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1991-03-15 第120回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年三月十五日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 奥田 幹生君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 高村 正彦君 理事 佐藤謙一郎君    理事 額賀福志郎君 理事 竹村 幸雄君    理事 和田 貞夫君 理事 森本 晃司君       尾身 幸次君    加藤 卓二君       木村 義雄君    古賀 正浩君       佐藤 信二君    斉藤斗志二君       坂井 隆憲君    住  博司君       田中 秀征君    田辺 広雄君       田原  隆君    谷川 和穗君       中谷  元君    鳩山 邦夫君       深谷 隆司君    町村 信孝君       山本  拓君    渡辺 秀央君       小澤 克介君    大畠 章宏君       加藤 繁秋君    小岩井 清君       渋谷  修君    鈴木  久君       水田  稔君    安田  範君       吉田 和子君    権藤 恒夫君       二見 伸明君    渡部 一郎君       小沢 和秋君    川端 達夫君       江田 五月君  出席国務大臣         通商産業大臣  中尾 栄一君  出席政府委員         通商産業大臣官         房長      熊野 英昭君         通商産業大臣官         房総務審議官  高島  章君         通商産業大臣官         房審議官    横田 捷宏君         通商産業大臣官         房審議官    合田宏四郎君         通商産業省立地         公害局長    岡松壯三郎君         通商産業省機械         情報産業局長  山本 幸助君         工業技術院長  杉浦  賢君         資源エネルギー         庁次長     深沢  亘君         中小企業庁指導         部長      田島 哲也君  委員外出席者         外務省国際連合         局原子力課長  貞岡 義幸君         文部省高等教育         局大学課長   泊  龍雄君         文部省高等教育         局専門教育課長 若林  元君         商工委員会調査         室長      松尾 恒生君     ───────────── 委員の異動 三月十五日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     住  博司君   加藤 卓二君     坂井 隆憲君   田中 秀征君     町村 信孝君 同日  辞任         補欠選任   坂井 隆憲君     加藤 卓二君   住  博司君     浦野 烋興君   町村 信孝君     田中 秀征君     ───────────── 本日の会議に付した案件  産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七〇号)      ────◇─────
  2. 奥田幹生

    奥田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田範君。
  3. 安田範

    安田(範)委員 産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。  この改正法律案は、政府委託による産業技術国際共同研究成果として得られた特許権等の一部を研究を実施した企業等に帰属させることと、研究を実施した企業無償または低廉な対価で実施することを認める、こういうことでありまして、さらにNEDO委託政府委託に準ずること、そしてこの分野での国際関係円滑化を図ろう、こういうことで出されてまいったと思うのであります。実質的にはこの点が今回の改正内容であろう、かように考えているわけでありますが、しかし私はこの改正案を検討してまいりますときに、単に法案内容というものだけではなくして、第二次世界大戦以降の時の流れと申しましょうか、時代変遷、こういうことに思いをいたし、いろいろな情感に駆られたわけであります。  同時に、我が国通商産業政策のみならず、広く経済あるいは外交面での意識や発想の転換期にある、言うならばそういうところに直面をしているという状況を非常に強く感じたわけであります。同時にまた、そういう状況の中でそれぞれの政策課題に対して的確な対処をしていかなければならない、これが国全体としての喫緊の課題であろう、こういうことも感じたわけであります。今日の世界に冠たる日本経済成長を築き上げてまいりました巨大な政治機構、もちろんあらゆる経済的な努力とかあるいはまた勤勉な、働き過ぎと指摘をされるような国民の多くの皆様方が挙げて努力をしてまいった、こういうことに対しては極めて高い評価をされるべきであり、同時にまたその評価を惜しむべきものではない、かように考えているところであります。  そういうところで、今この場では特にこの政治機構問題等について触れてみたいと思うのでありますが、率直に申し上げまして、機構の巨大さといいまするか肥大さ、こういうものがなかなか意識の変革というものにマッチしないというか即応できない、こういう状況になりつつあるのではないかな、こんなことをしみじみと感じているのが現況であります。まあ役所でありますから、今日まで言われてまいりました縄張り意識だとかあるいはまたそれぞれの省庁ごと既得権の確保と申しまするか、そういうものが閉鎖性となって、なかなか時代変遷あるいは時代要請というものに対応できない、こういう事情もあるのではないかな、こんなことを感じているわけであります。  そういう中で日米構造問題協議、そういう中での幾つかの問題点がありますけれども、それが典型的に、適切な政府の対応が欠けている、こういうことがあらわれているのではないか、こんなふうに実は思います。といいますのは、国内でいろいろな政治的なあるいは事象的な矛盾なんかがたくさんありまして、そういうものを解決しようという努力はそれなりにされているのですけれども、数年たちましてもそれらの問題というものがなかなか解決をされていない。ところが反面、日米構造問題協議の中で一つの問題をとらえられて外国からいろいろな注文が出てくる、要請が出てまいるということになりますると、巧みにそれを 工夫しまして、今まで困難だ、できないというふうに言い切っていたものまで何とかやり抜けられる、こういうような状況があるわけですね。  そういう面を考えますると、言うならば日本政治の主体性と申しますか自主性と申しますか、そういうものとのかかわりの中で大変妙な印象を今受けざるを得ない、これは実感であります。そういう実感を前提にしまして今回の法改正というものを見ましたときに、やはりこれは何なのかな、言うならば今回の法改正というものは遅きに失した分ではないのかな、こんなことを感ずるわけであります。が、そういうことにつきまして諸般の情勢から今回一部改正ということで出されました、法案提出をした背景と申しまするかそういうものについて実はお聞きをいたしたいな、こんなふうに考えております。  同時にまた、今回の改正によりまして、今までの諸外国との言うならば摩擦でしょうか、そういうものが解消できるのか、こういうことも一つ課題としてあると思うのであります。外国不満はこれでなくなるというようなことで受けとめてよろしいのかどうか、この辺につきましてもあわせてひとつ包括的に御答弁をいただきたい、かように思います。
  4. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今回、法案提出に至りました背景を御説明させていただきたいと思います。  近年、技術革新が非常に急速な勢いで進展しているかと思います。こういう中にございまして、産業技術分野における研究開発におきましては今までより一層複雑でいろいろな専門知識を組み合わせた研究を進めていくことが必要となってきております。このようにいろいろな分野にわたる専門的な知識を必要といたしますことから、我が国だけで対応するよりも広く各国研究者知識を集めて行う国際共同研究によって研究開発を進めることが非常に重要になってきていると考えております。特に政府、または新エネルギー産業技術総合開発機構NEDOと略称いたしますが、その委託により研究開発を行っている分野を申しますと、基礎的で先導的な分野でありますので、広く各国研究者専門的知識を組み合わせた国際共同研究により行う必要性が非常に高くなっているかと思います。  しかしながら、それにもかかわらず、その研究開発成果取り扱いにつきまして諸外国取り扱いと異なった点がございます。このため外国企業研究に参加しにくくなっておるのが現状でございます。このような状況を踏まえまして、政府またはNEDO委託する国際共同研究を促進するために、その成果であります特許権取り扱いにつきましてこの法案により措置を講じたいと考えているところでございます。  先生の方から摩擦解消になるかという御質問がございましたけれども摩擦解消にはいろいろな手だてを行っていく必要があるかと思いますけれども我が国の基礎的、先導的産業技術分野研究開発外国にオープンにする、しかも外国企業が参加しやすくなるということでございますので、摩擦解消のための非常に大きなステップになると考えております。
  5. 安田範

    安田(範)委員 院長の今の答弁なんですけれども、言葉じりをとらえるわけではありませんが、今回の措置というものが摩擦解消ステップになるだろうという話なんですけれども、私は、この改正でおおむね外国不満というものは消えるというか不満はなくなる、こういうふうに受けとめてよろしいのかどうか、こういうことについてもう一遍、ステップじゃなくて、これは序の口ですよという話なのかわかりませんけれども、その辺については認識としてはいかがなんですか。
  6. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 摩擦解消の大きなステップになるかと思っておりますけれども国際共同研究をやるということで日本技術のよいところが外国にも伝わっていくというようなことが進んでまいりますと、現在ございます例えば技術ただ乗り論というようなことに対しまして、やはり日本はよくやっている、力もあるというようなことが実証されていくとともに、そのような批判あるいは摩擦が解消されていくものと思っております。
  7. 安田範

    安田(範)委員 この問題については後でまた若干触れさせていただきたいと思うのです。  次に、今回の改正で、国の委託した研究開発成果である特許権等、これは従来一〇〇%国に帰属をしていた、こういう状況でありますけれども、これが改正をされまして五〇%以上が国、そしてまた五〇%までが受託者などとすることになるという状況だと思いますね。受託者などによる特許を実施するときの対価につきましても、従来有償であったものを無償または廉価にする、こういう状況でありまして、この内容につきましては一定の前進だな、こんなふうに私は評価をいたしているわけでありますけれども、その中で特に私は、今日の日本政治体制の中でやはり何といっても財政中心主義といいますか、そういう一つ流れがあったわけなんですが、その財政中心主義、これをちょっと枠が外れると申しまするか、今までですと研究開発成果財政法によりまして原則としてすべて国が占有する、こういう状況になっていたわけでありますから、そういう意味では一つの枠を取り払って、言うならば一つ前進と申しまするか、国際的な門戸を開けた、こういうことで評価をしているわけであります。  そういうことで、私は一歩前進したというふうには感じておるのですけれども、ただ、これで事成れりといいますか快哉を叫ぶような状況ではないのではないか、こういうふうにも考えざるを得ない面があろうと思うのであります。したがいまして、今回のこの一部法改正というものはとりあえずの一部法改正、こういうふうに私は見なければならないと考えております。変な話で表現をしては悪いのですけれども、例えば外圧に対する応急の措置と申しまするかそういう程度のものかな、こんな印象をいたしているわけであります。その内容は、この法改正というものは、法第十条で明らかになっておりますように、当該外国法人の参加が不可欠の条件である、もう一つは、相手国においても我が国同様の措置がとられていることが要件になっている、言うならば相互主義といいましょうか、そういう二つの条件要件というものがそろえられなければ今回の法改正対象になっていかない、こういう事情であろうと思うのです。  そういう面で考えますると、端的に疑問に思いますのは、なぜ外国法人が入っていなきゃならないのか。反面、言いかえますると、国内企業だけの国の委託研究開発部門、こういうものについては一切触れられないわけですから、そういう面で国内に対して大変冷たい措置と申しまするか、そういう印象を非常に強くするわけなんですが、この辺についてはどのようなお考えなのか、まず、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  8. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  外国企業が入ったときだけではないか、こういうことでございましたが、その点についてお答えいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたように、近年産業技術分野での研究開発につきましてはいろいろな専門分野知識を組み合わせることが大切であるということから、国際共同研究必要性を御説明いたしました。そして、政府が資金を提供して行います研究開発成果である特許権取り扱い海外先進国と異なることが大きなネックになっている、円滑に進まない理由になっているということもお話をいたしました。そして、このため、今回の法改正によりまして産業技術分野共同研究成果について特例措置を講ずることとしたものでございまして、国内企業につきましては、国内企業に対してこの措置対象とすることにつきましてはその必要性につきまして従来からいろいろな御指摘をいただいてきております。しかしながら、国有財産の適正な管理という一つの政策的な要請もございます。これとのバランスを考慮いたしまして、今後ともこの改善について引き続き努力をしていきたいと考えております。  それから、ただいまの御質問の中に、外圧によ るのではないか、こういうお話がございましたが、例えば技術ただ乗り論というような批判があったことは事実でございますけれども、私ども、一九八〇年代の中ごろから日本科学技術をめぐる大きな変化を踏まえながら、我々の考え方の中にも随分大きな変化がございまして、いろいろなところでの答申、例えば科学技術会議の第十一号答申などにおきましても積極的な国際的貢献科学技術分野でもやっていかなければいけないというようなことが指摘されてまいりましたし、私ども通商産業省において先般産業技術審議会で御審議いただきました「九〇年代における産業科学技術政策のあり方」におきましてもこのような点が指摘されておりまして、やはりこれから日本が進むべき道として今回のこの措置をお願いしていると考えております。
  9. 安田範

    安田(範)委員 ただいまの話なんですけれども国内企業については国有財産の適正な管理、こういうものを中心にして考えざるを得ないんだという御答弁だと思うのですね。しかし、国有財産管理ということからすれば、今回の外国企業が入ったからといって、あるいは国内企業だからといって別に関係のある話ではないと思う。ただ、外国との技術の提携、交流、こういうものを中心にして考えた場合の特例ということですから、これはある部分は私は認めます。ある部分は認めますけれども、しかし、国有財産の適正な管理ということだけを中心にして物を考えるのではなくして、やはり今日のハイテクその他の技術、そういうもののより一層の伸長と申しまするか、開発のさらに一層の助成と申しますか、そういうものを考えていった場合には、これは国有財産の適正な管理だけを中心にした議論というものは当てはまらないような感じがして仕方がありません。  と申しますのは、それぞれの団体からも今まで提議があったことも私は承知をいたしておりますけれども、それ以外に、今この改正案が出されてきましてからいろいろな面で検討されて、これでは国内企業が逆差別というような印象を受けるのではないか、こういう批判もあるわけですね。そういうことを考えてみました場合には、やはりその国内企業に対してもしかるべき措置というものは、あるいは言うならば特許権等の実施、言うならば企業化するに対して何らかの、今のこの一部改正法案にもありますように、言うならばそれを実施するときには無償ないしは廉価、こういう話もあるわけですから、そういう意味では国内企業に対しても何らかの措置があってもよろしいのではないか、こういうふうに私は考えるわけですね。特に特許権については、国が委託したということでありましてもやはり同じようなレベルで物を考えてみますれば、ある部分権利というものを、開発した者にある部分権利を与える、こういうことも可能ではないかと思うのですが、そういうものはやはり全体としては大変公平な取り扱いになるのじゃないか。同時にまた、それぞれの企業の発展なりあるいは成長、こういうものと結びついていくのではないか、かように考えますけれどもいかがでしょうか。
  10. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘のありました点は、私ども先生お話は非常によく理解できたわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、やはり国有財産の適正な管理というのも一つの非常に大きな政策的要請だと思っておりますので、そのバランスをとることも考慮に入れながら私どもといたしましても特例を拡大していくことは大変重要な課題だと考えております。そこで今後ともこの改善に向かっての努力をしていきたいと考えております。
  11. 安田範

    安田(範)委員 ただいまの問題につきまして、言うならば国内企業をどう取り扱うかあるいはどのような形で措置してまいるかということは、これからそれぞれの委託を受けた企業等の将来の伸長といいますかこういうものに大きな影響があるんじゃないかと思うのですね。  ちなみに申し上げますると、日本の頭脳がいつも海外流れていってしまう、こういうことが言われておりますね。これはもう技術院長おわかりのとおりだと思うのですが、後でも細かい数字も申し上げたい気持ちもあるのですが、時間の関係でどうなるかわかりませんが、いずれにしましても、日本の優秀な技術者なりが、あるいは研究者なりが日本に居つかないでみんな外国へ流出してしまう、それで外国共同開発あるいは共同研究をしている、こういうような状況というものは事実としてあるわけですね。したがって、そういう面からしますると、先ほど技術院長お話ございましたように日本技術ただ乗りといいますか、そういう形になってまた戻ってくるわけですね。  そういうことは何かといえば、一つはやはり基盤としての優秀な魅力のある研究開発施設設備がないということ、例えば大学においてもそうでしょう。あるいは企業においてもあるいは国営のそれぞれの研究機関においてもそうだと思うのですが、そういうものがないということ、そういうものがやはり一つ底流として流れている。同時にまた、今の御答弁のようにやはり国内は別だよ、言うならば国有財産管理のためにこれはしようがないんだというような形でやりますると、どうしてもやはり国内企業に対する魅力というものあるいは研究の、開発の意欲というもの、そういうものがどんどん薄れてしまうという現実が出てくるんじゃないかと思うのですね。どこに魅力を与えるか、そしてどこで定着した研究をしてもらうか、これがやはり日本の、例えば当面皆さんがおやりになっている仕事の大きい課題なんじゃないかなというふうに思うのですね。そういう面で私は、やはりこの問題についてはしっかりした方針なり見通しというものを立ててもらいたい、かように考えているわけなんです。くどいようなんですけれどももう一遍その辺についてお答えいただきたいと思います。
  12. 中尾栄一

    中尾国務大臣 この問題は私は非常に関心を持っている問題でございますから、きょうはもう本当に安田先生お話を先ほどから聞いておりまして、一つ一つがみんな私の言いたいことを申されているなという感じで受けとめているのでございます。けさからまた私もひどい花粉病にかかってしまいまして、本当に朝からくしゃみの連続でどうにも耐えられないぐらいでございまして、真っ当なお答えができないことがまことに残念でございますけれども、私は、先ほど来安田先生がおっしゃっているように、日本でこれだけの発展した、しかもこれだけに非常にアドバンスしただけの技術を持っていながらそれが日本で活用されずに外国へみんな流出してしまう、場合によってはまたもう日本の国の今日までの、言うなれば科学技術立国だといいながら現実外国ただ乗り論じゃないか、この批判があって当たり前かと思うような面も否定できません。そういう意味におきましては、全く我が国の行う技術開発につきましては海外基礎研究成果そのものを利用いたしまして製品開発に特化するということによって利益を上げているという、いわゆる先ほど来委員指摘技術ただ乗り論という批判海外にあることは特に承知しつかまつっている次第でございます。こうした批判の根拠は、そのものがずばりこれが理由だという明確さはないにせよ、我が国の論文の引用数が少ないこと、あるいはまたノーベル賞受賞者そのものがほかの国の、先進国から比べるとまことに少ないのではないかという批判、あるいは我が国における研究開発費のうちの基礎研究費と申しましょうか、その比率が極めて低いのじゃないかということが大きなメーンファクター理由になっているような感じもいたします。  近年、科学技術分野の接近が顕著となっておりますことから、通産省及び俗に言うNEDOの行う産業技術開発科学技術研究開発につきましては、より探索的かつ基礎的な分野に重点を移しているところでございまして、基礎的、独創的な研究強化を図っていくのがまことに肝要なことである、こう考えておるわけでございます。今後こうした研究開発成果を上げることを期待 するや切でございますが、さらに政府中心となりまして我が国大学国立試験研究所等研究レベル世界的に見ましても魅力のあるものに向上させるように、関係省庁とも連携を深ういたしまして、そしてまた研究体制あるいは研究設備、またそれを整えるだけの予算措置などを図っていく所存であることを申し伝えたいと思います。
  13. 安田範

    安田(範)委員 答弁はそのとおりだと思います。ぜひそういうことで、これからは基礎的な分野についての充実強化といいますか、そういうものはさらに一層努力をされたいというふうに思うのです。  ただ、先ほど申し上げましたように、これはあくまでも外国企業が加入していることが条件ということで、国内企業財政上の理由といいますか国有財産管理、そういうことで線引きをしてしまうことがいいのかどうか、これについては大変な疑問があると思いますから、ぜひこの国内企業、特にこれは政府委託するわけですから、あるいはNEDOであってもそうなんですけれども、そういう委託企業に対する措置の仕方、これは重い軽いはあるかもわかりません、しかしそれはできる範囲内で適切な措置を強く求めたい、こういう気持ちでいっぱいであります。これは申し上げておきたいと思うのであります。  次に、今回の一部改正というものは率直にいいますると通産省所管分野のみ、こういうことですね。それで、私はいろいろ検討いたしましたけれども、通常、情報、電子関係分野であるとかあるいは生命工学の関係、ソフト系の分野、宇宙、航空の分野、海洋開発、地球環境の問題等々たくさん広範囲に今日取り組まなければならない問題があると思いますね。こういうことを押しなべて考えますると、なぜ今回通産所管だけの分野に限られたのかな、このことについてどうも残念な気がしてならない。やはり行政全体の大枠と申しますか、日本政治全体をグローバルに見詰めて、そういう中で言うなれば整合性を持たせてそれぞれの省庁の関係とかそういうものを含めて方向が出される、これが一番すばらしいのじゃないかというふうに思っていたのですけれども、今回通産だけの分野に限られるということについてはどうも納得しかねるような気がするものですから、この辺についての所見をお願いしたいと思います。
  14. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  今回は産業技術に関する政府またはNEDO委託による研究開発に限ってこの措置対象といたしております。これは産業技術分野での委託研究開発成果取り扱いについて特例措置を講ずる必要性がこの分野において特に高かったからでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、平成元年度からNEDO委託による研究開発プロジェクトにつきまして外国企業の参加を進めてきております。政府が資金を提供して行う研究開発成果取り扱い我が国と諸外国とで異なっているために、外国企業との契約内容の調整に非常に長い時間をかけた事例がございました。しかも、今後通商産業省またはNEDOの行う委託研究開発につきましては、情報処理技術、先進的加工技術、ソフトウエア技術などの分野におきまして外国企業が参加することが予想されておりますので、当面産業技術について措置を講ずることが急がれるということでこの措置をとったわけでございます。  なお、今後産業技術以外の分野におきまして今回と同様な措置を講ずる必要性が生じた場合におきましては、関係省庁においてより広い技術分野対象とした措置が検討されることを私どもとしては期待をいたしております。
  15. 安田範

    安田(範)委員 工業技術院長さんですからね、そういう御答弁にしかならないのだろうと思いますよ。しかし考えてみますると、産業技術分野だけを大変緊急な課題だからということであえて取り上げて、これはもうやることは当然なのですけれども、それだけ突出をしなければならないという状況ではないと思うのですね。例えば、農水省にあっても、あるいは逓信省にあっても、いろいろな各省庁でたくさんの関連を持って今日的な課題、言うならば同じような課題を持っていると思うのですね。そういう面からしますると、ただいまの答弁のように、いずれ政府の方でというふうな考え方の答弁ではちょっとなかなか理解ができない。  これは技術院長ですからなかなか答弁しにくいのだと思うのですが、大臣の方から、この問題については、普遍的といいますか広い分野で、日本のそれぞれの省庁を含めた形で、こういう問題については早急に対応する、こういう姿勢が今望ましいのじゃないか。やはり、いつでも私ども感じますのは、後追い行政と申しまするか、問題があってから後にどうするかという議論がついて回るわけですね。これが国際的にも大変な批判を買うという状況にもなっていると思うのです。やはり一歩先んじて、何をするかというのが今日日本政治に求められているのだろうと思いますが、この辺についていかがなものでしょうか。大臣からお聞かせください。
  16. 中尾栄一

    中尾国務大臣 いささか政治分野でございますから私から答えさせていただきます。  今回の、産業技術に関する政府またはNEDO委託によります研究開発に限ってこの措置対象といたしましたのは、国際技術分野での委託研究開発成果というものの取り扱いについて特例措置を講ずる必要が特に高かったというためでございますが、先ほど委員指摘のとおり、これは何も一省、通産省だけに限る問題ではございません。本当に各般にわたって、例えばバイオの問題みたいな大きな問題などは、これまた通産省もさることながら農林省の大きな各般の分野でございますし、今後、産業技術以外の分野におきましても今回と同様の措置を講ずるよう、必要性が生じた場合には関係省庁において広い技術分野対象とした措置が検討されることは申すまでもないことでございますから、これは御案内のとおり、また御指摘のとおり、対象を広げることによって各省庁にも呼びかけていくということは私の責任においてやりたい、こう考えております。
  17. 安田範

    安田(範)委員 どうも大臣、大分花粉症がひどそうで答弁を求めるのが大変気の毒なものですからその辺は配慮したいと思うのですが、いずれにしましても、ただいまの御答弁をいただいて、積極的に他の省庁にも働きかけをいただくということについて御理解を深めていただきたいと思うのであります。  次に、中小企業関係についての関連と申しまするか、今回の法改正によりまして中小企業関係はどうなっているのだろうか、こういう視点で若干質問させていただきたいと思うのです。  御承知のように、国の委託あるいはNEDO委託、こういうものについては、ほぼ大企業と言ってよろしいんでしょう、国内大体三百カ所以上でしょうか。大体三百カ所ぐらいを対象にしているのかなというふうに思うのですが、それにしましても、今日の中小企業は非常な力をつけている、技術的にも大変なレベルに達している、こういうことが言えようかと思うのであります。しかし、中小企業なるがゆえに、言うなればビッグプロジェクトといいますか、そういうものにはなかなか参加し得ない、こういう状況も否定し得ない問題だと思うのです。  そういう面で考えますると、今日の法改正一つの契機にいたしまして中小企業等についても何らかの措置が必要なのではないかな、こういうことを一つは考えてまいりました。一つは、工業技術院としての目に見える中小企業に対する援助の措置技術向上、開発のための諸般の助成、こういうことについて一層力を尽くしてほしいな。これは、中小企業庁なんかを中心にしましていろいろな中小企業の育成強化のための施策というものがやられている、このことについては私も了承はいたしております。ただ、それだけではなしに、どうも工業技術という面から見ての援助、指導というものがなかなか目に見えない、こういう状況があろうかと思うのです。この際、今回を契機としましてぜひこれに視点を当てて行政を推進してもらいたい、このことを強く申し上げておきたい と思います。  同時にまた、もう一つの問題としましては、言うならば特許権の実施の仕方にかかわる問題なんですけれども、国が五〇%持つということになった場合に、やはり持ち分の五〇%を今度は中小企業の面でいわば企業化をするとか、そういうことに対しての配慮、言うならばそれは廉価ということになるかもわかりません、そういう配慮というものはもう不可欠になってきているんじゃないか。そうでないと大企業と中小企業の差というものがますます拡大をしてまいる、こういうことにも相なろうかと思うのです。したがいまして、その辺をどのようにお考えになっておられるか、あるいは措置についてどのような御検討をなされておられるか、この辺をひとつ御説明をいただきたい、かように思います。
  18. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  今回の措置対象となりますのは政府またはNEDO委託による研究開発でございまして、これは企業の規模の大小を問わずあらゆる企業に対して参加の機会が開かれているものでございます。したがいまして、大企業のみが今回の措置によって恩恵をうける、そういう制度ではございません。実際にも大型工業技術開発制度で行ってまいりました自動縫製システムの研究開発のプロジェクトがございますが、中小企業が多数参加して行われております。中小企業の方で、先生お話にもございましたように、力のある企業はたくさんございますが、そういう方々がその技術を持って御参加いただくことができるわけでございまして、中小企業にも開かれた制度でございます。  ただいまお話がございましたように、中小企業我が国経済の活力の源でございまして、この点につきましては、先生からお話がございましたように、中小企業庁におきましていろいろ技術力の向上に努めてきておりますが、私ども工業技術院といたしましても、技術による地域の活性化というのは一つの重点施策になっておりまして、いろいろな施策を進めております。もう少し具体的に申しますと、工業技術院傘下の試験研究所、地域に七つございます。これと各県にございます公設試験所との連携、それから地域試験研究所による技術指導、地域における重要技術研究開発プロジェクトなどを行っております。これらの施策によりまして中小企業技術力の向上を私どもも側面から支援をしてきております。今後ともこれらの施策の充実に努力していきたいと考えております。  なお、中小企業が国有特許を使う上での配慮について御質問がございましたが、これにつきましては私どもこれから検討をしていきたいと考えております。
  19. 安田範

    安田(範)委員 最後の御検討の話なんですが、できるだけ早い機会に、しかも具体的な検討結果、これをおまとめいただきたいというふうに思います。これは強くお願いしておきたいと思います。  お話にありましたように、これは建前はまさにそのとおりだと思うのです。あらゆる企業に門戸は開放してありますよ、すべての企業どうぞ入ってきてください、こういう話はもう当然の話だと思うのですけれども、実態としては、幾つかの中小企業が入っておりますよという話なんですけれども、今までのプロジェクトをずっと考えてみたりなんかしますると、中小企業の入る場、チャンスというものはそうない。中小企業の実態というのはなかなか、それは技術や何かが優秀なものがありましても、大企業と比較するとどうしてもチャンスというものは恵まれない、こういう実態があろうと思うのですね。したがって、お話にありますような、言うならば建前と言っては大変失礼なんですけれども、そういうものが実態として、事実上の問題としてそれぞれの中小企業に波及をするような、そういう具体的な啓発なり指導というものをしっかりやっていってもらわないと、これはやはりなかなか入りにくいんじゃないか、こういうことを強く感じます。ぜひその辺についても御留意を賜りたい、このことだけ指摘をしておきたいと存じます。  それと同時に、今回の法改正中心といいますか外国企業の参入というものは、これは大体先進諸国と言っては間違いでしょうか、恐らく間違いないんだと思いますね。今の中小企業の参加と同じような形で、いずれの国におきましてもという話になるに違いないと思います。しかし、実態はどうかということになれば、これはもう先進諸国を対象にしてということに結論としてならざるを得ないのが今日の状況ではないかと思うのですね。  したがって、そういう面からしますると、私が考えまするのに、今日の経済大国日本と言われている現況の中におきましてやはり大切なのは、言うならば先進諸国、これは当然その対象としなければならない気持ちはわかりますけれども、むしろ今日本が大切なのは途上国に対する貢献、こういうものをいかに進めるかということが極めて重要な問題ではないかと思うのですね。したがって、視点をそういうところに求めていこう、開拓をしていこう、そして経済大国としての日本の役割というものを世界にきっちりと示していこう、こういう姿勢が非常に大切なことではないかと考えます。  したがって、これは私の主張だけにしておきますけれども、ひとつお聞きとどめおきいただきまして、これら開発途上国に対する技術の援助なり、時にはこういう外国企業の参加という形でそれぞれの機会を与えてはどうなのかな、こんなことも考えますものですから、所感があれば別ですけれども、これは私の主張ということで御理解をいただいておきたいと存じます。  それで、先ほどの頭脳の流出、これはあってはならないんですけれども、先ほど触れたかったんですが、実は日本国内研究者と申しますか、そういう方々の海外流出が非常に多い。逆に日本に入ってくる人たちは極度に少ない。これはもう現況として、数字を挙げるまでもないと思いますね。これをどういうふうに解決していくかということは、先ほど来話が出ておりましたように、魅力のある機関をどうつくるか、同時にまた、入ってきた人たちが日本の風習あるいは風俗、言語等々、たくさんの不便な問題がありますから、そういうものも含めて受け入れ体制というものをどうつくっていくか、これらが問題として考えていかなければならないことであろう、かように思います。言うならば総合的に、バランスのとれたといいまするか、日本から出ていく研究者もある、それに見合う形で外国からもどんどんこちらが期待するような人たちが入ってくる、こういう体制を確立するように、ひとつ特段の御配慮をいただきたい、かように考えるわけでございます。  最後になりますけれども、この問題を契機にして、私はこれは大変難しいなという感情にとらわれたことがございます。それは、技術ナショナリズムといいますか、そういう言葉で表現していいのかどうかわかりませんけれども、そういう気持ちというものはあるんじゃないでしょうか。特に日本のような資源の少ない国、これは技術立国なんていう言葉がありますように、とにかく技術で何とかやっていかなければならない、こういう立場のものもあるわけですね。あるいは、よその国のように、資源は豊富である、しかし技術的にはまだ高まっていないという国もあるでしょう。同時に、資源と技術がほぼ両々相まって均衡して発展をしている、こういう状況の国々もあるわけですね。それぞれの国の様相というものは違うわけなんですけれども、それにしましても、国益という言葉でいつも表現されますように、それぞれの国においてはそれぞれの国の一つの経営と申しまするか、それぞれの国を運営していくのに、どういう形でそれぞれの工業技術やなんかについての、あるいは産業技術についての立場を守っていくかというか、立場を発展さしていくかというか、そういうことに相当心を砕いているんだろうと思うのですね。  したがって、今回の措置というものは、言うならば非常に善意な形だと思うのですね。すべての 国がこういう形で、言うならば崇高な精神を持ってそれぞれの国が全くオープンにして、できるだけの技術力あるいは能力というものを全部集中して新たなものをつくり上げようではないか、そしてそれを全世界の人類のために貢献しようではないか、こういうことがそのまま広がるとすれば、これはまことにすばらしいことだと思う。  ただ、実際問題としてそういうことが考えられるかどうか、極めて難しい話があろうかと思うのですね。特に今日、あってはならない戦争もあったりなんかしまして、特に技術の面についてはいろいろな国がそれぞれの研究開発をしている。あるいは、そういう国絡みじゃなくて、一企業におきましても企業秘密なんていわれるほどに自分の開発、経営なり結果というものについてはきちんと秘密の保持といいますか、そういうものをやっていくということは通常ありふれた話であるわけですね。そういう面から考えますると、先ほど申し上げました善意で一生懸命やろうというものと、ナショナリズムみたいな形でみずからの国のみをどうするかというものとの矛盾といいますか、言うならば板挟みの関係というものは必ず出てくるんじゃないかと思う。その辺についてどういうふうに整理をしたらよろしいのか。私はこの辺について、まことに不明ながら結論は出ないわけなんですよ。したがって、これらにつきましては大臣、最後、花粉症で恐縮なんですが、ひとつ所見をお述べいただきたいな、かように思います。
  20. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私も委員同様にそういう問題につきまして、すなわち国益、今委員技術ナショナリズムという言葉を使いましたが、しからば世界の対決、相克とは一体何なのか、それは私いつも悩み考えたこともございます。  確かにワールズガバメントという言葉がありますように、世界政府、あるいは今度行われようとしておりますECの統合、ECの統合も経済市場統合はできましょう。では、しからば言語も違う、人種も違う、そういうものが、統合的なユニティーというものは本当にECの中における政治的な立場で一体でき得るかということになりますと、これは問題があろうと思うのでございます。したがいまして、各国、人種もある意味においては違いがある、言語の違いがある、場合によっては立場に応じて、私どものような日本の国は他の国と性質的にちょっと違うことは、灘の生一本的な、北海道から九州、沖縄に至るまで一つの言語を使い、一つの単一民族であるという特徴もあるかもしれません。  そういう点から考えますと、国益はいかなる場合においても優先しなければやはり存立するものではない、一国のレーゾンデートルはあり得ないという結論がどうしてもでてくるわけでございます。相手が宇宙からの、サテライトからの地球に対する挑戦というような場合には地球は団結するかもしれません。それがゆえに地球上の相克というものは国益がいかにしても優先するというのは、歴史上の今日までの流れであり、また今からも多少、そういうことでなく大きなグローバルな気持ちを持っておっても、そのことは否めない事実として存続することも事実であろうと思うのであります。  そういう点から考えますと、我が国は二十一世紀に向かいまして経済社会の発展の原動力でございます技術開発の能力というものをさらに発展させるとともに、いわゆる技術ただ乗り論等の国際的な批判というものにはこたえなければならない。日本という国は資源がないものですから外国からの物まねだけでやっているんじゃないか、こういう極論もございますが、そういうこともある意味においては払拭するだけの努力を傾注しなければならぬことも事実でございましょう。世界経済の発展のために相応の貢献を行うためには、我が国がみずから基礎的な先導的な技術開発の積極的な推進を図ることがいかようにも喫緊の課題である、私は断言できると思うのでございます。  また、欧米諸国の一部におきまして技術囲い込みと言われておりまする動きが出てきておりまして、OECDの場におきましてもこのような動きに対する懸念が表明されているわけでございます。私もOECDの会議には何回か出させていただきましたけれども、私自身もいつも思いますのは、日本はこれだけの先進国になってはいながらも、血は水よりも濃いといいましょうか、欧米というのは最終段階では相当なネゴシエートが巧みに行われて、そしてアイソレートされていくような立場というものを我々は感ぜざるを得ないのでございまして、それも考えますると、技術開発の創造活動あるいはその成果の流通、移転というものを活性化するということは、いわゆるテクノグローバリズムの理念に基づいて産業技術政策を推進してまいるのは我々の喫緊の課題であると言っても差し支えはございません。  このような観点から、通産省としましては、これまでサミットの場におきましてもヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの推進を提唱するとともに、地球環境技術対策というものにおける先導的役割を果たす、場合によってはイニシアチブをとっていく、積極的にこの理念を実践したいところでございます。またしなければならぬと思っておるのでございます。これによりまして科学技術我が国を含め世界全体にもたらす利益を最大のものとするものと考えるものでございます。  ちなみに、委員指摘のとおり、日本の頭脳開発が、ブレーンストーミングじゃありませんが、せっかく日本でつくったものが自分自身の与えられている環境、待遇のために外国に行って、むしろ頭脳は移動されてしまう、こういうことは厳に避けなければならぬな、そのためにはあらゆる観点においての私どもの処遇改善あるいは予算措置、こういうものを国家的レベルで、しかも官庁などのセクショナリズムを排して、こういう問題に積極果敢に取り組んでいくことが必要だと思っておる次第でございます。ありがとうございました。
  21. 安田範

    安田(範)委員 質問の時間は終了しました。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、特にこの点だけはということで御留意いただきたいのは、まずは今回の措置を契機といたしまして国内企業に対しての措置、さらに中小企業に対する育成強化、もう一つ開発途上国に対する工業技術院としての考え方、これらのことにつきましては十分配慮の上、さらに加えて言うならばそれぞれの省庁にもまたがる分野、こういう理念のもとに精いっぱい連携を強化して所定の目的を達成してほしい、これだけ申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。
  22. 奥田幹生

    奥田委員長 小岩井清君。
  23. 小岩井清

    ○小岩井委員 小岩井清です。  私は、今回の産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案のうち、最初に第十条の関係について質問をいたしたいと思います。  十条では「政府は、その委託に係る産業技術に関する国際共同研究を促進するため、その成果について、次に掲げる取扱いをすることができる。」として、三点あるわけであります。一点目については、「当該成果に係る特許権若しくは実用新案権(以下「特許権等」という。)又は特許を受ける権利若しくは実用新案登録を受ける権利のうち政令で定めるものについて、政令で定めるところにより、その一部のみを受託者から譲り受けること。」とあります。あと二点、三点目は順次質問いたしますが、これの内容について説明をしていただきたいと思います。
  24. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 お答え申し上げます。  この十条、政令が非常に多うございましてややこしくなっておりますけれども先生指摘の政令、第一号には二つございます。  第一の政令は、この国際共同研究に参加する外国企業の場合についてはいわゆるレシプロシティーということで、その本国でもって同じような措置が講じられている場合に同じようなことをやろうということで、レシプロシティーについての原則を書いてございます。それからもう一つ外国 法人がこの研究開発に加わることが不可欠である、この研究開発のためには我が国及び外国企業知識を用いることが不可欠である、この二つの点を内容とする政令がこの第一号の初めの政令でございます。  それから第一号の第二番目の政令でございますが、これは受託者との共有を認める場合はその共有の持ち分は政府の持ち分が二分の一以上、二分の一を下回らないということを定める、これが第二の政令でございます。
  25. 小岩井清

    ○小岩井委員 第十条の第一について、この最初については、当該外国法人等の参加が不可欠である、そして相手国においても我が国と同様の措置がとられていることを要件とする、その次の政令については政府特許権等の持ち分を二分の一以上の範囲内に定める、こういうことですね。これで発展途上国の参加は可能ですか。先進国は可能かと思いますが、可能ですか。
  26. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 可能でございます。  ただ、発展途上国におきまして、今度認めますような政府の持ち分というのを民間に渡すことを認めていない場合には、これはレシプロシティーの原則から認められないということになります。
  27. 小岩井清

    ○小岩井委員 可能だということ、相手国においても我が国と同様の措置がとられていることを要件とするということですが、じゃ、具体的に発展途上国、どこの国が可能なんですか。
  28. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 具体的には発展途上国の制度はまだ調べておりません。
  29. 小岩井清

    ○小岩井委員 調べてなければ可能だと言えないじゃないですか。
  30. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 この制度を今回内部で検討し、また法律にするに当たりましては、現実国際共同研究相手国企業から申し込まれている事例についていろいろ研究をしてつくったわけでございます。現在の段階におきましては、こうした先端技術国際共同研究について発展途上国からの申し込みはございません。したがいまして、発展途上国の制度はまだ調べておりません。ただ、この法律制度上はレシプロシティーということが、そういう要件が満たされれば、発展途上国も当然対象になるということでございます。
  31. 小岩井清

    ○小岩井委員 対象になるということとこれが参加ができるということは別問題ですね。そう御理解できませんか。  なぜここにこだわっていくかというと、この中で地球環境の問題がありますね。地球環境の問題について、まず日本国内で温暖化問題を取り上げてみますと、この地球温暖化防止行動計画というのを政府でつくりましたね。これによりますと、一人当たりの二酸化炭素排出量については二〇〇〇年以降おおむね一九九〇年レベルで安定化を図ることとしている。一九九〇年レベルというのは一人当たり二・五トン程度だということになるのですね。  ところが、これは国内の問題で、通産省から伺いますけれども、先ごろのエネルギーの長期需給見通しでは、これは総量ですけれども、CO2の排出量が一九八八年で二億九千四百万トン、これは二年の差がありますけれども、これは総量ですね。二〇〇〇年は三億四千万トン、一六%ふえているのですね。ですから、政府の地球温暖化防止行動計画としての一九九〇年レベルで二〇〇〇年以降安定化を図るということの整合性について非常に問題があるというふうに思うのですけれども、これは国内の問題ですね。  地球の温暖化防止にCO2の固定化の技術開発がありますね。ですから、そういう問題とも関連をして、これはCO2排出を削減すると同時に固定化の技術開発をして実用化していかなければいけないということが一つあるわけです。あわせて、温暖化についてのCO2排出については、日本の周辺諸国における排出の方が非常に大きいのですね。あるいは酸性雨の問題もありますね。ですから、そういう点からいって、要するに先進諸国じゃなくて発展途上国との関係が極めて重要だということなんですよ、この点については。  今、一つ例として挙げましたけれども、それらの問題を踏まえて一つ一つ答弁してもらいたいと思うわけです。
  32. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  御指摘がございましたように、地球環境問題、非常に重要な問題でございます。今回の枠組みとは別に、この問題につきましては、工業技術院といたしまして、あるいは通産省といたしまして非常に力を入れて取り組んでいるところでございまして、例えば、国立研究所における研究開発、それから立地公害局などを中心に進めている政策などでございます。あわせて、この問題には通産省としても全力を挙げて対応しているところでございます。
  33. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 少し補足させていただきますが、今回の法律対象は相手の国際共同研究の当事者が主として民間である場合が多いわけでございます。それで、先ほどおっしゃいました例えば地球環境問題となりますと、現在の段階では恐らく国対国、あるいは国の機関対国の機関、こうなりますので、今回の法律は民間が入った場合の、主として民間ベースの共同研究についての特許権の帰趨ということを書いていまして、国対国の場合には、いわゆる研究交流法という法の範囲になるというふうに考えております。
  34. 小岩井清

    ○小岩井委員 今、一つだけ例を取り上げたのです。地球温暖化のCO2の問題だけ取り上げたのですね。それは周辺諸国、特に発展途上国との関係は極めて重要ですよ、と。だから、民間であろうとも、発展途上国に対してこれに参加をしてこられるような、参加できる道はあると言ったけれども、実際に参加できるかどうかわからないだけじゃなくて、参加できないんじゃないかと思うのですね。それについて、どう検討し、どう対応し、今後どうするか、これについて答えてください。
  35. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今回お願いしておりますこの法案の一部改正につきまして、途上国が参加できるか、こういうことが御趣旨かと思いますが、今回のこの改正特許権の問題をめぐる国際的な調和を図るということを基本にいたしまして、国際的な共同研究がやりやすくなるということを中心にこの法案をまとめております。  ただいま御質問がございましたような発展途上国に対してどう考えるか、その協力あるいはその支援、技術移転は私どもも非常に大切なことだと考えております。そういうことで、もし発展途上国の特許制度など、現在調べておりませんけれども、そういうところで、今回の問題で難しいといたしましても、発展途上国に対する研究協力、技術支援、技術移転につきましては、別途いろいろな施策をもちまして対応していきたいと考えておりますし、幾つかの点ではそういう事業を進めております。例えば、発展途上国あるいは地球環境問題の絡みで申しますと、石炭燃焼に起因する酸性雨の防止技術に関する研究というのを中国とやっておりますし、このような例もございまして、発展途上国に対する問題は別途いろいろな努力をしております。
  36. 小岩井清

    ○小岩井委員 さっきちょっと脱線しましたけれども、きょうは資源エネルギー庁来ていますか。――先ほど地球温暖化防止計画のCO2排出は、一九九〇年一人二・五トン程度ですね、二〇〇〇年以降一九九〇年レベルで安定化を図るということで、これは実は予算委員会の分科会で聞いたら答えられなくてとまってしまったのです。ですから、そこで本当は聞くべきですけれども、これはきょう答えてください、関連がありますからね。あわせて二酸化炭素固定化技術、これを積極的にやっていくことによって、CO2の排出を減らすだけではなくて、CO2の総量を減らしていくことができるというふうに思うのですね。その技術開発の現状はどうなっていますか。
  37. 深沢亘

    ○深沢政府委員 お答え申し上げます。  総合エネルギー調査会が昨年六月にまとめましたけれども、そのときの需給見通し、これは二〇〇〇年、二〇一〇年度を見通した見通しでございます。それを十分踏まえながら、その後検討しまして、昨年の十月に供給目標というものをつくりました。それは、二〇一〇年度を出しました。そ の供給目標の背景となっています需給見通しがございますけれども、それをベースにして一九九〇年のレベルで二〇〇〇年以降安定化というCO2の量をその後計算しておるところでございます。  それで、先生指摘の、先ほどもございましたように、総合エネルギー調査会では一六%増とあった、今回二・五トンとの関係が一体どうなるか、その辺のところが趣旨だと思いますけれども、一六%増というのは総量でございます。これは総合エネルギー調査会のときの見通しです。それから、供給目標の段階になりますと、総合エネルギー調査会の見通しをベースにしながら各省でいろいろ議論をいたしました。そこで、幾らか目標年次におきますその見通しの量が少し下がりました。それを背景にして計算いたしますと、十六%増という総量は少し下がります。  それから、先生また御指摘ございましたように、総合エネルギー調査会の基準年次というのは八八年度でございます。それで、供給目標のときの基準年次は八九年度なんですけれども、行動計画の目標になりますと、これは一九九〇年ぐらいのところをベースにしまして二〇〇〇年度を認めてございます。  そういうふうに、基準年次の違いが出てまいりますと、そこで先ほど一六%からちょっと下がる。それから、それがさらに足元が上がりましたものですから、二〇〇〇年度との関係でいきますと相対的にまたそれが下がる。それが大体、全体の総量としますと、人口の伸び程度になってまいります。それで、行動計画においては一人当たりCO2ということでなっております。それが大体六%でございますから、人口の伸びというのは大体六%ぐらいでございますから、総量が六%程度になりますと大体一九九〇年レベルで、二〇〇〇年も同じ。それで計算いたしますと大体二・五トン強でございます。一九九〇年ぐらい、それから二〇〇〇年、それから二〇一〇年度、これは議論にはなりませんけれども、先行きも大体二・五トン程度、こんなような数字に相なっております。
  38. 合田宏四郎

    ○合田政府委員 先生質問の第二番目の炭酸ガスの固定化・有効利用に関する技術開発の現状についてお答え申し上げますが、通産省といたしましては、地球温暖化対策として、長期的には、排出された炭酸ガスを分離固定化をいたしまして有効利用をしていくということは非常に重要であると認識をいたしております。  このため、細菌あるいは藻類を活用いたしました生物学的な手法とか、あるいは炭酸ガスの分離膜とか触媒等の化学的な、ケミカルな手法を活用いたしました炭酸ガスの固定化・有効利用に関する技術開発につきましては、従来から工業技術院傘下の国立研究所におきまして基礎的な研究を実施してまいりましたが、さらに平成二年度、今年度から産学官の協調のもとに、昨年七月に設立されました財団法人地球環境産業技術研究機構、略称RITEと言っておりますが、この研究機構を中核的研究機関といたしまして、炭酸ガスの固定化・有効利用技術の地球環境保全に関する革新的な技術開発について強力に取り組んでおるところでございます。
  39. 小岩井清

    ○小岩井委員 先ほどの発展途上国の話に戻りますけれども、参加が可能だ。可能だということとできるということは違うというふうに申し上げましたけれども、この点については、今地球環境問題をとっても、発展途上国抜きには考えられないということですから、そういう面で今後十分御検討をしていただきたいというふうに要望いたしておきます。  二、「当該成果に係る特許権等のうち政令で定めるものが政府政府以外の者であって政令で定めるものとの共有に係る場合において、当該政府以外の者のその特許発明又は登録実用新案の実施について、政府の持分に係る対価を受けず、又は時価よりも低い対価を受けること。」この「政令」という内容について御説明いただきたいと思います。
  40. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 この二号は、この特許につきまして国と共有権を持っている、そういう人たちに対する無償実施を定めたものでございます。  それで、二つ政令ございますけれども、初めの政令は、先ほどと同じように、一つ外国法人の参加が不可欠、それから我が国と同じレシプロで、同じようなことをとっているという要件を定めたものでございます。  それから、第二番目の政令でございますけれども、これは発明をした者が所属する法人、あるいは政府委託を受けて、そうした発明を受けた法人に再委託をした者、この両者について適用するということでございます。
  41. 小岩井清

    ○小岩井委員 それぞれ適用についてどうチェックしていくのか、伺いたいと思います。
  42. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 この第二号と申しますのは、新しい特許につきまして国と共有を持っている人ということでございます。それが、国が持っている分につきましてさらに無償実施、あるいは低価による実施をしたいという場合でございます。それは、そうした特許その他につきましては、先ほど言いましたように、レシプロかつ外国法人不可欠ということでございますけれども、後ろの方につきましては、実際にその発明をした者のいる法人、それが原則でございます。そのほかに、政府委託契約いたしまして、その委託契約を再委託するという場合には、その委託契約をしたもとの委託の者も一応含めるということでございます。
  43. 小岩井清

    ○小岩井委員 内容については御説明を受けたということにいたしておきます。時間がかなり経過しましたから、先に行きます。  新エネルギー産業技術総合開発機構NEDOにおける国際共同研究成果はどうなっているか、その現状と取り扱いについて御答弁いただきたいと思います。
  44. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  今回、一部改正をお願いしております産業技術法でございますが、昭和六十三年十月にこれが施行されました。そのときに、大型プロジェクト及び次世代産業基盤技術研究開発制度について、平成元年度の新規プロジェクトから、海外企業に対して積極的な参加を呼びかけております。この結果といたしまして、現在大型プロジェクトの超音速輸送機用推進システム、それから次世代産業基盤技術研究開発制度の非線形光電子材料の二つのプロジェクトに海外企業が参加をしております。こういう形で国際共同として進んでおります。  この成果取り扱いについて御質問があったかと思いますけれども、これらの二つのプロジェクトの委託研究の結果として得られました特許成果取り扱いにつきましては、現行のNEDOの制度に基づき、発明企業NEDOが五〇%ずつ所有権を取得する、そしてこれを実施する場合には、NEDOは五〇%の持ち分に相当する特許料を実施企業から得ることとなっております。
  45. 小岩井清

    ○小岩井委員 政府における国際共同研究成果の現状と取り扱いについて同様の答弁をいただきたいと思います。
  46. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 同じでございます。
  47. 小岩井清

    ○小岩井委員 今、政府NEDOの保有特許件数、何件になっていますか。そして、特許使用料、幾らぐらいになっていますか。
  48. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 国の委託による成果について私、先ほどお答えいたしましたのにちょっと誤りがございまして、申しわけございませんが訂正させていただきたいと思います。  現時点で国の委託による国際共同研究の実績はございません。先ほど申し上げましたことを、申しわけございません、訂正させていただきます。したがいまして、その成果の――申しわけございません、訂正させていただきます。  たびたび申しわけございません。御質問で、国の制度がNEDOと同じであるというふうな答弁を私いたしましたが、NEDOの場合には特許権を国とNEDOで半々に持ちますが、国が直接委託した場合につきましては、特許権は全部国が所有することになっております。このように訂正をさせていただきます。
  49. 小岩井清

    ○小岩井委員 その中身を聞いたんじゃないんで すよ。国とNEDO特許の保有件数、何件持っているのですか。国が何件でNEDOが何件。それから、今NEDOが五〇%というお話がありましたけれども特許の使用料。
  50. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  NEDOの保有しております産業技術に関する特許につきましては、昭和六十三年十月から本年二月までに国内で五百六十三件、海外で四十一件の六百四件を出願いたしております。六十三年十月からと申しましたのは、このときNEDO法が成立いたしましたので、このときから申しております。これらの特許につきましては、いずれも出願後間もないこともございまして、実施した実績はまだございません。  なお、通産省関係の国有特許につきましては、平成二年三月三十一日現在におきまして、出願中のものも含めまして国内で約一万六千件、海外で約二千件となっております。これらに関します特許実施料の収入は、平成元年度におきまして約三億三千万円でございます。
  51. 小岩井清

    ○小岩井委員 NEDOにおける特許保有件数は、まだ出願も間もないのでゼロだ、出願をしているのは六百四件、国内五百六十三件、外国四十一件でありますね。これはわかりました。それから、国の保有する特許件数、三月三十一日現在で国が一万六千件、出願も含めてということですね。外国が二千件ですね。  これは、出願も含めてというのは、保有件数をちゃんとつかんでいないのですか。そして、特許使用料は三億三千万円でありますが、――ちょっと今のことを答えてください。
  52. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 先ほどは出願中も含めて数を申し上げましたが、所有しております特許権となっておりますものは八千七百件でございます。
  53. 小岩井清

    ○小岩井委員 ということは、国内海外合わせて八千七百件ですか。
  54. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 国内海外を合わせてでございます。
  55. 小岩井清

    ○小岩井委員 これと、それから使用料収入を聞きましたのは、先ほどのことと関係あるのですけれども、先ほど安田委員質問の中小企業とも関係があるのですけれども特許使用料収入のもとになっている特許使用を認めている企業あるいは先はどういうところがあるのですか。
  56. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 大企業、中小企業といった分類の資料は現在手元にございません。
  57. 小岩井清

    ○小岩井委員 大企業、中小企業、分類の資料はない。これはもう大体大企業じゃないのですか。
  58. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 申しわけございませんが、ただいま手元にその資料を持っておりませんので、数字をお答えできません。
  59. 小岩井清

    ○小岩井委員 なかなか質問の焦点が進んでいかないのですけれども、先ほどの安田議員の質問とも重複しますけれども、もう一度答えてもらいたいのです。     〔委員長退席、佐藤(謙)委員長代理着席〕  一つは、この通産省の所掌に係る産業技術に限定するということで今回適用を決めていますね。政府で取り組んでいる他の分野、先ほど安田議員からも申し上げましたけれども、基礎的・先導的技術開発分野は、物資・材料系の分野、情報・電子系の分野、生命工学の分野、ソフト系の分野、宇宙・航空の分野、海洋開発分野、地球環境分野ですね、広範囲に及んでいるのですけれども通産省所掌以外の技術開発分野に対して、これは後どうしていくのか。これは受託者研究開発意欲を助長するという面での法制度をどう考えていくのか、これはこの際きっちり答弁をしておいていただきたい。  あわせて、今言ったように、特許保有件数で、しかもその特許を使うのは、数字は出てきませんけれども、出してもらったら明らかになると思うのですが、中小企業はないと思うのです。ということからいって、中小企業に対する配慮をどうしていくのか。  今度はこの法律関係して、資金力と技術対応という面から、一般的に中小企業、事業規模の小さい事業者が参加できにくい。今回、政府等の委託により行われる国際的な共同研究の結果生じた特許権等についてその一部を研究実施企業に帰属させること等の特例措置については、この面から中小企業についての対応についてどうしても必要になってくると思うのです。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  60. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えをいたします。  まず、産業技術に特定をしていて、ほかの分野のことをどう考えるかという御質問があったかと思いますが、この法律の一部改正を提案いたしました背景説明として私、説明いたしましたが、産業技術分野技術革新が非常に大きいということも踏まえまして、この分野における国際共同研究が非常に重要になってきている。国際共同研究をするためには、研究開発成果取り扱いである特許権の扱いに対しまして国際的なハーモナイゼーションをしていかなければならないということから、このたび緊急性の高い産業技術分野につきまして今回の措置をお願いしているところであります。  それから、中小企業の参加という御質問がございましたけれども、この法律そのものが中小企業にも開かれておるわけでございます。ただ、御質問の趣旨は、中小企業は参加しにくい、こういうことかと思います。中小企業に対しましては、中小企業の活性化ということは非常に重要な施策と考えておりますので、その点につきましては別途いろいろな施策を通産省といたしましても進めております。この法律につきましては中小企業を別に除外しているわけではございません。  それから、特許権の一部を企業に帰属させる点について御質問がございましたが、最近、研究開発そのものが非常に基礎的・先導的なものになってきております。キャッチアップの時代でございますと開発しているものがすぐ産業になるわけですが、開発したものがすぐ企業化できないようなところに参加して開発をする、研究者を出すというような状況が現在の国で進めている研究開発でございますので、そういうところに企業がよい人を出し、力を出すインセンティブを与える必要があるであろう、こういうような考えも進んでおりまして、そういうことを勘案いたしまして今回の一部改正をお願いしているところでございます。
  61. 小岩井清

    ○小岩井委員 先ほど中小企業についての問題を取り上げて、その前段で、だからこうすべきだというふうに質問をしようという前提でお聞きしたわけです。特許保有件数が今八千七百件、そして特許使用料収入を三億三千万円として、特許使用を認めている特許についての、要するに大企業か中小企業かということですが、私は中小企業はほとんど入っていないというふうに見ますけれども。そういう点からいっても、今後国自身が保有することになる特許権等権利の一部を、可能な限り政府等からの研究開発事業に参加していない中小企業等に適切な対価特許権等の事業化を実施させることについて検討していく意思があるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  62. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まず冒頭に、中小企業技術向上については通産省はどのようにとらえているのだ、先ほどこういう政治的、大局的な御質問もございましたから一般的な答弁になるかと思いますが、まずそれをお答えさせていただきます。  技術革新の進展、消費者ニーズの多様化あるいは高度化等の環境変化の中で、中小企業には省力化、合理化、新製品の開発等を進めていくことが求められておることは申すまでもございませんけれども技術力の向上そのものが中小企業施策の重要課題一つであるという認識に私どもは立っておるわけでございます。このために通産省におきましては、中小企業技術力の向上のために技術研修、技術指導、技術開発等につきまして諸施策を従来から積極的に推進しているところではございます。今後とも、中小企業のさまざまなニーズにこたえまして、きめ細かな技術力向上対策を進めてまいる所存でございます。  NEDO研究開発の個別プロジェクトへの中小企業の参加の状況につきましては、今回の措置対象となる政府または機構委託による研究開 発につきましては、企業の規模を問わず、あらゆる企業に対して参加の機会が開かれていくようなものでございまして、大企業のみが今回の措置の恩恵を受けるというような制度でないものと考えていくべきものであると考えます。実際にも、大型工業技術開発制度で行いました自動縫製システムの研究開発のプロジェクト等、中小企業が多数参加して行われてきておる例もあるわけでございまして、NEDO研究開発プロジェクトの成果につきましては、今後とも中小企業に対する普及、移転というものを積極的に進めていくつもりでございます。
  63. 小岩井清

    ○小岩井委員 今、通産大臣から中小企業にかかわる今後の問題について伺いました。先ほども申し上げましたように、発展途上国もそうですし、中小企業もそうですが、参加の道が開かれているということと参加ができるということはまた別問題ですから、その辺については特段の配慮をしていただきたいと思います。  最後に、産業技術開発におけるNEDOの体制と工業技術院の役割を伺って終わりたいと思います。
  64. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  NEDOと工業技術院というお話でございましたが、工業技術院の方からお話しするのがよろしいかと思います。  工業技術院で進めております産業科学技術政策は二つに大きく分けることができます。その一つは、つくばを中心といたしまして、つくばに九つ、全国に七つの国立研究所がございますが、これらの国立研究所による研究開発の推進でございます。国立研究所におきましては先端的な研究開発を実施するとともに、地球環境問題など公共的意義の高い研究テーマにも積極的に取り組んでおります。  第二は、我が国産業技術の向上を目的としたナショナルプロジェクトの実施でございます。これにつきましては、工業技術院が通商産業大臣の諮問機関である産業技術審議会の意見を聞きまして、プロジェクトテーマの選定を行った後、プロジェクト管理NEDO中心になって実施をしております。  NEDOにおきましては、昭和六十三年の産業技術法制定以来、ナショナルプロジェクトの管理を民間活力も活用いたしまして実施することにしたのみならず、大規模な研究基盤施設の整備国際共同研究チームに対する助成、いわゆるNEDOグラントでございますが、これらのことを一体的に実施することによりまして、従来工業技術院が行っておりましたプロジェクトの管理の高度化を図っております。通産省といたしましては、NEDO産業技術部門を設置したことによりまして、産業科学技術政策の高度化を図りつつあるところでございますけれども、今後とも一層努力をしていきたいと考えております。
  65. 小岩井清

    ○小岩井委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、積極的に役割を果たして今後の御活躍を期待いたしたいと思います。終わります。
  66. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)委員長代理 大畠章宏君。
  67. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠でございます。  産業技術に関する、研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案について御質問したいと思います。  ただいま小岩井委員、また安田委員の方からいろいろ御討論がありましたけれども、まさに日本産業技術分野における研究開発というのは大変活発でございまして、これが日本の国というのを大変しっかりと支えているベースになっているものと思います。しかしながらその一方で、今お話がありましたとおり、いわゆる技術ただ乗り論といいますか、基礎技術に対する対応のあり方というのが手薄になっているのではないか、こういう点。それから世界全般的な技術ですとか、あるいは特許に対する取り扱い方というのがいま一つ日本はアンフェアではないかというような意見が出ているところでありますが、これは非常に技術立国日本というものを自認する国としては大変不名誉なことと思います。今回の法改正も、そういう疑念を一掃して、まさに欧米並みの技術あるいは特許等の環境に整えて、同じルールで日本も堂々とやっていくのですという、それを宣言する意味で大変重要な法案だと思います、法改正だと思います。  この件について、ただいまいろいろ御質問がありましたけれども、私も今小岩井さんの御質問、また安田さんの御質問を伺いながら疑念に思ったことを含めて御質問したいと思います。  まず最初に、今小岩井さんの方から御質問がありましたけれども、第十条の政令の解釈の中で、「相手国においても我が国と同様の措置が探られていることを要件とする。」という説明がありましたけれども、非常にあいまいもことしていて、同様の措置というのがとられていること、これはどういう解釈をしたらいいのかなと思います。例えば、アメリカとかあるいはイギリスというのはこの「同様の措置」というものに入りますか。すなわちアメリカ、イギリスの企業というのは今回の対象になるのでしょうか。そこからまずお伺いしたいと思います。
  68. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 主要各国のこうした制度については調べておりますけれども、例えば今お尋ねのアメリカなんかは、今言ったように国が委託研究をした場合に、そこで委託研究をした企業がある場合に、その企業が発明をした、発見をしたという場合に、これは原則としてその発明、発見をした企業がその権利をもらうという格好になっています。ただし、アメリカの場合には、外国の場合にはだめだ、国に残る、こういう格好になっています。これに対してドイツとかフランスとかそういう国は、外国、内外を問わずそうした発明、発見をした企業権利が移る、こうなっております。  それから、無償実施あるいは安く実施させる、まあ無償実施の部分でございますが、国が持っている特許についての無償実施につきましては、アメリカ、ヨーロッパ、ほとんどの国が大体実際に発明、発見をした人の属する企業無償実施権を認めております。したがいまして、現在こうした国際共同研究が一番話題になりますアメリカとかあるいは主要ヨーロッパ国ということを考えますと、日本と違いまして、大体実際に発明、発見をした個人の属する企業というのは何らかの形でもって共有権あるいは全面的な所有権を持つ、また実際に実施する場合については無償でできる、こういう格好になっております。
  69. 大畠章宏

    ○大畠委員 私が伺っておるのは、今回の法改正というのも国際的な共通の、なるべく同じようなルールのもとの特許ですとか技術開発という体制を整えようという趣旨だと思いますけれども、これまでの日本を考えますとこういう状況じゃなかったのですね。なかったのですが、例えばアメリカとかイギリスでは共同研究を受け入れてくれましたね。日本人あるいは日本企業共同開発も受け入れてくれましたけれども、今お話がありました欧米でも同じようにこういう条件がついておるのでしょうか。「相手国においても我が国と同様の措置が探られていることを要件とする。」という条件が諸外国ではついていますか。
  70. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 世界各国の制度を詳細に調べたわけでございませんので全体はわかりませんけれども、私どもの知るアメリカないし主要ヨーロッパ国につきましてはそうした限定はございません。と申しますのは、恐らくヨーロッパ国間での共同研究あるいはアメリカとヨーロッパの共同研究の場合には、ほとんどみんな制度は似ているわけでございますけれども日本の場合については今まではこれを認めていなかったという状況でございまして、そうしたレシプロという考え方はヨーロッパの中では、あるいはアメリカの中ではないようでございます。
  71. 大畠章宏

    ○大畠委員 もしもアメリカ、ヨーロッパ関係で同じような「相手国においても我が国と同様の措置が採られていることを要件とする。」という条件がついていれば、日本は多分共同研究に入れなかったのじゃないですか。どうですか。
  72. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 実際にアメリカあるいはヨ ーロッパがお金を出して、日本がそれに共同研究するというケースはそれほど多うございませんが、おっしゃるとおりそうしたことについて向こう側としては制限はしていない。実は、日本がお金を出して、それでアメリカ、ヨーロッパの企業共同研究をする、これは今まではそう多くなかったわけでございます。国が金を出す、あるいは国に準じた機関が金を出すという場合については、従来はそう多くございませんでした。しかし、今後は相当起こるだろうということでこういう制度をつくるわけでございます。
  73. 大畠章宏

    ○大畠委員 私が思いますには、この条件というのは要らないのじゃないか。要するに国際的な共通ルールというものを目指す、あるいは日本も国際的なそういうアメリカ、ヨーロッパの条件と同じようなルール化をするというのであれば、この「相手国においても我が国と同様の措置が採られていることを要件とする。」という条文は、逆にアメリカやヨーロッパからすると、何だ、今まで勝手なことをやっていて、今度はきちっとつくったからこういう要件をつけますよなんて小しゃくなことをやるな、こういう感じを持つのじゃないかと私は思いますし、また逆に言えば、技術立国日本として世界じゅうからいろいろな意味で恩恵を受けた、助けられた、そして今日まで来たということは、こんな要件をつけずに私はオープンマインドで――それでなくても、これがついていなくても非常にいい条文になっていますから、私はこういうこそくな、変な盲腸みたいな条文をつけないでオープンマインドでやるべきだと思うのです。  要するに、これまでも日本がアメリカ、ヨーロッパにいろいろな面で技術的に助けてもらいました。そういうことを考えますと、我が国と同様の措置がとられていることを要件とするというのであれば、これは解釈として、海外との共同研究に関する特許などの一定のルールがあること、そのくらいの解釈でいいのじゃないか。余りがんじがらめに、やれ五〇%が云々あるいは国と企業との関係においては云々というこの今回のきめ細かなルールじゃなくて、海外との共同研究などを行う場合に余りトラブルが起こらないように、特許取り扱いなどの最低限のルールがちゃんとあればいいのだ、そういう解釈にするということでとらえるべきだと私は思うのですが、どうでしょうか。
  74. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 アメリカあるいは主要のヨーロッパ国との関係につきましてはおっしゃるとおりだと思います。したがいまして、こういうふうにしましても実際には向こうがやっているわけでございますので、レシプロといっても実際にはそれは別に障害にはならないと思います。  ただ、これはもちろん発展途上国についても開くわけでございますけれども、そういう国でもし一切認めない、国だけだという国がありました場合には、それとの関係ではやはりレシプロというのは一般的な通常の国際的な常識だろうと思います。
  75. 大畠章宏

    ○大畠委員 今、国際的な常識という話がありましたけれども、ぜひその常識をもうちょっと明確に、どうも「同様の措置」というのはいまひとつ明確じゃないのですね。したがって、国際的な常識、これを日本の今回決めようとしているこのルールと同じ措置じゃなくて、すなわち特許制度がきちっとなっていればいい、その程度の解釈でこの法案は運用しないと、今小岩井委員あるいは安田委員からお話がありましたように、発展途上国等できちっとしたものがあるいはできていない国があるかもしれない。したがって、最低でも特許制度がある、きちっとそういう特許管理ですとか特許料の問題ですとか、トラブルが起こらないという最低限のルールがあればこの日本との国際的な共同研究に参加できる、そういうものに条件整備をすべきだと私は思いますが、再度そこら辺整理してちょっと答弁いただきたいと思います。
  76. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 先進国につきましては特段問題ないと思いますけれども、後進国について、制度自体全然わかりませんので、それを調べながら検討したいと思います。
  77. 大畠章宏

    ○大畠委員 今いろいろな議論がありまして、小岩井委員からも後進国じゃない、発展途上国だということで、言葉というのは大変重要でございますので、ぜひお願いしたいと思います。
  78. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 訂正をさせていただきます。後進国ではございません、発展途上国でございます。
  79. 大畠章宏

    ○大畠委員 それから、あと中小企業の保護の話が安田委員あるいは小岩井委員からありましたが、私も産業分野に生活しておった者ですけれども、そういう意味から見ると、どうも中小企業がこういう大きなあるいは斬新的な最先端の技術に浴することがなかなか難しい状況がございます。例えば、今中小企業に対しても十分配慮をしながらの活動を展開したいという御答弁があったわけでありますが、逆にこれからの最先端の技術等については一定割合中小企業も、逆に言えば中小企業の方ではなかなかそっちの方はとても難しくてなという気持ちがあると思うのですね。したがって、一定割合、例えば一割ですとか、そういう分野については中小企業の中から希望があれば優先的に参加させるとか、そういうルール化をすることによって中小企業技術レベルを引き上げていくというような工夫が必要だと思うのですが、どうでしょうか。
  80. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 中小企業の活性化その他について御質問だったと思いますが、今回の措置対象となります政府またはNEDO委託による研究開発につきましては、規模の大小を問わずあらゆる企業に対して参加の機会が開かれているものでございまして、大企業のみ恩恵を受けるということには原則的にはなってございません。実際中小企業の方がたくさん参加したプロジェクトもございまして、例えて申しますと、大型工業技術研究開発制度で行っております自動縫製システムの研究開発のプロジェクトの中には中小企業の方が参加してくださっております。それから、NEDO研究開発プロジェクトの成果につきましては今後とも中小企業に対する普及、移転を積極的に進めてまいりたいと思いますし、このほかにも中小企業の方へのいろいろな施策をあわせて進めていきたいと考えております。
  81. 大畠章宏

    ○大畠委員 今のお話の中の積極的に進めていきたいというものの中に、中小企業をなるべく参加させる、そういう工夫をいろいろしてやっていきたいというように解釈をしたいと思います。よろしくお願いします。  それからもう一つですが、今いろいろお話しの中で、今回の法改正はまさに諸外国のルール等を横にらみしながら行っているということですけれども、例えばアメリカの例を見ますと、海外企業共同開発を行った場合にはアメリカという国がその特許の所有権を持つ。それからイギリスでは、これはこれまでの日本と同じだったかもしれないけれども共同研究においてはイギリスという国が特許権を持つという意味では、日本の今回の措置というのは非常に一歩踏み込んだルールになっていますね。ここら辺は欧米とこういう国際共同研究に関する一定のルールづけについての討論というのは行っているのでしょうか。例えばフランスとかドイツは、これは国を問わず研究実施者というものに非常にきちっと明確にしているわけです。私は最終的にこういう形にすべきじゃないかなという感じがするのですが、そこら辺の共通のディスカッションといいますか討論は行われた上で今回の法改正ができてきたのかどうかをお伺いしたいと思います。
  82. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今回の法改正に当たりまして、今おっしゃったような国際的な議論は行っておりません。
  83. 大畠章宏

    ○大畠委員 自主的にやるのはいいと思うのですけれども、これからそういう問題についても――いつもたたかれるのは日本なんですね。おまえらはアンルールだ、要するにルール違反じゃないか、おれたちとは日本人というのはちょっと異質なんだということを言われていますが、逆にこういう問題こそ日本が提唱して、これからの国際研 究というのはこうあるのだから日本としてはこう考える、皆さんちょっと同じテーブルに着いてください、同じルールにしませんか、アメリカさんだってイギリスさんだってこれは余りにもひどいじゃないか、国が持ってしまうというのはおかしい、だから我々としてはフィフティー・フィフティーにしましょう、国が半分、我々の日本から参加した企業がもしも特許を取ったら半分それはくださいよ、これは国際ルール化しませんかというぐらい、いつも専守防衛ばかりではなくてこういう技術分野においては大いに海外の人々を集めて共通ルールをつくる音頭取りをする、それも一つの国際貢献策だと私は思うのです。この問題について討論してもしようがないかもしれない、でもぜひ今後そういう積極的な音頭取りをやっていただけませんか。もう島国だけでごちょごちょ、余り文句言われぬようにというので、直すのもいいのですが、もうちょっと国際的にリーダーシップをとるということが必要だと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  84. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 ただいま特許の問題については相談を行っていないと申しましたが、今先生の御指摘なすったことにつきまして、通商産業省におきましてもそういう方向でこれからやっていこうと考えております。先般、通商産業省が「九〇年代の通商産業政策のあり方」という報告を出しましたが、その中で「産業科学技術政策のあり方」というのが含まれております。産業構造審議会、産業技術審議会で御審議をいただいて出したものでございますけれども、その中の一つの大きなこれからの政策の中心といたしまして、積極的なテクノグローバリズムの推進ということを掲げてございます。これは、まさに先生のおっしゃいましたような、科学技術は人類の公共財である、人類に必ずプラスサムをもたらすものであるという観点から、世界各国が協調して技術の創出、流通、移転を図っていこう、こういうものでございまして、積極的に対応していきたいと思っております。  それから、国際的にも、例えばOECDあたりでテクノグローバリズムに関しまして国際的なルールづくりをしようというような動きもございますので、私どもといたしましては積極的にそれを支援していきたいと考えております。
  85. 大畠章宏

    ○大畠委員 ぜひそういうルールづくりをやって、日本企業でも今一生懸命国際的な共同技術研究にも絡んでいますので、そういう意味では日本企業が余り日本だけで突出したルールをつくって非常にアンフェアな形にならないように、逆にぜひそういう国際的なルールづくりのリーダーシップをとるような気持ちで今後とも仕事をしていただきたいということをお願いしたいと思います。  次に、この法案を適用した場合の具体的な案件について何点かお伺いしたいと思うのです。  例えば、国際的な共同開発研究において、国内企業が五社、海外企業が五社、合計十社で共同開発研究を行った場合、これは国内とか海外とか問わずある一社のA社という担当の持ち分野技術開発分野において、そのA社の社員が特許を取得した場合、その特許権利はどういう取り扱いになるか、お伺いします。
  86. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 今先生の挙げられた事例でいいますと、五社、五社で十社あるとしますと、実際には共同研究しても、いわゆる特許になるような発明、発見というのはだれか個人がするわけでございますが、その場合には発明、発見をした個人の属する企業、これが実際に特許権についての共有権を持つ、こういうことになります。もし、たまたま二人で研究し、その企業が違った場合には、A社、B社両方が一緒に持つ、こうなると思います。
  87. 大畠章宏

    ○大畠委員 そうすると、国が五〇%、その開発に当たって発明をした人の属する企業が五〇%、そういう特許権を持つということですね。
  88. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 国の場合につきましては二分の一以上となっておりますので、今おっしゃいましたのはマキシマム、民間企業は五〇%あるいはその貢献の度合いによりましては三〇、四〇%ということもあると思います。
  89. 大畠章宏

    ○大畠委員 それはだれが判断するのですかね、その三〇%とか七〇%とか、国が七〇%で企業が三〇%とか、それはどういう解釈をするのですか。
  90. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 具体的な運用につきましてはこれからの検討でございますけれども、基本的にはその発明、発見した個人、どのくらいその発明、発見に寄与しているかということになると思います。例えば、既にわかっているようないろいろな知見を利用してそれに少し加えたという場合については、必ずしも五〇というふうにはならないと思います。
  91. 大畠章宏

    ○大畠委員 しかしながら、国が七〇%その人が三〇%というけれども、国は何にもやっていないのですよね、言ってみれば。まあお金を出していますが。その人が一生懸命考えて特許をとるわけですから、確かに公知の事実があって、それを利用してその人が考えて特許をとるのかもしれないけれども、その人のいろいろ利用した情報が、大体わかっているものにちょっとプラスしただけで三〇%だから、七割は国がとってしまうという、細かな話で申しわけないのですが、そこら辺もうちょっときちんと整理しておかないと混乱するのじゃないかと私は思いますね。それはぜひ整理しておいてください。  それから、例えば今その十社のうちの一社が特許をとった場合ですけれども、その十社の中に例えば海外企業が全く入っていなかった場合はどうなりますか。
  92. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 十社といいますと、国際共同研究する場合に、海外企業が入っていない場合については、この法律は適用にならないわけでございます。したがいまして、国際共同研究という場合には必ず海外企業その他が入っているわけでございます。その場合に、発明、発見をしたのが海外企業である場合にはもちろん海外企業が今言いました二分の一を限度とする共有権を持つ、また日本企業に属する人が発明したという場合には日本企業の方が二分の一持つ、こういうことでございます。
  93. 大畠章宏

    ○大畠委員 先ほどから小岩井委員あるいは安田委員からお話がありましたけれども、そこがちょっとおかしいのではないですか。海外企業が入っていれば、海外企業だろうが国内企業だろうが特許権を持つことができる、しかし海外企業が入っていなかったら日本企業が参加をしていても特許権を持つことができない。何かちょっと、余りにも海外海外というのを意識し過ぎじゃないですか。もうちょっと公平なルール、要するに、ちょうどフランス、西ドイツの例がいい例かなと思います。とにかくきちんとした、海外が入っていようが海外が入っていまいが同じだ、このルールは全部適用する、私はそれがルール化だと思うのですよ。  したがって、今度逆に、例えば日本企業を考えた場合、どうも国との共同研究をやった場合には特許権を全部とられてしまう。それで、使うときも全部有償で、今度は特許料を払わなければならない。しかし、海外が入っていれば特許料を払わなくて無償で利用できる。私は今回のこの法改正の中で、何かどうもちょっと均衡を欠いている法案じゃないかなという感じがするのですが、どう感じてこの法案をつくられたのですか、ルールを。
  94. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 確かに、今委員が御指摘になった点及び何で通産省の所管の技術だけやるのかという点につきましてオーバーオールじゃないじゃないかという批判があると思います。この点につきましては、実はこれは第一歩である。というのは、現在幾つかの国際共同研究が進みかかっておりますけれども、それにつきましてこの問題がネックになって進まないという状況でございまして、とりあえずこの問題を解決しようということでございまして、通産省技術以外に広げたらどうか、あるいはおっしゃるように、さらにいけば日本人同士でもいいじゃないかというのは今後 の課題であると思います。
  95. 大畠章宏

    ○大畠委員 私は国会議員になってこの一年間、常任委員会でもいろいろなところで質問させていただきましたけれども、一番おもしろくないのは、こうやって問題点があらわれながら、出された法案というのは全然変わらない。私は何のためにここで質問しているのだろうか、時々私は疑念に思いますよ。この委員会の中で新たにそういう問題点があらわれたら、出された法案の一部を改正していく、そのくらいの度量がなかったら、やれ時間の間質問は一生懸命する、答弁も何とかしのいでする、時間が終われば法案がそのまま通る。私は何か、議会といいますか、常任委員会でのやりとりというのは何なんですかね。そういう意味では、ここでちょっとこれは論外かもしれませんけれども、私は非常にそういう疑念を持ちますね。  まあいろいろお話がありますけれども、ぜひ今のお話のとおり、今後この問題についてはこの分野以外あるいは私企業と国との関係の問題についてもこの法案をぜひ発展的に検討していただきたいと思うのですが、もう一度答弁をお願いします。
  96. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 実はこれをオーバーオールしない一番大きな理由と申しますのは、やはり国の費用を使っての研究でございます。そうしますと、やはり国の税金ということになります。そういう形の、でき上がった成果について、やはり一般的な形で使うことも残す必要がある。例えば国が持つ特許でございますれば、関係のないその他の第三者あるいは中小企業というところにそれを使わせるということも可能でございますので、そういう意味では、基本的に国の費用丸抱えという場合に、それによって国としての権利をある程度留保したい、それと実際に研究した個人あるいは企業の利益というものの調整だろうと思います。そこら辺の調整を長い期間かかっていろいろ議論したわけでございますけれども、とりあえず目先に迫っている、これがなければ国際研究が動かないというところについて手当てをしたというのが現状でございます。
  97. 大畠章宏

    ○大畠委員 国際的な状況を見ますと、フランスも研究実施者、ドイツも研究実施者、アメリカも国内企業においては研究実施者、イギリスだけが国になっていますけれども、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、この主要国のうちの三国はもうそういう研究実施者に、フィフティー・フィフティーでも結構ですけれども特許といいますか、そういうものを与える、そういう流れができているのですから、日本もこの問題については、先ほどの件のとおり、通産省以外のところあるいは日本国内企業との共同研究についてもぜひ検討していく、そういうつもりですか。今の答弁の中にそれがちょっと抜けていたのですが、どうでしょうか。
  98. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 関係省庁といろいろ相談しながらぜひ検討したいと思います。
  99. 大畠章宏

    ○大畠委員 要するに、今、日本は非常にアンフェアであるということを言われておるのですが、こういうルールも、もしも世界的な潮流があれば、そういうフェアといいますか、国際的な共通のルールに向けてぜひ努力をしていただきたいということをお願いしたいと思います。  それから、ちょっとまた細かいケースに戻りますが、今の場合、例えば先ほどのケースですが、十社の企業共同研究において一社が特許を得ました、その場合に、その一社の取った特許を共通する残りの九社が使用する場合に、取った一社の認可を得なければ使用できないのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  100. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 これは特許権についての基本的な原則、日本の原則でございますけれども、共有持ち分がある場合、その持ち分について、あるいは持ち分じゃなくて全部持っているものももちろんそうですけれども、それは本人の同意がなければ移りません。また、共有がある場合は、共有持ち分になっている場合には、共有している相手方の同意がなければ、その持ち分を移したりあるいは実施させたりすることはできません。それは特許法の基本原則になっております。
  101. 大畠章宏

    ○大畠委員 そうすると、共同研究した、関与した企業は、これは無償で使えるのですか。一緒に共同研究した九社というのは無償で使えるのかあるいは有償になるのか、それはどちらでしょうか。     〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
  102. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 普通の特許の原則に戻りまして、同意を得て、しかも有償、こうなると思います。
  103. 大畠章宏

    ○大畠委員 わかりました。  それから開発のときに、例えばその十社のうちの三社の方が共同研究して、その成果として特許を申請したときには、三人の共同出願ですから、その三人の属する企業特許にそれぞれ配分されますね。その場合に、その三社のうちの一社が、共同出願したあと二社の方にも了解を得てその特許を使用しようとする場合、その特許料はどういうふうになるのか、ちょっとそこの点をお伺いしたいと思います。
  104. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 今先生のお挙げになりました例で、三人の人が別々の会社に属しておるとして、みんなでほとんど同じように貢献して発明をしたという場合、その場合には、マキシマムでございますけれども、普通は、二分の一は政府、残りの二分の一につきまして三等分、そういうことになると思います。したがいまして六分の一ずつの権利を持つ、こうなると思います。その場合に、実際にその六分の一の人が、例えば、国の持っている二分の一につきまして無償で実施してもらいたいということでもってお願いした場合には、その権利はございます。
  105. 大畠章宏

    ○大畠委員 要するに、無償で使えるということですね、共同出願した三者の方は。そういうことですね。
  106. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 これも特許権の原則に戻るわけでございますけれども、六分の一の人は六分の一の分しか権利がないわけでございますので、人の分については当然有償になります。
  107. 大畠章宏

    ○大畠委員 そういうことですか。特許を出願した企業無償でこの特許を使えるということじゃないのですか。
  108. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 今度の制度は三つの点を決めておりまして、一つは、今までは発明発見をした企業も共有権を持てなかった、これについては共有を持てることにしましょうということでございます。あとの二つは、国が持っている二分の一の分でございますが、あるいは丸々持っている場合もありますけれども、それについての無償実施あるいは安く実施する権利を与えましょう、こういうことでございます。  政令がありまして、「政令で定める者」というのがありますが、これは何かといいますと、実際に発明発見をした人の属する企業、こうなっておりますので、先生の御質問の先ほどの六分の一ずつ持っている三人の会社は、国の二分の一持っている権限についての無償実施の権利はございます。認めるかどうかは、その場合によりますけれども権利はございます。
  109. 大畠章宏

    ○大畠委員 そうすると、ここの無償というのは、まさに国の持っている特許の使用料については無償または廉価という判断でよろしいのですか。
  110. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 そのとおりでございます。
  111. 大畠章宏

    ○大畠委員 もう一つ、「時価よりも低い対価」という表現の解釈でありますけれども廉価というものはどういうふうに考えているのですか。
  112. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 具体的な運用につきましては今後検討するわけでございますけれども、基本的には、先ほど言いましたような、その人の発明発見の貢献の度合いというようなことも考えたいということでございます。
  113. 大畠章宏

    ○大畠委員 そこら辺のルールづくりもぜひお願いしたいと思います。  次の質問に移らせていただきますが、今回の法改正のバックグラウンドに、先ほどお話し申し上げましたとおり、日本の基礎技術に対する取り組 み姿勢あるいは国際的な共同研究を進める上での日本の態勢そのものをぜひもっとオープンに、それと共通なルール化にむけてやってほしいというような形でこの法案化が進んだと思うのです。  そこで、先ほど安田委員からもお話がありましたけれども研究者の受け入れ態勢についてちょっとお伺いしたいと思うのです。  法案をつくっただけではなかなか実効が上がりませんので、やはり顔を合わせて、心を合わせて、力を合わせる。私はよくこの三つは大切だなと思っているのですが、何といっても人間同士ですから、やはり技術者同士が交流するというのは大変重要だと思うのですね。今回、一九八八年の統計を見ますと、日本人の海外諸国への派遣研究者の数が十一万三千六百三十二人、それから海外から日本に受け入れた技術者の数は六万八千三百六十四人、大体十対六の割合なのですね。その内訳を見ますと、OECDの諸国へは日本人が八万六千百十六人、日本の国にはOECDの諸国から九千四十五人と、大体十対一になっているのですね。またアメリカについて見ますと、日本からアメリカには五万二千二百二十四人、アメリカから日本の方には四千四百六十八人、これも大体十対一ぐらいですね。それから発展途上国からはどうかといいますと、五万九千百七十四人が発展途上国から日本に来ています。日本からは二万六千三百六十四人が発展途上国に行っていろいろ技術交流をしておるのですけれども日本に来ている技術者の大体七割は発展途上国からの方なのですね。  その原因をいろいろ考えてみたいと思うのですけれども、やはり日本技術者の受け入れ態勢というものに何か原因があるのじゃないか。例えば受け入れ機関の技術水準が欧米に比べて劣っているのじゃないか。特に大学間の交流というのが非常に大きなポイントだと思うのですが、国立大学のいわゆる研究レベル海外、特に先進諸国から見た日本大学研究技術水準、いわゆる設備ですとか研究テーマ、あるいは研究費、そういうものがどうも欧米と比べて日本は劣っているのじゃないかという感じがもたれるのです。文部省見えておりましたと思うのですが、文部省はここら辺はどういうふうに今対応されているのでしょうか。
  114. 若林元

    ○若林説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、資源に恵まれない我が国にとりまして、科学技術の果たす役割というのは大変大きいものと考えております。御指摘のように、技術向上のために大学の教育研究水準の向上を図るというふうなことは非常に大きな課題になってまいっております。こうしたことから、大学におきましては近年における急速な技術革新、産業構造の変化等に伴って実践的また創造的な能力を備えました人材の養成を図るとともに、独創的、先端的な学術研究を推進する必要があると考えております。  文部省といたしましては、一つは社会的要請が非常に強い情報とかバイオ等の先端科学技術分野中心にいたしまして、教育研究体制の充実を図るために、大学の学部、学科の新設、改組を積極的に進めております。さらに大学レベルにおきましても、今申し上げましたような分野中心に、基礎研究の振興と高度の研究者技術者を養成するために、例えば先端科学技術大学大学というふうなものを創設するほか、関連の研究科、専攻の設置等を進めてまいっております。さらに、すぐれた学術研究を格段に発展させるということを目的とする研究助成費であります科学研究費補助金、この科学研究費補助金につきましても年々増額を図っておりまして、現在御審議いただいております平成三年度の予算案では対前年度三十一億円増の五百八十九億円を計上させていただいております。  いずれにいたしましても、現在文部大臣の諮問機関でございます大学審議会、それから学術審議会におきまして大学院の整備充実、学術研究の総合的推進方策というふうなものにつきまして鋭意検討中でございますので、その成果も踏まえまして、御指摘の国立大学の教育研究水準の向上について今後とも努めてまいりたい、かように考えております。
  115. 大畠章宏

    ○大畠委員 私も私立大学の工業系の研究室におりましたけれども大学研究室というのは本当に金がないのですね。それで今、特に技術系の大学研究室の元気がなくなってきているんじゃないか。それに比べて民間の企業研究室というのはかなり進んでいます。研究対象内容についても非常に金がかかる分野がありますので、金がなければなかなかできないというところがありますね。そういう意味で私は欧米に負けないぐらいの大学研究水準を上げていただきたい。単に四年間学生を育てて技術屋の卵として世の中に送り出せばいいという感じの教育機関もこれは必要かもしれない。でも、やはり大学研究室というのは諸外国大学技術水準と同等の、切磋琢磨するぐらいの技術水準を持てるぐらいの迫力を持った研究体制ができるように、ぜひいろいろな意味での措置をお願いしたいと思います。  それから最後に、諸外国研究者を迎える住宅、アパート、あるいは研究者の子供さんのための教育機関あるいは助成措置、そういうふうなものは諸外国と比べてどうなっているのか、少し劣っているんじゃないかと思うんですけれども。それと我が国基礎研究費の比率というのが欧米の約二〇%に比べて一二・八%と非常に低いのですが、この割合を高めるべきだと思うのです。  その二点についてお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  116. 中尾栄一

    中尾国務大臣 委員にお答えさせていただきます。  まず今の問題に直接にお答えさせていただきます前に、確かに我が国研究開発活動につきましては、基礎研究の比率が非常に低いということはもう従来から諸外国指摘されているところでございますし、このことが先進諸国の研究者にとりまして、我が国における研究実績は母国においても高く評価されずに、ひっきょう我が国においては研究活動を行うことをちゅうちょするような要因にもなっているものと認識しているわけでございます。通産省としましては、従来から基礎研究強化に努めてきたところではございますけれども我が国大学あるいは国立試験研究所等研究レベル世界的に見ましても魅力のあるものに向上するように、また関係省庁とも連携をとりながらさらに体制強化、また研究体制そのものの設備の整備を図ってまいらなければいけないな、こう思っておるわけでございます。  また同時に、研究員の受け入れとかそういうことになりますると、今委員指摘のとおりに相当な比較差がございました。これは言語並びに住宅の問題、特に日本語という、世界的に見ても特殊な言語のように思われておりますから、その点におきましては外国人の研究者などが生活の不便を感じる点が相当多いようにも聞いております。したがいまして、こういうことも全部含んだ上で関係省庁との連携を、これまた文部省等々とも連携をとりながら研修、住宅の借り上げなどの生活支援措置も講じていかなければなるまいなということを切に感ずる次第でございます。  以上でございます。
  117. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。
  118. 奥田幹生

    奥田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  119. 奥田幹生

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  120. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案の審議に当たりまして、政府側の御説明によりますと、今回の措置は、対象産業技術であり、通産省所管の鉱工業技術に限られているということを何回も明示されておられます。これは明らかに、通産省のお出しになった説明を拝見いたします と、   我が国では、近年の技術革新の一層の進展の下で、産業技術に関する研究開発が高度となり、国際的に共同して研究を進める必要性が増大しております。しかしながら、特に国際共同研究必要性の高い政府等の委託に係る産業技術に関する研究開発については、その成果取り扱いの諸外国との相違が外国企業の参加の障害となっており、研究開発の円滑な遂行を困難にしております。このような状況に対応して、政府等の委託に係る産業技術に関する国際共同研究を促進するための措置を新たに講ずるため、本法律案提出した これは通産省の書かれているペーパーですね。そうしますと、これは通産省所管の鉱工業技術に限られているという、限る必要は別になかったわけだし、むしろ最近のハイテクノロジーの進展というものは技術複合化時代を迎えておって、あるいは農林水産関係技術と密接にコンバインしていることが非常に多いわけでありますし、また電子関係技術、そうした技術に関してもこれはひどく大きないろいろなものがあるわけでございますし、通産省所管だけと言われるところに、私はひどく枠を小さく限ったなというふうに思わざるを得ないのであります。今回の措置国際共同研究を促進する上で有効な措置でありますから、その対象となる技術の枠をもっと一般的に広げてもよかったのではないかと思うわけでございます。  現在、政府として取り組んでいる基礎的・先導的技術開発分野といたしましては、物資・材料系分野、情報・電子系分野、生命工学分野、ソフト系分野、宇宙・航空分野、海洋開発分野、地球環境分野等々いろいろな分野に及んでおりまして、今後五年ないし十年の間にこの分野はますます広がり、複雑な展開の様相も見えるのではないか。したがって、研究開発を担当される人々の意欲を増長する立場におきましても、法制度の面でもっと大きな枠を広げておいた方が今後いいのではないか。本日現在としてはこれでいいかとしても、法律というものは一たん執行されると改正に多年の年月を要するし、大きな努力を要する。むしろ科学技術の発展よりも法制度改正技術の発展の方が問題だと議論された方があるわけでございますけれども、そういった点を考えると、枠組みがえらく小さく限られていることに私は不安を感ぜざるを得ない。  この法案について、その範囲をもっと拡大すべきだという立場から議論をさせていただいているわけでございますが、その辺をどうお考えになっておられるのか、御説明を賜わりたいと存じます。
  121. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えをいたします。  今お話がございましたように、今回産業技術に関する、政府または新エネルギー産業技術総合開発機構NEDOと申しますが、その委託による研究開発に限ってこの措置対象といたしましたのは、産業技術分野での委託研究開発成果取り扱いについて特例措置を講ずる必要性が特に高かったからでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、平成元年度からNEDO委託費による研究開発プロジェクトについて外国企業にオープンにいたしましてその参加を進めてまいりましたが、その結果、我が国と諸外国とで政府が資金を提供して行う研究開発成果取り扱いが異なっておりますために外国企業との契約内容の調整に長い時間を要した事例がございました。しかも、今後通産省またはNEDOの行う委託研究開発につきましては、情報処理技術、先進的加工技術、ソフトウエア開発技術、医療福祉技術、地球環境産業技術などの分野におきまして外国企業等の参加希望が予想されるところでございまして、当面産業技術について措置を講ずることにしたいと思っているわけでございます。  御指摘産業技術以外の分野におきまして今回と同様の措置を講ずることにつきましては、研究課題と考えております。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 研究課題とおっしゃってしまわれたらそれまでに尽きますので、実力大臣にちょっと伺いますが、例えば胃カメラの問題について、一つの具体例でやりましょう。胃カメラの開発をやったといたします。そうすると、胃カメラの技術というのはもう最近は開発し尽くされているから問題はないといたしますけれども、アメリカの胃カメラ業者との間で技術開発を一緒にやるといたしますと、ある部分通産省所管でありますが、医学的分野特許その他が絡んでまいりますと、これは医学分野との調整、競合というものが当然発生するわけであります。そうすると、この産業技術法改正案に関する部分というもので処理できる部分とできない部分が起こってしまう。胃カメラのような単純なものでさえもまた特許権をめぐって堂々めぐりをしなければならない。せっかくこの法が改正されて通産省所管の分だけはきれいに解決されますけれども、すぐはみ出してしまう。したがって、ただの研究では済まないのであって、他の省庁とも組んでテクノロジー全般に関する技術交流についての新ルールを研究し、つくっていかれることが必要なのではないか。  今、技術院長は明らかに研究するとおっしゃっておられますが、技術院の偉い人に研究していただいても、別の所管の問題を研究するのでありますから、特にそれは政策的問題を研究していただかなければならぬのでありますから、あの方は素人と同じであって、これは国務大臣に御返事をいただかなければならないと私は思いますが、いかがですか。
  123. 中尾栄一

    中尾国務大臣 超大ベテランの渡部委員にお答えをするというのはどうかと思いますけれども、今渡部委員が御指摘なさった胃カメラその他の問題も、これは通産の分野でございますし、ある意味においては研究する段階をはるかに超えまして産業技術以外の分野におきましても今回と同様の措置を講ずる必要性が生じた場合には、あくまでも関係省庁においてよりもある意味において広い技術分野、広域分野と申しましょうか、非常に広い分野においての措置が検討されていくように我が省からも働きかけていかなければなりますまいし、同時にまた、そのような方向で集約できるもの、このように前向きに考えていきたい、こう思っております。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、これは研究していただくだけではなくて、明らかにこれは法律上さまざまな特許権の問題、技術交流の問題が問題になるわけでございますから、それは研究されるではなくて、各省庁の中で本法案のさらなる改正あるいはさらなる新しい機構の設置あるいはルールの設定という現実政治的ルールの問題に変わるのではないか、そこまで検討、改良されるおつもりがあるかどうか伺います。
  125. 中尾栄一

    中尾国務大臣 そのような形で、委員指摘のとおりにさらなる進展、発展といいましょうか、私ども分野の中でこれを総括してやっていくという、研究の段階にとどまらずに広範囲な形でとらえていくということにおいては、必ずそのような前向きな検討だけでなく、前向きな総括というような考え方でとらえていくつもりでございます。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に伺うのでございますが、今回の措置国際共同研究についてのみの特例が認められることになっておりますが、この国際共同研究の「国際」という字は明らかに外国との関係においてと言われているわけであり、国内企業との間における共同研究については論じられていないようにお見受けするわけであります。  しまがいまして、ナショナルプロジェクトにおける特許権取り扱いにつきましては、我が国の産業界が多年にわたり要望しているところでございますけれども国内企業からのみ成るプロジェクト、そして日本政府の保有する特許その他の技術との関係が問題になるような場合には本特例が及ぶようにするのが本当ではないか。そうでないと、外国のは優遇するが、国内産業は優遇しない、外国との産業に対しては日本特許を、広く政府保有の特許をたくさん使わせるけれども国内の産業には使わせないというまことに奇妙な事態が 発生するわけでありまして、私は愛国者を気取っているわけではございませんけれども国際関係を優遇して国内関係を殊さらに冷遇するというのは、法の立案の基礎がちょっとおかしいのではないかと思われますが、いかがでございますか。
  127. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えいたします。  最近、産業技術分野研究開発につきましては技術革新が非常に進展をしてまいりまして、いろいろの分野専門知識を持っている人が一緒になって研究をする、そして基礎的、先導的な研究開発を進めていくことが必要となってきております。こういう意味で、外国我が国のすぐれた知識を持ち寄って国際共同研究として実施することが必要不可欠になってきております。しかしながら、現在の法制度におきましては、政府が資金を提供して行う研究開発成果として出てまいります特許権取り扱いにつきまして海外先進国と異なっておりますために、国際共同研究の円滑な遂行が困難になっている例もございます。このことから、今回の法律改正によって産業技術分野国際共同研究成果について特例措置を講ずることとしたものでございます。  渡部委員指摘のございました国内企業のみから成る委託研究開発を、この特例措置対象とする必要性につきましては、私どもも承知をいたしておりますけれども国有財産の適正な管理というもう一つ政策的要請がございまして、このバランスをとる、こう考慮いたしまして、今後ともこの改善については引き続いて検討をしていきたいと考えております。
  128. 中尾栄一

    中尾国務大臣 これはもう、渡部委員、何といたしましても長い間外務委員会の実力者でいらっしゃいましたから、国際的視野というものを一番広くお持ちの国会議員の数少ないお一人でございますし、その視野から見て、なおかつ日本というものの土壌を踏まえたものを考えろとおっしゃる。すなわち、国際的視野に立って、なおかつ日本の、いわゆる国内企業のみから成るプロジェクトについても本特例が及べという考え方は全く同感でございまして、そのような方向づけで考えていきたいというのが私の趣旨でございます。
  129. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 たびたびお褒めにあずかり恐縮でございますが、実力大臣がおっしゃっていただいておりますので、余りうるさいことも言いたくはないのでございますが、国際的企業に対してだけ優遇措置をとって国内企業には優遇措置をとらない、そして、それは管理上問題があるなどとおっしゃるのは甚だうなずけないのでありまして、それは問題であります。  きのう本会議を通過いたしました林野庁の国有林野の開放におきましても、国の管轄しておる財産を売却して、それによって利益を受けることによって国政をやろうとする、あるいは国の持っている林野を人に開放して使わせることによって一部の人にメリットを与えるが、全体としてのメリットを図ろう、これが国家の行動、政府の行動というべきものでございましょう。  したがって、特許庁が国有特許というものをどれぐらい保有しているかというと、そう大した金額ではありませんし、特許権受取料として約四億、うち通産関係が三億程度と伺っておりますから、そう大した大きな特許ではございませんけれども、それを開放するに当たってその三億円をわざわざ外国だけは許す、国内だけは許さぬ、これは片手落ちというべきものではないかと思われるわけでありまして、これは本法案対象となるべきものが国際関係の調整にあったことは明らかでありますから、そのためにつくられた法案だろうと推察しているわけであります。推察はいたしますけれども、それであるならば余計に、次の法案を持ち出してきまして国内企業に対して同じ措置がとられるような対策をつくりませんと、政治の一番基本である公平の喪失ということが問題になってしまう、その意味で対策をお立ていただくことがいいのではないか、私は重ねてお尋ねするわけでございます。
  130. 中尾栄一

    中尾国務大臣 渡部委員のおっしゃることはごもっともでございますから、その方向で必ず進んでいきたいと考えております。
  131. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今、国内企業外国企業の公平のお話が出ましたので、ひとつちょっと確認のために御説明させていただきたいと思います。  今回、国際共同研究を推進するためにこの法律をお願いしているわけでございますけれども、この共同研究に入っている国内企業には同じような優遇措置がございます。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣が決定的なことをおっしゃったときは、そういう瑣末の議論は要らないのでありまして、時間つぶしでございますから結構であります。  それから、もう一つ申し上げておきますが、そういう国際研究だけ優遇して国内研究を虐待するやり方をとりますと、日本企業国際関係におきまして研究機関を創設するぐらいのことは簡単にできるのであって、一カ月もたたないうちにしかるべき研究機関をつくる、そして、その中に入れてくる、迂回作戦で共同研究を設置するということは可能であります。そういう脱法行為をこれは進めるおそれすらある。その脱法行為というか、そういう戦術を我が国企業がしょっちゅう配慮してなければならぬというような不確かな日本政府であってはならぬと私は思っているわけでございまして、御説明はありがたく存じますが、大臣のお考えの御方向で進んでいかれることを、私は希望さしていただきたいと存じます。  第三問でございますが、我が国研究開発の現況を見ますと、基礎的、独創的な研究分野開発で、欧米諸国に比べまして甚だおくれをとっておるという面がある。欧米、特に米国からの研究者の受け入れ数が日本から欧米に対する派遣数に比べて著しく少ない状況を呈しております。我が国のこうした面の強化が、国際共同研究の促進を目的とする本改正を真に意味のあるものにするのではないか、多年にわたって言われていることでもございますので、大臣から御見識を表明していただきたいと存じます。
  133. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まず、我が国が欧米諸国から受け入れる研修者数が、我が国が欧米諸国に派遣する研修者数を大きく下回っているということは、御指摘のとおりでございます。我が国研究開発活動につきましては、論文の引用実績が少ないこと、あるいはノーベル賞の受賞者数が全く少ないこと、あるいはまた基礎研究費の比率が比較的に少ないこと等につきまして、従来から諸外国指摘がされているところでございますし、このことが先進諸国の研究者にとりましては我が国における研究実績が母国において高く評価されずに、ひいてはこれら諸外国研究者我が国研究機関において研究活動を行うことをちゅうちょする原因になっていることも認識している次第でございます。  我が通産省といたしましては、従来からの研究基礎というものの強化に努めてきたところではございますが、我が国大学国立試験研究所等研究レベルをさらに世界的に見ても魅力のあるものに向上するよう、また発展的なものになっていくよう関係省庁とも連絡をとりつつ、さらに研究体制あるいは研究設備等の整備を図ってまいる、こういう所存でございます。
  134. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣に総括的に言っていただきましたので、きょうはその問題については余り詳しく論じるつもりはないわけでございますが、我が国先進国からの研究者の受け入れが少ない理由といたしまして、幾つかの点が既に各方面で示されているところでございます。我が国に卓越した研究拠点や魅力的な研究所がないこと、二に我が国大学、国立研究機関研究機能が低いこと、それから三に、我が国特有の言語の問題、それから第四に、住宅問題あるいは研究者の子弟のための教育環境、生活環境が十分にされていないことなどなどが長い間言われ続けてきているわけでございます。御省におかれましてはフェローシップ制度等を外国研究者のためにつくられましたけれども、意外や意外で、受け入れ枠が少ないのにその受け入れ枠を下回るほど応募者が少ないというような恐るべき状況もある。つまり余り宣伝 しないのでお客が来ない、宣伝しないので足りておるという何ともかんとも言いがたい状況にあるわけでございます。  そういたしますと、この外国研究者日本に来ないというのは、一時的な現象としては見過ごすことのできるテーマではあると私は存じますけれども、長い目で見ると、日本基礎研究のために力を尽くさない国という評価が確立してしまう。今度は基礎研究のために訪れてもおもしろくない国となってしまう。そしていつの間にか理論、技術レベルの程度の低い野蛮国というふうに技術者の間にされてしまう。そしてその次には、こういう国は金を取るときだけ行くけれども、あとは利用するべき、そこに住むべき国でないというふうになってしまう。もっと先にいくと、今度は日本の青年たちの間に高級な深い意味技術レベルというものが定着しない。もっと言うと、応用技術だけの技術レベルであって、真に真理のうんのうをきわめていく楽しみを見出せるような学的環境というものがそろわないということが我が国に定着してしまう。  私はこれを簡単なレベルで言っているのではありませんで、清国の古いあれを見ておりますと青竜刀の話が書いてあります。日本刀は甚だよく切れると日本人は言っておるが、青竜刀の方が実際には甲冑に至るまでぶった切ることができるのだと書いてありまして、日本人は我々の青竜刀の技術を一部盗んで日本刀をつくって、つか巻きを丁寧にしたり漆をかけたり美術工芸品をつくったけれども日本人は本質的な改良をしたためしがないと清国の記録に載っているわけであります。今を去る五百年も昔にこういう記録が出ていたということに対して、私は日本人の文化体質というものがかなり深いところに根差していると思わざるを得ないのであります。  日本の場合は、先進技術者は必ず偏屈な人あるいは奇怪な人、おかしな人というふうに攻撃される、ところが応用技術を扱う人は技術者として、学者として名声を得る体質がある。社会的環境として基礎技術、基礎理論を行う者は変人として処罰されエリミネートされていくという状況にある。この社会的風土を直すための手を打とうとしないで、単に技術者の宿屋の問題とか言葉がないんでしょうとか、甚だしい場合には技術者の遊ぶダンスホールがないなどという話に転嫁してしまうと、結局、本質論的な日本人の文化体質というものの改良に目が行かないでいると我が国は失うところが甚だ多いのではないか。  一見、我が国は栄耀栄華をきわめて今世界の中のGNP大国としての日本というのが存在するけれども、その後ろに尊敬されない日本人という問題が各方面で言われており、その尊敬されない日本人という現象が単に平和の問題だけではなく、我が国の産業界にも色濃く影を落としているという状況を考えますと、ここのところは本質論的な取り組みが必要なんじゃないか。例えば文部省と通産省と運輸省あるいは科学技術庁等々各省庁並べて技術的な打ち合わせをするのではなくて、文化的な基礎的な打ち合わせをされることが必要なのではないか。そのリーダーシップをとる者こそ政治家である大臣でなければならぬと私は思うわけであり、かねて尊敬する大臣に御見識のあるところを披瀝していただき、また適切な措置をとられることを希望したいと思うのです。そこであえて多弁を弄してこの際申し上げたわけでございますが、一言御見識を承りたいと存じます。
  135. 中尾栄一

    中尾国務大臣 渡部委員に謹んで申し上げます。  私も確かに技術論の面においては官吏の各位のメンバーはそれぞれの分野において相当なエキスパートがそろっておると思います。しかし、日本の官吏機構の中で問題点があるとするならば横並びの、あるいは縦割りのということはそれぞれがありますが、横につながる連帯感と申しましょうか、そういうものの共同作戦と申しましょうかコーディネーティブな力の結集力に欠けているのではないかということを感ずる面が多々ございます。それはあってはならぬことであって、国際的視野に立ってなおかつ日本の国益というものを考えていく場合には、それこそが一番大きな今からの強いエネルギー集団になっていく、私はその点においては委員と全く同一な考え方を持つものでございます。  そういうコンセプトの上に立ちますると、私どもは、政治家といたしましても何が一体国益に集中して、なおかつ世界に対応して考えていかなければならぬのか。日本は唯我独尊で自分だけが非常にすぐれた面だと思っても、先ほどの委員の御指摘の青竜刀と日本刀の問題が数百年前にそのように言われて、私も今初めて聞いて、私は日本刀の方がはるかにすぐれておったと今でも思っておったらば、意外や意外青竜刀の方が相当な、骨の髄までばさっといけるんだということを聞きまするとただ驚くようなものでございまして、それは知識の欠如だと私も思っておるわけです。そういう点においては私どもは総合戦力でこういう問題点をとらえていく。この技術開発の問題もまた総合的にとらえていくという点においては各省庁連動しながらやっていくという点において、私どももイニシアチブをとれるものはとっていくという決意を新たにするものでございます。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは次にちょっと関連して、この法案と直接関係はないのでございますが、アエラの記事を引用いたしましていろいろお尋ねしてみたいと存じます。  これはアエラの記事の「北朝鮮の原爆製造工場」という報道であります。これは、朝鮮民主主義人民共和国の首都平壌から直線距離で北に九十キロほどのところに寧辺という町があり、その寧辺という町のところの小高い山並みに隠れて盆地が広がっており、核工学の専門家ならそれとわかるような核施設群が三カ所に分かれて盆地に位置している。比較的大型の原子炉、その原子炉で使い終わった核燃料を再処理する工場、原子炉に入れる核燃料の製造工場と記されているわけであります。我が国にとっては、NPTに加わっている同国がIAEAの監察を拒否している問題について政府が関心を表明していることは、日朝間の外交交渉の席上、記者会見の席上で漏れてくる言葉で伺っているところでございます。  ところが、これは恐らくソビエトで使われているだろう黒鉛減速型ガス冷却式の炉であろうと想像されているわけであります。これは大事故になりましたチェルノブイリ型とは違いますから、爆発する心配については相当低いものと思ってよろしいのではないかと私は勝手に思っているのです。しかしながら、近距離にあるところで原子炉が開発されていく、NPT条約に違反してIAEAの査察も受けていないという状況にある。そして我が国は目下交渉中であるということに関心を持たざるを得ない。また、中国の瀋陽におきまして、ソビエトの原子力発電所を二基中国側がソビエトから購入して運転しようという計画があると聞いておる。これはもし爆発事故などを起こしますと、日本列島にそのまま灰がかぶってくる距離にある。  したがって、実は世界は自国の内政問題についての発言権を国際協力の名のもとで失わなければならない時期に到達しつつある。自分の国の通産政策はこうだから、これはこっちの内政問題だから勝手にやっていいよというわけにいかない。一国の失敗は隣国に波及する。そういう意味でヨーロッパの国々の最近の打ち合わせの仕方というものを拝見しておりますと、国際関係において非常にレベルの高い打ち合わせというものが行われつつある。多くの失敗の上に立ってそれが行われつつある。国連の名のもとにおいてそれも行われなければならないなと我々も思っておる。  ところが、こうした問題について、産業技術法の改正問題と関連して国際的な技術交流は大事だよというお話が出ているけれども、それと一緒に考えなければならぬのは、近隣の諸国との国際的な情報の交換、技術レベルの交換というものが透明性を持たなければならないということが一つ出てくるのではないか。また、この問題のように安全保障問題にも絡むような重大問題については総 合的にチェックしなければならない状況を迎えつつあるのではないか。また、こうした問題で明らかになることは、明らかに低レベルの危険技術を使用しようとする隣国に対して、内政干渉の立場ではなく内政的な助言と援助の立場において我が通産省は画期的に発言するべきときが来ているのではないか。それが我が国の通産行政を貫徹する道でもあるのではないか。それは内政干渉と言うに当たらないのであって、むしろ国際的な相互扶助の、国際連帯の名のもとにおいて許容さるべきものではないかということをこれを見ながら感ずるわけであります。  今一遍に答えのところまで申しましたが、この問題について関係当局はどういう御判断を持っておられるのか。原子力関係の問題を扱っておられる外務省の担当部局の方も資源エネルギー庁の関係の方もお越しと伺っておりますので、ます事実関係から御説明をいただきたいと存じます。
  137. 貞岡義幸

    貞岡説明員 御説明申し上げます。  まず北朝鮮の原子力事情でございますが、我が方が確認しておりますのは、先生指摘の寧辺という地域にソ連から導入した研究炉二基がございます。その他の原子力施設については、いろいろ報道されておりますけれども事実関係については確認しておりません。  いずれにせよ、外務省、政府といたしましては本件問題に重大なる関心を有しておりまして、今週の前半東京で開催されました日朝正常化交渉におきましても、北朝鮮側に対しましてIAEAのフルスコープ保障措置協定を早期に締結するよう要請いたしました。  それから先生指摘の二点目でございますが、原子力分野における国際協力を行う場合には、我が国技術が危険な分野に利用されないように、その点十分に平和利用につきましては担保しております。
  138. 深沢亘

    ○深沢政府委員 先生指摘の二国間等々においてそういったいろいろな話し合いも進めるべきではないかというのも背景にあろうかと思いますが、例えば中国との間では八六年に日中原子力協定を結びまして、そういったことに基づいて、お互い原子力に対してどういうことをしているか、どういうことをしていこうか、その辺のところの話し合いといったものは地道に進めておる、そういうところでございます。  それから具体的に、例えば原子力関連技術海外移転の管理というようなことにつきましては、釈迦に説法になりますけれども、ウラン濃縮とか再処理といったような非常に機微にわたりますそういった設備にかかわる技術につきましてはいろいろな国際的な約束がございます。我が国におきましては外為法、外国為替及び外国貿易管理法によりまして通産大臣の許可にかからしめてございます。この辺のところは非常に厳格にそういった背景の中で対応しておりますし、今後とも対応してまいるつもりでございます。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務省が察知しているこういう情報がある。それに対して、通産省との間で今後よく協議をしていただいた上で対応していただきたいとまず思っております。  というのは、何か外務省の方がアメリカから情報を得て、原子力発電所の写真を見てびっくりしておる。しかしそれは、素人がみんな眺めてただ驚いておるというのであってはならない。通産省がそれに対してどういう対応が必要かというのは有機的にしょっちゅう打ち合わせをしないととんでもないことになるのではないか。また、今後においてはそうしたものはもうちょっと交流して、そして技術交流というものが技術の交流という分野に限らず、両国関係の安定、世界の安定のために極めて高いレベルのものになる。つまり、技術の交流をしないでいる相手同士の間は極めて危険な状況が生まれてくるということを率直に認識しなければならぬ段階に来たのではないか。とんでもない時期が生まれてしまったのだな。したがって、及び腰の技術交流ではなくて大々的な技術交流をやる。技術交流が途絶したときにはもう戦闘開始を覚悟しなければならぬぐらいの危険性にあるというこの地球の新しい状況というものに対応しなければいけないのではないか、そんなことを思うわけでございます。  時間がなくなってまいりましたので、ひとつまとめてお答えをいただければありがたいと存じます。
  140. 中尾栄一

    中尾国務大臣 これは全く話の次元の違うことで、また同時に軍事的な問題で恐縮ではございますけれども、この間の湾岸紛争のときでございますが、地上戦が始まった途端に向こうのイラク側のある将軍がつかまった。そのときの第一番目の感想が、これほどまでに多国籍軍側の空爆力あるいはまたあの兵器の強さというものが強大なものであったかということに一番先に驚かされたというのが感想であったと聞きまして私も驚いたわけで、ある意味においては知らざる者の怖さといいましょうか、日本のちょうど四十五年前の陸軍のあり方、海軍のあり方を全く思い知らされるような思いで聞いておりました。  考えてみますると、確かに技術レベルの向上がアンバランス各国にいろいろあるということの方がむしろ危険であって、ある意味においてお互いに、ノーハウにも限度、限界がありましょうけれども、お互いの交流を図り、だからそれは先進国だけで通用して発展途上国がもう知らぬ存ぜぬでいけばいいというのではなくて、やはりそれも引っ張っていく、同じような形で伸びていくというようなバランスの中にこそ、初めてある意味における本当の意味での国際平和の貢献ということも満たされると私は感ずるわけでありまして、それだけに今委員おっしゃられたような形における私どもの単なるセクショナリズムの各省庁の考え方だけで対応するのではなく、それが集中的に、一つのコンセントレーションを持って大きな意味における貢献ができ得るような方向というものにどうやっていけばいいかということも、これも検討を急いでするとともに、確かにおっしゃるような技術レベルにおけることにおいて交流をしながらも、なおかつそれが貢献的、発展的に、しかもなおかつそれが友好的なものであったという形につくり上げていくように私は努力を申し上げたい。また、そのことをお約束もさせてもらいたい、こう思うわけでございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 どうもありがとうございました。
  142. 奥田幹生

    奥田委員長 小沢和秋君。
  143. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この法案は、国の資金で内外の企業共同研究を行った場合、それによって得た特許などが従来国に全面的に帰属しておりましたものを国とそれらの企業とで折半することに改めようというものであります。  ここでまず言っておきたいことは、我が党は、本来企業がみずからの責任と負担で研究すべきテーマを国が取り上げ、企業に資金を提供して研究をさせるようなことは直接の企業活動への援助であり、国がやるべきことではないということであります。こういう国と企業が一体になった我が国技術開発のやり方が国際的な批判をこれまで受けてきたのは当然であります。  そこで、まずお尋ねをいたしたいのは、今回の法改正の直接のきっかけになったとされます超音速輸送機用推進システムについての国際共同研究のことであります。  この研究は、全額国が資金を出し、石川島、川崎、三菱、これにP&W、GE、ロールスロイス、スネクマなど内外の企業七社に委託するというものであります。この研究も本来これらの内外企業がみずからの負担で行うのが当然ではないかと考えますが、その点いかがでしょうか。
  144. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 お答えをいたします。  企業でやるべきことを国でやっているのではないかという御質問でございましたが、国でやります研究企業でできない基礎的、先導的な研究をやるということでテーマの選定その他をいたしております。  それから、具体的に超音速輸送機用推進システムについての御質問でございますけれども、この超音速輸送機用推進システムと申しますのは、マ ッハ五で飛ぶ飛行機用エンジンを開発しようというものでございまして、現在開発されようとしておりますものはいずれもマッハ二か三ではないかと思っております。そういう意味で申しますと、次の次の世代のエンジンでございまして、やはり国が、あるいは国際共同で進める将来のための非常に重要なテーマではないか、こんなふうに考えております。
  145. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今の点は見解がそれぞれ違うという問題でもありましょうから、私、あえて論争をきょうはしようとは思いませんが、これらの内外企業にすれば全額国費で研究できるわけですから、それだけでも大変な利益があるわけであります。それに加えて、この法改正研究成果を半分は自分のものにできるとなれば、いよいよ笑いがとまらぬほど結構な話ということになるんじゃないでしょうか。
  146. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今回、これは大型プロジェクトでございますけれども、大型プロジェクトを初めとする産業技術研究開発の幾つかを国際的にオープンにいたしまして国際共同研究といたしましたのは、これからの技術開発が非常に高度化をしてまいりまして、いろいろな力を持ったもの、いろいろな技術を持ったものが一緒になってやることによってさらにそのプロジェクトの成果がよくなるものということで国際共同研究ということにしているのであります。それに伴って知的所有権の取り扱いなどの問題が出てきたわけでございます。
  147. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 だから、私がお尋ねをしたことに対するそれでは答えになっていないと思うのですよ。私は、そういう研究をして得た成果を半分は自分のものにできるということになれば、お金は全部出してもらった上にそういう恩恵ということで、二重の恩恵を受けるようになるのではないかというふうにお尋ねをしているわけです。  次の質問もいたしたいと思いますが、この法改正は、事務当局の説明などを伺っておりますと、よその先進国では大体そういうことになっている、その水準に合わせたものだというお話なんですが、今回のプロジェクトに参加する米英仏四社のうち三社は米英に籍があるわけです。ところが、米英では、いただいた資料では、国費で開発をされた特許は、外国企業との関係で見れば国に帰属するわけです。これまでの日本と同じです。そうすると、米英の三社は、今回の法改正で、それぞれの国で企業が受けるよりもよい待遇を受けるということになってしまうのではないでしょうか。
  148. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 今回の法改正でお願いしておりますのは、相互主義ということが基本になっておりますので、海外企業等で行っているものと同じレベルのものをやりたい、こういうことでございます。
  149. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いや、だから、よく聞いてもらわないといけないのですよ。相互主義以上に日本の方が有利な条件を与えることになるのじゃないかと言っているのですよ。
  150. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 相互主義と申しましたのは、実際に参加する企業、今回の場合だと、アメリカ、イギリスの企業としますと、そのアメリカ、イギリスの国でもってほかの国に対してやっているあるいはその国の企業に対してやっているのと同じレベル権利を与えるということでございます。したがいまして、もしアメリカ、ヨーロッパで、外国企業に対しては権利を与えないということでございますれば、同じような取り扱いをするというのが相互主義でございます。
  151. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いや、だから今度は、半分は相手に対して特許権を認めるということでしょう。ところが、米英では、今外国企業がそういう政府援助などを受けて取得をする特許については全面的にその国に属するということになっておるわけでしょう、あなた方の資料では。違いますか。
  152. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 そのとおりでございます。したがいまして、たくさんの国が入ると複雑でございますけれども、もしアメリカと日本ということでございましたら、アメリカがやっているのと同じことをやるということでございます。これが相互主義でございます。例えばフランスの場合には、これは非常に権限の認め方が広いわけでございますが、そういうフランスの企業とやる場合にはフランスの企業並みの相互主義でいく、こういうことでございます。
  153. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いや、そうすると、NEDOと契約をしたというけれども、その契約どおりでいけば、半分特許を認めるということになっているのとの関係が私は今の答弁では理解できません。それで、だからその点ももう一遍明らかにしていただきたいのですが、次の質問もしたいと思います。  それで、この特許権取り扱い国際共同研究の大きな障害になっているというのですが、私が承知している範囲ではこの次々世代SSTエンジン開発で初めて問題になったのではないでしょうか。これまでもしばしば国際共同研究を実施した中で問題になったというのであれば、何件くらいそういうことがあったのか、そのために話がまとまらなかったというようなケースもあるのかどうか、お尋ねをします。
  154. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 国際共同研究で今回初めてでございまして、それ以前に経験はございません。
  155. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私がよくのみ込めるように言っていただきたいのです。だから、今までもないわけではなかったということですか、この問題以前にですよ。
  156. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 交渉をまとめるのに非常に長い時間がかかったのはこれが初めてでございました。
  157. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 だから、実際上少なくとも大きな障害になったというのは今度が初めてなんですね。だから、そういうことが一件起こっただけ。しかも、私さっき言いましたように、両者のバランスという点で見ても納得がいかないような内容を含んでいるようなものを何でこの時期に大急ぎでつくらなければならないのか、この点私は納得がいかないわけであります。  それから、もう一つ納得がいかないのは、この国際研究に参加する国内企業にも外国企業と同じように特許権を五〇%認めるという問題であります。百歩譲って対外的な摩擦を起こしたくないということで外国企業にこういう取り扱いを認めたとしても、なぜ日本企業にまで同じことを認めなければならないのか。先ほどからも問題になっているようですが、こういうことを認めれば、次は同じ共同研究をしてただ外国企業と一緒にやったかどうかで特許権を認められたり認められなかったりするというのはおかしいということになり、結局国内での委託研究も全部五〇%認めるということになっていくのではないでしょうか。この点どうですか。
  158. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 まず前半の、具体的な事例はこれしかないのではないかということでございますけれども、確かに大変大きな国のプロジェクトとしてやったのはこれが初めてでございますが、実はこの後ろにたくさんあるわけでございます。例えばこのSSTに関しましても、材料研究、これは宇宙と一緒になりますけれども、そういう素材研究なんかありまして、これについても実は国際共同研究がふさわしいというふうに考えておりますが、先ほど言いましたような問題があって、現在はとまっております。それからそのほかに、二十一世紀型の生産システム、これはIMSと称していますが、これは日米欧でやろうという大変大型な研究でございますけれども、これについてもこの問題で今議論が非常に難航しているということでございます。そのほか、今後の大きなプロジェクトとしては相当あるのではないかというのが現状でございます。  それから第二の点でございますが、実際に国際共同研究になるという場合には、日本だけではできない、あるいはアメリカだけでもできないということで、アメリカやヨーロッパあるいはその他の国の衆知を集めるような研究開発が多うございます。そういう意味で、そういうところに国が金 を出すということでございますけれども、見方を変えますれば、そういうアメリカ、ヨーロッパあるいは日本、多くの国の企業の英知を集めるということでございまして、そういう形でもって英知を集めて進めていこうということでございます。その際に、せっかく一生懸命に研究した個人あるいは企業にインセンティブがないということだとなかなか進まないということでございます。そういう意味では、ほかの国、アメリカ、ヨーロッパ並みのそういったインセンティブを与えていくということが必要であるというふうに判断したわけでございます。
  159. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それでは私の質問に答えていないのですよ。私は、外国企業共同研究をするようになったからということで国内企業にも五〇%を今度は特例として認めるということになっていけば、次は日本国内だけの研究についてもそれを認めなければならぬ、こういうふうに話がなっていくのではないですかということをお尋ねしているわけです。  その点を私が特に気にしているのは、実は財界などから十年以上も前から繰り返してその点については要求が出ているわけです。昭和五十五年十一月二十五日に経団連の技術同友会は「すぐれた研究を数多く生み出して行くため、研究開発成果に対して政府の十分な配慮が必要である。即ち、特許権の帰属及び実施権等の面で、民間にインセンティブを与える工夫が是非とも必要である。」というふうに述べておる。その後も、昭和五十七年一月十二日にも経団連から出ているし、以後も再三この要求が出ているわけです。だから、私が思うに、国際的な問題で大きな問題になったのはこれが初めてというふうに言われたが、これでできた、これがいい機会だということで、経団連がかねがね要求していることにこの機会にこたえてやろう、そういう道を開こうというねらいじゃないのですか、こういうことをお尋ねしているわけです。
  160. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 先生指摘の経団連あるいはその他の方面からもいろいろそういう要望が寄せられております。ただ問題は、やはり国の経費を出すということは国民の税金から出るということでございますので、国としてもその特許を持ってその国の特許を有効に使う、第三者あるいは中小企業も使われるわけでございますので、そういう国の特許というものと、それから実際に研究に参加する企業のインセンティブ、その両者のどういう均衡をとるかということになろうかと思います。今回につきましては、実際に国際研究開発でもっていろいろな問題が起こっているということで、とりあえずこの問題から手をつけていくということでございます。
  161. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 ここで国際共同研究ということについて大臣にちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。  私は、国際共同研究というのであればどういうテーマを選ぶべきか考えなければいけないと思います。私は、次々世代のSSTエンジンなどをテーマに選ぶよりも、もっと国が負担すべき緊急のテーマということになれば、例えば今地球環境全体が汚染して人類の今後の生存に深刻な影響を与えることが心配されているわけです。そういう環境破壊に大きな責任のある我が国こそCO2、フロンなどのガスや酸性雨対策などの技術開発の先頭に立つべきだと思いますが、こういう点、大臣はどうお考えでしょうか。
  162. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私に御指名でございますから、ごく簡単ではございますが、申し上げさせていただきます。  確かに、そういう私どもの今主張している問題点よりも、ある意味においては地球環境問題、人類の生存問題、その他の問題、CO2の問題等も含めていろいろの重要課題がまだ山積しているのではないか、こういう仰せでもございます。確かに、地球環境問題の取り組みに当たりましては、通産省では世界各国が協調いたしまして、技術によるブレークスルーを通じた温室効果ガス排出抑制あるいは削減、そういう意味において総合的なかつ長期的な行動をとることを地球再生計画として国際的な場で提唱しておりまして、ある意味においては国際的に高い評価も受けているのではないかと判断しておるわけでございます。  通産省としましては、技術開発の推進のために産学官の協調のもとに昨年七月設立されました財団法人地球環境産業技術研究機構の国際的な中核研究機関として、CO2固定化あるいは有効利用技術等の地球環境安全に関する革新的な技術開発等の協力にいそしんでいるわけでございまして、真剣に取り組んでいる次第でございます。さらに、海外研究機関としての研究交流、海外研究者の招聘あるいは国際的なセミナーの開催など、地球環境産業技術研究機構を核としました国際的なネットワークというものもこれまた構築している次第ですし、計画も運んでおる次第でごさいます。  これらの政策の実施のためには所要の予算の確保を図っているところでございまして、今後ともその点の地球環境保全に関する技術開発、いわゆる委員のただいま申されましたような問題点にも国際的な視野に立って積極果敢に推進してまいることもお約束させていただきますが、同時にまた、今のような種々各論申し述べました通産省側の意見もこれまた全体的な、グローバルな見地から見ると大事である、こういうことから御理解のほどを願いたい、こう思っておる次第でございます。
  163. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 地球環境技術国際共同研究などということで、今やられていることは承知しておりますけれども、この工場技術院などの資料をいだいて見てみると、金額が、例えばほかの、さっきから問題にしているようなプロジェクトが二百八十億というような規模から見ると余りにも小さい。ぜひそちらの方に大いに力を入れていただきたいということをもう一言申し上げておきます。  この機会に、我が国政府負担の研究費が世界的に見ても余りにも貧困だということを申し上げたいわけであります。政府負担の研究費が研究費全体の中で占める比率がどれくらいか、国際的に比較をしたらどうかということをちょっとお示しください。
  164. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 研究費の国際比較を申し上げます。  研究開発費の対GNP比でございますが、一九八八年でアメリカが二・六%、日本が二・六%でございます。それから、ドイツ、フランスまで入れて御説明いたしますと、ドイツが二・八%、フランスが二・三%でございます。政府負担割合が、アメリカが四八%、日本が一八・四%、ドイツが三三・三%、フランスが五〇・九%となっております。
  165. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 今のお話でも、日本政府の負担割合というのは極端に低いということははっきりしておるわけです。これを全体としてふやす努力をしているというお話なんですけれども、私どもがいただいている資料を見ると、一九七四年が二六・五%であったものが、絶対額はふえているのでしょうけれども、今お話があったように一九八八年には一八・四%までさらに落ち込んでいる。だから私は、これでは全体として政府が、この研究費、基礎研究を充実したいとかさっきから言っておられるが、その努力を十分にしたとは言えないのじゃないかと思うのです。とりわけ、重大な問題なのは、企業向けについてはかなり大きな伸びがあったようですけれども基礎研究という点で一番重視しなければならない大学あるいは国立研究機関などについては、その伸びというのは非常に低いという状態じゃないでしょうか。実態はいかがですか。
  166. 中尾栄一

    中尾国務大臣 その数値のほどはまた後で答弁するかもしれませんが、私の感想も踏まえまして総合的に率直な答弁をしたいと思います。  委員お話を聞いておってふと私も思い出しましたが、例えば外務省関係の官吏の制度のことを十数年前ですか、私はからかったことがございました。そのころ日本は外交官の数が二千五百人、イタリーの国は五千人と言われました。私もその 当時、私の所属する政党で外交機能強化委員会というのをつくりまして、私が言い出しっぺでございましたから初代委員長になりまして、相当積み上げて今や四千数百名以上になりました。まだイタリーよりも少し劣っておりますが、もうほぼ肩を並べたということでございます。  と同様に、これは予算措置ということをただいま委員もおっしゃったとおりで、これはむしろ企業のインスティチュートというか研究機関、そういうものは相当に企業体でやりますから、その点では相当に潤っている面がございます。しかし、国の方の問題となりますと、御指摘のとおりいろいろな問題があるのじゃないか。通産省としましては九〇年代ビジョンといたしまして、この御指摘を踏まえまして今後ともなお一層の基礎的、独創的な研究開発を推進してまいる所存でございますが、御指摘研究予算の拡充につきましては、政府全体の研究開発予算を我が国全体のGNPに比べた数値が欧米諸外国から比べますと極めて低い、これはもう私も率直に言わなければなりません。ですから、ある意味におけるバジェットの問題の膨らみをやっていくことが喫緊の課題であると言わなければなりません。御承知のとおり我が国大学あるいは国立研究所の研究機能のより一層の向上なくしては、我が国の今後の発展基盤ひいては十年ないし二十年後の将来を危うくする可能性があると言ってもけだし過言ではないと私は考えているものでございます。  したがいまして、通産省としましては、我が国全体の基礎研究の活性化という観点から大学及び関係省庁も含めた国立研究所全体を視野に入れまして対策を講ずる必要があるのではないかと感じます。文部省、科学技術庁等々関係省庁とも十分に打ち合わせしながら、政府研究開発予算の拡充については、私も非力ではございますが、全力を挙げまして今から取り組んでいくことはやぶさかではないということだけは申し上げておきたいと思います。
  167. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 時間が来たようですから、数字は私もいただいているからもうそれで省略したいと思います。  これを最後にしたいと思いますけれども研究者の人たちが一番自由に使えるお金ということでふやしてほしいと言っているのは、もちろんこの場合国立の研究所の話ですけれども、いわゆる経常研究費なんですね。これがさっきいただいた資料では、昭和五十六年度が百四十四万円、それがもう十年以上たっていると思いますが、今でも百四十六万円で、二万円しかふえておらない。こういうのをもう本当にふやしていただきたい。  それから、私はきのう全通商産業省労働組合筑波支部が発行した「夢とロマン」というパンフレットをいただいたので、ちょっと読んでみました。びっくりしたのですけれども、特にこの中で訴えられているのは、第一は、補助的な人員を定員削減で極端に減らしたために、研究者自身が雑用に追い回されて研究どころではないと言って音を上げているのです。第二に、出張旅費が余りに少ない。例えば電子技術総合研究所では研究者が五百五十人いるのですが、公費で海外の学会に行けた人は昨年度年間わずか二十人というのです。これでは一生に一回しか行けないという勘定になります。だから、大抵の人は自費で海外の学会に行くわけです。岡田安正さんという方の場合は、国際的にも注目される研究を行い、米英各国から共同研究を申し込まれているほどの人なんですが、公費で行けず、貯金をはたいて五十二万円工面し、自費でイギリスまで行ったというのです。同じ学会に来ておった富士通研究所の人は、年一回は会社負担で海外に行ける仕組みになっているといいます。国内出張は二年に一回、二万三千円ずつ予算化されているだけだ。これも身銭を切っているというのです。こういう実態を読んでみて、私も本当にせつなくなったのですね。せめてこの辺をもう少し改善していただきたいということを大臣にもう一度一言申し上げて質問を終わります。
  168. 中尾栄一

    中尾国務大臣 おっしゃるとおりで、それだけのすばらしい、すぐれた人が外国へ一年に一回か、二回も行けないなんていうこと自体がもう情ない状況でございます。そのような国にならないように私も鋭意努力を払い、予算のときにも頑張りますから、よろしくお願いいたします。
  169. 奥田幹生

    奥田委員長 川端達夫君。
  170. 川端達夫

    ○川端委員 大臣、御苦労さまでございます。  日本先進国の中で特に工業技術の発達した国として繁栄をしたということ自体は、通産省の御努力も含めて非常に結構なことだというふうに思っておるのですが、どちらかというと今まで企業中心、そして研究開発中心であっただろう。基礎的な、あるいは先端的な部分は諸外国にお任せして、その部分企業中心として商品化するというふうにかなりお金をつぎ込むということであった部分が対外的にも大分いろいろ御批判もある。そういう技術交流自体がなかなか難しくなってくるという中で、最近特に大きな動きとして、基礎的な、あるいは先端的な技術に非常に力を入れてきておられるということは非常に歓迎すべきことであると思いますし、今回の法改正も一歩前進していこうということでは評価をさせていただきたいと思うのです。  時間も限られておりますので、もう少し根本の問題についてお伺いをしたいのです。  こういうふうに国とか企業がいろいろ研究をしていかれるときに、今も御議論ありましたけれども、やはり大学研究機能というものが非常に重要な位置を占めているのではないかというふうに思うのです。いわゆる産業政策という観点でこういう産業技術開発をしていくというふうに限定いたしましても、大学研究機関の果たすべき役割というのか期待というか、通産の立場からのそういう大学研究に対する期待、あるいは今の状況に大満足であるのか、もう少しこうあってほしいというか、そういうふうなことを含めて御所感をまずお伺いしたいと思うのです。     〔委員長退席、高村委員長代理着席〕
  171. 中尾栄一

    中尾国務大臣 委員にお答えいたします。  私も日本大学研究機関あるいはインスティチュートというのは外国から比べると非常におくれているのじゃないかと思う。例えばブルックリン・インスティチュートとかハーバードのインスティチュートあるいはMIT、そういうところを比べますと、ある意味では予算も非常に優遇されていますし、予算が優遇されているだけにいい人材が集まる、いい人材が集まるからブレーンストーミングができる、ブレーンストーミングができれば非常にいいスタッフができる、政府の方でもそういうものを欲しがっていくから政府にも影響力ができる、そういう中で一体になってやっておりますね。国のビヘービアとインスティチュートと一緒になっている、こういうところに日本と大きな落差があり過ぎる、その点は私も同感でございます。
  172. 川端達夫

    ○川端委員 そういう意味で、これからその落差を埋めていかなければいけないと思うのです。きょうは文部省からも来ていただいておりますので、そういう国全体としての養成、今の御所感で非常に落差があるのではないかという部分に関して、文部省の立場で、高等教育、研究というものに対してどうしていこうとしておられるかも含めまして御所感をひとつお伺いしたいと思います。
  173. 泊龍雄

    ○泊説明員 お答えいたします。  私ども、いわゆる基礎研究の推進あるいは高度の専門的な人材の養成という意味で、特に大学、わけても大学レベルでの体制の整備が喫緊の課題であるというふうに認識をいたしております。現下の行財政事情等のもとではございますけれども、高等教育政策の中での最大の課題であるというふうに認識をいたしております。
  174. 川端達夫

    ○川端委員 ここ数年、特に技術系、理工系大学の教育のあり方、どうも最近大学教育のあり方という議論をいたしますと、仕組みばかり、入試制度がどうだとかいうことに議論が随分行ってしまう。果たしてこれでいいのだろうかなと思います。大学の特に研究機関強化充実され、今大臣おっしゃいましたように落差を埋めていかない と、通産省などでいろいろ仕組みをつくっていかれても、結局のところ、企業経済活動をしているわけですから、現に今でも日本大学に金を出すより前にアメリカの大学にどんどんお金を出す、共同研究をしていこうというふうな実態がもう既に顕著にあらわれているわけです。そういう意味では、結局のところ、また外国研究に頼り日本は金もうけをするということを、受け皿が、研究機能が果たせなかったらまたもとへ戻ってしまうというよりも少しも改善をされないのではないか。大学研究、特に理工系の大学というのは、いわゆる教育機能として人材を教育する、そういう人たちが主として民間の第二次産業、製造業に行き、技術開発をする、支えるという人たちを教育して送り出すという機能と、それからいわゆるベーシックな部分あるいは先端的な部分研究していくということと、両面を兼ね備えていると思うのです。  例えばある調査で、一九九〇年度の主要国立大学工学系大学院博士課程の日本人の充足率、こういう人たちが本当に大学での研究を支えるドクターコースの人たちであり、しかも学生を教育していく中心になる人たちですね。定員に対して、東京大学は充足率五〇%、京都大学一七%、東北大学三二%、大阪大学三〇%、名古屋大学三二%、九州大学二五%、北海道大学三〇%、東京工業大学五〇%、こんな状況なんですね。行く人がいない。そういう状況の中で果たしてこういう先端的な、あるいは基礎的な技術が支えられるのだろうか。  一方、私も大学は工学部を卒業いたしました。民間の製造業に就職をしました。余り役に立たないからこういうことになったのかもしれませんが、私がおりましたときに、同じ専門で四十名同級生がおりました。大学に残った者、民間企業に就職した者、いろいろでしたけれども研究者になった者以外、就職した者は三十数名いたと思いますが、一人を除いて全員製造業に就職をいたしました。一人だけは商社に就職しました。非常に珍しいと言われました。先般母校で恩師とお話をしていましたら、今卒業生の二五%は金融、保険、生保に就職をする。今まで日本がこういう高度の技術開発をなし遂げたのは、やはりそういう人材が製造業に行き、開発に携わる、それと同時に大学がバックアップする研究をしていたという機能が失われつつあるのではないか。先生にどういう理由ですかと言ったら、給料が違うのだと言われたのです。  それで、ちょっと調べてみたのですが、労働組合の連合が各労働組合に、あなたの組合員の給料は幾らですかという調査も含めて調べたのを参考にし、また週刊誌も取り上げましたので見ましたところ、一例として三十五歳時点で、大学の卒業者、業界別の年収比較は、銀行、これ三社ですけれども、年収一千百万円、証券四社平均で一千百十三万円、商社が五社で九百七十五万円、損保が二社で一千五十万円、三十五歳でほぼ一千万円から一千百万円、自動車産業九社平均五百八十一万円、電気産業二十社平均五百六十四万円、化学十七社平均六百五万円、三十五歳でいわゆる製造業、自動車とか電気とかいう、これは大手ですからそれなりの、日本ではビッグビジネス、ビッグカンパニーに勤めている人の平均年収が五百六十万から六百万。そして生保、銀行、商社、証券は大体一千から一千百万。だから行かないですよと先生はおっしゃるわけです。  そういう状況になってきているというときに、いろいろな問題があると思うのですが、今日本のこういう高度な工業技術が発達し、経済が発達した社会を支えている成功の一つは、やはり昭和四十年代半ばぐらいまでのいわゆる技術系の教育のいわば一つ成果ではないかと私は思います。優秀な人材を教育し、企業に投入する、その構図がこれから先崩れるのではないか。支える人がいなくなる。そして研究する人もいなくなる。教える人もいなくなる。こういう部分は文部省だけの問題ではなくて、日本のこれからの――確かに世界といろいろ特許権を融通し合いながら、世界の中でそういう役割を果たしていこうということは非常に大事なことなんですが、その根底となる部分で、もうもとから揺らいでくるのではないかという危惧を非常に持つわけなのです。  そういう意味で、大学研究のあり方云々ということ、まあ給料が高いのをどうしようかというのはダイレクトには非常に難しい問題なのですけれども、通産大臣として、いわゆるこういう日本産業技術を非常に支えていかなければいけない、そういう社会で日本が活力を持つという大前提の部分が土台から揺らぎ始めているということに対してどのような御認識をお持ちなのかということと、教育に関して通産省としては、これは人ごとではなくて相当に思い切った、先ほど言われましたMITであるとかスタンフォードの例から見ると、もう愕然とするような日本レベルということも含めると、これは教育の問題ではなくて日本の問題として、ひとつ先頭に立って相当旗を振っていただかないといけないのではないかというふうに思うのですけれども、その部分の御所感と、こういうことをやりたいということがおありでしたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  175. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私聞いておりまして、一言、一言がすべて全く同感の至りでございまして、委員のお若さでございますとまだその現象は感じられないかもしれませんが、私のころは――私もちょっと大学院に就学させていただいたことがございます。そのころの同期生は、ちょうどみんな今大学の教授になっております。ほとんどが教授になったといってもいいでしょう。しかし、それは教授になりたくてなったわけですね。ところが、そうでないのは、その後ずっと見ておりますると、まさに企業体にみんな行ってしまって残らない、こう言うのですね。それは、私の教えていただいた経済学の先生もそう言っておられました。  だから、そういうことを見ますると、確かにおっしゃられるとおりみんな企業の方が余りにも給料がよ過ぎて、将来のステータスがもうそのまま現存しておる。何だか不安定感のものには行きたくない。特に今の理工学部などは、エリートが非常にぐっと集まってしまって、いいところにみんな行ってしまう。だから、ある意味においては、これこそ必要だというところは非常に給料の不安定性がある、スタビライズされてないということで、どんどん逃げてしまう。これでは国家が成り立ちませんですね。その不安感は私は一様に、一律に感じておるわけでございます。  近年、特に首都圏の主要国立大学におきましては、理工学部の学生の製造業離れが顕著であるという報告があることは、もう否めない事実として認めなければなりません。そこで、製造業は、我が国経済発展において先導的な役割を果たしているとともに、経済社会の進歩の源泉である技術革新の担い手としても、これは重要な役割を果たしていると私は考えるものでございます。したがって、理工学部学生はその製造業において先端技術開発にかかわる等、重要な役割を果たしているわけでございますが、理工科系学生の製造業離れを解決するためには、まず製造業みずからが主体的に賃金や労働時間等の労働条件あるいはまた労働環境あるいは企業内処遇制度の改革などの面で、改革と言いましたが、思い切った改善が行われることが肝要ではないのかなと私は考えるものでございます。  通産省としましても、労働時間の短縮の推進を企業要請をする等、魅力ある職場づくり、この間から俗に言われている三Kというような形でなく、中小企業、大企業を含めまして魅力のある二十一世紀産業なんというのも、これはたとえ母体は小なりといえども魅力のある産業というのはございます。そういうものもキャンペーンなどをさせてもらいながら、職場づくりに向けた取り組みを強化していきたいものだな、このように検討しておりますし、また目下通産省としても、そのような趣旨に対して鋭意努力をしていこうということをこの間も話し合ったばかりでございます。
  176. 川端達夫

    ○川端委員 給料を上げるのはなかなか難しいことでございまして、先ほど比較しましたいわゆる 金融中心の業界というのは、ほとんどが学卒者で労務構成をしている。製造業というのは、最近だんだんシフトしてきましたけれども、今も実態としては、比較的中高齢者には義務教育を終えられた方から分布をしているという中で、その労務構成もそれなりに学歴も、義務教育、高等学校、短大、各種の方がおられるという中でいわゆるポストを構成しているという部分で、例えば学卒をその横並びで今の倍にするというか、全部上げるということですから、果たしてそれが国際競争力としてもつのかということが非常に問題になってくることでありますし、企業内の努力というのはいろいろあると思うのです。  きょうはこういうことの議論は余りできないと私は思いますが、やはり何か日本人が今物事をはかる物差しとして唯一持っているのはお金だけ、そういうことの風潮の方が――やはり社会に貢献するとかお金にかえられない価値観というものを随分失ってしまった。すぐ給料が違うからそういうところへ行きたがる。自分が何かやりたいからではなくて、お金が多いから、三Kでないからというふうな価値観が蔓延する日本の社会というものに非常に大きな問題があるということで、これは一朝一夕の問題ではないですが、みんながそれを意識して変えていかなければいけない問題ではないかなと思うのですが、とりわけそういう問題を別にしますと、やはり大学の教育というものに対する、要するに国のお金の使い方というのですかね、先ほど小沢委員も御質問されていましたのでもう繰り返しをいたしませんが、余りにも貧し過ぎるのではないかな。文部省も一生懸命御努力をされていると思うのですが、そういう予算の編成の際にはひとつ通産大臣としても、通産行政というか日本の国自体の根幹にかかわる部分で、そういうところに予算がしっかり回るように御努力をいただきたいとお願いを申し上げておきたいというふうに思います。
  177. 中尾栄一

    中尾国務大臣 これは委員、非常に踏み込んだ立派な御質問をいただきまして、私もありがたいことだと思っておるのです。それはなぜかといいますと、私も先ほどちょうど外交の問題を渡部委員にお答えいたしましたから、付言して申し上げますが、私がかつて外交機能強化委員委員長のときに、初代の委員長でございましたから、各国を五十六カ国歩きました。大使館を全部調べて歩きました。インドネシアの大使がいみじくも言いましたが、我々一番惨めなのは、私は大使でございますから一等席に乗ります、しかし、この国がと、ある国を指して、この日本が応援をしている国の方々の審議官、参事官クラスでも一等席に乗ってくるのです、ところが、我々日本の国の外交官は一等書記官でも一等クラスでなくてエコノミーに乗っておりてきて、みんな我々、迎えるために並んでおったらば、一等席からおりずにエコノミーからおりてきたので、私ども本当に恥ずかしい思いをしましたと日本の大使が言っておったことがございました。  何もそのことが引例になるわけではございません。しかし、事ほどさように一つの面目もありましょう、人間としての価値観もありましょう、そういう点においては、まず金のことも大事な問題ではございますけれども委員指摘のように人間おのずから金だけで生きれる動物ではない。価値観というものが最も有意的なものでございましょう。そういう点では、官吏はほとんどそんなに高い給料とは思いません、ほかの産業構造から見たら。しかし、彼らは国家観を持っております。国家のために従事しているのだ、おれたちのやっていることがすぐに国家に反映するのだ、この大きな燃えるような意識のもとに、彼らは甘んじてこのように一生懸命働くのだと私は思います。  同様に、もう大学のとき、卒業するときから退職金まで研究して、銀行とかあるいは金融とか損保とか、そういうところばかりねらっているというのもいます。それはその人間の価値観だからしょうがないといえばそれまでですが、もう少しその点において、私は何も愛国心と言っているわけではありません。しかし、人間の、すべからく自分よりも大きなもののために奉仕する、自分よりも偉大なもののために、オールマイティーのもののために少しは献身してみたいのだという人たちにはもっともっと大きな考慮を持った国家的政策というものが絶対に必要だということを特に特に感じておるものでございます。私はその点においては委員と同感でございますから。
  178. 川端達夫

    ○川端委員 ありがとうございました。  三Kという言葉がよく言われるのですけれども、何かまるでもう三Kは嫌だというのが普遍的な価値観であるようなこの世の中、そして日本世界に向かって三K国家で、いわゆるそういうこともしないという、国自体もそういうことをやっているし、企業も含めてみんながそう思っているということが本当にゆゆしきことではないかなというふうに思います。  あといろいろな細かな法案のことも聞こうと思っていたのですが、今さら余り細かいことを聞いてもあれでございますので、大臣のお気持ちお聞かせいただいたので終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
  179. 高村正彦

    ○高村委員長代理 江田五月君。
  180. 江田五月

    ○江田委員 今回の改正は、国際社会とのハーモナイゼーションを図るためということで、外国企業が参加した場合にこの委託研究成果取り扱いの変更をしよう、特許権等の帰属の変更とそれから特許実施の対価についてのルールの変更をしようということになっておるわけですが、外国企業が参加した場合にこういうルールをつくって、そのルールについてはそこへ参加する他の日本企業についても適用される、しかし外国企業が参加しない場合には別のルールになる、こうなりますと、どうも外国企業が参加する、しないでルールが異なるということになるのは、これはそこへ参加する日本企業としては、中に一つでも外国企業が入っていると入っていないとでルールが全然違うというので、何か妙な感じになるという気がするのです。  この国際化ということ、これは日本のルールと外国のルールと調和をとれたものにしようということなんですから、外国企業が入っていようが入っていまいがやはり同じルールでなかったら、国際化という意味の何か差別化ということになってしまっておかしいじゃないかという、そんな感じもするのですけれども、これは今回はここまでで、これから先はという課題かと思いますが、まずその点について伺っておきたいと思います。     〔高村委員長代理退席、委員長着席〕
  181. 杉浦賢

    杉浦(賢)政府委員 産業界からも、ナショナルプロジェクトから発生する特許権の帰属及び実施権などの面におきまして、民間企業に対してインセンティブを与えるべき、こういう要望がかねてございました。また、いろいろな答申などでもそういうことが指摘されておりました。それから、この今回一部改正を御審議いただいております産業技術法の制定に当たりましても、昭和六十三年でございますけれども、御審議の場においても同様の指摘をちょうだいしております。  今回の法改正は、外国企業が参加するという国際共同研究の場に限り、ナショナルプロジェクトにかかわる特許権改善を行おうとするものでありますけれども、これに限定しております理由は、我が国研究開発を通じた国際貢献、すなわち国際共同研究を円滑に進めていきたいということのための障害を除去するということに、その必要性の高まりがございまして、このような改正を行っておるわけでございまして、制度全体の改善措置の第一歩と考えておるわけでございます。  さらに、昨今のナショナルプロジェクトの現状を考えてみますと、テーマが大変基礎的、先導的なものになってきております。非常に基礎的になっておりますので、産業界の方々がこれに参加するときの人材を引き出し、投入してもらうためにはそのインセンティブを付与することが重要になっているかと思っております。したがいまして、国内企業のみのプロジェクトにかかわる特許権取り扱いにいたしましても、これからは十分検討をしていきたいと考えております。
  182. 江田五月

    ○江田委員 今回は第一歩である、今後十分検討していきたい、そういうお答えをいただいたと確認をしておきたいと思います。国際化という場合に、その国内のルールとそれから国際社会のルールが違うことが問題なんで、国際社会のものが入ってきたときにはこういうルール、入ってこないときは別のルールというのはやはりちょっとおかしいところがありますので、これは十分これから先、努力をしていただきたいと思います。  ところで、この特許権等の帰属は、五〇%以上国またはNEDO、五〇%まで受託者等に帰属、こういうふうに改められる、そしてその受託者等による特許実施の対価無償または廉価だと言われるわけですが、廉価というのは多少でも取るということなんでしょうが、これはどういうことになるのですか。そういうことがしょっちゅう起きるのか、起きる場合にはどんな価格の決め方をするのか。
  183. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 国際共同研究を行った場合に、その特許を取るもとになります発明発見に貢献のあった個人、それに属する企業、これにつきましては二分の一までの共有権を認められるということでございます。先生指摘廉価または無償と申しますのは、そういう企業が自分の持ち分のほかに、国の持っている持ち分についてまで実施をしてほしい、こういう場合にこれについては無償または廉価でこれを与えます、今後取り扱いの基準は考えますけれども、基本的考え方は、その企業の属する国の扱い方、その企業が例えばフランスでございましたらフランスの国でどうなっているかという相互主義の問題、もう一つは実際の発明発見がどのぐらい寄与したか、寄与度の問題でございますが、その寄与度に応じて考えたいということでございます。
  184. 江田五月

    ○江田委員 寄与度に応じてと、それからその国でどうなっているかということだということですが、現実には、無償または廉価とあれば大体無償でということになるのだろうと思いますが、無償ということになれば、受託者等による特許実施は、無償なんですから、許諾は当然するということにまずはなるわけでしょうね。無償になっている制度のもとで許諾をしないというのは普通余り考えられない。だけれども、許諾というものは、許諾するかしないかという権利は留保されておるわけなんでしょうが、そうするといろいろ、実施する場合の通知をしてもらうとか、実施状況について報告をしてもらうとか、そういうことはやはりないと、そうでないと第三者によって無断で実施をされるような状況が起きた場合にでもよくわからないことになりますね。そういう通知とか報告とかといったことは一体きちんと行われるような制度になるのか、それはどういうふうにしてそういう制度ができるのかを御説明ください。
  185. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 今申し上げましたとおり、実際に無償ないしは廉価ということになりました場合には、その許諾の権限というのは通産大臣がそれを判定いたすわけでございますが、その際に、実際のやり方につきましては、契約をどうせ結ぶわけでございますから、その契約の中でそのことを明記するということになろうと思います。
  186. 江田五月

    ○江田委員 委託共同研究に着手する前の基本的な契約の中でそういうことを全部決めておかれるということになるのですか。
  187. 山本幸助

    山本(幸)政府委員 そのとおりでございます。
  188. 江田五月

    ○江田委員 終わります。
  189. 奥田幹生

    奥田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  190. 奥田幹生

    奥田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  産業技術に関する研究開発体制整備に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  191. 奥田幹生

    奥田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 奥田幹生

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  193. 奥田幹生

    奥田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十四分散会