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1991-04-25 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月二十五日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    今津  寛君       岩村卯一郎君    衛藤征士郎君       狩野  勝君    河村 建夫君       久野統一郎君    坂本 剛二君       戸塚 進也君    中西 啓介君       萩山 教嚴君    林  大幹君       細田 博之君    柳本 卓治君       山下 元利君    小野 信一君       大木 正吾君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    仙谷 由人君       筒井 信隆君    富塚 三夫君       細谷 治通君    堀  昌雄君       渡辺 嘉藏君    井上 義久君       宮地 正介君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         内閣総理大臣  海部 俊樹君         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      大森 政輔君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         外務大臣官房審         議官      竹中 繁雄君         外務省欧亜局長 兵藤 長雄君         外務省経済協力         局長      川上 隆朗君         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省国際金融         局次長     江沢 雄一君         通商産業省貿易         局長      堤  富男君         自治大臣官房審         議官      谷口 恒夫君         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   菅  直人君     江田 五月君 同日  辞任         補欠選任   江田 五月君     菅  直人君 同月二十五日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     坂本 剛二君   前田  正君     今津  寛君 同日  辞任         補欠選任   今津  寛君     前田  正君   坂本 剛二君     狩野  勝君     ————————————— 四月二十二日  共済年金改善に関する請願臼井日出男紹介)(第三〇〇六号) 同月二十三日  共済年金改善に関する請願石橋一弥紹介)(第三二一一号)  消費税法即時廃止に関する請願金子満広紹介)(第三二一二号) 同月二十四日  共済年金改善に関する請願住博司紹介)(第三三三三号)  同外一件(甘利明紹介)(第三三五五号)  同(綿貫民輔紹介)(第三三九五号)  消費税法即時廃止に関する請願正森成二君紹介)(第三三九六号) 同月二十五日  身体障害者用自動車消費税減免に関する請願遠藤登紹介)(第三四五六号)  共済年金改善に関する請願長勢甚遠君紹介)(第三四五七号)  同(谷川和穗紹介)(第三五二四号)  所得税課税最低限を年収百五十六万円以上大幅是正に関する請願大野由利子紹介)(第三五二五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大木正吾君。
  3. 大木正吾

    大木委員 総理にお忙しい中を御出席いただきまして、恐縮です。  最初に、土地問題についてちょっと伺いますが、きのう参議院の方も地価税法が通りましたけれども税制問題についてのみでは土地問題の解決はなかなか難しい、こう考えています。特に、税調の答申に対しまして与党が値切り、同時に政府もそういった内容を提案しておりますが、そういった問題について、総理自身税制だけに頼っての土地問題の解決はなかなかできない、こういったことに絡んで御見解がありましたら伺いたい、こう考えています。
  4. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大木委員にお答え申し上げます前に、お許しいただいて委員長並びに委員会皆さんに御了解をいただきたいと思いますが、過日十八日にお呼び出しをいただきながら、たまたま日ソ交渉の方が予定どおり終わりませんでして、引き続き第四回会談を迎えるための準備その他がございましたので、私は欠席をいたしましたが、御了解をいただきたいと思います。  また、ただいま御指摘の、土地対策に対して税制だけで可能と思っておるのかというお尋ねですが、私は、この地価対策というのは、税制も大切な柱の一つでありますけれども税制だけでできるものではなくて、むしろ地価が高騰してきました理由の一つには、東京大阪等都市部中心地事務所需要というものが急増したということ、また同時にそれに伴って宅地の買いかえ、そこへ持ってきて、背景としては金のだぶつき現象というようないろいろなことが重なって土地の高騰が来されたものだと思っております。したがって、政府考え方としては、税制のみならず、融資の問題あるいは土地利用計画を促進していく問題、これらのことを総合的にあわせて行いませんと、土地問題に対する根本的な解決期待がで きないと思いますが、しかし、土地税制というものは極めて大切な柱の一つである、このように受けとめております。
  5. 大木正吾

    大木委員 最近の新聞報道によりましても、ことしの大卒の就業状態を見ていきますと、やはり東京東京にと集まっている傾向がございまして、そして情報、通信関係もそうでございますけれども、やはり一極集中がどうしてもとまらない、こういった問題がございますから、税制も一部に違いありませんけれども土地政策都市政策といいましょうか、そういった問題について、国会移転問題の決議もあったわけでございますけれども、もう少し広範な意味合いで産業あるいは工場、さらには役所等の分布を図り、同時に国土計画をもうちょっとしっかりしませんと、土地問題は片づかない、こう考えていますが、どうですか。
  6. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 まさに御指摘のとおりに幅広くいろいろなことをしなければならぬわけでありまして、東京一極集中是正しなければならぬということ、例えば工場とか企業なんかも都心から離れていきつつある、こういう傾向もありますし、また大学等都心から離れてキャンパスを郊外へ移すというようなこととか、いろいろありましたが、国会が昨年国会等移転に関する決議をしていただいたことも、これは国会も率先してそれらの考え方についての御示唆をいただいたものと政府は受けとめまして、その問題についても国民的な合意を形成するために、国土庁で懇談会は持っておりますけれども内閣の方にも、国民世論を形成するために各界代表方々に別の高い次元から御議論を願っておる。このことは、ただ単に国会移転したり、首都機能移転したり、企業や学校が移転するということのみならず、地方そのものが、地方の持っておるそれぞれの活力とか個性を生かして創生されていくことが大切で、年来行われておりますふるさと創生事業にさらに一味加えるといいますか、地域の創意と工夫によって活力倍増計画をそれぞれ地方に計画していただく。それに対して国がいろいろな面で政策努力をして、国土の均衡ある発展も図っていこう。農山村の都市との環境格差是正のみならず、文化や生活環境是正も行いながら広く有効利用に資していかなければならぬという考えでありますから、各省あらゆる努力をしていただく、また、国民的な合意もお願いしていく、こういう気持ちでございます。
  7. 大木正吾

    大木委員 極めて大事な問題でございますから、御答弁だけでなしに、政策的な実効、効果が上がるようにぜひお願いしておきます。二つ目に伺いたいことは、これはまだ国会で正式に終わったわけではございませんが、消費税見直し問題が話題になっておりまして、税制協でもって話が進行しているやに伺います。端的に申し上げて、私たちも我が党の立場からしますと不満な線もあるわけですが、結論がまだ見えておりませんが、今後将来にわたって、例えば食料品あるいは逆進性緩和問題等を含めて、今回の見直しが恐らく今国会中にあるかもしれませんが、今回以降においてもなお見直しをされる予定があるかどうか、これについて総理からお伺いいたします。
  8. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 消費税の問題につきましては、衆議院におきまして、政府見直し案を法案に作成して提出をし御理解をいただいたのですけれども参議院の方で審議未了、廃案という結果と相なりました。その後、各党皆さんが両院あわせて、このような一院通って一院通らないというようなことじゃなくて、国民のためを考え消費税を前提にしながらどのような対応が必要かについて協議会を開いていただき、たしかきょうもまたそれをおやりいただく予定になっておると聞いております。私は、各党各会派の皆さんのそういう御努力によって適正な合意が得られますように、そして政府はそれを受けて誠実に対応していかなければならぬのはもちろんのことでありますし、税制の問題は今後ともあらゆる立場を通じて広く各党間の御議論を得ていく問題であろう、このように受けとめております。
  9. 大木正吾

    大木委員 最終的な協議がまだ終わったわけではございませんから、聞く方も聞きにくいし、同時に答える方も難しい問題かもしれませんが、新聞報道によりますと、益税問題の是正中心でございまして、私が心配していますのは、やはり逆進性といいますか、弱い者に対する面倒ですね、食料品等につきまして。こういった問題につきまして、将来再見直しをぜひしてもらいたい、そういう気持ちがありますが、総理の個人的な見解でも結構でございますから、そういう問題についてどうお考えか、伺いたい。
  10. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 個人的な問題で結構だという温かい御質問でございますから、私も各党協議に予断と憶測を持って物を言うことは、これは厳に慎まなきゃならぬ立場でありますので、個人的ということでお許しいただきますが、逆進性の問題は、どこの国を通じてもやはり当然間接税には伴ってくる性格の問題でございます。それで、私ども税制だけでその問題に対応しようとしないで広くその他の政策全般の中で、例えば財政支出の中でもあるいは減税政策の中でも、その逆進性を絶えず念頭に置きながらの政策努力を続けてまいりますし、また、一番世の中で弱いと言われる立場方々に対しては、例えば年金なんかの問題とか幅広い角度からとらえまして、政策全体の中で逆進性というものが緩和されていくように努力をしていかなければならない、こういう基本的な背景考えとして持っております。  なお、現実の問題については、まさにきょう各党代表でお話しをいただくことになっておる問題でございますので、これは答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  11. 大木正吾

    大木委員 これは橋本さんから随分何遍も聞かされたことでございますから余り深入りしませんが、とにかく私自身あるいは我が党といたしまして、何らかの形でもって食料品問題等について再見直しをしてもらいたい、こういった強い希望を申し上げておきます。  次の問題でございますけれども総理ブッシュ大統領と大分お会いになっているわけでございますが、特に中東問題に対する外交政策ですけれども湾岸問題等についての、ああいった形での紛争は許すことはできませんが、外交政策といたしまして、田中内閣以来、鈴木あるいは大平、中曽根さん、大体イスラエルアラブ、この中間にありまして、どっちかというとアラブ側にちょっとスタンスを置いた外交政策で来たと思うのですけれども総理の心境としまして、そういった日本中東外交政策について若干イスラエルの方にスタンスを移す、そういったお気持ちがあるのじゃないか、こういうふうに感じるのですが、その辺どうですか。
  12. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 中東外交につきましては、世界的に中東恒久和平というものを達成しなければならぬという基本的な強い考えがあることは委員承知のとおりと思います。また、ブッシュ大統領自身も、去る九月に私が国連大統領の演説を聞きましたときも、当時はまだ平和回復のもちろん前でありますけれどもイラククウェートから無条件で撤兵をして国連決議を完全に受け入れるなれば、イラククウェートの間の問題やあるいはアラブパレスチナイスラエルとの問題や、さまざまな問題について話し合いの契機が生まれてくるだろうという提案を大統領自身もしておりました。私は、今大木委員のおっしゃったように、きょうまでアラブ寄りで、そしてイスラエル寄りではないという認識は必ずしも持っておらないわけでありまして、アラブとの関係も大切であるがイスラエルとの関係も大切にしていかなきゃならぬというので、両方ともにそれぞれの接触はございました。ただ、日本にとって死活的な重要な原油輸入先、そしてそれがアラブ、それからもう一つ国連決議の二四二、三三八以来、イスラエルに対しては日本は言うべきことを言ってこなければならぬという、こういう立場もございましたし、また、もう一つ言いますと、イスラエルは一人一人の個人所得も御承知のとおり高い わけでありますから、ODAの関係イスラエルとの関係というものはなかったわけでありまして、いろいろなことから考えると、政治対話アラブと比べて少なかったのではないかという御指摘は、これはあろうかと思います。  そういった意味で、この間うちの中東平和回復活動のさなかで、イラクの方からスカッドミサイルを無差別に撃ち込まれたイスラエルイラクに対して反撃をしなかった、私は委員会でもお答えしたと思いますが、もしあれが行われたらあの平和回復活動は質の違った紛争に拡大していくのですから、当時イスラエルが自制をしたということは、これは忘れてはならぬことである、こう受けとめておりまして、次官レベル政治対話を行うべしと判断をして、これは停戦前でしたが、イスラエルへお使いも出していろいろな政治対話をしたわけでございます。  今後は、軸足を移すのじゃなくて、片方片方にきょうまで政治対話その他で欠けるところがあるなれば、そこを高めていってバランスのとれた関係対話を続けなきゃなりませんし、同時に中東本当の平和を確立するためには、今イラクに対して大量破壊兵器の廃棄とかあるいは京都での軍縮会議の開催とか、日本イニシアチブをとっていろいろしていかなきゃならぬと思って積極的に取り組んでおりますけれども、もう一歩進んで、対話の場にイスラエルもそしてアラブアメリカも、そしてそれら関係諸国も皆入っていって、本当恒久和平を確立するためにはイスラエルとの対話をきちっと行って、あの二四二の決議その他についてのイスラエル側国際社会に対する協調的な態度も求めていかなきゃならぬわけでありますから、その意味政治対話を積極的に続けていこう、こう考えております。
  13. 大木正吾

    大木委員 私の最近の受けとめ方が、少し総理本当考え方がわかっていなかったような面もありますけれども、確かにイスラエルが自制されたことについては湾岸戦争の中で私たちも注目しておりまして、非常に大事な問題を間違わずに国際政治の中でとっていただいた、これについては感謝しています。  ただ、アラブ、これを見たときに、宗教、民族、大変な複雑な要素を持っている国々ですから、そういった中にありまして将来どういうふうに変わってくるか、また新しい紛争が起きるかどうか、そういったものは望ましくないのですけれども、全く可能性がないということも言えないと思うのですね。同時に、七〇%の原油を依存している、こういった問題がございます。そうしますと、歴代日本内閣は、双方に目を使いながらも、どちらかというと原油を依存する側の方に幾分目を向けていた、こういう感じがいたします。そういった点からしまして、十年、二十年先のことも考えながら、国益にそぐわない形はとってほしくない。中東全体の和平を望んでいますけれども、そういったことについて再度総理の今後の方向、中東関係に絡む外交姿勢、こういった問題について伺っておきたいと思います。
  14. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的なことを申し上げますと、日本の国にとってもそれから国民生活にとっても、私自身家庭生活にとっても、今原油にどれだけ依存しておるか、これは必要不可欠な地域でございます。あの地域から七割近い原油日本は輸入しておるのでありますから、御指摘国益国民生活を維持していくという点からいっても、これはどうしてもアラブ中東地域の平和と安定というもの、原油の安定的な供給というものが死活的に重要であると考えますので、それがあの地域の安定を願う第一の考えになります。  そのためにどうするかということになりますと、当面問題は二つに分けて考えなきゃならぬと思います。宗教的な問題、そしてアラブ大義アラブ一つと言われておったきょうまでの我々の常識が、今回はアラブアラブ内部で分かれざるを得なかった。そして力でもって他国を侵略、征服するという政策についていけないアラブ人たちもあった。国際社会大義の中では平和共存をしていかなきゃならぬ、同時に経済基盤を豊かにしていきたいという生活向上、安定の願いがアラブにも広まってきたことを物語っております。  そうであるならば、あの地域に一人だけずば抜けた強い国をつくってしまうということがだれの責任であったかというと、これは率直に申し上げて、東西両陣営を問わず大国の犯した責任ではなかったか、このことはブッシュ大統領にも言いましたし、ゴルバチョフ大統領にも率直に言いました。そして、自国の防衛のために必要にして十分な限度はございます。それを超えてずば抜けて強くなって、覇権を力で持つことができるような、わがままな欲望を力で達成することができるほど野方図武器移転は慎むべきである、これが当面あの地域の平和と安定のためにはまず取っかからなければならぬテーマであろうと私は思っております。しかし、少し長い目盛りで見ると、イスラエル国家の存立というものを認めて、テロによってイスラエル国家を追放するという考え方がいかに間違っておるかということも根気強く説得していかなければなりません。  私は、政権スタートの後で、PLOのアラファト議長が、日本政府として関係を持ったことがないから政府賓客で呼んでほしいという申し入れを受けました。そのときに、以後イスラエル国家の承認を大前提にすること、テロ行為には訴えないという二つのことのお約束ができるならば、また首脳会談ではそのことを私は強く言いますから、合意できるならば政府賓客としてお招きしますという決心をしまして、向こうもそれでいいということでございましたから、来ていただいてお話し合いをしました。そのとき明確に、パレスチナは今までイスラエルを認めないという態度できたけれども、承認する、イスラエル国家の生存は認める、そのかわり、パレスチナ人民族自決、建国の考え方も基本的に認めなければならない、テロ行為はしないということを明言されましたので、私はそういった基本に立って二四二と三三八の国連決議というものが成立していくように、私どもも、イスラエルとの政治対話を行ったりイスラエル立場理解をしながら、アラブとの間の恒久的な和平が成立するように努力をする、今後とも連絡を密にしていこう、こういう立場になっておるわけでありますから、先ほども申し上げましたような政治対話も進めていこう、引き続き行っておる、こういうわけでございます。
  15. 大木正吾

    大木委員 総理のお気持ちはよくわかりましたが、若干これに関連いたしまして、兵器輸出問題でございます。  最近の報道等をあちこち見ておりますと、アメリカが盛んにアラブ関係諸国に対しましての武器輸出を再開して、むしろ湾岸戦争以前の状態よりもっと多く輸出、こういう記事がございました。これに絡んで総理自身いろいろな、外国に行くこともございましょうし、サミットもございましょう。そういった中で、先進国が、あるいはソ連もそうでありますけれども、とにかく相手の国々に対しまして武器輸出を少しセーブをする、そういった御提言を国際的な会議の中でするお気持ちはありませんか。
  16. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的なことを申し上げますと、米ソの間において今冷戦状態が終わりを告げた、冷戦時代の発想を乗り越えつつあるというのは、まさに軍備管理そして軍縮双方必要性理解し合ったところからこの世界の流れが始まったと考えます。  残念ながら、米ソ首脳会談は中断しておりますけれども、これが前進していくことを強く期待すると同時に、今度の京都で行います軍縮国際会議には、アメリカからも軍備管理局長官出席をする、軍縮代表が来ますし、ソ連にもそのことは申し上げてあります。世界各国からいろいろなレベルの方に集まってもらって会議をし、それを国連の場へきちっとつなげていきたい。  これは大きく二つに分けて、核兵器化学兵器生物兵器といったような大量破壊兵器は、きょうまで国連でいろいろな努力が行われてきておる枠組み等もありますけれども、少なくとも不拡散、それで究極的には廃絶目的でありますが、ま ず不拡散から合意をし、それを守っていく。このことはアメリカにもソ連にもそういう考え方を私は伝えておりますし、また日ソ首脳会議のときも、アジアの平和と安定の枠組みをつくる前にまずやらなければならぬ問題は、例えばということで、朝鮮半島の緊張が今非常に高まっておる、南北の首相会談も滞っておるが、日本は北の政府と今国交正常化しようと思って国交交渉も始めておる、ただ、核の施設の査察の受け入れをやはり北朝鮮は受けるべきである、このことについては合意をしておりますから、こういった問題一つ一つを地道に積み上げていくことが大量破壊兵器に対する対応になる。  それからもう一つ、今触れられた通常兵器の方は、野方図移転はいけませんので、ただ一国だけがすごくバランスの強いものがあって、他に防衛力が、大変失礼な言い分ながら、防衛十分性を欠いておると、何か事があったときにはすぐにまた他国からの応援、それができるのは、やはり先頭に立ってできるのはアメリカだ、私はこう思っておりますから、そういった意味で、アメリカ中東から兵を引いて、その後は湾岸六カ国プラス二カ国、エジプト、シリアを含めての六プラス二のあの地域イニシアチブを尊重する安全保障構想というものを考えるならば、それらの国々のどれをとっても地域内で圧倒的にずば抜けた力はない。しかし、一国が何か考えても他国が手を組めば、域外からの力の支援を頼まなくても抑えることができるのだ、そういうバランスというものをきちっと考えていくのが、私は、軍備管理軍縮の目指すべき姿の現段階では一つである、こう考えております。  そういった意味で、五月の京都会議というものの各界の御議論にも期待をいたしておりますし、日本としてはそういう考え方を積極的に主張していきたい、こう考えておるところです。
  17. 大木正吾

    大木委員 基本的な考え方はわかりましたが、実はアメリカのハイテク兵器、今度の湾岸紛争で大変な威力を発揮したわけですが、あの部品の中に日本から出ているものが相当にあるわけですね。例えば京セラさんがほとんど独占的に持っています、あるいは輸出していますセラミックパッケージ、こういったものはやはりアメリカのハイテク兵器の部品に相当使われていますね。そういった問題について、日本には武器輸出三原則というものがございますが、部品ですから関係ないとおっしゃればそういうことになるのですが、国内問題としまして、相当な七、八品目のものがメーカーからペンタゴンあるいはアメリカ兵器生産民間会社に行っていますから、そういった問題について何らかの内閣なり政府の方針、そういったものを民間の関係企業と相談される、あるいは輸出についての一つの制約的なことを考える。相手が民需に使うか軍需に使うか、なかなかはっきり言わないかもしれませんけれども、一方的でも結構ですから、我が国側としての何らかの制約をしませんと、いわば部品だから結構でもってどんどん出ていってしまう。  そういった結果が、いえば世界的な軍拡、それによって東欧あるいはさらには世界的に、軍需産業が栄えて、マクロ的にいえば相当な貧困の方々が多いわけでありますから、そういったものをやはりバランスを欠かない状態でもって民生に活用していく、その一環として、日本から出ているハイテク部品の問題について何らかの制約をすることはできないのか、私はこのことが心配なんで伺っておきたいと思います。
  18. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 いろいろな報道がなされたことは私も承知しておりますけれども、その記事の中の具体的な事実についてはよくわかりませんし、また、その記事が引用しているAEAの資料に掲載された米国軍用機は架空のものであると見られる、かかる軍用機は実在しないということになっておるわけでありますし、また日本からいろいろな部品が出ておる、半導体部品はたくさん出ておりますから、そこで半導体交渉が起こったり二〇%はアメリカから買うという約束にせろとか、いろいろな議論が過去ずっとあったことは御承知のとおりでありますから、それはすべて汎用品でありますので、その部品がどのように使われているかということを確認することは困難でありますが、いずれにせよ日本は、武器輸出三原則に当たるものはこれは輸出はもちろんしておらないわけでありますし、またアメリカの方も、今御指摘の京セラの問題については、アメリカとの工場とか共同企業経営をしようという資本を出そうとしたときに、これはアメリカの軍の問題に触れることを外国の企業に合弁させることはできるとかできないとか、いろいろアメリカの方でも日本にそういったものに手を触れさせてはいけないというような角度の議論になったこともこれは事実でありまして、なかなか確認がしづらいところでありますが、いずれにしても武器輸出三原則の精神、基本はきちっと守っていくつもりでございます。
  19. 大木正吾

    大木委員 非常に難しい問題だとは思いますけれども、これはマクロ的には世界的に兵器の生産を減らしていくとか民需にもっとお金を使うとか、そういった面から見ますと一応注意すべき問題、こう考えていますので、ぜひ頭の隅にとめておいていただきまして、何らかの際には国際的な話あるいは国内の通産関係の話、そういった中に持ち込んでもらいたい、こういうふうに希望しておきます。  次に、総理、大変な御苦労願った日ソ関係の問題について若干伺います。  あなた御自身大変な御苦労をされて、テレビで私拝見いたしまして、目の下を黒くしまして随分と苦労したなと思って気の毒に思っておったのですが、自分で採点されてどれぐらいの点数だったとお考えですか。
  20. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 これは自分で採点すべき問題じゃございませんで、皆さんがどのように見てくださるかということだと思いますが、ただ、私としましては、きょうまでの原則と前提をしっかりと踏まえて、日ソ関係が平和条約も結ばれていないという極めて不安定な状況であるということ、同時に、これはゴルバチョフ大統領も触れた話ですが、会談の二日前にテレビで日ソのスタジオを結んで討論会と世論調査があったことを委員もごらんになったと思いますが、私はあの数字も率直にお知らせをして、ソ連からは比較的好意的な数が多いが、日本からは信頼するという数が非常に少ない。信頼していないという数が六八%でしたか、非常にたくさんあった。その原因は何であるかというと、一つは中立不可侵条約を破っての終戦のときの出来事である。一つは六十万人の抑留と六万人の犠牲者のことであり、もう一つは、八月十五日に日本がポツダム宣言を受諾した後で、八月二十九日にスターリンが北方四島占拠命令を出し、不法占拠が行われ、そしてそれが九月の三日にようやく占拠が終わったというこの不法占拠という事実があって、どうしても日本人には心のわだかまりがある。そして古いことを言えば、ロシア時代の文学とか芸術とか音楽とかバレエとかには日本も心を寄せ、ほのぼのとした親愛感を感ずる国民は非常にあるはずだから、その終戦前後のわだかまりを解いて、不法占拠した四島にきちっと日本の主権を認めて、その踏み台に立って平和条約を結べば、日ソ関係は飛躍的に抜本的によくなるんだということを私は本当に精魂込めて訴えましたし、お話も三回で打ちきることなしに、もう少しやろう、もう少しやろうということでやったのですけれども、結果としては、私が当初目指した四島の主権の確認という主張と、それに先立つ五六年の二島の主権の確認という問題と、ソ連側は四島の主権を日本に確認はしないけれども、四島問題が領土問題として残っておるということは、初めて共同声明にそれでは名前を書くことは確実に書く、そして加速的に平和条約を結ばなければならぬということも双方で一致しようというところまできちっといきましたし、それから五六年の共同宣言の問題については、これも私は、国際的に約束し、合意をし、「両方の国会できちっと決めた取り決め事項だから、日本としてはあれの有効性を前提にして、ああいったことは 否決してはいかないはずなんだ、こういうことで強く主張したのでありますが、これまたゴルバチョフさんにはゴルバチョフさんの主張、言い分があって、国内の事情のいかに難しいかとか、あるいはその後いかなる変化があったとか、日米安全保障条約の改定はソ連敵視政策であって事情の変化だというような話まで出てまいりましたので、それは違います、昔から日米安保条約はあったものですというようなことを言いましたが、結果として、率直に言ってすれ違いの議論でありましたが、四島の島名を共同声明にきちっと確認できたということは、きのうまで領土問題は存在しない、未解決の問題は存在しないと言われ続けたものに一つの契機ができた。これは、これを踏み台にして今後精力的に、四島の主権問題については積極的な努力をしていこう、こう考えておる次第であります。  点数は、どうぞ先生の方でつけてください。
  21. 大木正吾

    大木委員 大変な御努力ということは私も評価いたしますし、同時にそれがなるべく早い時期に、これからも継続的な話が進むことを希望いたします。  角度を変えまして、ソ連の改革、ペレストロイカの問題につきまして、総理自身はどうしても成功させたい、そういうお気持ちでございますか。
  22. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 そういう強い気持ちを持っております。
  23. 大木正吾

    大木委員 そこで、関連して伺います。  政経分離問題でございますが、ペレストロイカをどうしても成功させたいというお気持ちとなりますと、経済と政治問題、こちらは領土と言う、向こうではどうしても金が欲しい、経済援助が欲しい、こうおっしゃる。その辺の関係が非常に連動といいますか、難しい判断なんですが、ただ一つ、私ここで心配なことは、帝政ロシアから入りましてレーニンの革命、ロシア革命がございまして、いえばハンガリーなんかと違って市場経済の経験のない国が七十数年続いているわけですね。そうしますと、経済援助をいたしましても、どぶに金を捨てるという言い方はよくないのでありますけれども、とにかく技術援助にしましても、こういった市場メカニズムの経験をした方々がいらっしゃらない。言葉で言いますけれども、中身に入って議論したら全く話が合わないということでありますね。そうしますと、日本の経済企画庁のOBの方でもいいんですけれども、経済顧問としてソ連に行くぐらいの形じゃないと、これは援助してもなかなかうまく成功しない面があるでしょうね。それから同時に、技術援助にいたしましても、いえば人をつけて、技術者をつけていかなければなかなか生きてこないというものでもあろうと思うのです。  ですから、そういったことに関連いたしまして、政府の内部では外務省、通産省と相当深い検討をしていると思うのですけれども、経済援助の仕方につきましてどのような御見解をお持ちか、まずそれを伺っておきたいと思います。
  24. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的には、ソ連が平和を確保するということと国民生活を安定させるということと二つの目標の中で、政治的な意思決定、新思考外交で平和確保の方向は先が見えている、努力を続けている、こうなっておりますが、経済のペレストロイカ、立て直しの方は、御指摘のとおりうまくいっていないのが率直なところだと思います。  しかし、話してかみ合わないというのじゃなくて、私の内閣になりましてから、ソ連から五回もいろいろな調査団が来ておられる。誠心誠意受け入れて対応しておりますが、経済調査団は同じ団長で二度も来られて、しかも日本の戦後の復興や経済社会のあり方というものに非常に興味を持って、特に中小企業とか下請企業とか、あるいは一人一人の働く人々に能力を与える職業教育、労働省の職業訓練学校、そういったようなものに対して非常に興味を持って詳しく調査をする、また中小企業庁へ行っていろいろなことを聞く、大蔵省に行って予算のことやいろいろな仕組みを聞く、これはやはりソ連に対してペレストロイカをぜひなし遂げたいという願いと、それが、日本型のやり方というのが非常に何か波長が合うのではないかというような考えがあるというところで、向こうからの要請にこたえて、学者もあるいはお役所も必要に応じてソ連日本からも四回派遣をいたしました。  ゴルバチョフ大統領自身にも私は率直に、去年非常に豊作であったソ連がことし市民の食べる食糧もないということがテレビに出てくる、けれども率直に、失礼なことを言いますが、皆さん非常に体格がおよろしくて、餓死されるという報道もない、物はある、あるけれども動いてないから、極端に言うと腐っておるものがあったというような話すらテレビの報道で出てくることになると、それはもう少し市場経済のメカニズムというものを本気になって改革してやっていくことが大切でないでしょうか、そういった意味で必要なことは、技術協力や知的協力はどんどんしますから何なりと気づいたことを言ってくださいというようなことも率直に提案いたしました。向こうからもまたいろいろな面でそういう交流があるときは協力を申し上げていくつもりでおります。  ただ、無原則な政経分離はこれはしないというのがきょうまでの長い日本立場でございますし、したがいまして、積極的な大規模な金融支援に入るという前には、やはり政治的な信頼関係と安定関係をきちっとつくって、まず平和条約を結んでこの不安定な状態にあるところを一歩乗り越えていきませんとそういったところに入っていくことはできませんから、人道的な規模の援助とかあるいは医療救急の援助とか食糧の援助とかやけどの坊やの治療とか、いろいろ幅広く人物交流、知的交流は広げていきます、拡大均衡の方針で行ってまいります、こういったこともはっきり申し上げて、その点については両首脳の間できちっと合意をしておるところでございます。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  25. 大木正吾

    大木委員 話を少しまた前後いたしますが、今のソ連の政情なり経済状況等を拝見いたしますと、ゴルバチョフ大統領が失脚するとかとなりますと、やはり軍部の台頭とか、いえばペレストロイカの逆行ということにもつながりかねませんし、同時に、これを成功させるにはどうしても国民の生活を向上させなくてはいけない、こういった両面を持っておりまして、いえば、領土問題を前進させるには今のペレストロイカが成功してもらわないと困る、同時に、それを成功させるためには経済なり、もう少し生活の安定が必要だ、こういった問題だと思っております。ですから、その辺の問題につきまして、結局どうすれば改革が本当に成功し、進行するかどうかという問題と、領土の返還というものが進むかどうかの問題、極めてこれは密接な関係がございますね。ですから、総理のおっしゃったことはよくわかるのでございますけれども、その辺の問題につきまして、拡大均衡、結構でありますけれどもソ連の改革が進行するということ、どうしてもこれはしなければいけない、それが進行して初めての領土の返還ができる、こういった関連づけの上に立ちまして、公的な立場における援助、民間ももちろん大事でございますが、その辺の関連については一体どういうふうに受けとめておられますか。これは私自身も自問自答しながら伺っているのですが、総理考え方を伺いたいと思います。
  26. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今の御質問、お聞きしながら私は昨年のヒューストン・サミットの議論を思い出すのですが、あのときはまだ御承知のとおり湾岸に危機が起こる前のことでございました。そしてソ連の状況も今日ほど危機的な様相が強くなかった五月でありますけれども、私はヒューストン・サミットのときの議論の中で、積極的にソ連に大型経済協力をすべきだという国、特にそれは御承知のとおり東ドイツを抱えておったドイツの主張が非常にリードしておったのですが、同じヨーロッパの国でも、例えばソ連という国を人間に例え、今の統制経済の行き詰まりを病気に例えるならば、どんな薬を持っていって飲ませたらこの 病気に効くかということがわかっていないではないか、やみくもに薬だ薬だといっていろいろな注射を打ったり薬を持っていっても、効く薬か効かない薬かがわからなければかえって害になることもあるし、したがってIMFとか世銀とか、あるいは欧州開発銀行というのもあのとききちっとスタートさせようということが決まり、日本も応分の参加をしておりますけれども、そういった国際機関全部が集まって、IMFに、ソ連についてはどのような支援、どのような協力が一番ペレストロイカ成功のために役立つかということを調査を命じたわけですが、その調査の結果が過日発表されたことも御承知のとおりと思います。  したがいまして、それにはまさに今委員おっしゃったように、市場経済に移行していくためにどうしたらいいかという、技術協力と制度改革のための協力を積極的に行うべきである、そしてそれができた暁において本格的なものに入っていく、それまでは緊急援助とか人道的な問題の協力はそれはしていこう、こういう考えでありますから、今度のサミットでも恐らくそのことは大きなテーマになってくると思っております。  私は、日本一国であのソ連を相手にいろいろやるというのはとてもこれは大き過ぎる話でございますから、西側の一員としてサミットの全体の協力の中でなすべきことはやる。同時に、ユーラシア大陸の東にあって東西対立の残滓をまだ抱えておる日本としては、日本ソ連の二国間関係でもおっしゃるような協力はしなければなりませんので、この間共同声明とともに発出しました十五の文書の中には、ペレストロイカ支援のための協力協定、これも文書をつくって両方で署名しておりますから、そういった分野に関しては知的、技術的、人物交流その他において日本としてもできる限りの二国間協力もする、そして同時に西側全体の協力にも積極的に参加をしていく、そういう基本的な姿勢でまさに幅を広げながら進めていこう、平和条約と領土問題は、もうこれは凍結してというわけにはいきませんので、拡大均衡で一緒にやっていくということでございます。
  27. 大木正吾

    大木委員 今の問題に若干関連いたしますが、世界的に金不足時代で、それで日本の場合、やはりアジアに対する途上国の援助、これはどうしても欠かせない問題でありますと同時に、新しくソ連が入り、同時に東ヨーロッパ、そして湾岸の復興問題、大変な援助対象国といいましょうか、そういった地域が広がっていますね。もちろん日本単独でできるわけじゃないでしょうけれども、IMFの中に新しい機構をつくるというお話が新聞に報道されたり、あるいは国内の有力な総理経験者等がSDRの活用の問題とかやっておられますが、私自身日本の、今の世界の経済全体はそうでありますが、例えばインフレ対策を大事にするか、あるいは経済の拡大を、景気を大事にするかという問題、なかなか難しい課題の中にあるし、同時に、百六十八兆のとにかく赤字財政、そういったものを抱えながら、日本単独のものもありましょうが、世界的な規模でアメリカ日本、EC、こういった関係国々が協力し合って、今申し上げたような地域に対する援助、これをどういうふうにこれから考えていったらいいのか、自分でも自問自答している問題なんですが、ぜひこれは総理のお考え方を、大蔵大臣はしょっちゅう会っていますから聞けますので、きょうは総理考え方をぜひ伺っておきたい、こう考えていますので、お答えいただきたいと思います。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 大蔵大臣が日ごろここで何を詳しくやりとりしていらっしゃるのか全く予備知識なしで申し上げますけれども、実は日本の場合は、世界が平和で安定していくためにはどうしてもそれぞれの国が経済的な力を持たなければならぬ、こう考えておりますし、特に私たちが生活しておるこのアジア・太平洋の地域というのは、経済における活力は、全体として見ると全世界の平均よりも成長率は高くて、最近いささか陰りが見え始めたという報道等もありますが、それでも最高でございます。けれども、国ごとを見るとみんなでこぼこがそれぞれあるわけであります。だから、そういった活力の比較的弱いところへはODAで積極的に協力をしていく。  それから今度も、大蔵大臣ともこの間話し合って、世界の流れには日本も共同作業をしていかなければなりませんから、例えばブラジルとかあるいはエジプトとかいろいろな国の累積債務問題、あるいはその他十八も最貧国がある、これらの国々に対してどうするんだということも、これも日本だけではどうするわけにもまいりませんから、こういったことは国際社会を通じてひとつ日本もできるだけ協力と支援をしていこうということでありまして、このごろ東欧は東欧で、あるいは中米は中米でそれぞれその地域国際社会が寄り集まって協力をしていこうという基金なり仕組みなりが用意されて、みんなの協調、共同行為で対応していこうという考えがあります。  恐らく中東の復興に関しても、これは東欧とか中米と違いまして中東の被災国そのものは大変なお金持ちでありますから、海外資産でも物すごくあるということで、だからそこの復興にはどういったアプローチの仕方があるか、これはおのずから変わってくると思いますけれども、やはり必要な知恵とか組織とかお金というもの、そういったものはみんながやはり共同の中で、国際社会のルールの中で分担を守っていく、なお余力があるときには、日本は対アジアについてはいろいろな関連がありますから、できるだけのことを二国間でもしていこう、こういう基本的な考え方に立っております。
  29. 大木正吾

    大木委員 総理が御発表かどうかわかりませんが、ODAの問題につきましての四項目ですか、この前新聞でちょっと拝見いたしましたけれども、この中でも例えば軍事大国などは除外するという項がございますが、ぜひこの辺の問題につきましても全体的に、今申し上げた東欧なりソ連なり、とにかく世界の被援助国すべてにこういった考え方が適用できることが望ましい、こう考えていますし、同時に、これは経済のかじ取りが大変難しい時期に入っているわけでございますが、こういうような批判といいますか意見が耳に入ってくるわけですが、日本は非常に人がいい、アメリカからちょっと言われたらすぐに金を出していく、何か人的な湾岸への協力をしなかったことに対する披瀝か何かわかりませんが、そういった声が町の中にも相当ございますね。  ですから、今おっしゃられたように二国間の問題はあっても結構ですが、私は、こういった地球的な規模における被援助国の問題につきましては、やはり日本アメリカ、EC、先進国全部が相談し合って一つの機構をつくって、基準をつくってやっていってほしい、こういう気持ちを持っているわけですが、そういう考え方、これはODAの話がありましたけれども、関連していかがですか。     〔委員長退席、大石(正)委員長代理着席〕
  30. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 世界的規模での安定を図るために、いわゆる先進国と言われるものが協力して、知恵も出すがお金も出して協力をしていく。それで、インフレをとるか経済成長をとるかという議論もよくあるのですけれども、そもそも今から十七、八年前にサミットが始まりましたときは、インフレのない経済成長を世界で確保していかないと、成長がとまってしまったならば、その国の活力のみならず世界に対する協力も支援も不可能になる、したがって、インフレは抑えながら経済成長は否定しないで皆でそれを図っていこう、そのためにアメリカとドイツと日本は機関車になれというような、そんな世界の要求があったことも今思い出すわけであります。以来きょうまで、いろいろ政治面の話も絡んではきましたが、やはりサミットは経済サミットと言われてスタートしたように、世界の経済、世界に対する協力に対して大きな責任を持っておりますが、これまた七カ国だけでできないような問題にもなってきたり、七カ国以外にも経済的な力や支援をしようという気持ちがある国もできておりますので、それがOECDという場に広がったりいろいろしてお るわけであります。  私は、そういった中に立って、大勢の多国間の協力と話し合いの中から、全体として見ると世界全体に一定の基準ができて、そしてそういったものを救済したり共存共栄していくということ、やはり根底は経済の自信あるいは不安、そういったことがその国の安定度、不安定度というものを高めていくものだと思いますので、OECDの場とサミットの場というようなところを通じて、日本は積極的にそういった国際的な規模での世界の経済開発に対する協力には参加をしていかなければならない、こう考えております。
  31. 大木正吾

    大木委員 希望しておきますが、町にある声といたしましては、余りお人よし日本という形、個人個人の生活は決して豊かじゃないわけですから、そういった点の御配慮をぜひお願いしておきたいと思います。月末等に大蔵大臣が行かれますG7の問題につきましても、これはいずれまた伺う機会がございますが、そういったODAにおける抜本的な四原則みたいなことはつくりましたけれども、ぜひこういった考え方を基礎にいたしまして被援助国に対する対策は練ってもらいたい、こういったことを私は希望しておきます。  最後に、政治改革について、けさの新聞あるいはテレビの報道にも出ていましたけれども、大分総理は御決意かたく、進行させたい、こういうお考えのようですが、それは間違いありませんか。    〔大石(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 私が自由民主党で総裁に指名されましたときに、党の先輩方から受け継いだものが党の政治改革の大綱でありました。同時にまた、自由民主党にとっては極めて厳しい参議院選挙の結果を受けてのスタートのときに、やはりこれは、国民皆さんのために政治はあるのでありますから、政治改革はやるべきであるということを私自身も強く決意をして、そのことを党の皆さんにお誓いをして前進をしてまいりました。  政府は選挙制度審議会から答申等も既にいただきました。自由民主党に対しては、昨年の暮れに党議で決定もしてもらった政治改革の基本要綱があります。それは、党首会談をお願いして各党党首の皆さんにもその考え方を率直にお伝えしました。政治倫理の確立とか政治とお金の関係、これをもう少しわかりやすくしていくためにはどうしなければならぬかという議論が行われ、それにすべて盛り込まれてきましたが、簡単に結論を申し上げますと、今の選挙の仕組み自体の中に問題があるのではないか。したがって、もう少し選挙のときに政党本位、政策本位の選挙はできないものか。お金も、政治家個人が、候補者個人が選挙にかかるお金とか日ごろの政策宣伝活動のお金などを個人で集め、個人で責任を持つというよりも、公の仕事ならば、そういう仕組みをつくったときには、諸外国でそうであるように、日本も公費による政党活動の支援というものを考えてはどうか。そのためには、根本的には制度、仕組みの問題になってくる。したがって、今のような中選挙区の制度でいきますと、同じ政党の同じ政策のもとで複数の人が競争をする選挙というものは、これはやってみないとわからないと言うと大変言い過ぎでありますけれども、同じ選挙区にいる複数の同じ党の議員の争いというものは、やはり政策以外のところにも特色と魅力とを発揮しなきゃならぬというような大変厳しい状況が生まれることも、これは御理解を賜りたい、こう思うわけでありまして、そういったことから、できるだけ少しでも政策本位、政党本位のものに移行することはできないだろうか,こういったことをみんなで議論もいたしましたし、選挙制度審議会ではそういったことを踏まえて、先進工業国の中でこういう中選挙区制というあり方をやっておるのも日本だけでありますから、もう少しわかりやすい普通の国になって、どうも日本の民主主義とか日本の自由というのは我々とは違うのじゃないかというような批判を受けないようにするためにも、どうしたら政策本位の選挙制度になるんだろうか、こういうことを考えて選挙区制度というものの改革も織り込んでありますし、また一票の格差の問題で最高裁判所からいろいろな違憲判決をも受けました。けれども審議会は、もう一歩前進して、衆議院の選挙では選挙区ごとに一対二以内にせよという答申も盛り込まれております。  この答申は、学者の皆さんや有識者の皆さんやあるいは報道関係代表皆さんや、あらゆる立場国民皆さんによって構成された審議会の結論でありますから、政府はそれを最大限に尊重してこれに対する努力をしなければならぬと受けとめております。したがって、党首会談で党首の皆さんにはこれらの考え方は率直にお伝えしてございますが、そのときにも、これは政党のよって立つ基盤、議員の基本に関する問題ですから、いろいろなレベル各党各会派の御議論もいただかなければいかぬということで、そのことについてはまた改めていろいろな場での御議論期待いたしておりますし、また衆議院の公職選挙特別委員会では何回かにわたって各党の御意見交換も承っておるということでございます。  今、自民党でいろいろな努力も続けて大詰めに近づいておるようでありますし、また政府としても積極的に不退転の決意でこの政治改革の問題には取り組んでいかなければならない、こう考えておりますので、どうぞ御理解といろいろな御協力をお願いしたいと思います。
  33. 大木正吾

    大木委員 時間が参りましたから私の方で一言だけ申し上げておきますが、最近の新聞ですと、政治改革の熱が冷めてきている、こういう記事も多うございまして、同時に、我が党の中にもいろいろな意見がありますが、与党の中にもいろいろな意見があるようでございまして、なかなか難しい問題であろうということだけはこれははっきり申し上げておきまして、時間が参りましたので質問を終わります。ありがとうございました。
  34. 平沼赳夫

    平沼委員長 宮地正介君。
  35. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、本来、大蔵委員会でございますから、ちょうど地価税法案の審議の最後に総理に御質問ということでございましたが、前回は日ソ首脳会談ということできょうに延びまして、きょうの時点におきましては、当面する重要課題である掃海艇の問題について中心にお伺いをしてまいりたいと思います。  まず、昨日安全保障会議、そして閣議で、自衛隊のペルシャ湾への掃海艇の派遣、これを政府は決定をしたわけでございますが、政府声明の中でも総理は法的根拠については自衛隊法九十九条、これを法的根拠にしておりますが、私どもは、これは大変に無理があるのではないか、また国民合意もまだとられていない、拙速過ぎるのではないか、こういう感じがいたします。特に、今まで自衛隊の海外派遣の問題についてはいろいろ国会でも議論をされ、また質問主意書などにおいても政府からの答弁書も出ているのが事実でございまして、例えばそういう中におきまして、昭和五十五年の十月七日における自衛隊の海外派兵・日米安保条約等の問題に関する質問主意書、この中におきまして、当時鈴木善幸内閣総理大臣が五十五年の十月二十八日にこれに対する答弁書を出しているわけでございます。その中で、特にこの自衛隊の海外派兵の問題とそして海外派遣、この問題について明確にしているわけでございます。そこのところを少し私の方から確認をし、今回の派遣との違いを明確に総理から国民に御説明をいただきたいと思います。  その政府答弁書の中で、「従来、「いわゆる海外派兵とは、一般的にいえば、武力行使の目的をもつて武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することである」と定義づけて説明されているが、このような海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。したがって、このような海外派兵について将来の想定はない。これに対し、いわゆる海外派遣については、従来これを定義づけたことはないが、武力行使の目的をもたないで部隊を他国へ派遣することは、憲法上許されないわけではないと考えている。しかしながら、」ここが大事なんです。「しかしながら、法律上、自衛隊の任務、権限として規定されていないものに ついては、その部隊を他国へ派遣することはできないと考えている。このような自衛隊の他国への派遣については、将来どうするかという具体的な構想はもっていない。」これが鈴木善幸総理答弁書でございます。  この点を海部政権としてはどういうふうに読まれたのか。鈴木政権のときの答弁書と今回の海部総理のとられた措置、これはまさに自民党政府内閣としての政策の変更なのかどうか。政策の変更でないとしたら、この鈴木善幸総理答弁書をどういうふうに解釈して今回の派遣に踏み切ったのか。この点について御説明いただきたいと思います。     〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
  36. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御質問の自衛隊に関する政府答弁書は過去何回も何回も出ておるわけでありますけれども、ただいま御指摘の鈴木内閣当時の昭和五十五年の答弁書で、いわゆる海外派兵と海外派遣とこれは明瞭に区別されておりますし、それから今回のペルシャ湾に対する派遣は、私は、国連決議六百八十七によって停戦が正式に国連決議された、したがいまして、まず武力の威嚇とか武力の行使を伴っての武装部隊の海外派兵ではもちろんありませんし、また海外派遣という問題については、これは第九十九条というところに自衛隊の権限として規定されておるのが機雷の除去、処理という行為であります。それで、第三条に規定されておること、そして第九十九条に規定されておること、これは本来の任務と、それから本来の任務とやや異なるけれども権限は法律で与えておこうというものとありますから、だから九十九条に海上自衛隊にその権限が付与されておる、私はこう考えますから、これは昭和五十五年当時想定された現状でもございませんし、また、我が国が、自衛隊法によって、九十九条に認められた権限によって、国や国民生活に必要不可欠な原油の通商航海のルート、これは我が国のためのみならず世界の国も使う主要な道路でありますし、現に清掃が始められておるし、また、あの地域国々の戦後復興にはすべて国際主義で協調、協力をするという積極的な姿勢を表明し、御理解を願っておるところと思いますけれども、憲法、自衛隊法に基づいた機雷の除去である、このように考えております。
  37. 宮地正介

    ○宮地委員 総理は私の質問にまだ直接答えていない。  この鈴木善幸総理の五十五年のときの答弁書、「しかしながら、法律上、自衛隊の任務、権限として規定されていないものについては、その部隊を他国へ派遣することはできないと考えている。」このとき鈴木善幸総理は、こういう答弁書を出したということは、自衛隊法の第九十九条というもの、少なくとも解釈なり考え方も第三条を受けて、これは第二次世界大戦のときに敷設された機雷、日本国の近海の掃海を前提としてこの第九十九条ができている、こういう理解のもとにこの答弁書がつくられているからこういう形になったんじゃないんですか。ということは、海部総理の九十九条の今回の法的根拠というものは、まさに鈴木政権のときと解釈の変更があった、こういうふうに理解していいんですか。
  38. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 鈴木政権のときは、「将来どうするかという具体的な構想はもっていない。」お読みになった文章の最後のところにこうなっております。  それから、その後のいろいろな途中の経過は省きますが、最も直近のものは、昭和六十二年九月二十九日の黒柳明参議院議員に対する政府答弁書の中でいろいろなことが、当時中曽根内閣見解として書いてございます。これに基づくと、やはりペルシャ湾における安全航行の最大の受益国の一つであって、日本人、船舶関係の安全確保にできるだけの努力をするということ、同時に、政府は、九十九条による機雷の除去に関して、「我が国船舶の航行の安全にとって障害となっている場合に、その航行の安全を確保するために、これを除去する行為は武力の行使に当たるものではなく、自衛隊法上可能である旨を答弁したものである。」そのようになっております。また、公海にも機雷除去の権限は及び得るものであります。その範囲がどうかということは、そのときどきの状況を勘案して判断されるべきである。このときも最後の結論は、将来のことを拘束しないで、そのときどきの状況を勘案して判断されるものである、昭和六十二年の答弁書にもこうなっております。  ただ、このときはイラン・イラク戦争のさなかでありましたから、掃海艇を派遣するかどうかということを閣議で議論しましたときにも、紛争地域へ入っていくことは紛争に巻き込まれる危険があるからいけない、またその機雷が、敷設した人の意思の残っている機雷であるならば、意思の残っている機雷を取り除く行為というものは武力行使に当たるという可能性もあるという議論等があって、政策判断として派遣をしなかった。当時の記録なんかを読んでみますとそういうことに相なっております。  今回は、国連の停戦が発効しておりますから、そして機雷を千二百個ばかりここのところへ敷設したんだということを当のイラク自身国際社会に言っておるわけでありますし、それがまた重要な通商航海路の妨げになっておりますし、現に二隻ほど既に触雷をした船がある、最近も一隻は、これは漁船までが触雷をしたという報道があったところでありますし、今も一定区域は危険水域だから入っていけないということになっております。もちろん油田の延焼が終わらなければ輸出は再開されないというクウェートの状況もあるかもしれませんけれども、国際的にそこの機雷除去の、全く平和的な、言うなれば、原油を取り除く作業は今一生懸命日本も参加してやっておりますが、それと全く同じ安全確保のことでありますので、ここに言う、九十九条で与えられておる権限でありますから、日本の船舶の航行の安全を確保すること、それはひいては他の国々との共同作業で、他の国々の通商航海路に対しても安全を、協力して国際社会に尽くしたことにもなりますし、また、あの地域国々の復興に協力したことにもなるわけですから、やはり我が国の船舶の航行安全を確保するために行くべきである、こういう決断をしたわけでございます。     〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに今の黒柳参議院議員に対する答弁書においては、今総理のおっしゃったとおりでありますが、当時はやはり紛争中であった。しかしこれも、今総理が読まれましたが、最後の(2)では、「なお、一般に機雷の除去が武力の行使に当たるか否かは、それがいかなる具体的な状況の下で、またいかなる態様で行われるか等により判断されるものであり、一概に言うことは困難である。」こういうふうにペンディングにしておるわけです。  いずれにいたしましても、この自衛隊法の第三条の趣旨と第九十九条、第九十九条には地理的範囲が明らかにされていない、だから一万三千キロ先まで掃海ができるんだ、これは余りにも拙速過ぎる拡大解釈ではないか。この問題は、特に自衛隊の派遣問題、派兵問題というのは、日本の安全保障政策上も大変重要な問題でありますし、これが一内閣の決定でもって対応されるということ自体、これも非常に立法府を形骸化しているのではないか。本来この解釈についてもいろいろ異論があるわけですから、筋を通すのであれば、自衛隊法の三条に基づいて果たしてこの九十九条が、そうした一万三千キロ先まで海外派遣されるのかどうか、大いにこれは国会議論をし、法的な改正等が必要であるのかないのか、そこまで詰めてから対応すべきではなかったのか。  ましてや、昨年のあの国際平和協力法案の審議の中においてなぜあれが廃案になったか。あれはやはり自衛隊の派遣というところ、派兵というところに国民が非常に厳しい指摘をされたわけで、あの三党合意もどうしてああいう形でできてきたか。自衛隊と別個の組織をつくるという形でできてきた。こういうような流れを見てまいりますと、今回あのアンマンあるいはカイロに飛ばすための特例政令のあり方にしても非常に問題があっ た。現実的には実行されませんでしたが、どうもその延長線上に今回のこの掃海艇の派遣というものもある。その辺の海部政権の基本的な意識といいますか姿勢、これが非常に問題ではないかと私は思うわけですが、総理は、こういう一つの流れ、昨年来の国会議論の流れ、こういうものをどういうふうに受けとめて今回の派遣に踏み切ったのか、この点が非常に私どもとしては理解ができない。この点について御説明いただきたいと思います。
  40. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 言葉じりをとってお言葉を返すようで大変申しわけありませんが、議論を正確にするために言わせていただきますと、昨年の国連平和協力法案をお願いしましたときも、海外派兵をしようとは一言も書いておりませんし、何も考えておりません。あの法案の第二条には、武力による威嚇または武力行使の目的をもって海外へ出すものではないということは、これはきちっと書いてありますし、国連決議の実効性を確保するための行動に対して日本が協力をするということで、何ができるかということも第三条以下にきちっと書きました。それは今三党合意でお話し合いを願っておる制度、仕組みの中、ただ三党合意は、自衛隊と別個のということ。そうしますと、憲法でも違反とはならない、自衛隊法にも条文を挙げて権能が定められておる。それ以外の人には能力は全くない。当たり前のことです。掃海には大変な技術や機械や訓練を要します。にもかかわらず、我が国の船舶にとっては非常に重要な航海路である。しかもそれは国にとっても、私にとっても、国民生活みんなにとって、原油を輸入しなくてもいいんだとか、あそこから買ってくる七割の石油に対していろいろなことがあってもいいというようなことは断じてとるべき方針でもありませんから、安全の確保をしなければならない。そうしますと、自衛隊だけができる能力を持っておる掃海艇でありますから、これは共同の通路に障害物があるときに、それを共同で取り除こうということでありますから、日本だけはちょっとその角まではいいけれども角の向こうにあるのはだめだよというのは、国際協調主義をうたい、国際社会で名誉ある地位を占めたい、自分の国のことだけ考えてはいけないということを憲法の前文で誓っている我が国の立場からいっても、法を超えることはできませんが、法律に権限が与えられておることはやはり積極的に踏み出していってやるというのが国際社会における責任ある国家の態度である、私はこう判断しましたので決断をさせていただいたところでございます。どうぞ御理解いただきたいと思います。
  41. 宮地正介

    ○宮地委員 総理はなかなか答弁のマジックというか、そういう点で私の本音のところの議論をすりかえてそういう対応をされているが、そうじゃないのですよ。やはり原点に返ってもらいたいと思うのです。自衛隊の法律がつくられたときに参議院でも海外出動の禁止の決議をしているわけです。その決議の中で賛成討論をされた皆さん方の代表も、こういう討論をされているのです。海外出動のところについて、  自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であっても、不便であっても、憲法第九条の存する限り、この制限は破ってはならないのであります。外国においては、過去の日本の影像が深く惨み込んでいるために、今日の日本の戦闘力を過大評価して、これを恐るる向きもあり、又反対に、これを利用せんとする向きも絶無であるとは申せないと思うのであります。さような場合に、条約並びに憲法の明文が拡張解釈されることは、誠に危険なことであります。故にその危険を一掃する上からいつても、海外に出動せずということを、国民の総意として表明しておくことは、日本国民を守り、日本の民主主義を守るゆえんであると思うのであります。 こういう賛成討論を大先輩の皆さんが当時やっておるのです。これが原点です。  もし総理がそういうような国際貢献の一環として海外派遣を、どうしても掃海艇について第九十九条を根拠にしてやるというなら、本来自衛隊法をきちっと改正するなりそういう形の一つの方向というものを明確に国会に提案をされて、国会議論の中で、今までのこうした方向というものを変更いたしますと堂々とおやりになるのが内閣の姿勢じゃないのですか。そういうことをやらないで、あの特例政令と同じように何かこそくなやり方でやるのは、海部総理の基本的な姿勢に私は大変に残念でならないというように思うのですが、今申し上げたような原点の確認についてはどういうふうに理解されますか、総理
  42. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 昭和二十九年当時、今の自衛隊法ができたときのいろいろのお話の中で、それは明らかに歴史の反省に立って海外派兵はしないという誓いを先輩が述べられたものである、私はそう考えております。そして、そのことについてはいろいろ御議論もありましたけれども、法律がきちっとできて、そして自衛隊法の第三条には、おっしゃるように、日本が攻撃をされた場合の本来の任務が書かれております。九十九条にも海上自衛隊の権限として掃海の仕事が与えられておって、これは当然その前後に書いてありますように、我が国船舶の航行の安全を確保するために、そして先ほど括弧の中でお示しになった機雷の性質についても、なるほどその機雷がいかなる具体的な状況であるかということも中曽根内閣当時議論にはなりましたが、今回は敷設した国が、ここへ敷設をしましたと言って千二百個の敷設場所まで国連に提起しておるわけでありますから、これは海上に遺棄された危険物である、こう認定するのがむしろ国際常識であるわけでありますから、それを除去する行為は、九十九条を素直に読むと、そこに書いてある機雷の除去ということでございます。  同時にまた、私自身各党皆さん、党首会談等も通じて、これは今後どうするんだ、また次にずるずるずるずるとほかのものが出ていったらどうするという心配があるぞとおっしゃいますが、九十九条には機雷のあれしか書いていないわけでありますし、また同時に、声明で、歴史の深い反省に立って誓った平和国家の理念を将来にわたり堅持する決意を変えるものではありませんということもきちっと申し上げておるところであり、あくまで法の権限の根拠規定があるということでありますから、私は、昭和二十九年の原点に立てとおっしゃいます、立ちます。それは海外派兵はしないけれども、今日のような問題については派遣をするんです。派兵ではありません。派兵と派遣の議論は、先生が最初に出された昭和五十五年の鈴木答弁書の中でも明らかになっておりますし、黒柳参議院議員に出した答弁書の中でも明らかになっておることで、派兵と派遣とは国会議論の中では明確に区別されておったということも私はもう一度確認をしていただきたいし、派兵はしないということは繰り返し誓っておるし、今度の行為も断じて派兵に当たるものではないという確信を私は持っておることを改めて申し上げさせていただきますし、また、今回のように世界の人類に限りない影響を及ぼすような湾に対する原油の流出であるとか機雷の千二百個の敷設であるとか、そのようなことをする国があらわれたときは、やはりみんなで協力してその危険の除去、安全確保に努めていくのが国際社会の国家としての責任である、私はそう思います。
  43. 宮地正介

    ○宮地委員 国際貢献と権益の確保、この辺が国際的にこれから非常に誤解を招くと思うのですね。  時間もありませんので、今なし崩しに云々という話がありましたが、当面の問題としてクルド族の救援問題、総理、例えばイラクから自衛隊に対する要請が来られたらこれは断りますか。
  44. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 具体的な要請は来ておりませんし、また緒方高等弁務官が現地を視察して帰ってこられて、日本の現在の制度、仕組み、能力の中でできる限りのことはしようというので、資 金協力はもちろんのこと、医療班の派遣とか既にいろいろできる限りの手は、高等弁務官と相談しながら、なし得る限りのことはしておるところであります。
  45. 宮地正介

    ○宮地委員 今回の政府声明を見ますと、要約すれば、平和時である、それからもう一つ日本の船舶の航行の安全、これがいわゆる歯どめ論的なこととしてまかり通っているわけですが、この二つの要件が整えば今後自衛隊の海外派遣というのは、もちろんこれは自衛隊法上から見ていかなければなりませんが、容認をする考えですか。
  46. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 自衛隊法に権限が付与されておるということ、その大前提として憲法に禁止する海外派兵であってはいけないということ、それもきのうの政府声明に明確に書いてありますから、どうぞごらんをいただきたいと思います。
  47. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、やはり国際貢献のあり方についても、自衛隊のペルシャ湾への掃海艇の派遣が、必ずしもこれだけが国際貢献ではない。まだやらなければならないことはたくさんあると思う。やはりクルド人の避難民の救援もそうでございますが、油井の鎮圧だとか、あるいはペルシャ湾の汚染の問題の解決努力するとか、淡水化の問題とか、いろいろ努力はしているようですが、まだまだ日本として国際貢献をやるべき分野というのは平和的にもっともっと私はできると思うのです。もっとそういうところに力をどんどん入れるべきであって、なぜこの掃海艇にこだわったのか。それも無理をしたような形で、国民議論もまだまだ未成熟だと私は思うのですよ。そういう形の中で何で突っ走ったのか。ここのところがどうしても我々には解せないわけでございまして、きょうはまた午後から本会議集中的に質疑もあるようですから、私は時間が参りましたのでこの点については後に譲るといたしまして、とにもかくにも私どもは今回の掃海艇の派遣には反対でございます。どうかそういう点をぜひ強く申し上げておきまして、質問の時間が参りましたので終わります。
  48. 平沼赳夫

  49. 正森成二

    ○正森委員 私は、消費税の問題についてまず伺いたいと思います。  消費税見直しの緊急措置については今まさに行われんとしているところでありますが、まず大蔵省に伺いたいと思います。  税制協議会で加藤座長案というのが出ておりますが、そこでは簡易課税制度など中小企業に対する減税措置の見直しというものが言われておりますが、その結果、平年度で幾ら増収になるのですか。教育、社会保障などの七項目の非課税範囲の増大で幾ら減収になるかとの対比でお答えください。
  50. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 お答え申し上げます。  昨年末の座長案につきまして、一定の前提を置きまして試算をいたしますと、平年度で、簡易課税制度、限界控除制度の縮減等による増収額が二千四百億円程度、非課税範囲の拡大による減収額が千六百億円程度、差し引き八百億円程度の増収と見込まれます。
  51. 正森成二

    ○正森委員 非課税の拡大で千六百億円くらいの減収になるということですが、初めに案を自民党がお出しになりましたときに私どもがいただいた資料では、その結果の減収というのは千四百八十億円、平年度となっていたのですが、それがふえたわけですか。  それからもう一つ、いわゆる世間では益税と言われておりますが、中小企業に対する配慮に伴いまして減収額はもともとは幾らだったのですか。
  52. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 いわゆる座長案と言われておりますものを、実際の課税実績等を基礎にいたしまして、一定の前提を置きまして改正部分だけの計算を行いましたのが、先ほど申し上げた数字でございます。  それから、益税と言われるものでございますが、これは消費税、新しい税でございましたものですから、御承知のとおり非常に、課税ベースを計算いたしますのに付加価値がつくからいろいろ差し引き計算をいたしました。その際必要なこととして、中小企業者に対する特例による課税ベースの落ちるのが十六兆円、したがってそれに三%を掛けますと四千八百億円ということを申し上げたことがございます。ところが、平成三年度は、今までの課税実績が出てまいりましたので、実績に基づいて推計いたしておりますので、このような計算をいたしておりません。したがって、現在その数字がどうなっているかということを申し上げかねますことをお許しいただきたいと存じます。
  53. 正森成二

    ○正森委員 事務当局にもう一点だけ伺いたいと思います。  政府は、平成二年度に税制改正の案を出しました。結局は、衆議院は通りましたが参議院は通らないということになったのですが、そこでは飲食料品の小売段階非課税及び特別低税率の創設という項目がございました。それで、我々がいただいた資料によりますと、大蔵省は、平年度九千八百七十億円の減収になるという資料を出しております。それは間違いありませんか。
  54. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 昨年の見直し案によります減収額といたしまして、ただいま委員指摘のとおり、飲食料品の小売段階非課税及び特別低税率の創設ということで九千八百七十億円の減収と見込んでおりました。
  55. 正森成二

    ○正森委員 そこで、総理に伺いたいと思います。  今度税制協で、加藤座長が十二月にお出しになりました座長案、これで緊急是正を行うということですが、それには食料品の非課税がすっぽりと抜けております。したがって、減税額が、今お話がありましたように九千八百七十億円減少するだけでなく、逆に今の主税局長答弁によりますと、中小企業に対する軽減措置の是正が行われますから差し引き八百億円増収になる。あえて増税とは言いませんが、増収になるということであります。  ところが、ここに海部総理の選挙公約を持ってまいりました。現物でございません、コピーでございますので、海部総理のお顔がぼうっと写っておりましてまことに申しわけございませんが、それを見ますと、大きく十項目ばかり公約がありまして、その四番目に、「消費税を思い切って見直し、減税をします。」こうなっております。本文の「ご挨拶」のところを見ますと、「消費税については、食糧品の小売非課税を始め家賃、教育費、出産費用、福祉用具費を非課税にするとともに、社会的に弱い立場方々には予算措置できめ細かく対策を講じます。」こういうぐあいになっております。  そうなりますと、もし今、加藤座長の案で緊急是正が行われるとしますと、食料品はすっぽり抜けてしまうわけでございますから、我々は消費税のそもそもの導入が、中曽根内閣の多段階のいろいろな一般消費税的なものは導入しないという公約違反だと思っておりますが、それをのけましても、海部内閣において二重の公約違反が行われるということになるのではないのですか。
  56. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 二重の公約違反というお言葉はそのまま私は受け取るわけにはまいりません。というのは、選挙のときにいろいろ訴えて、まさにその公報は私の選挙公報でございます。そして、選挙が終わってから政府・与党で十分御相談をして、これがいいと思われる見直し案をつくって国会に御提案をしたのです。御議論を願ったのです。衆議院では御理解を得ました。けれども、結果は、参議院の御理解が得られなくてああいう状況になったのですから、よく議員は憲法四十一条のことをおっしゃるけれども、国権の最高機関で唯一の立法機関である国会の御意思に反して、公約どおりやれといって政府が押しつける権限は憲法にはございません。したがって、国会の決定を厳粛に受けとめるのが政府立場であろうと私は謙虚に受けとめております。そして各党において今御議論を願いたい。出して、一院で通ってそちらの院でだめになるでは、国民生活にとってもこれは極めてよくないことでありますから、総裁の立場で党にお願いをして、衆参両院で各党が、 共産党も参加をしていただいた、そういう合同協議会が行われてきていろいろ御議論を願ってきた。聞くところによると、きょうもまたそのお話し合いが続けられると承っておりますから、私は、各党の適切なお話し合いによって成果が出てきますことを期待しながら、政府としてはそれには誠実に対処をしていかなければならないと思っておりますので、作業の最中、努力の最中であります。
  57. 正森成二

    ○正森委員 昨年のことで申しわけありませんが、総理の第一声では、食料品の小売段階を非課税にします、こういうことです。自民党の消費税見直しは思い切ったものであり、認めてほしいという第一声をしておられる。今、衆議院で出して可決されたが参議院では残念ながら通らなかったという御意見がございました。それは事実としてはそのとおりです。しかし、私も今税制協の一員ですが、その税制協の一員で、加藤座長は初めから、ともかく野党の賛成が得られないにしても緊急措置の中に二月の総選挙でおっしゃった食料品の非課税のものも出してこられるならばともかく、それはお出しにならないで、運用益とかあるいは益税の問題とか社会保障、七項目だけをお出しになったという点で、私どもは、野党には別の主張がありますが、それをお出しになって、仮に最小限それだけでもやれということになればそれはおやりになるのが当然ではなかろうかというように考えるわけであります。  特に、大蔵大臣がおられますのであえて申しますが、橋本大蔵大臣は海部総理より一歩進んでいるのですよ。ここに選挙公報を持ってまいりました。こう言っておられる。「消費税についても、多くの方々のご意見をふまえ、食料品の小売や家賃、出産費、入学金や教科書、福祉関係等に非課税の範囲を拡大しました。」総理の方は、まだ選挙ですから、「します」という自分の意思表明なのです。それで大蔵大臣の方は、「拡大しました」と過去形になっているのです。だから、大蔵大臣だからおれはやるというふうに自信を持っておられたかもしれませんが、これでは、見た国民は、拡大したから食料品は非課税になると思ったのもやむを得ない印象を受けるのじゃないでしょうか。そうすると、公約違反よりもうちょっと進むのじゃないですか。
  58. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変恐縮ですが、その後ろもつけ加えて読んでいただきたいと思います。「しかし高齢化社会を考える時、消費税はどうしても必要な税制であり、今回の税制改革全体の中の大切な柱の一つとして、皆様のご理解を心からお願いいたします。」私は、そこまで全部読み上げていただきたかったと思います。そして、そのとおり、私は政府の直接の責任者として税制改革の一環としての見直しの法案を、私の公約どおりのものを国会に提出をいたしました。参議院審議未了で廃案になったことは大変残念であります。同時に、委員自身協議会委員でおられますから、協議会の内容について、政府として国権の最高機関にあえて物申すほど私は思い上がっておりません。
  59. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ言いたいことはございますが、時間でございますので、やめさせていただきます。
  60. 平沼赳夫

    平沼委員長 中井洽君。
  61. 中井洽

    ○中井委員 御議論のありましたように、政府は掃海艇のペルシャ湾への派遣を決定され、実行されようといたしております。  私どもの党は、国際的貢献と同時に、ペルシャ湾を通過する我が国の船舶の安全が我が国にとって必要不可欠なこと、この二つの点から、政府の決定は当然の措置だと、これに賛成をいたしております。同時に、政府・与党の今回の御決断に敬意を表するものであります。  ただ、去年八月以来のいろいろな国会議論政府対応等見させていただいておりますと、例えば去年の国連平和協力法あるいは難民の輸送に伴う自衛隊機の派遣、あるいはまた今度の掃海艇の派遣決定等、少し微妙に決断の時期が遅い、私はそのように感じております。自民党内にもいろいろな御議論国会にも御議論国民の世論があったと思うのでありますが、今回のような事件というのは戦後日本にとって一番大きなターニングポイントであったような感じすらあります。私どももいい勉強をしたと考えておりますけれども、こういうときに、やはり総理というものは決断すべきときに決断をして、逆に国内世論というものを引っ張っていく、そして国が国際社会の中で安全で平和で繁栄できるように導いていく、それが務めであろうか、私はこのように思います。今回の決断は決断として結構でありますが、どうも時期的やらタイミングを見ますと、地価税法案が通ってから総理がこの委員会にお越しになるみたいなものでありまして、微妙に時期がずれておるのじゃないか、こんな感じを強く申し上げておきたい、このように思います。  同時にまだまだこれからもこういう問題が起こってくる。そして論議をしていかなければならない。私ども国会の場で常日ごろから論議を続けてまいりましたし、これからも国家、国益のために論議を続けていきたい。しかし例えばシビリアンコントロールのために私どもが長年主張しております国会委員会への自衛隊の制服組の出席すらいまだに実現ができない。あるいは国際緊急救助隊、これは私どもは当然自衛隊の人たちにも働きをいただければいいと思うけれども、これも難しい。PKOの三党合意ですら実は半年間いろいろな状態でほっておかれておる、こういう状況であります。もっともっと総理みずからが、今回のような問題が起こったときに、国論がヒステリックに反論する、あるいは法的に対応が違うじゃないかということを言われないように、一つ一つ法律あるいは環境の整備をやっていかなければならないと私は思いますが、その点いかがお考えですか。
  62. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御激励をいただいたり御注意をいただいたり御批判をいただいたり、私は謙虚にそれを承っておりました。反論する気持ちはございませんが、今後とも日本の国の将来はいかにあるべきかということを強く念頭に置いて考えて前進をしてまいりたい、こう思っております。
  63. 中井洽

    ○中井委員 この派遣問題について一つだけ大蔵大臣に御確認をさせていただきたいのでありますが、党首会談で我が党の委員長から申し入れをしたと思うのでありますが、今回初めて派遣されます掃海艇、海上自衛隊の皆さん方の手当、大変危険なことあるいは困難な任務でもあります、手当を十分配慮すべきである、こういうことを申し入れさせていただきます。きのう御決定いただいたやに聞かせていただいておりますけれども、その点の御確認をお願いいたします。
  64. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 党首会談での御注意を総理から御指示の形でちょうだいをいたしました。現在防衛庁当局から案をお示しをいただき、私どもとしても誠心誠意それに対応させていただいております。
  65. 中井洽

    ○中井委員 地価税について二、三総理大臣に確認をさせていただきます。  法案が通りまして、結果、初年度三千億から四千億という税収が入ることになります。この法案は、本来増税を目的とした法案ではなく、土地対策、こういったものでつくられた法案であります。したがいまして、この増収分は当然のごとく土地政策あるいは法人、所得税の減税に限って使われるべきだと私ども考えておりますし、委員会等でもそういう御議論のあったところであります。総理大臣として、この点どのように御認識をなさっておられますか。
  66. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回の地価税というものは増収を目的につくったものではございませんから、その結果がどのようなことになるのか、来年度の予算編成作業、そして税制改革大綱を決める作業までの間に、そのことについては十分趣旨を踏まえて検討をしていく考えでございます。
  67. 中井洽

    ○中井委員 もう一つは、この法案の効果というものについていろんな議論がなされたところであります。法案が通過した後の新聞論調等におきましても、御承知のような論陣が張られておりま す。私どもの党におきましても、この法案そのものが土地神話を崩す、あるいは土地供給をふやす効果は何もないんだ、これが圧倒的な意見でありました。しかし、全体として土地政策の一歩前進ということで賛成をいたしてまいりました。  したがいまして、固定資産税の見直しの時期等と絡み合わせまして、私どもは、五年という見直し規定が入っておるけれども、それを早めて、この法案の効果があるかどうかを含めて三年で見直すべきである、このように主張し、大蔵大臣も踏み込んだ御答弁を賜っております。三年先まで海部総理がおられるかどうかということは別にいたしまして、この時点でできるだけ早い機会、三年を目途に見直す、このことについての御明言をいただきたいと思います。
  68. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今回は創設をしたところて、スタートしたばかりでありますから、政府としてはこれは土地の抑制に効果があるという基本的な考えを持ってスタートさせるわけでありますが、いろいろな状況等を踏まえて五年後に見直しとなっておりますが、必要があるなれば、これは国民生活のためにも、三年後にどのようなところをどうしたらいいかというところは十分検討していく可能性はあろう、こう考えております。
  69. 中井洽

    ○中井委員 この法案の通過、また今国会中にノンバンク規制を超党派で行おうかという大まかな合意のところまで参っております。税制あるいは金融面での土地対策というのはできてまいりました。しかし、たびたび御議論になりましたように、金融税制だけで土地対策ができるものではありません。都市計画といいますか土地利用、これらをどのようにしていくか、金融税制都市計画、この三つが一体となって初めて有効な土地対策あるいは働く者に安価な住宅が提供できると私ども考えております。  金融税制面がほぼ今国会におきまして対策がとられました後、総理としてこの都市計画、どのような意気込みでお取り組みか、土地利用というものをどのような形で促進をなさろうとお考えか、お聞かせをいただきます。
  70. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 御指摘のとおりに、税制金融土地利用計画、特に都市計画の中の土地利用計画の整備充実を図ること、これらが総合的に力を合わせて土地対策に取り組んでいかなければならないと考えております。政府は、閣議決定をいたしました総合土地政策推進要綱を基本方針といたしまして、土地政策上重要な手段の一つである都市計画等の整備充実を図っておるところであり、現在、中央審議会において二十一世紀を展望した都市計画制度のあり方について検討を進めているところでございます。この結論を踏まえて必要な対応を図っていこうと思っております。
  71. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  72. 平沼赳夫

    平沼委員長 菅直人君。
  73. 菅直人

    ○菅委員 昨日、地価税の法案が成立をしたわけですけれども総理にお尋ねをしたいというか御意見を聞きたいのですが、私も土地基本法以来この問題に深くかかわってきて、地価税の成立は大きな第二歩とでもいいましょうか、そういう段階だと思います。  しかし、それではどこまで効果があるかということで、最終的に日本地価はどのくらい下がったら適正であろうかと私なりに考えているわけですけれども、例えばアメリカ地価総額が四百数十兆、二十五倍の広さが五百兆以下、そういうふうなことを考えますと、現在日本地価の総額が約二千兆と言われておりますけれども、最終的には五百兆、さらには四百兆くらいまで下げた方が日本のためにはなるのではないか。ですから、四分の一から五分の一まで究極的には下げた方がいいのではないか。また、そうしたことの方が国民生活にとってプラスであるし、日本の経済にとって、若干不動産業等には一時的な混乱があるかもしれないけれども、トータルとしては日本経済にとっても健全な経済を進めることになるのではないか、このように考えておりますけれども、そういった日本地価総額、現在の約二千兆円を総理としてはどのくらい引き下げることが適正か、あるいは目標としたいか、そのお考えをまず、大変短い時間なので端的にお聞かせをいただきたいと思います。
  74. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 基本的に申しますと、日本土地の価格というものが約二千兆というのは高過ぎるということは共通の認識でありまして、これは地価を何とか抑制しなきゃならぬ、抑えていかなきゃならぬ。最近、東京都心部なんかの地価の鎮静化の兆しが見えておることは喜ばしいことだと思っておりますが、どこまで下げるかという具体的な数字を述べろと言われても、私どもが今目標にしておりますのは、少なくとも平均的な勤労者が年収の五倍程度のもので住宅が持てるような環境をつくりたい、そのために適正な土地価格というものを目指して下げていく努力をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  75. 菅直人

    ○菅委員 私は、総理にとっても、そのあたりを明確にされて、あと三年間で半分にするとか言われると、もうちょっと政権も長引くのじゃないかという気もしますから、思い切ってそれは数字を言っていただきたいと思いますが、きょうはこれ以上は重ねません。  もう一つ地価税は成立をしたわけですけれども、残された問題で大変大きな問題が二つあると思っております。  一つは、地価税がこれだけ低い税率になり、いろいろな足切りが多かったのは、一方では固定資産税を充実させて広く薄くかけるから、地価税はいわば突出したところについてかけるんだということでこういう形になったと理解をしているわけです。そういった意味で、固定資産税の評価がえを中心にした問題は、政府税調の最終答申にも出ておりますので、そのことが確実に実行されるか、これもことしの評価がえがあったばかりですから、ちょうど三年後が次期評価がえということになりますので、その点の決意のほどをお聞かせいただきたい。  もう一つは、今、中井委員の方からもありましたけれども税制は進んだけれども土地利用計画考え方がまだ十分に議論が進んでいない。先ほど都市計画審議会のことを言われましたけれども、それ以外にも行革審、これは総理直接の審議会だと思いますが、行革審の中でもこれからの都市のあり方ということを相当議論が始まっているように私いろいろな委員の方から聞いておりますし、あるいは国土庁が事務方をやっている土地政策審議会でもそういう議論が始まっているように聞いております。これも土地政策の、二本の柱か三本の柱かは別として、少くとも土地利用計画税制に並ぶ柱であることはだれしも否定しないところですので、これも総理の、ここまで来たんだからこのぐらいの間にはこういうところまで持っていきたいという決意のほどを、あればお聞かせいただきたいと思うわけですが、一言添えますと、私は、土地利用ということを考えたときに、どうも日本土地利用は経済効率優先で生活というものが非常に見落とされたと思うのですが、その点もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  76. 海部俊樹

    海部内閣総理大臣 今年二月に予算委員会でも御質問をいただきました。そのときにもお触れになった問題を私なりに後ほど再検討もしてみました。結局、税制と同時に金融とそして都市計画と三本の柱でいかなければ土地問題は片づかないという御視点と、もう一つは、地価税の税率についてのいろいろな御批判や御議論がありますけれども、これは固定資産税強化の問題を税全体の中で適正にしていくという方向で作業しておりますから、ここで解消、解決をしていきたいと思いますし、また、もう一本手つかずになっておる都市計画の方の問題につきましては、これは今市町村できちっとした都市計画をつくる、それを国へ上げてくる、こういう格好になっておりますけれども地方の自主性、地方の自主的な問題を踏まえながらではありますけれども、魅力ある町村づくりといいますか、活力倍増計画というものも自治省で今唱えて全国の市町村にもお願いをしておるわけでありますから、絵になる町の倍増計画とか あるいはUターン倍増計画とか、いろいろその町の町づくりについても、それぞれの町村が自主的自発的に計画をつくってくれることが、地方が生き生きと活力を持ってくる源である、これを大切にしておるところでございます。  行革審の方にもそういう議論の進んでおりますことを十分注目しながら対処してまいりたいと思います。
  77. 菅直人

    ○菅委員 それでは終わります。
  78. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三分散会