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1991-07-25 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年七月二十五日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       岩村卯一郎君    衛藤征士郎君       狩野  勝君    河村 建夫君       久野統一郎君    佐田玄一郎君       坂本 剛二君    笹川  堯君       戸塚 進也君    中西 啓介君       萩山 教嚴君    林  大幹君       細田 博之君    前田  正君       小野 信一君    大木 正吾君       沢田  広君    志賀 一夫君       鈴木喜久子君    関  晴正君       仙谷 由人君    筒井 信隆君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    井上 義久君       宮地 正介君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  委員外出席者         人事院事務総局         職員局長    大島  満君         公正取引委員会         事務局経済部長 糸田 省吾君         警察庁刑事局長 國松 孝次君         法務省刑事局長 井嶋 一友君         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵事務次官  保田  博君         大蔵大臣官房長 篠沢 恭助君         大蔵大臣官房総         務審議官    小川  是君         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省関税局長 吉田 道弘君         大蔵省理財局長 寺村 信行君         大蔵省証券局長 松野 允彦君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      江沢 雄一君         国税庁長官   尾崎  護君         国税庁次長   冨沢  宏君         厚生省年金局長 加藤 栄一君         自治大臣官房審         議官      遠藤 安彦君         参  考  人         (東京証券取引         所理事長)   長岡  實君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員異動 五月十四日  辞任         補欠選任   岩村卯一郎君     伊藤宗一郎君   狩野  勝君     水野  清君   沢田  広君     小川 国彦君 同日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     岩村卯一郎君   水野  清君     狩野  勝君   小川 国彦君     沢田  広君 七月二十五日  辞任         補欠選任   河村 建夫君     坂本 剛二君   柳本 卓治君     笹川  堯君   山下 元利君     佐田玄一郎君   小野 信一君     鈴木喜久子君   佐藤 恒晴君     志賀 一夫君   渡辺 嘉藏君     関  晴正君 同日  辞任         補欠選任   佐田玄一郎君     山下 元利君   坂本 剛二君     河村 建夫君   笹川  堯君     柳本 卓治君   志賀 一夫君     佐藤 恒晴君   鈴木喜久子君     小野 信一君   関  晴正君     渡辺 嘉藏君     ───────────── 五月八日  一、国の会計に関する件  二、税制に関する件  三、関税に関する件  四、金融に関する件  五、証券取引に関する件  六、外国為替に関する件  七、国有財産に関する件  八、専売事業に関する件  九、印刷事業に関する件  一〇、造幣事業に関する件 の閉会審査を本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  金融及び証券取引に関する件      ────◇─────
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  この際、今般新たに就任されました保田事務次官ほかより発言を求められておりますので、順次これを許します。保田事務次官
  3. 保田博

    保田説明員 保田でございます。過日の人事異動におきまして、大蔵事務次官を拝命いたしました。  当委員会におきましては、政府委員として長年にわたり格別の御指導と御交誼をいただきましたことをこの機会をかりまして厚く御礼申し上げますとともに、今後とも相変わらぬ御指導と御交誼のほどをお願いいたします。(拍手
  4. 平沼赳夫

  5. 篠沢恭助

    篠沢説明員 このたび官房長を拝命いたしました篠沢でございます。  何とぞよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。(拍手
  6. 平沼赳夫

  7. 小川是

    小川説明員 総務審議官になりました小川でございます。  どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  8. 平沼赳夫

  9. 斎藤次郎

    斎藤説明員 このたび主計局長になりました斎藤でございます。  今まで大変お世話になっておりますが、今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  10. 平沼赳夫

  11. 濱本英輔

    濱本説明員 主税局長を拝命いたしました濱本でございます。  どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  12. 平沼赳夫

  13. 吉田道弘

    吉田説明員 関税局長を拝命しました吉田道弘でございます。  よろしくどうぞお願い申し上げます。(拍手
  14. 平沼赳夫

  15. 寺村信行

    寺村説明員 理財局長を拝命いたしました寺村でございます。  よろしくお願い申し上げます。(拍手
  16. 平沼赳夫

  17. 江沢雄一

    江沢説明員 国際金融局長を拝命いたしました江沢でございます。  どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  18. 平沼赳夫

  19. 尾崎護

    尾崎説明員 国税庁長官を拝命いたしました尾崎でございます。  よろしくお願いいたします。(拍手
  20. 平沼赳夫

  21. 冨沢宏

    冨沢説明員 国税庁次長を拝命いたしました冨沢でございます。  どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ────◇─────
  22. 平沼赳夫

    平沼委員長 金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  23. 尾身幸次

    尾身委員 今回、証券会社一連の不祥事につきまして事実関係を究明をし、そして今後このようなことが二度と起こらぬような対策を検討するため、当大蔵委員会として閉会審査を行うことになったわけであります。  私は、この問題に関しまして種々質問をさせていただきます。  まず、大口顧客に対する損失補てん問題については、私は、一般投資家に対しては、自己責任原則があり、そして証券取引では損をすることもあれば得をすることもあると一方で言いつつ、大口顧客に対してのみ損失補てんをするということは、市場経済のメカニズムをゆがめるものでありまして、資本主義社会の根幹を揺るがす出来事であるとして、極めて遺憾であると考えているわけであります。また、一部企業暴力団との取引につきましても、高度の社会的信用あるいは公共性を持つべき企業のあり方として、あってはならぬことであると考えております。  これら一連の問題について、これから同僚議員とともに質問をさせていただくわけでございますが、まず最初に、この問題について全体としてどのように考えておられるか、大蔵大臣に基本的な認識をお伺いをいたします。
  24. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回の一連事態全体に対しまして、私どもとして監督不十分の責めを負わなければならないという点につき、まずおわびを申し上げます。  私自身がこの事態を承知いたしましたのは、ロンドンにおけるG7の会合を終了し、その会合から空港に向かう自動車の中に届けられた連絡によってでございました。そして、その時点において報ぜられましたものは、まず、実は暴力団関係と、そして続いて損失補てん内容だったわけであります。  帰国いたしまして後、直ちに事務方から事情を聞き、その上で記者会見でこの事態に対する我々の考え方ということを申し上げたわけでありますが、今回の、大手証券会社によりまして行われておりました大口法人顧客に対する損失補てん、また暴力団関係者との不明朗な取引などにつきましては、免許会社としての規範に著しく反するものでありますし、これらの行為によりまして一般投資家証券市場に対する信頼感が大きく損なわれたということはまことに遺憾であり、深刻に受けとめております。  このような観点から、証券四社に対しまして社内処分を要請いたしますとともに、四日間の営業自粛指示いたしました。証券会社営業姿勢適正化や、また証券市場における公正性の確保などにつきましては、これまでも各般の施策を講じて努力してきたつもりでありましたが、このような事態に立ち至りましたことにつき、行政当局としてその責任を重く受けとめております。  大蔵省自身といたしましても、私自身に対する処分を含め、大蔵省職員処分等を実施いたしたところでありますし、また金融機関に対しましても、検査体制充実強化のため、これは証券のみではございません、金融業務全体を含みましての検査体制充実強化につき、省内のプロジェクトチームを発足させ、至急に結論を出すべく検討を指示いたしますとともに、証券四社に対しまして特別検査に着手をいたしました。  今後、こうした問題の再発を防止いたしますためには、損失補てんの法令によります禁止を含めまして、法制上、行政上の必要な措置を講じ、投資家信頼を回復するために全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。  今申し上げられることは、監督の不十分さにつきおわびを申し上げるという一点に尽きるところであります。
  25. 尾身幸次

    尾身委員 まず、損失補てん問題についての事実関係についてお伺いをいたします。  平成元年十二月の証券局長通達について伺います。  証取法の五十条によりまして、証券会社顧客に対して、損失が出たときにそれを負担するということをあらかじめ約束をしてはならないとされておりまして、いわゆる損失保証禁止がされているわけであります。平成元年の末に、一部証券会社事後的な損失補てん問題が起こりまして、それに対しまして通達が出されたわけでありますが、それは事後的な損失補てん禁止一つと、もう一つは、事後的な損失補てんの原因となる、投資顧問契約が締結されていない特定金銭信託、いわゆる営業特金適正化内容とするものであるというふうに伺っているわけでございますが、その趣旨及び具体的な内容を説明願いたいと思います。
  26. 松野允彦

    松野説明員 特定大口投資家に対します損失補てんは、一般投資家証券会社及び証券市場に対する信頼感を非常に損ねますとともに、そもそも投資家有価証券投資に対する自己責任原則にもとるというような意味もございまして、大変不適切な行為だというふうに考えるわけでございます。私ども証券会社監督しております立場の者として、こういうような損失補てん事後的とはいえ行われたことに対しまして、監督の不十分を痛感し、責任を感じている次第でございます。  このような損失補てんが生じましたのは、いわゆる営業特金という勘定、財テクで企業が利用する場合が多いわけでございますが、その営業特金証券会社売買一任的な運用になっておりまして、その結果、その営業特金に生じた損失について補てんをするというような例が多いわけでございます。こういったようなものが平成元年の十一月に大きく表面化いたしまして、今委員から御指摘のように、既に証券取引法では事前損失保証約束した勧誘については禁止行為になっておりますが、事後損失補てんについては法律上の禁止行為になっておらない関係もございまして、平成元年末に証券局長通達を発出いたしまして、以後こういう事後的な損失補てんを行わないようにという指導を行ったわけでございます。  あわせまして、その通達の際に、今申し上げましたこの損失補てんのいわば温床となります営業特金について適正化をするようにという指導をしております。具体的には、営業特金と申しますものを投資顧問会社がついた形の特金に持っていくように、あるいはもうそういったことができない場合には損失補てん利回り保証というようなことをしていないという確認書顧客と取り交わすようにということで、営業特金適正化ということを進め、損失補てん温床をなくすとともに、損失補てんについて以後行わないようにという趣旨通達を十二月末に発したわけでございます。
  27. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、損失補てんという行為でありますが、これは一体具体的にどのようなやり方で損失補てんが行われるのか。証券会社がある種の操作によって損失補てんするという行為が行われるようなこと自体が、つまり行い得るようなこと自体が非常に問題ではないかというふうに私は感ずるわけでありますが、具体的にどのような行為によって損失補てんが行われたのか、具体的な方法、方式をお示し願いたいと思います。
  28. 松野允彦

    松野説明員 今御説明いたしましたように、損失補てん営業特金において生じた損失事後的に補てんする行為でございますが、これは主とし て有価証券売買の形をとって行われております。  幾つかの典型的な方法を御説明申し上げますと一つは例えば外貨建てワラントあるいは外債など実勢価格が不明確な有価証券を使いまして、適正な価格と乖離した値段売買をし、簡単に申し上げますと、証券会社顧客勘定に安い値段で売って高い値段で買い戻すというような売買を行いまして、顧客利益を発生させるという方法。あるいは、有価証券の場合には一日の間でもかなり値動きがございます。その一日の間の値動きを利用いたしまして、その一日の値幅を利用して、いわゆる日ばかり的な売買をしてお客利益を発生させるというような方法も見られております。さらには、新規公開株あるいは新発の転換社債ワラント債など、値上がりの蓋然性の高い有価証券を集中的に配分するというようなことによって利益を発生させるというような行為が主な方法でございます。
  29. 尾身幸次

    尾身委員 今のお話ですと、二つ質問を追加したいわけでありますが、一日で売ったり買ったりして、その間に売り先、相手先は当該の証券会社だと思うわけでありますが、お客、つまり取引先損失補てんを受けた方の企業は、その売ったり買ったりした相手先がわかるのか、つまり証券会社から買って、同じ証券会社に売ったということがわかるのかどうか、そういうことをお伺いしたいと思います。  なぜならば、損失補てんというのは証券会社損失補てんをしたということでありますが、そのお客大口顧客の方は一つ一つ取引についてこれが損失補てんであるかとか、あるいはこれが損失補てんではないとか、そういうことを認識したりわかったりするようなのが一般的なのか、あるいは取引を一任している以上、相手先、どこに売ったり買ったりしたかということは、市場を通してやるわけでありますからその取引先はわからないのか、つまり、損失補てんについて取引先企業というものがはっきりと意識をしているのかしていないのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  30. 松野允彦

    松野説明員 今申し上げました例えば一日の値動き値幅を利用して行います日ばかり商いの場合ですと、これは御指摘のように市場を通してやっている取引が多いわけでございまして、その利益を得る相手先企業が必ずしも利益を受けているという認識がない場合があろうかと私は思いますし、また、実際にそういう形で頻繁に一日のうちで行われますものですから、市場を通しておりますので、必ずしも利益補てん認識利益を受けているという認識はない場合があるというふうに考えておるわけでございます。
  31. 尾身幸次

    尾身委員 それからもう一つは、新規公開株の話でありますが、今局長新規公開株お客配分したときはこれは一種の損失補てんであるというような話がありましたが、新規公開株を割り当てたら本当に損失補てんということになるのかどうか。これは新規公開株を割り当てるという行為損失補てんであるということを認めた瞬間に、新規公開株というのは一体どういうことを意味するのだ、その点はどういうことを意味するのだ、そういうことにはなりませんか。
  32. 松野允彦

    松野説明員 新規公開株配分あるいは新発転換社債配分などにつきましては、私どもはできるだけ多くの投資家配分するようにということを証券会社指導しております。しかし、基本的にこの配分につきましては、証券会社の、一定の限度の中ではありますが、証券会社の裁量に任されているわけでございます。それで、元年の十二月末に通達を出しましたときの損失補てん、その通達におきましては損失補てんの定義を必ずしも明確に書いていないわけでございまして、むしろ各証券会社損失補てん認識しているかどうかということを自主的に検討してもらいたいというようなスタンスで行政指導が行われております。  したがいまして、今申し上げた新規公開株あるいは新発転換社債配分についても、証券会社においてこれは損失補てんだという認識をされたところは、その分については自主的な報告をされてきたというふうに理解をしているわけでございます。
  33. 尾身幸次

    尾身委員 私は、そういう今の局長お話を聞いていて、一つは、受取先企業損失補てんというものについて、ああ、この部分が損失補てんだなというふうにはっきり認識していないケースがかなりある。証券会社の方は自己申告をしたわけでありますから、これは損失補てんだというふうに認識していると思うのでありますが、受取企業の方はいろいろな形で取引を一任している中で、もちろんできるだけ有利な運用をしてくれというようなことは一般論としては頼んだり要望したりしていると思うのでありますが、どれが損失補てんでどれが損失補てんでない、一般取引であるということをはっきり認識していないケースがかなりあるのではないかという感じがどうもするわけでありますが、その点についてもう一度証券局長お話、お願いいたします。
  34. 松野允彦

    松野説明員 私ども通達に従いまして、証券会社から自主的に損失補てん行為というふうに証券会社認識した分についての報告を受けているわけでございますが、補てん先企業がどのような認識を有しているかということについてまでは、私どもは承知をしていないわけでございます。
  35. 尾身幸次

    尾身委員 次の質問に移りますが、この損失補てんという行為は、先ほど来話にありますように、いかなる企業、個人も平等に損失あるいは利益について自己責任原則を適用すべきである、されるべきであるという資本主義社会の一番の基本的原則を踏みにじるものであると思うわけでありますが、証券取引法上はどう扱われているか。また、欧米の法律ではこれをどう扱っているか、お伺いをさせていただきます。
  36. 松野允彦

    松野説明員 損失補てん行為は、先ほど申し上げましたように、有価証券投資自己責任原則という基本原則に反するものでございます。私、先ほど申し上げましたように、日本の証券取引法では、事前損失保証を約して勧誘する行為禁止行為になっておりますが、事後的な損失補てん行為については、証券取引法上直接これを禁止する規定はございません。その結果、元年末の通達指導をしたわけでございます。  アメリカあるいはイギリスにつきましても、私どもが承知している限りでは、法律によって事後損失補てん行為禁止しているというような例はないと聞いております。ただ、アメリカにおきましては、ニューヨークの証券取引所あるいは全米証券業協会などの自主規制団体が決めております規則の中で事後的な損失補てん禁止しているというふうに承知しております。
  37. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、先ほどの話に戻しますが、平成元年の末に通達を出したわけでありまして、それは証券各社に対しましてブラックマンデー以降の損失補てんについて自主点検を行い、その結果を平成二年の三月末までに報告するよう口頭で指示したというふうにされているわけでありますが、この指示を受けて出された各社自主報告内容はどのようなものであったか、改めてお聞かせいただきます。そして、その金額を、税務当局によって後で指摘されたものも含めましてここでお示しをいただきたいと思います。そして、さらにそのうち平成元年末の通達以前のものと以後のものの区分はどうなっているか、その点についてお伺いをいたします。  それから、いわゆる自主報告内容損失補てんについては、法律違反に当たる損失保証があったかないかということについてもお伺いをいたします。
  38. 松野允彦

    松野説明員 元年十二月末に出しました通達にあわせまして、各証券会社に対しブラックマンデー以降の損失補てんの有無について自主点検を行い、その結果を平成二年三月末までに報告するよう指示をしたわけでございます。それで、その指示に従って自主報告がなされたわけでございますが、大手四社につきましては、平成二年三月に、合わせまして当時自主申告額千六十億円という損失補てんがあるという自主報告がございまし た。  なおその後、これは七月二十三日の有価証券訂正報告書段階で精査をいたしまして、若干の照合ミスがございまして千四十五億に訂正をされております。それからその後、国税の税務調査によりこの自主報告から漏れていた損失補てんが認定されまして、それを含めますと四社の損失補てん額の合計は千二百八十三億、これは訂正後の数字でございますが、千二百八十三億という数字になっております。  それから、この通達以前のものと以後のものとという御指摘でございますが、当時、自主報告をとりましたときには、その報告を受けた段階通達発出後の損失補てんが含まれているという報告を受けたわけでございますが、特にその通達発出前後と分けて数字を把握しておりません。  それから損失保証、つまり法律に触れる事前保証約束でございますが、これは当時の報告では損失保証はないという報告を受けております。
  39. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、その時点大蔵省自主報告とあわせて各社に対して厳正な社内処分を行わせたということになっているわけでありますが、その処分はいかなる根拠で行わせたのか。そしてまた、こうした処分を行ったときになぜ公表をしなかったのか、その点についてお伺いをいたします。
  40. 松野允彦

    松野説明員 損失補てん行為は、基本的な自己責任ルール証券会社みずからがそれを守らないという、いわば証券市場の基本的なルールを非常に犯す行為でございます。したがいまして、私ども認識では、それは通達禁止をするという、もちろん行政指導で行うなということを十二月末にやったわけでございますが、それ以前においてもそういった行為が不適正な行為だということに変わりはないわけでございまして、私どもはその自主報告を受けて、それに基づいて各社に対し厳正な社内処分行政指導ベースとして要請をし、行わせたわけでございます。  公表の問題でございますが、自主報告につきましても、証券会社の自主的な報告ということで、公表を前提としないということのもとで証券会社から自主的に報告を受けておりますし、また、行政指導ベースでの社内処分ということでこれも行政指導で行っておりまして、そういう関係からあえて我々としては公表を差し控えさせていただいたところでございます。
  41. 尾身幸次

    尾身委員 行政指導社内処分をさせた、それから、公表しないということで自主報告をさせたということでありますが、基本的な自己責任原則に反しているような行為であるから社内処分をするべしであるという行政指導をしておりながら、それを世間に公表しないということは、行政当局と業界との間が、悪い言葉で言えばいかにも密着と言われてもいいような感じを、国民一般から見て受けとめざるを得ないというふうに思うのでありますが、現時点で、そのときにやったそういう行政行為が正しいというふうにお考えでございましょうか。
  42. 松野允彦

    松野説明員 御指摘のように、確かに基本的に有価証券投資ルールに大変もとる行為でございます。  ただ、私どもといたしましては、証券取引法に直接禁止されている規定がある行為でもございません、法律違反行為ということでもないわけでして、あくまでも行政指導ベース報告を求め、厳正な社内処分を行わせたということで、自主的な措置ということでございまして、公表をすることを差し控えさせていただいたわけでございます。
  43. 尾身幸次

    尾身委員 私は、現時点でそのときの行為が正しい行政行為であったと考えておられるかどうかという質問をしております。公表しなかったということですよ。
  44. 松野允彦

    松野説明員 行政指導に基づきますいろいろな報告の徴収あるいは社内処分の要請というものにつきましては、やはり行政の円滑な運営というようなことを考えますと、やはり我々として公表することは差し控えさせていただくのが適当であるというふうに考えております。
  45. 尾身幸次

    尾身委員 この報告を提出するに当たりまして、大蔵省は、営業特金適正化を図るために営業特金契約の解約料というような形で損失補てんを黙認したとも言われているわけでございます。そして、平成元年の十二月から二年三月までの間に、いわゆる営業特金適正化する過程で巨額な損失補てんが行われたのは、その原因として、元年十二月に存在していた営業特金は文書によると否とを問わず暗黙の損失保証的合意があったためではないかというふうにも報道もされているわけでございますが、この点については大蔵省はどういうふうに認識し、またどういうふうに対応したか、お伺いをさせていただきます。
  46. 松野允彦

    松野説明員 証券各社から三月にかけまして自主報告を求めました中に、通達発出以後の損失補てんが入っていたという報告はあったわけでございます。  これにつきましては、その当時、各社から、平成二年一月以降の株価の急落局面において営業特金適正化をめぐって相当のトラブルが発生し、それに対処するために余儀なくされた損失補てんであるというような説明がなされたわけでございますが、私どもとしては、十二月末の通達事後的な損失補てんを厳に行わないようにという指導をしてまいっておりまして、もちろん営業特金適正化損失補てん温床をもとから断つということも一方で行政指導をしていたわけでございます。したがいまして、営業特金適正化をするために損失補てんを容認するというようなことは一切なく、損失補てんについては厳に行わないようにという指導をしていたわけでございます。
  47. 尾身幸次

    尾身委員 この平成二年の自主報告がなされた以降におきまして、先ほど局長お話によりますと、税務調査の過程で損失補てんと考えられるものが見つかったということでありますが、これは証券会社自主報告段階で虚偽の報告があったということになるのかどうか、そして、そういう自主報告を受けた後に特別の検査も行わずにそのまま放置していたことについて大蔵省責任はどう考えるのか、この点についてお伺いをいたします。
  48. 松野允彦

    松野説明員 自主報告の後税務調査が行われ、税務上さらに事後的な損失補てんであるという認定を受け、更正を受けたものがございます。その内容自主報告との内容を突き合わせてみますと、自主報告に含まれていない事後的な損失補てんがあったということがわかったわけでございます。  税務認定の結果ではございますけれども、結果として自主報告に含まれていなかった事後的な損失補てんがあったということについては、我々として大変遺憾だというふうに思うわけでございますが、税務認定の問題でございます。初めから虚偽の自主報告であったということを決めつけることは難しいのではないかというふうに考えております。
  49. 尾身幸次

    尾身委員 損失補てん先の公表問題についてでありますが、今まで補てんを受けた取引先企業名の公表がなされていないわけでありますが、大蔵省としてこれを公表するお考えはないかどうか、そしてまた、大蔵省公表できないのであれば、国民の証券会社あるいは証券市場に対する信頼感を回復させるためにも、大蔵省として証券会社に対して公表をするよう行政指導をするお考えがあるかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  50. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回の事案に関しまして、国民の証券会社また証券市場に対する信頼を回復し、証券市場の今後の発展というものを期するためには、極力国民の前に事案の具体的な姿をお示しする必要がある、そうした声というものは、私は非常に重く受けとめております。しかし一方、公務員としての守秘義務とのはざまでどんな対応が可能であるか私自身が悩み抜いているさなかであります。そして同時に、証券業界自身の手でこうした問題が公表されるべきではなかろうか、本来、みずからの商取引内容でありますから、私は、証券業界御自身の手でこれらが明らかにされるべ きではないか、基本的にはそう考えております。  いずれにしても、こうした、いわば内容が不明確なままの姿がいつまでも続くということは、行政当局としても耐えられることではございません。
  51. 尾身幸次

    尾身委員 私は、この問題につきましては、公表を求める国民の声が相当強いのが実態であると思っております。そして私自身も、国民の皆様にあります不信感を払拭させるためにも、証券会社に対し公表を行うよう求めたいという気持ちもあるわけであります。  他方、先ほどの質問に対する答弁にもありますように、補てんを受けた企業が資金運用を事実上証券会社に一任をしていて、補てんされたということについての意識をしていない、あるいはこれを知らないということも十分考えられるところであると思っておりまして、このような場合に、補てんを受けたとして一方的に企業名を公表することの影響というものも十分考えなければいけない、そのように思っているわけでございます。また、公表によって証券会社と個々の取引先との信頼関係が失われる、そういう心配もあることも事実であります。  しかしながら、自由で平等な競争あるいは自己責任原則のもとにおける資本主義社会の根幹を揺るがすこの補てん問題について、事実関係を十分に究明して、その責任を厳しく追及することが必要でありますし、また、二度とこのようなことが起こらないような対策をとらなければならない、そのように考えているわけでございまして、その補てん先企業名の公表につきましては、行政当局におきましてさらに前向きに検討がされることを希望いたします。  そこで、先ほど大臣が、自主的に企業自身の手で明らかにされるべきではないかというお話でございました。今私が申し上げましたような観点から見ると、私は、証券会社にも顧客の秘密を守るという商業道徳があり、そしてまた取引先との信頼関係も失ってはならないという立場もあると思うわけであります。そこで、もし大蔵省が国民の証券市場への信頼を回復させるためにこの内容公表した方がよいという御判断であれば、大蔵省行政責任で強くこの点を業界に行政指導をしてほしい、そのように思います。  私は、大蔵省としての守秘義務というのは、公務員の立場として理解できるわけでありますが、やはり行政当局として、この点についての方向性を示して、大蔵省行政責任行政指導をするという立場をとられてもいいのではないかというふうに考えているわけでありますが、この点についての大蔵大臣の御所見をもう一度お伺いをさせていただきます。
  52. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 もともと大変情けない話でありますが、損失補てんという行為自身、商売の中でそういうことが行われるような性格のものではないという認識で、日本ばかりではなく、実は海外、例えばアメリカ、イギリス等でもこういう行為法律で規制することすらいたしておりませんでした。ところが、残念ながら我が国においては、そうした行為が現に行われ、通達を出しましてもそれが守られなかったという事実がございます。そして、そうした中におきまして、先ほど局長からお答えを申しましたように、例えばアメリカの場合にその証券取引所法に損失補てんそのものを禁止する規定はございませんけれども、ニューヨーク証券取引所などの自主規制団体がみずからのルールによってこうした行為を禁じておるという例もございます。  こうしたことを考えますと、私は、証券業界御自身がやはりこうしたことについてみずからを律する態度はあってしかるべきもの、そのように考えておりますし、本院においてそうした気持ちを申し述べるのは本日が初めてでありますが、他の場におきまして私はそうしたことを業界に慫慂したいという気持ちを申し述べてまいりました。
  53. 尾身幸次

    尾身委員 次に、損失補てんをした証券会社の範囲でありますが、今までいわゆる大手四社について補てん金額、損失補てん報告内容公表されているわけでありますが、それ以外の証券会社につきましては明らかにされていないわけであります。  ただしかし、私はいろいろな情報を新聞等で拝見をいたしますと、それ以外の証券会社についても損失補てんを行っていた企業はあるというふうな報道もあるわけでございまして、その点について、そういう企業があるとすればここでその企業名と金額を公表していただきたいと思います。
  54. 松野允彦

    松野説明員 通達に基づきまして自主報告をとりました。その自主報告を出してまいりました会社は、四社以外にもあるわけでございます。四社以外の自主報告を出してきた会社につきましては、個々の会社名について私の方から申し上げることは差し控えたいと思うわけでございますが、私どもとしては、現在有価証券報告書の訂正といった形で明らかにするよう各社指導をしているわけでございまして、まだ税務更正の決定が出ていない会社もございます。公認会計士と計数の精査をしているところもございます。準備が整い次第、できるだけ早く訂正報告書を出すということで指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  55. 尾身幸次

    尾身委員 この四社とそのほかの会社が同じに三月に自主報告を出してきたのかどうか、そしてもし出してきたとすれば、四社については自分から名のりを上げる、公表をすることを行政指導し、その他の企業については行政指導しなかったのか、あるいはその他の企業についてもそういう自主的に発表することを指導したんだけれども発表しなかったのか、どちらであるか、その点についてお伺いをいたしますのと同時に、ここで、ほかにもあるけれども名前を発表できない、あるいは数字も発表できないというのは、どうも責任ある行政当局の立場としていかがかなというふうに思うわけでございますが、その点について再度御答弁をお願いいたします。
  56. 松野允彦

    松野説明員 今申し上げましたように、四社以外にも自主報告平成二年三月に出したところがございます。個々の会社名については明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、この自主報告を出すように私ども指導をいたしましたのは、本省が直接監督しております証券会社二十二社でございまして、その中には四社がもちろん含まれております。その本省が直接監督しておりまして自主報告を出すように指導いたしました二十二社のうち、四社を除きまして六社から報告が参っております。その総額はおおむね三百五十億円ということになっております。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、有価証券訂正を行うという指導をしているわけでございまして、その有価証券の、精査をして、あるいは税務更正の決定があって確定した数字になったときに訂正を行うとともに、その内容について可能な限り四社と同じような形で自発的に公表するようにという指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  57. 尾身幸次

    尾身委員 本省担当の二十二社に自主報告を求めて、四社のほかに六社、三百五十億円の自主報告があった、こういうことでありますが、確かに大手のいわゆる四社というのが証券市場の中で非常に大きなシェアを占めているということは私もよく理解をしておりますが、しかし、この種の問題についての公表されたことによる企業に対する打撃というのも相当にあるのも事実でありまして、ほかの企業六社と、既にかなり詳細に公表されております四社について差別をして対応をした、つまり、残りの六社については有価証券報告書の訂正を待って、あるいは税務報告が決まってから発表をするように指導をし、四社についてはもっとずっと早い段階に出すようなことを指導したのではないか、お話を伺っていてそういう感じがするわけであります。  その点について、企業規模の大小とかいうこととこの問題の不適正なあり方という点については関係がない、したがって、もし行政指導をするのであれば同じ扱いにして、また公表も同じ扱いにすべきではなかったかと思いますが、その点につ いてはいかがでしょうか。
  58. 松野允彦

    松野説明員 確かに、規模の大小にかかわらず事後的な損失補てん行為というのが不適切な行為であることには変わりはないわけでございます。したがいまして私どもも、四社以外、今申し上げました自主報告のありました六社についてできるだけ早く内容公表するように指導をしているわけでございますが、もう税務更正を受けて現在公認会計士の精査が終わり、間もなく訂正報告書が提出できるという確定した数字が出てまいります。その段階公表をし、できるだけ、可能な限り内容を明らかにするという方が適切ではないかというふうに判断した次第でございます。
  59. 尾身幸次

    尾身委員 そこで私は、今お話をお伺いいたしますと、四社以外にも幾つかの損失補てんを行っている大手というか中堅というか、中堅と言ったらいいのかもしれませんが、そういう証券会社があるということであります。そういう点を考えますと、私は、この問題は大手四社の証券会社に限らない、いわば証券業界あるいは証券金融市場全体の構造的な問題であるというふうに考えざるを得ないと思うわけであります。すなわち、証券会社大口顧客に対しては損失補てんという行為をしてまでも一定の利回りを確保し、そしてその取引関係を維持しておけば証券会社としての手数料収入などが入るわけでありますから、結局は利益が上がるということが期待できる。そしてまた他方、大口顧客企業等は、ある程度以上の運用利回りを確保できないような証券会社からはほかの証券会社運用委託先を変更するという可能性を示唆することによって証券会社に有形無形の圧力を加えて一定の利回りを確保させることができる。このような、資本主義社会の基本である自己責任の原則、マーケットメカニズムの原則と相入れないようなものが、ある種のなれ合いの構造で行われてきた。そして関係者はそのことがいわば当然の慣行であるかのような意識でやってきたのではないかと思うわけでありまして、そういうことが今回の不祥事を引き起こした基本的な原因ではないかと考えているわけであります。この点の認識について大蔵省のお考えをお伺いさせていただきます。  そして、したがいましてそういう考えに立つと、この問題は単に罰則を強化したり検査を厳しくしたりするだけではなしに、もとよりそういうことも必要かもしれませんが、そういうことだけではなしに、例えば今の手数料の固定制、固定手数料制の可否、これがいいか悪いかという問題、あるいは本来手数料収入で仲介業を営む証券会社が非常に弾力的に株式とか証券の自己売買を行うことをもっと厳しく制限するべきではないかという点、さらに外国の例にありますようにSEC、証券取引委員会のごとき機関を設置したらどうかという点、あるいは証券会社とその系列の投資顧問会社、この関係を完全に分離する、遮断するというような点、もちろんこれらは一例でありますが、こういう点を含めて証券金融市場全体のあり方、システムについて構造的な対策を講じなければ、この損失補てん問題の再発防止、こういう資本主義の基本を揺るがすようなことの根を断つことはできないのではないかという感じがするわけでありますが、この点について大臣のお考えをお伺いさせていただきます。
  60. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今私どもが考えております対応、今後の対応につきまして私から申し上げ、補足すべき事務的な点につきましては事務当局から御答弁することをお許しいただきたいと存じます。  今、私どもとしては、こうした事態が起こりましたことにかんがみ、今回の損失補てんなどの不公正な取引温床となりやすい取引一任勘定というものを原則として禁止する通達を先般発出させました。さらに現在、この取引一任勘定の原則禁止、また損失補てん禁止などにつきまして証取法上の措置とすべき必要な規定の整備などについて検討を進めておるところでございますが、事実認定の問題等の検討点もございまして、今、鋭意検討を進めておるさなかであります。そして、その結論を得次第、今臨時国会におきまして証取法そのものの改正の御審議をお願いいたしたいと考えております。  また、これらに関連をいたしまして、自己責任原則を規定とすべきかどうかといった点についても検討を加えておるところでございます。  同時に、今委員からも多少お触れをいただきましたけれども検査体制そのものについても私どもとして根本的な検討を加えつつあります。  ただ、今委員から御指摘のありました中で、例えば固定手数料そのものがよいか悪いかということになりますと、例えば外国の例のように、自由交渉制にした結果、大口お客さんに極めて有利な手数料が設定をされ、交渉能力の弱い小口の投資家が逆に市場から離れていくといったケースも見受けられるわけでありまして、私個人が考えますならば、この水準のよしあしは別といたしまして、固定手数料という仕組みと自由な手数料設定というもののいずれがよいのかということになりますと、私自身証券取引をしたことがないせいもありまして、実は判断がつきかねる部分がございます。  また同時に、いわばアメリカのSECのような仕組みと申しますものは、登録制というものを前提にした仕組みでありますだけに、免許制を基礎とする日本の仕組みとして果たしてこれが的確なものかどうか、さらに司法権との関係をどうするか等、私どもとしては考えなければならない問題点を含めておるように思います。  いずれにいたしましても、事務的に多少補足をさせることをお許しいただきたいと存じます。
  61. 松野允彦

    松野説明員 証券会社の自己売買についてのお尋ねでございます。  証券会社が行います自己売買につきましては、証券業が免許制に昭和四十三年から移行したわけでございますが、この免許に付せられた条件がございまして、その条件によりまして、「証券会社の自己売買業務は、公正な市場を維持しかつ有価証券の流通を円滑にするために必要な限度を超えないようにするものとする。」という免許の条件がついております。こういうことで、自己売買についてはいわばブローカーの補完ということで免許の条件にもなっております。私どももその実効性が上がるように常日ごろ市場における証券会社の自己売買について注意をして見ているところでございます。  それから、もう一つのお尋ねでございます投資顧問会社証券会社との分離、関係の問題でございます。  投資顧問業法におきましては、投資一任業務の認可を受けました投資顧問業者について、取締役の兼職の制限など関係会社からの独立性の確保に配慮しているところでございます。また今般、証券会社取引一任勘定を行うことを原則として禁止する通達を出しました関係上、投資顧問会社が行います投資一任勘定の適正かつ公正な運営が一層求められるわけでございまして、そういう投資一任業務を行います投資顧問会社関係会社、親会社の証券会社との間の関係適正化あるいは投資顧問会社の独立性の一層の確保という点についてさらに指導を強めてまいりたいと思っているわけでございます。
  62. 尾身幸次

    尾身委員 今まで種々質問をしてまいりましたが、もとよりこの問題は我が国資本主義社会の根幹を揺るがす極めて深刻な問題でございまして、いわゆるもたれ合いとか大企業の甘えとか、そういう構造にメスを入れて原因を徹底的に究明し、そして正すべきところは正す。資本主義社会の中核であります証券金融市場に対する国民の皆様の信頼を回復しなければならないと考えているわけでございます。  私どもとしては、立法府として、我が自民党の中はもとよりでございますが、野党の皆様とも十分に協議をし、そして行政府の意見も聞きながら、国民各層の意見を十分に聞いて真剣に努力をして、こういう不祥事が二度と起こらないように全力を尽くさなければならない、そのように感じている次第でございます。  本日は閉会審査ということでございますが、来月の五日からはまた国会も始まるわけでございますから、そういうところを通じまして、この問題に対して私ども全力を尽くして解決に努力をし、そしてこのようなことが二度と起こらない健全な資本主義社会、マーケットメカニズムが健全に働く社会をつくり上げたいと念願をしている次第であります。  残りの質問同僚議員に譲りまして、以上で私の質問を終わります。
  63. 平沼赳夫

    平沼委員長 田中秀征君。
  64. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 ただいま同僚の尾身議員の方から事実関係の確認を中心にして、今回の不祥事について全般にわたる適切な御質問がありました。尾身議員の方からも触れられましたけれども、私は、今回の事態に対して行政当局が今後どのように対応していかれるか、その対応策について、それに絞ってお伺いをしたい、このように思います。  まず最初に大蔵大臣にお伺いしたいのでございますが、今回の不祥事、これを歴史的な位置づけといいますか経済史的な位置づけといいますか、ちょっと大げさですけれども、実は今回の事件で、リクルートのときも私はそう思ったのですが、これは証券市場の生々発展過程あるいはまた成熟過程の一段階の、必ず起こるあるいは避けられないというようなことは申しませんけれども、そういう証券市場の成熟過程、発展過程と絶ちがたい関係があるのではないか、そういうふうに受けとめております。  それで、特に大恐慌のときのアメリカと同じじゃないか、そういう意見がありますのでちょっと調べてみたわけでありますが、確かに当時のアメリカは経済の大きな躍進を遂げているときでありまして、特に自動車、鉄鋼、化学、そういうものを中心にして八年間に工業生産が倍になる、そういう急激な伸びを示しておりました。それから、近年の日本と同じなのは、資本の輸入国から輸出国に転じて経済超大国として登場した時期でありますし、また、社会資本の整備が集中的に行われていた時期でございます。株式市場においても異常な株高、投機熱が沸騰した時期で、わずか数年の間に五倍ぐらいに株価がはね上がったそうでございます。それからまた投資家の倫理観、これもどちらかといえば欠如していて、そして取引ルールもまだ確立していなかった。その中で大恐慌によって株価が一気に十分の一に下がる、そういう事態に見舞われたということであります。  そうしますと、私は、投資家が未熟であった、それから証券市場が確立していなかった、あるいはまだまだ未成熟であった、そういうことと国力、そして力とエネルギーが横溢していた、そういうところに視点を当てますと、そっくりとはいかないまでもよく似ていたんじゃないか、そんなふうに受けとめるわけでございますが、その辺について大蔵大臣、どのようにお考えでございますか。
  65. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変難しいお尋ねでありますけれども、八〇年代というものを振り返りましたときに、世界的な金融緩和基調、また世界経済の長期的拡大傾向というものの中におきまして、企業の余裕資金の効率的運用というものがいわゆる財テクブームというものを呼んだ、そしてその中において株式市場も活況を呈してきたという点につきましては、私は委員の御指摘どおりであろうと存じます。  こうしたブームの中におきまして、証券会社の業務なども拡大いたしたわけでありますけれども、一方でその営業姿勢において行き過ぎがあったこと、またお客の側になられる方々も自己責任原則というものの徹底が不十分であったこと、こうしたことは確かに今委員が述べられましたような今回の損失補てんといった行為を招く背景にあったかとも思います。殊に、八七年の十月、いわゆるブラックマンデーというものの起こりました後、いわゆる営業特金売買一任的に運用をされてきた、その結果として損失補てん等の不適当な営業行為が発生したものと理解をいたしております。  いずれにしても、特定投資家に対する損失補てんというものが、一般投資家証券会社証券市場への信頼を著しく損ねていること、また投資家自己責任原則に反するという行為であることは言うまでもありません。今委員が述べられましたように、この不幸な事態というものを私どもは将来の幸いに転ずることができればと、全力を尽くしたいと考えております。
  66. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 災いを転じて福となすという言葉がありますけれども、私がただいま大臣にお伺いしたのは、とにかく今回の不祥事、日本にとって大変不幸なことであったわけですが、今のようにとらえますと、やはり日本の証券市場がどうも着ている服が小さくなったんじゃないか、古くなったんじゃないか、あるいは型が合わなくなったんじゃないか、そういう事態、体が大きくなり過ぎて、そして今までの量的な拡大発展が質的な転換を遂げつつある、そのように私は受けとめているわけです。  しかし一方で、この機会というのは、より健全で公正で、なおかつ透明度の高い証券市場をこの機会につくっていく、そして国際資本市場としてそれにふさわしい、そういう市場に発展させていく絶好の機会であるというふうに思っております。そういう点で、この絶好の機会に行政当局は、新たな証券市場として生まれ変わるためにどのような思い切った対応策をお持ちなのか、先ほどもお答えありましたけれども、もう一度かいつまんでお話をいただきたいと思います。局長、お願いいたします。
  67. 松野允彦

    松野説明員 確かにこの問題は非常に大きな、証券市場に対する投資家信頼感を損ね、有価証券投資の基本的な原則に反する問題でございます。こういった問題を契機に証券市場の抜本的な改革というものが必要であろうというふうに思うわけでございます。  私ども証券市場の透明性あるいは公正性の向上という点につきましては、従来からも、例えばインサイダー取引規制あるいは大量の株保有についてのディスクロージャー、いわゆる五%ルールなどを通じて努力してまいったわけでございますが、今回のこの損失補てんという問題に対応いたしまして、この損失補てん温床となりやすい取引一任勘定というようなものについて当面、まず通達を発出いたしまして、この取引一任勘定の原則禁止という指導を行ったところでございます。また、こういう問題が生じます法人と証券会社との間の営業取引関係というようなものについて社内で十分チェックできる体制を具体的につくり上げていくというための改善策について現在鋭意検討を進めておりまして、これも今月中にもその指導を含めました通達を発出したいというふうに思っております。  さらに、この事後損失補てん、これは現在証券取引法では禁止行為になっておりませんが、これほどの問題となり、かつ証券市場信頼ということが問題になっております。証券取引法を改正いたしまして事後的な損失補てんについても禁止をする、あるいは今申し上げた通達禁止指導いたしました取引一任勘定についても証券取引法の中で禁止をするという方向で、現在鋭意検討を進めているところでございます。事後損失補てん行為といいますのは、有価証券売買の形をとっておりますものですからなかなか事実認定に難しい問題はございますが、その問題についても関係当局と意見調整をし、できるだけ早期に証券取引法の改正案を固めたいというふうに思っております。  また、あわせまして検査の充実強化につきましても、証券会社に対する検査の体制を抜本的に見直して、その充実強化を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  68. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 今のお答えに関連してちょっと伺いたいのですが、法改正を準備中ということでございますが、損失補てん法律禁止する、そういうお話がございますが、罰則の方はどうなっているのかということ、それから受け手の側、もうけた側についてはどういう形で考えておられる のか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
  69. 松野允彦

    松野説明員 損失補てん禁止につきましては、現在罰則を適用することも含めまして関係当局と意見調整を進めております。  それから受け手の問題でございますが、これは今回の場合でも損失補てん認識のないケースもあろうかと思うわけでございますが、明らかに認識をして損失補てんを受けているという場合について法律上の規制ができるのかどうかという点についてもあわせて検討を進めております。
  70. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 実は、心配なのは、ことしの五月に証取審で報告書を出されました。私もそれは一読してみたのですが、その中に、今回の事態のような展開を、当然予想できないことですけれども、それを念頭に置いて審議した経過というようなものを私の方で読み取れなかったものですから、一体そういう形での法改正で乗り切れるのかどうか、新しい証券市場に生まれ変わるのかどうか、大変疑問に思っているわけでございます。  先ほど大臣の方からも御答弁がありましたけれども、このところ経団連あるいは行革審、あるいはまたきょう新聞で野村証券の新しい名誉会長さんが、SECのようなものを導入すべきだということをおっしゃっておられます。私も、何らかの形で独立したそういう捜査、摘発をする、そういうことまで含んだ機能を持つ監視機構というものが必要だというふうに認識しているわけでございますが、局長、そのSEC、アメリカのSECについてどうお考えなのか、それが今の日本に設置されるということになればどういう問題点があるのか、その辺のところをちょっと詳しくお願いいたします。
  71. 松野允彦

    松野説明員 アメリカ証券取引委員会、SECについてのお尋ねでございます。  SECは、アメリカではいわゆる行政委員会として独立の立場で証券行政を行っているわけでございます。SECの行っております証券市場あるいは証券会社に対する行政という中身そのものは、私ども大蔵省証券局が行っております中身とその範囲においては変わりはございません。やはり証券市場に対するいろいろな指導監督も行っておりますし、アメリカの場合には証券会社は登録制ではございますけれども証券会社に対する指導監督も行い、あるいはディスクロージャー制度の執行もしております。検査も当然行っているわけでございます。  問題は、その検査の権限の問題でございまして、SECの場合にはその検査の一環として例えば証人の召喚権がある、あるいは種々の資料、例えば電話の通話記録なども含めてそれを徴収する権限があるというようなこともございますし、あるいは事情聴取に対して虚偽の陳述をいたしますと偽証罪に問われるというようなこともあるわけでございます。こういった点は、私ども証券局の検査権限よりははるかに強力なものでございます。  ただ、私どもの考えといたしましては、アメリカの場合には先ほど申し上げましたように証券会社が登録制でございまして、登録されている証券会社の数が大体一万二千社ぐらいございます。その一万二千社の証券会社の中身を見てみますと、年間千五百から千八百ぐらいの証券会社が新たに登録され、あるいは登録抹消をされるというようなことで、中身がかなり入れかわっているわけでございます。登録制の場合にはそういう大量の証券会社が存在し、かつそういう入れかわりが起こるというような環境にあるわけで、そういった環境のもとではSECのような強力な調査権あるいは事後取り締まり権というようなものが必要だろうと思うわけでございますが、我が国の場合には昭和四十三年に免許制に移行いたしまして、それまでの登録制の場合には千社を超えていた証券会社が、現在国内証券会社だけですと二百十社程度に整理統合をされております。そういう免許制のもとにある証券会社について、今申し上げたような登録制のもとでの証券会社の消長といいますか、入れかわりが起こるような格好での検査というようなものが果たしてなじむのかどうかというような問題があろうかというふうに考えているわけでございます。
  72. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 私が心配しているのは、例えば損失補てんにしても、法律禁止されたということで、その後に法律違反事態が起きた場合にまた大蔵大臣から監督不行き届きという言葉をいただかなければならないのじゃないか、そういう懸念でございます。要するに、非常に粗っぽく申し上げますと、一体弁護士と検事を兼ねることができるのかどうか、そういう心配がございます。したがって、行政指導の中で監督不行き届きというお言葉を非常に誠意を尽くして大蔵大臣の方からおっしゃっていただいているわけでありますけれども、この流れでいくと、法律違反のときも、大きな場合には監督不行き届き、そういう声が求められるような感じがしているわけでございまして、これはもう何か論理的な矛盾があるんだ、そういうふうに思わざるを得ないわけでございます。  それだけじゃなくて、国債の発行あるいはNTT株の発行、そういう市場に参入することもあり得る大蔵省、それが弁護士と検事の役割を二つあわせ持つということが適当かどうかについて私は強い疑念を持っているわけでございます。  そこで、局長にお伺いしますが、SECの中で特に警察的機能あるいは司法的機能、証券行政は残して、そういう機能だけでも独立させるということが当面非常に現実的じゃないか、そんなふうにも私は思っているわけですが、これについていかがお考えですか。
  73. 松野允彦

    松野説明員 先ほど御説明申し上げましたように、SECも形の上といいますか、全体の業務範囲では私ども証券局と同じ仕事をしておるわけでございます。ただ、先ほど申し上げた強力な検査権限を持っているということ、さらにその検査を行う部局、これはSECの中の一つの局でございますが、この局がほかの局と独立して行動しているという格好になっているわけでございまして、私、それは登録制ということでもう一つ環境としては違う点があろうかと思いますが、証券局の中におきます検査と行政との部局、これもやはりSECの中と同じように別の部局でやっているわけでございますが、SECのように、検査をやっている部門はほかの部門と関係なく純粋に検査を追求し、それの後始末をするといいますか、必要な措置をとるというようなことで、行政と検査を分けて、同じ局の中にありながら分けて、割り切って運用をするというようなことは一つの大きな検討課題ではないかというふうに考えているわけでございます。
  74. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 私、実は、最近、近年になりまして、大蔵省証券局が新しい証券市場の形成に向かって大変な御努力をしているというふうに敬意を表してきたわけでございます。脱皮への真剣な努力をされていることを私は高く評価しているものでありますけれども、先ほどの弁護士と検事の話でありますが、国民的なレベルから見ましたら、やはりそれはなかなか納得できない、そういうものだろうと思います。それはしっかりと峻別しておやりになったとしても、信頼性という問題になりますとこれは話は別問題ですから、やはり信頼性があって初めて検査あるいは告発、そういう体制が備わるのじゃないかというふうに思いますので、このことは証券局で一生懸命おやりになって、それこそ検査は検査だということでおやりになっても、国民から見た目は違うのだ、特に今回の事態でそういう信頼は大きく失われたということをやはり直視しなければいけないと私は思います。  それで、そのSEC、どういうSECがいいか、あるいは大蔵省の省内で、あるいは検査局のようなものをつくるとかそういう声も聞こえてまいりますし、検査体制を強化する、そういう御努力も伺っておりますけれども、そういう全般的な今回の不祥事に対する対応策を何らかの場、例えば証券取引審議会、こういう場で総洗いするとかそういうお考えはお持ちでしょうか。
  75. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、証取審といった審議会等に 御審議をお願いするところまで、私自身また事務方の検討も進捗をいたしておりません。ただ、今委員が御指摘になりましたように、一つの局の中における検査体制というものについてどれだけ努力をいたしましても、こうした事件が起こりました以上なかなか信頼がいただけないという御指摘は、私自身がそのとおりに考えております。そしてそうしたことから、機構そのものまでを含めて今私どもはその証券業務のみならず金融業務全体に対しての検査体制のあり方を根本的に洗い直しております。そして、これは概算要求との関係も横にらみをいたしながら、時期的にできるだけ早い結論を求めようといたしております。  今委員の御指摘の中で私が一つ問題を感じますのは、要するにSECというものを考えます場合に、やはり登録制というそのSECの機能のよって来るベースを抜きにしてこれをとらえることは問題があろうかと存じます。そして免許制を維持するという前提で考えました場合に、司法警察権との間における線引き等を考えますと、私はSECのような仕組みをそのまま日本に持ち込むことが必ずしも日本に合うとは考えておりませんが、こうした視点も当然のことながら御論議として成立するものであることを否定はいたしません。いずれにいたしましても、検査の手法そしてまた範囲、体制、機構そのもの、こうしたもの全部を含めて信頼を取り戻し得るその姿というものをでき得る限り早く私どもとして取りまとめたい、そのように努力をいたしております。
  76. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 私も、アメリカのSECそのままそっくり通用するものだというふうには思っておりません。登録制、免許制の違いあるいは財政的な面、それから人材が確保できるのか、いろいろ難しい問題があろうかと思います。ただ、アメリカ型のSECというものを参考にして、そして日本型の独立した監視機構をつくるべきだ、そういう考えを私は持っているわけでございます。いずれにしましても、これもまた絶対にいいと言うわけには自信がないわけで、それは私自身専門家ではありませんから、いろいろ難しい問題があろうかと思います。要は、この機会に証券市場が日本の国際資本市場としての役割にふさわしい市場として生まれ変わるかどうか、そこが目標でございまして、そのための議論をする場をぜひ設けていただきたいというふうに思います。特に、大蔵省の皆さんには頭痛いでしょうけれども大蔵省は大変な理論武装をする役所でありますが、その理論武装の根幹に権限保持とか権限擁護、そういう不純な動機がないように私はぜひこの際お願いしておきたいというふうに思います。  それで、私は実は、今回の議論の場、それを大蔵省の省内あるいは外郭に設けるのじゃなくて、総理大臣のもとに、住友やイトマンの問題がありますので、金融証券正常化調査会、そういうような名称のものをぜひ設けていただいて、期限を切って、年内にでも成案が得られるように、前川レポートのような成案を得て、機動性を持ってこの緊急の事態に対応するように私は考えています。これは大蔵大臣というよりも国務大臣として大臣にちょっと私の意見に対する御感想をお願いしたい、このように思います。
  77. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 とっさの御意見でありまして、必ずしも、的確を欠くかもしれません。また、委員の御構想自体にもう一つ私理解がいっておらないかもしれません。  私は、例えば総理のもとにそういうものをつくるという御意見は一つの御意見として総理にもお伝えをしたいと存じます。しかし同時に、その審議会ができたために、例えば検査体制を今我々は見直しつつありますし、概算要求に向けて間に合うようにその結論を出そうといたしております。また証取法改正につきましても、本来の証券取引法として論議をされてまいりましたものとは別に、今回の事態を踏まえた、いわばこうした不正常な取引が成立しない法律上の規制措置というものは今国会にも審議をお願いしたいと先ほどから申し上げております。こうした我々自身の努力というものがその審議会ができますために拘束をされるあるいはその後に結論を延ばされるということでは私は困ると思うのです。そういう審議会ができることについて別に私は異論を申し唱えるつもりはありません。また、先ほど委員から御指摘がありましたように、権限を擁護するという前提でこうした問題に我々は取り組もうとするつもりもございません。というよりも、この事態を一日も早く正常なものに戻すための努力というものは日々刻々行わなければならないと考えております。その審議会ができますために逆に我々の対応しようとする努力がおくれるのでは困る、率直なそんな感じを今抱いております。
  78. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 私は、先ほど局長からお話がありました大蔵省証券局内部での必死の御努力、それがだめだ、そういうことじゃなくて、これはもう私ども協力したいと思います。  実はこれも調べてみたところ、大恐慌の後にアメリカ証券市場の体制が整うときにやはり機動性のある調査会が不正取引というものを総洗いする、そういう行動をしております。それによって今までの制度にどこに欠陥があるのか、今までの法体系の中にどういう欠陥があるのかを総洗いして、それで一気に対応して三四年にSECができた、そのようになったのだということであります。これはもちろんその場で手数料の自由化の問題であるとか、もう一度登録、免許、これも実は私は現在の免許制というものに異論があるわけではないのですけれども、この問題も国民的な関心を呼んでおりますので、こういうことももう一度、免許がいいのか登録がいいのか、その辺のところを煮詰めて話し合ってもらったらいい。いずれにしても、中立的な委員を選んでそれで議論してもらう、それによって証券市場に対するあるいはまた証券行政に対する大きな信頼が内外ともに高まるというふうに私は思っております。  それから、証取審のことですけれども、証取審は何か今までの大手の四社から入っている人たちは参加を自粛するという話を私聞いておりますが、局長どうですか。
  79. 松野允彦

    松野説明員 まず最後のお尋ねからお答えしたいと思いますが、今回の事件を契機に四社の会長が公職を辞退いたしました。したがいまして、四社から出ておりました証券取引審議会の委員は現在辞任し、空席になっているわけでございます。  あといろいろと御指摘のございましたアメリカの、たしかこれはペコラ委員会と言っていたと思いますが、あれを契機にして一九三三年法、あるいは三四年法ができてSECができたわけでございます。  私ども実は、証券取引審議会の議論、先ほどちょっとお触れになりました、ことしの五月に出ましたいわゆる制度見直しという議論におきましても、証券市場におきます競争をいかに有効かつ公正な形で促進していくかという観点から議論を進めてまいったわけでございまして、そういったものはもちろんこういう不祥事といいますか、一連の問題が起こることを予想していたわけでは毛頭ございませんけれども、やはり証券市場における競争がややゆがんだものになっているのではないか、特に大手四社の寡占的な状況をどういうふうにしてより競争的な市場に持っていけるかというようなことも含めて制度見直しを考えて議論をしていただきまして、報告をいただき、具体的にこれから証券取引法の抜本的な見直しに入っていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、御指摘の手数料の問題あるいはそれ以外の抜本的な問題につきましても、例えばよく言われております日本における株価操作というものがいかにも法律でとらえられないではないかというような御指摘もございます。こういったものについて証券取引審議会におきましてやはり順次検討をしてもらいたいというふうに私どもは考えているわけでございまして、今回いろいろ出てまいりました問題、あるいはその根源にあります市場構造なども含めて、引き続き証券取引審議会で審議を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  80. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 随時証券取引審議会でというお話でありましたけれども、その大手証券会社からの委員さんが空席だということのほかに、私ちょっと心配しているのは、大企業の役員さんで委員になられている方、その大企業が、そういうことはないと思いますけれども、もしも損失補てんを受けた会社に属する方であった場合、大変心配でございます。そういうことも、そうないという断定する資料が私にはないわけでありますから、そういうふうに考えますと、証取審が機動性を持ってこの事態に対応するということはなかなか難しいことじゃないか、そんなふうにも思いますので、ぜひ私が先ほど申し上げたような形で、これはもう大蔵省一省のことじゃなくて政府の責任においてこの事態の打開策を見出していただきたい、そんなつもりで申し上げた次第でございます。  私は、今回の事態について実は国会議員として、それから与党の国会議員として大変責任を感じております。これは行政をチェックするのはどこかということになりますと、私どもしかいないという意味でございます。大蔵大臣は、私はきのうもテレビでちょっと拝見いたしまして、非常に真摯な姿勢で今回の事態をまともに、それこそ真っ正面から受けとめておられるというふうに私は敬意を表しているわけでありますけれども、私はどこに最大の第一責任があるかということになれば、やはり行政責任だと言われてもいたし方ないというふうにも思っております。そういう点では大臣、大変敬意を表しているわけでございますけれども、これは政府・与党、与党ばかりじゃなく野党の皆さんも含めて、何とか前向きに建設的に解決していかなきゃいけない、そういうことをつくづく感じております。  これで質問を終わります。
  81. 平沼赳夫

    平沼委員長 村井仁君。
  82. 村井仁

    ○村井委員 ただいま同僚の田中委員から、行政をチェックするのは私ども国会の非常に重要な仕事であるという指摘がありまして、私も全く同感であります。そういう立場から幾つかの問題につきまして質問させていただきたいと思うわけでございます。  私、それにつきまして最初にちょっとお伺いしたいのは、大蔵大臣は、次官以下を戒告されまして、またみずから給与の一部を国庫へ返納されるなど、責任を明らかにされたということでございます。そこでお伺いしたいのは、その責任とは証券業界に対する監督責任ということだとは存じますが、大蔵省としてどのような点で監督に欠けたところがあるとお考えになっておられるか、このあたりちょっとお伺いしたい。
  83. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私自身が一番感じましたことは、少なくとも行政通達というものを省として発出し、その特定行為禁止し、そしてその禁止をいたした行為がその後も継続していたことを見抜けなかったということについては、これはどういうおしかりをいただいてもやむを得ないものと思います。そして、それは私自身を含め行政当局として負うべき責め、そのように考えております。
  84. 村井仁

    ○村井委員 それでは、少し別の角度からお伺いしたいと存じます。  最近報道をされているところによりますと、問題があるのは証券業界だけではない。信託銀行も、ファンドトラストとかファントラとかいうような、何かトラのような話が出てきますが、同じ手口を用いているんだ、こういう指摘があります。そこでお伺いしたいのは、何かピークには十二兆円もあったというような話もありますし、証券の場合よりもさらに損失補てんが簡単だった、こんなような報道さえなされているわけでございますが、まずはこのファンドトラストというものはどういうものか、営業特金とどう違うのか、それから残高はどのくらいあるのか、一口当たりどのくらいから委託されるものなのか、信託期間はどのくらいか、こういった基礎的な問題、それから当事者でありますけれども、外銀信託でも扱うものなのかどうなのか、このあたりのところをまず教えてください。
  85. 土田正顕

    ○土田説明員 まず、ただいまお尋ねのファントラの商品性その他事実について御説明をいたします。  ファントラと申しますものはファンドトラストの略称でございます。それで、このファンドトラストというのは、投資家が委託者、信託銀行が受託者となりまして、主として有価証券投資を目的とした信託契約を締結し、受託者が広範な裁量権を持って有価証券運用を行う金銭の信託のことを言っております。信託商品はいろいろございますが、例えば元本保証のあるというような点では貸付信託が最も銀行預金に近い商品であります。いわばローリスク・ローリターンであります。他方、この委託者がすべての運用指図を行うという点で、特定金銭信託が最も株式の自己取引、ハイリスク・ハイリターンに近い商品でございます。ファントラはその中間にございまして、その信託銀行の運用によるハイリターンを期待する一方で、一任運用をした成果はたとえ損が出てもすべて甘受する、実績配当主義と言っておりますが、そのような商品性になっております。  そこで次に、この特定金銭信託、いわゆる特金と言われるものとファントラとの比較でございます。  この両者は同じく金銭の信託でありますが、特金の場合には、委託者自身が個別に運用の指図を行って信託銀行はその指図に従って取引を執行することに専念するという点でファントラとは異なっております。  それから、昨今特に問題になりましたいわゆる証券会社が勧誘いたします特金は、これはいわゆる営業特金と呼ばれておるものでございましたが、証券会社が投資情報とか助言を与えるにとどまらず、事実上売買を一任される例が多く見られたわけであります。このことが投資家の自己責任の原則をゆがめる、それから損失補てん温床となりやすいというようなことで当局の指導があったものだというふうに私どもは了解しております。  それで、ファンドトラストにおきましては、これに対しまして広範な運用裁量権、それは受託者、委託者間の高度な信頼関係に基づくものと言われておりますが、その広範な運用の裁量権が初めから信託銀行に認められておりまして、その意味で証券会社によるいわゆる営業特金とは根本的に異なるものであるというふうに私どもは見ておるわけでございます。  次に、ファントラの残高について御説明をいたします。残高は、平成三年三月末で九兆九百二十四億円に上っております。信託財産の総残高は大体今百九十兆円であります。それの約五%程度に相当いたします。  それから次に一口当たりというお尋ねでございますが、これはとりあえず調べた程度の数字でございますが、一口当たりの平均信託金額は約二十三億円という数字がございます。これはすなわちファンドトラストが大口顧客を対象とする信託商品であるということを示すものと思います。つまり、委託者もプロであり、受託し運用する方もプロである、プロ同士の商品でございます。  それで、その運用の中身についての統計はございませんが、いわゆるエクイティー物、これは三分の一からたかだか多くても五、六割ぐらいまでかと思います。それから比較的小口のものは債券中心の割合安定性を重視した運用をしておるとも聞いております。いずれにせよ、株式投資ばかりをやっているわけではございません。  それからその次に、信託期間についてのお尋ねでございます。信託期間につきましては、各顧客のニーズに応じた信託期間を設定できる、いわば大口顧客のためのオーダーメードの商品でありますので各信託銀行まちまちでございますが、概して申せば、三年から五年までのものがファンド口数のほとんどを占める銀行と、五年から七年ぐらいまでのものがほとんどを占める銀行と、二種類あるようでございます。いずれにいたしましても、かなり長目の運用期間を設定しております。  それから最後に、外銀信託もやはりこのファン トラを扱っておるものがございます。その残高は、この三月末で三千二百六十一億円でございます。
  86. 村井仁

    ○村井委員 引き続いて伺いますが、ファントラには、営業特金と同様の損失補てんというのは行われているんですか、行われてないんですか。その点、銀行局長、ちょっと明確に答えてください。
  87. 土田正顕

    ○土田説明員 まず、結論的な部分を申し上げますが、信託銀行各行に対しまして非公式に話を聞いておるところでございますけれども、信託銀行が委託者に対して元本補てんあるいは利回り保証約束し、それに基づいて損失補てんするといった事実は承知をしておりません。  それにつきまして多少解説を申し上げますが、損失補てんという言葉でいろいろ言われております、それがどのような行為を指すのかにつきまして、必ずしも明確な定義はございませんが、一般論として申せば、元本を保証したり利回りを保証したり、また事前保証約束する場合だけでありませんで、事前に明確な約束はないけれども元本割れや目標利回り未達の場合に補てんを行うような、そういうケースも含めて言っておることがあるようでございます。ただ、それにつきましていろいろ調べた結果、冒頭に申し上げましたように、今そのような事実は承知していないという認識を持っておるわけでございます。  信託の運用につきましては信託の本旨に従って受託者が行動する義務がございまして、これはお尋ねがあればより詳しく申し上げますが、例えば信託業法の九条、これは元本補てん利益補足の禁止の規定であります。それから信託法の二十条、善管注意義務の規定であります。それから信託法二十二条、これは忠実義務の思想を表現した規定であると言われております。そのような法律の規定に違反する行為の有無について重点的に話を聞いたわけでございますが、損失補てんといった行為は判明しておりません。  それからなお、利回りの目安というような問題で時々話題になることを申し上げますと、信託銀行が投資家との間でファントラの契約を締結するに際しまして、投資家の参考にする目的でそのときどきの市場環境なり利回りの見通しなどにつきましての情報を投資家に提供する。これはいわばセールス活動でございますから通常の活動であります。しかしそれはいわゆる利回り保証とは全く異なるものでありますし、その関係の書類にも、これは保証ではありませんと明示してあるようなものもございます。  それから、さらにもう一点申しますと、いずれにいたしましても、毎月受託者は運用状況の報告書を委託者に明示しておりまして、そこには、元本、資産、負債の状況、それから有価証券などの個別の取引の明細、日付、種類、単価、数量、そのようなものをすべて記載した書類を送付しております。そのようなことからも委託者側でも十分に目が届く仕組みになっているというふうに理解をしておるわけでございます。
  88. 村井仁

    ○村井委員 いずれにいたしましても、今のようなことであればよろしいわけでありますけれども、かりそめにも今問題になっています証券業界における問題と同じようなことが起こらないように十分な監督とそして指導をお願いしたい、それをまず申し上げておきます。  それから、時間が余りありませんのでもう一点。今度は証券局長暴力団問題。  これは私は非常に深刻な問題だと思っておるわけでございますけれども、野村それから日興、このあたりが暴力団取引したということにつきまして大蔵省として把握しているその事実関係を明らかにしていただきたい。私は、このことというのは、金がもうかりさえすれば何でもやるという証券会社の姿勢を象徴的に示している、こう言わざるを得ない。報道されているようなことでありますと非常に遺憾なことだと思っているわけであります。  それから、特に東急電鉄株につきまして野村証券が株価操作をやった疑いがある、こういうことが言われておる。このあたりにつきまして証券局で把握しておられることをまずお聞きしたい。
  89. 松野允彦

    松野説明員 野村証券と日興証券の二社の暴力団関係者との取引でございますが、私どもが現在まで報告を受けております事実によりますと、株の取引が昭和六十一年に開始をされました。これは二社ともそうでございます。平成元年の四月ごろから秋にかけまして当該暴力団関係者が東急電鉄の株の買い付けを行っております。これは、野村証券で約一千百万株、日興証券で約一千五百万株の買い付けが行われております。  なお、その過程で野村証券におきましては仮名口座を利用した取引が存在しております。  さらにこの株の買い付けの過程におきまして、野村、日興両証券の本社からの紹介によりまして、両社の関係会社であります野村ファイナンスあるいは日興クレジットが、平成元年から二年春にかけまして株式を担保にした融資を暴力団関係者に行っております。金額は、野村ファイナンスが百六十億円、日興クレジットが二百二億円、合わせて三百六十二億円でございます。  それからもう一つは、平成元年の六月に、これも両証券会社の本社の紹介によりまして、野村証券関係会社の平成ファイナンス、それから日興証券関係会社の日興不動産が、それぞれ岩間カントリークラブの会員権を、一口四千万円のものを五十口、二十億円ずつ購入をしております。この岩間カントリークラブというのは暴力団関係者が実質オーナーだと言われているわけでございますが、こういったような株券担保融資あるいは不明朗なゴルフ会員権の大量の購入というような行為は、免許会社といたしましては極めて問題のあるところでございまして、私どもとして、両社に対して厳しい社内への対応、処分を要請いたしますとともに、この暴力団関係取引、紹介をいたしました本店営業部の営業につきまして営業自粛を四日間指示したところでございます。  東急電鉄の株の取引でございます。これにつきましては、今申し上げましたように、平成元年四月から秋にかけて暴力団関係者が大量の買い付けを行ったわけでございますが、その後、株価の推移を見てみますと、かなり上昇をしております。私どもは、東京証券取引所と当時協力をいたしまして、証券取引法百二十五条の株価操作あるいは同法第五十条に基づく健全性省令のいわゆる作為的相場の形成に違反する行為はないかどうかということを調査してきたところでございますが、現在まで把握しているところによりますと、東急電鉄株が急騰いたしましたのは平成元年の十月から十一月でございまして、この内容を見ますと、非常に多くの投資家がたくさんの証券会社を通じて売買を行っております。また、その時期は株価が非常に上昇をしておりまして、史上最高値を更新するというような活況を呈しております。それから、東急電鉄株以外の電鉄株につきましてもかなり急騰を示して、東急電鉄株のみが異常な価格形成になっているということがなかなか言いがたい状況にあります。  こういったことで、現在までのところ、先ほど申し上げた百二十五条違反あるいは五十条に基づく健全性省令違反というような行為が存在するというのを認定するのは困難な状態にあるわけでございます。
  90. 村井仁

    ○村井委員 なおいろいろ問題はあると思うのでございますけれども、いずれにしましても暴力団証券会社がこういう形で取引した。それからさっきの岩間カントリークラブですか、会員資格保証金預かり証とかなんとか難しい言い方になっているようでございますけれども、これは関係会社の行為とはいえ、多額の融資をこれをベースに行った。これはいずれにしましても、社会的信頼性それから公共性を非常に重視すべき免許会社の立場として私はあるまじき行為だと思う。これだけの処分で十分なのかどうか、私はいろいろ議論のあるところだと思うわけでございます。  今後このような暴力団との取引がないようにするために大蔵省はどういう措置をとるつもりか、この点だけ伺っておきたい。
  91. 松野允彦

    松野説明員 暴力団関係者との取引につきましては、最近、暴力団新法の制定に見られますように、暴力団活動の抑制についての取り組みが行われている状況を考え、かつ証券市場及び証券会社に対します投資家信頼を確保するという観点からいたしましても非常に問題のある行為だというふうに認識をしているわけでございまして、私どもとしても、この問題については、さらに捜査当局による捜査の進展状況も見守る必要があると思いますが、暴力団新法を所管いたします関係省庁ともよく御相談をいたしまして、どういう対応が可能かという点について鋭意検討を進めてまいりたいと思っております。
  92. 村井仁

    ○村井委員 時間が余りありませんので、あと、同僚議員が今まで触れた問題にも重なりますが、若干ほかの点についてお伺いしたい。  損失補てんを受けた企業公表問題でありますけれども、先ほども尾身委員から指摘されたことでありますが、大企業大口投資家なら損失補てんが受けられるから損失をしない、しかし零細大衆投資家は泣き寝入りを強いられる、こういう怒りの声というのは本当に渦を巻いている。私も地元へ帰りますと、そういう話を始終聞かされる。四大証券だけで先ほどのお話で二百三十一社に千二百八十三億円補てんされたとされているけれども、今度はだれにどれだけ補てんされたという事実が明らかにされていない。そんなものですから、証券会社企業の間の癒着があるのじゃないかということが言われる。それから、大蔵省は、先ほど来のお話のように、公務員としての守秘義務ということを大臣仰せになりましたが、大蔵省のお立場でもそれを出せないということになりますと、これもまた大蔵省証券業界との、言葉の問題でありますが、癒着などというような批判も国民からは出てくる。しかし、損失補てんのやり方というのは非常に複雑なやり方である。これは先ほど尾身委員に対するお答えでも示されたわけでありますが、その損失補てんを受けた企業の側にその認識がない、こういう非常に難しい問題がある。  そこで、私は、先ほどの尾身委員の御論議に対する大臣の御答弁でも、御答弁の延長線にあるのかもしれませんが、損失補てんを受けた企業に対しまして、みずからその事実を公表するような、そういう指導というものは、そこまで踏み込んでできないものか。証券会社指導する、それにさらに損失補てんを受けたとされる企業に対してまで指導されるということはできないものか。証券会社は当然事実を知っている。それから、大蔵省報告を受けて事実を知っておられる。限られた数の企業です。これら企業に対しまして大蔵省と当該証券会社が共同で公表するように個別に説得を重ねていく、こういうことができないか。  私はなぜこんなことを言うかというと、財界も自由主義経済の目玉とも言える株式市場の透明性を確保するということに関心がないとは思えない。そういう意味で、我々が大切にしなければならない自由と民主主義の体制、そしてそれを支える自由主義経済体制、これを守っていくために、そしてそれに対する国民の信頼を回復するために相当な犠牲を払わなければならない。もう一歩踏み込んだことをお考えいただけないものか、お伺いしたい。
  93. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどの繰り返しというおしかりを受けるかもしれませんが、私はやはり証券業界自身がそうした御努力を払われるべきであると思います。  なぜなら、証券業界の方々が述べておられるというさまざまなお言葉を報道の中で私も読み、また聞かされております。そうすると、お客との信義関係ということをよく言われます。しかし、大口お客様との間の信義関係というものがあるならば、当然のことながら本当に小口の投資家に対する責任証券企業はお持ちのはずであります。そのより多くのお客さんの信頼を傷つけた行為というものに対して企業自身証券業界自身がその信頼を取り戻そうとする努力は、当然のことながらみずから払われるべきではないでしょうか。そして、そうしたお願いは、私は本当に切実にいたしたい気持ちでいっぱいであります。
  94. 村井仁

    ○村井委員 私、今の大臣の御答弁、大変詰まったといいますか、もうそこのぎりぎりの御答弁であるということを評価するものでありますが、いずれにいたしましてもそういう方向で国民の目の前に事実を明らかにしていくというのは私は本当に大切なことだと思っております。  ただ、私は、この事件の究明が単なる罪人捜しとか犯人捜しとかそういうものに終わってはならない。大切なことは、本来リスクキャピタルの市場であるところの株式市場ルールを根本から崩すような損失補てんという行動、行為が行われた、これを許すような体質あるいは制度、これをどう改善していくか、こういう問題だと私は思うのです。  そこで、先ほど来尾身委員からあるいは田中委員からも指摘があった点に関連するわけでありますが、とりわけて日本の固定手数料制は、小口の大衆投資家大口投資家も所定の手数料を払うということで相対的に小口投資家利益になる、こういうふうにされてきた。大臣も先ほどそういう御認識をお示しになられたわけでありますが、それがしかし結果的に証券会社に膨大な利益を生んで、そしてその結果損失補てん大口投資家だけにさせる、こういう今度の事態温床になった、こういう見方もできないわけではない。ブリーデンSEC委員長が、これは新聞報道でございますけれども、そのまま読みますと、「固定された株式売買手数料の水準が高ければ証券会社に過剰な利益が生まれ、顧客はその利益に対するリベートを求めることになる」、こういう指摘をした、こう報じられているわけでありまして、そういう意味で、その手数料の自由化ということにつきましては、大臣、先ほどのようなお考えをお示しになりました。そういう意味で、手数料の自由化というのはともかく、相当大幅な引き下げというようなことを考えていく必要があるのではなかろうか。そのあたりのところにつきまして、大蔵省の御見解をお伺いしたいと思います。
  95. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今局長に確かめましたところ、大蔵大臣がこれを決定する権限を持っておるわけではありません。これはあくまでも証券取引所自体ルールとして決められるものと承知をいたしております。ただ、これに対する認可権は大蔵大臣にあるということであります。  となれば、私は先ほどから御答弁申し上げましたように、自由手数料というものについては、私は小口投資家利益保護という観点からいかがなものかと考えておりますけれども、その取引手数料の水準そのものについては、私はやはり十分取引所としてもお考えあってしかるべきもの、そのように思います。
  96. 村井仁

    ○村井委員 いずれにいたしましても、株式市場の透明性を回復し、そして株式市場信頼を回復するということが、私は、今非常に低迷しております市場にもう一度国民の皆様のファンドが集まるようなそういう体制を回復し日本経済の活性化を確保する、引き続き日本経済のバイタリティーを維持していくその大目的のためにどうしても必要なことだと思うわけでございまして、そういう観点からこれからも我々一生懸命努力しなければならないと思います。大蔵大臣初め皆様の御健闘をお願い申し上げます。  終わります。
  97. 平沼赳夫

    平沼委員長 ただいま参考人として東京証券取引所理事長長岡實君が御出席になられております。  長岡参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  質疑を続行いたします。筒井信隆君。
  98. 筒井信隆

    ○筒井委員 まず最初に、大蔵大臣に今度の証券疑惑についての決意、これを確認をしたいと思います。  今度の証券疑惑に関して、私たちは次の三点をはっきりと要求したいと考えております。  一つ目は、この証券疑惑、今まで起こったことの真相を明らかにするという点、そして二つ目 は、十分なる再発防止策を講ずるという点、そして三つ目が、責任ある者がしかるべく責任をとるという点、この三つでございまして、いずれも一体となっているので、真相を明らかにせずして再発防止策は十分なものを講ずることができない、責任をとったからといって幕引きをすることは許されない、そういう意味でこの三つは三位一体、これで追及をしていかなければならないし、大蔵省としてもぜひその態度で決意を明らかにしていただきたいと考えますが、どうでしょうか。
  99. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私も、今委員が御指摘になりました三つの行為というものが並行して行わなければならない行為であるという意識は持っておるつもりであります。  ただ、同時に、御理解をいただきたいこと、行政当局として法律の規制を受ける部分がございます。先ほど来御論議をいただいております例えば公務員の守秘義務についての問題等、問題点があることも事実であります。  しかし、やはりこの証券会社証券市場に対しまして国民の間に生まれてしまっている不信感を払拭するためには、今回の一連の問題というものにつきましてその事実関係をできる限り明らかにしていくことは重要なことでありますし、その努力は我々としても当然払わなければならないものと存じております。また、その再発を防止するために、先ほど来申し上げておりますように、緊急に法律改正をお願いする部分等も含めまして、行政当局として努力をすべき目標というものは当然ございます。  また、今回の事態についての責任という点につきましては、私自身、本当に一番格好のいいのは、実はやめてしまうことだろうと思っておりました。しかし同時に、ちょうどその時期を考えましたとき、サミットでいずれにしても各国にこの状況を説明しなければならないとすれば、やめて済む話ではないという気持ちも私にはございました。そして、現行のルールの中で公職選挙法等に抵触する、しないまでを含めて内閣の意見も聞きました結果、私自身の歳費の一部の返上という自分自身に対しての処置もとりました。これについて軽い、重いの御判断はあろうかと思います。しかし、私自身がやめて済むものではないと考えておりますし、その再発防止の努力をすること自身が私に課せられた責任である、そのように理解をいたしております。
  100. 筒井信隆

    ○筒井委員 法律の範囲内で今の三つをやっていただきたい。これは当然の話で、法律違反を要求しているわけではございませんので、その範囲内で、今の三つの点は大蔵省としてもそういう方向でやるというふうにお聞きをしたいと思います。  そして、その真相を明らかにするという点で政府や自民党に、特に自民党ですが、証人喚問を拒否した点、これは極めて不当だというふうに考えておりまして、今度の証券疑惑のすべての真相を明らかにすること、これはもう国会の最低限の任務であって、国政調査権はそのためにある、こう言っても決して過言ではないというふうに思っておりまして、損失補てんをだれがどのように受けたのか、あるいは損失保証、特別背任、株価操作などの法令違反とかあるいは犯罪行為はなかったのか、あるいは証券会社企業暴力団、政治家、大蔵省関係はどうだったのか、こういう点をいずれも明らかにしなければならないわけでございます。  田淵野村前会長を野党は要求したわけですが、田淵前会長御本人は、呼ばれれば来て話す、こう言っているにもかかわらず、自民党が証人の人権、こんなものを口実に拒否した。これは政治家もまた秘書名義などで関係しているのではないか、こういう疑惑を強めた結果になったと思うのです。ぜひ臨時国会では早急にこの証人喚問を実現していただきたい。委員長としてもその決意をお聞きしたいと思いますが、いかがですか。
  101. 平沼赳夫

    平沼委員長 そのことに関しましては、理事会で皆さん方で御協議をいただいて、そしてそこで決定をさせていただきたい、委員長からそういうふうに申し上げます。
  102. 筒井信隆

    ○筒井委員 証人喚問をすることは、先ほど言った三位一体の真相を明らかにするためにどうしても必要な条件ですので、必ずそれを早急に実現していただきたいことを再度お願いして、その点を確認いたします。  大蔵省の方に対する質問ですけれども、野村証券の株主総会で田淵前社長は、大蔵省と相談して損失補てん問題で承認を得ているというふうに明確に発言をしております。大蔵省は全面否認をしております。しかし、田淵前社長御本人は、その後も一切公式にはこの発言を訂正しておりません。総会終了後に酒巻新社長が、不適切な表現という表現で訂正いたしましたが、田淵前社長御本人は一切訂正していない。大蔵省が承認していたかどうか、この真相を明らかにすることは極めて重要な大問題である、これからの再発防止等々のためにも必要であるというふうに考えるわけで、そのためにも、大蔵省がそれに反論するならば、ただ否定するだけではなくて、反論の事実関係を示して、はっきりと情報を開示する必要があると考えますし、先ほど言いました田淵会長を初めとした証人喚問を実現する必要があるというふうに考えるわけですが、大蔵省としてはその点、今の発言に関してどういうふうにお考えでしょうか。
  103. 松野允彦

    松野説明員 御指摘のように、六月二十七日に開かれました株主総会におきまして田淵前社長の発言があったわけでございますが、その夜に酒巻新社長が、表現が不適切でありということで訂正をしているわけでございます。  私どもは、御説明申し上げましたように、平成元年の十二月に通達を出しまして、損失補てんは厳に行わないことというような指導をしてまいっているわけでございます。営業特金適正化についてもあわせて指導を行っておりますが、損失補てんについて容認するというようなことは全くなかったというふうに承知をしております。
  104. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういう結論だけの否定は今までも何回も聞いているので、それでは国民が納得できないわけです。具体的な事実でもって情報を開示した上で、これこれこういう理由でそういう事実はなかった、そういう反論をしなければ、真相はあいまいなまま、やぶの中のままなので、それで明確にしていただきたい、この要求をしているわけです。  証人喚問と同時に、先ほどから問題になっております補てん先と補てんのやり方、これを公表すべきことを要求いたします。  今までのところ二百三十一件、一千二百八十三億、こういう損失補てんがなされたというふうに発表されておりますが、これは八七年の十月から九〇年三月までの分というふうに聞いております。この八七年十月から九〇年三月の分としてこれ以上ないというふうに大蔵省は断言できるのか、それともまだあるかもしれない、こういうことなのか、あるいは全然わからないのか、その点はどうでしょうか。
  105. 松野允彦

    松野説明員 八七年十月から九〇年三月までの分につきましては、自主報告を求め、かつ税務認定を受けた分合わせて照合して集計いたしました結果、二百三十一件ということになっているわけでございまして、九〇年三月までの分については、これ以上事後的な損失補てんはないというふうに承知をしております。
  106. 筒井信隆

    ○筒井委員 自主報告の場合に今までも何回も訂正されている。後からはっきり出てきている。そして、一般的に九〇年初めの暴落で評価損は約二兆円と言われている。それを一千二百八十三億円の損失補てんで済むわけがないというふうに常識的には考えられるわけでして、今大蔵省自主報告を受けた、その結果に対してどう判断しているのかという点なんです。これしかないというふうに判断しているのか、もう全面的に信用しているのか、それとも、まだあるかもしれない、これをさらに検査しなければいかぬというふうに考えているのか、そのどちらかということを聞いているのです。結論だけちょっとお聞かせください。
  107. 松野允彦

    松野説明員 現在、七月十八日から四社に特別検査に入っております。特別検査の主たる目的 は、損失補てんがさらに九〇年四月以降もあったのかどうか、あるのかどうかという点が主たる目的になっております。それからさらに、その過程で法律禁止されております損失保証、つまり、事前保証約束というものがなかったのかどうかという点がやはりあわせて検査の主な目的になっているわけでございます。  あわせまして、私どもその特別検査において過去の分についてもできる限り見るということにしておりますが、先ほど申し上げましたように、自主報告、さらには税務調査ということを経て九〇年三月までの数字が固まっているわけでございまして、そういうことから申し上げますと、九〇年三月までの事後損失補てんについては、これ以上のものはないというふうに承知をしているわけでございます。
  108. 筒井信隆

    ○筒井委員 大蔵省としては、九〇年三月以前は、今回報告されたもの以外にはないという判断に立っているということですね、大蔵省自身が。
  109. 松野允彦

    松野説明員 現在までの自主報告あるいは税務調査内容等から、そういうふうに判断をしているわけでございます。  なお、あわせて現在検査を行っております。検査の内容についてはまだこれから、検査が始まったばかりでございますが、主として九〇年四月以降の検査ということにはなっておりますけれども、それは取引の一貫性がございますから、それ以前にも検査が及ぶということは十分考えられるわけでございます。
  110. 筒井信隆

    ○筒井委員 今、九〇年四月以降について検査に入っていると言われましたが、七月二十三日、先日出された訂正有価証券報告書によりますと、九〇年四月以降に関しては一切訂正が出されていないわけですね。だから、証券会社としては九〇年四月以降はないというふうに報告しているわけですね。その点どうですか。
  111. 松野允彦

    松野説明員 証券会社は、九〇年四月以降は事後的な損失補てんはないというふうに報告をしてきております。
  112. 筒井信隆

    ○筒井委員 四大証券が全部九〇年四月以降についてはそういう報告をしている。しかし、今、九〇年四月以降あったのかどうか、それはまさに主たる目標の一つとして、検査項目として調べている。だから大蔵省としては、この四大証券が出した報告を、それはあるいはうそかもしれない、あるいは事実に反するかもしれない、そういう判断のもとで調べているということですね。
  113. 松野允彦

    松野説明員 九〇年四月以降につきましては、私どもは別に自主報告を、自己点検の上、自主報告を求めたわけではございません。ないということは、これは税務申告上自己否認をしていないということを各証券会社が私ども報告をしてきているわけでございまして、例えば九〇年三月以前につきましても、自己否認額以外に税務上認定された事後損失補てんが存在したわけでございますので、そういったことから申しまして、自己否認がないということだけを信用するということはいかがか、やはり自己否認がなくても、我々が検査で調べる必要があるのではないかという判断をしたわけでございます。
  114. 筒井信隆

    ○筒井委員 自己否認がなくても大蔵省が独自に検査する、そういう態度は必要だと思いますし、そうすべきだと思いますが、先ほど質問に出ました今回報告された分のうち、八九年、平成元年の十二月二十六日の通達以降九〇年三月までの分、これについては特別区分していない、先ほどそういうお答えがありました。しかし、これは区分して明確にはっきりさせるべきではないですか。通達を出して通達ではっきり禁止したのに、それ以降にその通達に違反してなされた分とその以前の分、これを明確に区分する必要があるのではないですか。先ほど大蔵大臣の話によりますと、通達を出した以降の通達違反を見抜けなかった、これも一つ大蔵省責任でこの前の処分をしたというふうに言っているわけですが、では、その大蔵省責任であると考えたまさにその通達後の損失補てん通達違反の損失補てんの金額が幾らで、その以前は幾らだったか、これを明確に区別する必要性があるのではないですか。
  115. 松野允彦

    松野説明員 平成元年十二月に通達を発出して、事後的な損失補てんについて行わないようにという指導をしたわけでございますが、私どもの考え方としては、もちろんその通達が出る以前でも、そういう行為は当然不公平で、かつ自己責任原則に反する不適切な行為であるということは我々としては認識をし、指導をしてまいっているわけでございます。  自主申告をとりました平成二年三月の自主申告の中には、報告に当たって、通達発出後のものもあったということを報告を受けておりますけれども、特にその中に通達発出前と発出後を分けて金額をとったということにはなっていないわけでございまして、私どもとしては把握をしていないわけでございます。
  116. 筒井信隆

    ○筒井委員 質問に端的に答えていただきたいと思うのですが、区別して把握していないことはもう先ほどの質問でわかっているのです。しかし、区別して把握すべきではないか、先ほどからの幾つかの論拠によって。実際に把握しようと思えば把握できるわけでしょう。把握できるのにするつもりがないのでしょうか、それとも把握できないからしないのでしょうか、どちらか、端的にそれも答えてください。
  117. 松野允彦

    松野説明員 損失補てん方法については、先ほども申し上げましたように、有価証券売買の形をとって一連取引の中で行われておりまして、ある時点で切って、それ以前と以後を分けるということは技術的にはかなり難しい問題がございます。したがいまして、当時一連取引の中で行われた損失補てん額ということで、一括して報告を求めているということになっているわけでございます。
  118. 筒井信隆

    ○筒井委員 それならば、どうして八七年の十月から九〇年三月までというふうにはっきり分かれることができたのですか。では、これだって間違いだということになりますか。その辺どうですか。
  119. 松野允彦

    松野説明員 九〇年三月と申しますのは、通達発出自主点検をして自主報告を求める期限、報告提出期限でございまして、我々としては、その当時は通達発出後に新たな事後的な損失補てんが行われるというようなことは予想していなかったわけでございまして、通達発出以前の既に行われた損失補てんについて、自主的に点検をして報告を求めたということでございます。
  120. 筒井信隆

    ○筒井委員 どうも質問に答えていないのですが、期限を明確に切ることができないとおっしゃるから。はっきり今まで公表されているのは八七年の十月から九〇年の三月。それどころか八七年の十月から八八年の九月三十日までが幾ら、そして八八年の十月から八九年の三月三十一日までが幾ら、八九年の四月一日から九〇年の三月三十一日までが幾ら、明確にそれぞれ有価証券報告書で訂正されているわけでしょう、期限を切って。この期限を切ったこと自体がおかしいことになるのじゃないですか。だから、先ほどおっしゃった通達を出した以降と以前とを期限を切ることが不可能だという論拠はおかしいじゃないですかという質問なのです。
  121. 松野允彦

    松野説明員 通達を出しましたときに自主点検を求めましたのは、ブラックマンデー以降ということでやったわけでございます。もちろん取引によっては、年度区分をきちっと区別するということができるわけでございますが、当時の考え方としては、先ほど申し上げましたように、通達発出前の損失補てんというものを自主点検しろということを中心に置いて自主報告を求めたわけでございます。三月に出てまいりました自主報告の中に通達発出後のものも入っていたという報告を受けたということで、我々としては通達発出前の損失補てんというものを中心にして自主報告をするように要求したところでございます。
  122. 筒井信隆

    ○筒井委員 全然答えになっていないので、端的に答えてほしいのです。それと、結論的に、通達後と通達以前とこれを区別して内容を明らかにする、その意思は全くないということですか。
  123. 松野允彦

    松野説明員 当時はそういうことでまとめて自主報告をとったわけでございます。それに対しまして、いずれにいたしましても不適切な行為だということで、すべてあわせて厳正な社内処分をそのときに要求をし、処分を行わせたわけでございまして、この段階に至って通達前と後とを分けて区分するということは、現在のところ考えておりません。厳正な社内処分ということで、我々としては証券会社に対し、自主申告にあります事後的な損失補てんについて、もう十分な責任をとらせたというふうに考えているわけでございます。
  124. 筒井信隆

    ○筒井委員 端的に答えてほしいのですが、この損失補てん、今通達違反を前提にして聞いているわけですが、単なる通達違反ではない。この点をお聞きしたいわけですけれども、先ほどもお答えされているように、損失補てんのやり口としては、現金提供ということではなくて、価格がはっきりしていない非上場債とかワラント債あるいは公社債、こういうものを安く売って高く買う、こういう形で損失補てんをした、そういう趣旨の話があったわけですが、その場合に証券会社認識としては、損失補てんをするつもりで安く売って高く買う、こういう認識でその取引をしているわけですから、事前にそこでは利益を上げる、こういうつもりで、つまり、事前保証認識はまず証券会社の方としてはありましたね。
  125. 松野允彦

    松野説明員 市場価格がはっきりしない有価証券を使って、証券会社が安く売って高く買うという行為を行って損失補てんしているわけでございますが、その行為そのものは、損失が出た場合にそれを保証するという約束のもとで行った取引ということは言いにくいのではないか、言えないのではないかというふうに思います。
  126. 筒井信隆

    ○筒井委員 今聞いているのはその点ではなくて、損失補てんをやるつもりの証券会社の方は、この取引利益を上げる、利益保証する、こういう認識でもってその取引自体をやっている。だから、全体の取引ではないですよ。損失補てんのための有価証券取引、これだけを取り上げてみれば、その時点では証券会社としてはその取引利益保証する、こういう認識取引をやっているわけですね。
  127. 松野允彦

    松野説明員 利益保証するといいますか、取引のやり方として、そういう利益を供与するという意図があったことは確かでございます。
  128. 筒井信隆

    ○筒井委員 そして、その上で今度はその相手の企業の方ですが、先ほどからの答えでは、一任している場合とそうじゃない場合がある。一任している場合には、そういう利益保証利益を与えられるということがわかって取引に参加しているわけではないというふうに言われましたけれども、しかし、一任している場合には、利益が与えられることをわかった取引も、それも全部任しているわけでしょう、企業証券会社に。そして、もし一任していない場合でその都度取引報告を受けている場合、あるいはその都度取引の話がある場合には、それは企業としてはその前にもう損失補てんができているんだから、損失補てんが生じているんだから、これは安い価格ですよ、高く買いますよ、そういう利益保証がない限りはそんな取引に参加するはずはないでしょう。だから、その都度報告している場合には、取引をお互いの意思疎通をしている場合にはもう事前保証は完全にあるし、それから一任の場合だって、事前保証をすることをも含めて一任している、こういうことが言えるんじゃないですか。
  129. 松野允彦

    松野説明員 事前保証と申しますのは、証券取引法に言います事前保証は、損失が出る場合にその損失保証するということでございまして、利益保証するということではございません。
  130. 筒井信隆

    ○筒井委員 事前利益保証する、利回りを保証する、これは証券取引法違反ではないのですか。
  131. 松野允彦

    松野説明員 証取法には、もう一つ特別の利益提供を約束するということも禁止行為になっております。その特別の利益提供という解釈をどうするかという問題はございますが、特別の利益提供に当たる行為であれば、これは証取法に触れる。これは省令でございますが、禁止行為になります。
  132. 筒井信隆

    ○筒井委員 損失補てん証券売買損失補てんのための証券取引自体を取り上げてみれば、そういう事前損失保証あるいは利益保証利回り保証、これがなければそもそも成り立たないもので、いろいろな形でもってされるでしょうけれども、しかし、これだけを取り上げてみれば、そこでは証取法違反が明確にあるんじゃないですか。
  133. 松野允彦

    松野説明員 その損失補てんをする場合の、今の安値で売って高値で買う行為でございますが、これは実はいろいろな行為がございます。典型的には、例えばいわゆる現先取引と言っておりまして、これは金利相当分をその価格差にするという取引でございまして、いわば金融取引の一種でございますが、そういったような形で、現先取引という形で行われているというものが非常に多いわけでございます。その場合には、金利相当分というのは特別の利益提供ということには当たらない。そういう現先取引有価証券を使って金利相当分の価格差にして取引を行うという現先取引というのは一般的に行われているわけでございまして、それをもって特別の利益提供ということは言いにくいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  134. 筒井信隆

    ○筒井委員 ワラント債、公社債、こういう値段がはっきりしないものを安く売って高く買う。相手がその取引を知っている場合には、企業の方が知っている場合には、まさに値段がはっきりしないわけですから、これが本当に安いのかどうか、本当にそれが高く買ってもらえるのかどうか、その明確なもの、保証がない限りはそういう取引に応じない、その前に既に損失が出ているわけですから。そのこと自体はどうですか。それはそう言えるんじゃないですか。
  135. 松野允彦

    松野説明員 今も申し上げましたように、そういう取引の場合でも値段の差が問題でございまして、証券会社が売る価格と買い戻す価格のその設定が、今も申し上げたように、いわゆる現先取引的にその期間の金利相当分の価格差になっているというのは、一般的にそういう現先取引というのは行われておるわけでございまして、そういうものを使って頻繁に利益供与をするというような形のものが、この価格差、安く売って高く買うという行為として行われているわけでございます。
  136. 筒井信隆

    ○筒井委員 証券会社としてはその取引利益を与えるという認識があった、それは先ほどお認めになりましたけれども、そのことを当然相手企業が知っている場合には証取法違反になる、一任していた場合だって、そのことを含めて一任している限りやはりそれも証取法違反になる、この点はどうですか。
  137. 松野允彦

    松野説明員 証取法違反になりますのは、その損失保証約束して勧誘する行為あるいは特別の利益提供を約束して勧誘する行為でございますので、勧誘行為があるかどうかという問題があるわけでございます。  一任的に行われている場合には、個々の取引についての勧誘行為というのが認められるかどうかという問題はございます。(筒井委員「その都度の問題」と呼ぶ)その都度の場合でも、今申し上げたように現先取引というような形をとっておりますと、これは特別の利益提供を約束して勧誘した行為というふうには、現先取引というのは一般的に金融取引として行われている取引形態でございますので、それを特別の利益提供を保証して、約して勧誘する行為だというふうに決めつけることは難しいのではないかというふうに思います。
  138. 筒井信隆

    ○筒井委員 その点も対立しているわけですが、この損失補てんが独禁法違反に当たるのかどうか、この点についての認識をお聞きしたいと思います。  独禁法の方で、競争者の顧客を自己と取引するよう誘引すること、これも禁止されておりますが、この損失補てんというのは、まさに不当な利 益をもってそういう行動をすることに当たるんじゃないか。そして「不当な対価をもつて取引すること。」とか「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。」こういうことも独禁法で禁止されておりますけれども、この独禁法違反になる、こういう点はどうですか。今のは大蔵省の方に。大蔵省は先ほどから通達違反しかないというふうなことを前提に言っておられるので、法違反もあるじやないかということをお聞きしたいので、もし今の独禁法違反について、なるのかどうか、わからなければわからないでも結構です。
  139. 松野允彦

    松野説明員 独禁法につきましては、私、非常に暗いものですから、独禁法のどこに触れる、あるいは触れないという点については、私が答弁する能力はございません。
  140. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうすると、大蔵省としては、今回の損失補てんの問題について法律違反がないというふうには断言できませんね。
  141. 松野允彦

    松野説明員 これは私どもも現に検査に入っておりまして、例えば損失保証があったかどうかという点も検査をしているわけでございます。  お尋ねの今の独禁法の問題は、私、よく結論といいますか考え方を申し上げるわけにはいきませんが、いずれにいたしましても、現在までのところ、私どもが把握した事実では、証取法違反という事実はないというふうに申し上げておきたいと思います。
  142. 筒井信隆

    ○筒井委員 独禁法違反について、あるのかどうかはっきりしないという答えなわけですから、その法律違反がないということを前提にした答弁は、これからぜひ差し控えていただきたいと思うのです。  それで、それらを前提に、今度公表しない理由として、行政機関の守秘義務ということを大蔵大臣は挙げておられますが、この国家公務員法の規定を根拠にしているんだと思うのですが、そもそも今度のものがそこで言っている秘密に当たるのかどうかという点をお聞きしたいと思います。  守秘義務の対象になる国家の秘密というのは、もちろんそれを漏らすことによって国家の重大な利益に悪影響を及ぼす、そういうことが客観的に言えるものでなければならない。単に行政機関がこれは秘密であると指定したからといって、それで守秘義務の対象になるわけではないというふうに思うわけですが、その点どうでしょうか。
  143. 松野允彦

    松野説明員 国家公務員法百条に言っております秘密というのは、昭和五十二年の最高裁判決がございまして、形式的な秘密の指定のいかんにかかわらず、非公知、公知でない事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるものをいう、というふうになっております。  本件の自主報告につきましては、私ども公表を予定しないで、各社から自主的に提出をさせたものでありますし、その内容は個別取引にかかわるものであるということで、公務員法上の守秘義務の対象となる秘密として保護するに値するというふうに考えているわけでございます。
  144. 筒井信隆

    ○筒井委員 国家の重大な利益に悪影響を及ぼすというふうに考えておられるという答えだったと思うのですが、そうですね。
  145. 松野允彦

    松野説明員 ただいまお答え申し上げましたのは、国家公務員法百条に言う秘密の意味でございまして、国政調査権との関係などで言われております国家の重大な利益に悪影響を与えるということではございませんで、公務員法に言う秘密というものはどういうものかということをお答え申し上げたわけでございます。
  146. 筒井信隆

    ○筒井委員 国家公務員法で言う秘密もやはり国家の利益に重大な悪影響を及ぼす、こういう場合を指すのじゃないですか。
  147. 松野允彦

    松野説明員 私が先ほど御答弁申し上げましたのは、必ずしも私、専門家ではございませんが、昭和五十二年に最高裁判決で述べられておりますこの公務員法百条に言う秘密の定義を申し上げたわけでございます。
  148. 筒井信隆

    ○筒井委員 昭和四十年の事務次官等会議申し合わせというのがあって、そこで「秘密文書等の取扱いについて」という文書があるわけですが、そこで秘密保全を要する文書の指定は必要最小限度にとどめる。そして秘密文書として「極秘」と「秘」と分けて、「極秘」の方には「秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益に損害を与えるおそれのあるもの。」そして「秘」の方には「極秘につぐ程度の秘密であって、関係者以外には知らせてはならないもの。」  今度の損失補てんの先とか補てんのやり口等に関する文書は、自主報告等の文書は、このどちらかに指定されているのでしょうか。
  149. 松野允彦

    松野説明員 この各社から自主的に提出を受けました自主報告については、そういう秘というような形式的な指定はされておりません。先ほど申し上げたように、この秘密というのは、形式的な指定のいかんにかかわらず実質的に秘密として保護するに値するものという最高裁の判決がございまして、私どもは実質的に秘密として保護するに値するものだというふうな考え方を持っておるわけでございます。
  150. 筒井信隆

    ○筒井委員 実質的な秘密にも当たらない、国家の重大な利益に悪影響を及ぼさないというふうに私は考えるわけですが、さらに省庁、行政機関の中で極秘と秘といずれにも該当していないとするならば、それはもう直ちに出すべきだというふうに思うわけでして、それを再度また要求をしておきます。  それから、この大蔵委員会から大蔵省に対してその補てん先等の記録の提出あるいは補てん先等の報告、これを求めたときは、もちろん大蔵省として応じなければなりませんね。
  151. 松野允彦

    松野説明員 私どもは、自主的な自主報告として個別の取引にかかわる事実について報告をいただいているわけでございますけれども、これは個別取引にかかわる問題でございまして、私どもとしては公表することは差し控えさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  152. 筒井信隆

    ○筒井委員 今一般的なことを聞いているのではなくて、この大蔵委員会から国会法百四条に基づいてその報告あるいは記録の提出を求めたときは、応じなければならないのじゃないか。そのときに応ずるべきである、このことを言っているだけなのです。
  153. 松野允彦

    松野説明員 お尋ねは国政調査権と守秘義務との関係になろうかと思います。  これにつきましては、四十九年の政府統一見解にもございますように、国政調査権の行使によって得られるべき公益と守秘義務によって守られるべき公益とを個々の事案ごとに比較考量することによって決定されるべきであるということになっているわけでございます。本件の場合には、損失補てん先を公表するということにつきましては、証券市場の透明性の確保に資するということも考えられるわけでございますが、投資家のプライバシーの保護の問題、あるいは私ども行政の過程で得られる情報が開示されるということになりますと、証券会社から正確な報告を求めるのが困難になるということで、証券行政の適正な遂行に支障を来すおそれがあるというふうに考えられるわけでございまして、私どもとしては、投資家保護あるいは我が国証券市場の発展、それを通じた国民経済の発展というようなことの公益を考えまして、損失補てん先の公表については控えさせていただきたいというふうに判断をしておるわけでございます。
  154. 筒井信隆

    ○筒井委員 プライバシーの保護等といっても、それは今回のように不公正きわまりない行為をやって、通達違反をして、あるいは先ほど言ったように法令違反の可能性さえある。そういう行動に関してまですべて隠すとするなら、それはあらゆる刑事事件を含めた公表もできなくなってしまう。今度の場合、それはまさに適用されないのじゃないですか。  それともう一点、自主的な報告だからと言っておりますけれども、こういう通達違反なのですから、それはもう明確に強制的に本来申告させるべき問題でしょう。しかも、もし向こうが嫌がって申告しなければ、大蔵省の方で今度やっているよ うに特別検査でも何でもやって調べて、それでやるべき問題でしょう。今の二つの理由とも、いずれもその根拠にならないのじゃないですか。
  155. 松野允彦

    松野説明員 今回のこの損失補てんは、御説明申し上げておりますように、証券取引法に触れる違法な行為ではございません。私ども行政指導として、そういうことをしないようにという指導をしているわけでございまして、そういう行政指導で得た資料につきましては、今申し上げましたように監督行政の適切な遂行というようなことを考えました場合に、具体的な今回の損失補てん先を公表することについては控えさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  156. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の結論は、この大蔵委員会から要求があってもその提出には応じない、こういう結論ですか。それはもう結論だけ言ってください。
  157. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今局長の答弁を聞き、昭和五十二年十二月十九日最高裁判決の指定秘説並びに実質秘説の両論を併記され、その秘密というものについての解釈をしておられる判決を改めて読んでみております。そして、その「右「秘密」とは、非公知の事項であつて、」というところから始まっております部分を局長は援用し、また国家公務員法上、第百条の公務員の守秘義務というものが、公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的に定められておるものということについての御答弁をしておりました。  国政調査権との絡みの問題になりますと、昭和四十九年十二月二十三日の政府統一見解で、これはできる限りの御協力をすべきものと政府としては決められております。  要は、今回の場合において、なお事態の把握の進行中ということもございます。そして、公表する公益と秘匿する公益との比較考量の場合の判断ということになろうかと存じますが、今事務当局から御答弁を申し上げましたように、市場の問題を絡むものでありますので、私自身もう一度少し冷静に考えさせていただきたいと思います。
  158. 筒井信隆

    ○筒井委員 衆議院は与野党逆転しておりませんが、参議院の方は逆転しているわけで、参議院で委員会の方から出されれば、私は法的にも政治的にも応ぜざるを得ないと思う。参議院で出される前に、ぜひこの衆議院の大蔵委員会でもってその提出を決議して、そして明確にしていただきたい。これについてちょっと委員長の決意をお聞きしたいと思います。
  159. 平沼赳夫

    平沼委員長 答弁されますか。――では、その前に橋本大蔵大臣
  160. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今申し上げましたように、国政調査権と守秘義務の関係につきましては、政府自身が、国会の国政調査活動が十分にその目的を達成することができるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考えているという政府見解を踏まえて、私は今申し上げました。公表する公益と秘匿する公益を比較考量する場合の判断の問題でございます。これにつきまして大蔵委員会理事会等におきまして御論議をいただきまして、その場において改めて我々としてもその考え方についての御説明を申し上げたいと思います。衆議院、参議院の別を私は問題にしてこの議論を申し上げておるのではないことは、ぜひ御理解をいただきたい。
  161. 筒井信隆

    ○筒井委員 先ほどの質問といいますか、委員長に対するお求め、これは同じでありまして、やはりそれぞれの委員会が国政調査権を独自に持っているわけですから、参議院で出されることがほぼ確実と私の方は見ておりまして、参議院で出される前に、みずから衆議院の方で出すのが国会の権威を高める方法で、参議院の方で出されて嫌々出すよりも、みずから自主的に衆議院の方で一刻も早く出すべきだというふうに思いますが、いかがですか。
  162. 平沼赳夫

    平沼委員長 この件に関しましても、理事会で協議をさせていただきたいと思います。
  163. 筒井信隆

    ○筒井委員 野村と日興の本社の紹介によって岩間カントリーの会員権預かり証、これを二十億円ずつ両社の子会社が購入をした。そして同じように、両社の子会社が両社の本社の紹介によって計三百六十二億円の融資を行った。相手が元稲川会の会長であるという点についてですが、この預かり証の購入と融資の事実、これを大蔵省が一番最初に知ったのはいつでしょうか。
  164. 松野允彦

    松野説明員 御指摘の事実につきましては、私ども本年の五月末に野村、日興両社から報告を受けております。
  165. 筒井信隆

    ○筒井委員 昭和五十六年五月十一日の通達、これに伴う事務連絡で「顧客のための保証、斡旋等の便宜供与の報告について」というものがございまして、こういう今言ったような紹介を含めた顧客の融資についての関与は大蔵省報告せよという通達がございますが、そうしますと、この通達に日興、野村とも違反したということになりますか
  166. 松野允彦

    松野説明員 御指摘通達は、証券会社が過大な融資のあっせんなどを行うことをしないようにという指導をしている通達でございます。  通達そのものに違反したかどうかという点につきましては、私どもは、この融資のあっせん行為が過大なものであったかということにつきましては、必ずしもそういうふうに言えないのではないかというふうに思うわけでございますが、ただ、それにあわせて出しております事務連絡におきまして、こういうあっせん行為があった場合には報告をしろということになっております。この報告がなかったということは事実でございまして、これについては事務連絡を十分遵守していなかったということになるわけでございまして、この点について野村、日興両社に対して私どもは厳正な指摘をしているわけでございます。
  167. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうすると、大蔵省指示にもこの点でも違反した。しかし、また同時に大蔵省はそれを見逃してしまった、こういう責任もあるわけですね。
  168. 松野允彦

    松野説明員 あっせんについて事務連絡で指導しております報告が行われていなかったということがわかりましたのは、本年の五月末の報告を聞いてそれからの問題でございまして、私どもはこの点については非常に遺憾であるということで、今回の処分の中でもそれについても指摘をし、あわせて処分を求めたところでございます。
  169. 筒井信隆

    ○筒井委員 初耳ですが、今の融資の紹介、融資のあっせん、それから預かり証の購入についてのあっせん、これについての報告をしなかったという点も今度の処分の対象事由になっているのですか。
  170. 松野允彦

    松野説明員 このあっせん行為は、いずれも日興、野村の本店営業部の担当者が行ったものでございまして、本店営業部の担当者に対する処分の中には、この報告違反という問題も含めて処分をしたというふうに私どもは考えております。
  171. 筒井信隆

    ○筒井委員 そして、この融資金ですが、いずれも日興クレジットあるいは野村ファイナンスから石井隆匡名義の住友銀行の高輪支店に振り込まれて、それが直ちに住友銀行の高輪支店において自己あて小切手化された後に、それがいずれも日興と野村の本社に渡って、日興、野村の本社がその小切手を取り立てている。こういう事実は大蔵省、もちろん承知しておりますね。
  172. 松野允彦

    松野説明員 具体的な借入金の資金の流れについてまで報告は受けておりません。
  173. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の事実も知らないということですが、そうしますと、先ほど言った大蔵省指示に反した行為を、つまり、報告すべきであったのに報告しなかった、その指示に反した行為を見逃してしまった大蔵省責任、これはまだそのままですか、それともこの前の処分の中にそれも入っているのでしょうか。
  174. 松野允彦

    松野説明員 今の指示と申されますのは、融資あっせん行為について届け出をしろという事務連絡のことだと解釈いたしますが、その点については先ほど申し上げましたように、事務連絡で要求しております報告を行わなかったという点については、本店営業部の扱い者の処分の中に入っております。(筒井委員大蔵省大蔵省」と呼ぶ)私どもですか。私どもとして事務連絡について十 分指導が行われなかったという点については、免許会社に対する全体の監督不十分ということで私どもは受け取っております。
  175. 筒井信隆

    ○筒井委員 だから、端的に答えていただきたいのですが、その点は今度の処分の中に、大蔵省の方の処分事由として入っているのか、それとも入っていないのか、その点だけです。
  176. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 個別の事由を列記して処分をいたしたわけではございません。監督全般に欠けるところがあったという処分をいたしております。
  177. 筒井信隆

    ○筒井委員 監督全般に欠けるところがあったとしても、その中身をはっきりしない限りは処分の程度も時期も出てこないと思うのですね。やはり具体的にどういう点で監督不十分があったのか、それを明確にしなければいかぬ。今の事務連絡に違反した、それを見逃した、その責任が今度の監督不十分の中に入っていて、それも含めて処分されたのかどうかを聞いているのです。
  178. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 個別の細かいことまで私もすべてを承知しておるわけではございませんけれども、いずれにしても、監督不十分の事実は先刻来私自身が認め、おわびも申し上げ、それにより処分をいたしたと申し上げております。
  179. 筒井信隆

    ○筒井委員 これを細かいと考えられると困るので、暴力団に対して物すごい多額の、三百六十二億円と四十億円ですから四百億円という額を融資したり、あるいは預かり証購入という形で渡して、しかもその金がまた日興、野村本社の方に直ちに戻っている。こういうことを細かいというふうに考えられるのはちょっとおかしいと思うのですが、どうですか。
  180. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 暴力団に対するかかわりを私は軽いと申しておるのではございません。事務の流れの問題としての軽重を私は申しております。暴力団とのかかわりの問題については、冒頭私は尾身委員に対する御答弁で申し上げましたように、極めて大きな問題だと認識をいたしております。
  181. 筒井信隆

    ○筒井委員 暴力団とのかかわりは、今も大臣おっしゃるように非常に大きな問題で、これがこの通達に伴う事務連絡どおりに直ちに月末ごとに報告されていれば防げたはず。大蔵省がそれを直ちに知って、それに対する対処をとれたはずなんです。それで大きな問題だと言っているわけです、この大蔵省通達、事務連絡に違反した行為、それをまた見逃した行為というのは。その点はいいです。  そして、預かり証の二十億円ずつの購入ですが、私はこれも法違反、法違反どころか明確な刑事犯罪であるというふうに思っているわけです。検察庁がこの預かり証について、小谷光浩被告人の蛇の目恐喝事件の初公判の冒頭陳述で、この預かり証というのは紙切れ同然で全く価値がない、こういうふうに言っているわけですが、刑事局長、それはそうですね。
  182. 井嶋一友

    井嶋説明員 今委員指摘のように、株式会社光進の代表取締役小谷光浩に係る恐喝事件の第一回公判、本年五月十七日でございますが、その公判におきまして検察官が冒頭陳述で述べたところの中に、今御指摘のようなくだりがございます。  若干背景を御説明いたしませんとわかりませんので、簡単に申し上げますが、本件そのものは、御承知のとおり、小谷が保有しておりました蛇の目ミシン工業の株を高値で買い取らそうという一連行為の中で起こった恐喝事件でございますが、その前に小谷が、今の岩間カントリークラブの会員資格保証金預かり証、これを七十億円で買い取れということを、買い取らせようとした動きがその前にあったわけでございます。それに対して、結局蛇の目側が財産的価値がないということでこれを拒否したということがこの三百億円の喝取の前にあるという、その本件喝取行為の事情として説明する必要がありましたので、冒頭陳述におきましてそのような趣旨のことを述べておるわけでございます。
  183. 筒井信隆

    ○筒井委員 蛇の目の方でさえ価値がないといって購入を拒否している。検察庁も紙切れ同然で全く価値がないと言っているものを、野村、日興の本社の紹介によって、その子会社が二十億円という多額の金を出して購入した。これはまさに、今度イトマン事件でも逮捕されましたけれども、自己もしくは第三者を利する目的でその任務に背いて会社に財産上の損害を与えた商法の特別背任罪に当たる、こう言わざるを得ないと思うのですが、大蔵省、その点の認識はどうでしょうか。これは大蔵省の方に聞きます。
  184. 松野允彦

    松野説明員 私どもが両社から報告を聞いておるところによりますと、平成元年の六月に各二十億円ずつの会員権五十口を購入したわけでございますが、これにつきましては両社の言い分では、岩間カントリークラブがオープンをいたしまして三年後に買い戻すという確約書が入っているというふうに報告を受けております。
  185. 筒井信隆

    ○筒井委員 三年後に買い戻すということを前提にして、そして、それ自体は紙切れ同然で価値がないとするならば、じゃ、融資というふうに大蔵省は考えておられるのでしょうか。
  186. 松野允彦

    松野説明員 この買い戻しの確認書というのは確かに存在するわけでございますが、これは必ず買い戻すというわけではなくて、買い戻すという約束はもちろんありますが、必ずしも融資というふうに決めつけるまでのものではないというふうに考えております。
  187. 筒井信隆

    ○筒井委員 必ず買い戻すものということでもないとするならば、やはり先ほどの特別背任、この可能性が非常に強くなるというふうに思うわけですが、少なくとも今度の事件に関して法令違反がないという、そういう前提はここでも崩れるんじゃないでしょうか。
  188. 松野允彦

    松野説明員 今必ず買い戻すものではないと申しましたが、ちょっと表現が適切じゃないと思います。その要求があれば買い戻すという確認書だというふうに承知しております。したがいまして、現在のところ、オープンいたしましてまだ三年の期間が来ておりません状態にあるわけでございますので、この会員権の価値について、我々がこの両社から聞いた事実をもとに判断いたします限り、今の段階で直ちに無価値であるというふうに決めつけることは困難ではないかというふうに思うわけでございます。
  189. 筒井信隆

    ○筒井委員 無価値であるというのは検察庁が明確に言っていることなので、それに対して必ずしもそうは言えないということですか、今の答えは。
  190. 松野允彦

    松野説明員 私どもが受けております報告では、その確認書によって、要求があれば三年後に買い戻すという確認書の存在が認められるわけでございます。
  191. 筒井信隆

    ○筒井委員 どうも質問に端的に答えてほしいのだけれども、検察庁が明確に公判廷で公式に言った全く価値がないということ、これは必ずしもそう言えないと判断しているのですかという質問なんです。
  192. 松野允彦

    松野説明員 この確認書をもとにいたしますと、私どもとしてはこの確認書があるということを前提にして判断いたしますと、現在のところまだ買い戻し時期も来ておりませんので、何とも判断しがたいということでございます。
  193. 筒井信隆

    ○筒井委員 検察庁の判断は、今断定できない。つまり、同じ国家機関の中で判断の違いがある、こういうふうに聞かざるを得ないわけです。  刑事局長の方にお聞きしますが、この点の特別背任の疑いについて捜査に着手しているのか、それとも着手しているかどうか言えないのか、その点どうでしょうか。
  194. 井嶋一友

    井嶋説明員 先ほど御答弁申し上げました冒頭陳述の点につきまして若干御議論がございましたが、冒頭陳述と申しますのは、御案内のとおり、公判の冒頭におきまして、検察官が証拠によって立証しようとする事実を起訴状よりもやや細かく述べるという性質のものでございまして、これから証拠によって立証していくわけでございます。その結果、判決がどのような判断をするかということは将来の話でございますので、その点のところは御理解いただきたいと思います。  それから、今の岩間カントリークラブの売買に 関する刑法上の犯罪の成否というお尋ねでございますが、御案内のとおり、犯罪の成否を決定するもの、これはもう申すまでもなく捜査機関でございまして、刑事訴訟法に基づきます的確な、適正な手続で収集しました証拠によって構成要件に該当する事実が確定できるかどうかということが論点でございます。そういった意味におきまして、事実も不確かであり、かつまたそのような権限のない私ども法務当局から犯罪の成否を述べること及びその着手の決意等を述べること、これは適当でないと考えるわけでございますので、答弁はお許しいただきたいと思います。
  195. 筒井信隆

    ○筒井委員 すると、捜査に着手しているかどうか言えないというふうにお聞きしておきますが、全く価値がないというのは検察庁の明確な考えで、今の大蔵省の言っている、まだ断定できないという立場とは違いますね。それはそうでしょう。
  196. 井嶋一友

    井嶋説明員 先ほど申しましたように、そういう引き取り方の要請があって、それに対してそういったいきさつがあって、結局売買が成立しなかったという経緯があるわけでございますから、その辺のところで財産的価値の有無といったことがこれから証人、証拠によって立証されてまいるわけでございますので、現時点ではお答えするわけにはまいりません。
  197. 筒井信隆

    ○筒井委員 検察庁の現時点での考え方、これから証拠によって証明しようとしている考え方、それは全く価値がないという考え方で、それを証明しようとしているわけでしょう。だから、全く価値がないという考え方に立っていることは事実でしょう。それと、今大蔵省が言ったように、まだその点が断定できないというのとは、それはもちろん国家機関の中で意見の違いがあってもいいのですけれども、その違いがあることの事実を確認せよと言っているのです。
  198. 井嶋一友

    井嶋説明員 何度も申し上げますけれども、要するに、財産的に価値があるかないかということがこの取引が成立するかしないかの重要な要素になっておったわけでありまして、その結果拒否されたわけでございますから、そういった経緯を立証する必要があるということでありまして、絶対的にこの財産的価値があるのかないのかということを争いの種にしておるわけではない。そういう経緯によって取引ができなかったという事実を立証する必要がある、こういう趣旨でございますから、お尋ねの件については、私としてはお答えをする知識も何もないわけでございます。
  199. 筒井信隆

    ○筒井委員 日興の方で結局計五回に分けて二百二億円を石井隆匡名義に融資をした。野村ファイナンスが三回に分けて計百六十億円を石井に融資をした。これらの資金がいずれも直ちに野村、日興の方に渡って、そして東急電鉄株の売買に使われたわけですが、これを先ほど何か証券局長通達違反ではないとおっしゃっておりますが、五十六年五月十一日の通達によると、証券会社顧客の資金に関して保証とかあっせんとかの便宜を供与することが過大となれば、過度の投機的取引を助長し、または証券会社の財政基盤を損なうおそれがあるので、慎重を期すること。まさに今度のこの石井隆匡に対する多額の資金のあっせん、これは今、その後の東急電鉄の動きを見れば、過度の投機的取引を助長して、そして今この融資金、一年という期限なのにまだ全然返ってきていない。しかも今もう担保割れになっている。こういう状況を考えると、証券会社の財政基盤を損なう、損なっている。少なくとも損なうおそれがあるということは言えるので、この過大な融資が通達違反じゃないということは言えないのじゃないですか。
  200. 松野允彦

    松野説明員 先ほど申し上げましたように、東急電鉄株を両社を通じて相当大量に購入しているわけでございます。ただ、過大なものかどうかという判断は投資家の資力等々から判断するわけでございまして、一概に過大だというふうに決めつけることは難しいんではないかというふうに考えるわけでございます。
  201. 筒井信隆

    ○筒井委員 これが過大でなければ、一体どうなったら過大となるのか。どういう場合がこの昭和五十六年五月十一日の通達違反になるのか。その点どうですか。
  202. 松野允彦

    松野説明員 この通達のそもそもの趣旨は、証券会社の財務基盤ということに着目してこういう通達を出しているわけでございまして……(筒井委員「投機的取引は」と呼ぶ)あるいは投機的取引の助長も加わっております。したがいまして、全体の当時のこの東急電鉄株の市場の状況、さらには受注を受けた証券会社の財産基盤等々を総体的に考えて、過大かどうかということを判断するわけでございます。しかも「慎重を期すること。」ということで、証券会社に対してこういうふうなことにならないように十分注意をしろ、こういうふうな指導になっているわけでございます。絶対的な基準というものを申し上げることは非常に難しいということを御理解いただきたいと思います。
  203. 筒井信隆

    ○筒井委員 今度のこの石井に対する融資あっせんが投機的取引を助長して、そして証券会社の財政基盤を危うくするおそれがある、こうは言えないという断定もできない、今の答えから見てもそう言えると思うんですが、それをさらに具体的に投機的取引であったということをお聞きしたいのですが、この東急電鉄の株に関して相場操縦の禁止に違反するんじゃないか、証取法違反ではないかという点をお聞きいたします。  まず、先ほどからも出ておりますが、東証にしても大蔵省にしても相場操縦に当たるというふうに認定できなかった理由の一つとして、当時は株式全体がピークに差しかかるころで、電鉄株は東急に限らず上がったということを一つの根拠にしております。そこで、東京のみで上場している電鉄十社の八九年四月から十二月、この株価の動きを調べてみたわけですが、その各月の最高の価格を見てみますといずれも、東武にしても西武にしても小田急にしても京王にしても、あるいは相模、箱根、京成、富士にしても、京浜急行にしても、六月前後がいずれも一番この間では低い、いずれも十一月前後が一番上がっている。こういう点では確かに共適しているわけですが、しかし、上がり方が全然違う。東急を除いた九社は一・〇八倍から一・四〇倍にすぎなかった。しかし、東急だけは一・七六倍の上がり方でダントツである。全部がある程度上がったとしても、東急の上がり方がダントツであるという事実自体は言えるんじゃないですか。
  204. 松野允彦

    松野説明員 今御指摘をいただきました。私ども実はそこまで分析しておりませんが、確かに六月から十一月にかけまして東急電鉄株はかなり急速な値上がりを示しております。今御指摘のような九社と東急とを分けて比べるということで今のような数字ということでございますと、東急電鉄株の値上がり幅の方が大きいということは言えると思います。
  205. 筒井信隆

    ○筒井委員 電鉄株は東急に限らず上がったということを株価操縦がないことの根拠に挙げられているから、当然調べた上での話だと思って私は聞いているんですが、そういうことを調べないで株価操縦の否定をするなんということは、これはそもそもおかしいというふうに思うのです。もう一度その点ははっきり調べてほしい。  それから、もう一つ相場操縦否定の理由として東証も大蔵省も挙げておるのが、先ほどの回答でも挙げているのが、多数の証券会社売買に参加しておって、野村のみが目立ったということでもなかったということも二つ目の根拠として挙げております。しかし、最も上がった八九年の十月から十二月の三カ月間における証券会社の株の買い、売りを見ますと、野村証券が買い、売りともダントツで、しかも買い越しを見ますと五千六百十八万株、二位の山一証券が五百九十三万株。一位と二位の間がまさに十倍の違いがある。あと、もちろん十位までなんて物すごい差がある。確かに多くの証券会社がこの株の売買に参加しましたけれども、それは巨人としての野村、野村が買いに入ればほかの人も、ほかの証券会社や個人も参加する、そういうことは当然予測できる。だけれ ども、野村がもう圧倒的なダントツの買い越しをやっている。決して多数の人がある程度参加したからといって、多数の証券会社が参加したからといって、相場操縦否定の根拠にはならないんじゃないですか。その点どうですか。
  206. 長岡實

    ○長岡参考人 東京証券取引所理事長の長岡でございます。  私からお答えを申し上げますが、今筒井委員の御指摘の電鉄株が総じて上昇していたということと、多数の証券会社が参加していたということの二点のみで株価操作と認定するに至らなかったということを申したわけではございません。これは記者会見で私が申し上げたわけでございますけれども、その二例をたまたま挙げたのがそういうふうにお受け取りになったのかもしれませんが、私は当時の調査の事情を聞いてみますと、確かにおっしゃるとおり、電鉄株自体が全体として値上がりしておる。その中で東急株は大きな値上がりはいたしております。  ただ、これは例としては適切ではないかもしれませんが、非常に品薄の電鉄株で、東急株に匹敵するぐらい上がっている株もあるわけでございます。それから、全体としての市況が、当時は日々高値を更新するような一昨年の秋から暮れにかけましての状況の中で、電鉄株に限らずほかの業界の株におきましても、当時の東急電鉄株に匹敵するぐらいの値上がりをしたような株もあるわけでございます。そういったようなことで、株価操作と申しますか、相場操縦的な行為と認定するに至らなかったということを申し上げたわけでございます。
  207. 筒井信隆

    ○筒井委員 東京のみで上場している電鉄十社の中で、この同じ時期、八九年四月から十二月の間で東急電鉄ほどの上がり方をしているのは一つもない。東急電鉄は一・七六倍であるのに、他の九社のうち最高でも一・四〇倍にすぎない、このことを指摘しているわけです。  ただ、今私が聞いているのはそうじゃなくて、そのもう一つの理由の多数の証券会社が参加した、そう言っておりますが、しかし、十月から十二月までの買い越しは、野村証券が五千六百十八万株で最高である。ベストテンまで見てみますと、二位が五百九十三万株で十分の一。ダントツの買い越しを野村証券がやっているので、他の部分が一部参加しているからといって、こういう状況を見ると相場操縦否定の根拠にならないのではないかという質問なんです。
  208. 長岡實

    ○長岡参考人 多数の参加した証券会社の中で、やはり野村が圧倒的に大量の取引をしておるということは事実でございます。ただ、これは東急株に限らず、非常に規模の大きな証券会社でございますために、大体において野村が非常に大きな取引をするという例は間々見受けられるところでございます。
  209. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういうことを言うだろうと思って調べてきたんですが、当時の東証の出来高シェアは、野村が一二・七%で大和が九・二%、日興も九・二%、山一が九・五%、こういうシェアに対応した程度の商いで野村が多かったというならば、確かに今おっしゃるとおりなのです。だけれども、一二・七と九・五%の違いどころか、先ほどから何回も言っているように、野村の買い越しが五千六百十八万株であるのに対して、二位の山一証券が五百九十三万株にすぎない。これはシェアの違いどころかダントツじゃないですか。この点についてどうですか。
  210. 長岡實

    ○長岡参考人 私が持ってまいりました資料によりますと、十月二日から十月三十一日までの二十一日間の東急株の売買でございますけれども、シェアで申しますと、野村が売りが全体の二一%、それに対して山一が一八%、それから買いが野村が二七%、それに対しまして山一が一九%、こういうふうになっております。
  211. 筒井信隆

    ○筒井委員 今の十月二日から三十一日までの売買手口、これだけを見てみましても、確かに買い越しの方で見ますと圧倒的に野村が多いわけですが、しかし、私が今聞いているのはその部分だけではなくて、十月から十二月の三カ月間にわたって合計を聞いているのです。全体を見た場合にそうである。その場合に特に、もういいですけれども、その点よく調べてなかったようですからいいですが、そういうことを調べて、明確に全部調べて、それで株価操縦がなかったと言われるならいいんだけれども、そうじゃなくて株価操縦がなかったと否定されることに対しては、やはりこれはよくない。  その点を言っておくと同時に、十月から十二月まで最も上がった時期において合計で二億六千万株、この売買がされたわけでして、この二億六千万株を買わされた顧客というのは、ほとんど物すごい、今三分の一に下がっていますから損をしている。そして、石井を初めとした石井の知り合いである小谷とかあるいは加藤関係とか、そういう人たちはその前に、十月の前にもうほとんど買い入れている。こういうことを野村が勧めて、そして二億六千万株を買った一般投資家、これらに対する責任というのは物すごく大きい。まず、株価操縦があるなしにかかわらずすごく大きいというふうに考えますが、東証、大蔵省としてその点どう考えますか。
  212. 長岡實

    ○長岡参考人 一般論で申し上げまして、特定の銘柄の株価をつり上げる行為を行って、そしてそれを買収をした相手先企業に高値で肩がわりをさせるとかあるいはつり上げて売り抜ける、それが一般投資家に非常に迷惑を及ぼすということは御指摘のとおりであります。  そのために、私どもといたしましては、日々の株価については常時調査をいたしておりまして、筒井委員も御承知だと思いますが、東証は内規といたしまして、株価が異常に上がる場合あるいは下がる場合に値幅制限というものを設けております。これは一日の間に、株の銘柄の価格によって、段階的にではございますが、平均値を申し上げますと、大体幅で一四、五%以上の値上がりを示す場合あるいは値下がりを示すような場合には、そこでその取引のストップを命ずる。しかも、それ以内でございましても、私どもの方の内規として株価監視基準のようなものを設けまして、これによってある銘柄が異常に上がりそうな様子を示した場合には、これは調査をして、委託会社に対して注意を喚起したりするということもやっておるわけでございます。  そういったことの中で、私ども調査不十分のために御迷惑をかけるようなことがあってはならないと思いますが、私どもといたしましても、今回の問題に限らず、一般論といたしまして、特定の株の値段が何か特定行為によってつり上げられ、そして、それによって一般投資家が被害をこうむらないように監視していくという機能については、従来にも増して十分に監視していかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  213. 筒井信隆

    ○筒井委員 そういう一般的なことを聞いているのではなくて、今回の十月から十二月の間に野村の積極的な推奨によって買わされた人たちが、そういう一般投資家が物すごくたくさん損をして、逆にその前に買った加藤とか東京佐川とかの渡辺とか竹井とか、こういう人たちはその前に買って売り抜けている、こういう責任を問いただしているわけですけれども、時間がもう終わりましたので、最後に刑事局長、わざわざ呼んだので、この相場操縦のことに関して今捜査中であるかどうか、相場操縦の疑いがあって捜査中であるかどうか、その点一言お答えいただきたいと思います。
  214. 井嶋一友

    井嶋説明員 株式会社野村証券、代表取締役田淵義久氏を被告発人とする告発が二件東京地検に出ておりまして、その告発に基づきまして東京地検が捜査をしております。告発事実は、いずれも野村証券が東急電鉄株の株式を操縦することを企てて、いわゆる株価操縦をしたという要旨の告発でございまして、証券取引法百二十五条二項違反ということの告発でございます。
  215. 筒井信隆

    ○筒井委員 その捜査を厳正にやっていただきたいわけですが、特に先ほどからの大蔵省それから東証の答えによりますと、二つの理由とも余り根拠がないというふうに言わざるを得ない。相場操 縦の否定の根拠は余りないというふうに言わざるを得ないと思うのです。  同時に、野村の方で「社内限」という記載のもとに「ポートフォリオウィークリー」という社内誌を出しておりますが、ここで強烈に東急株を推奨している。二十一世紀に向けて大きな飛躍期を迎えようとしているとか、あるいは東急電鉄の現在の株の時価は過小であるとか、ハード資産だけで一株当たり五千四百円になるとか、それにソフト資産を含めればもっと莫大になる。さらには東京と大阪の講演会でもっと強烈に、もっと文書以上にはっきりと、十二月には五千円になる、必ず急騰する、こういう断言をしているようですけれども、こういう野村の行為、これはまず大蔵省に確認したいのですが、昭和四十九年の十二月二日に出された通達で、「自社の営業方針に基づく特定少数の銘柄の一律集中的な推奨の如く投資情報を主観的又は恣意的に提供することは厳に慎むこと。」これに違反するんじゃないですか。
  216. 松野允彦

    松野説明員 御指摘の野村証券の「ボートフォリオウィークリー」でございますが、これは私どもも取り寄せて検討をしております。参考銘柄として二十八銘柄を掲げ、その中に東急電鉄株が入っているわけでございまして、今御指摘通達、特に御指摘のありました、営業の方針に基づく特定少数銘柄の一律集中的な推奨のごとく投資情報を主観的または恣意的に提供するということを慎むような指導通達がございます。私ども、「ポートフォリオウィークリー」で挙げられております二十八の参考銘柄のうちで、東急電鉄株について具体的に営業店でどういう推奨が行われたのかという点について、この通達違反の事実がないかどうかという点については現在調査を進めているところでございます。
  217. 筒井信隆

    ○筒井委員 じゃ、通達違反については調査中ということでよろしいのですけれども、私が見ているのは八九年の十月三十日号で、そこでそういうふうに物すごい飛躍期を迎えているというふうな推奨をしているわけですが、実際には八九年三月に五島昇、それまでの代表、グループをまとめていた人が死亡して、そして跡取りが頼りないとかグループ分裂の危機があるとか、こういうことが叫ばれていた時代。それを全く正反対に推奨するというのは、まさに主観的また恣意的なそういう情報の提供だというふうに考えているわけでして、そういう意味では、今調査中というよりも、もうほぼこの通達に違反するというふうに大蔵省は判断しているのじゃないですか。また、判断すべきじゃないですか。
  218. 松野允彦

    松野説明員 この通達、確かに主観的または恣意的に提供するということを慎むように指導しているわけでございまして、ただ、これは具体的に、今申し上げましたように、営業店においてどういうふうな提供のされ方をしたのかというようなことも含めまして、事実関係調査しているわけでございます。
  219. 筒井信隆

    ○筒井委員 今までの答弁も極めて納得できないものがたくさんある。根拠を調べた上で言っているのかと思うと、余りそうでもない。これは明らかになっているし、またさらにいろいろな点は聞きたいところがあるわけですが、もう時間をオーバーしましたのでこれでやめますが、きょうの答弁の内容に関しても、ああいう答弁では極めて不満ですから、理事会の方でも検討していただくと同時に、さらに引き続いてまた臨時国会の方でもこれを十分に審議をしていただきたい、このことをお願いして、私の質問を終わります。
  220. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時三十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ────◇─────     午後一時三十五分開議
  221. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。富塚三夫君。
  222. 富塚三夫

    ○富塚委員 きょうのこの大蔵委員会は国民の側が大変注目をしている。午前中の質疑でもありましたように、証人喚問の問題、また補てん先の公表の問題、こういう問題についてやはり明確に大蔵委員会としての態度を打ち出すべきだ、同時に大蔵省の、政府の態度も打ち出すべきだということで、今日までの議論の中では、昼休みの休憩に理事会を開きまして、いわゆる補てん先を公表するということを決めるかどうかということの問題だったのですが、何か聞くところによると、結論が出ないで、この委員会が終わった後にもう一回議論されるということを伺いました。  私は、私の質問の持ち時間をいわゆる理事会の協議に充ててもらって結構ですが、この委員会のさなかに結論を出してもらうということは、大蔵委員会としての決議、大蔵委員長としてはどうお考えになりますか。
  223. 平沼赳夫

    平沼委員長 先ほど、理事会じゃございませんで理事懇談会をさせていただきました。それで、各党からのお申し出がございましたのですが、まだ質疑がすべて終了しておりません。政党によってはまだ質疑を行っていない政党もございますので、やはり委員会等の推移の問題もございますから、全部質疑が終了してから、もう一度終了後理事懇を開いて協議しよう、こういうことになっておりますので、その点御了解をいただきたいと思います。
  224. 富塚三夫

    ○富塚委員 重ねて午前中の我が党の筒井委員質問に関連して大臣に質問をいたします。  大蔵省としてはいわゆる補てん先の公表の問題は控えたい、控えなければならないということが言明されているのですが、新聞等によると、大蔵大臣証券各社公表することを指導したい、こう言っているということも明らかにされているのですが、午前中の我が党の筒井氏に対する答弁と変わらないでしょうか。つまり、大蔵省証券会社公表指導するというだけでなくて、大蔵省として公表をする意思はないのかどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  225. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 意思のあるなしということとは別に、公務員に課せられた守秘義務というものは私はやはりきちんと守らなければならないものだと思います。同時に、この問題についてでき得る限りの事実を明らかにすることは、証券市場というものに対する信頼を取り戻す上でも大切なことだと私は思います。そして、そのはざまの中で、私として先刻来申し上げておりますように、証券業界としてこの事態を重く認識をされるならば当然のことながらみずからこれを公表されるべきではなかろうか、またそういう行動に出ていただくことを私としては心から願っております。
  226. 富塚三夫

    ○富塚委員 委員長にお願いをしておきたいのですけれども、やはり明確に本日の委員会補てん先を公表するということを決めていただきたい。理事会は継続して開かれるということを聞いておりますけれども、この委員会のうちに結論を出していただくということで確認していいですね。
  227. 平沼赳夫

    平沼委員長 委員長から富塚委員に申し上げたいのですけれども、先ほど申し上げましたように、この委員会でまだ社会党さんも質問者が一人残っておりますし、公明党さん、共産党さん、民社党さん、進民連さんそれぞれ残っておりますので、この委員会中ということではなくて、やはり委員会終了後理事懇談会を再度開催をさせていただいて、そして各党でこの問題は御協議をいただく、こういうことを今理事懇で決めさせていただきましたので、その線で御了解をいただきたいと思います。  以上であります。
  228. 富塚三夫

    ○富塚委員 委員長の答弁を信用して、この委員会中にもう一回理事会を開いて結論を出していただくということにお願いをしておきたい。
  229. 平沼赳夫

    平沼委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  230. 平沼赳夫

    平沼委員長 速記を再開してください。  富塚君。
  231. 富塚三夫

    ○富塚委員 理事会の審議された経過ということもあるようですが、ぜひひとつ前向きに結論を出してもらうよう私の方からお願いをしておきたいと思います。  次の問題ですが、我が党の筒井委員質問いたしましたけれども、証人喚問の問題についてやはり委員長に対してぜひ――臨時国会が始まる、審議される機関は大蔵委員会になるのか、特別委員会設置か、予算委員会か、いろいろあるでしょうけれども、やはりこれだけ証券スキャンダルが社会問題になって、その真相を究明すべきだ、野党側もこぞって証人喚問を要請をしておるわけでありまして、ぜひひとつ自民党さんも証人喚問に積極的に応じていただきたいというふうに要請をしておきたいと思うのですが、委員長、その点をひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。
  232. 平沼赳夫

    平沼委員長 委員長から富塚委員に申し上げますけれども、そのお話に関しましてはやはり理事会で検討すべき問題だと思いますので、私は委員長という立場でございますので、理事会という場でまた皆様方からお話を出していただいた過程の中で決まっていく問題だと思いますので、御了解をいただきたいと思います。
  233. 富塚三夫

    ○富塚委員 自民党の中の有力者の皆さんも積極的に証人喚問を早く行ってけじめをつけた方がいいではないか、何人かの実力者の方もそう申されているわけですね。証人喚問をなぜためらうのかという問題、これは一般に伝えられていますように、田淵野村証券前会長があのような発言をされている経過から見て、やはり明確にそういう点をした方がいいではないか、すべきではないかというのは、今国民はこぞって、だれ一人としてこのままふたをすればいいなんて思っている人はおりません。ですから、この証人喚問の問題は、筒井議員の発言にもありましたが、参議院に行けばそのことが決められる、衆議院はずるずるして逃げ回っておったけれども参議院ではそのようなことになったら、一体我々はどういうふうに考えたらいいのかという問題になりますので、その点は私の立場からも強く要請をしておきたいと思います。  次に、やはり今回の問題で政治家と株という問題がリクルート事件以来国民の不信を招いて、また今政治改革の必要性も叫ばれているんじゃないかと思います。政治家やあるいは政治資金を集める団体が株の売買によって政治資金を賄ったと言われる例が多いだけに、今回の損失補てん問題でも政治家や政治団体が無関係であるという保証はないんじゃないか。国民の目から見ると疑問視するのは私は当然だと思います。そういう点で一刻も早く解明を急がなければならないと思うのです。  きょう長岡参考人に来ていただいておりますけれども東京証券取引所を預かっておられる長岡参考人として、今もいわゆるマル政などと言われる政治家の銘柄みたいなものが兜町では公然とうわさされているみたいな話を聞きますけれども、そういう点について、証券取引所を預かっておられる立場で、一体マル政銘柄というものが現実にささやかれて、あるのでしょうかどうか、お尋ねしたいと思います。
  234. 長岡實

    ○長岡参考人 お答え申し上げます。  東京証券取引所の役割と申しますか、これは上場した株が東京証券取引所で集中的に売買が公正に行われるようにという立場から市場運営をいたしておりますが、取引所が相手にいたしておりますのは、もろもろの投資家から委託を受けて株式の売買を取り次ぐ受託者たる証券会社でございまして、その証券会社がどの株についてどういう方から売買の委託を受けたかというところまでは私どもの管理の及ぶところではございません。
  235. 富塚三夫

    ○富塚委員 野村はシェアでかなり大きな株を、五千六百十八万株で、山一証券の二位は十分の一のシェアを持っている、我々はこう見ているわけですけれども、この市場の支配力が野村証券は圧倒的に強いものを持っておられるのでしょうかどうでしょうか。後でも質問いたしますけれども、何か野村が大蔵省を軽視するかのような動きがあるという、つまり市場支配がかなり強いものに野村証券はなっているとお認めになるでしょうか、長岡さんにお尋ねしたいと思います。
  236. 長岡實

    ○長岡参考人 富塚委員御承知のように、東証の会員でございます証券会社は今百二十四社ございまして、そのうち外国の証券会社を除きますと九十九社ございます。これは二百十幾つかの証券会社のうち一定の要件を備えた証券会社が会員になるわけでございますけれども、その中で四大証券会社がやはり規模の上ではずば抜けて大きい、なかんずく野村証券が非常に大きいという事実は私も認めます。ただ、それによって野村が市場支配するとか、あるいは野村が行政の筋を曲げるとか、そういったようなことはないんじゃないかというふうに私は考えております。
  237. 富塚三夫

    ○富塚委員 大蔵省責任問題といいましょうか、午前中もいろいろお話がありました。田淵野村証券前会長は、十日前までは私はやめなくて自社再建のために頑張りたい、二十二日になって会社内の不祥事の究明が終わったので辞任をしたいと言ってやめられたと報道されています。証券業界の抜群のリーダーとして君臨をされてきた田淵さんがやめられただけに、今後市場証券業界も混乱をするのではないか、いろいろ言われております。また、暴力団との問題の取引やさまざまな点でも実はうわさに上っているわけですが、この証券会社大蔵省、そして大口顧客となっている大企業というかかわりからいうと、やはり当面、この証券問題の不祥事を起こした証券会社のリーダーが責任をとった。それなら当然大蔵省責任の問題として明確にするのが横並び、今あるべき正しい姿ではないかと私は思うのですが、大蔵大臣、どのようにお考えになっておるでしょうか。
  238. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先刻も私はどなたの御質問でありましたか同様のことを申し上げましたが、この問題が起こりました時点大蔵省としての監督責任というものを考えましたとき、私自身辞任ということを全く考えなかったわけではございません。ただし、同時に私としてそのときに考えましたことは、その直後に控えるサミットにおいて必ず他国の蔵相たちからこの問題が提起をされるであろう、それに対して事情の説明をする責任、また、今後日本としてどういう対応策を講じようとしているか説明をする責任、それは私自身がしなければならないことと考えてまいりました。  そして、そのような場合における閣僚の処分というものを過去を調べてみましたが、実は先例がございません。これについていろいろな御意見もあるかもしれませんが、私としては自分の気持ちを示すためにも自分の歳費返上という措置をとりました。これが公職選挙法による寄附等にかかるかどうか、この点が心配でありましたから内閣の方にこれを確かめ、御相談をいただく時間がかかりましたけれども、最終的に、今、閣僚全員が湾岸危機に際しての臨時特別税を国民に御負担をいただく際それぞれが歳費の一〇%を返上いたしておりますが、それと同じ手続であるならば問題を生じないという内閣の回答を得ましたので、その翌日私自身処分を含めて発表をいたしました。
  239. 富塚三夫

    ○富塚委員 前回大蔵大臣みずから減給処分、そして何人かの処分公表されました。その処分だけで終わるなどということは考えていらっしゃらぬ、今後、今申されたようにいろいろな手だてを尽くして二度とこのような問題の起きないような点をまた考えたいというお気持ちなのでしょうか。
  240. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 例えば私がやめてしまえばこれで全部この事件が終わるという性格のものでありますなら、私は今即刻委員に辞表をお預けしても結構であります。しかし、先ほど筒井委員からの御質問にもありましたように、その処分と再発をどう防止するかの方策とそしてこの事件そのものの解明、これはあわせて行わなければならないという御指摘がございました。私も同様に心得ております。そして、今検査そのもののあり方につきましても官房長をいわば座長として検討を急いでおりますし、この臨時国会において証取法そのものの、こうした問題が再発しないような法律条文の手当てもいたしたい、そのための御審議もお願いをしたいと考えております。そもそも、損失補てんについての禁止の条項を盛った法律というのはアメリカにもイギリスにもございません。当然 の倫理として行われないこと、それが世界の通例であります。残念ながら日本ではその倫理が欠如しこうした事件を起こしたとなれば、法律をもってこうした行為禁止する必要もまた生ずると存じます。こうしたこと全般を努力し、こうした事態が再発しないように努めていくことが我々としての責任を果たす、そう考えております。
  241. 富塚三夫

    ○富塚委員 大蔵省証券業界の関係、これがどうなっているのかということがやはり今国民の側が釈然としない一番の問題のように思われる。一つはその点を解明していかなければならないということと、もちろん大口顧客である企業の側も反省をして企業倫理を確立していかなければならないという問題になるだろうと思うのです。やはり第一はけじめの問題であって、第二は真相を解明してこのような不祥事を生まない金融体制をどうつくっていくか、そして三つ目は営利至上主義の企業の体質を改めて企業の倫理を確立していかなければならないということにどうトータルとして結論を出していくのかが、我々国会に課せられている任務であろうと私は思います。そういう点で言うと、証券業界の側が責任を前面に出して大蔵省大口顧客の側も企業の側もそういうことにくみしないということは、何としても釈然としないという問題があるような気が私はいたします。その点で責任の問題を申し上げておきたいというふうに思います。  次に、大蔵省証券業界の関係の中で特に天下りの問題、つまり癒着構造が証券業界と大蔵省の間にできているのではないかという懸念、そういう見方がされていると私は思います。  そういう点で、私は人事院にこの五年間の営利企業への就職の承認に関する報告について調べていただきました。そういたしますと、これは昭和六十一年などは五十五名のうち三十四名の方が金融証券に、また六十二年は五十四名のうち三十四名、六十三年は五十名のうち三十名、そして平成元年は五十七名のうち三十名、また二年は六十四名のうち三十五名、毎年三十名以上の方々が金融証券の業界にいわゆる天下りと称されて赴かれているという事実が明らかになっているわけであります。  また、きょう参考人になっておいでをいただきました長岡さんを初めとして、竹内さんや谷村さんやあるいは故森永さんなども証券業界の最高のポストにつかれている、こう言われています。さらにまた、大蔵省局長、審議官クラスの優秀な人材も野村総研とか山一証券経済研究所といったそれぞれの自社のシンクタンクに迎えられている。こういう事実が、いわゆる野村証券大蔵省の言うことを聞かなくて済むとか、あるいは禁止通達を出しても大蔵省の言うことを余り聞こうとしないとか、そういう問題が出ていると思うのですが、大蔵大臣、この事実をどのように見られておられますか。
  242. 篠沢恭助

    篠沢説明員 お答えをいたします。  大蔵省の場合、金融証券の知識経験を必要とする職場に請われて就職をするケースが比較的多いことは御指摘のとおりでございますが、私どもの仕事の性質上そうした専門的な知識経験を有する人が総体的に多いということに基本的にはよるのではないかと思っております。しかし、国の機関と密接な関係にございます営利企業への就職につきましては、その民間企業との癒着を防止し、行政の公正さの確保を図っていくという観点から、国家公務員法に基づく人事院の審査を受け、その承認を受けておるところでございます。証券会社への再就職も同様の手続を経るものでございます。  もとより、大蔵省に在職をした者が営利企業に就職をすることによりまして行政がゆがめられてはならないということは当然のことでございますから、当省の側におきましては常に厳正かつ公正な行政を行っているというふうに確信をしておるわけでございます。  なお、今先生から取引所あるいは幾つかの証券団体あるいはシンクタンク的なものへの就職ということについての御指摘がございました。取引所でございますとかあるいは証券業協会といったような団体におきましても、やはりその業務の運営上、高度な知識、識見あるいは長年の経験ということからの人材の求めがあるということが多くあるわけでございます。私どもといたしまして、大蔵省退職後において証券取引法運用等についての知識経験がさらに活用されるということは、それぞれの団体のいろいろな設立の趣旨等、目的の遂行に役立つものと私どもとしては考えてまいったところでございます。
  243. 富塚三夫

    ○富塚委員 天下りと言われている幹部の方々の人事はおおむね五年サイクルで交代されていくと聞いています。  私の得た情報では、大蔵省証券局長を中心とした幹部、大手証券業界のトップクラスとの間で月に一、二回程度の会合、打合会を開いて、株式担当者も含めて綿密な情報交換、情報の収集などもしていると聞いています。しかし、実際には専門家でなければわかりにくい。証券業界側がイニシアチブをとっている場合が多い。一部報道されているように、野村証券の力量が抜群に強くて大蔵省の担当者も頭が上がらないみたいなことが言われているのですけれども、そういった事実が癒着の構造と言われるようなものを生み出したように見られるのですが、証券局長、どうでしょうか。
  244. 松野允彦

    松野説明員 御指摘のように月に一回、証券局の担当別にいろいろと証券界の人たちと会合を持っております。これは主として、私どもとしては証券局の考え方、政策的、行政での考え方をむしろ説明する機会として大いに利用し、あわせて市場の動向、証券市場のあり方についての業界の意見も聞いて政策の立案の参考にしているわけでございまして、決して特定証券会社あるいは証券会社側の意見に左右されるということではなく、行政上の参考資料を得る、あるいは我々の行政の考え方を説明するという場所としてそういう機会を持っているわけでございます。
  245. 富塚三夫

    ○富塚委員 大蔵省はいわゆる育成、指導監督をするという立場にある証券業界との関係なのですが、やはり実態的にはそういう点がうまくいっていないからあのような問題が起きたのではないか。つまり、このところどうも不思議なことには、一昨日に大手証券会社より訂正報告が出て、二百二十九件が二百三十一件に、補てん額が千二百六十億が千二百八十三億に変わって、しかも八八年九月から九〇年三月期まで、大蔵省通達を出した後でも九〇年三月期の補てんが百六十三件の七百七十億も占めているといったことが出ているという。どう考えても、この大蔵委員会が始まる前の前の日になってまた訂正が出てきた。ある新聞によると、既に通達が出た一昨年の段階では八割方もそれが大蔵省もわかっていた、補てんの分が。それも黙認していた。また今度は訂正だということの問題から考えると、その辺の指導監督という問題は明確になされていなかったんじゃないか、そういうことができない環境にあったのではないかと思うのですが、どうなんですか。
  246. 松野允彦

    松野説明員 今回の事後的な損失補てんの問題につきましては、確かに、私ども元年十二月に通達を出しまして、しかしそれにもかかわらずその後のものがあったということについて私ども指導が十分でなかったという点についてはまことに責任を痛感している次第でございます。  ただ、今御指摘いただきました有価証券報告書の訂正の件でございますが、これは今月の初めに税務調査の決定、更正がございました。これが過去にさかのぼって訂正が行われたわけでございます。そういうものも踏まえまして自主申告額と突き合わせた結果、その自主報告額に入っていなかったものもございますし、あるいはその過程で若干の照合ミス、計算ミスなどもございまして、そういうものを公認会計士を入れまして訂正報告書をつくるための精査をした過程で若干のずれが生じたわけでございまして、この更正決定を受けて作業を始めたということもございますし、あるいは公認会計士と厳密な詰めをして訂正報告書と しての正確を期すという作業を鋭意進めた結果というふうに御理解をいただきたいと思います。     〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
  247. 富塚三夫

    ○富塚委員 大蔵省は国家財政について強大な権限を持っていると言われています。すなわち、歳入と歳出、また資金の調達や運用、そして業界の育成、指導監督、つまりこの証券業界に対しても、育成と指導という面と監督の面という両面を持ち合わせての今の対応ということの問題は、どう考えても癒着の構造が生まれてくるんじゃないかというふうに思わざるを得ないのであります。大蔵大臣、つまりきちっとした監督面のやり方と育成、指導という面のやり方は、当然行政上も切り離してやっていくように改めるべきだと思うのですが、これは証券全般の規制のあり方の問題と含めて考えなければいけないと思いますけれども行政の分野でその点はそういうふうに変えていくことはできないのでしょうか。
  248. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 午前中来申し上げてまいりましたように、私どもは検査の体制というものを、この証券業務に限らず金融全般について見直しをいたしております。そして、従来私は、銀行局は銀行局なりに、証券局は証券局なりに、そして国際金融局は国際金融局なりの検査体制を持っておりましたものはそれなりの意義があったと思います。しかし、それが今日以降もその状態であっていいのかどうかということはおのずから別の問題でありますし、今回これだけの問題が発生をいたしました以上、検査体制というものは基本的な面から見直す必要があると思い、検討いたしております。いずれにいたしましても、概算要求を取りまとめる時期というものも視野に入れながら作業をいたしておるところであります。
  249. 富塚三夫

    ○富塚委員 私たちは政府関係職員の特殊法人への天下り問題などについても、社会的な不公平をもたらしているということで、何回か閣議で徹底をされても守られていないという問題を今取り上げて、我が党の内閣部会などでいろいろ議論をしていただいているのですけれども、この天下り人事の問題の法的規制、この場合には主として退職金の二重取りとかそういう問題、あるいはそれぞれ公社公団、特殊法人の中の人事の停滞とか、そういう問題がいろいろ問題になっているのですけれども、天下り問題を一定のルールをきちっと決めていくようにしないと、これはこのまままたずるずるいってしまうと再びこういうことが起きるんじゃないかと懸念をするのですけれども、人事院などでどういうふうにお考えになっているのか。具体的な法的な規制の問題などについていろいろ議論されていますが、どのようにお考えになっているかお聞かせいただきたい。
  250. 大島満

    ○大島説明員 現在、先生も御承知だと思いますが、営利企業への就職制限制度というのが設けられております。これは、職員が在職中の地位とか職権を利用しまして営利企業に就職しようとする弊害を防止し、公務の公正な執行を確保するという要請と、離職後の職員の職業選択の自由あるいは勤労の権利等の憲法で保障されております基本的人権の尊重との調和を図るという趣旨に沿って、離職後二年間は離職前五年間に在職をしていた国の機関と密接な関係にある企業に就職することは原則的に禁止し、人事院がこの法律趣旨に反しないものとして承認した場合には就職を認めることとしている制度がございます。  このことによりまして、国民の行政に対する信頼感の保持を図ろうとしているわけでございますが、このような現在の制度がございますので、人事院といたしましては、その職責の重要さにかんがみまして、この制度の運用に当たりましては国会での御議論を参酌し、あるいは国民の批判を受けないように厳正な運用に努めてまいりたい、努めてまいりましたし、今後もそのような方針で対処してまいりたいというように考えております。
  251. 富塚三夫

    ○富塚委員 この問題は、いずれまた臨時国会が開かれて、具体的に今国民の側から見て大蔵省証券業界の癒着がこのような不祥事を起こしたのではないかと見られているその問題をどう解明するかという点で、天下り問題のあるべき姿をやはりきちっと国会の中でも政府として意思統一していく必要があるだろうと思いますので、この点はここで質問を終わりまして、さらに、これから私は具体的にそういったルールといいましょうか、やはり基準を決めて、一定の法的な規制を考えていくべきだろう、こう思っていますので、その点を申し上げておきたいと思います。  次に、証券局長にお尋ねしたいのですが、証券会社に対する大蔵省の検査は、ほぼ二年に一度証券局の検査課のメンバーが一カ月ぐらいかけて検査すると言われています。営業特金の各企業ごとの横並びといったような問題が出て、つまり証券会社相互が調整をして大蔵省にうまく言いわけを立てるみたいなことでやっている節も一部報道をされているのですが、この検査と講評そして注意という問題が、ルールがどんなふうになっているのかについてお尋ねしたいと思います。     〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
  252. 松野允彦

    松野説明員 証券会社に対する検査は、御指摘のように本省監督会社の場合には大体二年に一回ぐらいの周期で検査を行っております。これは会社の大きさによって検査期間あるいは検査人員が違うわけでございますが、もちろん本店の検査のみならず営業店、営業店すべてに臨店するというわけにはまいりませんものですから、抽出をして検査をするわけでございます。もちろん予告なしということで突然入るわけでございますが、検査を一カ月なりあるいは大きな四社ぐらいになりますと数カ月かけて検査を行いまして、その検査の結果を取りまとめまして検査の主任から会社の幹部に対して検査結果についての講評を行います。講評の中に、検査の結果問題と指摘されているものについての指摘があるわけでございまして、それに対しまして、証券会社からそれに対する是正策なりを答申をとるわけでございます。その答申をとりまして、それに基づいて証券会社が自主的に指摘事項の改善に当たるわけでございまして、後、その検査結果を行政の方に回しまして、行政の方でフォローをしていくというような形になっております。
  253. 富塚三夫

    ○富塚委員 銀行の場合も同じですか。
  254. 土田正顕

    ○土田説明員 銀行局では検査部という組織があり、財務局では金融検査課がございます。  それで、今、銀行というお話でございました。銀行は、大体において本省の検査部の方から検査官がチームをつくって検査に出ております。周期は多少証券会社の場合よりも長目であろうかと思いますが、例えば都銀、長銀、信託銀行、これはできれば三年以内の周期で回るようにしたいということで計画の策定に努めておるところでございます。実際に参ります検査は相手によってさまざまであり、通常の検査のほかに、例えば、まあこれは性格としては通常の検査でございましたが、昨年入りました住友銀行のような場合には、非常に長い期間を要したというようなものもございます。その対象により事案に応じ、弾力的に機動的にやりたいと考えておるところでございます。
  255. 富塚三夫

    ○富塚委員 時間が制約されていますから、いわゆる検査、講評そして注意というこの問題のあるべき姿の問題はいろいろな疑問点を残しているように思われますが、いずれ引き続いてまた次の国会で議論をされていくべき問題だと思いますけれども、その点について私からも、これから十分な検討を必要とするんじゃないかという点を申し上げておきます。  それで、証券各社顧客を勧誘するときの問題で今国民の側、庶民の側から非常に意見が出ているのですけれども証券会社はそれぞれ勧誘するについての内部規定や通達をもって社員を教育しているという点はあるのですが、その証券会社顧客への対応が非常に不親切で、一般投資家をだますようなやり方が非常に多いということが今大きな問題になっていると思います。電話の注文でだまされる、甘い言葉で口車に乗せられた、泣き寝入りさせられるケースが多いということで、結局、証券取引法の目的などからするならば、投資者保護をどうするかという観点に立ってこの問題 について根本的に証券会社指導していく姿勢に立たないと、ますますこの不祥事に拍車をかけるように、国民の側からそういう問題が提起されると思うのですが、局長どうですか。
  256. 松野允彦

    松野説明員 証券会社営業姿勢適正化の問題でございます。  これは、私どもも従来から通達を出しまして繰り返しその営業姿勢適正化について指導してまいっているわけでございますが、ただ残念ながら、委員指摘のようにいろいろなトラブルあるいは非常に不親切だとかいうような問題が起こっております。中には、私どもの方にまで苦情が来るというようなこともございまして、証券会社に対してさらに厳しい姿勢で臨むように、こういう一般的な指導に加えまして、今個別のそういう問題が起こりましたときに社内管理体制の問題あるいは当該行為者の責任の問題等も含めて厳しい姿勢を示すように、厳しい対処を求めているところでございます。  なお、やはりこうしたものの再発といいますか、適正化を促進するためにいろいろなことを考えなければいけないということで全力を挙げているわけでございますが、つい先日出しました通達取引一任勘定を全面禁止するというような通達も、もちろんそういう一任というのが非常に不適正な勧誘につながりかねないということでそういう通達を出したわけでございますし、また内部管理体制の強化あるいは営業マンの教育、研修の充実というようなことについても、具体的な改善策を内容とする通達を現在準備を進めておりまして、今月中に発出する予定にしております。  さらに、これは証券取引審議会で御審議をいただいたわけでございますが、国際的な会合の場におきまして証券業者の行為規範というものについての議論が行われ、それが昨年まとまったわけでございます。行為規範ということでございますので多分にモラルの問題でございますが、大きく七つの規範がございます。その中には、例えば顧客に対して誠実で公平でなければならないとか、あるいは顧客の資力に十分見合った投資を行うべきだ、あるいは顧客に情報を十分提供すべきだというような七つの原則がございまして、これについて証券取引審議会で議論をしていただきまして、そのうち幾つかの原則については証券取引法に織り込むべきだというような報告をいただいております。私ども金融制度改革の際に証券取引法の抜本的な改正を予定しております。その際にこの点についてもあわせて法制化を検討したいと考えております。
  257. 富塚三夫

    ○富塚委員 大蔵省もお認めになったように多くの問題を抱えていると思いますが、証券会社の営業マンも、相手が株について無知だと思うと勝手に出し入れをして、操作して、後でこうやりましたと電話連絡、あなたに損はさせません、そうすると、一般顧客は素人ですから株のことはよくわからない、そうすると営業マンの誘導にひっかかってしまうという、そして元本割れが続いて泣いている人が現実に非常に多いのです。だから、いかにその姿勢を変えるかという教育指導するという点をぜひひとつ大蔵省は積極的にやっていただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  時間がありませんので、大蔵大臣、これからの、このような不祥事を生まないために金融体制にメスを入れていくという意味で、宮澤さんなども、米国の証券取引委員会、すなわちSEC型の独立監視機関をつくったらどうか。午前中、自民党の先生方からもいろいろ提起がありました。また、経済界からもそれぞれ意見が出ているわけですけれども、そのようなSECの日本型を考えるということで大蔵省が積極的に取り上げていくという点についてどのように決意を持っておられるのか。その、どのようないわゆる監督監視機関をつくるのかということについて、やはり諸外国の例を見て日本なりに実情に合うことを考えていくという点で、私は、できるなら、もちろん専門家も入って各界各層の代表によってこの種の問題を積極的に検討していくという姿勢に政府は立っていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  258. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 午前中にも、総理のもとにこうした問題についての機関をつくるという御提言があり、私はそれを総理にお伝えするというお約束もいたしました。その上で私が申し上げましたことは、その機関ができます結果として、例えば、この臨時国会に証取法の改正をお願いしようとしている。あるいは現在、大蔵省自身の手で検査体制の根本的な見直しを進めております。先ほどもお答えしたとおりであります。そうした作業にブレーキがかかるのでは困るということを一点申し添えております。  同時に、例えば現在の証券行政で免許制度をとっておりますものを登録制に切りかえるといたしますならば、SECのような機構を必要とするという御意見も一つの考え方であると私は思います。しかし、果たしてそれが日本になじむかと申しますと、私どもはこうした問題を起こした中でありますけれども、やはり事前審査をきちんと行う免許制の方がより効率的ではないかと考えておりますし、SECのような機関をつくるといたしました場合、日本では検察庁あるいは警察にのみ与えられておりますような権限までをここに付与することが望ましい姿であるかどうかといった問題もございます。そうした点を考慮に入れながら、今大蔵省としてはみずからの手で検査体制の全面的な見直しを進めておるところであります。
  259. 富塚三夫

    ○富塚委員 政府あるいは大蔵省の諮問機関としてこの問題を取り上げて結論を出すような議論をしてみることはできないのでしょうか。
  260. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ですから、そういう機会を待つほどのゆとりが果たしてあるかどうかということも一つございます。むしろ検査体制の整備などは、私どもは概算要求をにらみながら早急に結論を出さなければならない問題と考えておりますし、審議会でゆっくり御論議をいただくという以前に措置をしなければならないと考えております。その上で、なおかつ私どもとして御検討いただくべきテーマがありますならば、あるいは証取審でありましても、また金融全般ということでありましたならまた他の審議会におきましても、いろいろ御論議をいただく場面もありましょう。しかし、当面我々がすぐなすべきことは我々自身の手でなさなければならない、そのように考えております。
  261. 富塚三夫

    ○富塚委員 いずれこれから先、国会で審議をする場に持ち込んでやっていく問題を私の方からも幾つか提起したわけですけれども、私の質問時間、昼間の理事会が延びたので縮められてしまったのですけれども委員長、その分はぜひリストの公表の問題を含めて、自民党の理事さんもまじめに検討していただいて、有効な結論を出してもらうように重ねてお願いをして質問を終わります。
  262. 平沼赳夫

    平沼委員長 沢田広君。
  263. 沢田広

    沢田委員 松野局長さん、今答弁の中で、証券法の改正は早急に提案をしたい、こういうふうに言っておりました。それから、今大臣は、改正の中には早期にやるものとじっくり構えてかかるものと二つある。その両方の答弁は今の答弁の中に含まれる、いわゆる早期に、あるいは次の国会であるとか通常国会であるとかそういう時期を見て考えていると判断してよろしいですか。
  264. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 証取法につきまして、こうした不祥事が発生いたします以前からさまざまな議論をお願いしてまいった経緯があることは委員御承知のとおりであります。これらの制度の本質的な部分にかかわりますものは、拙速ということを我々は避けなければなりません。しかし同時に、こうした不祥事が起きました以上、その再発防止に対する手だてを法制的に必要とするものがあるならば、そして先刻来御答弁を申し上げておりますように、この損失補てんという行為にいたしましてもその他の行為にいたしましても、法的に規制をする必要がありとすれば、私どもとしてはこれは切り離して臨時国会で御審議をお願いいたし たい、そのように考えております。
  265. 沢田広

    沢田委員 あっちこっちにいくようになりますけれども、先般出されたいわゆる売買一任勘定取引の自粛について一つありますが、もう一つは暮れに出された、十二月二十六日のものも同じでありますが、その内容は、公平と一般投資者の信頼を常時確保していくことが必要とされる、そういう目的のために一、二、三、四と出されたわけです。これはイエスかノーだけでひとつ答えてください。
  266. 松野允彦

    松野説明員 十二月の二十六日に出した通達は、まさに御指摘のとおりでございます。
  267. 沢田広

    沢田委員 それから、その前の通達の中には、「記」として、お得意様の住所、氏名、特に売買の別、銘柄、価格、それから数量、現金取引・信用取引――あと時間がかかりますから。月一回の報告義務等、当該取引により生じた損失補てん並びに当該取引による利益保証証券業者は行わない旨の明示、これを契約内容として締結しなければならない、こういう通達が出ておりますね。これはどう扱われておりますか。
  268. 松野允彦

    松野説明員 今御指摘のは十二月二十六日の通達に合わせて出した事務連絡ではないかというふうに思いますが……
  269. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、この間の記者会見で、罪を償うという立場の発言でありましたが、通達だとなると法律的な拘束力もないのでその辺はと、こういう……。読んでもいいですが、報道機関によれば、ちょっと通達だから、まあそう難しく解釈しなくてもいいのじゃないか、こういったようなことが大臣の新聞記者会見で述べられたのですが、記憶はございませんか。
  270. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 記憶をもちろんいたしておりますが、委員のお述べになりましたのとは多少ニュアンスが異なるような気がいたします。たしか処分の軽重に対する記者団からの御質問に対し、残念ではありますけれども法律禁止をしている行為ではない、行政通達というものに対する違反でありましたために、例えば法律をもって罰則を定めているのと同等の処分ができないという意味を私はそのとき申し上げたと記憶をいたしております。
  271. 沢田広

    沢田委員 まあ、これは報道の間違いなら間違いで。そのまま読みますと、法制化されていないことを通達で自粛を求めることにはどこかに限界がある、こういうふうに言われたわけですね。そこまで記憶をしているのなら間違いはないのでありますが、そうなると、通達というものの果たしている役割と位置づけというものはどうなのであろうか。政府がたくさんの通達を出すわけでありますが、その言葉は、あえて申し上げればお取り消しになった方がよろしいのではないかというふうに私は感じますが、これをやはりこのとおりだと頑張りますか、どうですか。
  272. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 頑張りますかとか頑張りませんとかいう性格のことではございませんで、今申し上げましたように、処分が妥当であったかどうかということに対して、たしか私はそういうお答えをしたと存じます。  そうしますと、その行政通達というものの拘束力、これは法律で罰則を明記しておるものとはおのずから残念ながら違いがございます。もとより通達というものはそれが守られることを前提にして発出いたしておるものでありますし、今回のような事態が発生するということを想定いたしたものは、恐らくこの通達を出しました時点で、なかったと思います。ところが、こうした非常に大きな問題が出た。しかし、法律によって罰則の定められていない通達の違反というものに対して求める処分というものにはおのずから限界がある、これは、その当時、また今も私の思う実感であります。
  273. 沢田広

    沢田委員 これは政府全般にかかわる問題にもつながっていくわけでありますが、ただ念のために、そういうことになると、通達そのものの基準あるいはいろいろな取り締まりをしたりする場合のその基準というものに微妙な影響を与えるものである、そういうふうに考えましたので、あえて通達の権威という立場からお伺いをしたということでございます。今後は、大蔵大臣通達はこういう考え方であったというふうに記憶にとどめておきたいと思います。  続いて、特金勘定報告をいろいろしてくれ、こう頼んだのでありますが、早目に私の方から申し上げておきますが、どうしても守秘義務に抵触するというならば、業態別、金額のコスト別、この表は出てくるだろうと思うのですね。法人、個人、特殊法人、あるいは地方団体もあるでしょうし、いろいろ形態がある。形態の分類がまずできる。それからまた、一単位の金額の単位ができる。それから、勘定的に言えば一般特金勘定と区分ができる。これは最低限度提出できる内容だと思いますが、いかがですか。イエスかノーかでいいですよ、言いわけは要らないですから。
  274. 松野允彦

    松野説明員 確かに、公開につきまして、私ども証券会社に対してできるだけ可能かつ必要な範囲で公開しろということを期待しているわけでございまして、その中で、どういう形で公開が可能かという点につきましては、今御指摘の点も含めまして検討をされるというふうに考えているわけでございます。
  275. 沢田広

    沢田委員 これは検討なんという内容のものじゃないでしょう。守秘義務と何にも関係ないでしょう。どういう形態の団体があって、そして、その中にもまたどれだけの金額別になっているか、そういうことの報告が何が検討があるのですか。どこに検討のその根拠があるのですか。そんなもの、出すのは当たり前のことじゃないですか。別に中身を言ってくれと私は言ってないですよ。それはかえってあなたが自縄自縛で、そういうことをやっていったら証券業界との癒着はますます深いんだな、男じゃない、こう思われてしまう。まず答えてください。
  276. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御指摘のありましたような資料が作成できるかどうか、至急チェックをしてみたいと思います。多分そうしたものは可能であろうと思いますが、私自身、全体を承知しておるわけではございませんので、検討をさせていただきたい。
  277. 沢田広

    沢田委員 いわゆる証券行政に対する姿勢が余りにも弱々しいので、私もつい力が入りまして申し上げたわけでありまして、その点は、やはりこのことを国民がいかに重要に、関心を持っているかということをより一層ひとつ銘記していただきたいと思うのです。  次に、大蔵大臣、今回の証券の不祥事で、外国へ行かれました。我々も聞くところによると、国内の問題もさることながら、諸外国の、極めて悪影響といいますか、日本に対する信頼を失っているという現状は大変厳しい、こういうふうにも伝え聞いているところであります。台湾などは支店の認可を出したら断ったというような情報もあるくらいでありますから、大臣としてはその辺、行かれた立場から含めて、この問題の海外に与えた影響をどう受けとめておられるか、お答えいただきたいと思います。
  278. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 サミットの開催前の日英の蔵相会談の際に、私の方からこの問題に対しての説明をいたしましたところ、サミットにおける蔵相レベル会合のリード役を日本でやってほしいという御依頼がありまして、世界経済並びに自国経済の状況の部分についてのリードを私が行うことになりました。その席上、日本の経済実態のリポーティングの中にこの証券問題を私は加え、私の方からその報告をいたしました。  各国の関心は、特に暴力団関係における不明朗な取引というものに非常に強く視点が当たったというのが私自身の実感であります。その際、証券取引法の改正、また検査体制の全面的な見直しに既に着手している状況を説明いたしましたところ、全体会議におきましても、他の場においてもそれ以上論議はございませんでしたが、それは私の説明で完全に了解をしたということではなく、その説明をいたしましたような証券取引法の改正あるいは検査体制の整備というものが実行に移されるのを待つといった感じを私自身が肌身に受け てきております。
  279. 沢田広

    沢田委員 東証の理事長として、今のような事態はあなたの方ではどう受けとめて、また業界内にどのようにその趣旨の徹底を図ろうとなさっておられますか。
  280. 長岡實

    ○長岡参考人 今回の事件、まことに遺憾でございます。私は、健全な証券市場を維持していくためには、できるだけ数の多い個人投資家に参加していただくことが非常に重要であるという基本的な認識のもとに、いろいろと呼びかけも始め、具体的なお願いも各方面にしてまいっております。上場会社に対しましては、例えば千株一くくりの取引単位をできるならば百株に引き下げることによって投資家の方々の手が届きやすいようにするとか、あるいは配当性向を見直すようにということもお願いしてまいりました。そのやさきにこういう問題が起きて、市場信頼を失墜したということは大変遺憾であり、私はショックを受けた次第でございます。  この問題につきまして、先ほど来大蔵大臣あるいは証券局長からもお話がございましたように、大蔵省としてもどう対処するかということを今お考え中でございますが、私ども東証といたしましても、これは会員組織の自主規制機関ではございますけれども、東証の機能が十全に発揮できるようにするためにまだ検討の余地がないかどうかを今研究をいたしておりますし、一番大事なのは、証券業界みずからが証券業界の体質改善に本気になって取り組むかどうかという問題ではないかと思います。その点につきましては、新たに証券業協会長も決まりまして、証券業協会の中で業界改革推進本部というものを設け、部外者の方々の諮問委員会まで設けまして、本格的に取り組みを開始したと聞いておりますので、そういうことをあわせて、一刻も早く市場信頼を回復しなければならないと考えております。
  281. 沢田広

    沢田委員 それはまだ後で申し上げますが、進めていただきたいと思います。  手数料については若干考慮をしていきたい、こういう発言もありました。いかにこの手数料を、これは焼け石に水かもわかりませんし、今の大衆投資家の立場から見たら、一方はえらいもうけをして、一方は損しっ放しだ、死んでも死に切れないといったような心情にいると思うのであります。ふんまんやる方ないということで、証券会社にどなり込んでいって捕まっちゃったというのも、泥棒を捕まえようと思ったら自分が捕まってしまったというようなこともあるわけでありますが、手数料について、大蔵大臣の認可事項でもあるということですし、東証の方でも努力をしてもらうということで、国民に報いるために、近い将来において早急にこの手数料の自由化なり引き下げということについて配意をしてもらえる、こういうふうに大体考えてよろしいですか。
  282. 長岡實

    ○長岡参考人 沢田委員指摘のとおり、私どもは固定手数料制を維持しておりまして、諸外国では自由化した国が多いということは事実でございますが、ただいまも申し上げましたように、今私どもの最大の問題意識と申しますか、これは個人投資家をふやすということ、一人でも多くの方が市場に参加することがやはり市場の公平を維持するゆえんであるという気持ちでおります。  そうなりますと、仮にこれが自由化されますと、アメリカの例を見ましても、当然のことながら、非常に手間のかかる小口投資家の方に手数料がしわ寄せされがちでございます。大口投資家の方はサービスをして、小口の投資家へ手数料がしわ寄せされる。その結果、これは自由化でございますから、アメリカの場合には、平均値にすぎないと思いますけれども、現時点で一番単位の低い大体百万円前後の取引の例で申しますと、日本の場合、取引手数料は一・一五%でございますが、アメリカは二・二九%、日本の倍ぐらいになっておる。そういったようなことを考えますと、にわかに自由化をすることがいいのかどうかというような点につきましては、もう少し私どもとしても検討しなければならないというふうに考えております。
  283. 沢田広

    沢田委員 現在、手数料で、これは八九年の手数料ですが、二兆一千億ぐらいは入っているのですね、アバウトな数字かもわかりませんが。八九年の実績でも二兆円にも及ぶ手数料が入っている。国民は、非常に市場が大きくなったわけですから、それだけたくさんの手数料を支払っている。そういう状況の中で、今の程度ではちょっとそれは国民的には納得しがたいものがあるんですよ。やはりこれは還元といいますか、経営の合理化もしてもらわなくちゃならないし、いろいろあれだけよくなった場所もできたわけですから、それなりに国民に還元してもらうし、そのためにはもうちょっとテンポを速めて対応するという必要性があるんだろうと思うのですね。証券局長もそう思っているんじゃないかと私は思うのですが、これはあわせてお答えいただきたいと思います。
  284. 長岡實

    ○長岡参考人 ただいま私は固定手数料制をにわかに自由化することにはどういう問題が出てくるかということをもっと慎重に考えなければいけないと申しましたけれども、固定手数料のもとにおきましても、手数料水準が適正であるかどうかということにつきましては私どもも常時関心を持っておりまして、過去五年間に四回にわたって、たしか五年だったと思いますが、四回にわたって引き下げを行っております。ごく最近では、昨年の七月に平均で七・一%の手数料の引き下げを行っております。今後とも、手数料水準の適正化につきましては、私どもとしても十分に関心を持って対処してまいりたいというふうに考えております。
  285. 松野允彦

    松野説明員 確かに、手数料は、日本の場合小口は比較的安いわけでございますけれども、御指摘のように、最近は大口取引がふえてまいっております。証券会社、特に大手証券会社大口取引をかなり大量にやっておりまして、大口の手数料が相当大手証券会社に入っているということは事実でございます。私どもも、今東証の理事長からお話がございましたように、大口、小口を含めてできるだけ適正な水準に引き下げるという方向で検討をしてもらうということを取引所にもお願いしたいというふうに思っております。
  286. 沢田広

    沢田委員 これで幕を引くとかなんとかということではなしに、まだ続いていくわけですが、そういうものを補てんした金額を全部戻せと言ってもこれはなかなか難しい問題でしょうから、白紙に戻せと言うわけにもなかなかいかないでしょうから、せめて一般投資家に対して均衡を図っていくように努力をしてもらいたいと思います。  さて、補てんという言葉が使われておりますが、今までの質問の中でも折々に触れてその補てんの解釈、定義づけがあいまいなんです。年金事業団は七千億くらいの金を預けておられたようでありましたし、あるいは去年で二千七百十億くらいでしたか、今年度は三千九百億くらいになっていますが、報道関係によれば、年金事業団の解釈は、全然補てんをしてもらっていないというふうに発表していますね。国税の方では、それはそうではない。これは年金事業団ばかりではないのですが、ほかにも通用するわけです。  それからもう一つは、これは野村さんだけかもわかりませんが、四十五億出ている、こういうふうに言われております。これも手数料は三億出ているのですね。手数料はちゃんと取られている。それで年金事業団は損してない、損してないと言っているわけですが、事実上公社債等の値下がりはあったわけですから、当然これも委託勘定でやっているわけでしょうけれども、その中身が実態はわからないんじゃないのかという気がしないでもない。  しかし、監督官庁の厚生省としては、それはどのような位置づけで受けとめているのか。それから、証券局としてはこれはどれだけ補てんをなされたと見ているのか。また、国税庁はその中のこういう補てんについてはどういう位置づけで補てんを定義づけているのか、一応お答えいただきたいと思います。
  287. 加藤栄一

    ○加藤説明員 厚生省でございます。  厚生省といたしましては、御存じのとおり、我 が国社会の急速な高齢化の進展に対処いたしまして、必要な年金の給付財源を充実し、あるいは還元融資の財源を確保するために、公的年金の積立金をできるだけ効率的かつ安定的に運用いたしまして正当な収益は得ていかねばならないという趣旨から、年金資金の自主運用を行っているわけでございます。  お尋ねの年金福祉事業団におきましては、専門の証券投資顧問会社の助言を受けて自主運用資金の一部を自家運用しております。これは第一に、株式は取り扱っておりませんで、先生今お話のありました公社債及び預金で運用しているわけでございます。それから第二に、得られた収益はすべて被保険者、国民に還元されるものでございます。報道されておりますような証券会社に対する株の運用を一任するとかあるいは営業特金を設けるというようなことはやっておらないわけでございます。  今回の件につきましては、年金福祉事業団から事情も聴取いたしました。年金福祉事業団としては、事前にせよ事後にせよ損失補てんを求めたことはありません。また、違法、不当な取引を黙認していたということもございません。取引関係をずっと調べまして、事後的に見ても、そういう不自然なところというのはないわけでございます。したがいまして、その点につきまして、私どもといたしまして補てんを受けているという認識はないわけでございます。
  288. 松野允彦

    松野説明員 年金福祉事業団の関係でございますが、私ども報告を受けておりますところでは、税の更正決定の中に年金福祉事業団との取引が入っていたということを聞いているわけでございます。ただ、具体的な損失補てんの金額につきましては、個別の取引内容でございますので明らかにするのを差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  ただ、この年金福祉事業団との間の損失補てん取引でございますが、これは税の認定で損失補てんだということで認定を受けた取引でございまして、運用する側の認識のいかんにかかわらず、結果として損失補てんのための取引であったと言わざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
  289. 冨沢宏

    冨沢説明員 課税上の取り扱いということでございます。  まず、損失補てんをしたと伝えられる側でございます。これは、本来払うべき必要のないお金を顧客との取引の維持のためにお払いになったということでございますれば、その分につきましては、私どもは交際費として課税をするという立場でございます。  それから、受け取った側でございます。これは、損失補てんというのは収益の一つの形でございますので、これがもし受け取った側で申告の中に入っておらないということでございましたら、それに対して私どもは適正な課税を行っていくという立場でございます。  今お話しの年金福祉事業団は、これは公共法人でございますので法人税の納税義務はございません。
  290. 沢田広

    沢田委員 今のように、年金事業団はその間に大蔵省の検査が三回あったのですね。ずっとあったのだけれども、堀田業務課長という人は、申告がなかった補てんの中に同事業団のものもあると、これは相手が言っているわけですね。そして同時に、年金局長も、穴埋めとしてこれは追徴課税がかからないと今おっしゃったが、出した方にかかるのでしょう。結果的には四十五億円の補てんをやったことが二十三日判明した。こういうふうに業者の言い分、これはちゃんと国税はやはり押さえて、年金事業団は納めなくてもいいが、野村は少なくともいわゆる出した金額は予定外の交際費、こういうことで制限外の交際費として当然追徴課税を行われる。その辺に、税金の問題でいろいろ紛争が起きておるというのはほかにもあるのですよ。挙げれば切りがないのですが時間の関係で省略しますが、要するに補てんというものの中身が、証券局と出した側と国税との間の認識が一致していない。これは言うならば不労所得ですよね。贈与なんだ、全然もらうべき契約のないものをもらうのだから、当てにしてないものが懐に入るのですから。それ以外だったら泥棒なんだ。だから、そういうことになった金を何か補てんだったら正当だとか、補ったらば正しいのだとかという印象づけをしようと証券局も一生懸命している。これはよくない。これは不労所得であるし、損したまま泣き寝入りしている国民はいっぱいいるのですからね。そういう意味においてはこれはいわゆる――だから隠そうとしているのですよ。不労所得であるし贈与であるし、言うならば今後も引き続いてくださいというリベートですよね。そうはっきり証券局は受けとめて、補てんだなんてわかりにくい言葉でごまかそうとしないで、これは今後も引き続いてお世話になりますからお礼に持ってきましたというようなものです、そういうふうに割り切った方が、国民は、あいつはもらったけれどもおれはもらわないからやはりけしからぬと言うかもしれませんが、そういう方が私はいいのだと思うのです。年金事業団も、今言ったように、自分の方はただもらったんじゃない、当たり前なんだと言っている。ところが、片っ方は四十五億払ったのですと言っている。証券局の方は、まああったようですというふうに言っている。だから、我々は業界も呼んで、言い分をちゃんと聞かないときちんとしたけじめがついていかないですよ。そういうことにこれはつながるわけですよ。政府の一機関の年金事業団の問題ですらこれだけの差がある。一般企業の問題へいったらもっと差が出てくるのは明らかですよ。そういうことで、国税庁が一生懸命税金を取ろうとしているのに、それを逆に、補てんは正当であるというような印象をもし与えて国税局をつぶすような形になったらこれは大変なことだ。だから、そういうようなことであってはならぬので、例えば今の大勢はそんな方向に向いているから、念のために国税局に叱咜勉励を与えるために、これは断固としてきちんとけじめをつけていかなくてはならぬ。不労所得である、そして、これはもらうべき金でないものをもらったのだ、こういうことをきちんと認識していかなくてはならぬと思うのでありますが、国税はどうですか。
  291. 冨沢宏

    冨沢説明員 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、収入として計上すべきものが落ちておるというようなことでございましたら、これに対して断固として適正な課税を行うという立場でございます。今後ともそういう姿勢でやってまいりたいと思います。
  292. 沢田広

    沢田委員 大勢の味方がここについているということを思って、ひとつ頑張っていただきたいと思います。  それから、先ほど大蔵大臣がなるべく可及的に返答してもらえるというのですが、私はこの委員会が、私の質問の終わるぐらいまでには出るだろうと実は考えたのです、その程度のものは。縦割り、横割りの勘定、いわゆる業態別、資金別勘定は。普通は出してしかるべきじゃないかと思って期待しているのですが、時間はどんどんかかっていきますから、あえて私は、証券局が検査もやったし書類も来ているのだし、ちょっとすれば出てくるのじゃないか。  もっと口が悪く、もうちょっと申し上げますと、大蔵大臣証券局に、今自粛をば、長岡さんもそうですが、休ませたけれども、夏休みだと言っている連中もいるのですよ。ちょうどいい夏休みをもらって、今までうんと働き過ぎていたからちょうどよかった、こういう評判もあるので、この夏休みで、一緒に自粛させたけれどもそれほどの効果はどうもなかったのじゃないか。今まで働き過ぎてきたからここで二週間ぐらい休むのもちょうどいいだろう、こういう言葉も聞くぐらいですからね。そういうふうなことで漫画にかかれないように、これは東証も大蔵の方も心して自粛の対応は図ってもらわなければならないと思います。私の見解も含めて、その点自粛の中身について、これは東証さんと証券局の方にお伺いをいたします。
  293. 長岡實

    ○長岡参考人 自粛は、今回の問題につきまして証券会社が自粛の営業――東証としては一日も休まず東証を開いております。
  294. 沢田広

    沢田委員 いや、東証は大いに励んでいただいて結構なんでありますし、特に悪いことがあったわけですから、余計に信頼を取り戻すために鋭意御努力いただかなくてはならぬのですが、当該の四大証券等が自粛をした、こう伝えられているが、御本人たちにとってみればちょうど夏休みだというふうに受けとめているということも言われているくらいですから、その点は証券局の方も、どこが指示したかわかりませんけれども、自分でやったのならちょうどそれでいいということになるのかもしれませんが、そういう非難を受けないようにやっていただきたい、こういう要望を申し上げたわけです。証券局の方から何かありますか。
  295. 松野允彦

    松野説明員 現在、四社に特別検査に入っております。その中の一つの検査項目として、この営業自粛期間中に社内点検あるいは社内管理体制の見直しをやったかどうかという点も含まれております。いやしくも、営業自粛の四日間に休みをとったというようなことはないと私は信じているわけでございますが、検査でそれも対象にしているわけでございます。
  296. 沢田広

    沢田委員 私は時たま笑っているような意味で話をするけれども、中身はそうじゃないのですよ。あなたが笑っていい立場にあるのじゃないですから、その点はひとつ注意しておきたいと思うのです。  それからもう一つは、一言だけ、これは大臣にも、途中いなかったから聞いてなかったのですが、今年金事業団の問題で資金運用で意見が違った、国税の意見とそれから証券会社の発表と年金事業団の受けとめ方が違ったわけです。片っ方は四十五億補てんした、片っ方は補てんしてもらってない。国税は、四十五億出たから追徴課税になります。野村と今けんかをしている。頑張れ、こう言って私が今言ったわけであります。そのことによって私が一番心配するのは、やはり自主運営はおまえらじゃだめだ、自主運営はやはり大蔵省がやらなければ、おまえらじゃごまかされるからだめなんだといったような形で年金事業団の運営に、今七千七百十億ぐらいのようでありますが、それを抑え込むような形はとってもらいたくない。このことでそのことが相殺されたりなんかすることは、十分ひとつ大臣に念頭に置いておいていただきたいと思うのですね。これはお願いをしておきたいと思います。  それからもう一つは、さっき東急電鉄の問題で、これは明らかに、例えば暴力団に金を貸したというのは、何かの見返りを期待していたことは間違いないのですね、何かの見返りを。それから、株をこれだけ買ったというのも、何かの見返りを当然見ているのですね、幹部は。だからそれが要すれば、私は今度は株価操作をやりますよということを言ってやる人はいないのですね。これは証券局長、わかるでしょう。今度私はこれをやりますよと言って宣伝してやる人はいないのですよ。だから当然、筒井さんの質問の途中で切れちゃったのですが、これは当然、株価操作の疑いがあるわけですよ、意図的なものが。特に暴力団も加わっていて、それに金を貸して、そしてつり上げるからおまえそれでもうけろと、そのうちの何割はよこせなんという相談をしながら、恐らく裏づけをとっていけばそういうことになるのだろうと思う。そういうことでこれが行われたことはもう明白なんです。だからそれを証券局が、いや、実は何でもないのです、何でもないのですと言えばますます黒くなる。だからそうじゃなくて、その事実は事実として、犯罪になるかどうかは別問題ですよ、犯罪になるかどうかは別問題として、事実は事実としてきちんと受けとめていく。この姿勢は、これからこういう証人なんかも事ある以上、これはきちんとはっきりしていかなかったら、これは本当に大蔵委員会の無用論につながってしまう。ですからそういう事実関係についてだけはきちんと、株価操作の疑惑はありましたと、そのぐらい、あなたの答弁を私が言ってしまってはおこがましいのですけれども、そのぐらいなつもりで国民に向かって言わないと納得しないと思うのですね。もう一回、あなたの腹の底から本音を言ってみてください。
  297. 松野允彦

    松野説明員 東急電鉄の株価につきましては確かに異常に上昇しているわけでございまして、私どもその株価の推移について、もちろん非常に疑念を持って調査をしているわけでございます。現在までのところ、株価操作と決めつけるだけの材料はないわけでございますけれども、引き続きその事実関係をさらに詳細に分析をして、その中でいやしくも株価操作のようなものが見つからないかどうか、我々としてもさらに全力を尽くして調査をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  298. 沢田広

    沢田委員 弱々しい答弁ですけれども、誠心誠意答えているものだと私も受けとめまして、ひとつ今後の努力を期待してやみません。  それから、東証でも公正な株取引の実現のために、今回のこの事態をどのように受けとめて、今後どのようにしていこうと考えておられるか、この際ひとつ御見解を承りたいと思います。
  299. 長岡實

    ○長岡参考人 東急株の問題につきましては、先ほど筒井委員にもお答え申し上げましたように、現在の段階においては相場操縦が行われたとはっきりと認定するには至らなかったということを申し上げたわけでございますが、ただいま証券局長からも答弁がございましたように、大蔵省当局ともよく相談した上で、私どもとしても厳重に調査をいたしてまいりたいと思います。  なお、東証としての審査体制が十分に機能を発揮していなかった面がないかどうかという点も私どもは率直に反省をいたしまして、現在の組織の内部のあり方まで含めまして将来に向かって改善を図るように努力してまいりたいと考えております。
  300. 沢田広

    沢田委員 ここで述べられたことが実現いたしまするように心から期待してやみません。  続いて、大変恐縮でありますけれども、先ほどSECの問題もあったわけですが、大蔵省内部につくるのも、何か犯人と仲よくやっていたのだからちょっと格好が悪い。外へつくるのも筋としてはあり得ない。行政改革のさなかでもあるということになると、公正取引委員会あたりは対象としてはどうか。似つかわしくないかどうかは別問題として、そういうような程度のところにそういう分野をつくって監視をし、あるいは報告をさせ、そしてそれに対して答申をする、こういうようなステップぐらいが、アバウトな問題でありますが、アバウト的に考えればそういうようなところがちょっと似ているところかな、こういうふうに思うのであります。その辺は公取が果たして、今のままが適用するとは私は思っていませんよ、それはそういう存在的な位置づけかなというふうに思っているわけであります。まだ大臣もそこまで思いが至ってないかもわかりませんけれども、お考えいただく一つの材料としてこれは提言をしておきます。もしお考えがあればお答えをいただきたいと思います。
  301. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御提起になりましたお考えは、一つのお考えとして私も拝聴させていただきます。ただ私は、大蔵省の外に検査体制を別の組織としてつくりました場合、果たしてうまく機能するかどうかについては疑念なしといたしません。むしろその意味では、証券のみを対象とした組織といいますよりも、証券行政をも含めまして金融全体の検査体制を省内にまとめていく方向の方がより実効が上がるのではないかと個人的には考えております。ただ、現時点におきまして官房長を中心に鋭意検討作業を進めております中であります。委員の御意見もその一つの参考として拝聴をさせていただきます。
  302. 沢田広

    沢田委員 公取さんに聞いても、自分のことで仕事がふえることですから、しかもまた違ったこういう厄介な問題では、なかなか婿さんにもらうというのもどうもちょっとおっくうだなという気もするでしょうけれども、もし国会等の法の改正 等でこういうものの取り扱いを行うという事態になったときに、公取としてはどういうふうな受けとめ方をされるか、一応これはレクチャーしたものですからお答えをしていただきたいと思います。
  303. 糸田省吾

    ○糸田説明員 証券行政の組織のあり方について私ども意見を申し上げる立場にございませんものでございますから、ぜひとも答弁は御容赦申し上げたいと思います。
  304. 沢田広

    沢田委員 余りにもあっけないので情けない。しかし、言うならば、若干とんでもない方に球が飛んだようなものでありますから、やむを得ないかと思います。しかし、そういうことも受けとめていくということをひとつ今後特にお願いをしておきたいと思います。  これはあるところから、事前にこれは当然入っていたものだろうと思うのでありますが、イトマンと関係してまいりますが、南青山の土地、伊勢志摩で約一千億、それから杉山商事で、これはもう検察当局に入っているわけですが、杉山商事で一千億、大平産業で一千億あるいは雅叙園観光で二千億、大和地所等で一千億、合計六千億等が転がしに使われているというようなものが、しばらく前でありましたが、投書等に出ていたというようなことが当然伝えられていただろうと思うのでありますが、大蔵省としては、こういう情報はいつごろ知って、いつごろこのことに対応をしようとしたのか。もしわからないならばこれはやむを得ませんけれども、わかっていたら、これは検察当局もそうですが、こういうことをいつごろ察知して、いつごろこれは怪しいなというふうに思われたのか、その点御見解を承りたいと思います。わからないといえばわからないでやむを得ません。
  305. 國松孝次

    國松説明員 イトマンをめぐるいろいろな事件につきましては、目下検察庁において関係被疑者を逮捕いたしまして捜査をしておるところでございます。大阪府警におきましても、本年四月二十四日、イトマン元企画監理本部長に係る特別背任容疑で、同人の関係する会社事務所などの捜索を行いまして、その押収資料の分析など鋭意捜査を進めておるところでございまして、今後大阪地検とよく連携をとりながら大阪府警なりの捜査を進めてまいりたいと思っておるところでございます。  ただ、この件につきましていつごろからということにつきましては今ちょっとはっきりわかっておりませんが、いろいろこの問題について表面化したちょっと前ぐらいからというような感じで理解をいたしております。
  306. 沢田広

    沢田委員 大臣、今回のこれらの、イトマンもそうですが、蛇の目もそうですし、大阪府民信用組合の問題もそうですし、暴力団関係もそうなんでありますが、要すれば、今回の問題も含めて、みんなこれは低金利時代のバブル現象の一つの関連の事件なんですね。低金利であったということと、それから非常に金がどんどん動いたということ。そういうようなことで、土地の暴騰と同じように、そういう関連性の中にこういう事件が続いて起きていっている。これを大臣としては、日銀もさることながら、どのように今――これらの事件のそもそもの発祥というものを考えたときには、私なども大蔵にいて、ややじくじたるものもあるわけですね。なぜもっと手を打つことができなかったのかというふうに思うのですよ。ですから、そういうことを考えると、これだけのいろいろな事件を発生させた責任金融政策に一部あったと言っても過言ではないと思うのです。その辺、その責任にある大臣としてどのように今受けとめておられるか、お伺いさせていただきたいと思います。
  307. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昭和六十一年ごろの金融緩和局面におきまして、景気拡大などを背景に株価が大幅に上昇した、そして株式市場が活況を呈したということは、委員指摘のとおりであります。こうしたブームの中におきまして証券会社の業務なども拡大をしていったわけでありますが、一方では証券会社営業姿勢において行き過ぎがあったこと、また顧客の側の自己責任原則の徹底が不十分であったこと、こうしたことが今回の損失補てんなどの背景にあると考えられます。同じように、実は他の分野において発生しております諸問題というものもこの金融緩和局面の中で生じた問題であるという委員の御指摘は、私もそのように受けとめなければなりません。ただ同時に、当時なぜ金融緩和が必要であったかということも御想起をいただきたいと思うわけでありまして、日本経済全体はその中で内需を中心とした順調な拡大を続けてまいりました。そして、その成長というものは今後も我々は維持しなければならない、内需中心の成長というものは維持しなければならないと考えております。  そうした中で今回のような事件が発生をいたしましたことは、私どもにとりまして極めて苦い思いを今強いておることでありますが、今後ともにこうした事態を発生しないよう当局としての責任を果たしてまいりたい、そのように考えております。
  308. 沢田広

    沢田委員 最後になりましたが、これからの問題は、先ほどもちょっと触れましたけれども、いろいろな問題の、事件の追及ということとあわせて、証人に来て、それぞれ、今の違いなどもありますから、それぞれの見解があるんだろうと思う。言い分はあるんだろうと思うのです。ですから、その言い分は堂々とやはり国民の前で言ってもらって、同時に、我々もいないところで審判をするということも避けなければならない。同じような条件で、発言の機会を与えて堂々と討論をするということは必要なことだと思うので、これは委員長も公正という立場から考えて、私も全然本人がいないところでぶったたいているみたいなものですから、それもやはり心苦しいですよ。やはり来てもらって、いや冗談じゃない、私はこうでした、こう言ってもらった方が国民のためにもプラスになるということで、自民党さんも公正な委員会運営が進められるように、これは心から期待してやまないのです。  それで、証券局長さん、これからの手順を、ちょっと私、二つケースを言っておきます。  一つは、通達等で今まで十分に徹底しなかった通達を、あるいは省令にするなりあるいは法律改正にするなり、とにかくそういう形でやっていく道が一つありますね。それからもう一つは、世界的に見て証券取引法をより一層明確にしていくために、一定の法の改正を進めていかなければならぬという条件がありますね。そして、同時にこれが、最後には一般投資家、国民全体から信頼されて、そして、正常な社会の中における株式市場、こういうものに生まれ変わっていってもらうという姿をつくらなければなりませんね。これはやはり一つのいいものをつくるための陣痛ですから、痛い思いをしなければならぬだろうと思うのですね。ですから、そういう意味において、余りかわいがった形のいわゆる過保護の行政でなくて、試練の行政としてこれからは方向を進めていかなければならない、私はこのように思います。恐らく大臣もそれだけの、事によったらやめちゃうかもしれないといったような立場でやったわけですから、日本の証券業界は橋本大蔵大臣のときに目が覚めて変わった、こういうふうに歴史に残るように、ひとつここは勇断を奮って改革をしていただきたい、こういうふうに思います。  手順の方とあわせて大臣からもお答えいただきたい。証券の方も心してやっていただくために、長岡さんからもその決意のほどをお聞かせいただいて、三十二分ですから、大体終わる二分ぐらい前に、約束の時間に終わるだろうと思います。どうぞよろしくお願いします。
  309. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたように、証券取引法の法改正は二段階になると思います。そしてそれは、こうした不祥事を考えず、証券市場というものの一層の定着、拡大を図るために今日まで考えられてまいりました対応策、これが一つございます。今回の事態によって、大変情けない話でありますけれども、ほかの国がわざわざ法律禁止をしないことまで法律禁止をしなければならないというような状況になりました中で、緊急を要する改正がございます。これらはいずれにいたしましても本委員会に御審議をいただくものでありますが、少なくとも、この当面の事態に対処するための改正は臨時国会においてできるだけ早い時期に御提出させていただき、御審議を願いたいと考えております。  同時に、この極めて不幸な事態というものをむしろ今後の証券市場の、国民に信頼される姿にしていくためにどうすればいいかを私どもも真剣に考え、その方向に向けての努力をいたしてまいりたいと考えておりますので、今後ともの御協力を心からお願いを申し上げます。
  310. 長岡實

    ○長岡参考人 東京証券取引所は一種の自主規制機関でございまして、取引等につきましても強制捜査権等もございませんけれども、私どもといたしましてでき得る限りの努力をし、現在の体制の改善を図りまして、一日も早く市場信頼を回復するように努めてまいりたいと考えております。
  311. 松野允彦

    松野説明員 証券行政、保護行政、こういう御指摘でございます。私ども大変心外でございまして、これだけ証券市場が大きくなっております。私どもの意識としては、決して保護行政をしているというつもりはないわけでございまして、やはり市場が大きくなれば、それに従った業者を育成し、あるいは新たな業者を入れるというようなことで、適正かつ有効な競争を促進していきたい、そのための抜本的な法改正を用意しておるわけでございますし、また国際化が進んでまいっております。通達による行政という不透明な面は極力減らしていって、できるだけ透明かつ公正な行政に持っていきたいというふうに思っているわけでございます。
  312. 沢田広

    沢田委員 終わります。
  313. 平沼赳夫

    平沼委員長 日笠勝之君。
  314. 日笠勝之

    ○日笠委員 私たち公明党は、今回の証券不祥事と言われているものにつきまして、真相究明がまず第一である、それがなければ再発防止もないだろう、こういうことで今回の証券不祥事にかかわった関係者の証人喚問を要求してきました。しかし、現段階におきまして、これが実現せず、大変残念に思い、遺憾に思うところでございます。ぜひこのことにつきましては、今後とも強く主張を申し上げていくということを申し述べておきたいと思います。  さて、私の持ち時間は三十五分でございますので、簡潔明瞭なひとつ御答弁をいただきたいと思います。  まず、損失補てんの件から質問に入りたいと思います。先ほど午前中に同僚委員質問に答えまして、損失補てんの手口というのでしょうか、手法、何点かございましたけれども、私が聞きたいのは、海外法人なり海外の子会社を通じてのこの損失補てんという手口、手法はあったのかなかったのか、このことだけをまずお聞きしたいと思います。
  315. 松野允彦

    松野説明員 海外の法人を使った手口があったという報道がございました。私どもも現在検査に入っておりまして、その件について検査をしております。ただ、海外法人自体は、私どもの検査の対象ではございませんけれども、親証券会社を通じて資料などを取り寄せるというようなことで、海外法人を使った損失補てん取引があったのかどうかということを検査を通じて調べているところでございます。
  316. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、通告をしておりますので準備があったと思いますので、ぜひお答えをいただきたい。  というのは、公務員として守秘義務がある、これを百歩譲ってそれを認めたといたしましょう。しかし、個別具体的な、いわゆる補てん先数二百三十一と言われておりますけれども、個別具体的にどういう企業だとか団体の名前を私は聞くわけじゃありません。百歩譲って守秘義務がある、こう考えまして。ですから、透明なガラスで二百三十一のいわゆる個別具体的な企業名を見たいというのじゃなくて、すりガラスで結構です、すりガラスで。ぼわっとしたような感じでもよろしいですし、フレームだけでも、この補てん先二百三十一を具体的にひとつお聞きいたしますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  まず、この二百三十一の補てん先数は、これは実数にしては幾らだったのでしょうか。いわゆるダブりがある、このような報道もございますので、その点をまずお聞きします。
  317. 松野允彦

    松野説明員 二百三十一は、四社の自主報告補てん先を単純に足したものでございますので、これは延べ数でございます。その中に幾つか重複したものがございます。ただ、完全にその重複分を取り除くということになりますと、同じ法人で証券会社によって違った名前というようなものもあり得るということもありますが、ただ、私どもが現在把握しております中で形式的に見て重複している分を除きますと二百、およそ二百ということになります。
  318. 日笠勝之

    ○日笠委員 次に、これも通告しております。新聞の株式欄を見ますと、業種別に株式、順番にいろいろ株価が出ておりますが、この業種別に何社、これは延べでも結構です。それから金額は幾らだったのか。これをひとつぜひ、個別具体的な企業名を特定するわけじゃございませんので、ぜひこれはこの場で公表していただきたいと思います。
  319. 松野允彦

    松野説明員 私ども実はまだそういうふうな分類をつくっておりませんので、先ほど大臣からもお答え申し上げましたが、業種別のどういう形のものができるか検討をしながらつくってまいりたいと思っております。現在のところはそういうまとめたものはございません。
  320. 日笠勝之

    ○日笠委員 私はこれは怠慢だと思うんですね。二十三日に公表されて、恐らく手元にデータはあると思うのです。それから二日たっていますから、大ざっぱな業種別でもこれはわかるんじゃないか。そういうことまで何か、こういう集中審議で国民注視のこの大蔵委員会で言えない、何かあるんじゃないかな、また悪く言えば、手元で何か作業をするんじゃないかな、そういうふうに疑いを持たれちゃいけません。公平、明朗な、そういう委員会の運営でなくちゃいけませんし、また行政側もそういう対応をしなければいけませんので、これはいつまでにできますか。そしていつまでに手元にいただけますか。
  321. 松野允彦

    松野説明員 私ども全力を挙げましてできるだけ早くつくるということでお許しを、御理解をいただきたいと思います。
  322. 日笠勝之

    ○日笠委員 わずか二百三十一、ダブりを除けば二百ですからね、わからなければその他でもよろしいですから、もう一日仕事でできると思います。何なら私にくださればすぐやってあげますけれどもね。一日仕事で、あすの今ごろまでぜひひとつお届けいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  323. 松野允彦

    松野説明員 できるだけ早くつくるように努力いたしますが、いつまでという確約をすることはお許しをいただきたいと思います。
  324. 日笠勝之

    ○日笠委員 じゃ、もう少し個別具体的にお聞きしたいと思います。その延べ二百三十一の補てん先、この中に政治家、政治家に連なる人、政治団体、こういうものはありましたですか。
  325. 松野允彦

    松野説明員 個別の取引先にかかわることでございますので、お答えを差し控えさしていただきたいと思います。
  326. 日笠勝之

    ○日笠委員 いやいや、あるかないかだけ聞いておるんですよ。だれかと言えば、それはあの人はどこそこの証券会社でやっているからあの人が怪しいとわかるでしょう。あるかないかだけ聞いておるんですから、イエスかノーかでお答えください。
  327. 松野允彦

    松野説明員 私どももまだ全部を精査しているわけではございませんので、完全な自信を持って今の質問にお答えできるという状態にはございません。
  328. 日笠勝之

    ○日笠委員 いや、ですから一覧表があるわけでしょう。それを証券局長は見られたと思うんですよ。その中で自分で、あっこれは政治家の方だな、政治家に連なる方かな、これは政治団体か な、じゃ、そういう第一段階でよろしいですよ。精査する前、今現時点で見た段階ではどうなんでしょうか。
  329. 松野允彦

    松野説明員 今申し上げましたように、自信を持ってお答えを申し上げるという状況にはございません。
  330. 日笠勝之

    ○日笠委員 何となくそうなってくると、こっち側にいる人が今晩寝れないんじゃないでしょうかね。(発言する者あり)いやいや、だって、いるか、だれだと、お互いに犯人捜しみたいになっちゃうんですよ。ですから、はっきり今の段階で、私の見た段階ではない、ないと思うとか、それだけでもいいですから、どうでしょうか。
  331. 松野允彦

    松野説明員 たびたびの同じ答えを繰り返して申しわけございませんが、ここで自信を持って私が今の御質問にお答えするという用意はございません。
  332. 日笠勝之

    ○日笠委員 時間がありません、押し問答できません。これも業種別で御報告いただくときにはわかるかもしれませんですね。  それでは、こういうのはいいでしょう。例えば補てん金額の一番大きな額は幾らだったのでしょうか。
  333. 松野允彦

    松野説明員 これは、先ほどの名寄せの話もございました。私ども、まだ二百三十一のリストについてそれほど詳しく見ておりませんので、今のお答えについても、例えばその相手先が非常に略号で書いてあったりなんかいたしまして、名寄せを完全にできるような状態にございません。したがいまして、今の御質問に対して確信を持ってお答えできる材料がございません。
  334. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、名寄せをしなくていいですよ。その出た延べでいいですから、延べ二百三十一の中で一番大きいのは、金額は幾らだったのですか。
  335. 松野允彦

    松野説明員 そういう目で見ておりませんものですから、今私は記憶をしておりません。
  336. 日笠勝之

    ○日笠委員 どうなんですか。真相を究明するためにわざわざ閉会中やっているんじゃないですか。データを持っておられてざあっと見れば、それは何かわかりませんよ、記号か何かわからないけれども、一番大きい金額は幾ら、これぐらいすぐわかるんじゃないでしょうか。何ならすぐ電話で本省へ問い合わせいただいて、私の質問はまだ少々ありますから、金額だけでもぜひひとつお教えいただきたい。どうですか。委員長、督促してください。
  337. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 金額だけは今すぐ調べさせます。ただ同時に、私も実はそれを全部見ているわけじゃないのですけれども、確かに、例えばアルファベットで書いてありますようなものがどういう相手であるのかを確認する作業に手間取っておるという事実は御理解をいただきたいと思います。金額はすぐ調べさせます。
  338. 日笠勝之

    ○日笠委員 その中で一つ伺いしたいのは、公共機関はありましたか、ありませんでしたか。
  339. 松野允彦

    松野説明員 公共機関と申しますと地方公共団体のことでございましょうか。(日笠委員「公共の機関ですから」と呼ぶ)これは今申し上げましたように、アルファベットで書いてあったりいたしまして、完全に確認、精査の作業が済んでおりませんものですから、なかなか公共機関かどうかという区別もつかないものもございまして、完全にお答えできる状態にございません。
  340. 日笠勝之

    ○日笠委員 アルファベットで書いたり意味不明のような名前があるということですが、それは仮名口座か借名口座なんでしょうかね。私、よくわかりませんが、それこそ問題じゃないでしょうかね。  では、次へ行きますよ。暴力団関係、これもわかりませんね。わからないですね。
  341. 平沼赳夫

    平沼委員長 松野証券局長、今の質問に……。
  342. 松野允彦

    松野説明員 我々としても暴力団関係があるかどうかはわかりません。
  343. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、金融機関はどうでした。これはわかるでしょう。何とか銀行とか何とか信用金庫とか、これだけはわかりますね。どうでしょう。
  344. 松野允彦

    松野説明員 金融機関はリストに入っております。含まれております。
  345. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、わかりましたか、金額。では金額。
  346. 松野允彦

    松野説明員 名寄せ前でございますけれども、単純、形式的に見た最大の金額は四十九億円でございます、一番大きい金額。
  347. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、業種別とか金額は精査をして近々に出てくるそうですから、次の質問に移りたいと思います。  午前中にも同僚議員にお答えになっていましたけれども、これは証券局長どうなんですか。本省分管轄の中二十二社、うち四大証券が入っている。その中で六社、三百五十億円の自主報告があった。損失補てんですね。これは具体的にはどういう証券会社が幾らということは、この場では言えませんですか。
  348. 松野允彦

    松野説明員 この前もお答え申し上げましたように、自主報告をした会社が四社以外に六社、本省監督の会社でございますが、これにつきましても、現在、訂正有価証券報告書を間もなく提出できるということで準備を進めております。今の段階でこの六社の具体的な証券会社名をお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  349. 日笠勝之

    ○日笠委員 この損失補てんの問題は、昨年七月に十五社で百六十五億円の損失補てんが発覚をして、マスコミにも大きく報道されました。これは、私、お聞きするところによりますと、九〇年三月までには自主報告をしなさい、八九年十二月の通達損失補てん禁止した、翌年の三月ごろまでに自主報告しなさいよ、こういうふうに聞いておるわけでございますが、その集まった段階でなぜその結果を公表しなかったのか。そこできちっと精査をして公表しておれば、今日こういう問題もなかったのではないのかな。行政指導の甘さというのでしょうか、報告をいただいて、自主報告だから発表できません、有価証券報告書を訂正した段階各社がそれぞれ発表しなさい、そういう何か密室というのでしょうか癒着というのでしょうか、隠ぺいというと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、その辺に国民の不信感というものがあるんじゃないかと思うのです。九〇年七月の段階損失補てんが発覚しました。そのときになぜきちっと公表をしなかったのかをお伺いしたいと思います。
  350. 松野允彦

    松野説明員 自主報告を受けました損失補てん額は、自主的に報告を提出させたものでございますし、公表を前提としないで行政が徴求したものでございます。行政当局といたしましては、そういったものを公表するということは、従来から差し控えさせていただいているところでございます。
  351. 日笠勝之

    ○日笠委員 一言申し添えをしておきますが、それがいわゆる密室でやったような感じで、補てんをしたところもされたところもいわゆるなあなあ主義で、別に大きな問題になってないし、これでいいんじゃないのと、そういう一つの方向へと行ったんじゃないか、こういうふうにも思うわけですね。ですから、自主報告だから公表しないというのもわかりますけれども、大問題なわけですから、行政通達違反ですから、これはきちっと適当な時期に、おたくの社内では処分しなさいよというふうな、そういう処分、自粛を求めてというのじゃなくて、堂々と、恐らく証券局長さんは毎日ぐらい記者会見をやっておったと思うのですが、その場で、こういうことがあったけれども、こういう手を打ちましたよと、そういうふうに事前にきちっとやるべきではなかったのかなということを今感じますので、それだけ申し添えて、次の質問に移ります。  御承知のとおり、今回の一連証券不祥事、特に野村、日興の暴力団への利益供与といいましょうか、こういう問題が地方自治体、またその関係団体に至るまで大きな影響を与えております。これは、四大証券との取引をそのために停止したというのが、私が知っておる一番新しいニュースは百二十九自治体・団体、こういうふうに聞いてお るわけであります。  さあそこで、民間会社の東電、関電、中部電力等も電力債発行等の主幹事会社を外して反省を求めよう、そういうようなニュースも流れておりました。じゃ、一体国はどうなのかな。国は一体じゃ、そういうことに対して何らかのペナルティーを科すというのでしょうか、そういうことは考えておるのかな。  そういうふうな観点で見ますと、郵政省は、簡易保険事業なんか見ますと、まあこちらの方から、あなたのところとは四日間一時取引を停止しますよ、こちらの方から意思をはっきりと言った。それがたまたま四営業日の自粛日であった、こういうことですけれども、しかし郵政省としてはっきりと意思を伝えた。これは大事ですよ。あなたのところとは取引しませんよ、一時、四日間だけだ、こういう郵政省は郵政省なりにきちっと意思をはっきり伝えている。じゃ、この大蔵の方の国債発行、政府保証債等々は一体どうなのか。  ちょっといろいろと資料をいただきますと、この国債の引き受けにおきまして相当四大証券は手数料を稼いでおるようでございます。例えば平成二年でありますと、四大証券で二百十億円、これは国債です。政府保証債でありますと昨年で二十一億円。このほか公募地方債もございますし、それからまた大蔵省所管で資金運用を行っておるいろいろな公的機関がございます。日本輸出入銀行、日本開発銀行、国民金融公庫、産業基盤整備基金、預金保険機構、国家公務員等共済組合連合会、こういうところは大なり小なり四大証券とおつき合いがあるそうでございます。  そういうことを見れば、この国債を発行する、政府保証債を発行する、四大証券がそのシンジケート団に入らなければ非常に利回りが高くなるんじゃないか、そういう心配もあるかもしれません。がしかし、未来永久にシンジケート団から自粛してくださいとか、一時的に外しますよとこっちから強制的に言うのか、その辺は別といたしまして、せめて何かあってしかるべきではないか。先ほど言いました大蔵省所管のその資金運用を行っておる七団体もあるわけですが、これぐらいは、四大証券とは一時やめますよとか、国債や政府保証債も、まあ八月、もしあれば八月期くらいは自粛してくださいよ、こういうペナルティーがなぜ国はできないのか。それが先ほどから委員の皆さんが言っておるように、大蔵省そのものにこの保護育成をする分野もあり、監督をする分野もあり、また国債を発行する分野もあり、十二面観音じゃありませんが、あれもこれもありますから、結局きちっとした姿勢がとれない。後で言いますが、天下りだどうのという話もございます。  この点大蔵大臣、三つ全部兼ね備えた最高の責任者でございますから、私は、特に暴力団と云々と言われたこの二つの大証券会社は、せめて何か一時取引停止とか自粛を願うとか、しかるべき処置があってもよかろうと思うのですが、いかがですか。
  352. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員がお述べになりましたような趣旨は、当然のことながらよく気持ちの上で理解のできることであります。同時に、その国債の発行条件がみすみす悪くなることを、国民からお預かりをしたお金を使わせていただく立場の人間として実施をするということにも、率直に申してためらいがございました。そうした中で、一方では自粛処分等を求めてまいりましたけれども、この国債を消化していくという立場は別に考えさせていただきたい、率直にそんな気持ちを持っております。
  353. 日笠勝之

    ○日笠委員 ちょっとはっきり理解できなかったのですが、国債発行は別の立場、それから資金運用の団体、これはどうですか。
  354. 寺村信行

    寺村説明員 国債の発行につきましては、なるべく広く国民各層に消化をしていただく、こういう趣旨から国債の販売、引き受けの能力のある金融機関でございますとか証券会社にあまねく参加を求めているところでございます。したがいまして、特定の会社を選んだり、あるいは逆に特定の会社を排除するというような考え方はとられておりません。  それから、現在国債は入札発行で行われておりますので、入札に際しましてどの参加者がどの価格でどれだけの量を落札するかというのは、競争の結果でわかるものですから、したがいまして、国債の発行者といたしましては、入札における競争ができるだけ活発になってもらうことが必要でございます。そのことが国債費の利払いの軽減につながり、納税者の負担を最小限にとどめる。そういう意味ではなるべく競争市場にたくさん参加していただく、そのことが必要だという考えでございまして、もちろん今回の不祥事に対しましては、大蔵省としては、先ほど来申し上げておりますように一方で各種の処分をしておりますし、それから今後の対策もいろいろ検討しているところでございますので、国債の発行、消化につきましては、従来の事務手続――もちろん四日間の営業自粛期間は当然これはできないわけでございますが、それ以外のことにつきましては、従来の事務手続をとらせていただいている、こういう考え方でございます。
  355. 日笠勝之

    ○日笠委員 その辺がどうも割り切れないのですね。結局巨大企業、スケールメリットが大きければ少々悪いことをしても、おれたちを抜かしては何もできないんだろう、こういうことではやはりいかぬと思うのですよ、国債は国がやっていることですから。そういう意味では、大臣が今おっしゃったことをしんしゃくいたしまして、ぜひ私は、国債発行、政府保証債発行以外にも大蔵省所管で資金運用を行っている公的機関がございます。国家公務員等共済組合連合会なんというのは二十五兆四千九百九十八億五千万ですか、膨大な有価証券での長期保有を行って、それはお聞きしますと四大証券も使っている、こういうのもありますので、こういうのを踏まえて、私は、もう一度自粛をするように求めるか、またこちらの方から郵政省のように一時取引停止しますよ、こういうペナルティーがあってしかるべきだ。それほど大問題なんだよ、特に暴力団に関しては絶対許せないんだ、そういう姿勢がなきゃいけない。暴力団と適当につき合って利益供与したって、まあ巨大企業だからおれらがいなくなったら大変でしょう、だからおれたちも入れさせてください、構わないよ、こういうなれ合いは断じて許せませんので、この点を強く申し添えておきます。  それから、今度は暴力団問題でございます。  証券局長、先日、今回の証券不祥事と称するものについてのペーパーをいただきました。その中で暴力団関係という項目がございますね。これを見ますと、六十一年に暴力団関係者との間で両社において、野村、日興ですが、株取引が開始され、平成元年四月から秋にかけて東急電鉄株の買い付けが行われた。なお、野村証券においては仮名口座取引もあった。これはこれだけなんでしょうか。暴力団関係者との株の買い付け、ほかにはなかったのでしょうか。それはどう掌握されていますか。
  356. 松野允彦

    松野説明員 私どもが現在まで報告を受けている限りでは、そこに書いてあるだけでございます。
  357. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、先ほども質問が出ましたゴルフの会員権の保証金預かり証ですか、俗に預かり証、これを平成ファイナンスという会社とグリーンサービスという会社がそれぞれ二十億円ずつ購入した、こういうことでございますが、先ほどのペーパーを見ますと、平成元年六月にそれぞれ平成ファイナンスは二十億円、それからこれは日興不動産が平成元年六月に購入し、それをグリーンサービスに譲渡したということですね。いずれにいたしましても、平成元年六月にこの売買があった。ところが平成ファイナンスは、商業登記を見ますと設立されたのが平成元年六月六日。それからグリーンサービスは平成元年八月三十日。取引のあった日と大変近似ですね。時期が近い。ですから、場合によってはこの二つは、いわゆる預かり証二十億円で野村ファイナンスとか日興クレジットとか、その親会社の両証券会社がこ れを買い込みますと、特別背任罪みたいになりますね。紙切れ同然だという、検察の冒頭陳述にもあった、価値がないものと言われておりますから。そういうことで、ダミー会社というのでしょうかね、一種のそれを引き取らすための会社をつくった、このようにもとられてもいたし方がないような気がいたしますが、この平成ファイナンス、グリーンサービスは、その後どういう企業活動をやっておりますか。
  358. 松野允彦

    松野説明員 両社から聴取をした報告によりますと、平成ファイナンスは、長期投資、融資などの業務を行っております。それから、日興のグリーンサービスの方は、印刷業、リース業などの業務を行っておりまして、実体的な事務内容のある会社であるというふうに報告を受けております。
  359. 日笠勝之

    ○日笠委員 グリーンサービスは年間売り上げはどのくらいなんですか。
  360. 松野允彦

    松野説明員 売上額はちょっと手元にございませんが、営業利益で、三年三月期、グリーンサービスが一億一千五百万円でございます。
  361. 日笠勝之

    ○日笠委員 企業活動は設立されて以降もやっている、そういうことになるわけですね。私どもの手元にも大体そういう同じようなデータがあります。ただ、直系の野村ファイナンス、日興クレジットであれば問題が大きい、だから、さらにその下の孫会社、関係会社に引き取らそう、そういうふうなことで、私は、これは何か疑いがどうしても生ずるわけでございます。  それと、もう一つお聞きしたいのは、暴力団関係でございますけれども、これは国税庁になりますが、株取引における巨額な資金源ですね、どこからそのお金が出てきたのかとか。イトマンの方も二千数百億円というお金がどこへ行ったかわからない、一部暴力団に行ったんじゃないかとか、こういうふうに言われております。そういうふうなのを踏まえて、私はここで出番は国税庁だと思うのです。今回の損失補てん問題も、どっちかというと、正義の味方国税庁があらわれて快刀乱麻にやった、それで証券局の方もいたし方なく自主報告を求める、こういうふうなパターンじゃないかなというふうに思わざるを得ないのですね。  そこで、国税庁さん、ぜひ今回の東急電鉄株を中心とする資金源、それからイトマンの二、三千億と言われる不明金、この辺をひとつ、暴力団に流れているとも言われておりますので、調査していくとかいろいろな資料を集めるとか、何かそういうお考えはございますか。
  362. 冨沢宏

    冨沢説明員 私ども個別の件についてはお答えできない立場でございますが、ただ、新聞等で報道された事件につきまして、それが課税の問題につながるというふうに思料されますものにつきましては、私ども常に関心を持ってあらゆる機会を通じて資料の収集に努め、またさらに必要があるという場合には、実地調査も行いまして、適正な課税の実現に努めてまいりたい、そういうふうに思っております
  363. 日笠勝之

    ○日笠委員 アメリカ・シカゴのギャング王アル・カポネがついに失墜したのも、エリオット・ネスという、所得税法違反で挙げたのです、あれ。殺人とかではないのです。だから、国税庁はしっかりこの際、アングラマネーが今表へ噴き出していますから、しっかりそういうところへ目をつけて、ぜひひとつ日本のエリオット・ネスたらんことを期待を申し上げるわけでございます。  それから、では最後に、時間がありません。これは大蔵大臣、先ほど天下りの問題がございましたね。私はだれがどうかということは申し上げません。大体証券会社にも毎年五、六名の方が俗に言う天下りと言われております。職業選択の自由もございますし、この点については厳密に法律で規制しろとかいうことは非常に難しいと思います。しかし、一つ考えなければいけないことは、大臣が記者会見したのを私テレビで見ました。野村証券の前社長が、大蔵省も御承知のことである、届けておると言ったときに、もう何と情けない、モラルの欠如かと、こういうふうな発言をされていましたね。その何と情けない会社へ皆さんどんどんどんどん天下りしていくわけですね、そういう業界へ。そういうことを考えますと、私は、大蔵省として今後証券業界へは天下りいたしません、特に利益追求する証券会社には天下りいたしません、自粛をいたします、自粛。証券会社に自粛をさせたわけでしょう、営業日四日休めとか、社内処分しなさいとか。自粛がお好きでございますから、大蔵省自体もこの際証券会社への天下りは自粛いたしますとここで明確におっしゃってくだされば、国民のこの不信感も払拭して、ああ、やはり大蔵省も今後癒着だなんとかということがなくなって公平な証券行政をやる気だな、このようにもう目に見えるわけでございますが、その点最後にお聞きして終わりたいと思います。
  364. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどどなたかに対して官房長が御答弁を申し上げましたが、国の機関と密接な関係にある営利企業への就職については、民間企業との癒着を防止し、行政の公正さの確保を図る観点から、国家公務員法百三条に基づく審査というものがあることは御承知のとおりであります。ただ、私は、個々の職員たちの第二の人生における進路を私が規制をするということについてはためらいがございます。そして、やはりそれぞれの良心にかけて行動をするもの、そのように思います。私は大蔵省責任者として、今後その業界には一切人を送らないといったことは、個々人を考えます限り申し上げることはできません。
  365. 日笠勝之

    ○日笠委員 私の質問を終わります。
  366. 平沼赳夫

    平沼委員長 宮地正介君。
  367. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、限られた三十五分間でございますので、最初に私、大蔵委員長に強く要求をさせていただきたいと思います。  けさからの集中審議を私も聞いておりまして、今回の証券不祥事事件についての真相の解明については、やはり野党が共通した田淵節也氏以下三名の証人喚問については、ぜひその実現のために大蔵委員長としては積極的に汗をかいていただきたい、このことが一点であります。  また、二百三十一件のリストの公表につきましても、先ほど来の議論を聞いておりましても、非常にまだまだ大蔵省としても、守秘義務を盾といたしまして、なかなかまだ公表に決断をしておりません。そういう意味合いにおきまして、国会法の百四条には国政調査権があるわけでございますので、大蔵委員長としても、ぜひこの国会法百四条の国政調査権に基づいて、大蔵委員会として大蔵省に正式に公表リストの資料要求、これができるようにぜひ汗をかいていただきたい。特に、現在の国会情勢は参議院においては与野党逆転であります。衆議院においての公表リストが出されないで、参議院の大蔵委員会において議決の結果、国政調査権によってリストの公表の要求がされる、こういうような事態になったときに、衆議院大蔵委員会の権威にかけましても、どうか大蔵委員長としては、ぜひこの資料、公表リストの国政調査権による要求についても特段の汗をかいていただきたい。  この二点をまず強く要求をしたいと思いますが、大蔵委員長としての決意また見解を伺っておきたいと思います。
  368. 平沼赳夫

    平沼委員長 委員長から宮地委員にお答えをいたしますけれども、御意見承りましたのですが、これは理事会で検討すべき事項でございますので、理事会で検討をさせていただきたいと思います。これで御了承いただきたいと思います。
  369. 宮地正介

    ○宮地委員 引き続きまして、何点か質問を続けてまいりたいと思います。  先ほど、日笠委員からの質問によりまして、名寄せをしないまでも、延べ二百三十一件、しかし重複を除きますと約二百件という新たな答弁が証券局長からなされました。また今回、四大証券以外に六社、三百五十億の損失補てんが新たにきょうわかったわけでございます。これにつきまして、出し手側の証券会社の数あるいは受け手側の数というものがわかってきたわけであります。なお、これから特別検査等によりまして、平成二年四月以降本年三月までの状況についても、今の段階では自主申告はないにせよ、場合によっては損失補てんの状況が今後明らかになることもわかっ てきたわけであります。  そこで、私は国税庁にちょっと伺っておきたいのですが、国税庁は、出し手の証券会社についての国税調査は行いまして、そして損失補てんの追加については、国税調査の中から交際費ということで大体この大要がわかってきた。今後、この重複を除いた二百件、あるいは今後明らかになってくるであろう受け手の数、こういうような受け手の企業、団体、あるいは個人があるかもしれません。こういうようなところについて税務調査あるいは査察などを行っていく考えがあるのかどうか、これをまず伺っておきたいと思います。
  370. 冨沢宏

    冨沢説明員 個別の問題については私どもお答えできませんが、今おっしゃいました損失補償というようなものを受けた側におきまして、仮にそれが正当に申告の上に反映されておらないということでございますれば、適正な課税を行うというのが私どもの立場でございます。そのために調査が必要ということであれば調査をいたす所存でございます。
  371. 宮地正介

    ○宮地委員 今回のこの証券スキャンダルのきっかけが、一つは兵庫県警からの切り口、もう一つは、やはり国税調査に基づいての追徴金、この二つの調査機関によって、この証券スキャンダルの解明が今進んできたわけでございます。どうか国税当局におきましても、出し手と受け手と、このチェックを、皆さんは調査されているわけですから、当然四大証券の二百三十、今回のこのいわゆる数についても、また重複された二百件についても、十分にこれは把握をされていると思います。どうか受け手においてもしっかりとチェックをしていただいて、今回のこの全容解明のどうか大きなインパクトとして、また調査機関としての、また本来の国税調査の使命に立って、今や日本が世界の金融国際市場のトップの位置にある、その先進国にふさわしい、今こそ私は災いを転じて福となすというこの決意で改革をしていかなくてはならない重大なときを迎えているのではないか、こう思いますので、どうか国税当局におかれましても、特段の精力的な汗をかいていただきたい、このことを強く要請しておきたいと思います。  そこで、具体的に、けさほども法務省当局から、二つの告発に基づいて、今回の特に東急電鉄株の相場操縦に関しまして捜査に着手している、こういう御報告が刑事局長から行われました。この点について特に私が伺っているところでは、七月十一日には中島照彦氏、七月十八日にはアルバート・アレンツハウザー氏による告発がなされたと聞いております。この告発の概要と今日までの捜査の状況について、御報告できる範囲で結構ですから、国会に報告していただきたいと思います。
  372. 井嶋一友

    井嶋説明員 ただいまお尋ねの告発二件でございますが、中島照彦氏告発の事件は七月十五日、アルバート・アレッツハウザー氏告発の事件は七月十九日、いずれも東京地検において告発を受理いたしております。  その要旨でございますが、被告発人は野村証券株式会社及びその代表取締役である田淵義久氏でございます。要するに、野村証券がその業務に関して東京急行電鉄の株式の価格を操縦することを企て、その目的で、平成元年の十月ごろから同年十一月ごろまでの間に、東京証券取引所において、野村証券等が右株式について一連取引を行うことにより株式の価格を高騰させたという、つまり証券取引法百二十五条二項の要するに株価の変動操作に当たる、こういう御主張で告発がなされたものでございまして、東京地検におきましては、これを受理いたしまして、捜査をしておるという状況でございます。
  373. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、警察庁としても、外為法の十八条、二十二条の違反に基づいて捜査に着手をしておるという案件があろうかと思いますが、この点についての御報告をいただきたいと思います。
  374. 國松孝次

    國松説明員 現在、兵庫県警察が捜査中の外国為替管理法違反事件でございます。これは貿易会社、ウエスト通商株式会社という会社がございますが、役員が韓国内の土地取得のため、平成元年五月ごろ、二回にわたり、円貨表示の自己あて小切手約百通、額面一億七千万円を不正に持ち出したという容疑が一つ。それから、同じ貿易会社の役員らが、平成元年六月三十日ごろ、大蔵大臣に対する事前の届け出などをせずに、米国所在の株式会社発行に係る株式百万株を、四百万米ドル、約五億四千万円ぐらいになると思いますが、それで購入したという容疑で捜査をいたしておるところでございます。本年一月以降数次にわたりまして関係者の事務所等十五ヵ所の捜索を行って、現在、押収資料の分析等所要の調査を行っておるところでございます。
  375. 宮地正介

    ○宮地委員 今、法務省並びに警察庁から報告がありましたとおり、今回のいわゆる証券スキャンダルの一つの大きな具体的な案件について捜査当局が着手をした。私はこれは非常に重大な問題であろう。やはり検察当局あるいは警察庁がこの問題をどう精力的に捜査をしていくか、その過程においていわゆる証券スキャンダルの全容が解明をされていく、非常に重要な今役割と責任を担っていると私は思います。そういう点におきまして、法務省刑事局長の今後の捜査に対する決意、この点を伺っておきたいと思います。
  376. 井嶋一友

    井嶋説明員 具体的な事件としては、ただいま申しましたように、東京地検において二人の個人から告発を受けておるわけでございまして、その捜査をする義務があるわけでございますが、その他一連の、今回関係あるとして報道されておりますいろいろな事実については、当然検察当局も承知をしておるはずでございます。  検察当局といたしましては、従来からもそうでございますが、犯罪行為に触れる事実があれば適正に対処するというのが検察でございますので、そのような姿勢でおるものと承知をいたしております。
  377. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ検察当局の今後の御活躍に期待をしておきたいと思います。  そこで、角度を変えまして、今回のこの不祥事件について、私は、独禁法の関係からこの問題の調査ができないのであろうか、特に独禁法十九条「不公正な取引方法禁止」というこの条項を適用して公取が調査に踏み込めないのかどうか、この点についてもいろいろ私なりに研究をしてまいりました。この独禁法十九条の、差別、対価の問題とか不当な利益による顧客誘引、こうしたところに当たらないのかどうか、公取内部でも相当議論をし検討をしたということも伺っておりますが、この点についての状況を御報告いただきたい。  また、証券取引法の第百九十五条の二に独占禁止法の優先という項がございまして、「この法律の規定は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用を排除し、又は同法に基く公正取引委員会の権限を制限するものと解釈してはならない。」こういう証取法の百九十五条の二があるわけでございますが、これとの関係においてはどうなのだろうか。  この二点について、公正取引委員会並びに証券局長から伺っておきたいと思います。
  378. 糸田省吾

    ○糸田説明員 初めの方のお尋ねでございますけれども、申し上げるまでもなく、独占禁止法は公正で自由な競争を促進するということを目的としておるわけでございます。そのために、例えば公正な競争を阻害するおそれのある行為、こういったものは不公正な取引方法として禁止しているところでございます。  ところで、ただいま委員指摘になっておりますような、証券会社顧客損失を負担する、こういったような行為につきまして、これは例えば具体的な内容のいかんによっては、御指摘のような正常な商慣習に照らして不当な利益による顧客誘引である、こういったことで独占禁止法上不公正な取引方法に該当する余地がないわけではございません。ただし、このような行為それ自体がいわば投資家の保護とかあるいは証券取引の公正化、こういった観点から証券取引法第五十条その他において禁止されている行為でもございますの で、監督官庁においてこれを直接規制することが事態の解決の上において最も直接的でありますし、また有効適切である、そのように考えておるわけでございます。  私どもといたしましても、現に監督官庁において特別の検査を実施して事実の究明あるいは是正を図っていくという御連絡を内々にちょうだいしているところでもございますので、公正取引委員会としては、しばらくこの事態の推移を見守ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二点目の、証券取引法第百九十五条の二の関係でございますけれども、これはいわば当然のことを規定したまででございまして、独占禁止法に違反する行為があれば、これは当然に独占禁止法によって規制の対象になっていくということでございます。
  379. 松野允彦

    松野説明員 問題になっております損失補てん行為、これは現在は証券取引法禁止行為にはなっておりませんが、証券取引の基本的な原則にもとるものでございますし、また不公平感を与え、証券市場への不信感をもたらすものでございます。私ども、現在この損失補てん行為について、証取法を改正して法律禁止するという方向で鋭意検討を進めているところでございます。  百九十五条の二の関係につきましては、今公正取引委員会の方から御説明があったとおりだと承知しております。
  380. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ公取としても、独禁法のお目付役であることは我々は十分に理解をしております。証取法については証券局、大蔵省監督行政をすることも承知をしております。しかし、今回の証券不祥事件、やはりこの証券にまつわる、あるいは金融にまつわるこうした不公正な取引、これをやはり取り締まるのが、今の日本の独立機関として経済取引をしっかりと取り締まり、また調査できるのは公取ではないか、こういうふうに私は考えているわけでございまして、公正取引委員会としても、ぜひ十分に議論をし検討されまして、今回の証券不祥事件にその機能が発揮できるようにどうか検討していただきたいと強く要求しておきたいと思います。  そこで、きょうは長岡理事長もお見えでございますので、東京証券取引所の、一つは先ほど来から大蔵大臣も、この損失補てんについての法規制はアメリカにおいてもあるいはヨーロッパにおいてもない、こういうふうに強調されておりますが、まあ米国の証券業協会とかあるいはニューヨークの証券取引所においては、確かに法律はありませんが、内規としてはやはりこの損失補てんの規定があるわけですね。その内規に基づいてやはり自主規制が行われておる。私は、そういう点では東京証券取引所の中においても、そうしたニューヨークの証券取引所のように、こうした損矢補てんについての内規的なものも検討していくべきではないか。今回は大蔵大臣証券取引法の改正という形で恐らく五十条の中に挿入をしていくのかなという感じをしているわけですが、私は、もっと早い時期に東証においても、この点について内規をつくって規制をしていくんだ、自主規制という本来のその姿はわかるにせよ、やはりこのニューヨークの取引所と同じようなものを導入しておくべきではなかったのかな、こういうことを感じるわけです。そういう点について反省があるのか。今後法改正になれば、これはそうした内規を超えた十分な法律的規制があるわけですが、今後検討できるのかどうか。  もう一点は、平成二年の十二月に施行されて本年五月から発足をしております、いわゆる商品取引所の改正の中で、商品取引所法に基づいて商品取引所では、商品取引所の紛争仲介委員会という第三者紛議協議機関、こういうものが取引所の中に既にできているのですね、この五月から。ところが、東証においてはいまだにこうした会員のトラブル等については、定款の九十八号に基づいて総務課が窓口で対処しているのですね。そういう点を考えますと、一歩、通産とか農水の商品取引所の方がいち早く改善が進んでいる感じもするのですね。この点をどういうふうにお考えになっているか。こうしたやはり第三者的な紛議調停機関というものを今後おつくりになる考えはあるのかどうか。この二点、理事長にお伺いしておきたいと思います。
  381. 長岡實

    ○長岡参考人 東京証券取引所の内規の見直しの問題につきましてまずお答え申し上げますが、宮地委員指摘のとおり、ニューヨークの証券取引所の内規の中には損失補てんをチェックする項目が入っております。私どもといたしましても、このようなことが起こりました機会に、ニューヨーク証券取引所のみならず、他国の自主規制機関の中でどのような規制を行っているかということを幅広く勉強いたしまして、私どもとしても取り入れるべきものは取り入れなければいけないのかなというふうに考えております。御承知のように、会員組織のいわゆる自主規制機関ではございますけれども、外国の自主規制機関もそれを行っているわけでございますから、私どもとして、どういうものが取り入れられるか、あるいは取り入れなければならないかというようなことについては真剣に検討いたしてまいりたいと思います。  また、第三者審査機関のようなものにつきましても、これはニューヨークの取引所の場合にも一種の査問委員会的なものがあるようでございます。そういったようなものも検討しながら、私どもとしても、東証の自主規制機能を高めるのにどうしたらいいかということは虚心坦懐にこの際考えてまいりたいというふうに思っております。
  382. 宮地正介

    ○宮地委員 時間ももう余りないのですが、一点だけ、年金福祉事業団の自家運用について御質問をさせていただきたいと思います。  年金福祉事業団の自主運用、そしてこの自家運用につきましては、我々も国会におきまして、過去の議論の中で、できるだけ運用益を得て、そして年金の財源に資するようにと、我々は非常に好意的に善意的に賛意を表しまして、年金福祉事業団のいわゆる自家運用というものが認められたのはもう皆さん御存じのとおりでございます。しかし、今回の一連証券不祥事事件に巻き込まれたというか、あるいは非常に軽率であったというか、皆さんとしては、株には手は出していない、こういうことでおっしゃっておりますけれども、結果的に、先ほど来からの議論を聞いておりますと、やはり証券局においても国税庁においても、出し手は損失補てんである、こういうふうに認知をしているわけですね。私は、その認識の違いだけでこの自家運用の問題が終わってはならない。少なくとも出し手の方はまさに損失補てんをしたのだ。新聞報道等によれば約四十五億円から五十億円の損失補てんをしているのではないか、こういうことが言われているわけでございます。特に、現在、自家運用の推移を見ましても、平成三年度では一兆二百三十億円、自家運用益の推移を見ましても、昭和六十二年度に十八億円であったのが平成元年度では百二十八億円と大変な勢いで、自家運用の額の推移も六百億から一兆二百三十億、それに伴っての運用益も、平成元年度でございますが百二十八億、そういうような状況に今あるわけでございます。  やはり今後国民から見て、この年金福祉事業団が今後自家運用をするに当たりまして、年金福祉事業団法の二十七条の二に基づいて運用しているとはいいながらも、やはり国民に誤解を招いたり不信感を与えるようなことをしてはならない、こういうふうに私は思うわけでございます。特に、資金の運用の第二十七条の二の第一の「国債、地方債その他確実と認められる有価証券の取得」、こういうふうになっているわけでございますから、この点についても、国債とか地方債とか転換社債とかいろいろな種類の債券を買っているようでございますが、少なくとも今回、大蔵省当局、国税当局は、損失補てんがあった、こう言っているわけですから、どうか今後この改善については、特に公的機関でありますので、それなりの国民に納得のいく改善をしたということを示す必要があるのではないか。そういう意味では、今野村証券等とは取引停止をしているようでございます が、私はもっと厳しい措置をすべきではないか、こう考えておりますが、厚生省の見解を伺っておきたいと思います。
  383. 加藤栄一

    ○加藤説明員 国民の貴重な保険料を財源といたしまして私ども公的年金資金の自主運用事業を行っておりまして、年金福祉事業団について、その資金運用信頼を損ないかねないような状況が生じていることにつきましては、大変残念に存じております。  かりそめにも公的年金資金の運用について不公正な取り扱いがなされたのではないかという疑いが持たれることのないように、今後とも適正な運用に努力するとともに、運用体制の常時の点検、必要な整備に努めてまいりたい、かように考えております
  384. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に大蔵大臣に、一つはやはり大蔵省監督責任ですね。大蔵大臣も、けさ方からおわびをしたいということで陳謝をされております。しかし、今回の通達行政、これがやはり守られなかった。先日も証券業協会の専務理事等からいろいろお話伺いました。いかに今後通達がこの自主規制の中で守られるか。ある意味では監督官庁がなめられているのか。あるいはもたれ合い、癒着と言われるような、ひんしゅくを買っているような事態、ここをやはり変えていかなければいかぬと思うのですね。  私は、今回のこの問題は根が深く広く、大変日本のこれからの経済の根本的な体質を改善する重要な課題である。そういう意味で私は、海部内閣の責任にも匹敵するぐらいの重要案件である。単に大蔵大臣がやめればいいという問題ではない。内閣そろって、どこまでこの責任を感じているのか、これがまず私は大きな問題であろう。また、再発防止として、今後本当に二度とこうした不祥事件が起きないために、どういった制度改革をやっていくのか。確かに証取法の改正、これによって損失補てんについても今後五十条の改正等の中に検討されるとか、あるいは検査機能を強化するとかいろいろ言われております。  私は、ここで一つ、私見でございますが、提案ですが、先ほども大臣が、この問題は金融証券全般にわたっての検査体制のあり方、あるいは審査体制のあり方を検討する必要がある、こんなことをおっしゃっておりました。私全く同感でございます。そういう意味合いにおきまして、現在の大蔵省部内の証券局、銀行局あるいは理財局、この体制がこのままでいいのか。ある意味では、これを三本を一つにして、金融庁というものも検討すべきではないかという声も国民の中にはあります。そして、金融証券全般にわたってのしっかりした体制をつくる。また、そこでの不公正な取引があった場合に、第三者機関として、公取とか人事院とか会計検査院があるように、やはり独自の政府の機関をつくって、そして不公正な経済取引については一括してそこが今後監督行政、場合によっては摘発もできるような、そういうような独自機関も必要ではないのか。経団連の会長等も日本版SECの必要性を言われております。果たしてアメリカのようなSECが日本の風土に適しているかどうか、これは十分チェックしなければなりません。しかし、ここまで不祥事ができた以上、私は何らかの形で金融証券行政の独立監督機関を設置すべきではないか、こう考えております。野球でもコーチと審判が一緒の仕事はなかなか無理だと思います。かえって大蔵省の内部に重い重い任を与えるのではないか。この際、そうした思い切った制度改革が必要ではないか、こんな気持ちを私は持っているわけでございますが、この二点について大臣の所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  385. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点の御指摘に対しましては、私は委員の御指摘をそのままに受けとめたい、こう存じます。  そして第二点の、具体的な一つの考え方を委員が提示をされました。私は、これも我々の考えていく方向の中の一つの案として勉強させていただきたいと思います。  ただ、今委員の御指摘の中で、一つ私の方から感じましたことは、我が国におきまして、いわゆる強制捜査権に当たりますもの、いわば司法権の分野というものは行政庁から当然のことながら独立して運営をされております。すなわち、警察、検察庁、そして麻薬等の取り締まりについて一部の機関に準司法捜査権が付与されておるという状況であります。そして証券行政のみならず金融全体の検査体制というものの見直しが必要だと私は思い、サミットに出発する前に、大蔵省にそのチームをスタートさせて、作業を今させておりますが、一つの問題は、いわば司法捜査当局と同様の権能を付与する、いわば登録制を前提にした仕組みを考えるのか、少なくとも事前チェックというものを中心にした免許行政の仕組みを今後とも日本として採用する方が望ましいのか、この部分から案は幾つかに分かれるであろうと私は思います。そして私は、やはり免許行政のよさというものを、今回非常に大きな傷を負いましたけれども、私どもとしては考えていくことが将来に対しても望ましいのではないだろうか。同時に、強制捜査権に類する、いわば検察庁、警察の持つ能力といったものが余りさまざまな機関に分布することは、必ずしも国民にとって望ましいことではない、私はそのような思いもいたしております。  いずれにいたしましても、今の委員の御指摘は、私どもとしても一つの指針として勉強の対象にさせていただきたいと思います。
  386. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  387. 平沼赳夫

    平沼委員長 正森成二君。
  388. 正森成二

    ○正森委員 今度の証券問題の不祥事は、小口投資家だけでなしに国民全体に非常な怒りを引き起こしております。つまり、自己責任の原則というのが当然の前提で、公正さが担保されなければならない証券市場で、世界のガリバー証券会社と言われ、そのリードをすべきところを先頭に、大口投資家にだけ、あってはならない損失補てんをやる。あまつさえ暴力団取引し、便宜を与えておる。もってのほかであると言わなければなりません。  だからこそ、我が国を代表する大蔵大臣がサミットの第一回の蔵相会議で事情を説明して、まことに遺憾なことであった、異例中の異例の遺憾の意を表さなければならなかった。また、これも異例中の異例ですが、大蔵大臣がみずからを三カ月の減給処分にする。あなたが記者会見で言われたように、こういうことはもうなかったことですね。そして次官もこれに準ずる、証券局長はもちろん処分される、こういう事態であります。  ところが、きょうの審議を聞いておると、みずからがサミットで世界に説明しなければならなかったその内容はどういうものであるか、みずからや大蔵省の幹部を処分しなければならなかったその全容はどうであるかということを聞かれると、それは守秘義務であると言って隠す。全然道理に合わないではないですか。そんなことで国民を納得させることができ、日本を注目している世界を納得させることができるかというようにいえば、断じて納得させることはできないというように私は思います。  そこで、あなた方が論拠とする守秘義務について伺いたいと思います。  法務省。守秘義務については、戦前には官吏服務紀律というのがありました。これは行政上の懲戒処分はされるけれども、刑事罰はなかったのです。それはなぜかといえば、特別権力関係のもとで、官吏というのは天皇及び天皇の政府に対してのみ忠誠を誓う、国民に対しては直接責任を負わないという体系になっていたからであります。ところが、戦後は国家公務員法百条によりまして、それが刑事罰が科せられるようになりました。  そこで、その秘密の内容というのは、主権在民の日本国憲法のもとにおいて、国家の利益を損なうような実質秘、つまり国民の利益の観点から見てそれを秘密にすることがどうか、こういう観点から論ぜられなければならないようになったというのは多くの学説の認めるところであります。  そこで、刑事局長が来ているので申し上げますが、守秘義務の点で指導的な判決というのは、 「徴税トラの巻事件」と言われる事件とラストボロフ事件であります。これはいずれも最高裁の判決が出ております。そして、判例や学説では大きく言って二つの流れがあります。  その一つは、形式秘であればよろしい、つまり、行政庁が秘密であると指定すればそれは秘密である、これを漏らせば処罰されるという考え方であり、もう一つは、それだけでは足らない、行政庁は仮に形式秘としても、それが刑罰によって守られる値打ちのあるものであるかどうかということを裁判所が独自に判断して、秘密に当たるかどうか、それを漏らせば公務員法に言う守秘義務に違反したことになるのかどうかということを判断すべきであるという説であります。もちろんこの中間の説もあり、多く分ける人は四つに分けておりますが、最高裁判所はこの実質秘をとっており、形式秘で若干補足する場合でも、形式秘に指定されているということは、それが実質秘であるということを推定させる効力があるというような見解をとっている判例が一部にあるはずであります。  私の今言ったことは、判例の流れとしてそのとおりだと思いますが、簡潔に答えてください。
  389. 井嶋一友

    井嶋説明員 突然のお尋ねでございまして、委員がお調べになったような判例の流れそのものを体系的に把握をしておるわけじゃございませんので、正確な御答弁はできません。  しかしながら、証券局長が午前中答弁いたしましたように、最高裁判所におきましては実質秘説と申しますか、そういう立場をとっておるということは、そのとおりだろうと思っております。
  390. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長も非常に遠慮した謙虚な答弁をしましたが、実質的には行政庁が形式秘としているだけでは不十分であり、刑罰によって保護をされるに値する秘密であるかどうかという実質秘の立場を最高裁判所もとっておるという大筋はお認めになったと思います。  そこで、午前中からの審議を見ますと、証券局長、あなたは同僚委員質問に対して、大蔵省の内部では形式秘の指定すらしていない、こう言っているじゃないですか。だから、いうところの形式秘ではないのです。  昭和四十年に次官の会合によって、秘密指定の取り扱いについてというのが論ぜられたのですけれども、それが極秘と秘に分けまして、極秘の場合には局長やあるいは次官かな、それから官房長というのが指定する、秘の場合は課長及びこれに準ずる者が指定すると、こうなっている。だから、秘というのは課長か課長に準ずる者でもできるようになっているのですよ。それすらやっていないじゃないですか。だから判例や学説の流れによれば、そもそも形式秘ではないのですよ。実質秘であるかどうかを論ずるまでもなく、形式秘ではないじゃないですか。  そして大蔵大臣、あなたは、証券業界がもしそれを公開するならその方に指導したい、こう言っているでしょう。局長、あなたもそう言っていますね。新聞に大きく報道されております。そうすると、その内容証券会社を通じて国民全体の前に明らかになっても、それは何ら差し支えがないという見解を大臣も証券局長も持っていることになります。つまり、国民の前に実質的に秘密にする値打ちのないものであるということを行政庁が認めているじゃないですか。そうしたら、形式秘でもない。もちろん実質秘でもない。なぜ隠すのだ。それは大きな企業利益を守るということ以外にないじゃないか。
  391. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 お言葉を返して恐縮でありますが、今委員が御引用になりました五十二年の最高裁判決の中に、「非公知の事項」という言葉が使われておりますこと、委員御承知のとおりであります。そして、今回私も全部を見ておるわけではございませんけれども証券局が収集いたしております資料というものは、公開を前提とせず入手したものと私は承知をいたしております。そして、これはまさに非公知の事項でありましょう。  しかし同時に、私はこの事件というものを考えるときに、この内容が全く伏せられたままで解決される性格のものだとは考えておりません。それだけに、本来ならばむしろ証券業界御自身自身責任において、こうした事実は公表されるのが筋である、私はそのように考えておると申し上げております。
  392. 正森成二

    ○正森委員 私は、そういう考えで証券業界が自主的に発表して、国民や国会が知ることができれば、結果的には同じことですから、それはそれでいいと思います。しかし、証券業界を通じて発表してもいいということは、これは国民に公知の事実になってもいいということを認めていることになるのですね。  あなたが言われたあの判例も、現在は公知の事実でなく秘密であっても、それが実質的に刑罰で守るに値するものでない場合には、まだ公知になっていなくてもそれは秘密と見られない、こう言っているのですよ、裁判所は。だから、あなたはその判例をお読みになりましたけれども、その判例の引用をもってしても、私の論拠に対して十分な反論にはなっていないのです。ですから、私は、あなた方が言われたことは全く理由がないというように思わざるを得ないのですね。  そして、さる財界人によれば、補てんを受けた企業の名前を明らかにするのは魔女狩りだとか、そういうことはやるべきでないとか、あるいは名前は言いませんが、今一番問題になっておる証券会社の交代した社長は、顧客あっての証券会社だ、相手方のことをとやかく言うのは商人の道、商人道に反する、こう言われていることは公知の事実であります。  ところが、それに対して、さる週刊誌に経済評論家が言っているのです。こういう言い方は、泥棒がどこへ泥棒に入ったかと言われて、それを言うのは泥棒の道に反する、泥棒道に反する、こう言うているのと同じことじゃないか。これは私が言っているのじゃないですよ。さる週刊誌で経済評論家が言っているのです。まさにそうじゃないですか。  小口投資家に対して損害を与えて大口だけを優遇をした。暴力団に金を与えて裏の金を表に出す、表の金をまた裏に回すというのを一流証券会社が援助した。そういう内容を秘匿するのがどうして商人道なのですか。商人の道なのですか。それは日本国憲法の精神からも、国民の考えからも全く反することじゃないですか。泥棒道を守らなければならないと言っているのと同じことじゃないですか。そんなことで国民や国会が納得すると思っているのでしょうか。私は断じて納得できません。  ですから、大臣が証券会社に、そんなことは商人道ではない、明らかにすべきであると言って、早急に明らかにされるならそれも結構。しかし、どうしてもそれに応じないなら、大蔵省は、私が言うたように形式秘でもなければ実質秘でもないのだから、みずから明らかにするか、それが嫌なら証人として出てきてもらって、そして国会で堂々と言ってもらう、これ以外にはない。  私は、一部の新聞に出ておる金額によって差をつけるとか、あるいは業種だけ言うとか、そういうようなことでは断じてこの事件をおさめるわけにはいかない。国民も納得しないし、世界に対する我が国の証券業界の公明性、透明性というものを明らかにする上でも、断じてそれは認められない。  大蔵大臣、ある意味では、ああいう事件を引き起こしたということはあなたの責任です。第一、バブル経済を引き起こしたあの一連の一九八五年以来の事実、これについても行政責任があります、日銀も責任がありますが。しかし、この件をもし隠してしまうとすれば、公表しないとすれば、それは同時に、重大な責任だと言わなければなりません。  あなたは同僚議員質問に対して、証券自身の手で明らかにされるべきではないか、いつまでも不明確のままでは行政当局として耐えられるところでない、こう言われたじゃないですか。耐えられるところでなければ、耐えるようにするのが当たり前じゃないですか。それには私が言った証 人喚問をするか、あるいは証券会社に開示させるか、証券会社がしないなら大蔵省が断固として開示するか、どちらかしかないというように思います。  私はそのことを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。それとも、いい答弁をなさいますか。いい答弁をなさるなら答えてください。
  393. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 よいか悪いかはわかりませんが、証人喚問は、これは院が、また委員会が決定されることでありまして、政府が介入すべきことではございません。そして、私は先ほど来、証券会社あるいは証券業界自身がこの汚名を晴らすためにも事実を明らかにされるべきであると申し上げております。  ただ同時に、もう一つ考えていただきたいことは、今回の問題について、私は委員の御指摘を甘受しなければなりません。しかし、公開せずという前提で報告行政機関がとりましたものが、行政機関の恣意によって公開されるということの恐ろしさも、私は感じております。その場合に、やはり公務員の守秘義務というものは尊重しなければなりません。そうしたはざまの中で、私は、証券業界自身がみずからの手で問題を明らかにされることを求めております。
  394. 正森成二

    ○正森委員 もう時間がありませんが、私も、恣意的に、報告さしたものを何でも言え、そんなことを言っているのじゃないのです。こういうようにサミットで大蔵大臣が遺憾の意を表明して釈明しなければならなかった、自分自身を、戦後初めてと言われるぐらい処分しなければならなかったことについては、国民の前に明らかにしなければならないのじゃないでしょうかと言って、限定して言っているのですよ。何でもかんでも報告さしたものを明らかにしてください、そういうことを言っているのではないということを申し上げておきたいと思います。  次に、年金福祉事業団。私は、年金福祉事業団を呼んでいただくように言いましたが、今回は厚生省が答えるということでした。同僚議員がもう既に質問されましたので、一言だけ。  報道によりますと、年金福祉事業団が非常におもしろい表現をしているのですね。これは六月二十三日付のある新聞であります。「我々は公的資金を扱う団体として健全・確実な投資を行っており、民間投資家と同列に扱われるのは心外だ。自家運用では損失を出したこともないし、利益補てんを強要したこともない。」こう言っているのです。非常に頭のいいコメントだと思うのですね。「年金福祉事業団資金運用部長の話」、こうなっております。だから、ここで言うているのは、強要したことはない、それから、自家運用損失を出したことはない、こう言っているのです。それだけであって、損失を出さないようにしてもらったかどうかについては触れていないわけであります。  そこで聞きますが、損失を出さないようにしてもらったことはないのですか。
  395. 加藤栄一

    ○加藤説明員 年金福祉事業団から私どもいろいろ聞いておりますところでは、年金福祉事業団としては事前にも事後にも損失補てんを求めたことはありませんし、また、損失補てんをしているということを知りながら黙認していた、こういうこともございません。
  396. 正森成二

    ○正森委員 今もなかなか頭のいい発言ですね。事前にも事後にも要求したことはないし、損失補てんを受けているということは承知していないとかなんとかね。しかし、損失補てんを受けたかどうかは言うてないんだ、慎重に。本当に頭がいいけれども、まあ言うたら悪い答弁ですね。本当に正直でない。  そこで証券局長、あなたのところに堀田隆夫という人はいますか。
  397. 松野允彦

    松野説明員 業務課長でございます。
  398. 正森成二

    ○正森委員 その大蔵省証券局業務課長堀田隆夫さんが、七月二十三日付の「財界」の中で談話を発表しております。インタビューです。その中でどう言っているかというと、こう言っております。「ええ、それから、通達を出すと同時に各社で自己点検をしてもらったわけですが、今回報道されている各社のいわゆる自己否認として報道されている分は、おおむねその範疇のもので、それに関しては、各社で厳しい社内処分と管理体制の強化をしてもらったのですが、」ここからです。「それ以外に新たに出てきた年金福祉事業団(に対する損失補填問題)などについては、証券局が知らなかったもので、証券会社が国税当局と交渉をしているわけですが、証券局としても、事実関係の説明を求めて、通達に反するのであれば、厳しく対応していくことになると思います。」こう言っております。いいですか。だから、これは当然その事実があるということを前提にして言われたものに間違いがないと言わなければなりません。  ですから、少なくとも証券会社はみずからは、損失補てんかあるいは利益提供か知らないけれども、私が聞いたところでは、財投資金を借りているのですから、今は六・六%元がかかっているのですね。それにオンしなければ運用益が出てこないのです。そして、私がレクチャーで聞いたらこう言っているのですね。いろいろやりまして、そして一から一・五%を財政投融資の金利の上にオンできるように目標値を持っていっている、こう言っているのですよ。だから、証券投資会社に任せるときに、財投金利はこれだけだよ、それに一ないし一・五オンするのが運用目標だと言っているのですよ。だから、そうなるように一生懸命やる。  そして、非常におもしろいことに、最近のあれでは、損失補てんをしたところで各社が言うているのですが、例えば、日興は個人はない、五十九社すべてが法人、山一は公共機関はない、大和はすべて民間企業だ、こう言っている中で、野村だけが一切答えられないと言っているのです。つまり、野村は公共機関はないとかなんとか言えないからそう言っているのです。そうなると、この補てんをしたのは野村だけであるという推定が働かざるを得ないし、そして今、証券局長、一番補てんを受けているのは四十九億円だと言いましたね。新聞報道では、年金福祉事業団は四十五億から五十億受けているというのです。だから、四十九億といえば、一番補てんを受けているのが国の機関である年金福祉事業団だ、こういうことになるじゃないですか。間違っているかもしれませんよ。しかし、当たらずといえども遠からず。そういうところが補てんを受けたかどうかということは言わないわ。  その上にまだあるのです。ここに、七月十七日の日経新聞がありますが、九一年度の自家運用配分というのがあるのです。それを見ると、何と二千五百二十億円新たに配分したうちで、野村が八百八十億で七・三%増でダントツ。日興が五百七十億で五・六%増。大和が六百三十で三・一%減。山一が四百四十で四・八%増。つまり、あれだけ世間から指弾されている野村が、この事件が起こって報道されてから一カ月たつのに、野村に対して最も優遇しているのですよ。  自治省、今も報道がありましたが、地方自治体はあなた方と相談の上、百二十幾つが取引を絶ったのじゃないですか。
  399. 遠藤安彦

    ○遠藤説明員 お答えを申し上げます。  今回の四大証券会社と地方団体の取引の問題でございますけれども、地方公共団体が歳計現金等について管理運用をしている、これは自治法等の法令の規定に基づいて適正に行う必要があるわけでありますが、ただいま御質問がありましたように私どもと相談をしてということではありませんで、これは個々の団体の資金であり基金でございますので、個々の団体が自主的な判断で行っているものでありまして、私どもと特に相談をして、何団体が証券会社を使うといったようなことではございません。ただ、私どもも、そういう証券会社を使っている地方団体が取引についていろいろ処置をしているという事実があったということは新聞等で承知をしている次第でございます。
  400. 正森成二

    ○正森委員 大筋はお認めになったと思うんですね。地方自治体は百二十九団体が、運用は遠慮し てもらおうか。ところが年金福祉事業団だけは、やめないどころか、それは営業を自粛された七月の何日間かは自粛しましたよ。こんなのは当たり前の話です、全部できないのだから。  ところが、シェアを見ると逆に伸ばしている。それはなぜかというと、我々が厚生省から聞いたところによれば、運用がどれぐらいオンしたかという成績によって配分をふやすようになっている、こうなっているんです。そうすると、ほかの三証券は余り損失補てんをしないで、証券界が不況だったから運用益がそれほどよくなかった。野村だけは将来を考えてせっせとオンをして、それで運用益がよかったからたくさんがぽっともらったということになるんですよ。これは国家機関ですよ。明らかに利益提供によって自分の会社の利益を図っている。最も悪質な行為じゃないですか。それを反省もせずにまたまた九一年度ふやしている。もってのほかじゃないですか。そして、いまだに監督官庁の厚生省は、損失補てんというか利益をオンしてもらったということは聞いても認めていない。そんなことがありますか。  巷間、年金福祉事業団は何か特別の便宜を受けているんじゃないか、こういう疑惑があるのは当たり前のことで、何でこんなことをしたか。私は、こういう問題については、きょうは時間がありませんが、さらに追及しなければならないと思います。  東証理事長さん、おいでいただいてありがとうございます。  「ザ・チャート日足集」というのがありますね。どういうものですか。
  401. 長岡實

    ○長岡参考人 その日その日の株価の傾向値をあらわしておりまして、私も実はそう詳しくは存じませんが、その足の下に向いているのがたしか下がりぎみ、上に向いているのが上がりぎみというふうに理解いたしております。
  402. 正森成二

    ○正森委員 私どもはまだ東証から一々個別企業について詳しい報告を受けておりませんが、この「ザ・チャート日足集」というのを見ると、おおよその傾向と、それから何株ぐらい取引があったというのが特徴的にわかるようになっているのです。それからもっと単純なのでは四季報というのがあります。この四季報にもこういう図が書いてあって、どれぐらい取引をしたかというのが出ているのです。  ですから、もちろん私の質問はそれらの資料に基づく質問で、長岡さんのように詳細に存知しておられるという方とは知識に格段の差があります。けれども私は、今同僚議員質問がありましたけれども、今度の東急の八九年の四月から始まり、特に十、十一月の二カ月間のあり方というのは極めて異常であるというように言わなければならないと思うんですね。あなたは十月の二日から三十一日までのを見まして、野村は売りが二一で買いが二七%でしたかね、しかしそれだけでなしに、山一が売りが一八で買いが一九とかいうことを言われて、特異ではないと言われました。この点は、私は「ザ・チャート日足集」とこの四季報を見てそれを知りまして、非常におかしいなと思ったのです。つまり野村と日興とが暴力団関係に融資しているのでしょう。ところが、日興は売りの方が多いんです、買いが多いんじゃなしに。そしてそのかわりに山一が、事実上野村の副官として、一千万単位で売買をしているのです。買いが多いのです。したがってこの時点で、山一がそのように多いということは決して野村が特別な推奨銘柄ということで異常な取引をやらなかったという証明じゃなしに、野村と山一が、野村が指揮官、山一が副官として、その二つが異常な取引をやったという証明になると思うのですね。その証拠には、ここに書いてありますが、あなたが言われた東京近傍の民鉄株、いずれも上がった、こう言われています。これを見ますと、右肩に、その時期になって上がっているのです。しかし、株の取引数が全然違うじゃないですか。西武なんか、上がることは上がったけれども、一カ月の取引を見ると数十万単位ですよ。ほかのところでも何百万、あるいはせいぜい二千万単位のがありますが、東急については十月は五億何千万株でしょう。十一月も三億をはるかに超えているでしょう。だから、けたがもう全然違うんですよ。それだけ集中しているのです。  証券局長、あなたは各店舗でどういう具体的な買い行動があったか、そこら辺を調べてから判断すると言われましたが、我々は関係のところへ行って調べてきました。そうすると、野村はあの十月のときに一斉に、前日から営業マン一人二万株の買いを確保せよと、もう何遍も何遍も、二万株に達したかを追及しているのです。そういうことをやったから何千万株という買いが起こったのですよ。そのほかの点については時間がありませんから言いませんが、同僚議員が言われたとおりであります。  そこで、今同僚の方からも出ましたが、二つほど告発があるという話が出ましたね。検察庁、あなたは概要のことを言いましたが、その中で中島さんの告発の内容があります。その中身は非常にリアルに書いてあるのです。  これを見ますと、十月の第二週はわずか四十三万九千株だったのが、第三週には五千三百三万九千株、第四週は六千五百二十三万株、十一月の第一週は四千七百十二万二千株、こういう買い注文を行って、そして高騰させた。ほかの証券会社一般投資家が買うのは当たり前なんです。それをやらなければ株価は上がらないのですよ。野村なんかが動いたということがあれば一般投資家が買いに出るのを、ちょうちん買いというのですよ。それをつけることによって、そしてそういう人たちに高値のところを買わせて自分が売り抜ける、これが仕手戦の常道で、ちょうちん買いがなければ仕手戦なんかそもそも起こらないのです。まさにそれをやったんじゃないですか。それを異常ではないとか調べないとか、もってのほかじゃないですか。私はそういう点を、店頭での野村のビヘービアを通じて調べていただくことを要求したいと思うのです。答弁。
  403. 松野允彦

    松野説明員 御指摘のように東急電鉄株、元年の十月から十一月にかけて株価が急騰し、かつ出来高も非常にふえているわけでございます。私どももこの点を非常に疑念に思って、東証と連携をとりながら、証取法の百二十五条の株価操作に当たるかどうかという調査を引き続き続けているところでございます。  残念ながら、現在までのところは特定の者による一定の目的を持った価格操作が行われたという確証をつかんでおりませんが、引き続き、この点についてさらに調査を進めてまいりたいと思っております。
  404. 正森成二

    ○正森委員 私は、岩間カントリークラブのゴルフ会員資格保証金預かり証、あれをめぐる不可解な動きについても質問させていただくつもりでしたが、残念ながら時間が参りましたので、お約束を守って質問を終わらせていただきます。
  405. 平沼赳夫

    平沼委員長 中井洽君。
  406. 中井洽

    ○中井委員 大臣にお尋ねをいたします。  七月二日、我が党の中野政審会長が党を代表して、今回の証券不祥事に関して金融対策の申し入れを大臣のところへ行いました。日本型SECをつくれ等を含んだ提言であります。大変お忙しい中、丁寧にお答えをいただいたと私どもは考えております。同時に、終わりましてから中野政審会長の手で記者会見がなされ、幾つかの新聞にも載り、我が党の機関紙にも詳しく載ったところでございます。私その日は立ち会うことができませんで、後刻報告を聞かせていただきました。意見の相違はいろいろありますが、その中で二つ、私は、これはちょっと大臣、言葉足らずかお考え違いじゃないか、こう思うところがございますので、お尋ねをしたいと思います。  一つは、今回の不祥事に関して、損失補てんの問題より暴力団との関係の方が問題だ、このようにお答えになりました。これはどういう御認識でお答えになられたのか、そして今もそのように暴力団事件の方が重大だ、このように御認識をなさっておるのか、いかがですか。
  407. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 正確に重大という言葉を使った かどうか私は記憶が明らかではありませんが、そのような御論議をいたしたことは記憶をいたしております。  なぜなら、損失補てんという行為は、行政通達を出し、それに違反していることが明らかな行為であります。行政通達違反ということが明らかな行為であります。一方、暴力団とのかかわりというのはその時点で解明が全く進んでおらず、報道によって初めて私自身は知った事件であります。そして、サミット等においてその説明をしなければならない場合に、各国の関心は恐らく通達違反という明らかな行為ではなく、暴力団とのかかわりの方がはるかに問題として大きく説明を求められるであろうという感じを確かに私は持っておりました。そして暴力団関係についてより大きな関心を、蔵相レベル会合の席上説明をいたしましたときに、各国は示しておりました。  これは問題としてどちらが大きい小さいということを言える種類のものではありません。そして、損失補てんという行為行政通達に違反していることが明らかな行為、これからより真相究明に努力を必要とするものは暴力団との不明朗なかかわり、そのような認識を持ったことは事実であります。
  408. 中井洽

    ○中井委員 もう一つお尋ねをいたします。  天下りの問題について、私どもは芳しくないという形で提言をいたしました。それに対して、天下りの問題については意見を異にする、むしろ大蔵省が行った方がよい、こうお答えになっていらっしゃる。僕はこんな考えというのはとんでもないと思います。どういうお気持ちでこのようなことを言われ、そしてこのお言葉をこの場で訂正される気はないか、いかがですか。
  409. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これについて私は正確なやりとりを記憶いたしておりませんけれども、確かに今回問題を起こした四社に、例えば役員等に大蔵省から人が行っていないという会話があったことは私も記憶をいたしております。大蔵省から随分たくさん出ているじゃないか、天下りというか人間が動いている、こういうところにも幹部としているというふうな御指摘もございました。そしてそれに対して、確かに今回問題を起こした四社について、例えば研究所とかこうしたところに全く大蔵省の人間がおらないわけではありませんが、問題を起こした四社の幹部の中に、大蔵省からスカウトされた人材がいないということは確かに申し上げた記憶がございます。事実問題としてそういう議論をしたことは覚えています。
  410. 中井洽

    ○中井委員 四大証券に、事実問題として会社そのものに役員が行っていない、大蔵省から天下っていない、こういう形でこれを言われて、私は、ああ大蔵省は、それじゃこの四大証券に、今回の不祥事にかんがみて、四大証券の本社へ天下りを受け入れなさい、こういう形で持っていこうとされておるんだなと率直に受けとめました。今回こういう不祥事件が起こって、そして大蔵省の監査が甘い、こう言われている中で、業界に対する天下りがたくさんおられる。優秀な方もおられるでしょう。必要で行ったんでありましょう。しかし、そのことで国民はやはりおかしな目で見る。まして四大証券へ、シンクタンクやらそういうところへは行っているけれども本社へ行っていないからだめだったんだ、大蔵省の行っているところはちゃんとやっているんだ、そういう御認識大蔵大臣が持たれたり漏らされたりするということは、私はとんでもないことだ、このように思いますが、いかがですか。
  411. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変恐縮でありますが、そのときのやりとり、私自身が正確に覚えておりませんので、どのような御質問からそういうやりとりになったかわかりません。そして、今お使いになりました言葉も必ずしも、失礼でありますが、私は正確を欠いておると思います。そして、要するに天下りを禁止する、しないという御議論がありましたとき、確かに私は、四社の首脳部に大蔵省はいないよということを申し上げました。しかしそれは、何もこれから先大蔵省が四社に人間を主要ポストに配置しようとかそのようなことを申しておるやりとりではありません。  大変失礼でありますが、その前後、政審会長のお話しになりましたこととあわせて、改めて私は御検討いただきたいと思いますが、そのような言い回しはいたしておりません。
  412. 中井洽

    ○中井委員 先ほどのお答え、それから午前中から午後にかけてのこの委員会での質疑を聞かせていただきまして、私は、大変こう、何か大蔵省少しとらえ方が違うんじゃないかなという感じを抱いております。  今回、先ほど大蔵大臣からも、この通達違反の問題よりも暴力団の方がという思いで言われた、こういうお言葉がありました。しかし、今回の損失補てんという事件は、通達があったとか、法律がどうだとかいう問題以前だと私は思います。先ほどから御答弁もこれありましたが、世界の中にもこれを禁止する法律がないということは、当然だれもやらないし、やっちゃいけないことなんです。これをやったら証券会社というのは存在しないのです。お客さんが損したときに保全しておったら証券会社は成り立たないじゃないでしょうか。成り立たないことをやった。しかも成り立たないことをやらした会社もあるわけであります。  例えば、証券局長は、損失補てんを受けたという認識なしの会社もある、こういうお言葉を言われました。そんなばかなことありますか。相手はみんな財務のプロじゃないですか。これだけのブラックマンデー以来株が下がっているときに、自分のところだけずっともうけ続けている、そんなものは補てんを受けたとみんな知っていますよ。認識をしているとかしていないとかいう問題じゃない。そういう証券会社証券市場がなくなるような問題を大手証券会社以下みんながやっておった、ここに問題がある。大変なことだ。したがって証人喚問もすべし、名簿も発表すべし、こういうことを私どもが言っているわけであります。  先ほどから、公務員の守秘義務だというお話がありました。大臣から、公表する公益と公表しない秘匿する公益とどっちが大事だと考えている。考えるまでもありません。公表する方が国益にとってプラスであります。一般国民大衆の市場に対する信頼、国際社会から日本の市場に対する信頼と日本の国に対する信頼、これを疑われている事件じゃないですか。それを大蔵当局と証券会社と、大変失礼だけれども、大変甘い関係でかばい合っておる。そんなことは私は許されない、このように思います。  先ほどから発表するしないなどと、大蔵大臣は業界にみずから発表しなさい、こう言っておる。さっきからどうして発表しないのだ、こういう話を聞いていると、どうもやはり、発表しないから持ってきなさい、こういった約束を守り通している。大蔵省証券業界との約束だけが大事なのか。違うでしょう。国民の目、世界の目、これの方がよっぽど大事だ、こういう認識の上で、大臣、名簿の発表、補てんを強要した先の発表をやっていただきたい、このように思いますが、いかがですか。
  413. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一に申し上げておきたいことは、私はこの損失補てんという行為が軽い行為だと一度も申し上げておりません。むしろはっきり、問題として明らかなものだということを申し上げております。と同時に、この問題について事実を明らかにせず国民が納得されると思わないということも繰り返し申し上げてきております。  同時に、本件に限っての問題としては、私は委員がおっしゃるような気持ちはよくわかるというより、私自身が同じような思いがいたしますが、非公知、要するに明らかにしないという約束で公務員が集めた資料が外に出ること、これはやはり私は慎むべき本来の問題点を含んでおると思います。そして、私は何よりも、証券業界自身がみずからの信頼を回復するために、みずからの手でこうした問題を明らかにされるのが本筋だ、そしてそういう努力はさせていただきたいということを申し上げております。
  414. 中井洽

    ○中井委員 大臣の言われる証券業界みずからの 手で公表をすべきだというのは、制限なしですべての補てん先を発表しなさい、こういうふうに理解していいですか。
  415. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今何らの前提条件を付さずに委員にお答えを申し上げております。他の委員にも同じようにお答えをしてまいりました。
  416. 中井洽

    ○中井委員 長岡東証理事長にお尋ねをいたします。  東証の理事長として、各証券会社が自主的にこのリストを公表すべきだ、このようにお考えですか。
  417. 長岡實

    ○長岡参考人 東証理事長としてお答えを申し上げるのはいかがかと存じますけれども、本日の論議をずっと伺っておりましても、この事実が明らかにされないということが大変重要な意味を持っておるという点は深く認識いたしておるつもりでございます。
  418. 中井洽

    ○中井委員 証券局長にお尋ねをいたします。  先ほど同僚議員から、細かくこれはどうだ、あれはどうだという議論がありました。私も一点だけ、政治家、政治家の家族、秘書、政治家の後援団体、その名前が二百数十社のリストの中にあったのかどうか、これをお答えください。
  419. 松野允彦

    松野説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、二百三十一のすべてについて私どもチェックを完了したわけではございません。いろいろな名前のものが入っておりまして、はっきり申し上げて、私どもわからないものもかなりございます。したがいまして、今の段階で御質問に自信を持ってお答えできないということを御理解いただきたいと思います。
  420. 中井洽

    ○中井委員 先ほどの証券局長の御答弁の中で、年金福祉事業団は入っているとお答えになりました。守秘義務だとかあるいははっきりわからないとか言われるけれども、年金福祉事業団は更正決定を受けた中に入っております、つい先ほどお答えになったじゃありませんか。どうしてほかは答えられないのですか。
  421. 松野允彦

    松野説明員 年金福祉事業団につきましては、確かに更正決定の中に含まれているというふうにお答えを申し上げました。ああいう比較的わかりやすいものでありましたらわかるわけでございますが、何しろ二百三十一、非常にいろんな名前のがございまして、なかなかチェックをするのにはかどっていないという実情にあることを御理解いただきたいと思います。
  422. 中井洽

    ○中井委員 私は、なぜ政治家だけを言うかといいますと、これは週刊朝日七月二十六日号、ニューヨーク大学の霍見教授が今回の問題について評論をされているわけであります。その中に、「私が得ている情報では、損失補填でキックバックなど不正行為温床である営業特金勘定は、大蔵族の議員らにもあり、大蔵省証券会社はこれで国会議員を儲けさせ、族議員操縦の足場としている。」こう書いているのであります。  こんなことを書かれて、この委員会どうなるんですか。週刊朝日という大変権威あるところに、しかも霍見さんという私どもが敬愛する方が堂々とお書きになっておる。そういう意味で、政治家あるかないか、この委員会ではっきりさせてほしい、私はそのように思います。「大蔵族」と、こうなっておるのであります。皆さんそれぞれ大変であります。  これくらいのことはお答えになるか、あるいは同僚議員に対して枠を示すと言われた、証券局長聞いていますか、枠を示すと言われた。今この場でお答えになるか。枠を示す、できる限り早い間に分類を示される、こういうあれがございます。そのときに私どもの党にもきちっと、これは政治家があるのかないのか御返事をいただけるか、答弁ください。
  423. 松野允彦

    松野説明員 確かにいろいろな名前がございますので、なかなか自信を持ってお答えできないというふうに申し上げておりますが、現在までの私ども形式的に見た中には、政治家の方は存在されません。
  424. 中井洽

    ○中井委員 私どもは今後とも委員会におきまして、リストの公表、こういったものを強く求めていきたい、このように考えます。  それからもう一つ、他の問題に移りますが、私ども、他党と同じく、今回の損失補てんにつきましては御報告をちょうだいいたしております。その中でどうしてもわからないのは、自主報告をさせた、そして国税へ自己否認をした、そして国税の捜査を受けてそれ以外にも出てきた。この自主報告をした金額、自己否認をした金額、そして国税から更正決定を受けた金額、それぞれあるわけでありますが、これは、国税当局と大蔵省証券局と、損失補てんということに関して全く違う理解をしているということでありますか。自主報告を受けて以来今日に至るまで、大蔵省証券局は何を損失補てん、こういう形で判断をなさってきたのか、国税庁も何を損失補てんとして基準をつくられておやりになったのか、そこのところをお教えください。
  425. 松野允彦

    松野説明員 私ども平成元年十二月の通達を出して、損失補てんを厳に慎め、あわせて損失補てんについて自主的な点検をして提出をしろということを言ったわけでございますが、その通達におきましては損失補てんの具体的な定義なり概念というのを示しておりません。各社の自主申告におきましては、このため、損失補てんの概念につきまして各社ややまちまちというところがございまして、中にはお客との純粋なトラブル処理のものや、あるいは比較的通常取引に近いものが入っているというようなものもございます。税法上の損金として認められるようなものも含めて、かなり広い範囲で自主申告が行われたというふうに聞いているわけでございます。
  426. 冨沢宏

    冨沢説明員 私どもは、証券会社の方でどのようなものを損失補てんとして報告されたかという中身について承知しておりませんので、その違いということについてもお答えできる立場ではございませんが、私ども税務当局として課税すべきものであると判断したものについて課税をいたしておるわけでございます。
  427. 中井洽

    ○中井委員 例えば、山一証券は四百二億自主報告をしておる、しかし自己否認したのは八億だ。野村証券は百六十一億自主報告をされて百六十六億自己否認をされておる。これは四社とも自己否認をされておる。自主報告をして、大蔵省証券局は報告を聞いて、これは違う、これはいいよ、これはだめだよという形でやって、それで四社にこういう形で自己否認という方法をとりなさい、そしてその後証券報告書を訂正しなさい、こういう指導をしたのですか。
  428. 松野允彦

    松野説明員 当時は損失補てんについて自己申告をしろということは言ったわけでございますが、税務上の自己否認をするということにつきましては、これは各証券会社の自主的な判断にゆだねていたわけでございます。
  429. 中井洽

    ○中井委員 その自己否認をする金額について、これとこれとはどうだというのは証券局が当時指導なすったのですか。
  430. 松野允彦

    松野説明員 その件については全く指導をしておりません。
  431. 中井洽

    ○中井委員 どうもお話を聞いていると、僕はさっぱりわからないのであります。  そうすると、当時の大蔵省証券局は甘かったのですか。報告を持ってきなさい、報告だけ受け取る、証券会社はそれぞれ自分のところで損失補てんだというものだけ税務署へ報告しなさい、これだけですか。そうすると、山一なんかは四百二億で八億しか出していないじゃないですか。そして結局九十億、四十九億と二年にわたって更正決定をされておる。野村証券は九十億、大和は十五億、日興は四十七億と、御承知のように更正決定をされておる。随分甘かったのじゃないかと言わざるを得ませんが、いかがですか。
  432. 松野允彦

    松野説明員 税務上の自己否認につきましては各証券会社の自主的な判断にゆだねておりまして、自己否認額について私どもは当時承知をしていなかったわけでございます。
  433. 中井洽

    ○中井委員 そうすると、現在特別検査が入っております。この特別検査で検査をされます範囲は、国税庁の更正決定になったレベルでおやりに なるのか、それとも自己否認をされておったレベルでおやりになるのか、どちらですか。
  434. 松野允彦

    松野説明員 現在、四社に検査に入っております。その検査において損失補てんをチェックするわけでございますが、それにはもちろん税務上の認定の基準というのも参考にいたしますし、あるいは我々の検査独自の考え方というのもあるわけでございまして、いろいろなものを総合勘案して損失補てん額の有無についてチェックをするということで検査をしているわけでございます。
  435. 中井洽

    ○中井委員 やってはならないことが山一証券の問題から出てきて、通達を出されて、三月間待っておるから持ってきなさい、そして持ってきたら各社ばらばらだった、中身も全然違う、しかしそれは受け取りましょう、自分のところで都合のいいように国税に自己否認をしてきなさい、あるいは税務申告しなさい、こういう指導をした、そして国税の方で調べたらそれ以外にたくさん出てきた、あるいはまた自主報告の後もやっておった、それに対して処分をした、こういうことで理解していいですか。
  436. 松野允彦

    松野説明員 自主申告の提出を受けたときに、それについてその段階で厳正な社内処分を要求し、実施させていたわけでございます。それに加えて、このたび税務更正を受けてそれをチェックした結果、自主申告漏れがあったということで、さらに重ねて社内処分をしたということでございます。
  437. 中井洽

    ○中井委員 当時こういう大きな、しかも証券会社の存続にかかわるような問題が起こったにもかかわらず、発表しないよ、ないしょにするよとしておいたこと自体が間違いだと私は思います。せめて今、当時やった各社社内処分、それの内容を発表してください。そして、その社内処分を当時受けた人が今回の処分でもまた重ねて処分を受けたのかどうか、御報告をください。
  438. 松野允彦

    松野説明員 社内処分内容につきましては、各社から発表するように私ども指導をいたしまして、各社において前回の分も含めて発表をしております。  前回の社内処分と、今回税務更正を受けた後の社内処分で重複している人がいるかということでございますが、これは、社内処分の中には行為責任だけではなくて管理責任あるいは経営責任というようなものも入っております。そういう中には、前回受け、今回も受けているという人がいるというとでございます。
  439. 中井洽

    ○中井委員 時間がありませんのでほかへ移りますが、銀行局長にお尋ねをいたします。  信託銀行や生保業界、これらについて先ほど内々の聞き取りをやった、こういうお話でございます。証券局と銀行局は違うかもしれませんが、証券局のこの極めて寛大な自主報告でも、かなり乱雑で後からいろいろ出てくる。そういうことにかんがみて、信託や生保業界の信頼をつなぎとめるためにも、銀行局として検査を実施されるおつもりはありませんか。
  440. 土田正顕

    ○土田説明員 最近話題になっておりますのは、主として特金との比較において、いわゆるファントラと称する商品が話題になっているようでございます。確かに特金もファントラも信託の仕組みを使った商品でありますが、運用の裁量権という点で異なっております。  つまり、いわゆる特金は委託者が有価証券運用を行うものである。したがって、受託者の信託銀行の役割は、有価証券の保管とか管理、報告書の作成、いわゆる事務を代行するというような感じの仕事にとどまるものであります。  他方、いわゆるファントラは、当初指定されました投資財産の……(中井委員「済みません、事後補てん損失補てんが実際あったかないかを調べる調査をやられる気があるかないかだけ答えてください」と呼ぶ)
  441. 平沼赳夫

    平沼委員長 簡潔にお答えください。
  442. 土田正顕

    ○土田説明員 失礼しました。  この信託銀行に運用の裁量権が認められた商品でございます。  そのような観点から、いろいろと私どもは話を聞いておりますところでございますが、今までのところ、委託者に対して元本補てんあるいは利回り保証約束し、それに基づいて損失補てんするといった事実は承知しておりません。  また、検査について申し上げます。当然信託銀行も一般の銀行と同じように定例的に検査をしております。実際外銀を除きますと八社扱っているものがございますが、昨年度、その中の五社について検査をしております。また、本年度に入りましても既に一社検査を行っております。そのような検査でのいろいろな結果をも含めて総合的に判断をいたしまして、先ほどのようなお答えを申し上げたわけでございます。
  443. 中井洽

    ○中井委員 国税庁はいかがですか。
  444. 冨沢宏

    冨沢説明員 私ども、大法人につきましてはかなりの密度で通常の税務調査をいたしておるところでございます。
  445. 中井洽

    ○中井委員 一問だけ、暴力団絡みの問題でお尋ねをいたします。  大臣も非常に関心をお持ちになって、損失補てんよりも重大だと考えるぐらい見詰めておられる、こういうことでありますから当然いろいろとお調べになっていると思うのですが、私どももいろいろ調査をしておりますが、根本的にわからないのは、野村証券と日興証券、これが全く同じことをやっておるんですね。これは野村と日興が相談してやっておったのか。それ以外に考えられない。金額もやり方も日にちもほとんど一緒じゃないですか。そこのところはお調べになりましたか。
  446. 松野允彦

    松野説明員 野村、日興、二社から報告を受けて調べておりますが、両社が相談したという報告は受けておりません。
  447. 中井洽

    ○中井委員 先ほどから報告ばかり言われますが、報告が頼りなかったからこんな大問題になってきたのであります。この暴力団事件でさらに調査をされる気がありますか。いいですか、今回の特別検査も含めて、こういうことをおやりになっていますか。
  448. 松野允彦

    松野説明員 現在四社に特別検査に入っております。特に野村、日興の二社につきましては、この問題も含めて検査を行うということにしております。
  449. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  450. 平沼赳夫

    平沼委員長 長岡参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、かつ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。心から御礼申し上げます。  菅直人君。
  451. 菅直人

    ○菅委員 朝からこの問題、ずっと私も同僚議員質問を聞いていたのですが、大きく言って今回の問題は二つの論点があると思います。  一つは、損失補てんに代表されるようないわゆるマーケットそのものに対するゆがみというのでしょうか、あるいはアンフェアというのでしょうか、そういった問題があり、その裏には日本的な企業のもたれ合い構造も相当指摘をされていると思うわけです。もう一つが、いわゆる暴力団絡みの、場合によったら株価操作あるいは特別背任などをにおわせるような問題点があると思います。そういった中で、短い時間ですので同僚議員とダブらない問題あるいはつけ加える問題について一、二質問をしておきたいと思います。  今も銀行局長がファンドトラストについて中井委員質問に答えられておりました。結局は損失補てんは承知をしていないという答弁が朝から続いているわけですが、私は別の観点からこの問題について質問をしてみたいと思います。  つまり、ファンドトラストにはたしか分別管理義務があるはずですね。そういった個々のファンドを分けて運用しなければいけないのに、実質的には合同的な運用をして、余りファンドごとの差が利率などで出ないように扱っているのではないか、こういう話を私などもあちこちから聞いております。そしてそのことについて、実は大蔵省銀行局はそういう実質的な合同運用をしていたことを知っていたのじゃないか。つまりそれを知りながらそれについては、きょうの朝からの質問で二 ギリとか損失補てんとかということで聞かれた場合には、承知をしていない。ですから、私は聞き方を変えまして、この分別管理義務に対する違反があったのではないか、それについて承知していたのではないかということについての答弁を求めたいと思います。端的に答えてください。
  452. 土田正顕

    ○土田説明員 それではごく手短にお答え申し上げますが、分別管理義務、これは信託法二十八条に規定がございます。これはその信託財産を固有財産とか他の信託財産と分離して特定の信託財産である旨の、端的に言えば表示をする義務であるということでございまして、例えば金銭については例外として各別にその計算を明らかにするをもって足る、それ以外のものは混合して管理してはいけない、こういうことでございます。したがいまして、ここで一たんやめますが、今問題を提起されましたものはそのほかの義務のことであろうかと思われます。
  453. 菅直人

    ○菅委員 もしかしたら分別管理義務ではなくて単独運用、いわゆる実質的な合同運用と言った方がいいのかもしれないのですけれども、そういったことについて短い時間ですのでついでに話を進めますと、ここにある文書があります。  これは「大蔵省検査講評結果について」という、「対外厳秘」と書いてありますが、どういうわけか私の手元に来ております。これによりますと、住友信託銀行に対して大蔵省が検査をやったときの大蔵省の検査講評というものがここに出ております。その中で「ファントラの管理面が不十分である。特にファンドの運用管理に不適正と見なされる事例がある。」このあたりが先ほどの分別管理義務なのか別の項目なのかは別として、つまりはそれぞれのファンドを個別に運用しなければいけないのに、実質的には、ならしてみれば大体この程度の利率はいくだろう、そうすると、多少でこぼこがあるところをちょっと埋めるような操作をする。このことが実はニギリとか損失補てんにつながってくるというような指摘が業界のいろいろな文章の中にもあるわけですけれども、そういった、今申し上げたようないわゆる運用管理上不適正とみなされる事例があったことを銀行局としては承知をしていますか。
  454. 土田正顕

    ○土田説明員 今のお話は合同運用ともまた違いますので、一応制度論議は時間の関係もありますので省略をさせていただきます。  それから、御指摘のような文章については私ども明細承知しておりません。これは私どもの方で作成した文章ではないと思われます。  それから、ただこれはあくまでも一般論として申し上げますが、検査などで時々不適切な取引を発見することはございます。例えば一つのファンドを複数のファンドマネジャーが運用していた、そのためにファンドの手持ちの余裕金残高を上回る有価証券を購入してしまった、そこで後日やむを得ずほかのファンドでそれを購入したように記録をつけかえたとか、そのような、どちらかといえば事務体制の不備、内部管理体制の不十分、そのようなものに起因するようなもの、これは一例でございますが、そのほか顧客との信頼関係を害したり、トラブル発生の原因ともなりかねないと認められたりする事例はございます。そのようなものにつきましては、内部管理体制の厳正化その他について注意を喚起し、しかるべく指導をしてまいったところでございます。
  455. 菅直人

    ○菅委員 大臣、このファンドトラストが今回の問題となっている営業特金と同じような問題を抱えているのじゃないかということを各方面から指摘をされていることはよく御承知のとおりだと思うのです。それについてきちんとした検査、調査をやっているのか。先ほどの議論だと、いろいろとインフォーマルに聞いているということが言われているだけで、しかも局長の答弁は、そういう事実がないという答弁ではなくて、承知をしていないという答弁にとどまっているわけです。これは、先ほど言いました日本的商慣習的なものも含めて、大体多くの場合にニギリをやってある程度の利益率を保証させて、若干でこぼこがあればならしているというような話は従来から各方面で言われてきていますし、私は必ずしもこの文章があるなしにかかわらずそういう事例を耳にすることが多いわけです。そういった意味で、この際、中途半端なふたの仕方をしないで、銀行、特に信託銀行についてもきちんと調査をして、大臣の口からはっきり、ないならない、事実としてありませんと言えるのか。ただ単に承知していないなんていいかげんなことではなくて、もしこの場で事実としてないということが言い切れるなら言っていただきたいし、もしそれが言えないとするならば、検査をして後日その事実関係を明らかにするということを約束していただきたいと思いますが、大臣いかがでございますか。
  456. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今銀行局長から御答弁を申し上げましたように、不適正な事例があるという幾つかの例を例示をいたしました。また同時に、昨年度の検査実績並びに本年既に行った検査の実態、信託銀行について御報告をいたしております。今後におきましても検査はそのまま続行、当然のことながらきちんと行われると思っております。
  457. 菅直人

    ○菅委員 大臣、ですから、ちょうど特金と同じような、補てんというような事実がないと言い切れるなら言ってください。今言ったような、一部更正とかなんとかということじゃなくて、損失補てん的な補てんがやられていたかやられていないか。事実がないならない。ないと言い切れないならば、その事実を検査をした上で、調査をした上で明確にしていただきたい。そのことをお答えください。
  458. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私はそこまで細かいことを存じませんので、銀行局長から改めて答弁をさせます。
  459. 土田正顕

    ○土田説明員 私は、承知していないという表現を使いましたのは、要するにそういう事実があるという認識を持っていないということを申し上げたわけでございます。
  460. 菅直人

    ○菅委員 法務省の方にも来ていただきましたけれども、既に同僚議員から質問がありましたので、時間ですので、これで終わります。
  461. 平沼赳夫

    平沼委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会