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橋本国務大臣 極めて大きな御質問でありますので、的確な御
答弁になるかどうか私自身必ずしも自信はありません。しかし、私なりに一生懸命お答えをしてみたいと思います。そして、今
委員から
指摘をされました基本的な部分について私はそれにつけ加える何物をも持ちません。ただ、申し上げたいことが二つございます。
一つは、
我が国の
経済そのものをどう見ているかということでありますが、私は、
個人消費、設備投資を中心とした内需主導型の
経済成長というものがこれから先もなおどれだけ続けられるか、そのための
対応策というものをまず我々の頭に置くべきだと考えております。そして、一時の過熱ぎみの
経済運営というものが今安定軌道に乗りつつある
状況をこのまま維持していくということが基本的に我々にとって大切なことでありましょう。そうした
意味では、先般湾岸危機というものに一応の終止符が打たれ、先行きへの不透明感というものが解消すると期待されておることは非常に我々にとって喜ばしいことでありまして、引き続き内需を中心とした持続的成長というものを続けることが十分できる体制になった、そのように考えております。
しかし、物価動向につきまして考えますとき、一部に労働力の需給の逼迫とか、あるいは現在進行しつつありますOPECの原油生産に対する対応が今後どのようになっていくかといった、注意を払い続けなければならないポイントが幾つか存在することも事実でございます。
しかし、それよりも大きく我々が考えておかなければならないのは、まさに
委員が御
指摘になりました国際
経済の中において
我が国が果たすべき
役割をどう規定するかということでありましょう。そして、本当に、私が就任いたしましてから今日までの間非常に大きな勢いで世界
経済が動きつつある、そしてその中に未知の要素を幾つも持っているということを常に私は忘れることができずにおります。その最大のものは何か。東欧の市場
経済への移行、計画
経済から市場
経済への移行というものが進展するその延長線上につい最近までソ連の
経済の変革というものが位置づけられておりました。そして、昨年のヒューストン・サミット等の議論を振り返ってみましても、特に欧州の大陸諸国、ECの中におきましても大陸諸国は、東欧の
経済改革が成功裏に終結するためにはソ連
経済の円滑な運営というものが必要、そしてそのソ連
経済に対して先進諸国が何をなすべきかという
視点から対ソ
経済支援というものを位置づけて論議を組み立てておられました。日本にとりましては北方領土問題という全く他国とは異なる、いわば第二次世界大戦の残滓とも言える問題を抱えておりますために、大陸諸国ほどこの問題に積極的な対応はしてこなかったわけであります。
ところが、その後ソ連のペレストロイカの進捗
状況を見ておりますと、我々はソ連
経済の前途というものに非常な危惧の念を抱かざるを得ません。特にヒューストン・サミットにおきまして、ソ連
経済の分析をOECD、IMF、世銀、そして今般誕生いたしますEBRDの四国際
金融機関が分析を行う責任者となり、十二月末までにその意見を取りまとめるとなっておりましたが、これが出てまいりますと、現在の体制のもとにおけるソ連に対する資金協力というものは非常に効果が薄いという、非常にきつい答えが出てまいりました。しかも、その四国際
金融機関の意見書が出された以降今日までの
状況、ソ連
経済の
状況というものは全然進展を見せておりません。となりますと、このソ連
経済の今後の運営いかんによりましては東欧の
経済改革にも非常に大きな影響を及ぼすという
意味で、これは私どもとしてこれから先極めて大きな関心を持たなければならないポイントであると考えております。
しかも、日本はアジアに位置する国として、アジア全体の
経済に対しても相応の
役割を果たすことが期待されておりました。そしてまたODA等においてそれだけの
役割も果たしております。ところが、そこに湾岸危機というものが発生をし、幸いに戦火は終結いたしましたけれども、今後中東
地域における復興という問題が生じ、同時に、その中東における復興が完了するまでの間における、その中東諸国への労働者の派遣とその送金によって国家
経済の相当部分を支えてきた国々、その
経済影響をどう先進諸国でカバーするかという新たな問題が発生をいたしました。これは従来からありました累積債務国
対策その他とはまた別に発生をした問題として、我々は国際的な枠組みの中でこれに対する
解決策を用意していかなければならないわけであります。
国内におきます百六十八兆円に上る国債残高、この累増にいかに歯どめをかけるか、そして国債依存度をいかに引き下げていくかという
財政責任者としての
役割に加え、新たな国際的な資金
需要の中で日本が果たさなければならない
役割というものを考えますとき、我々としては従来以上に
政策の優先性、個別施策における優先順位とともに節減合理化の
努力を続けていかなければなりませんし、その中で二十一世紀初頭までに日本としての国民生活の質を高めるための
公共投資を着実に実施し、あわせて超高齢化社会に到達するであろう二十一世紀初頭における社会保障
負担にたえる
財政体質をつくり上げるということは極めて難しい問題を多く含んでおります。いわば本当に剣の刃渡りのような運営を続けていかなければならないわけでありますが、これが我々が抱えている課題であり、全力を挙げてこうした目標に私どもは取り組んでいかなければなりません。
今後における日本の
経済運営というものは、こうした
観点から考えますとき、一方においては
我が国の外交
政策の選択と密接にリンクする部分を持ちながら、日本国内におけるそれぞれの問題にいかなる処方せんを書いていくか、要はここに尽きるような気がいたしております。