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1990-11-28 第119回国会 参議院 社会労働委員会育児休業制度検討小委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二年十一月二十八日(水曜日)    午前十時四分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     小委員長        小野 清子君     小委員                 清水嘉与子君                 西田 吉宏君                 前島英三郎君                 糸久八重子君                 菅野  壽君                日下部禧代子君                 木庭健太郎君                 沓脱タケ子君                 乾  晴美君                 勝木 健司君                 西川  潔君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○育児休業に関する件     ─────────────
  2. 小野清子

    ○小委員長小野清子君) ただいまから社会労働委員会育児休業制度検討小委員会を開会いたします。  本日は、まず最初に、前回示された自民党考え方について、もう少し具体的な内容を示されないかという糸久君からの要望もあり、自民党からこの点について、現在提出されている社会、公明、連合参議院、民社の四会派共同提出法案との相違も踏まえて御説明を願い、次に、前回自民党考え方について各党から御意見をお述べいただきましたので、今回は四会派共同提出法案について御意見を伺うこととし、その後、再度自民党考え方について若干の御意見を伺うこととします。  それでは前島君、御説明願います。
  3. 前島英三郎

    前島英三郎君 私の方から我が党の考え方を御説明したいと思うのですが、あらかじめ御了承を得なければならないと思うのですが、自民党法案要綱を出したらという意見もありまして、検討もいたしまして、前回育児小委員会に二枚のペーパーをお出ししたところでございます。また、御質疑を各委員先生方から伺ったところでございますが、そこで、さらにそれに沿いまして、具体的に整理をいたしまして、野党四党の皆さんから提出されている法案、そして自民党考え方、これらを対比しながら御説明させていただきますが、後ほどまた皆さんからの御質問をお受けしたいと思っておるところでございます。  私たち考え方は、育児休業制度に関する育児休業対象者といたしますれば、これは生後一歳に達するまでの子を養育する人というとらえ方で、これは父であろうと母であろうとその選択は父母に任せる、この辺は皆さんと相通ずるところもございます。  育児休業期間というのは、その子供が一歳に達するまでの間であるということで、これも皆さん法案との一致点を見ているところでもございますが、細部にわたりますと、いろいろな違いがあることを私たちも承知いたしておるところでございます。  不利益取り扱いの禁止という問題は、制度自体を否定するような不利益取り扱いは、これはもう基本的に許されないというのは論ずるまでもないという思いを持っているところでもございます。  そして、再雇用職場復帰ということが育児休業にとっては大変重要なことではございますけれども、復職後の配置につきましては、人事権というのはそれぞれの各事業主が持っているものでございますので、この辺を一律に法律によって規定することは、日本雇用体系あるいは日本企業体系という全般的な一つの歴史的また今日的な状況を見ましても適当ではない、こういうことで、この辺が今後も議論をしなければならないところであろうというふうに思います。  育児休業中の手当の問題が、育児休業制度に関する四野党皆さん法案との大きな相違点であろうと思いますけれども、私たち育児休業中の手当ノーワーク・ノーペイ原則であるということでございます。  特に、日本中小零細企業日本産業基盤を支えているということを考えていきますと、代替要員というのは大変重要な問題でございますから、今後この辺は私たちは真剣に考えていきませんとなかなか国民のコンセンサスは得られないのではないかな、こういう一致した意見を持っているところでございます。  また、そのほかの取り扱いといたしまして、中小零細企業については、こうした法律が出ましても、さあ法律が出た、すぐあしたからというわけには、これはもう諸外国の例を見ましてもなかなか難しいものがございますので、時間的猶予措置というのは当然必要ではないかな、その辺は行政指導もありましょうし、あるいはいろんなPR方法も考えていかなければならないところでございますが、中小零細企業について弾力的な措置をとるということは十分検討しなければならない、考慮に入れなければならない、このように思っているところでございます。  適用の部分でございますが、民間部門念頭に置きまして、公務員についてはそれぞれの法体系が現行もございますし、そういう一つ法的措置がございますから、それらを念頭に置きつつこの育児休業制度を実施していくべきである、このように思っているわけであります。  二つ目の大きな相違点は、きっとこの罰則の問題ではなかろうか、このように思うわけでございますが、法に違反した者に対して「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という大変厳しいものが四野党法律案の中には記されておるわけでございますが、前段でも申し上げましたような、中小零細企業基盤とした日本の経済全体を見渡しましたときに、こういう罰則というものはいかがなものであろうかということで、私たち罰則は設けないということで意見一致を見たところでございます。  立法形式は、これからの作業の中で議論していくべきこともあるわけでございますが、でき得れば単独立法でやりたい。あわせて、なるべく早い機会に法案を整備して、そして提出して、できる限り早い時期にこれが施行されるように私たち努力をしたいというようなことが、繰り返しになろうかと思いますけれども、私たち考え方でございますので、この辺を踏まえまして、また後ほど御議論をいただきたいと、このように思うところでございます。  以上でございます。
  4. 小野清子

    ○小委員長小野清子君) ただいまの前島君の説明も踏まえ、四会派共同提出法案に御意見のある方は御発言願います。
  5. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 育児休業法の制定をめぐりまして、これまで多くの先輩たち議論を、努力を重ねてこられた。そして、今日ある一定の射程距離の中で私も議員としてこの問題について参加させていただきますことを大変幸せに存じております。私も看護行政をこれまで担当しておりまして、人材確保の面から非常にこの育児休業法が大変な効果を上げてきたことを実感しておりまして、ただ、今私の関係したところでは公務員の教員、看護婦、保母、そういった人たち、特定の職種にだけ適用されているわけでございまして、やはり民間のそういう同じ職種人たち、あるいは他の民間の一般の女子職員方々にもこういう制度が早く適用できればということを考えておりました。そういう立場からきょうは四野党法案と、それから自民党が出しました考え方相違点につきまして歩み寄りの可能性等を探りたいというふうなことで、そういう立場から質問させていただきたいというふうに思います。  まず、第一点でございますけれども、野党法案自民党考え方の、今ここで前島先生から御説明がございましたけれども、比較をいたしますと、一番大きな隔たりというのは、やはり育児休業中の手当支給のことであろうというふうに思います。  私も、育児のために仕事をどうしても中断しなければならない、こういう労働者方々両方の案とも、お父さんでもお母さんでも、どちらでもとれますということではございますけれども、多くの場合、恐らく女性の方に負担が大きくなってくると思いますので、そういう立場になって考えますと、手当が出るということは非常に経済的にも安心をして育児に専念できるという意味では大変ありがたいことでございますし、もしこれが可能であればこれにこしたことはないというふうに考えます。しかし、六割という手当が本当に妥当であるのかどうか、そしてまた、財源確保社会全体の支持が得られるのかどうかということにつきまして疑問に思うことでございます。  例えば、現在労働災害でありますとか疾病あるいは出産など、本人が希望するとしないにかかわらず、どうしても休まざるを得ないような場合に限りまして賃金の六割の手当が支払われているわけでございまして、この育児休業制度では、とるとかとらないとかというのは個人の全く自由になるわけでございまして、そういうような自由な選択による休業にも六割の手当が支払われるということが本当に社会的に納得が得られるだろうかどうだろうかということでございます。  そこで、まず第一点、なぜ六割でなければいけないのか、なぜ六割なのかというあたりについて理由を伺いたいというふうに思います。
  6. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、四会派提出法案でございますから、筆頭発議者として私の方から答弁をさせていただきたいと思います。  出産後も働き続ける意思がありながらも、乳幼児を育てながら働き続けることが大変大きな負担であるために一たん退職をすることを余儀なくされている労働者が多いのが実情でございます。そのためにこそ育児休業制度の確立のための法的措置を講じようとしておるわけでございますが、その意味育児休業は、形式的にはともかく、実質的には必ずしも労働者の自由な選択とは言えないことはもう御理解いただけるのではないかと思います。西欧諸国においても、そのような実質を直視して、家族的責任雇用継続の障害となるべきでなく、両者を両立させることが必要であるとの考え方からこのような歴史的に新しい制度の導入が行われているわけでございます。また、育児休業した場合に、社会保険労働保険保険料労働者負担分程度はともかく、それ以上についてはノーワーク・ノーペイ立場から賃金が支払われない場合が一般的であります。  その一方、生計を立てるのに必要であった毎月の賃金収入がほとんどなくなってしまうのでは休業中の生計の見通しが立たないために、せっかくある育児休業制度の利用を断念するという労働者も少なからず出てくることも予想されます。そうなりますと、せっかくの育児休業制度も無意味なものになってしまうのではないか。私たち提出者といたしましては、そういう育児休業制度とあわせて育児休業手当制度を設ける必要があると考えまして、共同法案目的の中に手当制度と一緒にしたものを提出するということを書いたわけでございます。  さて、問題になってくるのが育児休業中の所得保障水準であるわけですが、これについては確かに国際的に確立した基準というものはございません。さまざまな論議があるところですけれども、生活保障観点から所得保障措置が講じられている制度として、今清水議員もおっしゃいましたけれども、我が国の類似の制度をずっと見てみました。そこには失業保険金支給する雇用保険制度の場合もありますし、それから出産手当金傷病手当金支給する健康保険制度の場合、それらも従前賃金の大体六割相当を支給しておるわけです。そういうことから、このような日本社会保障給付実情を考慮して、共同法案には従前賃金の六割の収入保障するということにしたわけでございます。
  7. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 そういたしますと、今の六割の財源の問題なんですが、その財源というのは、今のこの四野党法案では、すべての労働者事業主、そして国が三分の一ずつ負担するというふうになっているわけでございますね。そして、その試算によりますと、年間育児休業手当の額が今ですと約一千二百億円、そしてこれが三分の一ずつでございますから約四百億円ずつ負担することになる。そうすると、それぞれの労働者事業主、国、それぞれがそれだけ負担できるかという問題があるわけでございますので、その辺についてお伺いしたいわけですが、まず労働者の場合、労働者がこれだけ負担するとなりますと、平均して一人当たり月約九十円程度だと、百円くらい負担してもらえば、出産してもその後働き続けたいという人の約八割、そしてそれに平均約八カ月くらいの育児休業をとる間の賃金の六割の手当支給できるんだ、こういう計算になっているというふうに思います。  しかし、その育児休業をとる方はほんのわずかな一部の方なわけですけれども、その方のために育児休業と全く関係のない、例えば子供のいない人あるいは育児休業をとらないで働くような人たち、こういう人たちが、毎月百円というのはいいじゃないかといっても、果たしてそれだけを負担するということに納得してもらえるだろうかどうだろうかという問題があります。こういう意見に対しましてどういうふうにお考えでございましょうか。
  8. 糸久八重子

    糸久八重子君 先ほども申し上げましたけれども、労働者育児休業請求権が認められて育児休業ができるようになったとしても、その間得ていた収入がなくなってしまうことであれば生活を維持することが非常に困難になる。預貯金があればそれを取り崩すことも考えられますけれども、大体出産する方というのは若い方でありますから余り預貯金も多くは持っていないだろう。しかも、育児休業というのは比較的長期の休業でございますから、その間の生活費対策というのは非常に大変なわけですね。したがって、育児休業制度がどのくらい利用されてどの程度有効であるかについては、その間の所得保障のありなし及びその水準にやはり大きく左右されるのではないかというふうに考えます。  ILOの百六十五号勧告では、「社会保障給付、税の軽減その他国の政策に適合する適当な措置は、必要な場合には、家族的責任を有する労働者にとって利用可能であるべきである。」と書かれておりますし、また22及び23、これは育児休暇及び病気介護休暇についての規定なんですけれども、そういう休暇の間、「関係労働者は、国内事情及び慣行に従い、3に規定する方法」、つまり「法令、労働協約就業規則仲裁裁定、判決若しくはこれらの方法の組合せにより又は国内慣行に適合するその他の方法であって国内事情を考慮した上適当とされるもの」の「いずれかにより、社会保障による保護を受けることができる。」とされております。  実際、諸外国育児休業中の所得保障制度を見てみますと、国によって非常にさまざまでありますけれども、趨勢としては有給保障は常識化していると言ってもいいわけです。その支給額はより多く、また支給期間もより長いものとなっていきつつあるということが国際的な傾向でございます。  さて、日本制度について考えてみますと、欧米諸国では社会保障給付について労働者費用負担がない例がたくさん見られるのに対しまして、日本の場合はむしろ労働者負担がある方が通例になっている場合が非常に多いわけですね。これも先ほど申しましたけれども、失業保険雇用保険制度とか、それから健康保険制度とか厚生年金制度とか、これらはみんな労使負担する保険料と国の、つまり国税による補助金とか負担金ということで賄われておりまして、つまり日本の場合には税労使者負担方式の国となっていると言えるわけでございます。そこで、四党共同法案においても、育児休業中の手当にかかわる費用負担については労使と国が負担することとしているわけでございます。  先ほど御指摘ございましたけれども、労働者負担といいましても月額平均でせいぜい百円程度、三十年働いているといたしましてもせいぜい三万円か四万円程度拠出で賄われるものであるということですね。たとえ直接自分がこの制度恩恵に浴さなかったといたしましても、親兄弟とかそれから子供のうち必ずその恩恵を浴することができるであろう。そういうことから考えますと、そういう観点から育児休業手当制度説明すれば、労働者十分連帯立場に立って同意してくれるものではないかと確信をしておるところでございます。
  9. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今、六割もらえるという前提を置いての質問なわけでございますが、次に、じゃ今度事業者立場に立ってみますと、長い目で見ますと、この育児休業制度を入れることによってその後、育児休業をとった後に職場復帰するというわけでございますから労働力確保にもプラスになるわけでございますけれども、今日のような人手不足のときに、先のことはともあれ、今休まれたら本当に困るんじゃないか。特に中小企業のところなんかでこういう育児休業をとられるともう人のやりくりがつかない。今企業経営の面で非常に負担になるんじゃないかといったような不安も実はあるわけでございます。  その場合に、どうしても代替要員を雇わなきゃいけない、それを見つけるのも大変だと。たとえ代替要員が見つかったといたしましても、代替要員賃金を払わなきゃいけない。そして、育児休業をとっている方の社会保険料事業主負担分は払わなきゃいけない。そして、さらに育児休業手当財源負担ということがかかってくるわけでございまして、結構これ負担が大きくなるんじゃないだろうかというふうに思います。  また、自分企業に働いている労働者育児休業をとるような年齢の女子が多ければ、それはそれなりに自分のところの労働者福利厚生ということにもなるわけでございますから、それはもういいと思いますけれども、育児休業手当財源負担はするけれども、実際にはほとんどそこに働いている職員育児休業をとるような人はいないような職場も実はあるわけでございまして、そういうところにも財源負担がかかってくるということにつきましては、その事業主に今度は負担のことにつきましてどういうふうに納得させられるだろうか。この辺についての問題はいかがでございましょうか。
  10. 糸久八重子

    糸久八重子君 育児休業手当は継続的な雇用促進を図るための育児休業保障を十分なものにする目的支給されるわけです。継続的な雇用促進を図って労働者雇用を維持すること、そのことは事業主共同連帯責任であるだけでなくて、育児休業手当支給によって熟練労働者確保できるという、そういう意味では事業主もやはり利益を受けることになるというふうに考えるわけですね。ですから、そういう意味では事業主拠出を求めることについては基本的には問題はないと私どもは考えておるわけです。  今、全く育児休業をとっていない事業主拠出金を出さなければならないという、その矛盾はということをおっしゃったわけですけれども、仮に事業主Aのもとで働いている労働者が一人も育児休業をとらなかった、だから育児休業手当支給する者が一人もいなかったような場合には、そのような事業主A拠出を求めることは非常に不合理だということなんですが、しかしそのような場合であっても、その事業主A雇用されている労働者配偶者が別の事業主B雇用されている、そこの事業主Bのところで育児休業をとって手当支給されているという場合が少なからずあるんじゃないかというふうに考えるわけですね。そういうふうな場合には事業主A事業主B雇用する労働者育児休業することによって自分雇用する労働者休業させることなく使用できる、そういう意味から恩恵が受けられる。そういうことから考えれば矛盾はないのではないかというふうに考えるわけです。  それで、労働者と国と三分の一ずつということですから、そういうことからしますと事業主負担といいましても、雇用保険料事業主負担というのは雇用安定等事業を含めて支払い賃金の千分の九なんですね。しかし、育児休業手当の掛金の事業主負担というのはせいぜい支払い賃金の千分の〇・三程度でございまして、金額にしますと雇用労働者一人当たり平均は大体百円程度ということになりますから、特段事業主負担は大き過ぎるという問題ではないんじゃないかというふうに考えております。
  11. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それではもう一つ、国の立場なんですね。育児休業手当の三分の一が国、つまり国費税金で支払われるということになるわけでございますが、例えば共稼ぎの労働者のどちらかが育児休業をとれば、これは六割の手当支給されることになりますね。ところが専業主婦の場合、さっき先生は、育児休業をとらない労働者だけであっても奥様がどこかの事業所に勤めていれば恩恵を受けるじゃないかということをおっしゃいましたけれども、今度は専業主婦の場合、御主人の方は育児休業手当企業で払っている、しかし専業主婦の場合には幾ら育児をいたしましてもそこには手当支給されないという問題があります。  そしてまた、今度は夫婦で自営業をやっているような場合ですと、一人が育児のために休んで仕事ができない、あるいは農業の場合、そういった場合でも同じようなことがあると思いますが、そういうふうに要するに、この場合には雇用者だけが対象になっているわけでして、自営業をやっている、あるいは農業をやっているような方々には、育児を休んでやっているということは同じであっても手当がつかないというような矛盾があるんじゃないかというふうに思います。考えてみれば、こういう自営業の方、農業方々は働いて今までは税金を納めているわけでございまして、その税金の一部が雇用者だけがもらえて自分たちはもらえないというような不満があるんじゃないかというふうに思うんですが、そういう不満に対してはどういうふうに御説明いただけますでしょうか。
  12. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいま専業主婦の場合のお話が冒頭出てまいりましたけれども、これらの問題についてはやはり歴代自民党政府責任を有するいろんな法律の中にも非常に矛盾があるわけですね。例えば専業主婦の問題については年金問題があるわけです。年金の場合には、共働きの場合には両方とも拠出金を出している。しかし、専業主婦の場合には、年金の改正の中で夫の年金によって妻も基礎年金をもらえるという制度になったわけですね。ですから、そういう意味ではこれと同じではないかというふうに考えるわけです。  それから、自営業者とか農業就労者も失業するという場合があるわけですね、倒産するとかね。そういう場合にやはり生計を維持するのが困難な状況に落ち込む場合がありますよね。これらの方たちには失業保険制度というのはないわけですね。まさに雇用労働者だけに国費が支出されているという状況があるわけです。これらの点については、私たち提出者といたしましては、今後日本社会保障制度の充実を図る中でこういう農業労働者とか自営業者の問題も解決したいと考えておるところでございまして、これは自民党さんともっと話し合っていかなければならないな、そういうふうに思います。
  13. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 今、手当のことにつきましてお伺いしたわけでございますけれども、なかなかこの問題につきましては、そこまで本当に今のお話のような形で了解が得られるかどうかという点につきましては、まだまだ問題が残っているんじゃないかなというふうに思います。  それから、次の問題に移りますけれども、両方意見が違っています点というのは、育児休業後の原職復帰ということを原則として規定しておられるわけですが、これには実際問題として非常に無理が多いんじゃないだろうかというふうに思うわけです。例えば、企業の定期的な人事異動育児休業中の人もポストがかえられてしまうというような可能性もございますし、また育児休業をとっている方の役職ですとか、あるいは職種によってはどうしてもその後代替する人を入れなければならないというような場合があるというふうに思うわけですね。育児休業をとって帰ってきたときに、その人をすぐにそこの場に帰すことができないという問題も当然生じてくるんじゃないだろうか。特にまた、役職が上位の方がとればなおのことそういうことが難しくなるんじゃないだろうかというふうに思うわけでございます。  この問題は、当然育児休業をとる人の立場からと同時に、またそこの育児休業をとった人の後に入る代替の方々立場ということもやはり考慮して考えなきゃいけないことだろうというふうに思うわけでございまして、現に育児休業制度を取り入れております企業の中でも代替職員の採用が困難ということもですけれども、育児休業を終わって帰ってきた人たちの後、それと代替職員との処遇の問題について非常に困難があるということを指摘しているところでございます。  また、原職相当職でもいいというようなことですが、相当職というのはどういうものが相当職なのかというようなことも非常に判断が難しいんじゃないかというふうに思いますし、このように原則原職復帰といいましても非常に難しい場合もありますので、そもそも先ほど前島委員も指摘されましたけれども、人事管理というのは基本的に事業主の権限にあるということを考えますと、一律に法律でこういうことを規定するということにはちょっと無理があるんじゃないだろうかというふうに思いますが、この辺についていかがでございましょうか。
  14. 糸久八重子

    糸久八重子君 この育児休業というのは、労働基準法三十九条に規定されております年次有給休暇とか、それから六十五条に規定されております産前産後休業と同じように、労働者側の事情や発意により一定期間単純に就業しないこと、職場から解放されることでありますから、休業が終了すればもとの職場、つまり原職に復帰するのは当然だと私どもは考えております。  実際、労働省が六十二年度育児休業制度実態調査の結果を発表いたしましたけれども、それを見ますと、制度導入企業の九割近くが原則として原職復帰をしているわけでございます。ただし、育児休業が非常に一年間という長期にわたるわけでありますから、休業中に当該企業で当該労働者育児休業をするかしないかにかかわりなく定期的な人事異動が行われる場合が当然考えられるわけですね。このような場合には、人事ローテーションの中で育児休業者のみこのローテーションから除外してもとの職場に固定するということは非常に無理があるでしょうし、産業技術の急激な変化の中でもとの職場がなくなってしまって、そしてもとの職場に帰りたいと思っても帰れないというような事情があるかもしれませんね。ですから、私どもは当然そういうことを考慮いたしまして、「原職又は原職に相当する職に復帰させなければならない。」としたわけでございます。  なお、このような場合でも、相当職になって賃金が低くなったり降格されたりすることのそういう処遇は、原職復帰ということにならないわけですから、不利益取り扱いをしてはならないという意味から罰則が適用されるというふうに考えて規定をしたわけでございます。
  15. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 もう一つの問題としましては、私どもの案では、中小零細企業について配慮をすべきじゃないかという点があるわけでございますが、この中小企業の問題。幾ら中小企業でありましても、育児休業は請求がありましたらばこれを断ることができないということでございまして、必ず育児休業を与えなきゃなりません。例えばほんのわずかな四、五人の職員しかいないところであっても、そういう請求があれば出さなきゃいけないということになるわけでございまして、特に中小企業の場合に代替要員を見つけることが非常に難しいというようなこともありますし、また育児休業を入れましても、その間に代替職員賃金を払う、そしてまた育児休業中の職員社会保険料負担というようなこともありますと、先ほども申し上げましたけれども、結構これは負担が大きいんじゃないかと思います。  今、社会保険料事業主負担平均一人二万円くらいということでございまして、決して軽くはないというふうに思うんですけれども、中小企業の置かれてきた立場を考えますと、本当に我が国の経済基盤を支えてきたのが中小企業であると言っても過言ではないというふうに思いますし、こういう大変厳しい経営環境の中で一生懸命努力をして、日本の豊かな社会をつくることに努力をしてきてくれたというふうに思うわけです。そういうところで、拙速に育児休業を導入するということになりますと、経営を圧迫する、あるいは活力をそぐことになるというようなことになりますと、かえってまずい結果になるんじゃないだろうかなということを大変心配いたします。  そこで、これらの中小企業にありましても育児休業制度を取り入れ、そして労働者育児休業が本当に与えられるようになるために、やはりこの制度の趣旨でありますとか、導入の方法でありますとか十分に周知しなきゃなりませんし、またそれまでの準備の期間も必要がございましょうし、またその代替要員が非常に確保困難でございますから、その確保につきましても配慮をしなきゃならないんじゃないか、こういうことを考えるわけでございます。中小企業の実態に応じたこういう方法育児休業を実現していくことが私たちは有効ではないかというふうに思うんですが、その辺についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  16. 糸久八重子

    糸久八重子君 御指摘の点につきましても、提出者といたしましては十分に念頭に置いております。  このために、昨年の十一月に共同法案を提出した際にも、施行期日を一九九一年の四月一日といたしましたし、またことしの四月に再々提出をいたしました際にも、施行期日を一九九二年の四月として、現在育児休業制度を設けていないでその導入の検討をしていないような企業、特に中小企業においてもこの法律の制定や施行にスムーズに対応できるようにするために必要な準備期間を設けることとしたところでございます。  中小企業への配慮措置としましては、それだけでなくて、育児休業の法制化を前提として、財政上その他適切な援助措置については、提出者側といたしましても引き続きこれは検討しているところでございます。
  17. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 そして、あと罰則の問題でございますけれども、労働者育児休業を請求したときには、それを拒んだ事業主に刑事罰が科せられるということになっているわけでございまして、「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」ということになっているわけでございますけれども、実際問題として育児休業をとる可能性があるかどうかというのは、事業主も事前にわかるわけでございますから、準備をしておけばいいということも言えますけれども、例えば非常に経営が危機に瀕して、一人でも欠けては困るというような企業で、どうしてもこの育児休業を認められないといったような場合でも、今のこの四野党法案でいきますと、罰則が科せられるというような厳しい制裁措置が科せられているわけでございまして、こういう厳しい制裁措置をつけるということがかえって育児休業制度そのものに対する中小企業、特に中小企業等の反発というんでしょうか、反感を生じかねませんし、育児休業制度を法制化して進めようという私たち努力も何か水を差されるようなことになるんじゃないかということを大変心配するわけでございます。  育児休業というのは、当然のことながら事業主にとりましても、労働者の能力活用、そういう観点から非常に有意義な制度でありますから、こういう制度につきまして、そういう意義を十分に事業主方々に理解していただく、そして自分たちが自主的に育児休業制度をしようというような機運を盛り上げていくことが、むしろそちらの方が現実的な対応じゃないかというふうに思うわけでございますが、罰則の規定が少し厳し過ぎるんじゃないかということにつきましては、いかがでしょうか。
  18. 糸久八重子

    糸久八重子君 現在、育児休業制度普及促進を労働省は図っておりますけれども、やはり思うようにこれも進んでおらないという実態がございます。これは努力義務のせいであると私は思います。今ある年次有給休暇、これも労働者の当然の権利として現在受け入れられていない部分がありますね。そして、その取得が本人の不利益となってはね返ってくることがあるわけなんですね。だから、それを取得しにくいというのが実は日本の国の現状でございます。  育児休業の場合は、年次有給休暇と違いまして、非常に長期の休暇になりますから、年休以上にその権利が受け入れられないで、その取得が本人の不利益となってはね返ってくることが十分予想されるわけでございます。そのために、共同法案では育児休業の請求の拒否の禁止及び不利益取り扱いの禁止を規定するとともに、これらの規定違反に対しては罰則を設けることによってその保障を一層確実なものにしているわけでございます。  年次有給休暇につきましても、産前産後の休暇につきましても、その請求を認めなかった使用者に対する罰則は設けられておりまして、育児休業の請求を拒んだ使用者に対して刑事罰を科したからといって格段に厳し過ぎるものではないんじゃないかというふうに考えております。
  19. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 それでは、最後の質問なんですけれども、既存の育児休業法、義務教育諸学校の教員でありますとか、あるいは医療施設の看護婦、福祉施設の保母といった人たちに対する育児休業法が今あるわけでございますけれども、この四野党法案考え方ではこういった公務部門も含めてということでございますから、この法案ができますと既存の育児休業法は廃止されるというふうになっているわけでございます。この教員だとか看護婦だとか保母だとかという職種は、専門職種でありながら非常に労働力確保が困難であるというふうなことから、特別な分野で先にこういう制度ができた、そういう趣旨であろうというふうに考えております。  特に、これは地方公務員とか、そういう人たちに適用されているものですので、第十五条には代替要員の臨時的任用ということが規定されているわけでございますけれども、この法案が廃止されることによりまして、またそこの部分につきましても規定がなくなってしまうというふうに受けとめますが、この辺についてはどういうふうに対応なさるおつもりでございましょうか。
  20. 糸久八重子

    糸久八重子君 現行法は、確かに女子教員等の育児休業について定めた法律ではありますけれども、実はこの目的は、さっき清水議員もおっしゃいましたけれども、教員等の職務の特殊性等にかんがみて育児休業に関する制度を設けることによってその継続的な勤務を促進し、これによって究極的には義務教育諸学校における教育などの業務の円滑な実施を確保することにあるわけですね。つまり現行法というのは、女子教員等に育児休業をする権利を認めるための法律というよりも、むしろ業務の円滑実施を確保することを前提としながら、その枠内で育児休業を認めるということにしておるわけでございます。そして、かつ育児休業を許可した場合に必要となる代替教員等を正式採用者で確保することに伴う費用負担を避けるために、現行公務員制度の趣旨に反する臨時的な任用で対処することができるようにするための法律と、そういう形になっておるんですね。  これに対しまして、四党共同法案というのは、職務の特殊性等によるものでも、女子とか公務員とかに限られるものでもなくて、男女全労働者に対して育児休業を権利として保障するための法律案でございます。労働基準法の姉妹法とも言うべきものだと申し上げておきたいと思います。  具体的には、労働者は使用者に対し、当該子を養育するための休業を請求することができ、使用者はこれを拒んではならないこととされて、使用者が業務上の都合を理由に拒む余地は全くないものとなっております。  また、この法律に一般的な代替要員に関する規定が設けられていないのも、このような法律の性格、目的によるものでございまして、この事情は労働基準法には産前産後の休業に関する規定はあっても、産休代替要員に関する規定は設けられていないのと同じものでございます。  ところで、代替要員の問題というのは、育児休業をした労働者がそれぞれ担当していた業務が一体どうなるかという問題でありまして、官民の別や事業の性格、職種等によって事情はいろいろ異なっておるわけですね。御指摘の公務員にかかわる代替要員の問題につきましては、共同法案の提案理由説明の際に私の方から、「義務教育事業等の公共部門の事業遂行に支障を生じさせないようにするための関係法律の整備等についても、追ってできるだけ早く提案する予定である」と、そう申し上げました。  参考までに、現在じゃどういうことを検討しているかということを申し上げてみますと、まず第一に、公務員の定員を決める場合には、あらかじめ労働者育児休業をすることを考慮に入れて決めるものとすること。そして第二番目は、教員等の場合のように法的資格制度が存在するとともに、施設における定数の標準が存在しているような、そういう特殊な職種については第一の措置によってもなお確保できない場合には臨時的な任用を認めることとする。つまり定数の中に入れるのと、それから臨時的任用をすることということを両方含めたものを現在検討中であるということでございます。
  21. 清水嘉与子

    ○清水嘉与子君 ありがとうございました。  先ほど先生も御指摘のように、特定職種の現行法の育児休業法というのは、業務の継続性ということに着目しているわけでございまして、非常に確保困難な職種代替要員確保できて、そして安心して休めるというところに主眼が置かれているというふうに思いますので、その辺につきまして、それが全くなくなってしまうようなことでは大変心配でございますし、先生おっしゃったような措置がまた一緒に考えられなければちょっと少し差しさわりがあるんじゃないかというふうに思います。  今、ざっと一通り私どもの考え方と、それから四野党法案考え方相違しているところだけのお話を伺いまして、お考えもよくわかりました。ただ、まだすぐに歩み寄れないような差が開いているところがございますものですから、それを何とか前向きに進めていきたいというふうに考えております。  どうもありがとうございました。
  22. 小野清子

    ○小委員長小野清子君) 次に、「育児休業制度に関する自民党考え方」について、御意見のある方は順次御発言願います。
  23. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 きょう「考え方」をわかりやすくまとめていただきました自民党皆さんには感謝いたします。ただ、ここまでまとめられるのなら、どうせなら大綱まで踏み込んでいただいて、対比されて出すぐらいならここまで出してもらえたらうれしいな、その辺が若干残念かな、こういうのが私の個人的な感じでございます。  きょう出された中、また前回の質疑の中で若干わからなかったところもございますので、何点か私の方から確認させていただきたいと思います。  前回の十一月八日の当委員会でございましたけれども、糸久委員育児休業対象者に対する自民党考え方について、「両親」とか「母親」とか「人」という表現なんだけれども、そこのところは男女全労働者と判断してよろしいのかどうなのか。」というふうに質問したと思うんですけれども、それに対して前島委員は、「そうです。」と明快にお答えになっております。きょうの「考え方」を見させていただきましても、「人」という表現をなさっております。このことを確認しながら、さらに確認させていただきたいんですけれども、要するに、自民党としても労働者育児休業請求権を認める立法を考えているものというふうに私たち理解していいのかどうか、そこを教えていただきたいなと思っておるんです。
  24. 前島英三郎

    前島英三郎君 法律的な規定の仕方につきましては、法制的に今後詰めなければならない細かい部分、そういうことはいろいろあるわけでございますけれども、要は仕事を休んで子を養育することを望む人が、原則として子が一歳に達するまでの間育児休業を取得することを確保する規定、こういうことが一つの大きな意味でもございます。  適用対象といたしましては、これは男は産むことはできませんけれども育てることはできるわけでありますから、男女労働者ということに私たち一致を見ているところでございます。
  25. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 続きまして、今回の配付資料の「適用」の欄なんですけれども、この欄に「民間部門念頭におき、公務員についてはそれぞれの法体系措置」というふうにございます。これは前回たしか御説明がなかったし、今ちょっとお聞きしたところでは現行のある法制度公務員に対して、そういう部門というようにおっしゃったんですけれども、公務員でない部門もあるわけですね。そういった意味では、何かこう読んでいるだけだと片手落ちのような気もするんですけれども、この辺ちょっとわかりにくいと思うんですが、もう一度ぜひ説明していただければなと思うんです。
  26. 前島英三郎

    前島英三郎君 私たちはすべての労働者というとらえ方を念頭に置きつつも、現行の特定職種皆さんの問題あるいは公務員の問題あるいは一般労働者の問題、それぞれに細かい部分の法整備に関しては多岐にわたる問題がありますので、いろいろこれから詰めの作業をしなければならないというふうにも思っているわけですけれども、今後のいろいろな検討の中におきまして、こうしたことも踏まえて全体的、一般的労働者というとらえ方で私たち法案の整備に今取り組みをしているところでございます。
  27. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 とにかく公務員については今法制度がある部門もあるということですね、一つは。それと公務員の特殊性みたいなものを考えながら、ただ将来的には形としてはより広い方向でということで理解していいんですね、今のところは。
  28. 前島英三郎

    前島英三郎君 現行の特定職種育児休業法は、対象が教員、看護婦というふうに限られております。またその目的も、業務の円滑な遂行、その業務の遂行でいろいろ議論を今糸久先生から伺ったところなんですけれども、現在検討している一般労働者にかかわる育児休業制度とは若干趣旨は異なる部分も当然出てくるであろう、それぞれ別の観点からの検討が必要ではないかなという思いを持っているところでございます。
  29. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、育児休業期間というのは長期にわたるため、休業中個々の育児事情の変化によって延長または短縮する場合もあると思います。四党の提案では、そういう育児休業期間の延長、短縮について、一定の条件はもちろんありますけれども、それをもとに請求できることにしているんですが、この「考え方」の中に出ていないものですから、もし考え方があれば教えてほしいんです。この育児休業期間の変更の問題、この辺について自民党の方として何かお考えがあるなら、お聞かせ願いたいんです。
  30. 前島英三郎

    前島英三郎君 期間の細部については党としては意見の取りまとめはしておりません。法律の細部というのは党の議論にはなじまない部分があるんです。要は、育児休業をとにかく皆さんにとっていただくべく、そういう機は熟しておる、そういう方向でいこう、細部の期間の変更云々というようなものは党の議論にはちょっとなじまない、こういうとらえ方でございます。
  31. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点、私の方からお聞きしたいのは、育児休業請求権というのを法的に保障する場合は、これは産前産後休業について規定している労働基準法の場合のように、やはり違反する労働契約についてはその部分を無効とし、その部分はこの法律の規定によって補充するというような措置を講じるというようなことを明確化しておかなくちゃいけないと我が四党提案では考えておるんですけれども、その点について何かお考えがありましたら、お聞かせ願いたいんです。
  32. 前島英三郎

    前島英三郎君 この前も触れたかと思うんですけれども、育児休業制度確立のための規定ぶりというのはいろいろあると思いますし、また、民間あるいは公務員それぞれの、また業種によっても差異は当然出てくるであろうという思いを持っているんですが、重要なことは、育児休業をとりたいと思う人に育児休業確保するんだというその枠組みをつくることであろうというふうに私たちは考えておりまして、御指摘のような御意見も今後念頭に置きながら法的な技術的な面は詰めていくことが必要ではないかな、私たちはそんなふうに思っております。
  33. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう法的な面もぜひ詰めていただきながら、そうするとよりわかりやすくなりますので、その辺はぜひこれからこの委員会でまとめたいし、そういう方向でお願いしたいなということをお願いして、私は終わります。
  34. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、四党案との関係でというお話が出てきたわけですけれども、基本的には四党案の立場については、私ども部分的には意見の違いがありますけれども、基本的権利の分野からいいますと共通点がたくさんございますので、そういった立場から自民党のきょうお出しいただいたことについて若干質問をしておきたいと思います。  一つは、さっきからずっと質疑応答を拝聴しておったんですが、はっきりしておかなければならないなと思いますのは、今日の育児休業制度の確立を目指すという状況の中には、これはもういろんな国際、国内的な諸条件というのが出ておりますし、諸決定も出てきておるということが前提になって自民党の案というのも練り上げられてきているのではないかと思います。そういう点で端的に伺いたいと思うんですが、例えばきょうお出しいただいている自民党のお考えというのは、育児休業制度というものを女子労働者あるいは労働者の権利として確立をしていくという立場なのか、そうではなくて、そういう客観情勢になってきているから一定の制度をつくった恩恵的な規定としてやっていこうというのか、その辺が非常にあいまいだなというふうに思いますが、それはどうなんでしょうか。
  35. 前島英三郎

    前島英三郎君 繰り返して言うようですけれども、育児休業をとりたいと思う人に育児休業確保するという枠組みをつくる。これは当然一つの権利であろうというとらえ方で、機は熟したという思いと、さらにまた、就業も非常に男性をむしろ女性が上回るという現状もありますし、さらにそうした観点から出生率の低下等を踏まえて、今若いカップル一・五七人という状況で、昨年成人式を迎えた人が百八十六万人で、生まれた人が百二十六万人で、もう二十年の間に六十万人の人口減少があるというような状況を考え、それにまた一方では高齢化時代ということを考えていきますと、今までの既存の枠にとらわれている一つの感情といいますか、そういうものではなくて、働く人の権利として、また働く環境を整えつつ育児にも安心して専念ができる、安心して働く女性にも出産というものに対する喜びを得ていただくようにできる、そしてまた再雇用がされていくというような仕組みですから、当然これは一つの権利という感覚でとらえていただいてもいいのではないかというふうに思っております。
  36. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、今はっきり権利としてとおっしゃいましたのではっきりしたいんですが、先ほどのように取得したいと希望する労働者育児休業制度確保するという規定ということになりますと、果たして権利としての扱いをするのかどうかという点に若干の疑問があった。それはやはり権利として保障するというふうに御理解を申し上げてよろしいですね。
  37. 前島英三郎

    前島英三郎君 法律の細目は、文言がどうかというのは、これは法制局とかいろいろな関係するところと協議を積み重ねていかなければならないんですけれども、権利とするとしたならばそれに当然裏打ちする義務も並行して表裏一体のものでなければなりませんし、その権利が余りにも先走ったがゆえに中小零細企業というような人たちがそれによって倒産の憂き目を見るような、また問題を生じるような脆弱な産業基盤になっても困るということですから、これは非常に細かく多岐にわたるいろんな法解釈のもとに私たち検討していかなきゃならぬ、こんなふうに思っております。
  38. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 権利として保障する法制化を確立するということになれば、先ほど清水委員から四党案に対する御質問の中で出ていた自民党案との違いという箇所がこれはもっと解決のしやすい問題ではないかなというふうに考えるわけです。  時間の都合もあると思いますので、私重複を避けてごく二、三のところを伺いたいと思いますけれども、例えば不利益取り扱いというふうな問題、こういう不利益取り扱いの禁止というのは、働く人が権利として取得できる制度になれば、その裏打ちとして不利益取り扱いの禁止ということが法文に明記されるということによって担保されるというのが当然ではないかと思いますから、不利益取り扱いの禁止をすれば罰則を設けるというのは当たり前のことになるのではないかというふうに思いますが、そういう点、権利としての法制化をするということであれば、これは罰則の中身はいろいろ考えようがあるといたしましても、そういう体系というのが基本的に必要ではないかと思いますが、その点はいかがなんでしょうか。
  39. 前島英三郎

    前島英三郎君 自民党育児小委員会での取りまとめではこの問題について特段触れてはいないわけですけれども、育児休業制度を法制化する以上、制度自体を否定するような不利益取り扱いは許されない、こういう結論が導き出されると私たちは考えているわけですね。  ただ、実際に何が不利益取り扱いに当たるかということになりますと、これについては種々難しい問題がありまして、日本の産業構造とか、大企業ならいざ知らず中小零細企業の問題とか、あるいは夫婦で働いているような魚屋さん、お米屋さんの現状とかというふうなことを思いますと、法律の枠組みが縛ってしまって、そうした方々にかえってまた別の意味不利益が生じるようなことになってはこれは大変でありますから、一律に規定するということはなじまないという考え方を持っているわけですね。また、罰則のような強い制裁措置をとることは現状においては無理であろうというのが私たちの一般的結論としての考え方でございます。
  40. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、そこは権利として保障するという点で不十分さがあると思うんです。これは御検討いただきたいぎりぎりの点だと思いますので、ぜひお願いをしたいんです。というのは、お魚屋さんや何かの例が、いわゆる業者の方々の御意見というのが先ほども質疑で出ておりましたし、今、前島委員からも言われましたけれども、そこを混同しちゃいかぬと私は思うんです。育児休業制度の確立というのは、雇用労働者を中心としての権利をどう確保していくかということであって、子供を健全に育てていくという立場はこの制度一つで成り立つものではないわけです。十分な保育制度あるいは学童保育の制度あるいは児童手当の拡充、そういった諸問題、諸制度が並行してかみ合って十分な体制というものを確立していくというのが大前提なんですね。  その中で、一番大きな分野になってきております雇用労働者の権利として、この育児休業制度の法制化というものが今さしあたって緊急に必要だということで論議が詰められているという建前からいいますと、やはり権利としての法制化をするという限りでは、不利益取り扱いの禁止という点を明確にし、これに違反した場合には一定の罰則というものが裏打ちされるということでなければ、労働者育児休業を安心してとれるという保障にはならないという点をひとつ御理解いただきまして、ぜひ今後の御検討に課題として入れていただきたいなと思うわけでございます。  それからもう一つは、その権利という立場からいいますと、これは当然のことなんですけれども、本当に実効性を確保していくためには労働者が安心して育児休業制度を活用できるということになるというのは、安心してとれるということはもとの職場に原職で復帰できるかどうかということが最大の保障なんですね。職場の諸条件で同等職という、これは弾力的に考えている、実態的に弾力性を持たせている問題でありまして、当然そのことが必要であろうと思うんですが、ああだこうだということで、難しいからということでこのことをあいまいにするということになれば、育児休業制度の法制化が権利として保障されていくという上で非常にあいまいなものにされていくという点をひとつ御理解を賜っておきたいなと思うんです。  権利として保障するということであれば、この諸問題全部もっと解決しやすいんですが、さっき不利益処分の問題ちょっと言いましたけれども、そのうちの一つに例えば請求したいけれどもうまくもらえない。申告したいと思うけれども――申告権というのはちゃんと保障するんでしょうね、これは。不利益を受けたということを言おうと思ったら、これは申告という権利も労基法と同等に保障されるということが必要になってくるんですが、そんなことも権利としては当然含まれると思うんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
  41. 前島英三郎

    前島英三郎君 復職後の配置の問題、それで非常に働く人が不利益になった、いろいろなトラブルも想像できるような気がするんですけれども、育児休業利用者の役職とか職種及び利用者の属する企業規模によっては原職復帰が困難であるという場合も私は予測できると思うんですね。  さらに、人事配置等の人事管理というのは基本的には事業主に権限が属するものでございますから、一律にこれを法律によってやるというのは難しいのではないかなという気が私たちはいたしております。日本は法治国家でありますから、三権がしっかり分かれているわけですから、その不利益に対するいろいろな民事の訴訟の手だてというものもあるにいたしましても、そこに代替要員でいた人が一年やってその仕事がおもしろくなっても、一年後に帰ってきたら、あなたはこっちへ行きなさい、そこは今までいた人の席ですよというふうなことに政府がどう、あるいは法律がどう介入していくことができるだろうかといいますと、今度はその代替要員に置かれた人たちの権利というのも非常に侵害されてくるというようなことがありますから、それは企業事業主の判断にゆだねるべきではないか。それに法律で枠をつくるのはどうかなという意見が非常に党内では強く出されておりますし、私たちはそういう方向を持っているわけですね。  労働基準法の場合と同等というような今御意見がありましたが、実効担保措置や施行期間に関する問題など細部については党としては特に具体的な議論を行っておりません。今後の問題です。我々が自民党として意見を取りまとめましたその趣旨というのは、技術的事項を云々するよりも、まず育児休業についての基本的な考え方を、この前も申し上げたようにお示しすることだ、そしてそれをなるべく早くこの趣旨に沿って私たちは法制化をしたい、そして次の国会には出したい、こういう思いでいるということを御理解いただきたいと思います。
  42. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後ですが、これは重複したら悪いと思って私ちょっと避けているんですけれども、やっぱり考えなきゃならないのは、これは一つずつ考えていけばいろんな問題出てきますよ。例えば原職復帰はさせるということにはなったけれども、それじゃ休業中の年限は退職金のときの年数にどう考えられるのか、あるいはベースアップのとき、昇給のときの期間の算定にはどうなるのか、昇格のときにどうなるのかという心配だって当然出てくるんですね。そういう場合に、現行法では二分の一として算定をするというやり方をしているようですが、そういうことも含めて考えていくということにならないと権利の保障ということにはならないという点で、私は法律を権利の保障としての法制化という点をきちんと位置づけるかどうかということで、今若干の違いになっているあるいは基本的な違いになっていると見られる意見の違いというのは解消できるんじゃないか。  これは、具体問題では幅がありますから話し合いができると思いますけれども、例えばノーワーク・ノーペイだ、ゼロなんだと言う。一方では六割だと言う。私どもは三割だと言う。こういう問題だって、権利だということになれば、今日の日本社会状況でどのあたりが全労働者、国民的なコンセンサスの得られる水準なのかというあたりは協議できる内容になってくるわけですよ。国際的に見てノーワーク・ノーペイでゼロだというような国はないですよ。法制的にはゼロであっても他の制度によって補てんされる。フランスあたりそうでしょう。  そういうことになっているわけなんで、その辺は私はせっかくいろいろと御苦労いただいている自民党案で、もう一歩確立をしてはっきりしていただきたいのは、権利として付与するという法制化にするのかどうかというあたりに力点を置いていただいて、さらに御検討いただき、できるだけまとめ上げて早く成立をさせていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。
  43. 乾晴美

    ○乾晴美君 私もやはり所得保障ということが問題だろうと思うんです。育児休業中の所得保障の問題というのは、育児休業制度がどの程度利用されたり、また有効なものになるかと非常に大きなかかわりがあるだろうというふうに思うわけでございます。今沓脱さんもおっしゃいましたように、もう西洋の方ではこういった有給保障というのは国際常識化しつつあるんではないかなというふうに思います。この問題についてはILOの百六十五号条約を踏まえて対処すべきであるんだろう、事業主育児休業中の労働者に対しても社会保険料相当分の賃金を支払わせるというようなことはとにかくとしまして、西洋の諸国のようにいわゆる社会保障制度の中で考えていくというようなことにならないといけないだろうと思うんですが、自民党の御見解をお伺いしたいと思います。
  44. 前島英三郎

    前島英三郎君 スウェーデンのように国民の負担率が七六%を国民がみんな容認すると、消費税一つをとっても二四・四六%であるというような国の基盤的な社会保障考え方と、我が国のように三%でも昨年はあの状況の国民の負担のアレルギーという問題等を絡めていろいろ考えていきますと、なかなか言うはやすしという部分があることをひとつ御理解いただきたいと思うんです。  そういう意味では、確かにおっしゃるように社会保障というとらえ方を考えていくということは大変重要でありますから、例えば育児減税なんというのもどうだろうかとか、あるいは児童手当も今までのようなものではなくて、こういうふうな形で未来を背負う子供たちに対しての社会保障的な役割で考えていったらどうかと、いろんな議論を私たちもやっているわけでございます。やっているわけでございますけれども、この育児休業という問題に関しましては、ノーワーク・ノーペイ原則に加えて、社会保障制度としても、育児休業中に手当支給することは、育児休業をとらなくて働いておられる皆さんとのバランスということも一方では考えていかなければならない、あるいは専業主婦とのバランス等のことも、今清水委員から議論がありましたけれども、考えていかなければならない。一部分だけそこにずっと厚着をするというようなことはなかなか国民のコンセンサスを得にくいということで、基本的には育児休業中に手当を支払うということは考えてはいないという結論に達したわけでございます。
  45. 乾晴美

    ○乾晴美君 ノーワーク・ノーペイということなんですけれども、現行の特殊職種育児休業制度というのはあるわけですね。この中で公務員については共済掛金の労働者負担額相当のいわゆる育児休業給が支給されておるわけですね。民間部門については同様の措置を講ずる事業主、つまり労働者社会保険料負担分相当額以上の賃金を支払う業種に対しては特定職種育児休業利用助成給付金制度というのが設けられておるわけなんですが、自民党としても当然現行制度ということまで後退させるというようなことではないと思うんですが、そうですか。
  46. 前島英三郎

    前島英三郎君 現行の特定職種についての育児休業法、特定職種育児休業利用助成給付金制度というのは教員とか看護婦さんとか、今おっしゃった対象職種が限られているわけですけれども、また業務の円滑な実施の確保目的とする現在検討中の労働者一般に対する育児休業という趣旨とは若干異なる部分もあるという意見も出ております。そこで、育児休業を一般労働者に適用する場合に、同一に論ずることはなかなか難しいのではないかという意見が大勢を占めております。
  47. 乾晴美

    ○乾晴美君 ちょっと納得しかねるんですが。  それでは、いろんな意味でこういう制度ができたときに代替要員の問題もあるんだろうというように思いますけれども、代替要員の問題というのはもういろいろ問題点があって議論が錯綜しておりますので、一方的に片づけるということはできないだろうと思うわけなんですが、ここではとりあえず育児休業する労働者やその雇用主の立場だけではなくて、いわゆる代替要員立場に立っても考える必要があるということを強調しておきたいと思うんです。  一つだけお尋ねしておきたいのは、つまり不安定雇用者をなるべくなくしていくという立場から、代替要員問題も正規職員を基本として考えるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  48. 前島英三郎

    前島英三郎君 代替要員確保というのは、育児休業制度の導入に際して大変重要な問題であるということはこの前も申し上げました。また、この問題を考える際に、代替要員として雇用される人の立場を十分配慮していくということも、これもまた大切でございます。  ただ、御指摘の正規職員というものの意味がよくわからないんですけれども、代替要員問題に関する中小零細企業の実態を考えた場合、必ずしも正規職員としないこともやむを得ないのではないかな、パートというような代替要員考え方もあるのではないかなということですから、この辺は緩やかに私たちは考えるべきである。そこにいた人がさっき行って帰ってきた、はい、あなたはどこかへ行ってくださいじゃ、これも困るところもあります。その辺が難しいわけです。ですから、そういうことでこの辺は独自の事業主の判断にゆだねるべきではないかなという思いを持っております。
  49. 乾晴美

    ○乾晴美君 時間の関係で次に進みますけれども、最後に、いわゆる家庭的責任を有する労働者に関するILOの百五十六号条約の批准については自民党はどう考えているかということをお伺いしておきたいと思うんです。  それは、一九八五年の第百二国会で女子差別撤廃条約の審議の中で、土井たか子社会党の委員長さんの同条約と関連するILO条約、国際条約を締結する必要性についての質問に対して、当時の安倍国務大臣は、ILO百五十六号条約については次の国会までに批准の努力を行うということを約束しているわけなんですが、同条約というのは育児休業法の制定と密接不可分のものであるというふうに思うわけです。私たちはもうできるだけ早く早期批准を求めておるわけなんですけれども、自民党のお考えをお伺いさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  50. 前島英三郎

    前島英三郎君 育児休業問題等の小委員会では、ILOの条約まではとても議論はしていなかったと記憶しておりますけれども、条約を批准するか否かについては国内法制との関係もいろいろあると思いますので、これは政府において検討すべきものじゃないかな、こんな思いがしますけれども。
  51. 勝木健司

    ○勝木健司君 中小企業問題についてお伺いしたいというふうに思いますが、女性の大半、多くの女性の方々中小企業で働いておられる事実を指摘をしながらお尋ねしたいわけですが、この育児休業というのは、労働基準法が定める労働条件と同じように、労働者がどこで働こうが認められるべきじゃないかというふうに思うわけであります。また、労働法の精神からも、企業規模とかあるいは事業場規模によって差別的な取り扱いをすべきではないんじゃないかというふうに考えるわけですけれども、それについて自民党さんはどういう考えを持っておられますか。
  52. 前島英三郎

    前島英三郎君 党としては、中小零細企業においては育児休業制度を導入するには代替要員確保が大変重要であるし、また大企業に比べて困難だと思うんですね。その経営に対する影響が大きいと思われますから、弾力的措置検討する必要があるなということで意見一致しております。このような取り扱いも、必要な範囲で行われる限りはそれぞれの企業の許容範囲にゆだねざるを得ないなという思いを持っております。
  53. 勝木健司

    ○勝木健司君 自民党の小委員会の取りまとめでも、今言われましたように、「中小零細企業の実態等をふまえつつ、弾力的な措置検討する必要がある。」というふうにされておるわけでありますが、この点につきまして、前回の小委員会でも若干の時間の猶予措置を設けるという例を挙げられておったわけでありますが、時間的な猶予措置としては労働基準法に基づきます法定労働時間の猶予措置というのが今あるわけでありまして、皆さん方が御案内のとおり、製造業を例にとりまして、百一人以上のところでは週四十六時間ですよと、しかし百人以下のところでは平成三年三月末までは週四十八時間でいいですよというような措置があるわけでありますが、恐らくそのような考え方、そういう措置を考えられているのではないかというふうに推測をいたしておるわけでありますが、果たしてそうでありましょうかどうかお伺いしたい。  その場合に、この法定労働時間と同様な措置を適用することが果たして適当なのかどうか。また、種々議論の余地があるというふうに私は思うわけでありますけれども、どういうふうに考えられておるのか。また、それ以外に何らかの措置を考えられておるのか。先ほども行政指導とかPR措置とか言われておりますけれども、具体的に今まとめられて、今考えられておることがあればお伺いしたいというふうに思います。
  54. 前島英三郎

    前島英三郎君 時間的な猶予措置というのは労働基準法における規定がその例でありますけれども、必ずしもこの方法をとるというんじゃなくて、具体的には今後中小零細企業事業主意見を十分踏まえながら決めていかなければならないのではないか。それでなくても現状の人手不足という深刻化している問題もありますから、法律が出てきますとそれがひとり歩きしてしまう、こういうことになって非常に追い込むような形になっては大変だなという思いもいたしますし、やっぱり弾力的な措置検討していくことが必要ではないかな。特に、中小零細企業皆さん代替要員確保ということもなかなか至難のわざというような気がいたしますので、その辺も踏まえて法的整備を図るということではかなり時間的な猶予は持っていかなければならないな、準備期間を含めてということで、法律が通った後一年がいいのか二年がいいのか、この辺も詰めなければならない、こんなふうに思っています。
  55. 勝木健司

    ○勝木健司君 その場合に、ある程度事業主意見を聞くということも大事だと思いますけれども、しかし、ある一定の限度においてやらせていく、実行していくということも大事じゃないか。そのための政府として助成措置を講じていくというようなことも具体的に考えていかなければ、中小零細とやれる事業所との格差はなかなか縮まっていかないだろうというふうに思うわけですけれども、それについては何か考えられておりますか。
  56. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう細部についてのことは今後の私たち検討でありますけれども、その細部はむしろ法案というか、この問題に対しても政府もこれからは積極的に、労働省にもこの問題についての取り組みを小委員会のお許しをいただいてむしろそういう方面で早く法的整備に入っていく。それに一体可能な限りどういう手だてがあるだろうかということも小委員会を含め、私たちも党も含めて国民のコンセンサスを得るように、あるいは中小零細企業皆さんもこの法律の施行に対してもろ手を挙げというところまでいかなくても、そういう方向になっていくことによって育児休業がすべての労働者に与えられるという方向を目指したいものだな、こんなふうに考えているところです。
  57. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、育児休業手当と児童手当との関係についてお伺いをしたいというふうに思うわけですが、育児休業手当に関連してですが、この児童手当のとらえ方を新たに踏み込んでいく、考えるべきだとか、あるいは育児休業と児童手当をリンクして考えていくことが必要ではないかという意見が、前回の小委員会でもそういう意見があったということで紹介をされておったわけでありますけれども、私自身もこの児童手当の今の内容はちょっと貧弱じゃないかというふうに思うわけでありまして、これを充実改善することの必要性は大いに私もあるというふうに思うわけであります。しかし、その児童手当とこの育児休業手当の問題とは一応切り離して考えるべきじゃないか、そういうふうに考えていかなければいけないんじゃないかというふうに、私はそう思っておるわけであります。  そういう観点に立ちまして、二、三お伺いしたいわけでありますけれども、この育児休業の際の生活の問題、これを育児休業手当によってではなく児童手当によって解決する方法が果たして本当に妥当なのかどうか。妥当であるとすればそれは何ゆえに妥当なのかというようなこと。あるいは育児休業手当は出せないけれども児童手当なら、そういう形なら出せるというのはどういうことなのか、考え方があればお聞きをしたいなというふうに思うわけです。
  58. 前島英三郎

    前島英三郎君 いや、妥当とかということではなくて、これは育児休業ともちろんその児童手当の問題は、厚生省、労働省との社会保障の違いもありますから、ただ私たちは、一方では児童と家庭問題小委員会というのを前厚生大臣の戸井田三郎さんが委員長としてもう十回近くこの議論をいたしております。労働部会と社会部会というのは非常にオーバーラップしているメンバーが社会労働委員会と言われるようにあるものですから、時としては育児休業という立場から児童手当を論ずる人もおりますし、あるいはそうではなくて、これは育児休業とは別枠のものであるという立場から、今までの二子二千五百円、三子が五千円というようなことでいいのかとかいうふうな、こんなことではますます子供が少なくなってしまうではないかというふうな、そういう意見も踏まえた児童手当の見直しという問題も今議論になっていることは事実でございますが、この部分は今検討しているところでございますから、まだ結論は出ておりません。ただそれが、育児休業と児童手当というものが全く一本化された一つのものというとらえ方ではないということを御理解いただきたいとは思っております。
  59. 勝木健司

    ○勝木健司君 今さら改めて言うまでもないことでありますけれども、この児童手当は一歳未満に限られるべきではないということでありまして、そしてまた、この被用者のみに関する制度でもないということ、また受給が育児休業の場合に限られないこと等、やっぱり育児休業手当とは異なる面を確かに持っておるわけでありますので、そこでこの児童手当制度の活用という案につきまして、育児休業のときの手当の額が児童手当に影響されて低くされるんじゃないかとか、あるいはそうでなければ、一般の児童手当育児休業手当との格差ができるとか、そういう種々問題が生じてくるだろうというふうに考えるわけであります。  しかし、今全然別個の問題だという話もお聞きしましたけれども、新聞等々でもこの児童手当制度改正の内容が今検討されておるということでありますので、来年度予算編成時に決まるわけでありますけれども、予算のスケジュールから考えましてもそろそろ詰めていく段階だろうというふうに思うわけでありますが、この児童手当活用に関して私自身も懸念を持っておるわけでありますけれども、しかし、この問題について、この児童手当が新聞等々でも小委員会の模様が報道されております。この問題の見通しについてお答えいただきたいというふうに思います。
  60. 前島英三郎

    前島英三郎君 まだ結論には達しておりません、正直なところ。新聞にも報道されているところでございますが、いろいろな今の高齢化問題、あるいは減少していく出生率の問題ということも含めて私たちも深刻に受けとめておるだけに、今までの児童手当のあり方はいろんな検討は今会を重ねてやっております。  ただ結果として、形でそれが育児休業の支援的なものになったという結果は結果としても、これは厚生省、労働省それぞれの立場に立った中で法律は考えていくべきだし、またそれぞれ違う立場で、たまたま並行してそういう問題が議論され、その中に相通ずる議論もあるということで今のところは御報告をさしていただきたいと思います。まだ結論は出ていないということだけは申し上げておきたいと思います。
  61. 勝木健司

    ○勝木健司君 厚生省、労働省、それぞれの立場から、問題は同じところにあるわけでありますけれども、それぞれの立場で予算を編成をしていくということでありますが、出るところは大蔵省一つですから、そこら辺もここで出したのだからここは出さないとか、そういうことのないように、労働省、厚生省それぞれが綿密な連係プレーをとりながら、厚生省は厚生省でやったんだからもう労働省は労働省でだめだと言われることのないようにぜひ御努力をお願いしたいというふうに思います。  最後ですが、介護休業ということで、前回中間報告の中で出されておりますけれども、この介護休業制度につきましてであります。報告では「介護休業期間対象者などの実態を踏まえつつ、その実効ある普及促進措置を講ずる必要がある。」というふうにされております。  そこで、この「実効ある普及促進措置」の具体的な内容でありますが、育児休業の法制化と同時期にまた介護休業の法制化を行うのかどうかということで、私どもは「実効ある普及促進措置」の具体的内容については同じ時期に法制化をやるんだなというふうに理解してよろしいのかどうか。自民党の基本的な考え方と、今後のこの介護休業制度の法制化について、具体的な取り組みについてお伺いをしたいというふうに思います。
  62. 前島英三郎

    前島英三郎君 介護休業制度は、今後の高齢化社会の進展に伴い介護を必要とする高齢者が急増しているという、またゴールドプランというような一つ考え方も提示しているところでございますから、大変重要な問題であるというふうに思っております。このために「実効ある普及促進措置」ということで、党として最大限の努力をしなければならない。しかし、その法制化したときに介護休業制度もそこでゴールが一緒になるか、若干テープを切るのに違いが出るかというのは今後の詰めの作業によるだろうと思いますが、「実効ある普及促進措置」ということをこの間の大綱ではお示しをしたところでもございます。
  63. 勝木健司

    ○勝木健司君 できるだけ同時期にやれればやろうという、それでいいですね。
  64. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう思いで今努力をしております。
  65. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございました。
  66. 西川潔

    ○西川潔君 私は賛同者として、また庶民の代弁者としてお伺いしたいんですけれども、今まで前もって勉強もさしていただき、そしてきょうも質疑応答を聞かしていただきました。聞かしていただきながら、また手元の書類を見ながら、本当に双方足して二で割ったような法律が一番いいんではないかなというふうに思うんですけれども、賛同者ではあるんですが、すべてこのとおりでなければいけないというような考えでは私はございません。現実にこの制度が生き生きとして動けるような制度にしなければいけないと思います。  きょうもたくさんの傍聴者の皆さんもお越しになっておられますが、一つここでお伺いしたいんですけれども、十一月の八日の小委員会で、前島先生は沓脱先生質問に対して、議員立法になるのか、あるいはどういう形になるのか、新聞等いろいろ読ませていただいて、本当に庶民的感覚といたしましては心配ですが、これ何回も何回もこの小委員会も議論を重ねてきたわけですから、ここで前島先生議員立法としてこの育休を成立させるようなお約束はしていただけないもんでしょうか。
  67. 前島英三郎

    前島英三郎君 十一月八日以来、私たちも何回かにわたって会合を持ちました。そして、私の議事録なども皆さんにしっかり読んでもらって、西川委員を初め皆さんの我が党に対する考え方も、いろいろまた行間を埋めるような形で御報告もしたところでございますが、きょうもいろいろ議論を展開していきますと、一致しているところもあります。一致しているところもありますけれども、一致していないところがあるし、その一致してないところはまた非常に難しい問題である。非常に大きな、緩やかな違いじゃなくて、かなりの基本的な部分に私たちは違いがあるような気がするわけですね。  私としても、まとまるように最大限の努力をしたいと思いますし、我が党もそういう方向で何とか次期通常国会には出したい。次期通常国会には成案を出したいというには、やはり政府においても法律的な措置とかいろいろなもろもろの細部にわたる問題がありますから検討してもらう必要があるのではないか、ただ、政府がこの小委員会を傍観しているという立場ではなくて。細部にわたった成案の詰めという作業にはまたがる部分が余りにも多いわけでありますから、次期通常国会に向けて成案を得るという形ではその方がいいし、そういう場合には、私たちは政府提案でこの小委員会の意見を踏まえてそういう方向になっていくこともいいのではないかという一つ意見が、議員立法なのか、あるいは政府提案にしていくべきかということは意見が分かれておりますけれども、それはいずれにしても、どちらになるにしても次期通常国会には成案を得る。それには時間的な問題もありましょうし、次の国会は聞くところによると十二月十日だというようなことになっていくと、そういういろいろな手続的な面も考えていくと、法律的な措置としてどのようなものがあるか、政府にも検討させていくべきだという意見もあるということを報告しておきたいと思います。
  68. 西川潔

    ○西川潔君 先生お話、十二分に把握はできるんですけれども、一有権者として考えてみますと、大きな法案が出てまいりますと、ああ来年選挙やなあというような時期に必ず与野党がいろいろもめるわけです。実際本当に一有権者として考えますと、国会へ来たらよくわかるだろうなと思って来たんですけれども、ここへ来てわからなくなったところが随分ありまして、この問題もしかりです。  そこで、一つお伺いしたいんですけれども、自民党の小委員会の取りまとめによれば、「育児休業制度の確立等を行うため、男女雇用機会均等法等現行法制との関連も考慮しつつ、早急に法的整備を図ることとする。」とされておりますが、早急に次期通常国会を目指すという答えがありますが、これは先生、時期は先ほどちらっとお話に出ておりましたけれども、確かな時期というのはいつごろになるんでしょうか。
  69. 前島英三郎

    前島英三郎君 次期でございます。じきにと次期と。したがって、次の通常国会には私たちは出したい。出したいけれども、いろいろな作業とか、成案を得るためには……
  70. 西川潔

    ○西川潔君 施行するという意味ではどうですか。
  71. 前島英三郎

    前島英三郎君 それは一応法律が通ってからいろいろ準備期間がありますから、そういうことも含めて。けれどもやっぱり国会に提出した以上は、それが通らないと次へ行くということはできないわけですから、その取りまとめも含めて、むしろ細かい部分はひとつ政府にも検討させたいなという思いが大変強いわけでございます。
  72. 西川潔

    ○西川潔君 先生の頭の中で、自民党先生ですからおわかりだと思うんですけれども、大体このあたりだなというようなことは教えてもらえはしませんか。
  73. 前島英三郎

    前島英三郎君 次期通常国会。
  74. 西川潔

    ○西川潔君 施行も。
  75. 前島英三郎

    前島英三郎君 施行というのはやっぱり法律が通ってからいわゆる猶予期間という……
  76. 西川潔

    ○西川潔君 それが大体いつごろかということはわかりませんか。
  77. 前島英三郎

    前島英三郎君 それはいろいろやっぱり難しいんじゃないですかね。
  78. 西川潔

    ○西川潔君 そのあたりを明快にお答えいただきたかったんですけれども、わかりました。  大変すばらしい法案であると思いますので、どうぞいろんな方々に御意見をお伺いしていただいて、一つの大きなステップにしていただきたいと私は思います。  これで終わります。
  79. 乾晴美

    ○乾晴美君 先ほど二番目にお伺いしたんですが、私よくわからなかったんですが、現行制度、現行の育児休業法がありますね。そのものを後退させないかというように二番目にお伺いしたんですが、後退させないというお答えだったでしょうか。ちょっと確かめさせていただきたいんです。
  80. 前島英三郎

    前島英三郎君 いや、もう何もすべてが後退なんという前提のない形で私たちは進みたいと思っておりますから、一生懸命前へ前へと二十一世紀を見詰めつつ頑張りましょう。
  81. 乾晴美

    ○乾晴美君 はい、ありがとうございます。
  82. 糸久八重子

    糸久八重子君 論議を伺っておりますと、私たち四党が法案をつくって提出をしておりますのに、自民党さんは議員立法を出すとか政府提案をなさるとかというような言葉が諸所に出てくるわけでございますね。小委員会でやはりこれだけ論議をいたしましたので、土台は四党法案があるわけですから、政府提案を出して、それこそ審議会をつくったりなんかして論議をするということになると、またまた時間がかかるわけですから、ぜひ四党法案を土台としながら詰めをして、そして法案の成立を図っていっていただきたいということを強く要求しておきたいと思います。
  83. 小野清子

    ○小委員長小野清子君) 本日はこれまでの議論を通じて、自民党考え方野党考え方一致点及び相違点はかなり明確になってきたと思います。したがいまして、与野党の主張と今までの議論の経過を整理し、今後とも育児休業制度に関する取り組み方を協議していきたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十五分散会