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1991-04-10 第120回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月十日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 塩崎  潤君 理事 武村 正義君    理事 羽田  孜君 理事 穂積 良行君    理事 山崎  拓君 理事 佐藤 観樹君    理事 山花 貞夫君 理事 河上 覃雄君       浅野 勝人君    奥野 誠亮君       野田  毅君    町村 信孝君       村田 吉隆君    小岩井 清君       仙谷 由人君    日野 市朗君       堀  昌雄君    松原 脩雄君       井上 義久君    東中 光雄君       川端 達夫君  出席政府委員         自治省行政局選         挙部長     吉田 弘正君  委員外出席者         自治大臣官房審         議官      田中 宗孝君         自治省行政局選         挙部選挙課長  谷合 靖夫君         自治省行政局選         挙部管理課長  牧之内隆久君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       井戸 敏三君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 四月二日  地方選挙公営制度拡大に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二一七一号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  公職選挙法改正に関する件(自由民主党の「政治改革基本要綱」に基づく選挙制度について)      ────◇─────
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。  本日の委員会は、自由民主党政治改革基本要綱に基づく選挙制度について、自由民主党所属委員から意見を述べていただいた後に、委員間の自由な討議を行います。  それでは、まず、自由民主党羽田孜君にお願いいたします。
  3. 羽田孜

    羽田委員 委員長並びに各委員皆様方に、我が党の選挙制度改革、こういった問題についてお話しする機会を与えていただきましたことを、まずお礼を申し上げたいと思います。  私の方から、まず選挙制度に対する我が党の考え方並びに皆様のお手元にお配りしてございます選挙制度の骨子につきまして簡単に述べさせていただきたいと思います。  まず、今日の政治を取り巻きます環境の変化と政治改革ということでありますけれども、戦後の我が国政治が安定した政治であったことは、これはだれからも認められるところであろうと思います。そして、切磋琢磨する今日の選挙制度というものはやはり今日の我が国の繁栄を生み出すための一つの大きな牽引力になった、このことをまず認めたいと思うわけであります。  しかし、一方では、今日の政治状況が過度な競争によりまして極端な制度疲労現象を現出してしまっていることも事実として認めざるを得ないと思います。周期的に起きる金に絡む政治家不祥事件制度疲労を如実に示したものであり、また民主政治の根本である国会自体審議形骸化は目に余るものがありまして、国民政治に対する信頼感を大きく失わせてしまっている状況というものは、看過することはできないものであろうと考えます。  これまでの米ソ冷戦構造の中で、日米の枠組みを基本として対処してきた事態とは異なり、今日の我が国は激変する世界の状況をにらみながら国家国民利益国際的役割考え、迅速かつ適切に意思決定し、対応しなければならない時代を迎えているのではないかと痛切に感ずる今日であります。来るべき二十一世紀に十分対応できる新しい政治構造をつくり上げなければならないときと考えます。その意味で、今こそ政治全体の改革をしていかなければならないと信じます。まさにそれが我々国会に課せられた時代の要請であるとも言えるのではなかろうかと思っております。  まず一つ国会審議の停滞と政治改革ということで申し上げたいと思いますけれども国会国権最高機関として国家意思を最終的に決定する機関でありますが、しかし、今日その国家意思議論を通じなかなか明確にされない状況にあり、このままでは国会の果たす機能である真のシビリアンコントロールさえ機能しないというふうに考えざるを得ないということであります。  また、国民からの政治不信の原因の一つに、そういったわかりにくい国会運営が挙げられます。また、日本異質論に象徴されるように、対外的にも、外国からも日本政治はわかりにくいとまで言われるようになっていることに気づかなければならないと思います。それは一体どこに起因しているのか、我々は今追求すべきでありましょう。  国会運営の慣例が議論自体を硬直化させている面もありましょうが、根本的には、長い間の与野党勢力固定化により、片や政権政党、片や分立した抵抗政党の図式が定着しているところにあります。与野党間の不毛な対決の中では、議論を通じた活力ある国会は生まれないと言わざるを得ません。このような国会論議では、国会を構成する政党、さらに政党を構成する議員、またその議員を生み出す議会制民主主義の基盤である選挙制度そのもの考えざるを得ない状況に追い込まれているということを党派を超えて自覚し、改革を進めるべきときであると信じます。  選挙制度政治改革についてでありますけれども現行制度について、制度的な疑問について申し上げたいと思います。  我が国の政体は、憲法上国会国権最高機関として位置づけ、議会制民主主義議院内閣制を採用しています。これは政党政治前提としており、政党国民政治的意思の統合に努めながら政策を形成し、政権選択をかけた選挙を行い、民主政治を実践することとしていると考えます。しかるに、政権を獲得しようとする政党にあって、現行制度は極端に政党色を薄めるという矛盾をはらんでいます。すなわち、複数を単記で選ぶという制度は、個人本位選挙にならざるを得ない要素制度的に許している。一方、これを有権者の側から見れば、属人化した選挙の中で政策政権選択という選挙基本的な意義が果たされているのかということについて疑問と思います。  選挙実態でありますけれども現行制度は、一〇%台の得票率で当選することができます。これは、候補者にとっては有権者過半数意見を吸収するという努力よりも部分利益特定支持層確保に努めるという選挙戦術を肯定することにもなっています。この実態により、山積する難問に対し迅速な解決が望まれている今日、国家意思の取りまとめという観点からも問題があろうかと思います。  また、このような選挙実態の中で個人本位選挙を強いられます我が党、保守系候補者おのおのが熾烈な戦いをすることにより野党候補をはじき飛ばしてしまうという結果も呼んでいるのではなかろうかと思います。このままでは、野党は三分の一、四分の一、五分の一政党として存続することはでき得ても、政権獲得の第一歩である過半数を超える議席を得ることは永久にできないと言わざるを得ません。与野党勢力固定化の中で政治緊張感が失われ、政治自体はまさに停滞しているというのが現状であろうかと思います。  自民党の敵は自民党という選挙の中で、自民党候補者政策を争う選挙を行えない状態に置かれているとも申せます。同士打ちの激化によって、政治資金がかかるのも政策を争うことによって他の候補者との違いを明確にできないという政権党特有要素があることも指摘されております。  政治資金の問題は自民党固有の問題だという一部野党皆さんからの批判もあることは承知いたしております。しかし、基本的には、政治に金がかかるのは、多寡の相違はあっても各党とも同じであって、要はそのお金をだれが負担しているかの違いだけであろうと思います。後援会組織中心自民党にとっては議員個人が負担し、組織政党としての野党おのおの組織組合等団体が負担しているというのが実態であろうかと思います。これらの実態を踏まえまして、我が党は小選挙比例代表並立制というものを申し上げておるわけであります。  我が党は、国家意思の速やかな決定と同時に、多様な民意の吸収が図れる選挙制度の確立という観点から、小選挙区制を基本として小選挙比例代表並立制の導入を提案申し上げようと準備を進めておるところであります。  本来、政治は一党一派のためのものではなく、国家国民のためであり、それを実現する選挙制度とはいかなるものかを考えることであろうと思います。代表を選ぶ原理としての比較多数代表制比例代表制とでは、前者が主に政権の安定すなわち統治の観点を重視し、後者が少数の声を代表する議席確保を重視するという傾向があろうかと思います。  小選挙区制の長所は、政権選択について国民意思が端的に示されること、また、政権交代可能性が高まるであろうということ、そして、二大政党中心にした、国民選択した政権が安定するというところが挙げられると思います。しかし、欠点としては、少数意見が反映されにくいということであろうと思います。そのため、我々は、比例代表制長所である多様な意見がそのまま議席に反映され、少数勢力議席確保できるという点に配慮をいたし、一定割合を小選挙区制に比例を加味した制度が最善であろうと考えた次第です。  並立制は、小選挙区制と比例代表制両方長所がほどよく生かされており、現在の我が国政治状況に照らしても適切であり、転換期の政治状況に対応するためにも望ましい制度であろうと考えております。  以上申し上げた考え方基本として、我が党は、皆様のお手元に配付をいたしましたとおりの要綱を作成し、皆様の御理解と御批判を得たいと願うところであります。  今、皆様のお手元にお配りしてございます選挙制度改革について、要点だけを申し上げたいと思います。  定数につきましては、総定数は私どもは四百七十一人とし、三百人を小選挙定数、百七十一人を比例代表定数といたそうと考えております。  定数のうち、四十七人を各都道府県に一名ずつ割り振りまして、残りの定数二百五十三名は人口に応じて各都道府県に割り振るものといたしたいと思います。この方法は、最大剰余法でしたいということであります。  なお、先ごろも定数是正の問題が議論されたわけでありますけれども、私どもはこの考え方をこの選挙制度の中に取り入れまして、各選挙区間人口の格差は一対二未満とすることを基本原則としてやりたいと考えております。  区割りの具体的な基準は選挙制度審議会答申に準拠し、なお、区割り具体案選挙制度審議会にゆだねることにしたいと考えております。  なお、この定数是正につきましては、今後も起こり得ることでありますけれども、十年ごとに国勢調査人口基本として見直しを行うものといたしまして、常設の選挙区割委員会を設置したい。そして私どもは、この制度ができ上がるならば、第一回の見直し平成十二年の国勢調査に基づいて行いたいと思っております。  立候補政党届け出によるということでありますけれども個人立候補も認めたいということであります。  立候補届け出ができるのは、所属国会議員を五人以上有するもの、あるいは直近に行われた衆議院議員の総選挙または参議院議員通常選挙のいずれかにおける得票率全国を通じて二%以上のものと考えたいと思っております。  投票候補者名であります。  当選人については、有効投票数の最多数を得た者を当選人とするということであります。  補欠選挙は、欠員を生じた場合は補欠選挙を直ちに行うということであります。  選挙運動は、政策本位政党本位選挙にふさわしいものとなるよう適切な措置をとるものとしたいというふうに思います。  比例代表選挙部分でありますけれども得票全国で集計していきたいというふうに考えておりまして、全国基本としたいと思っております。皆様のお手元にお配りしてありますのは、ブロックですとか各都道府県のいずれかの単位とすることが書いてありますけれども、この「全国、」の下の部分は一応お消しいただきたいと思います。というのは、我が党で議論した結果、全国単位としたいということであります。  なお、立候補につきましては、政党候補者名簿届け出ることであります。  それから、「候補者名簿の届出ができるのは、次のいずれかに該当する政党」ということで、さきに小選挙区で述べたのと同じであります。  それからなお、今度の制度で私たち考えておりますのは重複立候補を認めようということで、小選挙区と比例両方名簿候補者の名前を登載できるものとするということにしたいと思っております。  投票は、これは当然政党名投票するということであります。  それから、当選人は、政党当選人数決定でありますけれども得票率が二%に達しなかった政党に対しては議席配分は行わないということであります。  また、ここに書いてあります②の、①で議席配分が行われないこととされた政党を除いて、各政党得票数に応じて当該政党当選人数を決めていきたいというふうに思っております。  当選人決定は、小選挙選挙で当選した者は候補者名簿から除外するということです。当選人は、候補者名簿に付された順位によって定めていこうということです。また、同一順位重複立候補者当選順位は、各候補者の小選挙選挙における得票率の高さによる、これで決めていきたいということであります。  なお、私ども参議院選挙制度もあわせて行おうということでございますけれども、私ども答申を受けたことをもとにして議論をいたしておりますけれども、これが得られた時点というのが衆議院に比べておくれておるということでございまして、我が党は今この問題について実は鋭意検討をいたしておるということであります。  私たちがねらおうとしておりますことは、衆議院がどちらかといいますと政党化というものをさらに促していくべきであろうというふうに考えております。その場合、参議院候補につきましては、参議院の持つ基本的な性格であろうと思われるところの抑制あるいは均衡、そして衆議院に対する補完ということを考えたときに、でき得ることであるならば非政党化というものもやはり考えていくべきであろうということでありまして、いずれにいたしましても根本的な改革を進めなければいけないということで、また近々皆様にこの方向について私ども考え方というものを述べる機会というものを与えていただきたいと思っております。  なお、私ども今度の選挙制度を変えていこうという中に、選挙の際の腐敗行為、こういった問題もよく議論をされるところでございまして、金のかからない選挙ですとか公正な選挙というものを行うために、腐敗行為に対して相当厳しい制裁というものを与えていく必要があろうということを考えまして、立候補者予定者の秘書を連座の対象に加えるとか、あるいは当選無効に加えて、五年間の立候補制限を科するということを新たに考えていこうということであります。  きょうは、選挙制度ということでありますから、政治資金について細かいことについては述べることは控えたいと思いますけれども政治資金につきましてもできるだけ個人から政党に移管していくべきであろう、そして企業ですとか組合あるいは団体寄附というものは、選挙制度改革という中にあってできるだけこれを少なくし、その分実際にかかるものに対して公的助成制度、こういうものを考えていかなければいけないであろうというふうに思っております。そして、今私は、できるだけ企業からの献金等についてこれを抑えていくということを申し上げましたけれども、五年間に限り政党以外の者に対する寄附を認め、その限度を逓減させる経過措置をとっていこうということであります。そして、資金調達団体に対しまして、公開を条件にしまして月額二万円までの比較的少額の企業組合等団体献金を認める方向にしていきたいというふうに思っております。団体寄附を受けることができる政党要件というものは、公的助成対象となる政党要件同一としていきたいというふうに考えております。  なお、寄附枠の区分を改め、政党に対する寄附枠を独立させるとともに、政治家個人に対する寄附は一般の政治団体に対する寄附同一寄附枠として、その限度政党に対する寄附枠の二分の一としていきたい。なお、政党以外の者に対する寄附枠限度内において、政党に対して寄附を行うことができるものとするということであります。  なお、政治資金パーティーについても、いろいろ各界から指摘があるところでございまして、これからは政治資金パーティー政治団体が開催するものとして、一千万円以上の政治資金パーティーの収支を明らかにすること、また政党については百五十万円、その他については百万円を超えるパーティー券同一の者による購入というものは禁止していくということ、それから、六十万円を超えるパーティー券購入者、これは氏名公開していくということが必要であろうと思っております。  また、政治資金公開でありますけれども政治団体の関係する政治家氏名というものははっきりと公表する必要があろうと思っております。また、政治家のために政治団体に対する寄附は、あらかじめ政治家が指定した二つ以内の資金調達団体に対して行うということで、資金調達団体はこれを公表するということであります。また、資金調達団体以外の政治団体に対してする寄附は、年間一万円超のものを公開するということがよろしかろうというふうに思っております。  それから、やはり罰則の強化ということがございますけれども、この違反行為をした者、また企業団体、こういったものにも罰則を設けることとするべきであろうということ、それから、寄附制限に違反した寄附受領者に対して、没収または追徴を科するという厳しいものにすべきであろうと思っております。また、政治資金規正法違反をした者に対して公民権を停止するということであります。また、政治資金による株取引等投機的取引は禁止するということ、政治団体は毎年、その主な資産について、これは政治家ということではなく、政治団体そのもの資産公開をすべきであろうということであります。  政党に対する公的助成というものについても、私どもといたしましては、これからその考え方というものを相当詰めて、また皆様方の御批判を得ていきたいというふうに思っております。  以上、簡単に私どもの党としてのこれからの選挙制度あるいは政治資金あるいは公的助成等につきまして、おおよそのものについて皆様に申し上げたわけでございますけれども、私どもさきに申し上げましたことを踏まえて、確かに現行選挙制度というのは六十数年を超える制度でありまして、私たちになじんでおるということ、あるいは先ほども申し上げましたように、一つ役割を果たしてきたということでありましょうけれども、今日の状況、そして、これからの新しい大きな国際的な転換のとき、こういったものに対処するためにも今こそ制度そのものにさかのぼってこれを改革すること、これを私たち考えていかなければいけないというふうに思っております。  ただ、私どもといたしましては、これは議会制民主主義基本であるということでございますから、でき得る限り各党皆様方とも存分な話し合いをする中で、こういったものをつくり上げていくということが大切であろうというふうに考えておりますので、今後とも皆様方の御批判、また御論議というものをいただけますようにお願いを申し上げて、私からの説明を終わらせていただきます。  なお、本日は、私どもの党の中でそれぞれの責任を持っていらっしゃいます、選挙制度については野田毅さん、それから政治資金につきましては塩崎潤さん、また全体のまとめ役をやっております事務局長であります武村さん、きょうこの皆様方がお見えいただいておりますので、私が今申し上げましたことにつきまして御意見等ございましたら、それぞれの皆さんに対して御質疑あるいは御意見を賜れば大変ありがたいと存じております。  どうもありがとうございます。
  4. 石井一

    石井委員長 これにて意見の表明は終了いたしました。     ─────────────
  5. 石井一

    石井委員長 これより討議に入ります。  なお、討議の際は、議事整理のため、委員長の指名により発言されますよう、また、一人一回の発言は五分以内にまとめていただくようお願いいたします。  それでは、御意見のある方は挙手をお願いいたします。
  6. 山花貞夫

    山花委員 羽田理事から政治改革全般について今説明をしていただきましたが、そのうち、例えば国会改革問題については議会制度協議会議論される場があると思いますし、また、きょうのテーマは自民党政治改革基本要綱に基づく選挙制度についてということになっておりますので、当委員会がかかわる政治倫理の問題あるいは政治資金の問題については、改めて議論の場をつくっていただきますよう、これは委員長にもお願いをしておきたいと思います。  さて、選挙制度中心にして意見を述べるに当たりまして、若干、この配付されております十二月二十五日付の政治改革基本要綱内容に関しまして伺っておきたい、このように思います。内容について確認的な部分と、あるいは内容についてまだ未調整の部分についてその後議論も進んでいるというように承っておりますので、そうした点について、まずあらかじめ御質問しておきたいと思うのであります。  全般的にこの基本要綱に至る、まず八九年五月十九日の自民党政治改革大綱答申案、九〇年十一月十日の政治改革基本要綱素案、十一月二十七日の政治改革基本要綱の案、そして今回出されております政治改革基本要綱、一貫して拝見してまいりますと、全体としての印象といたしましては、国民が求めている政治改革、すなわち、リクルート事件から始まって政治倫理を求め、定数是正を求める中で、国民政治に対する信頼をいかにして回復するか、こういう観点から政治改革議論されるべきだと思いますけれども、全般的な印象としては、やはり自民党のための選挙制度改革、こういう印象を否めないというのが私の意見であります。  実はそうした観点前提といたしまして幾つか伺っておきたいと思うのですけれども、今申し上げましたように、基本要綱の中でもまだ調整できていない部分があると思います。今も羽田理事がお触れになりましたが、まず第一に参議院について、この内容を拝見いたしますと、参議院の問題につきましては、二院制をとっている我が国選挙制度抜本的改革ということではありますけれども政治改革の精神にのっとって抜本的な改革については引き続き検討する、この要綱の中ではそうなっております。この点について今羽田理事は、鋭意検討しているとのことから、衆議院政党化参議院は非政党化方向で、こういうふうに御説明になりました。審議会議論その他、我々が知っている限りでは、参議院については推薦制制度を導入する方向議論が進んでいるのではなかろうか、こういうように思っております。そうなってまいりますと、二院制をとっている我が国選挙制度抜本的改革ということであるならば、自民党のお考えがもしそういうことであるとするならば、衆議院については小選挙比例並立である。参議院については、例えば推薦制である。セットにしてお出しになることが選挙制度としての抜本的改革ということの意義を明らかにすることになるのではないか、こう思っておりますけれども、この点いかがお考えでしょうか。  関連いたしまして、参議院制度につきまして、ことしの一月二十二日、自民党選挙制度調査会参議院選挙制度に関する小委員会松浦先生委員長の会でありますけれども、ここでは先送りということで、十六回の参議院選挙では抜本的な改革だけではなく、逆転区の解消のための定数是正、いわば部分的な現行制度の改善、こういう部分についても先送りにする、こういう意見がまとめられたと伝えられておりますけれども自民党としてはそういうことなのかということについて伺いたいと思います。  同時に、これは最近の動きでありますけれども、先月の末、二十九日夜、日本時間の三十日と報道されましたが、ボストンで小沢幹事長が、これから参議院選挙制度改革につきましてもセットで出す、そして政治日程にのせる、こうおっしゃっているのですけれども、この点については要綱ができ上がった以降の議論だと思いますので、一体どうなさるのかということについて伺いたい、こういうように思います。  第二番目に、一番関心が集まる、小選挙区三百とした場合の区割りの問題についてであります。三月二十七日、これは羽田理事が発言したと伝えられているところでありますけれども、この区割りの問題については、要するに法案作成後に明らかにする、こう私どもは聞いているわけであります。実は、従来から区割り問題については、出すと議員批判意見が集中して難しいから先送りにして、法案の骨格だけ先に出したい。実際の区割りにつきましては選挙制度審議会お願いするということもあったようですけれども、電光石火これをきちんと法案をまとめたい、こういう趣旨に我々受けとめているわけでありますけれども、実はきょうの新聞を見ましても、定数是正について自民党、中選挙区問題についての四つの試算というものが発表されております。マスコミに出ているコメントを見ますと、加藤担当委員長が、「定数是正ではいかに多くの選挙区に影響を及ぼすかを認識してもらい、小選挙区導入の方向を強めたい」こうなっているわけでありますけれども、これは全体として国民の前に選択を求めるとするならば、中選挙区ならば選挙区はこうなりますよ、小選挙区ならば三百の選挙区はこうなりますよ、これまたセットにして出すことが正しい選択対象となり得るのではないかというように思うわけですけれども、この点についていかがお考えでしょうか。  三番目に、この審議会答申とのかかわりであります。  従来、総理初め担当の幹部の皆さんの発言を伺っておりますと、選挙制度審議会答申については最大限尊重する、こういうことで一貫しておったと思います。しかし、実際に出てきた内容について拝見しますと、最大限尊重ということではなく、八次審の答申の中身がまたかなり重要な部分において変えられているのではないか、こういうように私どもは思っている次第であります。  変えられているところといたしましては、まず人数の問題がございます。答申の五百一から四百七十一。もっとも五百一といっても、新しい国調によれば五百というのでよろしいのかもしれませんけれど、四百七十一と数を減らし、かつ、その際に小選挙部分について三百は変えない、残る部分について比例とすると、こうなっているわけでありますけれども、この比例部分について減らして四百七十一、こうした四百七十一という総体の総数につきましても議論があるところでありますけれども、その点は答申との関係で横に置いたといたしましても、この三百という数だけは確保して、残りを比例区にするということになりますと、答申にありました、私は配慮と均衡論ということではないかと思うのですが、小選挙比例並立にするのだけれども、小選挙区の特性に、少数勢力議席確保し得るという比例代表制の特性を加味したものである、そして六、四、こういう数字が出ておったわけでありますが、この六、四のバランスが大きく変わってくるということになります。そのことは同時に、小選挙区から締め出される中小政党がまた出にくくなるということにもなるわけでありまして、答申からこういうように大きく変えることはいかがなものであろうかというように考えているところであります。  その他、二%という問題が出てまいりました。これはまた少数政党が切り捨てられるというところだと思います。  政治資金の問題、改めてということにしたいと思いますけれども政治資金問題についても、第七次の選挙制度審議会までは一貫して企業献金廃止の方向でということだったわけですが、これが百八十度転換して、政党に絞るんだからよろしいだろうということになったことに加えて、さらに政治団体政治家個人に対するものを加えてくる。いわば審議会答申のしり抜けが図られているということでありますけれども、こうした問題につきましては審議会内部でも議論があるということが新聞によって伝えられております。審議会答申と、重要な部分において変更してしまった問題についてどうお考えなのか。そして、いわば自民党有利に変更した部分だけは横に置いて、区割りだけは審議会にもう一遍頼むということは、審議会としても不満が出てくるのではないかと思いますけれども、いかがなものか。  以上、いろいろ意見を申し上げるに際しまして考えておりましたら、この点だけは伺っておきたいということがあったものですから、私の意見にかえてそうした質問をさせていただいた次第でございます。
  7. 石井一

    石井委員長 山花委員から非常に多岐にわたる問題の提起がございましたので、どこからでも結構です。順次ひとつ挙手を願いまして……。
  8. 野田毅

    野田(毅)委員 参議院改革の問題ですが、我が党として基本要綱を決めました後に、もう一遍党としてどうするかということで論議をした結果、まず来年行われます第十六回の選挙については、いわゆる偶数回であるということもありまして、基本的には現行制度で行う。そして、第十七回からはいわゆる抜本的といいますか根本的といいますか、そういう参議院選挙制度改革を行う、こういうことで党として決めております。  問題は、その中で、なぜ来年従来どおりなのかということが一つあります。それは今申し上げたように、一つは偶数ということもございますし、それからそもそも現在の比例選挙選挙選挙、こういう二つの選挙によって成り立っておる参議院の現在の制度そのものを根底からもう一遍見直してみたい。したがって、当面の是正措置ということだけで済ませるのではなくて、やはり衆議院選挙制度の抜本改革とあわせて、参議院二院制本来のあり方という角度の中から、根底から改革、メスを入れてみたい、そういうことからかえって来年の選挙制度について多少の手直しでお茶を濁すというようなことが逆に障害になるおそれがある、こういう判断から来年度は現行どおりで行う、こういうことにいたしたわけであります。  その抜本的な参議院選挙制度改革方向性について、御案内のとおり審議会答申の中身を見ますと、極力政党色を薄めていくという方向性が出ておりますね。御指摘のとおり候補者推薦制というものにかなり突っ込んだ言及がなされておりますけれども、残念ながら途中で思考停止状態に陥ったままになってしまっておるというのが実情だと思います。それで私どもはその候補者推薦制ということをも途中で思考停止をしないでさらにそれを具体的に展開していくとどういう仕組みになるのか、それがまた憲法論なり法律論なりそういう制度論として実際にどういうような成り立ちができるのかということも勉強していくということも一つ方向だと思っておりますが、必ずしもそれにのみこだわるのではなくてまだあと幾つかの考え方について現在検討を加えておる最中でございます。それで私どもとしては少なくともこの衆議院参議院両方選挙制度改革ということをワンセットでやりたいという考え方を持っております。ただ、参議院制度改革について党内の検討でまだ結論を得ておりません。そこで、極力急いでやらなければならぬと思っておりますけれども、セットで出すのかどうかということについては現在その方向で鋭意精力的に検討を積み重ねておるという段階にございます。これが参議院改革の問題であります。  それから小選挙区の区割りの問題でありますけれども、これはセットとして法案と一緒に出すべきだ、あるいは法案が成立した後でこの区割りを出すべきだ、両方意見はあると思います。しかし実際区割りそのものも法律で決めなければならぬことで、国会で決めなければならぬことであります。この点について私どもは、少なくとも区割り案を具体的にどうつくるかということについては極力第三者機関的なところで決めてもらうということが最も客観的、公正な判断ができる、我々はそう認識をいたしております。今回我が党のこの要綱の中に書いてありますとおり、当面は最初の区割り具体案選挙制度審議会お願いをしなければならぬことだと思っておりますが、その次以降は十年ごとに見直しをしていくというそれについては、常設の区割委員会お願いをする、こういう考え方でありますが、ともかく最初の区割り案の作成についてお願いをするためには、少なくとも与党のみでなくて、この基本的な小選挙比例代表並立制ということについて、やはり野党皆さんとのある程度のすり合わせといいますか、そういったことも基本的に必要なのではないか、そういうことをも実は感じております。その区割り案が具体的に問題になって、その区割り案がネックとなって法律の成否に影響を与えるという判断よりも、まずそこの区割り案に入る前の前提としてやはり少なくとも野党皆さんとの骨格部分についての基本的な考え方がある程度すり合わせといいますか歩み寄りというものができた上で区割りというものを考えていくということが大事なことではないかというふうに考えております。これを法案を提出するときに最初からワンセットで提出することがいいのか、あるいは逆に法案そのものは、最初は区割りについては別途法律で定めるなり何らかのやり方をする形がいいのか、その点についてはまた御相談をしていかなければならぬことだ、こう思っております。  あと、答申を最大限尊重するという中での総定数のお話もありましたが、私どもも率直に言ってどういう数字がいいのか、もう御案内のとおり、世界の中で比べてみても現在の一億二千万を超える日本人口から見れば、現在の総定数が多過ぎるということが言えるのか言えないのか、いろいろな角度の問題はあると思います。しかし、基本的にやはりこの際政治改革をやるということの姿勢が、政治改革をやった結果この定数がふえちゃったということになると国民から見てわかりよいのか否かということをも考え、いわゆる本則に戻るということで総定数というものを四七一という数字にしたわけであります。  あと、選挙区と比例との配分比率の問題であります。これは御指摘のとおり、配分比率六対四というのは一つのめどだと思いますし、答申にもそう書いてあります。私どもはその点をどういうやり方がいいのか、この辺はまた御相談をしていかなければならぬことだとは思いますけれども、大体約四十万人に一人というのは小選挙区について一つの目安であるし、それからいま一つは、本来この並立制というのはやはり小選挙区ということが根幹となって、その足らざるところを補完をしていくという役割である、こういうことから、やはり主眼は小選挙区、そしてそれを補完する比例である、こういう位置づけの中から、四七一とする場合にまず三百というものを確定をしてその上で比例を、残りを持っていく、こういうことを優先をすべきである、こういうことであります。  それから、いわゆる政党要件、二%要件でありますけれども、これはもう御案内のとおり現在参議院比例も実際問題半数改選の中で定数が五十人でありますから、結果として言えばこれは言うなら二%に相当する、そういうところから一応我々もその考え方を踏襲しようか。まあ西ドイツあたりでは、併用制ということもありまして、そしてその併用制の弊害がいろいろ過去に実際あったということから五%条項というものがある。だから我々もこれは本当に二%でよいのか、あるいは五%がよいのか、その点は議論のあるところかとは思いますが、むしろ五%にするよりもハードルを低くして、現在の参議院比例で行われておりますそのことを念頭に置いて二%という形の方がより少数政党といいますか、いわゆる新規参入に有利になるのではないか、こう考えておるわけです。
  9. 塩崎潤

    塩崎委員 企業献金については政党にだけに限定しているという答申を骨抜きにして個人にも認めているじゃないかという御意見でありました。私ども答申を骨抜きにしたということは全くありません。ただ、小選挙制度がどのように落ち着くかということもありましょうから、この動向を見ながら五年間は例外的に存続さしていく、その限度は逓減していく、そして五年経過後も、当分の間でございますが、月額二万円の少額のものを認めていくというふうに、限定的に、経過的に、祖父条項といいますか、経過的な規定を設けただけであって、現実に対応して小選挙制度を定着させるための、その間の政治資金の調達に現実的に対応していこう、こういう趣旨でありまして、私はこれは骨抜きとは全く考えておりません。むしろ答申に忠実な方向であろうと考えております。
  10. 武村正義

    武村委員 定数是正と小選挙区制をセットで出すべきではないのかという御指摘もございました。  自由民主党は、中選挙区制のもとにおける定数是正の党の案を出す考えはございません。これは先々週の論議でも申し上げたことであります。けさ新聞に出ておりますのは、羽田理事が申し上げたとおり、大綱に示しておりますように、党の方針は選挙制度改革と一体に国会決議を全部消化していこう、あくまでもこの考えでございまして、別途現行制度前提にした考え方と二本立てで出していく考えはないということを重ねて申し上げたいと思います。
  11. 石井一

    石井委員長 ほかにございませんか。大体カバーしたようですか。――それでは進めましょう。
  12. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 今、山花理事の方から、この要綱について基本的にどう考えておられるのか、不透明部分について前提としてちょっとお話があったのですが、私も二、三伺いたいのです。  一つは、二院制をとっている以上、衆議院をこういうふうに変えるとなれば参議院はどうする、参議院がこうだから、それでは参議院の方はこう変えて、衆議院はこうするというように、いわば両々相まってと申しましょうか、野田委員からお話があったように、二院制である限りやはりワンセットで考えるべきだと思うのです。それで、いろいろ考えるときに、私たちも永久的に中選挙区制と言っているわけではないわけです。私たち比例代表が一番民意を正確に反映する制度であると思っている。衆議院をそう変えた場合に、今度それでは参議院はどうするか。率直に言ってこれはなかなか難しい。  しかも、皆さん方のように、小選挙比例代表制というのを衆議院に導入しようというときに、事実上参議院は、正確には小選挙比例代表制ではなくて中選挙比例代表制というやり方だと思います。ただ、四十七都道府県で四十一県が一名区、二名区ですから、小選挙区と言ってもいいかもしれませんが、それは別といたしまして、事実上同じような制度になっている。これは、経過が全国区から比例代表に変わったということがありますから、それはそれとして、皆さん方にとりましていわば一番理想と思われるような制度が既に参議院に入っておるわけですから、選挙制度として、では参議院どうしましょうというと、なかなか答えは出てこないというのがある程度当然の理なんですね。  そこで、いずれにいたしましても、二院制のもとで、今は衆議院が中選挙区制で、参議院が正確には中選挙比例代表の格好になっているということ、しかし、衆議院を小選挙比例代表制とした場合に、参議院をこのままの制度にということにならぬでしょう。参議院の側がまたこれをどう受け取られるかということもありますが、いずれにしろ、これはどうあれワンセットで考えるべきことだと私は思うので、衆議院だけやってみてということにならぬだろうと思う。そのあたり、どういうふうにお考えになるか、お伺いしたい。  もう一つ、私は、選挙制度審議会でも皆さん方でも、参議院選挙のやり方について政治資金との関係で非常にわからないのは、選挙制度審議会答申もそうですけれども、非政党化をなるべく目指している。これは第七次の選挙制度審議会の、いわば政党化というのは時代の流れの中でやむを得ないんだということの前提と違うということは、それはそれとして、政治資金の方は基本的に政党に限っていこうではないか、塩崎先生からお話があったように、当分の間、五年間は経過措置として、いろいろなやり方があるにしても基本的にこれは政党に絞っていこうではないかという方向の中にあるときに、片や参議院の方は非政党化を目指そうという。参議院の方というのは一体選挙をどうやってやられるというイメージで物を考えていらっしゃるのかというのが非常にわからない。この点を御説明いただきたい。  三番目に、野党四党あるわけですけれども、社会党と他の三党で若干立場の違いがあるのは、私のところも、百三十選挙区のうち三十選挙区で複数立てているわけですね。きょうおられる中でも小岩井さん、仙谷さん、堀先生、山花理事、七人のうちこの四人は、複数を立て、今回は幸いにも当選をしてきているわけですよね。私は複数でやっていないから、必ずしもその辺のところは、内部の競争のあり方というのは実感としてわからない点が確かにあるかと思いますが、社会党は社会党なりに組織割りをしたり地域割りをしたりして複数が出れるような配慮をしておるわけですね。ですから、そういう意味で百三十のうちの三十、今回はそういうことでやったわけです。共産党さんの場合、京都一区だけ複数出されていますが、あとは単数でやられるところと複数でやるところの悩みというのは、その意味ではわからぬわけではないですが、しかし私たちは、選挙制度を変えるならば、最終的には一番民意を反映するのは基本的には比例代表だ。比例代表というのはあたかも弊履のごとく当初から捨て去ったがごとく報道もされるし皆さん方の方からもそう言われる。ですから私は、中選挙区制というのは永久不変とは申しませんけれども、変えるなら一番民意を正確に反映する比例代表。それはいろいろな格好があるし、いろいろな考えをこれからいろいろ詰めていけばいいと思うのですが、比例代表というものは世界の大勢であるし、小選挙比例代表制などという制度自体は世界にないわけで、まあ強いて言えば、言うまでもなく参議院が一番近いということになるわけで、比例代表制というものをもっと詰めていく必要があるのではないかというふうに思います。  私は、今申しましたように、永久不変中選挙区制だというふうにこだわっているわけではないのです。ただ、この前の議論にありましたように、やはり民主主義でありますから、ルールあるいは手続をちゃんとしていこうということで、定数是正国会決議をしたことだからやりましょう、あわせて選挙制度のあり方についても並行的にひとつ審議をしていこうじゃないですか。定数是正審議をしたときもおわかりのように、こちらはやるならとにかく全部比例代表自民党さんはだめ、まあ強弱はあるにいたしましても。ですから、そういう意味で、さらにもう少し突っ込んで比例代表の案というものについて自民党さんも考えてもらう必要があるんじゃないか。ですから世間では小選挙区制初めにありきか、政権維持、なお一層継続させるために、こういうことかというふうにとられるのは、これはある程度とる方も正しいと私は思っているのです。比例代表というものについてさらに真剣に考えていく必要があるのではないかというふうに思いますが、この点についての御意見を聞かせていただきたいと思います。
  13. 野田毅

    野田(毅)委員 衆議院改革参議院改革はワンセットで考えるべきだというようなお話は、私はそのとおりだと思っております。ただ、これを同時並行的にやっていくということになると、結局片っ方の足がしっかり定まらないと、もう片っ方の足も定まらないわけで、そういう意味で、まず衆議院としての望ましい制度のあり方はどうなのかということをセットする、そしてそれを前提として参議院制度改革考えるということでないと二兎を追う者は一兎も得られないことになりかねません。そういったところから、衆議院制度をどのような形に改めるのかということで、まずそれを先にセットする。そこで、参議院制度改革をどういうスタンスでやるかということは、今御指摘がありましたように、これは衆議院はより政党政治といいますか、政党本位政策本位選挙制度に持っていくということをより鮮明にしていく。他方で、二院制度という長所を生かすためにはやはり政党色を極力薄めていくような方策はないかということ、実はそれを立脚点として参議院制度改革を行っていくのだ、こういう考え方でおるということはさっき申し上げたとおりです。これは言うべくして、具体案になると甲論乙論いろいろあると思います。しかし、今申し上げたように、我が党内で、私の仰せつかっております委員会の中に小委員会を設け、その具体案について、いろいろ具体案がございますが、それについて今鋭意検討しておるということですから、基本的には今佐藤さんがおっしゃった方向性と同じ方向性で問題意識をとらえておるということかと思っております。その中身によっては、場合によって政治資金の取り扱いについても変更が加えられることも出てこようかという気もいたしております。  それから、最後の比例代表の話ですが、我々これは真剣に検討しました。ざっくばらんに申し上げて、我々の党内論議の中では、思い切って衆議院を完全小選挙区、参議院を完全比例代表ということにしたらどうかという意見も大変強くあったことは確かです。しかし、完全小選挙区というのは、英国のようなやり方もそれは一つのやり方だと思いますが、今直ちにそういう形に持っていくということになると、少数意見をどう反映させるかということにおける難点をなかなか克服しづらい部分があるということから、比例代表並立という結論に落ちついたわけです。  羽田先生が冒頭申し上げたとおり、本来衆議院の場合は、根本的に参議院と違うところは、少なくとも衆議院というのは政権を争う選挙である。したがって、一遍でき上がった政権は、できれば少なくとも一党政権なり、せいぜい二党連立、それ以上たくさんの政党が連立に加わらなければならぬような政権は、でき上がった政権の安定度が極めてよくないという致命的な欠陥がある。比例代表ということであれば、どうしてもいわゆるミニ政党、いろいろなたくさんの小会派がどんどん出てくる。したがって、御案内のとおりドイツにおいては、比例代表ということではあるけれども、五%条項というものを設置することによってそういうミニ会派を極力排除するということを現実にやっておる。されば、さっき山花さんから御指摘もありましたけれども日本において果たして五%条項というものが可能なのかどうなのか、そういったことをも念頭に置く必要もある。そういうところから、やはり政権としては、しかも解散制度もあることでありますから、でき上がった政権は、特に国際情勢がいろいろ変化していく中で、これからは非常に大事な変革の時代に入っていく中で、政権の強さというものが一方で必要である。しかし一方で、それだけではよくない。そこで、極力参議院の方でそのチェック機能を十分に果たしていくために、逆に非政党化という形によって、衆議院政権の行き過ぎをチェックする機能を十分に果たさなければならない、そういうシステムを考えるべきである、こういうことなんです。  比例代表についてまだまだいろいろなやり方もあろうかと思いますけれども、私どもやはり問題が多いのではないか。その五%条項が日本で本当に可能なのかどうなのか、そのことが最大のポイントだと思っております。
  14. 塩崎潤

    塩崎委員 佐藤委員が二番目に、参議院改革政治資金規正法との関係、特に参議院が非政党化された場合の政治資金のあり方等については問題があるではないかという御指摘でございました。私も、いろいろな問題が出てくる可能性はあるかと思います。  しかし、政治資金規正法は現在でも参議院のみならず地方議員にも適用されている法律であることは御案内のとおりでございます。しかも、参議院選挙制度改革方向は、政党化というような言葉がどうなのかわかりませんけれども、これがあらわすように、選挙に金がかからない方向での改革になるのではないかというふうに私は思いますので、現在の政治資金規正法という大きな袋、しかも改革後もまた大きな袋として役立つことを考えれば、私はこれを適用してそんなに不合理な事態が生ずるとは思いませんが、参議院改革の具体的な方向がはっきりした場合に特殊な事態を織り込むようなことが出てくる可能性はあるかもしれない、こんなふうに考えております。
  15. 河上覃雄

    ○河上委員 これは確認ということでお考えを示していただきたいのですが、例えば小選挙区に三百、この際に各党一名ずつ立つという原則になるわけでございますが、この自民党さんのお考えになりますと、この一名を決定するシステムですね、各選手区に一名を配置していくわけですけれども、どのような決定システムになるのか、その辺をちょっとお考えを示していただきたいと思います。
  16. 野田毅

    野田(毅)委員 お尋ねは、いわゆる公認候補の選定システムですね。これは今まさに、法律事項ではないのですけれども、この制度をやる場合に我が党として一番の関心事はそれなんです。だれがどの選挙区から出るのかということが最大の関心事でして、これをどうやって党内の円満なさばきをしていくか。実は率直に言って、妙な形で決まると党内のことだけでは済まされない。もし妙な形で決まったらやはり有権者はそれを批判するわけですから、党内で合意が得られるのみならず、その選考過程が言うなら有権者からも公正な選考過程であるということができるだけわかる必要がある。そういう意味で、客観的な選考基準をどうつくっていくかということが非常に大事なポイントになると思っております。我が党内で別途候補者選定に関する小委員会というものをつくりまして、もう既に二カ月にわたって鋭意具体的な選考基準といいますか、今勉強を積み重ねております。したがって、これは党内的な問題ですが、この法律を法案として提出して御審議をいただくという段階になる前に、まず党内的にその部分がはっきりしないと党内調整そのものが逆に難しくなるだろう、我々は政治的にはそう思っております。  ただ、現在の中選挙制度で圏内におさまるのかどうかという部分もありますが、いわゆる制度定着後における公認ということは、原則として現職優先ということは、我々これは小選挙区の英国を初め大体どこの国でも同じようなことだと思っております。いわゆるアメリカ型のプライマリーというやり方はすべきではない。むしろそれぞれの地元における意向ということを尊重するというのはこれは大事な事項でありますけれども、やはり補欠選挙が今度は必至になるわけですから、そういう意味で公認候補予定者というものは早く決めておく必要があるということはまず第一だと思っております。  そこで、制度定着後における新人の登用のあり方について、英国の保守党の例であるとかいろんなことを今勉強いたしておりまして、これを法律案として国会で具体的な審議に入るころには我が党内的にもその候補者選定手順というものをセットしたい、こう思っております。
  17. 仙谷由人

    仙谷委員 きょうは選挙制度の問題が中心だということでございますけれども、従来自治大臣に対する質問をずっと行ってきまして、今度の政治改革についてはいわゆる選挙制度、小選挙区なのか比例代表なのかということのみならず、いわゆる政治資金それから腐敗防止の関係、これをワンパッケージで行うんだというのが自治大臣のお答えであったわけですよ。つまり、そもそもの出発点がリクルート事件から始まったこの金権選挙をどうするのか、政党政策本位選挙にするためにはどうしたらいいのかというところから始まっているわけですから、選挙制度だけいじってできると考えるのはちょっと楽観的過ぎるというのはこれはもう常識だと思うのですね。  そこで、自由民主党政治改革基本要綱の「選挙腐敗行為に対する制裁の強化」というところを拝見しますと、どうもこれじゃ何もしないということを宣言しておるようなものじゃないかという気がするんですね、一つは。この程度のことしか現時点でもお決めになってない、お決めになってないというか案としてもないのか。  それからもう一つは、ワンパッケージ論というのは、やっぱり自治大臣だけじゃなくて自由民主党も、政治改革というのは腐敗防止、政治資金公的助成含めたワンパッケージで野党に示す、あるいは野党と協議をしながらワンパッケージとしてつくっていくんだ、こういうお考えなのか、この点ちょっと確認させていただきたいと思います。
  18. 羽田孜

    羽田委員 ただいまの御指摘にありましたとおり、我が党といたしましては今御指摘のあったことをこれを全部ワンパッケージでやろうということじゃないのです。それから、腐敗防止につきましても、これはさらに検討し、法案の骨子などをつくるときにはもう少し深めていかなければいけないと思っております。  しかし、この中に一項だけ、先ほど私がちょっと述べた中でも申し上げましたとおり、要するに一つ選挙区から五年間も立候補ができないということはこれはもう大変に大きなパンチがきいてくるということであろうというふうに私どもは確信をいたしております。
  19. 東中光雄

    ○東中委員 二、三点聞きたいんですが、選挙制度改革については当委員会では何回も私申し上げていますが、八七年の九月にも八八年の五月にも政府側あるいは自治省選挙部長の答弁で、選挙制度国会の構成の基本に関する問題だ、それから各党の土俵づくり、だから各党間で論議審議して原則をつくって選挙制度審議会に諮るなら諮るというふうな方法をとるべきだ、特に中選挙区制をどうするかというふうな大問題になれば、十分国会論議をしてやるべきだという態度なわけですね。これは八八年の四月の当委員会審議でもそういう趣旨のことが言われている。ところが、八八年の夏からいわゆるリクルート問題が起こって、何のそういう国会審議もないままで大綱、いわゆる政治改革大綱で、八九年にいわゆる小選挙比例代表並立制とは言ってないけれども、小選挙区制を中心にして比例代表を加味するという案が出てきた。これは従来の政府のあるいは自治省選挙部が言ってきた態度とは違ったやり方で八次審を開いて出してくる。自民党の方針に従ったものでちょっとこれは問題じゃないか。今までの答弁では、そういうようなことをやったら、一方的にやればそれは現実的でないし民主的でない、そういうふうにちゃんと論議をしてやるのが民主的で現実的であるという答弁もありますから、そういう点をひとつどう思っていらっしゃるのかというのが第一点です。  それから第二点としては、大綱が出されて、そして今度は八次審に諮問をして、八次審の答申は大綱に基本的に一致しているんだけれども、違う部分が何ぼかあった。総定数とか配分とかあるいは格差とかということについて違う部分があった。その部分については今度は基本要綱で全部大綱の趣旨へ戻っちゃった。大綱の趣旨を原則的に入れた答申とは矛盾してないけれども答申でちょっと違ったかなと思う部分は、全部答申部分は変えたというのが基本要綱ではないかという感じがしておりますが、この点どう思われますか。  だから、総定数の問題にしても選挙区間格差の問題についても後藤田さんが何かパンフに書いているのを見ますと、これは違っているんだ、自民党としては都道府県間格差を二対一未満としているのであって、選挙区間の格差は一対二という答申は全然違うんだというふうなことを実際に発言されたわけですね。それを今度はもとへ戻しておるというふうな感じを私は持っています。  それからもう一つは、小選挙区制は政権交代可能性を高めるという今の羽田さんの説明もありました。それについて朝日新聞九〇年五月十二日の「ざっくばらんに選挙改革を聞く」というやつで当時の小沢幹事長はこう言うてますよ。「小選挙区制について自民党の「従来の得票をあてはめて考える」と、自民党に圧倒的に有利で、自民党が圧勝する。公民は「現実問題として、目先をみれば」「埋没してしまう」とし、「その中から必然的に、これでいいのかという議論が起こるし、だれだって、健全な野党が必要だと考える。」だから、これは自民党の独裁だ。「健全な野党が必要だと考える。その時、今の野党中心になった新しい政党ができるのか、自民党が分れるのか分からんが政界再編が行われるんじゃないか」」、こういう考えですね。  それからやはり同じ小沢さんの「思春期を迎えた日本政治」、講談社の本の中で「小選挙区制を導入したら自民党に有利だといわれている。しかしながらそれは最初のうちだけだろう。……何度か実施されるうちに必ず健全野党が育ってくる」。だから、何回かやったら今度は健全野党を育てる、そういう制度である、こういうふうに当時の幹事長の小沢さんが公にしているわけですね。活字になっている。そういうことについてどう羽田さんはお考えになっておるのかお伺いをしたい。  それからあともう一点だけですが、政治資金はやはり個人に限るとすべきじゃないか。営利を目的にする株式会社側が選挙投票を左右するようなそういう資金を出すというのは、これはやはり基本的に間違っている。政治資金というのは政治参加なんだから、国民の浄財だということは法律にも書いてあるし、それから答申にも書いてある。そういう点からいえば、株式会社が国民である、国民の浄財だ、これは通用しない理屈ですね。アメリカや西ドイツの判例も、八〇年の場合の判例でもそういう考え方が出ているので、やはり個人に限るという方向をとるべきではないか。社会的実在であるから金出してもいいんだ、そんなことを言い出したら社会的実在というのはいっぱいあるのですよ。それはやはりいかぬのじゃないかというふうに思うのですが、基本的な考え方として政治資金考え方をお伺いしておきたいと思います。
  20. 羽田孜

    羽田委員 後藤田さんのお考えについて、これは後藤田さん個人のお考えだったんですけれども、その議論を踏まえながら私どもがこういう決定をしてきたということだけ申し上げておきたいと思っております。  なお、制度は公正でまた民主主義の基本であろうということで、八七年、八八年にここで議論されたことをもとにしてのお話があったわけでございますけれども、私どもといたしましては、従来から実は制度については党の中で議論もされてまいりましたけれども、しかしこの前のリクルート事件等が起こった。私たちはすりかえをしようというのではなくて、そういう経験を踏まえ、また過去にそういったものが起こってきたことを踏まえながら、今までは政治資金規正法とかそういったものの改革をしてきましたけれども、やはりそれだけではどうにもならないということで、その根本にさかのぼって選挙制度そのものに踏み込まなければいけないだろうということで、実はこういう方向を今たどりつつあるということであります。しかも、この問題については各党で話し合っていこうということであります。ですから私ども要綱をつくったこの時点で、各党の党首の皆様方に我が党の海部総裁の方から我が党はこう考えますということをもう十二月の時点で実は申し上げ、そして皆様にもやはりお考え方をぜひ聞かせていただきたいということを申し上げ、またこういった機会委員長に特におつくりをいただき、皆様方と一緒に議論をしていこうということで、私どもはやはり皆様方と、民主主義の土台でありますから、こういった問題についてはともに話し合いながら行こうという原則は全く変わっておらないということを申し上げておきたいと思います。  それから、小沢さんが話されたこと、あるいは今の本に書かれておるということについての御指摘があったわけでありますけれども、この考え方、実は私も先ほど申し上げました中で二大政党中心としてということを申し上げましたけれども、私どもの今度の小選挙比例並立というこの形は、やはり小選挙区というものが基本になっておるということだけは申し上げることができます。そして、そういう中で今のいろいろな大きな転換期の事態に対応するために、これは二つの大きな勢力といいますか考え方のものが中心になって、これは当然幾つかのほかの政党というのが残っていくということであろうと思っておりますけれども、そういうものが頭の中にあるということは、結果としてそういうものが生まれてくるであろう、またそういう結果が必要であろうというふうに考えておるということは事実であります。  それから、勝つ負けるという話については、前回あるいは前々回こういったものをインプットしてやると、確かに我が党というものが何だかんだと言いながらまだ勝つということはあり得るであろうけれども、何回か重ねているうちに違った結果が出てきますよということはそこで書かれておりますけれども、しかしそれほどさかのぼらなくても、一人区の場合には一昨年の参議院選挙が如実に示しますように、また一昨日の地方統一選挙の県会議員選挙というものが、その前の衆議院選挙、その前の参議院選挙とはまたがらっと変わってしまう。結局その選挙選挙の間にどの政党がどのような動きをしたかということが実に見事にあらわされたというのがこの参議院選挙の結果であり、また今度の地方統一選挙の結果であったろうというふうに私は思っております。ですから、何回か繰り返されているうちにというのは余り隔絶した意見ということじゃなくて、むしろ意見というものはだんだん現実的に収れんされてくるであろうということは言えますけれども選挙そのものの結果というのは、変なスキャンダルを起こしたらその政党はもう必ず敗れるということになるでしょうし、国民に理解されない政策を強引に押しつけていくとしたらこれまた必ず敗れてしまうであろうというぐらい、何というのですか非常にはっきりと民意というものは個々に反映されるであろうというふうに思っております。  ですから、私どもの党の議論の中で、今のままでいけば我が党は永久政権でいけるにもかかわらず、こんな制度を導入したら我が党として政権からおりなければならない場面というのは幾つも出てくるであろうということで、むしろそういった批判というのが我が党の中でも逆に強くあったということでありまして、私はそういった意味で、互いに緊張した中で政治が行われていくということは今最も望まれるものであろうというふうに考えております。
  21. 塩崎潤

    塩崎委員 東中委員、例のいつも主張される御持論を展開されて、政治資金個人献金に限るべきであるということでございます。私はおととし政治資金規正法改正案を提案した際に大変お知恵を賜ったわけでございますが、私どもはやはり企業献金をまず第一に、これは政治的行為の自由の中に入るという最高裁の昭和四十五年六月二十四日の大法廷の判決を私はかたく信じて、これが正しいものだ、こういうふうに考えております。したがって、あの際にも答弁を申し上げましたが、むしろこれを禁止すること自体憲法違反のおそれすら出てくる、このような疑問も出てくるわけでございます。  第二に、今度は、小選挙制度に改変されるからそれに応じて政党に限定する、こういうふうになっているわけでございまして、今度個人政治家に対する企業献金は、臨時的な経過的な措置は残りますけれども、原則としてなくなる、こういうふうに考えられるところでございます。  なお、今アメリカのごとくドイツのごとくという外国の権威のようなお話がありましたが、外国の制度を見ましたが、私はドイツはそのお話を聞きませんので、なるほど東中委員の言われることは正しいのかなと思ったら、ドイツは法人献金は認められておって法人税の控除まであることを今気がついたところなので、これはまたひとつ後でお教えをいただくことにして、私は企業献金は当然現在の憲法のもとでは許されるべきであるし、政党に限定するということは、小選挙制度に伴うところの政党本位選挙にすることに対する一つの改変だ、こんなふうに考えております。
  22. 武村正義

    武村委員 ちょっと補足ですが、一昨年自民党は大綱を決めて、その後、昨年政府の審議会答申が出た。大綱とかなり違っている点があったにもかかわらずまた要綱でもとへ戻したじゃないかという御指摘がございましたが、どういう点でおっしゃったのかよくわかりませんが、例えば選挙制度に限って定数の問題を例にとりますと、大綱は四百七十一以下ということをはっきり書いています。しかし、一定の目標を定めて段階的に着実に減らしていこう、こういう表現でありました。  それから、選挙制度そのものは、小選挙区の導入を基本として衆議院選挙制度の抜本改革に取り組む。ただし、この際、少数世論を配慮して比例制の導入も検討する、こういう表現が大綱ですから、ちょっと例を挙げましたけれども、大綱はまさに大綱、基本的な方向づけをしておりまして、具体的な例の審議会答申が出ました。その中で一部修正はしておりますが、基本的には答申を文字どおり尊重させていただいてこの要綱を定めさせていただいた、こういうふうに私どもは認識をいたしておりますので、誤解のないようにお願いします。     〔委員長退席、穂積委員長代理着席〕
  23. 川端達夫

    ○川端委員 一、二技術的なことでお尋ねしたいのですが、先ほどから御議論の中で、やはり選挙制度政治資金あるいは政治倫理等々は制度をいじる上にセットになっているという御議論で、考え方としてはそれなりに理解できないこともないのです。しかし、政治資金、もともとの政治改革の大きなインパクトになりましたリクルート等々含めて、やはり国民政治家にまつわるお金というものに関して、より透明性を持つべきであるというふうな期待というのは非常に強いというふうに思います。  同時に、この前も選挙法で寄附禁止を制度改革でやりましたけれども、当然ながらすべての政治家ということで地方議員にも及んでいるわけです。という意味で、地方もこの前の選挙も無投票が多かったということが報じられておりましたけれども選挙にお金がかかる、そしてその周辺での不透明な部分、ダーティーな部分というのの指摘は、国会だけではなくて地方議員にも非常に及んでいることであります。この部分の透明さ、清潔さというものを確保するという観点は、選挙制度にリンクしなくても早急に、しかも各党がそんなに隔たる意見を持っているわけではございませんので、セットにこだわることなく、ぜひとも私は先にやるべきであるというふうに思います。むしろ、その部分は何か非常にセットにこだわっておられるような印象を受けるのですが、一方で、セットに必ずこだわらなければいけないのが衆議院参議院制度を同時に変えるということだというふうに思います。  衆議院がどういう役割を持ち、参議院がどういう役割を持つかというスタンスということで、先ほど野田先生からお話がありました。その議論を構築していく過程においてのスタンスを片端から決めていくということは理解できるのですが、制度を変える、いじるということで、最終的に提起をされるときには同じように一緒に変えるという案が出てこないと議論ができないのではないかなというふうに思います。先ほど佐藤先生や山花先生も御指摘されたので重複するのを避けますけれども、セットにこだわるべきところにこだわられずにという感じを受けますので、むしろ切り離してでもやるべきだというところでセットにこだわられるような印象を受けますのですが、繰り返し重複することになるかもしれませんが、もう一度お願いしたいと思います。
  24. 武村正義

    武村委員 先ほど仙谷委員からの御指摘があって、腐敗防止はこれだけではというちょっと御指摘もあったのですが、確かに腐敗防止のところには二、三行しか書いておりません。しかし、議論がありますように、まさに要綱全体が腐敗防止のための考え方だというのが私どもの認識でございます。要するに同士討ちで、後援会中心の大変金のかかる今の中選挙区制をまず改めようという考えもあるわけです。あとは政治資金はここにも示しておりますように、企業献金もそうでありますが、資金調達団体を二つに絞ろうとかパーティーは規制しようとか、それから資産公開もやっていこうとか、これは全部いわば腐敗防止の姿勢であります。今の川端委員の御指摘も、確かにワンパッケージといいますか、セットにこだわるべきじゃないという御指摘ですが、セットをそう気にしないで、まさにセットで物を、全体を考えることに余り消極的におっしゃらないで、ぜひ全体で相互に、非常に関連は深いわけでありますだけに、一挙にやはり変えていこうという考え方を私どもは持ちたいと思っているわけでございます。
  25. 井上義久

    ○井上(義)委員 私も今回の政治改革、リクルートに端を発しまして国民政治不信というのが非常に高まった。これに何とかこたえなければいけないということから、この議論が出発したわけでございまして、そういう意味で政治倫理の問題、政治資金の問題、それとこの選挙制度の問題、この三つがあるわけでございますけれども、どうも議論を聞いておりますと、この選挙制度を盾にとって政治倫理政治資金に踏み込もうとされてないのじゃないかという感を否めないわけでございます。  この選挙制度の問題につきましては、やはり今定数是正、待ったなしの状態になっているわけでございまして、やはり早急に定数是正に手をつけるべきだ。もちろん中長期的な課題として選挙制度改革ということは議論しなければいけないわけですけれども、その場合もやはり民意を正確に反映するということが基本だろうと思うわけでございまして、そういう意味では、やはり比例代表ということをこの議論中心にすべきである、私はこう思うわけでございます。  先ほど五%条項、果たして日本でそれができるかというお話がございました。これは西ドイツの場合、まあそれはナチの進出を防ぐということが一番の課題だったわけでございまして、その国その国の事情というものが考慮される。日本の場合は、この中選挙区制を長くやってきたことによってある程度の政治勢力というものが、代表する政治勢力が育ってきておるわけでございまして、ここで比例代表をやると、それに反映された形で議席配分がなされるだろう、余り少数が雨後のタケノコのように出てくるということは心配しなくていいのじゃないか。一つないし二つの政党政権を担うような勢力は、私は比例代表によっても十分可能性があるというふうに思うわけでございまして、よしんば小党分立したとしても、私はそれが国民意思であれば、その国民意思に従うのがやはり民意を正確に反映することになるというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、この比例代表というものを軸に、やはりもう一回与野党でしっかり議論を、初めに小選挙区ありじゃなくて、比例代表というものをもう一回俎上にのせて与野党で協議をするという出発点からもう一回考え直すべきじゃないか。  この点の議論一つお聞きしたいということと、もう一つは、要綱の中にも出ておりますけれども、小選挙区にした場合、自民党の代議士の皆さんといろいろ個々にお話をしていますと、私はどうもだれも望んでいらっしゃらないのじゃないかというふうに思うわけです。それはなぜかといいますと、やはり小選挙区ということは、候補者を党が決めるなりいろいろな決め方はあると思いますけれども、例えばイギリスだとかドイツなんかを見ましても、どちらかというと議員というのはサラリーマン的といいますか、やはり日本の場合は、特に自民党皆さんはそうですけれども、自分の意思立候補して、自分の力で当選してきていらっしゃる。それなりにそれなりの権威というものがある。果たしてそういう議員の質というものが抜本的に変わるということについて、どうも余り望んでいらっしゃらないような印象を受けるわけでございます。  これが一つと、もう一つはやはり小選挙区で先ほどもちょっと議論が出ましたけれども、この候補の選定基準ということが一番問題になるのだろう。現在、参議院比例代表順位づけでもいろいろなことが言われているわけでございまして、これを放置したまま小選挙区制あるいは比例代表を導入したとしても国民政治不信は変わらない。それから、アメリカなんかのようにプライマリーをやる。このプライマリーをやるということは、いわゆる公の場で候補を選ぶ。きちっとした公選法上の例えば記載があった場合は適用を受けるというような、やはり開かれた候補者選定ということが前提になるわけです。例えばプライマリーをやるということになりますと、これはどうしても二大政党、既に二大政党前提になってプライマリーが行われなければいけないわけでございまして、例えば日本のように現状一つ選挙区に四つなり五つなりの政党候補を立てるということになりますと、これはもうプライマリー自体が成り立たないわけでございます。そうしますと、この候補の選定基準ということについては、やはり非常に難しい問題に直面してしまう。  それから、さらに言いますと、政策本位あるいは政党本位とおっしゃるのですけれども、例えばアメリカなんか見ますと、先般私も行きまして、いろいろなところを回りまして下院議員皆さんといろいろ懇談いたしましたが、例えばウエストバージニアに行きまして環境保護法案の問題が議論になりました。ウエストバージニアというのはどちらかというと硫黄分の多い石炭を産出しておるところでございまして、それで、あなたどうなんだというふうに聞きましたら、もちろん個人的には環境保護法案賛成だけれども、地元でこれに賛成したらとても当選できない、ですから投票は明確に反対であるというふうにはっきり言っていました。要するに、選挙区が小さいから個別利害にどうしても左右されてしまう。ですから、政党政策政党政策、だけれども地元に行ったら別な政策、こういうことになるわけでございまして、決して、小選挙区になったから政党本位あるいは政策本位選挙になるとはとても思えないということでございまして、そういう意味からいいますとかえって比例代表の方が、これは党の方針ですから明確に政策本位政党本位ということになるわけでございます。そういう点等を考え合わせますと、やはり比例代表ということを軸に改めて議論を出発し直すことがより有益であるというふうに思うわけでございまして、このことについてお考えをお伺いしたいと思います。
  26. 羽田孜

    羽田委員 井上さんから、まず、選挙制度というものを盾にしてどうも倫理ですとかあるいは政治資金、そういったものを先に手をつけていかないのじゃないのかという御指摘が今あったのですけれども、これは過去にもいろいろな事件がございましたことはもう御案内のとおりでありまして、その都度国会の中で議論されまして、そして政治資金規正法ですとかまたあるときには公職選挙法ですとか、なるべくお金がかからないようにとかあるいは腐敗というものを防止しようということでいろいろなことをやってきました。しかし残念ですけれども、一番の根本というものは複数で争うというところにある。これが先ほどお話があったようにサービス合戦になってしまって費用がかかっていくということです。  先ほど佐藤さんの方からも、我が党の方も百三十の選挙区の中で三十の選挙区では複数を立てている、共産党さんも京都一区で立てているというお話があったのですけれども皆さんのおっしゃった複数というのと私どもの経験しております複数というのは全然違いまして、二人立てるということではなくて、三人区の中に今みたいに自由に立てるという中で、無所属候補も入れますと、これは残念ですが三人、四人、五人と立てているわけなんですね。そうするとどうしてもやはりサービス合戦にならざるを得ないという現状で、今社会党さん、共産党さんが立てているような二人だけではない、地盤を割ればいいというだけでは済まないような状況になってしまっている。  そういうことを考えたときに、実はこれが出てきますと、例えば国会の中に出てまいりましても複数ですといろいろな場面があるのです。これをただ我が党だけで、私自身が経験したことを見ましても、同じ政党の同じ選挙区から出てきた同士はなかなか顔を合わせられないのですね。そして案外野党皆さんと仲よくお話ししているなんという、非常にこれは下世話な話ですけれども、実際にそういうものがあるのですよ。それから、これはこういこうというので発言しようとしたときにもう一人の人の視線を感じたときに、残念ですけれども本当の発言ができないということで、本当の政治というのが行われないというのは、私たち政権与党として長くやってきている中でどうしてもこれではいかぬなということで、やはり制度を抜本的に直して、そういう中でお金もかからないようにする。それと同時に、いろいろな政策なんかに対しても党で責任を持って、あるいは立候補者も責任を持った発言をする、そういう形をつくっていかなければいかぬなと思うのです。  これをもっと具体的に申しますと、例えば今私どもの方で政策を決めますね。ところが、残念ですけれども、各地区に行きますとみんな個々に我が党が分立しているわけです。自分党になっているわけですね。ということになりますと、本当の政策も訴えられないということで、私は、やはりこれからの大きな激変がある中にあってもう少し責任ある政治をやるためには、どうしても制度から踏み込み、そして倫理の問題あるいは政治資金の問題、そういった問題もあわせて解決していくというふうにしていくことがよろしいのじゃないかなと考えております。  それから、こういうことで我が党の中にもいろいろな意見があるだろう、これはもう率直に我が党の中に意見があることも事実です。しかし、ほとんどの人が望んでないんじゃないのかという話があったのですけれども、それどころか、新しい、それこそ当選をされたばかりの人たちも、大変数の多い人たちが、やはり自分たち国会に出てきて一年間というものを経験してみたときに、これではならぬということで立ち上がって、勇気を持って発言をしている。あるときには自分自身の身分は失われるかもしれないという中で彼らはその発言をしておるということを率直に申し上げておきたいし、また、何回も当選し多くの政治経験を踏まれた方々も、今のままではこれはもうどうにもならぬぞということの中で相当強い発言をされておる方が相当たくさんあるということもあわせて申し上げておきたいと思うのです。  それから、確かに私ども議論をしましたときに、今の時代というのは多様化ということが言われる時代であるから、多様な意見というものを政治の場で特に吸い上げることが重要であろうという話が実はあったわけでありますけれども、これはまさに今お話があったプライマリーですとかあるいは候補者選定のときにそういう中でいろいろな議論がなされるというような中で意見を吸収することができるし、それから、小選挙区ということになりますと相当の得票率を上げなければいけないということでありますから、いろいろなところに幅広く意見を吸い上げてくるということがありましょうし、また、選挙に勝ったとしても反対の意見が多ければ多いほどその意見に対して耳をかしていかなければいけないということになって、むしろ私は、小さな声というものも政治の中に反映されることは否定するものじゃないというふうに思っております。  ただ、そうかといって、実際に議員として一つ一つの小さな意見代表する人が出てもいいんじゃないかという中で、木に竹を接ぐような、不自然だなんていうことを言われながらも、比例という部分で多様な意見、小さな意見であるけれども全国的に見たときには一つ意見として成立するじゃないかという人たち意見もきちんと国会の中に反映させてあげようということで、比例という部分を取り入れているということをひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほどのプライマリーなんということで簡単に申し上げてしまいましたけれども、確かに我が党の中でも、じゃ一体候補者順位とかあるいは各小選挙区に立てる人たちをどう決めるのか、これは先ほど野田さんからもお話があったことで、もうくどく申し上げませんけれども、私どもとしては、これは今党内の問題でありますが、やはり過渡的なとりあえずやらなければならない、このための方法と、それから、この制度というものは定着したときにどういう制度をとるべきかということ、こういったことを我が党の現状に照らしながら、また世界のそういった小選挙区をやっているような各国の実情というものも相当細かく調査しながら、その選考過程というものを民主的に進められるようにということで、今検討を進めておるということを申し上げておきたいと思っております。     〔穂積委員長代理退席、委員長着席〕
  27. 日野市朗

    ○日野委員 第八次ですか、選挙制度審議会答申が出たときに、海部総理は不退転の決意を持ってこれを実現するんだ、こうおっしゃった。まあ選挙制度の問題になりますと、議員同士の話というのは非常に混迷することはもう当然のことでありまして、海部総理がそうおっしゃったにはおっしゃったなりの理由があるのだと思いますね。今度出されたこの政治改革基本要綱を拝見しますと、それとは大分違ったところが出てきているわけですね。それは違ったには違ったなりのそれぞれのいろいろな御意見があったろうと思いますから、その一つ一つについてどうこうということを私は申し上げません。しかし、総定数を変えた、それから小選挙区の比率を高めたというふうになっているわけなんで、私はここのところが非常に気になりますので、若干御意見を伺いたいと思うのです。  まず、さっき井上さんも言われたように、アメリカの制度なんというのを見ますと、アメリカの特に下院なんかになりますと、これはかなり極端と言っていいほどその選挙区の利益代表的な色彩が強まっておるわけで、これは私は非常に困ったことだなと実は思っているのです。それらが日米間の摩擦にどのように悪い影響を及ぼしているかということは皆さんよく御承知のとおりだと思うのです。私これを見まして、小選挙区制をとるとすれば、それと比例代表とを合わせるとすれば、その形は別として、小選挙区制というものをふやしていく、比率を高めていくということは余り好ましくないような感じがするのです。  それで、ここのところを今回変えてこられた理由。言われているところは、自民党の現役の方々が大体おさまりやすいようにしたんじゃないかというような話もささやかれておるわけで、なるほどうまくできているなと私なんかは思うわけです。私、小選挙区制になると、天下国家を見ずに自分の選挙区ばかりを見るようなことになりはしないかということが非常に心配な部分であります。  それから、きょうのお話によると、今までは全国、ブロック、都道府県というように三つ並列して並んでいたけれども、さっきの羽田委員の御説明だと、それは全国一本化というようなお話になったようですが、これを伺って、はて一体どうやって名簿をつくるのかいなということが私は非常に気になっているのですね、さっきから。参議院比例代表名簿をつくるときにも、やれ献金を何ぼにして順位をどうしたとか、かなりここは、ダーティーとは言いませんけれども、暗部であることは間違いない。全国一本でつくるということになりますと、やはりまた同じようなことを繰り返していくのではあるまいか。それから、議員が今度は利益代表的なにおいを身につけてくるのではなかろうかというような、そういう早く言えば業界代表みたいな形で出てくるようなこともあるのではないか、そんなことを非常に強く心配せざるを得ないというふうに私は思っております。  そういう意味で、細かいようなことですが、ちょっと伺っておきたいのです。連座制についてですが、さっき仙谷委員からちょっとそれに関連したことで出ておるのですが、連座制について、「候補者に対して制裁を及ぼすべきでないと認められる場合には、免責する。」というのは、これは一体何ですか。連座制というのはかなり厳しくあっていいはずなんで、これはきちんとした説明がなされていなければならないだろうというふうに思います。それはおとり行為に対する心配というのはありますよ。しかし、それはそれで、もっと別にきちんと考えるべきことなんでありまして、ここのところは厳しく指摘しておかなければいけない、こう思います。  それから、さっきから、参議院と一緒にこれはやるべきではないかというような問題、それから地方の場合と一緒にやるべきではないかというようないろいろセット論といったようなものも出ていますね。この要綱というのはまだ検討中という部分が幾つかありますが、大体これは一本で、つまり衆議院選挙一本だけでも一応改正案としてお出しになるつもりであるのかどうか、そこいらの周辺部分をきちんとなさった上でお出しになるつもりなのかどうか、これもお伺いしたい。
  28. 野田毅

    野田(毅)委員 後の、参議院との関連で言えば、先ほど申し上げたのですけれども、私どもは一本で出したいと思っております。  それから、小選挙区の弊害について今いろいろとお話がありました。ただ、アメリカの小選挙区とイギリスの小選挙区では基本的に違う。それはもう御承知のとおり。少なくともアメリカの場合は大統領は直接選挙なんですよ。大統領制なんですね。つまり、小選挙区で出てきた上院なり下院の議員が大統領を選ぶというシステムではないのです。つまり基本的に、政権選択はそれによっては迫られないのです。そういう意味で、議院内閣制下における小選挙区という問題と大統領制下における小選挙区という問題は基本的に違う。つまり政権を選ぶ選挙なんだということを一つ念頭に置かなければいけないということ。  それからいま一つは、アメリカの場合のプライマリーは、政党というものは確かに二大政党がありますけれども、現実問題、いわゆる政党選挙じゃないですね、やはり個人選挙型なんですね。それで、現職優先ということもアメリカにはない。それがプライマリーという形になっている。それが非常に激しい形で、選挙戦でも金がかかるしプライマリーでも金がかかっているというこの現実がある。だから我々は、アメリカの小選挙区における弊害というものが直ちに小選挙区そのものの弊害と結びつけるのはまだ早いのじゃないかということを申し上げておきたいと思います。それは候補者選定手続の話でも実はあるわけで、私ども、先ほど言いましたように、基本的には現役優先ということをこの中にも書いてありますけれども、そのことは十分あるわけですから、あとは政党の運用の問題だろうと思っております。  それから、いま一つの弊害として御指摘のあった、いわゆる地域の利益代表になるのじゃないかというお話なんですが、私どもは逆に考えております。つまり、さっき羽田先生からもお話がありましたけれども、現在の中選挙区制のもとですと、例えば我々五人区でおりますと、実際問題一六、七%の得票率さえあれば、八割の人があの人は困ると思っておっても、一六、七%の人がしっかりとした支持者であれば当選しちゃうんですよ。つまりそういう意味での部分利益代表たり得るわけです。ところが逆に、強弱からいえば支持の度合いは弱いかもしれないけれども、マイナスのイメージが弱ければ小選挙区制によって、つまり政党中心型の選挙をやることによって過半数を制し得るということになる。その場合に、特定の部分利益の強度な代表者という姿よりもむしろ全体的によりマイナスイメージの少ない、より全体利益代表しやすい形の人が選ばれていく、このことは制度論としては言えることだと思っております。  それから比例順位の話ですが、これは答申もそうですが、我々も、原則としてこの制度の想定は今の参議院比例のシステムとは違う。今の参議院のシステムは地方区と比例区と完全に分離しているわけです。だから、純粋比例だけの順位だからなかなか容易じゃない。むしろ今度は、原則は小選挙区を補完する比例なんだということから、重複立候補ということが第一であり、そして同時に同一順位の中に大勢の人間を並べることができるということに特色がある。だからむしろ、移行期の問題は別として、この制度が定着していけば恐らく同一順位の中で何百人かが、百人なり二百人なりがずっと並んでいくのじゃないかということを想定しておるわけです。したがって、その順番の問題で不明朗な話というのはないと私は思っております。  つまり、第一順位で五十人なり六十人なり百人なりが並ぶ。その中で、小選挙区で当選した人は、これは自動的に名簿から外れていくわけです。つまり、名簿で生き残っていく人は、小選挙区で落選した人が残っていくわけです。我々はそう考えております。それぞれ各政党のやり方いかんによって異なってくるかとは思いますが、今の参議院比例区における拘束比例式下における名簿順位決定よりも、より今回の方がそういう点での比例に関しての順位の問題点はない、こう判断しております。
  29. 武村正義

    武村委員 今の連座制の御意見でありましたが、これは「候補者に対して制裁を及ぼすべきでないと認められる場合には、免責」、何かなまぬるくしているような感じを与えたかもしれませんが、これは答申と同じでございまして、先生がおっしゃったようにおとりとか寝返りを想定している。せっかく選ばれておきながらそういうフェアでないやり方で失格するようなことがないようにしようという考え方でございます。自民党独自の案ではありません。
  30. 小岩井清

    ○小岩井委員 国勢調査の結果によって定数是正は待ったなしだという違憲状態になっているわけですね。そういうことで、自民党としては政治改革選挙制度の問題が出されてきょうの議論になったわけですけれども、しかしこれはあるべき姿の選挙制度として今各党議論しているわけです。当然、国会決議というのはあるわけでありますから、それに基づく是正というのは前段階で考えていかなければいけないんじゃないかと思っているわけです。  昨日、自民党は四つの試算を出されましたね。これは国会決議に基づいて試算を出したというふうに新聞報道で伝えられております。ですから、そういう点からいって、先ほど若干山花理事の質問のやりとりがありましたけれども、出せと要求した試算、この位置づけはどうなっているのか、これをどう取り扱っていくのか、それをもう一度御説明いただきたい。
  31. 野田毅

    野田(毅)委員 基本的に国会決議をどう生かしていくかということについて、私どもは中選挙区における是正ということのみならず、政治改革ということも将来の話ではなくて喫緊の課題である。したがって、そういう中で国会決議の精神をどう生かしていくかということで、この制度改革という中で、つまり政治改革全体の枠の中で国会決議の精神を生かしていきたいということで、党としてこの小選挙比例代表並立制ということの中で十分に決議の精神は生かしていける。そのことの方が決議の精神を生かすのみならず現下の政治改革全体をどう進めていくかということにもこたえていくんだ、こういう位置づけを実はしておるわけです。  しかし、そうは言いながら、一方で野党皆さん現行選挙区における定数是正をまずやれというお話がある。だから、その点について全然計算もしていないし、歯牙にもかけないということでもまずかろうということで、我が党としては基本的にもうこれを党議で決めておるわけですからそれでいくわけですが、一応そういう国会決議、中選挙区ということで試算をはじいてみれば、これは複雑な方程式ではないわけです。前提条件を置けば自動的に出てくる、言うなら算数の世界の話になるわけですね。実際問題、定数をどうするのか、逆転解消をするのかしないのか、再配分方式をとるのか増減方式をとるのか、そういった前提条件さえちょんちょんちょんと置いておけばおのずから全部決まってくる話なのですから、あとは足し算、引き算、掛け算、割り算の話だ。ですからその前提条件を、いわゆる国会決議の中で幾つか書いてあります、抽象的に書いてあることもありますから解釈によって相違があるかもしれないから、それをこういうような解釈をすればこういう前提になるでしょう、だからそれぞれの前提条件を置いてみれば自動的にこういう数字になりますということだけは、それすら計算もしなかったということでは、何かかえってしゃにむにという印象になるものだから、そうではなくて、計算もしてみるとこういう数字にはなりますという一応の試算だけは、客観的に計算してみるとどうなるということだけは知りたいということですからお示しをする、そういうことです。
  32. 羽田孜

    羽田委員 ちょっとつけ加えておきますと、私の方から加藤さんの委員会でこれを出してほしいと言ったそのもとは、福島さんが知事になってしまったのですけれども、この福島さんの時代に試算をしてもらっているわけです。ただ国勢調査がこの間ありましたから、それに基づいてもう一度それをやっておいてくれということを実は加藤さんのところにお願いしたのでありまして、私どもは、定数是正についてはこの新しい選挙制度改革の中にあって喫緊の問題であると認識しております。  ただ、それだけ大きなエネルギーを使うのだったら、やはり今もう一つ問題になっている制度そのものも一緒に改革しましょうということで、いわゆる定数是正というものについては我々も真剣に考えておるということであります。
  33. 小岩井清

    ○小岩井委員 野党の方から言うからこういう数字を出した、ただ出しただけだ、言うならば、簡単に言えばそういうことですね、今の御説明は。これはそういう内容ではない。自民党内だって中選挙区制による是正という意見がある。ですから、野党が言うから出しただけ、そんな態度はとらない方がいいと思うのです。
  34. 野田毅

    野田(毅)委員 もしそういう受けとめ方をされたなら私の言い方が悪かったのかもしれませんが、野党が言うから野党に向けて出したというのではないのです。つまり、野党も計算は同じになっていることだし、むしろ我が党の中で、今羽田さんからお話があったように、昨年のうちにこういう前提を置けばこうなりますよということは示してあるわけです。その後、決議の受けとめ方をどう見るのか、二倍と見るのかどう見るのかとか、その辺の前提条件、決議の中身をどう受けとめるかによって変わってくるわけですから、このように受けとめた場合にはこういう数字になりますよ、このように受けとめた場合にはこういう数字になりますよということを知りたいという人が我が党内にあるものですから、一応計算をしておきましょう、こういうことです。
  35. 小岩井清

    ○小岩井委員 党内にも向けて出したということですね。
  36. 野田毅

    野田(毅)委員 そういうことです。
  37. 松原脩雄

    ○松原委員 ちょっと技術的なことをお聞きしたいのですけれども並立制とか政党本位である、あるいはそれに公的助成を今度考えるとかいうふうになりますと、さっきちょっと出ましたけれども、各政党候補者をどのようにして選ぶのかという問題とともに、特に比例部分での当選決定方式、それについていろいろ配慮をしなければなりません。ヨーロッパでも今ちょっと議論になっているのは、いわゆるボス支配ですね。政治資金もまた政党へ集中するわけですから、既存の権力、政党内の権力を握った人が非常に大きな権限をずっと行使し続けるという弊害が出てくるわけです。そこを突破するために、先ほど言った比例部分について小選挙部分候補者同一順位に並べていく、こういうシステムが相当重視されるようになるだろう。これは、ドイツ型の比例併用制もまさにその問題に直面しているわけです。それと重ねながら考えているのですが、その場合に、小選挙部分で落選した人を自民党案では得票率の高さによって決めようじゃないか、こうされておられます。これは審議会答申と同じ考えであったと思うのです。  そうしますと、多党化しておる現状のもとで、特に都市部ではすごく多党化していると思うのですが、農村部へ行けば行くほど少党の争いとなる。つまり得票率が変わってくるのです。つまり、農村部の方は落選していても得票率の方が大きいが、しかし都市部の場合には落選してしまった場合に得票率はずっと下がっているということになります。そうすると、そういう得票率によるすくい上げ方にすると、結局自民党案の場合だったら都市部の議員比例部分で救われない、むしろ農村部の落選者の方がずっと比例部分で救われる、こういう形になると思うのです。これは、従来の一種の農村型と言われていた自民党の体質そのものもやはりそのまま維持しようということでこういう方式を考えられたのでしょうか。
  38. 野田毅

    野田(毅)委員 田舎の方からいうと大変配慮した話になるのかもしれないのですけれども、そういう発想ではなくて、我が党内でまだこれから検討、今内々やっておるわけですけれども一つは、多党立候補といいますか多党型のところは当然当選者の得票率も低いし落選者の得票率も低いわけですね。だから逆にその場合に順位をそういう形に、全国全部同一順位ということでなくてもいいわけですね。多党型のところを高順位で全部並べるとかいうやり方も、そこは知恵の出し方だと思います。これが一つです、基本的に。  それからいま一つは、本当に多党型が都会だけなのか。これは各政党のそれぞれのやり方、あるいは先ほどどなたかおっしゃいましたけれども政党間の選挙協力体制なりそういったことがどういうふうに動いていくのか。先ほど小沢さんの話がありましたけれども、今度はいろいろな複雑な方程式が絡んでくることだと私は思っております。その上で順位は決められていくのではないか。ただその中で、同一順位の中では、当選人決定に関しては法律事項ですから、それは客観的に得票率ということでやることがフェアなのではないか。鉛筆なめながら順位を決められるということではボス支配につながるかもしれない。我が党内でもそういった点で、党内民主主義といいますかそれが今非常に神経質になって、その委員会もつくって今その辺の順位の問題を含めて党内問題として勉強しておるということです。
  39. 東中光雄

    ○東中委員 小選挙区制が政党本位あるいは政策本位選挙制度であるとは私は思っていないのですけれども、ここで書かれているのを見ますと、「立候補政党の届出による。ただし、個人立候補も認める。」それだったら全く何も関係ないのかと思ったら、そうでなくて、政見放送については政党に限定する、個人立候補した人は政見放送ができないというふうなことで、こういう構成になっておりますね。被選挙権の平等という点からいうと一体いいのかどうかという大原則の問題がありますし、それはどういうふうに考えていますか。ちょっと余りにも制度としてはおかしいのではないかという気がしますので、考え方をお聞きしたいのです。
  40. 野田毅

    野田(毅)委員 私どもは、あくまで政党本位選挙にしたい、本音を言えば、できればもう個人立候補もできるだけ、なくてもいいのではないか。それは極端に言えば比例代表選挙考えた場合にはまさにそういう個人立候補排除という話が当然に連動する話だと私は思っております。そういった中で、憲法上、この小選挙区という形の中で政党本位ということでやるということであれば個人立候補そのものを排除するわけにはいかない。しかし、その機会均等等々の関係もありますが、選挙運動方法の中でどこまで差をつけることができるのか。それは、個人に対して認められる選挙運動それから政党に対して認められる選挙運動ということの枠の中で認めていく、そういう形の中で処理するならば私は認められることではないか。それは憲法上の問題にはならない。個人についての選挙運動はこうです、政党としての選挙運動はこうですという形の中で差をつけていく、そのことがより政党本位に持っていくといくそういう選挙システムになるのではないかと思っております。
  41. 石井一

    石井委員長 ほかに委員の方、ありましたらどうぞ。――よろしゅうございますか。  どうもありがとうございました。  本日は、各党委員におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただき、ありがとうございました。本日の討議は、この程度にとどめることといたします。  次回は、来る四月二十四日水曜日午前九時五十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十五分散会