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1991-04-26 第120回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成三年四月二十六日(金曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 瓦   力君 理事 中川 昭一君    理事 増子 輝彦君 理事 宮下 創平君    理事 上田  哲君 理事 元信  堯君    理事 山口那津男君       伊藤宗一郎君    中谷  元君       山下 元利君    渡瀬 憲明君       加藤 繁秋君    左近 正男君       冬柴 鐵三君    東中 光雄君       神田  厚君  出席国務大臣         外 務 大 臣 中山 太郎君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁人事局長 坪井 龍文君         外務大臣官房審         議官      竹中 繁雄君         外務省北米局長 松浦晃一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   渡辺  允君         外務省条約局長 柳井 俊二君         外務省国際連合         局長      丹波  實君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      高島 有終君         外務大臣官房審         議官      河村 武和君         水産庁海洋漁業         部長      嶌田 道夫君         特別委員会第三         調査室長    下野 一則君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ────◇─────
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  外務大臣から我が国安全保障政策について説明を求めます。外務大臣中山太郎君。
  3. 中山太郎

    中山国務大臣 衆議院安全保障特別委員会の開催に当たりまして、我が国安全保障について所信を申し述べたいと思います。  安全保障に万全を期することは、国家の独立と繁栄維持し、国民の生命財産を守るために必要不可欠な条件であり、外交基本的課題であります。私は、我が国安全保障政策遂行の任に当たる者の一人として、その使命責任を全うすべく全力を尽くす決意でございます。  昨年八月のイラククウェート侵攻に端を発する湾岸危機は、国際社会にとって一つの大きな試練でありました。幸いにして、危機への対応に当たっては米ソ協調関係が基本的に維持され、また国連権威米国の強力なリーダーシップのもと我が国を含む各国の一致した協力により、国際社会はこの試練を乗り越えることができました。  しかし、湾岸危機が一応の終結を見たとはいえ、イラクでは敗戦を機に反政府活動が活発化し、トルコを初めとする周辺諸国への難民流出が新たな問題として浮上しており、我が国としても、関係各国国際機関協力しつつ、これら周辺諸国への医療チーム派遣を含めてその対応にできる限りの努力を行っているところであります。  また政府は、一昨日の安全保障会議及び閣議において、我が国船舶航行の安全を確保するために、ペルシャ湾における機雷の除去及びその処理を行わせるため海上自衛隊掃海艇等派遣することを決定いたしました。この措置は、船舶航行の安全を確保し、被災国復興等に寄与するという平和的、人道的目的を有する人的貢献策であると同時に、その成果我が国のみならずアジア太平洋地域全体にも裨益するものであり、今般の決定について皆様の御理解と御協力お願い申し上げる次第であります。  さらに、湾岸危機後の中東地域全体の安定化は、それ自体国際社会協力して取り組むべき大きな課題であります。  湾岸危機を乗り越えた国際社会は、今日、ソ連の国内問題の深刻化というもう一つ不安定要因に直面しております。これは変化に内在する不安定性のあらわれとも言えますが、近年の東西関係の好ましい変化をもたらした主たる要因一つが新思考外交の展開を初めとするソ連変化であっただけに、ソ連情勢不安定化国際社会にとって特に重要な意味を有しております。ソ連情勢不安定化による影響は既にさまざまな形であらわれており、本年一月のバルト諸国への武力行使や、ソ連によるウラル以東への兵器移転問題を初めとするCFE条約に係る問題、さらにはSTART条約交渉への影響等、これまで続けられてきた米ソ関係安定化欧州における新たな安全保障枠組みに向けての努力に対する不確実性を高める要因となっております。  東欧においては、これまで東西対立の陰に隠れていた民族問題を初めとする各国の歴史的な諸問題が顕在化しつつあり、ソ連情勢不安定化と相まって、欧州安全保障を考慮する際の重要な問題の一つとなっております。  また、アジア太平洋地域におきましても、中ソ関係正常化、南北朝鮮間における対話の進展、韓ソ間の国交樹立等に見られるような一定の好ましい方向への変化が見られつつあるとはいえ、朝鮮半島における対立、カンボジア問題、日ソ間の北方領土問題等、この地域安全保障にとって重要な問題の構造的な解決は依然として見られておりません。また、北朝鮮は核不拡散条約を締結しているにもかかわらず、同条約上の義務であるIAEAのフルスコープ保障措置を受け入れる協定の締結をいまだ行っておらず、このことが国際社会において北朝鮮核兵器開発に対する大きな疑念を醸成する結果となっております。極東ソ連軍についても、量的には削減傾向が見られるものの依然として膨大な軍事力が蓄積されており、質的な向上も継続されております。  以上のように、今日の国際情勢は、新たな国際秩序構築へ向けての努力が続けられつつもなお多くの不安定性を抱えており、国家関係安定化のための積極的な外交努力を推進すると同時に、実力に裏づけられた効果的な抑止力維持することが引き続き重要であることを示しております。  このような国際情勢の中にあって、我が国の平和と安全を確保するためにまず重要なことは、日米安保体制堅持であります。  日米安保体制は、アジア太平洋地域安定要因となっている米国のプレゼンスを維持していく上で極めて重要であるのみならず、アジア太平洋地域の安定と発展のための重要な枠組みとなっております。  日米安保体制はまた、日米双方において日米関係の基盤として認識されており、日米両国間の強固なきずなとしての役割を果たしております。  政府としましては、このような意義重要性を有する日米安保体制信頼性向上と効果的な運用を確保していくために、自主的にできる限りの努力を払ってきているところであります。そのよ うな努力の一環である在日米軍駐留経費特別協定が、先般皆様の御協力により今国会の承認を得て発効の運びとなったところであります。  我が国の平和と安全を確保するために、日米安保体制堅持と並んで重要なことは、みずから適切な規模の防衛力整備することであります。我が国は、平和憲法もと、専守防衛に徹し他国脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、文民統制、非核三原則堅持しつつ、効率的で節度ある防衛力整備に努めてきております。昨年末、安全保障会議及び閣議において決定いたしました新中期防衛力整備計画は、このような基本的な考え方に立ったものであります。  国際社会が新たな秩序構築へ向けて動きつつある今日、安全保障政策のもう一つの柱としての外交重要性はますます高まっております。そして私は、アジア太平洋地域の長期的安定の確保のための方途についての国際的なコンセンサスを形成するために、我が国が積極的な役割を果たしていくことが重要であると考えております。  さき外交演説でも申し上げましたとおり、この地域の長期的安定を確保するための道程が欧州の場合と異なることは当然であります。なぜならば、この地域の地政学的な条件安全保障上の環境が欧州とは大きく異なっているからです。  第一に、アジア太平洋地域では域内の多くの国が開発途上国であることもあって、各国最大の関心事は経済発展であり、核戦争脅威を含む軍事的な緊張の緩和を最大関心事項としてきたこれまでの欧州とは大いに異なっております。  第二に、従来の欧州ではNATOとワルシャワ条約機構の二極に集約された形での東西関係が存在していたのに対し、アジア太平洋地域では、中国の存在を含めて東西関係では律し切れないようなさまざまな要因があり、国際政治上の力関係が多極的であります。この地域では同盟関係は二国間のものがほとんどであり、また各国の利害の対立及びこれに伴う脅威認識も多様であることから、全体として安全保障の構図が複雑であります。  第三に、欧州においては戦後の国境問題等解決という過程を経た上でいわゆるCSCEの作業が始められたのに対し、アジア太平洋地域においては依然として朝鮮半島における南北対立、カンボジア問題、日ソ間の北方領土問題などの未解決紛争対立が存在します。  そして第四に、欧州ではEC統合の動きを中心として政治的にも経済的にも統合に向かう大きな流れがあるのに対して、アジア太平洋地域では、むしろ国家地域政治的、社会的、文化的な多様性経済発展段階の相違を基礎としつつ、経済的な相互依存関係が追求されております。  このようなアジア太平洋地域の特徴を踏まえその平和と安定を確保していくためには、まず朝鮮半島における対立、カンボジア問題、北方領土問題等の未解決紛争対立解決を図り、その過程を通じて、北東アジア東南アジア等地域ごとにそれぞれの地域の長期的な安定を図るための対話協力関係を強化していくことが重要であります。  より広い範囲の地域協力については、域内諸国の安定のために経済発展が重要であることにかんがみ、経済面での協力中心に進めることが重要であります。具体的には、ASEANASEAN拡大外相会議アジア太平洋経済協力閣僚会議太平洋経済協力会議等の既存の枠組みを十分活用して、この地域政治経済両面にわたる諸問題についての対話協力を拡大していくことがこの地域に最もふさわしい方法であると考えます。  アジア太平洋地域の平和と繁栄確保するためには、日ソ関係の改善も不可欠の重要性を持っております。先般のゴルバチョフ大統領訪日の際、共同声明において歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島が平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることが明確に確認されたこと等は我が国の一貫した対ソ外交がもたらした成果でありますが、領土問題の解決に向けて今後なお一層の努力が必要であることは言うまでもありません。  以上、我が国安全保障政策につき所信を申し述べました。国際社会が変革期を迎えつつある中、我が国国際関係全般にわたってこれまでにない大きな責任役割を有しており、世界の平和と安定のため積極的に貢献していかなければなりません。今後も、安全保障問題に精通され多年にわたってこれに真剣に取り組んでこられた本委員会皆様の御指導と御鞭撻を引き続き賜り、外務大臣の重責を十分果たせますよう、皆様の御協力お願い申し上げます。
  4. 中山正暉

    中山委員長 以上で説明は終わりました。     ─────────────
  5. 中山正暉

    中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増子輝彦君。
  6. 増子輝彦

    増子委員 自由民主党の増子輝彦でございます。  いよいよ本日、掃海艇ペルシャ湾に向けて出航したわけでございますが、今回の決定は、我が国国際社会において貢献をなすためには大変重要な、意義ある英断であります。隊員皆さん航行の安全と、誇りを持ち職務の遂行を立派に果たされることを願いながら、我が国国際貢献につきまして、改めて日本安全保障世界の新たな国際秩序について幾つかの質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  まず最初に、世界が冷戦を乗り越えて新たな国際秩序を模索しつつあることは御案内のとおりでございます。今回、イラククウェートに対する侵略に端を発した湾岸危機が訪れましたが、国際社会国連権威もとに一致団結してこの危機を克服したことは、大変喜ばしいことでございます。今回このような平和の破壊に対して国連が成功裏に対処したことによりまして、今後地域紛争解決に果たす国連役割というものはますます大きくなっていくことが予想されますし、また、そうなければならないと考えるところでございます。  地域紛争は、それをまだ芽の出ないうちに摘み取ることが最も望ましいわけでございますし、このための努力を怠ってはならないわけでございます。また、紛争が実際に発生した場合には、国際社会が一致してその平和解決努力をする必要があるわけでありますが、このような紛争への対処を国連が行うに当たって、我が国といたしましてはさまざまな形で貢献を行い、世界主要国一つとしてその責務を果たすべきだと考えているところでございますが、この国際的な責務を果たすという点につきまして、政府の考えを外務大臣にお伺いいたしたいと思います。
  7. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の湾岸戦争に見られるような地域紛争対応について、我々が経験いたしましたこの経験から得たものは、地域紛争が発生する前にその緊張の情報をいかに国連中心となって収集するか、それを関係国に伝達するかという予防外交というものが非常に重要であるということをこの戦争を通じて我々は学んだわけでございまして、そういう意味では、既に日本政府としては国連事務総長に対して、この予防のためのシステムを国連の中につくるべきであるという申し入れをいたしております。
  8. 増子輝彦

    増子委員 予防外交、まさしく私もそのように感ずるわけでございます。いずれにいたしましても、今回の中東湾岸戦争におけるものが短期の中に終結して平和に向かったということは大変よかったわけでございますが、問題は、中東湾岸におけるいわゆる戦争の後をどういうふうにしていくのか。  御案内のとおり、ペルシャ湾沖にはたくさんの機雷があるわけであります。先ほど申し上げましたが、今回の掃海艇派遣ということにつきましては大変な英断でございます。今回の掃海艇派遣につきまして、ペルシャ湾には大変多くの機雷があると同時に、日本船舶が大変多く運航しているわけでございます。我が国の原油の七〇%以上 がこれらの周辺諸国から輸入しているという現状を考えても、万が一安全な航行確保できないという状態が起きれば、日本経済はもちろんのことでございますが、世界経済に及ぼす影響も大なるものがあるわけでございます。しかるゆえに、我が国ペルシャ湾における安全航行確保他国に任せるということではなくて、みずからの責任において当然努力すべきであります。今回の掃海艇派遣は、まさにこのような我が国が当然果たさなければならない責任を果たすものであります。また、これは湾岸地域における復興と通商の正常化、あるいはいろいろな形の中でのこれら周辺各国のこれからの方向性についても貢献するものと私は考えているところでございます。  今回の掃海艇派遣意義に関しまして、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  9. 中山太郎

    中山国務大臣 ペルシャ湾にはイラクが敷設いたしました機雷が既に千二百個あったと報告されております。現在、そのうち六百個余りが既に処理されたと報告を聞いておりますが、それらの処理に当たっては、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等掃海艇が活躍してきたという実態があろうかと思います。  なお、この地域におきます残存の機雷をどのように処理するかということが我が国船舶航行にとっても極めて重要なことでございますし、クウェート中心にした戦後の復興にも資材の輸送等について重大な影響を及ぼすもの、このようなことから、今回、日本政府法律の許すもと海上自衛隊掃海艇等派遣することにいたしたわけでございます。
  10. 増子輝彦

    増子委員 あわせまして、我が国国際化社会に対する責務という観点から、その持てる経済力を今後の経済援助に支出するということも考えていかなければならないことは当然のことでございます。  先般、実は海部総理ODAの新たな指針として四原則を表明したわけでございます。その中の一つは、核・生物化学兵器の保有、開発状況、これが盛んな国に対しましてはODA供与を見直すというものと理解をいたしているわけでございますが、今後どのような基準を設け実行するかということは、大変重要な点だと私は考えているわけでございます。単に我が国の姿勢を示すだけなのか、軍事費の増減などによってこの基準をどういうふうにつくっていかれるのか、大変重要だと考えているわけでございますが、NPT加盟しているかどうかは大変重要なことではないのか、そういうこともあるいは総理のこの四原則の中に含まれているのかどうか。この点を含めまして、私は、今後の世界の平和を維持して新たなる紛争を引き起こさせないためにも、また新たな国際秩序をつくっていく上でも我が国国際社会に対する責務は大変重要だと思いますので、NPT加盟国ODAを抑えるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  11. 中山太郎

    中山国務大臣 核拡散防止条約の未加盟国への加盟の働きかけ、またこの条約に関する義務の実施につきまして、これをやる国家、やっている国家、やらない国家、こういうものにつきましてODAを適用するかどうかということは、政府ODA決定する際に重要な要素として我々がこれを検討するということでございます。
  12. 増子輝彦

    増子委員 ただいま大臣が申されましたとおり、やはり世界の平和をつくっていく、先ほどお話に出ましたとおり予防という観点からいきましてもこれは極めて重要な問題と私自身は認識をいたしておりますので、どうかひとつこの点を慎重に、そしてその基準を今後とも明確にしていただくことが大変重要かと思いますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  また、先ほど申し上げました今後の中東周辺諸国のいろいろな復興の問題も含めてでございますが、今後日本はいろいろな形の中で世界平和維持という問題にかかわっていかなければならないわけでございます。国連中心主義ということは、これは当然でございます。そういう中におきまして国連平和維持活動、すなわちPKO、これは、実は今後大変重要な問題になってまいるわけでございますが、これまで多数の国家参加して発展してきた活動であることは御案内のとおりでありますし、国際の平和と安全の維持に多大の貢献を行っているところでございます。一九八八年にはノーベル平和賞を受賞する等、国際化社会の幅広い支持と評価を得ているわけでございます。このような国連PKO我が国が積極的に参加をするということは、まさに我が国憲法国際協調主義に合致するとともに、国際化社会において地位の増大した我が国にとっては当然の責務であると私は考えているところでございます。  かかる国連PKOにつきましては、その中心的な活動として、平和維持軍停戦監視団があることは御案内のとおりでございます。いずれにいたしましても、本来的には軍人による活動であって、各国から派遣された軍隊、軍人中心となって行われているものではありますが、我が国が真に国際的貢献の見地からPKOへの参加を検討するのであれば、かかるPKOの現実を踏まえて、国際的に評価の得られるような対応を行う必要があることは言うまでもないわけでございます。三党合意に基づくというさき臨時国会のこともございますが、今後このPKO参加に関する政府の取り組み方につきまして、大臣所信をお伺いいたしたいと思います。
  13. 中山太郎

    中山国務大臣 この国連PKOにどのような形で参加をしていくかということは、国際社会における我が国評価というものがおのずからそれによっても一定の検討をされる一つの座標軸になろうと考えております。  御案内のようにPKOの中には、今も委員御指摘のように平和維持軍停戦監視団選挙監視団と三つの大きな柱がございますけれども、平和維持軍停戦監視団は、国連基準によると原則軍人によって構成される、一部の部門が文民で行われるということでございます。これから日本がどのように対応していくかにつきましては、さきの三党合意も踏まえて各党で御協議をいただき、できれば各党が御協議いただく中で、我が国憲法もとでどこまで我々がこのPKOの部隊をどの種類まで構成することができるか、そういうものの御議論をいただくことが極めて重要である、政府各党間の御協議を踏まえて立法措置対応してまいりたい、このように考えております。
  14. 増子輝彦

    増子委員 ひとつこの点を慎重に、かつ積極的にPKOにつきましては御努力お願いしたいと同時に、私どももその責務を担っているものと考えているところでございます。  掃海艇につきまして、防衛庁にひとつお伺いをしたいわけでございます。  今回の掃海艇派遣につきましては、極めて困難な航海や掃海作業が予想される中で、派遣される隊員皆さんが安心して使命感誇りを持って業務に従事できるということが極めて重要だと私は考えておるわけでございます。防衛庁長官、きょう記者会見をされたようでございますが、その中で、この派遣隊員皆さんに対する諸手当処遇等につきまして防衛庁考え方をお伺いしたいわけでございます。これは大変重要なものと私は認識をいたしております。やはり初めての派遣のことでもございますし、先ほども申し上げましたとおり隊員皆さん誇りを持って使命感を持ってこの任務に当たるということは、今後の自衛隊員皆さん士気高揚の点におきましても極めて重要だと考えておりますので、この件についてお伺いをいたしたいと思います。
  15. 坪井龍文

    坪井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまも先生から大変ありがたい御発言ございまして、かねて我が隊員につきましていろいろ御支援、そういった御理解をいただいているところでございますが、御案内のように本日、ペルシャ湾機雷掃海作業のために海上自衛隊掃海艇等が実際に出帆いたしました。派遣される隊員に対しましては、その処遇につきましてかねてより、隊員誇りを持ち、そして安んじて業務に従事できるようにすることが大変重要であると私ども考えております。このため、今回の業務につ きましては、処遇の面で特別の措置を講ずる必要があるというふうに考えておりまして、関係省庁の御理解も得まして、今後所要の手続を進めて実施してまいりたいと考えております。  その具体的な措置としましては、まず手当につきましては、掃海作業の場合日額一万六百円を、また危険海域におけるその他の業務の場合には日額三千七百円を支給するということが一つでございます。  それから二番目に、賞じゅつ金等でございます。これはもちろん隊員が全員無事に任務遂行して帰還するということを確信しているわけでございますが、万一不幸な事態があった場合、殉職するとかあるいは傷害が起こるといったような場合には、現在の法律公務災害補償法がございますが、その中に五割増しの規定がございます。それで、かねてそういった機雷とか不発弾処理につきましては適用できるようになっておりますので、そういった規定が適用されるというふうに思います。  また、長官から、特にそういった任務遂行中に功績があり、そういった大変危険な業務遂行して殉職するとかあるいは傷害があった場合に、訓令で規定しておりますけれども、現行最高一千七百万円という賞じゅつ金がございますが、今回の場合にはこれに最高一千万をさらに上乗せして支給できるようにするということで関係方面と話がついております。  さらに、新たに総理からも特別な褒賞という制度で、現在警察官等につきましてそういうのがあるわけでございますが、今回の機雷掃海という任務につきましてもそういったものをいただけるふうにさせていただくというふうになっております。  よろしくお願いします。
  16. 増子輝彦

    増子委員 内容等につきましてはよくわかりました。ただ御要望申し上げておきたいことは、やはりこれだけの任務につくわけでありますから、掃海作業につきましての一万六百円あるいは危険海域における業務としての三千七百円、今の世の中の状況から考えますと極めて低い額かなというように今お聞きして感じたわけでございます。さらに賞じゅつ金等に関しましても、ちょうど警察官の方々の比較等もございましたが、この辺はひとつ今後検討をより進められて、後顧の憂いなくこういった任務につくということで、先ほど来申し上げておりますとおり隊員皆さん誇り責任を持って任務に当たるということがやはり極めて今後重要なことかと考えておりますので、その辺をさらに今後の課題といたしまして十分御検討いただきますよう、これは要望ということでお話を申し上げておきたいと思います。  外務大臣に再びお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど大臣所信表明の中にもございましたが、本当に世界の情勢、大変大きな変化があるわけでありますし、ソビエトの国内問題の深刻化という極めて不安定な要因に直面しているということの認識は、まさしくそのとおりでございます。先ごろ、ゴルバチョフ大統領がソビエトの元首といたしましては我が国に初めておいでになった。いわば新しい日ソ関係ということについては、改めて大きなスタート点に立ったのかなというふうに考えているわけでございます。しかし、ソ連を含む今後のアジア安全保障という問題につきましては、国家安全保障世界安全保障ということにつきましてやはり極めて重要な問題かと認識をいたしているところでございます。先ごろの国会における演説の中でもゴルバチョフ大統領はアジア太平洋地域安全保障に関する一連の提案を行ったわけでございますが、政府の見解はいかがかなということと、またあわせ、ゴルバチョフ大統領は二年前の北京演説と同様のソ連軍の一方的削減に関する措置を反復いたしているわけでございますが、この間むしろ極東ソ連軍は質的に増強されているのではないのかなというような認識をいたしているわけでございます。CFE条約による兵器の破壊義務を介して大量の新型兵器がソ連アジア部に移転されてきているわけでありますが、こうした事実に基づきまして、ゴルバチョフ大統領より納得のいく説明は果たして得られたのかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  17. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連アジア太平洋地域における軍備・軍縮の問題についてはゴルバチョフ大統領から触れられたことはございますけれども、大統領の訪日に先立って日本を訪問されたべススメルトヌイフ外相と私との外相会談では、日本としてソ連アジア地域における軍事力の問題については、海上艦艇においては隻数は減っている、しかし戦闘能力は向上している、また一方、ヨーロッパにおけるCSCEの結果、ウラル以東に一万両を超える戦車が移動している、こういう問題について政府としては重大な関心を持っているということを指摘しているところでございます。  いずれにいたしましても、ソ連の軍事情勢というものは軍縮に向かっているという考え方が十分見られますけれども、我々としては現在のソ連の国内政情というものはまだまだ不安定な状況が続いているという認識を持っております。
  18. 増子輝彦

    増子委員 この点につきましては、やはり本当によく見きわめていかなければ真の世界の平和というものを確立することにもならないと思いますし、また、我が国安全保障という観点からも極めて重要な問題だというふうに認識いたしておりますので、引き続きソビエトとの交渉等につきましては大臣の御努力をひとつお願い申し上げるところでございます。  やはり今後我が国が、経済大国ということだけでなくて、真の世界の、政治も一流、経済も一流と言われることにつきましては、より平和、独立という観点からしっかりと国際的な責務を果たしていかなければならないことは先ほど大臣所信と全く同感でございます。その中にあって、東西の冷戦状態というものも大変重要な問題ではございます。これを協調の時代に持っていくということは極めて重要なことではございますが、あわせてアジアの平和というものは、やはり私は、大変重要な、今後の日本安全保障にとっても必要であろうし、またこの点を我が国はしっかりと考えながら平和、安全保障というものを構築していかなければならないと認識をいたしているところでございます。  こういう観点から、我が国掃海艇派遣に対しましてアジア諸国の反応、これは外務大臣のいろいろな御所見をお聞きいたしておりますと、極めて理解をちょうだいしているというようなことも伺っておるわけでございます。これらの点につきまして、今度の掃海艇派遣アジア安全保障にどのような影響を与えるのか、と同時にまた、今回理解を得られるためにはどのような努力を引き続きされていかれるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  19. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の我が国掃海艇派遣の問題とアジア各国の反応はどうかというお尋ねでございますが、一部の国を除いてほとんどの国々は、日本の、平和目的のために戦争状態のない地域掃海作業を行うための出動である、またこれは国際社会への貢献として十分評価できるものという認識各国が抱いております。けさもフィリピンの官房長官日本に来られてお目にかかりましたが、フィリピン政府も大変な理解を示しておりますし、昨日行いました韓国の外相会談においても、韓国は十分理解をしている、こういうことでございます。
  20. 増子輝彦

    増子委員 ひとつ、このアジア各国理解を得るということにつきましても、大臣のより一層の御努力をよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、最後の質問になりますが、やはり日本安全保障ということを考えたときに、どうしても忘れることのできないといいますか、最も重要なものは、日米安全保障体制と日米関係ということにあるというふうに私は考えております。先ほど所信の中にも、「わが国の平和と安全を確保するためにまず重要なことは、日米安保体制堅持 であります。」ということも大臣は述べられておるわけでありますが、まさしくそのとおりであり、同感でございます。今般のイラククウェート侵攻に見られるとおり、アメリカが果たした役割というものは大変すばらしく、また重要なものがあったわけでございますが、今後、国際社会は依然地域紛争などの不安定要因を持っていることはもう御案内のとおりでありますし、我が国といたしましては、引き続き日米安保条約堅持し、その信頼性の強化に努めるということは極めて大事なことだというふうに考えております。  先ほど所信の中にもございましたが、最後にもう一度、日米安保体制意義、これにつきまして大臣所信をお伺いいたしたいと思います。
  21. 中山太郎

    中山国務大臣 日米関係というものは日本外交の基軸である、そして我が国にとりましては、やはり世界で最強の国家日本との安全保障条約の締結国である、こういうことによって我が国の国民の生命、財産の安全、これが我が国防衛力と相まって維持されてきたということは、紛れもない事実でございます。  なお、この安全保障条約は、単に防衛上の問題だけではなしに、経済的にも大きな関係がございます。そういう中で日米関係が良好である、信頼関係が絶えず維持されているということ、これは安全保障の効率的な運用に極めて重要でございまして、私は経済面においても日米間の関係が良好にあるということが、防衛上も経済上も非常に我が国には有利に機能しているということをここで改めて申し上げておきたいと思います。
  22. 増子輝彦

    増子委員 大変雑駁な質問になってしまいましたが、今後、日本安全保障、そして我が国国際社会に対する貢献、これはますます重要であり、我々が果たさなければならない責務だと認識をいたしております。大臣にもひとつ、今後十分健康に注意をされまして、何しろお忙しい方でございますから、世界平和のため、日本のために大いに御活躍、御健闘いただきますよう心からお祈りを申し上げまして、質問を終了させていただきます。  ありがとうございました。
  23. 中山正暉

    中山委員長 それでは、引き続き元信堯君から質疑の申し出がありますので、これを許します。元信堯君。
  24. 元信堯

    ○元信委員 社会党の元信です。  ゴルバチョフ大統領が来日をいたしました。海部総理大臣と数次にわたる首脳会談を行い、共同声明を発して帰国をされたわけでありますが、来日の成果、どういう成果があったのか、各方面から評価が行われているところでありますけれども、北方領土問題が思わしく進展をしなかった、そのゆえをもって失敗じゃないか、意味がなかったんじゃないか、こういう意見も強いわけであります。しかし、ソ連の元首が日本へやってきて、日本の首相あるいは国民と直接交流をしたということは画期的なことでありまして、歴史的にもまた大きな意味があることだと思います。目先の利益だけで失敗あるいは成功を論ずることは誤りであろうと思うわけであります。  きょうは外務大臣日ソ関係について、このゴルバチョフ大統領の来日の成果中心に幾つか質問を申し上げ、あわせて私の見解も申し上げて、これからの日ソ関係をどういうふうに発展させていくか、我が国外交のあり方を議論してみたいというふうに思います。  まず外務大臣伺いますが、今般のゴルバチョフ大統領の訪日の意義とその成果について、総括的な御評価を承りたいと思います。
  25. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連は我々の国の隣国でございます。この隣国の国家元首というものが戦後四十五年間、日本をいまだ訪問をされていなかったという状況の中で、今回ゴルバチョフ大統領が日本を訪問された。この意義は、日ソ関係のこれからの発展にとって極めて重要な一つのターニングポイントになるという認識を持っております。現在日ソ間は、輸出、輸入とも昨年あたりで約三十億ドルずつでございます。人の往来は、日本から大体二万四千人、ソ連から一万七千人くらいの人が日本に往来をしております。そういう中で、我々は最恵国待遇を一九五六年にソ連に与えておりますが、やはり政治的な安定が築かれていくということが両国の経済の協力にも大きく反映をしていく。こういうことから考えますと、ゴルバチョフ大統領の訪日を契機にこの領土問題が、従来かつて文書上、領土問題として歯舞、色丹、国後、択捉の四島が二国間に存在しているということが書かれたことはございませんでしたが、そういう意味から考えますと、これからの日ソの二国間の協議一つの大きな舞台が今回の大統領訪日ででき上がった、このように認識をいたしております。
  26. 元信堯

    ○元信委員 我が国ソ連の関係が、今外務大臣がおっしゃられるように、画期的な一つのエポックを越えた、こういう御見解、御認識でありますけれども、今回のゴルバチョフ訪日について、アメリカからはどのような働きかけがあったのか、あるいはまた評価について、アメリカ、それから中国、韓国、そこら辺からはどういう評価があったか、今の段階で承知されていることを伺いたいと思います。
  27. 中山太郎

    中山国務大臣 まだ正式に米国政府からコメントを私あてにいただいているわけではございませんが、アメリカの政府筋の考え方として、今回の訪日というものは領土問題について一定の進展があったというふうな認識を持っていると聞いております。  一方、中国もこのゴルバチョフ大統領の訪日というものについてはそれなりの、日ソ関係が進展していくことについて大きな関心を持たれていると思っております。  いずれにいたしましても、周辺国がどういう考えを持っているか。昨日は韓国の李外務大臣が訪日されまして外相会談を行いまして、日本におけるゴルバチョフ大統領の訪日の際のいろんな両国間の話し合いの経過、また済州島における韓ソの首脳会談の経過等も意見の交換を行ったところでございます。
  28. 元信堯

    ○元信委員 全般的に、日本ソ連の関係が改善することについて、今申し上げました諸国から異論がないのはもちろんだと思いますが、歓迎をする空気にある、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  29. 中山太郎

    中山国務大臣 そのとおりでございます。
  30. 元信堯

    ○元信委員 ゴルバチョフ大統領は、国会の演説でも触れられましたけれども、日本ソ連、アメリカ、中国、インドによる五カ国協議、あるいは日本ソ連、アメリカの三カ国協議、さまざまな協議ですね、それから環日本安全保障協力の提案をしたと思いますけれども、我が国政府はこれに対してどのような反応をいたしましたか。
  31. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府考え方といたしましては、中、米、ソ、印、日、この五カ国のいわゆる安全保障会議を持つという考え方、これについては特に日本政府としてコメントをするということは差し控えさしていただきたいと思います。  きょうも冒頭この安全保障上の外務省としての見解を申し上げましたが、ヨーロッパとアジアとの地政学的な相違、民族学的な相違、宗教的な相違、いろいろな、海洋も相当大きな海洋をアジア太平洋地域は持っておりまして、そういう意味では、ヨーロッパに対する考え方と同じような考え方アジア・太平洋における安全保障を議論するということはまだ時期尚早ではないか。我々は、まずこの地域紛争解決するために、カンボジアの和平会議あるいは朝鮮半島の南北の話し合いというものを促進させていくということが極めて重要であるという認識を持っております。
  32. 元信堯

    ○元信委員 特に、朝鮮半島の安定がこれから日本ソ連双方の共通の興味の対象になるというふうに思われますけれども、そういう意味で環日本安全保障協力が提起された意味は大きいと思います。これに対しても我が政府は今のところ乗らないというような態度だと承知しますが、それはどういう理由によるものでしょうか。
  33. 中山太郎

    中山国務大臣 環日本海をめぐる安全保障という問題は、極めて重要な問題であると認識をいたしております。今回のソ連側の提案もございま す。また一方では、カナダの前の外務大臣のクラーク外務大臣が言っておりますのは、北半球のアメリカ、日本、カナダ、ソ連、中国、ここらがここで朝鮮半島安全保障問題を議論する一つ考え方というものを示しておられます。  いろいろとございますが、いずれにいたしましても、環日本海の安全保障というものには関係国が既にあるわけでございますから、我々は、この朝鮮半島の安定のために各国とそれぞれ協議を進めながら、将来の環日本海の安全保障という問題が議論される場も構築していくべきであろうと考えております。
  34. 元信堯

    ○元信委員 今般のゴルバチョフ大統領の訪日によって北方領土問題が大きく進展すると期待していた向きも国民の中には多いと思います。しかしながら、日本政府が目指しました四島の主権の確認、これもできなかった、そのことで失望された向きも多いと思いますが、冷静に考えてみれば、今ソ連が実効的に支配をしている領土をそう簡単に手放すというわけにはいかぬだろう、そんなふうにも思われます。なぜ訪日前に国民の中にゴルバチョフ訪日によって四島返還の見通しがつくとの期待が大きかったのか、その理由は、ゴルバチョフ訪日に先立つ小沢自民党幹事長の訪ソによって、経済協力と引きかえに領土問題が進展する、そういうような幻想を国民が抱いたからではないか、そんなふうに思われる。一体、小沢さんは何のためにソ連に行かれて、どのようなことを話し合ってこられたのか。特に、領土問題について下話をしたというのですけれども、どんな話があったのか。外務大臣、報告は受けておられると思いますので、その内容についてお知りのところを承りたいと思います。
  35. 中山太郎

    中山国務大臣 この小沢前自民党幹事長の訪ソにつきまして、これはあくまでも党の幹事長という立場で行かれたものでございますから、政府として特にコメントを申し上げるわけにはまいらない、遠慮さしていただきたいと思いますが、この行かれた一つの目的は、ゴルバチョフ訪日を控えての日ソの話し合いの突破口ができるような努力をされたというふうに私は認識をしております。
  36. 元信堯

    ○元信委員 それが結果的に言うと、国民の中にいかにも訪日によって一挙に前進をするというような過大な期待を持たせる、あるいはまた、それを経済協力とリンクをさせることによってソ連の中には逆に円で領土を売り渡すのじゃないか、こういうリアクションを引き起こした、そういう意味で甚だまずかったのじゃないか、今日そう言わざるを得ないわけであります。閣僚として外務大臣が、与党の幹事長が余分なことをしてくれた、こうはおっしゃれないのは重々承知をしているところでありますが、どうもそういうふうな気分でおいでになるのではないかと推察をするところであります。  そこで、北方領土の返還に向けて、ソ連は今度の共同声明の中に四島の名前を記載することに同意をした、これは前進であると今もお話がありました。先ほど所信表明の中でもそういう評価をされております。名前は記載をされたわけでありますけれども、この後、返還交渉というのをどういうふうに進めていかれるのか。ここまで来たのは今までの一貫した外交成果である、こういう御評価のように先ほど承りましたけれども、今後も返せ返せの一点張りでいけるものなのか、そこのところを承りたいと思います。
  37. 中山太郎

    中山国務大臣 今回、日ソの首脳で六回にわたる議論が十三時間にわたって行われました。私もその間、五回同席をいたしておりますけれども、極めて激しいやりとりがございました。日本の主張またソ連の主張ございましたけれども、私はそこで、この共同声明案文が双方であのような文章で発表されるという中に、ソビエトもまた、領土問題を解決すればこの日ソの関係はさらに飛躍的に発展するという印象を特に持たれたものと確信しております。  私は、こういう領土交渉というものは、そう簡単にいくものではないということは歴史が証明しておりますから、やはり双方の政治的な環境、こういうものが熟してくる必要がありますし、またいろいろとこれから行われる日ソ協力、そういうものを通じて信頼が醸成されていく、そういう中でいろいろと、この二国がアジア・太平洋のともに存在する国家として、どのような良好な関係を構築すればアジア・太平洋における協力ができるかということを協議する場はこれからも数多いと思っておりまして、案文にもございますように、加速的にいろいろな人たちが接触をして意見の交換を行っていくということは極めて重要な一つの入り口になるだろうと考えております。
  38. 元信堯

    ○元信委員 今やソ連はかつてのような共産党の一党独裁の国ではありませんね。大統領なり書記長なりが、領土の一部を割譲する、島を返還する、そう言えばいや応なしに国がそういうふうに動くというわけにはまいらない。実際問題として、ソ連の連邦を構成いたしますロシア共和国、ここが決議をいたしまして返さないということを明言しているわけでありますし、さらにまたソ連の世論調査の結果なども日本にとって極めて厳しいものである、この辺は御承知されているというふうに思います。  そこで、まず手続論として、返還を実現する道筋は連邦と話がつけばいいのか、あるいは共和国とも話をしなければならぬのか、その辺の相手側の適格についてどのような認識で交渉されておるのか、そこのところを教えていただきたいと思います。
  39. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連の国内法あるいは憲法に基づいて外交権は連邦政府が現在保持していると私どもは認識をいたしております。しかし、先般のべススメルトヌイフ外相との外相協議の際も、モスクワでもそうでございましたが、ロシア共和国の外務大臣が同席をいたしておりますし、今回のゴルバチョフ大統領の首脳会談におきましてもロシア共和国の外務大臣が連邦の外務大臣と同席をされておられました。こういうことで、これからやはり日本政府としては連邦の外務省といわゆる外交チャネルとしては交渉する必要がございますけれども、今や、先生も御指摘のように、ソ連は世論の国になっておりますし、共和国制が認められておりますから、やはりそのロシア共和国にも我々は十分な日本への理解を求めるような努力をしなければならない、このように考えております。
  40. 元信堯

    ○元信委員 大変複雑なチャネルということにならざるを得ないわけです。したがって、今要件として考えられることは、ソ連の国民の半分以上の人がまず日本に北方領土を返還してもいい、こう考えなければならない、そしてその中でもとりわけロシア共和国においても同様のことでなくてはならない、さらにまた当事者中の当事者であります、あれはサハリン州になるのでしょうか、サハリン州、それから当該の四つの島に住んでいる人たちも、これは過半数なんというものじゃなくてみんなその気にならなければ出ていってくれるものじゃありませんね。そういう意味で、結局のところ、国家間の交渉と同時に我々としてはソ連の国民に対していろいろな形で働きかけをしていかなければならぬだろう、国民と国民との関係が改善をされなければこの問題は解決しないだろうというふうに考えます。ソ連の国民に働きかける方法としてどういうようなことをお考えになっているか、承りたいと思います。
  41. 中山太郎

    中山国務大臣 やはりこの日本理解してもらうということが極めて重要でございまして、そういう意味では、一つ日本からの人間の往来、ソ連の人たちが日本へ来ることを多くするように我々は協力をする、こういうことが一つ原則としてあろうかと思います。そのほか、一般の日本の情報についてソ連の方々に御理解をいただくことが重要であろうと思います。例えば衛星放送等につきましても、現在はソビエト圏内では日本の海外放送は聴取できないような状況にあると私どもは報告を聞いております。そういうことで文化の交流というものも盛んにやっていく必要がある。特にサハリン州あるいは四島の方々との交流を積極的にこれから進める必要がある、このように考 えております。
  42. 元信堯

    ○元信委員 日ソ両国民間の交流あるいは関係改善を図る上で、過去をどのようにとらえるかということも感情面で非常に大きな意味があると思うのです。今度ゴルバチョフ大統領は、訪日に先立ってシベリアで日本人の抑留中に亡くなった方のお墓に参拝をされましたし、あるいはまた日本へ到着になってからも、これはなかなか言い回しが難しいのですが、同情あるいは哀悼ですか、というふうに理解できる言葉もあったわけですね。そこで、このゴルバチョフ大統領の一連の行動あるいは言動を外務大臣としてどのように評価されておるかということが一つ。  それからもう一つは、過去の問題については、日本人も被害者意識ばかりでもしようがないんじゃないかなというふうに思います。確かに戦争が終わる直前にソ連が突如参戦をしたということ、そして戦争捕虜をシベリアに抑留してたくさんの死者を出したということ、あるいはまたその前後に北方領土を不法に占拠したこと、これらは我が方から見るとなかなか承服しがたいというところがあるわけでありますが、また同時に、日本も今までロシアなりソビエトなりに何にもしなかったかというとそうでもありませんね。例えば、シベリアに出兵してロシア革命に干渉した、これも歴史の事実であろうというふうに思います。  その過去の問題について、ゴルバチョフ大統領はさっき言ったように一定の意思表示をされたわけですが、今回の訪日に際して、日本側からの日ソ間の過去について何らかの言及がありましたでしょうか。
  43. 中山太郎

    中山国務大臣 首脳会談で正式な議題として日ソの過去の問題について議論をされたことはなかったかと思いますが、雑談の中でいろいろな話が出ました。特に私は、ゴルバチョフ大統領が長崎のロシア人墓地を訪問されるということで同行いたしましたけれども、やはりそこには、むしろこの異国の地に果てたロシアの人たちに対するソ連の大統領としての感情というものが大統領の胸に深く起こっておったと私は肌で感じております。しかし、過去を忘れて大統領は、日本の人たちに、自分は感謝している、ここにソ連の人たちがたくさん葬られて手厚く祭られているということに感謝しているということをぜひ伝えてもらいたいということを長崎の日ソ友好の碑の前で言われました。こういうふうなことを越えて両国がこれから新しい関係をつくっていくということが私は大変大切ではないか、このように考えております。
  44. 元信堯

    ○元信委員 そのとおりだろうと思います。そこで、我が国日ソあるいは日露間の過去について何らかの意思表示をすることもまた必要ではないかなというふうに思います。さきに盧泰愚大統領が見えたときにもそのことに言及がありましたし、我が方の総理大臣からもその旨お話がありました。今回は今大臣の御答弁の中にありましたように正式にはそういう話はなかったということでございますが、これは大臣のお考え方を承りたいと思いますが、シベリア出兵などを通じて日本が過去においてソビエトに迷惑をかけたということもある、こういう認識はお持ちになっているか、そのことだけちょっと伺いたいと思います。
  45. 中山太郎

    中山国務大臣 歴史の事実として、そういうことがあったということはよく存じております。
  46. 元信堯

    ○元信委員 前にもそういうことをいろいろ言って、例えば中国や朝鮮半島に対する侵略のときもそういうことを言っていましたが、私は歴史の事実としてあったかどうかじゃなくて、迷惑をかけたという認識があるのかどうか、あればまたあったでそれなりの対応があろうかというふうに思うわけでありますが、後ろの方も寝てないでよく聞いて、大臣に適切なるサゼスチョンを与えてもらいたいと思います。
  47. 中山太郎

    中山国務大臣 どういうふうな迷惑をかけたかということでお尋ねでございますが、歴史の事実としていろいろなことが過去にあったことは私はこれは率直に認めなければならない、しかし、双方にそういうことがあったということではないか。ただ、その国家間の意思によって例えば自分の命を失ったとかあるいは傷ついた、そういった方々には、そういうふうな国家間の意思とは別に我々は心から哀悼の意をささげなければならないし、見舞うという気持ちを持っていなければならない、このように考えております。
  48. 元信堯

    ○元信委員 事実はそのとおりですね。問題は、それをどういうふうにとらえるかということにあるわけでして、今度のゴルバチョフ訪日によって向こう側からは哀悼なり同情なり、申しわけなかったというニュアンスだろうと思うのですけれどもお話があったと思う。日本側からは全然そのことに触れないというのは、ちょっと今後の両国の交流をしていく上で感情面での障害にはなりはせぬか。いつもそうなんですけれども、政府は聞かれるとそういう事実があったなどと言って、どんどん突っ込まれてくると最後には申しわけなかった、こういうことになっていたのではないかと思いますが、そういうことがないように先手といいますか、必要なことはこちらからも率直に言う。どうせ過去のことは片一方が一方的によくて一方的に悪いということはないのです。お互いにそういうことがある、そういうことをはっきり見詰め合った上で将来の新しい関係をつくっていこうじゃないか、この態度でひとつお願いをしたいと思うのであります。  北方領土の返還に至る道筋、日ソ間の人的な交流、情報の交流をもっと進めなければならない、こういう大臣のお話、まことにごもっともであるというふうに思います。私は国家間の関係はそういうことであろうと思いますが、国民の間でももっともっと交流をする、いわば日ソの間の垣根を低くする、こういう対応が必要なのではないか。先ほど数字を挙げて御答弁をいただきましたが、人的交流もまだ双方二、三万人ということで、全国民的な交流ということにはならない。日ソ間は一番近い国、国境を接している国でありますから距離的には近いのですけれども、そういう交流の面では遠い国と言わざるを得ないわけでありまして、これを国民レベルに推し広げていくということが必要ではないか、こう思うわけであります。  そこで、角度をちょっと変えて議論をしてみたいというふうに思うのですが、北方領土返せ返せと言っておっても返すものでもないし、返そうかな、返してもいいなと思うような気分というのが両方にできるためには、その間に経過的な、過渡的な措置というものがやはり何らか必要なんじゃないかなというふうに思いますね。一遍に白から黒へ、黒から白へと百八十度ひっくり返るということは実際問題としては難しいわけでありまして、そういう考え方一つの提案をしてみたいというふうに思います。  北方領土というのは、今は日ソ間の問題、歴史的にさかのぼって言うならば日露間の問題として議論されていることが多いわけでありますが、日本がまだそういう島があることを知らない時代、あるいはロシアも、あれはたしかコサックが毛皮を求めてカムチャッカからおりてきてクリール諸島を発見した、こういうふうに承知しておりますけれども、その前にはあれらの島々には、先住民族と今言われておりますが、アイヌ、ギリヤーク、オロッコ、こういうような民族が住まっておったわけであります。  現在日本にいるアイヌの人々が、北方領土の交渉に、もともとあれはソ連の島でもなければ日本の島でもない、アイヌの島なんだから、アイヌ抜きで交渉するのはおかしいじゃないか、我々もその交渉に入れるべきである、こういうふうに要求をされているのは御存じであろうというふうに思います。この人たちで組織をしているウタリ協会の方が政府に対してこの交渉に参画をさせるように要求をしておるというふうに伝えられておりますが、どのように承知をされておるか。あるいはまた、先ほど申しました、もともと先住民族の島であるから先住民族に返すべきである、こういう主張についてどういうふうにお考えになってい るか、承りたいと思います。
  49. 高島有終

    ○高島説明員 お答え申し上げます。  アイヌ民族の先住権というお話があることは承知いたしておりますけれども、その内容、政府としてそれをどう扱うべきかという点につきましては、外務省として判断し得る立場にあるとは考えておりません。  いずれにいたしましても、北方領土が我が国の固有の領土である以上、それを日本に返還を求めるという我が国政府の立場は一貫している、今後も変える意思もないということを改めて申し上げておきたいと思います。
  50. 元信堯

    ○元信委員 外務大臣伺いたいと思いますが、我が国は単一民族の国であるというふうにお考えか、それとも我が国の中にはアイヌ民族というものもあるというふうにお考えになるのでしょうか。そこの認識、ちょっと教えてください。大臣政治家としての御認識を承ります。
  51. 河村武和

    ○河村説明員 いわゆる一般論として、外務省といたしましてアイヌの人々が少数民族であるかどうかということについて申し上げる立場にはないということについて、先生の御了解、御了承をいただきたいと思います。
  52. 元信堯

    ○元信委員 だから役人じゃだめだと言っているんです。政治家としての大臣はどういうふうにお考えになっているか、そこのところを承りたい、こう言っておるんです。
  53. 河村武和

    ○河村説明員 繰り返しで恐縮でございますけれども、これも先生御存じのとおり、現在内閣の内政審議室を中心にしてアイヌの方々の諸問題について討議をしているということでございますので、いわゆる一般論としての少数民族であるかどうかということについてのお答えですと、私たちとしては申し上げる立場にないということでございます。
  54. 元信堯

    ○元信委員 そう思うから聞いてないのに、出てきて返事をするので話がややこしくなる。  これはもう結論出ているのですよ。昭和六十二年五月十五日、沖縄及び北方問題に関する特別委員会、ここで当時の後藤田国務大臣、官房長官でしたかが、我が党の五十嵐広三議員の質問に答えて、「歴史の流れの中でも今問題になっておるウタリの諸君、これは二万とも三万とも言われますけれども、その方々が北海道におる。これは少数民族である。特殊の習慣、言語等も今日持っておるということであれば、これはやはり日本には少数民族は存在する、こう言わざるを得ません、こう私は申し上げているのです。」こう当時の官房長官が言っているわけでありますから、今ごろ外務省の審議官が、もともと答える立場にありもしないのに出てきてそのような自明のことを言うというのは時間のむだである、このように申し上げておきたいというふうに思います。  外務大臣、きょうは揚げ足取りっこをやっているんじゃないんで、建設的な議論をやろうと思っているのですから、率直にお答えいただきたいと思いますが、審議官が神経質に出てきて言うのは、国連の人権規約のB規約の中にある抑圧されている少数民族であるかどうかということを日本国連人権委員会に何て言うかということがあるものだから、そこへひっかけられるかと思ってああいうようなことを言うわけでありますが、そんなことを言っているわけではさらさらない。アイヌの人がいてそういう要求をしている、そういうことをベースに話をしたいと思っているので、アイヌ民族というものが日本にいるということについては、大臣の立場でひとつ確認をしてもらいたい。
  55. 中山太郎

    中山国務大臣 先ほど御引用になりました後藤田官房長官国会での発言等も踏まえて、私どもはやはり北海道周辺にそのような方々がおられるということは十分認識をいたしております。
  56. 元信堯

    ○元信委員 そうでしょう。  ちょっと遺憾なことを申し上げておきたいと思いますが、かなり昔の話ではありますけれども、古川清さんという人が、北海道大使をされておった方ですが、一九八九年三月十四日、根室市で「最近の国際情勢」という講演をされて、民族問題というのは日本にはございません、こう言われて、日本は単一民族国家であるというようなことを講演された。そのことは御承知になっておるというふうに思います。そういうような認識が広く外務省の中にあるものだから、今の審議官のような発言が出てくるんだと思いますので、ここのところは、少数民族問題、少数民族が日本に存在するということを外務省もこの際よく心得て、一々そういう余分なことを言わないようにひとつしてもらいたいと思います。  それを踏まえて伺うわけですが、北方領土返還に至る経過的な措置、過渡的な措置、そういうものを幾つか考えてみたいと思うのです。今度ゴルバチョフ大統領は、共同声明の中で、北方領土へのビザなしの入国を認めるという提起をされているわけですけれども、これに対して政府はどのように対応されるつもりですか。
  57. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の共同声明の中に今委員御指摘の項目が記載されております。これはその文章の中でソ連側が一方的に提案をされたという形になっておりまして、日本政府はまだ合意をしたというところには至っておりません。しかし極めて貴重な意見であるということでそのパラグラフが構成されているというふうに認識をいたしておりますが、具体的にこれからどうなるのかという問題につきましては、そこに行かれるという場合にどのような具体的な手続、これは実際問題として証明書になるのかどういうことになるのか、それはこれから二国間で協議をする必要があろうかと思います。  私どもが一番心配をいたしておりますことは、一つの例でございますけれども、旅行者が行かれた場合に単に写真を撮る、当然軍事施設があるわけでございますから、そういったような場合に、機密保護法のようなことがもしあったとした場合にそれが直ちに法律違反行為として逮捕される、その場合の裁判管轄権というものは一体どうなってくるのかといったような問題が一つの例として考えられますけれども、幾つもそのような案件があろうかと思います。そういうことを踏まえて日ソの間で、せっかくのソ連政府の提案でありますから、こういう申し出が効果的に生かされるような話し合いをこれから進めてまいらなければならない、このように考えております。
  58. 元信堯

    ○元信委員 そうすると、技術的な詰めはいろいろあるけれども、方向としてはゴルバチョフ大統領が提起をしたビザなし入国ということについて日本は前向きに受けとめる、その方向でこれからの話をする、こういうふうに確認しておいてよろしゅうございますか。
  59. 中山太郎

    中山国務大臣 そのように御理解いただいて結構でございます。
  60. 元信堯

    ○元信委員 そういうことで往来はかなり自由になるということになります。  そうすると、何人かの方から提案があるわけですが、北方領土というのを共同管理の島としてはどうかというような問題がその次に出てくるのではないか。どっちが持っているとかいうことは抜きにして、それを両方で入会地のような感じにするというようなことも出ていると思うのです。それは今の時点から言うのはちょっと難しいかというふうに思いますが、少なくとも北方領土周辺の漁業専管水域を共同で利用するというようなことについては考えてみる必要があるのではないかというふうに思います。それも、何とか島沖何とかと言うとそれは向こうの領有権を認めることになるからぐあいが悪いというのがこれまでの外務省の公式的なお立場であったというふうに思いますが、実際問題としては、例えば貝殻島周辺の昆布漁については、民間協定で何とか島という表現を使わない、北緯何度、東経何度という地点、こういうふうに地図の上に座標をつくって、その中で共同の漁業をする、認めるというようなことをしてきた長い歴史があるわけでありまして、それを発展する形で、北方領土の漁業専管水域に係る資源の共同開発などは検討の対象になるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 高島有終

    ○高島説明員 お答え申し上げます。  申し上げるまでもなく北方領土は我が国の固有の領土でございます。そして、先ほども申し上げましたように四島一括返還という立場を堅持しているところでございます。したがいまして、我が国固有の領土について、あるいは領海も含めまして、共同管理とするような考え方は今のところ全くとっていないところでございます。
  62. 元信堯

    ○元信委員 それだから審議官が出てきたらだめだと言うのだ。政治的な決断として——今までがそうだったということは、そんなことは言われなくても百も承知をしておる。これからの考え方として、そういうところで共同の事業を積み上げていくことが日ソ間の垣根を低くして、北方領土を返還してもいいじゃないかなという世論をつくる、その契機になるんじゃないかと言うのですよ。あなたみたいなことを言っておったのでは、いつまでたっても公式的な立場を両方でぶつけ合っておるだけで、これは百年たっても二百年たってもそういうことは起こらないと僕は思いますよ。  一つのケースとしてこのことをお聞きいただきたいと思うのです。外務大臣御存じかどうか、細かいことですが、ウタリ漁業生産組合の問題というのがありましたね。これは、北海道のアイヌの人々がソ連のサハリン州の漁業公団と合弁事業として国後島沖で、ニジマスの品種であるドナルドソンマスというのがあるのですが、これを海中で養殖しようじゃないか、その資金をつくるために、ソ連がハナサキガニを百トンとってウタリ漁業生産組合に無償譲渡する、そうしてこの養殖は日ソの合弁で行うということで、ウタリ漁業生産組合が一つの会社を興してやっていこうという協定を締結したというわけですね。実際に国後島沖に生けすもつくり、稚魚の放流もしというところまでいったわけでありますが、外務省が今審議官からお話のあったような立場、しゃくし定規に介入をして、それはソ連日本国内分断工作である、こういう立場からかれこれお話があって、あるいはまた水産庁も漁業法に違反する、漁業権を設定せずに養殖漁業を営んだ、こういうことだろうと思いますが、そういうことを言い立ててさんざん圧力をかけて、結局この事業は実施者の側が折れて、国後島沖から生けすを引っ張ってまいりまして日本の領海まで持ってきてそこでやろうとしたところが、折あしく大風が吹いて生けすはひっくり返った、おじゃんになった、こういう経過になりました。そのプロセスでいろいろなことがありまして、例えば右翼がこれに圧力をかけて船に放火をするというような事件もありましたし、あるいはまた、このウタリ漁業生産組合の方がソ連協定をしてカニをとったというので、これまた今度は北海道漁業調整規則でしたか、これ違反で検挙をされる、有罪判決まで受ける、こういうようなさんざんなことになったわけであります。  まあ時期が尚早であったと言えばそのとおりかもしれませんけれども、今後このような形での合弁事業、つまり一応領土領海問題というのは棚上げにして、棚上げにした例がないわけじゃありませんから棚上げにして、そうして共同事業の枠を拡大する、しかも、それに先ほど申しましたアイヌの皆さん参加をしていただく。もともと北方領土はアイヌの島であった、あるいはアイヌだけじゃなくてギリヤークその他の少数民族の島であったというのも歴史的な事実でありますから、そういうことも加味をして、少数民族によるそのような、これは日本だけじゃありませんよ、日本だけじゃなくてソ連の少数民族も加えた共同事業を行う。今の段階で言うと何をとっぴな、こう思われるかもしれませんが、私は一つのアイデアとして検討する価値があるのではないか、こう思うのですが、これはお役人じゃなくて外務大臣の御意見を承りたいと思います。
  63. 中山太郎

    中山国務大臣 今回の共同声明の三パラグラフにございますけれども、「ソ連側は、」「この地域における共同の互恵的経済活動の開始」ということが文言として出ております。このソ連側の提案について日本政府はこれから政府間の事務レベル協議を持ちたい、このように考えておりまして、こういう提案の中に今委員御指摘のような問題が議論として出てくるという可能性は十分あろうかと考えております。
  64. 元信堯

    ○元信委員 大変結構だというふうに思います。  今の外務大臣の御答弁は、外務省のお役人から見ると、何だか口をとんがらかしておいでるように見受けますが、そもそも政経不可分ということだけをやたらに言い立てて、まず領土ということだけが大前提というふうにやっておりますと、これはもう事態は動かないと思うのですね。相手側の感情だってそれで改善、緩和されるわけがない。金があるから金で張り倒して買ってこようなどということが通用するわけもないわけでありまして、やはり英断の時期でないかというふうに思うわけです。領土問題は棚上げにできないよということをおっしゃる向きもあろうかというふうに思いますが、しかし今まで日本が隣国との間で領土問題で全然紛争がなかったかというと、そうでもないと思うのですよね。幾つかあったと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ほかの国との領土問題につきましては、韓国との間で竹島の領有権が一つ紛争になっております。これは御承知のとおり、日韓国交正常化の際に非常に大きな問題になりまして、話し合いの結果、紛争解決交換公文というものができまして、まずは外交交渉、これで片づかない場合には第三者による解決ということで、この問題は紛争としていまだ残っているわけでございます。これは決して棚上げにしたという問題ではございません。  それから、しばしば尖閣列島の問題が言及されるわけでございますが、これは我が国固有の領土でございますし、また我が国が現に実効的に支配している領土でございますので、我が国の立場からいたしまして領土問題があるということではございません。ましてや棚上げということではございません。
  66. 元信堯

    ○元信委員 それじゃ竹島問題ですね、交換公文で処理をした。今どうなっています。
  67. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 遺憾ながら韓国側がこれを事実上支配しているということでございまして、機会あるごとに我が国からこれに対して抗議を申し入れているわけでございます。また、竹島の現状を毎年巡視しておりまして、この現状の把握にも努めております。
  68. 元信堯

    ○元信委員 先ほど第三国を入れて云々というお話がありましたけれども、そういう手続をやっていますか。
  69. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 まずは日韓両国間で外交交渉によって平和的に解決するという方針でございまして、遺憾ながらまだ解決のめどは立っておりませんけれども、この問題につきましては先ほど申し上げましたとおり、いろいろな機会に外務大臣のレベルも含めまして我が方から提起しているところでございます。
  70. 元信堯

    ○元信委員 いやいや、聞いたのは、第三国を入れてというようなお話があったけれどもそういうふうにしているか、していない理由は何か、こういうことです。
  71. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 結論から先に申し上げますれば、まだその紛争解決交換公文に言っておりますような手続はとっておりません。  この紛争解決交換公文、念のために主たる部分だけ読ませていただきますと、「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」こういう合意でございます。今のところ、両国間で何とか解決しようということで、まだこの調停というような手続はとっておらない次第でございます。
  72. 元信堯

    ○元信委員 紛争解決交換公文を交わしてから何年たちましたか。
  73. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 国交正常化は一九六五年でございます。したがいまして、それ以来、三十年には至りませんけれども相当な期間がたっておりま す。
  74. 元信堯

    ○元信委員 三十年間もほうってあるのを棚上げと言うんだと思うのですよ。しかもこのことがほかに影響を及ぼしていないかというと、例えば日本の漁業専管水域の問題にこれは影響を及ぼしていますね。きょうは水産庁から海洋漁業部長においでいただいていると思いますが、竹島の問題、尖閣列島の問題が日本の漁業専管水域にどういう影響を与えているか説明してください。
  75. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 水産庁からお答えがあります前に、このいわゆる漁業水域の点につきまして私から簡単に申し上げたいと思います。  御承知のとおり昭和五十二年に我が国も二百海里体制に入りまして、暫定漁業水域、二百海里の水域を設定したわけでございますが、韓国そして中国との間におきましては別途漁業協定が御案内のとおりございまして、そのもと秩序のある漁業関係ができているということで、我が国の場合には、東経百三十五度でございましたか、以西の日本海及び日中間の共通の関心のある海域につきましては漁業水域を設定しておらないわけでございます。したがいまして、そのような水域におきましては領海十二海里ということで、それ以外の点につきまして現行の漁業協定によりまして双方で秩序立った漁業関係を持っているということでございます。  ただ、韓国との関係におきましては、御承知のとおり、韓国がソ連等の二百海里から締め出されたというような事情がございまして北海道周辺に大型の韓国漁船が来たという経緯がございまして、このような問題につきましては自主規制ということで話し合いをいたしまして、そのような取り決めを、双方に自主規制を行うというような形で秩序をつくるようにしておる次第でございます。
  76. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 すべて今外務省の方から話のあったとおりでございます。
  77. 元信堯

    ○元信委員 表面上そういうことだろうというふうに思いますが、今柳井さんからお話があったのを地図に落として見てみれば竹島がどこにあり尖閣列島がどこにありということで、結局はその問題を表に出さないためにそういう処理をしている、これはそういうふうに受け取るほかないと思うのですね。このことは無関係なんてことはあり得ない。ということを言いましたのは、要するに領土問題がネックになって相手方との話が全然できないというようなことはないんじゃないか、今までも。やる気になればできることではないかと思うから申し上げている次第であります。何度も申し上げますが、かたくなに領土問題をまず解決してというふうに言っているばかりでは膠着してしまう、こういうことを申し上げておきたいと思います。  次に軍事問題でありますけれども、共同声明の中では、北方領土に駐屯している軍隊の削減というのが、これも一方的に提起されました。これに対して、北方領土が中立化、非武装化されるその第一歩であるとすれば非常に歓迎すべきであるという見方と、そんなものは幾らでも関係ない、あんなものは国境守備隊のごとき兵力であるからどっちでもいいんだ、顧慮に値しない、二つの評価があるように思いますが、外務大臣、どちらの評価をとられますか。
  78. 中山太郎

    中山国務大臣 日本政府考え方としては、削減ということは同意をいたしかねるということでございます。我々は、撤退ということが日本政府としての基本的な考え方で交渉に臨んでおります。
  79. 元信堯

    ○元信委員 軍備というのはおよそ双務的なものである、片っ方が下げれば片っ方もやはりそれに見合った措置というものが必要になろうかと思いますが、今大臣から撤退へ向けた一定の前進であるというふうに評価をされるとすると、我が国としてはどういうような措置をとるべきであるとお考えでしょうか。
  80. 高島有終

    ○高島説明員 お答え申し上げます。  もう申し上げるまでもなく、北方四島は我が国の固有の領土であるという基本的な立場、それからさらに日ソの信頼関係を構築していくという観点から見ましても、北方領土にソ連軍がいるという事態は我が国として容認できるものでない、そういう観点から、ただいま外務大臣から削減でなく完全な撤退を要求するということを御答弁申し上げた次第でございます。今後ともまさにそういう観点から撤退を求めていくということでございまして、これはこれに見合って我が国が何か措置をとるといったたぐいの話ではないというふうに認識いたしております。
  81. 元信堯

    ○元信委員 どうもお役人が答弁に出るとかたいばっかりでどうしようもないなと思うわけでありますが、大臣どうなんですか、ちょっと今大臣のお話があったのとニュアンスが違うように思うのですよ。考え方はどうであれ、我が国に極めて近いところに軍隊が駐屯をしておる。その軍隊が削減をするというのは、これは本来全部撤退してもらわないかぬのだろうけれども、今あるのが削減されるというのは結構なことではないか、こう私御質問しましたところが、肯定的なニュアンスの御答弁と思いましたら、こっちからいやそんなことじゃないと言うので、どうなんです。
  82. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、もう一回申し上げますけれども、削減ではなしに撤退を求めているというのが日本政府の基本的な立場でございまして、今政府委員が答弁いたしましたのと全く同一でございます。日ソ首脳会談においても、海部総理からはそのような強い意思の表明がございました。
  83. 元信堯

    ○元信委員 そうすると、撤退が実現されぬ以上は削減しようがどうしようがそんなことは知らないよ、関係ない、我が方もそれに対してどうこうする意思はない、こういうことですか。
  84. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 軍備管理と申しますか、軍縮という観点から一言だけ申し上げたいのでございますけれども、もとより北方四島から撤退がなされれば、これは当然歓迎すべき事態であると考えております。ただ、軍備の均衡という観点から申しますと、北方四島に現在あるソ連軍と我が国の例えば北海道にある日本の自衛隊との均衡ということだけを比べておりますといわば非常に部分的なことになるわけでございまして、ソ連の場合には極東の地域あるいはサハリンその他に軍があるわけでございますので、日ソ間の軍備の均衡、この地域における安全保障という全体的な考え方でこの問題は取り扱っていくべきだろうというふうに考えております。
  85. 元信堯

    ○元信委員 最後に一つだけ伺いたいと思いますが、ソ連は今大変な社会的な混乱の中にあるというふうに伝えられています。私も昨年の暮れに、社会党の食糧援助の伝達のために一週間ほどモスクワへ行ってまいりました。その間にモスクワの市場なども詳しく視察をしてきたところであります。もう全く物がなくて、国民の生活上の忍耐も限界に達しつつある、非常に不満も強まっているということであります。このままほっておきますとペレストロイカは失敗に終わって、ゴルバチョフ大統領はもちろんのこと、ソ連邦全体の枠組みが崩壊するのではないかというふうに思います。せっかく今まで積み上げてきたものが、そんなものが全部崩壊をして各共和国にばらばらになってしまえば、今エリツィン・ロシア共和国議長が絶対だめだなんということを言っているようなことを考え合わせてみても、これまでの領土問題の積み上げというのは無に帰するんじゃないか。そういう意味で、ゴルバチョフ大統領のペレストロイカを成功させるために、政経不可分、さっきから盛んにお話がありますが、やはりてこ入れをしていかなければならぬと思いますけれども、外務大臣の決意を伺って、終わりたいと思います。
  86. 中山太郎

    中山国務大臣 我々は、ソ連のゴルバチョフ大統領のペレストロイカの正しい方向性を支持するということが政府の一貫した姿勢でございまして、そのためにこれまでもソ連調査団等の受け入れもいたしてまいりましたし、政府はできるだけの協力をしてまいりました。また今回の日ソ共同声明に付随しまして協定を結びましたが、ペレストロイカの遂行のための技術的な支援、協力というものは政府も力を入れてやっていくという ことで合意を見たところでございまして、そういう形でソ連の経済改革が効果を上げるように日本としては協力をしてまいりたいと考えております。
  87. 元信堯

    ○元信委員 終わります。ありがとうございました。
  88. 中山正暉

    中山委員長 引き続いて、上田哲君から質疑の通告がございます。これを許します。上田哲君。
  89. 上田哲

    ○上田(哲)委員 委員長大臣が実の兄弟で並んでおる、これは立派なことであって、長い議会の友人として、党派を超えて祝意を表しておきます。
  90. 中山正暉

    中山委員長 ありがとうございます。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 さて、質問は厳しくいこうと思います。  きょうは、白波け立てて、国民の反対を押し切るかのごとく掃海艇が出かけた。残念でありますが、外務大臣、これは海外派兵でないということですな。
  92. 中山太郎

    中山国務大臣 海外派兵でございません。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 昨晩のテレビで外務大臣は、日本外交のあり方の基本は、一つにはアジアの中の一員である、そのとおりだと思います。アジア諸国の中で戦争の記憶がまだ完全にいえない中のいろんな反応があります。掃海艇が出かける前に当然近隣諸国に対して十分な理解を求めるべきである、後から総理ASEAN諸国に事後承諾を求めに歩くというのは、私はやはり順序が違うと思います。どういう努力外務大臣はなさいましたか。
  94. 中山太郎

    中山国務大臣 出先の公館長を通しまして相手国政府に、日本政府の今回の掃海艇派遣の目的、またその規模あるいは構成人員等について事前に十分説明をいたしております。もちろんこのためには何が結局必要かというと、各国の過敏な、過剰な批判というものがないように、実態をよく説明することが必要であるというふうに考えたわけでございます。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 考えたのはいいんだけれども、実際にやっていないでしょう、シンガポールとフィリピンがどう言ったというんじゃなくて、例えば大臣が飛んでいくとか。在外公館を通じてというのは普通のことなんですよ、今度は普通でないことをやるのではないかという心配があるのだから、それは私は努力が足りなかったと言うべきじゃないですか。
  96. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、私が飛び歩くというわけには、国会の御都合もございましてなかなかこれはできない。これが外務大臣にとっては一番つらいことでございますが、私にかわって大使がその務めを果たすということでございまして、問題は、委員もよく御存じのように、掃海艇は足が短いものでございますから、いずれかの国に立ち寄らないと向こうまで行けないという問題がございます。そういうことで、寄港地も含めて政府としてはできるだけの努力をいたしたと考えております。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それは、途中かかるから、また寄港するからという話では、これは違うと思いますよ。一月もかかるんだし、これはやはり出かける前ですから、出かける前不十分だったということを大臣お認めになるべきではありませんか。十分だったと言い切れますか。
  98. 中山太郎

    中山国務大臣 事前に打診をいたしまして、関係する国々が大方理解を示してくれたという報告に事前に接しておりまして、それに基づきまして、派遣決定する外務大臣としての判断の一つの大きな要素にいたしたということでございます。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 十分だったと言えますか。
  100. 中山太郎

    中山国務大臣 十分だったと思います。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それはまた、今後の反応を見ながら議論を続けることにします。  日ソ交渉なんですが、縮めて言うと、五六年共同宣言が完全に盛り込まれたとは全く言えない。特に、終わった後の記者会見でゴルバチョフ大統領は、あれは含まれておらぬということを明言しておるのですね。これは含まれておらぬということにしかならぬと思うのですが。
  102. 高島有終

    ○高島説明員 お答え申し上げます。  一九五六年の日ソ宣言は、日ソ両国によって批准され発効した日ソ間の条約でございます。これがソ連側の一方的な通告によって条約に基づく義務から逃れることはできないということは、極めて当然のことでございます。したがいまして、ソ連側はこの日ソ共同宣言第九項に規定されました我が国に対する歯舞、色丹両島を引き渡す義務に拘束されているというふうに考えているところでございます。  ただ、今回の日ソ共同声明におきましては、第四項第四パラグラフの、日ソ両国が「戦争状態の終了及び外交関係の回復を共同で宣言した千九百五十六年以来長年にわたって二国間交渉を通じて蓄積されたすべての肯定的要素」という表現の中に一九五六年の日ソ共同宣言は当然に含まれているというふうに考えておりまして、そういう趣旨を総理からもソ連側に述べておられるところでございます。
  103. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それは日本側の一方的な解釈だということに問題があるのです。それを繰り返して答弁してもらいたくはない。その文書を交換したその後で、記者団に対しての公式な会見でゴルバチョフ大統領は五六年宣言は含まれておらないと言っているわけですから、そうするとこちらの解釈をどんなに強調されても、日ソ双方の見解としては含まれているか含まれていないかについては意見が一致していないということになりますね。同じことは言わなくていいよ。
  104. 高島有終

    ○高島説明員 先ほども申しましたように、日ソ共同宣言は厳粛な国際条約であるという点から見ますと、一方的に義務から逃れ得るような性質のものではないということでございます。  それから、ゴルバチョフの記者会見におきます発言の意図につきましては、もちろん推測の域を出ないものでございますけれども、ソ連国内におけるさまざまな政治状況を考慮して今回共同宣言をあのような形で明示的に確認することはできなかった、こういうものであるというふうに推測いたしているところでございます。
  105. 上田哲

    ○上田(哲)委員 やはり明示的に確認できなかった、そうなるじゃないですか。記者会見というのはそんな単純なものじゃないです。シーレーンのときも、鈴木総理がナショナル・プレス・クラブで発言したことが実はその後の公約になっているのです、そのことはあなた方御存じのとおり。だから、我々は知りませんがなんてことを言うわけにはいかないのです。私が聞きたいのはずばりなんです。日本側の解釈がそうであることは耳が痛くなるほど聞いておる、しかし向こうは入っていないと言った。  そうすると、大臣、イエス、ノーでお答えいただきたい。この五六年共同宣言が今回の一連の合意文書の中に含まれているかいないかについては、双方の解釈は一致はしていないということですね。
  106. 中山太郎

    中山国務大臣 日本の主張としては入っているという確信を持っております。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 相手の主張としては入っていないということでは、違うということですね。
  108. 中山太郎

    中山国務大臣 肯定的な要素として入っていると私どもは認識をいたしております。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一遍聞きたい。こちら側の解釈としては、あのわかりにくい肯定的部分というようなこともあるだろうが、その解釈はよくわかった。相手方はこれは含まれていないと言っているということについては、意見は一致していないではないかという現実を認識しておるだろうと言っておるのです。
  110. 中山太郎

    中山国務大臣 五六年の宣言というものが国際法に照らして明確に双方の国家で批准されているわけでございますから、私どもはこれについて疑義を持っておりませんし、今回の会談におきましても海部首相はその旨強く申し、このような文章になったわけでございます。
  111. 上田哲

    ○上田(哲)委員 押し問答を繰り返したくはないのですが、私は昨年の九月、十二月、衆議院の公 式代表団として向こうを訪れまして、例えば今回も準備委員長でありましたヤナーエフと二回にわたって確認をした中ではっきり、五六年共同宣言は生きている文章だから東京で交換される新しい文書の中にはっきり入れようではないかと確認しておるのですよ。それがとれないというのは私は大変残念だと思っているわけです。だから、そういう意味で、こっちはこういう言い分だよという話だけではなくて、そのことばかり言っているとまた日ソの関係の問題にぎくしゃくが出てくるから、こちらは相当そこまで解釈をしておるんだよ、それはいい、そこはわかった——それを強調するばかりで平行線をたどるのではなくて、向こうはそれでいいですよと言っていないわけだから、その二つはこれからの確認あるいは努力、交渉テーマであるということをお認めになればいいんじゃないか。同じ気持ちなんです。それをはっきりしてください。     〔委員長退席、瓦委員長代理着席〕
  112. 中山太郎

    中山国務大臣 これからも日本政府としては、今御指摘の点をさらに確認をし続けてまいりたいと考えております。
  113. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まだ完全には確認されていない交渉テーマであるということですね。
  114. 中山太郎

    中山国務大臣 この議論をめぐりましては、ソ連側からは政治論としてございました。日本側はあくまでも法律論でやり合ったわけでございまして、私どもといたしましては、国際法に照らして何ら日本の主張が間違っていないということで最後まで努力いたしたい、そういうふうに考えております。
  115. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでは進まないんだ。これは条約論であり外交論なんです。そこは素直にいかなければ国民世論の支持も得られない。私は残念だと思っているんですよ。残念だと思っている立場でそこはうまくいったんだよと言ったら、国民をたばかったか、記者会見をたばかったか、相手を評価していないか、こういうことになるわけですから、外交というのはもっとそこはフランクにいかなければならない。しかも国民世論がここに集中していたではないか。十三時間一生懸命やったということは認める。けれども、ここのところはまだできていないということでなければ、これは日本の言論機関だって全くうそをつかれたということにしかならないですよ。言いにくいだろうけれども、そこはやはり確認できないということにしかならないです。  そこで、なぜそうなってしまったかということの幾つかの問題、時間が十分ではありませんから進んでいかなければならないのです。  小沢さんが出かけたときに、一回目会った、また二回目会った、四十五分待たされたのはともかくとして、その一回目のときに踏み込んだ発言があったという報道がなされ、二回目のときには段階的な手続論まで進んだんだ、こういう発表がなされた、事実はどうだったんですか。
  116. 高島有終

    ○高島説明員 小沢幹事長の訪ソ、それからゴルバチョフ大統領との会談につきましては、自由民主党の幹事長としての会談でございまして、私どもといたしましてはその内容をここで確認する立場には必ずしもないわけでございます。ただ、私どもが承知しております限りにおきましては、日ソ関係全般、特に領土問題につきまして極めて突っ込んだ話し合いをされた、その際、幹事長の方からは四島一括返還という立場で強く主張されたというふうに伺っております。
  117. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんな答弁をするなよ。外務省が、外交権、専権事項としてやっているわけでしょう。自民党だろうが何だろうが、外務省の権限のもと責任を持ってやっているわけでしょう。そのプライドでしょう。自民党がやったことだから知りませんでもって外交が勤まるか。ばかばかしいことを言っちゃいけない。  時間がないんだから、大臣としっかりした話をしないと、国民に対しても失礼だし、日ソ外交についてもおかしくなってしまう。言えないことだったら言えないことだというので我慢するから、しっかり言わなければだめですよ。少なくともそのとき、返還手順まで論議、段階返還に言及、それをとにかく与党の幹事長が発表しているんだ。活字になって日本の国民を、喜ばしたと言っては何だけれども、ほっとさせたという事実があるんだ。このことを、大統領を迎えた会談のときに話がどこまでいったかも確かめないで外交ができますか。これは言っても水かけ論で、首をなでながら話をされたんじゃ困るからそこは先に飛ばすけれども、事実確認をしていないで外交をしているなんというはずはないんだから、具体的に聞いておきます。  具体的でいいですよ。伝えられているように二百八十億ドルの経済援助、対日輸入代金未払いの四億五千万ドル、こうした問題については事前に向こうと話が出たのか出ないのか。
  118. 高島有終

    ○高島説明員 私どもが承知しております限りにおきましては、そのような話し合いはなさっていないということでございます。
  119. 上田哲

    ○上田(哲)委員 自民党の中でこういう話は固まっていたのですか。
  120. 高島有終

    ○高島説明員 私どもは、自民党としてそのような固まった考え方をお持ちになっていたということは承知いたしておりません。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣に伺うんだが、激しいやりとりがあったというその状況の中で、ゴルバチョフ大統領がドルで原則は売れないと叫んだと伝えられています。これは事実ですか。
  122. 中山太郎

    中山国務大臣 島を金で売るとか買うとかいったような雰囲気の話はございません。島を金で売るといったような感じの話はありません。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一遍確認しますが、そうすると、ドルで原則は売れないとゴルバチョフ大統領が叫んだという事実はなかったということですか、誤報ですか。
  124. 中山太郎

    中山国務大臣 会談ではそのような話はございません。
  125. 上田哲

    ○上田(哲)委員 例えばイギリスのフィナンシャル・タイムズが、二百六十億ドル以上で日本は北方領土を買い取ろうとしたがうまくいかなかった、巨大なジャパンマネーが力を発揮せずに済んだことはよかったことなんだという、これは外見ですけれどもそんな評論が出るようなところがあるとなれば、やはりこうした問題が余り論じられるべきではないなと思います。  それで外務大臣、これは日本外交上のメンツも立場もあるだろうから公式の場で言いにくいことはいっぱいあるでしょうけれども、我々もここで、一生懸命北方領土返還のために何遍も向こうへ行ってきた立場ですから、ほじくり出してどうしようと言っているんじゃないから、フランクに話し合っていかないとこれは世論に対しても失礼だ。ゴルバチョフが来た日に、私は東京で集まった六千人の返還署名簿を渡しましたよ。そういう立場で言っているわけです。そうすると、やはり予想よりは厳しかったというのが普通の認識なんだが、少なくともこれはこれから先時間がかかりますね。簡単ではないということはやはりあると思うのですね。いかがですか。
  126. 中山太郎

    中山国務大臣 領土問題の解決というものはなかなか簡単にいかないという認識を持っております。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで、私は衆議院の北方領土特別委員長としてことしの一月十一日に政府等々に要望書を出しました。この際、新しい日ソ関係、言ってみれば始まって以来というべき、日露戦争かノモンハンぐらいしかないようなそういう関係ではない新しい日ソ関係というものを築くべき今チャンスではないか、こういう立場から本当の関係が生まれ、その中から領土問題も解決していくということが望ましいではないか、これは普通の常識だと思いますね。だからそういう立場でいうと、私はかたくなな政経不可分、領土が返ってこなければ何もしてやらないぞみたいな、今の事実はなかったと言うからこのことをほじくり出しはしないけれども、そういうものを外から見たら、チャラチャラ小判の音をさせながらどうだいと言ってくるんじゃない、もっとやはりお互いのための——ルキヤノフも言いましたよ。今は援助が 欲しい、けれども我々はこびていきたくはない、将来の我々との友好関係の発展のために力をかりたいのだ、ここがやはり外交の基本でしょうね。だからそういうことでいうと、かたくなな政経不可分というものを何とか撤回すべきだ、少なくとも金が欲しければ領土を返せみたいな形ではいけないのだ、つまり政経不可分の方針、原則というものをやはり撤回すべきだということを提起しました。お読みになったはずであります。また、私の訪ソの報告も大臣にはしてあるわけであります。どこかでそのことをやらなければならない。貝殻島は、私もちょうど十年になります、私自身がモスクワで話を決めて帰ってきたということになるのですから。そういう中でいうと、そういうものを広げていくということは、昆布で経済協力だの政経不可分の原則の撤廃だなんという大げさなことではないが、そこはもっと踏み込んだ具体論がなければならないと思うのです。  そこで、ゴルバチョフ大統領の来日のときに日本の経済界と懇談をした。予定の時間をはるかにオーバーしていろいろあった。この中で平岩さんが、当面の対ソ協力策として三つ出した。一つは、引き続き合弁事業の可能性を検討しよう、それから知的支援、技術交流などの協力を推進しよう、シベリア、極東を初めとする開発プログラムへの参加努力しよう、四団体の代表が出た中でこういうことを提起された。これは支持されますか。
  128. 中山太郎

    中山国務大臣 無原則な政経分離というわけにはまいりませんけれども、経済界が話し合ったという問題については、今後日ソ間でいろいろな問題、経済問題として検討することは可能であろうと考えております。
  129. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いいでしょう。  では、もう一つ具体的に。私は十二月三日に、ソビエト商工会議所会頭マルケビッチの署名で、日本商工会議所石川会頭あてにぜひ大型経済ミッションを送ってもらいたいという招待状を預かって帰ってきました。ルキヤノフからも、ぜひこれはソ連国民の全体の意思だということを伝えてもらいたいという熱い励ましといいますか、依頼を受けて帰ってまいりました。経済界にはそういう意向があるわけですね、アメリカにも百人規模で行った、ソビエトにも百人規模で行きたい。ゴルバチョフは日本の中小企業に学べ、となれば商工会議所じゃないか、九十何%の中小企業ですからね。そういうところが機運はあるわけですね。今大臣の発言を、私は精いっぱいいいと思いますよ、まさにそういう雪解けになるわけで、そこから始めなければこの長い期間というものは道が踏み締められていかないわけですから。この人たちもまさに経済四団体のうちの一つですね、具体的に政府のそういう雪解けを待っているわけです。これに理解を示されますね。
  130. 中山太郎

    中山国務大臣 大統領の訪日を機に、新しい日ソ関係というものを展開さそうという双方の意欲は十分ございます。
  131. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常に抽象的な言葉で、それでいいのですが、例えば今までは政府の方針を見て、二またになってはいけないということを経済界は非常に気にしていたわけですよ。先ほど、交流の中で三原則は出てきたし、それに理解を示されるし、そしてそうした具体的なインビテーションに対しても、もう政府のことに気を使って、行ってはまずいかなというような雰囲気ではないのだというふうに理解していいのですね。
  132. 中山太郎

    中山国務大臣 無原則な政経分離ということはいたしませんけれども、いろいろの問題を双方が考えるということは当然あり得べきこと。問題は、民間がやられる場合に、ルーブルの兌換性の問題あるいは経済インフラの問題、こういう問題についてどのように考えられるかということは、ひとつ経済人同士で御協議をいただくことが極めて重要であろうと考えております。
  133. 上田哲

    ○上田(哲)委員 結構です、それは。経済人同士で大いにやれということになれば、そこからやはり雪解けというものは始まる。恐らく、翼を連ねて経済団体が調査に向こうに行くとか、事実通産省でも技術協力調査団を出しますね。そういうこともあるわけですから、そこはやはり進んで行って、お互いが役に立つということの中から進んでいくということはいいと思いますね。  そこで一つ国会でも大統領が表明されたし、会談でも出たようですけれども、例の米、ソ、日、中、印、五カ国の安保会議と言われる、あるいは軍縮会議と言われるそうした問題、私はやればいいと思うのですよ。これはヨーロッパのように三十何カ国も入っているような大がかりなものではない。やはりアジアの大国というのはそういうことになるわけだし、そういうところで例えば事軍縮ということになるのならどんな努力もしたらいい。この努力はしない方がいいという理屈はないわけですね。だから私は当然どんな努力もやってみたらいいと思うのだが、残念なことに、早速ポパデューク・ホワイトハウス副報道官が、これは困るという意向を表明された。これは私は非常におかしいと思うのです。なぜいけないのか。いけないとは言えないのです、これは。いけない理由が、いろいろ伝えられているところを見ると、例えば二国間関係が大事である、日米安保条約があるという話になる。すると、これはどうも説明不十分だ。それでせいぜい出てくる言葉は早過ぎるというのですね。何が早過ぎるのですか。
  134. 高島有終

    ○高島説明員 首脳会談で総理からも説明されたところでございますけれども、ソ連側のいわば対話の場、機構を設けようという考え方に対しまして、我が国としては、アジア・太平洋の地域の平和と繁栄の強化のためには、アジアにございます個々の紛争とか問題、例えば日ソ間ではもちろん北方領土問題がございますし、朝鮮半島は依然として緊張状態が続いております。カンボジア問題もございます。こういった地域の中にございます対立紛争をまず解決すること、さらにまたヨーロッパの考え方をそのままアジアに適用するのではなくて、アジアの状況に応じた平和、繁栄を図るやり方、そういったことを地域の状況に合わせて考えていく必要があるということを総理からゴルバチョフ大統領にも説明されたところでございます。
  135. 上田哲

    ○上田(哲)委員 何にも質問に答えていないのです。もうあと数分だから、そんな抽象的に逃げ回らないで具体的に答えてほしいんだな。日本は、国民みんなやはり軍縮、そして平和、そのためにどんな努力でもすべきだ、どんな話し合いでもすべきだという意味で、実りが少なかろうとも今度の日ソ会談でも評価するのですよ。だからそのことで今挙げたのを具体的に聞きますが、しきりに言うのはカンボジア、朝鮮問題について云々とか、あるいはもう一言言ったのはヨーロッパと同じようなことをしても何々。ヨーロッパと同じことをしようなんてゴルバチョフも言っていないし、それからカンボジア、朝鮮問題にこういう五カ国が話し合ったら何が障害になるのですか。具体的に答えてください。
  136. 高島有終

    ○高島説明員 私どもとしては、五カ国の話し合いが障害になるということを考えているわけではございませんが、有意義対話ができるためには、現にある問題、紛争をまず解決すべきだということでございまして、そういう趣旨を総理からゴルバチョフ大統領にも説明されたということでございます。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 恥ずかしくないかね、君。だから、それと関係ないじゃないか。あらゆるところが集まって軍縮の話をしようじゃないかということの何が障害になるかと聞いているのだが、総理がそうおっしゃいましたと言って、百万遍聞いたってこんなことじゃ答弁にならないですよ。大臣、これはおかしいでしょう。やったらいいじゃないですか、いろいろ。せめて言う言い方は、早過ぎるということ。何がいけないのか、やったらいいじゃないかということはどうですか。
  138. 中山太郎

    中山国務大臣 審議官の申しましたことが十分御理解いただけなかったのかもわかりませんが、率直に申し上げてアジア・太平洋の安全保障という問題について考え方が幾つかあると私は思います。一つは、日本政府が、今申しましたようなヨーロッパと違った局地的な問題を関係国がそれぞれ 協力しながらまずこれを解決した上で、全体の安全保障枠組みとして考えようという考え方があると思います。もう一つは、カナダのクラーク前外相が言っている北太平洋を中心にした安全保障考え方あるいはオーストラリアのエバンズ外相が提案している全アジア・太平洋のCSCE的な考え方、それから今回のソ連の大統領が言われた五カ国による安全保障考え方。今までインドという国名はほかの国の意見としては全然入っていなかった、こういうことで、そういうものをどういうふうに重ねるようにしていけばアジア・太平洋の安全保障が確立されていくかということについて、我々は目下慎重に検討している段階であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  139. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、CSCEの方にいくのか、そうでないのかということも集まって話をしてみたらいいじゃないか。アジアではそんな各国、五大国といいますか、こういう五カ国が集まって話をしたことはないわけですから、そういう機会をできるだけふやした方がいいじゃないかということは反対することはないと思うのですよ。そこはどうですか。
  140. 中山太郎

    中山国務大臣 率直に申し上げて、アジア・太平洋の軍縮問題で一番中心になってくるのは米ソ、この米ソの二大国がSTARTの交渉がおくれて、恐らく六月の末か七月の初めに米ソの首脳会談が持たれると思いますけれども、この両大国がその開催に合意をしなければこの問題は解決しない。まずその大きな入り口がどういうふうに開かれるのか、そういうふうな問題を含めて、私どもは関係国と十分意見の交換をこれからしていかなければならないと考えております。
  141. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ということは、そういう話し合いが進んでいけばこういう会談もあるべきだと考えていいのですか。
  142. 中山太郎

    中山国務大臣 あくまでもこれから各国協議が調っていくように努力をすることが大切であると私は考えております。
  143. 上田哲

    ○上田(哲)委員 努力をするというならそれでいいです。  ちょっと具体的に聞きますけれども、アメリカ政府は、北方四島の返還後の防衛政策は日米安保条約の適用除外や自衛隊の配備自粛による四島の非武装化を返還の前提条件として交渉しないよう要請した、これはどういう意味ですか。
  144. 中山太郎

    中山国務大臣 そういう事実は私自身ございません。
  145. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ないとなると、随分ベーカーさんと、例えば小沢さんがアメリカへ行かれた、大臣も行かれた、海部さんもあたふたと、全部首脳が向こうへ出かけた、そしてそこで出てきた話は、今のようなことを含んでアメリカ側からこの軍事問題、例えば軍縮問題ということになってもあるいは産業協力ということになってもそれは軍需生産を民需に変えるというふうな方向以外はだめだよとか、いろいろな注文なり、私から見れば枠がついたというふうに思うのですが、その事実はいかがですか。
  146. 中山太郎

    中山国務大臣 ソ連自身が日米安保条約の存在は日ソのこれからの協議あるいは関係発展に悪い影響を与えるものではないというふうに明確に言っておりますから、私は太平洋の軍縮問題についても日米安保条約がそれへの障害になるとは考えておりません。
  147. 上田哲

    ○上田(哲)委員 最後に私は、独立国として日本が隣国ソビエトと領土問題を真剣に考え新しい関係を開こうというときに、そしてまた国会で大統領が演説をしているそのときに、それに先立ってホワイトハウスからあれをやってはならぬ、これはまずい、それはこっちとの条約があるから的なことをやるのは内政干渉だと、言葉はきつくても——ちょっと後ろからぐずぐず言うな。黙って聞いておれ。大臣から政治家としての見解を聞きたいのだから、後ろからいろいろ言っているんじゃない。——私は頑張ってもらいたいと思う。日本が自主外交を堂々と、国民の信頼を受けるためには少なくとも周りからごちょごちょ言われないでやってもらいたい。そこを大臣はかなりきょう突っ込んでくれたから、前向きに努力するとか道は開けるとかと言ってくれたことはいいことだと思う。だからそういうことに、国内でいろいろな声が百家争鳴は結構だが、外国へ行って先に聞いてくるとかあるいは途中からそれはまずいぞというような話が入ってくる雑音は排除してもらいたい、私はそう思います。そういう意味での非常に自主的な、能動的な、そして時間がかかるだろうということを踏まえた上でまじめな、一方的なこちら側だけの解釈を宣伝するのではない、そういう外交日ソ関係に向かってやってもらいたい。最後に御決意を伺いたい。
  148. 中山太郎

    中山国務大臣 いろいろ御激励をいただきまして、十分その御意思を我々も尊重の上で日本外交を進めてまいりたいと考えております。
  149. 上田哲

    ○上田(哲)委員 自主的にね。  終わります。
  150. 瓦力

    ○瓦委員長代理 山口那津男君。
  151. 山口那津男

    ○山口(那)委員 今回の掃海艇派遣については国際貢献意味もあるということがしきりに強調されているわけでありますが、法的根拠を尋ねれば、これは自衛隊法の九十九条である、こういうふうにおっしゃるわけであります。果たしていずれが目的なのか、あるいは主従があるのか、この点が明確ではないわけであります。  総理の話によれば、ペルシャ湾には機雷があって、我が国があの地域に七割の石油を依存しておるのだからこれはやるべきである、こうおっしゃるわけでありますが、しかし、ペルシャ湾全部が機雷が敷設されている地域ではなくて、ごくわずか、特に北緯二十八度三十分以北あるいは東経四十九度三十分以西ですか、そういう地域でありますから、別にペルシャ湾全体ではないわけであります。船の航行がほとんどの地域ではできるわけであります。例えば、ラスタヌラですとかあるいはイランのカーグ島あるいはその他バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦、全部安全に航行ができる、我が国船舶には危険はないわけであります。  そうすると、その機雷による危険地域というのは、先ほどの緯度経度でいいますと、面積比でペルシャ湾の約八%にも満たない限られた地域であります。それから、石油の依存度という点からいっても、仮にサウジアラビアの旧中立地帯、カフジ以北を入れるとしても、例えばカフジの依存度といいますか輸入量というのは日本の全輸入量の大体四、五%にすぎないわけです。その機雷除去のために我が国の自衛隊を出す必要があるのかどうかということはもっと議論されていいでありましょうし、その点について私どもは、自衛隊法九十九条を適用するのではなくて、もっと議論をした上で法改正をする、あるいは新たな制度をつくり上げる、こういうことを主張しているわけであります。  そこで、自衛隊法九十九条とおっしゃいますから、その要件を満たしているのかどうか、私はこれまで再三質問してきたところでありますが、重ねてもう一度確認してみたいと思うのです。現時点で機雷がどの程度残存しているのか、正確な情報を教えていただきたい。あるいは五百個とも、あるいは七百個以上とも言われておりますので、その点いかがでしょうか。
  152. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答え申し上げます。  最初に、これは以前にも申し上げておることでございますが、三月の初めにイラクが多国籍軍側に通報をしてまいりましたところによれば、この海域に敷設された機雷が約千二百個だったということでございます。それで、私ども外交ルートを通じまして現在掃海作業に従事しております幾つかの国から随時各種の情報をもらっておりますけれども、それによりますと、これまで約六百個の機雷が現在の掃海作業処理されたというふうに承知をいたしております。
  153. 山口那津男

    ○山口(那)委員 少なくとも六百個というふうに伺っておきましょう。  その中で、掃海が比較的難しいと言われる例えば磁気反応の回数とか、あるいはその他いろいろセットできるようなプログラム機雷というふうな ものがあるそうでありますけれども、このような機雷が既に処理されたとか、あるいはどれくらい残っているとか、そういう情報はありますか。
  154. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私どもの承知しております限りでは、イラクが敷設をいたしました機雷は、大きく分類いたしまして、いわゆる係維機雷、つながっている機雷、それと沈底機雷、底に沈んでいる機雷ということでございます。それで、私どもいわゆるプログラム機雷というものがあるかどうかということについては確認をいたしておりません。
  155. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは機雷敷設海域の南端からカフジの港まで、距離はどれくらいあると推定されますか。
  156. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 まことに申しわけございません。正確な距離は、ちょっと私、手元に資料がございません。
  157. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私が計算したところでは、北緯二十八度三十分のラインからカフジの港までは約十キロであります。さらに敷設海域の南端となりますとさらに北になりますから十キロ以上あることは間違いないと思うのです。そうしますと、そのカフジの港の沖合に、付近に、敷設海域から流出といいますか浮遊してきた機雷があるのでしょうか。
  158. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 カフジの沖合に現に浮遊してきた機雷があるということを確認はいたしておりませんけれども、カフジのアラビア石油は現在操業再開の準備を鋭意進めておられまして、それとの関係では、万が一にもそういう機雷があり得るということが懸念材料の一つであろうかと思いますので、そういう意味でもあの水域の機雷の除去というのは重要なことだと考えております。
  159. 山口那津男

    ○山口(那)委員 掃海作業にはサウジアラビアの掃海部隊も参加しているようでありますが、カフジは一応現在ではサウジ領となっていると思いますが、このサウジの領海であるカフジ沖をサウジの掃海部隊は作業していないのですか。
  160. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 実は、サウジの掃海艇掃海参加しているということは御指摘のとおりでございますが、私ども正確にサウジがどこの海域を掃海しているのかということは現在のところ把握をしておりません。
  161. 山口那津男

    ○山口(那)委員 自分の領海の危険地域掃海しないでクウェートやその他の関係のないところを掃海するというのは考えにくいと思うのですが、もし本当にカフジ沖の自分の、つまりサウジの領海に危険があるのであれば、真っ先にサウジの掃海部隊がそこを作業しているはずではありませんか。いかがですか。——わからなければ結構です。  さて、カフジの港には普通はどれくらいの我が国船舶が出入りするのでしょうか。
  162. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 今私が手元に持っております資料でございますが、これは今回の湾岸危機の発生いたしました直前、すなわち昨年の七月一カ月間の船舶の就航状況を調査したものでございますけれども、これによりますと、この一カ月間でクウェートに十九隻、それからカフジだけをとりますとカフジには六隻の船舶日本関係船舶が就航しているということになっております。
  163. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、総理が常時二十隻航行していると言ったのはペルシャ湾全体のことでありまして、例えば今おっしゃったカフジでいいますと月に六隻ですか、月に六隻ということは常時ではありませんね。つまり基本的な数字を正確に与えなければ正しい評価はできないのでありますから、たった一カ月の航行実績で判断していいのかどうか問題ありますけれども、何というか、オオカミ少年とは言いませんけれども、法の適用なんですからもっと厳密な検討をしていただきたい、こういうふうに思うわけですね。  九十九条の関係でお聞きしますけれども、我が国船舶航行の安全、我が国船舶というのは船籍だけを言うのですか。それとも、積み荷が日本向けであるとかあるいは発注先が日本であるとか、そういうことも含めて言うのですか。
  164. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 我が国船舶という場合にそれは船籍主義かどうかということでございますけれども、これは原則として船籍を意味するというふうに理解をいたしております。
  165. 山口那津男

    ○山口(那)委員 一般に我が国のオイルルートあるいは我が国の権益と抽象的に言うと、船籍に限らず我が国の貿易に広くかかわるところを考えるべきであろうと思うのですが、そうではなくて自衛隊法九十九条は船籍でこれを判断する、こういうふうにおっしゃるわけですね。そうしますと、このクウェート、カフジの地域に本当にどれだけ航行の危険があるのかということをお尋ねしますけれども、クウェートに今後日本船籍が近く配船される予定がありますか。
  166. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 現在のクウェートの状況は先生御承知のとおりでございますし、また機雷の敷設もございますので、現在具体的に日本関係船舶の就航の予定があるというふうには聞いておりません。
  167. 山口那津男

    ○山口(那)委員 クウェートのオイルの積み出しが技術的には可能であるけれども、機雷があるために船が近づけない、今、そういう実情はありますか。
  168. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 現在は、機雷の問題のほかに石油の積み出しが停止されているという問題がございます。ただ、今後クウェート復興の問題、それからさらに将来をとりますればクウェートからの石油の積み出しの問題というふうなものも起こってくると思いますし、そのような場合には、今回の湾岸危機前と同様に日本船舶あるいは日本関係船舶の就航があるというふうに考えられると思います。
  169. 山口那津男

    ○山口(那)委員 つまり機雷がなかったとしても石油の積み出しは当分できない、こういうことでしょう。いずれは積み出し、もちろん可能なわけですけれども、例えば炎上を消しとめて積み出しを可能にする、そういう見込みが具体的に立っていますか。
  170. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 いろいろな推計ないし推測があるということを私どもいろいろ見ておりますけれども、恐らく、例えば一年以内というふうな期間をとりまして、クウェートから一部の石油の積み出しが起こるということは十分あり得ることかと考えます。
  171. 山口那津男

    ○山口(那)委員 掃海作業が予定されているのは、私が四月十六日に質問したときには、日本作業が約六カ月程度であろう、こういうお答えが防衛庁側からありましたけれども、現在でもその計画は変わりませんか。
  172. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 実際に向こうへ行きまして、具体的な各国との作業の進渉状況その他気象条件等にも依存すると思いますし、そういったことを踏まえまして具体的な作業の手順というものは決まっていくものと考えておりまして、現段階ではどのぐらい作業が続くかということは確たることを申し上げる状況にございません。
  173. 山口那津男

    ○山口(那)委員 当面三カ月を目標としている、こういう報道があるようですが、いかがでしょうか。
  174. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 要はあの地域にあります危険物である機雷の除去を行うということが目的でございますから、それの目的を達成するのにどのぐらいの日数を要するかということをあらかじめ現段階で予断を持って策定することは困難かと思います。一応の三カ月という話は、別に決めているわけではございません。
  175. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうすると、派遣決定する時点ではどれくらいの作業が必要であるかということはよくわからない、現地へ行ってみないとわからない、そういう判断で派遣決定をする、こういうふうに伺っていいようですね。  クウェートの商業港、これは既にオープンして久しいと思いますけれども、ここへ入るルートというのはもう安全が十分確保されているのではないですか。
  176. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 クウェートにおきましてはハマディという港が開かれておりまして、そこへ至ります非常に狭い航路帯が掃海をされた結果開かれているというふうに承知をいたしております。他方、四月四日付の米国政府の勧告等により ましても、要請があればエスコートするというふうなことも言っておりますし、私もこの方面の専門ではございませんけれども、それがあいているから必ずそこが一〇〇%安全だということはなかなか言い切れないものだろうと考えます。
  177. 山口那津男

    ○山口(那)委員 アハマディ港が開かれたのは、オープンしたのは三月十三日なんですね。そして四月四日で既にエスコートして入れるよということを一般に各国に流しているわけですね。機雷の除去個数は三月十三日以降どんどんふえております。そして我が国自衛隊が向こうで作業を開始すると思われる五月末ないしは六月初め、このころにはなお相当な機雷が既に撤去済みであろう、こう推定されるわけですね。危険が全くないとはもちろん言いませんけれども、相当にその主要なルートは確保されている、これは常識だと思うのですね。  そうなりますと、抽象的にはいろいろ危険があるかもしれない、否定はできないということかもしれないけれども、具体的に考えますと、我が国船籍を持つ船舶クウェート機雷の危険があるために近づけない、こういう現状というのは当面ないのじゃありませんか。外務大臣、いかがですか。
  178. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 先ほど申し上げましたような数字がございまして、現在ただいまの時点で見ますれば、確かに日本船舶クウェートにそもそも行っておらないわけでございますので、その危険は発生しておらないということでございますが、これは将来の問題として先ほど申し上げましたように必ず日本船舶が就航する必要が生じてくる、その際に備えて危険を除去する、そういうことと考えております。
  179. 中山太郎

    中山国務大臣 外交的な見地から申し上げますと、この国、この地域からの原油の依存率の高い日本が、掃海能力を持ちながら、法律あるいは憲法という一つの大きな国の規則、そういうものの中でこれができ得るのにしなかったといったようなことは、国内的ではなしに国際的では、国際協力観点から見ますと国の信頼度を極めて低くするもの、このように外務大臣としては率直に申し上げたいと思います。
  180. 山口那津男

    ○山口(那)委員 この危険海域でまだ掃海を実施していない海域というのがありますか。
  181. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 この海域の中で、イラクから通報を受けました機雷が敷設された海域と申しますか、区域というのはございます。そこを現在八カ国がそれぞれ分担をして掃海をしているという状況だろうと思います。  先生の御質問の御趣旨がちょっと必ずしも私はっきり理解いたさなかったかと思いますが、したがいまして、すべての海域をすべて掃海をしてしまったということでは……。先ほど申し上げましたようにまだ機雷が残っておるわけでございますから。
  182. 山口那津男

    ○山口(那)委員 機雷の除去作業というのは、ブロックを決めて、例えば何キロ四方の海域、こういうふうにブロックを分けまして、そこを各自分担をして作業していくわけですね。それは四月十六日防衛庁の答弁にもありますし、また私もクウェート政府からじかに聞いてきたことでありますから、そういう作業をしていくわけであります。そうすると、そのようなゾーンの中で、まだ一回も掃海作業をしたことのないようなゾーンというのが幾つもあるのかというふうにお聞きしたわけです。どうですか。
  183. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 御指摘のとおり、掃海作業はこの区域をブロックに分けて、それぞれを一カ国なりあるいは二カ国なりが分担して作業をしておるというふうには承知しております。ただ、例えばA国が分担をしたブロックの中でも掃海し切れない部分というのはあり得るだろうと思いますので、そういう意味では全海域を掃海してしまったということにはならないということになると考えます。
  184. 山口那津男

    ○山口(那)委員 我が国船舶航行の安全を図るためにクウェート我が国が今から行かなければならないという必要性は、私は全く感じられません。九十九条の適用としてはですよ。カフジについても全然実情がつかめていない。仮にカフジはまだ掃海作業はしていないとして、このカフジが輸入依存度から見て四、五%ですね。このために自衛隊をわざわざ派遣をして機雷を除去する、それが九十九条から必要になりますか。
  185. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 御承知のとおり、自衛隊法九十九条というのは機雷掃海を自衛隊ができることを規定したものでございまして、その法律自体には我が国船舶安全航行ということは別に出ていないわけでございます。そこで、六十二年の黒柳議員に対する質問主意書に対する答えとして、その解釈上掲げております一つの要件的なものとして我が国船舶航行の安全ということを言っているところでございます。  そこで、御質問のそういうことが今回当たるのかという点でございますけれども、実はこれはこういう公の席で申し上げていいのかどうか知りませんが、最近私のところに責任者が参りまして、カフジについて、その付近にいわゆる第六区という公海、機雷の危険区域がございまして、そこのところを掃海してもらえないだろうかということをいわば陳情して帰ったという事実がございます。したがって、そこは手つかずの状態でございます。  それからまた、先ほども話に出ましたけれども、昨年、イラククウェート侵攻が始まります直前の状況、一カ月の平均でまいりますと、この危険区域、ペルシャ湾の奥の部分でございますけれども、ここに日本の関係の船舶が二十隻航行していたところでございます。それが現在では、いわばカフジを除いたその部分についてはほとんどゼロの状態というふうに少なくともタンカーについては聞いております。したがって、それはすべて機雷のせいとは申しませんけれども、機雷がなかりせばもっと活発である状況のところこれが行われていないということでございますから、我が国船舶安全航行が阻害されていると推定するに十分であるということで考えております。
  186. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そうしますと、今後も同じような状況が世界のどこかで起きた場合に、どの程度の危険度といいますか、あるいは我が国の貿易等の関係でどの程度の要件が満たされれば出動させるのかというところ、これは一般的に言えますか。
  187. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 御質問は一般論としてどうかというお話でございますけれども、これはやはり恐縮でございますが、個々の状況を見ながら、そのときにおいて合理的な判断を下して適用していくということであろうかと思います。
  188. 山口那津男

    ○山口(那)委員 そのカフジの実情に即して出すべきである、こういう判断になるわけでありますが、今後同様の状況があれば、これは法の適用ですから勝手な自由裁量は許されないわけでありますから、派遣していただける、こういうことになると思うのですが、そう伺ってよろしいですか。
  189. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 事は我が国船舶の安全に関するものでございますから、ここは非常にストリクトにといいますか、何といったらいいのでしょうか、少しでもそういう事実があれば当然それは除去しなければならない、それは日本政府役割であるというふうに厳しく考えていく必要があろうかと思っております。
  190. 山口那津男

    ○山口(那)委員 それでは、ちょっと時間がありませんので次の質問に行きますけれども、我が国船舶航行の安全ということにこだわらず、こういう要件が仮になくても、我が国掃海能力が期待されておるような地域には、もしその除去が達成されれば大いに国際貢献といいますか、そういう実は上がるだろうと思うのですね。そういう九十九条の要件が必ずしも満たされていない状況で国際貢献として掃海部隊を派遣するということは、現行法上不可能だと思うのですね。しかし、そういう実情に合わせて今後自衛隊をどう利用するかということは大いに議論していいところだろうと思います。その点について外務大臣は、今後のあり方としてどのようにお考えになりますか。
  191. 中山太郎

    中山国務大臣 戦争状態がないという前提が一 つあろうかと思います。また、平和目的のために掃海をするということが一つあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、この九十九条の解釈をめぐっていろいろと御議論があるところでございますから、現在、国会におきまして各党間でPKOについても協議をいたされている過程でございますので、この問題も含めて、日本として将来国際貢献をするに当たってどの範囲のことをこの国家としてやるべきか、またやれるか、やるべきだという御議論をいただくことが極めて大切であると考えております。
  192. 山口那津男

    ○山口(那)委員 自衛隊の掃海部隊派遣について反対論があるのは、そもそも自衛隊が違憲の存在である、こういう主張もありますし、あるいは海外派兵につながりかねない、こういう批判もあるわけでありますけれども、仮にこれが自衛隊ではなくて、別個の組織でこのような平時における平和目的のために人的国際貢献の実も上がる、そういう掃海作業というのは観念的には考えられるところでありますが、それを自衛隊と別個の組織で考えるということも十分選択肢の一つになり得るだろうと思います。PKOその他に関する自公民の三党合意というものがありますが、あれはPKOだけを言っているのではなくて、災害派遣とかあるいは難民の救済とかその他の活動も含んでおります。実際問題、仮にあの組織ができたとすれば、PKOとして出動する場面よりもむしろ災害出動あるいは難民救済その他の関係の出動の方が多いだろうと私は思うのです。ですから、こういう組織に掃海作業をする平和的な部隊というものを繰り入れるということも一つの選択肢だろうと思いますが、外務大臣、いかがお考えになりますか。
  193. 中山太郎

    中山国務大臣 私は、そのようなことをもし自衛隊のほかの組織でやるといった場合に、少なくとも掃海艇には機雷を爆破する機関砲がついているわけでございますから、そういうふうな武器の取り扱いについての国の法律の規制を将来どうするのかということが一つ考えられると思います。もう一つは、常設部隊ということになれば、災害発生時以外にその部隊がどのようにいわゆる国民の税金を使って管理運用されるのかという問題があろうかと思います。またさらに、自衛隊法の中に目的をはっきりと明示した法律をつくるかどうかという問題があろうかと思います。あるいは、国際緊急援助隊法の中に別項でそういうものを入れていくことはどうか。こういうことがこれから御議論をいただかなければならない重大な問題だと私は認識をいたしております。
  194. 山口那津男

    ○山口(那)委員 私も、今外務大臣が指摘されたような各点について、今後大いに議論していかなければならないと思います。  そこで、ちょっと離れますけれども、掃海艇について世論調査というのがいろいろなされました。しかし、この世論調査の聞き方というのが、例えば、もう名前を出しますけれども、ビデオ・リサーチというところで三月にやった調査ですと、問いが六つありまして、三番目の問いは、「日本は金だけ出して、人的貢献を全くしなかったということで、国際的に反日感情が高まっています。あなたはこのことをご存知でしたか。」と問いをかけて、「知っていた」というのが九七%以上。次に第四の問いとして、「「石油輸入の為、ペルシャ湾に常時十数隻ものタンカーを航行させている日本としては、世界一の技術水準を持つ海上自衛隊掃海艇派遣すべきだ。」という意見がありますが、あなたはどう思われますか。」こういう聞き方をしているわけです。そして、「派遣は当然である」あるいは「派遣もやむを得ない」を合わせると六〇%以上、こういう数字になっております。これで国民が派遣すべきだと考えていると言うのは早合点でありまして、かなり誘導的な問いの仕方だろうと思います。仮に、さっき言いましたように、ペルシャ湾といってもごく一部の海域である、依存度といってもごく限られたものである、そういう前提がありますから、この問いはちょっとおかしいと私は思うわけです。  さらに、産経新聞の二十三日付のものに載っていますが、この問いも、四番目の問いなんですけれども、「「石油供給のため多数のタンカーを航行させているわが国としてもペルシャ湾海上自衛隊掃海艇派遣すべきだ」という意見があります。これをどう思われますか。」それで「当然だ」「やむをえない」を含めて七〇%以上という数字になっているわけです。同様に、これもかなり前提が怪しい問いである。  でありますから、この二つのアンケートから強いて意味を酌み取れば、国際貢献意味もあるのであれば掃海艇派遣というものは今後平時において考えていい、こういう意思だけは酌み取れるのではないかと私は思うわけです。武力行使としての掃海作業ということもありますし、そうでない、今回のような作業というものもあるわけであります。その境目は、機雷が遺棄されたとみなされるかどうか、こういう基準であろうと思います。これを自衛隊が両方の任務を兼ねてやれるというところに国民は危惧を感じるわけでありまして、これを分けて、制度として違う部隊にするということも選択肢ですが、法律でもっときちんと決めるということでもいいのですよ、そういうわかりやすい、そして世界の人たちに納得していただける制度をぜひつくらなければならない、このように私は思うわけであります。この点、防衛庁としてはいかがお考えですか。
  195. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 防衛庁、自衛隊以外の部隊でそういう平和時における機雷掃海ができるようなものをつくるという御提案について防衛庁の意見はどうかというのは、大変答えづらい御質問でございますが、先ほど外務大臣からもお答えがございましたように、そういうものを常設部隊として設けるということになりますと、果たしてそれの用務がないときの税金負担という問題もありますし、臨時にやるということになりますと、それじゃそういう能力というものが一体あるのだろうかということにもなるわけでありまして、結局のところ今まで自衛隊にいる者を身分を移してというような実体の変わらないものを別部隊と呼ぶということなら直ちにできるかと思いますけれども、それが果たして意味のあることかどうかといったような各種の問題点を踏まえて十分検討すべき問題だと思います。
  196. 山口那津男

    ○山口(那)委員 終わります。
  197. 瓦力

    ○瓦委員長代理 東中光雄君。
  198. 東中光雄

    ○東中委員 きょう、海上自衛隊掃海部隊がペルシャ湾に向かって出発しました。この派遣決定については、昨日の総理の本会議での報告によりますと、「昨日、」結局二十四日のことですけれども、「安全保障会議及びこれに続く閣議において、自衛隊法第九十九条に基づく措置として、」「ペルシャ湾における機雷の除去及びその処理を行わせるため、」「派遣することを決定いたしました。」こういうふうになっておるのです。  安全保障会議の非常に有力議員であります外務大臣にお伺いしたいのですが、ペルシャ湾への掃海艇派遣は、安全保障会議のどういう議題なんでしょうか。
  199. 中山太郎

    中山国務大臣 安全保障上の議題といたしましては、我が国国家としてのペルシャ湾における我が国船舶航行の安全がどうかということが一番大きなテーマでございまして、続いて、その船舶及び船員たちが遭難をする場合に対する国家責任というものはどうか、こういったようなことが主なる考え方一つでございます。
  200. 東中光雄

    ○東中委員 安全保障会議の議題については、必要議題が五つあります。そのほかには、「重大緊急事態が発生した場合において、必要があると認めるときは、当該重大緊急事態への対処措置について会議に諮るものとする。」これだけしか議題はないわけです。前の五つというのは、「国防の基本方針」「防衛計画の大綱」等々、とにかくそういうものです。ですから、恐らく「重大緊急事態が発生した場合」でということだと思うのです。ところが、九十九条でというのでしょう。戦争が終わって平和になったから、平和が回復したときの機雷、危険物の除去ということで行くのだ、こういうのでしょう。これは明らかに矛盾なんです ね。重大緊急事態、ペルシャ湾の平和が回復した、休戦になってからもう一月半になっておるのです。こういう点はどういうふうにお考えなんですか。  要するに、自衛隊の出動だということで、これは大変に重要な国防上の問題だというふうに考えて、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」に該当するということでやって、いや、国防に関係しないのだ、それは平和になった、平時のという言葉も使われましたけれども、危険物の除去だ、こういうことで九十九条で行った。非常に矛盾した態度をとっているのです。きのうの本会議を傍聴したある大学の先生は、もう日本の法治国家の終末だということで、文句を言って次の会合に行ったというのですよ。それはこういうところに出てきているのですが、外務大臣、どうお考えでしょうか。
  201. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 ただいまの御質問は、本来でありますと内閣安全保障室の方からお答えすべき問題かと思いますが、便宜私の方から申し上げます。  安全保障会議設置法第二条第五号「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」ということで諮問、決定を見たところでございます。  若干説明させていただきますと、本件の派遣は、自衛隊法第八章の中に規定されている「機雷等の除去」の規定に基づくものでございまして、第六章の「自衛隊の行動」に規定されている「防衛出動」等の活動と御指摘のとおり異なりまして、一般的には重要事項には該当しないというふうに解されるところでございます。しかしながら、今回の場合に限りましては、機雷の除去及びその処理を実施する地域が海外でございまして、かつまた海上自衛隊掃海艇四隻等六隻から成る部隊を派遣することが当時検討されたわけでございまして、このためには相当数の人員を要するということも考慮しますと、自衛隊の海外派遣あるいは派兵の問題として国会におきまして御論議がなされるということが予想されることもございまして、文民統制確保観点からあえて国防に関する重要事項として安保会議において審議するに値する重要性を有するという解釈のもとに付議したものと理解しております。
  202. 東中光雄

    ○東中委員 よくわかりました。掃海艇ペルシャ湾への派遣は、国防に関する重要事項であるというふうに国防会議の議長及び国防会議として認めたんだ。そうでなかったら議題にならないのですから。そして実際はどうしたのかといったら、これは警察活動である、国防ではないのだ、浮遊している危険物を除去する作業なのだ。作業という言葉も総理大臣使っていますね。外務大臣も、平和時のという言葉を使われたこともあります。平和回復のためのというふうに言われたこともありますけれども、どっちにしても正式の停戦が決定して、平和なんだからそこで危険物をのけるためだ、こう言っているのですが、これは物すごいすりかえなんです。  そこで伺いますが、九十九条というのは警察権の行使である、あるいは警察活動である、これは総理の答弁でも何回か出ておりますが、性格はそういうものですね、いかがですか。
  203. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 一種の警察活動というふうに理解をいたしております。
  204. 東中光雄

    ○東中委員 一種も二種もないのですよ。警察活動である、日本の警察権の行使、警察活動というものは日本の領域内においてこそ行使することができるのであって、それ以上にわたるときには公海に及ぶことがあり得るという、政府答弁書にもあるとおりです。ペルシャ湾に対して警察権を行使する、そういうことができる、そういう解釈なんでしょうか。
  205. 畠山蕃

    ○畠山(蕃)政府委員 御質問の中に、警察権というお言葉がございました。私どもは、今回の掃海活動は一種の警察活動でございますということを申し上げまして、一つの権利ということよりも、むしろ国防の、防衛行動に対置する概念として警察行動ということを申し上げているわけでございまして、それが公海に及び得るかという点については、るる御答弁申し上げているとおり、政府の質問主意書に対するお答えの中で「公海にも及び得る」ということを重ねて申し上げてきているところでございます。
  206. 東中光雄

    ○東中委員 ですから、防衛活動ではなくて、国防の重要事項ではなくて警察活動である、隊法の三条任務の中の一項の後段の部分の公の秩序維持するため、そしてそれを受けての九十九条、こういうことになっているわけであります。ですから、その点で言うならば公海に及び得るということなんで、一万三千キロ離れたペルシャ湾へ四十日近くもかかって十ノットでとっとことっとこ行く、そんなことはもう全く予想していない。これはもう言語道断ですよ。だから大学の教授が本当に法治国家は滅びてしまったと。国防の重要事項だといって国防会議にかけておいて、それは警察活動です、公海に及ぶのですといってインド洋を渡ってペルシャ湾まで行く、こんなこと許せますか。全くでたらめであるということをはっきり申し上げておきたいと思います。  山ほどあるのですけれども時間が足りませんので、もう一点だけ聞いておきます。あと五分ありますから。  いわゆる九十億ドル戦費問題です。日本から一兆一千七百億円がGCC基金に拠出されたわけですね。GCCに拠出されたのは、いつ何ドル拠出されたのかということをまず聞きたい。それから、基金から各国へ拠出しているわけですね、どこへいつ幾ら拠出をしたのか、まずお伺いしたい。
  207. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 最初に、GCCに一兆一千七百億円でございますが、これがいつ拠出されたかということでございますけれども、これは国会で御承認をいただきましてから交換公文を結びまして、それからたしか三月の十三日だったと記憶しておりますけれども、GCCの湾岸平和基金に払い込まれております。  それから具体的にどこの国に支出されたかという御質問でございますけれども、まずアメリカ向けに三月二十二日に七千九百三十九・一億円、それから四月二日に二千八百五十・九億円、合わせまして一兆七百九十億円が支出されております。それからイギリスに対しましては四月二日に三百九十億円が出されております。現在のところ五百二十億円がまだ湾岸平和基金に残っておりますが、これにつきましては、今後具体的にどの国に出すかにつきましてはまさに運営委員会決定するということになっておりますが、現在のところ、まだ決定を見ておりません。
  208. 東中光雄

    ○東中委員 一兆七百九十億円、アメリカへ出したのは円というふうに言われましたが、円建てでGCCもアメリカへも出しておるということかどうかということ。  それからその使途については随分論議がされました。アメリカでは砂漠の盾あるいは砂漠のあらし作戦の戦費会計の中へ入れられた、入れられる筋のものだということで私も質問をいたしてきましたが、それはどのように支出をされたのか。それは当然ちゃんと点検されていることだと思いますが、どうなっていますか。
  209. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 最初にアメリカについてでございますけれども、このアメリカの一兆七百九十億円につきましては、国会の場でも繰り返し御説明しておりますが、今回の一兆一千七百億円が対象にしております六分野、具体的には輸送関連、医療関連、食糧・生活関連、事務関連、通信関連、建設関連でございますが、これらの六分野を対象にしております。それからイギリスの三百九十億円でございますが、これは今の六分野のうちの一つ、具体的には輸送関連を対象にしております。
  210. 東中光雄

    ○東中委員 時間が来ましたから終わりますけれども、今の、一兆七百九十億円は六分野にやるということになっていますというのは、そんなことはわかり切っているんですよ。だからどこへ入ったかと聞いているんですよ。そうなっておるのにそういうふうに入ったかどうかが問題になってい るんですよ。向こうの会計はどんぶりじゃないですか。だからそれはどうなったのか、どういう報告があってどういう点検になっているのかということを聞いているので、六分野ということになっておりますなんて、そうなっておることは百も承知だから聞いておるんじゃないですか。何ということを言うんですか。答えてください。
  211. 松浦晃一郎

    ○松浦(晃)政府委員 今までもいろいろな委員会の場で御説明しておりますけれども、交換公文上、運営委員会が、この運営委員会決定いたしました六分野に各国向けの支払いが、それぞれこれがこれに充てられるように確保するという義務を負っておりまして、最終的には各国から運営委員会に報告がございまして、その上で日本政府にも報告があることになっておりますけれども、まだ現段階ではアメリカ政府から運営委員会には報告がございません。しかしながら、いずれ報告がございまして、そしてそれが日本政府にも報告がございまして私どもが確認できる体制になっております。
  212. 瓦力

    ○瓦委員長代理 時間が参りました。
  213. 東中光雄

    ○東中委員 それでは終わります。
  214. 瓦力

    ○瓦委員長代理 神田厚君。
  215. 神田厚

    ○神田委員 限られた時間でありますから、日ソ問題と掃海艇に限って御質問を申し上げます。  まず最初に、ゴルバチョフ大統領の訪日ということで、そのこと自体は私は日ソ問題の解決に一歩前進だというふうに評価をしております。しかし、北方四島の返還問題の基本は、ソ連が中立不可侵条約を破って不当に北方四島を占拠した、その反省とそれについての謝罪のことから始まらなければならないというふうに思っております。ところが、ゴルバチョフ大統領の話やあるいは共同声明の中でその問題についてすべて触れられていない、一切触れられていない、こういうふうに私は感じておるのですが、外務大臣はどのようにお考えでありますか。
  216. 中山太郎

    中山国務大臣 さきの第二次世界大戦の末期において、日ソ不可侵条約が締結された有効期間中に一方的に条約を破ったという国の姿勢として私は甚だ遺憾に思っておりますし、また一方では、その後に六十万近い人たちがシベリアに抑留をされて、長期間労役に服させて六万人の人間が亡くなった、また一方、四島が不法に占拠されているということについて、哀悼の意をささげるという言葉がありましたけれども、私は、心の中で日本の人たち、日本人は何かぬぐい切れないものがまだ残っているというふうな認識を持っております。
  217. 神田厚

    ○神田委員 私も、その中立不可侵条約を破ってソ連が北方四島を不当に占拠をした、このことについて、日本政府が大統領に対しましてそれらについてのきちんとした釈明といいますか謝罪を求めたのかどうか、その辺はいかがでありますか。
  218. 中山太郎

    中山国務大臣 首脳間の会談におきまして、海部総理からは、その一連の、第二次世界大戦のヤルタ協定あるいはその前の大西洋憲章から終戦時あるいは終戦後のいわゆる不法占拠等についての日本政府の公式な見解を、厳しく伝えたということでございます。
  219. 神田厚

    ○神田委員 また同時に、シベリア抑留問題で同情という言葉でその問題に言及された、こういうふうに聞いておりますが、我々としては、不当に六十万名もの人々が抑留され強制労働に供されて、しかも六万名の人々が死んでいるという事実は極めて重大な事実であります。それをただ単に同情ということで、それはスターリンのやったことだというようなことを前置きにして、まくら言葉にして、そういうことで片づけられる問題ではないと思います。公式文書は同情という言葉を哀悼という言葉につけ加えたというような報道もありますが、その辺はどういうふうにお考えでありますか。
  220. 高島有終

    ○高島説明員 私は必ずしもロシア語の専門ではございませんが、例えば宮中晩さん会におきますゴルバチョフ大統領のスピーチの中で、ロシア側の通訳が同情の念というふうに訳した表現は、専門家によりますと哀悼の意というふうにも訳せる趣旨の言葉であったと承知いたしております。
  221. 神田厚

    ○神田委員 外務大臣は、この抑留問題についてのソ連の態度についてどういうふうに思いますか。
  222. 中山太郎

    中山国務大臣 人道的にも国際法上も許しがたいことであるというふうな印象を持っております。
  223. 神田厚

    ○神田委員 私は昨年、櫻内議長についてソ連に参りました。ヤコブレフ現大統領顧問やあるいはシェワルナゼ外相などと話し合いをしてまいりました。そのときに強く感じましたことは、やはりいろいろありますけれども、ゴルバチョフのペレストロイカを成功させなければ日本との関係も進展はしない。シェワルナゼは、我々が敗れればその後に来る政権は軍服を着た力強い男とかあるいはそういうたぐいの人だということをはっきり言っておりました。  そこで、ペレストロイカの支援を我々はしなければならないし、させるべきだと思っておりますが、一方で経済支援に我々が踏み切れないというのは、ソ連が例えばキューバに四十億ドルのいわゆる援助をしているとか、世界各国にそういうことをしたまま我々が経済援助をすることはなかなかできないだろうと思っております。その辺のことについて、今後外相として、いろいろソ連と交渉に当たりあるいはまた援助問題の話し合いも行われると思うのでありますが、どのように進められるお考えでありますか。
  224. 中山太郎

    中山国務大臣 G7等における首脳者間の話し合いの中には、ソ連は自国の経済再建をするためにはまずいろいろな国に対する軍事援助、これを早急に中止するべきである、そうして自国の経済の再建に当たるべきであるということが言われております。私どもも同じような考えを持っております。
  225. 神田厚

    ○神田委員 ヤコブレフ現大統領顧問、その方との会談の中で、彼は国境問題につきまして、国境問題はまず配備されておる軍隊を撤退させる、次に国境警備隊を置く、そうして次には国境警備隊を撤退させて税関を置く、最後にはその税関もなくして自由交流にするのだ、そういう理想を語っておりました。そういうことからいえば、国後・択捉の問題もそういう形で進行していくというふうになれば日本にとって一番いい状況になるわけでありますが、現在のソ連の状況は非常に複雑であり、また大変な状況であります。海部さんが訪ソを約束しましたが、その前に、その間の党首会談でも言っておりましたように、中山外務大臣条件整備ができるかどうか、そういう訪ソを考えているのだというふうにお話がありましたが、いかがですか。
  226. 中山太郎

    中山国務大臣 今お話しのようなことで、私が先にソ連に赴いて外相協議をやり、いろいろと問題点の協議をしなければならないと考えております。
  227. 神田厚

    ○神田委員 それでは掃海艇問題に移ります。  三月一日二時二十分から自民党と民社党の党首談が行われました。我々はそのときに、湾岸貢献策といたしまして掃海艇派遣総理に進言いたしました。その時点から検討が開始されていればよかったのだと思うのでありますが、私は今回の派遣は少し遅過ぎたのではないかと思っております。正式な停戦が四月十二日でありますから、そのころからの協議でこういう形になったのだと思いますけれども、やはり私は、人的貢献が少ないと言われた非難ごうごうの中で、今度もまた日本が何にもしないで、みんなが掃除した後に石油を買いに行ったらば、世界の世論といいますか、そういうものは非常に問題だと思います。したがって、掃海艇派遣は民社党といたしましては湾岸貢献に資するものであり、ぜひ立派な成果を上げてほしいと思っておりますが、いかがでありますか。
  228. 中山太郎

    中山国務大臣 同感でございます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 そこで、昨日の本会議を聞いておりますと、機雷の敷設は、戦争が終わったらば敷設をした国が撤去するべきだというようなことが堂々と述べられておりました。しかし、イラクに 対しまして、あるいはイラク大使館などに対しまして、自分たちの埋設した機雷を撤去しろというような話はどこの政党も申し入れをしたりあるいは働きかけをしたということは聞いてないのでありますが、外務大臣の方はいかがでありますか。
  230. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 私どももそのようなことは承知いたしておりません。
  231. 神田厚

    ○神田委員 つまり、これはやはり一つ考え方で、イラク政府に、それだけの熱意がありそういう主張をした政党であれば当然自分の手でみずからの掃海をせよというぐらいのことは言うべきであるというふうに思っておりまして、何のための論議であったのかということを私は素直に考えるところでございます。  そういうことで、湾岸に対する貢献策が自衛隊法の関係で論議をされておりますが、私は本来はやはり自衛隊法をきちんと改正をして出すべきだと思っております。しかしながら、その見通しがはっきり立たない現状の中で掃海艇派遣は全くやむを得ないような状況でありますし、私自身の個人的な考えでは、日本国の人民一人の命でもあるいは外国で活動している私企業の一つでも、日本はやはりそれを守るという義務があると思っております。そういう意味では今回の掃海艇派遣を高く評価をします。ただ残念なことは、今回の出港式に官房副長官総理大臣の名代のような形で行きましたけれども、やはりこういう場面にも、私はきちんとした国家の意思を表明する意味においても、これだけ歴史的な事件でありますから、総理自身のお見送りがあったらばなというふうに思っております。また、この問題につきまして、掃海艇問題ではこれから先もいろいろあろうかと思いますけれども、我々としましては中東貢献策がきちんと評価が上がるように努力をしていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  232. 中山太郎

    中山国務大臣 この湾岸の平和回復のために、日本は今まで汚染防除のための部隊といいますかチームも出しておりますし、クルドの難民の救援のためにも三チーム派遣をいたしましたし、資金的にも国連のUNHCRに対して拠出をいたしておりますが、これからも引き続きこの地域の安定のために政治的にも経済的にも日本のできるだけの協力はしなければならないと考えております。
  233. 神田厚

    ○神田委員 防衛庁にお聞きしますが、派遣隊員、大変危険な仕事であります。手当や補償などの問題についてどういうふうにお考えでありますか。
  234. 坪井龍文

    坪井政府委員 お答えいたします。  本日、ペルシャ湾機雷掃海作業のため、海上自衛隊掃海艇等が出港いたしましたが、派遣される隊員に対しまして、彼らが誇りを持って、安んじて業務遂行できるようにするというのは大変重要なことだと我々考えております。  そのため、関係省庁の御理解も得まして、幾つかのことを実施することが固まっております。今後所要の手続を経て実施していく考えでございますが、具体的には、若干現行制度との対比で申し上げますと、現在の掃海作業の場合は、爆発物取扱手当というのが一時間百十円というのがございますが、昭和二十三年当時の、大変機雷が多くあった当時、一時間三十円という時代がございます。それに比べまして今日は、もちろん機雷の状況等々違うわけでございまして直接の対比はできませんが、今回の機雷掃海作業の困難性とか危険性とか、その環境の特殊性、そういったものを考慮しまして、特別な手当というものを創設してもらい、隊員に対しまして、掃海作業に直接従事する者に対しましては日額一万六百円、またそれ以外に、危険海域におきますその他の作業の場合には日額三千七百円の手当を支給するという内容が固まっております。  さらに、災害補償につきましては現行の公務災害補償法が適用されるわけでございますが、この規定の中にも特別のそういった掃海作業とか不発弾処理等々につきましては五割増しの規定がございまして、場合によりましてと申しますか、不幸にしてそういう事故等が生じた場合にはその規定が適用されることになろうと思います。  さらに、御案内のように防衛庁長官から賞じゅつ金といったものが授与されることになっておりますが、現行一千七百万というのが最高額でございますが、今回の場合、それにプラス一千万を増額して授与できるような措置、それからさらに、総理から褒賞というものをいただいて、約一千万をいただくということも御了承いただいておりますので、そういったことで対応したいというふうに考えております。
  235. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  236. 瓦力

    ○瓦委員長代理 次回は、来る五月八日水曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十七分散会