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1990-12-18 第120回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成二年十二月十日)(月曜日) (午前零時現在)における本委員は、次のとおり である。    委員長 渡辺 栄一君    理事 魚住 汎英君 理事 近藤 元次君    理事 志賀  節君 理事 中尾 栄一君    理事 藤井 裕久君 理事 新村 勝雄君    理事 時崎 雄司君 理事 春田 重昭君       衛藤 晟一君    加藤 六月君       粕谷  茂君    藤尾 正行君       前田  正君    水野  清君       渡部 恒三君    阿部喜男君       小川 国彦君    田邊  誠君       田並 胤明君    長谷百合子君       鳥居 一雄君    寺前  巖君       藤波 孝生君 ────────────────────── 平成二年十二月十八日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 渡辺 栄一君    理事 近藤 元次君 理事 志賀  節君    理事 中尾 栄一君 理事 藤井 裕久君    理事 新村 勝雄君 理事 時崎 雄司君    理事 北側 一雄君       衛藤 晟一君    粕谷  茂君       前田  正君    阿部喜男君       田邊  誠君    田並 胤明君       長谷百合子君    東  祥三君       春田 重昭君    木島日出夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 津島 雄二君         労 働 大 臣 塚原 俊平君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      相沢 英之君  出席政府委員         経済企画庁長官         官房会計課長  黒川 雄爾君         厚生大臣官房総         務審議官    熊代 昭彦君         厚生大臣官房会         計課長     近藤純五郎君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 岡光 序治君         厚生省健康政策         局長      長谷川慧重君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 小林 康彦君         厚生省社会局長 長尾 立子君         厚生省保険局長 黒木 武弘君         厚生省年金局長 末次  彬君         労働大臣官房会         計課長     中井 敏夫君         労働省労働基準         局長      佐藤 勝美君         労働省婦人局長 高橋柵太郎君         労働省職業安定         局長      若林 之矩君         労働省職業能力         開発局長    菊地 好司君  委員外出席者         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 細田 敏昭君         外務省国際連合         局人権難民課長 角崎 利夫君         大蔵省主計局司         計課長     設楽 岩久君         労働省労働基準         局職業病認定対         策室長     安孫子律夫君         会計検査院事務         総局第一局長  安部  彪君         会計検査院事務         総局第四局長  白川  健君         会計検査院事務         総局第五局長  山本  正君         環境衛生金融公         庫理事長    山下 眞臣君         参  考  人         (東日本旅客鉄         道株式会社取締         役人事部長)  大塚 陸毅君         決算委員会調査         室長      竹尾  勉君     ───────────── 委員異動 十二月十日  辞任         補欠選任   鳥居 一雄君     東  祥三君   春田 重昭君     北側 一雄君 同月十三日  辞任         補欠選任   東  祥三君     石田 祝稔君   寺前  巖君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   石田 祝稔君     東  祥三君 同月十八日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     後藤  茂君   田邊  誠君     上田 卓三君   田並 胤明君     関山 信之君   東  祥三君     春田 重昭君   木島日出夫君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     東  祥三君 同日  理事春田重昭君同月十日委員辞任につき、その  補欠として北側一雄君が理事に当選した。     ───────────── 十二月十日  昭和六十三年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  昭和六十三年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  昭和六十三年度特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  昭和六十三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  平成年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  平成年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  平成年度特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百十八回国会内閣提出)  昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十二年度政府関係機関決算書  昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十三年度政府関係機関決算書  昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十三年度一般会計国庫債務負担行為調書 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十二年度政府関係機関決算書  昭和六十二年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十二年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和六十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十三年度政府関係機関決算書  昭和六十三年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十三年度国有財産無償貸付状況計算書総理府所管経済企画庁)、厚生省所管労働省所管環境衛生金融公庫〕      ────◇─────
  2. 渡辺栄一

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺栄一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。  それでは、北側一雄君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 渡辺栄一

    渡辺委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関の経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等の方法により、本会期調査を進めたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡辺栄一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。      ────◇─────
  6. 渡辺栄一

    渡辺委員長 次に、昭和六十二年度決算外二件及び昭和六十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管経済企画庁厚生省労働省及び環境衛生金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として東日本旅客鉄道株式会社取締役人事部長大塚陸毅君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 渡辺栄一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────
  8. 渡辺栄一

    渡辺委員長 次に、相沢国務大臣津島厚生大臣塚原労働大臣及び環境衛生金融公庫当局概要説明並び会計検査院検査概要説明につきましては、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 渡辺栄一

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     ─────────────    昭和六十二年度経済企画庁歳出決算説明  昭和六十二年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十二年度の当初歳出予算額は、四百三十九億三百万円でありましたが、予算補正修正減少額一億四千七十二万円、予算移替減少額八億四千八百四十六万円を減少いたしますと、昭和六十二年度歳出予算現額は、四百二十九億千三百八十二万円となります。  これに対しまして支出済歳出額四百二十五億千九百五十一万円余であり、歳出予算現額との差額三億九千四百三十万円余は不用となった額であります。  次に、支出済歳出額のおもな内訳は、経済企画庁七十六億二千八百二万円余、海外経済協力基金交付金三百三十九億三千五百七十五万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費四億四千五百八十四万円余、経済研究所六億八千二百五十五万円余等であります。  また、不用額のおもなものは、国民生活安定対策等経済政策推進費でありますが、これは、総合的な物価対策を要することが少なかったこと等によるものであります。  以上、昭和六十二年度経済企画庁歳出決算の概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく、御審議のほどお願いいたします。    昭和六十三年度経済企画庁歳出決算説明  昭和六十三年度における経済企画庁歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十三年度の当初歳出予算額は、四百三十五億六千二百六十万円余でありましたが、予算補正修正減少額三千五百六十一万円余、予算移替減少額六億六千九百八十五万円余を減少いたしますと、昭和六十三年度歳出予算現額は、四百二十八億五千七百十三万円余となります。  これに対しまして支出済歳出額は、四百二十五億六千七十二万円余であり、歳出予算現額との差額二億九千六百四十万円余は不用となった額であります。  次に、支出済歳出額のおもな内訳は、経済企画庁七十五億七千六百六十七万円余、海外経済協力基金交付金三百三十七億五千百四十七万円余、国民生活安定対策等経済政策推進費五億二千七百九十六万円余、経済研究所七億四百六十万円余等であります。  また、不用額のおもなものは、経済企画庁について、人件費を要することが少なかったこと等によるものであります。  以上、昭和六十三年度経済企画庁歳出決算の概要を御説明いたしました。  何とぞよろしく、御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和六十二年度決算経済企画庁についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十二年度経済企画庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。    昭和六十三年度決算経済企画庁についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十三年度経済企画庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    昭和六十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算に関する説明  昭和六十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額十兆二百六十五億二千七百九十五万円余でありましたが、その後、予算補正追加額二千九百八十一億五千五百六十五万円余、予算補正修正減少額四百十六億八千四百九十一万円余、予算移替増加額四百三十二億四千百三十一万円余、前年度繰越額五百六十九億七千四百七十八万円余、予備費使用額三百八億百四十万円余、差引三千八百七十四億八千八百二十四万円余を増加し、歳出予算現額は十兆四千百四十億千六百十九万円余となりました。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は十兆二千三百八十三億七千六百七十六万円余、翌年度繰越額は七百八十九億二千八百六十九万円余、不用額は九百六十七億千七十三万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護法による生活扶助基準につきましては、国民の消費水準等の動向に対応して改善を行ったほか、少人数世帯の処遇、教育扶助等についても、それぞれ所要の改善を図り、総額一兆四百九十七億九千八百八十二万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  社会福祉施設の運営費につきましては、入所者の一般生活費等の増額をはじめとして、職員の給与の改善などを行い、所要の経費を支出しております。  また、施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム心身障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設の整備に対して七百七十五億五千五百三十九万円余を支出しております。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、ねたきり老人等に対する福祉対策として家庭奉仕員派遣事業デイ・サービス事業ショートスティ事業等拡充強化を図るとともに、高齢者サービス総合調整推進事業及び都道府県高齢者総合相談センター運営事業の推進を図り、一兆千三百三十一億九千六百八万円余を支出しております。  児童保護費につきましては、児童保護措置費内容改善を図るとともに、心身障害児(者)対策、母子保健衛生対策などの推進を図り、三千九百八億六千八百五十四万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千八百八十億四千二百七十六万円余を支出し、母子福祉対策につきましては、母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付原資として、三十四億四千八百万円を支出しております。  このほか、身体障害者福祉対策として、障害者社会参加促進事業、「障害者の住みよいまち」づくり推進事業及び在宅障害者デイ・サービス事業の拡充を図るほか、障害者のための小規模作業所に対する助成を実施するとともに、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等の支給のための経費、身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額二兆百十八億六千八百九十四万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、昭和六十二年度末における保険者数は、三千四百二十九であり、その被保険者数は、四千五百三十三万余人となっております。  昭和六十二年度におきましては、市町村国民健康保険の運営の安定化に資するための国民健康保険特別交付金を含め、医療費及び事務費等に要する経費として、二兆四千九百三十九億五百七十七万円余を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、三兆六千六百四十一億四千五百九十九万円余を支出しております。  このほか、児童手当の給付費及び事務費に要する経費として、五百六十一億七千三百五十二万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額六兆二千二百七十三億千九百八十四万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、各種手当の額の引上げ等の改善を行うなど施策の充実を図り、千九十六億六千五百九十一万円余を支出しております。  精神衛生費につきましては、精神衛生法に基づく措置入院費及び通院医療費公費負担に要する経費として、五百三十四億二千八百二万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、三百五十六億四千百七十六万円余、疾病予防及び健康づくり推進費保健所費らい予防対策費老人保健法による保健事業に要する経費等保健衛生諸費として、九百七十三億二千六百十七万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額四千九百二十四億九千四百七十七万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金等について恩給の改善に準じて額を引き上げるとともに、遺骨収集及び慰霊巡拝を実施いたしました。  また、中国残留日本人孤児対策につきましては、帰国を希望する孤児の早期受入れを可能とするための体制の整備を行うとともに、帰国孤児等定着自立促進対策の充実・強化を図ったところであり、遺族及び留守家族等援護費として、総額千五百十五億七千二百四十三万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設の整備を推進するため、昭和六十二年度は、廃棄物処理施設四百七十九か所、簡易水道等施設四百六十二か所、水道水源開発等施設三百二十五か所の整備について、それぞれ補助を行い、環境衛生施設整備関係費として、総額二千九十八億四千八百八万円余を支出しております。  次に、特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計の決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から二兆三千五百二十三億九千八百八十五万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額五兆六千四百五十二億四千二百十一万円余、支出済歳出額五兆六千四百六十一億五千九百二十九万円余でありまして、差引九億千七百十八万円余については、この勘定の積立金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年三月末の事務所数は、九十八万余か所、年度平均保険者数は、千五百七十六万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額十六兆五千八十億五千八百九十一万円余、支出済歳出額十二兆千八百九十九億九千三百二万円余でありまして、差引四兆三千百八十億六千五百八十九万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年三月末の事業所数は、百十一万余か所、年度平均保険者数は、二千七百六十一万余人に達しております。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額千四百九十八億四千五百九万円余、支出済歳出額千二百六十二億三百四十八万円余、翌年度繰越額五億二千二百二十二万円余でありまして、差引二百三十一億千九百三十九万円余については、被用者に係るものの不足額三十億千八百六十七万円余は、この勘定の積立金から補足し、その他に係るものの額二百六十一億三千八百六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、二百九十一万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四千四百九十五億千六百七万円余、支出済歳出額四千三百四十四億八千六百四十一万円余、翌年度繰越額八億千九百九十万円余でありまして、差引百四十二億九百七十五万円余については、このうち、七十四億七千九百一万円余を健康及び年金の各勘定の積立金に組み入れ、六十七億三千七十四万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計の決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から七十七億五千十一万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千百五十二億七千二百三十四万円余、支出済歳出額千百九十三億三千二百六十二万円余、翌年度繰越額一億六千七百九十七万円でありまして、差引四十二億二千八百二十四万円余については、この会計の積立金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均の被保険者数は、十五万余人であります。  第三は、国立病院特別会計の決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から千五百十七億九千百八十四万円余を繰り入れました。  まず、病院勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額四千百一億九千四百七十七万円余、支出済歳出額四千二十三億三千二百七十一万円余、翌年度繰越額二十一億四百二十三万円余でありまして、差引五十七億五千七百八十一万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万千余人、外来患者数は、一日平均四万二千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三千五百三十六億六千八百三十一万円余、支出済歳出額三千三百十六億九千八百十九万円余、翌年度繰越額二十三億六千五百万円でありまして、差引百九十六億五百十二万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均四万二千余人、外来患者数は、一日平均一万二千余人であります。  第四は、国民年金特別会計の決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆三千六百一億七千五十四万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額六兆四千九十一億四千十八万円余、支出済歳出額六兆千四百七十億三千八百三十八万円余でありまして、差引二千六百二十一億百八十万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額五兆千八百八十二億九百四十六万円余、支出済歳出額四兆五千二百四十四億二百九十四万円余、超過受入額二千三百五十九億三千二百四十八万円余でありまして、差引四千二百七十八億七千四百二万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年三月末の被保険者数は、三千五十九万余人で、そのうち、保険料の免除該当者は、二百二十四万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額六千百七十二億千三百八十三万円余、支出済歳出額五千二百七十五億五千八百二十二万円余でありまして、差引八百九十六億五千五百六十一万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆三千四百八十六億四千百六十一万円余、支出済歳出額一兆三千四百五十二億七千七百六万円余でありまして、差引三十三億六千四百五十四万円余については、このうち、五億六千五百一万円余を国民年金勘定積立金に組み入れ、二十七億九千九百五十三万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十二年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。  今回不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収額が不足していたもの二件、健康保険の傷病手当金等並びに厚生年金保険の老齢年金等及び国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの三件、医療施設運営費等補助金、老人保護費補助金及び戦傷病者福祉事業助成委託費の補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの三十五件、児童扶養手当の支給が適正でなかったもの一件及び医療費に係る国の負担が不当と認められるもの二十三件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、医学実験用サルの飼育管理業務の改善について、老人医療における特例許可外老人病院の把握について及び厚生年金保険の老齢厚生年金等に係る加給年金額の支給についてであります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了したところでありますが、今後とも、適用事業主及び船舶所有者に対し、報酬に関する適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  健康保険の傷病手当金等並びに厚生年金保険の老齢年金等及び国民年金の母子年金の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、被保険者及び適用事業主等に対し、適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、関係書類の調査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。  医療施設運営費等補助金、老人保護費補助金及び戦傷病者福祉事業助成委託費の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  児童扶養手当の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも現況届等の調査・確認事務について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、児童扶養手当の適正な支給に努力いたす所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された医学実験用サルの飼育管理業務の改善について、老人医療における特例許可外老人病院の把握について及び厚生年金保険の老齢厚生年金等に係る加給年金額の支給については、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講ずるべく改善を行う所存であります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。    昭和六十三年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算に関する説明  昭和六十三年度厚生省所管一般会計及び特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額につきましては、当初予算額十兆三千二百十一億二千三百十八万円余でありましたが、その後、予算補正追加額一兆四千九百八十五億四千三百八十九万円余、予算補正修正減少額八百十四億三千三百七十万円余、予算移替増加額三百八十一億二千八百四十八万円、前年度繰越額七百八十九億二千八百六十九万円余、予備費使用額六百四十七億五千九十八万円余、差引一兆五千九百八十九億千八百三十四万円余を増加し、歳出予算現額は十一兆九千二百億四千百五十二万円余となりました。  この歳出予算現額に対し、支出済歳出額は十一兆七千七百二十五億三千九百八十一万円余、翌年度繰越額は六百三十五億四千四百三十六万円余、不用額は八百三十九億五千七百三十四万円余で決算を結了いたしました。  次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活保護法による生活扶助基準につきましては、国民の消費水準等の動向に対応して改善を行ったほか、教育扶助等についても、所要の改善を図り、総額一兆百三十億八千六百四十三万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費であります。  社会福祉施設の運営費につきましては、入所者の一般生活費等の増額をはじめとして、職員の給与の改善などを行い、所要の経費を支出しております。  また、施設整備費につきましては、特別養護老人ホーム心身障害者福祉施設等各種社会福祉施設及び地方改善施設の整備に対して八百十億三千八百二十五万円余を支出しております。  老人福祉費につきましては、老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、ねたきり老人等に対する福祉対策として家庭奉仕員派遣事業デイ・サービス事業(日帰りで介護サービスを受ける事業)、ショートステイ事業(特別養護老人ホーム等に短期滞在する事業)等の拡充強化を図るとともに、都道府県高齢者総合相談センター運営事業の推進を図り、一兆二千百十億八千九百九十二万円余を支出しております。  児童保護費につきましては、児童保護措置費内容改善を図るとともに、心身障害児(者)対策、母子保健衛生対策などの推進を図り、四千七億六千二百二十二万円余を支出しております。  さらに、児童扶養手当及び特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千七百九十九億六千八十八万円余を支出し、母子福祉対策につきましては、母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付原資として、三十二億二千三百四十三万円余を支出しております。  このほか、身体障害者福祉対策として、障害者社会参加促進事業、「障害者の住みよいまち」づくり推進事業及び在宅障害者デイ・サービス事業(日帰りで創作的活動、機能訓練等を行う事業)の拡充を図るほか、障害者のための小規模作業所に対する助成を実施するとともに、在宅の重度障害者に対する特別障害者手当等の支給のための経費、身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。  以上、社会福祉費として、総額二兆千七百二十三億五千三百七十九万円余を支出しております。  第三は、社会保険費であります。  国民健康保険事業につきましては、昭和六十三年度末における保険者数は、三千四百二十九であり、その被保険者数は、四千四百六十一万余人となっております。  昭和六十三年度におきましては、国民健康保険の医療費及び事務費等に要する経費として、二兆三千九百七十二億二千三百五十三万円を支出しております。  また、社会保険国庫負担厚生年金保険国庫負担及び国民年金国庫負担に要する経費として、五兆二千七十一億二千八百七万円余を支出しております。  このほか、児童手当の給付費及び事務費に要する経費として、三百七十七億千五百二十七万円余を支出しております。  以上、社会保険費として、総額七兆六千五百五十四億五千三百六十九万円余を支出しております。  第四は、保健衛生対策費であります。  原爆障害対策費につきましては、各種手当の額の引上げ等の改善を行うなど施策の充実を図り、千百二十二億百二十九万円余を支出しております。  精神衛生費につきましては、精神保健法に基づく措置入院費及び通院医療費公費負担に要する経費として、四百八十六億四千八百二万円余を支出しております。  このほか、結核医療費として、二百九十億四千九百二十一万円余、疾病予防及び健康づくり推進費保健所費らい予防対策費老人保健法による保健事業に要する経費等保健衛生諸費として、千十六億四千七百六万円余を、それぞれ支出しております。  以上、保健衛生対策費として、総額四千九百三十八億千九百八十一万円余を支出しております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等援護対策につきましては、遺族年金等について恩給の改善に準じて額を引き上げるとともに、戦没者の父母等に対する特別給付金の継続及び増額の措置を講じたほか、遺骨収集及び慰霊巡拝を実施いたしました。  また、中国残留日本人孤児対策につきましては、中国帰国孤児等の落ち着き先における日本語指導、生活指導等の拠点となる中国帰国者自立研修センターを設置する等定着自立促進施策の充実・強化を図ったところであり、遺族及び留守家族等援護費として、総額千五百三十二億七千九百五十七万円余を支出しております。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  環境衛生施設の整備を推進するため、昭和六十三年度は、廃棄物処理施設六百三十七か所、簡易水道等施設五百九か所、水道水源開発等施設三百十四か所の整備について、それぞれ補助を行い、環境衛生施設整備関係費として、総額千八百八十四億七千八百六十九万円余を支出しております。  次に、特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。  第一は、厚生保険特別会計の決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計から三兆七千三百十四億六千九百五十二万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額五兆八千四百八十億四千九百四十九万円余、支出済歳出額五兆七千九百八十八億九千六百六十一万円余でありまして、差引四百九十一億五千二百八十八万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年三月末の事業所数は、百八万余か所、年度平均保険者数は、千六百五十一万余人に達しております。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額十八兆二千九十億九千八百八十二万円余、支出済歳出額十二兆五千六百七億四千三百四万円余でありまして、差引五兆六千四百八十三億五千五百七十七万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年三月末の事業所数は、百十二万余か所、年度平均保険者数は、二千八百五十五万余人に達しております。  次に、児童手当勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額千五百二十一億八千八百七十四万円余、支出済歳出額千二百二十七億六千九百六十九万円余、翌年度繰越額四億千四百二十四万円余でありまして、差引二百九十億四百八十万円余については、このうち二十七億九千八十八万円余をこの勘定の積立金として積み立て、二百六十二億千三百九十二万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均支給対象児童数は、三百十一万余人であります。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額四千二百三十三億八千四百五十四万円余、支出済歳出額四千百七十七億千七百二十一万円余でありまして、差引五十六億六千七百三十三万円余については、このうち、二十一億三千二百十六万円余を健康及び年金の各勘定の積立金に組み入れ、三十五億三千五百十六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  第二は、船員保険特別会計の決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から百五十四億七千六百八十二万円余を繰り入れました。  その決算額は、収納済歳入額千百五十一億九千百四十三万円余、支出済歳出額千百五十二億九千四百十六万円余でありまして、差引一億二百七十二万円余については、この会計の積立金から補足することとして、決算を結了いたしました。  なお、年度平均の被保険者数は、十四万余人であります。  第三は、国立病院特別会計の決算であります。  国立病院特別会計につきましては、一般会計から千五百二十五億七千六百七十八万円を繰り入れました。  まず、病院勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額四千二百十九億四千五百八十八万円余、支出済歳出額四千百四十七億二千二百二十九万円余、翌年度繰越額十九億九千万円でありまして、差引五十二億三千三百五十九万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万千余人、外来患者数は、一日平均四万三千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額三千六百二十三億七千六百三万円余、支出済歳出額三千五百十九億三百三十六万円余、翌年度繰越額二十億四千百十万円余でありまして、差引八十四億三千百五十五万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均四万千余人、外来患者数は、一日平均一万三千余人であります。  第四は、国民年金特別会計の決算であります。  国民年金特別会計につきましては、一般会計から一兆四千九百七十八億九千七百万円余を繰り入れました。  まず、基礎年金勘定決算額について申し上げますと、収納済歳入額六兆七千六百三十八億千三百六十五万円余、支出済歳出額六兆二千三百六十三億千三百五十四万円余でありまして、差引五千二百七十五億十万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、国民年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額五兆五千三百八十九億八百二十八万円余、支出済歳出額四兆九千八百二十一億千四百六十万円余、超過受入額二千三百五十七億百二十七万円余でありまして、差引三千二百十億九千二百四十一万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。  なお、平成元年三月末の被保険者数は、三千三十四万余人で、そのうち、保険料の免除該当者は、二百二十三万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額五千五百八十二億五千三百七十七万円余、支出済歳出額四千六百十億六千二百九十八万円余でありまして、差引九百七十一億九千七十八万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済歳入額一兆三千六百八十六億九百九十一万円余、支出済歳出額一兆三千六百七十三億三千七百十九万円余でありまして、差引十二億七千二百七十二万円余については、このうち、一億三千五百七十二万円余を国民年金勘定積立金に組み入れ、十一億三千七百万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  なお、昭和六十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。  今回不当事項として指摘を受けましたものは、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収額が不足していたもの二件、健康保険及び船員保険の傷病手当金並びに厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもの三件、国民健康保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもの一件、老人福祉施設保護費負担金及び生活保護費負担金の補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの三十件児童扶養手当の支給が適正でなかったもの一件及び医療費に係る国の負担が不当と認められるもの三十三件であります。  意見を表示され又は処置を要求された事項は、医療用酸素に係る診療報酬請求の適正化、合理化及び定数を超過して入院させている保険医療機関の適切な把握であります。  不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了し、全額収納済となっているところでありますが、今後とも、適用事業主及び船舶所有者に対し、報酬に関する適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。  健康保険及び船員保険の傷病手当金並びに厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の母子年金の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、被保険者及び適用事業主等に対し、適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、関係書類の調査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。  国民健康保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導の徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書の審査等のなお一層の強化を図り、普通調整交付金の適正な交付に努力していく所存であります。  老人福祉施設保護費負担金及び生活保護費負担金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。  児童扶養手当の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも現況届等の調査・確認事務について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、児童扶養手当の適正な支給に努力いたす所存であります。  医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導・徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。  意見を表示され又は処置を要求された医療用酸素に係る診療報酬請求の適正化、合理化及び定数を超過して入院させている保険医療機関の適切な把握については、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じたところであります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十二年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十二年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項六十四件及び意見を表示し又は処置を要求した事項三件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号二一号及び二二号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、いずれも事業主又は船舶所有者が制度を十分理解していなかったりなどして、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額など被保険者資格取得届等の記載内容が事実と相違しているものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、保険料の徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号二三号は、健康保険の傷病手当金等の支給が適正でなかったもので、被保険者及び事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、傷病手当金及び出産手当金の支給の基礎となる傷病手当金請求書又は出産手当金請求書の記載内容が事実と相違しているのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、傷病手当金等の支給が適正でなかったものであります。  検査報告番号二四号は、厚生年金保険の老齢年金等の支給が適正でなかったもので、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際に事業主が提出する資格取得届の記載内容が事実と相違しているものなどがあったのに、これに対する調査確認等が十分でなかったり、適正な資格取得届が提出されているのに、事務処理が適切でなかったりしたため、老齢年金等の支給が適正でなかったものであります。  検査報告番号二五号は、国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもので、母子年金の受給権者が制度を十分理解していなかったりなどして、夫の死亡を支給事由として他の公的年金の受給ができることを母子年金裁定請求書に表示をしていなかったり、支給停止、失権等の事由が生じたときの届出を怠っていたりなどしているものがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、母子年金の支給が適正でなかったものであります。  検査報告番号二六号から六〇号までの三十五件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。  これを補助金の種類別に区分いたしますと、検査報告番号二六号から三二号までの七件は、医療施設運営費等補助金でございます。  この補助金は、都道府県、市町村等の開設する医療機関が行うへき地中核病院運営事業等に要する費用を補助するものでありますが、検査報告番号二六号から三〇号までの五件は、へき地中核病院運営事業に係るもので、巡回診療等に要した医師等の人件費等を過大に算定したり、補助の対象とならない地区への巡回診療に要した人件費等を計上したりして、補助対象事業費を過大に精算していたものであります。また、検査報告番号三一号及び三二号の二件は、へき地診療所運営事業に係るもので、補助の対象とならない診療所に補助金を交付していたり、診療収入等の額を作為して補助金を不正受給していたものであります。  検査報告番号三三号から五九号までの二十七件は、老人保護費補助金でございます。  この補助金は、介護等を要する老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村に対して、その措置に要する費用を補助するものでありますが、補助対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者から徴収する徴収金の額を過小に算定していたり、民間施設給与等改善費の計算を誤っていたりしたため、国庫補助金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号六〇号は、戦傷病者福祉事業助成委託費でございます。  この委託費は、財団法人日本傷痕軍人会の支部である各都道府県傷痕軍人会が戦傷病者等に対して行う健康診査等戦傷病者福祉事業に要する費用を助成するものでありますが、事業を全く実施していなかったりなどして、委託費が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号六一号は、児童扶養手当の支給が適正でなかったもので、児童扶養手当の認定請求書、現況届又は資格喪失届の記載内容が事実と相違しているものがあったのに、これに対する指導及び調査確認が十分でなかったため、手当の支給が適正でなかったものであります。  検査報告番号六二号から八四号までの二十三件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これらは、医療機関が医療費の請求に当たり、室料等について入院定数超過のときの所定の算定方法によらないで算定していたり、特定患者収容管理料について対象にならない患者に係るものを算定していたり、入院時医学管理料について特例許可病棟の患者に対し一般病棟の患者に適用する点数を用いて算定していたりなどしているのに、市町村等においてこれらをそのまま認めて支払っていたため、国の負担が適正でなかったものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、医学実験用サルの飼育管理業務の実施に関するものであります。  国立予防衛生研究所における医学実験用サルの飼育管理業務につきまして、関係部局間の連絡調整が適切に行われていなかったり、現行の繁殖交配方式が需要に応じたものとなっていなかったりなどしているため、老齢などにより、実験用又は繁殖用に当面使用困難なサルを多数飼育している一方で、実験用サルの供給不足を生じ、別途野生ザルを輸入しているなどの事態が見受けられました。  したがいまして、厚生省におきまして、国立予防衛生研究所に対し、実験用サルの中長期の需給計画を策定させるなどの指示を行い、もって医学実験用サルの飼育管理業務の効率的な実施を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  その二は、老人医療における特例許可外老人病院の把握に関するものであります。  毎年の一月から三月までの間における老人収容比率の平均値が百分の六十以上になっているなど特例許可外老人病院に該当する病院は、特定の検査、注射、処置等に係るものについては、これらの診療報酬を一般病院が請求する診療報酬より低く定められている特例許可外老人病院に関する事項に基づいて算定することとなっております。  今回、一般病院として医療費を請求している保険医療機関について調査いたしましたところ、老人収容比率の平均値が百分の六十以上となっているなど特例許可外老人病院に該当しているのに、特例許可外老人病院に関する事項によることなく一般病院としての算定方法により診療報酬を算定し請求している不適切な事態が多数見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、都道府県に対して保険医療機関への指導を一層強化させるとともに、特例許可外老人病院に係る老人収容比率の具体的な把握の方法を都道府県に示すなどして老人保健法及び老人医療費算定基準の適正な運用を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  その三は、厚生年金保険の老齢厚生年金等に係る加給年金額の支給に関するものであります。  厚生年金保険の老齢厚生年金等の年金額には、当該年金の受給権者がその権利を取得した当時受給権者によって生計を維持されていた配偶者等を対象とする加給年金額を加算することになっております。そして、この加給年金額の対象配偶者が死亡したり、受給権者と離婚したりなどしたときには、受給権者から加給年金額対象者不該当届を提出させ、加給年金額を加算しないものとして年金額の改定を行い、対象配偶者が一定要件の老齢厚生年金等の公的年金の支給を受けることができるときには、受給権者から加給年金額支給停止事由該当届を提出させ加給年金額に相当する部分の支給停止を行うこととなっておりますが、この年金額の改定及び加給年金額の支給停止の状況を調査いたしましたところ、所要の年金額の改定又は加給年金額の支給停止を行っていないものが多数見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生を防止するために、社会保険庁におきまして、受給権者に対し、対象配偶者が死亡したりなどした場合の手続きについて一層の周知徹底を図ることはもとより、受給権者本人の生存確認と同様、対象配偶者の生存等に関しても第三者の証明によるなどして現況の確認を行い、その確認のできないものについては加給年金額の支給の一時差止めを行うことができるような体制の整備を図ったり、対象配偶者に係る公的年金の受給状況の確認に関してコンピュータを利用した事務処理体制の確立を図ったり、各共済組合等と連絡調整を図ったりするなどの措置を講じて老齢厚生年金等の支給の適正化を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十九年度決算検査報告に掲記いたしましたように、資産保有者に対する生活保護並びに昭和六十一年度決算検査報告に掲記いたしましたように、生活保護世帯に対する扶養義務の履行の確保、特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料の支払及び国民年金保険料の免除に係る事務処理の適正化について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。    昭和六十三年度決算厚生省についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十三年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項七十件、意見を表示し又は処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一六号及び一七号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、いずれも事業主又は船舶所有者が制度を十分理解していなかったりなどして、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額など被保険者資格取得届等の記載内容が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、保険料の徴収額が不足していたものであります。  検査報告番号一八号は、健康保険及び船員保険の傷病手当金の支給が適正でなかったもので、被保険者及び事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、傷病手当金の支給の基礎となる傷病手当金請求書の記載内容が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、傷病手当金の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号一九号は、厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもので、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際に事業主が提出する資格取得届の記載内容が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったり、適正な資格取得届が提出されているのに、事務処理が適切でなかったりしたため、老齢厚生年金等の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二〇号は、国民年金の母子年金の支給が適正でなかったもので、母子年金の受給権者が制度の理解が十分でなく、夫の死亡を支給事由として他の公的年金の受給ができることを母子年金裁定請求書に表示をしていなかったり、支給停止の事由が生じたときの届出を怠っていたりなどしていたものがあったのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、母子年金の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号二一号は、国民健康保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるもので、東大阪市において、国民健康保険の保険料について実際に賦課する額を下回る額をもって調定を行うことにより、普通調整交付金の額を算定するときの基礎となっている保険料収納割合を実際より引き上げて交付申請を行っていたこと、及び大阪府において、これに対する審査が十分でなかったことなどのため、交付金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号二二号から五一号までの三十件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。  これを補助金の種類別に区分いたしますと、検査報告番号二二号から四五号までの二十四件は、老人福祉施設保護費負担金であります。  この負担金は、介護等を要する老人を特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その措置に要する費用を負担するものでありますが、国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者から徴収する徴収金の額を過小に算定していたり、民間施設給与等改善費の計算を誤ったことにより費用の額を過大に算定していたりなどしていたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。  検査報告番号四六号から五一号までの六件は、生活保護費負担金であります。  この負担金は、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に生活保護費を支給した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用を負担するものでありますが、被保護世帯が受給している公的年金を控除しないで保護費を支給していたり、被保護世帯が、保有する不動産を売却していたものや、公的年金を遡及して受給したりしていたものがあったのに支給済保護費の返還を請求していなかったりして、保護費が不適正に支給されていた結果、負担金が過大に交付されていたものであります。  検査報告番号五二号は、児童扶養手当の支給が適正でなかったもので、児童扶養手当の認定請求書、現況届又は資格喪失届の記載内容が事実と相違しているものがあったのに、これに対する指導及び調査確認が十分でなかったため、手当の支給が適正を欠いたものであります。  検査報告番号五三号から八五号までの三十三件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。  これを診療報酬別に区分いたしますと、医療機関が医療費の請求に当たり、  看護料等については、基本看護、老人特例一類看護等の承認を得ていないのにこれらの看護料を算定したり、患者の平均在院日数を二十日以内とする特三類看護の要件を満たしていないのに特三類看護料を算定したり、一類看護料、特一類看護料の点数を誤って算定したりなどしていたものが十件、  注射料等については、注射に使用する際の標準とされている用法、用量によることなく薬剤を使用して、その薬剤料を注射料に加えて算定したり、特例許可外老人病院の入院期間が一年を超える患者に対して所定の上限の点数を超えて薬剤料を算定したりなどしていたものが六件、  処置料等については、処置に使用した酸素の費用を購入価格によらない高い単価で算定したり、特例許可老人病院等処置料(Ⅰ)とは別に老人処置料(Ⅰ)を算定したり、基本診療料に含まれる皮膚科軟膏処置料等を別に算定したりなどしていたものが四件、  検査料等については、毎月画一的に検体検査料や生体検査料を多数の項目にわたって繰り返し算定していて保険診療として適切でなかったり、血液化学検査を分割して行う要がないのに分割して割高に血液化学検査料を算定したり、知能検査料を算定する対象とは認められないものについてこれを算定したり、特例許可老人病院の入院期間が一年を超える患者に対して腫瘍マーカー検査料を所定の限度を超えて算定したりなどしていたものが六件、  入院時医学管理料等については、特例許可病棟に収容している患者について一般病棟に収容している場合の高い点数で算定したり、同一疾病で同一病院に再入院した患者について入院の起算日を誤って算定したり、医師及び看護婦等の員数が一定基準以下である場合の所定の減額をしないで算定したりなどしていたものが五件、  その他の診療報酬については、運動療法の施設基準に適合していないのに通常より高い点数で運動療法料を算定したり、医師の指示に基づいた栄養士による具体的な指導を行うことなく栄養食事指導料を算定したりしていたものが二件ありまして、いずれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払が適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、医療用の酸素に係る診療報酬請求に関するものであります。  保険医療機関等が酸素吸入等に使用する医療用酸素の診療報酬請求については、診療報酬点数表において、その購入価格を十円で除して得た点数によることとされています。  しかし、今回、国立病院、国立大学附属病院、労災病院など本院の検査対象機関である百十七の病院におきまして、医療用酸素に係る診療報酬請求の実態について調査いたしましたところ、当該病院で購入し使用する各種酸素容器のうち購入単価の割高な圧縮酸素の購入価格によっていたり、近隣の病院に問い合わせるなど独自に設定した価格によっていたりなどしていて、診療報酬請求の取扱が区々となっている事態が見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生を防止するために、厚生省におきまして、酸素に係る請求価格の具体的算定方法を明確にするなど、診療報酬請求の適正化、合理化を図るよう意見を表示いたしたものであります。  その二は、定数を超過して入院させている保険医療機関の把握に関するものであります。  保険医療機関は、許可病床数等を一定数上回って入院患者を収容している場合には、診療報酬の請求に当たり、全入院患者について室料、看護料及び入院時医学管理料を診療報酬点数表の所定点数に百分の八十を乗じて得た点数を用いて算定することとなっております。  今回、保険医療機関における入院患者の収容状況について調査いたしましたところ、病床の定数を上回って患者を入院させていて定数超過入院に該当しているのに、室料等について所定の減額を行わずに診療報酬を算定し請求している不適切な事態が多数見受けられました。  したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、都道府県に対して、定数超過入院の状況にある保険医療機関の把握について具体的な方法を指示するなどして健康保険法等の適正な運用を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、へき地中核病院運営事業における巡回診療の対象となる無医地区の把握等に関するものであります。  厚生省では、離島、山村等の医療に恵まれない地域の住民の医療を確保するため、都道府県等に無医地区への巡回診療やへき地診療所への医師派遣等の医療活動事業を実施させ、その費用を補助しております。  しかしながら、事業の実施等について検査いたしましたところ、無医地区に該当しない地区の巡回診療を事業の対象としたり、医師等の人件費の算出が適切でなかったりなどしたため、補助金が適切に交付されていない事態が見受けられました。  この点について当局の見解をただしましたところ、厚生省では、都道府県等に対して、近年の交通の利便性の向上などを考慮したうえで無医地区であることの実態を十分に把握させるとともに、費用の算出方法を具体的に明示するなどして事業を適切に行う処置を講じたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十九年度決算検査報告に掲記いたしましたように、資産保有者に対する生活保護並びに昭和六十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、医学実験用サルの飼育管理業務の実施、老人医療における特例許可外老人病院の把握及び厚生年金保険の老齢厚生年金等に係る加給年金額の支給について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。     ─────────────    昭和六十二年度労働省所管一般会計及び特別会計決算説明要旨  労働省所管の昭和六十二年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千八百八十三億五千六百九十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千八百三十八億七千七百七万円余、不用額四十四億七千九百八十三万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、「雇用保険法」に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び「緊急失業対策法」に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数五百箇所、事業数一千四百九十六、失業者の吸収人員一日平均二万一千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  つぎに、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、「労働保険特別会計法」に基づき昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆七千八百二十四億八千七百五十六万円余に対しまして、収納済歳入額一兆七千七百十億五千三百一万円余でありまして、差引き百十四億三千四百五十四万円余の減となっております。  これは、徴収勘定からの受入れが予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆一千八百四億九千九百四十六万円余でありまして、この内訳は、歳出予算額一兆一千八百二億五千百六十三万円余、前年度繰越額二億四千七百八十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆八十七億八千九百九十七万円余、翌年度繰越額三億七千三百三十二万円余、不用額一千七百十三億三千六百十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「労働者災害補償保険法」に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の支払件数は、五百三十六万四千件余、支払金額は、七千二百五十九億二千二百四十九万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆二千三百六十八億三千三百六十四万円余に対しまし て、収納済歳入額一兆八千七百六十六億五千二百五十二万円余でありまして、差引き三千六百一億八千百十二万円余の減となっております。  これは、予備費を使用しなかったこと等により、積立金からの受入れを必要としなかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額二兆二千三百六十九億六千八百八十三万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆二千三百六十八億三千三百六十四万円余、前年度繰越額一億三千五百十八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆六千四十八億六千百八十九万円余、翌年度繰越額一億七千八百三十三万円余、不用額六千三百十九億二千八百六十一万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「雇用保険法」に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等四事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇労働求職者給付の月平均受給者実人員は、一般求職者給付六十四万九千人余、日雇労働求職者給付八万六千人余、また、高年齢求職者給付、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付の受給者数は、高年齢求職者給付七万人余、短期雇用特例求職者給付六十一万四千人余、就職促進給付二十七万六千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付九千三億三千百二十三万円余、高年齢求職者給付三百三十億二千九百三十万円余、短期雇用特例求職者給付一千三百九十二億七千七百二十万円余、日雇労働求職者給付四百七十億二千七百十六万円余、就職促進給付七百二十三億三千二百七十八万円余となっております。  また、雇用安定事業等四事業に係る支出実績は、支出済歳出額二千五百三十二億七千九百十九万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、失業給付費等であります。  つぎに、微収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆七千五百二十二億四千九百九十三万円余に対しまして、収納済歳入額二兆六千六百十七億七千九百三十六万円余でありまして、差引き九百四億七千五十六万円余の減となっております。  これは、雇用保険に係る保険料収入が予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも二兆七千五百二十二億四千九百九十三万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆六千五百九十九億四千六百七十七万円余、不用額九百二十三億三百十六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  この事業の実績の概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数二百十七万余、労災保険適用労働者数三千八百八十万人余、雇用保険適用事業場数百五十五万余、一般雇用保険適用労働者数二千八百六十三万人余、日雇雇用保険適用労働者数十一万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分の炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百九十五億二千四百二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百八十億八千九十四万円余、不用額十四億四千三百七万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業の実績の概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数三十五箇所、事業数百三十四、就労人員延三十一万六千人余となっております。  つぎに、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十五箇所、事業数二百六、就労人員延六十五万六千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和六十二年度一般会計及び特別会計の決算の概要であります。  なお、昭和六十二年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。    昭和六十三年度労働省所管一般会計及び特別会計決算説明要旨  労働省所管の昭和六十三年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千九百四億一千四十八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額四千三百九十億七千八百八万円余、不用額五百十三億三千二百三十九万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、「雇用保険法」に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び「緊急失業対策法」に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数四百六十三箇所、事業数一千二百七十八、失業者の吸収人員一日平均一万六千九百人余となっております。  なお、不用額の主なものは、雇用保険国庫負担金等であります。  つぎに、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、「労働保険特別会計法」に基づき昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆八千三百五十八億四千二十二万円余に対しまして、収納済歳入額一兆八千五百八十四億五千二百十八万円余でありまして、差引き二百二十六億一千百九十六万円余の増となっております。  これは、徴収勘定からの受入れが予定より多かったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆二千百二十八億三千三百九十五万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆二千百二十四億六千六十二万円余、前年度繰越額三億七千三百三十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆二百十五億九十二万円余、翌年度繰越額十八億五千百五十一万円、不用額一千八百九十四億八千百五十二万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「労働者災害補償保険法」に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の支払件数は、五百二十九万一千件余、支払金額は、七千三百三十三億七千九百九十九万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険給付費等であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆四千二十一億八千七百九十九万円余に対しまして、収納済歳入額一兆九千八百七億五千五百四万円余でありまして、差引き四千二百十四億三千二百九十四万円余の減となっております。  これは、雇用安定給付金が予定より少なかったこと等により、雇用安定資金からの受入れを必要としなかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額二兆四千二十三億六千六百三十二万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆四千二十一億八千七百九十九万円余、前年度繰越額一億七千八百三十三万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆六千億四千四百万円余、翌年度繰越額一億三千三百六十八万円余、不用額八千二十一億八千八百六十三万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「雇用保険法」に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等四事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇労働求職者給付の月平均受給者実人員は、一般求職者給付五十四万九千人余、日雇労働求職者給付七万六千人余、また、高年齢求職者給付、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付の受給者数は、高年齢求職者給付六万人余、短期雇用特例求職者給付五十七万五千人余、就職促進給付二十五万七千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付七千七百十億八百六十七万円余、高年齢求職者給付二百九十一億九千六百三十四万円余、短期雇用特例求職者給付一千三百二十七億八千百三十九万円余、日雇労働求職者給付四百十五億八千五百六十七万円余、就職促進給付六百六十四億六千四百六十五万円余となっております。  また、雇用安定事業等四事業に係る支出実績は、支出済歳出額四千五十九億七千六百四十万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、失業給付費等であります。  つぎに、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆八千五百十三億二千四百七十二万円余に対しまして、収納済歳入額二兆八千七百九十八億二千五百四十三万円余でありまして、差引き二百八十五億七十一万円余の増となっております。  これは、労災保険に係る保険料収入が予定より多かったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額二兆八千六百五十一億二百五十二万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額二兆八千五百十三億二千四百七十二万円余、特別会計予算予算総則第十三条第一項第二十三号の規定による経費増額百三十七億七千七百八十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆八千五百七十億三千二百九十三万円余、不用額八十億六千九百五十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  この事業の実績の概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数二百二十七万余、労災保険適用労働者数四千七十三万人余、雇用保険適用事業場数百六十二万余、一般雇用保険適用労働者数二千九百四十八万人余、日雇雇用保険適用労働者数十万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、保険料の返還に必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分の炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも二百十八億二千三百八十七万円であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二百九億四千二百四十万円余、不用額八億八千百四十六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業の実績の概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数三十四箇所、事業数百二十二、就労人員延二十八万三千人余となっております。  つぎに、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十五箇所、事業数二百八、就労人員延六十四万八千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和六十三年度一般会計及び特別会計の決算の概要であります。  なお、昭和六十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十二年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十二年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一三七号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号一三八号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職、あるいは就労しておりますのに、失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして給付が適正でなかったものであります。  検査報告番号一三九号は、雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動等により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して、休業手当、賃金又は出向労働者に係る賃金負担額の一部を助成するものでありますが、事業主が労働日に休業又は教育訓練を行う一方で、休日出勤させながら振替休日を与えていない者に係る休業等を支給対象としているなど、支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付が適正でなかったものであります。  検査報告番号一四〇号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付が適正でなかったものであります。  検査報告番号一四一号は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。これは、石巻、瀬峰両労働基準監督署において、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病等に対して支給される療養補償給付、障害補償給付等に係る支給請求書等についての審査、障害等級の認定等の事務に従事していた労働事務官が、部外者と共謀し、架空又は実在の労働者名を使用して関係書類を偽造したうえ、審査、認定を了したこととするなどして支給決定を受け、療養補償給付等を領得していたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  これは、労働者災害補償保険の遺族補償年金等の受給資格者の認定に関するものであります。  遺族補償年金等の受給資格者は、死亡労働者によって生計を維持されていた遺族であることが要件となっておりますが、労働基準監督署においては、死亡労働者との同居の事実を住民票等により確認するだけで受給資格者と認定しているため、必ずしも生計維持関係があったとは認められない死亡労働者の孫又は祖父母が受給資格者となっている事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、遺族補償年金等の受給資格者の認定に当たり、労働者の死亡当時の遺族の所得、扶養関係等から生計維持関係の判断を実質的に行うこととするなどして、死亡労働者によって真に生計が維持されていた遺族を対象とするよう現行制度の見直しを図り、遺族補償年金等についてその趣旨に沿った支給を行うよう意見を表示いたしたものであります。  なお、以上のほか、昭和六十一年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の年金と厚生年金等との併給調整について処置を要求いたしましたが、これに対する労働省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。    昭和六十三年度決算労働省についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十三年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項四件及び意見を表示し又は処置を要求した事項二件であります。  まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。  検査報告番号一三八号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があったものであります。  検査報告番号一三九号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものであります。これは、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに、失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一四〇号は、雇用保険の雇用調整助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、失業の予防その他雇用の安定を図るため、景気の変動等により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業、教育訓練又は出向を実施した事業主に対して、休業手当、賃金又は出向労働者に係る賃金負担額の一部を助成するものでありますが、事業主が労働日に休業又は教育訓練を行う一方で、振替休日を与えずに休日出勤させていた日数分を支給対象としているなど、支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一四一号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。  その一は、競走事業従事者に係る雇用保険の取扱いに関するものであります。  埼玉県ほか九都府県で、競馬、競輪等の競走事業に従事する一部の者については、その雇用契約が日々又は一開催期間ごとの雇用となっていることから日雇労働被保険者として取り扱い、競走事業が開催されない日については失業しているとして日雇労働求職者給付金を支給しておりますが、その雇用の実態は、長期にわたり安定した雇用関係、安定した雇用条件及び処遇が保障されていて、継続雇用的な性格を有しているものであり、事業主、就労場所等が常に変動し、社会的に不安定な立場にある労働者に対して失業給付を行うことを目的とした日雇労働被保険者制度の趣旨からみて適切ではない事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、競走事業に従事する者の雇用関係の実態などについて十分把握、検討し、雇用保険の取扱いが適正なものとなるよう所要の措置を講じ、日雇労働被保険者制度の適正な運営を図るよう意見を表示いたしたものであります。  その二は、雇用保険の再就職手当の支給に関するものであります。  再就職手当は、就職日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の二分の一以上あることなどを支給要件としておりますが、公共職業安定所におきまして、就職日の前日までの期間について失業の認定を行わないまま基本手当の支給残日数を把握し支給決定しているものがあり、適切に基本手当の支給残日数を確認した場合には、再就職手当の支給要件を欠くことになったり、支給要件は満たすものの支給額が低額になったりする事態が見受けられました。  したがいまして、労働省において、再就職手当の支給が適切に行われるよう方策を樹立するとともに、各都道府県及び公共職業安定所に対してその施策の徹底を図るなど所要の措置を講ずるよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。  なお、以上のほか、六十二年度決算検査報告に掲記いたしましたように、労働者災害補償保険の遺族補償年金等の受給資格者の認定について意見を表示いたしましたが、これに対する労働省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもって概要の説明を終わります。    昭和六十二年度環境衛生金融公庫の業務の概況  一、環境衛生金融公庫の昭和六十二年度の概況につきまして御説明申し上げます。  昭和六十二年度の貸付計画額は、一千九百二十億円を予定いたしました。  その原資としては資金運用部資金の借入金一千九百三十五億円から借入金償還等十五億円を控除した一千九百二十億円を充てることといたしました。  これに対しまして、貸付実績は、一千八百九十一億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、十三・二パーセントの増となっております。  二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。  昭和六十一年度末における貸付残高は、五千七百八十九億五千万円余でありましたが、昭和六十二年度中に一千八百九十一億三千万円余の貸付を行い、二千七十八億六千万円余を回収いたしましたので、昭和六十二年度末においては、五千五百九十九億七千万円余となっております。  三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。  昭和六十二年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが二百十六億九千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、二百四億九千万円余で総貸付金残高の三・七パーセントとなっております。  四、次に昭和六十二年度の収入支出決算について御説明いたします。  昭和六十二年度における収入済額は四百三十七億二千万円余、支出済額は四百四十一億円余となりました。  まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は四百三十七億二千万円余でありまして、これを収入予算額四百九十三億九千万円余に比較いたしますと、五十六億七千万円余の減少となっております。この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額五百十二億六千万円余に対し、支出済額は四百四十一億円余でありまして、差引き七十一億五千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  五、最後に昭和六十二年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は四百六十六億三千万円余、借入金利息、事務費、業務委託費、貨倒引当金繰入等の総損失は四百六十六億三千万円余となりました。  この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が昭和六十二年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。    昭和六十三年度環境衛生金融公庫の業務の概況  一、環境衛生金融公庫の昭和六十三年度の概況につきまして御説明申し上げます。  昭和六十三年度の貸付計画額は、一千九百二十億円を予定いたしました。  その原資としては、資金運用部資金の借入金一千八百三億円、貸付回収金等百十七億円、計一千九百二十億円を充てることといたしました。  これに対しまして、貸付実績は、一千九百六億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、〇・八パーセントの増となっております。  二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。  昭和六十二年度末における貸付残高は、五千五百九十九億七千万円余でありましたが、昭和六十三年度中に一千九百六億三千万円余の貸付を行い、一千七百二十二億一千万円余を回収いたしましたので、昭和六十三年度末においては、五千七百八十一億四千万円余となっております。  三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。  昭和六十三年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百八十六億五千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百七十八億四千万円余で総貸付金残高の三・一パーセントとなっております。  四、次に昭和六十三年度の収入支出決算について御説明いたします。  昭和六十三年度における収入済額は四百億二千万円余、支出済額は三百九十八億九千万円余となりました。  まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は四百億二千万円余でありまして、これを収入予算額四百三億四千万円余に比較いたしますと、三億二千万円余の減少となっております。  この減少いたしました主な理由は、貸付金利息収入が予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額四百二十八億三千万円余に対し、支出済額は三百九十八億九千万円余でありまして、差引き二十九億三千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。  五、最後に昭和六十三年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は四百二十六億二千万円余、借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は四百二十六億二千万円余となりました。  この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。  以上が昭和六十三年度における環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十二年度決算環境衛生金融公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十二年度環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。    昭和六十三年度決算環境衛生金融公庫についての検査の概要に関する主管局長の説明                 会計検査院  昭和六十三年度環境衛生金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  10. 渡辺栄一

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  11. 新村勝雄

    新村委員 まず、労働省所管の労働問題についてお伺いをいたしますが、これはJRの労働問題ということでありまして、JRが現在、全額その資産がすべて国有になっているという関係もありましてお願いをするわけであります。  私はさきの国会で、国鉄清算事業団の職員を再び解雇してはならない、政府は地労委命令が出されていることからも早期解決を図るべきであるというふうに質問をし、政府の決断を促してまいりました。しかし残念なことに、三月三十一日には千四十七名の職員が解雇され、法の保護も受けられず、生活の道を断たれたわけであります。  この解雇された人々の雇用保険の受給期限は三カ月から六カ月で、早い人では既に八月から、遅い人でも十一月から全く収入がなくなるわけであります。こういう状況の中で、政府は民営化の当時、一人も失業者は出さない、一人も路頭に迷うようなことはしないということを国会で答弁をされておるわけであります。また、その後の国会答弁等においても、政府の方からは同じ趣旨の答弁が繰り返しなされているわけでありますけれども、事実はこういう状況で推移をしておるということでございます。  そこで、この国会審議の経過でありますが、参議院における民営化決定のときの附帯決議の中に、「国鉄改革の実施に当たっては、国鉄職員の雇用と生活の安定を図るため、次の諸点について十分配慮すること。」として、「各旅客鉄道株式会社等における職員の採用基準及び選定方法については、客観的かつ公正なものとする」というようなことがありますが、同時にまた、失業をさせないという、そういう明確な答弁があるわけでありますが、その答弁と、それから、その後の経過等について大臣はどうお考えになるのか、それが一つ。  それから、千四十七名が解雇されたということでありますけれども、この千四十七名の方々はその後どういう状況にあるのか、これを伺いたいと思います。
  12. 塚原俊平

    塚原国務大臣 私がことしの二月に就任をさせていただきまして、最初の一番大きな課題でございました。それまでも、政府といたしましても、何とか三月の末までにJRの内部も含めてできるだけいいお仕事先がお世話できるようにというような努力もいたしておりましたし、私どもも精いっぱい尽力をしてきたわけでございますが、残念ながら、千人を超える方を残す形で三月の末を迎えるという状況になりました。  そうなりました以上は、これは当然私ども職業安定行政の範囲の中に完全になってまいるわけでございますので、その後も、でき得る限りいいところのお世話をできるようにということで努力をしてきたわけでございますが、ただいま先生が御指摘をされたような現状がございます。非常に残念な結果になっているというふうに理解をいたしております。  細かな内容につきましては、職業安定局長の方から御答弁をさせたいと思います。
  13. 若林之矩

    ○若林政府委員 ただいま先生御指摘の一千四十七名の方々でございますけれども、そのほとんど、一千三十一名の方が六月末までに公共職業安定所に求職の申し込みを行われておりまして、これらのすべてにつきまして失業給付を行いますとともに、職業相談、職業紹介に努力をしてまいったところでございます。この十一月末までに、公共職業安定所の紹介で二十二名の方が再就職をされておりまして、十一月末現在で有効求職者は九十三名でございます。  私ども、今後とも、公共職業安定所に求職を申し込まれました方につきましては、きめ細かい職業相談、職業紹介を行いまして、一日でも早く再就職できますように努めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 新村勝雄

    新村委員 今のお答えによりますと、まだ就職できない方が相当おられるわけでありますが、職安というこの制度的なもののルートに乗って紹介をするということは原則でありましょうけれども、こういう状況の中で、こういう事情で失職をしたわけでありますから、その制度的なルートに乗せるということだけではなくて、やはりそのほかの特別な紹介なりあるいは就職のあっせんをするなりという個々の協力までこれはやらなければいけないのではないか、政府あるいはJRにおいてもそこまで配慮をする必要があるのではないかと思いますけれども、職安に希望を出して、それでその制度あるいは職安の行政の中で自然に解消される、吸収されるのを待つという態度だけでいいのかどうか。これはいかがですか。
  15. 若林之矩

    ○若林政府委員 私ども職業安定機関といたしましても、この関係の離職者の方々のお世話というのは非常に重要な問題だというふうに認識をしているわけでございまして、各安定機関の職員一人一人にその点は徹底をいたしておりますし、雇用保険の受給期間中につきましても十分その点は御理解をいただいていると思うのでございます。  したがいまして、ただいま申しましたように、本当にきめ細かな職業相談を求職を引き続き申し込まれておられる方につきましては私どもいたしておるつもりでございますし、今後ともそういった形で職業相談、職業紹介を進めていきたいというふうに思っております。
  16. 新村勝雄

    新村委員 ぜひ個々の事情を調査をされるというところまできめの細かい御協力をお願いをして、一人残らず再就職できるように御配慮をいただきたいと思います。  これは別の問題でありますが、労使の問題が御承知のとおりあるわけでありまして、中労委が石川会長などの決断で労使の和解の道を探る努力をされていると聞いています。この解決のかぎはJRの経営者の態度にかかっていると思います。中労委の努力を無にせず、早期決着を図るため、政府としてはJRの経営者に対する指導監督を強めるように切に希望したいわけでありますけれども、この問題について大臣はどうお考えですか。
  17. 塚原俊平

    塚原国務大臣 現在、中労委で大変な御努力をいただいておるわけでございますが、当然のように、中労委は独立した機関でございますので、私どもの方からどうせいこうせいというようなことはなかなか言えませんし、また労使双方に対して果たして労働省がどの辺までお話ができるのかということも非常に難しい問題だと思います。ただ、私どもといたしましても精いっぱいいい結論が出るような環境づくりということはできると思いますので、先生の御指摘にもございましたが、できる限りこれからもしっかりした環境をつくるような努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  18. 新村勝雄

    新村委員 これは中労委の御判断でありますけれども、JR経営者に対しても、大臣の方から、ぜひ良好な労使関係をつくるように、そしてまた今この問題になっている点についても十分解決に努力をされるように御指導願いたい、そういう趣旨です。  そこで、三月末に解雇された人々は、JR職場へ復帰するために組織をつくって自活の道をとっているようであります。全国的に行商やアルバイトに出たり、またアルバイトに出るにしても、これはいわゆる危険、きつい、汚いという三K職場しかないということのようでありますけれども、そういう職場に出て苦労しているということであります。  こういう中では、釧路においてはこの問題についての痛ましい犠牲者も出ておるということですね。釧路では、二十九歳の青年が下水道工事現場で倒れて、鋼板が頭部と顔面を打ち、頭蓋骨折、ほおの部分の複雑骨折等をしてヘリコプターで礼幌の病院に運ばれるという事故が九月十九日に起こっております。なれない仕事に朝早くから夜遅くまで従事をしておるわけでありますから、こういう痛ましい事故が起こるわけであります。労働省はこの事故を御存じですか。
  19. 若林之矩

    ○若林政府委員 私、職業安定行政を担当いたしておりますけれども、私は現在まだその話は伺っておりません。
  20. 新村勝雄

    新村委員 御存じないというのはちょっとずさんではないかと思いますね。そういう痛ましい事故があるわけですよ。ですから、そういう点についてもやはり調査をされて、解雇をされた人々がどういう苦労をしているのかということについてもこれは調査をされることが私は望ましいと思うのです。  それで、北海道ではこれからいよいよ厳寒の冬を迎えて、零下三十度を超える、一晩で一メートル以上の積雪になるような地方で建設現場などで働いておるわけでありまして、屋外の仕事は冬ですからありません。そういう厳しい気象条件の中で生活と闘かっているという、こういう厳しい現実があるわけです。この人たちを、また家族を飢えさせることがないように、また痛ましい事故に追いやることがないような施策が望まれているわけであります。そして、この今の係争というか争いについても、少なくとも正月を迎える前に全面解決をして、安心して正月を迎えることができるように、ぜひ皆さん方の御配慮を、御協力をお願いをしたいと思います。  労働者の権利を擁護し、雇用の安定を図る責任省庁として、また中労委の所管省として、もう一回大臣のお考えを、御決意を伺いたいと思います。
  21. 塚原俊平

    塚原国務大臣 先月だったと思いますが、御党の永井孝信先生の御紹介で、対象になられた皆様方の奥様方が労働省をお訪ねをいただきまして、いろいろなお話をその場で伺いました。そのときに、それぞれ御主人の仕事先での状況等も伺ったわけでございますが、私自身もそのとき今の北海道の事故につきましてはちょっとお話が出なかったということもございまして全くそれはわかっておりませんで、先生から御指摘されて非常にそれは申しわけないと思っております。  ただ、そのときも申し上げたのでございますが、これは決して、ちょうど皆さん争議団をつくって苦労されているというお話でございましたので、決してそれを妨害するとか分裂さすとか、そんな意図は全くなしに、ともかくぜひとも職業安定所の方と御相談をいただきたい、ぜひとも最大限の努力をして御紹介を申し上げるからというようなお話をそのときもいたしましたが、私どももできる限り精いっぱい、安定局長もお話しをしておりましたが、いい職場が御紹介できるようにこれからも努力をしてまいりたいというふうに考えております。  そして、ただいま中労委の方の結論を年内に、やはり日本でございまするので、懸案は年内に解決していい正月を迎えるというのが当然一番いいことであります。一つのけじめでありますので、そういうような私どもでできる範囲の努力というものはしなければいけないと思いますが、今の状況を、一応表から今中労委の状況を見ている形になっておりますが、正月までに果たしていい結論が出るかどうかということにはなかなか自信を持ったお答えができませんで、それも甚だ申しわけないというふうに思っておりますが、できる限り環境ができますように頑張ってまいりたいというふうに考えております。
  22. 新村勝雄

    新村委員 ぜひ、大臣の御配慮をお願いしたいと思います。  次は、JRの労働条件、主として労働時間の問題でありますが、JRは民営化をされまして、厳しい国鉄時代のいろいろな遺産を背負いながら再建に努力をされているわけでありまして、その努力は評価するわけであります。しかし、また一方では合理化あるいは全体の会社の運営の実績、あるいは効率化ということは必要でありましょうけれども、同時にその名のもとに労働者が労働者の基本的な権利を侵されてはならないわけでありますから、労働者の権利を守りながら業績の向上を図るということでなければいけないと思います。そういった意味で、ぜひともJRを中心とする労働者の権利、特に労働時間の問題等については、所管監督官庁として労働省の厳しいというか正確な、間違いのない御指導を期待をするわけであります。  今、働く人たちは、ゆとり、豊かさを求めているわけでありまして、危険、きつい、汚い、いわゆる三K職場や労働時間の長い職場は労働者から嫌われているわけです。また、その一つの犠牲として過労死が社会の問題となり、労災適用の訴えが随所に提起をされております。  労働省は、基本的には世界じゅうの国から不公正競争の一つとされて非難されている長時間労働を解消し、年間の総労働時間を千八百時間にすべく努力をされているようであります。この努力については評価をいたしますけれども、この労働省の御努力に反するような事態が残念ながらJRの中で起きていると思われるのであります。JRの経営側は株式の上場を急ぐため効率化を推進をして、その一つの方法として労働時間の事実上の延長をしているという事態があると思われるのであります。この労働時間の延長が重大な事故の増加にもつながっているという懸念が持たれているわけです。  例えば、JR東日本ではこの四月一日から新休日制度を導入されました。これは労働時間が短縮され休日がふえたのかと思うと、そうではなくて、その反対に年休を名目的に消化をさせるために、労基法で言う休日に出勤をさせて、代休を与えないで休日を買い上げる、こういうことを制度化していると言われております。これは実質的に休日がなくなるわけでありますから、休日に働くということになりますから休日がなくなる、こういうことになりまして、労基法上も問題であろう。  会社側の説明では、これは複雑な勤務時間に関する制度でありますので、我々にはわかりにくい点があるのですけれども、明示された休日に勤務する希望をとり、勤務指定の際や勤務指定後、当該日に他の職員から時季指定があった場合に、休日勤務者に休日の勤務を命じて、これは超過勤務手当が支給されます。年休の時季指定をした者には年休を指定することができるようにした。また、制度の改正の趣旨から、個人的には必ずしも必要でないと思われる休日には、希望に基づいて超過勤務手当を得て勤務することもできるという価値観を定着をさせるのだ、こういう趣旨であります。ですから、休日はあるけれども、その休日は必ずしも休まなくてもいいのだ、休日に働きたい者はどんどん働きなさいよという趣旨ですね。  ですからそれは、そうでなくても日本人は働き過ぎて世界から非難をされているわけでありますから、こういう価値観を定着をさせるということはどうかという気がするわけですよ。これは非常に重大な問題でありまして、休暇に対する考え方をどう考えるのかということは、労働行政だけではなくて国民の生活にとってもこれは非常に重要な問題だと思うのです。これからは労働時間を短縮をしてその余暇を楽しむ、あるいは余暇を文化的にあるいは人生を充実をさせるために使うべきであるという時代に向かっているときにもかかわらず、こういう休日に対する時代の趨勢とは逆の考え方を植えつけようとするかに見える、この考え方が非常に問題ではないかと思うのですよ。  そこで、まず、我々の人生の中で、あるいは労働に従事をしているその中で、休むということ、休日ということの持つ意義、これについては大臣はどうお考えですか。
  23. 塚原俊平

    塚原国務大臣 よりゆとりある社会生活をする中からさらに大きな生産なり実績を生むという意味におきましても、ゆとりというものは、当然健康面等の大前提もございますが、ゆとりある生活づくりをするということは極めて大切な課題であるというふうに理解しておりますし、政府といたしましても、何とか、なかなかきつい話ではございますが、きついところに目標を設定しなければ目標達成はなかなかできませんので、平成年度までに千八百時間程度にしたい、完全週休二日にしたい、年休は二十日とってもらいたい、残業も百六十時間以内にしてもらいたいというようなことで現在お願いをしているわけでございまして、休日をとるということがあらゆる面において大切なことであると理解をいたしております。  今の御指摘の事実関係、ちょっと私も具体的なものがわかりませんで恐縮でございますが、昨今、そういうような中で一部大企業の中においても、ともかく労働時間を減らさなければいかぬ、だから休日出勤しても、残業してもカードを出すなというような話があるとかいうようなことも伺っております。今のお話は、まだお金を払う話ですからそれよりは少しはいいのかもしれませんが、もし事実であるとするといささか問題があるなというような形で今のお話を伺いました。
  24. 新村勝雄

    新村委員 御承知のように、日本の現在の労働時間は、これは政府の発表ですから間違いないと思いますが、日本は年間二千四百七十時間、アメリカが二千百八十、西ドイツが千八百ですから、今西ドイツではありません、ドイツですね。ドイツと日本と比べるとこれは大変な差があるわけですね。六百七十時間もドイツ人よりは日本人は余計働いているということですから、これは働けばいいという時代ではなくて、やはり日本が、超過労働あるいは過重労働のために、それが外国人から見れば不当な黒字蓄積になっている、こういうようなことも言われているわけでありまして、労働時間あるいは労働に対する考え方、価値観というものを変えていく必要があるのではないかと思うのです。  そういうわけで、JRだけを言って申しわけないのですけれども、JRさんではそういうことのようでありまして、これは大変重要な問題だと思うのです。希望をとると言っていますが、休日を買い上げる制度、しかもその結果が当然人事考課にも影響していくと思います。ですから、これは精神的、肉体的に労働者に対する大きな圧力になってまいります。そしてさらに、価値観を変える、意識改革をするんだ、その意識改革も時代の趨勢に沿う意識改革ではないように思うのです。こういう意識改革をされたのではどうかというのが我々の考え方であるわけです。  休日というのは個人個人の必要で決められているわけではないわけでありまして、現在及び将来の国民のあり方、国民生活のあり方という基本的な観点からこれは考えていかなければならないわけでありますから、ぜひ経営者におかれてもそういう観点からお考えになっていただきたいわけであります。企業の経営者あるいは管理者がこういう労基法の解釈の仕方であってはいけないのではないか、国際的な公約になっている時間短縮はとてもこれではできないのではないかと思うわけであります。時間短縮、労働から、労働からといってもこれは全面的な労働からじゃなくて、適正なレジャーを、余暇を得るようにすべきであるという政府の政策にこれでは合致できないと思うのであります。  そこで一つの例でありますけれども、今回JR東日本では、JRさん全体だと思いますが、先般の労働基準法の改正によっていわゆるフレックスタイムの制度が導入をされております。そこで、JRさんはそれに基づいて形式的には、例えば十二月の勤務内容、休日、これは十月二十五日までに当局が十二月の休日の明示をする。十二月のいついつを休みだということを十月二十五日に明示をする。十一月二十日までに十二月分の年休を希望する人については、年休をいつ希望するかということを申し出をさせる。一方では、十二月に休日ではあるけれども勤務をしたいというその希望もとる。年休をとりたいということ、それから休日であるけれども勤務したいという希望、この両方の希望を総合して十一月二十五日までに十二月の勤務の指定表を発表するそうであります。  そしてその勤務指定の表に基づいて十二月はやるということになるのだそうでありますけれども、実際にはそうはならないということなんですね。その十一月二十五日までに発表した具体的な個人ごとの勤務表が十二月になるとかなり変えられるという実態があるわけなんです。労働基準法の三十二条の二によりますと、前を省きますが、「特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。」のですけれども、その場合には労働協約その他の規定によってそのフレックスタイムの時期の前にそれを公表しなければならない、そしてその公表どおりにやらなければいけないという規定があります。  これは労働省の通達によってそういう規定があるわけでありますけれども、そういう点からいたしまして、残念ながら今JRでおやりになっている休日の付与、あるいは休日を含めた労働行政といいますか、これが労基法の精神に反しているという疑いがあるわけであります。この点について労働省ではどういうふうにお考えですか。
  25. 若林之矩

    ○若林政府委員 所管外で大変恐縮でございますけれども、先生御指摘の事実は変形労働時間制の問題ではなかろうかと思うのでございますが、具体的な問題でございますので、大変恐縮でございますが、担当の部署におきまして事実関係をよく調べて後ほど御報告したいと存じます。
  26. 新村勝雄

    新村委員 実際に行われているその内容を調査をされて報告をしてくださるということですか。――それではそれに期待をいたしますが、現在行われているJRのフレックスタイムの運用は、労基法の三十二条の二に、少なくともこの精神には沿っていない、反していると言わざるを得ないわけでありますから、その点について後刻詳しく御報告をいただきたいと思います。  JRからはおいでになっていらっしゃいますね。その点はいかがでしょう。
  27. 大塚陸毅

    大塚参考人 ただいま先生から御指摘の件でございますけれども、確かにことしの四月一日から新しい休日制度というのを導入しております。そもそもこの制度を導入したねらいといいますのは、社員に平等に確実にその休日が付与されるようにということと、そうすることによりまして社員の生活設計にも配慮いたしたいということをねらいとしてスタートした制度でございます。  ただ、私どもの方の業務の特殊性といたしまして、どうしても人が欠けたりいたしますと、通常のデスクワークと違いましてその人を補充しないと仕事が回らないというような性格を持った仕事でございます。したがいまして、例えば急遽臨時列車などを動かすとか、あるいはまた社員が病気等で欠勤をするとか、あるいは災害が生じるとか、そういう場合につきましては、どうしても代務の手配をせざるを得ないということになりまして、勤務が確定した後でもそういう状況が起こりますと、その代務手配のために休日の予定になっている者が出勤をして仕事をするという状況が出てくることが間々ございます。  しかしながら、この休日制度の精神からいいますと、できるだけ決められた休日を極力変更しないことが望ましいということは我々も十分認識をしておりますので、そういう形で努力をしてまいりたいというふうに思っておりますし、この制度自体がまだ導入されて間もないということもございまして、こういった制度が定着してまいりましたら本来のこの新しい休日制度の趣旨というものが十分生かされるのではないかなというふうに考えておる次第でございます。
  28. 新村勝雄

    新村委員 これは、昭和六十三年三月十四日基発第百五十号、これは労働省の通達ですね。これの問答の答えで「就業規則においてできる限り具体的に特定すべきものであるが、」これは変形時間の内容ですよ、「特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前」、ですから仮に十二月の一カ月が変形期間であるとすれば十二月前ですね、「変形期間の開始前までに具体的に特定すること」、これが必要だと言っています。  ですから、特定をするということは、十一月の末までに十二月の変形労働期間の中の各人の勤務状況、特に休日については十二月前、規定では十一月二十五日に締め切るということになっているそうでありますけれども、そこで確定をしたらそれを動かしてはいけないというのですよ。動かしてはいけないというのがこの労基法の精神なんですね。そういうふうに労働省でも指導なさっているわけです、そこで決めたら動かすなと。十一月の末に決めたら十二月いっぱいの休日あるいは勤務条件、特に休日は動かしてはいけないというふうに指導されているわけです。ところがJRさんはそういうふうになさっていないということでありますから、この点はいかがでしょうか。
  29. 大塚陸毅

    大塚参考人 変形労働時間制における勤務の取り扱いの問題かと思いますけれども、この変形労働時間制におきましても、一たん指定された勤務につきましてその後一切変更してはならないということでは必ずしもないというふうに私どもは理解しております。
  30. 新村勝雄

    新村委員 労働省はいかがですか、その点については。
  31. 若林之矩

    ○若林政府委員 大変恐縮でございますけれども、労働基準法の解釈の問題でございまして、私、所管外でございましてお答えをすることちょっと難しいことでございますので、これにつきましては後ほど責任の者を伺わせまして十分御説明させたいと存じます。お許しいただきたいと思います。
  32. 新村勝雄

    新村委員 大臣、今の件は労基法の非常に重要な部分なんですよ。ですから、今お答えをいただけないとすれば、十分研究をされて、政府の正式の見解を、後で結構ですからお伺いしたいと思います。
  33. 塚原俊平

    塚原国務大臣 ともかく事実関係のものもございますし、一番最初に出ておりますルール自体はさほど問題があるようにも思えませんので、あとの、十二月になってどのような体制でどういうふうな変更があるかという事実関係のこともございますので、そのことも調べましてあわせて労働基準局の方から先生の方にまず御説明に行かさせていただきたいと思います。
  34. 新村勝雄

    新村委員 その点は回答をお待ちをいたします。  それからもう一つ、やはりこれはJRの問題なんですが、電車の運転士や車掌の仕業、それから行路。運転士は仕業というそうですね。それから車掌は行路というのだそうですが、勤務の、何時から何時までどこへ行ってどうするというようなことですね。この勤務のダイヤの組み方が、初めから超過勤務を予定して組んでいるという問題があるわけです。御承知のように、乗務の方々は非常に神経も使うし、精神、肉体ともに大きな職務上の影響を受けるわけです。ですから、乗務については週四十時間となっているそうであります。ところが、実際には四十時間はほとんど守られていない。  仕業、行路、あらかじめ運転士さん、車掌さんの勤務の計画をつくるわけです。その計画そのものが四十時間の計画ではなくて四十五時間あるいは四十六時間勤務する計画になっているようであります。そうしますと、就業規則では四十時間ということになっていても、最初から就業時間は守られていない、計画の段階から守られていないということのようであります。これでは安全性の上からいっても非常に問題であるし、もちろん労働者の方々にとっては労働強化、特に乗務の方々の労働強化というのは非常に問題だと思うのですね。もちろん、労働者の皆さん方の心身に悪い影響を与えるということがあります。その次には安全性の問題があります。こういったようなことで最初から就業規則あるいは労基法に違反をして仕業、行路の計画がつくられるということが大きな問題だと指摘をされているわけであります。  そもそも労基法では、超過勤務は臨時業務の必要から労使協定によって、しかも当事者の同意がなければ超過勤務はできない、こういうことになっているはずでありますが、残念ながら現在JRさんではこれが厳格に守られていないという問題が指摘をされております。勝手に超過勤務を命ずることは罰則の対象である、処罰の対象であるということです。あらかじめ恒常的な勤務ダイヤに超過勤務が組み込まれていること自体が大きな問題である、これがまた長時間労働を強制する、そしてまた他の産業あるいは公務員等の時間短縮にも大きな障害になるではないか、こういうことが言われておるわけでありますので、ぜひひとつ大臣にはこの点について十分認識を新たにしていただきたい。また、JRさんにも指導していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  35. 塚原俊平

    塚原国務大臣 JRは、今労使挙げてその持っているあらゆる人員、組織を使って社会に大きな貢献をするんだといって非常に張り切っているというふうに伺っております。そういう状況の中でございますので、恐らく罰則の対象になるような事例は余り考えられないというふうに思っていたわけでございますが、ただいま先生から御指摘がございましたので、事実関係についても調べさせていただきまして、またその点につきましても御報告をさせていただきたいというふうに考えております。
  36. 新村勝雄

    新村委員 JRの経営当局の御努力については評価をしますし、実績を上げておられるという点についても伺っておりますけれども、同時にまた、経営を改善することはもちろん必要でありますけれども、その反面、労働者の権利が侵されてはならないわけであります。それからまた、今、日本のあるいは世界の労働問題の大きな流れに反するような労務管理ではいけないわけでありますから、労働者の権利を守り、そして時代の要請に沿う労務管理を行いながら、同時に経営の改善に努力をしていただくというのが一番いいわけであります。そういう点でひとつ御努力をいただきたいわけであります。  そしてなお、これはJRの経営者の皆さんには大変耳の痛い、申しわけないことかもしれませんけれども、現在のJRの労使関係が必ずしもよくいっていないということが言われておるわけであります。先ほど、JRの長時間労働の実態について取り上げました。しかも、これが重大な事故の原因にもなっているということを指摘したわけであります。  そして最近、労働組合がJR職員のアンケートをとったそうであります。このアンケートは、組合の所属のいかんを問わず、また現場の管理者も含めたアンケートでありますが、そのアンケートによりますと、過度な要員の削減やその結果の労働の強化、それからまた、先ほどの休日出勤制度などによって慢性的な疲労、そして過労の状態になっているという人たちが九割もいるということが言われているわけであります。  このアンケートについては、これはそういう面からの観察でありますから、それを御承知いただきたいわけでありますが、これはJRの職場の、組合ではありません、組合の次元からではなくて、組合員も含めた、管理者をも含めたアンケートでありますけれども、職場の要員の配置が適当であるか適当でないかという問いに対する答えとして、「適当」であるという回答が一四・七、「不適当」である、要するに要員が不足だというのが八五・三、こういう結果が出ているわけです。  それから労務管理については、これまた特定組合ではありません、組合員及び管理者をも含めた全体のアンケートでありますが、現在の労使の関係が正常と思うかあるいは不正常と思うかということに対して、「正常と思う」という人たちが六・二、「不正常と思う」という人たちが九三・八あるのですね。これは非常に問題だと思うのですよ。  ですから、会社の業績を上げて安全性を向上させて黒字も生み出していく、こういう努力はもちろん必要でありますけれども、同時にまた、こういう労使の関係が不正常だと思っている人たちが九三・八%いるということは、これはどう考えても問題なわけですよ。ですから、やはり会社の御努力によってこの問題を解消していただかなければ、本当に正しいというか、JRが将来健全に発展していく上において大きな禍根を、問題を内蔵しているのではないかということになります。  それから、労働強化ということについてですが、これもやはり全体の職員についてアンケートをとったそうであります。その中で、睡眠時間について、十分眠っているかという問いと、それから、睡眠不足であるという問いとどちらかという問いに対して、睡眠不足だという方々が七一・九、十分睡眠をとっている、十分だという人が二八・一ということですね。これもやはり問題なわけでありまして、労務管理の一つの心配な側面をあらわしていると言わざるを得ないわけですね。  これは幾つかのアンケートの結果でありますから、これをもって全体を判断することについては不十分な点はあるかもしれませんけれども、少なくともそういう問題が指摘をされるということは、これは争えない事実だと思います。こういう状態について、大臣はどうお考えですか。
  37. 塚原俊平

    塚原国務大臣 アンケートの設問がどういうふうになっているかとか、どういうような形でとられたかとか、いろいろな詳しいことがわかりませんので、なかなか御答弁しにくい部分が多いのですが、いずれにいたしましても、統計的に見て七割を超えるというのはほとんど全部というような感じになりますものですから、全く、俗に言う正常な形でアンケートをとった形でそういう結論が出ているということになりますと、これは大変な数字だなというような感じがいたしました。  ただ、冒頭申しましたように、どのような対象で、どのような範囲で、どのような設問でというのがちょっとわかりませんものですから、ここでではどう答弁をするかということになるとコメントを差し控えさせていただきたいというような答弁になってしまうと思いますけれども、ただ、数字はすごい数字だというふうに感じました。
  38. 新村勝雄

    新村委員 このアンケートによってどう判断するかということを、今すぐその御回答を求めるつもりはありませんけれども、こういう調査もあるということはひとつお気にとめておいていただいて、そういう点についても、今後機会をとらえて調査をされるなり情報等も集めていただいて、その実態をぜひ把握をしていただきたいと思います。  そうして、特に運転士や車掌など旅客の人命を預かる人々の状態の悪化は、これは無視できません。転換教育、安全教育がないがしろにされたり、極度の緊張を長時間強いられたり,労働環境が悪くなっていることの原因に、これは先ほど申し上げたように労使関係の正常でないという面があるということですね。  既に御承知のように、地労委に提訴をされた件数が全国では二百件を超えている、そして、そのほとんど全部、全部と言ってもいい、ほとんど全部に地労委から命令が出されております。ところがJRさんは、すぐにその地労委の命令に服さないという面がありますね。中労委に上げてくる。中労委でもなかなか決定ができないというようなことがあるわけでありますが、地労委の命令を忠実に履行していないという問題がこれはあるわけです。それについては、やはり団体交渉の機能が正常に働いていない、そのことが労働条件を悪くし、労働環境を悪くしていると思います。  それから運転事故、これは最も重要な問題ですけれども、運転事故が、もちろんこれは旅客の人命にもかかわる、人命を失った事故もたくさん出ておるわけでありまして、車両や施設の保守をしている労働者の生命にもまた大きな影響があるということであります。  この一つの数字があるのですけれども、全国の業務上の死傷者の千人率、職員千人について何人の事故の死傷かという統計ですね。この統計によりますと、昭和五十九年が一・四三、六十三年が三・一三、元年が三・〇六というふうに、趨勢として事故がふえている、死亡事故、死傷の事故がふえているという統計があるわけであります。  それから、これはJR各社の傷害事故の発生状況ですが、六十三年と元年とを比較してみますと、北海道の場合には二・二四が三・〇五、東日本が三・六一に対して三・三三、これは若干減っていますが、東海が一・八二が二・三八、四国が三・三八が三・四一というふうに事故がふえている会社が多いわけです。こういう点からしても、労働条件、それから労使の関係の正常化、これは喫緊の課題ではないかと思います。  それから、最近JR東日本が鉄道の安全に関する国際会議を予定しているようですが、この会議には経営側だけではなく労働組合にも参加を呼びかけているようですが、肝心のJR東日本内では、これは余り労働問題の中に深く立ち入るつもりはありませんけれども、複数の組合があるにもかかわらず、特定の組合とだけ共催をして、他の組合を排除して参加を呼びかけないという事態があるというわけでありますけれども、こういう事態は、これは好ましくないと思いますが、その点が、そういうことがあるのかどうか。安全問題にも労使の関係は当然反映をいたしてまいりますし、労使の健全な関係がなければ安全問題についても成果が上がらないわけでありますから、こういう点についてはどうなのかということですね。それから、この会議は今どういうことになっているのか。今これは計画中ですか、それともどうなっているのかということですね。  それから最後に、今までいろいろ申し上げましたけれども、残念ながら、現在のJRの各社の状況は労使の関係がうまくいっていないということがあります。これが基本だと思うのです。ですから、労使の関係を正常化をして、それで、現在地労委から中労委に上がっている、中労委で問題になっている事件についての早期解決、これが喫緊の課題である。それからさらに、先ほど指摘を申し上げた労働条件、休日の問題を初めとして労働条件の改善改善すべき点は改善してもらいたいということ。これらの問題があるわけでありますけれども、これらの問題についての大臣のお考えを伺いたいと思います。  その前に、憲法にも、個人に対してあるいは組合に対して、団体に対して、思想、信条によって区別してはいけないという原則がありますので、組合差別というようなことがもしあるとすれば、これは大変遺憾なことでありますので、組合差別及び職員に対する思想、信条の差別、この人はこっちの組合に入っているからだめなんだ、この人はこっちの組合に入っているからいいんだ、あるいはこっちだからだめなんだ、そういう差別がされているという指摘もあるわけであります。そういうことが言われていること自体が問題であるわけでありますから、そういうことのないように、JRにおかれましても、あるいは大臣からもひとつその点は厳しく御指導いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  39. 大塚陸毅

    大塚参考人 ただいま先生御指摘のございましたように、いやしくも、思想、信条あるいは所属組合の別によって差別をするということは私ども厳に戒めておりますし、これまでもそういうことを絶対してはならぬということでやってまいったつもりでございます。今後ともそうした考え方には変わりございません。
  40. 塚原俊平

    塚原国務大臣 きょう、いろいろな点を先生から御指摘をいただきました。いずれも極めて重要な問題だというふうに理解をいたしましたので、事実関係を即刻調査をさせていただきまして、もしそこに是正すべき点があるならば是正をさせようというふうに思います。
  41. 新村勝雄

    新村委員 どうぞよろしく御指導のほどをお願いをいたしたいと思います。  JRの皆さん方には、以上で終わりますので、御退席になって結構であります。  次は厚生省関係でお伺いをいたしますが、まず初めに、廃棄物の問題でお伺いをいたしたいと思います。  廃棄物については、現在の法律によりまして、直接の責任は自治体にあるわけでありますが、自治体において処理をしてまいりまして、ごみの増加、このごみの増加がもうまさに著しいものがあるわけでありますが、ごみの増加に伴って処理施設も、特に焼却場を増設をしてきた。ごみの増加と焼却場の新設をお互いにイタチごっこのようにやってまいりましたが、今や、このごみ処理に対する基本的な、根本的な考え方を変えていかなければならない時期になっているのではないかと思うのですが、ごみ処理の現状及び将来について、基本的にどういう方針なり認識をお持ちでございましょうか。
  42. 津島雄二

    津島国務大臣 ごみが非常にふえた、それからまた広域に移動をする、こういうことの中で、廃棄物の処理問題が社会的に大きな問題になっておることは御指摘のとおりでございます。  この問題に対処するに当たりまして、従来の延長線上では処理できないであろうという基本的な認識を持ちまして、私も本院の予算委員会等で御答弁をいたしておりますけれども、廃棄物の減量化、資源化、再生利用対策などを中心といたしまして、法律改正を含めて抜本的な対策強化を図りたい、かように考えておるところでございます。  対策強化の中で、従来とかく産業廃棄物につきましては、PPPの原則、つまり排出者責任の原則ということの中で足りるとされておりますけれども、現実にこの問題の処理については、公共の関与が必要である、その声も高い。それからまた、排出者に対して適正にコストを持たせるということについても対策強化が必要である、こういうような認識を持っておるわけでございまして、こういうそれぞれの点につきまして生活環境審議会から答申を受けましたので、法律改正を含め、対策の総合的な推進を図りたいというのが私どもの考え方でございます。
  43. 新村勝雄

    新村委員 ごみ処理、ごみに対する対処の仕方において一つの転換期であるという大臣の御認識はそのとおりであると思います。  その点でありますが、どういう点にどういう問題があるのかということについては既に議論はされていると思いますけれども一口に言うならば、ごみの減量ですね、減量をどうするかという問題が一つあると思います。  それから同時に、自然の中で、環境の中でサイクルしていくといいますか、例えばその自然の状況であれば、生命が生まれ、それが活動してそれが死んでいく、そしてそれは自然に返っていくというこのサイクル、植物、動物のサイクルというのがあるわけですが、人間がつくり出した物質はこのサイクルが中断されるわけなんですね、これは申し上げるまでもないわけですけれども。このサイクルを中断するような物質についての厳しい製造制限なりあるいは管理なりが必要ではないかと思うのです。  これは環境の中に排出をされて、それで自然の摂理によって自然に帰っていくという、そういうものはむしろ製造物の中には少ないのであって、いずれも、プラスチックにしても薬品類にしてもそれが用済み廃棄になってもそのまま環境に残っているということが問題なわけでありましょうから、そういう自然のサイクルを中断するような物質については極力減量していく、あるいは製造禁止にしていくということを、国民生活の中でそういう問題を解決していくということが必要であろうかと思うのですね。  後でお願いしますけれども、例えばゴルフ場の農薬あるいは農林漁業、各産業に使われている薬剤の問題、それからまた生活に必要な、これはまさに万般の製品があるわけですけれども、そういったものはいずれもこのサイクルには乗らない、焼却をしなければいけない、焼却をすればガスが出る、また中には処理のしようがないというようなものもあるわけですけれども、そういう人工的な自然のサイクルに乗らない品物をどう統制していくのか、その製造禁止をしていくのか、そういう面からのアプローチはどうされますか。
  44. 津島雄二

    津島国務大臣 ただいま委員が仰せられた自然のサイクルの中で人間が人工的につくり出した製品がうまく乗らなくなる、そういうことに対する危機感が持たれなければならないというお考えはそのとおりだと思います。そして、今回生活環境審議会からいただいた答申もそういう深く広い立場に立った我々の社会生活の価値観とか使い捨て文化とかそういうものに対する見直しと申しますか、警鐘を乱打しているというふうに私は受けとめておるところでございます。  さて、具体的にどういうことをするかということはまことに多岐にわたっておりますが、ただいま委員が御指摘のリサイクルに乗るものはリサイクルに乗せる、それから減量化できるものは減量化していく、しかし、それに乗らないものについてはそれをどうやって適正に社会的に始末をしていくかということについて格段の工夫が要るであろうという点はそのとおりでございまして、例えば例を申しますと、非常に大型の廃棄物、電気冷蔵庫みたいなものにつきましてはやはり特定な品目として掲名をいたしまして、それにふさわしい処理の方法を考えるというようなことを含めて今審議会の答申をどのように具体化するか検討しておるのが現状でございます。
  45. 新村勝雄

    新村委員 それから、もう一つの側面は、製造業者に責任を持ってもらうという面があると思うのですね。高度成長以来物すごい経済の発展と同時に、経済発展ということと正比例をしてもちろんこれは言うまでもなく物の生産が行われているわけでありますけれども、生産されたものは必ず廃品になるわけでありますから、その廃品を末端の個人あるいは末端の行政だけが責任を持っていいのかどうかという問題がありまして、この問題が今新しい問題として提起をされていると思います。  しかも、大型のいわゆる粗大ごみと言われるものは、冷蔵庫にしてもあるいは洗濯機にしても、簡単に処理のできない問題であります。こういうものを最終の個人あるいは最終の自治体、行政の責任だけではどうにもならない段階に来ていると思います。そういったものを還流をさせる、新しいものがメーカーから問屋、消費者というふうな流れでおりてきますけれども、今度は古いものはその逆に還流をさしていくというような、そういう方法ができないかどうかですね。
  46. 津島雄二

    津島国務大臣 御指摘のとおり、この問題の解決に当たりましては、事業者、それから地域や家庭、行政、それぞれが的確にその役割を果たしていかなければならないわけでございますが、例えば市町村等につきましては減量化とか分別収集とか、この問題の処理について従来以上に計画的に対処していただくというようなことも考えておるわけでありますが、特に製造者に対しましては、委員御指摘のとおり、製品等の再生利用可能性等を十分事前に評価をしていただき、そして製品等への適正な廃棄方法を表示するというようなことも含めて今検討しておるところでございます。
  47. 新村勝雄

    新村委員 さらにまた焼却あるいは埋め立ての処分でありますけれども、これはまあそれを処分する施設はもちろん必要でありますが、これに対する住民の反応、それから同時に、ごみ行政に対する住民の反応も最近は大分変わってきたわけであります。  従来は、例えばこの土地に焼却場をつくりたいという計画が出た場合に、これはまあ何でもかんでも絶対反対だということで反対運動が燃え上がるという形での住民運動であったわけでありますけれども、現在の住民運動は、そういう点はもちろんあるし、住民エゴというものもないとはいえませんけれども、そうではなくて、当局に対してごみ行政の反省を促す、そういうことを正面に立てて反対をしていらっしゃる方々が大分おるわけであります。  千葉県にもそういう運動が実はありまして、かなりの程度の成果を上げたというふうに私は考えております。というのは、ごみがふえればふえたなりに、ふやしっぱなしということは言えませんけれども、ふえたことに対応して焼却場をつくっていけばいいんだ、こういう行き方はむしろ安易な行き方だと思うのです。そうじゃなくて、いかにしてそのごみの増加を抑えていくかということ、その増加を抑えることについてはやはり住民の協力がなければできませんので、そういう意味で住民の協力を求めていくという努力が、今までのごみの問題状況からすればやむを得なかったと思いますけれども、そういう点で行政側も責任があるんではないか。  例えば千葉県内のある市では、住民が焼却場の反対運動を猛烈にやったわけですが、その反対運動の趣旨というのは、市の計画はごみ減量という視点が全く抜けている、あと何年たてば、年に例えば三%なら三%毎年上がっていくから、それに応じた焼却場をつくるんだ、そういう単純な計画のようだけれども、それでは環境問題の観点からしても非常に問題である。また、財政的にも問題である。だからこの際、焼却場の建設はしばらく延期をしても、ごみ行政の合理化を当局に迫ろうではないかというような運動が起こりまして、この住民運動に対して市当局もかなりそのごみ収集計画あるいは将来計画等を修正をしたようであります。また、しつつあるようであります。  そういうことで、住民のエネルギーをそういう面でうまく利用していくといいますか、活用していくということが必要ではないかと思うのです。そういう意味での、厚生省として自治体に対する指導を、焼却場をつくればいいんだということではなくて、いかにごみ減量に知恵を絞るかということが必要だと思うのですけれども、そういう点でのひとつ御指導をいただきたい。  それからまた、既にどのくらいやっていらっしゃるかわかりませんけれども、ごみの問題については、社会科等で学校教育を通じて子供のうちから頭の中にたたき込んでおくという必要があるんじゃないかと思います。ごみ問題の解決は一人一人の市民の自覚なしにはこれは完全に解決できません。  これは最近聞いたのですけれども、ごみの収集について厳しくしたところが不法投棄がふえた。極めて問題の不法投棄があるのでありまして、私の方は農村でありますけれども、あいている畑、畑は作物が伸びている時期以外は大体あいているわけです。そこを夜中にやってきまして、畑の中に機械で穴を掘ってそこへ埋めて、平然としてそこをならしてどこかへ行ってしまう、こういう極めて悪質な不法投棄もふえているということなんです。これをやられたのではどうしようもないわけです。夜番をしているわけにはまいりませんから、夜、畑に穴を掘って捨ててならして行ってしまっているのですから、こういうことが既に起こりつつあるわけですね。  こういった問題については、一人一人の市民の自覚と、それから社会教育あるいは学校教育等も通じた国民全体のあらゆる面からの力を総合してごみ問題を解決していかなければなかなか難しいと思いますが、そういう観点からの厚生省あるいは政府としてのお考えはいかがでしょうか。
  48. 津島雄二

    津島国務大臣 新村委員の地方行政に長く携わってこられた御経験から来る大変具体的な御指摘でございまして、私も今承っておりまして、その御指摘の点、皆理解できるな、こういうふうに承っておるところでございます。  私も東京都を中心といたしまして、最終処理場を見に行ったのでありますけれども、例えば今委員が御指摘のように、一般消費者、広く言えば国民全体の御理解が必要だというのは全くそのとおりだと感じましたのは、東京の処理場に入ってまいりますごみの過半数が包み紙だというのですね。ですから、流通段階でむだな包装をやっているということがどんなに処理場の能力をむだに使っているかということを感じておるわけでございまして、このこと一つとりましても、まあ製造から流通、そして消費者に至る国民全体がむだな包装をやめようという気持ちになっていただくだけでも随分変わってくると思います。そういうことを含めて、私どもは今度の法律改正の機会に当たりまして、国民全体の御理解を得たいというふうに思っておるところでございます。  なお、処理場等を設置していきます場合に、どうしても地域の住民の御理解が必要だ、その御理解を得るためにいろいろな工夫が地方団体の創意で行われていることを私は喜ばしく思っておりますが、例えばある地方団体におきましては、ごみの分別収集等のためにボランティア活動を積極的にやっておられまして、それが地域ぐるみでより効率的な処理につながっていくような、よりいいシステムをつくるような方向に向かっているということを知りまして、これもやはりできるだけ全国でやれるところではやっていただきたいなと思っております。  そしてまた、その焼却場を設置いたしますときに、とかくやはり反対運動があるということにかんがみまして、例えば焼却場で出てまいりますエネルギーを発電に使いまして、その電気を使って周辺に地域住民が非常に喜ばれる施設、体育施設であるとか温水プールであるとか、これをおつくりになっている自治体もある、こういう工夫をしていただく。これを国の立場からも大いに守り立てていきたいというふうに考えております。  一言、最後に付言をいたしますけれども、一般廃棄物の処理については、長い間市町村が自分の地域で処理をするという原則で大変苦労してやってきていただいておりますけれども、首都圏のそれぞれの地域社会の現状を見ますと、その地域地域で処理をするには大変無理なケースも出てきているように思われます。それが広域移動という形になってきてほかの地域にまた迷惑を及ぼすということもあるわけでございますから、そういう点には、やはり国が地方団体と協力をしてお手伝いをする必要があるのではないだろうか、こういう点も一つ付言をさせていただきたいと思います。
  49. 新村勝雄

    新村委員 今大臣おっしゃったことに関連をして、今ごみが地域的に移動している。その地域だけではもう解決がつかなくて、ほかへ持っていこうとしているわけですね。それがさらに進んで、国際的にも移動をしているというようなことが言われておりますが、国際的な移動を許すというのはこれは論外だと思いまして、これを許すようでは日本の国際的信用はゼロになりますから、これは絶対に排除をしていただきたいということと、それから地域的な問題については、やはり住民意識の向上を図るためにも、その地域のごみは地域で解決をするという原則はやはり必要ではないかと思うのです。  これは千葉県だから言うわけではありませんけれども、千葉県は東京の物すごいごみを引き受けまして大変な苦労をしておるわけであります。ですから、ごみは、例えば農村地帯へ持っていって、へんぴなところへ持っていって捨てればいいというような、そういう安易な発想ではごみの問題は解決しないと思います。場合によっては国の指導のもとに、一定の条件のもとにやるということが絶対に排除はできないにしても、自分たちのごみは自分たちの地域で解決をするという基本はやはり持っていただかなければいけないと思いますね。  それから、これはうわさでありますけれども、国際間に既にごみの移動が始まっているというようなことがありますけれども、そういう点についての把握はなさっておられますか。
  50. 津島雄二

    津島国務大臣 委員が御指摘の二つの点でございますが、第一の国際的な廃棄物の越境移動の問題がございます。特に有害廃棄物などが移動いたしますときに大変な国際問題を起こす危険性をはらんでおるわけでございます。そのような見地に立ちまして、今回の生活環境審議会答申におきましても、そのような廃棄物の輸出入についても規制を法制化によって図っていかなければならないということが述べられておりまして、私どもも今取り組んでいる課題の一つというふうに考えております。  もう一つの点でございますけれども、委員御指摘のとおり、やはり一般廃棄物はその排出した地域、市町村で処理をするという原則は貫くべきだと思っております。ただ、私が先ほどあのように申し上げましたのは、一般廃棄物にとどまらず産業廃棄物等が非常に量がふえてまいりまして、それが、千葉県の場合はもう御自分のところでいっぱいでございますから、それこそよそから受け入れる余地なんかこれはないわけでございますけれども、逆に千葉県も含めて、私の地元の青森県にまで持っておいでになったというケースも委員は御存じだと思います。そういうことがございますので、やはりこれは国を初めとして、公共団体と協力をしながらその辺の適正化を図っていかなければならないということもつけ加えさせていただきました。
  51. 新村勝雄

    新村委員 大臣の一層の御努力をお願いしたいと思います。  次は別の問題でありまして、これは今まだ結論が出ていない問題で検討中のことだと思いますけれども、実は脳死という問題がありますね。人間の死の判定をどうするかという問題ですね。死については今まで別に法律で規定はないと思います。人間の死はこういうものだという規定は法的にはないと思いますが、いわゆる三徴候というのですか、自発呼吸の停止、心臓停止、それから瞳孔散大、この三徴候によって医者が決めていたということでありますけれども、たまたま臓器移植という問題が起こりまして、これが非常に発達をしてきたということと関連をして、この脳死を人間の死と認めるべきであるという議論が今起こっておるわけです。  認めるべきであるのかないのかということでありますが、この問題については厚生省審議会がありまして今検討していると思いますが、その検討の経過はどうなっているのでしょうか。
  52. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  臨時脳死及び臓器移植調査会の活動状況のお尋ねでございますけれども、本年の三月二十八日に第一回の調査会を開催いたしまして、それ以来今日までに九回の調査会を開催いたしまして、専門家を招聘してのヒアリングのほか意見交換、討議というのを行っているところでございます。また、脳死症例の多い国内三カ所の救命救急医療施設の視察、それからアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、タイにおきます脳死及び臓器移植問題の状況につきましての現地調査というのを行っているところでございます。さらに、一千人の有識者を対象といたしました意識調査も実施いたしたところでございます。それから、国民各階各層からの意見を聴取することを目的としまして第一回の公聴会も名古屋市におきまして開催いたしたところでございます。それから「審議だより」というのを作成いたしまして公共図書館等に配付することによりまして、調査会の調査審議状況につきまして国民に知っていただくよう努力いたしておるところでございます。
  53. 新村勝雄

    新村委員 これは結論をどうこうということをお願いしているわけじゃありませんが、今、日本には臓器移植を待っている人たち、臓器移植をすれば命が助かるあるいは相当に延命をすることができるという人たちがたくさんおります。さらにまた、私は素人でありますけれども、腎臓移植等についても、死体腎でも成功はするけれども、脳死患者あるいは生体からの移植の方がはるかにけた違いに成績がいいという事実があるわけです。そういった上に、日本の国内では臓器移植を希望している人たちが数千あるいは数万の単位でおられるわけです。  それからまた、日本の医療技術は世界の第一級でありますから、もちろん臓器移植なんかを十分できる技術がある、またそれを望んでいる人たちもたくさんいるということでありますけれども、一方、脳死が死として認定をされていない、認められていない、社会的なコンセンサスがないということで、依然として臓器移植ができない。生体移植あるいは死体移植はやっているようでありますけれども、それ以外はできない、心臓等については全くできないということですが、そのためにどうしても受けなければ命がもたないという人たちは外国へ行って移植を受けているわけです。  こういう状況は長く続けるわけにいきませんし、国内でできない、できないのじゃなくてやらないわけですけれども、国内ではやらないけれども、あなたの方ではやってくださいということで外国へ行ってやってもらうということは、これはある意味では日本の国の威信にもかかわる問題でしょうね。そういう状態の中で、もう脳死についての決断を下すべき時期が来ているんではないかと思います。こういう点について大臣はどういうお考えですか。大臣がどうこうするには、今はこうせいというそういう時期ではないと思いますけれども。
  54. 津島雄二

    津島国務大臣 大変難しい問題でございまして、脳死が人の死であるかどうかということを専門家に今御検討をいただいている事情は政府委員から御答弁したとおりでございますが、とにかく国民がわかりやすい形でこれからの考え方と申しますか、議論の方向をお示しになっていただくのが適当でないだろうかという感じを私は持っておるわけでございます。  それで、今後調査会で主要論点について集中的な審議をいただく段階にまいりますので、当面月二回程度の頻度で調査会をやっていただきまして、これらの審議を踏まえて必要によっては中間的な取りまとめをしていただくことも考えていただきたいな、こういうふうに申しておるところでございます。
  55. 新村勝雄

    新村委員 この問題については、これは極めて難しい問題で、国民にしてもあるいは調査会のメンバーの先生方にしても全員一致というわけにはいかないと思うのですよね。この間のテレビの討論会でも聞きましたけれども、賛成の人たちは医学的な立場に立って、合理的な理論的な立場で医学的な立場から脳死というのはもう絶対に生き返らない状態なんだ、そういう医学的な立場から賛成をしておられる。言うと失礼ですけれども、反対の方々はどちらかというと感情的あるいは感性、あるいは哲学と言うとおかしいが、思想的に人間に差別をつけるものであるとかなんとかというような、そういうどちらかというと非合理的な立場から反対論が出る、こういう傾向があると思うのですよ。  人体については、人によってはあるいは宗教によっては人体にはどんな場合でも傷をつけてはいけないという信念、そういう思想を持っている人たちあるいはそういうグループもいるわけですから、そういうグループは極端な場合には開腹手術もだめなんだ、もちろん輸血なんかはもってのほかだという、そういう思想のグループもいるわけですね。そういうことを信じている宗教の一派もいるというふうに聞いておりますが、そうなってきますと、人の臓器を受け入れる、個人間で臓器のやりとりをするというようなことは論外だ、そういう思想的なといいますか、考えの上でもう最初から受けつけないという立場の反対論がむしろ多いのではないか。  しかし一方、考えてみますと、これは決してほかの人に臓器をくれよということを強制するわけでもなければ、また臓器を受け入れることを強制するわけでもなくて、これはあくまで受ける人もくれる人も自由意思でありますから、与える方もできれば生前の意思が必要でありましょうけれども、その家族の完全な理解がもちろん必要なわけであります。場合によっては生前の意思があればなおいいということでありますけれども、いずれにしても、くれる方もその人の自主的な判断あるいは家族の自主的な判断によって決める。受ける方はもちろん受ける方の希望でやるわけでありますから、決して何人をも強制するものではないということなんですね。  しかし、一部の人たちの反対というのは、そういうことは倫理的にあるいは神の摂理に反するから、人間のあり方に反するから反対なんだという、どちらかというと観念的な思想の立場からの反対があるわけです。こういう反対については、これは説得はできませんよ、これはもう思想的にだめなんですから。そういう人たちについては説得はできませんけれども、少なくともそういう人たちに被害を与えるものでもなければ第三者に被害を与えるものでもないわけでありまして、臓器をいただいて延命を図りたいという切なる患者の希望と、それからまた医者の良心的な立場に立ったところの移植の技術、そういったものが相まって一つの成果を生むわけですから、だれにも迷惑を与えることがないわけです。  そういう点からすると、一定の段階で、十分国民の皆さん方の論議を踏まえた上で、あるいはまた調査会の先生方の十分の議論をいただいた上で、これは満場一致はできないわけですから、最後は行政、政府、やはりそういうことになると思うのです。調査会でこれはいいという結論が出れば結構ですけれども、なかなかそれが出ないということであれば、政府の決断で、人命を助けるんだという至上命令があります。  それからまた、さっきも申し上げたように、国内ではできないので外国でやってもらうという、国辱的と言うと言葉が過ぎますけれども、国の良識が問われるような事態は長くは続けることができないと思います。一年に今どのくらい行っているのでしょうか。数人あるいは十人を超えているのじゃないでしょうか、外国へ行って臓器移植を受けている人が。こういうことはとても長くは続けることができないと思います。最後はやはり政府の決断、あるいは神の声があればいいのですけれども、神の声はなかなか聞こえないということであれば、最高権威者のお声がかりか何か、まあそれもなかなか難しいということであれば、政府の決断以外にはないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  56. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、現在、調査会におきまして鋭意審議を続けているところでございます。先生から御指摘ございましたように、各界各層それぞれの意見がいろいろございまして、そういうものにつきまして調査会でヒアリングをし、これから調査会の先生方の中でいろいろなディスカッションをやっていこうという段階にございます。今月十二月の六日、七日と一泊二日、先生方に御殿場の方に行っていただきまして、いわば集中審議的なこともやって議論を鋭意詰めている段階でございます。  なお、来年以降は、非常に忙しい先生方でございますけれども、月二回お集まりいただきまして問題点につきまして集中的に議論し、できるだけ早く、場合によりますれば中間報告ということも考えまして議論を詰めていただきまして、大方の合意を得たところの御答申をいただきたい、それを踏まえまして私ども政府といたしましても対処してまいりたいというように思っております。
  57. 新村勝雄

    新村委員 ぜひなるべく早く、国民の中に数千単位あるいは万になるかもしれませんが、臓器移植を待っている、切にそれを希望している患者が現にいるわけでありますから、これらの人たちの希望に沿っていただきたいと思います。  要するに、脳死の状況をどう正確に判断をするかという問題に尽きるのだと思うのですね。その問題については、厚生省で既に脳死の基準は決めていますよね。決めていますから、あの基準をさらに厳しくするなりなんなりして、間違って生きている人をやってしまったというようなことが絶対に、万に一つも億に一つもなければいいわけですから、その点についての十分な配慮をされながら、ひとつ一日も早く患者の切なる希望に沿うことができるような御決断をいただきたいと思います。  次は、やはり同じような環境問題ですが、今、農業、林業、漁業、各産業の中で薬物、薬剤の使用が膨大なものであります。これについては、生産性を向上させるという至上命令に近いものがありますから、ある程度は危険を冒しても――危険を冒してはいけないのですけれども、やらざるを得ないという一方の要請があると思います。今農業から農薬を全部排してしまったらかなりな打撃になることは事実でありますから、それはあると思うのですが、ここで今お願いしたいのは、ゴルフ場なんです。  ゴルフ場の農薬について、今各地で非常な住民の抵抗を見ているわけです。地下水の汚染あるいは表流水の汚染もあります。こういうゴルフ場の農薬について、実は千葉県は恐らく全国でもゴルフ場が一番多い県ではないかと思いますけれども、千葉県知事が大変決断をされて、千葉県においてはこれから新しくつくるゴルフ場については農薬の使用は一切だめだ、それから現在経営をしているゴルフ場についても極力農薬の使用は控えるようにという県の指導要綱を最近出しております。  これは今非常に評価をされているわけでありますが、「本県内で計画されるゴルフ場は、農薬を使用しないゴルフ場とすることを基本方針とし、別添のとおり、」云々という要綱をつくっているわけであります。ですから、これから千葉県にできるゴルフ場については農薬は一切使わないということになると思います。こういう契約のもとに許可をするわけですから、これは法律と同じだけの強制力があると思うのです。これを使えば契約違反ですから。それを考えた場合に、これは極めて適切な指導方針であると思います。  これを考えた場合に、政府におかれても、ぜひ千葉県以上にひとつ厳しい指導要綱を、できれば法律がいいのですけれども、法律をつくって、ゴルフ場については農薬の使用は一切まかりならぬという方針を出していただくわけにはまいりませんか。
  58. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 ゴルフ場の農薬使用に伴いまして、水道水の汚染が懸念をされていましたため、本年五月に、主要農薬二十一種類につきまして水道水の暫定的水質目標値を設定するとともに、それらの農薬についてのモニタリングの実施等を都道府県に通知をしたところでございます。  水道水に関しましては、水質基準のこれからのあり方につきまして現在審議会で検討をしていただいておりますので、それを受けまして微量化学物質に対して適切な水質管理を進めていく所存でございます。
  59. 新村勝雄

    新村委員 ゴルフ場については、環境庁あるいは厚生省でもやっておられると思いますが、農薬の限定あるいは使用量の規制まではいかないのですよね。規制ではなくて指導ということでしょう。  しかし、ゴルフ場で農薬を使うことは一口に言ってぜいたくです。使わなくても済むわけですから。しかも、私のうちはゴルフ場のすぐそばにあるのですが、まずグリーンの芝が虫にやられるということなんですけれども、幾らかはやられるかもしれないけれどもプレーに支障があるほどはやられない。自然に任せていても、時々少しぐらい芝が枯れることがありますけれども、雑草を抜けばいいのですからプレーに支障はない。グリーンにしても、フェアウエーにしても、ラフにしても、一本の枯れ草もないように理想的に維持する必要はないわけです。  ゴルフ場の人に聞いてみますと、これはゴルフ場の競争ですから少しでもいいグリーンにしたいんですよ、こう言うのです。ラフにしても、フェアウエーにしても。そのために、ほかのゴルフ場との競争という意識がありますから、少しでもいいグリーンにしたいということで薬を使うのです。しかし、薬を使ったってゴルフ場の九ホールなり十八ホールなりの地域、その地域だけは使いますけれども、周りは自然に任してあるわけですから、周りは大体山林であるし、あるいは原野であるという場合が多いわけですから、幾らそこだけきれいにしたってどんどん周りから虫が入ってくる、細菌も入ってくるわけですから切りがない。普通のゴルフ場で、十八ホール規模のゴルフ場ですと、年間に金額にして三千万ないし五千万の薬剤を使うと言われております。これは大変なものです。金も大変ですけれども、それが地下に浸透して地下水を汚染するということは、これはもう必ずそうなるわけですから、また、傾斜地であれば流れて表流水の中にまじっていく。平たんなところであれば地下水に入っていくということで、最近住民から大変な拒否反応が出ているわけです。  ですから、今ゴルフ場だけを取り上げておりますけれども、少なくともゴルフ場については農薬の必要がない。農薬がなくてもやっていかれるわけでありますし、現にこれから千葉県にできるゴルフ場は農薬を全然使わないわけですから、使わないゴルフ場はまだ完成はしていないと思いますけれども、これから完成すると思います。そうすれば千葉県は全国のモデルになると思いますけれども、それまでの間農薬は使いほうだいということであってはならないわけですが、そういう点で環境庁あるいは厚生省におかれても、こういうやらなくてもいい、使わなくてもいい農薬をまずそこから禁止していくというお考えはございませんか。
  60. 細田敏昭

    ○細田説明員 御説明申し上げます。  高温多湿で病害虫あるいは病害細菌等が発生しやすい我が国の自然条件下でございます。そういう条件のもとで、多くのゴルフ場では農薬を使用して芝等の維持管理が行われているのが実情と承知しているところでございます。ただ、そのことによりまして水質の汚濁を生ずるような事態があってはならないというように考えております。  で、環境庁といたしましては、先ほど御答弁もございました厚生省あるいは農水省と一体となりまして、ゴルフ場の農薬問題に起因する水質汚濁が生じないように、関係の学者の専門家の意見も聞きまして五月に指導指針を策定しまして、ただいま県を指導しているところでございます。先生御指摘のように、農薬の適正使用あるいはさらに可能な限りこの使用量を削減していくということで、農薬による水質汚濁問題について問題が生じないように今後とも指導に努めていきたいと思っております。  以上でございます。
  61. 新村勝雄

    新村委員 今の御答弁は、農薬の使用についてはほかの水産業、農林漁業と同じようなスタンスですよね。そうじゃなくて、千葉県では既に農薬を一切使わないのですから、少なくともゴルフ場からだけでもいいから農薬は完全に排除をしていく、駆逐をしていくという、そういうことはできませんか、大臣。
  62. 津島雄二

    津島国務大臣 ゴルフ場の農薬問題につきましては、前の通常国会でもたくさんの御質問を私どもちょうだいをいたしました。そういう質疑の中から、今厚生省、環境庁両機関の担当から御説明がございましたように、まず周辺の住民の健康に心配がないような飲料水の基準を厚生省は設け、これと並行いたしまして、一般的な環境に対する指導基準を環境庁は決めたというのが実情でございまして、私は、これによって対処をしていくのが今の行政の姿勢であるというふうに申し上げさせていただきます。
  63. 新村勝雄

    新村委員 以上で終わりますけれども、千葉県では既にゴルフ場の農薬は一切使わないということを実現しているわけですから、国もひとつ、それにならってというと失礼ですけれども、既にそういう先進地があるわけですから、その先進地にならって全国のゴルフ場が農薬を使わないように、ぜひひとつそういう方向での御検討をいただきたい。  以上、最後にお願いして終わります。
  64. 渡辺栄一

    渡辺委員長 この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ────◇─────     午後一時五十三分開議
  65. 渡辺栄一

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東祥三
  66. 東祥三

    ○東(祥)委員 本日は、次の三点に関して質問させていただきます。  一つは外国人労働者問題、そして身体障害者の雇用促進問題、そして日本企業に勤務する外国人社員の厚生年金問題、以上三点でございます。時間が三十分しかありませんので、全部できるかどうかわかりませんけれども、よろしくお願いいたします。  まず第一点でございますが、外国人労働者問題、このうち国際条約問題について外務省にお伺いいたします。  国境を越える人、物、金の動き、特に人の動きは無視することができない状況になっております。その意味で、外国人労働者及びその家族の権利保護に関する国際条約の決議案が国連の総会、第三委員会で議論され、今日にも決議案は採択されると聞いておりますけれども、その内容について外務省より簡単に御報告いただきたいと思います。
  67. 角崎利夫

    ○角崎説明員 ただいま先生御指摘の移住労働者とその家族の権利保護に関する条約につきましては、現在、国連の第三委員会で無投票採択された後、本会議に上程されております。  この条約の内容でございますが、移住労働者及びその家族の基本的人権の保障、移住労働者及びその家族の恣意的な追放の禁止、移住労働者及びその家族に対する雇用、労働、教育、保険等における内国民待遇の付与、移住労働者及びその家族の母国への送金の権利の保障等々について定めております。
  68. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連の採択に対して、我が国はどのような態度で臨んでいるのでしょうか、簡単に御説明願えますでしょうか。
  69. 角崎利夫

    ○角崎説明員 我が国といたしましては、移住労働者及びその家族の権利保護を目的とする本条約の理念そのものは理解するという立場でございまして、第三委員会におきます採択に際しましては、無投票採択に加わっております。
  70. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連で採択されますと、その次に各国による署名、そして批准が待っているわけですけれども、我が国は批准する用意はあるのでしょうか。もし今ないとすれば、近い将来批准する考えはおありでしょうか。
  71. 角崎利夫

    ○角崎説明員 今申し上げましたように、我が国といたしましてはこの条約の理念そのものは理解するわけでございますが、内容につきましては問題も多く、慎重に検討する必要があると考えております。  署名、締結のスケジュールでございますが、そういったぐあいに十分慎重に検討する必要があるということで、現時点におきましてその署名、締結のスケジュールについて申し上げることはできないということで御了解いただきたいと思います。
  72. 東祥三

    ○東(祥)委員 問題点が多々あってそう簡単にはいかない、そういう御答弁だと思うのですけれども、最大の問題点はどういうことになるのでしょうか。つまり、その最大の問題点、この問題点をクリアすれば署名あるいは批准の方向に向かっていく可能性が出てくる、そういう問題点はどういうところにあるのでしょうか。
  73. 角崎利夫

    ○角崎説明員 この条約でございますが、採択をいたしましたときに、あるいはこの条約を国連の場で審議いたしましたときに、この条約の既存の条約との整合性、あるいは当該国の国民あるいはほかの外国人の人権、利益との調和、さらには国家が有しております正当な利益とのバランス、こういったことが十分配慮される必要があるということで、日本を含めます雇用国側はそういう観点から問題点を指摘いたしたわけでございますが、圧倒的多数の送り出し国側の要求に雇用国が押し切られた形となって採択されたという経緯がございます。  我が国に当てはめますと、本条約を締結する場合に、移住労働者が国民あるいは移住労働者以外の外国人よりもかえって優遇される結果になる、平等原則との関係で問題が生ずる可能性がないか、あるいは我が国の基本的な労働政策あるいは出入国管理、選挙、教育、刑事手続、社会保障、こういった国内の諸制度との関係において問題とならないか、十分検討をする必要があるというふうに考えております。
  74. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございます。  次に、外国人労働者問題に限って質問させていただきますが、前回、平成二年六月二十二日にも質問させていただきましたが、そのとき答弁のありました外国人労働者が労働面等に及ぼす影響等に関する研究会、これが設立され、そこで種々の研究がなされている。そしてことしの末あるいは来年の初めにその報告ができ上がるというふうに聞いておりましたけれども、この研究の進みぐあいはいかがなものでしょうか。
  75. 若林之矩

    ○若林政府委員 いわゆる単純労働分野等への外国人労働者の受け入れ問題につきましては、中長期的な視点からの検討が必要であるということでございまして、このためにただいま先生御指摘の本年六月に学識経験者から成ります研究会を開催いたしたわけでございますけれども、この研究会におきましては、海外の受け入れ国及び送り出し国におきます諸問題の現状の研究、外国人労働者に対します国際条約や労働関係法令等の適用関係の研究、外国人雇用や労働力需給状況について実情も念頭に置いた労働面等におけるメリット・デメリットの具体的な検討及び整理、こういうことを行つていただいておりまして、この研究会ではヒアリングでございますとか実態調査、海外実情調査等を実施してまいっておりまして、現在、先生御指摘のとおり報告の最終的な取りまとめをお願いしている段階でございます。  前回、十二月を目途に報告をまとめていただきたいというふうに考えているということを御答弁申し上げたと存じますけれども、詳細な事項についての調査等を実施しておりまして、来年早々にも取りまとめいただきたいというふうにお願いをしているところでございます。
  76. 東祥三

    ○東(祥)委員 続いて職業安定局長にお伺いしますが、現在の外国人労働者問題の最大の問題点は何かというふうに言われれば何とお答えになりますか。
  77. 若林之矩

    ○若林政府委員 この問題、一言でお答えするのは大変難しい問題だというふうに存じますけれども、現時点でこの外国人労働問題が大変大きく取り上げられておりますのは、やはり当面の人手不足との関係でございます。この問題につきましては、ただいま申し上げました研究会におきまして、別途労働供給の制約関係の研究会というのを開いていただいておりまして、そこで今後の労働需給の見通し等を検討していただいております。この外国人労働者の労働面に及ぼします影響の研究会におきまして、この需給見通しを踏まえながら外国人労働問題と人手不足の問題、これを御研究いただくことになっております。これは現在進行しているところでございます。  私ども、外国人労働問題につきましては基本的に幾つかの問題があると思っております。この問題につきましては、ただいまの研究会でメリット・デメリット等の御研究をいただいておりますので、その研究結果にまつべきでございますけれども、私ども従来申し上げてまいっておりますことは、一つはやはり外国人の労働力を人手不足というようなことで入れてまいりますと、一たび雇用情勢が悪化いたした場合に一番その被害を受けるのはこういった外国人の労働者の方々であるという問題が一つございます。  一方、いわゆるボトルネック的なところ、俗に申します三K労働と申しますか、こういうところがボトルネックなので、こういうところに外国人を入れるべきではないかという御議論もございますけれども、もし仮にそういうことをいたしますと、一定の職種に外国人労働者が大変高い比率で就労することになるということでございまして、いわば労働市場が分担されるという問題が出てまいりまして、これは現実にヨーロッパ諸国でもそういった問題を抱えておるわけでございまして、こういったような問題が種々あるということで、まさにこういった点を現在研究会で検討、整理いただいているということでございます。
  78. 東祥三

    ○東(祥)委員 浅学非才な自分が言うのはおかしいんですけれども、これは直接労働省とはかかわらないのかもわかりませんけれども、私は外国人労働者の最大の問題というのは次にあるんじゃないか、その結果として労働省が適切な対策を立てることができないのではないか、このように思っております。  それはどういうことかといいますと、国の公式見解では単純外国人労働者はいないということになっております。入管法によって、入っていないということになっております。にもかかわらず、現実的には十万とも言われる外国人労働者がいることは事実である。いないことになっている外国人労働者に対して対策を立てるのはできない。ここに最大の問題があるんではないかと思うのですが、申しわけありませんが、もう一度職業安定局長、この点についてどのように思われますか。
  79. 若林之矩

    ○若林政府委員 現実に相当数の外国人労働者がいわゆる不法就労者という形で就労しているということは事実でございます。先生御指摘の点は、もし仮にそういった労働者がないとすると、一体どういうような影響を及ぼすのだろうかという御指摘ではないかと存じます。なかなかその不法就労者の数も把握できない状況でございますし、どういった職種にということも詳しくは把握できない状況でございますので、その影響をということはなかなか申し上げることは難しいことでございます。  ただ、先ほど来申し上げましたように、今後の労働力見通しという中で国の労働力需給がバランスするものかどうか、そういったものとの関係で外国人労働力問題をどう考えるかということは、現在先生方に御研究をいただいておるところでございまして、その御研究の結果が出ましたところでまた御報告をさせていただきたいというふうに考えております。
  80. 東祥三

    ○東(祥)委員 今職業安定局長付言してくださったわけですけれども、この研究会では現状分析において単純外国人労働者の正確なる数が把握できないとおっしゃいましたけれども、こういう人々がもう日本の労働市場の中にビルトインされたということで分析されているのでしょうか。
  81. 若林之矩

    ○若林政府委員 その不法就労者の現状の分析というのは率直に申し上げて大変難しゅうございます。実態の調査というのはなかなか難しいわけでございますので、ただいま先生おっしゃいましたような、どういうところにビルトインされてなっているかといったようなものにつきましては、なかなか先生方もその問題のアプローチというのは難しいという御認識でございます。
  82. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、その研究会ではもし外国人労働者が、外国人労働者という言葉は適当じゃなくて不法就労者と言った方がいいんですか、公式見解ではいない、合法的に入ってきていない人々が、かつ何らかの形で労働に従事されている十万人とも言われるそういう人々がもしいなくなった場合の想定調査というのは行っていないということですか。
  83. 若林之矩

    ○若林政府委員 どこにどれだけの不法就労者がいるという状況は把握をいたしかねておるわけでございまして、したがいまして、そこが仮に抜けたという場合にどういう問題が起こるかというのはなかなか難しい問題でございます。
  84. 東祥三

    ○東(祥)委員 お立場はよくわかるのですけれども、基本的には、この研究会はその後どのように発展していくかはわかりませんけれども、法的には存在しない、しかし現実には十万人以上の人が働いている、その人々がもしいなくなった場合、どのようなインパクトがあるのかということは当然押さえておかなければならない研究なんだろうというふうに思いますけれども、当然こういった調査をやるべきではないのかと思うのですが、労働大臣、いかがですか。
  85. 塚原俊平

    塚原国務大臣 外国人の不法就労者についての人数というのは私どもも大変興味がございますし、こういう表現をしてはしかられますが、法務省も大変調べたいところだと思うのですけれども、国会で幾度となく同じ御答弁を繰り返してこれは本当に調べられないということでございまして、それをカウントした上でのいろんな想定をやるのは、実際はやる必要性は非常にあるのかもしれませんが、現実問題としてはかなり難しいのじゃないかなという気がいたしております。
  86. 東祥三

    ○東(祥)委員 労働大臣、先ほどの職業安定局長のお話ですと、私はまだその原稿もゲラも見ておりませんのでこの研究会の報告が早くできるのを楽しみにしているのですけれども、基本的には、外国人労働者を入れた場合のメリット・デメリット、これを想定して研究されているというふうに伺っております。その対象となるべき人が、十万人とも言われる人々が入っているのが日本の現実の労働市場です。  そうしますと、この人たちをカウントしないで調査するということは架空のものを設定してやっているということになるのじゃないのですか。そういう意味において、この十万人、わかりません、概数ですけれども、十万人前後の外国人労働者がもしいなくなった場合どのようになってしまうのかという調査をしなければ、基本的には、外国人労働者を入れた場合あるいは入れなかった場合のメリット・デメリット、この判定ができなくなってしまうのじゃないでしょうか。よろしくお願いします。
  87. 若林之矩

    ○若林政府委員 研究会の事務をやっておりますので、私からお答えをさせていただきます。  先ほど来申し上げましたように、現実の実態を詳細に把握してそこが抜けた場合の問題点ということは難しゅうございます。しかしながら、中長期的に見て日本の労働需給がどういうふうになるのか、この観点から、それもマクロでどうなるのだろうかあるいはミクロでどうなっていくのだろうか、こういったような点についての御研究はいただいております。あわせて、やはり諸外国でかなりの経験を積んでおるわけでございますので、こういった面につきましてもできる限りアップ・ツー・デートな詳細な資料を取り寄せまして分析をお願いするようにいたしておるところでございます。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 労働大臣にお聞きしたいのですが、この外国人労働者問題、どこから手をつけていけばいいのでしょうかね。十七省庁の連絡協議会というのがあると思うのですけれども、これは各省庁が外国人労働者問題にかかわっている部分を取り出して、そしてそれぞれの立場でもって研究調査されることになる。しかし、これを統率している部分というのは私よく見えないのですね。  そうすると、労働省労働省の立場で、当然外国人労働者を勘案した上で日本の労働市場の調査研究はどんどんなされていくだろう。しかし、実態として十万人以上いらっしゃる人々を勘案することができない。なぜできないかというと、入管法によってその人たちは不法就労者だからということで、しかるべき対策をとろうと思ってもとれないというのが現実なんじゃないだろうか。そういう意味において、どこのボタンを押したらよいのかよくわからないのですけれども、労働大臣、ぜひ御所見を伺いたいのです。
  89. 塚原俊平

    塚原国務大臣 外国人労働者問題で幾つかに話を分けなければいけないと思うのですが、まず、私ども労働省も含めて早急によりいい方向に向かわなければいけないというものの一つに、日系の二世、三世の方々に対する対応というのが一つあると思います。  これは当然、先生の御指摘、不法に今絞っているので、この話をするとちょっと余計だと言われるかもしれませんが、ともかく一応合法的に認められているわけでございますし、そこに時として悪質ブローカーなんかが入ることによって働く方も雇用者側もいろいろな面で迷惑をするというようなケースが多いわけでございますので、労働省は当然職業安定機構を持っているわけでございますから、その中でこれにどういう対応ができるのか。また、ブラジル政府とかペルー政府等は優秀な人材が表に出ることを非常に恐れるわけですから、政府間でどういう話をしていくかというのが一つあると思います。  それからもう一つ、不法就労問題についてでございますが、現在、外国人ならではの能力という方々についてはぜひとも入ってきていただいて、でき得る限り技術をつけてお国にお帰りいただいて、それぞれの国家のために御貢献いただきたいということで頑張っているわけでございますので、果たしてこの範囲をどこまでに設定できるのかというような問題があると思います。過日の入管法改正におきましてその範囲が少しは広がったわけでございますけれども、それにつきましてもこれからさらに検討課題として残っていると思います。  それから、いわゆる単純労働者でございますが、これにつきましては、これから先生方の御指導をいただきながらいろいろと議論が進んでいくところだと思いますけれども、少なくとも現在のところは政府の方針が変わるということはないわけでございまして、そのことにつきましてはしっかり国会等でも私ども御答弁をし、あるいは機会をとらえてこのことをお話しすることによって雇用主の方に正しい御理解をいただいて、いわゆる不法の単純労働者の方々を雇用計画の中に入れない方向で御計画いただくというような段取りをとっていかなければいけないのじゃないかなと考えております。
  90. 東祥三

    ○東(祥)委員 今大臣いろいろお話ししてくださいまして、ぜひさらに議論を深めていきたいと思うのですけれども、時間がないので、今のお話に関してはまた別の機会に改めてやらせていただきたいと思います。  次に、身体障害者の雇用促進問題に関して御質問させていただきます。  ことしの五月に総務庁から、身体障害者の福祉・雇用に関する調査結果に基づく改善意見が出されました。その改善意見によりますと、法定雇用率一・六%に達していた企業は一九八八年現在で全体の五一・五%、従業員一千人以上の企業では一九・五%にすぎない状況でございました。その主な理由は、雇い入れ計画を促す場合に出す勧告の基準があいまいであったり、また制度が十分に機能していないといったことが指摘をされておりました。この改善意見に対して労働省はどのように受けとめられ、またどのように対処するお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  91. 若林之矩

    ○若林政府委員 本年の五月に先生御指摘の総務庁の指摘があったわけでございまして、私どもこれまでも障害者の雇用問題につきましては積極的に取り組んでまいっているところでございますけれども、この御指摘を一つ一つ私ども検討いたしました結果、御指摘のとおりであるというふうに考えまして、その御指摘の方向に沿っていろいろな面でさらに私どもの業務の推進の仕方を改善していくべきであるというふうに考えてまいりました。  具体的には、身体障害者の雇用率の未達成企業に対する指導の強化ということでございます。企業に対する指導を一層強化すべきであるということでございまして、この点につきましてはいろいろな措置を講じておりますけれども、例えば一つ具体的に申し上げますと、ことしの十月でございますが、千人以上の五百四十の未達成の企業に対しましてその社長あてに職業安定局長からの親展文書を出しまして、雇用率の達成の指導を行っているというのも一例でございます。
  92. 東祥三

    ○東(祥)委員 雇用促進法第十六条によれば、もし雇い入れ計画作成命令を受けた企業がそういった今職業安定局長がお話しされた指導に理由もなく従わない場合は、基本的には労働大臣名で企業名を公表することができることになっております。これまで企業名を公表されたケースはないようですけれども、もし今後とも目覚ましい改善がもし見られない場合、企業名公表までの決意で取り組んでいく決意でおりますでしょうか。
  93. 塚原俊平

    塚原国務大臣 過日の参議院の委員会におきましても、法定雇用率一・六%を達成するための期限を区切れという御質問がございまして、役所としてもこれはかなり勇気の要ることであったのですが、十年で達成いたしますという御答弁をいたしました。何だおまえ、十年も今からと言われるかもしれませんが、やはりこれはなかなか私どもとしてみれば勇気を出して言ったわけでございますが、それだけの並み並みならぬ決意で労働省としても法定雇用率の達成をしていこうという決意でありますので、ただいま先生からお話のございました公表等も含めて強い態度で臨んでまいりたいというふうに考えております。
  94. 東祥三

    ○東(祥)委員 アメリカでは、御案内のとおり心身障害者の社会参加を助ける、障害を持つ米国人法、ADAというのが本年七月に発効をいたしました。この法律は心身障害者の社会参加に対するあらゆる差別を禁止した画期的な法律でございます。  こういった法律が成立したからといってもちろん障害者への差別が直ちになくなるとは私も思っておりませんけれども、少なくとも障害者への一切の差別は悪であるというこういった理念を明確にしたことは特筆すべきことなんだろう、そういった意味でこの法律が世界の障害者運動に及ぼす影響は多大なものがあるに違いないと私は思っておりますが、この全米障害者法に関しての労働大臣、厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
  95. 塚原俊平

    塚原国務大臣 アメリカにおいて、社会のあらゆる分野の障害者の差別をなくし、障害者の人権を保障しようとする障害を持つアメリカ人法がことしの七月に成立したわけでございますが、その考え方というのは大変に評価をされると思います。  しかし、我が国は、障害者の雇用対策として事業主と社会連帯という高い理念に立って雇用率の制度等を設けて雇用促進を図っているところであり、アメリカの差別禁止というアプローチの仕方とは基本的に考え方が異なりますので、アメリカのような制度についての具体的な評価は難しいというふうに思います。  ともかく、私どもはアメリカのものは、まあ私も余り、勉強不足のところもあるのですが、どちらにしろ差別をなくした上で対等にというような形のものがあるわけでございます。ただ、どうしても体が御不自由であるというのは、対等に勝負した場合は、それは勝てないケースもあるわけでございますが、日本の場合はともかく雇いなさい、雇いなさいという形でございますので、やはりその辺の考え方についての大きな違いがあるんじゃないかなと思います。  ただ、私どもは雇用率を達成するためにできるだけ強い姿勢でこれからも臨んでいきたいというふうに考えております。
  96. 津島雄二

    津島国務大臣 米国障害者法につきましては、厚生省としてはこれがアメリカで大統領の署名が行われ施行されたということは一つの前進として評価をいたしております。  我々厚生省の考え方といたしましては、昭和四十五年施行の心身障害者対策基本法に基本的な理念が述べられており、障害者個人の尊厳を保障しておりますほか、身体障害者福祉法などの個別法に基づいてそれぞれの分野で施策を進めていくことが至当ではないかと思っております。
  97. 東祥三

    ○東(祥)委員 第三番目の厚生年金問題、全く時間がなくて入ることができませんでした。厚生大臣、そして厚生省の方には、きょうお呼びいたしまして質問できなくて大変申しわけありません。ありがとうございました。
  98. 渡辺栄一

  99. 田並胤明

    田並委員 それでは、きょうは厚生大臣、労働大臣おいでですが、労働省の方に中心的にお聞きをしたいと思います。  大変労働省が働く人たちの雇用の安定であるとかあるいは職場の安全の推進であるとか、最近では労働時間の短縮、そして例の育児休業法、これらに真剣に取り組まれているということで、労働省の御努力にまず敬意を表する次第でございます。  そこで、本日は、労働省にお聞きをしたいのは、職場において不幸にして起きた死亡事故に対して労災か否かを最終的に審査をする労働保険審査会、それと関係する基準局の審査対策室というのでしょうか、この体制の一層の充実強化を図る必要があるのではないかという観点で御質問を申し上げていきたいと思います。  労働省の行政指導だとかあるいは企業の安全管理にもかかわらず、残念ながら職場であってはならない労働災害が不幸にして起きていることは御承知のとおりでございます。したがって、この最近の職場における、あるいは例えば運転をしている場合もあるでしょうし、いろいろな事例で、とにかく職業病として労働災害としての申請をされる件数であるとか、あるいは特に最近の事故の発生状況、主な原因等々、ひとつお知らせをまずいただきたいと思うのです。それとあわせて、死亡事故が最近どうなっているのか、ここ何年かの推移を、わかりましたならば教えていただきたいと思いますし、これらの労働災害に対する労働省の災害防止対策を今日どのように進められておるのか、関係局長で結構ですから、御説明をいただきたいと思います。
  100. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 まず労働災害全体の推移でございますが、昭和三十年代後半から四十年代前半がおおむね山でございまして、その後減少傾向にございます。特に死亡災害は昭和四十年代前半までは年間約六千人を数えておりましたが、現在では年間約二千四百人前後の水準でございます。ただ、ごく最近の状況を見ますと、本年に入りまして死亡災害が前年、平成元年に比べまして増加の傾向にございます。一月から十一月までの数字がわかっておりますが、その速報値では、全産業で二千二百二十三人の方が労働災害で死亡されておる。前年に比べまして約五・二%の増加という状況になっております。  私どもとしましては、もちろん労働災害というのはあってはならないという立場で対策に当たっておるわけでございまして、従来から労働災害防止計画を策定して計画的に施策を行っておるわけでございます。特に労働安全衛生法とそれに基づきます諸規則等の整備、労働基準監督機関による監督指導、事業者の自主的な労働災害防止活動の促進等に努めてきたところでございますが、昭和六十三年度からは第七次労働災害防止計画に基づきまして施策を行っておるわけでございます。  その重点といたしますところは、安全衛生に係る事前評価体制の確立、心身両面にわたる積極的な健康の保持増進対策推進、適正な作業環境管理の推進、機械設備の安全化の促進、中小規模事業場における安全衛生活動の促進といったところでございます。今後ともこのようなことを重点にしてやっていきたいと思います。  それから労災の請求件数というお尋ねでございますが、これは新規受給者の数で見るのが適当かと存じますが、それで申し上げますと、平成元年四月現在で八十三万二千三百三十五人という数字になっております。なお、平成年度では八十一万八千七人ということになっております。
  101. 田並胤明

    田並委員 今、労働災害の中の死亡事故がことしになってから前年比較で非常に伸びているということですが、これは非常に重大なことでありまして、一家の大黒柱あるいは自分のせがれ、あるいは女性の方もいらっしゃると思いますが、死亡事故あるいは傷害も含めて大変重要な問題でございますので、ぜひ労働省における一層の努力をまずお願いをしておきたいと思うのです。  そこで、今局長の方から言われた労働災害の保険給付審査請求の件数、これは労働災害がどのくらいあったかというよりも、実際に労働災害として申請をされたその数ですね。あわせて、現場の労働基準監督署の方でこれはというふうに認定されないものが今度は労働災害の保険給付の再審査ということでこちらへ上がってくるはずですが、これとの比較を見てみますと、これは労働省の資料ですから間違いないと思うのですが、例えば昭和三十六年から三十八年――これは私があえて言おうとするのは、法律が改正になって三十九年から労働災害の再審査に係る審査をされる先生方が三名から六名になったときですね、昭和三十九年というのは。その前の三年間というのを見ますと、審査請求件数というのは平均して約二千五百件、三十六年から三十八年まで。四十八年から五十年までが平均して千百九十件、それから昭和六十二年から平成元年までが千二百三十件、こういう形で大変、昭和三十六年から三十八年の二千五百件から見ますと昭和六十二年から平成元年までというのは審査請求が約半分に減っているわけですね。これは非常によろしいことだというふうに我々は思うわけです。それだけの努力が実って審査に上がってくる件数が少なくなったということは、非常によろしいのです。  しかし逆に、今度は再審査の請求がそれとは別に年々上昇しているという傾向が労働省の資料によりましてもあるのです。例えば再審査の請求件数が昭和三十六年から三十八年は平均して二百五十件、これは全体の審査請求件数の約一割ということになると思うのです。ところが、同じ昭和四十八年から五十年を見ますと、これが二百四十件ということで、ちょっと減っているのです。再審査の請求というのが少し減っているのです。ですから、全体の審査請求件数千百九十件に比較をいたしますと、二百四十件ですからまあまあ三十六年から三十八年当時と比較をしても大体並びということになっているのです。  ところが昭和六十二年から平成元年になりますと、この再審査請求件数というのは三百七十件に上るのです。ですから、この間における全体の審査請求の件数が千二百三十件ですから、おおむね三〇%ぐらいに当たる。三十六年から三十八年は全体の請求件数に対して再審査を請求される方が約一〇%、その次の四十八年から五十年が全体の審査請求をされた方が再審査に持ってくる割合が二〇%、つい最近になりますとこれが三〇%というふうに上がっているのです。これはもちろん、職場の環境というのが産業の高度化に伴っていろいろな複雑な様相を示しているだけに、果たして労働災害かどうかということで認定が難しくなっているのかもしれませんが、そういう状況にございます。  この辺を労働省の方としては傾向としてどのような見方をされているのか。全体の請求件数がほぼ横ばいながら再審査の請求がかなり率として上がってきているということに対して、労働省としてはどういう傾向なのか、その辺をひとつお聞きをしたいことと、先ほど私が尋ねた中で死亡事故、死亡災害、これの主な原因と、できれば最近の死亡事故でどういう職業に多いのか、これらについてお聞きをし、特に死亡事故の多いところについての重点的な行政指導というものもなされているのかどうかを含めてお聞かせを願いたいと思います。
  102. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 ただいま審査請求件数、また再審査請求件数につきまして非常に詳細に数字を挙げられまして、その内容は全くそのとおり私どもの調べと一致をしているわけでございます。  一方におきまして、先ほど御説明申し上げましたように労働災害が減っているということとの関連でございますが、これは、なぜそういうことになるかというのはある程度推測をする部分もあるわけでございますけれども、国民一般における権利意識が高まってきた、あるいは労災制度あるいはその審査制度についての知識が普及をしてきたというようなこと、さらには事案の内容といたしまして、脳、心臓疾患が基礎になりましてこれに業務上の理由が加わって起きる災害、そういった非常に判断の難しい案件が増加をしてきていることが再審査請求の件数の増加につながっているのではないかというふうに考えます。  それで、産業別の特に死亡災害の発生状況でございますが、これはやはり多いのは建設業でございます。建設業、製造業、それから陸上貨物運送事業といったところが産業別には主に死亡災害が発生をする部分でございます。  特に建設業の死亡災害が全体の大体四〇%以上を占めるというのが現状でございます。これは、建設業が屋外作業であり、あるいは天候に支配される要素があるということで、必ずしも屋内の安定した作業環境で行われるものではないということが影響しているかと思いますが、特に最近では、高齢者がふえてきておる、特に人手不足が影響しましてふなれな者が作業につく、あるいは現場管理、監督の者が不足をしておるというようなことも響いているかと存じます。この建設業を例にとってみますと、死亡事故の原因というのは極めて単純なものが多いわけでございまして、墜落、落下といったような、要するに前からあるようなものが非常にふえておるわけでございます。  それから陸上貨物運送事業につきましては、最近交通災害がふえておりますが、これが業務上の交通災害ということによりましてこの分野における労働災害、その中の死亡災害がふえてきておるというような実態があろうかと存じます。  以上でございます。
  103. 田並胤明

    田並委員 私も年に何回かは建設屋さんの安全大会に呼ばれるんですよ。現場の監督署の署長さんなんかは熱心にこの安全大会に出ていろいろ安全の指導をされておりまして、話を聞きながらなるほどなというふうに思うことは非常に多いのですが、ぜひ今局長が言われた中身というのは、本当に企業の方でもう少し配慮すれば、もう少し気をつければ、あるいは働いている人はもちろんなんでしょうけれども、非常に単純な、何でこんなことが起きるのだろうかという事故で死亡される方がいるんですね。多いんですね。ですから、ひとつそういう面についても引き続いて死亡事故をなくすための一層の努力を労働省の方からも現場の方にお願いをしたい。もちろん企業にもそういう注意をすると同時に、働いている人たちも自分の命は自分で守る、こういう安全管理の面についての特段の配慮をお願いをしたいと思うのです。  もう一つ、死亡事故というのでしょうか、亡くなられる事故でいわゆる過労死というのが最近よくテレビや新聞等で報ぜられます。これは心疾患と脳血管疾患なんでしょうけれども、これらの最近におけるいわゆる過労死と言われている件数というのがどういう状況になっているのか、それをひとつお知らせ願いたいと思うのです。
  104. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 いわゆる過労死と言われているもの、私どもは脳疾患あるいは心疾患で業務が起因しましてその発症に至るというケースだと理解をいたしておりますが、これが認定になりました件数でございますけれども、平成年度が三十件、昭和六十三年度が二十九件、昭和六十二年度が二十一件、最近からさかのぼりましてそういう状況でございます。  これに対します認定の請求件数でございますけれども、これは脳、心疾患全体でございまして、負傷に起因するものも入っております。そういう数字でございますが、平成年度が七百七十七件、六十三年度が六百七十六件、それから六十二年度が四百九十九件、こういう状況でございます。
  105. 田並胤明

    田並委員 私が過労死の問題をお聞きをしたのは、最近過労死を含めた労働保険審査会の審査の状況というのが非常に時間がかかっているのですね。実際に、例えば死亡災害であるとか、一家の大黒柱を失われた方々にとってみると、再審査の認定の時間というのが遅いと大変な迷惑というのでしょうか、不都合なことが多いのですね。しかも、不認定にされた場合には今度は行政訴訟に持っていって、それでも三年ぐらいかかってしまう。  労働省からのお話によりますと、例えば再審査の請求をされた件数のうち、年度ごとに残件数というのが出ておりまして、それを見させてもらいますと、当初は先ほど言った三十六年から三十八年までの間というのはおおよそ再審査請求をされたうちの約一〇%が残る、翌年に持ち越される、残件数になる。さらに昭和四十八年から五十年、要するに三名から六名にされて、三人の先生方がそれぞれ班を組んで審査をされるというのが順調にきた四十八年から五十年当時は、残の方もやはり二百五十件、変わらないのですね。ところが昭和六十二年から平成元年になりますと、残の件数というのが八百件にはね上がるわけですよ。  しかも、一件当たりの再審査に要する時間というのでしょうか、年月の方がいいかもしれませんが、昭和三十八年当時でいくと、一件当たりの処理日数が約十三カ月ぐらいかかった。それが昭和五十五年になって一年と二カ月、いわゆる十四カ月、平成元年ではそれが二年と八カ月、こういう一件当たりの処理が大変時間がかかるようになった。これは先ほど言ったように、労働災害か否か認定をするための非常に難しい認定作業というのがあるせいか、こういう状態になっているのですね。  そうすると、例えばきょう再審査の請求をした、それが最終的に認定が終わるのが平均をすると二年八カ月後でないとその結果が出てこない。もしその認定に不服があるとすれば、それを今度は行政訴訟に持っていく、そしてまた三年かかる。過労死であれ、一般の労働災害の死亡事故であれ、あるいは傷害であれ、とにかく再審査に出したらおおむね二年八カ月かかってしまう、こういう状況なのですね。  それで私は、昭和三十九年の三名から六名に労働保険審査官を増員するときの議案書を見させていただいたのですが、そのときの政府側の答弁というのは、例えば三十六、七、八の三カ年を計算しても増加をしたのはわずか十八件ぐらいだ、実際に再審査請求に出てくるのがこの三年間で十八件ほどしかふえてない、そうすると、なぜ現在の審査官の三名体制を六名体制にしなくちゃいけないんだ、これしかふえてないのに何でそんなに倍にもしなくちゃいけないんだ、こういう質問をしている先生がいるのですが、それに対する答弁として、確かに三十七年と三十八年を比較をすると再審査請求はわずかな増加だ、しかし働いている方々に対してなるべく迅速に処理をしてその結果を明らかにすることが、請求をしておられる労働者の方々にこたえることになるのではないか。要するに、件数の増加というよりも、その時点でもう既に一件当たりの処理日数が十三カ月ぐらいかかっているわけですから、これをもっと短縮をして、再審査の請求をした人たちに対してなるべく早くその結果をお知らせすることが大変いいことなんだという増員の理由を言っているわけです。  ところが、今申し上げましたように残件数が八百件あって、しかも一件の処理の年月が二年と八カ月もかかるということになりますと、この辺で何としても労働保険審査会の体制をもっともっと充実強化をしないとそれにこたえることはできないのじゃないだろうか、こういうふうに思うのです。とにかく八百件残っていることは、最終的には今二年八カ月ぐらいで済むものがさらに平均すると処理日数がかかる、認定日数がかかってしまうということになってしまうのじゃないだろうか。  そうすると、労働災害に遭って死亡された方の遺族であるとかあるいはけがをされた方で、果たして認定をされるのかされないのかということを三年近くも場合によると待たなければならない。その上、行政訴訟に持っていってまた三年もかかってしまう。場合によると四年もかかってしまう。そうすると、再審査をしてから結論が出るまでに六年も七年もかかってしまうということになりますと、世の中どんどん変わっておりますから、経済情勢の変動もありますし、もろもろの条件が変化をするわけですから、それに合ったような労働行政というものも必要なのではないか、非常に重要だ、このように思うのです。  過労死問題は、この間ちょっとあるテレビで放映をしておりました。審査官の方が夜うちへ書類を持っていって審査をする、こういう姿も放映をされておりましたが、どうも審査官が過労死してしまうのではないかという心配すらそのテレビの映像を見ながら思いました。  それとあわせて、この審査官の体制を強化するだけでなくして、当然この審査会には、労働省関係する部局として基準局審査対策室がありますが、これが現場の基準局だとかあるいは監督署にかわってこの審査会にいろいろな資料を提供したり説明をする。そこが出さなければ審査官が審査できないわけでありますから、当然その辺の体制も強化をしないと、審査官の体制強化とあわせて関係する審査対策室の強化もしていかないと両々相まっていかないのではないかということで、きょうの質問は、冒頭申し上げましたように、審査会と関係する局の体制強化を思い切ってここで労働大臣、されたらいかがかということで質問申し上げたわけなんですが、局長の方からの答弁と、大臣からの御答弁がございましたらぜひお願いしたいのです。  今、国家公務員の削減計画というのがあってなかなか思うようにいかないかもしれません。しかし、こういうところにもうちょっと人を配置して、今申し上げた、不幸にして労働災害に遭って亡くなられた方の遺族であるとかあるいはけがをされた御本人に対する特段の配慮をしていかなければいけないと思いますので、せっかく立派な労働行政をやりながら、ここのところだけ、もう少し労働大臣にお力を入れてもらって来年度の予算では場合によれば充実強化をして、来年の再開される通常国会では労働保険審査官及び労働保険審査会法の一部改正案くらい出して充実強化に取り組んでいただきたい。このことを強くお願いをしながら質問をしておきたいと思います。
  106. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 ただいま先生、労働保険審査会の体制あるいは労働省の事務当局の体制の問題について大変詳しくお触れをいただきました。労働保険審査会におきます審査の時間というのは非常に長くかかっておるのが実態であるということは今先生御指摘のとおりでございます。  ただ、実際問題としまして、委員の数をふやす、これは先生御指摘のようにある時期において増員があったわけでございますが、現実の問題として、今後そういうことを直ちに期待をすることは、率直に申し上げて非常に難しいわけでございますが、労働保険審査会側といたしましては、審理の一回当たりの件数をふやすとかあるいは委員補助に当たります労働保険専門調査官の増員を図る、あるいは労働省側の審理室の陣容を強化するというような措置をこれまでも講じておりますけれども、今後ともかような努力を続けていきたいというふうに考えております。
  107. 塚原俊平

    塚原国務大臣 特に私が就任いたしましてからいわゆる過労死問題に対してマスコミも含めて非常に問題提起をされました。いろいろなところに問題の指摘があったわけですが、一番簡単な言葉で言うと、血が通っていないのではないかというような御指摘が大変多うございました。私どもといたしましては、どのような形で血を通わせていけばいいのか。  まず、労災自体が大変な、死亡されるということは御家族にとっても大変な不幸であるわけでございまして、それが今先生が御指摘になったように、認定するまでに非常にかかる、それもまた不幸であります。なおかつ、そこでだめだということになるとまた裁判になる。大変な不幸をずっと家族が背負うということになるものですから、まず血を通わせる一番の方法は、最初御相談に見えた段階でまず無理だというのがあるわけでございまして、それは正しく御理解をいただくということで、絶対だめなものは期待を持っていただいたら困るというのがある。それに関しては、そんなことばかりやってしようがないと言われるかもしれませんが、しっかりしたパンフレット等もつくってPRをするようにということで今頑張ろうということ。  それから、今度はいかに認定を早くしていくのか、その早くする中に血が通ったものにするのか、そしてそれを血が通ったものにするためには、うまくいく場合はいいわけですけれども、絶対にだめな場合にはしっかりした理由づけもきちんと御説明を申し上げるというそれだけの基準というものがあるのですけれども、その基準をよりわかりやすく御説明できるように、また審査をする方々も今すごく分厚い基準の中でやっていますので、それをもっとより明確にできるような形のものがつくれないだろうかということで、これも今日まで努力をしてきたわけですが、時として、この前もマスコミで取り上げられましたのは、決してそういう悪い意味ではなかったのですが、簡素化をしようか、こういう資料につくってみようかなというような感じの資料が取り上げられて非常に問題になったというような、こんな画一的なものでいいのかというようなのもありましたので、非常にその部分が難しいということを実感をして今日まで来ております。  ただ、何としてもその認定をできるだけ短くするということが必要でありますので、審査官自体をふやして、大変難しい話でございますが、去年も二名、非常に厳しい中でふやしているわけでございまして、そういうような人数を少しでもふやす、あるいは労働省としての支援体制、今先生から御指摘をいただきましたが、それをもうちょっとできる限りしっかりしたものにすることによっていわゆる血の通った形のものが少しでもとれるように努力をしていきたいというふうに決意をいたしております。非常に重要な問題であるというふうに理解をして、現在、基準局全員で取り組んでいるというのが現状でございます。
  108. 田並胤明

    田並委員 いずれにしても、労働大臣の決意を聞いたわけですが、ぜひこの問題、一日も早く遺族だとかそういう人たちに対して早く処理ができ、しかもその認定結果が早く知らせられるように一層の努力をお願いして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  109. 渡辺栄一

  110. 春田重昭

    春田委員 私は、厚生省の方にごみの問題でお伺いしていきたいと思います。  今のごみ問題というのは、都心のみならず地方まで大きな問題として発展してきているわけでございます。一般の廃棄物の排出量、昭和六十三年度で約四千八百二十八万トン、一方、産業廃棄物につきましては昭和六十年度で三億一千二百万トンと推定されております。この量は年々増加の一途をたどっております。したがって、今後のごみ問題というのは、従来の大量消費、使い捨てといった考えからいかにしてごみを減らしていくか、また、出されたごみをいかにリサイクルしていくかという考え方に転換しなければならないと思うわけでございます。  ところで、昭和四十五年に制定されました廃棄物の処理及び清掃に関する法律、これはごみの収集、運搬、処分につきまして法を定めているわけでございますが、時代の流れといいますか、国民のニーズにマッチしないということで、厚生省は生活環境審議会において種々検討させたその答申が十二月十日に大臣の方に提出されたわけでございますが、この答申を受けて厚生省としてはこの国会にこの法案を出すやに伺っているわけでございますが、その骨子といいますか、方向性といいますか、その点と、国会へ提案するとすれば大体いつごろなのか、その二点につきまして、まず御説明をいただきたいと思います。
  111. 津島雄二

    津島国務大臣 廃棄物の数量が非常にふえて国民生活に大きな影響を与えておるということから、先ほど委員の言われた廃棄物処理法の改正を含めた抜本的な対策を求める声が高まっております。本院におきましても、前の通常国会からたくさんの方々から問題の御提起がなされております。  そういう中で、廃棄物の問題の処理のためにこれまでの対策の延長線上では到底処理できない。省資源、省エネルギーということから資源化、再生利用の推進、そして生産から流通、消費に至る経済活動のすべての分野において減量化していく社会経済システムを構築しなければならない。また、その目的を達するためにはさらに一層公共関与をいたしまして、国、地方行政の責任もより大きなものにしていく。それから産業界の御協力、国民全体の御理解も必要である。こうして、私は常に申し上げておりますけれども、これまでの我が国経済社会の価値観であるとか使い捨て文化というものについての反省であるとか、そういうところまで踏み込んだ対策を考えなければならないと強く求められているところでございます。そういう中で、委員仰せられましたように、生活環境審議会から答申をちょうだいいたしましたので、この答申の線に沿いまして法律改正をして対策強化を図りたいと考えておるところでございます。  なお、詳細は政府委員から答弁をさせます。
  112. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話のございました生活環境審議会からは、生産から廃棄に至るまでの間廃棄物に配慮し、廃棄物を減量化するという柱、それから最終処分場を中心に適正処理のための施設整備を促進するという柱、最後に、排出事業者及び処理業者の適正な管理のための規制の強化、おおむねこの三点につきましての御提言をいただいておるところでございます。これを踏まえまして法案準備に入っておりまして、今国会に廃棄物処理法の改正という形で提出させていただきたいということで準備をしております。
  113. 春田重昭

    春田委員 このごみの問題につきましては、大臣の御答弁にあるとおり、国民お一人お一人の協力、また排出事業者のそういった責務といいますか、また国・地方を含めた行政の対応、この三者が一体となって初めてごみ問題は解決すると私は思います。  ところで、厚生省のこの法改正の動きとともに、いろいろ報道されておりますが、通産省や環境庁でも新しい法律をつくっていこうということが報道されているわけでございます。通産省では仮称廃棄物再資源化促進法、環境庁では仮称リサイクル法というものが目につくわけでございますけれども、こういった各省の動きに対しまして厚生省としてはどういう御見解をお持ちですか。
  114. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 廃棄物対策は、行政ばかりでなく企業や地域住民が参加した幅広い取り組みが必要な極めて重要な課題でございまして、関係省庁を含め、各方面からさまざまな御提言、御意見が寄せられているところでございます。厚生省といたしましては、これらの提案を十分に踏まえるとともに、関係行政機関との調整を図りつつ、廃棄物処理体系全般の見直しを検討し、廃棄物処理法の改正という形でまとめたいというふうに考えております。
  115. 春田重昭

    春田委員 一つの廃棄物といいますかごみ問題でこういった三省から出てくる。特にリサイクルにつきましては、通産省も、また環境庁も、また厚生省の今回の一部改正の中でもリサイクルの骨子が入っていると先ほど説明がございました。そういった面で、非常に真剣なのは私も結構なことだと思うのですが、しかし一方では、そういった同じ問題で三省から出てくるというのは縦割り行政の典型的な形じゃないかとか、また自分のところの権益を守るために出してくるとか、またメンツのために出してくるという、そういった批判の声も若干あるわけでございまして、当然この廃棄物の処理とリサイクルというのは表裏一体でありまして、一本化になってこそ初めてスムーズにいくわけです。  その意味では、厚生省が今回一部改正するものにつきまして、一部改正でなくして、大臣は抜本改正とおっしゃいましたけれども、要するに法案の名称も廃棄物処理法及び再資源化法ということで抜本的な改正として、やはり通産省や環境庁が考えたものを含んで厚生省が従来ある法律の中で出していくのが本来の筋ではないかと私は思うのですが、どうお考えになりますか。
  116. 津島雄二

    津島国務大臣 春田委員の御指摘、もっともな点がございます。かつてこの廃棄物問題が昭和四十五年に提案されたときには、とかく各省間の権限争いのようなものがあったということを私は耳にしておりますけれども、今回はこの問題を取り巻く国民世論が大変厳しゅうございまして、私の知る限りにおいては、そういう縄張り争いというよりも一つの目的に向かってそれぞれの分野で協力をしようという零囲気が強く、行政的にも非常に細かい話し合いをしているという報告を受けております。  全体として申しますと、私どもが担当いたしますのはいわばこの問題の川下の方でございまして、出てきてから最終処分場までのところは私どもは権限も持っておるし責任もあるわけであります。ここははっきりしておりますから、この我々の分野がうまくいくためにも、そこへ入ってくるまでのところで例えば生産者がどのくらい御協力をいただけるか、また消費者の皆様方に御協力をいただけるかということについては、我々の足らない点を補完していただくような措置が大変ありがたいわけでございます。  でございますから、この問題の今後の処理に当たりましては、いささかも委員が御指摘のような縄張り争いのための争いにならないように、私も担当閣僚の一人として全力を挙げさせていただきたいと思いますし、国民世論もそのようなことを強く望んでいると感じております。
  117. 春田重昭

    春田委員 なぜ私があえてこういった質問を投げかけたかということでございますが、心配する一つの問題として、例えば再資源化の目標というのがあります。厚生省は法律の中で明確に出していきたいという形を聞いているわけでございますが、通産省としては法律でなくして政令、省令の中で企業の努力義務に期待したい。通産省は排出事業者を抱えている省でございますから、余り強めたくない、その権益は守りたいという形でむしろ法律よりも政令、省令で、しかもそれは努力義務に期待するという形になるやに聞いておるわけです。  となればその実効性がやはり薄くなっていくのではないか。先ほど言ったように国民一人一人の協力、それと排出事業者の責務というのが非常に大きくなってきているわけでございまして、この点が各省ばらばらになっていた場合、そういった点で出てくるのではないかという心配、危惧があるわけです。したがって、排出事業者の責任を明確化するために法律できちっと、厚生省が考えているそういった形で進むべきではないか。ところがばらばらになってきた場合、その辺が危倶される、こういう点があるのです。  これから各省で出てきた場合、恐らく話し合いといいますか協議が行われると思いますが、その辺のところはしっかりと押さえていただきたいと思うのですけれども、この点だけ。
  118. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 廃棄物は各方面にわたるものでございますので、その業を所管しております省庁とも十分協議をし、減量化の実効が上がり、かつ適正処理が担保されますよう、全体として総合性のある政策が展開されますよう、私どもそのつもりで調整に当たり、政府提案でございますので、関係省庁との協議を調えました後提出をさせていただきたいというふうに考えております。     〔委員長退席、志賀(節)委員長代理着席〕
  119. 春田重昭

    春田委員 続きまして、医療機関から排出されますごみの中には、一般ごみと感染性の廃棄物があるわけですが、全国で感染性の廃棄物が大体どれくらい排出されると推定されておりますか。
  120. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 私どもの試算では、医療関係から生じます廃棄物、一日当たり三千六百トン、そのうち医療廃棄物の排出量が千八百十トン、そのうち感染性の廃棄物と目されますものが三百五十四トン、以上の状況でございます。
  121. 春田重昭

    春田委員 この感染性廃棄物というのは、一般廃棄物なのか産業廃棄物なのか、どう区別されておりますか。
  122. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 現在の法律のもとでは、産業廃棄物と一般廃棄物が混合した状態で出てくる廃棄物でございます。
  123. 春田重昭

    春田委員 この感染性廃棄物、医療廃棄物につきましては、厚生省は昨年の十一月ガイドラインをつくった、そして、平成二年の四月から実施という形で各関係機関に徹底されたわけでございますが、このガイドラインどおり実施されているかどうか、守られているかどうか、厚生省としてはどう認識しておりますか。
  124. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話のガイドラインを定めまして、これに基づく実施を指導しておるところでございます。現在、都道府県におきまして医療廃棄物の適正処理を確保するために、医師会、医療関係機関及び市町村が協議する場を設け、必要に応じ指導助言を行っているところでございます。また、都道府県において医療廃棄物のガイドラインのパンフレットの配付、医療関係機関、処理業者等に対する講習会を実施をしておるところでございます。  徹底した実施に努めておるところでございますが、完全に行き渡るにはもう少し時間がかかるかと思っております。
  125. 春田重昭

    春田委員 実施主体は都道府県であり市町村でございますが、厚生省としては指導助言している、今部長の答弁があるとおり、完全には遂行されていないと思うという御答弁でございますが、この医療廃棄物のいろいろな事件等が新聞等で報道されております。  御存じのとおり、最近の事例では国家公務員共済組合の虎の門病院、また茨城県の厚生農協連の土浦協同病院による不法投棄が大々的に報道されたわけでございますが、これに対しましては厚生省はいかなる御見解並びにどんな対応をなされたのか、ひとつ関係筋に御答弁をいただきたいと思うのです。
  126. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話しのような事件が出まして、関係の市町村、都道府県におきまして病院に対する立入調査、個別の指導を行い、適正処理の体制づくりに努めました結果、現在では二つの病院とも適正処理が行われる状態になっております。  私ども、この件につきましても関心を持ち、関係市町村、都道府県から報告も求め、個別の相談にも応じておるところでございます。
  127. 春田重昭

    春田委員 事件があったから、報道されたから襟を正すということでは、これはもう事後の体制、対策であって、本来の姿ではないと思うのです。ガイドラインには、医療機関から出るごみにつきましては、一般ごみと感染性ごみについては明確に分けるようになっております。そして、その分けたごみにつきましては、収集から保管場所、それから運搬、処理について明確に区別するようになっているのですね。ところが、これらの病院につきましては、ごみの袋も分けてなかったり、保管場所も一般も感染性のごみも一緒のところに置いていたりしている。また、ガイドラインには現場には管理責任者を置くようになっているけれども、それも不明確である、こういったことが指摘されているのです。  虎の門病院というのは、これは名門中の名門で、もう大病院でございますし、この土浦の農協の協同病院にしても、ベッド数が八百六十五床といいますから、県下第一の病院だと聞いているのですね。これら大病院でもこんな基本的なことが守られていない。全国には十三万以上の医療機関があるわけでしょう。だから、本当にこれは氷山の一角じゃないかという点をやはり心配するわけです。  そういった点で、特殊な出来事ですという形で受けとめないで、昭和六十二年ですか、B型肝炎の注射針を過って打ってしまって二次感染でお医者さんが死亡したという例もあるわけですから、こういった点も踏まえて、再度関係機関に厳しいそういった通達を出すべきであり、また総点検も行うべきであり、またガイドラインも――これはガイドラインですから、行政指導なんですよ。だから、罰則がない。罰則があっても、委託業者が要するに許可を取り消されるぐらいであって、実際の排出事業者に対しては何ら罰則の規定がないわけですよ。そういったことも含めて、今回の改正の中でそういった医療廃棄物についてはやはり厳しい規制をすべきである、ガイドラインでは徹底できない、私はこう思っておりますが、これについて御答弁をいただきたいと思うのです。
  128. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 当面ガイドラインに基づきます適正指導の徹底に努めてまいりたいと思っておりますが、先生御指摘の点につきましては、さきの生活環境審議会の答申の中にも、感染性等の特性を有する処理、処分に配慮を要する廃棄物につきましては、例えば特定管理廃棄物というように区分をして、事業者に管理計画の策定あるいは廃棄物管理責任者の設置、最終処分に至るまでのルートの確認などを義務づけるべきではないか、こういう御提言もいただいております。  したがいまして、先生の今の御意見及び審議会の答申も考慮に入れながら、現在廃棄物処理制度の見直しを行っておる段階でございます。
  129. 春田重昭

    春田委員 ぜひとも法律の改正の中でそういった規制をしていただきたい、このように要求しておきたい。  時間がございませんので、最後に有害な廃棄物の海外の輸出入の問題についてお伺いしたいと思うのです。  本年の六月、ある新聞に報道されましたが、東京の産廃処分の会社がフィリピンに対しまして、実際は建設廃材なのに建設資材として十年間で約一千万トン輸出する、そういった計画といいますか契約を結ぶための動きがあったやに報道されたわけでございますけれども、その後、この会社が、東京でございますが、東京都に対してそういった申請の動きがあったのかどうか、またこれらの問題について厚生省としてはどんな御見解をお持ちなのか、お答えをいただきたいと思うのです。
  130. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 お話しの件につきましては、民間の企業が、国内で発生をいたしました建設廃棄物等の廃棄物をフィリピンに輸出をし埋め立て用資材として使用することを計画し、東京都に相談に来られたという事実がございます。この企業はその後東京都へ計画提出されておりませんし、計画の中にございます京浜島の積み出し基地というのは現在は使用できる状況にございませんところから、この計画につきましては進展はしていないようでございます。  なお、話を持ち込まれました企業の所在は現在不明という状況でございますので、新聞の報道の時点で話はとまっているというふうに考えております。
  131. 春田重昭

    春田委員 マスコミで余りにも大々的に報道されたからびっくりして逃げてしまったのじゃないかと思うのですが、この種の問題というのは、やはりお金で買って先進国が後進国にそういった廃材を持ち込む、外交問題にも発展しかねないですよね、こういうものがもしあれば。やはり厳重に監視していただきたいと思うわけでございます。  ところで、現在、有害廃棄物の輸出入の規制につきましてはバーゼル条約というのがあります。このバーゼル条約にはアメリカを初めとして英国、ドイツ、ECの五十三カ国が実は署名しておる、そのうちの五カ国が批准をしているということを聞いております。来年の中ごろになりますとこの署名した国が批准して、二十カ国になりますと条約の発効が可能になりますから、来年の中ごろだとその条約の発効が見込まれると言われております。  ところが、我が日本では署名もしてないし、当然批准もしてない、そして一方ではそういった変な動きがある、これは先進国として私はちょっとおくれをとっておるのじゃないか、こう思いますけれども、厚生省としてはどんなお考えなんですか。
  132. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 産業廃棄物の輸出入に関しましては、昭和六十年から、その実態を把握した都道府県知事は関係者に必要な事項についての確認をし、不適正な処理が行われないよう指導することを求めて現在に至っております。  お話しのように、UNEPの動きあるいはOECDの動き等国際的な規制の動きが活発でございまして、我が国におきましても、そうした動きに対応できる国内体制あるいは輸出入の規制についての体制を整えるために現在廃棄物処理法全体の見直しの中で、審議会の答申も受けましたので、検討を行っている段階でございます。
  133. 春田重昭

    春田委員 ただいまの部長の答弁では、そうした今回の法律の改正の中で考えていくということですね。署名、批准についてはどうお考えになっていますか。
  134. 小林康彦

    ○小林(康)政府委員 外務省を初め関係省庁と協議をいたしまして、適切な時期に批准の運びに進めるようというふうに考えております。  なお、我が国では署名をせずに批准をするという方針をとるというふうに外務省からは聞いております。
  135. 春田重昭

    春田委員 早急に批准するようにひとつ厚生省としても前向きな姿勢をとっていただきたい、こう思います。  時間が参りましたので、最後に大臣にお伺いしたいと思うのですが、やはりごみ問題というのは、人間が生活する以上、また、企業が経済活動をやる以上必ず出てくる問題でございまして、政治課題としてはこれから高齢化社会のために二十一世紀へ向けていろいろ取り組んでおりますけれども、同じ比重でこの問題を考えていく必要がある、こう私は思います。必ず出てくる問題ですから。     〔志賀(節)委員長代理退席、委員長着席〕  私の持論でございますが、ごみ問題については、本来ならば環境庁あたりがやったらどうかという考え方を持っております。厚生省は福祉の問題とか医療の問題とかその分野が大変広いわけでございまして、そういった面では厚生省が従来から取り組んでいるごみ問題については何かちょっと弱いようだし、片隅に追いやられたようなそういった感じを持っているわけでございまして、私は先ほど言ったように、これからごみ問題というのは大きな社会的な問題として発展しかねないわけでございますので、厚生省としては、法律があるわけでございますから、それを最大限生かしてひとつ時代の流れ、国民のニーズにこたえるようなそういったごみの処理体制をつくっていただきたい、こう要望するわけでございまして、大臣の御決意をお伺いして質問を終わります。
  136. 津島雄二

    津島国務大臣 廃棄物の問題は法律改正を考えておるわけでございますし、その改正は抜本的な改正でございますし、また、先ほど申し上げましたように、産業界、国民各位の御協力を得る、これまでの社会的な価値観の変更を求めるというような深い意味の改正でございますから、私は今国会の最大の課題の一つと受けとめております。  厚生省として福祉等々の仕事もございますけれども、いささかもこの問題については重要性の認識を見落とすことなしに取り組んでまいりたいと思います。特に委員各位にお願いを申し上げたいのは、生活関連公共投資の配分に当たりまして、廃棄物の処理のための施設の施設費を今積極的にお願いをいたしておりますが、予算におきましても私も先頭に立って頑張ってまいりたいと思います。
  137. 春田重昭

    春田委員 終わります。
  138. 渡辺栄一

  139. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 質問の重複があるのではないかと懸念をいたしておりますけれども、その点はひとつお許しをいただきたいと思います。  まず、労働大臣にお伺いをいたしますが、大臣は我が国の労働時間についてどういう認識を持っておられるのか。先進諸国に比較をして我が国の労働時間が年間の総労働時間で非常に短いのか、適当であるとお考えか、あるいは非常に長いというふうに理解をしておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  140. 塚原俊平

    塚原国務大臣 例えば私が勤めておりました企業等におきましては、今の定められた労働時間より非常に長い労働時間を働いておりましたが、企業の中で余り労働時間が長いと感じる印象はございませんでした。ですから、一概に、それぞれの立場立場で労働時間に対する考え方というのはあると思いますけれども、少なくとも政府といたしましては千八百時間程度に何としても労働時間をしたい。いろいろな検討に検討を重ねてその時間帯ということを設定したわけでございますので、やはり理想の基準としては一年千八百時間程度の労働時間になるということが一番いいことではないかと考えております。
  141. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働省がかねてから労働時間の短縮に向けて非常に努力をしておられることを私も承知しておりますし、今また千八百時間という目標を掲げてさらに努力されておることを多といたしますが、大体労働時間の短縮は世界の趨勢であるという認識を政府、国民が持ってから非常に長い時間がたっております。にもかかわらず、日本の労働時間がなかなか目標に近づいてこない。その原因がどこにあるのか。さらには、労働省が今日取り組んでおる労働時間短縮に対する具体的な施策がおありならば、お聞かせを願いたいと思います。
  142. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 労働時間の短縮につきましては、いろいろな面からやらなければいけないわけでございます。一つは、所定労働時間の短縮、これは週休二日制の普及ということが中心になるわけでございます。それから、年次有給休暇の取得と付与されたものは完全に取得するということ。それから、長期連続休暇をとる。それから、所定外、いわゆる残業、オーバータイムの時間を減らすといういろいろな部面があるわけでございます。先ほど大臣が千八百時間を目指してと申されましたが、これは、今申し上げました四つのことを実現することによって進められると考えております。  週四十時間、週休二日制の普及につきましては、昭和六十三年の労働基準法の改正以来三年を経過した時点、つまり今年度の終わりの時点で三年を経過するわけでございますが、来年の四月一日からこれまでの原則週四十六時間を四十四時間にする政令が本日公布されたところでございまして、これによりまして、中小企業を中心とする企業の指導によって所定内労働時間あるいは週休二日制の普及に努めてまいりたいと存じます。  それから、年次有給休暇の問題でございますが、御承知のように、日本の場合には年休の付与日数は大体十五日強でございますけれども、実際にこれを消化する率が半分ぐらいということで、最近三、四年その状況は変わっておりません。これは、ほかの人に迷惑がかかるとか後で多忙になるとか、考えてみるとかなり日本的ではないかと思われるような事情があるわけでございますけれども、この点につきましては、連続休暇取得促進要綱というものをことし専門家会議にお願いをしてつくっておりますので、こういったものの内容をもう少しわかりやすい形にした資料をつくりまして、どういうふうにすれば実際に年次有給休暇を初めとする長期の休暇がとれるようになるのかということにつきまして事業所の指導に努めたいと考えております。その他、所定外労働時間の基準につきましても、将来ガイドラインの見直しをいたしたいと考えております。  現在、日本の労働時間が長い原因は何かというお尋ねでございますが、現象的には、今申しましたように週休二日制の普及がおくれておるとか年次有給休暇がとれていない、あるいは残業が長いというようなことでございますが、それがどういう原因でくるのかということは、恐らく長年の労働習慣もございますし、六十三年の改正前の労働基準法では週四十八時間が最低基準であったという長年にわたる慣習、制度の問題あるいは物の考え方の問題、いろいろなことがまざり合っていると思います。一概には言えないと思いますが、実態としては、先ほど大臣もおっしゃいましたように、いわゆる諸外国、先進国に比べてかなり長いということがございます。
  143. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働省の方で週休二日制を打ち出してからかなり長いのですが、大変努力されておるわけですから、今そのことに触れようとは思いません。  ただ、今お話のありました年次有給休暇の問題ですが、あれは山口敏夫さんが労働大臣のときに、労働時間の短縮について各党間で話し合うことになりまして、小委員会をつくりました。そのときに労働者の側は、当時昭和天皇のお誕生日が四月二十九日でございましたから、五月一日をメーデーにして、四月二十九日から五月五日まで一週間をみどりの週間として休むようにしたらどうだろうか、こういう具体的な話し合いに入ったときに、これはもちろん各党だけでなくて、経営者、使用者の側についても出席をいただいていろいろ意見を聞いたのですが、冒頭に言われたことが、休暇をたくさん出せ、労働時間を短くせよとおっしゃるけれども、既に労働者の権利として確定をしておる年次有給休暇さえ完全に消化をしないではありませんか。これは経営側の言い分ですよ。もちろん労働側にも今お話があったようにいろいろな言い分はあると思いますけれども、経営側にとってもそういう意見があるほど、何で日本の年次有給休暇の付与なり消化が悪いのだろうか。  この辺を一体、単に慣行があるとか習慣があるだけで済ましておったのでは、これは百年河清を待つことになる。まず、年次有給休暇は既に法定された労働者の権利である、そういう認識に立ってもっと積極的に施策を講ずべきであると思いますが、どうでしょうか。
  144. 塚原俊平

    塚原国務大臣 御指摘のように、ともかく一番休みがとりやすいのは、週休二日の土日は正式に決まった場合には物すごく休みやすいと思うのです。それで、非常に休みにくいのが、とりにくいのが、今雰囲気としては年次有給休暇、それから言われた場合の残業、この二つが非常にとりにくい部分が多い。やはり何となくやった方が、だから年次休暇をとらない方が評価がいいのではないか、あるいは残業をたくさんした方が評価がいいのではないかというような印象を持たれるというところが大変にあると思います。  そういうこともございますので、ただいま先生が御指摘になりましたように、ともかく二十日間はできるだけ、二十日間休めないような社員は、まず消化できないような社員は逆に勤務評定が下がる、そういうような一つの雰囲気づくりができるということが逆に年次有給休暇をとりやすい雰囲気にもなりますし、加えて、これも余り難しい話ではございませんが、私自身もことしの夏行ったわけですが、できるだけリーダーの者が率先して夏休みをとる、そのことによってみんながとりやすくなるというようなことで、ことしはかなりの企業でトップの方がおとりをいただいて、そのことによって皆さんおとりをいただいたということがございます。  施策の中でともかく何日とらなければいけない、罰則をつける等々の施策というのはなかなか難しいと思うのですが、私どもも積極的にいろいろな形で御相談に乗りながら、また御指導しながら、少なくともこの二十日間の年次有給休暇はとりやすい環境というものをつくるように一生懸命努力をしてまいりたいと考えております。
  145. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 けさのテレビでしたか、半日を単位として年次有給休暇を付与するのが最近かなり流行してきたというふうな報道をしておりまして、これも喜ばれておるようでございますけれども、もう一つは、今お話がありましたが、年次有給休暇をまとめてとるということについてどうだろうか。これもこの前のみどりの週間のときの論議ですが、みどりの週間をつくることについて、製造業等は長期間休んだ方がいい、その間機械をとめてしまって、一週間なら一週間、十日間休んでもいい、こういう意見があるのですけれども、まずレジャー産業は困りますね。みんなが休むときに一緒に休んだのでは困ります。一番問題になったのは金融機関です。金融機関が一週間も休んだら日本経済はめちゃめちゃになるからこれはだめだ。したがって、みどりの週間の話が進まなかったのですけれども、そう考えてみると、結局、休暇というのは属人的に処理をしていく以外にやはりないのではないか、そういう感じを持っているわけです。  例えば、ある企業では計画的に年次有給休暇を付与する、計画休暇というような言葉も使われておりますので、そういう点についても、今の半日単位の付与も非常に結構だろうし、それから申し上げましたような方法も計画的にやればこれもまた有給休暇の消化に役立つのではないか、そういうことを考えましたので、参考までに申し上げておきます。  労働大臣の方は、以上で結構でございます。  それから、続いて厚生省の方にお伺いいたしますが、最近の新聞で、国民健康保険事業の支援のために国が交付しておる調整交付金の不正受給というのですか、会計検査院検査の結果、これが大きく取り上げられております。詳細な実態は結構ですけれども、大体大筋どういうことであったのか、お知らせ願いたいと思います。
  146. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 先日、会計検査院の方から国民健康保険の調整交付金の不正受給問題につきまして御指摘があったわけでございますけれども、調整交付金につきましては、保険料の収納努力に応じました公平な国庫助成を行うという観点から、保険料の収納率が一定割合に満たない市町村につきましては、収納率に応じまして五%から二〇%の減額措置をとるというふうな制度をつくっているわけでございます。  元年度におきましては、大阪市、松原市、和歌山市、海南市、松山市、それから徳島市、こういったところでこの収納率に絡みます調整交付金の不正事件が発覚したわけでございます。  この事件の中身につきましては、いずれの場合も収納率の算定におきまして保険料の調定額を操作する、そういうふうなことで不当に減額する、そういうふうなことで高い収納率を持ってきたということで調整交付金の減額を免れたというふうな事件があったわけでございます。
  147. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこでお伺いしたいのですが、このいわゆる不正受給をしたお金が何か特定の、ほかの方に使われたのか、同じ会計の中で処理されたのか。例えば地方自治体が負担する分を国から不正受給した分で補っていったのか、別のところで使われたのか、これはどう把握していますか。
  148. 近藤純五郎

    近藤(純)政府委員 特別会計の中で本来ならば少ない額のものを多く取得したということでございまして、こういった市町村の場合には赤字経営が多いところでございまして、その赤字の補てんに充てたのではないかと思われます。
  149. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は、多分そうだろうと思ったのです。そうしますと、大臣、収納率が悪いほど自治体の財政は苦しいわけですよね。収納率が悪いほど金が集まらないわけですから財政は苦しい、苦しいから不正受給でもやらなければ特別会計が賄っていけない、そういう状態が生まれておるのではないかと思うのですが、どうですか。
  150. 津島雄二

    津島国務大臣 確かに背に腹はかえられないというような感じでおやりになったという見方もおありだと思うのです。しかし、大部分の市町村は本当に苦労しながら厳しい国保制度を運営し、保険料の収納に御努力をいただいているわけでございますから、正直者がばかを見るようなことは私ども行政はやりたくないということでございます。  そしてまた、この収納率をきちっと維持するというのは、そもそも国民健康保険制度の基幹にかかわる問題でございますから、幾つかのというか相当数の市町村においてかなり厳しい国保の状況であるということを私、認めることはやぶさかではございませんけれども、この収納率の問題は制度の根幹であるというふうにお受けとめいただきたいと思います。
  151. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 確かにおっしゃるように、これは大臣の御出身は私は知りませんが、私ども地方自治体を眺めてみますと、地方自治体はこの国保の特別会計で泣かされているのですよ。一般会計から繰り入れ、繰り入れをやっておる。そこで、やむにやまれずやらざるを得なかったのではないか。収納率が下がっていいというのではありませんよ、収納率が低ければ地方財政も悪くなるわけですから。そこにもってきてまたこういう措置をとられたのでは、収納率によって差をつけられたのでは地方自治体はいよいよやりようがなくなってくる。私は収納率によって調整交付金の差をつくる必要はないのではないかと思うのですが、どうですか。
  152. 津島雄二

    津島国務大臣 先ほども申し上げましたように、保険料を適切に払っていただくということが国民健康保険の基盤でございますから、そういう制度の前提の上で大部分の市町村は厳しい中で収納率の確保に大変な御努力をしていただいておるということも御理解いただきたいと思います。
  153. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これで長く争う気持ちはありませんが、しかし、地方自治体の実態も十分配慮してやるべきではないか、私はそう思うのです。国保について自治体におんぶしておる部分が非常に大きいように思われてなりません。これはひとつ十分配慮してもらう必要があるのではないか、そういう気がいたします。  それから、次にお伺いいたしますが、参議院の方で育児休業について非常に熱心に取り組んでおられるようでございます。しかも、参議院では小委員会をつくって各党間の合意ができた。もちろん何点かについてなお意見の対立はあるようですけれども、そういうものを含めて行政府の方に立法措置の手順をひとつお任せするということになったと聞いておりますが、その後の進捗状況はどうなっておりますか。
  154. 塚原俊平

    塚原国務大臣 参議院の社会労働委員会の育児休業小委員会で十二月七日に法的整備について政府で検討、立案を行ったらどうかという御結論をいただいて、ボールを私どもの方に投げていただきました。それで、ボールを受け取りまして、私どもは、十二月十四日に、公労使三者構成の婦人少年問題審議会というのがございますが、これは労働大臣の諮問機関でございますが、そこに育児休業制度確立に向けて法的整備のあり方について御検討をお願いいたしました。早速審議会の場で御検討を開始していただいているということでございます。  ノーワーク・ノーペイの原則に対してどうするかとか、あるいはその罰則は一体いかにしたものかとか等々、これからいろいろな形で御意見等をいただきながら、できるだけすばらしいものがつくれますように頑張ってまいりたいというふうに考えております。
  155. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 確かにノーワーク・ノーペイの問題から罰則の問題、あるいは中小企業の問題等が対立点であるということは承知をしておりますが、実はそういうものについて何か大臣のお考えがあるのではないか、あくまでも審議会の意見を待つのですか、大臣としての、政治家としての判断はないのですか。
  156. 塚原俊平

    塚原国務大臣 労働省の今日までの一つずつの政策づくりの過程でいろいろな審議会の中でお願いをしているわけでございますが、いずれもそこの中ですばらしい結論をお出しいただいております。ですから、恐らくすばらしい結論を出していただけるだろうということで期待をいたしてお待ちをしておるわけでございます。
  157. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 やはり私は、そこまで来れば政治家、行政の責任者としての指導性と申しますか判断というものも必要になってくるのではないか、これはもうこうしろああしろと私が言う筋ではありませんが、労働省としてもその辺、今既に幾つかのところでありますから、そういうものを参考にしながらひとつ進めてもらいたいと思います。  それから、最後になりましょうか、特別養護老人ホームについてお伺いをしたいのでございますけれども、この特別養護老人ホームの措置費の内容が非常にややこしいようでございますが、そう細かな点までは結構ですが、大筋の措置費の考え方について聞かせてもらいたいと思います。
  158. 長尾立子

    ○長尾政府委員 御説明させていただきます。  施設に児童の方とかお年寄りの方のお世話を委託いたしました費用、今先生は措置費とおっしゃいましたが、この計算でございますが、非常に大まかに申し上げますと、その施設の所在地、それからその施設の入所定員の規模別に必要とされます入所者御本人の食費といった直接の経費と、お世話をいただきます職員の方の給与を算定いたしまして、その総額を入所の定員数で割りまして、一人当たりの措置費を決めましてそれを施設にお払いをする。大まかに申し上げますと、そういうような計算の仕方をいたしております。
  159. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その場合に、例えば職員に対する給与については、何らか勤続年数等による配慮とか、そういうものがあるのかないのか。
  160. 長尾立子

    ○長尾政府委員 各施設の職員でございますが、これは施設に最低基準がございまして、入所者の数に応じまして職員の配置、職員の資格等が決まっております。その職員の資格につきまして、例えば一番数の多い保母さんを例にとりますと、保母さんは高校卒二年の養成期間を経ないといけませんので、短大卒の国家公務員の給与というものに準拠いたしまして、全国の施設の平均の経験年数をこれに加えますと短大卒の、例えば七年間の経験ということでございますと、国家公務員給与で何号俸になる、こういうような計算をして当てはめておるわけでございます。
  161. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 計算の方法はわかりましたが、この施設をふやしていった経過を見ますと、昭和五十五年ごろから施設の数が非常にふえてまいっております。そうすると、昭和五十五年に開設をした特養と昭和六十三年に開設をした特養が今おっしゃるような基準でもって賃金が算定されておるとすれば、昭和五十五年に開設したところは人件費の負担割合が大きくなってくるし、新しいところはその人件費の負担割合が比較的少なくて済むのではないか、そんな悩みがあるように思われるのですが、その点はどうでしょう。
  162. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えをさせていただきます。  先生おっしゃいましたとおり、その一つ一つの施設をとりますと、今先生は開設の年月日でおっしゃったわけでございますが、何といいますか、職員の異動の激しい施設と非常に長い勤続年数の方がおられます施設とによりましても差が出てまいるわけでございますが、それぞれ個々の施設の御事情、それはよくわかるわけでございますが、地方公共団体等を単位に考えますと、複数の施設、幾つかの施設を多くの場合は設置をしておられますし、全体としての給与の中で私どもは全体をにらみましてこういったものの費用負担をいたしておりますので、全体の中である程度のバランスをとるという考え方でやらせていただいておるわけでございます。  また、逆にこれは入所者の方から考えますと、入所者の受けるサービスというもの、それからまた費用の負担をお願いしておる部分もございますので、こういう観点からいいますと、基本的にはこういったある程度の統一的な形というもので算定せざるを得ないということは御了解いただきたいと思います。
  163. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 かなり手間はかかるかもわかりませんけれども、特に田舎の方の施設に行くほどそこに働いておる職員の皆さんの勤続は長くなってくる傾向があるようでありますし、また開設が早かったところの方が年齢的に見てもかなり高い年齢になってきておる。したがって、措置費の中で人件費に該当する部分については、これはそう難しいことではないので、それぞれの施設の職員の構成、給与というものを出させて、それを基準にして措置費を配分する。これは私はそう難しいことではないと思うのですが、どうでしょうかね。
  164. 長尾立子

    ○長尾政府委員 確かに先生がおっしゃるような御事情は各施設施設それぞれにおいてはあるかと思うのでございますが、私どもは一種の、一種のというのは、さまざまな種類の施設、それから全国さまざまな地域にわたります施設を対象といたしまして全体の予算措置を講じておるわけでございます。そういう観点では、その地域の、例えば給与の差といったようなものもあるかと思うのでございますが、こういうものを考えますと、やはりある程度全国一律的な考え方というものをとらざるを得ないということは御了解をいただきたいと思います。
  165. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 厚生省の予算要求の基準としては、それはおっしゃることはよくわかります。しかし、いみじくも局長おっしゃったように、全国非常にばらばらな状態で運営をされているのも事実です。したがって、ほかのものは私そう言いませんが、この人件費負担についてはそれほど難しいことではないと思うのです。それぞれの施設から現に必要な人件費を報告させて、それに対して措置費を支給するということはそれほど手間のかかることではないだろうし、傾斜配分になるかもわかりませんが、その方が運営上より正確を期することができるのではないか、そういう気がいたします。  それからもう一つ、施設が老朽化しますね。老朽化が激しい場合には、国の方からの措置費じゃなく、何ですか、補助があるようでございますけれども、小さい部分、いわゆる小規模の営繕補修といいますか、そういうものについては必ずしも国からの補助がないように聞いていますが、どうですか。
  166. 長尾立子

    ○長尾政府委員 前段の、各施設の給与の差というものを何か国のレベルで補正していくということはできないかということでございますが、この点につきましては、非常に数多くの施設を抱えておりますので、現実問題といたしましてはそういった交付要綱をつくっていくということは非常に難しいと思います。逆にまた入所者の立場からいいまして、そういった細かい差ができていくということは、先ほど申し上げました費用を御負担いただく場合もございますので、この点につきましてはなかなか難しいということを申し上げさせていただきます。  それから、今先生の後段の御質問の建物の修繕に要する経費でございますが、各所修繕費といった通常その施設が維持管理のために必要といたします部分は、先ほどの措置費の中の管理費という部分の中に若干ではございますが入っております。また、十年を経過いたしました場合につきましては、例えば電気の設備といったようなそれぞれによって若干異なるわけでございますが、おおむね十年に対しましてある程度の規模のものは補助をいたしておるわけでございます。
  167. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 御答弁をいただきまして、決してうそであるとは思っておりません。しかし、私が申し上げましたような、例えば各所修繕、小さな営繕等についても三年のものも九年のものも同じであるとか、措置費の中で見るわけですから同じ額になるはずですね。それから、十年を経過した場合にどうなるか、いろいろ問題はあるようですけれども、要するに早く開設した施設が新しい施設に比較をして人件費の分野でも営繕費等の分野でも負担が大きくなっておるという、非常に心配といいますか、声が大きいわけですから、それで非常に技術的に難しい面はあろうかと思いますけれども、なるべく末端の施設が不満なく運用ができるような配慮をお願いしておきたいと思います。  最後に、大臣に伺っておきますが、統計によると、最近の特養施設に入っておられる老人の年齢は、八十歳以上の方が既に半数を超えております。そのことは介護に当たる方、寮母さん等々の負担が非常に大きくなっておると――一概に言えませんよ、平均余命が延びておるわけですから一概に言えませんが、総体的に考えてそうなってきておるというふうに理解をすべきであろうと思います。  したがって、そういう人員の配置なりあるいは給与の面においてもう少し厚生省として、厚生省だけでできぬでしょうから、行政指導をしながら措置をしていかれるように希望いたしたいと思いますが、大臣にお考えがあれば聞いておきたいと思います。
  168. 津島雄二

    津島国務大臣 確かに特別養護老人ホームにお入りになっております方々の年齢が上がっております。したがいまして、介護の必要性も確かに重くなっている事実は率直にお認めしてもいいと思います。  ただ、そもそもこの特別養護老人ホームというのは養護老人ホームよりも重い介護の要る方を主体としてお入りになっていただく施設でございますから、その中でまた重いというのはちょっとまだ私どもとしては概念的にはっきりつかめない。そういう中で少なくともしなければならないのは痴呆性のお年寄りでございまして、このことにつきましては、これはこのままではいけないということで、平成年度予算要求におきましても痴呆性老人の処遇の向上を図るための工夫をいろいろして、今予算要求をしておるところでございます。  なお、きめ細かな特別養護老人ホームに対する措置をというお気持ちはわかりますけれども、私どもゴールドプランでお示ししましたように、特別養護老人ホームの絶対的な数がまだ大変不足をしておりますので、まずその方に全力を挙げて予算要求をやることが必要だと思っておりますので、どうか委員におかれても御支援をお願い申し上げたいと思います。
  169. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大臣、せっかく御答弁をいただきまして、それに対して私の意見がないわけではございませんけれども、与えられた時間が終わったようでございますから、また日を改めて質問をさせてもらいたいと思います。  終わります。
  170. 渡辺栄一

  171. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、いわゆる過労死の問題、脳血管疾患及び虚血性の心疾患の労災認定についてこれからお伺いをしたいと思います。  本年の五月二十四日の参議院の社会労働委員会におきまして、労働大臣から答弁がありまして、歴代の労働大臣の中でも過労死問題について一番関心が高いのが自分ではないか、まことに頼もしい答弁を読まさせていただきました。本日の答弁の中にも、血の通った労災認定業務をやっていきたいとありました。血の通った労災認定業務と言うからには、まず一つは、手続面におきまして申請者の声をよく聞く、労働省審査をしているさまざまな資料についてはできる限り申請人に公開、開示をして、それに対する意見を述べる機会を与えていくということは当然の前提だと思うわけであります。また、業務上・外の決定については、納得できるような理由の付記等もやっていくことが必要であろうと思うわけであります。もう一つは、手続だけではだめでありまして、認定の結果が申請者にとってまことに狭き門では血の通った認定業務とは言えないと思うわけであります。  既にほかの委員の方々からの指摘もされておりますが、昭和六十二年の十月に新しい認定基準ができた後の認定の数字を見ますと、日本で今脳血管疾患、心疾患による死亡の数が大体二十七、八万人と言われているわけですね。その中には六十五歳以下、六十歳以下のまだ労働可能年齢の方々も多いわけであります。  例えば脳血管疾患、心臓疾患を原因とする業務上労災の申請数を見ますと、一昨年が六百七十六件、昨年が七百七十七件にすぎない。そのうち、いわゆる九号に基づく認定の数が一昨年はわずかに二十九件だけ、昨年は三十件だけという数字があるわけですね。しかも、それが不服として審査請求が出た件数が一昨年が百十二件、昨年が百三十二件、その結果、不服を認められて原処分が取り消された数が一昨年がわずかに三件だけ、昨年が四件だけ。さらにもう一つ上の段階に行きまして、再審査請求について見ますと、一昨年の再審査請求が四十五件、昨年の再審査請求が四十九件、そのうち申請人の不服が認められたものが一昨年にわずかに一件だけ、昨年はゼロという数字があるわけであります。まことに狭き狭き門にこの問題がなっていると思うわけです。  こういう数字を踏まえて、血の通った労災認定業務をやりたいという労働大臣はどういう所見なのか、まずお聞かせ願いたい。
  172. 塚原俊平

    塚原国務大臣 過労死問題に限って御答弁させていただきます。  先生も法律の方の御専門家でいらっしゃるわけですけれども、非常に微妙なものがずっと上に上がっていくわけだと思うのですね。そういう状況の中で、非常に判断等に難しい問題もある中で、現在ある認定基準に即した結論というものを出しているのだと思うのです。  先ほども御答弁で申し上げたのですが、まず御相談なり申請に見えた時点で、これはだれが見ても無理ですという話があるわけでございますので、当然それはしっかり御説明をする、また、その御説明も理解いただくような資料もできるだけ用意をする、それがまず最初だと思います。それから今度は、お受けしたものにつきましては、できる限り認定基準の中でしっかりした結論を出すように努力をしていくわけですが、やはりその中でどうしても入れないものがある。そのときに、先ほど御質問がありましたように、大変に長期間かかるということ自体、これは非常に問題でありますから、いずれにいたしましても、結論を早く出していかなければいけない。これからさらに努力をしていかなければならないことだと思いますけれども、その上でいろいろな議論になっているのは本当に微妙な部分であると思うのです。  では今度、認定基準全体を広げたらどうだというような御意見等もこれから出てくると思いますし、あるいは、いやいやもう過労死自体審査する必要がないぐらい新しい労災なんだというような判断、それも全部労災で処理しろということになってくると、今度はまた保険制度全体の大きな問題というもので仕組みも変えていくというような議論も、もしかしたらこれから出てくるかもしれません。  ただ、現状の中でどうしてもどこかで基準というものはつくらなければいけないわけでございまして、その基準につきましては、これもいろいろと議論のあるところでございますけれども、今のところは今の基準がベストとは言えないと思いますけれどもベターであるということでありますので、その判断の中でしている。そこで、その非常に微妙なところについて結論が遅くなる、また、いい結論が出せないというところもあるんだと思います。  だから、その辺のところはぜひとも御理解をいただきたいと思いますけれども、ただいま申し上げましたような点について精いっぱいこれからも努力をいたしてまいりたいと考えております。
  173. 木島日出夫

    ○木島委員 大臣は、現在の認定基準がベストとは言えないまでもベターだという認識を示されましたが、きょう私、時間の許す限り現在の認定基準の問題点等について質問をしたいと思います。  まずその前に、厚生省を呼んでおりますので、保険の問題についてお聞きをしたいと思うのですが、過労死等についての業務上労災の申請があった場合に、労災認定が下された疾病については労災保険が適用される。業務外という認定、要するに労働災害でないという認定が下された場合は健康保険の適用がなされる、そういう仕組みであることは御承知のとおりであります。  そこで、認定申請が出されて、まだ業務上・外の認定結果が出されるまでの間、先ほどほかの委員の質問によっても、最近認定のための時間が非常にかかっておって、一年、二年かかっておる例もあるというふうにお聞きをしたところでありますが、まだ業務上・外の認定の結論が出る前の医療費等については労災保険が適用になるのか、健康保険が適用になるのか、まず厚生省の方からお伺いをしたいと思います。
  174. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 お答えをいたします。  委員御指摘のように、法律上、業務上の事由による傷病につきましては労災保険から、それから業務外の事由による傷病につきましては健康保険から給付するということに相なっておるわけであります。いわば一般法と特別法の関係かと思いますけれども。したがいまして、特別法的な労災保険の給付を受けたいということで患者さんが病院に申し出られ、その手続をとられる限り、私どもの健康保険の給付というのは法律上当然ながらあり得ないというふうに考えております。
  175. 木島日出夫

    ○木島委員 ただいまの答弁の根拠は、恐らく昭和二十八年四月九日保文発第二千十四号通達、「業務上の傷病として労働基準局にその認定を申請し未決定の期間は、一応業務上の取扱をし、最終的に業務上の傷病でないと認定されたときに、」云々、「さかのぼって療養費、傷病手当金の給付を行う。」この通達を根拠にしておるとお聞きいたしますが、そのとおりでしょうか。
  176. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 御指摘いただきました昭和二十八年四月九日の保険局の通知でございまして、労災の申請がなされている間の未決定の状態の期間は一応業務上の取り扱いということで、労災の認定ではないというふうに決まったときにさかのぼって療養費の支給を行う、私どもはこういう通知を出しておるところでございます。
  177. 木島日出夫

    ○木島委員 この通達の、労災申請が出たときには一応業務上の取り扱いをする、そういう厚生省の側の通達なんですが、そうしますと、これをまともに受けますと、業務上疾病としての申請が出たときには、労働省としてはまだ審査中であるけれども、一応業務上の取り扱いをすると厚生省が言っているわけですから、労災保険を仮に適用することにしないと整合性がないと思うのですが、そこで労働省の方の考えはどうでしょうか。
  178. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 労災保険は、今さら言うまでもないことでございますが、業務災害による傷病等に対して必要な保険給付を行う制度でございます。保険給付の請求があった場合には、業務上の災害であるか否か等、法律に基づく要件に該当するか否かを適正に審査をする、その上で支給をするというのが言ってみれば本旨でございまして、言ってみれば業務上の災害であるのかないのかという認定をすることが制度上の全くのキーポイントであろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、その認定がなされた段階で給付をするということにしかならないというふうに考えております。
  179. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、厚生省の方は、業務上疾病の申請が当該労働基準監督署に出されると、健康保険は適用しませんよと言う。一方、今労働省の方は、業務上疾病の申請が労基署に出てきても、業務上の認定が出なければ労災保険適用させませんと言う。そうすると、審査中は健康保険も労災保険も使えないという制度上の空白が出てくるわけですね。こんな空白をほっておいていいのですか。労働大臣、厚生大臣、どうですか。
  180. 津島雄二

    津島国務大臣 ただいま御指摘のようなケースにつきまして私どもの健康保険の立場から申させていただきますと、御本人が業務上の事由であると考えて申請しておられるときに、いやそうではありませんという仮払いは制度上私どもはできないと思っております。
  181. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、労働省厚生省両方とも、業務上疾病の申請を申請者が出したときには、おのおのの所管する労災保険、健康保険使えませんよというと、先ほど再三他の委員からも指摘をされておりましたように、最近の脳血管疾患及び虚血性心疾患等に関する認定については時間がかかっておる。一年、二年かかっておるというわけであります。しかも、幸いにして一命が取りとめられて、脳血管疾患で倒れた場合にどんなに多額の医療費がかかるかというのは想像するにかたくないと思うのです。しかし、自分は労働災害だと考えて労災認定を受けるために申請をする、そうすると、そういう申請者に対しては健康保険も労災保険も何もきかないとなったら、莫大な医療費を認定が出るまでの間は自己負担しなければいかぬということにならざるを得ないわけです。  こんな制度的な欠陥が放置されていることについては大問題だと思うわけです。そこで大臣に聞いているわけです。どちらか是正してもらわないと、安心して医療を受けながら労災申請できないということになるのではないですか。
  182. 塚原俊平

    塚原国務大臣 御指摘のとおりで、これは特に寝たきりなんかになった場合の医療費は特にかかると思いますので、また特別な治療費もあると思いますし、そうかといって、現在制度上はそういう制度になっているというようなことでございますので、私どもといたしましても今後厚生省の方とちょっと話し合いをしてまいりたいというふうに考えております。
  183. 木島日出夫

    ○木島委員 厚生省もいいですか、労働省と話し合いをしてその制度的空白を埋める……。
  184. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 患者さんあるいは御本人が労災の給付を受けたいと言っておる場合に、私どもが出ていくというのはなかなか制度上無理があるし、いろいろ検討しなければならない問題が非常に多いわけでございますけれども、労働省から御相談があれば私どもも前向きに検討してみたいと思います。
  185. 木島日出夫

    ○木島委員 さてそこで、次に昭和六十二年十月二十六日に出されました労働基準局発第六百二十号、いわゆる「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」、いわゆる新しい認定基準についてお伺いをしていきたいと思うわけであります。  新しい認定基準の旧認定基準との一番の違いは、業務による過重負荷と疾病の発症との因果関係の問題について概念として過重負荷という概念を創出した。そして過重負荷の形態として二つを規定しているということだと思います。一つは異常な出来事に遭遇した場合、もう一つは日常業務に比較して特に過重な業務に就労した場合、このどちらかに該当する場合には労災認定をしていこうということのように私承りますが、そういう認識で、理解でよろしいのでしょうか。
  186. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 そのとおりでございます。
  187. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで、きょう私は、異常な出来事の遭遇の問題についてはそれほど難しい問題ではありませんから質問せずに、二つ目の「日常業務に比較して、特に過重な業務に就労したこと」、こういう要件の具体的中身についてお聞きしていきたいと思います。  まず最初に、この認定基準でいう「日常業務」とは何でしようか。
  188. 安孫子律夫

    ○安孫子説明員 日常業務に比較しまして過重な業務という考え方でございますけれども、その方の通常所定の業務に比較しましてかなり過重である業務、言うなれば、その方が持っている動脈硬化とかあるいは動脈瘤とか、そういうような基礎的な疾病を急激にかつまた著しく発症させるような業務というように認定基準では示しております。
  189. 木島日出夫

    ○木島委員 私が質問しておるのは日常業務とは何かという質問です。先のことじゃなくて、日常業務とは何か。
  190. 安孫子律夫

    ○安孫子説明員 日常業務というのは、ただいま申し上げましたように、その方が通常の所定の業務、例えばその方が一日七時間労働であれば七時間労働、あるいは八時間労働であれば八時間労働、その過重な業務というのはそれをオーバーする部分ということでございます。
  191. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、ここでいう日常業務とは、当該労働者の通常の所定就労時間の業務及び通常の業務内容、そういうことも含むのですか。時間だけではなくて業務内容についても所定の内容であるということを含むのですか。
  192. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 一般的に言えばそういうことだというふうに理解しております。
  193. 木島日出夫

    ○木島委員 労働省労働基準局補償課が編集している「詳解 脳血管疾患・虚血性心疾患の労災認定」という本には、日常業務についての規定がありまして、「一般的には、所定労働時間及び所定業務内容であるので、交替制勤務、隔日勤務などの勤務形態であっても、その業務が所定の業務であればこれが日常業務」だ。しかし、残業等が日常的に行われてもその残業の部分は日常業務ではないという記載があるのですが、そのとおりでしょうか。
  194. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 恒常的な残業がある場合にも、所定時間内の労働が日常業務というふうに考えております。
  195. 木島日出夫

    ○木島委員 日常業務の意味が今答弁されたとおりのことであるといたしますと、日常業務がいかに過重であってもそれは労災認定の対象にならぬということになると思うのですが、そういう解釈をとっておるのですか。
  196. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 そうではございません。むしろ逆であろうかと思います。先ほど申し上げましたのは、所定内時間に加えまして残業時間が恒常的にあるという場合にも日常業務というのは所定時間の労働であるというふうに解しておる、こういうことでございます。
  197. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、そうではなくて、ここで言う日常業務、基本概念である日常業務というものの中には、「当該労働者の通常の所定の就労時間及び業務内容である。」と規定しているのじゃないですか。それを特に超えた場合に過労死の認定の問題が出るということじゃないのですか。
  198. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 同じことの繰り返しになりますが、要するに残業が恒常的に所定時間にかぶさっておる場合でも、それを取り除いた時間を所定時間と見ておりますので、そういう意味からいいますと通常の業務というのは要するにその残業部分を除いたものであるという扱いにいたしております。
  199. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、私の質問は、労働省がこの新しい認定基準で規定しておりますように、日常業務それ自体、例えば八時間労働なら八時間労働それ自体が非常に労働密度が高い、あるいは作業環境が非常に劣悪であるというような状況があって血圧を上昇せしめるような状況である場合には、それはあくまでも労働省の新しい認定基準からいくと日常業務の枠の中なんだから、そういうものはもうどんなに環境が劣悪であれ超過密労働であっても労災の認定から外れてしまうというふうに解釈せざるを得ないのですが、そう読み取らざるを得ないのですが、どうでしょう。
  200. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 現在の認定基準の考え方は、要するに日常の業務の上に通常残業時間がかぶさっておる、これは個々のケース、非常にいろいろあると思いますけれども、ごく一般的に申し上げれば、それに非常に過重な残業時間がくっついておったということであれば、それを超えてさらに負荷が加わったということでなくても、その他の基準、例えば一週間以内の期間を見るというようなことで認定をするということは考えられます。  したがいまして、おっしゃる意味を私の方で必ずしも正確に理解したかどうか、若干問題があるように思いますが、私の理解しておる範囲では、おっしゃっておるようなことではなくて、要するに所定時間にいつも残業が加わっておる、そのことが他の基準に合う限りそのことが負荷になって発症に至ったということであればそれは認定されるケースであろうかと思っております。
  201. 木島日出夫

    ○木島委員 新認定基準に添付されております「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定マニュアル」の九ページのところにはっきりとそれはうたわれているわけです。「通常の所定業務の過程で発症したような場合には、業務起因性が認められないことはいうまでもない。」私が指摘したことが書かれているわけであります。そこで私は、日常業務それ自体が業務量、業務内容、作業環境から見て特に過重なものと認められないというふうに労働省は考えるのかということを先ほど来再三追及していたわけであります。  実はこの問題については昭和五十九年の六月と昭和六十一年の七月、いずれも新しい認定基準が労働省によって策定される前の時点で、労働関係民事行政事件担当裁判官会同という、全国の担当裁判官が一堂に集まって会同している。その中に、日常業務それ自体が特に過重であって、それが症状の発症に影響したという場合に、労働省はそれは認定しないという態度だけれども、そうではないんだ、「日常の業務内容自体が質的又は量的に過激なものであったときには、業務内容に特段の変化がないまま発病に至ったとしても、業務が疾病の有力な原因である場合のあり得ることは、医学的にも否定し得ないところであろう。」というふうに、裁判所の側は全員が集まったところでそういう結論を引き出しているわけであります。  そうしますと、新しい労働省の認定基準は、少なくともそれ以前の日本の裁判所の全体としての意向よりも大幅に後退してしまっている、そういう申請者にとって大変厳しい基準を新しくつくり出したと言わざるを得ないと思うのですが、どうでしょうか。
  202. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 先ほど引用されました裁判官会同のお話というのは、手元にちょっと資料がございませんので、その点との比較はできませんが、現在の認定基準で考えておりますのは、所定業務というのは、恒常的に残業がありましても、その分を取り除いたものである。したがって、それの上に積み重なった過重負担がしばらく続いておった場合に、さらにその残業時間がふえたというようなことが必ずしもなくても、例えば作業環境に何かの急変があったというようなことで発症の原因になったということであれば、残業がいつも続いていた状態で、その発症前二十四時間あるいは一週間以内にまた時間的な負荷が特に加わったということがなくても認定されるケースであろうかと思います。  なお、ここでは一般論を申し上げておるわけで、個々のケース、いろいろあると思いますので、それぞれのケースについてすべて同じ考えでいけるかどうかということは断言できませんけれども、認定基準の考え方は今申し上げたようなことでございます。
  203. 木島日出夫

    ○木島委員 今の局長の答弁は、認定基準に書かれている文言そのものではなくて、それを大分解釈を変えてきていると思うわけであります。それは認定しやすいように変えてきていると私は今伺っているわけで、それは結構なことだと思うわけでありますが、今指摘してみた日常業務という概念一つとってみても、もう実際の現状、今日、日本の労働者にとって日常業務そのものが健康に有害な業務が非常にふえている。むしろそれは常態化している。そういうときに、日常業務だけ幾らやっていてもそれは労災認定の対象から外すんだ、日常業務に比較して特に過重な労働をした場合だけ労災認定の対象なんだというような考え方はもう現状に合わないと思うわけですが、いかがですか。
  204. 佐藤勝美

    ○佐藤(勝)政府委員 御承知のように、いわゆる過労死と言われているもの、脳、心疾患の発症が業務が原因となって引き起こされるという場合に、そのもとになります動脈硬化であるとか動脈瘤というのは、多くの人が例えば加齢に伴って持っているというようなものでございまして、それが発症する、あるいは場合によっては死に至るという場合に、それが日常生活、自然の経過でそうなったのかどうか、多くの場合にはそういうことであろうと思いますが、ここで問題になりますのが、それが業務が原因になって自然の経過を超えて急激に発症して、その結果、災害に至る、こういうことでございますから、あくまでも業務と関係なくても存在する疾患が業務が原因になって発症する、そのことを論じているわけでございますので、日常的に脳、心の血管疾患、最近、生活慣習なり食生活の変化あるいは高齢化等に伴ってそういう疾患が非常にふえているというふうに理解をいたしますけれども、そのことをもってその多くが業務上のものであるというような考え方はとれないのではないかというふうに考えております。
  205. 木島日出夫

    ○木島委員 時間がありませんので、最後の質問にいたしますが、新しい認定基準が現状から認定にとって狭過ぎるという指摘が学者等からたくさん出ているということは労働省も御存じだと思うのです。今新しい認定基準そのものを見直していくということが必要になってきている、そういう時期ではないかというふうに思うわけであります。  そこで、最後に、労働大臣にそういう新しい認定基準そのものの見直しの要否についてお伺いして質問を終わらせていただきます。
  206. 塚原俊平

    塚原国務大臣 ただいまの、日常活動で、過酷な日常活動というものまで日常活動ということになりますと、これは労働基準法その他もろもろの法律の適用範囲にも逆になってくるかもしれません。ですから、日常活動自体についての認識というのは、これからまたいろいろな形で先生に御指導をいただいていかなくちゃいけないものだというふうに理解をいたしております。  いずれにいたしましても、先ほど私が申しましたように、ベストではないけれどもベターだということは、ベターより上があるということでありますから、当然一つ一つこれについてはさらに勉強を進めていかなければいけない課題であるという認識は持っておりますけれども、さしあたっては、ただいまの認定基準というものを皆様方からより御理解をいただけるように今後運用してまいりたいと考えております。
  207. 渡辺栄一

    渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十七分散会