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1991-04-12 第120回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十二日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 浜田卓二郎君    理事 粟屋 敏信君 理事 石破  茂君    理事 加藤 卓二君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 池端 清一君    理事 永井 孝信君 理事 遠藤 和良君       岩村卯一郎君    小沢 辰男君       岡田 克也君    片岡 武司君       古賀  誠君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    住  博司君       野田  毅君    野呂田芳成君       畑 英次郎君    平田辰一郎君       三原 朝彦君    山口 俊一君       網岡  雄君    伊東 秀子君       岩田 順介君    岡崎 宏美君       沖田 正人君    川俣健二郎君       小松 定男君    五島 正規君       外口 玉子君    土肥 隆一君       大野由利子君    草川 昭三君       児玉 健次君    菅原喜重郎君       柳田  稔君    菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 下条進一郎君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房審         議官      山口 剛彦君         厚生大臣官房審         議官      市川 和孝君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省援護局長 岸本 正裕君  委員外出席者         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       東郷 和彦君         大蔵省主計局主         計官      渡辺 裕泰君         消防庁救急救助         課長      飯田志農夫君         社会労働委員会         調査室長    高峯 一世君     ───────────── 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   岩屋  毅君     岩村卯一郎君   坂井 隆憲君     塩谷  立君   石田 祝稔君     草川 昭三君   柳田  稔君     菅原喜重郎君 同日  辞任         補欠選任   岩村卯一郎君     岩屋  毅君   塩谷  立君     坂井 隆憲君   草川 昭三君     石田 祝稔君   菅原喜重郎君     柳田  稔君     ───────────── 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案内閣提出第六九号)  救急救命士法案内閣提出第七三号)(参議院送付)  老人保健法等の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)      ────◇─────
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案及び内閣提出参議院送付救急救命士法案の両案を議題といたします。  これより、両案について質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網岡雄君。
  3. 網岡雄

    網岡委員 提案のありました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案審議に関連いたしまして若干質問をいたしたいと思います。  本案の改正内容につきましては、まだまだ改正の額が不十分だという気がいたしますけれども、私ども社会党といたしましては、この法案を一応現時点では妥当なものとして賛成するということでありますので、この法案審議に当たって若干問題になっております以下数点にわたりまして質問させていただきたいと思います。  近くソ連ゴルバチョフ大統領訪日をされるということに日程がなっておるわけでございますが、その訪日に当たりまして、シベリア抑留者家族にとりましては懸案の事項ともなっていると言われているわけでございますが、死亡者名簿を持参する、こういうふうに報道されているのでございますが、この死亡者名簿訪日されるゴルバチョフ大統領が持参されるのかどうか、この問題について、今政府側承知をされている事情について御答弁をいただきたいと思います。
  4. 東郷和彦

    東郷説明員 政府といたしましては、シベリア抑留に関する死亡者名簿引き渡し埋葬地調査墓参地拡大、こういう問題につきましては、人道的見地からぜひとも解決されねばならないという考えに立ちまして、これまで累次の日ソ間の大臣レベル事務次官レベル協議において一貫してソ連側に提起してきたところでございます。ソ連政府の方でも、このような私どもの働きかけに応じまして、特に昨年来、具体的には昨年の八月に、日本側からこの問題を解決するために、解決方向をなすために政府間で協定をつくろうではないかという提案をいたしたことに対しまして、前向きな対応が寄せられております。  ゴルバチョフ大統領来日の際には、シベリア抑留にかかわります死亡者名簿埋葬地資料引き渡し遺骨返還等処理の枠組みを定めるところの日ソ間の協定をつくりたいということで鋭意作業してまいりまして、ほぼその態勢が整ってきたところでございます。この協定の締結とあわせまして、ソ連側の方からは、シベリア抑留者名簿を作成して日本側の方に渡したいという意向が、正式な政府間の通報ということではございませんけれども、非公式な形で寄せられてきておりまして、ゴルバチョフ大統領来日の際には、いずれかの時点でこの名簿引き渡しもあり得ると私どもも心得ているところでございます。
  5. 網岡雄

    網岡委員 それでは二つ、この際確認をする意味で御質問申し上げます。  一つは、ゴルバチョフ大統領訪日されるときに同時に名簿提出されるのか、それ以外とすれば一体どういう経過をたどると予想されるのか、その辺。  それから二つ目は、民間団体であります全国抑留者補償協議会会長斎藤六郎氏の団体があるわけでございますが、この団体に対しても、ソ連政府側死亡者名簿提出民間同士協議といいますか話し合いの中で約束されたやに新聞でも報道されているわけでございます。それで、その当面の窓口といいますか責任者とも言われるキリチェンコ氏が次のように言明されていると報道されているわけです。名簿は今モスクワで作成中で ある、どんな圧力があっても日本政府のほかに全抑協にも出す、今日までこの問題で努力してきた全抑協の功績は無視できない、こういうふうに言明されておりまして、名簿提出の場所は、一つは今申された協定に基づいて政府、もう一つは今までこの問題処理について積極的な努力があってきた民間団体全抑協にも出す、こういうふうに向こう側責任者が言っているわけでございます。このことに対して、聞くところによりますと、民間団体の交渉は外して政府間でやっていただきたいというようなことをソ連側にも言われているやにうわさをされているわけでございますが、もし、名簿提出するという主体的な側に立っているソ連二つ方向二つの側に出す、今言いましたようなところに出すということをした場合には、日本政府としてはソ連に対してそれを妨害するといいますか、民間団体への提出をとめるような行動をとることはないかどうか、この際確認をいたします。
  6. 東郷和彦

    東郷説明員 まず第一の御質問でございますけれども、ただいま申し上げましたようにゴルバチョフ大統領来日の際に名簿提出したいという意向を非公式に聞いております。したがって、先ほど申し上げましたように、そのようになることを期待しております。  それから、第二の御質問でございますけれども、冒頭に申し上げましたように、私どもはこの問題は日本政府として責任を持って対処しなければいけない問題だとずっと考えてまいりまして、ソ連側に対しても日本政府としてこの名簿及びシベリアにおける死亡者に関連する諸問題について責任を持って対処できるような処理をしてほしいということを累次申し入れてまいったわけでございまして、今回ソ連側の方からも、ソ連政府として責任を持って日本政府に対して対応するという回答が寄せられているわけでございます。したがって、そのような政府間における責任ある処理として問題が解決されるということを期待しておるわけでございます。ソ連側内部においてソ連政府及び民間との関係で、ソ連民間との関係でどのように処理されるかについては、私ども情報を得ておりません。
  7. 網岡雄

    網岡委員 くどいようですが、ソ連側から日本全抑協という民間団体に対して死亡者名簿提出をされることになったと仮定した場合に、政府側としてはそれに対して干渉されないかどうか、するかしないか、その辺を明確にもう一度。
  8. 東郷和彦

    東郷説明員 この問題は、長い経緯を踏まえまして政府としてソ連政府との間で責任を持った処理をいたしたいということを念じてやってまいりまして、今まさに最後段階に来ているところでございます。  一義的には、政府間で解決されるようにソ連側とやっていきたいというふうに考えておりまして、それ以上、万一それと違った場合にどういうことになるかということについては、その段階考えさせていただきたいと思います。
  9. 網岡雄

    網岡委員 基本的には政府間の行政行為といいますか、それは当然あっていいわけですが、一番肝心なことは、これは民間団体相互行為でございますから、したがって、それを日本政府がとやかく言う代物ではないと思うのでございますが、その基本的な、何といいますか一つ考え方についてお答えください。
  10. 東郷和彦

    東郷説明員 一般的な考え方として申し上げるのであれば、これは申し上げるまでもなく、先ほど申し上げましたように政府として責任を持って処理しなければいけない問題とは考えてまいりましたが、同時に日本民間の各般の方々の建設的な御協力、御努力というものは政府としても心から多としているところでございます。
  11. 網岡雄

    網岡委員 次へ進みます。  それでは第二の問題に移りますが、最近の報道によりますと、死亡者名簿の中に従来厚生省が公表されておみえになりました五万五千人を若干上回る、ソ連側からの話によりますと六万四千人とも言われておるわけでございますが、その真偽はゴルバチョフさんが持っておみえになったときにはっきりするわけでございますが、こういう一つの違いがあるわけでございますけれども、その点について厚生省はどのような受けとめ方をされておみえになりますか。
  12. 岸本正裕

    岸本政府委員 お答え申し上げます。  報道されております六万四千人の根拠につきましては、厚生省といたしましては承知をしていないわけでございます。厚生省が把握しております数字、今先生からおっしゃいましたように五万五千人ということでございますが、これは抑留をされて帰ってこられた方々からいろいろと厚生省がお伺いをして情報を集めて、また一方、留守家族からのいろいろな調査依頼等の届け出もあったわけでございまして、そういうものをもとにいたしまして推計をした数字であるわけでございます。食い違いにつきましては今のところ何とも申し上げられませんけれども、もし名簿を受け取るようなことになれば照合をして究明してみたいと思っております。
  13. 網岡雄

    網岡委員 それで次に移りますが、シベリア抑留されていた民間人については今後死亡者名簿などが出てまいった場合に補償措置が一体どうとられるか。これは民間人でありましても例えば軍属だった場合は法律上やられていますが、軍隊に頼まれてそして手伝いをしていた、それが何らかの形で一緒に抑留をされていったという経緯ども実際にはあると思うのでございます。しかし、日本の側から見ればそれは軍人軍属ではなくて一般民間人という場合もあるわけでございますが、しかし、御案内の極寒の中でああいう苦しい抑留をされたわけでございますけれども、そういう人たちに対して補償措置というものは一体どういうことをされようとするか、政府考え方を聞かせてください。
  14. 岸本正裕

    岸本政府委員 シベリア抑留中に死亡された軍人軍属以外の方々につきましては、援護法では第二条第三項第五号に掲げております特別未帰還者といたしましてその遺族遺族給与金等支給している、援護法の適用をしているというところでございます。
  15. 網岡雄

    網岡委員 これは名簿が出てくれば照合する過程の中で明らかになるわけでございますが、ぜひひとつ補償措置については前向きにされるように要望をしたいと思います。  それから次に、第四点ですが、モンゴル関係死亡者名簿が伝達されたというふうに聞きますが、その内容は一体どんなものかお聞かせをいただけませんか。
  16. 岸本正裕

    岸本政府委員 モンゴルでの日本人の抑留死亡者を十六カ所の墓地に埋葬されているということでございます。墓地ごとに大きな規模から小さな規模までいろいろございますけれども、全体で千五百九十七名の死亡者につきましてその氏名死亡年月日が記載されている名簿を受け取ったところでございます。
  17. 網岡雄

    網岡委員 それでは、このモンゴルの場合には千五百九十七名の死亡者名簿提出をされたわけでございますが、そのモンゴルとそれからゴルバチョフ大統領が持っておみえになると言われる死亡者名簿について、その遺族にはどのような措置がとられていくのでございましょうか。
  18. 岸本正裕

    岸本政府委員 まず名簿を受け取りまして行わなければいけないのは翻訳作業でございまして、翻訳を行いました上で当方で保管をいたしております資料と照合いたしまして死亡者本人特定をするという作業があるわけでございます。この特定ができたケースにつきましては、都道府県を通じましてその記録内容を漏れなく御遺族にお伝えをするというふうに考えております。  なお、モンゴル死亡者名簿につきましては、既に今翻訳を終了した段階でございます。
  19. 網岡雄

    網岡委員 次の質問ですが、特にシベリア抑留者の問題でございますけれども提出をされて、さっき言われたように翻訳をし特定をするという作業が出てまいりました場合に、従来の先ほど御答弁をいただいた五万五千人と言われる方々以外に新たに死亡者名簿として出てきたというような事態が出ました場合には、この人たちに対するあ るいはその家族に対する補償措置はどうとられるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  20. 岸本正裕

    岸本政府委員 シベリア抑留中に死亡した方々につきましては、既に恩給法とか援護法等によりまして従来から遺族年金等支給をしているところでございます。これらの制度は十分周知をされているというふうに考えておりまして、御指摘名簿によりまして新たに相当数対象者が判明するということは考えていないわけでございます。ただ、仮に御指摘のようなものが確認をされましてその遺族からの申請がございますれば、他の死亡者の場合と同様の措置をとるというふうに考えております。
  21. 網岡雄

    網岡委員 次に、今回の大統領訪日をきっかけといたしまして、名簿提出されたと同時に、いわゆる墓地が従来二十六カ所ということになっているわけでございますが、それはやはり新たに出てくる可能性も十分あるわけでございますし、遺骨収集の問題なども起きてくると思うのでございます。そういう新たな問題については、これはもう当然のことですけれども政府人道的な立場に立って積極的にやらなければいかぬと思うのでございますが、その措置について政府としては一体どういうお考えをお持ちになっているのか明らかにしていただきたい。
  22. 岸本正裕

    岸本政府委員 先生承知のように、シベリア抑留中の死亡者遺骨収集とか墓参につきましては御遺族要望も強いものがございます。私ども従来からソ連政府に対しまして遺骨収集墓参の実現について強く要請しているところでございます。ただ、現在のところ通報のあったのは二十六墓地にすぎません。これらの墓地に対しまして政府としての墓参を行っているところでございます。今回のゴルバチョフ大統領訪日時に本問題についての合意が得られれば、その合意に基づいて関係遺族方々心情を踏まえつつ取り組んでまいりたいと考えております。
  23. 網岡雄

    網岡委員 それでは大臣、今まで四つばかりお聞きしたわけですが、それぞれ関係援護局長から御答弁をいただいたわけでございますが、この際、新たに出てくる問題も含めてシベリア抑留問題について厚生省として取り組んでいかれるに当たって、ひとつ厚生大臣の所信と決意というものをお聞かせいただきたいと思います。
  24. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいま委員からの御質問に対しまして関係局長から御答弁申し上げましたように、本件は、本当に問題を突き詰めてまいれば、御本人のみならずその御遺族も本当にお気の毒なことでございまして、心の痛む問題でございます。したがいまして、シベリア抑留中の死亡者の問題につきましては人道上の立場から早期に問題を解決すべきである、このように考えておる次第でございます。  今回、シベリア抑留中の死亡者名簿引き渡し及び遺骨収集墓参等につきまして問題が、さらに名簿が新たに出るということで事態が一歩前進することを期待しておるわけでございますが、現在までは日ソ両国間において大きなわだかまりとなっていた問題でございまして、我が方といたしましては人道上の見地から御遺族心情を思い、早期解決すべき問題と認識しておるわけでございます。これまで外交経路を通じまして本問題の解決に向けましてソ連政府にしばしば申し入れを行ってきたところでございますが、先ほど来お話に出ておりますように、今回のゴルバチョフ大統領訪日を機にこの問題の解決に向けて大きな前進あることを期待しておるところでございまして、関係遺族心情を十分踏まえて真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  25. 網岡雄

    網岡委員 それでは次の質問に移りますが、シベリア裁判というものが行われておるわけでございますが、内容は、抑留中における不当強制労働に対する労働対価を要求するという形で、日ソ共同宣言ソ連側補償権についてはこれは放棄をされている関係もあって、結局ジュネーブ協定の趣旨にもなるわけでございますけれども日本政府に対して強制労働対価に伴う補償を行えということの裁判が行われておるわけでございますが、それに重要なかかわりを持ってくると言われている労働証明書発行について御質問申し上げたいと思うわけでございます。  これは全国抑留者補償協議会、俗に全抑協と言われておりますが、そことソ連側ソ日相互理解協議会キリチェンコ氏などと民間団体でずっと話し合いが行われてまいりまして、この労働証明書発行については一応窓口団体といたしまして日ソ民間団体旗上げをする、こういうことになりまして、名称国際相互理解協議会、こういう名称でいこう、そして日本側からは日本赤十字、日弁連、全抑協などが日本側民間団体としては入る。そしてソ連側といたしましては全ソ法律家協会それからソ連科学アカデミーソ連赤十字などの団体ソ連側はつくる。その相互の間で国際相互理解協議会というものをつくって、そこが労働証明書発行窓口になる。こういうことで作業を進めておられるように聞くわけでございますが、この作業が当初三月二十五日を目標にして進められておるわけでございますが、こういう民間側の動きが実際に今あるわけでございますけれども、これに対して日本の、はっきり言って厚生省がこの民間団体が自発的にやっていくこの行為について何らかの妨害あるいはこれに対する干渉をやるようなことはないと思いますけれども、その点について厚生省は一体どういう態度をとるか、この際明らかにしていただきたい。
  26. 岸本正裕

    岸本政府委員 厚生省所管をいたしております援護法は、戦争によりまして、戦争公務によって死亡された方、また戦争公務によって傷害を受けられた方、こういう方々対象にして援護措置を講じているわけでございます。シベリア抑留経験者強制労働をさせられて日本にお帰りになってきている、そういう方々に対しますその労働対価、こういう問題につきましては、当方といたしまして、厚生省といたしましては所管外の問題であるというふうに考えておりまして、したがいまして、妨害をするとかそういうことは考えておりません、立場にはございません。
  27. 網岡雄

    網岡委員 むしろ妨害をするだけではなくて、私は、この際厚生省側態度も一遍これから言うことについてお聞きしたいと思うのでございますが、これはこれからあってはいけないことでございますが、やはりこれは国際的に見れば全世界の注視の的だと思うのですよ、こういう問題は。だから、いわゆる捕虜として抑留をされている場合の労働証明書発行というものは、それを強制した国が労働証明書発行するということはジュネーブ条約の規定からいってもこれは当然のことでございますし、東南アジア地方における日本軍抑留者に対してはアメリカやイギリスは証明書発行したという事実も現にありますし、その場合は厚生省はその証明書に基づいて労働賃金を払われているということになっているようでございますが、この窓口として考えられている日ソ相互理解協議会というものが労働証明書として発行しようとしておりますものは、ソ連政府である内務省が抑留者氏名本籍地労働の期間それから未払いの賃金額というものもきちっと明記をして労働証明書発行する、こういうことについても民間同士話し合いが進められて、大体国際的にいえば労働証明書というものはそういうものだということになっているわけでございますが、そういう民間団体労働証明書発行について一定の方向に進みつつあるわけでございますが、これを妨害をするとか介入するというだけにとどまらず、今後の問題として、戦争に対する被害、戦争に対する問題を究明していく立場から、政府としても、この労働証明書発行についての民間機関の業務について一日も早く設立をされるような日本政府側協力というものをやられるべきだと思うのでございますが、その辺はどうでしょうか。
  28. 岸本正裕

    岸本政府委員 ただいま私が御説明を申し上げましたように、厚生省所管の外にある問題であるということでございます。また、国際条約等解釈等の絡む問題でございまして、私から責任あ る答弁を申し上げられる立場にないということしか申し上げられないわけでございます。よろしく御理解いただきたいと思います。
  29. 網岡雄

    網岡委員 これは後でまた別の機会を設けてやりたいと思いますが、少なくとも介入はしないということを御答弁なさったですね。なさっておりましたね。そのことだけはしかと答弁として受けとめておりますから、今後そういう事実がないように私は監視をしてまいりますから、厚生省としてもきちっと守っていただきたいということを要望しておきます。  最後でございますが、この法案に関連をいたしまして一点だけ質問をいたします。  空襲によって傷ついたり死亡したりしている日本民間人たちがたくさんあるわけでございますね。今団体では、そういうことを援護していく団体として全国戦災傷害者連絡会という、杉山千佐子さんが会長で二十年近くずっと運動を続けているわけでございます。今までの政府側答弁などを聞いてきますと、一つは戦場でない、二つ目には国との雇用関係がなかったということで、国としては何ら補償するということは考えていない、こういうことで終始をしてきているわけでございますが、国際的に私どもが調べてまいりますと、例えば西ドイツは、軍事上の任務に従事した者はもちろん、準軍事上の任務に従事した者、これは軍属というような種類のものだと思いますが、三番目では、直接の戦争影響による傷害を受けた者、これは具体的に言えば空襲とかいったものによって傷ついた人、死亡した人ということになると思うのでございますが、そういうところまで一般民間戦災者に援護の範囲を広げているわけでございます。  しかも西ドイツの場合には、傷害の度合い、内容、そのことで補償を決めていく、軍人であるとか民間人であるというようなことの差別がない、傷害の程度によって補償していく、援護をしていく、こういうことになっているわけでございますが、こういう形で西ドイツもやられている。それだけじゃなしに、フランスもイギリスもやっている。こういう状況でございますが、ぜひひとつ、これは従来のそういう考え方ではなくて、諸外国でも現にやっているわけでございますから、第二次世界大戦が開戦をいたしましてことしはちょうど五十周年と言われておるわけでございますが、半世紀たった今日、戦争を再び起こさない、こういう誓いを立てる意味におきましても、従来の軍人軍属というものだけではなくて、一般民間傷害者に対してもドイツやイギリスやフランスと同じように国がそういう援護の手を差し伸べる法律をつくって援護する、こういうような考え方政府としてはお持ちにならないのかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思いますし、最後に、厚生大臣として、この問題について今まで何の援護もなしにずっと放置されている民間戦争の被害者、こういう人たちに対する救済というものについて、厚生大臣としての考え方をお聞かせいただきたい。
  30. 下条進一郎

    下条国務大臣 戦争の災害を受けられた方、これはもう場所いかんを問わずまことにお気の毒だと思います。さきの大戦は我が国にとって未曾有の事態であって、すべての国民が、程度の差こそあれ、何らかの犠牲を余儀なくされたところでありまして、このような戦争損害につきまして政府責任を持ってそのすべてを補償することは到底不可能なことでございまして、基本的には国民一人一人がそれぞれの立場で受けとめていただかなければならない、このような考え方でございます。厚生省といたしましては、戦傷病者戦没者遺族に対する援護、遺骨収集等の戦没者の慰霊事業、あるいは中国残留孤児等を初めとする引揚者の援護を担当しておりまして、御指摘一般戦災者に対しては、今後とも社会保障の充実強化を図っていく中でその福祉の向上に努めて処理をしてまいりたい、このように考えております。
  31. 網岡雄

    網岡委員 もう時間がたっていますので簡潔にしておきますが、今の御答弁は今までずっと続いている答弁なんですね。ですから、これは大臣一般社会保障の範囲内でということは、戦争をやってきた国の責任としては余りにもなさ過ぎますよ。世界でどこもやってないなら問題は別でございますが、現にドイツやイギリスやフランスはもうやっているわけでございますから、これは戦争放棄をうたった日本の憲法からいいまして、外国でやっているものを一つの模範としながら、諸外国の例をとりながら、将来日本として、戦争放棄をした国としてふさわしい法律をぜひひとつ制定をしてもらえるように私は要望いたしまして、本質問を終わります。
  32. 浜田卓二郎

    浜田委員長 外口玉子君。
  33. 外口玉子

    外口委員 まず、本法案の必要性について、政府からは、救急医療体制については受け入れ側の医療機関の体制はおおむね整ってきているが、搬送途上の医療の充実が大きな課題であるとの説明がなされております。私は、長く病院や保健所において直接に患者の苦痛に向き合ってきた者として、その苦痛を取り除きたい、そう願いながらあらん限りの知恵を振り絞って対処しようとする医療現場の重みというものを強く感じさせられているものでございます。したがって、本法案につきましても、この医療の現場性を重んじる立場から幾つかの問題点を明らかにし、質問させていただきたいと思います。  命を救わなければならないというその瞬間に居合わせ、一刻を争う時間との闘いの中で判断し、具体的な行為を選び取っていく医療者の資質とその責任についてまず考えざるを得ません。病院であれば医師、看護婦を中心とするチームが総力を挙げてかかわり、一定の技術水準が保障される中で手を尽くして救命に当たることができます。そしてお互いに持てる観察力、判断力を出し合いながらそれぞれの権限の発揮と責任のとり方を訓練し、経験を積み重ねやすいシステムが病院ではつくられております。しかし、本法案の救急救命士は、病院とは異なった場において予想外の事態の中へ、時には想像を絶するような事故現場に文字どおり飛び込んでいかざるを得ない状況に置かれるわけです。そこでは、その人々の善意と熱意とは裏腹に、せっかく技術が生かされにくい場面が多く起こるでしょうし、そうした中で人の命を救うというせっぱ詰まった役割を担わされていくことに対して大変に危惧の念を抱かざるを得ません。また、翻ってそのような状況下で働く人たちのサービスを受ける側の立場からいたしましても、この法案によって救急救命士の献身的な働きが生かされるような仕組みが充実されなければ安心して託することができないはずでございます。  以上、多少長目に立場性を話させていただきましたが、それは、このような皆様方の命にかかわるような大事な法案の討議時間が余りにも少な過ぎると感じていることもありまして、あらかじめ本法案を検討する基本的な視点を明らかにしておくことで、大変に限られた時間の中での質問を有効にさせていただきたいと願ったからにほかなりません。よろしくお願いいたします。  では、質問をさせていただきます。  まず第一に確認したい点といたしまして、本法案が意図する救急救命処置とはどの範囲をもって言うのかについてお伺いいたします。つまり、本法案で言う救急救命処置の具体的内容と実施範囲について明らかにしていただきたいと思います。
  34. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  救急救命処置につきましては、重度の傷病者に対しまして医療機関に搬送されるまでの間に行われる処置でございまして、重度の傷病者の症状の著しい悪化を防止し、または生命の危険を回避させるために緊急に必要なものとして行われるものでございます。具体的には、心肺機能停止状態にある患者さんに対しまして医師の指示のもとにラリンゲアル・マスク等によります気道の確保、除細動、静脈路の確保のための輸液といった処置を行うものでございます。これ以外に、通常救急隊員の行っておりますいろいろな処置、手当て等につきましては当然行われることになるわけでございます。
  35. 外口玉子

    外口委員 ただいまは行う技術についての限定 を説明されたと思いますが、このような処置を行う対象はどのような状態にある人を想定していらっしゃるでしょうか。救急救命士の機能が発動される状況のイメージを少し明らかにしていただきたいと思います。
  36. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ただいま申し上げましたように、気道の確保、除細動、輸液といったような高度の処置につきましては心肺機能の停止状態の患者さんが対象になると考えております。こういういわゆる心肺機能停止状態の患者さんは、頭部の外傷だとか脳卒中、心臓疾患等が原因でこのような心肺機能の停止状態になるというぐあいに思うわけでございますので、そういう状態の患者さんに対して、人に応じ医師の指示のもとにいわゆる三点セットを行うという考え方をいたしております。
  37. 外口玉子

    外口委員 そのような状況下にある患者さんに救急救命処置が実施された場合、その結果に対する責任の所在は大変に重大な問題と考えますので、その責任の所在について明らかにしていただきたいと思います。  まず、救急救命処置の実施者の責任はどのようになっているのでしょうか。お願いいたします。
  38. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 申し上げましたように、救急救命士は医師の指示のもとで救急救命処置を行うことというぐあいにされております。でございますから、先生お尋ねございましたように、救急救命士は必ず医師との連絡をとりまして医師の指示を受けて、その医師の指示を受ける場合には当然患者さんの状態等につきまして的確に医師に連絡し、医師がその連絡を受けて指示をした上で行うという形になるかと思います。  一般的には、仮に事故が起きた場合の責任主体の問題でございますけれども、それは患者さんの傷病の程度なり、医師の指示の内容、あるいは救急救命士の行っておる処置の内容、事故の状況等によってさまざま異なってくるというぐあいに思うわけでございます。しかし、医師が患者の状況を踏まえまして救急救命士に対して行った指示の内容に明らかな過失がある場合には医師の責任が問われる、それから救急救命士が医師の指示に反して処置を行いまして医療事故を起こした場合等、明らかに救急救命士に過失があると認められる場合におきましては救急救命士の責任が問われるというぐあいに考えるわけでございまして、基本的には医師の責任、ケースによって救急救命士の責任というぐあいに個々の状況に応じて、画然と分けるわけにはいきませんけれども、それぞれのケース、ケースによりまして、状況によりましてそれぞれの責任があるというぐあいに考えているところでございます。
  39. 外口玉子

    外口委員 ただいま大変重要な点をお聞かせいただきましたが、特に私が懸念を強めておりますことは、一刻一秒を争う現場での観察が誤ったり、あるいは報告が十分でなかったり、指示による行為が誤って不幸にして医療過誤が生ずる場合のことを大変に危惧するものでございます。  ただいま御説明の中の二点、一点が医師の指示のもとにということで医師の責任、これは次に質問させていただきますが、もう一点述べられました救急救命士による処置の責任が当然問われるとのことですが、現場で働く人への負担が極めて強くなっていくような方向ということは大変な問題ではないかと思います。したがって、医師の指示のもとにという現場に居合わせない、現場より離れたところにいる医師の指示というものの実効性について明らかにしていただきたいというふうに思います。一分一秒を争う救急場面において救命救急隊員が困らないような、戸惑わないような指示を得るということはどのように可能なのでしょうか。また、そのための的確な指示システムをどのように確立していくお考えなんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  40. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急救命士が医師と同乗している場合でございますれば、その医師からその現場に応じまして必要な指示を受けることになるわけでございますが、医師が現場にいない場合におきましては的確な指示を出せる体制を整備しておくことは非常に大切であるというぐあいに考えております。このために、まず救急救命士が救急現場におきまして患者の状態を的確に把握いたしまして、これを医師に伝達し、それから、医師から指示を受けた指示内容を十分に理解できるように救急救命士の養成課程におきまして十分な教育訓練あるいは実施を行うことが必要であるというぐあいに考えております。  それからまた、指示を行う医師につきましても、各種の研修等を通じまして、救急救命士からの情報を聞いた上で的確な判断が行える救急専門医の養成確保に努めてまいりたいというぐあいに考えております。  さらに、消防庁とも協力しながら、救命救急センター等の医療機関の医師が専用自動車電話等の通信機器を利用いたしまして必要な指示を行うシステムの整備が必要であるというぐあいに考えております。  このようなことから、平成三年度予算におきましては、医師の判断を直接救急現場に届けるためのホットラインシステムの充実等を図るための事業を実施いたしますとともに、救急現場における医療情報をより正確に医師に伝送するための方策を検討するために心電図情報の伝送のための救急医療情報伝送システムのモデル事業、それから救急・災害医療総合科学研究の推進等を行うことといたしているところでございます。これらの措置によりまして救急救命士に対して的確な指示が行えるというぐあいにしてまいりたいと考えております。
  41. 外口玉子

    外口委員 的確な処置という場合は小刻みな観察による確かめ、そして知識に裏づけられた判断力、さらに高度の技術に支えられた処置といった一連の行為によって初めて可能になるわけですが、全く見ないで、手を触れない人の指示によってそれが可能なのでしょうか。その点についてお伺いします。
  42. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 心肺機能停止状態の患者さんというケースにつきましては、救命救急センターにおきましていろんなケースをごらんになっていらっしゃるわけでございますから、そういう患者さんはどういうような状況にある患者さんであるか、その場合にどういうような情報伝達が救急救命士から伝えられるようになるのかということをきちっと整理いたしまして、そこら辺を救急救命士にきちっと教え、そういう情報を救命救急センターのお医者さんが受け取りまして、それによってこの処置、この処置というような指示を行うということになるわけでございますので、そういう面でそういう症例といいますか、患者さんをいろいろ見ていらっしゃる救命救急センターのお医者さんの指示をいただきながら救急救命士に教育をし、それを救命救急センターの方に伝えてもらうという仕組みをやることによりまして、先生のような御指摘の御心配はないものというぐあいに考えておるところでございます。
  43. 外口玉子

    外口委員 私、大変心配なのでちょっと今の答弁には納得できないのですが、その救急専門医はどこでどのように指示を出すことになるのでしょうか。どのような配置を考えておいでなのでしょうか。
  44. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お医者さんの例で、どこにおるかというお尋ねでございますが、さしあたりといいますか当面は、いわゆる救命救急センターとホットラインでつなぎまして、そこにおける先生の指示を受けてやるという形になろうかと思います。ただ、地域におきましては、いわゆる消防本部にいらっしゃる先生がおられれば、その先生からの情報もいただけることもあり得ますし、あるいはその地域救急におきまして協議会等を通じまして、そういう場合に常時そういう患者さんが出た場合におきます伝達の受けとめ場所をきちっと整備いたしておきまして、そちらの方に連絡をとっていただいて、かなり熟練された、救急救命になれた先生からの指示を受けるという形のものにしてまいりたいというぐあいに考えております。
  45. 外口玉子

    外口委員 最初に私が現場性ということを強調 いたしましたのはこの点でございまして、一刻一秒を争うときに救急救命士が医師に連絡をとった場合、いなかった場合とかあるいはとれなかった場合の責任というのは一体どこにあるのかというようなことも含めまして、また、そのような救急専門医の数というものがかなり今おっしゃっているような体制を含むといたしますと必要とされますが、そのような専門医の確保も含めてどのようにお考えなっておられるのかお伺いしたいと思います。
  46. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急救命を担当するお医者さんの教育訓練の問題でございますが、そういう救急医学講座といいますものを大学等におきまして設けていただいて養成訓練をしていただきたいということにつきましては、かねてから文部省に要請いたしておりますし、また、あわせまして、厚生省におきましても救急医療施設に勤めております先生方に対しまして、救急医療に対する一般研修あるいはそれぞれの専門分野におきます専門研修、それから平成三年度予算からは実務研修というような形でいろいろな形でその救急医療に直接タッチする先生方につきましての教育、養成をやってまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  47. 外口玉子

    外口委員 ただいま養成に御努力なされるという御答弁でしたが、今その確保できるまでの間はどのように対処されるおつもりなのでございましょうか。
  48. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 現実の問題として、平成三年度予算案におきましては、救急現場医療確保事業というのを実施してまいりたいというように考えております。それは、全国の救命救急センターにおきまして、いわゆるドクターカー方式といいますのを実質的にもっと推進してまいりたいというぐあいに考えております。そういうことで、救急医療に携わる先生方につきましても実際的にいろいろな形で体験をし勉強していただこうというようなことを考えておりますので、将来この法案が認められまして救急救命士が誕生いたしますれば、そういう形での利用といいますか活用が図られるものというぐあいに期待いたしておるところでございます。
  49. 外口玉子

    外口委員 時間がないのでその先に進ませていただきますが、この救急救命処置は、本法案の四十三条で診療補助と規定されておりますね。そうすると、これは当然に健康保険の適用となるのでしょうか、そのことについて。
  50. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 法案が認められましてこの救急救命士の養成が行われますと、当面といいますか、主として消防庁においてそういう救急救命士を養成され、その方が活用されることになろうかと思います。そうなりますと、いわゆる消防庁が行います救急業務の中において行われるのがまず先に実際に世の中に動き出すだろうというぐあいに思うわけでございます。それ以外に医療機関におきまして救急救命士の方を雇われまして、医療機関の中におきまして医師の指示のもとに救急救命士が動き出すというような形になりました場合におきましては、その場合におきます診療報酬の問題につきましては、当然その診療報酬の中において具体的な事態考えながら検討してまいるということになろうかと思います。
  51. 外口玉子

    外口委員 そういたしますと、当分は自己負担あるいは地方自治体の負担というふうに受けとめてよろしゅうございましょうか。
  52. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 申し上げましたように、消防救急隊員の方が現実に行われる回数が余計になるだろうというぐあいに思うわけでございますが、医師が消防機関に所属している場合におきまして、その指示等が行われまして救急業務が行われるような場合におきましては、その費用負担につきましては、消防機関の方で負担していただけるものというぐあいに考えるわけでございます。ただし、保険医療機関に所属する医師の指示によりまして救急業務が行われた場合の医師の指示にかかわるものについてはどうなのかという点につきましては、具体的な行為内容なりあるいは救急業務の行われる態様等に応じましてこれを保険診療の中で評価していくかどうかにつきましては、今後十分検討していかなければならない問題であるというぐあいに思っております。
  53. 外口玉子

    外口委員 では、ぜひ検討していただきたいと思いますが、それに関連しまして次の質問をさせていただきます。  本法案の救急救命活動の地方公共団体における責任についてぜひお伺いしたいと思います。つまり行政責任、公的な責任ですが、救急救命士の養成、配置等救急救命士がうまく機能していくシステムあるいはそのための財政保障も含めてどのような計画をお持ちなのかについてお伺いします。
  54. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 この救急救命士法案が通りました場合、消防で行っております救急業務、現在救急隊員がその業務についているわけでございますが、救急隊員のうちの、三人編成で隊を組んでおるわけでございますが、少なくとも三人のうち一人以上はこの救命士の資格を取りまして、救命率の向上に必要な高度な応急処置ができるような体制をつくりたいと考えております。そのためには法律にもありますような教育訓練をしなければなりません。そういうことで、現在都道府県が共同して教育訓練の機関をつくる準備が進められております。また、幾つかの県なり政令市で独自に教育訓練を行うことを検討しておられます。そういうことで、なるべく早期に救急救命士の資格を取得して、救急現場、搬送途上における応急処置の充実を図っていくべく、緊急の課題だと思っておりますので、そういう姿勢で臨んでいるところでございます。
  55. 外口玉子

    外口委員 そうしますと、本法案における救急救命士による処置の質の確保について、ただいま行政については御説明ありましたが、その実質的な質の確保を保証し続けるということについては、どのような体制あるいは計画をお持ちでございましょうか。     〔委員長退席、石破委員長代理着席〕
  56. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急救命士の資格を取得した後の質の確保に関するお尋ねでございますが、資格を取得いたしました救急救命士が、医療技術水準の向上に対応いたしましてより適正な救急救命処置を提供していくためには、資格の取得後もいろいろな機会を通じまして研さんに努めることが必要であるというぐあいに考えております。今後、救急救命士の所属する機関の協力を得ながら、その方法についてはいろいろ検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  57. 外口玉子

    外口委員 自治省に伺います。ただいまの件ですが、現実に実効あるような質の確保というのはできるのでしょうか。
  58. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 救急隊員が救命士の資格を取りまして救急業務を行うわけでございますが、しっかりした救急救命士としての活動ができますように、教育訓練体制もしっかりしたものをつくり上げまして、救急救命士の試験を受験し、合格して行うということでございます。  また、日ごろ高度な救急救命処置を行うということになりますと、医療機関との連携、協力を絶えずとっておく必要がございます。そういった日常的な医療機関との連携の中で質の向上も図られるべきだと思いますし、また、取得した後、医療技術や医療資器材の進歩にも的確に対応しつつ、常に知識、技能の維持向上を図っていくことが必要だと考えておりますので、こういう見地から、消防庁として、今後救急医療関係者などの協力を得ながら、また欧米先進国の例も参考としながら、救急隊員であります救急救命士の知識、技能の効果的な維持向上策について検討してまいりたい、このように考えております。
  59. 外口玉子

    外口委員 救急救命士の養成は、地方公共団体によっては財源負担などで大変地域間格差が生じる可能性があると考えますが、それはどのように対処するお考えなのでしょうか。
  60. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 現在市町村が行う救急業務、先ほどお答えしましたように三人編成で救急隊を編成しております。市町村の規模によって救急隊の数について基準が設けられております。この基準に則した救急業務の実施が可能となるように、基本 的に地方交付税により必要な財源措置がなされてきているわけでございます。  消防庁としては、将来的に救急隊に常時救急救命士の資格を有する救急隊員を一名以上配置するということを目標としてこの救急救命士の養成、配置を行っていく考えでございますが、財政力の弱い小規模な市町村を含めまして、全国の消防本部で救急救命士の養成、配置が円滑に進むように所要の財源措置の充実についても今後とも努力してまいりたい、このように考えております。
  61. 外口玉子

    外口委員 救急救命士の養成に関して、その確保対策というのは、これまでもなかなか医療関係のマンパワーの確保対策というのは実行されてこない面がありまして、大変懸念するところですが、そのような救急救命士の確保対策あるいは養成機関の確保はどのようにされているのでしょうか。
  62. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 救急救命士が行います処置は、今までの救急隊員の行っているものに比べますとかなり高度なものになりますので、それを行うには高度な教育訓練が必要になる、こう考えております。  現在、消防の救急隊員について申し上げますと、その教育訓練というのは都道府県の消防学校で行うということになっております。都道府県の事務とされているわけでございますが、そういう高度な教育訓練でございますので、一般的に申しますと、各都道府県ごとの消防学校で行うことには無理がございます。そういうことで、各都道府県が共同してお金を出し合いまして教育訓練機関を設立して高度な教育訓練を行うことを考えているわけでございます。  また、そのほかにも幾つかのお力のある地方公共団体では独自に養成機関をつくるということにもなっておりまして、医療教育でございますので大量に早期にというわけにいきませんが、早急に目標とする常時一名体制ができるように教育訓練に鋭意取り組んでまいりたいと考えております。
  63. 外口玉子

    外口委員 都道府県の事務として消防学校などが既にある。しかし、今度財団をつくって行うというようなことも伺っていますが、その必要性というものはどのようにお考えなのでしょうか。
  64. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 救急救命士の資格取得のため必要となる教育訓練は、その内容が高度かつ専門的であることなどから、各都道府県の消防学校では必ずしも十分な対応が図られない面もあることから、都道府県の共同出資による新たな教育訓練機関の設置について検討しているわけでございます。幾つかの地方公共団体では独自に教育訓練を行うことを検討しているわけでございますが、なかなか普通の県では講師なり実習病院の確保という点で限界があります。そういうことから、共同設立でしっかりした教育訓練機関をつくる準備を進めているわけでございます。
  65. 外口玉子

    外口委員 ただいま幾つかの点を質問してまいりましたのは、質の確保への行政責任ということで大変懸念するからでありまして、民間への委託とかそういうようなことが決してなく、公的な責任において行うということと受けとめてよろしゅうございましょうか。
  66. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 現実の形といたしましては、いわゆる救急業務、救急がありました場合におきましては消防本部、消防の方にお願いしまして救急患者の搬送等を行っているわけでございますから、そういう面で、当面といいますか現実問題としては、いわゆる救急隊員によります、そういう救急救命士の資格を取っていただいて、さらに搬送途上の医療の充実に努めてまいりたいというぐあいに考えております。  ただ、将来いわゆる消防、公的な救急隊員の搬送するもの以外に、民間等におきましてもそのようなことを行うような機関が出てまいりました場合におきましては、それ以外のところでまたいろいろな教育訓練等も行う必要もあろうかと思います。そういう面でこの救急救命士の養成というものにつきましては、さしあたりといいますか当面といいますか、消防本部、消防庁の方でいろいろお考えいただくわけでございますけれども、それ以外にも医療機関におきましてそういう救急救命士を雇いたいというケースもございますでしょうし、あるいは海上とか陸上等におきますいろいろなときに救命活動を行うところもございますので、そういう人を確保しておきたいという考え方もございますから、そういう面でやはり救急隊員以外のところでもそういう救急救命士の養成を必要とするところもございますから、そういう面で消防庁の方でお考えになっております教育訓練、それ以外にさらに民間等におきましてもそういう医療技術者の養成を行うところも出てまいってくるかと思う次第でございます。
  67. 外口玉子

    外口委員 今の点につきましては、大変私懸念しているところでございますので、今後まずは自治体の責任、そういう公的な責任において十分な養成、そして再教育等の研修制度の充実などをぜひとも図っていただきたいと要望して、その点についてはこれからの課題としていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思います。  時間がございませんので、最後に、数日前も大変新聞報道された問題で一つだけお考えをお尋ねしたいのですが、けさの朝日新聞に「心臓病薬、重い副作用 大塚製薬に厚生省調査指示 四人の死亡確認」という記事が載っておりますが、この点について、厚生省としてのお考え、また御見解をぜひともお伺いさせていただきたいと思います。     〔石破委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 市川和孝

    ○市川(和)政府委員 お答え申し上げます。  本日報道等がなされております心臓病の薬は、昨年の九月に発売されたものでございますが、今までの慢性心不全の薬と作用機序がかなり異なりまして、心臓の心拍数といいましょうか、そういうものをふやすことなく心臓の収縮力を強めるという全く新しい機序による薬剤でございまして、非常に注目されている薬剤でございます。  現在、この薬剤を含めまして新薬が認可されますと、その後市販される中で副作用の発生状況等をすべて調査していくという仕組みがとられておりまして、この薬剤につきましても実際にお医者さんや医療の場へ供給された後に副作用調査が継続的に行われてきたわけでございます。その結果、本年の二月までの副作用報告によりますと、白血球減少を来した症例が四十三例報告されたということで、そのうちの四例の方は二次的に感染症等を起こして死亡されたというような事例もございます。  本剤の副作用に関しまして、私どもの方では中央薬事審議会の副作用調査会等の御意見を伺いましたところ、慢性心不全の薬剤については、ほかの慢性心不全の薬が無効な事例においてはやはり本剤の必要性というものは治療上高いという御指摘がございました。同時に報告されております血液の副作用は、頻回な血液検査等を通じまして医師の厳重な監視下に置けば早期発見それから防止が可能である、このような見解でございまして、厚生省といたしましては、このような御意見を踏まえまして、厳重な安全対策を講じるということで、この種の注意を緊急安全情報としてお医者さんに、使用されている臨床家に配付申し上げるという指示をいたしたわけでございます。
  69. 外口玉子

    外口委員 時間がございませんので、今後ぜひとも原因の究明に全力を尽くしていただきたいというふうに要望して終わりたいと思います。  最後に、大臣の御決意を次の点についてお伺いしたいのですが、私、この法案質疑を行っていて、またさらにその思いを強くいたしている点が一つございます。それは、医療における機能の分化のあり方、職種の分化のあり方というものについて大変気になっていることがかねてよりあります。それは、このように医療が著しく高度化してくる中で大変多様化するコメディカルスタッフというものがありまして、その一員として救急救命士の機能もこのたび明らかにされてきたわけですが、そのようなコメディカルスタッフの権限、すなわち責任だけが大きく権限は認められない、そのような「医師の指示の下に、」という一札が入ることによって現場で実際に患者と最初に出会う 人の判断に重きが置かれないような仕組みというものになっていくことを大変恐れております。また、そういうシステムの中では質の高いコメディカルスタッフを確保するということは大変難しくなっていくのではないかと思います。そうした意味では、今後チーム医療というものを発展させる中で、この点に関しては実際に携わる人を守る、実際に携わる人がより生き生きと活動できる、そして力を、知識と技術を十分に発揮していくことができる、そのような医療体制のあり方、充実強化を図っていただきたいと思いますが、その点につきましてぜひとも厚生大臣の御決意を伺いたいと思います。  また、加えて、今回このような形で救急救命士の資格取得について法案が出されましたが、本来は救急医療体制が医療機関においてもっと整備充実される方向が目指されるべきだと考えますが、そういう点も含めて、大臣責任ある御決意、御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  70. 下条進一郎

    下条国務大臣 先ほど来、専門家でいらっしゃる外口先生の適切ないろいろな御意見を拝聴いたしておりまして、この新しい救急救命士の制度は、最初に政府委員から御説明申し上げましたように、搬送途上における事故を少しでも少なくしたい、こういうところにねらいを置きまして整備の充実を図ろうということで御審議を願っておるわけでございます。ただ、問題が非常に複雑であり、また、医療のいろいろな関係での処置が極めて高度のものを要求される場合も出てまいりますので、そういう問題につきましては、既に御説明の中に政府委員から申し上げましたように、十分事前の研修を経まして、その担当の救急救命士がみずからの責任において十分に目的を達成できるように経験と研修の上で当たるようにいたしておるわけでございます。  ただ、先ほど来お話がございましたように、医療は技術がさらに進んでいくテンポも速うございますし、いろいろと高度化の問題もございますので、これは関係機関全員のコーディネーションの上において初めて目的を達成することができるわけでありますから、今後ともその面につきましては厚生省といたしまして関係各位の御協力を賜りながら組織、制度の充実を図るように努力してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  71. 外口玉子

    外口委員 どうもありがとうございました。
  72. 浜田卓二郎

  73. 草川昭三

    草川委員 救急救命士の質問をさせていただきます。  私はこれまで、我が国の救急医療の充実を望む立場から、救急蘇生法の一般市民への普及それから大学医学部における救急医学講座の開設、それから言われるところの第三次救急医療体制のあり方、この問題を繰り返し国会で取り上げてまいりました。最近、我が国が欧米に比べましていわゆるDOA、来院時心肺停止、このDOAなどに代表されます重篤患者の救命率が非常に低い、また社会復帰率が著しく低いのは、今問題になっておりますいわゆるプレホスピタルケア、病院前看護または医療の不在がその最大の原因だ、こういうことを言われておるわけであります。事実、重篤患者を医療機関へ搬送する救急隊員に認められている応急処置というのは心臓マッサージや止血などに限られておるわけでありまして、プレホスピタルケアというのは不在だと言えます。しかし、欧米の高い社会復帰率は必ずしもプレホスピタルケアの完備だけに支えられているのではないというのが私の意見でありまして、まず第一に患者、これは交通事故であろうとその他の病状でもそうですが、直近にいる人の救急蘇生法が非常に向こうは発達している、これが大事だというのが私の主張なんです。そしてプレホスピタルケア、それから受け入れ体制の救命救急医療、この一連の流れの中で初めて社会復帰というのが高まる、ここを忘れて単なる手法だけに陥るべきではないというのが私の意見でありまして、その立場から二、三質問させていただきたいと思うのです。  本法案説明の中に、救急医療体制について受け入れ側の医療機関の体制はおおむね整っている、病院または診療所に搬送されるまでの間の傷病者に対する救急処置について不十分だ、その確保が重要な課題だ、こういうことを言っておりますね。この救急救命士の制度が導入された場合に、いわゆるDOAなどに代表される重篤患者の救命率あるいは社会復帰率は、本案成立によりこれが実行に移る立場からどの程度向上するのか、厚生省にお伺いをしたいと思います。
  74. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  搬送途上の医療を充実をさせるためには、医師が直接現場へ赴きまして医師の指示のもとに高度の応急処置を行うことが一番望ましいというぐあいに思うわけでございます。さはさりながら、なかなかそうもいかないケースもあるわけでございますので、救急救命士制度をつくりまして医師の指示のもとに高度の応急処置を行わせるということを考えているわけでございますが、そういう救急救命士制度の創設によりましていわゆる救命率あるいは退院率がどのように向上するかというお尋ねでございますけれども、なかなかその数字を的確に申し上げるのは非常に難しゅうございます。御案内のとおりに、我が国におきましてはいわゆる来院時心肺停止状態の患者さんの退院率が三プロとか六プロというぐあいに言われておりますし、アメリカ等におきましては一一プロというようなかなりのばらつきがございます。先生お話ございましたように、アメリカにおきます国民の応急処置の普及の問題、あるいは搬送途上のそういう手当ての問題あるいは医療機関の受け入れの状況等によりましてさまざまにその率は変わるわけでございますが、私どもといたしましては、この救急救命士制度の創設によりまして、現在いろいろな統計で見られております三ないし六%の間の数字がかなり期待できるものというぐあいに考えているところでございます。
  75. 草川昭三

    草川委員 今三なり六、こういうようなお話もあったわけですが、いかにすぐれたプレホスピタルケアが実現をしたとしても、医療機関に到達した時点で患者の心肺が停止をしていたのでは救命率というのは向上しない、まあ当たり前の話ですけれども。アメリカのテネシー大学の救急部に搬送された一つの例が、これは一九八八年の例ですけれども、病院到着時心肺停止状態の患者二百四十人の退院率はわずか一・六%にすぎなかったという報告があります。その救急救命士に医療行為を認めても、それだけでは必ずしも救命率は上がらないということを前提に問題を考えていかないと、ここだけに集中してはいかぬということを私は繰り返し申し上げたいと思うのであります。このDOA、いわゆる来院時心肺停止などに代表される重篤患者の救命率や社会復帰率の向上は、このプレホスピタルケアの充実だけで実現できるものではない、患者の直近にいる人による救急蘇生法、それから今問題になっているプレホスピタルケア、そして受け入れの救命救急医療という一連の流れが大切だということを先ほど来から言っているのですが、この私の考え方についてまず基本的に厚生省はどのような考えを持たれるのか、お伺いをしたいと思います。
  76. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 先生の御指摘のとおりであるというぐあいに思っております。救急救命士あるいは医師がそういう患者さんのそばへ行きました時点におきまして患者さんの心肺がとまっておりますればどうにもならないということもございますので、そういう患者さんが発生いたしました場合におきまして、できるだけその周辺においてそういう心肺停止状態にならないような処置といいますか、いわゆる蘇生法といいますことにつきまして国民にもう少し周知徹底を私ども図ってまいりまして、第一次の手当てがさらに行われるような体制をつくっていくことは非常に大事である、先生指摘のとおりであるというぐあいに思っております。
  77. 草川昭三

    草川委員 そこで消防庁にお伺いをしたいわけですが、私は昨年の予算委員会の分科会でもこの救急隊の問題を取り上げておるわけであります。ドリンカー博士の生存曲線という、これは有名な 先生でありますが、この先生の説によりますと、呼吸停止から四分後には心臓が停止をする、その一分後には非可逆的脳障害に陥り、ほぼ絶望状態に陥る、こういうことを言っておみえになるわけです。一方、呼吸停止から一分以内に救急蘇生法を行えば九七%が蘇生する、二分以内であれば九〇%、三分以内では七五%が蘇生すると言っておみえになるわけであります。東京消防庁では、救急隊が通報から現場到着までに要する管内の平均時間は五分弱だということを言っていますね。これは統計にも出しておみえになります。すなわち、このプレホスピタルケアの充実のみでは重篤患者の救命率の向上は図れないというのが私の意見なんです。その救急隊が現場に到着するまでの間に患者の直近にいる人による救急蘇生を行うために一般市民に対する救急蘇生法の普及をやれということを昨年の四月の二十七日に私は提言しておるわけでありますが、答弁は、政府の方は前向きにひとつ検討したいという答弁をしておりますが、消防庁としてどのような対応をしておみえになるのか、お伺いをします。
  78. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 御指摘のように、救命率の向上のためには住民に対する応急手当ての普及啓発の一層の充実を図っていくことが必要であると認識しております。現在全国平均で、消防の方に電話なりなんなりで救急通報があってから現場到着まで五・七分かかっております。したがいまして、その間に住民による応急手当てが行われれば御指摘のように非常に効果が上がると思っておるわけでございます。消防機関では現在、関係機関の協力を得ながら、救急の日及び救急医療週間などを中心に、心臓マッサージ、人工呼吸や止血等の応急手当ての普及啓発を行っているところでございますが、消防庁として、またこの平成三年度から応急手当ての普及啓発広報車及び普及啓発資器材等に対する国庫補助制度を創設しまして、一層の充実を図ってまいりたいと考えております。また、現在設立準備中の救急振興財団においても地方公共団体が行いますこれらの活動に対して積極的な支援をしていく予定である、このように聞いておる次第でございます。
  79. 草川昭三

    草川委員 教育というのは一回教えたら済むということではないと思うのですね。ですから、二年なり三年たって再訓練をするということが非常に重要になってくるわけですが、そういう意味では今の消防庁の予算の中を見ても対策というのはないのです。私は、例えば自動車教習所なんというのは、三年ごとに更新するわけですから、そういうところでも教えたらどうだろう。あるいは労働省のいわゆる労災法上の各種免許がありますね、クレーン免許とかなんとか、そういう免許取得時にも救急蘇生をやったらどうだろうということを言っておるわけです。あるいはまた地域の活動、あるいはこれは文部省にお願いをし、中学生だけではなくて高校の場合でも、あらゆる教育の場で定着させるような、教育にその輪を広げていただきたい。これは消防庁だけの問題ではなくて、厚生省の問題でもあり文部省の問題でもあり労働省の労災という面でも問題があると思うのですが、そういう視点に立ってぜひ基本的なことをやっていただきたいということを特に要望しておきたいと思うわけであります。  それからもう一つ、今度は受け入れ側のことについてもちょっと申し上げたいのですが、法案説明の中にも受け入れ側の医療機関の体制はおおむねいいということを言っておりますが、現在各救急医療施設における医療というものは評価できるのかどうか。あるいは第三次救急医療施設のセンターでは入院治療を必要とする重傷及び重篤患者を取り扱うことを目的としておりますけれども、その目的どおりの医療がきちっと行われているかどうか、これは厚生省にお伺いしたいと思います。
  80. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急医療体制につきましては、先生も御案内のとおり昭和五十二年度からその整備を計画的に進めてまいりまして、現在初期、二次、三次という形で救急医療体制の整備を行っているところでございます。量的にはおおむね整ってきているというぐあいに思うわけでございます。しかしながら、その中身といたしまして、いわゆる多発外傷なり広範囲熱傷等の高度専門的な救急医療を要します重度の傷病者に対する経費につきましても必ずしも十分でないという面もあるわけでございまして、現在救急医療体制検討会におきましてこれからの高度医療を要します救急患者の医療体制のあり方につきましていろいろ御検討をいただいているところでございます。  それからもう一点、現在の救命救急センターにつきましては、お話しございましたように第三次救急医療機関ということで、二十四時間体制で心筋梗塞なり頭部外傷等に対します高度の診療機能を提供できるようにその整備を進めてまいっておるところでございます。しかしながら、御指摘ございましたように一部の救命救急センターにおきましては専任の医師等の確保が十分なされていない、あるいは実際に受け入れている患者さんの中には軽傷の事例もあるということも事実でございます。厚生省といたしましては、この救命救急センターをより有効に機能させていくために、初期なりあるいは二次救急医療機関との連携をさらに一層図るように指導してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。さらに、救急医療情報センターの機能の充実なり国民に対する啓発等によりまして、救急患者が円滑に受け入れられるような体制の整備をさらに進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  81. 草川昭三

    草川委員 御存じのとおり、昭和五十八年の行政管理庁の指摘では、第三次のセンターの場合七〇%以上が入院治療を必要としない軽傷患者だったというような指摘もあるわけなので、ぜひ内容の充実を図っていただきたいと思うのですが、この際一言申し上げますと、実は救命救急センターというのは大赤字ですね。大体一センター当たり年間一億以上の赤字を出しております。特に今医師の専門制ということにもなっておるわけですから、多方面にわたる対応を立てなければいかぬというわけで非常に苦しい運営をしておりますので、財政的にも見直す対策が必要だ、私はこういうようなことを思っておりますので、強く要望しておきたいと思うのです。  同時に、これも私ずっと以前から提言をしておるわけですが、救急医療を専門とする救急医の育成というのが非常に不足をしておるわけです。一体この救急医の育成というのはどういう状況になっておるのか。ようやく平成三年度の予算で東大にこの救急講座の予算がついた程度です。国立大学ではたしか二カ所しかないはずですよ。こういう段階で、一方では医師の専門化、細分化が進んでおる中で救急に対応するところの医師が非常に少ないということなんですが、どのような指導をされるのか、お伺いをしたいと思います。
  82. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急専門医の確保に関するお尋ねでございますが、救急医療対策の充実の観点から極めて重要であるというぐあいに考えております。御指摘のとおり、まだ非常に数が不足であるという状況も事実でございます。そういう面で、従来から救急医療施設に勤務するお医者さんに対しまして救急医療一般についての研修あるいは脳神経外科、麻酔科、小児科領域の専門研修を実施いたしますとともに、医師の救急業務実地修練というのを実施してまいっているところでございます。平成三年度予算案におきましては、医師の救急業務実地修練につきましては研修人員なり研修期間の拡大を図り、その内容の充実を図ってまいりたいというぐあいに思っております。それからまた、各医科大学におきまして救急医学に関します教育を充実するように文部省に要請してまいることといたしております。これらによりまして、今後とも救急専門医の養成に努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  83. 草川昭三

    草川委員 今の答弁ではなかなか専門医の養成、拡大はできない、私はこう思うので、これは本腰を入れて文部省にも働きかけをしていただきたいと思います。  これは消防庁にお伺いをしますが、この法案には厚生大臣が指定した救急救命士養成所という文 言があるわけですが、この養成所における教員にはだれが一体当たるのか。教師というのはあるのか。今の答弁を引き継いでお答えを願いたいと思うのです。また、救急医療に携わる医療関係者が非常に不足をしておるわけでありますが、先ほどの答弁を聞いておりますと、全国に教員を張りつけるような答弁をなされておったやに聞いておりますが、これは本当にできるのかどうか、お伺いをしたい、こう思います。
  84. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 救急救命士の受験資格を取得するための教育訓練は、その内容が高度かつ専門的であることから、救急医療に精通した医師の資格を有する教官などの確保が必要であります。現在設立準備中の財団におきまして、今後厚生省関係医学会等の協力を得ながらその確保に努めていくという考えであると聞いております。消防庁としてもできる限りの支援をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  全国にというお話でございましたけれども、この教官となるべき救急医療に精通した医師の確保が全国各県ごとにはなかなか難しいという状況を踏まえまして、都道府県が共同して全国の救急隊員を対象とする教育訓練機関をつくる、そういうことで財団の設立準備が進められているところであるわけでございます。
  85. 草川昭三

    草川委員 全国の都道府県からお金を集めて二十億円の金を基金にしてセンターをつくる、こういうお話ですが、実は現在東京消防庁は東京のある大学の附属の救急センターに救命士を派遣していますね。その数は三人でしょう。しかも、その三人の東京消防庁の職員が二年間その大学で訓練をしてようやく一人前になるわけですよ。消防職員というのは全国で十三万人、講習受講者というのは七万五千人でしょう。七万五千人に対して現在やっているのでも二年間かかる。しかも三人しかない。そういう方が今回の救急救命士というふうになっていくと思うのですが、それぐらい成熟しないと実際は難しい非常に高度な役職だと思うのですよ、今回のこの法案による受験資格を受けた救命士というのは。今の程度のお話で、全国にやらない、東京のどこかでセンターをつくるということですが、果たして対応できるかどうか。教育機関をつくるとしても、少なくとも教える人がいないじゃないか。我々が承知している大学なりセンターを申し上げてもいいのですが、その実態を調べる限りでは、少なくとも全国七万五千の人を対象につくるには気の遠くなるような話で、一体見通しは何人ぐらい予定をされておられるのか、お答えを願いたい、こう思います。
  86. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 御指摘のように、現在救急隊員になる講習を受けているのは七万何千人おるわけでございますが、現実に救急隊員として活動しているのは四万七、八千人でございます。三人編成でございますので、自治省としてはそのうち一人以上この救急救命士の資格を取得する。そうなりますと、一方五千人程度の救急隊員がこの新しい資格を取得するということが必要になってくるわけでございます。  そのため、現在設立準備中の財団、これは法案が成立いたしますれば平成三年度から既存の施設等を活用した教育訓練に着手する予定でございます。また、教育訓練施設につきましては当面二カ所を建設する予定でございます。このほかに、一部の地方公共団体では独自に教育訓練を実施しようとしているところもあるわけでございます。今後、これらの教育訓練の状況や民間の養成施設の状況等も十分見きわめながら、必要があれば財団による教育訓練施設の増設についても検討をしていくこととしております。  消防庁としては、財団、地方公共団体の教育訓練体制の整備に対して積極的な指導なり支援をしてまいる予定でございます。
  87. 草川昭三

    草川委員 その点はちょっと質問しなければいかぬ点があるのですが、時間があれでございますから最後に回します。  問題はこの仕事の内容でありますけれども、俗に言う救命士、アメリカ的に言うならばパラメディックということになるわけですが、アメリカの医学雑誌の紹介をしますと、七百七十九例あるというのですね、この医学雑誌の報告の一つの例でございます。成功したのは七百一例、特に気管内挿管のことだけに絞っておるわけです。成功したのは七百一例で、失敗したのが一〇%、一割。これは挿管できなかったというのです。  症例別に見ますと、外傷患者の挿管失敗率は三一・二%と非常に高いのですね。七百一の成功例の中身を見ると、一度目で挿管できたのが四百五十一例、二回ないし三回でようやく成功したのが二百四十六例、残り四例の最高は六回の挿管、こういうことだというのです。しかも挿管した中の四十二例は挿管までの時間が長過ぎるといった弊害が出ており、食道挿管の事例も十一ある。いわゆるこの法案の作成に当たって当然このアメリカのパラメディックは参考にされていたと思うのですが、この気管内挿管なり、後でいわゆる三点セットということを言っておるわけですが、今の教育訓練の状況などからいいまして本当にやれるのかどうか。これが私ども非常に心配だと思うし、事実ドクターなんかに聞いてみると、よほど専門的な医師でないとこれはなかなかできませんよと。事実、気管支や食道を破ったような例もある、あるいは違うところに誤って挿入することもあるので、熟練した技術というのは非常に必要になってくるということを言っておるのですが、その点は、これは消防庁になるのか厚生省になるのか知りませんが、自信ありますか。
  88. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 気道の確保につきましては、先生お話がございましたように気管内挿管あるいは他の手法等もいろいろあるわけでございます。気管内挿管につきましては、先生からお話がございましたようにいろいろな危険、問題点もございますので、なお専門家によります検討をお願いいたしているところでございます。  現在考えております気道確保につきましては、ラリンゲアル・マスクによります気道確保あるいは食道閉鎖式エアウェイによります気道確保を考えているところでございます。そういう面で、この気道確保の方式あるいは輸液それから除細動という行為につきましては、二千時間の授業の時間の中におきまして講義なり実習等も十分やっていただきまして、医師の指示のもとに適切に行われるというぐあいに私ども考えているところでございます。
  89. 草川昭三

    草川委員 このアメリカの例ですが、「アナルズ・オブ・エマージェンシー・メディスン」という医学雑誌によれば、救急隊が現場に到着をして現場を出発するまでにアメリカで大体六・六三分だというのです。先ほど消防庁の言ったのと大体同じ程度の速さだと思うのです。それはそれでいいのですが、いわゆる向こうのパラメディックが静脈ラインにいろいろな処置をする。それで出発をすると平均して十九・六分になるというのです。その十九・六分の処置をして運ぶのがいいのか。東京だとか大阪のような場合だったら、今五分弱というならば医療機関に早く運んだ方がいいのではないだろうかという意見があるわけです。その点はどのような議論をなされてきたのか、これは厚生省にお伺いしたいと思うのです。
  90. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急の現場から医療機関に搬送されるまでの時間が平均十五分というぐあいに消防庁の方で言われておるところでございます。その十五分の間に何らの手当てをせずに心肺停止になりました場合には非常に大変なことになるということで、先ほど来先生のお話がございましたように、まず心肺停止状態になったときに第一次的な応急処置をやっていただく。さらにそれが、いわゆる心肺停止状態で心臓がとまるあるいは呼吸がとまるというおそれがある場合におきましては、気道の確保なり除細動あるいは輪液の確保ということはどうしても必要であろうというぐあいに思うわけでございます。  基本的には、先生お話がございましたように、できるだけ早く医療機関に搬送するのが本筋であるし、その方がベターであると思いますけれども、その間の、搬送の間に心肺停止の状態になりそうな場合におきましては、その時点で何らかの 処置が必要であろうと考えているわけでございます。そういう面で、この新しい資格制度によりまして、その間の非常に重篤の状態におきます処置を行わせたいというぐあいに考えているところでございます。
  91. 草川昭三

    草川委員 もう時間がないので、その点の処置はどちらにしても例えばドクターの指示を受けるわけでしょう。ですから、東京の場合だと東京消防庁と日本医科大学なり東大の救急部とは非常にうまくいっていると我々は承知しておるわけです。だから患者が出たときに、消防隊員が例えば日医大の何々先生といえば、顔を合わせていますから、わかった、それはそうしなさい、こうしなさいという処置、それよりはすぐ搬送をやれといった場合があると思う。コミュニケーションが非常にうまくいっている。  ところが、これを他の都市を想定した場合に、他の都市で果たして消防隊員がセンターの何々先生と本当にうまくコミュニケーションがいっているかどうか。特に医科大学というのはドクターがかわりますから、もたもたして、もたもたという言葉は非常に悪いのですが、時間がかかった場合に、また今回の三点セットの処置をしておるとかえって問題が出るんじゃないか。例えば輸液なんかはもし車内でやるとしても、ばい菌が入ったとするならば、治ったとしても後遺症が残る。こういう心配もあるわけですから、よほどその点はしっかりしてもらいたいと思うのです。  時間が来ましたので最後に一問になりますが、それはそれとして、実は国家試験ですが、消防庁は現在講習をまずさせますね。それから、実務経験五年または二千時間をし、それから六カ月の課程で財団法人による教育を六カ月受けて今回の国家試験を受ける、こういうことになりますね。ただ一方、厚生省の方は、高卒を出て二年課程のそれぞれの養成機関とか医療関係養成所を卒業するとか厚生大臣の指定科目の取得をした人はまた別のラインでこの救命士の国家試験を受ける、そして厚生大臣の免許を受けることになる。厚生省サイドで救命士を受けた人が、私は救急車に乗りたい、地方自治体の救急救命士になりたいと言って地方自治体に就職できるかどうか、採用できるかどうか。これは地方自治体にしてみれば、定員で救急隊員を雇っておるわけですから、救急隊員でなくて消防職員として採用しておるわけですから、まず途中採用というのは考えられぬでしょう、今足りないから募集するということがあるかもわかりませんけれども。そうすると厚生省サイドで国家試験を受けた人はどこへ行くのかというわけです。せっかく厚生大臣の救急救命士の資格を取ったけれども、少なくとも私は自治省の地方自治体の採用する職員にはなかなかなる道はない。どこかそういう適当な、工場の救命士になるのか、どこかに受け入れがあるのかもわかりませんが、私はこういうものをつくるときには一本できちっとしてもらいたいわけですよ。だから自治省と厚生省という二つのラインでこのようなことを決めるのではなくて、一本のラインで救命士というようなものを教育するなら教育をする、受け入れるなら受け入れる、それで消防庁の方も厚生省のラインで育った人間を採用するなら採用する。二つやるということは必ず後々の将来私は問題が出てくると思うのです。その点についての答弁をぜひ厚生省とそれから大臣にしていただいて、私の質問を終わりたい、こう思います。
  92. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急救命士の国家試験を受ける受験資格を与える道筋の問題でございますが、基本的には高卒二年以上というぐあいに考えているところでございます。ただし、現実その救急隊員におきましては、一定の救急業務に関します教育訓練を受けておりますし、さらにかなり実務経験というものもあるわけでございますので、そういうような方々に対しましても同じように二年以上の教育訓練を必要とするのか、一定の訓練あるいは実務経験のある方に関しましては六カ月以上という短期間の教育によりまして二年間勉強した方と同じような勉強をしていただきますれば、同じような形での国家試験の受験資格を与えるというような形で法律を組み立てているところでございます。  なお、先生お話ございましたように、消防庁におきましては、早急に救急救命士を養成する必要があるというようなことで、財団等の構想をお持ちでいろいろ計画されているわけでございますし、お話ございましたように、一万五千名余の救急救命士の養成といいますか確保を図りたいということを考えていらっしゃるわけでございますから、その中におきましては、なかなかそこまで到達するのは容易でもないわけでございますので、いわゆる民間におきます二年課程を経て卒業されて試験資格を持たれた方につきましても、当然私どもといたしましては当面は消防庁の方で御採用いただけるものというぐあいに考えておるところでございます。
  93. 下条進一郎

    下条国務大臣 救急の場合における救急救命士がいかに大事であるか、また、それの医療の研修が非常に高度のものであるということの御指摘はお説のとおりでございます。これは、非常に危険な状態の患者あるいは傷害者が一刻も早く救済の処置を講ずるという見地からでございますので、先ほどの御意見の中にありましたように、早くそれぞれの救急の病院に運ぶのが一番望ましいわけでありますけれども、そのために途中の搬送上の事故を未然に、あるいはできるだけ少なくしようというねらいからこの制度のあることは御承知のとおりでございます。したがいまして、今回新しい制度としてスタートするわけでございますので、御指摘のような点を十分踏まえて研修あるいはまた養成、あるいは経験を積ませる上におきまして十分に配慮してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  94. 草川昭三

    草川委員 終わります。
  95. 浜田卓二郎

    浜田委員長 児玉健次君。
  96. 児玉健次

    ○児玉委員 救急救命士法案、この法案でねらいが、医師が救急用自動車等に同乗して必要な処置を行う方式、ドクターカー、それを推進していく。もう一つは、搬送途上で医師の指示のもとに救急救命処置を行うことを業務とする新しい医療資格、これは常に医師と救急救命士がつながる必要がある。  そこで伺いたいのですが、ドクターカーの重要性、救命率の向上にドクターカーがどのような役割を果たしているのか、その点、まずお答えいただきたい。
  97. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  搬送途上におきまして必要な医療は医師が直接関与して行うことがより望ましく、その意味で救急用自動車に医師が同乗いたしますドクターカーの必要性が高いというぐあいに思っております。このために、平成三年度予算におきましては、自治省と連携のもとにドクターカー制度の充実を図るための救急現場医療確保事業というのを実施することといたしておるところでございます。今後はこのドクターカーの普及とあわせまして、御審議いただきます新たな国家資格であります救急救命士の創設と相まちまして、搬送途上におきます医療の充実が図られるようにしてまいりたいというぐあいに考えております。
  98. 児玉健次

    ○児玉委員 そのドクターカーが厚生省や自治省が期待されるテンポでは普及していないと思うのですね。その普及がおくれている隘路は何ですか。
  99. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ドクターカーにつきましては、現在百四カ所の救命救急センターのうちに三十五カ所で整備されている状況にとどまっております。これは、救急医療にかかわります医師の確保が非常に難しいということ、救命救急センターの医師、看護婦が救急現場に出動しやすくなるための消防機関との連携等地域におきます体制が必ずしも十分でないということなどの理由によるものというぐあいに考えておるところでございます。このような意味で、さらに自治省、消防庁との連携のもとに、先ほど申し上げましたようにドクターカー制度の普及を図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  100. 児玉健次

    ○児玉委員 その点の努力を抜本的に強めていた だきたいと強く要望します。  さて、今の法案二つ目の柱ですが、これは、救急救命士が必要とする場合いつでも医師とつながるということが重要な条件になっておりますね。皆さんはそれをホットラインとおっしゃっている。携帯電話を携行させるということもお考えのようです。  消防庁に伺いたいんですが、東京都では、消防庁の本部に二十四時間体制で医師が常駐されているそうです。非常に好ましい体制だと思う。これは東京都だけなのか。もし東京都だけだとすると、この体制を全国で急速に広げる必要があると思うのですが、その点で消防庁の考えを聞きたい。
  101. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 消防による救急業務を円滑に推進していくためには、医療機関との連携が十分に確保される必要があると認識しております。特に救急救命士の資格を取得した救急隊員が行う高度な救急救命処置につきましては、二十四時間体制で医師との連絡が確保され、迅速かつ具体的な指示を得られるようにすることが不可欠でございます。この場合、東京消防庁のように消防の指令機関に医師が常駐する方法もありますが、一般的には消防機関に医師を二十四時間体制で確保することは困難な状況にございます。まずは医療機関側において二十四時間体制で救急隊からの連絡があった場合に適切な指示を出せるような体制を整備していただくことが必要である、このように考えておるわけでございます。
  102. 児玉健次

    ○児玉委員 さてそこで、消防庁からボールが厚生省に投げられたわけですが、消防庁として東京のような体制をとるのは困難だ、厚生省の方でということですね。厚生省としては、もちろんこれは全国百四カ所ある救命救急センターがまず第一候補として挙げられると思うのです。それではこの救命救急センターは、この法律が成立し、この業務が施行されていくことになると、ホットラインで出先の救急車とつながって必要な指示を与えるという新たな重要な業務が救命救急センターに事実上つけ加わるということにならないでしょうか。
  103. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救急救命士に必要な指示を行う医師の確保といいますのは、この救急救命士が行為を行う上で極めて重要であるわけでございます。指示を行う医師といたしましては救命救急センターに所属する医師等が考えられているわけでございます。現実問題といたしましても、救命救急センターの医師が必ずしもドクターカーに乗って救急業務をやっているわけじゃございませんので、そういう面で、平成三年度におきまして新たな救急現場医療確保事業というのを実施いたしまして、全国百四カ所の救命救急センターにおいて実際に消防機関と連絡をとりながら救急業務をやっていただこうということで始めたいと思っておるわけでございます。そういう面で、今年度の予算におきましてそういうことをやっていただきまして、これから救急救命士との間のホットラインあるいは携帯電話というような形におきまして連絡をとり合うような形によって適切な指示が行えるようにいたしてまいりたいと考えているところでございます。  さらに、救命救急センター以外にも実際にそういういろいろな業務をやっている病院等もあるわけでございますので、それぞれの地域におきまして救急救命士あるいは消防署あるいは救命救急センターを初めといたします医師等の間におきまして相互に連携をとり合う、いろいろな協議機関において話し合いをする、あるいは例えば勉強会を設けるというような形で、そういう面でのふだんの連係プレーも十分行えるような形のものをつくっていきますれば、御心配ございますような医師との連携体制が不十分でないような形のものをつくっていけるのじゃないかと考えているところでございます。
  104. 児玉健次

    ○児玉委員 消防庁には、やはり東京都のような体制をつくるという点でこの後努力をしていただきたいのです。  それで、今の厚生省の答えですが、救命救急センターの医師が常にドクターカーに乗れと言っているわけじゃありませんし、そこだけが全部やるとも考えていないし、しかし中心的に役割を果たすということはそうでしょうから、そこに電話が来る、それに必要な適切な対応をする、これは新しい業務になる、この点を一つ言っておきます。  私は北海道におるのですが、沖縄、鹿児島、長崎、北海道等、島嶼や僻地など広域な地域でこの業務を進めていく。たまたま総務庁の北海道管区行政監察局が「救急患者の長距離搬送体制に関する実態調査結果の概要」というのを去年の四月に発表しております。それとの関係でまず消防庁に伺いたいのですが、消防庁では余り遠くない時期に各県十五分以内でヘリコプターで到着できる体制ということを展望されているようですが、この法律が動き出すことを契機に長距離搬送体制をどのように整備されようとしているか。それから次に厚生省に対しては、スーパー救急センターとか広域救急センターとかさまざまな呼び方がありますが、これについて、言ってみれば広域的な救急の拠点となるべき医療機関をどのように整えようとされているか、以上伺います。
  105. 飯田志農夫

    ○飯田説明員 救急の搬送にヘリコプターを導入して活用することは、特に山間僻地、離島など救急患者の搬送の場合には、病院収容までの時間を飛躍的に短縮して救命率を高める上で大変有効であると考えております。消防審議会の答申では、二十一世紀の初頭には各都道府県に少なくとも一機以上ヘリコプターを整備、活用すべきであるとされているわけでございます。  消防庁としては、かねてから、地方公共団体におけるヘリコプターの導入整備を推進するため、国庫補助による財政援助措置を講じているところでございます。今後とも消防防災ヘリコプターの計画的導入について積極的な支援措置を講じますとともに、ヘリコプターの広域的な有効活用や整備運用のあり方についても必要な助言指導を行ってまいる考えでございます。
  106. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ヘリコプター等の機動力を利用いたします広域救急医療体制の整備が重要であるというぐあいに考えております。厚生省におきましては、救急医療体制検討会という場におきまして、二十一世紀に向けての救急医療体制のあり方についての検討をお願いいたしておるわけでございます。その中で、広域救急医療体制の拠点となります救急医療施設の整備についても御検討をお願いいたしているところでございます。この検討結果を踏まえまして、広域救急医療体制の充実に努めてまいりたいというように考えております。
  107. 児玉健次

    ○児玉委員 北海道では、全道の救命救急センターの役割を持っている札幌医科大学の附属病院の屋上に北海道防災救急ヘリコプターが直接患者を搬入できる体制になっています。自治体の救急ヘリコプターの導入に対して国の援助措置はどうなっているのか、伺います。
  108. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 厚生省におきましては、五十四年度からヘリコプターの購入に要します経費につきまして補助対象といたしておるところでございます。それからまた、ヘリコプター等によります救急患者の搬送に際して添乗する医師等を確保することを目的といたしまして、ヘリコプター等添乗医師等確保事業というものにつきましても補助を行っているところでございます。
  109. 児玉健次

    ○児玉委員 一機について一億円だと聞いておるのですが、実績はどうですか。
  110. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 補助基準額につきましては一億三百万円でございますが、現在までの補助申請はないという状況にございます。
  111. 児玉健次

    ○児玉委員 金額はそれで十分だとは全然思いませんが、せっかくそういった方法が準備されているのになぜ補助の実績が進まないのか。さっきの防災救急ヘリコプターという幾らか副義的な任務になるとこの補助の対象から外れるのですか。
  112. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 厚生省といたしましては、救急医療の確保のためにヘリコプターを導入したいという場合には補助対象にいたしておるわけでございますから、御指摘のように防災用とい う形でございますれば、私ども補助対象にすることは非常にいろいろ難しい問題があろうかと思います。
  113. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣、先ほど関係省庁の横の連絡をとりながらこの分野の仕事を大いに前進させたいという趣旨のことをお話しでしたが、自治体としては救急ヘリコプターだけの業務だとなかなか運転士、整備士その他の維持が困難だ、それでその防災ということがついたりするのですけれども、その面について政府としての今後の前進的な検討をお願いしたいと思うのですが、どうでしょう。
  114. 下条進一郎

    下条国務大臣 私たちの方では、救急救命士の関係で今御議論をお願いしておりまして、この救急の体制の中でさらに広範囲の、しかも迅速の処置としてヘリコプターの必要性いかんという御議論だと思いますが、もちろんヘリコプターが使えることが最も望ましい場合が多々あると思います。時間を短縮する場合、あるいはけが人の方あるいは御病気の方がおられる場所が自動車でなかなか到着しにくい場所、そういうことでありますが、この関係でのヘリコプターの必要性ということであれば、これはやはり救急救命士体制とあわせて将来の課題として今後考えていくものだ、このように考えております。
  115. 児玉健次

    ○児玉委員 時間のようですから、今の点は御努力をお願いしたいと思います。  最後に、救命救急センターですが、北海道では七カ所の整備を目標にして現在四カ所が既に重要な任務を果たしています。国立を除く三カ所の収支状況、一九八八年ですが、旭川赤十字についていえば赤字が一億三千万円、市立の釧路総合病院は赤字が二億七千万、市立函館病院は赤字一億五千万、これではせっかくいい仕事をやっているのだけれども補助の、所によっては大体二倍の赤字を出していますね。補助基準を引き上げるべきではないかと思うのが一つです。  もう一つは、救命救急センターの職員の配置基準は、昭和五十二年にセンターが発足して以来そのままになって改善がされていない。これも、医学の高度化、そしてこの業務の社会的な重要性にかんがみて、職員の配置基準について前進的な見直しをすべきだと思うのですが、その二点について伺います。
  116. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 救命救急センターに対します国庫補助の問題につきましては、補助制度を設けているところでございますが、毎年人件費等のアップに伴います単価の引き上げ等をやりまして補助基準額についての引き上げ等を行っているところでございます。  御指摘のように、職員配置基準等については当初に設定したままになっておるわけでございますし、救命救急センターにかかわりますいろいろな要望等の問題もあるわけでございますので、少し実情を調査いたしました上で、また検討、勉強してみたいというぐあいに考えております。
  117. 児玉健次

    ○児玉委員 前進的な努力をお願いして、質問を終わります。
  118. 浜田卓二郎

    浜田委員長 以上で両案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  119. 浜田卓二郎

    浜田委員長 まず、内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  本案に対し、野呂昭彦君から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。野呂昭彦君。     ─────────────  戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  120. 野呂昭彦

    野呂委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表いたしましてその趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、原案において「平成三年四月一日」となっている施行期日を「公布の日」に改め、平成三年四月一日から適用することであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  121. 浜田卓二郎

    浜田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  122. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、野呂昭彦提出の修正案について採決い たします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  123. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、野呂昭彦提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  125. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、本案に対し、野呂昭彦君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党及び進歩民主連合の六派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。遠藤和良君。
  126. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党及び進歩民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。  一 国民の生活水準の向上等に見合って、今後とも援護の水準を引き上げ、公平な援護措置が行われるように努めること。  二 海外旧戦域における遺骨収集については、相手国の協力を得て早期収集に一層の努力を払うとともに、慰霊巡拝等についてはさらに積極的に推進すること。  三 中国残留日本人孤児、中国残留日本婦人等に関する情報収集について、引き続き中国政府の積極的な協力が得られるように配慮すること。さらに、訪日調査により肉親が判明しなかった孤児に関する調査に最大限の努力を払うこと。また、サハリン残留邦人の一時帰国の一層の促進を図ること。  四 帰国孤児の定着先における自立促進を図るため、日本語教育、就職対策、住宅対策等の諸施策の総合的な実施に万全を期すこと。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  127. 浜田卓二郎

    浜田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  野呂昭彦君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  128. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりま すので、これを許します。下条厚生大臣
  129. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重して努力いたす所存でございます。     ─────────────
  130. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次に、内閣提出参議院送付救急救命士法案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  132. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、本案に対し、野呂昭彦君外五名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党及び進歩民主連合の六派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。永井孝信君。
  133. 永井孝信

    ○永井委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党、民社党及び進歩民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     救急救命士法案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずべきである。  一 救急専門医等救急医療に携わる医療関係者の養成に積極的に努めるとともに、医師が救急用自動車等に同乗して必要な処置を行う方式(ドクターカー方式)等を推進し、救急医療体制の一層の充実を図ること。  二 救急救命処置が適切に行われるよう、救急救命士と医師その他の医療関係者との十分な連携の確保を図るとともに、救急医療体制の地域間格差の解消に努めること。  三 救急救命士の適切な人材の確保と資質の向上に努め、処遇の向上を図ること。  四 近年の医療の著しい高度化にかんがみ、定期的研修制度の創設を図るなど制度の充実強化に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  134. 浜田卓二郎

    浜田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  野呂昭彦君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 浜田卓二郎

    浜田委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下条厚生大臣
  136. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重して、努力いたす所存でございます。     ─────────────
  137. 浜田卓二郎

    浜田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 浜田卓二郎

    浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  139. 浜田卓二郎

    浜田委員長 午後零時四十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ────◇─────     午後零時四十六分開議
  140. 浜田卓二郎

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出老人保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石破茂君。
  141. 石破茂

    ○石破委員 それでは、老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして若干の質問をさせていただきたいと存じます。  皆様方御案内のとおり、我が国は平均寿命八十歳を超える世界で一番の長寿国ということに相なりました。これは戦後我が国政治の最も輝かしい成果の一つであろうというふうに認識をいたしております。政治が悪かったから寿命が延びたなぞということはないわけでありまして、やはりそれは私どもの政治が間違っていなかったということを示します一つの証左ではなかろうかというふうには認識をいたしております。  しかし、量より質という言葉が正しいのかどうかわかりませんが、長生きして本当によかったねと言えるような長寿社会でなくてはこれは余り意味がないのではないか。こんなことであれば早く死にたいなんというお年寄りがふえるようなことでは、単に寿命が延びたからといっていい社会が来たということにはならないでありましょう。よく言われておりますように、二十一世紀には四人に一人が六十五歳以上になりますよというふうに指摘をされて、若い世代の負担がふえる、これをどうするかというようなことが当面の問題になっておるはずであります。  さて、大臣は所信表明の中で、赤ちゃんからお年寄りまでみんなを幸せにできる社会を築くんだというふうにお述べであります。それを正しく確実に担保いたしますためには、今後の社会保障のあり方というのはどのようにお考えなのか、大臣の御所見をまず承りたいと存じます。
  142. 下条進一郎

    下条国務大臣 委員のただいまの最初のお話の中にもありましたように、日本は非常に速いテンポで高齢化の社会に突入したわけでございます。また、国民一人一人の努力、あるいはまた、それを取り巻く環境の整備、さらには、その整備を進めるに当たっては政治の力も大いにあったと思いますけれども、諸条件が整いまして長寿社会というものが実現してきたわけでございます。  問題は、そのような長寿の社会が、お年寄りがやはり長生きをしてよかった、しかも健康である、しかも健康だけでなくして年金制度の裏づけがあって生活の安定もある、そのような条件が整っていくことが必要でありますし、また同時に、若い、後を支えていく方々はそれ相応の費用の分担にとどめられるような均衡ある諸制度の建設をしていかなければならないということも忘れることができない重要なポイントだと思います。  また、最近非常に問題になっておりますのは、出生率が非常に低くなってきた。公式に発表されております出生率は、平成元年の数字でございますが、御承知のようにこれが一・五七ということになっておりますし、さらに、その後のいろいろなソースから出ております数字は、公式のものではございませんけれども、その一・五七をさらに下回る傾向にあるということになりますと、将来の人口構成の最も望ましい姿から見ますと、この赤ちゃんが少ないということは非常に大きな問題を発生させる原因になる、このように考えるわけでございます。  したがいまして、私が所信で申し上げましたのは、やはりお年寄りから赤ちゃんまでの皆さんが、どこに住んでもその幸せを実感できる社会づくりをしようということが私の政治の信念でございますし、また同時に、厚生省としての保健、福祉、年金、医療、その他万般にわたります厚生行政もそういうような見地で今あらゆる施策を進めておる、こういうことだと私は信じております。
  143. 石破茂

    ○石破委員 さて、それでは具体的に、平成元年の十二月に策定をされました「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、実際に今大臣がおっしゃいましたことを具現化する手段としてそういう戦略が組み立てられ、今実行に移されておるところであります。要するに、お年寄りのお話を聞いてみますと、単に寂しく長生きだけしても仕方がない、家族に見られて、家族と一緒に、家族の介護を受けながら長生きをしたい、そういうようなお気持ちが強いように私は思うのであります。その具現化として十カ年戦略というのが行われているわけでありますが、さて、家で介護をする、老人にとっては幸せなのかもしれないが、介護をする家族にしてみると、もちろん親は大切だし何でもできることはしてあげたいが、負担というものもかなりなものになるねというお気持ちが強かろうと思います。そういうことを踏まえました上で、十カ年戦略なるものの具体的な像について、また、これから先の推進の方向について承れれば幸いであります。
  144. 熊代昭彦

    熊代政府委員 お答えいたします。  「高齢者保健福祉推進十か年戦略」は、先生指摘のように二十一世紀の本格的な高齢化社会に向けまして、高齢者の保健福祉の分野におきまして今世紀中に実現を図るべき十年間の目標を掲げまして、在宅福祉サービス、施設福祉サービス等の基盤を総合的かつ緊急に整備していこうというものでございますが、まず第一に、在宅の柱でありますホームヘルパーにつきまして十万人確保する等、具体的な整備目標を定めまして、市町村における在宅福祉対策の緊急整備を図ることが第一点でございます。第二点は、予防から治療、リハビリテーション、介護まで一貫した体制を整備する寝たきり老人ゼロ作戦を展開すること。第三点は、在宅福祉や高齢者の生きがい事業を支援するため、七百億円の長寿社会福祉基金を設置すること。第四点でございますが、特別養護老人ホームを目標年度には二十四万床にする、老人保健施設は二十八万床にする等、施設の緊急整備を図ること。第五点といたしまして、明るい長寿社会づくり推進機構を全都道府県に設置することなどによりまして、高齢者の生きがい対策を推進すること等の事業を実施することといたしております。  平成二年度より事業の推進に努めてまいっているところでございますが、事業の第二年度目に当たります平成三年度におきましては、国費ベースで平成二年度に比べまして約五百億円増の千四百億円といたしております。中身といたしまして、ホームヘルパーの増員、デイサービス、ショートステイの拡充等在宅福祉サービスの充実や、特別養護老人ホーム、老人保健施設などの施設整備等を進めることといたしております。今後とも目標達成に向けまして事業の推進に努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  145. 石破茂

    ○石破委員 総論的なことを幾つかお尋ねをいたしておきたいと思います。  大臣のお話の中にもございましたが、一体日本型福祉とは何ぞやということでございます。高負担高福祉がいいのか、低負担低福祉なのか。最もよろしいのは低負担高福祉には決まっているが、大事なものはただではないんで、よく北欧なりそういうところは高負担高福祉と言われておるが、それでは社会の活力が損なわれてぐあいが悪い。よって我が国というのは、高負担高福祉によって社会の活力が損なわれるのではなくて、日本独自の、何負担何福祉ということではなくて、日本型福祉というものをこれから模索をしていかにゃならぬのではないかというふうに言われてはおるのです。言われてはおるのだが、さて、日本型福祉とは一体どのようなものなのかということの具体像がなかなか見えてこない、私どもはそこを承りたいと思っておるのです。  つまり、国民の負担が余り高くならないように配慮をすべきであるというのはそうなんです。外国とのデータを比較するとどういうふうになるか。八六年の数字を見ますと、国民負担率でありますが、アメリカが三五・五、西ドイツが五二・八、イギリスが五三・九、フランスが六一・五、スウェーデンが七三・三、こういう数字が出てきて、じゃ、それに比して日本はどうなのか、こういう議論がなされるかと思います。ただ、単に外国との数字を比べてもそれは余り意味のない話で、要するにどれだけの負担をしてどれだけの福祉が行われるのか、逆に言えばどれだけの福祉をするためにはどれだけの負担が必要なのか、日本の場合にはどうなんですかという話をしていかねばならぬだろう。つまり、社会保障の中身がどうであって、それに応じていかなる負担をするかというお話を国民全体でコンセンサスを得ておかないと、これから先は大変ぐあいが悪いことになるんじゃないかというふぅに思っておるところでございます。  第二臨調ですとか新行革審ですとか、ああいうところでは何が言われているかといいますと、ピーク時であっても国民の負担率は四〇%台後半におさめるというふうに言われているわけでありますが、しかし、このまま行けば二十一世紀には間違いなく五〇を超えるだろうというふうに予想されておるわけですね。ですから、日本型福祉というのは本当にどういうものを目指し、どういう形で国民に理解を得ようとしておられるか、そのことについてお尋ねいたします。
  146. 下条進一郎

    下条国務大臣 これは大変難しいお話だと思いますけれども、基本的には日本は憲法第二十五条によって国民がひとしく権利を持って生活ができる、こういう基本的な条件が示されているわけでございますので、どんな場所においてもどんな形にあっても、その状態、状態に応じてそれぞれの方々が生活ができる、また、健康な生活が保障される、こういうことがベースで私は考えていかなければならないと思います。  そういうことから、先ほど来お話が出ておりますように、お年を召した方も健やかに生活をされ、また、長寿を全うされるということの条件を整えることがもちろん必要でございますけれども、そのお年寄りの中には、御病気とかあるいはその他介護を必要とされる方がある場合には、これは健康な人たちの負担の中で、あるいは過去における蓄積の中で、その方々が介護を十分受けられるような条件を整える。あるいはまた若い方々については、やはりこれから後を継いでいくわけでありますので、健やかに生み育てる条件を整えていくということも必要でありましょうし、あるいはまた、お体の御不自由な方に対しては、これは健康な人たちが同じ世代に生きる者としての応分の御協力を申し上げて、温かい手を差し伸べていくような条件を整えなければならないというようなことなど、全般にわたりまして、くどいようでございますが、保健、医療、福祉、全般にわたっての行き届いた施策がしみ通るような形での社会づくりということがねらいであろうと思います。それを実現するためには、もちろんそれぞれの負担をしていただくということに相なろうと思いますが、その負担につきましては、今おっしゃったように国民負担率という形で評価されることが一つのめどにはなっております。  そこで、先ほどお話がありました、二十一世紀に向かってだんだん負担率がふえるではないかというお見通しでございますけれども、二十一世紀初頭はいろいろな調査によりますと四〇%の中ごろというような数字もあるやに聞いております。今現在は日本は三九%を若干切っておるというように記憶いたしておりますが、できる限り、上がっても四〇%の中ごろ、四五%前後のあたりにおさめられれば国民の負担もそれほど苦痛にならないのじゃないかと思います。やはり可処分所得が多いほど経済も活性化し、また、それがめぐりめぐって社会福祉のいろんな手だてもできることに相なるわけでありますので、私たちとしてはほどほどの負担率の中でこのような総合的な福祉政策を行っていきたい、このように考えておるわけでございます。
  147. 石破茂

    ○石破委員 これはある意味においては二律背反みたいな話に下手をするとなってしまうんじゃないかという気はするのです。つまり、社会保障は 充実をさせねばならないし、経済の活力も維持をさせねばならない。非常に難しいことだと思っております。日本型福祉というものを実現するために、ぜひともこれから先もお力を尽くしていただきたいと思うところでございます。  さて次に、消費税につきまして若干のお尋ねをいたしたいと存じます。  つまり、消費税を導入いたしますときの、私ども大変評判が悪かった消費税、国民の皆様方からしかられ、しかられ、選挙においては同志の多くを失い、大変に困難をきわめて実現をした、犠牲を払って実現をした消費税でありました。消費税を導入しますときに私どもが国民の皆様方に申し上げたのは、これから先は高齢化社会がやってまいりますよ、ついては負担はふえますよ、そのために広く薄く、国民みんなで分担をしていく、高齢化社会はみんなで支えるんであるから、だれに負担が偏ることもない消費税を導入をさせてくださいということでお願いをいたしたはずであります。  最近、消費税というのは定着をしたように思います。定着をしたのは、なれちゃったということがほとんどなのでありましょう。もう実際はそんなにややこしくもないね、負担も高くないね、国民の間に定着したねということではあります。しかし、定着したから消費税はこれでいいんだというものではないでしょう。最初私どもが選挙のときに申し上げたように、国民の皆様方に訴えかけたように、これから先は高齢化社会が来る、そのための消費税なんだということをもう一度認識をする必要があろうというふうに思っております。消費税を導入したんだから福祉は確かに向上したねという形を国民の皆様方に示すことが政治をする者の一つ責任なのかなという気はいたしておるところでございます。  さて、これから先の、現在でもそうですが、社会保障において消費税の果たしておる、また果たすべき役割、そのことについてお伺いをいたしたいと存じます。
  148. 渡辺裕泰

    ○渡辺説明員 お答えをさしていただきます。  消費税は、先生指摘のとおり、高齢化社会への対応、負担の公平の確保、個別間接税制度の問題点の解消、こういった観点から創設されたものでございますが、それを社会保障のための目的税化するかどうかということにつきましては、先生承知のとおり種々の御議論がありました結果、現在では目的税ということにはなっておらないわけでございます。  そこで、消費税の使途ということではなくて、消費税を含めた税収を社会保障分野でどう生かしていくのかということでお答えをさしていただきたいと存じます。  社会保障関係費を大きく分類いたしますと、御承知のとおりに、年金等の所得保障の分野、それから医療保障の分野、それに福祉、生活衛生等の公共福祉サービスの分野がございます。  所得保障あるいは医療保障の分野におきましては、健康の自己責任、さらには負担と給付の公平といった観点から、保険料を中心にした社会保険システムで運営してきておりますし、今後も受益と負担の対応関係が明確なこの方式を基本としていくべきものというふうに考えております。したがいまして、消費税を含む税収は、福祉等の公共福祉サービスの分野に重点を置いて充当していくのが基本ではないかというふうに考えております。  このような考え方から、政府といたしましては、この消費税が高齢化社会の進展等に備える趣旨で導入されましたことも踏まえまして、先ほどお話の出ておりました「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を策定いたしまして、各年度の予算編成においてその着実な推進を図ることを初めといたしまして、高齢化に対応した公共福祉サービスの充実に努めてきているところでございます。
  149. 石破茂

    ○石破委員 確かにこれは目的税ではないわけでありますから、その使途が牽連性を持つということには相ならないのでありましょう。また、消費税をそのまま目的税にすることがいいかどうかというのはいろいろな議論のある話でありまして、つまり、税収の伸びなるものと医療費の伸びなるものがパラレルではないわけですから、消費税をそのまま目的税にすることが福祉の増進に資するかと言えば、決して一概にそう言えるものでもなかろうというふうには思っております。  今大蔵省の見解を承ったわけでありますが、下条大臣、税の専門家でもいらっしゃいますけれども、御見解があれば一言承りたいと存じます。
  150. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいまの消費税に関する答弁を、大蔵省の主計官の方から申し上げましたけれども、私も同じような考えでございます。
  151. 石破茂

    ○石破委員 消費税を導入をするときに、とにもかくにもあれだけ大議論があった。定着をしたからといってこれをもう忘れてもいいというものではない。目的税ではないわけでありますが、国民の皆様方に本当に広く薄く御負担をいただいたからには、目に見えて福祉がよくなったということはやはり責任として必要なことではなかろうかというふうに思いますので、ぜひともこの点は今後お願いをいたしたいと思います。  さて、本題に移りますが、老健法の審議に当たりまして幾つかのポイントをお尋ねをいたしたいと存じます。  高齢化に伴いまして老人医療の必要性はますますふえる、高まる、それは確かであります。ただ、六十三年度に四兆八千億、元年度に五兆五千億、二年度は六兆円を医療費は超える、二十一世紀には十六兆円というふうにも予想をされておるわけであります。総医療費の伸びは五%から六%でありますが、老人医療費の伸びというのは九%から一〇%になっていくわけでありますね。そうしますと、今後の老人医療のあり方、老人医療費は国民でどのように負担をするのか、老人にふさわしい医療というのは一体何なのか、そういう基本的な認識を確認をし明らかにしておきませんと、個々の制度だけあれやこれや議論をしてみても仕方のないことだろうというふうに私どもは思っております。  今後の老人医療の運営につきまして基本的な御認識を承りたいと存じます。
  152. 下条進一郎

    下条国務大臣 老人医療の問題についてのお尋ねでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、国民がひとしく健康で安心した老後が送れるようにということがねらいでございまして、そういうような総合的な施策の推進、そしてまた、そのために老人保健制度の長期的な安定を図っていくという観点でこれに取り組んでまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  153. 石破茂

    ○石破委員 さて次に、だれが負担すべきかというお話でございます。  今回の改正というのは、パンフレットを見ますと、「現役世代の負担軽減を目指して」、こういうサブタイトルが付されておる。それはそれで大事なことだとは思います。  ちょっとわき道へ話がそれるようなんでありますが、地域間のバランスということについてどのようにお考えかということを教えていただきたいと思います。  例えば私の選挙区鳥取県なんというのは、全国で五本の指に入る高齢県でございます。かわいそうなのは、おじいさんとおばあさんと二人で暮らしていて、おじいさんでもおばあさんでもそうなんですが、私が死んだらおじいさんの面倒、おばあさんの面倒はだれが見てくれるの、だれがみとってくれるのみたいなお話がありまして、まことにかわいそうだなという気がするのですね。また、長男だから田舎にいなさい、長男の嫁だから田舎に来なさいということになるわけであります。長男なり老人なりというのを地方はたくさん抱えて、医療費は非常に多いんだ。ところが、確かに満員電車で通うのかもしれないし、家はウサギ小屋なのかもしれないし、勤務条件は劣悪なのかもしれないけれども、都会に出た次男なり三男なりというのは、健康保険組合に入っておって安い負担で、土曜は休みで日曜は休みで、長男は確かに田舎の家はもらうのかもしれませんが、そんなもの今売れやしませんわね。田舎の家だって土 地だってそんな山奥なんて売れやせぬのです。そうなってくると、やはり地域間のバランスとして、なぜ田舎の高齢者の多いところは負担が多くて、都会の若い人が多いところは健康保険に入っておって病気になる人も少なくて負担が少ないのかというような、地域間のバランスを失しておるというようなことがあるような気がしておるのでありますが、このことにつきましてはいかがでございましょうか。
  154. 岡光序治

    岡光政府委員 確かに老人医療費の実態を見ますと、地域差が相当ございます。そういった地域差の問題と、もう一つは老人医療費についての地域間の負担のアンバランスの問題と、この二つの問題があろうかと思います。  先生がおっしゃいましたのは恐らく地域間の負担のアンバランスの問題だと思うのです。典型的におっしゃいましたように、都市部ではまさに若い人が多くて、そして農村部というのでしょうか、地方では高齢化も高いし、それから国保の加入率も高いということで、そちらの方の老人医療費が保険グループとしてはかかっておる。その辺の問題の調整として、まさに今の老人保健制度では一〇〇%按分ということで、それぞれの保険グループでひとしくお年寄りを抱えるという、支え合うんだという、そういう仕組みにしたわけでございまして、そういう仕組みにした結果がそのような地域間の負担のアンバランスを調整する役割を果たしているんじゃないだろうか、そのように認識をしております。
  155. 下条進一郎

    下条国務大臣 ちょっと補足をさせていただきたいと思うのですけれども、今ちょうど手元にあります老人の人口比をちょっと見てみましたら、鳥取は六十五歳以上の人口が平成元年の統計で一五・五%でございますね。これは全国の平均が一一・六でありますから、高齢化は余計進んでいるということでございますが、ちょっと手前みそになって恐縮でありますけれども、私の長野県の方も同じく一五・五で、ほぼ同じでございます。そして、医療費は長野県は全国で一番低いということになっておりますので、これは必ずしもパラレルに結びつかない。例えば北海道は非常に多いということでございます。それぞれこれは理由がみんな違うと思いますので、画一的な議論はなかなかできにくい。しかし、高いところの問題についても、低いところの問題につきましても、今後の課題として研究してみたいと思っております。
  156. 石破茂

    ○石破委員 それでは、別の立場に立って考えてみますと、今部長からお話がありましたように、老人保健制度というのは、健保の負担によって国保の負担を軽減し、地域間格差の是正なり、公平の実現に努めておるのだ、そういう役割も確かに持っておるのだろうと思うのです。ところが、一方で健康保険組合に言わせると、何で我々はこんなに負担をしなければいかぬのだという話になるのでしょうね。何のための健康保険組合なんだというお話が出てこようかと思うのです。  拠出金額を見てみますと、現在、各健保というのは保険料の二七%ないし二八%、これを老人医療費に振り当てておるということになるのでしょう。これは多分十年後には五〇%ぐらいになりはせぬか、そういう予想もあるのではないかと思います。この辺はどうなんでしょう。そういうことがだんだんふえていきますと、実際、若い人たちは、何もお年寄りを養うのが嫌だと言っているわけじゃない。そうではないんだけれども、自分たちはこれだけ納めるのにもかかわらず、自分たちが老人になったときはだれも面倒を見てくれぬじゃないか、これでは余りひどいではないか。それじゃ、自分たちの出したものは自分たちで使いましょうというような、これはあながち責めることはできないとは思うのですけれども、そういうような健康保険組合側からの反発というのもこれまた予想されるとは思うのです。そのことにつきましてはいかがでございましょうか。
  157. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃいますように、それぞれの保険グループで見た場合には、健康保険組合の場合には若い人たちで構成をされておりますので、そこへ一〇〇%按分率ということで、全国平均的な部分を持ってください、こうなりますと、実際に抱えているのは、百人被保険者がいますと三人ぐらいしか高齢者はいないわけでございますが、平均ですと七人余り持ってください、今の時点ではそうなっておりまして、プラス四持ってもらう格好になります。それが現役世代に、拠出金をしなければなりませんものですから、保険料負担としてかぶさっておる。それが自分たちの医療費であれば保険料で払うのは納得できるけれども、人様のお年寄りに拠出をするのではどうもそこのところが理解できないというのが根底にあるというふうに理解をしております。  この点につきましては、そういった面も否定できない面がございますので、できるだけ現役の勤労者の負担を緩和しなければいけないではないかということで特別保健福祉事業というものを講じまして、平成三年度では一千億のその特別事業をぜひとも実現させていただきたいと考えておりますが、そういったことを講じながら、できるだけ現役世代の御理解を得た上でこの老人保健制度の運営を図っていきたい。また、今回の改正案ではそういった観点から若い人の理解を得ながら、若い人とお年寄りの負担のバランスということを何しろ内容として盛り込んでいきたいということを考えている次第でございます。
  158. 石破茂

    ○石破委員 それでは、続けてお尋ねをいたします。  今回の法改正によりまして、具体的に一人一人のレベルにおろして見た場合に、どれぐらいの負担減というものが考えられておるわけでありますか。
  159. 岡光序治

    岡光政府委員 ただいま申し上げました制度改正、それから特別保健福祉事業、合わせまして満年度ベースで総額約二千六百億円の拠出金負担の軽減になります。これを一人当たりで計算いたしますと、健康保険組合とか共済、いわゆる勤労者の場合でございますが、被保険者一人当たり年額で約六千六百円、それから国民健康保険の場合には、これは世帯当たりで保険料負担されておりますが、一世帯当たり年間で約三千四百円の負担効果が見込まれております。
  160. 石破茂

    ○石破委員 それでは、次に公費の負担につきましてお尋ねをいたしたいと存じます。  今回、介護に着目した公費負担割合の引き上げということが行われている。具体的には老人保健施設ですね。この療養費が現在の三割から五割に上がる、看護婦、介護職員が多数配置された老人病院の入院医療費、これも三割から五割に上がるというふうに提案をなされておるわけであります。これは今後どのように推移をするのでありましょうか。
  161. 岡光序治

    岡光政府委員 どの程度になるだろうかというのは、医療費がどう伸びるかとか、実際に今度の御提案申し上げております公費負担割合を引き上げる対象施設がどう展開していくか、それによってどうもはっきりとした数字として申し上げられないのではございますが、先ほども御議論ありましたような「高齢者保健福祉推進十か年戦略」に基づいて、まず今回対象にしております老人保健施設につきましては、現在約三万床でございますが、これを十年後には二十八万床にしたいということで、約十倍に伸びるわけでございます。  それから、もう一つのタイプのものといたしまして、介護体制が整った老人病院の入院医療費を公費負担の拡大対象にしておりますが、こういった介護体制の整った老人病院につきましても、その承認促進を鋭意図っているところでございます。例えば介護力強化病院ということで平成二年四月に老人診療報酬を改定いたしましてそのような制度をつくったのですが、現時点でもう百を超えた老人病院がその対象になっておる。相当の勢いでその普及が図られておりますが、そういったことが例証でございまして、そういった対象がどんどん整備されることによって、結果として公費の額が膨らんでいくものだというふうに理解をしております。
  162. 石破茂

    ○石破委員 うまい話というのはどこにもないわけで、打ち出の小づちというのは世の中にないわ けで、公費がふえればそれでいいじゃないか、公費の負担をもっとふやせ、確かに耳ざわりのいい議論ではあるのです。しかし、公費というのは何ですかというと、それは国民の負担なのであり、だれが公費を納めておりますかというと、これは圧倒的に現役世代が多いわけで、公費をふやせばそれでいい、私はそういうものではなかろうと思っておるのです。お上という全然別の世界があって、そこがお金をじゃぶじゃぶ持ってきてくれるというのだったらそういう概念も成り立つのでしょうが、ただ公費をふやせばそれでいいというわけにはならぬだろうというふうには私は思っているのです。  しかし、先ほど消費税のときにも申し上げましたけれども、きちんと理念のあるものであれば公費というのは割合はふえていくべきものではないか。無定見にふやしていくということではなくて、理念があれば公費の負担というのはもっとふえてもいいのではないかというふうに思うのです。つまり、どこまでを保険料で賄って、どこまでを公費で見るべきかというような基本理念の確立というのは、今絶対に必要なことだというふうに思っておるのです。それがない場合には、国家財政に余裕があれば公費がふえますし、国家財政に余裕がなくなれば保険料の割合がふえますよ、保険料の引き上げを行いますよ、非常に悪い言い方で言えば、場当たり的なものになってしまうのではないかという気がしておるわけであります。今回、公費の割合がふえるというふうには言いながら、それは実は三〇%が三一・二になるだけではないかというような御批判もあるわけですね。くどいようでありますが、私は単に公費だけふやせばそれでいいとは思っていない。公費をいたずらにふやすことというのはチェックがきかなくなることであり、責任の分担が不明確になることですから、いたずらに公費をふやせばいいとは思わないのだけれども、理念のある、原則の確立された公費の負担割合の増加ということはやはり必要なことではないかというふうに思っておるわけであります。したがって、三〇が三一・二ではだめなのだ、もっとふやさなければいかぬ、そういうような限界もあろうかと思いますが、そういうことについてはいかがでありましょうか。
  163. 岡光序治

    岡光政府委員 御指摘のとおり、公費というのも税金でございますので、その相当部分は現役世代が負担をしているわけでございますから、おっしゃいますように、公費を導入する場合にも意義、目的を十分吟味をして、今の日本の全体の制度の中でやはり整合性のある、意味のあるものじゃないといけないというふうに考えております。  今回の制度改正で私ども考えておりますのは、これからのお年寄りのことを考えますと、体の機能が年をとるとともに非常に低下をしていって、日常生活を送るに当たってどうしても他からの支援、援助が必要だというふうな状態になる人が多くなると想定されているわけでございます。したがって、そういういわゆる生活介護というのでしょうか、他から生活を支援するという部分が物すごく重要になってくるというふうに認識をしておりまして、公費を考える場合にも、そういった部分がどんどん進んでいくように、理念的にもそういったものに対して応援をしていくようにという仕組みを仕組むことがふさわしいのではないだろうかというふうに考えているわけでございます。中身的には福祉の要素に非常に似通っているわけでございまして、今の日本の補助金の体系の中で福祉の経費は五割補助というのが多いわけでございまして、そういったものとのバランスを考えまして、この介護的な部分については五割の公費割合に持っていきたい、そのようなことを考えたわけでございます。  先生、三一・二%というふうにおっしゃいましたが、これは平成三年度で満年度ベースで計算した結果として、今七百五十億円というふうに私ども計算をしておるわけでございまして、六兆円の総医療費で七百五十億円を割ったらそれが一・二五%になるということでございまして、先ほども答弁申し上げましたが、この対象の施設はどんどんこれからふえていくわけでございますから、三一・二がどんどんふえていくというふうに私どもは見ておるわけでございます。
  164. 石破茂

    ○石破委員 社会保障において保険料と税金がどのような役割を果たしていくのかという理念をやはり明らかにしておく必要があるのではないかと思います。確かに部長のおっしゃるように、三一・二ではなくて、今はそうかもしれないが、どんどんどんどん公費の割合が上がっていくということはある意味では望ましいことだとは思っております。しかし、保険料は何をし、税金は何をするのか。税金というのは、本来は所得再分配の意味合いを持っておるはず、垂直的公平を実現するという意味合いを持っておるはずでありまして、これはもう御答弁は結構なのでありますけれども、非常にお金持ちもお金のない人も、公費の出す割合は一緒よということは何となく理解をしにくいことだと思うのですね。下になれば、下という言い方はいけませんけれども、生活保護があるからいいではないかという話なのかもしれませんが、生活保護は受けていなくても、そのやや上のレベルでは本当に負担ができない、負担をするのが非常に苦しいというレベルが存在をすることも事実なのでありましょう。また、本当に大金持ちで、自分のお金で何でもできるという人もいるはずなんですね。ですから、いろいろな患者さんがいる、いろいろなお年寄りがいる、そういうことを考えてみた場合に、保険料の持つべき役割と税金の果たすべき役割、それはきちんと理念をはっきりしておくことが必要なのではないかなというふうに私は思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  それでは次に移ります。  一部負担金の改定でございます。外来が一月八百円が一千円に、入院が一日四百円から八百円ということが提案をされているわけでございます。このことにつきまして、なぜこういうような数字になりますのか、基本的な御認識を承りたいと存じます。
  165. 岡光序治

    岡光政府委員 先生よく御承知のとおり、老人保健につきましては定額の一部負担制であるわけでございます。現在は、外来の場合に一月で八百円、それから入院の場合には一日当たりで四百円という定額制になっておるわけでございます。そして、この一部負担を除く経費につきまして、三割を公費負担し、七割を拠出金の対象にしておるわけでございます。したがいまして、一部負担をどの程度とするのか、それから現役世代に拠出金をどのように担ってもらうのか、それから公費でどの程度出すのか、その三つの経費の関係になっているわけでございます。  一部負担につきまして私ども今回改正をお願いしたいと考えておりますのは、前回の改正が昭和六十一年でございますので、四年以上据え置かれておる、そして六兆円の総額に対しまして、一部負担金の総額が約三%にとどまっているわけでございます。先ほども申し上げましたが、老人医療費の増大に伴いまして、拠出金を拠出しておる現役世代の負担感が高まっているわけでございまして、そういった現役世代とお年寄りの負担の均衡であるとか、あるいはお年寄りの中でも在宅で療養しておる、あるいは他の施設に入っていらっしゃる場合の負担であるとか、そういったこととの負担の均衡を考えまして、必要な受診が抑制せられない範囲で一部負担の改定をお願いしたい、こういうことを考えている次第でございます。
  166. 石破茂

    ○石破委員 さて、そういうことが行われるわけですが、老人の立場に立った場合にはどうなんでしょうねということであります。  今回の制度改正によって、確かに現役世代と老人との負担のバランスということは明確にされるわけですね。ただ、それと同時に、負担のスライドというのもあわせて導入をされる、スライド制というのが導入される。これまでは法律できちんと幾らよということが決まっておったわけでありますが、これから先スライドが導入される、自動的に変動していくということになりますと、政府 の裁量によって負担が決められてしまうのではないかというような不安が老人にはあるのではないかというふうに思いますが、その点についてはどうなんでありましょうか。  そしてまた、何に連動してスライドするかということでありますけれども、老人の医療費の伸びにスライドをするということになりますと、負担が過重なものにならないかということをお尋ねをしたい。  それから、今も部長のお話の中にございましたが、スライドがなかった今までの制度の中において老人負担の割合というのは確かに減ってきているはずなんですね。だんだんだんだん減ってくるのでしょう。それはどのように減ってきたのでしょうかね。老人の自己負担率というのは、今回三・二から五になるというふうに言われておるわけですが、今まではずっと下がってきたはず。それがどのように下がってきたのかということについてお尋ねをいたします。
  167. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、どのように数字が下がってきたかというのを申し上げますと、昭和六十二年度で三・四六%であったものが六十三年度では三・四三、元年度には三・三、二年度予算では三・二というふうに下がってきております。  それから、今度改正をお願いしたいと考えておりますスライドの方式でございますが、これは行政庁の裁量の入らない仕組みで、いわば租税法定主義と同じ考え方でございまして、法律の上でこの一部負担の額が改定される仕組み、改定の幅の算定方法であるとか改定の時期とか、こういったものを具体的、明確に法定することにしておりまして、やはり負担をお願いするという考え方からしますと、租税法定主義の考え方で整理をしなければならない。いわば税の負担をお願いすると同じように、その仕組みについてすべて法律で書き込むということを今度の法律改正ではお願いをしているところでございます。  毎年のスライドによって負担増になるのではないかということでございますが、例えば過去五年間の老人医療費の全体の伸びは、平均を出してみますと約九%でございます。それが今回の仕組みでは、入院一日当たりの診療費であるとか外来一件当たりの診療費ということで、いわば医療費の単価のふえる部分を考えているわけでございます。つまり、お年寄りの頭数がふえる部分を外しまして、一人当たりの単価がふえる部分を考えているわけでございまして、その五年間の平均伸び率を申し上げますと、入院の一日当たりでは二・五%、それから外来の一件当たりでは三%でございまして、今回お願いをしておりますのは二・五%なりあるいは三%なり、この伸び率を使ってスライドをお願いしたいということでございまして、そういったものは、年金のスライドであるとか、そういったお年寄りの消費生活の実情、その消費の伸びであるとか、そういったものとのバランスは決して欠けてないものだ、バランスはとれているのではないだろうか、そう考えておりますので、過重な負担にはならないというふうに私どもは見ているところでございます。
  168. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、自己負担率は五%というのが大体維持されると見てよろしいわけでございますか。
  169. 岡光序治

    岡光政府委員 おっしゃるとおりでございます。要するに、単価の伸びに、あとは受診率の伸びとかいう要素が加わりますので、結果としては五%程度のレベルが維持できるだろうというふうに見ております。
  170. 石破茂

    ○石破委員 それでは、先ほど大臣が補足してお話しいただいたことにも関連するのでありますが、大事なことはもう一つあって、元気なお年寄りづくりというのが大事だと思うのですね。老人医療費の伸びを抑えることというのが何も目的ではないわけでありまして、結果としてそうなるわけでありますけれども、元気なお年寄りというのはどうすればつくれるのかということも考えていく必要があるだろうと思う。北海道が確かに一番高くて、これは気候が寒冷であるから高いのではないかとか、労働がきついから高いのではないかとかいろいろお話があるが、では東北は高いのかといえばそうでもないですね。しかし、老人医療費平均五十万とかいいますが、一番高いところは百万円、一番少ないところは十万円、このばらつきは、やはり何か要因があるとしか考えられないわけであります。気候、風土、医療機関の有無云々、いろいろな要因があろうかとは思いますけれども、元気なお年寄りをつくるために、そういうことをもう一度積極的に分析、検討してみる必要がありはしないのかなというふうに思います。  また、政府は五十八年から、四十歳以上を対象といたしました保健事業を始めた。しかしながら、それに応じる人が非常に少なくて、対象者であるところの三千六百万人はもとよりも、政府の目標たる千四百万人、これも大幅に下回るようなありさまでございますけれども、これについて、これから先どのように対応されるのか。二点お尋ねをいたします。
  171. 岡光序治

    岡光政府委員 まず、地域間格差の原因あるいはそれへの対処方針ということでございます。  まず原因は、先生も今おっしゃいましたように、端的には人口の年齢構成の差が一つございますし、それから供給体制の問題としまして、人口一万なりあるいは十万対比の病床数の違い、それから医療機関側の診療パターンの違いというのも言えると思います。それから、住民側にとりましては、住民に対する保健事業がどのように展開されているかということと、あるいは、住民側そのものの生活習慣とか健康に対する意識とか受診行動とか、こういったものが複雑に絡み合っているというふうに見ております。北海道の例をおっしゃいましたが、北海道の例は、入院期間が非常に長いというのが医療費を押し上げている典型的な原因だというふうに私どもは分析をしているところでございます。  こういったことにどう対応するかということでございますが、まず、人口の年齢構成につきましては、これはもう社会構造の問題でございますので、それは全体として対応しなければいけませんし、地域間の財政調整的なことをやらなければいけないだろう。それから、病床の違いにつきましては、これは地域医療計画等によりましてそういった整備の関係を調整するということと同時に、医療供給側の非能率な点を解消しなければいけない、したがって、医療機関の連携であるとかそのほかの社会資源との連携、調整、そういったことを展開していかなければならないと思っております。  それから、住民に対する保健事業につきましては、昨年でございますが老人福祉法の改正をお願いしまして、平成五年四月から市町村で保健福祉計画をつくってもらうことになりまして、それぞれの市町村に応じて適切な保健なり福祉のサービスが展開されるようにということをお願いしようと思っておりますが、そういったことを促進をする。それから、住民に対して健康に対する意識啓発を行っていく。こんなふうなことを総合的に対応して、最も適切な結果が出るように私ども誘導していきたいというふうに考えております。
  172. 石破茂

    ○石破委員 これは聞いた話で本当かどうかわかりませんが、ある老人クラブの話を聞きますと、一年間お医者にかからなかったら海外旅行に行かせてあげるなんということを言いますと、医者にかかる割合ががたんと減って医療費がほとんどかからなかったというような話を聞いたことがございますけれども、いろいろな知恵があるだろうとは思うのですね。話し相手がいないからお医者さんに行きます、それも確かに大事なことなのかもしれないけれども、医療費を減らす、そのことが自己目的ではないのだけれども、いろいろな知恵をこれから先も出す必要があるし、施策については今後も積極的なお取り組みをお願いしたいというふうに思います。  時間がございませんので先を急ぎますが、次に、今後の大きな流れといたしましては、在宅医療の重要性というのが取り上げられるかと思います。  本改正案には老人訪問看護制度というのが盛り 込まれるわけでありますけれども、これは今後どのような役割を果たすのでありましょうか。そしてまた、それがどの地域にも普及をして、どこの地域の人でも公平に受けられるということが必要ではないかというふうに思いますけれども、そのことに対しましての施策はいかなるものでありましょうか。
  173. 岡光序治

    岡光政府委員 まさに在宅で、自分のうちで、あるいは住みなれた地域で生活を続けたい、そして生活の質の確保を図りたいということは、個人からも要望がありますし、施策としても進めなければいけないと考えております。そういう意味で在宅対策の整備を進めておるところでございますが、今回御提案をしております老人訪問看護制度も、そういった在宅の要介護老人が在宅での生活が送れるように、そして、より高い生活の質が確保できるようにということをねらっているところでございます。  これからどういうふうに展開をしていくかということでございますが、私ども、大体訪問看護ステーションの数は全国で約五千カ所程度になるんじゃないだろうか、そのようなことを念頭に置きまして、地域の需要を考えながら全国的にそういったサービスが均てんして展開されるように整備を図っていきたいと考えております。
  174. 石破茂

    ○石破委員 そのための人材の確保なのであります。  今、看護婦さんが足りない、足りないと言われている。それは、夜勤があるからとてもできないわとか、子供を持ったらとても勤められませんわ、だけれども、もし勤務が楽な体制であれば働きたいと思っておる潜在的な看護婦の免許を持った人たちもいると思うのですね。そういう人たちも含めて、どのようにその人材の確保をしていかれるのか、お見通しについて。
  175. 岡光序治

    岡光政府委員 潜在の看護婦さんは、三十万とも四十万ともいらっしゃるというふうに聞かされております。この五千カ所のステーションを動かしていくためにはもっと少ないオーダーで対応できるというふうに考えておりますので、特に潜在をしておる看護婦さんを対象にその発掘をして、そのマンパワーを整えたいというふうに考えております。
  176. 石破茂

    ○石破委員 それでは、今回の改正のもう一つの点でございます、初老期痴呆の状態にある者の老人保健施設の利用ということが今回可能になるわけであります。この場合に、その概要、それからその対象者数はどれぐらいいるのかということについて、お尋ねをいたしたい。そしてまた、もう一つは、初老期痴呆というのはなまじ、なまじと言ってはいけないかもしれないが元気なだけに、そのケアというのは非常に大変なものがあるだろうというふうに思っておりますが、そういう人が入ってこられて老人保健施設というのは本当に対応ができるのかということにつきましてはいかがでありますか。
  177. 岡光序治

    岡光政府委員 六十五歳末満の初老期痴呆患者は、現在約一万三千人いるのではないかというふうに推計をしております。その人たちが今度対象に拡大したいと思っております老人保健施設へ入る、その対象予想数でございますが、約千人程度ではないだろうかというふうに考えておりまして、したがいまして、この程度の定員部分であれば十分老人保健施設で受け入れ可能だというふうに考えております。
  178. 石破茂

    ○石破委員 それでは、時間が参りましたので、最後に締めくくりをさせていただきたいと思います。  私は、こういう福祉というのが政争の具に使われては絶対にいかぬと思っておりますし、まして、いろいろな考え方によって、例えば前の老健法の改正が選挙でつぶれてしまったようなことを二度と繰り返してはいかぬだろうというふうに思っております。たとえ選挙に不利であっても、自分の党にとって不利であっても、二十一世紀、高齢化が進展します社会保障の確立のためには正しい選択というのをしていかねばならぬだろう。政治に携わる者にしても行政に携わる者にしても、なぜこれを行わねばならないのかという理由を明確にして、国民にわかりやすく説明をし、説得をすることがどうしても必要なことなんだろうというふうに思っております。政治に求められる役割というのは、私もよくは存じませんけれども、これは決して機嫌取りではないんだろう、国民が欲しておるものを口当たりよく約束をして耳ざわりのいい言葉で申し述べることではない。国民の皆様方がもろ手を挙げて賛成はしていただけないかもしれない、賛成はしていただけないかもしれないけれども、そこを御理解いただく努力をし説得をするのが、私は、政治をする者の仕事ではないか、それをしなければ、今はよくても、政治家はよくても、本当に困るのはだれなのかということになるであろうというふうに思っております。そして、それを明確にすることが長寿社会を支えていく唯一の道だというふうに思います。年金にしても保険にしても、大変に制度自体複雑でわかりにくい点があろうかと思います。みんなが、自分だけは負担はしたくない、公費の負担がふえればいい、年寄りの面倒まで見るのは嫌だというふうに、その場その場のことばかり言っても仕方がないので、全体的にどうなるのかという百年のタームで物事を説明し、あなたの場合はこうなるのですよというような話をしていかねばならぬだろう。そういうためにもっともっとPRもしていただきたいし、老人の方、現役の方、そういう方におわかりをいただけるようなPR活動というものが今後必要になってくるんじゃないかというふうに思っております。  そういうことも含めまして、最後大臣の御見解を承って、終わりにしたいと思います。
  179. 下条進一郎

    下条国務大臣 長寿社会に備えて今回の老人保健法の改正をお願いしているわけでございますが、この問題に対してのただいまの委員のお考え、全く同感でございます。  私たちは、長い中長期の見通しの中で、長寿の社会を支えていくということで、お年寄りの方々の医療の問題あるいはまた介護の問題の充実等を一方で考えながらも、また、安定した長期の制度を維持していくという観点から、若い方々の御負担もほどほどにしていかなきゃならないということの権衡を考えながら、制度を確実なものにしていくというような見地で、今回の改正をお願いしているわけでございます。先生からのいろいろな御所見、非常に重要なポイントを含んでおりますので、今後とも施策の中でできる限り生かしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  180. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございました。  終わります。
  181. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十三分散会