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1991-02-21 第120回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年二月二十一日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 浜田卓二郎君    理事 粟屋 敏信君 理事 石破  茂君    理事 加藤 卓二君 理事 丹羽 雄哉君    理事 野呂 昭彦君 理事 池端 清一君    理事 永井 孝信君 理事 遠藤 和良君       岩屋  毅君    小沢 辰男君       岡田 克也君    片岡 武司君       古賀  誠君    坂井 隆憲君       鈴木 俊一君    住  博司君       野呂田芳成君    畑 英次郎君       平田辰一郎君    三原 朝彦君       宮路 和明君    山口 俊一君       山下 徳夫君    網岡  雄君       伊東 秀子君    岩田 順介君       岡崎 宏美君    沖田 正人君       川俣健二郎君    小松 定男君       五島 正規君    土肥 隆一君       石田 祝稔君    大野由利子君       児玉 健次君    柳田  稔君       菅  直人君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 下条進一郎君  出席政府委員         厚生政務次官  伊吹 文明君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局長      目黒 克己君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省薬務局長 川崎 幸雄君         厚生省社会局長 長尾 立子君         厚生省児童家庭         局長      土井  豊君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         厚生省年金局長 末次  彬君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部薬物対策課         長       鎌原 俊二君         環境庁企画調整         局環境研究技術         課長      角野 祥三君         労働省労働基準         局労災管理課長 坂根 俊孝君         社会労働委員会         調査室長    滝口  敦君     ───────────── 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   柳田  稔君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     柳田  稔君     ───────────── 二月十八日  地域雇用開発等促進法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号) 同日  医療改善等に関する請願戸田菊雄紹介)(第一一九三号)  同(速見魁紹介)(第一一九四号)  安全な食べ物に関する請願小沢和秋紹介)(第一二七九号)  同(金子満広紹介)(第一二八〇号)  同(木島日出夫紹介)(第一二八一号)  同(児玉健次紹介)(第一二八二号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一二八三号)  同(菅野悦子紹介)(第一二八四号)  同(辻第一君紹介)(第一二八五号)  同(寺前巖紹介)(第一二八六号)  同(東中光雄紹介)(第一二八七号)  同(不破哲三紹介)(第一二八八号)  同(藤田スミ紹介)(第一二八九号)  同(古堅実吉紹介)(第一二九〇号)  同(正森成二君紹介)(第一二九一号)  同(三浦久紹介)(第一二九二号)  同(山原健二郎紹介)(第一二九三号)  同(吉井英勝紹介)(第一二九四号)  育児休暇看護休暇制度化に関する請願児玉健次紹介)(第一二九五号)  医療年金改悪反対等に関する請願小沢和秋紹介)(第一二九六号)  同(金子満広紹介)(第一二九七号)  同(木島日出夫紹介)(第一二九八号)  同(児玉健次紹介)(第一二九九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一三〇〇号)  同(菅野悦子紹介)(第一三〇一号)  同(辻第一君紹介)(第一三〇二号)  同(寺前巖紹介)(第一三〇三号)  同(東中光雄紹介)(第一三〇四号)  同(不破哲三紹介)(第一三〇五号)  同(藤田スミ紹介)(第一三〇六号)  同(正森成二君紹介)(第一三〇七号)  同(三浦久紹介)(第一三〇八号)  同(山原健二郎紹介)(第一三〇九号)  同(吉井英勝紹介)(第一三一〇号)  健康保険本人の十割給付復活等に関する請願古堅実吉紹介)(第一三一一号)  保育所制度充実に関する請願鈴木俊一紹介)(第一三一二号)  育児休業法早期制定に関する請願井出正一紹介)(第一三一三号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一三一四号)  同(小坂憲次紹介)(第一三一五号)  同(田中秀征紹介)(第一三一六号)  同(羽田孜紹介)(第一三一七号)  同(宮下創平紹介)(第一三一八号)  同(村井仁紹介)(第一三一九号)  看護婦等確保対策充実強化に関する請願井出正一紹介)(第一三二〇号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一三二一号)  同(小坂憲次紹介)(第一三二二号)  同(田中秀征紹介)(第一三二三号)  同(羽田孜紹介)(第一三二四号)  同(宮下創平紹介)(第一三二五号)  同(村井仁紹介)(第一三二六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 浜田卓二郎

    浜田委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平田辰一郎君。
  3. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 第百二十回国会における社会労働委員会審議に当たりまして、最初質疑者として厚生大臣初め厚生行政責任あるお立場にある皆様方に対し、自由民主党に属する委員として最初質問をさせていただき、大変光栄に存じます。  私は、昨年二月の衆議院選挙で初めて当選させていただいたわけですが、それ以前の活動を通じまして、また、その後一年間の衆議院議員としての活動を通じまして、福祉医療保健の問題についていろいろの声を聞き、また勉強してまいりました。地域にありましては人々と触れ合うごとに、また東京に来られる多くの陳情者皆様とお会いするごとに厚生行政重要性というものを深く認識しているわけであります。とりわけ私の地元は、この首都東京から遠く離れました農山漁村でありまして、高齢化全国平均に比べまして一段と進んでおります。  そこで、まず最初に、高齢者についての対策を取り上げてまいりたいと存じます。  高齢化社会が到来する中で、国民老後生活充実を早急に図っていく必要があります。特に、保健医療福祉といったサービスの効果的な拡充とともに、これに必要な財源確保に努めていかなければならないわけであります。政府は、一昨年十二月には「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランを策定しまして、在宅福祉サービス入所施設についての緊急拡大を図っておられますが、この進捗状況及び来年度における取り組みがどうなっているかについてお伺いします。簡単に御説明いただきたい。
  4. 下条進一郎

    下条国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまおっしゃいましたように、高齢者が非常にスピードを上げてふえておるという状況の中で、ただいま既にゴールドプラン高齢者の措置が第二年目を迎えたわけでございます。この戦略の中で事業推進に努めておりまして、三年度になりますとちょうど二年目でございますので、今度の予算で、今御審議をいただいておるわけですが、その中で、国費ベース平成二年度に比べまして約五百億円増ということで、千四百億円の規模でこれを進めるということに相なっております。  中身は、ホームヘルパーの増員、デイサービス、ショートステイの拡充等在宅福祉サービス充実や、特別養護老人ホーム老人保健施設などの施設整備等を進めることになっております。これによりまして、目的達成に向けて着実に事業は進んでまいる、このように考えております。
  5. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 こうした政府の努力につきましては、私も大変評価するわけでございますけれども、一方で、高齢者に対する保健医療サービスに目を転じますと、社会的入院と言われるような形で医療福祉肩がわりをしているという事実に象徴されますように、本当に老人にふさわしい形で各種サービスが展開されているかどうか、そして、急増する老人医療費が有効に使用されているのかといった問題をよく点検してみる必要があると考えます。  福祉医療肩がわりをしているような社会的入院を例にとって考えてみても、高齢者長期入院については在宅サービスの受け皿が不十分であることや、入院費用が他施設在宅よりも安いことなどがその理由に考えられます。高齢者病院から家庭に帰ったときに、引き続き必要な医療看護サービスが受けられることとか、あるいはこうした保健医療サービス在宅福祉サービスと相互の連携をとって提供され、高齢者介護する家族の支えとなっていくようにサービス体系が整備されていくことが必要だと思うわけです。  次に、病院の中の医療についても、高齢者に本当に必要な医療とは、各種の検査や投薬を中心とするのではなくて、介護やリハビリを中心とした生活上の配慮ではないかと言われています。老人医療については、どうしても費用負担についての議論ばかりが表面に立ってしまいますが、私は、高齢者心身特性に合ったサービスあり方を十分検討して、その上でこれに要する費用国民がどのように負担し合っていくべきかという形で論議を深めていく必要があると思いますけれども、こうした考え方について大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  6. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいまの御意見の中にありますように、老人医療というものは年々ふえております。全体の医療の中でも六兆円というような規模になっておるわけでございます。その老人医療費用負担の問題は、お話しのように、保健医療福祉全般にわたって均衡を考えながらこの対策を講じていかなければならないということでございまして、高齢者対策につきましては、お年寄りの心身特性に合ったサービス確保しながら保健医療福祉全般にわたる総合的な観点から対策を講じていくことが重要である、このように考えております。  また、費用負担につきましても、このような観点を踏まえて考えていくことにいたしておりまして、老人保健の分野におきましても総合的な介護体制づくり老人保健制度の長期安定を図るため、本国会法律改正案を提出しているところでございますので、できる限り早い御審議をお願いしたい、このように考えております。
  7. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、看護婦さんの問題ですが、今後の医療考えていく上で、看護婦さんの確保をどのように図っていくかは極めて重要な課題であります。夜勤回数職員配置等の問題について、十分とはいえないまでも改善が図られつつある傾向があります。また、平成三年度の予算案にも看護婦確保のための緊急対策が盛り込まれ、それなりに評価ができるわけです。しかしながら、現場の看護婦さんの声を聞きますと、看護婦給与が低いということが確保対策考える上で支障になっていると思います。厚生省としては、民間看護婦等給与の問題についてもっと積極的に取り組むべきではないかと思いますが、どうでしょうか。特に、社会保険診療報酬との関連でどう考えているか、お伺いしたいと思います。
  8. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  国民に適切な医療を提供していくためには、資質の高い看護職員を十分確保していくことが重要であるというぐあいに考えております。このため、平成三年度予算案におきましても、看護職員確保対策といたしまして、養成施設への助成の強化、離職の防止、潜在看護職員の再就業の促進看護の日の制定等を柱に一般会計ベースで約四割の大幅増を図ったところでございます。  それから、先生お尋ね民間医療機関給与水準をいかに設定するかということでございますが、これにつきましては、個々の医療機関におきまして、その置かれている状況等を勘案いたしまして労使間の問題ということで決定される事項であるというぐあいに思うわけでございますが、看護職員確保のためには給与等勤務条件が、看護職員勤務実態等を踏まえまして改善されていくことが重要であるというぐあいに考えております。  なお、医療機関の経営の財源でございます診療報酬につきましては、これまでも医療におきます看護サービス重要性にかんがみまして、その適正化を図ってまいったところでございます。昨年四月の診療報酬改定におきましても、労働時間短縮の動向等も踏まえまして、看護料の引き上げを実施いたしたところでございます。今後とも長期的視点に立ちまして看護職員確保対策に努力してまいる所存でございます。
  9. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、廃棄物処理の問題についてお尋ねいたします。  廃棄物の問題が大きな社会問題となっておりまして、廃棄物処理法改正が行われようとしているわけであります。制度の見直しに当たっては、基本的な考え方を確立することが重要だと私は考えているわけであります。私は、廃棄物処理に当たっては、ごみを出す者が責任を負うべきだと考えています。産業廃棄物事業者責任処理されなければならないし、一般廃棄物住民共同処理として市町村により行われていると理解しています。厚生省は、廃棄物処理法改正に当たって、この原理原則をどのように考えておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  10. 下条進一郎

    下条国務大臣 廃棄物処理について問題はたくさんございますけれども、今、出す方の責任の問題のお話でございます。これは一般家庭廃棄物あるいは事務所の方から出る廃棄物あるいは産 業廃棄物、いろいろございます。その中で、すべてが出す方の責任でいけるかどうかという問題がまたございます。今、身近な例で家庭廃棄物ということになりますと、これは原則は、今各市町村費用でこれを処理してもらっているようになっておりますけれども、場所によっては出す方の方に一部費用負担をお願いしているということでありますが、このやり方については、実際問題としてはその量に応じて料金を決めるということになるわけでありますから、量をどのように測定するかという問題について非常に困難が伴う場合がありますので、今のところはほとんどの市町村において、原則市町村費用負担ということになっております。だからといって廃棄物を出す家庭の方が無責任にやっていいというわけではございませんので、その処理等については必要な分別収集とかその他いろいろな配慮をしていただくようにしなければならない、このように考えております。
  11. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 廃棄物処理施設処理能力が不十分でありまして、施設整備が急務となっているわけであります。一方、廃棄物処理施設整備費は不足しておりまして、市町村において苦労して地元の同意を取りつけても建設を先延ばしにせざるを得ないケースというのが非常に多いと聞いています。廃棄物処理施設住民生活に最も密接に関連をする施設なので、十分な予算額確保すべきだと思いますが、その点どうでしょうか。
  12. 下条進一郎

    下条国務大臣 廃棄物処理についての施設の問題でございます。  先ほどの御質問関連するわけでありますけれども、廃棄物処理施設としては、一般家庭廃棄物処理施設、それからまた、産業廃棄物処理をどうするかという問題とかいろいろありますけれども、いわゆる一般的に廃棄物処理する施設ということになりますと、これは今全国で非常な御要望がありまして、これに対して適切な施設を、我々としては建設に御支援申し上げるということで、この平成三年度の予算におきましても、八百六十二億の予算を計上いたしておりまして、できる限りその建設のお手伝いをするということにいたしておるわけでございます。
  13. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 従来のやり方でやりますと、公共事業シェア率に縛られちゃいまして、限界があるように思うわけでありますが、抜本的な改善方策考えるお考えはないでしょうか。
  14. 下条進一郎

    下条国務大臣 この問題は、すべての関連が深い全体のあり方考えていかなきゃならない問題でございます。出るところから最後の終わりのところまで全部一貫してそれぞれの問題がある。先ほど部分的にお話ししてまいりましたけれども、出すところで、やはり分別収集ということについて一般の御協力を相当お願いしなきゃならない、その御協力いただいた分別収集した後のまたその段階における費用の問題がさっき出ましたけれども、一般事務所から出るものについては、これはもう原則として費用負担していただくということになりますし、また、産業廃棄物についてもそういうような方向でいっていただくということになりまして、その後結局出たものをやはりリサイクルしていくということもまた大事でございます。  さらにまた、もう一回戻りますと、出す量をできるだけ少なくしなきゃならない。それで、この前予算委員会のところでもお話が出ましたように、包装紙あるいはむだな紙を余計使わないようにするということもその最初段階から考えていかなきゃならない。そして最終的には、先ほどお話がございましたような高能率の焼却炉で、これはまたなるべくNOxの出ないような施設でこの問題の処理をしていく。そして最終的には埋立地確保の問題ということに一貫いたしますので、関係者皆様の御理解と御協力を得て体制が整うようにお願いしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  15. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 今、関係者の御理解を得る問題でございますが、この施設の立地を進めるためには周辺住民の御理解をいただくという意味で周辺対策が大変重要だと考えるわけですが、この点についてどういうお考えでございましょうか。
  16. 下条進一郎

    下条国務大臣 今、この最終処理の問題に関連して、その処理施設周辺の方の御協力の問題ということでございますが、これはやはり環境の問題あるいはまた施設の性能の問題、いろいろな問題がございますので、施設そのものとしては、ただいまちょっとお話しいたしましたように温度を余り上げ過ぎない、例えば八百度ぐらいであればNOxの出る量が割合に少ないというような配慮をしながら、機能的にその焼却炉周辺に御迷惑がかからないように努力すると同時に、場所選定等についても十分配慮しながら、やはり地域方々の御理解を深めてこの事業を進めていくということに相なろうと思う次第でございます。     〔委員長退席野呂委員長代理着席
  17. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、年金問題について伺います。  この四月から、年金制度国民年金基金制度の発足ということで、また新しい一歩を踏み出すわけであります。国民年金基金につきましては、かねてからの懸案でありました自営業者基礎年金上乗せ年金を保障しようというものでありますけれども、法改正趣旨を生かしていくためには、老後年金として十全のものであり、また、広く自営業者方々加入していただく必要があるわけであります。このことは、元年改正での当委員会附帯決議でも「地域型国民年金基金創設については、自営業者の二階部分の年金としての機能を十分発揮しうるよう適切な運用を図ること。」と言っているとおりでありますけれども、これについてどのように配慮されるわけでございましょうか。
  18. 末次彬

    末次政府委員 国民年金基金につきましては、御指摘のとおり、自営業者老後生活におきます多様なニーズにこたえるための基礎年金上乗せ年金としての機能を十分に果たせるよう、できる限り多くの方々加入していただけるようにすることが最も重要であるというふうに考えております。そのため、一口当たりの掛金をできるだけ少額に抑えるなど、できるだけ加入しやすいものにまずしたいと考えております。また、事務費につきましても一部国庫補助を行う、さらに、連合会等を通じまして効率的な運営を行う、こういう配慮をしたいと考えております。さらに、制度趣旨、内容につきまして国、地方、民間がそれぞれの立場広報活動を行うことによりまして、できる限り多くの自営業者方々がこの基金加入していただけるように努力していきたいと考えております。
  19. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次の課題は、この自営業者方々のための国民年金基金への加入をどう進めていくかでありまして、まず何といっても、各都道府県国民年金基金ができていなければならないわけであります。各都道府県それぞれいろいろ事情もありましょうけれども、厚生省としては国民年金基金創設のスケジュールについてどう進めていこうというお考えであろうか、その点伺いたいと思います。
  20. 末次彬

    末次政府委員 この基金制度法律上、平成三年四月から施行ということになっておりまして、法律施行後速やかにこの法律に基づきます所定の設立手続開始いたしまして、できるだけ速やかに基金設立認可業務開始ができるように、現在各都道府県におきまして地域型基金設立の準備が進められているところでございます。四月以降の具体的な手順といたしましては、遅くとも五月初旬には基金設立認可を行いまして、その後この基金が集まり国民年金基金連合会をつくりまして、速やかにこの連合会によりまして本格的な業務開始を進めたいというふうに考えております。
  21. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 それでは、ことしの五月には自営業者方々加入できる体制が整うというわけですね。自営業者方々は一日も早く老後保障のために国民年金基金加入できるように熱望しております。できるだけ早い設立がなされるように要望しておきます。それから、国民年金基金により多くの方々加入できるようにするためには加 入員募集をどういうやり方でやっていくか、さらに、年金財源をより多くしていくということで考えますと、その運用をどうしていくおつもりか、お尋ねいたします。
  22. 末次彬

    末次政府委員 加入員募集の点でございますが、これは先ほど申し上げましたように、できるだけ多くの方に入っていただきたいということで、まず、基金制度について広く理解をしていただくということが大事であるというふうに考えておりまして、現在、政府広報あるいは都道府県広報あるいは民間団体等によりましてそのPRに努めております。具体的な募集につきましては、まず、基金みずからが行うというやり方のほかに、生命保険会社あるいは信託銀行などにこの募集業務を委託するということも考えております。  それから、次の資産運用の点でございますが、法律上、長期資産運用専門機関でございます信託銀行あるいは生命保険会社などにこの年金資産運用委託先が限られておりまして、基金としましては、これらの会社に委託して資産運用していくということになるわけでございます。将来的には、運用成績も評価しながら安全かつ効率的な運用に努めていきたいというように考えております。     〔野呂委員長代理退席委員長着席
  23. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 結局、いい制度を設けましても知られざるものでは絵にかいたもちになってしまうわけでありまして、PRにはぜひ力を入れていただきたいと存ずるわけでございます。  最後に、この問題につきまして、大臣にこの国民年金基金創設、普及についての御決意をお伺いしたいと思います。
  24. 下条進一郎

    下条国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますように、国民の皆年金ということで、国民のどんな職場の方々でも広く年金によって老後が保障される、こういうことが望ましいということでございまして、その国民年金が今までは各方々地域あるいは職種によって選択の余地がなかったというところに、今度はそれぞれの御希望に沿って、いろいろな御希望に沿う形のプログラムを組みながら自分の一生の設計が立てられるということに相なるわけでございまして、ぜひ、この新しい年金基金制度充実し、国民の各層の御理解と、そしてまた、それによっての将来の楽しみを深めていただくように持っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  25. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 次に、輸入食品の安全性の問題についてお伺いいたします。  近年、国民生活水準の向上やグルメブームなどによりまして、世界各国から種々の食品が輸入され、我々の食卓をにぎわしております。このように輸入食品の占める割合は年々増加しまして、これに伴いまして国民の食生活の安全確保において輸入食品の安全性確保が極めて重要になっております。国民の関心も非常に高いわけであります。私としましては、この輸入食品の急増ぶりに対しまして今の輸入食品の監視体制で十分か、大丈夫かと言われれば心もとない気がいたすわけでございます。特にポストハーベスト農薬問題などは国民の間に輸入食品の監視体制への不安、その強化への強い要望があると思います。そこで、輸入食品の安全性を確保するため今後輸入食品監視体制の大幅な強化を図るべきではないかと思いますが、いかがお考えでございましょうか。
  26. 下条進一郎

    下条国務大臣 まことにごもっともなことだと思います。それで、我々の方といたしましても輸入食品の安全性の問題、これには鋭意努力をしているところでございまして、特にこの平成三年度に向けて食品衛生監視員の増員ということについても配慮したところでございます。すなわち、現在は九十九名の人間でやっておりますが、これに二十五名の新規、振りかえ十九名ということで百四十三名という人数に増員いたしまして、ポストハーベストの問題等を含めて監視体制強化するということにいたしております。  なお、ポストハーベストの問題につきましては、まだ検討の段階でございますけれども、三年中に何とか結論を得たいなということで、今一生懸命いろいろな関係者と協議をしながら検討を進めておるという状態でございます。  以上でございます。
  27. 平田辰一郎

    平田(辰)委員 そのほか、本日は取り上げませんでしたが、大臣が所信表明の中でお述べになられました女性の社会進出や出生率の低下を初めとする子供と家庭を取り巻く環境の変化の問題、その中で次代を担う子供たちが健やかに生まれ育つための環境づくりといった問題、あるいは搬送途上における医療充実を図るため、搬送途上の救急救命士の資格を整備する問題、あるいは成人病、難病対策などの各種疾病対策や精神保健対策の問題、地域におけるきめ細かな福祉サービス、障害を持った方々地域社会の中での自立生活の問題、あるいは医薬行政として医薬品、医療機器などの安全性の確保、研究開発の促進、血液製剤の国内自給対策推進、麻薬等の不正取引防止を目的とした麻薬新条約への対応といった問題、さらには援護施策、援護年金の額の引き上げ、今度新たに戦傷病者の妻になった者に対する特別給付金の支給が行われるわけですが、この問題、中国残留孤児の問題、残留婦人等の援護の問題、環境衛生対策、まだまだ質問したいことはたくさんあるわけでございますけれども、時間も余りございませんので、きょうはこれまでにさせていただきます。  最後になりましたけれども、厚生大臣は先日の所信表明演説の結びで、国民に直結した厚生行政課題一つ一つに全力を挙げて取り組むのだとおっしゃったわけでございますけれども、まさに厚生行政国民の長寿、福祉に直結しているわけでございますので、大臣の御活躍に期待するわけでございます。  これにて私の質疑を終わりたいと存じますが、本日は丁重な御答弁を大変ありがとうございました。
  28. 浜田卓二郎

    浜田委員長 網岡雄君。
  29. 網岡雄

    ○網岡委員 私はきょう医薬分業問題、そしてダイオキシンの問題、それから新麻薬条約批准に基づく国内整備の問題などにつきまして若干御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、私はまあ医薬分業推進論者でございますので、大臣がかわられるたびにまず冒頭の質問は、医薬分業について大臣がどういう所信をお持ちになっているのかということを最初に聞くのが私の一つのしきたりになっていますので、まず、その大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  30. 下条進一郎

    下条国務大臣 お答え申し上げます。  委員は医薬の問題についての権威でいらっしゃるということをかねがね承っておりますが、医療はこれは医者、歯医者、薬剤師あるいは薬業その他万般の関係者皆様の御協力の中で充実した施策が行われるわけでございますが、医薬の問題につきましては、ただいま先生のお話にございましたように、かねてから医薬分業はやはり進めていくべきであるという立場厚生省としてもとっておるわけでございます。これはその地域によってばらつきがございまして、これは薬剤師あるいは薬業の方々の御努力もさることながら、やはり関係医師会、歯科医師会、その方々の御努力も、また協調も得なければ実現できない問題でございまして、やはり時間をかけて協調の中に実が上がるように努力していかねばならない方向である、このように考えておるわけでございます。
  31. 網岡雄

    ○網岡委員 ぜひひとつ、そういう御決意のもとで、以下私が御質問を申し上げる内容につきましては一つ一つの課題を積み上げていただく、まさに厚生省の行政の一つ一つを今から、そんなに大きい問題ではなくて、これはやる気になっていただければ必ず進んでいくというふうに私思っているわけでございますが、それらの点について、以下若干御質問申し上げたいと思います。  一つは、大臣がお答えになりましたように、分業がかなり進展をいたしておるわけでございますが、その状況の中で、薬局側が処方せんの応需をして調剤を行っていく場合に、一番ネックになっている問題は医薬品の小包装の問題でございます。この前も私質問をしたわけでございますが、かなり前向きの御答弁をいただいたわけでございますけれども、なかなか現実には事が進んでいない、こういう状況にございます。  最近の、これは日薬で調査をやったアンケートの回答の結果でございますが、一つは、包装の希望の単位のものがない、つまりこれは、千単位ぐらいの包装で、薬局のようなところでは大きくてとても用をなさないという答えをしたのが回答の実に八六・四%という状況でございます。そして、そういう状況でございますから、「やむを得ず大包装のものを購入した」というふうに答えているのがこれまた七四・八%という非常に高い数字でございます。そして、実践の段階に入っております長野の上田薬剤師会の会営の調剤薬局が、あそこは分業がかなり進んでおりますから、したがって、各薬局からこの会営の調剤センターに手持ちでない薬を買い求めてくるようになっておるわけでございますが、そこがアンケートをとりましたところ、内用薬は一回当たり平均の分譲単位が五十九グラムあるいは五十九カプセルとかいったように、全部百以下になっております。こういう状況でございます。外用薬でも二十五・四、こういう状況にございます。  したがって、この数字を見ていただきましてもおわかりいただけますように、一応の法律で定められている小包装というのは五百単位のものでございますが、これではとても手が伸びないわけでございます。したがって、今言いましたように、五十九、二十五と出ておりますように、百以下の小包装にしていただかないと、結局薬局側の立場からいきますと、大きくてだめだ、こういう状況にあるわけです。前回、これはかなり前向きに基準薬局の評価に絡んでやっていただいたわけでございますけれども、ぜひこれは進めていただきたい、こう思っておるわけですが、これは局長で結構でございます。どうぞ。
  32. 川崎幸雄

    ○川崎政府委員 医薬分業の進展に伴いまして、調剤薬局に対応した小包装の適正供給が必要となっておることは御指摘をいただいているとおりでございます。このため、従来より小包装の供給を指導してまいりまして、昭和五十九年に小包装の基準を明らかにいたしまして、その徹底を図りますとともに、基準よりも相当程度小さい包装品も供給していただくよう指導を行っているところでございます。  また、ただいま御指摘ございましたように、昨年の六月には私どもにも日本薬剤師会から小包装に関する御要望をいただいております。関係団体に対しましてもその趣旨を伝えまして、薬価基準収載に際しての小包装供給の指導を一層徹底して行ってまいりたいというふうに考えております。一方、小包装の需要が少なくて、せっかく生産しても消費されずに廃棄されるのもあるんだといったようなことも製薬団体等から聞かれるわけでございます。したがいまして、私どもは今後、昭和五十九年に設けました小包装医薬品の供給に関する苦情、相談制度とか、あるいは関係団体等の御要望などを通じまして、小包装の要望をもう少しきめ細かく把握いたしまして、需要動向に応じた適切な小包装が供給できるような関係団体の指導を図ってまいりたいというふうに考えております。
  33. 網岡雄

    ○網岡委員 今局長の御答弁でございますが、結局、現状でいくとメーカー側からいえばそういう話もあろうかと思います。やはり根本的な問題は、医薬分業がどのぐらい進んでいくかということに兼ね合ってくるわけでございまして、本当に進んでいけばメーカー側が対応できないぐらいどんどん需要が出てくるわけでございます。でありますから、まず一つは、分業の推進を図っていただくということと同時に、百グラムぐらいの小包装をぜひひとつやっていただければ——今までの統計数字を見ましても、大きくて使い物にならぬというのが七四というふうに高いわけでございますから、実際にそういうことをやっていただければかなり需要がふえていきますので、私どもとしましてはぜひやっていただきたいと思っておるわけでございます。それで、日薬の方も、今言ったような話も踏まえながら前向きにそういう取り組みをしていくようにいたしますので、ぜひひとつ厚生省の方としては、再度メーカー側にこれを具体的に対応できるような体制を目に見えるようにやっていただきたい、できれば日薬ともきちっと打ち合わせをしながらやっていただくようにお願い申し上げたいというふうに思います。  次に移ります。  三番目は、御案内のように病院にサンプルの薬品が出ております。病院側からサンプルの使用が、あれは三カ月になっておるものですから、ある程度進んでいきますと処方せんが薬局側に回ってくる場合があるんでございます。そうなりますと、これは収載されているものでありますと今言ったように買えるわけでございますけれども、サンプルの場合はだめなんですね。そして、局長御存じのように、サンプルを薬局は買うことができないという規定に今なっているわけでございます。ところが実際は、これは具体的にとおっしゃれば私どもも出しますけれども、薬局の方に処方せんが回ってくるんでございます。そうすると、回ってきたときには、薬はどういう方法をとっても求めることができないわけでございますから、やむを得ず断らざるを得ない、こういうことになってきまして、調剤薬局としての信用をある意味で落としていくことになりまして、これまた分業の一つの大きなネックになっている状況がございます。でありますから、これはぜひひとつ薬務局としても検討していただきまして、薬局側はただではなくて購入するんでございますから、ぜひひとつそういう方で検討をしていただきたい、こういうふうに思います。  それから次に、医薬品の備蓄センター等が調剤用医薬品を薬局に分割販売する場合の表示規制の緩和措置について、これも私、質問を申し上げたのでございますが、そのときは、専門家同士の売り買いであるから、したがって、定められているような一から十までやらなくても、ポイントになるものだけでいけるようにしたいというような形での御答弁をいただいたわけでございますが、その後どうも進行していないようでございます。したがって、ぜひひとつこれは詰めていただきたいと思っておりますが、厚生省考え方はどうでございましょうか。
  34. 川崎幸雄

    ○川崎政府委員 まず、前段のサンプルの件でございます。これについてお答えさせていただきますけれども、臨床試用医薬品いわゆるサンプルの提供は原則として薬価基準収載後に行われておりますが、一方商品自体の供給も薬価基準収載後遅くとも三カ月以内に開始するよう義務づけているところでございますけれども、サンプル提供の時点で商品供給が行われていないといったこともあり得るわけでございます。メーカーに対しましては、薬価基準収載後三カ月以内のできるだけ早期に供給を開始するよう改めて指導することといたしたいというふうに考えておりますが、あわせて商品供給開始以前に処方せんが発行されないように、発売時期の周知徹底を含めまして、関係方面に対する指導を行ってまいりたいというふうに考えております。  それから、備蓄センターにおきます問題でございますが、先生ただいまおっしゃいましたように、私どもも、備蓄センターにおきます分割販売する場合の表示をもう少し簡略化できないかといった方向で同じような考え方を持っておりまして、現在、簡略化する場合にどういった項目が最低限必要となるだろうか、こういったようなことを、関係団体、日本薬剤師会とか関係都道府県、その他関係者から実情や意見を聴取しているところでございますので、今後さらに簡略化の方向で検討を進めさせていただきたいというふうに考えております。
  35. 網岡雄

    ○網岡委員 局長、御丁寧な御答弁をいただいているわけでございますが、さっきの表示規制の緩和の問題でございますけれども、これは、私ちょっと理解に苦しむのですが、ほぼ一年近くたっているのでございます。一年以内でしょうけれども、かなりな期間でございます。本当に詰めるというなら、これはもう本当に十分ぐらいで詰めるぐら いの話だと思うのでございます。それが少しも形になってあらわれてこないということは、俗に言うお役所仕事の典型のような私気がするわけでございますが、ぜひ、これぐらいは少なくとも速やかに解決できるように積極的にやっていただきたいということを、これは御答弁要りません、私わかっていただけると思いますので、次に移りますが、ぜひひとつそういうことでやってください。  それから次でございますが、人手不足というのが全体に蔓延をしておる状況でございますが、薬剤師の場合もやはり同じでございます。しかし、一つ薬剤師の場合に違っておりますことは、在宅の、俗に言うたんすの引き出しにある薬剤師の方がかなりお見えになるわけでございます。これをやはり分業進展の問題とあわせて考えましたときには、そういう形になっている薬剤師に仕事についていただく、積極的に薬剤師の職能活動をやっていただくということが国家的な見地から見ても大事なことだと思うのでございます。  この前のときは、その人を使っていくために必要な研修について検討する時期に来ているというふうに、かなりこれは節がついて明確にお答えになったわけでございますが、これもまだ答えが出ていないわけでございます。これは研修をする入れ物とかいうものがございますので、かなりこれは、検討が少し要るかもしれませんが、しかし実際にやる気になれば、今各都道府県の薬剤師会館がございますし、いろいろな施設がございます。そういうところでやれば、研修をする場というものは探す気になればあるわけでございますので、ぜひひとつ厚生省において、この制度推進するように図っていただきたいと思うわけですが、見解をお願いします。
  36. 川崎幸雄

    ○川崎政府委員 医薬分業が進展するに伴いまして薬剤師が不足する状態も一部予想されるところでございまして、在宅薬剤師を活用するということは非常に大切だというふうに私どもも考えておるところでございます。この在宅薬剤師の研修につきましては、一昨年六月に設立されました日本薬剤師研修センターにおいて薬剤師の研修が行われているところでございますので、そういった観点から、このセンターで在宅薬剤師を含めました薬剤師の研修制度あり方について御検討をいただいているところでございまして、その検討の結果、昨年の九月には、在宅薬剤師の調査それから在宅薬剤師の登録名薄の作成それから登録薬剤師の研究事業等の実施方法、こういったことについて一応の素案が取りまとめられたところでございます。  このセンターにおきましては、この素案に基づきましてさらに細部の検討が進められているところでございますので、厚生省といたしましても、今後ともこのセンターの検討に積極的に協力してまいりたいというふうに考えております。
  37. 網岡雄

    ○網岡委員 非常に作業が進んでいるようでございまして、ぜひひとつその方向でさらに検討を進めていただきまして、実際に実行に移るように早くやっていただきたいということを心からお願い申し上げます。  それから、次に御質問申し上げますのは、一九八八年に採択されました麻薬新条約の批准の時期と、その批准に必要な国内法整備に関連をいたしまして若干御質問申し上げたいと思うのでございます。  まず、この問題を取り巻く諸問題ということで、特に麻薬関係の犯罪というものが最近非常に激増しておるという状況にございます。うがった見方をすれば、金持ちの日本の国というのが世界の各国からねらいをされているような感じも受けないでもない状況にございます。コカインの押収量も、それから乾燥大麻の物もすべて年々膨大な率でふえておるわけでございまして、この意味でいっても、麻薬犯罪というものはやはり非常に危険な状態にある、憂慮すべき状況にあるというふうに思うのでございます。それから、その裏づけともいうべきことでございましょうが、暴力団の麻薬事犯件数それから検挙人員というものが、これまた大変な数字で伸びておりまして、これもまた憂慮すべき事態にあると思うのでございます。それから、最近の新聞によりますと、二月に入ってから、コカインを封筒に入れまして、何か十四社に対して、一部報道機関にも送られたと言われておるわけでございますが、そういう、いわば麻薬に対する取り締まりが徐々に厳しくなっていくことに対する挑戦とも受け取れるような動きがあるわけでございます。  こういう事犯が今出ておるわけでございまが、このことについて警察庁としてどういう状況に今あるのか、この際、お答えいただけませんでしょうか。
  38. 鎌原俊二

    ○鎌原説明員 今お尋ねの件でございますけれども、これは、二月の五日に報道機関や銀行などにコカイン、それと挑戦状めいた手紙が郵送されてきた事案でございますけれども、この手紙の中身は、タイトルを宣戦布告といたしまして、我が組織による麻薬戦争の開始をここに宣言する、交戦地域は日本国及びアメリカ合衆団カリフォルニア州とするという内容のものを、全部で最終的に十五カ所になりましたけれども、十五カ所のテレビ局、新聞社等々に送付してきたものでございます。この送られてきました、白色の粉末が一緒に送られてきたわけでございますけれども、これを鑑定いたしました結果、コカインであるということが判明いたしましたので、現在警察におきましてはコカインの所持、譲渡事件ということで、このコカインを本鑑定に回しますとともに、送付した者を特定すべく鋭意捜査を進めているところでございます。
  39. 網岡雄

    ○網岡委員 捜査の途中のことでございますから、ぜひひとつ敏速な対応をしていただくようにお願い申し上げたいと思うのです。  新条約の批准ということが具体的に世論として高まりつつありますことは、やはり麻薬犯罪というものがいつまでたっても絶えない、しかも最近の状況は暴力団の有力な資金源になっているという事実から見まして、このままでいけば犯罪がますます激増していくという状況にあると思います。したがって、麻薬に対する今後の取り締まりというものにつきましては、従来の麻薬のブツを水際でとらえて処置をしていくということだけではもう間に合わない。こういう取り締まりの先進国であるアメリカを初めとするヨーロッパでは、資金源になっているわけでございますから、その金が匿名の名前で隠されて預金をされたり、いろいろな形で運用されておる実態をつかみまして、一番肝心な、彼らにとってはそのためにやるわけでございますが、その金をチェックする。場合によれば犯罪行為に基づく所得であったということで、わかればそれは没収をする。あるいはコントロールドデリバリーということを言われているのですが、その捜査の段階で知りながら泳がせて、そして追跡の調査を行いながら、一番中心のところまで行くのを見ておって、そこで根こそぎいくというようなことが、今度の新条約の中では許されるというような内容を盛った、俗に言うマネーロンダリング、資金の洗浄を中心といたします各犯罪行為を取り締まっていく有効な手段というべきものが今度の新条約の中に規定をされているわけでございます。  今度各国の状況を見ますと、数字がちょっと違ってくるかわかりませんが、たしか四十三カ国に及ぶというふうに記憶をいたしておりますが、これはもうほとんど主要な国が入っているのでございます。今資料が洪水になってどこかに沈没していますのであれですが、そういう状況でございますから、やはりこれから日本がねらわれていくあらゆる形での形跡が出ているわけでございますから、ぜひひとつ早急にこの新条約を批准をするということは、今一番大事なことだと思うのでございます。そのためには今言ったような内容を持つ国内法の整備が緊急の課題だというふうに思っているわけでございますが、それらの作業が今日段階でどういうふうに進んでいて、そして一体いつごろその批准をし、国内法の整備を行うことになるのかということについて、厚生省として取り組んでいる見通しなどを含めてお答えをいただき たいと思います。
  40. 川崎幸雄

    ○川崎政府委員 ただいまお話ございました麻薬新条約批准の状況は三十四カ国でございます。  それで、この新条約は、ただいまお話がございましたように、麻薬等の不正取引防止のために国際的に各国が協力して当たろうという内容のものでございまして、新条約の内容を国内的に法的に担保いたしましてこれを批准いたしますことは、麻薬乱用撲滅に向けた国際協調として極めて重要な意味を持っているというふうに考えております。それで、ただいま先生も御指摘になりましたように、いろいろなマネーロンダリングだとか国外犯の処罰だとか、あるいは麻薬で得た不正な収益を没収する、あるいはコントロールドデリバリーといったような捜査手法も取り入れるとか、麻薬の密造に使われるような原料物質の流れも規制するとか、こういったようなことで国際的な麻薬等の乱用防止、不正取引の防止には効果があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、私ども厚生省といたしましても、ただいま言ったような内容から、法務省、大蔵省、それから厚生省中心となりまして、この新条約の批准に向けて国内法の整備の作業を進めているところでございます。現在いろいろ検討を進めている段階で、内容で申し上げますと、ただいま申し上げましたようなマネーロンダリングを犯罪とするような新たな罰則を追加するとか、それから外国で麻薬犯罪を犯したような人が我が国で処罰できるような、国外犯を処罰するとか、あるいは現行刑法にはございません無体物も没収できるような、麻薬犯罪によって得たような財産を没収するような規定を設けるとか、麻薬原料物質を規制するとか、さらにはコントロールドデリバリーといいますような、捜査のため密輸麻薬をわざわざ税関で通関をさせまして効果的な対処をする、こういったような手続を設ける、こういったような内容を詰めているところでございます。現在のところそういった内容で、厚生、法務、大蔵が中心となりまして法案を詰めているところでございます。  この法案の提出時期につきましては、条約との関係もございまして、今いつということを申し上げることはできませんけれども、関係省庁と協力をしながら検討を急ぎまして、今国会で御審議をいただけるよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  41. 網岡雄

    ○網岡委員 まず国内法の整備という案をやることが一番肝心でしょうが、条約は既に賛成をして日本は態度を決めているわけでございますから、問題は批准条件が整うかどうかでございますから、ぜひひとつその批准条件が整うような整備体制を急いでいただきたいということをお願い申し上げておきます。  次に、ダイオキシンの汚染の問題について質問をさせていただきます。昨年の十月に、愛媛県の川之江というところがありますが、そこの川から採取しましたボラを検査いたしましたところ、この川之江というところはどうも非常にパルプ工場の多いところだそうでございまして、新聞の記事によりますと、この川之江ともう一つの都市との間に五十幾つの製紙工場があるということでございますので、そこから排出される排水液というのは大変なものだというふうに思うわけでございます。その結果、汚染をされました状況は、私どもがかなりショッキングなものを感ずるほどの大きなものでございます。  その新聞の報ずるところによりますと、ある地点で調査をいたしましたボラの中から検出されたダイオキシンは、換算後、2・3・7・8というダイオキシンの化合物があるわけですが、それが一番毒性が強くて、それが基準になっていて換算をしていく方式だそうでございますけれども、九・四PPtという大変高濃度なものが検出されました。これをWHOの基準で計算をいたしますと、大体五十から二百五十ピコグラムぐらいのものになる。これは多分基準値は五ということで計算をされたものだと思いますが、WHOの基準、一日摂取量は一から十でございますから、十ではめればもうちょっと大きい数字になろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても、この数字が九・四ということになりますと、大体日本の人は平均でいいまして一日九十グラムから百グラムぐらいの魚を摂取するということだそうでございますので、百ということになりますと、これは九百四十ピコグラム、こういうことになるわけでございます。これは大変な数字で、WHOから計算をいたしました数字でいう、仮に十で計算をいたしましても、五百四十ということでございますから、約倍近くの濃度をしていることになるわけでございまして、日本人としての健康上、大変ゆゆしき問題だということが今度の調査の中ではっきりしてきたわけでございます。  そこでお尋ねをいたしますが、一つは、事の重大性を認識されました政府におかれては直ちに調査をする運びとなりまして、排水汚泥処分場からの浸出水十五検体、周辺の大気から十検体、汚泥焼却炉の排ガス十五検体、周辺の水域の魚介類の分析が三十検体ということで、ダイオキシン調査連絡会議というのを厚生省環境庁などが中心になってつくられまして、そして調査活動をやることになっておるようでございますが、この程度の検体の調査によって十分な汚染の状況を把握することになるのかどうか、まずそれが一つです。そして、この検査は調査連絡会議中心になってやられるということでございますけれども、いつごろまでに結論を出されようとしているのか、それが二つ目です。  それから三つ目は、出てきた結論に対して、ダイオキシンの汚染に対する抜本的な対策として一体どういうところまでのことを国として想定しているのか。例えばガイドラインということで百ピコグラムというのを出されておるようでございますが、これはまた後の質問で議論をしたいところでございますけれども、そういう程度のものではなくてもっと根本的に、ぴしゃっと物差しではかって汚染の度合いがわかるというものを定めていくためには、ADIという一日摂取量というものをもうこの辺で日本は決めていかなければいかぬ時期に来ていると私は思うのでありますが、一体そういうところまで作業を想定しながらやっていこうとしているのかどうか、その点について。
  42. 角野祥三

    ○角野説明員 先生の御質問、三点ございました。  まず第一点についてお答えいたしますと、先生御指摘の調査は、紙パルプ製造工場におけるダイオキシンの発生過程及び発生量を把握するための総合的な調査でございまして、環境庁、厚生省及び水産庁の協力を得て実施するものでございます。そしてこの調査では、紙パルプ製造工場からの排水、排出ガス及び廃棄物に含まれるダイオキシンの濃度を測定するほか、環境大気及び排水口周辺水域で採取される魚介類につきましてもダイオキシン濃度の測定、分析を行うこととしております。そして本調査の実施に当たりましては、学識経験者から成る調査連絡会議を設置いたしまして、調査計画の企画及び結果の評価について専門的立場から御指摘をいただくことにしております。これらによりまして、パルプ製造工場に係るダイオキシンの実態を総合的に正確に把握できるものと期待しております。  第二点でございますが、本調査重要性にかんがみ、関係省庁の連携を得ながら円滑に推進していく所存でございまして、結果の概要につきましては八月ごろに取りまとめの予定でございます。  第三点目でございますが、本調査に先立ちまして、昨年十一月より全国の主要な紙パルプ工場を対象として工場排水中に含まれるダイオキシンについて緊急実態調査を実施しております。したがいまして、先ほどお話しいたしました総合調査とこの緊急実態調査の結果を踏まえまして、排水基準の設定に関する検討も含めまして適切な環境保全のあり方について検討してまいる所存でございます。
  43. 網岡雄

    ○網岡委員 昨年の十一月の段階で廃液の調査を各製紙工場から取り寄せて環境庁が集計をとっておみえになったようでございますが、その時点の数字で、この愛媛の川之江市の沖合におけるボラ からの検出というものは、当時環境庁が持っていた数字からいって予想ができたものですか。どういう判断をされていましたか。
  44. 角野祥三

    ○角野説明員 川之江市沖の魚のダイオキシンの値につきましては、これが直ちに健康に問題となるレベルではないと考えておりますが、これまでの環境庁の調査結果に比べますとかなり高い値が出ておりますので、製紙工場の排水の実態をより正確に把握するということで今回の調査を始めたものでございます。そして、先生のお話になりました昨年十一月より実施しております実態調査につきましては、現在サンプリングの採取を行っているところでございます。
  45. 網岡雄

    ○網岡委員 私、これからちょっと申し上げたいのでございますが、今もおっしゃったように、かなりの高い数字だと言いながら直接健康には影響がないとかという表現を使われておりますが、まず外国のADI、一日の許容摂取量というものの状態を言いますと、スウェーデンは五です。ドイツは一です。それからカナダは高くて十。WHOの上限ですよ。アメリカに至りましては、いろいろな説もございますが、しかし〇・一ピコグラムというふうに、これに至ってはドイツのさらにまた十倍という非常に厳しい基準をはめておるのでございます。ところが、日本の場合は、これはガイド基準なのですね。これは一応の目安なのですよ、ガイド、目安。国際的に、ドイツ、今言ったような数字でADIが決められて、そしてその排水基準やいろいろなものがこれをもとにしながら、一日摂取量によって、これを超えるか超えないかによっていろいろな、排水の場合は排水の基準を決める、大気の場合は大気汚染の基準を決めるというふうに基準を決めていく積算の基礎になっているわけでございますが、日本の場合は百ですから、ここで載っている一番高いと言われているカナダの十の十倍ですよ。これがすぐに健康を阻害するようなことに出てきたら毒性ということになるのですから、これは公害上の基準を離れているわけです。この程度の空気や魚を食べていたって一年ぐらいでは健康上の被害は出てこないかもしれませんが、しかし、これが二年、三年、四年、五年、十年、二十年と食べていたらどういう変形が出てくるかということははかり知れないものがあると思います。そういう、今目に見えてあらわれてこないから、こういった一番高いカナダでも十ですが、それを超える百というガイドラインで、平気で環境庁なら環境庁、厚生省生活局のところに座っておれる、そういう神経は私は本当に理解ができないわけでございます。  先ほどおっしゃったように、専門家の会議を開いて一定の調査の結果の結論を出して、そして、どうするかということを考えられるということでございますが、この際一番もとになるADIを設定する、このことをやらなければ何事も全部目盛りにならないわけですよ。逃げ道になってしまうのですよ。だから、これを早く決める。世界で初めて日本がやるならともかく、カナダもやっている、ドイツもやっている、そしてスウェーデンもやっている、そういう国際的な判断目盛りというものがある段階で、日本だけがガイドラインといういいかげんな話で、これは突っ込まれたときには、ガイドラインですからADIというような権威あるものとはしておりません、これはおおよその目盛りですということで逃げていこうという姿勢にとられても、私はしようがないと思うのでございます。こういうあり方はもうこの辺で吹っ切って、そしてADIの設定に、この調査を基礎にしながら段階を詰めていくということをぜひひとつ環境庁や、これは厚生省だそうですが、厚生省が踏み切ってもらうように、私はそういう時期に来ていると思うのでございますが、どうですか。その点厚生省の御答弁を願います。
  46. 目黒克己

    ○目黒政府委員 ダイオキシン類につきましては、先生御承知のように有機塩素化合物の一つでございまして、化学構造の違いによりまして各種の異性体があり、その毒性の強度がそれぞれ異なるという事情がございます。  また、この中で特に2・3・7・8四塩化ダイオキシン、これは極めて強い急性毒性があることが知られておるわけでございますが、また、慢性毒性につきましても幾つかの報告がございますが、毒性の発現機構などにつきましてはまだまだ不明な点が多く、異性体を含めましたダイオキシン全体の毒性については十分な資料がないということから、私どもは、先ほど来お話に出ておりますような検討会等いたしまして、毒性に関して検討をするといったようなことでございますが、もちろん私ども厚生省としてこのダイオキシン類が重大な問題と受けとめているわけでございますけれども、今そのような状況にあるのでございます。  また、外国において、御指摘のようにADI、一日摂取許容量が大きな差があるということも先ほど申し上げましたようなダイオキシン類の化合物の異性体、いろいろなものがありまして、その間の毒性あるいは非常にわからない面があるといったようなことがおおよそ大きなばらつきがあることも先生御承知のとおりでございます。  したがいまして、このダイオキシン類につきましては、国際的に定まった評価がないというような現状の中で、私どもはこのADIに基づいて一定のガイドラインということでいたしておる、こういう状況にあるのでございます。やはりこれは科学的根拠でもって、私どもは今後とも鋭意真剣に検討していかなければならない課題であるということは承知しているのでございまして、今後ともできるだけ十分な知見を集めまして、ガイドラインをさらに精密なものにするよう努力してまいりたい、このように思っている次第でございます。  なお、一応ガイドラインで定めましたものにつきまして、当時の毒性学あるいは公衆衛生学等の専門家の評価によりまして判断されたものでございまして、私どもそれを今踏襲しているというのが現状でございます。  なお、このADIにつきましては、先ほど先生もちょっとお触れになりましたけれども、このADIの許容量といいますものは、七十年間、約一生これを毎日摂取いたしましても安全であるというような非常に厳しいといいましょうか、非常に一定の枠の中の評価でございますので、私ども、現時点ではこのダイオキシン類において健康に被害はない、こういう結論をいたしておるところでございます。もちろん先生御指摘の、一日も早くということにつきましても、私ども今後とも努力を続けてまいりたい、このように思っておる次第でございます。
  47. 網岡雄

    ○網岡委員 局長から御答弁がございましたけれども、七十年、一生涯という非常に長い期間を通じてはかっていくということの根本的な考え方は、食べ物ですから、摂取量ですから、したがって、土の汚染とかというものではなくて、食べて人間がどういう害になるかということをはかっていくものでございますから、したがって、これはかなり厳しくしなければいかぬ、そして、それだからこそADIというものを定めて一定の基準をもとにしながら、水質基準なりいろいろなものを決めていくということが大体各国でとられておる状況なのでございます。  そこで、何遍も申し上げますけれども、ほかは大体十以下なのですね、十以下。ところが、日本だけ異常に飛び離れて百ということになっているわけでございますが、これは私どもが考えてどうしても理解のできないところでございます。こんなことがいつまでも続いておるということは、ある意味でいくと、公害対策を積極的に進めていく日本の立場からいけば問題があるというふうに私は思うわけでございます。  そこで、この調査連絡会議というものができて、この調査の分析結果というものについてやられる会議が一つできましたね。それで、それに続いて、一遍、もう一度ガイドラインというものを、こういういろいろな新しい事実が出てきているわけでございますから、そういう事実に立って改めてそのものを見直していくための審議会なり会議なりというものを、この際、この調査が終わった、一つの結論が出た後の段階でやっていく考えはございませんか。そして、入ってくる学識経験者の中に は今度の調査で非常に積極的に御努力された脇本教授なども含めて、もっと幅の広い選択の視野を持ちながら人数もふやして検討をする会を早急に持ってやっていただきたいというふうに思うのでございます。  この間レクチャーを受けたときに、カナダでは一応パルプ工場の排水基準というもので、AOX、パルプ一トン当たり一・五キログラムという一つの排水基準というのがあるそうでございます。これは、ハロゲン有機物をとってそしてやることによって一定の係数を掛けながらダイオキシンのものをやっていくという手法のようでございますが、しかし、これがカナダにおいて合格したという、一つの踏み切ったというその判断の基礎は、やはりADIの十から積算をして、通常平均の大人の体重を掛けて計算をする。それから、AOXの一・五キロから計算をしたものの数値がADIから計算をしたものよりも下回っている。したがって、以下ですから無作用なんですよ、反応が出ない。そういうことの積算のきちっとした判断があって、これはAOX一・五キロというものが出ておるわけですよ。  ところが、聞くところによりますと、去年の十二月二十日に、日本製紙連合会ですか、正確な名称は。製紙連合会というところがこれは自主的に決めたと言われておりますが、事実上は何か、通産省ですか、環境庁ですか、そういうところも入って決められたというのでございますけれども、カナダのAOXのパルプ一トン当たり一・五キロ、こういうもので業界の自主規制としてこれからやっていこう、こういうことでスタートを切られたようでございますが、やらぬよりは私はやった方がいいくらいに思いますけれども、しかし、実際これは当てはめてみますと、カナダの場合には魚肉を摂取する量は一日二十グラムだと言われているそうでございます。ところが、日本の場合は一日九十から百、こういうことになっているわけですから、大まかに言って日本はカナダよりも五倍という数になるわけでございます。そうなりますと、私がちょっと計算をいたしましたが、カナダはADI十で計算をして、体重六十キロとすればこれは六百ということになるわけですから、その数字はAOXの数字ではじいたものよりもそのものが下ですから合格になるわけですが、日本の場合はこれは摂取量が百ということになるわけでございますから、結局この場合は、ADIの十とした場合にはこれは不合格なんですよ、大体倍近い数字になるのですよ。こういう代物なんです。  だから、私が申し上げたいことは、環境のガイドラインという大ざっぱな、諸外国が決めているADIの十倍というような非常に大きな数字でやっていきますと、最後のところは、結局人間が同じ物をずっと食べ続けて一生涯かかっても変化が出ないというものからした安全の数字というものは、カナダのものを当てはめるということは、その基礎は食肉が一日二十グラムだ、そして、ADIの十を掛けた数字でちゃんと大丈夫だという数字がはじかれているわけですが、日本の場合は食生活の実態も含めてこれは全然科学的な根拠がないわけですよ。カナダの方で、カナダと同じでんでいけば、日本は甘いということになる、こういう状況になるわけです。したがって、私が言いたいことは、目盛りになるADIというものを決めなければ、このものがいいか悪いかという判断はとてもできないのですよ。環境庁が責任を持ってこれを判断できますか、学問的な根拠に立って。という代物なんでございます。だから、これはいろいろな問題があると思います。でありますけれども、ここまで事態が進んできておる、汚染が進んでおる状況が出ておるわけでございますから、今度の合同調査によって進められていく結果によって一定のものが出たら、次の段階のあらゆる目盛りの積算の中心になるADIというものを設定していく方向にこれは積極的に進めていくようにしてもらいたいということを思うわけですが、この点について厚生省のお答えをいただきたい。
  48. 目黒克己

    ○目黒政府委員 このダイオキシン類につきましては、先生御承知のように、二百十種類のダイオキシンがございます。これが非常に毒性の強いものから弱いものまでございます。この中の幾つかのものについてのみ動物実験が、私、正確な数が今手元にございませんが、たしか一つか二つか三つか、そのような単位の動物実験があるだけでございます。その動物実験の結果をもってして……(網岡委員「2・3・7・8ですよ」と呼ぶ)ええ、2・3・7・8、二百十種類のものを類推をする、こういうことで今世界じゅうで議論をしているわけでございます。したがって、世界じゅうでこの幅が非常に振れてしまうという大きな理由の一つには、すべてこの非常に強いものの、あるいは実験が出たものだけをもってして、それを他の二百十種類に当てはめられるかどうかという、この種類ずつの問題、異性体間の毒性の強さの問題が一つあると言われております。  それからもう一つは……(網岡委員「具体的には2・3・7・8を基準にして換算するようになっているんじゃないですか。環境庁、教えてあげなさい」と呼ぶ)換算の仕方等についてやはりいろいろ議論があることも事実でございます。私も否定じているわけではございませんで、現在そういう換算をして各国がやっているのでございますが、その換算の仕方についてもいろいろ意見があるということも私ども承知しているのでございます。またそのほか、私どもの中でこのADIを決めるに当たりまして、いわゆるダイオキシンの実験のフォローといったようなものについて大変難しい問題があるのでございますけれども、ダイオキシン学というと言葉がなんでございますが、今言ったものを含めまして御説明申し上げた一端でございますけれども、ダイオキシン学そのものについてどうも世界じゅうの科学的な資料が不足している。そういう中で一定の考え方に基づいて一定の方向を出すということは極めて困難でございます。したがって、私どもは現在ガイドラインということで一応の基準値的なものをつくっておるのでございますが、一応の安全の判断はそこでいたしている、こういうことでございます。その判断の基準について、先ほど来いろいろ御指摘あるいは御意見をいただいているのでございますが、もう少し時間を拝借いたしまして私ども鋭意研究努力してまいりたい、このように思っておりますので、御理解を賜ればと思っておる次第でございます。
  49. 網岡雄

    ○網岡委員 もっとやりたいのですけれども、時間が来ておりますから一言だけ言っておきますが、局長が言われたようにダイオキシンの種類が二百もあるということは私も百も承知でございます。しかし、これは各国も、その道の権威者が集まって一定の目盛りを示す判断というものは2・3・7・8を基準として換算をしていくということが国際的に通用した手法なんですよ。そういうことで進められておるのですよ。だから、それで出てきたものの数字は世界のどの国でも通用する一つの判断なんです、数字は別としまして、出てきたものはそういうものなんです。そういう中で、大体各国が十以下でおさまっているものが、ガイドラインというわけのわからぬようなことで十倍の百ということでいつまでもこれが一つの目盛りだと言っているようなことでは、国際化社会にある、その中で地位を占めようとする日本にとりまして大変情けない話だというふうに私思うのですよ。  それは、ちゅうちょをされる原因というのは、産業部門のところにある問題とかいろいろなものがあると思いますけれども、公害の一つの基準が進んでいく段階での道筋を今ダイオキシンがやっておるわけです。しかし、我々はそういう段階でとにかく公害の基準というものが、一日も早くやらなければいけなかったということだけは、公害の今までの取り組みをしてきた歴史の中で我々が知ったことですよ。だから、ダイオキシンについては、いろいろな理屈をつけるのじゃなくて、ちゃんと国際的に通用するものがあって各国もやっている、そういう状況にあるわけでございますから、やらないやらないという理屈をつけるためにいろいろなことを言っているのじゃなくて、 ないよりも決めた方がいいということでいくならば、それはやはり積極的にADIを決めていく時期にもう日本は来ているというふうに私は思うわけでございます。  最後の答弁で、関係者の衆知を集めてできるだけ早い時期にという御答弁をされましたので、そのくだりのところを私は十分理解をさせてもらいますが、ADIが早急に決定をされるようにぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  以上です。
  50. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次に、土肥隆一君。
  51. 土肥隆一

    ○土肥委員 私は、本日、民間社会福祉法人あるいは社会福祉施設、とりわけ事務費、人件費等措置費という部分について御質問をしたいと思います。  皆さん御承知のように、既に日本の社会福祉施設は四万九千余になりまして、在所者数はもう二百二十万、従事者数も五十七万七千人を超える、いわばもう日本の社会にとって欠くことのできない社会福祉制度が今実現しているわけでありますけれども、私は民間福祉に携わってきた者といたしまして、これまでさまざまな疑問を持ってまいりました。その中でも、特に措置費の中身というものが明快でない、あるいは知らされてないという部分がありまして、私は、なるべくその措置費というものの中身について、積算根拠について明快にすべきだとも思っております。  それから、施設整備につきましても、施設整備をするときの単価なり土地の取得、それに対する補助金等々についてもさまざまな問題を感じておりますので、徐々に詰めさせていただきたいと思っておりますが、本日は主に事務費の中でも人件費、そして、できましたら若干管理費の部分についてもいろいろお聞きしたいというふうに思っております。  私、民間福祉施設を見ておりましてつくづく思うのは、今日に至ってようやく施設運営、施設経営が安定してきた。そういう意味では、日本の国の福祉政策というものもかなりの水準に至ったというふうに思います。そして、そこで提供されております福祉サービスにいたしましても、かなり水準の高いものが実現できたことは大いに評価するわけでありますけれども、逆にこの措置費というもので守られてきました特に民間福祉法人、民間福祉施設、実は総予算のほぼ九割から、一〇〇%とはいきませんけれども、九割以上の運営費を補助金あるいはその措置費で賄われているわけであります。そして、それが民間福祉法人、福祉施設の安定化をもたらしたわけでありますけれども、どうもその措置費制度というあり方によって日本の民間福祉がある意味で制約を加えられ、制限を加えられてきている。そして、どうもやはり一元的、画一的な、言ってみれば行政スタイルといったようなものが民間にも身についてしまう。いわば民間福祉法人という独立した組織であるにかかわらず、やっていることは行政のスタイルと全く同じだというようなことが随所に見られて、したがって、あるいは非営利だとか公共的性格というものを非常に強く望まれますために、どうも施設自体あるいは施設運営者自体もっと大胆な創造的な生き生きとした福祉展開をすることが難しくなってきているというふうな感じが大変するわけであります。  つまり、ある意味で措置費制度というもので守られながら措置費制度の枠内でしか仕事ができない、そういうものにならされてきてしまいまして、言ってみれば単なる国の代行機関になってしまう、行政の代行機関になってしまうような傾向が出てまいりまして、そして、これだけの高齢化社会を迎えて、そして、これだけ資産価値が高まっている中で、民間福祉法人が持っております土地なりあるいは資産を十分に活用して、しかも高齢化社会というふうな我が国が初めて経験するような社会自体に民間福祉法人が生き生きと積極的にかかわりを持つ、そういうふうなことにはならないで、むしろ措置費に守られ過ぎてというと語弊がありますが、措置費が十分だというわけじゃなくて、措置費制度のスタイルをそのまま民間福祉法人が持ってしまって、そして、どうにもこうにも行かなくなっているのではないかと私は感じるわけです。  きょうは、措置費制度というものを国が実施している中で、将来民間福祉法人に対して一体国はどういう期待をし、また、どういう方向に行ってもらいたいと思っているのか、その辺を特に児童養護を中心にしてお尋ねしたいと思うわけであります。  まず、措置というような言葉も私は非常にひっかかるわけであります。行政用語としては何でもないのかもしれませんけれども、やはりそれを、民間人も措置、措置というようなことを言いますので、どうも役所的になってしまうわけであります。私がちょっと調べましたものでは、ちょうど児童福祉法ができます昭和二十二年に厚生省がGHQに福祉の措置と保障という法案を出した、それを英文に訳してGHQに出したそうでありますけれども、それはウエルフェア・プログラム・アンド・セキュリティーと書いてある。ウエルフェア・プログラム、要するに社会福祉のプログラムなんだというふうになっているわけでありまして、それが措置ということになってくると非常に問題を感じるわけであります。  そういうことを前置きにいたしまして、まず措置費制度は一体どういう経過で決められて、そして措置費制度に措置費というお金が裏づけされるわけでありますが、それはどういう根拠に基づいて決められているのか、お知らせいただきたいと思います。
  52. 土井豊

    ○土井政府委員 ただいまお尋ねの措置費制度でございますけれども、昭和二十三年四月に児童福祉法が施行されましたが、その発足と同時に措置費制度という形でスタートをいたしております。途中、昭和二十五年から昭和二十七年までの三年間、平衡交付金ということでこの制度がなくなった時代がございましたが、その後、昭和二十八年度に措置費制度に復活をいたしました。その後、制度の内容につきまして数々の改善を行いながら今日に至っているという経過をたどっております。  おっしゃるとおり、措置という言葉は確かになじみにくいという御意見もあると思いますけれども、私ども、一定の養護に欠けるような子供について、養護施設に入っていただくという行政上の措置を決定した後、その必要な経費についてきちっと担保していくという意味でこの言葉を、かたいという御批判はございますけれども、使わせていただいて今日に至っているという経過でございます。
  53. 土肥隆一

    ○土肥委員 中身に入っていきたいと思います。措置という言葉も、何かいい言葉があったら変えていただきたいと思うのであります。  措置費というのが民間福祉法人に交付されます。御承知かと思いますけれども、言ってみれば人件費それからいわゆる事務費事務費の中に人件費と管理費とございます。それから事業費がございまして、それがずっと厚生省の中で積算されまして、その全額、一定のモデルができて一定の基準ができて、児童福祉法によれば最低基準でありますけれども、それを今度はそこに生活しております入居者の頭割りで出してくるわけです。それを措置単価というわけでありますけれども、その措置単価が提示されて、それに基づいて各福祉施設が措置費を受けるわけでありますが、本日は特に人件費部分についてお尋ねしたいのであります。この措置費、ないしは人件費が中心でありますけれども、その人件費等の決定においてどういう基準を設けていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。     〔委員長退席、加藤(卓)委員長代理着席〕
  54. 土井豊

    ○土井政府委員 養護施設を例にとりまして御説明申し上げますと、人件費につきましては、必要な人員配置を考えまして、基準表で一定の入所児童の数に対応した人員は何人要るかという基準を設けております。そして、それぞれの職種ごとにどういう給与の格付で人件費を積算するかという基準を定めまして、一定の人数に対応したその施 設の人件費を積算するという計算方式で決めているところであります。
  55. 土肥隆一

    ○土肥委員 一言で言えばそういうことでしょうけれども、私は、厚生省の方で、福祉施設における職員の経歴や経験や年齢あるいは社会的な立場等も含めて、何か実態調査に基づいて人件費なり管理費なりが決定されているのかどうかお聞きしたいと思います。
  56. 土井豊

    ○土井政府委員 具体的に申しますと、施設における職員の給与につきまして数次にわたる給与の実態調査を行いまして、その結果に基づいて平均勤続年数と経験年数を出しまして、これをもとにして国家公務員の給与に当てはめて何級の何号俸というような形で格付をいたしております。養護施設で申しますと、直近の調査は昭和四十九年度にしたものでございます。  なお、一番数の多い保母さんでございますけれども、勤続年数七年というような形で格付を行って今日に至っているという状況でございます。
  57. 土肥隆一

    ○土肥委員 四十九年が直近の調査だということでございますけれども、そうしますともう十六年経過しているわけでございまして、この十六年間に物価がどれだけ上がり、また人件費等々がどういう状況にあるか、あるいは生活レベルがどれだけ変わってきたかということは十分予想がつくわけでありまして、やはりもう少し頻繁に実態調査はなさるべきだと思います。  今局長がおっしゃいましたが、私もこの資料を手元に持っているわけでありますが、これは平均しますと六・九年ということになります。これがいわば人件費の基本的な考え方、初めて就職しまして六・九、つまり七年ぐらいのところをモデルにして人件費を決める。例えば施設長ですと、児童施設で申し上げますと五十人以下では四の六ということになっております。四の六で二十一万九千百円。そして管理者の加算がありますので一〇%管理職手当がつきますから、それを入れましても二十四、五万円。御承知のように施設長というのはほぼ二十四時間拘束されておりまして、何も二十四時間施設にいるというわけではございませんが、今から十年ぐらい前までは施設に住み込んで子供たちと二十四時間一緒に暮らしているようなものでありましたが、今日施設内に住むということがだんだんなくなってまいりましたが、例えば施設長が本俸四の六で二十一万九千百円。これはどう見ても納得のいく額ではないわけです。行政職の四の六でいきますと、例えば係長さんは、いろいろ業種によって違うでしょうけれども、大体何級ぐらいなのでしょうか。
  58. 土井豊

    ○土井政府委員 正確に調べたものでございませんが、四級または五級という格付の方が多いのではないかと思います。
  59. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうしたら係長さんクラスですね。私、神戸市ですけれども、神戸市あるいは兵庫県で見ましても係長あるいは課長補佐ぐらいまでのようでありますけれども。要するに、四の六で施設長を位置づけるということは、その程度の評価しかないというふうに言わざるを得ないわけです。  ここで議論しても仕方がありませんが、一番中心的な保母さんにいたしましても行政職の二の四で十四万六千五百円、もちろん加算がございますが、年額にしまして百九十三万八千円。措置費の現行の格付、平均経験年数が七年、所長以下、四の六からずっと調理員は一級の十一ということになっておりますが、これが平均的な施設の勤続年数そして学歴等も含めて平均的なものだとお考えなんでしょうか。
  60. 土井豊

    ○土井政府委員 ただいまお話しの中の一番中心になります保母さんについて見ますと、最近における平均勤続年数を実態で調べますと六・三年というような状況になっておりまして、現在の格付が先ほど申しましたとおり勤続年数七年ということでやっておりますので、それほど乖離はしていない。ただ、施設長さんなんかはどうかということでございます。あるいは調理員さんはどうだ。我々いろいろな形で勤続年数の実態を見てみますと、確かに個々の施設におきましてはこの基準で当てはまらないというケースはあろうかと思います。ただ、措置費全体の仕組みとして全体としての人件費がそれで足りるか足りないかというような観点施設の運営を担保するためには必要であるということで、この基準は基準として、運用につきましては施設の実情に即したような運用をある程度やっていただくというようなことをお願いしておりまして、全体として現在の措置費では施設運営ができないというような状況であれば、これはいろいろ調査をさらに行った上で手直しというようなことも考える必要があると思いますけれども、現状においては何とか妥当な形になっているのではないだろうかと考えている次第でございます。
  61. 土肥隆一

    ○土肥委員 今保母さんの勤続年数をおっしゃったわけでありますが、これも資料をいただいたわけですけれども、寮母あるいは保母の、特別養護老人ホーム、児童養護、身障療護、この三つの平均勤続年数の一覧表をいただいているわけですけれども、確かに、例えば児童養護でいえば全体の平均、養護施設で平均六年ということでございます。これは私もかなり議論を事前にいたしましたが、つまり、措置費の範囲内で押し込めようとするから平均年齢がどうしても下がらざるを得ないんじゃないか。ちょうど児童養護でいけば平均六年、今の格付でいけば平均七年、もう少しいいじゃないかと。それで、保母さんというのはどんどんやめていくわけですね。この統計によりますと、もう一年未満で大体一八%やめていく。そして二つ山がありまして、一年から三年の間にどっと二八%やめます。それから、五年から十年の間にまたやめていくわけです。児童養護の場合はやめていかれる山が割になだらかに下ってまいりますが、例えば身障療護なんかは五年から十年でほとんどやめてしまいまして、十五年以上続く人なんというのは二%、二十年以上なんというと〇・一%、こういうふうな数字でございます。  これは鶏が先か、卵が先かという論理になるかもしれませんけれども、要するに福祉の現場というのは、特に寮母あるいは保母等の職場はどんどん回転させていく、その方が結局平均六・九年で出していただいているこの格付にぴったり合ってくるわけですね。ぴったり合うというところが私は非常に疑問でありまして、どうですか、福祉施設というのはそういうふうな、いわば定年まで勤めるようなところではなくて、どんどこかわっていくような職場でよろしいというふうにお考えでしょうか。
  62. 土井豊

    ○土井政府委員 ただいまお話しのとおり、比較的早くやめられる職員が多いという一面はあろうかと思います。私どもとしては、福祉施設、特に養護施設で申しますと、保母さんが中心的な担い手になっておるわけでございますが、結婚されたりあるいは子供が生まれたりしてやめるというようなケースもよく伺っております。  先生も施設をいろいろ運営されておられた御経験がございますのでよく御案内だと思いますが、ただ、私どもといたしましては、優秀な職員の方々には長く続けていただくということはどうしても必要なことだと思っております。したがって、現在の措置費という一定の運営の枠の中でどうしてもはまらないというケースが当然出てまいるのだろうと思っておりまして、その施設の平均的な勤続年数が長くなれば、その長い期間に見合って全体として人件費を上乗せするというような、これは民間施設給与等改善費という形で申しておりますけれども、平均勤続年数が長くなれば、それにスライドして上乗せの給与分が施設に行くようにというような措置もあわせて講じておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  63. 土肥隆一

    ○土肥委員 局長、民改費の方にお入りになりましたので、それでは民改費で、今の格付で、六・九年を一つの基本にして、ちょうど六・九年というのは経験年数モデルでいきますと民改費E階級なんですね。そうすると、AからHまでありますから、ちょうど真ん中あたりになるわけでありまして、ある意味で厚生省は平均的なところで出しておられる。ですから、この六・九年、つまり民改費 のE階級のところで、それより下の部分では措置費が余ると考えていいのでしょうか。  それから、E階級、六・九年を超えますと、Aまであるわけですから、Aまで民改費がずっと追っかけていって、それは措置費が足りなくなる、人件費が足りなくなるから民改費で追っかけていく。ちょうど六・九年というのがモデルになって、民改費ではEになるわけですね。そうすると、そのEのところで人件費が足りなくなったら民改費でずっとAまで追っかけていく、だからそういう意味では社会福祉施設は永久に破産しない、そういうふうに考えていいのでしょうか。     〔加藤(卓)委員長代理退席、委員長着席
  64. 土井豊

    ○土井政府委員 今申しましたとおり、この民間給与改善費の区分でございますけれども、先生御指摘のとおりAからHまでそれぞれ平均勤続年数が何年になるかということによって決めております。それで、お話のE階級、六年から八年末満という間のものに来ているのが、私どもの調査では二二・八%ぐらいがこの階層にありまして、一番多いのが、もう一つ上の八年から十年というのが二八%ぐらいになっております。いずれにしても、現在の格付より若干上のところへ多くが集まっているというのが実態だろうと思います。  ただ、私どもは、これは平均的な形で全体としての給与財源施設に行くようにする手当てという形で考えておりまして、これは足りるとか足りないということではなくて、このような形で給与財源を、施設に行きまして優秀な職員に働いていただく、もちろんこのほかにも特殊勤務手当等々の形でいろいろ御苦労に報いるという措置を講じておりますけれども、全体として施設運営が成り立ちいくようにきちっと考えていく、そういう思想を基本に置いて考えておりますので、仮に将来今のような基準で運営が困難になるというような事態が生ずるとすれば、これに対してどういう適切な措置を講ずる必要があるかということを検討することが必要であろうと思っております。
  65. 土肥隆一

    ○土肥委員 その都度適切な措置をするということであれば、その民改費の区分なり階級なりパーセンテージを変更することもある、そういうふうに理解してようございましょうか、答弁をお願いします。
  66. 土井豊

    ○土井政府委員 民改費につきましては、当初、昭和四十一年に一律三%というようなことでスタートをしまして、先生御案内のとおり、昭和四十八年に三つの区分にこれを改めました。その後、昭和五十一年に六ランクに、そして昭和六十三年から八ランクというふうに中身を改革をしてまいっております。  また、それぞれのランクに見合う人件費加算分というものの割合もその都度見直して改善してきているという経過がございます。したがいまして、将来におきまして、もしそのような必要が生じたというような事態になった場合には、私どもも過去の経緯を十分念頭に置きながら、民間福祉施設の運営が可能なように必要な措置を検討することが重要であるというふうに思っております。
  67. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうしますと、厚生省としては、将来も民間福祉施設に対しては措置費ですべての事務が賄われるような方向でこれを支えていく、措置費の改善も含めて維持、保持していくというふうに理解してようございますでしょうか。
  68. 土井豊

    ○土井政府委員 施設運営に対して、国として措置費という形で、財源的な責任を持つという形で運営をいたしているものですから、私どもは、措置費内容が施設運営が可能になるような内容であるということがどうしても必要であると思っておりますので、将来、現状のようなままでは運営ができないというようなことが起こりますれば、その段階で十分検討することが必要だというふうに思っている次第でございます。
  69. 土肥隆一

    ○土肥委員 大変ありがたい答弁だと思いますが、この民改費の区分別の養護施設の数を見ますと、既にA階級、十四年以上でも二十二施設あるわけですね。Bも六十二施設、Cが百。今後、民間福祉施設がこれからどんどんふえていくわけですけれども、同時に定着化が進む方向で指導していかなければならない、そのように私は思うわけであります。  例えば、都市部における民間福祉施設の人材の確保が非常に難しくなっているわけでございまして、これについては大臣にもお答えをいただきますが、東京都社会福祉協議会が「福祉展望」という本を出しております。去年の十月の雑誌でありますけれども、それを見ますと、東京都のいわゆる人材確保についての問題が出ておりまして、それは「社会福祉があぶない」、そしてヒューマンジョブとしての福祉職員が深刻な人手不足を来しているということを述べております。千七十八カ所調べたようでありまして、一九九〇年四月一日現在で約三割が欠員状況にある。そして、求人難をかこっておりまして、いわば非常に困難、やや困難を合わせると、八四%の施設が近年の人材確保に苦労しているようであります。その求人難の結果、利用者のサービスの低下とか過重労働あるいは職員の質の低下まで来しておるというふうなことが言われております。どうもこの民間福祉法人というのは、早くやめてもらうと言ったら語弊がありますけれども、やめざるを得ないような状況というのがあって、やはりそれは労働条件が、あるいは職場環境が魅力的でないということだろうと思います。  それで、この雑誌は提言をいたしておりまして、「人材確保へのポイント」として、給与を引き上げること、労働時間を短縮すること、休日、休暇をふやすこと、それから職場をもっと魅力あるものにする、あるいは福祉というイメージを変えなければならないというふうに述べております。  大臣、今、先ほどの寮母さん、職員の平均勤続年数が大体三年から五年未満で、もう五〇%以上消えていくというふうな状況、そういう中にあって、やはり厚生年金を掛け、社会保険も掛けておりながら結局生涯、定年まで勤めることがない実態があるわけです。身体障害者療護施設で、二十年以上でやめた人は八人。五千五十四人中八人、パーセンテージにすると〇・一%であるわけです。これはやはり福祉の現場が一般の職場や他の職種に比べていろいろな問題を持っている。今人件費の問題を言っているわけでありますけれども、魅力ある職場の環境づくりなども含めて、これだけ人手不足を来している中で福祉によき人材が与えられないということは利用者に対するサービスが非常に低下することにもなるのですが、大臣の所信をお伺いしたいと思います。
  70. 下条進一郎

    下条国務大臣 土肥委員にお答えいたします。  先ほど来施設の現状についての極めて行き届いた御調査の上での御質疑、拝聴いたしておりまして、今お話がございましたように、この大事な職場が若い人が中心に極めて短い期間で職場を去らざるを得ないような環境になっておるというのはまことに残念なことだと思う次第でございます。  我が厚生省の方といたしましては、状況の把握に常に努めておりまして、この重要な福祉行政の一部を支える職場といたしまして、職員の方々が将来に希望を持ってその職責を全うできるように、これからも鋭意協力をいたしまして条件を整えるようにやってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  71. 土肥隆一

    ○土肥委員 大臣予算委員会に行かれるそうでございますので、また質疑を続けさせていただきます。  現行の措置費制度でございますが、先ほどは人件費、特に本俸についての基本的な考え方をお聞きしたのですが、もう一度そこへ戻りますが、例えば施設長というようなものが二十一万円くらいの本俸でやってられるかということになるわけです。皆さん、もう御承知のように施設長がその施設を引っ張っていくわけでありまして、施設長に対する不十分なというか、こう言っては悪いですけれども、役所の係長さん程度の扱いではよき施設長も得られないというふうに私は思うのであります。管理職手当がつきますけれども、例えば福祉施設では交際費というのは一切ないわけですね。交際費なんか使っていたら早速監査でぶっつぶされるわけでありまして、例えば施設長が職員 とちょっと食事をしようとか、私的にこの職員ともう少しヒューマンタッチな関係を持たなければいけないと思えば、ちょっと飲みに行ったりとか何かがしょっちゅうあるわけです。あるいは職員、保母さんたちに日ごろビビッドな生活をしてもらうためにいろいろ働きかけも必要なわけです。あるいは研究をしたり本を買ったりとか、さまざまな出費があるわけでありますが、それはほとんど本俸ないしは給与にはね返ってないわけでありまして、どうでしょうか、もう少し思い切った格付を施設長にしてもらえないでしょうか。
  72. 土井豊

    ○土井政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、全体としての施設の運営というものができるかどうかということが私どもの観点としては一番大きいわけでございます。ただ、一つ一つ取り出して、特に施設長さんの給料は、今先生お話しの小規模施設におきましては二十二万円弱、管理職手当をつけてもそれの一割増程度ということでは低過ぎるではないか、大規模施設でもそれよりか若干上にしても、数万上という程度ではないかという御指摘かと思います。  確かにそういう点は、私どももかつて四十年代でございますが、実態調査を三回ほどこの施設についてやりました。そのときに、結局実態の平均の勤続年数というものをもとにして計算をしてみますと、そのときは調理員の方々がむしろ低いというような結果が出て、他の職種の方々についてはそのような結果が出なかったということで、調理員についての必要な手直しを行ったという経緯がございます。ただ、それも相当古いではないかというようなお話かと思いますけれども、私どももよく先生のお話を念頭に置いて、今後とも関係者お話もよく伺いながら研究してまいりたいと思います。
  73. 土肥隆一

    ○土肥委員 今の、大臣の答弁もそうでございましたけれども、大変総論としては結構でございますが、ここでこれだけ福祉ニーズが高まる中で、よき人材、そして創造的な人材を集めたいと思えば、やはり人件費の見直しをしなければならない。大幅な見直しをしなければ、今後あっちこっちで人材難を来すのではないかというふうに私は感じております。都市部にあります施設長はあきらめておりまして、人集めについてはもうどうしようもないというようなことを言っております。  ひとつ突然の御提案なのですけれども、かつて学校の教職員の人材確保のための人確法ができましたが、この際思い切って福祉人材確保法案的なものを近々に私は素案でもつくって御提案したいというふうに思っておりますが、それくらいの思い切った施策をしないと、今後の増大する福祉ニーズに福祉法人が豊かにこたえていくことはできないというふうに思いますが、人確法案のようなことについてはどういうお考えでしょうか。それとも、もう全部これは民改費で追っかけていけば大丈夫なのかどうかということです。
  74. 土井豊

    ○土井政府委員 御提案については私どもも十分勉強させていただきたいと思いますが、人材確保という観点からは、昭和五十三年であったと記憶しておりますけれども、保母さんたち、直接処遇職員について六%の特別の上乗せ部分というものをいたしております。したがって、勤務の困難性に伴う特殊勤務手当、これは四%であったと思いますが、それプラス六%分という形の、学校の教員と全く同じというわけではありませんけれども、一応それに相当する手当は昭和五十年代においては行ったという経緯も念頭において検討することが必要なのではないかというふうに思います。
  75. 土肥隆一

    ○土肥委員 もう一つ福祉の現場で人件費とともに問題になっておりますのは、職員の定数であります。  児童養護でいきますと、児童六名に一名、小規模加算等もございますけれども、そうすると六名で一人の保母、指導員ということになるわけですが、例えば児童養護で六名で一名といったときに、その六人で一人だったらどんな処遇が基準としてあるのか。その六名とお決めになった根拠は何なのかをお聞かせください。
  76. 土井豊

    ○土井政府委員 職員の配置基準をどういう形で決めてきたかという経過を若干申し上げさせていただきたいと思います。  当初、昭和二十三年当時は十人に一人というような形でスタートいたしまして、その後三歳未満児は昭和四十五年に三対一、それから年少児は昭和四十七年に五対一、就学児童は七対一というふうに改正を経ております。五十一年度になりまして、三歳未満児は二対一、年少児は四対一、就学児童は六対一という現行の配置基準が決められております。  これが具体的にどのような処遇に結びつくかというお尋ねかと思いますけれども、私も直接、専門家ではありませんので、なかなかお答えしにくいわけでございますが、このような基準を決めるに当たりまして、中央児童福祉審議会の専門家の先生方を中心に、施設のいろいろな実態を勉強しながらどういう基準が妥当かということで御審議いただいて、このような基準を決められたというような経緯でございまして、一応現行の基準で適切なる処遇が確保できているものというふうに考えている次第でございます。
  77. 土肥隆一

    ○土肥委員 私はそうは思わないのでありまして、まして時間短縮、そして週休二日制に向かって職員の定員配置基準というのはやはり早急に対処しませんと、結局、現場の混乱を来すというふうに考えます。  例えば六対一、四対一、二対一というのが決められたのは昭和五十一年でございますが、その後一貫して定数が変わらないわけですね。その変わらない定数の十五年の間に日本の子供は相当変わった。したがって、養護施設においてもその処遇状況が非常に変わってきている。例えば高年齢化しておりますね。中学生、高校生の段階で措置されてくる子供もいるわけです。教護院からやっと出てきたというような子供もいるわけです。それから、既に情緒障害やその他さまざまな問題性を持って入ってまいります。そして、今日では子供が減っておりますので、どうしてもやはり定員を保ちたいということで、無理してというか福祉施設側もそれを受け入れようとしますと、もう一人の子に四六時中ついていかなければならないということも現場では間々あるわけであります。昔の戦災孤児の時代、十対一でやっていたのが六対一まで来たわけですから、それだけ前進したとは思いますけれども、しかし、施設の中で、特に養護施設の中で子供たちに本当の子育てをしたい、本当にいい成長を遂げさせたいと思えば、とてもこういう水準ではいかないと私は思うのです。  具体的な数字を挙げると、それで議論が重なってしまいますから申し上げませんけれども、私のおりました施設でざっと計算しましたら、保母、指導員含めて八名なんですけれども、一日平均職員は五・五人しか出てこない。そして、その五・五人しか出てこないのを職員が三交代でいるわけですから、どこか瞬間的にとると一人か二人しかいないというような瞬間もあるわけです。もちろん学校へ行っている時点と——だから早出と遅出というのがあるわけですけれども、しかし、夜の時間になるべく職員が集中するようにするわけですが、言ってみれば、そこで一つけんかでも起これば職員はそっちにかかってしまって、あとはどうにもならないというようなことがあるということで、私は時間の都合もございますが、ぜひとも定数の見直しをするべきときに来ているのではないかというふうに痛切に感じておりますが、いかがでしょうか。
  78. 伊吹文明

    ○伊吹政府委員 今先生の実地の御経験からのいろいろな御質問がございまして、私も実は地元の身体障害者団体の会長をいたしております。現場の立場に立ちますと、おっしゃっておることはまことに身につまされることでございますので、待遇の問題、定数の問題、しかし、どちらもこれは財源とは切り離して論じられないものでございますから、その負担をしてくれる納税者との関係で考えねばなりませんけれども、特に定数の問題は時代とともにいろいろなことが変わっておるというのは、私はよくわかりますので、また来年度の予 算編成の中で財政当局とも協議しながら、温かい気持ちで対応してまいりたいと思っております。
  79. 土肥隆一

    ○土肥委員 ありがとうございました。終わります。
  80. 浜田卓二郎

    浜田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ────◇─────     午後一時二十九分開議
  81. 浜田卓二郎

    浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。五島正規君。
  82. 五島正規

    ○五島委員 本日は大臣に、今日深刻な問題となっております医療福祉マンパワー問題、とりわけ看護職員不足の問題、さらに、今日の疾病構造の変化あるいは医療ニーズの変化に対応した医療体系の確立についての御所見、またいま一つ、廃棄物の適正処理の問題についてお伺いいたしたいと存じます。  まず冒頭大臣に、今日非常に深刻な問題となっております看護職員の不足の問題について、どのように御認識になっているかをお伺いしたいというふうに考えます。
  83. 下条進一郎

    下条国務大臣 委員にお答えいたします。  ただいまお話の中にありましたように、看護職員が非常に大きな責任を持って医療に当たっておる。しかしながら、医療が高度化し、また患者さんの寿命が延びて高齢化社会になってきた、こういうことから、絶対的な数で申しますと看護職員の数が足りないということに相なっておるわけでございます。現実は八十万二千人という数でありますけれども、需要の方が大きい。しかも、医療の高度化という問題もまたございます。それから、看護職員勤務体制、さらに資質の向上、休日の確保あるいは夜勤の時間の問題等々がございますので、どの角度から見ましても看護職員の数は少ない、これを増強しなければならないという現状にあることは先生のおっしゃったとおりでございます。  これに対しまして私たちの方といたしましては、看護職員の増強について一番最初にやるべきことは現状認識である。そのために、ことしは新たにまた計画を練り直しまして、現実にはどういう状態になっているか、各医療機関ごとにそれぞれ状況が異なります。それらをまず調査をいたしまして、それに見合った長期的な計画を立てようということに相なっておりますけれども、それには若干の時間がかかりますので、この平成三年度の予算におきまして、看護職員の増強に関係いたします予算といたしましては前年度比約四割の増で、これは緊急に処置をするということに相なっておるわけでございます。
  84. 五島正規

    ○五島委員 ただいまの大臣の現状認識のお話につきまして、私も基本的認識においてはそのとおりであるということで非常に安心いたしました。問題は、大臣もおっしゃいましたように、現在の状況をどのように変えていくか、どのように改善していくかという問題であろうかというふうに考えます。  そこで、お伺いしたいわけでございますが、厚生省平成元年五月に、平成六年度には需給が均衡するとした看護職員需給見通しを発表されましたが、その中で、平成六年の段階でも都道府県ごとにおいてはかなりの過不足が起こってくるということで、都道府県ごとの格差是正を図る、地域医療需要の特殊性や看護職員の需要状況に応じた適切な方策が用意されなければならないとも述べておられます。  ところで、我が党は川俣健二郎議員を団長といたしまして、去る二月の七、八日、看護職員確保対策の現状及び看護職員の賃金及び労働条件につきまして、全国医療と共同して茨城県において実態調査を行いました。茨城県では、厚生省の需給見通しにおきましても平成六年度においてなお七百名の看護職員の不足が見込まれております。これでは困るわけで、今回、一つの民間病院を除きまして、他は市民病院、日赤、済生会などいわゆる中核公的病院において調査を行ったのですが、各病院共通して、大変な努力をなさっているにもかかわらず、前年度退職者の年度当初補充が困難であるというふうに訴えておられます。こうした状況を勘案しますと、茨城県では平成六年において厚生省の需給見通し、すなわち七百名の不足という状況を上回る不足者が生じる可能性もございます。こうしたことは大変困るわけで、早急に需給見通しの見直しと、それに基づく看護職員確保計画の策定、これがなされなければなりません。そのためには国の段階においてこうした施策を進めていくと同時に、現場におきましては医療団体の代表あるいは医療労働組合の代表を含めた各都道府県ごとにこうした計画の策定というものを実施していく必要があるというふうに考えますが、いかがなようにお考えでございましょうか。
  85. 下条進一郎

    下条国務大臣 ただいまおっしゃいました厚生省でつくりました需給見通し、そのような数字が出ておりますけれども、先ほど御説明いたしましたように、状況が大分変わってまいりました。例えば、ゴールドプランがことし二年目に入ってきた、こういうようなことなどもございますので、根本的に看護職員の需給見通しについて見直しをするということになっております。それで、この需給の状況につきましても、今お話にございましたように、地域格差は大分あるわけでございます。そしてまた、医療機関の種類によってもこれはまた大分違います。例えば、大きな病院、専門の病院であれば、これはもう看護婦さんのかなりの経験を求めるような、医療技術も必要なところがございます。一方、開業医の診療所でおやりになっている場合には、准看でも間に合うとおっしゃる先生も中にはいらっしゃるわけでございます。それらいろいろな事情を総合見ながら、根本的な需給計画を立てていかなければならないということであります。  ここの中で幾つかに分けて整理しなければならないと思いますけれども、一つは、やはり新しく看護職になられる方の供給と申しましょうか、その方々が喜んで勉学につき、そして看護職に行かれるような条件を整えていくということでございます。これは、今度の予算でもかなりの手当てをしてございます。  それから、一たん看護につかれて看護職をやっておられた方が退職される、この方々の復職を容易にするということもまた大変必要なことだというふうに思います。その関係で、各県にセンターを設けまして、かつて看護職の経験を持っておられた方々の経歴の把握に努め、そしてまた、連係プレーで容易にまた再就職をしていただける条件になったならばおいでいただく、こういうようなことができるような道も開かれている。さらにまた、看護職員方々の士気と申しましょうか、そういうものを高揚するためにも看護の日というものをことしは制定いたしまして、我々国民全体が看護職の皆様に敬意を払うと同時に、働いていらっしゃる方々が生きがいを持って看護の仕事に当たっていただけるような条件を一つ一つ整えていきたい、こう考えておるわけでございます。
  86. 五島正規

    ○五島委員 看護婦の供給問題につきまして、看護婦の養成問題を軸としながら今おっしゃったようなことを、それが無意味であるとは申しませんが、果たしてそれだけでいいかどうかというふうな疑問を持ちます。その点につきましてまた後ほど触れさせていただくといたしまして、厚生省平成二年の八月に事務次官を本部長として保健医療福祉マンパワー対策本部を設置し、平成三年、すなわち本年四月をめどに取りまとめを行い、それまでに中間報告を予定するというふうにしておられました。また、その中で保健医療福祉マンパワーの需給見通しについて新たに検討することになっておりましたが、この作業は現在どのようになっているか、お伺いしたいと思います。
  87. 熊代昭彦

    熊代政府委員 先生御指摘のとおり、昨年の八月に事務次官を本部長といたします保健医療福祉マンパワー対策本部を設置いたしまして、保健医療福祉マンパワーに関します現状の分析それから今後の見通しなどを検討しながら、処遇の改善、就業の促進、養成力の拡充強化などの対策を、主として中長期的な視野に立って総合的に検討いた しているところでございます。  現在の状況でございますが、看護職員、ホームヘルパーなど、「高齢者保健福祉推進十か年戦略」、いわゆるゴールドプランでございますけれども、その実施に当たりまして特に緊急性の高い職種を中心に、中間的な取りまとめをするということで鋭意検討をしているところでございます。
  88. 五島正規

    ○五島委員 当初、四月には全体の取りまとめを行い、それまでに中間報告を予定しておられたわけですが、大変おくれているようでございますが、その理由はどういうことでございましょうか。
  89. 熊代昭彦

    熊代政府委員 ただいま大臣が申し上げたことでもございますけれども、需給見通しにおきまして、その考えるべきこととか潜在看護婦状況把握とか、もろもろのことがございまして、当初考えましたよりも非常に多くの課題があるということでございますので。上辺に走らないで、根本的に深く掘り下げまして検討いたしたいということで、当初見込みよりは若干時間を食っている、そのような状況でございます。
  90. 五島正規

    ○五島委員 今審議官もお触れになったわけでございますが、この保健医療福祉マンパワー対策本部におきましては、潜在マンパワーの活用対策が検討されることになっておりました。先日、厚生省から提出いただいた資料によりますと、平成元年末現在、看護職員の就業者数は約八十万二千人となっております。  ところで、現在、免許の取得者が何名程度おられるのか、言いかえれば看護免許をお持ちになっておりながら看護職に従事しておられない方が何名程度おられるのか、さらに、そのうち看護職以外の職に従事している人はどの程度あると推測しておられるのか、お示しいただきたいと思います。
  91. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 看護職員の資格を持つ人の数の問題でございますが、いわゆる看護職員につきましては、各種調査によりまして就業者数は把握いたしているわけでございますけれども、先生御指摘のように有資格者のうちのついていない人の数について、いろいろな推計等はございますけれども、確たる数字はないということで、現在も新しく推計作業を進めているところでございます。  過去の例で申し上げますと、五十八年末においては六十四万六千人の看護職員が就業しておったわけでございますが、この年に実施いたしました厚生行政基礎調査によりますれば、このほかに約二十二万人の潜在看護婦がいるという推計がございます。それからまた、別に昭和六十一年の財団法人厚生統計協会の「日本の患者と医療施設」というものによりますれば、看護婦についてだけでございますけれども、六十一年末の看護婦免許保有者五十八万五千人のうち就業していない者が二十五万人ぐらいいるという推計等もございますので、そこら辺の数字を見ながら新しく推計の作業を現在やっているところでございます。  二番目の、いわゆる潜在看護職員のうち看護以外の仕事を行っている者の数というお尋ねでございますが、申し上げましたように、五十八年に実施いたしました厚生行政基礎調査によりますれば、潜在看護職員二十二万人のうち看護以外の仕事に従事している者は約七万四千人、働いていない者は十四万六千人という推計があるわけでございます。
  92. 五島正規

    ○五島委員 五十八年のデータはあるけれども現在のデータはないということでございますが、一説によりますと、最近の看護職員看護職への就業率は六〇%強であるとも言われております。また、潜在資格者が四〇%近くも存在して、看護職業者と離職者との比率が約三対二になっているというふうな指摘もあるわけでございます。また、今局長お話しになられましたように、昭和五十八年の厚生行政基礎調査によりますと、看護職員の就業者数六十四万六千人に対して離職者数は約二十二万人ということでございまして、そのうち他の職種に従事している者は七万四千人。言いかえれば、その当時の看護職の就業者と離職者の比率は約三対一である。すなわち、昭和五十八年に看護職に就業しておられる方と離職しておられる方が三対一であったのが、最近では三対二近くまで上がってきていると言われているわけでございます。  もちろん、この原因につきましては、高齢の有資格者の増加といったようなこと、あるいはその他原因は多々あると推察されます。しかし、その中でいま一つ考えなければいけないのは、有資格者の中において看護職から離れて他の職種を選ぶ人が多数出てきているのではないかということが推測されます。私の関係しております高知県下のある看護婦の養成学校におきまして、ここ数年間、看護婦看護職離れが非常にふえている。卒業当初においてはほとんどの人が看護職につくが、三年、五年たってみると看護職の従事者が五割を割っているという話も聞いています。こうした状況について何が原因とお考えか、お伺いしたいと思います。
  93. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 私どものデータを見ますと、就業者数と離職者数の関係を例年眺めてみますと、離職者数の割合がそう急激にふえているわけではない。全体の総数が看護婦さんについてはふえておりますので、そういう面で総数自体はふえておりますけれども、就業者数対離職者数の割合を見ますと、そう大きくふえていないと私ども思っておるところでございます。  先生お尋ねの、何で離職をするのか、他の職種につくのかにつきましてはいろいろな御意見がございます。看護婦さんが夜勤等かなりきつい仕事をしておる、それから、ほかの職種と比べますと仕事の割合に処遇条件が必ずしもよくない、あるいは家庭の事情等いろいろ要因があるわけでございまして、そこら辺の要因が、いろいろな御意見等ございまして、どれが確たるものであるかよくわかりませんけれども、看護婦さんの仕事の面、家庭の面、いろいろな問題がそれぞれ絡み合いまして、それぞれの事情によりましておやめになる方が一定の割合いるというぐあいに思っておるところでございます。
  94. 五島正規

    ○五島委員 局長の御答弁でございますが、きょうは深くその問題について触れるつもりはございませんけれども、看護職に従事している人と離職しておられる方の比率がそんなに昭和五十八年当時と変わっていないという認識は大変違うのではないか。少なくてもその比率において現在一・七倍ぐらいにふえていると大体推測されているということにつきまして、局長もそういう数字をお聞きになったことはないということはないと思います。ぜひ、このあたりにつきまして、重要な問題でございます、御調査をお願いしておきたいと思います。  今、看護婦不足の中におきまして、看護労働労働条件及び看護婦の賃金という問題が一つ大きな問題として上がってきているのではないか。テレビにおきまして、看護労働が三K、いや六Kだというふうな形でも取り上げられます。本来、人の命を預かるという最も社会的に尊敬されてしかるべき、あるいはそういう三Kとかいう形で評価されるべきでない職種がそのようにマスコミにおいてすら取り上げられるということに対して、私は医療従事者の一員として非常に悲しみを感じるわけでございますが、この点について少しお伺いしたいと思います。  まず、今全国的に週休二日制度というものが広がってきております。当然看護職種においてもこの週休二日というものが普及されるべきであることは言うまでもありません。同じような労働条件が適用されるということは当たり前でございます。  ところで、現在の看護労働とりわけ基準看護というものを考えてみますと、週労働四十八時間時代に定められたものでございます。もちろん、公務員労働者の場合は四十四時間労働というところも多数あったかと思いますが、民間一般においては四十八時間労働という時代に定められた基準でございます。それが、週四十時間労働へと変わってくる中において、基準看護というものにつましても当然見直しがなされなければならない思います。例えば、週労働四十時間への移行を行った場合、患者二・五人に対して一人の看護婦看護を行うという特二類基準看護、これが、週四十八時間労働のこの基準が週四十時間労働に変わりますと、三人に一人の、いわゆるこれまでの特一類の基準看護と同じ看護しか行うことができない。また、三人に一人の、これは前の特一類の基準看護は三・八人に一人の看護というふうになりますし、四人に一人の看護では四・八人の患者さんに一人の看護というものしか行うことができなくなります。この状況看護労働者に対しては、当然世間一般労働基準、労働条件が適用されるべきである。その結果を患者にしわ寄せすることによって看護力を手薄くさせていいのかどうか、その点についてどのようにお考えになっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  95. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 現在の特一あるいは特二類の基準看護で週休二日制なり、あるいは二・八体制に対応できるのかという御質問だと思います。  御案内のように、現行の基準看護制度につきましては、患者の病状に応じた適正な看護を行えるように看護婦等の配置状況等に応じた段階的な加算の仕組みをとっておるところでございます。  そこで、お尋ねの特一類、特二類の看護体制がとられている場合のケースでございますけれども、私どもは、看護婦等の配置状況から見て二・八体制あるいは週休二日制に対応することは、特一類あるいは特二類の場合には一般的にはおおむね可能である、こういうふうに考えております。例えば、特二類は二・五人に一人でございます。五十床の場合ですと、看護要員数が二十人になります。それを当てはめてみますと、週休二日制で五、六人が休む。深夜で二人、準夜で二人、日勤が十ないし十一人という勤務体制の中で、何とか週休二日制それから二・八体制というのはとれるのではなかろうかと思っておりますけれども、なかなかぎりぎりの線かなと思いますし、なお、これから検討しなければならない課題かなと思っております。
  96. 五島正規

    ○五島委員 今保険局長がお答えになられたその点について、私もそのように思います。すなわち、病院勤務看護婦にとりましては、夜勤勤務というのは必ずついてくる問題でございます。二人夜勤、月八回以内の夜勤体制、これは昭和三十年代の末から看護労働者の常識的労働条件というふうになっているわけです。今日、この二・八体制が維持できていない医療機関においては看護婦の就労が一層敬遠され、そうした病院においてはますます看護婦不足に拍車がかかっているということは御案内のとおりだと思います。  それで、こうした二・八体制を維持するためには、先ほど局長もおっしゃっておられたわけですが、一看護単位として、夜勤できる人が最低十六名、それに非夜勤の責任者を入れると大体十七名、こうした全く夜勤できない人がいないという条件において十七名という看護婦が、二・八を維持していくためには最低必要でございます。これは今での四十八時間労働の時代においてはそうでございました。ところが、先ほども申しましたように四十時間労働に変わってまいりますと、特二類の基準看護が特一類の基準看護と等しくなってしまうということでございます。したがいまして、これまでの状況におきまして、特二類の基準看護におきましては、四十三床の病棟を一看護単位ということで、一人の責任者を除いて全員が夜勤できるという状態では、辛うじて二・八体制が守られました。あるいは特一類の基準看護すなわち三人の患者に一人の看護という基準看護においては五十一床の病床におきましてこうした条件が満たされます。言いかえれば、特二類が昔の特一類と等しい人的配置になりますので、その四十時間労働におきましては特二類の基準看護において五十一床の病床、現実には五十床の病床ということでもって辛うじて二・八体制が維持できる。それで、特一類の基準看護であった場合どうなるかといいますと、一看護単位が六十三床ないと二・八体制は維持できません。また、あるいは夜勤回数が非常に増加するか、それとも日勤者の数を大幅に減すという変則勤務にならざるを得ません。あるは四人に一人の看護体制では、何と八十二床を一看護単位としないと二・八体制が守れないということになってまいります。  御承知と思いますが、一看護単位のベッド数が増加するにつれまして看護婦の疲労と疾病が非常に増加してくること、各種調査にもございます。この調査につきましては、例えば自治労の衛生医療評議会が調査した内容、これは岡山大学あるいは奈良医大と一緒になりまして調査検討しているわけですが、六十床を超えた状態においては看護婦さんの疲労、例えばさまざまな肉体、足がだるいとか肩が凝る、頭が痛いといったようなさまざまな疲労性の症状というものが急激にふえてまいりますし、それだけではなくて、看護労働そのものの中身として、例えば機械的に看護することがある、あるいは患者の症状を見逃す、必要な看護ができない、看護にミスをしそうになる、患者と接触する時間が少ない、これらがすべて五十床以下の病床に比べて倍以上の訴えになっております。  そういう意味におきまして、一看護単位のベッドをふやすことによってこういうふうな二・八体制を維持するとするならば、看護婦の疲労というのは非常に強まってまいりますし、また十分な看護ができないということにもなってまいります。こうした夜勤回数の増加あるいは一看護単位の増加という労働条件の劣悪化を見逃すならば、今後ますます看護婦の離職者をふやす原因になっていくというふうに考えるわけでございまして、その点についてどのようにお考えなのか、二・八体制及び適切一着護病床について今どのようにお考えになっておられるか、ぜひお伺いしたいと思います。
  97. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 看護単位を何床にするかという問題がまずあるわけでございますが、それにつきましては、それぞれの病院におきまして患者さんの病状、態様等を勘案して決められるものであるというぐあいに思うわけでございます。先生御存じのとおり、いわゆる新生児とかICUというのは非常に小さな単位でございますし、それからかなり長期な療養を続ける患者さんというのは五十床というような形で、病気の状態に応じましてその規模がおのずから決められるものだというぐあいに思うわけでございますが、先生御指摘のように、大きな単位になりますればそれだけいろいろな疲労度とか何とかということで、看護婦さんの労働強化につながるということも当然私どもよく理解できるところでございます。  そのようなことで、いずれにいたしましても、この労働時間の短縮等に伴いまして看護婦さんの需要増というのは増してくるわけでございますので、そういう面で、先ほど大臣からも御答弁いただきましたように、看護婦さんの数をいかに確保するか、いかにやめないような施策を講ずるか、あるいは看護婦さんのいわゆるイメージアップを図るような対策をとるかというようなことにつきまして、私ども、これからも一生懸命やってまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  98. 五島正規

    ○五島委員 それぞれの患者さんの病状によって看護の質が違ってくる、あるいは内容が変わってくる、それは言うまでもございません。私は、現在看護婦労働条件という側面から、二・八体制と一看護病棟ということについてお伺いしているわけでございます。  そういう点から申しまして、もし四十時間労働制に移行する、移行することによって、結果として非常に大きな一看護単位に病床がふえ、そのことによって看護の中においての疲労、そして、もう一方において看護そのものに対する、さまざまな患者に対する配慮が不十分であるという自覚の増加というものが出てくるとするならば、これは間違いなく看護婦さんがその看護労働から、看護職からの離脱の原因になるだろうし、またその反面、夜勤回数をふやすことによって逃そうということになれば、当然そのことも労働条件のさらなる悪化ということで、看護婦への、看護職としての就労というのが減ってしまう危険性が非常に多い。これは既に、二・八ができていない病院ほど看護婦がますます減っているという事実からも推測できるわけでございまして、国のシステムとしてそのようなことになっては大変だ。そういう意味 においては、看護需要の見直しの中において、看護婦労働条件が世間一般労働者の労働条件と匹敵する内容にしていくということを前提として、ぜひ見直しをお願いしたいというふうに考えます。  さらにいま一つ、看護労働者の賃金と他の産業労働者の賃金との比較でございます。  今、日本の勤労国民の所得は年間約四百二十万というふうにも言われております。それに対しまして、看護婦の年間所得というのは非常に低く抑えられております。低いというのが実態でございます。  こうした賃金の問題につきまして、単に看護職の賃金が低いという問題だけでなしに、保険医療におきましての看護料というものを見てみましても、非常に不当に低く見られているということを指摘したいと思います。例えば、特三類と特二類の基準看護の差額で人件費を計算しますと、看護婦の年間一人の総人件費が三百八十六万九千円。これはさまざまな夜勤料あるいはその人の保険料等々含めたいわゆる年間総人件費でございます。これが三百八十六万九千円というふうに、特三類の基準という極めて高度の重症患者を対象とした医療におきましても、夜勤労働という非常に過酷な労働が入っているにもかかわらず、勤労国民の平均からいいますとまだ追いついておりません。  また、外来の看護婦看護料というのは算定の根拠はないわけでございますが、今回訪問看護のシステムができました。この訪問看護のシステムの中において計算してみますと、御案内のように、今寝たきりのお年寄りを訪問看護やった場合、正看の人で一回三千六百円、准看の方で一回二千九百円となっております。今、仮に二人で訪問看護を行い、そして日に五人あるいは六人のお年寄りの訪問看護、これは二人の看護婦さんで寝たきりのお年寄りを一日に五人ないし六人診ていくというのは非常に重労働でございます。それを年間二千時間実施した。年間二千時間こんな仕事しておりますと、看護婦さん間違いなく腰痛になると思います。そういう意味では非常に非常識な計算であることを認めた上で、仮に年間二千時間、二人で一日に五人あるいは六人の寝たきり老人の訪問看護を行ったということを前提にしてはじいてみます。  仮に、日に五人の寝たきり老人の訪問看護を行ったということになりますと、高看で年間総人件費が二百二十五万円、准看では百八十一万二千五百円。日に六人、年間二千時間ずっとやったということで、年に診られるお年寄りの数が全部で七百五十人。したがいまして、高看で二百七十万、准看で二百十七万五千円という人件費しかこの保険医療においては看護料として計算されておりません。こういうふうな保険医療の中においても出てまいります看護料というものが、現実に非常に過酷な労働であるにもかかわらず、看護労働者の賃金が国民の平均的な所得に比べて非常に低い水準に抑えられているというふうに考えるわけでございますが、その点についてどのようにお考えでございましょうか。
  99. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 現行診療報酬上の看護料が非常に低く抑えられているのではないかというお尋ねだと思います。  先生御案内のように、看護婦さんの業務というのは療養上のお世話のほかに、診療時の補助という業務がございまして、私どもは看護料のみで看護婦さんの給与が出るという考えではございません。いろいろな診療報酬上の各点数、手術をやられた場合にはやはり看護婦さんがお手伝いなさる、そういうことを込み込みにしまして、診療が行われる、入院患者が入ってこられる、その場合の積み上げの中によって医療機関が全体的な適正な経営ができるように点数上あんばいをしているということになっているわけでございます。したがって、一つの看護料だけで人件費に見合わないじゃないか、あるいは訪問看護料だけで見合わないじゃないかという御批判は当たらないのではないか。やはり全体の各点数から得られます総収入の中で、看護婦さんの人件費にどの程度充当できるのかなという観点から見るべきものではないかと思っております。  さりながら、やはり看護問題が非常に重要になっているということで、前回の四月改定におきましては、看護料をおおむね一〇%相当という大幅な引き上げを行ったところでありまして、私どもは十分その辺のことは考えていかなければなない、かように思っておる次第でございます。
  100. 五島正規

    ○五島委員 今の保険診療表の中におきまして、人件費に相当する部分が保険点数の中に出ているのは、看護料あるいは理学療法料あるいは医師の医学管理料等々といった非常に限られた部分。そして、そのほかは何かといいますと、薬価であるとか、あるいは検査による点数であるとか、そういうふうなものでございます。言いかえますと、現在の診療報酬表というものを見ていきますと、人件費についてどのように保障し担保していくかという思想は全くございません。  今、医療に対してマスコミから、例えば薬価差益、非常に悪であるように言われます。私も、薬価差益に依存する医療というのは、薬づけ医療、さまざまな弊害を起こしてまいります。あるいは検査差益に依存する医療、非常に問題があると思います。しかし、現実問題として、薬価差益、検査差益以外において何によって医療を経営していくのか。人件費が保障されていない。保険においては全く保障されていない人件費、多数ございます。あるいは施設の償却その他等々、医療経営の中において数々のそういう問題があるわけでございますりそういう意味においては、現在の診療報酬というものは、薬価差益、検査差益によって医療経営を維持させるのだ、そこにすべてが集中するという内容になっているというふうに思います。  ところが、そういうふうな診療報酬表であるがゆえに、先ほども申しましたように、看護婦さんについていえば看護料というのがありながら、あるいは訪問看護料というのがありながら、看護婦さんが訪問看護して、不可能だろうけれども、年間二千時間訪問看護をやった場合というふうに私は先ほど申しました。これはもう一〇〇%その訪問看護料によってしか、ほかのものはないわけです。しかし、現実問題としては、看護婦さんが注射されたりあるいは手術の介助をされたり、さまざまなことがある。そういうふうな技術料からも看護料が入ってくる。言われるのはよくわかります。しかし、その一つ一つを見ていった場合に、人件費も足りない。そういう意味では、現在の診療報酬表というものを抜本的に改正して、いわゆる技術料というものを含む人件費を中心として、人件費を担保するような診療報酬表を策定していくということに基本的に変わっていかないと、こうした問題が解消しないのではないかというふうに考えますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  101. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 診療報酬につきましては、御指摘のように薬とか検査に頼らないで、技術本位で、技術重視の立場の診療が行われるように、私どもも改定の都度、技術重視の改定をやってきたつもりでございます。  あわせて、薬価基準については、薬価の引き下げを図る、あるいは検査については、検査点数のマルメと申しますか、乱用されないような合理化を図る等々によりまして、先生御指摘のように薬、検査に依存しない、技術本位の診療が行われるように、私どもは改定の都度そういうことを志向してきたつもりでございます。  さらに、人件費の保障がないではないか、いわばそのとおりでございまして、今の診療報酬体系は、人件費が幾ら、物件費が幾ら、その他のものが幾らというような固定的な形で診療報酬が組み立てられているわけではございません。得られました収入全体の中から、例えば機械を買うか、看護婦さんの給料を上げてやるか等々、上げられた収入の中でどう分配されるかという発想で診療報酬ができ上がっているわけでございまして、それも病院の自主性を尊重する意味でそれなりにメリットのある制度だなと私どもは思っておりますけれども、そこを御指摘のように人件費という形でお払いするということになれば、これはもう診療報 酬体系の仕組みそのものを抜本的に変えなければならないわけでございまして、それは一朝一夕にはできないわけでございます。私どもは、時間をかけて、いかなる体系が二十一世紀にふさわしいかということは勉強はいたしておりますけれども、現在のところ、改定の都度、技術重視の診療報酬にいたしたい、それから、物件費、人件費等々の社会経済情勢に合わせて診療報酬を改定をしていく、そういう考え方で取り組んでいるということで御理解をいただきたいと思います。
  102. 五島正規

    ○五島委員 時間がございませんので、非常に不満でございますが、次へ進ませていただきます。  今、医療の中においてさまざまな保険外負担の問題が取りざたされているわけでございますが、とりわけその中でお世話料、介護料という問題について、私どものところへも非常に多くの方々からお話がございます。  先日厚生省からお示しいただきました保険外の差額徴収、実費徴収の状況というものを見せていただきますと、例えば、お世話料というものにつきまして、昭和六十年度には二七%もあった、ところが平成二年には一%に下がった、だからこの問題は基本的に解決したのではないかというふうな御意見でございました。ちょうど昭和六十二年に厚生省老人保健部の老人保健課長の名前でもちまして通達をお出しになっておられます。こうしたお世話料に相当するようなものの徴収について、それは認められないという通達が出されました。その成果であるかとも思われます。しかし、現実には患者さんの方から、お世話料の徴収あるいは介護料の徴収ということについての訴えは減っておりません。  その点について見てみますと、昭和六十年度には、おむつ代というところでの差額の徴収が四三%であったものが平成二年の調査では七三%と三〇%もふえています。雑費は一四%から一六%と二%ふえているだけなんです。お世話料だけが二七%から一%に減っておるわけですね。お世話料が例えばこういうおむつ代とか雑費とかいう形で、調査の上では、化けてと言えば言葉は悪いけれども、すりかえられて報告されているのではないか。そのあたりについて、差額の徴収の状況、そして、それが本当にそうであるのかどうか、厚生省の通達にも出されましたように、本来医療保険において給付されているものが差額として重複して個人から徴収されているというふうなことがないのかどうか、そのあたりについてお伺いしたいと思います。
  103. 岡光序治

    岡光政府委員 先生おっしゃいます調査は、私どもが老人病院を対象にアンケートの形で調査をしたものでございまして、そういう意味では、先生おっしゃいましたような病院側の判断というのが相当かかわっていると思います。  御指摘のとおり、昭和六十二年に通達を出しておりまして、治療行為及びそれに密接に関連したサービスまたは物を徴収するのは困ります、ただし、日常生活上の利便として必要な、治療、看護とは直接関係のないサービスまたは物は、これは保険外負担としてそれを徴収することは可能ですというふうに、治療行為に関連するか関連しないかということで整理をして指導しているところでございます。そういう意味では、名目だけで実態がちっとも変わっていないんじゃないか、そういう面も十分調査をしなければいけないと私は思います。そういう意味で、考え方は一応整理をしておりますので、その考え方に従いまして、今後とも関係の医療機関の指導監査、そういったものの趣旨の徹底に努めてまいりたいと思っております。
  104. 五島正規

    ○五島委員 ぜひ、そのあたりについて御調査をお願いしたいというように思います。  実は、大臣にどうしても廃棄物の適正処理に関する質問をしたいと存じますが、まだお見えになっておりませんので、その前に医療供給体制について一点お伺いいたします。  今日、疾病構造、医療のニーズの変化というものが非常に変わってまいりました。現行の医療法というのは、基本的には昭和二十三年に成立したものであり、当時と現在では疾病構造の変化を初め医療レベルの革命的な変化あるいは国民生活の変化があり、そういうふうなものを考えるときに、当然医療の供給システムというものも変えていかなければならないということは言うまでもございません。しかるに、昭和二十三年の時代において規定された、例えば看護基準であるとか施設基準であるとかいうふうなものがいまだにそれをも満たしていないという状況。すなわち、言いかえれば、ここまで国民生活が豊かになったにもかかわらず、病気になった患者にとってみたら、満足な対人サービスというものについて昭和二十三年の基準もいまだに満たされていないということについては、これは大変な問題だというふうに考えます。そのあたりについてぜひひとつ御所見をお伺いしたいと思います。  あわせまして、今日の疾病予防あるいはプライマリーケアの確立、それを軸とする医療供給システム、この問題については厚生省もかつて盛んにおっしゃっておられたわけで、当然現在もそのようにお考えだろうというふうに思います。しかも、高齢社会を迎えて医療費が非常に増大するという状況考えた場合に、最も効率がよく、かつ国民自身も納得し望む医療費の抑制は、一つは疾病の予防であり、そしていま一つは、成人病疾患を中心とする疾病の早期発見、早期治療であるというふうに考えます。厚生省はこの疾病予防あるいはプライマリーケアの供給システムの確立についてどのようにお考えになっておられるのか、とりわけ国民の初期医療中心を占めております診療所医療機能について厚生省のお考えを伺いたいと思います。  以上について、まずちょっとお伺いしたいと思います。
  105. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 先生お話ございましたように、医療法は昭和二十三年につくったものでございまして、その医療法によりまして、いわゆる基本的な枠組みから見ますれば、全国的には医療施設の整備等量的な面が十分確保されたというふうに思うわけでございます。その後、先生のお話のように医療を取りきます環境が非常にさま変わりしたというようなことで、これからの二十一世紀に向けての医療供給体制をどうつくっていくのかというのが大きな課題であるというぐあいに認識いたしておるところでございます。  先ほどから先生お話ございました医療法に定める病院医療従事者の配置基準を守ってない病院があるということにつきましては、まことに遺憾であるというぐあいに思っておるところでございます。医療法に定めます基準を下回っている病院に対しましては具体的な改善計画を提出させ、必要な指導を行う等、都道府県に対しまして厳正に対処するよう強く指導いたしておるところでございます。今後とも医療法に基づきます職員配置が守られていない病院に対しましては重点的に指導強化を行ってまいりたいというぐあいに考えております。  それから、第二点目のプライマリーケアに関するお尋ねでございますが、人口構成の高齢化なり疾病構造の変化等に対応いたしまして、今後の医療供給を考えていく場合にはプライマリーケアを重視いたしまして、疾病予防から早期発見、診断、治療、リハビリテーションに至る包括的かつ継続的な医療を担う体制の確立が重要であるというぐあいに認識いたしております。このような体制の確立のためには、日常の健康管理なり健康相談あるいは日常的な諸疾患に対します適切な診断、治療を十分に行いますとともに、必要に応じまして専門医療機関等への患者の紹介をする等、包括的かつ継続的な医療を担うための役割を担う医師が必要でございまして、診療所の医師におかれましては、このような役割を担っていただくことが今後重要になってくるというぐあいに考えておるところでございます。厚生省におきましては、このような医師の役割を家庭機能という形でとらえまして、家庭医に関する懇談会報告書に基づきまして家庭機能研修事業等を実施いたしまして、家庭機能の普及施策を推進いたしておるところでございます。
  106. 五島正規

    ○五島委員 今の局長お話、ぜひ医療法の中にも盛り込んでいただきたいものだというふうに思います。  大臣お帰りになりましたので、廃棄物の適正処理に関する質問をさしていただきいと思います。  二月十五日にこの廃棄物の適正処理に関する法律改正案の閣議決定が行われる予定であるというふうに聞いておりましたが、どのような事情で延期されたのか、また、今後の見通しはどうなっておるのか、お示しいただきたいと思います。
  107. 下条進一郎

    下条国務大臣 廃棄物処理の関係の法案につきましては今関係各省と調整を急いでおるさなかでございます。したがいまして、今お話がございましたような特定した日がまだ決まっているわけではございませんけれども、なるべく早くこの調整を終えてこちらに提出さしていただきまして、慎重な御審議をお願いしたいと考えておる次第でございます。
  108. 五島正規

    ○五島委員 関係省庁との調整によって当初の構想が後退を余儀なくされているといったような事態はないだろうというふうに思いますが、その点大変心配しております。例えば昨年の生活環境審議会の答申によりますと、大型テレビ、冷蔵庫それからタイヤ、自動車、オートバイなど市町村による処理が困難な一般廃棄物について厚生大臣が指定し、一定の要件のもとに市町村が製造業者などに引き取りを求める、または市町村処理費用の一部について負担を求める、あるいは市町村が製造業者の協力を求めて処理に当たることができるよう新しい制度創設を検討すべきであるとしています。このような新しい制度法律上どのようになっていくのか、ぜひお知らせをいただきたいと思います。  さらに、適正処理困難物につきまして、製造業者が確実に回収責任を果たすようになるのかどうか、その点についてぜひ大臣にはっきり御答弁をいただきたい。この点が今度の改正案の眼目の一つで、国民の関心も極めて高い。調整中のために明確な答弁ができないというのであれば、調整に当たる厚生大臣の決意をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  109. 下条進一郎

    下条国務大臣 廃棄物につきましては、これはいろいろな種類のものがあるわけでございますけれども、その中で今特定された、要するに巨大廃棄物と申しましょうか、自動車、自転車、オートバイあるいはまた家電等の大きな冷蔵庫というようなものの取り扱いについての問題だと思いますけれども、こういう問題につきましては、これが製造者の段階から廃棄物に至るまでの間に、より処理しやすいような形にしたらどうかという、製造の段階の問題から、さらに、廃棄物になってからの分別収集あるいはまた、それの廃棄物の具体的な最後処理の問題、いろいろ段階がございます。したがいまして、厚生省といたしましては、これらのものが適切に処理されて、廃棄物が妥当な形で最終の形におさまるというような方向を方向づけするために、関係各省にそれぞれのお立場で御協力をお願いするような方法で今御協議を進めておる、こういうことでございます。
  110. 五島正規

    ○五島委員 いま一点。生活環境審議会は、製品が廃棄物となった場合の処理困難の度合い、資源化の可能性といったことにつきまして、製造業者があらかじめ評価し、そして必要な対応を講じていくことが必要であるというふうにしています。この点につきましても法律上明確にされることを我々は期待しているわけでございますが、見通しについてはどうでございましょうか。
  111. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 市町村の行います廃棄物事業におきまして、処理が困難にならないようにあらかじめ評価をし、その線で努力をしていただくということで昭和六十二年にガイドラインを定め、それでの協力をお願いをしておるところでございます。その方向での御協力を徹底を図っていきますとともに、いわゆる適正処理困難物全体の扱いの中で製造段階での配慮あり方について検討いたしておりまして、その線で法案をまとめる努力をしておるところでございます。
  112. 五島正規

    ○五島委員 今国会には廃掃法改正案がこの社会労働委員会に提案されるばかりでなく、商工委員会には通産省から再資源化促進法案が提案されます。そこで、これらの法案の審議の進め方について、この際委員長並びに与野党の理事方々に次の四点についてお願いして、私の質問を終わりたいと思います。  その第一は、社労、商工、環境、地行など関係委員会による連合審査によってこれらについて審査すること。第二は、そうした場に極めて多岐にわたる関係者をできるだけ多数、参考人、公述人としてお招きすること。第三に、廃棄物処理施設や不法投棄の現場に委員会として積極的に調査に出かけること。さらに第四といたしまして、自治体の業務に重大な影響を及ぼす法案、具体的にはこの廃棄物関連法案等につきましては、ぜひ統一地方選挙前に、統一自治体選挙の前に、本会議でも政府提案と各党の代表質問を行って、自治体議員の候補者及び有権者に対して十分な情報を提供するというふうな審議をぜひお願いして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  113. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次に、遠藤和良君。
  114. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私の持ち時間は三十分という短い時間でございますから、質問も簡潔に行いますから、御答弁も説明は結構ですから、はっきり決意なり意欲あるいは結論の部分を明確に積極的に御答弁をお願いしたいと思います。  厚生省は先日、平成三年度の国民医療費、二十一兆七千二百億円と推定しました。大体毎年一兆円ずつ伸びているわけですけれども、このまま増大をし続けますと医療保険制度そのものが崩壊しかねない、こういう危惧を私は持っているわけです。で、厚生行政を主管する大臣はこの医療費の適正化について具体的にどんな展望を持ち、政策を持っているのか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  115. 下条進一郎

    下条国務大臣 今お話が出ましたように、医療費は毎年伸び、さらに、その実額も大変な大きな金額になってきております。この間新聞に出ました平成三年度の見通しは、御承知のように平成元年の実績、それから平成二年の実績見通しがまだできない段階で、計数的に事務屋が伸ばしたという数字でございますけれども、かなりのテンポで伸びるであろうということはその趨勢として言えると思います。しかしながら、今高齢化社会になっておりまして、お年寄りも赤ちゃんも、あるいは障害のある方々も、十分な医療を受けられて快適な生活ができるような条件を整える、これは国民ひとしく希望している状態でございますから、そういう意味において、良質の医療を適切に供給するということはこれは大事なことである、このように試算してございます。  その全体の医療費の伸びにつきましては、いろいろな考え方があるわけでありますけれども、私の方といたしましては、望むらくは国民所得の伸びの中におさまるようにというようなことでございまして、最近はおおむねそういう傾向が見られる、こういうことでございます。
  116. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 私は、医療の改革ということはいろいろなところで言われているのですけれども、やはり国民の側に立った医療の改革を今こそ断行すべきではないのか、このように感じているわけです。それでやはり国民の側から考えますと、医療費の適正化考える場合に大変大事なことは、重複検査とか薬剤の過剰投与ですね、これを何とか防止する有効な手段を考えるべきだ、これが国民の声でもあると思うわけでございますが、それを実行するに当たって、私は大変有効な手段として提言をしたいのでございますが、医療用光カード、これをぜひ厚生省も検討してもらいたいと思います。  私ども公明党は厚生部会で、一昨日、東京医科歯科大学で研究導入されております医療用光カードの現場を見てまいりました。この小さなカードをもらってきたのですが、一枚の小さなカードでございますが、このカードの中に二百八十万文字入る。それからA四版の用紙で千二百ページ分入る。それから普通の電話帳一冊分ぐらいの情報が 全部入る。私たちの生涯の全健康データを記憶させることもできるのですね。  もしこの光カードが、将来日本国民、全国民が誕生と同時に持って、日本全国どこの医療機関でも生涯にわたってこれを使用することができるようになったら、どういうふうな状態になるのだろうか、こういうことを私は考えてみたのですが、こうしますと、国民は自分自身が生まれて以来の健康状態を全部ずっとここにインプットしておくことができるわけですね。あるいは過去からのデータは全部蓄積されている。そして、どこでどういう検査を受けたか、あるいはどこでどういうふうな治療を受けたか、そのデータが全部残っている。したがいまして、検査の重複とか過剰投薬ですね、薬歴も全部記入できるわけです。こういうことを防止するように医者に言うこともできるし、医者もそれを見ることができる。お医者さんもまた、現在いろいろな診療をしているわけですが、現在の時点だけで判断をしている。その人の過去のデータが全部この中に入っていることができますと、より正確な診断ができる。いわゆる点の診断じゃなくて線として本人の健康状態を観察できる、こういうことでございますから、より正確な判断を迅速にできるという効果がある。しかも、病院間で互換性がありますと、どこの病院でどういうふうな治療を受けたかということが全部わかるわけです。適正な医療をやっているかどうかということも全部わかるわけですね。こういうことをぜひ、国民医療費を適正なものにしていくためにも、この光カードの導入を厚生省はぜひ考えるべきではないのか、このような考え方を持っております。  そこで、いろいろ関係者に意見を聞いてみますと、この統一のフォーマットをどうつくるかということが大変大事なわけですね。一番最初にそういうものをつくっておかないと、ばらばらの研究機関でいろいろ研究していますと、互換性がないですから、ここの病院では使えるけれどもここの病院では使えない、こうなると意味がなくなるわけですね。ですから、一番最初に統一フォーマットをつくるという問題を解決しておかないと、このメリットはなくなる、こう思うわけでございます。ぜひ厚生省は、高い見地からこの光カードの導入を積極的に検討されたらどうか、このように考えますが、いかがでございましょう。     〔委員長退席、石破委員長代理着席〕
  117. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 御指摘の光カード、ICカードを活用いたしました健康管理システムにつきましては、私どもといたしましても、二十一世紀に向けての我が国の社会をつくります場合におきましては、非常に有用であるというぐあいに思っておるところでございます。先生お話がございましたように、国民の一人一人がICカードなり光カードを持ちますことによりまして、カードを利用いたしました健康管理システムというのは有効な方法の一つであるというぐあいに考えておるわけでございます。  しかしながら、一方におきましては、患者のプライバシーの保護の問題あるいはカード及び情報の入出力をどうするかというような問題もあるわけでございます。そういう面で、厚生省におきましては、昭和六十二年度から平成元年度までに保健医療カードシステムについてのモデル実験を行ってまいりました。平成二年度におきましてその結果をいろいろ検討いたしまして、平成三年度予算案におきましては、このモデル実験の結果を踏まえまして全国レベルでのカードシステムの普及、定着の可能性を探るためにカード配付対象の拡大、それから、先生お話ございました他システムとの連携等の実験、開発を行うべく、保健医療新カードシステムについての予算を計上いたしたところでございます。この中におきまして、先生お話しございましたように、フォーマットの統一の問題、互換性の問題等も当然検討しなければならない課題であるというように思っております。  今後、研究の成果を踏まえまして、良質で効率的な医療確保し、国民の健康増進に努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  118. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 昨年度でございましたが、この平成三年度の予算編成に当たりまして、我々公明党の厚生部会といたしまして大臣に要望した。そのときに、やはりこの医療カードをぜひ予算計上しろ、こういう要望をいたしました。その結果、今おっしゃいました保健医療新カードシステム開発研究費ですか、単年度でございますが、初年度として二千九百万円計上した。これは大体三年間やるということでございますが、大体どういうことを具体的に考えているのか。私としては、やはりモデル地区をつくって、例えば小さな町村でも結構でございますけれども、人口が一万人だとか、そのぐらいのところで事業をやって、いろいろなノーハウを蓄積していくということがいいのではないかな、こう思うわけでございます。この間の予算要望のときにも、全国五カ所くらいをモデル地区にしたらどうか、もっと予算もつけろ、こういうふうに話をしたわけでありますが、具体的にはどういうような考え方を持っておりますか。展望を聞かせてください。
  119. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 先生お話しございましたように、平成三年度予算で約二千九百万円の予算を計上いたしているところでございます。この検討の項目につきましてはいろいろな項目があるわけでございますが、このシステムの開発、モデル実験ということで二カ所を想定いたしまして、そこでそのカードシステムの適用について、あるいは他のシステムとの提携、統合化というような問題等々につきまして実験的にいろいろやってみたいというぐあいに思っているところでございます。
  120. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 関係者方々は大変長い間いろいろな努力をされてこの研究を推進してきたわけですが、その皆さんの声を聞くと、特にこの光カードについてでございますけれども、これは、文部省はかなり積極的な評価をしてくれているんだけれども、厚生省は全く意欲がない、こういうふうな評価があります。ICカードだとかあるいは光カードだとか、IDカードの中にはいろいろあるんですけれども、ぜひひとつ総合的に検討する審議会を早急に厚生省の中でつくるべきだ。そして、厚生省としては、やはり医療行政は全般にわたって厚生省が主管をしていることでございますし、これが国民の中に全国展開をしていくとなると、厚生省は一番大きな役所ですから、積極的に、勇猛果敢にやる必要があるのではないか、このように思いますが、決意どうですか。
  121. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 先生御指摘のように、このICカードあるいは光カードにつきましては、自治体におきましてもかなり熱心にいろいろ検討しているところもございます。そのようなことで、私どもといたしましては、この方式につきましてはこれから非常に有用であるというような観点から、関係自治体ともいろいろ相談しながら、あるいは時に応じまして私どもから委員の参画等もやりながら、そういう自治体での取り組みについてもいろいろな面で指導してまいりたいというふうに思っております。  基本的には、私どもいわゆる医療情報システム開発センターにおきましてそういう先生お話しのような委員会を設けまして、先生お話しございましたいろいろなカードのメリット・デメリットの比較でございますとか、あるいは他のシステムとの統合の問題につきましていろいろその委員会の中で検討いたしておりまして、私ども、それに参画しながらいろいろ新しい知恵を出しながらやってまいりたいというふうに思っております。
  122. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 ぜひ厚生省の中に審議会をつくって総合的に検討を進めてもらいたいと思うのです。  そのときにぜひ検討の項目の中に入れてもらいたいことはインフォームド・コンセントです。今重要視されておりますね。要するに、医者と患者との同意ですね、納得の上で医療を進めるという話です。医療行政を見てみますと、今、三時間待って三分しか診てくれないとか、それも一方的な話で終わってしまう。お医者さんの方も本当はゆとりのある行政をしたいのでしょうけれどもそうなっていない。これは医療行政全般にかかわる問題だと思うのですが、患者さんの病気の状態を親 切丁寧にお医者さんが話ができる、その媒介になるのがやはり光カードだと思うのです。光カードにあなたの今の心臓の状態はどうですよとか、あるいはレントゲンの写真の姿はこうですよとか、そういうものを全部映しながら、医者と患者がどういう治療が一番その人に合った治療か話し合いながら、合意の中、納得の中で医療行政を進めていく、これがこれからの医療の姿ではないかと思うのです。このインフォームド・コンセントを実現できる医療体制、そして、そのインフォームド・コンセントが実現する手段としてぜひ光カードの活用も考えてもらいたい、こう思うのですが、どうですか。
  123. 長谷川慧重

    長谷川(慧)政府委員 確かに、先生の御指摘ございましたように、光カード等につきましては、過去の病歴なり検査記録等がここに載っかるわけでございますから、そういう意味で点じゃなくて長いフォローの中での患者の診察なり指導ができる。しかも先生お話しのように、インフォームド・コンセントの中におきまして過去の病歴、経歴を見ながら医師と患者さんが話し合うという場に活用するという面では非常にメリットがあるというぐあいに思うわけでございます。  その光カード等につきましての研究は私どもこれからも一生懸命やってまいりたいというぐあいに思うわけでございますが、先生御指摘の、医師と患者との話し合いの場ということにつきましても、私どもこれから非常に大切なことであるというぐあいに思っておるわけでございます。そういう意味で、患者さんが十分にお医者さんと話をし、お医者さんも患者さんの話をよく聞いた上で、時間をかけてお互いの信頼関係の上で医療が行えるような形のものをぜひこれからもやってまいりたいというように思っておる次第でございます。
  124. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 では、別の話をします。  健康保険について聞きたいのですけれども、健康保険法第一条を読むと、健康保険が適用されるのは業務外の事由によるものと限定をしておるわけですけれども、限定の理由はなぜですか。
  125. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 健康保険法におきましては、かつては疾病等につきまして業務上外の区別なく保険給付の対象にいたしていたわけでございます。しかしながら、昭和二十二年に労働基準法が制定されまして、労働者の業務災害について使用者に補償義務を課すとともに、このような業務災害に対する補償を確保する等の観点から労働者災害補償保険法が制定されたことに伴いまして、同年、健康保険法を改正いたしまして、今御指摘のように、疾病等のうち業務外の事由によるものについて保険給付の対象とするということで現行法ができておるわけでございます。
  126. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 これは第九十二回帝国議会衆議院の議事録でございますけれども、今おっしゃったような提案理由の説明があります。昭和二十二年の話ですね。確かに、労働基準法ができまして、労働者災害補償保険法ができた、したがって、業務上の事由によるものはそこに移譲したんだ、ですから健康保険法は業務外の事由によるものに限る、こういうふうな整理をしているわけですけれども、ここで問題なのは、労災法は代表権を持つ事業主は対象外になっていますね。そうすると、代表権を持つ事業主が業務上の事由によって負傷した場合は労災保険の対象になりません。とともに健康保険の対象にもならない。ということは、その人が仕事の上でけがをした場合は全部自分の、自己負担で全部医療費を払わなければならない、こういう状態になっているのですけれども、一体これでいいのですか。
  127. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 法人の代表者の業務上の事由による疾病についての対応が現行法制上できていないのではないかというお尋ねでございました。  確かに、御指摘のように、私ども健康保険は、そういう代表者の方々もその法人に使用されているという形をとりまして健康保険の被保険者にいたしておりまして、その限りにおいては業務外の疾病についてはいわば保険証がきくと申しますか、医療の給付がなされているわけでございますけれども、現行法上「業務外ノ事由ニ因ル疾病」と書いてあるために、何とも私どもの方から給付の対象にはできかねるということでございます。
  128. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 それで、医療給付を行うほかの制度を見ました。例えば国保があります。老健法があります。これは業務外の規定はありませんね。業務外、業務上、ともに適用になりますね。それから公務員共済、これは公務によらないものを対象とすると書いてありますが、公務によるものは公務員災害補償法ですべて適用されますね。それから船員保険法は業務上、業務外、ともに給付の対象になっていますね。  こういうような横並びの論理からいっても、健康保険法のみ業務外に限定しているというのはちょっと問題ではないのかと私は思います。この谷間を埋める努力をやはり厚生省としてもするべきではないのか、私はこう考えるわけですが、例えば健保法第一条に規定されている業務外の限定の規定を削除して、そのかわりに労災法の適用を受けた者は除外するという規定を新たに設けることができれば全部救済できるわけですね。こういうふうなことを考えておりませんか。考えるべきだと私は思うのですが、どうですか。
  129. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 実は、私ども正直に申し上げまして、社長さん方の業務上の疾病について問題意識を持ってなかったわけでございます。確かに御指摘のように、国民健康保険につきましては、これは被用者、使用者ということではなくて、自営業者、農民の方が主として入っておられる健康保険制度なものでございますから、疾病についての損害賠償的な発想がないものですから、業務上外の区別を問わず対象にしている制度を持っているわけでございます。  そういう意味からいうと、私ども問題意識がなかったわけでございますので、御指摘でございます、私どもとしても、そういう制度を持っているということの均衝からいって現行法では難しいわけでございますけれども、何らか工夫、勉強させていただいて、どんな形での適用なりあるいはカバーというものがあり得るのか、ちょっと時間をいただきまして研究をさせていただきたいと思うわけでございます。
  130. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 問題意識を持ってないのがおかしいと思うのです。やはり国民全体の保健だとか医療だとか、そういう厚生を全部面倒見る役所ですから、もっと温かい目で、法に谷間がないのかどうかというのを常に見てもらいたい、こういうふうに要望します。  それから、労働省に聞きたいのだけれども、厚生省は先ほども話が一部ありましたが、昭和二十四年の保険局長通知でこういうことを言っています。「今後これら法人の代表者又は業務執行者であつても、法人から、労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者の資格を取得させるよう致されたい。」いわゆる事業主も健康保険の被保険者となることができる、こういうふうな規定をしたわけでございますが、労働省は法人に対してどういう見解を持っているんだということなのです。  例えば一人親方の人だとか、あるいは三百人以下の法人の代表者というものは特別加入制度を認めた。しかし、三百人以上の法人の代表者には特別加入はありませんね。ということは、厚生省考え方と大分違う。厚生省と同じく、法人の代表者であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者については法人に使用される者として労災保険の対象とすべきだ。こうすれば谷間はなくなるんですね。これは労働省の努力だと思うのですが、労働省、どうですか。     〔石破委員長代理退席、委員長着席
  131. 坂根俊孝

    ○坂根説明員 お答えいたします。  労災保険は、労災保険法第一条の目的にもございますように、労働者の業務上または通勤途上における災害をこうむった場合に必要な保険給付を行う制度だということで、この労働者でございますが、先ほどお話もございましたように、労災保険が労働基準法に規定する使用者の災害補償責任を担保する制度として発足したという経緯等から見まして、労働基準法上の労働者と同一であると いうふうにされているわけでございます。そういうことで、労働基準法におきましては、代表権を持つ事業主のように、使用者との関係において使用、従属の関係に立たない者は労働者でないということで、労災保険においても原則として保険給付の対象になってないわけでございます。  特別加入でございますが、労災保険におきましては、労働者でない方につきましても特に必要があると考えられる方につきまして例外的に任意加入の特別加入制度を設けているわけでございまして、そういうことで、そういう場合には労働者に準じて保険給付の対象にしているということで、あくまでも例外的だというふうに考えているわけでございます。
  132. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 労働省の見解は、歴史的経過はわかるんだけれども、現在の時点に立っての見方が非常に狭いと思うのです。例えば医療給付という観点から見れば、雇用主も労働者もともに国民なんですね。それから、雇用主といっても、実態的には法人に使用されている側面から見れば労働者であるわけなんです。それがいまだに、雇用主は労働者でないんだ、こう言っているわけです。  平たく言うと、こういう問題なんですね。三百一人の従業員を持っている会社の社長さんが、労働者と一緒に、日曜日も出勤して、一生懸命に働いていた。ところが、この人が仕事中に事故になった。そうするとこの社長さんは、事業主ですから、労災の保険の適用は受けられないわけですね。とともに、今度は健康保険の適用も受けられないんですよ。そうでしょう、これは業務上の事故ですから。そうすると、一生懸命働いていた三百一人の社長さんは、全額自己負担でやらなければならないわけです。そうでしょう。そして一方、働かないで、同じ三百一人の従業員の社長さんが遊んでいてけがをした。これは、遊んでいてけがをしたときは全部健保の対象になるわけです。これは矛盾じゃないですか。  労働省と厚生省は、何か縄張り争いをして、そっちの方だから、こっちの方だからと言っているのではなくて、こういう人が実際にいる、これは矛盾だ、法に谷間がある証拠だ。これは両省が話し合いをして、労災の適用にするのか、あるいは健保の適用にするのか、どっちかで救済すべきだと思うのですが、どうですか。
  133. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 先ほども申し上げましたように、確かに谷間の問題があるわけでございます。どうするか、法体系上難しい問題があろうかと思いますけれども、検討させていただきたいと思います。
  134. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 時間が参りましたから、大臣に一言。今私が平たく申し上げたような問題が実際あるわけです。三百一人の従業員を抱えている社長さんが、油まみれになって働いているときに事故になった人は労災の保険の適用もできないし、そして健康保険の適用にもならない。遊んでいて事故になった場合は健康保険の適用になる。これはいかにも矛盾じゃないのか。これは、厚生省、もっとしゃんとしてもらって、これは労働省にやらせるべきは労働省にやらせる、あるいは厚生省でやるべきものは厚生省でやる。これははっきり大臣、きちっと決意を表明してもらいたい、こう思うのですが、どうですか。
  135. 下条進一郎

    下条国務大臣 遠藤委員お話、今日の現状において、法の立て方からいって今のような谷間があるということは事実でございます。これはいろいろな経緯があってこういう法の立て方になっていると思いますけれども、矛盾の面をつかれたお話も今ございますので、その点は関係省と協議をいたしまして、検討いたします。
  136. 遠藤和良

    ○遠藤(和)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  137. 浜田卓二郎

  138. 大野由利子

    ○大野(由)委員 食品の安全性に関しまして、何点かお伺いしたいと思います。  我が国の輸入食品の急増ぶりは大変すさまじいものがございまして、今既にカロリーベースで五一%が輸入食品に頼っている、そういう現状でございます。国民の健康を考えると、輸入食品の安全性の確保は極めて重要な課題だと思います。厚生省では輸入食品の安全性の確保のために、検疫体制強化策として輸入食品の検疫を行う食品衛生監視員を平成三年から四十四名追加して百四十三名にし、また残留農薬の検出など高度な検査を行う検査センターを横浜に新たに設置される方針を決定されましたが、まず初めに、こうした厚生省の御努力に敬意を表したいと思います。その上でお伺いしたいと思います。  輸入業者の提出します輸入届け出書ごとにこの輸入食品の検査が行われているわけですが、昭和六十年以来大変急増しておりまして、昭和六十年には約三十八万件、また、それが平成元年には六十八万件へとほぼ倍増しております。輸入食品を検査する食品衛生監視員は、昭和六十年の六十七名から平成二年には九十九名へと三十二名ふえておりますが、これも届け出件数の急増に比べますと、この監視員のふえ方は非常に少ないのではないか。昭和六十年は監視員一人当たりの輸入届け出件数は五千七百四十二件ですが、平成元年では監視員一人当たりに対しまして七千六百六十五件と約二千件ふえております。これが一つは、有害食品を水際でチェックが十分できなかった、できない一因にもなっているんではないか、そのように思います。  これから平成三年から三年間にわたりまして、約倍増、二百名にされる御予定の御計画があるようですが、現在行政検査は輸入届け出件数に対して三・五%、またそのうち試験室内検査はわずか一・一%という現状でございます。これが二百名になりましても、現在の不足状態が少し是正される程度ではないかと思うのですが、質的向上につながるのかどうか。二百名体制になれば、行政検査率また試験室内検査がどれくらいにふえる、そのように見込んでいらっしゃるのか、その辺をお伺いさせていただきたいと思います。  それから貿易の自由化、それから食生活の多様化によりまして、ますます輸入件数がふえると思いますが、これからの輸入食品の安全確保に対しまして、厚生省としまして、どのようなビジョンを持っていらっしゃるか、簡潔明瞭にお答えいただきたいと思います。
  139. 目黒克己

    ○目黒政府委員 輸入食品の届け出件数の伸びをどのように考えているか、それに対して一つの検査する職員の数の伸び等についてということでございますが、御指摘のような件数で伸びているのは事実でございます。この届け出件数の増加の原因については私どもは、国民生活の非常に多様化したこととか、食品の国際流通が伸展があったとか、付加価値の高い加工食品がふえてきた、あるいは魚介類等の生鮮食品が増大してきたといったような要因が考えられるわけでございます。こういう要因を受けとめながら、私どもは今後この伸びについて、社会的状況の変化等もありますから確たることは申し上げられないのでございますが、当面は現在のような傾向が続くものということで対応してまいりたい、このように思っているのでございます。
  140. 大野由利子

    ○大野(由)委員 輸入食品の検査は、現在、検疫所で行っています行政検査と、輸入業者が民間指定検査機関に依頼して行います民間の検査と、それから輸出国であります外国公的検査機関に依頼して行うものと、主にこの三つに大別されると思いますが、残留抗菌性物質の違反が発見されましたのが、平成元年は三十八件、昭和六十三年は七十五件ございます。これがいずれも民間指定検査機関で発見されたものでございます。行政検査はにおいとか腐敗とかの官能検査をやっている程度のようでございますが、私は、国の検査機関が輸入の安全性に対してもっと積極的に責任を持つ体制をつくられるべきではないか、そのように思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  141. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の輸入検査につきましては、平成元年の実績から見ますと、検査を要するとされたもの約十五万八千件のうち検疫所が実施いたしましたいわゆる行政検査でございますが、これが二万三千六百十三件、一四・九%、厚生大臣が指定した検査機関が実施したものが七万件余り、約四四・三%、外国の公的検査機関が実施した ものが三万八千九百七十四件、二四・七%等々ということでございまして、今後輸入食品の検査をどのようにやっていくかということにつきましては、既に違反が発見されたものとか、あるいは同じ種類のものとか、そういうようなものについては指定検査機関等の検査の結果を活用していく、それから初めて輸入されるようなものとか、あるいはモニタリング検査等を含めまして、行政検査を充実しなければいけない、このように考えている次第でございます。このため、先ほど先生の方からもお話がございましたが、平成三年度の予算案において横浜検疫所に輸入食品の検疫検査センター等を設置いたしておるのでございますが、これらにおきまして行政検査機能充実に努めることといたしておりまして、これによりまして従来よりは行政検査の件数が増加していくもの、このように思っているものでございます。
  142. 大野由利子

    ○大野(由)委員 民間の指定検査機関に頼るというか、その要素も今後ますますふえるのではないか。現にふえている状況でございますが、この民間の指定検査機関でございますが、私は、この精度管理がどうなっているか、精度管理が必要ではないか、そのように思っております。また、特定業者等のつながりから、例えばサンプリングの差しかえとか、検査でひっかかったサンプルを取りかえて、別のサンプルを提出してそのまま通るというふうなことが行われているかに伺っております。また、検査自体が甘くなってしまったりということが起こり得るのではないか、こういう不安を国民は大変持っているわけですが、こうした不安を取り除く必要があると思いますが、厚生省はどういう対策を講じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  143. 目黒克己

    ○目黒政府委員 輸入食品の安全性を確保するという観点から、私どもは適正かつ厳正な指定検査機関の検査を確保することは極めて重要であると考えておりまして、従来から検査の適正化について指導を行ってきたところでございます。特に、検体の採取にかかわります不正を防止することにつきましては、従来から輸入者及び指定検査機関の指導に努めてきたところでございますが、指定検査機関による検体の採取が行われた場合にのみその検査データを受け入れることとするなどの私どもの指導によりまして、また検査機関の精度を確保するために、五十七年から指定検査機関の団体を中心といたしました自主的な精度管理を行わせてまいりましたけれども、今後は平成二年七月から指定検査機関内における精度管理体制の整備と外部の機関による試験精度のチェックというものを内容といたしました試験精度のチェックをいたしたい、そして、その精度管理の要綱を定めたい、このように思っているところでございます。  今後ともこの指定検査機関の重要性にかんがみまして、その信頼性と試験の技術の向上に努めてまいりたい、このように思っているところでございます。
  144. 大野由利子

    ○大野(由)委員 済みません。今ちょっと聞き漏らしたのですが、民間の指定検査機関によるサンプリングは、検体の採取者は輸入業者がやっているのか、それとも検査員か、それとも検疫所の職員か、どなたがやっているか教えていただきたいと思います。
  145. 目黒克己

    ○目黒政府委員 今先生のおっしゃったすべての三者がそれぞれ現在やっているのでございますが、その中で、指定検査機関は現在ほぼ大幅に検査員が行っているのでございます。それから、行政検査につきましては、これは検疫所の職員がやっているということになるわけでございます。それから、自主的に企業が持っていくものにつきましては、これはそれらの監視員以外の者が持っていく場合もあるわけでございます。それは極めて少数で、今後はそのようなことは認めない、こういう方向で今指導をいたしているところでございます。
  146. 大野由利子

    ○大野(由)委員 やはり業者が持ってきたサンプルは中身と違うものが持ってこられる可能性があるわけでございますので、こうした心配がないように厚生省で厳重にやっていただきたい、そのように思います。精度管理も厳重にやっていただきたいと思いますし、また外国の公的検査機関の精度管理とか監視体制、安全性の確保、これも日本のそばにいないだけに非常に不安なものがございますので、外国の公的検査機関の精度管理に関しましても厚生省はぜひ積極的に取り組んでいただきたい、そのように思います。  時間がございませんので、次の質問に移らせていただきます。  ポストハーベスト農薬が残留した食品が流通市場で見つかって、消費者に非常に不安を与えているということがしばしばございます。これは、人員や分析器の不備のほかにも問題があるのではないか。有害食品のチェックは食品衛生監視員が食品等輸入届書でチェックするようになっておりますが、届け書には使用した合成添加物の記載欄がありますが、使用したポストハーベストの記載欄がございません。ポストハーベストが広く行われていますのに、この記載欄がないというのはどうしたことか、不備ではないのかということについてお尋ねしたいと思います。
  147. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘のように、農産物輸入時に使用されておりますポストハーベスト農薬、これにつきましては輸入届に、現時点ではないのでございますが、この輸入農産物について使われております農薬を輸入届に記載をさせるには、農産物の輸入を行う者が当該の農産物に使用された農薬を把握できている必要があるのでございます。輸出先国におきましても、農産物に使用農薬の表示の制度が確立をしていないような現状でございますので、情報の入手には非常に限界がございまして、なかなか困難だということが現状でございます。  また、そのほかに私どもポストハーベストの基準につきましては、現在基準を作成中ということでございまして、そのようなものにつきましても、先生御指摘のようなものを含めまして、大幅にポストハーベスト農薬の検査の体制の確立ということで私ども現在検討しているところでございます。
  148. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今局長お話を伺ったんでございますが、この食品等輸入届書の中には、「貨物が化学的合成品たる添加物又は、規格基準の定められた天然添加物を含む食品である場合」、当該添加物の品名を書くようになっております。合成添加物の品名を書くわけでございますので、合成添加物の品名を書くのであれば、輸入業者が輸入元からポストハーベストはどういう農薬を使ったかということは、収穫後の農薬でございますので、それはちょっと聴取すればわかるわけでございますから、添加物でさえ書くのにどうしてポストハーベストはわからないなんということがあるのかどうか。
  149. 目黒克己

    ○目黒政府委員 まず第一に、ポストハーベストを使用している国でございますけれども、外国で使用してこちらへ持ってくる、しかしながら、私どもではポストハーベストについての基準とかあるいはそれをチェックする体制がございませんで、先生が御指摘のような今の輸入届書の中に添加物と同じようにポストハーベストの農薬の種類を書いたらどうか、こういうことでございますが、これは輸出先国においても、使用の現状については現在非常に、どのようなものが使われているかをチェックをするような、あるいは輸入業者自体もまだよくわからないような現状でございます。したがいまして、これを記載させるということは、ある一部の特定なものにだけできるかもしれません。ある特定の国で、たまたまわかっているあるものについてできるかもしれませんが、それ以外のものについては記載できないというような状況にもなりますので、新たにこのポストハーベストの農薬のチェックをする場合には、そのような先生御指摘のようなものも含めて、こういう体制をきちんと整備しなければいけないと私ども考えている次第でございます。  要は相手国との問題になるわけでございますので、必要に応じて相手国ともそのような使用のもの、ポストハーベストを使用した、あるいは明らかにしなければ輸入できるとかできないとかと いったような条件を私どもが整備して初めてできることでございますので、まず第一に私ども基準をつくって、そして条件を整備した後にそのようなことに取りかかりたい、このように思っている次第でございます。したがいまして、私ども、平成三年度を目途に主要な農産物について、現在そういうものも含めまして幅広く検討いたしているのでございます。
  150. 大野由利子

    ○大野(由)委員 厳密な意味でポストハーベストを全部網羅するというのが今非常に難しい現状であるということは、それは私もよく承知をしております。しかし、参考欄として自主的に記載をしていただければ、それが検査のときに非常に役立つということがございます。今ポストハーベストの基準づくりをやっていらっしゃる最中でございますので、まだできないというお話でございますが、私は、備考欄に参考としてでも書いていただく、少しでも国民の健康を守るために、基準づくりができ上がってから初めてそういう記載欄を設けるというのではなくて、何とぞこれはぜひ積極的に取り組んでいただきたい、そのように思います。  それから、このポストハーベストの基準づくりでございますが、ようやく平成三年度に小麦、大豆、冷凍ポテトの三品目について基準づくりに今取り組んでくださっているようでございますが、そのほかのものにつきまして、大体いつごろ、どのようにこの基準づくりが完成をするのかということをお尋ねしたいと思います。
  151. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先生御承知のように、このポストハーベストの問題は、小麦とか大豆とかバレイショといったような主要なもの、そのほかのものについては例えばトウモロコシとかカボチャとかトマトとかいろいろな対象物と、それから、それに使うそれぞれの農薬の種類が例えばアメリカだけでも約六十種ある、こう言われているわけでございます。例えば、どういう農産物にどのような農薬を使っているのかというような情報も今集めているところでございまして、そのようなものの組み合わせに応じながら、私どもできるだけ早く基準をつくりたい、このように思っているのでございます。したがって、非常にたくさんの農産物すべてに、例えばキュウリやカボチャに使うのは大体こういうポストハーベストだとある程度決まっているのではございますけれども、かなり種類が多いものでございますから、主要農産物に使われるポストハーベストの農薬についてまず基準をつくり、そのものについては当然ある程度の基準をつくりますればいろいろなパターンができ上がりますから、そういう中でできるだけ早く次のステップに移りたい、このように思っております。  現在、いつまでにどのような農薬について、また、どのような産物についてやるというスケジュールについては今のところちょっと私ども、なかなか申し上げることができないような状況なのでございます。ただ、重要性については認識をいたしておりますので、できるだけ早く行いたい、このように思っておる次第でございます。
  152. 大野由利子

    ○大野(由)委員 ポストハーベストのいろいろなことは社会的にも随分、もう何年も前から非常に騒がれている問題でございます。急にここ一、二年になって問題になったことではございませんので、もっと積極的にぜひ、そのうちにというのじゃなくて、もう本当に今半分以上が輸入食品という時代でございますので、全力を挙げて早急に取り組んでいただきたいということを要望したいと思います。  それから、ちょっと済みません、これは通告していなかったのでございますが、一つお尋ねしたいのは、平成元年の十一月に神奈川県が実施いたしました畜水産食品の抗菌性物質を検査しました結果、チリ産の輸入鳥肉から食品衛生法の第七条違反になります合成抗菌剤クロピドールが検出された、そういうことが報道をされました。これは神奈川県が厚生省に報告をしておりますが、厚生省都道府県保健所設置市に対し通知を出しておりません。これはどうして通知を出されなかったのかということをお聞きしたいと思います。
  153. 目黒克己

    ○目黒政府委員 御指摘の点でございますが、私どもは過去において、御指摘の品名につきましては、出たらば直ちにこれは検査するようにということでずっと体制を既に組んでいるものでございまして、神奈川県で出た場合にも、これは既にその情報に基づいて他の都道府県ではそのような体制がいつでもできるものになっております関係上、私ども特に中央から特定のものについてというのは今流していないという、御指摘のとおりの現状でございます。
  154. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今のお答えには非常に私は不満でございます。各都道府県は改めて通知がなければ全部見過ごしてしまうと思うのですね。毎日大変煩多な忙しい仕事の中で、随分前に通知をしてあるからということであれば、それで気づかないで全部流れていくと思うのです。今回のこの通知にいたしましても、冷凍の鳥肉でございますので、厚生省がすぐに全国都道府県に通知すれば、まだ冷凍食品というのは消費者の口に入る前に倉庫の段階とか、またいろいろなスーパーの中とかで、事前に防げるものがまだたくさんあったはずでございますが、今回全くその辺の通知がなされていない、その辺に対してもっと厚生省国民立場に立って即座に通知する、そういうふうにすべきじゃないか、そのように思います。
  155. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先ほど私どものお答えがちょっと舌足らずでございましたが、全国の主管課長会議とかあるいはブロック会議等の中で、このクロピドールを含みます抗菌性物質の問題につきましては、こういうものも含めていつも指導の徹底を図っているところでございます。したがいまして、特にクロピドール自体について、鳥肉に出ましたこのものについて通知等は流してはおりませんけれども、常日ごろ主管課長会議等でこの品名も含めて抗菌性物質については指導を行っているところでございます。  したがいまして、せっかくの先生の御指摘でもございますので、この点につきまして今後機会あるごとに、これが徹底いたしますような方策をとるようにしてまいりたい、このように思っておるところでございます。
  156. 大野由利子

    ○大野(由)委員 今回、総務庁の勧告によりますと、残留違反輸入食品は昭和六十二年から平成元年までの間に八件あった中で、厚生省は検疫所には通知したけれども都道府県に通知してないものが八件中四件ある、そのように勧告をしております。また、残り四件、通知したものでありましても検疫所に通知した時点よりも非常におくれている、中には一カ月ぐらいおくれて通知を出している、そのようなことが総務庁の勧告の中に指摘をされております。先ほど局長がおっしゃったように常日ごろいろいろな会合、局長会議等で言われているということであれば、都道府県保健部の方は通知を受けてないというふうには受けとめないはずでございまして、これは既に厚生省から通知を受けていると受けるはずですけれども、通知を受けてないというふうに現に現場では受けとっているわけでございます。この辺私は非常に何というか、厚生省では通知した、連絡したつもりでも、現場は連絡を受けていないというのであれば何にもならないのではないか、そのように思います。
  157. 目黒克己

    ○目黒政府委員 今の問題につきましては、輸入食品の安全性の問題につきまして、検疫所のみならず国内でも十分注意をするようにということにつきましては、私自身衛生部長会議等で指示をしたところでございますけれども、そのほか具体的なものについては、特に先生御指摘の面についても今後指導が十分徹底するようにいたしてまいりたい、このように思っております。
  158. 大野由利子

    ○大野(由)委員 流通市場に出てから違反物質が発見されたものが厚生省にすぐに報告が行って、また別の各都道府県に連絡が行くという、この辺のシステムが非常に弱いように思いますので、この辺ぜひ早急にルートの確立を図っていただきたい、そのように思います。  最後に、もう時間がだんだんなくなってきたのですが、牛の成長ホルモンのことについてお伺いしたいのです。  御存じのように、ECではアメリカの合成ホルモン等を利用しました第三国からの輸入の禁止を一九八五年十二月に決定いたしまして、一九八九年二月から既に実施をしております。日本ではことし四月から牛肉の自由化が始まるわけでございますが、ECが輸入を拒絶した牛肉が日本に来るのではないか、そういう非常な不安を消費者は持っております。このことに関しまして厚生省はどういう見解を持っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  159. 目黒克己

    ○目黒政府委員 我が国及び米国、カナダ等におきまして、家畜、特に肉用の去勢牛の肉質向上の目的で肥育用のホルモンが使用されておるのでございます。その安全性につきましては、当該ホルモンの残留の有無、あるいは残留が人体に対しどのような影響があるかということについては、検討の上評価する必要がある、こういうことでございます。このため、私ども厚生省では、食肉中の残留ホルモンの検査方法を開発いたしますとともに、輸入食品を含めまして食肉についてホルモンの残留の実態調査を行っております。現在までのところ、問題となるような残留は認められてないのでございます。  今後も、これらの残留の実態調査結果、それから安全性等に関するFAO、WHOの合同食品規格計画における検討の状況等の国際的な評価、そういう動向を見ながら、必要に応じ残留許容基準の設定等所要の措置を講じることといたしているのでございます。
  160. 大野由利子

    ○大野(由)委員 合成ホルモン三種類ある中で、日本で実質一生懸命今残留の調査等がなされているのはそのうちの一種ぐらいだと思います。また、この辺の基準がはっきりわかるのはまだ大分先になるのではないかと思いますが、こうした基準がはっきりする前に既に自由化で日本に入ってくる、一方、ECでは危ないということで拒絶をしている。これは、輸入食品に対する姿勢がこうしたところにもあらわれているのじゃないか。疑わしきは禁止するという姿勢でなければいけない。安全とわかったものであればともかく、危ないということでECが禁止しているものが日本こ入ってきまして、この日本に入ってくる牛肉が安全かどうかはこれから検査をしますという、そういう姿勢で果たしていいのかどうかということを申し上げまして、時間が来ましたので質問を打ち切らせていただきたいと思います。
  161. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次に、児玉健次君。
  162. 児玉健次

    児玉委員 下条厚生大臣は先日の所信表明で、「明るく豊かな長寿・福祉社会を築き上げる」ということを強調されました。そのように進めていただきたいと強く望みます。  明るく豊かな長寿・福祉社会を築くために今急いで実現してほしい課題の一つに、白内障の眼内レンズの保険適用の問題があります。老人性白内障は年々増加している。その数は、専門家によれば二百三十万人とも言われています。現在、白内障手術でおよそ九割が眼内レンズ、人工水晶体を挿入していると専門家は推定しておりますが、この点で厚生省の認識はいかがですか。
  163. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 白内障手術の患者に対します眼内レンズの使用の状況についてお尋ねでございます。  私どもはこのための調査というものをやってないわけでございまして、正確な数字はつかめないわけでございますけれども、一定の白内障手術の件数と、それから眼内レンズの国内使用量、その関係から普及率と申しますか定着率を出してみますと、私どもは八〇%程度ではないかというふうに認識をいたしております。
  164. 児玉健次

    児玉委員 眼内レンズ学会の推計によれば、この眼内レンズの使用が年間約二十四万件、うち眼内レンズの移植が二十万件ですから、八三%ぐらいになりましょうか。お年寄りの場合、老人性白内障、さまざまな症状を伴うものでなく、老人性の白内障というふうに限定すれば、そろそろ九割になっているだろうと私は見ております。  そこで、手術件数ですが、眼内レンズの使用が承認許可された一九八五年、この年の国内生産と輸入の個数の合計が八千七百八でした。これは薬事工業生産動態統計年報によっております。それが一九八八年には国内と輸入を合わせて十六万六千九、そして一九八九年には二十五万三千九百七。わずか五年間に二十九倍に激増しています。この状態については、同様の認識ですね。
  165. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 手元に詳しい資料を持っておりませんで、平成元年の数字だけ持っているわけでございまして、平成元年度の社会医療診療行為別調査によりますと、白内障の手術件数の推計は年約二十五万件、それからレンズの使用数でございますけれども、御指摘の薬事工業生産動態の年報によりますと、これも元年度でございますが、約二十万眼でございます。したがいまして、御指摘のように相当の伸びを示していると私どもも考えております。
  166. 児玉健次

    児玉委員 眼内レンズの挿入に係る保険給付についてですが、入院料と白内障手術料等で大まかに言って約十万円、しかし、保険の適用はそこまでである。眼内レンズ挿入の保険外負担は現在平均的に幾らになっているか、挿入の手技料と眼内レンズ料に分けてお答えいただきたいと思います。
  167. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 私どもが照会して調べました限りにおきましては、手技料が十万円、それから材料料と申しますか、眼内レンズの費用が五万円ということで、約十五万円程度ではなかろうかと思っております。
  168. 児玉健次

    児玉委員 私たちが精力的に調査したのでも同様でして、眼内レンズの使用が白内障手術の八、九割に上っている、しかも、それが急速な伸びで、去年、ことしに至っている、その他について今厚生省と認識が一致した、そう思います。  これまでに特定治療材料として、心臓のペースメーカー、人工骨などが保険適用になってきております。もちろん、その前提には薬事法で承認許可されているということがございます。ペースメーカーや人工骨等が保険適用になるには幾つかの要件が多分あると思うのですが、その一つは治療方法が安全であるということ、二つ目は患者の利益となること、三つ目、多くの治療機関でその治療が実施されていること、こういった要件だと思うのですが、いかがでしょうか。
  169. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 私どもが新しい材料なり新技術を保険に導入する場合に考慮すべき事項として大まかに考えておりますのは、安全性、有効性それから効率性と申しますか経済性、あるいは社会的な妥当性、それに普及性、そういうものを総合的に勘案をして、新技術なり新材料を保険導入するかどうかということの検討の素材にいたしております。
  170. 児玉健次

    児玉委員 どのように表現するかというのはそれぞれですが、白内障の治療における眼内レンズの挿入手術、私たちは昨年六月の薬事生産の動態を調べてみて、それを十二倍するとほぼ三十万個になっていると見ております。なぜそうなったのか、そこが問題です。何より手術が安全であること、ほとんどの眼科医院で実施されるように今日なっていること、そして患者の利益となること。白内障は、大臣、あるお年寄りが私に非常に適切な比喩をおっしゃったけれども、頭の髪の毛が白くなるのと同じように多くの場合避けがたい、こういうふうに申しますね。そういうお年寄りにとって、この眼内レンズの挿入というのは文字どおり光明、光になっている。そこに眼内レンズの数が激増している最大の理由があると私は思います。  ところで、これまで使用されてきた眼鏡による補正では視野が非常に狭い、そして周囲がゆがんで見える。コンタクトレンズについていえば、お年寄りには取り扱いが困難であって、ときには角膜潰瘍で失明することが指摘されています。眼内レンズにはこのような欠点がありません。そして、さっき私が例示的に取り上げたペースメーカー、人工骨、その他人工関節、人工弁、さまざまにありますが、それらと共通していることは、体内に埋め込まれていて患者本人による着脱は不可能です。その点で、眼鏡やコンタクトレンズとも根本的に違います。そうなってきますと、特定治療材料としてこの眼内レンズは保険適用をすべきだ、 その条件が既に整っていると考えるのですが、いかがですか。
  171. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 眼内レンズの保険適用につきましては、これまでもお答えいたしておりますように、他に同様の機能を持ちます、具体的に申しますとコンタクトレンズ、眼鏡というものが存在するわけでございまして、これは保険の適用になっていないわけでございます。白内障の手術をした場合に、確かにほっておきますと遠視と申しますか視力の障害が出るわけでございます。それに対しまして、視力補正の手段といたしまして、現在は眼球外部で用いられるものが眼鏡、眼球に密着して用いられるものがコンタクトレンズ、眼球内部に埋め込んで用いられるものが眼内レンズ、こういうふうに整理されているわけでありますけれども、それぞれの適用に応じてこういったものが使用されておるのが実態でございます。  そこで、保険給付をすべきかどうかということで最大に問題になるのは、眼鏡、コンタクトレンズが給付外でございまして、それを受けた人は給付の対象にならない、埋め込んだレンズは給付になるということについてのバランス論と申しますか、私どもとしてはそれが非常に難点でございます。したがって、現在も眼鏡、コンタクトレンズが給付外、したがいまして、同様の手段でございます埋め込み型レンズ、眼内レンズにつきましても、同様の効果を持つほかにかわるものが給付外になっているということのバランス上、給付外の取り扱いが妥当であるという見解を持っているわけでございます。
  172. 児玉健次

    児玉委員 何回かの議論でこれまで同様の御説明がありましたが、それは眼内レンズの普及がまだ非常に不十分であったり、治療の一つの体系としてまだ十分に行き渡っていなかったり、そういう段階では多少なるほどというところもあります。今はもうその状態ではありません。  例えば、厚生省が今度私のところにお届けくださった、三つの手段、眼内レンズと眼鏡とコンタクトレンズ、コンタクトレンズについていえば適用が限定されており、眼疾患を有する患者や涙液分泌不足の者などには用いられないというふうに明確に書いていますし、眼鏡についていえば、繰り返しませんが、さっきの弱点を持っています。  私は厚生大臣にここのところは申したいのですが、なぜ今白内障の手術で八、九割までそれが適用されているのか、ここを直視していただきたいのですよ。それは眼鏡やコンタクトレンズにはない非常な有利性がそこにあるからです。例えば東京の駿河台でこの手術を年間千六百件も扱っていらっしゃる井上眼科病院の井上治郎院長さんは、もとあった水晶体と同じ場所に入れる、この方法は生理的に一番合っている。技術的にも進歩し安全性も問題ない。そうなっているから八割、九割がそうなる。さっきのお話のように十五万円自己負担をしてもそこを選んでいる。その実態を大臣、黒木局長に直視していただきたい。  そしてあわせて、これは平成二年七月二十日、北海道議会の議長が総理大臣厚生大臣に出した要望意見書ですが、「白内障の手術を受けた場合、その手術代については保険の適用となるものの、眼内レンズについては保険給付の対象外となっている。よって、すべての老人性白内障患者が安心して、眼内レンズ装着の手術を受け、光を取り戻すためにも、国においては早急に眼内レンズに保険が適用されるよう要望する。右地方自治法第九十九条第二項の規定により提出する。」同様の都道府県の決議が東京、新潟から、全国で言えば十一特別区、二十六市九町二村、五十一の議会で既に採択されているのです。そこまで来ているのですからね。この際保険適用に踏み切っていただきたい。大臣、いかがですか。
  173. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 私も眼内レンズの有効性等について否定するものではございません。  ただ、御指摘がありましたけれども、眼内レンズ、差し上げた資料にあるわけでございますけれども、眼内レンズが普及しておるといえども適用のない場合もあるわけでございまして、例えば子供の先天性白内障とか糖尿病等の合併症を有する患者さんには適用がないわけでございまして、この方はどうしても眼鏡とかコンタクトレンズ、保険給付外のものを自己で購入しなければならない、そういう実態の中でどうやってバランスをとっていくか。眼鏡、コンタクトレンズが給付外の中で、そのバランスの中においてどう考えるかというのが非常に難しい課題だと申し上げているわけでございます。
  174. 児玉健次

    児玉委員 その点については眼科の専門医の方がリアルにおっしゃっているので、眼内レンズ移植における禁忌疾患とは何かというのがほぼ大体確定していますね。今あなたがおっしゃった、子供さんだとか三十代の場合、将来埋め込むことを再度やらなければいけないかもしれないから極めて慎重で、四十代、五十代以上おおむねその部分、そういった点について言えば、今までの特定治療材料についても同様のプロセスがありますよ。私は皆さん方がおっしゃっている代用し得るものがあるからというのは、もう八割、九割がそうなっているとき、三つの選択肢が対等、平等でないから八割、九割がそこに集中している、それはもう現実崩れている。  何が今ネックになっているのか、事態がどこまで進んでいるのかということでいろいろ調べ、そして、いろいろな方からも聞いてみたのですが、日本眼科医会というお医者さんの集まりがありますが、そこで昭和六十一年の九月厚生大臣に対して「人工骨、心臓人工弁にしろそれを用いることによって手術目的を完全にしている。」という理由を付して眼内レンズを保険給付の対象にされたいという要望書も出されています。その要望書の中には「人工水晶体挿入術は世界的に一般化した手術であり、」非常に適切に説明が付されていますよ。眼科の皆さん方もそう思っている。であれば、この際もう踏み切るべきではないでしょうか。この点、大臣、お答えいただきたい。
  175. 下条進一郎

    下条国務大臣 お答えいたします。  眼内レンズの今の普及状況、また、その性能等についての御説明、十分承りました。  しかしながら、それをそのまますぐに診療報酬の中で保険の適用にするかどうか、こういう問題はすぐに結論が出にくいわけでございます。なぜかと申しますと、その理由については先ほど局長から御説明いたしましたような問題点もまだございますので、それらを一つ一つ検討しながら中医協の御意見も尊重しながら私たちは最終的な結論を得たい、こう思っておるわけでございます。
  176. 児玉健次

    児玉委員 中医協というお話も出ましたが、眼内レンズの適用がもう今では文字通り多数になっている。しかも、その有効性ということについても今意見が一致したわけなんですが、問題はその中医協の論議であると従来おっしゃっておりました。日本医師会と厚生省との間で、昨年の六月二十三日、日本眼科医会の定例代議員会速記録によれば、既にこの間において人工水晶体の保険適用に関連して具体的な論議があったことが速記録を細かに読めば十分に読み取れるのです。事態はそこまでいっているのじゃないですか。いかがですか。
  177. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 眼科医学会の議事録を引用されたわけでございます。私どもは通常、診療報酬改定を行う場合にはいろんな懸案事項と申しますか、既存の技術料の見直し、新しい医療技術等の取り扱い、いろいろ問題になっております、あるいは要望等がございます事項を洗いざらい私どもは議題に供しまして検討をするということでございます。しかし残念ながら、先ほど申しましたように眼鏡、コンタクトレンズが給付外になっているというバランス論の中で見送らざるを得なかったというのが事実でございます。
  178. 児玉健次

    児玉委員 眼科医会のこの速記録だけで物を言うのはどうかと思いまして、厚生省にも事前にお伺いしたのですが、厚生省の当時の担当者、医療課長と技官が日医との間でこの問題について一定のレビューをなさったということですが、それは事実そのとおりですね。事実の有無をお答えください。
  179. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 洗いざらい懸案事項を出しましてディスカッションをする、その中に入っておっ たということは事実でございます。
  180. 児玉健次

    児玉委員 大いにその検討を進めていただきたいと思うのですよ。言うところの中医協の論議を見守りながらと皆さんおっしゃってきたけれども、実際にはそのことで具体的な話し合いを厚生省が日医との間でされている。  そこで、最後に私は大臣に申し上げたいのですが、白内障にかかった高齢者にとって眼内レンズは光を取り戻す、そういうものです。ところが、先ほどお答えがあったとおり、手術はお年寄りに重い経済的負担を強いている。光を取り戻したいというお年寄りの切なる願いにこたえて、国がその点で手だてを講じていないから、名古屋市、宇都宮市、足利市、その他六つの自治体で既に独自にこの眼内レンズの装着についての補助制度機能しております。そして東京では、この春から目黒、国立など二区四市で新たに費用助成制度が発足しようとしています。大臣は、先日の所信表明で、お年寄りから赤ちゃんまでの幸せを私は政治信条としていると申されたのですが、その信条を私はすばらしいと思います。その立場でこの分野における厚生省の努力を一歩進めていただきたい。大臣、いかがしょう。
  181. 下条進一郎

    下条国務大臣 児玉委員の御熱心な御意見、十分承っておきます。
  182. 児玉健次

    児玉委員 それに続く具体的な努力を期待して、終わります。
  183. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次に、柳田稔君。
  184. 柳田稔

    柳田委員 いろいろとお尋ねをしたいのですけれども、私に与えられた時間は二十分でございますので、年金に絞ってお伺いをしたいと思います。それで時間が余れば、これから来る高齢化社会に向けて少し若者の気持ちも聞いてもらえればなというふうに思っております。  一昨年の国会国民年金法等が改正され、年金額の改善や鉄道共済年金の救済が行われたのは御存じのとおりでございます。民社党は、厚生年金の六十五歳支給開始の規定の削除や保険料率の引き上げ幅を抑制するなど一定の修正を行っていただいたということで、この改正案には賛成の態度をとりました。その制度改正の際の一つの大きな柱が国民年金基金制度創設であったというふうに思います。これは自営業者などについても二階建て部分の制度を確立するということであり、被用者年金制度との均衡を図る上でも必要な制度であると、私はこの制度創設を評価いたしております。そして、その一昨年の年金法改正創設された国民年金基金制度がいよいよことしの四月から施行される運びとなりました。  そこで、まずお尋ねをしたいわけなんですけれども、この基金の具体的な給付と掛金の内容、また、その考え方についてお聞かせ願いたいと思います。
  185. 末次彬

    末次政府委員 国民年金基金の給付と掛金は、これは各基金が規約で定めるものでございますけれども、現在私どもの方でそのモデルとして考えているものにつきまして御披露させていただきたいと思います。  給付は、加入される方が将来の生活設計に合わせて年金月額などを選択できるようにということで、口数制の仕組みをとることにしております。一口目は年金月額三万円としまして、それぞれの方の所得に応じて増口できるように、しやすいように、二口目以降は年金月額一万円単位というふうにしております。これに加えまして、配当を原資としましたボーナス給付それから各基金独自に設計いたします給付、これができるようにしたいというふうに考えております。  それから掛金は、加入したときの年齢に応じて決めることにいたしておりまして、男女同一かつ全国同一というふうにいたしたいと思っております。例えば四十歳加入の掛金としましては、六十五歳から支給開始いたしまして十五年保証つきの終身年金、つまり終身年金ではございますが十五年間は確定的にお支払いをするという年金につきましては九千九百円、それから六十五歳支給の終身年金、これは保証期間がないという意味でございますが、その場合には九千円、それからボーナス給付がない、六十五歳支給の終身年金だけということになりますと七千二百円というふうに、それぞれのパターンで掛金額は変わるというふうにいたしております。  なお、年齢の高い方が加入される場合には、実質的に拠出される期間が短くなりますので、それに応じまして掛金が高くなります。そういたしますと加入しにくくなるものですから、一口目の年金月額を四十六歳以上五十歳までに加入した方につきましては二万円に落とす、それから五十歳以上五十四歳までに加入された方につきましては一万円単位ということで、それに応じて掛金額を下げていくというふうに考えておりまして、できるだけ年齢階層を問わず加入しやすいように配慮いたしたいというふうに考えております。
  186. 柳田稔

    柳田委員 この制度については、先ほども申しましたように評価をしているものでございますけれども、まだそれほど広まったなという感じを受けてないわけなんです。これから国民の間に広く定着させていかなければならないというふうに思っております。そのためにも、大臣にも努力を続けていただければなというふうに思っております。  そこで、この基金の問題点としては、少数の人が入っただけでは成り立つものでもありませんので、できるだけたくさんの人に加入をしていただける、普通、厚生年金の方でもこういう二段階部分があるんですが、これは会社が一生懸命やりますので非常に普及をする。それに比べて、先ほ申しましたけれども、これは厚生省中心になって音頭をとっていかなければならないものではないかなというふうに考えております。地域型と職能別ですか、二つほどあるというふうに聞いておりますけれども、地域別においてはやはり都道府県でいろいろと差が出てくるようなこともあるかもわかりませんので、地域的といいますか都道府県でも余り差がないようにできるだけ努力をしていっていただければというふうに思います。  そこで、現段階で、いろいろと二通りあるようですけれども、これの設立準備状況、各県どういうふうになっているのか、また、今後の見通しについてどういうふうにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  187. 末次彬

    末次政府委員 御指摘のとおりでございまして、これは自営業者のいわゆる上乗せ年金という格好でスタートさせるわけでございますから、全国どこにおられても入れるということがまず第一の条件であるというふうに私ども考えております。そのためには国民年金の第一号被保険者、いわゆる自営業者方々にこの制度趣旨を十分PRしなければならないということで、現在、政府広報それから都道府県を通じましての広報、それから市町村にも広報をお願いいたしております。それから、民間の団体につきましてもこの広報のお手伝いをしていただくということで、現在、ことしに入りまして急ピッチにその広報活動を進めておるところでございます。  それから、この設立手続でございますけれども、この国民年金基金創設に関する規定につきましては、法律上、平成三年四月から施行ということになっております。私ども法施行後、速やかにこの法律に基づく所定の手続を開始したいというふうに考えておりまして、その事前準備を各都道府県におきまして、地域型基金の発起人といいますか、そういう方に現在打診をして発起人になっていただくように各県とも準備を進めている段階でございまして、平成三年四月本法律施行されましたら直ちに基金の認可、業務開始ができるようにいたしたいというふうに考えております。ただ、施行が四月で、それ以後法律上のもろもろの設立手続というものが規定されておりますので、それを順調にこなしていきまして、基金設立認可ができますのが大体五月の初旬ごろかなというふうに考えております。  それから、職能型の基金につきましても現在一部の業界団体でその設立準備が進められておりますが、各団体とも従来からその団体の構成員につきまして、果たしてその構成員がどれだけが厚生年金、どれだけが国民年金の被保険者であるかと いうふうな目でごらんになったことがない。端的に言いますと、内部の年金適用についての実態も十分把握しておられないようなところも多いものでございますから、現在それの調査をお願いいたしておりまして、進んでおるところにつきましては、ぼつぼつその設立準備が進められているというふうに承知いたしております。  で、この地域型基金と職能型基金、これが両方でき上がりました、ある程度数がまとまりました段階におきまして、その基金にお集まりいただいて国民年金基金連合会というものをつくりたいと思っておりまして、実質的にこの連合会が相当各基金の事務を代行するような機能を持つということを念頭に置いておりますので、各基金設立と、それに伴う連合会設立、これの準備を現在急いでおるところでございます。
  188. 柳田稔

    柳田委員 よく言われますけれども、初めが肝心でございますので、大臣を初め皆さんの努力を心からお願いしたいと思います。  次に、沖縄の厚生年金の格差問題についてお伺いをしたいと思います。  昨日、おとといと、うちの党でも党大会が開かれまして、その際沖縄の県代表の方から、沖縄の厚生年金の本土格差是正ということで決議議案が出されまして、満場一致で通ったわけでありますけれども、昨年政令によって特例納付措置が行われたというふうに聞いております。中身については非常に評価をしたいというふうに思うわけでありますけれども、ただ、この厚生年金については、本土復帰があった、そして本土はこの年金制度については昭和十七年、沖縄については四十五年ということで開きがありまして、結果考えてみますと、沖縄の方々は四十五年以降しか掛金が掛けられない、そこに大分差が出るような原因があるんではないかなというふうに思うわけでございます。この格差について厚生省はどのように考えていらっしゃるのか、まずお聞かせを願いたいと思います。
  189. 末次彬

    末次政府委員 ただいまお話のありましたとおり、本土につきましては厚生年金は昭和十七年から、国民年金は昭和三十六年からということでございますが、沖縄につきましては昭和四十五年に沖縄としての、琉球政府としての厚生年金保険法が施行された。それを現在の厚生年金保険法に引き継いでいるわけでございますが、私どもとしては、この沖縄と本土の格差をできる限り是正したいということで、沖縄が本土に復帰しました時点で受給資格期間の短縮の特例を既に第一段階として実施したわけでございまして、その後につきましても、平成二年四月からそういう特例の、資格期間短縮の特例の対象になった方々につきまして、短縮された期間分の年金額を保険料の特例納付という格好で補てんして、本土の中高齢特例並みの年金額を保障する措置を講じたところでございます。
  190. 柳田稔

    柳田委員 その特例措置ですね、評価をしたいと思うわけですけれども、昭和四十五年までにこの厚生年金制度はなかった、本土ではあった、としますと沖縄の方は本土の人に比べれば掛ける年数が短いわけですよね。つまり、本土の人はもう三十五年掛けている人もいらっしゃいますけれども、沖縄の人は二十年、一番長い人でも二十年くらいですか。そうしますと、厚生年金をもらう立場になりますと大分差が出てくるということで、この格差を是正していただきたいという声が沖縄の方から上がっているわけなんです。この格差について厚生省はどのように考えているか教えていただきたいと思うのです。
  191. 末次彬

    末次政府委員 御質問趣旨は、適用年数の差による格差をどう考えるかということであろうかというふうに考えておりますが、一般年金制度あるいは年金保険制度といいますか、保険制度によって成り立っている、いわゆる社会保険制度につきましては、適用拡大等によって途中から厚生年金加入した方々、こういう方々の受給権の確保というのは通常、遡及ではなくて、遡及適用という過去の部分、つまり制度に入っておられなかった部分を適用するものではなくて、資格期間を短縮する、つまり通例であれば二十年あるいは二十五年の受給資格期間が必要なケースにつきまして、年齢に応じてそれを短縮していくという措置を講じております。  先ほど申し上げました沖縄本土復帰の際の特例では、本土の中高齢者特例でいいますと四十歳到達後十五年の資格期間が要るわけでございますけれども、復帰の際の特例として、年齢に応じまして最短四年で本土の中高齢特例並みの給付を出すという措置を講じたわけでございます。四年で十五年並みといいましても、基礎年金、いわゆる定額部分については二十年分、その上にそれぞれ実際に加入された分の年金額を報酬比例として乗せる、こういう格好でスタートいたしまして、平成二年四月からの特例は、それにさらに、いわゆる二階部分の報酬比例に相当する部分も追納によりまして十五年丸々出るというような特例を講じたわけでございます。したがいまして、加入期間は四年ですが、追納いたしますと定額部分につきましては二十年、報酬比例については十五年の年金が丸々出るというような措置を講じております。  話が前後いたしましたが、通常、厚生年金制度につきましては遡及適用ではなくて資格期間を短縮する、あるいは第四種被保険者制度といいまして、厚生年金を脱退した後も御自分で事業主の保険料と本人の保険料、これを両方納入していただくということで厚生年金の資格を継続していく、こういうような制度をとっております。先ほどちょっと申し上げましたが、本土復帰の際には、この両方の措置につきましてさらに特例措置を講じたということでございまして、この沖縄の厚生年金加入者につきまして、制度発足後、本土よりおくれたということを配慮いたしまして、今申し上げましたように、本土復帰時に一定年齢以上の方々については中高齢者特例の特例、第四種被保険者制度についてもまた特例ということで、できる限り受給権の確保ができるように、当時それからその後もしたわけでございます。さらに平成二年には、年金額につきましても、今申し上げましたように最短四年の方でも十五年分出るようにというような額についての特例も認めたわけでございまして、この二つの特例措置によりまして、年金受給権と実際に受給していただく年金額、両面にわたりまして中高齢者、つまり入りたくても入れなかったとおっしゃるような中高齢者につきましても、実質的に本土並みの年金が実現されたというふうに考えておるわけでございます。
  192. 柳田稔

    柳田委員 沖縄の年金制度ができたのは四十五年ということですが、では昭和四十年から働いておりました人、制度ができたのは四十五年ですから掛金を払い始めたのは四十五年からです。その四十年から働いている人が、五年間の掛金を払いますからこの掛金を払った年数をプラスして年金をもらえるようにしてもらえませんかという案が出たとしたら、これの処理についてはどのようにされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  193. 末次彬

    末次政府委員 私どもの、年金制度をお預かりしている立場からいいますと、厚生年金加入していなかった期間をさかのぼって加入するということにつきましては、年金制度としてはとり得ないというふうに考えております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、年金の受給権を付与する際の資格期間の短縮、それから年金額の計算の際に一定年限までの追納を認めるというような格好で、できる限りの、年金制度としてとり得る限りの措置をとっているというふうに御理解いただきたいと思います。
  194. 柳田稔

    柳田委員 時間がなくなりましたので、またの機会でお願いをしたいと思います。どうもありがとうございました。
  195. 浜田卓二郎

    浜田委員長 次回は、来る二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十五分散会