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政府委員(工藤敦夫君) これは実は衆議院におきましても私お答えしたところでございますが、
国連憲章の第七章に基づく
国連軍、今四十二条をお引きになりましたが、四十三条で、そういうときに特別協定に従って各国が利用させることを約束するというような規定もございます。
国連憲章の第七章に基づく
国連軍というのは、現在のところまだ、第七章の四十二条、四十三条といったところの
国連軍は現実のものとなっておりません。したがいまして、我が国がこれに関与するその仕方あるいは参加の態様というものが現実の姿となっていない以上、明確な形で申し上げるわけにはまいらないと思います。
ただ、こういうことだけは申し上げられるということで、従来思考過程あるいは研究過程ということで申し上げましたが、まず、先ほど
委員仰せられましたように、自衛隊につきましては、我が国の自衛のための必要最小限度の実力組織である、そういう
意味におきましていわゆる憲法九条に違反するものではない、こういうことは従来から申し上げてきているところでございます。
これから派生するといいますか、そういう自衛隊の存在理由からまいりまして三つだけ、まずその系といいますか、そういう形で申し上げられると思うんですが、まず、武力行使の目的を持って武装した部隊、これを他国の領土、領海、領空に派遣するという、いわゆる海外派兵と言っておりますが、この海外派兵は一般に自衛のための必要最小限度を超えるものだ、かように観念できますので、憲法上許されないということを申し上げてきているわけでございます。
それから次に、集団的自衛権、これは今
総理も申されましたが、自国と密接な関係にある外国、これに対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利、かように定義いたしますと、我が国は国際法上こういう権利を持っていることは主権国家という
意味におきまして当然ではございますけれども、その権利を行使することは、先ほど出ました憲法九条のもとで許されている我が国を防衛するため必要最小限度、こういうことの範囲を超えるものであって憲法上許されない、これが従来の解釈だろうと思います。
それから三番目は、
国連の平和維持活動を行う従来のいわゆる
国連軍と称されるものがございます。これはさまざまな形態がございますので一概に言うわけにはまいりませんが、その中で、その目的、任務が武力行使を伴うものであればこれに参加することが許されない、これも従来申し上げてきているところかと思います。
そのような憲法九条あるいはそれに関連する事項の解釈なり適用、こういうものを積み重ねてきているわけでございますが、こういうものから推論いたしますと、任務が我が国を防衛するものとは言えないいわゆる、いわゆるというか、正規のと申しますか、そういる
国連憲章上の
国連軍に自衛隊を参加させること、これについては憲法上の問題が残る、こういうふうなことを申し上げたところでございます。
それで「冒頭も申し上げましたけれども、
国連憲章の第七章に基づきます
国連軍、これはまだ設けられたことはないわけでございます。四十三条で特別協定を結ぶということになっておりますが、その四十三条の特別協定の内容につきましても、どのような内容になるか、具体なものがまだないわけでございます。また、
国連憲章の四十三条におきましては手段として三つのことが書いてありまして、その貢献の中身として兵力、援助及び便益を利用させること、こういうふうな三つのことが書いてございます。この三つは必ずしもそのすべてが満たされなければならないとは解されていないようでございます。そういう
意味におきまして、この三つが絶えずペアでと申しますか、絶えず一体となっている必要はないというふうな解釈もございます。
さらに、国際情勢、これは急速に変化しつつある。そういう
意味で、今後この四十二条、四十三条というふうなものも含めましてどのような形になっていくか、そういったことを全体として考えますと、将来この
国連憲章第七章に基づきます、特に四十二条、四十三条に基づきます
国連軍の編成が現実の問題となる場合に、従来の憲法解釈、積み重ねというのはそういうことがございますから、その時点でこれとの適合ということを総合勘案して判断すべきである、かように考えているところでございます。