歳の方が書状の申請をされます、そして不幸にしてお亡くなりになります、そうした場合は、遺族がいらっしゃるわけですけれども本人の名前で交付される、こういうことですね。
  120. 井上達夫

    ○井上説明員 今審議官が御説明しましたのは、申請をいただいた後に書状、銀盃が届く前にお亡くなりになった場合には、そのものをお受け取りいただくということでございます。  先生のお尋ねが新規慰藉事業についてでございますと、御案内のとおり、新規の慰藉事業は何分対象者が多く、資金が限られているものですから、高齢の方々から、書状、銀盃を贈られた方々に基金の方から連絡をするということで贈呈をさせていただいております。この件数が、ことし初年度でございますが約一万人を予定しておりまして、基金の方から今年度御連絡をしている方々は、高齢の順に連絡しておりますので、七十九歳の方々まで御連絡しているということでございます。したがいまして、先生のおっしゃっていることが新規慰藉事業の基金からの連絡のことであるとすれば、そのような年齢の高齢の順から連絡しているという実情にあることは事実でございま す。
  121. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 新規事業だけでないわけなんです。先ほどちょっと例を申し上げましたものですから答えもこんがらがったと思いますけれども、百八万の方がおられる。申請書を出された後不幸にしてお亡くなりになる、その場合には権利はもう消滅するのか、そうでなくて苦楽をともにしてこられた恩欠者の遺族にやはり贈呈するのか、そこあたりをはっきりしてもらいたいと思うのです。
  122. 井上達夫

    ○井上説明員 今先生お話しのように、申請をしていただいた後に不幸にしてお亡くなりになったという場合には、御遺族の方に事実上受け取っていただいております。
  123. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 書状の場合は、申請があった後亡くなられても贈られますね。書状を贈った後新規事業の申請があった場合も、もうその人は亡くなっておってもその対象者として贈呈される、こういうふうに理解していいのですね。
  124. 井上達夫

    ○井上説明員 新規慰藉事業の場合には、先ほど御説明しましたように、書状と銀盃をお贈りした方々の中から基金の方で高齢の順に御連絡をしているわけでございます。そのときに、書状、銀盃の贈呈後相当期間たっている、それで御本人が亡くなられたという場合には、これは贈呈の対象から外させていただいております。
  125. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 これは今後の問題として残しておきたいと思うのですけれども恩給欠格者は三年以上、こういう一つの基準でなくて、全部が大変御苦労いただいているわけですから、この枠を取り払って、一年以上ぐらいにして枠を拡大していただく、してもらう、このことが必要じゃないかと思うと同時に、先ほど出ましたけれども、今戦死者等については遺族に対する補償がなされているわけですが、そういった意味で、慰藉事業ぐらいは遺族の皆さん方にも対象を広げていただく、こういうことが大事ではなかろうかと私たちは思っております。社会党といたしましても、予算要求の時点で何遍もそのことを要求しているわけですけれども、そこらあたりは検討されたことはないのかどうか。
  126. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  この恩給欠格者に対しまする措置につきましては、先ほど来申し述べておりますとおり、基金の運営委員会で大変慎重に関係者の御意見もお聞きいたしまして、検討を重ねられまして、その結果まとめられた報告を踏まえております。その考えといたしましては、さきの大戦というのは未曾有の大戦でございましたから、国民一人一人がそれぞれの立場で大変な御労苦を賜った、そこでこの恩給欠格者の御不満だとかいう気持ちもよくわかる、それに対しましては政府としてやはり心情に報いる必要があろう、こういうことで、その基準としまして、外地の経験があってしかも加算年を含めて三年以上、こういう条件で縛ってございます。  この措置につきましては、やはり国民の方々の御納得も十分得なければならないであろう、こういうことを総合勘案されまして措置された次第でございますので、私どもといたしましては、この基金運営委員会の報告を尊重いたしまして、お示しのとおりの措置を講じているところでございます。
  127. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 恩欠者が二百五十三万人、そのうちの対象者が百八万人ということで、対象者にならない人が圧倒的に多いわけなんですね。こういうことは、まさにこの恩給欠格者の救済を目指す基金制度がむしろ切り捨てをしているというふうにしか私たちは受け取れないわけでございまして、そういう面で今後さらに御検討いただくこととしては、この三年を取っ払って、苦労した方々に同じように事業が適用になるようにぜひしていただきたいと思います。  さらにもう一つ、内地勤務が除外されておりますけれども、どうだったかといいますと、知覧に飛行場がございまして、ここからは毎日のように特攻隊が飛び立っていったらしいのでございます。私たち、後で聞いた話でございますが、この人たち内地勤務です。私は海岸の近くに住んでおりましたが、そこから魚雷艇が出る、その準備のための若者が、兵隊さんが毎日待機をしておった。内地でもそういう戦時に備えて常に精神的にも肉体的にも大変な苦痛、苦痛といいますか、不安定な中でやってこられたわけで外地におったからこれが対象になるんだ、内地はだめだ、これはちょっとおかしいのではないか、私はこういう思いがいたします。ここあたりもひとつ御検討いただきたいということをお願いしておきたい。  さらに、軍属の皆さんにも、同じように戦地で頑張られた方たち、頑張ったというか、大変御苦労いただいた方もいらっしゃるわけで、そういった者が除外されておる、これはまた私ども心外でならないわけであります。そういった面でこの軍属の問題も十分今後検討いただく、こういうことでお願いを申し上げておきたいと思うのですが、長官、ここあたりどうなんでしょうか。
  128. 文田久雄

    ○文田政府委員 ただいまの先生の御指摘は私どもといたしましても十分理解できるところでございますが、繰り返しで大変恐縮でありますが、この基金の運営委員会におきまして関係者の皆さんの御意見も十分お聞きを申し上げまして、かつ国民の御理解も得なくてはならない、こういうことを踏まえて措置されたものであるということもひとつ先生よろしく御理解賜りたいと存ずる次第であります。
  129. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 そういうことでぜひ今後とも検討いただいて、より多くの皆さん方が、御苦労いただいた皆さん方がこの事業の適用を受けるように、御尽力、御努力をお願いしておきたいと思います。  もう一つは恩給欠格者の年金通算の問題でありますけれども、これはもう御案内のように、私が申すまでもなく、兵歴十二年末満の方は先ほどから出ておりますように年金が、恩給が出ておりません。さらに、公務員の場合はそういう恩給との通算がきいておりますから、公務員に就職された方は年金通算ということでこの期間は年金の受給者になっているわけですね。十二年間、厚生年金、国民年金の職につかれた方は皆さん、これが通算されない、こういうことから官民格差という事態が起きておることは御案内のとおりと思うのです。  そこで、何としても官民格差を取り払ってもらいたい、是正していただきたいという運動が全国で恩欠者の皆さんから盛り上がっておる。そのことはもう御案内のとおりではありますけれども、これに対して今まで何らの政府としての考え方というものが出されておりません。昨年の内閣委員会での附帯決議にもこのことは入っておりますし、本当に真剣に検討され、実行に移されなければこの問題は解決しない、こう思うのですけれども、そこらあたりはどのように今まで取り扱われてこられたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  130. 江利川毅

    ○江利川説明員 先生の御質問は、軍歴期間恩給、共済では通算しておるのに厚生年金、国民年金ではなぜできないかということでございますが、軍歴期間恩給期間対象となっていた期間でございまして、現在の共済年金の方ではこの恩給を引き継いだ制度でございますので、そういう一本の制度だから共済年金制度において通算されておるということでございます。そういうふうに私ども理解しているわけでございます。  一方、国民年金、厚生年金の関係でございますが、これらの制度は保険料の拠出を要件としているわけでございまして、保険料を拠出して給付を行うという社会保険方式をとっているわけでございます。保険料の拠出を伴わない恩給対象となる軍歴期間をこれら国民年金や厚生年金において通算するといいますのは、こういう社会保険方式の根幹を揺るがすような問題になるわけでございまして、なかなか難しい問題であるということでございます。その点、御理解を賜りたいと存じておる次第でございます。
  131. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 この人たちも、今恩給欠格者の皆さん方も、もしあと十年まだ任官が残っていれ ば、当然のことながら恩給を受けられる。また三年でも外地の人は受けられる。それが、たまたまというとおかしいのですが、敗戦によって打ち切られたわけです。その期間確かに実在しておったことは間違いないわけですから、当然のことながらこれは何らかの形で補償すべき筋合いのものではないか。公務員に就職したらそれは共済年金に通算されて何年かが補償されている。そうでない方々はこの部分だけは人生の中で欠落している、こういう事態が起きているわけなんですね。そして公務員の皆さん方の年金と、それから事実欠格者の皆さん方で老齢福祉年金を受けている方もいらっしゃる、そういった皆さんとの差はだんだん広がっていくわけなんです。そういった面での差別扱いに対する憤りというものをお持ちなんですね。これは国民年金とかあるいは厚生年金とかそういうことに限定するのでなくて、こうした大変御苦労いただいた、国のために働いた期間、それが何ら補償のない期間として残っていくことについては皆さん方は大変残念な思いなんです。したがって、これを何らかの形で補償していただきたいというのが欠格者の皆さん方のお気持ちなんです。願いなんですよ。そこらあたり、これは平和祈念事業が始まったからもう終わりだ、これはもう決着した問題だ、このようにお考えなのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  132. 文田久雄

    ○文田政府委員 軍歴通算問題につきまして、私どもの方から総理府といたしまして的確にお答えする立場じゃございませんけれども、先ほど先生がお示しのとおり、平和祈念事業特別基金等に関する法律、この成立の経緯というものが、お示しの通算措置が甚だ困難である、こういう報告のもとに行われたものである、そういうことで、私どもの事業もこの法の精神に基づきまして誠心誠意これを執行していく、推進していくというふうに受けとめております。
  133. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 慰藉事業と年金欠格の分の補償と、この問題は全く違うのですね。慰藉事業で対象者にお渡しする総額、金額は大体どのぐらいになるのですか。書状、銀杯それから追加事業、新規事業ですね、含めますと大体どのぐらいの金額になるのですか。
  134. 文田久雄

    ○文田政府委員 お答え申し上げます。  三年度事業費といたしまして恩給欠格者にかかります所要経費は十八億一千百万円を計上いたしております。
  135. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 一人につき幾らですか。
  136. 文田久雄

    ○文田政府委員 恩給欠格者に対しましての書状、それから銀杯、これは書状が実費でもって二千円相当かかりますし、その余、事務経費等がこれにいろいろ入ってまいりますので、送料だとかいろいろかかりますので、一件当たり、一人当たり幾らかということは事務的に算定をいたしておりませんので、御了承賜りたいと思います。
  137. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 そういうことで事業を進められておるわけですか。銀杯何ぼ、書状が幾ら、それから追加のあれは大体三万円平均ですよね、これで一人当たりの経費はどのくらい、これが事務費まで積み上げていかなければ出てこないわけですかね。
  138. 文田久雄

    ○文田政府委員 本件措置を講ずるに当たりましては、これはその認定に必要な人員だとかあるいは送料、それから管理費だとかすべて含みますし、あわせましてまた逐次申請者がふえてまいりますので、その除するところの員数も確定しておりませんし、大体何人になるかというのは的確にちょっと算定をいたしかねているところであります。
  139. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 一人当たりの経費でなくて、書状、銀杯、それから新規事業の分も含めると一人当たりにお渡しする額はどのぐらいになるのかというのは、事務費まで、通信費まで含まなければいかぬのですか。皆さん方がそこまでかぶるわけなんですか。そうじゃないのでしょう。
  140. 井上達夫

    ○井上説明員 今審議官がお答えいたしましたのは、事業としてやる場合には、例えば書状はもともとが非常に安いものといいますか、金額の張るものではございませんので、事務員その他も考えないと全体としての金額が出ないということがございますが、大ざっぱに御説明いたしますれば、お贈りしている銀杯は市価で約二万七千円程度のものだと理解しております。それから新規慰藉事業の方は、これは先生御指摘のとおり三万円ということで措置させていただいているところでございます。
  141. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 大体五、六万のものですね。これで恩欠者に対する問題は解決したということでは恩給者の皆さん方は納得できないだろうし、また同時に、今後お亡くなりになるときも大変恨みを持っていかれると思うのですよ。そういう面で、何としてもこの欠落した期間を何とか補償する、こういう気持ちで、立場で御検討、御研究をしていただきたいと思いますし、私どもも常にこのことは要求し続けていきたいと思うのです。軍人に行かれた皆さん、当時何ぼであったのかちょっと調べてみましたら、上等兵さんが十円です。公務員の皆さん方が当時初任給が四十円ですね。二等兵は六円。こういうことで家の仕事も放棄せざるを得ない状況で軍務につかれた。そして、帰ってみたら恩給も全く適用にならない、しかも年金にも通算しない、こういうことで、大変生活的にも御苦労されている方もいらっしゃるのです。国の責任においてこの欠落した期間は何らかの形でやはり補償すべきだと思うのですが、長官、どうでしょう。
  142. 井上達夫

    ○井上説明員 平和祈念事業基金の経過でございますが、先生も御案内のとおりと思いますが、今の御指摘のような軍歴通算その他の問題が五十年代に起こってきたわけでございます。それらの動きを踏まえまして、五十七年にこの基金のもとになりました戦後処理問題懇談会というのができております。この懇談会で二年半にわたりまして恩欠問題も中心として検討した結果、シベリア問題、引揚者問題その他含めまして、いわゆる戦後処理問題に関してこれ以上個別の措置を講ずる必要はないといいますか、義務はないというのが結論でございました。ただし、恩欠者の方々あるいはシベリア抑留者の方々心情には国としていろいろ思いをいたさなければならないところもあり、国として適切な措置を講ずべきだということで、補償という観点ではなくてこれらの方々の労苦を慰藉するという観点から、平和祈念事業特別基金ができたわけでございます。その基金の法律及びその法律に基づいてできました基金により、ただいま慰藉事業を進めているわけでございまして、政府としましては、これらのいわゆる戦後処理問題についてはこの基金の事業をもって決着を図るという考え方で事業を行っているところでございます。
  143. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 私たちはそういうふうに理解はいたしておりません、法案上の面からも。さらに、今までも内閣委員会で附帯決議が毎年毎年つけられておりますが、「適切な措置」を講ずること、こういう附帯決議です。「適切な措置」ということは、慰藉事業でなくて改めてこの欠落した期間についての補償をすべきだ、こういうことなんですね。今ちょっと触れられましたけれども、これは内閣委員会で皆さんで決めたわけなんですが、現在の自衛隊員は五十三で定年、六十歳にならないと年金は渡らない。そういうことで働き盛りの七年間が残っておりますので、この七年間の生活の保障という意味で特別給付金というものを決めましたね。これが平年度になりますと年間大体五百億くらいになるらしいのですが、そういう形で、今の皆さん方にはいろいろな形で物事が考えられ、処理されているのです。ところが、もう四十五年も五十年も前のことだからこれはもう終わり、しかも対象人員が三百五十万人もおるのだから金もかかるしという考え方が根底にあっては私は大変だと思います。今のお年寄りの、高齢化しておるかつて軍隊で御苦労いただいた皆さん方に何としても報いるという気持ちでこの問題はひとつさらに検討いただきたいと思うのです。私ども言い続けます。  この軍恩欠で適用にならない方ですけれども、私もこの前ちょっとある資料でいただいたわけで すが、大変苦労しているのですよ。「昭和二十年三月十三日斬込隊として出撃命令を受け、○○隊長指揮の下○○山の○○小隊の陣地に到着するも三月十五日米軍に包囲され、機銃と迫撃砲による集中攻撃を受け、山の稜線に釘付け状態となり、交戦中、機銃による右大腿部貫通銃創と迫撃砲弾により右足二ケ所破片創を受け、壕に収容され応急手当を受ける、」そこで「多数の戦友が戦死、其夜隊長より重傷者の自決と翌十六日の玉砕が宣告された」。この人は何とか生き延びて帰られたそうですけれども自分の陣地に帰ってみたところ、戦死者の名簿に記載されておった。  こういう皆さんがあの当時御苦労されてきておる。毎日毎日のように生死の境をさまよってこられたわけです。中には自決された方もいらっしゃる。玉砕寸前の中でこうした務めを果たされた皆さんが、二年、三年足らないということでこの期間が空白のまま追いやられるということは、これは本当に忍びないことなんです。やはり今後ともこの問題については真剣に考えていただきたい。しかも、期間があとそう長くないのです、平均で七十二歳や七十三歳です。そうなりますと、皆さん方がどういう思いで余生を過ごされていくのか、その気持ちになってこの問題に取り組んでいただきたいと思います。長官、この点についてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  144. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 いろいろとお話をお伺いいたしたわけでございますけれども、おっしゃるお気持ちというのは私には十分わかりますし、私も、かつて同じような気持ちを持ったこともありますし、関係者の皆さんと一緒に、同じような気持ちで運動したこともございます。ただ、やはり制度にはそれぞれの目的がありますし、仕組みがございますので、そういうこともひとつ御理解をいただかなければならないだろうと思っております。これは、直接私の所管ではございませんけれども、私は一政治家として、ひとつ勉強させてもらいたい、こう思っております。
  145. 北川昌典

    ○北川(昌)委員 ありがとうございます。大変申しわけなかったです。  今そういう事態にあるわけでございますから、ひとつぜひとも、この問題については制度とかだけの問題で解決しようとするのでなくて、やはり新しい何かの方法はないのか、こういったあたりも御検討いただいて、こういう人たちの気持ちに報いるための御検討、御努力をお願い申し上げ、強く要望いたしまして、終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。
  146. 近岡理一郎

    近岡委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  147. 近岡理一郎

    近岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三浦久君。
  148. 三浦久

    ○三浦委員 人事院にお尋ねをいたしたいと思います。  国公法の二十七条に「平等取扱の原則」、それから百八条の七に職員団体に加入する等の行為によって差別的な取り扱いをしてはならない、そういう「不利益取扱いの禁止」の条項が規定されておりますけれども、これは憲法との関係で私は極めて重要な意味を持っている規定だと思います。その内容とその精神を手短にお答えいただきたいというふうに思います。
  149. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 ただいま先生御指摘のように、国家公務員法の二十七条では、憲法の第十四条を受けまして、国家公務員関係につきましても、具体的に申し上げますと、「すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分」等、または「政治的意見若しくは政治的所属関係によって、差別されてはならない。」と規定し、不合理な差別を禁止しているところでございます。  また、同法第百八条の七におきまして、職員が職員団体を結成したり、正当な職員団体活動を行うことによりまして不利益な取り扱いを受けることがないことを明らかにしているところでございます。
  150. 三浦久

    ○三浦委員 その不利益な扱いですけれども、それは昇給とか昇進とか昇格とか、そういうものを含みますね。
  151. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 おっしゃるとおり、含みます。
  152. 三浦久

    ○三浦委員 それに違反をした場合には罰則の規定がありますね。国家公務員法の百九条の八号に「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」というふうになっておりますね。
  153. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 百九条で、先生ただいまおっしゃったとおりの規定がございます。
  154. 三浦久

    ○三浦委員 建設省にお尋ねをいたしますが、ただいまの人事院の見解、そのとおりですね。
  155. 風岡典之

    ○風岡説明員 そのとおりでございます。
  156. 三浦久

    ○三浦委員 ところが、この建設省内部では労使間で、国家公務員法二十七条の「平等取扱の原則」、また百八条の七の「不利益取扱いの禁止」をめぐって労使紛争が絶えないというのが現状であります。  人事院にお尋ねをいたしますけれども、現在全建労から国公法の八十六条に基づく勤務条件に関する行政措置要求が出されていると思いますけれども、その件数、また調査対象の人員、どうなっているのかお知らせいただきたいと思います。
  157. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 昭和六十三年十一月以降におきまして、全建労の各地方本部などから、女性であること、あるいは全建労の組合員であることを理由といたしました昇任、昇格あるいは特別昇給等における差別取り扱いの是正などを求める行政措置要求が大量に提出されております。件数にいたしまして現在約二千件でございます。  ただ、これらの事案につきましては、その後受理できるかどうかにつきまして検討を加えまして、所要の処理を行って、現在では件数にいたしまして約四百件、人数にいたしまして四千人分が継続している状況にございます。
  158. 三浦久

    ○三浦委員 これは極めて膨大な行政措置要求なんですね。これは民間でいえば不当労働行為ですよ。これはもうちょっと異常だというような状態だと私は思うのですね。官は悪をなさずというけれども、まさに建設省自身が組織的にそういう不当労働行為というものをやっているということを私は意味していると思います。というのは、例えば昭和四十九年の十月十二日付の朝日新聞があります。その朝刊の一面トップに、いわゆる建設省が内部でいろいろな方針を伝達している極秘文書、これが暴露されましたね。  この文書によりますと、労組役員や革新政党に所属をする職員というのは昇任、昇格をさせないということになった。まさに国家公務員法違反そのものであります。まさに処罰の対象になるものです。二十七条には、政党の所属の違いによって差別しちゃいかぬということもはっきり書かれておるわけですね。それを受けて百九条で処罰が決められておるわけですから、こういうようなまさに組織的な不当労働行為というものが省内挙げてやられたという、そういう前科が建設省にあるわけです。これはほうっておけないと大きな社会問題になりました。それで、労使で交渉が行われましたよね。五十年の三月二十七日に、全建労の上部団体である当時の総評と建設省の大臣官房調査官との間で「会見メモ」というものが取り交わされたのは御承知ですね。どうですか。
  159. 風岡典之

    ○風岡説明員 五十年の三・二七ということで、先生が御指摘になりましたような「会見メモ」というものはあります。
  160. 三浦久

    ○三浦委員 この「会見メモ」によりますと、これは労使双方で立ち会って確認しているものですが、 「職員管理については、かねてより十分配慮し てきたところであるが、昨年来組合側から、人 事管理上適切を欠くものとしていくつかの事例 の指摘があったので、それについては厳正に調 査した結果、一部適切を欠く事例があったこと は遺憾であった、ついてはそれぞれ適切な措置 を講じてきたところである。」 「しかしながら、適正な職員管理を一層推進す ることは必要であるので、その旨すでに通達を もって指摘したところであるが今後さらにすべ ての管理者にその趣旨の徹底をはかる。 二番目として、  当局は、職員の一部に、人事処遇の面で差別 されていると思っているものがあることを認識 し、早急に組合側から実情を聴取し、今後適切 な人事管理上の配慮を行う。」 こういう内容になっていますね。  それでも解決しないで、昭和五十七年の三月十五日ですけれども、これは労使で「官房長表明」というものを確認しておりますね。建設省の官房長がこの問題について表明をしている。それを労使で確認をしているものがあります。これによりますと、 「一連の昇進・異動・昇格・特昇等の処遇改善に ついて、全建労から格差是正を図るよう要求が 出されたが、本来、人事は厳正・公平に行われ るものである。全建労の主張している格差の是 正要求については十分認識しており、重要な判 断要素の一つのなかに含め、とり入れるべき要 素については、とり入れるよう対処してきてい るところである。  職員の処遇改善については、今後とも引き続 き努力したい。これに関して、残る格差につい て年次計画を明らかにするようにとの、全建労 の強い主張があったことは十分承知している。」 こういう内容がありますね。  ですから、こういう一連の文書を見てみますと、口でははっきりあなたたちが不当労働行為を行ったという表現は避けてはいますけれども、しかし事の経過、その事実から、要するに組合の所属、その違いによって昇任、昇格その他の処遇について差別をした、それに対して当事者である建設省が遺憾の意を表明して、そして今後これを改善するということを約束したという内容になっていると思います。  それで伺いたいのですが、その後どういうような格差是正の改善をなされたのか、伺いたいと思います。
  161. 風岡典之

    ○風岡説明員 私ども、建設省の人事、今御指摘ありましたように昇任、昇格あるいは配置がえも含めましてそういった人事を実施するに当たりましては、当然これは厳正公平、適材適所という基本的な考え方を持って私どもとしては進めてきているつもりでございます。ただ、職場の中の現実の声として、先生御指摘のありましたような建設省の職員の中に処遇上差別されていると思っている人がいる、そういう事実は私どもとしても十分承知をしておりまして、我々、人事を行うに当たりましては、職員から身上申告書ということで、いろいろな希望とか事情を書いて出してもらうこともやっておりますし、それからまた、それを出してもらうときに職員からいろいろ事情を聞くというようなヒアリングみたいなこともやっております。そういったことも含めまして、我々、毎年毎年の人事で厳正公平にやってきたつもりでありますし、これからもまたその精神でいきたいというふうに思っております。
  162. 三浦久

    ○三浦委員 それが事実であれば、現在四千人も行政措置要求が出されるなんていうことはあり得ないはずです。今、あなたは、職員の中に差別を受けているんじゃないかと思っている人がいるということは承知しておるというような言い方ですけれども、ということは、結局職員に対してあなたたちが差別をしているから職員が差別を受けていると思っているのですよ。何にも差別がないところに、職員が勝手に私は差別を受けているなんて、そんなことを感じるなんということはあり得ないはずなんです。論理の飛躍でも何でもない、事実です。そして、それが今まであなたたちがここ十数年来ずっと労務対策の一環として行ってきたことですよ。建設省という国の機関がそんなでたらめな労務管理をやるなんということは、私は到底許すことができない。官は悪をなさずというけれども、とんでもない話だ。悪の塊みたいなものだと私は思いますよ。  それで、実態はどうなっているのか、職場の実態を特徴的なものを一つ、二つ私挙げてみたいと思います。  例えば、これは中国地方建設局の例ですけれども昭和三十六年、初級試験で採用された二十六人の土木職員の昇任、昇格の実態です。ここにきれいな表があるのですけれども、この表は後でまたゆっくりお見せしましょう。口で私述べます。この昭和三十六年入局者といいますと、ちょうど入局して三十年です。年齢はほぼ四十八歳ぐらいです。二十六人のうち、全建労組合員は十一名、それ以外が十五人です。二十六人のうち給与表上の六級、職務でいいますと出張所の所長クラスになりますが、この出張所の所長クラスになっている人が二十六人中十四人、これは同期入局者全体の、二十六人中の約半数に当たるわけですけれども、六級在級者十四人のうち十三人までが全建労組合員以外の人です。要するに、全建労の組合員はわずか一人だけが出張所の所長クラスになっているにすぎないということなんですね。ですから、繰り返して申し上げますけれども、結局十五人のうち十三人が出張所長クラスになり、全建労に所属している職員は、十一人のうち一人しか出張所長になれないという、こういう事実関係は明白なんです。あなたたちは成績主義だとかいろいろな理由をつけるかもしれませんけれども、こういう全建労の組合員が極端に昇給に差別をつけられているというのは明らかなことだと思うのです。これでも、いわゆる格差の是正をした、また処遇の改善をしたということが言えるのでしょうか。
  163. 風岡典之

    ○風岡説明員 今御指摘の中国地建のケース、詳細に拝見をしておりませんので、それにつきましてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、私ども先ほど申し上げましたように人事は厳正公平、適材適所ということで、職員がどこの組合に所属しているかということはその人事処遇上の判断要素に私どもとしては入れておりません。それから、今のことではございません、一般論で申し上げますと、同一年次にもちろん何人か採用されますけれども、その人たちが二十年、三十年という勤続の中で、それぞれ当然昇任とか昇格については差がつくことはあり得ることではないかというふうに思っております。  いずれにしましても、人事は、確かに職員の不満というものはできるだけ少なくするということが望ましいわけでございますから、そういう意味で、職員のいろいろな身上申告書等も十分参考にさせていただいて人事をしたいというふうに私どもとしては思っております。
  164. 三浦久

    ○三浦委員 差がつくのはある程度はやむを得ないでしょう。しかし、差がつき過ぎるのですね。組合員に対してはほとんど出張所クラスの職につけないというような偏りがひど過ぎるということは事実です。組合員だから能力が劣っているとか、そういうことはないでしょう、どうですか。
  165. 風岡典之

    ○風岡説明員 当然勤務成績その他はそれぞれの人ごとに判断をするわけでございますので、組合員とかそうでない人とか、そういう区別は当たらないと思います。
  166. 三浦久

    ○三浦委員 もう一つ、男女差別がひどいのです。これは関東地建の事務官の実態です。昭和三十五年生まれまでの職員の数をとりました。昭和三十五年生まれまでの職員ですね。というのは、これは係長になる資格が出る人という意味でその数字をとらせていただきましたが、事務官の総数が千十人です。そのうち男性が六百十八名、女性が三百九十二名、ですから男性は六一・二%、女性は三八・八%、約六〇%と四〇%という比率であります。係長以上の総数は五百五十二名、うち男性は四百九十九名、女性は五十三名なんです。数からいうと六一・二%にしかすぎない男性が係長以上の職につくというのが八〇・七%、女性は約三九%、四〇%でしょう、四〇%おりながら係長以上の職につける人がわずか一三・五%しかいない、こういう実態なんですね。これは明らかに婦人に対する差別的な取り扱いではないかという ふうに思うのですが、いかがお考えですか。
  167. 風岡典之

    ○風岡説明員 御指摘の数字を私ちょっと正確に把握しておりませんので、それについてはコメントを差し控えます。  私ども、係長に昇任をするときというのは、男女を問わず当然職員の勤務成績あるいは経験、適性、それからまた建設省の職場は全国に事務所、出張所約九百近くが広範に分布しているわけでございます。当然山の中のダムの事務所とか出張所とかいろいろなケースがありますので、その職員が転勤できるかどうか、そういうような転勤の可能性みたいなものも当然いろいろ加味しながら昇任というものを決めているわけでございます。私どもとしては、そういう形で、男女ということではなくて客観的な状況の中で昇任者というものを決めて人事を行っているところでございます。  ただ、先生御指摘の女性についての処遇が悪いではないかということについては、私どもいろいろ職員団体からもそういった意見ももらっておりまして、できるだけ女性がつきやすいようなポストをとるとか、あるいはまたいろんな人事の中で女性の登用ということもできるだけやりたいということで、近年特に努力をしてきているところでございます。
  168. 三浦久

    ○三浦委員 ここで決着のつく問題じゃありませんので、時間がありませんから、ちょっと人事院にお尋ねいたしますけれども、これだけ膨大な行政措置要求が出ております。これの解決というのは簡易かつ迅速にやるというふうになっておりますね。それは法律の要請でもあると思いますけれども、これらの案件処理にどのくらいの時間がかかるというふうにお思いでしょうか。
  169. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 現在、男女差別事案につきまして鋭意実地調査を行っておるわけでございますが、男女差別事案につきましては一昨年の暮れから実地調査に入っております。そして、この男女差別の事案につきましては、来年度で調査をすべて終了いたしまして、来年度中に判定で処理いたしたいと考えております。  また、組合差別事案につきましては、やはり一部調査は開始しておりますが、主として来年度以降に実地調査を行う予定でおります。
  170. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、大体まあ三年から四年ぐらいかかるということですよね。これは、公平五課の人が九人、一人増員されて九人で担当されているようですけれども、やはり簡易かつ迅速に処理するという点からいえば、こういう大量の行政措置要求が出された場合には、やはりもっと体制を強化をするということが必要ではなかろうか。そのことがまた、非常に過重になっている該当の人事院の職員の皆様方の業務の軽減にもつながっていく、また、迅速な解決にもつながっていくというふうに私は思うのですが、その点いかがでございましょう。
  171. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 ただいま先生がおっしゃったように、昨年度は五課の職員は八名でございました。一般的には定員の削減が進む中におきまして、一人ではございますけれどもふやしまして、現在九名でございます。なお、大変事案が多いということもございまして、公平局部内で応援態勢等をいろいろ図りまして、なお一層事案の迅速な処理に努めてまいりたい、かように思っております。
  172. 近岡理一郎

    近岡委員長 三浦委員に申し上げます。時間が参っておりますので、結論を急いでください。
  173. 三浦久

    ○三浦委員 では、もう一問だけ。  この調査ですけれども、密室でもって三人ないし四人の人々が調査をされているようですね。そうしますと、調査をされる側の人は、警察へ行って取り調べを受けているような、そういう感じを受けるんだそうですよ。ですから、私はやはりもっと自由に気楽に思うことが言えるような雰囲気をつくってやる、そのためには、いわゆる申立人の調査に関しては補佐人をつけてやるというようなことが必要ではないかなと思っておりますけれども、その点いかがでございましょう。
  174. 丹羽清之助

    ○丹羽説明員 行政措置要求の事案の審査につきましては、人事院、私どもの責任において行っておりまして、先生のお言葉ではございますけれども、補佐人または代理人等の参加がなくても十分に事案の解明が可能な方法をとっております。  先ほど先生がおっしゃったような感じを持たれるということもございますので、実地調査の際には申立人がくつろいだ雰囲気で話をすることができるように、私ども調査員の言葉遣いや態度にも十分に意を払うよう指導しております。現に調査が終わりました関係職員の方からも、人事院には非常に親切に聞いていただいたというような印象を私ども承っております。
  175. 三浦久

    ○三浦委員 終わります。
  176. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  177. 近岡理一郎

    近岡委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 近岡理一郎

    近岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  179. 近岡理一郎

    近岡委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、斉藤斗志二君外四名から、五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。田口健二君。
  180. 田口健二

    ○田口委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党及び民社党の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに善処すべきである。  一 恩給年額の改定については、国家補償としての恩給の性格、恩給受給者の高齢化等に配意し、今後とも現職公務員の給与水準との均衡を維持するよう努めること。  一 恩給の改定実施時期については、現職公務員の給与との遅れをなくすよう特段の配慮をすること。  一 恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等を図るとともに扶助料については、さらに給付水準の実質的向上を図ること。  一 恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。  一 外国特殊法人および外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。  一 戦地勤務に服した旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の増額について適切な措置をとること。  一 恩給欠格者等の処遇について検討の上、適切な措置を講ずるよう努めること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。  以上でございます。
  181. 近岡理一郎

    近岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  182. 近岡理一郎

    近岡委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木総務庁長官
  183. 佐々木満

    ○佐々木国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、今後慎重に検討してまいりたいと存じます。     ─────────────
  184. 近岡理一郎

    近岡委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 近岡理一郎

    近岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  186. 近岡理一郎

    近岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十八分散会