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1991-03-15 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十五日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       金子 一義君    河村 建夫君       久野統一郎君    戸塚 進也君       萩山 教嚴君    細田 博之君       前田  正君    町村 信孝君       柳本 卓治君    山下 元利君       小野 信一君    大木 正吾君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       仙谷 由人君    筒井 信隆君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    渡辺 嘉藏君       井上 義久君    宮地 正介君       正森 成二君    中井  洽君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      末木凰太郎君         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵省主計局次         長       小村  武君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省関税局長 伊藤 博行君         大蔵省理財局長 篠沢 恭助君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         大蔵省国際金融         局長      千野 忠男君  委員外出席者         外務省経済協力         局国際機構課長 塩崎  修君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 豊田 正和君         通商産業省貿易         局総務課長   中野 正孝君         参  考  人        (日本銀行総裁) 三重野 康君         参  考  人         (日本銀行企画         局長)     小島 邦夫君         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 三月十五日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     金子 一義君   林  大幹君     町村 信孝君   菅  直人君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     中西 啓介君   町村 信孝君     林  大幹君   楢崎弥之助君     菅  直人君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案内閣提出第三四号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)  航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第四六号)      ────◇─────
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  趣旨説明を求めます。橋本大蔵大臣。     ─────────────  欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案  航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま議題となりました欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  この法律案は、別途本国会において御承認をお願いしております欧州復興開発銀行を設立する協定に基づき、我が国が同銀行加盟するために必要な措置を講ずることを目的とするものであります。  欧州復興開発銀行は、民主化自由化を目指した改革が進められている東欧諸国を支援するため、これら諸国における市場経済への移行及び民間部門経済活動を促進することを目的として設立されることとなっております。政府といたしましては、我が国が同銀行加盟し、東欧諸国改革を支援することは、これら諸国経済発展を促進するとともに、我が国と同地域との経済関係を緊密にするものであると考え欧米主要国とともに、同銀行加盟することを決意した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、政府は、同銀行に対し、加盟に伴う当初出資として、約千四百四十八億円の範囲内において、本邦通貨により出資することができることとするほか、予算で定める金額の範囲内において、本邦通貨により、追加出資し、また同銀行特別基金に充てるため拠出することができることといたしております。  第二に、同銀行への出資及び拠出は、国債の交付によることが認められておりますので、国債発行権限政府に付与するとともに、その発行条件償還等に関して必要な事項を定めることといたしております。  第三に、同銀行が保有する本邦通貨その他の資産の寄託所としての業務は、日本銀行が行うことといたしております。  次に、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における内外経済情勢変化に対応し、我が国市場の一層の開放を図る等の見地から、特恵関税制度関税率等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、特恵関税制度改正であります。  平成三年三月末に適用期限の到来する特恵関税制度について、さらにその適用期限を十年延長するとともに、特定の鉱工業産品等に係る適用限度額等の算定の基礎となる基準年次の変更及び適用限度額等の拡大を行うことといたしております。  第二は、関税率等改正であります。  オキサミド等関税率を撤廃するほか、平成三年三月末に適用期限の到来する暫定関税率及び関税免税還付制度について、これらの適用期限を延長する等所要改正を行うことといたしております。  以上のほか、商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約改正に伴い、関税率表品目分類につき所要調整を行うことといたしております。  最後に、航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、海上運送貨物に係る税関手続の迅速かつ的確な処理を図るため、航空運送貨物に加え、海上運送貨物についても電子情報処理組織を使用して処理することができるようにする等、所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、法律の題名を電子情報処理組織による税関手続特例等に関する法律に改めることといたしております。  第二に、電子情報処理組織により処理される税関手続に、海上運送貨物に係る税関手続を含めるための所要改正を行うことといたしております。  第三に、航空貨物通関情報処理センター名称通関情報処理センターに改めるとともに、同センター業務海上運送貨物に係る電算処理業務を含める等、所要改正を行うことといたしております。  以上が、欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁三重野康君、日本銀行企画局長小島邦夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  7. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  8. 堀昌雄

    堀委員 本国会で初めて実は質疑をさせていただくのでありますが、欧州開発銀行の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  ちょっと委員長資料をお配りいただいておりますね。  今皆さんのお手元にお配りをいたしておりますのは、「マーシャルのKの推移」、M2プラスCD平残を名目GNPで割ったものの図表でございます。点線は、一九七五年の第一・四半期から一九八五年第四・四半期までのトレンドの線を延長したものでございます。これでごらんをいただきますと、要するに一九八六年から今日に至るまで、この斜線といいますか、これで囲った部分が、実は資金が非常に増加をしておる部分でございまして、現在約五十兆円のマネーが過大に供給をされている、こういうふうに考えるわけでございます。  今そういう大変な通貨供給状態から、日銀の引き締め及び貸し出しの規制等によって、漸次この問題は収縮に向かうと思うのでありますけれども、依然として相当なものが滞留しておるというのが現状だと考えておるわけであります。  そこで、日銀総裁のお時間の都合もありますので、最初に、法案に関するものとは直接関係がないのでありますけれども、お伺いをしたいのであります。  この現状を踏まえて、総裁は、今の日本経済というのはどういう姿に現在なっているのか、今後これがどういう形で推移をしていくのかという、今の日本経済現状分析と今後の見通し等について総裁のお考えを承りたいと思います。
  9. 三重野康

    三重野参考人 お答え申し上げます。  まず、国内景気現況をお話ししたいと思います。  最近は、家計支出あるいは設備投資関連でやや弱目数字も出ておりますけれども、現在の生産レベルの高さあるいは労働状態の非常な人手不足という点を考えて総合的に考えますと、まだ足元の景気は強いと見ております。これから先も、今の腰の強さから見てすぐに落ちるというふうには考えておりません。もちろん、これからやや減速に向かうとは思いますけれども減速に向かう方がかえって景気が長続きする。例えば、政府見通しの三・八%程度減速することが望ましい、そういう考え方でございます。  もう少し敷衍して申し上げますと、これからもまだ設備投資個人消費が引き続き牽引役になると思っております。設備投資は、確かにこれから落ちてまいるとは思いますけれども、いわゆる技術革新あるいは人手不足に対応する独立的投資誘因というのはまだ残っておりますので、そう大きく落ちることはない。個人消費も、やはり一部に弱気の数字も出ておりますけれども所得環境がまだ非常にいいわけでございますので、これもまだそんなに急に落ちるということはない。したがって、これから先もすぐには落ち込まないというふうに考えております。  物価でございますが、これはこのところじり高を続けております。湾岸危機が始まりました直前、昨年の七月と現在を比べますと、国内卸売物価、これは七月は前年比がプラス〇・五でございましたが、現在は大体二%の半ばになっております。CPI、消費者物価、これは昨年の夏が二%の半ばでございましたのが四%前後までじりじりと上がってきております。  内容を見てみますと、国内卸売物価の大部分石油関連で上がっております。消費者物価の上がってまいります大部分は、台風などもありましたので、生鮮食品の上昇と一部石油がございます。  しかしながら、ここで注目を要しますのは、その他の品目、主因はそうでございますが、その他の品目が、人件費の高騰とか物流費コスト増とか、そういったものを製品価格へ転嫁する動きがじりじりと広がっております。幸いにして全体の物価感は落ちついておりますし、戦争が終わりましたのでこれから石油も安定するということがありますから、その点は大変好材料ではございまが、そのじりじりと上がっている点は、その後ろに、五%成長が四年間続いたということがあるわけで、製品需給人手不足が強いわけでございますから、なかなか目が離せないというふうに見ております。  それからマネーサプライ、さっき先生が図に示したとおり、最近M2プラスCDを見ますと、昨年の四—六月がピークでございまして、その後伸び率ははっきりと減速してまいりました。減速してまいりましたけれども、さっきの先生のグラフにありましたように、金融緩和がかなり長く続きましたものですから、残高としてはまだ多い。注目していかなければならない。その上に、戦争が終わりましたので、これまでありました不透明感というものがなくなりますので、また、不透明感がなくなったからといってすぐに強気一辺倒になるとは考えておりませんけれども、これがどういうふうに景気に響いてまいるか、その点もよく注目していかなければならない、かように考えております。
  10. 堀昌雄

    堀委員 昨日も予算委員会で、私の同僚の武藤山治議員が、金融政策に関する問題について論議があったようであります。私は、今の三重野総裁お答えを聞いておりまして、またさらに、私が皆さんにお配りした資料というのは、確かに今マネーサプライはようやく下がってはきておりますけれども、対前月比という形で見ると、横ばいか、まあ少し上がっている部分もあるくらいで、決して実はマネーサプライが著しく改善してきているという状況にはございませんし、それを皆さんに端的に理解していただくために、このマーシャルのKの資料をお配りして、大蔵委員会の皆様の御認識をひとつまとめていただければいい、こう思っておるわけであります。  そういう意味では、今、日本銀行がとられております金融政策は、今後も情勢変化が何らか起こるまでは一応現状を維持されるのが大変望ましい、そういう客観的な条件があるということをひとつ私も認識をいたしておりますが、その問題についての総裁のお考えを承りたいと思います。
  11. 三重野康

    三重野参考人 先ほど申し上げました現況判断に基づきまして、また今先生がおっしゃったようなことに基づきまして、私どもとしましては、現在は、内外情勢、為替の情勢も含めまして、今までのとりました政策効果が少しずつ浸透していっているわけでございますから、それを見守っていく、それが私どもの基本的なスタンスでございます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 大変お忙しいところありがとうございました。これで総裁は御退席いただいて結構でございます。  そこで今度は、まず最初に、これは国際収支だから大蔵省に。  前川リポートの線に沿って日本経済は内需への転換ということで大変熱心にやってまいりました。その努力大変効果が見えてまいったのでありますが、しかし、そのことは結果的には、国際収支が必ずしも安定しているのではなくて、逆にだんだんとどうもこういうふうになってきている、こういう感じがするのでありますが、国際金融局長から、この全体のトレンドをひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 千野忠男

    千野政府委員 御指摘のように、各国間の経済の不均衡を極力是正をしたいということで各国が協調して政策的に協力をしてきているわけでございます。その結果がだんだんに出てまいりまして、例えば日本の場合で申しますと、経常収支黒字幅というものが、かつては相当巨額でございましたが、これが徐々に小幅になってきているわけでございます。例えば一九八六年度の経常収支は九百四十一億ドルということでございましたが、これが年々減りまして八九年度には五百三十四億ドルということで、今年度は三百億ドル台ということに見込まれているわけでございます。  日本はこういうことで、政策協調の結果が非常に好ましい形で出ていると思いますが、ほかの国、例えばアメリカなどについては、必ずしもそれほどに効果が出ているとは見られないわけでございます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 現在、マスコミ等で見ておりますと、日本は何か大変資金のある国なので、これから湾岸戦争後もいろいろな復旧の問題やその他に大いにひとつ資金を出してもらいたい、こういうことが外国から求められておるように実は承知をいたしております。  しかし、今国際金融局長もお話しになりましたように、今度の経常収支が三百億ドル台ということになると、結果的には一体その基礎収支がどうなるのか、これはかなり前に比べて低くなってきて、そんなに日本は金があり余っている国で、どこかから要請があれば、はい、よろしいというようなことのできるような情勢にはない、こう思っているのですが、その点についてちょっと……。
  15. 千野忠男

    千野政府委員 そこは御指摘のとおりでございます。
  16. 堀昌雄

    堀委員 しかし、御承知のように、今法案で出ております欧州復興開発銀行というのは、目的として、民主化自由化を行っておる東欧諸国市場経済への移行を支援するということのようであります。私は後でこれに触れるのでありますけれども、この欧州復興開発銀行日本協定署名国として参加をいたしました中で、初めてこういう協定の中でこういうものが決められたということを私は大変喜んでおるわけであります。資本金百億ECU欧州通貨単位)、約百二十億ドルで、五年間に分割して払い込み、払い込み資本、請求払い資本三対七、払い込み額確定通貨ECU、ドル及び円、払い込み資本のうち五〇%は国債によることが可能だ、こういうことが初めて、実はこういう国際的な銀行のルールの中に出てきたわけであります。財務官中心として大蔵省皆さんの大変な努力の成果であったと思いまして、日本国際金融の歴史の上に非常に大きなエポックメーキングなことであった、こう評価をしておるわけであります。  しかし同時に、私はずっと長くこの問題にかかわってきておりまして、依然としてこれからの資金需要が相当に出てくることもこれは避けられません。特に、この今の欧州復興開発銀行の問題だけではありませんけれども湾岸関係問題等を含めてかなりな資金需要が生じてくるだろう、こう考えておるわけでございます。  そこで、一体今後に予想される資金需要というものはどの程度にこれから出てくるのかということについて、ちょっとお答えをいただいておきたいと思います。
  17. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員、大変大事なポイントを御指摘をいただいたと私は思います。そして、私どもがまさに懸念をいたしております部分もその点であります。  と申しますのは、もともと日本が果たすべき役割として私自身感じますのは、何といいましてもアジアにある日本として、アジアというものを中心考えるべきであると思っております。ところが、ちょうど一昨年、御承知のように東欧諸国におきまして計画経済から市場経済への移行が始まり、東欧に対する資金援助というものが非常に大きくクローズアップされるようになりました。そして、日本としても、今回御審議をいただきます欧州復興開発銀行に積極的に参加し、この振興を助けていこうという決断をしたわけでありますが、そのほかに、御承知のように累積債務国の問題もありますし、また石油を産出しておらない中低所得国の問題、こういうとらえ方もあったと存じます。  さらに、昨年のヒューストンサミットになりますと、この東欧変化の延長線上の問題として、ソ連経済改革に伴うソ連への資金協力というものが非常に大きな論議の対象となってまいりました。そして、少なくとも、四つの国際金融機関ソ連経済分析の結果を受けてこれについて考えようという合意は成立しておったわけであります。ところが、もう昨年のヒューストンサミット段階におきまして、ドイツからは、東独を抱え、さらにソ連軍の撤退に伴う経費負担という形でソ連経済に対するてこ入れを現在、当時の西ドイツとして行っているが、到底自国一国で支えられる状況ではない。悲鳴が上がっておりました。  そして、その上にこの湾岸危機というものが到来したわけでありまして、この中東復興に必要な経費だけでも実は数百億ドルから数千億ドルという、非常に見方の幅が分かれております。そして、現時点におきまして資金所要額がどの程度になるか、だれも自信を持ってこれに答えを出すことができておりません。  そういう状況の中で、日本自身が、今委員から御指摘を受けておりますように、まさに構造改革に取り組んでまいりました結果、経常収支黒字幅というものも縮小してきております。そして、一方では日本政府そのものが百六十八兆に上る国債残高を抱えておりまして、そう甘い話ばかりができる状況にないという御指摘はそのとおりでありますが、特に今回の中東情勢変化の中で、日本国内からも非常に安易に資金協力という言葉が使われる情勢の中で、各国から過大な期待を招いておるという状況については、私どもは極めて不本意な感じを持ちながら対応をいたしております。  しかし、国際社会の中において、当然のことながら日本はその役割は相応に果たしていかなければならないわけでありまして、むしろ今後外交政策と我々の資金の提供の内容というものをどう整合性を持たせていくか、政府自身としても真剣に考えなければならない局面に参っております。こうした点から、私は今の委員の御指摘を極めて敬意を持って拝聴させていただいております。     〔委員長退席村井委員長代理着席
  18. 堀昌雄

    堀委員 今大蔵大臣からお話がございましたように、私の認識大蔵大臣認識は、少なくとも、日本国際収支問題及びそれを取り巻く客観的な各国状態については大変憂慮すべき段階にある、こういうふうに感じておるわけであります。  この中で、実は私、一つ非常に問題があると思っておりますのは、やはりアメリカの問題が非常に重要な問題ではないか、こう私は考えているわけであります。  そこで、私の方で試算をしたものをちょっと申し上げますと、世界貯蓄投資財政赤字というものを一九八九年で見てみますと、米国民間貯蓄は八千三百五十億ドル、日本は九千八百九十億ドル、西ドイツ、このときまだ西ドイツでございますが、三千百九十億ドル、こうなっておりまして、その中で、民間投資は、米国が七千九百六十億ドル、日本九千百七十億ドル、西ドイツ二千五百五十億ドル。中央政府赤字が、米国は千五百億ドル、日本が百五十億ドル、西ドイツ百十億ドル。経常収支は、米国はマイナスで千百十億ドル、日本プラス五百七十億ドル、西ドイツ五百三十億ドル、こんなふうな形でございます。     〔村井委員長代理退席委員長着席〕  確かに、今度湾岸戦争で、アメリカがイニシアチブをとってイラクの不当なクウェート侵攻に対して適切な処置をとったことについては、私はやはり世界の人間の一人として大変すばらしかった、こういうふうに高く評価をしているのでありますけれども、今後の問題については、要するにアメリカもみずから自分たちの国の財政なり経済なりを真剣に自分たちの力で立て直すという意欲を持ってもらわなければ、なるに任せて、要するにファイナンスはよその国に助けてもらうなどということは、これだけの軍事的、政治的に大きな影響力を持っておる国としては、どうも私は適当でないのではないか、こういう感じがいたしてなりません。  そうして、さっきから申し上げているように、これからの問題として東欧ソ連の問題がありますし、湾岸の問題も出てきます。ただ、それだけではなくて、やはりラテンアメリカの問題、さらにはアフリカの問題、私たちにとりましてはアジアの問題というものが、今ほかの問題が大きくなったために実はその下に隠れておりますけれども、これはまたなかなかゆるがせにできない、非常に大きな問題がここにあるわけでございます。  ですから、そういうふうに考えてきたときに、私どもは一体どういう形でこれに対応すべきか。  私は率直に言いますけれども日本外交なりいろいろな点で、非常に不満に思っておりますのは、どうも日本という国には主体的な外交がないのではないか。要するに常に受け身で、何かが来たらそれにこたえる。これではまさに政治小国ということでして、今後の日本の将来について、率直に言って私は実は非常に心配をしているわけであります。  さっきもちょっとここで大蔵大臣と立ち話をしておりました中で、私は皆さんのおかげで衆議院議員在職三十一年でございますけれども、若いころには、外国へ行きましたときに、遠慮なくそこの大使に、大使、今日本経済の中で最も重要なものは何でしょうか、御存じですか、こう聞きますと、実は答えられない人の方が多いのです。私は、今そんなこと言えませんけれども、若いころですから、あなた、日本国を代表してこの国に来ていて、日本経済上の問題、プラスの問題あるいはマイナスの問題、国際的な問題、そういうことを私どもにこの場所でちゃんと説明できなくて、あなた、何を代表して大使として来ているんですか、率直にこう申したことがあるわけであります。大使の方は、いや、まあこちらのことにかまけてましてと言うから、冗談じゃない、日本のことを知らないであなた方何をやっているんですかというようなことをやっておりました。  また、国際関係の問題で、外務省の方に来ていただいて私がいろいろと質問をいたします。そうしますと、資金の問題でありますけれども、少なくとも大蔵委員会で私が質問してぱっと答弁の出てこないなんということは原則として大蔵省皆さんの場合にはないのでありますけれども、外務省からは、もたもたしてなかなか答弁が出てこないです。そうすると、当時の国際金融局長が手を挙げまして、ちょっと時間がかかるようでございますから私の方で答弁さしてください。私は、外務省の所管のことだから外務省を呼んで質問をしておるのに、所管外の大蔵省の方から、ちょっと時間がかかるようですからかわって答弁さしていただきますなどということが実はかつてあったわけであります。  私は、どうしてこういうことが起こるのだろうか。特に今、世界の中の日本というものが相対的に大きくなっておるにもかかわらず、これまでの国際的な対応というものが常に追従型になって、イニシアチブをとってこうやろうという話はなかなか実は出てこないというのを非常に残念に思っているわけでありますが、どうも私は、この問題の根底にあるものはこうだと思っているのです。外務省の皆さんは、外交官試験という別枠の試験を通じて外務省の役人になるわけです。その他の各省は、上級職公務員試験というので各省入る方は全部同じベースの試験で一緒にやって入ってくるのですね。要するに外務省だけが別の世界にあって、特別な外交官試験というものにある中で、どうも私は今の問題が派生しておるのではないだろうか。ですから、そういう意味ではその外務省のシステムをやはり一般上級職試験から採るということに改めない限り、そうしてその人たちがまたそういう切磋琢磨をしてもらって今後の日本をリードするような、そういうひとつ外交を確立できるようにしてもらわなければ、国内で営々と幾ら皆さん一生懸命やっていても、日本の国際的な位置というものは一向にどうも上がらないのではないか。  その一番のもとは、たびたび言いますからきょうは多く触れませんが、日本に戦略がないということだと思うのであります。要するに間近な問題だけについてやっていますけれども、少なくとも十年二十年の戦略を持たなければ、私は、日本世界の有数の国家として今後生き残るわけにいかないんじゃないか、こう思うのでありますが、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  19. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは私の立場で全部賛成と申し上げるわけにはまいりませんけれども、私は、今御指摘をいただきました中で、私ども財政当局として考えるべき点も多々あるように思います。  そして、この機会に簡潔に私どもなりの考え方をお聞きをいただきたいと思うのでありますが、ことし一月早々、私は天安門事件以降現職閣僚として初めて北京に参りました。いろいろな御意見もございましたけれども、私は、これ以上国際社会において中国を孤立化させたままにしておくことは絶対に世界にとって得策ではないと信じておりますし、この行動自体を私は悔いておりません。ところが問題は、一体我々が地域としてのノーハウを持っている、世界地図を眺めたときにそれはどこだろう、そうなりましたときに、やはり我々はアジアというものに自分たちの基盤を置かなければならないと思っております。そして、例えばアフリカ開発基金のように、日本は最大の出資国でありますけれども、やはりアフリカという地域に対して、地理的にもまた歴史的にもかかわりが薄い地域は、こうした国際金融機関を盛り立てることによってそれぞれの地域に我々は協力をしていくべきであると思います。欧州復興開発銀行に対し積極的に我々が参加を決定いたしましたのも、東欧改革というものを進めていく上において、二国間において全力投球ができるだけの我々はやはり歴史的、地理的つながりを持っていない。なれば、やはり欧州復興開発銀行というものを盛り立てることによって我々はこの地域に対する貢献を果たすべきであろう。同じように、米州開銀を中心にし、やはり中南米については私はアメリカのイニシアというものを尊重していくことが日本の立場であろうと思います。  そうした考え方のもとに我々なりに整理をいたして財政の立場からは対応しておるつもりでありますが、今回の湾岸危機というものを契機に、中東というものに対する位置づけが我々の世界でも抜けておった、今さまざまな御提案が各党からもなされておりますし、国際的にも出ておりますが、こうした視点を持ってこれらの問題にも取り組んでいかなければならない、そのように考えております。
  20. 堀昌雄

    堀委員 私も後で触れるのでありますけれども、やはりアジア重視という認識は、これは私ども、要するにアジアの国として当然のことだ、こう考えておるわけであります。  そこで、ちょっと今後の見通しについて、要するに世界資金の流れというのは今後どうなるんだろうか。私は時間の節約をするために私の方でちょっと申し上げますけれども、私どもの試算でありますが、国際的な資金貸借表ということで、対外純資産、純債務残高というものを、一九八九年末とこれから六年先の一九九五年末をまずちょっと計算をしてみたい、こう思ってやってみたわけでございます。一九八九年末の貸し手の方は、日本が三千五百億ドルの貸し手になって、中東産油国が三千億ドル、西ドイツが二千六百億ドルというのがこのときのものでございます。この三千五百億ドルというのは対外純資産でありますし、中東産油国はクウェートが千二百億、サウジ八百億、あと一千億が個人とその他の湾岸諸国ということで三千億、そして西ドイツが二千六百億。そのときの借り手というのは、アメリカが六千五百億ドル、ラテンアメリカが三千億ドル、ソ連東欧が千億ドル。こういうふうに一応置いてみまして、これが一九九五年末には一体どうなるんだろうか。これは試算のベースがちょっと私どもなりの試算のベースでありますけれども、要するに成長率、全体として〇・五%くらいのものを二・五%くらいに高めないとどうもこういう一九九五年末の姿が出ないのでありますが、それにしても一九九五年末には日本は六千億ドルの貸し手になり、中東産油国が五千億ドル、ドイツが三千億ドル、こういうふうになるのであります。さっきから私が申しておりますように、借り手の方は、一九九五年末にアメリカが一兆一千億ドルを借り手として借りる、ラテンアメリカソ連東欧であとの五千億ドル、こういう姿が、一つの試算でありますけれども出てまいるわけであります。  ですから、私たちは今後考えます場合に、アメリカが少しきちんとしてくれなければ、それだけ要するに湾岸にしろ日本やドイツにしろ努力をしても、言ってみればざるに水を流し込むようなもので、私は、世界経済にとってこれは大変問題が大きい、こう考えているわけでありまして、こういうような点を、確かに政治的にはいろいろアメリカから非難を受けておるのでありましょうけれども経済的にはあなた方はもっとちゃんとしてくださいよ、こういうふうになる予想もあるんだから、それにならないようにやってくれというくらいのことをきちんとアメリカに言うべきではないのかという感じがしてなりません。大臣、いかがでございましょうか。
  21. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 その御指摘、私ども、そのとおりだと思います。そうして、まさに日米構造問題協議のときに我々がアメリカ側に対して執拗に迫ったのは、アメリカの双子の赤字と言われるものに対してきちんとした対応をとってくれということ、同時に貯蓄率を高める努力をしてくれということでありました。私どもが予測いたしましたよりも時期がおくれましたけれども、昨年のたしか十一月でありますか、今後五年間に千四百六十六億ドルの増税というものが決定をいたしまして、既に動き始めております。これだけでアメリカ財政赤字が全部解消するわけではありませんけれども、少なくとも我々の指摘にこたえた努力アメリカ側が開始してくれておりますことは評価はいたしますが、なお一層の努力を我々はこれからも求め続けなければならない、そのように考えております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この欧州開発銀行に円で出資できるようになった。こういう問題を通じて、現在の日本の通貨に対する対応でありますけれども現状で一体円がどういう形で使われていて、ドルがどういう形になっているかということを、ちょっと事務方の方で答弁してください。
  23. 千野忠男

    千野政府委員 円の国際化の問題でございますが、端的に数字を御説明申し上げます。  まず、経常取引面でどのように使われているかということでございますが、まず輸出でございます。我が国の貿易の円建て比率の推移を見ますと、輸出における円建て比率は、長い目で見まして徐々に向上はしてきております。例えば一九七〇年にはわずか〇・九%でございましたが、それが八〇年には二九・四%になり、八五年には三九・三%まで上がった。ところが、その後は大勢観察としては横ばいでございます。九〇年は三七・五%ということで横ばいになっております。それから輸入でございますが、これはやはり長期的には少しずつ円建て比率は上昇しておりますけれども、非常に緩やかでございまして、七〇年が〇・三%、八〇年が二・四%、八五年が七・三%、九〇年で一四・五%ということで、非常に緩やかな上昇でございます。  次に、資本取引面における円の使われ方でございますが、例えばユーロ債が発行されるわけでございますが、そのユーロ債の通貨別の発行状況のデータによりますと、そういうユーロ債の発行総額の中で円建て債がどれぐらい占めているかということでございますが、これは一九八五年が五%、八六年が一〇%、八七年が一六%ということで、その辺まではかなり伸びてきておりますが、その後は上がったり下がったりでございまして、一九九〇年は一三%ということになっております。この辺は、一言だけ申し上げますと、八五年ごろからのユーロ円債の自由化といったようなものが効果を持って徐々に上がってきたわけでございますが、最近はもう横ばいといいますか、上がったり下がったりという状況になっておるわけでございます。  次に、公的準備面で、各国の通貨当局が外貨を持つわけでございますが、その中で日本円というものはどれくらい持たれているかということでございますが、七五年に二・七%、八〇年が四・四%、八五年が八・〇%とだんだん上がってきまして、八九年で七・九%ということで、上昇をしてきてはおりますが、八五年以降は横ばいということでございます。  一応そういう形になっております。
  24. 堀昌雄

    堀委員 お聞きになったようなことで、かつてに比べると確かにふえてまいりました。しかし、どうもなかなか、一回上がったのですけれども、そこからはいずれももたもたしている、こういう現状でございます。  私は、昭和五十六年二月の大蔵委員会で、何としても日本に短期金融市場をつくることなくして円の国際化というものは難しい、こう考えたものでありますから、今日も検討を続けてもらっているのでありますけれども国債資金特別会計という新しい国債発行をやったらどうかという仕組みを提案いたしました。これはもう何回か当委員会でも言っておりますし、本会議でも言っておるのでありますけれども、要するに今の日本国債発行とかその他の問題というのは、戦後の、国債乱発に基づくところの高度のインフレーションのときにできた財政法、この財政法をベースにして物が行われているわけであります。あの財政法は、お読みになればわかると思いますけれども、今日のような国債発行などを、あの財政法を書いた人が、この法律のままでこんなことができるなんていうのは一体行政当局は何をしているのだ、あの財政法をつくった人はこう感じているのじゃないかと思うぐらいに、さっきもお触れになりましたが百六十九兆でしたか……(橋本国務大臣「百六十八兆」と呼ぶ)百六十八兆。しかし、あそこでは建設国債は認めておりますけれども赤字国債などということは頭の中の隅にもなかった財政法なのですね。そういう財政法で要するに国債をマネージするというのは問題があるというのが私の認識でありまして、国債資金特別会計という特別会計に国債に関するファイナンスは全部任せる、そこで自由に発行して、金利の安いときにどんと借り入れて、金利の高いときには短期で調整しながら、これは国民の金なんですから、できるだけ合理的に金利負担を減らすようにする。それは根っこが大きいのですから、それを上手に金利負担を減らしていけば、今の予算を圧迫している大きな国債費が、確かに大きくはなっていますけれども程度の点では圧縮ができたと私は思うのであります。五十六年に提案して約十年たつのですけれども、この問題は話がついていない。  もう一つは、そのときに借りかえをどうするかという問題が目の前に来ておりましたから、五兆だ、六兆だというようなものをある日突然として借りかえるなんということがそのときの状態でできると思いませんでしたから、私は、アメリカのTBのような短期国債を発行して事前に資金を集めておいて、借りかえのときにそれですぱっと金で処理をして、またその他の国債は適当なところで処理すればいい、こういう提案を実はいたしておるわけであります。  この国債資金特別会計は、かつての山口光秀次官なんかもいろいろと本当に真剣に努力をしてくれたのでありますが、財政法をさわらないとできない、財政法をさわるのはちょっと大変だということで今日に延び延びになっているというのが現状であります。  それで、私はアメリカのTBのようにと言ったのは、ここで一つこれを発行することによって、これは短期金融市場の種にしよう、こういう考えでそれをやりました。その次に、五十六年の五月でありましたか、銀行改正を行いました。この銀行改正のときに、CPを発行できるような法律的な整備を進めるべきだという附帯決議を実はつけました。要するに片方に短期国債、TB、片方にCP、もうCDは既にありましたから、そういうものを有効に利用することによって短期金融市場を大きくしたい、こう考えたわけであります。しかし、短期金融市場のこの短期国債というものの発行量はなかなかふえなかったのでありますが、今名古屋に行っておる榊原さんが国債課長をやっておりますときに、私がしりをたたいて、こんなちょっとじゃだめだ、しっかりふやせ、こう言ってやりましたら、彼が私のあれに大変こたえてくれまして、今日七兆幾らでありますか、大変大きくなってきたのであります。  しかし、これから後まだいろいろ問題が実はあるのでありますけれども、短期国債やその他をやっていただいても、今の短期金融市場における問題がまだなかなか解決しない。大分前になりますけれども、バンクアクセプタンスという制度をつくりました。これも円が国際化をしてくる過程で役に立つと思って、大蔵省考えられてできたのでありますけれども、このバンクアクセプタンス、つくってしばらくはちょっとよかったのですが、今日一体どうなっているのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  25. 千野忠男

    千野政府委員 これは、御指摘のとおり残念ながら余り振るいませんで、たしか現在の残高は十億円程度と聞いております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 私は、そういう意味では、一つは金融面で円が国際化をするということが非常に重要なファクターである、こう思っております。一つは貿易面でやはり円建てで処理がされる、要するに円の商品市場ができるというようなことが今後の解決の方向ではないか、こう考えているわけでございます。  これについて日銀の方で何かお答えいただけるあれがありますか。(三重野参考人「バンクアクセプタンスのことでございますか。——今大蔵省からお答えしたとおりです」と呼ぶ)結構です。  そこで、きょうは通産省は局長が参議院に行っているようでありますから、貿易局の総務課長に来てもらっておるのでありますけれども、円建ての日本の貿易の具体的な地域別その他の現状についてちょっと報告をいただきたいと思います。
  27. 中野正孝

    ○中野説明員 御説明いたします。  円建てにつきましては、近年特に東南アジア中心にしましてかなり上昇の傾向がございまして、数字で申し上げますと、昭和六十二年全体の円建ては、千野局長からお答えになったとおりでございますが、件数で見ますと特に上がっておりまして、昭和六十二年が三六・三%、それから昨年、平成二年四七・六%ということで、特に東南アジア中心にして上昇しておる現状でございます。  以上でよろしゅうございましょうか。
  28. 堀昌雄

    堀委員 東南アジアだけを言われたのでありますけれども、これはアメリカとかECとか、それもちょっとつけ加えて言ってもらわないと、アジアだけやっていればいい話じゃないので、これはグローバルにやらなければならない問題ですから。アメリカとECとあとつけ加えて……。
  29. 中野正孝

    ○中野説明員 わかりました。  日本の輸出で申し上げますと、これは件数ベースでございますが、平成二年全地域向け件数ベースでございますと、円建ては四一%でございます。地域別に主なところを申し上げますと、アメリカが一八%、それからEC五一・六%、LDC全体で四七%、東南アジアが四七・六%、共産圏が四〇%というのが現状でございます。
  30. 堀昌雄

    堀委員 数量で見るとそうだということなんですが、どうもこれは金額で見ないと、どういうふうな形になっているか、ちょっと認識が難しいのでありますけれども、やはり両面で、これはひとつ日本経済的な戦略として円の国際化というものを、大蔵省としては国際金融面でありますけれども、貿易の方は通産省所管でありますが、各省にわたってのそういう戦略が必要ではないかと思うのでありますけれども大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  31. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 なかなか具体的にその設計は難しいという感じが直観的にいたしますが、いずれにいたしましても、そうした戦略的な思考を持つことは私も必要なことであろうと思います。
  32. 堀昌雄

    堀委員 きょうは時間の制約がありますので関係の方しかお越しいただかなかったのですが、もし将来この国会でも時間がとれましたら、経団連とか日経連とか経済界の幹部の方に御出席をいただいて、これは金融の面もそうでありますし、貿易の面もそうでありますけれども日本がこれからとるべきそういう経済的な戦略について実は少し私は皆さんと意見を交換をしたい、こう思っているのであります。  というのは、政府主導だけでできるものはごく限られている部分でありまして、要するに経済の問題というのは実際にそれを担っておる金融界の皆さん、あるいは商社とかその他、あるいは製造業の皆さん、この人たちがその気になって、輸出をするときにも円建てでいきましょう、輸入をするときにもできるだけ円建てでやりましょう、こうやっていただけば、この間起きたような問題はなくなってくるのではないか。  この間起こった問題というのは、九十億ドルの支援を日本は実はお約束をいたしました。そうして補正予算を組んで、いつこれは処理されたのですか。最初に、いつ処理されたかだけちょっと伺いたい。アメリカに払ったとき。
  33. 千野忠男

    千野政府委員 一兆一千七百億円をGCCに対しまして十三日に円価で払い込んでおります。
  34. 堀昌雄

    堀委員 それは円価で払ったとすると、ドルで換算して、そのときのドルのベースでは幾らになっているのでしょうか。百三十円のときの九十億ドルの換算だと思うのですね。一体どうなっているか。九十億ドルという約束をしていて、しかし実際にドルでいったら減価しているということになっているのじゃないでしょうかね。
  35. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実際これは外務省がやっておりますので、私どもちょっと正確に幾らで換算し、お渡しをすることになるのか、手元に資料を持っておりません。  ただ、委員に申し上げたいと思いますのは、日本の場合にこの湾岸に対する多国籍軍の資金協力と申しますもの、これは以前に二回、十億ドルずつ行っております。この時点も実は円建てで行っておりまして、このときには、多少円高に振れておりました分だけ本来なら余剰が生じたかもしれません。しかし、それも実は問題にならなかったわけでありまして、我々としては今回も円建てで支払うことに別に問題があると思っておらないわけであります。
  36. 堀昌雄

    堀委員 私は、九十億ドルということばかりが表へ出ていて、それで一兆一千幾らと、こういう話になっていたものですから、恐らくドルで払ったのかと思っていたのですが、円で払ったのなら問題ございませんので、それは大変結構なんです。何にしても、要するに円で処理をしていれば、我々が約束したことは約束どおりできるのですけれども、他国の変動する通貨で物を約束するというのは大変適切でない、こう思っているわけでありまして、そういう意味でひとつ考えていただきたいと思います。  ここで私がTBの話を聞きましたのは、ちょうど一九八四年にアメリカに参っておりまして、ボストンにおりますときに当時の平沢先任次長から電話がございまして、今、特別会計、一生懸命やってきたけれども、どうにもできませんので短期国債法律だけ処理をしたい、どうでしょうかとおっしゃるので、それは結構です、ぜひやってくださいとお願いをいたしました。  そうして昭和六十年、このときに私は予算委員会で、当時社会党の副委員長でございましたけれども、税の公正化を担保したいという私の長年の考え方を実行するためにはどうしてもEC型の付加価値税を導入する以外にない。当時のことでありますけれども、所得税の納税者の九二%がサラリーマンです。源泉徴収なんです。残りの八%は営庶業、農業の皆さんが納めている。この営庶業、農業の皆さんがどのぐらい納めているかということを国税庁の十四年間の統計によって計算をしてみますと、平均的に約七四%しか納めていない。二六%は脱漏になっておるということが大量統計の中でわかったわけであります。そうすると、憲法三十条は、国民は納税の義務を負うとはっきり書いているのでありますし、税ぐらい公正が担保されるべきことが、納税のシステムによって片方は一〇〇%、九二%のサラリーマンは税金を取られているが、片方は、十三年間でしたか、この大量統計で見ても二六%ぐらいが漏れているということは何としても正したい。それを正すためには、これは付加価値税で、税金を取るのが目的じゃなかったのですから、インボイスのついた付加価値税というシステムによって物の流れを全部国税庁の中にインプットしておけば、たとえ営庶業、農業の皆さんといえども、幾らで幾ら出荷したということ、あるいは買って売ったとか、すべてがちゃんと資料になるわけでありますので、それをベースにして税の公正化を図りたいということでその提案をいたしました。  これをやるために、実は私はずっと大蔵委員でいたのですけれども、そのときは正規の予算委員になってこれをやるということで、予算委員をやっておりました。  その間に短期国債法律大蔵委員会処理されたわけであります。処理された結果を見たら、何とこれに源泉徴収がついておるということで、私は非常にびっくりいたしました。私が提案の、アメリカのTBのような短期国債をやってくれというのは、渡辺大蔵大臣の昭和五十六年二月の大蔵委員会における提案でありますから、アメリカのTBのように。アメリカのTBには源泉徴収はついていないのであります。ドイツもTBには源泉徴収はついていない。日本だけ源泉徴収がついている。そこで、後でマルフォード氏に会いましたときに、それはその次の年だったかもしれませんが、彼が、堀さん、どうしてTBに源泉徴収がついているのですかと言いますから、いや、私はアメリカのTBのようにやってくれと言ったからそういうものはついていないと思っていた、しかし実はそのときは所管の委員会にいなかったので後で見たらそういうふうになっていた、大変残念だ、何とかこれは国際金融上の問題だからアメリカ西ドイツと同じような非課税にしたいという話をして帰ってきました。そうして、当時次官の山口さんに、山口さん、私の提案はこうなっていたのだから何とか考えてくれと言いましたら、いや堀さん、なかなかこの税の問題は難しくてと、こういう話なのです。税の問題が難しいのはもちろん私もよくわかっていますけれども、そう簡単にいかないということでございまして、今日までそのままになっている、こういうことなのであります。  要するに、税金がついていなければ今の短期国債はオーバーナイトででも処理ができる商品なのです。そういう本来的な商品の特性を阻んだ今の源泉徴収をつけている限り、国際金融面における今の短期金融市場としての役割は果たせないというのが現在の状態なんです。  ですから、まず事務方のあれを聞いてから大臣に御答弁いただきたいのですけれども、要するに円という通貨を国際的な通貨にするためにどうしてわずかな、今の源泉徴収をやらなければならないのか。これがもう既にこの問題が起きてから五年ぐらいたっております。私が問題にするようになってから五年ぐらいたっている。ひとつ主税局長の方で答弁してください。
  37. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 主税局長から御答弁申し上げます前に、一言だけ先生指摘のTBの市場がどのような形で拡充されてきておるかということについて簡単に触れさせていただきたいと思うのであります。  まさに先生の御指摘を踏まえまして、我が国の短期金融市場の整備あるいはその中での短期国債、TB市場の整備育成ということが進んだわけでございます。五つございまして、一つは発行量の大幅な増大ということでございます。五年間に、五年前は一兆円弱でスタートいたしましたが、現在は七、八兆の残高まできておるわけでございます。それから二点目に、発行頻度を増加させまして、最近では毎月二回、このTBというものを発行するということをしております。それから三番目に、発行の種類をもともと六カ月物でやっておりましたが、それに三カ月物を加えるというようなことをいたしました。さらに、取引単位を当初一億円ということでスタートいたしましたが、これを一千万円というところまで下げております。それから五点目に、源泉徴収問題に若干関係するのでございますが、外国の中央銀行、これは先生がかねて御指摘になったことでございますけれども、いわゆる主権免税機関ということでございますので、ここに対する源泉徴収につきましては、本来でございますと償還時に還付をしてあげるということになると思うのでございますが、これを取得時に源泉税相当額を還付する。これは六十二年の八月からやっております。こういうような、今五点申し上げましたが、このTB市場の拡充育成努力ということで全力を尽くしてきたわけでございます。  その中で、先生はまさに円の国際化という視点からのTB問題というものをお取り上げになっておられるわけでございますが、そこでTBの源泉徴収問題をお取り上げになっておるわけでございますが、この点につきましては、まさに我が国の税制度のもとでの適正な課税の確保と、それからTBの円滑な流通を図ることによるTB市場の育成という両面の要請の調和をどこでとるかということで、私どもTBを発行しております当局の方といたしまして、かなりその点、先生の御指摘も受けましていろいろ勉強もさせていただき、苦慮もしておるところでございますが、なかなか難しい点があるわけでございます。主税局長の方からその検討の状況等については別途申し上げると思います。
  38. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 かねがねの御主張でございます。よく私ども内容承知しておりますが、いわゆる短期国債政府短期証券につきましては、ほかの債券との課税のバランスということから、償還差益に対し現在発行時に源泉徴収を行っているわけでございます。債券の利子でございますとか償還差益でございますとか、これは所得の発生の都度税負担を求めるというのが我が国考え方でございまして、適正課税を確保する観点から一般的に源泉徴収の対象とするということをいたしております。  それから、金融商品相互間の課税バランス、これもまた大変重要なことでございますので、それらのことを考えますと、流通形態等によりまして課税の方式が左右されるということは好ましくないと考えるのが税制上の現在の原則となっているわけでございます。  その中におきまして、御指摘の短期国債につきましては、何分にも短期金融商品であるということから十分の流通性が要請される。そこで、発行時から償還までブックエントリーシステムにおきまして取引されているものにつきましては、償還差益に対します法人税の課税の際に、その法人がどのぐらいの期間その短期証券を持っていたかというその保有期間にかかわりませんで、源泉徴収されました所得税を全額法人税から控除するというシステムをとっておりまして、流通上の支障を生じないよう最大限の配慮を行っているところでございます。  しかしながら、このブックエントリーシステムの外で、短国でございますとか政府短期証券の取得、流通が行われる、あるいは法人ではなくて個人による取得が外で行われるということは法律上禁止されているものではございませんものですから、そのような事態が生ずることも考えられるわけでございます。したがいまして、転々流通する債券という性格からいきまして、源泉徴収を行っておきませんと、やはり適正な課税上問題が生ずるのではないかと私ども考えております。  そこで、一つの考え方といたしまして、法律上明確に国内の他の金融取引に対する影響を遮断してしまって、そしてその課税のバランスという問題をクリアできるのではないか、遮断してしまえばそういう道が開けてくるのではないかというように考えまして、その可能性につきまして所管部局に内々検討をお願いしてみたりしているところでございますが、しかしながら、残念なことでございますが、現在までのところ、適当な解決策を見出すことができませんで、議論がちょっと行き詰まっている状況にございます。しかしながら、なお勉強し、努力してまいりたいと存じております。  それから、先ほど委員お触れになりましたアメリカ側の感じでございますが、承りますところによりますと、アメリカ側の意見というのはあくまで個人取引を含めるということであるというように承っておりまして、そうでありますと、仮に法律上ブックエントリーの世界を他の取引から遮断できたといたしましても、アメリカ側の批判には応じられないということになってしまいます。問題が解決しないということになりますので、その点、また本件をいま一つ難しくしているというのがその現況でございます。なお努力してまいりたいと存じます。
  39. 堀昌雄

    堀委員 経済企画庁、もう時間がありませんから、退席してもらって結構です。  実は私、マルフォードと話をしましたときに、マルフォードがこういうことを言うのですね。堀さん、もしアメリカならば、私の息子が、ちょっとおやじさん一万ドル貸せ、こう言って、それで今のTBをオーバーナイトでやって、そして小遣いくらい稼げるのですよと。だから何とか源泉徴収というのをやめてくれと言いました。私は彼にこう言ったのですね。私でも、私の息子が今短期国債処理をしようというのならやれます。私は、小さいですけれども株式会社昌平という法人の代表取締役をしておりまして、息子もスタッフでございます。ですから、要するに、法人の金で処理をして、収益があったらそれをボーナスかなんかで渡すということも可能なんで、あなた方は個人ばかり考えているけれども日本には法人が百万以上あるのだ、あなた、知っていますか、こう聞きましたら、いや、そんなことは全然考えたこともない、こう言っているわけであります。  だから、今の個人、法人の問題というのは、要するに法人とはごく限られたものだ、日本のように百万以上も、中でもちょっとひどいと思うのですけれども、その中の赤字法人というものがほとんどだというような話は、これはちょっと余談でありますけれども、実情を彼らが知らないものだからそういう話なんで、マルフォードとはそれはきっちりやって、そこはわかったとマルフォードが私に言っていますから、個人でという話にはなってないと思うのです。  それからもう一つ、私は今の問題の中で初めから言っていることですけれども、これは日本銀行にブックエントリーされているわけですね。ブックエントリーされていて、そして私が聞いている限りでは、個人にいくことについては理財局も非常に慎重なので、証券会社に対して、証券会社がやっている短期国債の取引を個人でやらせるようなことがあったら、国債取引はその証券会社ではやりませんよという一札をとっていますという話を大分前に一回聞いたことがあるのです。だから、要するに、個人にいく話は遮断することはそんなに困難ではない、こう私は思っているわけであります。  そこで、橋本大蔵大臣伺いたいのでありますけれども、私はこの三十一年間主として大蔵委員会におりまして、私がいろいろな問題の提起をして、それが今日非常に役立っておる問題というのは数ございますが、それは、実は田中角栄さんが大蔵大臣の三年間、この間に私が田中角栄さんに物を提案します。非常に顕著だったのは、証券の免許制問題なんです。証券の免許制というのは、当時一任勘定が横行してどうにもならない。当時は理財局証券部と言ったのですけれども、その証券部に対して、ともかく一任勘定ができないように通達をつくれと言って、通達をつくってやってもらっても、なおなかなかそう簡単でなかった時期がございました。そこで私が、どうしてもこの登録制の証券会社ではそういう顧客に対して大きな損害を与えておるので免許制にしたいということで、既に証取審も免許制の答申を出しておりましたから、田中角栄さんにボールをぶつけました。そこで、田中角栄さんは私に対して、当時証券部長、加治木さんですが、隣に座っていて、大臣の方ばかり向いて、大臣、慎重にお願いします、慎重にお願いしますと言っているのですよ。堀さん、ごらんのように事務方はまだここへ来てまで反対しています。私がこの席へ出る前に、事務方は二年や三年で免許制をやるなんという答弁をしていただいたら、私どもとても六百もある証券会社を監督することはできませんから、それだけはひとつ大臣、こういうことを言っていました。今もやっています。しかし、私は政治家としてあなたの提案に賛成です。今内閣委員会に証券局設置法をお願いしておりますが.この証券局設置法を通していただきましたら、最初の仕事として証券の免許制に取り組みます。これが角さんの答弁です。これによって、現在の証取法は、私の考えました、要するに業務別免許という、世界の免許の中には類例のない証券取引法というものを、当時の松井局長や加治木さんと相談してつくったという経緯がございます。  もう一つあるのです。実は、生命保険では税で所得控除があるのですけれども、火災保険では実はそれはないのですね。  そこで私に、ひとつ火災保険だって税の控除ができないだろうかという話でしたから、私はそれをまた角さんとやりました。私は、どうして生命保険料は控除があるけれども火災保険料は控除がないんだと聞きましたら、主税局長が、世界の国に火災保険料控除というのはありません、こう言いましたから、私が、それでは主税局長、聞くけれども、木と紙でできている家に住んでいるところが日本以外にあるのか、こう言って聞きましたら、主税局長が、いや、それはありません。そうしたら、角さんが直ちに、堀委員提案を検討します。そうして三千円の所得控除ができたのです。  要するに私は、大臣というのはいかに政治的な問題に対してどういう判断をするかというのが大臣のあるべき姿だと思っているのですね。それを私は公式に竹下さんが大蔵大臣になった最初の一般質問でやりました。そうして、要するに私は、これまで長い間大蔵大臣とおつき合いをしてきたけれども、政治家としての大蔵大臣というのは田中角栄さんただ一人だった、あとは役人の書いたとおりにやっている、それでは要するに政治家の大臣が必要でないのではないか、竹下さん、あなたは田中さんの要するに門下生だし、きょう大蔵大臣になられたから、ひとつ田中さんのように政治家としての大蔵大臣になってくださいと。ああいう事件があって非常に残念だけれども、私は今日でも、要するに政治家としての大蔵大臣というのは田中角栄さん、これまで一人だと思うのです。どうかひとつ、政治家としての大蔵大臣を二人にしたいのですね。  ということで、今の源泉徴収の問題、ごくほんの小さなことですよ。片方に、円の国際的な金融化をやるという戦略は大きな問題なのですね。だからこれは、大蔵大臣の政治的決断によって、あなたが角さんと同じように、要するに国際金融的に日本の円を国際化するために、そういう部分ならばそれはひとつちゃんとしましょう、そうしていただくと二人目の政治家大蔵大臣が誕生する、こういうことでありますが、いかがでしょうか。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 なかなか二人目は生まれそうにないな、今伺いながら思いました。  ただ、冗談は抜きにしまして私は、委員の御主張というものを円の国際化という立場から考えたときには、そういう議論は十分に成立し得るものだ、こう思います。  問題は、税の世界の仕組みというものが、これはまた委員の方が私よりよく御承知ですけれども、税体系の論理づけというものがございます。これはちょうどそのはざまに入ってしまっている問題でありますから、当然事務方の諸君としても十分勉強していくと思いますけれども、この問題とは別に円の国際化というものについて今後ともに御協力をいただきますように心からお願いを申し上げます。
  41. 堀昌雄

    堀委員 私は前向きの答弁と受け取りましたので、しかとひとつ皆さん認識をいただいておきたいと思うのです。  これは要するに政府の問題じゃないのですよ。我々国会が決めることなので、本当なら、だめなら、国会で我々が源泉徴収のところはやめようという議員立法を与野党で出せば政府にかかわりなくできるのですよ。ところが残念ながら、この建物をごらんになればわかるように、私、印刷物で回しておりますけれども、帝国憲法のままの仕組みに実はなっているでしょう。我々が国権の最高機関なのですが、これは昭和四十六年ですか、分館ができるまでは我々こんないすに座ってなかったのですよ。あのいすに座っていた。枠のないのに座っていた。そうして大臣だけがああいういすに座っている。帝国憲法のときのままのやり方が行われているわけでしょう。それで、衆議院の職員が気を使って、幾ら何でもそれはひどいというのでこのそでのある狭い窮屈ないすができた、そういう歴史があるのです。衆議院の事務局の方がはるかに先進的で、この間からやっておりますあの円卓の委員会、あれはまさに議員同士で論議ができるような仕組みを既に事務局が考えているのに、国会はまだ依然としてこういう格好ですね。  私は、予算と条約は政府提案する権限があるのですから、これはこれでいいと思いますよ。しかし、その他は大体あなた、政府というのは参考人に呼ぶぐらいにして、与野党でディスカッションして、四十一条の、国会は国権の最高機関であって唯一の立法機関だ、この認識に立って国会を運営しないからいけない。  しかし、それをするためには金帰火来をやめなければならない、勉強できないから。金帰火来をやめようということになると、私は十三日の公選の特別委員会でやったけれども、これはやはり政党本位の選挙制度にして、小選挙区はだめですよ、ますますへばりつかなきゃいかぬようになるから、だから比例代表を中心とする西ドイツ方式をやれと。そうして、皆さんが金帰火来をやめてしっかりお互いに勉強して、与野党であそこの円卓で論議をして——私は、今の私が提案していることに与党の皆さん反対の方はないと思っているんですよ。そうでしょう。だから、要するにそういう国の将来をかけた問題を事務的な処理だけで終わるということは私にとっては大変残念なことだ、こう考えておるわけでありまして、そういう意味で、大臣も前向きでありますし、皆さんも前向きですから、ぜひひとつそういうことでこの問題の処理をいただきたいと思います。  もう時間もあとわずかになりましたから……(発言する者あり)スタッフは一人ふやすようにちゃんともう処理をいたしました。要するに、四月になって衆議院の議長のところに学識経験者から成るあれができて、その学識経験者によってあるべき秘書とはどういうものかというのを答申していただいたら、それが出たら、大蔵省はちゃんとそれについて予算を組んでおりますから、それができたらというふうに私は了解しておるんです。  そこで、もう時間がありませんが、要するにきょう私がいろいろ申し上げてきたことは、まず第一に、根本からいけば、選挙制度を変えてみんなで勉強して、そうして、政治家でなければ戦略は立てられないのですよ、グローバルに物を見て二十年、三十年先をやろうというのは。何回も言いますけれども、官僚の皆さんは課長のときに政策立案、これが二年間しかない、局長が二年ということでは、三十年先のことを考えるなんていったって担いで走ってくれる者はいませんからね。そういう意味で、戦略を立てるためには、そういう基本的な政治改革をやって、私たちが勉強できる条件をつくってしっかりみんなで勉強して、そうして憲法四十一条に言う国権の最高機関としての役割が果たせるようにしたい、こう考えておるわけであります。  いろいろと申し上げましたけれども、どうかひとつ、よろしく御協力をいただきたいと思います。
  42. 平沼赳夫

    平沼委員長 大木正吾君。
  43. 大木正吾

    ○大木委員 通告をしてなかったのでございますけれども、大臣に一言最初に伺ってよろしゅうございますか。  実は為替の変動の問題がここ四、五日ありまして、私もずっと新聞を見ながら、一月のG7がどうのとそんなことじゃありませんけれども、一番心配していますことはアメリカ経済の動向、これについて一体どっちの道を行くのか。割合に早く経済は回復する、こういう話がございます。ただ湾岸後の特需といいますか、復興特需関係のこともございますが、いろいろな観点から見ていますと、財政赤字あるいは貿易の赤字、同時にもっと厳しく申し上げれば、アメリカ経済のファンダメンタルズがさほど好転しているとは基調的には思えない。  そういった中で、軍事力で勝った勝ったということは、ムード的にはアメリカ経済は強いという感じを与えているのでございますけれども、為替のああいった乱高下状態を見ていますと必ずしもそうじゃないんじゃないか。恐らく半年から一年後にまた普通の状態に返ったときに、アメリカ経済が大分動揺しますと、やはり世界経済に与える影響も大きいわけでございますが、一般的に大臣はどういうお見通しを持っておられるか、これについてお聞かせいただきたい。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもの立場で為替の水準がどうあるべきかということを申し上げることは、必ずしも望ましいことではありません。しかし、一般的な考え方としてお聞きをいただきたいと存じます。  先般たまたま記者クラブの皆さんから為替の水準についてお尋ねがありましたときに、私は楽しくないという言い方をいたしました。そして、それは率直に申しまして、現在日本経済のファンダメンタルズを現行の為替の水準が的確に反映したものとは思わないということであります。  同時に、今確かに湾岸危機というものが終結をしつつある状況の中で、いわば戦勝ムードによるある種のムードが為替の世界に流れておりますことは事実でありますから、私は今委員が御指摘になりましたと同じような問題点をまさに心配をし続けております。これがその期待といいますか、勝った勝ったムードの中でついている水準が、改めてアメリカ経済のファンダメンタルズというものを落ちついて見直したとき、どすんと落ち込むような事態がありますと、これは本当に大きな影響を世界経済に与えます。そういう意味では、この状況を私は決して余り楽しいものと受けとめておりません。  同時に、私は就任以来、G7のたびに、日米欧の三極の通貨というものの中にある種の安定した仕組みがつくれないだろうかということを提起をいたしてまいりました。実は昨年九月のG7くらいまでは、こうした空気に乗ってくれる雰囲気がG7の中でも非常に希薄でありましたけれども、ことしの一月のG7になりまして、多少その雰囲気には変わりが出てきておるような感じがいたします。こういうムードがこのままじわじわとおさまってくれれば、それはそれなりに問題を生じないと思いますけれども、ある日改めて自分の足元を見直してという事態が来ないことだけは我々は願っております。
  45. 大木正吾

    ○大木委員 日本の持っている経済力あるいは貿易の力、金融の力、そういったものが非常に大事な役割を果たす時期が来るという感じもしておりまして、金利問題等についても触れたいとは思うのですけれども、堀先輩のおっしゃったことに私も大筋としては賛成しているのです。  問題は、最近の一つ個別の問題に入りますと、例えば東海銀行と三和信金の合併問題がございました。信用金庫協会等を見ていますと、城南信用金庫さんみたいに七兆も八兆も持っている大信用金庫があるかと思いますと、大半が二、三千億の中小信用金庫。しかも、三和さんの場合には都市に店舗を持っておられますが、地方に偏っています信金等は非常に苦しい状態にあると聞いておりまして、ある意味では大蔵省出入りのマスコミの方々にも、そんなことを余り書くなという話も出ているということを聞いております。こういった合併でもって大銀行が中小金融機関の赤字をしょい込んでいく、そういう姿だけでもって果たしてこの問題に対処し切れるかどうか、この辺についてまず日銀のお考え方を聞かしてくれますか。
  46. 小島邦夫

    小島参考人 小島でございます。  本来は大蔵省からお答えいただく方がよろしいんじゃないかと思いますが、今回の合併のケースにつきましては、実は私ども三和信用金庫というのは取引先ではございませんので、経営内容について詳しく承知しておるわけではございません。したがいまして、救済合併に当たるかどうかというような判断については、差し控えさせていただきたいと思っております。  今回の両金融機関の合併は、経営の合理化、効率化を進め、金融の自由化に対応した経営基盤の強化を図るとともに、地域金融の一層の充実に努めるということを目的として決定されたものであると聞いておりまして、一つの経営判断であると思います。  一般論として申し上げますと、今後金融機関の経営環境は厳しくなってくると予想されている状況のもとでございまして、そうした環境変化の中で合併は一つの対応策であると思っておりますが、これはあくまでも一つの選択肢でございまして、個々の金融機関が具体的にいかなる方法を選択するかは、経営上のさまざまな条件を十分に検討した上で金融機関自身が主体的に判断すべき問題であると思っております。  いずれにしましても、こういった厳しい環境に対応して経営基盤の強化を図っていくということがぜひとも必要でございますが、その場合の基本は、やはりリスク管理の徹底、自己資本の充実というようなことではないかと思っております。私どもといたしましては、そうした観点から、金融機関との日常的な接触や実地工作を通じまして適切な指導助言を図ってまいりたいと思っております。
  47. 大木正吾

    ○大木委員 銀行局長、いらっしゃいますか。
  48. 土田正顕

    ○土田政府委員 重複を避けつつ補足して御説明を申し上げるような形になりますが、やはりいろいろな経営環境の変化に対応する根本は、その金融機関自身の経営努力でございます。その経営努力によりまして対応策を進めていくということであろうかと思います。  今度の合併の話は、申すまでもなく、それは両当事者の自主的な判断によって発表されたものでございますけれども、私どものこれに対する位置づけは、従来から申し上げておりますように、この合併も一つの手段である、しかしながら、それのみが金融自由化に対処する手段であるということでは決してないということでございます。もともと信用金庫のような中小金融機関は、大銀行と違った地盤、違った人縁、地縁というものも持っておりまして、同一平面上での競争をしているということでは必ずしもないわけでございます。したがいまして、それぞれの個性を生かし、その独特の強みを生かせば、金融自由化の中でも立派に経営を続けていくことができるはずだと思っておるわけでございます。  万一経営が悪化した場合の対応については、まず第一に自助努力、それからそのほかに、同じ業態の中での相互援助とか合併とか、その他セーフティーネットのシステムもございますけれども、そのようなことを論ずるまでもなく、今度の場合には両者の自主的な話し合いによって合併の決断に至ったものと了解しております。  なお一言申し上げますが、私どもは、今回の合併がいわゆる救済合併であるとは理解しておらないわけでございます。
  49. 大木正吾

    ○大木委員 救済合併であるかどうかということとか大蔵省銀行局の関与の仕方、それを問うたのではございません。  これは日経新聞だと思いますが、日銀さんの方では「信用・決済システム全体には問題が起こらないネットワーク」云々という問題について取り組んでおられますか。
  50. 小島邦夫

    小島参考人 お答え申し上げます。  その件につきましては決済システムの問題ということかと思いますが、やはりいろいろ決済が錯綜いたしますので、そのシステムの中にリスクが残らないよう、つまり、そういうようなことを検討いたしておりまして、まだまだ検討の段階でございますので十分なお答えはできませんけれども、そういうようなことでございます。
  51. 大木正吾

    ○大木委員 これは銀行局長と両方に答えてほしいのですけれどもアメリカの場合と日本の場合と、やはり金融秩序あるいは信用秩序問題につきまして若干感触が違うのですね。アメリカの場合はむしろ後者、信用秩序の方にウエートを置いている感じがありまして、若干の銀行が倒産しても余り驚かないという国民の心理もあるようですが、日本の場合には銀行が、地方銀行でありましても信用金庫でありましても、倒産といったら一つの取りつけ騒ぎですね。  非常に悪いイメージが国民の中にございますから、そういった面で、私自身の気持ちからしますれば、預金保険制度といったものをもっとシステム化して、そして今の合併でもって救済していくということよりは、確かに今銀行局長がおっしゃった面もあることは知っていますけれども、しかし、もうちょっと横断的な形でもって、もし公定歩合の問題等がそのまま残ってバブル退治をやっていけば、当然の問題として中小金融機関、中小企業等にも響くわけでございますから、そういった問題について方向性として検討を加え、預金保険制度等によるシステム化問題についてもっと拡充する気持ちはございませんか。日銀銀行局長、両方から答えてもらいたい。
  52. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず私から申し上げますと、最前申し上げましたように、金融機関の経営が仮に悪化した場合、合併のみがその対応策であるというふうに申し上げているわけではございません。あくまでもいろいろな対応策の中の一つでございます。  その中で、話を飛ばして恐縮でございますが、例えば預金保険システムというものはどうであろうかという論点かと思います。その点で、第一にアメリカ型のそういうシステムを考えて、この預金保険のシステムをいわば活用することを積極的に考えていいのではないかという御議論もあるやに伺っております。その点は、私どももこの預金保険機構というのはあるわけでございますから、その制度の整備についてはかねがねいろいろ努力してまいってきておるところでございまして、近くは昭和六十一年に預金保険制度の改正をいたしました。  その具体的な中身は、保険金限度額の引き上げとか、仮払金制度の導入とか、日銀借り入れ限度の引き上げのほかに、救済合併に対する資金援助制度の導入などを図りました。あわせて保険料率の引き上げも行ったわけでございます。そのように預金保険のシステムの整備、研究はもちろん進めてまいっておるわけでございますが、これを発動することにつきましては、委員からお話がございましたように、日本ではややもすると倒産とか取りつけというものについて非常にイメージが悪いというのはまことに御指摘のとおりでございまして、国民側でこういうシステムの発動を受け入れる状況になっているかどうか、そこのところは私どもとしては慎重に考えなければいかぬのではないかと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、いわゆる金融秩序の混乱というものを招かないように、私どもはできる限り、及ぶ限りの努力を続けてまいりたいと思っております。
  53. 小島邦夫

    小島参考人 ただいまの土田銀行局長の御答弁でほぼ尽きていると思いますが、私どもといたしまして金利自由化のもとで金融機関の経営で一番大切なことは、やはりまず第一に、自己責任原則に立って自分でしっかりやっていくということだと思っております。確かに非常に環境が厳しくなっていく中で、苦しいところが出てまいるということは考えられますが、その辺につきましても、先ほど申し上げましたように、いろいろな形での指導助言等を通じまして対応してまいりたいと思っております。  もう一つ、ただいま御指摘の預金保険機構でございます。これもただいま御答弁にありましたとおりでございますが、一言だけつけ加えさせていただきますと、先ほどの自己責任原則を徹底するということとの絡みにおきましては、これを余り拡充いたし過ぎますと、逆にそういったことのモラルハザードといいますか、そういった格好になりますので、この辺の兼ね合いを考えながら、これから先必要に応じて検討していけばよろしいのではないかというふうに思っております。
  54. 大木正吾

    ○大木委員 わかりましたが、ただ、問題は自己責任ですね。確かに大事なことなのでございますけれども、住宅ローンとかいろいろな意味合いを含めて、国民の方々が高い金利の中で、いわばそういった自分の銀行、金融機関でもって解決する際には、何らかの弊害といいましょうか、あるいは損をするとかそういったことも起こるわけです。そういった点までぜひ視野に入れていただきまして、どういう状況がいいか、私も結論を持ちませんけれども、合併合併ということが随分はやってきているわけでございます。最近の問題として、信用金庫、中小の金融機関というものを都市銀行等が吸収合併をしていくということ自身が、同時に業界の方へ入って聞いてみますと、類似した問題があそこもここもという話を漏れ聞くものでございますから、そういう点を含めて伺ったわけでございますけれども、これ以上結構です。  あと別のことでございますが、先ほど堀委員の質問に対しまして日銀総裁お答えがあったのですが、日経連、経団連等は現在の金利状況を維持することについてどういう見解をお持ちですか。これは日銀に聞くのか。——私の方から言いましょうか。経団連も日経連も、このことについては大分日銀を応援する形の発言が多うなっていますね。しかし、業界の一部にはまた逆のこともあるようですね。この背景については日銀考えたことございませんか。
  55. 小島邦夫

    小島参考人 お答え申し上げます。  私どもといたしましても、経団連、日経連等がどういう趣旨でああいう御発言をなさっているのか、お尋ねしたこともございませんので、正確には承知しておりませんけれども、ただ、私どもの今の政策スタンス、総裁からも申し上げましたように、まず物価の安定を図ることが持続的な内需中心景気拡大を図れるという、そういった考え方に対して御理解をいただいているのではないかというふうに思っております。
  56. 大木正吾

    ○大木委員 実は私も労働界の出身なものですから、ちょっとやぼったいことを申し上げさせていただくのですが、湾岸戦争が長引けばということで年末から一月に折衝した中では、非常に渋い春闘結果、賃上げ問題の話題が出た、こういう話が一般的でした。しかし、一週間程度の短期間で戦争は終わりまして、その後の状況等を見ていますと、盛んに日経連の会長、鈴木さんとかなんかは「日銀もっと大いに頑張って」「利下げ問題については目をくれるな」、こういう発言が目立つものですから、その背景に何があるか。結果的に私たちが勝手なとり方をしますれば、春の賃上げを大体五・五、五・三、五・四、その辺で五%台の真ん中から下の方に押しつぶしていく、これをねらっているというふうに、私はひがんでいるかもしれませんが、とりがちなんですね。結局、最近の鉄鋼の交渉とかあるいは自動車の交渉を見ていますと、そういった断片的な話が出てくる。  ですから、私はもうちょっと突っ込んだ話をしますと、日本銀行調査局長を長くやった方の話を二時間ぐらい聞いたことがあるのですが、彼はずばっとこう言っていましたね。恐らく公定歩合は、アメリカも緩んできていますから下げざるを得ぬでしょう。時期はと聞きましたら、それは大木さん、やはり春闘の賃金が決まった後じゃないですか、こういう話がずばり返ってきまして、なるほどそういうものかなと思ったことがあるのですが、そんなことについて感想でも結構ですから、ありましたら聞かせていただけませんか。
  57. 小島邦夫

    小島参考人 ただいま私の立場で春闘に関しましてあれこれ申し上げるのは適当でございませんので、この点は何とぞ御理解いただきたいと思います。  私どものOBが何を言っておりますかあれでございますが、ごく一般論として申し上げますと、賃金の動向といいますのは先行きの物価を左右する重要な要素の一つであることは事実でございます。しかし、実際の国内物価と申しますのは、このほかに製品需給の動向でございますとか原材料等の人件費以外のコストの動向、それから為替相場、それから競合輸入品価格の動き等々、さらにはそれらを背景といたします企業や家計の物価感と申しますが、そういったものにも影響されるわけでございまして、それだけに私どもといたしましては、物価をめぐるいろいろなこういった環境に十分注意を払っていきたいというふうに思っているところでございます。  いずれにいたしましても、いろいろ報道等はございますが、金融政策はあくまでもそのときどきの物価景気、為替相場ないしは金融市場状況といった内外の諸情勢の総合判断に立って運営されるものでございまして、ひとり賃金動向のみによって動くということではございませんで、まことに申すまでもないことでございますが、そう申し上げたいと思います。
  58. 大木正吾

    ○大木委員 冒頭に大臣から伺ったアメリカ経済の心配もあるわけでございますが、いえば小出しにしていって失敗したという例も随分ございまして、よく世界経済動向等をにらみながら、この辺の問題については機を失しないといいますか、ぜひ適切な時期に日本の——例えばけさの日経新聞で経済討論会なんかやっていますけれども、大体三・八%、政府経済計画で出ているわけでございますけれども、九一年度二・五から三・五というような数字を専門家は、金森さんなんか相当気が強い方ですけれども、この方でも三・三なんて言っていますね。ですから、こういったことを考えていきますと、日本経済の先行きがGNPを含めて全体的に少し成長度合いがダウンする、こういう感じが出ていますので、これは世界経済とあわせて適切な対応をぜひお願いをしたいと思うし、大臣、ここでひとつそういったことに絡んでの所見をちょうだいできますか。
  59. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員から二つの側面から御意見が出ておると思います。一つは、金融秩序という問題に関連し、これが日本経済に与える影響、さらに現実に行われております金融政策、それが日本経済に今後どう影響してくるか、そして結論としては、バランスのとれた成長を日本として維持できる自信があるかという御指摘であろうと存じます。  私は、結論からまいりますならば、日本経済は巡航速度に入りつつある、そしてこの巡航速度を今後いかに維持していくかということに焦点は移るであろうと考えます。その場合、設備投資にいたしましても、むしろ一時期の過熱ぎみの設備投資というものは確かにスローダウンしておりますが、依然として非常に堅調でありますし、個人消費もまた堅調であります。  殊に、日本経済だけではなくて、世界経済全体の中で非常に不安な要因として存在しておりました湾岸危機というものが終息をした状況で、先行きにそれなりの見通しが立てられる状況になってきた。これは先ほど堀委員から御指摘のありました世界的な通貨不足とか、こうした問題を別に抱えてはおりますけれども日本経済そのものとしては、労働力の需給に懸念材料を持つとか、懸念というより注意しておかなければならないと言いかえた方がよろしゅうございましょう、さらに、今後のOPECの動向によりまして原油供給体制がどのように変わるかとか、注意していかなければならない要素は持っておりますけれども、むしろ巡航速度に入りつつある状況というものを我々が今後どう維持していくかということにかかると思います。こうした点につきましては、もちろん日銀当局の金融政策と相まちまして、我々としては安定した内需中心の自律的な経済成長を維持し得る、またそうしていかなければならない、そのように考えております。
  60. 大木正吾

    ○大木委員 アメリカ経済のバブルがはじけた後のことは心配もありますし、どうせ日本は出ていかざるを得ない、こういう感じもいたしますので、こういったことを伺ったわけでございます。  さて問題は、今度きょうの議案の絡みに入って質問させていただきまして、税関業務の問題について四、五点伺ってまいります。  輸入申告件数あるいは出入国者数、予算定員、そういった問題について関税局、最近の推移といいましょうか、現状を若干さかのぼった年次を入れてお話しいただけませんか。
  61. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  税関の業務量につきましてはいろいろな指標があり得るかと思いますけれども、その重立ったものいずれをとりましても大幅に増加いたしております。例えば、今先生のお話に出てまいりました輸出申告件数、比較的最近の平成二年の数字で申し上げますと七百四十九万件、これが五年前の六十年に比べますと約一・三倍になっております。また、輸入申告件数は五百十一万件で、同様に五年前に比べますと一・九倍。それから、出入国者数は二千八百九十六万人で、これも五年前に比べますと二倍になっております。そういった業務量の増でございます。  他方、予算推移あるいは定員の推移という御質問でございますが、まず予算につきまして最近の数字、昭和六十一年度が税関予算トータルといたしまして五百十九億円、以下、六十二年度五百三十三、六十三年度五百三十九、平成元年度五百五十四、平成二年度五百七十八、平成三年度、これはまだ予算案でございますけれども、六百二十四億円というふうになっております。それから定員の方は、六十一年度が七千七百六十三名、六十二年度が七千七百二十六名、六十三年度が七千七百三十一名、平成元年度は七千八百八十六名、二年度が七千八百七十五名、三年度、これは予算案でございますけれども、七千八百七十六名というふうになっております。
  62. 大木正吾

    ○大木委員 この数字で非常に明快でございます。仕事は相当にふえて二倍以上にふえているけれども、要員の方はほとんど横並びということが極めて明快に出ているわけです。  さて、いろいろな附帯決議等もございますが、そのことに入る前に一番の問題として伺いたいのは、要するに密輸等そういったものの件数、対処方法、そういった問題について最近の実情を少し説明してくれませんか。
  63. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 先生のお話の密輸は、主として社会悪物品等についての御質問かと存じます。  最近におきます社会悪物品の密輸状況の税関における押収量という点で見てまいりますと、覚せい剤が約百五十六キログラム、これは平成二年の数字でございます。同様にコカインが四十二キロ、大麻が八十五キロ、ヘロインが約九キログラムということで、特に近年ではコカインの押収量が急増しております。社会生活の安全を脅かすという意味で、こういった麻薬あるいは覚せい剤等の社会悪物品の取り締まりにつきましては、私どもの水際での取り締まりあるいはその流入の阻止というのは極めて重要なことであるというふうに考えております。  このため、税関におきましても、いろいろな税関行政の中での大きな柱の一つとしてそれらの対策に意を用いているところでございまして、特に情報収集を強化する、あるいは取り締まり機器を整備充実をする、あるいは警察等の関係当局との連携を密にするというようなことで、そういった面での行政の充実に努めているところでございます。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕
  64. 大木正吾

    ○大木委員 これはおたくの方の資料をちょうだいしたと思いますけれども、六十二年ごろに五百七十一キロとか、六十三年ですか四百五とか、べらぼうな量の押収がございますね。こういうことはどういうところから押収、あるいはどういう人が持ち込んだりしているかわかりますか。
  65. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 麻薬類につきましてはある程度国別に特徴がございますが、しかし、実際に私どもで押収いたします場合にもいろいろな形態がございます。仕出し国においてもかなりあちこちに及んでおりますし、それから、それを携帯する者につきましてもいろいろな国籍の人に及んでおります。そういった中でも、総体的に見て比較的多いのが南米系統あるいは東南アジア系統といったようなところでございますけれども、しかし、それらに限らず、いろんなケースがあるというのが現状かと思います。
  66. 大木正吾

    ○大木委員 ココム関係の問題についてですが、最近は国際的な動向としまして、湾岸戦争に絡んで毒ガス、その他原料、そういったものについて厳しく取り締まる、こういった新聞論調等も出ていますが、ココム違反の問題につきましてはどのような対策なり対応をしておられますか。
  67. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 ココムの関係は輸出に関しての問題でございます。これらにつきましては所管省庁は通産省でございますけれども、そちらでのいろんな審査を経た後、我が方での輸出許可ということになってまいります。したがいまして、担当する関係省庁での承認等を得ておるかどうかといった確認を得た上で、私どもとしては輸出許可を出しておるということでございます。
  68. 大木正吾

    ○大木委員 今の国際論調にありますように、化学兵器あるいは毒ガス等、そういったものの話題が仮に国際的な会議の中で持ち込まれた場合には、関税当局としてはそれに対してどういう所見をお持ちになりますか。
  69. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 今のお話は、日本へ入る場合のお話のようにお聞きしたのですが、一般的にココムの問題は外に出ていく方が中心でございますけれども、仮に類するものがこちらへ入るというようなケースにつきましても、例えば銃砲等であれば、それぞれ関税定率法等で輸入禁制になっているような場合もございます。そういったものにつきましては、しかるべく水際でもってチェックしていくというようなことで、私どもとしても、関税法も広い意味の、いわば他法令を含めての法律関係の適正な実施ということで、水際での対処をしてまいっているつもりでございます。
  70. 大木正吾

    ○大木委員 最近警察庁がまとめた銃の密輸摘発強化法、これは大蔵省関税局は相談を受けておられますか。
  71. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 委員指摘の件は、鉄砲部品のお話かと存じます。これは、現行法はいわば完成された鉄砲についての規制ということが中心になっておりますけれども、今警察庁の方で検討されておりますのは、いわば鉄砲の部品についてもその取り締まりの対象にしてまいりたいということかと思います。そういったものも取り締まりの対象にした場合に、それらの輸入についても取り締まりを強化したいという御意向でございまして、私どもとしてもその辺は相談を受けながら対処していきたいというふうに考えております。
  72. 大木正吾

    ○大木委員 幾つか伺っておきましたけれども、問題は税関の職員の定数問題でございます。実に衆参両院におきまして八年間ぐらい同じような附帯決議をつけてきているわけでございますけれども、これについて関係の職員組合からも陳情等もあるわけでございます。大臣、どうでしょう、かつて党の行財政調査会会長をやった立場ですから、非常に答弁がしにくいのではないかという気もいたしますが、仕事量が二倍半、三倍近く膨らんだり、同時に密輸関係の起訴事件がやはりふえる傾向を持っていますね。そういった中で大変過酷な労働環境にあろうかと思うのですが、要員をふやす方法は考えられませんか。
  73. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 大臣から御答弁いただきます前に、これまでの私どもの本件についての対応ぶりといいましょうか、これを御説明申し上げたいと思います。  今委員指摘のように業務量はふえておりますし、また我々の行政対象も、今お話にございましたように、麻薬等を含めて範囲が広がっております。また、手口等も複雑化しているという意味で、総体としての業務量は多量化、かつ複雑化しておりますけれども、これに対して私どもといたしましては、いろいろな手段をもちまして業務の効率化等をまずもって図ってきておるつもりでございます。  今回法案としてお願いしておりますNACCS法の改正案も、いわばその一つの手段ということでございますけれども、機械化を初めといたしまして、事務効率を上げるということが大きな柱であろうかと思います。そのほか、仕事のやり方を重点化する、あるいは効率化するというような、いわばソフトの面での努力もやってきておるつもりでございます。そういったいろいろな努力を行いましてもなおかつ足りない分につきましては、関係方面の御理解を得ながら要員の確保に努めてきておるということでございます。
  74. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 就任いたしましてから、東京税関を中心に一日現場を見せていただき、その後、小さいところは一体どんな状況だろうと思いまして、対馬の税関の業務を見せてもらいました。そして、今関税局長から御答弁を申し上げましたようにいろいろな工夫をいたしておりますけれども、また、総定員を抑え込んでおります中で税関定員はふえつつありますけれども、確かにその業務量に比して増員の状況が十分ではないという感じを私自身も持ちました。  ただ、私ども、これは率直に悩みを申しますと、大蔵省という役所が要求官庁の側面と同時に査定官庁であり、なかなか定員をふやしにくい情勢があるということであります。これは税関ばかりではなく国税につきましてもそうでありますし、あるいはその国税定員をふやしますために、ある程度承知で犠牲を払わせてまいりました財務局系統にも、これ以上しわが寄せられないという状況がございます。そうした中、事務方の諸君、できる限りの努力をしてくれておりますし、機械化等による対応の余地も次第に拡大しておりますけれども、今後ともに注意を払い続けなければならない大切なポイントの一つ、そのように私は今考えております。
  75. 大木正吾

    ○大木委員 査定官庁の立場もございましてなかなか難しいという立場はよくわかります。ただ、時間短縮問題が社会的に非常に大きな問題になっておりますし、伺いますと、各公務員の方々が完全週休に向けて一カ月に二回は土曜日を休める体制になっているわけでございますけれども、税関職員の方々はなかなかそういったことも完全にとり切らないという話を伺っております。  大臣、現場を見ていただいた際には、そういった問題について、私がこう見ますと、新しい法案に出てきました航空貨物から海上貨物に移る機械化の問題等、その努力はわかりますけれども、そういったことをいたしましても、いわば事件が密輸的な事件が多くなったりで、どうしても週休等が完全にとり切らないとか、あるいは機械に振り回されて残業的な部分がふえてしまうとかといったことが多いと聞いておりますので、ぜひこの問題につきましてはさらに一段の御工夫をお願いいたしたいし、査定官庁という立場の中において、国税関係の職員と税関の問題につきましては、他の民間の企業なり現業官庁的なところもいろいろ見ておりますけれども、国際経済がこれからも膨らんでいきますので、そういった問題については、査定官庁の立場も反面持っているからとおっしゃらないで、何らかの方法で他の官庁の了承等も受けながら、若干の増員ということができないかどうか。査定官庁の立場ということを頭に置きますと、大臣、どうしても現状のほとんど横並びの線でしかいかれませんでしょうか。
  76. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、査定官庁としての立場を持ちつつも、今後ともにやはり増員の必要な部門と考えております。  ただ、その点では、たまたま今委員から当省所管部分についての御指摘をいただいたわけでありますけれども、同じような問題が出入国管理、検疫等、いわば関連部門共通の問題点でありまして、私は、一方で簡素にして効率的な政府を求められる国民の声と、この現実の業務の増大というもののいわば二律背反の状態の中で、どの辺に一体ポイントを求めればいいのか、率直に苦慮いたしております。しかし、今後ともに増員の必要な部門であるという認識は持っておるつもりであります。
  77. 大木正吾

    ○大木委員 税関から今度は次の法案の問題に入りまして、最初に確認いたしますけれども航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律でございますが、これは、題名が電子情報処理組織による税関手続特例等に関する法律というふうに変わるということでございますね。
  78. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 仰せのとおりでございます。  従来、航空貨物のみを対象にしておりましたものを、航空貨物プラス海上貨物をも対象にするということで、名称も変更させていただきたいということでございます。
  79. 大木正吾

    ○大木委員 主として通関業者並びに港湾労働者関係の問題について二、三点お伺いさせていただきます。  まず、海上貨物の通関電算システムに関しまして、これに関連する業者の確認をしたいのでございますが、税関と銀行、そして通関業者、こういうふうに確認させていただいてよろしゅうございますか。
  80. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 当面考えておりますのは、仰せの三者でございます。
  81. 大木正吾

    ○大木委員 当面という言葉の中には、何か今後の問題について含みがございますか。
  82. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 システムというのは、やはり利用者があってのシステムでございます。航空貨物の場合にはもう少し広い範囲で、物流関係全体が対象になっておりますけれども、海貨の場合には関係者が非常に多いということで、物流一般というのはとてもなかなかコンセンサスが得られない。したがって、通関手続というところに限定してのシステムということでございますので、先ほど御質問ございましたように、関係するのは税関を含めて三者ということでございます。
  83. 大木正吾

    ○大木委員 余り深追いしてやぶ蛇になるといけないのですが、例えば大きな荷主の方々がカードを持った資格のある方々を雇ったりしまして、荷主の手元で仕事をしてしまうなんということは将来起こり得ますか。
  84. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 今の先生の御質問がシステムの利用という点に即しての御質問であるといたしますならば、先ほど申し上げましたような構成になっておりますので、通関業者を通じてということに相なろうかと思います。
  85. 大木正吾

    ○大木委員 次の問題でございますけれども、港湾の労働者といいましょうか、労働組合が関係業者と、こういった電算機システムの導入によりましていろいろ労働条件が変わる場合等がございますので、当然話し合いが持たれていくだろうと思いますが、その間で協議が成立する、労働協約ができる、そういったものについてはあくまでも当事者間にお任せする、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  86. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 海上貨物のシステムの導入に関連しましては、先ほど申し上げましたように税関手続についての電算化ということでございます。したがいまして、労使関係とこのシステムとダイレクトな関係はないかと思います。その意味で、お話しの労使の間のお話し合いはまさに労使の間のお話ということでございまして、直接システムがどうこうということとは関係ないかと思いますけれども、ただ、通関業者にいたしましても、またそこでの従業員の方にいたしましても、いろいろ御意見をお持ちの向きもございます。一般的な私どものシステムに対するいろいろな御意見等もあろうかと思います。そういったものについてはこれまでもいろいろ承ってまいりました。今後とも同じようなことでやってまいりたいと思いますが、冒頭申しましたように、基本的には本システムが税関の手続の電算化というふうに限定されておるという点で、直接の関係は比較的薄いのじゃないかというふうに承知しております。
  87. 大木正吾

    ○大木委員 例えば、この電算化システムの稼働時間と現在の港湾労働者等が働いている時間には大分差がございますね。そういった場合に、税関の職員なり港湾労働者なりが、機械は人なしでもって運転されているという状態で済むのかどうかということも後ほど聞こうと思っておりますが、一般的に、職場にこういった電算機あるいはオートメーション関係の機械が入ってきた場合には、労働問題に影響しないということはあり得ないことなんでございまして、今言ったように、言葉上では局長おっしゃるようにシステムの変更だから関係がないようなお話ですが、私はそうは考えておりませんので、労働関係に関する問題については、業者の側に立ちますと当然システムの問題については頭にあるわけでございますから、ぜひそういったことを前提としながら、労使関係の協議についてはそれをお認めになる、こういうふうにしていただきたい、こう考えます。
  88. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 労使間のお話し合いに対し、私どもとしてはどうこうするという立場には全くございません。  そういう意味では、先ほどシステムの運用時間云々というのを例としてお挙げになりましたけれども、これはあくまでもシステムとしてオープンにしておくという時間だけでございまして、そのことが即就業時間数云々ということとは関係ございません。もちろんシステムの運用者、いわばNACCSの中での保守等についてはそれなりの影響はございますけれども、そのことと個々の通関業者における労使間の議論とはちょっと別個ではないかというふうに考えております。
  89. 大木正吾

    ○大木委員 恐らく局長は労働局長とか労働部長とかということを御体験ないのだと思いますけれども、どこの工場に行きましても、オートメーションシステムというのが入ってきますと、当然の問題として、関連する仕事の労働者は新しい機械の訓練を受けるとか、あるいはそれに絡んで仕事の態様が若干変化するとか、そういったことが起こるわけで、これは当然なんですね。そうしなければまたこういった機械を入れる意味がないわけですから。  そういう関係において私があえて再三ここで聞いているわけでございますが、要するに通関電算化システムの稼働に伴って労働環境に変化が起きる。それに対して事業者と労働組合が交渉する場合には、その交渉の結果について税関の方としてはいわば特段の介入はしない、尊重する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  90. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 二つの点でお答えした方がよろしいかと思いますが、まずシステムのオープン使用時間をどう決めていくか、これは税関を含めまして関係する利用者の中で決めていくことになろうかと思います。それから、それぞれの通関業者の個々の企業の中における労使関係、これはそれぞれのところでお決めいただく話かと思います。  それから、第一の点に関連しまして、今議論されておりますオープンされる時間というのは、やはりいろいろな要素を背景にしての御議論かと思いますけれども、基本的には、今行われておるのをそんなに大きく変えるということではないというふうに私ども承知しております。そういう意味で、利用する関係者を含めての関係者間でオープンする時間を決めていくということというふうに御理解いただけたらというふうに思います。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席
  91. 大木正吾

    ○大木委員 ややこしい言い回しは抜きにいたしまして、要するに電算化システムが入った場合に、現在の仕事に関与している港湾労働者の仕事に一切関係がないというように言い切らないでほしいのですがね。電算化システムを導入するということは、さっき大臣もお答えになりましたとおり、とにかく仕事をなるべく効率的にやろうということですから、効率的にやるためには、当然の問題といたしまして、通関業者あるいは関係の荷役等を手伝います港湾労働者等が何らかの影響を受けることは間違いないわけですから。要するに労働の態様に対する変化、それについて業者と港湾関係労働組合が協議をする、その協議をしたものについては尊重する、こういうふうに明確にしていただきたいのですがね。
  92. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 労使間でお決めになりましたことを我々がとやかく言う立場にないという意味で、先生のおっしゃったとおりかと思います。
  93. 大木正吾

    ○大木委員 関連いたしまして局長にもう一遍伺いますが、この稼働時間でございますけれども、システムの方は、結果的には午前八時から午後九時まで、土曜日は第二、第四を中心としまして同じく午前八時から午後四時まで、こうなっていまして、時間帯的に大体税関の職員なり関連します港湾労働者なりの時間よりもシステムの稼働の方が時間が長い、こういう関係になっていますが、この間の空き時間といいますか、これは人を配置せずに機械だけを稼働させておく、こういうふうになりますか。
  94. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 システムのオープン時間というのは、その間端末機をたたけば中に数字が入り得るという格好の状態を指すわけでございますけれどもセンターにおきましては、当然その保守の関係が要ろうかと思います。それから、端末をたたく場合には、もしたたこうと思えばたたける状態になっておるというだけで、たたくかたたかないかは個々の利用者の方の御都合次第ということかと思います。
  95. 大木正吾

    ○大木委員 たまたまこういうことはないですか。要するに、一定の時間の中で荷役ができない、あるいは緊急にこれをどうしても荷揚げしたいとか、そういった問題に絡んで、こういった稼働時間帯の中で税関の職員なり関係荷役労働者等を残してもらいたいとか、そういったことを言い出す、あるいは必要性が起きることはないですか。
  96. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 これはシステムとは関係なく、現在の関税の法体系の中で、緊急に輸出あるいは輸入される貨物についての特別な要請がある場合には、閉庁されておるときにおいてもそれを受け付けなければならないという規定がございます。その場合には当然それなりの特別の手数料等をお払いいただくという格好になっておりますけれども、これはシステム以前のそもそもの制度が前提にございます。  これは輸出入のいわば特殊性と申しましょうか、物によって非常に緊急に輸入しなければならない、あるいは輸出しなければならないというケースがあることにかんがみまして、そのような制度が設けられておるのだと思いますけれども、そういったものは現在もございます。過去もございました。今後も同じようにそういう問題は当然あるだろうと思います。そういう意味で、そういうケースがあるということは今後ともあり得ますけれども、これは別にシステムが導入されたからということではなくて、従来から引き続いて行われておる別の問題かと思います。
  97. 大木正吾

    ○大木委員 結局今の話を総合しますと、そういったことは過去にもあったし、やってきた、こういうお話でございますが、結果的には、これは当然の問題として、所定勤務時間外の仕事になりますれば、税関職員の場合には御指示でしょうけれども、港湾労働者の場合には、やはり何らかの話し合いによりまして、当然こういったことに対応する取り決めが業者との間になければなりませんね。ですから、そういったことについては当然尊重されると考えますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  98. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 たびたび申し上げておりますけれども、労使間でお決めになったことは、我々としては別にそれをどうこう申し上げる立場にはないという意味で、先生のおっしゃるとおりかと思います。
  99. 大木正吾

    ○大木委員 稼働時間と勤務時間の関係につきまして、港湾の労働者全体的な面で幾つか要請がございます。  それは、勤務時間につきまして、結局稼働時間との差を詰めてもらいたいということも含めて、平日午前九時から午後五時までとする。それから土曜日は閉庁としてもらいたい。年末年始の閉庁は十二月二十九日より一月四日までとしてもらいたい。海の記念日、これは七月二十日でございますか、休ましてもらいたい、こういう要求が来ておりまして、ぜひこれは、関係業者との話が中心でございましょうが、局長の方でも御理解を賜っておきたい、こう考えますが、いかがですか。
  100. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、システムの稼働時間をどうするかという点につきましては、私ども税関を含めまして、利用者グループでその最も適正な時間を決めていくということになろうかと思います。  それから、今先生お話しの個々の通関事業者と従業員との関係、これはそれぞれのところでお決めいただくということになろうかと思います。
  101. 大木正吾

    ○大木委員 事業者と労働組合との間で今私が申し上げた四点の時間帯の問題について話し合いがつけば、それは尊重される、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  102. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 システムの問題は、先ほど来申し上げておりますように開発協議会というグループといいましょうか、研究会を設けております。その中には通関業者の代表あるいは銀行の代表といういわば利用者、このシステムを構成する主要なメンバーで適正な時間帯を決めるということで協議をしつつございます。そういったところで決めていくことに相なろうかと思います。それから、そういったシステムを具体的に活用されるのは、それはそれぞれのところでいろいろお決めいただくということに相なるのではないかというふうに理解しております。
  103. 大木正吾

    ○大木委員 ちょっと話がすれ違い的になりますので、もう一遍念を押しておきますが、システムの扱いにつきましてはソフトグループでやる。私のせがれもNTTでソフトをやっていますから、大体仕事の中身は幾らかわかるのですけれども、そのことはそれでいいのです。  問題は、それを受けて荷役をするいわば港湾労働者関係の組合員、これが持っています今の労働時間帯は午前九時から午後五時、土曜日は閉庁、そして年末年始は十二月二十九日から一月四日、海の記念日は閉庁とする、こういった問題については業者間との話し合いが中心でございましょうと考えますから、その業者間との話がついた場合には、大蔵省関税局はこれに介入しないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  104. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 たびたび繰り返しになって恐縮でございますけれども、システムを運用するというのは、いわばそのシステムをオープンにしておくという意味での開庁でございます。先生のお話の中に開庁、閉庁という言葉が出てまいりますので、それが私どもの方の税関を閉じてしまうという意味だとするとちょっと問題がありますけれども、そういうオープンにはなっているけれども、そのシステムをどういうふうに利用されるかというのは、それぞれのところの利用者のお決めになることという意味で、二つの側面を区別して申し上げているつもりでございます。
  105. 大木正吾

    ○大木委員 私は、別にシステムを何時にとめろと言っているわけじゃないんで、働く労働者に影響が及ばないという形でもって考えてほしいということが中心でございまして、閉庁とかそういった言葉はこの際差し控えますが、要するに、港湾労働者の方々が働く時間帯について先ほど申し上げた四点ございますので、これは業者間との話し合いで決まる問題だと考えておりますが、それについては当然関税当局は尊重される、こう考えていいでしょうか。
  106. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 それぞれの事業者と組合の方で、あるいは従業員の方とお決めになることは、そのことは我々として特に干渉するという立場にはございません。
  107. 大木正吾

    ○大木委員 問題が業者関係の問題にちょっと入って恐縮でございますが、通関料金の関係でございます。  現在ダンピング等あって、最高料金とかあるいは言葉がいろいろございますが、これを一定のゾーンにするか確定料金にすることはできませんか。
  108. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 通関業務料金につきましては、先生御案内のように、通関業務をある程度類型化いたしまして、それぞれにつきましての通関業務料金として収受できる最高額を定めてございます。  この最高料金制を採用しております趣旨は、一つは、業務の負担度が同じような類型の中でもかなり程度の差がございます。したがいまして、申告内容いかんによってはかなり負担のかかるものもあればそうでないものもあるということで、なかなか一律にはしにくい。それから、そもそもこの通関業が許可制をとっているということ等もあって、やはり利用者の保護ということにも配慮する必要があるというようなことから、これも相当古い歴史を持っておりますけれども、最高限度、上限を設けるという格好で料金の適正化を図るということでスタートしております。  現在の制度になりましたのは昭和四十二年ですけれども、この制度の前身、これは明治時代からあるわけですけれども、そのころからこの関係の料金の適正化というものにつきましては、最高限度制ということで運用されてきております。この点について時々いろいろ先生お話しのような御議論もあったようでございますけれども、やはり利用者保護という別の側面もございます。そういった意味で、事業者の利益と同時に利用者の面の両面を見ながら、適正な料金としては現在のような最高限度制がいいのではないか。  いま一つは、冒頭申し上げましたように、この業務の種類に非常に多様性がある。一つの同じような類型であっても業務内容が多様であるというような点から、最高制が内容としても適正ではないかというふうに考えております。
  109. 大木正吾

    ○大木委員 確かに、たくさんの荷物を扱わしていただいている業者、あるいは一見というか時たま一回だけ頼みにくる業者等、いろいろあろうと思うのですね。ただ問題は、業界どこでも競争でございますから、結果的にはダンピングその他のこともあったり特別のサービス等もあるでしょうが、やはり何らかの、確定という言葉はきつ過ぎるとしますれば、一定のゾーンの中で指導することはできないのですか。
  110. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 通関料金のそもそもの性格は、いわゆる公共料金ではない、いわば基本的に自由料金の分野に属する部分だろうと思います。そういう料金の本質的な性格にプラスしまして、先ほど申し上げましたようなことからいきますと、最低を定めるというのはちょっとなじみにくい。一定率をやるというのは、冒頭申し上げましたように、同じような類型の中でもいろいろな態様があるということから難しい。そういたしますと、一律が難しい、最低が難しいとなると、残るのは最高ということで、まあいろいろな御議論はあろうかと思いますけれども、先ほど来申し上げております各種の観点を総合勘案いたしますと、やはり最高限度制で料金の適正化を図っていくというのが今の諸情勢を含めても最も妥当な制度じゃないのかなというふうに考えております。
  111. 大木正吾

    ○大木委員 押し問答しても仕方がありません。私の方からは、むしろ最低、最高、ある程度のゾーンを決めて、そして競争は大いにやった方が結構なんでありますけれども、むしろサービスの面でそういったことも付加してもらいたい、こういったことを希望としてこの問題については当局にお願いしておきます。  もう一つありまして、業者のことをちょっと言うわけでございますけれども、こういった新しいシステムを導入いたしますと当然一度に金がかかりますね。それに対しまして小さい業者もいられるようでございますので、一社に二台から四台ぐらいは設備として端末が必要だ、こういう話を伺っております。金額的に一千万ぐらいのものが一遍に要る、こういう話もあります。中小企業金融公庫がいいのかあるいはどこがいいのかわかりませんけれども、低利融資の金融機関について御指導を願いたい。こういうところがありますよということを指導してやってもらいたいと思います。同時に、関係金融業者に対しましても、こういった制度に関して融資を適切に行うようにしてもらいたいと考えますが、どうですか。
  112. 土田正顕

    ○土田政府委員 この融資の面につきまして御説明を申し上げます。  通関業者の中には零細の方も多いということでございましょう。資本金一億円未満の方々などにつきまして申し上げますが、そういう零細の通関業者が今度のシステムの端末を導入するに当たりまして必要となる資金、運転資金でございましょうが、それにつきましては、国民金融公庫及び中小企業金融公庫の一般貸し付けとか、または中小企業金融公庫の情報基盤整備貸し付けなどの貸し付け対象になると考えられます。これら貸付制度の金利は民間の長期プライムレートと同水準で、現在は七・五%でございますが、小さな業者が利用される資金としてはかなり有利なものになっていると考えられます。私どもは、このような貸付制度が有効に利用されるよう期待しておるものでございます。
  113. 大木正吾

    ○大木委員 ぜひそういったことにつきまして関税局長さんも受けとめていただきまして、そして関係業者に対して御指導願いたい、こう考えております。  若干時間を残しますが、これは実はきょうの議題になじまないのですが、お教えいただきたいのです。  主税局にちょっとお伺いいたしますが、最近サラリーマンの老後保障のためにということで、年金が三階建て等にもだんだんふえてきておりまして、企業の退職金を一部取り崩して企業年金等が始まっているわけでございます。これは今後の検討課題ということになるかもしれませんが、一応御意見を伺いながらぜひ検討していただきたいという問題で、適格退職年金契約の本人掛金部分につきまして社会保険料控除相応の税制措置がとられるかどうか、これについて主税局の担当の方がいらっしゃいましたら一言お伺いさせていただきまして、そしてさらに検討を続けてもらいたいと考えるのですが、いかがですか。
  114. 尾崎護

    ○尾崎政府委員 お答え申し上げます。  適格退職年金契約でございますけれども、これは御承知のとおり企業が任意に導入する私的な企業年金制度でございまして、そのうち一定の要件を満たして国税庁長官が承認したものであるわけでございます。この承認を受けますと、税務上、企業が積み立ててまいります掛金が損金算入として扱われるということと、それから、受益者であります従業員は、企業が積み立てたときに本当はそこに所得が帰属しているとも考えられるのですが、それを年金の支払い時まで延ばそうということ、所得税の課税を年金の支払い時まで延ばしましょうという恩典があるわけでございます。  そういうものでございますので、まず第一に、適格退職年金制度そのものが、厚生年金でございますとか厚生年金基金でございますとか共済年金のような公的な社会保険制度として位置づけられていない、あくまで任意のものでございます。  第二には、適格退職年金制度におきます従業員負担の掛金でございますけれども、これは事業主負担による年金額以上の給付を受けたいという御希望の従業員の方が任意にこれを支払うということになっておりまして、そこにも任意性があるわけでございます。したがいまして、強制的あるいは公的な性格を持っております他の年金と同じように社会保険料控除を適用するということにつきましては、難しい面があるというように考えております。  ただ、現実に退職年金の年金の支払いが行われますときに、通常でございますと強制的な、例えば厚生年金のようなものでございますと、給付額から例の公的年金等控除という制度がございまして、その控除が行われるだけなのでございますけれども、適格退職年金の場合には、給付額から本人負担の今までの掛金の分をまず引きまして、それからさらに公的年金等控除を行う。そこで調整が一つ行われているわけでございます。
  115. 大木正吾

    ○大木委員 流れは主税局長の話はよくわかるのです。ただ、総体的に申し上げまして、公的年金ではもちろん老後生活はできませんし、個人で掛けている方もいらっしゃるかもしれませんが、とにかくできてきた背景というものが、一般的には従来の退職金といったものを取り崩しながら、結局会社と組合で話し合ってやっている面が多うございまして、調べてみますと、現在関係加入者が一千八百万人ぐらいになっているのですね。ですから、老後生活を豊かにとは言いませんけれども、ある程度の生活レベルを維持していくためには、こういった問題についても税制上の配慮等が必要ではないか、こういう意見が大分関係者の中に高まっておりますので、今の局長の答弁でとりあえずはやむを得ませんが、今後さらに厚生省等と相談いたしまして、結果的には御検討を継続してもらいたい、このことを私の方から要望として申し上げさせていただきます。  終わります。
  116. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  117. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日笠勝之君。
  118. 日笠勝之

    ○日笠委員 本日議題法案外の一般的な質問でございますけれども、これは当初理事会で、一般質問をする時間が大蔵委員会はなかなかないので、一般質問も含めて審議していい、こういうことでございますから、一問だけノンバンク問題につきましてお伺いしたいと思います。  まず大蔵大臣、去る十二日の本会議におきまして地価税法案に関する質疑がございました。いわゆるノンバンクにつきまして、不動産関係に対する融資が非常に膨大な金額になっておる、ノンバンクもその大きな一翼を担っているのじゃないか、こういうようなことで質問がありまして、大臣からそのことにつきまして、貸金業規制法改正など法的整備をすることも検討する旨の答弁がありましたが、そのとおりでいいでしょうか。
  119. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 多分吉井委員に対する御答弁であろうと思いますが、「ノンバンクに対し直接的に指導を行うため、貸金業規制法等の法的整備を行うことの適否についても検討したいと考えております。」という御答弁を申し上げたと思います。
  120. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで、銀行局長にお伺いいたしまが、銀行局長の私的研究会でノンバンク研究会というのがございますが、今現況どうなっておりますか。また、今後の見通しについて御答弁をお願いいたします。
  121. 土田正顕

    ○土田政府委員 御説明申し上げます。  ノンバンク研究会と我々言っておりますが、この研究会は、いわゆるノンバンクの最近における業容の拡大などにかんがみまして、ノンバンクの融資業務の実態やその資金仲介の意義などについて調査検討するため、昨年四月に発足していただいたものであります。この研究会は、これまでに十一回にわたって検討を続けまして、主として業界あるいは学者の方々からのヒアリングとか海外調査を実施してまいりました。この研究会では、順調にいけばことしの春ごろをめどに取りまとめをしていただけるのではないかと思っております。  ただ、ノンバンクの融資活動の実態とか金融システムに及ぼす影響などについて検討を続けていただいておるわけですが、具体的な取りまとめの方向、時期、それは今後の検討にまつという段階でございます。
  122. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると大蔵大臣、このノンバンク研究会が春ごろ、十一回のいわゆるヒアリング等々海外視察も含めて終えまして、報告書を取りまとめるということですが、その報告書を検討されて、先ほど言われたような貸金業規制法改正など法的整備の検討をする、こういうことでしょうか。
  123. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはもう委員がよく御承知のように、ノンバンクにつきましては、その融資の十分な実態把握あるいはそれに基づく指導が行われておらないという問題がございます。これは大蔵省の権限の及ばない部分を持っておるということでありまして、今後研究会から報告が出されましたならば、それに従って我々として勉強し、必要があれば法改正をお願いする場合もあり得る、そのように思います。
  124. 日笠勝之

    ○日笠委員 そこで、一、二疑念がございますので確認したいと思うのですが、この貸金業規制法は昭和五十八年に議員立法で成立しておるはずですね。本来なら、議員立法で成立しているものの改正なら、議員立法であるべきだと思う。これが一つ。  それからもう一つは、規制を、法的整備も検討とおっしゃいましたけれども、実は「月刊消費者信用」という雑誌に、大蔵省銀行局調査課長の中井さんのノンバンク研究会スタートに当たってのインタビューが出ております。このインタビューの問いが「土地融資にからんでノンバンクに対する規制が強化されるのではないか、という見方も出てきているが。」中井さんはこう答えております。「今いったように新しい業態をもっと把握していくことが目的だから、われわれとしては先入観をもたずに、幅広い観点から議論していただこうと考えている。研究会が銀行局長の私的勉強会という形式をとったのもそのためだ。もし、制度問題に関連するような何らかの規制を設けるということであれば、それは金融制度調査会を待たなければいけない。」こうあるわけですね。おっしゃるとおりだと思うのです。私的勉強会の報告を見て検討して、規制していくという。それも場合によっては網の目をばさっとかけるようなことにもなりかねないということです。  先ほど言った議員立法でもある。私は、一生懸命ノンバンク研究会でいろいろと勉強されて報告書をまとめられる、結構なことだと思うのです。それを今度は金融制度調査会に諮る。正式な国家行政組織法に言うところの八条機関であります。そのために大蔵大臣の諮問機関として法律で認めている調査会もあるわけですから、そこへ諮って、そこでもう一度幅広く議論をしていただく。その答申なら答申をもとに考えていただくならわかりますけれども、今おっしゃったようなことを聞きますと、ノンバンク研究会の報告書から検討もあり得るというのはちょっと早いんじゃないかな、こう思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  125. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点の議員立法を土台にして政府が新たな立法措置を講ずることの可否、私は、これは必ずしも委員が御指摘になるような問題はないと思います。  私自身の経験の中でも、私自身が各党に御相談をかけ、たしか昭和五十年代の初めに特定不況業種離職者臨時措置法を議員立法で通過、成立をさせました。その後政府が特定不況地域離職者臨時措置法を提案され、これも通過をいたしまして、数年後にその特定不況地域と特定不況業種という考え方を一体にした新たな立法措置政府が踏み切りました。その土台は議員立法による特定不況業種離職者臨時措置法でありまして、私は、それが政府の提出に係る改正でありましても、よりよきものになるということであるならば、問題はないものと心得ます。同時に、逆に政府提出の法律案を土台に議員立法が行われることも、私は何ら問題がないと思います。  また、今二点目に委員が御指摘になりましたような点は、確かに今後私どもが心しておくべき点でありましょう。しかし、研究会からどのようなお答えをいただけるのか今わからない時点において、金制に諮問を改めて必要とする内容になるのか、あるいは御意見を伺いながら作業するということでとどまるのか、この辺については今確たることは申せないと思います。しかし、委員の御注意は十分脳裏に刻んでおきたいと思います。
  126. 日笠勝之

    ○日笠委員 きょうは時間もありませんし、法案審議もしなければいけませんので、これは銀行局長、既にノンバンク上位二百社のいわゆる貸金実態調査が出ております。これを見ましても、ノンバンク、ノンバンクと一把からげて言いますけれども、不動産、建設業に対する融資は、ほとんど事業者向け貸金業者、それからさらにはリース会社が圧倒的でございます。この二つだけで八五・五%なんですね。ですから、あとの弱小な、零細な貸金業者までそれも網をかぶせちゃうという、ちょっとこれは行き過ぎじゃないかというような気もします。いわゆる角を矯めて牛を殺すようなことがあってはならぬわけでありますし、またそれぞれ信販会社なんかは本業があるわけでございますから、その本業に差しさわりのあるような規制でもこれまたいかがなものか、かように思います。  そこで、せっかく上位二百社の実態調査もされましたので、一把からげてということではなく、いろいろもっと詳しく金制の方にも審議をお願いするというふうなことも含めて、もう少し実態を細かく調査した上で、ノンバンクに対する規制をするとか法的整備をするとかいうことはあるやもしれませんけれども、私が申し上げたいのは、一把からげて一網打尽にすべてのノンバンクと称するものは大蔵省の指導監督のもとに置くんだというふうなことはいかがなものかな、こう思うのですが、局長、御感想はどうですか。
  127. 土田正顕

    ○土田政府委員 まず、先ほどのお尋ねにありました月刊誌の記事を私はちょっと見ておりませんが、それは昨年のその時点での個人的な感想を述べたものであろうと思います。いずれにいたしましても、私どもは今このノンバンク研究会で御審議をいただいているものの結論について、先入観を踏まえて物事を考えているわけではございません。  それから、ただいま委員からお話がございましたようなノンバンク上位二百社の貸付金の実態調査結果などを見まして、一括してノンバンクと言われているものの中にも、いろいろなものがあるというようなことは認識を深めたつもりであるわけでございます。  ただ、私どもの方の政策目標といたしまして、総合土地政策推進要綱というのがことし一月二十五日に閣議決定になっておるわけでございますが、そこでは「いわゆるノンバンクたる貸金業者の土地関連融資の実態を把握し、より実効ある指導を行えるような方策のあり方について検討する。」こういう政策方針をいただいておりますので、どのような方向があり得るか、これは私どもが検討しなければいけないと思います。  今後ノンバンク研究会の御議論なども拝聴しながらなお考えてまいりたいと思いますが、ただいま委員がお話しになりましたような弱小、零細、全体としてはとにかく三万七千ぐらいの業者がおるわけでございますが、その弱小、零細のものまで綱をかぶせるということはどうなのかというような御指摘、さらに本業に差しさわりを生じてはいかぬのではないかというような御指摘、そのようなこともよく考えてまいりたいと思っております。
  128. 日笠勝之

    ○日笠委員 このノンバンクの資金の借り入れ先をいろいろ調査したデータがございますが、ほとんど金融機関ですね。八七・三%、九割方はいわゆる金融機関から、生保も入っているんでしょうけれども借り入れているわけです。ですから、今回の土地高騰はノンバンクにも確かに責任の一端はあるのかもしれませんけれども、八七・三%も貸し付けておる銀行であるとか生保であるとか損保であるとか、もっとそういうところの元栓を閉めれば自然と流れはとまっていくわけなんですね。そういうことで、海外視察も行かれたようでございますけれども、諸外国では、そういういろいろな実態調査の結果によりますと、ほとんどの国はいわゆる貸し付けておる銀行とか生保とか、金融機関の方をいろいろと規制をしておる、こういうことだそうでございます。  先ほどから私が申し上げておるのは、そういういろいろな細かい実態もよく御承知の上で、一番望ましいのは、やはり八条機関であります金融制度調査会という正式な諮問機関があるわけです。予算書を見ても、委員手当もあり、委員旅費もあり、審議会の開催に必要な費用をちゃんと認めておる。そういう公的な審議会があるわけでございますから、そこへやはり一度お諮りをする、その結論をまって大臣がおっしゃるような法的整備も含めて検討する、こういうことをもう一度大臣にお伺いして、この問題は終わりたいと思います。
  129. 土田正顕

    ○土田政府委員 制度その他についてのお尋ねでございますので、とりあえずちょっと私から申し上げます。  現在取り上げております総量規制、これはノンバンクに対しましては融資額について明確なメルクマールを設けるということにはしておりません。ただ、この残高の届け出をしてもらいたい、報告をしてもらいたいということを義務づけるだけでございます。しかしながら、実態はこのノンバンクに対する資金パイプが細くなっておる、詰まっておるというようなことも仄聞するわけでございます。  そのときの問題は、先ほど委員からもお話がございましたが、ノンバンクは実は貸金業のほかにいろいろなほかの関係のない業種もやっております。そういう業種までも一括して資金がとまるということであってよろしいかというような問題でございますので、元栓を閉めるだけで本当に効果的な、しかも適切な対策と言えるか、それをいつまでも続けることがいいと言えるかというのは、若干問題があるのではないかと思っておるわけでございます。  それから、外国の制度の問題でございますが、確かに間接規制によっているような国、例えば米国などは割合そういうようなことで、金融機関なり銀行持ち株会社に対する監督を通じて行動をウオッチしておるというような国はございます。しかし片一方で、フランスないしはスイスのように貸金業、与信業務それ自体を単独で銀行業務の一つとしておりまして、この業務ごとに銀行法上の免許を取得する必要があるというふうにしている国もございます。したがいまして、諸外国の制度というものは、一言で総括することはなかなか難しいように見ております。  最後に、我が国でも確かに現在は貸金業者には自力で資金調達をする手段はほとんどございませんので、金融機関、保険会社、そういうところが資金供給源になっているわけでございますが、非常に大きなノンバンクの場合には、もう何十という金融機関から少しずつといいますか、パーセントにすればもう数%ずつのシェアで金を幅広く借りておるということでございますので、個別の金融機関を通した肩越しのコントロールというのは非常に困難な状況になっている。そのような状況もまた問題点の一つとしてお考えおきいただきたいと存じます。
  130. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、ノンバンクの件は結構です。ありがとうございました。  それでは続いて議案の内容に入っていきたいと思います。  きょうは外務省の方からもお越しいただいておりますけれども、外務省の方から欧州復興開発銀行を設立する協定書とか外務委員会で審議されました提案理由説明とかをいただいておりますが、この間私が意外に思ったのは、中欧という言葉が出てくるのですね。西欧とか東欧とか言いますが、中欧というのは、我が公明党も中道主義ですから、いよいよヨーロッパにおいても我々は市民権を得たのかなんて思ったりもするのですけれども、中欧というのは新しい概念だと思います。この提案理由説明とか協定書の中にも入っておりますが、どういう概念でしょうか。
  131. 塩崎修

    ○塩崎説明員 お答えします。  御質問の中欧という言葉でございますが、厳密な意味での地理的な概念として用いられているというわけではございませんで、この銀行の受益者たる東欧諸国の意を体しまして、彼らが中欧という名前で呼んでほしいということがございましたので、中欧、東欧という二つの書き方のようになったわけでございます。
  132. 日笠勝之

    ○日笠委員 具体的にはどういう国でしょうか。
  133. 塩崎修

    ○塩崎説明員 具体的にはチェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、この三国がみずからを中欧と呼んでほしい、こういうふうに言っております。
  134. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうしますと、今度は大蔵大臣、先ほど提案理由説明をされました要旨がございますが、中欧という言葉は全然出てこないのですね。「東欧諸国を支援するため」とか「東欧諸国改革を支援する」とかありますが、欧州復興開発銀行は、これはチェコとかハンガリー、ポーランドを除いてそういう任務をするのでしょうか。なぜ中欧が提案理由説明にはないのでしょうか。
  135. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 俗称と言ってはおしかりを受けるかもしれませんが、東ヨーロッパ、西ヨーロッパと体制の違いによって世界が分断されておりました当時、中欧という概念がなかったことは御承知のとおりであります。そして一昨年の夏以降、東独から始まりました一連の体制の変革という流れをとらえましたとき、東ヨーロッパの市場経済化という言葉が一般的に使われておりました。その当時、東ヨーロッパという概念の中には、ポーランドもハンガリーもチェコスロバキアも含まれておったわけであります。いわば東西二大陣営対立の時代における東と西という概念の中で、東ヨーロッパと言う中にポーランド、ハンガリーあるいはチェコスロバキアという国々は含まれておりました。私は、外務省ほど学がありませんので、そういう中欧という言葉が学問的に定着しておるかどうかについては存じません。
  136. 日笠勝之

    ○日笠委員 協定書にあるのですよ。これはこの前本会議で承認した条約ですよ。ですから、これはチェコとかハンガリーとかポーランドがそう言ってくれと言っているわけです。その意向を体して協定書に入れたわけでしょう。だったら大蔵省もそれに対応して、この提案理由説明には中欧及び東欧諸国をというように正確に出さないと、これは提案趣旨説明ですから、こう思うのですが、これは事務方はどうなのですか。そういう意識があったのでしょうか。
  137. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 おしかりを受けるならおわびをいたしますし、なんでしたら外交当局に私から謝り状も書きますけれども、東ヨーロッパの体制変革という言葉が使われておりましたことは委員承知のとおりであります。そして私は、外交的にその中欧というものが定着しておるかどうか、率直に申して存じません。しかし、東西二大陣営の対立、東ヨーロッパの社会主義経済圏、従来から使われておりました日本語はそのように定着をしておったと存じます。ですから、提案理由説明に不備があるというおしかりでありましたら、私の国際的知識の不足ということでお許しをいただきたいと存じます。
  138. 日笠勝之

    ○日笠委員 それはもうやめます。次へ行きます。  欧州復興開発銀行でございますけれどもアメリカの軍備管理軍縮庁の調べによりますと、世界の主な兵器の輸出国、一九八八年度分でございますが、このベストテン以内にチェコスロバキアとかポーランドとかブルガリアが入っておるわけですね。これは兵器を輸出している中欧諸国東欧諸国もあるわけですけれども、そういうところにいろいろな面で支援をしよう、こういうことですね。おまけにポーランドに至っては兵器輸入国でもあるわけです。  さらに、金額を言えばいいのですが、金額の方は言いませんけれども、国防支出、これはミリタリー・バランスから引用いたしますと、ブルガリアは例えば一九八八年の国防支出は、NATOの定義で計算した分でいきますと国民一人当たり百三十四ドル、チェコスロバキアは二百六十七ドル。ちなみに日本は百二十五ドルでございます。また、政府支出に対する国防費は、パーセンテージで言いますとブルガリア六・一%、チェコスロバキア七・六%、ハンガリー七%、ポーランド七・三%。ちなみに日本は六・六%。このように兵器輸出をしていたり輸入をしていたり、国防支出が日本よりも高い。いろいろな事情があるのでしょうけれども、こういう国々にいろいろな意味で、特に民生部門を中心に援助、支援をしていこうということでございます。  私は、この前から予算委員会、本会議を踏まえまして、ODAに対する日本の支援の哲学、理念——イラクに対してもいろいろ各国が武器を輸出しました。また日本もいろいろな意味で武器輸出していたり、国防費が非常に高い国にもODAで援助してきました。そういう意味では、今後は理念、哲学を持って、世界の軍縮・軍備管理という方向へこのODAをどう結びつけていくか、また多国間のこういう支援もどう結びつけていくか、非常に大事な問題だと思うのですね。  本来ならば、その国が民生の安定で使えるお金を武器を買ったり国防費にどんどん回して、そして足らないからお金を貸してください、お金を無償借款でぜひ支援してください、こういうことであれば本末転倒ということになるわけですが、これはどこにお聞きしたらいいのでしょう。そういう多国間の支援についても日本は物を言うのでしょうか。理事会だとか総務会が欧州復興開発銀行にもあるそうで、日本理事になるそうでございますが、そこでそういうことを物を申していくのですか。それとも決められた範囲内でとにかくもうどんどんお金だけを支援していくのか。これは大臣ですね。支援の哲学、ODAは大蔵省が全部一応目を通すわけですから、その辺ひとつ明確なスタンスをお聞きしたいと思うのです。
  139. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 武器輸出三原則を持ちます日本として、今委員がお述べになりました御質問の背景にある武器輸出等に異常なエネルギーを注いでいる国に対しての経済支援のあり方を問いかける、これは私は必要なことであると思いますし、今回のイラクのクウェート侵略から発生した一連の事態の中においても、世界的に大きく取り上げられた問題であると私自身承知をいたしております。  一方、日本経済協力国際社会の相互依存、人道的考慮というものを基本理念としながら、開発途上国の経済社会開発に対する自助努力というものを支援する、そしてその国の経済発展、貧困の救済あるいは国民生活の向上に貢献することを目的としている、こうした視点からまいりますと、確かにその矛盾は非常にあるわけであります。しかし、例えばお隣の中国に対して、孤立化させることは望ましくないという考え方で私は取り組んでおる一人でありますが、中国もイラクに対しての武器輸出を行っていた国の一つ、さらに国際的に今経済支援を求める声の強まっておりますソ連にいたしましても、イラクに対する第一位の武器輸出国、こうした現実が一方にあります。  そうなりますと、やはり基本的にそうした国々に対し、例えば日本の行います援助について何らかの条件を付するといった努力は、当然のことながらしていかなければならないと思いますし、国際金融機関の活動の中におきましても、何らかのコンディショナリティーを必要とするといった議論を提起する責任は我々にあろうと思いますが、実態として非常に困難な局面に逢着することも想定される。こうした点についての合意を国際的にいかにつくり出すかにつきましては、今こういう方策があり得るという自信を持った発言は私自身できません。しかし、何らかのコンディショナリティーというものを頭に置きつつ行動する必要があるという点においては、委員の御指摘と私は同感であります。
  140. 日笠勝之

    ○日笠委員 ポーランド、エジプトの公的債務削減につきまして、最近いろいろ会議もあったようでございますが、現状どうなっていますか。また、大蔵大臣、今後の日本国としてのスタンス、これについてお答えをいただきたい。
  141. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私の記憶いたします限りにおきまして、ポーランドに対する公的債務の削減あるいは放棄というものは、昨年のヒューストンサミットにおいて大陸諸国から提起された、そう記憶をいたしております。しかし、これは大変いろいろな議論がありまして、今後の一つの検討課題として残されておりまして、今日パリ・クラブにおきましてそれなりの方向が出つつあるようであります。  日本としてこの問題を考えます場合に、私から提起をいたしておりました問題が幾つかございます。  一つは、公的債務の放棄あるいは削減という方向を確定する場合、日本としてはその国に対して今後ニューマネーを供与することに非常に大きな問題を生ずる。しかし、ニューマネーがなくて果たしてそれらの国々は生きていけるのかという基本的な問題。もう一つは、だれがどうやってその公的債務の削減あるいは放棄の対象国を決めるのか。言いかえれば、その対象としない国との間の壁をどうつくり得るのか。そしてもう一つの問題は、削減あるいは放棄以外にメニューはあり得ないのか、こんな点でありました。  こうした点につきましてさまざまな論議が交わされております中で、事務的にはある程度進捗しておる部分もあるようであります。そして、そうした基本的な部分についての答えもそれなりにまとまりつつあるようでありまして、私自身から提起をした問題でありますから、それらに対しての答えがある程度明確なものが得られれば、パリ・クラブの方向に日本としても協力をしていかなければならないであろう、今そのように考えております。
  142. 日笠勝之

    ○日笠委員 公的債務ですから、これはいろいろな削減の仕方があるわけですけれども、極端に言えば税金ですね。それから貿易保険だって、一般会計から補てんしなければいけませんから、税金ですね。ですから、スタンスというのをはっきりしないとドミノ倒しになってしまって、もう中南米なんかも累積債務国ですし、どんどん削減してくれ削減してくれとなりますと、また放棄してくれとなりますと、日本は一般会計に非常に大きな痛手というかその影響を受けるわけなんです。ですから、大臣、基本スタンスというもの、日本がそういう意味でもどう貢献できるか、こういうきちっとスタンスを持った上でこの公的債務の削減というものを考えていかなければならないときが来たのじゃないか。日本だけのわがままを言えませんし、そういう意味で、きちっとしたスタンスがもし今あればお聞きしたいのですけれども、お聞きできますか。
  143. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の言われるスタンスという言葉に的確に答えられるのかどうかわかりませんが、昨年来一番大激論になっておりましたのは、一部の国から出されております債務国に対してニューマネーを供与することがその国の累積債務の増大につながり、それはその国に対してプラスに働かないという考え方、これに対して私どもが抵抗してきた論議がございます。  それは、一時的な債務の増大がありましても、ニューマネーが供与されなくなった場合、その債務国の経済はその後果たして機能し得るのか、言いかえれば、ニューマネーの供与は悪なのかという問いかけを我々は他国に対して行ってきたわけでありました。そして、それは同時に、元本の放棄あるいは削減という事態になりましたとき、委員から御指摘がありましたように、まさに国民からお預かりしたお金を使うことでありますから、日本としてはそのような不安定な国に二度とニューマネーの供与はできない。しかし、公的債務の増大するような国は主として民間からの資金の流入が得られない国でありますから、ニューマネーの供与が打ち切られた場合に、それらの国が生存できるかという根本的な問いかけを日本は他国に対して行っておりました。  そして同時に、同じ公的債務の削減という方向でありましても、元本の放棄以外にもさまざまなオプションがあるはずだということと同時に、ニューマネーの供与が悪という考え方は我々としてはとれない、これがもう一点の議論の端であります。我々はこうした点の原則をゆがめずに今日まで議論を続けてきたつもりでありまして、パリ・クラブにおきましても日本のそうした基本的なスタンスというものは維持されるであろう、私はそう願っております。
  144. 日笠勝之

    ○日笠委員 それでは、関税二法の方へ参ります。外務省さん、ありがとうございました。  財政法の第四条「歳出財源の制限」というところで、釈迦に説法ですから第三項だけ読みますと「第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」とあります。公共事業の範囲はこういうものです、こういうことを「国会の議決を経なければならない。」とあります。平成三年度一般会計予算の修正済みのものを持ってまいりましたけれども予算総則第七条に「公共事業費の範囲は、次に掲げるとおりとする。」ということで、各省庁別にずっと出ております。今回たまたま税関に関する法案でもございますので見ますと、税関のところに船舶建造費というのが公共事業費の範囲だということで記載されております。  そこで大臣、頭のクイズでございますけれども、船舶は公共事業の範囲に入るようでございますが、航空機はどうなんでしょうか。
  145. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実は私が運輸大臣のときに、海上保安庁の長距離捜索救難機をどうしても購入したいということで、公共事業で買えないだろうかという相談をかけましたところ、耐用年数が短くてだめだという非常につれない答えを当時の大蔵省主計局から受けました。よって、遺憾ながら航空機は対象になっておらないと存じます。
  146. 日笠勝之

    ○日笠委員 主計局にお伺いいたしますけれども、船舶建造と航空機はどこがどう違うのでしょうか。大蔵大臣は今いみじくも耐用年数とおっしゃいましたけれども、違いを明確に教えてください。
  147. 小村武

    ○小村政府委員 財政法四条のただし書きで書いております公共事業費につきましては、従来から建設的または投資的な経費、つまり、経費支出の見合いが国民の資産として後まで残るもの、その資産によって国民全体が利益を享受することができ、回り回って国民経済の発展に資することということで選定しておりまして、ただいま御指摘の点につきましては、大臣から御答弁申し上げましたように、航空機については船舶に比べ税法上の耐用年数が短いこと等から、公債発行対象経費として取り扱っていないということでございます。
  148. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、総理府所管でこの秋引き渡しになります政府専用機、これはどうして公共事業の範囲にならなかったのですか。耐用年数が短いからですか。
  149. 小村武

    ○小村政府委員 政府専用機についても公債発行対象経費として取り扱っておりません。航空機全般につきまして耐用年数、これは税法上の耐用年数でございますが、その種類によって異なってまいりますが、政府自体がその耐用年数を定めるということは従来から余りなされていなかったこと等もありまして、通常、飛行時間等で規制しておりまして、後々まで残る資産としてのカウントの仕方等におきましても、そういう取り扱いをしてこなかったということでございますので、今回も公債発行対象経費から外しております。
  150. 日笠勝之

    ○日笠委員 そうすると、この税関の船舶建造費は公共事業費ということですが、これは耐用年数は何年の船と考えておられますか。
  151. 小村武

    ○小村政府委員 船舶につきましては、従来から取り扱われておりました官庁営繕に準ずるものとして、いわば海上において移動する点を除けば一種の官庁営繕に準ずるものではないかということで、大きなものにつきましては、耐用年数をある程度持ったものについては、五十三年度以降この対象にしております。税関につきましては、具体的にその船のトン数等において違いますが、実際の運用上は約二十年で運用されていると聞いております。
  152. 日笠勝之

    ○日笠委員 今、五十三年からと言われました。五十三年からいわゆる国債費率がどんどん伸びて、五十四年がピークになっていくわけです。ですから、これは恐らく赤字国債、いわゆる特例公債はなかなか出しにくい、建設国債なら、この財政法四条で範囲を決めれば建設国債だということで出しやすい、こういうことからこの船舶建造費を五十三年から公共事業の範囲に取り入れたのではないかと私は観測するわけです。今回の平成三年度の公共事業の範囲であります船舶建造費を見ましても、警察庁であるとか、大蔵省は税関ですね、文部省の国立学校船であるとか海上保安庁、気象庁、水産庁で、トータルしても百三十億円ぐらいなんです。  そこで、予算委員会に提出されました公債発行対象経費とすき間率を見ますと、五十八年から平成元年の決算までずっと見ましても、大体五百億円以上のすき間率があるのです。すなわち、財政法四条による国債発行額と公債発行対象経費というものを見ますと、すき間率があるわけです。ですから、百三十億ぐらいの船舶建造費ですから、航空機も、これは実は百三十トン以上の飛行機で耐用年数が十年なんですね。二千トン以下の船も十年なんです。減価償却資産の耐用年数等に関する省令、大蔵省令でいくと耐用年数も同じなんです。  そういうような理屈をつけておられますけれども、どうでしょうか、来年度から船舶建造費は公共事業の範囲から除く、こういうふうにされてもいいのじゃないでしょうか。すき間率もありますし、だれが考えても、実は大蔵委員会のメンバー何人かの方に聞きましても、へえ、船舶建造費は公共事業費ですかと新たな驚きを持っておられる方も多々いらっしゃいます。そういう意味ではどうもなじまない。ただ、五十三年の国債費率がどんどん上がっていく中でやむを得ず取り込んだのかなと思うわけですが、大臣、どうですか、来年度から船舶建造費は公共事業の範囲から除く、その方がいわゆる健全財政財政民主主義ということになるかと思いますので。     〔委員長退席、村上委員長代理着席〕
  153. 小村武

    ○小村政府委員 五十三年度におきまして経常経費投資部門を分けまして、厳しく歳出削減に踏み切った年でございますが、船舶建造につきまして、海上保安庁等におきましては大変多額なものでありまして、こうした面で、いわゆる建設公債対象経費としてそれが取り扱われるということは一つのメリットがございました。  ただいま御指摘の、すき間があるではないかということでございますが、これは公債発行対象経費限度いっぱいを建設公債を発行するという意味ではございませんので、その対象範囲として従来どおりこれを取り扱っていくということについては、今後ともその取り扱いを継続してまいりたいと考えております。
  154. 日笠勝之

    ○日笠委員 では、来年度から除外しないということですか。時間がないものですから、もう少し詳しくやりたかったのですが、あとは、関税二法の中に一番大事な問題があります。時間もあと七分しかありませんから、また後日、予算委員会ででもやりましょうかね。  実は私は、この関税二法の法案審議に当たりまして、東京税関の東京外郵出張所、外国郵便物を取り扱う東京国際郵便局内の税関の皆様方のお仕事ぶりをちょっとのぞかせていただきました。そこで私、感じますことは、建物の広さ、キャパシティーが非常に狭いということは、外国郵便物もどんどんふえておりますのでわかるのですが、中でも段ボール、いわゆる開発途上国から来る段ボールのちりあくたというのですか、目に見えないようなほこりがいっぱいなわけですね。税関職員の皆さんはマスクをかけて検査をされておるわけなんです。  そこで私は、特に外郵官署の職場環境改善をぜひ、これは人間の人権の問題でもありますので、ひとつこれは大蔵大臣。なぜかといいますと、東京外郵出張所は近いんですよ。大臣を三期もやっておられるわけでございますし、もしお時間があれば、国会も早く、会期中に終わるようでございますれば、ちょっとのぞいていただいて、税関職員の皆さんのお仕事ぶりもぜひ視察をしていただきたいと思うのですが、その中で感じたことは、非常に狭いということと、それから郵袋の開封の際に生ずるちりあくたですね、こういうもので空気が大変汚染されておるということで、マスクをかけてやっておる。これは私は早急に改善を要求したいと思うのですが、局長、いかがですか。
  155. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 先生には、大変お忙しいところを外郵の現場を見ていただいたと聞いております。大変ありがとうございます。  ただいま御指摘いただきましたように、私ども業務量、いろいろな分野でふえておりますけれども、その中でも国際郵便というのは非常に著しいテンポでふえております。御案内のように、その職場が郵政省の郵便局の一部をお借りするというのが原則でございますので、お借りしたときにはほどほどのスペースであっても、その後の業務量の増というようなことからどうしても狭くなっていく。業務量の増をある程度追っかけるような形で、人の配置はなるべくそういう方へ回してはおりますけれども、建物そのものを広げるというのはなかなか難しいというようなことから、先ほどの御指摘のようなことに相なっておるかと思います。  私どもといたしましても、そういった外郵の職場環境の改善につきましては、より大きな問題はスペースを広くするということでございますけれども、これは私どもだけではなくて、郵政当局との協力のもとでやらなければなりませんので、そういった方面へのお願いをしておりますが、いわばその中での環境問題としては、職員の仕事のやりやすいような、細かいことではございますが、我々のできる範囲で一つずつ前進させていっておるということで、先生から御指摘いただきましたようなじんあいの問題等々につきましても、いろいろ工夫をしながら少しずつ解決を図ってきておるということでございます。
  156. 日笠勝之

    ○日笠委員 個別具体的に要請しておきますが、大阪外郵出張所、神戸外郵出張所はともに、先ほど局長が言われたように、じんあい等で事務所内の空気の汚染が著しいわけでございます。健康管理上もぜひ空気清浄器をつけてもらいたい。検査場の拡張は、先ほどおっしゃいましたように郵政省さんの建物ですから、すぐ広くするというわけになかなかいかないでしょう。それは何とかわかる気がするのです。空気清浄器ぐらい何とか早急に設置できないでしょうか。マスクをかけて検査をしている。これは大変な健康上の問題だと思いますよ。  局長は、かわられるたびにちゃんと視察に来られるそうですけれども、できれば月曜日の朝、狭い検査場に一番山ほど外郵がたまっているときか、いわゆるクリスマス、正月シーズンの山ほど荷物がたまっておるとき、どういう仕事ぶりであるか、そういうときに見ていただければ、これは大変だということになると思うのです。私はたまたまそういうのを見ましたので、こうやって実感を持って申し上げておるわけですが、大阪外郵出張所、神戸外郵出張所に空気清浄器新設、これぐらい何とかすると言ってください。     〔村上委員長代理退席、委員長着席
  157. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 空気清浄器というふうに具体的に指定されますと、郵政省の所管にまたがるものですから、そちらともいろいろ相談しながらという問題がございますけれども、いずれにしても、環境を改善するための努力というのは我々としても意識しておりますので、今後とも努力してまいりたいというふうに思います。
  158. 日笠勝之

    ○日笠委員 大臣、税関職員といったら七千数百人いらっしゃるわけですよ。社会悪物品、ピストルとか麻薬とかを含めて、また、今や地方空港もどんどんできて、わざわざ何時間もかかって税関の検査にも行かれておるわけですし、御苦労というのは私もわかるような気がします。岡山空港も平成三年度予算で何かそういう官署もできるようでございますけれども、ぜひひとつ税関職員の健康上の問題のために、厚生大臣をやっておられた大臣ですから一番理解があると思うのですが、早速郵政省さんと協議をして、大阪外郵出張所、神戸外郵出張所の空気清浄器、即相談をしていただけませんか、大臣。
  159. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今伺っておりまして、果たして委員がごらんをいただいて御提起をいただいた二カ所だけなのか、ちょっと私、心配になりました。  実は私、就任直後に東京税関を見ましたとき、成田の支署の休息室の余りにひどいのにびっくりしまして、これは直してもらったんですけれども大蔵省の中だけでやれることでありましたから、これはすぐ対応ができました。今局長が御答弁を申し上げましたように、郵政省との協議を要する問題のようであります。その二カ所にとどまるのかどうかも含め関税局長の方で全体を調べてもらい、その上で郵政省と相談すべきはしたいと思います。
  160. 日笠勝之

    ○日笠委員 予告でございますが、きょうは附帯決議を付するようになっておりまして、その中には、職場環境の充実に特段の努力を払うことということで、今各党これは大体この方向でいく予定でございますね。そうすると、その後、大臣はずっと毎年こう言われているのです。「ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。」こう言われることになっておるわけですから、ひとつこのことについてはさらに要請をお願いして、終わります。  以上です。
  161. 平沼赳夫

    平沼委員長 正森成二君。
  162. 正森成二

    ○正森委員 短い時間でございますが、まず第一に、航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案について聞かせていただきます。  輸出入貨物の増加とコンピューターの急速な普及の中で、従来の航空運送貨物に加えて海上運送貨物の通関手続も電算化するという本法案に対しては、現代化、近代化の観点から我が党も賛成であります。ただ、関係労働者等あるいは業者等から寄せられている疑問もありますので、若干聞かせていただきます。  海上運送貨物の通関手続を電算化することによって行政サービスの充実と税関のチェック機能の強化、税関労働者の労働条件改善を図り、あわせて通関業者の経営の安定とそこで働く労働者の職域、雇用の安定及び労働条件の向上に資するよう配慮すべきであるというように私ども考えておりますが、そういうように思っておられますか。
  163. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 今回のコンピューター化の対象範囲の拡大は、基本的には、増大する業務量、それに対する税関業務の合理化ということがベースにあろうかと思いますけれども、そのことは同時に、関係するところにもプラスとして寄与するものではないかという意味で、先生おっしゃったことには基本的には同じかと思います。
  164. 正森成二

    ○正森委員 現在のNACCS、ニッポン・エア・カーゴ・クリアランス・システムの略だそうですが、なかなか難しいですね。貨物が集中して業務が忙しくなると、現在のNACCSでもかなりの部分が簡易審査ということで、事実上無審査で通されているようだという声があります。検査すべき貨物を選別する審査区分の選定基準の策定に当たっては、現場の税関職員にその内容を明らかにし、また現場職員の意見を聞く必要があるのではないかと思いますが、それが一点。  その次に、麻薬、けん銃の密輸を摘発することはもちろん重要だが、これに偏重することなく、食品の安全性に加えて、薬事、環境問題など国民の健康と安全を守るためチェックも充実させる必要があると思いますが、いかがですか。
  165. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 二つ御質問いただきました。  第一の点につきましては、コンピューター化することによって検査が甘くなっておるのではないかという御趣旨かと思います。これはむしろそうではないのでありまして、従来、手で、マニュアルで行っております部分、その部分のうち機械でもできる部分というのがいわば迅速化される。それで、実際に検査をするものについては今後もみずからといいましょうか、人の手によってチェックをしていく。問題は、お話の中にございましたように、何を検査対象にし、何を検査省略にするかということかと思います。これはもちろん機械が振り分けるわけですけれども、機械が振り分けるその基準は、あくまでも人が組み込むわけでございます。したがいまして、その審査基準が適正なものとしてセットしてあればうまくその振り分けがついていくはずであるという意味で、その審査基準を適正なものにするということが一番ポイントになるわけでございますけれども、これは事前の予測と結果を常時チェックしながら、問題があれば常にその審査基準を見直していくということによって、より的確な検査対象の摘出といいましょうか、ピックアップをやっていきたいと考えております。  その際に、お話にございましたように、当然、事柄は現場業務とも関連するわけでございますので、単に中央で決めるということではなくて、第一線の税関の経験も十分踏まえながら、フィードバックさせながら随時適切にやってまいりたいというふうに考えております。  それから、二つ目の御質問は、他法令関係の審査もきちんとやれという御質問かと思います。これは、私どもの通関業務、いわば水際でのチェックは、いわゆる税の逋脱という点のチェックだけではなくて、他法令関係につきましても任務として委託されているわけでございます。したがいまして、他法令でありましても、私どもの本来の業務と全く同じような観点で適切にやってまいりたいというふうに考えております。
  166. 正森成二

    ○正森委員 その関連もあって聞きますが、日米構造協議で政府は二十四時間通関体制を約束しておりますが、厚生省の食品検査等他省庁の検査も含めて二十四時間に押し込めるということはとても無理があります。  昨年の四月二十六日、我が党の藤田スミ議員の質問に対して外務省の林経済局長は、「植物検疫、それから家畜伝染病予防などに関する承認を得るための手続につきましては、税関以外の官庁にかかわる輸入手続でございますので、この時間の中には含まれておりません。」こういうぐあいに答弁しております。税関当局、大蔵省も同じ見解をとりますか。
  167. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 お話しの、日米協議の最終報告書の中に出てまいります二十四時間云々というのは、そこにも明示しておりますように、税関への輸入申告書の提出から輸入許可までに要する時間という書き方をしております。したがいまして、検疫等の他省庁関連の輸入手続に要する時間は含まれていないというふうに申していいと思います。ただ、だからといって他省庁部分がどんなに長くかかってもいいということではございませんので、やはり迅速通関というのは別にアメリカ側から言われたからどうということではなくて、やはり我々自身、各省を含めまして迅速ということは共通の課題であるという認識であることは、別途御承知おきいただきたいというふうに思います。
  168. 正森成二

    ○正森委員 アメリカ側は、構造協議の話し合いの中で、それらを含めて迅速化しろ、迅速化しろというように言うておるようでございますので、国民の健康と食品の安全性等のために特に御配意願いたいと思います。  次に、少し細かい問題ですが、NACCSでは航空会社と倉庫会社も参加させているようですが、海上通関電算化システムでは、税関と通関業者と銀行だけを参加させて船会社と倉庫会社は参加させないというように聞いておりますが、そういうように理解してよろしいか。
  169. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 これは先ほどの大木先生の御質問のときにもちょっとお答えしたかと思いますけれども、航空貨物の場合には、電算化する範囲を、いわば通関手続よりももう少し広い範囲で電算化しております。これに対しまして海上貨物につきましては、そのシステムの対象を通関手続というところに限定しておりますので、そのシステムのもとでの関係者というものは、税関、通関業者並びに銀行ということに相なろうかと思います。
  170. 正森成二

    ○正森委員 私の質問の趣旨に沿った答弁だと思います。  次に、通関手数料は大蔵大臣が料金を定めることになっておりますが、通関業界関係の組合等から、現在の最高料金を定める方式から確定料金制度に改め、またコンピューター利用料金等、これは二十万円くらい要るとか言われておりますが、それも反映したものにするように要望が寄せられております。これらについてはどう検討しておりますか。
  171. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 第一の最高料金制を改めろという点につきましては、これまた先ほどもたびたび御質問いただき、なかなか趣旨に沿うのは難しいということを申し上げましたが、やはり事柄の性格上、許可制をとっております通関業者のその料金というのがどうあるべきかということで、通関業全体の健全化というのはもちろん大きな眼目ですけれども、同時に利用者の保護という側面も考えていかなきゃいけないということから、両者のいわば調整という観点で、公共料金ではないけれども、最高制度をとることによってその間の調和を図るということでやってきております。この考え方は、やはりお話のような定額制をとるときの問題点というのは、仮にどんなに類型化を細かくいたしましても、その同じ類型に属する中でも一つ一つ事案ごとに難易度等が違っております。したがって、本質的に無理なところがあるという中では、やはり最高制の方がより合理的な制度ではないのかなというふうに考えております。  それから、システムが導入された後の料金をどう考えるかという点でございますけれども、これは当然のことながら、システムに参加する人がその受益に応じて負担をするという前提でシステムはスタートしていくだろうと思います。したがいまして、それがスタートした後におけるそれらの関係業界の収支状況がどうなっていくのかといったところを十分見定めた後に検討されるべき課題ではないかというふうに考えております。
  172. 正森成二

    ○正森委員 この問題について最後に、電算化システム導入によっても保税地域への搬入義務、関税法六十七条の二ですが、これは当然堅持すべきであると思いますが、いかがですか。
  173. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 現在改正をお願いしておりますコンピューター化の拡大は、現在の関税法あるいは定率法の考え方の基本を変えるものではございません。現在の関税法に乗っかった上で部分的に申告書にかえて電算で申告することもできる等々という、その限度での特例ということでございます。
  174. 正森成二

    ○正森委員 それでは、関税定率法等について伺います。  時間がございませんので、皮革、革靴のTQ制度、割り当て割度ですね、これについて伺います。  この問題については、私は数年前にも質問をいたしました。当初は革靴では八六年度の二百四十五万足から、九一年度の四百八十三万足にほぼ倍増しております。導入当時は、関税割り当て数量枠について今後五年間にわたって毎年ほぼ一〇%ずつ拡大するというようになっておりましたが、その後どんどんふえまして、一五%から九一年度は一七%増ということになっております。その結果どうなるかといいますと、自由化前の八五年度には百十八万足であったのが八九年には三百三十六万足と三倍増、ほかにTQ制度の対象外になっているスポーツ靴というもので革靴がどんどん入ってきまして、甲の部分だけといった半製品を含めますと、自由化前の十倍の約二千万足が輸入されております。  したがって、国内中小生産者は、これまでは十二月、一月に仕事切れがあったんですが、それがうんと早まって十月、十一月から仕事が切れるということが起こっております。私があえて言うまでもなく、皮革、革靴関係は同和地区の本当に生業を支えておるものであります。こういう点についての十分な配慮が行われる必要がありますが、実際上は行われていないのですね。  そこで、通産省来てもらっていると思いますが、数年前に浜岡生活産業局長、通産省におられたのですが、こう答えているのですね。「一つは市場アクセスの改善という国際的な要請、もう一つはいわゆる同和対策地域の基幹産業と言ってもいいような産業分野の将来の地位を確保するという、この両方をにらみながら、いわばまた裂きにならないように対応していくというのが基本であろう」、こう答えているのですが、実際上は著しく国際的配慮が過ぎるんじゃないですか。
  175. 豊田正和

    ○豊田説明員 TQ制度についての御質問でございますが、先生指摘のとおりでございまして、皮の産業、皮革産業は大変重要な産業だと私ども考えておりまして、国内産業事情をよく勘案した上で、それと現在進んでおりますウルグアイ・ラウンドの中での市場アクセスの改善に対する要求、両方をよく見据えて対策を考えているところでございまして、とりわけ先生指摘のとおり皮革産業が同和地区の主要な産業であって、中小零細性が高くかつ国際競争力が乏しいということを考えまして、これまでも慎重に対応してきておりまして、今後もまた慎重に対応してまいりたいというふうに考えております。
  176. 正森成二

    ○正森委員 いいかげんな答弁したらいかぬですよ。初めつくるときは毎年一〇%くらいだと言うておいて、その後一五%から来年は一七%になっているのに、これまでも慎重にやってきたけれども今後もやりますなんて言われて、だれが信用しますか。そんなこと言うんだったら、泥棒の前科何犯というのが、これまでもまじめにやってきましたがこれからも人様の物はとらないようにいたしますと言うたらそれで無罪だというようなもので、通産省は本当によろしくない。  それから関税だって余りよろしくないですよ。一次税率がたしか二七%で二次税率が六〇%だったか、上げているのですね。それを、物の本を見ますと、アメリカの要求もあって四〇%に二次枠を税率を下げようとか、いやいや三三%くらいだとかいうようなのが出ているのですが、ここに持ってまいりましたが「関税と税関のてびき」という税関が出している書類があります。それを見ますと、「一定の数量までは低い税率を適用し、それを超えて輸入されるものについては高い税率を適用するもので、一次税率が適用される数量(関税割当数量)は原則としてその物品の国内需要量から国内生産量を差し引いた数量です。」こう書いているのですね。ところが、こんなものは全然守られてないじゃないですか。だからどんどん輸入されるから、国内の革靴生産などの同和地区の中小業者が、十月、十一月からもう端境期というか、注文がなくなって困るということでどんどん廃業しているのですよ。だから、税関だって自分の言うている説明書と全然違うんじゃないんですか。
  177. 豊田正和

    ○豊田説明員 先生指摘の皮革産業の問題でございますけれども、TQ枠あるいは税の問題につきましても、国内産業の事情、それから市場改善の要求を踏まえまして、関税率審議会の審議などを経まして慎重に検討さしていただいているわけでございます。先生指摘のように、皮革産業に対する影響というものを十分勘案しないといけないわけでございまして、そういう観点から私どもといたしましては、これまでにも対策を講じてきているわけでございますが、今回もこのウルグアイ・ラウンドの中での対応に伴いまして、技術力の向上といったものを一層進行するために、この皮革産業の経営の安定を図ろうということで、平成二年度の補正予算に二十億円を計上いたしましてこの産業対策を図っていこうと考えているわけでございます。
  178. 正森成二

    ○正森委員 これまでもというように言われると、これまではやってなかったじゃないかというように言いたくなるのですが、時間がありませんので、最後に、欧州復興開発銀行について、質問というよりは意見を申させていただきます。  我々は東欧諸国経済再建と当該諸国民の生活向上、そのための国際支援の必要性、緊急性は当然認めております。ところが、設立協定を見ますと、今までのこの種のものにはなかった異例の文言が含まれております。それは、大臣御承知のとおりだと思いますが、第一条に目的がありますね。その目的を読みますと、「複数政党制民主主義、多元主義及び市場経済の諸原則を誓約しかつ適用している中欧及び東欧各国における開放された市場指向型経済への移行並びに民間及び企業家の自発的活動を促進することを目的とする。」こうなっておりまして、これから外れた場合には融資をストップするとかそういうことができるようになっております。これは国際連合の憲章を見ましても、「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること」等々が目的になっておって、内政不干渉というのが、あるいはその制度というのは、自分で自分の国のことは選ぶというのが原則になっているんですね。それから、IMFでも世界銀行でもこういう規定を設けたのはただの一つもないのですね。余りにもひどい、体制選択を融資によって、あるいは融資をストップさせることによって強制するという内容になっているのではないかという危惧をぬぐい去ることができないわけであります。  したがって我々は、緊急の援助が必要であるという立場はとりますけれども、遺憾ながら原理原則の上からこの問題については賛成することができないということを表明しておきたいと思います。  大蔵大臣、もし何か御意見がございましたらお答えいただいて、終わります。
  179. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 特に私から意見と申しますよりも、まさに今委員指摘をされました問題点それ自体が、今回欧州復興開発銀行設置に結びつくその要件であったと思います。それは、東西対立の中から市場のメカニズムというものに着目し、計画経済から市場経済への移行という視点で動き始めた東欧諸国をまさに助けるためにつくろうということでありましたので、委員からはお気に召さないかもしれませんが、非常に率直な内容になっておると、私はそう理解をいたします。
  180. 平沼赳夫

    平沼委員長 中井洽君
  181. 中井洽

    ○中井委員 私どもは、今審議しております三法に賛成であります。十五分でありますので、関連して簡単に幾つかの点で質問をいたします。  欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案の中で、いろいろと勉強させていただきますと、ソビエトに対する融資の規制というものが載っております。これについて御説明をいただくと同時に、どうして一番困窮をしておるソビエトに対してこういう制限がつけられたのか、これらの点について御説明をいただきます。
  182. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 多少記憶が不正確かもしれませんが、お許しをいただきたいと存じます。  この欧州復興開発銀行論議が出ましたとき、G7構成国の中におきましても、大陸諸国とそれ以外の間には相当程度に対ソ連経済というものについての認識の差異がございました。同時に欧州各国の中におきましても、ソ連をこの欧州復興開発銀行の対象に取り込んだ場合、想定されるソ連資金需要というものが極めて多く、肝心の東ヨーロッパ諸国市場経済への移行に十分な資金援助ができないのではないかという考え方もございました。そうした中から、その出資に見合う金額はソ連にと、三年間でありましたか、制限をつけるといったような論議が出てまいりまして、それに対しその後、他の東欧諸国と同等の対応をすべきであるという意見も一時期出てまいったわけであります。しかし、その後のソ連のペレストロイカの状況等々の中でそうした議論も、中途半端な形で終わったと言っては恐縮でありますけれども、中途半端な形で終わり、今回発足に至った、そのように理解をいたしております。
  183. 中井洽

    ○中井委員 先ほど日笠議員から、哲学を持って対外援助をすべきだというお話がございました。今回の欧州復興開発銀行目的等を見させていただきますと、今正森先生からお話があった、民主化自由化を行い、そして市場原理を導入した経済移行する国を助けるんだと、はっきり目的が書かれております。私どもはこの目的に大賛成であります。そういう意味からのソビエトに対する自由化をもっと早く進めなさいよ、あるいはまだまだソビエトの民主化というのは安心できるところまでいっていないという警戒感、そういったものが重なり合ってこういうことも出てきたのではないかと私は理解しておりますが、いかがですか。
  184. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 そうした考え方も全くなかったとは私も思いません。しかし、それ以上に大きかったのは、当時このEBRDの設立に各国が本気で取り組み始めました時点、ソ連経済改革というものの行方がなお明らかでなかった、と同時にその資金の予測が全く立てられなかった、そうした要素の方が私は大きかったような気がいたします。ただ、その後その議論が多少変質をしておることは委員指摘のとおりであります。
  185. 中井洽

    ○中井委員 どういうふうに御質問を申し上げていいかわかりませんが、大半は私の意見みたいになってしまうかもしれませんが、御感想をお聞かせいただきたいと思います。  アメリカという国は、自由あるいは民主主義といったものに対して大変強烈な意識を持っていらっしゃる。そうして自由と民主主義ということであるならばよその国を、困窮をしておるときでも、血を流してでも助けるという国柄じゃないかという感じを抱いております。同時にそれは、今回のイラクの事件のように大成功するときもあれば幾つかの点で失敗したこともあった。しかしアメリカという国の一つの根幹をなすものとして大事にしておる、私はそういうふうに考えております。  アメリカにおります私どもの友人といろいろな話をしましたときに、何人かの人から同じような意見を言われました。それはソビエトや東欧諸国に対して、まあまあみんなで頑張った、そして結局成り立たなくなって共産主義というものを放棄した、そして自由主義と民主主義、市場競争原理というものを導入して、自分らと同じ目的あるいは理念を持った国としてやっていきたい、だから助けるんだ、援助というのはそういうことを考えなければならないんだ、しかるに自由民主党が政権を続けておる日本において、なぜ中国や、あるいはこれから国交回復を交渉しようとする北朝鮮をむやみやたらと助けるんだ、もう少し置いておけばこれらの国々においても自由化民主化というのが出てくるじゃないか、そのときになって初めて日本が大々的に援助をする、これが私どもの理解できる方法だ、こういう話を聞きまして、そういう考えもあるのかと実はびっくりしたり、なるほどなと思ったりいたしております。  先ほどから大蔵大臣、隣国、大国の中国を孤立化させてはならないんだ、過般から大変御努力をいただいて中国との経済援助のお話をおまとめになりましたこと、私どもも敬意を表します。しかし、そういった見方についてどうお考えであろうか。今中国に対します対外援助を見ましたときに、日本が一番巨額なお金を出しておる。しかし一方では、天安門事件もあった、また共産主義というものをいまだに堅持し続けておる。これから国交回復をやろうとされ、自民党さんと社会党さんの代表が情けない交渉をなさった北朝鮮において、日本のお金がむやみやたらに行くということによって余計自由や民主主義というものを弾圧する政府というものが続いてしまう、こういったことをやはり諸外国は見ているのじゃないか、私どもはそういったことも考えながら援助をしなければいけないのじゃないか、こんな思いがいたします。私も友人なんかには、そう言うけれども、中国とは特別の関係、古い関係戦争もあった、また隣人でもあると言えば、その人たちは、ヨーロッパはソビエトあるいは東欧諸国とも隣人であり、古い歴史もあり、いろいろなこともあった、しかしこういうふうに体制をチェンジして選んだからこそ助けるのだ、こういう言い方をいたします。そういった発想、日本もそこまで割り切れるかどうかわかりませんが、私どもも頭の隅に置いていかなければならないのじゃないか、こんなことを思いますが、大臣、いかがですか。
  186. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化問題は、正式の外交交渉が開かれ、動き始めた直後でありますから、政府の一人としてこれについて言及することは避けるべきであると思います。  しかし同時に、私は、中国に対して今委員が述べられましたような御意見が確かに欧米諸国の中に相当根強くあることを承知いたしております。同時に、昨年ちょうどゴールデンウイークの時期がアジア開銀の総会でありまして、私はインドに参りました。その際にも感じたことでありますけれども、個別の会談の中でアジア各国が、そのとき全部触れましたことは、中国をこれ以上孤立化させてしまうことがアジアの安定にいかに不幸なことかということであります。私もそれは本当にそう思っております。そして、欧米は欧米の見方がありましょう。しかし同時に、私は、日本アジアの一カ国として、しかもG7あるいはサミットに参加するアジアからの唯一の国として、アジアの声を背中に受けながら行動することは当然のことであると思っております。その場合に、仮に天安門事件以降のような状態を、中国の体制が変化するまでということでいつまでも続けておりました場合に、アジアは果たして安定するでしょうか。仮に中国が混乱をし、中国から大量の流民が発生するような事態が起きたとき、アジア諸国は安定した国家運営ができるでありましょうか。私はそうは思いません。それは日本にとりましても同様であります。そして、中国大陸からその体制変革のはざまに挟まれた難民が続々と日本に押しかけるような情勢になったとき、果たして日本は後悔しないでしょうか。アジアの中において当然、私は少なくとも共産主義は賛成ではありませんし、社会主義も賛成はいたしません。しかし、その国の国民がどういう政体を選ぶかはその国の国民の選択にかかることであります。他国が介入すべきことではありません。同時に、アジアの安定を考えるとき、私は、中国を国際社会においてこれ以上孤立化させることが望ましいとは考えておらない。G7におきましても、私はそういう主張を今日までもしてまいりました。これからも同様の考え方をもって行動したいと私は考えております。
  187. 中井洽

    ○中井委員 私も中国生まれでありますし、アジアの隣国、大国中国は大変な人口を抱え、いろいろな影響があることは承知いたしております。しかし同時に、私ども多額の援助金を出すやはり一つの大きな目的、あるいはこういう方向へ行ってくれたらなという思いも持っていいのじゃないか。そういう中から少しは物を申し上げてもいいのじゃないかという思いがいたします。  例えば、日本は国連における地位は御承知のようなとおり、中国は国連の常任理事国であります。また、何か日本の政治に対してしょっちゅう御注文をおつけいただく。どうしてだと率直な意見があることも事実であろうか。私どもは何もお金を、援助を差し上げるからえばるとかこうせいとか言うわけではありません。しかし、お互い、向こうもおっしゃっていただくならこっちも言う。そういう中で世界平和、アジアの安定といったことに役立つ援助をともども考えていかなければならない、こんなふうに考えております。  時間がなくなりましたので、最後に、日笠先生からもお話が出ましたが、去年も御要望申し上げましたけれども、税関の職員の方々の待遇改善あるいは定数是正についてぜひこれまで以上に御配慮をいただきたい。特に税関は日本の国の玄関口であります。ここの印象が悪ければ日本の印象が悪くなるということでもあります。量も膨大にふえているわけであります。同時にまた、大阪新国際空港もぼちぼちと見えてまいりました。二十四時間空港ができますと勤務体制も大いに変わってまいります。そういった点から、大臣や関税局長のお考えを聞き、終わります。
  188. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 税関行政について各党から非常に積極的な支援の御意見をいただいておりますことを私は大変幸せに思います。と同時に、それだけ御心配をいただかなければならない状況につきまして、責任者として、胸の痛む部分があることも私は隠しません。そして、今後ともできる限りの努力をしてまいりたいと考えます。  同時に、簡素にして効率的な政府を目指せという国民の声が我々の背後にあることも事実でありまして、第一線の諸君には一層苦労をかける場面が多いと思いますけれども、与えられた定員の中で最善を尽くしてくれることを心から願っております。
  189. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 大臣の御答弁の趣旨に従って我々も努力してまいりたいと思います。
  190. 中井洽

    ○中井委員 終わります。
  191. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  192. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに各案について採決に入ります。  まず、欧州復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  193. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  194. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  195. 平沼赳夫

    平沼委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、田中秀征君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党及び進歩民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。田中秀征君。
  196. 田中秀征

    ○田中(秀)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨説明といたします。     関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 世界経済における我が国の立場を踏まえ、調和ある対外経済関係の形成に努めるとの観点から、多国間交渉への積極的な取り組みとともに、多角的自由貿易体制の維持・強化、世界経済の安定的成長に引き続き貢献し得るようウルグアイ・ラウンドの成功に努めること。  一 関税率改正に当たっては、農産物の輸入問題、製品輸入の拡大等をめぐる情勢に対処するとともに、国民経済的観点に立って、国内産業、特に農林水産業及び中小企業等への影響を十分配慮しつつ、国民生活の安定に寄与するよう努めること。  一 近年の国際化の進展等による貿易量、出入国者数の伸長に伴い、より適正で迅速な処理と麻薬、覚せい剤、銃砲、不正商品、ワシントン条約物品等の水際での阻止が国際的、社会的要請として一層強まっていることにかんがみ、業務処理体制等の一層の見直しを行うことにより税関業務の効率的、重点的運用に努めるとともに、今後とも税関職員の特殊な職務を考慮して、中長期的展望に基づく税関職員の定員の確保はもとより、その処遇改善、職場環境の充実等に特段の努力を行うこと。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  197. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  198. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。橋本大蔵大臣
  199. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  200. 平沼赳夫

    平沼委員長 次に、航空運送貨物税関手続特例等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  201. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  203. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十二分散会