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1991-03-12 第120回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十二日(火曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 尾身 幸次君 理事 大石 正光君    理事 田中 秀征君 理事 村井  仁君    理事 村上誠一郎君 理事 中村 正男君    理事 早川  勝君 理事 日笠 勝之君       浅野 勝人君    井奥 貞雄君       石原 伸晃君    岩村卯一郎君       衛藤征士郎君    狩野  勝君       河村 建夫君    久野統一郎君       戸塚 進也君    萩山 教嚴君       細田 博之君    前田  正君       柳本 卓治君    山下 元利君       小野 信一君    大木 正吾君       佐藤 恒晴君    沢田  広君       仙谷 由人君    筒井 信隆君       富塚 三夫君    細谷 治通君       堀  昌雄君    井上 義久君       宮地 正介君    正森 成二君       中井  洽君    菅  直人君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 橋本龍太郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  持永 和見君         大蔵大臣官房総         務審議官    濱本 英輔君         大蔵大臣官房審         議官         兼内閣審議官  日高 壮平君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主税局長 尾崎  護君         大蔵省理財局次         長       田中  寿君         大蔵省銀行局長 土田 正顕君         国税庁直税部長 山口 厚生君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      兵藤 廣治君     ───────────── 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   筒井 信隆君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     筒井 信隆君     ───────────── 三月十二日  地価税法案内閣提出第一七号) 同月十一日  共済年金の改善に関する請願伊藤公介紹介)(第一八一一号)  同(粕谷茂紹介)(第一八一二号)  同外一件(坂本剛二君紹介)(第一八一三号)  同(杉浦正健紹介)(第一八一四号)  同(杉山憲夫紹介)(第一八一五号)  同(山村新治郎君紹介)(第一八一六号)  同(宇野宗佑紹介)(第一九一八号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第一九一九号)  同(小杉隆紹介)(第一九二〇号)  同外十三件(小宮山重四郎紹介)(第一九二一号)  同(佐藤敬夫紹介)(第一九二二号)  同(武村正義紹介)(第一九二三号)  同(中山成彬紹介)(第一九二四号)  同(浜野剛紹介)(第一九二五号)  同(山下元利紹介)(第一九二六号)  消費税の廃止、国民本位税制改革に関する請願小沢和秋紹介)(第一九二七号)  同(金子満広紹介)(第一九二八号)  同(木島日出夫紹介)(第一九二九号)  同(児玉健次紹介)(第一九三〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一九三一号)  同(菅野悦子紹介)(第一九三二号)  同(辻第一君紹介)(第一九三三号)  同(寺前巖紹介)(第一九三四号)  同(東中光雄紹介)(第一九三五号)  同(不破哲三紹介)(第一九三六号)  同(藤田スミ紹介)(第一九三七号)  同(古堅実吉紹介)(第一九三八号)  同(正森成二君紹介)(第一九三九号)  同(三浦久紹介)(第一九四〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一九四一号)  同(吉井英勝紹介)(第一九四二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ────◇─────
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  3. 浅野勝人

    浅野委員 土地は持っていればもうかるという神話がありました。土地はほかの商品と違って公共性の高い、国民共有資産です。イギリスの人々には、私有地といえども女王陛下からの預かり物で、いざというときには公のために役立てるという意識が根づいているとも聞いております。  残念ながら我が国では、土地投機対象となり、バブル経済の主役を演じてきました。この神話への挑戦が一連の土地政策であり、それを支える柱の一つ土地税制だと理解をしております。近年の地価高騰はなぜ起こったのか、まず最初大蔵大臣基本認識を承って、論議を進めてまいりたいと存じます。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今回の地価高騰原因を限りました場合は、一つは、東京都心部における事務所ビル需要増大、もう一つは、周辺住宅地における買いかえ需要増大、さらにこれらを見込んだ投機的取引増大などの要因が、金融緩和状況、また土地は有利な資産であるといういわゆる土地神話、こうしたものを背景として複合的に影響を生み、それが周辺部あるいは大阪圏名古屋圏へと波及してきたものと考えております。しかし、基本的には、過去二回の地価高騰に際してそれなりの対応策を講じてきましたが、土地神話というものに対しては手をつけてこなかった、これがやはり根本的な原因をなしている、今そのように私は考えております。
  5. 浅野勝人

    浅野委員 地価は下がることがない、だから土地は確実にもうかる商品だという意識が根強くある限り、地価は安定しないでしょう。必ずしもそうではないということをみんなにわかっていただくことが何よりも大切な解決策一つで、そこに土地問題を解く糸口があるようにも思います。したがって、土地所有にはコストがかさんで割の合わないものだということをわかってもらう必要があります。その意味では、近く当委員会に提出される地価税は時宜を得た土地税制一つだと思います。ただ、固定資産税税率見直しが急がれる環境の中で二重課税となることの自家撞着を政府はどう説明しますか、伺っておきます。
  6. 尾崎護

    尾崎政府委員 ただいま御指摘ございましたように、地価税は、公共的な性格を有します土地という資産に対しまして適正公平な税負担を確保し、そして土地資産としての有利性を縮減しようという観点に立ちまして、一定水準以上の資産価値を有する土地保有に対しまして資産価値に応じて負担を求めようとしている税でございます。したがいまして、固定資産税とは趣旨を異にするものでございます。御承知のとおり、固定資産税は、土地保有市町村行政サービスとの間の受益関係に着目いたしまして、居住用土地も含めまして基本的にすべての土地課税対象とする。それに対しまして地価税は、土地公共性でございますとか資産としての有利性という点に着目いたしまして、資産価値に応じて負担を求めるという点がまず第一に違います。  それから第二に、地価税居住用地原則非課税ということにしておりまして、また、課税最低限を設定いたしまして、広く土地保有一般負担を求める固定資産税と比べまして納税者数が極めて限定されたものになっている。そこも大きな違いであろうかと思います。  このような点から、固定資産税地価税は異なる趣旨、異なる仕組みを持っておりまして、二重課税というようなことにはなっていないと存じております。
  7. 浅野勝人

    浅野委員 土地を持っている法人ないし個人に対する政策だけでは不十分だということは明白であります。  次に重要なことは、土地を商売の道具にしようとしてもそれほどうまみのあるものではないという網のかけ方が必要になってくるということだと存じます。つまり、土地投機対象にしてもらっては困るという観点から、土地譲渡益に対する課税を強化するという、そこに必要性テーマが出でくるものと理解をいたします。租税特別措置法改正する今回の重要なポイントになっている点であります。  そこで、問題の第一、個人長期保有地譲渡益課税を今回一律三〇%に引き上げてみたものの、ロックイン効果があらわれて土地供給がかえって減ってしまい、結果として土地政策全体のねらいに逆行することになりませんか。
  8. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘のとおり、今回の租税特別措置法改正におきましては、譲渡所得税課税を変更することが重要な一つ改正点になっておりまして、個人譲渡所得につきましても重課をする、従来以上に重い税率にするということにいたしております。そういたしますと、売ったときの税金が重くなるわけだから持っている土地を手放さないのではないかという御疑問が出てくるわけでございますけれども、他方におきまして、優良住宅地供給でごさいますとかあるいは公共用地の確保のためでございますとか、そのような目的のための譲渡につきましては従来よりも税金を軽くするという措置もあわせてとっているところでございます。したがいまして、目下最も緊急の問題として土地供給が求められております優良住宅地、それから公共用地等につきましては、従来以上にインセンティブのかかった低い税率となっているという点にも御留意をいただきたいと存ずる次第でございます。
  9. 浅野勝人

    浅野委員 例えば土地転がしのような二年以内の超短期スーパー短期土地売買利益を得た法人が、もともと黒字のところへそれをきちんと出せば、基本税率の三七・五%に三〇%の追加課税となって、国税で六七・五%税金を取られる。それに地方税を加えると、恐らくもうけの八割以上が税金で持っていかれる。取る方は持っていかれるという感覚はあれかもしれませんが、我々納税者の側からするとそういうことでありまして、国税だけでも六七・五%になる。ところが、わざと赤字をつくって土地売買で得た利益でその赤字を埋める、穴埋めをすれば三〇%の課税だけで済むわけですね。この差はちょっと納得しにくい大きな幅で、社会通念から見ても不公平だなという感じが否めません。この逃げ道を今回の改正でどうふさいでいるのか伺っておきます。
  10. 尾崎護

    尾崎政府委員 土地譲渡した場合、法人でございますが、その利益に対しましては、御指摘のとおり超短期それから短期という二つの特別の措置がございまして、超短期の場合には三〇%を追加課税する、短期の場合には二〇%を追加課税するということにしておりました。しかしながら、この追加課税分は、まさに御指摘のとおり赤字法人でございましても――赤字法人でございますとその根っことなる三七・五%の法人税の方はかからない、追加課税分だけかかるということでございましたが、土地転がしの典型的な場合でございます所有期間二年以下の土地譲渡につきましては、これを分離課税方式に改めることといたしまして、赤字法人の場合でありましても土地譲渡利益につきましては根っこから三七・五%プラス三〇%の税率がかかるというように改めさせていただきました。  なお、通常短期譲渡の場合には従来どおりの二〇%の追加課税ということにとどめてございます。  それから、従来特別の追加課税のございませんでした長期譲渡所得につきましても、法人の場合には一〇%の追加課税制度を新たに設けるということにいたしております。
  11. 浅野勝人

    浅野委員 同じことの繰り返しになりますが、要するに、その土地売買をした会社が黒字であろうが赤字であろうがこれはもう全く分離課税で、その企業収益とはかかわりなく土地売買については一律課税をされるので、赤字穴埋めというような形では抜け道にはならない、そういう意味ですね。  これは関連企業連結決算みたいなものを含めて同じですか。
  12. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘は、土地取引赤字法人を介在させることによって、その法人の持っている赤字土地譲渡益とを相殺してしまうというような経理上の操作が行われることに対しての御懸念だと存じますが、御指摘のとおり、今回超短期の場合には分離課税としてしまいますので、根っこ収益赤字になっているかどうかということにかかわりなく、黒字法人であろうと赤字法人であろうと合計して六七・五%の税金をいただくということになります。まさに御指摘のとおり、例えば企業間のいろいろな経理の帰属によりまして根っこ赤字土地譲渡益とを相殺させるというような処理を防ごうという考え方でございます。
  13. 浅野勝人

    浅野委員 三つ目は、買いかえの問題です。  これまで買いかえは、十年たてば企業にとって打ち出の小づちと言われてきました。その意味は、地価が上がった近郊の工業用地などを売ってそのお金でほかのところへマンションを建ててもうける。そういった場合、土地を売ったもうけの八〇%が課税を繰り延べされるので、大変有利な結果になるから、企業にとって十年たてば打ち出の小づちという表現が使われてきたのだと思います。これが地価高騰全国に拡散した元凶だと私は思っております。私の地元でもそうですけれども、地方都市マンション土地が随分このところ値上がりをしてきた原因一つであることは間違いないでしょう。ところが一方で、この優遇税制は多極分散地方への分散を促してきたことも事実であります。  こうして考えてみますと、国土の有効な利用政策に沿ったいい点とよくない点とがあるということがはっきりしてまいります。どれがよくてどれがよくないか、その間の線の引き方を間違ってもらっては困ります。今回はどういう考え方でそのあたり整理してありますか、伺っておきます。
  14. 尾崎護

    尾崎政府委員 法人が、あるいは個人でも事業用のものですと同じでございますが、土地を売りましてそこに収益を生じたという場合には、その売った目的事業用資産買いかえのためでございましょうと、また単に不要であるから売ったという場合でございましょうと、本来でありますと、実現した値上がり益でございますからそこに課税が生ずるというのが通常のことなのでございます。しかしながら、事業用資産買いかえにつきましては、国土利用政策あるいは土地政策観点から特別に課税繰り延べ措置というのが講じられてまいりました。  いろいろなケースがあるわけでございますが、例えば移転促進のための買いかえ、わかりやすい例で申し上げますと、大気汚染規制区域の中から大気汚染を生じているような工場が、ばい煙発生施設があるわけですけれども、そういうものを持って地域外に移っていくというような移転促進のための買いかえでございますとか、逆に誘致促進、例えば農村地域工業等導入地区に移っていくような場合には課税留保をいたしましょうとか、そういうように特定目的を持って国土利用政策の上から考えられているわけでございます。既成市街地内におきましても、同じ土地に高い建物を建てまして、土地を持っている方が例えばマンションの一番上のところを自分のものとして買いかえる、そういうようなことをやった場合には、それも課税留保ということになっている。  その中に、御指摘の例といたしまして、長期保有、十年以上持っている土地から減価償却資産買いかえるという制度がございます。これは大変特定されていないものでございますから、御指摘ございましたように、十年たった土地を売りまして減価償却資産買いかえる、マンションという御指摘がございましたが、そのようなものにどんどん買いかえていく、それが地価上昇地域の高い地価買いかえ先の方に波及させる一つ原因となっている、あるいは大都市圏における建物工場等についての過大な需要をもたらしている、仮需要のようなものまでもたらしているという御指摘がございまして、今回この買いかえ制度を全般的に見直しまして、この買いかえ特例制度趣旨が生かされますように、必要なものは残し、好ましいものはさらに進める、例えば工業配置促進法移転促進地域から誘導地域に移る場合にはこれは優遇をするというような見直しをいろいろとしているわけでございます。  このようなことによりまして、従来事業用資産買いかえにつきましていろいろ御批判のありました点を改善いたしまして、土地政策弊害を生じないような措置を講じているところでございます。
  15. 浅野勝人

    浅野委員 私がただしたもう一つ意味合いというのは、土地値上がり全国に拡散する元凶になった意味合いというのは、首都圏東京の中で高い、随分値上がりした工場用地などを売って、そのお金地方都市の空き地を次から次に買っていく、そうすると、これは税金を払わないでいいというわけではありませんけれども繰り延べされていきますから、地方都市買い主が、土地マンションを買う人がほとんど東京の人とか大阪企業とかというのが随分目立っていて、それが地方都市地価やその種のマンションなどの住宅をつり上げている。その地域的な規制というのはきちんと線が引かれているわけですか。
  16. 尾崎護

    尾崎政府委員 事業用資産買いかえにつきましては、現行制度では実は十五種類細かく分かれておりまして、その中には、先ほど申しましたように移転促進とかあるいは誘致促進というように、非常に地域等を指定いたしましてはっきりとしているものもございますが、御指摘のございました長期保有土地から減価償却資産買いかえるケースにつきましては、実はそういう土地的な、地域的な制限がはっきりしておりませんので、御指摘のような弊害を生むのではないかということが懸念されているわけでございます。  それから、やや似た例といたしまして、既成市街地等の内から外への買いかえという制度一つございまして、割合東京の真ん中の土地を売って出ていくわけですが、既成市街地からちょっと出たところ、東京周辺の、本当はそこにもまだ大きな土地問題があるというようなところに買いかえているという例もございます。このようなケースにつきましては、買いかえの圧縮割合、現在八〇%が原則でございますが、それを六〇%に縮小するというような措置も講じているところでございまして、一カ所の土地高騰がまた他の地域に波及するというような弊害を防ぎたいと考えているところでございます。
  17. 浅野勝人

    浅野委員 それからもう一点、収用などの場合の譲渡に係る特別控除ですけれども、一般が五千万円で農地が八百万というのはちょっとどうでしょうか、農家の方々にもうちょっと考えてさしあげる余地というものはないものでしょうか。
  18. 尾崎護

    尾崎政府委員 八百万円のケースは、農地から農地買いかえるケースでございまして、一定農地土地区画整理などによりまして、一定特定目的を持った農地整理をする、それに応じて土地譲渡しなくてはいけないというケースに適用されるものでございまして、農地でございましても公共収用対象となるようなケースにつきましては、五千万円が適用になるわけでございます。
  19. 浅野勝人

    浅野委員 そういう意味ですか、わかりました。  大臣、これから大蔵委員会地価税について審議をさせていただきますので、土地を持っている人たちに対する、ただ持っているということが必ずしもメリットのあることではないという一つ税制の側面を、法案が出てきたら審議をさせていただくわけですけれども、この租税特別措置法改正によって、土地売買土地商品として扱うことが必ずしもうまい話ではないのだ、うまい商品ではないのだという御決意だと理解をいたします。  きのうの数字ですと、首都圏で、東京で、わずかですけれども地価が下がったという近年珍しい数字を聞いて、いささかこれまでの努力が幾らか実ってきているのか、偶然なのか、どちらなのかという感じがしております。これらもろもろのテーマに取り組む大臣決意を伺っておきます。
  20. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、本来税制が余り役割を果たさなくても、都市計画等において非常に厳しいものがきちんとつくられている状態というのが、土地の問題を考える上で一つのかぎだと考えてまいりました。  先日、予算委員会におきましても、ドイツの都市計画のあり方を日本の都市計画と対比された御意見がございましたが、過剰な値上がりといったものに対して都市計画そのものが対応できる仕組みというものは本来望ましいものだと私は考えております。しかし、残念ながらそういう状況にない我が国において、土地基本法というものによって土地の哲学が生まれた。それを土台として、保有につきましても、また譲渡につきましても、土地神話というものを崩す、その役割の一角を税が担う立場にございます。  そして、そうした背景を考えますとき、私は、その一つ対策土地問題すべてに対応できるとは考えておりません。しかし、今回御審議をいただいております租税特別措置見直しあるいは今後御審議をいただくことになります地価税、こうしたものが組み合わせられることによりまして、税は、地価対策土地問題における一つの大きな役割を担うことができる、そう信じておりまして、今委員がお述べになりましたような東京における現象が、偶然の状況といったそしりを受けないように、我々としても今後努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  21. 浅野勝人

    浅野委員 最後に、市街化区域内の農地宅地並み課税について、そのありようを伺っておきたいと存じます。  元来、十年以内に市街化すべき地域にある農地ですから、今やそれが貴重な空間になっております。ですから、農業をここらあたりでやめたいという人の土地をできれば市町村買い上げて、公園や公民館のような公共施設にして、民間の乱開発ミニ開発をできれば避けていくということになりますと、貴重な空間が引き続き残ることになります。つまり、宅地並み課税土地税制都市政策がリンクして初めてよい結果があらわれるシステムだと私は考えております。  したがって、地方自治体がもう農業をやめたいという人の土地を、農地を買える手だてをもっと政府全体で、とりわけ財政当局が考えてやることが極めて肝要だと思いますけれども、大臣最後に、これは長期的な視点でとらえていくこととは存じますが、いかがでございましょうか。
  22. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員からお述べになりましたような視点というものは、私は、今後の都市における環境というものを考えます場合になくしてはならない大切な視点だと思います。そして、これまでも公共用地先行取得等事業債など種々の財源措置を講じてまいりました。平成三年度には、地財計画の上で土地開発基金積み増しを講じております。こうしたものを活用していただくことによりまして土地の有効的な公共利用の推進が図られる。その中において、今委員がお述べになりましたような緑地の保全を初めとする地域環境づくりというものも、当然のことながらお考えをいただけるでありましょう。私どもとしてもそうした視点を持って今回土地開発基金積み増しという手法を講じたところでございます。
  23. 浅野勝人

    浅野委員 終わります。
  24. 平沼赳夫

  25. 小野信一

    小野委員 大蔵委員会は、新人や新入生に対して大変親切な答弁をするところだと聞いております。私は新入生なものですから、端的に、しかも的確な答弁をまずお願いをいたしておきます。  最初に、大臣の所見をお伺いいたします。大臣は既に一年半以上の任期を務めております。大臣の頭の中には橋本財政論あるいは橋本金融論の骨格ができ上がっているのじゃないか、こう拝察をいたします。  大蔵省の資料によりますと、財政とは、政府地方公共団体の行う経済活動である、こう規定をいたしまして、その機能として、第一に資源配分の調整、第二に所得の再配分、そして第三に経済安定化三つを挙げております。  しかし、我が国の現在の財政金融の動きを見てまいりますと、この三つ機能で果たして小括弧でくくることができるんだろうか、そういう感じがいたします。  国民経済は家計、企業及び政府の三部門から構成されて経済活動を営んでおるわけですけれども、現状、我が国は貿易や資本取引によって海外との経済活動の領域が大変大きくなってまいりました。世界の人口の三%、世界のGNPの三%から、人口は同じであってもGNP一五%を持つ経済大国に成長いたしました。この量的拡大が経済財政の質的転換をもたらすのは当然だと私は考えております。ODA、資本取引、通貨市場への介入、過去の財政金融政策とは異なった機能が付加されるのは当然だと思います。財政金融の責任者として現場にいる大臣は、過去の財政金融政策と現在の財政金融政策を比較してどんな実感をお持ちになり、どんなことが大切だとお考えになりますか。
  26. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 極めて大きな御質問でありますので、的確な御答弁になるかどうか私自身必ずしも自信はありません。しかし、私なりに一生懸命お答えをしてみたいと思います。そして、今委員から指摘をされました基本的な部分について私はそれにつけ加える何物をも持ちません。ただ、申し上げたいことが二つございます。  一つは、我が国経済そのものをどう見ているかということでありますが、私は、個人消費、設備投資を中心とした内需主導型の経済成長というものがこれから先もなおどれだけ続けられるか、そのための対応策というものをまず我々の頭に置くべきだと考えております。そして、一時の過熱ぎみの経済運営というものが今安定軌道に乗りつつある状況をこのまま維持していくということが基本的に我々にとって大切なことでありましょう。そうした意味では、先般湾岸危機というものに一応の終止符が打たれ、先行きへの不透明感というものが解消すると期待されておることは非常に我々にとって喜ばしいことでありまして、引き続き内需を中心とした持続的成長というものを続けることが十分できる体制になった、そのように考えております。  しかし、物価動向につきまして考えますとき、一部に労働力の需給の逼迫とか、あるいは現在進行しつつありますOPECの原油生産に対する対応が今後どのようになっていくかといった、注意を払い続けなければならないポイントが幾つか存在することも事実でございます。  しかし、それよりも大きく我々が考えておかなければならないのは、まさに委員が御指摘になりました国際経済の中において我が国が果たすべき役割をどう規定するかということでありましょう。そして、本当に、私が就任いたしましてから今日までの間非常に大きな勢いで世界経済が動きつつある、そしてその中に未知の要素を幾つも持っているということを常に私は忘れることができずにおります。その最大のものは何か。東欧の市場経済への移行、計画経済から市場経済への移行というものが進展するその延長線上につい最近までソ連の経済の変革というものが位置づけられておりました。そして、昨年のヒューストン・サミット等の議論を振り返ってみましても、特に欧州の大陸諸国、ECの中におきましても大陸諸国は、東欧の経済改革が成功裏に終結するためにはソ連経済の円滑な運営というものが必要、そしてそのソ連経済に対して先進諸国が何をなすべきかという視点から対ソ経済支援というものを位置づけて論議を組み立てておられました。日本にとりましては北方領土問題という全く他国とは異なる、いわば第二次世界大戦の残滓とも言える問題を抱えておりますために、大陸諸国ほどこの問題に積極的な対応はしてこなかったわけであります。  ところが、その後ソ連のペレストロイカの進捗状況を見ておりますと、我々はソ連経済の前途というものに非常な危惧の念を抱かざるを得ません。特にヒューストン・サミットにおきまして、ソ連経済の分析をOECD、IMF、世銀、そして今般誕生いたしますEBRDの四国際金融機関が分析を行う責任者となり、十二月末までにその意見を取りまとめるとなっておりましたが、これが出てまいりますと、現在の体制のもとにおけるソ連に対する資金協力というものは非常に効果が薄いという、非常にきつい答えが出てまいりました。しかも、その四国際金融機関の意見書が出された以降今日までの状況、ソ連経済状況というものは全然進展を見せておりません。となりますと、このソ連経済の今後の運営いかんによりましては東欧の経済改革にも非常に大きな影響を及ぼすという意味で、これは私どもとしてこれから先極めて大きな関心を持たなければならないポイントであると考えております。  しかも、日本はアジアに位置する国として、アジア全体の経済に対しても相応の役割を果たすことが期待されておりました。そしてまたODA等においてそれだけの役割も果たしております。ところが、そこに湾岸危機というものが発生をし、幸いに戦火は終結いたしましたけれども、今後中東地域における復興という問題が生じ、同時に、その中東における復興が完了するまでの間における、その中東諸国への労働者の派遣とその送金によって国家経済の相当部分を支えてきた国々、その経済影響をどう先進諸国でカバーするかという新たな問題が発生をいたしました。これは従来からありました累積債務国対策その他とはまた別に発生をした問題として、我々は国際的な枠組みの中でこれに対する解決策を用意していかなければならないわけであります。  国内におきます百六十八兆円に上る国債残高、この累増にいかに歯どめをかけるか、そして国債依存度をいかに引き下げていくかという財政責任者としての役割に加え、新たな国際的な資金需要の中で日本が果たさなければならない役割というものを考えますとき、我々としては従来以上に政策の優先性、個別施策における優先順位とともに節減合理化の努力を続けていかなければなりませんし、その中で二十一世紀初頭までに日本としての国民生活の質を高めるための公共投資を着実に実施し、あわせて超高齢化社会に到達するであろう二十一世紀初頭における社会保障負担にたえる財政体質をつくり上げるということは極めて難しい問題を多く含んでおります。いわば本当に剣の刃渡りのような運営を続けていかなければならないわけでありますが、これが我々が抱えている課題であり、全力を挙げてこうした目標に私どもは取り組んでいかなければなりません。  今後における日本の経済運営というものは、こうした観点から考えますとき、一方においては我が国の外交政策の選択と密接にリンクする部分を持ちながら、日本国内におけるそれぞれの問題にいかなる処方せんを書いていくか、要はここに尽きるような気がいたしております。
  27. 小野信一

    小野委員 我が国の国際的役割が大きいという観点からすれば、現在の我が国財政金融の現状は最低でもどんな条件を備えていなければならないのか、国際的役割を果たすために我が国財政政策金融政策は最低でもどんな条件を備えておらなければならないのか、整備しておらなければならないのか、大臣の所見をお伺いします。
  28. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 基本的には、我々は先般のG7声明にも記されましたように、成長へのリスクと同時に、いわゆる二つのリスクというものを常に頭に置いた運営を必要とすると考えております。しかし、中長期的に考えましたとき、殊に金融政策の中で私どもが考えていきたい、また、いく必要が既に生じておると考えますのは、一つは、日本の通貨であります円が、国際通貨市場においてドルとのみリンクしている現況が望ましい姿であるかどうかということに対する検討であります。  私は就任以来、G7あるいはサミットの蔵相レベルの会合におきまして、日本とアメリカだけではなく欧州の通貨、日米欧の三極の通貨が一定の枠組みの中で安定した仕組みをつくることはできないだろうか、言いかえればドルとのみ連動するのではなく、欧州の主要通貨としてのマルクでも結構でありますが、欧州通貨とリンクして考える場所をつくっておく必要がある、三極の通貨の安定した仕組みが必要だということを言い続けてまいりました。最近、ようやくこうした主張にセブンのほかの国の中でも耳をかしてくれる国が出始めております。しかし、まだ残念ながらこの仕組みをつくることができてはおりません。今後における検討の一つの大きな課題でありましょう。  もう一つは、国際的な資金の流れの中において、現在もいろいろな角度から論議をされておりますけれども、累積債務国における債務の縮減というものについてどのような手法をとることが国際経済の上から望ましいかという問題であります。  最近、ときどき市場にも伝えられておりますように、公的債務の放棄あるいは削減という手法をもってこうした国々に当たるべきだという意見が世界の一方にはございます。しかし、この主張は、そのまま延長線上で論議を続けていきますと、累積債務国に対するニューマネーの供与が悪という議論につながりかねないわけであります。しかし、仮に公的債務が削減をされたといたしまして、あるいは特定の国について放棄が行われました場合に、民間の金融機関がそうした危険性のある国にニューマネーを供与するかといえば、これは私は非常にリスキーな話だと思います。しかし、債務が削減されたままニューマネーが供与されない状況で、果たして累積債務国の経済の再建ができるかといえば、これは私は非常に大きな問題があろうかと思います。少なくともその国が必要とするニューマネーがどこから来るのか。そうした手法をとりましたときには民間からなかなかそうした資金は来ないでありましょう。こうした点についても、私どもはできるだけ早い時期に一つの答えを出さなければなりません。  同時に、為替という点に着目して問題を申し上げますならば、ある意味では為替相場というのは生き物でありますけれども、基本的にはそれぞれの国の経済のファンダメンタルズというものを反映すべきものであります。そうした点における反映の仕組みというものをいかに整えていかなければならないのか。こうした点を我々としては今後の財政金融政策の運営の中で常に脳裏にとどめておかなければならない、そのように考えております。
  29. 小野信一

    小野委員 一九八六年の四月に前川レポートが出ました。この中に、内需中心の国際協調型経済構造への変革を図る中で、国民生活の質的向上を目指し、真の豊かさを追求すべきだ、こう書いてあります。この前川レポートは、当時中曽根総理も財界もあるいは労働界等の皆さんも大変歓迎し支持した文書でございます。しかし、その後の経過を見ますと、地価高騰、株の高騰資産格差が拡大をいたしまして、国民生活は逆に質的に低下をしたのではないか、後退したのではないかと思われます。前川レポートの目標と現状について、大臣はどういう御感想をお持ちになりますか。
  30. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 当時私も前川リポートの指摘する方向というものに非常な感銘を受けながら目を凝らした一人であります。そうして、前川リポートの示唆する方向というものに大枠としては日本経済全体は動きつつあると私は考えております。ただ、強いて問題点を拾い出しますならば、今委員が挙げられました地価高騰以外に、私はもう一つ問題点があったような気がいたします。  それは、急速な円高の進行により、むしろ産業構造の変化が将来の日本のあるべき産業構造というものをイメージしながら転換をしていくという要素よりも、円高誘導によっていや応なしに変わらざるを得なかった産業が多かった。結果としては、それは日本全体の産業構造、いわゆる重厚長大型の産業構造から、軽薄短小という言葉を私は好きではありませんけれども、知識集約型の産業構造に移行する間に非常なギャップを生じた部分がある。これは、労働力の需給体制についてもひずみを残す一つの大きなポイントであったような気が私はいたします。しかも、円高誘導の中でいや応なしに変わらざるを得なかった産業構造というものは、これが一たん円安に振れた場合には非常に基盤の弱い産業構造ということも言えるわけでありまして、この辺をいかに定着させるかということについては、今日もなお、例えば通産当局が努力中であり、我々もまた心して予算編成等で配意いたさなければならないテーマとして存続をいたしておる。  そうした問題点は内在いたしておりますけれども、前川リポートの目指した方向に日本全体が大きく動いているということは間違いない、私はそのように思います。
  31. 小野信一

    小野委員 前川レポートの達成度は国土政策を含む多様な角度からの検討が必要でありますけれども、その批判の一つ金融サイドから見てみますと、規制緩和のもとで何らの政策的誘導もなく資金の需給のままに膨大な資金が無軌道に動いていたため大きなひずみが生まれた、こういう批判がありますけれども、金融財政政策の責任者としてどういうお感じを持ちますか。
  32. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ちょうど不況から脱出をいたします時期、ある程度金融が景気を誘導しようといたしました時期に、たまたま東京地区におけるオフィス需要の急激な増大とか幾つかの要因が重なり地価高騰を招いた、これは事実として否定のできないことであると私は思います。また同時に、不況の中において、土地というところに金融機関が新たな融資を求めたという行動があったことも私は否定をいたしません。そして、これはある程度までは私は必要な行動であったと思います。しかし、それが行き過ぎて問題を今日に残したという点について、私は金融当局の責任を全く否定する意思はございません。我々として、先ほど浅野委員にもお答えをしたことでありますけれども、過去二回の地価高騰の際、土地神話というものを破壊し切れないままに終わっていた、その結果が今回、今、本委員会にもさまざまな御苦労をいただき、地価を安定、抑制させていくための施策について御論議をいただかなければならないいわばベースをつくったという点におきまして、私は金融政策当局としての責任を回避するつもりはございません。
  33. 小野信一

    小野委員 この一連の動きから私どもが学び得たことは、資金の需給のままに放置された過剰資金は、有効な誘導がなければ国民生活を質的に高める公共的事業には回ってこないということであります。流れないということであります。まことに単純な事実にはっきり気がつきました。したがって、今後の金融政策は、資金を積極的に誘導することによって社会資本の整備に、国民生活の質的向上に資するようにコントロールすることだということを示唆したものだと私は思いますが、いかがです。
  34. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに今委員が御指摘になりましたように、私どもが今後留意をしていかなければならない教訓が今回の情勢の中には幾つか含まれておると思います。過去を振り返ってみましても、第一回の地価高騰の時期、まさに高度経済成長による人口、産業の急速な都市部への集中、また第二回目、昭和四十年代の地価高騰というものが列島改造ブームと同時に金融緩和、過剰流動性の発生が重なった。こうした中から我々は幾つかの教訓を得たつもりでありました。しかし、それが基本的に崩れた最大の原因というものは、土地神話というものを完全に破壊し切れていないというところにあったわけでありますが、今委員が御指摘になりましたような視点というものも我々は今後心にとめておかなければならないもの、そのように考えております。
  35. 小野信一

    小野委員 その民間資本の誘導の基本は、有効性のある投資を保障することにあると私は思います。強制的に資金を誘導することではないはずと私は思います。市場経済のもとでの金融政策は金利等による誘導が原則であって、強制的な措置によって政策の実現を図ることになれば、必ず実体経済にゆがみが生ずるからであります。このような財政金融政策の基本を今後ともしっかり守っていける、いかなければならないとお考えになりますか。
  36. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から金利にお触れになりましたけれども、金利政策そのもの、御承知のようにこれは日本銀行が専管すべきことでありまして、私から云々することは避けたいと思います。  と同時に、一点申し上げたいのは、金融政策によってと委員指摘がございましたし、民間資本というものについて余り規制を加えることはという御指摘でありましたけれども、その辺について我々が一番問題としてこれから考えなければならないものと思いますのは、まさに今回の地価高騰の中で民間の資本の流れというものが規制が加えられなかった結果、土地という資産に集中したのではなかろうか、それは過度な土地値上がりを誘発し、ひいては国民生活に影響を与えるものになったのではなかろうか、それは、ただ単に金利誘導といったことだけでしのげるものではない、やはりある程度政策的な誘導というものは必要ではなかろうか、私はそんな感じがいたしております。しかし、行政が過剰にこうした分野に介入することが望ましくないということはそのとおりでありまして、いわばそのバランスを我々が常に気をつけていかなければならない、そのような御指摘と受けとめさせていただきたいと思います。
  37. 小野信一

    小野委員 私がここまで質問をいたしましたのは、具体的提案をしたかったからであります。  例えば、民間の有効資金を公的国民生活の向上のために投資させるために、例えば地方債を免税債にするというようなことはいかがなものでしょう。あるいは利子部分を、一定条件を付して一般会計から補給するというようなこと、あるいは財政力の弱い地方公共団体に連合債を認めて、それに県等が信用保証するとかによって民間資金を有効的な投資として参入させる環境をつくる、こういう形で過剰流動資金を公共設備の充実のために使う、こういう考え方大蔵省としておとりになるつもりはございませんか。
  38. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 しばらく前から、委員もよく御承知のように、民間金融と郵貯の問題がしばしば論議の対象になっております。私は、必ずしも郵貯育成論者ではございませんでしたし、今日も必ずしも郵貯育成論者ではございません。と申しますよりも、国と民間との役割分担ということを考えます場合に、国というものはやはり民間の補完的な立場であるべきだという私は基本的な考え方をとっているからであります。  にもかかわらず、私は、実は大蔵大臣としての立場ではないさまざまな時期に、民間金融機関の方々からその郵貯問題についてのお話をいただくとき、常に同じ質問をぶつけてまいりました。それは、財投原資としての郵貯の役割というものを考えるとき、仮に郵貯にブレーキをかけるなら、その郵貯の果たしている役割を民間金融機関が代行していただくだけの自信が持てなければ、国としての政策選択の中で民間金融機関の言い分に必ずしも耳を傾けるわけにいかない場面がある。それは何かといえば、長期低利に資金を固定することが民間金融機関としておできになるであろうか。言いかえれば、今の財投で行われておりますような、例えば非常に長期間の資金固定を必要とする地域の再開発でありますとか、こうした分野に対して民間金融機関は資金を固定する自信がおありかという問いかけでありました。残念ながら、実はそれに対して、今財投が果たしております役割を民間で代行し得るという積極的なお答えは返ってこないわけであります。  たまたま今委員の御質問を承りながら、有名なアーサー・ヘイリーの「マネーチェンジャーズ」という小説を思い出しておりましたが、あの小説の主題は、要するに銀行の経営方針として地域に対する企業のいわば貢献というものを金融資本の中でどう位置づけるかというテーマでありました。まさにその地域の行う開発事業というものに民間金融機関としてどれだけの資金を固定するかという部分でありました。同じ問いかけをいたしまして、実は残念ながら、今財投原資が果たしてくれておりますようなところまで民間の金融機関が責任を持って行うという答えはなかなか返ってこないわけであります。これは大変寂しいことでありますし、今委員がお述べになりましたようなお考えというものは私は一概に否定をいたしません。しかし、果たしてそういうものを工夫いたしたとし、それだけの役割を民間が果たしてくれ得るだろうか。必ずしも私は自信が持てない、率直に申し上げてそういう感じがいたします。殊に今金利の自由化が進みつつある中におきまして、金融機関のポジションにも変化が生じております。そうした場合に、委員から御提起をいただきましたようなものに民間がそれだけ積極的に乗り出してくれるかどうか、私は必ずしも自信が持てません。  と同時に、これはおしかりを受けるかもしれませんけれども、私は、地方財政を考えますときに一つぜひお考えをいただかなければなりませんのは、特定の自治体に非常に大きな財源が集中し、地方自治体間における財政のアンバランスというものが非常に大きくなっている。水平の財源移動というものがなかなか行われていない。こうした状況地方財政の立場からはどのように考えていただけるのだろうかということであります。今確かに、委員がお述べになりましたように、非常に財政力指数から見て弱小の都道府県、非常に巨額の税収を上げ、ある意味では国よりもはるかに優位な立場で行政の進められる自治体、この格差というものは非常に大きなものがございます。これは都道府県レベルだけではありませんで、市町村においても同じような問題があるわけでありますが、財政力指数の弱い自治体というものを論議をいたします場合に、ややもすると非常に財政力指数の高い、強い自治体というものが抜けてしまうわけでありまして、私は、国と地方との間の論議とあわせ、地方自治体間における財政調整機能というものがもう一つ論議をされてしかるべきではないだろうか、率直に言ってそのような感じを持っております。
  39. 小野信一

    小野委員 例えば、円高差益によって生まれた膨大な資金、この民間資金を有効に活用する。誘導しなければ今回の土地高騰のような現象がまた起こってくる。だとするならば、大蔵省はこの民間資金を誘導する責任があるだろう。具体的にどんな方針で、政策で、この資金を誘導するおつもりになりますか。
  40. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今私どもは現実に起きております事態に対応することに全力投球、率直に申し上げてそういう状況でありますし、また本年度は、特に年度末になりましてから、湾岸における特別な支出等財政当局としては予期しない新たな問題にも遭遇し、その解決等の中で、必ずしも今委員が御指摘になりましたような視点からの長期な施策をここで申し上げられるところまで我々として自信を持って内容を詰めておるわけではございません。しかし、おかげさまで多少これは過剰流動性まで行くかと心配をしておりましたマネーサプライも、今相当程度におさまってきております。こうした中で、安定した経済運営というものについて今後ともに意を払っていかなければならない、その御指摘はそのようにちょうだいをいたしたいと思います。
  41. 小野信一

    小野委員 大きな過剰とは言えないにしても、民間資金が豊富である。片方で、大臣がおっしゃったように、裕福な地方自治体と非常に財政力指数の小さい自治体がある。これを結びつけて解決するという方法は当然私は考えるべきだと思いますので、その点に対する今後の検討をお願いをいたしておきます。  次に、今度の地価高騰背景原因についてお尋ねをいたします。  その原因に、いろいろな資料を見ますと、土地保有のコストが安い、土地の有効利用を進める土地政策が貧困である、土地への金融制度が未整備であった、あるいは土地を貸さない方が安全だという制度の不備がある、いろいろ言われておりますけれども、大臣は、過去二回の土地高騰と今回の土地高騰では、その背景と要因は異なるとお考えになりますか、それとも今回の場合と前二回は同じであるとお考えになりますか、分析をお聞かせ願いたいと思います。
  42. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 現象面においては私はそれぞれ違いはあったと思います。先ほどもちょっと申し上げましたが、第一回の昭和三十五、六年ごろの地価高騰と申しますものは、まさに高度経済成長によりまして人口あるいは産業が急速に都市に集中していく過程で生じてきたもの、そのように分析ができると思います。また、昭和四十年代後半の地価高騰というものは、日本列島改造ブーム、それに金融緩和と過剰流動性の発生が重なったということが申し上げられるでありましょう。今回の地価高騰は、まさに都市部などにおきますオフィスビルの需要の急速な増大、また周辺住宅地域における買いかえ需要増大、そしてこれらを見込んだ投機的な土地取引増大、これが金融緩和の状況を契機として動いた、複合的な影響として地価高騰を招いた、そういう分析ができると思います。  しかし、この三回に共通をいたしますことは、既に土地神話というものがその根底にあったということでありまして、こうした視点から見ますならば、私は、今回を入れまして三回の地価高騰というものには現象面においてそれぞれの違いはありますけれども、土地神話というものが基礎にあったという一点においては同じ現象ということが言えると思います。それだけに、今回土地基本法の制定を契機として税制見直しを図り、大蔵省の立場でいいますならば、金融政策、そして国有地の利活用といったテーマとともに、税制における役割というものを十分機能させるための改正の御審議をお願いを申し上げておるわけでありまして、これらの目指すところは土地神話というものを破壊するということにある、そう申し上げてよろしいと思います。
  43. 小野信一

    小野委員 三回の土地高騰を見てみますと、昭和三十九年のオリンピックブームによる土地高騰、これは昭和四十年前後になります。日本列島改造論、昭和五十年前後になります。昭和五十九年から始まった円高差益、規制緩和からくる昭和六十年前後の地価高騰。見事に十年間隔で地価高騰をいたしております。  土地神話がこの根底にある共通項であるとすれば、そのほかの要因がなければこの三回の地価高騰は起こらなかったのではないか、こういう気がいたします。だとするならば、この十年間サイクルというのは、景気のサイクルによってもたらされ、金融緩和によってもたらされたものだと考えざるを得ません。だとすれば、土地神話の共通項を持ちながらも金融緩和が一つの大きな要因になっておると断ぜざるを得ないのですが、その三回の土地高騰から、今大蔵省金融政策税制政策の中でどのような反省点、どのようなこれからの方針をお立てになっておりますか。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、基本的には、国土再開発というものが今後円滑に進んでいかないとするならば、土地神話というものを今回の税制改正等である程度崩し得たとしても、規模は小さいながら同じような問題を生ずる危険性は存在をいたすと思います。それだけに、今多極分散型の国土形成というものが非常に急がれておるわけでありますし、昨年の日米の構造問題協議におきましてもアメリカ側から提起をされましたアイデアというものが、いわば都市に集中し都市機能を拡大する方向で提起をされました公共投資に対する考え方でありましたものを、我々がそれを押し戻し、多極分散型の国土形成に資する公共投資という視点から日本側の主張を組み立ててまいりましたのも、そうした考え方が基礎にあったからであります。そして国会が移転決議を行っていただきましたようなこと、さらには政府機関の地方分散を今進行させつつありますのも、まさに多極分散型の国土形成を行うことによりまして、都市に過度に人口、産業の集中する現状を打破したいという考え方が基本にあるということは御理解をいただきたいと思います。税にいたしましても金融にいたしましても、そうした基本方針の上に立って運用されて初めて十分な機能を果たすわけでありまして、私どもはこうした新たな国土の形成に向けて、多極分散型の国土形成というものに向けて土地基本法が有効に機能することを願いますとともに、その中における金融政策、そして税制役割を果たしてまいりたい、そのように考えております。
  45. 小野信一

    小野委員 土地問題の解決というのは何を解決すれば解決した、こういうことが言えるのでしょうか。どういう状態になれば土地問題は解決した、こう言えるのでしょうか。
  46. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは率直に申しましていろいろな御意見を述べられる方々がございます。少なくともこれでこれ以上地価が上昇しないということをもって土地問題としての一つの成果と受けとめられる向きもございます。あるいは、例えば東京圏あるいは大阪圏名古屋圏に代表されますような地価高騰地域において目に見えて地価が下がるということをもって土地政策の成功と言われる方もございます。私は、むしろその意味では、後者の大都市部における地価が下がるということは一つの目安だと思いますけれども、それ以上にやはり総合交通体系を整備していく、生活基盤の整備を地方都市あるいは農村部等を含めまして全国的に進めていくことにより国民生活の質の向上というものが地域差なく進められる状況の中で円満に人口、産業の分散が図られることをもって土地政策の成功と位置づけたい、私個人としてはそのように感じております。
  47. 小野信一

    小野委員 今回の土地税制の提出というのはどういう目的をお持ちになっておつくりになったのですか。
  48. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 一つは、ここ数年間の地価高騰の中で東京圏を中心とする、あるいは大阪、名古屋を含めても結構であります、大都市部において、地価高騰地域において土地所有しておられる方と土地所有していない方との間の資産格差が極めて大きくなり、国民の中に非常に不公平感を生んでしまったこと、この資産格差の是正というものが一つの目標であることも事実であります。また、もっと素朴に申し上げて、一生懸命に働けば大都市部でも自分のうちが買えるようになるための土地政策、その中における税の役割というもの、これに着目をし、各段階における税負担というものをバランスのとれたものにしていくことによって地価の鎮静化を図っていこうというねらい、これもございます。いわば二つの目標を中心に追っておるもの、そうお考えいただいてよろしいのではないでしょうか。
  49. 小野信一

    小野委員 土地問題のいろいろな資料なり識者の皆さんの議論を聞いておりますと、第一に、地価が高過ぎる、あるいはある人は上昇率が余りにも長期に続き過ぎた、ある人は不労所得が発生している、ある人は公共用地の買収が非常に困難になった、ある人は産業用地の取得難を挙げております。これが土地問題の解決の目的になっております。  政府が一月の二十五日に総合土地政策推進要綱を閣議決定をいたしました。要綱では、まず第一に土地神話の打破、二つ目に地価の適正水準への引き下げ、この適正水準として、住宅地は中堅勤労者が相応の負担で確保できる価格、こう規定をいたしております。第三に、生活の快適性を配慮した適正かつ合理的な土地利用、この三つの目標を掲げております。したがって、この要綱の示す三つの目標と今回の租税特別措置法案の改正とはどんな関係になるのだろうかと私は感じます。  特に、第一に、土地神話は、短期的にも長期的にも今回の土地税制の改革、もちろん他のいろいろな政策を総合的に実施しなければならないことは言うに及びませんけれども、これによってこの神話が打破できるんだ、こうお考えになるのでしょうか。第二の、中堅勤労者が相応の負担で確保できる価格とは、具体的に東京では一平米どれぐらいの価格を言うのだろうか。そうなりますとその価格は、東京の平均的勤労者の所得とどういう割合、どういう関係になるのだろうか、こういう質問が出てまいります。答弁をお願いいたします。
  50. 尾崎護

    尾崎政府委員 今回の税制改正といわゆる土地神話との関係でございますが、税制改正についての議論の中でこの土地神話の問題は随分意識されたわけでございます。よく保有・取得・譲渡と各面にわたって税制見直したということを申し上げるわけでございますけれども、土地を取得した場合、例えば相続で取得した場合の税制、その土地を持っている間の税制、それからその土地を売った場合の税制、それぞれにつきまして現在の税制が非常に土地神話を生むような、そういう結果となっていないかという目での見直しが行われたわけでございます。  今回の税制改正の最大の特色は、やはりその保有に対する税についての意識が非常に強かったということであろうかと思いますが、これは委員も御指摘のとおり、まさにその土地保有コストが非常に安い、したがって資産として土地を持っているということは大変有利なことであるという結果をもたらしている。これについてどのようなことを考えていったらいいのか。それから取得の問題について考えてみますと、典型的には相続税でございますが、相続税課税に当たっての土地の評価がほかの資産と比べて低くなっているから、相続の場合にも土地を持っているということが非常に有利だ、それがやはり土地有利性ということをつくっていないか。それから譲渡の場合におきましては、現在例えば労働によって稼得される所得に対する所得税の税率と比べますと大体二分の一という水準で土地のキャピタルゲインは課税されてきたわけでございますけれども、それが果たしてよろしいことなのかどうか。労働所得等と比べてもっと土地譲渡課税を上げていくべきではなかろうか。それが他面におきまして、先ほど御質問がございましたように、かえってロックイン効果と申しますか、その譲渡所得に対する課税を上げていくと土地を手放さなくなってしまうのではないかという議論もあるわけでございます。他面、譲渡の際の譲渡所得に対する課税が低いということは、資産として土地を持っておりますと、それを売ったときの税金が安いということですから、これまた土地を持っているということの有利性を高めているということがあるわけでございます。そのようなことを考えまして、税制を全般的に見直しました場合、やはり土地保有税のようなものを導入する、今回地価税ということによって保有コストを高める、さらに固定資産税等につきましてもその評価の適正化を図る、それから相続税につきましても評価の適正化を図るとともに、例えば農地等について設けられている特例を見直す、それから譲渡所得につきましては今までよりも税率を高めていく、重課をしていくとともに、特定目的、例えば公共用地に充てられるものあるいは優良住宅に充てられるもの等については思い切って従来以上に特典を与える、そのようなことで全般の見直しをしたわけでございます。  こういう見直しの背後に、過去におきます土地上昇要因をずっと貫いてきた土地神話というような、我が国にございます体質のようなものを何とか直していかなくてはいけないという考えがあったわけでございます。
  51. 日高壮平

    ○日高政府委員 去る一月二十五日に決定いたしました土地政策推進要綱に定めておりますいわば土地政策の目標についてでございますが、具体的な件は本日国土庁が参っておりませんのであれですけれども、基本的に基本政策を三点、先ほど御指摘がございましたように定めているわけでございますけれども、その中で述べております、例えば「中堅勤労者が相応の負担一定水準住宅を確保しうる」といったものにつきまして、政府として具体的に幾らということを今申し上げるわけにはまいりませんけれども、こういった基本目標を私ども大蔵省としては、先ほど大臣が申し上げましたように三つ政策手段を持っているわけでございますが、それだけでなしに、より基本的な土地利用計画をどう定めていくか、そういった点ともあわせて推進をしていくというのが今回の政策要綱の目標になっているわけでございます。
  52. 小野信一

    小野委員 大臣、中堅勤労者が年収の四倍ないし五倍、月給の二〇%以内で借りることができる、買う場合には五倍くらいで買える、これが経済企画庁なり国土庁が、生活を破壊しないで買える最高限度額だ、支払い能力だ、こう規定いたしておりますから、この要綱が決めた中堅勤労者が買える価格とはそういう価格だと私どもは考えるわけですけれども、そのことを頭に入れておいていただきたい、こう思います。  我が国国土面積は三十七万七千平方キロメートル。森林、原野、水路等を差し引いた可住地面積は八万五百平方キロメートル。住宅地は今度は百八億平方メートル。人口一億二千万で割ってみますと、一人当たり九十平方メートルになります。ですから、標準家庭である四人家族で見ますと、配分してみますと三百六十平方メートルで、約百坪になります。これ以上農地、森林を破壊しなくても、もし有効に土地を使えるならば、今後の住宅政策は進められるということに数字上はなります。  したがって、私が考える土地問題の目標は、土地の有効利用じゃないだろうか、こう思います。要するに、現在の土地政策は非有効利用を放置している、ここに最大のポイントが置かれるべきだと考えるのであります。同時にもう一つ、有効利用は国家的、社会的判断から当然検討されなければならない、判断されなければならないのですが、だとするならば、だれが有効利用だということを考えるのだろうか、判断するのだろうか、こういう問題に直面をいたします。  そこで、大蔵省では、今回の土地税制改革の目標は、土地の有効利用だという私の見解、その見解が妥当性があるのかどうかという御感想を聞かせていただきたいし、何が有効利用かという判断をするのはだれが行うのだろうか、こういう感じがいたしますので、国土庁が来ておりませんけれども、わかる範囲で御意見を聞かせていただきたいと思います。
  53. 尾崎護

    尾崎政府委員 税制改正に当たりまして土地の有効利用という点、御指摘のとおり私ども大変意識しておりました。限られた土地でございますから、それをできるだけ有効に利用し、国民の生活水準が向上するように考えていかなくてはいけないわけでございますが、そのためにも、先ほど申し上げましたように税制上の不備があってはいけない。やはりそこのポイントの一つは、課税土地の評価を適正にするということ、それからもう少し保有コストを高めていくということではないかというように考えたわけでございます。  土地保有コストが低いと、保有それ自体について余り考えないというところがございます。例えば、日本の企業は世界に冠たる日本的経営ということで、できるだけ余分な人を雇わずに人件費を少なくするとか、あるいは余計な在庫を持たないとか、あるいは余計な借り入れをしないで資金コストを少なくするとかいうことを非常に丹念に考えられて経営が行われておるわけでございますが、どうも土地保有コストという点については必ずしも十分でなかった。それが必要以上に土地を持ち、有効利用を妨げてきているというようなことも考えられたわけでございます。  そういう意味で今回は、特に固定資産税の評価の見直しでございますとか地価税の導入でございますとか、保有コストという点に重きを置いて土地税制見直しが行われたわけでございます。
  54. 小野信一

    小野委員 最初にお願いしましたように、端的に的確に答弁をお願いいたしておきます。  地価高騰した理由はいろいろあると思います。国土が狭隘であるとか、経済成長が長期にわたって続いたとか、都市への集中があるとか、金余りがあるとか、投機あるいは土地政策の不備があると思います。その中で自然的条件あるいは経済的条件、こういうものを取り除いてみますと、国の責任として浮かび上がってくるものがあるのではないだろうか、私はそう思います。国が当然やらなければならなかったことをやらないために土地高騰した領域があるのではないか、私はそう考えるのですけれども、いかがでしょうか。国は土地住宅行政にどこまで責任を持つのが近代国家として最低の義務だ、こういう認識もまた必要になってまいります。この二つについて所見をお伺いいたします。
  55. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、これは大変恐縮でありますけれども、基本的には国土庁からお答えをいただくべきことではなかろうかと思います。ただ、私どもの立場から申しますならば、これは私自身が土地基本法が制定されます前、本委員会におきましてもあるいは申し上げたことがあるかもしれません。同種の御質問に、予算委員会で御論議が出ました際に、一体税制がどういう方向に働けばいいのか、基本哲学がない中で税に余り大きな期待を寄せられても困りますということを申し上げたことがございます。そのとき私が例に引きましたのは、大都市部においてそれこそ何百年間続いているしにせのお店があるとする。税は、そのお店が今後ともその土地で伝統を守った営業が行えるような方向に働くべきものであるのか、そのお店がその場を去ったとしてもその地域が再開発される方向に動くべきであるのか。両論がある中で、土地というものについての基本的な共通した理念がない今日において、税が果たし得る役割には限界があるという御答弁を申し上げておりました。土地基本法が制定され、公共優先という原則が定まりました今日、おのずからその方向は変わってまいっております。そして、私自身が本院における御答弁でも申し上げたことがございますけれども、例えば土地基本法というものができました中におきましても、日本の都市計画というものにはそれなりの遊びがあるということは御承知のとおりであります。先日、予算委員会においてドイツの都市計画と対比しての御質問がございました。非常に厳密に定められ、さまざまな要素が組み合わせられ、その中において恣意的な地価高騰に対応する措置までが組み込まれている都市計画と日本の都市計画と比べてみますと、非常に大きな差がございます。同時にまた、個人資産に対しましても、それだけの都市計画における歯どめを許しておる国民性にも差異がある。その御質問を受けながら、私はそのような感じを持ちました。  今日、委員が御指摘になりますような諸問題と申しますものについて、土地基本法の制定後、ある程度の我々に対する手がかりは与えられております。今後、より努力をしてまいりたい、率直にそのように考えておりますが、今日の時点において、憲法上一体どこまで私権を制約することが国に許されているのか。言いかえれば、地価というものに、あるいは土地政策というものに国が強権をどこまで発動できるかということについては、まださまざまな疑問点を残しておるというのが実体の認識ではなかろうか、私はそのように感じております。
  56. 小野信一

    小野委員 我が国住宅政策に対する重要度を見るときに、私は歳出に占める住宅対策費の割合一つの目安になるだろうと思います。また、普通、歳入に占める住宅減税もまた一つのポイントになるだろうと思います。  そこで、諸外国を調べてみました。歳出に占める住宅対策費、フランス四・九%、イギリス三・〇%、アメリカ一・五%、日本一・三%、西ドイツ〇・七%であります。歳入に占める住宅減税の割合を見ますと、イギリス四・九%、アメリカ四・四%、フランス一・五%、西ドイツ一・二%、日本〇・六%であります。実にイギリスの八分の一になります。やはりここに我が国住宅に対する政治の見方、ウエートの置き方の大変低いことを感ぜざるを得ません。このことを大臣にお訴えを申し上げておきます。  今大臣から憲法と財産権、所有権の問題がありましたので、私の意見を申し上げておきます。土地利用に一定の秩序を持たせようとするときには、法律上の最大の問題点として財産権を保障している憲法第二十九条の関係が出てまいります。その内容は、土地所有権と使用収益権の制限とその補償の要否であります。どんな画期的な政策でも、憲法に違反し、膨大な補償を必要とするならば、その実現は不可能であるからであります。同時に、土地財産権を市場価格をもとにした交換価値とのみ評価するのは、土地商品としてではなく生活権の基礎としている大多数の国民の生活実感とは合致をいたしません。現実の生活実感と合わない法律とその解釈は破綻するのは当然だと私は考えております。その改正は、当然政治の任務だ、務めだと思います。したがって、土地所有権と憲法との関係において現在でも、公共の福祉の名のもとで所有権は制限できる、こう解釈されております。原則自由で例外規制という解釈を私はとります。  しかし、現在の我が国土地の現状、住宅の現状を見ましたときに、この解釈を一歩進めまして、財産権、特に土地は他の財産とは異なる特質を持っておるものですから、その所有権と利用は公共の福祉に従う、こういう解釈が成立するのではないか、成り立つのではないかと考えるものです。要するに原則規制、例外自由であります。この解釈は私は憲法違反にならないと解釈しておるのですけれども、大臣の所見をお伺いいたします。
  57. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実は私は運輸大臣在職中、成田空港周辺土地の問題でほとほとてこずった経験を持っております。また、二期工事の再開命令を出しまして、過激派の襲撃目標のトップに、大変光栄でありますが、位置いたしまして、運輸省に向けてロケットを撃たれた経験も持っております。  今委員がお述べをいただきましたような概念が国民の中に定着をいたしておれば、非常に望ましい姿が生まれるでありましょうし、同時に、国もまた極端な行動を慎む、その権利の乱用を慎むという意味において非常に好ましい環境が生まれると私は考えております。遺憾ながら現実にはそこまで我が国の中において土地というものについての公共優先という考え方、これが定着をいたしておるとは残念ながら思えないというのが、実は私自身の実感でありまして、御見解に異を唱えるつもりはありません。実感として差異があるなという感想を申し述べたいと思います。
  58. 小野信一

    小野委員 現在、土地税制の改革案が出ておりますけれども、いろいろな税制が出てまいりますと、当然事務量が増大をいたします。この事務量の増大に伴って要員の確保が問題になると思いますけれども、この土地税制を中心とした税制改革、これに伴う人員についてどのような御準備をなさっておるんですか。
  59. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 国税当局が今参っておりませんので、私は正確な数字を申し上げるわけにまいりませんけれども、新たな税を採用し、お許しをいただくとなれば、当然それに見合う業務量が満たされるだけの要員を確保することは必要になるわけでございます。そして、一方では簡素にして効率的な政府というものを求められる国民の声とを勘案をしながら、それでもやはり必要な要員は確保いたさなければなりません。大蔵省というのは大変不幸などいってはいけませんが、要求官庁であると同時に査定官庁であり、大蔵省自身の内部における定員査定を厚く見ますと他省庁から袋だたきに遭うという宿命がありまして、私自身がその矛盾に悩むときも決してないわけではございません。しかし、当然のことながら、地価税というものが創設をされるという段階におきまして、必要な要員は確保してまいるつもりでおります。
  60. 小野信一

    小野委員 特別措置法の内容を見ますと、今回の土地税制の改革は、他の資産を持っているよりも土地を持っていた方が有利である、土地を持っていれば必ず将来は上がるという土地神話の除去にあると明記をいたしております。そういう答弁をいただいております。そして、土地神話を打破した上で適正な地価水準を維持していこうとするものであるとも答弁をいただいております。とすれば、適正な地価水準というものをどのようにお考えになりますか。
  61. 日高壮平

    ○日高政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、一月末に政府で定めました土地政策要綱に掲げられております基本目標というものは、具体的な水準をどのくらいということを想定してつくっておるわけではございませんので的確に申し上げられませんけれども、私どもとしては、その土地政策推進要綱に定められた基本目標を何とかして実現しなければならないということで鋭意取り組んでいるという状況にございます。
  62. 小野信一

    小野委員 土地政策の目標は何になりますかということです。今回の土地税制は、土地神話の打破と適正な地価水準を維持すること、それから、適正かつ合理的な土地利用を確保するという三つの目標があると考えます。土地利用の具体策とは何を期待しておるのでしょう。特に、土地利用課税である固定資産税との関係をどのようにお考えになりますか。
  63. 尾崎護

    尾崎政府委員 ただいまの御質問に御答弁申し上げます前に、先ほど国税庁の定員のお話がございましたが、平成三年度におきましては二百人の定員増を認めていただいているようでございます。  それから、土地利用との関係でございますが、税制上、土地の有効利用を図っていく上でもう少し保有コストを高めた方がよいのではないかということにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたが、さらに個別の配慮も各方面でいたしているところでございます。基本的には、土地基本法におきまして、土地の適正な利用、計画に従った利用というような点が強調されているわけでございますけれども、各種の特別措置、先ほど話題になりました事業用資産買いかえ等につきましても、そのような趣旨に沿って目的がはっきりするように、できるだけ土地政策との関連を明らかに意識し、明らかにそれを認めた上で税制を組み立てていくというような配慮をいたしているところでございます。  固定資産税との関係は、御指摘のように非常に重要なところでございまして、固定資産税、それから国税で申しますと相続税を通じまして、やはり土地の適正な利用を考えていく上で課税上の評価が適正なものであるということが重要ではないかというように考えております。したがいまして、相続税におきましても、一層評価の適正化を図る、そのために増員もいただいているわけでございますが、それによりまして土地の有効利用を図っていくという結果になろうかと思います。  固定資産税につきましては自治省の御担当でございますので、私から申し上げることに限界がございますが、しかし固定資産税におきましても、今回評価の適正化ということが非常に強く意識されておりまして、地価税とあわせまして、両々相まって、土地の有効利用の上で有効な役割を果たしていきたいと考えているところでございます。
  64. 小野信一

    小野委員 譲渡益に対する重課は私は賛成であります。妥当なものと考えます。しかしその結果として、ロックイン効果により土地供給が行われないのではないかという識者の意見があります。この問題についてどのようにお考えになりますか。
  65. 尾崎護

    尾崎政府委員 従来の土地税制におきます議論は、土地供給面に非常に重きが置かれてまいりまして、したがいまして、いろいろな形で土地譲渡につきましては軽課措置が設けられてきたわけでございます。今回それを重課する方向に転換したというのは、今委員からその方向でよろしいというお言葉をちょうだいしたわけでございますが、考えてみますと、土地供給面だけではなくて、需要面におきましても譲渡所得税率というのは関係してくる。譲渡所得税率を非常に低いままにしておきますと、土地を持っていれば、将来売るときに低い税金で済むということから仮需要を生じてくる。やはり資産有利性土地という資産有利性を高めている一つの要因となっている、需要面のことも考えなくてはいけないという点、そこに重きを置いたわけでございます。  やはり土地資産有利性をできるだけ縮減させるという見地からも、土地譲渡所得は従来以上に重課した方がよいということでありますし、それによって生じますロックイン効果のようなものに対する配慮といたしましては、保有コストを高めるような税制を導入するというように考えたわけでございます。
  66. 小野信一

    小野委員 不動産所得の損益通算の不適用について私は賛成です。土地対策としては、税制金融の両面により施策を講ずべきものと考えておりますが、この損益通算を認めないことにより、金融機関の不動産融資は緩和されると考えていいのですか。
  67. 尾崎護

    尾崎政府委員 従来、よく象徴的にワンルームマンションということが言われてきたわけでございますけれども、不動産所得の面で赤字を生じさせて他の所得と通算させることによって税金の還付を受ける、そういう目的で例えばワンルームマンションのようなものを持つというような点が指摘されてまいりまして、仮需要をつくり出しているのではないか、それが土地の価格を引き上げているのではないかという御指摘がございました。したがいまして、御指摘のとおり不動産所得の損益通算につきまして、土地の部分につきましてはこれを認めないということにいたしたわけでございますが、そういたしますと、先ほど申しましたようにいわゆる節税効果というものがやはり減ってくるわけでございますから、その節税目的のための資金需要というようなものもそれによって影響を受けてくるというように私どもは考えております。
  68. 小野信一

    小野委員 それはどういう意味です。要するに、マンション投資が節税対策として行われておった、しかしそれはできませんよ、こうなった場合に、そういう節税対策ができないのですから、今度は金融を緩和する、金融を緩和して資金を貸しても大丈夫だ、こう判断するのですかという意味です。
  69. 尾崎護

    尾崎政府委員 申し上げましたのは、税制上節税策として役立つということでお金を借りる、借りることによって生ずる支払い利子、それが損に立つ、その分がほかの所得と通算できる、それを土地の部分については認めないということにしたわけでございますから、その無理な借り入れをするということによる資金需要は影響を受けるであろうということを申し上げたわけでございます。
  70. 小野信一

    小野委員 ちょっと私の言葉が、言っていることがわかりかねるようでありますけれども、いつかまたお聞きいたします。  終わります。
  71. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後二時十五分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二十分休憩      ────◇─────     午後二時十五分開議
  72. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷治通君。
  73. 細谷治通

    ○細谷委員 私は、租税特別措置法、そして密接に関連いたします今後の財政運営に対する基本的なスタンスみたいなことについてお尋ねをいたしたいと思います。大所高所論は、政治論はもう先輩方が十分おやりになっておりますので、私は若干細かくなるかと思いますけれども、質問を申し上げさせていただきたいと思います。  まず、平成三年度、来年度の財政運営でございますけれども、ことしは平成二年度ですね。ことしは歳出削減の努力も、もちろん政府の御努力もありましたし、何といっても好調な税収に支えられまして、平成二年度、懸案でございました特例公債依存体質脱却の目標は達成できたということだと思います。一応の評価を申し上げなければいけないと思います。  さて、これから、平成三年度からの中期財政運営の初年度に本年度は当たるわけであります。ところが、平成三年度予算を取り巻く環境というのは大変厳しいと私ども認識いたしております。  若干具体的に挙げてみますと、歳入の面では、まず税収確保の上での問題点が多々山積しているんじゃないかと思います。景気の先行き不透明とかバブルの崩壊によりまして、各種諸税、法人税、有価証券取引税、キャピタルゲイン課税、相続税、どの税目をとりましても税収確保が相当厳しいものがあるんじゃないかと思います。  また、一つ大きな要因といたしましては、消費税見直しの決着が迫られておるわけでありまして、これが年度中間で行われるということになりますと、当然かなりの減収を想定しなければならぬということだと思います。もちろん食料品に対する非課税がどうなるかということによるわけでありますけれども、仮に十月から行うといたしましても、五千億近くの財源が必要になってくるという状況があります。  ところで、一方の歳出ですけれども、九十億ドルの財政措置として、まず予備費二千億円を来年度の予算から支出することにいたしまして、残りは千五百億しか残っていないという状況であります。平年並みの災害が発生したらどうなるんだろう、いや、それ以上の災害が発生したらどうなるんだろう。それから、公務員ベアの動向も大変微妙であります。巷間伝えられるところによれば、春闘相場は五%の半ば前後ということも言われておるわけでありまして、これが公務員ベアにアプライされるということになると、大変な財源不足を生ずるということになると思います。  それから、申すまでもなく、湾岸戦争終結後における国際貢献というのも求められると思っております。当然金融支援だけじゃなくて、財政支援ということも出てくるというふうに思うわけであります。  こういうふうに考えてまいりますと、歳入歳出とも大変厳しい、財政運営は窮屈なものになっているというふうに思うわけであります。  さて、中期財政再建の目標であります、特例公債は発行しない、公債依存度を五%以下に抑え込んでいく、そういう目標に対しまして、初年度からどうも先行きが大変見通しにくいという状況にあるんじゃないかと思うわけでありまして、まず、財政運営上の責任者といたしまして大蔵大臣の御所信をお伺いをいたしたいと思います。政府としてどうしてこの厳しい財政状況を乗り切っていくのか、仮に財源不足というような状況に陥ったときにはどういう方策で対処されようとされておるのか、御存念をお伺いしたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員からも御指摘がありましたが、平成三年度の予算につきましては、ここ数年来のような大幅な税収増がなかなか期待しづらいという状況の中で、中期的財政運営の新しい努力目標の初年度として、公債依存度の引き下げを図るために、真に必要な財政需要に適切に対応しながら、歳出の徹底した節減合理化、税外収入の確保など、歳出歳入両面にわたる見直しを行うことなどによりまして、公債発行額を可能な限り縮減することとして編成をいたしました。おかげさまで公債依存度を七・六%まで下げることができたわけであります。  また、平成二年度内に発生いたしました湾岸危機に関係いたします先般の平成二年度の第二次補正予算、この財源につきましても、新たに臨時的な税制上の措置を講ずるとさせていただきます一方で、今国会での御論議等を踏まえながら、歳出の節減合理化などに最大限の努力を払った次第であります。そうした中で、委員から御指摘がありましたように、私どもは予備費の節減ということについても今回新たな決意を持ち、当初計上いたすつもりでおりました中から二千億円をカットいたす決断をいたしました。  ただ、非常に幸いな、幸いなという言い方が適切かどうかわかりませんけれども、先年来の両院の御論議の中から、私どもとしてその御論議を受け、今回給与改善予備費を従来の予備費とは別に一・五%分、すなわち、過去の人事院勧告の一番低いものよりは多少多目に別に計上いたしております。これによりまして、給与の改善による圧力というものは、例年に比べてある程度軽減している部分があることも事実であります。  しかし、いずれにいたしましても、現時点において三年度予算の追加財政需要といったものに何らかの言及をする状況では全くありませんが、今後の財政運営というものを考えてまいります場合に、三年度末の公債残高が百六十八兆円にも達する。依然として極めて厳しい財政状況にあることを踏まえながら、一層の節減合理化に努め、引き続き行財政改革を強力に推進していくことによって対応してまいりたい、そう考えております。
  75. 細谷治通

    ○細谷委員 財政の余裕といいましょうか、弾力性という意味でちょっとお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、大蔵省から出されております「平成三年度予算及び財政投融資計画の説明」という資料によりますと、公債の発行限度額と公共事業費出資金及び貸付金との差額、これが七千九百四十五億円、約八千億円あるという形になっております。これは俗にプロの世界ではすき間というそうでありますけれども、このすき間についてどういうふうな見方をしたらいいかということをお尋ねしたいわけであります。  年度中間において補正予算をどうしても組まざるを得ないという状況が出たとすれば、この約八千億の限度において建設国債を発行する。もちろん補正が必要でありますけれども、そういうことになれば、その分だけは一般財源としてよそに流用できるといいましょうか、活用できるということが考えられるのではないか、そういう意味においては、特例公債に頼らずに、この限度内においてはできるということが申し上げられるのじゃないか。しかしながら、片方で、もう一つの目標であります建設国債を五%以下に落としていくための努力目標、ことしは二千五百二億円を削減することになっておるわけでありますが、この目標が実は初年度において崩れるという形になっちゃうのじゃないかと思うわけでありますけれども、こういう私の理解でよろしいのかどうか、その辺について御見解を賜りたいと思います。
  76. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 現在、平成三年度予算の国会審議をいただいている真っ最中でございます。したがいまして、平成三年度予算を執行する過程においてどういう歳出の追加需要があるか、あるいは歳入にどういうような変動が予想されるか、そういったものについて何らかのことを申し上げられるという状況では全くないわけでございます。それは今大臣からもお答え申し上げたとおりでございます。  ただ、御指摘のございました公債発行限度額といわゆる発行額との差額、確かに御指摘のとおり約八千億円弱ございます。一般論として申し上げれば、従来は特例公債を発行しておるといういわば異常な財政状況のもとで、建設公債を公債発行限度額いっぱい発行するという財政運営をやらざるを得なかったわけでございますが、我々の考え方といたしましては、これはあくまでも特例公債発行という特殊な事情のもとにおける、いわば緊急避難的な措置としてやむを得ず行ってきたものでございまして、財政の本来のあり方からすれば、特例公債さえなくなれば依然としてこういう状況が続いていいというような筋合いのものでは全くないというふうに考えておりまして、特例公債依存体質脱却後の目標として何とかこれを早急に是正していきたい、そういう考え方から、委員も御指摘のとおり、今後とも公債依存度の引き下げ等によって、公債残高が累積しないような財政体質を何とかつくり上げたいという目標を現在持っており、また、それに向かって必死の努力をして三年度予算を組んだわけでございます。  こういう我々が抱えております問題意識、あるいはこういう我々が目指しております目標、そういうものを常に念頭に置いて今後とも財政運営をやっていかなければいかぬ、そういう基本原則だけは我々も肝に銘じておるわけでございます。
  77. 細谷治通

    ○細谷委員 同期でなれ合いの質疑をするつもりはございません。厳しくこれから質疑を続けたいと思いますけれども、今お話がございましたように、今後の財政運営、特に平成三年度の財政運営は大変厳しいということである。片一方で、我が党の土井委員長も提唱されておりますけれども、これから国際貢献ということが大変求められてくるということになれば、やはり増税という形も出てくるんじゃないかということは、当然私は予想しておかなければならぬというふうに思います。  そして、だとすれば、私は、国民の皆さん方にもそれを許容する土壌というのはあるのじゃないかというふうに思っているわけなんです。そういう意味において、平成三年度の財政運営が苦しいということであるならば、そういう事態も当然考えるんだということを前広に国民に語りかける、理解を求めるという努力が私は必要ではないかと考えるわけでありますけれども、大蔵大臣の御存念をお伺いしたいと思います。
  78. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、湾岸における戦闘行為というものが終結をし、中東の安全保障の確保と並んで、中東地域における戦災復興、経済再建というものが重要な課題の一つとして国際的に議論をされているという点については、これは委員の御指摘のとおりであります。  しかし、そのための方策としてどんな方法が適切であるのか、あるいはその負担というものが世界全体でどのくらいになるのか、こうした点については、まだこれから先、関係国間で十分議論をしていかなければならない性格の問題でありまして、現時点において、私はその財源措置等について何らかの状況を申し上げられるといったところまでは来ていないような感じがいたします。  むしろ問題はほかのところにあるんじゃないか、私はそんな気がしてなりません。今回の戦闘行為というものによって国土の復興を必要とするのは、直接的にはクウェート及びイラクという二カ国になります。しかし、クウェートは、みずからが非常に多くの資産を海外にお持ちであることと同時に、安保理決議六七四によりイラクに対して求償権をお持ちであります。これが実効上どの程度の効力があるかということとは別に、法的にはこの安保理決議六七四により、クウェートはみずからの国土の破壊とイラク軍から受けました略奪等に対して、イラクに対して求償権が成立をするはずであります。  そうなりますと、イラクの復興が本当にお金が要るものになるというケースも当然想定されるわけでありますが、その場合にイラクに対してイラクの経済復興そのもの、人道的な援助を別にいたしました部分で、果たして国際的に見てそういう行動が出てくるのか、この辺についても疑問なしといたしません。  むしろ、そうなりますと、この湾岸地域における戦闘行為の終結の結果の影響というものは、関係地域に対して多量の労働力を派遣し、その人々からの送金によって国家経済の柱の一つを組み立てていたような、例えばアジアにおける幾つかの国々のようなところにその影響が出てくる。それをどうするか。いわば、従来の周辺国というより、もう一回り外側の問題の方がより深刻な問題になる可能性も存在するわけであります。  そうしたものを考えます場合に、これは平成三年度予算そのものの中におけるODAのあり方等からも対応策は考えなければならなくなるわけでありまして、そうしたことを考えますと、私は、委員の御指摘一つの見識として、将来の方向を示すものと理解をいたしますけれども、現時点において国民に対しというところまで財源措置等について物を言うには余りに早過ぎる、そのような感じがしてならないわけであります。
  79. 細谷治通

    ○細谷委員 今度は、視点をもう少し中長期的な観点から財政の問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」ということでございますけれども、まず赤字公債依存体質脱却後の財政の姿はどうなるのか、国民は大変関心を持っております。一体国民の負担は現実にどうなるのか。片一方で依然巨額の累積債務が残っている。この債務というのは国民一人一人にとってどんな負担意味するのか、そういう関心を持っているのじゃないかと思うのです。この観点から質問を申し上げてみたいと思います。  まず、特例公債の問題であります。特例公債は依然としてまだ百六十八兆円のうち六十数兆円残っている形になっております。この特例公債というのは、もう申すまでもなく建設国債とは違うわけでありまして、性格が異なるわけであります。国民共有の社会資本という見返りの資産の存在しない、単なる負担というのが特例公債の特色である。そういうことでいいますと、これが後世に残っていくということは、世代間負担の公平という観点から見まして、将来の世代に対して今の私どもが負担を転嫁することにほかならない。だとすれば、速やかに償還をしていかなければいけない。建設国債に先駆けて償還をしていかなければならぬということだと思うのです。  法律の名前は長くなりますから申し上げませんけれども、財確法第二条四項、五項には、事実その旨がはっきり書いてあるわけであります。別の特例公債の償還計画をもって速やかにとにかく償還するようにしなさい、そして借換債はするな、極力しないようにというふうに書いてあります。正確な言葉は申し上げませんけれども、そう書いてあります。そういうことで申し上げれば、建設国債とは異なる早期の特例公債の償還計画をつくらなければならない、つくるのが本筋であると私は考えます。  ところが、今現状はどうなっているかといいますと、全く建設国債と同じ償還計画というふうになっているわけでありまして、特例公債については借換債は認めないぐらいの厳しい財政再建に対する姿勢というものを財政当局としてはやはり示していかなければならぬというふうに思うわけであります。かつてはこの特例公債については借りかえはしないという方針であった、そういう経緯もあるわけでございます。この特例公債に対する早期の償還計画のあり方についてお伺いをいたしたいと思います。
  80. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 特例公債の本来的な性格ということにつきましては、我々も委員のお考えと似たような感じを持っております。建設国債とはやはり性格的に違う、見合いの資産が存在しない、そういう意味で、本来できるだけ早く残高を減少させていかなければならない性格のものであろうと考えております。  委員も御指摘のとおり、初めてこの特例公債というものを当初予算から出しましたのが昭和五十一年度ですが、それから五十八年度までの間の特例公債法では借りかえ禁止規定が設けられておりまして、借りかえずに直ちに償還すべきものということが法定されておったわけですけれども、五十九年に至りまして、当時の第二次石油ショックというような経済の大きな変動のもとで、この規定が維持できなくなる。いわば借りかえをしなければ、極めて厳しい財政事情のもとでさらに厳しい財政運営を強いられる。それは国民の福祉、あるいは場合によっては特別の歳入も必要とするかもしれません。そういう状況ではないということで、当時としてはやむを得ない現実的な選択として、建設国債と同じ六十年ルールによる償還ルールということにせざるを得なかったというふうに我々も思っております。  現在、おかげさまで特例公債からは脱却いたしましたが、まだ依然として巨額の国債残高を抱え、また、先ほども委員の御指摘にありましたように、建設国債発行限度額と実際に発行している額との間で、わずか八千億円弱程度の余裕しかないというようなまだまだ健全とは言いがたい財政状況のもとで、この六十年償還ルールにかわって直ちに新しい特例公債の償還ルールをつくっていくということは、残念ながら現在の財政状況から見ますと非常に困難である、まだ財政はそこまで健全化しておらぬと考えざるを得ないのではないかというふうに思っております。  ただ、これも委員の御指摘の中にございましたけれども、そうはいっても特例公債はやはり性格的には建設国債と異なりますので、財確法の中で、できるだけ早期に償還しなさいという努力規定が設けられております。我々もその趣旨を受けて、できる限り早期償還に努めていくというのは、これからできる限りの範囲でやっていかなければならぬ、そういう我々に課せられた課題であろうと考えております。
  81. 細谷治通

    ○細谷委員 いろいろの御事情はございましょうけれども、財政当局として、財政運営に当たる厳しい姿勢を示すという意味におきまして絶好の機会であるわけなんですから、とにかく当面の財政運営が楽になるようにということではなくて、やはり特例公債というのはその性格にかんがみて一日も早く返すのだ、少なくとも借りかえはもうこれからは認めないというような形ぐらいは、せめて出していくのが必要ではないかということを私は指摘しておきたいと思います。  次に、国民負担率の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  将来、例えばこれを四五%にするとか五〇%以下に抑えるとか、いろいろ問題はあります。しかし、なるほど現在は、ことし平成二年度は三八%台でございますか、そういう見込みのようでありますけれども、それが四五%、五〇%近くになるということは、その分だけ国民の負担がふえるわけで、厳しくなるということだと思うのですね。  私はそのことも大変重要だと思うのですけれども、国民負担率の中の構成要素である社会保障負担と租税の関係というのが一体どうなっていくのかということ、これに注目しなければならぬというふうに思うのですね。それもただ単にその割合がどうなるというだけではなくて、租税がふえるのか、社会保障の負担がふえるのかによって国民一人一人の負担がどうなるかということは、やはり大変重要な問題だというふうに思うのです。そういう認識のもとでこの問題をとらえて、実は御質問をしたいというふうに思っているのです。  御承知のように、現在、九一年度の予算ベースで見ますと、国民負担率はトータルで三八・九、これは補正予算を含めてでございますけれども、こうなっております。社会保障負担率が一一・三、そして租税負担率が二七・六というふうになっております。これを過去六年、八五年と比較してみますと、社会保障負担率は〇・六、租税負担率は三・〇ということで、圧倒的に租税負担率の上昇カーブが高くなっているという形をとっていると思います。  片一方で、今後の国民負担率が上昇せざるを得ないとしても、その負担の求め方としては、受益と負担の関係が明白な社会保障負担を重視すべきだという財政上の考え方もあるわけでありますけれども、こういう観点で見まして、二十一世紀の初頭の段階で仮に四五%の国民負担率とした場合に、租税と社会保障負担割合は一体どうなっていると考えられるのか。また、どういう姿というのが望ましいと言ってはおかしいわけでありますけれども、どんな姿を描くことができるのか、この辺について御見解を伺いたいと思います。
  82. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実はこの御質問については、社会保険庁長官まで歴任をされました持永政務次官からお答えをいただく方がより的確な御答弁が出るかとも思いますが、便宜私から感じを申させていただきたいと思います。  私は、今の委員の御指摘はそのとおりであると思いますし、仮に社会保障給付費というものを給付と負担の関係を切り離してしまって、一般的な負担である租税に依存するということを考えました場合には、制度の効率化に対するインセンティブが働かなくなる。ひいては社会保障給付費の安易な拡大というものが国民負担率の上昇に対する歯どめを失わせる危険性がある、率直にそう考えております。したがって、これから先、国民負担率のある程度の上昇というものはやむを得ないといたしましても、臨調の答申でありますとか財政審の報告で指摘をされておりますように、社会保障負担を重視していくべきであると考えます。  その上で一つの問題提起をさせていただきますと、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を政府が立案いたしますときにも、一つの問題点に逢着をいたしました。  それは、今後における我が国の人口構造の変化をどうとらえるか、同時に、今日までの世代間同居が欧米に比して率的に非常に高い日本の家族構成というものが、二十一世紀初頭になりました段階でどのような形態をとっていくのか。すなわち、依然として世代間同居に対する志向が強く、その傾向が維持される状況にあるのか、あるいは核家族化がますます進展し、世代間同居が減少し続けていくのか、その方向によって社会保障負担と一言で申します中が大きく変化するということであります。  高齢化が進めば進むほど老人保健、老人医療に必要な資源は大きくなります。また、世代間同居が今後ともにある程度以上続くと考えます場合には、ある程度年金、すなわち、所得保障機能というもののウエートを落としてでも、家計に著しい圧迫がかからないということを前提に、医療給付に負担をかけていく方法があり得るわけであります。しかし、世代間同居は次第に減少し、高齢者世帯がふえていくということを考えました場合には、所得保障というものに重点を置いた社会保障の仕組みを考えていかざるを得ません。  同時に、それは公的福祉サービスの内容についても大きな変化を生ずるわけでありまして、施設整備にある程度のウエートを置いていくべきか、在宅介護を中心とした仕組みを立案していくべきか、この方向にも影響を与えるわけであります。  実は「高齢者保健福祉推進十か年戦略」をつくります時点で私どもが一番悩みましたのは、その方向をどうとらえるかということでありました。この問題は、今後の社会保障負担というもののあり方を考えます場合に我々として見逃すことのできない論点でありまして、当然のことながら、国民負担率のある程度の上昇の中で社会保障負担を重視する考え方の中、そのもとにおいてこうした点についてどう結論を出すか、今後御論議を願いたい課題の一つと、そのように考えております。
  83. 細谷治通

    ○細谷委員 社会保障負担のウエートを高めるという一つ考え方があるということでありますけれども、片一方で財政状況を考えてみますと、借金減らしは急がなければならない、片方で高齢化、国際化に対応するための負担増というのはふえてくる、社会資本整備もしていかなければいけないということになれば、歳出が当然ふえてくるということが考えられるわけであります。これは公債に頼らないということになるならば、税収への依存度というものはどうしても高まらざるを得ないというわけでありまして、そこで税制に対する増収圧力というものは、どうしても強まらざるを得ない状況が片一方であるのじゃないかというふうに思うわけであります。  そこで、そういう二つの相矛盾する要請がある。しかし、現実に今言いましたように国民負担率が四五%になるにしても、その国民負担率が国民一人一人にとって一体どういう意味を持つのか。社会保障負担率は幾らになります、租税負担率は大体こうなりますということを、そして国民一人一人にとって負担という観点がどういうふうになるのかということを示していくということが、やはり財政当局の責任として求められているのじゃないかということを私は指摘をしておきたいというふうに思います。  時間が大分迫っておりますので、用意した質問を少しはしょらせていただきたいと思います。恐縮でございます。  次に、「財政の中期展望」というものが示されておるわけでありまして、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。  なかなかわかりづらい。国民がこれを読んでみて本当にわかるのかどうかということを疑問に思います。そこで、この中期展望の読み方、見方というようなものについて、国民の皆さん方の御理解をいただくという観点からお尋ねをしてみたいというふうに思っているのです。  まず、その税収見積もりについて、税収はマクロで名目成長率に一・一の弾性値を掛けて試算をしておるわけなんです。そこで、過去ここ数年のこの税収実績、トータルが一体どうなっているのかということ、そしてこれを細分化してみて、例えば所得税であるとか、なかんずく後から私は所得税のところで御質問したいと思っておりますけれども、給与所得税に限っての弾性値は一体どうなっているのか。また、法人税、それから間接税、こういうものはそれぞれに違っている。一・一というのはマクロでいいますとそうなりますけれども、中身は物すごく違っているんじゃないかという感じがするわけでありまして、果たしてトータルとして一・一の弾性値で収入をはじいてしまうということは、幾ら機械的、マクロ的であっても、なかなか納得性が得られないんじゃないかというふうに思うわけでありまして、この辺の問題についてあわせてお答えをいただきたいと思います。
  84. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘のとおり、「財政の中期展望」では税収弾性値一・一という数字を使っているわけでございます。これは、昭和六十二年あたりから株高、土地高等によりまして非常に税収弾性値が上がってきているということがございまして、これを一種の特殊要因として除きまして、昭和五十一年度から六十年度の十年間の平均弾性値、それが一・一でございました。また、従来とも常識的に一・一というように考えられておりますので、中期展望におきましてはその数値を用いているわけでございます。  ただ、御指摘のとおり、その税の内訳について考えてみますと相当の差がございまして、一番新しい実績でございます平成元年度分について申し上げますと、一般会計分の税収全体では、弾性値は一・四六というようになります。その内訳でございますが、所得税は二・七六、法人税は〇・五八、間接税等ひっくるめまして〇・七八というようになっているわけでございます。所得税二・七六と申しましたが、この中で給与所得に係ります源泉所得税は、元年度におきましてGNP弾性値は大体二程度となっております。
  85. 細谷治通

    ○細谷委員 この実績で見ましても、トータルで見れば一・一でありますけれども、その中身においては大変多岐にわたっている、大小さまざまであるということだと思うのです。なるほど過去十年において一・一だったからということでありましょうけれども、経済は動いておりますし、いろいろな変動要素があるということでありますから、果たしてこれが本当に正確に税収見積もりの指標として機能しているのかどうかということについては大変疑問に思うわけでありまして、もう少しきめ細かな、そんな細かい、微細というわけじゃありませんけれども、もう少しきめ細かな収入見積もりというものが私は求められるのじゃないかというふうに思うわけであります。  次に、要調整額というのが歳入歳出の締めくくりのところにあります。平成四年度ではこの要調整額が三兆百億でありますけれども、平成六年度では二兆六百億ということで、九千五百億ぐらい改善されたような形、マイナスになっております。ちなみに、平成三年度は三兆六千六百億ということでありますから、四年度も三年度から比べればマイナスになっているという形になっているわけであります。  これは、なるほど機械的に、政策的意図は余り加えずに単純に試算したということでありましょうけれども、こういうふうに徐々にこの要調整額が減っていくということは、素人目には、財政状況が好転してきている、財政にゆとりがその分だけできている、財政規模全体は大きくなっている、その中でなおさら要調整額が少なくなっているということでありますので、そういうふうに見ることができるんじゃないかというふうに思うわけでありますけれども、そういうふうに見てよろしいのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  86. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 財政をこれから中期的に見ていただく、そういう判断の一つの手がかりとして「財政の中期展望」というものを作成し、提出させていただいておるわけでございます。  あくまでも手がかりでございますから、委員の御指摘のとおり、その推計の方法は、いわば非常に機械的な推計になっているということはおっしゃるとおりでございます。そういう機械的な推計、歳入歳出ともにそういう性格のものでございますけれども、そういう機械的推計のもとで歳出歳入のバランスを見てみますと、確かに平成四年度の要調整額が三兆百億円、それが六年度には二兆六百億円になる、それから、去年提出いたしました中期展望の将来年度の初年度の計数も、いわば要調整額が小さくなっているということは全く事実でございます。  ただ、先ほど申しましたように、この中期展望というのは、現在我が国財政の置かれておる現状がどういうものであるかという判断の手がかりを提供するという意味でございまして、これを出したときの我々の主観的な見方は、やはりまだまだこんなに大きな要調整額が残っておる、現在の財政状況というのは、特例公債への依存体質からの脱却という一つの目標は達成いたしましたが、依然として健全というにはほど遠い、これからも財政の効率化、歳出の効率化、合理化、そういうものに徹底的な努力をしていかなければとても毎年の予算が組めない、そういう我々にむしろ覚悟を求めているというような感じでこれを受けとめておるわけでございます。  我々といたしましても、財政当局として毎年予算を組んでまいりますけれども、いろいろ合理化、効率化と申しましても、毎年のように、まあ容易さと言ったらおかしいのですけれども、その困難さというのは非常に募ってきておる。こういう形で数字で出てくる以上のつらさが財政を取り巻いているというふうに感じております。こういう脆弱な体質というものを何とか少しでもという、そういう努力を我々に要請しておる数字だというふうに我々は見ておるわけでございます。
  87. 細谷治通

    ○細谷委員 中期展望と一体として出されております「国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算」ということについて、若干触れさせていただきたいと思います。  平成六年度における公債発行額は三兆九千九百億円、公債依存度五・一%というふうになっております。平成六年度末の国債残高は百七十四兆三千億円ということでありますけれども、GNPとの対比で見ると一体どうなるのか。平成三年度では三六・五%というふうになっているわけでありますけれども、これと比較して一体どういう感じになるのか、国債費の歳出に占める割合はどうなるのかということをお示しいただきたい。これが第一点。  それから、向こう五年間でございますか、毎年建設国債は四千五百億円ずつ減額していくということになると、平成七年度には四・三%になる、こうなっております。平成八年度以降の国債発行額はどういうふうに考えておられるのか。当然要償還額残高なんかが出ているわけでありますから、一応の機械的な計算というのはあるんじゃないかというふうに思うわけであります。  それから第三点。特例公債というものを平成二年度以降発行しないということでありますから、当然残高の中に占める特例公債の割合というのは減っていくということは、まあある意味では当たり前のことなんです。しかしながら、依然建設国債は発行されるということになるわけでありまして、したがって、平成十六年度末の国債発行残高は百七十八兆七千億円残るということになっております。この国債残高というものが財政上どういう位置づけになるのか、意味を持つのかということ。大変難しい問題でありますけれども、その時点におけるGNPと比較してみてどんな感じになるのか。現在が三六・五%という割合になっておるわけでございますが、どんな感じになるのか、その見通しについてお答えいただきたいと思います。
  88. 藤井威

    ○藤井(威)政府委員 御指摘の国債整理基金の資金繰り状況でございますけれども、中期展望とあわせまして御提出した資料でございます。  その資料の表題にもありますように、これはあくまでも「仮定計算」ということでございます。今後国債発行がどうなっていくか、それによって国債残高がどういうふうになっていくかという、そこをある一定の仮定を置いて計算しないと出てこないわけでございますが、一応我々の悲願であります公債残高の累増体質から何とか脱却して、公債依存度が五%を下回る水準というものを早く実現したいということで、七年度にそういう状態になるということを仮定しますと、毎年度四千五百億円ずつ建設国債を減額していかなきゃいけない。一応毎年四千五百億円ずつ減額いたしまして、七年度に公債依存度が五%を下回る水準に持っていく、そういうことをまず仮置きいたしまして、それからいろいろな計算をしておるわけでございます。  まず御質問でございました、そうすると国債費が平成六年度においてどれくらいの財政におけるシェアを占めることになるかということでございます。中期展望自体は歳出歳入アンバランス、要調整額が残っておりますので、いゆる一般会計の規模に対してどれくらいになるかというのは正確に申し上げることができない性格のあれなんでございますが、仮に、国債費は歳出ですから、中期展望における機械的な歳出推計の総計に対する国債費の割合を見てみますと、平成三年度が二二・八%であるのに対して、平成六年度には二〇・八%まで低下するという計算が出てまいります。  次に、GNPに対する公債残高の割合でございますが、今度はGNPをどう見るかという問題が出てくるわけでございますけれども、GNPを一応現行経済計画における名目経済成長率四・七五%で均等に伸びていく、これは非常に大きな仮定でございますが、そういう仮定で、これも大胆な仮定なので、計算自体も非常に大胆な計算結果になるわけですけれども、公債残高のGNPに対する比率は、平成三年度が三六・七%であるものが平成六年度には三三・〇にまで低下するという計算が出てまいります。  最後にお尋ねになりました、今の公債残高の対GNP比が十六年度にはどうなるかということでございますが、この資金繰り表では、平成七年度に建設国債の発行比率が依存度として四・三になるということを前提にして、それ以降は三兆五千四百三十億という建設国債発行額が毎年同じ額だけずっと続いていく、そういう仮定を置いて計算しております。そういう仮定を置いて、かつGNPの伸びの方は、これもまた大変大胆な仮定ですが、十七年度までずっと四・七五でいく。四・七五以外の数字が全然ございませんので、全くの仮定としてそういうふうに置けば、十六年度には公債残高の対GNP比率は二一・三%というところまで、三年度が三六・七ですから、これは相当の低下になります。こういうようなところまで何とか持っていければいいわけですけれども、非常に長期の極めて大胆な仮定の上での計算でございますので、そういうものとしてお聞き取りいただきたいと思います。
  89. 細谷治通

    ○細谷委員 この中には、「財政の中期展望」の中において、いわゆる隠れ借金と言われるものが見えてきてないわけでありまして、これが財政に与える圧迫も大変強いわけであります。そのことについても本当はお尋ねする用意をしておりましたけれども、時間がございませんので、別の機会にさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私は今まで御質問申し上げました。それは、平成二年度に特例公債発行ゼロの当面の財政目標はクリアしたとはいうものの、財政運営を取り巻く環境は大変厳しいものがある。目が離せない状況にあるということだと思うのですね。いつ特例公債の再発行に追い込まれるかしれない状況と言っても過言ではないと思います。だから、財政というものもできるだけ、少しでも多く国民の前にガラス張りにして、そして国民の理解を求めていく、そういう中から財政運営をしていく必要があるんじゃないかということで申し上げたわけであります。もし増税の必要性がどうしても避けられないというようなことが出るにいたしましても、そういう国民に対する財政全般の理解というものがどれだけ行き届いているかが基本になるのじゃないかということで、私は申し上げたわけでございます。  はしょって申しわけありませんけれども、次は所得税の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  御承知のように確定申告が十五日まででございますか、行われておるということでございまして、サラリーマンを含めまして、大変国民の税に対する関心は高まっているということではないかと思います。私は、税という問題で実は地元の国会報告会でお話をしたことがありました。百人ぐらいおりまして、その中で、ほとんどサラリーマンだとお考えになっていいと思いますけれども、所得控除と税額控除の相違というものをお尋ねして、ここで知っている方がおられたら手を挙げてくれ、こういう話をしましたら、その百人の中で一人でした。その一人の人は、市役所で税務の仕事をなさっている方だったということなんですね。要するに御存じないのですね。まして、累進税率というものを介して大変これが不公平になっているんだということに気づいていない、こういうのが実態で、実はびっくりさせられたわけであります。  例えば、労働界の要求にいたしましても、減税減税と言うけれども、何か人的控除のところで所得控除とか、そこをやってもらったら何か大変満足されているという言い方はおかしいのでありますけれども、もっと公平な税制のあり方というものをやはり追求していかなきゃいかぬという実感がしておるわけであります。  そこで、きょうはいろいろ尋ねたいのでありますけれども、給与所得控除に絞ってお伺いをしたいというふうに思っております。  給与所得控除は人的控除とは多少性格が、例えば基礎控除とか扶養控除とか配偶者控除の人的控除とはちょっと性格を異にすると思うのです。やはり収入が多くなればなるほど、コストもそれに比例してとは言わないけれども、応分のふえ方をするというのはある程度理解できるわけであります。そういう意味において、今の税制は、給与所得控除というものが所得にスライドしてふえる仕組みになっているということではないかというふうに思うわけです。  そこで、ちょっと数字を示させていただきますけれども、平成二年度の税収の落ちつき見込みはどうなるのかという問題でございます。まだ一月の実績しか出ていないのでありましょうけれども、例えばこれを所得税の源泉分、申告分に分けて、それから法人税、間接税、こんなものが一体どんな落ちつき見込みになるか、簡単で結構でございますので、お答えいただきたいと思います。
  90. 尾崎護

    尾崎政府委員 実績見込みといたしましては今の補正後予算額しかないわけでございまして、私ども先般の補正の際に、十分に資料を勘案しながら補正の見込みを立てたところでございます。御指摘のように、一月末現在までしか実績が出ておりません。  所得税で申しますと、源泉所得税は八四%ほどの進捗割合になっておりますが、申告分はこの確定申告を待っているわけでございまして、三〇%弱ぐらいしかまだ税収が出ていない。法人税は大体半分ぐらいというようなことになっているわけでございます。最近の金利の上昇を反映いたしまして、また給与等も比較的好調でございますので、源泉所得税は、前年同月比累計で見まして、一月末二三・八%ほどの増となっております。しかしながら、法人税は一月末累計で九五%程度というような状況でございます。申告につきましては、昨年と比較することにまだ今の段階では余り意味がないと思います。そういう状況でございまして、今後の税収の動向をさらに慎重に見守ってまいりたいと考えております。
  91. 細谷治通

    ○細谷委員 大臣、お手元にちょっと私がつくりました資料をお配りしておると思いますけれども、これは、データはもちろん大蔵省の予算関係の資料から出したものでございます。  まず一表目であります。六十一年度から三年度までの給与所得に関する課税状況というものを示しておるわけでありますけれども、まず一番上のバツ印一四四・五というのは、これは要するに課税対象所得であります。これが一番大きな伸びを示している形になっております。それから二番目の丸のところ、一三九・四と伸びておりますのは、これは給与総額であります。したがいまして、給与総額を上回る率で課税所得が伸びているということであります。  三角、これは人的控除でありまして、これは先ほど言いました扶養控除とか何か、そういうものがそれぞれ引き上げられておりますから、その実績があらわれてきている。高く出ているわけであります。これはマイナスに効いてくるわけですね。それから今度は四角、これが給与所得控除額ですね。これが小さければ小さいほど給与総額との開きが大きくなるわけでありますが、課税対象がふえるということになるわけであります。当然のことでございます。そして一番下が税収額。これは御承知のように六十二、六十三、この辺ではかなり思い切った所得減税が行われましたから、課税額全体は一番伸びは低いわけでありますけれども、元年度から伸びが大きくなっている、こういうことだと思います。  その状況を示したのが二枚目でありまして、まず一番上のは何か。これが元年度の税収額であります。税収額の伸びが一番大きい。一三〇・六になっております。それから、次の二番目のバツというのが課税所得ですね。課税所得、これに一定税率を掛けたのが一番上の黒丸のところになるわけであります。その次の丸が給与総額、それから次が給与所得控除、こうなります。一番低いのが人的控除。ほとんど人的控除はいじっておりませんから、これは納税人員がふえた分だけということになりますから、一番低い。  いずれにいたしましても、ここで大変給与所得に対する課税額の伸びがふえているということであります。これは単なる納税人員がふえたというよりも、一人当たりの所得水準というものが極めて高い伸び率を示しているということだと思います。そのことをまず御認識をいただいた上で、次の質問に入りたいと思います。  平成二年度におきましては、景気の動向もありまして、法人税は大幅に減額をいたしまして、五・四%の減額をした。それで、申告所得税は大幅に一三・九というふうに補正をいたしたことは御承知のとおりであります。さらに、源泉所得税について見ますと、対前年伸び率で元年度は一一七・九、大変高うございます。そして、二年度の補正後では一一九・四というふうになっております。ところが、三年度になりますと、予算上は一〇九・九ということなんですね。半分以下になっているわけでありますけれども、これは税制改正も予定されていないのにどうしてこんなに見積もりが低いのか。ベアだって五%台半ばなんというのが見込まれているわけでありますので、どうしてこういうことになるかという問題があるわけであります。まず、この見積もりについて御説明をいただきたいと思います。
  92. 尾崎護

    尾崎政府委員 平成三年度の源泉所得税収でございますが、その内訳を申しますと、給与所得に係るものが十一兆二千五百十億円でございまして、二年度の補正後に対しまして一一・七%の増となっております。また、利子所得に係るものが五兆五千九百九十億円でございまして、二年度補正後に対しまして一〇・六%の増、それから、配当所得等に係りますものが三兆二千四百五十億円でございまして、三・二%の増、合計で二十兆九百五十億円、御指摘のとおり九・九%の増と見込んでいるところでございます。  このうち給与所得に係るものにつきましては、課税実績を基礎といたしまして、政府経済見通しで雇用者数の対前年度増加率が二・〇%程度、それから雇用者所得の対前年度増加率が六・五%となっております。それらを勘案して見積もりを行ったものでございます。  それから、御指摘の三年度九・九%は、元年度実績の一七・九%増、二年度補正後は一九・四%増と高くなっているのに比べて相当低くなっているのではないかということでございますが、元年度の場合には、主として預金金利の引き上げに伴います利子所得についての税収が非常に好調でありましたのと、それから、先般の税制改革により創設されました上場株式等のキャピタルゲインに対する課税、それが新たに含まれることとなりましたために伸びが高くなったものでございます。それから、二年度補正後の場合におきましては、同じく預金金利の引き上げの効果がございますのと、自由金利預金が大変ふえまして、その影響で利子所得に対する源泉所得税収が大幅に増加すると見込まれる結果となっております。このために高い伸びとなっているわけでございますが、三年度におきましてはこれらの要因がほぼ一巡すると見込まれますので、その効果一巡ということを考え合わせますと、九・九%という見積もりが低いということはない、適正な見積もりであると考えております。
  93. 細谷治通

    ○細谷委員 いずれにいたしましても、平成三年度の給与所得に係る所得税、私はこれはこんな低いわけはないと思う。実績としてはもっと高いものに出てくるというふうに考えておるわけであります。先ほども言いましたように、この要素は、給与所得人員の伸びよりも納税者一人当たりの所得水準というものが上昇している。したがって、これは高い伸び率を示すということになっているというふうに私は思います。それはまさに給与総額に占める給与所得控除の割合、給与所得控除率が徐々に低下している。それは先ほどのグラフにあったとおりでありまして、したがって、私はこの課税対象所得がふえる、したがって課税がふえる、こういう仕組みになっているというふうに思うわけであります。  ちなみに、給与所得控除率の低下というものを見てみますと、六十一年度が三〇・八%でありましたのが、平成三年度においては二八・三ということで、二・五下がっているということになっているわけであります。そして、これを徴税という観点から見てみますと、申すまでもなく、所得税の税収が異常にふえているということを意味していると私は思うのです。異常というのは何かといいますと、まさにこのからくりというのは、物騰といいましょうかインフレ、要するにインフレ修正が行われてない、構造的に税収がふえる仕組みになっているということが言えるのではないかというふうに私は思うわけであります。  言いかえてみますと、給与水準が上がっても、それに比例して給与所得控除が追いつきませんから、自動的に控除率はどんどん下がるという仕組みが今の所得税制の中に組み込まれているというふうに私は考えるわけでありますけれども、こうした認識につきましてどういうふうにお考えになっておりますか、御見解を賜りたいと思います。
  94. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘は、給与所得控除にいわゆるインデクセーションの思想を取り入れるようにということであろうかと思いますが、このインデクセーションにつきましては、従来私ども、給与所得控除のような所得税の控除とか、あるいは税率のようなものにインデクセーションを導入するのであれば、インフレによって同じような影響を受けます他の分野、例えば所得税、法人税におきます減価償却費でございますとかあるいはキャピタルゲイン等でございますけれども、そのようなものについても物価調整制度を導入しないと税体系のバランスがおかしくなってくるということが一つ。それからもう一つ、インデクセーションの導入によりまして税制の持っております景気調整機能が阻害されてくるのではないかというようなことから、インデクセーション導入という制度はとらない、それに対しては慎重であるべきだという考え方になっているわけでございます。  ただ、御指摘でございますけれども、所得課税負担の問題は、社会経済情勢の推移に即応して適宜見直しを行っていくということが適当であると考えておりますし、また、そのようなことであれば、あえてインデクセーションを制度として導入しなくてもいいのではないかというように考えている次第でございます。
  95. 細谷治通

    ○細谷委員 インデクセーションの話、まさにそうなんです。私は、所得税制の中にインデクセーション、こういう仕組みというものをビルトインさせていかなければならない、いく必要があるのではないかということを申し上げたかったわけです。  今いろいろ例が示されましたけれども、法人企業の場合には、例えば経費積算の中で、経費の内訳としてインフレ分は自動的に控除できる仕組みになっていると申し上げていいと思うのです。それは、いってみれば個人事業主についても同様なことが言えるのではないかというふうに私は思います。そのことは、逆に言えば、サラリーマンの給与所得についてもやはりこういう仕組みが導入されないと、どうしても不公平感が残ってくるといわざるを得ないというふうに思うのです。  さて、給与所得控除につきまして、八六年の十月、政府税調の答申に、必要経費、勤務費用の概算控除と、他方、担税力調整分としての負担調整のための特別控除の要素があるというのがこの答申の中に指摘されておるわけであります。そして、その配分割合は、いろいろ議論があるけれども、答申ではおのおの五〇%が適当であるというふうに言われております。この政府税調の答申について今日時点で一体どういうふうにお考えになっておられるのか、給与所得控除の性格というものをどういうふうにお考えになっておられるか、御見解を賜りたいと思います。
  96. 尾崎護

    尾崎政府委員 給与所得控除の性格につきましては、御指摘の六十一年十月の税制調査会の答申にございますように、一つには、勤務に伴う費用を概算的に控除する、それからもう一つは、給与所得の特異性に基づいた他の所得との負担の調整を図る、その二つのことを主眼として設けられているものと考えております。よく給与所得者は身一つで働いているからというようなことを申しますが、そのような給与所得の特異性、それとの調整という意味も概算経費控除のほかにあるのではないかというように考えている次第でございます。
  97. 細谷治通

    ○細谷委員 今申し上げましたように、給与所得控除における物価スライド制、いわゆるインデクセーションの導入をしない限り、どうしても自動的に増税になる仕組みというものがこの税制の中に組み込まれているという形になっているわけでありますから、サラリーマンにとってどうしても不公平感というのを免れることができないということだと思うのです。経済の好、不況に関係なく給与所得税というものがふえていくという形は、そういうところにあるのじゃないかというふうに私は思うのです。このことは、財政当局から見れば、確実な税収増というものが確保できるわけでありますから、大変都合のよい仕組みかもわかりませんけれども、サラリーマンにとっては、やはり大変不公平感の残る税制と言わざるを得ないわけでありますから、せめてインフレ分については常に修正されるのだ。それでなくても、事実サラリーマンの収入が上がれば税収の実質増というのは確保されているわけでありますから、少なくともインフレ分については修正をするという仕組み税制の中に組み入れておくことが必要ではないかというふうに私は判断いたしております。
  98. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘趣旨はよくわかるわけでございますが、給与の水準が決まりますときに、そこで物価の上昇分、インフレ分が反映されているといたしますと、給与所得控除の方は定率で決まっているわけでございますから、一定率という形で給与所得控除が行われる。つまり、インフレに伴う所得の増に見合って、控除の方も大きくなるということになるわけでございます。  ただ、給与所得控除の場合、二つの要素があります。本来でございますと、控除でございますから、定額的に定まっていくというのが通常なのかもしれませんけれども、給与所得控除のように定率で決めてございますのは、一つは、先ほど申しました第二の点、身一つで働いているという給与所得者の特異性、それに対する配慮ということもございまして、御承知のとおり五%という低い率ではございますが、青天井で給与所得控除が行われている。そういう要素も加味されているわけでございまして、そこは、率で給与所得控除が定まっているというところで、控除の面、インフレ分も考慮をされてきているというように考えられますが、いかがでしょうか。
  99. 細谷治通

    ○細谷委員 ちょっと見解を異にするわけでありまして、給与所得がふえる、それに従って控除が一定の率でふえるということは、それはコストの分が加味されているということでありまして、私は、インフレの分までそこでは修正されてないという考え方が正しいのじゃないかというふうに思うわけなんです。  だんだん時間もなくなってまいりましたけれども、もう一つ見方を変えますと、物価スライド制というものの必要性というのは、税率構造の中にもあるのじゃないかということを指摘したいと思うのです。  御承知のように、今は税率区分は一〇%から五〇%で五段階になっているわけです。そして、それに対する所得区分というものがあるわけでありますけれども、この所得区分についても、税率区分をいじろうと言っているのじゃないのですけれども、所得区分というものは物価上昇に合わせて見直しをし、かさ上げをしていかない限り、やはりこれはどうしてもインフレの分まで課税所得として取られてしまうという形になっているんじゃないかと私は思うのです。ここにも、この税率区分と税率構造の中にも、給与所得に関しては自然増収になる構造的な仕組みというものが内在しているというふうに考えております。  事実こういうこともあるわけで、アメリカではレーガン税制の中で、インフレ率に応じた税率区分変動の仕組みというものが現に導入されているわけでありまして、現在も続いておるというふうに聞いております。ですから、この辺についても、私は日本の制度として改善の余地があるというふうに考えておりますけれども、いかがでございましょう。
  100. 尾崎護

    尾崎政府委員 御指摘のとおり、一九八一年の経済再建租税法というもので、アメリカにおきましてはインデクセーション制度が取り入れられまして、一九八五年以降、その前年の消費者物価指数の上昇率に応じまして、税率の適用所得区分、それから人的控除、概算控除を引き上げるというようにされているわけでございます。  インデクセーションを取り入れるといたしますと、それが控除の段階で行われるのか、あるいは税率適用所得区分、二段階、三段階、四段階、いろいろございますが、その区分の額をいじっていくことにするのか、いろいろと考え方があろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、インデクセーションを取り入れることに伴う問題点ということもまたあるわけでございまして、我が国のように毎年税制改正が行われる、毎年その見直しが行われるというその実情の中にありましては、あえてインデクセーションで自動的にそれを決めていく必要もないのではないかというように考えている次第でございます。
  101. 細谷治通

    ○細谷委員 意を尽くせませんけれども、結論的に御質問申し上げたいと思いますけれども、給与所得者、サラリーマンにとりましては、景気に無関係に、賃金上昇があれば現行の所得税制、なかんずくこの給与所得控除のシステムとそれから税率所得区分の制度を通じて、自動的に増税を強いられる、こういう形になっているわけでありまして、税制構造自体に常にこの増税のシステムというものがビルトインされているというふうに申さなければならぬというふうに思っております。  ところで、大臣に御感想をお伺いしたいと思いますけれども、今労働界からは物価調整減税というものが出されて、要求が出されておるのは御承知のとおりであります。今のこの所得税制仕組みというのは、私が指摘しましたように、今の仕組みをとっている限り、毎年あるいは恐らく二年、三年のタームでは必ず減税要求が出てくるというふうに思うのです。ところが、私は、インデクセーションというものを導入して、インフレというものを常に修正加味した税制というものが仕組みとしてできていれば、そういう要求、圧力というものも弱まる、納得性を得られるんじゃないかというふうに思うわけであります。そういう観点から、今の議論を通じて大臣の御感想をいただければありがたいと思います。
  102. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 感想と言われますと大変難しいのですが、まず第一に感じましたことは、非常によくお調べになっておられるということ、そして、私では到底思いつかない鋭い御指摘もたくさんあったということ、にもかかわらず主税局長も非常に健闘したなという率直な感じであります。私は、冗談でこういう言い方をするのではなく、同じ問題をとらえるのにも、なるほどこういうふうに見方を変えて見るとさまざまな議論ができる、そして、そういう中にはお互いに勉強すべき点があるのではないだろうか、これは率直な感じで今伺っておりました。  ただ、今最終的に感想という一言でお話をいただいたわけでありますけれども、今御承知のように、昭和五十年代後半の税制改正要望の非常に強い高まりの中で、我が国は抜本的な税制改革というものに取り組み、現にその一部がまだ進行中という状況でございます。国会にその解決をおゆだねしておるテーマもあるわけであります。こうしたことを考えていきます場合に、その部分だけを取り上げて問題を処理することは非常に困難が多いだろう。率直にそんな印象を持って拝聴をいたしておりました。
  103. 細谷治通

    ○細谷委員 やはり不公平税制を正すという観点からも、このインデクセーションというのは、日本の所得税制の中でぜひ検討に値する課題だと私は確信をします。そういう意味において、政府税調の場でも結構であります、大蔵省の中においてでも結構でありますけれども、この問題をひとつ真剣に受けとめていただいて、検討の素材としていただきたいということを申し上げておきます。また別の機会に、もう少し詳しく議論をさせていただきたいというふうに思います。  租特について、実は本題についてお尋ねしなきゃならなかったわけですが、まだちょっとそこまで行きませんで、時間がございませんでした。またの機会にさせていただきまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  104. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、明十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十七分散