○
池田国務大臣 お答え申し上げます。
委員御
指摘のとおり、今
世界の
情勢が大きく変わっておる、これは私もよく認識しております。米ソを
中心といたしますいわば東西の対決、
冷戦構造というものを超えた本格的な
対話と
協調の
時代に向かっておる、そういった大きな
流れは否定いたしません。しかしながら、このままストレートに、一直線にそのような理想とするような、極めて安全であり、不安も憂いも全くないような
時代に結びついていくのかと申しますと、そう簡単ではないんじゃないかと存じます。
例えばヨーロッパにおきまして、とりわけそういった
対話と
協調の
動きがずっと進んでまいったわけでございますけれども、現在の時点で見ますと、CFEにいたしましてもあるいはSTARTにいたしましてもいろいろ障害を持っているというのは、御
承知のとおりでございます。とりわけ
我が国の
周辺地域の
情勢を見ますと、ヨーロッパに比べましても、確かにそういった安定化への
動きが加速されているのは事実でございますけれども、まだまだ不透明な面あるいは複雑な
要素がございまして、将来の理想あるいは大きな
流れはそういった
冷戦構造を超えてのものだといたしましても、いわば新しい秩序を模索する過渡期である現在ではまだいろいろな面があるということは委員も御理解をちょうだいしておると思います。そういった
情勢でございます。
そしてまた、
ソ連の力について私の
所信表明の認識はどうかという御
指摘がございましたけれども、私は、
ソ連が確かに今ペレストロイカの道を進んでおる、そして従来と変わった行き方を模索しておるというのは
承知しておりますし、またそういった方向に進むことを期待しているところでございます。しかしながら、
ソ連の国内も非常に難しいところでございまして、経済の方ではGNPが一一%を超すようなダウンになったという非常に難しい
状況に逢着しております。そしてまた、そういった中でいわばペレストロイカを進めようという勢力もいろいろな障害に際会しておりまして、一部には保守的な力、そちらの方の
影響力がふえるんじゃないか、こんなことも言われているのは御
承知のとおりであります。
さて、
ソ連の
軍事力、その中でとりわけ
極東ソ連軍の力について申し上げますと、このところ、確かに量的な面での
削減が進められている、これは私も認めます。しかしながら、量的な面での
削減と申しましても、
極東ソ連軍というのは六〇年代からほぼ一貫して増強が図られてまいりましたので、現在ピークの段階から減っておるけれども、例えば
我が国の
防衛力整備の
大綱が定められた昭和五十一年時点と比べるとどうかと申しますと、これは地上兵力においても作戦
航空機の数、艦艇の数あるいはその中での潜水艦の数、あらゆる指標をとりましてもその当時に比べてはるかに高い
水準にあるというのは事実でございます。ようやくゴルバチョフが政権の座に着いたときとほぼ似たり寄ったりの
水準にまで量的に
削減されたというのが現在の状態でございます。しかもそういった中で質的にどうかと申しますと、これは大変な質的な
向上が見られまして、例えば作戦
航空機なんかにつきましても第四世代の
航空機がどんどふえておる、あるいは
ミサイル巡洋艦、
ミサイル駆逐艦あるいは原子力潜水艦の増強が見られる等々でございまして、そういった意味で量的な面で
削減は進んでいるといいましてもまだまた高い
水準であるし、質的には非常にその
能力が
向上しておる、こういうことでございますので、やはり
ソ連が極東
地域、みずからの領土を守るために必要とする力というものと比べた場合には、はるかにそれを超えた
水準の力を
維持しておるというのは否定できないことだと思います。
しかしながら、こう申し上げたからといって、私は
ソ連が
侵略する
可能性があるとか脅威であるということを申しているわけじゃございません、脅威というものは力と同時にそういった意図が合わされなくてはならないわけでございますから。しかしながら、現実にそういった力を保有しているということは厳然たる事実であるということを
指摘させていただいたわけでございます。そういった状態でございます。
国際情勢についても、大きな
流れはそういった
対話と
協調の方向であるといたしましても、まだまだ不確定、不透明な
要素があるということでございます。そしてまた、現実に今
世界の各国はそれぞれみずから
防衛力を
整備し、あるいは各国との
協調のもとにみずからの国の安全を確保するための
努力をしておるわけでございまして、
我が国の場合には憲法の理念の中で認められる
必要最小限の
防衛力としてみずから
自衛隊という力を持つ、それにあわせまして米国との間の
日米安全保障体制を堅持していくということが
我が国の今日の
時代における存立、独立、そして平和を守るために必要不可欠なものである、このように認識しております。
なお、安保
条約については、そのような
安全保障上の観点のほかにも経済その他の面で相互
関係の
緊密化という面もあるわけでございまして、総じて申しまして、私は今日の
国際情勢の中においても
日米安全保障体制は堅持しなくてはいけませんし、さらにその
効果的な運用が図られるように
努力をしていくべきものと認識しておる次第でございます。