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1991-04-12 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十二日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       赤城 徳彦君    浅野 勝人君       井奥 貞雄君    石原 伸晃君       岩村卯一郎君    狩野  勝君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    戸塚 進也君       萩山 教嚴君    林  大幹君       細田 博之君    柳本 卓治君       山下 元利君    小野 信一君       大木 正吾君    佐藤 恒晴君       沢田  広君    仙谷 由人君       筒井 信隆君    富塚 三夫君       細谷 治通君    堀  昌雄君       渡辺 嘉藏君    井上 義久君       宮地 正介君    正森 成二君       高木 義明君    中井  洽君       菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         国土庁土地局次         長       鎭西 迪雄君         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵大臣官房審         議官      日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       田中  寿君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁税部長 山口 厚生君         国税庁間税部長 坂本 導聰君  委員外出席者         国土庁長官官房         総務課長    今藤 洋海君         国土庁大都市圏         整備局計画課行         政機関等移転推         進室長     野見山恵弘君         自治省税務局固         定資産税課長  堤 新二郎君         参  考  人         (税制調査会委         員)      石  弘光君         参  考  人         (税制調査会委         員)      山田 精吾君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   衛藤征士郎君     金子 一義君   前田  正君     赤城 徳彦君   中井  洽君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     前田  正君   金子 一義君     衛藤征士郎君   高木 義明君     中井  洽君     ───────────── 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  地価税法案内閣提出第一七号)      ────◇─────
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地価税法案議題といたします。  趣旨説明を求めます。橋本大蔵大臣。     ─────────────  地価税法案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま議題となりました地価税法案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、土地税制改革の一環として、土地基本法に定められた土地についての基本理念にのっとり、土地に対する適正公平な税負担を確保しつつ、土地資産としての有利性を縮減し土地政策に資するため、土地資産価値に応じて負担を求める地価税を創設することとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、地価税納税義務者は、国内にある土地及び借地権等を有する個人または法人としております。  第二に、課税対象は、個人または法人がその年一月一日の課税時期において有する土地等としております。  第三に、非課税とされる土地等については、国、地方公共団体その他の公共法人が有する土地等及び公益法人等がその業務目的に関し有する土地等のほか、自然・国土保全、医療・社会福祉、文化・教育、交通・通信、水道・エネルギー等に関する一定の公益的な用途に供されている土地等非課税としております。  また、みずから所有し居住している住宅や他人に貸し付けられている住宅の用に供されている千平方メートル以下の部分の土地等非課税とすることとしております。  以上のほか、一平方メートル当たりの更地の価額が三万円以下である土地等について、非課税とすることとしております。  第四に、課税価格は、個人または法人課税時期において有する土地等価額合計額としております。  なお、優良住宅分譲予定地等については、課税価格に算入する金額土地等価額の五分の一とし、また、協同組合等の有する土地等その他一定土地等については、二分の一に軽減する特例措置を講ずることとしております。  第五に、課税価格から控除する基礎控除は、資本の金額が一億円を超える法人にあっては十億円とし、個人及び中小法人等にあっては十五億円としております。なお、非課税とされるもの以外の保有土地の面積に三万円を乗じて計算した金額が十億円または十五億円を上回る場合には、この計算した金額によることとしております。  第六に、税率は、千分の三としております。なお、平成四年については、千分の二としております。  第七に、土地等価額評価については、相続税と同機に、課税時期における時価によることとしております。  第八に、地価税申告、納付については、その年の十月一日から同月三十一日までの間に申告し、地価税の額の二分の一に相当する金額申告書提出期限までに、その残額を翌年三月三十一日までに納付することとしております。なお、平成四年の申告書提出期限については、平成四年十一月十六日から十二月十五日までとしております。  その他、税務署長等に対する固定資産課税台帳等供覧規定など所要規定を設けることとしております。  さらに、地価税負担あり方については、少なくとも五年ごとに、固定資産税土地評価適正化等を勘案しつつ土地保有に対する税負担全体の状況等を踏まえて検討するものとし、必要があると認めるときは、地価税課税対象及び税率等について所要措置を講ずるものとすることとしております。  なお、この法律平成四年以降の課税時期において個人または法人が有する土地等に係る地価税について適用することとし、施行に当たり所要経過措置を設けております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 平沼赳夫

    平沼委員長 本日は、本案審査のため、参考人として税制調査会委員石弘光君及び山田精吾君の御出席をいただいております。  本日は、大変お忙しいところ委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございました。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細谷治通君。
  6. 細谷治通

    細谷委員 石先生、それに山田先生大変お忙しいところおいでいただきまして、ありがとうございました。  私は、まず本法案について、税率それから非課税範囲等大変不十分な点が多々あるわけでありますけれども、基本的にこの法案について賛成という立場問題点を掘り下げてみたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  まず基本認識といたしまして、土地政策土地対策に対する税制役割ということで考えてみますと、土地対策の中に占める土地税制役割というのは、従来単に補完的、誘導的なものとする見解もあるわけでありますけれども、私どもは主要な政策手段であると考えています。土地神話をつくり出したのも、ある意味では甘い税制に責任の一半があるのではないかというふうにも考えております。地価対策は単に、都市計画だ、土地利用規制が重要だといっても、一向に今日まで解決できなかった、らちが明かなかったと言わざるを得ないと思うのです。行政の取り組みもさることながら、やはりこの背景としては、日本人の私権制限に対する根深い拒否反応があるからだというふうに考えておる次第であります。  こういう基本認識に立ちまして石先生にお伺いをいたしたいと思いますけれども、まず、土地政策における税制役割をどういうふうに位置づけておられるのか。節目節目で御発言なさっておるようでありますけれども、ここでまず第一点をお伺いしたいと思います。  そして同時に、あわせて、去年の十月三十日政府税調答申が出されました。これに対しまして先生は、二十年ぶりの本格的な審議であった、今後数十年間土地税制あり方を検討する際には中心的役割を演ずるだろうということで高く評価されているということだと思うのです。こういう観点からしまして、政府税調答申評価、位置づけ、この辺もあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  7. 石弘光

    石参考人 今二点御質問をいただきました。順次お答えいたしたいと思います。  昨年の四月、ちょうど今ごろ政府税制調査会土地税制小委員会ができまして、議論を出発させました。そのときから我々の念頭にありましたのは、税制というものをどのぐらい土地政策に活用できるかという点でありました。そこで最初に我我が過去の政府税調答申を調べましたところ、四十三年にやはり同じような小委員会をつくり同じような答申を出しております。実はそのとき、細谷先生指摘のように税制は誘導的、補完的地位にあるべきであるという規定をし、それ以来控え目な役割税制に担わせてきたわけであります。我々の小委員会は、それを主役の一人に育て上げたという点で大きな特色があったのではないかと考えております。つまり、土地基本法ができましたので、土地公共財の一種であるという規定ができたことを踏まえまして、もうちょっと税制というものを表に出してもいいのではないか、それから土地税制審議を始めたという経緯がございます。ただし、基本答申にも書いてございますように、たった一人の主役というわけにはどうもいかないだろう、幾つかある主役の一人であろう、しかし、わき役ではないであろうという位置づけをしたという意味で、税制役割を格上げしたと言ってはおかしいのでありますが、かなり重視したという点、御指摘のとおりでございます。  それから第二点は、今回の税制調査会答申というのは、手前みそではありますが、私自身はかなり皆様から評価をいただいたと考えております。特に、マスコミ報道を通じましていろいろな点からの評価をあわせてみますと、当然のこと一部に幾つか批判があるにしても、大枠はこういう形でいいのではないか。つまり、今橋本大臣から趣旨説明がございましたような形で、土地政策の中で税制を位置づけ、土地資産価値に対して新しい形の地価税をかけるというのが基本トーンでございます。と同時に、もろもろのキャピタルゲイン課税相続税あるいは農地宅地並み課税含めまして土地税制全般に対して見直したという点におきまして、今後この考え方というのは、恐らくいろいろな形で議論されるとき、賛否両論を踏まえまして、これを踏まえて議論されるというふうに理解し、また、そう信じております。
  8. 細谷治通

    細谷委員 今回のこの政府案税率それから基礎控除額非課税範囲など、政府税調答申から見ますと大幅に後退をしているということであります。先生答申に対する思い入れみたいなものが大きければ大きいほど、逆に失望感も大きかったのではないかというふうに思います。大山鳴動してネズミ一匹とか、土地神話の復権とか、歴史は繰り返すとか、土地保有税は形骸化したとか、いろいろの表現をお使いになって失望感を表現されているというふうに思うわけであります。  その後大分時間もたちまして、先生のお気持ちとして今日時点では本政府案をどういうふうにとらまえておられるのか、本法案地価抑制効果というものが一体どういうふうになるのであろうかという点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  9. 石弘光

    石参考人 一番核心部質問の点が来たなという感じをいたしておりますが、正直申しまして、昨年の暮れ土地税制大綱が出ましていろいろコメントを求められたときには、やはり考えていたよりは大分後退したという意識がございまして、今御指摘のように幾つか厳しい点を出した記憶がございます。  大きく申しまして、新土地保有税、つまり今の地価税でございますね、地価税に対しましては、やはりもうちょっと頑張ってほしかったな、これは税率並びに課税最低限についてでありますが、ございました。他の点、つまり、譲渡益税あるいは相続税農地宅地並み課税等々につきましては、ほぼ我々の答申の線に沿った形で実現しておりまして、この点につきましてはさしたる不満を持っておりません。  そこで、全体として、今の時点、つまり数カ月たった今の時点政府案を冷静に見てみますと、やはりこういう新しい仕組みをつくることが第一義的に優先されるべきではないかという考えに立っております。当然のこと、部品につきましては今後さまざまな形で改良の余地はあろうかと思います。ただ、これはあくまで今後の地価動向、あるいは、特に既存税制がどれだけ見直され、どれだけ活用されるか、具体的には固定資産税あり方でありますが、そういうものを見ながらやるべきことが今後の課題でありまして、とりあえず仕組みが入りませんことには何もできない、そういう意味で、政府案に沿った形の地価税中心とした土地税制というものをこの際入れて、そして今後の新しい方向を目指すべきではないかというふうに今考えております。
  10. 細谷治通

    細谷委員 政府税調答申では、新土地保有税については税率控除額等について具体的に基準が示されておりません。税調答申の中に具体的に示されなかったということが、その後の混乱といいましょうか、後退といいましょうか、そういう一因だったというふうに考えると、私は大変残念だったというふうに思うわけであります。  そこで、小委員長という立場で、実際保有税議論する過程においては、税率、例えばそういう条件がどうなるかによってその政策効果というのは当然違ってくるわけなんで、その辺については当然一種の基準みたいなものを想定されて議論されてきたと思うのです。それで、小委員長としては、例えば具体的に税率についてどのレベルのことをお考えになっていたのかということをお伺いをしたいと思います。
  11. 石弘光

    石参考人 税率は、恐らく小委員会メンバーの頭の中にはさまざまな幅を待って考えられていたことだと思います。恐らく、一%というマスコミ先導型の水準が示され、しかし、これはストックに対して年々かける税率としては非常に高過ぎるのではないかという意識を持った方も多いと思いますし、まあ〇・五ぐらいがいいかなと考えた方もいると思います。私は、個人的にはまあ一%ではやはり年々のストック課税としては高過ぎると思っておりましたし、といって、余り低過ぎる税率では効果がどれだけあるかわからないということもございまして、できれば〇・五ぐらいあったらいいかなと思いつつも、〇・五から一・〇ぐらいの間でおさまった方がと当時は思っておりました。  と申しますのは、固定資産税の方の動向がわかりませんで、結局土地保有税というのは固定資産税と今回の地価税二つあるわけでありまして、納税者の側から申しますと、当然のことこの二つは同じ負担になるわけでありまして、そのバランス考えなければいけない。ところが、政府税調段階におきましては、その両方のバランスをとって、それを踏まえて新しい土地保有税税率を決めるというところまで議論が至りませんでした。はっきり申しまして時間切れということもざいましたし、それから何と申しましても、従来の経緯から申しまして土地関係の資料が余りございませんで、それをマクロ的に利用できないという制約もございました。あるいは我々の能力不足だったかもしれませんが、いずれにいたしましても、細かく〇・五でいいか、〇・七五がいいか、一・〇がいいかというようなところまで議論が立ち至らないまま、メンバー各位、自分で想定した税率をもって恐らく議論したのだと思います。  今になってみますと、それは〇・五の方がよかった、あるいは塩川私案で出された段階のことで話がつけばよかったかと思いますが、新税は悪税でありますし抵抗も多いということで、最初に〇・三、あるいは〇・二という段階もあるようでありますが、そういう形で入れて将来を見るというのも一つのやり方ではないか、そういう仕組みを入れるのが重要であるという点からはそういうことも配慮が必要ではないかというふうに今考えております。
  12. 細谷治通

    細谷委員 重ねてお伺いをするような形になると思いますけれども本案では効果の点で極めて不十分だと言われておりますし、私どももそう考えております。当然修正されなければならないと思います。しかし一方で、根深い反対論もあるわけでありまして、我々が本国会において修正をあくまで貫こうということであるならば廃案になってしまうかもわからない、そういう状況も一方であるわけであります。内容的には、ある意味では、言葉は適切でないと思いますけれども、堕落、ここまで堕落するならば無用、ない方がましだという考えもありましょうし、それから小さく産んで大きく育てるためにも、不満だがここで成立させるべきだという意見があると思うのです。現時点においてどのような選択がベターであるというふうにお考えになっておるのか、政府税調基本答申を作業された立場で率直な見解を最後に承りたいと思います。
  13. 石弘光

    石参考人 結論から申しますと、今御指摘のとおり、何回も申しておりますが、仕組みを入れる。そういう意味では、今御指摘の小さく産んで大きく育てるというのが基本的スタンスになるのかな、ならざるを得ないだろうと考えております。  今回は不十分だという御指摘がございましたが、これは非常に難しいのでありまして、つまり、全然何もないところから比べますとこの地価税というのはそれなり効果を持つと思いますし、当初考えていた、一部の経済学者が言っておりますように一・〇%で大きくかけるという点から見ますと、確かに効果は期待したほど上がらないという点もあろうかと思います。しかし、何もないところから新しい税が始まるわけでございますので、私はそれなり効果というのがじわじわ効いてくる税ではないか。特に、土地保有者というものはかなり少数に集中しております。特に東京みたいなところは集中しております。そういう土地を持って、かつ地価の高い土地を持っているという方に負担をいただくというのがこのねらいでございますから、大分納税者の数も減りましたし税率も減りましたが、それなりに導入すれば効果が効き、かつ将来何か起こったときに再度これを拡張する、そういう手だても残っておるわけでありますから、ぜひこの地価税法案で盛られた思想を生かしつつ、とりあえずこれを我が国税制の中に入れて、今後の推移を見ていきたい、こう考えております。
  14. 細谷治通

    細谷委員 続きまして、山田参考人にお伺いをしたいと思います。  税調委員という立場と、それから一方で連合事務局長という立場にあられるわけでありまして、したがいまして、労働者代表といいましょうか、都市サラリーマン代表と言ってもいいのじゃないかと思うわけであります。そういう立場でぜひ率直な御意見をいただきたいと思います。  連合の制度・政策要求、いろいろありましょう。その中で、特に大都市サラリーマン層にとっての住宅問題、この根っこにあります土地問題というのは緊急かつ最大課題ではないかというふうに思うわけであります。そういう立場で、連合として、土地問題について、特に都市サラリーマン層とのかかわり合いでどんな問題認識を持っておられるのか、率直なところをお伺いしたい。  あわせて、連合として土地政策というものはどうあるべきとお考えになっておるのか。特に、土地税制については貴重な提言もなさっておられるようでありますし、その基本的な考え方と、ねらいといいましょうか、そういうものについてまずお伺いしたいと思います。
  15. 山田精吾

    山田参考人 こういう機会をつくっていただきましたことにむしろこちらからお礼を申し上げたいと思います。  基本的な考え方は、今石先生の方からるる説明をされまして、私ども考え方と基本的には同じような立場にあります。土地暴騰しました際に、連合として首都圏サラリーマン中心にいろいろな調査を実は行った時期がありました。率直な意見サラリーマンの方から寄せられておりまして、特に怒りに近い気持ちでアンケートに皆答えられておった内容でしたけれども土地暴騰理由は、何か首都圏における情報化社会国際化社会、そういうようなことでビル不足だとか何不足だとかいうようなことをほとんどその理由として政府側から挙げられておりましたが、やはりサラリーマンから見ますと、最大原因というのは政府が何もやらなかったではないかということを一番皆怒っているわけですね。何もやらなかった、無策。二つ目には、やはり金融業界から始まる土地転がしとか、いろいろなことがありました。ほとんど無制限に近い金融業界からの不動産業界への金の融資といいますか、こういうことも暴騰最大原因だ、そういうふうなことを実感的に、実態的に我々はとらまえながら、連合連合としての土地政策対策を立てていったというようなことなんです。  国会土地基本法を超党派で決められました。私どもは、これを大変歓迎をし、評価を実はさせてもらいました。土地基本法を具体的にどう今後生かすのかということはこの土地税制の問題が一つ加わっておるというぐあいに、私は政府税調委員として議論に参加する中で、まずは土地基本法というのをきちっと正確にとらまえて、税制の面ではどうするのか、政策の面ではどうするのかというのがスタンスで実は議論にも参加し、具体的な政策提案も実はしてきたということなんです。  それで、一つは、消費税導入に当たりまして、所得資産消費バランスのとれた税制要求、これは各党ともそう大きな違いはなかったと思うのです。バランスのとれた税制要求課税ベースからいきますと、所得にしましても、それから消費にしましても、大した課税ベースじゃないですね。肝心な資産課税についてはまるっきり横に置かれたようなことだ。特に、土地課税ベースなんというのは横に置かれている。ここに、サラリーマンとしての大変な不公平感といいますか、そういうような気持ちが、最近特に土地暴騰によりまして格差問題も含めて議論の大きな中心に据わったというような状況もございます。  それから、年収の四、五倍ぐらいで家が欲しいというのが大方の気持ちでありますし、各政党も全く同じようなことを言われるのですけれども、具体的にどうするのかということになりますと、なかなかわかりやすくなってないというような状況もございます。  そういうことで、たまたま私は政府税調の方にも顔を出していますけれども土地基本法で設置されました土地政策審議会の方にも顔を出しまして、両面でやや私どもの主張を展開しておりますが、そう大きな、お互いに狂いはないなというぐあいに思っております。あとは、具体的にどうそれを実行するのかということにすべてかかっている。人間の考えられることは、もうほとんど出尽くしておる。あとはどう整理してそれを実行するか、そこに非常にいら立ちを持っております。特に縦割り行政、これを直さないと、幾ら政策を出しましても、実行面になったらどうしようもないんじゃないかというような気持ちも率直に申し上げておきたいと思います。  それから最後に、石先生がいろいろ言われましたが、実は昨年の十二月十九日、政府税調で「平成三年度の税制改正に関する答申」というものが出されております。この中にすべて私どもの言いたいことは文字で明確に整理をされていますから、ここのところをどういうぐあいに国会でも議論をしていただいて、さらに整理をしていただくかということにすべてかかっているような感じがいたします。
  16. 細谷治通

    細谷委員 政府税調委員という立場で作業に参画されてきたわけであります。そういう立場から見まして、今回の地価税、本法案ですね、かなり後退したものになっているということだと思うのです。そういう観点から、今回の法案に対して、税率だとか課税最低限非課税範囲の設定だとか、そういうものについてどういうふうにお考えになっておるか。これでは効果というものが大変危ぶまれるというようなことなんでありますけれども、どういうふうにお考えになっておるのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  17. 山田精吾

    山田参考人 昨年の十二月二十日でしたか、連合から依頼をいたしまして、何人かの学者、専門家の皆さんたちにいろいろ相談をいたしまして、最近では連合政策懇談会というような名前で呼んでおりますが、そこで、言うならば税率効果の問題について実は数字で明らかにして提言をさせていただいたというようなことです。  ですから、連合政策懇談会でまとめました一%ということでいきますと、土地保有税固有の効果というのは一三%から一七%の効果が出るだろう。ところが、政府のあの内容でいきますと、〇・四から二%程度ではないか。詳しいことは申し上げませんけれども、それならばどういうぐあいにこれをやったらいいのかということを、実は幾つか具体的な提案をさせていただいておる経過があります。  一つは、「二千平方メートル以上、かつ相続税評価額で五億円以上の土地課税対象とする。」二つ目には、「相続税評価で控除は五億円以下、税率は一%以上とする。」そのほか、「単価による非課税措置と控除措置は採用しない。」とか、そういうようなもろもろの問題を具体的に私どもはこの時点で提言をさせていただいた経過があります。  それから、今日の情勢を見ますと、これをもっと強化せいというのが私ども意見なのです。もっと緩めようという意見もあります。一体この綱引きがどういうような結果を生むのだろうかということは、連合としても実は大変心配をしているのです。今の衆議院と参議院の情勢を見まして、下手をすると、また消費税の二の舞を繰り返してしまうのではないかというような危惧も持っております。  私は、政府税調が十二月に答申を出すときに、その席で一言感想を言いました、モミの木は残ったのかなと。それが私の率直な感じでして、これがなかったらどうなるのか、これはもっと悪くなるだろう。だから、やはりこういうような枠組みといいますか、これはきちんと残しながら、将来に備えながら強化するということが非常に大事だなというのが私の率直な気持ちです。  しかし、あれだけテレビ、マスコミを通じて物すごい論争をやったわけですから、国会の舞台でも一番大事なことは、地価は下がるのか、下げられるのか、その効果はどうなのだということはきちっととらまえながら、この問題についての決着をつけていただきたい。直ちにできる問題と時間のかかる問題といろいろありますから、それと、これだけになったら都市政策との絡みというのもありますから、そういう両面からとらえて、一歩でも二歩でもこの問題については前進させてほしいというのが率直な私ども気持ちです。
  18. 細谷治通

    細谷委員 ありがとうございました。
  19. 平沼赳夫

    平沼委員長 細谷委員、よろしいですか。  関連で、富塚三夫君。
  20. 富塚三夫

    ○富塚委員 石先生にぜひお尋ねしたいと思いますが、ずばり今度の政府提案のこの地価税法案についてどのように評価されているのか。一口で言うと、その問題についてどう評価されているのか。  御案内のように、先生大分税調で努力されまして、土地保有とか譲渡とかあるいは取得、三つの面にわたって課税の強化を考えたいということで大変苦労されたことを伺っています。先生もあの答申後にいろいろマスコミのインタビューでは、大山鳴動してネズミ一匹だ、つまり持たざる側の声がほとんど届いてない、したがって、この新鋭法は骨抜きである、自民党の土地税制改革大綱が出されたときに大変な議論があったわけですけれども、そういうふうに言われているのです。その心理的効果だけを求めるような法案になっているのか、果たして実効性が出てくるのかどうかということの問題について、まず先生の所見を伺いたいと思います。
  21. 石弘光

    石参考人 私は学校の教師でありますので、点数をつけるのが商売なのですが、当然のこと、百点滴点というのは難しいだろうと思いますし、といって落第点ではないというふうに私は理解いたしております。したがいまして、合格点と落第点の真ん中ぐらいがこの点数ではないか。それは人によって七十点か七十五点か八十点かよくわかりませんが、そういうとらえ方をしております。  そこで、では何が評価に値するか、何が評価に値しないかという点が重要なのですが、私はやはり保有税のところはもうちょっと頑張ってもらいたいなという気がしておりますので、これはマイナスでありましょうが、それを補って余りあるものがあるので、結果的にはネットでプラスではないか。その補って余りあるものというのは、先ほどから申しておりますように、相続税であれ、農地住宅並み課税であれ、あるいは固定資産税評価を本格的にやるよという話になった、これは非常に重要な点ではないか。そういう意味で総合的に見まして、これは、きざでありますが、英語で言いますとアクセプタブルな案にまではなったのだろう、このように思います。  ただ、どうしても最後の政治的な折衝になったときには、今御指摘のように持てる側の方の声が出てきたのだと思います。持たざる側というのは、これから山田さんの方からもいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、どうしてもやはり年収の四、五倍でうちを買いたいという人の側からいいますと、持っている人にもうちょっと負担してもらってもいいのではないかという声が最後届かなかった。これは今後こういう仕組みをつくり、枠組みをつくり、その中で生かされるべきことではないか、このように考えております。そういう意味でややトーンダウン的なことになるかもしれませんが、今の政府案というものは、それなり評価をしているということでございます。
  22. 富塚三夫

    ○富塚委員 各論ではたくさんの問題点を抱えている法案なんですけれども、一口に言って、野党の立場からどのような修正にポイントを置いた方がいいのかということの問題が、実は先生に聞くのはどうかと思うのですけれども先生と同じ大学の野口先生も言っているように、この案では地価の引き下げに効果はない、野党は結束をして大胆に修正をすべきであろう。従来、野党は新税提案には反対をするという立場をとっているのですが、この法案は我々も強く求めてきただけあって賛成して、より中身を充実させなければならないという問題であるだけに、この内容の中で、税率や控除を税調の原案のレベルまで戻せという問題や、課税される土地の範囲を拡大する、公平と供給源拡大の観点から拡大をする。あるいは三万円の課税最低限と単価控除を廃止する。つまり、細い骨でも残していこうという観点にすれば、こういう三つのポイントの中でどの点に力を注いでいくことがいいのかということの問題になると、一口に言って、野党側も全部の修正など出してみても、恐らく与党の方は「はい」なんというわけはないだろう、政府もそうだろうと思いまして、現実問題として、この法案の中から見たいわゆる修正をすべきポイントについて、先生はどうお考えになっているでしょう。
  23. 石弘光

    石参考人 前段は、私の同僚の野口さんの推計等とか出ておりますが、彼の言うのは恐らくバブルですね。バブルの崩壊に期待感が大きかっただけに、地価税効果が足りないのじゃないかという点を主張されたと思いますが、これからやりますほかのいろいろな、先ほどから申しておりますような譲渡益課税あるいは相続税にしてもというような仕組みの中で、このバブルをつぶしていくことをじっくり腰を落ちつけてやることでかなり対処できるのではないか。劇薬から漢方薬的に発想が変わったのだという理解が必要なのではないかと考えております。  今御指摘の見直すべき方向、私はそれなり個人的には考えを持っておるのです。これは全く個人的な意見でありますが、やはりどうも単価控除が一番問題ではないかというふうに考えております。恐らくこれは税調の中で余り審議がなかったのじゃないかと思いますが、課税最低限という大きな枠で、一回、資産価値のない土地に対して非課税にするという考え方は十分あり得ますが、さらにそれに屋上屋的にこういうのが入っているというのは、土地を持っている保有者にとってはかなり有利になり過ぎたのではないかという考えもしております。  それから、まだ詰めた発想ではございませんが、土地が何カ所かに分かれていて、それを集計するときに、日本の今の政府案というのは、非課税のものはすべてその段階で入れないわけですね。三万円の土地は、三万円以下だとそれは初めからはねてしまうわけですが、考え方としては、恐らくまず非課税であろうが課税であろうが土地持ちの土地は全部合計して、その後で十億円とか十五億円という課税最低限を使う、あるいは基礎控除を使うという形の方が、土地に対する資産価値あるいは土地保有者に対する負担を強いるというならば、税制としてはすっきりするのかなという感じが個人的にはしておりますが、それは先の話ではないか。今言ったような発想はオーストラリアの土地税制にそういう形のものが既に施行された例がございますので、ちょっと参考になるかなと思っております。  それから、あとは税率の問題、それから課税の、そもそもこれから税率は高める方に、非課税対象範囲というのは狭める方にというのは、恐らく、今後の地価動向あるいは固定資産税の頑張り方にもよりますが、そういう方向に行くと思います。やはりこの仕組み自体を入れて、さまざまな影響を見ないと、今から急に行けない面もあるのじゃないかと考えております。その辺は少し慎重に考えるべきであろうというふうに考えております。
  24. 富塚三夫

    ○富塚委員 与党側も、この法案、つまり大綱をつくるに当たっては、産業界や金融界、つまり財界や農業団体、地方公共団体のいろいろな意見も聞いてきた。政府も、大蔵省、自治省、いろいろな意見が交わされた。あるいは国土庁も入っていろいろな調整をして法案になった。しかし基本は、持たざる者の側の意見を聞いてないという欠点を実は持っているわけですね。持っている側だけの意見を聞いてこうまとめてきたというところがポイントなんです。もっとこれから先のことを考えて、仮にこの法案がこのまま成立すると、これから先、五年後に見直すと言っても竜頭蛇尾になって、現実に、本来この地価税法案の求める趣旨が生かされていかなくなってしまうという懸念を私は非常に心配するわけで、山田さんの方も心配されていると思うのです。  そこで、税調の新たな役割として、いわゆる臨時小委員会などをつくって、この法律の実効性について集約を図っていく、そして第二、第三段階につないでいくという現実的な対応について先生もある新聞に何かそう答えておられたし、私は政府税調のそういった役割が非常に大きくなってくるのではないかというふうに思うのです。その税調が画期的な答申をされただけあって、この法案になって、これから先の問題を形骸化させないといいましょうか、この法案の実効性を生かしていく上で、税調がその問題について、これは山田さんも税調委員をやっていらっしゃいますけれども、税調の小委員長をされた立場で集約をされているわけですが、先生どうでしょうか。
  25. 石弘光

    石参考人 まさに御指摘のとおりだろうと思います。私は、今回の地価税法案代表されます土地税制改革というのは第一ラウンドではないかとかねがね主張いたしております。自民党の方の議論でも、戦後四度目の地価高騰をなくすためにどうしても必要であるということを加藤政調会長がおっしゃっておりましたが、そういう趣旨から申しますと、第一ラウンドだけで話が終わらないだろう。しかし、その第一ラウンドもやはり全く新しいことをやるわけでありますから、それなりに十分な配慮をし、フォローアップをする必要があろうと思います。  そこで、重要な点は、相続税評価額がこれから上がります。その上がったものに地価税がかかりますから、見かけ以上に税負担がふえていく可能性もあります。それから、今年度から固定資産税評価がえが行われ、また三年後に行われるということで、固定資産税評価を一応上げるというスタンスが明確になっております。これが、口で言うと軽く聞こえるのでありますが、意外と言っては失礼でありますが、実際にそれが施行されますと、税負担という形でかなり住民の負担になってきたとき、どういう対応をするかという議論が恐らく数年後に出てくるであろう、このように思います。  そういう意味で、ここ数年間、今回の地価評価を軸といたしました土地税制改革の行方を見守りつつ、次の段階にどうしたらいいかという模索あるいは研究期間に当てるべきではないか。恐らく政府税調もそういう形でこれから第二ラウンド、第三ラウンドの具体的なことも考えつつ、この地価税法案中心としたその後のフォローアップに努めるということにならざるを得ないのではないかと考えております。
  26. 富塚三夫

    ○富塚委員 僕の時間内で堀先生も何か関連質問されたいという申し出がありますので簡潔に申し上げますが、山田参考人に、連合ないしは山田さん個人考え方でもいいですから、この点についてもぜひひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。  繰り返しませんが、あれだけ税調答申で厳しい注文をいろいろつけておっても、実質には十分でない法案が出てきた。この国会で廃案にして出直すという問題もあります。また、せめて修正をして税調答申に近づけられればいいのですけれども、修正するという問題もあります。それから、修正できない場合でも、法律の実効性の監視の問題について、その後の見直しの進め方、今先生もお話ありましたが、税調の取り上げ方の問題などといったことについて、特に持たざる者の側の代表として土地住宅問題に真剣に取り組んでこられている連合の責任者として、現実的にこの問題をどう実効性あるものの展開を考えた方がいいかということについて、所見をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 山田精吾

    山田参考人 持たざる側ということを今富塚先生の方から言われましたが、私自身が実は借家住まいで持ち家がありません。還暦も過ぎまして、今家探しに家内も大変頭を痛めておるような状況で、仕事柄、一時間半も二時間ものところは何とか家があるようですけれども、仕事ができません。別居しなければならぬというようなこともありまして、何でこの年までこういうような悩みを持たなくちゃならぬのか、私自身がそういう実感を持っている立場ですから、特にこの土地住宅を初めとする問題については執念に近いものを自分自身で持っているつもりです。  一番問題は、税率の問題のところは今から〇・二、〇・三でも効果があるんだと言っておられるのです。私どもは、効果は薄いのではないか、だからこの辺までこい。ある意味では水かけ論なんです。私たちとすれば、スタートを切ってもらって、土地動向なり、この影響がどういうことに具体的にあらわれてくるのかということを国民の前にもしっかり示しながら、次の段階、次の段階へと手を打つような形にしてもらう。何か空理空論とまでは言いませんけれども、わかったようなわからぬような空中戦を続けておっても困るのではないか。日が延びて、延びて、またやり直し、やり直しとなったら、いつまでたっても議論倒れで終わってしまうことを大変気にしているわけですから、今までなかったことが、内容は別にして形としてはスタートを切ることは間違いないので、内容の問題がむしろ議論になっていますからね。  それで、先ほど私は、十二月の政府税調答申について私ども考え方は大体整理してありますと言いましたが、一つは、枠組みにおいては基本答申で述べた考え方におよそ沿ったものであると考える、それから、やはり税率が低いこと、基礎控除が高いこと、その負担水準が土地資産としての有利性を縮減する上ではまだ極めて不十分じゃないかというような問題点は、皆さんたちも指摘をされているところです。そういうことがずっとありまして、「土地保有コストに対する意識を高める上で必要不可欠であり、資産評価(時価)に応じて毎年税負担を求める新税の創設の意義は極めて大きいものと考える。」これもそのとおりだというぐあいに私どもは実は思います。「今回の措置を改革の第一歩と捉え、今後、土地に関する各種の情報の収集や新税等の実施状況の把握に努め、その効果や影響を見極めつつ、保有・譲渡・取得の各段階における適正な負担水準等を追求し、より望ましい土地税制の姿を求めるための不断の努力を続ける必要がある。」「今後の地価動向固定資産税評価適正化等を勘案しつつ、機動的、弾力的に見直しを行っていくことが必要である」。  ちょっと時間をとりましたけれども、こういうことで、実はその後、自民党案が出されましても、さらにこれを十二月の段階で税調の意見をまとめて出したということは、先ほどの富塚先生の、見直し問題云々と言われましたが、まさにそのことをこれは答えている内容ですから、私がここで返事をしましても、私が税調の責任者でもありませんので、そこまで際立つたことは言えませんが、考え方については大方の政府税調メンバーの皆さんも同じような考え方ではないかと私は思います。
  28. 富塚三夫

    ○富塚委員 最後に、ちょっとこの法案にかかわる問題とは違うのですけれども消費税の見直しの問題で山田参考人にお尋ねしたいのですが、益税の見直しなど両院の協議会でやっておりますが、食料品の非課税の問題がやはりどうしても国民の側から見ると気になるところであって、さきに自民党の方からも見直しが公約として出されておって、今回それがきいている。ここで一たん見直しを決めてしまうと、当分は見直しの問題もなかなか難しい問題になりはしないかという懸念と、ここでまたある程度の合意を見出さないと定着をしてしまうという懸念といろいろあるわけですけれども、これからいわゆるどのような見直しの対応のステップを踏んでいった方がいいのかなどについて、連合の、あるいは山田参考人考えでもいいですから、簡単にお聞かせをいただいて終わりたいと思います。  以上です。
  29. 山田精吾

    山田参考人 両院協議会でいろいろな議論がされてきまして、本当に感謝をしておりますが、問題は食料問題を初めとする逆進性のところがどうもはっきりしない、そのことも十分私どもは承知しておりますし、私どももそういう方向に向かうことについては賛成です。しかし、国会の両院協議会の状況を見ますと、まとまっているものがあればそれは先にひとつ実行に移してほしい。まとまってない分は引き続き真剣にひとつ議論をして答えを出してもらいたい。なぜそんなことを言っているかといいますと、いや逆進性ができるまで絶対にだめだということであれば、いつまで待ったらそれができるのかなという不安が私どもはあるということなのです。ですから、それを主張される方は、いや来年の三月にはちゃんとこれを決めるから待ってくれというのだったら私どもはそうがみがみ言うことはないと思いますが、どうもその辺の見通しが、ある一点の議論で行ったり来たりしているというようなことでは、消費者の立場からいいますとやはりわかりやすくやってほしいなというのが私たちの実は正直な気持ちです。そういうことをまた各党にもお願いに上がったということで、余り難しく考えてなくて、もっと現実的にわかりやすく対応してほしいというのが私たちの気持ちです。
  30. 富塚三夫

    ○富塚委員 ありがとうございました。
  31. 平沼赳夫

    平沼委員長 堀昌雄君。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 突然ちょっと関連質問で申しわけないのでありますけれども、お話を聞いておりまして一つ感じたことがありますので、ちょっと先生方の御意見を承りたいと思うのです。  これまで大蔵省は長年にわたって、税制というのは土地問題では補完的なものであって、要するに表舞台に出るものではないということを一貫してやってきたのでありますけれども、ようやく今回、それを踏み切ってこの土地保有税地価税ということをやるようになったことを私も、大変大蔵省の主税局というのはかたいところでございまして、私、各局大体物を言って、多くその改善が見られるのですけれども、主税局だけはどういうわけか、源泉徴収などということにこだわって一向にその方針を改めようとしない、非常にソリッドな機構のところですが、今回そういうふうにやってくれたということを高く評価したいと思っているのであります。  ただ、この土地問題というのは、ちょっと今いろいろ税やその他でやっておりますけれども、やはり私は、現在の社会は資本主義社会でございますから、需要と供給で価格が決まる。これはもう間違いなく市場の原理でございますので、まずそこにメスを入れなければならない。要するに土地問題というのは構造的な問題の処理をしなければ解決しないというのが私の考えでございまして、既に、昭和五十六年の四月だったと思いますけれども、大蔵委員会で渡辺美智雄大蔵大臣に対して公式に問題が提起してございます。  そのときに渡辺さんは私の意見に対して、土地の問題については憲法二十九条があるから、そう簡単にあなたの言うようなことはできない、こう言っているのでありますが、私が提案をしましたのは、私、今荻窪に住んでおりまして、高速四号線をずっと参りますと見渡す限り二階建ちなんですね。あの広い部分がほとんど二階建ちで、そこにぽこりぽこりと建っている。私は、供給をふやすということは高層化以外にないのでございますから、高層化をしてやろうというので、とりあえず環状六号と七号の間をひとつ三十年計画で三十階建ての公共的な建物を建てる。そうして、それを全部賃貸住宅にするということで、同時にあわせて空中権というものが売買できるようにしよう。地上から三階まで、地下二階まではその土地の所有者の権利にするけれども、そこから下、三階から上は公共のものだということで空中権を設定して、それは売買ができる、ただし公的なものとしての処理をするというような基本的な構造問題に立ち入らない限り、私は土地問題は解決しない。三十年計画で三十階建てでやりましょう、こういう提案を十年前にしたのでありますけれども、渡辺美智雄さんは、憲法でそういかないと言うのであります。  しかし憲法第二十九条は、「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」憲法二十九条はこう書ておりますので、土地の問題こそ公共問題として私有財産に介入できる最も重要な部分だ、こういうことで提案してまいりました。自民党で住先生がこの問題について、空中権の勉強をしていただいておりましたけれども、残念ながらお亡くなりになったのでありますが、ひとつ石先生も、それから山田さんも、きょうは税制の問題でおいでいただいておりますけれども、経済問題として土地問題を考える場合に、私は、この問題を除いて、需要と供給のバランス考えなくてその他の手段でやることには限界がある、こう考えております。  私は兵庫県でございますが、神戸市は御承知のように北の方の山を崩して、要するに六甲アイランド、ポートアイランド、どんどん山を崩して住宅を建て、それで海を埋め立てて新しい住宅を建て、徹底して供給をふやしておるわけでございまして、私は、それをやはり東京で本格的にやれば全国の地価に大きな影響を与える、こう考えておりますので、両参考人のお答えを一つずつ承りたいと思います。
  33. 石弘光

    石参考人 今の御意見に全面的に賛成であります。土地基本法もでき、憲法二十九条に対して新しい解釈も可能になったと思っております。そういうものを武器にしてこれから御指摘の方に向かうべきだと思います。  ただ、今私ども一つ議論しているのは、都心の高層化というのはまさにそのとおりでありますが、既に住んでいる方をどうするかという問題が恐らく残る。その場合に必ず出てきますのは、長年住んでお年寄りになった方を追い出すのか、税制で追い出すのか、あるいは土地規制で追い出すのか。それを私は西欧流に考えるならば、かえっていいところに移っていただくきっかけになっていいのじゃないかという発想がとれるような世の中になれば、それは恐らく可能だと思います。  ところが、そこまでいくにはまだまだ大分時間がかかる。今三十年とおっしゃいました。十年前におっしゃったからあと二十年の間にそれが実現できればいいかと思いますが、その二十年の間にそういう社会的コンセンサスができるのかできないのか。私は、そういう国民の意識の改革から土地問題の改革に取り組むという姿勢も必要だと思います。私は基本的には全くお考えのとおりにしたいと考えております。できたらと思っています。
  34. 山田精吾

    山田参考人 先生の御高説を聞かせていただきましてありがとうございます。経済面とかいろいろなことを言われますが、土地の問題にしても物価の問題にしても構造的な問題があるのです。市場原理ということがよく議論されます、土地の価格とかいろいろな面で。言葉はいいのですけれども、なかなかそのとおり動いていないのが現状だと思います。  だれがそうさせているのか、これもわかっているのです。そこのところをきちっととらまえながら今先生の言われたことに対応していかないと、動かすことがまた値上げを呼び起こしていくというのが実態なのですね。  この土地の値上がりの最大の、何といいますか、元凶はどこにあったのか、法人なのです。これはどこの調査を見ましても明確になっているのです。ですから、今度政府のいろいろな提案税制上も出ております。率の問題とか基礎控除の問題についてはわあっと出ているのですけれども、別段私はそのことできょう来たわけじゃないのですが、大変大きな規制がこれに加わっていますね。余り表に出ていませんよ。このことも、今度の地価税の問題については我々としてはやはり注目をして対応する必要がある。これはちょっと先生質問に関連しておりますから申し上げておきたいと思います。  そういう点で、一つはやはり、土地の問題というのは需要と供給の関係があることもわかりますけれども、その需要と供給をだれが動かしているのか。国民なのか、だれがこれを動かしているのか。そこのところもきもっとさらにメスを加えなければいかぬ。  ですから、私は、事後対処方式でやっていますから、これが事前対処できるような、地価動向をきちっと把握しながら事前に事前に手を打つ、立派な法律がたくさんあるのですから。何で規制区域なんかをきちっとやらないのか。どうして地価の公示価格を、一物四価なんて言わぬで早く一元化できないのか。やらなくちゃならぬ具体的な問題というのはもう表にずっと出そろっているわけですから、そういうことで私は先ほど抽象的に、ぜひひとつ、もう出そろっているので整理してやれるところはやりましょうやと言ったのは、消費税も含めてすべてそこにあるのじゃないかと思います。  答えになっておりませんけれども……。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもありがとうございました。
  36. 平沼赳夫

    平沼委員長 日笠勝之君。
  37. 日笠勝之

    ○日笠委員 公明党・国民会議の日笠でございます。  両先生には.公私ともにお忙しいところ大変に御苦労さまでございます。早速でございますが、まず石先生に何点かお伺いしたいと思います。  先ほども同僚委員の方もおっしゃっておりましたけれども政府税調答申が出た後の先生のいろいろなインタビュー記事を注意深く読ませていただきました。確かに朝日新聞のインタビューでも、大山鳴動してネズミ一匹であるとか、切り札にはなり得なかったとか、また税経通信三月号にも、先ほどもおっしゃいました、劇薬的なことを考えていたが漢方薬になってしまったとか、一般的には期待外れという評価ではないかとか、こういうインタビューでのお話がございました。  平成二年十二月十九日の「平成三年度の税制改正に関する答申」の中にもそのことが明記されております。切り文でございますが、そこのところだけちょっと読みますと、「総合的土地対策とあいまって果断に税率・控除等を見直し、本税に期待されている役割をまっとうさせるべきである。」こういうふうにおっしゃっておるわけでございます。  先ほど先生はこの地価税法案は七十点から七十五点とおっしゃいましたけれども、先ほどのインタビュー等々、また答申を見ますと、そこまでいかないのじゃないかなという気もいたします。実際に切り札にしようと思えば、一体税率とか基礎控除ほどの程度であれば切り札になり得たとお考えでしょうか。
  38. 石弘光

    石参考人 政府税制調査会土地税制小委員会でも七カ月ほど議論をいたしましたので、その間でいろいろなやりとりがあったのは事実でございます。そこで今の税率が低いあるいは基礎控除が高い等の不満が最後に出て、それが答申にも書いてあったというのは事実でございますし、各委員の中にはそういう意見をお持ちの方が随分いたのもこれまた事実でございます。  私自身も、先ほどから申しておりますように、期待したほど税率あるいは基礎控除の点で実現してない面があるなという気はしておりますので、そういうところから、地価税に限って言えば、大分これを中心にして一生懸命やってきた手前、鳴り物入りでやった割には最後のでき上がりが少し細ってしまったなという感じを持っておりますので、今御指摘のようないろいろな表現を使ってコメントはしたつもりでございます。  ただ、あえてそのときの状況を思い起こして申しますと、あのときと今との事情の違い、あるいはあのときと自民党税調の議論の後の違いが一つございまして、それは既存税制固定資産税あるいは特別土地保有税、これが現行程度ではないかという意味で、それが余り出てこないならば新しい仕掛けが必要であるということから、新土地保有税に対して異常な期待を持って議論を進めていた。ところが、その後のいろいろな事態、あるいは今の政府案に盛り込まれておりますように既存税制の方もかなり頑張る、土地資産価値を減殺するためにかなり頑張るという姿勢を明確に出してきておりまして、それとのかみ合わせで言うならば、今度の地価税法案というものが当初より少し後退したのは既存税制の方の頑張りで十分に補える面もあろう。両方頑張ってしまいますとかなり劇薬になる。そういう点の御指摘あるいは御心配の方もいらっしゃる。その点もわからないわけではございません。  そういう意味で、若干状況は変わったということを踏まえまして、当初批判したよりはややトーンダウンしているというのが、私の地価税の方の評価を高めているというのが現状でございます。新土地保有税を我々政府税調で出した直後に比べますと、新しいことをするという意味で、このぐらいのことでまず最初仕組みをつくるという姿勢が重要ではないか、そういう意見になっております。     〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
  39. 日笠勝之

    ○日笠委員 山田参考人にもお伺いしたいのですが、石先生は七十点から七十五点と言われました。私も点数をつけるのが大変好きなので、いつもこの大蔵委員会で点数をつけているのですが、山田参考人はこの地価税法に点数をつければ何点ぐらいだと思いますか。
  40. 山田精吾

    山田参考人 私は学校の先生ではありませんから、点数のつけ方ができません。
  41. 日笠勝之

    ○日笠委員 その次に石先生にお伺いしたいのが、もちろんこの答申にも出ておるのですが、「土地神話の打破という土地政策の目標に資することとなるものと考えられる。」これも切り文ですが、こういうふうに答申の中の一文に出てくるのですね。いわゆる土地神話打破ということ、これは総合土地政策推進要綱にも出てくるのですけれども、この地価税法案が導入されたら本当に土地神話の打破という土地政策の目標に資すると──固定資産税のこともあるでしょうし、ほかの都市計画法もあるでしょうけれども、ちょっと何となく、先ほどおっしゃったように漢方薬のような地価税であれば土地神話の打破に直接リンクはしなくて間接的なリンクをするような感じがいたします。それで土地神話の打破ということであれば、それじゃ一体どのぐらい地価は下がるのかな、こうなってくるのですが、その点はどういうふうなことを想定されて土地神話の打破ということをおっしゃっているのか、お聞きしたいと思います。
  42. 石弘光

    石参考人 土地神話というものの定義も難しいのでありますし、打破というのはどこまでやれば本当の打破になるかというのもこれまた難しいのでありますが、少なくとも、今何もない、何もないところに今度地価税が入るということから考えますと、少なくとも地価を上げる方には行かないで下げる方に何かしらの大きなあるいは小さな、いろいろな影響があるのは当然でございます。その点、実はだれもまだ予測ができませんで、非常に楽観的に見る人と非常に悲観的に見る人といろいろあろうかと思います。  この地価税の今回の議論を通じて一番重要なのは、実はバブルをどれだけつぶせるかというところに恐らく重さがあったのだと私は思うのですが、期待が大きかっただけに、初めからこのぐらいだということでこれが実現すればそれなり効果があったかと思いますが、初め何か鳴り物入りでやったという点から踏まえますと、バブルの崩れ方はやはり当初よりは小さい、そういう意味では土地神話の打破に資する程度が当初よりは落ちたかもしれません。しかし、先ほどから言っておりますように、何もないところから比べますとこれはこれから非常にじわじわ効いてくる税。先ほど申しましたように相続税評価でやりますから、相続税というのは年々変わります。それに対して〇・三なり〇・二がかかるということは、ある意味では非常に効いてくる面もあろうかと思います。そういう意味で、何%と言える人は恐らく今いないと思います。  と同時に、実は今土地が少し下がり出しておりますが、これは私の見るところ、やはり土地関連融資の総枠規制が非常に効いてくる、それから土地基本法ができて、これから土地規制も厳格にやるよといったアナウンスメントエフェクトも効いておる。総合力でやるわけでありますから、恐らくそこに土地税制が絡んできたという意味で、土地税制だけ取り出して何%という計算は仮にやっても余り実効を伴う結果ではないなと僕は見ております。しかし、何かしらというのか非常に大きな程度というのかわかりませんが、表現は難しいのでありますが、地価税というのは土地神話の打破に、程度の差はあれ資するものであるということは確信いたしております。
  43. 日笠勝之

    ○日笠委員 同じく「平成三年度の税制改正に関する答申」の中に、「総合的土地対策とあいまって果断に税率・控除等を見直し、本税に期待されている役割をまっとうさせるべきである。」これが今度の地価税法案附則第八条の検討、見直し事項とリンクするものだと思うのです。この附則八条の条文に「少なくとも五年ごとに、固定資産税土地評価適正化等を勘案しつつ土地保有に対する税負担全体の状況等を踏まえて検討するもの」、こうあります。ですから、固定資産税評価割合がどっと上がってそれ相応の保有コストを負担をしなければいけない、そこへ同じ、第二固定資産税とも言われていますこの地価税地価税固定資産税両方の負担が非常に高くなると、この「果断に税率・控除等を見直し、」というのは、控除は下げて税率を上げるというふうにも私はとれるのですが、附則八条を読んでいくとそうじゃなくて、どっちかというともう下げよう、そういう何か附則八条というふうにもとれるのですけれども先生、この附則八条の見直し事項はどういうふうにとればいいとお考えでしょうか。
  44. 石弘光

    石参考人 どういう状況を想定して議論するかというのは難しい問題だと思います。私は当初から、個人的には固定資産税がもっと頑張ればこの新土地保有税議論というのはもっともっと縮まったのだと思います。と申しますのは、固定資産税というのは既に歴史があり、それだけ徴税機構があり、ネットワークは全国津々浦々あり、居住用までカバーしているわけであります。したがって保有税を高めるときには、恐らく頑張れば一番いい保有税になると思いつつも、地方の方の御意見を伺うと、やはり地価が上がったからといって地域住民の負担をどんと上げるといったような性格の税ではない。これはあくまで応益原則に基づき基礎的な公共財の財源なんだという、これまた非常によくわかる議論なんですね。  したがいまして、五年ごとに見直しという意味は、そのときの地価状況の程度にもよりましょう。それから、これからどれだけ頑張って本当に地域住民の納得のいく範囲において評価がえができるのかという問題もありましょう。そういう意味では私は、今の御指摘の附則八条でございますか、それはひとえに地価動向と今後三年ごとに見直される固定資産税評価がえの進捗状況と兼ね合わせて、上げる方にも下げる方にも両方に見直しの方向に使うべき条項ではないか。そういう意味地価税というのは、固定資産税と相助け、保有コストを高めて本来の資産価値を減殺するというねらいに沿った税としてこれから見直すべきで、つまり独走してやるという立場にないというのは、今の附則でいいのではないかと考えております。上下に使っていいのではないかと思います。
  45. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、また、昨年十月の「土地税制あり方についての基本答申」にはそこのところはこう書いていますね。このときは新土地保有税(国税)となっておりますが、「新税は固定資産税と性格を異にするものであり、その間で負担の調整を図ることは適当でないと考える。」こうあるわけですね。あくまでも新税は固定資産税と性格を異にするものである。固定資産税というのは行政サービスの対価でもあるわけです。そういう意味では、所得資産消費というバランスの面もある。直間比率のこともあるでしょうし、それからまたこういう資産課税は日本は非常に弱いということもあるでしょう。それから土地高騰を抑えるということもあるでしょう。ですからこの基本答申にあるように、固定資産税と性格を異にするものであるのだからその間での負担の調整を図ることは適当でない、こう言いながら、この八条には「固定資産税土地評価適正化等を勘案しつつ」、先ほどおっしゃった上げることも下げることもあるのかもしれませんけれども保有コストの総額がそんなに上がると下げることもあるというふうにも読めるわけですが、先ほど申し上げました、固定資産税と性格を異にするものである、だからそういうことは考えなくて地価税地価税の世界でいきなさい、こういうふうに基本答申には書いているのではないかと思いますが、その点はいかがなんでしょうか。
  46. 石弘光

    石参考人 今の御指摘、非常に重要だと思います。つまり地価税の性格をどう理解するかというときに、既存税制との概念上の違い、あるいは納税者立場からしてどうなんだという問題、非常に重要だと思います。  お答えすべきことは、基本答申を書いたとき、政府税調で新しくこの新土地保有税を出したときには、あくまで新しい仕組みをつくるわけでありますから、既存税制との違いというものを明確にしなければいけません。そういう意味で、既存税制の方は本来の趣旨に従った形の固定資産税という立場があるだろう、しかしそれでは不十分だから新税として保有税を入れますという趣旨で、違った面を大いに強調したわけであります。ところが、現に施行の段階になり、実際に納税者が想定されてきますと、今度は納税者立場に立ってこれは考えなければいけない。そういうことになりますと、納税者立場になりますと、固定資産税でやられようが地価税でやられようが、仮に土地を持っていれば負担というのはかかってくるわけであります。つまり国税の所得税で払う、住民税の地方税で払うのと同じような立場納税者の方にはあるわけでありまして、そのときにはやはりトータルとしての土地保有のコスト増というものを加味しないといけないだろう。したがって、かける方の理屈からいいますと違う税をかけるけれども、払う方の側からいえば当然のこと、そこの一体化したところの負担を調整する。したがって議論としては、かける方と払う方、納めていただく方という議論の使い分けというのは重要ではないか。それが今の段階になりますと、五年ごとに見直すというのはその後者の方が出てきたというふうに御理解いただければいいのではないかと思います。
  47. 日笠勝之

    ○日笠委員 それから、今後の参考のために石先生にもう一問だけ最後にお聞きしたいのですが、これも先生インタビューでおっしゃっているのですが、資産課税の再構築が今後に残された議論である、これは税経通信三月号に出ておりました。先ほど言いました所得資産消費というバランスのとれた課税ということも当然あるのでしょうけれども、これで第一歩ということは言えると思うのですけれども、さらに資産課税そのものに対する議論、どういうものがあり、また、第一段階が済んだとすれば第二段階、第三段階と準備をしていかなければならない。どういうことを想定されておっしゃっておられたのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  48. 石弘光

    石参考人 思い起こしてみますと、ここ四、五年あるいは五、六年になりますか、中曽根総理、竹下総理ときたときに、シャウプ勧告以来の抜本的見直しという形で税制改革が進んでまいりました。そのときのスローガンはやはり、消費所得資産の間のバランスを回復するということでございました。  そこでずっと見てまいりますと、消費税が入り、その前に例の利子とキャピタルゲインのところの強化が図られ、そして今回土地になりました。そうずっと見てきますと、何がやはり残っているかといいますと、総合的に見た資産に対する課税の是非の問題が残ると思います。  そこで、ストックの時代と今言われておりますように、フローからストックへ人々の関心が移り、所得格差はもちろんのこと、資産格差ということが非常に国民の間で問題にされてまいりました。それは土地が絡んでまいっているわけです。そうなりますと、経常的な財産税あるいは経常的な資産税という動きは、私の頭の中では、アカデミックなレベルではこれから議論しなければいけないだろう、これが現実の税制改革に結びつくかどうかというまではまだかなり時間を要すると思いますが、我々財政学をやっている者、あるいは税制の研究者の中には、土地税制の後、もうちょっと課税対象を膨らます、つまりその後金融資産等々の土地以外、そのものを入れた経常的な財産税といったようなものが我が国税制に必要なのか必要ではないのか、その是非を少し学問的に研究してみる必要があるだろう。これは主要先進国でもあるわけであります。日本はとかく資産税が高いと言われても、相続税が高いのでありまして、経常的な財産税において必ずしもほかに比べて、現になかったわけでありますから。しかし、シャウプのときに富裕税というのがございまして、そういうものを連想するのかどうか、これまた人によって違います。  いずれにいたしましても、私の申しておりますのは、我々、いわゆる学者と言われる人々の間にそういう問題意識が芽生え、私もそういう関心があるということを、この土地税制の見直しの次の問題としてとらえる、こういうことでございます。
  49. 日笠勝之

    ○日笠委員 山田参考人に今度は何点かお伺いしたいと思います。  先ほどもおっしゃっておられましたけれども連合政策懇談会で、これは昨年の十二月ですか、提言があったそうですが、そのときの内容をかいつまんで言うと、一%以上の税率が必要であるとか、いわゆる単価控除と言われる一平米三万円というものですね、これは面積比例控除と大蔵省さんでは言っているそうですが、まあいわゆる単価控除、余りにもあからさまに大企業優遇措置であると、どっちかというと非常に批判的な懇談会の提言でなかったかと思うのです。  そこで、後ろにお座りの名井さんも、未熟児でも流産するよりはいいんだ、こういうようなことで、とにかくつくるんだというふうなことも最近おっしゃっているようですし、私たちも原則的にはそういうスタンスなんですが、では実際どの程度、一%の税率が必要とあるのですが、税率の問題、それから単価控除、先ほど言いました面積比例控除、これは要らなかったのではないかとか、これは政府税調答申にもこの単価控除というのは出てこないのですよね、それが突然出てくるということもありまして、この単価控除の是非、必要であるか必要でないか、この二点をちょっとお伺いしたいと思うのですが。
  50. 山田精吾

    山田参考人 私の立場からいえば、ぜひやってほしいという気持ちなんですが、しかしそれを決めるのは国会ですから、ある一定の期間があって結果的にどうなるのかということは、これはだれでもわかることなので、今の段階では私たちの気持ちとしては、大いに議論をしてもらって、どうしてこういうことになったのかということを国民にわかりやすくして、次にやはりつなぐような展開をするためにも、その目標は今後私どもは持続してやっていきたいということを申し上げたいと思うのです。
  51. 日笠勝之

    ○日笠委員 石先生、申しわけない、もう一問。  単価控除の話なんですが、これも昨年の十月の「土地税制あり方についての基本答申」でございますが、「控除の基準については、保有する土地金額と面積の二つ基準を併用することが考えられるが、土地資産価値に着目する新税の趣旨からは、基本的には金額基準による方向で検討することが適当である。」それから私たちは基本答申等々踏まえて、ずっと新聞の報道なんかを見ている限りは、この一平米三万の面積比例控除、いわゆる単価控除は全然想定をしてなかった、ところが突然法案に出てくる、こういうことなんですが、それの乖離、ギャップはどうお感じになるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。     〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
  52. 石弘光

    石参考人 先ほどもお答えいたしましたが、単価控除というのは私どもの中では議論をしておりませんでした。そして、今回の趣旨から申しますと、土地資産価値にかける、そうなりますと、五億円とか十億円とかいう、要するに地価の低い、資産価値のないものを非課税にするという措置があれば十分ではないかと私は個人的に思っておりました。まして十億円とか十五億円とか、当初より大分幅が広がりましたから、そういう意味では面積基準を加味したようなことは恐らく必要なかったのじゃないかと思いますが、ただ、個人の居住については一千平米等々の面積で、それより高いものをやるというところへ生かされていると思います。そういう意味では、いろいろな折衝過程、いろいろな議論があってしかるべきだと思いますが、我々が出したことから次の議論にそれが移っていったというふうに理解しております。
  53. 日笠勝之

    ○日笠委員 今度は山田参考人、お願いいたします。  大蔵省が予算委員会へ提出された資料によりますと、この地価税が導入されたならば三千から四千億円ぐらいの増収になるだろう、納税義務者が大体五万人(社)ぐらいじゃないか、こういう資料を出されております。  私たちとすれば、大蔵省は精密な計算をされるところでございますから、三千億や四千億はこれは税収として入ってくると思い切っておるわけでございますが、では、ならば、これを一体何に使うのか。増収が目的ではないということはわかります。その点についても答申にはいろいろと記載をされていますね。「新税の税収について、その一部は所得課税の減税と合わせ、土地対策等に資するという観点から、歳出を通じ国民生活に還元することが適当ではないかとの意見もあった。」こういうことで所得減税というようなことも想定されるということでございますが、一つの我が党の主張でもございますし、連合さんの主張でもございます、いわゆる働く人たち、額に汗を流して働くサラリーマンの中堅層の方々は、最近のいろいろなアンケートがここ一週間以内に二回も出ておりますのは、もう持ち家はあきらめた、今後私はずっと賃貸住宅でもいいんだ、こういう方が三割も四割もいるという一つのアンケート調査もこれありでございます。  そこで、私たちが常日ごろから申し上げておるのが家賃控除ないし家賃補助制度、こういうものをこの増収分で充てたらどうだろうかと。国税でございますから、所得減税というのはいわゆる家賃控除、税額控除にするか、それは別といたしましても、そういうものに当てはめてこれを活用していく、すると、資産課税でございますから、それは公平な分配ということにもなろうかと思うのです。そこで、増収分について家賃控除制度であるとか補助制度を私はぜひこの財源でもって導入すべきであろう、こう考えておりますが、お考えはいかがでございましょうか。
  54. 山田精吾

    山田参考人 当初、税調でその文章ができるときには税率がどのくらいかわからなかった。私どもは私どもで一%ぐらいを想定しましたから、サラリーマンにこれは相当な減税ができるなというような基本的な考え方を今でも持っているのですけれども、しかし、我々の立場からいいますと、今先生が触れられました財源から見まして不十分でありますけれども、やはり家賃控除なんかを基本に据えながら、言うなればその増収分に対する対応をしていただくと大変ありがたいというのが私たちの考え方だということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  55. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、これは石先生にまた一問お願いをしたいのですが、国税ですから、所得税で家賃控除制度等々で減税をする。これは、固定資産税評価割合が上がりますね、それで固定資産税も増収になるわけですね。これは地方独自の財源ですが、地方は、所得税を納めてない、いわゆる減税対象にならない人でも家賃は払うわけです。そういう方々に対して補助制度という、国は所得税控除で減税、国税、それで、地方税で増収分の固定資産税の分は家賃補助でいくという、すなわち、高齢者の方々の家賃補助であるとか、一人住まいの方であるとか、いろいろなことが想定されます。現実に東京二十三区でも、渋谷区を除いて二十二区では高齢者への家賃補助制度を新しく導入してやっておるわけなんですね。そういうようなことも含めまして、固定資産税の増収は、これは地方税のことですから権限外かもしれませんが、一つ個人的なお考えとして、いわゆる家賃補助制度で分配をしていく、こういう手もあるのではなかろうかと思いますが、御意見はいかがでしょうか。
  56. 石弘光

    石参考人 私は、どのくらい税収が出てくるかによって、減税に充てるか、あるいは土地政策関連の政策に充てるかというのは意見が変わってくると思います。仮に地価税が一兆円でも出てくれば、それだけやはり負担が重くなるというので、法人税、所得税を減税するという立場もあり得ましょう。それから、固定資産税評価に伴って非常に高くなれば、それは住民税に還元して住民の負担を少なくするという手もありましょう。  今御指摘の、家賃控除を含めた住民税、所得税の減税でありますが、私は基本的に余りそれに賛成じゃないのですね。と申しますのは、今地価税は三千億から四千億という、額が低い。そう薄く減税でばらまくよりは、それは土地の先買い権のときの財源にしたり、さまざまなインフラとかなんかの方にまとめて使うのも一つの手ではないかと私は考えておりますし、私は、所得税の一つの欠陥は控除がやたらに多過ぎることだと思っています。今それにまた新しく、理由はともあれ家賃控除というカテゴリーをくっつけるのは、ある意味の不公平を生むのですね、これは。持たない人からすると、住宅政策というのは非常に重要だと思います。ただ、いろいろな形の控除がさまざまに使われております、福祉的に。それにさらにそういうものがつけ加わるのがいいかどうかというのは、私は自分の税の研究をした立場からいいますと、少し検討する必要があるだろう。つまり、持っていない人のためにやるという大義名分ができますと、それがすべていいかと思いますが、その財源をほかにどう使うかというほかとの代替的使用なり、ほかの恩恵を受けられない人との間の新たな税負担バランスということも考えますと、ちょっとそう簡単にいかないのかなというのが私の意見です。
  57. 日笠勝之

    ○日笠委員 住宅を取得する人は、住宅取得促進控除というのがございまして、今度租税特別措置法で大幅に緩和というのですか、大幅にさらに優遇しましたね。一年延ばすとか、さらに一千万円の分は認める、結論的には、最高二十五万円、六年間百五十万円を、住宅を取得する人には控除。いわゆる税額控除ですから、百五十万円というネットで六年間でございますが、なる。だから、持てる者はそういう税制がある。持たない、賃貸住宅に住んでいる人は何もありません。消費税もかかっていますしね。そういう意味では公平を欠くのではないかなというのが一つと、それから、三千億から四千億という税収でありますと、実は、建設省と労働省が一応の試案を出しました。それは、家賃控除制度ということで、所得一千万円以下で五十平米未満の賃貸住宅の場合は月額五万円を最高とします、五万円が最高、だから最高でも六十万円の控除額とか、それ以上の人の場合にはこれはもう最高十万円までであるとか、そういういろいろな条件を設けて試算をいたしますと、減税額は三千四百億円になるのです。ちょうどぴったりなんですね、これ。だから、そういう意味で、先ほど山田参考人にも申し上げたのは、ちょうど三千億から四千億の国税として増収がある、それを、だから、家賃控除、一千万円以下のいわゆる中低所得者に対して六十万であるとか、それぐらいの上限を決めてやればちょうど三千四百億円で、まさに示し合わせたようにうまくいくのではないかな、こういうことで申し上げておるわけであります。これは我が党の政策でもございますから、ぜひひとつまた政府税調の中で機会があれば議論をしていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。
  58. 平沼赳夫

    平沼委員長 正森成二君。
  59. 正森成二

    ○正森委員 まず最初に、石参考人にお伺いいたします。  石参考人は一橋大学教授という資格でございますが、全銀協の「金融」という雑誌がございますね、その九一年二月号に「土地税制について──その審議経過と問題点──」という論文をお書きになっています。拝見させていただいて非常に勉強になりましたが、そこにお書きになっている二、三の点について伺います。  そこでは、私が拝見しますと、自民党の土地税制改革大綱というものについてお触れになりまして、それで、「そのでき上りは、ある程度予想されたとはいえ、先の政府税調の「基本答申」の考えを大幅に後退させ、骨抜きにしたという印象を免れえない。果してこれで、地価高騰から生じた種種の土地問題を解決するのに本当に役立つのか、甚だ心許ないといえよう。」こういうふうにお書きになり、それからしばらく置きまして、「その改革の方向は政府税調の主張が生かされている。しかし問題はその中身である。とりわけ新土地保有税は、土地問題解決の切り札には到底なりえないほど形式的な代物に変質させられてしまったといってもよい。」先ほどの七十五点という評価に比べると非常に厳しい評価がされておられる。  ほかにいろいろございますが、それからさらに後には、「「土地神話の打破」という目標は、かえって遠のいた感じさえする。資産格差はそのまま温存され、その是正は文字通り画に描いた餅となった。「持てる者」の政治力はやはり強かったとの印象を禁じえない。」こう言っておられます。  詳しい中身は省略いたしますが、こういうぐあいにお書きになったその一番の根本はどこにあるのか、ごく簡単に、要旨だけ説明してください。
  60. 石弘光

    石参考人 「骨抜き」とか「切り札」とか「なりえない」とかという言葉を使いましたのは、地価税税率が予想より低かったということ、それから、やはりさっき言った単価控除あるいは基礎控除の水準が上がってしまったというところからきております。ただ、今御指摘いただきました点は地価税に関する言及のみであります。さらに、後から御質問があるかと思いますが、私はほかの点については高く評価しておりまして、そこのバランスは再三説明しておりますようにとって、総合的に七十五点と言っているわけであります。  七十五点という意味は、日ごろ何点ぐらいとっている人から見て七十五点かということで大分違ってくるわけですよね、学生時代何点とられたかよくわかりませんが。つまり、百点と六十点の間の真ん中だという意味で七十五点と言っているわけでありまして、それを、落第点を五十点と見るか四十点と見るかでは七十五点というのは随分幅がありますので、合格点を六十点と見れば七十五点というのは大したことはない。その辺は、点数はこだわってもしようがありませんので、ちょうど中間で、それほどハッピーではないけれどもそれほど決定的にけなすことではないというふうに受け取っていただければいいかと思います。
  61. 正森成二

    ○正森委員 この論文を拝見いたしますと、税率が低いということのほかに、先生の論文では「とりわけ新土地保有税を骨抜きにしたのは、単価控除であろう。これでもって地方の工場敷地などが課税対象外となり、大企業の税負担は特に軽減されることになった。」という御指摘がございます。事実、これは「週刊ダイヤモンド」に載っているのですが、それを見ますと、「例えば新日鉄は当初の税率一%、基礎控除なしでは三百億円の税負担が、四十億円まで後退した。」これは「ダイヤモンド」ですが、「後退した」という表現を使っております。こういう点について先生も同意見でございますか。
  62. 石弘光

    石参考人 再三の話で申したかと思いますが、それは全く同意見です。
  63. 正森成二

    ○正森委員 それでは、山田参考人にちょっと伺います。  同じ論文の冒頭の部分で、石一橋大学教授はこう書いておられるのです。   そもそも今回の土地問題は、一九八〇年代後半より始まった戦後三度目の異常な地価高騰に端を発したものである。とりわけ東京圏を中心とした大都市の地価高騰は激しく、地価公示価格でみて五年間で商業地は二・八倍、住宅地でも二・三倍に跳ね上った。過去二回の地価高騰と比べ、今回の地価高騰の最も大きな特徴は、地価水準が勤労所得の伸びとかけ離れてしまったという点にある。平均的サラリーマンは一生働いても自分の家を購入できず、サラリーマンの夢は無残に打ち砕かれた。土地の値上りが庶民の切実な問題として、世間に登場してきたわけである。それだけ今回の土地問題は、社会問題化していたといえよう。 こう言っておられます。  この認識は私も同じでございますし、山田参考人は恐らくいろいろお考えがおありと思うのですね。サラリーマンとしてどうすべきか、あるいは企業としても考えなければ働く意欲が失われていくというような点があろうかと思いますが、こういう点について山田参考人の御見解を承れればありがたいと思います。
  64. 山田精吾

    山田参考人 連合にはいろいろな産業別の組合が参加しておりまして、税制の問題になりますとそれぞれの立場の発言が従来からもいろいろありました。  今回の地価税の問題をめぐりましては、はっきり申し上げまして連合は基本的にきちんと整っております。ということは何かといいますと、それは会社人間か社会人間かということを盛んに言われている時代で、私どもは、やはりすべての環境条件を整えながら社会人間に早く転換をすべきじゃないかというような生活者の立場というものを主張していることです。その意味では、従来型の発想からいけば、会社のこともそれは心配かもしれぬけれども、自分のことの方が心配だというのが、みんなの気持ちがそういうまとまりになっているのだろうというぐあいに私は受けとめております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 終わりますが、もう一つ聞いていいですか。  会社では、戦後の一時期を除きまして余り社宅を建てなかった時期があったのですが、最近はまた社宅を建てるという方向が出てきているのですね。これは企業にとっては遊休地の活用という面もございますが、同時に、従業員を確保しなければ、大都会では適切な従業員を確保できないという点があることですが、同時にそれは、社宅を提供できる土地も持っており、資金もある大企業と、人手不足に悩む中小企業との格差を広げているという面があるのです。山田参考人は全体の労働者代表ですから、これらの点について何か御意見があればお聞かせください。
  66. 山田精吾

    山田参考人 この土地の問題も格差の問題だ。持てる者、持たない者、いろいろな面の格差が出ているのです。大企業と中小企業、地域格差の問題、男女の格差の問題、いろいろなことがありますから、そのことをやはり政策的にはきちんと真ん中に据えて今の社宅の問題なんかも考えてみる必要があると思うのです。  ですから、企業が社宅をつくることについて、つくるなとかつくれとか、そんなことは言うような立場じゃありませんから、それは自主的におやりになったらいいと思う。そのことがまた何か国の税金との絡みで云々かんぬんということになると、これまた不公平を呼んでしまうということがありますから、社宅の今後のあり方について我々としては結論はまだ出しておりませんけれども、どういう社宅のあり方というのが公平な面からいっても正しいのかということについては、早急にひとつ見解をまとめていきたいな、しかし、基本的考え方は、先ほど申し上げました点をきちんととらえてやっていきたい。  それからもう一つ、大企業と中小企業の、住宅を含む福利の関係についての格差をどう是正するかということで、往々にして大企業がやっているような形を中小企業に追い求めていくというのは、やはり本当に無理があると私は思います、賃金問題、労働時間の問題で追われっ放しですから。そういうものこそ国としても地方としても、福利関係でいったらそこに無理を言うのではなしに、いろいろな政策面からひとつ施設を含めた支援体制をもっと具体的に政策の面でも進めるのが正しいのではないかというぐあいに私は思っております。
  67. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  68. 平沼赳夫

  69. 高木義明

    高木委員 山田参考人にお尋ねをいたします。  御承知のとおり、主要先進国では例を見ない土地問題が深刻化をしておりますが、この異常な土地高騰に対しては特にサラリーマンが苦しんでおられる。だからこの苦しみを何とか救うためには、今かかっております土地保有税税制改革あるいはまた都市計画の再構築、そしてまたいわゆる土地本位と言われる金融の是正、こういう三位一体となった対策が、このサラリーマンの願いをかなえる大きな課題であろうと思っております。同時に、サラリーマンの年収の四倍から五倍で良好な住宅が持てる、こういうことをかなえるのが今の私たちの政治的な一つの責務であろう、こう考えておるのですけれども、現実にそういう願いを持って地価税というのが今国会にかかっておるわけでございます。  この地価税、それぞれ経過がございますけれども、現状のこの上程されておる地価税に対して、本当にサラリーマンがそういう願いとするところの地価が下がっていくのかということが率直な今の注目された点ではないかと思っておりますが、その点について、まず連合としてどのようにお考えであるのか、お尋ねをいたします。
  70. 山田精吾

    山田参考人 せんだって日本経営者連盟と連合と話し合いがありまして、一致しました。鈴木会長は、やはり一%くらいばんとやるべきだ、こういうものはショック的に投げ込まないと成功しない、そして効果が出れば率を下げたらいいじゃないかというのが日経連の鈴木会長の発言でした。連合もほぼ同じような見解を持っているのですが、どうも物の考え方二つ流れているな、もうじわじわ余り影響ない程度に形をつくってきた、目標はやはり地価を下げなければいかぬけれども、入り口の段階では低目から、いや高目からショック的にいけという両論がいろいろなことで交わされているのだろうというぐあいに私ども思っておりますが、結論からいいますと、中身の議論は今から国会でもぜひひとつ徹底してやっていただいて地価税を実現してほしいな、それがサラリーマン立場からいう、我々が一貫して言っている基本的なことです。  もう一つ大事なことは、その四倍から五倍と言っているのですが、決定的なのは、地価が高いから住宅を買えないのですから、やはり地価を下げるところに焦点を置いてもらわないと絵にかいたもちに終わってしまうのではないかということを繰り返し繰り返し私どもは今日まで言っておりますから、この税制の面と政策の面と両面から土地住宅の問題は攻め立てていかないと成功しないのじゃないか。  結論は、貯金をするよりも土地を持っておった方が得だ、ここを具体的にどう破っていくかというところが一番のポイントだろうというぐあいに私どもは思っております。
  71. 高木義明

    高木委員 私たちは、下がるか下がらないかという一つの大きな注目点があるわけですが、何とかこの税制改革によりまして地価が引き下がるということを願ってやみません。しかし同時に、上質な住宅あるいは宅地を供給するという方策も大事なことでありまして、そういうことにつながるものでなくてはならないだろうというふうに思っていますが、いわゆるサラリーマン、勤労者の立場に立ってそういう供給面に対するお考え、方策を考えられておられれば、この際お示しいただきたいと思っております。
  72. 山田精吾

    山田参考人 二点あると思います。一つはやはり法人なり企業が持っている低・未利用地、これをもっと開放してほしい。それから都市型の農地、実際余り有効的に使われていない、そういうところをどういうぐあいに供給してもらえるのか。そういうところが目につく二点だと思います。もう一つつけ加えれば、国公有地をどうするのか。これもいろいろ、売れという主張もあるし、もっと厳正にやれというような主張もありますけれども、余り変なものに使ってもらわぬで住宅の方にやってもらうのがもう最高だ。今度の都知事選でも東京湾岸の話も出ていますが、それはいろんなことがあるでしょうけれども、やはり住宅住宅ということで当面やってもらうことが、今先生の言われたことにこたえる道じゃないかというぐあいに私は思っております。
  73. 高木義明

    高木委員 次に石参考人にお伺いをしますが、まず政府税調としてはこの土地保有税を国税として創設をする、こういう答申をされたわけでございます。当初は、広く薄く土地保有に対して課税する、こういう位置づけがあったと思うわけですが、しかしその後、聞くところによりますと、自民党税調あたりでの議論の中で固定資産税、いわゆる地方税の固定資産税の適正化というものを前提とするという議論がありまして、すなわち土地の利用価値への負担ということで時価の、公示価格の七割ぐらいに引き上げるべきだ、いわゆる適正化すべきだ、こういう議論があったわけでございます。したがって、地価税につきましては固定資産税の分を除いた資産価値課税をするという意味合いから、当初の広く薄くというのが限定された課税ベースになってしまった、こういういきさつがあると私は思っております。  しかし、本当に固定資産税の見直し、いわゆる適正化がされるかどうか、私はかなり大きな問題があるし、疑問が残ります。したがって、この適正化がきちんと行われるまでは税率をある程度高めにして、そして課税ベースをある意味で広げてやっていった方が地価対策になる、こういう意見もございますが、その点についていかがお考えでしょうか。
  74. 石弘光

    石参考人 まさに御指摘のところが一番問題になったところであります。したがいまして、五年間、固定資産税がどのくらい改革に乗り出すかを見ましょうという、言うなればそれが僕は五年間の意味だろうと思っております。今年度から評価がえが行われました。それから七割という数字は最近は消えてしまったようでありまして、一定割合になっております。というのは、どう考えても七割まで上げるのは難しいんじゃないかという線がやっぱり内々出てきているんではないかなという感じがいたします。と申しますのは、東京というのは地価公示の二割です。それを七割にしたら三・五倍に上げるわけですね。その三・五倍まで評価を上げられるかどうかという問題が、技術的あるいは住民のサイドの不満を見て、あると思いますし、それから、年来主張しております固定資産税の性格論ですね、応益原則からいって、地価が上がったからといって公共サービスをふやさないのにそんなに上げることはないじゃないかという議論が恐らくまた出てくるだろうしということで、私はそこは目標は目標として頑張っていただくしかないとは思いますが、そう予定どおりはいかないだろう。そうなれば、今御指摘のようにやっぱり地価にかける地価税というものの独自の存在理由というのはあり得るわけでありまして、そういう意味でそれを大いに活用すべきという本来の趣旨、これを大いに生かすべきだと思っております。ひとえにやっぱり既存税制の方との兼ね合いで見ていかなきゃいけないという意味で、五年間の執行猶予があるというふうに理解しております。
  75. 高木義明

    高木委員 時間も限られておりますので終わりにいたしますが、不確定な固定資産税の引き上げを前提とした地価税というのは問題があると私は思っておりますし、初めに狭い課税ベースありきという考え方はどうかな、いかがなものかなと私は思っております。要するに実効が上がるか、中途半端に終わってはならない、そういう気持ちが常にしてならないのですけれども先生最後にその点についてどうお考えかお伺いいたします。
  76. 石弘光

    石参考人 時間も限られております。簡単に申し上げます。  やはり私は、今の段階で必要なのは、中途半端になるおそれもあるかもしれませんが、仕組みをとりあえず税制の中に入れるべきだと思っております。それからいろいろやり方というのはあるんだろうと思います。何も入れなくてどうこうという議論は非常に難しい。そういう意味で私は、若干譲歩するあるいはセカンドベストであれという思想が強くなっても、この地価税法案中心とした新しい仕組みというものをこの際大いに議論し、問題点も残しつつでも結構でございますから、それは導入の方向に図るべきではないかというふうに考えております。
  77. 高木義明

    高木委員 ありがとうございました。
  78. 平沼赳夫

    平沼委員長 両参考人には、お忙しいところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。御退席をしていただいて結構でございます。  小野信一君。
  79. 小野信一

    ○小野委員 社会的にも経済的にも政治的にも土地問題が焦眉の課題となりましたけれども、論者によるあるいは識者による発言を聞いてみますと、土地問題の焦点が非常に多くて、何が中心課題なのかわかりかねる場合があります。  そこで国土庁にお尋ねしますけれども土地問題の解決とは何を解決することになりますか。どういう状態になれば土地問題は解決した、こう言えるのでしょうか。
  80. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 お答えいたします。  今回の地価高騰によりまして、御承知のように国民の住宅取得が著しく困難になりましたし、資産格差の拡大によりまして不公平感が増大するあるいは社会資本の円滑な整備を妨げる等、我が国の経済社会に重大な支障を生じさせていると認識しているところでございます。そのため政府といたしましては、去る一月二十五日に総合土地政策推進要綱というものを定めまして、そこにおきまして今後の土地政策の目標というものを明確にいたしております。  三つばかりあるわけでございますが、一つ土地神話の打破、それから二度と地価高騰を招来しないようなそういう構造的、制度的枠組みを構築する、それと地価問題でございますが、土地の利用価値に相応した適正な水準まで地価を引き下げる必要があるという基本的な認識によりまして、これから各般の施策を進めていこう、こういうことにしておるわけでございまして、端的に申しますれば、土地問題というのは、土地の利用の著しい錯綜、利用秩序の混乱というものと地価問題ということに収れんできるんではないか、かように考えております。
  81. 小野信一

    ○小野委員 土地問題の中心土地を有効に利用すること、もう一つ地価である、こう答弁をいただきました。そこで、この有効利用というのは、国家的、社会的な見地から判断されなければならないものであろうと思います。だとするならば、何が有効利用であって、だれがどのようにして判断するものになりますか。
  82. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 土地の利用につきましては、ただいま申しましたように、土地基本法の第三条に適正な利用、計画に従った利用ということを明確にしております。これは土地基本法の述べております四つの基本理念一つでございます。  ここでは土地の特性、すなわち「その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて適正に利用されるものとする。」また、その「適正かつ合理的な土地利用を図るため策定された土地利用に関する計画に従って利用されるものとする。」というように法律が明確にしておるわけでございます。これを少しかみ砕いて申しますと、土地についてはあくまでも利用財、公共的性格の非常に強い利用財でございまして、国民全体の利益を増進する上でその利用のあり方というものが常に問われるべきものである、かように土地基本法が認識しているところであると理解しております。
  83. 小野信一

    ○小野委員 だれが有効利用であると判断するのかと聞いているのです。
  84. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 有効利用と先生がおっしゃるのは、土地基本法で言う適正な利用、計画に従った利用ということと同種だと存じます。したがいまして、その地域の自然的、社会的、経済的、文化的諸条件に応じていかに利用されるべきかということが土地利用計画上きちっとされる必要があるという前提に立ちまして、その利用計画に従った適正な利用というのが私ども考えている土地の有効利用ということになるわけでございます。  具体的には、広域計画、もっとぐっと即地的な細かい現地に根差した計画がございますが、国、地方公共団体が適正に定めるそういう計画に従った利用というものが有効利用であろう、かように考えております。
  85. 小野信一

    ○小野委員 政府の総合土地政策推進要綱によりますと、今答弁にもありましたように、第一に土地神話の打破。二つ目地価の適正水準への引き下げ。その内容は、住宅地は、中堅勤労者が相応の負担で確保できる価格。三、生活の快適性を配慮した適正かつ合理的土地利用、こうなっております。  そこで、中堅勤労者が相応の負担で確保できる価格とは、具体的には、この東京で地価所得がどんな関係になっていればいいとお考えになりますか。できれば四十歳代の中堅サラリーマンの平均所得はどれだけであり、住宅を取得する場合に年収の四ないし五倍で取得できる価格、そうなりますと、三十坪の敷地に住宅を建設する場合、一平方メートル当たりの地価はどれぐらいでなければこの推進要綱が実現できないということになりますか、その具体的な数字を明らかにしていただきたい。
  86. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、総合土地政策推進要綱の目標の一つとして、住宅につきましては、中堅勤労者が相応の負担一定水準の住宅を確保し得る地価水準を目指すというように書いております。  では、どういう水準の地価なのかということでございますけれども、私どもといたしましては、住宅地でございますので、取得可能な範囲ということで、おおむね年収の五倍程度というものを考えております。これは地域によって大分異なるわけでございますけれども、例えば京浜地区の平均的な勤労者世帯、大体四十四、五歳が世帯主の年齢でございますけれども、これの年収が七百六十七万円ぐらい、総務庁の貯蓄動向調査によりますとそういうことでございますので、これの五倍程度といいますと、持ち家の場合は四千万円程度というのが取得可能な限界であろう、かように考えております。
  87. 小野信一

    ○小野委員 一平方メートル当たりの単価は。
  88. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 平米当たりの単価につきましては、立地するところの状況によりて相当異なりますので、私ども必ずしも平米幾らぐらいということを申し上げられるわけではないのでございますけれども、平均的な規模を一応、京浜地域におきましては都市型の居住でございますので、七十五平米から八十五平米ぐらい、そういうマンションというものを前提にしたときに、四千万円程度で取得できるようなそういう地価水準を目指すというように認識しておるところでございます。
  89. 小野信一

    ○小野委員 京浜地域の平均勤労者所得、四十五歳前後で七百六十七万円、年収の五倍で四千万円。七十五平方メートルといたしますと、現在の水準から比較した場合にこれはどのような関係になりますか。
  90. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 現在の住宅取得価格と年収との関係につきましては、民間等々も含めまして幾つかの調査がございまして、それによりますと、ごく最近の平成二年の調査によりますと、おおむね八倍程度になっておりますので、相当の乖離があると言わざるを得ないと思います。
  91. 小野信一

    ○小野委員 この目的を達するために、国土庁は何年計画で達成しようとお考えになっておりますか。
  92. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 具体的に何年ということまではなかなか断言できないわけでございますが、少なくとも現実的なターム、数カ年間でそういう状況に持っていきたいというのが、現在総合土地政策推進要綱をつくりまして取り組んでいる政府立場である、かように理解しております。
  93. 小野信一

    ○小野委員 勤労国民の皆さんは大変関心のあるところでございますので、数年というのは何年を指しますか。
  94. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 具体的に何年ということでございませんが、文字どおり数年というように御理解いただきまして、私どもこれに到達すべく、着実に各般の施策をこれから進めていくという決意をこの一月二十五日の総合土地政策推進要綱で新たにしたところでございます。
  95. 小野信一

    ○小野委員 常識的には二、三年と解釈されるのですけれども、それは無理なんでしょうから、五年以内と判断してよろしゅうございますか。
  96. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 なるべく早い実現ということを心がけておりますが、率直に申しまして二、三年というタームは、現実的には非常に難しいのではないかという認識をしております。
  97. 小野信一

    ○小野委員 五年以内という質問をするのですが、いかがですか。
  98. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 努力目標としては数年ということでございますので、そのくらいの年限を一つの念頭に置きまして誠心努力する、こういうように御理解いただければ幸いでございます。
  99. 小野信一

    ○小野委員 憲法と土地所有権について国土庁の見解をお尋ねします。  土地利用に一定の秩序を持たせようとするときに、法律上の問題点は、財産権を保障している憲法第二十九条との関係になります。その内容は、土地所有権と使用収益権の制限とその補償の要否になるからであります。どんな画期的な政策でも、憲法に違反し、膨大な補償が必要となってまいりますと、その実現は不可能であるからであります。同時に、土地財産権を市場価格をもとにした交換価値のみと評価するのは、土地を商品としてではなく、生活権の基礎として考えている大多数の国民の生活実感とは一致いたしません。現実の生活実感と合わない法律、あるいはその解釈は当然破綻することがあります。その改正は政治の任務であろうと私は思います。この現状にかんがみて、憲法と財産権、特に土地所有権の問題についてどのように国土庁はお考えになっておりますか。
  100. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 先生御承知のように、日本国憲法の二十九条一項が「財産権は、これを侵してはならない。」二項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」三項が「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ということになっておりまして、私権につきましては、その原則を民法が敷衍いたしておりまして、第一条は「私権ハ公共ノ福祉二遵フ」ということになっておりまして、我が国の憲法、法体系のもとで、私有財産権というのは公共の福祉に従うという考え方は確立しております。  それを特に公共的な色彩の強い財でございます土地につきまして、先般成立いたしました土地基本法の第二条で、土地についての公共的性格、いろいろな例示を具体的に書いておりますけれども、その公共的性格にかんがみまして「土地については、公共の福祉を優先させるものとする。」ということになっておりまして、土地の利用、保有負担あり方というものは、広く国民全体の立場から考えられるべきであるということを土地について明確にしたものである、かように考えております。
  101. 小野信一

    ○小野委員 現憲法の特徴は、人権を中心に生活権、生存権を置いておることであります。したがって、第二十九条の財産権は第二十五条の生存権を基礎にしたものであり、従来、生存権を侵す財産権は当然公共の福祉の名のもとに制限できるものと私ども解釈をいたします。原則自由、例外規制であると私は思います。  我が国の土地の現状を見る場合に、現在のこの解釈を一歩進める必要があるのではないか、私はそう思っております。財産権、特に土地は他の財産と異なる特質を持つものですから、制限できるという解釈ではなくて、公共の福祉に従わなければならないと一歩踏み込むべきだと思います。原則規制、例外自由であります。この解釈は憲法に違反するとお考えになりますか、それとも十分たえられる解釈であるとお考えになりますか。
  102. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 土地基本法の両院におきます審議の際も随分御議論が行われたわけでございまして、その結果、現在の第二条の「土地については、公共の福祉を優先させるものとする。」という極めて明確な表現になったという経緯を承知いたしております。そういうことからいたしますれば、個別具体的にどういう公共的制約を課すかというのは、それぞれの個別立法の趣旨、目的に従うべきものであろうと考えますけれども、場合によっては、ただいま先生が御指摘になりましたより強い公的制約に服するということは、現行憲法、それを敷衍いたしました土地基本法規定から十分可能であろうというように考えております。
  103. 小野信一

    ○小野委員 そこで、土地問題での公共の福祉、これはどんな概念であって、具体的にはどこでだれが何を決めるとお考えになりますか。
  104. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 先ほども説明いたしましたように、土地についての特殊な公共的性格というものから、その利用、保有負担につきまして個人の自由に任されるべきでなくて、広く国民全体の利益を増進するという立場から考えられるべきである、かように基本的には考えておるところでございまして、それを受けまして、土地利用計画あるいは土地に関する公的負担あり方といったものが個別具体的な制度のもとで考えられるべきものであろう、かように理解をいたしております。
  105. 小野信一

    ○小野委員 私の考え土地における公共の福祉というのは、社会的保護である。多くの国民に形式的、実質的自由を保障することですから、国民に人間的な生活を保障しようとする国家的福祉と私は定義をいたします。別の言葉で言えば社会的公正であります。したがって、社会的公正の維持発展と不公正の是正のためには、土地の所有権とその利用は制限されてやむを得ないものだ、制限されるべきものだ、こう私は解釈いたします。  したがって、公共の福祉の名のもとに所有権、利用権は制限することができるということではなくて、土地に関する限り、これは公共の福祉に従わなければならない、従うべきものだ、そう理解しております。したがって、土地の公共の福祉とは、具体的には計画に従って利用する、こういう原則をしっかり立てるべきだ。要するに原則規制、よほどの例外自由、こういう原則がはっきり立てらるべきものだという私の意見ですけれども、いかがですか。
  106. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 土地の利用に関しましては、先ほど申しました土地基本法の第三条が基本理念でございまして、それを少し敷衍いたしまして「土地に関する基本的施策」という章に十一条、十二条というのがございまして、「土地利用計画の策定等」あるいは「適正な土地利用の確保を図るための措置」という規定がございます。そこにも明確に書いておりますけれども土地の公共的なそういう性格から、地域の特性を考慮するという前提が当然ございますけれども、そういう前提のもとで、適正に策定されました土地利用計画に従った利用というものが必要であるということを明確にいたしておりますので、先生ただいまおっしゃった認識、基本的には私ども同様の認識でございます。
  107. 小野信一

    ○小野委員 財産権である土地所有権が憲法で保障されておるのは、私は、利用を全うするために最も強い所有権を与えられていると解釈いたします。まず所有権があって、使うも自由、使わざるも自由という利用ではなくて、利用を全うするために最も強い所有権が与えられている、こう私は解釈いたします。フランス革命あるいは日本の戦後の農地解放、これらは私の言っている精神を具現化した歴史的事実である、こう思っております。この解釈は国土庁はどのようにお考えになりますか。
  108. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 まさに土地基本法審議の際も、その点も両院で十分御議論がなされたところでございますが、土地基本法によりまして、土地は交換するためのそういう財ではなくて利用財である、しかも公共的制約が非常に強い、そういう制約を受けるもとでの利用財であるということが明確にされたというように理解しております。
  109. 小野信一

    ○小野委員 ある民間調査機関によりますと、一九八四年当時、東京圏で七十五平方メートル、先ほど次長がおっしゃった新築マンション、平均的サラリーマンの年収の五ないし六倍で買うことができました。しかし現在、平均で九倍、都心ですと十七・八倍、こう実態はなっておる、こう言っております。この事実をお認めになりますか。もし五年で今回の地価高騰前の倍率に戻すとすれば、具体的にそのスケジュールが国民の前に明らかにされなければ、数年という言葉や五年以内という言葉で国民は納得するものでないと私は思います。やはりこの年次計画あるいは具体的な法律による規制、その段階を明らかに国民の前に示すことが今国土庁に課せられた任務ではないのか、私はそう判断しますけれども、具体的なこれらの実例から、その目標に向かっての国土庁の考え方、できれば計画を説明していただきたいと思います。
  110. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 ただいま御指摘になりましたように、幾つかの調査で見ますと、今回の地価高騰前の状況で申しますと、東京圏におきましても大体五倍から六倍ぐらいだった。それが平均的には先ほども申しましたように八倍ぐらいになったということでございますので、私ども住宅地につきましては中堅勤労者が取得できる能力を超えた水準になってきている。当面はこの水準というものを、なるべく早急に地価を鎮静化させまして、取得可能な水準でございます五倍程度に総力を挙げて取り組んでいくということが緊急に必要だろうというように考えております。そのために一月二十五日に総合土地政策推進要綱というものもつくりまして、政府一丸となって取り組んでいく姿勢というものを明確にしたところでございます。
  111. 小野信一

    ○小野委員 今の答弁に納得するわけにはまいりませんけれども、これ以上の答弁はあるいはできないのかもしれませんので、この辺で質問をやめておきます。  そこで、民間機関の不動産関連融資残高、一九八九年末にノンバンク経由を含めて百五兆円、こう発表になっております。現在、その後この数字に変化がございますか。もし把握していれば公表していただきたいと思います。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 不動産融資残高を把握しております。その中の最も新しい数字は、全国銀行、平成三年一月末四十八兆四千億円余でございます。
  113. 小野信一

    ○小野委員 ノンバンク経由はいかがですか。
  114. 土田正顕

    ○土田政府委員 今のとは多少統計のとり方が違いますが、平成二年十二月末現在で、いわゆる総量規制関連で金融機関から貸し出しの残高の報告を求めております。それによりますと、銀行から信用金庫までの金融機関合計で、ノンバンク向け貸出残高は七十二兆二千億円となっております。
  115. 小野信一

    ○小野委員 問題になるのは、今回の地価高騰が始まって以降の貸し付けだろうと思います。かつ、購入された土地が販売されずに、業者の手元にあることが問題になります。この面積あるいは金額調査してありますか。
  116. 土田正顕

    ○土田政府委員 業者の手元にあります土地状況その他については、私どもの方では把握しておりません。
  117. 小野信一

    ○小野委員 普通銀行、一般市中銀行の不動産融資残高四十八兆円、ノンバンクまで入れますと百兆円を超えます。普通銀行の残高だけで見ますと、まず計算しやすいようにして五十兆円、一平方メートル当たり百万円、坪三百万円、この不動産融資残高は面積に直して五千ヘクタールになります。この面積は世田谷区の全住宅地の一・五倍になります。一平方メートル当たり一千万円、坪三千万円、商業地域にしますと五百ヘクタールになります。千代田区と中央区の商業地の面積に匹敵いたします。戸建て三千万円、建築費二千万円、地代を一千万円といたしますと、五百万戸建てなければこの土地は売買することができず、銀行は回収不可能であります。  建設省の計画によりますと五年で百万戸程度ですから、不動産融資残高と実態とではここに大きな乖離を生んでいることは明らかであります。もしノンバンクを含めて百兆円ということになりますと、住宅地で一万ヘクタール、商業地で千ヘクタールということになります。戸建てで一千万戸建てなければこの不動産融資残高は回収できないということになります。もちろん中央区のこの辺の高層住宅、高層ビルの建築によって坪単価が低くなるということはわかりますけれども、これらの実態から見てかなり厳しい現実ではないのか、こう判断せざるを得ないのですけれども、国土庁並びに大蔵省はこの現実にどのような考え方をお持ちになりますか。
  118. 土田正顕

    ○土田政府委員 国土庁からの説明の前に、ただいまの先生からお話がございました数字につきまして、多少感ずるところを申し上げます。  第一に、ノンバンク向け融資の額でございますが、そのものが直に土地なり不動産向けの融資に結びついているかというと、それはそういうことではございません。明確な資金使途その他については私どもは把握しておりませんけれども、ノンバンクは、貸金業もやっておりますが、そのほかに例えば信販業とかリース業とか、それからいろいろな物品販売業その他もやっておるわけでございます。そういうようなものに対する資金供給の総量が先ほど申し上げたような数字だということでございますので、その中にもちろん不動産取得向けに末端で流れた金額があるかとは思いますが、先ほど申し上げました数字がすべて不動産に結びついていることはないと存じます。  それから次に、不動産業向け融資の額は、これは多かれ少なかれいろいろな方法で不動産の取得ないし保有の資金使途に向けられていると思いますが、これは住宅用地もございましょうし、それから地方の方の山林とか原野とかいろいろなものもございましょうから、これをすべて住宅問題その他に結びつけていろいろ議論をするのは、やや適当ではないのではないかと考える次第でございます。
  119. 小野信一

    ○小野委員 ノンバンクから不動産業者に回っている金額調査してない、こういう発言は少し問題ではないだろうか、私はこう思いますので、十分調査をしていっていただきたいと思います。  そこで、地価の適正価格あるいは妥当価格というものはどういう条件を備えていなければならないとお考えになりますか、国土庁。
  120. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 適正な地価の水準ということでございますが、総合土地政策推進要綱にも明確にしておりますように、やはり土地の利用価値に相応した水準というものだろう。業務用地の場合は収益に相応する価格、住宅地の場合は取得能力との見合いからくる価格、こういうようなことでございまして、具体的には、先ほど申しましたように特に住宅地の価格が問題でございまして、年収の五倍程度というものを目標にいたしたい、かように考えております。
  121. 小野信一

    ○小野委員 国民の皆さんが今の答弁を聞いて、どういう価格が妥当価格なんだ、適正価格なんだと理解する人は恐らくいないだろうと思います。  日本とアメリカの場合を比較しますと、面積は日本が一に対してアメリカ二十五、GNP日本一に対してアメリカ二、したがって、土地の生産性は単純に計算しますと十二・五対一。したがって、日米の地価は十二・五対一が正常だ、単純に比較いたしますとそうなります。ところが、日米の地価は百二十五対一であります。したがって、日本の地価は十倍高いのではないか、こういう単純な結論が出るのですけれども、こういう計算、単純な結論はどういう御感想を持ちますか。
  122. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 よく我が国の国富といたしましての土地資産額二千兆円等々と言われるのでございますが、それの推定の仕方もいろいろ問題がございまして、平均的な価額に面積を掛けて、それを積み上げるというようなことでございますので、必ずしもそれが実態を反映しているかどうかということについては、慎重に検証すべき問題がいろいろあるのだろう。  ただ、今先生指摘のように、いずれにいたしましても、我が国の土地資産額というのがGNPあるいは国土面積等々から比較しても非常に高いということは否定できない事実でございますので、地価対策土地対策をこれから進めていく上で、そういうものを一つの大きい警鐘ということで十分考慮しながら進めていく必要があろう、かように考えております。
  123. 小野信一

    ○小野委員 大臣がお見えになっておりますので、大臣にお尋ねをいたします。  戦後我が国の繁栄は、私的所有権を認め、経済活動を個々人の自由に任せたからだ、こういう主張をする人が多くおります。もちろん自由といいましても契約は遵守されなければなりませんし、法は公平に、効率的に運用されなければなりませんし、公害は規制されなければなりません。この同じ方法がなぜ土地住宅問題で適用できないのだろうか。ある識者に言わせますと、誤った規制や税制がむしろ地価を混乱させたのではないだろうか、地価を高騰させたのではないだろうか、こういう説を私は時として耳にすることがございます。大臣、いかがお考えになりますか。
  124. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、地価高騰の中におきまして、税制を含め、私どもの役所の所管している部分に全く責任がないというようなことを申し上げるつもりはございません。ただ、同時に、税制という点から申し上げますならば、私どもとして、その税制をどう動かすかについて国民の基本的な合意がいただけなかったという点も申し上げたいと存じます。  土地というものについて国民の間に共通した概念が価値観として定着をし、そして、それがどの方向へ向くかということにつきましては、土地基本法が制定されるまでの間、明らかにはなっておらなかったという実態がございます。そして、その中において、土地対策の中に税に役割を求められる方の中には、全く相反した御論議がございましたことは委員も御承知のとおりであります。よく私が例で一般の方々とお話をするときに申し上げましたのは、例えば大都市の一等地と言われるところに先祖伝来のお店を構え、営々として伝統を守っているお店がある。土地税制はそのお店がその場で営業を続けるように働くべきなのか、あるいはそのお店そのものをも含めたその地域の再開発が可能な状況を生み出すために役立つべきなのか、その方向はいずれでしょうということをよく私は問いかけてまいりました。  おかげさまで、土地基本法というものが制定をされ、土地の公共性というものが基本理念として定着をいたす状態になり、私どもとしてその方向に向いた税制改革というものが行える状態がようやく到来をいたしております。  そして今回、その概念の中で、資産格差の是正等をも念頭に置きながら、土地というものの公共性、公用性というものに向けての足取りが続く。その方向を目指して今地価税を御審議をいただいておるわけでありまして、こうした考え方がとれるようになりましたのも、土地基本法によりまして土地というものについての公共性という基本理念を確立していただけたということでありまして、こうしたものが生まれます前におきましてさまざまな御論議をいただきます中で、私は、税主管官庁として、今お考えをいただく場合に必ずしも適切ならざるものはあったかもしれないと思います。しかし、それは土地政策の中における税というものが重要な役割を果たす一つの柱ではありますけれども地価対策等における税制主役ではあり得ない、そうした点についても御認識を賜りたい、そのように思っております。
  125. 小野信一

    ○小野委員 この地価税法の創設は、土地問題で何を解決しようとし、具体的にどんな効果大臣は期待しておりますか。
  126. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回地価税を御審議をいただくことになりましたそのねらい、まさに土地基本法基本理念を踏まえました、土地に対する適正公平な税負担を確保しながら、その資産としての有利性を縮減する、そうした観点から、土地資産価値に応じました負担を求める税として創設を考えたものであります。  この地価税効果として考えられるものは幾点かございますが、その新税が土地資産価値に応じて新たに毎年負担を求めるものでありますこと、また、国土資産額のかなりの部分が宅地に集中し、その宅地の相当部分を少数の者が保有しているという我が国の土地保有状況のもとにおきまして、新税は実質的に大規模な土地保有者に対して適切な負担を求めるものになること、また、新税の課税標準とされます相続税評価については、地価公示価格に対する評価割合を引き上げ、適正化を図ることとされておりますので、地価税の実質的な負担水準は、今後地価が下落いたさない限り、現行の評価水準を前提に、現在一般に想定されているものより高まることとなる。  さらに、その新税の導入に加えまして、固定資産税評価につきましても一層の均衡化、適正化が行われることになっておりますこと、こうしたことから、全体として土地保有コストというものを増大させ、他の土地政策と相まって有効利用の促進、住宅地の供給促進、地価の抑制.低下などに対して相応の効果を上げるものと私どもは期待をいたしておるわけであります。  また、もう一つどものねらいとしておりますものは、今回の地価税の導入というものを通じまして、土地保有コストについての認識を国民の中に持っていただきたいと願ってまいりました。幸い今日までの御論議等を通じながら、またマスコミの報道等の中で、国民の中に土地保有コストというものについての認識が生まれつつありますこと、今後の地価の抑制に資するもの、そのように考えております。
  127. 小野信一

    ○小野委員 今、大臣が答弁されましたこの法律趣旨、目的、効果が果たして期待できるのかどうか、これから個々についてお尋ねをいたします。  税率の決定は最低どんな条件を満たさなければならないとお考えになりますか。現在、預貯金の金利に二〇%課税、平均の利率が五%程度とすると、預貯金額の一%程度が課税になっております。株式も売却益の一%課税。平均五%程度の利益を予想し、これに二〇%課税をするという考え方に立っております。したがって、私は今回の場合も、一%程度の課税が他の資産とのバランスからいけばいいのではないか、こう考えております。したがって、税率を決定する場合、どのような条件を具備しなければならないとお考えになりますか。現在の〇・二、明年度からの〇・三、果たしてこの税率がそのような条件を満たしているとお考えになりますか。
  128. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 税率につきましては、税制調査会答申の中にも触れられておるところでございますが、一つは、土地有利性、いわば土地神話のもとなどとなっておりますその土地有利性政策的に縮減するという観点に沿わなくてはいけないということ、それからもう一つは、新鋭を導入するわけでございますから、我が国の経済に与えます影響でございますとか個々の納税者に対する負担の問題でありますとか、その点をやはり配慮していかなくてはいけない。いわばちょっと相反するようなところがございまして、それを総合的に勘案いたしまして現在の〇・三%、初年度、平成四年につきましては〇・二%ということにいたしたところでございます。
  129. 小野信一

    ○小野委員 この税は所得計算上損金の額に算入されますから、法人税等の実効税率は約五〇%とすれば、企業の実質負担は〇・一%になると思いますが、いかがですか。
  130. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど大臣の御答弁にもございましたように、新たに土地保有に対して税金をかけます。これは保有というものに対してそのコストを高めるということを目的といたしておりまして、コストを伴うがゆえに土地の有効利用等が促進されると考えている。また、むだな土地を持たないと考えているわけでございますが、あくまでそのコスト意識ということを高めるということが一つの目的であると考えますと、やはりこれはコストでございますから、税制上、法人税法上の計算といたしましては、コストとしてほかの費用と同様に扱わざるを得ない。それは現在固定資産税等がそのようになっているわけでございますので、法人税の計算上はそのようにいたしたわけでございます。
  131. 小野信一

    ○小野委員 基礎控除は、土地資産価額に着目する新税の趣旨からすれば、金額基準によることが適当だと私は思います。結果として面積基準は、地方にある企業の遊休地や工場敷地等を救済する結果になったと私は思いますけれども、いかがです。
  132. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 土地資産価値の縮減を図るという点から申しまして金額表示が好ましいということは、税制調査会答申にも記されておりまして、委員指摘のとおりであろうかと存じます。そこで、一つは十億円、十五億円といったような定額の基礎控除を設けまして、もう一つ一定面積の単価三万円ということで、それ以下のものには課税しないということにいたしました。  特にその後者につきましてのお尋ねであろうかと存じますが、やはり今回の土地問題を生じておりますのは、土地のどんどん高くなったところ、そこが基本であろうというように考えますと、ほとんど土地の値動きがない、あるいはその絶対額が非常に低いというところまで課税対象として取り込むことが適当であるのかどうか、そういう考え方から単価控除のようなものを入れたわけでございます。結果といたしまして、非常に土地の安いところにたくさん土地を持っているというような方は、非常に大きな面積を持っていても課税対象とならないということがあり得るわけでございますが、今回の新しい税制の導入の目的から考えまして、そのようなところは外してもよろしいのではないかというように考えた次第でございます。
  133. 小野信一

    ○小野委員 自分の居住用地外の賃貸用居住地について、この税が家賃に転嫁しないためという理由非課税になったために、賃貸マンション敷地や役員用のものを除く社宅敷地には課税されないことになりました。このため、土地の値上がりを見越して社宅を保有している企業にとって、その部分新税の負担がないことになりますけれども、いかがです。
  134. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 やはり居住用の土地と申しますのは生活していく上でどうしても必要なものでありますし、これは今回の地価税対象から外した方がいいのではないかというのが基本的な考え方でございます。ただ、非常に大きな土地を利用して居住しているというようなケースにつきましては課税対象にするということで、千平米というような制限を設けた次第でございますが、そのように生活の本拠に対して課税上配慮を加えるということになりますと、それが借家でございましてもやはり考えていかなくてはいけないのではないかということから、賃貸マンション、社宅につきましても、現にそこで人々が居住しているわけでございますから、持ち家の場合と同じように配慮の対象にいたしたわけでございます。
  135. 小野信一

    ○小野委員 賃貸用建物の敷地は家賃への転嫁を避けて非課税ですが、その他の土地について課税された金額を企業が製品価格等に転嫁しないという保証はないと私は思うが、いかがです。
  136. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 保証がないという点におきましてはおっしゃるとおりだろうと思います。伝統的にこの土地に対します保有税は、転嫁をしないというように考えられているわけでございますが、理論上の問題は別といたしまして、現実にはいろいろ与えられている条件によりまして転嫁が行われるということはあろうかと思います。例えばウエーティングリストに載っている方が大勢いるような非常に希望が多いオフィスというようなものを考えてみますと、やはりその転嫁は可能になるわけでございますし、商品につきましても、競争相手が土地の安いところにいる場合には転嫁が難しいということも考えられますが、ごく限られた土地の高いところで行われている生産しかないということでございますと、転嫁も行われるということがあり得るのではないかと考えます。
  137. 小野信一

    ○小野委員 基礎控除十億円、中小企業法人十五億円、一平方メートル当たり三万円に面積を乗ずる額、いずれか大きい額を選択する。この結果、課税対象となる個人法人固定資産税納税者数の〇・二%以下の五万人程度、税収も土地固定資産税二兆一千億の七分の一から四分の一、四千億程度と見込まれると大蔵省は明らかにいたしております。この数字から判断する限り土地神話の打破は無理である、こう判断せざるを得ないんですけれども、いかがですか。
  138. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 課税対象となる方が非常に限られた数になりますし、税額といたしましても三、四千億ぐらいではないかと我々考えているわけでございますが、しかし、我が国の土地状況考えてみますと、実は宅地が全国土の四%しかない。しかし、国土の土地価格というものを考えてみますと、その宅地が価格としては八〇%を占めている。またその宅地の保有状況を見てみましても、余りいい資料がないのでございますが、東京都の例で申しますと、一・七%ぐらいの大法人によりまして法人保有土地の半分ぐらいの土地が持たれている。そういうことを考えますと、ごく限られた対象とお感じになるかもしれませんが、地価に対するインパクトというのはやはり相応のものがあるだろうというように考えておりまして、有効にこの税が機能することを期待いたしている次第でございます。
  139. 小野信一

    ○小野委員 以上の質問から、私は、地価は下がるかもしれないと勤労国民あるいはサラリーマンの皆さんが期待したのですけれども、その期待は裏切られたのではないか、こう感じるんですが、いかがですか。
  140. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、地価税だけに地価抑制の効果あるいは地価引き下げの効果を期待されることは、先ほど最初にも申し上げましたように、そもそもその全部を負い切れるほどの力のあるものではないと思います。そして、もし地価税だけで地価を引き下げなければならないとすれば、税率にいたしましてもその他の要件にいたしましても、極めて厳しいものにしなければならなかったでありましょう。しかし、今局長がちょっと例で申し上げましたように、本当に東京都区部あるいは市部における一万平米以上の宅地を所有している法人が一・七%しかいないのに、法人所有面積からいくと全体の五一%を占めている、こういう非常に偏った土地所有というものを考えてみましたときに、いわゆる大法人中心にして資産価値の高い大規模土地保有者に対して、これは相当な負担を求めるものになっていくと思います。  また、ミクロの話で申し上げますならば、土地資産価値に応じた税負担を求めるという地価税仕組みから、地価水準の高い地域を中心に広い土地保有する方、例えば都市の目抜き通りにビルを構えて事業を行っている方だとか、あるいは地価水準が低い地域でありましても、大規模に土地保有を展開している方に相当の負担を求めるものになるわけでありまして、私は、ミクロ的には、地価税土地保有額の大きい方にかなり重い負担を課すものになると考えております。こうしたことを考えてみますと、私は、地価税そのものも相当の力を持つと思いますし、固定資産税の見直しからさまざまな要因を組み合わせていくことによって地価は引き下げられていく、そう考えております。
  141. 小野信一

    ○小野委員 私は、今回の地価税中心とした税制改革が地価を下げる効果を持つのかと聞かれれば、一応イエスと答える気持ちを持っております。しかし、今回の土地税制が与えた目標が達せられるのか、こう考えると、ノーと答えざるを得ないような気がいたしておるところです。  最後に大臣にお尋ねいたします。不動産向けの融資の総量規制についてであります。これは緊急ですから、臨時措置でありますから、長期にこれを続けることはいけないのではないかという説があります。同時に、今解除したら、バブルで成長した不動産やノンバンクを救済するのではないか、こういう説もございます。したがって、現在の総量規制の問題について今大臣はどんな御見解をお持ちになりますか。
  142. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員が先ほど政府委員に対しましてノンバンクの状況その他をチェックをしておられましたように、税ばかりではなく、金融におきましても、今回の土地政策の中に大きな役割を担ってもらわなければなりません。  そうした中におきまして、私どもは総量規制という方針をとったわけでありますが、総量規制導入前の平成二年三月末、全国銀行の不動産業向け貸出残高の前年比伸び率を見ますと、一五・三%でありました。ところが、本年一月にはこれが二%へと急速に低下をいたしております。私どもは、今日ただいまもなおその効果を注意深く見守っておるところでありまして、現時点において総量規制を解除するつもりはございません。今後におきまして私どもは、やはり地価動向というものに加え、金融経済情勢あるいは金融機関の融資動向そのもの、さらには土地政策全般の推進状況などを総合的に勘案しながら、適時適切、機動的に対応してまいりたいと考えておりまして、今日ただいまこれを解除する意思はないということだけは明確に申し上げたいと思います。
  143. 小野信一

    ○小野委員 終わります。
  144. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  145. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案に対し、土地問題等に関する特別委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会の開会日時は、土地問題等に関する特別委員長と協議の上決定いたしますが、来る十七日水曜日午前九時三十分開会の予定でありますので、御了承願います。  また、連合審査会において、参考人から意見を聴取する必要が生じました場合、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  148. 平沼赳夫

    平沼委員長 質疑を続行いたします。仙谷由人君。
  149. 仙谷由人

    仙谷委員 地価税法案について質問をさせていただくわけですが、まず金融政策土地あるいは地価の問題をお伺いいたしておきたいというふうに考えます。  今、友人の不動産取引仲介といいますか、こういう人たちに会うと、五年間辛抱しなければいかぬ。つまり、今はもうほとんど物件が動かない、だから仲介手数料が入ってこないのでひいひい言っているけれども、五年間待てば何とかなる、こういうことをよく言われるわけであります。一方では、今度のこの五年前ぐらいからのバブルの中で、相当大きいお金を借りて不動産に投資したといいますか、不動産を買った会社の方々からは、金利の支払いが大変だ、金利が非常に高いから大変だ、こういう声も聞こえてまいりまして、私自身はそういう人たちには、あなた方がバブルでもうけたんだからそれはしようがないじゃないか、もうけた分でじっと辛抱するんだったら辛抱した方がいいんじゃないのというようなことを言っておるわけであります。  この金利問題に絡みますと、新聞紙上を読んでおりましても、どうも金利引き下げのプレッシャーが日本銀行あるいは大蔵省に随分かかっておるのではないかという感じを私は受けておるわけであります。金利というのは、私が申し上げたように、今の企業経営の中のキャッシュフロー云々かんぬんということだけで決まるわけではないと思いますが、金利引き下げというふうなことが近々行われる可能性があるのかないのか、その点について大蔵大臣にまずお伺いをいたしておきたいと思います。
  150. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちまたからいろいろな声があることは私どももさまざまな機会において拝聴し、また、そうした御意見には、私どもが仕事をしていきます上で十分参考にしていくべきものであることは言をまちません。  ただ、今たまたま委員は金利という言葉を使われましたけれども、仮にこれを公定歩合と理解させていただきますならば、これは本来日本銀行の専管でありまして、私どもが物を申すべき分野ではございません。その上であえて一般論として申し上げますならば、私は今日本の現状を考えますとき、物価あるいは労働力その他さまざまな分野を考え合わせてまいりますときに、金融政策というものを変更しなければならない状況にあるとは考えておりません。専管事項としての日銀がどういう御意見をお持ちなのか、私自身特に承っておるわけでもありませんけれども、今政策を変更しなければならないような状況にはない。むしろ現状を注意深くそれぞれの分野から効果を測定しつつある状況、そのように私は理解をいたしております。
  151. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほどのお答えで、総量規制を外すつもりはないというお答えがございまして、今、金融政策についても変更をするつもりはないんだ、こういうお答えであったと思います。  代表質問のときにも申し上げたわけでございますけれども、今度の地価暴騰一つの大きな原因は、金融政策というものが、無意識的にせよ、公定歩合が二・五%というふうな時代が長く続いたということもあって、どうもそのお金が不動産投機に流れたというのが常識化しておるようでございます。今地価が鎮静化しておるといいますか、上がってはいないという状況は、総量規制と金利というのが相当大きな要因になっておると思うのです。この金利、あるいは公定歩合と言いかえてもいいのかもわかりませんけれども、それが中長期的に現在の水準のような少々高目の公定歩合、これを続けることができるのかどうなのか。あるいは、それこそ機動的、弾力的に考えていかなければならない。国際経済といいますか、世界経済の方から見ましても金利問題はどういうふうにお考えなのか、大蔵大臣の御所見をいただきたいと思います。
  152. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 公定歩合というものにつきまして、本来私の立場で申し上げるべきでないということは御理解がいただけると思うのです。これは日銀の専管事項として、私どもは尊重していかなければなりません。  ただ、その上で、先ほども一般論としてお答えを申し上げたわけでありますが、今我が国のさまざまな経済関係における要素を考えますときに、私の立場からいたしますならば、金融政策を必ずしも変更しなければならない状況にはない、本当にそう思っております。私どもの脳裏には、例えば先ほど物価でありますとか労働力という例示を挙げましたが、国際的に見ましても、例えば為替の水準等の問題もあるわけであります。いろいろなことを考えてみまして、財政当局の立場からいたしますならば、私どもは今政策変更を必要とする状況にはなかろうと判断をいたしておりますが、これは日銀さんがどういうふうに思っておられるか、ちょっと私もわかりませんので、本来なら日銀にお問い合わせを願いたいことでありますけれども、私はそのように感じております。
  153. 仙谷由人

    仙谷委員 お答えをいただきたかったのは、中長期的に、二年とか五年とかという範囲内でどういうふうに金利が動いていく可能性があるのか、あるいは動かさざるを得ないのか、こういうことを実は聞きたかったわけでございます。  そこで、アメリカの経済が一つの要素だろうと私は思いますけれども、それから日本の場合は、政府で言えば国債費の問題というのがあろうかと思います。そういう観点から、例えば五年ぐらいの期間をとってみれば、金利というのは、やはり公定歩合というのも下げざるを得ない状況というのもこれから生まれてくるのではないか、そういうふうに考えますが、いかがでございますか。
  154. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 五年、十年というタイムラグになりますと、私はその間にはさまざまな問題があろうかと存じます。そして、今の委員の視点から挙げられましたような要素以外にも、世界的な資金需要の動向、そして世界的な貯蓄率の増加傾向がどうなるのか、さらには現在よく資金需要という言葉が使われますときに、新たに発生いたしました中東の復興のための経費を含めまして、ソ連の経済支援、そしてその手前にあります中東欧の資金協力、さらに累積債務国の問題でありますとか、また先般日本がIDB総会を主宰いたしました立場から申しますと、中南米における資金をどのように分担するかとか、世界的な資金の流れにもさまざまな問題点がございます。  また、委員が御承知のように、日本経済自身が黒字幅を縮小する努力を続ける立場となり、まさに内需中心の自律的な経済成長というものを目標に置きながら今日まで経済運営を続けてまいりました。それなり効果を発揮し、今いわば安定した成長の確保というところにその焦点をシフトしつつあるわけであります。  そうなりますと、これにはさまざまな要因が加わると思います。しかも、それは世界的なエネルギーの需給が今後どうなるのか、そのコストほどうなるか、こうした問題も当然のことながら考えなければなりません。さらに、日本の産業構造が今後どのように変化をしていくかによりましては、今行われております設備投資とは異質の設備投資というものも出てくる可能性がございます。その場合に、日本経済そのものを加速する必要が生じる、減速する必要が生じる。自然体で臨めるさまざまな状況に公定歩合も含めまして、金融政策というものは機動的に財政とともに対応していく役割を負うものでありますから、委員がお述べになりましたようなスパンを考え議論をさせていただくとするならば、その場合にはさまざまな対応が考えられると思います。そして、そのときそのときに敏速かつ適切な対応というものが必要になるという点では、委員の御指摘に私は異論はございません。
  155. 仙谷由人

    仙谷委員 いわゆる大蔵省の方で用意された資料あるいは日銀で昨年お書きになった報告書的なもの、そういうものを読みましても、昭和四十年、昭和五十年、昭和六十年という、まさに金融緩和時期に地価の高騰というのが起こったという歴史的事実はあるわけですね。今も地価税法案が出されておるわけでございますけれども、これがまあそれなりの機能を果たすといいますか、役割をもし果たせない、つまり今までと同じような、地価税法案かないのと同じような効果しか果たせないということになりますと、今おっしゃった可能性としての金融緩和ということが再び参ったときに、また地価が上昇局面に入っていくということが十分あると思うのですね。それが経験的に不動産業者が五年間辛抱すれば何とかなる、つまり、まだ土地神話は生きておるということだろうと思うのです。  そういう観点からいきますと、地価税あるいは保有税保有コストを高めるということが金利政策だけあるいは総量規制だけに頼れないのと同じように、やはり構造問題として税制というものが果たすべき役割は相当大きいというふうに私自身は考えておるのですが、その点につきまして大蔵大臣の御意見をいただきたいと思います。
  156. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 過去二回の地価高騰期について、今委員がお触れになりました。そして今回、その意味では三回目という状況の中に我々はあるわけでありますが、確かに過去二回、地価の急上昇というものがブレーキがかかり、収束をしていく過程において、土地神話そのものを破壊するという発想は、そのいずれの時期においてもなかったわけであります。そして、それが今回問題を大きくした一つ原因であることは、私は御指摘のとおりだと思いますし、その限りにおきまして、土地神話というものを今日の時点で我々が破壊できているかというならば、残念ながらまだ土地神話を破壊することに成功はいたしておりません。  そして、そういう点から申し上げるとするならば、私どもは、まさにこの地価税によりまして、他の税制とともに.保有コストの上昇というものの抑制効果を当然のことながら期待をいたしております。しかし、税だけで地価対策ができるわけではないことは、今委員もお触れになりましたとおりでありまして、私どもの役所の範囲から申しますならば、金融政策というものも当然ながらその一翼を担うものになります。  しかし、根本的には、例えば私は、実は旧東独がどういう状況であったか存じませんけれども、旧西独と言わせていただきましょうか、旧西独の持っております都市計画と同じような都市計画を我々が持っていたとするならば、その都市計画そのものの中で相当程度の地価抑制効果というものは発揮されておったと考えております。しかし、そのもとになります土地に対する国民の共通意識というものが生まれておらなかったことが、私はこうした点においても一歩対応がおくれた原因であろうと思っております。  おかげさまで土地基本法というものが生まれ、土地政策というものが土地基本法の理念に基づいて今それぞれの部署において再検討され、新たなスタートを切ろうとしているわけでありますが、その中におきまして、当然ながら私どもの守備範囲であります税制、金融、いずれも大きな役割を果たすものではありますけれども、基本的には土地基本法の理念に基づいた都市計画というものが有効に設定をされ、これが機能をすることにより、税制あるいは金融の土地政策における役割が減少する方向が本来の姿である、私はそのように考えております。
  157. 仙谷由人

    仙谷委員 今の御意見に基本的に同意をいたすわけでございますけれども、そうは言っても、結局戦後四十五年それらしき土地政策、都市政策、それから今おっしゃった西ドイツのAプラン、Bプランのようなものができてこない。そして、また今から都市計画が早急に策定されて実施されるかということを考えますと、先ほど来の議論を聞いておりましてもなかなか難しいだろうな。やらなければならないけれども、非常な困難がつきまとうということも事実であります。  そうだといたしますと、多少無理があっても、今大蔵大臣がおっしゃったような、本来それほど大きい役割を果たすべきでないのかもわかりませんけれども、金融政策税制というものがやはり大きな役割を担っていかざるを得ないという、不幸なのか何なのかわかりませんけれども、そういう事態であるという認識をしなければいけないだろうと思います。  その点については、ちょっとほかの質問を挟みまして続けたいと思いますが、銀行局長、先ほど私の聞き間違えかどうかわからないのでございますが、小野委員質問にお答えになって、ノンバンクの貸付金のうち不動産業あるいは不動産担保融資というものが何か額としてはよくわからない、あるいは都市銀行の分もちょっとわからないんだという趣旨のお答えをされましたでしょうか。
  158. 土田正顕

    ○土田政府委員 私の記憶しております限りでは、銀行の不動産向けの融資は幾らかというお尋ねと、それからノンバンク向けの融資は幾らかというお尋ねと、その中の何がしが要するに不動産に向いているかというお尋ねであったと思います。その前二者は数字を申し上げたわけであります。最後のものは、これはその実態の数字を把握しておりませんというふうに申し上げたわけでございます。
  159. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、私がいただいております資料は、平成三年二月八日、大蔵省が新聞発表ということをされた「ノンバンク上位二百社の貸付金の実態調査結果について」という書面、それから、それに添付されておるノンバンクの不動産業に対する融資が二十兆二千四百十六億円、全国銀行で不動産業に対する融資が四十二兆一千二百四十八億円、こういう金額については、そのとおりだというふうに承知してよろしいのでしょうか。
  160. 土田正顕

    ○土田政府委員 その数字そのものはただいまおっしゃいましたとおりでございます。  先ほどは、そういう意味では多少答弁が懇切を欠いたかと思いますが、この大蔵省で発表いたしました実態調査結果は、ノンバンクの上位二百社についてのデータに限っておるわけでございます。その二百社に関する限りでは、ノンバンクの貸付金の業種別残高の中の三五・七%、二十兆二千億は不動産業向けであるというふうに申し上げることはできます。  ただ、先ほどのお尋ねと結びつけて申し上げますと、ノンバンク向けの貸付金というのは、必ずしも貸金業を行うに当たっての財源というふうに直に結びつけられるというものではない。ノンバンクは貸金業のほかにいろいろな事業をやっております。そちらの方にも金が流れているわけでございまして、総体として幾らであるかというと、いわば総量規制でとっております報告の数字がございます。これは全国銀行の悉皆調査の報告でございます。ノンバンクがそのような金その他の金を受け入れていろいろな事業を行い、また貸付金を行う。その貸付金の中で不動産業に幾ら持っていくかということは、それは正確には把握できていない、わからない。ただ、その中で、初めての試みでございますが、上位二百社に限りますと今のような数字になる、こういう趣旨でございます。
  161. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと取り越し苦労に過ぎるのかもわかりませんけれども、毎日、新聞を見ておりますと、特にイトマン事件というのがクローズアップされて、主としては都市銀行からイトマンに融資され、イトマンからいろいろなところに金融がされて、そしてそれが焦げついて、我々の方から見ると、焦げつくであろう、焦げつくことが相当確実であろうというふうなことが報道されておるのですね。これは多分イトマンだけではなくて、あるいは住友銀行だけではなくて、他の銀行にもその種の案件、つまり商社やノンバンクを通して焦げつき債権が出る。不動産とか株であるとかですね。今となってみれば、元本返済は到底できない、金利も払えないというふうな事態になっている部分というのは、相当あるのじゃないかという感じを私受けておるのですね。  問題は、例えば聞くところによりますと、一九二九年の世界恐慌と言われるアメリカの恐慌も、ウォール街の暴落から始まっておるけれども、本当は不動産恐慌といいますか、不動産融資の焦げつきに始まった金融恐慌である、そういう説を出しておる方がいらっしゃるようでございますけれども、日本の場合、今の実態というのは、大蔵省の検査とか日銀の考査ですか、そういうのを通じてその焦げつきが大量に発生して、金融不安といいますか、それにつながるようなそんな兆候というのは、今の段階ではないというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  162. 土田正顕

    ○土田政府委員 イトマンの例をお引きいただきましたが、イトマンは実は事業法人でございますので、必ずしも不動産関連の話だけで議論するわけにはまいりません。ただ、不動産業なり事業法人なり、それは大蔵省が所管しているわけではございませんけれども、倒産というデータから見ますと、最近、例えば二月の報告を見ますと、不動産業の倒産は六十九件であり、これは一月の四十九件を上回っておるとか、五カ月間連続前年同月を上回っておるとか、そのような統計が発表されているようでございます。  これが金融機関に与える影響ということでございますけれども、これはもちろん金融機関の貸し出しにつきましては、かねてから各金融機関において、今問題になっております不動産関連融資を含めて、適切なリスク管理がなされるよう私どもも指導しておりますし、金融機関も十分気をつけておるはずでございます。今回のような経験は、例えばかつて石油ショックの後にも一時期あったわけでございまして、そのころの経験もそれぞれ金融機関は持っているわけでございますから、それぞれにおいて自主的にいろいろなリスク対応をしているものと私ども考えております。もちろん、今後とも私どももいろいろ経営の健全性維持という観点から、検査なり行政なりを通じて適切な指導に努めてまいりたいと存じます。  それから、アメリカの話はよくわかりませんけれども、先ほど申し上げましたような銀行の関係のデータからしますと、不動産業向けの融資が銀行から直接不動産業向けに出ておりますものに限りますと、総貸し出しの約一〇%程度でございまして、さほど高い数字ではございません。どこかで読みましたアメリカの銀行の貸し出しの中の不動産業向けのいわゆる不動産融資の比率は、もっと高いものであったかと思っております。  そのほか、日本の金融機関につきましては、いろいろまだ経営上の体力、それから含み益その他が残っておりますし、日本の金融機関が全体としていろいろ多くの問題を生むということはない、そのような心配はまだないと私ども考えておるわけでございます。
  163. 仙谷由人

    仙谷委員 恐慌まで至らなくとも、少なくとも国民感情としてはおもしろくない、あるいは多少の経済的な攪乱要因になり得る可能性があるということも間違いがないところでございます。  したがいまして、だからこそこの地価税というふうなもの、つまり、税制の欠陥の結果バブル経済というようなものが起こったのか、どちらが原因でどちらが結果なのか、なかなか経済というのは難しいのでわからないところがあるかもわかりませんが、この地価税税率、それからその他の要素、利子率等々を含めて地価との関係、経済的な効果はどうなるのか、政府税調の十月の答申のときに、その添付の資料に「土地保有税の経済効果」という書面が出ております。その中に、利子率から収益上昇率をマイナスして、そして今度は保有コストを加えてやる、それを分母として、土地から生まれる収益自身を分子とする、そういう割り算をすれば地価というのは当然出てくるのだ、こういう式が書かれておるわけであります。  これを見ますと、利子率が高くなれば地価が下がる方向へ動くだろう、あるいは税率が高くなれば地価がやはり下がる方向へ動くだろう、それから土地からの収益上昇率、つまり上昇の可能性ということになると思いますが、それが上がれば地価は上がる方向へ動くだろう、つまり、収益がある程度定量的だとしますとそうなるだろう、こういう式が書かれておるわけでありますが、この式を前提にいたしますと、金利は高く、税率も高ければ、地価が低い方へ動くということになるわけですね。  このある種の理論といいますか仮説、これは大体こんなところでよろしいのでしょうかといいますか、大蔵省自身もこういうことを前提にして今度の地価税というものをお考えになったのか、あるいは政府税調の中で今度の税率を決めるときに、こういう数式を参考にしてお決めになったのか、その点いかがでございましょう。
  164. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘の資料は、税制調査会土地に関する税制の見直しをいたしましたときに、経済理論のサイドについての議論を学者の先生方を中心にしていただきました。その内容を取りまとめたものでございます。御指摘のとおりの単純な式によりまして、保有課税地価の下落の方向に働くはずであるという説明がされているわけでございます。  そういう定性的な方向といたしまして、今委員指摘のとおり、利子率が上がりますと地価は下がる方向に働くであろう、将来の期待収益率が上がってくればこれは地価が上昇する方向に働くであろう、保有税がかかればその分だけ地価が下落する方向に働くであろう、そういう定性的な物の考え方の整理として示されているわけでございますけれども、現実の税率を決めますときにこの式を利用して決めたというところまで、実はそのような働きをしているわけではなくで、いわばその方向性といいますか、理論的な物の考え方を示すうちの一つの単純なモデルとしてそれが示されているわけでございます。
  165. 仙谷由人

    仙谷委員 この式を前提にして考えますと、保有税導入後の地価というのは、当然のことながら、今申し上げた利子率から収益上昇率をマイナスして税率をプラスする、そしてそれを分母として、分子が利子率から収益上昇率をマイナスしたものだ、今度はそういう分数をもとの地価に掛けてやれば新しい保有税導入後の地価というふうにこれは書かれておりますけれども、多分こういうふうな地価になるだろう、こういう推論が成り立つわけですね。  この数式を前提にして考えますと、例えば一%の税率、ほかの利子率とか収益上昇率というのは変わらないで一%の税率が導入されたとすると、地価は単純計算ですと二〇%ぐらい下がる方向に動くだろう、こういうことになるわけですね。今回の〇・三%ですとこれは六%ぐらいになる。六%ぐらいしか下がらない、こういう結論になるのですね。あるいは反対からいえば、先ほど国土庁の次長さんの方からは、新しい地価を数年で八分の一の地価に、私の聞き間違いじゃなければ八分の一の地価に持っていきたいというお答えがあったように思いますけれども、そうだとすれば、新しい地価のところに数字を入れてやれば、どういう利子率と税率を入れてやれば八分の一になるかというのは推論としては出てくるはずなんですね。そうなるのじゃないですか。
  166. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 極めて単純化して、誤解を恐れずに申しますと、話としてはそういうことになるということが言えると思います。  ただ、私先ほど申し上げました、また委員もおっしゃっておられました金利ということでございますが、正確に申しますと、これは将来の収益、現在の収益等をもとにいたしまして現在価値を導き出すという形でその土地の価格を出しているわけでございますから、本当は利子率というよりか現在価値を求める際の割引率でありまして、それは一般的な利子率に一定のリスクプレミアムのようなものを加えて考えるんだというように、理論的にはそういうことになっております。  実は、この割引率をどう決めるかというのは非常に難しい問題でありまして、直ちに利子率、一般の利子率と置きかえていいかどうかという、そこはあるんだろうと思います。しかし、そういう細かい点を全部無視して言いますと、御指摘のような方向に行くと思います。ただ、絶対額、絶対的にそれが二〇%とかそういう数値ですぱっと出てくるほど、いわばその諸要素がはっきりしていないということでございまして、したがいまして、議論は定性的なものにとどまっていったということでございます。
  167. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと違うといいますか、ほとんど考え方は同じだろうと思いますが、長谷川徳之輔さんという方が「世界」という雑誌の三月号にやはり地価を導く数式を書いていらっしゃいます。  それは、地価というものが、今度は分母が利子率で、分子の方に地代収益と期待値上がり益と節税益が来る、こういう式を書いていらっしゃって、そして、地代の収益というのは日本の場合にはそんなには変わらないんだという前提のようですけれども、期待値上がり益というのは、先ほど大蔵大臣がおっしゃっておるような計画に基づいて用途指定がされたら、この期待値上がり益というのはほとんどない、あるいは転用の可能性がなければ、土地神話というか、この土地はどんどん上がるんだという部分がないんだ、そういう前提の数式のようであります。節税益というのがまさに今度の保有税と裏腹の関係になるといいますか、あるいは租税特別措置法上のいろいろな節税の問題、日本の場合にはこの節税益があるがためにどうも地代がどんどん上がるんだ、利子率、つまり、金利の動きによって一挙に上がったりあるいは緩やかに上がったり、そういうことで上がるんだということを書いてらっしゃるわけでございます。  したがいまして、保有コストを上げるということは、現実の経済的な心理構造の上からいっても、あるいは現実の経済の中においても、保有コストの問題というのは意外と大きい役割を果たすんじゃないか、税率によって大きな地価に対する関係が出てくるんではないか、そんなふうにちょっと最近私は考え出しておるのですが、その点はいかがですか。
  168. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 まさに御指摘のように私ども考えまして、保有税の導入、今回地価税という名前にいたしましたが、それが土地対策地価に対していい影響を持ってくれるということを期待しているわけでございます。  御指摘の論文、私も記憶にございますが、一般の地代収益に加えまして、期待値上がり益というものとそれから節税益というのを掲げて、まあそれは実証できるような、数字が入るというものではないと思いますが、物の考え方として、そのようなものを掲げて御説明をなさっておられました。そこに節税益というようなものが出てまいりますのは、税を担当しておる者としては甚だ残念なことなんでございますが、そのような要素も確かにあったのではないかという気はいたします。
  169. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと質問を進めまして、附則八条の関係をお伺いいたしたいと思います。  この附則八条というのは、主語は何でございますか。主語、主体は。
  170. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 附則八条は、「地価税負担の在り方については、少なくとも五年ごとに、固定資産税土地評価適正化等を勘案しつつ土地保有に対する税負担全体の状況等を踏まえて検討するものとし、必要があると認めるときは、地価税課税対象及び税率等について所要措置を講ずるものとする。」こういうことでございまして、御指摘のとおり、日本語では間々あることでございますが、はっきり主語が示されておりません。しかし、国の法律でございますから、これは政府はということであろうかと思います。
  171. 仙谷由人

    仙谷委員 これは、国会はということでなくて、政府はということになりますね。大蔵省は、適正化等を勘案しつつ検討するものとし、必要があると認めるときは所要措置を講ずる、この義務が政府にあるというふうに読んでいいわけですね。
  172. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 土地政策全般の問題もございましょうから、また地方税の問題もございましょうから、大蔵省はということではないかもしれませんが、やはりこのような所要措置を講ずるのは政府に対して求められているのだろうと思います。法律でございますので、変えるときには当然国会にお諮りすることになります。
  173. 仙谷由人

    仙谷委員 細かくなって恐縮なのですが、この条文に「等」というのが三つ出てまいります。「土地評価適正化等」、それから次は「税負担全体の状況等を踏まえて」の「等」、それから次は「課税対象及び税率等」というふうに記載がございます。それぞれ「等」というのは何か深い意味があるのかないのか、ある種の内容を持っておるのか、その辺を御説明いただきます。
  174. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 「固定資産税土地評価適正化等を勘案しつつ」というこの「等」でございますが、固定資産税土地評価の適正化を勘案するだけではございませんで、やはり地価動向でございますとか地価の水準でございますとか、そのようなものも勘案するというように読むのだろうと思います。  それから「土地保有に対する税負担全体の状況等を踏まえて検討するものとし、」というわけでございますが、検討に当たって踏まえますものは、税負担全体の状況のほかに、例えば土地税制でございますから、土地対策一般のあり方、それから税のことでございますから、国や地方の財政状況ども考えなくてはいけないかと存じます。  それから「地価税課税対象及び税率等」でございますが、これは地価税の税額の計算の要素でございます税率以外の、例えば基礎控除でございますとかあるいは非課税規定でございますとか、場合によっていろいろでございましょうが、税額計算の基礎となる諸要素を指しているものと考えます。
  175. 仙谷由人

    仙谷委員 割と常識的に読むよりも、広い範囲のことがこの「等」の中へ含まれておる趣旨の御答弁をいただいたと思うのですけれども、それがいいか悪いかは別にして、さらにもう一歩突っ込みますと、突っ込みますとと言うとちょっと語弊がございますが、もう一歩踏み込んで申し上げますと、ここに「等」「等」といろいろなことが書いてありますが、結局、地価の引き下げなのか安定なのかはともかくといたしまして、金利とか金融政策とかあらゆるものを総合的に判断して、課税対象及び税率等について新しく何らかの措置をとらなければならない、こういう理解をしておいてよろしいのでしょうか。
  176. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 五年ごとに見直しを行いますが、その場合に、いわばどのようなことを頭に置いて見直しを行うかということでございますから、広くいろいろなものが入ってくると思います。ただ、そのときの金融の情勢というのは、金融政策は非常に短期に変わってくる要素の強いものでございますから、五年ごとの見直しの際にそこをどう考えるのか、ちょっとややつながりは薄いような気がいたします。
  177. 仙谷由人

    仙谷委員 昨年の十二月の方の答申の中には、多分附則八条に照応するといいますか、照応する部分として機動的、弾力的運用という記載がございましたね。特に地価税「創設の趣旨に照らし、今後の地価動向固定資産税評価適正化等を勘案しつつ、機動的、弾力的に見直しを行っていくことが必要であり、再び地価の高騰の窺える事態が生ずれば、総合的土地対策とあいまって果断に税率・控除等を見直し、本税に期待されている役割をまっとうさせるべきである。」という記載があるわけですが、ここの記載とこの附則八条というのは、意味内容を変えておるのか、それともそうではなくして、答申に書かれた今私が読み上げた部分、その部分を法律として書くと附則八条のようになっておる、こういう趣旨なのでしょうか。いかがですか。
  178. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘答申の方は「再び地価の高騰の窺える事態が生ずれば、」ということで、むしろ方向といたしましては税率を上げるというような、あるいは諸控除をより少ないものにするというような方向の話になるわけでございますが、附則八条の方は、もう少し広く負担の関係も考えているのではないかと思います、固定資産税負担等が挙げられておりますので。したがいまして、上げる方向にも下げる方向にも、もし必要があれば見直しをするという趣旨であろうかと思います。  この答申趣旨にございますように、せっかく創設する地価税でございますから、創設の暁には、その本来の趣旨に照らして機動的、弾力的に考えていくというのはそのとおりであろうと考えております。
  179. 仙谷由人

    仙谷委員 きょうの午前中の参考人質問もそうでございましたし、先ほど我が党の小野議員の質問もそうでございました。そして、国土庁のお答えも、やはり地価は下げなければいけないのだ、サラリーマンの年収の五倍程度に、五倍で住宅が買えるといいますか、それにふさわしい地価に引き下げなければいけないのだ、ここが今度の地価税創設の庶民の素朴な願望だと思うのですね。  そうだといたしますと、この八条の規定というのは、先ほど私が指摘しました昨年十二月の答申の中で、再び地価が高騰することがうかがえる状況のもとでは再検討して所要措置を講じる。機動的、弾力的にやるのだということだけではなくて、地価が引き下がらない場合には、少なくとも五年以内に税率とか非課税範囲あるいは控除、こういうものを見直すのだ、そういうふうには読めないのでしょうか。
  180. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど「等」というところで申し上げましたが、当然いろいろ考えます要素の中には、地価動向とか地価の水準とか、そういうことがあろうかと思います。したがいまして、地価が上昇している局面ではないけれども地価の水準自体が非常に高いというようなことについて、より強力な土地政策上の措置が必要であるということであれば、委員の御指摘のような方向で所要措置を講ずるということも当然可能であろうというように存じます。
  181. 仙谷由人

    仙谷委員 後の質問者からも出るかと思いますけれども、この関係で一つ聞いておきたいと思うことは、これがもし成立して地価税が導入されたということになりますと、来年の十一月には申告納税が終了するということになるわけですね。そうしますと、その結果としてのいろいろなデータというのを多分国税当局はお持ちになれるのじゃないかと思うのですね。そのときに、例の非課税範囲あるいは基礎控除の問題で、三万円じゃなくて一万円であったら、あるいは二万円であったら課税されておったであろう課税対象額がどうなるのかとか、どのぐらいあったのか、つまり、単価を三万円にしたことによって、三万円掛ける面積無制限というこの基礎控除の部分が、これによってどのぐらい、節税とは言いませんけれども、それこそ税の対象から漏れていったのかというふうなことが来年になりますればわかるわけですね。当然のことでありますけれども、そういう資料は国会にといいますか、大蔵委員会に報告をされるということになろうかと思うのですが、それはそのとおりで間違いございませんか。
  182. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘のとおり、この地価税が成立いたしまして実施の段階になりますと、課税上の資料がいろいろ手に入ってまいります。課税上の資料をいろいろ分析をいたしまして──法人税とか所得税等につきましてもかなりの部分公表されているわけでございますが、今御意見を拝聴しておりまして、お求めになっておられます資料は、実は課税から外れている部分のように伺いました。そういたしますと、課税資料からは出てこないことになろうかと思います。課税資料から得られる限りのデータにつきましては、私どもいろいろ分析をしてみたいと思います。どういうふうになりますのか、まだ具体的な実施の段階になっておりませんのでわかりませんが、御趣旨を体しまして検討してまいりたいと考えております。ただ、課税上あらわれてこないものにつきましては、全然別途に調査するしか方法がないように思います。
  183. 仙谷由人

    仙谷委員 例の名寄せとの関係で、要するに日本全国の土地が名寄せされて集まる。それは当然のことながら、国税当局としては、果たして三万円を超えているのか超えていないのかということで、金額が入ったそういう名寄せになるのじゃないかというふうに私は想像しているのですね。そうだといたしますと、それを見ればというよりも、税務申告をしてきた人に対して当然のことながら精査するといいますか、調べてみるということにはなるはずでありますから、何々会社は面積がこれだけあるうちこの分が課税の範囲から漏れておるのだ、これが例えば二万円の課税最低限基礎控除の額が二万円ということであれば、幾ら課税されなかったことになるのかというのは当然出てくると思うのですね。つまり、そういう非課税範囲の問題、基礎控除の問題、この辺が附則八条との関係において政府が見直す、あるいは国会でそれを審議するという場合に資料としてなければ、そういうものが見直す材料にならない、そういうふうに思いまして申し上げたわけでございます。  余り時間がなくなりましたので、自治省の方に一点だけ固定資産税についてお伺いをいたしておきます。  自治省は、ことし固定資産税評価額の評価がえをされたということをお伺いしておるわけでございますけれども、一説によりますと、評価水準について地域間の格差を是正するため、地価公示価格の一定割合を目標にして評価の均衡化、適正化を行う、そういう方針をとっていらっしゃるということでございます。これは自民党税調の税制大綱ですか、それにもそのように書かれておるようであります。  当初は、おおむね公示価格の七割程度を考えておるんだというふうなことも報道されたり、言われたりしておりますが、この一定割合というのはどういうことをお考えになっておるのか。あるいは年次別に、当面はこのぐらい、三年後にまたこのぐらい、何年かかかって公示価格の何%というふうにお考えになっているのかどうなのか、その点をお伺いしておきたい。
  184. 堤新二郎

    ○堤説明員 お答えを申し上げます。  固定資産税における今後の評価につきましては、先般閣議決定されました総合土地政策推進要綱におきましても、「平成六年度以降の評価替えにおいて、土地基本法第十六条の規定趣旨を踏まえ、相続税評価との均衡にも配慮しつつ、速やかに、地価公示価格の一定割合を目標に、その均衡化・適正化を推進する。」こととされているわけでございます。  その一定割合につきましては、公示価格そのものの中に将来におけるある程度の期待価格が含まれていることとか、地価が相対的に安定しておりました昭和五十年代のころには、固定資産税土地評価額がおおむね地価公示価格の七割であったことなどを踏まえまして、例えば地価公示価格の七割程度の水準とすることも考えられるわけでございますけれども、具体的な数値につきましては、なお検討を行う必要があると考えております。  いずれにいたしましても、昨年十二月の政府税制調査会答申におきましても、また先ほど申し上げました総合土地政策推進要綱におきましても、平成六年度以降の評価がえにおいて、速やかに評価の均衡化、適正化を図れというふうに言われておりますので、私どもこれを踏まえまして、速やかにそういった措置をとっていきたいというふうに考えております。
  185. 仙谷由人

    仙谷委員 この固定資産税評価については、いろいろな角度からいろいろな考え方があると思します。ただ、公示価格の七割ということが原則になりますと、ある意味では土地そのものが、要するに利用度の違う土地というのが現に存在するわけですから、それを一律に公示価格を前提に七割ということになると、まさに追い出し税になるというふうなこともあり得るでしょうし、そしてまた今度は住民税で減税するんだということになっても、住民税減税の恩典が当たらない人が高額土地のところに住んでおる、あるいはその土地を使っておるというようなこともあるでしょうし、あるいは今度は財源的に見ますと、東京都は非常に税収は上がるけれども、四国の各県とか九州の各県ではほとんど税収はふえないで、どうにもならぬというふうなことも起こってくることがあると思うのですね。  だから固定資産税評価については、今おっしゃったような方法で評価をやるときには、必ず利用の仕方等々、あるいは小規模かそうでないか、今もその種の負担の調整措置があるようでございますけれども、それから財源問題もぜひ考慮に入れて評価がえということをやっていただきたいというふうに思います。  そのことを申し上げて、質問を終わります。     〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
  186. 村上誠一郎

    ○村上委員長代理 富塚三夫君。
  187. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、大蔵大臣に、税率や控除、課税範囲などこの法案を修正してください、こう質問しても、現在では恐らくノーだ、こういうふうに言うだろうと思いますし、抑制効果の問題を聞いても、この法案を出発点にして頑張ってみようとおっしゃるだろうと思いますから、あえて質問しても答えは決まっているだろうと思いますので、きょうは土地住宅問題、この土地法案を契機として、国会の論戦を通じて、論議を通じて、衆知を集めて土地政策を安定させる、あるいは生活基盤である住宅環境整備等の観点から、現実に私も中小の不動産業者の人たちに何人か集まってもらっていろいろな意見を聞いてみました。そうした問題点について提起をいたしまして、それぞれお答えをいただきたいと思います。  一つは、国土庁にお伺いしたいのですが、国土法の弾力的な運用ができないのかということの問題です。結局今国土法による土地の売買価格規制の問題、東京、横浜などは百平米で約三十坪、あるいは神奈川でも私の外れの方などは三百平米ということになっているのですが、中小不動産業者は、一平米が百万円の国土法ということになると、売買をするときにはどうしても百五十万で売らないと採算が合わないということで、また国土法をお願いすると二週間も三週間もかかるということの中で、売買するのを小刻みに売らなければならない、取引をしなければならない、つまり国土法にかからないようにしての土地の取引という問題が現実の問題でたくさん起こっている、こういうことが意外に地価をつり上げている、そういう現象を生んでいるという話を実は聞きました。  また、中小の不動産は高金利の融資に泣いているだけではなくて、現実に土地の売買を促進をしないと死活の問題にかかわってくる、商売が成り立たなくたってしまう、食べていけないという問題が現実に出てくる。  こうした現実について、一体国土庁はこういう事実を知っておられるか、あるいはこういう問題についていろいろ検討されたことがあるかについて、まずお尋ねいたしたいと思います。
  188. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 国土利用計画法によります現在の監視区域制度につきましては、六十二年に法律改正をいたしまして、都道府県知事が定める相当小規模な面積につきましても価格審査、利用目的審査ができるという制度を導入したところでございまして、大変地方公共団体の御努力を得まして、現在では一千市区町村以上で監視区域の指定、運用が行われているという実態でございます。  ただいま先生が御指摘になりましたが、地価の実勢が非常に急騰する局面では、国土法のいわゆる指導価格と申している価格でございますけれども、それは厳し過ぎるのじゃないか、実勢価格よりもぐっと下のラインで、それではとても取引ができないのじゃないかというような御指摘がございますし、昨今のように大阪圏を中心といたしまして地価が上げどまった、ないしは低落基調にあるときには、国土法の指導価格というのが実勢取引価格を下支えしているのじゃないかというような御指摘があるところでございます。いずれも、必ずしも正当を得ているところではないのでございますけれども、運用面では十分そういうことを配慮してやっていく必要があろうというように考えております。  それと、国土法の届け出対象面積を余り細かくすれば脱法的に細切れな売買をすることになるのではないかという御指摘でございますが、これは法律上明確に、同一目的でございますれば、時間差で細切れの売買契約を結びましてもそれは一つの取引ということで把握するということにしておりますので、そういうことはできないという形になっているところでございます。
  189. 富塚三夫

    ○富塚委員 国土法で同じ基準価格を示されても、日の当たる場所と当たらない場所で同じ土地の場所であっても全然値段が違う、価格が違う。あるいは道路一本隔ててちょっと行けばすぐ違ってしまう。つまり国土法では地域全体の総枠的な評価をするのですけれども、現実の取引は日の当たる場所と当たらぬ場所で格段の違いがあるということを考えていくと、国土法の弾力的な運用と言っているのは、どうも行政のそういった画一的な対応と現実の商取引、売買がかみ合っていないという問題についてやはり考えてもらわなくちゃいけない、こう思うのです。  そこで、もう一つの問題は、私の選挙区のある不動産業者の問題ですけれども、先ほど質疑応答のあれのときに資料はおたくの方に差し上げてありますから見ていただきたいと思うのですが、ある人が遺産相続のために二十年近く入っていた貸し家の返還を求めた。そして裁判になった。和解が成立をした。その裁判の和解が一平米当たり六百八十万と裁定をした。そしてトータルが一億四千八百七十五万の売買代金を裁判所が示して和解をした。ところが、国土法は平米が五百万、それ以上は絶対にだめだ、国土法ではそういうふうに示している。そうすると、その土地を買おうとしても、今度は銀行に申し出ると国土法の示した金額しか貸してくれない。銀行はそれ以上は一切貸さないということになって今立ち往生している。つまり、平米の金額が国土法とかなり違う金額を裁定をする、なぜそんなことがあり得るのかということの問題、この辺の問題は一体どうでしょう。
  190. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 まず、国土利用計画法の体系の中では、司法と行政との調整を図るといったような観点から、民事訴訟法によります正式の和解でございますが、こういうものにつきましては届け出義務の適用除外ということにいたしておるところでございまして、裁判所の和解で金額が確定いたしますとそれで契約ができる状態になるわけでございます。したがいまして、先ほどお聞きしたばかりでございますので詳細は必ずしもつまびらかではございませんけれども、民事訴訟法によります和解ということになりますれば、これは国土法の届け出適用外で売買が成立したという効果を持つものでございますので、今御指摘のような事態は起こらない。その事前のいろいろなお話の中にそういうことが出てきたのじゃないかと一つは推測されるわけでございますが、詳細をよく調べてみたいと思います。  それから、今申しましたように法制度上、和解等を適用除外ということにしておりますので、これが悪用されるということになりますれば著しい問題でございますので、そういうことがないように私ども、都道府県を通じまして裁判所との間の情報の交換、連絡ということを十分密にするように最高裁を通じましてお願いをし、連絡体制をとっているというような運用をやっているところでございます。
  191. 富塚三夫

    ○富塚委員 一たん裁判所から示された裁定の金額はそう簡単に訂正できるものでない、何か金科玉条のように皆そう思ってしまいますよね。だけれども、平米当たり百八十万も違う。国土法でこれ以上一切譲れないと行政の関係者は言う。一方、銀行の方は、国土法以外の金は貸せない、こういうふうにはねつける。こういう問題。この点についてお願いしておきたいのは、ぜひひとつ、今答弁は要りませんから、具体的にこの問題も一回調べていただきたい、こうお願いをしておきたいと思うのです。  そこで今度は、国土法の弾力的な運用ということについて今要請をしましたけれども、その点を検討していただくということについて、これはどうなんでしょう、例えば神奈川は神奈川、埼玉は埼玉、東京は東京、それなりのしきたりがあるのでしょうけれども、国土庁としてその実態を把握して、例えば柔軟な、弾力的な対応をする、させるというような手だての問題はうまくいくんでしょうか。流れとしてパイプの問題がうまく通じていくんでしょうか、お尋ねします。
  192. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、国土利用計画法によります指導価格というのは、あくまでも行政当局としての上限の価格でございまして、それ以下で契約されるということについては容認するというものでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、地価が非常に高騰しつつある時期、これについては国土法の指導価格に対する厳しいいろいろな御指摘、それではとても実勢価格の時点に追いついてきていないから契約できないんじゃないかという御指摘がございます。それから、昨今のように上げどまりないしは下落傾向にある時点におきましては、あるサイドからは国土法の指導価格が実勢価格の下支えになっているんじゃないかというような御指摘もあるところでございまして、私どもは、地価公示価格なり都道府県の地価調査価格といったものを基準にいたしまして、厳正的確な運用に努めているところでございますので、この指導価格の水準につきましては、その時点におきます地価の水準というのが十分適正に反映された上で、それの取引の上限価格ということでございますので、ぜひよろしく御理解をいただきたいと思います。
  193. 富塚三夫

    ○富塚委員 ぜひ要望しておきたいことは、実態の掌握とその対応の仕方の問題についてやはり適切に指導されるように望んでおきたいと思うのです。  そうすると、お金を貸す銀行の側の問題なんですけれども、やはり大企業が土地を取得するときは何か担保が要らない、一口で言うと企業そのものが担保になる形みたいになる。そして親会社、関連会社の信用で融資を受けることが可能だ。もちろん形式的なそれなりの担保とかというものはあるかもしれませんけれども、実態的にはそうだという。ところが、中小企業はすべて担保を必要としている。個人の場合もアパートを借りる場合は保証金とか手数料とか取られておりますけれども、どうも結果として大企業の方に金融の優遇措置をとって、中小企業の方にはかなり厳しい状況になっているということの問題について、大蔵省、担当の方どうでしょう。
  194. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 お言葉を返すようですが、この点は私はちょっと承服をいたしかねます。政府系の金融機関を思い起こしていただきますならば、政府系の金融機関の中に無担保無保証の融資措置がつくられておるのは御承知のとおりでありまして、政府として中小企業において必要な資金供給のために無担保無保証の融資措置を設けておることは御承知のとおりであります。  一般的に今委員がお述べになりましたような話がございますけれども、私は、金融機関が融資をいたすに際しましてその貸し金の安全な回収というもののために担保をとるということは、大企業であろうと中小企業であろうと債権保全措置として当然行っておると思います。大企業であれば保証がなしに融資をされるというようなことはちょっと現実と離れているのではなかろうか。ただ、企業規模が大きい、そして担保価値の大きい資産を大企業ほど有しておるということでありますなら、これは私は委員がおっしゃる点も当たる部分があることを否定いたしません。ただ、そうした状況を救うためにこそ政府系金融機関における無担保無保証の融資措置というものが講ぜられておるという事実を申し上げたいと思います。
  195. 富塚三夫

    ○富塚委員 中小企業の側からいうと、やはり金利が非常に高いという問題、これは国会でもいろいろ議論されているし、大蔵大臣や日銀もそれぞれいろいろな見解を言っておりますけれども、やはり中小企業に対する銀行の金融問題は非常に厳し過ぎる。それは一面厳しくしなければならないことのあることもわかるけれども、もうちょっと弾力的にそういうことを考えていくという指導をすべきではないのか。金利の引き下げの問題とその問題については、結局大企業は、比較的やりたいほうだいと言っては語弊がありますけれども、担保がなくとも、あるいは企業の信用でいろいろなことができても、中小企業の方が大変厳しい状況に置かれるというだけでは、そのことが先ほど前段に申し上げましたように土地の切り売り売買によって地価を押し上げているという問題なども現存するということになると、その辺の問題を考えていくことはできないのかどうかという点について、金利の問題、金融の弾力化の問題についてどうお考えでしょう。
  196. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の御指摘をもう一つ私取り違えておるのかもしれませんけれども委員の今触れられました金利というものが、民間金融機関の融資についての個別の案件についての金利水準ということでありますならば、実は私は的確なお答えをできるだけの細かい知識を持っておりませんけれども、金融機関として、金融機関自身の経営の安定ということも当然ありましょう。その資金調達コストがどれぐらいになっておりますのか、その状況によっても変化があるであろうと私は思います。また、その時点その時点における公定歩合、どの程度のところにあるのか、あるいは長期金利、短期金利、どのような状況にありますのか、要はそれぞれの金融機関の資金コストにもかかわりがあることであろうと、一点は思います。  また同時に、先ほども申し上げたわけでありますが、そうした民間金融機関の機能を補完し、中小零細企業を守るためにこそ政府系金融機関というものは存在をいたします。そしてそれは国民金融公庫であろうと、中小企業金融公庫でありましょうと、政府系金融機関としてまさに中小零細企業の方々の資金需要に対応するために存在をするわけでありますけれども、そこで使わせていただくお金の原資は、国民からお預かりをしたものでありますから、こうした点もその水準に反映をするのは、これはやむを得ないことであろうと思います。  ただ、先ほど委員はその担保を問題にしてお話しになりましたので、私は、無担保無保証の制度を政府系金融機関において持っておるということを申し上げたわけでありますが、要は民間金利、これはそれぞれの金融機関における資金調達コストというものと連動するということでありまして、その資金調達コストを割って、特定の、これが大企業でありましても中小零細企業でありましても、貸し出しを求めるということはおのずから限界があろうかと思います。     〔村上委員長代理退席、委員長着席〕
  197. 富塚三夫

    ○富塚委員 結論をきちっとせいという問題ではなくて、さまざまなケースの問題について、やはり十分に実態を取り上げて検討していくという角度がないと、この法律だけ通ったって、ひとり歩きしていっても、どちらかというと影響の受けない人たちの間で、いろいろなまた別なくぐり抜けることを考えるとかということがあってはならないという点で、私は今申し上げているのです。大臣の言わんとすることもわかりますけれども、しかし、やはり多面的に問題を取り上げて、ひとつ金融の分野でもあるいは弾力的に考えるところがあっていいのではないかという点について、私は申し上げておきます。  次の問題は、自動車の車庫の問題なのです。この問題が土地の値段をつり上げているという問題について、ひとつぜひ見解伺いたいというふうに思うのです。  東京などでは、一台一カ月三万から七万、何か神田周辺などは七万円だと聞いています。地方に行きますと、一万から三万くらいですよね。それで、車を購入しても登録は当然車庫を確保しなければならないと義務づけられている。一体、車の登録台数と車庫の数というのはどの程度あるのかというものを政府は掌握されているかどうかということの問題ですが、どうですか。きょう答えられないなら、また次の機会でもいいですけれども
  198. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 具体的な数字のことについては、私どもも現在手元に持っていないわけでございますが、ただいま御指摘のございます車庫とか駐車場の需要、これは大都市におきます業務機能の一環ということで、今回東京の都心部を中心にした地価高騰というのも東京の業務機能が著しく集中したことに端を発しているという、一環の問題だろうというように認識をいたしております。したがいまして、これからの都市交通をどうするか、あるいは業務機能等の配置のあり方、あるいはその容量といったような都市全体の計画的な整備の一環として解決されていく必要がある問題ではなかろうか、かように基本的には認識をいたしております。  ただ、先生指摘のような問題点につきましては、ただいまのお話にございますように、地域によって事情が非常に大きく異なっておると思われますけれども、特に東京等、旺盛な駐車場需要が存する地域におきましては、いろいろな問題というものが出てまいっておるわけでございますので、私ども関係省庁と十分連絡を密にいたしながら、この問題に取り組んでいく努力をいたしたい、かように考えております。
  199. 富塚三夫

    ○富塚委員 この自動車の車庫の問題は、サラリーマンにとっては今大変大きな問題だと思うのです。最近路上駐車は徹底的に取り締まるということで、警察庁も警視庁も徹底的に取り締まっている。ところがサラリーマンは、車庫を借りようと思うと、値段が高くてとても借りられない。結局は路上の駐車を考えざるを得ない。いろいろなことを苦心して考えているように思われるのです。そうすると、この車庫の値段というものが、一カ月当たりの車庫の貸付料が幾ら幾らという値段がそっくり地価に連動するみたいな、土地の値段に結びつくような形のものがやはり随所にあらわれているということなんです。そうすると、サラリーマンはどうすれば車庫を確保することができるのかということで腐心をしている問題なんですけれども、ここの問題について、公共的で低廉な車庫をつくるという意味で検討していくような方法はないのか。あるいは、県や市の住宅ども、団地の場合にかなりの規制があって、やはり車のいろいろな規定があって駐車ができない。そういうことをもっと積極的に取り上げて考えて指導していくということはできないものなんでしょうか。
  200. 鎭西迪雄

    ○鎭西政府委員 直接の所管でございませんので、ただいまの問題点につきまして的確に御答弁はできかねるわけでございますが、駐車場につきましても現在いろいろな形で、融資制度あるいは地方債によります財源措置税制上の優遇措置等等によりまして、円滑な都市交通の確保と地域経済の活性化を図るため、いろいろな対策は講じているところでございます。  先生の御指摘の問題につきまして、先ほど申しましたように、私ども、十分関係省庁と連絡を密にいたしまして、対策についてこれから検討、対処いたしたい、かように考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  201. 富塚三夫

    ○富塚委員 私は、自動車の車庫問題は大きな政治問題であろうというふうに思っている一人ですけれどもサラリーマンのマイホームやあるいはマイカーの夢を生かしてやる、そういうものが今の時代になければならない問題だ。ただ、一方では規制だけを考える。一方はとても高くてそんな値段では買うことができない、どこかを探して置かざるを得ないといったようなことで腐心をしている方々がたくさんおられるだろうということについて、同時に、その車庫を持っている地主さんがやはり高い値段で貸し付けて、需要と供給の関係にもちろんなりますけれども、どうしても車庫の値段を下げていくみたいな雰囲気にはならない、上げよう、上げようというふうになっていく流れが出ていることに、つまり警察の規制が強化してそういうふうになると、余計またそういう形のものに連動していくような形になっているわけですね。  だから、ここのところは私は、車の登録台数やあるいは車庫の数とか、現実の問題をやはり政治の場でしっかりとらえて改善をしていく、サラリーマンのニーズに沿って実現をしていくような努力をすべきなんじゃないのかというふうに考えるわけです。  そういう点で私は、幾つかの現場におけるこういった実態の中から問題点を提起したのでありますけれども、この新地価税の問題、法案をいろいろ審議するに当たって、やはりいろいろな問題を摘出してやりませんと、税調答申が出た、法案にした、通りさえすればいいという問題ではないのではないかという点で、午前中も参考人にいろいろ質問して意見を申し上げたのですけれども、やはり全面的にこれを契機にして地価抑制問題に取り組んでいく、住宅問題に取り組んでいく、道路問題に取り細んでいく、あるいは車庫問題に取り組んでいくという姿勢が貫かれてしかるべきだと思うので、私はそのことだけ申し上げて、あと細谷委員の関連質問に譲ることにいたします。ありがとうございました。
  202. 平沼赳夫

  203. 細谷治通

    細谷委員 貴重な時間でございますから、重複を避けるという意味で、幾つか答弁を用意していただきましたけれども、まことに御容赦いただきたいと思います。省略させていただく部分があるのではないかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、土地神話というものが国民の意識の中に深く浸透しているというのは、いろいろの世論調査なんかにも出ているわけでありまして、そういう意味からしますと、今回の税率〇・三%、初年度〇・二%、単価控除三万円、十億から十五億の非課税額、広い非課税範囲の設定など、地価抑制効果ということで見ますと大変大きな疑問を抱かざるを得ないわけであります。これについて、その効果について御答弁をいただく必要はございませんけれども、ただちょっと気になりますのは、一月の段階で大蔵大臣がマスコミのインタビューにお答えになりまして、新たな土地保有についての税体系を構築できるかどうかが重要な問題だ、その上で率の議論があるのではないのかというようなコメントをされておりまして、あたかも今回の地価税、この税の仕組み、システムをつくればよしとは言いませんけれども、つくることに重要な意義があるのだと、現下の緊急かつ不可避の問題である地価の抑制、引き下げということは、まあその従たる使命といいましょうか、目的であるとも受け取れかねない御発言があったわけであります。だとすれば、その仕組み、現下の緊急かつ不可避の問題ということではない、仕組みを入れることが大切だということならば、もう少しじっくり時間をかけて、会期末のこの忙しいときにばたばたとやらぬでも、じっくり議論をしてもいいのではないかと私は考えないでもないわけでありますけれども、この辺の御真意について大蔵大臣の御所見を賜りたいと思います。
  204. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御引用になりましたものがどこに掲載されたか、あるいは電波として登場したのか、私は存じませんけれども、確かにそういう言い回しを私がしていなかったとは申しません。というのは、その時期を委員に思い起こしていただきたいわけでありますが、地価税、あるいはそのころまだ土地保有税という言い方も残っておりましたけれども、こういうものは要らないという、反対であるという空気の非常に強かった時期でありました。そして私どもとしては、法案取りまとめに向けて最後の努力を一生懸命、事務方の諸君にさせておった時期であります。そして、地価税というものが土地神話を破壊する上で必要な武器であるということは当然のこととして繰り返し私は述べてまいりましたし、その新しい保有についての税制を創設することが、ようやく土地基本法の成立を受けてその理念の上に立って行えるようになったということも繰り返して申しておった当時であります。そして、そういうときに必ず出ておりました質問は、税率はどうするのかとかそういう話が必ず出ておったわけでありますから、その税率云々よりも、とにかく効果あらしめるためにまず仕組みをつくり上げたい、今その新しい制度をつくることの方が私の頭の中にはいっぱいあるので、率の話とかあるいは一定面積以下の面積というのをどれぐらいにするかとか、そういう話は事務方の諸君に聞いてくれないかと、私は、大枠の仕組みそのものをつくることを世の中の納得をとらなければならないんだ、そんな話を繰り返しておりました。ですから、そのうちの一部を引用されますならば、私は確かにそういう言い回しをしておったことがございます。  ただ、その発言の行われましたそれ以前からその時期にかけての状況というものの中で、反対と言ってこられる方々を説得することに全力投球をしていた時期であるということはどうぞ御理解をいただきたいと思います。そしてその中で、私どもが今、我々として最善と思われるものをつくり上げ、国会に御審議をいただいておるわけでありまして、今日我々なりに結論を出しました税率、そして控除その他の仕組みを御検討いただいておる、そう御理解をいただきたいと思います。
  205. 細谷治通

    細谷委員 大臣の決意のほどはわかりました。  先ほど同僚議員から附則八条の関係についてちょっとお話がありましたので、もう少し突っ込んでお伺いしておきたいと思います。  附則八条には「少なくとも五年ごとに、」という表現になっておりますけれども、要するに片一方では地価の実情に合わせて機動的、弾力的に対応していこうということであるならば、その五年を待たずに見直すことあり得べしという理解でよろしいのかどうか。何か聞いておりますと、五年たったら見直すんだという、盛んにそういう言葉が返ってまいりまして大変気になるものですから、機動的、弾力的に運用するということは、当然、五年待たずに見直すことも情勢によってはあり得るという理解でどうか。
  206. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ここで五年という考え方をとりましたのには、平成四年に導入をされました後の実施状況を見きわめる必要がある、また、固定資産税評価の適正化が平成六年度の評価がえから三年ごとに実施される、また、地価そのものの中期的な動向を見きわめるといった考え方から、原則的な期間としては五年というのが一つの目安、私どもはそう考え、適切なものと判断をしたわけです。  しかし、それは「少なくとも五年ごと」の見直しでありますから、例えば地価の高騰など、見直しの緊急性が認められる場合には、その五年という年月にとらわれることなしに、機動的、弾力的にその見直しを行う、そうした必要が生じた場合には当然そのような行動になる、五年というものにこだわるものではない、私はそう考えております。
  207. 細谷治通

    細谷委員 次は、税収の使途についてお尋ねをいたしたいと思います。  今回の新税による税収額は三千億から四千億とも言われております。もし税率が、例えば〇・五から一%の間であるとか、基礎控除を五億円にするというようなことにしますと、一兆数千億円の税収になるのではないかということがマスコミ等で報じられているのは御承知のとおりだというふうに思います。  ところで、この税収の使途でありますけれども、税収額が非常に少ないときと、それからかなり大幅な税収が期待できる場合では、考え方が変わってくるのではないかというふうに私は思うわけでありますけれども、この面については税調答申では、少なくとも「増収を目的とするものではない」ということだけは言っているのですけれども、どちらかというと所得税の減税、すなわち所得消費資産等の課税の均衡を図る、そうした観点からは新税創設の際には所得課税の減税をあわせて検討することが適当であるとして、インフラ整備等、「国民生活に還元することが適当」であるというのは少数意見として書かれているように思います。結論としては先送りになっているわけです。政府はあくまでこの辺については明確になっておりませんで、単に税調答申を踏まえて対処するというような抽象的なことになっていると思うのですね。やはり国民にこういう新税の理解を求めるときには、私は、上がった税収をどうしていくかということをしっかり国民の前に示していくことが必要じゃないか、理解を得るためにもそういうふうに思います。私は、だからそういう意味において、この時点で今政府として税収をこういうものに使っていくんだという基本的な方向というものがあればお示し願いたいと思いますけれども、私自身としては、まだ三千億、四千億のこの税収の段階ではこれを所得減税でばらまいてみても効果のない話でありますし、むしろ重点的、集中的に何かインフラ整備とか土地の先行取得とかそういう方向に資金として充当していくのが適当じゃないかと思います。そしてまたこれがいろいろの、例えば税率を上げたり何かして非課税範囲を見直したりして税収がふえた段階においては、場合によってはそれは所得減税に回していく、そして課税バランスを図っていくという必要もあろうと思いますけれども、現在のこの税収の少ない段階では国民に何かそういうインフラ整備というような形で還元することが望ましいのではないかというふうに考えておりますが、政府考え方がございましたら……。
  208. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど委員が引用されましたのは、土地税制についての基本的な考え方を税調からいただいたときにお示しをいただいたものであります。その後、「平成三年度の税制改正に関する答申」において、基本答申考え方に沿って平成四年度の税制改正、予算編成時までに検討しろという提言をいただいているわけであります。そして、今私が申し上げられますことは、この基本答申というものを受けて我々がこれから考えていくわけですけれども、その場合には、委員の御意見をも含めて国会での御議論というものは我々の非常に大きな一つの、参考資料と言っては大変失礼でありますが、参考でありますし、また御承知のように、国会における御議論の要点というものは政府税制調査会審議の御参考としてお知らせをいたしておるわけでありまして、私は、今後院における御議論、そして税制調査会答申というものを踏まえて適切に対処してまいりたい。その意味において、御論議を深めていただくことは、税制調査会の検討にも資することとして、大いに歓迎と言っては大変失礼な言い方なんですけれども、私は、非常に一つの望ましい方向をまとめていく上で有力な参考になる、そのように考えております。
  209. 細谷治通

    細谷委員 午前中参考人としてお見えいただきました石教授も何かの本で、税収が当初もくろんだとおり一兆を超すような財源になる場合には所得税減税というような形も考えられるけれども、五千億以下ぐらいのものであるならば、みんなに薄くばらまくよりも、むしろ何か目的を定めて集中的にインフラ整備等に使っていった方がいいんじゃないかという御提言があったと思いますが、私は大賛成なんです。そういうこともぜひ御参考に検討していただきたいと思います。  次に、損金算入の対象になっているわけでありますけれども、この問題について少し考えてみたいと思います。  政府税調答申では、新税による税額は「損金算入の対象とすることが適当である」、こうなっております。ただ、その中に、しかしながらということで、「もっとも、この点は、税率水準の決定と密接に関わるところであるが、土地保有に対する負担という点からは、所得の有無により新税の実質的な負担が大きく変わるのは適当でなく、損金算入の対象とすべきでないとの意見があった。」、要するに少数意見を付記しているわけですね。そして、答申自体は結論を先送りする形になっております。  そして、ちょっと経過を振り返ってみますと、大蔵省側から自民党税調の土地税制小委員会に対しまして、新税の税額は法人税や個人事業税を計算する際に損金算入を認めるという考え方を提起する形に去年の段階でなっているやに聞いております。その中で、これは新聞報道でありますので真偽のほどは確かでございませんけれども理由としては、新税と同様に土地保有に対して課税する固定資産税も損金算入が認められているのだからというのが一つ。それから、これはちょっとあれでしょうけれども、損金算入による恩恵は黒字の法人だけに及ぶため、節税対策で赤字決算を選んでいる法人が黒字申告に踏み切るきっかけになる。こんなことはないと思いますけれども、それが書いてございます。こういうことを報道されております。  さて、結果としてはこの法案では損金算入が認められる形になっております。考えてみますと、私は税理論は詳しくありませんけれども固定資産税はある意味では公共的なサービスの対価としての性格があるわけでありますから、これは企業のコストというふうに考えてもいい。したがって費用、損金算入するという一定の合理性はあり得るのじゃないかと思いますけれども、この場合の地価税土地保有に対するコストであり、公共的便益に対するコストではない。保有そのものに対するコストだ。要するに一定政策目的を実現するために設けられる税だということになるならば、これを損金算入する合理的な根拠はないのじゃないか、単なる負担軽減を図っているにすぎないのではないかというふうに私は思うわけであります。そしてこれは事実、例えば東大の宮島教授などは、この保有税というのは未実現キャピタルゲインに対する代替課税だと考えるならば所得課税の一種だ、だとするならば法人税と同じように損金算入を認める必要はないのではないか、こういう学説を租税理論として展開されておるわけですね。そういう難しい議論は別にいたしまして、所得の有無によって新税の実質的な負担が大きく変わってくる。黒字企業は言ってみれば実質的には税率の半分の負担で済む、赤字の企業は丸々税率の分だげ負担しなければいかぬ。要するに所得の有無によって新税の実質的な負担が変わってくるというのはいかにも不合理だというふうに私は思えてならないのです。また、しかもそのことが実は、損金算入を通じて、当初の法律の目的である資産としての有利性を引き下げるという効果もその分だけ間違いなく減殺していることは事実だと思うのです。  そこでお伺いしたいのでありますけれども、今回損金算入を大蔵省として積極的に認めていこうとお考えになった理由ですね。それと、私が言いますその税調答申の少数意見に書かれておる、所得の有無によって新税の実質的な負担が変わってくる、この辺についてはどういうふうにお考えになっておるのか、御見解を賜りたいと思います。
  210. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘がございましたように、税制調査会におきましてもいろいろと議論がございました。しかし、一番素直に考えてみますと、この税は、事業の遂行上土地保有している、その土地保有に伴いまして生ずる費用と見るのが一番妥当ではないかと私ども考えたわけでございます。他の租税公課、固定資産税という例を挙げられましたが、それと同じように法人所得の計算上損金に入れる、それが一番素直ではないだろうか。この地価税一つの目的といたしまして、土地保有コストを高めることによりましていわば土地保有というものについて企業にコスト意識を持っていただく、そうすることによってコストのかかる土地をむだに使わない、効率的に利用する、そのようにしていただきたいという思いも加わっているわけでございまして、その点から考えましてもコストとして処理していくことの方が素直であろうと考えたわけでございます。  赤字法人と黒字法人の相違について御指摘がございましたが、これは赤字法人、黒字法人を問わずに同じ扱いにするということでございますから、特別に赤字法人に不利な扱いをしているということでもございませんし、それから、よく御承知のことと存じますが、例の青色法人等はまた損失の繰り越しというようなこともできるわけでございますので、これが不公平な取り扱いになるというようには考えておりません。
  211. 細谷治通

    細谷委員 いずれにいたしましても、結果としては所得の有無、要するに黒字、赤字の状態の違いによって税負担が変わってくるということはやはり一つの大きな問題ではないかというふうに思います。そのことだけ指摘をしておきたいと思います。  次に、地価税算定の評価基準であります路線価の問題なんですけれども、大体今路線価というのは、ことしの引き上げによって全国平均で三八%の引き上げをなさったのですか、そういうことで、当面の目標でありました公示価格の七割という水準にほぼ全税務署管内で達成した、こういうことになっておるわけですね。その公示価格の七割が妥当なのか。大蔵省国税庁ではかつて、去年の段階においては公示価格の七割を八割程度に引き上げるということも御検討されたこともあるというふうに報道されておりました。やはり、公示価格を実勢価格に引き上げ、近づけていけばいくほど、その分だけ逆にいえば地価税評価基準として上がっていくわけでありますから、その分だけさらに効果が増すことになるのじゃないかというふうに思うわけなんです。例えば、税率非課税限度というものは、基礎控除額なんかはもちろん、地価税そのものを改正しなければならぬわけでありますけれども、これはある意味では行政の裁量でできるのではないかと思うのです。  したがって、今後公示価格の七割という水準をどういうふうに考えたらいいのか、さらに、これを引き上げていく、バーを上げていくお考えがあるのかないのか、その辺についてお伺いいたしたいと思います。
  212. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  まず最初に、この七割という考え方、根拠でございますけれども先生御承知のように、相続税におきます土地価額につきましては、地価の公示価格それから売買実例価額、それから不動産鑑定士などの地価事情の精通者の意見価格、これらをもとにして地価公示価格と同水準の価格をまず算定いたします。それで、その価格の七〇%程度を目途としてかた目の評価を行っておる、こういう状況にございます。  といいますのは、実際問題として土地価額には相当の値幅がございますし、また相続税における評価というものはあくまでも課税上のものであるということを考慮いたしまして、例えば相続した土地を納税のために売り払う、そういう売却をしたとしても、その売買価額評価額を下回ることのないように、その値幅の中では下限に近い価額により評価することといたしているものでございます。  なお、この七〇%という割合は、土地の取引価額の値幅について過去の経験的数値から導き出された平均的な数値でございまして、相続税評価の上で従来から採用されてきているものでございます。  次に、先生指摘のこの相続税評価を実勢価格に近づけるべきではないか、こういうことについてでございますけれども、今申し上げましたようにかた目の評価ということで七〇%を目途に評価を行っているところでございますが、この評価に関しましては、御承知のように昨年十月政府税制調査会答申、「土地税制あり方についての基本答申」の中に、土地有利性を縮減し、不要不急の土地需要を抑制するため土地相続税評価における現行の評価割合七〇%をある程度引き上げていく必要があること、こういうことが答申されたところでございます。  また、本年一月には総合土地政策推進要綱が決定されまして、ここでは、土地相続税評価については、地価公示価格を基準として評定する考え方に立って、平成四年分の土地評価から評価時点を一月一日に変更すること、現行の評価割合の引き上げを図ること、及びこれに伴う相続税負担調整等について平成四年度税制改正において検討すること、このようなことが閣議決定されたところでございます。国税庁としては、この閣議決定の趣旨に沿いまして評価割合をどの程度引き上げるかについて今後鋭意検討してまいりたいと考えております。  なお、先生から、八割という数字を国税庁は既に検討したのではないかというふうな御趣旨の御発言があったようでございますけれども、私どもそういう新聞報道があったことは承知をしておりますけれども、現在のところ具体的な数値をその引き上げ幅について持ち合わせているわけではございません。ですけれども土地有利性を縮減すること、こういう見地からしまして、実際の土地取引における取引価額相続税評価との関係等を調査した上で妥当な水準を慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  213. 細谷治通

    細谷委員 要するに、公示価格の七割というのは絶対的なものではないんだということでよろしいのですね。
  214. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 今申し上げましたように、これから実態調査等を行うこととしてはおりますが、この七割という数字は実は戦前から存在しているものでございまして、戦前においては取引価額の七割ということでございましたけれども、この公示価格との関連におきましては昭和四十六年から七割ということになっておる次第でございます。あくまでも経験的な数値でございます。
  215. 細谷治通

    細谷委員 時間がなくなりましたので、地価税関連の質問はこれで終わりますけれども一つだけ、これから政府税調、大蔵省でも来年度の税制改正に向かっていろいろと検討、勉強が始まるのではないかというふうに思っております。前回の大蔵委員会で私、給与所得控除のあり方について御質問を申し上げておりましたけれども、きょうはもうお答えは結構でございます。  それに関連して、特定支出控除の制度が設けられております。この制度は一九八八年に導入された制度で、実はほとんど利用されてない。八八年で十六人、八九年で五人という、鳴り物入りで導入された制度にしては、これが利用の実態であるということなんですね。ですから、制度として大変未熟であるというか、未整備であるというふうに言わざるを得ないと思うのです。何といっても、サラリーマンがみずから自分の税金について確定申告をするということは、税に対する関心度を向上させることになりますし、私はやはり望ましい方向だというふうに思うのです。ところが、せっかくその一部を導入したこの制度が実はほとんど利用されてないということでありますので、来年度の税制改正に向かってこの問題はどこに問題があるのか、そしてどうすべきなのかということをじっくり議論をしていただきたいということを御要望申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  216. 平沼赳夫

    平沼委員長 渡辺嘉藏君。
  217. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 地価税について御質問をさせていただきます。  まず新税の目的でございますが、土地は社会公財産という基本法の概念から、社会的公平を図るためにも今日の地価の過大な高騰期待の抑制と、むしろ地価の引き下げのために土地保有に対して適切な水準の負担を求めることで、一つは投機的土地購入を抑制する、二つ目には未利用地のまま保有している値上げ待ちを排除する、三つ目には土地供給の促進を図る、こういうような幾多の目的を持って新税を創設、導入した、こういうふうに理解をいたしますが、それでよろしゅうございますか。
  218. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常にうまくまとめられまして、基本的に私はその方向を否定するものではございません。
  219. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 では、大臣から御答弁をいただきましたので、それに基づいて個々に聞いていきたいのでございますが、まず、社会的公平を図るための新税に不公平があってはならぬと思うのであります。そこで課税の基本は、法二十三条では土地の時価、こうなっておるわけですが、これは何をもって時価とされるわけですか。
  220. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 具体的には相続税評価を行っております路線価格に従って時価とするわけでございます。
  221. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今、相続税評価額、路線価格をもって時価とする、こういうふうに承りましたが、本当の意味で果たしてそれが時価という法文に当てはまるのかどうか。時価というものは、一般的に売買の実例、不動産鑑定士の鑑定あるいはまた売り急ぎ、買い渋りあるいはまた買い急ぎ、売り渋り、いろいろあるわけですね。そういう状況によって時価というものは十のものが十五になったりあるいは五や六になることもあり得るわけですが、この路線価格はしからば何をもとにお決めになったか。
  222. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  時価という言葉につきましては、実は相続税法の二十二条に時価の規定がございまして、相続税財産評価基本通達において「自由な取引が行われた場合の通常成立する価格」、こういうふうに規定されておるわけでございます。そこで、この時価は路線価ということになるわけでございますけれども「この相続税におきます路線価は、まず、あらかじめ定めた標準地につきまして、地価公示価格、売買実例価額それから不動産鑑定士などの地価事情精通者の意見価格をもととしまして地価公示価格と同水準の価格を評定しまして、その価格の七〇%程度を目途として評価額を算定しております。次に、その評価額を柱といたしまして各路線ごとにおきます地価バランスをも調査した上で、各路線ごとの価格を決定することとしております。  以上でございます。
  223. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 恐縮ですが、できるだけよくわかるように、こちらで聞いておると言葉はあるのだけれども意味が不明瞭で聞き取れないことがありますので、よろしくお願いをいたします。  そこで、今相続税法にも時価とあるんだ、だからその時価というものは今お述べになったようないろいろなファクターを勘案して路線価格として決めたんだ、こういうふうに承ったのです。  そこで、今皆さんのお手元にもお渡ししたわけですが、路線価格にはそれぞれ大きな矛盾を抱えておるということなんですね。相続税の場合は一回きりですから余り問題にならなくてそのまま済む場合が多いのですが、これから毎年、これは保有にコストを意識させるわけですから、これが不公平があるといろいろなトラブルが起きてくることは言をまちません。  私の地元の岐阜市で白山町があるわけですが、これの一丁目では平米四十三万五千円、すぐお隣の二丁目は三十六万五千円、三丁目は二十六万四千円、同じ路線で同じ併用住宅地なんです。わずか二百メーターから三百メーターの間にこれだけの格差が出てくるのです。それだけの値打ちは実際あるだろうか。一方においては百であり一方は六十、わずか二、三百メートルの間にこういう格差があるのです。同じ延長線上に長住町一丁目があります。ここは平米六十万円。すぐ隣の二丁目は百十七万円。五十一対百、こうなるわけですね。これは単に、ここにも出ておりますように八メートルの道路がある、この道路を隔てただけでこれだけの倍の格差が生ずるわけですが、問題はここなんですね。こういう格差がありますと、階段状にこういう極端に格差が出てきます。道路を隔てた八メートル先は六十万、道路のこちら方は百十七万、こうなるわけですね。所得税でも一〇%、一五%、二〇%と税率が格差がありますが、これは前段階の分を税額控除の形で累進ですから控除いたしますから、緩いこういうカーブになっていきますから角がなくなるわけです。ところが、この場合には極端にその角がそのまま出てきますので、こういうふうに考えると、果たしてこういう極端なことを見逃したままでいいのかどうか、この点どうです。
  224. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  非常に細かい技術的な点でございますけれども、まず一つの例で、同一の路線であるにもかかわらず途中で価格が変わってしまう、こういう事例をお挙げになりましたが、この点につきましては、路線価は宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定をする、こういう考え方に立っておりますので、その設定に当たりましては各路線ごとにおける地価状況、繁華街であるとか商業地区であるとか住宅であるとか、そういういろいろな事情に応じましてそういう地価状況調査した上で、各路線間の地価バランス等を考慮した上で各路線ごとの価格を決定することにいたしております。したがいまして、間隔があったとしてもそれはただいま申し述べたような結果に基づいて定めておるものでございますので、この点を御理解いただきたいと思います。なお、各路線価の地価バランス等については毎年見直しを行いつつ適正な評価に努めておる次第でございます。  それから、例えば角地の場合があるかと思いますけれども、例えば道を挟んで向かい合った角地の場合……(渡辺(嘉)委員「まだ角地は聞いてない「これから後で聞くから」と呼ぶ)  以上でございます。
  225. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 理論的にはそれでいいのです。ところが、その理論を現場におろした場合にどうなるか、問題はこれなんですね。現場におろすと今のような矛盾が起きる。だから毎年見直したとおっしゃる。そのとおり。  ところが、見直しによって六十万と百十七万は、前年度は五十万と八十四万なんです。これを今度逆にまた余計開いてきておるのです。こういう現象が現実に起きてきているということ、この意味から見ると、私が何回も言うように、角がこういうふうにかちっとついてしまう。わずか八メートルの差でそれだけついてくるわけですね。こういうことは決して好ましくない。野球場なら特等席と外野席とのフェンス一枚だ、こう言うかもしれぬけれども、やはり税ですから。ですから、私は、ここに公平の概念から見てもスローカーブを何らかの形で設けないと好ましくない。  あわせて、これの答弁とともに角地のことを御答弁されようとされたが、私の方がまず聞きます。  今もう一つの紙をいただいたわけですが、これには角地加算の計算が出ております。これは大蔵省からもらったものですから全国的な例ですが、これに岐阜市の例も含めておきました。まず、Aさんは角地で三百三十平米持っておるわけですが、表通りは百五十万、横の通りは百二十万。ですから、これは角地加算をいたしまして、この人は百六十二万。それからBさんは、ずっと町の中の方に持っておりますると百五十万のままということになるわけですね。これは角地だからいいのじゃないか、こういうことになる。あるいはまた、岐阜市の例をとりますと、六十万円と四十万円のところがありまするので、それを角地計算いたしますと、六十万と六十二万八千円ということになるわけですね。  問題はここなんです。角地だから当然高くなりますよ、こういう反面、今度は、角地で安い方に面しておるところが距離が長いという場合があり得るわけですね、表に面しておるところ。だから、これに対しては奥行き逓減方式あるいはまた狭小地、側方加算、三角地のいろいろな補正をずっとやるわけですね。ところが、全部やりましてもこういう矛盾はもう解決しない。そうすると、私は横の安い方に面しておるところが距離が長いのだからこの方で計算しますよ、こういう意見を述べる人も出てくるだろうし、あるいはまた表通りの百五十万の延長が二十二メートル先では九六%なのか九八%、いろいろな指数がありますが、九六まで影響するのか、わずか二%か四%程度逓減するだけで果たして二十二メートルがつかまえられるかどうか、百五十万でつかまえていいのかどうか、これは甚だいろいろな問題があるわけですね。こういう点を考えますると、この路線価格の格差、乖離、現実に乖離しておる、矛盾等々については、今申し上げた奥行き逓減率、側方路線影響加算率、その他三角地だとか狭小地、いろいろな補正率があるわけだが、これを今回、この際抜本的に見直しておかないと、新税を施行したときには必ず問題が起きると私は思うのですが、どうですか。
  226. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答えを申し上げます。  委員指摘のとおり、現在の評価の建前と申しますのは、要するに路線価の高い方を正面といたしまして、その横に側方路線がある場合には側方路線加算として算定しているわけでございます。  この路線の高い方を正面として計算することとしておりますのは、その土地価額が路線価の高い方の路線の影響を受ける度合いが高い、そして側方の路線の影響を受ける度合いが少ないということを考慮したものでございまして、実態に即した評価方法と考えております。仮に角地について安い方を正面として計算することにいたしますと、その土地の価値を反映しない評価額となりまして、さらには、高い方の路線だけに面している角地でない土地よりも安い評価額ともなりますので、課税の公平の見地からも問題があると考えております。  ただ、委員指摘のとおり、地価税の執行に当たりましては、例えば奥行き逓減とか側方路線の加算とか、そういう点についてはさらに検討を加えていきたいと考えております。
  227. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 もう一遍申し上げておきますが、時たま聞きにくいところが出るので、僕の耳が悪いのかどうか知らぬけれども、これはきちっと聞いておきませんと、言葉ですから僕が理解できないままですと、後で文書を見ればいいというものではありませんので、次の質問ができませんので、済まぬけれども、きちっとわかるようにしゃべっていただけませんか。  今部長さんがおっしゃったように、いや、自分たちの方はこれで正しいと思っておるんだ、これが常に大蔵省なり税務署へ住民、国民、納税者が行ったときの答弁なんです。甚だ勝手にできない場合がたくさんあるのです。しかし、権力は大蔵省にありますから、時には、泣く子と地頭には勝てない、こういうことが起きるのです。裁判までやればいいじゃないか、よほどの人でなければこれはできない。  そこで、私はこの時価という表現は法律上好ましくないと見ておるのです。なぜか、これからまたいろいろ申し上げていきますが、まず今度は、今の角地の問題等についてもそうですが、表側でやることは好ましくないので横側でやった方が私の商売はいいんだ、事業はいいんだ、こういう場合もありますね。そうすると、表側の百五十万の経済効果よりも、側道の百二十万円の方面で私は商売をやった方がいいんだということになると、経済効果は百五十万ではなくて百二十万の方が影響しておるはずです。それを全部百五十万でざあっと三百三十平米とるということは、どう考えたってこんなことは合理性がないのです。だから、もっと見直しをしないとだめだと僕は思うのです。  次に、あわせてもう一つ聞いておきます。では借地権の時価はどう見るかということですが、賃借権に課税をする、または負担と言ってもいいわけですが、貸借人に負担をさせる。しからば、これによって当初大臣がおっしゃったように地価の高騰とか投機の抑制になりますか。
  228. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 借地権の問題につきまして先にお答えをさせていただきます。  地価税は、借地権を課税対象として構成されております。借地権の設定されている土地考えてみますと、土地を使用収益する権利の全部または一部は借地権者にあるわけでございます。それから、借地権など、いわゆる上土権というのでしょうか、それは底地と独立に取引をされまして、土地資産価値の一部が借地権者に実質的に帰属しているという状況にございます。したがいまして、土地資産価値に応じて負担を求める地価税趣旨考えてみますと、借地権等地価税対象にする方が望ましいということで、そのように仕組んでございます。これは固定資産税のような税と違うところでございます。  なお、相続税におきましては、御承知のとおり借地権が別途に評価されているわけでございます。  前半の土地評価の問題につきましては、国税庁からお答えいたします。
  229. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 借地権の時価は、借地割合で国税庁は出していらっしゃるのだから、それを時価ということですね。要するに土地の路線価格の時価に対して、それに今度は借地権割合を掛けてそれが時価になる、こういうことですね。ですから、そういう前提で後でまた答弁を一緒にいただきます。  そこで、今局長がおっしゃったように、いわゆる借地権者にも、その土地の値打ちが高まっておればそれの使用収益はその借地権者にある、これは当たり前ですね。だから、固定資産税はそういう使用収益のために課税しますよ。今度の地価税はそうじゃないのです。資産価値にかけるんですから、使用収益にかけるんじゃない。だから、使用収益は、借地権者には直接かからないけれども固定資産税として地主にかかるから、地主はそれを借地料ということで徴収するのです。それで固定資産税を払っているわけです。ですから、地価税固定資産税とは課税対象が違うんだから、その意味で、これを一緒くたにしてそういう借地権に課税するということは好ましいことではない。ただし、これについては税調も、借地権者にも「資産価値に応じて負担を求めることが必要」と述べていることは事実なんです。これは実際に果たしてこういうことがいいのかどうか。私は反対の意見を持っておる、好ましくないという意見を持っておるのですが、どうですか。
  230. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど、土地を使用収益する権利の全部または一部が借地権者等にあるということを申し上げました。また、それと同時に、借地権は底地と独立に取引されていて、土地資産価値の一部が借地権者等に実質的に帰属しているということも申し上げたわけでございます。  この地価税趣旨といたしましては、再々申し上げておりますように、一つは公平の確保の問題でございますし、それからもう一つは、やはり資産としての土地有利性を縮減するということを目的としているわけでございますが、その資産としての土地という場合は、借地権で実質上使用収益し、しかも独立に取引されるというわけでございますから、そこの資産価値の縮減を図る、それに課税をしていくということが必要ではないかという趣旨でございます。
  231. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 先ほどのお尋ねの点でございますけれども、実務的にはどういうふうに扱っておるかということでございますが、地価税におきます借地権の価額相続税における場合と同様に評価されるものと考えられますので、したがいまして、相続税におきます借地権の価額相続税法上、相続等により取得したときの時価により評価することになっており、実務的には路線または地域ごとにあらかじめ借地権割合、つまり自用地価額に占める借地権価額の割合、これを定めておきまして、課税原因が生じた場合にその土地の自用地としての価額に借地権割合を乗じて計算した金額によって評価することにしております。
  232. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今局長から借地権と底地権、それぞれ独立して活動し、取引されておる、こんなふうにおっしゃいましたが、あくまで土地所有者の持っておる土地を借りるんです。また、借りているんです。ですから、独立して借地権だけひとり歩きはできないんです。あくまで土地所有者の承諾がない限りはできない。もし本当に独立しておるならばこの人が勝手にこの借地権を売れますけれども、今の借地借家法ではそういうことは許されません。当然土地所有者の承諾が必要なんです。こういうような意味で、独立しては動けないのです。  私の友人が東京で三百平米ほど借地をして事業をやっておるのですが、この路線価格は約八百万円です。昔は安かったのですけれども、あれよあれよという間に八百万円になっちゃった。この場合、時価は二十四億、こうなる。借地割合はBクラスでありますから八〇%。これで計算いたしますと、この人は個人であり、中小企業ですから十五億控除がありますが、四億二千万が課税対象となってくる。そうすると今度百二十六万円の納税額が出てくるのです。土地所有者は課税対象にならないんです、控除範囲内ですから。そうすると借地権者だけが持つ。しからば、この場合に、三十年の期限が来た、契約更新がうまくいかなくて打ち切りになった。そうした場合には、土地所有者は今までは税金を払っていない。ところが、借地人は払ってきた。不自然に思いませんか、こういうことは。
  233. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 仮に借地権がついたままでその底地権を持っておられる方が土地を売ったということを考えてみますと、その借地権の分だけ、借地権づきということで減額された価格でしか売れないというのが現実でございますから、ケースによってはおっしゃいますようなことが出てくる、しかしそれは、土地の取引の実態、土地の利用の現実から見ましてそういうことになっているように思いますので、御指摘のように不自然なこととは余り思いませんが……。
  234. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 不自然だということが御理解いただければいいわけですが、借地権者も借地権によって時には何億という経済給付を受けるということ、これも私は不自然だと思うのです、本当のことを言うと。これは地価の高騰のあおりでこういう結果が出るわけなんです。  しかし、元来、借地権というものは、今おっしゃったように借地割合を相続税法上は九〇だとか八〇だとかずっと見ていらっしゃる。岐阜なんかでは六五見ていらっしゃる。しかし、現実にそれは土地所有者が保証した借地割合ではないということ。大蔵省が勝手に見ただけなんです。そうすると、今度、御承知のように、借地借家法の改正案で正当事由が緩和されて、更新期間も短縮されて地主がより立ち退きをやりやすく、地上げ屋がばっこしやすい、範囲が拡大されるというようなことが法律として出ようとしている今日、立ち退き、明け渡しは両者の力関係と周囲の事情によって行われ、立ち退き料は個々の事情によって異なる。これは当たり前のことなんです。八〇と大蔵省は見たけれども五〇になるかもしれない、時には三〇かもしれない、一つ間違うとほうり出されるかもしれない。こういう不安定なものだということです。こういうことについてはどうお考えですか。
  235. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  相続税評価におきます借地権の価額は、その借地権の目的となっております宅地の自用地としての価額に国税局長が定めた借地権割合を乗じて計算した金額によって評価することとしております。この国税局長が定める借地権割合は、その地域において売買実例等から見て通常成立すると認められる借地権割合を意味するものでございまして、これを基礎に算定されます借地権の価額は客観的な資産価値をあらわすものであると考えるわけでございます。
  236. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 いやいや、そういう紋切り型の答弁では、実際の行政をおたくらがやりなさるときには必ず突き当たりますよ。なぜか。六五%と岐阜市の場合に決まっていても、それだけもらっている実例は私は十のうち一つかあるいは〇・五くらいしか知らない。あとは、五、五とか、逆の四分六だ。中には、そうでない、もっと低いのがある。現実にあるのです。こういうことから見て、大蔵省は、おれたちはこう見たんだ、だから課税したんだ、こういう一方的なやり方は改めないと必ず問題が起きる。むしろ、借地権者に負担させるのではなくて、負担割合をそういうふうにするのではなくて、土地所有者の底地価格を軽減してやる、その方が新税の目的にも合致するのじゃないか。なぜか。そのことによって借地供給が促進されるのじゃないか。大蔵省は取る側ですから、いずれにしろ、さきに例示した三百平米からは取りますよ。ただその割合は借地人と土地所有者で案分すればいいけれども負担する方は本当に現金を出すわけです、納税するわけですから。だから、本当にそれが土地投機の抑制になり、借地権者が借地権を拡大することによって、土地投機を拡大しようとか、あるいはまた地価の値上がりを待とうとか、そんなものではないと思うのです。また、むしろそんなことが期待できるものではないと思うのだ。私はそういうような意味から、むしろ底地価格を軽減してやって、借地供給の促進を図った方がいいのではないか。ただし、その場合に気をつけなければならぬことは、ダミー会社をつくって、地主がダミー会社に貸して底地を下げる、こういう悪乗りをしないとは限りません。そういう施策は大蔵省は、おやりになっていることを見ておると万遺漏ありませんから、だから心配しておりませんが、そういうことも含めながらやるべきじゃないか。  しからば、今度、借地割合どおり立ち退き料が入らなかった、経済的な給付がなかった場合には、そのときには税を納めっ放しなのですがね。借地権者は納めただけ。借地権というのはいつかは切れるのです。永久なものではありませんから、だからいつかは切れる。三十年目に切れるか、十年目に切れるか、これは別にしていつかは切れるのです。だから、そういうような意味で、それを納めた場合、これの救済の措置はあるかどうか。
  237. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  御質問のように、仮に課税時期において、その借地権の価額相続税評価による借地権の価額に比べて値下がりしていたかどうかが問題となる場合には、その借地権の価額が通常成立すべきものであるかどうかを総合的に検討した上で、その課税関係のあり方が判断されるべきものと考えられるわけでございます。
  238. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 僕の聞いておることと大分違うと思うのですがね。  私は、そういう意味で、納めていたが今度は借地契約が解除になった、そうしたら、今まで納めておったのは、もうそれは納めっ放しですよ。それはなぜかというと、今度は立ち退き料が、今おっしゃったように八〇%と見て課税しました、配分しました、ところが、八〇%でなかった場合は泣き寝入りをしなさい。五〇%しかなかった、三〇%しかなかった、立ち退き料がなかった場合もあり得る。その場合泣き寝入りしなさい、こういうことですか。
  239. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 この地価税法の第五条に「個人又は法人課税時期において有する土地等には、この法律により、地価税を課する。」とあります。課税時期というのはしからば何かといいますと、二条の「定義」にございまして、その課税時期というのは「その年一月一日午前零時をいう。」したがいまして、この課税関係はその一点で決めるわけでございますので、そのときに借地権等を有しておりますと、課税対象になり得るというようにお考えいただきたいと思います。
  240. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 大蔵省としてはそういう答弁になるかもしれぬけれども、しかし、この借地割合というものは裁判所が認めたわけでもないし、法律上明記もないし、そして土地所有者が承諾しておる借地割合でもないということ。それからいけば、一方的に一月一日の十二時ちょんで、これで課税ですよというようなことは、これは現実においては必ず矛盾が起きる。そして不当な泣き寝入りも起きる。この点についての対策と、いま一つは、二十四条では地上権については、だから時価を百分の五にしますよとかというふうにずっと逓減していらっしゃる、十年以内ならどう、二十年以内ならどうとか。地上権については逓減をしていらっしゃるのですが、賃借権については、これは一切なしに、永久不変に賃借権はあるものというふうな、永小作権のような考え方で、ずっとあるものだというふうに見ていらっしゃるように思うのだが、今度新しく借地借家法が出てくるのですが、これはまだこれからの国会審議ですから、私どもはこれはもう好ましくないということで反対をいたしますが、その中には定期借地権というものもあるのです。そうすると、定期借地権が起きたときには、この地上権の割合はそのまま準用されるのかどうか。私は、賃借権にも当然この逓減率を設けるべきだ、こう思うのですが、どうですか。
  241. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘地価税法二十四条は、残存期間によりまして地上権につきまして逓減の措置を設けてございます。御指摘のとおりでございます。で、括弧書きがございまして、借地権それからいわゆる区分所有権につきましては、これはその規定から外れているわけでございますが、その考え方といたしましては、これは実は相続税にも同様な規定がございまして、借地権につきましては借地法等による特別の保護がございます。それから区分所有権につきましては、一つ土地に重層的に存在する権利でございますので、これは地上権と同じようにただ存続期間のみで評価をするのは不適当ではないかということで外しているわけでございます。  それから、これから新しい借地法、借家法等の改正がございました場合にどうするかということでございましたが、基本的には、やはり借地権につきましては借地法による特別の保護があるわけでございますから、具体的に法律が成立しました後で検討はいたしてみますが、今回の改正でその基本的なところが変わっているというようにも考えませんが、いかがでございましょうか。
  242. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 どうも余り、いかがじゃないのですけれども、納得できないのですが、と同時にこの借地権割合も、東京の日野市の八坂神社の前は路線価格が四十八万円なんです。そこの借地割合は七〇%。岐阜市の白山町、今お渡ししたところは四十三万五千円で、これの借地割合は六〇%になる。全国一律であるべきものがなぜこういうふうに違うのですか。
  243. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  路線価が同じなのに異なった借地権割合が設定されるのは問題ではないか、こういう御趣旨かと思いますけれども、借地権割合というのは、路線または地域ごとに、その地域におきます売買実例価額、精通者意見価格等に基づいて定めるものでありますために、路線価が同じであっても、その地域の状況が異なること等によって、借地権割合に差が生じることはあり得るわけでございます。
  244. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 僕はそういう答弁を聞くつもりはないけれども、答弁されるのでしようがないが、そんな紋切り型なことをやりますと、しからばこの路線価格は不公平だ、角地のこの問題、あるいはまた側面あるいはまた三角地、狭小地等々のいろいろな計算方式があるわけですが、あるいはまた借地権割合の問題等々不満を持った人は、これは自主申告ですから、路線価格どおり申告しない人が出てきます。これは当たり前のことですね、自主申告ですから。路線価格を時価だとあなた方おっしゃるけれども、その人は、おれの時価はこれだ、角地加算はこれだ、狭小地割引はこれだけだ、こう出してくることがないとは言えませんね。そうしたら、そのときには当然税務署側、大蔵省としては決定なり更正を打ちますね。そうすると、納税者は異議の申し立てをするわけですね。そういうふうになってくるわけですね。いいですか。
  245. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  納税者が路線価に不服な場合に、この地価税について異議申し立てができるのかどうか、こういうことでございますが、路線価は、土地のように時価の把握が困難であるものについて、納税者の便宜を考慮するとともに課税の公平を期すという観点から、ある路線に面する標準的な宅地の価額を明らかにしておこうとするものでございます。したがいまして、路線価自体は、委員御承知のように国税通則法の第七十五条に規定します「国税に関する法律に基づく処分」、これには当たらないわけでございますから、不服申し立ての対象にはならないわけでございます。  しかしながら、この路線価に基づいて実際に課税処分が行われた場合には、その処分を不服とするときには国税通則法第七十五条の定めによりまして不服申し立てをすることができることになっております。
  246. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 そこで、不服を申し立てた、異議の申し立てをした、こういうことになると、行き詰まるところは路線価格に突き当たると思うのです。あるいはまたいろいろな軽減あるいはまた加算率、これに突き当たってくるわけですね。あるいはまた借地割合、これに突き当たってくるわけですね。その場合にこの路線価格に、私自身も各地をずっと見ておりますが、これは不公平だと、あそこがあれだけの価格でここがこれだけではおかしいのではないかと思うことを痛感することが多いのです。周囲の人々もそれを言うのです。いいですか、これは私一人の独断ではなしに、周囲の人々も多い。  そうすれば、ここで今度は問題になるのですが、異議の申し立てをして、どうしても腹へ入らぬときに裁判になった、裁判になった場合に二つの場合があると思うのです。納税者の異議の申し立てが認められる場合と却下される場合とその中間と。しかし中間ということはあり得ないと思うのですから、採択か却下か、こうなるのですね。そうするとその場合に、却下された人は裁判をどこまでもやる場合もあるだろうし、あきらめる人もある。と同時に、今度はそれが受け入れられた場合がありますね。受け入れられたら、その人だけは救済をされたけれども、隣の人は救済されませんね、同じ路線価格できておりますから。そういう場合に裁判を申し立てて、そしてとうとう最高裁まで行って勝ってしまったという人があれば、その人は救済される。ところが隣の人は異議の申し立ての権利を行使しなかったから損のまま。損というたらおかしいですが、過大な納税のまま、こういうことがあり得るのですが、その場合にはその近傍にも手当てをするのが公平ではないだろうかということと、いま一つは、そこで法律用語が時価とこうなってくると、私は先ほど申し上げたように、法律の文言として時価とこううたいますと、裁判官はいろいろ判断すると思うのです。いろいろな関連法規を眺めながら、路線価格を時価だ、こういうふうに持つ裁判官と、いやいやそうじゃない、やはり売買実例なり不動産鑑定士の鑑定なり、あるいはまたいろいろな経済状況を勘案しておれは考えるのだ、こういうことで時価を考える裁判官がないとは言えないと思うのです。だから私は、時価という表現が果たしていいのかどうか。  相続税を何回もおっしゃいますが、相続税は突発的というか突然に生ずることであって、単なんです。町内ぐるみの相続税ということはあり得ない。単なんです。ところが地価税は町内も含めて日本全国一体でございますので、不公平が生じたときには必ずその問題は一件だけで済まないので、今まで私は相続税についてもいろいろな問題があると思いながらも余り取り上げたことはないのですが、この相続税の路線価格並びにそれのいろいろな基準を基礎に、今度時価としてこれから地価税課税されるということになると、これを一遍抜本的に見直しておかないと大変だ、こういうふうに考えたので強くこの点をお聞きしておるわけですから、明快に、これは国民が納得するように答弁をしていただきたい。
  247. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 時価についてのお尋ねでございますが、相続税法におきましても「当該財産の取得の時における時価」によるという、「時価」という表現になっております。固定資産税におきましても、「価格」は「適正な時価をいう。」ということで、これも「時価」という表現でございます。それから御承知の地価公示法におきましては「正常な価格を判定し、これを公示する」ということになっておりまして、「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格」というような表現になっております。  それで、それぞれ同じような表現ではございますが、御承知のとおり、その定められます公示価格、それから相続税におきます路線価、それから固定資産税におきます評価額、それぞれの考えに立って評価が行われているわけでございます。したがいまして、時価ということがいわば一義的にこれであると言うのは、確かに土地というものの取引、非常に個別性がございまして、本当に隣同士でも値段が違ってくるということがございます。どうしても欲しいという方がおられて高く買った、それでその後、すぐ近所で今度はどうしても売りたいという方が安く売ったというようなことは当然生ずるわけでございますから、そこを何らかの基準によって評価をしていかないと課税関係がうまく成立しないということでございます。  今度新しく地価税をつくるに当たりまして、しからばどのような形で時価というものを定めたらいいかといいますと、全国的な規模で現在定められておりますのが相続税におきます路線価でございます。公示価格も全国的には定められておりますが、その評価されております地点の数が少のうございます。同じ国税でございますし、現実に全国的に評価されております相続税の路線価格によってこの地価税を運営するというのが最も妥当なことであろうということでございます。税制調査会におきましてもそのように考えられてきたわけでございます。  しかし、この評価というのが課税の基礎になるわけでございますから、そこの合理化、その適正化に努めろという委員の御指摘はまことにおっしゃるとおりであろうと思います。このたび国税庁におきましても人員等の強化が図られておりますし、これから実施に当たりますまでの間、まだしばらく時間がございますので、御指摘のとおり、そこは努力をしてまいりたいと存じます。
  248. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 今御答弁いただきまして、いろいろな御指摘申し上げました事項についてはある程度御理解をいただいて、これから施行までの間に努力したい。努力したいということは、実態に合わせ、現実に即したように、納税者不満、不公平を与えないように今までのこれを見直していく、こういう努力というふうに承ってよろしいですか。
  249. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 先ほど申し上げましたとおり、施行までの間、いろいろと努力をしてまいりたいと申し上げましたが、例えばその評価の地点をふやすとか、それから精通者の意見その他につきまして、より綿密に見直しを行うとか、そういうような努力を重ねてまいりまして適正な評価額を定めていきたいと存じます。  なお、地価税が成立し、施行されました後におきましても、そのような努力は怠ることなく続けてまいりたいと存じます。
  250. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 では次に移りますが、時間がありませんので、簡単に御質問いたします。  この非課税とされる土地等につきまして、公共法人を初め、公益法人、公益的な土地、こういうものは非課税、こういうことになりましたが、私は当然こういう非課税土地、物件があっていいと思います。  ただ、一つの例です。これは前提も背景もない。誤解しないように聞いてもらうわけですが、ここに公共法人として日本放送協会がある。NHKですが、ここの持っておる土地課税しませんよ。そうすると、今度はほかの放送局のものは課税しますよ、こうなるわけですね、これは。そうすると、公共放送だからこれははずいたんだ、こういうことになりますと、私はそれはそれなりにいいと思うけれども、よく考えてみますと、そこだけは何らかの恩恵が生ずることだけは否定できない。経済的な恩恵があることは否定できない。そうすると、それは公共的な用に使う。そうすると、やはり視聴率の問題等々で競争しておる間柄からいけば、片一方は大セットあるいはまた有名人あるいはまた名優を招聘できる、片一方は地価税その他でコスト高になってくるからそういうことができない、こういうような好ましくないこともこういうところから出るのじゃないか。あるいはまた宗教法人なんか眺めてみますると、収益を上げておる宗教法人、庭園の拝観をさせた、金閣寺でもそうですが、そういうものを拝観させる、そうすると宗教行為ということで入場券のかわりにお札をくれるわけです。三百円払うとお札をくれる。私は信者じゃないけれどもお札をくれた。ところが、そういう庭園、土地は全部非課税に今度はなってくる。私は、営業行為、収益行為をやっておる部分、これまでそういうふうに非課税にしていいのかどうか。仮に、東大寺があります。あそこに物売りがありますね、売店が道端にずっと並んでおります。じゃ、あの土地はどうするのか。これは一々悪くとってもらってはいかぬですよ、例で聞くだけですから。  そういうふうに、私は、公益的な土地、公益法人土地、宗教法人、いろいろその他ここにずっと書いてある一つ一つが、これは大変なことが起きるのじゃないか。しかし、天網恢々疎にして漏らさず、天下の大蔵省ですからやりなさると思うけれども、こういうものに妙な非課税措置は講じない方がいいのじゃないか。公共施設は、国だとか地方公共団体はともかく、それ以外に余りこういうものはすそ野を広げると問題が起きるのじゃないかと私は思うのですが、これらについての施策はどういうふうにお考えになっていますか。
  251. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 一つのお考えとしておっしゃる意味はよくわかるわけでございますが、今度の地価税をつくる、導入する一番その基礎となりましたものは土地基本法であったわけでございますけれども、その土地基本法最大の特色は、土地の持つ公共性という点を強調したことであろうかと存じます。したがいまして、そういう趣旨から考えましても、公共的な土地の利用につきましては課税対象から外していくことが望ましいというように考えまして、国や地方公共団体の持っております土地、それから御指摘公共法人、これは国、地方公共団体が全額出資をいたしまして特定の公共的な業務を代行させるために設立したものでございます。御指摘のNHKの例もまさにそういうことでございまして、しかるがゆえに視聴料などを取っているというようなことも特別に認められているわけでございます。そのサービスの面から見ますと民間の放送、テレビ等と同じような業務ということかもしれませんが、その存立の意義というのはあくまで公共法人として国民全体の利益のためにサービスを提供するというものでございまして、営利を目的としているわけではないわけでございます。したがいまして、その公共性という点から課税対象から外しているわけでございます。  もう一つ指摘の宗教法人でございますが、これは公益的法人でございまして、ちょっと公共法人とは違ってくるわけでございます。公益法人の場合には、本来の目的外の収益的な目的等に利用されている分につきましては課税対象になってくるということが起こり得ます。そこの区分が難しいだろうということはこれも御指摘のとおりでございまして、執行上いろいろ苦労をしなければならないと思いますが、納税者の方々、またその周囲の方々から見て不公平な感じを与えることがないように、そこはいろいろと過去の経験等もございますから、適正に課税が行われるように努力をしてまいりたいと存じます。
  252. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 私は、地価税土地保有税の創設については当然前向きに賛成をする気持ちは持っていた。しかし、この中身は非常に不満足なんで、この中身のままだと、〇・三の税率の問題を含めて、所期の目的が果たしてこれで達せられるのかどうかということを危ぶむがために、本来ならこれは一遍反対しておいて、そしてもう一遍出直しをしてもらうのがいいのじゃないかという気持ちもなきにしもあらずです。しかしこの場合には、まず取っかかりをつくろうということですから、一つ仕組みを橋頭堡としてつくろう、そしてだんだんよくしていこうじやないか、こういうような意味合いで、この中身においての欠陥をそのまま、欠陥と言うたら失礼かもしれぬけれども私はそう思う、欠陥をそのままある程度行政の面で直してもらい、所期の目的が達せられるようにやってもらいたい。  これは消費税の場合とは違うわけですね。私は、消費税はあっては困ると思うからこそこれはいけない、見直しをすれば見直しをするほど悪くなるんだ、こういう考え方なんです。この土地保有税、いわゆる地価税は、まずつくることに意義がある、そして直していけばいいんだ、こういうことで我が党の方針が出ておることは御案内のとおりであり、私どももそういうことで一応これの成立には賛成の態度をとっているわけです。  ただここで、この法が施行されて少なくとも五年、こう決めておるわけですが、五年以内には見直しをします、こういうことですが、私は五年というのは長いと思うのです。もともと言い分としても、三年で見直しますよ、こうすべきじゃないか。なぜかというと、固定資産税はことしからずっと変わって、そしてまた三年先に見直していきます。地価税は来年から実施になりますから、そうすると固定資産税の見直しの時期とちょうど一年ずれるのですね。だから私は、実施から三年以内に見直しをすることがまず当面は大事じゃないかと思うのが一つ。  いま一つは、これの使い道についてですが、大蔵省の収益のような形で大蔵省が取り込んで何かの事業をやる、これは好ましくないと私は思うのです。むしろそうでなくて、これはやはり所得減税、私に言わせるならば、昨年政府案でも出ました消費税の減税額は一兆一千三百五十億ですから、だからそれに三千億なり四千億のこの地価税を上乗せすれば一兆七千億なり一兆六千億の消費税の減税は可能なのですから。そうすると食料品の全額非課税ということになるわけです。  そういうような意味で、私どもとしてはこれの使い道についても、税で徴収したものを消費税の減税を中心とした、主体とした減税の方向に回すべきではなかろうか、私はこういうふうに考えますが、どうですか。
  253. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ここまでの御論議は私は大変敬意を持って拝聴してまいりましたけれども、最後の結論はどうもいただけません。私どもとちょっと考え方が違います。私どもは、その消費税そのものについても世の中の御理解をいただき、定着を図る努力をし続けているわけでありますけれども、この地価税について、今そのスタートを切らせてやりたいと言っていただいたことは非常に私どもは大切にしたいと思います。ただ、この使途につきましては、税制調査会の御意見自身が、明年度予算編成時までに十分考えてという意見をいただいているわけでありまして、私どもとして十分考えてまいりたいと存じますけれども消費税の減税財源、それはちょっと私としてはいただけない、そう思います。もっといい使い道を考えたいと思います。
  254. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 三年と五年の問題はどうですか。
  255. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 委員も御指摘がございましたように、少なくとも五年ごとということでございますので、五年を経なくても何か特別の見直しの必要が生ずれば当然見直しを行っていくということになるのでございますが、五年そのものが長過ぎるのではないかという御指摘でございますけれども、やはり地価の中期的な動向を見定めるということが一つ大切であろうかと思います。それから、固定資産税につきましては三年ごとに評価が行われますが、その評価がどのようにされていくのかということも見定めたいという気持ちもございます。それから、地価税のような税の見直しが制度的に余りに頻繁に行われるということになりますと、逆に一つのスぺキュレーションを呼ぶ危険もあるのではないかという気もいたしまして、五年ごとというのが妥当なところではないかというように考えた次第でございます。冒頭申し上げましたとおり、少なくとも五年ごとでございますから、何か地価状況その他につきまして異常な状態が生じましたら、そこは五年たたなくても見直しを行っていく、そういう考えでございます。
  256. 渡辺嘉藏

    ○渡辺(嘉)委員 いろいろ答弁いただきましたが、私ども考え方も申し上げ、あるいはまた大蔵省側からの、政府側からの答弁もいただきました。どうかひとつその点、新しい税です、所期の目的が達せられるように、そして国民から不公平感を抱かれないように施行していただきますように、そして最後に大臣からも承りましたが、その点はお互いにいろいろと考え方がありますのでこれはやむを得ませんが、私はぜひそういう点はお酌みいただければありがたい話だな、ぜひよろしくお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  257. 平沼赳夫

    平沼委員長 筒井信隆君。
  258. 筒井信隆

    ○筒井委員 今回の地価税税率が低過ぎる、それから基礎控除が高過ぎる、非課税が多過ぎる、こういういろいろな問題点があるわけでございますが、しかし、ベストでなければ反対であるという立場をとるべきではない、ベターとまでは言えないかもしれませんけれども、ないよりいいというか、ベターである限り基本的にその方向を目指して、それに賛成すべきであるというふうな考え方を前提にしながら、幾つかお聞きをしたいと思います。  低過ぎるとか高過ぎるとか多過ぎるとかこういう点、いろいろな考え方や政治的な配慮があると思いますが、今ちょうど質問に出ました非課税の範囲の問題については、そういう点以上に筋が通らない、そういう点が幾つかあるというふうに考えております。  政府税調基本答申によりますと「公共的、公益的な用途に供される土地」これを非課税にする。今尾崎主税局長もその点を強調されたわけでございます。地価税趣旨からいって、公共的、公益的な用途に供されている土地非課税にする、これは当然あり得ることだし、それも賛成できるわけでございます。しかし、この地価税法案はその点を必ずしも一貫させていない。公益法人公共法人とを明確に区別して、公共法人については主体で判断して、公共法人保有している土地は全面的に非課税である、こういう形にしているわけですから、未利用地に関しても全面的に非課税になってしまう。しかし、公益法人に関しては、明確に事業目的以外の土地についてと未利用地については、これは課税というふうな区別をしているわけでございまして、その点一つ大きな問題点が出てくるのではないかというふうに考えます。公共法人と公益法人との区別はもちろんあるわけですけれども、必ずしも具体的なその団体を見てみますと、そんな明確な区別があるのか。公共法人についても、やはり未利用地については課税すべきではないかというふうに考えるわけでございます。  例えば金属鉱業事業団、これは公共法人で、未利用地も非課税でございますが、宇宙開発事業団は公益法人となって別の扱いになる。さらには、自動車安全運転センターは、これは公共法人、海洋科学技術センターは、これは公益法人。こういうふうな個々の法人を見てみますと、そういうふうに法律上未利用地について課税する場合と課税しない場合と区別するほどの区別というのが法人にあるのかどうか、この点をまずお聞きをしたいわけでございます。
  259. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘がございましたように、公共法人につきましては、主体によりまして非課税ということにいたしているわけでございますが、その主体として公共法人とされておりますものでそこは割り切っているところから、御指摘のとおり、非常に類似した公益法人があって、その扱いが違うのはおかしいのではないかという御疑問を持たれるのはごもっともであろうかと存じます。  しかしながら、その公共法人の監督の度合いといいますか、例えば残余財産の処分の問題でございますとか国なり地方公共団体の関与の度合いでございますとか、やはりそれなりの違いがあるわけでございまして、公共法人が未利用地を持っているというようなケースも生ずるかもしれませんが、それは公共法人あり方として、むしろその監督官庁その他の方から有効な利用をお願いする。国有地等につきましても同じようなことがなされているわけでございますから、そういう行政上の活動の話になってくるのではないかと存じます。  税制上の扱いといたしましては、やはり公共法人と公益法人の間にそれなりの差を設けることに理由がございますし、この地価税に限らず、他の税法におきましても同じようなことが行われているわけでございますから、それに従って取り扱いを異にさせていただいているということでございます。
  260. 筒井信隆

    ○筒井委員 この法律の目的の一つに、土地の利用を促進するという点もあるというふうに考えております。そういう立場で今の問題を見てみますと、やはり立場としては、広く薄くすべての土地課税する。しかし、現に公益的、公共的な用途に使用されている土地に関しては、実際に使用されている土地に関しては非課税にする。これをすべての部面で、つまり、公共法人に関しても地方公共団体に対しても一貫すべきだというふうに考えているわけでございまして、今、公共法人の場合でも未利用地があり得るというふうに言われましたけれども、実際に物すごくたくさんあるのではないか。公社公団を含めた公共法人に関して、低はもちろんですが、未利用地が物すごくたくさんある。ある意味で遊休地と言われる土地がたくさんある。これは公共法人に限らず、国に関しても一緒であるというふうに見ているわけでございます。  ちょうど日米構造協議の日本側の最終報告でも、低・未利用の国公有地の利活用ということを約束しているわけでございます。その際に、その最終報告でも、地方公共団体に対して、それから公有地について有効利用を図るよう促進していく、こういう点と同時に、九〇年度末までに低・未利用の国有地の特定を完了するというふうに約束しているわけでございまして、九〇年度末、過ぎておりますので、国有地の低・未利用地の特定、完了していると思うのですが、この中身について説明をいただきたいと思います。
  261. 田中寿

    田中(寿)政府委員 国有地の有効活用は、これは現在の土地問題等こういう厳しい状況でございますので、これを図っていくことは非常に必要なことでございます。平成元年十二月の「今後の土地対策の重点実施方針」の中で、これは土地対策関係閣僚会議の申し合わせでありますが、大都市地域の国有地については点検を行う、こういうことの申し合わせがなされまして、それを受けまして大都市地域、首都圏、近畿圏、中部圏、三圏に所在いたします国有地につきまして点検を行ってまいりました。その結果は、先般、四月九日の土地対策関係閣僚会議に御報告を申し上げたところでございます。  この内容でございますが、これは対象といたしましては、三圏と東京二十三区、政令指定都市につきましては全数の財産、それからそれ以外の市町村に所在いたします財産につきましては千平米以上のものを対象にいたしまして、考え方といたしまして、周辺の用途地域あるいは土地利用の状況と適合しているかどうか、あるいは当該物件そのものが法定容積率等との兼ね合いで利用割合が低くはないか等々、いろいろの観点で作業を行ったわけでございます。  この結果、まず行政財産のうち庁舎等に使用いたしておりますものが二千二百六十件、面積にいたしまして五千五十七・六ヘクタールございますが、そういう観点で今後有効利用を図る必要があるもの、こういうふうに認めましたのが二百三十四件、百九十一・八ヘクタールでございます。ただ、このうちもう既に移転あるいは集約整備を進めることにいたしまして、そういう意味での有効利用を図っておりますものが百十五件、七十六・二ヘクタールあるわけでございます。  さらにまた、公務員宿舎用地につきましては関心の度合いも非常に高うございますし、さらに、この問題につきましては鋭意有効利用の方策等も含めまして検討いたしまして、公務員宿舎用地につきましては全体が二千五百五十六件、この三圏の調査対象が二千五百五十六件、九百五十四・六ヘクタールございますが、この中で七百五十件、百六十五・八ヘクタールにつきましては今後有効利用を図っていく必要があるのではないか、こういうふうに認めたわけでございます。公務員宿舎用地につきましては、有効利用を図ってまいりますのは極力高層化あるいは集約化を進めることでございますので、今後十カ年にわたりまして計画的に高層化、集約化を進めることにいたしまして、七百五十件、百六十五・八ヘクタールのうち約四割に相当いたします六十九ヘクタールにつきましては、公務員宿舎用地以外への転用が可能になるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。  そういうことでこの作業を行いましたので、日米構造問題協議の最終報告書にうたわれておりますところの九〇年度末までに未利用、低利用地の特定を行うという作業は終えた、果たしたもの、こういうふうに考えております。
  262. 筒井信隆

    ○筒井委員 国有地に関してもそれほどの低・未利用地があるわけでございまして、地方公共団体や公社公団、これらの未利用地あるいは遊休地に課税することによってその利活用を図る、課税すれば一つはまず利活用の促進になる、これは当然認められると思うのですが、その点を一つ確認していただきたいのと、それと公共法人に対しても公益法人と同じように未利用地については課税する、こういう形にした場合でも何の不都合もないと思いますが、何か出てくる不都合がありましたら、それを説明していただきたいと思います。
  263. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 土地の持つ公共性ということが土地基本法で非常に強調されているところから、公共性に着目して国、地方公共団体公共法人については非課税にしているわけでございますが、その結果、御指摘のような問題が生ずるということはよく理解できます。しかし、これは国自分自身の問題であり、また地方公共団体あるいは公共法人のような非常にパブリックなセクターの問題でございますから、課税による間接的な強制というようなことをしなくても、むしろ自分自身の問題としてこれは解決できるはずのことでございます。  ただいま理財局次長から御説明ございましたようなことも行われているわけでございますし、同じようなことを地方公共団体あるいは公共法人におきましても考えていけばいいわけでございまして、課税による間接的な強制を必ずしもしなくても問題の解決ができるのではないかと考えます。
  264. 筒井信隆

    ○筒井委員 非課税を決定する際に明確に基準を決めて、厳格な基準を決めて、それで一貫すべきである。売上税のときの非課税の決定がまさにそうではなかったことを思い起こされるわけですが、その点から考えると、先ほど申し上げましたように、公共的、公益的な用途に実際に供されている場合、それを非課税にする。主体でもって決めない。例えば主体が公益法人だからといって、あるいは公共法人だからといって、必ずしも公共的、公益的用途に供されているとは限らない現実があるわけですから、主体でもっては決めないという方向で考えるべきだというふうに思っておりまして、それがこの場合にはその点で一貫してないから、いろいろな問題点が出てくる。  その一つの例えばの例ですが、先ほどNHKと民放との、NHKは非課税で民放が課税だということが出されましたけれども、例えば通信業務で共同通信というのが、これは社団法人ですから、社団法人という主体に関しては原則非課税を決めておりますから、非課税になる。しかし、時事通信は株式会社だから、この法律ですと課税になってしまう。同じ通信業務であるわけですが、こういう課税非課税の区別が出てくることの確認と、そういうふうに解釈できるわけですが、それで正しいかどうかという点と、そういう同じ通信業務で全く正反対の結論が出てきてしまう合理性を説明していただきたいと思います。
  265. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 公益法人と普通法人とが同じような事業を行っておりました場合に、そこに課税上の扱いに差が生じてしまうということは御指摘のとおりでございます。しかしながら、公益法人は、営利を目的としないで、定款等に定める公益目的を達成するために主務官庁の許可を受けて設立される法人でございます。したがいまして、その保有する土地について公益的性格を見出して、これを非課税とするということを考えているわけでございますが、先ほども委員から御指摘がございましたように、公益法人等保有土地でございましても、目的業務以外の用に供されている土地でございますとか、目的業務のための具体的な供用計画のない未利用地については、課税するということにいたしているわけでございます。  通信社の事業を公益法人が経営する場合でございますと、それはやはり主務大臣の許可を受けて設立されまして、その許可を受けた定款に基づいて公益事業として行われているわけでございますから、その事業の内容は非常に似通ったものがございましても、そこは営利を目的として通信社の事業を経営する場合と必ずしも同一に考えなくてはいけないということもないのではないかと存じている次第でございます。
  266. 筒井信隆

    ○筒井委員 通信業務というのを公益的な業務として考えて、通信業務を非課税にするというふうな形で一貫すれば、こういう問題点は出てこないだろうと思うのです。今言われたような法人の主体によって区別するものですから、そういうふうな結果になってしまう。  同時に、同じような点ですが、日本中央競馬会は公共法人、だから低・未利用地を含めて非課税になる。しかし、自転車競技会、これは公益法人ですから、低・未利用地のみは課税になる。競馬場とか競輪場が非課税の合理性と、同じそういうものの中でも日本中央競馬会と自転車競技会との区別、この合理性、二点についてもちょっと説明していただきたいと思います。
  267. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 日本中央競馬会は公共法人でございまして、日本中央競馬会法に基づきまして全額国庫出資でございます。特殊法人として存在しているわけでございます。それから、御承知のとおり剰余金の二分の一が国庫に納付されまして、財政に寄与しているということもございます。したがいまして、これは公共法人として位置づけられているわけでございまして、この地価税の上では、国、地方公共団体と同様に、すべての土地について非課税とするということになるわけでございます。  自転車競技会の方は公益法人でございまして、自転車競技法に基づく通産大臣の認可法人でございます。これは営利を目的といたしませんで、競輪施行者でございます地方公共団体の委託を受けまして、委託者の計算におきまして競輪競技に関する事務を行うことを目的としておりまして、公益法人として位置づけられているものでございます。したがいまして、公益法人としての自転車競技会の事業用地でございます土地につきましては、他の公益法人の事業用地と同様に非課税にする必要があると考えております。
  268. 筒井信隆

    ○筒井委員 その非課税のもう一つの要素として、一平米三万円以下の土地に関する単価控除、これは先ほどから出ておりますように、政府税調基本答申にはなかったものを新たにつけ加えたわけでございまして、この一平米三万円とした根拠ですね。例えば当初は一万円というふうな話も出ていたようですが、それを三万円にした。一部では十万円という話も出ていたようですが、それを三万円にした。一万とか十万ではなくて三万円にした点、その金額の根拠をひとつ説明いただきたいと思います。
  269. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 一平方メートル当たり三万円以下の土地、坪にいたしますと約十万円以下の土地につきましては、資産価値が低いということで、今回の地価税趣旨から申しまして特に負担を求めるに及ばないだろうということで、非課税にいたしたわけでございます。  なぜ三万円かというお尋ねでございますが、ただいま御指摘ございましたように、これはいろいろな考え方がございまして、この法の趣旨としてどのくらいの水準を求めていったらいいかということで数々の論議が闘わされまして、この辺が妥当であろうという判断が行われたということでございます。
  270. 筒井信隆

    ○筒井委員 この辺が妥当であろうという結論になったことはわかるのですが、この辺が妥当であると判断されたその根拠をお聞きしたいわけです。なかなか説明しにくいだろうということも理解できますので、それはいいのですが、坪で約十万円、これは路線価ですから、時価で約二十万円の土地を広い範囲で持っている、値上がりを期待して持っている、こういうことも数としては結構多いわけでございまして、もし地価が低いからいいのだということになれば、じや一万円だっていいじゃないかということになるわけで、三万円ということを単価控除した、地価が低いから対象にしなくてもいいというのは、余り合理性がないのではないか。先ほどの公益的なあるいは公共的な用途に使っている、これは合理性があると思うのですけれども、この単価控除に関しては合理性がないというふうに思っているわけでございます。  当初は、農地とか森林を非課税にするためにこういう考え方が出てきたようですが、農地とか森林は別に非課税になったわけですから、結局一平米三万円以下の単価控除で、地方にある物すごい広い、特に値上がり期待の遊休地、低・未利用地が救済される結果になる。農地や森林はもう別に非課税になりましたから、少なくとも結果としてはそういう効果が大きく出てしまった。そういう結果になるということについてはどうでしょうか。
  271. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 議論の過程を思い起こしてみますと、この単価控除の話は、農地、森林ということもさりながら、一つ考え方として、今回の地価税趣旨からいいまして、土地の高騰している地域だけを対象にすればいいのではないか。現況におきましても土地が値下がりしているようなところもあるし、値上がりなんかほとんどない地域もある。それを今回の土地価格の高騰を機会に導入される地価税対象にするというのはどういうことだろうかというような議論がございまして、一部に地域を限って施行したら、施行範囲を限ったらどうかというような御意見もあったわけでございます。  それに対しまして、そういう地価の低いところ、地価の上昇のないようなところにつきまして配慮をするのであれば、むしろ単価控除というようなことをした方がいい。御指摘のとおり、現在地価の低いところでございましても、いろいろな要因でまた地価が上がってくるということもあるわけでございますから、むしろこの単価控除の方が望ましいということで定められたわけでございます。  その結果、地方におきまして広大な土地が遊休地となっていて、それが課税を免れるではないかという御指摘がございましたが、これは税制調査会の小委員会、けさほど参考人でお見えになりました石小委員長を含めまして、北海道に現地視察に行ったことがございました。  御承知のように、北海道の苫小牧東に広大な工場用地がございまして、そこで聞かされる話というのは、何とかそこに工場を誘致したいというその一心でございまして、その努力を数々聞かされているわけでございます。そこはいわば投機的な目的を持って遊休地としているという話と全く違いまして、とにかくこれだけ準備して、きちんと整地をして待っているのに来てくれない、こういう話でございます。そういうようなところを課税対象とするのは、土地の高騰を抑える、投機的な土地取引を防ぐというような目的等から考えますと、やはりちょっと違ってきている話でございまして、そのようなところが外れるということが必ずしも地価税の目的に反するということではないのではないかというように存じます。
  272. 筒井信隆

    ○筒井委員 済みません。今の北海道の土地は、時価で坪どのくらいのところだったのでしょう。
  273. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 今、直接資料を持ち合わせておりませんが、すぐ近所にございます室蘭の宅地で一番高いところが平米十五万だそうでございますから、それから勘案してみましても、平米どのくらいでしょうか、ちょっとわかりませんが、恐らく非常に低い価格であろうと存じます。
  274. 筒井信隆

    ○筒井委員 三万円という金額、先ほど申し上げましたように、時価で言うと坪二十万円くらいになるわけでございまして、地方における坪二十万円の土地というと、結構値上がり期待を物すごく持って、遊ばせておく手ごろな土地として対象になっている部分もあるわけでございます。私の選挙区の地元でもそういう部分があるわけでございまして、その意味では、単価控除自体問題ですが、単価控除をつけたとしても、もう値上がりもほとんど期待できない、地価が低いからこんな土地だったら対象にしなくていいんだ、当初の案のように一万円にした方がその趣旨にはより合うと思うのですが、その点どうでしょう。
  275. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 一つのお考えであろうかと思います。事実そういう案も現実にあったわけでございまして、その案をもとにして議論が行われた結果、種々状況を勘案して三万円で決まったということでございますので、そこは御理解をいただきたいと存じます。
  276. 筒井信隆

    ○筒井委員 地価税固定資産税の関係についてお聞きをしたいと思いますが、政府税調基本答申でもはっきり出されておりますし、大蔵省もそうだと思いますが、地価税というのは、基本的に土地資産価値、交換価値を課税標準とする。固定資産税は、収益価格、利用価値を課税標準とする。その意味では性質が違う税金である。屋上屋を架す二階建ての税金ではなくて、別のものだという説明がなされているわけでございます。ただ、それはそれでいいと思うのですが、しかし、資産価値というのはその中に収益価格を含んでいるわけですから、その意味でその二つは関係を持っているというふうに思うわけでございます。  その場合にこの二つの、固定資産税地価税のこれからの性格なんですが、固定資産税の方は収益価格を対象にすると言いながら、現在の固定資産税評価額は収益価格の水準になっているかというと、必ずしもそうではない。固定資産税の方の評価額は、できる限り評価水準を収益価格のレベルに引き上げる、これを目指しているというのが現在の政府税調立場、そして大蔵省の立場だと思うのですが、その点はよろしいのでしょうか。
  277. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 税制調査会答申にございますように、固定資産税地価税の性格は違うわけでございまして、その課税標準となります評価につきましても違いが出てくるのは当然のことであると考えておる次第でございます。
  278. 筒井信隆

    ○筒井委員 当然のことだと思うのですが、今ここで確かめたいのは、固定資産税評価水準というのを、収益価格の水準にまだ現在いっていないから、そのレベルまで上げるのが目的である、この点の確認をしたいわけです。
  279. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 固定資産税評価につきまして適正化を行うということになっておりまして、それを目指して自治省、地方団体が御努力なさることになっているわけでございますが、どこを目的とするかということになりますと、ちょっと私どもの方では何とも申し上げかねるところがございますけれども、基本といたしまして、収益還元価格というのを固定資産税が伝統的に重視してきているということは御指摘のとおりだと存じます。
  280. 筒井信隆

    ○筒井委員 明確に、簡単に認めていただけるのかと思ったのですが、基本答申でこういう記載があるのは当然御存じだと思います。固定資産税について「土地の収益価格を目標として評価の均衡化・適正化を計画的に行い、最終的には評価水準を収益価格のレベルに引き上げる」、これは大蔵省と一致している考えだと思うのですが、どうでしょうか。
  281. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 税制調査会答申ではそのとおりでございまして、それを私どもそのように受けとめているわけでございますが、その後、固定資産税評価につきまして答申が出ました後にいろいろ議論があったことでもございますので、大蔵省としてどうかということにつきましては、答弁を遠慮させていただきたいと存じます。
  282. 筒井信隆

    ○筒井委員 政府税調はそういうふうな答申を出していて、そして、現在その収益価格と資産価値との乖離が激し過ぎる。我が国の時価というのは、つまり、資産価値というのは本来の利用価値を余りにも異常に上回っている。この二つを一致させる、その乖離をなるべく縮小させる、資産価値というのを低下させることによって収益価格になるべく近づける、この方向を目指しているということは、これはお認めになられますか。
  283. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 済みません。ちょっと今的確に把握できなかったのでございますが、申しわけございません。
  284. 筒井信隆

    ○筒井委員 現在、収益価格とそれから実際の資産価値、時価が全くかけ離れ過ぎている。これを資産価値、時価の方を引き下げることによって収益価格とできる限り一致させる、その間の乖離を縮小させる、これを目指しているということはそのとおりですか。
  285. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 大変失礼いたしました。  収益価格と時価といいますか取引価額が非常に乖離をしている。そこに投機的な要素その他、実態とかけ離れているいわゆるバブルと言われておりますような現象が介在しているということでございまして、そのようなものを取り除いていくことによりまして、本来あるべき収益価格といいますか収益還元価格に近づく、それが非常に望ましいことだと存じているのは御指摘のとおりでございます。
  286. 筒井信隆

    ○筒井委員 そうしますと、固定資産税の方は、政府税調答申によっても、固定資産税評価額を収益価格の水準にまでレベルを上げる。そして、時価といいますか資産価値といいますか、その低下を図って収益価格の水準になるべく近づける。この二つが一致してしまった段階では、そうしますと地価税固定資産税の二本立ての必要性がなくなるのか。現在はその二つが全くかけ離れているものですから、資産価値を、時価を対象とした地価税と、それから収益価格を対象とした固定資産税の二本立てが必要になってくる、こういう方針なわけですけれども、この二つをまさに一致させる方向を目指しているわけですから、一致に限りなく近づいた時点では、地価税の必要性がなくなるというふうに考えておられるのかどうか、その点をちょっとお答えいただきたいと思います。
  287. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 五年ごとに地価税につきまして税率その他の見直しをするというような規定が入っているわけでございますが、究極的なところでそのような状況が生じた場合にどうするかというのは、一つ問題点としてあるわけでございます。しかし、地価動向等動いているものでございますから、両者が一致して、その後離れないという状況になり得るのかどうかという問題も抱えておりますでしょうし、やはりその状況下におきまして判断させていただく問題であろうかと存じます。  しかし、そういう今委員が御指摘になりましたような状況が到来いたしますと、地価税はもう本当にその目的を達成したではないかということにはなるのだろうと思います。しかし、それとまた仕組みをなくすかどうかというのは別な問題でございますし、そのような状況に至りますことを私たちは望んでいるわけでございます。しかしながら、今まで御指摘ございましたように数多くの問題もございまして、なかなかそこまでいくのが大変なようにも考えております。大変なようにも思えますが、しかし、いろいろな施策を動員いたしまして、地価状況をそのようなあるべき姿に近づける努力、これは一生懸命していかなくてはいけない問題だと存じます。
  288. 筒井信隆

    ○筒井委員 資産価値と収益価格が一致した時点あるいは限りなく近づいた時点においては、また離れる可能性があるから仕組みは残しておいて、しかし、例えば税率をゼロにする。今お答えになられたのはそういうこともあり得る、そういう趣旨だというふうに思いますけれども、そういう意味でこの地価税は恒久的な税制として設けた、こういう趣旨でしょうか。
  289. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 仕組みとしてはやはり必要な仕組みであると考えまして、恒久的な税制として設けました。それから、一部に臨時的な措置としてつくったらどうかという御意見もございましたが、むしろそのような仕組みをつくることは土地についてのスペキュレーションを呼ぶおそれもございますので、これはやはり恒久的な仕組みにすることが適当であると考えております。
  290. 筒井信隆

    ○筒井委員 それから、今度のこの件に関して、土地の情報公開が国に対してと国民に対してと二本立てでなされた点も非常に大きな意味があるというふうに考えておりまして、今まで大蔵省とか国税庁とかが土地の名寄せができていなかったこと自体がある意味で異常というふうに思うわけですが、同時にまた、国民に対しても情報公開が全くなされていなかった。今度政府税調答申に基づいて、国民に対しても情報公開されるということが決まったようですが、しかし、固定資産税に関しては、あくまで基準地とか標準地の路線価の公開だけにとどまっている、全地点の土地価額の公開はやはり相変わらずしない、こういう形になっているようでございます。  その点で確かめておきたいのですが、相続税は以前から路線価が全面的に公開をされていた。だから相続税の場合には、自分の隣の家の土地が幾らであるかすぐわかった。今度のこの固定資産税に関しては、標準地、基準地の路線価の公開が平成六年度に全地点でなされたとして、その時点では、自分の隣の家が自分の土地と比べて幾らに評価されているのか、これはわかる形になるのでしょうか。
  291. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 固定資産税につきまして路線価が公開されることになりますから、その公開されました地点に所在する土地につきまして大体の見当がつくという点では、それは言えるわけでございますが、御指摘のように隣の土地が幾らかということになりますと、これはそこまで公開されてないわけでございますから、うかがい知れないところはあろうかと存じます。しかしながら、税制調査会答申におきまして、「次回評価替え以降すみやかに全路線価を公開するように努める必要がある。」とされているところでございまして、これによりまして路線価が公開されることを私ども期待しておりますし、そうすることによりまして固定資産税評価の合理化は進むものと、これまた期待をいたしております。
  292. 筒井信隆

    ○筒井委員 やや事務的な質問で、技術的な質問で申しわけないのですが、相続税の場合には全路線価が今公開されていて、隣の土地が幾らとして評価されているか、これはわかる仕組みになっておりますね。
  293. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 すべて公開いたしております。税務署に路線価図が備えつけてございまして、だれでも見れるようになっております。
  294. 筒井信隆

    ○筒井委員 路線価が公開されていることは確かなのですが、ただ、要するにここではっきり確かめたいのは、自分の土地とほかの土地との、あるいは近所の土地との間の評価が本当に公平に適正になされているか、それぞれの人が調べることができる仕組みが必要である。相続税の場合にはそれができている。固定資産税の今度の情報公開、路線価の公開によってそれができる仕組みになっているのかどうか。もしできる仕組みになっていないとしたら、まだ不十分ではないか。自分の土地と比べて、隣の土地あるいは近所の土地との比較ができる体制にしなくてはいかぬのじゃないかという点の質問なのです。
  295. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 これは自治省にお聞きいただかないと、私は甚だつらいのでございますけれども、しかし、路線価が公表されますと、その路線価を基点といたしまして、その周囲でアンバランスが生じないような評価を市町村が行うでございましょうから、その効果はやはり非常に大きいのではないかというように期待いたしているところでございます。
  296. 筒井信隆

    ○筒井委員 国に対する、大蔵省に対する情報公開として、この固定資産税の台帳等の供覧等の規定については「公布の日から施行する。」というふうな規定になっていて、直ちに名寄せの作業、これを開始することが予定されていると思うのですが、いつごろまでに全国のそういう土地の実態をはっきりさせる、そういう準備は今どういう予定になっているか、ちょっとその点説明いただきたいと思います。
  297. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 国税庁がおりますと詳しいことがわかるのでございますが、今私ども存じております限りでは、今回のこの地価税の成立につきまして、できるだけ早くしていただきたいというお願いをかねがね申し上げているわけでございますが、それが今御指摘の、全国一億六千万筆と言われております土地固定資産税台帳等々を見せていただきまして、名寄せをいたしまして、地価税についての課税資料をつくっていくということのためでございます。来年の一月一日現在で課税が行われることになりますので、その前までにできる限りの整理をしたいと存じますが、何分にも膨大な作業でございますので、やはり年内ぎりぎりのところまでかかるのではないかというように考えます。恐縮でございますが、詳細につきましてはちょっと大体そんな感じだろうというのが今現在私ども承知しているところでございます。
  298. 筒井信隆

    ○筒井委員 この地価税という保有課税と譲渡益課税との関係についてお聞きをしたいと思います。  譲渡益課税というのは、もちろん未実現のキャピタルゲインが何年か積み重なって、最後に売ったときにそれに対して課税されるわけですが、この保有課税を毎年生ずる譲渡益の利子相当分である、こういうふうな説明をされる人もいるわけですが、その点に関して大蔵省としてはどう考えておられますか。
  299. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘のような要素を持っているのではないかというお尋ねでございましたら、そういう要素もあると思います。それは、年々の相続税、路線価の評価額に従いまして行っていくわけでございますから、地価の上昇等がございましたらその分課税対象となる価額が上がってくるわけでございまして、それに低い率で課税をしていくわけでございますから、利子に対する課税のような性格を持つ、一種の所得課税のような性格を持つと言えば言えないことはないと思いますけれども、私ども地価税につきましては、極めてむしろ端的に、土地というものに対しましてその時価、具体的には路線価格でございますが、それをもちまして課税をする、それによって土地が現在持っておりますその資産としての有利性を縮減していくというように考えているところでございます。
  300. 筒井信隆

    ○筒井委員 いろいろな考え方はあると思いますが、譲渡益課税保有課税との結びつきといいますか、例えば先ほどの譲渡益の利子相当分が保有課税である、こういうふうな考え方も全然成り立たないわけではない。そういう一体的な関係があるのにもかかわらず、今まではどうも譲渡益課税を強化するということは、これは土地の供給に阻害になって、譲渡益課税を軽課した方がいいんだ、保有課税は逆なんだ、全く正反対の主張が大分されて、日本の政府税調考え方もその点どうもはっきりしていなかった。だから、譲渡益課税に関しては猫の目課税と言われて、これがかえってまた逆に土地の供給に阻害を与えたのではないかというふうに思うわけです。  今回明確に、土地供給の促進のためにも譲渡益課税保有課税も強化した方がいいんだ、こういう立場政府税調答申が立たれたわけで、大蔵省もその点ははっきりそういう立場に立っているわけですね。
  301. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 私どもも同様に考えております。土地の譲渡課税につきまして、短期譲渡、それから超短期の譲渡につきましては、いわば土地転がしというようなものに対して重課をし、その土地価額に及ぼす悪い影響を除くということが行われてきたわけでございますが、長期の譲渡所得につきましては、むしろ供給面、委員指摘の供給のインセンティブというような面が強調されてきたように思っております。しかしながら、そうすることによりまして土地資産としての有利性を高める結果となりまして、長期的な土地保有につきましても、何もしないで値上がりをずっと待っているというのも、これも一つのスベキュレーションでございますから、その点について税制上の配慮が足りなかったように思います。  その結果、長期譲渡所得が軽課されているということが資産としての有利性を高め、供給面のインセンティブと考えておりましたのが、逆に投機的な需要に対して需要をふやしてしまうというような結果になっていたのではないかというように、私どももそこは考え直しているわけでございまして、御指摘のとおり、その保有課税との関連等につきましてはいろいろの見方もございますし、委員の御指摘は御立派なお考えであるというように私ども存じますが、そのような考え方を離れても、長期の譲渡所得につきまして、そのよって来るゆえんが公共投資でありますとか周囲の開発でございますとか、そういうようなものによって生じてきたゲインであるというようなことも考え合わせまして、勤労所得等との課税の公平上も、やはりより重課した方がよろしいのではないかという考えに立ち至ったわけでございます。
  302. 筒井信隆

    ○筒井委員 その点全く同じ考え、それが正しいと思うのですが、日米構造協議でアメリカの対日要求が全く逆の要求をしてきた。土地供給を促進する、地価を下げるという目的はアメリカも変わらなかったと思うのですが、しかし、土地の売却益に対する税率を低くする、譲渡益課税を軽くせよという要求がアメリカの方から出されてきたわけで、それはまさに先ほど言った考え方、要するに考え方の相違からでしょうか、それともほかの理由があったのでしょうか、その辺わかれば……。
  303. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 アメリカと我が国とでは土地についての情勢が全く異なるわけでございまして、我が国のような特殊な状況下にないアメリカの方方のお考えとしては、土地の供給が不足しているのであるから、税制上軽課をすれば供給が進むではないかというようにお考えになったのであろうと存じますが、御指摘のとおりの主張が米側からなされたことは事実でございます。  それに対しまして私どもは、まず、その公平性の見地からいいまして、先ほど申し上げましたけれども土地価額というものは、公共投資でありますとか経済活動の集積などの外部的要因によって増加するものでございますから、譲渡所得を軽課するということは他の所得との公平上問題がある。それから、土地基本法におきましても、土地について、利益に応じた適切な負担をするようにということが基本理念として示されているところであるというような説明を米側にいたしました。  また、土地政策の見地からいたしましても、土地が有利な資産考えられている我が国におきまして、譲渡課税の軽減を行うことは土地資産としての有利性をさらに高めてしまう、土地の供給促進よりは土地への需要の増大を招いて、かえって地価上昇になるんだというような説明もしたわけでございます。我が国においては土地からはもうけることはできないというような、つまり、土地を投機的な取引の対象としないという土地基本法考え方、それを明確に示すためにも、土地の譲渡所得に対しまして適切な税負担を求める必要があるのだという点もあわせて説明いたしました。  なお、米側の一つ考え方に直接それが沿うものかどうか、ややあるいは視点が違うのかもしれませんけれども、御承知のとおり、一般的な土地の譲渡は重課をいたしましたが、公共用地の確保でございますとかあるいは優良な住宅地の供給などの政策目的に沿うものにつきましては、かえって軽課したわけでございまして、その点が望ましい供給面の力を発揮するであろうということも米側によく説明をしたところでございます。
  304. 筒井信隆

    ○筒井委員 その点はそうだと思うのですが、譲渡益課税を強化した方が土地供給によりプラスになる、こういう形をこれからも明確な形で出して、猫の目と言われるような譲渡益課税のその都度の変更というのは、これからもやめていただきたいというふうに思うわけでございます。  ただ、その場合でも、今のように長期譲渡と短期譲渡と明確に区別してやる。つまり、五年を過ぎてから売らなきやいかぬ、あるいは以前のように十年を過ぎてから売らなきやいかぬ。売った方が得である。五年を過ぎるまであるいは十年を過ぎるまで売らない。長期と短期と明確な税率の区別をしている限りは、その点に関してのロックイン効果というか凍結効果というか、これがあって、その点からは土地供給に抑制的な、阻害的なそういう働きをするんじゃないでしょうか。
  305. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 御指摘の点だけをとらえれば、おっしゃるとおりだと思います。  しかしながら、現実にいわゆる土地転がしのような、短期間で土地を動かしていくことによってそこに利益を見出し、それが土地の価格の上昇につながっていくというような取引が現にあり、社会的な問題として指摘されているのが現状でございますから、それらの取引を防止するという意味におきましては、やはり超短期、短期、長期というような区分も意味を持っているというように考えております。まだその方が、我が国の取引の現状からいたしまして、現在のような措置を続けることの方が意味があるのではないかと判断している次第でございます。
  306. 筒井信隆

    ○筒井委員 それでもやはり長期と短期と明確な分離をして、今回長期の税率を上げましたから、ややその差が少なくなりましたけれども、それなら凍結効果というのはある。これを防ぐとすれば、所有期間の年数で譲渡益を割って、そして、そのうちの最後の年の一年分を総合課税をして、その税率で残りの譲渡益の方に掛ける、こういうふうな形でやれば、そういった凍結効果というのは少なくとも解消されるのではないかと思いますが、その点どうでしょう。
  307. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 これは所得税の仕組みの上で大変議論のあるところでございますし、また一番難しいところであるわけでございますが、譲渡所得をどのように総合課税の中に取り込んでいくかということと関連してくるわけでございますけれども、御指摘ございましたような考え方は、学者の間等でもあるわけでございます。しかしながら、仕組みとしては相当複雑な仕組みになると思います。それと、現行制度のような分離課税でフラットに税をかけていくという単純な仕組み、まあどちらがいいのかという判断の問題であろうと思いますが、御指摘のような考え方があることは私どももよく承知しております。
  308. 筒井信隆

    ○筒井委員 確かに複雑性という点は今の案だと残るわけでございますが、ただ、公平性とかあるいは中立性の観点からは非常にすぐれた考え方ではないか、検討対象であるというふうに思っております。  最後になりますが、質問を前もっては出していないのですけれども、先ほど回答された借地権の問題について、一点ちょっと確かめておきたいと思います。  借地権割合、これは各地域において当然違うし、実際にまた取引における、借地権売買におけるその借地権割合というのも各地域によって当然違う、それはわかるのですが、先ほどのお答えですと、今審議されようとしている定期借地権に関しても現在の借地権と同じ課税をする、こういうふうに答えられたと思うのですが、そうでしょうか。もしそうだとするとおかしいのではないかというので、その点ちょっと確かめたいと思います。
  309. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 申し上げました趣旨は、この地価税の作業をいたしましたときに、定期借地権というものがまだはっきりいたしておりませんでした。そこで、私どもはそのようなことを頭に置かずに、この提案しております制度をつくっているわけでございます。  定期借地権というものが現実にできまして、それに関連した各種の慣行、普及の度合い、いろいろな点を勘案いたしまして、将来の問題としては確かに検討すべき一面を持っていると存じますが、まだ現に存在しないものでございますから、現行の借地権というものを考えてみた場合には、申し上げましたように、その借地権につきまして別途に評価をし、別途に課税をするというやり方をとることが適当であると判断しているわけでございます。
  310. 筒井信隆

    ○筒井委員 現行の借地権が地上権と民法上の賃借権と二つ含んで、建物を目的にして、これが客観的な経済的な価値がある。だから実際に取引にも使われているし、客観的、経済的な価値があるから、それに対して課税するというのはわかる。だけれども、定期借地権となると、これはもう今度は更新も何もされない。必ず一定時期においてなくなってしまうわけですから、この定期借地権に対しても現在の借地権と同じような考え方をとるとしたら全くおかしいので、性格が全く違うと思うのです。だから、今後において検討するということなら私も今わざわざ確かめなかったのですが、先ほどそういうふうな趣旨のことを言われたので、それをされるとしたらちょっと困るし、おかしいんじゃないかという趣旨なんです。
  311. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 実現いたしましたら、その実際の普及の状況等を見まして判断したいと思いますが、御指摘のございますように非常にこの終期がはっきりしているということになりますと、現在地上権等についての逓減率を決めておりますけれども、またそれと似たような措置をとるかどうかというようなことが検討の対象として上がってくるのではないかと存じます。
  312. 筒井信隆

    ○筒井委員 終わります。ありがとうございました。
  313. 平沼赳夫

    平沼委員長 日笠勝之君。
  314. 日笠勝之

    ○日笠委員 本日の長時間にわたる審議のトリを務めますけれども政府答弁が私に満足のいくような御答弁なら、審議時間を縮減して御協力申し上げたいと思いますので、そういう御答弁をまずお願い申し上げておきたいと思います。  これは通告しておりませんが、大蔵大臣も何か手持ちぶさたのようでございますので、ちょっと一つお聞きをしておきたいと思います。  これは地価税外でございますけれども、ペルシャ湾に掃海艇派遣の問題でございますが、私ここで議論するつもりはないのです。大蔵大臣の御所見を伺いたいのですね。いわゆる海部内閣の重要閣僚として、もし派遣するとなると閣議決定をしなければいけないと思いますね。そのときにどういうふうな御所見を述べられるのかな、非常に関心が私はあるわけです。そういうことでこれをお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  315. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 全くとっさのお尋ねでありますが、政府としてまだ態度を確定したわけではありませんので、というより、そういう相談自体をまだ正式にいたしておりませんので、私個人考え方について申し述べたいと思います。  委員御承知のように、私は、イラン・イラク戦争の一番激しい時期、運輸大臣を務めておりました。そして、日本船がしばしば被弾し、船員の中に死者を出す状況の中で、現地から本当に悲鳴にも近いような声で日本の船を出してくれ、まさにあのときは掃海艇でありましたけれども、途中から海上保安庁の船でもいいから出してくれ、そして、要するに何らか日本の旗の立った船に守られて航行できる体制をつくってくれという訴えを聞いておりました。そして、さまざまな議論がございましたが、私は、海上保安庁の巡視船でそれが国際的に評価をされるものであるならば、保安庁の職員が同意をしてくれるなら、巡視船を現地に送りたいという決断をいたしました。  そして当時、海上保安庁の職員は現地に赴き、邦人を積んだ船、さらには一般の他国の民間の船について、海上交通安全の立場から、その誘導に当たる任務を引き受けるという決心を彼ら自身もいたしておりました。ただし同時に、彼らは、私を含め運輸省の幹部職員、また海上保安庁の幹部職員、交代でいいからだれかが必ず乗ってほしいということも申しました。そして、私はその第一船に乗る約束もいたしておりました。幸いにその後戦争は終結し、ペルシャ湾内は安全を取り戻し、いつしかそういう声も聞こえなくなりました。  今回、また湾岸の危機の中でそうした声が聞こえ始め、今日安全保障理事会決議により停戦が確定をいたした段階で、浮遊機雷に対する恐怖から、同じような声が邦人船員からも沸き上がっておることは御承知のとおりであります。私個人としては、自衛隊の能力といいますか、私は実は海上自衛隊の装備については詳しくありませんので、その航行性能等に十分な知識はありませんが、その性能がたえ得るものであるならば、願わくは海上自衛隊の諸君が掃海業務に当たることによって、一日も早い航路の安全を確保してくれることを願っております。
  316. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうは議論をいたしませんので、御所見を伺いました。  それから、平成三年度の予算が昨日成立をいたしたわけでございますが、早速報道を見ますと、どうも歳入、すなわち税収が鈍化の懸念で、一部事務経費等々凍結をしなければいけないんではないか、こういうふうなことが報道されております。きのう成立してもう既に凍結一〇%程度と言われておりますが、主税局長、どうなんですか。やはり景気減退ということで、税収は思うように伸びないということでこういう措置をとらざるを得ない、こういうことなんでしょうか。
  317. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 局長御指名でありますが、便宜お許しをいただいて、私からお答えをさせていただきたいと思います。  御承知のように、平成三年度予算編成をいたしました直後に、中東における想定しない状況が発生をし、その中におきまして平成二年度第二次補正予算の編成という事態を迎えました。そして、その平成二年度補正予算(第2号)は、そのまま平成三年度予算における私ども自身の見直しの努力を呼ぶことになり、その中で、御承知のように予備費の二千億を私どもは削減をいたしたわけであります。例年に比べ、千五百億円という予備費は、財政運営を極めて厳しくするものであることは否定できません。そして、いわゆる三高二安と言われました税収の非常に大きな伸びが続きました状況というものに変化が生じておることは、これはもう事実そのとおりであります。  また同時に、国会でたびたび税収の見積もりの誤差を起こすなという厳しい御指摘を受けながら、できる限り税収を正確に見込む努力をし、平成三年度予算を編成しております今日、それほど大きな見積もりの誤りがあるとは私は考えておりません。そうした中におきまして、予備費が千五百億円しかないということは、財政担当者として極めて不安であります。それだけに、そういう状況の中で、本日の閣議におきまして私から各閣僚に対し、でき得る限りの節減についての御協力をいただきたい、具体的には事務的に改めて御相談をさせるというお願いを申し、その了承を受けたところであります。
  318. 日笠勝之

    ○日笠委員 じゃ、本題の地価税法案の方に移りたいと思います。  地価税法案を今回提案をされたねらい、目的というのは、先ほどからの同僚議員の皆さんの質疑でもお聞きをしておるわけでございますが、私どもが一番どうなのかなと思うのは、固定資産税評価の割合を上げていけば、保有税ですから保有コストは上がっていくということで事足りるのではないかな、そういうようにも思いますし、それからもう一つは、土地神話を打破するという、これは総合土地政策推進要綱にも載っておりますけれども地価税だけでは当然土地神話打破には難しい、何かほかのものとセットでいかざるを得ないだろう。こうなりますと、土地神話打破についてこの地価税がどの程度資するのかな、かように思うわけでございますが、その点どのようにお考えでしょうか。
  319. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、地価税だけでどの程度の効果があるか、すなわち、他の施策が現行の制度と全く変わらず、地価税のみを採用した場合にどの程度の効果があるかということでありますと、十分お答えを申し上げるだけの想定ができません。ただ、これはもう委員がよく御承知のように、今回の異常な地価高騰というものが我が国の社会経済に深刻なゆがみを生じてきている。そして、土地問題の解決というもの自身が我が国にとって喫緊の課題となっている状況というものは、よく御承知のとおりであります。  私どももこういう認識に立っており、その上で税制がどのような役割を果たすべきかについて悩んでおりました。ちょうど一昨年十二月に土地基本法が制定をされ、土地というものにつきまして一つの国民の共通の理念というものがつくられたわけであります。土地問題の解決のためには、そうした基本的な一つの合意が必要であることは言うまでもありません。そして、このおかげで、私どもはこの理念を踏まえまして、各種の施策を総合的に実施することがようやく可能になりました。そしてまた、その必要性にも迫られてまいりました。そうした中で、税制面においても総合的な見直しに取り組んできたわけであります。  今回御審議をいただいております地価税は、その中におきまして、従来の固定資産税あるいは特別土地保有税とは違った視点から、土地保有というもののコストを高めていく、そしてその効果を縮減していく、土地というものの持つ効果を縮減していくという目標を持って創設されたことも委員がよく御承知のとおりでありまして、こうした目的から、私どもとしては、土地資産価値に応じた税負担を求めていくことにより、固定資産税評価適正化等と相まちまして、地価の低下、抑制あるいは土地の有効利用の促進といったそれぞれの分野に税制としての役割を一応果たし得るだけの体系がつくり上げられる、そのように信じて御審議をお願いいたしております。
  320. 日笠勝之

    ○日笠委員 やはり土地神話打破は、地価税一つ主役かもしれませんね。しかし、先ほど申し上げました総合土地政策推進要綱にのっとってこれから質問いたしますが、やはり首都機能だとか産業機能等の分散、中でも国の行政機関等の移転、これは非常に重要なことだと思うのです。昭和六十三年七月十九日に閣議決定をされております「国の行政機関等の移転について」の「基本方針」では、これがるる盛り込まれております。詳しい内容は時間もありませんので申し上げませんが、別表一から別表三まで、私が調べたところによると百十四の機関を移転をしていこう、こういう閣議決定なわけでございます。  そこで、きょうは国土庁の担当の室長にも来ていただいておりますけれども、今現在既に移転が完了したのは何機関であり、それから予算の裏づけをもって今計画中のものは幾つあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  321. 野見山恵弘

    ○野見山説明員 お答え申し上げます。  国の行政機関等の移転につきましては、ただいま御指摘の別表一、二、三のうち、別表一、二につきましては平成元年八月に移転先地を取りまとめたところでございます。また、その推進につきましても、昨年三月の土地対策関係閣僚会議におきまして、国土庁長官が土地対策担当大臣として、おおむね五年を目標に移転が具体化するよう各大臣に要請したところでございます。  また、お尋ねの推進の件でございますけれども、去る四月八日に各省庁事務次官で構成しております国の機関等移転推進連絡会議を開催いたしまして確認を行ったところでございますけれども、税関研修所及び宇宙科学研究所の二機関につきましては移転を完了いたしております。また、その他個別につきましては、十省庁十八機関十一部隊、大宮操車場跡地に移転します地方支分部局につきましては、十省庁十四機関につきましては具体の予算を認めていただいております。  以上でございます。
  322. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうは大蔵省さんがいての質問ですから、大蔵省にちょっとお聞きしますが、別表一に移転をすることになっております税関研修所と醸造試験所、これは先ほどおっしゃったとおりで、もう済んだものもありますし、予算を計上して今進行中のものもございます。しかしながら、例えば関東財務局とか関東信越国税局とか、それからまた関東信越国税不服審判所、これはまだ何ら予算措置がされておりませんが、いつごろを目途に予算措置をし、移転をしようとされておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  323. 日高壮平

    ○日高政府委員 本問題につきましては、大蔵省としてもその円滑な移転に向けて鋭意取り組んでいるところでございます。今先生指摘になりましたように、税関研修所は既に移転済みでございますし、それから印刷局の研究所も、ほぼ平成四年度中には神奈川県の小田原市へ移転する予定でございます。それから醸造試験所についても、平成六年度に広島県東広島市に移転する予定でございます。  それから、今御質問ございました関東財務局、関東信越国税局、関東信越国税不服審判所、この三機関につきましては、埼玉県の大宮・与野・浦和地区集団移転対象機関ということで、現在政府部内において検討を続けているというところでございます。
  324. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで、これは雑誌の報道なんですけれども、醸造試験所は東広島市に移転をする。これは平成六年までにやるということですが、東広島市に行ってしまったのではいわゆる情報収集に困るということで、何か出張所というのでしょうか支所というのでしょうか、そういうものをやはり東京都区内ないし首都圏内に置かざるを得ない。それからまた米どころの新潟とか東北への行政サービスということで、そういうものもそういうところに置かざるを得ない。こうなりますと、せっかく東広島市へ移転しても、東京に一部残ったり、また東北や新潟に残る、こういうことも考えておるのでしょうか、どうでしょうか。
  325. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 お答えいたします。  委員指摘の醸造試験所の移転でございますけれども、醸造試験所の基本的任務である研究部門はすべて東広島に移転させます。ただ、これも委員から御指摘がございましたように、関係省庁とか関係学術機関との連絡調整、あるいは関東、信越、東北地方等の酒造業者の指導あるいは相談に乗るということで、現在の醸造試験所の機能をほんの一部東京に残すということは考えております。ただ、御指摘のように、新潟方面に支所をつくるとかそういうことは全く考えてございませんので、御理解いただきたいと思います。
  326. 日笠勝之

    ○日笠委員 やはり一部残すわけですね。完全移転でないと余り意味がないのじゃないかという気もいたしますね。  そうしますと、これからほかの百十四の機関がそれぞれ移転をする。しかし、情報収集だとか、そういう意味で東京都内に、二十三区内に、ほんの少しといえども、百十四機関がほんの少しというたら膨大な数になるわけですから、やはりそれは完全移転というものを一つ目安にしなければ、国の行政機関の移転、移転といっても、私どもは一〇〇%行くものかと思うわけですが、ひとつその辺は残さないように。今はファックスもありますし電話もありますし、東広島市は新空港もできますと東京まで一時間で来れるわけですし、新幹線でも五時間でございますし、そこそこの情報収集もできる、こう思いますので、私はその点はちょっと納得がいかない、かように思います。しかし、今後また前向きに、私が言っている意味で前向きで検討されんことを望みまして、次へ移りたいと思うのです。  国土庁さんにもきょう来ていただいておりますが、別表二の水資源開発公団と地域振興整備公団、これは移転をするようになっておるわけですが、今もって予算がついておりませんですね。調査費とか検討費とかいうわずか百万円単位の予算もついておりません。本来ならばこれは国土庁さんが率先して、私どもはまさに国土の均衡ある発展のため、一極集中を排するため国の行政機関の移転の先駆を切って行きます、こういうふうになるべきだと思うのです。現時点、水資源開発公団は横浜、地域振興整備公団は川崎というふうに移転先は決まっておりますが、今もって予算がついていない。なぜなんでしょうか。
  327. 今藤洋海

    ○今藤説明員 国土庁の関係でございます水資源開発公団につきましては、平成元年八月に横浜市でございます。それから地域振興整備公団につきましては、川崎市に移転候補地ということで定められたところでございます。両公団におきましては特別な予算措置というのはしてございませんけれども、内部で検討委員会を設けて鋭意検討を行っておる状況でございますが、現在のところ、移転のための経費の具体的な算出を行うという段階にはまだ至ってない状況でございます。今後とも、国土庁といたしましては、両公団の円滑な移転が図られますよう努力をしてまいりたいと思っております。
  328. 日笠勝之

    ○日笠委員 これはぜひひとつ百万円ぐらいの調査費をつけて、前向きに早く国土庁さんみずからがやるべきじゃないかと私は思います。指摘をしておきたいと思います。  それから、「移転を推進する方向で関係省庁においてその機関の性格に配慮しながら別途検討を行う」ということで、別表三に掲げられた機関がございます。これは移転を推進する方向です。その中に大蔵省の管轄の中のものが三つございますね。いわゆる国民金融公庫と日本開発銀行と日本輸出入銀行と三つありますが、この三つの機関につきまして理事会等で移転はもう決議されたでしょうか。また、行く先も決まったのでしょうか。
  329. 土田正顕

    ○土田政府委員 輸出入銀行、開発銀行、国民金融公庫は政府関係金融機関の中に入るものでございますが、これらのいわゆる政府関係金融機関につきましては、もちろん業務地域が全国一円であるという事情もございますが、そのほかに、やはり世界有数の金融センターである東京における活動というものが非常に重要な意味を持っております。その他、公庫によりましては、政策官庁との緊密な連携が必要であるというような事情もあるようでございます。  そこで、そのようなことで、本店を地方に移転させることには困難な問題が多いと考えられますけれども、なおどのような対応が可能かにつきまして、引き続き所管官庁としても検討してまいりたいと考えております。
  330. 日笠勝之

    ○日笠委員 理事会でもう移転は決議されましたか。それともまだそういうところまでいってないのでしょうか。
  331. 土田正顕

    ○土田政府委員 私ども理事会でそのような決議があったということを承知しておりません。  余談でございますが、金融機関というものについては何がしかの特殊性があるかと思いますのは、例えばロンドンではシティーでございます。このシティーではワンスクエアマイルの中にいろいろな金融機関、証券業者その他が密集しておるということでありますし、ニューヨークのウォールストリートも、また極めて狭い地域の中に金融機関その他が密集しておるわけでございます。ある程度金融センターというのは、その比較的狭い地域の中に一緒に入って共同して活動し、情報を交換をするというようなところがやはり世界的に他にも例があるわけでございますので、そのような観点から見ましても、その金融センターから出ていくということはなかなか難しいのではないかというような説明も聞いております。
  332. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、移転の方向でというのは、これはいわゆる精神規定であって、今のお話を聞くととても行きそうにないと思うのですが、大蔵大臣、どうなんでしょうか。  大蔵省所管の三つの機関が行くというよりは、まだほかにも例えば厚生省との共管の環境衛生金融公庫とか、それから農林水産省との共管の農林漁業金融公庫、通産省との共管の中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫、商工組合中央金庫、それから建設省との共管の住宅金融公庫、それから自治省との共管の公営企業金融公庫等々、大蔵省独自のものもあれば共管もたくさんあるのですね。ならば、この際、先ほどのロンドンじゃありませんけれども、どこか大宮の操車場跡地でも横浜の港北ニュータウンですか、そこらをがばっと手当てをしまして、一大金融センターにすればいいんですよ。それくらいのことがまさにいわゆる一極集中を排する、こういうことになると思うのです。  これはたくさん共管もありますし、先ほどの三つの国民金融公庫、開発銀行、輸出入銀行がありますが、先ほどの銀行局長の御答弁を聞くと、これは五年の間に検討すると言いますけれども、結論的には、やはり東京は金融センターであり、とても行くことはできない、私はこういうふうにしかとれないのですね。大臣とすれば、先ほど申し上げました共管のものを含めて、金融センター的なものも含めて積極的に指導する、こういうお考えでしょうか、どうでしょうか。
  333. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 残念でありますが、私は、金融機関関係につきまして地方移転というものについては、全く委員意見を異にいたします。むしろ今後東京の中に、例えば臨海地帯の整備でありますとか、あるいは突拍子もない言い方でありますけれども、汐留の操車場跡地をどう開発していくのかとか、そうした中にむしろ金融センターを集中してつくっていくということであるなら、私は意味があると思います。なぜなら、金融機関は、お客様の利便と同時に、資金調達コストその他において集約性のメリットのある業種でありますから、これを一カ所に集中する意味はあると私は思います。しかし、東京から離して金融機関を各地に散らばらせる、私はそれが国益につながるとは思っておりません。  ただ、先ほど審議官の方から御報告をいたしました私ども自身の各出先機関の移転、あるいは先ほど触れておられたかどうかちょっと忘れましたけれども、私は申し上げていなかったような気がいたしますので、重複すればお許しをいただきますが、税務大学校の若松町校舎につきましては、埼玉県和光市における具体的な建設構想を検討中でありますし、こうした分野については積極的に我々は取り組んでまいります。
  334. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、大臣、六十三年七月は大臣でしたかね。これは閣議決定なんです。閣議決定でそのようにやりましょうということで決まったものなんですよ。今の大臣のお話を聞くと、何か金融関係はそうじゃないんだよということに……(橋本国務大臣「だから個人意見を聞かれれば」と呼ぶ)個人意見ですか。では、大蔵省はこういう国の行政機関の移転については、特に金融機関については積極的でないというふうに私はとらえたのですが、国土庁、それでいいのでしょうか、この閣議決定から見て。遠慮せずに言ってください。
  335. 野見山恵弘

    ○野見山説明員 お尋ねの別表三の機関でございますけれども平成元年の十月の連絡会議で、閣議決定の趣旨を踏まえ、引き続き検討を行う。その際に、東京都区部に所在する機能の一部の地方への移転等も含め、きめ細かな検討を行うということを申し合わせております。  御報告申し上げます。
  336. 日笠勝之

    ○日笠委員 だんだん後退してくるんですね。ですから、三月二十八日に第三次行革審の豊かなくらし部会で、国土庁の担当者の皆さんが、首都圏の中でも機能分散はそれなり意味があるとか、行政機関の移転は五年をめどにしたいと答えたら、部会は納得せず、改めて文書で回答を求めた。やはり行政機関の移転が計画どおり進んでない。なぜかということからそういうふうになったという、これも報道でございますが、閣議で決定した重みもありますし、一極集中の是正をしていかなければ、先ほど申し上げました地価税だけでは土地神話の打破にもなりませんし、これは積極的に別表一、二、三は移転をするということで、前向きに検討しなければいけないと思うのです。この点はどなたか御答弁できますか。銀行局長、どうですか。
  337. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変申しわけありませんが、先ほど私は個人意見と申しましたのは、この閣議決定期間、私は党におりまして、引き継いだという立場からいえば、これは検討しなければならぬと思います。しかし、もしその時点におきまして私が閣僚でありましたならば、金融機関は外して議論をしたであろうと思っております。  これは、金融機関というものの持つ特性をお考えいただきたいのでありまして、行政改革というものは、わざわざ非効率をつくり出すために機関を移転するものではないと私は信じております。また、移転に伴うコストとその移転の結果生ずる利益とがプラスになるようなものであるならばともかくも、完全に業務上マイナスを生じるとわかっておりますことを積極的に進めるという言葉は、私は申し上げる方が不誠実であると思います。  真剣に検討はいたします。しかし、個人として申し上げる限り、金融機関の移転というものには、むしろ金融市場としての重みを持つ東京のエリアの中で集約ができるような土地が出てくれば、そこに集約していくということは非常に意味があると思いますけれども、他の機関について積極的に移転に取り組んでいくこととこの点は、私は委員意見を異にいたします。
  338. 日笠勝之

    ○日笠委員 これは、ことしの一月二十五日に総合土地政策推進要綱を閣議決定したものの中にあるのです。国の行政機関等の移転については「着実に実施する。」こうなっておるわけですよ。もう一度読んでいただきたいと思うのです。そういう意味では、金融機関だけは私がその当時いたらば云々というのは、ちょっといかがなものかなと思います。ここでこれ以上議論しても、大臣がそういうかたい決意でございますから、銀行局長にやりとして、これで助かったというような顔をされていますけれども、また場を移して、もう少し詳しくやりたいと思います。  もう一つは、私どもが昨年の七月に国家公務員宿舎用地についての申し入れを行いました。それは、御存じのように、国公有地総点検委員会を設けまして調査をした結果に基づき申し入れをしたものでございますが、その報告として、一生懸命調査をしていただきました。先ほど理財局次長から御答弁がありました。私は、公務員宿舎用地の有効利用をして残った分、転用が可能な分、幾らがあるわけですから、できればそこに公共住宅をつくれるような配慮がまず一番大切ではなかろうか、かように思いますが、その点はいかがでしょうか。細かいことは後で聞きますからいいですよ。 ◯田中(寿)政府委員 公務員宿舎につきまして点検をやりました結果、七百五十件の中で、土地面積が百六十五・八へクタールでございますが、その四割、六十九ヘクタールにつきましては公務員宿舎以外の転用が可能であろう、こういうふうに思っております。  ただ、公務員宿舎につきましては、所在いたしますところが既にもう公園用地、広場になっておりますところでありますとか、あるいは道路用地でありますとか、都市計画事業で区画整理事業の対象になっておりますところでありますとか、いろいろあるわけでございます。そういうところをいろいろ考えますと、そういう中で約半分ぐらいは他用途に転用がされるのではないかというふうに思っております。もちろんその中には、公共住宅に隣接しておって、もし地元地方公共団体において一体として活用を考えるというような話があれば、それも可能ではございますけれども、計画的に政策対象として公共住宅の供給の対象になり得るものであるかというと、それは量的には非常に限られたものになるだろう、こういうふうに思っております。
  339. 日笠勝之

    ○日笠委員 公共住宅にも積極的に転用を御要望しておきたいと思います。  もう一つ、庁舎等の用地、これについて同じくこの前御報告を私個人いただきましたけれども、この中で特に気になるところは、庁舎用地も集約・移転整備が進められておるわけでございますが、それ以外の有効利用を図る必要があると認めたものについては、できるだけ速やかに利用計画の具体化を進める、こうあるのです。公務員宿舎の方の計画は十年間で一万六百戸でしたか、こういうきちっとした数字的な裏づけもできました。しかし、庁舎用等の用地は非常に抽象的に「できるだけすみやかに利用計画の具体化を進め、」というだけなんですが、これはいつごろ具体化をされて、どういうふうにこの有効利用を図ろうとされておるのか、目途をお聞きしたいと思います。
  340. 田中寿

    田中(寿)政府委員 公務員宿舎の場合は非常に単機能でございますが、庁舎用地は、これは大変いろいろ多岐にわたっております。二百三十四件、面積にいたしまして百九十一・八ヘクタールでございますが、その中で既に件数にいたしまして半分のものにつきましては、集約・移転整備等の予算化も図りながら進められておるわけでございます。  残余のものにつきましては非常に多岐多様でございまして、場合によれば、それほど時間がかからないで効率化を図り得るというものもございますが、中には機構そのものにもかかってくるというようなものもございます。それからまた、行刑施設のように、場所的に市街地の中にあって、これをより有効活用するという観点から、移転した方がいいだろうと思われるものもあるわけでございます。しかし、受け入れ先がなかなかないというようなものもございまして、そういうことで非常に多様でございますので、いろいろこの有効活用を図るための具体化を進めるべく各省庁に協力を依頼するとともに、今回このような形で点検をやりました結果として、今後における検討の部内的な体制も一層進んだと思いますけれども、しかし、今ここでいつごろどのくらいのめどでできるかということは、ちょっと申し上げられないことを御理解賜りたいと思います。
  341. 日笠勝之

    ○日笠委員 実はこれも報道なんですが、大蔵省は未利用国有地の活用策を探る財団法人の設立を検討とありますが、これは真実でしょうか。
  342. 田中寿

    田中(寿)政府委員 一都三県の中で未利用国有地は約六百件ございますが、その中で、例えば一千平米以下というのが六割ぐらいの件数を占めるわけであります。国有地につきましては、かつては競争入札をやっておりました。国有地の利用の方法といたしまして、これはもう公用、公共用を最優先にしております。しかし、例えば一千平米未満のこの種の土地につきまして、県あるいは地方公共団体等が公用という形で手を挙げられるかというと、必ずしもそうでないものが出てくる。それから一方では、それではそういう土地を未利用のままで放置しておいていいのか。せっかくの土地空間を何らかの形で暫定利用もしないで放置しておくということにはやはり問題があるだろう。  さりとて、それでは競争入札に付して民間でお使いいただくような形でできるかというと、地価対策との関係でそれはストップしております。現在、全国的に都市地域で監視区域に指定されておりますのが千百を越えますが、市街化区域で約四分の三以上になるようでございます。こういう状況の中で競争入札は全国的にストップいたしております。こういう状態が続きますと、これはやはり問題だろう。そういう意味で未利用国有地の暫定的な、例えば駐車場でありますとか広場、公園だとか、あるいは再開発のための一時居住用の施設でありますとか、この種のそういう暫定利用の方策を考えたいということで、いろいろ検討していることは事実でございます。
  343. 日笠勝之

    ○日笠委員 地価税の創設となりますと三千億円から四千億円ぐらいの税収があるというのは、予算委員会へ提出された資料にも載っております。午前中、参考人の方々にもお聞きいたしましたのですが、税収三千ないし四千億円の使途について先ほどいろんな議論もありましたが、私は私の議論として、また我が党の一つ政策としてここで主張を申し上げ、またお考えをお聞きしたいと思うんです。  これはもう既に大蔵大臣と何遍も実はやったことなんですが、家賃補助、家賃控除制度なんですね。先日、国会図書館の調査及び立法考査局の「調査と情報」百四十六号のイシューブリーフ、これは各議員会館の部屋に定期的に来るわけですが、これをずっと読んでみますと、賃貸住宅政策の流れは、欧米諸国においては賃貸住宅の建設補助から家賃補助制度に大きく比重を変えているという、そういう報告がなされているわけです。私も大蔵大臣と何回か議論したときに、家賃補助で個別的にばらまきではなくて、良質な賃貸住宅の建設を促進する、そういうふうな方向がいいんではないかというようなお話を聞いたこともございます。  日本におきましては、持てる者と持たざる者との資産格差ということもございますが、住宅を取得した場合は例えば住宅金融公庫の低利な融資もございます。また、租税特別措置法を先日改正をいたしまして、住宅取得減税ということで、最高一年二十五万円までで、六年間で計百五十万円までの減税となるわけですね。そしてまた住宅地には、地方税でございますが、固定資産税の軽減もございます。住宅を持つ人はいろんな特典がある。しかし、賃貸住宅居住者には何もない。何もないどころか消費税まで払っておるわけですね。  先日、総理府が大都市圏の借家住まいの方々のアンケート調査を報告しておりました。それを見ますと、大都市圏の借家住まいの三割の方はもう持ち家をあきらめた、こういう総理府の報告でございます。それからまた、日本住宅総合センターの意識調査によりますと、社宅の居住者の中で、同じくもう持ち家をあきらめたという方が三五・九%、そのかわりに家賃補助制度ないしは社宅を充実してもらいたいという人が四五%、こういうふうな報告がなされております。  政府もこういう家賃補助制度について全然後ろ向きとは言いません。一歩前進だと思いますのが、本年度から建てかえ差額負担補助制度であるとか、借り上げ住宅制度等を一部導入されました。一歩前進だと思います。しかし、国税として地価税の税収が三千から四千億円あるということから、もう一度前へ戻りまして、平成二年度の建設省、労働省の税制改正要求のときに、家賃控除制度というものを大蔵省さんの方へ恐らく要求したと思うんです。  その制度は、簡単に申し上げますと所得制限をしております。所得制限は、年収一千万以下であるとか、対象住宅は賃貸住宅であるとか、減税方式は所得控除であるとか、また五十平米未満の賃貸住宅については五万円を限度に月額家賃の一年分を所得控除する、六十万円までということですね。五十平米以上の賃貸住宅については、これはいろいろ制限をいたしまして最高九十万円まで。五万円までは十二カ月分、五万円を越える十万円までは二分の一ということでございますから、最高九十万円までの所得控除、こういうことに税制改正で建設省の方が大蔵省さんの方に要請したと思うんです。そういう条件でいきますと、減税額が三千四百億円なんですね。まさに地価税の税収とほぼぴったり一致をするわけなんです。  そこで、先ほどの欧米の流れも賃貸住宅建設促進から家賃補助制度に大きく変わっているということ、それからまた地方自治体におきましても、高齢者の方とか一人親の方とか、そういう方々に対しまして、東京二十三区だけ見ましても、渋谷区を除いた二十二区が住みかえの場合は補助制度を設けておりますし、そのほか障害者の方であるとか母子家庭であるとか新婚の方とか、いろんな条件はついておりますが、埼玉県でも神奈川県の一部でも愛知県の一部でも、大阪府、兵庫県と、次第にこの家賃補助制度というものが地方自治体独自の施策として今実施をされつつあるわけなんです。  そういうことから考えまして、日本もそろそろ、持てる者と持たざる者、住宅を取得できる人とできない人の格差も出てきておりますし、この平成二年、建設省、労働省が税制要求しました家賃控除制度、まあ税額控除でも所得控除でもいろいろやり方はあると思いますが、要はこういう制度をこの増収分で賄い得ると思いますので、ぜひひとつこれは前向きにそろそろ検討する時期ではなかろうか、かように思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  344. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今までこの問題について委員とは何回か意見伺い、また、私どもなりの意見を申し上げてまいりました。今まで私のいたした議論をもう一度繰り返そうとは思いません。ただ、委員が今例示をされましたように、特に人口の稠密地帯からドーナツ現象を起こしております大都市部において、その地域、地域の施策に基づく家賃補助あるいは控除というものが地方自治体によって採用されております。そのとおりこれは、地域の施策としては住民の数を維持したい、あるいはその中で特に若い方々をふやしたい、さまざまな政策目的を持って運用していかれるべき施策であろう、これを私は否定をいたしません。  ただ、やはり私は、そうした中で、国が住宅費というものについて着目しながら努力をする目標というものは、公営住宅などの建設でありますとか、あるいは融資あるいは税制の活用など、いろいろな手だてもありましょうが、良質な賃貸住宅供給のコストをどうして低減し、実際必要なだけの住宅を確保していくかという施策であろうと思います。言いかえれば、私は、国の役割と地方自治体の役割には、この部分については重複する部分もありますけれども、それぞれが役割分担をして努力すべき点があると考えております。その場合、国が採用すべきは、住宅控除あるいは住宅費補助といった施策ではなく、むしろその資金をより積極的に賃貸住宅の建設、あるいは供給コストの低減という方向に向けていく、私どもとしてはそうした施策の方がより望ましいものと思っております。ただ、委員の御意見は私は御意見として承りますし、税制調査会の方にも当然のことながらその御意見というものは紹介をさせていただき、税制調査会の御論議の参考にもさせていただきたいと思います。
  345. 日笠勝之

    ○日笠委員 実はきょう午前中、石政府税調委員参考人出席がございまして、この場ではそのことは要請をしたのです、家賃控除制度を税調でも議論してもらいたいと。終わった後、これは廊下でございますけれども、ぜひひとつお願いしたい、こう再度要請しました。やはりやらなければいけないかなというお話もされておりました。家賃控除制度を政府税調議論をしなければいけないかな、こうおっしゃっておりましたので、今大蔵大臣言われたように、政府税調でぜひ検討していただきたい。  住宅宅地審議会なんかでも、良質な賃貸住宅促進のことはいっぱい書いておるんですが、現実に家賃補助とか家賃控除ということは一行も出てこないんですね。こんな厚いのを一生懸命見てみましたけれども、一行も出てこない。ですから、政府の皆さんには、家賃補助とか控除という概念は余り頭にないんじゃないかな。しかし、先ほど申し上げましたように、欧米主要各国は良質な賃貸住宅建設促進から大きくもう個別の家賃補助制度に変わっているという、これは国会図書館ですから、権威ある国会図書館の「調査と情報」にも載っておるわけでございますから、ぜひこれは政府税調で一度真剣に議論をしていただきたいな、かように要請をしておきたいと思います。  それから、地価の安定ということでは、やはり何といいましても総量規制、これは今大きな効果を上げつつあると思います。銀行局長、この総量規制というのは一部においてはもうそろそろ緩和しろという声も出ております。私は、どういう条件になれば、どういう条件が整ったらこの総量規制は緩和できるのかな。今までのいきさつは結構です。どういう条件になれば総量規制が一部なり全面的に緩和できるのかな、このことについてお聞きしたいと思います。
  346. 土田正顕

    ○土田政府委員 御案内のように、昨年の四月から総量規制を導入しておりまして、かなりの効果を上げております。私どもといたしましては現在なおその効果を注意深く見守っているところでございまして、さしあたり現時点で総量規制を解除する考えはございません。  ただ、今後どのようにするかというお尋ねでございますが、今後の取り扱いにつきましては、いろいろな面を注意深く見てまいらなければいけないと思います。  一つには、やはり何と申しましても地価動向でございます。それからまた、そのほかに金融経済情勢全般とか、それから金融機関の融資動向、つまり、緩めた場合にまたこのような土地融資が非常な勢いで上昇する危険性があるかどうか、そのような融資動向も見なければいけないと思います。それからまた、土地対策というものは金融面の措置だけで処理できるものではございませんので、土地政策全般の推進状況、いわば他の方面でのいろいろな手段の整備の状況、それなども見てまいらなければいけないと存じます。そのようなものを総合的に勘案しながらなお今後検討してまいりたいと思います。  具体的な基準というものはなかなかこれは難しゅうございまして、一つ二つの例えば地価などの特定の指標だけをもってこの規制を継続するとか、解除するとかというようなことを判断すべきものではなかろうと思います。やはり総合的にいろいろ見てまいりたいと思っておるわけでございます。
  347. 日笠勝之

    ○日笠委員 先日、予算委員会でも、私これは通産省に聞いたのですが、いわゆる原油高騰になるだろうということで月決め方式でヒアリングをして、そのぐらいの値上げとか値下げならいいだろうということでずっとやってきました。そのときには通産大臣は当分続けるなんておっしゃっていたが、きょうの新聞を見たらもう五月からやめようかということですね。  ですから、この総量規制についても、今言ったような御答弁しかできないことはよくわかりますけれども、いわゆる不動産貸し出し、これはノンバンクとも関連してくるわけですね。時間がありませんので、ノンバンク研究会、そろそろ報告をまとめられるということでございますが、また議員立法でという話もございますし、大体どういう方向に固まりつつございますか。ノンバンク研究会のいわゆる不動産融資等々に対するガイドラインというのですか、内容でございます。
  348. 土田正顕

    ○土田政府委員 ノンバンク研究会についてのお尋ねでございますが、これは大蔵省の銀行局長のところで、学識経験者、それからノンバンク業界の方々、金融界の方々などにお集まりをいただきまして、初めての試みでございますが、どのような仕事をしておるのか、ノンバンクの概要とかそれからどのような活動、殊に資金仲介系統の活動をしておるのか、それから、それについてどのような意義づけを我々は考えたらいいかというようなことで、大変精力的に御審議をいただいております。  確かに回を重ねましたので、そろそろ報告書案の取りまとめにかからなければいけないわけでございますが、私どもは、これは事務局として申しますと、取りまとめ作業を行っている最中であるというふうに承知をしておりまして、その内容について、この方向づけを含めて現段階ではまだ申し上げることを御容赦いただきたいと存じます。
  349. 日笠勝之

    ○日笠委員 新聞には出ていましたよね、自主規制ガイドラインをつくるとか。正式な報告書はまだ取りまとめ中ということだそうでございますから、また出てきたときにいろいろと検討させていただきたいと思います。  地価税の細目について、もう時間もありませんので、一つ二つお聞きをしたいと思います。  一つは、今回の地価税法案を見ますと、こういう項目を取り入れてもよかったのではないかなと思うところがございます。それは、地方税法の三百八十二条に「登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、十日以内に、その旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。」とあります。ですから、名寄せをしていくということだそうでございますから、自動的に市町村と同じように登記所から通知をいただく。そうすると人件費も安くなるし、非常に時間的な効率もよくなる、かように思うわけです。  恐らく大蔵省さんは、その三百八十二条の三項に、結局、市町村長がその通知を受けたら「遅滞なく、当該土地又は家屋についての異動を土地課税台帳又は家屋課税台帳に記載し、又はこれに記載された事項を訂正しなければならない。」、そちらの方を見れるのだから要らないのかな、こういうことも言えると思いますが、登記特別会計には一般会計からたしか五百億円ぐらい補助というのですか、交付もしているわけですね。ですから、できればこういうふうに自動的に登記所から通知をいただくということを一項目盛り込めばよかったのではなかろうかなと私は思うのですが、その点はどうだったのでしょうか。
  350. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 固定資産税の方がその登記所の通知義務について定めがございます。御指摘のとおりでございますが、固定資産税は、御承知のように、市町村が作成しております固定資産台帳によりまして、台帳課税主義と申しておりますけれども、その記載された者を納税義務者といたしまして市町村は税額を決定するいわゆる賦課課税でございます。それを納税義務者に通知をするというやり方をやっているわけでございます。したがいまして、固定資産税課税上、登記事項の把握が必要不可欠だということから、御指摘のような通知義務が定められているわけでございます。  一方、地価税の方は、これは申告納税方式でございますので、固定資産税と基本的な事情がやや異なっておりますので、そのような義務を定めずに、御指摘のとおり、固定資産台帳等を閲覧させてもらうという規定にしてあるわけでございます。
  351. 日笠勝之

    ○日笠委員 これは、譲渡課税とかそういうことでも非常に便利ですね。土地を売ったとかいうような場合もわかるわけですね、名義変更もあるわけですから。だから、私は、一般会計から五百億円も登記特別会計へ出しておるわけでもございますし——では、結局名寄せはしないのですか。申告だけを待っていて、あとどういう変更があるか、それは全部市町村の固定資産台帳を見るだけなんでしょうか。ちょっと大きな取引があっても、それは要は申告を待つだけ。通知をいただいた方が便利で簡単で、人的、時間的にも楽じゃないでしょうか。そういう意味で、私はこれは国税庁の応援団のつもりで言っているのですが、主税局長はえらい積極的でないようですが、国税庁の方はどうなんでしょうか。
  352. 山口厚生

    ○山口(厚)政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの名寄せの点につきましては、固定資産課税台帳等の閲覧記録によりまして、その方法は固定資産課税台帳等の写しを得て行うということとなりますけれども、そのうち問題は、市町村をまたがっているケースでございます。この市町村をまたがって保有している者の土地等については、その写しをその土地等保有者の住所地を管轄する税務署に送付することによりまして、そこで全国的に名寄せを行う、こういうことで検討しているところでございます。
  353. 日笠勝之

    ○日笠委員 終わります。
  354. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、来る十七日水曜日午前九時二十分理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会